トップページに戻る
月別インデックスに戻る



2005/04/28

お題「大したネタも無いので小ネタを少々」

○金融政策決定会合ですが

当然ながら何も変更は無いでしょう。というかあったら大騒ぎなのですが、まぁそれよりも来月に発表される今回の会合の議事要旨の方が面白かろうとは思います。景気の先行きが何となく怪しげというか平均株価見てるといつまでたっても踊り場な訳ですが、そんな状況下で当座預金残高目標をどうしましょうかって議論は相変わらず行われると思いますんで、そちらを見ておきたいものであります。

本件に関してはどうも流れとして「当座預金残高目標の引き下げ」方向になっているようですわな。引き下げに際して今までの「量の増加は金融緩和」という理屈は放置して「技術的緩和論」を持ち出すのか「相対性緩和論」を持ち出すのか判りませんが、とりあえず論理破綻モードで突撃の悪寒。まぁ勝手にすればって感じですが。

展望レポートに関してはどう考えても今年度のCPI見通しを下方修正して来年度のそれをプラスにするって話しになるでしょうとしか申しあげようがないです。景気見通しに関しては結構強気なものが出てくるでしょう。

あとは現状維持の表決(追記:票決の誤記ですな、あっはっは)ですか。前回1票反対がありましたが、これが3票くらいまで増えるとそれはそれでインパクトあるかもしれませんが、そもそも債券市場の現状では当座預金残高目標引き下げは材料にならないという扱いになっている(単に外部環境がよいから無視しているだけの可能性も否定できない)ので影響は限定的でしょう。

しかし短期金融市場関係者には申し訳ないが「短期金融市場の市場機能低下という量的緩和政策の副作用がケシカラン」という一部政策委員の理論は相変わらず理解不能である。既にデフレ脱却している状況ならその理論は判るが。。。。。


○国債投資家懇談会

火曜日(4月26日)に国債投資家懇談会が実施されまして、その議事要旨が公表されております。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyoshi/b170426.htm

国債市場特別参加者会合(国債市場懇談会)と比較して参加者数が少ない(どうでもいい事なのですが、当該Webを見ますと国債市場懇談会の参加者メンバーとしてリンクされているテキストが平成16年6月4日時点=国債市場特別参加者制度のスタート前時点の状態から更新されていませんですよ>財務省様)せいなのか(出席するような身分じゃないから中で何がどうなってるのか知らんが)、公表される議事要旨の内容はこっちの方がやや突っ込んだ物になってます。

今回の会合のお題は「国債市場の状況と今度の運用見通し」と「今後やることになってる流動性供給入札ってどうよ(そんな表現じゃないって^^)」ということのようですが、まぁ前半の相場見通しその他のお話は中々面白いですな。

えーまぁ皆さんの意見を勝手に総合すると、「年度前半は比較的堅調な債券相場ですが、秋以降にかけて景気回復で年度後半に金利はやや上昇するでしょう。でも量的緩和というかゼロ金利があるから行って2%までは上昇しないでしょ」という誠にオーソドックスな予想。まぁそうじゃろうなぁとあたくしも思うのですが、世の中皆が思っているようには動かないというのが市場の素晴らしい所ですので、このメインシナリオがど〜ゆ〜事になると崩れるのかという事に考察を加えるのが吉なのではないかと愚考。

変動15年利付国債に関してはその商品性に関してまだ意見が分かれているようでして・・・・

『15年変動利付債については、金利先高期待が強い状況では投資妙味がある。ただ、来年半ば以降に、実際に短期金利が上がり始め、ベアフラット化が進むことになれば、15年変動利付債の価格自体が低下することから追加投資は当面控えたい。』

『15年変動利付債については、金利上昇の際のヘッジとして常に視野に入れている。ただし、負債構成上、金利上昇時に含み益が増加することから、資産サイドに15年変動利付債をあえて組み込む必要があるかについては社内的にも議論がある。』

『今後金利が上がってくると、イールドカーブがスティープ化するのではないかと予想しており、15年変動利付債については、昨年も買い増しをしたが、今年についても買い増しを考えている。』

まぁ人それぞれという感じでオモロイ。

物価連動国債に関しても意見がでてましたが、その中で感心したというか「いや仰せの通りですな」と思ったのはこんな意見。

『時価ベースでみると、不動産及び株式が資産サイドのかなりの割合を占めており、これ以上、インフレに対するヘッジの必要はない。』

物価連動国債に関してはデフレ制約のある状況での発行だったんでややこしい事になったのかもしれませんが、元本がぶれるってのはやはり商品としてどうよってのはありそうですな。と言っておっぱじめたものを今更止めるわけにも行かず・・・・・

コア預金の概念がバーゼルUで堂々ご登場になったので、その話も出ておりますが、まぁ上記URL先をご覧頂ければと存じます。



○(おまけの与太話)その態度にある意味感動を覚える訳ですが

「ブログメディア」を標榜して堂々スタートして一時は大いに話題を集めたものの、その論説の自家撞着ぶりを批判されて逆切れしてしまい、俺様ワールドへと見事に回帰しちゃった人といえばあのお方でございますが、久々にそのお方のブログを拝見した所このような論説が。

ttp://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/thats_none_of_y_2059.html
(この人のURL書くときだけは何故か先頭の”h”を省略する訳だが^^)

著作権がどうのだとか誹謗中傷だとか色々と喧しそうなお方なので引用はせずまぁ読んでくだされって感じですが、創業早々にそこそこ大きな貸出先が経営破綻した話しをスルーして「貸出件数と貸出金額の目標を達成」って何と申しますか素晴らしい理論ですなぁ(棒読み)と存じますな。この先生のことですからもちろん「目標達成の為に数字作りをする」などということは全くしておられないと存じますが、「貸出件数と貸出金額の目標達成」と威張られてもその前の実績がアレですのでどうもねぇって感じですわな。

で、まぁ要するにご自身の経営する銀行の状況についてあちこちで批判されるのが気に食わないのか「金融や経営の何たるかを弁えない素人の方々が愚論を長々と述べていらっしゃいます(上記記事から引用)」とお話しになっておられますが、んじゃあ過去に銀行経営に関して散々シバキアゲ理論を展開して政策運営に関与しておられたのはありゃ何だったんでしょうかって思うわけですな。あたしゃ。

まぁ別に市井のイチ私人だったら別にあたくしも噛み付かないのですが、こ〜ゆ〜手合いが政策運営に絡んでいた事、現在も銀行という公的サポート(預金保険機構)付きの企業(であるが故にある意味公器なわけだが)の経営をしていると思うと、世の中どうなってるのよって思う次第であります。

久々に見て血圧が上昇したのでついおまけにしてしまいました。健康の為には見ない方が吉ですな>自分



2005/05/27

お題「入札合戦は終わらず(か?)」

○2年国債入札レビュー

昨日の2年国債入札。前場の引け時点では0.085%(100.029円)を一生懸命叩いている動きとなっているものの、0.085%は続々と買いが入り0.08%売りの0.085%買い気配で終了。値段に直すと100円3銭9厘売りの2銭9厘買いな訳ですが・・・・・・

既にプライストークの時点で皆様諦めモードに突入。「100円4銭と言いたい所で、本来5銭はいらねぇのだが、大人の事情で入れないといけない部分は5銭に入れておかないと(4銭の按分が読めないので)仕方ないでしょ」ってなお話しになっておりました。昨日の2年新発債に関する「大人の事情」札は・・・・

1.商品品揃えのための在庫確保
2.プライマリーディラーの落札責任確保
3.落札シェア確保

ってのがある訳なのですが、前回の5年国債の入札が市場予想(正確には市場が諦めつつ覚悟していたレベル)よりも更に割高入札になっていた為に2.だの3.だのという「お家の事情」札が多くなるのではないかという見方が優勢というのが真相でした。

まぁ2年国債に関してはここの所同年限の10年既発債などから比較してみるとやや需給が悪くて安めに推移していましたので、そーゆー意味ではそれほど無理して売り叩く必要もない状況ではありました。ただやはり「2年カレント国債0.08%」となると絶対水準的に「向こう1年半以内の量的緩和解除なんてアリエネーヨ」と確信できないと満期保有しにくいレベルではありますので、毎度お馴染みの「どこかの投資家(ってメガバンクしかいないのだが)がほとんど全量お買い上げ〜」みたいな動きは警戒されてましたが落札結果からみるとそれは無かったようです。

今回の入札は久々に大手業者の皆様揃いも揃って2000億円程度の落札(市場推定ベース)になっておりまして落札状況がばらけたので、特定の投資家様全量買入攻撃もなく、とりあえず必要在庫だのシェアだのを意識した分の結果になりましたわなぁという所かと思います。


まぁしかし相変わらず馬鹿入札リターンズであることは変らん訳でして、100円4銭が最低落札価格ではありましたが、按分比率が0.14%と相変わらず豪快な状況(715億札入れしてやっと1億落札ですが)でして、まぁ応札総額が207兆だのとかですので、4銭に兆円単位の応札をした人が最低でも2社(もっといそうな気もするが)いたという事なんでしょうな。実質的には100円5銭という感じです。短期国債状態リターンズというか期初お得意のパターンというか、まぁ困ったもんです。

今回の入札に関しては先ほど申しあげたように2年国債そのものは他の既発債比やや安いこともありましたので、それほど馬鹿馬鹿しく崩れるような展開にはなってませんし、後場寄付きと同時に前場引けのオファーサイド0.08%が一発オールテイクンする元気もあったので「こりゃ大丈夫か?」と思いましたが、結局終わってみれば0.08%がオファー残りで、落札した業者の皆さん揃って1銭1厘やられという情けない結果となりました(今月発行の231回債が0.07%じゃあ仕方ありませんというか発行まで1ヶ月近くあることを考えると2年231回債から利回り引っ張ると0.085%でもおかしくない)。また馬鹿入札復活でありますな。残念!



ということで、結局今月実施された入札は最初の10年債が一番真っ当でして、その後の入札は馬鹿入札の連発。短期国債方面では100円落札が2発ございましたし、期初独特の伝統的年中行事と言ってしまえばそれまでですが、相変わらず進歩なくしょーもない消耗戦が今期もまた繰り広げられるのでありました。大人のやる事はよく判らんのですが、毎度毎度入札で消耗戦やってどうなんでしょうかってお子ちゃまのあたくしは思うのでありました。

そんな中で先日財務省様が「短期国債で最低落札価格が100円になった入札は国債市場参加者資格における落札実績にカウントしない」という大変に素晴らしい発表をされていた事はなかなかよろしゅうございました。しかし相変わらず短期国債では100円での応札が随分ある(最低落札価格での按分比率と応札額、各社の落札額から逆算すれば大体予想は付きます)ようでして、まぁ困ったもんだというのは中々改善されないようです。100円で落札して100円で販売してるなら判りますが、どうも業者間気配とかを見てるとそうでは無い様ですし、「大人の事情」にも困ったもんですな。


○ニュース雑感

というか尼崎の鉄道事故なんですが、事故に関する報道(テレビ)は相変わらず事故原因に関してテクニカルな報道に終始して、JR西の運行体制がどうのとか私鉄王国の関西圏で無茶なスピード競争してませんでしたかとか、そもそもカーブの外側の鉄道路線に思いっきり隣接する場所にマンションを建築認可する(建物の方が後から出来ているでしょ)ってどうよ(まぁ住宅でも結局同じことなんで、建築まかりならんというわけにも行かない状況では仕方ないかもしれないけど)とか、事故の起きた背景っつーんですかまぁそういう方向の報道を望みたいです。そういう話は新聞読めって事かもしれませんが、専門家らしき人のコメントもテクニカルな話ばかり。問題の本質を突っ込んで再発防止に努めて頂きたいものです。

で、相変わらず取材ヘリは各社バラバラに飛ばしているようですし、「悲しみに暮れるご遺族の皆様」画像を取るためにご遺族への取材合戦を各局でやっているようですし、相変わらずのメディアスクラムは何とかならんかと思う次第。

昨日も申しあげましたが、鉄道に限らず輸送力強化と収益確保の狭間で無理がだんだん蓄積されていないのかと心配ではあります。

・・・しかし死者90人って・・・・犠牲者の皆様の御冥福をお祈りし、負傷者の皆様の一日も早い回復をお祈り致します。




2005/04/26

お題「深く突っ込みだすと長いネタなのですが」

深く突っ込みだすと長大なレポートの作成が必要になりそうなお話を少々。

○日本国債清算機関(JGBCC)の稼動

来月2日という何故か連休のど真ん中にJGBCCが稼動開始。ここでJGBCCの話を延々と始めると終了しないので、Google先生でJCGCCなり日本国債清算機関で検索して頂ければ関連資料が出てくると思う(URL忘れた)ので適当にご覧頂きたいわけでありますが、日本銀行さま主催の第9回決済システムフォーラムの議事の概要を見ますと、とりあえず大きな混乱もなく稼動開始という事になっているようですな。

・・・それじゃぁ余りにも不親切なのでJGBCCに関して簡単に申しあげますと、JGBの決済(売買+レポ)を取引ごとに売買当事者間で全て1本1本日銀ネットを使って決済しているのが現在の状況ですが、その決済をJGBCCに一旦集約することによって決済を差し引き合算としましょうってお話。これによって決済量の削減を行い、オペレーショナルリスクの軽減をしましょう(将来のSTP化も狙う)って話ですわな。


当初設立する時は「全てのJGB決済業務をJGBCCで行い、JGBCC非参加者は直接参加者にカストディする」という目算もあったやに聞いておりますが、まぁ案の定スタート当初は「JGBCCを通じた決済と従来どおりの日銀ネット直接参加者同士の相対決済の混在」という形になってしまいましたわな。そりゃ売買やレポをたくさんする業者にはJGBCCのメリットはありますが、別に同日決済で同じ銘柄を売ったり買ったりするわけじゃない投資家さまは「別に?」ってところでしょうなぁとは思いますが。

で、折角JGBCCがおっぱじまるというのに相変わらず困るのは「フェイルは罷りならん」という人がうじゃうじゃ存在する事(確かに他人勘定でフェイルを食らってそれが決算時期だったりしたら説明がややこしくなるから困りますなぁというのは判らんでもないのですが)でして、フェイルが罷りならんという事になりますと、当面他人勘定が絡む売買やらレポ取引はJGBCC決済に持って行きにくいという話になりますわな。

と申しますのは、決済がJGBCC相手になりますといざフェイルが起きた場合にJGBCCにケツを拭かせる訳にもいかないですし、(JGBCCが日銀と組んでそこまでやってくれるのなら凄いがスタッフ15人とかではどうしようもないでしょ)疑心暗鬼モードの担当レベルとしては「誰がフェイルの犯人か判らないのを良い事にフェイルする奴が出てくるんじゃネーノ(杞憂であって欲しいが)」というのもありまして(フェイルが多い不届き者はJGBCCでも方策を考えているようですが)、当面は相対決済と平行していく事になるでしょうな。


あとテクニカルなお話しとしては、レポ取引をロールオーバーする際のお話しでして、現在はロールオーバーにおける決済は「中抜き」する事によって「すくみ」状態にならないようにしておりますが、JGBCCへの移行段階では返済新規扱いをする必要があり(移行後のロールオーバーは無問題)ますので、恒常的にマーケットで業者がショートしているような銘柄ではフェイルが発生する懸念がありますので、5月2日以降暫くの間(決済日ベースでは連休明け以降)は決済がらみでややこしい事が起きるかもしれませんな。まぁレポ担当者も暫くは慎重にJGBCCへの移行を行うようですので、そんなに大騒ぎにはならないと思いますが。

ま、その他本件について書き出すと長々となりますし、何かここで書いていいのか良く判らん細かいお話しもあったりなかったりするのですが(と妙な書き方でスイマセン)、まだあたくしも問題点の整理がイマイチできていないのでとりあえずこんな感じでしょうか。

しかし相変わらずなんですが、フェイル慣行を定着させてくれないと困りますな〜とは思うのですが。。。。。


○生産性の上昇が・・・・

以前も書いた話しですが、大事故がおきる度に思うお話。

昨日の尼崎でのJR福知山線脱線転覆事故。あたくしが生まれる前に起きた鶴見事故以来の犠牲者数に声も出ません。事故の直接原因もそうなのですが、効率的な運営のために安全運行という基本問題が疎かになっていなかったか、安全運行に関る設備投資を疎かにしていなかったかという根本問題に関して調査していただきたいものです。こういう事故になると「物理的な原因」ばかりが取り沙汰されますが、それはそれとして本質的な問題を調査して頂きたいし、報道もそういう方向での報道を求めたいです。

JR西日本といえば以前別の事故で線路上に出動していたレスキュー隊員を列車(だか貨車だか)が撥ねる(確か犠牲者が出た筈ですが)事故というのもありましたし。

旧国鉄時代に大事故が起きていたのは戦時中から戦後にかけて設備投資を怠り(というかそんな余裕が無かったというか)設備が老朽化している中で輸送量が能力の限界に達してしまったことが(直接の原因は別として)根本にあったと言われておりますし、英国の国鉄が民営化した後に事故が頻発したのも英国国鉄時代の経営効率化と言う名の下に設備投資更新を怠っていたという話しもございます。

近年工場などで起きる事故やら、今朝は海外ツアーバスでの事故のニュースもありましたが、どうもこれらの事故の報道を見ておりますと、「生産性の上昇」とか言って企業業績が向上してますが、現場に無茶な皺寄せが来ているのではないかと思っちゃいますな。

現場に無茶な皺寄せをさせても、当面は持ってしまうのが怖い所でして、設備の老朽化と同じ理屈で(というと例えが悪いが)、現場に無茶をさせすぎるとどこかで限界を超えてしまい、とんでもない事になっちゃうのではないかと危惧する所ではあります。


この話しも書き出すと重いのですが、考えの整理がイマイチなのでこんな所で本日は終了。




2005/04/25

お題「4月の入札を振り返って(という程偉そうなものではない)」

目の前で月曜おなじみの某経済評論家のお方がニッポン放送買収騒動のお話をしているのですが、ライブドアの大幅株式分割錬金術に対して「自由化をすると制度の不備を突く行儀の悪い人が出てくるが、市場には自ずと節度が求められるのではないか」などと偉そうな事を仰せでありまして朝から血圧上昇ですな。騒動の真っ最中にはお前はライブドアを散々マンセーしていたんじゃないかと小一時間問い詰めたい訳ですが(-_-メ)。

それはともかく。

○期初になったらまたまた入札頑張り攻撃復活ですな

明日は2年国債の入札が予定されておりますが、とりあえず先週の木曜に行われた20年国債入札で今月のでかい入札は一巡しました。で、一巡した結果なのですが、こんな感じかと。

・プライストークよりも強めの落札結果が復活

昨年度の終盤では事前のプライストーク並みと申しますか、前場引け後の業者間売買気配とだいたい同じくらいの結果で落ち着くというパターンになっていたのですが、今月実施された入札はどれも事前のプライストークよりも若干強めの入札になりました。特に強めだったのは5年国債でしたが、さすがに先日の20年国債は学習効果が働いて前場引け最終のインチキ気配を綺麗に無視してプライストークそのものが強くなってしまいました(^^)。


・期初から頑張る業者様

債券相場では昔からの伝統行事として「国債入札の落札結果を自ら進んで公表する」というのがありまして、金融ファクシミリ新聞という金融市場の中でも局地的な人しか知らない(がその局地では知らない人はモグリとされる)媒体その他のニュース(日経クイックとか)で何故か各社ごとの落札額が自己申告ベースで公開されてしまいます。他市場の人たちから「何でわざわざ手口を公開するんですか?」と不思議がられる訳ですが、まぁ「新発国債を沢山落札してますから皆さん買いに来てくださいね〜♪」ってアピールする便利な方法なので行われていると思ってください。

前置きが長くなりましたが、4月に入ってからの入札で目立つのは上記自己申告ベースによる市場推定では日興シティ証券さまの落札ぶりがやや目立つところとなっておりますな。まぁ期初(なのか?一応外資だしなぁ)になってから方針でも変更したのかどうかは存じませんが、落札シェアを意識したような雰囲気が漂って来る訳でございまして、野村證券様とみずほ証券さまが競うように落札する一角にわざわざ飛び込まなくても良いだろうにと端から見てると思うのですが、まぁ色々と大人の事情があるんでしょうな。

国債市場特別参加者(いわゆるプライマリーディーラー)も参加者が2社(カリヨン証券とABNアムロ証券)増えましたし、円債というかJGBに関して頑張るお方が増えているというのはあたくしのように市場のおこぼれを拾って棲息している人としては雇用機会が広がる可能性がある(なんてことはないですかそうですか)ので大変に結構至極なお話でございます(^^)。

・深い意味は無いが2年国債入札に注目

と言うことで、明日は2年国債入札。別に2年国債は相場にどうのこうのという影響はないのですが、シェア争いモードになる馬鹿入札が連発するのは「やられ限定」の2年国債というのが定番になっております。今までは野村證券VSみずほ証券の一騎打ちあるいは両社参加せず真っ当な入札というパターンが展開されておりましたが、はて今回はどうなるんでしょうか。物凄く馬鹿馬鹿しいお話ではございますが注目したい所ではあります。馬鹿入札と判っていても落札ゼロだと商売が始まらない(し、プライマリーディーラーだったりすると落札責任額というものがあるのでボウズだとちと問題あり)ので泣きながら落札するその他業者にとっては誠に迷惑至極ではございますな。

まぁ馬鹿入札といえば短期国債(と政府短期証券)の入札では相変わらず100円落札が横行しておりますが、まぁ色々と営業政策上の理由とかあるから仕方ないのは判らんでも無いですが、100円で落札したものを次の瞬間に100円未満のお値段で売却するのも如何なものかと存じますわな。マイナス金利で資金調達できている訳でもないでしょうに。まぁ大人の事情があるんでしょうな。お子ちゃまのあたくしには判らん。


おまけ:ニュース雑感

・自民党補選2戦2勝
→まぁ順当でしょうな。あたくし的には山拓センセイは別に好きでも何でもないですが、「若くてイケメン」「若くて洋行帰り」ってのを並べれば票が入るでしょっていう政権準備政党(自称)の安易なる発想が砕かれてオッサンが当選したのは大変に結構なことでありましたなぁなどとまた読者が減るような事を言うあたくし(^^)。

・ハンマー振り回したアホガキが残虐サイトを見ていたそうですが→朝から某公共放送ではこのネタをせっせと放映していますな。この手の事件が起きるとすぐに「ネット上の有害サイトがどうのこうの」とかいう方向に原因をなすりつけるのは困ったもんですな。どうも言論統制方面の香りがしてくるんでどうなのかと。

・(すげぇローカルネタですが)紫川(@北九州市)で鮎の稚魚放流→福岡在住当時「紫川は汚染で本当に川の色が紫になっている」という噂がありましたが(^^)、この30年で日本の川って本当にきれいになりましたなぁとテレビで放映されていた河川敷の様子を見て思うのでありました。




2005/04/22

お題「水野審議委員インタビュー続」

昨日ご紹介しました水野審議委員インタビューの続きです。何せインタビュー詳細が記事8本立てな上に、質疑応答の形式ではありますが殆ど水野さんのお話でしかも一つ一つのお話がやたら長くて話題があちこち飛んでおり(^^)、結構読むところが多かったりする訳で。以下「」内水野審議委員発言のソースは20日15時03分〜16分に出ました共同通信ニュースです。

○物価の見通しについて

「敢えて特殊要因を取り出してどうだという議論はあまりしたくないが、一時的な要因がマイナスに寄与していることは否めないのだろうと思う。そういった一時的な要因が剥落するのはいつかというと、完全に剥落するのは来年1月以降となってくるので、前年比プラスになるのはいつかというと、蓋然性が高いのは来年の1−3月期。よほどうまく回っていけば秋以降ということがいえるかもしれないが、1−3月期というのが蓋然性が高いという感じで見ている」

名目賃金の下げ止まりと都市部の公示地価に見られる資産価格の下げ止まり傾向によって、「素材インフレ(by水野さん)」の影響が物価に影響してくるでしょうってお話になっております。

○今後の金融政策について

「個人的にどう思っているかというと、無担保コール翌日物金利をゼロ近辺で安定させつつ、当座預金残高を自然体で引き下げていくことが望ましいと思っている。当座預金残高の水準でもって、景気刺激効果が異なるわけではないという思いだ。そういう意味では、市場の実勢に合わせる形で淡々と下げていきたい、というのが本音だ。短期金融市場の正常化がなけれな、金融政策の正常化もなるという思いが強い」

昨日も申しあげましたが今日もしつこく。1月末のブルームバーグニュースとのインタビューと正反対の話をしているようにしか見えませんが困ったもんですな。世の中に革命的変化でも起きているのなら判りますけど、金融市場関係者からの初起用者が言うこといきなりの豹変というのはちょっとねぇ。

で、まぁ文句ばっかり言っても仕方ないので、水野さんの発言を色々と読んでみますと(先ほども申しあげたように話が多岐に飛ぶので内容を掴むのがそこそこ大変だったりする)、どうも量的緩和政策における量の意味はほとんど無く、量的緩和政策の本質はゼロ金利+時間軸であるという認識に立っており(そのこと自体は以前も言及してました)、どうも(景気に強気なので)量的緩和政策の副作用に対する懸念が大きくなってきたので豹変モードになったのではないかと。


○うーん・・・・

「「ビハインド・ザ・カーブ」の話をしておくと、量的緩和論は、まずビハインド・ザ・カーブを覚悟しているという説明を日銀はしてきたし、私も入ってからビハインド・ザ・カーブを覚悟した議案に賛成してきている。違和感はあるが、全員がコミットしているということだ」

違和感あるとかわざわざ仰るなら反対意見出したら如何かと(まぁ意見表明してるのかもしれませんが・・・)。

「その中で、敢えてより深い意味で、量的緩和の副作用の方がメリットよりも大きくなってしまうということを避けるには、あるいは、金融市場の混乱を避けるようなコストが大きいビハインド・ザ・カーブにならないようにどうしたらいいかという質問ということで答えさせてもらうと、これは結局、量的緩和の解除の具体的なプロセスや、ポスト量的緩和の政策の枠組みにういて、もう少しマーケットに話しをしてもいいのではないかと思っている」

だそうなのですが、その具体的施策(?)は以下の通り。

「適当なときに言及してあげることが必要で、個人的にはときどき巨額の30兆−35兆円程度という当座預金残高を維持することの必要性が下がってきたのではないか、と言ってみたり、量的緩和の枠組みは機動力がないのが問題だと思うので、機動力のない政策を続けることは、実は国益の観点からも合致していない、と言ってみたり、あるいは量的緩和が長期化したときに予想される潜在的な副作用もある、と言及するようにしている」

そういう話は政策委員会で議論をしていただきたいですし、政策委員会で議論する気がないのに政策委員会の外で話しをするのならばただのノイズあるいはマッチポンプではないかと思うあたくしは原則に拘泥する原理主義者なんですかそうですか。

良く判らんのですが、どうもこういうご意見をお持ちの人のようですので、水野審議委員もまた(とほほ)政策委員会の外でノイズ撒き散らし攻撃になりそうですな。トレーディングやっている身としては相場が無用に動くので楽しめますが、中央銀行の政策運営としては如何なものかと存じますな。


○健全化合戦の懸念が・・・・・(-_-メ)

昨日最後の方でご紹介した部分に続くお話。

「2007年度となってくると、景気が循環的に減速局面に入っていく可能性が高まってくるし、消費税率引き上げをめぐる話題等もさまざまに出てくると思う。そういうときに、財政・金融政策上、何らかの形で景気刺激策が採れるような態勢でないと非常に困るのではないか」

「逆に言うと、経済と金融システムがある程度正常化したところで、金融政策のノーマライゼーションのプロセスをある程度経てこないと、次の景気後退で金融政策が使えなくなる。そういう危機意識を非常に持っている。金融引き締めに前のめりになっているという意味では全くないが、それについては、時間が掛かるが、政府との対話では訴えていきたいところだ」

・・・・どうも財政と金融で健全化合戦が始まってしまうのではないかという悪寒がしそうなこのくだり。財政再建路線で消費税増税がどうのこうのと言う話が本格化する前に金融引き締めをしておいて金融緩和余地を残しておきたいというご意見のようですな。財政と金融がお互いに俺が先に健全化するって言い出してどうするんでしょうかねぇと思うわけだが、そんなアフォな事態が起きそうな予感がして、甚だ遺憾でございますわな。



○まとめ

・結局のところ水野審議委員はタカ派
・今後の発言は地均し的な意図でよりタカ派的なものがでてくるかも
・政策委員会は景気にかなーり強気のようで
・今後は財務省と日銀の「健全化合戦」が最大の逆噴射要因かと

んなところですか。


おまけ:ここでもマッチポンプ??

昨日の日経金融新聞2面「ポジション」欄の副題が「緩和、正面から議論を」となっておりました。当座預金残高目標引き下げの技術的対応を煽ったのはどこの誰だと思いながら記事をよんだら、福間審議委員の技術論に対して日経金融さまは『金融システム不安の後退で金融機関がカネを欲しがらなくなったのだから、供給する資金を絞っても良いのではないか。福間氏は「量」の減額に正面から切り込んでおり、主張は明快だ。』として、福間審議委員の技術論を正面からの政策論と思いっきり勘違いしているように書いておられまして、あたくしは思わずコーヒーを噴き出してしまいました。もうアフ(自主規制^^)。




2005/04/21

お題「水野審議委員宗旨替えですか?」

最初に正誤。時事通信社の「金融財政」に関して「月刊誌」と申しあげましたが、隔週発行の間違いでした。謹んでお詫びして訂正いたしますが、賠償は致しかねます(^^)。

昨日は平均株価が上昇しようとお構いなし(日経225は大ダレしておりましたが)で債券市場は上昇。何せ寄付きが前日比2銭安でそこから2銭しか下げなかった(しかも安値つけたのは9時1分)という状況。債券相場恐るべしなのですが、まぁ今週号の日経公社債情報での「皆様の想定レンジ」を上に抜けたらこの有様という実に素晴らしい展開でございました。今日の20年国債入札は1.9%割れ状態でお迎えのようですが、いやもうどうするのよって感じです。


そんな債券市場であまり話題にならなかったのですが、ロイターの記事に「水野審議委員、当座預金残高の段階的下げに言及=共同通信」ちゅう話がありました。昨日の共同通信ニュースにインタビュー一問一答詳細が載っていた(15:03付〜)のですが、本当に詳細記事でして何と8本立て。水野さんの就任記者会見でも思ったのですが話の長いお方ですなぁ(^^)。

・・・ってことはどうでも良く、水野審議委員が宗旨替えしているのがヲチャー的には衝撃の材料(ただし債券市場は残高引き下げを織り込んでいる節があるのですが)です。今年1月31日のドラめもんで書きましたが、以前ブルームバーグニュースのインタビューを受けた際にはこちらの先生はこのように発言しておりました。

「そもそも、量的緩和政策の枠組みは、市場参加者が必要と考える量よりも潤沢に流動性を供給することによって景気刺激効果を出そうという枠組みだ。日銀の資金供給オペに対して資金需要が低下し、札割れが頻発したからと言って、簡単に目標を引き下げると、自己矛盾が生じてしまう。当座預金残高目標を引き下げても、潤沢な資金供給と、その結果としてゼロ金利は維持されるので、量的緩和政策の枠組みは維持できるという議論は、市場が受け入れないと思う」

市場が受け入れれば引き下げありと宗旨替えですかそうですか、ってな訳で長いインタビューからあたくしが勝手に要点らしい所を並べてみます。すんげぇ長いインタビューですので、元記事をご覧になることをお勧めしますが、詳しくは共同通信社にお問い合わせ下さい(ってまたこれかよ^^)。例によって以下の「」内のソースは共同通信ニュースでございます。


○景気に関しては基本的に強気のようですが

「(景気が)踊り場を脱却する時期は敢えていえば4−6月期で良いと思う」
「1月(の経済統計)は出来過ぎ、2月はその反動でさえないという状況である」
「(4月短観の)DIは悪いが事業計画良いから大丈夫、という見方はちょっと
控えたいと思うし、もう少し様子を見ないといけない」
「今回短観はあまり白黒はっきりとつけられない」
「全体的に経済指標の中で、比較的明るいものが多いのは雇用所得環境の統計」
「企業収益が増加し、雇用過剰感が払拭される中で、雇用者所得は緩やかに
上昇していく可能性が高いという見方で良い」
「短観が出るまでと大きく景況感変えたという判断はしていない」
「日銀の金融政策の環境は、この数日間、あるいはこの1、2週間で変ったかというと、多分何も変っていない」

ちなみに、最後の一言は米国でのGMだのフォードだのの件やら、中国での反日デモだの日本株下落だのについて言及しつつ「何も変っていない」ということですんで、まぁ要するに今の状況は一時的な調整だと思ってるんでしょうな。


○当座預金残高目標引き下げ論

この部分の話がやたら多く、話が色々な角度でやってるのでまとめにくいです(涙)。

・目標引き下げに関する概括

「(最近の当座預金残高議論に関して)技術論から本質論の話になってくるのかな、というのが正直な感想だ」
「当座預金残高目標の引き下げは政策変更ではないという説明は、短期金融市場の参加者と債券市場の参加者は非常に同情的に分かりますと言っていただけるが、なかなか政府サイドは良い反応にならないと思う」
「金融システムが安定してきたということがいろいろな形ではっきりしてきたので、当座預金残高目標引き下げをめぐって日銀で議論され、いずれ当座預金残高下げることもありうるのだろうと皆さんも思っているので、実際に当座預金残高を引き下げても金融市場が混乱することはよほどのことがない限りないと思う」
「当座預金残高目標30兆ー35兆円程度を引き下げても景気に悪影響を与えることはないと思う」

・・・・1月のインタビューとトーンが違いますなぁ


・量的緩和政策の副作用、短期金融市場の市場機能復活ネタ

「量的緩和政策を続ける一つの副作用として短期金融市場の機能が低下していったということがあった。そういう意味では政策転換をしていく上で必要になってくる話は、短期金融市場の機能を回復し、正常化していくことが必要だということだ」
「そういう意味では、オーバーナイト物金利がゼロ、ターム物金利もゼロという状況を続けていく場合には、短期金融市場の機能が回復するとは思えない」
「当座預金残高は理由はともかく段階的に減らしていく方向にしていかないと、短期金融市場の正常化はなかなか難しいと思う」
「金利機能を復活させる方がいいので当座預金残高は段階的に引き下げて、無担保コール翌日物金利はゼロ近辺と維持しつつ、ターム物金利は動かすという話だ」

・・・・いやまぁ何と申しますか。ターム物金利を上げるという話は現在の政策の枠組みでありますところの時間軸効果と思いっきり矛盾する話なんですけど、その辺の整合性はどうつけるんでしょうか?大体本当に景気が回復して物価も上昇してもう下がらんと皆さんが信じるような状況、即ち現在の政策目標が達成しそうな時になれば、日銀がやいのやいの言わなくても量的緩和政策解除を織り込んで金利は上昇するでしょ?


・うまくまとまらんのだが「・・・・」な語録

「(量的緩和政策コミットメントの)3条件について今後1年程度時間をかけて見直したらどうかとか、日銀内で議論を深めてはどうかと思う。」
「期待に働きかける役割と言われても、債券市場では、4年間も期待に働きかけていると効果が消えます、と言われている」
「景気が回復しないと当座預金残高を下げられないかというと、当座預金残高を上げたこと自体に景気刺激効果はそんなに大きいと思ってないので、下げることが景気に悪影響を与えるとはおもっていない」
「ある事象が起きたから、これだけ当座預金残高を下げるという説明よりも、自然体で淡々と下げていきたい」
「また、非常に微妙な問題になってくるかもしれないが、超低金利政策を実は10年間続けていることの意味が強い。その間に景気循環が3回ぐらいあって、また次の景気後退まで今の政策を続けるのかということになると、例えが良いか分からないが、伸びきったゴムのような状態で金融政策が使えなくなってしまう。マクロ政策運営の中で金融政策が使えないとなることは、日銀がつらいというよりも日本の国益に合致しないと思っている」

特に最後の部分は、この後に「来年度になると景気が循環的に減速したり消費税引き上げを巡る問題も出てくるので、その時に景気刺激策が採れるような体制になってないと非常に困るのではないか」という趣旨の話が出てまして、いわゆる「糊代確保の為の金融引き締め」みたいな話までしております。何と申しますか、ちょっとそりゃどうかと思いますがねぇ。

引用がひたすら手打ちタイピングでしたので、引用してるだけで本日は終了(^^)。
まぁ「逆噴射引き締め懸念が強まりましたなぁ」というのが印象であります。







2005/04/20

お題「ネタは人のふんどしだったりする今日のドラめもん」

TIに続いてIntelも市場予想より良い決算のようですな。これでほっと一息って事になると良いのですが・・・・・

○山口前副総裁の講演関連

一昨日の山口副総裁の講演は日本証券アナリスト協会主催だったそうで(最近お知らせ郵便が廃止になったので何があるのか知らん。一々アナリスト協会のWebなんぞ見るかっちゅーの)、講演でのお話に関しては早速東短リサーチの加藤氏がレポートを出しております。また「本石町日記」(http://hongokucho.exblog.jp)氏が「会場が一瞬静まり返った」質疑応答場面アップしておりますんで、まぁそちらをご参照されたしという所で。必見です。

昨日も申し上げましたが、金融政策っつーか量的緩和政策の評価に関する山口さんの発言というか見解に関しては、(講演に出席した人によりますと)ご本人も「インタビュー記事も読んでね」っていうような発言をしておられたようですので、詳しい見解に関してはあたくしの昔のドラめもん(えーっと昨年の8月前半に3回ほど書きましたんで)をお読みくださいと手前味噌(^^)。記事そのものをお読みになりたい方は時事通信社にお問い合わせ下さると吉かと。バックナンバーとかあるのか知りませんが。


○まぁある意味裸単騎待ちの勇者とも言える訳ですが

昨日も書きましたが日銀の今後について心配しつつ整理してみるのである。

・当座預金残高目標を今更引き上げられない
→「技術的対応」とか「相対性緩和論」とか「流動性対応」だのと理由をつけて「量を減らしても金融引き締めではない」と言っているのに(同じ話なので以下省略^^)

・そもそもそれ以前に政策の整合性が崩壊していた訳だが
→「景気判断を上方修正しているのに当座預金残高目標を引き上げた」というのが政策の論理性を失わせていた訳で、非不胎化介入支援をする積りだったらそうだと言っておけって感じですわな。「景気判断の上方修正をしながら当座預金残高目標の引き上げを行うのは矛盾して無いか」という突っ込みに対して訳判らん応答を総裁は当時してたと存じます。

・けしかけられてその気になったら・・・・・
→まぁしかし日銀も運が無い(本石町日記氏も指摘してますが)わけでして(^^)、当座預金残高目標引き下げの雰囲気が札割れ攻撃やら短期金融市場方面を中心とする「目標下げは技術的対応なので無問題でっせ〜おっほっほ」キャンペーン(?)によって短期金融市場あんど債券市場で織り込みに行った所で平均株価急落、お前は相場神かと(^^)。

・ま、景気に強気なんでしょうな
→景気に強気なので仕方ないんですけど、わざわざ自分で逃げ道を塞ぐ(=景気が失速した時の政策対応余地を狭める)ことをすることはねぇと思うのですが、まぁ政策委員会の「景気回復一点張りモード(に見える)」は何と言うか勇者の香りが致します。


○外債投資の留意点(何故か似非ファイナンシャルプランナー状態)

ご注意:以下のお話は特定商品にケチをつける為に行っている訳ではございませんので念の為申しあげます。販売証券会社へのケチをつけているわけでも有りませんので宜しく(^^)。

例によって受け売りネタなんですが、まぁ知人から「こんな債券はどうよ」って質問を受けたと思ってください。(URLの先は何故かSSL対応)
https://newtrading.etrade.ne.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?getFlg=
on&burl=search_bond&cat1=bond&cat2=foreign&dir=foreign&file=zarbond
/P0021/bond_zarbond_1.html(念の為URL入れておきました。長いので改行してます)

まぁ商品内容は上記URLにある訳ですが、要するに世銀が発行する南アフリカランド建ての債券でございます。世の中高金利通貨に人気がありまして、そういえばランド建て債券ってのも時々出ているのですが、面白いな〜と思ったのはこの「高金利ですよ〜」の宣伝方法。

勝手にコピペすると怒られそうなので、微妙に紹介しますが、「600,000南アフリカ・ランド(1080万円くらい)購入すると毎月 50,184円(初回利払いは期間短いので少々少ない)年間602,208円の利金を受け取ることができる」っちゅうお話になっておりますな。「満期(5年後の5月10日)まで持つと3,001,004円 の利金を受け取る」というお話も。

「ところでランド建てですがどうなのよ」と思いつつこの宣伝文句を見ておりますと、ちゃんと「当社適用為替レートがご購入時1南アフリカ・ランド=18円、利払時1南アフリカ・ランド=17円で変動しないものと仮定して、また利金は全て税引後で計算。」と書いてありますな。ふむふむなるほどちゃんと為替鞘部分と税金の部分を明記していますな。

・・・・・さて、ここで問題です。償還時の適用為替レートはどうなっているんでしょうか??

→(答)思いっきり見当たりませんが(苦笑)。

まぁこ〜ゆ〜通貨だから為替鞘が思いっきりかかるのは当然なのですが、18円の通貨で1円の鞘が掛かったら元本の何%になるのか良く考えて投資していただきたいものですな。別にこの宣伝文句自体は法令諸規則に照らしてどうのこうのと言うことは全然ございませんが、為替が仮に変動しなくても元本が為替鞘で減る(償還時に為替鞘取らないというのなら神認定だが、常識的にそんな訳はねぇだろう)所を華麗にスルーした説明に感動を覚えてしまいました。

ま、それ以前に為替リスクがありますけどね。

毎月利払いなんて思いっきり日本人しかも年寄りが喜んで買いそうな商品でございますな。こ〜ゆ〜のって「毎月お小遣いがもらえる」って感覚で買う人多いんでしょうなぁと思います。

えー念の為再度申しあげますと、この部分は特定商品にイチャモンをつけているお話では毛頭ございませんので一つ宜しく(^^)。






2005/04/19

お題「終わった相場の後講釈とその他雑談」

昨日の株式市場では日経225構成銘柄全部が下落というあんまり記憶に無い展開。日経225寄与度順の値上がり&値下がり上位銘柄ってのを見たら(全銘柄下落なので当たり前ですが)値上がり寄与度1位の欄には前日比3円安(寄与度0.126)の三菱重工が・・・・とほほ。

という訳で、株式市場は下落した訳ですが、債券市場の方はと申しますと、需給関係もありますが景気腰折れを株式市場よりも先に織り込みにいった(債券相場が先行するのは珍しいことです)ともいえる展開(なのか?)だったせいか、今年最大の平均株価下げにしては債券相場の上昇は先物で33銭でしたんで「ふ〜ん」って感じでございました。


○絶賛会議中?

昨日の債券市場、寄り付き直後は先物が下押しして20年あたりの伸びがイマイチだったのですが、9時半あたりから先物が上昇して20年ゾーンがいきなり上昇しました。その後は前場中延々とじり高推移でしたが、後場になるとイールドカーブ上超長期ゾーンが強含みになる局面もあったのですが、先物は140円18銭〜14銭くらいのレンジでひたすら動かないという展開になっちゃいました。

はてどうしたことでしょうと思いつつ、今週号の日経公社債情報を読みますと、ちょうど「2005年度の運用方針を聞く」みたいな特集記事がございまして、その中で銀行業態の皆様は10年国債利回りの想定レンジを言わされているのですが、揃いも揃って10年金利の下限が「1.3%」になっております(農林中央金庫のお方だけ下限1.2%)。アンケート回答期限がいつなのかは存じませんが、まぁいずれにせよ「10年国債利回り1.3%を派手派手に割れ」というのは「想定の範囲外」って奴でしょうから、昨日の後場は運用会議絶賛実施中にて相場が動かなくなったと見ました。

本日どうなるのか、結局日本株次第(米ナスも上昇してるしNY引け後に発表されたTIの決算が事前予想よりは良いようなのでちったぁ戻りませんですかねぇって感じですが)なのですが、さてどうなんでしょ?


ま、あくまでも(良く外れる)あたくし的な印象ですが、昨日は「そろそろ売るものが無くなって来ましたな〜」って感じを受ける所でして、目先は株式市場が戻って少々下落しても現物債には押し目買いが入りそうな予感がするんですが、そんなことを書くと寄りから渾身の売りが出ちゃったりしてね、えへへ。でも上記した日経公社債情報の感じだと債券残高を予定通り積めてない人が多そうですなぁ。


○まぁそりゃそうなんですがタイミングが・・・・

理論派で鳴らした(つーか今でも理論派ですが)日本銀行前副総裁の山口泰さんが昨日都内のどこぞで講演をしていたそうです。情報ベンダーにちょっとだけ記事がでてフラッシュを打たれていたのですが、記事によると話の内容はこんなところ。

・量的緩和政策の「量」そのものには意味が無かった(ゼロ金利+時間軸には意味がある)
・札割れ対策で長期国債の買入を増やすと、反対に売却する場合にインパクトが相当に激烈になると思うので日銀が長期国債買入増額に慎重なのは理解できる
・最近の福井総裁発言などを踏まえると日銀は札割れがなくても景気が回復するのであれば当座預金残高目標の引き下げを考えているかもしれない
・量的緩和の出口に向かうと言っても、その先にインフレ的経済や高金利の経済が待っているわけではなく、超低金利が続く可能性が高い
・デフレ下でも景気回復はしている

3番目の話以外は昨年8月にこちらでもとりあげました時事通信社発行の月間誌「金融財政」でのインタビューで同じようなお話をしておりましたな。3番目の点に関してはまぁあたくしも同じ見解だったりする(やるべきではないと思うのと、日銀はこうやるでしょうという見通しは別問題^^)のですが、果たして市場はどこまで織り込んでいるのか。株式市場やら為替市場(はそもそも反応しなさそうですが)なんかはどう反応するのかは未知数の段階ですわな。日銀としてはどうやって織り込ませるのか難しいでしょうなぁってところですな。

ま、それは良いのですが、株式市場が実に怪しい状況になっているさなかに日銀方面から聞こえてくる話は当座預金残高の引き下げだの景気回復だのというものばかりですな。間違って株式市場が腰折れ状態になって景気も怪しくなってきた時に大丈夫なんでしょうか?

山口前副総裁の講演自体は事前準備していることなんで株式市況がゲロゲロになっているから内容いじるって訳には行かないのは判りますが、何ちゅうかタイミングが宜しくありませんでしたなぁ。


○しかし当座預金残高目標引き下げして大丈夫か?

という話になる訳ですよ。どうもここもとの株式市場の下落に関してもそんなに気にしている雰囲気もないし、山口前副総裁の講演を引くまでもなく日銀は相変わらず景気には強気で消費者物価だけは下がらないですねってスタンス。昨日の信託大会での福井総裁挨拶(武藤副総裁代読ですが)でもこんな感じ。

『景気回復の基本的なメカニズムはしっかりと維持されており、最近では、生産も横這い圏内に持ち直しております。わが国経済は、遠からず「踊り場」を脱し、持続性のある成長軌道に向けて回復を続けていくものとみています。』

『この4月1日から予定通りペイオフが全面解禁され、わが国の金融システムは新しい時代を迎えることとなりました。この間、預金者や金融機関の動向は落ち着いたものとなっており、ペイオフ全面解禁は円滑に実施に移すことができたと思います。』

相変わらず強気モードでありますな。そういえばペイオフ全面解禁が尻抜けだという話を特集する積りだったのに調べ物をする余裕が無くてそのまま放置になってましたな。興味深いエントリーが昨日の「本石町日記」にありますんでご覧下さいませ(とまた手抜き)。

それはともかくとして、当座預金残高も「量」に関しては、既に当座預金残高目標引き下げ議論で「テクニカルな減額」だの「流動性対応分の減額」だのという話をしている訳ですんで、山口前副総裁のように断言はしませんが、実質的に「量の増額=金融緩和」と言っていた理屈がなし崩し的に骨抜きになっているのが現状でありまして、仮に景気がマジで腰折れモードになった場合に日銀として次に打つ手は無くなっているという状況になりつつありますわな。ま〜面の皮が物凄く厚ければいけしゃあしゃあと「量を増やしたから金融緩和」とか言って当座預金残高目標増額でお茶を濁すのかもしれませんが、最早そうなったら金融政策支離滅裂ですわな(^^)。

という訳で、日銀の中の人は結構ドキドキしているのではないかと思う今日この頃でありました。


○おまけの雑談

フジテレビの株式購入価格が6300円ですかそうですか。TOBに応じた企業の皆様の顔を泥靴で踏みつけるような「和解案」で誠に結構でございますなあ。誰か「フジサンケイグループ企業への広告出稿は全面的に停止」とかやってくれないかなと思いますな。とりあえず「フジサンケイビジネスアイ」は即刻廃刊していただきたいですな。そんなカイシャの「経済報道」なんてちゃんちゃらおかしいですわな。アホラシ。

などということは目出度い和解にケチをつける無粋ないちゃもんなので言ってはいけませんですな。あっはっは。

しかし理解に苦しむ。これでまた「日本企業は株を買い占めると金が出てくる打ち出の小槌」という認識が広がりそうな悪寒。日本企業の内部留保を労働分配しなかったら何のために景気回復(ただし企業部門のみ)したのか意味判らん。。。。まぁ株価が低いのがイカンといってしまえばそれまでだし、そんなら株を買えと言われそうですが、雇われ的にはやれリストラだの労働強化だのしてせっせとためた内部留保があっさり持っていかれるのは感情的に釈然としませんわな。

・・・また読者が減るような無見識なことを書いてしまった・・・




2005/05/18

お題「相変わらず小ネタだったりする訳ですが」

フジテレビとライブドアが和解して結局フジテレビ自体に影響がなさそうなのがそんなに気に食わないのか何だか判りませんが、朝見ている複数の番組では「結局マネーゲームだった」と批判している朝から暑苦しいメインキャスターあり、今頃になって「大幅な株式分割いかがなものか」などというネタを言い出す経済評論家ありと実に謎でありますな。まぁど〜でもいいんですが。


○経済財政諮問会議(金曜の続きと言うか補足)

お勧めの経済財政諮問会議の会議録をお読みいただきますとお気づきになられたと思うのですが、どうも麻生さんが孤軍奮闘でちゃんとした話をしているように思える訳でございますな。特に先日ご紹介した4月7日の諮問会議は「国と地方」の問題がテーマになっていた事もありまして、総務大臣として「何でもかんでも地方に押し付けるんじゃねぇこのヴォケ」という話を行っておりますな。4月7日の会議録の5ページ目の最後の辺りから麻生大臣の発言を引用します(金曜日に載せるつもりだったのですが、時間と量の都合で本日に延期)。長いので適宜段落分けします。

『(麻生議員) 今の地方のプライマリーバランスは黒字だということについて、私どもの資料の2ページ目で、イギリス、フランス、ドイツでも地方の財政赤字は少ないということがわかる。これはどうしてかというと、国は金融、経済、税制など自ら歳入をコントロールできる広範な権能、権限を有している一方、地方にはそれはない。国は同時に大きな単一財政主体なのだろうが、地方の場合は、財政主体の集合体のようなものだから、国と地方に同じような財政赤字を背負わすということは、基本的には適当ではないからこうなっているのだと思っている。』

『資料の3ページ目は、地方財政の大幅な財源不足の主たる原因は、国が赤字国債を発行してからの話であることを示している。国が赤字国債を発行して、地方にも景気対策等々、同様の財政運用を強いてきたという歴史があり、地方の財源不足とは非常に深い関係がある。谷垣議員も理解された上で発言しておられたのだが、数字、紙については、納得しかねるところがある。』

『したがって、国の財政が国債への依存体質から脱却することが不可欠であり、一方的に地方歳出を削減すべきとだけ聞こえる議論というのはいかがなものか。この件については、昨年の三位一体の全体像においても、国と地方の双方が納得できる形での歳出削減に努めるということになっている。谷垣議員と私で借金の押し付けあいのようなことをやっていても始まらないので、国と地方を通じた歳出の削減を進めて、財政の健全化を図ることが重要であるという、極めて常識的なことを申し上げて反論とさせていただく。』

と、このように物凄く真っ当なお話をしているのですが、この発言は誰も反論のしようがなかったらしく、会議録によればこの話はスルーされちゃったようで誠に遺憾でございますな。

それにしても三位一体改革とやら(三位一体って宗教用語だから安易に使っちゃまずいんじゃネーノと思うのだが)に反対する全国知事会の図とかが東京発のメディアで報道されている時は如何にも「既得権益に固執する連中の図」という風に扱われる(とあたくしは印象操作されますが)のですが、こ〜ゆ〜観点の報道ってあまり見ませんなぁ。

という訳で益々麻生大臣ファンになるのでありました(^^)。


○いまさら15年変動国債が重くなってきたようですが

金曜日の債券市場はNYダウの下落あんど日本株指数の下落って事で見事に上昇した訳ですが、そんな中で気になったのは15年変動利付国債が何となく売り物勝ちになってきた事です。

フツーに考えますと変動利付国債なんですから相場が高値圏だと思えば固定利付債からの入替ニーズが発生しそうなもんなのですが、どうもここへ来て変動利付国債の上値が重いということですんで、まぁ投資家の皆様におかれましては「こりゃ相場が下がらないんじゃネーノ」と思い出していると見ました。

で、週末は豪快にニューヨーク株式が売られて帰ってきましたので、本日もまた同じような展開が発生するとは思いますが、それにしても何か「ここまで買わないでいたんですね〜」って感じではあります。まぁニューマネーの流入って奴もあるんでしょうけど。


○G7後の日銀総裁記者会見

会見要旨はこちら(http://www.boj.or.jp/press/05/kk0504c_f.htm)でして、G7終了後に30分やった割には物凄く簡単な「要旨」になっております。で、朝のブルームバーグテレビによりますと、ここには出てないんですが、福井総裁は日本の景気に関して「日本経済の基礎体温はまだ低い」というお話をしたそうな。(他のソースは無いかと探したのですが見当たらないのであたくしの脳内メモリーベースのお話ですが)

いやまぁ経済指標は確かに弱いのですが、何も株式市場が安くなり債券市場が高くなっている今その発言をする事はないでしょうにって思うのですが。まぁ日銀総裁発言に一々株式市場は反応しないでしょうが、債券市場はうっかりするとまた反応しちゃうんですが、毎度毎度のことですが、総裁の不規則発言は相場の方向性を加速する趣旨のお話が多くて誠に遺憾でございますな。ディーラーとしては「面白い」ので「もっとやれ」とも思いますが(^^)、「市場との対話」などと偉そうな事を仰っているのですからちったぁ発言のタイミングを考えて言えやとおもうのですが。(しかし「基礎体温」は用語おかしくねぇかと思うのですが^^)

ま、G7といえば今回はこんなニュース→http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20050417AT1F1601G16042005.htmlあたりが話題でしょうかって所ですが、まぁ財政再建も結構ですが、デフレ脱却まで待った方がよかとじゃないですかって思いますがどうなんでしょうかねぇ。


○そういえばまた展望レポートの見通し記事が出ているわけだが

http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt37/20050414AS1F1401714042005.html
先週木曜の時事通信ニュースやら金曜の日経新聞やらに今月末発表予定の展望レポートの「見通し記事」が出ていますな。

展望レポートの予想自体は各審議委員の発言やら物価指標やらを見ればある程度予測できるのでしょうが、『日銀は・・・・消費者物価指数の見通しを下方修正する方向。』(上記URL先の記事)とか如何にも確定事項というかリーク記事のように書くのは如何なものかと思うわけですな。

つまらん話ではありますが、リーク記事っぽく書かれちゃいますと、世の中的には「ああ日銀は公表前にリークされちゃうんですね」って印象を与えかねない訳でして、(そういう細かい事に拘るのはあたくしだけかもしれませんが)日銀の政策運営に関する信頼性に関してほんのちょっとかもしれませんが悪影響を与えているのではないかと思うのですよ。企業決算の内容が事前リークされたら大変なことでしょ?

「見通し記事なら見通し記事と書かないと風雪のルルですがな」と日銀さまが一言いえば済むんじゃネーノとも思いますが、あまり気にして無いのかなぁと思う次第。



2005/04/15

お題「昨日の補足その他/経済財政諮問会議ウォッチ」

30年国債入札と言いますと「滅茶苦茶強い入札になって恐怖ブルフラット」か「ボロボロの入札になって恐怖スティープニング」というのが恒例行事になっておりましたが、昨日の入札は珍しくも前場引けの業者間入札前取引気配と同じところで決着するという穏当な結果になりました。まぁこれじゃあ当面は株価しか材料ありませんな。その株価が動きそうなのでそれはそれで使える材料ですが。

昨日の補足から。

○3ヶ月ものFB100円落札問題補足

昨日もあちこち聞いて回った訳ですが、まぁ要するに足元の玉不足を反映したものだという感じ。ちょうど期末にペイオフ解禁という名目があったので運用サイドが足元資金の運用を抑えていた反動で玉不足になっており、そこに期初なので元気な業者が販売用の玉確保をしたがっていた事とぶつかったという感じのようです。

昨日申しあげたように、100円で落札したFBは日銀の資金供給オペがゼロ%にならない(国債買入でも出来上がりがゼロ利回りになる債券は買わないです)ので、普通に日銀相手にファイナンスをつけると見事にコスト割れなんですが、まぁ期初で営業政策上販売玉を確保しておきたいとか、落札実績というかシェアを期初に確保して取引の活発化に寄与したいとかいう、合理的だけど合理的じゃない理由(謎)に伴った動きがこの結果だということで。

昨日は100円落札ケシカランと言うことで短期国債売却オペが実施されました(そういえば昨年12月に短期国債100円落札があったときにも同じように短期国債売却オペがありましたが)。結果は落札利回り0.001%と言うことで、足元の運用圧力も結構ありますなぁって感です。

ま、期末の反動で足元の運用圧力が掛かっている事と、期初の業者の営業政策上の要請のダブルパンチという解釈でよろしいのかと。


○まぁどうでもいいですがニュース雑感

・「セキュアードキャピタル、カルパースの出資を受けて資金総額700億円のファンドを組成」(ソースが見当たらないが同社発表ネタ)

→はあはあそうですか。ところで先日NHKスペシャル「巨大マネーが東京を狙う(とか言うようなお題の番組)」でカルパースの運用部門の偉い人は「そろそろ撤退も検討」みたいな話をしていましたが、ありゃ「買いたい弱気」のポジショントークですかそうですか。

・「フジテレビとライブドアが和解する方向」(あちこちで報道中)

→何かライブドアが損しない方向になるそうですが、そうしたらTOBに応じた人達へはどう言い訳するんでしょうかねぇ。フジテレビってもしかしてメガトン級のアフォですか?

・「カネボウ粉飾決算問題で上場維持を検討するように産業再生機構が表明したらしい」(昨日のNHKニュースで見たのだが)

→産業再生機構の何ちゃらという執行役員だか何だかのお方が、「正直にゲロしたんだから取引所も配慮をしましょうね(はぁと)」とか「正直にゲロしたら上場廃止じゃぁ正直者が馬鹿を見るみたいな話になりませんかねぇ」みたいな趣旨の発言をしていたとあたくしの脳内メモリーに入っているのですが、そりゃちょっと話が変な気がしますが。粉飾は粉飾じゃろ。もしかして本件は産業再生機構様が取り扱っている物件なんだから以下自主規制ってあわわわわ。ま、ダブルスタンダードキターーーーーって感じですが。


○経済財政諮問会議ウォッチ

年がら年中やっている経済財政諮問会議ですが、まぁテーマがテーマだけに会議録を読んでおりますと麻生総務大臣の奮闘振りが目立つと申しますか、民間議員の話が「そりゃどうよ」って感じでして、やや個人的贔屓目もあるのかもしれませんが、麻生さんが一番まともな話をしているように思えます。付け加えますと、小泉首相はあまり発言しませんが、割とちゃんとした突っ込みと言うか質問をしてますし、細田官房長官もあまり発言しませんが以下同文。

4月7日に行われた議事要旨(議事要旨は「内閣府のWeb」→「経済財政諮問会議」→「会議情報」→「平成17年度」→「第7回(4月7日)」で読む事ができます。毎度毎度応酬をみているとオモロイですんで物凄い勢いでお勧めです)を見ますと、民間議員というか本間正明大阪大学大学院教授と吉川洋東京大学大学院教授の「有識者議員」の提出してくる話にどうも突っ込みどころが多いようで。。

・「国と地方」の改革について、に突っ込む麻生さんの図(3ページ目)

『不交付団体の目標について、これも昨年、私の方から、不交付団体を人口割合で3分の1にするということは既に申し上げたと思うが、人口比で3分の1だと、それだけで交付団体と不交付団体の税収はちょうど50 対50になる。今回、団体数で3分の1ということになると、平成16 年度の人口割合では82. 1%になり、これは少々非現実的。目標とするならば、ある程度達成可能な話でないといかがなものか。』(地方交付税交付金の話ね)

『地方債の改革については、有識者議員の資料の@とBが少し矛盾しているような気がする』『先ほど申し上げたように、有識者議員の資料の3の@とBのところは、自主性と管理という異なった方向となっているとも思う。』

他にも面白い部分はありますが、麻生さんの説明がオモロイです。


・「基本方針2004」の総点検について、に突っ込むの図(8ページ目以降)

『(麻生議員)A、B、Cをつけられた理由を教えていただきたい。「B」になった理由。私どもとしては、これが「B」なのかというのも幾つもあるので、理由を教えてほしい。士気に影響するのでよろしくお願いしたい。』

『(谷垣議員) 要するに我々は採点をしていただく立場で、この採点結果は、御指摘も踏まえて、今後さらに努力しなくてはならないと思うが、こういう試みをより実りあるものとしていくためには、やはり採点を「A」、「B」、「C」としていただくのも結構だが、何で「B」、「C」なのかというのを、よく議論というか、対話をさせていただき、できるだけ透明度の高いものにしながら、その議論を踏まえてさらにやっていく、ということもお願いしたいと思っている。』

で、これに関する本間議員の答えなんですが、最初の一節はそりゃどうよって思う訳ですが・・・・

『(本間議員)この採点表が確定したものとは考えていない。基本方針に書き込まれた表現ぶりがある。例えば、検討する、工程表を明示化するなどの書き方がある。その基本方針に書かれたことが忠実に行われているかどうかを基準にした。』

うーん。。。。。ちなみにこの続きはこんな感じ。

『例えば、「A」で十分な取組がなされたものというものでも、そのうちの10 項目は「検討する」ということで検討したので、「A」に入っているものもある。絶対レベルでかなり目標の数値が高いもので実現できないものの中では「B」に落ちているものもあり、各省庁とのやり取りの中で、ランキングが合理的な説明を要するかどうか、ぜひ今後もきちんと詰めた形でやってまいりたいと考える。』

『「B」の中でも、麻生議員指摘の部分を、それぞれの項目によって違う説明をしなければならない点があると思うので、ぜひその点についても事務方とチェックをしながら、ここで説明する必要性があれば、次回以降に説明させていただきたいと思う。』

説明資料用意しとけよ・・・・・

ちなみにこの続きに小泉さん、細田さん、竹中さんはこんな意見を言ってます。

『(小泉議長) 何故こういう評価か、「B」、「C」、「×」なのか、この検討、対話は重要である。評価する方も評価される方も。そうでないと改善できないので、十分やってほしい。』

『(細田議員) 総合科学技術会議でも8人の議員が各省と、なぜ「S」「A」「B」「C」なのかを対話をしている。理由の開示と直接対話は必要なのではないか。』

『(竹中議員) 評価する側と評価される側、双方の説明責任があろうかと思うので、前向きに対応させていただきたいと思う。』


いやまぁこの手の資料っつーか議事要旨って見てて面白いです。国会の会議録も面白いんですが。。。。。

#最後は引用で増量になったことをお詫びいたします。




2005/04/14

お題「FB入札と当座預金残高維持問題」

日銀ネタが月末まで一段落しちゃいまして、入札も次の20年国債まではちとネタにしにくい感じですな。本日は30年国債の入札があるんですが、この商品はまだまだ投資家層の広がりとか流動性とかに少々問題があるようで、何っちゅうか別天地の商品って趣が抜け切りませんですなぁと思うわけで。

○FB最低落札価格が100円ですかそうですか

昨日のFB3ヶ月もの入札は最近の短期国債入札の過熱っぷりが見事に影響して期初から景気良く最低落札価格が100円、つまりゼロ%となりました。まーこれも当座預金残高目標30兆円維持の犠牲みたいなもんで、ここの所の動きから見て市場的には「はぁそうですか」くらいのお話だとは思いますが、「短期国債が100円=利回りゼロ%」ってことなんで、金融政策論議で言われる「量的緩和政策(というよりはゼロ金利政策なんですが)によって日銀当座預金=短期国債となる」っていうお話が具現化しましたなぁってのが話題っていえば話題なんでしょうか。

量的緩和政策によってポートフォリオリバランス効果が発揮されるというロジックは割と多くの人がお話している(日銀もそもそもこの政策をおっぱじめる時にポートフォリオリバランス効果を重視した言い方をしていた)のですが、実際はどうよって話になりますと、ポートフォリオリバランスの前に国債のイールドがどんどんゼロに向かっていくのが先に行くというのが市場にいるものの直感でございます。

もちろん「国債利回りの低下」→「財政ファイナンスのサポート」→「財政支出による景気刺激」ってルートを使えば景気回復への効果はあると思うんですが、そこで財政が何もしないと単に国債が買われるだけで意味があんまりなさそうな気も。などとちゃんと経済学をやっている人から思いっきりアホ扱いされそうなイメージ話で恐縮至極。

しかし3ヶ月FBで落札者全員ゼロ利回りってのもようやるわって感じです。日銀の資金供給オペにこの玉応札したら逆ザヤになるわけで(日銀はゼロ%利回りになる資金供給オペを今の所実施していないはず。記憶違いだったらゴメンナサイ)、資金供給オペは益々大変になるでしょうな。まぁ実際はコストゼロ%でのFBであっても短期国債買入とか国債買現先とかにぶちこむと思いますんで無問題なんでしょうが、雰囲気としてはまぁ困ったちゃんって感じですな。


○当座預金残高目標維持に「協力」という茶番

ときどき話題に上るのですが、当座預金残高目標30兆円を維持するために銀行が協力するとかしないとかいう話がございます。昨日の日経新聞にそんな記事があったらしい(読んで無いので良く判らんが)のですが、まぁ要するに「イラネ」って状態の短期資金供給オペに対して金融機関も日銀の顔を潰すのもアレですんで特に資金要りもしないが参加いたしましょってお話。

そうなってくるとこの「当座預金残高目標維持」ってのは一体全体何の意味があるんでしょって話になる訳ですな。今までの政策ロジックを踏襲するのであれば、短期資金の供給オペで当座預金残高目標維持が困難になってきたのであれば、オペ期間の長期化とか中長期国債買入の増額(そもそも速水総裁時代は「当座預金残高目標の引き上げ」と「長期国債買入額の増加」をセットにしていたわけですし)をするのが筋というもので、目標維持に「お願い攻撃」とは何ですかそりゃって所でしょう。

とは申しましても、実際問題として政策の筋を通そうとして長期国債買入の増加を実施というのはまぁ今の体制では考え難いというか多分あり得ない選択肢なんで、そうなりますと日銀としては、何らかの技術的な理由で誤魔化しつつ当座預金残高目標を引き下げて「金融引き締めではない」と強弁するしか無いんでしょうな。政策ロジック支離滅裂ですが。

しかし当座預金残高目標維持のための「努力」って「お願い行脚」では無いと思うんですが・・・・・・


ところでこの当座預金残高維持問題。他市場との関連って話を考えますと、株式市場は3月初旬には「日経平均12000円抜けですよおっほっほ」って勢いを見せていたのですが、まぁ最近は色々と怪しい雰囲気でどうもぱっとしない展開。そんな中で当座預金残高目標維持はというと目先はともかくこの調子では6月以降にはテクニカルに維持困難になってきそうですわな。

まぁその頃になっていれば株式市場の様子も違っているかもしれませんが、このままですと「株式市場はこう着状態なのに当座預金残高目標は引き下げ」という実にお洒落な展開を見る事が出来るかもしれませんな。

他市場への影響をちゃんと止められるんでしょうか?>目標下げ


○いつも書いているがまた整理(結局日銀ネタか・・・)

だいたい目先の金融政策の注目点としては、(1)当座預金残高目標の引き下げ問題、(2)消費者物価指数の定義問題、という辺りになろうかと思います。目先にくるのが(1)でして、まずは「当座預金残高維持がいつまで持つのか」というのが注目。結局テクニカルな理由を持ち出して下げてくるんでしょうなぁってのが結論でしょうが。

(2)の方が実は話題としては重くて、政策の前提になるCPIの定義をいじっちゃいましょうって事ですから、(1)より重大な問題。しかも西村審議委員もこのネタを就任記者会見で話題にしておりますので、今後の展開には注目したい所です。


#今日もまた纏まりのない雑談で恐縮でした。





2005/04/13

お題「相場雑談」

#今朝は相場雑談で勘弁。

○5年国債入札レビュー

まぁ大体「積極的な買いは期待しにくいかな」などと書きますと入札が強くなるのですが・・・・・

・前場〜前場引け

昨日は米国株の下落を受けて(なのかどーかは知りませんが)朝から確りのスタートとなりました。しかし前日の5年44回債の引値が0.545%ってことからクーポン設定が微妙なラインにあったことからとりあえず5年債の前日比5糸強レベルには売りが出るという形になりました。肝心のクーポン設定は0.6%となりまして、とりあえず一安心という感じではありましたが、特に好感した動きがあったとも見えない状況で、前場の引けは先物が売られて前日比変らずになりました。

ところが、前場引け直前からそれまで弱体モードだった5年債新発ゾーンがやたらと確りとなりまして、前場の先物高値近辺でも5糸強だった5年44回債が前場引けでも5糸強の0.54%、5年45回債も最終出合いは0.545%となりまして、5年カレントだけ復活という入札する側としては困ったちゃんの入札となりました。

事前のプライストークは前場引け際の雰囲気を受けまして「100円26銭(=0.545%)で足切りになれば御の字ですか?」って話になっていたのですが、結局引けの雰囲気が継続してしまい「28銭(=0.541%)もシャクですが入れますか」という話にはなりました。

・後場

案の定後場は寄りから先物が前場引けから6銭とか上昇してスタートしたのですが、落札結果発表前に先物がじりじりと上昇する中で5年ゾーンの伸びはイマイチとなりまして「???」と思っていた所、落札結果は平均29銭の足きり28銭で按分36%と強い結果。結果発表後なぜかワンタイミング置いてから先物が上昇した訳ですが、ふと気が付くと前場引けから先物が20銭とか上昇しているのに、5年45回債の業者間気配は0.535%オファーの0.540%ビットとなっておりまして、何と平均落札価格から2銭(まぁ5糸)上がオファーサイドという情け無い状態になりました。

引けにかけて先物が売り込まれたこともあり、やや現物債の気配は復活しまして、大引けでは先物139円53銭に対して5年45回債の気配は0.53%−0.535%となりましたが、結局入札そのものは「日中値動き的に見て一番割高な所で買わされた」という格好になってしまいました。ナンノコッチャという感じの入札ではありました。


・ニーズがあるにはあるんでしょうが・・・・

市場推測によりますと大手銀行系の証券会社が3000億円以上と大きく落札しておりまして、「落札者不明」の札も3000億円ほどあるということですんで、まぁどこかの大手銀行さまを始めとする銀行業態の大きな方にはニーズがあったようですが、入札が結構つよつよだった割りにはその後イールドカーブ上で5年ゾーンがドンドン強くなることも無く、っていうか結局元の木阿弥に戻ってた訳ですな。そう考えますと、今回の入札は「プライマリーでのニーズで目先終了」って感じもしますし、とは言っても相場が上昇しているのですから相場が弱い訳でもなく・・・・・

ま〜とりあえず「入札段階は行ってみましたけど今の所追加して買いには行きませんです」くらいのもんなんでしょうが、債券市場がこの調子でじり高モード(昨日はそれなりに上昇しましたが)になっておりますと、またも炙り出し大会になってしまうかな〜などと思う次第でございます。


○というわけで炙り出し攻撃のようですが

米国市場では例によって債券高株高攻撃ですんでどっちに反応するのかよーわからん所ですが、流れとしてはまぁ債券市場の買い方向になる方に反応するでしょうなぁって所ですか。こ〜ゆ〜じり高状態で何となく出てくる戻り売り(あんまり出てないようですが)を何となく消化しながら本格的な上昇をしないでちんたら上昇というのは売り方に取って「蛇の生殺し」的な相場ですわな。まぁ昨日の5年国債はそれなりに買いが入っておりましたが(^^)。

目先気になるのは「当座預金残高目標引き下げ」くらいという感じですし、何だか債券市場は消化しちゃっているのか消化してないのかよく判らんのですが、あたくしがこちらで申しあげておりますように、状況はどう見ても「近いうちに当座預金残高目標をなし崩し的(政策ロジックを気にせずに後付け理屈をつけて)に引き下げは必至」という感じですんで、それなりに債券市場はこの材料を消化しちゃっていると見た方がよさそうに思えます。

となりますと、明日の30年、来週の20年という超長期ゾーン2発の入札を無事に切りぬけられるかしかポイントが無さそうですな。「相対的比較」での買いで消化しづらい債券ですんで、まぁ30年はともかくとして、1.9%台前半(ここから上昇すればの話ですが)の20年債が入札で無事に捌けるのかが注目材料と言う感じで、まぁ来週の20年入札までこの調子の相場になりそうですな。

ではでは。





2005/04/12

お題「西村審議委員記者会見」

今日は5年国債入札なんですが、相場水準がこの調子だと積極的な買いは期待しにくいですかね。とはいってもあんまり下がる雰囲気もないのでまぁちんたらと消化していく感じになるんでしょうな。大いに強くなったら脅威ですが。

昨日ちょっとだけ触れた西村清彦審議委員の就任記者会見が日銀Webにアップされましたので追加的なあたくし的印象を申しあげませう。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0504b.htm

○総体的印象

・話が長いお方ですな

会見要旨をA4サイズに打ち出しますと7ページ。ちゃんと傾向を取ったわけではないので今までの記憶とイメージベースですが、記者会見の時間約35分に対して量が多いですなぁという印象。

・著書より会見の方がわかりやすいです

先日来先生の著書について「言いたいことは判らんでもないが、何でそうなるのかがさっぱり判らん」などと悪態をついておりましたが、この記者会見要旨を見ますと言いたい事が判りやすいという印象を受けます。あくまでもイメージなんですけど、会見での発言を通して読んだほうが、著書を読んでいるよりも判りやすいと思いました。

・ちょっと持って回った言い方をしますな

まぁ今回の会見では「審議委員」としての発言というよりは「西村清彦氏としての見解」を述べる場となっておりますので、今後に期待したいところではありますが、ちと持って回った言い方をするので片言隻句を切り取られて情報ベンダーでフラッシュを打たれるとそりゃどうよって話になりそうですな。まぁ日銀政策審議委員としてどのような発言をするかというのに期待したいです。

と言いますと気になるのは就任直後は色々とお話していたのに最近めっきりお静かになられた水野温氏審議委員でありますな。日経金融新聞の寄稿で市場レビューをおっぱじめて「グローバルフラットニングが暫く継続」と債券ストラテジストのようなお話をしてしかも見事にフラットニングのど天井で指摘しちゃうという某人気株式評論家も真っ青な攻撃爆裂以来どうなったんでしょうか。

と、唐突に水野さんを持ち出しましたが、西村さんにおかれましても、経済学者としてどうのこうのと言う所と、審議委員としてどうのこうのって話を使い分けするのは情報発信として結構難しいのでご留意ありたしと思うわけです。

では個別のお話


○量的緩和モルヒネ論

『私の著書をご覧になったと思う。そこで「モルヒネ経済」という言葉を使っているが――多分、「モルヒネ経済」についての質問が出るのではないかと予想はしていた――、量的緩和というのは、はっきり申し上げて「モルヒネ」であることは確かである。』

と、ここで発言を切ってしまうと「西村さんは量的緩和積極解除派か?」となってしまうわけですが、

『しかし、この4年間にわたって「モルヒネ」を打ちながら、日本経済がそれまでの非常に大きな困難を乗り越えてきたことは事実であるし、やはりこれは正当に評価しなければならないと思う。』

と言うことで評価もしているので話がややこしい。どう評価しているかは、

『ただし、量的緩和が具体的にどのような影響を持ったかということを、定量的に調べることは非常に難しいということも事実である。先程も申し上げたように、経済は最終的には企業や家計の行動というものに規定されているということから考えるならば、量的緩和を通じた安心のネットワークというようなものが、そういった企業や家計に影響を及ぼしたと考えるのが自然ではないかと思う。これを具体的に数字で表すというのは非常に難しいが、そういったかたちの評価が可能ではないかと思う。』

量的緩和政策の評価に関してはさほど「量の意味」を重視していないという印象を受けます。どっちかというと「一定以上の流動性供与」と「ゼロ金利+時間軸」を評価すると見ました。まぁそりゃそうなんですけど、従来の金融政策運営とどのように折り合いをつけるのでしょうか。

『そのように考えると、量的緩和の出口も、自然に、どういった対処で考えたら良いかということが出てくると思う。「モルヒネ」というのは劇薬である。従って、劇薬は当然のことながら止めてしまったほうが良いわけだが、しかし、劇薬を急に止めるとそこに非常な痛みが生じてしまう。頭ではわかっていても、痛みというものは体(からだ)にきてしまう。経済というものは頭ではなく体であるから、本当に痛いんだ、ということを体に少しずつわからせながら、次第にこの「モルヒネ」を止めていくというかたちで考えるのが、政策としての一つの重要なスタンスではないかと思っている。』

「本当に痛いんだ、ということを体に少しずつわからせながら」なんて所を読むと「シバキアゲですか?」とか思っちゃうんですが、発言を通してみると要するに徐々に緩和政策を解除した方が良いんじゃねぇのって事なんでしょうな。

で、先ほど申しあげたように「発言を通して読むと趣旨は伝わるけど、一部を取ると刺激的なフレーズがある」ってのはミスリードを生みやすいので具体的にどうのこうのというのが判らんのですが、もうちょっと何とかした方が良いのではないかと存じます。


○インフレターゲットに関して

『何度も申し上げている通り一般論で申し上げると、インフレ・ターゲットというのは、いわゆる根拠に基づく政策(evidence based policy)ということから考えて、金融政策の説明責任を明確にして金融政策の信用を高めるという点で非常に重要な政策手段の一つであると考えている。特に、インフレが進行している場合にその効果は非常に大きなものがあると考えている。』

『ただし、日本の現状に当てはめた時に、その効果の得失をやはり考えなければならない。ゼロ金利政策や量的緩和政策の経験から見て、金融政策に十分な対応余地があるのかということを考えなければならない。特に、その目的が政策の信用を高めるということであるから、この点に関してはかなり慎重な対応が必要であると考えている。先程申し上げた、発展途上である統計との関係の問題も考えなければならない。』

デフレ下におけるインフレターゲット政策は、日本銀行として出来る金融政策に限界があることを考えると「根拠に基づく政策」としては取りがたいというご意見のようです。もっと端的に申しあげれば、「デフレ下でターゲット設定しても実行する手段がねぇんじゃコノヤロー」ってところでしょうかね。


○消費者物価指数に関して

『これ(量的緩和政策が消費者物価指数にリンクしているという件)は非常に難しい問題だ。実は統計のあり方そのものが現在動いている。私は統計審議会や内閣府にいたので、このことについての理解は十分にあると思っているが、統計の中身そのものを実態にセンシティブになるように統計の作り方が少しずつ変わってきている。従って、いわば今は統計そのものも発展途上にあると考えている。同じようなことは日本銀行の調査統計局で作成している統計についても言えることである。逆に言えば、そういう動きつつあるものにコミットするようなかたちで政策を決めるということが、本当に望ましいのかということに関しては、若干の躊躇がある。』

と言われると「ええっ!」って感じなんですが、この後にちゃんと『しかし、当然のことだが、コミットメントというのは守らなくてはならない。』って続けてはいます。ただ、西村さんとしては物価指数に関してこんな話を続けてます。

『従って、今後は消費者物価指数や企業物価指数などをいかに良くしていくか、そしてそうしたものが変化してきているということについて、いかにマーケットや世論、そしてマスコミの皆様方と対話し、理解して頂き、より良いターゲットを作っていくか、という考え方が必要ではないかと思っている。具体的なことに関しては非常にテクニカルになるので、ここでお話することは差し控えたい。』

ということで、消費者物価指数の定義をいじるという最終兵器が出てくる可能性は思いっきりありそうですな。ひところ「コア消費者物価指数から特殊要因を除く消費者物価指数がどうしたこうした」ってお話が審議委員の皆さんから聞かれましたが、まぁどうもそういう方向になりそうですな。岩田副総裁このままじゃあ押し切られますよ〜♪


○その他少々

・政策の「質」というお話

『踊り場を脱していく上での政策のあり方に関してであるが、金融政策はかなり目一杯のことをやっているし、財政政策もかなり目一杯のことをやっている。問題は目一杯のことをやっているやり方を、両方とも効率的にやっていかないと、なかなかうまくいかないのではないかということである。効率的というのは、例えば金融政策──これは景気回復をもたらすものではなく景気を後押しするものであると思っている──が、どのような力を持っているのか、その力をどのように使うのがもっとも効率的なのかということを考えなければならない。財政政策のほうも、公共投資の支出の仕方ということを含めて、いかに効率的な支出をすることによって新しい需要を生み出すことができるか、ということを考えなければならないと思っている。』

政策の「量」より「質」ってのが何を意味するのか良く判りませんが、とりあえず西村さん的には重要そうなポイントなので一応引用しました。財政政策に関しては最近西村さんは「政策投資ファンド」を提唱しているので、ま〜その辺をイメージしてるんでしょうなって感じです。この続きの部分で「質が重要」って言ってます。

・当座預金残高目標引き下げ問題

『まず最初の点(当座預金残高目標引き下げ問題)は、金融のマイクロストラクチャーの機微に属するものであるが、私自身は現在十分な情報を持っているとは考えてないので、私の見解を述べるのは差し控えたい。これはやはり十分な情報を頂いてから、金融政策決定会合で私なりの判断をすべきことだと考えている。』

ということで今回は留保となっております。



2005/04/11

お題「お花見疲れで今日は小ネタで勘弁」

東京で桜が満開な時って不思議と陽気が良くないというのがここ数年続いてましたが、今年は珍しくも絶好のお花見日和になりましたな。よって月曜からヘロヘロ(謎)。

○相場が下がらねぇ〜

金曜は機械受注統計が発表されました。で、機械受注の数字は事前予想の前月比2%台後半を上回る+4.9%と強い数字。債券先物はその瞬間は売られたのですが、下げはほんの1−2分程度という状況。機械受注発表で下落した瞬間を待っていた押し目待ち軍団の買いが相場を戻しまして、何とその後指標発表前の価格よりも先物が上昇する(そもそも押し目が10銭ちょっとしかなかったが)という有様で、その余りにも下がらない状況に脱帽。

何と言うかどこまで「様子見」だったんだかって感じではあるのですが、「材料が出て相場が下落」→「すかさず押し目買い」ってのが段々強力化している悪寒であります。需給要因恐るべしといった所か。

大体木曜日に福井総裁が国会で思いっきり「当座預金残高目標引き下げ」に関して踏み込んだ発言をしているのに相場が反応しないから変だなぁとは思っていたんですが、ここまで押し目買いをしたい人がいるとは驚きでございます。今週は5年と30年国債の入札がありますが、この調子だとなんか全然問題なしって感じになりそうですな。

ただ、相変わらず現物債は循環物色といえば聞こえがいいのですが、どちらかと言うと「買いが来ているゾーン以外は重い」という風な動きをしているというのが実感でして、まだ様子見でございますかって感もございます。こんな感じで相場が推移しつつ、皆が痺れを切らした所で2月みたいな景気の良い相場がやってくるんでしょうなぁ。同じパターンですな。


○西村審議委員の会見

西村清彦先生が植田審議委員の後任という形で日銀政策委員会審議委員に就任しまして、記者会見があったようです。惜しくも日銀のWebにはアップされていない(つーかアップされるものなのかよくわからん)のですが、時間が金曜の引け後だったこともあって市場の反応はイマイチというか皆無でした。

まぁ報道されているフラッシュを見た限りにおいては、西村審議委員は「現実派」と申しますか、まぁ政策ロジックの整合性に関しては柔軟な対応って感じのようですな。目だったのは西村先生の著書「日本経済見えざる構造転換(日本経済新聞社)」でも指摘しております「量的緩和政策は痛みを和らげるモルヒネ投与」っていう認識でしょうか。

基本的には「量的緩和政策の早期脱却」というスタンスのようでして、何か「構造改革シバキアゲ論」を彷彿させるものがあって誠に如何なものかって気もしますが、そこはそこ、西村審議委員の「現実的」発想によってあまり極端なお話にはならないのではないかと期待したいところでございます。

金曜日の日経金融新聞では1面を大きく使って「量的緩和政策の修正へ」という趣旨の記事を書いておりまして、量的緩和政策導入時の審議委員である植田さんの退任によって「過去のしがらみからの解放」が出来るというようなお話もしておりました。

まぁ本来中央銀行の政策って「人の切れ目が政策の切れ目(by本石町日記(http://hongokucho.exblog.jp)さま)じゃぁ困るんですが(つーかそうならないように政策委員の交代時期が微妙にぶれているのでは???)、どうも流れとしては「人の切れ目が政策の切れ目」って形になって行きそうですな。


○当座預金残高目標引き下げに関するあたくしの愚意見叩き台

全然纏まっていないので思考の叩き台という感じで簡単に。

まぁ上記のように雰囲気としては「当座預金残高目標引き下げ」の方向のようなんですが、じゃぁそれでいいんですか?って事になりますと、あたくしとしては如何なものかという感じであります。何度もここで書いておりますのでご存知かとは思いますが、政策ロジックとして「当座預金残高目標引き上げ=量的緩和の強化」という事でやっていた当座預金残高目標を「技術的対応」で引き下げるのはそりゃ先生姑息ってもんでしょう。というのが基本的意見。

もう一点としては「量的緩和政策のアナウンスメント効果」部分に関して。あまりアナウンスメント効果に関しては信用してはおりませんが、金利関連のマーケット以外ではそれなりに効果があるのではないかという気もしております。何せ「足元直下の日銀ウォッチャーからは酷評されながらも、世間的には極めてウケが宜しい」という「世界で使えて自宅で圏外」日銀総裁という状況でもありますんで。

金融市場というか債券とか短期金融市場では当座預金残高目標の引き下げに関してだいぶ消化されたような感じ(ただし債券市場が下げないのは単に需給かもしれないですが)ではありますが、いざ当座預金残高目標を引き下げた場合に、株式市場とか為替市場などの他市場や、海外投資家なんかが日銀の意図どおりに材料を消化して反応しないで済むのかという点は大いに懸念されますな。「期待に働きかける政策」っていう部分もあった筈なんで金融市場が織り込んだからと言って喜んで(?)引き下げを急ぐことのないようにって思います。

たぶん金融市場は「技術的対応オッケー」であっても論理的整合性を欠く状況で突っ走ると金融市場の外ではやはり「金融引き締め」とか「緩和政策の終了近し」と受け止めると思いますんで・・・・





2005/04/08

お題「総裁記者会見と総裁国会答弁」

○参議院財政金融委員会の国会答弁

昨日の参議院財政金融委員会では日銀半期報告質疑が行われまして、福井総裁と武藤副総裁(ほか誰か出席したかもしれませんが)が出席して答弁をしておりました。で、その中で福井総裁は「仮に」ということで「当座預金残高目標を数字の上で調整するとしても、実態的緩和を維持するなかでも技術的調整であるということが理解されるべきであり、日銀としてもそういう説明をすることになろう」(ロイター日本語版)という趣旨のお話をしていたそうな。

一昨日の債券市場では「金融政策決定会合で現状維持に反対票が入った」というのをネタにして債券先物が売られていたというのは昨日申しあげましたが、もし「当座預金残高目標引き下げ問題」が債券相場に対してヒジョーーーにナーバスになるようなお話だとしたら昨日の国会答弁でも債券相場は売られるって事になるんですが、昨日の債券市場は全然売りで反応しないとは誠に遺憾の極みであります。


ま、理由としては、

(1)そもそも当座預金残高目標の引き下げが債券市場的にはテクニカル調整だと解釈されているのであんまり重大視されていない。
(2)まぁ日銀総裁発言に関しては話半分に聞いておかないと2月末の「福井ショック」の二の舞になるから気にしない。
(3)この発言が「当座預金残高目標の引き下げに大きく踏み込んだ発言」だと理解できていない。

なんてののどれか(あるいは合わせ技)が考えられますな。その時の現物債とか先物の売り手と買い手の力関係(一昨日は現物が全般的に重く、昨日は6年〜7年ゾーンの現物と先物が強かった)で「材料にしたり材料にしなかったり」という程度の扱いなのかとも思いますが、実は(3)なのかもしれませんのでご注意を。

しかし当日の答弁のフラッシュが流れましたが、相変わらず金利関連に関する話は金利低下を牽制しているのかなぁってのも散見されまして、相変わらず困ったお方だという感じです。



○珍しく荒れなかったような総裁記者会見

金融政策決定会合を受けた総裁定例記者会見ですが、珍しく平穏な記者会見になったようで誠に結構であります(^^)。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0504a.htm

「展望レポートの見通し期間延長問題」に関して

『(答)なぜこの時期にと言われると返事に窮する。この時期とすることに特別の大きな理由があったわけではない。いろいろなかたちで工夫を凝らしながら私どものコミュニケーションを良くしていく。政策決定の前提となる私ども自身の見通しを極力先に延ばしながら、それに基づいて政策決定をしていく。見通しについてはできる限りお示しして、共有して頂きながら、私どもの政策行動についても理解を深めて頂く。こうした以前からの運動の一環であり、別にこれに限らず様々な工夫を凝らしてきているし、今後も続けていくということである。』

以下延々と説明が続きますので上記URLをご参照って事なんですけれども(^^)、いつものパターンならここを先途と「消費者物価指数の今年度見通しが下方修正されるからじゃないんですか」と来てもおかしくないのですが、長々と言い訳をしたことによって「いや日銀様もお苦しいですなぁ」って雰囲気になったのでは無いかと言うのはあたくしの勝手な憶測ですけどね。あっはっは。


ところで、質疑応答の最後の方で反対票(=当座預金残高目標を技術的に引き下げましょうって趣旨での反対)に対する総裁の意見を聞いているお方がおられまして、これに対する総裁発言はちょっと微妙です。

『(答)私自身は議長の立場として、十分議論を尽くした上で、多数意見で本日の結論を取りまとめた。日本銀行の政策委員会は典型的な合議体であり、議論を尽くして一つの結論を導き出すための創造的な過程である。その際に、全会一致の場合もあるし、少数意見が残る場合もある。少数意見については、私は議長として、その中で将来につながる価値ある部分が含まれているかどうかということを、今後よく考えたい。(後半部分割愛)』

最後の一文が実に微妙なんですが、まぁ一般論として言っているというよりは市場としては「こりゃ福井総裁もホンネでは当座預金残高目標引き下げに傾いていますなぁ」って事になるんでしょう。昨日の国会答弁もあわせますと益々その感を強くします。で、まぁこれはさすがに微妙な所なので突っ込みが数本入ります。

『(問)少数意見の中に将来につながる価値があるかどうかについて、総裁は今どのようにお考えか。』

『(答)まだ即断を許さないと思う。これから真剣に考えたいと思っている。』

うーん、やはり総裁は目標引き下げっぽいなぁ・・・・

『(問)以前に、ペイオフ全面解禁後の流動性需要の動向などをみていきたいというご発言もあったかと思うが、即断を許さないと言われるのは、その辺りのこととも絡んでいるのか。』

『(答)この席でも、あるいは国会でご質問があった場合にも、ペイオフ全面解禁後の経済情勢の展開、金融システムの安定化度合いの更なる深まりの状況、それらを背景としながら金融市場がどう変化するか、具体的な流動性需要がどう変化するか、といったことを十分考えながらでなければ結論の出ない問題である、と申し上げてきた。ペイオフ全面解禁後まだ数日の状況であるので、そういう意味で、まだ予断をもって臨むべき段階ではないと私自身は思っている。』

で、この後「じゃあどの程度の期間を見れば見極めがつくのか?」という質問に対しては「期間じゃなくて今後の情勢次第」って回答をしておりまして、まぁこの調子ではある程度経済指標が良くなって来て、その時に当座預金残高目標の維持がしんどくなっていた場合は福井総裁は動きたがりそうですな。岩田副総裁が恐らく反対するとは思うのですが、5月以降とか6月あたりは少々鬼門かもしれませんなぁ。


○「前後不接連」はあるのか??

という訳で当座預金残高目標の「技術的な引き下げ」への道筋を絶賛敷設中となっているように見える福井総裁。今般の金融政策決定会合は植田審議委員の任期中に行われる最後の会合でして、これで量的緩和政策導入(2001年3月)時の審議委員は全員入れ替わりとなりますが、日銀ウォッチャー大先輩(つーかあたくしはなんちゃってウォッチャーなのだが)の某氏は「人の切れ目が政策の切れ目になる、なーんちゃって。そんな馬鹿なこと、あるはずはない。と思う。」って話をしておりましたが、本当にそんなことが起きそうな悪寒。

こんな時は以前ドラめもんでご紹介した深田祐介著の「大東亜会議の真実(PHP新書)」にありました中華民国(いわゆる南京政府ですな)汪兆銘行政院長の言葉を思い出すわけです。再掲になりますが。

「日本政府に対して言いたいことは山ほどある。それを要約すると三つの”不”に到達する。”上下不貫徹”、”前後不接連”、”左右不連携”。上役がよろしいと受けても下が聞かん。前任者が言ったことを後任者はそんなことは俺は全然知らんと問題にしない。左右の連携もまったく欠けている。」(戦後外務次官を務めた黄田多喜夫さんの談話として紹介されています。同書68ページより引用)

つーか前後不接連というか当座預金残高引き上げは今の委員がやっているわけですけどね、あっはっは。

#昨日の「予告編」の続きはまた後日(^^)




2005/04/07

お題「金融政策決定会合」

昨日まで実施された金融政策決定会合に関してあれこれ。

○「現状維持に反対票」でしたが

決定会合の結果が毎度おなじみの「全会一致」じゃなくて「賛成多数」だったんですが、債券先物はちょっとだけ売られる結果になりました。昨日の場合はやたらめったら中期債の4年〜5年ゾーンが重い(前日の相場下落の時に下げが少なかったのが影響しているんでしょうが)ため、何となく債券先物を売りたい人もいたので格好の言い訳になったという感じだとは思います。もちろん「当座預金残高目標引き下げ」で反対があったという発想です。

あたくし的には短観を受けて目標引き上げるべしって意見が出てきたら滅茶苦茶面白いなぁと思ったんですが(^^)、惜しくもその後の福井総裁記者会見で「反対票は当座預金残高目標引き下げ方向の反対」というコメントがでておりましたんでまぁ世の中の想定どおりの結果でした(^^)。

ここで反対票が植田さん(今回が最後ですな)だとオモロイのですが、情報ベンダー経由での総裁記者会見を見たところでは、反対理由が「金融市場の(ペイオフ全面解禁実施ってことでしょうな)変化の中で流動性需要がどう後退しているか、その流動性需要の変化に対して最低限、受身で、ある程度の調整がいるのではないか」(時事メインより、カッコ内はあっしのつけたし)って物なんで、まぁ福間審議委員あたり(または須田審議委員)が反対したんでしょうなってところですね。

まぁ講演なんかであれだけ散々当座預金残高目標のテクニカルな引き下げを提唱しているんですから、反対するのが筋というものでしょう、って声が聞こえましたかねぇ。なお、短観の結果があの状態のときに引き下げ方向で反対とは一体全体何を考えているんだヴォケなどという突っ込みはしてはいけません(^^)。ま、反対が一票あっても相場には影響ないでしょうな。


○時間軸効果が出過ぎないようにしてますか??

昨日の金融政策決定会合では所謂「展望レポート」における将来の経済見通しに関して今まで当該年度が対象だったのを翌年度まで対象になるようにしたって発表がありました。(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k050406b.htm)

昨日も早速債券強気派であります某有名ストラテジスト様がこの発表に関してコメントしている訳ですが、まぁあたくしだけでなく市場関係者の多くが思ったのは「今年度のCPI見通しはどう頑張って予想しても前回から下方修正になるから、量的緩和解除に望みを持たせる意味でも来年度見通しも加えるようにしたんでしょ」って所ではないかと。

記者会見で「なぜこの時期に対象範囲を広げるのか?」と質問されたんですが、福井総裁は「なぜこの時期にと聞かれると返事に窮するが、この時期に特別の大きな理由があったわけではない」(時事メインより)と言ってから延々とその言い訳をしておりまして実に微笑ましいというか「この正直者!」って感じですな、あっはっは。

先日のドラめもんで日経金融新聞が「日銀陰謀論」みたいな記事を書いてケシカランと申しあげましたが、その記事どおりに「量的緩和解除の期待(笑)を繋ぐような作戦発動」を日銀が行っておりまして、呆れてしまうとともに当日の日経金融新聞「ポジション」面執筆者様の慧眼(っつーのか?)に敬服する次第であります。

まぁ確かにイールドカーブがある程度立ってないと金融政策もしんどいのは判りますが、そのやり方はどうよって感じですな。時間軸設定の意味はなんなんでしょ??


○「企業業績の改善が家計部門に及ぶ」を継続している金融経済月報

昨日の金融政策決定会合では金融経済月報の基本的見解が決定されて公表されてます。(http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0504.htm)

内容的には「3月時点の基本的見解+4月短観」ってところです。まずは景気の現状認識部分に関して3月と違っている点。

(4月)『生産は横ばい圏内の動きとなっており、企業の業況感にはやや慎重さがうかがわれる。』
(3月)『生産は横ばい圏内の動きとなっている。』

個人消費に関する『雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得も下げ止まりが明確になる』って記述は持続しております。次に景気の先行き見通しに関する部分に関して3月と違っている点。

(4月)『IT関連分野の調整の影響が弱まるにつれて、輸出や生産は増加していくとみられる。』『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益が増加し雇用過剰感も払拭されていくもとで、雇用者所得は緩やかに増加していく可能性が高い。』
(3月)『IT関連分野の調整の影響が徐々に弱まるにつれて、輸出や生産は増加していくとみられる。』『企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い。』

どうも「雇用面における改善傾向」に関して強調したいようでして、「企業業績の改善が家計に波及する」というお馴染みのダム論的なお話を絶賛継続中って所のようで、景況感や先行き見通しに関してはどうも相変わらず強めに見ているって所のようですな。まさか陰謀(略)。


○不規則発言は出ませんでしたな(^^)

だいたい「総裁記者会見に注目」などと事前に言われるときはそんなに楽しい事にはならないというのが世の常ですが、情報ベンダーに出てきたフラッシュもすぐに終わってしまいましたし、珍しく火だるまでもなく不規則発言もない大人しい記者会見になったようですな。めでたしめでたし。


○記者会見で指摘さた「ペイオフ全面解禁の抜け穴」的な問題(次回予告)

この問題を調べたり書き出すとすんげぇ長くなるので本日は予告編(^^)。

日本語版ロイターの報道によりますと、総裁記者会見の席上ペイオフ全面解禁の抜け穴的(微妙に「的」を入れてヘッジしていることを念のため申し添えます^^)な問題がある話について総裁に見解を求める場面がありました。抜け穴というのは「銀行間での決済未了部分がペイオフ全面解禁後でも保護される」って所でして、もうちょっと調べてから詳しく書きますが、どうも内国為替決済における全銀システム利用部分(いわゆる「銀行振込」ですな)が全額保護されちゃいますってお話です。全銀システムへ決済指図を出した後に金融機関が支払不能になっても決済はしますよって事のようですが、最近局地的にではありますが本件に関して「どうなのよ」って話になっております。

と予告編だけ書いて調べ物はこれからだったりするんですが。上記した話も生かじり状態で書いてますんでその辺宜しくです。



2005/04/06

お題「10年入札レビュー/相対性緩和論の落とし穴^^」

○10年国債入札レビューなど

じり高だの書いたら相場下落というお洒落な展開で誠に困ったものですが、思いのほかドル上昇が効いてしまう形になってしまい、20年やら30年ゾーンがダメダメになっちゃいましたな。必ずしも海外勢の売りではないと思うんですが、円安→海外勢円債売り→海外勢と言えば超長期国債というのがお約束の発想になりますんで、まぁその発想に乗って先回りで動くという人がいたのかも知れませんな。

で、昨日の10年入札なんですが、朝一では相場水準が若干下がりながら10年は堅調に推移していたんですが、20年ゾーンが朝方から重くて、10時過ぎになってから下げが加速しました。10年ゾーンもそれにつられて弱含みとなりまして、前日比1.5毛甘水準を割り込んだあたりからヘッジ売り大作戦が加速して前場はほぼ安値引け。

最近は業者間気配とプライスアクションを参考に入札の札読みをするという訳の判らんことが趣味となっているあたくしでありますが、昨日の入札に関してどう考えますかってお話を少々。

昨日の場合は月末から10年ゾーンがイールドカーブ上弱含みになっている上に、前場の時点で相場水準も下がり、ついでに10年ゾーンも弱くなって引けておりました。こ〜ゆ〜時は業者の事前ヘッジがかな〜りワークしております(昨日であれば前場引けの実勢が3毛甘でしたが、本格的にヘッジ売り攻撃が始まったのが1.5毛甘くらいからだったんでまぁ当日に売った人の平均売りコストは2毛くらいでしょう)ので、前場の引け時点での気配より入札が強くなりやすい。

プライストークが始まる段階では20年ゾーンが弱かったり、実質安値引けの雰囲気から案外弱い話が多くて、「5銭単位だったら60銭ー55銭じゃネーノ」などと開口一番言ったら「えっ?」って言われちゃうわけですなこれがまた。まぁ確かに20年ゾーンに売りが出ている雰囲気なんで、その分応札が減る懸念もあって入札は流れるんじゃないかって意見もあったんですが、まぁ昨日のような場合は業者の方に余力がありますんで、そんなに酷い話にはならないですな。

という訳で、落札結果は前場引けの実勢から見るとちと割高って感じでしたが、まぁこれは想定の範囲内って奴でございましょう。落札結果発表後に相場はいったん戻ったのですが、良く判らんですが引けにかけてまた売られちゃいましたんでそんなに売れているわけではないのでしょう。その結果見てから言うわけじゃないんですけど、入札が堅調だった割には応札倍率は3倍ちょっととごく普通の印象を受けまして、まぁ皆さんそれなりに応札を絞って(というか入札額が増えた影響だけかもしれませんが)満額狙いでドカンとかいう変な札入れをせず、一応警戒はしていたんでしょうなぁって感じでした。


○金融政策決定会合ですが

現状維持はまぁ良いと致しまして、またまた会合終了後の日銀総裁記者会見が注目というかネタ投下となるのかと言いますか、まぁ引け後なんで今日の相場には関係ないですが楽しみではあります。

昨日の日経金融新聞2面の「ポジション」欄では「当座預金残高目標維持が技術的に難しくなっている中での日銀短観結果で大変ですな〜」というお話(先週時事メインコラム「金融観測」で同じようネタで話をしていたんですが・・・)がありまして、その中で「日銀としては当座預金残高目標を維持しやすくするためには金利先高感があると結構(資金供給オペへの応札意欲が高くなり札割れが起き難くなるから)だと思っているので、次回の総裁記者会見では景気への強気やら金利先高感を起こさせるような発言が出るかもしれませんね」などという趣旨(脳内メモリーから書き出しておりますので念の為申し添えます)の結論になっておりました。相変わらず妙な話のもって行き方というか陰謀論みたいな書き方が好きな新聞社ですなぁと苦笑しちゃいます。


先週の時事メインコラム「金融観測」で指摘されていましたんですけれども、今回の日銀短観結果は先に「相対性緩和論」のようなお話を展開していた福井総裁としては、頭の痛いところでしょう。「景気回復局面になると同じ緩和でもその緩和の景気に対する効果は高まる」という理屈に即しますと、景況感が悪化すると益々量的緩和の強化=当座預金残高目標の引き上げをしないといけないという理屈になりますわな。どうも福井総裁がおいでのうちは長期国債買入増額はしないようですけれども、このままで大丈夫なんでしょうかねぇ。

ま、よく言えば当意即妙なんですが、咄嗟に気の効いたことを口にしてしまい、前後の論理的整合性をあまり深く考慮していないと思われる不規則発言がお得意の福井総裁の自業自得ではあるのですが、経済指標が好転してくれりゃぁ良いとしてもしこの調子で経済情勢が益々足踏みモードになってきたらどうしちゃうんでしょうかと懸念される所でございます。

金融政策は政治じゃないんですから、あまり反射的に不規則発言をなさらない方が吉だと思うんですが、今日も何かやらかしてくれそうな予感(^^)。




2005/04/05

お題「お勉強コース驀進の日銀と仕切り大魔王の金融庁」

金融行政ネタであります。

年度替りにかけまして金融庁と日銀から監督だの考査だのという施策に対して色々と発表されております。色々と発表されているだけにまだ全然フォローできてないのですが、まぁとりあえず今までやっている事の傾向が益々加速されて凶暴化しつつありそうですなぁというのを簡単に(^^)。

○「リスク計測オタク」化絶賛進行中のお方

昨日の夕方日本銀行のWebに「平成17年度の考査の実施方針等について」というのがアップされました。大変な力作のようですなぁ。
http://www.boj.or.jp/set/05/fsk0504a_f.htm

力作だけに一々紹介しているといつまで経っても終わらない悪寒が致しますのでまぁ上記URLをご覧頂きたい訳ですが、まぁ読みながら思うのは「リスク管理の精緻化に随分走ってますなぁ」って所でしょう。今年度の考査方針に関してこんな感じで書いてあります。

『考査においては、引続き金融機関の経営実態の把握に努め、最後の貸し手機能の発揮に備えるとともに、今後は、(ここから太字!)金融機関がリスク管理・経営管理の高度化を進め、顧客ニーズに応えて創造的な業務展開ができるよう支援し、それを通じて金融システム全体としての機能度や頑健性の向上に貢献していく(ここまで太字)ことに力点を置く方針である。』

と言うことで、まぁ「金融高度化支援」がどうのこうのという話をしておりますが、この後に延々と書いてある事は(物凄く乱暴な割り切り方でございますが・・・・)あたくしにはどうも「リスク計測の高度化」に走っているようにしか思えん訳です。

『貸出資産については、これまでもDCF(Discounted Cash Flow)法的な考え方を用いて経済価値の適切な把握に努めてきたが、今後もその考え方を広く応用して、金融機関との間で、貸出資産の評価に関する認識の共有を図る。その際、経済価値が金融機関自身の経営状況に応じ変動し得る親密企業向け貸出などについては、その特性を踏まえた評価方法について議論し、評価の精度を高めていく。』

いやもう物凄く難しく書いてありますな。特に後半部分は頭の悪いあたくしにはさっぱりワカランチ会長であります。こんな感じで延々と管理手法の精緻化やら高度化という話をしてます。別にリスク管理をイイカゲンにしろとは申しませんが、どうも努力する方向を間違えているのではないかという気がする訳です。

だいたいモデル化がどうのこうのとかってのは頭が良くて数学のお得意な方が大好きと決まっておりますが、大体からして金融機関経営を揺るがすような大災厄的な変動ってのはモデルで想定している範囲外の時に起きるものですし、そうじゃなかったら昔のベアリングみたいに管理不行き届きによるものでしょう(皆揃って仲良く緩慢に沈没するという国もありますが・・・)。それにモデルに関しても特に信用リスク関係に関してはそんなに理論価格がどうのこうのって割り切れるもんでも無いでしょうと思うんですが。先日はクレジット・デリバティブ市場から信用リスクの市場価値を計算してどうのこうのって話も出てましたが、そもそも市場で付いた値段がまんま正しいかというと、市場規模がそれなりの流動性があって色々なプレーヤーが絶賛ご参加されてる訳でもないですしねぇ。まぁいっか。

最後の方に図表形式で「17年度考査におけるリスク・カテゴリー毎の重点項目」ってのがありまして、まぁ色々と書いてあるんですが、その中でちと笑ってしまったのは「信用リスク」の最後の部分。

『競売や任意売却の実績、担保売却の方針、担保物件の現地での調査結果等を踏まえ、担保の処分可能見込額の適切性を検証。その際、必要に応じて、土壌汚染のある不動産担保の適切な評価が行われているか確認。』

・・・・先日どこぞの不動産会社が土壌汚染地に分譲マンションをぶち建てて問題になった事件を踏まえてますな。何で突然ここだけ急に個別具体論が出てきているのか良く判らんですなぁ。。。何で??


まぁ総じて申しあげますと、兎に角何でも計量化して精緻に管理しましょってお話なんで、まぁその手のご商売をしておられる方々におかれましてはウッシッシという所ですなぁ。しかし小規模金融機関までそんなに精緻な管理って必要なのかねと思うのでありました。



○仕切り大魔王による仕切り行政は終わらないようですな

さて金融庁。3月29日に「金融改革プログラム」の「工程表」やら、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」などの施策が絶賛大発表されました。で、この金融庁と言うところは相変わらず記者発表はせっせとやってくれるのですが、この手の資料が記者発表当日に全然Webに載らないという特技があります。財務省も日銀も記者発表関連の資料って速攻でWebにも掲載するんですが、誠に遺憾な官庁ではあります。

んな話はともかくとして、金融庁の相変わらずの体質というか、益々凶暴化が進んでいる象徴的な資料ですなぁと思ったのがこのセット。

『金融改革プログラム「工程表」の公表について』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20050329-3.html

『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2.html



工程表の公表云々にはこんな事が書いてあります。

『金融庁と致しましては、本「工程表」に沿って着実に施策を実施することにより、多様な金融商品やサービスを国民が身近に利用できる「金融サービス立国」を「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』

で、『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』って言うくらいですし、ペイオフ全面解禁もしたことですし、これからは金融機関の自主性を重視するのかと思えばあにはからんや。2番目のURL先を見ますと『今後、本プログラムに盛り込まれた措置を着実に実施してまいりたい。』ってなことでアクションプログラムがある訳です。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/ginkou/f-20030328-2/01.pdf

このPDFファイルの2ページ目からが措置とやらなんですが、一目瞭然なのは箇条書きで書いてあるのが『金融機関に・・・・要請する。』『業界団体に・・・・・要請する。』ってのばっかりだと言う事(-_-メ)。どこがどう『「官」の主導ではなく、「民」の力で目指してまいります。』なのかもう小一時間問い詰めたい訳ですよ。結局官主導じゃないと安心できないって事とちゃうのかという感じですなぁ。この「金融機関に・・・・・要請する」の数を数えようかと思ったのですが、途中で空しくなってしまったので止めちゃいました。金融期間やら業界団体に要請する話はゲップが出るくらいあるのですが、金融庁がこんなことをやりますよ〜って話はあんまりないのよね。

という訳で、相変わらずの金融庁でありますが、すぐに見る事の出来る場所には「官の主導じゃないですよ」と書きながら、面倒臭がってシロートの人があまり読まないと思われる具体的施策の資料部分では毎度お馴染みの仕切り大魔王爆裂というのも実にアレでございますな。

困ったもんです。


2005/04/04

お題「週初は小ネタを少々」

毎度の事ですが週の頭はどうも調子が良くないですな。

○期初の益出しからスタートのようで

金曜日の朝発表された日銀短観は市場予想と言われていたものよりも悪い結果。とは言いましても、どうも直近出ていた経済指標が宜しくなかった事もありまして「事前予想数値よりも良くないのではないか」という見方はあったらしいですが。

で、寄り付きで当たり前のように買い気配になったのですが、ものの3分で大幅下落開始。まぁ上に行った分だけ反動で下までやったんでしょうが、それにしても9時51分の安値139円割れには驚いてしまいました。さすがにそこまで下がると月末月初お得意の買いやら押し目買いやらで戻るの巻となりました。

後場の反発局面では前場の下げの反動(笑)で今度は寄り付き近くまで戻りそうになる場面もありましたが、結局債券先物は前日比2銭高で終了。いやはや疲れる展開でございました。

で、まぁとりあえず金曜日の相場から何となく見えた話としては「何かの材料が出て相場が吹き上がったら売りたい」という人がいるというのと、「でも下がった場合は買いたい」状態で、そういうお方は「下がったら買うけど上ったら買わないよ」ってなもんなんでしょうな。

先物オプションがこれだけの派手派手な値動きの割にはボラティリティー上ってないのは、まぁ投資家の皆様がそんなに大きな相場の上下を見ている訳ではなく、戻り売り+押し目買いモードのまま継続されているという事の反映なんでしょうな。この調子ならたぶん「じり高」になるんじゃねーのかという勝手に思いますが。


○短観:前回の先行き通りでもあり通りでもなし

金曜日の短観。主要企業の業況判断DIが前回の+22から+14と悪化したのですが、実は前回12月の業況判断DI3月見通しは+15になっておりまして、そ〜ゆ〜意味では12月時点での「先行き悪化見通し」が的中した形になっているというものでもあります。

今までの回復局面では「先行きの慎重な見方が良いほうに裏切られる」というパターンが多かったのですが、今回は悪化方向に予想通りという形。じゃあ今回の先行き見通しはどうよって話になりますと、大企業製造業に関しては先行き見通しが変らずとなっておりまして、まぁ景気先行き見通しがこれからドンドン悪くなるというような予想になっておりませんな。

大企業のDIを業種別に展開しているの(短観概要)を見ると、12月時点での3月予想が全然違う方向に出ている業種が散見されるのがちょっと気にかかる所であります。製造業では「造船・重機等」で12月±0→3月予想▲7(3月DI+4)ですが、非製造業は中々凄くて「不動産」の12月+14→3月予想+10(実績+20)とか「通信」12月+2→3月予想▲3(実績+22)とか中々派手なのがあってオモロイ。

で、これらのデコボコがあるんですが、トータルすると大体12月時点での先行き見通しが達成されているっていうのですから、相変わらず個別に展開した場合に景気回復なのか景気腰折れなのかは個別事情によって全然違うって事なんでしょうな。いかにも今の景気回復局面って感じでよろしいのかと。


○まぁこういうのに突っ込むのは野暮なんでしょうが

平成17年度入行式における総裁挨拶要旨ってのが日銀のWebにアップされております。(http://www.boj.or.jp/press/05/ko0504a.htm)雑談的にくだらなく突っ込み。まずはペイオフ解禁云々の前半部分。

『本日(4月1日)からペイオフ全面解禁と申しまして、政府が預金を特別に保護するといった異常な状態から抜け出すこととなりました。』

決済性預金を全額保護(ついでに申しあげますと銀行間取引も保護なんで、結局政府のコミットメントは続いているんですが)しているのに何か相変わらずですなぁとは思います。まぁ金融危機はもうありませんって雰囲気作りをするためにペイオフ全面解禁を大々的に話すって事なんでしょうか。あまりたばかるのはよろしくないと思うんですが・・・(ちなみに、この後にも「ペイオフ全面解禁は物凄いことなんだ」という話が延々と続きます)

『日本経済が、過去10年以上もの長きに亘り、厳しい状況を続け、その中で皆さんのご両親も、職場において、家庭において、大変なご苦労をなさったことは、ご承知の通りです。』

多分日銀に入るような方々の親御さんにはそういうお方は該当しないのではないかと思いますが・・・・・(苦笑)

『それは、今を去る1980年代以降世界経済の潮流が大きく変化し、それ以前に経済立国として大きな成功物語(success story)を築き上げて来た(以下割愛)』

「success story」キターって感じです。つーか「成功物語」っつーのも余り聞きませんが。フツーはサクセスストーリーってカタカナになるような気がしますが、相変わらず総裁ってばお洒落なんですから(棒読み)。


後半部分では今般の中期経営戦略に絡むお話をしているのですが、どうも気になると言うか腑に落ちない点がございます。

『私は、いつも、日本銀行は、サッカーに喩えればゴールキーパーのような仕事をするところだ、と申し上げています。日本経済の最後の砦として、確りと守りを固める。これが基本ですが、同時にゴールキーパーは戦線の最後尾にいて常に全体の戦況、個々の選手の動きを掌握することが出来る位置にいます。日本銀行としては、日本経済や世界経済の状況がどうなっているか、企業や金融機関や家計の動きがどうなっているか、常に情勢を的確に判断するとともに、人々のこれからの行動に指針となるような情報を的確に発信して行かなければなりません。』

と、このくだりは誠にその通りでございますが、その割には今般の中期経営戦略の目玉施策「金融高度化支援」はどうも日銀様が御自ら前線に出張って金融高度化の推進を行うようにしか思えない訳でして、そりゃあなた全然ゴールキーパーじゃないんじゃねーかと小一時間ですな。司令塔の間違いじゃねーの?


最後の部分も結構笑ってしまったんですが・・・・・

『皆さんが、日本銀行のような安定した職場に入れて良かった、というような気持ちをもし少しでもお持ちであれば、その気持ちは直ちに拭い去って下さい。率直に申して、日本銀行は、皆さんが想像されているよりも遥かに厳しい職場です。』

日銀は安定した職場なんですかそうですか(苦笑)。そ〜ゆ〜意識が元々芽生えないような場所ではそもそも上記のような訓示は出ませんわな(^^)。ついでになおも下らん揚げ足取りをしますと、職場が安定していることと仕事が厳しいことは両立すると思いますが(^^)。

『今この瞬間から、皆さんは、プロの日銀職員として、「事務の堅確性」ということを瞬時とも疎かにすることは許されません。』

堅確性って言葉はあまり見たことないんですが、どうも日銀用語らしいですな。意味は字面の通りだと思いますんでまぁ良いんですが、「プロの日銀職員」と言う事は世の中にはアマチュアの日銀職員がおいでなんですかそうですか。「プロの審議委員として金融政策の堅確性を疎かにしないようにしましょう」という大変にキビシー突っ込みが金曜日の時事メインコラム「金融観測」に出ておりまして、思わず茶を吹いてしまった事を申し添えます(^^)。

まぁ入行式の挨拶なんですからあまりしょうもない揚げ足取りするのも我ながら如何なものかとは思いますが、この挨拶要旨を読んでますと、相変わらずのお気取りっぷりが良く現れていて福井さんらしいですなぁって思っちゃいます。先日の日銀ニューヨーク支店100周年記念講演を思い出してしまいました。


ではでは。



2005/04/01

お題「期初ですが期末レポの話」

今期もよろしくお願い致します。今日は朝っぱらから日銀短観な訳ですが、事前にここまで相場が踏み踏みモードで上昇しちゃってますんで何かよほどの事がないと「指標を見てどうのこうの」って感じにはならない(内部要因での動きしかなさそう)と思われますが。。。。。って書くとまた指標に素直に動いたりして。

本日はちと古いのですが期末越えレポに絡んで。

○期末越えのレポ金利が上昇していた訳ですが

債券市場では月内最終受渡の売買が28日に行われておりまして、まぁそのあたりで債券取引業者は月末の残高がほぼ見えて来る訳です。で、その在庫ファイナンスのために行われるGCレポ取引市場では28日引け後の最終時点では0.15%〜0.20%まで金利が上昇するということになってしまいました。29日火曜日の日本経済新聞マーケット総合1面に載っていたからご記憶に新しいかと存じますが。

で、まぁ毎度おなじみの如くこちらの記事はちとアレな物がございますので、不肖あたくしがもうちょっとご説明申しあげようというのが本日の趣旨であります。つーか忘れる前にメモしておくってのが正解ですが(汗)。


○そもそも何で突如期末越えのレポ金利が上昇したか

新聞記事などの後講釈によりますと、「ペイオフ全面解禁を控えた動き」って事になっているのですが、ペイオフ全面解禁なんちゅうものはもう大昔から予定が入っているものでして、その直前ギリギリになって慌てるのは相当のアフォ以外にはあり得ませんわな。もう一つの可能性(というか常にそうなんですけど)として「この手のイベント直前にいきなり金利が予想外にぶれる」要因としてあるのが「全員楽観視してたら予想外の事が起きました」って所でしょう。

だいたい大昔短期金利がそれなりに動いていた時でも、期末越え金利が直前に乱高下する時ってのはその前に「いや〜今期末は無難に終わりそうですな〜あっはっは」などというコンセンサスが出来ている時だったりする訳ですな。だから世の中笑えるのですが(^^)。と言うことで、必ずしも間違えとは申しませんが、「ペイオフ全面解禁を控え」期末越えのレポ金利が上昇したというのはミスリードしやすい書き方ですわな。


じゃあ何で期末越えのレポ金利が上昇したかと申しますと、その前に日銀が行った短期金融市場における公開市場操作が市場の需給をいきなり狂わせたんですな。

3月24日に日本銀行は何を思ったのか28日スタートの国債売現先を1週間ものと2週間ものという期越えもの2本立て4000億円×2でオファーしてきやがりました。現在は銀行業態が基本的に預金超過であり、保有国債の在庫ファイナンスを常に行わなければならないっていう状況にありませんので、必然的に国債現先オペってのは債券ディーラー(=証券会社)の在庫ファイナンス(というか資金繁閑の調節)あるいは資金ディーラー(これは銀行も含む)の鞘取りとして利用されるケースが多くなります。で、証券会社としては3月24日などと言う時点で期末の残高は全然確定できない時期ですし、資金放出(売り現先は日銀から見たら資金吸収)なんぞするタイミングではありません。期間がもうちょっと長ければともかく、1週間やら2週間如きの期間の資金運用で期末越えファイナンス勝負する奴はいませんので、当然ながら2本とも札割れと相成りました。(って長くても多分ダメだったと思うが)

でまぁ2本とも札割れしちゃたんですが、これによって「期末越えの資金吸収オペが大きく(オファー合計8000億に対して応札が合計5300億)札割れ」→「期末越え資金の需給懸念」→「アヒャヒャヒャヒャ」というお話になる訳でして、ベタ凪状態だった期末越え金利に警戒感が絶賛大浮上したのが大きな要因だった訳です。あっはっは。


○何を考えているのか判らん調節

で、これだけで終わっていればこのオペの評価として「期末越えをお前ら安心しまくっているけどちったぁ警戒しなさいな」という日銀からのシグナルと市場が勝手に解釈するって話で終わったのですが、何を考えているのか良く判らん公開市場操作が翌日25日に実施されたわけです。

「国債買現先4000億円、3月29日〜4月7日」ってのがそれなんですが、確かに日々の資金需給を均すために資金吸収と資金供給をある程度細かく行う必要があるのかもしれませんが、資金吸収をした翌日に同じような期間で資金供給を行うというのはど〜ゆ〜ことよってお話ですわな。この一連のオペレーションで期末直前にいきなり市場の需給が妙に狂ったのが「思わぬ金利上昇」の一因になってしまったようであります。

そもそも当座預金残高目標にレンジがあるし、一応ペイオフ解禁というイベント(実際は全然問題ないのですが)も控えている期末直前に、資金吸収(しかも相対的にファイナンス能力が低い証券業者向け)を行うというのが意味不明。ある意味日本銀行も「ペイオフ解禁無警戒モード」だったんじゃないのかなぁって思うところであります。


○ロンバード貸出よりも金利が上っちゃいましたが

国債レポ取引ってのは当然ながら国債を担保にした資金調達な訳ですから、本来はその国債をロンバード貸出の担保として使うという選択肢がある筈なんですが、ロンバード貸出の金利を上回ってレポ金利が上昇。ロンバード貸出を短期金利の上限にするっていう政策意図が相変わらず達成されない訳ですが。

日経新聞の記事にもありますように、このロンバード貸出がそもそも普段あまり機能していませんで「お試し借り」位しか利用されていない(短期金利がゼロに張り付いているんだから当たり前ですが)こともあって、こーゆー咄嗟のときに使うのに慣れてないというのがまぁ原因でしょう。まぁ期末越えのレポ金利が新聞報道の上限あたりの0.2%として、期末最終調整で500億円ファンディングした場合に、ロンバード貸出の0.1%と幾ら違うのよって事を考えますと、136986円でございまして、14万円の節約のために普段使い慣れていないロンバード貸出を利用するかって話になりますと、万が一チョンボした時のリスクおよびやり慣れない取引をする手間隙に対して間尺に合わないでしょうってのが結論になる訳ですな。よって金利上昇となったわけで。


○つーわけで誰も警戒してない時に不測の事態が起きる訳ですな

小見出しの通り(^^)。今回の期末越えは「ペイオフ解禁」というイベントはありましたが、金融機関は揃いも揃って預金超過ですし、そもそもペイオフ絡みの話は定期性預金がどうのこうのというときにやっておりまして、今回は流動性預金のペイオフ解禁が主眼。その流動性預金は「決済性預金の全額保護」という新たな保護策があって、ついでにコール取引も保護対象なんで、政府当局の偉い人が大げさに言うような大層なものではないということで、期末に関して無警戒が過ぎたって事でしょうか。

まぁこれを期にロンバード貸出の利用へのインセンティブが高まるとか、ちったぁ危機管理もしておかなきゃって話になれば、瓢箪から駒と申しますか、意外に良い結果になるのかもしれませんね。


#期初なのに終わった期末の話をするとはしかし抜作ですな>自分