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2005/02/28

お題「福間審議委員の講演と記者会見なんですが・・・」

先週木曜日に行われた福間審議委員の講演&記者会見でありますが、何といいますかもう突っ込みどころ満載と申しますか、ちとアレなものがございまして。

講演→http://www.boj.or.jp/press/ko0502b.htm
会見→http://www.boj.or.jp/press/kk0502b.htm

この講演なんですが、図表付きになっておりまして、この図表もまた中々オモロイので図表(講演のアドレスにリンクがあります)もご覧頂くことをお勧めします。

○同床異夢の量的緩和政策??

講演で注目されていたのは金融政策に関るお話でして、当座預金残高目標をどうしましょって問題に絡んで堂々と「危機管理の為に実施した当座預金残高引き上げ」という理屈の展開が行われてしまいました。まぁいいけど。後半の「日本銀行の金融政策運営」の3−1−2「日本銀行当座預金残高目標値の引き上げ」であります。

量的緩和政策のそもそも論について。

『量的緩和政策については、まず図表20-1をご覧下さい。これは量的緩和政策を導入した際の対外公表文を基に作成したものです。いわば量的緩和政策の「枠組み」を纏めたものです。その「目的」や「内容」欄にあるように、量的緩和政策は、第一に、日本銀行当座預金残高という量をターゲットにして金融市場へ潤沢な資金供給を行うこと、第二に、コア消費者物価が安定的にプラスとなるまでじっくりと潤沢な資金供給を行い、その時間軸効果を通じて、より長めの短期金利の低下を促すこと、第三に、補完貸付制度を無制限に利用できるようにすることで無担コール・オーバーナイト物レートの上限を現在0.1%となっている公定歩合に画すること、それらによりゼロ金利政策の有する金融緩和効果をさらに浸透させ、デフレからの脱却を図るという政策です。』

何かどさくさに紛れて「量的緩和」の説明の中に「ゼロ金利政策」が入っているところが既にそもそも論を理解していないのではないのかという疑問あり。ちなみにこの図表20−1ってのは量的緩和政策導入時の対外公表文を基に作成した事になっているのですが、量的緩和政策実施時に政策を説明した資料がありまして、そこにはゼロ金利政策という文言は入っておりませんなぁ。

http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319a.htm(公表文)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319b.htm(参考説明)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319c.htm(Q&A)

まぁ確かに量的緩和政策のキモが「ゼロ金利+時間軸」ではないかというお話はよく言われている話ではあります(たぶんそうではないかとあたくしも思うのですが)が、一応曲がりなりにも「量」に金融緩和効果があるという名目で金融政策をこれまで運営しているのにあれれ?って感じですが、これは後に続く福間さんの主張に繋がるマクラな訳ですよ。



量的緩和政策の拡大は危機管理でしたという理屈

『このような危機的な状況を受けて、日本銀行は、金融市場の安定確保のためのいわばクライシス・マネジメントとして市場に一段と潤沢な資金供給を行い、銀行の流動性不安とそれに伴う日本銀行当座預金に対する予備的需要の増加に応えることとしました。』

まぁ確かに「金融システムの安定」って言葉はありましたが、速水総裁時代は勿論ですが、福井総裁になってからも途中までは「経済への悪影響を緩和する」というのが一応の大義名分だったと思いますし、「量的緩和政策の強化」って言い方だったのですわな。そもそも単なる危機管理で流動性を追加したのなら「りそな銀行処理問題」を名目にし実施した量は処理問題にメドが付いたら回収しないと話が変なのに回収してないでしょ。



何か銀行に関して妙な理解をしてそうなこの続き

『只今ご説明したような当時の極めて厳しい金融経済情勢を踏まえると、97〜98年の金融危機のときのように銀行の流動性不安が「貸し渋り」や「貸し剥がし」を引き起こし、それによって経済にさらなるデフレ・インパクトが及ぶ事態は何としてでも回避する必要がある――そうした強い危機感があったからです。日本銀行は、この当座預金残高の引上げに加えて、コール市場でターム物取引が成立し難くなった状況にも対応して、オペを通じて1〜2週間という短期間の条件で市場から資金を吸収し、3〜6ヶ月あるいはそれ以上の長めの期間で市場に資金を供給しました。結果的に日本銀行は金融市場の「ブローカー役」となり、銀行のALMにも配慮した格好となりました。』

てめぇの流動性に不安があるから貸し渋りや貸し剥がしが起きるというのは理屈として話が通っているように見えますが、短期の流動性問題が起きたからと言っていきなり回収できるほど貸し出しってのは流動性があるものではないですし、大体貸し渋りだの貸し剥がしだのって問題になったのは中小企業の話でしょと思うのですが。

話の後半では短期金融市場でのツイストオペの話をしているのですが、足元で資金の吸収をしてたら流動性危機対応になりませんが何か?という話もあるのですが、どうも以前ドラめもんで指摘したこのお方の誤解「ターム物取引が出来ないのは金融システム不安があるから」という珍理論に基づくお話になっているのが実に???であります。そもそもツイストオペを打つ破目になったのは足元の短期間の資金供給では金利がゼロに張り付いてしまい「イラネーヨ」状態になったのでより長期間のオペを実施して資金供給(というか当座預金残高維持)を円滑に行ったというのが真実に近く、日銀の資金大供給が原因でターム物の金利がゼロにはりつきだし、結果ターム物取引が出来なくなったというべきではないでしょうかねぇ。

おまけに「銀行のALM」って言いますけど、短期資金の1週間とか6ヶ月とかの世界はALMでも何でもなくてただの資金繰りの問題でしょ。何でALM??


○ということで量を減らしても良かろうという結論になる訳ですが

そんな訳で、福間審議委員のお話は「量的緩和の拡大はクライシスマネジメント」というような方向に話が進む訳ですが、その辺は端折りまして結論らしき部分。

『こうした金融環境の改善が進む下で、このところ資金供給オペの「札割れ」が頻発するなど、図表26が示すように、オペのパフォーマンスが低下しています。これは、銀行の流動性リスクや金融システム不安が後退し、コール市場での取引が成立し易くなる中で、日本銀行当座預金に対する銀行の予備的需要が減少しつつあること、また銀行が、ROEと並んでROAを向上させ、自らの格付けのさらなる向上を図るため、総資産の圧縮に動き始めたこと、これらの影響が大きいと考えられます。私としては、こうした市場の地合いも十分に踏まえながら金融政策運営に当たっていく必要があると考えています。』

銀行の流動性リスクだの金融システム不安だのというのはりそな銀行絶賛大救済財政大盤振る舞いスキームが確定したあたりから既に無問題状態になっておるのですが、どうも何かこの結論に持って行きたいらしい。

『現在までのところ日本銀行は、札割れが頻発するという状況の中で、さらに長めの資金を供給するなど金融調節上の工夫を凝らしながら現行の目標値に基づく資金供給に努めています。こうした政策運営に対して、「実体経済や金融環境の変化と整合性を欠くものであり、市場への資金供給が自己目的化している」といった批判を頂くようになりました。』

この批判は誰がしてるのか存じませんが、だいぶ的が外れていませんかねぇ。量的緩和政策は「CPIにコミットメント」している政策で、実体経済をあらわす指標の一つでもあるCPIは絶賛マイナス継続中ですが何か??

『ただ、日本銀行が、過去、金融市場の安定化に配慮して目標値の引上げを行った経緯を踏まえると、私としては、少なくとも金融システムの安定化が確認されるまでは現行の「30〜35兆円程度」という目標値に基づいて資金供給を行っていくことが適当であると思います。そしてその金融システムの安定化の試金石となるのは、これまでこのような場で繰り返し申し上げてきたとおり、4月のペイオフ全面解禁ではないかと考えています。』

会見でも「金融システム安定化の説得材料はペイオフ全面解禁」というような話をしている訳でして、要するに「4月以降も金融システム安定が確認できたら危機回避の為に出した流動性の吸収を検討できるのではないか」って話をしておりますわな。マーケットの常識として「今は考えないが」って言っても、「4月以降の動向を見て考える」というのは「絶賛大検討中です」と言っているのと同じだというのは判って言ってらっしゃるのだとは思いますがどうなんでしょうね〜。



○「特殊要因を除く分析」って何よ?

福間審議委員の講演でもう一つ「????」だったのは消費者物価に関する分析。先ほどの金融政策云々の前に消費者物価の分析があるのですが、これが何というか我田引水的な香ばしさを感じるものがございます。

『一方、コア消費者物価は小幅のマイナスが続いていますが、企業間競争と規制改革の成果として新たに固定電話通信料や電気代の引下げ等の物価押下げ要因が加わったため、来年度中も「コア消費者物価が安定的にゼロ%以上」と判断される状況に至るかどうかは微妙であると思っています。』

『ただ、一時的な物価押下げ要因を除くベースで消費者物価の推移をみると、図表17が示すように、徐々にそのマイナス幅が縮小しています。これは景気回復を背景とした需給ギャップの縮小による物価の押上げ効果が、企業のユニット・レーバー・コスト引下げによる物価の押下げ効果を僅かながらも上回り、その結果、物価の下落率が徐々に縮小しているためと思われます。』

図表17ってのは上記講演のアドレスから講演テキストに当たりますとその最初に図表へのリンクがありますので、それをご覧頂くとしまして、物価の一時的な押し下げ要因を物凄い勢いで並べて「総合除く生鮮食品(←ここまでが金融政策のコミットメントで言うコアCPI)から更に特殊要因を除く」という素晴らしい物価指数の推移を並べておりまして、「総合除く生鮮食品から更に特殊要因を除く」消費者物価(笑)が順調にゼロに向けて上昇してきているというグラフがあります。

・・・・・・何というかまぁお遊びとしては面白いかもしれませんが、それに何の意味があるのか小一時間問い詰めたい分析です。ちなみにその中にある「特殊要因」には何故か「石油製品」とか「米類」と言った(ちなみにコメは保存が利くので物価統計上の生鮮食品には含まれません)それは特殊要因じゃねぇだろうと言いたくなるようなものが混ざっているのですが。


ま〜何というか他にも突っ込みどころは満載なのですが、とにかく激しくアレなお方ですなぁという感じであります。






2005/02/25

お題「同じ話ばかりでは何ですから雑談」

福間審議委員講演について一言。

昨日は福間審議委員の講演もありましたが、案の定当座預金残高目標引き下げの話について「ペイオフ解禁までは」検討をする時期ではないというような記者会見でコメントしたようです。来月末にペイオフ解禁なんですからその発言って「将来を織り込みに行く」マーケット的には「検討する」と言っているのと同義だと判って言っておられるのでしょうかと小一時間問い詰めたいですわな。その他にも講演テキスト見ていると何か「教えて!にちぎん」でも読んでくれって言いたくなる部分が散見されましたが、記者会見要旨と共に週明けにでも。


同じネタで1週間まるまるというのは芸が無いので別の話。

○金融市場の法整備

昨日麻生総務大臣が国会の委員会で電波法の外資規制問題に関連して「昭和25年の制定以来、時代が変化しているのにこの問題が見直されてこなかったのはどうしてだ」みたいな質問に対して「夏休みの宿題を最後にならないとやらないようなもんでしょ」というような答弁をしたそうですな(記者の方から聞いた話をマクラに持ってきて恐縮ですが)。実に本質を突いたお話。

まーどこぞの買収合戦はもう双方で法律のグレーゾーンで泥レスを繰り広げる大変に素晴らしい展開で、「そんな新株予約権付与ありですかぁぁぁぁ?」という手段を「こんなのがありだったら既存株主は大幅希薄化されて安心して株を買えないじゃないですか」と批判するお前は何をやって資金調達をしたんだよという感じで、まぁ爆笑と涙を禁じえない状況でありますな。

で、この「法律の隙間」問題なんですが、これらの話が世界初のケースってのならまぁ仕方ない面もあろうかと思いますが、そもそもこの程度の話は想定可能(何せどこぞの暑苦しいお方は「過半数の株を取ったら増資して持ち株比率下げる」とか公言していた位ですから・・・・あれ?支配権を握る目的の新株予約権付与がいけないのに何で持ち株比率下げて議決権復活させる増資は出来るのかな〜??)な訳でして、こ〜ゆ〜のは「法律が想定していない事態」もへったくれも無い訳でして、単に欠陥があるだけの話。

と、まるで法曹関係者が悪いようなお話をしておりますが、そ〜ゆ〜問題ではありませんで、これは正直申しあげて金融市場参加者の問題意識が激しく乏しいのではないかと思う次第でありまして、法律なんて特にちゃんと勉強した訳ではない(宅建主任の勉強と金貸し時代に不良債権担当チームただし課長一人って所で下っ端仕事していた時に勉強しただけです)あたくしが見ても何かいざとなった時にそりゃ大丈夫かよって感じだったりする訳です。


例えば(偶々Google様で適当に検索したらヒットしただけで関係者を槍玉に挙げる意図はございませんので念の為)こんなの。

http://www.zenginkyo.or.jp/news/15/pdf/news150424-3.pdf

短期金融市場の取引慣行を整備しようってお話に絡む資料なのですが、このなかの資料5に「短期金融市場取引/基本契約書整備に対するアンケート結果」ってのが2003年3月18日付けでまとめられております。まぁこれは主にコール取引に関するお話のようですけれども、その「1.契約書を整備するニーズの有無とその事由」にある意見を見ておりますと、まぁあまりニーズが無いって話が多いようでこんな意見がありますわな。

・リスク管理面に対する関心は強いが、差し迫ったニーズは出ていない。方向性という意味では望ましいという認識はあるが、コール取引が余資・待機資金運用という性質が強いため、柔軟性を失うデメリットに対する警戒感が強い。最終的には取引当事者間で相対で定めていく為の雛形のようなものを想定している。

別にこのお方を非難する気は毛頭ないのですが、まぁ平均的な意識ってこんなもんなのではないかなぁって感じではあります。確かにコールに関しては銀行の破綻処理に関する法整備も出来たし(穴があるかもしれないけど)、コールは全額保護らしいのでそうそう慌てる必要がないからって面もあるとは思いますが、まー喉元過ぎれば熱さ忘れるって奴で法律面をどうのこうのって話は市場関係者の間では常に後回しにされやすい。

だいたい物凄い修羅場が発生した場合に法律が穴だらけだと碌なことにならないというのは短取研の皆さんって大体銀行屋さんなんだから金貸し現場で経験してませんかって気もするんですが、まぁ今回の買収合戦に見られるようなお話になる訳ですわな。で、そうなった時ってのが「差し迫ったニーズ」って奴でしょうが、そんなときに法整備がどうのこうのというのを泥縄というのですなぁと言う感じ。


かつてあたくし国債発行前取引の法律面の問題に関して「ちょっとそりゃ修羅場の時に問題が生じませんですかねぇ」って疑問を呈したものの誰も相手にしてくれなかった(金融ファクシミリ新聞様は話題にして下さいましたが)というのがありましたが、まぁ一事が万事で修羅場が発生した時のことを考えて法律に穴があるのを市場関係者(特に実務担当者)はもっと指摘した方が良いんじゃないかと思う次第ですが、まぁ法律のグレーソーンでお仕事をするあわわわわ(以下自粛)。


○余談ですが

麻生総務大臣と言えば、第3回経済財政諮問会議でも大変に結構なお話をしておりますな。特に議事要旨の5ページの牛尾さんとのやりとりなんか見ておりますと、「民間議員真面目にやれ」と文句つけたくなりますわな。ま、牛尾さんがもともと真面目にやる気が無いのかもしれませんが、ちょっとそりゃ牛尾さんおちゃらけてませんかって感じですわ。詳しくは内閣府のWebをご覧下さい。







2005/02/24

お題「相変わらずオペ札割れ問題」

まぁこの話ばっかで恐縮なんですが・・・・・

○手形オペの札割れなんですが

昨日実施された期間264日間(2月25日〜11月16日)の手形買入オペが1兆円の実施予定に対して9297億円の応札しかなく見事札割れ。まぁ先日の総裁記者会見を受けた(?)259日の手形オペをやったのが金曜日で、そんなに間をおかずに長期間のオペを打ったというのも何なんですが、とりあえず札割れは札割れでございます。

期間のながーい手形オペを実施したのですがいきなり札割れって事でして、「またまた札割れ」と札割れがクローズアップされそうではありますが、これは基本的にオペの打ち方が(札割れさせない積りなら)あまりお上手ではなかったのではないかって感じです。

と申しますのも、短期国債市場のほうでは一頃の100円落札祭り状態は沈静化しておりまして、手形買入じゃなくて短国買入とか債券買現先オペを実施すればそうそう札割れにもならんと思う状況らしいようなんで、そう長期間の手形オペを連発する必要があったのかね〜って感じです。

もともと銀行は資金調達意欲が乏しいですし、どっちかと言えばオペ札割れ→当座預金残高目標維持困難→無理に資金供給する位なら当座預金残高目標維持に拘らない→短期金融市場の市場機能の復活という方向性をの望ましいと考えている人が多そうな短期金融市場のメジャープレーヤー様に「足もとを見透かされた」格好にもなってしまったの図って事で実に香しい。益々本質から外れそうですが(^^)、札割れさせたくなかったら相対的に資金調達能力が劣る(預金という究極の無担保調達が出来ないから)証券会社が参加しやすい債券系のオペを打ちますと吉ではないかと思いますがね〜。

一回札割れしちゃうとまぁ余程資金需給が逼迫する(ということは基本的にありえませんわな)事が無い限り「所詮前回札割れですし」って話になっちゃって、益々応札が消極的になるという楽しい悪循環が待っておりますんで、そう簡単に札割れになってしまわないようにもうちょっと慎重(1兆円も打たないとか)になったほうが良かったのではないかと、後出しじゃんけんながら思うのでありました。

まぁ最近の「意図だしオペ(か?)」に見られるように、今回のオペは実は調節担当部門で「とっととオペ札割れして当座預金残高維持問題を再燃させなさい」という隠れた意図があって、以心伝心で応札側が乗った結果が札割れでした、な〜んて話だったら物凄い勢いで感動する(何に?)のですが・・・・・・


○財務金融委員会での総裁発言

昨日の衆議院財務金融委員会に出席した福井総裁は公明党の谷口委員(って事は昔の財務副大臣でしたっけ)から札割れ議論に関して質問を受けたらしいですな。国会の会議録ってのは直ぐにアップされるものではないんで、後で見るときは兎も角とりあえずは情報ベンダーのニュース記事を参考にする(インターネットの国会審議中継を見て文字起こしするという手はあるんですが、そこまで細かくチェックする時間が無いのでゴメンナサイ)事として本日はブルームバーグニュースを参考にしつつ(以下総裁発言のソースはブルームバーグニュース)。

まぁ当然ながら「量的緩和政策の堅持」については強調しているのでそのあたりは安心できますな。

『いずれの委員にも共通することは、金融政策の基本的なフレームワーク、つまり量的緩和政策の枠組みと実態的な緩和の度合いに修正を加えようということでは全くない』

ただ、札割れを受けても当座預金ターゲットを堅持するのかという点に関しては報道される限りにおいてはだいぶ怪しげなところがありますな。まぁ最終的には「本当は何言ってるの」という検証が必要だったりしますけれども。

『4月以降ペイオフの全面解禁後、まず経済情勢がどう展開するか、それと金融システムの安定度合いはさらにどの程度、どのようなスピードで確立していくか。その関係のなかで、金融市場でイールドカーブがどういう形状で形成されるか。それらによって実態的な流動性需要の出方そのものが大きく変ってくる。そこをまず見極めていくことが先決』

『そのうえで初めて、札割れという現象と、30−35兆円程度のターゲットとが現実的な整合性という点でどれくらい問題が生じてくるか、正確に認定できる。そこのところを正確に認定しながら、技術的な対応を加味していくことがより望ましいのかどうかは、その時点で判断できるだろう』

・・・・・何か雲行きが怪しい答弁に見えますわな。

『そこのところ(技術的な対応が必要かどうかとかいう話だと思われます)は今からその先を見通して議論は始まっているが、まだ具体的な結論に向かって収束していく段階ではない。まず前段階の諸情勢の変化をこれからもしっかり見極めながら必要な議論を進めていきたい』

ということで、あくまでもペイオフ解禁後の状況を見るって言ってはおるのですが、市場というのはいわゆる自己実現ってぇのをするものでありまして、「ペイオフ解禁後には当座預金残高目標の見直しが必至」だという認識が共有されれば市場の方としては勝手に織り込みに行くものですし、織り込みに行く事によって多少懐疑的な人もついていかざるを得ないという話になるという点に関して少々配慮が不足しておられるのではないかという感じですな。今に始まったことではないですが。

まぁ当座預金残高目標割れに関して「技術的対応」をする気だというのであればそれはそれで政策判断なんですが、少なくとも前回会合時点で当座預金残高目標維持が全員一致だったのにそれはどうよって思うのはケチのつけすぎですかねぇ。反対票が入っているのならまだ判るが。


で、札割れそのものに関しては以前国会内での多分ぶらさがりインタビューで答えた事と同じ話をしております。

『(資金供給オペの札割れは)経済、金融システムが次第によい方向に向かってきていることの市場のメッセージであり、好ましい方向としてポジティブに受け止めている』

「企業金融の円滑化」「資金の出前持ち」を標榜して福井総裁就任から間もなく鳴り物入りで導入された資産担保証券の買入が全然実績を上げていない事について参議院財政金融委員会(だったと思います)で突っ込まれたときにも同じような答弁(=そもそも日銀は資産担保証券市場の育成のためにオペの導入をした。円滑に資産担保証券市場が機能すればオペが機能しなくても結構というかより好ましいって趣旨です)をしていたのを思い出す答弁。

まぁ何というのかそう言ってしまえばそうなのかもしれないけど、その理屈は何か「じゃあ元々そんな事やる必要があったんですか?」という突っ込みをしたくなるお話でもありますわな。「それは見込み違いでした」っていうのも一つの勇気ではないんでしょうかと思うんですがね。まぁそもそも「ゼロ金利解除は見込み違いじゃ無かった」という理屈の元に量的緩和政策を「金利ターゲットではない」と言って始めた時点で理屈が妙になっている所へ来て、速水総裁時代にあった「当座預金残高目標の引き上げ=中長期国債買入オペの増額」というある意味判りやすい話も福井総裁になってからは無くなってしまったので益々話がややこしくなっているんですけどね。

ま、あまり突き詰めて考えないのが吉なんでしょうが、それではあまりにも中央銀行の金融政策として情け無いって感じではありますわな。


#本当は別の話題もあったのですが、時間の都合上後日



2005/02/23

お題「会議は踊る(ただし無用に)」

昨日の時事メインコラム「金融観測」記事「政策論が迷走したら・・・=『教えて!にちぎん』を読む」は必見ですな。ちなみに日銀のWebを見ますと、トップページの真ん中左の方にこのコーナーがありまして、知る人ぞ知る存在。輪番が成長通貨の供給でその他のオペは資金繰りだとかのお話を始めとして、勘違いしやすい問題に関して日銀の見解が書いてあります。これは便利なのですが、最近の政策委員会の支離滅裂政策論と違い誠に明解ですな〜って感じです(^^)。

おまけに申しあげますと、トップページには「キッズコーナー」という所へのリンクもありますが、これも馬鹿にしてはいけません。そこを見ると「お金とは?」ということに関してお子様向けにアニメーション付きで説明しておりまして、「お金の信用とは何ぞや」とか「お金がお金であるために」などという話をしておりまして、これもまた中々です。


もう一つ雑談。目の前のニュース番組によりますと、偽造カード問題で金融庁が金融機関にICカード化などの対策を求め、その対応状況を3月末までに提出しろとか言ってるようですが、「余計な仕事を増やすなボケ」と言いたい訳ですな。金融機関が対応をするなという意味ではなく、これだけ偽造カードがどうのこうのという話になっている中ではさすがにICカード化するのが他行との差別化になって安全重視の客が来るから顧客拡大できるでしょって話しだし、それはそうでもICカード化するコストというのもある訳で、それは偽造カード被害への補償で発生するコストとの比較問題だからそれこそ経営判断の世界じゃネーノかと思うんですが、とにかく何でも画一的対応を要請して一々報告させる金融庁さま。そんなに金融機関を統制して何が楽しいのか良く判らん(訳でもないが^^)ですなぁ。

特定産業振興法(は成立しませんでしたが)時代の通産省かお前らはという感じですな。>金融庁


前置きが長くなりましたが本題。

当座預金残高目標問題の議論はどうでしたか?って意味でそれなりに注目されていた先月の金融政策決定会合議事要旨が公表されたのですが、場中はさすがにフラッシュしか見ている暇がなく(20年国債の入札でしたから)あとで読んだのですが、途中で腰が砕けてしまいました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050119.htm

例によって景気の認識とか先行き見通しの部分は思いっきり割愛。



○ちょっと怪しい「金融市場の現状認識」

「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」における金融面の動向に関する検討の部分なんですが、よくよく見ると「???」というのもありましてちょっといちゃもん。

『何人かの委員は、4月にペイオフ全面解禁を控えているが、金融システム不安が後退しているもとで、金融機関間の預金シフト等特段の資金シフトはうかがわれていないと指摘した。』

そりゃそうなんですが、そもそもペイオフ全面解禁が尻抜けなんで金融機関間での預金シフトは起きんでしょ。シフトするなら預金→国債などって事だと思いますが。細かい言いがかりですかそうですか。


『社債市場などで信用スプレッドが縮小している点について、ある委員は、低金利政策の継続により、イールドカーブのフラット化と信用スプレッドの縮小が生じており、投資家や金融機関は大きな金利リスク、信用リスクを抱えている可能性があると指摘した。』

それはちょっと違うと思うぞ。イールドカーブが極度にフラット化していた一昨年の初夏までは絶賛信用不安モードでもあって、そんなに信用スプレッドの縮小は起きてなくて、りそな銀行絶賛大救済からの財政下支え攻撃政策大転換によって信用不安の拡大が抑えられてから株式市場が復活してからはイールドカーブは基本的にスティープしてるんだが。まぁ目先直近の1ヶ月くらいの話をしているのなら現象は上記の通りですが、何かちょっと結論に書いてある話を見ると違和感が。


『また、最近の地価の動向に関して、複数の委員は、東京都区部の地価がここにきて上昇に転じていることは注目すべき動きであると指摘した。』

局地的にはもう既に無茶苦茶に上ってますが。何か今更「上昇に転じている」ってのがちょっと何と申しますか。


○当面の金融政策運営に関する検討は・・・・

いやもうこの「検討の概要」部分の話は何と申しますかアヒャヒャって感じ。以下は「先行きの金融政策運営」に関するお話を順を追って紹介します。

『ある委員は、金融システムの健全化による流動性リスクの低下を背景に、日銀当座預金残高への需要が減退していることを指摘したうえで、これまでの当座預金残高目標の引き上げの過程では金融市場の安定確保を通じて景気回復を支援することを変更の大きな事由としてきたことを踏まえると、オペの札割れにみられるように市場自身が不要であるとのシグナルを発している部分については、現行の政策の枠組みの中で慎重に当座預金残高を減額することが適当であると指摘した。』

物凄く局地的技術論で言えば「所要準備+資金繰りバッファー」以上の額はイラネって話なんで、当座預金目標引き上げは技術的にはいらねぇ金をぶちこんでいる(技術的にはいらねぇ金でもまぁそれによる効果を狙うという事が出来るかという議論はあたくし否定はしませんが・・・)だけなんですが、ぶち込むときは押し売りしておいて減らすときは「どうも要らないらしいから減らしましょう」ですかそうですか。


『これに関して、別の委員は、4月のペイオフ全面解禁を契機に金融市場の流動性リスクが一層後退していく場合、現在の当座預金残高を維持していくことの効果と副作用のバランスが変化することも考えられると述べた。』

これを誰が発言したのか謎ですが、「流動性リスク対応の当座預金引き上げ部分は減らせるのではないのか」という理屈(屁理屈)ですな。そもそも流動性リスク対応って言ったって、出すときの理由は別だったし、その理由らしきものはとっくに片付いており、引き上げるときは別の理由ですか?って感じでもう支離滅裂ですな。笑えるけど。


『また、ある委員は、財政資金の受払いが金融調節に与える影響について留意する必要があると述べた。』

これは政府預金が当座預金残高目標維持を邪魔している可能性の話です。


『何人かの委員は、現在の量的緩和政策は、金融不安への対応も含めてデフレからの脱却を目標としたものであり、金融不安の後退だけを理由に当座預金残高目標を減額することは説明が難しいのではないかとの認識を示した。また、一人の委員は、景気が踊り場を迎えている中で当座預金残高目標の減額が金融引き締めと誤解される惧れはないのかどうかなど、当座預金残高目標を調整することについては、慎重に検討すべき点があるとの認識を示した。』

筋論としてはこっちが正しい。勿論「実は量的緩和政策は単にゼロ金利+時間軸に過ぎなかったので、ゼロ金利が維持できるレベルを超えた当座預金残高の存在は意味が無かったですよあっはっは」とあっさり認めれば最初の人の意見が筋論として正しくなる訳ですが(^^)。


『別の委員は、当座預金残高目標の減額は景気が良い場合に限られるように思うが、当座預金残高目標を引き下げずに一時的な資金需給の振れを許容するような工夫も必要ではないかと述べた。』

なお書き追加ですかそうですか。そりゃちょっとどうよって感じですな。


『ある委員は、当面の金融政策運営として、量的緩和政策を堅持していくことについては委員の間で共通の認識があると述べた。』

こりゃ当たり前なんですが、まぁお前ら落ち着けとでも言いたかったのか?


『さらに、同じ委員は、市場の流動性需要の変化に応じて当座預金残高を調整することが適当であるかどうか、そうした当座預金残高の調整が市場関係者そして国民の理解を得ることができるのかといった点については、景気の動向と市場の反応を十分確認しながら、今後とも検討していく必要があるとの認識を示した。』

まぁ一応きれいにまとめてはあるのですが、「市場の流動性需要の変化に応じて当座預金残高(目標でしょうな)を調整」してたらそりゃ量的緩和じゃなくて金利ターゲットでしょって話な訳で、検討も糞も無いと思うが。それこそ最初にご紹介した時事メインコラム「金融観測」氏のご指摘のように「おしえて!にちぎん」を読めって感じですな。まぁ皆さんも「おしえて!にちぎん」を是非お読みください。


という訳で、議論も論理も迷走する量的緩和論。まぁはっきり言って不毛な話ではあるのですが、ギャグとしては実に笑える展開になって参りまして最早日銀政策委員会による身を切ったギャグとしか思えません。あははのは。






2005/02/22

お題「総裁記者会見(続)〜量的緩和政策の枠組みに突っ込み集まる」

昨日の続き。記者会見の後半部分です。

とうとう「量的緩和の相対性原理」みたいな話まで出てしまい、何と申しますかもう屁理屈の上に屁理屈の上塗りのようになってしまった記者会見。当然ながら「そりゃ何ですか〜」ってことで後半は質問が色々と出ておりました。

○「目標引き上げの理由」論

過去の当座預金目標引き上げの理由として「不測の事態に事前に手を打っておきます」と言っていたのがあったのは確かで、イラク戦争だのSARS(によるアジア経済の悪影響)だのりそな銀行問題だのというのがあったのですが、んじゃあこれらの要因は現在どうよ?って考えると「??」な訳ですが、その点についての突っ込みが。

『(問)金融政策運営の中で、金融システム不安に対し景気下支えをするなど、これまで様々な理由から当座預金残高目標を引き上げてきたと思う。当座預金残高目標引き上げの理由を金額ごとにそれぞれ明確に区別することは難しいと思うが、先ほどおっしゃっていた現在の金融システムの安定という状況からみると、当座預金残高目標を引き上げていく過程の中での理由のいくつかは、若干クリアされているような気もする。現状とディレクティブを比較して、当座預金残高目標を引き下げることができないような理由というものが何かあるのか。』

金融システムは安定しているし、景気見通し(=ディレクティブ)は強気になっており、「相対性緩和論」の理屈から言えば残高目標引き下げは出来るのではないでしょうかって話ですわな。

『(前半省略、景気判断据え置きでペイオフ完全解禁前だよって話です)従って、景気の動きにせよ、金融システムの安定の度合いにせよ、我々が政策を行っていく場合の大きなバックグラウンドについての情勢判断は、まだ大きく今後の課題として残っているわけである。そこを踏まえながら、市場における流動性需要の変化というものをより正確に判断できるようになるわけである。そこのところを正確に判断しながら、政策的判断かあるいは技術的な対応として何か切り分けて処理していくのか、あるいは双方とも当分必要がないのか、現状において早まった判断をするということは我々の責任の範囲内には入っていないということである。』

何かどさくさに紛れて「技術的な対応として何か切り分けて処理」とか言っているのは何ですか?って感じがします。いやまぁ可能性を排除しないというのは結構なんですが、それなら前半であそこまで強力に当座預金目標の維持を強力に主張する必要があるのかと。何というかもう少しぼんやりとした言い方はできんもんなのかと。後の話を見てますと、この「技術的な対応」というのは最終的に量的緩和政策を終了する時まで封印されるっぽいのですが、どうも「福井日銀は何をしでかすかわからん」というのがありますんで思惑は止まらんでしょうなぁ。


○相対性緩和論の説明を求む

『(問)量的緩和のもとで、いわゆる追加緩和を行うときには、当座預金残高目標を引き上げるという、我々にとっても非常に単純に理解できるかたちで実施され、目標額は現在の30〜35兆円程度まできている。これに対して、これからどうするのかという時に、先程総裁は「相対的なものである」という趣旨の説明をされた。今すぐ何かアクションをとるということではないだろうが、この説明に即して言えば、環境と景気の地合いによっては、当座預金残高目標が減ることが必ずしも引き締めではないということにも受け止められるかと思うが、そこのところをもう少しわかりやすく説明して頂きたい。』

で、まぁこれに対する答えが物凄く判ったような判らないような物になっておりまして、正直全部引用すると長すぎるし、要点がどこにあるのか判らんという難しい回答です。あたくしの判断で勝手に一部を抜きますとこんな感じ。まずは量的緩和相対性原理(笑)について。

『例えば、33兆円ならば33兆円という流動性の供給であっても、経済がどんどん悪くなってきてデフレ・スパイラルのリスクが強まるとか、金融不安が強まるとか、経済の動いている角度が下を向いているときには、同じ33兆円でも、今日みている33兆円よりも、坂がさらに下っていく中で、翌日みた33兆円は、緩和の度合いは少なくなっていくわけである。従って、経済の落ち込みを防ごうと思えば、33兆円でじっと我慢していれば不十分だということになるので、さらに供給を加えていくということになる。しかし、今度は逆に経済が上向くということであれば、今日の33兆円よりも明日の33兆円のほうが緩和の度合いが強いということになる。』

今日の33兆と明日の33兆とを比較するですか総裁。。。。

『経済が踊り場現象の中にあるとき、ペイオフ完全解禁がまだ終わっていないときに、「どういう判断ですか」とお互いに問答しても、これは明確に結論が出ない段階ではないかと思っている。』

んなら金融政策決定会合はCPIがゼロ以上になるまで実施しなけりゃいいのではないかと暴論を言いたくなってしまうんですが・・・・・


○量的緩和政策の効果について

そもそも「金利ターゲット政策とは違う」という触れ込み(会見の前半でも同じ事を総裁が言ってましたが)になっている量的緩和政策の効果については何なんでしょうって話がある訳でして、そこについての質問が出てます。しかし今回は「そもそも論」に関する突っ込みが多く、総裁もご機嫌斜めの図ですな。

『(問)量的金融緩和の効果としてよく言われているのが、イールド・カーブのフラット化効果、時間軸効果、ポートフォリオ・リバランス効果などである。当座預金残高に資金を積めば、貸出に潤っていって、資金が経済の活性化につながるという効果も期待されると聞いていた。しかし、景気が回復して金融システム不安が払拭されると、銀行は体力を回復して、ポートフォリオ・リバランスが活発化してくるかと思いきや、むしろもう資金は要らないという札割れが起こっているというのは少しわかりにくい。ポートフォリオ・リバランス効果も含めた量的緩和の効果といったことについて、足許どのようにご覧になっているか。』

で、この答えが物の見事にA4用紙1枚分になってしまうので、これまた端折って引用しますが、要するに「時間軸効果とアナウンスメント効果はあったが他はよく判らん」ということのようですな。その中で「ははぁ」と思った部分を引用。

『ポートフォリオ・リバランス効果、すなわち流動性を余計に持つとそれを活発に使ってくれるかどうかということについては、学者の世界では、そういうことをクリアにおっしゃっているが、そこのところは、過去に、世界中のどこの中央銀行も経験則は持っていないことである。』

どうも岩田副総裁に対する嫌味に見えますなぁ。時間軸効果に関しては・・・

『コミットメントして、流動性の量を多くした場合に、アナウンスメント効果があり、時間軸効果が働いて、緩和が先取りできるというところまでは──これについても経験則はなかったわけであるが──、他の様々な過去の我々の経験の蓄積の中から、ある程度確証を持てるところであったし、現実に我々が考えたのに近いような効果は出してきていると思う。』

この「緩和が先取り」っつーのはこの答えの冒頭部分で話しているのですが、イマイチ何を言いたいか判らんのですが、どうも時間軸効果による政策金利に関する期待の安定がより長い金利を低位安定させるという事らしいです。

『しかし、学者の方がおっしゃるようなポートフォリオ・リバランス効果というものが本当にあるのかどうかというのは、我々もやってみなければわからないことである。』

また岩田副総裁に対する嫌味ですか?というのは兎も角としてこの次はちと腰が砕ける説明。そんなに自己正当化せんでも良いと思うんですけれども・・・

『政策は実験ではないので、ポートフォリオ・リバランス効果だけであったら、我々は政策に踏み切らなかったと思う。しかし、我々は、アナウンスメント効果と時間軸効果については確信を持ってやり、それはきちんと効果があったし、現在もあり続けている。』

まぁ確かに量的緩和政策を実施する時には福井総裁じゃありませんでしたから何言っても良いっちゃあ良いんですが、どっちかというと量的緩和政策のキモと最初に言ってたのはポートフォリオ・リバランス効果だったと記憶しているんですから、「ポートフォリオ・リバランス効果だけであったら踏み切らなかったと思う」っつーのはそりゃーねーだろって感じなんですが。「ポートフォリオ・リバランス効果があると思って実施したけど、どうもそれは今の所無かったらしい」で良いんじゃねーかと思いますがねぇ。何というか変なところで意地を張らなくても良いのではないかと。

で、この話の最後にちと気になる点が一つ。さっきの「技術的対応」と同じ話ですが。

『我々は「出前持ち」として、本来の日本銀行のオペの役割を超えて資金供給をしてきた(補足:資産担保証券証券の買入のことでしょうな)のという部分がある。そうした部分は必要がなくなっているという取りあえずのメッセージがある程度──完全ではないと思うが──出ている。そうしたところは、私どもは正確に受け止め、そのデータを蓄積しながら、将来のより広い判断の中に吸収していかなければならないと考えている。』

資産担保証券オペはそもそも最初から絶賛大札割れしてますが何か?という突っ込みもあるのですが、それはそれとしてこの部分も「将来の可能性を排除しない」という意識で出た言葉なのか案外ホンネなのか良く判らんところではあります。


○最後に議論がぶち壊しになっているような気がしますが・・・・(-_-メ)

とまぁこんな感じで当座預金残高問題にバシバシと突っ込みが入ったのですが、最後の方で論理矛盾を突っ込まれて総裁ぶちきれの図のような気がする質疑応答が2つほどありまして(笑)、そんなに長くないのでまる引用します。

『(問)今の話とも関連するが、経済の状況と量の多寡が相対的な関係だとおっしゃる点について伺いたい。もしそうだとすれば、例えば同じ2%の政策金利でも、景気が良いときにはより緩和的であり、景気が悪いときにはより引き締め的であり、ということは十分起こりうると思う。金利のときにも、経済と政策手段は相対的な関係にあると思う。そこで、今までは所要準備に収めてゼロ金利あるいは金利政策であったのが、量的緩和を始めて、量を増やすことを緩和と言ってきた。であるとすれば、如何に政策手段と経済が相対的な関係にあるとはいえ、量を減らすことはやはり引き締めになるのではないか。その上で、もう1点伺いたいのが、先程「市場が吸収できる、ぎりぎりの水準のところに供給していく」ということが量的緩和であるとおっしゃった。これをそのまま受け止めると、市場がもう受け入れられなくなれば、20兆円でも25兆円でも、今の当座預金残高目標を引き下げるということもありうるというふうに受け取らざるを得ない。そうした場合でも、これは引き締めではないとおっしゃるのかどうかについて伺いたい。』

『(答)繰り返し申し上げるが、緩和とか引き締めというのは、アプリオリに、事前的な定義を数字で言えるものではない。ご承知の通り、一定の金利水準なら必ず引き締め、一定の金利水準なら緩和ということはあり得ない。それぞれの、その時の経済の状況によって、その金利水準が緩和的か引き締め的かということは、経済実態に合わせなければわからない。米国のFRBの場合にも、今、中立的な金利に戻そうと言っているけれども、中立的な金利は数字では明示できないと言っている。それと同じことだ。もう一つのお尋ねの点については、日本銀行は、流動性供給を市場が吸収できる上限ぎりぎり以上に供給しているということを、少し文学的な表現として申し上げたが、要は所要準備額を大幅に上回る、それを極端にまで、ということを別な表現にしたわけである。当面、現在の30〜35兆円程度という目標が、到底維持不可能だ──枠組みが崩れるほどに維持不可能だ──、ということは全く予見できないということを繰り返し申し上げている。』

だから「文学的な表現」は止めなさいと。何度それで墓穴を掘っているのか。次回あたりになったら「量的緩和の相対性理論」も文学的な表現になりそうな悪寒。


『(問)将来あるかどうかわからない政策に対して「緩和か」「引き締めか」というのは、ある意味で神学論争のようであって不毛のようにも聞こえるが、ここに我々がこだわることには理由がある。先程総裁は、当座預金残高目標を増やすときに、増やしていく過程でアナウンスメント効果を重視する、それについては自信もあったし効果もあったとおっしゃった。その意味で、日本銀行がとる行為について、それが緩和であるか引き締めであるかということは、国民に働きかける意味でも、非常に重要な意味を持つと思う。しかし、量は減らすかもしれないけれど、それは引き締めではないというのは非常にわかりにくい。このわかりにくい量的緩和というものを3〜4年間続けてきたが、経済情勢と比較して相対的にはもう役割を終えたのではないのか、という問題意識もある。また、須田委員は函館での講演でCPIにもいろいろな問題があると指摘している。こうした点を踏まえると、そろそろ、今とは言わないが、徐々に量的緩和の出口というのを模索していく時ではないかと思うが如何か。』

『(答)全くそう思わない。私どもは、CPIの前年比変化率が安定的にゼロ%以上になる、その条件を3つにブレイクダウンしてお示ししているわけで、この条件を満たしていない限り、「そろそろ」という概念は全くあたらないと思っている。それから、緩和か引き締めか、それに対してアナウンスメント効果を人々がどう理解するかというのは、その状況次第である。それと切り離して、単に数字だけでアナウンスメント効果を論じたり、あるいは緩和か引き締めかという説明をしたりしたことは今まで一度もないわけで、将来の架空の状況を前提に、数字だけで緩和か引き締めかを論ずることは極めて危険なことだと思っている。私どもは、その点は自ら強く戒めていることである。将来いずれかの時点で、おっしゃる通り経済の情勢が非常に好転して、そういうバックグラウンドのもとに我々が何かアクションをした時に人々はどういう理解をするか、このスクリーニングをかけなければ、緩和か引き締めかと言ってみたところで何の意味もなさないと考えている。』

そんなら屁理屈を積み上げるよりはどこかの首相みたいに「その時々で判断する」って言った方がよっぽど潔いと思いますが、あっはっは。

#またまた引用が長くなってしまった事をお詫びいたします。





2005/02/21

お題「またまたオペで意図出し(か?)/記者会見大戦争?」

○唐突に9ヶ月もの手形オペ

昨日の短期金融市場ですが、午後の定例オペのお時間に実施されたのが2月22日〜11月8日(期間259日)の全店手形買入でした。この259日というのは一昨年の夏に金融市場が早期の量的緩和解除モードになった時に市場沈静化のため(とは日銀は言ってませんが)に行った期間260日並みの長さでして、まぁ「やたらと期間の長いオペ」という事であります。

金曜日にご紹介して、この後にも会見要旨をご紹介する木曜日の金融市場決定会合後の日銀総裁記者会見で「当座預金残高目標30兆円維持問題」に関してやたらと強気姿勢で「懸念全く無し」という福井総裁発言が出た翌日に「資金供給オペの期間延ばし攻撃」を行うというのは、もうそりゃー意図を忖度するなと言っても勝手に意図を忖度したくなるものですわな。

で、まぁこの意図は直ぐに判ろうという物でして(^^)、総裁様の鶴の一声を受けまして「当座預金残高目標維持への資金供給に工夫してみました〜♪」って話としか思えませんな。金融政策決定会合の期間中になると輪番オペの日程を微妙にずらしてみたり、総裁発言に呼応するかのように久しぶりに「長期間のオペ」というある意味伝家の宝刀を抜いてみたりと中々最近の調節は「意図がございますかそれは」という動きが徐々に増加中でありまして、昔の「日々の金融調節で意図を出す」という職人芸の世界が復活しつつある気がしてまぁそれはそれで楽しいですな。

で、今回の「オペの出すシグナル」ですけど、「当座預金残高目標維持は無問題でっせ〜」というシグナルと共に出されていると勝手に推測するのは、「資金供給問題で無理をするときには短期金融市場に皺寄せが行きますんでそこんとこヨロシク」というものでしょう。先日来申しあげておりますように、当座預金残高目標維持でやや無理をしないといかんという状況では、結局どこかにある程度無理をかけないといけない訳ですが、案の定現在手持ちの道具で簡単にできる措置を行うという作戦にでることになったようですな。短期金融市場の皆様ご愁傷さまです。

まぁ後でもご紹介しますが、目標の引き下げもしないし、輪番増額もしないと総裁が言い切っちゃってますからまぁ仕方ないですわな。


○大変に険悪な総裁記者会見

という訳で総裁記者会見。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0502c.htm

当座預金残高目標維持問題に関して突っ込んだ質疑、というよりはなんというか意地の悪い突っ込みとそれにムッとする総裁の図って感じでありますわな。今回は55分間と会見時間が長く、要旨の量も多く(紙に出すと10ページ)なってます。


・当座預金残高維持に自信

最初のお約束の質問。

『(問)本日の金融政策決定会合の結果および金融経済月報を踏まえた景気認識を伺いたい。また、最近の一部の審議委員の発言にもあるが、当座預金残高目標の下限の柔軟化というか弾力化といった議論についての総裁の所見を伺いたい。』

『(結果と景気認識は割愛)オペレーションとの関連についてもお尋ねがあったが、金融システム不安が後退しているというか、全般的に市場関係者の先行きに対する不透明感が後退していくなかで、金融機関の流動性需要は徐々に減少し始めている。別の言い方をすれば、金融市場において資金余剰感が強まっているということであり、ご指摘の通り、こうしたことを背景にして、短期の資金供給オペレーションの場面において、札割れと言われる現象がしばしば発生している。しかし、重要なことは、私どもの当座預金残高目標はしっかりと維持できているということである。(以下3月になっても残高目標維持は問題ないという話だが割愛)』


・当座預金残高目標引き下げを否定

ちょっと後に何だか意地の悪い質問。

『(問)1点目は、当座預金残高目標の維持に関して30〜35兆円程度ということであるが、この「程度」について伺いたい。下限についてであるが、ある日着地点が、例えば28兆円台や29兆円台になったとしても、それは何ら問題がなく、ありうるべきことだと理解して良いのか。2点目は、「量的金融緩和の枠組みは維持する」という表現があるが、この枠組みというのは口語で言えば「精神」や「考え」あるいは「方針」だと思うが、これは量――つまり当座預金残高――と枠組みというものが同一のものなのか。例えば、20兆円や25兆円でも、どのようにターゲットを置いても良いが、それも量的金融緩和であると言うことが可能であると思う。量と枠組みが同一のものであるのかどうか、伺いたい。』

残高目標割れをテクニカルに容認する気があるのかというのと、目標額の引き下げをやるきがあるのかという質問を意地の悪い言い方をして行っていると読めますが、これに対して総裁はこういう回答。

『(答)1点目のご質問について必ずしも明確にご趣旨がわからないが、30〜35兆円程度を目標に、現在、流動性の供給活動を毎日行なっているということである。先般も何度か皆様方からご確認があって、30〜35兆円程度と言ってもその中で特にどの辺りを中心点として考えながら調節するのかということも時々聞かれているが、要するに30〜35兆円程度と言った時には33兆円ぐらいを中心点にしながら、日々、流動性を供給していく。これがこのターゲットの趣旨である。「上限をはみ出した場合」、「下限をはみ出した場合」というような定義はない。法律の定義ではなく、我々のオペレーション上のターゲットであるため、33兆円ぐらいというのは中心として念頭にあるわけで、しかもその上下に30兆円ないし35兆円という幅を持った目標を置いているということである。(以下似たような説明が続く)』

『それから量的緩和の枠組みについて、これは精神規定かとおっしゃったが、それは明らかに違う。先程申し上げた通り、金利水準というものをターゲットにしないで、流動性の量――量というのも33兆円というようにピンポイントにすることは難しいから幅を置いているわけであるが――に政策ターゲットを置いている。これが現在の緩和政策の枠組みである。あらためて申し上げれば、所要準備額をはるかに上回る、市場ニーズの上限あるいはそれ以上の流動性を供給し続ける、これが現在の量的緩和の枠組みとご理解頂きたいと思う。』

ということで、見事に現在の政策運営の「そもそも論」について発言しましたんで、当座預金残高目標の引き下げについてもそう簡単に行えない状況になってしまいましたな〜というのが感想。


・相対性緩和論??

サービスフレーズの好きな総裁(きっと物凄く頭が良いんでしょうな^^)が新たに「相対性理論」を持ち出してきました(^^)。

『(問)先程、30〜35兆円、中心33兆円という大きなボリュームに政策の目標を置いているのが今の枠組みだとおっしゃったが、たまたま、下回った時あるいは政策判断で引き下げた時のいずれにしても、30〜35兆円という目標を資金供給額が下回った時は、それは金融引き締めであると受け止めて良いのか。また、逆に30〜35兆円を維持できないと判断した時に、金融引き締めでないとすると長期国債買入れを増額してまでこれを維持するのかどうかを伺いたい。』

『(答)私どもはCPIの前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで基本的に量的緩和の枠組みを維持しながら超緩和を続けるということを約束しているので、30〜35兆円という具体的な数字の評価と直接絡んでいないと思う。先程申し上げた通り、所要準備額を大幅に上回る、市場として吸収しうるぎりぎりのところを狙いながら緩和を維持しているということが枠組みだと申し上げたので、びた一文狂ったらすぐ引き締めかという法律的な定義のご質問であれば、私は答えようがないとしか言いようがないと思う。』

ここの部分は先ほどの質問に相通じる状況ですが、この後に出てくるのが久々のサービスフレーズでございますな。

『それが証拠にこれまでも度々この席で申し上げている通り、仮に35兆円なら35兆円あるいは中心33兆円ということをコンスタントに供給し続けている場合でも、経済の回復度合いが高まれば実態的な緩和度合いがさらに強まるということを申し上げた。このように一種の相対性原理のように、経済のコンディションと流動性供給の状況との相対関係で緩和度合いというものを判断していかなければならない。量的緩和の難しさはそこにある。従って、数字が1億円あるいは1千億円狂ったらすぐ緩和か、引き締めかというご質問には答えようがない。その時の経済状況と合わせて我々はきちんと判断していくし、そのことに対する市場の反応は正確に出るであろうと考えている。』

何だか総裁が従来から言っている「経済が回復基調にある中では、経済後退時期と比較して量的緩和の効果が高まる」というお話をするのにとうとう相対性原理という言葉まで持ち出しておりますわな。久々の迷(名?)言登場です。

しかし何というか相対性原理みたいな緩和度合いがどうのこうのと言ってるのなら、景気判断によってコロコロと当座預金残高目標を上げたり下げたりするのが筋って話になりかねないし、逆に量的緩和解除が出来るような状況になっても、一気に量を減らすというのは強烈な引き締めって意味になってしまうからそれもやっぱりややこしいことにならんか(量的緩和解除しても翌日物誘導金利が0.1%とかだったらそれもまた金融政策としては緩和状況であると思うんですが)と思う次第。

まぁ元々理屈を超越したところにあるのが現行の金融政策(一応屁理屈であっても理屈は理屈ですが)なのですが、何かまた屁理屈に謎理論を上塗りしてしまって良いのでしょうか??って感じです。

ちなみに、この時には答えてませんが、後ほどの別の質問に対して長期国債の買い入れに関して『当座預金残高目標は維持できると思っているし、現在、長期国債の買入れについては月々1兆2千億円ペースで買い入れを行っているが、この点についても、全く方針の変更はないし、変えるつもりもない。』と回答しております。


・しかしまぁ喧嘩腰ですこと

この場で飛び出した「相対性緩和論」に関連して量的緩和政策の枠組み問題になおも延々と質疑が続くのですが、量と時間の関係上本日は前半部分最後の質疑応答を引用しまして、続きは明日ということで。

『(問)緩和か引き締めかの関係とは別として、現在の政策との対比において、ある日、当座預金残高が例えば29兆5千億円になった時、これは現行の政策の範囲内なのか、それとも範囲外なのか。』

『(答)近い将来見通しうる限り、我々はオペレーションを通じて30〜35兆円程度の範囲内に収めていけるという判断に立っているわけであるから、収まらないかもしれないということを前提とした議論に対してはお答えのしようがない。』

何というか実に結構な雰囲気ですなぁ(棒読み)。


ちなみに、このときの質疑応答の中でライブドアの話を質問している人がいた(多分同一人物が2回質問したのではないかと思うのですが)のですが、先日の野球話の時は金融政策で大して話をする事も無かったからまぁ兎も角として、金融政策で色々と突っ込みどころのある中で何やってるんだという印象でございますわな。某掲示板用語で「空気嫁」って奴ですわな。まぁそういう質問をする人間は可及的速やかに反省していただきたいものです。つーか答えようねぇだろうよ。。。。








2005/02/18

お題「金融政策決定会合あれこれ」

目の前でやっている某経済ニュース番組の報道によりますと、どこぞの巨大ソフトウェア企業さま@米国が最近アンチウィルス業界への進出(というか侵略)を狙って企業買収して安値攻勢を掛けたりしているそうですな。いやあんさんの所がアンチウィルス業界へ進出って悪い冗談というかマッチ(自主規制)。

文章書きながら某ニュース番組が続いているのですが、量的緩和政策に関してどこかの誰かさんが解説しているんですけど、その内容が何というかもう聞くに耐えない説明でして、可及的速やかに黙っていただきたいとか書いていたらやっとCMになってくれました。あの会社はタレント経済解説者プロダクションとして機能しとるとですか?・・・血圧が朝から上昇したのでチャンネルを東京MXテレビに変更。

んな話はともかくとして金融政策決定会合話。


○まずは金融経済月報

金融経済月報の基本的見解が出ました。今回の月報の特徴(と言えるのかどうか)は「景気に関してではなく物価に関しての見通しがやや弱気方向になっている」という所でしょうか。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0502.htm

毎度毎度お馴染みの『わが国の景気は』から始まる景気の現状判断と先行き見通しなのですが、1月に発表(1月19日ですな)された金融経済月報の基本的見解とまるっきり同じという素晴らしい内容です。景気の現状認識部分と先行き見通し部分って大体の場合4つの部分に分けてかいてあるのですが、物の見事に一言半句違いなしであります。

で、物価に関して何気に先行き見通しを弱含みさせている感じで、1月分と比較しながら読んでみるとこんな感じになりますわな。

・国内企業物価の現状

(2月)『国内企業物価は、昨年末にかけての原油価格の反落などから、足もと弱含んでいる。』
(1月)『国内企業物価は、原油高の一服等により、上昇テンポが幾分緩やかになっている。』

・国内企業物価の先行き見通し

(2月)『国内企業物価は、内外の商品市況次第であるが、当面、弱含みないし横ばいで推移する可能性が高い。』
(1月)『国内企業物価は、商品市況の騰勢一服を受けて、目先、頭打ちとなる可能性が高い。』

「頭打ち」→「弱含みないし横ばい」でございますよおほほのほ。国内企業物価の上昇傾向が川下でありますところの消費者物価に波及してきて珍重珍重という流れが見えてくる前にこの有様になっておりまして、まぁ何と申しますか益々出口が見えない量的緩和政策ですなぁというお話ですわな、こりゃ。

・消費者物価の先行き見通し(現状判断は変化無)

(2月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、公共料金引き下げの影響などもあって、小幅のマイナスで推移すると予想される。』
(1月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、小幅のマイナスで推移すると予想される。』

先日の須田審議委員の講演で述べられていた「広義公共サービス価格」について触れてまたまた消費者物価下落弱含みの特殊要因(?)を並べておりますが、まぁしかし肝心の川上が弱含みになっていてさてどうなるのよという気はしますな。


物価見通しに関しては判断が後退している訳ですから、まぁまたまた出口はどっちだってなもんでしょうなぁ。



○全員一致ですかそうですか

現状の金融政策の維持を「全員一致」で決定したそうなんですが、んじゃあてめぇら当座預金残高目標維持問題についてどういう議論をしていたんだと小一時間問い詰めたいところであります。てめぇらじゃなくて須田審議委員およびあと一人(当座預金残高目標下限割れ問題に関して議論していた人)についてですが。

「今回もまたまた単に議論しただけ」って事なんでしょうが、それならまぁわざわざ先日の講演で当座預金残高目標維持問題に関して下限割れ容認のような話をして世間様を騒がせたですかという話になる訳ですな。

ま、実際問題としては須田さんの講演で騒いでいた訳ではなくて、「当座預金残高目標の下限割れ容認ネタで相場をきゃあきゃあ」というのに使われてしまったに過ぎないのですが、まぁ本件はそういう神経質なネタでもある訳ですから、あまり本気度が低いときに論じるのはいかがなものかと言う教訓にしていただきたいものです。まぁあちこちから不規則発言が飛び出すのが政策委員会クオリティでもあるのですけど。



○何か喧嘩腰じゃあありませんか

金融政策決定会合も終わり、金融経済月報も出たところで日銀総裁の定例記者会見になるのですが、今回の記者会見は何だか情報ベンダーに総裁発言として出てくるフラッシュが妙に喧嘩腰に見えるわけですな。内容に関しては日銀Webに今日アップされる会見要旨を待ちたいのですが、例えばロイター日本語版でのニュースフラッシュを見ますとこんな感じ。

『当面30−35兆円の当預目標が維持不可能になるとは全く予見できない』
『長期国債買入枠、全く変えるつもりはない』
『量的緩和政策の出口を模索する時期とは全く思わない』
『ボリュームに政策ターゲット置くのが緩和政策の枠組み』

フラッシュはこれ以外にも一杯あったのですが、まぁこの「全く」が3度も出て来たのには「もしかして福井総裁怒ってませんですか?」というざわめきが起きるというものでして(^^)、先日須田審議委員の講演後に行われた記者会見でも何か痛烈な質問をしている人がいましたが、まぁ今回も何だかんだと福井総裁様の逆鱗に触れるような急降下爆撃的質問が行われたのでしょうかね〜って感じであります。

福井総裁になってからの記者会見ってまぁ平和だったのは最初だけで、何か途中から会見で火だるまになっている事が多く、その後は「この人は何でもありだから突っ込んでもしょうがない」という諦観モードが流れていたという経緯があるのですが、ここへ来てまた火だるま合戦となっていただきますと観客としては大変に楽しいものを感じますので今後とも是非宜しく。

しかし何ですな。また上記のように自分の手足をガチガチに縛る発言をしておる訳で、まぁ福井総裁おちつけ(某掲示板用語では「もちつけ」)と言ったところであります。

自分の手足を縛りながらも、緩和政策の効果について「景気が回復基調にある中では量的緩和の効果は高まるので、同じ量を出していても効果がより高い事になる」というお馴染みの判ったような判らんような理屈についても言及しているようですので、まぁ必ずしも落ち着いていない訳ではないようでございますがね。


ではでは。








2005/02/17

お題「オペに意図?/モルヒネ経済からの脱却ねぇ・・・」

○これで2度目ですが・・・・

昨日は「まぁあるでしょう」と思われていた輪番オペが実施されませんでした。となると今日か明日に実施(多分明日)という事になるんでしょうが、今回は金融政策決定会合の期間中な上に、当座預金残高目標下限割れ問題がどうのこうのという話が盛り上がりモードになっている最中でありますので昨日の輪番見送りは「あれれ?」という感じでした。

債券相場では「福井総裁になってから輪番の増額を行っていない」という点を重く見ている人が多いんで、昨日の輪番見送りで「すわ輪番増額か」という騒ぎにはならなかったような感じでした(ただ、債券先物の当日安値が「輪番オペ無し」が明らかになった直後の10時12分で、その後先物が上昇してますんで、もしかしてアオリイカはいたのかもしれませんが)が、今までひたすら淡々と機械的にオペを打っていた日銀の調節がちょっと変化している兆しなのかもしれないと考えるあたくしは考えすぎですかそうですか。


輪番問題では昨年12月にも同じようなことがありまして、この時は12月15日(水)に輪番が実施されずで、金融政策決定会合が16〜17の日程。結局16日も17日も輪番が実施されずで、日程的に17日に輪番やらねぇと月末までの日程がタイトになるから(というのと、基本的に週に1回実施するという慣例もあるので)輪番やるでしょってコンセンサスだったので債券市場ビックリの図。おまけにそのとき実施したオペが短国売却。「輪番見送り」→「絶対ありえない筈なんだけど決定会合で輪番減額されたらシャレにならん」という不安がよぎる中、タイミング良く債券先物を売り叩く人がいたので債券先物が30銭くらい売りたたきの図となった訳です。

12月に引き続き今回も金融政策決定会合を前に「日程的にはやるでしょ」ってタイミングで輪番オペを見送って下さいましたので、まぁこっちとしては「金融政策決定会合の週は輪番オペのタイミングに注意しますか」って事になる訳ですが、このタイミングのずらし方は意図があるのか何も考えてなくて単に資金需給だけみている(3000億くらいツイストで吸収打てば何とでもなると思うんですが・・・)だけなのか良く判りませんが、まぁ今後もちょっと気にはしておく必要があるのかもしれませんね。



○西村清彦先生が次期審議委員に起用されるとの事ですが

GDPの発表があり、相場の方は相変わらずイールドカーブが良く動くという展開で西村さんの(というか東大のWebというか)派手派手Webの中をあまり読んでいる余裕は無かったのですが、さすがに東短リサーチの加藤さんが早速西村さんの発言、主張を整理したレポートを出してましたんで、まぁその辺を参考にしながら。

西村さんの近著は「日本経済・見えざる構造転換」って本だそうで(市場関係者が慌てて買いに走るだろうなぁと思う訳ですが^^)、先生のWebには著書の目次が紹介されておりました。で、そこを見ますと「モルヒネ経済からの脱却」というお話をしているようでして、それがど〜ゆ〜趣旨かと言いますと加藤さんのまとめレポートによれば「痛みを和らげるためにモルヒネを打ち、それで問題を先送りしてきたことが、痛みの原因の解明とその除去を遅らせた」ってことらしいですな(週末に真面目に著書読みますが)。

まぁそりゃそうなんでしょうけど、じゃあ今の経済状況でモルヒネ投与とやらを止めていきなり退院させたらどうなるのよっていう疑問はあるんですが。現在の景気回復だってそもそもの発端はそれまでの基準だったら(後から発表された不良債権新規償却を見れば)債務超過認定コースだったと思われるりそな銀行への公的資金絶賛大投入という政策転換と、産業再生機構(しかもここに不振企業の債権をぶちこむと何故か残りの債権が正常先債権になるという素晴らしい仕掛けもありますし)の大活躍やらペイオフ解禁の骨抜き大作戦やらと、色々な方法で財政出動しているんですからねぇ。

まあ良くも悪くも柔軟なお方のようですので、実際に就任されてからどういうスタンスを出してくるのかを見ないと良く判らんって所もあるのですが、いきなりモルヒネ投与解除はどうかと思いますけどねぇ(そりゃ投与しないで済めばそれに越したことは無いですが)。


以下与太話(これまでも与太話ですかそうですか)。

○別の意味で楽しめたGDP

昨日発表になったGDPは相場的には「あっそう」で終了なまぁ予想通りの数字って奴なんですが、「GDP反響」ということで情報ベンダーから出てくる色々な解釈が人によって全然違うのが実に楽しめました。正直、皆さん自分の主張に都合の良い解釈をしておりまして面白かったっつー事ですんで、要するにまぁ強弱定まらずという内容だったって話なんでしょうな。自分の相場見通しにとって都合の悪い数字が出てくるといきなり「過去の数字」扱いするのはいかがなものかと思いますが(^^)。


○議会証言と国会答弁

毎度毎度思うのですが、ちゃんと発表テキストがあって証言のあとにすかさずFRBのWebで内容の確認ができる米国と比較して年がら年中予算委員会だの財務金融委員会だのに引っ張りだされて同じような話しばかりさせられる(一昨日も福井総裁は財務金融委員会だか何だかに引っ張り出されてましたが、そもそも金融政策決定会合の2日前ってブラックアウト期間じゃなかったでしたっけ?)日銀総裁には誠に同情するものであります(あたくしに同情されたくはないでしょうが^^)。

で、サービス精神豊富な福井総裁様におかれましては、金利が下がっているときに「金利に蓋をする」だの金利が上がっているときに「景気回復に伴う金利上昇は自然」だの市場に燃料を投下するのがお得意(白眉は副総裁時代の「ジャストタイミング」発言でしたが)なので、プロップトレーディングやってる分には実に素晴らしいお方なのですが、まぁ何と申しますかやっぱちょっと勘弁して欲しいと相変わらず思うわけです。今日のグリーンスパン議長の債券相場火消し発言(実は内容見てませんからテレビ報道の受け売りですが)と比較するとどうもねぇって感じであります。


本日は寝坊に付きこの辺で。









2005/02/16

お題「相場後講釈その他」

○入札正常化への流れ・・・・なのかな?

まずは相場後講釈。

あたくしがこう書くと世の中逆に行くという誠に遺憾なことが多いのですが、やはり書く事は書くというわけで(謎)。

昨日の30年国債入札。前場には20年や30年ゾーンではなくて先物近辺の債券(たぶん6年〜8年あたり)に買いを入れる人がいたようで相場水準は先物主導で上昇するも20年だの30年だのの上げはイマイチって感じ(しかもふざけた事に30年vs20年では30年の方が堅調という状況)でした。で、前場の引け時点での30年新発債の適正水準は2.42%近辺という感じになった訳ですが、入札のふたをあけてみたら何とビックリの2.46%とまるでダメダメの結果になりました。

まぁ入札自体がイールドダッチ方式(複利利回りで入札を行い、最高落札利回り(というのは最低価格に相当する訳だが)で全額発行となる方式。今は全然やってない株式の入札方式みたいなもんですな。)で行われるので、落札した皆さん全員2.46%の利回りで購入できているのですが、「何ぼ何でも2.45%より安くはならんでしょ(つーか事前の予想は2.42か43)」って雰囲気だったので思わぬ在庫が発生の巻と相成りまして、ヘッジ売り攻撃となってしまいました。

とはもうしましても、先物は7年金利連動で30年もののヘッジにはあまりならん訳でして、結局それなりに流動性のある20年だの10年だののカレント物を叩くしかない(そのものズバリは入札後2.48%が高値でした)ので、先物は大して下がらない(先物が安値をマークしたのは落札結果発表直後の13時4分)のにイールドカーブだけまたもスティープするという頭の痛い相場になってしまいました。


で、まぁ今月になってから実施された入札なんですが、今までのアフォのような高値入札から一転して精々前場の引け水準程度での落札という誠に美しいというか本来そうでなきゃ変でしょっていう入札となっております。つらつら理由を考えてますと・・・・・

1.2月発行の中長期国債(5年と10年と20年)は12月償還債の3発目の発行になるので、利回り水準に新鮮味があんまり無くてポートフォリオ上でも既にそれなりに購入しているので、燃え上がるようなニーズ(笑)に乏しい。(ってのはだいぶ前にドラめもんで言ってるのですが、後になってまた言い出すところが実にアフォ)

2.毎度毎度のように割高入札を連発していたので、さすがに今まで無茶していた人たちの予算(まぁ世の中シェア確保するとそれなりに良い事が起こるという発想は相変わらずございますので、入札でこれくらいはマーケットシェアを確保するのためのコストとしてまぁ仕方ないでしょっていう予算があるっつーのが暗黙の了解だったりする訳で、つーかその辺のコスト計算も無くてただただひたすら高値入札をするのは身を切ったギャグとしか・・・・)がそろそろ底をついてきた。よって無理して入札する体力が不足気味。

3.目標となる入札シェアも確保したのでそんなに無理する事は無いでしょって意識。

4.1.で書いた理由の裏返しで、3月発行の中長期国債が3月償還債になるのでこちらは毎度毎度ニーズがあるのが(余程相場がアホタレさん状態でない限り)ほぼ自明という商品。よって入札で頑張らなければいけない3月に向けて今回は体力を温存しておく必要があるでしょっていう発想(なんかあるのかなぁ?)。

5.そもそも景気回復局面(単に日経平均が1万5千円の節目を上回っただけですが)なのに国債発行しすぎなんじゃネーノかという疑問。まぁこの程度でそんなにナーバスになる必要もないでしょうが、実を言えば最近の入札は1回の発行額がその年限の主要投資家がごっそり持っていくようなレベルになっていない債券(具体的には5年と10年ですが)に関しては既に割高っぷりも沈静化の傾向にありますわな。


まぁマーケットの片隅でくだを巻いているあたくしではなくて、何でそんな割高レベルであなたたちは落札しますか(今月は別^^)という人たちに聞いた方が早いのかもしれませんが(・・・・また読者が減りそうな事を言ってしまった)、まぁこれらの要因が複合されているのでしょうな。

何にせよ入札が正常化するのは大変結構なことでありまして、昨日も入札日の前場に買いを入れる(別の年限ですが)という嫌がらせのような事をしていた人は物の見事に成敗されてしまった訳でして、そーゆー不届きな動きも今後減ってくださりますと業者としても無理せずに入札に参加する事ができて、ひいては長期的に見た国債の安定消化に資するものではないかなどと綺麗事を申しあげておきましょう。

・・・・と書くと来週の20年国債入札がまた割高入札になったりして。



あ、そうそう、昨日はどこぞの情報ベンダーが落札結果発表時間に「最高落札利回り2.400%」などというフラッシュを打ってくれたために一瞬騙された人もいたかと存じます。つーかあたくしも恥ずかしながら「入札強いのに何で売るですか?」と思ったクチなんですが。勿論財務省のWebを見ればちゃんと発表されるのですが(昔はそんな便利なものが無かったから情報ベンダーしか頼るものありませんでしたな。隔世の感とはこの事)、13時ちょうどは財務省Webへのアクセスが集中して中々閲覧できないという問題もありまして、つい情報ベンダーを頼ったのは不覚でしたな。

ま、今回のせいで益々財務省のWebへのアクセスが13時になると集中するでしょうな。来週の火曜日13時は霞ヶ関関連のWeb閲覧は鬼門になるかと存じます(^^)。

#そー言えば、公営賭博(賭博は現在民営化されておりませんので念の為^^)の結果報道では「正式な結果は主催者発表のものでご確認ください」ってヘッジクローズが常に入っておりますな、あっはっは。



○金融政策決定会合が実施される訳ですが

本日と明日の決定会合に関連した東短リサーチの加藤出さんのレポートを拝読する機会がありましたので「ほほう」と思いながら読んでおりましたが、「当座預金残高のテクニカルな下限割れ問題は短期金融市場では金融政策の変更ではないというコンセンサスになっているのに、他の市場および政府などでは反対の意見が多いですなぁ」というようなお話しがございまして、偶々(というか時期的に重なるのは当然ですが)昨日愚意見を申しあげたあたくしとしては中々参考になりました。

まぁ当座預金残高目標をせっせとあげてしまったら気が付けばやり過ぎモードになってしまった(詳しく勉強してないのでちとアレなのですが、政府部門の預金がちと増えすぎで民間の金を吸い上げてしまっている問題があるようなんで、日銀だけが悪いって事でも無い様なんですが)分のツケをどこに回すかって話しになってしまっている感が強い当座預金残高問題でございまして、最早トランプのババ抜き状態になっているっちゅうところでしょう。昨日も申しあげましたが(^^)。

まぁ目先30兆円の当座預金残高を維持するのは可能なようですので、今回の会合では当座預金残高目標問題が議事にあがるのは間違いないですが、とりあえず何も無しという結論に落ち着くのではないでしょうか。少なくとも岩田副総裁が反対しそうですしね。で、「公開される議事要旨に注目しましょう」っていうのは既に加藤出さんのレポートで書かれていたので受け売りになっちゃいますが、ど〜ゆ〜議論になったのかは注目って事なんでしょうな。明日の会議終了後の記者会見でも質問あるかもしれませんが(明確な答えはしてくれないでしょうけどね)。


まぁそういうことで。




2005/02/15

お題「当座預金残高目標減額問題に関するあたくしの愚意見」

まー相変わらずしぶとく当座預金残高目標の維持が大変になっているだろうって話しからお題の議論が今週の金融政策決定会合で出るんではないかとかいう話題が盛り上がっているようです。

まぁ今回の金融政策決定会合で実施されなければ次回以降も同じ話題で盛り上がる事が出来ますので、ど〜せなら今回いきなり当座預金残高のテクニカル的な減額を容認するような決定がなされない法がネタとしては美味しいって事なんでしょうな。

まぁ水野さんのインタビューやら須田さんの講演やらとここの所このネタが話題の材料となってまして、色々と受け売りをしておりますが、んじゃぁお前の意見はどうよ?って事でここのところ意見交換をしながら何となく纏まってきたあたくしの愚意見をば。


○政策の筋論としては当座預金残高目標を守るべきである

まず、一番有力視されている「なお書き(またはそれに類するもの)の追加によって当座預金残高目標の下限を一時的に割り込む事を許容する」というやり方ですが、これはやはりどうかと思う訳です。

当座預金残高をターゲットにして金融政策を行っているという手前、この目標レンジを更に拡大する(当初は「○兆円前後」だったのが「○兆円前後だが流動性に問題が生じたような場合は、その必要に応じてより多く供給する」になってその後の改定を経て「30兆円〜35兆円」になった訳ですが)というのは「当座預金残高目標という量」の意味を更に希薄にさせるという事に他ならない訳です。

「量」をターゲットにして金融政策を行っているという原則がある以上はそのターゲット額をなし崩し的に曖昧にするという選択は、政策の筋が通っていませんわな。もちろん「今までの量的緩和政策における「量」は実は(ある一定以上を超えた段階で)意味が無く、幾ら増やしても同じだったんですよゴメンナサイ」と日銀が認めればそれで勘弁される訳ですが、猛批判にさらされる事が火を見るより明らか。


じゃぁ思い切って当座預金残高目標を引き下げるのはどうよって事になりますが、これは須田さんや水野さんも言及しているように、今までの当座預金残高目標引き上げを「金融緩和」らしく位置づけ(正確に言えば「量的緩和政策の強化」なので微妙に違うという事になるのですが、そういう言葉尻を使って言い逃れするのは詭弁でしょうな)ておりましたので、当座預金残高目標引き下げ=金融引き締めって事になる訳ですので、これまた同じ理由で、今までの量的緩和政策における「量」の問題に関しての棚卸が必要になりますわな。


と、言う事で、政策の筋論としては「当座預金残高目標を維持するように努力すべきである」というのがあたくしの結論ですし、政策の筋が通らないことをしてしまうのは中央銀行として如何なものかとも思うわけであります。



○残高維持のためには・・・・

で、あたくしの結論は「当座預金残高目標を維持すべき」という事になるのですが、じゃあどうするのよ?って問題になる訳です。


まず考えられるのは「手形オペなどの期間を長くするなどのオペ実施方法の工夫によって資金供給を行う」というもの。折角手形オペの期間を最大1年までにしているのに、現状ではそんなに長い期間のオペを実施しておりません。とりあえず長い期間のオペを実施する事によって資金供給を行うというのが本筋というかややこしい政策措置も不要で現場の裁量で出来ることでしょう。

この場合のデメリットは「長めの短期金利のイールドがゼロに張り付いてしまう」ということでして、須田審議委員などがよく言う「量的緩和政策による市場機能の阻害」って事になるわけです。



次に考えられるのは「中長期国債買入(要するに輪番オペ)」の増額。もちろん福井総裁になってからは輪番増額を行っていないという事もあり、福井総裁としては政策判断として実施したくないってことなんでしょうけれども。そもそも他のオペは「短期金融市場の資金繁閑を均す」ために行っており、中長期国債の買入は「ハイパワードマネー(成長通貨)の供給」という区別がされているのではありますが、じゃぁ短期国債の買入はどうなっているのかと言いますとこれは「資金調節」になっておりまして、短期国債の最大期間が1年ものになっており、中長期国債の買入に関しては日銀の保有国債残高を見ればお分かりのように「残存1年半程度の2年もの中期国債」が毎月の買入実績の大体半分くらいを占めている訳でございます。

そう考えますと、短期国債の買入と中長期国債の買入を方や単なる金融調節で、もう一方がハイパワードマネーの供給だというのはどうなのよって議論になってくるわけでございまして(6ヶ月と1年半の違いにどんな意味があるのかという話しですな)、そうなりますと中長期国債の買入の増額に関して排除するのは如何なものかという議論になる訳です。

この場合のデメリットその1は昨日のドラめもんでも申しあげた通りでありまして、量的緩和政策からの本格的な出口が出てきた場合に、今まで資金供給していた分の吸収のために日銀保有の中長期国債の売却を行う必要があるという話。結果として中長期金利の乱高下を招く事になりますし、それ以前の問題として輪番の増額をした時点で中長期金利の低下を促す可能性(増額の仕方によりますが)がありますわな。デメリットその2はマーケットインパクトの問題でして、短期金融市場で必要とされるような資金額全部を輪番増額で対応するとなりますと、今まで1兆2千億円/月である輪番オペをいきなり1兆円引き上げるとかいう世界になってしまいますが、それは各回のオペレーションでのマーケットインパクトがでかくなりすぎます。

その1、その2でもありますように、資金供給不足分を輪番増額で対応するとなりますと、輪番対象になっている中長期国債の市場を歪める(=市場機能の低下)事になる訳ですな。


で、まぁ書いているうちにふと気が付いたのですが、それなら例えば2年もの中期国債だけを対象にした中期国債買入オペを新設して、輪番増額の影響を2年までで遮断するというせこい技も考えられるのですが、そうなってきますと今度は「輪番はハイパワードマネーの供給」って話がどうなのよとか、何で2年(じゃなくてもいいけど)で分けるのよとかいう話になってくるのですが、単純に輪番をまともに増額するよりはマシかもしれません。


その他の方法としては、政府預金とか特別会計(外為とか)の残高がちと多すぎなのでこれをどうにかするとか、ブンデスバンクなどが実施していた外国為替直先スワップ取引の活用などがあるようなのですが、この辺に関しては受け売りの世界になりして、正直まだ勉強途上なのでとりあえず省略。

まぁ色々とやろうと思えばまだまだ当座預金残高目標維持は出来るということのようですが。


○要は政策のトレードオフでしょ

とまぁつらつら書き並べましたが、まぁいずれにせよやや無理気味に資金供給を行うというのはどこかに歪みを生じさせる(大体からして、日々の資金繁閑を均すという行動が「公開市場操作」という市場介入なんですから仕方ないですわな)のでありまして、当座預金残高目標の維持のために何か工夫をするということになりますと、どこかで市場に歪みが発生してしまうのは致し方ない事でございます。あとはどこを取る(犠牲にする)かという話しで、それは政策判断という事になるのではないでしょうか。

勿論、政策の筋論よりも市場機能の方が大事だというのであればそれもまた政策判断なのですが、まぁ政策の筋は通すべきではないでしょうかというのがあたくしの愚意見な訳です。

少々手厳しい事を申し上げますが、「テクニカル的には何の問題もないから当座預金残高目標の下限の事実上の引き下げもよいのではないか」ってのは政策の筋論というものを軽視したポジショントークに類するものではないかと思いますけどね。当座預金残高目標を維持しようとすれば手っ取り早く犠牲(=市場に益々介入される)になるのは短期金融市場でありまして、当座預金残高目標引き下げというか「なお書き」によるレンジ割り込み容認論が主に短期金融市場から出ている訳ですし・・・・・って短期市場の読者様が不愉快に思われそうなことを書いてしまったあたくし。また読者を減らすような暴言をしてしまった。

ではでは。
2005/02/21

お題「またまたオペで意図出し(か?)/記者会見大戦争?」

○唐突に9ヶ月もの手形オペ

昨日の短期金融市場ですが、午後の定例オペのお時間に実施されたのが2月22日〜11月8日(期間259日)の全店手形買入でした。この259日というのは一昨年の夏に金融市場が早期の量的緩和解除モードになった時に市場沈静化のため(とは日銀は言ってませんが)に行った期間260日並みの長さでして、まぁ「やたらと期間の長いオペ」という事であります。

金曜日にご紹介して、この後にも会見要旨をご紹介する木曜日の金融市場決定会合後の日銀総裁記者会見で「当座預金残高目標30兆円維持問題」に関してやたらと強気姿勢で「懸念全く無し」という福井総裁発言が出た翌日に「資金供給オペの期間延ばし攻撃」を行うというのは、もうそりゃー意図を忖度するなと言っても勝手に意図を忖度したくなるものですわな。

で、まぁこの意図は直ぐに判ろうという物でして(^^)、総裁様の鶴の一声を受けまして「当座預金残高目標維持への資金供給に工夫してみました〜♪」って話としか思えませんな。金融政策決定会合の期間中になると輪番オペの日程を微妙にずらしてみたり、総裁発言に呼応するかのように久しぶりに「長期間のオペ」というある意味伝家の宝刀を抜いてみたりと中々最近の調節は「意図がございますかそれは」という動きが徐々に増加中でありまして、昔の「日々の金融調節で意図を出す」という職人芸の世界が復活しつつある気がしてまぁそれはそれで楽しいですな。

で、今回の「オペの出すシグナル」ですけど、「当座預金残高目標維持は無問題でっせ〜」というシグナルと共に出されていると勝手に推測するのは、「資金供給問題で無理をするときには短期金融市場に皺寄せが行きますんでそこんとこヨロシク」というものでしょう。先日来申しあげておりますように、当座預金残高目標維持でやや無理をしないといかんという状況では、結局どこかにある程度無理をかけないといけない訳ですが、案の定現在手持ちの道具で簡単にできる措置を行うという作戦にでることになったようですな。短期金融市場の皆様ご愁傷さまです。

まぁ後でもご紹介しますが、目標の引き下げもしないし、輪番増額もしないと総裁が言い切っちゃってますからまぁ仕方ないですわな。


○大変に険悪な総裁記者会見

という訳で総裁記者会見。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0502c.htm

当座預金残高目標維持問題に関して突っ込んだ質疑、というよりはなんというか意地の悪い突っ込みとそれにムッとする総裁の図って感じでありますわな。今回は55分間と会見時間が長く、要旨の量も多く(紙に出すと10ページ)なってます。


・当座預金残高維持に自信

最初のお約束の質問。

『(問)本日の金融政策決定会合の結果および金融経済月報を踏まえた景気認識を伺いたい。また、最近の一部の審議委員の発言にもあるが、当座預金残高目標の下限の柔軟化というか弾力化といった議論についての総裁の所見を伺いたい。』

『(結果と景気認識は割愛)オペレーションとの関連についてもお尋ねがあったが、金融システム不安が後退しているというか、全般的に市場関係者の先行きに対する不透明感が後退していくなかで、金融機関の流動性需要は徐々に減少し始めている。別の言い方をすれば、金融市場において資金余剰感が強まっているということであり、ご指摘の通り、こうしたことを背景にして、短期の資金供給オペレーションの場面において、札割れと言われる現象がしばしば発生している。しかし、重要なことは、私どもの当座預金残高目標はしっかりと維持できているということである。(以下3月になっても残高目標維持は問題ないという話だが割愛)』


・当座預金残高目標引き下げを否定

ちょっと後に何だか意地の悪い質問。

『(問)1点目は、当座預金残高目標の維持に関して30〜35兆円程度ということであるが、この「程度」について伺いたい。下限についてであるが、ある日着地点が、例えば28兆円台や29兆円台になったとしても、それは何ら問題がなく、ありうるべきことだと理解して良いのか。2点目は、「量的金融緩和の枠組みは維持する」という表現があるが、この枠組みというのは口語で言えば「精神」や「考え」あるいは「方針」だと思うが、これは量――つまり当座預金残高――と枠組みというものが同一のものなのか。例えば、20兆円や25兆円でも、どのようにターゲットを置いても良いが、それも量的金融緩和であると言うことが可能であると思う。量と枠組みが同一のものであるのかどうか、伺いたい。』

残高目標割れをテクニカルに容認する気があるのかというのと、目標額の引き下げをやるきがあるのかという質問を意地の悪い言い方をして行っていると読めますが、これに対して総裁はこういう回答。

『(答)1点目のご質問について必ずしも明確にご趣旨がわからないが、30〜35兆円程度を目標に、現在、流動性の供給活動を毎日行なっているということである。先般も何度か皆様方からご確認があって、30〜35兆円程度と言ってもその中で特にどの辺りを中心点として考えながら調節するのかということも時々聞かれているが、要するに30〜35兆円程度と言った時には33兆円ぐらいを中心点にしながら、日々、流動性を供給していく。これがこのターゲットの趣旨である。「上限をはみ出した場合」、「下限をはみ出した場合」というような定義はない。法律の定義ではなく、我々のオペレーション上のターゲットであるため、33兆円ぐらいというのは中心として念頭にあるわけで、しかもその上下に30兆円ないし35兆円という幅を持った目標を置いているということである。(以下似たような説明が続く)』

『それから量的緩和の枠組みについて、これは精神規定かとおっしゃったが、それは明らかに違う。先程申し上げた通り、金利水準というものをターゲットにしないで、流動性の量――量というのも33兆円というようにピンポイントにすることは難しいから幅を置いているわけであるが――に政策ターゲットを置いている。これが現在の緩和政策の枠組みである。あらためて申し上げれば、所要準備額をはるかに上回る、市場ニーズの上限あるいはそれ以上の流動性を供給し続ける、これが現在の量的緩和の枠組みとご理解頂きたいと思う。』

ということで、見事に現在の政策運営の「そもそも論」について発言しましたんで、当座預金残高目標の引き下げについてもそう簡単に行えない状況になってしまいましたな〜というのが感想。


・相対性緩和論??

サービスフレーズの好きな総裁(きっと物凄く頭が良いんでしょうな^^)が新たに「相対性理論」を持ち出してきました(^^)。

『(問)先程、30〜35兆円、中心33兆円という大きなボリュームに政策の目標を置いているのが今の枠組みだとおっしゃったが、たまたま、下回った時あるいは政策判断で引き下げた時のいずれにしても、30〜35兆円という目標を資金供給額が下回った時は、それは金融引き締めであると受け止めて良いのか。また、逆に30〜35兆円を維持できないと判断した時に、金融引き締めでないとすると長期国債買入れを増額してまでこれを維持するのかどうかを伺いたい。』

『(答)私どもはCPIの前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで基本的に量的緩和の枠組みを維持しながら超緩和を続けるということを約束しているので、30〜35兆円という具体的な数字の評価と直接絡んでいないと思う。先程申し上げた通り、所要準備額を大幅に上回る、市場として吸収しうるぎりぎりのところを狙いながら緩和を維持しているということが枠組みだと申し上げたので、びた一文狂ったらすぐ引き締めかという法律的な定義のご質問であれば、私は答えようがないとしか言いようがないと思う。』

ここの部分は先ほどの質問に相通じる状況ですが、この後に出てくるのが久々のサービスフレーズでございますな。

『それが証拠にこれまでも度々この席で申し上げている通り、仮に35兆円なら35兆円あるいは中心33兆円ということをコンスタントに供給し続けている場合でも、経済の回復度合いが高まれば実態的な緩和度合いがさらに強まるということを申し上げた。このように一種の相対性原理のように、経済のコンディションと流動性供給の状況との相対関係で緩和度合いというものを判断していかなければならない。量的緩和の難しさはそこにある。従って、数字が1億円あるいは1千億円狂ったらすぐ緩和か、引き締めかというご質問には答えようがない。その時の経済状況と合わせて我々はきちんと判断していくし、そのことに対する市場の反応は正確に出るであろうと考えている。』

何だか総裁が従来から言っている「経済が回復基調にある中では、経済後退時期と比較して量的緩和の効果が高まる」というお話をするのにとうとう相対性原理という言葉まで持ち出しておりますわな。久々の迷(名?)言登場です。

しかし何というか相対性原理みたいな緩和度合いがどうのこうのと言ってるのなら、景気判断によってコロコロと当座預金残高目標を上げたり下げたりするのが筋って話になりかねないし、逆に量的緩和解除が出来るような状況になっても、一気に量を減らすというのは強烈な引き締めって意味になってしまうからそれもやっぱりややこしいことにならんか(量的緩和解除しても翌日物誘導金利が0.1%とかだったらそれもまた金融政策としては緩和状況であると思うんですが)と思う次第。

まぁ元々理屈を超越したところにあるのが現行の金融政策(一応屁理屈であっても理屈は理屈ですが)なのですが、何かまた屁理屈に謎理論を上塗りしてしまって良いのでしょうか??って感じです。

ちなみに、この時には答えてませんが、後ほどの別の質問に対して長期国債の買い入れに関して『当座預金残高目標は維持できると思っているし、現在、長期国債の買入れについては月々1兆2千億円ペースで買い入れを行っているが、この点についても、全く方針の変更はないし、変えるつもりもない。』と回答しております。


・しかしまぁ喧嘩腰ですこと

この場で飛び出した「相対性緩和論」に関連して量的緩和政策の枠組み問題になおも延々と質疑が続くのですが、量と時間の関係上本日は前半部分最後の質疑応答を引用しまして、続きは明日ということで。

『(問)緩和か引き締めかの関係とは別として、現在の政策との対比において、ある日、当座預金残高が例えば29兆5千億円になった時、これは現行の政策の範囲内なのか、それとも範囲外なのか。』

『(答)近い将来見通しうる限り、我々はオペレーションを通じて30〜35兆円程度の範囲内に収めていけるという判断に立っているわけであるから、収まらないかもしれないということを前提とした議論に対してはお答えのしようがない。』

何というか実に結構な雰囲気ですなぁ(棒読み)。


ちなみに、このときの質疑応答の中でライブドアの話を質問している人がいた(多分同一人物が2回質問したのではないかと思うのですが)のですが、先日の野球話の時は金融政策で大して話をする事も無かったからまぁ兎も角として、金融政策で色々と突っ込みどころのある中で何やってるんだという印象でございますわな。某掲示板用語で「空気嫁」って奴ですわな。まぁそういう質問をする人間は可及的速やかに反省していただきたいものです。つーか答えようねぇだろうよ。。。。








2005/02/18

お題「金融政策決定会合あれこれ」

目の前でやっている某経済ニュース番組の報道によりますと、どこぞの巨大ソフトウェア企業さま@米国が最近アンチウィルス業界への進出(というか侵略)を狙って企業買収して安値攻勢を掛けたりしているそうですな。いやあんさんの所がアンチウィルス業界へ進出って悪い冗談というかマッチ(自主規制)。

文章書きながら某ニュース番組が続いているのですが、量的緩和政策に関してどこかの誰かさんが解説しているんですけど、その内容が何というかもう聞くに耐えない説明でして、可及的速やかに黙っていただきたいとか書いていたらやっとCMになってくれました。あの会社はタレント経済解説者プロダクションとして機能しとるとですか?・・・血圧が朝から上昇したのでチャンネルを東京MXテレビに変更。

んな話はともかくとして金融政策決定会合話。


○まずは金融経済月報

金融経済月報の基本的見解が出ました。今回の月報の特徴(と言えるのかどうか)は「景気に関してではなく物価に関しての見通しがやや弱気方向になっている」という所でしょうか。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0502.htm

毎度毎度お馴染みの『わが国の景気は』から始まる景気の現状判断と先行き見通しなのですが、1月に発表(1月19日ですな)された金融経済月報の基本的見解とまるっきり同じという素晴らしい内容です。景気の現状認識部分と先行き見通し部分って大体の場合4つの部分に分けてかいてあるのですが、物の見事に一言半句違いなしであります。

で、物価に関して何気に先行き見通しを弱含みさせている感じで、1月分と比較しながら読んでみるとこんな感じになりますわな。

・国内企業物価の現状

(2月)『国内企業物価は、昨年末にかけての原油価格の反落などから、足もと弱含んでいる。』
(1月)『国内企業物価は、原油高の一服等により、上昇テンポが幾分緩やかになっている。』

・国内企業物価の先行き見通し

(2月)『国内企業物価は、内外の商品市況次第であるが、当面、弱含みないし横ばいで推移する可能性が高い。』
(1月)『国内企業物価は、商品市況の騰勢一服を受けて、目先、頭打ちとなる可能性が高い。』

「頭打ち」→「弱含みないし横ばい」でございますよおほほのほ。国内企業物価の上昇傾向が川下でありますところの消費者物価に波及してきて珍重珍重という流れが見えてくる前にこの有様になっておりまして、まぁ何と申しますか益々出口が見えない量的緩和政策ですなぁというお話ですわな、こりゃ。

・消費者物価の先行き見通し(現状判断は変化無)

(2月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、公共料金引き下げの影響などもあって、小幅のマイナスで推移すると予想される。』
(1月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、小幅のマイナスで推移すると予想される。』

先日の須田審議委員の講演で述べられていた「広義公共サービス価格」について触れてまたまた消費者物価下落弱含みの特殊要因(?)を並べておりますが、まぁしかし肝心の川上が弱含みになっていてさてどうなるのよという気はしますな。


物価見通しに関しては判断が後退している訳ですから、まぁまたまた出口はどっちだってなもんでしょうなぁ。



○全員一致ですかそうですか

現状の金融政策の維持を「全員一致」で決定したそうなんですが、んじゃあてめぇら当座預金残高目標維持問題についてどういう議論をしていたんだと小一時間問い詰めたいところであります。てめぇらじゃなくて須田審議委員およびあと一人(当座預金残高目標下限割れ問題に関して議論していた人)についてですが。

「今回もまたまた単に議論しただけ」って事なんでしょうが、それならまぁわざわざ先日の講演で当座預金残高目標維持問題に関して下限割れ容認のような話をして世間様を騒がせたですかという話になる訳ですな。

ま、実際問題としては須田さんの講演で騒いでいた訳ではなくて、「当座預金残高目標の下限割れ容認ネタで相場をきゃあきゃあ」というのに使われてしまったに過ぎないのですが、まぁ本件はそういう神経質なネタでもある訳ですから、あまり本気度が低いときに論じるのはいかがなものかと言う教訓にしていただきたいものです。まぁあちこちから不規則発言が飛び出すのが政策委員会クオリティでもあるのですけど。



○何か喧嘩腰じゃあありませんか

金融政策決定会合も終わり、金融経済月報も出たところで日銀総裁の定例記者会見になるのですが、今回の記者会見は何だか情報ベンダーに総裁発言として出てくるフラッシュが妙に喧嘩腰に見えるわけですな。内容に関しては日銀Webに今日アップされる会見要旨を待ちたいのですが、例えばロイター日本語版でのニュースフラッシュを見ますとこんな感じ。

『当面30−35兆円の当預目標が維持不可能になるとは全く予見できない』
『長期国債買入枠、全く変えるつもりはない』
『量的緩和政策の出口を模索する時期とは全く思わない』
『ボリュームに政策ターゲット置くのが緩和政策の枠組み』

フラッシュはこれ以外にも一杯あったのですが、まぁこの「全く」が3度も出て来たのには「もしかして福井総裁怒ってませんですか?」というざわめきが起きるというものでして(^^)、先日須田審議委員の講演後に行われた記者会見でも何か痛烈な質問をしている人がいましたが、まぁ今回も何だかんだと福井総裁様の逆鱗に触れるような急降下爆撃的質問が行われたのでしょうかね〜って感じであります。

福井総裁になってからの記者会見ってまぁ平和だったのは最初だけで、何か途中から会見で火だるまになっている事が多く、その後は「この人は何でもありだから突っ込んでもしょうがない」という諦観モードが流れていたという経緯があるのですが、ここへ来てまた火だるま合戦となっていただきますと観客としては大変に楽しいものを感じますので今後とも是非宜しく。

しかし何ですな。また上記のように自分の手足をガチガチに縛る発言をしておる訳で、まぁ福井総裁おちつけ(某掲示板用語では「もちつけ」)と言ったところであります。

自分の手足を縛りながらも、緩和政策の効果について「景気が回復基調にある中では量的緩和の効果は高まるので、同じ量を出していても効果がより高い事になる」というお馴染みの判ったような判らんような理屈についても言及しているようですので、まぁ必ずしも落ち着いていない訳ではないようでございますがね。


ではでは。








2005/02/17

お題「オペに意図?/モルヒネ経済からの脱却ねぇ・・・」

○これで2度目ですが・・・・

昨日は「まぁあるでしょう」と思われていた輪番オペが実施されませんでした。となると今日か明日に実施(多分明日)という事になるんでしょうが、今回は金融政策決定会合の期間中な上に、当座預金残高目標下限割れ問題がどうのこうのという話が盛り上がりモードになっている最中でありますので昨日の輪番見送りは「あれれ?」という感じでした。

債券相場では「福井総裁になってから輪番の増額を行っていない」という点を重く見ている人が多いんで、昨日の輪番見送りで「すわ輪番増額か」という騒ぎにはならなかったような感じでした(ただ、債券先物の当日安値が「輪番オペ無し」が明らかになった直後の10時12分で、その後先物が上昇してますんで、もしかしてアオリイカはいたのかもしれませんが)が、今までひたすら淡々と機械的にオペを打っていた日銀の調節がちょっと変化している兆しなのかもしれないと考えるあたくしは考えすぎですかそうですか。


輪番問題では昨年12月にも同じようなことがありまして、この時は12月15日(水)に輪番が実施されずで、金融政策決定会合が16〜17の日程。結局16日も17日も輪番が実施されずで、日程的に17日に輪番やらねぇと月末までの日程がタイトになるから(というのと、基本的に週に1回実施するという慣例もあるので)輪番やるでしょってコンセンサスだったので債券市場ビックリの図。おまけにそのとき実施したオペが短国売却。「輪番見送り」→「絶対ありえない筈なんだけど決定会合で輪番減額されたらシャレにならん」という不安がよぎる中、タイミング良く債券先物を売り叩く人がいたので債券先物が30銭くらい売りたたきの図となった訳です。

12月に引き続き今回も金融政策決定会合を前に「日程的にはやるでしょ」ってタイミングで輪番オペを見送って下さいましたので、まぁこっちとしては「金融政策決定会合の週は輪番オペのタイミングに注意しますか」って事になる訳ですが、このタイミングのずらし方は意図があるのか何も考えてなくて単に資金需給だけみている(3000億くらいツイストで吸収打てば何とでもなると思うんですが・・・)だけなのか良く判りませんが、まぁ今後もちょっと気にはしておく必要があるのかもしれませんね。



○西村清彦先生が次期審議委員に起用されるとの事ですが

GDPの発表があり、相場の方は相変わらずイールドカーブが良く動くという展開で西村さんの(というか東大のWebというか)派手派手Webの中をあまり読んでいる余裕は無かったのですが、さすがに東短リサーチの加藤さんが早速西村さんの発言、主張を整理したレポートを出してましたんで、まぁその辺を参考にしながら。

西村さんの近著は「日本経済・見えざる構造転換」って本だそうで(市場関係者が慌てて買いに走るだろうなぁと思う訳ですが^^)、先生のWebには著書の目次が紹介されておりました。で、そこを見ますと「モルヒネ経済からの脱却」というお話をしているようでして、それがど〜ゆ〜趣旨かと言いますと加藤さんのまとめレポートによれば「痛みを和らげるためにモルヒネを打ち、それで問題を先送りしてきたことが、痛みの原因の解明とその除去を遅らせた」ってことらしいですな(週末に真面目に著書読みますが)。

まぁそりゃそうなんでしょうけど、じゃあ今の経済状況でモルヒネ投与とやらを止めていきなり退院させたらどうなるのよっていう疑問はあるんですが。現在の景気回復だってそもそもの発端はそれまでの基準だったら(後から発表された不良債権新規償却を見れば)債務超過認定コースだったと思われるりそな銀行への公的資金絶賛大投入という政策転換と、産業再生機構(しかもここに不振企業の債権をぶちこむと何故か残りの債権が正常先債権になるという素晴らしい仕掛けもありますし)の大活躍やらペイオフ解禁の骨抜き大作戦やらと、色々な方法で財政出動しているんですからねぇ。

まあ良くも悪くも柔軟なお方のようですので、実際に就任されてからどういうスタンスを出してくるのかを見ないと良く判らんって所もあるのですが、いきなりモルヒネ投与解除はどうかと思いますけどねぇ(そりゃ投与しないで済めばそれに越したことは無いですが)。


以下与太話(これまでも与太話ですかそうですか)。

○別の意味で楽しめたGDP

昨日発表になったGDPは相場的には「あっそう」で終了なまぁ予想通りの数字って奴なんですが、「GDP反響」ということで情報ベンダーから出てくる色々な解釈が人によって全然違うのが実に楽しめました。正直、皆さん自分の主張に都合の良い解釈をしておりまして面白かったっつー事ですんで、要するにまぁ強弱定まらずという内容だったって話なんでしょうな。自分の相場見通しにとって都合の悪い数字が出てくるといきなり「過去の数字」扱いするのはいかがなものかと思いますが(^^)。


○議会証言と国会答弁

毎度毎度思うのですが、ちゃんと発表テキストがあって証言のあとにすかさずFRBのWebで内容の確認ができる米国と比較して年がら年中予算委員会だの財務金融委員会だのに引っ張りだされて同じような話しばかりさせられる(一昨日も福井総裁は財務金融委員会だか何だかに引っ張り出されてましたが、そもそも金融政策決定会合の2日前ってブラックアウト期間じゃなかったでしたっけ?)日銀総裁には誠に同情するものであります(あたくしに同情されたくはないでしょうが^^)。

で、サービス精神豊富な福井総裁様におかれましては、金利が下がっているときに「金利に蓋をする」だの金利が上がっているときに「景気回復に伴う金利上昇は自然」だの市場に燃料を投下するのがお得意(白眉は副総裁時代の「ジャストタイミング」発言でしたが)なので、プロップトレーディングやってる分には実に素晴らしいお方なのですが、まぁ何と申しますかやっぱちょっと勘弁して欲しいと相変わらず思うわけです。今日のグリーンスパン議長の債券相場火消し発言(実は内容見てませんからテレビ報道の受け売りですが)と比較するとどうもねぇって感じであります。


本日は寝坊に付きこの辺で。









2005/02/16

お題「相場後講釈その他」

○入札正常化への流れ・・・・なのかな?

まずは相場後講釈。

あたくしがこう書くと世の中逆に行くという誠に遺憾なことが多いのですが、やはり書く事は書くというわけで(謎)。

昨日の30年国債入札。前場には20年や30年ゾーンではなくて先物近辺の債券(たぶん6年〜8年あたり)に買いを入れる人がいたようで相場水準は先物主導で上昇するも20年だの30年だのの上げはイマイチって感じ(しかもふざけた事に30年vs20年では30年の方が堅調という状況)でした。で、前場の引け時点での30年新発債の適正水準は2.42%近辺という感じになった訳ですが、入札のふたをあけてみたら何とビックリの2.46%とまるでダメダメの結果になりました。

まぁ入札自体がイールドダッチ方式(複利利回りで入札を行い、最高落札利回り(というのは最低価格に相当する訳だが)で全額発行となる方式。今は全然やってない株式の入札方式みたいなもんですな。)で行われるので、落札した皆さん全員2.46%の利回りで購入できているのですが、「何ぼ何でも2.45%より安くはならんでしょ(つーか事前の予想は2.42か43)」って雰囲気だったので思わぬ在庫が発生の巻と相成りまして、ヘッジ売り攻撃となってしまいました。

とはもうしましても、先物は7年金利連動で30年もののヘッジにはあまりならん訳でして、結局それなりに流動性のある20年だの10年だののカレント物を叩くしかない(そのものズバリは入札後2.48%が高値でした)ので、先物は大して下がらない(先物が安値をマークしたのは落札結果発表直後の13時4分)のにイールドカーブだけまたもスティープするという頭の痛い相場になってしまいました。


で、まぁ今月になってから実施された入札なんですが、今までのアフォのような高値入札から一転して精々前場の引け水準程度での落札という誠に美しいというか本来そうでなきゃ変でしょっていう入札となっております。つらつら理由を考えてますと・・・・・

1.2月発行の中長期国債(5年と10年と20年)は12月償還債の3発目の発行になるので、利回り水準に新鮮味があんまり無くてポートフォリオ上でも既にそれなりに購入しているので、燃え上がるようなニーズ(笑)に乏しい。(ってのはだいぶ前にドラめもんで言ってるのですが、後になってまた言い出すところが実にアフォ)

2.毎度毎度のように割高入札を連発していたので、さすがに今まで無茶していた人たちの予算(まぁ世の中シェア確保するとそれなりに良い事が起こるという発想は相変わらずございますので、入札でこれくらいはマーケットシェアを確保するのためのコストとしてまぁ仕方ないでしょっていう予算があるっつーのが暗黙の了解だったりする訳で、つーかその辺のコスト計算も無くてただただひたすら高値入札をするのは身を切ったギャグとしか・・・・)がそろそろ底をついてきた。よって無理して入札する体力が不足気味。

3.目標となる入札シェアも確保したのでそんなに無理する事は無いでしょって意識。

4.1.で書いた理由の裏返しで、3月発行の中長期国債が3月償還債になるのでこちらは毎度毎度ニーズがあるのが(余程相場がアホタレさん状態でない限り)ほぼ自明という商品。よって入札で頑張らなければいけない3月に向けて今回は体力を温存しておく必要があるでしょっていう発想(なんかあるのかなぁ?)。

5.そもそも景気回復局面(単に日経平均が1万5千円の節目を上回っただけですが)なのに国債発行しすぎなんじゃネーノかという疑問。まぁこの程度でそんなにナーバスになる必要もないでしょうが、実を言えば最近の入札は1回の発行額がその年限の主要投資家がごっそり持っていくようなレベルになっていない債券(具体的には5年と10年ですが)に関しては既に割高っぷりも沈静化の傾向にありますわな。


まぁマーケットの片隅でくだを巻いているあたくしではなくて、何でそんな割高レベルであなたたちは落札しますか(今月は別^^)という人たちに聞いた方が早いのかもしれませんが(・・・・また読者が減りそうな事を言ってしまった)、まぁこれらの要因が複合されているのでしょうな。

何にせよ入札が正常化するのは大変結構なことでありまして、昨日も入札日の前場に買いを入れる(別の年限ですが)という嫌がらせのような事をしていた人は物の見事に成敗されてしまった訳でして、そーゆー不届きな動きも今後減ってくださりますと業者としても無理せずに入札に参加する事ができて、ひいては長期的に見た国債の安定消化に資するものではないかなどと綺麗事を申しあげておきましょう。

・・・・と書くと来週の20年国債入札がまた割高入札になったりして。



あ、そうそう、昨日はどこぞの情報ベンダーが落札結果発表時間に「最高落札利回り2.400%」などというフラッシュを打ってくれたために一瞬騙された人もいたかと存じます。つーかあたくしも恥ずかしながら「入札強いのに何で売るですか?」と思ったクチなんですが。勿論財務省のWebを見ればちゃんと発表されるのですが(昔はそんな便利なものが無かったから情報ベンダーしか頼るものありませんでしたな。隔世の感とはこの事)、13時ちょうどは財務省Webへのアクセスが集中して中々閲覧できないという問題もありまして、つい情報ベンダーを頼ったのは不覚でしたな。

ま、今回のせいで益々財務省のWebへのアクセスが13時になると集中するでしょうな。来週の火曜日13時は霞ヶ関関連のWeb閲覧は鬼門になるかと存じます(^^)。

#そー言えば、公営賭博(賭博は現在民営化されておりませんので念の為^^)の結果報道では「正式な結果は主催者発表のものでご確認ください」ってヘッジクローズが常に入っておりますな、あっはっは。



○金融政策決定会合が実施される訳ですが

本日と明日の決定会合に関連した東短リサーチの加藤出さんのレポートを拝読する機会がありましたので「ほほう」と思いながら読んでおりましたが、「当座預金残高のテクニカルな下限割れ問題は短期金融市場では金融政策の変更ではないというコンセンサスになっているのに、他の市場および政府などでは反対の意見が多いですなぁ」というようなお話しがございまして、偶々(というか時期的に重なるのは当然ですが)昨日愚意見を申しあげたあたくしとしては中々参考になりました。

まぁ当座預金残高目標をせっせとあげてしまったら気が付けばやり過ぎモードになってしまった(詳しく勉強してないのでちとアレなのですが、政府部門の預金がちと増えすぎで民間の金を吸い上げてしまっている問題があるようなんで、日銀だけが悪いって事でも無い様なんですが)分のツケをどこに回すかって話しになってしまっている感が強い当座預金残高問題でございまして、最早トランプのババ抜き状態になっているっちゅうところでしょう。昨日も申しあげましたが(^^)。

まぁ目先30兆円の当座預金残高を維持するのは可能なようですので、今回の会合では当座預金残高目標問題が議事にあがるのは間違いないですが、とりあえず何も無しという結論に落ち着くのではないでしょうか。少なくとも岩田副総裁が反対しそうですしね。で、「公開される議事要旨に注目しましょう」っていうのは既に加藤出さんのレポートで書かれていたので受け売りになっちゃいますが、ど〜ゆ〜議論になったのかは注目って事なんでしょうな。明日の会議終了後の記者会見でも質問あるかもしれませんが(明確な答えはしてくれないでしょうけどね)。


まぁそういうことで。




2005/02/15

お題「当座預金残高目標減額問題に関するあたくしの愚意見」

まー相変わらずしぶとく当座預金残高目標の維持が大変になっているだろうって話しからお題の議論が今週の金融政策決定会合で出るんではないかとかいう話題が盛り上がっているようです。

まぁ今回の金融政策決定会合で実施されなければ次回以降も同じ話題で盛り上がる事が出来ますので、ど〜せなら今回いきなり当座預金残高のテクニカル的な減額を容認するような決定がなされない法がネタとしては美味しいって事なんでしょうな。

まぁ水野さんのインタビューやら須田さんの講演やらとここの所このネタが話題の材料となってまして、色々と受け売りをしておりますが、んじゃぁお前の意見はどうよ?って事でここのところ意見交換をしながら何となく纏まってきたあたくしの愚意見をば。


○政策の筋論としては当座預金残高目標を守るべきである

まず、一番有力視されている「なお書き(またはそれに類するもの)の追加によって当座預金残高目標の下限を一時的に割り込む事を許容する」というやり方ですが、これはやはりどうかと思う訳です。

当座預金残高をターゲットにして金融政策を行っているという手前、この目標レンジを更に拡大する(当初は「○兆円前後」だったのが「○兆円前後だが流動性に問題が生じたような場合は、その必要に応じてより多く供給する」になってその後の改定を経て「30兆円〜35兆円」になった訳ですが)というのは「当座預金残高目標という量」の意味を更に希薄にさせるという事に他ならない訳です。

「量」をターゲットにして金融政策を行っているという原則がある以上はそのターゲット額をなし崩し的に曖昧にするという選択は、政策の筋が通っていませんわな。もちろん「今までの量的緩和政策における「量」は実は(ある一定以上を超えた段階で)意味が無く、幾ら増やしても同じだったんですよゴメンナサイ」と日銀が認めればそれで勘弁される訳ですが、猛批判にさらされる事が火を見るより明らか。


じゃぁ思い切って当座預金残高目標を引き下げるのはどうよって事になりますが、これは須田さんや水野さんも言及しているように、今までの当座預金残高目標引き上げを「金融緩和」らしく位置づけ(正確に言えば「量的緩和政策の強化」なので微妙に違うという事になるのですが、そういう言葉尻を使って言い逃れするのは詭弁でしょうな)ておりましたので、当座預金残高目標引き下げ=金融引き締めって事になる訳ですので、これまた同じ理由で、今までの量的緩和政策における「量」の問題に関しての棚卸が必要になりますわな。


と、言う事で、政策の筋論としては「当座預金残高目標を維持するように努力すべきである」というのがあたくしの結論ですし、政策の筋が通らないことをしてしまうのは中央銀行として如何なものかとも思うわけであります。



○残高維持のためには・・・・

で、あたくしの結論は「当座預金残高目標を維持すべき」という事になるのですが、じゃあどうするのよ?って問題になる訳です。


まず考えられるのは「手形オペなどの期間を長くするなどのオペ実施方法の工夫によって資金供給を行う」というもの。折角手形オペの期間を最大1年までにしているのに、現状ではそんなに長い期間のオペを実施しておりません。とりあえず長い期間のオペを実施する事によって資金供給を行うというのが本筋というかややこしい政策措置も不要で現場の裁量で出来ることでしょう。

この場合のデメリットは「長めの短期金利のイールドがゼロに張り付いてしまう」ということでして、須田審議委員などがよく言う「量的緩和政策による市場機能の阻害」って事になるわけです。



次に考えられるのは「中長期国債買入(要するに輪番オペ)」の増額。もちろん福井総裁になってからは輪番増額を行っていないという事もあり、福井総裁としては政策判断として実施したくないってことなんでしょうけれども。そもそも他のオペは「短期金融市場の資金繁閑を均す」ために行っており、中長期国債の買入は「ハイパワードマネー(成長通貨)の供給」という区別がされているのではありますが、じゃぁ短期国債の買入はどうなっているのかと言いますとこれは「資金調節」になっておりまして、短期国債の最大期間が1年ものになっており、中長期国債の買入に関しては日銀の保有国債残高を見ればお分かりのように「残存1年半程度の2年もの中期国債」が毎月の買入実績の大体半分くらいを占めている訳でございます。

そう考えますと、短期国債の買入と中長期国債の買入を方や単なる金融調節で、もう一方がハイパワードマネーの供給だというのはどうなのよって議論になってくるわけでございまして(6ヶ月と1年半の違いにどんな意味があるのかという話しですな)、そうなりますと中長期国債の買入の増額に関して排除するのは如何なものかという議論になる訳です。

この場合のデメリットその1は昨日のドラめもんでも申しあげた通りでありまして、量的緩和政策からの本格的な出口が出てきた場合に、今まで資金供給していた分の吸収のために日銀保有の中長期国債の売却を行う必要があるという話。結果として中長期金利の乱高下を招く事になりますし、それ以前の問題として輪番の増額をした時点で中長期金利の低下を促す可能性(増額の仕方によりますが)がありますわな。デメリットその2はマーケットインパクトの問題でして、短期金融市場で必要とされるような資金額全部を輪番増額で対応するとなりますと、今まで1兆2千億円/月である輪番オペをいきなり1兆円引き上げるとかいう世界になってしまいますが、それは各回のオペレーションでのマーケットインパクトがでかくなりすぎます。

その1、その2でもありますように、資金供給不足分を輪番増額で対応するとなりますと、輪番対象になっている中長期国債の市場を歪める(=市場機能の低下)事になる訳ですな。


で、まぁ書いているうちにふと気が付いたのですが、それなら例えば2年もの中期国債だけを対象にした中期国債買入オペを新設して、輪番増額の影響を2年までで遮断するというせこい技も考えられるのですが、そうなってきますと今度は「輪番はハイパワードマネーの供給」って話がどうなのよとか、何で2年(じゃなくてもいいけど)で分けるのよとかいう話になってくるのですが、単純に輪番をまともに増額するよりはマシかもしれません。


その他の方法としては、政府預金とか特別会計(外為とか)の残高がちと多すぎなのでこれをどうにかするとか、ブンデスバンクなどが実施していた外国為替直先スワップ取引の活用などがあるようなのですが、この辺に関しては受け売りの世界になりして、正直まだ勉強途上なのでとりあえず省略。

まぁ色々とやろうと思えばまだまだ当座預金残高目標維持は出来るということのようですが。


○要は政策のトレードオフでしょ

とまぁつらつら書き並べましたが、まぁいずれにせよやや無理気味に資金供給を行うというのはどこかに歪みを生じさせる(大体からして、日々の資金繁閑を均すという行動が「公開市場操作」という市場介入なんですから仕方ないですわな)のでありまして、当座預金残高目標の維持のために何か工夫をするということになりますと、どこかで市場に歪みが発生してしまうのは致し方ない事でございます。あとはどこを取る(犠牲にする)かという話しで、それは政策判断という事になるのではないでしょうか。

勿論、政策の筋論よりも市場機能の方が大事だというのであればそれもまた政策判断なのですが、まぁ政策の筋は通すべきではないでしょうかというのがあたくしの愚意見な訳です。

少々手厳しい事を申し上げますが、「テクニカル的には何の問題もないから当座預金残高目標の下限の事実上の引き下げもよいのではないか」ってのは政策の筋論というものを軽視したポジショントークに類するものではないかと思いますけどね。当座預金残高目標を維持しようとすれば手っ取り早く犠牲(=市場に益々介入される)になるのは短期金融市場でありまして、当座預金残高目標引き下げというか「なお書き」によるレンジ割り込み容認論が主に短期金融市場から出ている訳ですし・・・・・って短期市場の読者様が不愉快に思われそうなことを書いてしまったあたくし。また読者を減らすような暴言をしてしまった。

ではでは。






2005/02/14

お題「当座預金残高問題とゼロインフレ問題」

今日も引き続き須田委員の講演絡みです。須田委員の講演に関する記者会見が同日(9日)に行われまして、その会見要旨が日銀Webにアップされましたが、案の定木曜日のドラめもんでご紹介した金融政策に関る部分(講演要旨12ページ中2ページ位の部分なんですが)に質問が集中しました。しかも結構強烈な質問が多かったりしたのは何でなんでしょ?

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0502b.htm

○「量的緩和政策はゼロ金利政策と違う」という茶番

最初の方(会見要旨を紙に出すと2ページ目の冒頭)に質問をしたお方が直球速球剛速球を投げ込みまして会見の方向性が決まった感があります(^^)。

『(問)いくつか質問させて頂く。まず、一点目は足許でオペの札割れが頻発していることについて、挨拶ではこれに対する対処方法として二つあげておられ、二つ目のやり方として一時的に目標を下回ることを認めるという対応について言及されている。また、その部分の最後のほうで少なくともこうした技術的な対応が必要になるかもしれないとご指摘されている。仮にこのような対応が行われた場合、30〜35兆円という当座預金残高目標に対し、目標を上回ることには「なお書き」というものが認められていて、一時的に上回ることもあり得る一方、下回ることについてもまた同じように「なお書き」で一時的に下回ることも認めるというのは、レンジの上下で上振れたり下振れたりすることを認めるということになるが、そうなれば量的緩和政策において30〜35兆円で今までやってきたことにどのような意味があったのかと疑問を持つ人もいると思う。上にも下にも需要に応じて増減させるということは、そもそもゼロ金利政策とあまり変わりがないのではないか。需要に応じて量を上下させるのであれば、99年2月から1年半ほど行われたゼロ金利政策とあまり差はないのではないか。そうだとすると、これまでの量的緩和政策というのはどのような意味があって、ゼロ金利と何が違うのかということをお聞きしたい。』

講演で「当座預金残高の一時的な目標割れは容認してよいのではないか」という話が出た事に関する質問ですが、「当座預金残高目標のなし崩し的な形骸化を行うと今まで日銀が政策に関して説明していた話しと違うんじゃね〜か」という事でして、誠に核心に切り込むものでございます。この部分に関する須田委員のお答え。

『最初のご質問についてであるが、私がもともと量的緩和政策における「量」について、ある程度変動幅をもったほうが良く、場合によって「量」を減らしても良いと思うのは、「金利を安定化させる」というよりも、逆に「金利機能を少しでも活かして欲しい」ということを念頭において、「量」の振れのことに言及しているのであり、ゼロ金利政策とは視点が違っている。本日お示ししたのは、もともと資金需要が非常に小さい状況下で、国債発行の増加、税収の増加といった政府の要因で日々の資金需給の振れが非常に大きくなっているのであり、そこのところの対応のほうを大きく考えている。資金需要が非常に弱い状況で、かなり短期の間で10兆円を超えるようなかたちでの資金の振れがある場合について、それにうまく対応できるかなと考えたときに、技術的な対応として、下振れてしまうことは許容しても良いのではないかと私は考えている。』

だいぶ苦しい理屈です。ゼロ金利政策との違いについては・・・・

『ご質問のゼロ金利政策との違いという点だが、いずれにしても「量」は必要以上に出し続けるということである。資金需要がどれだけなのかを図ることは私には到底できないが、この分だけ需要が減ったから、その分だけ減らせばいいということでは全くないと考えている。十分必要以上に「量」を出し続けることを前提として、当預残高目標の引き下げの可否を考えている。』

ただ、須田委員はこの記者会見の最後の部分でも発言しているように、これまで当座預金残高目標の引き上げについて反対に回っていた人でして、量的緩和政策の「量」の効果については直接的な効果がデメリットと比較して乏しいと主張してきている人ですので、そもそも論として量的緩和政策の量に関する認識が日銀の公式見解(というものは実は微妙に曖昧なので、多数派と思われる見解ですな)とはやや違いますんでそこんとこヨロシク。



○ゼロインフレに関する質問

講演でやたら「ゼロインフレ」について強調しているように見えた(しかしゼロインフレに関する大昔のグリーンスパン議長のコメントを引用してましたが、ついこの前の米国の金融緩和ってデフレ突入を回避する為に「ゼロインフレになる前」に実施したような気もするんですが・・・)のですが、案の定この点にも質問が。

『(問)基調的に消費者物価指数の前年比がゼロ%以上で、見通しもゼロ%を超えるという量的緩和政策の解除条件について、先程から述べられているように、挨拶では「ゼロ」は「ゼロ」と言葉どおりに捉えるべきだと言われた。さらに、展望レポートで、来年度の消費者物価指数の前年比の予想がプラスに転じ、広義の公共サービスを除けば物価がもっと上昇しているということであれば、早ければ来年度ぐらいには量的緩和政策の解除の時期が来るのかどうか、解除時期についてのお考えを伺いたい。』

『(答)本日申し上げたことについてであるが、量的緩和政策の解除の条件は何も変えていない。消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が数か月均してゼロ%以上、政策委員の多くが見通し期間において物価上昇率がゼロ%を超えるという見通しを有していること、という条件はそのままである。』

ここまではまぁごく当然のコメント。

『本日申し上げたかったのは次のようなことである。私は、物価の問題において、理念的には物価上昇率がゼロ%というのが物価の安定であると述べた。ただ、それを実際の数値に落としたらどうかと言えば、やはりプラスアルファだと考えており、ゼロだとは思っていない。但し、アルファがいくらかはわからない。それも時として変動していくと思う。その下で、景気に対応する物価と規制緩和により下落している物価が混ざっているのが今の一般の物価であり、景気に対応している物価が上昇しているというのがみえるのであれば、よく言われる「のりしろ」とか、プラスアルファとかはそこの部分で見てもらえばいいのではないかと考えている。』

講演でちょっと「ゼロインフレ」について強調しすぎたので、「実際はプラス」ということをコメントしております。んなら講演の時にあそこまで「消費者物価指数がゼロ」について強調しなきゃいいのにとも思う訳ですが、経済学徒としての「理念」をちと強調しすぎて「実際に落とし込むとどうなのよ」って話がうまく伝わっていないというのも如何なものかと思う訳です。既にゼロインフレがどうのこうのという部分は所謂リフレ派の人が早速槍玉に挙げているようですしねぇ。

『したがって、「数か月均してみて確認する」という結果の部分としては、「ゼロ」ということで判断すれば良いのではないかと思っている。ただ、念のため申し上げておくが、必要条件を満たしたから、すぐ量的緩和政策を解除するということでは全くない。今申し上げたことは必要条件であって、きちんと景気が持続的に回復していくかというところを主として見ながら総合的に判断するというところが一番大事である。特に物価だけに、しかも個別のことに引き回されて金融政策をやっているというのはおかしくて、基本的には物価の条件を早く満たした状態にしたうえで景気・経済・金融の実態をみながら、これから先の金融政策を考えていきたいというのが一番言いたかったことである。「ゼロ」は文字通り「ゼロ」と言ったからといってその分だけ私が量的緩和政策の解除時期を手前に引き寄せているということではない。』

だそうです。結局いいたかったのは「糊代論」の排除という事のようですな。こりゃ岩田副総裁や中原審議委員との意見対立が鮮明になって実にみものです。


○長期国債買入増額問題についての突っ込み

最初の剛速球質問に戻ります。

『二点目は、もともと量的緩和政策では、須田委員がご指摘の通り、資金供給を円滑に行うために長期国債を買い入れるという手段をとったわけだが、まずはそれをやってからというのが、そもそも論で言えば量的緩和政策なのではないか。長期国債の買い入れ増額をあらかじめ排除し、一時的に当座預金残高目標を下回ることを認めるということは、量的緩和政策自体がかなり歪んでおり、もともとかなり欠陥のある政策だと判断せざるを得ないと思う。』

須田委員のお答えは・・・・

『二点目の質問についてであるが、確かにもともとは、資金供給を円滑にするために長期国債の買い入れを増額することもあり得ると考えてきたわけだが、それは少しずつ増やしていくということである。挨拶で申し上げたように、今のような状況で簡単に長期国債の買い入れを増やすような対応ができるかといえばそうではないと思う。一時期に大量に買えば良いと言われれば、そうかも知れないが、資金ニーズがそもそも残高でみて下がってきている、資金需要がこれまでよりも弱くなっている中で長期国債をたくさん買えば他のオペの札割れが多くなる。市場参加者が欲している流動性ニーズに限りがあって、そのニーズが小さくなっている限り、そこに長期国債での資金供給を足したからといって、資金がうまく供給できるという自信が私にはない。』

長期国債の買入はハイパワードマネーの供給で日々の資金繁閑を均すものではないってお話なんですが、じゃあ長期国債買入を死ぬほど増やしたらどうなるのよって考えますと、この説明も少々アレではあります。で、その続き。

『それともう一つは、これから先の金融政策が正常化していくという過程を念頭に置いたときに、日本銀行のバランスシートを考えると、負債の部分では当預残高および日銀券といった短期の負債が大部分であるのに対して長期の資産を多く持っているということは、正常化の過程で流動負債を減らしていくときに、場合によっては、そういった長期の資産を売却しなくてはならず、それは調整の過程で、非常にコストが大きくなる側面もあると思う。この観点からも私は長期国債の買い入れで資金供給を円滑にしていくという選択肢は認められないと現在は考えている。』

所謂「リフレ派」といわれる人たちが具体的な施策について言及する場合、大体「日銀は長期国債をドンドン買いなさい」と言いますわな。で、目標インフレが達成されて、尚インフレが高進しそうになった場合はそれまで購入した保有長期国債の売却を行ってマネーを吸収すれば良いという風に処方箋を書く訳なんですが、須田審議委員はこの点に関しても批判的なのではないかと思わせる部分であります。まぁあたくしも所謂「リフレ派」の言ってる事って「実際にその通りに出来れば結構な政策だ」とは思うのですが、具体的処方箋が「そりゃ実際にやったらマズイんじゃネーノ」って所(例えば上記の施策だと、マネーの供給・吸収に伴って債券市場の需給が大きくぶれることによって長期金利が無茶苦茶に乱高下するリスクが高いんじゃねぇかと。所謂「リフレ派」の方に言わせると「期待が安定化するから市場の変動が小さくなる」というんですが、そりゃちょっと違いわせんかねぇと思うのですが)ですわな。


○そもそも量的緩和政策のコミットメントが・・・・・

最初の質問の第3点も大変に剛球でございまして・・・・・

『三点目は、足許のデフレについて随分細かく言及されており、読んでいてなるほどと思う点がかなり多い。例えば、広義の公共サービスを除くと、物価はここ数か月上昇している現状にはなるほどと思う。ただ、なるほどと思えば思うほど量的緩和政策の「消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで続ける」という枠組み自体が何かおかしいのではないかと考えるのが普通ではないかと思う。須田委員は、量的緩和政策の解除に関する約束は守るとおっしゃっている。ただその約束自体がもともとおかしい約束ではないかという考え方になると思うが、それにも関わらず約束を守ると言い続ける理由は何かお聞きしたい。』

何というストレートな質問なんでしょうか、感動した!

『今の量的緩和政策の枠組み、あるいは約束がおかしいという三点目のご指摘についてであるが、2003年10月に量的緩和政策のコミットメント ── 消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和政策を続けるという約束 ── を明確化する際に、いろいろなことを考えた。明確化した条件については、こういった条件を付けると「ビハインド・ザ・カーブ」になる可能性はあるのだろうかといったことも考えた上で決定したものである。この条件については、我々は「ゼロ%」と書いているが、一時期のマーケットの反応をみていると、もう少し高いインフレ率になるまでこの状態が続くであろうと受け止められているようなところもある。そうではなくて、「ゼロ%」というのを言葉どおりと考えるべきである。』

糊代論に関しては講演にあるように、広義の公共サービスの下方バイアスがあるので不要だという事のようです。

『状況が変わったら条件は変えても良いのではないかという考え方に関しては、そういうことを一度行うと中央銀行の言っていることに対する信頼が欠如するということもあると考えている。また、金融政策の決定に携わるボードメンバーには任期があるが、メンバーが変われば条件を変えても良いというふうになってしまうのはとても怖いことである。中央銀行として過去に決定したことを尊重しながら、その時々の条件に応じて皆を説得しながら政策を変更していくということだと思っている。今の条件の「ゼロ%」が文字通り「ゼロ%」以上であるということならば、それほど厳しい条件ではないというふうに思っているし、そして中央銀行の信認を維持するためにもこの条件はこのままで守っていきたいと考えている。』


で、この答えに関して改めて質問がされました。なおも直球でして、

『(問)今の質問に関連して、三点ほどお聞きしたい。一点目は、個別の指標に金融政策が引き回されるのはおかしいということが、本日の挨拶からも良く伝わってくるが、そうであるならば、もともとの物価が安定、CPIコア前年比がゼロ%以上に安定的になるまでという約束自体がおかしいのではないか、それに拘ること自体がやはりおかしいのではないかと強く感じるがその点についてどうお考えか。』

『二点目は、約束を破ったら、日本銀行の信認の維持のために苦しくなるという点についても、もともと誤った約束なり、誤った政策なのであれば、それを続けることの方が、長期的に考えれば信認維持という観点からすれば非常にまずいのではないか。個別の指標に引き回されるのはおかしいという主張は非常に良くわかるが、そうであるならば、この量的緩和解除の条件自体もおかしいのではないか。論理的に考えればそうなるのではないかと思うが、須田委員のお考えは如何か。』

『三点目は、この条件をどうしても続けるということであるならば、須田委員が挨拶で言及されているように文字通り「ゼロ」に拘るのであれば、持続的な景気の回復が確認されれば、コアCPIがたとえプラス0.1%でも解除するという判断は十分にあり得ると聞こえるのだが、そういう理解で良いのかお伺いしたい。』

この直球に関してのこたえはこんな感じであります。

『(答)デフレはいけないことだということは政府も言っている。デフレから脱却しようということであるならば、物価はマイナスであってはいけないということだと思う。その物価がどの物価かということに関しては、私は決めの問題であるという部分もあると思っている。ただ、その物価について、その問題点も指摘しながらCPIコアを選択したのであるから、何か別のものに動かすものではないと思っている。デフレ脱却が望ましいというのが国民の判断であるとするならば、これは維持していく必要があるということだと思っている。一般論として「誤った約束だと思ったら、約束は破れ、破った方が良い」というのはその通りだと思っている。自分が決めたことは絶対に守らなければならないということではないと私も思っている。ただ、今、私が見ている限り、そういう状態が来るとは思っていないため、この約束を維持することが信認に繋がると思っている。なお、数字の上では、私はプラス0.1%でもイエスと言う。プラス0.1%でも良いと思っている。』

何というか苦しそうな回答だというのは良く判りました。結局三点目の質問に関しては「イエス」だというのは判りましたが、前の二点に関してはまぁムニャムニャという感じなのが考えを良く反映しているという事でしょうな(^^)。


○量的緩和政策に関する須田さんの見解?

最後の質問に関する答えを引用のみいたします。長いけど。

『(答)ここまで「量」を増やしてきた量的緩和政策であるが、私は「量」を増やすことにずっと反対してきた。このことからもおわかりのように、私は、「量」を増やすことの効果よりは、それがもたらすマイナス面の方を認識してきている。もっとも、今の金融政策に対する考え方が多くの人の間で一致しているかと言うと、そうではないとも思っている。金利ターゲット政策であれば、金利を上げるとか、下げるということで、金融緩和か、引き締めかということが多くの人にとってわかりやすいと思う。ただ、今は「量」を増やし、結果的にゼロ金利になっているという政策をとっているが、こんな「量」には意味がないと言う人がいる一方で、「量」が増えるということに対してプラスの評価をしている人もいる。例えば、資産価格に対する影響、ないしはもともとマネタリスト的な考え方をする人達にとって、「量」は意味をもっている。今実施している政策について、私は効果があるとしたら人々の期待に働きかけていくという効果の部分が大きいと思っている。どうすれば日本銀行が行う金融政策が、景気が下振れたときに景気を下支えする効果を持つだろうかと考えた時に、今のように「ゼロ金利」で、たくさんの「量」を供給しているという状況下では、人々がどう思ってくれるかということを重視せざるを得ないということであり、ボードメンバーが頭の中でここはこうすれば良いということができるような状況ではないと思う。人々の期待に働きかけながら政策をやっていかざるを得ない状況にあるということである。仮にマイナス面が少なければ私が本来望んでいるようなかたちでもう少し金利機能を活かしたような形の方向に移って行けるかもしれない。ただ、そういう判断はどうしても期待を通じる効果ということを念頭に置く必要がある限り、相手が国民や市場ないし海外がどう受け止めるかということなしには議論できない。政策委員会は必要ないと言われたが、金融政策というのはポリティカルな面も非常にあり、実際に政策をやった者にしかわからないところがあるのかなと感じている。』


引用しまくって物凄く長くなってしまった事をお詫びいたします。

2005/02/10

お題「須田審議委員講演(のうち金融政策に関して)/その他」

三井住友FGと大和證券Gが経営統合だそうざんすが、持ち株会社の統合だったら既に三菱東京FG傘下に三菱証券あり、みずほFG傘下にみずほ証券その他ありとなっているんで、何でそんな大騒ぎになるんじゃろうか??という気もしないでもないが、まぁ大ニュースなんでしょうかねぇ。ま、いっか。

○本題の前に昨日の補足その他

・昨日の補足:信用創造に関して

高校の政経(高校生当時一番の得意科目でしたが、当時政経で受験できる東京の国公立大学があまり無かったのはありゃ何でだったんでしょ)の授業以来久しぶりに「信用創造がどうのこうの」などと話をしたので、書いた自分もちょっと不安があったのですが、やはり昨日申しあげた木村剛さんの信用創造に関する話は妙であるというご教示を頂きました。ありがとうございます。

という訳で昨日の補足。木村さんは信用創造のメカニズムに関して『本来であれば、「日銀→銀行→企業→銀行→企業…」という信用創造のメカニズムの中で、経済の血流としてマネーが還流すべきところだが、すでに手元資金が潤沢にある銀行は、日銀の助けがなくとも信用創造を働かせるには十分な資金準備を持っている。』と話している訳ですが、基本的に「信用創造」っていうのは「銀行→企業→銀行」という形で銀行がバランスシートを膨らませるプロセスのお話だというのはやはり正解でした。じゃあ「日銀→銀行」ってところは何の意味があるかと言いますと、「銀行がバランスシートを拡大するためのハイパワードマネーを供給する」という点で日銀の存在意味はある(だいたいからして日本銀行券が無かったら話が始まりませんしね^^)訳ですな。昨日申しあげたように、日銀の資金供給ルートってのは別に市中銀行に対して無担保融資している訳では無いんで、「日銀→銀行」ってラインでの信用供与は起きていないって事でございますわな。やはり話がおかしい。

で、信用創造のメカニズムが働かないのは銀行がケシカランというお話しを木村先生よくする訳なのですが、そりゃ銀行が無理矢理にバランスシートを拡大すれば信用創造のメカニズムは発生するかも知れませんが、それは罷りならんって事になっている状況で銀行悪玉論を唱えられても困るというものではないかと思うのですがね。


・水野審議委員の日経金融新聞への寄稿

あるお方が話題にしておりまして、その2番煎じで恐縮なのですがあたくしも拝見。昨日の日経金融新聞1面左上のコラム欄に水野審議委員が寄稿していたのですが、確かに話題にしたお方のご指摘通りで「何か政策委員会審議委員というよりはアナリストですなぁ」って感じですな。詳しくはもしかしたら別の機会に。

で、まぁそれはそれとして何と言うかアレだったのは、この寄稿の中で世界的な金利フラットニングに触れておりまして、水野さんはこんなことを仰っておられました(日経金融新聞より引用)。

『欧米主要国の影響もあって、わが国の債券相場も長期・超長期セクター主導で堅調である。今回の「グローバル・フラットニング」は債券バブルの色彩が強かった2003年とは異なり、持続性が高くなると見込まれる。』

・・・・・・・先生は相場神ですか??

まぁあんまり政策委員が相場観の話しをしてもしょうがないっていうかあまり益が無くて弊害のほうがありそうな気がしますわな。ストラテジストである事はしばしお忘れになられた方が吉かと、ってこれも受け売りなんですけど。


というわけで本題の前の話はこんなところで(意外に時間を食ってしまった)。


○須田審議委員の講演:金融政策に関る部分に関して

昨日は須田審議委員の講演が行われました。須田さんの講演は内容が結構細かくて毎度毎度量も多いので引用とかしながら紹介しておりますとドラめもん1回分では済まないんで、本日はとりあえず金融政策に絡む部分に関して読んでみたいと思います。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0502a.htm

・ゼロインフレが目標ですかそうですか

講演の後半部分で「物価と金融政策」って小見出しでお話しをしているのですが、須田委員はこのように言っております。

『日本銀行法15にも定められているとおり、金融政策を運営する上で、「物価の安定」が重要な地位を占めていることはいうまでもありません。物価の安定が保たれていれば、家計や企業等のさまざまな経済主体が、物価の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができます。』

まぁそんなもんでございますかね。

『グリーンスパンFRB議長は「物価の安定」の定義を、「経済主体が意思決定を行うに当たり、将来の一般物価水準の変動を気にかけなくてもよい状態」と表現していますが、「具体的な水準はどこか」と問われて、「インフレ率が正確に測れるならば、ゼロである」と答えています。プール・セントルイス連銀総裁もそのような考え方に賛成しています。』

え〜ゼロインフレっすか?と思って(引用したときに脚注の番号を省略しているんですが)脚注を見たら、グリーンスパン議長の発言って96年7月のFOMC議事録だそうなんですが、そりゃちょっと昔過ぎませんか?って気も少々。プールさんのは2004年だそうです(脚注先の文書は見てませんが)んで、まぁそれは良いとしまして。

てな訳で、こういう事になるそうです。

『私も物価の安定を数値で問われたら、「理念的には物価上昇率がゼロ%」と答えるでしょう。物価が変動すると、メニューを書き換えなければならないといった資源の無駄遣い、相対価格の変動が不必要に大きくなるため相対価格がもつシグナル効果の低下、価格変動の不確実性がもたらすリスク・プレミアム、税制を通じる歪みの発生などによって、資源配分の効率性が損なわれることになるからです。』

ゼロインフレは理想なのかもしれませんが、じゃあきちんと常にゼロインフレにできるかというとその間にマイナスインフレになったらどうなのよって話については続けて須田さんはこのように指摘しています。

『もっとも、理念上のゼロインフレを実際の物価指数に当てはめることは容易ではありません。物価指数の選択の難しさに加え、物価指数には様々なバイアスがあり、かつその幅が変動する可能性があることから、バイアスをある一定の数値に決めその大きさをもって、ある物価指数による数字上の物価安定の定義とできるわけではありません。つまり、物価の安定についての理念上の概念と実際の物価指数とを常に具体的な特定の「数字」でもって関連付けることはできません。』

『また、ゼロ金利制約、名目賃金の下方硬直性や債務契約の硬直性などの存在が物価下落特有のコストをもたらす可能性があることなどから、デフレに陥らないためにインフレ率を若干プラスにしておく方が望ましいという議論もありますが、これについてもデフレのコストは経済状況に応じて変化しますし、「のりしろ」としてある適当な値を導くことが必ずしも常にできるわけではありません。』

まぁこのあたりだけ引用しているとこのお方は激烈的インフレ退治論者と思われそうなので補足しますと、この話をする前に特に「広義公共サービス(電力料金その他ですな)の価格問題」について言及しておりまして、広義公共サービスの価格が規制緩和のもとで基調的に下落傾向が持続し、世界的に見て割高なこれらの価格が是正されるという点を指摘しております。即ち、広義公共サービスの価格下落は構造改革の成果としての物価下落でありますが、この価格下落も消費者物価指数という面で言えばマイナスに作用するので、景気が回復を続けても消費者物価が上昇しにくい状況が続く可能性があるという点を指摘。

そんな背景があるので須田委員は敢えて「ゼロインフレ」を強調したと思われます。


・当座預金残高維持問題について

最初に結論を書きますと・・・・

(1)短期金融市場における資金供給オペで札割れが続くのは金融機関の流動性
問題が解消に向かっている証左であり、望ましい方向への変化である
(2)長期国債の買入増額で残高維持をするという考え方は賛成しがたい
(3)当座預金残高が一時的に目標を割り込む事も容認すべきではないか
(4)当座預金残高目標の引き下げは今までの「引き上げ=金融緩和」との整合性
をどうするのかという問題がある
(5)よって目標を減額せずに技術的な対応をするのが吉では

って話しですな。書いているうちに時間がなくなってしまった(汗)ので、あとは上記の点の部分を引用します。

『最初に、このような現象(引用者注:短期市場での札割れ)が生じている背景について、よく考える必要があります。金融機関の流動性需要が着実に減退していることは、不良債権の減少を背景に、金融システム問題が改善に向かっていることを反映しています。金融システム問題の解決はわが国の経済にとって過去10年以上に亘る課題であったことを考えると、最近における札割れの発生は、金融機関が最早従来ほどには流動性を必要としないというサインを送っていることを意味しているのではないでしょうか。その意味では、最近の札割れの発生は、それ自体としては望ましい方向への変化です。そうした基本認識をもったうえで、従来と同様の大量の流動性を供給することが適当か、また可能かというのが現在問われている問題です。』

『残高目標達成がむずかしいのであれば、「長期国債の買い入れを増額すれば良いのではないか」、という声も聞こえてきそうです。確かに、過去の局面では、「資金供給を円滑に行うため、長期国債の買い入れを増額する」という手段をとったのも事実です。もっとも、金融機関では最早従来ほどには流動性を必要とせず、金融機関側がオペの取捨選択をしているといわれるような現状では、長期国債買い入れオペ自体が札割れすることはないとしても、その分、その他のオペの入り具合が悪化することが考えられ、根本的な解決策にはならないのではないかと思います。さらに、中央銀行のバランスシート上、流動性負債(日本銀行券、日銀当座預金残高)に比べ、長期の資産を持ちすぎると、流動性を吸収する正常化の過程で、長期の資産を売却せねばならず、市場への影響等を勘案すれば調整を難しくする可能性があると考えています。』

『一つ目の考え方(引用者注:当座預金残高目標の引き下げ)については、当座預金残高目標の引き下げは、潤沢な資金供給を限界的に減らす技術的なものであることを理解してもらう必要があります。実際、国内の短期市場の関係者からは「多少当座預金残高目標が引き下げられても、なお所要準備比じゃぶじゃぶの資金供給は継続されるため、過剰反応を起こすようなことは考え難い」との声が聞こえてきます。ただ、これまで当座預金残高目標の引き上げについて、金融市場の安定確保とそれを通じた景気回復を支援する効果を念頭においた「金融緩和である」という説明を行ってきたこともあり、目標の減額の可否については、減額に対する内外市場や国民の受け止め方と市場機能の改善の程度を比較考量する必要があります。その大小関係はそのときどきの経済・金融環境などによって異なってくると考えています。』

『一方、二つ目の考え方ですが、当座預金残高目標を維持した上での、まさに技術的な対応です。最近の資金需給動向をみますと、金融機関の当座預金ニーズが減退している中で、国債発行の増加や税収の増加といった政府の要因で日々の振れが過去に比べて大きくなっています(図表20)。資金余剰感が増大しているもとでのこうした状況を勘案して、オペによる資金供給が難しくなった時に、資金需給の振れに伴う一時的な目標レンジ割れを認めるという対応です。これまでやってきたオペの工夫にも限界がありますので、オペ・ニーズの減退が持続するようであれば、少なくともこのような技術的な対応が必要になるかもしれません。』


まぁそうなるのかも知れないんですけど、当座預金残高目標に5兆円のレンジがある上に「なお書き」で残高目標の上限突破と下限突破を容認するってのは何だかそりゃ何のための当座預金残高目標設定なのかもう無茶苦茶って気もするんですが、まぁここまで色々と結論先にありきで理屈をこねくり回して来た弊害がどんどん顕在化してきておりまして、誠に香しいものがございますな。


てなわけで。



2005/02/09

お題「日銀出身者なんですからねぇ」

本題の前に雑談を少々。

昨日の債券相場ですが、先物の動きは大した事無かったけどイールドカーブの動きはもう豪快。7年(というか先物)と20年カレント物の関係で言えば、朝方から7年vs20年がほぼパラレルから始まって20年2毛強ビットまで行った後に後場途中からいきなり弱くなりだして終わってみれば1毛甘オファーまで行くという形で、まぁ大体3毛ちょっと日中にぶれるというまさに高値波乱相場となりました。最も凄かったのは後場途中の動きでして、先物が139円55銭〜48銭あたりを実にゆっくりと上ったり下がったりして先物の値段があまり動かない間に20年ゾーンが前日比2毛強から引けあたりまで安くなるという頭の痛くなるような相場展開でありました。

本日は5年入札が行われますが、前回入札の時は0.5%クーポンで入札をやるとなったのはいいのですがいきなり前場引けにかけて見事に下落。で、その後1ヶ月経ちましたが、その間結局0.5%を割り込むことなく推移しておりますんで、まぁ0.5%前半では上昇余地無し無しという事ですわな。そんなレベルで入札をやってくれるとちと困るんで、是非ロンドン市場の下げを引き継いで欲しいものです。ただ、前場あまりに調子に乗って相場を叩くと「先回りの買い」が入ると言う諸刃の剣。どうなる事やら。


もう一つの雑談というか雑感ですが、ライブドアのニュースは「まぁそれはそれは」って程度の感想しかないんですが、あたくしとしては何と言うか今回のニッポン放送株式買占めあんどユーロCB800億円発行攻撃なんぞを見ていますと、ど〜も「天一坊」とか「伊東ハンニ」などという名前が浮かんできてしまいますな。いやそれだけの事なんですが(^^)。


前置きが長くなりましたがお題に関して。

○「整合性欠く日銀の量的緩和」だそうですが・・・・

ブログはジャーナリズムだとかメディアだとか偉そうな言説を散々吹聴した挙句、その主張の矛盾(というか論理破綻)を突かれて自爆してしまい、ついに自分のブログは「仲良しコミュニティー」だと宣言して言論人としての資質に対してネット界隈の評判を激しく下落させた日銀OBの木村剛さんというお方がいらっしゃいます。で、最近の木村さんのブログ「週刊!木村剛」は何かスノッブの香り漂う毒にも薬にもならないウンチク話(しかも木村さん以外の執筆者が輪番で書いているんですが)ばかりだったのですが、何を思ったのかいきなり日銀の量的緩和がどうのこうのという話題をエントリー。

本来どうでもいい人といえばそれまでなんですが、何だかんだと言いましても「日銀OBの金融専門家」としてメディアで言説が取り上げられる事が多いお方なんで、この先生がどういう主張をして一般ピープルを教育(笑)しようとしているのかというのをチェックしてみましょうと。

http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/02/post_5.html

「整合性欠く日銀の量的緩和」ってお題でお話をしているのですが、何と申しますか、これで日銀OBなのかよ!って言いたくなる部分がちらほらと見受けられる訳です。著作権がどうのこうのとか逆ねじを食らわされる(本人が知らんところでこっそりといちゃもんつけているだけなんですがね)かもしれないので引用は最低限に止めます。この先読む前に軽く上記URL先に目を通すのも吉かと(^^)。

・量的緩和政策の効果に対する説明が乱暴すぎなんですが

『もっとも冷静にみれば、量的緩和の効果は甚だしく疑問である。日銀からの資金供給量は増えているものの、その資金は銀行の手元にそのまま残るだけなのだから、それで「金融緩和の効果があると信じろ」と主張する方に無理がある。』

量的緩和政策の効果って「ゼロ金利+時間軸効果による長期金利の低位安定」をパスとしているというのは金融市場関係者の常識なのですが、あえて「資金のフロー」という話だけして「効果は疑問」というのはいかがなものかと。量に関しては流動性危機回避の下支え効果程度はあるでしょうしね。


・信用創造のメカニズムって・・・・・

『本来であれば、「日銀→銀行→企業→銀行→企業…」という信用創造のメカニズムの中で、経済の血流としてマネーが還流すべきところだが、すでに手元資金が潤沢にある銀行は、日銀の助けがなくとも信用創造を働かせるには十分な資金準備を持っている。』

えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!「信用創造」でGoogle先生をサーチすると、例えばこんな(http://www.findai.com/yogo/0016.htm)のが引っ掛かってきますが、そこには「信用創造とは、銀行が預金と貸出しを連鎖的に繰り返すことで、お金(通貨)が増えていくことをいいます」って書いてますし、あたくしが高校の政経の授業でも(苦笑)信用創造って銀行→企業→銀行・・・としか教わりませんでしたが、日銀→銀行って線は何よ??

そもそも日銀は特別融資のような場合は別ですが、基本的に有担保貸出じゃなかったでしたっけ??

まぁこの件はあたくしの知識もアレでございますので、書いている本人も自分の言ってる事が正解なのか不安はありますが・・・・誰かご教示を。

追記:翌日のドラめもんで書きましたがこちらにも。

・昨日の補足:信用創造に関して

高校の政経(高校生当時一番の得意科目でしたが、当時政経で受験できる東京の国公立大学があまり無かったのはありゃ何でだったんでしょ)の授業以来久しぶりに「信用創造がどうのこうの」などと話をしたので、書いた自分もちょっと不安があったのですが、やはり昨日申しあげた木村剛さんの信用創造に関する話は妙であるというご教示を頂きました。ありがとうございます。

という訳で昨日の補足。木村さんは信用創造のメカニズムに関して『本来であれば、「日銀→銀行→企業→銀行→企業…」という信用創造のメカニズムの中で、経済の血流としてマネーが還流すべきところだが、すでに手元資金が潤沢にある銀行は、日銀の助けがなくとも信用創造を働かせるには十分な資金準備を持っている。』と話している訳ですが、基本的に「信用創造」っていうのは「銀行→企業→銀行」という形で銀行がバランスシートを膨らませるプロセスのお話だというのはやはり正解でした。じゃあ「日銀→銀行」ってところは何の意味があるかと言いますと、「銀行がバランスシートを拡大するためのハイパワードマネーを供給する」という点で日銀の存在意味はある(だいたいからして日本銀行券が無かったら話が始まりませんしね^^)訳ですな。昨日申しあげたように、日銀の資金供給ルートってのは別に市中銀行に対して無担保融資している訳では無いんで、「日銀→銀行」ってラインでの信用供与は起きていないって事でございますわな。やはり話がおかしい。

で、信用創造のメカニズムが働かないのは銀行がケシカランというお話しを木村先生よくする訳なのですが、そりゃ銀行が無理矢理にバランスシートを拡大すれば信用創造のメカニズムは発生するかも知れませんが、それは罷りならんって事になっている状況で銀行悪玉論を唱えられても困るというものではないかと思うのですがね。


・勝手に事実を作らないようにしましょう

『2002年秋に(金融担当相の)竹中プランが策定された当時には、「中小企業に資金需要はない」と断言していた大銀行が、しかもベンチャー企業にまで貸し出し始めたという現状に一種の感慨を覚える向きも多いだろう。』

中小企業に資金需要はないなんていつ銀行が言ってましたっけ?大体からして当時の金融庁のご指導は「貸し出しの査定を厳しくしろ」って事でしたが何か?金融検査マニュアル中小企業編をその後出しませんでしたっけ?

まぁこの先生は毎度毎度「大銀行はケシカラン」という誠に扇動的な論調が目に付くお方なんでこの程度の話はデフォではあるのですが、休日のニュース解説バラエティ番組(見てると血圧が急上昇するのであたくしは見ない)などでもまたこんな話してるんでしょうなぁ。


・話が矛盾してますが

『もし、銀行システムが正常化し、通常の信用創造機能が働き始めるのならば、経済の血流たるマネーはそれこそ勢いよく循環し始めるかもしれない。しかしそうなったとき、30〜35兆円という日銀当座預金残高は、大きすぎるようにも思われる。量的緩和は、あくまでも非常時の金融政策。信用創造メカニズムが機能不全であるときの異例の政策である。金融システムが正常化したときに、現状の量的緩和がそのままということは、整合性を欠く。』

あのー、さっき「量的緩和の効果は甚だしく疑問」って言ってませんでしたっけ??


・話の誇張は如何なものか

『デフレ対策というムードを醸し出すためのデコレーション(=量的緩和)が長らく続いたために、最近では公開オペレーションの札割れという形で日銀からの資金供給を拒否する銀行すらでてきた。日銀マンが銀行に「何とか借りてください」と頼み込んでいたりする。』

「拒否している」とか「何とか借りてください」ってのはどう見ても話の誇張でしょうな。世間に専門家として影響力を持っているお方としてはもっと冷静にモノを書いていただきたい所ですな。まぁこ〜ゆ〜刺激的な言い方をする人をメディアが求めているってぇのが問題だとも言える訳ですがね。

『その一方で、短期国債の買入でGDPの6倍近くの入札をするという事件も起こる。異常としか言いようがない。』

短期国債の買入じゃなくて入札でしょ。専門外の話をする時に事実関係や用語の使い方が妙になるのはある程度仕方ない面はある(正確は期すべきですが、まぁ個人的雑感を書くような場合もありますし)んですが、日銀OBという看板で金融政策を語るのにこうまでいい加減なことを書くのは如何なものかと思う次第。ネットで書いたものを広めるんですから(書き終えてから気が付いたのですが、上記エントリーって2月7日の「フジサンケイビジネスアイ」というまるで話題になっていない新聞に掲載した記事なんですね。益々たちが悪い・・・)テキトーなことを書かれても困りますなぁ。(あたくしも時々間違えますが必ず追記で訂正するようにしております。あたくし如きですら・・・)


・出身母体の評判が・・・・

まぁそ〜ゆ〜訳で、変なモノにいちゃもんをつけるという余り物の参考にならない話をしちゃいまして誠に申し訳ございません。ちょっと前に「日銀OBの某社ストラテジストが『タカ派の水野さんを次期審議委員に推薦したのは、量的緩和政策の早期解除を日銀にさせて失敗する事によって日銀の独立性を失わせる財務省の陰謀だ』などとアフォな話をしているそうですな〜」ってな事をドラめもんで申しあげましたが、この某ストラテジストと言い、木村先生と言い、もうちょっと何とかならんものかと思うのでありました。そういえば昨年「日銀OBの民主党議員」(結構若い人)の国会における質疑を取り上げて「アフォですかこの人は?」って話をした事もありましたが、ちょっと如何なものかと思われるお方が目に付く訳で、日銀の対外的評価もまた下がるのではないかと他人事ながら憂慮に堪えないものでございます。


#本日はあまり役に立たなさそうなお話ばかりで恐縮至極。





2005/02/08

お題「国会会議録読書の勧め」

えー、債券相場は相変わらず10年以降のイールドカーブを中心にフラットニングが相変わらず継続しておりますが、日本の場合は「景気回復下においてインフレを抑制しながら金融が徐々に引き締めになる」という基本シナリオを書き難い筈なんで(量的緩和のコミットメントがあって政策金利は引き上げられないわ、財政赤字問題で言えば「ドーマーの公債命題」でいう財政赤字発散過程にあるわという状況で、米国とはまるで正反対状態じゃねぇのかと)、まぁ対ドルでの円高も何となく一服してて日経平均は堅調(個別は色々と祭りになっているものがあるようですが)って状態でどこまで行けるのかは謎としか言いようがありませんな。でも結局のところ、市場がまだ総強気になってないからやるんでしょうな。20年の入札くらいまで・・・

という相場コメントくらいしかしようの無い今日この頃のイールドカーブ大暴れ相場ですが、そういう時には別のものを見るということで、時々ご紹介している国会の議事録の読書をちょっとだけ。


国会と言えば、あたくしがインフルエンザでひっくり返っていた時はちょうど代表質問をやっていた頃でして、熱もだいぶ収まってテレビを見るくらいの元気が出てきたときに参議院本会議で代表質問をやっておりました。で、ちょうど見ていたのが共産党と社民党の代表質問だったのですが、この代表質問に対する小泉首相の答えっぷりが実にアレなものがございましたな。

と申しますのは、この両党の代表質問に対する小泉くんの答弁ってもう思いっ切り原稿棒読みでしかもまぁ早口。まるで気持ちがこもっていないというのがテレビから見てもすんげぇ良く伝わってくる態度でして、そういう露骨な態度を取るのもどうなのかねぇと思ってしまいましたな。

という話は兎も角として、郵政民営化に関して質疑の行われた1月31日の参議院予算委員会の会議録。当該会議録は参議院Webから会議録情報→参議院会議録情報→予算委員会で読むことができます。読んでいて「何の話をしているんだかねぇ」って思っちゃいましたが。。。。


○突っ込みどころ満載の決意表明

冒頭の質問者は民主党・新緑風会の小川敏夫委員。質問の最初が郵政民営化でございまして、まずは小泉首相が決意表明をしているのですが、この理屈がさっぱり判らん。

『まず郵政民営化、改革の本丸であると私が位置付けていると、それは大方の議員、民主党の議員の多くも、民間にできることは民間にということについてそう異論はないと思うんです。それから、行財政改革を断行しろ、これも異論がない。公務員を減らしなさいと、これも異論がない。となると、今の郵政三事業、いずれもこれを民営化するということに対して反対だというのは私、分かんないです。郵政三事業、郵便事業にしても貯金事業にしても簡保の事業にしても民間でできるんですね、まあ一つの封書、はがきの配達以外は。』

はぁそうですか。でも「一つの封書、はがきの配達」って郵便事業のことじゃねぇのか?とシロートのあたくしは思うのですが、まぁスルーして次。


『そういうことを考えますと、この郵政三事業、郵便局従事している国家公務員約二十八万人、短時間の公務員を入れると十二万人いますから、合わせて約四十万人。この四十万人の公務員がいないと郵便局の仕事はできないのかということを考えてくださいよ。外務省、これは本省の、日本にある本省の職員と全世界にある大使館、領事館、これを含めて国家公務員は六千人いないんですよ。それと警察官、これも約二十四、五万ですかね。そうしますと、これ外務省の仕事でも警察官の仕事でも重要な仕事であります。本当に公務員を減らそうと考えるんだったらば、果たしてここ、郵便局の仕事は公務員でなくてはいけないのかということを考えれば、民間にできることはもうたくさんあるんです。』

郵政事業と外務省やら警察やらの仕事を一緒くたにして人員の多寡を比較するというのは何というか凄い論理展開(というか論理ではないと思うが^^)でございますな。ついでに申しあげますと、公務員を減らす云々って言っても郵政事業が現状の形態のままで民営化してもそれは単に職員の肩書きが変るだけで、それで「公務員が減りました」って言われても何のこっちゃとしか申しあげようがありませんな。

どうせ「民営化すると経営が効率化されて人員が減る」って事なんでしょうけど、それなら別に現在の経営形態で効率化して人員を減らす事だって可能な筈であって、民営化しないと経営の効率化が出来ないというのはそりゃ官営のままでは何も手がつけられませんって言ってるようなものですから、今後の公務員制度改革だの何だのって計画は実行出来ませんって言っているのと同じではないでしょうかねぇ。で、次。


『そして、郵便局の経営も、企業の経営を考えれば、公務員が経営するよりも民間人に経営を任せた方が国民の様々な要望にこたえ得るような経営ができるのではないかということを考えると、私は民間にできることを民間にというんだったらこれは民営化十分できると。郵便局をなくせなんというのは一言も言っていない。国鉄だって民営化して鉄道はなくなっていない。電話にしても、電電公社からNTT、民営化になっても電話がなくなるどころか、もうすさまじい勢いで電話サービスというのは展開されている。こういうことを考えて、この郵便局の仕事は民間人に任せても十分できると。』

あたくしが昔住んでいた九州地方では筑豊地区を中心に物凄い勢いでローカル線が廃止になりましたが何か?ま、要するに民営化して非効率な部分を削る分には「一私企業の判断ですから政治の知った事ではない」という言い訳が成立するって事なんでしょうな。でもそれって政治の責任放棄じゃね〜のって気もする訳ですが。いや勿論「非効率な部分は郵政事業の民間会社に勝手にやらせて良し」っていうのが政治で決定すればそれはそれで良いんですけど、現在の話はそうなってないでしょ?

で、この理念発表がまだと続くのですが、とりあえず続きの質疑。


○郵貯・簡保の資金が民間で活用されて経済活性化という理屈

さっきの決意表明答弁の続きでは小泉首相このような発言をしています。

『行政改革、財政改革と、今まで郵便貯金とか簡保の資金で集めていた金が財政投融資制度という制度を通じて各特殊法人に流れていた、いわゆる官の分野の資金に使われていた、これを民間に流せるようにするということについても、これ郵政民営化というのは欠かせない事業であると。そういうことを考えますと、私は郵便局の仕事は民間に任せても十分できると。』

てな訳で、郵政民営化によって郵貯簡保資金350兆円が民間で活用されて経済が活性化するらしいのですが、既に銀行貸出が低迷しているのに350兆円がローンに向かっていったら益々ローン金利ダンピング祭りになりませんかねぇと思う訳ですが、それは杞憂であるというのが竹中郵政民営化担当大臣の答弁で明らかになります(^^)。

小川委員の質問(の一部)。

『まず、具体的な話になりますが、郵貯であります。郵貯・簡保資金、これ今政府保証が入っておりますが、これが民営化になりますと政府保証を外れるわけでございますね。そうしますと、これまで政府保証が入っているということで、郵政公社法四十一条でその資金の運用は安全第一ということで非常に限定された運用に限られておったわけですが、これが政府保証が外れて普通の銀行と同じような民営銀行になるとした場合に、これは当然外れるんでしょうね。』

この部分に関する竹中大臣の答弁。

『預金については、これは政府保証を外すわけでございますけれども、その運用については、民間企業として段階的に、貸付けも含めて、自由な経営判断の下でいろんなことをやっていただく。同時に、政府保証の付いたものについては、公社勘定ということでまあ別に持つことになりますので、それについてはその性格を考えて、安全資産として運用をしていただく、そのようなスキームでしっかりと段階的に自由度を持っていただく。』

小川委員の突っ込み。

『その安定的に運用するということと、この郵政公社法四十一条で運用方法が制限されている、この関係はどうなりますか。』

竹中大臣の答弁(の一部)。

『それは、基本的にどういう法律を作るかということで、今、制度設計等、法案の作成に向けて基本方針に基づいて作業をしておりますので、今、法案上どうなるかということに関しましては、正にそれを、その趣旨を生かして制度設計、法案作成を行っているということになろうかと思います。』


とまで言わせておいて小川委員の切り込みが入ります。長いので要点部分だけ。

『総理は、郵貯・簡保資金三百五十兆円、これを膨大な資金が民間で有効に活用されると、こういうふうに述べております。また、年末にありました政府広報、内閣官房の郵政民営化のこの広告も、郵貯・簡保資金三百五十兆円を民間で利用可能にと、このように一番強く郵政民営化のこの主眼であるというふうに述べておりますが、(略)そうしますと、この三百五十兆円は民間には行かないんじゃないかと。すなわち、郵政公社勘定に行った資金は民間で活用できない。民間で活用できるのは、公社勘定とは別に新たな銀行が集めた貯金が新しい運用方法によって民間で利用できる可能性が出るかもしれないけれども、現在ある郵貯・簡保資金三百五十兆円は結局、民間で利用すると言っているのは、これはできないことをできるような広告をしているんじゃないでしょうか。どうですか。』

この質問に関する小泉首相の答弁が何ともアレでして・・・・・

『法案の作成はこれからなんです。そして、法案が作成して国会に提出されれば、その具体論がより鮮明になってきます。しかし、現在の時点においては、郵政公社が民営化する際に移行期間を設けていますから、旧勘定と新勘定になりますね。そういう点もどのように、不安のないように今までの資金が活用されるか、新たに民営化会社がどのような自由度を持って自由に民間に流れるような資金にするかというのはこれからよく与党とも協議して、国民に不安のないような形で法案作成に臨みたいと思っております。』

で、まぁこの後新勘定に移行した場合にどうなるのよとか言った話になって、小川委員から「そんなに郵貯簡保資金を民間で活用したいのならば規模を縮小していくという方法だってあるんじゃねぇのか」というような話に向かったのですが、例によって続きは皆さん是非国会会議録をご覧下さい。

ちなみに、その続きとして国債発行30兆円がどうのこうのという話にもなっておりまして、段々話が「???」の方向になってしまって面白くなくなって来るのが残念なところではございます。



まぁあたしゃー郵政民営化ってどうもピンと来ないのですが、どうもこの質疑応答に見られるように、民営化推進の主張が全体的に「結論先にありきで理屈をこじつけ」て、「最も肝心なことを言ってない」ように思えるのが実に遺憾だと思う次第であります。

#今日は引用ばっかで増量になってしまいまして誠に恐縮でした。



2005/02/07

お題「イールドカーブ大暴れ中/銀行規制緩和雑感」

○とりあえず相場後講釈

先週末の債券相場は朝から20年だの30年だのがもう激烈に強含み状態になりまして、債券先物は前日比21銭高とかやっている所で20年73回債は6毛強の1.87%が堂々買われるという素晴らしい相場展開。債券先物は高値更新しないのに20年だの30年だのは戻り高値を絶賛更新中となっておりました。

で、理由不明ながら週末お得意の売りが出たようでしてその後相場は結構暴れてくれたのですが、終わってみれば先物17銭安に対して10年が前日比変らずで20年は前日比2.5毛強(日本相互証券の引値、実際はもうちょっと強い)という有様でして、20年、30年が豪快に金利低下しながらイールドカーブは思いっ切りフラットニングしました。


前日の木曜日には10年国債入札が行われましたが、10年入札の落札結果発表後(もしかしたら前かもしれませんが)に10年や20年(たぶん20年主体)に売りが出てフラットニング一服と申しますか、入札前の前場中にフラットニングしておいてそりゃねぇだろうと落札業者を不幸に陥れた碌でもない動きの後だっただけに、誠に美しい相場展開で大変に結構でございました。

ま、何と申しますか前回の20年国債入札の時もそうなのですが「入札日の後場になってからいきなり売りをぶつけて相場を崩す」という性格の悪い動きがここの所良くありまして、まぁ相場を崩してからまた買い直そうって下心が有ってやっているのではないかという節がありますが、入札後に相場を崩しに行くという意地悪というよりは「この国賊が!」と言いたくなる動きが見事に別の買いでカウンターアタックを食らっている光景を目のあたりにする事ができた昨日の債券相場でした。あっはっは。

ここもとの20年、30年ゾーンのフラットニングはどうも海外勢の買い(というかスワップの受けというか)の寄与がでかいようでして、まぁ海外でイールドカーブがフラットニングしていてどうのこうのとか色々と要因はあるようなのですが、まぁ昔日本から「グローバルフラットニング」などと言って皆で債券市場のイールドカーブがブルフラットした事もございましたが、今回は海外からフラットニングがやって来たってなもんなのでしょうか。

ただ今回の米国のフラットニングはインフレが拡大する前に予防的に政策金利を引き上げているので長期金利が上らないという形でして、量的緩和政策の時間軸があって短期金利がゼロに張り付いているので、日本でフラットニングするには「長期金利が低下する」という形でのフラットニングしかやり様が無い次第であり、現在のように「何となく景気失速してませんかねぇ」という状態であればフラットニングも継続しそうですが、どうなんでしょうかねぇという気もしないでもないですわな。

まぁ期末を2か月後に控えまして、そろそろ債券残高が気になってくる今日この頃でもありますので、来週から30年、20年の入札があるのですが、こいつらを無事にこなしてしまうと期末前に向けてフラットニングを益々しやすくなるので、要注意といったところでしょう。正直今週の5年国債入札は比較的どうでもいいって感じになって参りましたわな。


○ちょっと目に留まった記事

先週木曜日の東京新聞の特報面(24面)の囲み記事に「利息バトル・仕掛ける外資系2行」という事で、東京スター銀行と新生銀行が行っているキャンペーン預金(東京スターで10年定期の1.5%、新生銀行で5年定期の1.0%でキャンペーン期間中なのでプラス0.1%)の動きについて報道しておりました。記事から勝手に引用しますと、この2行の動きについて『金利が0.00何%の現在、2行が販売する”高金利”の定期預金は、(中略)ペイオフが解禁される4月を前に、預金分散の動きに対応して、新規の顧客を取り込む狙いがあるといえる。』という解説になっておりました。

で、その後、元経済企画庁事務次官の赤羽隆夫さんのコメントとして『両行とも元は破たん銀行で、大手銀行と同じ金利での競争だと、イメージ的に不利。勝つには高金利しかない。企業戦略としてまったく当然の行為。』『見逃してならないのは、両行とも外資系金融機関の傘下に入っていること。こうした外資系企業は、体力の弱った日本企業やリゾート買収を狙っている、1%の金利で集めた資金を買収に充てれば、大きな利益が挙げられる。高金利の定期預金の向こうには外資のこうした狙いがある。』というのがございました。

「外資系金融機関の傘下」って所には「?」なものがありまして、話の進行が外資ハゲタカ論っぽくて何ともアレなコメント(勝手に記者が面白い方向にコメントを纏めているという疑惑はあるがそれは兎も角)なのですが、まぁ「1%の金利で集めた資金をリスク資金に利用する」って趣旨の指摘は「ほうほうなるほど」と思ってしまう次第でございますわな。

日本振興銀行(そういえば小穴前社長もとうとう会長を辞任してまさに木村剛銀行になっちゃいましたな。なんだったんでしょう)に関して「預金保険機構をバックに預金を集め(木村剛さんがご自身のブログ「週刊!木村剛」で堂々と「一人1000万円までしか預金を受け付けないので預金保険で全額カバーされる所がミソです」と発言してますから〜斬りぃ!)て信用リスクの比較的高い中小企業に高利無担保融資をするってのは、預金保険機構制度に乗ったモラルハザードの一種じゃね〜の」とあたしゃ〜思うのですが、まぁそこまでは申しませんが、銀行という器を使って資金を集めて運用は何でも結構というのはやはりアレなものを感じる次第でありますな。

昨今は銀行への参入規制緩和がどうしたこうしたという話が進行しているようですが、昭和金融恐慌に関する本なんぞを読んでおりますと、昔々のその昔は経営者のお財布状態になってしまった銀行などと言った事例も結構あったようでして、まぁ規制緩和も結構ですが、そもそも銀行制度がやたらガチガチに規制されたのは何ででしょうかっていう面はどうなっているのかな〜と思う次第であります。

まぁ銀行が経営陣の「機関銀行化」するというのであればそれならそれでも構わないのですが、その場合は預金保険制度による保護施策というのはモラルハザードを助長する施策になってしまうのでどうなんでしょうね〜って感じであります(もちろん預金保険制度を生かしつつ銀行の資産をきちんと精査する監督をしろってのが本来のあり方なんでしょうが)。


何か話が上手く纏まりませんが、まぁそういう感じで(汗)。ちなみにこの記事の惜しいところは、最後のまとめ部分に出てくる海外投資アドバイザーの三原淳雄さん(どうでもいいが翌日の囲み記事では三原さんの肩書きが経済評論家になっていましたな、あっはっは)のコメントでして、「集めた資金をリスクを承知で避けられていた企業に高利で融資するのは結構」「例えば楽天が銀行を持って球団が一勝したら利率何%という定期預金が売り出されるようなアイデア合戦が展開されるかもしれない」などという趣旨のコメントをしているのですが、それはあたくしの危惧するモラルハザードがどうのこうのという問題に関してちょっと脳天気すぎではないかと思う次第でして、ちょっと三原さんにがっかりしちゃいました。

ではでは。






2005/02/04

お題「10年国債入札レビュー/当座預金問題などなど」

そろそろ色々なネタが仕込まれてきている感じではあります。

○10年国債入札レビュー

昨日のドラめもんで「この入札後にブルフラットしたら債券相場総強気モードって奴ですな」などと申しあげましたが、毎度おなじみのように入札後に相場弱含みとなってしまいました。

今回の入札に関しては10年に事前の買いが入ったのは入ったのですが、基本的に20年とか30年とかの買いに対するショートカバーの買いでした。で、昨日の前場も20年は相変わらずの買いモードとなっておりましたので、仕方が無くって感じで10年ゾーンが強くなっておりました。

しかし、入札そのものも前場の引け水準からそれほど割高な水準の高値入札にもならず、しかも落札結果発表後暫くしてから急に20年ゾーンに売りでも出たのかいきなり20年ゾーンが一気に値を崩してしまいました。元々10年ゾーンの買いがショートカバー主体だった所で10年の入札が行われたという状況で肝心の20年に売りをぶち込まれたら先生そりゃダメダメでございますわなって所でございました。

先日も20年国債入札の日の後場に10年20年に売りをぶち込んで業者大出血という事件がありましたが、今回もまた再現ですかって感じで誠に遺憾というか債券相場らしい性格の悪い展開(・・・)という動きでございます。まぁ先日の20年国債入札後の売りに関しましても、その後の下げで買いなおしていればおジョーズ(というかそんな短期売買をするのが「債券運用」なのかと小一時間問い詰めたいが)ですが、買いなおし損なっていれば結局踏み上げの刑に遭っている訳ですので、まぁ細かいテクニックで上手い事やっても相場全体の流れを間違えたらしょうがねぇんじゃネーノとは思うのですが、まぁそれは兎も角として、ここの所「落札結果発表後に売りを出して相場を下げさせる」という全くもって意味不明というか根性がいい感じで腐った動きがあって大変に遺憾な入札が今回も繰り広げられたという感じでしょう。

ま、相場の上昇モードに入ってからの日柄がまだ若い割りにここもとの相場の上げ方の加速がちと早かったという事でして、まぁ一旦の振り落としを演じるの巻といった所ではないかと思います。


○当座預金残高問題

昨日の衆議院予算委員会では量的緩和政策の堅持を改めて表明していた福井総裁。その足もとでは資金供給オペがあっぷあっぷ状態になっておりまして、当座預金残高目標30兆円の維持でヒーヒー言っているという状態になっておりますな。

で、報道によりますと予算委員会終了後のぶらさがりインタビューで当座預金残高維持問題に関して「資金供給オペへの応札が少なくなっているというのは、金融システム不安が後退しているという事なので大変結構でありますなぁ」などと言う趣旨のご発言をしていたようであります。

案外こ〜ゆ〜所に福井総裁の「日本銀行生え抜き」としてのホンネが出ているなぁと思うあたくしでして、「当座預金残高目標30兆円なんて縛りを何とか骨抜きにして量的緩和政策から徐々にフェードアウトしたいもんですなぁ」と腹の底では思っているのではないかと勝手に推測する次第でございます(^^)。と申しますのは、以前ドラめもんでもご紹介しましたが、衆議院だか参議院だか忘れましたが、財務金融委員会(参議院だと財政金融委員会って言うんですよこれがまた)で野党委員から資産担保証券の買入実績が上っていない事について突っ込みを受けた時に、福井総裁は「資産担保証券の買入は市場育成の一助となる為に実施したものであり、買入実績が上っていないが市場規模は拡大しており、政策の意図は達成される方向に向かっており大変結構」という趣旨の答弁をしておりまして、「福井総裁は本当は資産担保証券の買取なんかはやりたくないんでしょうなぁ」という印象を受けたことがございまして、何だかんだと言っても福井総裁は「伝統的な日銀マン」なんですなぁと思っているあたくしなのであります。兎に角デフレ脱却までは猫をかぶっておきましょうって事なんでしょうな。


で、まぁ当座預金残高問題に関しては昨日もあちこちの情報ベンダーで「当座預金残高目標を引き下げましょう」という短期金融市場方面からの悲痛な叫びが当然ながら出ておりまして、またぞろ問題になりそうなのですが、昨日のドラめもんで申しあげたように、当座預金残高目標をあからさまに引き下げるのは今までの政策との整合性の観点から言って無理がありますわな(下げたいのならりそな銀行だのSARSだの訳の判らん言い訳で当座預金残高目標を引き上げた後にちゃんと引き下げを行えば良かった訳ですが今更時既に遅し)。ペイオフ解禁後に何とか言い訳をつけることは出来そうな気もしますが、何せペイオフ解禁後に何かすると言ってもどう考えてもその時期は5月以降のお話ですんで足もとの30兆円維持問題に関しては意味無し状態。困ったもんですなぁ。

で、オペの札割れが続くのでこの際ヤケクソで長期国債買入(輪番オペ)の増額をという煽りネタがど〜せ出てくるのは昨日申しあげたように必定というものでありまして、このネタは後に申しあげるように「ありえね〜」ってネタなのですが、何せ長期国債買入に関してはどう考えても増額余力があるという素晴らしい状況になっておりますんで、理屈の上からは一番やりやすいお話になっておりますわな。ど〜も金融政策ネタに疎い債券市場関係者というか海外の人あたりが引っ掛かりそうな煽りネタの優秀な種でございますので、ひっかからないように注意されたいものであります。

「ありえね〜」の理由ですが、まず最大の理由は「福井日銀になってからは当座預金残高目標の引き上げと長期国債買入が全然リンクしていない」という事。兎に角この点は福井総裁たいしたもんだと思うのですが、最後に長期国債買入を増額したのは速水さんの時ですな。次の理由なのですが、「長期国債買入は日銀の政策理屈上は他の公開市場操作と違う」という点でございますわな。速水さんの時に当座預金残高目標引き上げと長期国債買入増額がリンクしていたので妙な話になっているのですが、基本的に長期国債買入は「日銀券見合いの成長通貨供給」が政策目的という事になっているので、話として「当座預金残高目標の維持が困難だから輪番増額」というのはヘンだという事になりますわな。

ま、そうは言いましても、煽りネタとしては秀逸なので色々と楽しい話が出てくるんでしょうなぁという感じであります。精々お楽しみにって感じですな。


○偽造通貨祭り

随分精巧な偽造500円玉が発見されたようで。ちょうど目の前の某公共放送でトップニュース(しかも所要時間6分)でやっているのですが、専門家の意見として「作りとしては精巧で、これでペイするのかどうか疑問を感じるくらいです」「自販機やATMを騙せるというのは偽造1万円よりもタチが悪いです」と言ってました。

ここへ来てまるで狙ったかのように一気に偽造通貨祭り状態になっていますが、いつもニコニコ現金払いがモットーのあたくしと致しましては(つーかカードとかって利用状況が人に捕捉されるってのが気に入らないので現金払いを好むという感覚的な理由なんですけどね)誠に遺憾な状態でございまして、極端から極端に走りやすいニホンジンの傾向を考えるとそのうち急に電子マネーとかばかりになってしまうのではないかという悪寒もする訳ですな。

まぁ現金経済が減りますと、アンダーグラウンドなお方とかも困る訳ですからそうそう現金というものが廃れはしないと思いますが、何でもかんでも捕捉可能な電子化が進むというのも個人的趣味としてはアレですなぁって感じでございます。単純な印象なんですけどね。


あと他にも雑談ネタあったのですが、時間の都合上また後日。





2005/02/03

お題「10年国債入札/その他雑談」

さあ、盛り上がってまいりました!!

○ここでフラットニングすれば本物ですが

昨日の債券相場は久々に相場から「ぶち切れの音」が聞こえて来るような展開になりました。朝から20年ゾーンを中心に堅調に推移していると思っていたら10時半過ぎ位から先物が碌に動かないのに20年ゾーンがあれよあれよという間に気配切り上げまくりという状態になりまして、先物が8銭高とかやっているのに超長期が3毛強テイクンなどという豪快な動きと相成りました。先物としては昨日の相場はそれほど驚く事の無い動きではありましたが、そんな訳でしてもう20年、30年が引っ張ってイールドカーブが豪快にフラットニングしましたので、相場としては「すんげぇ上昇しましたな」って感じであります。何せ20年新発債が(単利ベースですが)1.90%割れまで上昇しちゃいました(一日にして5毛以上の上昇)からこりゃビックリという感じです。

凄い上昇だと思ったのは日中の超長期ゾーンの気配の切り上げ方でして、まず前場に一段強くなったあとに後場途中からもう一段上げ。おまけに引け近くにまたまた気配を切り上げまして、ちょっとそりゃやり過ぎじゃね〜のって思っていたら引け後になって引け際の気配切り上げが正当化される上昇でございますよ先生って動きでして、相当20年30年ゾーンへの買いが入ったと言う事なんでしょうが、久々のぶち切れ相場となりました。


さて、そんな訳で大変派手派手にイールドカーブのフラット化をやった後に10年国債入札という誠に遺憾な入札と相成りました。今までのパターンでは「入札前に何故か先回り買いが入る」→「入札準備をしていた業者が踏み上げの刑にあう」→「それを見て煽る輩が現れて入札で踏みあがり」→「いざ落札結果が出てみると後続の買いが無い」→「入札後ボロボロ」という動きに該当するのが今回の入札であります。

ただ、今回の入札の場合は「事前の買い」に該当するのが20年とか30年ゾーンの買いなのが今までのパターンと違う所でして、超長期ゾーンに引っ張られて嫌々付いて来た(笑)という感じの買い上がり方ですので、入札前に踏みあがる(20年とか30年が強そうなので)かも知れませんが、実際に入札が高値入札になるのかは少々疑問。で、もともと20年とか30年に引っ張られてショートカバー的に上昇してきているだけに、入札によって需給が緩和されると、入札後は10年ゾーンだけ弱くなってしまいそうな雰囲気ではございます。


・・・・というのがまぁ常識的な予想だと思うのですが、今日からいきなり10年ゾーンが先物対比フラットニングしながら相場が堅調に推移した場合は「おお!そりゃ債券相場総強気!!」って事になりますわな。まだそこまで行くにはお日柄が早いというか相場が若い気はするのでそうは成らないと見ておりますが。



○短期金融市場での資金供給オペ

昨日もまた資金供給オペで札割れが連発。日本全国の皆様が応札可能で一番の「全国お助けオペ」として使える筈の全店手形買入オペが札割れとなったようでして、誠に心温まるものがございます。

まぁ確かに資金ニーズが無ぇぞってのもあるのですが、こうなってきますと「札割れ攻撃で日銀の姿勢を試しに行く」という短期金融市場からの日銀へのアクション催促モードとなっているようにも見える訳でして、日銀としても中々大変な状況になっているようですな。あっはっは。

先月前半から皆さんで「日銀当座預金残高目標引き下げはどうよ」って話をせっせと盛り上げたのですが、盛り上げのペースが速すぎて時期尚早となってしまい水野審議委員のブルームバーグインタビューで見事に鉄槌を下されてしまったというのは先日来ご紹介した通りなのですが、まぁこうなったら市場と日銀の意地の張り合いでもやっていただけると見物人としては大変に楽しいものを感じる次第でございます。


ただ、債券市場としては既に当座預金残高目標引き下げ問題に関しては「ま〜駄目でしょうな」という認識になっておりますし、テクニカル的な問題はともかくとして、外部を納得させるのは現状の情勢から見て不可能でしょって話ですんで、短期金融市場方面から「当座預金残高目標引き下げ催促モード」をやっても、債券市場としては「当座預金残高目標の維持が困難」→「とうとう長期国債買入の増額か!(輪番だけは当分札割れの懸念無し)」→「債券相場に燃料投下」という展開になってしまうでしょうな。

これで本当にテクニカルに当座預金残高目標を実質引き下げみたいな事をやると激しく笑えるのですが・・・・・・


○知財立国などと言いますが・・・・

知財立国がどうのこうのって話がありまして、弁理士資格者1万人確保を目標に最近妙に弁理士試験が緩くなっている(1万人確保まであと2〜3年程度のようですので目指す方は今のうちに)ようでございますな。

で、まぁ一日遅れの反応ですが、ジャストシステムと松下の訴訟問題の雑談な訳でして(^^)、あたくしはオフィスでのコンピューター利用の発展期に、コンピューター化の激しく遅れた職場で仕事をしていましたので、実は一太郎よりワープロ専用機の方が馴染みのある人間なのであまりジャストシステムがどうのこうのといわれましても「はぁはぁそうですか」位のものなのですが、ワープロソフトの本質的な部分じゃないヘルプファイルのどうのこうのという点で販売停止どころか在庫破棄まででちゃう(控訴すれば執行停止なのですが)という判決はどうなのよって思う次第。

どうも東京地方裁判所ってのは青色LED訴訟では200億円とかいうちょっと幾らなんでもその額は無ぇだろうって判決をだしてみたり、今回の特許判決(詳しく見てませんけど、今回の特許ってアイデアはアイデアとして認めるにしても、アイデアより実装技術の方が重要ではないかと思うんですが)といい、ちょっと何とかならんのかという司法判断が目に付く訳ですな。(その他にも「建設したマンションの6階から上を削れ」とかそりゃ物理的に可能なのかよって判決もありましたな。セーフかアウトかどっちかしかありえないでしょう。)

債券相場とは思いっ切り関係ありませんが、さすがにそりゃね〜だろうと思ったのでちょっと言わせて頂きました。まぁちょっとだけ笑ったのは昨日の株式市場の反応でして、松下以外の電器株は比較的堅調でしたが、松下だけ逆行安しておりましたな。おっほっほ。


まぁそんなところで。









2005/02/02

お題「しかしまぁ相変わらず謎の相場ですな」

これというネタが無いときは相場話になる訳でして・・・・・

○意表をつく動きが多いわけですが

昨日の債券相場は後場になって突如10年とか20年とかの現物債の気配がやたらと強くなったと思ったらいきなり相場上昇の巻。月曜日の場合は株価指数先物の謎の上昇というのがあったのである意味「はあはあそうですか」って感じではあったのですが、昨日の場合は外部環境を見てもまるっきり訳わからずの巻という上昇でして、外部要因訳判らんという位ですから当然ながら内部要因ってぇ事でしょうな。

だいたい訳のわからんタイミングで突如買いが入るのはインデックス系の資金というかパッシブ系の資金というかまぁそういうケースが往々にしてあるのですが、月曜日にロングの振り落としをやってしまったせいか、昨日はあれよあれよと上昇する相場の中で「ロングの外し」的な向きも無く、相場は見事に上昇してしまいました。月曜日の「10分で30銭下落」は一体全体何だったんでしょうって感じではあります。


とは言いましても、結局のところは「時々ロングの振り落としをしながらも相場は堅調」というシナリオからは逸脱しておりませんで、一日中相場に張り付いてヒーヒー言っておりますと目先の上げ下げできゃあきゃあと言うわけですな。例えば先週なんかでも、あたくしがインフルエンザ(は治ったのだが鼻水が止まらなくてくしゃみが出るのですが、もしかしてこれは・・・)で寝込んでいる時でも「先物2銭高で20年1毛甘」というようなロング筋が投げたくなるような相場展開(休んでいたので動きに翻弄されずに済んだ訳ですが^^)があったりしておりまして、そもそもが高値警戒感があるので「ロングの振り落とし」が時々発生しやすく、マーケットに思ったほどロングが溜まらないという構造になっているのかな〜って感じでございます。


○ま、相場観が揃って来たんでしょうな

特に今年に入ってからの相場は、大きな流れはともかく、目先の動きでは「意表をつく動き」が多いという印象があります。で、昨日もつらつらと「何でそう意表をつく事が多いのでしょうか」などと悩んで(ませんが)おりましたが、どうも色々と皆様のお話を聞いたりレポートを読んだりしておりますと「相場の見方がどうも揃って来た」という感を深くするものでございまして、恐らく「突如謎の動き」というのは「皆で同じことを考えているので意表を突かれた時の対応が後手に回る」って事なのかな〜何て思っている次第であります。

とは言いましても、この相場展開と皆様のレポートその他を拝見しておりますと、「相場観が揃っている」とは申しましても、まだまだ相場上昇への確信って訳ではなく、「相場は下がりにくいんだけど高値圏にあるので高値警戒意識は継続ですなぁ」というのがコンセンサスって感じのようでして、まだまだ「ブルフラット来たーーーー」って感じの動きにはなっておりませんし、惜しくも明日には10年国債の入札があるので中々一気にって事にはならんのでしょうな。

ただ、先週前半(はインフルエンザでひっくり返ってましたが)までの展開と、先週金曜日以降の相場の違いは「相場が上昇するときに10年、20年が主導で上昇する」ってぇのがございます。それまではどちらかと言うと先物だったり中期債だったりというゾーンが上昇しながら10年とか20年は渋々上昇するものの戻り売りが出てくるの図って感じでしたが、とうとう長期債の売り(過去に捕まった買い玉の整理)も終了したのか、それとも買いを手控えていた人が諦めたのか良く判りませんが、長期、超長期主導での相場上昇が目立つようになって来たのは相場としては誠に明るい材料ではないかと思う次第でございます。

と、喜んで(?)おりますが、10年国債入札でまたまた10年ゾーンが重くなってしまったらまた元の木阿弥なんで、この高値圏と皆が警戒している状況下ですんなり10年新発国債が捌けるのかどうかに大きな注目が集まっているという感じではないでしょうか。



○構造改革と経済財政の中期展望

真面目に分析を始めると物凄く時間がかかりそうな話。

律儀に毎週のように実施されている経済財政諮問会議ですが、本年第1回は1月20日に行われまして、席上「構造改革と経済財政の中期展望(2004年度改定)」が公表されておりまして、「ほうほう」とこれまた読んでおるのですが、昨日ご紹介した財務省発表の「平成17年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」とは別の「国の一般会計の姿」「地方普通会計の姿」なんかがございまして、中々不思議な思いにかられる次第でございます。

ちなみに資料その他は「内閣府」→「経済財政諮問会議」→「会議資料」から見る事ができます。

まぁ何だか色々と不思議な気がするのですが、わざわざ本資料の最終ページで「内閣府・参考資料と財務省・後年度影響試算の比較」と銘打って違いについて力説しておりまして、確かに前提になっている経済のシナリオなんぞも財務省の物と随分違うのですが、国の一般会計の姿として出てくる結果が財務省の後年度影響試算と内閣府参考資料があんまり違わないのはど〜してなんでしょというのが最初の「???」でございます。

当初は「なるほど後年度影響試算と似てますなぁ」などと思っていたのですが、良く見りゃ前提条件になるマクロ経済の図が結構違うようですので、何でそう同じような結果になるのかなぁと思うのですが、どうも今百歩ほど判らないのでこの話に関してもまた宿題って感じでして、精々悩むことと致します。


この「経済財政諮問会議」の議事要旨は毎回毎回見て楽しめる内容になっております。あたくしも人から読むのを勧められたクチなんですが、結構面白いです。特に麻生総務大臣のコメントは何というか本質的な問題提起というか突っ込みというか、実にいい味を出しておりまして、あたくしはこの会議録を読んでいるうちに麻生さんのファンになりつつある今日この頃でございます。議事要旨に関しても面白いのがあったらいずれご紹介致します。


・・・・てな訳で、今日もおまけは宿題になってしまいましたな。あっはっは。








2005/02/01

お題「いまだ総強気には至らず・・・・っすかねぇ」

○昨日の債券相場

昨日のドラめもんで「相場に死角がありませんなぁ」などと申し上げましたところ、昨日の債券相場は朝っぱらから20年、30年ゾーンを中心に見事なブルフラット商状となりまして10年もあっさり1.3%割れ。やーこりゃ益々死角なしモードで総強気突入ですかと思わせてくれたのですが、後場開始後10分くらい経ってからいきなり日経平均先物が大上昇致しますと、債券先物も「ありゃりゃ」という感じで下落。

相場が下がりだしてさてどうなったかと申しますと、まぁそんなに大きな動きではありませんでしたが「何だ下がるなら今まで引っ張っていたロングを外しますか」ってな話になって参りまして、押し目買いというよりはロングの外しの方が目に付く動きとなりました。まぁ先週後半以降の地合いの強さによって思ったより皆さんロングになっておられたようでございますな。

引けに掛けては株価指数先物が今度は謎の反落を示して大幅に上昇した分をだいぶお返ししてしまったのですが、そうすると先物中心に債券市場は戻ってしまいました。何のこっちゃという感じですが、昨日の印象としては「皆さん何気にロングなのね」というのと「と言いつつも高値圏にいるという意識はあるのね」という感じでございまして、朝方の豪快なフラットニングで一瞬「もう総強気相場かよ」と思わせた債券市場に良いお休みとなったという感じでございました。


○変動利付国債

変動利付国債も中々豪快な動きをしておりまして、まぁ今まで延々とプレミアムがつきまくっていたせいもあるのですが、こちらは先週後半から売りがだいぶ出ておりまして、先週末あたりでは「やっぱりプレミアムがつきすぎでしたかそうですか」ってな感じで今まで買いばっかりだった投資家層まで売りだしてくるという有様となりまして、変動利付国債の売りのピークは昨日の前場という感じになりました。

何せあっという間に前日比10銭安〜15銭安くらいまで売り込まれた後に今度は押し目買いが入ったらしく終わってみれば20銭高くらいまで戻るというこちらもまた豪快な展開でして、利付国債と同様にこちらもまた高値波乱と言った状態になっております。

ま、ここのところ変動利付国債を売ったお金が中期債あたりに流入していたような節がございましたので、昨日の債券相場で変動利付国債が値を戻した後はその反対の動きと言う感じで後場の相場下落で妙に3〜4年ゾーンの中期債が重くなっておりました。この辺がどうも変動利付国債とリンクしているようでして、まぁこのあたりのゾーンを好んでいじるという事はだいたい大手系の銀行業態の動きなんでしょうな〜(そもそも変動利付国債と言えば銀行業態の買いでプレミアム状態になってしまっているので当たり前ですが)という感じであります。


○というわけで当たらない2月相場展望

ま〜いずれにせよ、まだまだ「総強気債券ユーフォリア(などというものが来るのかど〜かという突っ込みは無しね)相場」が来るのにはお時間がかかりそうでして、「高値警戒感」「材料(入札とか経済指標とか)警戒感」のある中での相場が続くという感じでございますな。警戒感があるうちは下げがあっても大したお話にはならんでしょうというのがお約束ですので、2月相場は基本的に少なくとも前半は堅調推移で宜しいんじゃないでしょうかね。

まーしかし昨日はドラめもんで「こ〜ゆ〜時には皆で総強気になったあたりで意表をつく材料が飛び出してきてアヒャヒャヒャヒャ状態になるというのが債券市場の伝統芸能でございますが、今のところはまだ「ああ死角がございませんなぁ」くらいの感じではないかと思うところでございます。」などとのんびりとした話をしたらいきなり「10分で30銭下げ」という相場をやってくれる所なんぞは中々お茶目な債券相場ではございますので、まぁあたくしの相場展望は相場検討の叩き台として叩く(価値が無いなどと言わないでね)材料にしていただければ誠に幸いでございます。



○平成17年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算

というものが財務省から発表されております。
http://www/mof.go.jp/jouhou/syukei/h17/sy170128a.htm

この影響試算ってのは毎年発表されているようでして、上記URLを見ますと下の欄外に「ホームページ>予算・決算>後年度影響計算>・・・・」という風になっている場所がありますので、この「後年度影響試算」ってところをクリックしますと過去の一覧りすとが出てまいります。これを見て「ほほー」と思うのも中々宜しいのではないかと思う次第(^^)。

まーそもそもの前提条件がいわゆる一つの腰だめの数字って奴ですからそんなに大騒ぎして読むものでもないとは思うのですが、過去に出した「後年度影響試算」を見ますと、例えば平成15年度当初予算案を出した時点(=2年前)に出した試算と実際の16年度の数字を比較すると、税収予想はまぁ大体同じで、歳出に関して地方交付税と一般歳出のその他(社会保障と公共事業以外の部分らしい)部分でやりくりして歳出削減しているのねっていうのが読み取れまして、「ふ〜ん」って感じであります。

ま、今回発表された試算もよくよく見ると名目経済成長率が18年度以降年率2%だのCPIが年率0.5%だのとなっていて「それで10年金利2%はね〜だろ」って気が思いっ切りする試算になっている(というようなイチャモンをつける人向けに「平成18年度以降金利3%の場合」っていう計算があったりするのですが^^)ので、恐らくこの試算って直近1〜2年が恐ろしく正確に出てきてその先はいきなり鉛筆なめなめの世界に突入するというギャップがあるのではないかと勝手に想像しておりますが、残念ながらあまり財政関連のお話に詳しくない(だいたい外国為替特別会計のどこがどうなっているのかって話だってよ〜判らん次第でして)あたくしは折角ネタ振りをしながらこの話はこれで竜頭蛇尾(汗)。

何かこの表だけみているといつになったらプライマリーバランスが黒字化するのでしょうかねぇという感じなんですが・・・・・


#どうもネタ無しで恐縮でございます。