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朝のドラめもん


2004/09/30

お題「量的緩和政策の終了は出来るのでしょうか?」

本題に入る前にお詫びと訂正。一昨日のドラめもんで「最近日銀審議委員の出張が多く組まれているのは間もなく発表になる展望レポートを前に各委員に言いたいことを言わせるっつーことなのでしょうか」などと書いたのですが、実は10月に発表される展望レポートは月前半ではなく、月末の金融政策決定会合で発表されるのでありました(大汗)。

よって、展望レポート直前云々というのは事実誤認でございました事を深く陳謝いたします。ちなみに本日は福間審議委員の出張が予定されているので、まぁこの期末時期に向けて審議委員の出張が妙にあるのは事実としてあります。勝手に想像致しますと、まぁ「上期の総括」を各審議委員にやってもらいましょって事なんでしょうね。どちらにしても、色々な人たちが色々と意見表明してくれますのでよく確認をしておくのが吉かと。

前置きはその辺までとしまして本題は昨日の続き。

相変わらず旧聞ではありますが、植田審議委員の記者会見に関してです。量的緩和政策をど〜するのよって話をしておりますのでその辺に関して読んでみましょう。URLは昨日と同じです。


○いわゆる2段階解除論に関して

元はといえばどこぞの著名債券ストラテジストあたりから出ていたお話であったと記憶していますが、今年5月に中原審議委員が講演で量的緩和政策からのソフトランディング的な脱却方法として、このようなことを言い出したのがそもそものはじまり。

『量的緩和の状態からいずれ出れば金利の世界に戻る訳であるが、ポジティブな金利水準の世界に戻る前に、ゼロ金利の状況を一旦挟むことがソフトランディングとして適当ではないかと思っている。その過程で望ましいインフレ率を明示することによって、ある種の時間軸効果をもたらすことができる。』

で、この考え方は量的緩和政策の実施にあたって「ゼロ金利政策と量的緩和政策は別物」であると言っていた事を今のところ撤回していない日銀のロジックを自己否定するものであるので、あたくしは(どうも知らぬ間に少数派になっていたのですが)中央銀行としての政策としては論理的に有り得ないと散々罵倒の限りを尽くしていた訳ですな。

『(問)本日の基調説明の中で、将来の出口政策のイメージとして、日銀がどのように静かに出口政策を行うかということについて説明があり、オーバーナイト・レートを上げるという話があった。現在の量的緩和はオーバナイト・レートが0%近傍に位置しているのと同時に、リザーブ・ターゲットをかなり積み上げているという2つの側面があると思う。出口政策を実際に行う際、積み上がったリザーブ・ターゲットがどのようになっていくというイメージを持っているか。また、現在、日銀が購入している国債の扱いはどのようになるとイメージしているか。 』

『(答)出口の際に金利が上昇するのは、出口全体を広く捉えれば、結局どこかの時点でオーバーナイト・レートは上がることになるだろうという意味である。 』

とりあえず慎重な言い回しで2段階解除論の発動余地も残してます。

『出口に至るプロセスとして、金利が上昇するということが起るし、同時に、リザーブを現在のように高い水準から格段に低い水準に下げていくことも起る。これが、どれくらいの時間的な長さで起るか、あるいは起こすのか、ということはいろいろなやり方があって、長く時間を掛けてリザーブを回収するやり方もあるし、極端に言えば1日で回収することも理屈上は考えられなくもない。ある程度まで回収しないと、オーバーナイト・レートも上昇しないということだと思う。』

ここは量的緩和政策で積み上がった超越的超過準備をどうするって話。

『その際、どのやり方を選ぶのが適切かというのは、今、こうだとはやはり言い難く、その近くになった時の経済・金融情勢に対応して一番良いと思われるものを選びたいという趣旨で申し上げた。量的緩和の施策の一環である、長期国債買いオペの扱いについても、出口の技術的側面をどうするかということの一環として考えたい。いろいろなやり方があると思うが、それもその時の状況に合わせて、ほかに出口でやらなければならないことと併せて決めていきたい。』

技術的な話に持って行ってさらっと逃げてはいるのですが、その後このような質疑がありまして、2段階解除論に関しては実質的には否定的だというのが伝わってまいります。

『(問)出口について金利と量の話が出たが、基調説明の趣旨は、世の中がビックリするように、ある日突然、無担オーバーナイト・レートを上げるのではない、ということであったと思う。要するに、ビハインド・ザ・カーブにしていくということか。世の中の物価が上がってきて、それに併せて中・長期国債の金利も上がってきて、世の中がそういうムードになった時にオーバーナイト・レートだけ上げるから、静かに出口に入っていくという理解で良いか。 』

わかりやすい質問で大変に結構であります(^^)。

『(答)ビハインド・ザ・カーブかどうかという論点は、別にあると思う。私が申し上げたのは、出口に至る際には、裁量的な部分が残る面はあるが、基本的には既に出口に至るプロセス、あるいは出口の条件をきちんと示しているので、マーケットは出口がいつくらいになるかということを予想する手立てを持っているということである。』

いやまぁそうなんですが、債券市場っつーのはどうも余計なことを言い出して暴走するという傾向にあるわけでして、日経平均株価が4桁からようやく戻りだしただけで物価の絶賛マイナス傾向の出口がまだ見えないような昨年の夏時点でもいきなりパニック売り状態になって「1年後には量的緩和政策が終了」って所まで織り込みに行くような金利まで中短期債が売り込まれるという「おまえら何考えてるんだ」状態になったのは記憶に新しいところです。

まぁそれは日銀の政策が何たるかってゆー話をあまり理解しようとしない傾向にある債券市場にかなーり問題があるのですが、市場での動きの底流に何があるかってことに対して無頓着な対応をしていた日銀サイドもやや問題があったと思いますがね。話がそれましたがその続き。

『従って、出口が近くなってくれば、現実問題としてまだ出口ではなくても、将来における短期金利の予想値が上がってくる。これが、中期や長期の金利を先に上げることになる。もっと出口が近くなれば、もっと短めの金利が先に上がって、従って日銀が出口について何もしない間に、ターム・ストラクチャーのかなりの部分は、出口後の姿に修正されてしまうであろう。』

市場追認型の利上げっていうことをイメージしているわけで、このように続けてます。

『出口の周辺で起ることは、非常に短いところの金利調整の部分である。極端にいえば、金利変動というところだけに着目していれば、オーバーナイトの金利だけが上がることになる。現実にはそう綺麗にはいかないと思うが、ひとつの姿として、一番綺麗にいった場合は、そういうことであろうという話をしたつもりである。出口を出る前から、出口を出た後の金利の姿がどうなるかということが、オーバーナイトを除けば、織り込まれてしまうということである。』



○技術的な問題はそれでいいのですが・・・・・

という質問が鋭くされる訳です。先日ドラめもんでもご紹介した山口前副総裁の時事通信社単独インタビューに触発された質問(という事は質問者は時事か)でございまして、日銀的には突っ込まれると痛い点だったりします。

『(問)量的緩和政策解除の技術論は、それはそれで良いと思うが、その前に、量的緩和政策の効果と、量を出したことの物価と経済に対する効果が果たしてあったのかどうか、ということを一度検証しないと、解除する際の政策ロジックとして難しいのではないか。本当にデフレを払拭する効果があったのであれば、ゆっくりとしか解除できないかも知れないし、もし殆ど効果がないのであれば、技術的に簡単に解除する方法にいくと思うが、この点はどのように思われるか。』

『(答)難しい点だが、解除する前にきちんとした分析をして、「これまでの緩和局面でこれだけの効果があった」、「効果の大きさがこれくらいだから、解除のスピードはこれくらいが望ましい」というような綺麗な議論、ないし分析が出来る種類の問題ではないと思っている。従って、解除の時も、ある程度そこに色々なリスクがあるということを頭に置いたうえで、やや試行錯誤的なやり方になる。出口を出て締めてみると、今よりはもう少しはっきり、量の経済への影響はどれくらいのものであったかということが分かる面もあると思っている。』

よーするに「量的緩和政策における量(=日銀当座預金残高、すなわち超過準備額)にどのような効果があったかは知らん」と言っているに等しい訳でして、福井総裁になってからの量的緩和政策において散々「量的緩和政策を強化する」と称して当座預金残高を拡大させ続けておりましたが、それは単なる茶(以下自主規制)。

ちなみに、速水総裁時代に量的緩和政策の強化を行う際には基本的に(全部確認してないので記憶で書いちゃいますが)当座預金残高の拡大と共に長期国債買入の拡大(=日銀の理屈ではベースマネーの供給)を行っていたので、一応「量的緩和効果の拡大=ベースマネーの供給」っていう理屈が成立しておりました。

おそらく日銀の内部的には量的緩和政策の効果の本質は「ゼロ金利+時間軸」だという話がコンセンサスになっているのではないか(岩田副総裁は別)と思われる節はあるのですが、そういってしまうと昨日ご紹介したような「景気が循環的に後退する場合」に打つ手がなくなるという問題があるので、量的緩和政策を終了させるまではこの政策の正式かつ本質的な総括はできないのでしょうな〜とは思っております。


○微妙な質疑応答

『(問)基調説明の中での「下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいとみられる」というのは、簡単に言うと、ぴったりのタイミングよりも早く解除してしまうリスクの方が、やや遅く解除するリスクよりも大きいという理解で良いか。2点目は、なぜ下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいとみているのか。 』

『(答)下に外れるコストの方が大きいということと、早く解除するリスクの方が遅く解除するリスクの方よりも大きいということが同じかというのは、大体同じだと思うが、完全に同じかどうかは自信がない。』

ビハインド・ザ・カーブを全面肯定しているわけではないと言いたいようです。何とも訳の判らん物言いですが、ではどういうことかと申しますと・・・・

『なぜ下側のリスクの方が高いのか、ということについては、現在のスタンスにもインプリシットに入っていると思うが、望ましいインフレ率のようなものをイメージしてみると、少しプラスであるということだと思う。従って、現在の状態からインフレ予測を出して、そこから下に外れるということは、上に外れるという場合に比べると、望ましいインフレ率とのギャップがより大きく拡大するということだと思う。』

ふ〜んって感じですな。何か微妙な言い方です。


というわけで、岩田副総裁の講演もあるというのに10日以上前の話で散々勝手に盛り上がり大変に恐縮至極です。ネタ講演はまとめて出すなと言いたいですが(^^)。












2004/09/29

お題「今更ですが植田審議委員の記者会見」

10日前のネタで恐縮ですが、植田審議委員の記者会見。この講演と記者会見は情報ベンダーのフラッシュで報道された時(=先々週の木曜日)には何となく売りで反応していたのですが、よくよく読んでみると売り材料じゃないでしょって話は連休前に申しあげましたとおりでございます。

講演も結構読み応えがありましたが、記者会見要旨も紙に打ち出すと7ページになる代物でして、読むべきところもありますので、まぁ今更ではありますが読むことと致します。

http://www.boj.or.jp/press/kk0409c.htm

記者会見では「景気の現状認識」と「量的緩和の出口政策」の2点についてかなり突っ込んだ質疑が行われておりました。


○景気の現状認識

講演における原稿ベースではどちらかというと現状認識と先行きに関しては強気判断というのが基調にあるという印象でして、その後で「リスク要因」としてあげている部分がさらっと流しながらも実は結構深刻な話をしている(=実はリスクが結構ある)なぁというようなご紹介を先々週末のドラめもんで行いましたが、記者会見要旨を見ますとこれがまた結構景気の先行きを懸念しているように読める訳です。情報ベンダーのフラッシュではそうは読めなかったのですが。

『(問)まず第一に、基調説明では、潜在成長率をやや上回るという今後の見通しであったが、潜在成長率について、大体何%くらいでみているのか。第二に、日本経済について減速していると判断しているのか、減速しているかもしれないとみているのか。 (第三以下は金融政策話なので後ほど)』

『(答)皆難しい質問である。まず、潜在成長率だが、最近計算し直してみたわけではないので、漠然と頭の中にあることで申し上げれば、2%前後くらいに思っている。第二に、減速しているのか、減速の兆候がみえているのか、ということについては、どのデータをみるかということ次第だが、やはりどのデータをみても、ある程度の期間均したトレンドをみなければならないと思っているので、ここまでに出たデータだけからは、「減速の兆候がある」くらいしか言えないかと思っている。』

あらま、減速の兆候があるんですか。次の質疑も長いのですが、例によってまるまる引用してしまいます。長いので適宜段落分けをします。

『(問)景気と物価の関係で伺いたい。今まで景気が回復してくる中で、需給ギャップが縮小傾向にあった。しかし生産性の上昇によって、需給ギャップの縮小を上回るようなものがあったということで、賃金と物価がなかなか上がらなかった。先行き景気が減速する中、物価は実際の経済に遅れると言われるし、また、生産性の上昇が、非製造業か製造業か、循環的なものか構造的なものかでどれくらい続くかわからないという面もあると思う。こうした点を踏まえ、今、委員が思っている景気の循環面からみた物価の先行きについて伺いたい。』

『(続き)というのは、これだけ景気が回復している、企業収益も強い、しかし労働市場がなかなか締まっていなくて企業経営者の中期的な成長率の期待も低い、またパートの比率が高まっている、そのような中で、生産性の上昇を今後どうみるかによって、物価に対する見方も変わると思う。仮に生産性の上昇が循環的なものであればそれがずっと続くわけではないだろう。その辺の見通しを伺いたい。 』

ま、よーするに「景気回復が循環的なものだったらどうよ」ってことですか。

『(答)生産性の上昇率の今後の推移そのものについては、先程もお話したように、よくわからないというか、循環的に高まっている部分と、根っこの技術進歩その他で高まっている部分と、両方あるのだと思う。それがどれくらいであって、従って循環的な部分がなくなればどの辺に落ち着くのか。これは、ちょっと今読めない状況であると、残念だがお答えせざるを得ないと思う。』

ま、確かにそれはそうですが、どの辺あたりまでが循環的かという分析は恐らく大本営発表ベース以外の部分では為されているのではとは勝手に思っておりますが。 また続きます。

『最初のほうにおっしゃっていたのは、景気が減速した時にインフレ率がどうなるか、というご質問かと思う。基調説明では、減速に2通りある、という話をしたと思う。不況になるというのではなくて、潜在成長率より少し上くらいの所へ成長率が段々下がり、その辺で暫く安定するというような意味での減速と、景気が一旦後退局面に入るという減速と、両方あることを話した。その場合のインフレ率の予想ということであるが、前者においては、潜在成長率を一応上回る姿を想定しているので、普通に考えれば、どこかで物価は上昇し始めるということだと思う。但し、前者においても、生産性の上昇が高い水準で続いたり、あるいは非正規雇用へのシフトがまだまだ続いたり、という場合は、成長率がそこそこ高くてもなかなか物価は上がり始めないというケースが考えられる。』

『一方、景気循環的な意味で、ちょっと調整、という局面に行く可能性もゼロではないと思っている。ただ、先程来お話しているように、その場合でも現在見渡せる範囲では、非常に深刻な調整になるという可能性は少ないのではないか、従って、インフレ率はその調整局面で大幅にマイナス幅を拡大するというのも想定し難い、という感じでみている。』

読んでいると福井総裁あたりが普段吹いている進軍ラッパとはトーンが違うという感じですか。もともと植田さんというのは割と景気に対して慎重派だという話をどこかで聞いたことがある(あまりこの人の講演とかの機会が無いので良く判らんのですが)のですが、景気の先行きに関して「デフレ脱却・量的緩和政策の出口」という観点から読みますと、「時期尚早」というかまぁいくつも但し書きをおいているという感じですね。

量的緩和の出口論議というか金融政策に絡む質問ではありますが、出口と別の問題に関して「景気が減速する場合には追加緩和も必要になる可能性はあるのではないか」という質問がありまして、上記2種類の景気減速のうち、循環的に調整局面に入るという深刻なケースの場合に関しては追加緩和は真剣な検討対象になるというような趣旨の発言もありましたが、長くなるので引用は省略致します。

結構「景気減速」をネタに色々と話をしているという印象を与える記者会見要旨であります。まぁ先週あたりはその辺も材料になっていたんでしょうか?


○量的緩和の出口政策論議に関して

まずはインフレ率の予想と言う問題に関して。

『(問)(第一、第二は前半でご紹介)第三に、政策運営に関連して、基調説明要旨をみるとインフレ率の通常の予測の視野について、1〜2年となっているが、実際の基調説明の中では、2〜3年先のインフレ率の上昇も考えていくことが重要だ、と述べていたと思う。この点について確認したい。 第四に、以前テーラールールに基づいて、翌日物金利は−2%くらいと言っていたと思うが、現在の計測では、テーラールールでは金利は何%くらいになるのか。』

『(答)第三に、出口との関係で、インフレ予想が1年前後先だけでなく、その先も、という話について、もう少し詳しく解説して欲しいということだと思うが、これは、我々がこれまで出してきた1年とか18か月先くらいの見通しをみるだけで十分なケースもあるだろうし、それだけではちょっと不安だ、というケースもある、そういう程度の話で申し上げた。 最後に、テーラールールに基づいた金利はどのくらいのレベルかという点だが、前提の置き方次第であり、まだまだマイナスという数字も出せると思うし、かなり無理をすれば、若干プラスという数字も出せなくもない、という程度かと思う。』

政策運営においてインフレ率の予想が下に外れた場合のリスクの方が大きいという話に関連して質疑が2つほど。

『(問)基調説明において、中央銀行の物価見通しが上下に外れるリスクがあることに関して、政策運営のリスク管理という概念に言及されたと思う。それを今後応用していくと、委員の指摘だと、仮に物価予想が将来下振れた方がコストが大きい、ということを念頭におくのであれば、寧ろ予想を外した場合の保険として、CPIが0%以上という条件を、例えば0.5%まで引き上げることも必要だと考えられるか。』

『(答)それは、今のような話に対応する一つのオプションだと思う。ただ、具体例でお話すると、インフレ予想が0.3%とか0.4%になったとして、それで解除できるかどうか。0.3%や0.4%という予想にかなり確信があり、従ってもう一回デフレに戻ってしまうリスクが非常に小さい場合。そうした場合と、3つくらいシナリオがあって、ひとつは0.3%くらいである、ひとつはデフレに戻る可能性がある、ひとつは0.3%よりちょっと高いインフレ率が出るかもしれない、そういう中での平均0.3%とでは違うと思う。あるいは更に言えば、来年は0.3%だけれども、その辺がピークであって、その後は下がっていきそうだ、というようなケース、同じ0.3%であっても、色々考えられると思う。』

『従って、ある種ののりしろ、保険料みたいなものであるXパーセントという数字を前もって出しておいて、そこを上回れば自動的に解除というような、はっきりと定量化した機械的なルールで対応した方が透明性が高いわけであるが、現実問題としてはそうようなものは難しく、裁量的な判断の余地を残しておかざるを得ないと、今、私は考えている。』

あくまでもケースバイケースという断りは入ってますが、これはよく読めば量的緩和政策の出口は結構先ですよって話な訳でして、量的緩和政策が景気が上昇局面に入っても継続されている可能性を意識すべきではないかと思う訳でありますな。当然こういう質問が起こるわけでして・・・・

『(問)先程、インフレ率の予想が下に外れるコストの方が、上に外れるコストよりも大きいとおっしゃったが、これは量的緩和政策解除に関するCPIの二つの条件が満たされても、なおかつ慎重に判断するという可能性について触れられたのかと思う。仮にそういう状況になって、量的緩和政策を解除するのかしないのか、市場が神経質になっている時に、「もっとやるよ」というように市場に働き掛けるよりも、基調説明で例にあげたグリーンスパン議長のように、「当面は量的緩和を解除しない」というような言い方、あるいは「1年、2年は解除しない」という言い方を今の段階からする方が、長期金利を引き下げる効果があるのではないか。景気が減速しようとしている今についても、景気を刺激する、支援する効果があるのではないかと思う。グリーンスパン議長が言ったように「当面量的緩和は解除しない」なり、「量的緩和は長期化させる」と明言した方が良いと思うがどうか。 』

『(答)Fedは「FFレート1%を相当期間続ける」という言い方をした訳である。これに対し、日本銀行はその点についてはもっと明快なことをずっと言ってきた。すなわち、「インフレ率の現実値と予想値の両方がプラスになるまで、現在の量的緩和を続ける」というスタンスにある。「かなりの期間」という非常に曖昧な表現に比べると、非常に明快な形で量的緩和、従って低金利を続ける期間を表明してきたということだと思う。』

『そのうえで、私が先程申し上げたような保険的な意味で、あるいはリスク管理的な意味での考慮も必要であるという話だが、これをさらに長期金利を下げる手段として使うということになると、先程質問があったとおり、もう少しはっきりと定量化させて、例えば「0.5%に予測値がなるまで解除しない」とか「1%になるまで解除しない」― あるいは他の言い方もあるかと思うが ― そういう定量的にはっきりとしたルールを示すということでないと、なかなか長期金利への強い働き掛けということにならないと思う。』

『しかし、先程お話したとおり、はっきりとした定量化が出来難い部分について配慮が必要であるという話であるので、定量化して期待にはっきり働き掛けるという所まではいき難いように思う。』

まぁ景気に遅行するCPIがプラス基調に転じた場合に景気の向きがどっちに行ってるのかって問題がありますので、中々このような仮定の質問に答えにくい訳ですが、とりあえず現状では「コミットメントの強力化」という事はオプションとしては有り得るけど実施するようなイメージではなさそうですな。


で、もう一つの問題であります「量的緩和の出口政策において金利と量の関係をどうするのか」といういわゆる「2段階解除論」の問題に関しての質疑もご紹介しないといけないのですが、時間と分量の関係から明日という事でご勘弁。

よーするにあたくしが常日頃から「2段階解除論(=量的緩和解除の後にゼロ金利政策に移行する)」に関して「んなものは有り得ません」と申しあげている通りの結論になっている訳ですが、最近知ったのですが、どうも債券市場では2段階解除論的な見方が大勢だったらしいので、市場では一応話題になっていたようでありますね。

という事でやたら長くなりまして恐縮至極。しかも続きあり。







2004/09/28

お題「お休み中材料の整理メモとか入札の話とか」

まー今朝もまだフニャフニャ状態でありますので本日もまたメモ状態だったりする訳ですが。

○審議委員の講演等

植田審議委員の記者会見内容要旨が先々週末にアップされておりまして、先週は岩田副総裁の講演とありました。で、まだ内容のほうは精読できていないのですが・・・・

「展望レポート(正式名称は経済・物価情勢の展望)」の発表といった日程が控えている時期に複数の委員の講演日程をぶつけているというわけなのですが、植田審議委員の記者会見によれば「審議委員の出張日程は何ヶ月も前に決まっている」そうですので、まぁ展望レポートの発表を前に各審議委員がある程度意見表明をする機会を作っているっつー事でありますので、市場ではあんまり材料になっていなかったのではないかという気もするのですが、こちらはチェックをする必要があるかと思われます。

ざっと見た限りでは、常に緩和バイアスが掛かっている岩田副総裁はいつもどおり、植田委員はあたくしの休暇前にご紹介したように「こりゃ債券売り材料にはならないでしょ」という感じではありましたが。まぁ明日にでもご紹介。


○政府税調の議論

新聞を斜め読みしただけなのですが、定率減税の廃止と言うことで、まぁ相変わらず取りやすいところから取るというか、中堅リーマン層から取るというお得意の攻撃が出るかって印象であります。取りやすい所から取ると言う徴税都合優先の姿勢は如何なものかと思うのですが、それはそれとしても相変わらず中流というか割と安定的な市民層を叩くのは、社会の不安定化に繋がる話なのでどうなのかな〜とは思うわけで。

まぁ社会の階層分化というか、よーするに宗主国様の社会形態のような両極化を進めるという政策運営ポリシーが現在の内閣の方針でもありますので、こういう流れは致し方ない(あたくしは全く支持しませんが)所ではありますが。

でもこの2極分化推進政策って、某宗主国様のように人口の多くの部分が地方の中小都市というか村に毛の生えたような地域に住んでいる国でやる分には軋轢もそんなに多くない(訳は無いとは思うが)のかも知れませんが、日本のように人口の多くの部分が一部の都市部に集中している場合はどうなのかな〜と思う訳でして。人口の集中度合いが高いっつーことは社会階層の分化に伴う軋轢がより高まる事に繋がり、結果としては社会の不安定化が促進され、社会的コストが大いに高まるのでは無いかと思うのですがね。


○2年国債入札

話は変って2年国債入札。

一応カレントクーポンは0.1%という事になります。ただ、過去3ヶ月の入札は0.2%クーポンで行われていまして、今回クーポン引き下げになりますとちょっと先々の需要が見込めないのではないかと思うわけであります。

まー以前ドラめもんで申し上げましたが、いわゆるキャッシュつぶしという意味での投資としての2年国債に対する需要はいまや変動利付国債に取って代わられているという現状があるようです。実際の価格変動リスクがどうのこうのという以前に新BIS規制上の市場リスクという意味においては、15年変動利付国債は6ヶ月(=金利改定期間)ものの固定利付債と同じ扱いになるのに対して、2年債は2年ものですのでごく単純に言うとリスク量4倍で、クーポン収入はというと15年変動利付国債が高いという訳ですな。そりゃ債券投資部門としては2年債そんなに要りませんわな。

基本的には資金ポジション見合いという事になるので、短期金利動向の見通し次第と言うことになると思うのですが、今後も量的緩和政策が継続すると言う確信と申しますか、まぁ要するに0.1%クーポンが当面続くと言う見通しになるようでしたらまた話は別でしょうが、現状の市場環境はそこまで見ているという感じではないですので、今回もまた入札だけはそこそこ堅調かもしれませんが、しばらくは業者のもちになると思われます。0.2%クーポンならだいぶマシなんですけど。

まぁ現状イールドカーブがブルフラットしているのに変動15年利付国債の取引価格が上昇していると言うことは、そこまでの金利低下をまだ市場は織り込んでいないって話ですから、相変わらずこのゾーンは需給が悪いままで推移するものと思われます。


という訳で、本日もまた甚だ簡単でした。




朝のドラめもん(雑談編)

2004/09/27

お題「旅行のみやげ話(^^)」

3営業日お休みしておりましたが、18日〜26日の日程で海外旅行なんぞに行っておりました訳ですな。今回はロンドン経由でスペインの主に南部地方に行って来ましたのですが、まぁ与太話を。

○豊かな暮らしとは何ぞや

まぁいつも海外にフラフラとお出かけしていて思うのですが、今回はあたくしの昔の親分がロンドンでお仕事をしているので、お宅にお邪魔させていただきまして、普通の観光客が行かないような住宅地に行くことが出来ました(^^)。

で、到着した日の翌朝なんぞは晴天の中近所の公園にお散歩なんぞをしておったのですが、まぁ公園といったインフラは整備されているわけでして、緑豊かな丘をのんびりと散策とご多忙海外旅行にあるまじきのんびりとした時間を送っていた訳です。

まぁ何というか日本からやってくるとのんびりしているな〜と思う訳でして、地下鉄が止まっても別に皆さん直ぐに怒り狂う訳でもなかったり、延々と並ぶ(いろんなところで)のは苦にならないようだったりと、時間の使い方が余裕ありという印象でした。

確かに、生活の便利さと言う意味では日本のほうが断然上だとおもうのですが、仕事だけでなく生活全般が慌しい毎日からやってきますと豊かさとは何ぞやという偉そうなテーマを考えてしまう訳ですな。ちなみに旅先で知り合ったケンブリッジ在住の熟年夫妻に言わせれば「ロンドンというのは忙しい街だ」だそうですな。

スペインの南の方まで行きますと環境があまりにも違いすぎるのでそこまで深く感じませんでしたが、何というかアレな訳でして。


○この商品はいかがなものか

ロンドンからスペインに行き返りするのに現地の格安系航空会社を使ったのですが、帰りの便が機体トラブルで何と11時間強延着。機体トラブルがどうしようもなくなり、ロンドンで機体をやりくりした挙句に飛行機をロンドンからスペインまで飛ばしたというのがオチでして、翌日昼には帰国便に乗らないといけないあたくしはもう真っ青になっておりました。親切な英国人の熟年夫妻に随分と助けていただき「何とかしろ」と色々と交渉を手伝って貰いましたのがまさに地獄で仏でありました。

で、色々とやった挙句に「まぁこの便を待つしかないですな」という話になったときに「ところで保険には入っているのか」と聞かれて「そういえば入っているな」と答えた後に空港で入った保険を見たら飛行機延着保障を付保していなかったという間抜けなオチ。

しょんぼりしながら暇なので保険約款を見ていたら、実はこの飛行機延着保障ってたったの2万円しかカバーしていないというのに気がつきまして、「これなら入っても無駄じゃん」と呆然としてしまった次第。別に格安航空会社でなくても、「乗り継ぎ便」と指定して通しで航空券を手配した場合以外では延着で乗り継ぎ損なった分の保障って航空会社がやってくれる訳ではないと思うのですが、2万円では屁のたしにもならないではないかと思う次第でございます。正規運賃で2万円では日本から一歩も外に出れないと思うのですが。

まぁ無駄な保障をつけて(自粛)な訳なのでしょうが、ちとどうかと思った次第であります。

で、上記飛行機延着というのが「現地時間金曜日午後4時50分の便」が「土曜日早朝午前4時10分」となってしまい、空港に半日以上いたという事態だったので、ロンドンについたら直ぐにヒースロー空港まで(郊外の空港に行く便だったので)2時間近く掛けて移動してその足で帰国便に乗る破目に。

日本に着いたのが日曜の朝9時だったのですが、その時間をスペイン時間に直しますと、土曜の深夜2時となる訳で、金曜の朝7時に起きてから徹夜(飛行機やら空港やらでちょこちょこ眠りましたが、正直日本行きの便に乗るまではまともに寝るような状態ではなかったですし)状態が2日弱でしたよ先生って感じであります。

相変わらず「乗り物でトラブルが起きるが最後は何とかなっている」という運は継続しているようであります。


旅行記はそのうち別途、とか言って今まで真面目に纏めた事無いのですけど。





2004/09/17

お題「植田審議委員の講演」

昨日は静岡県金融経済懇談会で植田審議委員の講演、全国証券大会では福井総裁の挨拶がありました。金融政策の出口論がどうのこうのという質疑応答部分で相場がちょっと反応したような気もするのですが、残念ながらそのあたりの部分は今朝の時点ではアップされていませんので、植田審議委員の講演について景気に関する部分を主に見ていきます。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0409b.htm

講演のお題は皆様と同じく「最近の金融経済情勢と金融政策運営」ってものなんですが、便利なことに目次がついているので大体何を言っているのか最初の1ページで判るという物です(^^)。曰く、

1、予想を上回った景気回復
2、難しい経済予測
3、好調な中国・米国経済に支えられた景気回復
4、構造調整の進展も寄与
5、巡航速度を模索する中国、米国経済
6、世界的なハイテク景気の行方
7、日本経済も巡航速度の模索へ
8、リスク要因
9、生産性上昇と非正規雇用の拡大で抑えられるCPI
10、景気・物価情勢と金融政策


○景気の現状に関する部分

という事で、まーこの見出しでお分かりのように、景気認識に関しては海外っつーか中国と米国の景気に引っ張られているという話。ちょっと面白いな〜と思ったのは、「米国と中国」ではなく、「中国と米国」という表現になってる点。本文中にもあるのですが、輸出の増大に大きく寄与したのが中国向け(ここ2年での実質輸出の増加分に対する中国向け輸出の寄与度が60%近くに達するそうな)なのでそういう見出しになっているのですが、『東アジア向け輸出のかなりの部分は同地域で加工されて対米向けに再輸出されることを考えれば、日本の輸出増の主因は米国経済と中国経済の好調にあったといえよう。』って話になっておりまして、結論は「米国と中国」となっておりました。

GDP2次速報において設備投資が予想より伸びが悪かった点について言及している部分があります。上記「3」の中で言っておりますが。

『設備投資も好調に推移してきたわけだが、その中身がどのようなものだったかはやや不透明である。例えば、9月に入って発表された財務省の法人企業統計季報によると、ここ1年前後の設備投資をリードしてきたのは非製造業の中堅中小企業である。しかし、これは一般的なイメージとやや合わない。実際、9月10日に発表されたGDPの第2次速報での設備投資の上方修正幅は予想より小さいものだった。今回の法人季報に合わせて実施された年1回のサンプル替えで、設備投資額が大きめの中小企業が拾われたことによるバイアスがかなり含まれていると見られる。』

『6月の日銀短観によれば、2002年度から2003年度にかけての設備投資増額のうちの92%を製造業が、60%を製造業大企業が占める。2004年度計画の2003年度実績に対する増分についてもほぼ同様である。製造業の中でも電気機械、輸送機械、精密機械といった輸出関連産業の設備投資のウエートが高い。日銀短観に現れた姿が正しいとすると、設備投資の堅調さは輸出関連企業がリードしてきたものと言えよう。 』

となっております。この設備投資に関してその次には、実質ベースの話になるとまた変わってきており、設備投資の堅調さの裾野が広いという話をしております。

『設備投資のリード役が輸出関連の製造業であることを指摘したが、投資財の価格下落を考慮した実質ベースではかなり様相は異なる。先ほどの短観のデータを2004年第1四半期の設備投資デフレータの対前年比下落率4.3%で実質化してみると、2002年度から2003年度にかけての実質設備投資増額に占める製造業のシェアは47%に低下する。』

『すなわち、設備投資の裾野は格段に広くなる。あるいは、名目額で見ても法人企業統計の情報にもう少しウエートを置けば同様の結論となる。』

ということであります。まぁ要するに現状には相当強気ですな。


○今後の景気に関する部分

今後の景気に関しては見出しにあるように「減速しているが後退ではなくて、巡航速度の模索段階である」という事になっております。米国経済と中国経済に関してそれぞれ『市場における平均的な見方どおり、米国経済は巡航速度へ収束しつつある過程と見ておくのが良いかと思われる。』『要するに、中国経済に失速の気配は見えない。 』という事で、景気後退に関する懸念は日銀的にはひくーいってことでしょう。

で、目の前の某経済ニュース番組でも今後の懸念として大騒ぎしている原油価格に関しては極めてさらりと流しているのが印象に強い訳で(^^)、

『原油価格の上昇傾向も懸念される点だが、サプライサイドの要因もあるが、基本的には世界経済の拡大を映じたものであり、スピードや幅の問題はあるにせよ、原油価格の上昇から予想されるマイナスの効果のみをとりあげて論じるのは木を見て森を見ない議論である。実際、足元の日本の企業業績は原油価格上昇を吸収して好調が続いている。』

こんなのを読みながら唯一真面目に経済報道をしているニュース番組を見ると目の前では「原油価格が上昇しても東アジアでは石炭の依存度が高い」だとか「原油の埋蔵量がどうのこうの」という与太話(植田さんの講演を全面的に信用するとすれば、ですが)が展開されている訳でして、実に朝から心が温まると言うものであります。


○景気に関するリスク要因

じゃあリスク要因は何なんだと言うことですが、

『以上の見方(「リスク要因」の見出しの前の部分で説明している景気の見方でして、基本的には「腰折れ懸念無し」というもの)にリスクが無いわけではない。地政学的リスクが高まる可能性、ハイテク関連の調整が予想以上に深刻なものとなる可能性以外に、米中経済はそれぞれ問題を抱えている。』

『米国については、巡航速度へ移行する過程で循環的な調整局面に入るリスクは消えていないし、財政赤字、経常収支赤字のいわゆる「双子の赤字」を巡って、金融資本市場に波乱が発生するリスクも残っている。また、経済動向次第ではバランス・シートを拡大した家計部門の調整が深刻化する可能性もある。 』

『中国については、GDPの40%強を固定資産投資が占めるという中長期的には維持不可能ともみられる状態の調整が、どのような形で発生するかという問題がある。強めの経済指標が続いた場合、より強力な引き締め政策の発動という形で、近い将来にこうした調整圧力が顕現化するリスクがある。引き締め政策が発動されない場合には、原油を含む商品市況の一段の上昇、それによる中国を含む世界経済の減速という市場メカニズムによる調整となる可能性もある。』

『特に、中国経済が大きく減速した場合は、足許絶好調の日本の素材産業の業況には重大な影響が及ぶと考えられる。』

何か結構深刻なリスクのような気がするのですが気のせいでしょうか(^^)??

『国内に目を転じると、賃金が完全には下げ止まっていないことが、消費の先行きを考える上でのリスク要因である。この背景として、人材派遣に関する規制緩和によってパート・派遣労働者・請負労働者等の非正規雇用が拡大していることがある。この影響もあって、本年夏のボーナスは対前年比ではっきり下げ止まるには至らなかったと見られる。非正規雇用比率の上昇がどこで頭打ちになるかははっきりしないが、しばらくはこの比率の上昇が、平均賃金の足を引っ張る力として働きそうである。』

『ただ、逆に企業部門の体力はその分高まっているわけであり、経済の減速があった場合の抵抗力が高まっているという見方も可能であろう。』

とは言いましても、企業部門ってのは体力がちょっと高くなると経営資源をどぶに捨てたがる傾向もあるので油断はならないのですがね。まぁそれは只の愚痴ですが。


○物価動向に関して

『最後に物価の動きを点検してみよう。よく知られているように、内外の商品市況、それを反映した国内企業物価は上昇傾向にあるが、消費者物価指数(CPI)はなかなか重い動きである。図表7にあるように、コアCPIから診療代、たばこ、コメ、電気、さらに石油製品等の一時的ないし制度的要因を除去した指数の動きを見ると、ここ1年ほど−0.5%程度の変化率でほとんど動いていない。この1年は4%強の実質GDPの成長があったわけであり、通常では考えられないほどCPIの実体経済に対する反応が弱くなっている。 』

多くの審議委員があちこちで指摘しているのと同じように、今後の物価動向に関しては労働生産性と労働分配率に注目すべきと言うことになっております。

『この背景の解明が十分出来ているわけではないが、一つには、製造業中心の回復の中で、図表8にあるように労働生産性が4%前後というきわめて高い率で伸びており、なかなか雇用の増大につながっていないことがある。これに加えて、雇用はここ数ヶ月ようやく増加基調に転じているものの、非正規雇用比率の上昇によって平均賃金が抑えられていることがあげられる。』

まぁ皆さんご指摘のとおりです。


○金融政策に関して

のっけからこういうお話をしてます。

『以上のような分析から予想される今後のCPIインフレ率と金融政策の姿はどのようなものになろうか。まず、足許の原油価格の若干の落ち着きの気配、予想される9月からの米価の下落等を考慮すると、今後数ヶ月というような近い将来にインフレ率が基調的にプラスに転じる可能性はかなり低い。』

で、まぁもう少し先を見た場合どうなるかって話もしてますが、上下にぶれるとしても意外にぶれが小さいって話になっております。で、足元の金融政策スタンスに関してこのように話をしております。

『このように先行きについて様々な可能性を念頭におきながら、足許の金融政策スタンスを決めていくわけである。その際、図表1等で見たように景気予測がなかなか容易ではないこと、また物価の景気に対する反応度合いにも不確定性が高まっている点について中央銀行としてはどのように配慮したらよいだろうか。』

『日本銀行、そしてほとんどのインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行がそうであるように、インフレ率の予測値に基づいて足許の金融政策を決めるというのが基本である。これは政策効果の発現にラグがあるからである。 』

ドサクサにまぎれて足元の経済指標に一点張りを行う金融政策に関してケチをつけているところが実に微笑ましいです。おまけに「インフレターゲットも足元の経済指標ではなく、将来予測で政策をするものだ」と言っているのも中々(^^)。

『しかし、予測が難しい場合には、将来のある時点のインフレ率の予測の平均値のみに基づいての政策決定は最適でない可能性が高い。予測が外れた場合にどのような事態が発生するかが十分考えられていないからである。小さな確率でしか予想されないが、もしも現実化すれば経済にとってコストはきわめて高いというような事態も考えうる。あるいは予測が上にはずれた場合と下に外れた場合とでコストが非対称的だということもあるだろう。通常の予測の視野(おそらく1〜2年)よりも長い先についてのインフレ予測が重要ということもあろう。』

ほうほうなるほど。まぁこう来れば話の先は読めると思いますが、予想通りの展開。

『日本経済のおかれた現状では、当面インフレ率予想が下に外れるコストのほうが上に外れるコストより大きいと見られる(※)。その上で、私の考えでは、以上のようなこと、すなわちインフレ率予想の平均値のみでなく、それがどの程度上下、特に下に外れるリスクがあるか、それによるコストはどの程度のものか、さらに発表される見通しより先の期間についてはどのような見方が可能か、等の点について注意深い配慮が必要だと思う。こうした点を念頭におきつつ、今後の経済動向予測、金融政策決定にあたりたい。』

思いっきり「金融引き締め(というか量的緩和解除)が早すぎるリスクの方が、遅れた場合のリスクよりもでかい」と言ってますな。どうもこの辺りを見ていると原稿みただけでは債券の売り要因にはならんようにも見えますがねぇ。

で、上記の(※)の部分ですが、実際は脚注ナンバーがついていまして、そこにはちゃっかりヘッジクローズが入っております。もしかして実際にはこのヘッジクローズ部分が強調されていたのかもしれませんね。

『もちろん、インフレ率がどこかできわめて強い上昇基調に転じるというリスクを無視しているわけではないし、こちらのコストの方に相対的に大きなウエートをおくという局面に転じる可能性もある。』

その場の雰囲気とか、質問コーナーとか記者会見とかを見ないとどっちにバイアスが掛かっているのかというニュアンスが良く判らない所が残念ですが、普通こういう構成の文章であれば、脚注部分よりも本文にウェイトをおいて見るというのが正しい文書の読み方ではないかと思います。


という訳で、総じて見るとあまり債券を売り込むような講演内容とは思えないのですが、昨日の相場は偶々入札があって超割高になったために売れ行き低調とか、情報ベンダーに出てきたニュースフラッシュが何となく売りたくなるような文言があったとか、そんな感じなのかもしれませんね。あたくし的にはあまり売り材料には見えませんな。


業務連絡:上期分発行の利付国債入札がすべて終了したことを記念致しまして(嘘)、
作者は来週1週間(ただし営業日は3日)夏休みを取らせて頂きます。再来週にまた
お会いしたいと思います。



2004/09/16

お題「金融庁ネタの次は財務省ネタ」

昨日の債券相場は突如物凄い勢いで超長期国債が買われたのですが、最近気のせいかもしれませんが、超長期国債の入札直前にやたらと買いが入るわけですな。まぁ2.5%とかをやっているときに買いが入るのは判りますが、2.1%割っているのに入札前日にとりつかれたかのように買うってのは一体全体何をお考えなのかと。まぁまともに考えているとも思えませんがね。

そんな悪態は兎も角と致しまして今日は財務省がらみの雑談。

○国債投資家懇談会

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b160913.htm

月曜日に行われた国債投資家懇談会。似たような趣旨で実施される国債市場懇談会よりは参加者が少ないせいなのか議事要旨に関しては市場懇談会よりも見るべきものがあるという傾向にあります。変動利付国債のニーズがこれから大いに増大するという話も11月の投資家懇談会で出ていたりしてましたし。

最近はやたらと変動利付国債と物価連動債の話が多うございまして、火曜日の日経朝刊にも記事が出たくらいでありますが、国債投資家懇談会でも当然のように「変動利付国債のニーズが高い」って話が出てくるわけです。曰く、

『15年変動利付国債は、金利変動局面におけるデュレーション調整に有効であり、今後買い増していきたい。その際には、発行頻度をできるだけ増やし、将来的には毎月発行とすることも検討して欲しい。』

『足元金利はやや低下しているが、中期的な観点からは、金利上昇を意識している投資家が多く、15年変動利付国債に対しては、引き続き投資家のニーズは強い。理論価格よりも1円から2円程度割高に取引されていると言われているが、それも投資家の根強いニーズの表れである。今後増発を希望したい。』

で、まぁそんな感じのお話が連発されているのですが、その中でいつも気になっている意見があります。何かと申しますと、

『15年という年数については、一般的な投資対象と比べると、やはり長く感じられる。より残存年数の短い変動利付国債の発行も考えていただきたい。』

という件。どうも毎回同じ人が同じことを言っている気がするのですが、前回4月20日の投資家懇談会では「例えば利息が10年金利に連動し、満期が7年の変動利付国債を導入する」というよう意見が出ている訳ですな。

ま〜要望する側から見たらメリットが非常に高い商品なのは判るのですが、そんな商品設計で発行側に何のメリットがあるのかという事を考えるとこれがまた1ミリも理解できない意見でありまして、発行サイドのメリットを考えて発言しているのか訳の判らん(考えてないのだと思いますが)ところであります。


まぁ先日の入札で示されたように、相変わらず変動利付国債のニーズは高いものがあるわけなのですが、変動利付国債を選好するってことはその裏で固定利付国債との比較という発想が働いているわけでして、要は固定利付債のリスク=金利変動リスクを取りたくないという人が絶賛増殖中であるという事でもあるわけですな。

そう考えると変動利付国債がやたらと人気化するというのは将来の利払い負担がどうのこうのという以前の問題として、民間というか国債の購入主体が金利変動リスクをこれ以上負いたくないと言っているのに等しいわけですから、発行サイドたる政府部門としてはあまり宜しくないお話でもある訳です。

で、相変わらずアフォじゃの〜と思うのは、この変動利付国債さま空前の大ブーム状態を後押ししているのが例によって例の如く金融庁と日銀である事であります。BIS2次規制問題もそうですが、2次規制がまだまだ始まらないうちから「金利上昇リスクに関してどのような体制をとっているのか」とやたらめったら五月蝿くなりだしておりまして、どうも最近は小規模の地域金融機関の債券投資部門を捕まえて「そのポジションの100BPV(=100べーシス、つまり1%金利が上昇した場合に損益がいくらぶれるというかやられるかという額ね)はいくらになっている」と、まんまBIS2次規制の「標準的金利ショック」と同じ事をチェックしているらしいという話もちらほら聞かれるわけでして、これから益々国債の安定消化と国債費増大の抑制が課題になっているというのに、民間の金利変動リスク許容度をせっせと引き下げるような施策をとっているという素晴らしい所業が絶賛進行中のようであります。まぁ現場を直接見聞している訳ではない話ベースですけどね。

まぁいつもながら一つ一つの政策を見ていると尤もらしい事をしているのにトータルで見るとやっている事が自己矛盾のマッチポンプをやっているという素晴らしい状態がこんなところにも出ているというわけでして、大丈夫かよと思ってしまうわけであります。


○ちょっと緊張感に欠けているのではないかと言う記者会見

例によって上のネタを書いているうちに時間がなくなってきたので簡単に。

今週になって細川財務事務次官、谷垣財務大臣の記者会見があったのですが、それぞれの会見内容が報道された瞬間に「おいおい」という声が上がっておりました。

細川さんの場合は、長期金利に対するコメントで「長期金利の急激な変動は望ましくない」とフラッシュを打たれまして、「おいおい金利低下牽制かよ」という誤解を招きそうな状況が発生。引け後だったので誰も見てませんでしたが。

この一問一答を財務省のWebから拾うとこんな感じになります。

『(問)先週発表されましたいろいろな経済指標がやや先行き減速感を示すものになっておりまして、それを受けて長期金利が低下してきているわけですけれども、長期金利の低下は、財務省にとっては国債費の増加が見込まれる中、決して悪い話ではないと思うんですが、長期金利の動向についてはどうお考えになりますか。』

『(答)長期金利自体については、さまざまな要因があると思います。それによって決まっているんだと思いますので、具体的なそれぞれについてコメントするのは差し控えたいと思いますが、これも繰り返し申し上げておりますが、先々の回復を先取りするような急激な動きということについては、余り好ましくないという考え方は常に持っておりますが、いずれにしても、その動向についてはしっかり注視していかなければいかんというふうに思っております。』

次官殿、その答えは長期金利が上昇しているときに使うものですよ。金利が低下していて本当にその金利低下が都合が悪いと思っているのなら別ですが、後半の「先々の回復」以降の答えは余計です。

谷垣財務大臣は閣議後の記者会見で「大幅な増税を示唆」とフラッシュを打たれてしまいまして、これまた前場引け後だったので問題は無かったのですが、債券市場は何となく反応したのか後場の寄り付き直後は先物が結構上昇していたわけですな。14日の話でしたが。

『(問)昨日、財政制度等審議会が次の建議に向けた議論をスタートさせました。このなかで大臣から、歳出歳入の両面からバランスのとれた財政構造改革が必要だという趣旨の発言がありましたが、財審であえて歳入に触れられた理由とですね、あと歳入歳出両面でバランスのとれた改革とはどんなふうなものだというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。』

『(答)これは、昨日、おっしゃいましたようにね、一つは、歳入歳出両面からバランスのとれた財政構造改革をつくっていく必要があるということと、まあ財政健全化の取組みを強化して、それが民需主導の経済発展につながるようにもっていかなきゃいかんと、いろいろ申し上げましたけど、整理すれば二つのことを申し上げたわけですが、今の歳入歳出両面のバランスが必要ということはですね、今までも歳出の抑制というのはかなりいろいろやってまいりまして、孫悟空の頭の上にわっかをはめたみたいに、まあきゅうきゅう締めてきたわけでありますし、これは今後とも継続していかなきゃいけないことは言うまでもないわけですけれども、他方、社会保障などは、まあ私も身の丈に合ったものにしなければならないと、昨日もそういうことは申し上げたわけですけれども、他方、やはりこれだけ高齢化が進みますと、そうは言ったって増大がやむを得ない面が、これはあるわけですので、歳出の抑制、歳出を削るというだけでは、だんだんだんだんバランスが悪くなってきちゃうということが現実問題としてあると思います。したがって、そういう問題意識にたって、歳入歳出のバランスということを申し上げたわけです。(長いので以下略)』

実はこの時のフラッシュは時事通信と日本語版ロイターの両社が「大幅増税不可避」と伝えた後で小一時間ほどたってから「社会保障費の大幅増不可避」に訂正記事が打たれておりまして、その場にいたわけではないから良く判りませんが、谷垣大臣が増税らしき話をここに書いているよりも強いトーンで発言して大慌てで訂正したのでは無いかという激しい疑惑が涌いて来る次第であります。


ま〜どちらにしてもそうなのですが、次官にしてみれば国債市場がとりあえず暴落祭りから遠のいたという安心感、大臣にしてみれば選挙も終わって民主党はお得意の内紛状態なので政局大無風という安心感があって、つい発言にも細かい配慮が欠けているのではないかと思う次第でございます。立て続けに同じようなことが起きたのでちょっと気になっているところであります。


ではでは〜(^^)。


#どうでもいいおまけ話ですが、国債投資家懇談会の議事要旨って14日にアップされた筈なのですが、さっき財務省のWeb見てファイルのプロパティ見たら何故か更新された
のが16日、すなわち今日(昨日の深夜ではないかという気もしますが)ですな。関連資料のリンクでもアップしたのではないかと思うのですが、早朝あるいは深夜の作業お疲れ様でございます。>担当官さま




2004/09/15

お題「金融庁あいかわらずいかがなものか」

変動利付国債入札の話は「いやぁ全くニーズがありますな〜」で終了という感じでして、それより不思議なのは現物債が全般的に重い中で先物だけ全然下がらないという現状。と言って先物の建玉は6兆円台という水準だったりするのでして、やたらと買い戻しが入ると言う先物の板付は不思議でございますな。

まぁネタと言うのは同時に色々と出てくるのですが、今朝はそのネタの中であたくしが好きな金融庁関連の悪態でも(^^)。

○先端金融取引の重点検査ですか

変動利付国債入札の話が1面に出てるってぇので日経新聞を拝読しておりましたら、「金融庁、大手銀の先端金融取引を重点調査」って記事がありました。日経のWebによりますと、「金融庁は銀行が取引先企業との間で実施している先端的な金融取引について重点的に検査する。」そうでありまして、その主な対象としてあがっているのが「金利スワップ」や「デットエクイティスワップ」となっているそうです。

記事によりますと、「銀行がこうした取引を使って自らの収益を底上げしたり(金利スワップをイメージしているようです)、取引先の経営状況を実態より良く見せかける(DES=デットエクイティスワップをイメージしているようです)のを防ぐのが狙いだ。」ということになっております。

確かに金利スワップなんぞは会計上の収益の嵩上げ(あるいは益の繰り延べ)に使いやすい商品ですし、どう考えても回収不能な貸出をDESに転換することによって問題の先送りを図ることができるので、検査で重点的に対応したいってのはその場の理屈としては話が通っている訳です。しかし「それは待てよ」と言いたくなる訳でして、毎度ドラめもんをご覧になられている読者様におかれましてはこの先の論理展開が見えていると存じますが(^^)話を続けさせていただく訳ですな。


○金融先端取引を推奨してたのはどこの誰でしたっけ?

金融庁の施策として不良債権処理の加速って所で、金融庁様は擬似資本状態の長期固定貸出金を資本化しましょう何て事を提唱していた筈でして、その中では、

「要管理先以上の債務者区分に属する債務者において、実現性の高い経営再建計画の下で、長期固定化した貸出金をDESだのDDS(=債務の劣後ローン化)だので貸出金を資本性資金に変換するとあら不思議。残った貸出部分が正常先債権に区分されます」

という画期的な施策(あたくしには唯の先送り誤魔化し手法にしか思えませんが)を打ち出して居た筈です。先送りのススメって事で昨年12月に悪態をついております。DDSに関しては金融検査マニュアル中小企業編にこんな記載があるわけで。

『資本調達手段が限られている中小・零細企業においては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていることが多い(疑似エクィティ的融資)。このような状況を踏まえて、金融機関が、中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)を、債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後ローンに転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとする。』


で、これをあたくしなりに翻訳すると12月24日のドラめもんではこんなことになるわけです。改めて書きます(というかコピー&ペーストですが)。

(以下12月24日のドラめもんで書いたこと)
要するに、延滞貸出金状態になっている経常運転資金の短期転がし貸出を劣後ローンに切り替えるとあら不思議、与信先の資本が充実しちゃいますってお話なのですが、もうアホか馬鹿かと。不良債務者の貸出金固定化を推進してどうするんでしょう?

で、この事例を読むと益々訳がわかりません。この「事例」によれば、「実現性が高い経営再建計画」の実施の一環として、一部の貸出を劣後ローンに転換した場合、この会社への貸出金と劣後ローンが全て貸出条件緩和債権に該当しない(=正常先債権)になり、劣後ローンに関しては100%引当を行う、となっておりますな。

これって結局「表面上の不良債権額が減る」だけの事になるようですし、それ以前の問題として契約上短期弁済が可能な(金がないから不可能ですが)貸出金を長期固定化するのを勧めるというのは、単なる「先送りの勧め」であるとしか思えませんな。(以上)


とまぁそんな感じでDDSなんぞのような金融取引を一方で推奨しておきながら返す刀で重点検査をするというこの自己矛盾。お前はどうして毎度毎度やっている事が首尾一貫していないのだと小一時間どころではなく24時間くらい問い詰めてみたくなるわけです。お前は右の手と左の手でやっている事が矛盾しとりはせんかという訳ですな。


○官製の罠ですか?

そもそも、債務の株式化だの劣後ローン化をすると現実的には兎も角として会計上のメリットが大いにあるという状況を作り出しておいて、いざそれをおっぱじめだしたらいきなり重点検査ってんじゃあ金融機関は困りますわな。例えが激しく不穏当ですが、玄関を開放して入り口に札束をこれ見よがしに積み上げておいて取りに来た人間を泥棒としてタイーホすべく待ち構えているようなものではないかと思うわけでして、これまさに官製の罠としか言いようがありません。

既にこの「官製の罠」には「繰延税金資産」という恐ろしいものがあって銀行株は只みたいな値段まで売られるわ、どこぞの銀行は無理矢理吸収合併の方向に持っていかれるわと銀行は散々な目に遭わされた訳ですが、この時の「官製の罠」は繰延税金資産の制度を当初導入した時から監督官庁の体制が思いっきり変わっている(だからと言っていきなり天変地異の如く行政の扱いが変化するというのは行政の継続性という観点からは如何な物かと思いますが)ので、理解できないけどまぁ仕方ないと致しましょう。

しかし今回は何ですか?つい半年前に金融検査マニュアル中小企業編を出したばっかりなのにいきなり重点検査ですか?金融庁は銀行を罠に嵌めて気に食わないと犯罪者に仕立て上げるのが仕事なんですか?

・・・・興奮して少々取り乱しました。暴言勘弁。


まぁしかし何ですな。打ち出す施策を直ぐに検査の名目で否定するような状況が続いたらまともに金融庁の施策を信じて何か始めたら大変な目に遭う訳ですから、まぁ昨今あちこちから漏れ伝わる「銀行の経営は金融庁の方ばっかり見ていて本来の銀行経営をしていない」などという悪態も企業防衛上致し方なしとしか申し上げようがないですな。恐ろしい事です。


という訳で、外傷性頚部症候群だというのに朝から興奮してしまいました。ほかにもネタがあったはずなのですが、時間の都合でこの辺で(^^)。



2004/09/14

お題「徒然なる雑談」

昨日は前場丸々病院なんぞに行っておりまして、後場から登場したのですが、出てきたら先物から10年は前日比値を上げているのに中期債や超長期債ボロボロですよ先生って相場。先週後半に鉱工業生産にGDPと相場をぶち上げてしまったので、いったん様子見モードになったのか知りませんが、相場は(先物の出来高とか見ている限りは)閑散の癖によくもまぁイールドカーブが動いてくださるという感じ。

まぁいずれ中期債あたりに先週末にでも売りが出ていたという事なんでしょうが、それにしては先物は全然下がらないというのも不思議極まりない相場でございます。そんな訳で良く判らない時は思いつくままに材料にでもなりそうな話をつらつらと書き並べるのであります。

○景気の定点観測といいますか

8月以降に出てきた経済指標は景気減速のオンパレードでございます。まぁ既にここまで来た相場ですんで織り込んだという話もありそうですが、どうもあたくし的には先日発表されてあまり話題にならない景気ウォッチャー調査が気にかかる所ではあります。

確か堺屋経済企画庁長官時代にほとんど堺屋さんの趣味で始まった経済調査と聞いたことがあるのですが(又聞きなので間違っていたらゴメンナサイ)、「何じゃそりゃ」などと言われながらも景気の先行指標としては結構当たっていることが多いそうですな。まぁあたくしも時々駄文の中で「景気の定点観測」と称して交通量だとか新聞広告(マイナー紙を購読しているので、新聞広告の量が減るともろに折込チラシが減少するので結構判りやすい。後は大型スーパーなどのチラシに金が掛かっているかどうかとか^^)なんぞについてはチェックを入れておりますが、バイアスをかけて見なければ結構後から思い出すと景気の先行指標に使えないこともありませんな。

ただ、あたくしどものような景気動向をモロに商売にしている人がこの手の定点観測をすると、どこかで自分の相場観やポジションが反映されて見てしまうので、上記した「バイアスを掛けて見る」って事になりやすいので注意が必要なのですが。


○ところが日銀は強気継続なわけでして

先日の金融政策決定会合で発表された金融経済月報に関しては金曜日のドラめもんでご紹介致しましたように、8月に発表されたものとまるっきり同じという内容。今回の金融経済月報には機械受注とGDP2次速報値に関しては反映されていませんが、そこまでの経済指標を反映した結果が「8月とまるっきり同じ」というものですので、日銀としては「景気は回復を続けている」という判断は全く後退させておりませんな。

おまけに日銀総裁は記者会見で最前列に陣取った(らしい)某テレビ局のアナウンサーのおねいさんに機嫌がよろしくなったのかどーか知りませんが、昨日のドラめもんでご紹介したように、プロ野球の質問には懇切丁寧にお答えするわ、いつもよりも妙に多く「心情の吐露」的な「サービスフレーズ」を連発しておりました。で、その内容をよくよく見れば、やれ「量的緩和政策から早く脱却したいという気持ち」だとか、「なるべく早く(量的緩和政策から)卒業したいという気持ちはあるが、それはうんと抑えて我慢する」だとか大変に香ばしい心情の吐露であります。

自分でCPI時間軸を設定しておきながらそういう「心情」を出すのは如何なものかと思うわけです。おかげでちょっと経済指標が良くなると「量的緩和を我慢して行っているということは解除の条件が整った時は結構な引き締めを行うのではないか」という思惑が出てきて、アフォのように相場が大荒れする原因になっているという認識はどうも総裁には無いようですな。

あたくしは量的緩和終了後のイメージは足元金利0.1%くらいなのですが、どうも物価やら株価が上がっていくと直ぐに中短期金利が過激に上昇していく傾向を見ておりますと、もっと高い足元金利を相場は想定しているようでして、これも総裁効果名のではないかと思うわけです。その反動として「量的緩和の終了後にはゼロ金利政策を行う」という政策の論理的整合性を無視した「2段階解除論」なんぞが本職の債券ストラテジストの方々から堂々と論議される(国債市場懇談会でも発言していた人がいたようですが)といった現象も起きている訳ですな。

政策論議も迷走させる総裁のサービス精神には頭が下がる思いでありますが、外傷性頚部症候群というありがたい診断を頂いたあたくしとしましてはあまり頭を下げている姿勢は好ましくないそうなので勘弁していただきたいと思うわけですな(謎)。


○細川財務次官

これもテキストは出ていないので本日あたりにアップされるであろう財務省のWebを待ちたいと思うのですが、昨日の記者会見では長期金利に関する質問があったらしいです。情報ベンダーの中で日本語版ロイターが打ったフラッシュが「長期金利の急激な変動は望ましくない」というものでして、「金利低下牽制をする必要は無い筈なのに何じゃそりゃ???」と思って見ていたのですが、どうも「景気回復を反映した金利上昇局面において急激な長期金利の上昇はよろしくない」ということを言ったのが、お得意の「面白そうな所だけ切り取る攻撃」で報道されたようです。

ロイター通信如何なものかと思うわけですが、そもそも長期金利がどっちかというと下がっている時に長期金利上昇に対してのコメントをするというのは細川さんちょっと不用意ではないかと思う訳でして、まぁ次官になりたてだから仕方なのかもしれませんが、もうちょっと相場水準を考えて発言していただきたいものであります。特に相場に関わるコメントっつーのは前提条件が常に「現在の状況」であるので、同じ話であっても相場の位置によって発言の取られ方が全然変わってくるという事を理解して頂きたい訳ですな。

どこぞの中央銀行総裁のように、突如「一般論」の話をしだして相場に余計な思惑を与える(最近の例では「金利と量を一体化して考える」という発言をして「量的緩和解除後には短期金利が大幅に上昇する」ってな思惑を呼んだわけですが)という大変に香ばしいお方の真似をする必要は無いわけです。ここの所平和な相場なので問題は無かったかもしれませんが、「不用意な一般論」を発言するのは止めた方が吉なのではないかと申し上げたいところではあります。

あたくしがここで申し上げても仕方ないですが(^^)。


というわけで、何をテーマにした話なのかイマイチ良く判らない雑談でございました。やはり外傷性頚部・・・・(-_-メ)。




2004/09/13

お題「総裁記者会見」

PC新機種導入はいいのですが、データ移行が全然できないので本日ははなはだ簡単に(言い訳)。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0409b.htm

○大阪の講演と金融経済月報について

先日ご紹介した大阪での講演(正確には挨拶)では景気に関して比較的強気ともとれる内容でして、木曜の金融経済月報9月分は8月に示された強気の景気認識を引き続き継続という内容になっておりました。冒頭ではその点に関して質問が。

『(問)本日の金融政策決定会合の結果について、総裁より趣旨を伺いたい。また関連して、先日、総裁は大阪で強気な景気認識を示されたわけだが、本日公表された「金融経済月報・基本的見解」を踏まえて、その認識に変わりはないのか伺いたい。 』

大阪で・・・・以降の部分に関する答えはこんな感じ。

『大阪で強気な見通しを述べたというご指摘については、特に強気、弱気というバイアスをかけて申し上げたつもりはない。ただ、日本経済の回復の基本的なメカニズムは、当面出てきている経済指標の強さ、弱さが入り乱れている中であっても、損なわれていない。そういう判断については強気だということを申し上げたわけである。』

んなら大阪の挨拶はいったい全体なんだったのよと申し上げたい所ではありますが、これを日和見と見るべきか日銀公式見解と総裁の個人的心情の乖離が生じつつあると見るのかは判断に苦しむところではあります。あたくしとしては「大阪の強気トーンは総裁の個人的心情を強く反映しており、金融経済月報が日銀の公式見解であって今回は日銀総裁という機関としての発言」という印象を持っております。

ま、確かに金融経済月報に関しても判断を後退させている訳ではないのでこちらも強気継続といえば強気継続なのですが、何せここの所毎度毎度のごとく景気判断を上方修正し続けていたので判断が前進しないというのも「ほほう」と思ってしまう訳ですな。


○景気認識に関して更なる突込み

『(問)市場では景気減速感が出てきたのではないかとの認識があり、また電子部品等で在庫調整などの動きがあって、長期金利も低下傾向にある。日銀と市場の景気認識には非常にギャップがあるような気がするが如何か。 』

『(答)先日、大阪でも同じようなご質問があって、既にお答えしたことでもあるが、市場の判断と私どもの認識とにそんなにギャップがあるとは思っていない。(中間割愛)我々は個々の指標に反応することによって皆様に判断をお示しするのではなく、まとめて、分析した結果としてご報告しているが、最終的な判断にそれほど大きな差はないであろうと思う。 』

『昨年の夏の終わり以降の、いわばポジティブ・サプライズの連続というような──つまり指標が出る度に良い方向に皆が驚くような──時期は過ぎて、次第に経済が巡航速度に向かって収斂していく過程になると、刻々と出てくる指標は、引き続き良い方向で驚くものと、意外に期待を裏切るというようなものが入り乱れて、綾なすように出てくる局面に変わってきていることは事実である。(以下略)』

ということで「景気は巡航速度に向かう段階」だということになっているようです。しかしIT関連の在庫調整問題の質問に関する答えの部分はやや日和見の香りが。

『今、ご質問の中にあった電気機械、IT関連で一種の在庫調整の動きが始まっている点については、景気のサイクルをある意味で決定づける重要な動きだと我々も認識している。ITのサイクルがどのように変わるか、転換点がいつか、もしサイクルに変調をきたしたらどれくらいのマグニチュードで、どれくらいの期間それが続くのかというようなことは、非常に大事な課題である。』

という事で、物価に関するユニット・レーバー・コストとともに景気循環に関する電子関連の在庫調整動向にも注目ということでしょうか。この答えの続きはこんな感じです。

『現在、世界的にIT関連の在庫調整が始まったと我々はみているが、(中間割愛)今回は比較的早めに調整に入っている、(割愛)従って、在庫調整に共通の性格として、企業が早めに調整すれば、調整の深度が浅く早く終わる可能性があり、IT関連の調整についても同じだと思う。しかし、過去の経験則では、IT関連の調整は動いていくうちにやや強めに振れるという性格を持っている。従って、その点について楽観視ばかりするのではなくて、調整が予想以上に大きくなる可能性も一部念頭に置きながら、今後の推移を見ていきたいと思っている。 』

どうも答弁の傾向として、前半は「福井俊彦としての意見」が出てくるのですが、後半になると「日銀総裁としての意見」になってきているように思えます。まぁ順序が逆だと印象が全然違うわけでして、この順序ならまぁ後半の方が後に印象として残るので問題ないといえば無いのですが、そもそも「総裁記者会見」で個人的心情をそう吐露していいのかという話はありますわな。


○CPIに関連して

今回の会見は質問が厳選されているというか直球ストレートというか。

『(問)CPIについてだが、先程、総裁がお話になられたように、CPIがマイナス基調を続けている状況に変わりがない。今後もプラス要因として原油高がある一方で、マイナス要因として米の豊作等が影響してくる。そういった状況を見て、市場ではCPIがプラスになる時期というのは遠のいたのではないか、量的緩和政策からの出口というのは遠のいたのではないのかといった見方が出ているが、どうお考えか。』

『(答)私どもは、以前から「出口」という言葉は嫌いだと散々申し上げているのであるが、出口政策はそんなに至近距離で考えていない、かなり遠い先の話である、CPIが安定的にプラスになるまでにまだ相当な時間的距離がある、という点は、私の記者会見でも他の項目に比べて、より安定的に同じ表現で申し上げてきたと思う。今も同様の心境でいるということで、私どもには一切振れがない。』

ここでもまた最初に福井俊彦さん個人の心情が出てくるのが大変に笑える訳ですが(^^)、CPIのプラス転換はまだまだ先ということのようですな。

『米や原油の要因とか、確かにCPIにおけるその時々の指標に振れをもたらす要因というのはあるわけであるが、私どもはより基調的に生産性の上昇とか、景気回復の中にあっても企業所得が雇用者所得に循環するスピードが、今回は世界共通の現象として遅いとか、そういうベーシックな要素をもとに判断している。家計所得の面にも好循環は波及していくという基本的判断は変えていないが、なかなか波及速度は目先目立って急速に上がるわけではないという従来の予想もそのまま維持している。今回も同様である。』

という事で、引き続き雇用者所得に関して注目が必要だという事には変化は無いようです。もうちょっと同じ話をしているのですが以下割愛。


○サービスフレーズというか心情吐露というか

金曜の時事通信社提供の時事メインコラム「金融観測」は日銀総裁に絡んで2本ほど大変に面白いのだがそりゃ日銀総裁が怒らんかね〜って内容のものがでておりまして、そこで触れている話なので2番煎じもいいところなのですが。

今回の会見は某才媛局アナのおねいさんがプロ野球談義をするためにやってきたせいなのかもしれませんが(^^)、サービスフレーズが乱発されていて実に微笑ましいというか笑えるというか。

・景気認識に関連して

『我々も、心の中では出てくる指標に対してある意味で一喜一憂しながら、しかし冷静にそれを分析して最終的に持っている判断をお示ししている。』

一喜一憂しているらしいです。どうせCPI時間軸なのにねぇ。

・現在の金融政策に関連して

『私どもは、以前から「出口」という言葉は嫌いだと散々申し上げているのであるが(さっきも引用しましたが)』

はあはあそうですか。どうも「出口政策論議で中短期金利の上昇のトリガーを引いた」と去年は散々な言われようでしたが、いまでもそれが不満だと。

『私どもは量的緩和政策から早く脱却したいという気持ちはあっても、実際にはここは我慢強く、構造調整の面でも循環的な景気を長持ちさせる意味でも、粘り強く頑張り通したいという気持ちでいる。人間なのでなるべく早く卒業したいという気持ちはあるが、それはうんと抑えて我慢するということである。』

セントラルバンカーとして現在の量的緩和政策が極めて不本意な政策だというのは良く判りますが、あなた何でもそこまで言わんでもよかろうにって気がするのですが。


○おまけ

世間的にはプロ野球問題の質疑応答が翌日の新聞やニュース番組なんかで取り上げられまして、「別に関係の無いことにそこまで丁寧に話するのか」と思いましたが、何せ質問したのが「最前列に座った美貌のテレビ局女子アナ」(時事メイン記事による)だったという事でして、なるほどそうだったのねと激しく笑えました。個人的には経済関連の書籍に顔をだしたりして硬派のイメージで売り出している筈の某女子アナウンサー様にそんなイロモノ質問をさせる某テレビ局のセンスを疑いますな。これでイロモノ評価になっちゃわないのかね。

質疑応答内容に関してはあちこちに出てますのでまぁご存知だと思いますが、日銀Webでもごらんくださいませ。

ではでは。








2004/09/10

お題「金融経済月報」

昨日のドラめもんも妙にタイポしてましたし、今もお題を「月例経済月報」などと書きまして「何か変だな」と思うというのはこれはもしかして事故の後遺症なのではないかと恐れるあたくしでありました、とすぐ大袈裟な話になる訳ですが、とりあえず生きている(どうも実はあちこちぶつけていたようで、外傷が良くなってきだした昨日の朝あたりから腰だの膝だのがアレな訳ですがそれはさておき)ので一つ宜しくです。

一昨日〜昨日に実施された金融政策決定会合は当たり前のように政策変更無し。最近は「何か動いている」というアピール的なあまり意味の無さそうな施策(全然残高の増えない資産担保証券の買入だとか、あまりにも使い勝手が悪い為に一度も実施されていない国債の補完的貸出取引とか)も打たなくなりまして、誠に慶賀の念に耐えない所でございます。

で、例によって例の如く金融経済月報が出てくる訳でして、この手のものは時系列観測をするのが吉ということで観測をしてみます。何せ怪我人ですので簡単に。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0409.htm

○ある意味において驚愕の内容

時系列観測といえば当然ながらまず8月の月報と比較するのが正しいあり方なのですが、比較しながら読んでいくうちにあたしゃー「あれ、これ本当に8月分??」と思ってしまう訳でございます。ちなみに8月分はこちらですな↓
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0408.htm

思いっきり前回と同じという月報(基本的見解)な所が激しく驚愕なわけです。まぁ今まではご紹介したように、毎回の如くどこかの表現が前進するという実に景気の良い(ってゆーか景気が良いから表現が前進する訳だが)状況が続いたのですが、さすがに8月のあいだ中に発表された景気指標がこれでもかこれでもかと景気減速を示唆するものであったので、判断前進をするのは無理があったという事でしょう。

違っているのは僅かに一箇所(^^)です。国内景気の現状認識に関する部分です。

(9月)『輸出、鉱工業生産は、伸びがやや鈍化しつつも増加を続けており、企業収益の改善が続くもとで、設備投資も引き続き増加している。』

(8月)『輸出、設備投資の増加が続いており、鉱工業生産も引き続き増加している。』

さすがに輸出の伸びが鈍化している事と、鉱工業生産の伸びも鈍化しているということは書かない訳には行かなかったということなのでしょうが、転んでも只では起きないとはまさにこの事といいますか、9月にはわざわざ「企業収益の改善」という文言を挿入している所が泣かせてくれます。

ちなみにこれ以外の表現は物の見事に一言一句同じだったりする訳でして、これもまた面白いところであります。


○どう解釈するか

で、この状況をどう解釈するかという事になる訳ですが、どうもその後の記者会見で、総裁に対して先日の挨拶と記者会見(ドラめもんで既に話題にしましたよね)が景気に強気なスタンスだった事に関して質疑応答があったらしく、この時は総裁は「バイアスを掛けた積りは無い」と言ったらしいという事なんぞを踏まえますと、景気に対する方向性としては依然として上向きな見方を崩しておらず、8月に出てきた経済指標は「景気腰折れ」ではなく「速度調整」と考えていると解釈するのが妥当なのかな〜と思ってしまったりするわけです。

一応「伸びが鈍化しつつも」と(現実がそうだから)表記しながらも、全然見方が変わっていないということは、根本的には景気回復の方向に対する見方に変化は無いということなのでしょう。債券市場は何となく8月以降の経済指標に降参(今日のGDP2次速報が注目なのかな?)している雰囲気ですが、日銀いまだ降参せずといった所でしょうな。まぁ1ヶ月くらいの数字で一々反応されても困りますがね(^^)。


○またも記者会見に注目ですか

一応記者会見の一問一答に関しては情報ベンダーなどでも見る事ができるのですが、あたくしとしては公式発表とも言える(微妙な書き方をしますが、実はWebに載せている物が「公式発表」なのかどうか存じませんもので・・・・)日銀Webのアップを待ちたいと思います。

どうも福井総裁様に置かれましては、記者会見の席上では特に、色々な表現を駆使する傾向があるようでして、最近の珠玉の発言と致しましては7月の金融政策決定会合後(13日)に行なわれた記者会見でのこんな質問に対するお答えです。

『(問)先程、何としてでもデフレ克服が必要だとおっしゃっていたが、景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況で推移しているのだが、「デフレを克服しなければならない」とそこまで強く言うほどの問題を抱えているとお考えか。』

『(答)その甘いささやきには決して乗らない。やはり、将来のことを深く考えると、物価がマイナスに陥って国民の皆様が苦しい状況を再度経験しなければならないという不幸な状況をもう見たくないという気持ちが非常に強い。(途中省略)将来再びデフレに陥って、せっかく出始めた新しい展望を根こそぎ摘み取ってしまうようなことにならないように、多少の賭けをすることはお許しいただきたいし、我々は甘いささやきにはそれまでは応えない。こういう姿勢で臨みたいということである。』

別に「現在の政策目標はデフレ脱却であり、日銀としては量的緩和のコミットメントに従って淡々と現在の政策を継続していく」とでもあっさり答えれば良いような気もするのですが、この大先生様におかれましては、日銀総裁としての公式発言の中についつい個人的な心情を交えてしまうという傾向があるのではないかと、このような発言を見るにつけ思うのであります。

まぁ人間としてはついつい心情を吐露してしまうって所に大変好感するのでありますが、市場との対話という意味では如何なものかと思う所ではあります。どうも「公式見解」と「個人的心情」の間にギャップがあるように見受けられまして、このギャップが発言に現れると、どこぞの経済新聞あたりが個人的心情の部分を増幅してしまい、ついつい売り推奨的記事を書いてみたり買い推奨記事を書いてみたりして、それを見た偉い人がまた反応するって動きになるのではないかと思う訳ですな。


てな訳で、折角ドラめもんのネタにしようと張り切っていた金融経済月報が物の見事に前月と同じな為に話が妙な方向に展開してしまいました(^^)。





2004/09/09

お題「番外編―あたくしの超不幸かつ不幸中の幸いの一日」

本日は番外編。何と申しますか身を切ったネタ状態です。

○交通事故編

昨日のあたくし、まぁタクシーなんぞに乗っておった訳なのですが、大通りに並行して走る小さな通りを(大通りに入る信号が赤だったので抜ける為に)走っておった所、信号の無い交差点って奴で「左前方に車!」と思った瞬間に「ガシャーン」となりました。でもって後部座席にいたあたくしは前のシートのどこぞかにぶつかった訳であります。まさに出会い頭とはこの事なんですが、左から入ってきた車(これまたタクシー)が一時停止しないで突っ込んできたらしいですな。

あたくしの乗った車は豪快にも交差点(小さい交差点ですが)右前方にある事務所に突っ込んでサッシとガラスをぶち破りまして、もう見物人様大集合。そのときあたくしは、とりあえず顔面が甚だしく痛いのですが、車から何となくガスのような香りがしたので「とりあえず脱出しなければ」と思い外へでたら、野次馬先生から「額が割れとるぞ」とのお告げ。後から後部座席の下をみたら右のレンズの所から見事に真っ二つになったメガネの片割れが発掘されたのでありました。

で、まぁ救急車なんぞも呼ばれまして某病院に行ってレントゲンだの取った訳ですが、額の擦過傷は派手ながら縫う必要なしとのお告げ(確かに後で見たらそうでした)で、骨には異常なしとの事で一安心と言いたいのですが、顔面から鼻にかけて腫れておる訳で、もうこれは先生如何な物かと思われますって感じです(なんて今だから書いてますが、その時はもうとりあえず痛いのと骨折が心配で余裕皆無でございました)。

まぁ救急車には乗るわ、病院では戸板じゃなくて何と言うのかしりませんが、寝たまま運搬器に乗せられて首は固定されるわもうエライコッチャでありました。その後警視庁某警察署で事情聴取を受けましたが、何を隠そう事情聴取はこれで2度目。前回もタクシー事故がらみでして、前回は「おーい」と止めたタクシーの右側にバイクが突っ込んで大転倒というこれまた洒落にならない事故でござんしたが。

とりあえず「信号の無い交差点で出会い頭に衝突して道路わきの事務所(たぶん兼住宅)に特攻して玄関ガラス大破(多分タクシーも部類は大破でしょうな)という豪快な事故ながら死人なしであったのは不幸中の幸い。

・・・・っていうか1秒タイミングが狂ってたらこっちの車の脇腹にぶつけられてお陀仏さんだったかと思うと中々であります。


・メガネの良し悪し

あたしゃー常にメガネ掛け人間ですし、乱視も入っているので、ガラスのレンズはちとしんどく、プラスチックレンズにしておりまして、お蔭で割れても粉々になるという事態にならなかったのかと思う訳です。ついでに申し上げると、前方に激突した時にメガネがぶっ壊れるのに必要な分のショックが吸収された訳でもありますから、(外傷は痛いは顔面は腫れるわと悲惨ですが)まぁ顔面直接大強打をしなかった(と思われる)のもメガネの効用でもあったりする訳です。ガラスのレンズだと派手派手に壊れて眼にどうしたこうしたという事もありますので、お値段張ってもプラスチックレンズを推奨したいところであります。


・車載カメラのあるタクシー

どうも加害側らしいタクシー会社の事故担当者が夕方に来社(後始末終わった所で出社したので)して丁重にお話するには・・・・

某タクシー会社(武士の情けで名は伏せる)では運行測定の一環として車載カメラを用意してあるそうで、当然ながら運行中に取る映像は何度も上書きして使うそうですな。で、いくらか忘れましたが、ある一定以上の加速度が車にかかるとその前後10数秒だか20秒だか忘れましたが、その記録は自動的に保存する事になっているとの事でして、このお蔭で事故の原因も判りやすくなったようです。当然ながら前方道路優先のところを見事に時速50キロで突っ込んだことなんぞ一発で判るようであります。


・病院は高い!

まぁ病院は当然のように自費立替なのですが、レントゲン取って顔面の傷を見て「こりゃ縫う必要はないね」と言って傷口を消毒して派手にガーゼで止めただけなのに26840円ですよ先生。後で返ってくるとは言え、この調子で通院していたらお財布様がエライコッチャになってしまうのですが、某病院救急部恐るべし。お品書きによりますと消毒液つけてテープ貼ったのが9700円で、レントゲンが17140円でした。

しかもこの某病院は「保険会社に後から請求してくれ」という技が使えないという所でして、行くたびに精算では洒落にならんという気が思いっきりする訳ですな。困ったもんです。


・タクシー事故は多いそうで

都心ではタクシーの台数は増えるわ人口が増えて自転車の通行は増えるわという状態でして、東京都中央区における交通事故の半分はタクシーがらみだと事情聴取を受けたもののカツ丼は出なかった(^^)警視庁某警察署の担当のお方(これは記憶違いでして、某タクシー会社の事故担当が前日に警視庁中央警察署の講習会に行って聞かされた話でした)が仰っておりました。皆様もお仕事でタクシーご利用の際はシートベルトしろとは申しませんが、窓枠の手すりとか前の手すりとかに手を掛けておくのも吉なのかもしれません。


ま、顔面の方はメガネ大激突のお蔭で額に派手に傷ができるわ(深くないので見た目ほどではないが)、鼻のあたりが内出血していて額と共に腫れているわという有様ですが、顔面強打でお陀仏さんになるよりは無限大倍はマシですので、ほっと一息と言う感じであります。あと右脛打撲と、その時は気が付かなかったのですが、左の膝も強打していたようです。他の痛みが納まってきたら気が付いたざます、とほほのほ。

事故に出くわすのは全く不幸なのですが、時速50キロで横からきた車にぶつけられて(とりあえず今の所)まぁ寝込むような怪我になっていないというのは悪運が強かったと申し上げるしかないのかな〜と思う訳です。結構こういうパターン多いんですよね>自分


○PC編

まぁそんな訳でとりあえず朝のドラめもんは夜のうちに書いておくかと考えてPCを起動したらとうとう謎の画面が現出。もう人が交通事故にあったというのにこれかいなと激しくしょんぼりしてながらやっていたら、プログラムやらドライバやらがいくつか飛んでおりましたが、珠玉のデータ(嘘です。只の過去の駄文)は無事でありました。ホッと一息。

しかし、肝心のウィルスバスター大先生が飛んでおりまして、おまけにあたくしのPCに大昔プリインストールされていたマカフィー先生の残骸が復活したようで、ウィルスバスターの再インストールができないという悲しい事実。各種設定も何故か4年前の状態に戻っておりまして、仕方が無いので早寝したいのに泣きながら設定をしなおして再起動したら同じ現象が発生(号泣)。

ええ、頭に来たあたくしはもう一度設定しなおした後はPCの電源入れっぱなしですよ。もう恐ろしくて電源切れません。仕方がないから週末にとうとう新PC導入の所存であります。

で、まぁ頭に気ながらPCいじっていたのですが、いきなり「もしかしてこれはご主人様の命を守る為に災厄をPCが引受けて下さったのか」と自分に都合のよい解釈が閃きましたので、そういうことにしてPCは仕方の無いことと割り切る事にしました。まぁ基本的なデータが飛んでいなかったので被害僅少ですが。

ということで、ウィルスメールは間違っても送ってこないで下さい(^^)。


という訳で昨日は散々な日でありました。とりあえず命あって翌日を迎えることが出来たのは悪運強しと言った所なのでしょう>自分


#皆様も安全運転に心掛けてください。




2004/09/08

お題「まとまっていない雑談」

○また高値入札か!

昨日は注目の5年国債入札がありました。入札前のパターンは毎度お馴染みというか何と言うかなんですが、5年ゾーンだけ突出して堅調という形になって入札を迎えまして、おまけに落札結果は(事前予想というよりは事前覚悟どおりとは言え)入札直前の既発5年債の取引実勢から見るとどう見ても1毛は割高なものとなりました。

まさにキングオブ割高入札といった所でありますが、入札前の事前先回り買いって奴が入っていなければ入札前から5年独歩高になる訳はございませんので、わざわざ入札を割高にするような性格の悪い動きをして一体全体何の得になるのだろうと市場の片隅でこっそりと棲息するあたくしなんぞは思うのでありました。

特に、昨日の前場の場合は5年ゾーンは確かに堅調そのものだったのですが、4年以下の中期債は無茶苦茶重くて長期やら超長期はもう駄目駄目状態というテイタラク。例えば割安だった中期ゾーン全体が堅調というのであれば判らない事もないのですが、2年〜5年あたりのイールドカーブ見ると4年近辺の方が5年よりもマシなような気もするのにそっちはゲロゲロという状況で「5年だけ独歩高」というのは如何にも無理があるというものであります。で、入札後は「やっぱりセカンダリーの買いがありませんな〜」となった所で平均株価が少々上昇したので先物中心に売り党の狙い撃ち(^^)で仕方なくヘッジも入るの図。


・・・・・で、このパターンなんですが、3ヶ月前に行なわれた入札とまるで同じパターン。入札直前に買いが入ってアフォのように強くなって大割高入札になった後に梯子外しの刑。おまけに申し上げますと直前の10年入札も同じパターンでして、6月の10年入札は「入札絶好調」→「入札後ブルフラット」→「上がったらやっぱり買いがなく先物ヘッジ叩きの刑」→「翌日以降の長期ゾーンボロボロ」という展開だったのですが、これって先日の10年入札と同じようなパターンです。

なんたる学習効果の無い相場なんでしょうというのが率直な印象なのですが、まぁ巻き込まれるあたくしも人のことは言えませんわな。とほほのほ。

ちなみに、6月相場といえば5年入札後に「捏造武藤ショック」(未だにあのレポートは許し難いのですが、何のお咎めも無いんですかね。個別株の推奨絡みで随分せっせと難癖つける筈なんですけれども)によって中短期金利絶賛大上昇しましたが、今回はさすがに同じアフォな事はしないと思いたいですな。先日の総裁講演あたりを下げ材料ネタにして煽る人が出たりして。


以下相場と関係ない雑談。

○素晴らしいご都合主義報道

プロ野球再編問題で世の中大変楽しい状態になっていますが、どうも話題を煽るためにノイジーマイノリティー(と敢えて言い切りますが)の動きばかり報道し過ぎなのではないかと思う訳で。Jリーグのチームが合併する時ここまで騒ぎましたっけ?と記憶を辿りつつ朝の某経済新聞社系列放送局の放送番組を視聴しておりましたら、実に素晴らしい報道を拝見して朝から笑ってしまったのですな。

某放送局の解説委員っつーんですから結構偉い人だとおもうのですが、この偉い人が現在の球団合併の動きに関する問題点として3点挙げまして曰く(記憶を元に書いているので概ねの話は間違っていないのですが、言い回しとかが違っているかも知れません、念のため)、

1.理念無き合併―何の為に合併するのか。結局1リーグ制導入先にありきではないか。
2.株主利益の軽視―オリックス球団との合併とライブドア社への球団売却のどちらが株主に対して有利かという検討はなされているのか。
3.説明責任―球団合併に伴うリストラなどの痛みを説明しているのか、企業合併ならば経営が当然痛みについて労組に説明している。

・・・・・理念無き銀行合併を散々煽りまくる報道をして、銀行に勤務する人の待遇切り下げを所与のものとして報道していたお前等が何を今更言うのかと、朝からドラめもん先生大変に血圧上昇(-_-メ)。まー昔の銀行合併の話は置いておくとしましても、つい先日のUFJHDとMTFGの経営統合報道では、住友信託銀行の立場は思いっきり無視し、何が何でもMTFGとの経営統合が確定しているような報道をしておられた報道機関の仰る事とは到底思えない「球団合併に関する問題点」の指摘っぷり。その面の皮の厚さに大変に頭の下がる思いであります。

この解説委員の先生は、この話をする前振りで「今回の球団合併問題を球団経営の観点から考えるとこのように言えるかと思います。」と始めたので、当然ながらプロ野球のパイが碌に拡大しないのに選手の年俸だけ高騰している現状とか、読売の自社コンテンツの価値最大化作戦によって巨人戦以外のコンテンツの価値が暴落し、挙句の果てにプロ野球全体の地盤沈下を招いた合成の誤謬問題とかの話でもするのかと期待したのですが、まぁやはりそういう世間受けしない(とは思いませんが)コメントよりも自分たちで煽り立てた「世論なるもの」への迎合ですかとちょっとくらーい気分になる朝のひとときでございました。

この国の報道は一体どうなっているのでしょうか?


野球話を書いているうちにもう一つ書こうとしていた話を書く時間がなくなった上に、そもそも話の展開方法を忘却したので(大汗)、今朝は簡単ですがこの辺で。




2004/09/07

お題「昨日の続きというか補足」

久々の日銀総裁講演&記者会見について、あたくし昨日のドラめもんで「まぁ気になるのは長期金利が低い現状のどさくさに紛れて発言したのではないかとも思える『量的緩和政策の長期化リスクに関する具体的な言及』ですな。」と申し上げましたが、この点について指摘を頂きましたので。

2段階解除論とか時間軸の強化という話が盛り上がっていた以前から既に量的緩和のCPI時間軸に関して何度か「CPI一点張りの現在の時間軸政策はリスクがある」という言及は行なっております。

『30兆円を超える流動性の供給というのは、ずっと先のいわゆる皆さんの用語で言えばエグジット(出口)──私はあまりエグジットとは言わないがエグジットという皆さんの言葉を借りて言えば──の時点での負担が増すということは、おそらく共通に認識されていることだろうと思っている。』(4月9日記者会見)

『金融政策は、特定の経済指標をターゲットにして、そこにあまりに機械的に結びつけると、機動性を損なうという意味でリスクを伴うということは一般論としてある。(中間省略)この点について、CPIが安定的にゼロ%になるまでの間に、今の金融政策のフレームワークの修正に時間がかかり過ぎるリスクというものはごく僅か含んでいるであろうと、厳密に議論すればおっしゃる通りだ。』(6月15日記者会見)



とりあえず記者会見から適当に拾ったのはこんな感じ。講演でも日銀の政策はデフレ脱却を最優先にしているためにリスクを取っているという話を折にふれて行なっています。ただ、今まではどちらかというと単純に「時間軸というのは日銀もリスクを取っているのです(だから日銀はデフレ脱却に頑張っています)」という感じだったのですが、先日の大阪での講演(正しくは挨拶)と記者会見では総裁本人も「やや理屈っぽい話」と言いながら、

『これは、自然利子率の上昇に少し遅れて我々の金利の操作が始まるということであり、いわゆるビハインド・ザ・カーブの金融政策が少し長くなるということである。こうした文脈で、最終的には、自然利子率の上昇幅に見合った金利の要調整幅が、早く金利調整に入った場合に比べて大きくなるという、やや理屈っぽい話を申し上げた。』

と発言して、その続きで

『結果として、そうでない場合に比べて調整幅が多少大きくなるとしても、それは程度問題である。我々が市場の金利形成に働きかけていく際に市場調節上の負担が少し重くなる、あるいは市場調節に当たって考えなければいけない方程式が少し複雑になるという面で、余計に知恵がいるということだと思う。時間が余計かかれば困難が増す。一方、時間がかかれば、我々がさぼらない限り、勉強の時間があると思っている。』

とやや煙に巻くような感もありますが、どさくさに紛れて「(ビハインド・ザ・カーブの、という意味でしょうな)時間が余計かかれば(自然利子率まで追いつかせるための市場調節の)困難が増す。」としれっと発言しておりますな。



まぁ今まで一般論として「日銀がリスクを取っている」と言っている意味とここで話をした事は全く同じ意味、というか日銀が基本的に景気に遅行する傾向がある(そうですな。よー知らんのだが)CPIに対して時間軸を設定しているという事がどういうリスクを孕んでいるのかという点への具体的な説明をしたのが上記の先日の講演&記者会見という事でございます。

実際に講演やら会見の場にいればまたニュアンスも違って伝わるのかもしれませんが、日銀のWebに「挨拶要旨」「記者会見要旨」として出ている文書を追っかけて見るというのもまた意味があるかと勝手に思っております。当然ながら日銀のWebにアップされた文書ってのは当然ながら日銀の事務方(企画部門なんでしょうか?)が作成するものですから、これは(厳密には違いますが)公的文書というか発言者の公式見解という扱いにしても宜しいって訳ですから、不規則発言ではない意見表明のウォッチになるのかなという訳で。

で、その場の雰囲気はよく分りませんが、日銀のWebから出てきた文書を見ていると、どうも先日のコメントは「出口政策を意識した発言」であり「ビハインド・ザ・カーブのリスクが大きくなるリスクを意識した発言」であり、今までの発言よりやや突っ込んだ印象を与えるものでした。あたくしの勝手な印象なのかも知れませんが。

冒頭でも申し上げましたが、債券相場が大いに反発して少々長期金利がぶれても安全ゾーンにいるドサクサに紛れて、今までも懸念していた事について今のうちに言ってしまおうという意図があったと考えるのは穿ちすぎですかな。


以前「量的緩和政策の出口論」が総裁の口から堂々と出るようになる前に中原審議委員が量的緩和の2段階解除論とか時間軸の強化というか実質延長みたいな話をして話題を盛り上げ(たかどーかは知らんが)たという事がございましたが、(堂々と出口論の話が出てきたのは5月13日の講演でした)今回は山口副総裁が時事通信インタビューで現状の金融政策について論じる中で金融政策のビハインド・ザ・カーブのリスクに関しても大いに指摘した後かつ債券市場が戻り高値って時にこの話という事でして、中々タイミングは宜しいのかと思いますな。

まぁあんまり示し合わせているようには思えませんが(中原さんの時は斥候部隊を中原さんがやったような感も無くは無いですけど)、まぁ色々と考えますわな〜って感じでした。

では。




2004/09/06

お題「総裁記者会見」

先週末にご紹介した日銀総裁挨拶の後に行なわれた記者会見ですが、久々の講演(挨拶だが面倒なので講演と書いてしまいます)&記者会見という事で色々と突っ込みを受けております。で、今回は強気弱気の双方が都合よく引用できそうな部分がありまして、情報ベンダーによって別々の方向の発言が報じられていたのが笑えました。ちなみに債券相場が上がりそうな発言を報じていたのは日経クイック。おまいら「景気回復で金利上昇」キャンペーンをやっていたんちゃうんかいと小一時間問い詰めたくなるところではありますが(^^)。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0409a.htm

○「債券買い材料か」と思わせた質疑について

日経クイックに総裁発言として「長期金利低下は時間軸の効果」というようなヘッドラインがでた(らしい)のですが、幸か不幸か先日の講演&記者会見時は10年入札直後だったのでこちらへの注目度が低かったので相場は反応しませんでした(が、講演も記者会見も中々見どころあると思いますよ)。

長期金利に関する見方に対しての質疑でこんな発言が。

『基本的に、長期金利は、日本経済の先行きや物価情勢についての市場参加者の判断をもとに形成される。(以下同じ事を言っているので省略)』

『おそらく今は、米中経済、日本経済について、次から次へと予想よりも良い指標が出るというポジティブ・サプライズの期間が過ぎて、異なったニュアンスの指標が入り乱れて出てくる時期になっている。市場参加者がこうした状況に反応している中で、日本銀行が繰り返し申し上げている、量的緩和政策は当面は揺るぎがない、といういわゆる「時間軸効果」が、結果としてより強く市況の面に出ているのではないかと思っている。』

ここの部分を捕まえて日経クイックは「長期金利低下は時間軸の効果」とヘッドラインを打ったようですな。まぁ確かにそうは言ってますが、これは「昨今の長期金利低下が時間軸の意図したものだ」という話をしているのではなく、時間軸効果に対する一般的なお話ですな。まぁ強気派としては飛びつきたくなる発言ですが。

『米国についていえば、FRBが8月の利上げの際に公表したステートメントで、resumeという英語を使って、「景気回復ペースは、先行き再び高まる」と表現していた。その表現に沿った強めの指標が出てくる局面があれば、相場形成の仕方もある程度変化してくるだろう。』

『市場は、こうして一進一退を繰り返しながら、実勢を探っていくと考えられる。日本経済についても、今後どういった指標が出るかによって、長期金利は多少のアップダウンをしていくだろう。しかし、ベースには、日本銀行の量的緩和政策堅持という時間軸効果がしっかり効いていくだろう。』

長期金利上昇容認と取られるとマズイという判断が働いて最後に予防線を張った発言になっているのですが、予防線を下手に張ると余計な報道をされてしまうので、まぁムツカシイですわな。今回はあまり材料扱いされなかったですが。


○ビハインド・ザ・カーブのリスクに関する発言

金曜のドラめもんで申し上げましたが、量的緩和の出口に関してこれだけ堂々と話をし、またビハインド・ザ・カーブのリスクに対して具体的に言及した(今までは単に「ビハインド・ザ・カーブは覚悟してるからどっからでも掛かってきなさい」的な発言しかしてませんでしたので結構大胆な発言ではあったのですが)講演の部分に対して当然のように質問が出ました。

質問が長いのですが、ポイントを的確に衝いているので改行入れながら引用します。

『先の懇談会において、総裁は、潜在成長率が上がっていく過程でゼロ金利を続けていくと、最後には調整幅が大きくなるという意味で、将来の金利調整に困難さが加わるという趣旨のご発言をされた。また、物価と景気が乖離している要因として、3点を挙げられた。』

『1つ目は、過剰設備・過剰雇用の解消により資源がより効率的に活用されていること、2つ目は、ITを中心に技術革新が浸透していること、3つ目は景気循環であった。総裁は、1つ目と2つ目の要因がかなり影響していると認識されているとお見受けする。』

『仮に、そうした要因により潜在成長率が上がっている場合は、物価はずっと上昇せずに潜在成長率が上がり続けることになる。物価が上昇しないもとで日銀は量的緩和を続けていくと予想される。この先、潜在成長率が高まる中でゼロ金利を続け、その結果として調整しなければならない幅が非常に大きくなった場合に、日銀としてどのような対応をされるのか、教えて頂きたい。』

誰が質問したのか存じませんが大変に素晴らしいです。総裁の答えも長いのですが、これまた全文引用してしまいます。

『過去の過剰設備、過剰雇用が解消し、規制緩和等で資源を有効に活用できるようになり、イノベーションによって付加価値をつける能力が上がる。これは明らかに、潜在成長率を押し上げる要因、すなわち生産性を構造的に押し上げる要因となる、ということはおっしゃる通りである。日本経済において、このように潜在成長率を構造的に押し上げていく力が働き始めていると思う。その場合、潜在成長率に見合って経済をバランスさせていくため、金利水準が自然に高くなる。学者の方々は、これを自然利子率が上がると言っている。自然利子率が上がれば現実の金利も上昇するというのが普通の姿である。 』

『しかし、潜在成長率が上がるかたちで景気回復をしても、グローバル経済の下で、従来に比べると物価の上昇テンポが少し遅れることがある。この場合、デフレ脱却という最終目標実現のために、短期の金利水準を低く抑えて少し長く時間軸効果を効かせ、最終的に問題の解決を図るということがあり得る。これは、自然利子率の上昇に少し遅れて我々の金利の操作が始まるということであり、いわゆるビハインド・ザ・カーブの金融政策が少し長くなるということである。こうした文脈で、最終的には、自然利子率の上昇幅に見合った金利の要調整幅が、早く金利調整に入った場合に比べて大きくなるという、やや理屈っぽい話を申し上げた。』

『どれくらい最後の調整の困難度合いが増すかというのは、質的な問題ではなく、あくまで量的な程度の問題ということである。といっても、経済の潜在成長率が上がり、現実の景気回復が進むもとで、いつまでたっても、同じような生産性の上昇が続き、賃金や物価の上昇がいつまでたっても追いつかないという経済を想定しているわけではない。時間的距離というものにも、ある相対観を持って見ていく必要がある。結果として、そうでない場合に比べて調整幅が多少大きくなるとしても、それは程度問題である。我々が市場の金利形成に働きかけていく際に市場調節上の負担が少し重くなる、あるいは市場調節に当たって考えなければいけない方程式が少し複雑になるという面で、余計に知恵がいるということだと思う。時間が余計かかれば困難が増す。一方、時間がかかれば、我々がさぼらない限り、勉強の時間があると思っている。難しい仕事ではあるが、きちんと対応するつもりである。不良債権問題に苦しむという後ろ向きの問題ではなく、将来展望のある明るい話なので、しっかり勉強していきたい。』

とりあえず「講演での言及はあくまでも一般論としてのものであり、日銀は金融引締めが遅れるというビハインド・ザ・カーブのリスクは承知の上で、将来発生する困難への対処を考えていっている」と読めますので、講演での言及を見て「時間軸が短くなった」と言うのはさすがに無理がありますな。まぁ「潜在成長率は上がるのに消費者物価は全然上がらない」という事に関してはナーバスになっているというのは伝わってきますが。


○資産価格に関して

まぁ今の所まるで上がってこない資産価格ですが、こんな質問も。

『資産価格について一点お伺いしたい。現在、銀行の貸出は未だ前年比マイナスとなっているほか、一般企業も、潤沢なキャッシュフローを使ったり、社債やCPを発行してまで、不動産投資に振り向けることは想定し難い状況にある。しかしながら、以前、総裁が言われていたように、景気が回復すればするほど金融緩和の効果は増すと考えられる。バブル時にも金利は上げたが、流動性はジャブジャブであった。現在も、ゼロ金利であって流動性がこれだけ潤沢にある。その状況で、消費者物価指数が、日本銀行がコミットメントしている条件に達しないまま、株や不動産などの資産価格だけが上昇してきた場合、どのように対応されるのか。またその可能性についてどうお考えになるか伺いたい。』

この点も重要な論点ですが、とりあえず総裁はさらりと回答。

『先程の懇談会の場でも、消費者物価指数の変化率に絞ってコミットしているという意味で、日本銀行は少しリスクを冒していると率直に申し上げた。それは、資産価格の動き、特に、不動産価格等が一般の物価指数に先駆けて大きく変化する可能性、そういうリスクをいくらか孕んでいるという意味で申し上げたものである。毎回の記者会見では、実体経済と物価ということで政策運営をご説明しているが、資産価格の動きについても、過去の経験を踏まえてきめ細かくフォローしている。また、それに対し、どのような資金がついているかもフォローしている。我々が取っているリスクがどれだけ大きなものになりつつあるのか、もしくはそうはなっていないのかについて、極力正確に掴む努力をしている。今までのところ、そのリスクが大きくなって経済政策全体の根底を塗り替えなければならないという状況には、まだなっていないと思っている。』

「資産価格が上昇する気配も無いのにそんな話はしませんよ」ってなもんですな。さすがにかつての資産価格バブルに関しては猛烈に反省しているようですので、資産価格動向はきちんとウォッチはしているようですが、現実になった場合にどう動く(あるいは手を拱いている)かは不明としか言いようがありません(が、何か理屈をつけて動くのではないかと思うのですが・・・・・・・)な。


○景気認識について

景気の認識に関しては講演内容と同じでして、強引に要約すると「昨今出ている景気指標は1−3月期に出てきた高成長の反動」となります。総裁は「非常に重要な話」と言ってますので敬意を表して一部だけ引用します。

『今年4-6月期の成長率が、多くの方の予想よりも少し低めに出たことを眺めて、今後の経済をどうみるか、金融政策との関連でどうみるかというご質問だが、この点は、非常に重要な話だと思う。』
(途中を思いっきり割愛しまして)
『従って、今年4-6月期の表面的な数字は、昨年10-12月期、今年1-3月期の高成長の反動もあってやや減速したが、均してみれば、今の動きは、将来の持続的な成長軌道への復帰に繋がる回復過程を辿りつつあると判断している。』

と言ってます。基本認識に関しては割愛してしまった部分で、

『景気の動きを形付けているメカニズムからみた場合、輸出は引き続き堅調で、設備投資や生産も増加を続けている。家計部門にも、少なくとも雇用の面で好影響が及んできている。個人所得の裏付けはまだしっかりしていないが、個人消費も強めの動きを続けていて、全体として前向きの循環メカニズムが明確化するかたちで動き続けていると思っている。』

と言ってます。相変わらずダム論というか「前向きの循環メカニズム」に関しては自信満々の巻と言った所ですな。

また、原油価格上昇に関しては、講演では言ってませんでしたが、記者会見では例によって『基本的には世界経済の順調な拡大に伴う需要の増加が背景となっている。』という言及をしておりますが、『その一方で、供給面は、過不足が測定し難く、さらに地政学的リスク等も絡んで、不確実性を伴っている。需要の強さに加え、供給面でも大きな不確実性を伴っているという両面から、原油価格は、高値圏で推移しているというだけではなくて、先行きが読み難いところがあり、心配の種になっている。』とコメントしております。

まぁ要するに「どうなるかさっぱり判らん」というコメントを延々と続けておりまして、原油価格上昇に関しては日銀も今後の行く末やら経済への影響やらに関しては測りかねているというのが正直な所なんでしょうね。


○ということでまとめて見ると

景気に関して引き続き強気なのは分りますが、金融政策の出口に関してのコメントは踏み込んでいるようで踏み込んでいない発言ですし、長期金利の現状についても一般論(言葉尻だけ見ると金利低下が政策効果と言っているように見えるが)しか言ってませんので、実を言うとどっちとも取れる内容ではあります。

まぁ気になるのは長期金利が低い現状のどさくさに紛れて発言したのではないかとも思える「量的緩和政策の長期化リスクに関する具体的な言及」ですな。この手の発言を長期金利が上昇している時に行なうと思いっきり相場に燃料投下モードになってしまい、もう阿鼻叫喚の火災が発生してしまう所でして、債券相場が堅調なうちに言及したのは珍しくも賢明であったかと思います(^^)。



2004/09/03

お題「久々に福井総裁の講演」

政策の季節がやってまいりました(^^)。

昨日は大阪経済4団体共催懇談会において福井総裁が挨拶を行いまして、その後記者会見も行なわれました。景気減速を想像させる経済指標が立て続けに出て、債券市場の居場所が大きく変わった後なのでそのあたりに関しての意見も聞きたいと言った所でございますな。記者会見要旨は例によって本日にならないとリリースされませんが、挨拶要旨は出ておりますので読んでみることと致します。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0409a.htm


○景気に関しては依然として強気

『こうした世界経済(引用者注:堅調な世界経済)のもと、冒頭申し上げたように、日本経済は、回復を続けています。本年4〜6月のGDP成長率の速報値は、昨年10〜12月、今年1〜3月の高成長の反動もあって年率+1.7%に減速しましたが、均してみれば将来の持続的な成長軌道への復帰に繋がる回復過程を辿りつつあると評価しています。』

『景気回復のメカニズムの面でも、輸出の伸長とともに、生産と企業収益の拡大が設備投資の増加に繋がる前向きの循環が働いており、最近では、雇用者数の改善傾向もはっきりしてきています。先行きは、所得面にも好影響が波及し、このところやや強めの動きが続いている個人消費が緩やかに回復することにより、前向きの循環メカニズムが明確化していくとみています。』

お得意の「前向きの循環メカニズム」であります。8月に出た経済指標は見事なまでに景気減速を示唆させる内容が連発してましたが、前2四半期の高成長から巡航速度になったという認識ということのようです。


○景気と物価に関して

挨拶の冒頭で総裁はこのように指摘しております。引用の都合上段落を分けます。

『わが国経済は、海外諸国と同様、2001年以降やや深い調整局面を経験しましたが、昨年の夏頃からは世界経済が拡大を続けるもとで、明確な回復過程に入りました。実質GDP成長率でみますと、ユーロエリアはもちろん、昨年10〜12月と本年1〜3月は米国も上回る高成長となりました。』

ということですが、この要因に関しては、

『この後ご説明するように、こうした高成長の大きな牽引力は、海外経済の回復であり輸出の増加であったことは事実ですが、そうした外部環境の好転だけで実現され得るものではなく、わが国固有の回復の基盤が整備されてきたことも大きな背景にあったと思われます。日本経済の回復のスピードが速かったことも興味深いのですが、こうした景気の回復が小幅とは言え物価の下落基調が続くもとで実現していることも興味深い点です。本日は、このような点も意識しながら、お話をしたいと思います。』

わが国固有の回復の基盤云々というは前向きの循環メカニズムにもつながる議論でして、経済の構造改革の成果だという論理のようです。あたくしは全くそうは思いませんが(民間部門の問題点を政府部門に付け替えた事によって問題が表面上解決しただけに過ぎないから)、それはそれとして、先日ご紹介した山口前副総裁の時事通信社インタビューでも「物価の小幅下落の中で景気が回復している」という点についての指摘がありましたが、ここでも同じ点についての指摘があります。

一般物価が小幅下落する中で景気が回復基調にあるという認識に立ちますと従来の「デフレは極めて僅かなものであっても景気に対して害悪」というリフレ派を中心とした現在のまぁ一般的な認識が本当に正しいのかという事にもなる訳でして(あたくし的には一般消費者物価が問題なのではなく、というか物価統計は技術革新分を価格引き下げに織り込むので、経済成長よりも技術革新の速度が速ければ統計上の物価上昇は抑制されるのではないかな〜などとシロート考えながら思う訳で。問題は信用創造が実質土地本位制の中で不動産価格が下落した所だと思いますが。)、このあたりは(本当に景気が回復するのであれば)今後議論になるでしょうな。

『以上申し述べた企業や金融機関による調整の努力(注:該当部分の引用は省略しております)を一つの背景として、景気は回復を続けています。そうした中で、物価面では、原油高の影響もあって、国内企業物価は素材や中間財等を中心に上昇しています。ただ、消費者の手に渡る製品やサービスの価格である消費者物価は引続き小幅の下落基調にあります。』

『これは、基本的には、生産性の向上や人件費の抑制を通じた、企業部門でのコスト引下げが背景にあります。従って、この先物価情勢を判断していく上でのポイントは、生産性や賃金の状況に変化が生じるかどうかという点です。現在の生産性の向上の背後には、3つの要因があるのではないかと考えています。』

長いので一旦ここで段落分けますが、今後の景気動向という意味で日銀が注目するのは企業の生産性と労働分配の動向と言うことで、最近はよく「ユニットレーバーコスト」という術語が聞かれるようになっております。金融政策は消費者物価一点張りなので物価動向のチェックは重要ですが、この点については今後大いに注目すべきだと思います。

『第一の要因は、過剰設備・過剰雇用等の調整に向けた企業の取組みや労働市場を含む様々な分野での規制緩和等によって、資源がより効率的に活用されるようになっていることですし、第二の要因はITを中心に技術革新が進展していることです。第三の要因は、景気回復期に一般にみられることですが、人や設備の稼働率が上昇し、生産性が高まるという要因です。』

『このうち、最初の2つは、日本経済の潜在的な生産能力を高めるような構造的な変化をもたらし得るものであるのに対し、3つ目は循環的な要素であるという違いはありますが、いずれの要素も何がしか影響を与えていることは間違いないと思います。ともあれ、こうした景気と物価の動きの乖離は、程度の差こそあれ各国が経験してきた問題です。これをどのように理解するかは、エコノミストや中央銀行にとっての大きな課題ですが、この先景気回復が続いていった場合に生産性の上昇が鈍ってくるのか、それとも規制緩和やITの効果で生産性の上昇が続くのか、また、生産性の向上に見合う賃金の上昇が見られるのか、注目していきたいと思います。』

目先の問題として原油高に関してもコメントしてますが、原油高当初言っていた「原油高は需要増という面もある」というのんびりした発言はさすがに影をひそめまして(^^)、企業業績への悪影響を懸念ってコメントになっています。


○量的緩和の出口に関してのコメント

まぁ債券相場が強気モードの時なので別に深く突っ込みを受けないのですが・・・・

『勿論将来の課題としては、日本銀行当座預金を操作目標とする政策から短期金利を操作目標とする通常の金融政策へ、いずれ復帰していかなければなりません。当然のことながら、そうしたプロセスは2つの面から成り立ちます。金融機関は、所要準備として、法律等により約6兆円の当座預金を日本銀行に保有する義務がありますが、現在は、日本銀行の潤沢な資金供給を通じて、これを大幅に上回る30〜35兆円の当座預金を保有しています。こうした潤沢な資金供給は、金融機関の流動性調達に対する不安感を払拭することを通じて、金融市場の安定、ひいてはデフレ・スパイラルの防止に大きく貢献したと判断しています。』

『将来、短期金利を操作目標とする政策レジームに戻っていく局面では、この日銀当座預金残高の圧縮が必要となります。他方、現在の金融緩和効果の大きな源泉である時間軸効果については、実質的にほぼゼロ%となっている短期金利をどのようなテンポで引き上げるかということが最も重要な点です。こうした対応を具体的にどのような手順や方法で実現していくのか、その際に、日本銀行の金融政策についての考え方をどのように明らかにしていくのが適当か、これらの点は私どもにとっても重要な課題です。』

『どのような対応を取れば円滑な移行が実現できるのか、経済金融情勢等をしっかり踏まえながら、十分に検討していきたいと思っています。』

結局「考えて無い訳ではないが時期尚早」というように読めますが(^^)、この出口に関するコメントに関しては恐らく記者会見でも突っ込みがあったと思うので、記者会見要旨のリリースを待ちたいと思います。まぁこういう話を日銀総裁がしても別に市場が反応しなくなったと言うのは、日銀としては良いことなんでしょうな。

引用ばっかりで甚だ簡単でしたが本日はこんな所で。





2004/09/02

お題「10年国債入札/国債市場懇談会」

○今後の需給を占う入札

本日は10年新発国債の入札が予定されています。今回入札される新発国債は償還が3ヶ月長くなる最初の発行(2年債は毎月償還なので別と致しまして)です。10年、5年、20年国債に関しては償還が3ヵ月毎(なのに発行が毎月なのは如何なものかと思ってるのですが、その話は別としまして)なので、投資家さんのポートフォリオを考えれば当たり前なのですが、償還が延びた時が一番ニーズがあるという事になります。で、その後3ヶ月に渡って同じ償還の国債が発行されるので、時間の経過と共に品薄感が解消していきまして段々売れなくなるというのがお馴染みのパターンです。今回の償還は9月ものって事になりますが、9月償還の国債は9月〜11月まで発行され続けまして、投資家ニーズは9月>10月>11月って形になる訳ですな。

そういう訳でして、今回の入札は「償還が新しくなった債券の初回入札」という事ですので、まぁお約束どおり(^^)にきっちりとニーズが集まるかというのは最注目点でしょう。この入札がこける(まぁこける事は無いと思いますが)と来週火曜日には5年入札が控えているので相場には俄かに緊張が走るという形になりそうです。

今回の入札に関しての強弱材料を並べると、

強材料
・経済指標に弱いものが連発している
・8月の相場上昇+フラットニングが急速で、買い遅れ組がいる
・償還が延びている(上記)
・相場の勢いが上向き(何のこっちゃ)

弱材料
・相場上昇で10年ゾーンが買い進まれており、相対的な割安感に乏しい
・週末に米国雇用統計の発表を控えている
・そもそも相場が戻りすぎで、絶対水準バイヤーは過去のしこり玉の整理で売りに回っており、いきなり買うのも躊躇される

まぁ特に米国雇用統計に関しては、ここの所毎月のように「サプライズ!」な結果が出るという豪快な状態が続いておりまして、雇用統計後に債券相場が下ぶれた場合に申し開きが出来ないというお馴染みの言い訳もありますな。

そもそも入札だけを見れば、期内最終月なんで「シェア争い」などと言った要因(それを要因と言うのか?)がありますので、入札は無難に終わるでしょう。そんな意味では入札以降に相場を頑張って持ち上げて10年ゾーンを堅調推移に持っていけるかが注目材料になるでしょう。


と、ありきたりな話ですが、入札に関してはまぁそんな感じ。いつも大予想が外れることで評判の高い(涙)あたくしの今の時点での予想はと言いますと、「入札はやや過熱気味」「セカンダリーの販売はスローになるが、相場が下がらないので結局持ち上げ攻撃になる」という感じでありまする。まぁあたるも八卦あたらぬも八卦(ではなく外れ率が高いほうが価値がありますが^^)と言う事で。一応大真面目に予想したことを書きましたんでそこの所よろしくです。


○15年変動利付国債に関する議論

31日に行なわれた国債市場懇談会の議事要旨が財務省のWebにアップされております。前回の懇談会の最大のお題は「15年変動利付国債の増発問題」「物価連動国債の増発問題」というものだったようで、議事要旨の7割以上はこの話に関る意見となっていました。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/a160831.htm

延々と並んでいる意見を15年変動利付国債に関して集約すると、「15年変動利付国債の増発はやっても無問題」というお話になりますわな。まぁ市場の片隅にいるあたくしですら「15年変動利付国債増発すれば」と思っている位ですから当然の結論になる訳です。

その中でまぁ興味深いというかそれなりに意味のありそうな意見を引用するとこんなあたりになりそうです。

・足元の状況は、景気が減速する懸念が出てきただけで、リセッションに入るという懸念が出てきた訳ではないため、15年変動利付国債や物価連動国債へのニーズは引き続き高い。超長期債もある程度以上の利回り水準であればニーズがある。今後借換債が増額することを考慮すれば、借換リスクに着目して、15年変動利付国債や物価連動国債のような金利上昇にある程度対応した国債と超長期債とをバランスよく増発していく必要。

・米国と比べ、日本の債券市場は分散投資が難しい状況にあることから、リスク特性の異なる商品を提供することが重要であり、15年変動利付国債や物価連動国債の増発は妥当である。 

・15年変動利付国債は、足元発行量が増えマーケットの流動性も高くなってきていると思う。投資家のニーズはかなり高く、発行規模を拡大する余地は大きい。隔月で1兆5,000億円程度でも十分消化できると考えるが、割高な水準で取引されており、増発により価格調整されるおそれがあることにも留意して 、これよりはやや慎重な対応が望まれる。

・15年変動利付国債については、将来の金利上昇の可能性に対するヘッジや、2006年度末からスタートする新BIS基準への対応等の観点から潜在的な投資家ニーズがあり、来年度については隔月発行で1回あたり1.5兆円までは増額することは可能と思われる。今年度下期については、他年限の減額をしてまでも増発をする必要性は高くはないが、来年度の発行増額に備え平準化を図る観点から、隔月発行で1回あたり1.3兆円程度に増額するということであれば、一定の意義はあると考える。

・15年変動利付国債については、足下では1.3兆円でも1.5兆円でも消化は可能と考えるが、(1)償還までの間にイールドカーブがインバートした場合には、金融機関が逆ざやとなった既発債を抱え、流動性が急激に低下することになりかねないこと、(2)金融機関についてみれば、2年債、5年債等の需要が15年変動債に移っている面もあること、(3)今年度下期に大幅増発すれば、来年度の増発額も大幅になるのではないかとの思惑も生じる恐れがあることから、むしろ今年度下期の増発額は1.2兆円程度とし、来年度は隔月1.4兆円ないし毎月0.7兆円程度とすることが妥当ではないか。


まぁ一つ一つの意見に関しても「あれ?」と思うような突っ込み所もあるのですが、実感としては最後の意見にある(2)のあたりに関して同意ですので、そういう意味では特に2年ゾーン以下の短い年限の国債発行の減額を視野に置きながら15年変動国債を増発するというのが宜しいのではないかと思います。

あまり多く引用しませんでしたが、変動15年と20年をあわせて増発という意見もいくつかあったのですが、現状の相場を見ると変動15年と20年は全然別の世界で動いており(理屈上は10年〜20年のイールドカーブ形状で変動15年国債の理論価格が変化することになっている)まして、足許の相場では全然連動性が認められませんので、将来は兎も角現状ではどうなんでしょうね。


それから、上記最後の意見にある(1)に関してはこの15年国債の罠な訳でして、同じ意見が他にも出ています。要するにこの債券は導入以来本格的な試練(=短期金利が上昇しながらイールドカーブがフラット化するという恐怖の展開)を経た事がありませんので、本当に将来に渡って無事かというとこれがまた「やってみないと判らない」という大変に出たとこ勝負的なものもある訳ですな。

ま、当面は新BIS規制対応商品ってことで売れるでしょうけど。


と言うことで、発行計画がどうのこうのという話の際は変動利付国債と物価連動債の増額と発行年限の長期化という話になりそうですな。相場自体は既に織り込んでいる節があるので特に波乱になりそうもないですね。まぁ市場懇談会が役に立っているということで(^^)。


ではでは。



2004/09/01

お題「質問主意書を眺めてみる訳だが」

○質問主意書とは?

質問主意書っていう制度がありまして、民主党がこの制度の利用を党として奨励しているらしく、しょうもない質問主意書の乱発によって行政に負担が掛かってしまい、政府から「いい加減勘弁してくれ」というお話がでているというニュースが先月の頭にちょっとでていました。ネタバレをしますと、あたくしが巡回しているWebの一つで著名なWeb(というか「はてなダイアリー」なんですが)「霞ヶ関官僚日記」にその辺の話が出ていて初めてこの制度の事を知ったのですが。

結局、あまりにも無駄な質問主意書の提出は自粛しましょうって話になったと言うところで話は落着したのかなぁと思いながら別のネタを見る為に東京新聞朝刊を読んでいたら、「質問主意書封殺がどうのこうの」という記事が特報(28〜29面)に出ております。多分東京新聞Webでも記事を見る事ができると思いますのでそちらもご参考に(^^)。何とタイムリーな企画>自画自賛


あまりにも下らない質問主意書を出すアフォがいる為に、8月6日からは主意書の提出前に議院運営委員会で事前に議連の理事がチェックするという事で話がまとまっていたようです。一応国政調査権の一環の制度なので無くなるのも如何な物かと思いますが、実際にどういう質問主意書がでているのかと思って眺めてみると「こりゃ制度の濫用でしょう」って思う訳ですわな。東京新聞は質問主意書の制限問題を一生懸命叩いてますが、どんな質問主意書が出ているのかを読んでから記事を書いていただきたいものです。


○で、今国会で出された主意書を見る訳ですが

という訳で前振りがやたら長くなりましたが、直近の国会であります第160回国会で提出された質問主意書とそれに関する政府回答を衆議院Webで眺めてみると、やはり「こりゃ駄目だ」という思いを強くする訳であります。

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/kaiji160_l.htm

上記URLの下の方が160回国会での質問主意書リストって感じであります。まぁ随分と色々な質問が出ていまして、隅から隅までは読めていないのですが、まぁ何となく題名を見て「こりゃ変だろう」ってのをピックアップしてから質問内容を眺めてみたのですが、見事に色々なものが釣れるという観光釣堀状態であります(-_-メ)。

○質問主意書といえば長妻昭議員らしいです

事前知識として「長妻昭」という議員センセイが碌でもない質問を出すというのはあった(ちなみにこの先生は160回国会での衆議院財務金融委員会で社会保険庁の経費の使い方がどうのこうのという質問をしているのですが、別の委員会で質問したらどうですかね〜と思うのでありました。)ので、この先生の質問を見たらもういきなり腰が砕ける訳です。

この辺の質問は題名を見ただけで笑えるわけですが。

質問番号 27
質問件名 国会議員よりも高額給与をもらう国家公務員等に関する質問主意書
提出者名 長妻 昭君
会派名 民主党・無所属クラブ

質問番号 28
質問件名 政府のリストラに関する質問主意書
提出者名 長妻 昭君
会派名 民主党・無所属クラブ

で、どんな質問をしているかといえば、
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160027.htm
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160028.htm
という感じです。お忙しい方の為に質問番号27をご紹介するとこんな感じなのですな。

国会議員よりも高額給与をもらう国家公務員等に関する質問主意書

一 現在減額されている国会議員の年俸よりも、高額な年俸を受け取る特殊法人・独立行政法人・認可法人・公益法人等の役職員に関して以下を明らかにした上で、その金額が適正か否かに関して内閣の見解を問う。部署名、役職、年俸額、高額年俸の理由。
 プライバシーの保護で法人名を出せない場合は、それぞれの種類ごとに該当する法人数とそれぞれの年俸額を明らかにした上で、内閣の見解を問う。

二 国会法では、国会議員は、一般職の国家公務員の給与よりも少なくない歳費を受けるという規定がある。
 現在の国会議員よりも多くの歳費をもらう一般職の国家公務員は存在するのか。存在するとすれば、その部署・役職名と年俸額を明らかにした上で、国会法に抵触するか否か、内閣の見解を問う。


 右質問する。


「質問する」って言いますが、何の為にこの質問をしているのか全く意味不明。官僚に対しても実力主義を導入(まぁその事に関してあたくしは?を付けたい気分なのですが、世の中の流れは実力主義導入って感じですわな)するっていう話がトレンドになる中で、何で上記のような悪平等的な質問をするんでしょうな。

国会法に規定があるのをいいことに質問をしてるんでしょうが、「実力主義」という観点を持ち込んで話をするならば、国会に当選してから「これから勉強したい」などとスカタンなことを抜かす人やら、比例代表に立候補した会見で「党の主張と合わない場合は離党も有り得る」などという選挙制度も判っていない発言をする人やらが議員になっている現状との整合性について長妻君の見解を問うって感じでありますな(官僚の実力主義と代議士の土俵は違うから、今の理屈にはちょっと無理があることは承知しております^^)。

ちなみに、こんな質問にも真面目に答えないといけないので、資料付きの回答が出ております。上記Webのリンク先から辿ると政府回答が読めますよ。

ちなみに質問番号28はもっと無茶苦茶で、「政府のリストラに関する質問主意書」と称して質問している項目がこんな感じですよ先生。

一 過去五年間で、削減した政府の部署(課名、係名ごと)を削減時期、削減理由、また、過去五年間で、増設された部署を増設時期、理由とともに明らかにした上で、その妥当性について内閣の見解を問う。
二 過去五年間で、無くなった予算の経費項目、時期、理由、また、過去五年間で、新設された予算の経費項目、時期、理由を明らかにした上で、その妥当性について内閣の見解を問う。
三 過去五年間で、閉鎖した公益法人名と(以下引用省略^^)


まぁ答えようが無い訳でして、つーかこれって只の嫌がらせ質問としか思えないのですが、政府回答はこうなります。

一について
 課及び係の廃止及び新設については、地方支分部局等も含め広範囲の調査が必要であり、その整理にも膨大な作業を必要とすることから、網羅的にお示しすることは困難であるが、行政需要に応じて適切に行っているところである。
二について
 お尋ねの「予算の経費項目」が何を指すのか必ずしも明らかではないところ、例えば、歳出予算における項についてみても、過去五年間で廃止及び新設された件数が膨大であり、廃止及び新設の理由の整理にも膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難であるが、予算編成を的確に行う観点から、項の廃止及び新設を適切に行っているところである。
(三以下の引用省略)

まぁこうとしか答えよう有りませんわな。何なんでしょう、この長妻って人は。


○こんなのもありますが

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160060.htm
質問番号 60
質問件名 国家公務員の有給休暇に関する質問主意書
提出者名 若井 康彦君
会派名 民主党・無所属クラブ

わが国における勤労者の有給休暇は、諸先進国と比べ必ずしも十分ではないと認識している。特に、中小零細企業の勤労者は厳しい労働環境に置かれている。こうしたわが国の労働環境を向上させるためには、まず法律等に則った国家公務員の有給休暇が確保されることが重要と考える。
 そこで、以下質問する。

一 国家公務員の有給休暇、とくに育児休暇と、配偶者が出産した場合の育児休暇の消化率と、同都道府県毎の消化率を示されたうえで、政府としての国家公務員の有給休暇、育児休暇等に対する考え方を示されたい。
 右質問する。


一番笑えるのは「諸先進国と比べ必ずしも十分ではないと認識している。」という部分。真面目に質問する気が有るなら、先進各国の労働統計くらい調べてから質問しそうなものなのですが、質問する方は「俺様はこう思っている」というだけの状況で一々政府に質問するんですか?

まぁ政府回答は皆様ご覧下さい(^^)。



○今国会での極めつけの豪快な主意書はこれかな?

国会の場で係争中の案件について質問をしている不思議な人が居ます。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a160068.htm
質問番号 68
質問件名 UFJ銀行の不正融資に関する質問主意書
提出者名 岩國 哲人君
会派名 民主党・無所属クラブ

題名を見たときは真面目な質問なのかと思いきや、この内容たるやまぁお読み頂くと宜しいかと思いますがこんな感じです。

 世界でも有数の金融機関であるモルガン・スタンレー・インターナショナルの代表者であった杉山哲氏が一九八七年三月五日に脳梗塞で倒れ、意思能力等に著しい障害が残ったことが利用され、その後一年余りの間にUFJ銀行(三和銀行)より合計二十五億円もの金銭が杉山氏の知らないところで貸し付けられることとなった。その有効性を争った裁判において、UFJ銀行側が以下の行為を行っていることが判明した。 このことに関して、二〇〇四年三月一日の予算委員会第一分科会において、質問を行ったところであるが、わが国の金融機関に対する不信を取り除くためにも、より厳格な監督行政が必要であると考え、次の事項について改めて質問する。
(以下延々と係争中の事件の説明なので省略)


何なんでしょうこの人は???と思って岩國氏のWebを見たら、このセンセイはかつてモルガンスタンレー投資銀行に77年から84年まで勤務していたようですな。という事はこのセンセイは国会の質問主意書という場、すなわち国政調査権を利用して知人の係争中の案件に関して圧力を掛けているのではないかっていう穿った見方をしたくなる訳ですよ。あたくしのような性格が斜めになった人間に言わせますと。

ちなみに、話は横に逸れますが、この係争案件は別にモルガンスタンレーと関係ない話なのにわざわざ「世界でも有数の金融機関である」云々と持ち出す質問者の脳内はどういう構造になっているのか実に不思議です。まぁ自分のWebの自己紹介で臆面もなく「銀座支店長栄転の辞令を返上し」とか「世界最大の投資銀行、メリル・リンチ社へ」などと書く精神構造だから仕方無いのかも知れませんが。

で、この質問主意書に関する政府回答は当然ながらこうなる訳です。

一から六までについて
 個別の金融機関による個別の取引に関する検査の有無や結果等を明らかにすることは、将来の検査一般において、正確な事実の把握を困難にするなど検査の実効性を損ねるおそれがあること等から、答弁を差し控えたい。いずれにせよ、金融機関に対する検査においては、業務の健全かつ適切な運営を確保するとの観点から、その業務又は財産の状況について的確な実態把握に努めているところである。
 なお、一般に、銀行と債務者との間で生じる個別の紛争は、私法上の契約に係る問題であり、基本的に司法の場を含め当事者間で解決されるべき事柄であると考える。


○立派な制度も運用次第って事ですな

元々この質問主意書制度がどのようにして出来たかは不勉強で存じておりませんが、国会の委員会などだけでは質問の機会が少ないので、この制度自体を上手に利用すれば少数政党にいる議員でも有効に質問などが出来るはずなのですが、アフォな利用をする人のせいで碌でもない事になっている模様。まぁ株主総会という制度を乱用する事によって発生した総会屋みたいなものと言うとちょっと言い過ぎですが、まぁ放置しておくと同じようなことになりそうです。

民主党も真面目に政権を取る気が有るのであれば、もうちょっと真面目に質問主意書を厳選していただきたいと思う次第です。他にも「何じゃこりゃ」というものがある質問がありますので、まぁご覧いただければと思います。