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2004/08/31

お題「改めて新BIS規制案」

台風到来の為本日は簡単に(謎)。

金融庁および日本銀行のWebに昨日「新BIS規制案Q&A」というものがアップされております。PDFファイル形式でアップされているので(と言う訳でもないのですが)アドレスは手抜きで書きませんが、金融庁のWebはやたらゴテゴテしていて見難いので日銀のWebから探せば宜しいかと思います。内容的にはほんのさわりと言った感じですが。

○個人・中小企業向け貸出に関する謎再掲

一発目の問1に「BISの新規制の枠組み」に関してでかでかと計算式をのっけて説明しております。そこにもありますように、今回の自己資本比率規制の変更においては分子にあたる自己資本に関しての変更は無しと言うことで、分母の部分が変更になっている訳ですな。

で、元々の分母部分が「信用リスク+市場リスク」だったのですが、今回は「信用リスク+市場リスク+オペレーショナルリスク」ということで変更になったのですが、変更の基本的ポリシーはその次の問2にありますように、新規制の3つの柱の一つに挙げられている「市場規律」の重視であり、「リスク計測を精緻化」するというあたりらしい訳ですな。

ところがご存知のように今般の新規制においては、個人だの中小企業向け与信について何故か信用リスクのリスクウェイトを軽減するという大技に出ているというのが大変に素晴らしいというか香しいというか。問6(4ページ目)には、個人・中小企業向け与信に関して具体的にどのようになるかが記載されているので引用します。

・標準的手法については、与信額1億円未満の個人・中小企業向け与信について、現行のリスク・ウェイトから25%引き下げ。75%のリスク・ウェイトとし、また、住宅ローンについてはリスク・ウェイトを現行規制よりも3割削減し、35%とすることとされている。

・内部格付手法では、個人、中小企業向け与信については、同様の与信特性でも大企業向け与信と比べ所要自己資本が軽減されるような算式が示されている。

と言うことでして、小口分散効果が発生するから大企業向け貸付よりも中小企業や個人向け貸付のリスクウェイトが下がると言う理屈になっております。で、この理屈は過去にも申し上げたと思いますが、ローンの信用リスクという観点で言えば無茶苦茶というか論理破綻としか申し上げようがありません。

母集団の信用リスクが高いものを幾ら集めてもポートフォリオ全体の信用リスクは軽減されませんが何か???と言った所でして、上記理屈(というか屁理屈)が成立するのは貸出ポートフォリオが(1)ローンじゃなくてエクイティの場合(2)元々のローンが信用リスクを反映した値付け(まぁ街金レートですな)で購入したもの(貸出金じゃなくて社債ですな、そりゃ。)の場合って事になるでしょうから、基本的な前提が直接金融を意識したものだとしか言い様がありませんな。

科学的に精緻な分析をしているかのような話になっていますが、根本的な部分で(政治的に理由があるにせよ)無理無理な前提を置いてリスクの計測をしているというこの新BIS規制。所詮は単なる「国際展開する銀行へのお約束事」であるに過ぎない筈なのですが、今までと同様に今度の新BIS規制に関しても国際展開をしていない国内銀行にも適用する方向だそうですな(Q&Aの問7に記載されております)。BIS規制参加各国の多様な金融の現状を無理矢理ごちゃまぜにする為に「中小企業向け貸出の方が大企業向け貸出よりも信用リスクが低い」と言い出すような規制を何故国内銀行に適用するのかと考えますと、金融庁の思考停止あるいは海外崇拝の香りが実に強烈に漂ってまいりまして、もう頭が下がるとしか申し上げようがありません。


○まぁ結局は政治の世界な訳ですが

中小企業向け貸出金の信用リスクが大企業向けよりも低いという無茶苦茶としか言い様が無い理屈が採用されたというのは、(ちゃんと調べている訳でないのですが)国際展開している銀行が国内で大々的に中小企業貸出業務に精を出している日本とかドイツとかの銀行に対する配慮、というか日本とかドイツとかが強硬に主張したことが原因なのでしょうなって事はとりあえず想像の付くところでございます。

その点では政治力を評価したい所ですが、どうも金融当局さまにおかれましてはやはりその辺の評価が欲しい(というよりは国内向け政治アピールなんでしょうが)ようで、わざわざQ&Aの問5で「日本の金融当局としては、これまでどのような主張を行ってきたのか。」という誰も質問をしそうもない質問を挙げまして説明しております。まぁもともとBIS規制自体が過小資本で業務を絶賛大拡大させた邦銀への嫌がらせとして成立したような節(その時に日本の金融当局は何をやっていやがったんでしょうな〜)があると考えるのは被害妄想かもしれませんが、今回の2次規制に関しても「科学的に精緻なアプローチ」をしていると言いながら肝心の根本が政治的妥協の産物と言うことな訳ですか。

で、同じ結論になるのですが、そんなものを有り難がって国内銀行にも適用する必要がどこにあるのかサッパリ訳判らんわけですが、って我ながらあたくしも粘着ですな。


○市場リスクに関して

一応債券市場に関連する部分。問8の部分なのですが、どうも今一歩この説明が良くわからんので、BIS規制案を精読する必要があるかも。

・今回の新BIS規制案では、銀行勘定の金利リスクについて、自己資本比率の分母(リスク・アセット)の計算には参入せず、第2の柱(引用者補足:監督上の検証って所です)においてモニタリングすることとなって
いる。

・したがって、銀行勘定の金利リスクについてアウトライアー銀行に該当したからといって自動的に自己資本の賦課が求められるものではない。

と言うことでして、アウトライアー銀行ってのは標準化された金利ショック(全ての金利が1%上昇するという設定)に伴って発生する金利リスクがTier1とTier2の合計額の20%を超える銀行の事をいうって話はだいぶ前にもしたかと思いますが、ここだけ見ていると、アウトライアー銀行に該当するような金利リスクを取っていなければ無問題って話にも読める訳ですな。

とは言いましても、昨今の国債絶賛大発行+金融市場だけは資金大余り状態の量的緩和って状況からすると、つい1年前の10年0.4%なんてやっていた時のような債券ポート組んでいたらアウトライアー銀行に簡単に抵触しそうな感じもする訳でして、この辺はちゃんと財務諸表を見ないといけませんな。どっちにしろ預貸率が低く、債券投資部門での利息収入が求められるような銀行はある程度気にしておかなければいけないという話でしょう。

しかもこの金利リスクについては監督上の検証ってことで、どの位のリスクを取るとどうなるって話が明確ではなさそう(もしかしたら明確なのかもしれませんが)なのがまた怪しさ満点ですな。「過大な金利リスクを取っている」とか難癖つけるネタになりそうで。


オペレーショナルリスクに関しては相変わらず良く判らないので、本日は簡単にこんな所で。というか結局規制案を精読する必要に迫られているという説もありますな。







2004/08/30

お題「物価指標と雇用統計」

○注目されるべき経済指標

経済指標連発シリーズ第一弾という事で先週末には物価統計に雇用統計、勤労者世帯家計調査と出たわけですが、どれも市場予想を下回る内容でして(まぁ8月都区部CPIの▲0.2%はそんなに大騒ぎするほどの悪い数字でもありませんが)、債券相場は当然の如く上昇した訳です。

金融政策に関してはご存知のように「CPIに一点張り」という状態で政策運営をしていることもありましてCPIの数値は気になるところですが、最近は「いずれCPIはゼロになるでしょう」というのは割と織り込みに行ってる(だから物価指標が相変わらずマイナスだとやや反応するのですが)こともありまして、物価指標と同じ位に注目すべき指標に関して金融政策の動向に影響与えそうなものは「雇用関連の指標」という事になるのではないかと。

以前ご紹介した山口前日銀副総裁のインタビューでその辺を説明しているので再掲するとこんな感じです。

『コンマ以下の(消費者物価の)マイナスがあとどれくらいで解消されるかは不確実性が高い。なぜなら景気回復で需給関係はかなり改善し、需給ギャップも目立って縮小してきたと考えられるが、それにしては物価指数の反応が鈍いからだ。』

『要因の一つは、消費財の国際的な競争環境が非常に厳しいこと。もう一つは、日本でも生産性上昇がかなり見られ始めること。昨年度は3%強の成長が実現したが、雇用はほとんど増えず、生産性上昇が速かった。この場合に賃金が欧米のように上昇すればサービス価格は上昇する。日本では名目賃金は一昨年までかなり下がり、最近やっと下げ止まってきた。生産性上昇と賃金の落ち着きでユニットレーバーコスト(単位労働コスト)はかなり下がっている。』

『従って、「デフレがいつごろ解消するか」を言い換えると、生産性の速い上昇が今後どうなっていくのか、下がり気味だった賃金がどうなるのか―の2点をどう見るかにかかる。成長が持続し、来年度にも潜在成長率を上回る成長が実現し、その間に生産性上昇が鈍化すれば、雇用と賃金の上昇圧力は強まらざるを得ない。そうなると物価の基調が本格的に変わる可能性がある。』

という意味で先週末の経済指標を眺めると、って言ってもあたくしあまりこの手の分析をした事がない(得意技は公式発表文の分析とか業者間気配の板読みとかですので)ので、詳しい事はお得意な方にお願いしたい所では有るのですが、一見したイメージで申し上げますと、雇用関連の数値が悪化(=失業率絶賛上昇)して東京都区部の消費者物価が相変わらずマイナス継続というかマイナスがほんのちょっと拡大ってことですので、まぁそれはそれなりに話の筋が通っているようですな。今週は鉱工業生産なども発表されまして、まぁそれぞれ重要な指標だという感じなのですが、当面は雇用関係の需給と給与所得の推移なんぞを注目しながら物価を見るという感じで行くのが吉かと存じます。

と、考えますと先週末の経済指標は今後の物価動向という面から言うと「消費者物価のプラス転換」への流れが押し戻されるような意味を持つ可能性がある訳でして、やはり重視すべきだという事になろうかと存じます。失業率がいきなり0.3%跳ねるというのも中々ですし。勿論今回の数字が単に瞬間的な反動なのかも知れないので一回だけの指標で断定はできませんが。

金曜にちらっと触れました「コメ大豊作でコアCPI押し下げ効果」ってのも少々気になるところですが、冷静に考えますと、もともと昨年分のコメ凶作という特殊要因が剥落した筈の4月以降のコアCPIも特殊要因剥落による反動減が出たとも思えませんし、まぁこの話も強気相場の時によく出てくる「後付け理屈」の一環かもしれませんな。結果は10月以降のコアCPIに出てくるでしょうが。


○相変わらずネタが乏しいのでここぞとばかりに読書室

だいたいこのドラめもんにも傾向というのがありまして、てめぇの本業の調子が今一歩だと書き物のパワーも今一歩(たまに逆切れモードの場合もありますが)となりまして、その上金融政策が夏休みモードと来てはもう先生困りますな〜って感じな訳です。そういう時は日々読み散らしている本のご紹介でも。

・アーロン収容所(会田雄次著、中公文庫)

そもそもの初版が1962年10月ということで42年前の出版。だいぶ前に買っておいて(従ってお値段が違うかもしれません)積ん読状態だったのですが、先日ご紹介した山本七平氏の「日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条」も読んだ事だし読んでみますかって事で読んでみました。

山本氏の著書のベースになっている小松真一氏の「虜囚日記」よりはまぁ読みやすい(内容を敢えて暗くしなかった事は著者もあとがきで認めている)のですが、日本人の特色を捕虜収容所の生活の描写を通じて鋭く斬ってますな。ご本人は当時の英国というか欧州崇拝(米国へのアンチテーゼとしての)に一石を投じるという意図もあったようですが。

ISBN4-12-200046-7 C1120 \560


・ツキの法則(谷岡一郎著、PHP新書)

あたくしの趣味に属する本です。「賭け」に関する科学、といえば確率と統計なのですが、その辺に関する素養が無くても読めると思います。いわゆる「ギャンブラーの迷信」に始まる色々な数学的なお話をわかりやすく書いて有りまして、あたくしも「おお!言われてみればそうじゃん」と目から鱗状態のお話もあったりしました。「確実に負ける賭け方とは」と言う部分が本書のウリでしょうな。まぁ仕事に役立つかどうかは別ですが。

「ツキ」の正体は統計学上の必然的な偏りに過ぎないってのが本書で述べることでありますので、期待してお読みにならないよう申し添えます(^^)。

ISBN4-569=55763-5 C0233 \657







2004/08/27

お題「入札レビューと雑談」

相変わらず相場の方向感が無いせいか、ちょっとした投資家の売買フローで妙に相場が動くという日々が続いております。特に材料が出ていないのにまぁ上がったり下がったりして、先物なんぞは連日上げと下げの日替わりメニュー。方向感が無いので手がかり材料として目先筋が投資家のフローに提灯つけるから尚余計に質が悪い展開が続くのですが。

○2年国債入札レビュー

昨日入札が行なわれた2年新発債なんぞがまた無茶苦茶でして、今週に入ってから2毛ほど売り込まれて前日には新発WI取引の引値が0.18%などというお値段をやっていたのですが、昨日の市場では前場0.19%まで押し込んでおいて前場引け直前にいきなり買い戻し攻撃で0.175%まで戻り、入札の平均&最低価格は100円6銭で0.169%という有様。ちなみに、この2年債を押し込んでいる間って3年とか4年のゾーンの国債はやたらめったら堅調でして、これは一体どういう事なのか??と頭の中に?が1万個位飛び交っておりました。

以前は2年国債は「キャッシュ潰し」用の債券投資資金退避所として選好されていた事もあるのですが、相場水準全体の下落によりまして、いわゆるキャッシュ潰しと言うか、弱気筋の買い対象銘柄は変動15年国債へと変化しておりまして、正直言って投資家層の厚みが以前ほどではなくなってきているのではないかと思う次第であります(別に確証をもって言っているお話ではありません)。で、ますますこの2年国債は一部大手投資家の動きに左右されやすい動きを示すようになっておりまして、正直あたくしのような無力ディーラーにとっては(゚д゚)ハァ?って動きが多い訳です(-_-メ)。

昨日も書きましたが前提としての量的緩和という梯子を外された後にもこの発行量で入札をするのはかなり厳しいものがあるでしょうな。価格変動リスクが何気にある割には絶対水準としての金利が低いからこそ投資家の買いが細って15年変動利付国債に向っている(というのはあたくしの脳内現実かもしれませんけど)わけでして、大手銀行さまあたりが買ったり売ったりしていたり、大手の有力証券会社さまがドカンと落札して平気な顔をしている(かど〜か知らんが)為にそこそこ値持ちしておりますが、これとて前提条件に量的緩和という資金ジャブジャブ状態があるからですからね〜。

勿論、イールドカーブの2年ゾーンを膨らませても良いというのであれば話は全然別ですが。


○ネタも無いので以下雑談(^^)

小ネタをば。

・原油価格と債券相場

原油価格がどうしたこうしたというので株式市場や債券市場が妙に乱高下するというパターンはだいぶ崩れてきたようですが、まぁ基本的に「原油価格上昇」→「株式相場下落」→「債券相場上昇」という動きだったと思う訳です。

で、あたくしつらつらと考えるに矢印の最初はまぁ良いのかもしれませんが、その次の矢印ってどうよって感じな訳ですよ。原油価格上昇はインフレ要因なのではないかと(^^)、まぁ原材料価格上昇が一般物価の上昇に直結しないで企業部門で吸収されるから企業業績が悪化して株価下落という話なのでしょうが、結構不思議な理屈ですな〜などと思う訳です。

・米の作況と債券相場

時事メインとか日経とかに出ていたお話の受け売りですが、昨年の米凶作から一転して米が豊作と言うことで、コアCPI(米は「生鮮」食料品ではないそうで)にマイナスの影響を与えるそうですが、大和証券SMBCの白石氏の試算によりますと、最大で0.4%のマイナス効果があるそうですな。

普段でしたら「ああそうですな」で終了する話なのですが、何せ金融政策がコアCPIに一点張りをしているという量的緩和政策のコミットメントがありますので、これがまた量的緩和の出口が遠のくとかいう話になってくると色々と楽しそうな思惑が出てきそうでございますな。既に早場米は店頭に出回っておりますし、それ以前の問題として個人的な体感としては5月くらいから米の小売価格って下がってきている印象ですので、劇的な変化って事にはならないような気もしますが、本格的に新米が店頭に出てくる9月後半だか10月だかの後のコアCPIの変化は(ネタとして)注目されるかもしれませんな。

・スーパーマーケット売上と折り込み広告

あたくしの棲息している地域の近所に某大手スーパーがある訳ですが、ここが寄越す新聞折り込み広告が5月の連休明けくらいから妙にしょぼくなってきているのですな。具体的には見開きだった広告がペラ1になってみたり、衣料品広告に出てくるモデルのおにいさんおねいさんの人数が激しく減ってみたり、週に3回出ていた広告が2.5回に減ってみたりとか。ちなみに広告に気合が入っていたのは昨年の春先くらいから冬くらいまででしたが。

まぁ統計でもスーパーマーケットの売上がどうも伸びていないとでておりまして、ほうほうなるほどと思いつつ週末の広告はどうなるのでしょうな〜と思う訳であります。週末の広告といえば定番は不動産の広告なのですが、余り真面目に見たことが無いので今度真面目に見ることとしますか(謎)。


という訳で、本当のネタは本日以降の経済指標って事ですな。



2004/08/26

お題「今日も甚だ簡単に相場の話」

本質的には週末から月末にかけて出てくる経済指標が相場の本命なので、ある意味中休み状態なのですが。

○現物債が重いわけだが

昨日の債券相場、前場はそこそこしっかりだった現物中期ゾーンだったのですが、輪番オペが通過した後の後場になっていきなり中短期から8年ゾーンあたりまで現物が全部重くなるという脅威の展開。銘柄間の需給にデコボコがあるので微妙に強かったり売り込まれていたりするのですが、全般的には2年から8年位のゾーンが満遍なく叩かれるという状況でした。

3年ゾーンあたりでは前場は前日比5糸甘レベルのオファーなんぞを威勢良く買って引けが堂々のビットサイドだったのに、後場になって相場が下落しているどさくさに紛れていつの間にやら1毛甘どころか1.5毛甘くらいまで叩かれるという事でして、3年ゾーンで日中にそんなに上がったり下がったりするというのも中々豪快な展開であります。どうせまた例によって例の如く売りが出たんでしょうが、これだけ甘くなって2年債入札とはこれまた中々寒い展開ではございます。

○今度は「5年の0.75%」に注目してみると

そんなこんなで5年債がズルズルと下がって気が付けば昨日の引け値ベースで0.755%ということで、誤差を押して言えば「5年0.75%」な訳ですが、このゾーンがまた滞空時間が短いのですよ先生って感じであります。過去の数字をつらつら眺めているとこの近辺も滞空時間が短いという状態。で、その滞空時間の短い5年の0.75%の時の他年限の位置はと言いますと、直近の0.75%の時と比較すると(ある意味当たり前ですが)若干のデコボコはありますが概ね似たような位置。債券相場急落時の通過点であった6月の5年0.75%の時と比較すると、現在は2年債が甘く、10年、20年が強いという形になっておりまして、「量的緩和政策の解除の可能性を視野に入れつつも、景気の先行きに関しては強気一辺倒状態からは脱却している」という事になる訳ですな。

・・・・・そう考えたら別に普通の状態ですな。

てな訳で、あまりにも中期債が弱体なので驚いていたのですが、良く良く考えるとこの程度では微調整の一環ということですな。と申しますか、20年国債の入札前に延々と時間をかけて20年ゾーンを売り込んでいた為に、単にイールドカーブが元に戻る動きの中でやたらと過激なフラットニングが起きているように見えるだけだったりする訳でした。

ちなみに、5年債の引け利回りが昨日と同じ0.755%であります2週間前の8月10日の引け値を昨日と比較致しますと、先物が3銭安で、2年は変わらず、10年が1毛強くて20年は(70回債同士で比較すると)3毛強って感じでして、2週間前の水準に戻って(30年の記録が手元に無いです。スイマセン)ややフラットニングしたかな〜という所のようですな。ここからのフラットニングはどうかな〜って感じですかね。


○2年国債入札雑感

まぁこの2年国債自体は特にどうという事も無い入札になるのでしょうが、昔のように量的緩和政策が半永久的に続くのではないかと思わせるような状況であれば消化に問題はないのですが、最近は一応量的緩和政策が終了する場合がどうのこうのという事をまともに意識するようになってきている訳でして、威勢良く買われるという訳にも行かない訳です。

で、過去においてはこの2年債が相場の高値圏においては「投資資金の一時退避先」として選好されていた時代もございましたが、最近は変動利付国債の方が好まれているのではないかという節が見られるようになっております。理由としては、

(1)相場の下落リスクが意識されるようになり、過去に保有していた変動利付国債の価格が復活。塩漬け状態が解消されたので売買がしやすくなった。

(2)いわゆるBIS2次規制や、金融庁検査だの日銀考査だので「金利上昇リスク」に関して喧しく言われるようになって来るという流れが根底にある(アウトライヤー規制なども含めまして)ために、リスク管理上「6ヶ月債」扱いになり、かつ金利上昇への備えになっていると言い訳可能で、とどめに期間利回りがそこそこ取れるという変動利付国債の方が下手な短期債より投資しやすい。

(3)発行額が増えてきて、流通市場でまともに値段がつくようになってきた為に売買がやりやすくなった。

という事が挙げられるかと考えられます。まぁそんな感じですので、あたくしと致しましては、どうせ短期金利がぶれるようになったらヘッジがやたらやりにくい2年ゾーンの発行残高を膨らませるのはイールドカーブの安定形成という事を考えますと、あまり宜しく無いとも言えます(恐らくカーブ上2年ゾーンが恒常的に膨らむ形になってしまい、中期ゾーンのイールド全体に上昇圧力が掛かりやすくなる)ので、当局様に置かれましては、来年度あたりの発行計画では2年ゾーンの発行を減額して15年変動利付国債の発行を増額するということも(安定消化優先ならば)ご検討いただくと幸いではないかと思う訳です。


では〜(^^)/






2004/08/25

お題「まぁ雑談という感じですが」

相変わらず新聞を読んでもテレビを見ても出てくる話題がオリンピックなもんで、何だかんだと言っても結局流されてしまうあたくしはどうもオリンピック以外の話題に目が行かない訳でして(何のこっちゃ)、相場のお話と愚にもつかない世間話をば。

○相場概況

先日ドラめもんでお話した「10年の1.6%の滞空時間があまり長くない」っつー話ですが、ここの所連日上がったり下がったり訳の判らん方向性皆無の相場展開が続き(だから相場の話をネタにしにくいのですが)ながらも、徐々に10年1.6%水準というのが新たなレンジの中心になりつつあるようでございますな。と、あたくしが書くと良くレンジを抜けるという話はこの際気にしないようにしましょう。

と、10年ゾーンは比較的堅調なのですが、どうも気になるのが中期ゾーンでして、ここもとの相場でレンジ内で相場が上下する間に上がっても下がっても軟調という実に困った状態。特に目立つのは4年ゾーンを中心としたあたりなのですが、この辺のゾーンと言えばご存知の通り大手銀行勢の債券ポートフォリオの核になっている部分。

無力ディーラーのあたくしは今一歩良く判らんのですが、どうもここもとの相場水準上昇でようやく日の目を見ることになった塩漬け債券に対して改めてヘッジの売りなのかスワップの払いなのかオプションを利用したヘッジ(コール売りとかシンセショートとか)なのか知りませんが、まぁ実弾の売りも含めまして売りが登場しているようで、中期ゾーンの中でも買い手の多様性に欠ける3年〜4年ゾーンの需給悪化に大いに影響しているようであります。大手銀行が売りに回ると買い手がいないのよこれがまた。

長期ゾーン以降に目を向けますと、昨日の20年国債入札は事前に随分カーブ上で売り込んでいた割には落札結果自体は前場引けでのオファーサイドが最低落札価格(しかも按分比率が半分ほど)となっておりまして、順調と言えば順調なのですが別に過熱する雰囲気もなし。で、その後は特にカーブ上伸びてくる雰囲気も無いという訳で、事前に散々売り込んで準備万端の雰囲気だった割には「ハァ?」という感じの入札でした。サプライズもなければ失望もないという面白くない入札でした。で、30年ゾーンと言うのは正直良く分らないのですが、どうも堅調だったのは先週の金曜くらいでして、相変わらず頭の重い展開が続いております。

と言う事で、実は10年ゾーン以外の現物債はやたらめったら重いというのが実情でして、現物債の需給関係から全然相場が上がらないというのもある様です。そこまで原油価格と連動してど〜するのって気はするのですが、NY株式→日本株式→日本債券って感じで取り敢えず債券先物が動いてくれるので先物はそれなりに上がったり下がったり致しますが。


売買状況はと申しますと、上がったら売りたい組の売りは取り敢えず一巡。下がったら買うという人はいない訳ではないですが、今まで散々下に持っていかれてやっと売れたばかりですので、一般的には中々ここでいきなり買うという訳にも行かないようです。従って変動利付国債が買われちゃったりするのですが。

そんな感じで板が薄いという状況が継続しておりますので、ここの所連日「引けにかけて突然先物が上昇して現物が堅調になる」という訳の判らん動きが起きておりますが、ど〜考えてもパッシブ系の新規資金が入ってきて、インデックスベースでのパフォーマンスに負けないためにいわゆる「引け握り」が入ったとしか思えない動きです。大したロットを買っている雰囲気も無いのですが、物の見事に反応する所をみますと、やはりこれも板が薄いことの影響かと思います。


まぁ経済指標が週末近くから出てきますのでそちらをお楽しみにってことなのでしょうな。


○ニュース雑談

三井住友の提案は中々笑えました。まるでどこぞの債券ディーラーのような提案だと健やかな笑いを提供させていただきましたな。で、「どこぞの債券ディーラー」っつーのはどーゆー事かと申しますと・・・・・・

ご存知のように債券の売買は店頭での相対売買な訳ですが、即時性を求められるような売買は大体電話での発注になるのでして、まぁそれなりの規模の投資家様の場合は数社に同時に引き合いを出す訳です。で、まぁ売買が成立するのですが、業者の色々なお家の事情だったりディーラーが間抜けだったりした場合に「お前それはおかしいだろう」というレートが他社から出て残念な思いをすることもある訳です。

特に、需給関係でレポが異常にタイトになっている銘柄なんかでミスレートがあった場合に、業者間スクリーンに「てめぇ今のレートは何なんだ」という対抗注文が出る場合がある訳ですな。例えばレポがきついから業者が安くオファーしないというか出来ない銘柄を安くオファーされて、取引を他社に持っていかれたような場合に、「そのレートはビットサイドだろう」と堂々のビットを入れるといった具合に。

こ〜ゆ〜場合にはレポが鬼のようにタイトになっていて誰も敢えて強いビットを叩かないという状況になっている銘柄にビットが入るので、余程無茶苦茶なビットなら叩かれますが、少々強い程度のビットは叩かれません。と言ってもそれなりに引け値ベースで言えば強いビットになりますので、叩かれるとタイトだけど割高な銘柄のロングポジションが発生するという諸刃の剣。素人にはお勧めできません(^^)。

まぁここまで書いたら何を言いたいかはお分りかと存じますが(^^)、今回のSMBCの提案も「叩かれないことを見透かした嫌がらせビット」なのではないか、などと書くと関係者から怒られそうですが、まぁ性格のひねくれたあたくしはそう思うのでありました。


しかし、ニュースを見ていると「?????」な話が一つ。今回の合併の株式交換比率提案に対して、どこの報道でも「UFJ株式の現在の価格水準からすると30%のプレミアムを乗せている」と言っているのですが、現在の株価が大体SMBC=1でUFJHD=0.7だったら、UJFのプレミアムは0.3÷0.7だから40%にならないのでしょうか???こういう計算の話は素人なのでよー判らんのですが。。。。


ではでは。



2004/08/24

お題「理想は結構なのですが」

相場も今一歩パンチに欠けますし、金融政策に絡む動きは思いっきり夏休みモードのまんまですので、本日もまたあたくしの勝手なごたくを並べるのでありました。

○蛸壺的専門家は宜しくない訳で

世に言われる「専門家」っつーのは発想がつい固定化しがちだとはよく言われることであります。実際に古今東西の戦記なんぞを見ますと、戦争における戦術の進歩には「素人の新しい戦術によって専門家の遵守していた戦術が敗退する」という事が結構あったりする訳でございます。

まぁ専門家って言っても、多くの専門家の内実はその分野に関する知識が門外漢よりもちょっと豊富なだけだったりする訳でして、知識が豊富なだけに発想が蛸壺に入ってしまい、実は単にマニュアルを適当に組み合わせて運用しているだけという状況になり勝ちなのでしょう。本来はその分野に関する豊富な知識を活用して新たな工夫ってのをするのが専門家の専門家たる所以なのでしょうが。

と、まぁそんな訳で発想が硬直化した専門家が、素人の創意工夫に敗退するという事態が発生する訳ですので、専門家を自称するものは、従来の発想で物事を進めるだけではなく、常に創意工夫を心掛けましょうって事になるのですが、正直書きながら自分の耳に痛いわけであります(汗)。


○日本振興銀行の理想と現実

昨日のドラめもんでも申し上げた日本振興銀行。昨日ご紹介した「シンクタンクのメッ」さんのWebでのコラムと話はかぶるのですが、従来の銀行が陥っている「専門家の蛸壺」を打破しようという当初の動きは「何じゃそのパフォーマンスは」と思いながらも、実際に機能したらそれはそれで面白い壮挙だとあたくしも思っていた訳ですよ。

しかし、蓋を開けてみれば当初は社長になって預金の個人保証をする(現実問題として意味があるのかは別としてもやる気だけは評価したいですな)という話であった落合さんはいつの間にやら取締役でも執行役員でもなくなってしまいました。まぁ現実の壁ってのにぶつかるのは良くある話ですから、それはそれで仕方が無い面はあるのでしょうが、その後の姿勢がいただけない訳でございます。

日本振興銀行設立に際して「金融維新」などというご立派な本をおだしになって色々と主張というか言い訳をしていた人が最近新たなマーケッティングの場として絶賛活用中のBlog(直接リンクにならないように最初の「h」を省略してますのでよろしく)にこんなのがありまして、下の方(=古い記事)をご覧になるとまぁ色々と楽しい事が書いてあります。
ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/07_/index.html

一番下にある2月19日付けの「落合氏が代表から降りたことの経緯説明」もやたらガバナンスがどうのこうのとか書いているのですが、結局「何でそうなったのか」という説明はありませんし、代表者個人による預金への保証に関しても『おそらく決定的な要因(補足:落合さんが代表から降りて取締役や執行役員にもならない事の要因)となったものとしては、「預金すべてに対して連帯して無制限の個人保証を行う」ということのプレッシャーにかなり悩まされていたということがあったに違いない。』などとしれっと書いている訳ですな。

現実の壁に当るのは仕方無いとは申しましても、銀行が開業する前というか預金を集める前からそれは無いでしょ〜よって突っ込みを入れたくなる訳ですが、もっと香しいものを感じたのは、そのちょいと上にあります4月21日付けの振興銀行開業にあたっての記事でして、「預金に対して個人保証を行なう」と大見得を切っていた筈の銀行の非常勤取締役様がこんな事を言い出しているのですよ先生。

『本日、東京青年会議所の有志が呼び掛けた日本振興銀行が開業いたします。預金は100万円以上1000万円以下なんですが、開業キャンペーン中は、5年定期1.00%、3年定期0.80%、1年定期0.65%となっています。本店一店主義を貫きローコストで運営する分、高めの預金金利でお客さまにお返しをするという経営方針です。』

ここまではまぁよろしい。この次の言葉で腰が抜けるのですな。

『いずれにしても1000万円までですから、元本と利息がすべて預金保険でカバーされるというところがミソです。』

・・・・・・(-_-メ)。

もう何をか言わんやという訳でして、「融資に対して個人保証を求めるのに預金に対しては何もしていない銀行の姿勢はケシカランので姿勢を示す為に預金に連帯保証する」というような話をしていたのは貴様のその口か、貴様のその著書かと小一時間問い詰めたくなる訳であります。

昨日ご紹介した「融資先へのアドバイス(アドバイスって言ったって、客として居酒屋に行った時に出された焼きおにぎりの出し方を直しましょうって物でして、それを「融資先へのアドバイス」と言うのかと思う訳なのですが)をする振興銀行の行員の図」ってテレビ番組でのパフォーマンス姿も「何か必死ですな」という感じです。

融資に対する保証人の徴求に関しても、「シンクタンクのメッ」氏が指摘しているように、法人なら代表者の個人保証、個人なら別の保証人を立てる必要があるようでして、著書「金融維新」なんかで「代表者の個人保証は再起の機会を奪うものだ」などと言っていたのはどこへやら。


○現実の壁に当るのは仕方ないのですが

てな訳で、この銀行さまに置かれましては、打ち出した「経営理念」が「現実の壁」にぶち当たる速度があまりにも速すぎる訳でして、理念を打ち出すのは壮としたいのですが、幾ら何でもあまりといえばあまりですし、その後理想と現実のギャップに関して素直に反省してくれれば良いのですが、何か尤もらしい理屈をこねたり、報道パフォーマンスをやったりして「自分たちの思ったとおりに物事が進んでいる」と認識しだすのが恐ろしい訳です。

一般企業や一般個人ならばまぁ破綻でも破産でも勝手にすればって感じなのですが、コトが銀行であれば預金保険機構を通じて国民にあまねく被害が回ってきますし、行政がそんな事を始めると手の付け様の無い暴れ馬状態になる訳でして、暴れ馬に蹴られて怪我人続出となる訳ですな。しまいには現実と脳内現実のギャップがでかくなりすぎてもう無茶苦茶になる訳でして、そんな出来事は大東亜戦争中に山のように事例がある訳です。最後は国家が焦土になる訳ですが。

戦争の常識を変える革命的新戦術は「現実の壁」から蛸壺専門家ではない人間の創意工夫によって出てきたのであって、脳内現実からでてくるのでは無いのですが、どうも昨今は脳内現実から出てきた「美しい理念」が好まれるようでして、例えば上記した「法人融資における代表者の個人保証」問題に関しても、現実は日本振興銀行にあるようなモノだというのに、民主党のアフォな代議士辺りが「融資に対する保証人制度は廃止すべきだ」などと言い出す始末でありまして、誠に困ったものであります。


○金融検査マニュアルへの疑問(ここは未完なのでまた後日)

で、話の流れに無理がある+時間の都合上ちょっと書けなくなってしまいましたが、木村氏も策定に参画しているらしい金融庁の「金融検査マニュアル」に関しましても、書いてあることはそれほどおかしくないのですが、どうも作成している皆様の認識している脳内現実が現実と違うのではないかと思う節があるんですな。

捨印慣行の不適切な運用がどうのこうのという件がありまして、捨印を無闇に押させるのは確かに如何なものかとおもうのですが、例によって木村氏のBlogを拝読致しますと、「捨印を押す事によって契約内容の訂正が出来るので(ここまでは正しい)極端に言えば借入金額を一桁多くする事だって可能だ」などという楽しい話をしている訳でして、その楽しい話のどこがどうおかしいかというのは皆様でお考え頂くと致しまして(書く時間が無いだけです、ゴメンナサイ)、現状認識がそんな状態で政策の立案をされても正直言って現場に無用かつ無駄な負担が掛かるだけなのではないかと思う訳ですよ。

・・・・・・って旧軍の参謀本部と前線の関係と同じじゃん。とほほのほ。





2004/08/23

お題「言行不一致(-_-メ)」

まぁ相場と関係ない話ですけどね・・・・・

○公共事業は減ったそうですが

オリンピックのドサクサに紛れて国土交通省から実に妙な施策が提案されております。何でも「交通渋滞解消の促進に資する為に高速道路の一部区間の値下げを行なう。財源は特定道路財源ですな。あ、そうそう値下げの対象はETC利用者だけですよ。」とかいうお話。さすがにこの施策は何とも香ばしいのでオリンピック報道の間にきっちり取り上げられております。

料金収受の効率化によって渋滞緩和と経費削減に役立てるってぇのがETC導入の本旨だったと思うのですが、いつの間にやら「ETC普及の為に国費導入」という本末転倒な議論が絶賛大進行中。ETC導入で経費削減が進んだのでその分が利用者に還元されるって話ならまぁ判らん話でもないですが、それはあなた話が思いっきり逆なのではないかと。

で、その背景にはETCが当初思ったほど普及していないってのがあるのでしょうと容易に想像できるのですが、ETCの普及が遅々として進まない理由をもうちょっと真剣に考えて障害となっている部分をどうするのかって事ではなく、極めて安直に「税金を突っ込んで利用料金の引き下げ」という作戦にでてくる国土交通省の姿勢には頭が下がる思いであります。


結局ですな、公共事業の削減とか言って土木工事を減らしているのかもしれませんけど、こういった形で別の分野に公共事業が突っ込まれている訳でして、特に最近(というかここ数年)はアイテー事業の巨大受注先は政府部門というお話が続いているらしいのですな。特にETCのような制度が絡んだ問題になりますと、色々と以下自主規制なお話があったりするようですな。これじゃあ結果土木工事がアイテー事業に置き換わっただけの事であって、お手盛り的ばら撒き構造の本質は何も変わっていないのではないかと思ってしまう訳です。


○裁量行政を超越しているのではないかと

で、まぁ金融行政に話は飛ぶ訳ですが、何時の間にかスルーされてしまっておりますが、りそな銀行に関する税金突っ込み攻撃は未だにあたくし釈然としておりません。突っ込んだ後に厳格な貸出債権引当を行なったら、突っ込んだ税金額と同じ位新たに要引当債権が発生したってぇのは何ぼ何でも人を馬鹿にした話であります。

で、全部が全部りそな方式になるというのであれば、行政として話の筋は通っているのですが、りそな銀行は無事に巨大なる国費(しかもこれが特別会計から突っ込んでいるので、一般会計に出てこない為に分りやすく表沙汰になる訳ではないのがミソ)をぶち込んだのに、より突っ込むべき国費が少ないと思われる足利銀行は問答無用で国有化コース。

そういうことをされますと、大阪選出の国会議員と言えばあんな人がいたなぁとか、そんな政党の強力な地盤だったなぁなどと思い、栃木選出の国会議員といえば内閣の政策に批判的かつ政策通として評価が高い人がいたようですなぁなどと、これがまた自主規制な想像を逞しくしたくなる訳でございます。

最近大手金融機関に入るどこぞの官庁の検査とやらに関しましても、別に直接当事者としてやっている訳ではなく知人からの又聞きベースなので思いっきり不正確なお話である事をお断りしつつ申し上げますと、どう考えても嫌がらせとしか思えないような動きも目に付くそうですな。勿論意図的な検査忌避というのも宜しくはありませんが、貸出債権の査定方法なんて特にDCFなんぞを使ってやるのであれば、将来のCFをどう見積もるかである程度まではなんとでも操作可能なお話なのですから、やはり如何なものかと思う訳ですな。

あるときは国費大投入で組織は残し、あるときは国有化、そして別の時には生殺し状態にして締め上げと、一体全体どういう基準でやっているのかという根拠に関して質問主意書を提出して明確なものを説明されたいって感じですな。


○日本振興銀行のその後

丁度今朝のモーサテで日本振興銀行のヨイショ報道が行なわれております。で、このヨイショ報道で初めて知ったのですが、毎週月曜に出てきて愚にもつかないコメントしかしない某経済アナリスト(何じゃその肩書きは)はこの銀行のアドバイザリーボードに加わっているようで、対メディア対策だけはせっせとやっていますなぁという印象を益々深くするものであります。

そのヨイショ報道によりますと、フランチャイズローンを実行するにあたって融資担当者が当該企業の店舗(小奇麗な居酒屋チェーンのようでしたが)に言って色々なアドバイスをする図などという物がありましたが、従業員の頭数とカバーする営業エリアから逆算すれば、そんな細かい対応を全ての融資先に出来る訳無いと思うわけでして、もう宣伝用のお話なのが見え見えも良い所。

おまけに融資の証書を書いている図に見せようとしている映像で、3千万円という数字をまともに3にゼロ7つの算用数字を書いておりましたが、後日の変造が容易になる算用数字で金銭消費貸借契約書(借金の証文ね)の借入金額を書かないのは金融法務の常識中の常識(読者の皆様も住宅ローンで証書に漢数字で金額書きませんでしたか?)であります。余談ですが、手形や小切手に金額を入れる時には、専用の機械(「チェックライター」でしたっけ?)を使って思いっきり刻印状態にします。手書きの場合は漢数字を使用しないと不備手形扱いです。従いまして、当該映像は「融資が順調に伸びている事を強調する為にただの融資申込みの光景を融資実行の光景に見せようとするミスリード促進映像」なのか「金融法務の常識も欠如した状態での運営をしている映像」なのかのどちらかと言うことですな。如何な物かと。

などとあたくし悪態をつくのですが、もっと冷静に分析している人が世の中にはいる訳でして、個人サイトなんで直接リンクするのは自粛しますが、普段から中小企業金融に関して現場の目から明解に政策提言や政策批判をしているお方が「ミディアムリスク専業銀行はやはり幻影か」というお題で日本振興銀行の現状が当初多いに宣伝していた事から変質してきている点を指摘しております(別にこのお題だけではなく、色々と中小企業融資への施策に対して重要な指摘がありますので、ご一読をお勧めしたいページです)。「シンクタンクのメッ」というお題で検索をかけるとヒットすると思いますし、ヒットしない場合はあたくしに個別にお問合せを。


○まとめにならないまとめ

結局何ですな、近年の風潮として「言ってる事とやってる事がまるで一致していない」というのがある訳でして、大臣に就任した時に「アイテーで450万人(だか何人だか忘れましたが)の新規雇用創出」などという不思議な事を言い出した人もいましたが、この先生もその後何か施策をやった気配はなし。待てよ、土木公共事業がアイテー公共事業になっているのであながち嘘ではないな(汗)。一般会計を削減する側から特別会計は大膨張(外為にしろ預金保険にしろ)とか金融行政の透明化などを標榜して導入した筈の金融検査マニュアルは上記のように運用面で恣意的なのではないかと疑問を呈したくなるような状況があったりする訳ですな。

で、言っている事とやっている事が整合性が取れていないという状況に関してはやや後ろめたい意識でもあるのか、上記の某銀行の如くに宣伝だけは怠りないのがまた困り物としか言い様がありません。で、そういう状況を世の片隅から眺めていると誠に遺憾に思う訳でして、相場とまるっきり関係のないこのような愚痴的な駄文を月曜の朝から書き散らす訳でありました。お付き合いいただきまして恐縮です。




2004/08/20

お題「次の材料待ちですな」

と言ってしまうと話が終わってしまいますが、まぁどうも手ががりになるものが無い割には相場の方はよく動くというものです。

○1.6%というのはもしかして居心地が悪いのでは

ご存知のように6月に債券相場がいきなり下落したのですが、この時終値ベースで10年が1.6%近辺にいた期間というのを見ますと6月3日の1.58%と4日の1.595%の2日間でした。その前は延々と続いていた1.5%挟みの展開となっていまして、この後はと申しますと7日に1.67%で8日は1.70%となりましていきなり1.6%をぶち抜けるという展開。

この時の新発10年国債は260回債ですので、現在の10年新発262回国債と償還が同じという事で、単純に利回りを比較するのも(6月から見ると債券の残存期間が2ヶ月短くなっている訳ですから)話としてはややインチキの類に属するのですが、まぁその辺は勘弁していただくと致しまして(^^)。

260回債は1.6%クーポンだったのですが、この入札の時は平均落札価格から引受手数料相当額を差っ引いた実質的なコストを利回り換算すると1.538%だったりする訳でして(まぁその後下がった訳ですが)、その後一気に1.6%をぶち抜けるの巻という事ですので、相場の下げ過程での1.6%近辺の滞空時間は極めて短かったりするというお話ですな。

で、ここもとの債券相場ですが、8月に入ってからの債券相場絶賛大反発においても実は1.6%近辺でいる時間があまり無かったりするのですな。先週の月曜火曜という事ですから8月9日、10日が1.62%となっていましたが、その後は1.6%台後半になったと思ったら4−6月期日本のGDP様のお力でいきなり1.565%までぶち上げるの巻という壮絶な展開。

ま、うだうだと10年新発債の動きを書きましたが、ご覧のように「10年1.6%」という水準は滞空時間が短い傾向にある訳でして、そう考えますと今週になってから大して材料も無いのに先物の40銭とか10年の4毛くらいの値幅を取ったりしているのは、この位置が実は居心地が悪いのでどちらかに動きたがっているのだが、決定的な材料に欠ける為に動けずに結果として妙に不安定な動きをしているのではないかと勝手に思ってみたりもする訳です。または出来高の少ない価格帯なので安定レンジを形成するためには暫く動く必要があるのかも知れませんが。


○またまた変動利付国債

昨日の業者間取引でやたらと目立ったのは変動利付国債の大量なる取引。弱含みながら大量の取引が行なわれていたことから、ど〜せまたどこかの投資家様がドカンと売りを入れたってことなのでしょうな〜というのは容易に想像出来る訳であります。

相変わらず変動利付国債は理論価格がど〜のこ〜のというお話よりは需給で動く債券なもので、正直ここまで何で値持ちしているのかという状況だったので、割高は割高なんですが、ヘッジ商品でもある(ことになっている)変動利付国債をこの高値圏(もっと上がるのかも知れませんが^^)で売ってくるのも中々の動きではないかと。相場観なのか割高割安の観点で売っているのかはよ〜わからんので判断には苦しむのですが。

あたくしが思うに、過去の捕まり玉整理モードに入っている絶対水準バイヤーの投資家様が最近の10年1.6%割れ水準で売りをぶつけておりますので、この変動利付国債の出物(債券で出物というのも何か間抜けな表現でござんすな)は絶好の資金退避先として吸収されていくのではないかと。

ま、今日以降の変動利付国債の動きにも注目したいと思います。



ってな訳で、お題のように「次の材料待ち」状態でして、まぁ来週には20年に2年と入札が2発待っておりますし、夏休み明けモードになってくるのではないかと思いますので、今日はNY株安債券高でちょっと(ではなくもしかしたらまた40銭だったりして^^)上昇って感じなんでしょうが、それはそれという事で様子見というのが吉かと。

おまけついでに申し上げますと、先日ドラめもんでご紹介した日銀前副総裁の山口泰さんのインタビュー記事の掲載された時事通信社の「金融財政」が昨日付けで出ておりますので機会がございましたらご一読を。ちなみに記事ご紹介のリードの最後には、

『最近では、論理的な筋道の通った政策論は希少なだけに、理論派で鳴らした山口氏の熱弁は傾聴に値する。』

とあります。改めて拝読いたしましたが誠に同感で、あたくし元々債券ディーラーながらマネーマーケットが長いという特異体質なために一応勉強している積りでしたが、金融政策についてもっと勉強せねばと思いつつ、昨今のもはやブームになっているのではないかとまで思ってしまう「論理的な筋道不在の政策論」横行を嘆く訳であります。とくにどこぞの経済新聞は目の玉よく磨いてから読めという感じでございますな。お問合せはあたくしではなく時事通信社へ、って良いのか??






2004/08/19

お題「またも相場雑談」

時の経つのは早いもので8月も既に19日になってしまいました。少年老い易く学成り難し(謎)。

オリンピックの話で話題満載状態のせいか、何だかドラめもんのネタがあまり見つからない(あたくしが何気にオリンピックをせっせとチェックしているせいという説はありますが)ので、またも相場の話あたりで勘弁。しかしNHK以外が実況している競技の放送シーンをダイジェストなんぞで見ると、激しく喧しく、勘弁していただきたいものです。まぁ日本快進撃の為に益々オリンピックに注目してしまうのですが(^^)。

○不思議な相場

昨日の債券相場は別に材料も無いのにやたらと堅調でして、印象としては「何でこんなに強いの?」という動きでありました。しかも朝方は20年や30年ゾーンがやたらと重いのに10年と先物は無闇矢鱈と堅調に推移しておりまして益々意味不明。まぁ後場になって20年や30年が一気に強含みになりましたので話は何となく分るという展開にはなりましたが。

しかし一昨日にいくらでも買う機会はあった訳でして、特に世の中変わった(米国のCPIがそんなに重大な経済指標とは思えませんが)訳でもないタイミングで戻るとは恐るべしとしか言いようがありません。まぁ「お家の事情」で昨日にしか買いを入れる機会が無いというお方の買いとしか考えようがありませんが。

で、「お家の事情で買う日限定投資家様」の買いで相場が見事に戻るのは結構なのですが、その戻り方が先物こそ下げた分の6割しか戻してませんが、20年債なんぞでは前日の下げを殆ど打ち消すという実に豪快な戻りでありまして、まぁそこまで戻るかフツーってなもんであります。

6月以来の下落相場と今月に入ってからの戻り相場という動きが取り敢えず一巡して、売り方にしろ買い方にしろポジションの整理が大分進行してきた為に、皆さん慌てて動くといううよりは「次の作戦検討中」モードになっているのではないかと思います。様子見状態の人が多い中で「お家の事情の買い(まぁ要するにパッシブ運用系の新規資金配分な訳だが)」が入るとその影響が(商いが薄いだけに)でかいという事でしょうな。

○ところであたくしのごたくの検証

いやもう先生こりゃ参ったというのはまさにこの事でございまして(超大汗)、一昨日のドラめもんでは「変動利付国債が値崩れして、先物9月きりの買い戻しの動きも目立ち、相場の下を見ている人が減ってきているのでは無いでしょうか」と書いたところ、不意打ちのように相場が下落。で、昨日は「下がると変動利付国債に買いが入ってきますので、やっぱり相場の下落リスクって意識されているのね」と書いたらこの有様。おまけに先物は結構売られちゃったりしてるし・・・・・

まぁあたくし根が売り好きな上に、基本的に順張りが大好きな人間ですんで(と、言い訳が始まるのだが)、訳のわからん板薄相場展開になりますと、目先の相場についてのコメントが見事なまでに外れだすという素晴らしい傾向がある訳でして(涙)、誠に遺憾に存じますが、読者の皆様に置かれましては大変に参考になるのではないかと思っております、とほほ。


○で、めげずに相場の話をする訳ですが

まぁ実を申しますとさっぱり訳がわからなくなっているのですが、どうも上で申し上げましたように、ある程度のポジション調整はカタがついて、参加者の多くが様子見というか作戦会議中状態になっているようですので、今暫くはレンジを形成するという順張り型のあたくしには辛抱が必要な相場が継続しそうであります。動かなくてはいけないようなお方に置かれましては、狙っているオペレーションは逆張り感覚で入るのが吉かと。

あたくし的に気になっているのが、株式市場における売買代金の低迷傾向であります。東証1部の売買代金1兆円割れというのはもう普通の状況になって参りましたが、昨日は一昨日に続いて売買代金が8000億円台となっておりまして、玉の回転が悪くなっているのではないかと勝手に懸念している訳でございますな。米国株式は再度復活してきましたが、どうも日本株が目先パッとしないのでこれまたアレなのでございます。

どこぞの提唱する「景気回復で金利上昇キャンペーン」に私たちはまんまと嵌っていたのかもしれませんな。


#どうもネタがございませんので目先の相場話で甚だ恐縮です。






2004/08/18

お題「あまりまとまっていない小ネタ類」

○昨日の債券相場

まぁしかし相場が下がらんの〜という話をした側から債券市場下落というのも中々情けないのですが、昨日のドラめもんで羅列していた状況が昨日の相場変動でどうなっていたのかと言うことを少々。

その1:やはり押し目買いが入る変動利付国債

昨日は時間の経過と共にイールドカーブ全体に売り圧力がかかるという表現がしっくりくるような相場の下がり方でありまして、何気に10年債1.6%まで金利上昇の巻。で、そんな相場が展開されているうちに、月曜に陥落の気配を見せていた15年変動利付国債は押し目買いの動きが目立つ展開になりまして、月曜は売り注文の指値が徐々に下がるという「いかにも在庫が重そう」な雰囲気を醸し出していた業者間気配は昨日は一転して「買いたい人多し」の雰囲気を漂わせる状況となりました。

ここもとの相場上昇局面で過去の高値掴み玉の整理がだいぶ進行しているのですが、玉整理をした分の余剰資金がどこに行くのかというのは当然注目される点であります。で、その資金が中期ゾーンに向うなどというのがお馴染みのパターンだったのですが、中期債は相変わらず出遅れたまま。昨日のように相場水準が下落しても、玉整理で売った分の見合いの買いらしき動きは見られず(冷静に考えれば「やっと日の目を見た」債券をたかが50銭や1円下がっただけで買い戻す訳は無いのですが)と言う事で、ちょっと相場が押してくるとすかさず変動利付国債の買いって事なのかな〜って感じです。

やはり昨日の変動利付国債の気配は一種のダマシでしたかね。

その2:先物9月限一人旅継続

昨日の相場でも先物はちょっと下がるとすかさず買いが入るような動きが目に付きまして、その一方で最割安の10年234回債は業者間で売り指値置きっ放し状態が継続という有様。まーよく考えれば今までの「チーペストスクイーズ攻撃」が「上げ相場」とか「チーペストの流通量不足」とか「フェイル慣行の不備」とかいろんな要素によって仕掛けが容易だったということもある訳でして、冷静になってみるとイールドカーブの中で7年はどうなってるの?というお話が優先されてくるというものなのでしょう。

で、先物っつーのは現物債を主にディーリングしている人だけがやっている訳ではないので、時にこういう事にもなるのでしょうか。どっちにしても割高化したり割安化したりしやすい状況になるんでしょうな、今後とも。当面は先物9月限は割高一人旅状態になりそうです。


○読者様からのご指摘で気が付いた「市場との対話」

先日公開された7月12〜13日の日銀金融政策決定会合の議事要旨をご紹介しましたが、その中で何気に通過してしまいましたが、ちょっと面白い記述がありましたので再掲(^^)。

市場との対話に関しての部分で、FRBの市場との対話に関連する議論の部分であります。

『このうちひとりの委員は、経済情勢の変化に応じて市場が変動することは当然であり、今回も利上げ前の段階では、経済統計の公表の際に相応の金利の変動がみられた、と述べたうえで、情報発信の前提には、正確な情勢判断があり、日本銀行としても、今後の金融政策運営に当たっては、物価情勢を含めた経済情勢全般について正確な情勢判断を行うとともに、それに基づく適切な情報発信を心がけていきたい、と付け加えた。』

さらっとスルーしておりまして、ご指摘されて初めて気が付いたのですが、この委員って「日本銀行としても・・・・・・心がけていきたい」って発言している訳なんですね。と言うことはこの意見を言った委員は日銀総裁としか考えられない訳でして(^^)、年がら年中不適切な形容詞あるいは強調文句を連発(不適切というのは誤解を招きやすいという意味ですよ)するわ、どこぞの新聞社には講演で話した事を思いっきり発言の趣旨を取り違えて報道されるわというカリスマ大総裁様のご発言にしては随分と殊勝なお言葉。

と言うことで、最近の記者会見要旨なんかを見てても伝わっては来るのですが、日銀総裁様に置かれましてはご自身のお考えになっている事がメディアやら市場関係者やらなどに誤解されて伝わって、それがまた余計な相場撹乱要因になっているというご認識が大有りなのではないかと。イライラするのは判りますが、それなら余計な形容詞や強調文句を発言に混ぜないというのを励行していただきたいものです。

まぁ報道する方も報道する方でして、殊更特定のどこか叩く訳ではないですが(嘘)金融政策に絡む報道を見ておりますと、特に某経済新聞の報道っぷりが酷い訳でして、勝手に「景気回復で金利上昇キャンペーン」をおっぱじめてみたり、一部の審議委員(とどこぞのストラテジスト)が勝手に盛り上がっていただけの「量的緩和政策の強化」が既定路線であるかのように報道して(先日のドラめもんでご紹介したように、その議論は6月の決定会合で思いっきり否定されてましたが)みたりと、もう暴れ馬状態で困ったものであります。

ご指摘いただきました読者様のお言葉を拝借致しますと、「市場との対話」と言うよりは「(伏字^^)新聞との対話」をちゃんとやった方が良いのではないかと言う事のようですな。困った現状であります(-_-メ)。


ではでは(^^)/~~





2004/08/17

お題「毎度おなじみの相場後講釈」

朝っぱらから某公共放送でオリンピック体操団体競技が絶賛放映されているのですが、実況アナウンサーが米国の選手が鉄棒で技を失敗した時に嬉しそうな(というかやたらと力の入ったというか)声を出すのは、曲がりなりにも「スポーツの祭典」なのですからいかがなものかと。らしからぬ実況ですな。

他国の演技どうのこうのとは関係なく日本男子はきっちりと演技をこなして総合点で2位米国に大きく(大きいのかどうかよく判らんのですが)差をつけて金メダルって結果でしたので大変素晴らしい結果でありましたな。これぞ見事なメダル獲得なんでしょうな。そんな場面に出くわしたということで、まぁ早起きすると良い事ありますにゃ(^^)。

最後の種目だったから仕方無いのかもしれませんが、いきなりつけたテレビ画面で実況放送アナウンサーが声裏返らせて大盛り上がり状態ですと放送のペースにこっちがあわせるのに苦労しますな。最初からちゃんと見てろと言われそうですが・・・・・・(^^)。


という世間話はさておきまして、金融政策は夏休みですが債券市場の方は解釈がムツカシイ動きが色々とある訳で、昨日の相場から気になった点を羅列しておきます。思考のたたき台にでもしていただけると幸いです。


○これは「循環物色」ですかな

昨日の債券市場では朝方こそ10年ゾーンを中心に相場上昇というまたもブルフラット状態でしたが、10年やら20年などの戻りから比較して出遅れ感のあった中期ゾーンが途中から復活しまして、その一方で長期ゾーンが弱くなりまして7年(先物)以降のイールドカーブはスティープ化しました。

まぁ同一人物が入替売買をしているかどうかはともかくと致しまして、相場全体を通してみると「長期(超長期?)売りの中期買い」となっており、相場水準全体で見れば買われているので「トータルで買い越し」の図であります。特に後場途中からは平均株価が戻り歩調になってきている事も委細構わず先物を中心に相場上昇ってのは誠に力強いというか、板の薄い中を随分頑張ってますなぁというか。まぁとにかく循環物色でネット買い越し状態という図が益々鮮明になってきております。


○やっと弱体化の兆しを見せる15年変動利付国債

銘柄による需給に強弱はあるのですが、昨日の業者間取引では15年変動利付国債が結構売り物勝ちな状態でした。まぁ売り物が出てくるのはここもとの相場戻り局面で毎度のように見られる光景なのですが、昨日の場合は「下を叩く」という動きが見られた事が先週までと違ったところであります。

一応理論価格がどうのこうのという話になりますと、この変動利付国債って10年〜20年のイールドカーブがフラット化すると価格が下がるらしい商品なのですが、昨日の場合はカーブがスティープ化して中期ゾーンの金利は低下しているのでお値段上がっても然るべきなのですが、それまで散々フラットニングする中で全然値下がりしなかった事の反動って奴ですね。

昨日の「下を叩く動き」なんですが、昨日一日だけのダマシかもしれませんので断定するのはまだ早いと致しましても、さすがに変動利付国債の需給悪化が顕在化してきたという事なのではないかという気がしております。気がするだけの状態なんですが(^^)。

以前にも申し上げたように、この変動利付国債は理論価格がどうのこうのというよりは、購入者(主に銀行というか預金金融機関というか)が「債券相場の下値リスク」を意識しだすと買いが入りやすくなるという商品でありまして、買いの手がとうとう引っ込んだのか売りが出たのかは判りませんが、ともかく「債券相場の下値リスク」に関しての意識が薄れてきたという事なのではないかと思います。


○先物9月限の独歩高

今の債券先物はイールドカーブ上では7年に連動することになっているのですが、先物の受渡最割安銘柄の10年234回債がレポコスト勘案後のネットベーシスでマイナス状態で取引されておりまして、昨日に至っては最早業者間のベーシス売買の買い気配値も碌なものが出てこなくて、アウトライト取引で前日よりも1銭は安い所まで叩かれると言う状態。残存流通量が激しく多い債券な事もあり、毎度のようなスクイーズ狙い(大体からして前回も見事に大不発しましたが)の仕掛けも元々困難な所へ来て、ど〜考えても需給が激しく悪い状態が続いているので、この#234は売り物勝ちな状態が継続しております。

で、今までの常識からしますと、最割安銘柄の需給が悪い場合ってのは連動する筈の先物も売り物勝ちになるのですが、この限月においては現物債の需給をあざ笑うかの如く先物一人旅状態でして、教科書的に言えば「おいおい」状態の受渡最割安の現物債が先物よりも割安状態という有様。

色々と解釈は可能なのでしょうが、激しくざっくりとした言い方をすれば、残存7年の現物債がイールドカーブ(というか前後の関係と言うか)では既にこれ以上買い進むのに無理がある状態で、先物が尚も引っ張って割高になっているという状況だという事なのでしょうな。先物買い圧力恐るべし。

特に昨日の相場では上記のように「ベーシスの売り」ではなく、「アウトライト売買で売り注文晒しっぱなし」「ちょっと安いビットでもぶっ叩く」という状況になっておりまして、先物9月限の買い戻し圧力、つまり投資家ヘッジの買い戻し圧力が顕在化して来たっつー事なのでしょうな。


ところで、話は全然違いますが、先週金曜日に先物建玉が速報ベースで3000枚ほど増加して、昨日は確定ベースで1000枚ほど減少してから前日比1500枚ほど減少となっておりまして、こういう動きに関して思惑の存在を指摘する人もいると思いますが、事務上の問題という面もありますのであまりナーバスになる必要はないかと思います。

と言いますのは、先週金曜日のように現物債の売買が猛烈にぶつかって相場が動く時というのは、現物債のマーケットメークしてると必然的に先物の売り買いがどっちも増える訳でして、処理すべき伝票量が莫大になる訳です。取引所に転売買戻しの報告する時限っつーのは売買高がなんぼあっても同じですんで、売買が錯綜した時にはいちいち転売買戻しの紐付け処理をしている事務的な余裕がない場合っつーのもありますので、「とりあえず全部両建て」という処理になってしまう場合もある訳です。で、後から修正報告出したり、翌日の売買で売り買い両方を転売買戻し扱いにしたりする訳ですな。


本日はそんな所で。





2004/08/16

お題「市場との対話にお悩みですな」

先週末はNY株安に日本のGDPのせいで激しい相場をやっていただきまして、大変に多忙を極める動きでありました。で、あまりにも動きが激しかったので、金融政策決定会合議事要旨が発表されたのも相手にされませんでしたな。まぁ発表された決定会合議事要旨の時期から債券市場が上昇しているのでそもそも注目材料にしにくいって事もありそうですが。

6月25日開催分
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g040625.htm
7月12〜13日開催分
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/g040713.htm

○当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

議事要旨の最後の方に毎回あるこのコーナーなのですが、市場が日銀の考えていることを勝手に解釈して暴走する傾向にある事が懸念材料のようでして、債券相場が下落しだすと「市場との対話」ネタがより多くなる訳です。で、6月25日にはこんな話をしておったようです。

『長期金利の上昇に関連して、委員は、経済金融情勢が変化しつつある状況であるだけに、金融政策運営に関する情報発信が特に重要である、との認識を共有した。』

『具体的には、(1)これまで通り、消費者物価指数に基づく現在の「約束」にしたがって量的緩和政策を継続していくことを必要に応じて説明するとともに、(2)経済金融情勢について、市場の見方を十分理解したうえで、日本銀行の判断をできるだけ正確に伝えることにより、市場と認識の共有を図ることが重要である、という点につき、意見の一致をみた。』

日本銀行の判断をできるだけ正確に伝えるってのは大事だと思うのですが、何でそのあと市場と「認識の共有」をするって話になるのかがよ〜分らん所であります。市場なんてぇのははっきり申し上げて何時も間違えているものですて、んな市場相手に「認識の共有」などという妙に妥協的な努力はせんでよろし。「日銀の判断を正確に伝える」だけで良いと思います。

『何人かの委員は、こうした対応は、量的緩和政策の解除に関する無用の憶測を避けるうえで有効である、との見方を示した。』

もしかして6月の相場下落は「無用の憶測」だったのでしょうか(^^)。


で、悩める政策委員会は7月にも似たようなお話をしております。

『この間、何人かの委員は、FRBの利上げに際しての市場との対話について言及した。これらの委員は、FRBの政策運営についての考え方は市場に広く浸透していたため、市場では今回の利上げについて総じて落ち着いた受け止め方をしている、と述べた。また、こうした背景には、FRBが実際の利上げよりも相当前の段階からFOMCのステートメントや講演を通じて丹念に情報発信をしてきたことが挙げられる、と続けた。』

まぁそうですな。あたくし思いまするに、FRBの情報発信が上手く機能している(ように見える)のは、FRBから出てくる情報発信のやり方が、常にFRBのペースで行なわれていると言う事も要因として挙げられるのではないかと。日本の場合は個人的な意見をいきなり表明する審議委員(例えば中原審議委員の2段階解除論とか、岩田副総裁のインフレ参照値とか)があると思えば(政策委員会として一定の意図があって敢えてこれらの審議委員に観測気球を上げさせたのならある意味立派な作戦だが)、国会に年がら年中呼び出されて誤解を招きやすい不規則発言(いちいち挙げるまでもなし)をしてしまう総裁がありと言うわけで、とても「政策委員会ペースでの情報発信」ができているとは思えないわけですな。

『このうちひとりの委員は、経済情勢の変化に応じて市場が変動することは当然であり、今回も利上げ前の段階では、経済統計の公表の際に相応の金利の変動がみられた、と述べたうえで、情報発信の前提には、正確な情勢判断があり、日本銀行としても、今後の金融政策運営に当たっては、物価情勢を含めた経済情勢全般について正確な情勢判断を行うとともに、それに基づく適切な情報発信を心がけていきたい、と付け加えた。』

「市場との対話」が「市場との認識の共有(6月の議事要旨)」とかいう話になって「どうやって情報を発信するか」とかいう技術的な方向に話が向っても仕方が無いという訳でして、要はこの意見にあるように、「情報発信の前提には、正確な情勢判断があり」って事ですな。誠に同感であります。この意見を言っている審議委員がどなたか存じませんが、わざわざこういう風に書かれるって事は、会議中に話が情報発信に関る枝葉末節に話が流れた為に「おまえらそれよりも根源的にやる事があるだろう」という意見表明に至ったのではないかと、勝手に想像を逞しくするあたくしでありました(^^)。


○展望リポート中間評価に関して

7月12〜13日の決定会合では金融経済月報の中にいわゆる「展望リポートの中間評価」が含まれていましたので、その中間評価に関しても意見が出されていたようです。

『何人かの委員は、今回の「中間評価」に関連し、対外的な説明の重要性について指摘した。これらの委員は、「景気は上振れ」、「消費者物価は概ね見通しどおり」という今回の判断はやや分かりにくい面があり、日本銀行が消費者物価を基準に量的緩和の継続を「約束」していることも考え合わせると、そう判断している背景について、日本銀行としての考え方を対外的に丁寧に説明していくことが重要である、と述べた。』

(こんな場所で苦言を呈しても仕方無いですが)日銀に苦言を呈するとなりますと、市場が時に「もうすぐにでも量的緩和解除がある」と言わんばかりの勢いで暴走してみたり、その逆をやってみたりするのは、究極的には、上記の「景気は上振れ」なのに「消費者物価は概ね見通しどおり」という分ったような分らんような日銀のスタンスが無用の混乱の原因の一つではなかろうかと思う訳ですな。2段階解除論がどうのこうのとか、インフレ参照値がどうのこうのとかいう話をする前に、こちらについての明解なる解説をお願いしたいものです。



○量的緩和政策強化(?)に関る議論

6月の会合では量的緩和政策強化に関する話も行なわれたようです。

『この間、ある委員は、市場における期待の安定化を図るためには、昨年10月に示した「約束」の内容のうち、「消費者物価が先行き再び下落しないと見込まれる」との部分につき、「ゼロ%を超える」という基準をさらに具体的に表現するため、より高めの数値を示すことを検討すべきではないかと発言した。』

多分岩田副総裁。もしかしたら中原審議委員。この施策が市場における期待の安定化に資するかという話は散々ドラめもんで罵倒しましたので省略。

『別のひとりの委員も、その趣旨に同調したうえで、現行の「約束」の強化を意図するものではない、と付け加えた。』

ここまでくると屁理屈状態ですが、多分こっちが中原さんでしょうな。で、当然ながら反論食らう訳でして(^^)、

『これに対し、別のある委員は、先行きの経済・物価動向には不確実性が伴うことから、このような対応は政策運営の機動性を損なうリスクが大きい、と述べた。また、別の委員は、「約束」の内容を強化すれば、かえって市場が不安定化するおそれがあるほか、政策に対する信認の低下にもつながりかねない、と主張した。』

この話はここで終了しておりまして、7月にはこのお題に関するネタがどこにも書かれておりませんので、岩田&中原さんは6月の時点で論破されてしまったのか、それとも単に6月会合時点から比較して債券相場が安定したので議論をするのは時期尚早と思って話を引っ込めたのかは良く分らん所ではありますが、とりあえずこの話はひとまず終了という事なのでしょう。


という訳で、議事要旨で一番文章の短いコーナーながら読むと楽しめる箇所をご紹介させて頂きました。




2004/08/13

お題「雑談ですな」

いやはや、あたくしもとうとう夏バテモードに入ってしまったようでして、甚だ調子が良くありませんな(-_-メ)。んな訳で本日は簡単に参ります。

○日銀総裁定例記者会見

火曜日の金融政策決定会合後に行なわれた日銀総裁記者会見、昨日のドラめもんでも一部ご紹介しましたが、質疑に関しては債券相場が戻った事もあって(笑)、甚だ平和なものが多くなっておりました。郵政民営化とかメガバンク統合問題の話とか地下金庫の公開の話などという話題が多かったのですが、量的緩和の今後に関する質疑が2つありました。うち1つは昨日ご紹介いたしましたが、もう1つの質疑を。

『(問)昨年10月に、量的緩和政策継続のコミットメント明確化ということで3つの条件を言われていたかと思うが、そのことに関して伺いたい。1番目と2番目の条件というのはCPIの数字で言われているということで、はっきりされているかと思うが、3番目の条件は、1番目と2番目の条件を満たしても金融経済情勢に鑑みて政策の継続が必要な場合には政策の変更を行わないということかと思う。3番目の条件で言われている金融経済情勢といった場合、様々な要因が含まれてくるため明確化することは難しいと思うのだが、そうした要因の中で、金融システムの安定の度合いとか、不良債権処理の具合とか、インターバンク市場の機能の回復とか、そのようなものについての考え方をできれば伺いたい。』

そー言われても答えに困る質問ですなって感じですが。

『(答)おっしゃるとおり1番目、2番目の条件については生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比変化率について、1番目の条件はその時点において安定的にゼロ%以上、2番目の条件は将来の見通しがゼロ%以上ということであるので、ある意味で数字的に非常に明確で把握しやすい条件である。3番目は、何か特定の事柄を予め念頭においているとか、それに対して我々として内々何か基準を持っているとか、そういう性格のものではない。』

まーそう答えますな。 長いから答えの続きは改行いれます。

『経済・物価情勢、これは内外の情勢と言ったほうが良いと思うが、そういう常に動く背景のもとに、1番目および2番目の数字の姿を置いた場合、つまり同じ現実のCPIの動き、同じ数字の将来のCPIの見通しというものも、内外経済というバックグラウンドを差し替えてみると全然違って見えることがないかということである。つまり、お芝居をご覧になって、同じ舞台衣装、同じメイクアップの俳優がいる場合でも、背景・舞台装置が違うと、全然違ったストーリーに見えるものである。次に喜劇を演ずる役者なのか悲劇を演ずる役者なのか、そこのところは随分違った姿になるわけである。』

『従って、我々は同じ数字を見る場合にも、その時点およびその時点以降想定される内外経済情勢というものを一応バックに置いてみて、本当にこの足許の物価の動き、将来の我々の予想、これがどういう雰囲気のものなのかということをしっかり確認したい。非常に抽象的なものの言い方だが、そういうことになると思う。経済が生き物である以上そうした点検作業は欠かせないことであり、これは、ただ数字面だけで金融政策を変更しうるというふうにはどなたもお考えにならないのと全く同じことである。』

つーことで、福井総裁からは「総合判断の重要性」のアピールが最近目立つようになっております。中央銀行としては極めて当然の事なのですが、どうもそれ以前に「超強気の景気判断」を連発したり、調査統計局方面から甚だ強気の話が染み出して(微妙な表現でアレですが)いるとの話があったり、金融庁と日銀が「金融機関経営は金利上昇リスクに備えているのか」と言ってみたりして「金利上昇ムード」を作ってしまったことからの軌道修正という面もあるのではないかと思います。

で、例によって例の如く、債券相場もまぁいい水準まで戻っているような気もするのですが、そんな中でも「金融政策の変更が遅れる」かのような情報発信をするセンスは如何なものかという感じですが、中短期ゾーンの利回りが急落前の水準に戻っていない(特に2年は売り物勝ち)ところを見ると、日銀の思ったように市場は動いていないという事なのかもしれませんな(^^)。長期債の世界は日銀の意図どおりに金利が順調低下してますが、2年債あたりの世界では「また発言のブレか!」って感じでまだ半信半疑なのかもしれませんな。よーわからんが。


○5年国債入札レビュー

リオープン発行という事で「まるで売れないのではないか」という懸念も当初はあった入札ですが、蓋を開けてみれば大手業者揃い踏みの落札。というかやはり業者主体の入札という事のような気もしますが、何となく背後に大手銀行勢がいそうな落札状況でもありました。

で、ただでなくさえ高値入札(平均落札価格の100円12銭は前場引けのオファーサイドから見ると3銭近く、つまり5糸以上高い)だったのにその後は新発国債の割高落札レベルに合わせるかのように中期ゾーンが堅調になるという大技。

「新発を買う」どころか「戻ったら売りたい」という人も結構おいでになる中でしっかり堅調になりましたが、例によって業者だけでそういう持ち上げパワーを発揮するのは無茶な話でして、5年ゾーンあたりに投資家様のそこそこ大量なお買い上げがあったという事でしょう。

戻り待ち(というか過去のナンピンの玉整理なのですが)の売りをこなしつつ上昇って事ですので、戻り待ちで売った人が相場が堅調推移を続けた場合にど〜ゆ〜動きをするのかという事には注目したい所でして、また買いなおしって事になりますとなお一段高の可能性も。ただし、今のところは、ナンピン玉整理と思われる「買い下がりが捕まったまま」の方々の戻り待ち売りの次のアクションは「変動利付国債の買い」という方面に向っている(変動利付国債が思いっきり値持ちしているからそう思うのですが)ような雰囲気でして、「債券相場は当面の天井」感をもっているというオペレーションに徹している雰囲気ですな。

ま、「高値警戒感のあるうちは下がらない」というのが相場の法則ですので、当面は相場は下がらんということで宜しいのではないかと(^^)。


#皆様も夏バテに注意しましょう、とほほ。







2004/08/12

お題「山口前副総裁の示唆〜いわゆる2段階解除論に関連して」

「法的拘束力は認めるが、信頼関係が損なわれているので仮処分申請は認めない」ってぇ事はこの国では「法の正義」よりは「やった者勝ち」だという認識で宜しいと言う事な訳ですか。もしくは「力が法」なのかも知れませんな(-_-メ)。

という話はさておきまして、日銀総裁の記者会見も含めまして先日の山口前副総裁の時事通信社インタビューのお話を含めて表題のお話。


○量的緩和政策の出口イメージ

まぁ別に近い話とは思っていないのですが、量的緩和政策の「出口」のイメージとしてあたくしが考えているのは、(1)資金供給オペを絞りながら当座預金残高を減らしていき、(2)所要準備まで当座預金残高が減少した後の無担保コール翌日物金利は(暫定的にゼロ%近傍にするかもしれないが)0.10とか0.15%あたりにして、ロンバード金利で一時的な上昇を抑える。という感じですな。

で、この量的緩和政策の「出口」に関連しては「量的緩和政策の解除」と「無担保コール翌日物金利の誘導目標金利の引き上げ」がセットになるのかならないのかという話があるようです。で、どうも「量的緩和政策の解除の後はゼロ金利政策の期間が入る」という2段階解除論の方が優勢らしい訳です。

先日日経新聞社主催のセミナーで挨拶した福井総裁が時の質疑応答で総裁が「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をしたのが実は話題になっていたそうで、これを捕まえて「2段階解除論を前面否定したので量的緩和が終了したら短期金利がドカンと上がる」という話になったのも債券相場下落の後付け理由の一つになっていたらしいのですな。


○山口前副総裁の指摘

時事メインの記事によりますと、山口前副総裁のインタビューでこんな質疑があったようです。全文は時事通信社発行の「金融財政」をご覧下さい(と、毎回言っておかないと^^)。

(問)時間軸のコミットメントは「量的緩和の枠組み」に対するもので当座預金残高目標は除外される。物価が下がり気味でも持続的成長によって大きな変化が表れそうな局面では、残高目標の引き下げは行なえるのではないか。

(答)もちろん技術的には可能だ。だが、その政策運営にはほとんど意味はないと思う。当座預金残高を減らし始める、つまり「出口政策」と開始する事は、最終的に金利機能を復活させる事が目標になる。それに至るまでどれくらい時間をかけるのかは重要な判断になるが、結局は30何兆円という当座預金残高を5−6兆円に着実に減らしてゼロ金利という短期市場の状態をプラス金利のゾーンに持っていくことになるのだと思う。

金利機能の復活という事になりますとやはりゼロ金利だと都合が悪いと思う訳ですな。で、2段階解除論に関してもこんな質疑をしています。

(問)解除方法をめぐっては、まず当座預金残高を減らしてゼロ金利状態とし、そして様子を見て金利をプラスにする「二段階解除論」なる説もある。

(答)それは技術的には可能だろう。ただ、基本を言えば、それは「量」の供給自体にどれ位の効果があったかという点の理解にかかっている。私たちが量的緩和を開始した時点では、そこはやってみないと分らない部分で、だからこそ踏み切ったのだが、結果ははっきり出たように思う。日銀は4月の「展望リポート」で量的緩和の効果を強調しているが、良く読みとゼロ金利か低金利の効果だ。つまり現在でも金融緩和の核心は「ゼロ金利プラス時間軸」にあり、そうすると「二段階」は技術的にはともかく論理的には説明が難しい。

(答えの続き)ここで大事なことは、当座預金残高を当初5兆円弱から30数兆円に増やしてきた量的緩和政策そのものの景気押上げ効果、物価押上げ効果というものが本当はどれぐらいあったのか、ということだ。仮にほとんど効果がなかったのだと考えられるならば、比較的短期間に過剰流動性を回収してかまわないことにある。一方、かなりの効果があると認められるならば、徐々にしか吸収オペレーションはできないはずだ。この点、日銀にはぜひ過去3年以上にわたる量的緩和政策のレビューをきちんとやってほしい。

(問)量的緩和の効果はほとんどなく、解除は比較的簡単なのでは

(答)3年余りの経験を見た後では、私の考えもそれに近い。だが、30数兆円は大きな額だし、この吸収をいざ始める時は金融市場の反応を確かめる必要があろう。現実的には、何回かのステップに分けて、足場を踏み固めながら解除せざるを得ないのではないか。実際にどれぐらい時間をかけて、どのような手段で過剰流動性を吸収するのかは、日銀もまだ十分には詰めていないだろう。言わずもがなだか、「出口政策」のあり方は、そのときの経済・物価情勢によって左右去れると考えるのが常識であり、かなりスピードアップしないと間に合わない事もありえるわけで、今の時点では十分に議論しきれない。


長々と引用(記事を転記したので手が疲れた^^送り仮名などの違いは勘弁してちょ)致しましたが、「まず量的緩和の効果」というか「過剰準備になっている過剰部分を上げ下げ(実際には下げてないが)する事に意味があったのか」という点の検証が必要という指摘は仰せの通りであります。

ただ、「量的緩和の強化」と称して実施した「当座預金残高目標の引き上げ」を「政策の変更」としていただけに今更「あれは意味が殆ど無かったので実は茶番でした」とは言いにくいという説は大有りでしてまさに諸刃の剣(^^)。量的緩和政策の本質が「ゼロ金利+時間軸」であるという話は以前須田審議委員もどこぞの講演でお話しておりましたが、量的緩和政策の終了において「量的緩和は終了しますが金利はゼロにします」という話になりますと(時間軸をどうするという問題はありますが)政策としての一貫性はどうなってるの?という話になる訳です。


どうも量的緩和が終了してゼロ金利政策が解除された場合に、前回のゼロ金利解除のイメージから短期金利がいきなり0.25%くらい上昇するというイメージを債券市場関係者は持っているのではないかという風に思うのですが、短期金融市場が見事に破壊されて3年もたっているので「金利機能の復活」をするのも慎重になっていくと思う訳ですよ。その為に、「ゼロ金利解除後の短期金利は0.15%位」ってイメージを最近のあたくしは持っているのですが、実は少数派の意見のようですな。

長期金利のことまで考えますと、本当はいきなり0.25%くらいまで引き上げて「打ち止め感」を出した方がイールドカーブ全体への影響が逆に小さいという話もあるのですが・・・・・・。


量的緩和解除によって財政赤字を反映した長期金利の上昇が起きるという問題についても山口さんコメントしてますが、そちらはまたいずれ。



○福井総裁の「いわゆる合体発言」に関して

前の方で申し上げた「市場の話題になった福井さんの合体発言」でございますが、もともと日銀は「量と金利はコインの裏表の関係」だという認識でおりまして(現象的にもその通りなのですが)、福井さんもその趣旨で「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」といった趣旨の発言をしたのではないかと。要するに2段階解除論がどうのこうのという話ではなく、あくまでも一般論ですな。

その点に関しての記者会見(http://www.boj.or.jp/press/04/kk0408a.htm)での質疑はこうなっております(コピペは楽だ^^)。

(問)(前半部分割愛)もう1点は、いつも出口政策について伺うと、「あまりにも時期尚早だ」と一蹴されるのだが、最近の都内での講演の質疑応答で、総裁は「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をされて、市場でも非常に話題になった。市場のほうからも、もっと具体的に話を聞きたいという声も上がっているので、もう少しわかり易い言葉で講演の時のご指摘をご説明頂きたい。

(答)(前半部分割愛)2番目のご質問についてだが、この前、私が金融システムについて講演をしたときにお尋ねがあったので、米国との比較で、一言言葉を付け加えさせて頂いたわけである。米国の連銀の場合には、今は低い金利をこれから経済と見合った正常な金利にもっていく、そういうステップを踏み始めたということだが、日本の場合は、エグジット(出口)と言ってもまだその時期はあくまで見えていないという前提だ。しかし、仮にそういう時点に来た場合にも、米国との違いというのは、単に金利水準の調整ということだけではなくて、量的緩和という領域にかなり深入りをしているので、非常に過大に供給している流動性をどう吸収するかという部分と金利の問題とを、頭の中で常にこの両側面を考えながら、連銀に比べるとより難しい工夫をしながらやっていく必要がありそうだ、という極めて当然のことを申し上げたつもりである。「合体して」という言葉に引っかかったという人もおられるが、もともと金利と量とを分離して考えるのがおかしい。今はゼロ金利になっているから量だけを考えていて良いわけだが、将来のことを考えた場合、金利と量を分解して考えるということは論理的におかしいのではないかと思う。

長くなってしまいましたが、要は最後の部分な訳でして、これは「量と金利はコインの裏表の関係にある」というお話。従いまして、いわゆる2段階解除論を肯定したわけでも否定したわけでもないというのが真意ではないかと推測します。だいたい先ほど山口前副総裁が指摘しているように、いざ「出口政策」となった時の経済状況次第でそのあたりは変化しうる物でして、時間軸効果が「ビハインド・ザ・カーブ」を認めている事も考えますと、場合によっては出口直後に結構頑張って引締めしないと行けないかもしれないですし、逆に景気はイマイチで一般物価が上昇するかもしれません
し、まーあまりその辺にナーバスになるのも如何なものかとは思います。

ただ、あたくしは純理論的に「量的緩和後のゼロ金利」は論理が破綻しているので、それをやるなら「低金利」にしておけばよいと思っているだけな訳ですな。


#どうも分ったようなわからんような話で恐縮です。






2004/08/11

お題「日銀の月報とFRBの声明文」

えー、本日は昨日予告した山口前副総裁のインタビュー記事絡みの続編は時間の都合上明日という事で(汗)。ネタ切れのために取って置く積りではないのですが(あまり放置するとネタが古くなるので)。本日は外れると定評の高い相場見通しはございませんので悪しからず(つーか意味不明の動きが多すぎでサッパリ判らんというのが正直な所です)。

○日銀の金融経済月報

昨日終了した金融政策決定会合は予想通り何もなしで現状維持。まぁついこの前まで当座預金残高をいじったり、当座預金をいじらない場合は「資産担保証券の買入」だの「国債の補完的貸し出し制度の創設」だの作ったは良いが全然機能していない無駄打ち政策を連発していたことを考えますと、ようやくまともになってきたと喜んでいいのでしょう。で、いつものように金融経済月報が発表されております。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0408.htm

8月の金融経済月報の基本的見解を7月と比べると、またも日銀極めてこっそりと判断を細かく前進させております。一々細かく比較すると毎回毎回目立たないように少しずつ判断が前進して数ヶ月に一回ドカンと前進って動きは継続するのでしょうか?

7月分から前進した箇所は極めて少ないのですが、ポイントとなる部分で微妙に表現をいじっているのが着目すべき所かと。

・基本判断

『わが国の景気は、回復を続けている。』(8月)
『わが国の景気は、生産活動や企業収益から雇用面への好影響を伴いつつ、回復を続けている。』(7月)

何か余計な説明が消えて、「景気は回復」と直球を投げております(^^)。


・現状認識部分

『こうしたもとで、雇用面でも改善傾向が続いており、』(8月)
『こうしたもとで、雇用面にも改善の動きがみられており、』(7月)

動きが見られるというのが改善傾向という事で何気に判断が前進。で、実を申しますとこの他に表現が変化しているのが、この先ご紹介致しますが、あと僅か2箇所ということでちょっと見ただけだと殆ど気がつかないような微妙な表現の変化となっています。

ただし、先日ご紹介した山口前副総裁の指摘を待つまでも無く、今後のデフレ脱却に関してポイントになりそうな「雇用情勢」についての表現が非常に微妙ながら前進している訳ですな。要注目かと。


・原油価格に関して一文追加

『なお、原油価格の動向と、その内外経済への影響については、留意する必要がある。』(8月)

読んで字の如し。悪影響なのか好影響なのか実は書いていないのが賢いのですが。さすがに最近言わなくなりましたが、一時は「原油価格上昇などの一次産品価格上昇は単純に景気に悪影響とは言えない(需要の増加を反映しているとも取れるから)」という趣旨のコメントがあった事もありましたしね。


・金融面

あんまり金融面には注目していないのですが、今回は表現が変わった箇所が余りにも少なかったので。

『企業からみた金融機関の貸出態度も引き続き明確に改善している。』(8月)
『企業からみた金融機関の貸出態度も改善の動きが一段と明確になっている。』(7月)

この部分だけですが、ここも企業金融に関る部分だけに一応チェック。


総裁記者会見も余り注目されませんでした(相場が戻り歩調なのである意味注目されないのがあたり前ではありますが)が、こちらに関しては日銀から本日リリースされると思います。


○FOMC声明文

Fedウォッチは本職ではないのですが一応ご参考までに。といいつつ実は自分のための手控えにしようとしているという説もありますが。

・キメ文句(とあたくしが勝手に命名している)の部分

The Committee perceives the upside and downside risks to the attainment of both sustainable growth and price stability for the next few quarters are roughly equal. With underlying inflation still expected to be relatively low, the Committee believes that policy accommodation can be removed at a pace that is likely to be measured. Nonetheless, the Committee will respond to changes in economic prospects as needed to fulfill its obligation to maintain price stability.

前回と一言一句同じです(^^)。


・エネルギー価格上昇と雇用情勢改善の鈍化傾向に触れているようです。

順番は逆になるのですが、声明文前半の最初の一発目の部分は6月と同じ。雇用情勢に関して6月は『labor market conditions have improved』と言ってたのが今回『the pace of improvement in labor market conditions has slowed』と雇用情勢改善の鈍化に言及しております。そりゃ雇用統計がアレじゃあ仕方ないですわな。

で、その雇用情勢鈍化に関しては『This softness likely owes importantly to the substantial rise in energy prices.』ということで、エネルギー価格というか原油価格の上昇が影響しているっつーことですか。


・ただし、基本的に景気には強気なように読めるのですが

あたくしのいい加減な英語力によりますと、これは結局景気に強気だと読めるのですが如何なもんでしょう。

The economy nevertheless appears poised to resume a stronger pace of expansion going forward. Inflation has been somewhat elevated this year, though a portion of the rise in prices seems to reflect transitory factors.

この文言がさっきの「rise in energy prices」の次に来る文言な訳ですので、やっぱり強気判断は継続中ということにしているのでしょう。ただ、雇用情勢に触れる事で(米国の金融政策には完全雇用っつーのが目標の一つになっていたと記憶していますが)ハイペースの利上げ懸念を払拭しつつも政策のフリーハンドはもち続けるということですな。大変に結構なお話で。


#恐縮ですがお題「山口前副総裁の示唆」の続編は明日に致します。





2004/08/10

お題「昨日の相場点描/山口前日銀副総裁の示唆」

ふと気がつくとドラめもんがただの相場講釈になっておりまして季節柄ネタが切れやすいとは言え、市場というか金融経済政策というか、まぁその類のモノに斜めから斬り込む(オーバーですな)あたくしとしては極めて遺憾な日々でもある訳です(-_-メ)。


○塩漬け銘柄復活!

昨日の債券相場、最初は先物独歩高コースかとも思われましたが、色々とやっているうちに気がつけばイールドカーブはフラット化致しました。相場が上昇しながらフラットニングとは恐るべしといった所でしたが・・・・・・

ま〜しかし昨日は相場上昇に伴って過去に捕まった債券の処分売りが目立ちまして、特に債券相場急落(しつこく書くと「捏造的武藤ショック」で中短期が売られた6月第2週)の1週間前に絶賛大人気入札が行なわれた(応札倍率59倍ですよ先生)1.6%クーポンの260回債の売りが目立ちました。他にも急落前に捕まっていた中でクーポンが低くてもう塩漬け状態になっていた銘柄に売りが出ておりました。

この260回債は、入札直後からじりじり下落した後に急落に捕まりましたので、利食い売りをぶつける間もない上に、当時は10年カレント債はこの銘柄しかなかったので押し目買い(というかナンピン買い)の対象になり続けるわ、元々のコストが高いから売るに売れないわという恐怖の銘柄になっておりました。その為に業者のショートがエライコッチャになっておりましてつい先日までやたら割高に売買されていたのですが、ふと気がつくと昨日は業者間でフツーに出合うフツーの銘柄となっている訳で、まー随分売りが出たものかと。

急落開始時の10年260回債は1.6%割れの水準にいまして6月5日の週にまずは米国雇用統計を受けていきなり1.6%台後半に下落したあとに中短期債主体に1.7%もぶち抜けという状態でしたので、やや足りなかったですが、まぁ概ね急落前の水準が見えてきたのが昨日の高値近辺でしたな。売りが出るのも当然でございます。


○しかしなぜかフラットニング

そんな感じで、ど〜も「捕まった物のヤレヤレ売り」という意味では長期債に売りがわんさか御到来という気が思いっきりしていたのですが、イールドカーブ自体は上記のようにフラット化。まーあたしゃよ―判らんのですが、中期債の売りと長期債の買いが相当な規模で(同一人物による入替売買かどうかは別にして)出ていないと、こ〜ゆ〜動きにはならないですから、まぁ今更ここでフラットニングかよ!とは思いますが、相当の動きがあったに違いない。

しかし中短期が伸び悩んでいるのに20年2.2%だの10年1.6%だのよーやるわというイメージ。10年と20年は急落前の水準をほぼ回復しているのですが、2年は急落前は0.1%台前半でしたし、5年は0.7%割れ(ただし対象銘柄の償還が3ヶ月違うので、比較するなら0.7%ちょい乗せというのが正しい)でしたので、出遅れが目立つというものです。

短期金利が引っ張って金利上昇って何か所謂「良い金利上昇」って奴なのですが、そこまで見るのはちょっと先走りすぎではないかと思いますが、イマイチよ―判らんという物であります。


○変動利付国債の動き

密かにあたくしが注目していた変動利付国債ですが、昨日は当初の相場上昇後に何時の間にか業者間取引で売りが嵩んで参りまして、概ね前日比25銭安レベルまで出合いまして、先月発行の29回債は100円まで出合いました。

で、これで終われば「とうとう変動利付国債から長期債なんかへの乗換が始まりましたか(^^)」という事になるのですが、ここで脅威だったのは25銭安の出合いという話を聞きつけた(かど〜かは知らんが)人(多分投資家さま)からの買いが入った(らしい)こと。後場にかけて平均株価が戻り歩調になったこともあるのでしょうが、売られた分を半分ほど戻して終了となりました。

まぁ下がった所で投資家様の買い登場ということでありますので、そ〜ゆ〜意味では「長い目で見た場合の相場下落に対する懸念」というのはまだまだ払拭されていないという事では無いかと思います。


○今更ですが山口前日銀副総裁のインタビューから

先日ちらっと触れました時事通信社による山口泰前日銀副総裁のインタビューですが、4日の時事メインで報道されたインタビュー内容を読めば読むほど示唆に富む内容です。時事通信社発行「金融財政」に全文が掲載されているそうですので、機会があればご覧になるのが吉かと存じます。ってどこで「金融財政」を入手できるのかあたくし不覚にも存じませんが(大汗)。

金融政策の根幹に据えられる破目になってしまった(山口さんはCPIを金融政策の根幹に据えるのは否定的ですが)消費者物価に関してはこのようにコメントしております(以下、8月4日の時事メイン記事より内容を引用しております)。

『(前半部分省略)コンマ以下の(消費者物価の)マイナスがあとどれくらいで解消されるかは不確実性が高い。なぜなら景気回復で需給関係はかなり改善し、需給ギャップも目立って縮小してきたと考えられるが、それにしては物価指数の反応が鈍いからだ。』

『要因の一つは、消費財の国際的な競争環境が非常に厳しいこと。もう一つは、日本でも生産性上昇がかなり見られ始めること。昨年度は3%強の成長が実現したが、雇用はほとんど増えず、生産性上昇が速かった。この場合に賃金が欧米のように上昇すればサービス価格は上昇する。日本では名目賃金は一昨年までかなり下がり、最近やっと下げ止まってきた。生産性上昇と賃金の落ち着きでユニットレーバーコスト(単位労働コスト)はかなり下がっている。』

『従って、「デフレがいつごろ解消するか」を言い換えると、生産性の速い上昇が今後どうなっていくのか、下がり気味だった賃金がどうなるのか―の2点をどう見るかにかかる。成長が持続し、来年度にも潜在成長率を上回る成長が実現し、その間に生産性上昇が鈍化すれば、雇用と賃金の上昇圧力は強まらざるを得ない。そうなると物価の基調が本格的に変わる可能性がある。』

ということで、賃金の動向と生産性が物価基調の鍵だというお話ですな。

統計上は賃金って下げ止まっているようなのですが、世の中の片隅に居ながら眺めておりますと、可変部分の賃金(賞与に当る部分)が一時的に上昇しただけで、基本給にあたる部分が上昇しているっていうような景気の良い話はあまり聞かないので、山口さんの仰る賃金の上昇圧力ってのは中々来ないのでは無いかと思いますが、あたくしと致しましては。



「デフレは経済にマイナス」という論点、というか殆ど定説化しておりますが、この点に関しても疑問を投げかけております。「デフレはもはや経済にマイナスだとは考えにくいが」という質問に関してこんなコメントを。

『事実として、マイルドな消費者物価の下落が経済成長を阻害する、ないしは景気回復を基本的に制約する、といったことは起きていないと見るのが常識的だ。どんなにマイルドでも物価の下落はとにかく景気回復に大きな制約になるとの先入観にとらわれると景気判断が歪み恐れがある。』

本当はこの先の話も引用しないと話が上手くつながらないのですが、時間と量の都合上明日(以降)に続くの巻とさせて頂きます。まぁ実はこの点に関してはあたくしイマイチ考えが纏まっていないのですが、賃金というか労働コストの下方硬直性が以前ほど極端なものではなくなってきている(と思っているのですが)中であれば、消費者物価が前年比ゼロコンマ%の世界でマイナスになっているのがそんなに経済成長を阻害するのかというのは正直同じような気がしております。

問題は資産デフレな訳ですが、そもそも90年代からの資産デフレはその前の資産価格の上昇が実態価値から乖離したものであった事の修正でもある(従って資産バブルを放置した政策に問題があって、消費者物価が低位安定してしている中で住宅価格の上昇を牽制する為に金融引締めを行なったBOEは日本の失敗に学んでいると言えるのですが)という面もありましたので、話がややこしいのがまた困ったものなんでしょうな。と、話があらぬ方向に行きましたが。

山口さんはこの後のコメントで「80年代後半のバブル期でも拡大期でもCPIはせいぜい0.5%程度しか上昇しておらず一番最後の時期に3%くらいに上昇した」と「コアのCPIが物価指数の中で最後に動くものだ」と指摘しておりまして、消費者物価に注目しすぎる事への警鐘を鳴らしている(ように見える)訳ですな。

という事で、続きは明日にでも。




2004/08/09

お題「懲りずに当らない相場見通し」

○金曜日の相場に関して

しかし何ですな、ど〜してこう相場の話を書くと見事に外すかっつー感じで、こーやってレビューしていて情けないですな。これでも本人大真面目に考えて見通しを書いているのですが・・・・・・・とほほ。ちなみに、あたくしこりゃマズイと思えば慌てて方針転換しますので必ずしもここで書いてある見通しとポジションが一致している訳ではありません、あしからず(^^)。

という言い訳は兎も角として先週末の債券相場。相場が下がらないというのはま〜予想通り(つーか米国債券高株安なので当らないほうがおかしいですな)でしたが、イールドカーブが見事にスティープ化致しました。フラット化継続は朝の30分くらいでして、金曜日のドラめもんでも申し上げましたが「気がつけば超長期ゾーンが6月初頭以来の2.3%割れ」ということで、それに対して中短期ゾーン(5年とか2年とか)の戻りがイマイチですので、比較感から一旦売りが出たという事でしょう。

まーしかし先週末の債券市場では、どう見ても5年債に今更ながらそれなりのロットの買いが入っているようでしましたが、いまさら買いですか先生と申しますか、そんなに弱気に傾けていたのねって感じでございますな。資金運用者じゃないから判らないんですけど、運用に際して一応調達コストの見合いというか、運用利回りのメドみたいなのは無いのかな〜と思ったりもするのですが、まぁ確かにインデックス対比でのパフォーマンスがどうのこうのと言われる運用者は絶対水準で相場に入れないですわな。ご同情申し上げます。

結局今回は絶対水準を重視して買い下がっていた人の勝ちという結果になったのですが、もともと「金利に蓋をする」などというお節介発言に反応して3月に1.3%割れなんぞをやってからひたすらズルズルと下落した相場ですので、今回の戻り程度では絶対水準買い下がり組みは「やられが回復途上」程度だったりするのが残念な所ですが。


○注目は中期債と変動利付国債

金曜日の債券市場では超長期債が伸び悩んだのに対して5年ゾーンは上記のように買いも入り(売った人もいるようで売買交錯の雰囲気でしたが)、今週入札があるというのに途中からは堅調。

上で買って捕まっている絶対水準バイヤーの戻り待ちに対して、ポジションをアンダーウェイトしていた人たちの買いのぶつかり合いは、アンダーウェイト組のポジションの方がでかく、外部環境の後押しもあって(今日もありそうですが)買いの圧勝(と言っても買い方も踏みなので圧勝しても全然嬉しくないでしょうが)でしたが、ここに「5年新発国債2兆円供給攻撃」があった場合にど〜なるのかというのは注目というのは衆目の一致する所。

もう一つ地味に注目したいのは変動利付国債であります。

監督官庁が「金利上昇リスクに対するリスク管理」に注目するなどとしつこく情報発信するもんですから、金利上昇リスクに対する備えになっている(ことになっているだけで、実態は金利上昇が短期金利主体で来るのか長期金利主体で来るのかで全然違うのですが)変動利付国債が絶賛大人気状態となりました。

確かこの商品の理論価格は10年〜20年のイールドカーブの形状によって変化する筈なのですが、最近はそ〜ゆ〜事はお構いなしで、「相場の先行き不安が拡大すると買われる」という訳のわからん(というかわかりやすいというか^^)動きをしております。

で、ここへ来てイールドカーブはフラット化するわ債券相場は上がるわという美しい相場展開になっておりまして、ヘッジと称して変動利付国債をかなりお持ちになっている投資家様が特に銀行業態のお方に増えていると観測されておりますが、この人たちが変動利付国債をじっと保有しているかというのが何気に注目な訳ですな。

この変動利付国債、相変わらず気配値は堅調でして、先月発行の新発変動債もオーバーパーを維持しておりますが、さすがに木曜あたりから業者間のブローカースクリーン上では売り注文がやや増えてきた感じですが、いまだに気配は堅調なまま。

この商品が値崩れする場合というのは実弾の売りが出た場合でございますので、今のところ小口の売りはあってもそれなりにでかく持っている人は売りに回っていない訳でして、上記の理屈(というか屁理屈)に即して言えば「相場参加者はまだ金利上昇懸念を持っている」という事にもなるのでしょう(勿論、監督当局対策にもち続けるという意味もあるのでしょうけれども)。

金利上昇懸念を持っている人がまだ多いという事は逆説的に言えばまだまだ相場には上昇余地があるというかそんなに下がらないっつー事でしょうな。変動利付国債がどこまで値もちできるかには密かに注目したいと思います。


では今週もよろしくお願いします。金融政策決定会合は無風でしょう。金融経済月報もよほどとんでもない強気がでなければ相場に無影響でしょうな。




2004/08/06

お題「いやはやびっくり」

○素晴らしいフラット化

一昨日の相場上昇も驚きでしたが、昨日の相場上昇はなおもまたも驚き。途中までは「下がらんのは仕方ありませんな」という感じでしたが、後場途中から超長期だの10年だのの買いに拍車が掛かる格好。まぁ仕掛けがどうのこうのとかいう話もあるでしょうが、この上昇あんどフラットニングの場面ではど〜考えても投資家様の長期ゾーンご購入やら長期化入替に伴うフラット化圧力があったのは確実ではないかと。

昨日も申し上げましたが、業者の仕掛け如きでここまで相場を持ち上げておまけにフラットニングなどという攻撃が出来るような市場でもない(と思うんですけどね〜)という事で、投資家様昨日も債券ご購入または長期化取引大参加という風情でありました。特に長期化入替が出てくる場合に売りがぶち込まれやすくなる2年だの3年だのというゾーンの債券が昨日は全然上がらない(どころか取引時間中は下がっているものまであった)状態でして、状況証拠からすると長期化入替が行なわれていたのでしょうな。

という事で先物は7月高値を抜いたわけですが、7月高値近辺ではイールドカーブがごちゃごちゃ動いた事も蟻、まぁ昨日の状況に一番近いと思われる7月8日の終値を比較しますと、2年、5年は7月よりも安い状態が継続(7月8日は5年が0.8%割れで2年は0.155%)しているのに対して、10年は3毛ほど金利低下(1ヶ月償還が短くなっている事を加味すると実質1〜2毛の金利低下ですな)なのですが、20年が6.5毛金利低下ですよ先生って事でして、この相場の戻りは長期債への熱烈購入意欲に支えられたものですなってことになるんでしょう。


○「上がってから大挙購入」の動きは死なずという事で(-_-メ)

つい先日「買い手不在でズルズル下落」「でも上を買ったり下を叩いたりする人が居なくなって大変冷静な相場(^^)」などと申して居た筈なのですが、この2日間の上昇はまさしく「上がってからご購入」という動きの連発。

20年債が2.3%台の時に2.4%では買いを検討という筈だったのが2.4%どころか2.45%でも買いの手が見られず。で、下値確認して2.4%前半になって買いが来る所まではまぁ理解の範疇に入ってましたが、2.3%前半になってもまだ買いの動きというのが恐るべき話でして、昨日の高値2.265%(さすがにその水準はショートカバーだとは思いますが)には開いた口が塞がらない(と言いたいですが、相場が激しく動いていたのでそれどころではありませんでしたが)思いでした。

2.4%台後半を買いそびれて、そもそも買おうかな〜って思っていた2.4%あたりまで慌てて買うのはま〜致し方無いとは思うのですが、なにゆえ先月来その値段で幾らでも買う事のできた2.3%台を買い?????と思うと(しかも外部環境に先月と今月で劇的な変化があったとは到底思えないんですが・・・・・)面白い相場と喜ぶよりは、この国の債券運用(というか資金運用というか)は一体全体どうなっているのかと言う事に思いを至らせて深く悩む者であります。その日暮らしの対顧ディーラーじゃああるまいし、どこで長期債を買うとかの方針はど〜なっているのかと。

・・・・・また読者様のご機嫌に触るような事を書いてしまった(;;)。


まぁ昔から相場が一番大きく動くのは「ポジションの踏み投げ」であると言われておりますが、この2日間の見事な相場上昇(というか今日もまた上昇相場をやってくれそうですが)はまさに「ポジションの踏み」状態であります。気がつけばここ数ヶ月来見ていないようなフラットニング状態になっているというのが実に香しい所でして、「あーた戻るにも限度ってぇのがあるでしょうに」と申し上げたいところな訳でございまする。


○ではこれからどうなるのでしょ

と、ひたすら相場の愚痴を申し上げましたが、当らないという定評の高い(とほほ)あたくしの目先のお話を致しますと、何だか今一歩考えが纏まっていないのですが、以下のような感じ。

上記のようにフラットニングのやり過ぎ状態であると思ってまして、取り敢えず現状は「あとどの位踏みが残っているのか」というお話かと存じます。で、今月は20年と30年の新発国債が出てくるのに対して償還はそんなに無いのでインデックスがだいぶ長期化される(というお話を人から教わったのですが^^)訳ですので、相場が上昇するわフラットニングするわという状況を見せられると、人間心理として「やっぱ長期や超長期を入れないといけないよな〜」となってくる訳で、当面長期化圧力が掛かりやすく、よって相場は下がりにくい(または上昇)。

で、その長期というか超長期ゾーンの需給逼迫が頂点に達するのが30年国債入札直前という事になるわけでして、これまさにどこかで見た記憶のある「振り向けば買いなし」の30年国債入札などというものを見る事ができるかも知れません。

などと今は書いてますが、本当に需給が逼迫してきて30年国債の入札を迎えたら上記のような事はすっかり忘却して「ニーズあるので入札問題なし」とか言っているに違いない>あたくし

問題は既に業者の在庫が重くなっている中期債の動向でして、来週には2兆円の新発債、しかも0.8%か0.9%のリオープン発行が必至(0.7%になるかもしれないが)という状態で真っ当に消化できるとは思えません。このポジションがある程度解消できないと持続的な相場上昇は難しいでしょうな。

20年とか30年は糸の切れた凧状態なので、暫く放置というか傍観なんですが、中期ゾーンの需給を注目すべきでしょう。一昨日は中期ゾーンが妙に堅調で相場の上昇に拍車が掛かりましたが、さすがに息切れ状態となっていた昨日。イールドカーブのフラット化進行を見て見直し買い(または入替の買い)が入るかどうか注意しましょう。


本当は山口副総裁のインタビュー話もする積りでしたが、相場のことを書く為に昔のメモとか見て相場を思い出していたら何だかどーーっと疲れてしまったので本日は甚だ簡単かつ主観的なお話のみで恐縮でございます。なお、最後になりまして恐縮ですが、昨日ご紹介した時事通信社の雑誌名は「金融経済」じゃなくて「金融財政」でした。慎んでお詫びして訂正させていただきます。




2004/08/05

お題「いや〜参りました」

自信満々(な訳でもないが)に相場について語ると派手に大外しするという毎度お馴染みのジンクスが昨日も炸裂しておりまして、汗顔至極とはこの事でございます(-_-メ)。

○久々にご登場「上がった所での買い」

昨日の債券相場、朝っぱらから先物一人旅で相場が上昇し、先物の上昇が止まって揉みあいになると現物の気配が何となく追いついていくという怪しい気配。あやしいですな〜と思っていたら、後場になって先物が下押しして、膠着状態になった所で急に5年ゾーンの気配が強くなりまして、超長期ゾーンも強くなり、終わってみれば先物も高いですが20年以降が強く、4〜5年ゾーンもやたらと堅調となりました。

まぁ先物の動きもそうですが、相場全体が20年2.4%割れだの10年1.8%割れだの5年0.85%だのという豪快な上昇をしたというのは、さすがに業者の踏みだけで行けるものではない(だいたいからして業者は入札直後だから全体を均すとロングポジションになってますが)ものでして、背景には「投資家様の大量ご購入」があったかと思います。

相場大暴れ大上昇の他の要因としてつい先日(つーか入札の当日だからつい一昨日)に「買い手不在の相場下落」と申し上げたように、直前までの下げ相場において大した買いが入っていなかった事もあるかもしれません。昨日の相場の戻りではお約束のように出るフツーの投資家さまの「戻り待ちの売り」が少なかったというのが正直な印象。

戻り待ちの売りが少ない所に「上がってきたので買い」というもう3ヶ月近く見る事の無かった投資家行動が爆裂しましたので、業者もビックリ仰天でございました。


○投資家の買いというか踏みというか

昨日は上記のように途中から5年ゾーンがやたらと買われる形になりまして、後場途中からの日経平均株価の戻りに対しても下げにくくなり、現物債が激しく堅調になっていった訳です。5年債と言えば、来週木曜に2兆円の新規発行、しかも既発の0.8または0.9クーポン発行となりそうな相場の位置にいる訳ですが、そこでいきなり5年ゾーンに買いがご登場となった次第。0.9%のアンダーパーになっていた時も勿論、一昨日の債券市場でもやたらと上値が重かった5年ゾーンなのですが、相場が散々戻ってから買いが入るとは恐れ入った次第であります。

市場でのもっぱらの話は5年国債にカバードコール(コールオプションの売り)を掛けていた大手の投資家さまが、相場が想定以上に戻ったので現物債を買い直しに入ったというものでして、仮に、仮にですけど、その話が本当であれば(状況証拠は濃厚に本当であると語っておりますが)、コール掛けておいてぶち抜けたら現物を改めて買うという行動に対してあたくし「もうね、アホか馬鹿かと」という某匿名掲示板用語で小一時間問い詰めたくなりますな。お前は相場が上昇したら売却する積りでコールオプション売ったんちゃうのかと。上がって売る気が無いならオプション売るんじゃねぇこのヴォケが。

・・・・つい取り乱しましたが(^^)、


6月の妙な相場暴落一段落以降、めっきりと「下で叩き売る」「上で買い上がる」という投資家(つーかそれはディーラーのやる事です)行動が見られなくなっていたのですが、ここへ来ての「上がってから買い」攻撃は、一頃大人しかった一部大手投資家様の行動パターンが変化した事を意味するかも知れませんので、本日以降の動きも注意したいと思います。

大手の一角を占めるような投資家さまが「戻って買い上げ」「下がって叩き売り」というマーケットクラッシャーのような行動を取っていただきますと相場としては実に面白い展開にはなるのですが、振り回されるマーケットメーカーはこの夏バテ状態の中でまた疲れる日々が復活しそうでございます(-_-メ)。


以下相場と別のお話

昨日の時事通信社「時事メイン」に山口前日銀副総裁のインタビュー記事が報道されておりました。結構な長いインタビューで、何でも時事通信社の月刊だか何だか失念しましたが、雑誌のほうに全文は掲載されるそうなのですが、山口さん金融政策に関しては中央銀行として極めて真っ当というか正統的というか、まぁ本来中央銀行としてはこうではないといけないというお話に終始しておりまして、久々に爽快な金融政策へのコメントを見る事ができました。

で、まぁ有料の雑誌に掲載されるというインタビューなのでほいほいと引用するのもアレかと思いまして、というのは半分だけ本当で、実は紙に打ち出した肝心のインタビュー記事をお持ち帰りするのを失念したので書こうにも書けないというのが最大の要因なのですが、まぁネタに困ったら詳しく書くかもしれませんが、昨日の時事メイン記事あるいは時事通信社発行の「金融経済」(でしたっけ??)誌(追記:「金融財政」でした。大変恐縮です)をご覧ください。

福井総裁になってから益々混迷というか最早論理が破綻した政策運営を続けている日銀を見るのに慣れてしまうとつい忘れがちな「中央銀行の論理」を読むことができるので、是非ご一読をお勧めします。

ちなみに、ちょっとだけご紹介すると(あたくしの記憶ベースですので正確な引用ではありません。趣旨は合っていると思いますが)、

「量的緩和政策の効果と言われているものは『ゼロ金利+時間軸効果』であって、量的緩和政策そのものに効果があるのか検証がされていない」「2段階解除論(量的緩和終了後にゼロ金利政策に移行する)は技術的には可能かもしれないが、論理的整合性がなく議論に値しない政策」「中央銀行の『透明性の高い政策運営』は数値目標などで示すのではなく、中央銀行が何を考えて政策運営を行なっているかという事を論理的に説明することである」

などなどであります(違っていたらご指摘ください)。特に2段階解除論に関してきっぱりと否定していただいたのは「どうも2段階解除論がおかしいとか言っているあたくしの方が少数派?」と思い出している昨今でしたので、ちと安心しました(^^)。もちろんインフレ参照値に関しても思いっきり否定的です。





2004/08/04

お題「10年入札無事終了/その他雑談」

金融政策関連は何だか夏休み状態。来週の金融政策決定会合までネタ無しという雰囲気が漂っておりまして、まぁ相場が暇ならネタ探しという所でしたが、10年国債入札の日はさすがに動くというものでありますな。

○10年入札日に超長期の買い

昨日の債券相場、前日まで駄目駄目状態だった20年国債の気配が途中から消えておりましたが、30年債なんぞが妙に強い出合いが散見されておりました。超長期ゾーンが堅調で10年債はと言いますと10年カレントは強いけど、8年〜9年ゾーンは駄目駄目という状態でありました。

で、まぁ入札の方はと申しますと、事前のプライストークよりやや強めの結果となり、市場観測による上位落札業者はまぁ大手といわれるところが順当に落札した形。でもって野村證券さまが久々の満額落札となりました。

で、以下は市場の片隅から業者間現物債気配(と債券先物)のプライスアクションを目を皿のようにして(いない場合も多々ありますが^^)眺めているあたくしの想像する「昨日は何があったか」っつーものです。

状況証拠から行きますと、昨日の債券相場は前場時点から超長期ゾーンにそこそこの買いが入ったという感じ。で、その買い方が割とおじょーずな買い方で、注文をばら撒いて相場の買い煽りを誘発するような「お取引先全社にご発注モード」では無く、まぁそこそこ体力のある大手のマーケットメーカーに注文を出したということでしょう。

受けた業者も10年国債入札があるのでいきなり持っていかれた超長期(20年とか30年)を派手に買い戻しすると自分の首を締めるので入札まで我慢して、10年国債を大量に落札してから20年、30年のカバーを行なってイールドカーブをフラット化させれば、少々割高に落札した10年新発国債も利益になるので目出度し目出度し。というのがシナリオになりまして、まぁ相場水準も十分に安い所にありますので、昨日の後場(というか落札結果発表後の動き)は上記シナリオ通りに展開したようでありますな。


という事で、昨日の10年国債入札はまぁ順調な結果なのですが、いざ引けてみると、先物(7年)〜10年で前日比1.5毛フラット化しているのですが、良く良く見ると堅調なのは精々9年位までで、8年あたりの現物債は引け値ベースこそ確りとしていますが(イールドカーブの整合性の問題があるから)どうもパッとしない展開。20年やら30年は当然の如く激しく堅調なのですが、10年債までの部分を見た場合はちょっと???が飛び交うような感じであります。

どちらかというと「10年国債に買いが入って相場が堅調になった」というよりは「20年国債やら30年国債に買いが入った為にカバーニーズを巻き込んで10年ゾーンが堅調になった」という感じが漂ってくる値動き。まぁ先月来散々安くされた20年だの30年だのが戻るのはあまり不思議ではないのですが、10年を調子に乗って持ち上げるほどに10年ゾーンに買いが入っているのでしょうかって事でして、本日以降の動きを見たいと思う訳ですよ。戻った1.8%台前半の10年にリアルの買いが入ってくれるのかという事
ですな。

ま、とりあえず20年の2.5%なんぞを叩き売る必要は無いということが判明したという事でして、取り敢えず「まぁ当面の下値固めをしました」という程度が昨日の10年国債入札の評価と見ておいたほうが良いと思います。今日も10年に買いが入るのなら話は別ですが。世の中には相変わらず短絡的に行動する人がおりまして「相場が下がらないから上がる」と戯けた事を言い出して今日あたりは当初先物を買い上げる人もいそうですが、「下がらないから上がる」というのは間違いでして、債券市場の場合(だけではないですが)はコンスタントに債券が新規発行され、その間に償還だの利払いだのがあって、資金の流入と流出がある訳ですから、その辺のバランスっつーもんがあるのでは?と思う訳で、「下がらないけど上がらない」という状況があって然るべきでしょうな。

まぁ上を買ったり下を叩く人(何て偉そうに言っているあたくしも良くやっているというのはナイショです)がいないと相場が動かん(7月のように)ので業者もやる事がなくなる(ので、どう考えても経済的意味のない変動利付国債の入替売買なんぞを推奨したりする向きもあったようですが)訳ですから、上記コメントもまた自分の首を締めるという罠が(^^)。

という訳で終わった入札に関して長広舌となってしまいましたな。以下ただの雑談です。


○身を切ったギャグが好きな日本の民主党

国会開会中だというのに岡田代表は先日米国に行ってきて、日米同盟問題に絡んで憲法改正容認発言をぶち上げてきて、党内の左派からは当然叩かれ、現実派の小沢氏あたりからも「政権政党として現実にどう対応するかが問題で、改正は直ちにはできない」と叩かれるという大変に香ばしい状況。

何と言うか民主党を生温かく見守っているのですが、この政党は自分から転ぶのが大好きだとしか思えないですな。米国へ行ってある意味既定路線の多国籍軍(つーかただの米英軍だろ)に参加するけど指揮権は別とかいう無茶苦茶な理屈を捏ねてイラク駐留の継続を表明した小泉くんを散々に叩いてた岡田くんですが、てめぇも米国に行って党内での議論も碌に進んでいない憲法と軍隊の問題に関して勝手に意見表明してくるというのでは正に「オマエモナー」状態で大変に頭の下がる思いであります(-_-メ)。

参議院選挙の比例代表で古色蒼然としたメンバーを当選させておいて代表は憲法9条改正容認発言というのはまぁ笑えるので、ここは憲法9条を守り抜くと選挙で表明していた参議院比例代表選出の喜納昌吉センセイに「ギター侍」ならぬ「三線侍」となって「岡田斬り〜」とかやっていただきたいものですな。

民主党がこの程度だから政局に緊張感がなく、政権が経年劣化して行く訳ですな。困ったものです。


○ほうほう、聞く耳は持ちたくないと

昨日の東京新聞によりますと、小泉くん「華氏911」に関して「ブッシュ批判、小泉批判、批判ばかりしていても意味がないんじゃないの。批判より建設的な議論。」と仰せになったようで。まぁお気持ちはよーわかりますし、わざわざ自分を政治的に批判するスタンスの映画を見に行く人間も中々居ないでしょうから、質問するほうも悪趣味ですな〜と思う訳ですが。

まぁこのコメントを読んで、先日ご紹介した木村剛さんのブログでの逆切れモードを思い出すわけですな。木村さんは「悩める母親党をブログで立ち上げよう!」と提言したのですが、子育てという微妙な問題に対しての扱いに慎重さを欠いていたために、いつものように取り巻きがマンセーマンセーという展開にならずに、「それは如何なものか」という意見が読者から相次いで、とうとう「ポジティブコミュニケーションでないと物事は前に進まない」と逆切れしてしまったのですが(詳しくは氏のブログご参照。どうも逆切れに対しても批判が相次いだ為に、話を過去ログの中に流そうとせっせと新たなネタをエントリーしてまうので探しにくいかも)、小泉くんの上記発言と合い通じる物があって実に香しい訳ですな。

まぁ物事の運営ってのは開発独裁的な手法が一番効率がよいのですが、開発独裁をする人がリークァンユーなのかマルコスなのかによって結果が大変に違ってくるという諸刃の剣な訳でして、まぁ日本的ではない罠って思いますが、どうも開発独裁的な空気をひしひしと感じる訳でしてあたくしのような人間は(以下自粛)となるんでしょうな。

何だかダイエーも産業再生機構送りになるとか報道されてるし・・・・


と、よけいな雑談2本で恐縮至極でした。





2004/08/03


お題「どうも買い手不在のようですが」

○昨日も買い手不在

本日は10年国債入札。激しく久し振りに1.9%クーポンの10年国債なのですが、どうにもこうにも盛り上がりに欠ける展開になっておりまして非常に遺憾な訳でございます。

先週末は月末恒例のインデックスプレーヤーの長期化取引も不発(お蔭で毎度馬鹿馬鹿しい月末高値状態が避けられたのは大変に結構でありますが)となりまして「あれれ」と思っていたら、昨日の債券相場も米債大反発やら東京株安やらにも関らず下落と相成りました。

5年ゾーンに売りが出たような雰囲気でして、5年38回債が節目と見られていた0.90%というレベルをあっさりとブレイクしてしまった後は益々買いの手が引っ込むという形になってきました。おまいら0.9%の100円は買い出動するんじゃ無かったのかと嘆いても買い手来たらずという状態でズルズルと下落しました。

○入札前のパターンは継続するか?

最近の入札は「安く落札しようとして入札のあるゾーンを売り込む」→「安くなりすぎた当該ゾーンに先回りの買いが入る」という動きが目立っておりました。先月の入札は全てそのパターンでして、入札当日の前場に何故か入札対象ゾーンが堅調になるという動きになっております。

昨日の債券相場では、10年ゾーンは朝方こそ先物などの他年限対比弱く推移していたのですが、上記の通りに5年ゾーンの売りが引っ張って相場を下げる(中期債の売りを打ち込まれると先物を叩いて凌ぐしかないので)という展開になってきてからは特に10年カレントものを中心にしっかりとした展開(もしかしたら入替売買えで10年が買われたのかもしれませんが)となっており、10年ゾーンが入札前に見直し買いが入る兆候は既に現れてるわけですな。

という事でして、本日もまた「入札前に10年ゾーンが他年限比堅調になるか」という所はちょっと気にしております。それなりに投資家さまのやる気というか購入意欲を現すものだと勝手に定義しておりますので。


○どちらにしても誰も上を買わない相場ですな

小見出しの如し。別に派手派手に売りをかます投資家さんがいる訳ではないのですが、兎に角相場が戻った時の買いが全然無いというのがここのところの下落相場の特徴であります。「上を買う人がいない」→「下がるとちょっとだけ買うのみ」→「碌に相場が上がらない」→「買った人も利食いのチャンスが乏しい」→「買い余力の低下」→「相場の戻りで買う必要なし」・・・・・ってな状態で気がつけば日々五月雨式にじり安状態。

まぁ債券ってのは放置しておくと利払だの償還だのとキャッシュが入ってくるので、全員が放置プレイ状態になってもそこそこ値保ちする筈なのですが、ご存知のように発行>>償還という状態が続いておりまして、まぁ量的緩和政策で何とか消化しているという状況なのでしょうな。特に中期債に関しては。

最近の相場の特徴として「大手銀行を始めとした銀行勢の積極的な売買の後退」というのが挙げられると思います。まぁありていに申し上げますとバンクポートの債券運用ってのは兎に角上層部からの収益プレッシャーが厳しくて、目標達成のためには単にデュレ―ションマッチングで淡々と買っているだけでは不足で、超過収益を上げるために色々とディーリングみたいな動きをしていた訳ですな。

その売買が今年度に入ったあたりから目立たなくなってきたのですが、6月の相場下落あたりから特に「動かないバンクポート」という傾向が顕著になってきているわけですな。勝手に理由を愚考すると

・景気回復に伴いトレジャリー収益依存から本業回帰へ

⇒まぁ本当に景気回復しているのかは甚だ謎だったりもしますが、どうも上層部の動きはそういう感じ。また業務の多角化も推進中なので人員は必要。既に(ポートではなく)債券トレーディング部門を縮小しようという動きも有るとか無いとか。

・金融庁と日銀が「金利上昇リスク管理」を五月蝿く言う

⇒金融庁にしても日銀にしても「金利上昇時に問題にならないような債券投資をしろ」とおりにふれてアナウンスしているわけですな。まぁUFJHDの受難(最近の見苦しい行動を見ていると段々受難というよりは自業自得のような気もしてきましたが^^)を見せ付けられれば銀行経営者様に置かれましては、金利上昇リスクへの管理を気にするしかありません。

そうなりますと、下手に債券投資部門で1年ちょっと前のようにポジションをパンパンに膨らませた挙句に金利が上昇して債券投資部門討ち死にしましたなどという事態を引き起こした場合にどんな災厄が起こるか判らない(担当役員のクビだけでなく監督当局の検査で何言われるかわからないから)という恐怖がある訳で、まぁ自然と銀行の積極的な債券売買は抑制されますわな。

最近も相変わらずイールドカーブの動向をまるっきり無視する形で15年変動利付国債が堅調なのは「金利上昇リスク管理」へのプレッシャーがドライブしているのが主要因ではないかと思う訳です。短期金利が本格的に上がりだしたらひとたまりも無い商品性のような気もしますが、一応金利上昇リスクへの管理が出来ている商品という事になっていますので。

全盛期というか昨年の債券相場絶賛大上昇の最後の頃は20年国債までせっせとご購入されておられた大手銀行(メガバンクだけではありません)さまが最近はめっきり変動15年国債ばかり売買(ってこの商品を細かく入替売買とかする行為に何の意味があるのか不明でして、ただの業者のカモにされ・・・・くわばらくわばら)するという有様で、大変に香しいものを感じる訳でございます。

しかしこの調子で金融庁や日銀のご指導が効果を発揮して長期金利がじりじり上昇して国債管理政策で財務省は頭を益々痛めるの図ってのも一種の「合成の誤謬」ですな。


ま、今回の入札は久々の1.9%クーポンなんですが、惜しくも「同償還3回目は売れないの法則」とぶつかるので、入札よければその後販売苦戦、入札悪けりゃその後何とか捌いて一息って所かと思います。

では。




2004/08/02

お題「8月相場展望あるいは雑談」

早いものでもう8月(って同じセリフ金曜も言ってますが)と相成りました。7月の債券相場は終わってみれば実におとなしい動きでして、先物の値幅が1円77銭。しかも安値は7月1日につけて高値は7月7日につけているので、先月は月初につけた値幅の範囲内でグダグダ動いていたっつー事ですな。現物債もしょぼい動きだったのですが、年限によって動きが微妙に違いまして、終値どうしで比較すると実は20年とか2年とかは月末終値が月初よりも安くなってます。特に20年に関しては1ヶ月のロールダウンを考えますと随分安くなりましたな〜という感じでしょうか。

で、8月なのですが、今月は立ち合い初日が2日という事ですので、「2日新甫は荒れる」などということも言われそう(手元の「商品相場用語辞典」を見ると新甫って当限が納会したあとに生まれる期先限月のことだそうなのですが)ですが、まぁつらつらと考えてみるかという感じ。

○皆が警戒している時は動かない?

8月は参加者が少ない中で値段が飛びやすいという事になっている上に今月は30年国債の入札もあるので長期ゾーン揃い踏みという頭の痛い状況となっております。で、そんな月がやって来るのは皆さん既に判っている訳ですので、どさくさに紛れて30年債の気配を毎日少しずつ安くしているというのが実は注目材料(材料とは言わんのですが)でございます。

まぁ30年債などというのは相変わらず流動性というものが碌に無い債券。発行量が3000だの4000億円ですから致し方なしという感じ。感覚的には大昔の2年国債並みの発行規模でして、品借りができるだけ遥かにマシですが、まぁヘッジもやりにくいですし、一部の大手マーケットメーカーと一部の大手機関投資家様で勝手にやっているという印象が強いですな。せめて20年債並みに発行量を増やしていただかないと中々手を出せません。

で、まぁそんな商品ですので、どこかでポジションが大きく動くと大きく気配が変わるの巻になります。で、派手にイールドカーブを動かすと直ぐに反対売買が入るというパターンが出来ている昨今でありますので、再来週の30年国債入札に向けて毎日毎日少しずつ気配を安くしているのではないかと勝手に想像しているわけですな。派手に動かすと反対売買を食らって却って強くなるという罠がありますので、日々匍匐前進という事で(^^)。


という訳で、この30年債の匍匐前進(というか匍匐後退か)ぶりを見ておりますと、既に「8月相場警戒モード」となっていると見た方が良いわけですな。先月末は期待されていたパッシブ系の買いもどうも不発だったようですが、不発の割にはそれほど下がっていない(真価は本日の相場で問われそうですが)のは「不発リスク」を意識している参加者が多かった(相場水準が既に安値圏にあるのもありますが)ということでもあろうかと。

つー訳ですので、それなりに債券市場は「下げ警戒」状態にはなっているかと思います。下への警戒は出来ているとは言え、そもそも7月に相場が碌に動いていないという事は、投資家さまのポジションが碌に変わっていないという事である訳で、相場の下げに対して買い余力があるのかというと疑問があるのが問題点と言えば問題点ですな。


○量的緩和解除の思惑

日経新聞がわざわざ1面で取り上げた「量的緩和解除の手段を検討」という福井総裁発言(?)のお蔭で見事に中短期ゾーン、特に2年国債あたりが弱体化したのが7月後半の相場という事なのでしょうか。

そもそも日銀のWebにその発言がアップされていない訳ですから確認のしようが無い訳で、ソースに当れない状況では眉に唾をつけて解釈すべき(先日の小泉首相の「日朝国交正常化1年以内に開始」発言を報道各社が伝えたのですが、この内容と官邸HPで発表された首相発言の趣旨が全然違っていたということがありましたな)なのですが、例によって見事にマッチポンプに引っ掛かって中短期のスワップやら金先やらが売られたのが2年債を引っ張った形になったように見えます。

最近の日経新聞は益々「景気回復キャンペーン」が大好きなようでして、とにかく「景気回復で金利上昇」という方向に話を持っていきがちに見える訳ですな。日経新聞がそういう雰囲気を盛り上げだしますと、現場は兎も角として偉い人たちが段々その気になってくる訳でして、「本業回帰、トレジャリー収益には依存しない」というお話になってきやすくなります。結果として出てくるのは「偉い人からの売り指令」ってやつですので、まぁ8月相場が荒れるとすれば、入札が20年、30年とあって普段よりも需給が悪化しそうな超長期ゾーンではなくて、量的緩和解除の思惑というか亡霊というかマッチポンプというか、まぁ中短期から崩れる形になるのではないかと思います。


月初という事で簡単な相場展望(ただしいつも外れる)でした。