2004年3月

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朝のドラめもん

2004/03/31

お題「期末のご挨拶と称して雑談」

例年のように発生する期末期初の短期金利上昇祭りもなく、金融機関の経営不安の話も無くという見事な期末となったせいか、全然期末気分を味わう事もなく気が付けば期末って感じの今日この頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか?

相場多忙につき真面目なネタを拾う余裕無く雑談形式で恐縮であります。

○値段よりモメンタム

昨日の債券市場は寄りから指数先物が買い気配という美しい状況にある中でも何故か上昇。最初は現物債の気配が碌に戻らない中で債券先物がやたらと買い戻されるというまさに買戻し主体という動きでした。で、相場が前日比プラス圏内で何となく堅調推移のような雰囲気を醸し出してくると、今まで何だかんだと言いながら「様子見」とばかり言い続けていた投資家の皆様が、前日比2毛強だの3毛強だのという所でおもむろに買いを入れてくるという動きと相成りました。

相場が止まって戻りだすと買いが入りだすという、ありがちといえばありがちなのですが、投資基準の中で「相場の勢い>相場水準」という意識が働いている姿が垣間見られて何だかな〜って感じでしたな、それじゃまるでディーラーじゃんってところでありまする。まさに債券市場総ディーラー状態なのか。


○中期債の重さは解消されたか

という債券市場でしたが、時間の経過から考えますと「先物の買い戻し主体で上昇」→「現物債に押し目買いが散発」→「先物引けにかけて再度独走」という感じでの推移でした。その中で比較的確りだったのは3年〜6年ゾーン。特に残存7年弱のゾーンが強いという状況でした。

昨日のドラめもんでも申し上げましたが、今回の下げ過程で5年ゾーンが妙に重かったのが気になる所でした。昨日も途中までは5年ゾーンがやたらめったら重そうにしていたのですけれども、後場途中から妙に確りして来たので一安心と言った所なのでしょうか。どうも一日の動きだけでは信用しにくい所ではありますが。

中期債がアンカーになればとりあえず相場は落ち着くのですが、というかいい加減振り回しすぎの相場には疲れるのでちったぁ落ち着いていただきたいものであります。


○来期相場の展望にならない展望

ま、あまりイメージが無いのですが、テーマは「時間軸効果をどこまで信用するか」の1点に尽きるかと思います。

何だかんだと申しましても、結局は「株価が上がれば全てよし」という極めて安易な景気認識がベースにあるようですので、株価がどう動くかというのが問題になるんでしょうな。いつもと同じお話なのですが。

そんな訳で、世の中景気が本格的に回復しているだの、一部ではインフレ時代の芽が出てきているだの、痩せ馬の先走りかと思うような大本営提灯新聞様の論調をみておりますと、少なくとも参議院選挙くらいまでは株価堅調→債券軟調という動きが継続するのでしょうな。大勢的な動きとしては。

ドラめもんでしつこく申し上げておりますが、財政赤字の拡大が全然止まらない状況での景気回復などというのは所詮底上げ景気なのでありまして、そんな中で景気回復→金利上昇となると財政に掛かる負担が大上昇する訳ですが、財政はそれに耐えられるのでしょうか。

潜在的な財政負担(産業再生機構と言う名の先送りスキームやら金融機関救済への暗黙のコミットメント)もあり、外為特会という名の宗主国様の財政赤字大献金システムの大借金だの、まぁ色々と訳のわからん部分もありますので、部外者が中々判らないようにできている所がまた恐ろしいのですな。

おまけに申し上げますと、昨今の物価上昇傾向を量的緩和政策の出口と絡める議論もございます。確かに現在の量的緩和政策のコミットメントは「全国消費者物価指数の前年比ゼロ以上」というのがメルクマールになっているのですが、残念ながら現在の国内物価の上昇傾向は、有効需要の増大に伴うディマンドプル型というよりは、国際的な資源価格、一次産品価格上昇に伴うコストプッシュ型の要因が強く働いているものと思われます。

有効需要の増加を伴わない形での物価上昇が発生した場合に金融の引き締めを行うとスタグフレーションが起きるという教訓が過去に有った様な気がするのですが、浅学非才のあたくしの記憶違いでしょうか?

ということで、まぁ外部環境を積み上げていくとどう考えても当面は量的緩和の解除はできないのですが、あたくしがそう思っても世の中がそう思わなければ債券相場は「利上げモード」を一回はやることになるでしょう。来期もまた・・・・・・


以下脱線気味の雑談で、マクラネタ候補を放出(^^)

○何でこんなにしつこく報道するのでしょう

六本木ヒルズの事故。連日某公共放送を始めとして(というか公共放送様が一番熱心)「死角がどうのこうの」だの「設定がどうのこうの」だのと原因追求なのか責任のなすりあい合戦なのか良く判りませんが、その状況が報道されております。しかもトップニュースあるいはそれに準じる扱いで。

確かに痛ましい事故なのですけれども、近くには尖閣諸島や台湾総統選挙、イラク問題もありますし、これから審議に入る重要法案が目白押し。おまけに消費税の総額表示のお話など、多くの人々の将来に関る報道すべき問題があるのではないかと思うわけですよ。

ここまで熱心に報道するのを見ていると、逆に「他の問題を報道しない為にやっているのではないか」とまで勘ぐりたくなるひねくれ者のあたくし。


○それに関連しまして

先日GALA湯沢スキー場なんて所に行って来たのですが、やたらめったら子供連れの客が多かったんですよ。で、運動不足がたたって昼飯後延々とレストハウスで休息モードになっている時に見ていて思ったのですが、

「あんたら子供を野放しにしすぎ」(きちんとしているのも勿論沢山いますが)

世の中危ない物はそこかしこに転がっている訳ですし、ましてやここはスキー場。遊びに来ていて楽しいのは判るが、もうちょっと何とか工夫したほうが良かろうかと思う訳ですな。

ま、回りの人間が(勿論あたくしも含めて)注意しないという無関心無責任社会状態になっているのも問題ですんで、結局悪いのは野放し親だけではなく周囲のオトナ全員当然含むあたくしなのですよね。自戒も込めまして。


というわけで雑談の後にご挨拶とは間抜けですが、今期もありがとうございました。来期も何卒ご愛顧を。


2004/03/30

お題「先物が売り込まれていますが」

金曜と月曜の2日で2円4銭先物が売られるとは恐れ入りました。期末まで値持ちして期初が利食い売りからスタートするかと思っていたのですが、大体皆さんが考えるようには相場は動かないものですな。

で、今回の下げの特徴はやたらと先物が売り込まれている所でしょうか。とにかく日中に相場が下がる時にやたらと先物ばかり下がり、その一方で買いの入りやすい10年などのカレント国債にしっかりとしたビットが残るという展開になっております。

まぁちょうど期末期初にかかる投資家さまが多いので現物債よりも先物に売りが出やすいということもあるのかな〜などと呆然と考えていたりする訳ですが、この派手派手な下落過程の中で気になるのは実は中期国債の5年〜7年ゾーンだったりする訳です。8月〜9月の絶賛大暴落のあとで10年カレント債が1.5%をマークしたのは総選挙前に先行きの不透明感が出てきた11月の頭であります。

例によって比較するのが単利なのがイイカゲン振り爆発のドラめもんではありますが、11月4日と昨日の各年限の単利引け値を比較するとこんな感じです。

------(11/4)--- (3/29)
20年 2.035%  2.020%
10年 1.500%  1.490%
5年  0.670%  0.670%
2年  0.160%  0.125%
先物  136.88  137.00

え〜こうやってみますと極めてざっくりとした言い方になりますが、実はこの下げで昨年11月初頭の位置に戻っていると言うお話になっております。で、もっと良く良く見ると2年債の位置が妙にしっかりとなっております。

2年債が妙にしっかりしている事に関して、何とでも講釈はできそうですが、一応「量的緩和の継続への期待はまだ継続している」という事になるのでしょう。それよりも資金ディーリング的な買いが(期末という事もあり)あまり入りにくくなっているために逆にロスカット的な売りが無いからなのかも知れませんが。

2年ゾーンが割高なのか後ろが割安なのかというのは解釈が難しいところなのですが、2年ゾーンが比較的安定している(その前に先行して売られすぎたというのもあるのですが)中で5年債が結構威勢良く売られているのが気になる所。

本日はNY株式が上昇しておりまして、朝のテレビ番組では日経平均12000円トライなどと景気の良い話をしておりまして、またまた売りの出そうな日なのですが、このあたりから尚も先物やら5年債やらを中心にして売り込む動きになるような動きになるのは、ちと無理筋気味のきらいがありますな。昨年8月みたいに残存1年半くらいの債券まで威勢良く売られ出せば話は別ですが。

と言って、ここから先に10年やら20年の金利上昇余地ってあるのかな〜という気もしますし、前提となる「量的緩和政策の継続観測」が崩壊しないと中々売り込みにくい所までやって来たような気もするわけであります。

まぁここから5年売っていくのは最早「時間軸の短期化」というお話になっていく話ですので、短期ゾーンの落ち着きから比較するとちょっとやり過ぎざましょうなというお話だと言うことです。2年〜3年ゾーンが大崩壊すれば話は別ですが。

問題は「5年債」がマーケットの暴れん坊将軍であらせられます大手銀行様の主要ポートになっていることでございまして、過去にも相場観というか適正価格への考慮も何もないようなレベルかつ凄いタイミングで売りをぶちかました前科のある方々なので、何をやってくるか判らんというのはちょっとだけ気になります。


おまけ:本のご紹介

昭和恐慌と経済政策(中村隆英著:講談社学術文庫)

ベースになる本は昭和42年に出版された「経済政策の運命」という本。井上準之助蔵相の実施した金解禁政策の政策導入から崩壊に至る過程を詳細かつコンパクトにまとめてあります。経済をまともに勉強していないあたくしには序論にあった金本位制に関する解説(金本位制を維持するためにはどういう事が必要だったのかというお話)が判り易くて勉強になっていたりもします。

経済理論がどうのこうのというよりは実態に即した実証検証的な一冊です。

ISBN4-06-159130-4 \760


信長の戦争(藤本正行著:講談社学術文庫)

副題は「『信長公記』にみる戦国軍事学」となっており、戦国時代の良質な資料である太田牛一の所謂「信長公記」をベースにして、史実として人口に膾炙している織田信長の合戦の真実を探った一冊。

まぁ正直歴史あるいは戦国ヲタ向けの本ですけど、「桶狭間の合戦は奇襲ではなく、正面攻撃で行われた」とか「墨俣一夜城の伝説はまるっきりのでっち上げ」とか「長篠合戦での『三千挺の鉄砲の三段構え一斉射撃』はなかった」などといった論証が緻密に行われておりまして、戦国ヲタ必見の一冊でありますが、そもそもドラめもん読者に戦国ヲタがいるかどうかは不明だったりします(汗)

ISBN4-06-159578-4 \1000





2004/03/29

お題「帝國陸海軍と同じですな〜」

日露戦争100年ってので世の中のごく一部が局地的に盛り上がっておりますが、日露戦争に勝利した大日本帝國の陸海軍はその後組織の硬直化が見事に進行しました。で、大東亜戦争においては現場の状況を思いっきり無視した作戦が次々と行われて、日本兵は次々と無謀な作戦によって消耗させられるのでありました。

と、のっけから訳のわからんお話になっておりますが、先週末にご紹介した福間審議委員の講演ご紹介第2弾。

長崎で福間審議委員が講演を行ったのですが、金融政策に関してあまり言い訳になっていない言い訳をした後には、「今後の銀行経営」という小見出しで銀行経営に関して講演をしているおります。紙に打ち出したベースで1枚半程度の短い段落なのですが、これがまた中々のものであります。


○相変わらずの米国崇拝

日本の銀行経営についての参考にしているのが「米国」一辺倒なのはどういう事なんでしょうという感じです。最近の政権というか政策立案の地位にある人々は揃いも揃って宗主国もとい米国崇拝の傾向が見られるというのはあたくしの考えすぎなのかな?と思ってしまったりします。

『第一のリスク管理の高度化については、米国の大手銀行では、フロントとリスク・マネジメント部署が、自動化・標準化されたシステムにより有機的に結び付き(以下略)』

『米国では、ご案内のように、JPモルガン・チェースとバンク・ワンの合併や、バンク・オブ・アメリカによるフリートボストンの買収等、戦略的なM&Aにより絶えず金融業界の再編が行われています。』

『米国には「オーバーバンキング問題は存在しない」と言われていますが、(略)』

とまぁ美しいまでに米国崇拝。米国の銀行経営モデルを日本にそのまま移植して上手く機能するのかという観点に関する分析をなおざりにして「米国と同じやりかたにすれば全てが上手く行く」という前提でのお話が行われている訳でして、大変に頭の下がる思いであります。


○机上の理論「リスク管理の高度化」

さて、福間さんがお話する銀行経営の課題の3点がありまして、
(1)リスク管理の高度化
(2)リスク・リターンの明確化
(3)事業ポートフォリオの絶え間ない見直し
ということでして、まぁ講演の中の短い部分なのですが、突っ込み所満載でございます。実に美しい。

で、この「リスク管理の高度化」なのですが、これがまた何ともはや。

『米国の大手銀行では、フロントとリスク・マネジメント部署が、自動化・標準化されたシステムにより有機的に結び付き、自行のあらゆる資産のリスク評価を絶え間なく、タイムレスに行っており、その結果、流動性リスクがあると判断される場合には当該資産を証券化して売却し、集中リスクがある場合には、証券化による売却のほか、デリバティブを用いたヘッジを行うなど、リスクの分散化を図っています。あたかもディーリング業務のように、コアとなる資産を維持しつつ、許容範囲を超えるリスクのある資産については、市場動向をみながら売却している訳です。』

まぁ要するに米国の大手銀行は素晴らしいって話なのですけれども、そもそも貸出資産の「時価評価」とやらをどう行うのかとか、それ以前に資産の時価評価を行う必要があるのかという状況にあるのが現状ではないかと思いますが。大体、米国の大手銀行の貸出資産と日本の銀行の貸出資産では根本的に資産の内容(優良とか不良とかの話ではなく)が違うと思うのですけれども。

『わが国でも、最近、大手行や地銀において信用リスク管理を高度化する動きがみられ始めており、今後そうした動きが広範化することを期待しております。』

信用リスクの把握方法をどうすべきかという話が先なのではと思いますが、まぁ高度化している振りをするのは流行しているかと思われます。


まぁこれだけの話だと突っ込まれるので「資産担保市場の整備が必要だ」というお話にもなってくるのですが、こんな感じでお話をしています。

『銀行が、その資産内容の見直しを絶え間なく行うには、理想論をいえば、銀行がいつでも資産を売買できる市場が整備されていることが望ましく、そのためには、銀行が、絶えず時価評価と減損会計により資産の適切な自己査定を行っていく必要があります。(以下略)』

まぁ法的整備やら売買市場の整備は精々やって頂きたい所ではありますが、『絶えず時価評価と減損会計により資産の適切な自己査定』っていうのをやりだして中小企業貸出が激しく締められたのではないかと思うわけで。


○支離滅裂な「リスク・リターンの明確化」

『第二の、コベナンツを活用して借り手との間でリスクとリターンを明確化することについては、その前提として、銀行が、企業と共に汗をかきながら対象となる案件のリスクを最小化し、リターンを最大化する努力が必要になるという点で、銀行にとっては、その「目利き」機能の向上に繋がると思います。』

コベナンツってのは「財務制限条項」という事なんですが、このコベナンツを活用することによって借り手が財務上これはやってはいかんという事を明確にするとか、貸してはいきなり借り手の梯子を外すような事をしないとか、まぁそういう効用があることは事実。それを「リスクとリターンを明確化」というのはどうも違和感がありますが。どちらかというと「権利義務の明確化」と言う方が良いのではないかと思いますが。

それは兎も角として、『その前提として』以下の文章が甚だしく意味不明であります。顧客の事業評価の問題とコベナンツの問題は全く通じないとまでは言いませんが、基本的に別の問題でしょう。

『地域金融機関の場合は、その伝統的な貸出業務に対して、「リレーションシップ・バンキング」ということで、地元企業の育成や地域経済の基盤作りという重要な役割が期待されています。ただ、目的が重要であるから事業性を度外視してもよいという訳ではなく、株主利益の重視という観点からも、案件の収益性と貸し手・借り手の間のリスクの分担について合理的な見通しや取極めを行うことが重要です。』

リレーションシップバンキングとコベナンツの活用は矛盾しないと言いたいようなのですが、顧客との取引に関して顧客との長期的な関係による情報の共有を活用して貸出取引を行う(ってのは別に横文字を使わなくても昔から銀行がやっていたことですけど・・・・・・・)というのと財務データを重視したコベナンツの活用っつーのはどうも矛盾するようにしか思えなかったりする訳です。


そもそも米国の銀行融資と日本の銀行融資ではカバーする領域が全然違う(日本の方が滅茶苦茶広い)訳で、米国米国といいますが、同じ制度をぶちこむと色々な所で問題が生じる事間違いなし。というか金融検査マニュアルという形で既に生じているという気もしますが。


○話としては良いのかも知れませんけどねぇ

『第三の事業ポートフォリオの絶え間ない見直しについては、変化の激しい時代にあって、経営環境や自行の経営資源の変化に応じて戦略的に事業ポートフォリオを見直し、「選択と集中」を図ることも、経営安定化のために必要なことと思います。』

話としては判りますが、根本的にストック商売である銀行業務のストック部分を流動化するという話がないと。まぁその点についての必要性を言及しているからこれはこれで仰せのとおりと言うことで。

『米国には「オーバーバンキング問題は存在しない」と言われていますが、その背景にはこうした活発なM&A(引用者注:マネーセンターバンクを中心とする米国の活発な銀行合併)があり、さらにそれが可能であるのは、時価会計・減損会計の徹底と、説明責任を伴った情報開示を通じて、企業価値を適正に反映した株価が形成されているからです。』

ほほう、米国様では『説明責任を伴った情報開示を通じて、企業価値を適正に反映した株価が形成されている』と仰るわけで。株価を過剰に重視した経営によって会計問題が生じているのもまた米国だったと記憶しておりますが、あれはあたくしの勘違いだと。ふーん。

まぁそれにしても、そもそも日本の会計、特に中小零細企業の会計に『時価会計・減損会計の徹底』だの『説明責任を伴った情報開示』だのが求められているのかというお話をまず考えていただきたいものです。何せ日本の銀行の貸出先には時価会計だの情報開示だのと遠いところにおいでの企業が多うございますが。


○現場を知らない指揮官あるいは参謀?

総じて言える事なのですが、この審議委員様は「世の中には上場企業とそれに準ずる企業しかいない」という脳内現実があるのではないかと思ってしまうような傾向が見受けられる訳ですな。

以前ドラめもんで福間さんの別の講演をご紹介したときにもたまげる話がありまして、重複になりますが簡単に申し上げますと、この時には「手形の活用」というお話を講演で行ったのですが、その時に「無担保裏書」という方式も活用しましょうというお話をしておりました。この「無担保裏書」というのは譲受人が裏書人に対して遡及が出来ないという性質を持った裏書なんですけど、「この手形の支払に関しては俺様は関知しません」なんて受取る側が困る流通方法がとても普及しているとは思えません。

と思って銀行屋の友人に聞いて回りましたが「そういえば大学の時にそんな事勉強した事があったかもしれない」という人がかすかにいただけで、「そんな手形流通するのかよ」という事であっさりと「見たことない」というお話ばかりでした。

今回の講演における「銀行経営」に関しても同じような事がいえる所でありまして、どうも現実離れした前提に立脚してお話をしているのではないかと思われる節があちこちに見られるわけです。これが無害無益な立場にいる人ならいいのですが、このお方は「日本銀行政策委員会の政策審議委員」なところが実に美しい訳です。

まるで大日本帝國末期の大本営(以下自粛)。




2004/03/26

お題「量的緩和は為替介入へのご協力」

昨日は福間審議委員が長崎県金融経済懇談会で「最近の金融経済情勢について」というお題で基調説明を行っていました。日銀Webにアップされている講演要旨を紙に打ち出すと10ページあって、参考図表が22枚あるという結構な大作です。話も経済見通しに量的緩和政策と銀行経営のお話とありますが、本日はその中の「量的緩和政策」に関る部分に突っ込んでみましょう。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0403b.htm

○量的緩和政策のコミットメントについて

量的緩和政策のコミットメントの明確化を行った経緯と理由に関してはこんなコメントがございます。

『昨年の夏以降、短期の先物金利が急上昇した際、その要因として、株価と長期金利の急騰に加えて、日本銀行の金融政策決定会合等における量的緩和政策の解除、いわゆる「出口政策」に関する議論や発言の影響も指摘されました。』

因果関係を意図的に取り違えているような気がします。

元々長期金利の上昇第一弾(10年0.5%からの上昇)では長期債と超長期債が主に売られておりましたが、中短期国債に関しては比較的影響が少ない状況でした。この時までは市場は自然な調整の範囲内(長期金利の下がりすぎの修正)だったのですが、その後に「いわゆる出口政策議論」の話が出てきたり株価が絶賛上昇を継続している間に「景気回復を反映した金利上昇は自然」と量的緩和の時間軸効果を自ら減殺させるような情報発信を続けたのが日銀でありましす。で、その動きが「オーバーインベストをしていた銀行勢のロスカットスパイラル」を招き2年金利0.25%だの5年金利1%だのという豪快な金利上昇を招いたのではないかと。

『日本銀行としては、景気が上向いても、物価の下落傾向が続いている間は、量的緩和政策を堅持することが最優先の課題であり、出口政策はその次の問題として認識しております。そうした「遠近感」を市場との間で共有するため、昨年10月に量的緩和政策解除に関する判断基準を、より明確化した形で公表しました。』

という事で、どうも日銀は相変わらず判っていない(多分事務方は判っていると思うのですが、知らぬは執行部と多くの政策委員でしょう)な〜と思わせてくれる部分がここにも出ております。

ちょっと上であたくしが申し上げたように、元々量的緩和の時間軸効果について自らその効果を無力化するような「金利上昇放置」という情報発信をしていたのは日銀(の執行部)な訳でして、余計な情報発信を行ってそれを後から慌てて否定した形になっているのがこの「コミットメント」だという認識があるのかないのか。公式に認めたくない(体面もあるし)ので言っているのかも知れませんが、どうも過去からの経緯から勘案するとナチュラルで言っているように思えるところが寒いわけであります。

『時々、「日本銀行は、量的緩和政策の時間軸効果を維持するために、出口政策を封印している」との声を耳にしますが、昨年10月に発表した判断基準がまさに日本銀行の出口政策であります。』

意味不明ですな。


○景気拡大下における量的緩和強化の強化への言い訳

そもそもこの段落のお題が『本年1月の量的緩和の拡大』な時点で話がおかしい訳でして、景気判断を前進させているのに量的緩和の強化を行ったのはその前に遡る訳でして、本年1月の量的緩和強化は最早終わってしまった話の追認作業に過ぎないのですがねぇ。

という悪態を軽くついてから福間審議委員による驚愕の告白をご紹介するしかありませんな(^^)。

量的緩和拡大の言い訳としてあげているのが3点。

(1)経済のデフレ・リスクへの対応
(2)金融調節の円滑性の確保
(3)ペイオフ全面解禁に向けた金融政策上の保険

この3点ともに中々香しいものを感じるのですが、順番は逆になりますがまずはこの(2)に関する衝撃の発言が!(^^)。

『2つ目の理由は、為替介入の増加に伴うFB発行額の急増により、日本銀行の金融調節の円滑性が失われ、市場との対話が困難とならないよう、日本銀行当座預金残高目標値に十分な余地を確保する必要があったことです。』

このあとうだうだと説明が続くのですが、結局は「介入増加によって発行が増えたFBの円滑な消化ができません。特にペイオフ全面解禁になったら大変です」というお話に(ペイオフ解禁云々の因果関係はあたくし的には素直に頷けないが)なっております。

正直なのは大変結構なのですが、要するに量的緩和政策は為替市場でのドル買い介入によって発生する円資金ファイナンスのサポートざますってお話をしているようなものでして、金融政策が為替市場操作にリンクしているというお話をここまで判りやすくお話をするとは大変香しいです。

本当にそんなこと堂々と言って良いのか福間さん。


ちなみに、他に並べられている理由にも中々結構な部分が散見されます。例えば上記理由の(1)に関してですが、量的緩和拡大の必要性についてこんなコメントをしているわけですな。

『本年入り後、為替市場で円高のマグマが蓄積され、為替円高が一段と加速した場合の、輸出や企業業績に対する影響が懸念されたため、日本銀行としては、量的緩和の拡大により、「現在の極めて緩和的な金融環境は当面維持される」との期待を通じて、経済に対するデフレ・インパクトの軽減を図る必要がありました。』

まぁ円高対策で量的緩和拡大をしましたとも読めますが、良く良く見ると「量的緩和の拡大で金融環境が当面維持されるという期待形成を行う」と言っている訳でして、期待形成の為に量的緩和拡大、というか当座預金残高目標の引上げをするというお話。そんないい加減な理由で「量的緩和政策」の根幹である当座預金残高目標を操作して良いのかよと突っ込みたくなる訳であります。

そしてもう一つ申し上げますと、期待形成の為に量的緩和の拡大を行ったというのは、ついその前に『日本銀行としては、景気が上向いても、物価の下落傾向が続いている間は、量的緩和政策を堅持することが最優先の課題であり(略)、「遠近感」を市場との間で共有するため、昨年10月に量的緩和政策解除に関する判断基準を、より明確化した形で公表しました。』と言ってわざわざ政策の自由度を縛る「量的緩和のコミットメントの明確化」の狙いを自ら否定している訳ですな。非常に素晴らしく、あたくしは感動のあまり開いた口が塞がらなくなってしまうというものです。


福井総裁の言動もそうなのですが、どうも最近の日本銀行は政府のトップに素晴らしく影響でもされたのか、「言っている事ややっている事が見事に首尾一貫していない」という素晴らしい傾向がある訳で、この支離滅裂金融政策に振り回されるほうは堪った物ではありません。というか相変わらず総裁の国会答弁なんかを真に受けて一々反応する人たちがいるから困るのですけれども。


ちなみに、(3)の理由も意味不明でして、ペイオフ全面解禁に向けて金融を緩和状況にしておくだけなら別に十分な緩和状況にあるのを更に緩和する必要は無い訳で、それよりも「混乱が生じた時に緩和ができるように『糊代部分』を確保しておく為に緩和カードを切らないで温存する」のが常識なのではないかと思うわけですな。


いやはや、困ったものですな。



2004/03/25

お題「2年国債入札/その他」

本日は2年中期国債の入札が実施されます。というわけで、あまり注目はされないのですが、現実にそのへんの商品をいじる立場になっている人としては色々な感想が湧くもので・・・・・・・

○ゼロ金利下でこの不安定さはどうよ

福井総裁がかねてから「景気回復のペースは極めて順調だが、量的緩和の解除の話をするのはあまりにも早すぎる」と言っているのですけれども、最近の2年ゾーンの金利はまぁよく動く事動く事。先月までは妙に堅調で0.05%だの0.06%だのというレベル(まぁ10年債も1.2%前半でしたが)にあったのは兎も角として、株価指数が高値をマークした今月の5日あたりからの動きを見ると0.12%(5日)→0.085%(12日)→0.125%(19日)と、(10年債も派手に上下していますが)相場の上げ下げにしっかりついていって豪快に値動きをするようになっています。ちなみに昨日は0.11%買い気配ざます。

というわけで、一頃は全く動かない商品の象徴でもありました2年国債なのですが、最近は0.1%を挟んで妙に動くようになりました。この動きは「市場の考える量的緩和政策の期間」が動いている事を反映している・・・・・・と言いたいところなのですが、単に需給で動いているだけのような気もするし、量的緩和解除が向こう2年以内(2年債の金利が動く為には量的緩和解除が1年半後とかにあるという発想が無いと本来は変なのですけどね)に実施されるという意識が参加者の中に出てきているともいえますし、まぁ何だかわからんのですが。


2年国債という発行量は多いわ、ヘッジ手段は碌に無いわという債券が現段階で既に値動きをそこそこ元気良く開始しているという状況は中々なものがございます。将来本当に量的緩和政策が終了しそうになった時に現状の2年国債の発行量が安定的に捌けるのか心配(というか短期国債のほうがもっと心配ですが)になってきます。

何せ2年国債の大量発行は量的緩和時代にしかやっていません。まともに短期金利がついている時代になって大丈夫なのかいな、と思うのは発行サイドでも同じと見えまして、発行年限の長期化を進めているのは良い傾向だと思いますけど。



○今回は年度替りの入札です

現在の入札日程では、2年国債だけは前月の内に入札が実施されております。という訳で本日の入札が2004年度上期の一発目の入札と相成りますな。

で、まぁ国債市場懇談会メンバーの選定だの何だのという諸々のお話がありまして、期初の入札というのは余程相場が過熱していない限り「落札シェア確保」というあまり経済的合理性の無い(無くは無いが)動きが出てくる傾向にありまして、まぁ碌でもない入札になってしまったりする訳であります。

本年10月より実施予定の国債市場特別参加者(日本版プライマリーディーラー)制度の参加がどうのこうのというお話がありますので、まぁ今回の入札はそこそこ「シェア確保」的な動きをする業者様が益々出てくるのではないかと勝手に想像しております。よって恐らく割高入札になるのではと思われます。

例によって期末期初で暫く売れない債券を業者で抱え込みというお馴染みのパターンになりますので、まぁ株式市場が無駄に上昇しない事を祈るしかございませんな。業者連合と致しましては。


ということで、あまり注目されない2年国債入札ですが、本日の入札はそれなりに注目してあげて下さいませ。


※ここから全然別の話題というか雑談になります

○日本国債格付け見通しの上方修正

どこぞの格付け機関が日本国債格付け見通しの上方修正をしていましたが、財政状況が全然好転していないどころか悪化傾向は相変わらずという素晴らしい状態にも拘らず格付け見通し上方修正。リリース(ただし日本語)を一応読んだのですが、景気が回復傾向にあるのでソブリン格付けの見通しが上方修正されるという論理はどうよってのがあたくし的な印象。

財政構造改革が進捗しているとは到底思えないのですが、格付け見通しの上方修正っつーのは格付けの基本的な発想とずれているような気が思いっきりするところであります。

というか、日本国債の強引な格付けですっかり海外格付け機関の格付けへの注目度が下がってしまったので、今や債券市場への直接的影響もあったものではないのですけど。


○緊張感に欠ける国会

昨日は衆議院財務金融委員会の会議録を見ながら「民主党やる気あるのか」と突っ込みました。で、念のためと思いまして当該議員が何者なのか検索していましたら、メガバンク吊るし上げ大会の時に延々と「俺様の演説」をしていた五十嵐議員というのは「民主党の金融関連政策の政策責任者」で「民主党の『次の内閣』の金融担当大臣」だという実に香しい記述をご本人のWebから発見してしまいました。大丈夫か民主党。

そういえばこの党の党首様は社会保険庁の広報問題で、何故か出演俳優(江角マキコさんね)を参考人招致するなどと、わざわざ自党の支持率を軽く1%は下げるのではないかとも思われる自党破壊活動を炸裂させていましたが(参考人招致するなら出演俳優の社会保険料未納にも気が付かず、おまけに視聴者の反感を買いまくりで逆効果抜群の広報に6億円だかを掛けた無能役人を招致するんじゃないのかね)、景気回復ムードの蔓延のせいか国会(というか野党)の緊張感が無くなっているのが気がかりであります。

激しく前のドラめもんでご紹介した緊張感のある、というか鋭い突っ込み満載の国会会議録を思い出しますと、「結局野党同士にも競争が必要なのだろうか?」と思ってしまう今日この頃であります。

このままじゃぁ昔の万年野党と同じになりそうですな。一応の抑止効果があった昔の万年野党のほうがまだマシという説もありますが。無駄に現実的なだけに・・・・・・

ではでは。




2004/03/24

お題「政権担当能力」

相場は期末モードでちょっとした需給によって嘘のように振らされる状態ですのであまり申し上げる事はありません。というかエエカゲンにせえよって感じなのですがね。

そんな訳で、先日も突っ込みを入れた衆議院財務金融委員会の会議録を拝読していると、これがまた無駄な質疑をやっているので健やかな笑いが提供される訳ですな。昨日アップされた会議録は3月16日と17日の分です。

○突込み不足

16日では民主党の小泉俊明委員が冒頭に質疑をしているのですけれども、これがまた竹中大臣に全部楽勝で流されてしまうという実に心温まる質疑です。内閣府の出す月例経済報告について突っ込みをしている所なんかでは「月例経済報告の発表内容が『良いことずくめ』のように書いてあるが、詳細に読むと色々と問題があるように読めるがどうなっているのか」と質問しているように見えるのですが、質問の仕方が悪くて何を答えさせたいのかさっぱり判らないという美しい質問。結局竹中大臣からは『今、委員から月例経済報告の資料そのものはなかなかよくできているじゃないかという御指摘をいただいて、我々はかなり自信を持ってつくっております。』などと流されながら答弁されてますな。民主党やる気あるのか。

この日は日銀の白川理事が参考人として出席して答弁をしておりまして、為替介入に関する問題に関して同じく小泉俊明委員が質疑を行っております。

『これは実は、やはり日銀が政府短期証券を一たんであれ引き受けるということは、そもそも日銀の政府短期証券の引き受けは、財政法五条の、要するに、日銀による国債の引き受けを禁止した例外規定ですよね。しかし、ここまで巨額の介入をするために巨額の政府短期証券を引き受けるということは、そもそも、法の予定した範囲を超えた、財政法上の脱法行為になる危険性が極めて高いと私は思うんですが、この点につきましては、日銀の方、おいでになられていれば、端的にお答えいただけますか。』

こんな教科書的な質問ならわざわざ白川理事を呼び出すことも無い訳で、極めて順当な説明を返されております。ちと長いですが、日銀的な理屈のお勉強のために丸引用します。適当に段落を切りますが全て一連の答弁です。

『お答えいたします。政府短期証券につきましては、一九九九年四月に、市場におきます公募入札に移行いたしました。』

『日本銀行では、かねてより、短期金融市場の整備拡充の観点とともに、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点から、政府短期証券については市場における公募入札が望ましいというふうに考えてきたところでございまして、その見直しは重要な意義を持つというふうに認識しております。』

『先生御質問の件でございますけれども、政府短期証券の公募入札において、日本銀行は、現在、例外的に引き受けを行うケースは二つに限定しております。一つは、公募入札におきまして募集残額、未達でございますけれども、これが生じた場合、それから二つ目は、為替介入の実施等によりまして国庫に予期せざる資金需要が生じた場合に限定しております。さらに、こうした臨時の引き受けを行った場合にも、ただいま理財局長から御説明がございましたとおり、次回以降の政府短期証券の公募入札発行かわり金によりまして可及的速やかに償還を受けるという扱いにしております。』

『このように、現在の制度のもとでの日本銀行による政府短期証券の引き受けは、安易な財政ファイナンスにつながることがないようにしっかりとした歯どめが設けられておりまして、あくまでも一時的な流動性の供給という性格が極めて明確になっているということでございます。』


で、この完璧な答弁に対して質問者の答弁を読んだ瞬間に発生しそうになった爆笑の発作を抑えるのに苦労する訳です。

『説明はわかるんですが、やはりこれほど巨額のものは法の予定の範囲を私は超えていると思いますので、これはやはり財政法五条の脱法行為として非常に財政法上の問題もあるということを指摘させていただきたいと思います。』

こういう理屈にならない捨て台詞のような言い方で「指摘させていただきます」というのは昔からの伝統らしく、時々ものの本を読むと似たような質疑が国会では行われていたようですな。

突込みをするのなら「何故巨額の政府短期証券の消化が可能になっているのか」という点を「量的緩和政策およびにその拡大過程」と絡めて論じた岩田副総裁の講演なんかを敷衍して「日銀による為替介入ファイナンスが行われ、この1年で大幅に拡大しているが、これは実質的に外為特別会計のマネタイゼーションではないか」とでもやれば良いのですがねぇ。

結局この委員は最初から最後までてめぇのところで考えたしょうもない理屈を持ちだして一生懸命突っ込んでいるのですが、週末の似非経済番組程度の突込みしかしないもので、全部政府側から簡単にあしらわれております。実に情けない限りです。


○メガバンクの吊るし上げ会

というのがその翌日であります3月17日にあったのですが、質疑のトップバッターは自民党の林田彪委員。まぁ本人も質疑中で何度も言及しているのですが、この方の質問は「新聞報道によりますとどうのこうの」という答弁のしようのない質問が多く、何のために吊るし上げ大会をやっているのか激しく意味不明であります。

で、突込み所は例によって民主党なのですが、この日の質問者は五十嵐文彦委員でございます。この人まず最初に『最初に、私の基本的な考え方を述べさせていただきたいんですが』と言って延々と一般的な話(しかも別に新しい観点なんぞありません)をした上に、参考人の答弁に関しては『御丁寧な答弁、ありがたいんですが、なるべく簡略にお願いをいたしたいと思います、重要な問題がたくさんこの後控えておりますので。』と言う始末。しかもてめぇの質問はやたらめったら長いという状況です。誰もおめぇの演説なんか聞きたくねぇっつーの。

で、この方の無益な演説の一節が実に楽しく、頭痛を激しく催すものとなっております。楽しいので引用。

『(引用者注:銀行の企業融資が構造的に増えにくいという話の続きです)今は国債をやたら買って、そして銀行自身が国債バブルのリスクを背負い込んでいるということなんですね。金余り現象が大手の金融機関の中では起きているわけです。新たなビジネスモデルを構築して、これはもうリテールを伸ばす、中小企業と個人向けを伸ばす以外ないのに、そこをきちんとされておられないということに大きな問題がある。そうすると、あとはデリバティブに頼るということになると思うんです。デリバティブの領域は今急拡大をメガバンクではしていると思いますが、これは一種の投機であります。投機的な収益に当たります。ばくちになりますので、そのリスクは巨大なものになってくるわけですね。』

頼むからこんなのを財務金融委員会に出さないで頂きたい。>民主党

で、途中でまた同じようなしょうもない発言をしております。みずほFGへの質問の一節なのですが、

『昨年十二月五日の金融庁との検査後の出口協議で口頭指摘があったというふうに言われております。幾つかの重要な指摘があったと言われておりますが、私どもも独自にいろいろ調べたところ、どうもみずほ銀行の中では反社という言葉、隠語が使われている。反社というのは何かというと、反社会的な勢力という存在です。そこの、反社への融資というのがやはりまだなくなっていなかったということが金融庁に発覚をいたしまして、そこで指摘を受けたのではないか。(中間省略)反社会的な勢力、すなわち総会屋及びその関連会社への融資というのが残っているのではありませんか。』

という質問に対して、まぁこう答えるしかない訳で前田社長はこういう答弁。

『みずほ銀行の金融庁検査に関しましてのマスコミ報道に関しましては、先ほどのお答えと同じでございまして、この場でお答えは御容赦いただきます。反社会的勢力に対しての御質問でございますが、私どもは、従来同様、反社会的勢力に対しての対応につきましては毅然たる対応を行っておりまして、現在も同じ方針であります。また、総会屋の御質問がございましたが、現在ではそのような事実はございません。』

と、まぁこう答えるしかないのですが、何故か鬼の首を取ったようにこんな発言をしているわけでありますな。五十嵐委員は。

『しかし、反社という言葉は、我々の世界では気がつきもしない言葉であります。はっきりとみずほのグループの中からそういう言葉が使われているということを聞かされたこと自体が、実はまだそうした融資が残っているのではないかという疑いを極めて濃厚にさせることだということを指摘させていただいて(以下略)』

もうね、アフォかヴァカかと。


まぁこの後で不良債権問題の話を色々と突っ込んではいるのですが、どうも何だかねぇって感じの応答が続くのでありました。

会議録は結構読んでいると楽しめる事もありますので、ご一読をお勧めします。国会会議録検索システムっつーのがございますし、衆議院に関しては会議録がアップされた分に関してメールで案内が来るシステムもあります。勿論無料ですので一度如何ですか?

ではでは。




2004/03/23

お題「都合により本当にメモ」

いやはや面目ない。目覚ましを見事にスルーしてしまいました。ちなみに昨日呑んだお酒はビールジョッキ1杯に冷酒1合と梅酒ソーダ割が2杯。途中で「コリャイカン」と思って水を飲むという飲み会参加者にあるまじき動きをしていたのですが、物の見事に酒が回ってしまいました。風邪で暫く酒を呑まなくなった影響で激しく酒に弱くなっていますな。本卦帰りしたという説もありますが・・・・・

てな訳で、本日は超越的寝坊をして(当然昨日書き物する状態になし)ますので、メモだけにさせてください。明日にでも増量セールをば。

○公示地価

相変わらず公示地価が下がっているようですな。で、不動産会社の偉い人が鼻息荒く「都心部の地価はもう下がらず、今後上昇」とか言っているようですが、土地の高度利用に関する規制が緩和されているんですから目先都心部の土地価格が下げ止まるのはある意味自明だったりする訳です。土地の利用価値が上がるんですから。

で、土地の利用価値が上がるから土地価格は上昇するかも知れないのですが、問題はその土地に建てる「箱」の需給バランスな訳です。最近もまた立派なビルがバカスカできておりますが、その分既存のオフィス需要を食っている部分もありますし、都心部に湧いて出てくるかのごとく増殖中の高層マンションも何時まで売れる(あるいは賃貸の場合もありますが)のか怪しいものがあります。

まぁトータルの実態は正直良く判りませんが、住民的な感覚で言えば、都心の東側の住宅建設はちょっとやり過ぎじゃね〜のって感じです。中古物件は明らかに値崩れしてますし、完売御礼だった筈の物件が何故か折り込み広告で「残物件あります」となっていたりと、「おいおい」という感じではあります。

都心だから何とかなるのかも知れませんが、その分は着実に郊外の需要を食っている訳で、これもまた経済状況にも似た「都市部と地方の2極化経済」みたいなもんでしょうかね。

○ヤシシ師殺害

イラク戦争のドサクサであまり報道されませんが、さすがにヤシシ師の殺害はとんでもない状況になりそうで、報道がされておりますな。某公共放送ではヤシシ師について「アラファト議長と並ぶパレスチナ解放の象徴的人物」と言ってましたが、あたくしの理解ではパレスチナの民衆的な人気はヤシシ>>>>>>>>アラファトだったような気がするのですが。行った事無いから知りませんが。

パレスチナはコメントの仕様が無いくらい悲惨な状況が続いておりまして、泥沼化が終了しないのですが、この調子では米国の「テロ戦争」も百年戦争状態になってしまうでしょうな。大丈夫なのかよと言いたくなります。


まぁそんな訳で思いっきりメモでした。寝坊には参った。



2004/03/22

お題「景況感の整理」

最近めっきり何を考えているのか訳の判らない相場が続いておりまして、あたくしの方も色々整理せんといかんかなと。

○日銀の景況感

これはもう何度もご説明しておりますが、景況感は3月の金融経済月報で個人消費と設備投資に関して前進しております。これは「外需主導の景気回復からの離陸」というお話(本当かよおひおひと言いたくなりますが)でありますので、これは強気転換も良い所。景気回復に伴う金利上昇というシナリオであればいわゆる「良い金利上昇」って奴ですか。まぁ金利上昇に良いも悪いも無い気がしますが。債券売り。

○物価動向と量的緩和解除の関係

とうとう竹中大臣まで国会で「一次産品の価格上昇が云々」というお話をするようになっておりますが、原油価格も景気良く高止まりの状況となっております。で、こちらを債券の売り要因として捉える事も可能なのですが、実は消費者物価指数の上昇は量的緩和解除とリンクしないのではないかという説を立てつつあるあたくしなのでありました。

と申しますのは、ゼロ金利解除に加えて昨年の長期金利急騰(本当に問題だったのは5年金利が1%まで上昇した「早期量的緩和解除モード」なんですけど)という2つのトラウマがあることから、日銀としては今回は「早すぎる量的緩和解除」に関しては相当にナーバスになっているのではないかとあたくしが勝手に想像しているのがその理由であります。結果としては量的緩和の解除が遅れることになると思うんですけど、ここでチョンボをしたら日銀の独立性に関する正当性を問われるような展開になるかもしれないという意識が福井総裁にはあると思います。だからこそ外部との良好な関係を築くべく努力しているわけでして。

福井総裁は既に国会やら記者会見やらでも「均衡ある日本経済の姿」などという観念的なお話をしだしておりまして、言葉巧みに「CPIターゲット」を「これは単なる必要条件のひとつに過ぎません」とある意味骨抜き(骨抜きというのは変な表現だが)化しつつある訳であります。ちょっと読みを入れすぎなのかも知れませんが、そういう状況を考えますと、あたくしは「まぁCPIで慌てなくて宜しい」と思っているわけです。

結局はこの「口先介入大作戦」を信じるのか、本来の「CPI時間軸」を信じるのかというお話なのですが、政治的柔軟性を重んじる福井総裁のことですからまぁ柔軟にやるでしょうな。

問題は「口先介入は相場のモメンタムを加速する事はできるけど、反転させる事が出来ない」という事なんですけどね。まぁよろしいか。

○為替介入政策の変化?

為替市場への無限介入政策に変化が見られると言われるようになった昨今ですが、皆様ご指摘のように「円売りドル買い介入」→「米国債購入」→「米国様が安心して財政赤字拡大」→「米国景気の拡大」→「日本もウマー」という介入の景気刺激効果(笑)が何だかんだと言っても米国と日本の景気の下支えとなっている訳であります。

で、この新手の「一般会計を通さない公共事業」大作戦に関して急に出口政策らしき論議が盛り上がっているわけで、為替市場では政府日銀のドル買い方見殺し祭りが展開されております。介入の規模を減らしたりするのはまぁ結構なのですが、上記の下支え効果についてはどうする積りなのでしょうか。日本としては「外需主導の回復から内需主導にバトンタッチしたから敢えて米国下支え政策をこれ以上継続する積りはない」という事なのかな〜と勝手に想像しているのですが、米国がこけると結局日本もただでは済まないという気もする訳で、やっぱ注意しないといかんのでは。

一番洒落にならんのは米国債下落の米株下落でおまけにドル安ですか。

そういえば最近メディアでも「介入の出口政策」なんて事言いますけど、介入を止めるだけで、膨れ上がった外国為替特別会計を減らす方策が何も無い状態のどこが「出口」なのかと思うわけですな。これがまた。


○全然関係ないですけど台湾総統選挙

陳水扁氏の再選で、レファレンダム(公民投票)は無効のようで、ある意味バランス感覚の働いた選挙結果なんですが、あまりにも差が接近していますので暫くはややこしい事になりそうです。先日(先月)米国とフィリピンが台湾島から南に50キロと言うところで共同軍事演習をしていたように、東アジアの軍事的緊張が発生するなら北朝鮮ではなく台湾海峡でございましょう。今後の動向には要注目ですな。


何となくとりとめの無いお話になってしまいましたが、週初はいつも呆然としているということでご勘弁ありたしであります。






2004/03/19

お題「決算モードの影響か?」

市場分断状態もまた困ったものでありますな。

最近、中期国債の価格形成がかなりいびつになっております。日本相互証券の債券終値を見ているだけでも「おひおひ」という動きがご覧いただけますので、本日はさらりとそんなお話でも。

○3年ゾーン国債の無茶苦茶

残存3年近辺の国債がエライコッチャになっております。以下特に断り無く「終値」といえば日本相互証券発表の債券終値(単利)ですので予めお断りします。

で、その残存3年あたりの債券なのですが、例えば2006年12月償還の10年190回、191回の終値は0.175%で同償還の5年17回、18回の終値は0.205%であります。

この終値だけ見ていると「ふ〜ん」くらいのお話なのですが、実を申せばこの10年債の0.175%というのは大引け後に無理矢理業者間で付けた出合い価格に基づく数字。昨日の市場では相場実際にはこのゾーンの10年債は安値圏でも0.170%での出合いしかありませんで、0.175%での終値というのはやや無理筋の感があります。一方で5年の16回、17回債の0.205%は絶賛オファーサイドの終値でありまして、実際の実力を見ると同償還で単利が0.04%は利回りが違うという素晴らしい状態です。

この辺りの銘柄であります10年190回〜198回あたり、特に190〜193なんかが絶賛大人気を誇っておりまして、日中これらのゾーンの前日比較ベースの値動きを見ていると、中期債ディーラーで対顧客売買を業にしている人たちは日々激しく不機嫌になる訳でございます(-_-メ)。

(通常、債券投資においては複利を比較して論じるのが常識なのですが、このゾーンの債券利回りを比較するときに「クーポンの再投資利回りが求める複利利回りと一致する」という前提で求めた複利利回りを比較するのもどうかと思っているあたくしですので、このまま話を単純化するために単利比較で通してしまいます。念のため。)


○理由はまた決算らしいのですが

純粋に経済的な視点で考えますと、ど〜考えましてもこの辺の10年債を売って同償還の5年債に入れ替えるのがお利口さんと思えるのでありますが、世の動きはその逆に進行中でして、この10年債と5年債のスプレッドは拡大圧力が掛かっていたりするわけです。

で、経済的に考えるとやや無理気味な価格がついている時には理由と言うものがあるのですが、今回の理由もまた決算のようです。金融機関の投資有価証券の会計に「償却」というのがございまして、要するにクーポンが高くて取得原価が高くなる債券について償還価額(100円ざますな)との差額を均等償却していくという制度がございまして、「アモチぜーション」などと申すのですが、この「アモチ会計」の適用による償却狙いという動きが流行しているのがその背景にあるようです。

つまり、有体に言えば「債券部門の収益が上がりすぎたので、償却資産を持って益の先送りをしたい」というまぁ景気の良いお話。基本的にはアモチ会計における償却は残存期間に対して月次で償却をしていくというのが原則(だったと思うのですが、違っていたらゴメンナサイ)ですが、簡便法を使っていますと、半年(だか四半期だか)毎に償却をするという技を使えると思いますので、益先送り効果もまた絶大というものです。


で、この辺の残存期間がある10年国債というのは元々オペやら「もう償還まで売らない人」のもとに沈んでいる上に、昔の発行ですから発行量も少なく品薄状態。この品薄状態のところへ買いがわんさかやって来る訳ですからそりゃーもうエライコッチャになるのは致し方なし。現在申し上げるような純経済的には理解不能ながら、会計問題を絡めると合理的という実に心温まる価格形成が行われていく訳であります。


○会計問題恐るべし

昔々その昔、4年国債と6年国債という妙に中途半端な(5年国債の発行が金融債と競合するという理由だったようですが)国債が発行されていた時代には、10年国債(と20年国債)は東証に上場されておりました。で、4年、6年国債は上場されていなかったので、当時は「非上場プレミアム」という有体に言ってしまえば「時価評価されない債券なのでプレミアムがつく」という実に香しいものが発生して、特に新規発行債では同ゾーンの上場国債よりも10BP位プレミアムがついていた事もあったりしておりました。その後、金融不安モードになった時には「非上場なので流動性が無いからディスカウント」などというもっと香しい事態が発生して、大量保有(というか意図的買占め)をしていた一部の投資家様が見事に焼死するという結果になったのですが。

まぁ決算時期が来るとこの手の「調整用のお道具」債券が妙に売られたり買われたりする訳です。マーケットの流動性が変わらないのであればそれはそれで結構な収益機会でもあるのですが、相変わらず世の中では「決算期末になるとレポ市場に放出している債券を引き揚げる」という動きもまた決算のご都合上出てくる動きでして、こういうときに限ってレポ市場の機能が低下していたりする訳です。(というかレポ市場の流動性が下がっているから市場に歪みが生じるというのが因果関係として正しいのですが)

相変わらずなのですが、業者サイドは商品有価証券としてひたすら時価会計で動かざるを得ない中で、投資家サイドでは時価会計が中途半端に適用されているお方もあれば、取得原価と償却しか反映されない会計を適用しているお方もありと言う事でして、この辺のギャップもまた市場の歪みに拍車をかけている面が無いとは言い切れないでしょうな。困ったお話です。


業者の立場としては完全時価会計を適用しないお客様が「売るに売れない債券」を保有したままで抱え込みモードになってしまい、結果「ショート厳禁銘柄」が各所で発生したり、100円よりちょっとだけ安い債券ばかりに買いが入ったりといった個別銘柄の需給の「お家の事情による歪み」を是正する為にも「単価調整売買の復活」を求めたい所ですが、まぁ単価調整売買が認められなくなったそもそもの理由を考えますと、「身から出た錆び錆び錆び錆び錆び」なところも多々ありますので難しいところでしょうな。

ちなみに、問題になるようなど派手な単価調整売買が横行していた時代にはあたくし債券ではなく株式のディーラーやってましたんで、その辺の事情を良くは判っていなかったりしますが。


という訳で本日はマニアなお話しでした(^^)。





2004/03/18

お題「気にするなといわれても気になります」

金融政策決定会合後の総裁定例記者会見やら昨日の国会での答弁やらを拝見(国会答弁は元テキストを入手するのに少々お時間が掛かるのですが)致しますと、昨日ご紹介した金融経済月報(基本的見解)に見られるのと同じく、やたらめったら「景気回復モード」になっている福井総裁であったり致します。

景気回復に伴って(本当に回復しているのかね〜??という気は相変わらずあたくし的にはするのですがまぁ兎も角)総裁としては強気の旗を出したり引っ込めたりしながら様子をみて行きたいというところなのかと存じます。

で、まぁこの総裁様は(相変わらずしつこく引用しますと)『私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』という事ですので、一々真面目に気にするなということのようですけれども、そうは言われても気になる点が少々。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0403a.htm

○益々絶好調な景気認識

『実体経済は、想定通り、緩やかな回復傾向を続けている。そして、おそらく物価の基調も少しずつ改善しつつあるのだろうという判断である。』

『今の素材価格の上昇は、やはり世界的な景気回復傾向の強まりが基本的背景になっている。(中略)これは今、グローバルに経済の回復が進んでいるということを素直に表していると思われる。』

『中間段階の価格には、波及がだんだん及んできている──国内においても企業物価が上昇傾向を示し始めていることに現れ始めている──と思うので、さらに景気の順調な回復が続けば、末端の段階の消費者物価指数、あるいは小売物価というところにも経済のロジックとしては影響が及んで来るというように思われる。』

『景気の順調な回復そのものが需要全般を強めていき、企業の収益力がそれだけ高まるという見方のほうが強くて、原材料高、製品安によって企業経営が決定的なダメージを受け、マクロ経済にまで悪い影響が及ぶリスクまで判断が及んでいない、というのが一般的な見方ではないかと思う。』

『(引用者注:景気の現状認識について)もう少し1〜3月の数字の出方も見ながら、最終的に確認したいし、シナリオとの関係でどの辺りの位置付けかということは4月の展望レポートの時にきちんと結論を出したいということである。取りあえずのところは、従来のシナリオの範囲内で、もしかしたらシナリオの中点よりはやや上をいっているかもしれないという感触は持っているが、そのように金融政策決定会合で判断を出したわけではない。』

とまぁ拾ってみるとうじゃうじゃ出てくるのですが、とりあえず景気の現状については進軍ラッパ鳴りまくりという感じですのでご留意ありたし。




○よく言えば「政治力に長けている」のでしょうが

まぁこのお方のお話はどうも前後関係に整合性が取れない傾向が昔からあるのですが、結局経済が好転してしまえば何でも良いと言う事なのでしょうか。どうも???なのではございますが。


長期金利をどうコントロールするのかという趣旨の質問に対して、総裁はこんなコメントをしております。

『金利を抑えるということを言ってしまうと、マーケットを人為的に操れるような印象になってしまうのであまり適当な言葉ではないと思う。もし私が使っていたとすれば、言葉の使い方として反省しなくてはならないと思う。』

ま、内閣総理大臣が率先して言葉を大事にしないお方ですんで仕方がないのかもしれませんけど、ついこの前国会(1月30日衆議院財務金融委員会)では『量的緩和の効果というものは、もう御承知のとおり、流動性をたくさんマーケットに供給することによりまして、短期金利のみならず期間の長い金利についても極力低位に抑えて』などと堂々と発言している訳ですが、もしかして国会での発言はその場限りのいい加減なお話だとおっしゃる訳で????・・・・あ、閣僚の皆様も同じだから別に構わないのか・・・・・・・・とほほ。

『消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでは量的緩和の枠組みを続ける──これは、流動性を大量に供給し続けることで、量的緩和プラス時間軸効果を持つことになる。これがマーケットで正しく理解されれば、長めの金利についても、少なくとも早めに跳ね上がるということに対しては、マーケットが自らブレーキをかける要素になるのではないかと思う。そういう政策を我々は明確にとり続けるという意味である。』

「期待に働きかけるという政策」を取っている訳ですが、このように「放置はしていませんが、コントロールの意図も無い」みたいに言いつつ、市場に対する期待感は表明するというのは何とも論評しがたいところではあります。

『結果としてでてくる金利が、実体経済ないし物価の先行きの動向と過不足なくマッチしたものであれば、それはそれでいいということである。』

まるで「ノルマは無いが目標はある」という営業現場のようなお話で(-_-メ)。

『マーケットの金利形成が、先行きの動きをあまり先取りしすぎて、金利が先に跳ね上がるということを極力避けて、安心して金利形成ができるような諸条件を金融面からの流動性供給およびメッセージの発信ということで実現していきたい。ここのところは人為的に抑えられるものではなく、マーケットと日本銀行との息がいかに合うかということが大事である。』

その意図が訳わからん上に、表現がコロコロ変わるので何を言いたいのか判らなくなっておるのですが・・・・・・・・・・とここで突っ込んでもナントカの遠吠え。


別の質問に対してこんなコメントがあります。別々の質問に対するコメントなのですが・・・・・・

『金利が先行きの経済ないし物価状況と平仄のとれるかたちで自然に形成されていくという部分を大事にしながら金融政策をやっていくことが、結果としては構造改革を早くかつ円滑に進める方法ではないかと思う。』

『景気の回復についての信認度合いを強く持っておられる方々からは、いつまでも市場機能を犠牲にしないで、早く日本銀行は次のことを考えろ、とのご意見もだんだん増えてきているが、我々はまだその時期ではないということを強く心に決めている。』

さっきの「金利コントロール」に関するコメントと、上記2つのコメントを並べて読みますと、現在の金融政策はは市場機能や金利形成に関して何を意図してやっているのかさっぱり判らん訳であります。コントロールしているのかしていないのか、市場機能を封殺しているのかしていないのか・・・・・一つ一つの質疑応答を見ているとそれなりに説得力のあるお話なのですが、どうも全体的に通してみると前後で言う事がコロコロ変わっているように見えてしまうのは、あたくしの読み方に問題があるのでしょうか?と思いつつ。


まぁその辺が「原理主義者」であった速水前総裁と180度異なるところでありまして、だからこそ(何となく誉め殺しのような感もある記事でしたが)海外の経済誌からは絶賛され、政治との関係では過去に無い良好極まる関係を維持している訳です。「政略家」としての福井総裁は大変優秀であるというのは間違いなく確かなことなのでしょう。

難しいところではありますが。。。。。


#本日は時間の都合で纏まらないうちに終了ざます。





2004/03/17

お題「判断が前進基調の金融経済月報」

や、「当座預金残高目標引上げも」などと書いてしまって、結局かいたのは赤恥でありました。面目ありませんな。

昨日終了した金融政策決定会合ですが、金融政策の変更はなかったのですが、例によって何かやらないと気が済まないらしく、今回は「銀行保有株式等取得機構への貸出債権の適格担保化」をリリースしております。こういうのを一つ一つ小出しにする必要があるのか非常に理解しがたいところです。

まぁそれは兎も角。

金融経済月報の基本的見解も同時にリリースされていますので、例によって前月と比較してみますと、これがまた結構判断前進なのでございます。福井総裁が最近妙に金利を抑えつけるような発言をあちこちで行っているのは、日銀の景気判断が前進していることの裏返しだとあたくしは思います。つまり、昨年の債券相場暴落というか、中短期金利の理解しがたいレベルまでの上昇が教訓になっておりまして、「金利市場を放置していると日銀の景気判断上方修正に過剰反応してしまうので、先に口先介入で予防線を張っておく」という発想があるのかと思います。

長期金利放置発言を続けた結果、長期金利よりも中短期金利が劇的に上昇してしまい、市場金利が「早期利上げ織り込みモード」になってしまうという事態が発生した昨年から比較すれば隔世の感があります。それが本当に良いことなのか悪い事なのかは、あたくし的には正直判断を下しにくい所なのですけど、現在の国内金利・債券市場は市場構造的にスタンピート的大暴走をしやすい要素を内包しているという事を考えますと、このような口先介入もやむを得ないのではないかと思うところもあったりします。うーん、難しい。

しかし何ですな。半年前の経済状況で利上げモードになり、それよりど〜考えても経済状況が好転していると思える現在は量的緩和解除に対して全く無警戒ってのは一体全体どうなっているんざますか??とその無節操ぶりに対して頭が痛くなるところでありますな。


と、話が少々脱線しましたが基本的見解の判断前進具合をば。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0403.htm

○基調判断は同じだが個人消費の判断を前進

基調判断に関しては『わが国の景気は、緩やかに回復している。』ということで、昨年12月にそれまでの『回復しつつある』から変更して以来の表現を継続中です。

景気の現状判断に関して判断が前進しているのは個人消費の部分です。『個人消費も足もとはやや強めの動きとなっている。』となっており、前月までの『横ばい圏内の動き』から前進した表現になっています。


○先行きの見通しも判断前進

先行きに関しては『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けるとみられる。』となっております。前月まではこの文言に続きまして『が、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。』と入っていたのですが、今月はこの部分が削除されています。

個別では『最終需要の回復が続き』という表現が目に付きます。この部分に関して前月の表現と今月の表現を比較するとこんな感じです。

2月『海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。』

3月『海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続き、生産も引き続き増加していく可能性が高い。』

どうも文脈を読むと設備投資の回復傾向についての判断を前進させているようにも見えるという微妙な形容詞の係り具合という感じです。


○構造調整問題への言及の変化について注目すべきかと

あたくし的にはこっちの方が気になる所。構造調整問題に関して判断を匍匐前進させている点に注目しておきたいです。今月から構造調整について表現が追加されております。

2月『もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。』

3月『もっとも、企業の過剰債務などの構造的な要因は、徐々に和らぐ方向にあるとは言え、依然として根強い。』

設備投資に関する表現の方に注目が行きそうですが、物価より何より問題な「構造調整問題」に関して初めて『徐々に和らぐ方向にある』という表現がご登場してきた事に関しても注目すべきところだと思います。何せ日本経済最大級の問題なのですから。


○物価に関してはあまり表現を変えていません

と、まぁ景気の基調判断や先行き見通しに関しての表現を見ているとやたらと判断の前進が目立つ所であります。バランスを取っているのかどうかは不明でありますが、物価動向に関しては判断の前進に関しては極めて慎重であります。まぁ「CPI縛り」をコミットしてしまった手前、あまり物価の先行き見通しを強気にする訳にも行かなくなっているという面もあるのではと。

物価に関しては、国内企業物価の先行き見通しについて前月の『目先は強含み』から『当面、上昇を続ける』としておりますが、消費者物価の先行きに関しては前年比で基調的には小幅のマイナスを続けるといういつもどおりの判断になっております。

ま、この判断を上方修正したら超絶的な大騒ぎになりますんで、ここに関しては「結果後追い型の判断」になるでしょう。あまりここの判断を気にする必要は当面無いかも知れませんね。

なお、金融面に関しては表現に変化はありません。



2004/03/16

お題「雑感をいくつか」

○金融政策決定会合

昨日と本日の2日間の日程で金融政策決定会合が行われます。

まぁ金融政策自体がめっきり茶番状態なのですが、本日は一応何も無いというのがコンセンサスとなっております。精々やるとすれば決算期末を控えていますので、決算期末を控えて「必要があれば当座預金残高目標にとらわれずに潤沢な資金を供給」とでもするという所でしょうか。

技術的に言えば、為替市場への介入増加ということもありますので当座預金残高目標の増額をやっても何らおかしくないので、幸か不幸か言い訳として使えそうな「国際テロ懸念」というのがございますので、当座預金残高目標の引き上げという茶番劇が行われても宜しいかと思います。時あたかも介入終了観測が強まる中ですので、介入を行う「見せ金」としての当座預金残高目標引上げというもはや何の為の量的緩和だか理解不能な量的緩和の強化も可能性として考える必要はあるでしょう。

ちなみに、当座預金残高目標額を引上げると、英語系の情報ベンダーが「BOJ eases monetary policy」とフラッシュを出しますので、それをみた人が瞬間的に債券先物を買うようです。てな訳で、瞬間的に債券先物は反応してくださいますので要注意。

現実問題としては、FBの発行増加によってやや強含み傾向のある短期国債やらレポ金利やらが当座預金残高目標引上げによって安定化しますので、最近になってタイムラグを置いて需給が悪化傾向の中短期ゾーンの国債金利の安定化には繋がるとは思います。

なお、前回「検討を指示」した「品貸しスキーム」はつい先日市場関係者へのアンケートが終了したばかりですのでさすがに具体的施策の発表は厳しいかと思います。まぁそんなに慌ててやられても困りますけどね。


○下手な情報操作は命取り

スペインの爆破テロ。今までのETAのやり方と違いますな〜と思いつつも思わず現地の大本営発表を瞬間的には信用しておりましたが、何の事は無い結局アルカイダ系の犯行説が濃厚という話が米国から出てきている有様。選挙の悪影響を避けようとして事件直後にいきなり「ETA犯行説」を大々的に唱えた政府の情報操作のあざとさが目立ったという所なのではないかと勝手に推測しております。大体シロートのあたくしでも「本当にETA??」と思ってしまう(基本的に無差別テロは行わないから)状態でのあの発表はまずかったでしょうな。

直前までは与党優勢と言われていたのがひっくり返った訳でして、いわゆる無党派タイプの有権者が情報操作に嫌気したのが本当の原因であると思うのですが、まぁ外野で好き勝手言っているだけなので本当の事というのは現地にでも行かないと判らない(行っても判らないか)というところでしょうか。


激しく不謹慎ですが、スペインの政権交代で参議院選挙前での日本対象テロの懸念が高まるというものであります。で、つらつら考えておりましたが、東京でテロをやるというよりは我が海外派遣軍への攻撃とか在外公館の攻撃という話になるのかなと思ってはおります。無党派層の投票動向は直前3日がポイントと言われますので、参議院選挙投票日直前の週は要警戒でお願いします。あまりそういう想像はしたくない困ったお話ですが。

ただ・・・・何かあった時には基本的に人の良い日本人は情報操作に乗り易いですので、スペインとは全然違う反応になると思います。どちらかというと監視国家体制の強化に拍車が掛かるだけの結果を招くだけだと思いますので、まぁテロは勘弁して頂きたいものです。


○資金循環表

というのが昨日発表されておりまして、「家計部門が初の資金不足」と報道されております。本当はこれがどういうお話なのかを書くのが本日一番のネタのような気がするのですが、情けないことにこの辺の話はあたくし未だ勉強途上ですのでちゃんとした話ができません。

って一々書くことではないんですが、一応気にしているというポーズで。


○展望になっていない相場展望

債券市場はめっきり株価指数連動相場となっておりまして、債券の予想をするよりは株価指数の予想をしたほうが早いようです。イールドカーブ動向はと言いますと、週末の日経新聞に出ていた企業年金保有債券の満期保有債券扱い適用問題に単純に反応した訳でもないのでしょうが、何故か上がっても下がってもフラットニング継続となっています。こちらは最近めっきり訳がわからない動きというか、トレンドらしきものがない動き。

所詮は10年債で1.3%±0.1%、5年債で0.55%±0.05%、20年債で1.9%±0.1%のレンジから逸脱できないという所なのかと思いつつ、実にしょうも無い相場で困っている次第であります。

景気回復(本当に回復しているのかあたくし的にはイマイチ理解できませんが)下で、一次産品価格が上昇する中での流動性の気前の良い供給と言う状態が続いておりますが、まぁどこかで碌でもないことが起こるかと思いつつも、そのときが何時来るのかさっぱり判りませんので、とりあえずは上記レンジを大きく超えるパワーは難しいのではないかという感じでしょうか。





2004/03/15

お題「目先の相場ポイント(かも)」

相変わらず万全とは程遠い体調で、あまり調べ物ができないのよこれがまた。全く困ったものであります。よって本日もメモ。

○時間軸再考

株価が上がると何だかんだと問題になる時間軸。またぞろ株価が踊り場形成って感じになっているので一旦落ち着いておりますが。まぁそれにしても、月初からの1週間の動きを見ておりますと、「景気回復局面下での低金利継続」というのに無理があるっつーのがあるのかという印象を与えてくれました。まぁ実情で言えば、売り仕掛けが入ってそれに乗ってしまった人がごく一部にいただけだったという見方もあるのですが。

ここの所岩田副総裁や福井総裁が「原材料価格の上昇が消費者物価に与える影響」という点を指摘しているのは以前もお話したと思います。で、恐らく原材料価格上昇が消費者物価上昇に繋がるという問題は割と早く顕在化するのではないかと勝手にあたくしが想像するのは、最近の「時間軸強調」発言であります。

良く良く考えれば、景気が回復しないで原材料価格の上昇から物価が上昇しても何の意味も無い訳で(それはスタグフレーションですな)、そういう観点からしますと、川上からCPIが上昇して来た場合には量的緩和政策をそのまま継続する(どころかまた強化するのかもしれませんが)となっても違和感が無いと言う事になります。

『消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上に達するというのは、一つの通過点であるかもしれない』
『消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%以上になれば、すぐ、均衡ある、将来望ましい日本経済の姿になるかどうかということとはまた別問題』

という風に国会答弁で指摘していますが、実はこれらの答弁から勝手に想像すると、CPIの上昇傾向は割と早く来るのかも知れませんね。問題はその要因分析という事になるのでしょう。確実な景気回復の下でが、需給ギャップが払拭されるという点に確信を持てないと、前回のゼロ金利解除のトラウマもありますんで、中々量的緩和の解除は出来ないのではないかと思いますがね。その代わり恐らくは量的緩和の解除は本来あるべきときよりも大幅に遅れることになるのでしょうが。



ま、それ以前の問題として、消費者物価も問題かも知れませんが、将来の需要を先食いしまくって上昇した資産価格デフレの方が問題だった筈なのですが、そちらの話はすっかり忘れられたようになっておりますな。平均株価で言えば相変わらずの水準なんですがね。


○選挙の季節

昨日はスペイン総選挙。本日中に大勢が判明するようですが、与野党は接戦だそうですな。イラク戦争ではEU内でも思いっきり米国寄りでありますAznar(そういえばブッシュ君はスペイン訪問時に間違えて”Anzar”って言ったんでしたっけ^^)首相の政策への信認を問う選挙の色彩を余計なテロのせいでより強くした感があります。

まぁブッシュの外交政策が海外で支持されようとされなかろうと、米国国内的には屁とも思われないでしょうが、海外の動きをやたらと気にする日本なんぞはまた色々と話題になるのかもしれませんな。と、書いているうちにニュースによれば野党が勝利宣言をしたそうですな。

今週末には台湾総統選挙が実施されます。債券市場的には全然注目されていませんが、軍事的緊張という意味では朝鮮半島よりも台湾海峡のほうがよほどリスクがでかく、おまけに台湾情勢が一変すると、東アジアの軍事経済情勢も大きく変わる問題。目先すぐにどうのこうのとはならないかも知れませんが、北朝鮮よりも台湾海峡に注目ではないかと思うわけです。


そういえば日本も夏に参議院選挙が行われますが、スペイン総選挙と同じ想像をすると、参議院選挙前はテロ警戒なのかもしれません。あまりそういう想像はしたくないですが。

という訳で、相も変わらず簡単メモで申し訳ありません。




2004/03/12

お題「本日も体調不良でメモ程度ざます」

いやはや、結局風邪引き1週間。そういうときに限って連日血圧と体温の上がるような相場が続いております。そんな訳でここ数日見事にヘロヘロでして、朝の早起きも本日はパスしてしまいましたので思いっきりメモにします。

○スペインの爆弾テロ

旅行で2度行った街という事もありまして、何とも申し上げる言葉がございません。爆発のあった駅の近所のホテルが個人的にお気に入りなもので・・・・・・(TT)犠牲者の方々のご冥福をお祈りしたいと思います。

最初はETAのテロかという話でしたが、アルカイダの仕業という話も出ているようで、NY株式は下落。東京市場も影響は免れないと思います。円債は例によって株価を睨んで動くのでしょうが、本当に円債を買っていいのかというとこれがまた怪しいところであります。何せアルカイダのテロということであれば、問題は深刻な訳で、とうとう同盟国の本国で大規模なテロ攻撃ってお話。ブッシュ君が挙げる大絶賛同盟国リストの上位に位置する日本国と致しましては、まぁとても懸念される訳であります。

最新ニュースではETAのテロらしいという事になっているようですが、まだ不明みたいですね。何ともやりきれないです。


○いい加減にしたらと思う動きについて

昨日の引け際は、それまで非常に重かったはずの超長期債がいきなり強くなりました。で、強くなったのだから買いでも入ったのではとは思うのですが、3時を20分も過ぎますと瞬間的に強い出会いやらビットたらがあった超長期国債の値が、他の気配とあまり関係なく急速に下落。

こういういかにも「引け値操作」と思われるような動きをみせつけられますと、「ああ、(今回の場合は超長期に)引け値ギャランティー取引が入っているんでしょうな〜」と思いながら呆れて業者間の気配画面を見ているわけであります。

あたしゃー現物株式のディーラーっつーのもやった事があるので法令諸規則は随分読みましたが、はっきり言ってこの債券市場の引け値操作紛いの取引は如何な物かと思うわけですよ。現物株式は「個人投資家が直接参加する市場」なので「個人投資家の保護」という大義名分で、売買に関しての規制が「ここまで本当に必要なのか」と思うほど喧しく、先物その他とのバランスが取れない状態になっていると思われるわけです。

例えば、現物株で証券自己が「見せ板」なんて頻繁に出していたら「作為的相場形成」で一発摘発ですが、指数先物は「プロの市場」なのでお咎めなし。債券市場に至っては「プロの市場」の「相対取引」だからこれもまた問題なしっていうのはちとバランスが悪いのではないかと思うわけです。両方の中間かつやや債券市場より位のところが妥当なのではないかと。


ま、インデックスとの比較しか重視されない為に、肝心のインデックスが引け値ギャランティー売買のマーケットインパクトで無用にぶれるという問題を無視するような運用評価体系になっていることが問題の根底にあると思います。引け値ギャランティー売買を入れて高値を買ったり安値を叩いたりせざるを得ない破目になっているパッシブ運用の受託者様の苦渋もまた思いやられるわけであります。

という話は前も書いたと思うのですが、昨日の動きにあまりにも呆れてしまいましたので。




2004/03/11

お題「ほんのメモ程度です」

引いた風邪が全然治らず、昨日は元々体調不良な所で相場の大暴れで熱が上がってしまい、参加必須だった筈の会までキャンセルしてしまいました。

と、言い訳をしまして本日はメモ程度のお話と本のご紹介。

○オーバーシュートしすぎ

昨日の債券市場は先物と中期ゾーンが主役だったようで、まぁあたくしも風邪を押して仕事に突撃した甲斐のある相場だという感じでしたが(^^)、とにかく「やり過ぎ」の一言に尽きます。

投資家さんの買いが入ったのは事実なのでしょうが、先物や他の年限がろくすっぽ動かない中でじりじりと気配を上げ、5年ゾーンが一時前日比4毛強の気配まで行ってしまいました。で、この時何と3年ゾーンあたりまでもが4強だの3.5強だのという壮絶な展開になりました。

しかし、冷静に考えてみれば5年ゾーンの昨日高値とは、前月発行の既発債ベースで0.5%を割り込むレベル(0.49%)でありまして、それはまさに先週末の引けやら月曜のもみ合いレベルが0.6%近辺であった事を考えますと「あなたそれはやり過ぎざんしょ」というレベル。

当たり前ですが、既発債の0.6%をターゲットにして買いをいれていた投資家様にしてみれば1週間もせずに0.1%金利低下しかも安定推移するはずの5年ゾーンという事ですから、そりゃー売りが出ますわな。一時は大規模火砕流状態だった3年〜5年ゾーンは大引けにかけて一気に鎮火致しました。

踏みあがるのは結構ですが、絶対水準という物を考えて踏みあがって貰いたいものです。


先日は20年ゾーンが散々売られて2%台まで瞬間叩かれたのですが、当然ながらすかさず2%をターゲットにする投資家様の買いが炸裂。例によって踏みあがるのは結構なのですが、2日も経たずにいきなり1.9%まで踏みあがってしまいまして、今度は逆に売りを誘うという展開。1.9%の20年債なんぞを買う投資家様は今の所いませんので(というかいないから相場下がったのよね)今度は全然上がらないどころか、一昨日のように先物は上昇しているのに前日比利回り上昇(すなわち相場下落)という嘘のような展開になりました。


どうも「絶対水準」という奴を無視して踏みあがったり投げが嵩んだりという動きが最近特に多いのですが、最近は力技相場状態になっている事が多く、いわゆる自己勘定による裁定売買のパワーが(色々な事情により)減衰状態なのも大きく、「細かい相場観よりもお家の事情優先」という売買が炸裂しますと、その動きに向かうパワーが弱くなっているのが一因ではないかと思います。

「お家の事情」というのは「機械的に売買を入れないといけないお方」とか、「役員会議室から出てくる売買指令」なんてのが挙げられると思いますが、この手の売買にまともに向かっても向かう人が少ないのでいかれてしまうというのが定説になってしまえば、ディーラーなどというのは現金なものですから「強い方につく」とばかりにお家の事情の皆様に提灯をつけてついていく人も増えてきて、益々勢力拡大という実に見事な展開になってしまいます。

で、まぁハーメルンの笛吹き男よろしく、提灯行列がオーバーシュートの結果、ふと気がつけば行列全員入水状態となってしまったりする訳であり実に困ったものであります。オーバーシュートのやり過ぎ相場に巻き込まれますと、あたくしのような年寄りは「はぁ??」と言いながらどう考えても阿鼻叫喚の猛炎に一緒に飛び込まされる訳であります。


とにかく壮絶な相場続きで、場中に血圧が上がりっぱなしのあたくしの風邪も中々治らないというものです、とほほのほ。


○本の紹介

リフレと金融政策(ベン・バーナンキ著、高橋洋一訳:日本経済新聞社)

以前ドラめもんでご紹介しましたが、バーナンキFRB理事の講演集の翻訳です。本の帯では岩田規久男先生が大絶賛。まぁ日本でも岩田一政副総裁が水を得た魚のように頑張る今日この頃でありますので、リフレ派と言われている人たちの主張を簡単に知るのにはよろしいかと。

しかし1900円はちと高いような気がする。

ISBN4-532-35075-1 \1900


金融政策論議の争点 日銀批判とその反論
(小宮隆太郎、日本経済研究センター編:日本経済新聞社)

以前ドラめもんでちょっとだけ取り上げましたが、ヒーヒー言いながらも8割方読みました。初版が2002年7月ですので、参加している岩田一政さんが内閣府政策統括官だったりしておりますが、それだからこそまた面白いというところもあったりする訳です。執筆陣も豪華メンバーで、メンバーに白川方明日銀理事(当時審議役)が参加している所がまた論議を充実させていると思います。読むのには予備知識が必要かも知れませんが、この内容で2800円は割安だとおもいますけど。

ISBN4-532-13236-3 \2800


証券取引等監視委員会の活動状況(証券取引等監視委員会編:国立印刷局)

毎年出ておりまして、只今出ているのは平成15年版。平成14年検査年度(14年7月〜15年6月)までに検査が終了して勧告のでた事案のご紹介何ぞがございます。個別の内容はSESCのWebで出ていることと同じなのですが、一冊の本にコンパクトにして貰いますと、読むという面については便利ですな。

興味本位でお読みになるのも吉かと。

ISBN4-17-211254-4 \760


美人(ブス)投票入門 ブス銘柄をつかまされないための13か条
(山本一郎著:オーエス出版社)

山本一郎といってもこの前実刑が確定した経済革命倶楽部の人ではなく、「ネット界の切込隊長」として局地的に有名な人の本。株式投資本と言う事になっていますが、どちらかというと経済社会批評みたいな本ですな。面白いけど1500円は高いです。1時間も有れば読めますので(以下自粛)。

ISBN4-7573-0213-4 \1500


ではでは(^^)/




2004/03/10

お題「この質問者は何なんだ?」

昨日は旧聞ではありますが話題になった1月30日の衆議院財務金融委員会の福井総裁答弁を改めて確認致しました。

で、ドラめもんを書いているうちに、福井総裁の答弁よりも質問者のアフォぶりのほうが気になってしまいました所、読者様から「このレベルの低い質問者は日銀出身だというのが情けない限りなところです」というご指摘を頂きまして、検索エンジンで「津村啓介」氏を調べたら確かにもと日銀マン。しかも随分とお若いお方ですな。

という事がわかりましたので、本日はこの質問者の方を肴にしてみることに致します。あたくし体調が悪いと文章が攻撃的になる傾向がありますので、最初に念のためお断りしておきますね^^。


その前に一応昨日の続きの「出口戦略」に関する総裁答弁。

『ただいまの御質問に対しましては極めて簡潔にお答え申し上げるということでお許しいただきたいと思いますが、と申しますのは、出口戦略の詳細を申し上げるには余りにも時期尚早だという点が一つございます。ただし、将来におきまして、この量的緩和のフレームワークから通常の金融政策のフレームワークに切りかえていく、いわゆる出口戦略というのは非常に重要だという点は同時に強く認識をいたしております。』

と言うのはいつも言っている事と同じ。

『CPI、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでというものは、私ども、当面の非常に重要なゴール、目標といたしておりますけれども、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%以上になれば、すぐ、均衡ある、将来望ましい日本経済の姿になるかどうかということとはまた別問題。その先、本当に均衡ある日本経済の姿、いわゆる最終的なゴールに行くまでさらに距離があるかもしれないというふうに思っていかなきゃいけないと思います。したがいまして、そういう意味では、消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上に達するというのは、一つの通過点であるかもしれないということでございます。』

この発言が「あらら?」と思わせる内容でした、この部分を読みますと「CPIがゼロ以上になっても量的緩和を続けるのか?」というお話になります。まぁ量的緩和のコミットメントが出た頃から「CPIゼロ以上は必要条件であって、CPIだけで量的緩和を自動的に終了させる訳では有りません」という事は言われていましたが・・・・・

またお得意の「サービス発言」が出てしまったという所なんでしょうが(以前も同じ事を言いましたが)自分たちで「CPI時間軸」を改めて明文化したのに、せっかく明文化した時間軸の条件に余計な「均衡ある日本経済の姿」という具体的に何を意味するのか判断に苦しむような条件を加えてしまってどうするんでしょうか。

毎度毎度こんな事ばかりやっているので、日銀の金融政策が「何をやらかすのかさっぱり判らん」というまるでリスク要因状態になっていますし、ひいては(今はまだ信認度絶大のようですが)日銀の金融政策への信認低下をひき起こす原因にならないだろうかと懸念してしまいますな。

なにせ(何度も槍玉に挙げますが^^)「私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。」と言い放つ総裁様でございますので。



ということで本日も前振り(というか元々のテーマ)が長くなりましたので、結局本題の話は端折って駆け足で。


○わざわざ国会に呼ぶ必要の無い答弁ですな

さて、津村議員様の質問なんですが、日銀総裁をわざわざ呼んで答弁をさせた内容はといえば、会議録をご覧頂きますとより判りやすいのですが普段の講演や記者会見などで総裁をはじめとして各審議委員が日頃から言っている見解と同じものです。総裁の答弁を読んでいると、日銀Webに載っている文書と同じじゃね〜のって感じです。強いて言えば「均衡ある日本経済の姿云々」の部分くらいですか。これも別に驚倒するほど新しい話ではないんですけど。

『本日、大変御足労いただいておるわけでありますけれども、言うまでもなく国会の場は国民との対話の場でありまして、また、金融市場も大変注目をしていると理解しております。』

となどと格好良く見栄を切って、普段の公式見解をそのまま繰り返させるだけに日銀総裁を呼んで何の意味があるのかと小一時間問い詰めたい所であります。

もと日銀マン(しかもこの人海外留学までさせてもらっているようですが)が質問するのであれば、もっと核心を突く質問をして頂きたいわけでして、少なくとも門前の小僧たるあたくしのドラめもん程度の突っ込みは必要ではないかと思う訳ですな。例えば・・・・

・景気判断が上向きになっているのに緩和を強化すると、過剰流動性の供給が将来に禍根を残さないのか
・ところで、10月の金融政策決定会合で量的緩和の強化を行ったが、衆議院解散にあわせた政治的な意図が見られる
・岩田副総裁は講演で「事後的に当座預金残高引上げと為替介入の累増額がバランスしている」という話をしている。これは「当座預金残高目標引上げは為替介入のバックファイナンス」であり、「日銀による米国債購入政策」だという事を意味するのではないか

なんて感じですかね。読者様のアイデアを拝借しておりますが。


○自分の言葉で質問しましょう

昨日も書きましたが、この議員様の質問の進め方が実に香しい。長々と質問しているので途中を端折ります。(略)というのは割愛部分です。

『こちら、BNPパリバ証券というフランス系の証券会社がございますが、(略)ここで、総裁記者会見の文言を引きつつ、総裁のコメントに対して次のように論評しています。』

『例えば、「日銀はこれまで「量的緩和はデフレ解消の効果は薄い」と主張しており、突然の「路線変更」には、市場を始め、日銀内部ですら、戸惑いの声が出ている。」これは朝日新聞でございますが、こう報道されております。』

昨日は「一生懸命勉強しているのでしょうが」などと甘い事を申し上げましたが、日銀出身で海外留学を売りにして民主党の候補者公募で候補者になったようなお方がご本人の出身母体である日銀に対する質問がこれではこの候補者のレベルは推して知るべしと言った所であります。

何の事は無い総裁に普段どおりの公式見解の繰り返しを述べさせただけで、おまけに野党議員だというのに質問のあいだじゅう、日銀総裁のヨイショに終始するというテイタラク。何なんだこいつはって感じです。正直、最初この会議録を見たときには完全に「ああ、与党議員の質問なんだな〜」と思っておりまして、質問の冒頭部分をみて「民主党・無所属クラブの」という文言が出た時に腰を抜かした次第であります。もうアフォかヴァカかと。

ちなみにこのセンセイ、国債管理政策への質問もしているのですが、これもまた過去の海江田議員の質問を引き合いにしていて、その上質問内容が全てといっていいほど政府の既に実施した施策を賛美するような内容だったりする訳でして、情けない限りです。

「国債発行30兆円枠の欺瞞」について自由党(当時)の達増議員あたりが辛辣に突っ込んでいた時期、ちょうどりそなの話やら予定利率の話なんかもあり、中々盛り上がっていたのですが、あの時期の会議録は面白かったのですが、この民主党の状況は如何な物かと思うわけです。何だかな〜。


○とにかくこれが「日銀出身」でどうするんだ

というお話になる訳ですな。自分のバックグラウンドである筈の金融政策に関して日銀総裁に質問して出てくる回答は公式見解どおり。おまけに総裁をヨイショしておりますが、お前は本当に野党議員だという自覚があるのかとまたも小一時間問い詰めてみたくなる訳であります。しかもこの人海外留学までしてます。日銀の金で行っているのかどうかがこの人のWebでイマイチ良く判らなかったのでどっちなのか判らないのですが、もし仮に日銀の金で留学までしたお方がこの状況だとすれば、明治の軍人、児玉源太郎氏の有名な言葉(ただし司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」からの孫引きですが)を奉りたいと存じます。

「国家は貴官を大学校に学ばせた。貴官の栄達のために学ばせたのではない」


もっと書く積りでしたが時間切れかつ体調不良なのでこの辺で。




2004/03/09

お題「今に始まった事ではないが困ったちゃんの国会」

さて、ここの所の債券下げ相場の前に発生した「時間軸効果への過剰な期待感」の一因を担ったとあたくしのみならず、各所からブーブー言われつつある福井総裁の国会発言。まぁ今更ではありますが、問題の衆議院財務金融委員会が行われた1月30日の会議録を衆議院Webで確認してみましょう。

この日の委員会では「平成十四年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案(内閣提出第一号)」と「農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成十五年度の再保険金の支払財源の不足に充てるために行う積立金の歳入への繰入れに関する法律案(内閣提出第二号)」の審議を行うという名目で参考人として福井総裁が呼ばれているのですが、そもそも何でこの名目で福井総裁が呼ばれるのか判りませんな。

で、問題の質疑は、民主党・無所属クラブの津村啓介委員とのやり取りにあるのですが、どうもこの委員は一生懸命調べて質問しているようなのですが、正直申し上げて勉強不足というよりは、勉強している方向に問題があるようで、質問というか突っ込んでいる内容が甚だしくトンチンカンに思えます。

以前の国会の財務金融委員会で「国債発行30兆円枠とは一体何だったのか」という議論が行われた時には見事な突っ込みをしていて実に楽しく会議録を拝読したのですが、今回は質問からして非常に下らん。色々なレポートを引用している時点で既に失格です。

と、質問者のレベルの低さを嘆いても仕方が無いので該当箇所を読んでみましょう。長いのであちこちで省略します。

『(津村委員)(冒頭部略)福井日銀総裁に御質問をさせていただきたいと思います。先般の追加的な金融緩和についての御質問でございます。質問の趣旨ですが、今回の措置につきまして、一部市場参加者からは、そもそも今回の政策変更の背景には、量的緩和政策の効果に対する福井総裁御自身の認識の変化があったのではないか、そういった見方をする向きもあるようでございます。』

と言った後、この委員は某社のレポートを『こちらは英語にも訳されて、海外の投資家にも広く読まれているレポートだと聞いております。』などと言いながら引用してからこんな感じで質問を続けています。

『そのほか、追加緩和措置が発表された翌日の一月の二十一日の新聞各紙にも同様の指摘が見られまして、今回の日銀の追加緩和については、市場との対話、これまで福井総裁が昨年三月に就任されて以来大変努力をされてきたと思うんですけれども、この市場との対話という部分で若干配慮不足があったんではないか、そういった論調が一月二十一日の報道に大変目立ったのが残念でございます。』

まぁここは良いとしましょう。

『例えば、「日銀はこれまで「量的緩和はデフレ解消の効果は薄い」と主張しており、突然の「路線変更」には、市場を始め、日銀内部ですら、戸惑いの声が出ている。」これは朝日新聞でございますが、こう報道されております。』

それは朝日新聞が勝手に言っている事でして、日銀の見解は折にふれて日銀から発信されており、きちんとWebに載っておりますな。そもそも「突然の路線変更」って既にその前に「強気の景気判断と当座預金残高目標引上げ」というセット政策は始まっておりますが何か?

と、日銀総裁の発言を分析する積りで書き出したドラめもんなのですが、何時の間にか津島啓介氏が肴になってますな、あはは。

結局この人は田谷審議委員の講演を引用する事ですら何故かブルームバーグの記事から引用するという、本人は他の議員の前で「自分は金融通である」と自慢したいのだろうな〜と思わせる香しい(田谷審議委員の講演は当日中に日銀Webにアップされていますので、正確を期すなら報道の引用ではなく日銀の公式発表文を引用すべきでしょ)質問で、自分の言葉で質問できないのかねこの人は、って思いますな。で、最終的にどんな質問をしようとしていたかというとこんな感じでした。

『言うまでもなく国会の場は国民との対話の場でありまして、また、金融市場も大変注目をしていると理解しております。ただいま御紹介いたしました、ついに日銀は量的緩和の効果を積極的に認めたとか、日銀は新たな領域に踏み出したとか、突然の路線変更、こういった受けとめ方が本当に正しいのか、もし仮に誤解であるとすれば、量的緩和政策の効果に対する福井総裁のこれまでと変わらない御評価と、今回の政策変更の正しいねらいについて、この場を通じて、私、多少時間がございますので、改めて説明をしていただきたいと思います。』

思わず質問者に釣られて余計な前振りをあたくしもしてしまいましたな。


やっと肝心の総裁答弁になりました(^^)。

さて、この答弁、実を言うと恐ろしく長く、しかもこの質問者はこの答弁の後に「出口戦略」について質問をするというこのやり取りだけ見ていると意味不明な質問をしていまして、(実はこの委員の質疑を最初から読むと、何で出口戦略について質問したのかが判るのですが)それに対してまたも延々と総裁の答弁がございます。という訳で、長くなりすぎるので本日は最初の答弁について。

情報ベンダーに出て債券相場がやたらめったら反応してしまったのが総裁の『量的緩和の効果というものは、もう御承知のとおり、流動性をたくさんマーケットに供給することによりまして、短期金利のみならず期間の長い金利についても極力低位に抑えて』という件でございました。確かに先ほどの質問に対してこのような発言が出ていたのは事実でありますが、良く良くこの答弁を読んでみると、総裁はこんなお話もしております。同じ答弁の中からフレーズを拾ってみます。

『私どもの感覚では、昨年の夏ごろまでは、経済が、どちらかというと、ともすれば落ち込もう落ち込もうとするような環境でございました。幸いにも、昨年の夏過ぎ以降は、経済が少しずつ上向きの方向に、いわばいい方向に局面変化をした、こういう状況でございます。』
『政策姿勢は一貫しておりますが、局面はいい方向に変わっているということでございます。』
『現在の状況に即して申し上げますと、景気は確かに緩やかに回復をしておりまして、先行きにつきましても、当面景気が後戻りしてくる心配はない』
『今度は、経済が前向きに動き始めましたら、その下支えしていた力は、これに伴って後押しをしていくという力になるわけで、表現は、下支えから後押しというふうに変わるといたしましても、金融緩和の効果、実態的な効果そのものは何ら変わりがない。』

とまぁ随分景気の良い進軍ラッパが響き渡る現状認識でございますが、これだけ言っていると例によって金融市場が動揺するといけないと思うようでして、消費者物価に関してはこんなことを仰っています。

『ただ、回復テンポは、まだ過剰債務など構造的な問題が多々残っておりますもとで、緩やかなものにとどまる可能性が強いと私ども判断しております。』
『消費者物価指数の動きを見ておりますと、基調的にはなおしばらく下落基調をたどる、つまりデフレ脱却の展望はなお容易につかみにくいという状況にございます。』
『私どもの認識は、残り〇・幾らのデフレを克服していく道、つまりこの最後の一マイル、ザ・ラスト・ワン・マイルはなお非常に厳しい道だ、これが私どもの基本的な認識でございます。』

という訳でして、この答弁を真面目に読むとどこがどう債券市場の買い材料になるのかさっぱり判らない内容でして、精々中立じゃないんですかね〜って感じであります。


元々の質問をご覧になるとおわかりのように、話題となった「長短金利云々」の答弁は「量的緩和とは何ぞや」というお話の中での一節でありまして、正直申しあげて「市場金利を今ある水準からどうしよう」という意図は答弁の中からは全く感じられません。この部分を引用してみましょう。

『量的緩和の効果というものは、もう御承知のとおり、流動性をたくさんマーケットに供給することによりまして、短期金利のみならず期間の長い金利についても極力低位に抑えて、企業及び金融機関、特に企業にとっての資金コストを常に最低限のものに抑える、信用スプレッドについても、非常に幅の狭い、低位なものに抑えて、金融環境を企業にとって有利なものにしていくということのほかに、金融市場あるいは我が国の経済にはさまざまなショック要因が今後とも舞い込んでくると思いますが、そのショックを金融市場の中で極力速やかに吸収してしまう、そういう安定的な金融環境を企業に提供することによりまして、今後とも、リストラ、さらにはより前向きに価値創造に向かっての新しいビジネスモデル構築を支援してまいりたい、こういうことでございます。』

現在の金利水準がどうのこうのという話は当たり前ですが一言もなく、量的緩和の効果について話をしているだけなのですが、時あたかも債券市場が上に行きたがっていた所でしたので、このお話に飛びついたと言った所なのでしょう。


で、国会の会議録というのは正式にリリースされるまで数日〜2週間程度掛かっておりまして、答弁の全文が明らかになる頃には既に次の話題に興味が向かっている訳ですな。よって情報ベンダーで出てくるフラッシュがそのまま参加者の記憶に残ってしまう訳でございます。良く良く見ると別にこの答弁でも大した話はしていないというのですが、そんな検証なんぞをするのは余程のマニアでしょう。過去の国会答弁を一々議会発表の会議録まで見るのはさすがに(^^)。


で、ここであたくしの愚案なんですが、やはり日銀総裁が国会で答弁する場合なんぞは当該質疑の部分を文責日銀ということで翌日にでもリリースして頂きたいわけであります。どうも国会答弁の場合は正式なものが出てくるのが遅いので、情報ベンダーからの情報が一人歩きしてしまう傾向にあるので。FRBだって議長の議会証言(というかあれは演説だが)なんかをすかさずリリースしているのですから、日銀がやってイカンという事でもないでしょう。色々と手続き上の問題はあると思いますが、是非ご検討いただければ(って日銀の人が見る可能性あるのかこの文書??)と思うわけです。

まぁそれ以前に、大した話でもないのに一々日銀総裁を呼びつけて何か喋らせようとする国会を何とかするほうが先決なのですが。最近はあまり有りませんが、政治的にウケの悪かった速水総裁時代は、金融政策決定会合中に国会に呼び出したり、決定会合の直前に国会で金融政策運営について答弁させたりともう無茶苦茶でしたからね〜。


という訳で、出口戦略に関する答弁は他にネタが無ければ明日にでも。ちなみに会議録は衆議院Web(http://www.shugiin.go.jp)から「会議録」で本会議や各委員会をクリックすると過去のものを見る事が出来ます。お暇なときにどうぞ。




2004/03/08

お題「攻防の分岐点」

本日はひたすら相場雑談です。


先週末の債券相場、落ち着いてくれるのかと思えば結局5年債〜先物ゾーンに相変わらずの売りが出てしまって最後の最後に相場下落。引け前の下げの勢いを持続して引け後も相場が下落と、相場が下落したタイミングが週末の大引けというエアポケットみたいな時間帯だった為に、あっという間に5年債の節目と見られていた0.6%を超えてしまいました。

「中期債が重い」とか言われている時に中期債に売りを出すとは困った人もいますな〜などと言っている場合ではございませんで(^^)、中期債から相場が下落するというパターンは基本的に「時間軸の短縮化」という発想が根底にあるという事から考えますとこれがまた寒いものがある訳であります。

この「5年0.6%」というレベルはどうも「止まり所」になっているようでして、昨年も0.6%近辺で滞在している(引け値ベースでの記録しか手元にありませんが)ケースが多く、このレベルを下に抜けるといきなり0.6%後半から0.7%近辺まで相場下落をしてしまうケースが多く見られます(一々例はあげませんが)。戻る時も同じで、0.7%近辺から戻りだすといきなり0.6%まで戻ってしまう訳でして。

という訳で、「5年0.6%」というのが攻防の分岐点になっている訳ですが、どうもこのレベルは「時間軸に関する見方」の分岐点になっているようでありますな。昨年の8月末から9月にかけての5年金利の阿鼻叫喚的上昇はともかくと致しまして、それ以降に5年金利が0.6%を超えた時期に何があったかを手元の記録で見直してみると、瞬間的な上昇は兎も角として、0.75%までいきなり売られたのが11月上旬であります。

この時は、総選挙が11月9日に予定されていたのですが、民主党の合併効果で連立与党の苦戦観測が強くなって参りまして、全然可能性が無いと皆が思っていた「政権アウト」が「もしかすると有り得るかも知れない」程度には緊張させてくれる事態となりました。

政権がアウトになれば債券市場の前提条件が根本的に変わってくる訳ですので、債券相場が売られるのはまぁ当たり前のお話です。この時は選挙直後に5年債の入札が予定されていたので、事前のヘッジ売りも結構入りましたが、結局は選挙結果が案外穏当だった事や、入札日(11月11日)に平均株価が引け値ベースで10200円まで下落したり、機械受注が2ヶ月連続でマイナスの数字が出たりと言うことで派手派手に切り返す展開になりました。


さて、今回もまた奇しくも5年国債入札前に5年金利が0.6%を突き抜ける勢いとなっています(な〜んて言ってますが、一応下がってスタートって前提で話をしてますんで悪しからず^^)。で、まぁ0.6%を抜けるといきなり0.6%台後半まで案外無抵抗で売られてしまうパターンがございますので、入札前になんとも死臭漂う状態。

今回は前回11月の時より平均株価が1割ほど高く、ドル円は3円ほど円安。米国株式は思いっきり上昇と、外部要因的には債券にとっては宜しくないものが並んでおります。余計な福井総裁発言を一つのきっかけ(もう一つはドル円相場での円高)にして「時間軸強化への期待」が盛り上がってしまった債券相場ですが、下手に相場が上昇してしまった分だけ反動で下落するエネルギーもあります。今回の5年国債入札が無事に通過できないとまたぞろ「時間軸短期化への思惑」というお話になって来るのではないかと懸念される所であります。

まぁ元はといえば「信じるものは足をすくわれる」というお題で申し上げたように、債券相場に都合の良い材料だけを囃し立てて買いあがった人たち(あたくしも降参したので同罪^^)の自業自得と言うことでしょうな。とほほのほ。


それにしてもいつも槍玉に挙げてますが、福井日銀総裁は発言の際に「強気な話と弱気な話を両方話す」という「皆に等しくサービスフレーズ」という悪い癖がございますな。日銀総裁発言に一喜一憂せざるを得ない立場にあります金利市場にとってはやはりこのお方の発言は相場のモメンタムを無用に加速する効果というものがあることが多いと思うわけです。何せ、相場っつーのは勢いってぇのがありますので、このお方のように「売り方にも買い方にも都合の良い解釈ができる発言」を見ると、当然ながら勢いがあるほうへの援軍としての効果が高くなってしまう訳ですから・・・・・まぁ一生治らないでしょうけど。このお方の場合は。


と、これだけ散々書いて、今日相場が戻ってしまうと只の間抜けなコメントになるのが恐ろしい(^^)。さてどうなる事やら・・・・・


2004/03/05

お題「量的緩和政策を巡る政策委員会の議論」

昨日はとりあえず「止め男」が出たと言うほどでもないのでしょうが、超長期ゾーンに買いが入ったようで、一旦は全般復活の香りとなったのですが、不安定な動きで先物ベースでは寄りから上げ下げ約2往復って感じでした。本日はまたまたドル円がドル高に振れております。さてどうなる事やら。

ドル円に関しては相変わらずの円売り介入が行われているとの市場観測が報道されております。グリーンスパン議長に為替市場介入の苦言を呈された後に介入しているのであれば、またも意地になってやってますな〜って感じですか。米国の低金利をサポートしている(積りでやっているのかは知りませんが)のですから介入に感謝して貰いたい所ですけどね。


それはさておきまして本題。

さて、景気回復という認識の中で当座預金残高目標額をまたまた引き上げるという論理的整合性が見事に破綻した政策を決定した1月19、20日の金融政策決定会合の議事要旨が日銀Webにアップされております。景気認識や、資産担保証券の買入基準緩和といった問題の議論もあり、結構な量になるのですが、本日は「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」部分についてご紹介。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g040120.htm

○当座預金残高目標額引き上げを正当化する論理は

『多くの委員は、当座預金残高目標を引き上げることで、日本銀行のデフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示し、景気回復の動きをより確かなものとすることが適当である、との意見を述べた。』

『ある委員は、量的緩和政策は、流動性懸念の払拭や長めの金利を含めた金利・信用スプレッドの低位での推移など金融市場の安定や、緩和的な企業金融環境を維持することに寄与し、実体経済をしっかりとサポートしている、としたうえで、今回、一段と潤沢な資金供給を行うことを通じて、日本銀行のデフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示すことは、市場や人々に安心感を与え、ポジティブな行動を促すことにもつながる、と述べた。』

『また、別の複数の委員も、景気回復の動きが明確になってきている中で、前向きのモメンタムを促す効果が期待できるのではないかとの見方を示した。これらの委員の中からは、こうした点は伝統的な金利低下の効果のように波及のメカニズムが明確ではないだけに、今後とも、効果や副作用をよく点検しながら政策運営を行っていく必要があるが、今回の目標引き上げによって経済主体のマインド面に好影響が生じることを期待するとの認識が示された。』

短期金利はもはや下げようがない訳ですから、金利を経路とした金融政策を打つことはまず出来ません。本当のことを言えばゼロ金利にした時点で短期金利コントロール政策は「打ち止め」状態になっているのですが、「量的緩和政策」という名目で「日銀当座預金残高目標のコントロール」で有効な政策が取れるという理屈を持ち出して自称金融緩和政策の拡大を続けているのが現実だというのが結論になる訳でしょう。何らかの荒業(非伝統的政策とも言われますが)をするのでなければ。

この発言要旨を拝読致しますと、当座預金残高の目標額引上げの論拠は「デフレ克服に向けたスタンスを改めて明確に示し」「市場や人々に安心感を与え」「マインド面に好影響が生じることを期待する」という風に読めます。目標引上げ賛成論者の中にも「伝統的な金利低下の効果のように波及のメカニズムが明確ではないだけに、今後とも、効果や副作用をよく点検しながら政策運営を行っていく必要がある」と認めている方もいるように、「波及効果がよく判らない中で期待形成が進む事を希望します」というのが当座預金残高目標引上げの論拠となっています。

何と申しますか、論理的整合性がどうのこうのというよりは「こういう期待が生まれて欲しい」という願望の世界で金融政策を運営を続けているのが今の日銀だという事を見事に現す議論かと思います。

しかし何ですな、「期待形成に働きかける政策」を取るのであれば日銀総裁様も『私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』などいう不用意な発言は慎んで頂きたいものですな。



○実態は為替市場無限介入へのご協力ですかね

経済状況に関する議論の中でも「円高が景気を下押しするリスク要因」という話が何度も出てきます。そのため、金融政策に関してもこういう論点が示される訳です。

『複数の委員は、輸出中心の回復過程にあることを踏まえると、円高に伴う将来のリスクの芽をつむとともに、経済を下支えしていくことが重要であるとコメントした。』

で、その中では当然ながらこのような指摘が出てくるわけです。

『もっとも、このうちひとりの委員は、ターゲットの引き上げが直接的な円高対策のための追加緩和と受け止められるリスクもある、と付け加えた。』

で、短期金融市場の技術論と絡めて指摘がなされる訳でして、

『別の委員は、為替市場介入の増加などによって市場では日本銀行の資金供給オペが減少するのではないかといった不安感があり、ターゲットの引き上げによって本行のスタンスを改めて示すことが適当であるとの見方を示した。もうひとりの委員も、資金吸収オペの頻度が高まり、介入資金の流入により金融機関間で資金の偏在がみられることなどを考えると、オペ技術上の観点からも引き上げが適当であるとコメントした。』

というお話になっていますが、これって結局上段で指摘されている「ターゲットの引き上げが直接的な円高対策のための追加緩和と受け止められる」事を「その通りでございます」と認めている話ではないでしょうか。日銀執行部(除く岩田一政副総裁)は認めたがりませんが・・・・・


○妙な指摘

ところで、上記議論の中で妙なコメントがあります。

『ある委員は、短期金融市場が落ち着いていることは事実であるが、金融機関のALM上のニーズなども踏まえれば、オペに対する需要はあるのではないかと述べた。』

今や預金超過になっている金融機関のALMにおいて短期金融市場での資金調達のニーズは乏しい(目先の資金繰りという観点は別問題)筈なのですが、何でこんなコメントが出るのでしょう??

意味がさっぱり判らないのですが、想像を逞しくして無理矢理こじつけるとすれば、短期ゾーンの債券を買い捲り過ぎてショートファンディング(=恒常的に短期金融市場での資金調達が必要な状態)に陥っている金融機関がいるというお話なのでしょうか。つい最近までTB、FBどころか2年国債まで入札が絶賛大過熱しておりましたが・・・・・・・・

謎の論点です。


○岩田副総裁、田谷委員、須田委員の論点と思われる部分

誰が言っているのかはこっちで勝手に想像しているのですが、まぁ過去の発言から類推すると「この人が話しているだろうな〜」という感じです。

・岩田副総裁

『ひとりの委員は、財政政策をあまり急速に引き締めないことで名目公債残高が伸びることと、マネタリーベースが伸びることが相俟って、デフレから脱却できる』

何度聞いてもこの理屈が判らないのですが。誰か教えてください(涙)。以下ご紹介だけでノーコメント。

・田谷委員

『ひとりの委員は、量的緩和政策には、長めの金利を含めた金利の低下、スプレッドの低下など金融市場の安定や、流動性懸念の払拭など金融システム面の安定に効果があったとしつつ、こうした効果は、当座預金の積み増しによってこれ以上強まるとは考えられない』

『また、短期金融市場は落ち着いており、金融機関の一部には日銀当座預金を圧縮する動きもある、と述べた。さらに、この委員は、短期金利がほぼゼロ%となっている下では、マネタリーベースと成長率・物価変化率・為替レートなどとの関係は理論的に明確でないし、特に90年代半ば以降は経験的にもはっきりしない』

『現在の状況で引き上げを行えば、マネタリーベースの低下に対応したものといった誤解を生じかねず、市場との対話を困難にさせる惧れがある』

・須田委員

『また、もうひとりの委員は、量的緩和政策は金融システムの安定性の維持・景気の下支えに貢献してきたが、(1)景気は概ね標準シナリオに沿った動きを続けており、むしろ足許ではやや上振れ気味で推移している、(2)金融システム不安の後退を背景に、短期金融市場も安定しているなどの状況下では、ターゲットの引き上げは、効果よりも副作用の方が大きく適当でない』

『時間軸に対する市場の信認は十分高くなっている』

『また、マネタリーベースは、ストックとしては十分供給されており、今はそれが動き出し、経済活動の活発化につながる芽が出てきているかどうか見極める時期にある』

『量的緩和政策の副作用として、問題企業の退出や金融機関の不良債権問題への対処を遅らせてきた面があるほか、短期金融市場の機能を犠牲にしてきた』



#今日は引用で量だけは多くなってしまいましたね。大変恐縮であります。




2004/03/04

お題「またも帰ってきた中短期債の悲劇」

始めにお礼を。

昨日物価連動国債について駄文を書きましたが、個人向けが出てこないのは主に課税事務の問題が大きいということのようです。多くの皆様からご指摘いただきまして、感謝と共に自分の不勉強振りを反省する次第でございます。

ところで、今目の前でやっているいつもの経済番組で某氏が説明する物価連動国債の説明で「投資家のメリットとしてインフレヘッジ」っていうのは良いんですけど、「機関投資家は負債を持っているのでインフレで金利が上がると損失」って言ってますが何か話が変な気が。まぁ短い時間で簡単に話してるので端折ってしまったんでしょうけど、某氏らしからぬ乱暴な説明で。


では本題。

「急落相場に中短期債」というのは今や定番メニューとなって参りました。当ドラめもんでも「中短期債の悲劇」というお題で昨年の7月2日、8月20日と書きました(おまけに申し上げれば、もっと悲惨だった9月3日には「合理的価格形成機能の崩壊」なんてお題で文章書きました)が、学習効果というものが無いらしく、「また中短期債か!」という相場下落であります。

学習効果があるのは相場下落を報道する方でして(^^)、さすがに今回の下落では「長期債の下落」という話よりも「中短期債の下落」の方が目立っております。と書いたら目の前でやっている某テレビ番組では「長期金利の上昇」としか言いませんな。


○過剰な期待の剥落で済めば良いですが

先週の木曜日に応札倍率を100倍超(手元のメモに控えて無い)と絶賛大人気の入札実績を誇った2年新発国債。落札時点では100円7銭という事で、利回り0.064%となってまして、翌金曜日には0.05%までマークしていたのですが、一昨日は0.075%、そして昨日は何と0.115%の引けですが、安値0.12%をマークとなりまして、わずか3営業日で「利回り2倍」と、どこぞのクレジットカード会社のキャンペーンのような素晴らしい事態になっております。ちなみに0.12%とは99円96銭です。おーおそろし。

昨年株価の上昇やら日銀の「景気回復をっほっほモード」入りやらをネタにして「投げスパイラル」が発生。2年国債が0.26%とかいう理解しがたいレベルまで叩き売られた事がございましたが、その後の相場治癒によって概ね2年国債の利回りが0.10〜0.15%で推移していた事を考えますと、実際にはやっと正常な状態に戻ったという事でしょう。

ただ、いつものパターンですが、「急落した」という印象を受けますとまたも「値段無視の叩き売り」をする人が出てきかねないのであります。米国金利が「利上げ警戒モード」という美しい状況になっていることもありますので、非常に懸念される所では有ります。

幾ら何でも前回の学習効果からして、「リスク管理の売り」とやらも一応外部環境から類推してまともでないレベルで売るような事まではしないで頂きたいものだと愚考しますし、画一的なVaR管理にも一応反省が行われているものだと期待したいのですが・・・・・・・



○余計な期待を煽れば末路は所詮こんなもの

今回の中短期債の妙な買われ方、2年債が何故か0.05%レベルまで買われ、5年債が0.4%に接近するという非常に威勢の良いものでありましたが、元はといえば「時間軸の更なる強化」への思惑というのがあるのでして、例によってこの過剰な期待感という油に火を注いだもの(後日追記:「火に油を注ぐ」です。汗顔至極・・・)の一つに挙げられるのが国会やら記者会見などでの福井総裁発言である事は否定できない所でしょう。

長期・短期金利が落ち着いて推移している状況にあったにも拘らず、何を思ったのか急に「長期、短期の金利を出来るだけ低い所で安定させる」といった余計な事を言い出したのが支援材料となって、円高(というかドル安)と平均株価の推移のうち、債券相場に都合の良い方ばかりに反応してしまう結果となったのが2月からの5年金利0.5%割れ相場という事でしょう。

ちなみに、2月2日のドラめもんでは「信じるものは足をすくわれる」というお題でこんな事を書いた訳ですな。

『頑固とも愚直とも思える前任の総裁と違いまして、現総裁はその発言にサービスフレーズを入れるのが得意であります。時あたかも米国では「時間軸外し」を連想されるようなFRBの声明があり、国内消費者物価の発表もあった日と言う事でございまして、福井総裁としては、国内金融市場で「時間軸短縮」の思惑が出るのを避けたと言う風に解釈した方がよいのではないかと思います。』

『政治からの下らない圧力を避ける為に、ある程度のサービスフレーズを入れるのも理解できなくはないですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。』

『何時の間にやら時間軸のコミットメントが「CPI」から「均衡ある日本経済」というもはや訳の分からぬ物になっておりまして、中央銀行の政策とは思えない状況になっております。こういう風になんでもかんでもサービスフレーズを出すと言うのはその逆もありうる訳でして(というか現にそういう事態はありました)そのへんのリスクを考える必要があるでしょうな。』

という訳でして、この時は「そんなに買うのかよ!」と疑問を呈していたあたくしでありますが、その後も強弱両材料、というか悪材料の方がでかかった筈なのに、延々と相場が高原状態で安定推移というか全然下がらなくなってしまった相場には超目先で動かなければいけないディーラーとしては降参せざるを得なくなってしまった訳ですな。とほほのほ。

あたくしの事は兎も角、まぁまた余計な「サービスフレーズ」で過剰な期待を結果として煽ることになってしまった福井総裁様。どうもサービスフレーズを出すタイミングが悪いんですよね。やはり2月26日の記者会見でいみじくも総裁様がおん自ら仰せの如く、

『私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』

という事で理解した方が宜しいのではないでしょうか。こんな事で中央銀行の政策運営の信認が本当に維持可能なのか甚だ疑問ですが。


○当面の注目点

昨年の下げ相場には日柄的なパターンがありまして、「月末の2年債入札で短期ゾーンに玉が供給される」→「月初の10年入札後に下げる」→「翌週の5年入札に対する極端な懸念が広がる」→「止め男登場」となっております。昨年の7月は10年ゾーンに投資家様渾身の買い、9月には総裁の記者会見となっておりまして、「5年債入札で相場死亡」に至らずに済みました。

今回の相場ですが、とりあえず5年金利の0.6%でどの位止まってくれるか(Liffeの先物レベルを見ていると止まらない悪寒がしますが)と、2年金利の0.15%でどの位止まってくれるかというのが一つの注目点。そして、今回「止め男」が週末までに登場してくれるのか(というあまりにも相場分析としては無茶苦茶な論議ですが)が焦点となるでしょう。


とまぁそんな訳で、本当は金融政策決定会合議事要旨の読み込みも少々楽しめるのですが、本日はこの辺で。





2004/03/03

お題「WI取引の活発化に水を差さなければ良いですが」

○サプライズな入札結果

昨日の10年国債入札は久し振りに見事なテールの流れっぷりでございました。前場の引け時点での業者間気配が1.345%−1.35%だったのに、平均落札価格が99円92銭(1.353%)で最低落札価格が99円50銭(1.401%)とは恐れ入りました。

先月後半は円高(というかドル安)の頭打ち傾向がはっきりして来たのにも拘らず、日経平均が10500円近辺でウロウロしているうちに、何故か平均株価がちょっと下がるとそちらにだけ反応し、債券だけ威勢良く買い上げられている不思議な展開でした。その反動として先週末から突如気がついたかのように債券市場が外部環境に反応したのはその反動だったのかもしれません。

そんなことも有りまして、昨日は債券にアゲインストな外部環境をいつもよりより多く懸念し、慎重姿勢の強い入札になってしまったと言う事だったというのが入札大流れの原因になったのでしょう。恐らく「入札の事前ヘッジで既にショートポジションになっている分」と言う意味での必要な応札分が100円あるいは99円95銭に入り、「まぁ在庫にしても良いし・・・・」的な札が不透明感からかなり抑えられたという事が原因かと。

1.4%、99円50銭という妙にきりの良い所が最低落札になったのは、「在庫にしましょうか」札の見事なまでの少なさを反映しているといったところでしょうか。


○原因は別にWI取引が機能していない訳ではなく・・・・

早速「WI取引が有効に機能していない」というお話が出てきそうですが、今回はまぁ不幸な事故みたいな物でして、入札前のセカンダリー(というのも妙な表現ですが)マーケットで「入札を待たずして買い」という動きが投資家サイドから出てこなかったのが原因その1であり、前回の2年国債入札での入札前の業者間取引があまりにも絵に描いたように業者目出度し目出度しな動きになってしまって、なまじセカンダリーの気配があるので業者が安心してしまったのが原因その2。却ってサプライズを産んでしまいました。

強いていえば、入札前にセカンダリーの板が存在する所から、とりあえず「ショートカバーの為に必要な応札分」をどこに入れるかという事を悩む必要がないというのも、今回のように外部環境が読みにくい入札での応札額が減った原因かもしれません。セカンダリーの板が見えるということは、「まぁとりあえずここに入れとけば良いでしょう」というのが以前より読みやすくなる(特に償還が延びてイールドカーブをどう引いたら良いか読みづらい今回のような入札の場合)という効果があり、ある程度価格がわかりやすければ敢えて勝負をする必要もない訳ですから、外部環境が悪いと「忘れた頃にやって来る入札大流れ」が起きる事もあるのでしょう。


○これでWI取引への参加が控えられなければ良いのですが

それよりも懸念されるのは、入札前取引への投資家の参加が今回の入札大流れによって阻害されるのではないかというお話。昨今説明責任がどうのこうのと喧しい世の中でございまして、「入札前売買で買ったら入札が大きく流れた。これなら入札で買った方が良いではないか」となるのは説明がつきにくい話です。

WI取引が業者間で細々と行われるだけではあまり物の役に立たず、取引の厚みを確保し、業者の事前ヘッジを容易にするには「買い方」である投資家の皆様の参加が望まれる所であります。そんな中で一発目の大きな入札でこの有様では、「やはり入札前取引で買う事もなかろう」という悲しい話になるのが懸念されます。

恐らく、入札前から買い意欲旺盛な状況であれば入札前取引で買いを入れる動きがあって然るべきかとは思いますが、暫くは今回の入札大流れがトラウマになってしまう可能性も高いかと思います。ま、3ヶ月もすれば皆さんすっかり忘れると思いますが(^^)。



細かいネタですが以下全然別の話。

明日は初の物価連動国債の入札が行われます。正直訳がわからない債券なのですが、この物価連動国債の商品性のある1点に対して素朴な疑問。

「何で機関投資家向けなんでしょうか?」

この国債、要するに「CPIの上昇に対するヘッジ商品」な訳ですが、そもそも日本の機関投資家でCPIの上昇を直接ヘッジする必要がある人がいるのか甚だ疑問であります。年金にしろ預貯金にしろインフレヘッジをする必要はさらさら無い(表現にやや語弊がありますが)訳でして、インフレリスクは契約者なり預金者が負担するものですから・・・・CPIが上がって困るのは貯蓄主体のセクターでありますから基本的には個人という事になる筈で、本来この債券は個人向けに発行したほうが良いのではないかと思う訳です。

とは申しましても、いきなり個人向けを出すわけにもいかないですから、最初に機関投資家向けの物価連動国債を発行して、将来の個人向け国債に向けた瀬踏みを行うという意味もあるのではないかと勝手に想像を逞しくしております。

商品バスケットの取引市場でもあるならヘッジのやり様もあるかと思いますが、わが国では個別商品の先物くらいしか市場が無く、おまけに市場規模も小さいと来ておりますので、物価連動国債を業者としてポジションを取った場合にはヘッジが出来ずに途方にくれる(相場観でノーヘッジでホールドするというなら可能ですが)だけのお話になると思いますので、この商品もまた前途多難ではないかと思ってしまう次第であります。個人投資家としての見方をすれば時代のニーズにマッチした商品だとは思いますが。


2004/03/02

お題「金融検査マニュアル中小企業編」

金融検査マニュアルの中小企業編が正式リリースされました。この原案については昨年12月に金融庁から発表されていまして、今回は各方面からの意見、要望を踏まえて内容の手直しを行っております。

金融庁のWebにこの件に関して寄せられたコメントおよびそれに関する金融庁の考え方が掲載されています。量が膨大(よく見ると全般に関する部分とテーマ別分類している部分があるので同じコメントが複数箇所掲載されているのですが)ですが、気がついた点を。

○裁量権の範囲を巡る綱引き

12月24日のドラめもんで「これでは金融庁の裁量権の拡大にならないか?」という疑問を出しておりましたが、さすがにあちこちから同じ趣旨のパブリックコメントが提出されています。

『債務者区分の判断にあたって、(途中省略)キャッシュフローを明確に定義づける(営業キャッシュフロー)ほか、中小企業にとって利用が平易な計算書の様式についても明示するとともに、その普及定着に努めるべきである。(東京商工会議所)』

『(前半省略)「金融機関の企業訪問、経営指導等の実施状況や、企業・事業再生実績等」が良好である場合とはいかなる状況をさすのか、明確にすべきである。(日本商工会議所)』

『現行の別冊では、その対象となる「中小・零細企業等」の定義がなされていない。こうした中、中小企業基本法の中小企業者への特性への配慮がなされず、大企業並みに厳しく検査されたとの金融機関の声がある。このため、検査の現場において別冊の内容を浸透させるため、「中小・零細企業等」とは概ね中小企業基本法の定義による旨を明文化すべきである。(経済産業省)』

最後のコメントを見て初めて気がついたのは我ながら迂闊でしたが、確かにこの肝心の「中小・零細企業等」の定義も曖昧という金融検査マニュアルというのはかなりぶっ飛んでしまいました。

で、これらのコメントに関する金融庁の「コメントに対する考え方」なんですけれども、『一律基準の設定については機械的・画一的な運用にもつながりかねず、適切でもない』という感じの答えとなっております。だいたい予想された事なんですけど、今後の現場での運用が相変わらず恣意的というか妙に厳しい運用になるのではないかと懸念するところです。


○DDSに関する素朴な疑問

過小資本の中小企業において、経常運転資金貸出の「転がし」となっている部分に関しては実質的に資本的性格の資金になっているという事を勘案して貸出金を資本的劣後ローンに切り替えると資本が充実するというお話。銀行から見れば単に貸出金を固定化しているだけのことで、企業にはメリットなので企業から見れば資本が充実するのはそのとおり。

しかし、銀行から見た場合は貸出金の一部が固定化されるので、与信リスクという点からみるとリスクが大きくなっているだけの話だと思うのですが、検査マニュアルの通りに運用すると、資本的劣後ローンの部分の引当率が100%に跳ね上がる代わりに、債務者区分が格上げになります(ならない場合もありますが)。引当が増えるのか減るのかはケースバイケースのような気がしますが、とりあえず公称不良債権額は減少する訳でして、個人的には非常に謎なところです。

ちなみに、パブリックコメントでは「DDSは中小企業取引の実態にそぐわないので、DDSにしていなくてもケースによっては借入金を資本とみなせないか」という意見が幾つか寄せられているのですが、さすがに法的要件を具備しないのに資本と見なすのは不適切という考え方になっております。


その他、色々な面に関してパブリックコメントが寄せられておりまして、紙にうっかり打ち出すと60枚位になってしまいますので、関係者の方しか読む気が起きなさそうですが、とりあえずあたくしが気がついた点についてコメントしておきました。


おまけ:10年国債入札

先週末からいきなり威勢良く平均株価が商い高を伴って上昇。債券相場は昨日は先物中心に下落して、Liffeでもまた下落しております。

後付けでGDPだの鉱工業生産だのというお話が出ているのですが、それにしては株式上昇、債券下落のタイミングが妙に遅れています。おまけに量的緩和政策の長期化と株価上昇というパッケージならば長期債がもっと派手に売られても良さそうなものですが、超長期債を中心に突如堅調な展開。いやはや、非常に悩ましい相場です。

本日は10年国債の入札が行われますが、とりあえず1.3%クーポンでアンダーパー入札になりそう(昨日の終値時点で1.295%)ですので目先の消化に懸念はあまり無いとは思うのですが、株価の威勢の良い上昇に対して債券下落が反応しだしたのが先週末からという事もありますので、「本当に大丈夫なのか??」という気にはなる所であります。

恥ずかしながら個人的事情を申し上げれば、株価が反転しだしてからも債券が全然下落で反応しないので降参した途端に債券相場下落。いつもながら相場は難しい限りでございます。いやはや。




2004/03/01

お題「凄いオチのついた日銀総裁記者会見」

2月26日の金融政策決定会合後に行われた定例会見の要旨が例によって日銀Webにアップされました。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0402d.htm

○強気な経済見通し

経済の現状に関してやたらと出てきた言葉が「順調な回復」というフレーズであります。

『経済に関する判断については、一言で言えば、海外経済、国内経済とも、目下のところ順調な回復過程を辿っているという判断である。』

『実質GDPの伸びはかなり高い数字が出たというのが率直な印象であるが、同時に、名目GDPをみてもプラスになってきているということで、両方みて、景気が順調な回復過程に入っていると判断できると思う。』

『全てを総合して、景気は緩やかな回復を続けている。この先も続くことについての我々の確信をかなり裏付けている。そして、物価についても、基調のところでは、緩やかに良い方向に向かっているのではないかと判断をなし得る材料ではないかと思う。』

とまぁこんな感じで「景気の基調は順調な回復」というのが基本的な見解のようであります。そして個人消費の堅調さについて注目しているようでありまして、当面の注目点として個人消費を挙げております。

『10〜12月のGDPの数字でみても、個人消費についても比較的しっかりした数字が出ているが、この点についても、1〜3月の動きをよくみたい。個人所得の回復を伴いながらの個人消費の伸びということにつながっていくのかどうか、あるいは、個人所得の増加がさほどでない状況が続いても、企業が提供してくる新しい商品・サービスが需要誘発型であることから、消費も伸びるという面がある程度伴っているのかどうか、あるいは、その合わせ技か。様々なことをきちんと判断していきたい。』

まぁGDPについてもそうなのですが、「まずは1〜3月の動きを見ていきたい」という感じの発言が並んでおります。言葉を額面通りに受け止めると「1〜3月の動きがこのまま堅調推移を辿れば益々判断を上方修正したいですな〜」とも読めてしまうのですが、ど〜せ何だかんだと理由をつけて、情勢判断の上方修正は避けるでしょうな。長期金利が上昇するのは日銀総裁にとって非常に宜しくない事態だという認識を感じさせる発言が相次ぐ今日この頃でありますから。


○物価に関するコメント

『ご承知の通り、企業物価は下げ止まって、プラスマイナスゼロというところまで来ている。これが今後どのようになるのかということと同時に、こうした川上段階の物価の動きが、小売ないしは消費者物価指数の段階までどのように波及していくか。金融政策の観点から、重要なポイントである。』

というお話でして、この「川上段階での物価の動きの波及」ということに関しては、先に岩田副総裁が講演(というか神戸における懇談会での挨拶)で同じような表現で指摘しておりました。当然とは言え、この「物価上昇の川下への波及」状況に関しては注意しておく必要があるのでしょうな。どうやって注目すればよいのかあたくし不勉強でよく判らないのですが(汗)。

関連してこんな質疑もありました。(質問の冒頭部分を趣旨を損なわない程度にカットしています)

『(問)最近、原油高や国際商品市況高が非常に目につく。また、先日の岩田副総裁の講演でも、川上部門の急騰が中間財および最終財に波及していくことを慎重に見極めなければいけない、とご発言されている。一次産品の急騰が今後どういったかたちで物価に出てくるのか、総裁の個人的なお考えで結構なので伺いたい。』

『(答)これからの動き次第なので、明確に予測し難いところがあるというのが率直なところであるが、少なくとも世界経済、日本経済ともに、過去の国際商品市況ひいては国内商品市況が上がる局面との対比でみると、今回は、最終段階の価格――小売段階や消費者物価の段階――への波及の時間的ラグが、過去のパターンよりもかなり長いという感じで、既に認識され始めていると思う。』

「物価について強気」などとへたなことを言った途端に金融市場が暴れだすので、慎重に「時間が掛かる」という留保を加えています。

『日本だけでなく、主要国も押し並べてそういった状況である。従って、今後急速に消費者物価の段階にまで川上段階の物価の上昇が及ぶとは、断言し難い状況であると思っている。』

そりゃー断言しませんわな(^^)。

『しかし、世界経済、そして日本経済の回復が順調であれば、着実に需給ギャップが縮まっていくわけであるし――その中でも企業間競争がグローバル化の下でかつてなく厳しく、その面では最終製品について高い値段を通し難い環境は今後とも続くと思うが――、大きな下敷きとして需給ギャップが少しずつ縮まっていけば、力のある企業から順次価格戦略をより積極的にしていく可能性があると思う。これからの見極めどころであると思っている。』

需給ギャップの縮小(本当にGDPデフレータに見られるような需給ギャップがあるのかいなという気もするんすけど)と、一次産品の価格上昇の合わせ技で消費者物価の上昇も期待できると言いたいと解釈致しましたが、本音は奈辺に?


○長期金利上昇のトラウマ

ま〜何と申しますか、この総裁様は「昨年の長期金利急上昇(本当の問題は中短期金利の上昇だったんですけど、そう言ってもインパクトが無いので「長期金利上昇」と言いたがる)に火を点けた」という批判を相当気にしているのではないかと思われる節がございまして、最近とみに「長期金利の低下」というお話をされております。

『金融市場のほうは、平穏に推移しているという判断である。(途中割愛)金利の形成もスムーズであり、短期金利だけでなく、より長めの金利も、景気回復のモメンタムが増す中で逆に少し低下の方向に動いている状況にある。』

『非常に大きな背景として世界的に景気の回復が進んでいる中で、日本だけでなく、海外主要国の債券市場をみても、やはりほぼ同じぐらいの幅──今、10ベーシス・ポイントとおっしゃったが──で長めの金利も下がっている状況である。日本の長期金利というか、やや長めの金利の最近の低下は、日本だけが際立っているというわけではなく、だいたい世界の長期金利の動きと整合性のある動きをしていると思う。』

と、都合の良い時だけ世界の長期金利の動きまで持ち出してきております。

で、まぁ金利上昇の点火役と言われたことが相当のトラウマなのは、今回の「品貸しスキーム」の導入にも反映されているようで実に微笑ましい(^^)。品貸しスキーム導入に関しての質問に対する答えです。長いのであたくし的に微苦笑した部分を引用致します。

『(引用者注:品貸しスキームに関して)過去を振り返ってみても、「あの時こういう制度があれば良かった」というケースがいくつかあるが、それほどあるわけではない。しかし、いくつかあるケースというのが、市場価格の形成に歪みを残したという過去の形跡がしっかり残っている。』

この「過去の形跡」というのが何かと申しますと、債券先物2003年6月限が中心限月だった時に発生したスクイーズ騒動。ちょうど相場が上げ基調であり、先物受渡際割安銘柄候補の2銘柄ともに流通玉が少ないという状態でもあったので、スクイーズ懸念で債券先物が心理的に非常に売りにくくなってしまいました。

この時に数年ぶりに先物際割安銘柄のスクイーズ絡みのレポ仕手戦みたいな争いが起きまして、結局売り方敗北だったと記憶しております。また間が悪い事に債券先物の限月交代後に0.8%クーポンの20年62回債の入札が行われまして、相場の崩壊が始まったので、「スクイーズ騒動なかりせば、馬鹿高値もつかずに済んだのでは・・・・」と言いたくなるのかもしれませんな。

ま〜そんな訳で、「長期金利上昇の引き金を引いた」として叩かれるのは「ゼロ金利解除は失敗だった」として叩かれる位に気になる事のようでございます。無駄に蛮勇を奮われても困りますが、この程度でトラウマ的な反応を示されると、この人量的緩和の解除が適切なタイミングで出来るんかいなと不安になって参りますな。何となく解除が送れて悪性インフレの種をまきそうな悪寒。



○最後にとんでもないオチが待ってます(-_-メ)

さて、色々と総裁会見を引用しているのですが、実はこの方とんでもないコメントをしておりまして、日銀Webを読んでいたあたくしを凍りつかせつつも爆笑の発作を起させる大技を出してくれました。

『(問)先程、景気について、総裁は「順調な回復過程にある」という言葉を使われたと思う。これまで日銀は「緩やかな回復過程」という言葉を使ってきたわけだが、一段と景気の見方が強気なものになってきたということなのか。』

『(答)全く同じ言葉を使わなければ同じ見方ではないというところまで厳密にお考え頂くのであれば、言い直さなければならない。今まで通り「緩やかな回復過程を続けている」という判断に変わりはない。毎回「緩やかな回復」が続いているとしても、何か心配事があるのかないのかということまで考えて言えば、そうした範囲の景気回復であれば、当面そんなに大きな懸念材料がないという意味で「順調だ」ということだ。私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』

や〜(-_-メ)、この発言にはたまげました(^^)。実に素晴らしい。海の向こうの宗主国様では中央銀行の発表するステートメントや議長発言の微妙な言い回しによって金融市場が大々的に反応するというのに。

「下衆どもは総裁様の発言に細々と反応するんじゃねぇ」と言う事なのか、はたまた「普段テキトーに言ってるんだから真に受けないでね〜」とでも言いたいのか判りませんが、中央銀行総裁としては実に見事な香気を放つご発言、大変痛み入ります。自爆系のギャグだと思えば良いのかも知れませんが。


しかし、こんな事言われてしまいますと、あたくしが折角やっている「自称日銀ウォッチ」の意味がなくなるので困ってしまいますな。まぁ勢いで言ってしまう癖があるんでしょうな。このお方は。

大昔の副総裁時代に金利引上げについて「ジャストタイミングで考えている」という発言をして金融市場大騒ぎになった時から全然変わっていないと思えばまぁこんなものなのでしょうが・・・・・・・・頭が痛い。