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朝のドラめもん


2004/11/30

お題「国債入札制度に係わるドラめもん的雑感」

物凄く真面目に取り上げだすととても重いネタなんですが、ちゃんと考えが纏まっているわけではないので雑談的に。

議事要旨を見てないのですが、報道によりますと昨日の国債投資家懇談会では国債引受シンジケート団の廃止がどうのこうのという話題が出ていたようですな。まぁ国債市場特別参加者制度が本格稼動している訳ですからシ団の廃止も検討しても宜しいかと思います。で、そんなこんなで国債の入札制度に改善の余地は無いでしょうかって話はここ最近のネタでもあったりするようです。

○応札価格の刻みの問題

応札価格の刻みがちと荒いな〜と思うのは10年国債。何せ昔のように豪快なディーリング相場では無い昨今において、応札価格の刻みが5銭というのは如何にも荒すぎ。5銭というのが0.5bp以上と言うことでして、業者間の呼び値公称刻み幅以上であります。ついでに申しあげれば、最近はあまりにもAsk-Bidがガチガチになっていたり、相場自体が全然動いて無い時なんぞには0.25bpなんぞで堂々売買しておりますので、まさに呼び値幅よりもデカイ応札価格の刻み幅であります。

現在のように常に入札が過熱してくれる(ただし10年国債に限って言えば最近あまり過熱しない傾向にあるのですが)のであれば「按分になりそうな価格の上にも応札しなきゃ」などという動きも出てきますので発行体ウハウハではありますが、相場が何となく弱くなるとこの刻みが逆効果として作用しそうな悪寒がする訳でして、まぁ改善の余地があろうかと思う訳でございます。

ちなみに、2年国債も本当は刻み1銭ですと値段としては荒いのですが、ゼロ金利がいつまでも続く訳でもなし(と言いつつまだまだ続くと思っているあたくし)、まぁ短期金利がそれなりに動くようになれば無問題かとは思います。0.5銭刻みにでもなるとまぁ便利は便利ですが。


○落札限度額の問題

先ほど「ここ最近の10年国債入札はあまり過熱していない」と申しあげましたが、この「あまり過熱しない入札」に貢献しているのが落札限度額の存在ではないかと思っております。

特に2年国債入札で思いっきり顕著に見られるのですが、どこぞの大手業者が代わる代わる発行量の7割くらいを落札するというアホウな状態が毎月のように発生した挙句、先月の入札のように過熱しすぎで7割落札組が手を引いたら「そんなに入れたくはね〜けど7割落としてくる人がいるから多めに応札するしかありませんな〜」ってなもんで多めに応札した人が叩き投げモードになってしまうわけでして、落札限度額が無い入札で特定業者の買占めが行われるというのも如何なものかと思うわけです。

まぁ目先的には入札が過熱したから発行体としてはオイチイですが、より長い目でみれば馬鹿入札の連発は国債の安定消化を阻害するものでございまして、入札はあまり馬鹿馬鹿しく過熱しすぎず、かといって毎回入札が割安になるというのも変な訳でして、その辺のバランスはムツカシイですが、特定業者が毎回のように買占める入札(2年の他には短期国債もその傾向あり)というのは制度改善の余地があろうかと思います。

10年国債の場合は落札限度額がありますので、1社で発行額の殆どを抑えるという荒業ができません。その為に「そんなに馬鹿馬鹿しい高値で応札しなくても買占め攻撃にはならないでしょう」という心理が働いて比較的まともな入札になるという結果になるという事でして、まぁ応札限度みたいな発想も必要ではないかという気はする訳です。あるいは米国債みたいに自己勘定と顧客勘定での応札を分けて自己勘定だけ落札限度だか応札限度だか忘れましたが、リミットを設けるとか、まぁやり様はありそうですな。


○応札限度額の問題

同じような理屈なのですが応札限度額問題。現在の国債入札では応札限度額がございませんでして、応札を行う日銀ネットでの入力可能額が事実上の応札限度額になっております。で、どういう事が生じているかと言うと、短期国債なんかでは99兆9999億9000万円などという応札をする人が続出しちゃうわけですわな。まぁ短期国債の場合は極端ですが、「多分この価格が最低落札価格になって按分がかかるんでしょう」って価格に10兆だの20兆だのという応札が入るケースも相変わらずありまして、お蔭で応札倍率が幾らかという事が何の意味もなくなる(応札倍率が低いときだけ参考になりますが)という弊害も生じております。

ちなみに、現物株式のディーラーもやったことがあるという債券市場では珍しいあたくしは株式のディーラーやっている時に取引に関する諸規則が債券と全然違う(極めて厳しい)のにビックリ致しましたわな。例えば現物株式でストップ高買い気配になりますと、あまりにもバイカイが極端に偏っている場合は値段がつかないのですが、まぁ普通にバイカイが偏っている場合は多い方の注文が比例配分されて取引が成立する訳なんですが、この時に「比例配分狙い」ということで大目の注文(買い気配なら買い注文ですな)を入れると「作為的相場形成」に該当いたしますのでタイーホでございます。

ついでに申しあげますと、ブックビルディング方式での売り出しあるいは新株発行の際に多くの配分を得る為に行う「カラ注文」も違反(公正慣習規則違反)でございます。いつぞやのドラめもんで指摘しましたが、日経新聞あたりでも勘違いしているようで、サンデーニッケイのマネー指南みたいなコーナーで「人気の新規公開株の配分を受けるためには複数の証券会社で注文しましょう」というようなFPのアドバイスをそのまま掲載しちゃったりする訳ですなこれがまた(^^)。ちなみに、同一人物が複数の証券会社で同じブックビルディングに申し込むのも規則違反。他人名義でやるのは名義借りなので証券取引法違反ですわな、うひょひょのひょ。


で、国債入札におきましては発行予定額がなんぼかある訳でして、全部落札しないのが判っていて過大(発行予定額を大きく超過するような)な応札をするというのは現物株式市場に直しますと「過大注文」にどう考えても該当する訳でして、まぁ如何なものかと思うわけですな。もうちょっと何とかならんかと思う訳です(まぁ落札限度額があれば無問題かもしれないですが)わな。



ちなみに、この手の「株式市場の規制と比べて何でこう債券市場は無法地帯なんだ」という話を債券市場関係者の前で堂々とすると(ドラめもん推定で)10人中7人位はいやーな顔をしまして、そのうち2人くらいから「債券市場はプロの市場で株式市場と参加者層が違う(以下省略)」という猛反論を食らいますので注意が必要なわけでございます。

で、ドラめもんも債券市場関係者向けに書いているんでしたな。また読者が減るような事を書いてしまったではないかと思いつつも、既にお時間が無いので今更全部書き直す訳にも行かず(というのは大嘘で元々直す気ありませんが^^)という事で本日は債券市場関係者のご機嫌を損ねる部分があったことをお詫びしておきますねm(__)m。


ちなみに、本日は国債決済制度(というか来年始まる事になっている国債決済機関)に関しての愚意見も書くつもりだったのですが、こちらに関してはまた改めて。




2004/11/29

お題「毎度のパターンなのですが」

相変わらずネタがあまりございませんので先日の春審議委員の講演からちょっとだけピックアップ。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0411c.htm

○審議委員の間で最も平均的な見解と思える景気の見方

基本的に春審議委員の講演とか記者会見とかを見ますと、端的に言ってしまえば「何の独自色も無い」っていうのが特徴的でして、ネタとして取り上げる方としてはヒジョーに面白くございません。とは申しましても、何の独自色も無いって事はよーするに「最も無難な見解」でもある訳ですので、まぁ審議委員間の平均的な見解を知るのには便利だという事でもあろうかと思うわけです(本当か?)。

で、景気に関する見方を読みますと、まぁ強気って印象を強くします。順序良く纏められているので読みやすい講演ではあります。

・海外経済の先行き

『まず、前提となる海外経済の先行きについては、原油価格の上昇やIT関連財の需要調整もあって、これまでの高めの成長から若干鈍化しますが、米国や中国を中心に拡大が続くものと見ています。』

『既に見られているIT関連財の在庫調整については、デジタル家電市場が成長期にあること、過剰在庫が大きく膨らむ前に生産が抑制されていることから、基本的には軽い調整で終わる可能性が高いと考えています。』

『このため、輸出、生産は若干の調整を伴いながらも増加基調を続けると見ています。』

適当に省略して引用してますが、あまり懸念していないというかろくすっぽ懸念していないというのが正直な印象でして、先日の金融経済月報と話が合っておりますわな。

・企業収益と設備投資

『また、企業収益の改善も続き上場企業の中間決算も概ね順調で、下期については慎重な見方をしていますが、それでも04年度は2年連続で過去最高益を更新すると見込まれています。』

どうも先日の日経新聞「冬のボーナス3%増」記事と似たものを感じるコメントでしてちょっと「??」という気もするところではあります。ちなみに日経新聞の記事では「冬のボーナスが前年比増加します」って話なのですが、調査対象が大手製造業に偏っておりまして、「それは景気の良い所だけサンプリングしてるんじゃネーノ」と突っ込みを入れたくなるような話がございましたが、この春審議委員の「企業収益の見方」に関しても「それは見ているサンプルに偏りがございませんでしょうか?」という突っ込みを入れたくなる所でございます。

『過剰債務や過剰設備など構造的な調整圧力が和らいできている環境の下で、設備投資の増加基調は継続するものと見ています。7〜9月期GDP1次速報値における設備投資は前期比マイナスとなりましたが、各種の設備投資調査等でも、04年度の設備投資は高い伸びが予測されています。』

設備投資に関しては相変わらず強気の見方です。この辺に関してはあたくしも突っ込む材料が正直良く判らんのでとりあえず「はいはいそうですか」と流しておきましょう。

・雇用と個人消費

『雇用面では、パート労働者やアウトソーシングなど所謂非正規雇用の活用などによる企業の人件費抑制姿勢は続いていますが、既に失業率の低下や雇用者数の増加が見られており、現在下げ止っている雇用者所得も緩やかな増加に向かうものと見ています。』

この辺の楽観的見解に関しては、あたくし個人的には「それはどうよ」って思うのですが、まぁこの辺は個人的な事情によって見解が異なるところでもありますので何とも言い難い所ではありますが、どうもそんなに楽観視していいのかな〜と思いつつも、日銀的には相変わらず強気の見解をキープしていると言うことで宜しいのではないかと。

『このところ連続して上陸した台風や新潟中越地震の影響によって消費者マインドが押し下げられた部分もあると思いますが、こうした雇用者所得の増加は既に見られている消費の強さに、持続性を与えるものと見ています。』

という事で、雇用者所得が増加するから消費も持続的に強いって論理展開になっております。その割には消費者マインドに関して台風だの地震だのという話しか持ち出していないのが如何なものかと思うわけでして、「増税キャンペーン」がここへ来て連日のように話題にされているという問題が消費者マインドにど〜ゆ〜影響を与えるのよって話に関しては見事にスルー。如何なものかと思うわけですが、政府与党の税制改正(というか要するに増税だが)論議に悪影響を与えないように気を使ってスルーしているのか、それとも福井総裁が常々仰せのように財政均衡化路線が長い目で見たら消費者マインドを好転させるという発想なのか、まぁ真意は良く判らんのですが、とりあえずこの辺も読んでるこっちが違和感をもつような強気見解であります。



この後景気の上振れ下振れ要因を挙げているのですが、先日公表された金融経済月報と同じ話でございますので引用省略。原油価格動向に関しても一項を割いて懸念材料として取り上げつつも、日本経済単体として考えた場合には懸念してませんなってお話になっております。

で、企業活動の変化って話をしていて、どうも「???」な印象を与える内容なのですが、どこをどう突っ込めば良いのか考えが纏まらないのですな。どうも企業経営が「攻めの経営」になってきたと言いたいようなのですが、それは要するに2極化の進行なのではないかという気がしますが・・・・・


○金融政策に関して

・量的緩和政策の効果に関して

山口前副総裁が時事通信社とのインタビューで「量的緩和政策のレビューを行うべきではないか」って意見を表明していましたが、まぁ相変わらず量的緩和政策の効果に関する見解は「それは量への評価じゃねーだろー」という話になってます。

『短期の市場金利がほぼゼロ%まで低下した状況でさらに金融緩和を進めるため、他の先進国にあまり例を見ないこの量的緩和政策を採用しました。また、量的緩和政策の変更の条件を明示することによって、長期間に亘って低金利が続くという見方が市場に浸透し、長めの金利にも低下圧力が働きました。』

『日本銀行の量的緩和政策は金融市場の安定や景気の下支えに効果を発揮したと考えています。』

結局ここでも「ゼロ金利」+「時間軸」の効果に関しての説明はあるのですが、「量」の意味はどうなっているのよって事に関しては審議委員の間でも意見が集約されていないのか元々集約する気がないのかと言った所でしょう。ちなみに、「量」に関しては岩田副総裁がかつて「為替市場への円売りドル買い介入で増えた外為特会に日銀当座預金残高の増加が見合っており、これぞ為替介入の非不胎化」という話をしていた事がありましたが、「量」の意味に関してはこの岩田副総裁のコメントしかございませんな、相変わらずですが。

まぁ結局レビューをすると量的緩和政策の「量」の意味は岩田副総裁の指摘くらいしか無いって事でしょうか。そう考えるとどこがどう「追加緩和政策」だったのか謎は深まる訳でございますが。

・量的緩和政策解除のイメージ

どうもこの点に関しては平均的な見解というものが無いようでして、皆さん言ってる事がバラバラもいいとこでして、春審議委員の場合は現在の金融政策の枠組みが「景気に遅行するCPIの数字に一点張り」になっている筈なのに何故か「金融政策変更は早すぎず遅すぎず」と言い出まして、その代わりなのか何だか判りませんが、量的緩和政策解除において論議としては終わった印象の強い「2段階解除論」が復活しているという内容になっています。

『いずれ来る枠組み変更は、早すぎず遅すぎず、そのタイミングを誤らないことが日本銀行の大きな課題ですが、私はどちらかといえば再びデフレに戻らないことを重視して判断したいと考えています。』

早すぎず遅すぎずと言いながら「デフレに戻らないことを重視」っていうのも何を言いたいのか良く判りませんな。で、2段階解除論になる訳でして、

『枠組み変更のプロセスとしては、(1)当座預金残高目標を金利目標へ切り替え、当座預金残高を縮小させるプロセスと、(2)金利目標をゼロからプラスに切り替えるプロセスがあり、それぞれのプロセスをどう組み合わせていくのか、どのタイミングで開始し、どのようなスピードで進めるかは、その時の情勢に応じて判断することが必要です。』

この話ですと思いっきり2段階解除論に読めますな。量的緩和政策の「量」に意味があるというのであれば上記の2段階解除論にも意味があるのですが、量に関するレビューが無い状況でその意見はどうかと思うのですが。

『その判断基準としては、(1)基本的にコアCPIのレベルとその上昇スピードおよび持続性の見通しにかかっていますが、(2)景気の実態、(3)地価等資産価格の状況、(4)金融システムの状況、(5)金融市場の状況などにも注意を払う必要があると思っています。』

ここまで来ると総合判断以外の何物でもなさそうですが、まぁいっか。


で、毎度毎度不思議に思うのですが、量的緩和政策解除に関する各審議委員の意見を見ておりますと、「景気に強気な人は解除条件の緩和や2段階解除論のような『量的緩和解除の実質先送り』」を提唱しまして、「景気に強気じゃない人は解除条件に関して『条件整ったらとっとと解除』」的な意見表明を行うという傾向にありまして、要するに皆さんあまり「量的緩和政策解除」のイメージが無いのではないかと思ってしまうところではあります。その辺の問題に関して一番色々と発言しているのが福井総裁だってのも何だか面白い所ですな。

ではでは。





2004/11/26

お題「小ネタを少々」

あまり脈絡のないネタを連発。

○久々にロクデナシ入札

昨日の2年国債入札。最近短期金融市場で当座預金残高目標の維持がしんどい状況になっており、無理矢理資金供給をする為に短期国債買い切りオペをどんどん実施しないといけませんってぇ状況になっている事は先日ドラめもんでご紹介したとおりであります。

当然ながらその影響で短期金融市場では運用する商品が日銀のオペで吸い上げられるという状況になっておりまして、ついに運用商品がなくなってしまったせいか2年債も威勢良く買われ出しまして、入札前日には先月入札の行われた2年226回債の100円超え、0.1%割れが買われるという有様でして、「あらあら」という感じになってしまいました。

で、入札当日である昨日の前場もまた煽りが入る形で買われてしまいまして、前場の引け時点では2年226回債は0.085%が買われて買い気配。新発債の227回債は0.09%(100.019円)が買われてしまいまして、入札まえのプライストークでは「困ったもんですがまた100円3銭じゃないと落札額が読めませんな〜」などという感じになっていました。

そんな話をしているところで、相場の煽りに止めを刺すべく飛び出たニュースが「短期国債買入オペが2年ぶりの札割れ!」でありまして、「そんなに短期市場の玉が無いのか」って事になって業者間売買でも0.09%がまたも買われたのですが・・・

後場が始まって何故か業者間スクリーンに残っていた0.09%が買われたのにその後も0.09%が出合うという状態。あれれ?と思いつつ入札結果の蓋を開けてみれば0.8%ぽっちの按分とは言え落札最低価格は100円2銭。平均落札価格は100円3銭でして、おまけにいつも競う様に大量落札して他の業者の営業を敢然と邪魔してくださる大手2社(どことは言いませんが^^)がろくすっぽ落札していないという観測が広まると、「ありゃま、落札しすぎちゃった」って業者がポジション整理(つーか投げ)に踏み切りまして、あっという間に100円まで下落。2年債でいきなり3銭(平均落札価格から)下落ってのも久々に見せてくれる相場でありました。

まぁ因果関係がどっちなのか判りませんが、現物国債の中期ゾーンもやたらめったら売り物勝ちになりまして(中期ゾーンの売りが先にあったから入札で大手2社が頑張らなかったのかもしれませんが)、ドル全面安歓迎光臨で139円18銭まで上昇したはずの債券先物も何と前日比マイナス圏まで下落と相成りました。久々に破壊力抜群の入札ではございました(-_-メ)。


まぁ現在の資金需給が継続するのであれば2年国債あたりまでその恩恵が回ってくることが容易に予想できますので、まぁ0.1%あたりが均衡点なのかもしれませんが、ドル買い介入でもやらかしてくれてFBを威勢良く発行してくれるとその辺の事情も変ってくるというリスクもありますので要注意。どうも市場関係者(つーか要するにあたくしのお友達)の話を聞いて回ると案外「介入やってもしょうがないから介入しねぇんじゃね〜の」って意見や「対ドルで円高だけど他通貨まで考えたらそんなに介入する必要感じてないんじゃね〜の」って意見が多く、介入は口先だけでしょって見方が多いみたいですな。局地的な話でございますが(^^)。

そもそも当座預金残高目標額を昨年景気見通しを上方修正している中で引き上げたのは「介入のやりすぎで短期金融市場にミニ・クラウディングアウト状態が発生した」というのも背景にある(とは日銀では岩田副総裁以外誰も認めませんが)わけですので、またぞろ介入をバンバンやりだすと(グリーンスパン大先生が介入するなと暗に言っておられる気がするのですが)同じ理屈で短期金融市場での運用資産逼迫感も解消しちゃう訳でして、まぁその辺には注意されたしって感じでしょう。

しかし久しぶりに無茶苦茶な入札でした。



○何のための証券仲介業かってお話

まるで別件なのですが、昨日のニュースで「広島銀行がみずほ証券と証券仲介業で提携」ってぇのがございまして、報道によりますと(プレスリリースは面倒なので見てません)、広島銀行ではみずほ証券の提供する外貨建て債券や仕組み債の取り扱いを解禁になる12月から開始するそうですな。

いやまぁ別にそれはそれで良いんですけど、最初に扱う商品が外貨建て債券や仕組み債ってのが誠にアレなものを感じる訳ですな。あたくしは兼ねてから「仕組みが複雑な金融商品に碌なものなし」という証券会社の人間がそれを言うと同業者から袋叩きにされそうな事を申しあげているもので、「証券仲介業の第一弾が仕組み債かよ!」と脱力するのでございますな。

金融商品ってのは商品がそのまんま「お金ちゃん同等物」である性質上、製造原価が読みやすい商品でして、物を売るときに「いかに買い手にこっちの利幅を悟らせないか」っていうのが高収益確保の源泉であるという事を考えますと、金融商品のうち仕組みが簡単明瞭なものというのはその分薄利多売を余儀なくされる訳でして、高収益確保の為に色々と訳の判らん装飾を施して製造原価を訳判らなくした商品を手を変え品を変えて提供している訳でございます。当然そのような商品を売っていただければ仲介してくださった業者様にも手数料を多くお支払いできるという訳ですな。

最近銀行業態では「手数料ビジネスの拡大」ってな事で変額年金保険をせっせと販売してみたり(おかげで保険販売員資格者が大量発生したと思いますが)しておるようですが、今般の証券仲介業参入でも結局は「手数料が沢山頂戴できる商品をせっせと仲介しましょう」って話になるようでして、まぁいきなり青臭い正論を言い出しますと、「株式市場活性化の為に証券仲介業制度で証券販売窓口を増やすって話じゃなかったでしたっけ??」と申し上げたくなる訳ですな。ええ、勿論債券だって直接金融ですから「間接金融から直接金融へ」には叶っておりますが。


ま、先日マクラでご紹介した「松竹の映画ファンド」もそうなんですけど、どうも最近は新規に何かやる場合でも「まずは市場を開拓して」っていうような余裕は無いんでしょうな。最初の一発目に手掛ける案件がどう考えても「売る側にとって利幅が確保できそうな商品」になっているのが誠に残念至極でございます。その点で言えば、数年前からやっている銀行の投信窓版は導入当初「銀行の預金者がとっつきやすい商品を」って感じでして、まぁゲテモノ的な商品を積極販売するような向きが無く、市場の拡大に寄与したのではないかと思う次第でございます。

まぁ買うほうが注意すりゃぁ良いんですけどね。お金の「消費者教育」も必要ではないかと思われる今日この頃。ただしあまり皆様賢くなられるとわたくしどもの商売がもう思いっきりしんどくなりますのでそれはそれで困ると言う因業な商売でもあるのですけどね(^^)。

なお、広島銀行とみずほ証券の名誉の為に申しあげますが、2005年2がついからは株式などの商品の取り扱いも開始する予定になっておりますので念の為。でもみずほ証券で個人の相手できるのかな〜??


○春審議委員の講演

というのもあったのですが、正直特筆することは「なぜか2段階解除論のような話をしている」って所くらいでして、正直面白く無いので本日は時間もなくなってきたので省略します。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0411c.htm









2004/11/25

お題「夏草や・・・・」

こういうのを「つわものどもが夢の跡」とでも言うのではないかと(^^)。

と申しますのは、相変わらず平均株価くらいしか材料の無い債券市場なわけですが、昨日は10月12日、13日開催分の金融政策決定会合議事要旨が公開されて、世の中に20人ほど存在すると思われる(ドラめもん推測)日銀マニアの間にどよめきが起こりました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041013.htm

で、昨日17時23分に配信された時事通信社の時事メインコラム「金融観測」で『決定会合は放談的?=「とりとめのない」議論』というお題で今回発表された議事要旨を斬っておりまして大変に面白いので時事メインをお持ちの方は必見ですな、と書くと話が終わってしまいますが、冒頭のところだけ勝手に引用します。

『日銀が24日発表した10月12、13日の金融政策決定会合・議事用紙は、「とりとめがない」(銀行系証券アナリスト)と受け止められた。政策ロジックの喪失により、同会合が放談的になるのは否定できないが、意味不明の市場機能論がなお浮上する傍らで、それを諭す委員。そして、解除イメージの必要性を叫ぶ威勢のいい声も上がるなど、確かにとりとめがなくなっている。』

今回公表された議事録は指摘のように「とりとめがない放談状態」でもありますし、あたくしが最初にさらっと見た印象では「まぁおまえら落ち着け」とでも言いたくなる「景気楽観でお祭り状態?」というものもありまして、わずか1ヶ月半前には随分と景気回復、というか景気拡大で大喜びしていたんですな〜と思ってしまうわけでして、今月になって内閣府は景気判断を下方修正するし、日銀も金融経済月報で「前向きの循環も明確化」という文言を削っている現在から振り返ってこの議事要旨を拝読いたしますと、あたかも「宴の後」的な風情を感じている訳であります。


○景気回復感を強調しているように見える執行部報告

まず最初に「金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要」というのがありますが、こちらで発表される現状(10月初旬現在ですが)報告はちょうど10月の頭にどこぞの経済新聞が突如景気回復大キャンペーンを張り出したのと同じような感じで景気回復感を強調しているような感じです。

・海外金融経済情勢

『米国経済は、家計支出や設備投資などの国内民需に支えられて、景気の拡大が続いている。ただし、雇用者数や資本財受注など、景気拡大テンポのスローダウンを示す指標もみられている。』

『中国は、内外需ともに力強い拡大が続いており、固定資産投資の年初来累計の前年比は、政策当局が景気過熱抑制策を講じているもとにあっても、引き続き高い伸びとなっている。』

『ユーロエリアでは、景気の回復が続いている。ただ、輸出の増勢が幾分頭打ちとなっていることもあって、企業コンフィデンスの持ち直しは一服している。』

ちょっとずつヘッジクローズが入っているのですが、まず最初に「拡大傾向」を強調しておりますな。で、国内経済に関してはもっと威勢が良いよのこれが。

・国内金融経済情勢

『設備投資は、増加を続けている。資本財出荷(除く輸送機械)は、4〜6月に続いて7〜8月も堅調な増加を続けた。9月短観で、設備投資を取り巻く環境を確認すると、企業収益が増加を続けているほか、企業の業況感も着実な改善を続けている。そうしたもとで、2004年度の設備投資計画は、中小企業を中心に、順調に上方修正されている。この間、先行指標の一つである機械受注(船舶・電力を除く民需)は、4〜6月に大幅に増加した後、その反動が出るかたちで7〜8月は減少したが、もう一つの先行指標である建築着工床面積(民間非居住用)については、このところ増加傾向が明確となっている。』

いやまぁこの設備投資に関する所に関しては強気な見方が思いっきり感じられてしまう訳でして、思わずこの部分だけは全部引用してしまいました。この時点で機械受注は減速していたのですが、建築着工面積を持ち出して設備投資の増加傾向に関して言及しておりますわな。うーむ。

引用しだすときりが無いので上記URLの先にある文書をご覧いただければと思う訳ですが、雇用環境、個人消費に関しても強気の印象を与える内容となっております。


○で、肝心の委員会の検討概要ですが・・・・

まぁ直前に発表された日銀短観も特に設備投資なんぞが良い数字を示してましたし、執行部の報告も強気な現状判断ってことでして、大変に良い感じの検討状況だったのでしょうな〜って感じです。正直、今の時点で景気減速傾向が見られていなかったらこの部分だけでも見事に債券売り材料になったのではないかと思う次第で、いつもながら「まぁお前らおちつけ」であります。

『足許の経済情勢について、委員は、輸出の伸び鈍化が引き続き生産面等に影響を及ぼしているが、(1)9月短観において、素材や機械をはじめ、幅広い業種で業況感の改善がみられ、前向きの循環が引き続き働いていることが確認された、(2)個人消費指標は引き続き強めの動きであり、消費者心理を示す指標も改善を続けている、などの点を指摘した上で、景気は回復を続けているとの認識を共有した。先行きについても、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとの見方が共有された。』

「前向きの循環も明確化していくとの見方が共有された」でございますよ先生って感じですが、どうも9月短観が強気の見方を随分後押ししたと思われます。

『海外経済に関して、委員は、世界経済を全体としてみれば、これまでの高い成長からより持続的な成長ペースに速度を落としつつも、着実な拡大を続けていくとの見方を共有した。』

まぁこの時に限らず、海外経済に関しては今月の金融経済月報でも強気の見方は継続なんでこんなものでしょう。要因分析部分は引用割愛致します。


『設備投資について、多くの委員は、2004年度の設備投資計画が9月短観においてさらに上方修正されたことを指摘し、設備投資の増勢は、業種・企業規模の広がりを伴いつつ、力強さを増していると述べた。複数の委員は、能力増強投資に踏み切るなど、攻めの経営に転じる企業が増えてきているように窺われるとの見方を示した。先行きについても、委員は増加を続けるとの認識を共有した。』

『生産について、多くの委員は、7〜9月の鉱工業生産指数は、一時的に横ばい圏内の動きにとどまる見込みであるが、10〜12月は、内外需要の回復を背景に再び増勢を取り戻すとの見方を示した。その上で、基調判断として、生産は増加傾向を続けているとの認識が概ね共有された。』

『個人消費について、委員は、やや強めの動きが続いているとの見方を共有した。そうした動きを下支えする要因として、何人かの委員は、消費者コンフィデンスの改善傾向を指摘した。』

『雇用・所得面では、委員は、求人関連指標や失業率、短観の雇用判断DIなど労働需給を反映する諸指標が改善を続けている中で、雇用者数が増加傾向にあるほか、賃金も概ね下げ止まりつつあり、雇用者所得は下げ止まってきているとの認識を共有した。ある委員は、企業収益の増加が雇用者所得に与える好影響は今後明確になり、いずれかの時点で、個人消費の強めの動きが雇用者所得の裏付けを伴ったものとなるとの見方を示した。』

最後の「ある委員」ってもしかして福井総裁かな〜何て思う訳ですが、まぁ基調としてもうとっても強気。

で、この辺の文章も引用元にあたって頂けるとわかる(全部引用していると時間と量が多くなりすぎるので・・・)のですが、何だか「この間、複数の委員は」とか「また、ある委員は」などというフレーズが妙に多い気が致します。まぁ過去の要旨と並べて比較しているわけではないので本当に多いのかは未確認ですが、毎度毎度見ている人の印象としてそう思うわけでして、冒頭でご紹介した時事メインコラム「金融観測」にあるように、今回の議事要旨は「とりとめのない放談的」な印象を与えるものとなっています。


○金融政策運営の検討は益々放談化

時事メインコラムと思いっきりかぶるのですが、やはりご紹介しない訳にはいかないでしょう(^^)。

『当面の金融市場調節に関して、複数の委員は、量的緩和開始後初めて「なお書き」を発動しないまま半期末越えを迎えるなど、金融市場はきわめて落ち着いた推移を辿っていると評価した。そのうち一人の委員は、こうした状況では、金融機関の当座預金に対する需要が減退しがちであるため、当座預金残高目標の達成は必ずしも容易でないと指摘し、引き続ききめ細かい調節に配慮する必要があると付言した。』

この「こうした状況では云々」の部分が何を言いたいのか良く判らない(原因と結果を混同してね〜か?)のですが、まぁ要するに当座預金残高目標額を達成するのが困難化しつつあるというのは現実としてありますわな。恐らく介入資金の絡みでは無いかと思うのですが。。。。。

『他の一人の委員は、現在のように金融システムに対する不安感が後退しているもとでは、現行の当座預金残高目標を維持するとともに、市場機能復活の芽を摘まないという観点も必要ではないかと述べた。』

えーこれはもしかして福間さんでしょうか。以前あたくしがドラめもんでボロカスに書いた気がするのですが、福間委員は「ターム物取引が活発化しないのは銀行間のクレジットラインが復活していないからであって、金融不安のあるうちは量的緩和政策が必要である」という因果関係を見事に取り違えた怪論を発して、日銀ウォッチャーの間に「おいおい」という声が上がっていたわけですな。

ちなみに市場機能復活がどうのこうのって話は須田さんも得意なのですが、須田さんの場合は「当座預金残高目標を拡大しすぎた為に目標達成の為に日銀がターム物資金を出しすぎてしまい、市場機能(量的緩和の導入時は「市場機能を残しながら緩和効果を出すのでゼロ金利とは違う」って理屈になってました)が損なわれている」という認識だった筈なので、須田さんのご意見では無いと思うのですが。

まぁそんな間の抜けた意見に対しては「おいおいおい」と突込みが入ったようで(^^)、

『これに対し、別の委員は、当座預金残高目標の達成と同時に市場機能の回復の芽を摘まないということは、大変難しい要請であるとした。』

つーか無理だって(-_-メ)。

『さらに別の委員は、少なくともペイオフが完全に実施されるまでは、金融市場の動きを注意深くみていく必要があるとの考えを述べた。』

もしかしたらこれが福間さんかもしれませんな。まぁどうせ10年後にならないと判らないので判明した頃にはどうでもいい事になっているでしょうが、10年後にあたくしが同じようなことやっていたら興味本位で全部検証してみましょう。


『複数の委員は、次回の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示される2005年度の消費者物価見通しに市場参加者の関心が改めて集まりつつあることに言及し、見通し計数などに過剰な反応がみられる可能性もあるので、引き続き、市場の動向を丁寧に確認していくとともに、日本銀行としての経済・物価情勢の見方や政策運営についての考え方を市場に対して分かり易く示していくことが重要である、との考えを述べた。』

まぁアレですな。まずは「市場機能の回復をしながら当座預金はスーパーじゃぶじゃぶにする」などというような「おまえ本当は何も判ってないんじゃね〜のか」とあたくし如き人間に突っ込みを食らうような意見を平然と語るようなお方にもっと勉強をしていただかないと、「市場に対して分かり易く示していく」も糞もねぇと思うのですけどねぇ。


○まぁ落ち着けと

で、最後の一文が今回の議事要旨の白眉でして、もしかして事務局は狙って最後にオチをつけたのでは無いかと思っちゃうくらい面白い(^^)。

『この間、一人の委員は、将来のいずれかの時点では、日本銀行当座預金残高を金融市場調節の主たる操作目標とする現在の金融政策の枠組みから移行することになるので、移行のイメージについて十分に議論しておくことが必要ではないかとの意見を述べた。』

時事メイン「金融観測」での指摘はこんな感じです。あたくしも全く同感。

(引用開始)そもそもビハインド・ザ・カーブの政策運営では事前のイメージは「市場との対話」においては雑音となりかねない。恐らく「改善を示した日銀短観直後の昂揚感が言わしめたもの」(都銀)と推測されるが、この点はやはりと言うか、『展望リポート』の「余裕をもって対応を進められる」との文言が必要なのは日銀だったわけだ。(引用終了)


景気減速の指標が出ているときに公表されたのが不幸中の幸い(本当か?)としか言いようの無い議事要旨でして、もし10月初旬の「株価とかは上がらないけど、まぁ何となく景気回復は持続してるんでしょうな〜」という雰囲気が継続しているような状態でこの議事要旨が出たら、昨年の債券相場を髣髴させる暴落を演じてもおかしくはなかったでしょう。

10月の議事でこんなに威勢のいい話をしていた訳で、こうなりますと11月の議事要旨が早く見たくなりますな。どんな雰囲気で話をしてたんでしょう??


ではでは。






2004/11/24

お題「介入雑感/久々に読書室」

米債が上がろうと下がろうと平均株価逆相関相場でありますので、債券市場に関して悩むよりは株価指数の見通しとか為替市場の見通しでも考えていた方が気が利いているようですので、まぁ深く悩まないこととしまして。

毎度毎度日銀総裁発言読みばかりではワンパターンもいい所ですので、本日は介入に関してあたくし的雑考というか与太話でも。


○介入をしないようですが

ドル/ユーロはまぁエライコッチャになっておりますが、合成通貨の悲しさでこ〜ゆ〜時にはやる事はなさそうな雰囲気。一方でドル/円に関しては米国大統領様まで担ぎ出してコメントまでさせておいて介入警戒感を煽っているせいか、何となく103円台という妙なところで下げ渋っております。

まぁグリーンスパン議長がドル安にお墨付き与えちゃってるんようなもんなんで如何ともし難いという所ではありますが、この「介入警戒感を利用する」というのはどうなのかな〜と思ってしまうわけですわな。確かに介入なんぞしないに越した事はないのですが、逆に「介入するぞ」という雰囲気を煽っておいて何もしないってのも宜しくない訳でして、介入警戒感を妙に煽るためにマーケットにショート(ドル円でのドルショート)が全然溜まらない訳でして、ショートが余計にたまらなければ相場の反発力も無いっつー事になる訳です。

で、昨年の債券相場2段大暴落を思い出してみますと・・・・

1回目の下げでは基本的に先物とか10年以降の債券が売られていた一方で、中短期債に関しては量的緩和政策の時間軸への信用があったのでまぁ下げも限定的って感じだったのですが、2回目の下げでは時間軸への信用がどこかへ飛んでしまうような売られ方になってしまい、5年債が1%を上回る「えぇぇぇぇ!!」って言うような馬鹿相場を演出してしまい、結局日本銀行さまは「時間軸のコミットメントの明確化」などというやらずもがなの発表をする破目に追い込まれた訳であります。

この時は債券市場がそれまで持っていた「時間軸への信頼」に関して、日銀というよりは一部の政策委員のお方というか総裁というか、まぁそっちの方でご丁寧にも金利上昇歓迎の雰囲気を作り出してしまい、積み上がりまくっていたロングというそれこそ「地雷」に爆弾を投下して大誘爆合戦が発生した挙句に「時間軸って何でしたっけ」というような状態になってしまった訳でして、為替介入警戒感があると言っても別にドルのロングポジションが溜まっているとはあまり思えない(訳でもない。為替オプション絡みとか仕組債絡みとかはあると思うが、スペキュレーションのロングは積み上がって無いでしょうなぁって事です)現在の為替市場とは違いますけど・・・・・

まぁ介入をしないならしないでも結構なんですが、今の状態のように介入警戒感というか介入期待を煽る(何せ昨年の前科がありますから)だけ煽っておいて何もしないまま生殺し状態にしておくのは、一見口先介入だけでスムージングオペレーションに成功しているように感じられますが、ショートポジションが溜まらないので何時まで経ってもポジションが整理されず、恐らくは時間の経過と共にイカレポンチになっていて投げるに投げられないロングポジションが増えてきて、ある時大爆発してしまうって事になり兼ねないと思うのですよ。

で、まぁ大爆発しちゃいますと生半可な介入は効かなくなってしまうというのは今までも事例がある訳ですし、上記した債券市場大暴落にあるように余計な施策(自分の手足を明文化して縛るという「量的緩和政策のコミットメント明文化」)をする破目に陥ったりするかもしれませんな。それ以前の問題として、これだけ介入警戒感がどうのこうのと言われていると現実に介入して効くのかも疑問ですが。


てな訳でして、為替市場への介入が良い行動だとは全然思いませんが、今のように「やるぞやるぞ」という雰囲気だけ米国大統領様まで持ち出して煽るだけ煽っておいて何もしないままっていうのはちょっと駄目出しをしたくなる所であります。やると言うのならちゃんと責任持ってやって頂きたい訳でして、独裁者の征伐おっぱじめておいて「終わったんで後は皆さん仲良くやってね、じゃあ撤退」などとやられると困るのと同じ理屈というイメージなんですけどね。無茶苦茶な例えですが。


と、ダラダラと為替介入に関してグダグダ書きましたが、以下勝手な推測。

グリーンスパン議長様におかれましては、財政赤字の話をしながらわざわざ「為替」に言及したようですが、これを勝手に憶測いたしますと日本に向かって「ガンガン介入して財政赤字ファイナンスを安易にやられちゃあ米国の財政規律が崩壊するんだよね〜♪」って言っているのではないかな〜なんて。まぁ思いっきり憶測入ってますが、もしかしてもしかするとグリーンスパン議長は日本の円売り介入が結果として米国財政赤字ファイナンスを大いに後押ししており、このまま放置していたら米国財政が日本(及びアジアのどこぞの国)によってシャブ中状態にされてしまうと懸念しているのかも知れませんね(^^)。


○久々に読書室

・嗚乎、香ばしき人々(切込隊長@山本一郎著、扶桑社)

つい先日まで「週刊SPA!」で連載されていた「経営者ウォッチ」コラムを加筆編集したものです。面白おかしく書いてますが、根本には「日本に出でよ真の経営者」って思いが感じられます。良く良く読めば結構真面目でもありますが、とりあえず読みながら笑ってしまいます。

たまたま週末所用で出た時に「そういえば近くで出版記念サイン会をやってるんだな〜」と思い出してサインを貰いに行った(^^)のですが、本書のイラスト(似顔絵)を書いている金子ナンペイ(最近の有名な所では「ハッスル」のポスターを書いているようです)さんに似顔絵を書いて貰いまして、これがまたさすがプロ。あっという間に「おお!」と思うような絵をサインペンでささっと描くんですよね。

ご覧になりたい方はあたくしまで(って書評になってませんな)。

ISBN4-594-04818-8 C0095 \1200


・日本宗教事典(村上重良著、講談社学術文庫)

いやまぁ深い意味は無いのですが、まぁこういうのも手元にあると便利かなと思って買った訳ですな。一応歴史順に日本の宗教について解説しているのですが、神社仏閣には折々に参詣する訳ですが、背景にど〜ゆ〜ものがあるのかって事を(概説的にですけれども)知り、「へぇ〜」っていう感じであります。が、講談社学術文庫だけにお値段が張りますので、まぁ普通のお方は買うような本ではないでしょうな。

ただ、あたくしこんな文章であっても一応(生業じゃないけど)物書きの端くれのつもりで(自意識過剰ですな)いる訳ですので、特に宗教用語を使う時にあまりいい加減な使い方をするのも如何なものかと思う訳でして(と言いながら時々後から見て「うーむ」というのもあるのですが)、軽くでも理解はしておくかな〜と思って読んだ次第。まぁ面白い人には面白いのでは?

ISBN4-06-158837-0 C0114 \1400




2004/11/22

お題「機嫌が悪いのかもしれませんけど・・・・」

先週木曜日の金融政策決定会合では「前向きの循環」が削られた金融経済月報が決定されまして、その後の定例記者会見の要旨が金曜日に日銀Webにアップされたのですが、どうもこの行間を見ていると「今回の月報採択に関して福井総裁はご機嫌が悪いのではないか」と思わせるような雰囲気が漂ってくるのですよこれがまた。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0411c.htm


○市場の認識をコントロールしようと意識しすぎなのでは?

景気判断自体は若干後退モードではあるのですが、最近少々話題になっている「当座預金残高維持問題」ってのがありまして(先日のドラめもんでほんの少し触れましたが、資金供給オペを打っても札割れ連発で、最近はついに発行された短期国債をすかさず買い入れてしまうという荒業で凌いでいるという話)、短期市場関係者の一部では「当座預金残高目標(現状は30兆円〜35兆円)の下限を引き下げてくるのではないか」という話があります。そのせいか今回の記者会見では「当座預金残高をどうするの?」って質問が手を変え品を変え行われました。その中の一節。

『(問)量的緩和政策を解除するという場合、一般的にイメージするひとつのあり方は、当座預金残高目標を今の水準から徐々に減らし始めて、ある段階で操作目標を金利に戻すという姿が想定できる。この場合、量的緩和政策の解除とは、当座預金を減らし始める時点を言うのか、あるいは減らした後に、操作目標を金利に戻した時点を言うのか、その点を伺いたい。』

『(答)今の緩和政策のフレームワークの修正プロセスということについては、具体的に何も詰めていない。従って、正確にはお答えできないとしか申し上げようがない。言えることは、私どもが申し上げている3つの条件、すなわち、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで今の量的緩和の枠組みを堅持する、市場にとって非常に過大とも思えるような流動性を供給し続けるという、この基本的なフレームワークを堅持し続ける、ということである。それ以外に、量的な意識とかそのようなところまでは、まだ何も詰めた話ではない。』

今回の記者会見ではこのような質疑がやたら多うございまして、「量的緩和解除の場合のプロセスはどうよ」とか「当座預金残高目標を減らすのどうします」とかの質問が飛んで、「具体的に何も詰めてねぇんじゃヴォケ」というお答えが返ってくるという応酬が連発されているのが印象的であります。

で、まぁこの質問の前にも同じような質疑があった為に「非常に過大とも思えるような流動性」という発言をしたのが突っ込まれているのですが、よく読むとこの「量的な意識とかそのようなところまでは、まだ何も詰めた話ではない」ってのも言いたい意味は判らんでも無いのですが、量的緩和政策で目標にしてるのが「当座預金残高目標」なんだから、もうちょっと丁寧な言い方をしたほうが良いのでは無いかと思う訳ですな。全くもう。


で、まぁ上記のように抽象的(というか感情的というか^^)な発言をすると当然の如く突込みが飛んでくる訳でして・・・・・

『(問)先程の量的緩和の枠組みの説明として、「過大とも思える流動性を供給することだ」というご指摘であった。そうすると、例えば、25〜30兆円というレベルが市場にとって過大ということであれば、そうした範囲で当座預金残高目標を減らすこともあり得るのか。』

という風に突込みが来るのはある意味当然でありまする。

『(答)先程は少し文学的に表現したのであって、市場が過大と思うかどうかといったことは認定できないことだと思う。現在は、所要準備額の約6倍という多額の流動性を供給しているわけであり、その数字の大きさからみて「過大とも思える」というような表現をしたまでのことである。(後半割愛)』

「文学的表現」っつーのも随分楽しい表現なのですが、どうもその次の言い方って「俺様が過大だと思えば過大なんだよヴォケ」と読んでしまう訳でありまして、何というかアレな応答な訳です。まぁこの質疑応答はある意味「語るに落ちる」って奴でして(何か段々あたくしの言い方がきつくなってますが^^)、どうも総裁の心の中では「俺様が考えること」=「市場が考えるべきこと」となっているのではないかと邪推したくなってしまう発言な訳です。


○当座預金残高削減問題

という訳でひとくさり悪態をついた所で当座預金残高削減問題に係わる質疑応答に関して引用しておきます。やたらと今回はこの件の突っ込みが多かったのよ。

『(問)本日の金融政策決定会合では当座預金残高目標を30〜35兆円に据え置いたが、金融調節が非常に難しくなっているのではないかとの見方から、上限を35兆円にとどめても、下限をいずれ30兆円から下げるのではないかとの見方がある。緩和の方針は維持しつつ、金融調節上の自由度を高めるために、下限を20兆円台に下げる可能性もあるのではないかとの見方も市場では出ており、プライス面では出ていないが、心理面では多少のたじろぎがあるように見受けられる。今後の選択肢として、そういうことがあり得るのか伺いたい。(後半割愛)』

『(答)まず、第1のご質問のほうであるが、もちろん金融調節の現場では、その時々の資金需給の状況、そして市場の地合いの変化に合わせて調節しようと様々な工夫を凝らしながら、流動性供給目標を日々達成していく努力をしている。私が聞いている限り、調節が困難に逢着しているというようなことはない。様々な工夫を凝らしながら円滑に必要な流動性を供給するという目的は達成し続けているということであって、お尋ねのような点については、私どもは何も今念頭に置いていない。その必要は今何も感じていないということである。』

これが最初の質疑応答部分でして、「市場では金融調節が大変ですよ」と質問しているのに「技術的に困難にはなっていない」というお答えになっていてどうも質問と回答が噛み合っていない訳ですな。そもそもこのある意味答えになっていない質疑応答が記者会見会場に燃料を投下したのではないかと思う訳ですが(^^)。


で、最初にご紹介した質疑に繋がっていったのですが、その後も会見ではスッポンのように(^^)本件について香しい質疑応答が交わされるのでありました。

『(問)「所要準備額の6倍ある」ということであるが、これを5倍にしても「過大」かどうかという議論もあるかと思う。審議委員の中には、当座預金残高目標を減らすことはやはり「引き締め」と取られる可能性があるから、それはなかなか難しいという意見もあるが、総裁はどうお考えか。 』

結構この質問はキモの部分でして、当座預金残高目標を増やすときに「量的緩和政策の強化」と称していたというロジック(まぁそもそもそのロジック自体が怪しいという突っ込みはさておいて)になっていた事を考えると、当座預金残高目標の減額は「量的緩和政策の緩和(って書くと何か変ですな、弱体化ってのも変ですし・・・)」であるので論理的には「引き締め」になっちゃう訳ですな。ここのところを上手く切り抜ける理論武装を期待したい所なのですが・・・・

『(答)今の時点でそのようなことは、およそ議論の対象にはならないと思う。具体的な状況を前提にしないで、量を減らしたらどうかというのは、およそ金融政策の議論にならない。全くお答えできない質問だと思う。』

何というか総裁から湯気でも出ているのではないかと思わせるようなお答えでございますな。あなたそこまで言うことないでしょって感じですが、このような豪快なお答えが返ってくる背景を勝手に憶測しますと・・・・

@当座預金残高問題の質疑ばかりが延々と続いているので「同じこと何度も聞くなヴォケ」とトサカに来た。A実は本件に関してちょっと議論になっていて全然意見集約が出来てないので「痛い所を突かれてお怒りモード」。B月報で景気の現状判断後退だけでなく、総裁お気に入りの「前向きの循環」が削除されておかんむり。

などと勝手に想像したくなるのですが、どうもこの問題に関して全般的に質問と答えが噛み合っていない印象ですんで、政策委員会(なのか日銀執行部なのか知りませんが)内部で量的緩和政策における「量」の問題に関して総括が行われて議論になっている最中なのかな〜なんて思う訳です。以前ご紹介した山口前副総裁の時事通信インタビューにありますように、量的緩和政策の出口を考える際には当然この政策の総括をしないといかん訳ですし。


○市場への説明とは?

『(問)10月29日に発表した展望レポートで、「金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明していく方針である。具体的な説明の内容や方法については、さらに工夫を重ね、市場参加者が金融政策の先行きを予測する上で参考になる基本的な判断材料を適切に提供していく」、と書かれている点について伺いたい。今後、量的緩和政策が解除された後も、日銀の政策に関して市場が誤解をすることはマイナスだと思うが、市場の安定化を念頭に置きつつ金融政策の運営をしていく──主眼としては、政策変更にあたっての市場の安定を維持する──という目的で、今後もこうした情報を提供していくということなのか。(後半は別項で)』

『(答)どういう状況のもとであれ、金融政策を運営していく場合には、市場および広く世の中の方々の理解を求めて、期待の安定性ということを十分確保しながら政策効果の浸透をより良く図っていくという原則に変わりはない。従って、如何なる状況のもとにおいても、我々は政策変更する場合にもしない場合にも、状況説明は十分やっていきたいということである。展望レポートの中であえてそこのところを強調したようなかたちで書かせて頂いた。消費者物価指数のマイナスの動きがもう何年も続いており、量的緩和政策も既にかなり長い期間やっているといういわば異例の事態から次の局面に移っていく過程においては、様々な期待の不安定性というものが出てくる心配がある。そうした局面においては、なおさら我々が取ろうとする行動について正しい理解を求める努力をしていく必要がある。そうした認識で、あそこのところをあえて強調させて頂いているというふうにご理解頂きたい。』

と言っている割にはどうも今回の記者会見全般を見ますと「理解を求める」というよりは「俺様の考えが判らんのはケシカラン」という雰囲気が漂って来るのは気のせいでしょうか??まぁ良いけどさ。

まぁこの言葉の端々にも「量的緩和政策は継続したくない」ってのが伝わって来るのですが、じゃぁ過剰流動性が物価に向かわずに資産バブル(まぁ既にアイテーというか新規公開バブルのような気はするんですがね)に向かったらどうなるのよって質問がでてまして・・・・


○資産価格の上昇が起きても放置という明確なスタンス(^^)

『(問)(さっきの質問の後半部分です)もう1点、量的緩和政策解除の3つの条件のうち、仮に1つ目と2つ目の条件をクリアしつつも弊害というか歪みが生じたような場合でも、適切に対応していくという理解で良いか。市場が政策の解除を予想していようが、あるいは反対に予想していない場合でも、日銀としては金融政策に影響するようなものに関しては丁寧に説明していくという理解で良いか。 』

『(答)まず後者の質問に関して、3つの条件というものは個別ばらばらの条件ではないということを前回の会見でも申し上げた。消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上というただ1つの条件を、強いて因数分解して3つの側面から見ればこうなるということで申し上げた。従って、3つがばらばらに理解されることによって、2つは満たしたけれども1つは満たしていない、といった組み立て方のものではない。あくまで3つの側面から見て1つのことを判断していくということであるので、「経済に歪みが出ても金融政策は放っておくのか」という議論は成り立たないような性格のものだと思って頂きたい。』

ここのスタンスだけは相変わらず明確(というか約束させられているのだから仕方がないのですが)でして、結局政策スタンスはこの部分に集約されるのだから余計な情報発信というか心情吐露は人心を惑わすだけではないかと思ってしまう訳であります。



本当は今回の記者会見で景気に関する質疑ももっと見たかったという気もするのですが、どうも当座預金残高問題に関して燃料が投下されたせいか話がそっちの方に進んでしまい、景気に関してはあまり面白い質疑が見られませんでした(と思うのですが)ので引用省略。まぁ総裁としてはあまり「判断後退」を強調されるような発言はしたくないって雰囲気は伝わってまいりました。




2004/11/19

お題「金融経済月報」

やはり話題はこれでしょって事ですな。昨日あっさり12時前に終了した金融政策決定会合は当然の如く全員一致で現状維持なのですが、注目は金融経済月報でありまして、さてどうなったかと申しますと・・・・・

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0411.htm

○「前向きの循環」は?

話題の展開の都合上現状判断の前に先行き見通しをご紹介。今回は何気に注目の月報だったので既にあちこちで指摘されていると思いますが、先行き見通しの中で登場した「前向きの循環」という文言が消えてしまいました。

この「前向きの循環」が「ダム論復活!」とゆ〜ことで日銀の景気への強気な見方を象徴していた訳ですな。ちなみにこの文言が最初に出てきたのは今年4月の金融経済月報で『先行きについては、景気は当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が次第に強まっていくとみられる。』という風にご登場した次第です。で、今回惜しくも消えてしまったのですが、念の為10月と比較してみましょう。

(11月)『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』
(10月)『先行きについては、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとみられる。』

先月の月報の決定が10月13日でしたので、先月からの1ヶ月で「前向きの循環」という文言が消えてしまったという事になる訳なのですが、福井総裁的にしてみれば散々ご紹介したように月末月初あたりに国会でも景気強気発言を続けていた所ですので・・・・・残念!って感じですな(^^)。という訳でダム論消滅・・・なのか一時引っ込めているのかは存じませんが、何の解説もなく「前向きの循環」が消えているというのは景気の先行き方向性について日銀として懐疑的になっているという解釈をされても致し方なしと言った所かと存じます。

あたくしの大予想は日銀絡みでは外さないのが自慢だったのですが、今回は足元の現実数字が現実数字ですんでそのあたりは認めるにしても、まぁ何とでも言える先行き判断に関してダム論をこうさっさと引っ込めたのは意外感がありました。月例経済報告を先日発表した内閣府に気を使ったのでしょうか???(まぁ使ってないと思いますけどね^^)


○景気の現状判断は「足もとの一服感」に言及

冒頭のお言葉を前月と比較しましょう。

(11月)『わが国の景気は、輸出、生産の増勢に足もと一服感がみられるものの、全体として回復を続けている。』
(10月)『わが国の景気は、回復を続けている。』

6月に「緩やかな回復」から「回復」と判断から「緩やかな」を外して8月には上記10月を同じく余計な言葉を加えずに直球剛速球で「わが国の景気は、回復を続けている」とぶち込んでいたのですが、今回は「足もと一服感」に加えて「全体として」という言葉が入っております。文章の流れ上入れないと表現として変だから入れたのかもしれませんが、前月の直球剛速球と比較すると印象として抑制的にも見える訳ですな。どっちだか判らんけど。

上記文言に続く表現はこうなっておりまして、

(11月)『輸出や鉱工業生産の増勢には、このところ一服感がみられる。一方、設備投資をみると、足もとのペースは緩やかながら、企業収益が改善するもとで、引き続き増加している。また、雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得も下げ止まる中で、個人消費は底堅く推移している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は減少している。』

10月との相違点はこの中の最初の部分でして、10月は『輸出、鉱工業生産は、伸びがやや鈍化しつつも増加傾向を続けており』となっており、輸出と鉱工業生産の一服について言及しておりますが、他の部分は判断据え置きになっています。まぁ出てくる経済指標がそ〜ゆ〜事になっている(と記憶してます)のでまぁこんな物かも知れませんが、まぁ他の部分据え置きという事でまだまだ頑張っているなという感じでもあります。


○先行き見通しの要因分解は・・・・

海外経済に関してはここの所の中国経済無事軟着陸観測(本当かよとあたしゃー思うのですが)と米国株価の底打ち観測を反映したのか若干判断を微妙に上方修正しているのですが、何故か雇用に関して判断を微妙に下方修正しています。ってゆ〜かあたくし的には雇用判断こんなもんだと思いますがね。

長いですが11月と10月を並べてご覧下さい。

(11月)『すなわち、海外経済の拡大が続き、内需も増加を続けるもとで、輸出や生産は基調的には増加していくとみられる。企業の過剰設備・過剰債務などの構造的な調整圧力も和らいできている。また、企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』

(10月)『すなわち、海外経済の拡大が続くとみられるもとで、輸出や内需の増加が続き、生産も引き続き増加基調を維持していく可能性が高い。企業の過剰債務など構造的な要因が企業活動に及ぼす影響も和らいできている。また、企業の人件費抑制姿勢は維持されているが、雇用過剰感が緩和するもとで、生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響は次第に明確化していくと考えられる。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』

海外経済の拡大について『拡大が続くとみられる(10月)』→『拡大が続き(11月)』という事で海外経済が国内景気を牽引してくれるでしょうって見方をより鮮明にしております。

しかしその一方で暫く強気(というか回復を楽観的に)に見ていた雇用情勢に関して『生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響は次第に明確化していくと考えられる(10月)』→『雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い(11月)』とここでも「ダム論」的な「企業収益増加」→「雇用者所得増加」というあたくし的には甚だ実感に乏しい(-_-メ)見通しを引っ込めておりまして、雇用に関して判断をこっそり後退させています。

もしかして海外経済の判断を上方修正させた隙を狙ってバランスをとりつつこっそりと現状追認をしたのかもしれませんが、まぁ先行きの景気回復に関する「上振れ、下振れ要因」の柱である「海外経済」と「国内最終需要(を支える個人消費の基本となる雇用情勢)」に関してビミョーな匙加減が入っているようですな(^^)。


○IT関連にも言及

この次に毎度毎度原油価格上昇に関して「なお書き」をしているのですが、今回はIT関連需要に関してのコメントが追加されました。

(11月)『なお、IT関連需要や原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』
(10月)『なお、原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』


○物価面、金融面は判断変らず

まぁこのあたりは判断をいじりようが無いのですが、物価に関しては見事に全文一致。

(11月と10月共通^^)『物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高や需給環境の改善を反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナス基調で推移している。物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高の影響もあって、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、基調的には小幅のマイナスで推移すると予想される。』

「物価の先行き云々」の前のところで実際は段落が分かれております、念の為。

金融面に関しても引き続き変化なし。銀行券発行残高が紙幣改刷の影響で伸びがやや高まっているってコメントが「ほほう」と思うくらいでありまして、特にコメントすることは無いと思います。


○まとめ(のつもり)

まぁ今回は「ダム論(と言うと日銀からいや〜な顔をされるらしいのですが)を引っ込めた」というのが最大トピックスですが、あたくし的にはこのタイミングで雇用情勢に関して判断を微妙に後退させているのも少々気になるところといった感じです。まぁ債券市場に対して売り材料にはならないでしょう。総裁記者会見の方も気になりますが、こちらは日銀Webに会見要旨がアップされてからと言うことで一つよろしくです。

しかし何ですな。前進していた判断(ここ3ヶ月全くの据え置きでしたが)を若干とは言え後退という事ですから向きが変るって話なのに、決定会合はあっさり昼前に終わってしまいましたな。この内容だったらもうちょっと長引いても良かったのではないかとゆ〜気もしますが、実際に会合でど〜ゆ〜感じで議論しているのか良く判らん(この前の須田さんの講演はその意味でも面白かった)のでアレなのですが、何となくね。






2004/11/18

お題「この正直者!」

ご好評につき11月2日の福井総裁国会迷言をまとめてみましょう。え、「金融経済月報が出るまでの時間稼ぎ」ですと?まぁその通りなんですがね(滝汗)。で、ネタを考え付いていたので安心していたら、見事に寝過ごしたので本日は引用で増量攻撃で勘弁です。

でまぁ昨日ご紹介した「この正直者!」って発言は実は他にもありまして、見つかる限り纏めておきましょう(^^)。出典は全て参議院財政金融委員会の会議録であります。もう会議録ウォッチが癖になってしまいますな〜(^^)。


・「国債残高=地雷」説(昨日の再掲)

『委員御心配のとおり、市場の中には国債の発行残高が非常にたくさん累積していると、俗な言い方しますと、地雷が一杯埋まっているような金融市場でありますから、そこは私どもの政策運営について、どういう考え方で運営していくんだと、もし変更があるとすれば、どういう、あらかたどういう考え方で変更していくんだということが事前にやっぱり理解が浸透しているということが非常に大事だというふうに思っています。』


・もしかして岩田副総裁へのあてこすりですか?(昨日の再掲)

『学者の先生からお教えいただいている理論が理論としてそのまま実現していくためにも、我々の現実の政策は、人々、企業、金融機関の行動に現実的な意識としてこれがうまく消化され、それぞれの行動に反映させていただくという大変厄介な過程を通さなければ実現しないというところに我々の悩みがあるわけでございます。日本銀行が学者先生と同じことを申し上げて、人々は、実は大変な借金があるんだけれども、まあ日銀がそう言うんなら明日からこう動こうと、そういうふうに言ってくだされば我々は非常に楽なんですけれども、なかなかそうはいかない。』


・量的緩和政策を解除したくて「苦しい思い」なの?

公明党西田委員から質問された出口政策論(月曜日のドラめもんでご紹介したように、途中から岩田副総裁に話が振られて「執行部内不一致」を国会の場で堂々答弁の図になった質問です)に係わる総裁答弁の一節。

『この(引用者補足:量的緩和政策の)メリットとデメリットの比較にいつも苦しみながら判断し続けているわけでありまして、したがいまして、なるべく早く経済の自律的な回復のパスへの到達、デフレからの脱却の判断に至るということがやはり望ましいんだというふうに思っています。しかし、これも判断が早過ぎてかえってすべての努力を水泡に帰するということがないようにしなきゃいけませんので、この苦しい判断のプロセス、いましばらく我々は続くと覚悟しているところでございます。』

CPIのコミットメントという現実の数値ターゲットがあるので苦しいも糞も無いと思うのは畜生の浅ましさって奴なのでしょうか。現実にCPIが相変わらずマイナスなので苦しむ必要も無い筈ですな〜(^^)。で、もしかしたらこれは「CPIがプラスになりそうだが景気は良くなさそうだから判断に苦しむ」と言いたいのかと解釈したくもなりますが(嘘)、最近の福井総裁の発言から類推すると、どうも「こんなに景気が前向きの循環(しかしこの前向きって言葉も総裁好きですよね〜)を続けているのに量的緩和政策を継続しっぱなしというのはケシカラン」と「苦しい判断」をしていると読んでしまいたくなりますな。この正直者!


・日本国債市場は「人見知り」

これは民主党平野委員への答弁。米国の国債市場と日本の国債市場における保有構成の問題に関する質疑です。まぁこういう問題で日本と米国を比較しても余り意味は無いと思うのですが、どうも総裁様に置かれましては「もっと資金が出たり入ったりして欲しい」らしいようで。

『先ほどホームバイアスとかいうふうな、何か少しつかみ難い、つかみどころのない表現で申し上げましたけれども、アメリカのマーケットの場合には、国内の投資家、海外の投資家、その間かれこれ余り区別なく、同じ主体としてマーケットが自然に受け入れるという、そういう土壌が早くからできていると。日本の場合には、もちろん日本の市場も自由化が進んで機能の向上も進んでいるんですが、何とはなしに海外の投資家と国内の投資家との間では、出入り自由なんですけれども、どっか何か人見知りするところがあるというふうな感じが残っているとか、その差があるというふうに思われるわけであります。』

「ホームバイアス」の代わりの表現が「人見知り」ではどっちも「つかみどころのない表現」じゃね〜のかという野暮な突っ込みは置いといて、まぁ確かに日本では海外の投資が中国などに流れ出すと「ジャパンパッシング」とか言って大騒ぎするし、かといって海外投資ファンドがやってくるとやれ「ハゲタカ」だの何だのという訳で(ここの例え方は切込隊長の受け売り^^)、まぁ人見知りというのは言い得て妙でもあります。

「資金循環を考えると当たり前の現象ですけど」という説明も勿論福井総裁はしておりますので念の為付け加えます。


・で、その「ホームバイアス」に絡んで

「ホームバイアス」云々の中でこんな一節が。

『それ以前の世界経済、つまり国ごとにセグメントされた、つまり障壁の高い経済と比べますと、投資家が、あるいは事業家が国境を越えて最も魅力的な投資機会ということを探りやすいし、探り当てれば実行しやすい経済の仕組みに変わったということだと思います。そして、資本も自由に移動するということでありますので、生まれ故郷に資本がなるべくへばり付いていようとする、そういういわゆるホームバイアスというものも次第に薄れていって、勇気を持って国境を越えて資本が動くと、こういう経済になっているのが特徴でございます。』

言いたい趣旨は判りますが、「勇気を持って」ってのは何というかまぁ曰く論評し難い表現でありますな。何と申しますか・・・・・


と言うわけで、本日は手抜きドラめもんで恐縮ですが、福井総裁迷言集という事でまとめてみました(^^)。


おまけメモ:短期金融市場の話(ただしメモ)

昨日実施された短期国債買入オペは何と短期国債入札との同日実施。記憶によればこのケースは初めてだと思いますし、このオペの対象銘柄に前日に入札の行われた短期国債だか政府短期証券だか忘れましたが、まぁ兎も角「昨日入札やったものを今日買いましょう」状態になってしまっております。

資金供給オペを打てども打てども札が集まらないという状況なので、最後の手段という事で発行した短期国債を次の瞬間に買入するというマッチポンプのような事をしないと当座預金残高の目標が維持できないという訳でして、まぁ過去の介入やり過ぎの後遺症がこんな所にも出ているということなのでしょうか。よーわかりませんが。

そんなこともあって、「それは金融引き締めを意味する事になってしまっているからやる訳は無い」と日銀ウォッチャーが指摘する「当座預金残高引き下げ観測」が浮上しちゃったりする訳で実に香しい訳ですが、そんな中天の助けのように米国様が相変わらず減税大盤振る舞いだのドル安放置だのという雰囲気を醸し出しております。

ここで大規模円売り介入をすれば当座預金を大きく引くことが出来る訳でして(^^)、是非この際ヤケクソで円売り介入をお勧めしたいと思います。何のためにやるのか最早支離滅裂ではありますが・・・・・


#寝坊の影響で甚だ手抜きになってしまったことをお詫び致します。




2004/11/17

お題「相場が材料難でドラめもんも小ネタを小出しに^^」

相場は煮詰まってきたと言うよりはどちらかと言うと立ち枯れに近づいてきているのではないかという気もして参りますな(-_-メ)。まぁ本日から(多分本日は午後ほんのちょっとやるだけだと思いますが^^)行われる金融政策決定会合で出てくる金融経済月報が益々気になってくる(多分昨日申しあげたとおりで景気判断は後退しないと思いますが)所ではありますな。内閣府の月例経済報告は景気判断を若干後退させたようですし。

相場がこんな有様なので今日もまた小ネタを少々。

○20年国債入札後講釈というか備忘録

昨日の20年国債入札。既発の20年72回債のりオープン発行となるのは確実視されていたので、寄付きからまぁ新発債の売買が行われていたようなものでした。で、最初はせっせとヘッジ売りだの水準を下げておきましょう売りなどがあって前日比1毛甘(+0.01%)まで売られたのですが、下げたところで嫌がらせのように超長期に(多分72回債ではなくて60回台後半の18年以降の既発債に)買いが入ったらしく、前場の引け時点では超長期ゾーン>先物>10年という順に強いという展開になりました。

細かく書きますと、20年72回債が前日比5糸甘(+0.005%)でバカスカ買われて買い残り。10年264回債が1毛甘で多分買い残り。先物は前日比4銭安という関係でして、「また入札前に強くする攻撃かいな」という状態になりました。

落札結果も順調だったのですが、何故か10年ゾーンあたりに買いが入ったようで(というのは結果から類推した話で、長期債の気配が暫く消えていたので良く判らなかったのですが)して、先物と長期債は上昇したものの、新発超長期となりました72回債はまるで上がらずという業者泣かせの展開になりました。前場から買いが入っていたと思われる超長期60回台中盤以降の銘柄は堅調でしたが、需給要因で新発だけ駄目駄目というのは困ったものです(-_-メ)。

引けて見ますと、先物20銭高の10年2毛強で20年72回は1.5毛強な訳ですが、入札自体はいつものように前場引け最終出合いよりも高い99円72銭(平均価格)となっておりまして、実質前日比変らずでの入札だった事を考えますと、前場の引けから10年VS20年で1.5毛イールドカーブ上の強弱関係をひっくり返すという形になりまして、まぁ前場の買いは何だったんでしょうって感じではありました。


最近の入札のパターンとして幾つかありますが、今回は「入札前の前場に入札のあるゾーンに投資家様の買いが入って、いざ入札が終わってみると買いが入らない」というパターンになってしまった訳で、一番たちの悪いパターンであったなぁって感じです。毎度毎度思うのですが、入札が終われば新規に玉が供給されるのだから、そんなに慌てて買ってるじゃねぇまぁお前らもちつけと言いたくなる訳ですな。困ったものです。

昨日の金融ファクシミリ新聞では「発行量が多いので指標期待も」などと言われていましたが、最近の債券市場は何でそう嫌がらせのような動きが多いのかと思うのですが、どうも72回債ではなく60回台後半の銘柄が暫く買われるのではないかという感じですんで、「流動性プレミアム」ではなく「発行量絶大ディスカウント」がつくという状態が当面(輪番オペで捌けるようになるまで)継続するようです。


○またまた参議院財政金融委員会

またも同じソースからのネタで恐縮なのですが、11月2日の参議院財政金融委員会での質疑応答は中々楽しめるものでありまして、まぁ既にあちこちで取り上げられているようでもありますが、一応ご紹介をば。

まぁこの質疑応答では福井総裁そこまで心情を見せていいのでしょうかって位に色々とお話をしているわけでして・・・・・・


・わざわざ地雷を踏まないようにしましょう

民主党の平野委員からの国債残高がどうのこうのという質問に対する福井総裁の迷答弁の一節。

『委員御心配のとおり、市場の中には国債の発行残高が非常にたくさん累積していると、俗な言い方しますと、地雷が一杯埋まっているような金融市場でありますから、そこは私どもの政策運営について、どういう考え方で運営していくんだと、もし変更があるとすれば、どういう、あらかたどういう考え方で変更していくんだということが事前にやっぱり理解が浸透しているということが非常に大事だというふうに思っています。』

まぁ「不良債権問題は峠を越えた」って何回峠がありましたっけと突っ込みをしたくなるような答弁(「国債発行残高が幾らあっても無問題」みたいな)をされてもそれはそれで困るのですが、わざわざ「地雷が沢山」と強調することも無いと思うわけですな。しかも国債発行残高問題はまぁ身も蓋も無い言い方をすれば現在の資金循環がサステイナブルであれば(そこが問題ですが^^)要するに「何とでもなる」類の話ですので、危機意識を持つなとは言いませんが、別に一生懸命煽る話でもないかと思うわけです。例として出すのは適当かどうか判りませんが、昭和金融恐慌で名を残してしまった片岡直温蔵相(失言が無くても銀行取付けは不可避だったと思うのですが)にならないようにご注意
ありたしって感じです。


・インフレターゲットを提唱する人への反感が良く判る一節

同じく平野委員の質問と福井総裁の答弁。

『この量的緩和政策に関連しましてもう一点お尋ねしますけれども、かつてマネタリストという、かつてというか今でもいるかもしれませんが、おられまして、量的緩和を進めればこれはデフレ脱却するんだと。(中略)ところが、量的緩和を進めて、なかなかこのデフレの脱却ができない。量的緩和自体は、もうこれは、かつて言われたデフレスパイラルなんて言葉は最近聞かれなくなりましたし、経済の落ち込みを防いだという意味においては本当に効果があったということだったと思いますけれども、どうやらこれだけではデフレ脱却の条件にはならないということがそろそろ明らかになってきたと言ってもいいんじゃないかと思います。』

『私の質問は、そのかつて言われた、いわゆる通常言われたマネタリストと言われる人たちが言ってきたことというのは余り当たっていなかったんじゃなかったかというようなことを言いたいわけですが、そこまで総裁は言い切れるかどうかということなんですが、総裁、どのように思われるでしょうか。』

まぁ同席している舛添要一さんへのあてつけなのか竹中さん(は同席してませんが)への嫌味なのか知りませんが、量的緩和政策の効果をレビューしろという質問にしてくれた方が質問としての質は良かったと思いますが・・・・・

『今、マネタリストという言葉でおっしゃいましたけれども、そういった金融と実体経済と結び付けながら理論立てを行っておられる方々、まあ学者の先生方中心に、私は理論的に整合性のある分析と物の言い方を一貫して私どもに提供してくださっているというふうに思っています。ただ、私どもは、現実の経済、そして現実の経済を構成している個々の企業、金融機関、そして我々個人、家計の行動というものを現実の姿として、そしてその人々は現時点、将来に向かってどういう心持ちで動いておられるかということをいつも認識しながら経済政策、金融政策をやっていく立場にございます。学者の先生からお教えいただいている理論が理論としてそのまま実現していくためにも、我々の現実の政策は、人々、企業、金融機関の行動に現実的な意識としてこれがうまく消化され、それぞれの行動に反映させていただくという大変厄介な過程を通さなければ実現しないというところに我々の悩みがあるわけでございます。』

あえて段落わけを原典と変えております事を申し添えます。というのはこの次がオモロイので。

『日本銀行が学者先生と同じことを申し上げて、人々は、実は大変な借金があるんだけれども、まあ日銀がそう言うんなら明日からこう動こうと、そういうふうに言ってくだされば我々は非常に楽なんですけれども、なかなかそうはいかない。』

最初に読んだときに茶を吹いて危うくキーボードを一つおしゃかにするところでした(^^)。答弁はこの後も続くのですが、以下省略ということで。。。。。

「この正直者!」って感じですな。実に素晴らしい(^^)。






2004/11/16

お題「小ネタを3つほど」

どうも取っ掛かり材料難な相場で困ったものです。

○なおも材料待ち?

先週水曜、木曜あたりの債券相場は新規資金流入系らしき動きがあったようで、「買い方(つーか投資家)の炙り出しモード」の香りが漂いまして、木曜後場には機械受注キターーーでありまして、やっと相場が炙り出し祭りになるかと思った訳ですな。で、金曜の寄り前のGDP速報が実質+0.1%でもうこれはワッショイワッショイかと思わせたのですが、平均株価が何故か上昇したら途端に債券相場失速。まぁ水曜からの流れであたくしですら「炙り出しモード到来!」などと言う位ですから、何のことは無い皆さん「炙り出しだからロングで攻めようではないか」ってな事になる訳でして、思わぬ株高攻撃で皆さん週末だから降参モードになってしまいましたな。あっはっは(-_-メ)。

材料が一通り出ているのに材料待ちとはこれいかにって感じなのですが、先週木曜日の変動15年利付国債の入札結果が良好であって、その後の販売状況も発行αが101だというのに特に崩れる気配も無く(さすがに強くはなりませんが)という状況を見ますと、結構皆さん変動利付国債をとりあえず買って凌いでいるって感じなんでしょう。

ただ、「やっぱりそろそろ買っておかないとね〜」って雰囲気は思いっきりある訳でして、相場が下落するとそれなりに買いも入ってくるという動きが継続しておりまして、そんなこんなで気がつけば10年の1.5%割れ状態も早1週間継続となっております。相場全体の水準はうだうだと動きつつも値もちはしっかりしておりますので、まぁどこかで「債券炙り出し」攻撃になるかとは思うのですが・・・・・

で、これだけ皆様「下がったら買いたい」「売るものはありまへんな〜」って状態になっているのに相場が上昇しないっつーのは、過去の債券大上昇相場のような「キャピタルゲイン期待の買い」が大いに縮小しているのがでかいのでしょうかね〜。相場上昇を狙った買いって事ですからまぁ言ってしまえば「仮需」って奴が激しく少ない相場となると、「実需」が債券供給と均衡するところで市場が定常状態になっていく・・・って本当かよと書いている内に思ってしまいますが、まるでそんな感じになっておりますわな。

最近は入札前後で相場が若干下押しする程度でして、まぁ相場的には妙に安定しているという感じですが、結局のところ景気の先行指標という事になっている株価インデックスが延々とボックス圏に入っているのだから仕方が無いのかもしれませんな。何だか主体性の無い相場で寂しいものを感じますが。



○俄かに注目される金融経済月報

先日来ご紹介しているように、福井総裁はウォッチャーも驚く物凄い勢いで景気強気を提唱しております。何せ先週木曜日のきさらぎ会での講演後の会見だか質疑応答だかではご丁寧にも「来年度CPIの見通しが+0.1%だが、年平均で+0.1%だと言う事は年度前半は低いが年度後半になればCPIが高くなるはず」というような趣旨の発言までするという有様。

そんな福井総裁も当然出席して行われる政策決定会合が17〜18日の日程で行われます。金融政策に関しては何も無いので相変わらず無関係なのですが、今回の決定会合では11月分の金融経済月報が公表される予定になっておりまして、会合終了日の18日、月報の基本的見解の公表時間は15時という段取りになっております。

昨年秋以降「景気判断前進」か「景気判断据え置き」しかやっていない日銀の景気に関する考えはどうなのかという事は激しく注目材料ではあるかと思います。まぁつい3週間前にカンカンの強気見通しの「展望リポート」を出したばっかりなのにいきなり先行き見通しを後退させるというのも中々恥ずかしい訳でして(-_-メ)、まぁ「苦渋のまるで同じ文章攻撃」になるのではないかと思いますが。原油価格下がってるし。


まぁこの月報で日銀が景気の現状判断あるいは先行き見通しに関して判断を後退させてきた場合は最近俄かに増えてきた「景気ベア組」の後押しならびに債券市場の炙り出し相場にいい感じで燃料投下になるかな〜とは思っております。今までの流れから考えますと可能性は低そうですが、一応リスクシナリオという事で。


○岩田副総裁の糊代論

同じネタ元で引っ張りますが、本日も11月2日の参議院財政金融委員会の質疑応答から拾ってくる訳です。今日は小ネタですが。

毎度引っ張ってくるのでお馴染みの11月2日の参議院委員会で金融政策に関して岩田副総裁はこんな答弁をしておりました。質問者は公明党の西田実仁委員です。

(西田委員)『まあそういう意味で大変に難しいかじ取りの局面にいよいよ突入してくるわけでございますけれども、いわゆるこの出口戦略のところでお聞きしたいのは、先ほど来総裁がおっしゃっている、ゆとりを持った政策というお話をされました。これは岩田副総裁も前に御発言されておられましたけれども、いわゆるのり代論という、いわゆる安定的にをどう解釈するかという話で、一%ぐらいという具体的な数字も出されておられましたけれども、これの真意について副総裁にお聞きしたいと思います。』

いい質問ですな(^^)。で、岩田副総裁の答弁はこんな感じです。

『ただいまの委員の方から御指摘いただきましたように、私、今の日本銀行の量的緩和を継続するということについての三つの条件のうちの第二番目の条件でありますけれども、今後再びマイナスに戻らないようという、つまりもう一回デフレに戻ってしまうということはないんだということをもう少し明確にしていくことが望ましいのではないかと個人的には思っております。』

『これは委員の間でもいろいろな、例えば〇・三%ならいいのか〇・四%ならいいのか、いろいろな御意見あると思いますけれども、私は先行き、これは足下が基調的にゼロ以上というのは私はこれでいいというふうに思っているんですが、第二番目の条件、経済の先行きがどうなるのか、景気の持続性がしっかりしていて力強いものであって、一%を先行きは展望できるんだという、つまり再びデフレに戻らないということがはっきり確認できるということが重要じゃないかというふうに思っております。』

という事で、国会でも引き続き糊代論炸裂。まぁ総裁と副総裁の意見が違っていちゃあイカンという決まりはどこにも無いので無問題ではあるのですが、どうも量的緩和の出口が展望される頃になりますと、「総合判断」を行うにあたって岩田副総裁が「糊代論」を提唱して、総裁と副総裁という日銀執行部の票決が割れるという楽しい事態が発生しそうですな。ちなみに今までの発言から勘案しますと、糊代論を言い出しそうなのは岩田さんの他には中原審議委員ですな。福間さんはどっちだかわかりませんが、須田さんと田谷さん(と後任予定の水野さん)は糊代論は否定的だと推測されますのでご参考までに。

ちなみに質疑に続きがありまして、

(西田委員)『そうすると、それは、かつてその一%という数字を言われているわけですけれども、そういう水準でしょうか。』

(岩田副総裁)『そうですね。これ、私、先進国を見ましても、例えばアメリカの場合ですと、連邦準備制度理事会ございますが、これやっぱり消費者物価、具体的にはコアの、個人消費のデフレーターを見ていると私理解しておりますけれども、それが一%になったときにやはりデフレのリスクが相当あるということで、連邦準備は実は一%までフェデラルファンドレートを下げて、言わば超緩和政策を取ったということでありまして、国際的にも一%程度ののり代は必要ではないかというのは多くの御意見がある、そういった御意見をお持ちになる方は多いのではないかというふうに理解いたしております。』

まぁ何というか量的緩和政策のコミットメントを事実上骨抜き(緩和方向で)にする提唱をするというのも実に香しいお方でして、そんなら政策決定会合でコミットメントの変更を提案しやがれって思うのですが、中原伸之前審議委員のようにね。

で、こういう流れになれば当然次の質問はこうなるわけです。

(西田委員)『ということは、来年度の見通しは〇・一%、そんな単純じゃないんでしょうけれども、まだ来年はそういう出口戦略なりを考える時期ではないという御見解になるんでしょうか。』

ここでこれ以上岩田副総裁に喋らせるわけにいかないと慌てた(かど〜かは知りませんが^^)福井総裁が火消し答弁に入るわけでして(^^)、

(何故か福井総裁^^)『日本銀行全体としては、政策委員会で最終的にはこれで本当に再びデフレに陥るリスクはなくなったのかどうかということはきちんと判断しなければいけない。先週末にお出ししましたのは、(割愛)二〇〇五年度を走っているうちに、ある月は(引用者補足:「CPIが」)〇・〇かもしれない、ある月はマイナス〇・一かもしれない。しかし、平均してみると〇・一ということは、恐らく経済が自然な運行をしているとすれば、後になればなるほどプラスの確率が高くなり、場合によっては最終的には〇・一よりも高い数字になるかもしれない。場合によっては最終的には〇・一よりも高い数字になるかもしれない。平均して〇・一でございます。』

『そういう経過をたどりました場合には、来年度中か、あるいは来年度が終わって更にもう少し先に行ってか分かりませんが、蓋然性としては、我々は安定的にその消費者物価指数が〇%以上になるという段階を迎える可能性はあるというふうに、こう思っています。』

『そして、逆に、どこまで来れば再びデフレに戻るリスクがないかという判断をする場合に、委員によってはある数字を念頭に置いて議論される方もいらっしゃいますでしょう。しかし、ある人はもっとほかの要素で、もっと経済をいろんな要素を分析しながら断定しようというふうにお考えになる委員もいらっしゃるでしょう。それらを全部持ち寄って我々は最終判断をしたいと。』

『したがいまして、日本銀行全体としては、今持っております数字は来年度の見通しが平均としてプラス〇・一ぐらいというだけでございまして、それを超えていったときに新たな数字、数値的な目標で判断しましょうというふうなコンセンサスには今至っておりません。』

火消しご苦労様です。というか来年度後半プラスの確率高いって話ここでもしてた訳ですな。

小ネタの積もりが引用が長くなってしまいましたな。あっはっは。





2004/11/15

お題「非伝統的金融政策はやりたくなかったのね〜」

何と申しますか日銀総裁ここのところへ来て絶好調というよりは一人で突っ走っているような印象を与えております。現実にCPIがゼロになってもいないのにそんなに量的緩和解除の話を熱心にするのは如何なものかって感じでして、金曜に申しあげたように、CPI時間軸のコミットメントがなかったらとっくの昔に「量的緩和解除モード」になっていたと思います。

景気の減速傾向が経済指標ででてきたり、有価証券報告書の虚偽記載がどうのこうのって話が何時の間にか飛び火してアイテー方面での架空売り上げ経常がどうのこうのという光景を見ていますと、速水総裁時代にアイテーバブルが崩壊している中でゼロ金利解除を実施した頃とダブるものを感じまして、CPI時間軸があって本当に良かったな〜と思うわけです。

そんな訳で最近の福井総裁という訳で木曜日にご紹介した参議院財政金融委員会での総裁答弁を見てみます。


○資産担保証券に関する驚愕の答弁

福井総裁就任以来の日銀は当座預金残高は大盤振る舞いで拡大するわ、資産担保証券の買取という施策をぶち上げて、当初は銀行の貸出債権を証券化したものまで買いますよって話までおっぱじめて、あたくしなんぞ「日銀はついに震災手形を復活させたか」と激しく嘆いた事を思い出すわけであります。

証券化市場に関しては日銀が「証券化市場フォーラム」なんかを作ったりして熱心に関与していたのですが、よくよく考えたらこの辺りの証券化市場がど〜のこ〜のって話は速水さんがやたら熱心でして、今にして思えば証券化云々は速水さんの遺産だったのかもしれませんが、それは兎も角として、大々的にぶち上げてスタートした資産担保証券の買入が全然実績が上がらずでして、その後日銀は買入資産の対象を緩和(緩和とは言ってませんが、実態ベースは緩和)し、「相変わらずやる気満々なのか・・・・・」と思わせてくれまして、この時も随分悪態をついていた記憶がございました。

ところが、11月2日の参議院財政金融委員会では福井総裁驚愕の発言をしているわけです。資産担保証券の買入スキームが全然機能していない事に関する民主党大久保勉委員からの質問に対してこのように答弁しています。

『詳しいことは担当の理事からお答えを申し上げますけれども、ポイントになりますところだけ私にお答えをさせていただきたいと思いますが、少しお言葉を返すようになって恐縮なんでございますけれども、資産担保証券の買入れ措置を決定しました直後から、私、たしか国会でも御説明申し上げたと思うんですが、これは、新しい市場に対して中央銀行がむしろ介入をしていく措置なので、余り多くの介入をすると健全な市場の発展を逆に妨げるリスクがあると。したがって、中央銀行はある決意を持って市場介入に踏み切るけれども、実際の介入は少なければ少ない方がいいと。それが口火となって人々が市場の中で出合いが円滑に付くようになり、市場の発展のその出発点が形成されれば、それが最も望ましい結果だと。』

『買入れ実績は、残高としては非常に小さくとどまっているというのは、私どもとしては理想的な姿にとどまっていると。実際、私どもがこういう資産を買入れ適格だと認定することによって、むしろ市場の中では非常に活発に出合いが付いているという状況でございまして、相当程度私どもはねらいが果たせつつあるんではないかというふうに思っております。』


○実は「見せ金」だったのか?

あたくしとしましては、日銀が所謂非伝統的政策を採用して何でもかんでも買ったり、企業金融に関与するような「震災手形」的政策に走るのはいかがなものかと相変わらず思っている人ですので、こういう話をしていただけますと結構安心しちゃうんですけど、確か資産担保証券買入スキームを導入する際には『資産担保証券市場を通じる企業金融活性化のための新たなスキームの提案』と謳っておりまして、まぁこの時点で企業金融活性化という施策を打ち出す必要があったのかは謎ですが、どちらかと言えば「量的緩和政策の効果が企業金融部門で目詰まりを起こしている」っていう「目詰まり論」からこの政策を打ち出した訳でして、そりゃ話が違うんじゃね〜のって気もする訳であります。

この答弁だけ見てますと、資産担保証券の買入スキームは何を隠そうただの「見せ金スキーム」であったという話になるようです。前任の速水さん時代からの流れもあったし、日銀に対するプレッシャーがどんどん拡大してなし崩し的に長期国債買入の野放図な拡大から国債引受に繋がらないようにする為に、このスキームを利用したという事だという話になりそうで。

と申しますのは、同じ大久保委員から財政問題と日銀の関わり(要するに日銀が財政ファイナンスに協力するのはケシカランという事のようですが)に関して「財投機関債を買う可能性はあるのか」という質問がありまして、その答弁でこんなお話をしております。

『少なくとも、現時点におきまして日本銀行が金融市場に潤沢な流動性供給を行っていく、このための手段として財投機関債を買い入れる必要というものは全く感じておりません。』

『将来どうなるかと。将来の可能性というのは全く今のところは具体的には想定できませんので、あらゆる可能性をこの段階で排除するというわけにはいきませんけれども、しかし、方向としては、先ほども申し上げましたとおり、デフレを脱却し、そして金利を中心とする本来的な金融政策の姿に戻っていくということを今展望しているわけですので、そういう展望の方向に沿って金融の姿がうまく展開していけるということになりますれば、流動性の供給の量はおのずと削減されていくということであります。つまり、日本銀行のバランスシートは小さくなっていくということであります。』

『銀行券につきましても、今非常に大きく膨れた状況でございますが、今後の金利水準いかん、そして金融システムの安定に対する人々の認識が更に強まっていけば銀行券の発行残高も落ちていくと。これまた日本銀行のバランスシートが小さくなる方向でございますので、財投機関債を買い入れなければ金融調節が全うできない可能性というのは今のところほとんど予見できないと思います。理論的にこれを排除して、初めからこれだけは排除してしまうという必要も感じないぐらい今は予見できないということでございます。』

という事で、中央銀行として手も足も出せない量的緩和政策をとっとと終了させたいってぇ話を福井総裁が熱心に行っているというのも注目されておりますが、このあたりの答弁を見ますと、福井総裁は実を言えば所謂非伝統的な金融政策に関しても激しく否定的であって、通常ベースの短期金利をターゲットにした金融政策に戻した暁には非伝統的金融政策はもうやんね〜よ〜ってなもんなんでしょうな。


○結局のところ自信満々なんでしょう

この参議院財政金融委員会での福井総裁の答弁を仔細に見ておりますと、やたら景気に強気でして、しかもデフレ脱却にも自信満々(先週のきさらぎ会での講演では尚パワーアップしてましたが)。おまけに本日ご紹介したように、所謂非伝統的政策に関しても過去の施策が骨抜きになるのも無問題と言わんばかりの勢いで答弁しておりまして、もうタカ派というか本来の日銀マン的発言が満載でございます。

まぁ就任以来資産担保証券は買うわ、当座預金残高は大盤振る舞いするわで、随分と「何でもあり」的な雰囲気を演出していた総裁ですが、ここへ来ての「日銀マン全開モード」を見ておりますと、就任以来の姿は「世を忍ぶ仮の姿」だったんでしょうか?って言いたくなります。確かに当時からそういう見方をしている人もおいででしたが、正直者のあたくし(^^)は「なんという無原則な総裁だ」と勝手に憤慨しておりましたが、実は作戦としての演出だった訳ですな。福井総裁恐るべし。

・・・・・と、いつものあたくしらしからぬ気味悪い褒めようですが、どっちかと言いますと、本音を出すのは本当にCPIがゼロ以上になってからの方が吉ではないかと思いますが。景気回復というかデフレ解消に関して自信満々なのが最近の強気発言に繋がっているのだとは思いますが、これで景気が腰折れしたら「言わなきゃ良かった」って事になるとおもうのですが・・・・・


ま、そんな訳で、当面は「日銀(というか福井総裁)の景況感」と「市場の景況感」のギャップが相場のかく乱要因になるんだろうな〜などと漠然と思っております。



2004/11/12

お題「ネタはあれども小ネタになるのですが」

たいして呑んだはずでも無いのに朝からマーライオンになっていることもございまして、本日は甚だ簡単に参ります。

○買い意欲旺盛のようで

昨日の債券相場、FOMCでの利上げは確かに予想通りでしたが、いきなりのドル円でのドル反発があったりしたので、Liffeでは結構下落していたのですが、東京市場の寄り付きは思ったほど下がらず。

で、下がらずとか思っていたらいきなり長期債やら超長期債なんぞに買いが入ったようで相場反発。相場が反発すると局地的に「買いが買いを呼びますな〜」って感じになりまして「おいおい」という間に相場が上昇するという有様。まぁその後は戻り待ちの売りも出たようで、機械受注結果を受けた買いがやってくるまではもみ合いだったのですが、何だかんだと言いましてもやたらめったら買い意欲の強さを見せてくれました。

しかも15年変動国債入札も発行αが101とこれまた良好な結果になってしまいまして、その上いつもの割高発行になった場合のパターンと異なりまして、結果発表後の業者間売買では全然値下がりせず(というか全然値段がつきませんでした。そういう場合ってぇのは要するに投資家様の引き合いが強いって事を意味しますので、今回の入札の評価としては「入札結果は良好」でありまして、「固定利付債を買うのはシャクなのでとりあえず変動利付債を買っておきたい」という投資行動もまた確認できたって事ではないかと思います。

まぁ機械受注とかその前からの株価伸び悩みというフォロー材料もありますが、やたら景気に強気な日銀総裁の言動やら米国の雇用統計だとかFOMCだとか債券を売る材料は色々と揃っている筈なのですが国内債券相場はこの様な有様でして、先日ドラめもんで申し上げた「炙り出しモード」に徐々に着火しているようにも思える相場でありました。


○ますますタカの本領発揮のようですな

福井総裁がここの所絶好調のようです。昨日ドラめもんでご紹介した参議院財政金融委員会における答弁でも、景気に関するお話ではもう景気回復絶好調〜!って感じでしたが、昨日の講演およびその後の記者会見でも景気に関してはチョー強気だったようです。

講演のほうは既に内容が日銀のWebに乗っていますが、概ね「展望リポート」の内容に即したものとなっているようです。それよりも好調だったのはその後の記者会見だったようでして、例によって記者会見内容が日銀のWebにアップされてないので、報道を脳内メモリーから書き出しますと曰く、

「12月の展望レポート中間レビューで景気の見方を下方修正する可能性はゼロだと確信している」
「今のCPI見通しからすれば来年度後半には消費者物価のゼロ%以上が達成できるのではないか」

みたいな感じでして(正しくは日銀Webをご覧下さい。正確性については担保致しかねます)、まぁとにかくここへ来て強気モードに益々拍車が掛かりまして、今まで猫をかぶっていた福井総裁もセントラルバンカー本来の面目躍如と言う感じです。


ま、こうなってきますと、政策の枠組みに「CPI時間軸」っていう「ビハインド・ザ・カーブ強制装置」が組み込んであるのが効果を発揮して来るわけでして、フォワードルッキングな金融政策をやっていたら今頃既に「すわ量的緩和政策解除」って騒ぎになっていたかと思います、まぁその装置があるから安心してタカ派全開モードになっているのかもしれませんが。


このあたりに関しては改めて纏めます。本日は激烈マーライオンなので簡単メモで恐縮です。






2004/11/11

お題「いろんな意味で読みごたえのある会議録」

11月2日〜3日にかけて参議院財政金融委員会で「財政及び金融等に関する調査のため」という事で、日銀からは福井総裁、岩田副総裁や理事3名が参考人として出席して質疑と言うか議論が行われておりまして、この時の福井総裁の景気に関する強気スタンスが報じられてちょっと話題になっていたことは記憶に新しいかと存じます。

で、その時の会議録が参議院会議録情報にアップされましたので、これを読もうとしたわけですが、全編に渡って福井総裁を始めとして日銀に対する質疑応答が連発しておりまして、読んでいるだけで結構なボリュームになります。という訳で、今日は11月2日分(質疑を紙に打ち出すと33ページになる)の前半3分の2くらいまで何とか読んだので、そのあたりから適当にご紹介したいと思います。なお、当該会議録は参議院Web(http://www.sangiin.go.jp/)から「会議録検索」→「財政金融委員会」から検索できます。

○「デフレ脱却にインフレターゲッ」ト論者の限界か

自民党からの質問者はお馴染み舛添要一先生です。インタゲというよりはもう日銀は実物資産でも何でも買えやという話をするお方で、昔のバーナンキ先生の影響を受けているのでしょう。肝心のバーナンキ先生はFRBの理事になってからすっかり普通の事しか言わなくなっているというのはまるで気にしていない所が実に香しいのですが。

基本的に質疑がやたら長いのが難点なのですが、変に割愛するのも何なので舛添委員の質問からまる引用です。まぁこのあたりがはしなくも「インフレターゲットを導入してデフレを脱却しましょう」論者(=インフレ抑制の為にインフレターゲットを導入するという話とは本質的に違うという点にご留意ください)の限界を示したのかな〜と思わせてくれました。

以下舛添さんの質問。

『次に、デフレをどう克服するかということについて議論したいと思いますけれども、この点に関しては、日銀もいつどこでと、これ明確に言えない状況だと思いますし、依然としてデフレは続いていると思います。』
 
『そして、その政策手段として、これは私どもがずっと日銀を批判してきたことでありますし、私はやっぱりインフレターゲットということをもっと明確に掲げるべきであるということをずっと申し上げてきました。』

『ただ、消費者物価、このCPI、全国規模で生鮮食料品を除いて前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するということですから、ある意味でこれはもうインフレターゲットだと私は見て、それでしようがないかと、しようがないかというか、ないよりはいいと。』
 
『ただ、私の立場からいうと、今の段階でも二とか三とかいう数字をやってくれていればもっとうまくいったし、今でもそうじゃないかなという感じがするんですが、出口論との、いつこの量的金融緩和をやめるかという出口論との関係もありますが、この今の私の考え方に対して、総裁、どういうふうにお答えになりますか。』


第3段落まではまぁ良いとしまして、最後の段落の質問のあたりが要するにインタゲ導入しろやゴルァという訳ですな。ところがこの最後の段落で舛添先生が仰せなのは、現在の量的緩和政策のコミットメントであります「CPIが安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和政策を行う」という「ゼロ%」を「プラス2%とか3%」にしたらより早くデフレから脱却できるのではないかという意見であるとしか読めない訳です。

現実問題としてデフレ絶賛継続中(というか物価が上がらないというのが現在をあらわす言い方としては正しいわけだが)なのですが、コミットメントの数字をゼロからプラスなんぼかにしても、結局日銀が打てる手は同じようなものな訳ですから、ど〜考えてもその数字をプラスなんぼかにしても結果は同じであろうかと思うわけです。

「デフレ脱却の為にインフレターゲット政策の導入」という政策提案をする人が世の中結構多くて、なぜだか知りませんが官庁系のお方(経済官僚のキャリアのお方なんかは特に)に多かったりするのですが、この人たちの最大の弱点は「じゃあ具体的に何をすればいいのよ?」という質問に対して処方箋が出てこない所です。苦し紛れに出してくる処方箋は大体が本質的に「ヘリコプターマネー」だと言うところが如何なものかと思いますな。


ちなみに、福井総裁の答弁もやたら長いのですが、インフレターゲットに関する部分だけ抜粋しますとこんな感じです。

『委員御指摘のとおり、私どもは、いわゆる明確なインフレーションターゲティングの政策は取っておりませんが、取りあえず物価が下落し続けるという異常な事態から脱却するために消費者物価指数がゼロ%という、これは私は一つの通過点と申し上げております。通過点において明確なターゲットを掲げ、そして人々の限りなきデフレ心理というものを修正しながら、つまり限りなく物価が下がるんだというふうな、そういう期待は修正しながら、そして企業、金融機関の構造改革努力を背後からサポートして、とにかくおっしゃるとおり出口に早く到達して、出口の後の正常な経済運営、そして金融政策の運営の局面に早く移りたいと、こういう作戦を取っているわけでございます。』

『私自身は、インフレターゲティングというものは、いつも申し上げておりますとおり、中央銀行の政策手段の一つの重要な選択肢としてこれを一度も排除して考えたことはございません。将来もしあり得るとすれば、局面に応じては一つの選択肢として十分考えたい、本当にこれが採用できるかどうか。米国の場合にも、やっぱり連銀はなかなかインフレターゲティングを採用しておりません。世界経済の中で非常に重要な位置付けを占める通貨の、通貨政策の場合に、その透明性を上げるという要素とフレキシビリティーを保つという要素、この利害得失の関係を最終的にどう判断するかという難しい問題が残っているというふうに思っています。』


「デフレ脱却の為に行うのではなく、インフレ抑制という意味でのインフレターゲットは検討に値する」という総裁の答弁は何度も聞いて(見て?)おりますのでお馴染みではあるのですが、ひところ情報ベンダーからは「日銀総裁インフレターゲット導入も選択肢と語る」みたいな言い方をされて「???」という印象を与えてみたり、「すわインタゲ導入」などという動きをされてみたりしておりましたが、さすがに最近はこの福井総裁の言い方も世の中で周知されているようです。


○オモシロ質問というかトンデモ質問というか

1回分の多分3分の2位の質疑応答というか論戦をざーっと読んだのですが、色々な面白い応酬がありまして、何といいますか激しく楽しめます。特に今回は質問する側も自信満々で登場しているようですので大変に結構です。

とは言いましても何か激しくスカタンな質問もある訳でして、本日は(この会議録は正直小ネタの宝庫という感じですので、またネタに使う可能性大^^)質問者の方にのみ注目してイチャモンをつけてみましょう(^^)、という事で「そりゃ何ですか〜」って質問列伝をば。

・舛添要一委員(自民党)

『それで、最初、お札の経済学のような話をお伺いしたいんですけれども、低金利でたんす預金が非常に増えていると思いますが、日銀総裁、どれぐらいたんす預金あると思われていますか。』

→この先の質疑応答を見ても意味がある質問とは思えん。ちなみに福井総裁も『たんす預金というのは、厳格に言いますと本当にたんすの中に入っているお金ですので正確にはつかめませんが』と返しながら銀行券発券残高の話をしてました。ちなみに舛添先生この後に続けて質問というか意見を言ってますが、

『この新札発行を機にたんす預金が外に出て少し世の中の金巡りがよくなるんじゃないか、そういう意味でマネーサプライ増えるんじゃないかと、こういうふうに期待していますけれども、そういうことはございませんかね。』

→言いたい意味はわかりますが、たんす預金が外に出てきてもマネーサプライに変化は無いとおもいますが何か?

で、まぁ新札発行だのマネーサプライだのの話を延々としているのですが、こんな質問をしても答えられないというか、そもそも新札発行は経済対策でも何でもないのに何を聞いているのでしょうって質問もありまして・・・・

『それと、この新しいお札はサイズは前のと同じなんで、自動販売機なんかを総取替えということはないと思いますけれども、少なくともソフトを替えないといけない。そうすると、この内需拡大効果というのは、総裁、どれぐらいになると見通しておられますか。これも難しい質問ですが、お見通しで結構です。』

→お見通しも何も答えようが無いので、総裁は一般論でかわしていました(^^)。

で、この話の続きでマネーサプライの伸びが2%台なのは少なすぎでケシカランという話になっていくのですが、その辺は割愛します。ちなみに話は逸れますが、その流れの中で日銀総裁の景気強気発言として注目された「銀行貸出はこれから増加に転じる云々」の発言もでていましたが、会議録を見る限りではどっちかというと話の勢いで強気カンカンの発言をしちゃいましたって印象をうけました。そのほかにも舛添さんとの質疑の中では景気見通しの話なんかもあったのですが、やはり総じて言いますと日銀の公式見解というか展望リポートの内容に即した強気の見通しになっています。

で、どうでもいいのだが舛添先生そんなこと聞くなよな〜っていう質問が。

『アメリカ経済についてですけれども、正に今日、アメリカ大統領選挙ということでありますが、ブッシュさん勝利の場合は、これは基本的な政策、継続すると思っていいんでしょうが、ケリーさんになった場合に、例えば最悪のシナリオを描きますと、ドル安に意図的に持っていく、したがって日本の輸出に対してマイナスのダメージを与える可能性がある。ドル安、裏は円高ですから。これどちらが勝つかはなってみないと分かりませんが、仮にケリー政権となった場合に、日銀総裁としては、こういうことになったら困るなとか、こういう政策を取ることは懸念だなということを他国の内政に干渉しない範囲でお答え願いたいと思います。』

→そんな答えようの無い質問をしないように。しかし福井総裁の偉いな〜と思えるところは、このようなしょうも無い質問に対しても丁寧に答弁しているところでして(といっても結局何も答えてはいないのですが^^)、これが別人だったら「誰が当選したら良い悪いというようにとられるような質問についてはお答えできません」と言ってもおかしくないかと。


・平野達男委員(民主党)

こちらの先生は延々と量的緩和政策のコミットメント部分に関して同じような質疑を長々と繰り返していまして、まぁ質問全体が「この人何でここまでしつこく同じ事を聞いてるんだ」って感じです。とにかく引用しているとアホのように長くなってくるのでどれがどうという話は今日は割愛ですな。総裁の答弁の方が面白かったり示唆に富んだりしているのですが(^^)。


・大久保勉委員(民主党)

某外資系証券のマネージングダイレクターから候補者公募で当選したお方だと記憶しておりまして、まぁ民主党お得意の「専門家」ってお方なのですが、頼むからそんな事聞かないでくれという質問が爆裂するわけです。

『まず、日本銀行のバランスシートに関して質問します。この五年間で日本銀行のバランスシートが二倍に、そして過去十年間では三倍に膨れ上がっています。具体的な数字を申し上げますと、一九九八年が八十兆、これはGDPの一六%です。これが二〇〇三年では百五十兆、GDPの三〇%になっています。国際比較をしますと、米国連銀は七%、欧州中央銀行一二%。この数字に比べても極めて日本銀行のバランスシートが急激に拡大している、また絶対的な金額も大きいと。このことに関して日本銀行総裁に質問します。』

『日銀の資産のアセットサイド、資産の七割が国債ということに関して、日本銀行が事実上、政府の国債管理政策に組み込まれていると、こういった懸念があります。また、このことによりまして政府の財政の規律をそいでいると、こういう指摘もあります。このことに対して総裁はどのようなお考えでしょうか。』

もうね、アホか馬鹿かと。量的緩和政策で日銀当座預金残高を拡大しているのだから、日銀のバランスシートが拡大するのは当たり前であって、日銀当座預金という負債サイド(銀行の預金は銀行から見れば外部からの債務ですな)が拡大している反対側の資産サイドが国債なのがどこがどう悪いのかと。一番安全じゃねーのかと思うわけでして、日銀当座預金の見合いがどこの馬の骨ともわからない所への貸出だったり、どこぞの原野だったりしたらそっちの方が危ねぇじゃねぇかと小一時間問い詰めたいところです。

総裁もこうとしか言いようが無いわけでして、

『日本銀行のバランスシート、資産、負債ともに非常に大きくなっておりますのは御指摘のとおりでございます。これは、ひとえに、量的緩和政策によって市場に流動性をたくさん供給する政策目的から結果として起こったことでございます。市場にたくさん流動性を供給するということは、市場の中から日本銀行が資産を買い入れて、対価として流動性を供給すると、こういう形になるためでございます。』

多分「お前はそれでも某証券のMDかよ」って言いたかったでしょうな〜。で、この話の流れで総裁も言わずもがなの話をする訳で、その答弁の部分がフラッシュとして打たれてしまいました。

『様々な資産を買っておりますけれども、おっしゃいましたとおり、長期国債の金額も非常に大きく増えていると、このことは確かでございますが、今申し上げましたとおり、これは政府の国債管理政策の一環として行っているわけではないと。ましてや、先ほどからも御質問に出ておりましたけれども、長期金利を経済の実勢以上に人為的に低く抑えると、あるいは抑え続けるということを目的にやっているものではございません。』

その通りなのですが、別にそこまで言う必然性があったのかと。今年2月に量的緩和政策の効果について「金利に蓋をする」と言ったのと同じものを感じる次第です。



#延々と書いていたらもう一つのネタであるFOMCステートメントの話を書く暇が無くなってしまいました。基本的な枠組みは変らず、景気には依然として強気であります。



2004/11/10

お題「ネタが無いときの相場後講釈」

実は国会(参議院)の会議録待ちでもあるのですが(^^)。

○5年国債入札レビュー

昨日の5年国債入札ですが、久々に「入札前から先回り買い」が登場したようでして、米債下落にもかかわらず(というか日本株が全然上がらないからというのもあるのですが)相場の下押しはあまりなく、時間の経過と共に2兆円の新発債が出るというのに入替ベースと思われる動きも含めまして5年債益々堅調。前場引けの時点では債券先物は前日比変らずの水準まで戻されたのですが、この時点で既に5年ゾーンは前日比利回り低下という有様で、実質高値引け状態。

で、入札はと言いますと事前のプライストークの中で一番強気の部類にあたる水準で決着しまして、その後は前月と同じパターンでヘッジの買戻し先行攻撃で先物独歩高という攻撃になりました。もしかして同じパターンかと思ったのですが、ついつい手が勝手に動いて(^^)前場の引けで先物をほんの少しだけヘッジしたらまた例によってヘッジしたものだけ担がれ状態になっていたあたしゃ〜「ありゃまたやっちまったよ」ってなもんです。さすがに学習効果によってヘッジって言ったって殆どオマジナイ程度だったので、第U非競争価格入札のストライクプライス(っていうか要するに平均落札価格)を抜けて上昇というこれまた前回の入札と同じパターンをやっている間にヘッジロスは目出度く誤魔化されましたが(^^)。

つー訳でして、「入札前から事前の買いが入る」→「割高入札」→「入札の割高を修正しながらも相場水準上昇」という結果になったのですが、事前に無理矢理相場水準を下げて入札を良好にした先週の10年国債入札と比較しますと、今回の入札の方が事前に無理に安くしていない分だけ結果良好という評価になるでしょう。

んでまぁ新発5年41回債の日本相互証券引値が0.64%で40回債の引値が0.635%って事になりましたんで、昨日あたくしが根拠レスの感覚で申し上げました「クーポン0.7%ってのはどうも居心地が宜しくありませんで(略)、どっちかに抜ける可能性が高いという面もあります」ってのが珍しくも当たりましたな。と言っても方向性どっちって言って無いし、5年の0.7%から確かに外れましたが、相場全体で言えば先物オプションのインプライドボラティリティーは絶賛低下致しましたので、全然意味の無い当たりっぷりですわな(自爆)。



○炙り出しの香りが少々して参りました

「展望リポート(どうもレポートではなくリポートらしいので今日からリポートと書く所存)まで様子見」「雇用統計まで様子見」「FOMCまで様子見」などと様子見のオンパレードで半期替わりしてからはや1ヶ月が経った訳ですが、昨日の債券相場では2兆円と中長期国債の中で額面ベース最大の発行を誇る5年国債の入札がある(=黙っていても額面2兆円分新規供給がある)にもかかわらずに先ほど申しあげたように入札を待たずして買いがご登場。

まぁ大体入札前に先回り買いなどというのはあまり褒められた動きでは無いのですが、「先回りで買っておかないと他の人が買ってしまうのではないか」という焦燥感が出てくると目の前の2兆円供給が待てなくなる訳ですわな。業者にとってはいい迷惑ですが、まぁ入札前から持っていかれると仕方がありませんので高値入札になってしまいます。

で、かつての債券馬鹿相場やら戻り高値絶賛トライ相場(今年の正月後に相場上昇した挙句に日銀総裁が国会で「金利に蓋をする」と燃料投下発言をした相場ね)なんかで良くあったパターンとしては「入札前に事前の買いが入る」→「割高高値入札」→「益々堅調」というのがございまして、まぁ大体こういうときは「先に買わないと他の誰かに買われてしまう」という香しい焦燥感が大手投資家様のケツに火を点けて相場に燃料投下となり、結構なるお加減で祭りが発生する訳であります。などと言ってるあたくしもその場にいる時は目先の動きに反応するのがお仕事なんで(本当か??)祭りに巻き込まれて小さな怪我やら大きな怪我をする訳ですが(激汗)。


そんな観点から昨日の5年国債入札を振り返って見ますと、久々に事前の買いがそれなりの規模で入った(ただし入替ベースの買いもあったようで、そっちの評価はムツカシイ所ではある)と見られる所は「そろそろ様子見とか言って何もしなかった人たちが我慢できなくなってきたかな〜」と思わせる雰囲気を醸し出しております。

とは言え、昨日の入札の場合は、入札時点ではやたらめったら強かった5年ゾーンが落札結果発表後の相場上昇でイールドカーブ上の入札時点での強さをしっかり修正してしまい、そこそこ堅調ではありますが、極端な盛り上がりを示していなかったという事が言える訳でして、まぁ要するに「強い落札結果を見てなおも(当該ゾーンに)買い攻撃」は大して入って無かったということでしょうから、まだまだ燃料投下の買い遅れ焦燥祭りにはなっていないと見るのが宜しいかと存じます。

また、チョー久しぶりに平均落札価格=最低落札価格となりまして、その落札価格である100円20銭という価格自体は「まぁ応札するのに(高いから)抵抗あるんだけど仕方ね〜のか」という感じの価格で、その価格が平均落札価格だったという事は、21銭以上での応札があまり無かったという事を意味するわけでして、特にチャレンジャーというか暴れん坊将軍の登場も無かったという事であります。また最低落札価格での按分比率が72%とかでしたんで、まぁ落札した業者としては「まぁ仕方ね〜な〜」ってなもんで、落札結果判明後に「想定外のショートポジション」って状況になっている人もそんなに居なかったという感じだったのではないかと思います。この辺もまだまだ相場は冷静だな〜と思わせるものがありました。


○で、結論

という訳で、うだうだ書いたのですが、そろそろ相場が下がらないと思い出してケツに着火しつつある雰囲気は漂って来ているのかな〜ってなもんでして、昨日ドラめもんで申しあげたときにはまだ煽られ合戦は遠い先のような話をしたのですが、この5年国債入札後に相場が暫く持ちこたえていると、そろそろ点火モードになるのかもしれませんのでご注意ありたし。

ま、月曜に「水野さんが田谷審議委員の後任らしいし、福井総裁がやたら強気発言をしているので、その辺をネタに仕掛けが出てもおかしくない」と言ったばかりなのにお前は何を言ってるんだと小一時間問い詰められそうですが、まぁ金融政策に関する思惑は思惑、目先の需給は需給という事ですので(と、我ながら苦しい言い訳ですが)、金融政策への思惑はこれからも潜在的にある地雷であって、需給的には上記のようにちょっと金利低下(しかしここから買いが入るのかは激しく疑問)の可能性も、ってことにして置いてください。あー無理矢理な言い訳だこと(自爆)。


何だか良く判らないのですが、今朝のモーサテでは定率減税の話を捕まえて「景気腰折れの懸念にまた一つ悪材料」みたいな言い方をしておりまして、景気回復で財政再建路線再開だの量的緩和解除の出口がどうのこうのとか言い出してなかったっけおたくの系列の新聞社はって突っ込みを入れたくなってしまいましたが、ここの所「偉い人」がよくご参考にされる某経済新聞の景気に関する論調がコロコロ変る(ように見えますが、単に両論併記なのかもしれません)のがまた妙に気になるところでもあったりする訳です。まぁ某経済新聞も相場と同様気迷いモードなのかもしれませんな。






2004/11/09

お題「小ネタを少々」

こう暑かったり寒かったりするとつい体調を崩すわけで、入札があると言うのにまことに遺憾であります(-_-メ)。


○中原伸之元審議委員の講演

いつのまにやら金融庁顧問をやっておられる元日本銀行政策審議委員の中原伸之さんが都内で講演をやっていたようであります。まぁ市場へのインパクトという意味ではあまり関係ない話ではありますが。

中原伸之さんといえば日銀審議委員の時に景気弱気の急先鋒でいわゆる非伝統的政策の提唱で有名なお方でした。結果としてみれば中原伸之さんの主張がかなり取り入れられた政策運営を日銀が行っているので、そ〜ゆ〜意味では慧眼の持ち主でありました。ただ、惜しむらくは氏の主張っつーのがどうも金融政策の伝統的な立場に対して無用に攻撃的というか喧嘩売りまくりの印象を強く与えるのと、政策運営をどうするかって話になると提言内容が少々極論のきらいがあったので、当時は「ふ〜ん」という感じで見られていたのが残念でしたな。

で、この講演なのですが、残念ながら講演テキストを拝見しておりませんので、情報ベンダーが打ったフラッシュを脳内メモリーから書き出しますとこんな発言がありました。

「景気は下降局面にあり、次に景気の底を確認してから量的緩和政策の解除を検討すべき」
「緩和政策解除に関しては地方の土地価格や銀行貸出の増加傾向なども確認する必要がある」

「景気下降局面」というのも相変わらず中原伸之さんやりますな〜と思う訳でして、立場的に何を言ってもまぁ無問題な位置なんでいいのかもしれませんが、相変わらずもうちょっと物の言い方があるのではないかと思うわけですな。日銀に対して政策提言する気があるならそんなに直球剛速球で日銀の景気に対する正式見解を全面否定するこたぁねぇと思うのですが(などと悪口雑言三昧のドラめもんに言われたくは無いですな、すいません。)、まぁそれはそれとして。

講演の全文を見ているわけでは無いので想像になるのですが、恐らく中原伸之さんは「循環的に景気が回復しているからと言っても資産デフレが止まるまでは量的緩和政策の解除は時期尚早」と言いたいのではないかな〜と思う訳でして、即ち、一般物価のデフレより大きな問題は資産デフレであってフローよりもストックが問題ではないですか?ということなんでしょうな。それならあたくしも同意。

で、まぁ中原伸之さんの良い所でもあり悪いところでもあったのですが、審議委員時代にこういう話を始めた場合どうなるかと申しますと、もし今このときに審議委員やっていたら「量的緩和のコミットメントにCPIだけでなく地価動向などを加えるべき」と言い出して「それはあまりにも政策としておかしかろう」と言われて話が終わってしまうわけですよこの先生は。

まぁその辺は「総合判断」で何とかしましょうって事になるんでしょうな。


で、何でまた測ったようなタイミングでこんな講演をしているのかは良く判りませんが、まぁ取り敢えず日銀は「量的緩和解除を具体的に検討したいな〜」モードに入っており、政府は「国民負担増キャンペーン」を張っているという「循環的な景気回復ムードに早速煽られている」金融当局と財政当局へ一石を投じていると言う事でも評価に値する講演なのではないかと思う次第であります。


○負担増キャンペーンはいかがなものか

昨日マクラでも書きましたが、結構マジで国民負担増加キャンペーンをおっぱじめているようでして、定率減税の縮小(というか下手したら撤廃)話は確定状態で、「このままでは消費税21%」などと言って脅しキャンペーンまで開始という実に香しい状態。

どうも施策として出てくるのが「既存の取りやすい連中からより取り立てる」という方向になっているのが気になるというか、相変わらず所得が全部捕捉されてきっちりと納税しているあたくしと致しましては誠に遺憾であると言った所です。そんなに増税したいのなら課税ベースの拡大とか消費税のインボイス方式導入(で捕捉をきっちりと行う)とか本来やるべきことは他にあるのではないかと思う訳でして、何か「国民負担増キャンペーン」でまたまた将来不安を煽ってどうするんだって感じではあります。

そんなこんなでこの「景気回復」(本当かね)に早速お慶びになった日銀は「量的緩和政策はしょーがねーから続けている」といわんばかりの言い方を益々強め、税務当局が「景気も回復したし増税しましょう」と言い出すというのは橋本内閣の「9兆円負担増」を髣髴とさせて激しく如何なものかという感じでありますな(-_-メ)。

橋本内閣の時は結局負担増はしたものの、景気が大失速してその後に小渕、森と財政大盤振る舞い(ま、昨年あたりから小泉内閣も「一般財政を使わない財政大盤振る舞い」をやってますが)をする破目になって財政状況は益々悪化したわけでして、もうちょっと物事考えてくれって感じではあります。

もしかしたら中原伸之さんはこちらの増税問題も念頭にあって講演をしていたのかもしれませんな。



○5年国債入札

何だか良く判らないのですが、常に「様子見」モードになっている債券市場という実に不可思議な状態になっておりますのが最近のマーケット。よって「様子見が許されない人」が時々買いをドカンと入れてきた時だけ相場がいきなり上昇して、煽られ組が提灯つける事はあるのですが、冷静に気が付くと上で買う人がいないので結局(新発国債が出るので需給は何もしないと勝手に悪化するので)元の木阿弥になるという相場が続いてます。

「様子見が許されない人」ってのは要するに「○○日までに債券をポートにナンボか積み上げる必要がある」って人でして、大体の場合年金新規資金となっております。これが2月くらいになると「期末までに債券をある程度積んで置かないといけない」という話があちこちから出てくるので、「相場が下がらないから買う」などという人が出てきて、煽られ合戦が発生して実に香しい展開が起こるのですが、現在は11月前半なのでそれを期待するのは難しそうですな。

さて、小見出しの5年国債入札ですが、正直よ〜わからんですし、過去の5年国債のクーポン推移をご覧になると何となくお分かりになるかとおもうのですが、実はこの(想定されている)クーポン0.7%ってのはどうも居心地が宜しくありませんで、大体0.8%より利回りが高いか、0.5%〜0.6%あたりにいるかという事が多く、どっちかに抜ける可能性が高いという面もありますので、入札後の動きにはそれなりに注目が必要かと思います。

業者間気配の状況証拠だけ並べると、昨日は3年あたりのゾーンの5年国債の成れの果て債券に妙に売りが出ていたようで、業者がみな揃ってショートになっていてヒーヒー言っていたはずの銘柄がボカスカ出合ったり、それまで業者が揃ってロングでもう売れないモードだったはずの直近発行の5年40回債は妙にしっかりしてきたりしてました。このあたりの状況を勝手に総合すると、「業者は5年カレント債はショートになってる(ような気がする)」「3年辺りを売って新発国債を買おうとしている人がいる(ような気がする)」といった所でしょう。

要するに入札は懸念なしということで。その後は知らんが。





2004/11/08

お題「田谷さんの後任」

金曜日のニュースといえば田谷審議委員の後任人事。CSFBの水野温さんが後任に内定という事でして水野さんの最近のレポートどうなってましたっけなどという話題で盛り上がっておりました(^^)。

田谷審議委員はこのへんhttp://www.boj.or.jp/about/basic/pb/taya.htmにあるように、経済学者というよりはエコノミストっぽい所ではありますが、今度の水野さんはもろに市場関係者ですので、まぁエコノミストっつーよりは市場関係者って感じですな。で、まぁ本日は水野さんがどうのこうのって話しは本職の方もするでしょうから、ちょっとだけ別の視点を交えながら。


○比較的まともな主張をする人のようですが

水野さんのレポートを精読したわけでは無いのですが、野村證券時代にはよく拝見していたレポートは至極まっとうなお話が多うございましたし、最近はレポートを時々しか拝見しておりませんが、まぁ偶に拝見したときの印象は引き続き「バランスの取れた真っ当な事を言うお方」という所です。最近ではどちらかと言うと量的緩和政策からの脱却について言及しておられるようですが、(本人に聞いたわけではないから勝手な憶測ですが)まぁ審議委員入りがどうのこうのという話もあったのでしょうが、それよりも「量的緩和政策の長期化」ばかりが話題になっている風潮に一石を投じている(そもそも日銀総裁の最近の国会答弁にあるように、日銀総裁は別に量的緩和政策を延々と引っ張る気はない点に注意)という面があったのではないかな〜なんて。

まぁ極端な事は言い出しませんし、主張もあまりぶれないお方だと記憶しております。で、金融政策についてコメントする際には金融政策の論理的整合性っつーかアカウンタビリティを重要視していたような気がしますんで、まぁ色々と考えますと、年がら年中日銀やら金融政策のウォッチをしているお方なのですから、あんなお方やこんなお方よりは遥かに適任なのではないかと思ったりするわけですな。

元々市場関係者から審議委員を選ぶって事が所与だったとしたら、まぁ水野さんが最も順当な人事だったと思います。というか順当過ぎという話もあるようですが。


○田谷さんの後任という意味では

田谷さんはご存知のように「金融政策の論理的整合性」を重要視していて、景気が方向として回復に向かっているという認識をしているのに当座預金残高の目標額を引き上げる(=量的緩和政策の枠組みの中では金融緩和扱い)という支離滅裂な金融政策(だから当時は「円売り介入のサポートの為の追加緩和」と散々な言われようでしたが)に堂々の反対票を投じておりました。この時は須田さんと(途中までは)植田さんも反対していまして、一時は「執行部以外の票決が半々」という素晴らしい状態になっておりましたが、岩田副総裁を除く経済学者系の審議委員が全員反対票という香しい状態になっておりましたな。

で、そういう意味ではまぁ審議委員の中では「非主流派」であり「原則論重視」でもあるので本来的に言えば「正統派」でもあると思うのですが、そういう田谷さんの後釜に座る水野さんは、まぁ割と「バランスの取れた人」となりますので、政策委員会におけるバランスはやや執行部よりになるんでしょうが、それほど極端な変化は起きないように思えます。

まぁあたくし的には田谷さんみたいにある意味「執行部に対して耳が痛い」発言をしていただきますと実に面白いのですが、そこまで期待するのは無理があると致しまして、今後のご活躍に期待したいと思います。


○変化がなさそうではありますが・・・・・

さて、そんな感じで(同業者のレポートを引用するのも何ですので具体性に乏しい記述になってしまいましたが)まぁ水野さんになったからと言ってそんなに極端な変化がおきるとも思えないのですが、相場に与えるインパクトっつーのはまた別の問題であります。

と申しますのは、あたくしがこのように「まぁ順当な人事で、そんなに極端な話にはならないでしょう」などとしたり顔で能書きを垂れていましても、世間様がどういう解釈をするかと言うのは別問題(何てったってあたくしが「それは量的緩和政策の自己否定に繋がるから有り得ない」と言い切っていた「量的緩和のあとにゼロ金利政策が延々と続く」といういわゆる2段階解除論が債券市場で主流の見解だった(今でもそうなのか?)りした事ありましたし・・・・)でして、じゃぁ世間様はどうよ?ってのを考えませんと日々のちょこまかとした相場変動できゃあきゃあ言うのを正業としているあたくしとしては困る訳でございます。

てな訳で、まずまともに英文ニュースで出てきたのがあたくしの知る限りではDowJonesNewswiresの金曜午前11時2分のニュースでして、水野さんの金融政策に関する最近のレポートに関してこのような記述がありました。

In one fo his most recent reseach reports, Mizuno said that the central bank could opt for an early shift to a more normal interest-rate targeting monetary policy from its ultra-loose quantitative easing.

でもって、ブルームバーグ同日午前10時19分のニュースでは日本語ニュースですが、水野氏の審議委員就任(の方向)に関して「日銀に力強い援軍、CSFB水野氏が次期委員の報道」という題で記事がありまして、まぁその中から拾ってみますとこんな感じです。

「民間エコノミストより強気と言われる日銀だが、水野氏はその日銀と同じ強気派に属している。」
「水野氏の起用には、福井総裁自身の意向が強く働いた可能性がある。その福井総裁は最近、出口政策について踏み込んだ発言を繰り返している。」
「福井総裁が展望リポートに前後して強気な発言を増やしていることが、来年度の量的緩和解除に向けた「地ならし第1弾」だとすれば水野氏の起用はその第2弾に当たるのかもしれない。」

ついでにこの記事の小見出しを並べると「福井総裁の強気と軌を一にする起用」「来年度の解除に向けた「地ならし」」となっております。


あたくしが読まない日経新聞なんかでもど〜せ似たようなお話はでているでしょうが、まぁ水野氏起用という事で出てくる解説記事としてはこんな感じのものが多いでしょうから、そ〜ゆ〜意味で言えばまたも「量的緩和政策の早期解除がどうのこうの」って思惑が浮上しやすい展開になってきていると見るのが妥当だという事になるでしょう。

特に、ダウジョーンズの英語ニュースとかブルームバーグのニュースなんかは海外投資家というか投機家がいの一番に読むでしょうから、こ〜ゆ〜のを読んで何をおっぱじめるかとかを想定しておくのもまた宜しいかと。今年の6月ごろに武藤副総裁の海外でのスピーチを無茶苦茶に曲解したレポートがどこぞのストラテジストから出されて相場のとんでもない下落を招いたという事件は記憶に新しい所でありますので、まぁ注意するにしくはなしと言ったところでしょうな。


それでは〜




2004/11/05

お題「相場雑感」

金融政策に関するお話が続きましたので本日は相場に関する雑感。

○買い安心感というもの

昨日の債券相場は米国市場の株高債券安にも拘らず朝っぱらから先物いきなり特別買い気配。確かに米国市場では株高債券安と言いましても最初大幅株高債券安だったのが戻る形で引けたってのもあるのですが、まぁ物の見事に債券上昇となりました。

まぁ寄り前から債券市場には買いが入っていたようなのですが、相場が戻ったのを見てまた買いが入るの図という事になったようでして、現物債が堅調に推移してまぁ正直びっくり致しました。

何が驚きかといいますと、昨日の高値近辺では火曜日に入札が行われた10年264回債がほぼ1.5%という状況になってしまった訳でして、まぁ20年国債のヘッジの買戻しとかの事情もあるんでしょうが、背景にそれなりに投資家様の買いがあったことを考えますと「利回り1.5%を大きく上回る展開があんなにあったのにどうなってるのよ」と正直思わざるを得ませんな、まったく。

まー目先のイベントが終了したから手控えていた買いを出動させるという理屈は判らないでも無いのですが、それにしても相場水準ってのもあるだろうと思うのでありまして、入札時点で1.555%だの1.56%だのという状態までやっていた(しかも入札だからその水準で玉は楽勝で確保できる)のに、相場が戻ってから買いが入ってくると言う姿をみますと、毎度毎度お馴染みの展開ではあるのですが「何だかな〜」と思う次第であります。

「相場が戻ってから買う」っつーのは、相場のモメンタムを重視って事なんでしょうし、まー確かにイベント前に下がっている時に買ったは良いけど、イベント発生でなお相場下落って事になったらまぁ癪の種でしょうからそのお気持ちも判るのですが、どっちかというとその発想は「ディーラー(トレーダー)」の発想なのではないかと思ってしまう次第。債券投資って「上がりそうだから買う」って言うのではなくて、投資としてこの利回り水準なら買うとか買わないとかという発想で買うものなのではないのかな〜などと、債券投資部門の苦悩が良く判らないで勝手な事をいうあたくしは思うのでありました。


○損益あるいはポジションの「時間」の差

判ったような判らないような小見出しですな。

さて、上記の言い方ですと世の中の債券投資をしている人が揃いも揃ってまるでディーラーのように「上がれば一斉に買い出動して下がれば一斉に売り出動」しているかのように読めちゃうのですが、実際問題としては投資水準を決めていて相場が下がると徐々に買い出動して、逆にある水準を越えると徐々に売っていくという投資家の皆様も多数おいででございます。

あたくしはディーラー(トレーダー)と投資家を分けるものというのは「ポジションの時間」であると思っております。最終的には半期でどうのこうのと言われますが、まぁ毎日ポジションがばたばた動いて(特にマーケットメーカーの場合ですが)損益計算して勝った負けたと言われる業者(ディーラー)に対しまして、投資家っつーのはよーするに期間収益を幾らか以上獲得する事が目標な訳ですから、ポジションを評価する時間がもうちょっと長い(最近は必ずしもそうではないという話もある訳ですが)ので、その分本来は毎日きゃあきゃあ言う必要もないのではないかと思うわけです。

そんな事をつらつら考えて相場を呆然と眺めておりますと、何だか投資家サイドまでディーラー的な動きに煽られているのではないのかな〜なんて思う次第。昔のディーリング全盛時代の残滓を引きずっているのかな〜とも思っておる訳です。ま〜投資家の皆様が「下がらないと買わない、上がらないと売らない」って事になってしまうとこちとら商売あがったりなので今後とも暴れて頂くことは誠に慶賀の念に耐えないのでありますが、本当にそれで良いのか?とちょっと思ってしまった昨日の債券相場でありました。


○さっきのところで終わりにするとただの悪態になるのでフォロー(^^)

と、散々悪態をついておりますが、確かにやれ「年金資金の評価を4半期で評価する」だの「月次損益がどうのこうの」だの言われてみたり、「何でもかんでも時価会計」みたいな流れがあったりという風に、投資家サイドとしてもいつの間にやらポジションの評価時間が短くなっている傾向が特に大手といわれる人たちに顕著になっているというのもあります。

ポジションの評価時間が短くなってくれば、それだけ細かくオペレーションをしていかなければならなくなるのは理の当然。結果としてマーケットの動きがあたかも「債券市場総ディーラー化」のようになってしまい、そのような相場の動きになってしまうと行動最適化の為にやむなくディーラー化していく人がなお増えるという楽しい循環が発生するわけでありますわな。つまり運用機関がケシカランというよりは市場の構造的問題になりつつあるという事もいえるのかな〜などと思う次第です(とフォローしておかないと出入り禁止になってしまう)。

運用期間の評価をきめ細かくするのは、別に嫌がらせでやっている訳ではなくて、本来的には普段からせっせとモニタリングする事によって「いつのまにやら大やられ」っていうリスクを回避しようってのが根底思想にある筈だと理解しているのですが、皆が皆できめ細かい管理をしてリスクを軽減しようとして、結果として市場が「総ディーラー化」のようになってしまうというのは実に香しい世界でありまして、まさに「合成の誤謬」を絵に描いたような展開となっております。

何でも福井総裁は先日の参議院財政金融委員会(何で衆議院と参議院で名前が違うのよ)で「国債発行の累増で金融市場は地雷がいっぱい」などというようなお話をされたらしい(時事通信より)のですが、そんなに地雷が気になるのなら金融機関のリスク管理がどうのこうのと五月蝿くいうのはどうなのかな〜なんて事もまた「合成の誤謬大爆発状態」の昨年夏の債券市場集団自殺相場を思い出しながら思ってしまう次第でありました。


#自分なりにフォローしておりますが、どうも機関投資家の皆様に対して好き勝手申しあげておりまして、ご不快な表現に関しましてはお詫び申しあげます。謝罪はするが反省はしないというどこぞのあほたれ外交のようなスタンスになっておりますな。あたくしもあほたれ。




2004/11/04

お題「総裁記者会見の続き」

火曜日の続きの前に参議院での福井総裁答弁について少々。

先日のドラめもんでも「国会は鬼門?」などというお題で福井総裁の「原稿が無い発言」の危なっかしさについて申しあげましたが、どうも火曜日の参議院財政金融委員会で福井総裁またもお得意の訳の判らん発言を連発していたようで、10年国債の入札をやっている日だという認識はこのお方には無いのでしょうな〜と感心する次第であります。普段から言ってる「市場との対話」といい言葉の意味が判っているとは到底思えないそのやんちゃぶりに乾杯です。

どうも岩田副総裁も国会に出席していたようですが、情報ベンダーで出てきたのは福井さんの答弁でして、何だか以前「金利に蓋をする」とか「長短金利を出来るだけ低いところで安定させる」とか言っていた話(これも余計な発言ですが)と思いっきり違う話をしてみたり、相変わらず「金融機関の国債保有のリスクが大きい」などと、金融財政政策の必然として発生する国内金融機関の国債保有を金融機関のせいにするかのような香しい発言もしておりまして、相変わらず「結論先にありき」で事実関係を並べている傾向に有るのが気にかかるところであります。

では火曜日の続き。

○金融政策運営のお話:「金利と量」談義

久しぶりに「金利と量」の問題に質問が。

『(問)今年7月の総裁の講演の中で、「米国と比べれば日本の場合には過剰流動性の吸収と金利の引き上げということが必要だ」ということを言われたかと思うが、過剰流動性の吸収と金利の引き上げに関して一緒にされるというお話をしていなかったかと思う。総裁が考えられている今の量的緩和というのはゼロ金利と一緒のものなのか、それとも違ったもので考えていらっしゃるのか。これは、流動性の吸収と金利の引き上げが同時に行われなければならないか、別々でも構わないかということと関係するかと思う。その点についてイメージでも構わないので伺いたい。』

長いお答えなので途中にあたくしの能書きを入れます。

『(答)ご質問の趣旨をもし私が正しく理解しているとすれば、米国は量的緩和政策をとっているわけではないので、金融政策を急いで変更するか、あるいは余裕をもって変更するか、いずれにしても金利を中心に物事を判断していけば良い。日本銀行の場合には量的緩和政策をとっている。過剰流動性というおっしゃり方が適当かどうかという問題はあるが、いずれにせよ政策目的をもってたくさんの流動性を市場に供給している。より正確に言えば、所要準備額をはるかに上回る流動性を供給している。』

ここまでは量的緩和政策の説明みたいなものですが、この中で「過剰流動性」などという用語を使っているのが、福井総裁の「本音」を現しているようにも見える訳でして、まぁ「過剰流動性」って言葉にはネガティブな語感を伴うと考えるのが普通ですから、こうなりますと「福井総裁は量的緩和政策をケシカランと思っているんですな〜」って思惑を生むわけで(つーか多分そうなんでしょうが)、金融政策の枠組み自体が「CPI時間軸」というのを組んでいる状況下で「本音」もへったくれも無く、余計な思惑を生むだけ無駄な「意思表明」ではないかと思うのですが、ど〜なんでしょうな〜。

『もしも今の政策の枠組みを変更するということになると、流動性を吸収していく、つまり所要準備に対して非常にたくさん供給している流動性を吸収していかなければならない。その場合、先行きの金利について、そのレベルを次第に念頭に置きながらやっていくことになるのではないか、ということを一般論として申し上げた覚えがある。つまり量と金利というのは別々でないといつも申し上げている通り、量の調整を始めるとマーケットは先行きの金利感をいろいろ修正しながら金融調節の意味合いを受け取ろうとするであろう。政策を行なうほうも、政策を受け取りマーケットでマーケット・コンディションズを造るほうも、量と金利についてある種の立体構造を持って、共に行動し始めるわけである。』

前回と同じ「量と金利はコインの裏表」という認識です。こういう風に言われるとまぁ判り易いのではないかと思いますが、「量的緩和政策を解除した後にゼロ金利政策を取る」といういわゆる「2段階解除論」は技術的には可能ですが、結局ゼロ金利政策を実施するためには一つ前の総裁発言にあるように「所要準備額をはるか(でなくても良いのですが)に上回る流動性を供給」する事が必要ですので、結局やっている現象は量的緩和政策と同じになる訳です。

という真面目なお話の他に気が付いたのですが、久々に総裁お得意の「謎の英語」が爆裂しておりまして、大変にご機嫌が麗しいのではないかと思わせてくれて実に心が和むものがございます。だから火曜日も国会で妄言じゃなかった名調子が炸裂したのでございましょうな。

「政策を受け取りマーケットでマーケット・コンディションズを造るほう」って何だよおい。

・・・・気を取り直して尚も発言は続く。

『従って、量と金利を一体的に考えながら、しかも、現在と将来にわたるダイナミックな構造の中でそれを考えながらやっていかなければならない。市場のほうもその作業をやっていかなければならない。そこは単純に金利水準だけというよりは、より幅の広いものの考え方、市場の受け取り方の中での対話が必要になる。そういうような趣旨のことを一般論として申し上げたと思う。その点は今も同じである。』

なにを言いたいのか判りませんが、どうも市場との対話を良くやりましょうと言っているらしい。しかしどう考えても市場をちゃんと判っていると思えない中で自分は市場との対話を一生懸命やっていると思っている所が実に痛い所であります。困ったもんだ。


○金融政策のお話:「市場との対話」

『(問)市場参加者に対する具体的な説明等を工夫していくとのことであるが、もし具体的なイメージが今あれば教えて頂きたい。今の3条件等に加えて、今後、どのような工夫の余地があるのかについて、現段階でのアイデアを伺いたい。』

『(答)別にそう突飛なことを今の段階で考えているわけではない。経済が停滞を続け物価もずっとマイナスといった先行きの展望が開けない時期と違って、今回の展望レポートのように、先行き明るい方向性が少しずつ見えてきたというレポートを出したからには、このシナリオ通り刻々と経済が推移しているかどうか。どこかで変調──より良い方向とより好ましくない方向と常にリスクというものは上振れ、下振れ両方あるが──を来していないか。今日お示しした標準的シナリオを軸に、より良い方向に行っているのか、シナリオ通り行っているのか、あるいは、どうもシナリオとは違う方向に行っているのか。それから、経済と物価との関係で、先程からもしつこく申し上げているように、生産性の動向や賃金の調整の状況といった、事前には非常に読みにくい要素──米国の連銀も今この辺の読みに一番苦労しているわけであるが──について、我々の予測の範囲に何かが入ってきたかどうか。この範囲に入ってきたことが標準シナリオに対して影響のあるものかどうか。こうしたことを、金融政策決定会合後の記者会見の機会であるとか、あるいは、3か月毎に行う中間レビューといったものにより、持てる材料をできるだけ解りやすく差し上げていきたい。基本的にはそれを念頭に置いている。』

途中の上振れ下振れどうのこうのという説明が妙にくどいので文章が長くなっておりますが、まぁ折に触れて展望レポートの標準シナリオからの乖離について情報発信したいって事なんでしょうか。まぁ審議委員の皆様がせっせと講演なんぞをするのも宜しいかとは思う訳ですが、どうせやるなら9月のように一時期に集中させる必要も無い(展望レポート前に審議委員それぞれの言いたい事を言わせたという事なのでしょうが)と思いますな。

『表現形態やコミュニケーションの仕方について特別の道具立てが要るかどうかは、どのような材料を説明しなくてはならないかによってその都度考えていくが、今申し上げたように、普通に考えていくと、毎月、それから特に3か月毎の中間レビューの時に、今回お示しした標準シナリオ、その方向性とその背景にある生産性の動き、賃金調整の動きを、経済のスピードと経済の動くメカニズムの両面から、なるべくきめ細かい情報を提供したいというのが主眼である。』

特別の道具立ては必要ないですが、訳の判らんというか誤解を招くような表現やら本音の表明をするのは控えて頂きたいと切に願いたいものであります。

しかし何ですな。別にこの程度の一般的なことでしたら、市場との対話がどうのこうのとかいう話をわざわざ持ち出すまでもなく、強力な独立性と権限を保持している中央銀行として当然行うべきことでありまして、わざわざ展望レポートに『日本銀行としては、(中略)金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明していく方針である。具体的な説明の内容や方法については、さらに工夫を重ね、市場参加者が金融政策の先行きを予測する上で参考になる基本的な判断材料を適切に提供していく。』 などと書く事かいなと思いますな。まぁいいけどさ。


○財政再建問題にやたら熱心な総裁

まぁ参議院財政金融委員会での発言(情報ベンダーからの脳内メモリーベースなので引用しませんが)だの、上の方で言っているような「過剰流動性」発言なんぞを見ますと、福井総裁としては量的緩和政策をお嫌いなようですな。つーか普通のセントラルバンカーなら現在の手も足も出ない金融政策状態が好きな訳は無いのですが。

で、嫌いな量的緩和政策の出口が少しだけ見えてきたような気がしてきたし、さすがにもうデフレスパイラル方面への懸念も無いでしょうって状況になってきた最近になって、とうとう福井総裁今までの鬱憤を晴らすべく「俺様が散々やりたくもない量的緩和政策をやったんだから今度はてめぇらが財政健全化を推進しやがれこの野郎」といわんばかりの勢いで財政再建問題を力説。実に人間的な総裁様でございますな。

今回の記者会見は紙に打ち出しますと9ページになるのですが、本来日銀と関係のない財政再建問題に関する質疑応答が概ね2ページちょとの場所を占めておりまして、福井総裁の財政再建問題に掛ける意気込みが判ろうかというものです。別にそこまで気合を入れてもしょうがないと思うのですが。

何せ2ページ分もある質疑応答なので、引用していると終わらなくなるのですが、例によって例の如くお得意のサービスフレーズを炸裂させていたことについて突っ込まれている部分を一部引用します。

『(問)財政制度等審議会において総裁は「財政健全化は大事だ」と言われ、「マクロ経済環境の安定を維持するのが重要でそれに日銀として貢献していく」と言われたが、例えば定率減税の廃止ということは短期的には経済の下押し圧力になると思うが、そういうところは日銀が量的緩和を続けることで景気の下支えをやっていくということと受け取って良いのか。となると今まで言われている3条件にプラスして4条件目として、財政健全化をある程度サポートするために時間軸を延ばすという解釈も成り立つと思うが、その点について伺いたい。』

これはよくよく考えたらこの発言は原稿が用意されてたような気もするので、お得意の「サービス発言」とは違うような気もしますが、それは兎も角としてまぁ上記のような質問が出てもおかしくはありませんな。

『(答)今のご質問に対しては、そういう足し算引き算という観念は、私どもは一切持っていないということである。 財政審で私が強調して申し上げたのは、長い目でみて財政規律を高めていく。そのことが国民の将来の経済生活にきちんと生活のリズムとして取り入れられていく。逆に言えば、政府に対する信認をより高めながら、財政規律が自然に確立していくような方向を目指すべきだ。』

という事でお得意の一般論だという事になる訳ですが、そんな当たり前の一般論を言うのにわざわざ「日銀が貢献」云々とかの文言を加える必要はないと思うんですな。そういう事を言うから上記質問のような解釈が発生する余地が生じる訳でして、そういう意図が無いのであれば一々余計な文言を加える必要は無いと思います。

確かに現実問題として量的緩和政策の国債消化への貢献は甚だ偉大なものがありますので、プライマリーバランスの改善をしないうちに量的緩和政策が解除されるというのも中々寒いものがあるというのは言えるのですが・・・・・

で、中間に何を言いたいのか意味不明(気持ちだけは伝わってくるのですがね)な部分がありまして、全部引用すると話がややこしくなるのでその辺は割愛しまして、引用します。

『金融政策の面からみれば、財政が経済にある負担をかけるからといって、その部分を金融政策で相殺する方法というものはない。将来に対する国民のイメージが悪ければ、相殺する方法はない。(中略)目先、経済に負担がかかるから金融政策でこれをオフセットしようとしても、何事も実現しない。(また中略)日本銀行は、そういう足し引き計算による金融政策を行うつもりは全くない。 』

じゃぁ「日本銀行が貢献」って何に貢献するんだよと小一時間問い詰めたくなるような発言でございます。要するに政府債務を減らせこのヤローと言いたいらしいですが。で、省略した中で何だか面白い発言がございます。

『市場の中に累積している国債発行残高が、国民が将来の経済をみる眼の不安を映し出す鏡になった場合には、いくら日本銀行が適切な金融政策の運営を図ろうとしても、正しい市場金利の形成はできない。』

「不安を映し出す鏡」とはアレな発言でして、「戦は負けと思った瞬間から負けになる」というのと同じでして、日銀総裁御自らがそういう事を言い出すのは如何なものかと思う訳です。そう思うのは大変に結構なことではあるのですが。で、その後に続く「正しい市場金利の形成」って何だよって感じですな。確かに市場ってのは年がら年中オーバーシュートしますので「何じゃコリャ」という値段を叩き出すのは得意技ですけど、「政府債務への懸念を反映した市場金利の形成」が「正しい市場金利の形成」じゃないと言われるとそれはあんた何いってるのよって感を強くするものであります。


という事で、思いのほか長くなってしまいましたが、どうも景気回復への確信とデフレ脱却の確信をお持ちであろう福井総裁に置かれましては、本来のやんちゃ振りがどんどんと発現しだしているのではないかと思うわけでして、何だかちと懸念されるところでございます。



2004/10/02

お題「力の入った総裁記者会見」

というわけで昨日の続き。先週の金曜日の金融政策決定会合でいわゆる展望レポートを発表したこともありまして、記者会見の時間も約55分と金融政策決定会合後の記者会見としては割と長時間(ちなみに前回は25分でその前は35分)でして、結構気合の入った雰囲気が伝わってくる記者会見要旨であります。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0411a.htm

今回の記者会見で話題になったのは「展望レポートにあった『余裕を持って』という文言の意味は?」「審議委員のCPI大勢見通しがゼロ以上になっている事は量的緩和解除の条件の一つを満たすのか?」「今後の金融政策運営(というか情報発信をどうするの?って話とか)」と、ここもと総裁が力を入れて発言している「財政再建問題」に関してというところでした。財政再建云々の話はとりあえず置いておきまして(つーか後日)、最初の2点に関する質疑応答を見ていくことにしましょう。


○「余裕を持って」ってなんですか〜??

まずこの点についての一発目の質疑ですが、昨日ご紹介した日本語版ロイターの記事の引用とまぁ同じ内容ですが、念のため引用します。

『(問)展望レポートの中の金融政策の先行きに関する部分で、「余裕をもって対応を進められる可能性が高い」という表現があるが、これはどのように理解すれば良いか。』

『(答)まずその前段で「2005年度内に現在の金融政策の枠組みを変更する時期を迎えるか否かは明らかではない」と述べている。2005年度内か、あるいはそれより少し後になるか、いずれにせよ変更の時期を迎えることになるだろうけれども、そういう場合の今後の金融政策運営については、言うまでもなく、先行きの経済物価情勢に依存する。従って、極めてオープンであるが、展望レポートで述べている一種の標準的な見通し──いわゆるメインシナリオ──では、経済もゆっくり持続可能な成長過程に移っていく中で、物価面は、生産性の向上を基本的な背景としてそれほど急激に反応するという状況でないかたちで推移していくとしている。』

『このように経済がメインシナリオ通りにいくとすれば、2005年度内であれ、2005年度を過ぎてからであれ、枠組みを変更するような場合にも、それほど慌てないで余裕をもって対応を進められる可能性が高い、ということを申し上げている。』

発言を恐らくそのまま紹介したロイター日本語版の記事と会見要旨として纏めた日銀の公式発表みたいなものとの違いも興味深いですが、基本的に昨日紹介した記事と同じ(当たり前だが)ですな。引用に際して段落を敢えて区切りましたが、要するに後半部分が肝。

そうなりますとこういう質問がでてくる訳で。長いので話の趣旨から考えて重要なところで段落切りますのでちょっと細々となることをお断りします。

『(問)そうすると当面ではなく、2005年度、2006年度などを含んだ中期的にも量的緩和の枠組みが続くということか。』

『(答)そういうことを言っているわけではない。どのような時点で──2005年度内かあるいはちょっと過ぎてからか良くわからないが──現在の緩和の枠組みを変更し、どのようなペースで、例えば流動性の吸収を図るとか金利主体のレジームに移っていくとかについて、適切に判断していこうということである。』

『適切に判断していく場合に、今の標準シナリオ通りに経済・物価が推移していくとすれば、息せき切って対応するというよりは十分余裕をもって判断しながらできるのではないか、ということを申し上げているのである。』

先ほどの質疑の肝の部分と同じことを改めて強調しています。なお話は続く。

『その後に、「もとより、日本銀行としては、今後の情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応するとともに、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明していく方針である」という箇所がある。これは、我々が今申し上げた標準的シナリオ一本だけを考え、他の可能性を一切排除しているというわけではない。標準シナリオ以外のシナリオというものの可能性が見えてくるような場合──これが「今後の情勢変化」ということである──には、それはそれで必ずしも余裕をもって対応を進められる場合だけではないということがある。』

『従って、金融経済情勢に関する判断とか政策運営に関する基本的な考え方は、その都度丁寧に説明していく必要があるし、急に人々を驚かすということではなくて、十分予見性をもって、具体的な説明の内容や方法に工夫を重ねていく、という趣旨がその後の文章に繋がっている。』


展望レポートの中でわざわざ『今回の展望レポートの見通しのもとでは、2005年度内に(中略)現在の金融政策の枠組みを変更する時期を迎えるか否かは明らかではない。』と記述していた事に関して昨日のドラめもんで「CPIの大勢見通しプラスに過剰反応しないように敢えて入れたのではないか(量的緩和政策のコミットメントを真正直に解釈すれば自明なのだが、市場が正しく解釈するかが今までの実績からすると怪しいので)と申しあげましたが、どうもこの辺の質疑を見ておりますと、この「余裕を持って」というのも似たような効果を期待して入れた文言ではないかと推測します。

と申しますのは、よくよく見ると今後の情勢変化によっては『それはそれで必ずしも余裕をもって対応を進められる場合だけではない』って総裁は言ってる訳でして、必ずしも量的緩和解除を無闇矢鱈と遅らせると言っている訳ではない訳ですな、これがまた。

と言う訳でして、あたくしの解釈した結論を申しあげますと、この「余裕を持って」っていうのは「標準シナリオの範囲内で動いている現状では量的緩和継続だからCPI大勢見通し+0.1%で驚いて先走りするな」というメッセージ以上の意味はなさそうですわな。まぁおまえらもちつけということで。

実は質疑後半の方で「良く判らんからもっと説明してくれ」という趣旨(もっと丁寧な聞き方です、念の為^^)の質問があって、物凄い勢いで総裁が懇切丁寧に答えているのですが、どうもあたくしの解釈通りの話をしているのではないかと思われます(正直、説明が長すぎて却って話がややこしくなっている)ので、興味のある方は日銀のWebPageからご覧下さい。



○量的緩和政策解除の条件の一つを満たすのか?

となりますと、質疑の方向は「大勢見通し+0.1%」になるわけですが、

『(問)今回の展望レポートでは、CPIの中央値が0.1%ということで、半数の委員がプラスを予想されたわけであるが、これは「安定的にゼロ%以上」という状況ではないということなのか。』

『(答)昨年10月に安定的にゼロ%以上というものを因数分解して3つの要素に分けた。すなわち、(1)現実のCPIの前年比変化率が基調的にゼロ%以上になること、(2)再びデフレに戻らないという意味で先行きのCPIの前年比変化率見通しがゼロ%を超えていること、(3)経済物価情勢をさらに広く判断する、ということである。今回、政策委員の多数のCPI見通しが若干のプラスになったが、CPIが安定的にゼロ%以上になったという判断にはまだ繋がらないということだと思っている。』

と言う訳で、一応量的緩和解除の条件のうち(2)を満たしているという話にはなっているような答え方。質疑はなお続く。

『(問)例えばCPIの上昇率が0.1%や0.2%である場合に、「安定的にゼロ%以上」という判断をすることはありうるのか。』

『(答)(1)現実のCPIが基調的にプラスだとその数字をもって認定できること、(2)改めてマイナスに落ち込んでくるリスクがまずないと見通せること、それから、(3)経済情勢をもう少し広く見ようということで経済がなお内在的に脆弱性を含んでいないか、ということを一通り点検する。これらが全部満たされれば、その時点で条件を満たしたという判断に至ると思う。』

やはり数字の目処があるのかと言うことは気になりますのでなおも質疑が続く。

『(問)例えばCPIの伸び率が1%なければならないとか、2%なければならないといったレベルは関係ないということか。』

『(答)そういう数字的に固定的な判断基準は持っていない。』

まぁ今までの流れからはそうですわな。で、質疑の最後の方で再度この点についての直球剛速球の質問がでました。やはりこう来なければいけませんな(^^)。

『(問)今回の展望レポートの消費者物価指数の2005年度の予測が小幅ながらプラスになったということは、量的緩和政策解除の3つの条件のうちの2つ目を満たすものでは必ずしもないという理解でいいのか。』

『(答)安定的にCPIの前年比変化率がゼロ%以上と言えるためには、現実のCPIが基調的にゼロ%以上、そして将来の見通しがゼロ%を超える、さらに経済の情勢が心配されるような脆弱性をそれほど含んでいない、といった3つの条件が満たされなければ満たしたとは言わないわけで、一つひとつを満たした、満たさないといった感覚ではない。これは1つのことを3つに因数分解したものに過ぎない。従って、条件は満たしていないということである。』

ついこの前までは「コミットメントの3つの条件」とか言っていたような気もするのですが、やはり「条件が一つ満たされた」と言い出して金融市場が先走りされると問題が大ありになる訳でして、どさくさに紛れて「3つの条件は一体として考える」と言わんばかりの発言をしておりまして、相変わらず風呂敷の左と右の整合性の取れないお話をするな〜なんて思うわけです。

この「先走りを防ぐためにどさくさに紛れて3つの条件を一体化する」という大技を拝見いたしますと、現在の「CPIという特定の経済統計にターゲットを定めた一点張り政策」の問題点も見えてくるわけでして、まぁ読者の皆様にはあたくしがしつこく申しあげているので「またか!」とお思いでしょうが申しあげますと(^^)、特定の経済統計数値にフォーカスした政策ってのは政策の変更点から遠い時には「時間軸効果」を如何無く発揮して市場の「期待の安定化」に大きく寄与する(寄与しすぎて馬鹿相場にもなりましたがそれは兎も角)のですが、政策変更ポイントが近づいてくると、金融政策の変更というのは金利変化と言う意味では「不連続な変化」をもたらすので、却って市場が不安定化するという弊害をどうコントロールする(あるいは放置プレイかもしれませんが)のかは今後のお手並み拝見と言ったところでしょうな。


まぁ先行き見通しなんて大本営発表みたいなもんですから、現実のCPIがプラス転換してから「さて、量的緩和解除の条件は整ってますか」って話になるのが筋って言えば筋(まーその時には市場は大騒ぎになっているでしょうが)でございますので、大勢見通しがプラスになったからと言っていきなり大騒ぎするのもまた間抜けな話ではあります。CPIのプラス転換が近いと思っているのなら話は別ですがね。


とまぁダラダラと書き連ねましたが、要するに「CPIの大勢見通しがプラス転換」ってぇのは「3つの条件」として考えた場合の一つの条件としては確かに満たしているという事のようではあります。あるんですが、条件の中で一番最初に達成される性質のものですし、そもそも鉛筆なめなめの世界でもあります(何て言ったら激しく失礼ですな)ので、全く意味がないとは申しませんが、そう大騒ぎする必要はないでしょって事でしょうな。


今後の情報発信がどうのこうのという話題と、財政再建問題がどうのこうのという話題は量と時間の関係上木曜日にでもご紹介させていただきます。





2004/11/01

お題「展望レポート」

金曜日に発表された展望レポート(正式名称は「経済・物価情勢の展望」)はあちこちで「事前予想」と言われていたような内容になっていたようで、本質的には織り込み済みのような気もしますが、総裁の記者会見とかその後の報道っぷりなんかも見ていく必要はあるかと思います。

とのっけから結論になってしまいましたが、とりあえず日銀のWebにアップされているのは展望レポートの基本的見解部分という事で、最も基本的な部分と言うことで読んでみることとしましょう。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gor0410.htm


○景気に関しては標準シナリオから上方修正

冒頭部分は「経済・物価情勢の見通し」であります。まぁここもとの金融経済月報を見れば上方修正なのは自明なのですが・・・・・・

『このように、わが国経済は、前回(4月)の「経済・物価情勢の展望」において示された「2004年度見通し」と比べると、上振れて推移していると考えられる。』

んじゃあ「このように」とはどのようかと申しますと最初の一節になります。

『わが国経済は、回復を続けている。すなわち、輸出や生産が伸びをやや鈍化させつつも増加傾向を続けるもとで企業収益が増加しており、これが設備投資の増加につながっている。また、雇用面の改善や消費マインドの好転を背景に、個人消費もやや強めの動きを続けている。』

経済は上振れで物価はどうかと言いますと、『物価面では、国内企業物価は「見通し」に比べて上振れて推移している一方、消費者物価は概ね「見通し」に沿った動きとなっている。』という相変わらず何故か消費者物価だけ上がらずに「???」となっているようです。


○先行きの基本的見通し

『先行きについても、景気は回復を続け、次第に持続性のある成長軌道に移行していくと考えられる。』ってな訳で、経済の先行き見通しが次の段落なんですが、これまたやたらめったら景気の良い話になってます。景気が回復していると言うことになっているんだから当たり前か(^^)。景気というよりは消費者物価の帰趨のポイントになるという事になっている「個人消費」というか「家計部門」に関する見通しを読みますとこんな感じ。

『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に転じる可能性が高い。このため、個人消費は緩やかに増加していくと予想される。』

って言ってるのですが、同じ段落内で企業部門に関して『企業収益は、企業のコスト削減や財務体質の強化等ともあいまって、大企業・中小企業ともに幅広い業種で改善を続けると予想される。』などと指摘しておりまして、どうも希望的観測含みなのではないかと思ってしまう次第でございます。

芸が細かいな〜と思うのは企業収益云々の続きに『また、企業の過剰設備・過剰債務などの構造的な調整圧力も和らいできている。』と言ってるのですが、この一文は何時の間にか日銀総裁が常日頃指摘している「構造調整の必要な過剰問題」から「雇用」が消えてまして、構造調整のうち雇用問題が解決になっているかのような勢い。本当かねと激しく思うのですが・・・・・・

海外経済だの生産だのという話はやたら景気の良い話になっていますが長いので引用省略。アイテー関連の減速傾向に関しては一応『IT関連財の在庫調整が進行中であるが、調整は軽度なものにとどまると予想される。』とは言ってますが、それ以外に関してはひたすらよさそうな話です。


物価に関しての標準シナリオは企業物価上昇で消費者物価は下落という訳の判らんシナリオになっています。2005年度は消費者物価もプラスとなると言うことにはなっていますが、今度は企業物価の上昇が緩やかになり、消費者物価は上昇に転じるという見通しになっていて、そんな器用なことになるんですかと突っ込みを入れたくなる標準シナリオでございます。

『国内企業物価は、原油価格の上昇や素材の需給引き締まりなどを反映して、2004年度中は上昇を続ける可能性が高い。2005年度は、原油価格の一段の高騰等がない限り、上昇テンポは緩やかなものになっていくと予想される。』

『この間、消費者物価については、景気が回復を続けるもとで需給ギャップは改善を続けるものの、企業部門における生産性の向上や人件費の抑制等から、当面上昇しにくい状況が続くとみられる。消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比は、今後、米価格が前年比で下落に転じることもあって、今年度後半も引き続き小幅のマイナスで推移すると見込まれる。2005年度については、需給バランスの緩やかな改善が続くもとで、前年比で小幅のプラスに転じると予想される。』

で、その後『なお、物価の先行きは、原油価格のほか、生産性や人件費の動向にも左右されるため、見通しは上下に振れる可能性がある点には留意しておく必要がある。』とわざわざ言っているのはイマイチ良く判らんのですが、勝手に推測すると、上記標準シナリオが余りにも「器用なシナリオ」になっているので保険を掛けたのではないかとっていうのは深読みしすぎかな?


○上振れ&下振れ要因

日銀が指摘するのは主に2点。『第1に、海外経済の動向である。』『第2に、国内民間需要の動向である。』でして、その後に並べてある『第3に、国内金融・為替市場の動向である。』『第4に、不良債権処理や金融システムの動向である。』に関してはとりあえず並べてみただけって感じだと思います。

あたくし的には不良債権問題も気にはなるのですが、とりあえず現状では銀行に関してどころか債務超過企業に関してまで政府がケツを拭く体制が見事に確立されておりまして、政府部門への問題飛ばしが進行しており、まぁ無問題(というか単に表面化しにくいように先送りしているだけなのですが、政府部門最強と言うことで)。金融システムに関しては「ペイオフ解禁」によって金融システムの正常化が達成されたことになるんでしょう。実態問題としては金融機関の資金繰り(資金繰りさえ付けば企業は倒産しません)は量的緩和政策でサポートされており、ペイオフ解禁は決済性口座の全額保護という巨大な抜け穴が開いているので、これもまた只の茶番なのですが、まぁ取り敢えず茶番と言えども強力な蓋をしている状況ですんで、確かに民間経済主体に与える影響は軽微でしょう。爆発したら大変な事になりますがね。

という事で、海外経済と国内民間需要がポイントだということです。


○金融政策運営

FRBの真似をしたのか何だかわからないですが、激しく妙な表現が登場して市場の話題をさらっております。

『今後の金融政策運営については、言うまでもなく先行きの経済物価情勢に依存するが、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって生産性の向上を基本的な背景として物価が反応しにくい状況が続いていくのであれば、余裕をもって対応を進められる可能性が高いと考えられる。』

この「余裕を持って」という新しい表現が当然ながら話題の的になるわけでして、記者会見でもこの点が質問されているのですが、総裁はこんな感じで話をしているようです(ソースは日本語版ロイター29日17時45分のニュース)

『その前段に、2005年度内に枠組みを変更する時期を迎えるか否かは明らかではない(と書いてある)。文章を補うとすれば、2005年度内か、それより少し後になるか、いずれにしても変更の時期を迎える事になるだろうけれど、そういう場合の今後の金融政策運営については、言うまでも無く、先行きの経済・物価情勢に依存する。経済がゆっくり持続可能な成長過程に移っていく、物価面では生産性向上を基本的な背景として、それほど急激に物価が反応するという状況ではない形で推移していく。これが、展望リポートの主文で長々と書いているメインシナリオだ。経済がメインシナリオ通りにいくとすれば、2005年度内であれ、2005年度を過ぎてからであれ、枠組みを変更するような場合にも、それほど慌てないで、余裕を持って対応を進められる可能性が高いということを言っている。』

ニュースの文章を読みながらタイピングしてみて何となく話が読めてきたという感じでして、この文を一読して何を言いたいのかすんなりは判らん言い方ですが、この応答を見ると「余裕を持って」などという主観的な文言をわざわざ入れる必要があったのかどうかははなはだ疑問でありますな。要するに「景気が良くても物価の上げが大したこと無かったら緩和解除は急がない」って言いたいようです。

あたくしが読んでる東京新聞でも「日銀、物価見通しをプラスに」などと景気の良い話になっておりまして、先日の日経新聞のように「量的緩和の解除条件のうちの一つが達成された」というのが一般的なコメントになるのでしょうが、標準シナリオ(しかしそんな器用なシナリオ通りに動くのかと思うが)に沿って経済が動いた場合あるいは少々の上振れであっても、「余裕を持って」云々の一文を見ると、量的緩和政策の出口はどこに行ってしまったんでしょうって印象を強くするのですが如何なもんでしょうか??


上記の会見でも指摘してましたが、余裕云々の前段ではこのようになってます。

『今回の展望レポートの見通しのもとでは、2005年度内に日本銀行当座預金残高を金融市場調節の主たる操作目標とする現在の金融政策の枠組みを変更する時期を迎えるか否かは明らかではない。』

現実に2005年度に消費者物価がプラスになっていないとそもそも量的緩和政策の解除の議論にすら到達しないのですが、日経新聞その他が「見通しがプラスになったから量的緩和の出口が見えてきた」などと囃し立てて、それが「偉い人」を始めとする「良く判っていない人たち」の馬鹿売りを誘発して債券市場などに悪影響を及ぼさないようにわざわざこの文を入れたのではないかと思います。実際に「量的緩和政策のコミットメント」に関してちゃんと理解していれば慌てて大暴れという事にはならない筈なんですが、過去の相場のトラックレコードを考えると余計な一言が必要だったんでしょうな。

で、まぁ市場との対話に関しては相変わらず気にしているようでして、最後にこんな一文があります。

『もとより、日本銀行としては、今後の情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応するとともに、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明していく方針である。具体的な説明の内容や方法については、さらに工夫を重ね、市場参加者が金融政策の先行きを予測する上で参考になる基本的な判断材料を適切に提供していく。 』

まず審議委員というか総裁と副総裁の片方の不規則発言を何とかして下さいと声を大にして申しあげたい所ですが、まぁ精々提供してくれって感じです。あまり努力しない方がいいと思うんですけどね。的外してるし。


○まとめ

・標準シナリオから上振れしているけど、消費者物価だけは反応していないというある意味不思議な展望レポートになっている。

・消費者物価の先行きに影響を与えそうな個人所得の部分に関してちょっと見通しが希望的観測っぽい

・その他の部門は総強気状態

・しかし、消費者物価が上がらないので量的緩和政策はまだまだ継続しそう

・「消費者物価指数の翌年度大勢見通しプラス」が金融市場で過剰反応しないようにやたらと気を使っている


で、うっかり肝心の数字書き忘れましたが、2004年度の大勢見通しは実質GDPと国内企業物価指数がそれぞれ+0.5%、+1.3%の上方修正で、消費者物価指数は変らず。2005年度の大勢見通しは「実質GDP+2.2〜+2.6%(中央値+2.5%)」「国内企業物価指数+0.2〜+0.5%(中央値+0.3%)」「消費者物価指数▲0.1〜+0.2%(中央値+0.1%)」でございます。