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2005/03/31

お題「今度は須田審議委員なんですが」

2004年度も最終日となりました。来年度もドラめもんをよろしくお願い致します。

本日は須田審議委員の寄稿した日本経済新聞「経済教室」をサカナに。3月30日の日本経済新聞の同記事をご覧下さいませ。

○昔は結構良い事言う人だと思ってたんですが・・・・

というのが結論です。かつて景気判断を上方修正しながら当座預金残高目標の引き上げを行うという決定に「政策としての筋が通らん」と反対票を投じていた頃は「政策の筋論を通す人なんですなぁ」とあたくし的にはポイント高かったのですが、最近の氏の主張は何と言うかもうダメダメ状態になって誠に残念です。

本稿で述べている事は最近須田さんが講演等で折に触れて主張していることを纏めたような形になっているのですが、相変わらずそのご主張が我田引水解釈というか何と言うか。


『この間(引用者注:量的緩和政策による当座預金残高目標の引き上げ)に生じたことの中で、少し長めの視点から今後の金融政策を考えるに当たり筆者が重要と考えることを三点指摘しておきたい。』

と言うことで3つの点について論じているのですが、その3点というのは悉く「量的緩和政策が意図していたことの結果」だと思うんですが・・・・・


○日銀券の見合い資産が長期国債なのがそんなに悪いの?

『一つ目は日銀のバランスシートの拡大である。』

って事で日銀のバランスシートが拡大して、長期国債の買入が増加しているというのを量的緩和政策解除後の懸念材料らしく論じているのですが、記事中に掲載されている99年9月末と04年9月末との比較をみたら、長期国債の増加額が銀行券の発行残高の増加額に見合っている(ともに概ね20兆円増加)訳でして、発行銀行券が減りまくるというのであれば話は別ですが、理屈の上では別に長期国債の増加は無問題というお話になるんですが。

当座預金が29兆円増えていて、その見合いになっているのは買入手形と短期国債で十分間に合っている形になっており、このバランスシート見るだけでは別に問題ないでしょうに。

まぁ須田委員としては流動性を回収した時の出来上がりの形として「日銀券」という日銀から見ると短期債務に対して「長期国債」という長期資産を持っているのがバランス悪いって言いたいんでしょうが、一般の事業会社や民間金融機関じゃないんですからその論点はどうも良く判らんのですよ。

確かに日本銀行券は短期債務(須田さんは流動性負債と言ってますがまぁ同じ意味で使ってると思ってちょ)なんですが、別に履行を求められる債務でもないですし、そもそも日本銀行券が現象したらベースマネーが縮小して経済が縮小しませんでしょうかと(無茶苦茶乱暴な言い方で経済学をちゃんと勉強している人から怒られそうですが)小一時間問い詰めたい訳ですが。(銀行券が例えば電子マネーなんかに化ける場合は銀行券の減少に見合って民間銀行部門の預金が増えますが、最終的にはその分は日銀に帰ってくるとおもいますがどうなんでしょ?頭があまり良くないのでうまく説明できませんが)

と言うわけで、バランスシートが拡大して長期国債の買入残高が増えているのがどうのこうのという論点はどうも変なのではないでしょうかと思いますわな。だいたいからして「日本銀行のバランスシートが悪化」っつーのを問題視するんなら、どうせ満期になれば償還される長期国債の評価損などというどうでもいい事を問題視するんじゃなくて、適格担保とか特融とかでしょうに。。。。。


○押し売りしておいてそれはないでしょ

『二つ目は民間金融機関が資金を融通し合う短期金融市場(コール市場)の縮小である。日銀が潤沢に資金を供給したため、各金融機関はコール市場から資金を取る必要がなくなり、金融機関は日銀を頼りにするようになっている。』

別に頼るもへったくれも無い訳で、そもそも預金超過になっている所に日銀が押し売りの如く(笑)資金を供給してコール市場の存在意義を潰している訳でして、それを「金融機関は日銀を頼りにするようになっている」とか言われても激しく困るんですけど。

須田審議委員は市場機能の回復がどうのこうのという主張を折にふれてしておられるんですが、量的緩和政策を継続する限りにおいては短期金融市場の市場機能とか言われましても「それじゃあ須田さんは量的緩和解除熱烈キボンヌなんでしょうか」という風に解釈されるだけの事ですわな。あっはっは。



○量的緩和政策の効果な訳でして

『三つ目は、短期資金供給オペの期間の長期化である。(中略)その結果、長めの金利も限りなくゼロに近くなり、自然な金利形成がゆがめられているように思う。』

そもそも量的緩和政策実施の時に速水総裁は「CPI時間軸の効果によって長めの金利に対しても影響を与える」という趣旨の発言をしておりまして(その割には需給問題やら国債30兆円枠がどうしたこうしたと言った事で瞬間激烈フラットニングしたイールドカーブがスティープしちゃったんですが)、同じ理屈で短期金融市場の金利がゼロに近づいても無問題という解釈になるんですがどうなんでしょ?何をもって自然な金利形成って言っているのか良く判らん。

ちなみに、須田委員はこの中で何故か短期資金供給オペの期間に関して突然『(欧米では一週間程度)』というフレーズをぶちこんでいるのですが、やっている金融政策が全然違うのにそこで欧米と比較するというのは何ちゅうかもう涙が出てきちゃいます。



○政策委員が現状認識を我田引水するのはどうかと思うぞ

福間委員も同じような事を言っていてこの点に関しては物凄く懸念をいだいているところでありますが・・・・・

『足元、コール市場に復活の兆しが見られるが、その背景には、金融システム不安後退の影響による資金の需要と供給の増加などがある。こうした芽をつぶさないで育てていけば、資金偏在調整の担い手を日銀からコール市場に戻す際の混乱は少なくて済むと思う。』

コール市場の復活と金融システム不安後退の因果関係は相当怪しいところ。現状では企業のバランスシート調整っつーか要するに借入金絶賛大返済と、不良固定化貸付金の絶賛償却処理によって企業部門の資金需要が減退した(物凄く乱暴に言うとその分政府部門が真っ赤になっているのでしょうが)事もあり金融機関は基本的にどこも預金超過状態。単に短期金融市場でひところイールドカーブがそこそこ立って、資金ディーリング的な妙味が発生したからターム物取引が出来るようになったのではないかと言う可能性も否定できないっすな。つーか先ほど申しあげたように、、コール市場潰したのは量的緩和政策の効果なんですが。

で、コール市場に「資金偏在調整の担い手」という昔むかしの機能をイメージしているようなんですが、当面金融機関が預金超過状態にあるんですから資金偏在調整(昔は大手銀行は概ね貸出超過状態で毎日コール市場で資金繰りをしてました。だから97年に大騒ぎが起こった訳ですが・・・)じゃなくて単なる足元の需給調整と短期資金ディーリングだけの世界になると思いますが。(大手金融機関が貸出超過になるような頃にはとっくの昔にデフレ脱却してるでしょ)


どうもこの市場機能云々は福間さんと須田さんが主に主張しているようなのですが、そもそも前提としている認識に物凄く違和感を受けるものでありまして、何か大丈夫かと思ってしまうわけです。


○その他細々突っ込むと色々ありそうなんですが

まぁこんな所で。昨日の伊藤先生に関しては「うーん」という感想ではありましたが、日本銀行政策委員会審議委員というお仕事をしているお方にしてこのお話というのは大幅に血圧が上昇するものでありまして甚だ遺憾としか申しあげようがありませんな。

で、最後にとってつけたように「いずれにせよ現在の量的緩和政策を粘り強く続けていきたい」って書いているのがまた血圧急上昇ですよ。それなら延々と主張していたのはただのノイズですか?


・・・・と血圧も上がったところで本日は終了(^^)。







2005/03/30

お題「伊藤隆敏先生・・・・・」

昨日の債券相場も先週木曜の相場に似てましたな。朝の経済指標がどっちかというと債券の買い材料の筈なのに何故か売りが出て相場下落。しかし後場になると倍返しで買いが入って大幅上昇しちゃうという格好。まぁイールドカーブを見ますと時間差短期化入替のようですが、最近の日中の動きは訳判らん・・・・


さて、既に別のところでも話題になっているので2番煎じもいいところなんですが、昨日の日経新聞「経済教室」に東京大学教授の伊藤隆敏先生が「物価安定目標の導入を」という寄稿を行っておるのですが、どうも現実に対して事実誤認とまでは申しませんが、そりゃちと違うんじゃないの?っていう点が散見されるのが極めて残念であります。

別にあたしゃー現場の経験主義全てエライとは思いませんが、金融政策に関して提言する学者さまの中でも影響力が高いと思われるお方にしてこのような認識というのは正直情けないと思うと同時に、もうちょっと「実務はこうなんですが」っていう宣伝を行う(日銀のWebを見てると結構頑張っているとは思いますが)必要があるんじゃないかと思う次第。

てなわけで、伊藤先生が見ている訳もないこんな所でこそこそと突っ込みを入れるあたくしはチキンですかそうですか。重大なところから順に愚意見を。


○当座預金残高に付利したら市場金利が上りますが

当座預金残高目標の維持対策として、長期国債買入の増額(それでもダメなら社債やREITなどの債券購入)を提唱している部分は激しく同意なのですが、第二の策として日銀当座預金への付利(当然ですが今は金利つきません)を提唱しておられます。

『余資を日銀に預けるインセンティブが高まるので、当座預金残高の目標維持は容易になる。こうして、デフレからの脱却がはっきりして金融引き締めの次期(追記:「時期」のタイプ間違えです)がくるまで、30兆ー35兆円を維持することは可能になるだろう。しかし、当座預金への付利により30兆ー35兆円を維持していることが、量的緩和の継続としてのシグナルを出し続けることになるかどうかは、確実ではない。』(3月29日日本経済新聞「経済教室」より引用。以下同様)

いやまぁそりゃそうなんですが、日銀当座預金に利息をつけますと資金運用側としては日銀当座預金が一つの「運用先」としての選択肢として浮上(今は利息が付かないのでタンス預金みたいなもん)する訳でして、そうなりますと短期市場金利が日銀当座預金金利まで上昇しちゃうんですけど、マネーの供給がされれば良いから金利が上っても無問題って事なんでしょうか??

金利が少しくらい上っても(屁のような金利だったら市場金利はそんなに上がりませんが、今度は日銀当座預金残高を積むインセンティブが働かないわけでして。事務コストとかバランスシート拡大とのトレードオフという面もありますんで・・・・)問題ないから日銀当座預金残高目標は維持しろという趣旨で仰せなのか、それとも結論である物価水準数値目標の導入への単なる露払いなのか良く判らんのですが、何の断りも無しに堂々と「当座預金残高に付利」って話をされますとちょっともうその時点で伊藤先生の金融市場に対する理解度に?をつけたくなっちゃう訳ですよ。

どうかとおもいますがねぇ。



○「世界で使えて自宅で・・・・」面目躍如といったところでしょうか

福井総裁の量的緩和政策に対する姿勢を高く評価する一節。

『さらに03年春から秋にかけて、福井総裁が講演などで、量的緩和政策の終結までは非常に忍耐強くなるという発言を繰り返して、日銀のデフレ脱却への決意を市場に送った。直接的には言わないものの、「2000年8月に行った、デフレ下の金融引き締めの愚を繰り返さない」というメッセージが込められていると受け取られた。こうした日銀の力強い姿勢が市場に安心感を与え、03年度後半から04年初めにかけての急速な景気回復に貢献したことは間違いない。』

2003年春から秋にかけてといえば、りそな銀行絶賛大救済スキーム発動という政策転換によって株価が反発。いつの間にやら政策委員会方面から出口政策話が浮上して「量的緩和政策の早期解除懸念」から中短期債が大暴落して早期利上げ織り込みモードになってしまった恐怖の時期。大体それで金利が上昇しまくったお仕置きとして「量的緩和政策のコミットメント明文化」などという事になったと金融市場では理解しておるのですが。金融市場(の実務担当者)では福井総裁は発言はぶれる(というか一貫性がない)わ、わけのわからん市場牽制発言をするわと「ちとどうよ」ってイメージだとは思いますが、こういう感じで世間様へのウケは絶大なんですよね。

読んだけどあたくしが頭が悪いので変な感想を書くと恥ずかしいなぁなどとらしからぬ羞恥心から書評を書いてない(だけなので実はこの本は判りやすくって良い本だと思います)岩田規久男先生の「日本経済を学ぶ(ちくま文庫)」でも福井総裁の量的緩和政策維持の姿勢を高く評価する記述があったりと、まぁ金融市場などという狭い世界じゃ無いところからは「福井総裁は量的緩和政策を断固継続する意思が強い」と思われているんでしょう。

まぁ確かに「金融政策期待への働きかけ」という意味においては、市場がどう思っても世間様がちゃんと期待してくれればそれはそれで目標の達成に資するとは思います(本当か?という気もしますが)ので無問題なんでしょうか。

ちょっと昔に某携帯キャリアを揶揄して「世界で使えて自宅で圏外」というのがあったんですが、福井総裁さすがですなって感じであります(^^)。



○まぁ下らない突っ込みですが

『当座預金残高目標の引き上げは、為替介入を非不胎化するというシグナルでもあり、金融緩和の決意を示したものとして市場から歓迎された。』

非不胎化問題に言及したのは岩田副総裁だけですが、その岩田副総裁も講演で「あくまでも事後的にではありますが」という言い方をしておりますんでまぁどうなんでしょ。確かに「公的には認めないけど実際は非不胎化介入の実施」なのかもしれませんが、「財務省が介入ばっかしやがるから当座預金残高を引き上げないと資金が回らん」という後追い引き上げなのかも知れませんし、そこを断言するのは微妙でしょうな。

えー他にも微妙に何か因果関係を取り違えているように思える記述がある(最初のあたり)んですが、あたくしが思うだけなのかもしれないのでその部分はペンディングとしまして・・・・・


○この部分激しく同意です

『30兆ー35兆円の日銀当座預金残高はそもそも「金融政策」として金融政策決定会合で決定してきたことである。決して金融システム安定だけのためではない。したがって、日銀当座預金残高の目標額の引き下げ、あるいは実績が目標を下回るようなことが続けば、これは金融引き締めの第一歩であると理解されたとしても仕方がない。』

全く仰るとおりで、一部政策委員の論理崩壊は如何なものかと存じます。

ではでは。




2005/03/29

お題「ますますネタの無い相場ですが・・・・・」

まずは昨日の訂正。日銀レビューのクレジットデリバティブ云々の話ですが、「グラフが如何なものか」ってお話をしましたが、「あのグラフの横軸のとり方は全然問題ないでしょう」というご指摘を読者様から頂きまして、改めて見直しましたが、確かにご指摘の通りであたくしのいちゃもんの方がおかしいという結論に達しましたので全面的に削除させていただきます。大変失礼致しました。貴重なご指摘ありがとうございました。


○期初はもしかして買いからなのでしょうか?

昨日の債券相場は先物の出来高1兆2000億ちょっとって数字に表されるように期末受渡にしてはというか期末渡しらしくというか思いっきり動きませんでした。

で、まぁそのまるっきり動かない相場なんですけど、昨日だけではなくここ数日の場中の雰囲気を見ておりますと、これがまた「下がりにくい相場」って感じなんですよね〜。昨日なんかでも平均株価が上昇しようが、ドル円市場で円安に振れようが無問題って感じで「前日比安くなると買いがご到来」って動きになっております。

先週後半の相場上昇が主に中期債というか5年債のカレントゾーンが引っ張るといういかにも「大手銀行さまご購入」という雰囲気(真相は知りませんが、だいたい相場が下がらなくなってきてから中期債に買いが入る時は大手銀行さまというケースが多い)。中期債にそれなりの買いが入り、相場全体が上昇するという事は、その買い方は入替売買ではなくて概ね単買いと見るのが妥当な線でして、その動きが期末ギリギリになっていきなり出てきたという事は、「結局世の中の皆様債券残高足りないんですね♪」ってお話になる訳でして・・・・・


以前は「あ〜た1.3%台なんかを期初でやっていたらいきなり益出し売却からスタートですよ」などと思っておりドラめもんでもそう申しあげていたと思いますが、どうもこの期末の雰囲気を見ていますと、先ほど申しあげたように「皆さんもしかして債券残高不足っすかぁ?」って感じが漂って来るわけでして、この調子では期初の益出し売却なんぞで相場が下がった場合には早速押し目買いが到来しそうな感じですな。

もちろん日銀短観が期初一発目にあるので、短観の数字次第ではあるんですが、平均株価が12000円を上抜けて威勢良く上昇しない限りという前提つきなんですが、どうも「相場の位置が高いから期初は益出し売り」というのは怪しいかも知れませんな。

・・・・何て事をあたくしが申しあげると碌な事はないのですが(笑)。


○読んだんですがいまだ??なのに書評と言うのもなんですが

「日本経済 見えざる構造転換(西村清彦著 日本経済新聞社)」

植田和男さんの後任の形で次期日銀政策委員会審議委員に就任予定の西村先生の最近の著書なんでどういう考えをお持ちなのか興味を持って買ったのですが、これがまたどうも一々突っ込みを入れながら読んでいると全然読書が進まないという難物であります。

判りやすく説明するためなのか譬えがやたら多すぎでして、却って説明しようとしている事が曖昧(というか論理が飛躍していると言った方が良いのか??)になっているという印象と共に、第2章の「日本企業の凋落」って所で「付加価値の源泉」として「プロセスの最適化」対「組み合わせの最適化」というお題で説明をおっぱじめているように、やたらと二元論っぽい説明も気になる所であります。そんなに単純化できるものなのかよって思うんですが。

で、ご本人はまえがきで『特に、主流派経済学に色濃いミクロとマクロの二分法、さらには経営と経済の二分法は、日本の経済の分析に不必要な桎梏になっているように思えてならない。本書はそうした二つの二分法を越える試みでもある。』と仰せなんですが、生産だの消費だのの個々の分析をする時に二元論と申しますか、どこぞの経営誌でよく見るような単純化した図式を持ち出すのはちと???でございます。

まぁ『本書の内容はミクロの個々の企業行動、個々の消費者行動に始まって、政府経済統計を用いたマクロの日本経済分析、そして経済システムの総体としてのデザインまで滝に渡っている。従って、分析の書物であるとともに、日本経済の「現在」を知る一種のガイドブックになっている。』(まえがきより)って言う事なんで、一般読者にも読みやすく作ったということなんでしょうねぇと一応纏めておきますか。

本書の結論部分というか今後の政策提言部分というか、まぁ最後の部分で「社会投資ファンド」の提唱をしているのですが、あたくしの頭が物凄く悪いせいなのか何でそういう結論になるのかさっぱりわけワカメでありました。ちなみにまえがき部分ではこういう話になってます。

『しかし、こうした「見えざる構造転換」は、システムとしての脆弱性を持っている。(中略)「見えざる構造転換」の主体は後者、費用の削減であった。しかし日本経済がそしてひいては日本社会が、真に新しい発展の軌道に乗るためには、新しい「価値」を効率的に創造する仕組みが必要なのである。費用の削減は、ともすると費用を「弱者」に押し付ける手段になりかねない。』

というのが前置きで、その「見えざる構造転換」で発生した「負の遺産」を解消して新しい「価値」の創造をする担い手として・・・・・

『そして90年代の経験から、その担い手にふさわしいのは単なる市場経済でもなく、その対極にある政府機構でもない。市場経済に立脚しながら政府資金と協働し、「社会的に重要な」有形無形の資本に投資し「社会的に重要な」財・サービスを対価を取って供給する、第三の主体でなければならない。』

ってお話(以上まえがきより引用)で最終章に社会投資ファンドのお話があるんですが、これがまた読んでみたものの、何で社会投資ファンドじゃないといけないのかよー判らんでした。

肝心の金融政策に関る部分はどうもあまりご興味が無い(のか現在社会投資ファンドに熱心なのか判りませんが)ようです。どうもインタゲを否定しているようにも思えますが、金融政策の効果に関して「期待に働きかける政策効果(つーかインタゲか?)」VS「構造改革論者」というこれまたお馴染みの二元論が出てきて、最後には『2004年後半の時点でこの論争を振り返ると、この論争は必ずしも生産的ではなかったという感想を持たざるを得ない。』としている所を見るとちょっと・・・・って感じがしますな。まぁ他にも文書書いておられると思いますんでもっと読まないといけないかもしれませんが。

ISBN-4-532-35113-8 C3033 \1600

何気に時間がなくなったので本日はますます簡単に終了。









2005/03/28

お題「週明けは雑談で」

本日は期内最終受渡になります。朝のニュース番組でも顔ぶれが変っている局なんかもありまして、何か既に新年度っぽい雰囲気ですなぁって感じ。今期も色々と訳の判らん相場ではありましたが、さて来期のテーマは何なんでしょうな。

○来期の金融政策テーマ

・当座預金残高目標の引き下げ

ま、よくよく考えればテクニカルにはど〜でも良いお話なんですが、そもそも当座預金残高目標に意味があって、その増額は緩和の強化だというロジックを使っていた訳ですから、日銀の政策に対する信用を確保するためにはなぁなぁで済ますのはどうかと思います。ってあたくしが思っていてもなぁなぁコースになりそうな悪寒もする訳でして、一番懸念されるところかと。当座預金残高目標を少々引き下げても足もとの金利は全然動かないとは思いますが、これだけ事前に大騒ぎしてしまうと、ただの技術的な問題で済まされなくなっている以上は、何らかの総括をしていただきたいと思いますが。

ということは、恐らく総括すると「量的緩和政策」は「時間軸つきのゼロ金利政策」だったという話になってしまうんですが、それはそれでこの先景気が悪化した場合に打つ手がややこしくなるという問題(量に意味がある事にしておけばとりあえず当座預金目標引き上げで対応して他にやる手を考える余裕がある訳で)があるんで、残念ながらこの調子でダラダラと思惑だけが出たり引っ込んだりという感じでしょうなぁ。


・CPIの定義問題(というのをネタにして騒ぐ)

まあ相変わらず政策委員会の皆様におかれましては脇が甘いと思うのですが、物価に対する見方として「財の価格がゼロ近傍」なる発言が審議委員の皆様から連発されている訳ですわな。既に須田、福間、福井、岩田、中原の各氏から指摘されているということは、政策委員会としては現状の消費者物価に関して「公共料金等の引き下げによる特殊要因を除くと既にゼロ近傍まで改善してきている」という見方をしているってぇ話ですな。

グリーンスパン議長の真似っこをしたのでは無いかと思しき福井総裁講演での相場火付けショックで一騒ぎした相場だったので今の所スルーされているんですが、本件に関しては所詮足もとの短期金利に影響がない(と市場では思っている)当座預金残高目標引き下げ問題よりも話としてはデカイですわな。何せ現状における金融政策の基本部分が消費者物価指数ですんで、そのうちこの「コアCPIの定義を日銀がいじって、特殊要因抜きのコアCPIを重視するようになる」ってのをネタにして一騒動やるんじゃないですかね。

常識的には自分で作った定義を目標達成前にいじる(しかも事実上の目標引き下げですわな)というのはその前に物凄い勢いで総括と自己批判が必要になるとおもうんですが、まぁ上記当座預金残高目標問題での一部政策委員の「技術的な問題攻撃」と同様でして「何を言い出すかワカラン」という評価が政策委員会さまにある以上、この問題をネタにして騒ぎを起こすというのはやりそうですな。恐らく平均株価の上昇に合わせてこのネタを持ち出すとは思いますが。



○「クレジット市場の発展に関する一考察」ですかそうですか

先日(24日)に出てきた日銀レビュー・シリーズに上記お題のレポートがございました。(http://www.boj.pr.jp/ronbun/05/rev05j04.htm)URLの先にペーパー本文があるんですが、まぁ毎度お馴染みの頭の宜しいお方が頭の宜しいご考察を為されておられますんで軽く突っ込み。

・冒頭でノックアウト(^^)

『「市場価格が得られないために、リスク計測の高度化が図れない」、「リスク計測が高度化しないから、銀行がリスクが移転されず市場が育たない」。国際決済銀行(BIS)のグローバル金融システム委員会のある作業部会において、このような議論が交わされた。』

いや何と申しますかどこをどう突っ込んでいいのか悩んでしまうお話でございますなぁ。保有する貸出債権を売却しない日本の銀行はリスク管理が出来ていない低レベルの人たちなので日銀様が教えて差し上げるとでも言うのでしょうかねぇ。ふ〜ん。

・前提がどうかと思うんですが

で、本文なんですが、まぁ大体「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」市場を発展させましょうってお話で終始しているんですが、その論理展開に関しては頭の悪いあたくしは突っ込むと返り討ちにあうだけ(誰から??)なんでもっと根源的疑問をば。

本文1ページ目の「はじめに」って所でこんな記述が。

『報告書作成の過程において、こうした観点から繰返し議論されたテーマのひとつに「クレジット市場の発展とリスク計測の高度化」がある。具体的には、特定の企業や業種の信用リスクを過度に抱えているという計測結果が示されることによって、金融機関は融資の売却や、クレジット・デリバティブ取引などを通じたリスクの削減という経営判断を機動的になし得るのではないかといった論点である。』

世の中の色々な産業にあまねく資金需要が存在しており、各金融機関はそれぞれの産業に融資を行っているが、金融機関ごとに融資先の産業構成に凸凹があって、クレジット・デリバティブ取引を利用する事によってその偏りを直す事ができるんよ素晴らしいじゃありませんか。と書いているように読めるのですが、そもそも将来碌でもない問題債権が発生するような場合はその前にバブルらしきものが発生してアフォのように資金需要が発生していると思うんですが。それに、特定業種が問題になる時なんかは皆そろって融資の売却熱烈キボンヌだと思いますがねぇ。

まぁ別にクレジット市場イラネとは全然思わないんですが、そういう崇高な使命感で市場の育成とか言われても困るんですが。


・図表に下らない突っ込み(追記:この部分は読者様からのご指摘によりましてよくよく読み直してみると何を言ってるのかさっぱり意味不明なので全面削除しますが、無かった事にはしないポリシーによって取り消し線にて対応)

1ページ目に(図表1)としてCDSの市場規模(残高)推移ってのがありましてまぁ確かに日本は市場規模が小さいですなぁというのは判るのですが、そのグラフを一見すると「グローバル市場では物凄い勢いで市場規模が発展しているのに対して、日本市場(レポートでは本邦市場)では全然拡大してなくて誠にケシカランって印象操作してませんか?」っていう軸の取り方になっております。

まぁ確かに真面目に見ると市場規模拡大してないというのはその通りなんですが、印象操作っぽく見えるグラフの書き方は如何なものかと(^^)。

(追記その2:まぁここのグラフなんですが、あたくし的には折れ線グラフの方が見やすいというか日本市場での拡大が遅々として進んでいないと見せやすいとおもうんですが、まぁこれは主観問題ですわな。と汗かきながらフォロー)


・まぁそれ以前の問題として

企業を整理する際に本来優先劣後の関係と思いっきり逆の事態(株式は紙くずにならないのに貸出は債権放棄とか、社債は保全されるのに貸出は債権放棄とか)が発生してみたり、国営債権塩漬けじゃなかった買取機構があったりという国をグローバル比較する事自体がそもそもどうかと思うのでして、そういう面に関しての考察を求めたいと思うのですが。と珍しく建設的な(本当か?)お話をしておりますが、折角頭の宜しいお方が寄ってたかって立派な論文をだされておられるのですから、是非そーゆー根源的な問題に切り込んで頂きたいと切に祈念する次第であります。

と、結局本論には突っ込んでませんが、まぁ概ねそんなにややこしい話はしてません。日本銀行の「金融高度化支援」という新しい政策の柱(何だかな〜)に関るお話なんで一応ご一読されておいた方が吉かと。4ページなんですが図表入りまくりで実質2ページくらいなんですぐに読めます。







2005/03/25

お題「2年国債入札その他レビューでも」

白馬に乗った北尾のおじちゃんは相変わらず血色が宜しく声もでかいですなぁ(笑)。最初にニュース聞いた時に「白馬に乗った孫正義」の図を想像して茶を吹きそうになりましたが、その図から「そういえばベンチャー三銃士とかいうのもあったなぁ」なんて思い出し感慨深いものがありました。あれから5年も経ったのか・・・・・


○落ち着いた入札ではあったのですが・・・・・

昨日実施された2年国債入札。ここのところ債券相場全体が堅調推移する中で何となく放置され状態にあったゾーンでして(まぁ下がっている時もあんまり下がってませんでしたが)、おまけに昨日の前場も結構頑張って売っている雰囲気で、入札直前の前場引け時点での業者間取引気配は0.125%(=99円95銭)が最終出合いになっていました。って言っても0.125%のビットを叩いてから売り気配にした形で0.13%が叩かれる気配は毛ほども無かったんですが。

ただ、上記のように「頑張って気配を安くしている」って雰囲気がアリアリでしたんで、事前のプライストークでは「まぁ95銭はあんまり期待できませんなぁ」ってなもんでして、「4月債なんでいきなりシェア確保攻撃が出たらやだな〜」ってお話(昨日あたくしが申しあげたような動き)もありまして、「96銭(=0.120%)按分はさて幾らでしょ?」っていう話になってました。

これで昨年3月の再来ですと、「仕方が無いから97銭に札を入れますか」ってお話になるんですが、さすがに割高入札は馬鹿馬鹿しいですなぁって事でプライストーク段階から「97銭は勘弁でしょ」ってなっておりました。結果もその通りになりまして、平均落札価格が99円96銭で、懸念されていた按分比率も87.6%となり「結構まともに入ったじゃん」というのが第一感でありました。

ちょっと市場で「???」となっていたのは、どうも某最大手証券さまの落札結果が「ゼロ」らしいという話になった時。応札倍率を見ると例によって75倍だのという素晴らしい数字になっていたんで、99円95銭に按分狙いの巨大な応札があったものと推測されるのですが、まさか某大手さまが札を読み間違える訳はないと思うので、「96銭イラネ」って事だったんでしょうか。その割には(債券相場そのものが上昇した事もありますが)落札結果発表後から0.125%にはがっちりビットが入っておりまして、最終的には0.12%のオファーが業者間売買で全部買われてビット残りとなっておりましたんで、まるっきりニーズが無かったというわけでもないようなんですが・・・・・ちょっと不思議でした。


てな訳で、某大手様が行かなかった(市場観測)のも「落ち着いた入札」となる要因になったようで、入札結果が穏当だから安心して良いのかというとちょっとまだよー判らんってのですが、まぁ期末ですんで大人の事情もあるのかも知れませんし、本当の「入札スタンス」は4月頭の10年国債入札まで待たないといけないようです。いやまぁ某大手証券さまが普通に落札してこの結果だと安心だったんですがねぇ・・・・・・


○そんなに買いを待っていたですか!

一昨日の債券市場ではFOMCを受けて下がったら買いがご到来の図で米国長期金利が0.1%上昇しているのに円債は全然下がらずで、後場からいきなりイールドカーブ全体に買いが入ったかのような動きで金利絶賛ご低下。で、昨日の債券市場でも前場は何となく弱そうな動きだったんですが、後場になるとこれまたいきなり相場上昇の巻と相成り絶賛連騰とあいなりました。

決算期末ですからそんなにもう動きはないでしょ何て思っていたら相場が動くというのはまー良くある話ですけど、それにしてもここまで買い圧力があったとは正直驚きました。そんならもっと安い所幾らでもあったんですが・・・・・・まぁ運用しておられる方面の懐具合は不肖あたくし存じませんので勝手なごたくで恐縮至極ではありますが。

5年0.6%、10年1.4%、20年2.0%というポイントを悉く突破して迎えた本日の相場で値持ちするかどうかが注目ですな。



○良く見ますと・・・・って奴でして(雑談)

昨日あちこちで「地価下げ止まりで三大都市圏中心部では地価絶賛反転上昇」などと威勢の良い報道が行われた公示地価のニュースでありました。「そんなもんなのかなぁ」と思いつつ朝刊の「東京都の公示地価」コーナーをのんびりと眺めておりましたが・・・・・・

まぁ確かに都心の一角は公示地価絶賛上昇しているんですが、例えば商業地区を見ると台東区と墨田区では全地点(手元の新聞ベースですが・・・)で前年比下落、江東区は概ね横ばいも上昇しているのは築地市場移転と鉄道(ゆりかもめ)開通の恩恵を受けそうな豊洲4丁目だけとなっておりますわな。ちなみに中央区でも銀座なんぞは絶賛上昇ですけど、日本橋兜町がまたまた大下落してまして何ともトホホでございます。ちなみに中央区の商業地でも上昇しているのが銀座、日本橋(の概ね中央通り=地下鉄銀座線沿い)に八重洲と言った界隈なんですが、そこをちょっと外れるといきなり前年比変わらずとか微減といったのがちらほらと言う事で、まぁ「不動産局地バブルは周辺の需要を食っているんじゃネーノ」っていう直感的感想を裏付けるような数字でありました。

だからどうしたと言われると困るんですが・・・・・^^



○ロイター通信の中原審議委員インタビュー(メモ)

時間の関係上メモ箇条書き(汗)。

・当座預金残高目標が維持できる状況での目標引き下げは明らかに金融引き締めだが、技術的に維持が困難な場合にディレクティブの表現を変える事によって対応する

→それは詭弁じゃねぇのかと小一時間(略

・2005年度中のデフレ脱却見通しには否定的

→だったら残高維持の姿勢を見せた方が良いんじゃねぇかと小一時(略

・特殊要因を除いた財の物価はマイナス幅が縮小しゼロ近傍

→いざとなったら政策委員会はこの理屈を持ち出すのではないかと言う悪寒




2005/03/24

お題「相場雑感その他」

○内部要因で動きますモード

米国10年国債が前日比0.1%上昇したからちったぁ円債も下がるかと思っていたら何と先生前日比17銭高。まぁ平均株価が下がったのもありますが、まーこの期に及んでもまだ買いたいお方が沢山(かどーか知らんが)おいでだったということのようですな。だいたいそういう状況の時ってのは理屈後付けなんで、一昨日公表された2月の金融政策決定会合議事要旨で財務省出席者が出した意見(昨日のドラめもんでご紹介しましたが)が「当座預金目標残高引き下げを強く牽制する」という点を買い材料扱いモードになっちゃったりもしていたようですな。既にその話は財務大臣や事務次官から何度も出ているんですが、都合のよい時だけ材料扱いするのは相場の得意技(^^)。

てな訳で、公示地価が下げ止まりを見せようが、ドル円水準が105円台後半になろうが内部需給要因最強といったところですなぁという感じ。結局毎度毎度お馴染みの10年1.4%5年0.6%に吸い寄せられる展開になりました。いやはや何と申しますか先日来の下げは何だったんでしょうなぁって所であります。まぁそもそもは余計な発言(講演)が市場に燃料を投下したからなんですけど。


○下らない意味で来年度を占う入札

本日は2年国債の入札。入札自体はまぁあまり面白くも無いものになりそうなんですが、ちょっとだけ注目するネタがあるとすれば「新年度発行債券の1発目」の入札だという点ですな。

昨年の3月に行われた4月発行2年国債の入札はと申しますと、超越的に取り上がり入札になってしまいまして、某大手証券様が殆ど1社で落札遊ばれましたという凄まじい展開。以前てめぇが書いた駄文を読んでみたらやっぱり事前に「10月から導入されるプライマリーディーラー制度に向けてシェア確保の割高入札になるでしょうな」などと書いておりましたので、まぁ世の中それなりに割高入札を覚悟していましたが、入札結果はそれをも斜め上に逝ってしまう豪快な結果になっておりました。

確か前場引け時点でのオファーサイドの1銭上の按分が1%とかいう無茶苦茶な結果で、2銭上に入れないとまともに落札できないっていう結果で、おまけに市場観測では大手一社が1兆3000億円強を落札、次に多く落とした業者がが500億、200億ってんですから恐怖寡占モード。

で、その後は別の大手さまが報復攻撃の積りなのかどうかは知りませんが、対抗するかのように大量割高落札をしたりしちゃって、本年度上期の国債入札は超大国の全面戦争状態になってしまいました。もう戦場でばっかんばっかんと巨砲大砲を撃ち合うの巻って状態でして、「入札取り上がり割高入札合戦」が半年近く続くという実に馬鹿馬鹿しい戦争モードでしたわな。

まぁ最近はさすがに入札でアフォのように取り上がりすぎた弊害が出てきて、入札が前場引けの実勢から割高になりすぎるから投資家様が入札段階じゃなくて落札後の割安化を狙うようになっちゃったり、体力消耗しちゃったりと心温まる展開になったんでかなーり入札が真っ当になってきたんですが・・・・・・

年度替りでまた同じ下らねぇ取り上がり合戦モードに点火する事の無いように願いたいですが、正直だいぶ懸念しております。「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」ってのは鉄血宰相ビスマルクの名言だったと存じますが、経験にもあまり学んでいないと思しき動きが多い「まーけっと」ってのはまぁ何なんでしょうなぁと我が身を振り返りつつ思うのでありました。


来年度の入札が割高合戦復活になるのか、それとも引き続きまぁ妥当な水準での入札が継続してくれるのかは今回の2年と年度替り一発目の10年でほぼ読めると思います。

#すんげぇ下らねぇ話を延々引っ張ってしまった。


○ペイオフ解禁と公示地価と愛知万博(与太話)

公示地価が底打ち状態になってきましたって結構なニュースが出ておりましたが、仔細には見てませんし大体あんまり普段関心を持ってみている話じゃないんですが、感覚的には「下げ止まりは判るけど上昇してるの??」って所ですか。まぁ地面に関しては規制緩和で利用価値が高まった効果がここへ来てやっと出てきた(から大規模再開発が多い訳ですが)って事の反映なんでしょうな。再開発とは無縁の小規模建築密集地域の地価ってどうなのよっていう気はしますし、こんなに新築物件が出てきて需要はあるのかよ(結局既存物件とか郊外物件に皺寄せが来るんでしょうが)ってのは相変わらず気にはしております。

というようにあたくしが気にしても、世の中雰囲気がそっち方面に向かえば不動産投資再来になる(というか既にそういう状況ですが)ので、そうなりますとまたまた人気化するというお得意の展開が発生しても何らおかしくない訳で、絶賛借家住まいのあたくしははてどうしたもんでしょうなぁと思案に暮れるのでありました(^^)。

相変わらず世の中を斜に構えて暮らしているあたくしが最近思いまするに、この手の「雰囲気」ってのが随分流れとして定着するもんだなぁって思う次第でして、昨年の4様ブームもそうなんですが、前評判が全然無かった愛知万博がどうも人気化するらしい(ついこの前までは全然見向きもされなかった愛知万博の前売り券が気が付けば絶賛大人気だそうな)というお話を聞いて益々その感を強くしております。

そんな中でペイオフ全面解禁にあわせて最近はメディアで「ペイオフ全面解禁対策で預金以外の投資も」というような宣伝が目に付く上に昨年12月からは銀行での証券仲介業が認められてあちこちで預金客へのアプローチも絶賛展開中のようですし、まぁあたしゃー「ペイオフ対策で預金から投資にシフトってそりゃ話の筋が違いませんか?」と思うのですが、これまた世の中雰囲気をそっちに持っていくということになっているんでしょうかねぇと思う今日この頃であります。

なにせブームが到来するとそっちに走るというのは日本伝統芸能ですから。







2005/03/23

お題「2月16、17日の決定会合議事要旨」

債券相場のほうはと申しますと月末まででかい入札がない事もありまして何となく下がりにくい(今朝は海外要因がありますんで微妙ですが)という感じの動意薄相場でございます。そんな中で昨日は2月に実施された金融政策決定会合の議事要旨が発表されましたが、既に当座預金残高目標引き下げ騒動で大騒ぎをやってしまったので何か反応が全然ありませんでした。

で、金融政策に関る議論に関して読みますと、当座預金残高目標問題の論点整理状態になっておりますので、まーそのあたりからチェックしておきませう。大体今まで言われてきた話ではありますがこの機会に。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050217.htm

つー事で「V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」以下の部分なんで議事要旨の最後の1ページ半(実質8ページなんですが)を読むの巻です。


○(政策論ではないですが)資金需給が狂った場合の見方

当座預金残高目標と言いましてもまぁ当日に予期せぬ資金需給のぶれが生じてしまった場合はどうなるかって話が最初のあたりで言われています。

『何人かの委員は、資金需要が予想外に大きく振れるような場合には、当座預金残高が30兆円を幾分下回ることが起こらないとは言い切れないと述べ、万一そうした事態が起きた場合は、出来るだけ早期にこれを解消することが必要であると指摘した。その上で、こうした調節運営であれば、現在の金融市場調節方針が目標レンジを「程度」で示しているとおり上下に若干の糊代をもった枠組みであることから、金融市場調節方針に沿った運営と言って良いのではないか、との考えを示した。』

まぁこの辺に関しては市場コンセンサスと一致するのではないかと愚考しております。糊代がなし崩し的に拡大されると扱いに困りますが。以下は政策論、多くの委員が見解を述べたそうで。

『また、多くの委員は、先行きの調節運営の考え方について見解を述べた。』

個別意見に関して突っ込みを入れるのは最後の方で、というか本日の駄文の趣旨は意見整理でして、あたくしの意見は既に耳タコかと存じますんで(^^)。


当座預金残高目標の引き下げまたは容認に近い見解

○金融システム不安対応の部分は引き下げ可能という説

『ある委員は、量的緩和政策継続の3つの条件が満たされるまで量的緩和政策の枠組みを堅持しつつも、ペイオフ全面解禁を経て金融システムの安定が確認された際には、過去金融市場の安定確保を目的に当座預金残高目標を引き上げてきた経緯を踏まえ、市場の状況等を確認しながら慎重に減額していくことが適当であるとの意見を述べた。』


○技術的な問題という説

『別の委員は、この問題は、政策というよりは技術的な問題と捉えるべきであると述べた。』


○微妙なんですが「説明をすれば出来る」ともいえそうな態度留保

『何人かの委員は、先行きについては様々な不確定要因があり、今の時点で言えることは、景気・物価情勢を的確に判断した上で、実際の金融市場の状況やオペの応札状況なども丁寧に確認するとともに、市場や国民の受け止め方、将来の政策運営への影響等も踏まえつつ、慎重に検討していくことが適当ではないかとの考えを示した。』


当座預金残高目標の引き下げ反対の見解

○引き下げにメリットがないという説(こういう言い方は初めて見たかも)

『これに対し、ある委員は、当座預金残高目標の引き下げは、そのマイナスの影響と比べて、メリットがほとんどないとの見方を述べた。』


○量的緩和政策(なのか時間軸効果なのかという点は微妙ですが)が期待に働きかける点を重視した説

『日本銀行におかれても、このような基本スタンス(注:デフレ脱却の為に政府・日銀が一体となって取り組むべきだということ)のもと、平成13年3月以降、量的緩和政策を開始され、これまで順次日銀当座預金残高目標を引き上げ、これを維持することを通じて、こうした政策スタンスを対外的に示されてきたものと理解している。』

『現状においても、民間主導の持続的な景気回復の達成およびデフレ克服に向けた最大限の努力が必要な状況に変わりはなく、日本銀行におかれては現在の政策内容を継続することにより、こうした日本銀行の断固たる姿勢を市場や国民に示して頂きたいと考えている。』

読めばお判りのようにこの部分は審議委員の意見じゃないです。財務省の出席者からの発言です。


○当座預金残高をマネーサプライと比較的密接に関連させている説

『日本銀行におかれても、政府との意思疎通を密にしつつ、デフレからの脱却を確実にすべく、思い切った金融緩和を続けられることを期待する。デフレ克服には、結果としてマネーサプライが増加することが不可欠であることから、当座預金残高の増減が最近注目を集めていることに鑑み、効果的な資金供給により、さらに実効性のある金融政策運営を行って頂きたいと考えている。』

これも審議委員ではなく、マネーサプライといえば内閣府。おまけですが内閣府の出席者からの発言の続きに謎の一節があります。インタゲ導入しなさいって話なのかな??

『また、金融政策運営に関する透明性の一段の向上に努める中で、デフレ克服までの道筋を明確に示して頂くことを期待する。』



・・・・と言うことで議事要旨を何の芸も無くコピペしておりますが(^^)、反対の見解としてあたくしが勝手につけたお題に関しては財務省と内閣府からの意見をうまく反映しているのかどうかちと微妙。

財務省は「そもそもデフレ脱却の為に当座預金残高目標の引き上げをしているのだがらデフレ脱却してないのに引き下げをするのは変だろう」という原則論というか筋論を言っているという感じですし、内閣府はマネーサプライの増加ペースが相変わらず鈍化している点を踏まえて「当座預金残高目標の引き上げがそもそも不十分ではないか」と言っているようにも思えます。まぁどちらにしても反対である事は間違い無いでしょうな。


まぁ大体上でご紹介した見解(とあたくしが勝手に補足した見解)で概ね本件に関する現状の意見はカバーされていると思います。もう一つあるとすれば総裁が折りにふれて言及する「相対性緩和論」でして、同じ金融緩和政策であっても、状況によって効果が違ってくる(景気が拡大傾向にある時は効果が「押し上げ介入」みたいに大きくなる)っていう話ですかね。


○で、これを見ると政策委員会は当座預金残高目標引き下げに関して・・・

賛成2、反対1、その他6名は態度保留と読めますが、さてその態度保留がどっちの態度保留なのよって感じですわな。まぁ態度保留って事は量的緩和政策の枠組みの範囲内での当座預金残高目標引き下げに関して検討余地があるとしている訳でして、こりゃまぁ5月の決定会合とか4月の議事要旨が出る頃とかの時期はまたぞろ思惑絶賛大浮上の巻って感じなんでしょうなぁという悪寒が致します。

金融政策運営の話以外にも少々「ふーん」って思う部分が無くはないのですが、話題が発散するので本日はこの辺で。



2005/03/22

お題「日銀よお前もか・・・・」

休み明けはおおぼけモードなのですが、3日も休むと・・・・って事で今朝は甚だ簡単に。

○ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について

先週金曜日に上記のお題で機構改革だの今後の日銀の政策運営だのが発表されております。場中にいきなり「ペイオフ全面解禁後の新しい政策運営に関して3時過ぎに発表」ってのが出た時は一瞬何の事かと思いましたがまぁご愛嬌って奴ですか。
http://www.boj.or.jp/set/faa0503a.htm

まぁ「決済性預金全額保護」と言っている時点でペイオフ全面解禁もへったくれもあったものではないと相変わらず思っているんでその時点ではぁはぁそうですかってなもんなのですが、今回の施策は公式発表文を見たところ一応日銀としては政策の基本的なありかたの転換って感じのようですわな。

「基本的な考え方」の冒頭部分にこんな事がかいてあります。

『こうした変化(引用者補足:ペイオフ全面解禁)を受け、日本銀行の金融システム面の対応も、これまでの危機管理重視から、(以下の太字部分は本文中にわざわざ太字にしているものを忠実に太字化したものです)金融システムの安定を確保しつつ、公正な競争を通じ金融の高度化を支援していく方向へと切り替えていく必要がある。』

はぁはぁそうですか。要するに危機管理モードが終了したという事なんでしょうが、この「金融の高度化を支援」ってのはこりゃまた面妖なお話だと思ってその先を読むと、金融機関に対して何でもかんでも手取り足取りな上に、最近では産業政策までやろうとしてませんかっていう勢いで昔の大蔵省もビックリの金融庁さまを彷彿させる記述がございます。


○金融の高度化支援ねぇ・・・・

2段落目はまぁ普通の話(やや気になる点もあるが突っ込み省略)ではありますが、3段落目以降が「金融の高度化支援」話であります。

で、内容を突っ込みながらネタにする前にあたくしの思うところを申し上げますと、金融庁に影響されているのだか何だか知りませんが、日銀が以下にご紹介するように金融機関に対する「高度化支援」みたいな事をやるのはどうかと思いますな。どうもいまやっている(またはやろうとしている)事は、古き昔の「行政指導」と思いっきりかぶるお話(金融庁も日銀も)に見えます。金融自由化だの構造改革だのってのは確か「一定のルールを適用して原則自由化。監督官庁はルールが正しく運用されているかどうかの公正な審判役」ってのが骨子だったと思うんですが、そーゆー精神はどこに逝ってしまったんでしょうなぁ。

と申しますか、やたらと「ご指導」をした挙句に問題が発生した場合にはだれがどう責任を取るんでしょうなぁと思いますと益々寒いものを感じる訳であります。どこぞの役所みたいに「無税償却は認めないけど繰延税金資産認めてやるから引き当て増やせ」と指導した後に「繰延税金資産の過大計上だ」などと梯子を外して涼しい顔をするのでしょうかね。ま、なんちゅうか困った話だ。では本文に突っ込み。タグのようなものはあたくしの補足(太字部分スタート〜エンド)です、念の為。


○鼻息荒く「かくあるべし」

『一方、金融の高度化は、今後、日本経済が持続的、安定的な発展を遂げていく上で、重要な前提条件となる。日本経済を取り巻く環境が急速に変化する状況において、円滑で効率的な資金の配分を実現し、経済全体の活性化を図っていくためには、より多様な信用供与の仲介チャネルが存在し、金融仲介構造が柔軟で頑健なものであることが必要である。』

いやまぁ重要な前提条件だとか必要だとかそう考えるのは結構なのですが、何と言うか「かくあるべし」みたいな理念先行の香りが致しまして、大昔に読んだ小説「官僚たちの夏(城山三郎)」ですなぁなどという感想でございます。つーかそういうものは「かくあるべし」から生まれるものではなくて、その国あるいは経済主体が必要であるとなればちゃんと発生する物ではないかと思うのよ、あたしゃー。

従って本当に必要なのは、新たに生まれる金融手法に関して不必要な規制(その手法が単に詐欺だとか犯罪的な手法だったら規制せにゃーなりませんが)を行わないようにするとか、法律面などでの整備を行うとかってお話だと思うんですけど。

と、思いながらその次に参りますと、益々「かくあるべし」攻撃が爆裂。



『そして、そうした金融仲介構造の実現のためには、融資慣行の見直し、金融機関のリスク管理の高度化、クレジット関連市場の整備など、金融システム面でなお広範な取組みが求められる。

この太字部分が一々突っ込みどころというのは狙ったギャグなのでしょうかって感じですが、融資慣行の見直しってのは金融庁がお好きなネタ。リスク管理の高度化ってのはバーゼルU絡みなんでしょうが、そもそもバーゼルUは何度か話のネタにしているように「中小零細企業向け小口貸付のリスクウェイトが大企業向け貸付のそれよりも何故か低い」とか「金融機関の金利リスクを図る際に用いる標準的な金利ショックがイールドカーブのパラレルシフトという基本的に有り得ない事を前提にしている」などと精緻化しているように見えても「はぁ何ですかそれは?」ってのがある訳ですな。それをベースに「高度なリスク管理」のご指導をしても、本当に問題が発生した場合に高度なリスク管理とやらで想定しているような結果で収まるんでしょうか?

リスク値の計測そのものは要するに計算の世界でして、問題はその前提条件が実態に即しているかどうかなんですが、だいたい「最新の金融工学を駆使した手法」ってのは計算の精緻化方面に走りたがるらしいんでご注意ありたい所でありますわな。まぁそりゃ世の中全てを前提条件に組み込む事は不可能なんで、使う側はモデルの前提条件がどうなってるかを知っておく必要があるということですわな。何だか話が逸れましたが。


○あっはっは

『このような金融高度化が関係者の努力で進展していけば、日本銀行の金融政策運営面でも、その効果がより効率的に経済に及んでいくものと考えられる。』

これだけ散々「かくあるべし」話をぶち上げておいて「関係者の努力で進展」といきなりひとごとモードになるのは如何なものかと。まぁそりゃ「私たちが絶賛ご指導する」と言うのは問題ありだってのは判りますがねぇ。


『金融の高度化に向けた民間の取組みを支援するため、日本銀行としては、考査・モニタリングにおいて、金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を促すことを通じて、新しい業務展開などの動きを積極的に後押ししていくほか、組織体制、金融機関との対話チャネルなどの面でも工夫を凝らしていく。』

と書いてますが、要するに「乃公出でずんば蒼世を如何にせん」って事なんでしょ。まぁ後押しされたらその先は崖でしたって事のないようにして頂きたいものでございます。

ちなみに、基本的な考え方の続きは上記日銀WebからPDFファイルへのリンクがありますので、その辺でもご覧頂けるとなお「???」なのですが、その5ページ目あたりなんぞを見ておりますと、今般の組織改変に伴い「金融高度化センター」なるものが設置されるようでして、「公開セミナーの実施」という目玉施策が予定されているらしく、あんたは金融コンサル会社かと突っ込みたくなります。その部分を引用。

(公開セミナーの定期的開催)

金融の高度化に関する諸問題に取り組むための前提条件として、問題の所在、解決の方策等に関して金融機関等と広く理解を共有する必要がある。そのため、内外の金融機関の経営者や実務担当者を主たる対象とする公開セミナーを定期的に開催する。本公開セミナーは、考査・モニタリングと並ぶ、金融機関等との間の第三の対話チャネルと位置付ける。

テーマとしては、@試算の経済価値把握のための高度な手法の開発と共有、A融資を巡る金融慣行のあり方、B金融情報セキュリティを巡る経営上の問題と解決の方策、C新しい金融業務の展開に見合った会計処理のあり方、D新たに実施する考査・モニタリング技法の解説、などが考えられる。

(引用終了)いやまぁそうですかとしか言いようがありませんが、何か既に「頭でっかちの人たちが寄ってたかって高度な金融手法の話をした挙句、使えない施策を押し付けてくる」という予感が思いっきりするのはあたくしの杞憂ですかそうですか。


○というわけで

まぁこういう方向になりそうだなかというのは昨今の日銀の偉い人たちの言動を見ておりますと予想はできない事もなかったのですが、金融庁と日銀がせっせとご指導(つーか金融庁の場合は強制みたいなもんだが)する金融機関って何なんでしょうなぁというのが感想でございました。まぁ碌なもんじゃあねぇな。





2005/03/18

お題「総裁記者会見を不真面目に分析する」

内容はいわずもがなという説はございますが(^^)。

○その前に20年国債入札に付いて少々。

20年国債入札は久々に盛り上がり入札になりましたな。寄付きからいきなり相場がバッカンバッカン上昇したのでおひおひ大丈夫かって感じだったのですが、久々に強い入札でした。と申しましても、昨日の入札の場合は前場の引けギリギリに業者間スクリーンのビットサイドを叩いてオファーを残すという動きによって最終気配が2.07%オファーになった訳でして、実質的には2.065%−2.07%の気配だったと考えますと、まぁ50銭(=2.064%)の最低落札価格ってのはそんなに驚きの価格でもありませんでした。ただ、入札前のプライストークでは「こんなに相場水準が上昇して入札して大丈夫なのかよ」ってな感じで結構弱気の人も多くて、もうちょっと下に流れるという雰囲気だったのでより「強い入札」という印象が有ったのかと思います。

入札前は10年ゾーンと20年ゾーンの力関係は10年>20年だったんですが、当然ながら入札後は20年>10年と相成りました。しかし2.1%あたりで延々ともみ合っていたはずなのにいくら日経平均が12000円を手前に足踏みしているからと言ってもいきなり入札前から上昇して入札後なお上昇しますかぁと少々驚きの相場でありました。ど〜せ新規資金の流入でもあったんでしょうけど。。。。

#しかし「相場が動かん」と愚痴ってみるもんですなぁ(苦笑)。


○と言うわけで総裁記者会見

素でやっているのかギャグでやっているのか実に判りかねるお方が中央銀行のトップにいるという国というのもお洒落なものでございますなぁ。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0503a.htm


・一応最初だけは真面目に分析

冒頭の質疑応答では金融経済月報についての公式見解について補足説明しております。この中で総裁は「経済情勢の基調判断は変えていないが、個別に見ると明るい材料がある」っていうような纏め方(金融経済月報と同じといえばそれまでですが)をしております。(引用すると長くなるので上記URL先の最初の質疑応答を読んでくださいね^^)

まーこーゆー言い方をしている時は本音ベースでは景気に関して強気の見方に転じているというケースが往々にしてあります。まぁディーラーみたいに売りと言っていてもその1時間後には買いになっていたりするような訳にはいかんですから、そうそうコロコロ基調判断を変えるわけにはいかずってのが背景にあると勝手に想像しております。よって「基調判断は変わっていない」というのをあまり信用しないのが吉であるというのが結論でしょうな。

で、世の中皮肉なものでして、日銀が先行きの景気判断を上方修正しているのに債券相場は絶賛ブルフラット。需給要因恐るべしと言ったところでしょうな。あっはっは。


・猪突猛進で後ろを振り返りませんですかそうですか

昨日ご紹介した後ろを振り返らない云々発言。就任2周年を迎えてこの2年間の感想をどのようにお持ちかという問いに対して。

『1年目にもそうしたご質問を受けたのを思い出したが、その時お答えしたのと全く同じ答えになるが、私は仕事をする場合──それ以外の場合もそうだが──、どこかで一区切り置きながら物を考える習性を持っていない。一貫した姿勢でやり遂げるべきことはやり遂げていかなくてはならないという姿勢である。亥年生まれなので猪突猛進、前向きにばかり進んでいるというわけでもないのだが、時々立ち止まって後ろを振り返るというのは私の習性に合わない。』

金融政策だけじゃなくてお仕事全般ってのは「試す」→「失敗」→「改良」→「試す」→「うまくいくかもしれない」ってのが基本じゃないかと思う次第なんですが、大先生におかれましては自分のやっていることを振り返って反省するという習性は無いのでしょうか。何か物凄く恐ろしいんですが。もしかしてあなたさまは牟田口廉也中将の再臨ですか(昭和10年生まれなので再臨は物理的に無理ですが^^)と申しあげたくなりますなぁ。レビューをしない政策運営をしますと言っているようにも思えて・・・・(^^)

で、このくだりをきっちりと会見要旨に掲載した事務局の勇気に関しては誠に素晴らしいものを感じる次第であります。もしかしてこれってささやかな抵抗あわわわわわ。


・長期金利牽制発言(講演)に関する突っ込みに関して

質疑応答の最後の方でこんな質疑が(^^)。

『3点伺いたい。1点目は、繰り返しになり恐縮だが、2月28日の内外情勢調査会で講演された際に「長期まで含めたイールド・カーブのフラット化についても」という表現があった。あの時点として、フラット化しているないしは急激にフラット化する懸念があったという考えで言われたのかどうか。』

2点目の前にこの部分の応答を。

『再度あの時の講演の全文を良くお読み頂きたいと思う。特定の時点の相場形成について私は特別にウォーニング(警告)を発したということは痕跡としても残っていないと思う。ごく一般的なあり方として、長期まで含めたイールド・カーブのフラット化についても市場が緩和の長期継続を過度に織り込むような価格形成を行っていないかという目を常時持って見ていくということを申し上げた。その時の相場形成がおかしいというコメントは一切していないわけである。一般論として申し上げたに過ぎないということである。』

あたくしは頭が悪いせいか牽制発言にしか読めなかったのですが、「痕跡としても残っていない」ですかそうですか(しかし総裁は語彙が豊富で面白い)。

で、誠に頭の宜しくないあたくしが思いまするに、一般論として言うのであれば「一般論として長期にわたる緩和政策の弊害はこれこれこのようなものがありますが、現在はCPI時間軸のフレームワークに沿って政策を運営しておりまして、CPI時間軸のメリットを重視しています」とかいう言い方があるのではないかと思いますがどうなんでしょうなぁ〜。で、2点目とその関連答弁がまた笑えます。


・部下が勝手に書いた講演英訳は知った事ではないんですかそうですか

『2点目は、少し細かいことかもしれないが、3月4日に財務省で開かれた国債市場特別参加者会合で、参加者の中からクレームが出ており、日本語では「長期まで含めたイールド・カーブのフラット化」となっているのだが、英語をみると「long-term interest rates」と単なる長期金利となっている。その会合の出席者が議事録で残しているところでは、「こういう簡単な表現だから完全に長期金利だ」と名指ししていて、「外国人が反応したのも無理はない」と言っていた。そもそも英語と日本語で違いがあるわけである。その差というのは一体何か。』

まぁ言われて初めて英文の講演要旨を見たあたくしもうかつでしたが、そういえば昨年6月には武藤副総裁がロンドンで行ったスピーチに関して某日本橋方面在住外資系証券のストラテジストさまがそれはあなた誤訳じゃないですかねぇと言いたくなるような紹介の仕方をしたレポートを出して金融市場にショックを与えたという事例があったのを思い出しますが、今回は日銀Webに掲載された英文の講演要旨(http://www.boj.or.jp/en/press/05/ko0502a.htm)ですな。

確かに「VI. Effects of Quantitative Easing」の件の後半段落9行目にありました(あたくしが手で打ってるのでスペルミスあったら勘弁)。

Similarly, attention now needs to be paid to whether or not low long-term interest rates are consistent with the likely duration of accommodative monetary policy.

「なう」にーずとぃーびーぺいどですよ先生って感じですなぁ。気が付かなかったあたくしこれはとりあえず今年最大の不覚でありました。そりゃ売るわ。

で、この2点目の質問に関してはさっき引用したように、そんなことは毛ほども言ってませんが何か?って言われちゃったので、記者様はもう一度質問。

『英語訳と日本語では何か違いがあるのか。』

この回答が中々お洒落なんですが。

『その日に英語で講演したわけではない。私がもし英語で講演したとしたらそういうクレームを受け付けることもできるが、日本語から英語への翻訳は常に全く差のないかたちにできるかどうかという問題ではないかと思う。』

いや「俺は知らん」って言われても困るんですが。部下が勝手にやったので俺様は知りませんってこーゆー時は通らない理屈だとおもうんですが。大体からして英文要旨だってチェックしてるんじゃねーのかって思うんですがまぁそこまでは良く判らん話なので突っ込み避けますが。どっちにしても英文翻訳した部署の皆様ご愁傷さまであります。

ま、講演時点では長期金利の過度な低下(苦笑)について牽制する意図があったんじゃねーのかという疑惑は全く晴れませんなぁという感じです。


・というわけで不真面目な分析をしましたが

正直、あまり総裁発言の一挙手一投足に反応してはいけないというのが結論になるとは思うのですが、ネタも無い時は何かに反応したがる市場が勝手に反応してしまうのは如何ともしがたいところでして、まぁ総裁落ち着けというところですな。エンターテイメントだと思ってみていればそんなに腹も立ちません。困ったもんですけどね。。。。。





2005/03/17

お題「景況感と物価先行き判断が微妙に強気復活のようで(3月月報)」

20年国債入札だというのにNYで株安とは甚だ迷惑ですな。上ったらインデックス系のリバランスか新規資金流入しか買いがなくなっちゃうんでご勘弁願いたいですな。

さて、100人のうち200人が現状維持を予想した金融政策決定会合ですが、金融政策は兎も角として、発表された金融経済月報はあたくし的にはちょっと意外感がある「強気」な内容になっておりました。例によって2月(=1月とまるっきり同じ内容でした)分と比較検討します。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0503.htm

○景気の基調判断をやや上方修正

(3月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整の動きを伴いつつも、基調としては回復を続けている。』
(2月)『わが国の景気は、生産面などに弱めの動きがみられるものの、基調としては回復を続けている。』

こう比較すると、1〜2月時点で「生産面など」と言っていたのを「IT関連分野」と限定列挙した形になっていると読めます。全体基調に関する「生産面の弱さ」という所を削っており、判断をやや確り目にさせたと言えそうですな。


基調判断の個別展開部分を順に見て行きます。まずは輸出と生産。

(3月)『輸出は持ち直しつつあるが、IT関連分野の在庫調整が続いていることなどから、生産は横ばい圏内の動きとなっている。』
(2月)『輸出が横ばい圏内で推移する中で、IT関連分野の在庫調整などから、生産に弱めの動きがみられる。』

輸出も生産も基調判断を上方修正。やや弱めとなっている生産の要因としてあげているのが2月の「など」が消えて基調判断と同じように限定列挙型になっております。次は設備投資。

(3月)『一方、設備投資をみると、企業収益が改善基調を維持するもとで、製造業を中心に増加傾向にある。』
(2月)『一方、設備投資をみると、企業収益が改善するもとで、引き続き増加傾向にある。』

微妙に言い回しが変わってますが、改善するってのが改善基調を維持っていうのは良くなっているのか足踏みなのかよーわからんですな。いつもながら雇用、個人消費、住宅投資、公共投資に関しては2月と同じなので引用省略。


○先行きの景気に関しても微妙に強気っぽい

『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』ってくだりは同じですが、輸出や生産に関る部分でまた微妙に表現が判断前進。

(3月)『すなわち、海外経済の拡大が続き、内需も増加を続けるもとで、IT関連分野の調整の影響が徐々に弱まるにつれて、輸出や生産は増加していくとみられる。』
(2月)『すなわち、当面はIT関連分野の在庫調整の影響が残ると予想されるが、海外経済の拡大が続き、内需も増加を続けるもとで、輸出や生産は、基調的には増加していくとみられる。』

先行きとしてはIT関連分野の調整が終了に向かっていくと輸出や生産は増加しますなぁって話です。2月時点での判断は絶賛調整中なので、先行きの輸出や生産について「基調的には増加」という日和見的な表現をしていたのと比較するとこの部分に関しても判断を前進させているということが見えますな。日銀結構強気ですなぁ。雇用者所得と公共投資に関しては2月と同じなので引用略。


○物価に関して

現状判断部分。

(3月)『物価の現状をみると、国内企業物価は、昨年末にかけて原油価格がいったん反落したことなどから、足もと弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、電気・電話料金引き下げの影響もあって、小幅のマイナスとなっている。』
(2月)『物価の現状をみると、国内企業物価は、昨年末にかけての原油価格の反落などから、足もと弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。』

国内企業物価の足もと弱含み状態に関しては昨今の原油価格上昇を意識して「いったん反落」という言い方で先行きの反転を意識させてますな。実際この後に「先行き強含み」って書いてます。また消費者物価に関して小幅マイナス状態に関して「電気・電話料金引き下げの影響」を強調しておりまして、最近日銀審議委員から出ている「財の価格は基調としてゼロ」って話と平仄をあわせているのがちと気にかかる所ではありますなぁ。

先行きに関して。

(3月)『物価の先行きについて、国内企業物価は、内外商品市況の上昇を受けて、強含んでいく可能性が高い。一方、消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、電気・電話料金引き下げの影響が続くこともあって、小幅のマイナスで推移すると予想される。』
(2月)『物価の先行きについて、国内企業物価は、内外の商品市況次第であるが、当面、弱含みないし横ばいで推移する可能性が高い。一方、消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、公共料金引き下げの影響などもあって、小幅のマイナスで推移すると予想される。』

というわけで先行きの国内企業物価については強含みを予想。消費者物価については小幅マイナス推移と毎度お馴染みの表現ですが、消費者物価のマイナス推移の要因として電気・電話料金と言う形で明記しているのが、上で書いた事と同じ理由で少々気にかかる所ではあります。


なお、金融面に関してはマネタリーベースの数字が実際に出てきた統計にあわせて直しただけで基本的にまるっきり同じ話なんで例によって引用省略。


結論としては「細かく判断を前進させてますなぁ」という所でしょうか。


○おまけ:総裁記者会見に関して

例によって会見要旨は今日日銀のWebにアップされますんでそれを見てからなんですが、情報ベンダーから出てきた記事を見ていて思わず茶を吹きそうになったのが2本ほど。ソースは時事メイン。

その1はこの前のBIS総会での記者会見と同じですが「2月28日の講演は一般論として言ったに過ぎない」って話。「特定の相場水準を意識して話をした訳ではない」って事らしいんですが、それなら最初から一般論として話をするとか、行き過ぎた金融緩和長期化観測による長期金利の過剰なフラット化の例として一昨年の20年金利1%割れの話をするとか、話の言い様ってものがあるでしょうと思いつつ。

まぁ本当は漠然と相場のイメージをしていたんでしょうが、いきなり「福井ショック」などと口の悪い人たちに言われて非難轟々だったので慌てて一般論とか言ったんじゃねーのとか意地の悪い見方をしたくなりますな、あっはっは。

その2は就任2周年って事で感想を問われた時の答えなんですが、「私は立ち止まって後ろを振り返る習性はない」と(実はなお笑える前置きもあったとの事ですが)ご発言になられたそうです。

・・・・量的緩和政策のレビューはしないということですかそうですか(苦笑)。

特に2番目の方は大笑いさせていただきました。さすが芸風を外しませんな。


ではでは。





2005/03/16

お題「相場レビュー/いつかみた理屈」

○いや〜相場が動いちゃいましたなあっはっは

昨日のドラめもんで「動かねぇ相場」などと書いた途端に債券市場は先物ベースで先週2回つけた高値を更新するという実に素晴らしい上昇をしちゃいました。我ながらあまりの展開にもう涙が出てしまいます。こういうのを「ネガティブインディケーター」と申しますが、株式市場の一部で「髪(変換ミスではない)」と言われて多くのファンがいるどこかの誰かさんにはまだまだ遠く及びません。精進が必要ですな。あれ???

昨日の債券相場なんですが、もともと9年ゾーンの現物国債がやたらと朝から堅調。このゾーンの現物債はどっちかというと10年国債を買った人がロールダウンを取って期間収益確定って事で売りが出がちなものなんで、このゾーンが堅調だと妙に目立ちますし、まぁ何となく現物債取扱い人間をして「相場堅調じゃん」と思わせてくれます。

で、後場の寄り付き後あたりからいきなり先物がスルスルと忍者のように上昇しだしまして長期ゾーンの現物債の売り物が消えるというパターン。先物が引っ張っているように見える上げ方ですが、業者間スクリーンを見ておりますと先物の上昇が止まると今度は現物債が追いついてくるとか、妙にカレントものが確りしているとかの状況を見ると現物国債に買いが入って相場が上昇しちゃったんでしょうなぁという感じであります。まぁ想像の世界になりますが、「現物債に投資家様の買い」→「とりあえず先物を買ってショートカバー」→「相場が上昇したところで現物をカバーして先物を外す」ってパターンでやっているんでしょうなぁという所。特定のゾーンに買いが入るとイールドカーブ上でそこだけやたらと強くなるんですが、そうでも無く相場が威勢良くあがっている所を見ますと、「全体的に買いが入った」というパターンだったんでしょうな。またニューマネーですかねぇ。

超長期国債入札を前にして相場全体が上昇しちゃうというのは入札する側にとっては迷惑至極なんですが。。。。


○15年変動利付国債入札レビュー

入札前のWI取引は最初α=101オファー99.5ビットから始まりましたが、時間の経過と共にオファーが徐々に下がって来まして最後の時点では99.5をヒットするという中々結構な状況。結果はα=100で按分37.8%とまぁ物凄く順当な結果。順当な結果であったがために業者間のセカンダリー売買も全然ぶれずに99円99銭と100円の出合いしかないという大変に落ち着いた状況になりました。

市場観測での大口落札業者の顔ぶれを見ますとだいたい大手銀行系といわれるところが上位を示しておりまして、まぁ順当に銀行業態のニーズが相変わらずあったという事でしょう。期末が近いっていう要因はあると思いますが、それほど盛り上がりが見られなかったのは「アウトライヤー規制対応の買い」が徐々に平準買いペース程度に落ちつつあるという事を表しているのかもしれませんなぁなどと勝手に想像しちゃったりしております。まぁ決算を控えたこの時期にまだ決算対策で大きく売買しなきゃいけない状況にあるってポートは如何なものかと思いますが(^^)。

当面はα=100を心理的なラインとして、上って102、下がって97とかそんな感じ(思いっきり根拠レスですが)の小動きになるという感じなんでしょうかねぇ。などと書いたら暴騰暴落しちゃったり・・・・しませんわな、さすがに。最近イールドカーブ妙に安定してますしね〜。


○これは懐かしいフレーズ

相場話のあとはまたまた日銀ウォッチャーウォッチャーであります所のあたくしの日銀ネタしかも同じ話になってしまいますが(^^)。

昨日の時事メイン(12時28分)でどこぞの証券会社のシニアエコノミストという人が「家計にやさしい金融政策が必要」などというのが出てました。すんげぇ昔懐かしくかつトンデモな理屈を思い出しますなぁと思いながらその記事を拝見しましたらやはりそのトンデモが爆裂している訳で。

まぁ要するに「今までは企業部門の構造調整を促進するために緊急避難的に家計から企業へ富の移転を行っていたが、企業収益が好転した現在は企業部門から家計部門への所得移転を加速させる為に金利を引き上げることが必要。わずかな金利上昇なら構造調整を終えた企業は耐える事が出来る」って話なんですが、何ですかこれは?って感じのお話。

と、思ったら当座預金残高目標引き下げ絶賛キャンペーン中の某短期金融市場レポートにも「ここのところ永田町では、ゼロ金利が預金者に負担を強いていることを憂慮する態度が散見されるようになってきている。」というようなお話が出てまして、はぁはぁそうですかと思っていたら、実は金曜から日経金融新聞で「福井総裁の2年」を聞く、というお題でインタビュー記事が連載開始しておりまして、与謝野馨自民党政調会長のインタビューの中でインタビューワーが「金利生活者のための利上げを求める声もある」って質問しておりまして、何だか大昔の亡霊が復活してきた感がありますわなぁ。(ちなみに与謝野政調会長は「日本の経済が成長しない時代、高い予想収益率がない時代に市場で金利を決めたらやっぱりいまの水準で決まってしまう」っていう言い方で明確な答えはぼかしてますが、まぁさすがに賛意をしめしてはなさそう)

もしかして上記のシニアエコノミストさまにおかれましては、その永田町方面から流れてくる空気(実は永田町ではなくて某新聞社とかが雰囲気せっせと作っているのではという気もしないでもないが)を感じて早速お墨付き用資料を作成したのではないかというのは余りにも意地の悪い読み筋ですかそうですか。

あたくしが物凄く漠然と思いまするに、企業部門の構造調整を促進するために企業部門の問題部分を財政にツケ送りしたという方が正確な話ではないかと存じますが、そうなりますとツケ回しを食らっている財政に対しては低金利の状況がやはり必要。それで資金超過セクターが割を食うから金利を上げろってのは構造改革シバキあげ論をも上回るシバキあげ論ではないかと存じますがどうなんでしょうかねぇ。と、なりますと次の課題は大儲けしておられます企業部門からどうやって財政部門にツケを返済させましょうかという話になるのかも知れませんし、それではちと違うのかもしれませんが、まぁ企業部門が利潤上げてるけどキャッシュ溜め込んでいるんだったらあんまり意味がなさそうだなぁとは漠然と思っております。

企業から家計への所得移転を促進する為に金利を上げるってのはちとトンデモではなかろうかと思いますけど、何か本当にそんな「世論」とやらが復活するのはあまりと言えばあまりって感じなんですが、はぁ(ため息)。




2005/03/15

お題「手ががり材料が一気に無くなるのは何故??」

いきなりお題から泣きが入ってます(笑)。だいたい相場のお話でも。

○動かねぇ相場

金曜日の先物日中値幅は29銭とまぁまぁでしたが、昨日の先物日中値幅は16銭と前日比半減。しかもその動きたるや、寄り付きが特別売り気配(米国長期金利の上昇とGDP2次速報値の上方修正というダブルパンチが効いたんでしょうなぁ)でいきなり前日終値から26銭下げた137円44銭でスタート。しかし寄り付いたと思ったらあっという間に先物は50銭近辺まで上昇しちゃいまして、その後は延々と10年債の1.5毛甘(1.495%)と2毛甘(1.50%)しか値段がつかないという素晴らしい値動きの無さ。動いているのは先物だけで、現物債は何と言うかろくすっぽ動かないという展開でして、まぁこりゃ寄り付きで先物を売ったか買ったかした先物日計り組がせっせと先物をやっているんですなぁという相場でして、これぞ見事な「現物債に動意無し」を絵に描いた展開でございました。

当座預金残高目標引き下げ問題で一相場やって、これで日経平均が12000円にすんなり上昇していれば相場も大騒ぎだったかもしれないのですが、惜しい事に日経平均は上りきらず、機械受注にGDP2次速報値と経済指標も景気に関してイマイチでしたんで、一気に期末モードになってしまったのは誠に遺憾でございます。


○15年変動利付国債

半年くらい前まではこの国債の入札前後はそりゃーもうマーケット大盛り上がりもいい所でして、業者間売買市場のWI(=入札前)取引で売り買いが交錯して売買大盛り上がりで気配もぶれて思惑ぶつかり合いの図した。で、今回はどうよって話をしますと、暫く前からα=100挟みの気配が延々と続いて(最初は100.5オファーの99.5ビットでしたが、昨日は100オファーの99ビット→追記:最終気配は100.5オファーの99.5ビットでした。暫く100オファー出てたんですけどね。)いるだけでろくすっぽ出合い無し(つーか多分ブローカースクリーンでは出合いが無いと思う)という盛り上がりに欠ける展開になっております。

この国債も因果な商品でして、当初はイカサマ値付けにより日本相互証券の終値だの公社債売買参考統計値で全銘柄いつも100円という実に馬鹿馬鹿しい状態。「常に100円で価格変動がないのに期間収益は4年国債並み」という魔法の商品だったのですが魔法は長く続かず。次第に長期金利がフラットニングして気が付くと期間収益が悪化している事が判明したり、発行量がどんどん増えてきたりして今度は需給悪化で売り一色商品。本来イールドカーブのベアスティープ(景気回復に伴う金利上昇ですな)には威力を発揮するはずなんですが、2年前に債券市場が大幅下落した時に一足飛びに「量的緩和早期解除相場」をやってしまい中短期金利が大幅上昇したのでこの商品そのものが「何か金利上昇してもイマイチですなぁ」という状態になりました。

その後、バーゼルUの「アウトライヤー規制」(ならず者規制)に対応する魔法の商品として再度息を吹き返した後は、アウトライヤー規制に向けてポートのリスク(ただし真の価格変動リスクではなく単にバーゼルUにおけるストレステスト対応のリスク値だが)を軽減するために買いがうじゃうじゃやってきて今に至るの巻き。


で、つい半年前くらいは盛り上がっていたんですが、何せこの商品、発行はあっても償還は当分無いという代物。基本的に「償還分の見合いの買い」ってのは無い訳でして、ニューマネーと既存ポートからの振り替えしか需要がないんで、アウトライヤー規制分の「制度プレミアム」はいずれ剥落する方向になるんじゃネーノって話になるかと存じます。

また、将来の金利上昇リスク対応商品としての位置づけはあるんですけれども、現在の日銀がやっている事を見ていると「次の金利上昇局面」は時間軸の短期化リスクが強く意識される時(つーか過去2回の長期金利上昇も時間軸の短期化リスクが意識された時なんですけれども)になります。この時は長期金利も上昇するんですが、中短期金利が強烈に上昇(毎度毎度5年カレント金利が1%になりますわな。10年は2%になりませんが)するのが「金融引き締め織り込み相場」の常ですんで、変動利付国債としてはイマイチ宜しくない展開(固定利付持ったままよりはマシという見方もあるのでそう悲観する事はないですが、理屈の上では時価は下がるでしょう)になりますわな。

まぁそんなことをつらつら考えますと、何だかんだと言いましても需給でややプレミアムが発生している商品ですんで、来年度からの増発もありましてあと10年くらいは償還が無いと思いますと、そんなに喜んで在庫にしておくような商品でもなさそうな感じですな。まぁ入札は堅調なんでしょうが。


○金融政策決定会合な訳ですが

現状維持の可能性120%といったところですんでそれは無問題。で、あたしゃー最近他の業者さんのレポートをあんまり見ない(知人のだけしか見ない)のですが、どうも経済ニュースやら情報ベンダーを見ておりますと短期市場の人(って該当者1名しかいませんが^^)だけではなく債券系のストラテジストでも「5月とか6月に当座預金残高目標の引き下げを技術的な対応として行う」と言っている人が多いようです。

これはまさしく「市場関係者が日銀の意図を忖度する」→「市場の声を聞いた日銀が市場の意図だとして理解する」→最初に戻るっていう循環というかバンドワゴン効果が発生しているようにあたくしには思えるのですが、まぁどうなんでしょうねぇって思う次第。日経公社債情報の今週号の「日銀ウォッチ」コーナーの筆者は「武闘家」氏でしたが、まぁあたくしの意見に割と近いものを感じる次第でございます。著作権問題がモロにある物件ですんで趣旨を敷衍しつつ申しあげると・・・・

正直、現在の状況で当座預金残高が30兆円を切ったからといって金利が上昇する訳ではない(同意っす)。ただ、当座預金残高目標の技術的引き下げは日銀の政策ロジックの崩壊を意味するのでやるべきではない(これも同意)。政策ロジックが崩壊すると、将来における政策への信認が低下する訳で、時間軸の短期化につながり(そうそうその通り)、長期金利の急上昇に繋がるリスクがある(長期金利よりも中短期金利の上昇が厳しいし、中短期金利の上昇は企業の資金調達コストにモロに響くと思いますが、まぁ同意)。政策ロジックを崩壊させずに当座預金残高の減額を行うのであれば、今まで「量を増やす=金融緩和」と言っていた「まやかし金融緩和」についての効果についての清算を行い、改めて「ゼロ金利政策+1年までのターム物金利を低位安定」のコミットメントという政策の枠組みを作るべきではないか(まぁだいたい同意。細かい点ではちょっと見方が違うけど基本的には同じっす)ってお話でした。

どうもここの所金利がそこそこ安定しているんで「時間軸が外れる脅威」がどこかへ逝ってしまったようですが、政策ロジックの崩壊相場は2年前にやった筈なんですけどねぇ(画一的なVAR管理のせいでもあったが)って感じではあります。まぁその方が業者は相場が動いて商売のネタにはなりますが、あまり乗せられるのはどうかとおもうぞ日本銀行。


ではまぁ時間も参りましたのでこんな所で。




2005/03/14

お題「いろいろと雑談」

ニッポン放送買収合戦、お馴染み朝の経済ニュース番組では「海外では堀江氏高評価」だの「株主価値守る戦い」などと報道されていると報道してますが、それじゃぁほりえもんサイドは何やっているんでしょうなぁと突っ込みを入れたくなりますが、まぁそりゃあ海外から見ればそんなもんでしょうなぁと。ほりえもんじゃ無ければあたくしも応援するんですが、ありゃただ単に金振り回して大騒ぎしているだけにしかあたしには見えん。ビジョンもノウハウもまるで無い人間が金(しかも裏打ちになっている本業で儲かっているのがこの前居抜きで買った証券会社くらいですし)持ってやってきてもそりゃー反発しますわな。

ところで何で民主党の代表は熱心に本件コメントするですか?

と言う前置きは兎も角として雑談。


○ちょっと意外感のあった金曜の相場展開

金曜日の債券相場ですが、米国債が反発したことを受けて、前日行われた5年国債入札で在庫もあることですし、目出度く相場堅調になってくれるのかと思いきや、相場が強かったのは寄り付き後の数十分でして、その後は延々と上値の重い展開になってしまいました。

で、金曜日の相場で一番ダメダメだったのが5年新発債ってのはそりゃどうよって展開でして、まぁ前日(木曜日)のサプライズ機械受注統計で相場を上昇させすぎたというのが新発債消化の意味ではケシカラン(しかも第U非価格競争入札で1800億くらい追加で発行量増えてるし)でしたなぁという所だとは思うのですが、それにしても金曜日は「債券先物が上がっても下がっても5年新発債がイールドカーブ上一番ダメダメ状態」というような感じになっておりまして、「何だかんだと言っても新発5年国債売れてないのね」というのが結論になりそうです。

まぁ5年新発国債に関しては金曜日のドラめもんで落札結果発表後の動きについて申しあげたとおりで、「0.7%近辺まで下押ししてくれば買いはあるんでしょうが、物の見事に上を買う人が居ない」という素晴らしい現象が起きているようですね。まぁ新発債に限らないのですが、そんな感じですと相場が上昇するのは需給関係上新発債の供給が途切れるタイミングしか期待できませんなぁという話になるのかなぁと勝手に思っております。



○不規則発言注意報発令(^^)!

FRB議長が講演で「根拠無き振る舞い(irrational behavior:スペルに関して自信なし)」というような言葉を使って過剰流動性による資産バブル形成に関して警告をしたそうですな。まぁ過剰流動性といえば資産への投機というのがお約束なんですが、基本的にシロートでも一番判りやすいのが不動産なんで米国におかれましてもそれなりに不動産が人気のようです。

で、それはまぁ別の国のお話でほうほうそうですかで終了なんですが、これが定例記者会見(今週の何も変化が無い筈の金融政策決定会合後に予定されています)を間近に控えた福井総裁にかかりますと、またまた気を利かせて(意地の悪い記者様がネタを振るというのもありますが^^)バブルがどうのこうのという素晴らしい不規則発言が出てきそうな悪寒。

住宅価格問題に関しては、英国で消費者物価指数が安定している中で住宅価格高騰を問題にして金融引き締めが行われたという例もある訳でして、まぁ最近の諸外国のテーマって感じになっている感がありますんで、流行物がお好きな日本銀行総裁さまにおかれましてはこの件に関してネタ振りをされると要らん事言い出してまた「時間軸を消滅させる」と市場が解釈しそうな話をしかねないなぁと思うのでありました。


ま、この前も話しましたが、金融政策で手が打てないというか手を打たない(=時間軸)のが現在の金融政策の肝になっている中央銀行総裁が英国や米国の中央銀行総裁の真似をして発言しますと、市場の解釈としては「金融政策で手を打てないのに何で発言するんだ?」→「金融政策で手を打つようにする為には時間軸を外すのか」→「そりゃ大変!」ってお話になる訳でして、本人にその覚悟があって発言しているとは思えないんで(本当にその気があるなら凄い話ですが)まぁファッションの積りで発言するのは控えた方が吉かと思います。



○いまさら先々週の国債市場特別参加者会合に関して

いまさらなんですが、話題にするのを忘れていましたが、議事要旨は例によって財務省のWebにございます。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyoshi/c170304.htm

議題は市場制度改革に関るものでして、「流動性供給入札」というのと「国債入札方式の改善」ってのがありました。何か勝手なポジショントークをしている連中もいるのぉって思いつつも議事要旨自体は面白い(ただし面白いと思うのは業者だけですが)です。

細かな話に関してはいずれ制度の概要がどうなるこうなるって段階になってからまた話をしたいと思います(というか今のままでは海のものとも山のものとも判らん)が、その議論の中でポイントになっているのは「国債の流動性」って話でありますわな。

グローバルスタンダードだか何だか知りませんが、当局サイドにおかれましてはやたら「証券決済の翌日決済化」だの「決済のSTP化推進」だのと熱心でございまして、国債流通市場の制度改革をしようと企図しているようであります。で、これらの目標に立ちはだかるのは「流動性の問題」でもあったりする訳です。

何せ相変わらず国債市場におきましては「フェイル(=受渡日に証券を引き渡せない状況。物理的にモノが無いという状態なので、債務不履行とは異なります。念の為)不可」とかいう人が存在しておりますし、国債と資金の決済に関してもDVP参加者と非参加者が混在しております。その上銘柄の種類はやたら多く、うっかり市中残存量の少ない国債を物なし状態で売却するとさあ大変なんて状況下で、「欧米並みの決済」などというものを実施したらエライ事が起こるのは必定。だからこそ色々と施策を練っているようですな。

まぁどんな意見があるかってのは議事要旨をご参照下さいって感じなのですが、兎に角国債に関しては一銘柄の発行量をもっと多くして(四半期は同じクーポンにするとか)期末になると年中行事のように発生する「レポ市場でのレポ金利急低下(=品借りコストの急上昇)で買い戻し要請発生し個別銘柄の需給に歪みが発生」ってのが減っていただくと誠に幸いでございます。

相変わらず買うだけ買って品貸しを渋る人もいるようですし、どうもグローバルスタンダードとは程遠い現象は相変わらずでございますな。


#とりとめもない雑談でございましたがこんなところで。






2005/03/11

お題「入札レビューその他」

○入札はまずまずでしたが・・・・・・

昨日の5年国債入札。米国長期金利の上昇を受けていきなり寄付きから債券相場が下落してしまい、新発5年国債の0.7%に接近してスタートとなりました。で、「えーこんな下で寄るのかよ」って感じの寄り付きだったのですが、その直後に先物に200枚の売りなんぞがぶち込まれてしまい、何だかんだと言ってその後は延々と上値の重い展開でした。

入札前の動きとしては、やたらめったら5年国債の既発ゾーンを売っているのが目立ちました。何でかと申しますと、債券先物はちょうど限月交代って要因がありまして、今回の場合先物がテクニカルに売られすぎでヘッジで売るのがちと二の足を踏むって状況だったので、5年新発債の販売に自信が無いって話になる場合にはヘッジとして5年既発債ゾーンを売るっちゅう話になる訳ですな。

前場引けでは5年新発債が0.695%までマークして、引け後の日本相互証券の業者間取引でも最初は新発0.695%相当にあたる前日比2.5毛甘がパカパカ叩かれておりましたが、最後の最後に先回り買いが入ったようで0.69%−0.695%で入札を迎えました。


で、こーゆー時は基本的に入札しっかりというのがお約束でして、プライストークの段階でも最後の方では100円05銭(=0.689%)が按分になるんじゃねぇのかって話になっていたようですが、入札結果は平均100円05銭で最低落札価格は100円04銭(=0.691%)で19%程度の按分と「直前のプライストークで思ったより弱い」という入札になりました。

(市場推定ベースの)落札額がラウンドの数字になっている業者が結構いまして、さてはこの人たち入札がどっちに転ぶか良く判らんから04銭の応札をパスしたなってのが判る結果でもありまして、業者の慎重姿勢が目に付いた格好。一番興味深かったのは期初から延々とトップ争いらしきもの繰り広げて高値入札をしまくってその他大勢の業者を散々巻き込んで不幸のどん底に陥れていた某大手2社様の落札がまたまた少なかった事。まぁこのまま来期になってもアフォなトップ争いはいい加減自粛して欲しいものです。無理だろうけど。


○で、売れたのかと言いますと・・・・・

入札直前には「大手銀行が積極参加するらしい」などという説も流れていたようでして、そういう時は何故か入札が取りあがりモードになるってのが半年ちょっと前の常識だったのですが、(自慢モードになっちゃいますが)あたしゃープライストークの時に「んなもん全部がプライマリーで行く訳ないから1行いったって精々5000億でしょ。それに機械受注の発表が2時に控えてるのにプライマリーでドカンと行って相場が下がったら投資部門担当者の進退問題に発展しちゃうからそんなに行けないって」などと言ってましたが、まーその通りの結果。

友人のディーラー(他社)と話をしてたら「結局機械受注の結果が出たら良くても悪くてもとりあえず買いが入るでしょうなぁ」という結論に落ち着きましたが(^^)、まぁ後から見るとそんな雰囲気になっております。


ただし、落札結果発表後の動きを見ているとあまり楽観できないっていう感じの雰囲気でした。平均落札利回りが0.689%で、まぁ0.69%がオファーサイドになるのは仕方ないとしまして、その後先物が何となくあがったり下がったりする間に出合っていたのは0.695%ばっかり。(どこぞのアホウが0.70%をごく小額叩いてましたが)どうも「0.70%の買いなら山のようにあるけど、上を買おうという人はいませんなぁ」という雰囲気が彷彿とする展開でした。

また、新発5年国債と既発債の関係を見ておりますと、0.7%の壁をバックにビットが確りしていた落札結果発表直後の局面では一時は5年42回債VS44回債の単利スプレッドが4毛ー4.5毛という感じで結構新発債が堅調だったのですが、相場の上昇後に出てきた気配は4.5毛ー5毛という感じになって参りまして、第U非価格競争入札の影響はあるにせよ、戻り局面で既発債対比で新発債が弱くなっているという現象を見ますと、「確かに相場として買いは入っているものの新発5年債にはそんなに買いが入ってませんなぁ」という分析になるのでありました。


○しかしジンクス恐るべしですな

何度か申しあげました「5年カレントの0.7%は居心地が悪いのジンクス」ですが、今回もまた爆裂するとは(自分で勝手に言い出したジンクスではあるのですが)恐るべしという感じですな。今回の場合は「跳ね返される」という結果に終わりましたが、まぁ次に相場が何らかの拍子に下落した場合に「5年44回債の100円」というのはジンクスの法則が発動すると「思いっきり跳ね返される」のか「あっという間にぶち抜ける」のかの2者択一モードと言うことですんで(何と言う無茶苦茶な屁理屈・・・・・)、ご注意ありたしと言ったところでしょうな。信じる信じないは皆様にお任せ致しますが、根拠レスなジンクスとかが大好き(その割には占いとかははぁそうですか程度。占よりはトロの方があたくしは好きですが^^)なあたくしはこーゆーの気にするのよ。



○ところでそろそろ気になるのは昨年3月末との対比ですが

正確な数字を記録しているつもりですが、あたくしの手元にある手書きの俺様帳面ベースなので本当に間違いないかどうかは無保証と言うことでご勘弁願いたいのですが、日本相互証券の終値(ただし単利)はこんな感じです。

       昨年3月末     昨日
20年 1.965%(67回)  2.055%(74回)  
10年 1.440%(258回) 1.490%(268回)
5年  0.620%(35回)  0.655%(44回)
2年  0.120%(219回) 0.125%(230回)

なるほどイールドカーブがスティープニングしてますかそうですか。まぁあまり違和感がございませんが、こうやって見ていると20年カレント債が「2.0%乗せは押し目買い」などと言っていた時代が懐かしい訳ですが、さすがに毎月20年債が発行されて、おまけに徐々に発行量が増えてきているというのはじわじわとボディーブローのように効いてきているってなもんでしょうな。

もちろん債券ポート的には持っている間にロールダウンしますし金利も入って来るって話ですから「今年度一年あがったり下がったりで疲れましたが、やはりBuy&Holdで無事に終わりましたなぁ(惜しい事に20年債は無事ではないようですが)」ってなことで平準買い最強・・・・などという結論を出しますと、まぁ投資家様が売ったり買ったりしてくれないと商売が上がったりになってしまうのでナイショにしておきましょう。

んじゃどの年限が最強だったかという分析は本職のお方にお任せ。あたくしの弟子によりますと7年近辺らしいですが。念の為。。。。





2005/03/10

お題「相場雑談を少々」

○5年国債入札

今日は5年国債の入札ですが、何故かこの5年入札は機械受注統計の発表とぶつかることが多く、今回もまた機械受注統計の発表が14時に予定されております。おまけに今回は週後半の入札な上に(3ヶ月ごとの恒例行事ですが)債券先物の中心限月が交代するタイミングでして、ヘッジツールとして業者が利用する債券先物がテクニカルに変な動きをしやすく、これまた少々コントロールのやりにくい状況ではあります。

ただし、本日入札の5年国債は3月債なので償還が既発債から3ヶ月先になります。3ヶ月長い分利回りが見栄えする水準になりますんで、0.7%クーポンの100円水準ってのが(今日相場が米国長期債下落を受けて大きく売られればの話ですが)見えてくる水準ってことでまぁ何とかなりそうな雰囲気でしょうなぁって所でしょう。少々気になるのは以前もちょっと指摘したように、「5年カレントの0.7%は居心地が悪く、すぐに0.65%か0.75%に行ってしまう」ってことですな。


直近の相場展開を見ておりますと、「下がれば買いが来るけど、上ってしまうと買いがない」という傾向が顕著な事でしょうか。「海外要因とか平均株価上昇とかで先物中心に下落」→「投資家さま押し目買い千客万来」→「ショートカバーで上昇」→「目先筋も投資家の買いを見て買いで参戦」→「相場戻る」→「投資家の買いが無い」→「上値重い」→最初に戻る(ああ長かった)というのがここの所の展開でして、まぁお見事なほど戻ってからの買いが無いと言う状況。

米国のトリプル安が債券にとってどっちで効いて来るのかよく判らん(たぶん最近のパターンだと米国長期金利上昇に反応しそうだが)のですが、まぁ相場が下がっちゃうと入札を待たずに先回り買い攻撃がありそうですし、相場が上っちゃうと先物一人旅って感じになりそうですな。この入札で死ぬほどニーズがあるというのであれば別なんですが、下がらないと買わないよって人が多いと目先は「在庫販売大作戦」で先物を売って相場を下げてみたり、逆に先物を持ち上げて(というかヘッジをふまさせて)5年新発債を相対的に割安にして買いやすくしてみたりと、先物中心に相場が暴れる展開を大予想しておきましょう(^^)。どーせ当たらんのだが。


○相場のテーマと言うもの

今朝もまた米国長期金利が上昇して戻ってまいりました。今年初め辺りからの債券相場というか特に長期金利動向ってのは米国の長期金利に引っ張られて動く傾向が見られます。勿論日本の経済指標が景気減速を示していて、もしかしたら腰折れ?って話になっていたのも大きいのですが。

で、この米国長期金利なんですが、最初は「FRBの金融引き締めが先行きオーバーキルになって景気が減速するんじゃないの?」って感じで金利低下をしてイールドカーブがフラット化したのですが、その後景気失速懸念が後退したり、グリーンスパンさんの「長期金利の低下は謎」発言なんかでフラットニングの巻き戻し→長期金利上昇となりましたわな。で、ここもとの長期金利上昇は主に原油やら商品価格上昇に伴うインフレ懸念ですな。

例によって例のごとく何かをテーマにしだすと暫くの間何も考えずにその材料に連動して動くという素晴らしい傾向のある日本債券市場なんですが、フラットニングの巻き戻しや、米国景気失速懸念の後退というネタで売られている米国長期金利に連れて日本の長期金利が上昇するというのは話の筋が通っているのでまぁそうでしょうなってなもんですが、インフレ懸念で米国の長期金利が上昇している中で日本がそれにお付き合いするのは何か変じゃネーノって思うのですけれどねぇ。

どっちかと言いますと「米国インフレ懸念で長期金利上昇」→「米国株下落」→「日本株に悪影響」って話じゃねぇのかと思うのですが、まぁそーゆーことは別のテーマが見つかってから後付けで言われ出すのが毎度のパターンですんで、次のネタができるまでは米国長期債連動になりそうだなぁと。もしかして次のネタは機械受注かもしれないけど。



○例によってニュース雑感その他

で、雑感なわけですが・・・・

・榊原なんちゃらというお方がどこぞの外資系証券のアドバイザーを辞任するとかいうニュースが流れていましたが、その報道によりますとアドバイザー大先生は「自身の中立性が脅かされると感じた」というのを理由に挙げていたそうな。何か禿しく腰が砕ける理由で笑ってしまいましたが、もしかしてこの先生は「金は召使が持ってくるもの」とでも考えてたのでしょうかねぇ。どんな名目にせよ金貰って仕事する以上、金をくれる人の為に働く(監査役だって社外取締役だって究極的にはその会社の為に存在するもんでしょ)のが当たり前だと思うんですが。まぁ意味不明なお人だ。


・日本銀行政策委員会の次期審議委員として承認された西村清彦先生の著書「日本経済 見えざる構造転換」(日本経済新聞社)をやっと購入しました。さわりの部分だけちらっと読んでみたのですが、何かこう曰く言いがたい物を感じるのでありました。なんっつーか経済書というより通俗書って言いますか、某大臣の出しそうな本と申しますか・・・・まぁ週末にでも真面目に読んでみる所存。この先生のWeb(東京大学の中にあるようですが)とか見てるとどうも派手そうな(つーかぶっちゃけ自己顕示欲が強そうってんですけど)雰囲気ですし、就任後にはあちこちで不規則発言をぶちかましてくれそうですな。はぁ・・・・

#大したネタもなく雑談ばっかでしたな。




2005/03/09

お題「本日(というか昨日)のトンデモコラム(^^)」

債券相場の方は一通りネタ終了の香りでして、まぁここから日経平均株価が12000円を超えてバンバン上昇でもしないと動意がなさそうですなぁ。ってな訳でたまには軽いお話で参ります。


○困ったコラム発見!

日経金融新聞の1面右端に「複眼独眼」というコラムがありまして、たぶん複数の金融業界関係者かつそれなりのお方がコラムを書いていると思われるのですが、最近このコラムと日経新聞市況面のコラムの内容が著しく劣化しているように(毎日読んでいるわけではないのでアレなんですが印象として)思えるのは気のせいではないかと。で、昨日のコラムはあまりにも豪快な「トンデモ」だったので、市場関係者の方には面白くないかもしれませんが肴にしてみましょう。

複眼独眼のお題は「銀国逆転金利」で著者は「一葉」氏です。本文を引用しつつトンデモぶりについて検証してみませう。以下『』内は3月8日の日経金融新聞「複眼独眼」より引用した部分になります(漢数字を算用数字に置き換えてます)。

『年配の債券関係者なら、「金国逆転金利」という言葉を覚えているだろう。今から25年前ほど昔の話であるが、5年金融債利回りは10年国債利回りより上でなければならないという当時の大蔵省の長期金利体系が崩れ、5年金融債利回りが10年国債利回りより低くなった事をいった。』

ここは話のマクラですし、25年前じゃああたくしもお子ちゃまですんでこの辺は「ほほうそうなんですか」で終了。でもこの頃ってそもそも金融機関による国債のディーリングってやってましたっけ?っていう気がしますわな。まぁいいけど。


『今から考えれば、スティープな順イールドになってスプレッドが信用リスクを上回っただけである。当時は規制金利下でイールドカーブはすべてフラットであったので、規制金利が緩んできたわけである。』

スプレッドってのは5年金利と10年金利のスプレッドの事を指しているものと思われます(用語の使い方に疑問は残りますが)のでまぁ良いんですが、イールドカーブは全部フラットだったんですかそうですか。知らないから「はいはいそうですか」としか言いませんが、当時お年玉預金を銀行で定期預金にしてみたら1年ものよりも2年物の方が金利が高かったんですがまぁいいか。

ここまではまぁよいのですが、最近の話と言うことで「銀国逆転金利」の話になると素晴らしい論説がでてくるのですな。


○比較する対象が無茶苦茶ですが

『最近の金利を見ると、5年金融債で0.1%、10年国債で1.5%となっている。ところが、この状況は驚かなければいけない。5年国債では0.63%となっており、ここでも金融債のほうが国債より金利が低く、金国逆転になっている』

利金債の流通利回りは国債よりも高いんですが何を言っているのでしょうか?と思って商工組合中央金庫(ここで商工中金というのがマニアだが^^)のWebを見ますと、確かに0.1%のリッショーという商品がありますな。でもこれって個人向けの貯蓄商品ですんで、国債の業者間流通利回りと比較しても意味がありません(だいたい個人が既発国債を窓販で買いにいくとその利回りじゃ買えません)から・・・・残念!

念の為申しあげますと、個人向けの金利が低い(たしかに0.1%はちと低すぎの気はしますが)のは一件あたりの金額が全然違うというのが大きな理由の一つ。資金調達という面で見れば、一発で何十億円と調達出来るのと、その金額集めるのに数千件とかかかるのでは手間賃というコストが全然ちがいますんで、それは金利に反映してくるのは当然のことであります。

『同じ年限であれば、信用力のあるもののほうがより低い金利になるという経済の常識に反している。』

前提条件が同じならそうですが、前提条件が違うものを比較してこっちが高いだの安いだの言うのは経済の常識に反してますが何か?


『実は、同じ2年物でみても、銀行大口定期は0.04%であるが、国債は0.1%とやはり「銀国逆転金利」になっている。』

既発の流通している国債は途中で売却すると元本が必ずしも保証されていません(絶賛販売中の個人向け国債は別ですんで念のため申し添えます。流通性のない国債ですから)ので、中途換金した場合の期間利回りがマイナスになる事もあり得ますが、銀行の定期預金は元本は保証されているんで、中途解約オプションが付いているようなもんですけど、そのオプション料はどう評価するんでしょうなぁ。


○海外との比較についてはちと研究の余地があるかも

『もちろんこんな異様な状況は日本だけであり、しかも金利規制緩和後から今日にいたるまで続いており、先進国の金融市場ではまずみられない。』

そんなもんかいなと思いまして、物は試しに英国(を選定するのがそもそもひねっているが)の商業銀行の定期預金金利はいくらでしょうかと、日本であまりポピュラーじゃなさそうなLloydsTSBのWeb(http://www/lloydstsb.com)を見ますと確かに3年もののTerm Depositの金利が2月末時点で4.9%(金額によってちょっと違ったりする場合もあるようですな)と3年物国債(Gilt)の流通利回り4.761%(複利、ソースはブルームバーグ)に対してほぼ遜色ない水準になっているようです。なるほどなるほど。

『このおかげで、日本の金融機関は預金を国債に運用しても利ざやが稼げるという幸運な環境になっている。』

何か金融機関が怠惰であるかのごとき表現ですが、そりゃあんた日本では余資が思いっきり金融機関に入ってくる構造になっているし、現在はそもそもが民間部門が資金不足じゃないので金イラネって事でもありますし、その断罪ぶりはどうなのよって思うわけです。


まぁ漠然としたイメージなんで話半分に思っていただけるとありがたいのですが、どうも(追記:英国の商業銀行では)貸出金利もそれなりに高いようでして、個人向けローン商品の金利を見ていると金利が7.8%だの9.9%だのという数字がうじゃうじゃ出てくるようでして、まぁそれなりの利ざやは確保できてるのねって思うわけです。ちなみに国民生活金融公庫の教育ローンの金利は1.7%(と保証料がざっくり0.3〜0.5%くらいっぽい)だったりする訳で、日本ではどうも色々と要因が複合して相変わらず貸出金利が安かったりするわけですな。預金金利がそれなりに高いのはそのせいかな〜何て思いましたが、これは全然まともな分析じゃないので念の為。


○書くほうも書くほうだが掲載するほうも掲載するほうですな

このコラムはその後に結論らしきものがあるのですが、もはや論評する気も起きないのでまぁお暇な方は古新聞をご覧頂くとしまして(笑)、あたくしの結論ですが、「こんな豪快な文章を書くほうも書くほうだが、自分の結論にもっていくために本来比較対象にならないものを比較しているコラムを日経金融新聞はチェックできないのでしょうか」というところでしょうかね。

こんなトンデモコラムがスルーして「金融新聞」を名乗ってプロ向きと称する紙面の1面コラムを飾ってしまいますと、一事が万事って奴でして、この新聞に書いてある記事は大丈夫かよって気にさせてくれる素晴らしい記事(コラム)って事になるかと思うんですが。関係者の猛省を促します。


ではでは。





2005/03/08

お題「それはひょっとしてギャグで言っているのか?」

日銀ネタはいったん終了したはずなのですが、天性のネタ芸人ではないかと言いたくなる人の発言に反応してしまう因業なあたくしなのであります。

○福井総裁の困惑(?)

えー、スイスはバーゼルにてBISの定例中央銀行総裁会議がございまして、会議前に福井総裁が記者団に対しましてこんな発言をしたそうですな。以下ソースは時事メイン。

福井総裁は先の講演で金融緩和政策の継続を過度に織り込んで長期金利が低下する事を牽制したことについて、「市場に警告発したつもりはない」と指摘した。(記事を端折ってます)

・・・・・・・・・(-_-メ)

まぁ確かにグリーンスパン氏の議会証言と違いまして、講演と言う事で原稿なんかもかなり前から準備して吟味しているのでしょうからタイミングがずれてしまいましたな〜ってお話なのかもしれませんなぁというのは弁護として成立するお話ではあるのですが、それにしても市場ってぇのはそのタイミングが悪いと思いっきり反応するものであります。先週末の国債市場参加者特別会合でも市場動向に関する意見交換の場でこんな指摘が。

日銀総裁の発言は、景況感が改善し、マーケットが弱気に傾いている時に出たことから、タイミングも良くなかった。特に、海外のファンド等は日銀の量的緩和がいつまで続くかをテーマにしており、日銀総裁等の発言が売りを誘った面がある。(議事要旨より)

ま、そういう事ですんで発言のタイミングをよーく考えて頂きたいものでありますが、どうも福井総裁におかれましては、副総裁時代の「ジャストタイミング」発言という至高の迷言を筆頭に市場に燃料を注ぐというか、消防車が放水したら水じゃなくてガソリンだった(どんな例えだ)という感じではありますな。困ったもんです。

で、どうも福井総裁(だけではなく日銀の偉い人全体において)におかれましては先ほどのバーゼルでの「市場に警告を発したつもりはない」というのは何気に素で言っているらしく、市場が大騒ぎしているのを見て「はぁ??」と思っている節があるのがこれまた困ったものです。意識してマッチポンプをしている訳ではないのがより質が悪い。


○改めてグリーンスパン議長議会証言との違いを愚考(^^)

グリーンスパン議長の議会証言における「長期金利の低下は謎」という発言は市場に大騒ぎを巻き起こしましたが、先日はちゃんと火消しの議会証言をするという芸の細かさを見せてくれました。まぁ口先介入もあまりやりすぎない方が吉だとは思いますがそれは兎も角。

そもそもグリーンスパンさんの場合は、FRBに金融政策の自由裁量がある状態でして、その上金融引き締めを行っている真っ最中でもありますんで、市場に警告を発した上でアクションを起こすことが可能。で、金融を引き締め中で短期金利が上昇しているのに長期金利が碌に下がらないという事象は、市場が「金融引き締めがオーバーキルとなって先行きの景気に対して懐疑的になっている訳ですなあっはっは」と言っているような物でして、そ〜ゆ〜意味ではグリーンスパン議長の金融政策運営ちと引き締めすぎじゃネーノって言っているとも取れる状態。そりゃグリーンスパン議長不快感示しますわなって事であります。

翻って我らが日銀総裁様なんですが、そもそも量的緩和政策はコアCPIにペッグしておりますので金融政策のフリーハンドは持っていない(持っていないから時間軸効果が発生する)のでして、いくら市場動向がケシカランと文句言っても手を出す道具が無いですわなぁ。従って意味の無いノイズを発信しているだけというのがグリーンスパン議長との違い。グリーンスパンさんに倣ったのでしょうけどね。

市場に手出しをする手段を封じられている人が市場に口を出しても本来意味が無いのですが、何せ金融政策は日銀の専決事項ですから、いざとなったらCPI時間軸だって反故にする事は可能(物理的に可能というだけですが)な訳でして、「財の価格はゼロ近傍」だとか、(これはその前の福間審議委員講演からになりますが)「コアCPI除く特殊要因の物価指数は着実にゼロに向かっている」などというお話をされた所で「量的緩和政策の継続を過度に織り込んで長期金利が低下することに注意」などと言われてしまえばそりゃ市場は反応しちゃいますわな。

で、後から「市場に警告発したつもりない」とか言われても市場としては「いい加減にしろ(-_-メ)」という感想しか出てこないのですが、まぁ兎に角そこらでテキトーな話を吹聴するのは勘弁して欲しいものがあります。どうも福井総裁はその場の勢いでお話をする傾向がありますんで特に注意されたい訳でして、市場がど〜見てますかってのは是非ドラめもんを読んで参考にして頂きたいものですな。(嘘です。血圧が上がるだけですな^^)


おまけメモ:その他雑談というかネタメモ状態

・国債市場特別参加者会合の議事要旨を斜め読みしましたが、マーケット時事放談って感じですな。もうちょっと内容を読んでからご紹介するかもしれません。

・昨日もまた先物動かずイールドカーブが少々動くという感じでしたが、ライブドアの株価が日中急落して安値をマークする前後には債券先物の板が故障したのではないかと思うくらい状態で全く動かずとなってました。何と言うか笑ってしまいました。

・で、ライブドアですが鹿内氏までご登場でもうドロドロですな。ま、ここまで怨念だの何だのが出てくるとほりえもん大先生も困惑しているのではないかな〜何て勝手に想像するのでありました(^^)。

ではでは。



2005/03/07

お題「余り纏まってない小ネタと雑談」

まずは3月3日の駄文に対して重大な間違いがあった事が判明したので謝罪と訂正を。

3日の話の中で、バーナンキ氏講演集の邦訳集+解説・対談であります日本経済新聞社の「リフレと金融政策」に関してコメントしたのですが、その中で同書の著者に関して「高橋洋一」氏と記述すべきところを「高橋進」氏と書いてしまいました。「進」じゃ日本総研の全然別の人でして、事もあろうに人名を間違える(しかも書くときに手元に本を置きながら書いていた)とは誠にケシカラン話で、謹んで謝罪致しまして訂正すると共に、ご指摘頂きましたbewaad様(http://www.bewaad.com)に感謝致します。

しかし高橋洋一氏と進氏じゃあ大違いな訳でして、間違え方にも程がありますな。全くお恥ずかしい限りです(などと書いているとそれはそれで高橋進氏に対してあわわわわわ)。


まぁとりあえずあまり纏まった話もないので小ネタと雑談でも。


○岩田副総裁も「財の価格ゼロ近傍」

岩田副総裁が金曜の午後に大阪で講演をしたそうなのですが、講演テキストが日銀Webに見当たらなかったのでブルームバーグのニュースから拾ってみます。

まぁ岩田副総裁は前々から景気に関しては強気な見方を示しつつ先行きの金融政策については「CPI時間軸の延長」論ということを提唱しているお方なので、景気に関して強気な意見が出てきてもさほど世の中驚かない(というかそもそも金曜の午後のニュースで今更反応のしようも無かったのですが)のですが、引き続き景気に関しては強気ですなぁ。(以下『』内はブルームバーグニュースによる岩田副総裁のコメントです)


『再びデフレに戻らないことを条件にした金融政策と、ゆっくりだが、財政健全化に向けた財政政策の組み合わせはデフレ幅の縮小に貢献してきた。あとワンストロークかなと思っている』

何だか福井総裁の「ラスト1マイル」みたいで微笑ましいのですが、このお話は前々からの岩田副総裁が展開している理論(頭の悪いあたくしには良く判らん部分があるのですが)なんですが、ど〜も腑に落ちないのは「財政健全化に向けた財政政策」って奴なんですけれども。現象として見えるのは財政が全然健全化していないというのと、そもそも資産価格の下落が止まったきっかけはりそな銀行救済スキームとか問題企業の産業再生機構送りとか絶賛ドル買い介入非不胎化攻撃とか結局財政パワー(というか財政に民間部門の問題を飛ばしているというか)によるものだったように思えるのですが。(ペイオフ解禁も実質骨抜きですしねぇ)


『基調的な動きを見ると、財は02年の初めぐらいから一貫してマイナス幅を縮小してきており、足元ではかなりゼロにちかいところに来ている。サービスはほぼゼロ%近傍で動いている』

まぁ物価に関しても岩田副総裁は強気見通し(というかGDPギャップの縮小とかを見ていたような気がする)の人なんですが、ここの所福間審議委員、福井総裁と「消費者物価は足元ゼロに近い数字」って話が出て相場が大騒ぎした話と同じような話が出てくる訳でして、なるほどなるほどと思うのでありました。

で、岩田副総裁はご存知のように「再びデフレに戻らない糊代の物価上昇率が達成されるまで量的緩和政策を継続(で、その糊代数値を明示すべしというのがキモなんですが)すべし」という主張を行っている人なんで、岩田副総裁が「物価の基調は足元ゼロ」って話をしても「はあはあそうですか」程度の反応しかしないんですが、その話を別の人が当座預金残高目標減額議論と絡めてしだすといきなり「ひぇ〜」ってことになるという諸刃の剣。市場との対話と言う意味ではちとお勧めしにくいものがございますなぁ。


日銀政策委員会として審議委員の意見が異なるのは当然の話ではあるのですが、何と言うか現在の政策に関する枠組みに関して審議委員の意見がバラバラになっているんじゃねーのかっていう状態で色々な情報発信を行われても市場の方としては困ってしまいますなぁって感じですな。


○ニッポン放送買収合戦

ネタとしては秀逸なので色々な所で色々な意見を見る事が出来、それもまた面白いのですが、どうも論議がまともに噛み合っていないように思えるわけですな。で、その原因を考えてみますと、どうも応援するベースが「相手がケシカランのでこっちを応援する」という所にあるのではないかなどという実にしょうもない仮説が出てまいりました。

で、あたくしの立場は「ライブドア如何なものか」なんですけど、どうも新株予約権問題のせいか金融市場っつーか機関投資家っつーかまぁその手のお方にはフジテレビ側の評判が悪いようですな。新株予約権以前からもインベストメントバンカー的なお方の間ではどっちかというとライブドア側の意見が多くて、新株予約権で駄目押しされちゃったって感じでありますが。

まぁ買収をめぐる「合法だけどそれはどうよ」合戦はどっちもどっちだと思うのですが、いざ買収を成立させた場合にライブドアが実現可能な経営を考えているようには全く思えず(高崎競馬の前科もありますし)、要するにてめぇの時価総額経営(しかも裏打ちできる事業は買って来たものばかり)に役立てる道具としてしか考えてないでしょってのが「ライブドアいかがなものか」のベースな訳で。ニッポン放送を買収したら株式百分割でもするんですかね〜(笑)。

厚生年金基金のエライ人が新株予約権いかがなものかって話をしてましたが、じゃあエライ人はライブドアが何やってたんよって事は理解しているのかな〜って思っちゃったのでついそんな話題を。ま、どっちにしても本日で一つのヤマですな。


#週明けボケボケモードなので本日はこんなところで。



2005/03/04

お題「相場点描」

本日は大雪なので(と言う訳ではないが)簡単に雑談でも。

○10年国債入札レビュー

昨日の10年国債入札、「福井ショック」(あえてこういう)から初めての中長期国債の入札と言うことでいきなり注目の入札になってしまいましたが、その結果に関して簡単に論評。


・売れ行きが良いのだか悪いのだか良く判らん

入札後の動きを見ておりますと、落札結果発表直後から先物なんぞに時々売りがでておりましたが、その間に10年新発債の気配は確り。前場引けの気配(毎度毎度安めの気配だが)が1.535%−1.54%で先物前場引けが137円84銭でしたが、先物が安値72銭をマークする段階においても1.535%ってところでして、まぁ先物下がっても10年下がらんという事ですんで、押し目買い意欲は強いんですね〜って話。

しかし「10年が下がらんから先物を買いましょう」という毎度おなじみの動きが始まって前場引けのレベルを先物が上回ってくると次第に10年新発債の上値が重くなってきました。昨日の入札では応札ベースで100円(実質99円67銭)の札がそれなりに入っていたと思われるのですが、その札のコストが1.326%とかになっておりまして、先物が上昇して1.325%あたりになってきたらいきなり10年新発債が全然強くならないという有様。まぁ当然ながら世の中においでになる「入札裸隊」の外しが待ち構えているっちゅうことで何かしょんぼりの展開になってしまいました。

引け直前になって先物がいきなり叩かれ攻撃になったために7年〜10年の最終的なイールドカーブ形成は威勢良くフラット化しましたが、本当に売れているのかと言う問いに関しては「下がったら買いがあるんじゃないですかあっはっは」としか答えようのない動き。10年債に強力な買いが入って相場大復活というのは中々厳しそうですなぁ。米国雇用統計次第でしょうが。


・業者の慎重姿勢

昨日の10年国債の応札倍率は2.62倍。満額狙いの札だの何だのというのがあるのでそもそも応札倍率が過大な時は何の参考にもならんのですが、応札倍率がまともな時は一応参考にする必要がございますわな。

事前に10年カレントゾーンにそれなりの買いが入っていた雰囲気ですし、ここまで10年をせっせと叩いて甘くしてきた状態で(昨日の前場はそうでもなかったが)迎えた入札なんで、それなりに業者の準備も出来ているのかな〜なんて漠然と思ってましたし、昨日申しあげた「3ヶ月償還が伸びるから既発債より利回りが高くなるのでお買い得感がある」という要因(?)やら「期末が近いので入替などのニーズがあって新発債は買われやすい」ということですからもうちょっと入札がしっかりしても良かったんじゃねーのって感じではあります。

入札直前の情勢から申しますと、直前の業者間気配のオファーサイドである1.535%に相当するのが応札ベースの99円95銭と90銭の間くらい(91銭くらいかな?)でして、プライストークの段階では「100円なら間違いなく入るけど割高もいいとこ、95銭もまぁ入ると思うが厚めの按分かも。もしかしたら90銭まで届くかもしれない」って状態。で結果は平均99円96銭で最低落札は90銭の按分8%ちょいなのでまぁちょっとかすりました位の状態。

平均落札と最低落札、応札倍率を眺めてみると、落札された額のうち半分以上は100円の札になっているのですが、95銭の札が素通しで入ってしまい90銭まで届いたって事ですんで、応札した業者としてはショートカバー分は100円に札入れしたけど、95銭の札をあまり多く入れずに、90銭にも「按分狙いの過大なスケベ札」が入っていませんですな〜って感じでして、応札額をそれなりに絞っている人が多いのではないかと推測される訳ですな。勝手に落札結果と相場状況で想像しているだけですが。


・まとめ

まぁ入札の結果単体で見れば「順調な入札」なんでしょうが、戻りでの反応の鈍さをみるとどうもあまりぱっとしない結果でございましたなぁって感じです。結局は米国雇用統計次第なんですが、どうも既発というか8−9年ゾーンの現物債の重さを見るとどうもねぇって感じです。



○来週は5年国債なんですが・・・・

来週木曜の話をするのはちと早いのですが5年国債入札。現在のマーケット状況から行きますと0.7%クーポンで100円前後の入札になるという事になるんですが、この「5年0.7%」というのは(前にも同じ話をしたことあるかもしれませんが)妙なジンクスがあります。

そのジンクスとは「5年0.7%は通過点になりやすい」って事でして、まぁ過去の5年債のクーポンをご覧になっても0.8以上と0.6以下のクーポンは結構発行があるのですが、0.7クーポンというのが案外少ないことにお気づきになられると思います。何だか良く判らんのですが、どうも5年のカレント0.7%というのは落ち着きの良くない位置のようでして、0.6%か0.8%に吸い寄せられてしまうというマジックがございますわな。

てな訳でして、この5年新発債が0.7%の入札をやった場合はちと鬼門かもしれませんのでご注意ありたいものです。いきなり大戻りするかぶち抜けて0.75%くらいまで行ってしまうか。金利水準があがってくると「10年カレント÷2=5年カレント」というあたくしの提唱するインチキ臭い水準感が復活してくるんで、10年の1.5%が中々戻らないって事になってくると現在の0.6%台後半(新発債に引きなおすと0.7%ですけどね)という水準がちとどうかなぁって感じになりそうです。

で、これもまた米国雇用統計次第なので、「結局これだけ散々書いて米国雇用統計次第かよ」ってオチで債券相場雑談終了。


○当座預金残高30兆円割れ危機一髪

昨日は9時20分の即日オペタイムで手形買入5000億円(しかし期間が来年の1月18日ってえれぇ長いですなぁ)実施。こえがないと当座預金残高が予想から何らかのぶれが生じた時に結果として30兆円割れになる可能性がありましたのでまさに危機一髪。

つい先日(2月17日)の記者会見で売り言葉に買い言葉モード(笑)で福井総裁さまが『当面30−35兆円の当預目標が維持不可能になるとは全く予見できない』と大変に素晴らしい発言をされていた訳ですが、早速30兆円割れになったらもう総裁のメンツ丸潰れなんで、まぁ無事でよかったですねぇって感じなのですが、どうも昨日の時点で「ノーオペ」を予想していた人も結構いたらしいと聞いてビックリでありました。やるに決まってるじゃん。

ま、「福井ショック」(笑)を意識したのか財務省筋から金利上昇牽制発言が出てみたりと、不期遭遇戦のお好きな日本銀行政策委員会の皆様に振り回されて大変ですねぇという朝の調節でした。






2005/03/03

お題「絶賛キャンペーン」

最初に相場の話ですが、本日の10年国債入札。既発債から償還が3ヶ月伸びるので「何となく利回り的にお買い得感」が出ますし、まぁ1.5%という一種の「止まり所」にいるのでとりあえず何とかなるのではないかと思料。ただし以下申しあげるような「当座預金残高目標絶賛引き下げキャンペーン」期間中でもありますし、ここもとの下げで今まで買いたいと思っていた人が既にそれなりに買っているのではないかという懸念もありますので、下げても知らんよって感じ。まぁ下がらなかったら幾らなんでも買いが入るとは思いますが。


で、相変わらず当座預金残高問題ばかりで恐縮ですが、まぁだいたいあたくしの愚意見まとめって感じなんでそろそろこの話題も打ち止めですな。

○雰囲気を盛り上げている感じですなぁ

あたしゃー某経済新聞をろくすっぽ見ないという人なもんでついついそのあたりの事情に疎くなるのですが、昨日の某経済新聞系の某金融新聞を見ると「何かまたやってますなぁ」的印象を深く持つものであります。

昨日の日経金融新聞(って結局名前書いてるじゃん)は「日銀当座預金残高目標引き下げキャンペーン」状態ですなぁってところですか。一面の「ベンチマーク」という滝田編集委員のでかいコラムでは「日銀もグリーンスパン流」というお題で、中には「リチャード・メドレー氏が『日銀の当座預金残高目標は4月のペイオフ解禁後5〜7月後に引き下げられるだろう。技術的な問題で金融引き締めとは別だ』というような感想を述べた」とか「金利操作という手段を封じられた総裁にとって、市場の信認は貴重な財産だ」などとまぁいい感じで当座預金残高目標の引き下げを煽っておりますわな。

ちなみに、当座預金残高目標の引き下げのお勧めをしてますが、金融引き締めはいかがなものかって言ってますんで、まぁ滝田(あるいは日経新聞)さんとしては「当座預金残高目標の引き下げは技術的な問題」という理屈で通してしまうってところなんでしょうなぁ。


で、2面の「ポジション」ってところがもっと凄いのですが、そのお題は何と「時間軸効果消滅に期待」であります。もう腰が抜けちゃいますよ先生って感じでして、まぁうだうだ書いてありますが要するに記事の趣旨は「生命保険会社などの機関投資家は長期金利上昇で運用環境が改善することを期待している」ってお話で、こっちは「長期金利の上昇は全く問題ございません」というキャンペーン絶賛進行中って感じでありますわな。


○「ゼロ金利解除キャンペーン」にも似ているんですか?

最近ここぞとばかりに上記のようなお話が日経新聞社さまだけでなく、あちらこちらの市場関係者の本職の方々からのレポートやらという形でも出ているらしく(あまり見てないが)、福間審議委員や福井総裁の記者会見で散々「政策の筋論」を立てて食い下がっている記者さま若干名の皆様に同感しているあたくしのような主張が何かまたまた少数派になってきているかのような雰囲気を感じる訳であります。

これって何かいつぞやの「ゼロ金利解除キャンペーン」にも似ているのではないかという示唆を頂いております。実はゼロ金利解除の時にはあたくし金融市場にいなくて、事業会社にいたもんで「ハァ?」と思った(ちょうどアイテーバブル絶賛大破裂の影響が出てきた所だったんで)訳ですが、案の定その後は景気腰折れ。正直、ゼロ金利が0.15%になったからといってもその数字自体に鬼のような直接影響があるとは思わんので「ゼロ金利解除しなかったら景気腰折れしなかったか?」と問われると「???」という気もしますが、まぁ心理的効果としての「引き締め」というのは影響大ですし、もう物の見事に日銀責任論が浮上してしまった訳でありますわな。

で、今回は「日銀当座預金残高目標引き下げ」という実際問題で言えば禿しく意味に乏しいけど、政策の筋論としてそれはちょっともう無茶苦茶ではないでしょうかっていう問題に関してキャンペーン活動が開始の図となっておりまして、「ああこうやって雰囲気盛り上げて日銀がそれに乗せられるのね〜」と痛く感心するというか呆れる次第の今日この頃でございます。


○で、あたくしの意見は筋論なんですが

当座預金残高目標を引き上げる時は「量的緩和の強化」で下げる時は「技術的対応」なんて理屈はちょっと変ですし、「いや今までの量の拡大は金融機関の流動性ニーズに応える量の拡大だったんだよ」って言うのだったらプルーデンスの世界だから金融政策決定会合じゃなくて通常の政策委員会で決定しなければいけなかった話なんでやはり理論的に禿しく崩壊している訳ですな。あっはっは。

某読者さまと話をしていた時に出てきたのは「量を増やす時は緩和の強化で減らす時は技術的対応。まるで『敗北による撤退』を『転進』と言って欺瞞していたどこかの人たちみたいですなぁわはははは」というものであります。もう政策の筋もへったくれもなくなりますわな。

じゃぁお前は当座預金残高目標を引き下げるのはケシカランというのかと言われるとそれは違う人でありまして、だいぶ前からあたくしの駄文を送りつけている人はご存知だと思いますが、「SARS問題」「りそな問題」あたりが片付いたあたりで一回「緊急対応分の量は引き揚げる(=残高目標を減らす)」とやっておけば良いのではって話をしていた(これもまぁ理屈としてはやや変なのですが)くらい(よって昨年の追加緩和も何じゃこりゃなんですが)ですんで、「筋を通せ」と申しあげている訳ですな。

どう筋を通すかと言うとそりゃもう簡単な話でして、日銀が「『量的緩和政策』と言って量に意味があるような話をしていましたが、実際にやってみたら量には直接の意味はありませんでした。本当はこの政策は『ゼロ金利政策+時間軸効果』だったんです。」と認めれば話は全て丸く収まると思うんですよね。

要するに「CPI時間軸」さえきちんとしていれば当座預金残高はゼロ金利を維持できる水準になっていれば無問題なんで、資金需要があるときは多めに出すし、需要が無いときは短期金利が上がらない程度に減らしておけばよいと。思いっきり政策が「金利ターゲット」に戻るという話で、今までの「当座預金残高目標の量に意味がある」と言っていたのが壮大なる茶番だったって事になっちゃうから大変に認めにくくて苦渋の決断になるとは存じますが、勇気ある「撤退」も必要じゃないんでしょうかって思う所であります。「技術的対応」という「転進」をするというのは止めて頂きたいと切に願うものであります。

ま、それで理屈がグダグダになって焼け野原になってしまうのも一興ではありますがね。(とまた身も蓋も無い事を言うあたくし)


○ポジショントークもほどほどに

以下また暴言。

まぁそういうわけで徐々に「筋論派」の周囲からは楚の歌なんかが聞こえて来るような展開が絶賛進行中な訳でございますが、正直申しあげて日銀の政策が筋として(もともとかなり理屈が破綻している政策ではありましたが)崩壊するような「技術的対応」論を勧めるというのはいかがなものかと思う訳ですよ。そりゃ相場が動いて金利が全体的に上昇してくれりゃぁ市場参加者としては商売繁盛だし運用環境も改善するし結構な話なんですが、だからと言ってもポジショントークというのにも限度があると思うんですよね。

景気がそんなに絶賛大回復していて金融引き締めにも無問題ってぇ話だというのなら別に結構なんですが、「技術的対応」って言ったってアナウンスメント効果って物もある訳ですし、それなりに長期金利やら貸出金利に響いてくる中期ゾーンの金利やらが上昇して経済やら財政やらに悪影響を与えないんでしょうかねぇと思うんですよ。「それよりも俺様の明日のメシの種が大事だ」って話ならまぁそれはそれで一つの考えですし、いちトレーダーとしては当座預金残高目標問題で相場が盛り上がった方が収益チャンスもありますが。

ただねぇ。一応「市場の声」として機能しているマーケットエコノミストだとかマーケットストラテジスト(などという表現が適切かどうか判りませんが、ニュアンス汲み取って頂けると幸甚)だとかの人が「技術的対応論」を支持するのは如何な物かと思いますよ。そういう事を言っているから「市場の人間はポジショントークばっかりしている」と言われてしまうのではないでしょうか
ねぇ。

以前ご紹介したバーナンキ氏講演集「リフレと金融政策」(日本経済新聞社)の書評を書いた時に、訳者の高橋洋一(訂正及びお詫び:高橋洋一さんです。高橋「進」じゃ日本総研ですわなbewaad様ご指摘ありがとうございました)さんが解説で書いた「ボンドトレーダーなどの金融市場関係者はインフレ目標が採用されるとフィッシャー効果によって名目長期金利が上昇して保有債券の評価損が生じると信じられている」という部分に「市場関係者はそんなポジション上の理由で反対しているんじゃない」と散々悪態をつきましたが、謹んで撤回して深くお詫び申し上げたい(って高橋さんが見ている訳ではないのでお詫びもないが気持ちの問題)と存じます。ええ、市場関係者はどうも「政策は如何にあるべきか」などと言うことは考えてないようですわ。ポジショントーク全開なんですな。


ま、四面楚歌もまた楽しですけどね(半ばヤケクソ)。


2005/03/02

お題「マッチポンプですか?」

相変わらず日銀ネタばかりで甚だ恐縮ではございますが。

○火消しオペリターンズ(か?)

昨日の日銀の金融調節は「ほほう」と思わせるものが2本ございました。

まず10時10分に行われた国債買入。最近ややパターンが崩れているというのはありますが、基本的には月曜か水曜に実施されるというパターンが目立つオペだったのですが、昨日はいきなり月初の火曜に実施。あまり市場としては予想をしていなかったせいかちと不意打ちになったようで先物が少々戻りましたな。で、これがまたお笑いなのですが、昨日の前場引けはバイカイ食い合いの引けもうさずになってしまい、引けで先物のヘッジが出来なくなるというスカポンタンな事になりました。そのために事前予想より長期債がオペに吸収されなかったようですな。

先日来指摘しておりますように、ここの所妙にオペのタイミングに「オペを打つ人の意思らしきもの」が感じられるようになっている訳ですが、金融政策決定会合直前に実施しない国債買入が「決定会合に配慮して結果待ち」というものを感じさせるのに対しまして、昨日の場合は「福井総裁の内外情勢調査会における講演にショックを受けた金融市場の火消し」という意図があるんじゃぁねぇかというそこはかとないものを感じさせてくれました。


もう一つのオペは13時に行われた全店手形オペ。3月3日スタートで何と来年1月11日エンドとGWに半期末2回に年末越えという314日の資金供給。この前久しぶりに長期間のオペ実施などと言っていたものからいきなり50日ちょっとの期間延長。もう何だかヤケクソになっているのじゃないかと何か心配(^^)。

これもまた「市場に配慮」って奴なのかなぁという感じでして、まぁ当然ながら一昨日の福井総裁講演によってユーロ円金利先物市場なんかでも金利先高感が台頭しているかのような価格形成が行われておりましたんで、「まぁお前ら落ち着け」というオペだったのかもしれませんな。

「かもしれない」という言い方になったのは別の見方もある訳でして、とりあえず今回資金供給期間を長くしたのは先日期間259日の供給オペが見事に札割れしていたんで、「資金供給への努力をしておりますよおっほっほ」という姿勢をみせているとも言えるのでございますな。

この場合は「資金供給オペの期間を長くして工夫してみました」→「(そのうち)どうも札割れが発生しますなぁ」→「やっぱり流動性を減らした方が良いんじゃねーの」→「当座預金残高目標・・・・」という連想が働いてしまったりする次第でございまして、そうなりますとやっぱダメダメじゃんってことにもなりますので、まぁ正直真意がどこにある(何も考えないで単に札割れ回避したかっただけかもしれませんが)のか判らんところですな。


手形オペの場合はイマイチよー判らんところがあったからなのかどうかは不明ですが、債券市場ではそれまでどちらかと言えば超長期ゾーンなどが堅調に推移していたのですが、オペオファー後にはイールドカーブがスティープ気味に推移しました。あまり関係は無いかもしれませんが、「長めの短期金利の安定化」というようなオペに対してイールドカーブがスティープで反応というのも自然と言えば自然なのかな?

ちなみに、全店手形オペ結果は1兆円の予定額に対して応札は目出度く22273億円で札割れ回避なんですが、応札サイドは見事に日銀の足元を見透かしているようでして(笑)、一発目から下限レートの0.001%の札しか入っていなかったようですな。落札10008億円で按分比率44.9%って言う事は全部の札が0.001%に入っていたと容易に逆算できる訳でして、次回以降のオペ大丈夫かな〜と不安になりますわな。


いずれにせよ、いつの間にやら「シグナリングオペ」という古き時代のオペレーション手法が局地的にではありますが絶賛大復活中となっているということでしょうな。何だかな〜。


○内外情勢調査会で気になった福井総裁語録

ソースは相変わらず時事メインですが、一昨日の内外情勢調査会での福井総裁の一問一答で気になったところを少々。

・財政問題に関して

『この日本の場合のように諸外国に例を見ない大幅な財政赤字解消のプロセス』(本間正明氏との一問一答より)

『今後残っている最大の課題は公的部門の構造調整だ。なかんづく先進国では世界一悪い財政状況を良くしていく必要がある』(斎藤精一郎氏との一問一答より)

まぁ今に始まったことでは無いのですが、財政再建問題に関しては相変わらず熱心にご主張。強調して言いたいのは判りますが、いつものように表現が強いですなぁというのは兎も角として、激しく不思議なのは、そんなに財政事情が悪い悪いと言い、財政再建へのプロセスをサポートしようって意思があるんなら別に「イールドカーブの過度なフラットはケシカラン」なんて話をする必要はなかろうにって思う訳ですな。

まぁ総裁としては「過度なフラットの後に反動が来て金利急上昇するのが良くないから」という風に思っているんだと解釈してますが、昨日も申し上げたようにこ〜ゆ〜発言はタイミングが悪いと本来発言者が意図するように解釈されないというのが市場の困った所でありますんで、もうちょっとその辺に配慮した発言をされたいって感じですな。

「そもそも金融政策のフリーハンドが無い日銀には相場を牽制しようとしても政策対応が出来ないのだから、グリーンスパン議長の真似をするのはいかがなものか、というか政策を縛っている日銀に市場牽制の資格は無いでしょ」って趣旨の昨日の時事メインコラム「金融観測」に関しては全く同意するものであります。


・インフレ警戒??

『一足飛びにはインフレに行かないと言う意味では、日銀としては時間的余裕をもってこれに対処していける。がまん強く緩和を続けると言っているのは、そういう意味だ。』(斎藤氏との一問一答より)

まぁ前もそんな話をしていましたが、その割りには講演では「量的緩和政策のデメリット」の話をしておりまして、コアCPIが相変わらずマイナスだというのにどうなっているんでしょ?って感じですわな。そういえば「コアCPIから特殊要因を除く」物価指数を持ち出しているのも福間さんに福井さんなんですけど。

どうもこう言っているものの、ここのところの言行を見ていると「がまん強く緩和を続ける」と言っているのは「量的緩和はやりやくないけど我慢している」と解釈したくなりますし、「インフレに行かない」というのは「コアCPIがゼロになったらもうインフレを警戒しだすんじゃないか」と解釈したくなってきちゃうのは深読みのしすぎでしょうかね??


ま、いずれにせよ政策委員会メンバーがノイズを撒き散らすのは勘弁願いたいところでございますな。相場は動くから面白いには面白いが。





2005/03/01

お題「やってくれましたよ福井ショック(-_-メ)」

昨日の債券相場、鉱工業生産は足元の数字が良くて先行きは慎重っていうことで良いには良い数字ながらって感じだったので何となく重い展開ながら長期化期待で20年あたりがまるで下がらんという展開だったのですが・・・・・・

内外情勢調査会における福井総裁の講演要旨がフラッシュで伝わると「あれれ?」という感じになってしまいまして、先物に大き目の売りが断続的に入るの図。何と138円割れまで売られてしまうの巻となってしまいました。で、どんなフラッシュに反応したかというと、景気にやたら強気な部分もあるかもしれませんが、(1)物価に関するコメント(2)量的緩和の弊害とイールドカーブへの言及(3)当座預金残高目標の引き下げへの言及という3点に反応したって感じでしょうか。

まぁコメントするのはするで結構ではありますが、そりゃあんたつい先日の金融政策決定会合後の記者会見で言っていた事と思いっきりニュアンスが違ってませんですかって所でして、まぁ総裁お得意の「サービス発言をして後から梯子を外す」という大変に遺憾な展開が炸裂してしまいました。ではこの3点に関して引け後にアップされた講演要旨を読みながら悪態でも(^^)。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0502c.htm


(1)物価に関するコメント:福間理論リターンズ

前半の景気に対するやたらと強気な見解は省略(というかいつもの事なので驚かない)しまして物価に関して何ですが、先日の福間審議委員の講演で披露された「総合除く生鮮食品から更に特殊要因を除く消費者物価」という我田引水まるだしの話が蒸し返されております。

『一時、1%にまで達していた消費者物価の前年比マイナス幅は、需給環境の改善に伴い、生鮮食品を除くベースで、現在、0.2〜0.3%程度まで縮小しています。』

はいはいそうですね。

『内訳を仔細にみると、景気動向に感応的な「財」の価格については、前年比マイナス幅が徐々に縮小し、足許ではほぼゼロ近傍となっています。』

はぁ?そうでしたっけ??

『幾分恣意的な要素は否めませんが、石油製品価格や公共料金、米価格といった特殊要因を除いたベースでみても、下落幅は緩やかな縮小傾向を辿っています。』

ほほう、石油製品価格が特殊要因ですかそうですか。何ですかそりゃ??

ちなみに、フラッシュでは引用した2番目の部分「ゼロ近傍」というのにはそりゃ先生反応しますわなって感じでございますが、昨日のドラめもんで何じゃそりゃと突っ込みを入れていた「コアCPIから特殊要因を除く消費者物価指数」という何と言うか強引な理屈を総裁までもが言い出すというのは一体全体何なんでしょうねぇ。量的緩和政策のコミットメントの根本に関して「この人本当に守る気あるんかいな」という疑問がまたまた(前回は一昨年の初夏ね)発生するの図ですわな。ちなみに前回「時間軸への信頼の揺らぎ」が発生した時は物の見事に5年国債が1%まで叩かれる中短期国債大暴落相場をやってくれてしまい、日銀は「量的緩和政策のコミットメントの3条件の明記」という甚だ情けない行動に追い込まれた訳ですが。


(2)量的緩和の弊害とイールドカーブへの言及

『こうした異例の緩和政策のもとでは、行き過ぎが生じていないかといった点に注意が怠れません。ここで言う「行き過ぎ」とは、経済の持続的な成長と整合的ではない経済行動・現象のことです。米国では、長期に亘る低金利が流動性を著しく高め、これが、極端に小さい信用スプレッド、住宅市場での投機的需要の顕在化といった過度なリスクテイキング行動につながっているのではないかという議論がなされています。』

はぁはぁそうですか。

『信用スプレッドの縮小は世界的に共通して起こっている現象ですが、わが国の場合、それがやや目立っており、リスクに対する認識は希薄化していないかどうかという観点が欠かせなくなってきています。』

それ以前に信用スプレッドが気が遠くなるほど拡大していたのが縮小したという面もあるかとは思いますが、まぁそれに関してはとりあえずはぁさようでございますかと申しておきましょう。次の部分が呆然。

『また、長期まで含めたイールド・カーブのフラット化についても、市場が緩和の長期継続を過度に織り込むような価格形成を行っていないかという目を常に持っておくことが必要と言えましょう。こうした観点から十分に注意を払いつつ、政策運営を行っていく必要があることは言うまでもありません。』

1ヶ月前の10年1.3%割れ20年1.9%割れとかいう時に言うのならまぁタイミングは宜しゅうございますなぁって話になるんですが、既に米国のフラットニングも一服して「グローバルフラットニング」的な流れもひとまず片付き、どちらかと言えば反動で金利に上昇ドライブが掛かりやすいこのタイミングでの発言というのは相場に燃料を投下するという機能しか果たさないという事はまぁ当然ながらお判りじゃ無いんでしょうなぁと心底思うあたくしでございます。

当たり前ですが、こういうときは現物債を売ろうとしても相場の変動が激しいのでオファービットのスプレッドが瞬間的に大拡大しちゃいますんで、とりあえず売りやすい債券先物が集中的に叩かれる格好となってしまい、あれよあれよと言う間に先物138円割れまで売られてしまいましたな。

何か暫く前のグリーンスパン議長様の議会証言「長期金利の低下は謎」というのを意識したかのようなコメントではあるのですが、同じような話をしてもタイミングというのは物凄く重要な訳でして、折角の「金融市場牽制発言」もただ単に何となく置き火が燻る市場へ可燃性燃料を投下するだけの結果を招くので、繰り返しになりますがタイミング考えていただきたい。今に始まった事ではないのですが、この方の場合はとにかく何かに魅入られたかのごとくタイミングが悪すぎて涙を禁じえません。

まぁアレですな、真似をするには過去のパフォーマンスと信用を(以下暴言)。


(3)当座預金残高目標引き下げへの言及?

講演本文には無かったのですが、フラッシュでは出ていた部分。ソースは時事通信ニュース「時事メイン」ですが、本間正明大阪大学大学院教授の質問に対する回答の中に問題の部分がございました。

『我々は今30−35兆円程度という非常に膨大な量の当座預金残高を供給し続けているが、このこととマーケットにおける資金需要の後退が実質的に平仄の合わないものになるかどうかは、まだ私どもは見極めついておりません。』

『(金融システムの安定に言及した続きで)イールドカーブの形成が変れば日本銀行に対する資金需要の出方もまた変わってまいります。そこまで含めて今後現実的に現在の数字の上での供給ターゲットというものが現実性を失うかどうかが現実性を失うかどうかは慎重に判断していきたい。』

「基本スタンスは変えない」という話もしておりますが、こーゆー事を言えば当然マーケットとしては「総裁はペイオフ解禁後に当座預金残高目標の引き下げに着手する意思がある」という風に解釈するわけでございますが、つい先日の定例記者会見で「30〜35兆円程度という当座預金残高目標を維持していく」と仰せでございましたがあの発言は一体全体何だったんでしょうか。と言うか、それ以前の問題として何で前回の決定会合は全会一致なんですかって小一時間・・・・

まぁここのフラッシュでも思いっきり驚きって感じでしたな。確かにこのお方の場合政策スタンスの話と一般論をごっちゃにして話すという禿しく困った傾向が昔からある(ので10年金利が0.5%だとかの時に「国債は株と違って満期には償還されるのでバブルという言い方はちと変でしょ」みたいな事をいっちゃったりするのですが)わけですが、一般論を言っているのか政策スタンスを言っているのかを明確に切り分けていただかないと、総裁の仰る「市場との対話」にノイズを撒き散らすだけの結果になる訳でして、まぁ言えば言うほど墓穴を掘る結果になるというものですわな〜って所であります。

ちなみに、フラッシュには出てませんでしたが、本間先生との質疑応答の中で総裁はこんな事も仰せでございました。ソースは同じく時事メイン。

『金融市場の中で、金融機関同士がお互いに市場を通じてお金を融通しあってもそんなに心配ないという状況にだんだんなってきている、ということは、日本銀行に対する流動性需要が相対的に減り始め、あるいは市場全体に流動性の過剰感が強まる、ということで、全体にこれまた整合的な動きであります。』

またお得意の相対性緩和論ですな。



しかし何ですな、確か量的緩和政策ってのは「コアCPI縛りの政策」であって、「ビハインド・ザ・カーブを辞さず」という政策であった筈。だからこそ「時間軸効果」がその役割を発揮するというお話なんですが、一昨年の失敗にも懲りずにまたまた調子に乗って自ら時間軸効果をぶち壊しに掛かる日銀政策委員会(全員がそうではありませんが)ってぇのは一体全体何なんでしょうと思ってしまう次第でございます。

困ったもんです。