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2005/09/30

お題「ああ本格地均し/ふ〜ん/ご挨拶とお知らせ」

○とどめの福井総裁記者会見

須田審議委員の記者会見(http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509e_f.htm)をネタにする積りでしたが、福井総裁の記者会見の方が話としてデカイのでそっちが先行。で、本日のソースはブルームバーグニュースのネット版を見ることにしましょう。えーっと多分http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=af3g3UXXqLb0&refer=jp_news_index#で読めると思うのですが、リンク切れとかしてたら.comまででトップページに入って「ニュース/コラム」からヘッドラインを探すと見つかると思います。

昨日は大阪経済4団体共催懇談会における総裁挨拶がありまして、そちらのニュースは4時過ぎくらいに流れていたのですが、記者会見のほうに関してはどの辺まで織り込んでるか微妙ですか。まぁ本日のCPIの方が効きそうですけど。。。

総裁挨拶はhttp://www.boj.or.jp/press/05/ko0509h_f.htmですが、経済の見方云々は兎も角として、金融政策に関する最後の部分ですな、注目する所は・・・・

『いつ量的緩和政策解除の判断ができるかは、もとより今後の経済・物価情勢次第ですが、先ほど述べたような見通しを前提にすると、2006年度にかけて、その可能性が次第に高まっていくと考えています。』

2006年度じゃなくて良く見りゃ06年度にかけてな訳でして、その具体的な意味に関しては記者会見で出ております。

『その際には、日々の金融調節における操作目標を日銀当座預金残高から短期の市場金利に戻すことになります。先ほども述べたように量的緩和政策が実態としてゼロ金利に近付いていることを考えると、政策枠組みの変更はそれ自体で、金融政策が不連続に変化することを意味するものではありません。金融政策の姿は、先行きの経済・物価情勢により左右されますが、4月の展望レポートで述べたように、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって、物価が反応しにくい状況が続いていくのであれば、引き続き緩和的な金融環境が維持されていくことになると考えています。』

一応こっちの発言で「量的緩和政策は解除するけど金利は低位安定させますよ」という話にしてバランスを取っている積りなんでしょう。この次にご紹介する記者会見記事にありますように、量的緩和政策コミットメントの第一条件が達成される前に「次の金利水準は幾らになるのか」が相場としてのネタになってしまうという見事なコミットメントの形骸化になってしまいましたな。本石町日記さんも早速エントリー上げておられましたが、こりゃもう流れは止まりませんな。


ではブルームバーグニュース(インターネット版)より引用させていただきます。

『9月29日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は29日夕、大阪市内で記者会見し、量的緩和政策の解除について「06年度にかけてそういう可能性が出てくるだろう」と述べたうえで、「『06年度にかけて』という意味は、06年に入る以前の段階をまったく否定していない。しかし、06年度以前の段階に確実に、とも言っていない。つまり、06年度の入る前か、入って数カ月か、というふうな感じに普通は読めると思う」と述べた。』

ということでして、2006年4月プラスマイナス数ヶ月で解除ですと総裁御自らが言明されてしまったら最早時間軸もへったくれもございませんな。

まぁ「金利をいきなり上げると市場にショックを与える」→「市場にショックを与えないように事前に地均しをする」という発想で「やるぞやるぞ」という話を事前にしておくということで、それが「市場との対話」とは言いませんわなぁという話は既に百回位(そんなにはしてないか)してますな。

結局量的緩和政策のコミットメント3条件を自ら形骸化させる方向に勝負してしまった日銀様。まぁインフレ期待でも醸成されて金利を引き上げても大丈夫って状態になっちゃえば物忘れの激しい金融市場的(まぁそれじゃぁイカンと思うけど、べき論とは別に考えるとそんなもんでしょう、はぁ)には結果オーライになると思いますんで、そうなっていただくことをこころからきぼうしたいものでございます(棒読み)。

まさか自分たちで時間軸の短期化をしておいて「市場金利は先行きの物価上昇を見込んでいるので金利を上げても無問題」とか言い出さないですよねえ・・・・

会見記事をまぁご覧いただければと存じますが、ふ〜んと思った部分をば引用。

『(量的緩和解除後にゼロ金利にするのか金利を引き上げるのかの点について)今この段階でそこまでは予見できない。量的緩和の枠組み自身の修正のタイミングがいつごろになるのか明確に予想しにくい段階にあるので、その先の金利の操作について何か予断を持てるかというと、それはない。そういう予断を一切持たないで、今後の経済、物価情勢にきちんと符合するような政策をしていかなければならない』

一昨日の須田審議委員の「予断」と違いまして、福井総裁におかれましては既に「次の金利操作に関しては予断を持ちません」と仰せでございまして、もうやる気満々とはこのことです。

『(海外で「量的緩和解除=金利引き上げ」と取られているようだが、という指摘について)海外で、とおっしゃったが、わたしはこの間、海外に行って帰ったばかりだが、日本経済について何か、段差を設けて引き締め方向への金融政策が必要だとか、そういうことを日銀が意図しているのではないかというふうな感じで、日本経済や日銀の金融政策をご覧になっている方はあまりいらっしゃらないのではないかと思っている』

引き締め方向への金融政策が必要と考えている人はいないと思いますが、金融政策の「先行き予想」に関しては・・・・・(-_-メ)

『とりあえず、最も最適なタイミングで量的緩和政策の枠組みの修正を図る。そのタイミングを過たずにきちんとつかみたいということであって、そこから先のことはまだ、今から予見を持って考えない』

副総裁時代の「ジャストタイミング」発言を彷彿とさせて下さる懐かしい香りが致しますな。



○十戒ですかそうですか

超有名Webの溜池通信(http://tameike.net/)の9月28日付のエントリーに今週号の「週刊エコノミスト」誌に掲載された「金融庁“異能官僚”が綴った『十戒』」というコラムに関しての話題がございました。現物の週刊エコノミスト誌は読んでませんのでかんべえさんの記事からの孫引きで恐縮ですが、中々良い「十戒」ではございます。でも・・・・

『(4)制度 ワークしない制度を作るやつは最低のバカである。この制度は国民にとって何の意味があるのかを不断に問え。不要化した制度は迅速に撤廃せよ。』(上記Webより)

いやあのそれは正論なんですが、「リレーショナルバンキング」とか言いながら「融資に関してスコアリングモデルの採用」などと広げている風呂敷の右と左で矛盾したお話をしておられたりする組織様のお方にそのように言われましてもうわなにをするやめwせdrftgyふじこlp

いやまぁ「十戒」のような感じで皆さんがんばっていただければまことにありがたいですなあ。こういうひとがえらくなってぜひ「じゅっかい」のとおりにやってほしいものです。



○お知らせとご挨拶

ここの所諸般の事情だの何だのとか変な話をしておりましたが、実はあたくし今月末(今日ですが)を持ちまして債券ディーラー稼業から少々別の稼業になる運びとなりました。結局債券金利関係のお仕事をしておりますので債券市場の片隅で棲息をしつつメシの種を拾わせて頂くのは変りませんが、今までのように一日中(嘘です、場中だけ)板に張り付いて値動きを細々とチェックする訳にも行かなさそうです。

で、あたくしの駄文を継続するかどうかを検討したのですが、何か金融政策も動き(先走りの悪寒はするけど)そうですし、まぁ自分の生業に支障が発生あるいはネタ切れにならない(ネタが切れると相場レビューでお茶を濁していたのはご存知の通り)限りは日々継続していきたいと存じますので今後とも皆様のご指導ご鞭撻を賜りますと甚だ幸いでございます。

ドラめもん拝




2005/09/29

お題「いやもう予断与えまくりですなぁ」

○5年カレント0.7%の滞空時間が無いの法則が発動

いやまぁこういう珍法則の話を終わってからしても意味無いんですけど。

昨日の債券市場ではまたまた中短期債がズタボロになって一時5年カレントものが前日比0.1%上昇の0.8%までマーク(と申しましても板に張り付いていた訳ではないので聞いた話で恐縮ですが)したそうで、実にゲロゲロの相場であったかと存じます。

以前も書いたと思いますが、特に根拠がある訳では無いのですが5年カレントの0.7%というのは実に妙な位置でして、一昨年の下落の時以降毎度毎度の如く「滞空時間がやたら短い」という水準。先月の場合は0.685%で相場がすかさず跳ね返されましたし、今月はあっさりとぶち抜けの巻と「反転するか(上昇でも下落でも)ぶち抜けるか」という不思議な数字でございます。

0.6%台と0.8%台は滞空するんですが、0.7%近辺はホントに滞空しないのが不思議です。ただの経験則なんですが不思議とこれは当たる、などと終わってから書いてもただの後出しじゃんけんですかそうですか。

まぁしかし2年0.225%で5年0.8%なのに10年が1.44%ちゅうのはどうも感覚的にバランス悪い(中期売られすぎか長期が売られなさすぎ)だと思うんですが、まぁ月末期末とかの要因もあるんでしょうな。


○で、須田委員は何を言いたかったのでしょうか

昨日は須田審議委員の講演のヘッドラインが出たのが昼の11時4分ごろという(先物が終了したあと日本相互証券の業者間売買が11時5分までやっているので)恐ろしく微妙な時間だったよう(聞いた話なんで)ですが、ヘッドラインに「量的緩和政策の解除の時期が近づきつつある」というのが出てもうそれは大騒ぎということになったのですが、この須田委員問題の講演と記者会見(はまだ日銀Webにはアップされてませんので昨日17時55分配信の日本語版ロイターの記事を参照しています)に関してその部分を槍玉(^^)に。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509g.htm

講演はインフレターゲット導入論に対して単一の経済指標数値に依存した機械的な金融政策はイクナイというお話が主眼のようなのですが、そちらに関する論考はbewaadさんにお願いすると致しまして(おいおい)、あたくしはくだんの部分に関する所に苦言でも。講演をA4の紙に打ち出すと17ページもあるので既にめげているなどと言ってはいけません(爆)。(追記:10月2日エントリーでより敷衍したエントリーをbewaadさんがアップしていただきました。ありがとうございます。)

問題の部分は講演の最後の方(紙に出すと多分14枚目)にある(当面の金融政策)のところです。

『私自身は、文字通り、消費者物価が安定的にゼロ以上で推移するかどうかを、解除の重要な判断基準としたいと思っており、今のところ、量的緩和政策の解除の時期が近づきつつあるとみています。』

消費者物価はまだ前年比マイナス推移してまして、(今月発表分は30日)量的緩和政策のコミットメント3条件の第一条件というか大前提の部分が達成されていないのに「近づきつつある」というのは一体全体何をお考えなのでしょうか?

まぁこういう言い方をすれば聞いた方(「市場」とは敢えて申しません)は消費者物価指数がゼロ以上に転換し、1〜3ヶ月程度ゼロ以上が続けば、あるいは下手したら直ぐにでも量的緩和解除を行うでしょうという予想をしたくなるのは人情(笑)というものですわな。3条件のうちの最後が「総合判断」の筈ですがその「総合判断」が何故か先行するという謎の展開でありまして(2つの条件達成されてから「総合判断」するんじゃネーノ?)、金融政策運営に関して予断を与えるフレーズなんですが・・・・・

その直後の部分ではこんな話になっています。

『今後、量的緩和政策の継続期間(時間軸)の短縮効果が市場にどのようにでてくるのか、時間軸についてマーケットと私どもの見方があっているどうかということとともに、まだ足許はコミットメントが満たされていませんので、コミットメントが満たされるようになるまでの間、予断をもたずに経済物価情勢の現状・先行きをしっかりとみていきたいと思います。』

「予断をもたずに」というのはギャグでしょうか??


ちなみにこの後にこんなことを言ってますが・・・・

『オペ環境がよいということがあくまでも前提ですが、コミットメントが満たされるまで、当座預金残高目標は現状維持を続けることがよいと思っています。オペ環境がよいもとでの残高目標の引き下げは出口論と混同される可能性があるので、私としては避けるべきだと思っています。』

いやあの「量的緩和政策の解除の時期が近づきつつあるとみています」ってのは出口論とどこがどう違うのかと小一時間・・・・


で、もっと情けないのはその後の記者会見でして、ソースの日本語版ロイターによりますとこんな感じです。質問者の突っ込み方が強烈で感動しました(^^)。他の質疑もどうも十字砲火モードの香りがしますがそれは会見要旨が今日出るとおもうので明日にでも。

(問)『「量的緩和の時期が近づきつつある」としているが、半年以上先のことを近づいてくるとは常識的には言わないと思う。年明け早々にも訪れると思っているのか。講演のなかにある「低金利」とは、どの程度のことを低金利と言っているのか。最初の着地点まで少しずつ調整していくということは、かなり時間をかけてよいということか。それならば0.25%程度の利上げも想定できない経済物価情勢から、量的緩和解除をする必要はあるのか。』

(答)『近づきつつある、がどの程度かということは、簡単に申し上げれば、私がいる間にそういうことが起こるかもしれないし、起こらないかもしれない、というのが答え』(以下後半部分に関する回答があるのですが長い上に妙にくどいので割愛)

・・・・なら「近づきつつある」とか言うなよと思うのはあたくしだけでしょうか??


まぁそんな調子で金融政策運営に関して審議委員の皆様から予断与えまくりのご発言が出てくるわけでして、べき論としては「エエカゲンニセエ」なのですが、こんな感じですと「日銀はCPIがプラス転換したら早期に量的緩和解除を行うだろう」という予想が形成されやすくなりますわな。結果として市場金利が日銀の動きを予想した形で早期の量的緩和解除を織り込んで形成されてしまい、「市場の景況感と自分たちの景況感が一致している」と勘違いした日銀が逆噴射解除を実施・・・というシナリオも考えないとイカンっちゅう事になるでしょうな。

ってこの部分は昨日の時事メインコラム「金融観測」(お題は「金融政策運営も劇場型?=モノローグの落とし穴」です)の受け売り状態ですが、あたくしも全く同意でございますので書いちゃいました。全く困ったもんですなぁ。




2005/09/28

お題「板見て無いけど相場雑感/英国中銀博物館訪問記録」

引き続き相場からちと離れてるのでプライスアクション見ながらのお話をする訳には参りません。よって単なる傍観者の雑談ですが。

○中期債主導の展開ですか?

あたくしがのうのうとお休みを取っている間に日経平均は13000円を平気でぶち抜けているのですが、債券市場の数字としてさっくり入手できる数字と言えば10年国債の利回りでして、何か相変わらず1.405%だとか言っているのは傍観者的に「そりゃまた随分値持ちしてますな」って感じでございます。

何せ8月の安値は8月に行われた5年国債入札の日(=11日)でしたが、この時の10年カレント物の利回りは引けベースで1.485%(先物は137円95銭でまぁ大体安値引け)。この前日は日経平均が終値ベースでも12000円回復してその勢いで上昇した日でしたが、まぁこのレベルから見ると日経平均が1000円上昇してますわな。それで10年金利がこの位置とは。

・・・と思ってふと2年だの5年だのの水準を確認してみると、入札の行われた2年債は入札後もヘロヘロで引値で0.195%で5年が0.70%ということでこいつらは8月安値(2年0.175%瞬間風速で0.185%、5年0.685%)をぶち抜けているようでして、まぁ相場としては「量的緩和早期解除織り込みに行くモード」となって中短期債が主導する相場になっているようですわな。

まぁ政策金利引き上げ織り込みモードなので中短期主導になるのは当たり前なのですが、昨年や一昨年のパターンとちと違うなぁと思うのは「長期ゾーンに投資家の投げが見られない(全く無いわけではない)」ことでしょうか。中期債ゾーンにはここのところへ来てやっと外しらしき動きもあるようなのですが、今のところヘロヘロなのは2年で、それに次ぐのが5年という所でしょうか。

ま、売ったり買ったりする投資家様といえば大手銀行勢が中心になるのですが、この人たちはどうも5年辺りの中期債を主に購入していた事もありまして(あと資金部門が2年を購入)、この人たちの外し(資金部門の2年債投資はかなりディーリングに近い感覚)が入る中期ゾーンが相場を引っ張っているという図なのではないかと勝手に愚考。まぁ量的緩和政策の時間軸が短くなっている筈なのにこれまで5年あたりの中期ゾーンが妙に確りしてますわなぁと思ってたのですが、ようやく外しが来たって事かもしれませんな。

・・・・などとエラソーに書くと中期債が戻るのがドラめもんクオリティ。


○相対性ハト派(笑)

昨日ご紹介した(だいぶ前の)福間審議委員の記者会見や、(まだご紹介してませんが)水野審議委員の講演なんかを読んでおりますと、妙に「漸進的な緩和解除プロセス」という部分が目についちゃったりします。

もともと「金融政策の正常化」とか「市場機能の回復」などという趣旨で当座預金残高目標の引下げを提唱しているこのお二方ですが、(量的緩和政策のコミットメント3条件が達成される前に引下げに着手するという部分に関しては兎も角)量的緩和政策解除→金利政策への移行に関してはできるだけスムーズに実施したいという発想(それがちと変じゃネーノというツッコミはありますが)がありますわな。となりますと、ここの所景気に関して無茶苦茶強気になっている日銀公式見解(金融経済月報)と比較するとこのお二方(というより特に福間さん)の主張がある意味「慎重派」に見えてきてしまいますわな。

ま〜景気動向に関するコメントだけの執行部と技術論を引っ張り出す人の違いと言ってしまえばそれまでなのですが、いつの間にか相対的にハト派に見えてきてしまうというのも何か騙し絵みたいで面白いなぁと思った次第。


○おまけの旅行日記:イングランド銀行博物館訪問記録

ご案内の通り先週あたくしはのうのうと休暇の英国旅行なんぞに行ってきたのですが、やはり金融関係者でありますから行かねばなるまいと思い(笑)、BOEに博物館が併設されていると聞きつけ早速突撃。

場所は地下鉄のその名もまんまズバリの「Bank」駅から「Bank of Englandはこっち(意訳)」という出口を降りるとそこにはBOE様の立派な建物がございまして、その周りも大手銀行の本店と思われる立派な建物が(^^)。

で、正面入り口に向かって右側に「Bank of England Museum」の入り口がございまして、鞄なんぞを持っていると入り口でチェックされますが、入場無料で入り口にパンフレットがございます(日本語版もある)のでそれを貰って入ります。

で、まぁBOEの歴史とか貨幣制度の歴史とかの展示があるのですが、「金の延べ棒を自分で持ち上げてみましょうコーナー」があったり、ディーリングデスクでディーラー業務の説明を聞くコーナー(席にディーリングデスクさながらに電話機やら情報端末があって、電話を取ると説明が聞けるらしい。あたくしは聞かなかったが)などがあったりと中々オモロイ。ちなみに金の延べ棒は15キロ位の重さなんですが、そこにいた警備員兼係員のオッチャンは「ほれ見ろ」と軽々と人差し指一本で持ち上げて見せてくれました。ちょうど重心の所に人差し指をフックのようにして掛けると持ち上がるようなのですが、シロートには無理ですな(^^)。

で、最後に記念品売り場があるのが中々笑えるのですが、「BANK OF ENGLAND」のロゴの入ったお土産品の数々に思わず魅了されてしまい、キーホルダー(£6.5)やら定規(£0.6)やらデスクの置時計(£17.1)などなど気が付けば£40近くもお布施をしてしまったのは内緒です。

「BANK OF ENGLAND」印のセーターを着たテディーベア(£7.5)もございまして、こちらの熊さんの種類が「GEORGE BEAR」なんですが、これはやはり総裁(前総裁ですな)のお名前に引っ掛けた洒落なんでしょうか?(英国人ならやりかねん)

また、記念品売り場にはチャールズ皇太子様ご成婚記念コインセットも絶賛販売(またの名を募残販売とも言う^^)されておりました事をご報告させていただきます。

中々面白かったですが、金融関係者以外が観に行っても何がどう面白いのかは少々意味不明かもしれないという諸刃の剣でございますので、観光で行く際にはあなたの連れが退屈してないかどうか注意しましょう。あたくしは同業のオッサンと観に行ったので二人で大ウケしながら見てましたが(^^)。

#と、結局与太話がメインになってしまった


2005/09/27

お題「古い話で恐縮ですが福間審議委員の14日の記者会見」

諸般の事情により社会復帰してませんのでまぁ軽く。先々週の話で恐縮ですが、相変わらず何だかな〜という講演をした福間審議委員の記者会見もまた何だかな〜でございました。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509b_f.htm


○当預引下げの意味が結局量的緩和解除の前段階のようですが

冒頭の質疑がこれ。

『(問)福間委員はかねてより当座預金残高目標の減額を提案されてきたが、量的緩和政策の枠組みの変更については「焦らずゆっくりと漸進的に」と発言されている。(質問一部割愛)福間委員は、量的緩和政策の解除のタイミングとその後のイメージについてどのようにお考えか。』

こんな質問をする方もする方だが、そもそもこれに答える人がいるから困るのでありますわな。この手の質問に対して福井総裁はさすがに心得ておいでのようで、「そんなものはその時の状況次第」としかお答えにならないのですが、どうも「市場出身者として市場を熟知している」とお考えの方は違うようで。と毎度毎度イチャモンをつけるあたくしも相当しつこいが。


やたら答えが長いので分割して引用。

『(答)(割愛部分に対応した箇所は省略)当座預金残高目標については、ご指摘のとおり私は4月の金融政策決定会合以降、27〜32兆円程度に引き下げるべきだと提案してきた。同時に、この残高目標の引下げと量的緩和政策の枠組みの変更は別であるということも申し上げてきた。私が残高目標の引下げを提案するのは、量的緩和政策の先にある金利政策、あるいはゼロ金利を通っての金利政策に移行する前に環境整備を行っておく必要があるからである。』

「量的緩和政策の枠組みの変更とは別」だけど「金利政策への移行への環境整備」って一体全体何なんでしょう?環境整備をしたらその先には枠組みの変更があるという事であれば、環境整備が即ち量的緩和政策の枠組みの変更に繋がると考えるのが自然に思えるのですが。それが「別になる」いう理屈が1ミリも理解できません。


『(途中割愛)ただ、残高目標を引き下げるに当たっては、5月の議事要旨にも書いてあるとおり、「慎重にゆっくりと減額していく必要がある」と考えている。本日の講演では、この考え方がもう少し具体的に伝わるように、「焦らずゆっくりと漸進的に」という表現で申し上げた。私がなぜこうしたことを申し上げるかと言うと、残高目標を一気に落とすと市場にショックを与えるので、市場と並走しながら漸進的に落としていく必要があるからである。私としてはできるだけ市場に痛みを与えず継ぎ目のない形で金利政策に移行していきたいと考えている。』

この理屈も意味不明。一気に落とすのか数ヶ月掛けて落とすのかは技術的な問題であり、その時の状況が一気に落とすのを容認するようなら一気に落として問題ないでしょうし、そうじゃなければ数ヶ月掛けて落とすという話ではないかと。どうして決め打ちするですかこの先生は。


『残高目標の引下げについては、3条件が達成してからでも遅くないのではないかという意見も聞かれるが、CPIがプラスになったからといって焦って残高目標を引き下げると、市場にショックや痛みを与える惧れがある。そうならないようにするために残高目標を金融機関の当座預金需要の減少に合わせて引き下げておくことが、過去の経験に照らしても適当なのではないかと考えている。FRBもBOEも過去の経験に学びその教訓を活かしながら、ディス・インフレ下での金融政策あるいはディス・インフレが一応止まった後の金融政策を行っている。その教訓とは、金融政策は追い込まれてから対応するのではかえってリスクを大きくするということである。これはわが国も例外ではない。』

さっき指摘しましたように、残高目標の引下げが金利政策への移行への環境整備であるという理屈を援用致しますと、量的緩和政策のコミットメント3条件の達成前にその「環境整備」を行うというお話になりますが、そりゃコミットメントの前倒し化に繋がる話でよっぽど「市場にショック」を与えると思いますが。大体今までやった事の無い政策を運用してるのにこういうときだけ「過去の経験」とか言い出すのは牽強付会ですわな。

で、この部分もう一つおかしいのですが、現在の政策の枠組みは「ビハインド・ザ・カーブ」を前提にしている訳でして、「追い込まれてから対応するのではかえってリスクを大きくする」とか言ってるのは現状の量的緩和政策の枠組みの放棄でありますからして、本来福間審議委員が金融政策決定会合で提案すべきは「コミットメント3条件の撤廃」ではございませんでしょうかと存じますが如何なもんでしょう?



○思いっきり自家撞着に陥ってませんでしょうか?

そのちょっと後の質疑がまたトホホなわけで。

『(問)「焦らずゆっくりと漸進的に」というスタンスが重要ということだが、現在の残高目標を徐々に引き下げて金利政策が遂行できる段階に至るまで、どれ位の時間を掛ける必要があるとお考えか。また、福間委員の主張は未だ少数派であり、多数派は量的緩和政策を解除するまで現在の当座預金残高を維持した方がよいと主張しているように思われる。仮に量的緩和政策を解除した後に残高目標の引下げを開始した場合、金利政策が遂行できるまでにはかなりの時間を要すると考えられるが、そのように捉えてよいか。』

だからこんな質問はその時になってみないと意味が無いんですな。具体的に申し上げるとすれば、時々話題になる「資金供給オペレーションの期間」ですけど、世の中で金利変更時期の予想が近くなればなるほど、より短い期間の供給オペレーションでも所謂「札割れ」が発生しにくくなる訳で、うまいこと資金供給オペレーションを短期化していけば将来の当座預金残高の引下げが現在想定されているより迅速に進む(オペの期落ちが早く来るから)かも知れない訳でして、こんな話は現在の延長線上で考えていてもあまり意味は無い(とまでは言いませんが)話でしょう。で、これに対する答えがまた長い。


『(答)まず申し上げたいことは、量的緩和政策の枠組みを変更するまで現在の残高目標を維持し、3条件を達成してから残高目標を引下げるのは、私としては最も採りたくない政策であるということだ。』

「目標残高の引下げ=金利政策への移行の準備」という位置づけになって(以下同文^^)。


『本日の講演の図表でもお示ししたように、既に市場の景況感は変化し金利先高観が出始めている。キャッシュ・マーケットでもイールド・カーブが立ち始めている。このように市場は先取りしながら動くため、金融政策が後追いになると、結局は景気拡大が加速し、市場の景況感も急激に変化することで、市場金利とオペ金利の乖離はますます大きくなる。』

市場金利とオペ金利の乖離という意味不明な理屈に関してはあたくしのお休み前にもケチつけましたが、この理屈ばかりはさっぱり判らん。どうも後の質疑なんかを見るとユーロ円金利先物取引から出てくるインプライドフォワードレートなんかを参考にして「市場金利とオペ金利の乖離」とか言ってるらしいのですが、そもそも金先とキャッシュのマーケットで完全裁定が働くかといえばそういうメカニズムにはなってませんわな。まぁそれを持ち出して「市場金利」とか言われても困りますわな。そんな事言い出したらJGBの現物債のイールドカーブからインプライドフォワードレート出したら物凄いグラフが書けると思うんですが。

ま、それ以前にデフレ脱却前なのに「結局は景気拡大が加速し」とか言い出すのがどうかと思う訳ですが。この直ぐ後に「リスク」とか言っちゃってるのはもうねぇ・・・・


『こうしたリスクを回避するためには、不要となった当座預金を事前に取り除いていく必要がある。残高目標を引き下げる前にあれこれと心配するよりも、現在のようにまだ余裕がある時期に引き下げ、それに対する市場の反応を見て行き過ぎがないかどうかを判断し、さらにその時の景気実体や市場動向を見極めながら次のアクションを考えていく、そういうアプローチが現実的ではないかと思う。』

では景気が逆に行った場合はどうするんでしょうか?まさか当座預金残高目標を引き下げてから景気が後退したから目標を引き上げるなどと言い出さないですよね〜。

で、市場との対話がどうのこうのというお馴染みの理屈が始まるのでありまして・・・・


『3条件を達成してから一気に引き下げるというのは、色々な意味で市場に痛みをもたらすし、長期金利に与える影響も大きいと思う。講演要旨に当面の望ましい金融政策は「二刀流」と書いたが、これは残高目標の引下げという刀とゼロ金利という刀の2つを持ちながら進んでいき、やがて金利が反応し始めたら少し考え方を変えるというものである。3条件を達成して初めて残高目標を引き下げるというのは、私のような実務上がりの人間からすると、あるいは市場との対話を重視する観点からすると、理想論に過ぎる。』

だから残高目標を下げてから景気が後退したらどうするのかと小一時間(以下省略)。


『いずれにしても1つだけはっきりしていることは、景気・物価動向、市場動向が我々を導いてくれるということだ。そのためには不必要な当座預金を積んで金利機能を動きにくくし、市場との対話ができない状態にしておくよりも、市場が反応できる状態、息のできる状態にしておくことが必要と思っている。』

当座預金残高目標を維持していても市場は反応してますが何か?で、ここからがなお判らん。


『金利政策への移行に要する期間については――この移行が最も難しい局面であるが――、予め残高目標を軽くしておけば、移行が間近に迫った段階で市場の方から移行後の金利水準を示し始めるはずである。そうでなければ金利政策には移れない。』

この後にぶっ飛ぶような発言があるのでまぁアレなのですが、正直意味が判らん。結局市場の後追いで金利政策をするって言ってるように見えますが、さっきの発言では「市場に追い込まれて実施するのはリスクが大きい」って言ってませんでしたっけ????しかしこの後が凄い。

『かつてのように日本銀行が裁量的に金利水準を決めるという時代ではない。』

いやあの普通の中央銀行というのは短期市場金利(まぁ良くあるのは銀行間翌日物金利)の誘導目標を決めて金融政策を運営していると思うんですが、何を仰りたいのやら。

『市場との対話を通じて市場が示す金利を参考にしながら金融政策あるいは金利政策は動くべきだと思う。市場におもねる必要はないが、市場の考えを表象している金利がどういう動きをしているのかを注視する必要はあるし、その前提として金利が動く状態にしておかなければならない。(以下割愛)』

最初の発言と矛盾してますが・・・・・・(-_-メ)


という訳で、なんちゅうかご本人の中では理屈として完結しているのかもしれませんが、あたくし如き人間で論点の矛盾が見つかるというのは日本銀行政策委員会審議委員としていかがなものかと正直思うのでございますが。

で、最大級に問題なのはこの審議委員先生は「自分が市場を熟知しており、市場の声を伝える立場にある」と恐らく真剣に思っている事ですわな。全く困ったお話ですが、べき論とは別に予想屋として考えた場合、もう一人の市場関係者と共にこのお方が当預引下げ論者であるというのは現在少数意見であるとは言え、予想の上では重要なファクターになるでしょうな。

まぁそんな感じで古いネタで大変恐縮ですが。



2005/09/26

お題「番外編:夏休みの与太話」

今年も期末のこの時期に夏休み。3日休んで1週間ですのでまぁ効率は宜しい訳ですが(^^)。今回は英国(主にロンドン)に滞在し、知人宅にお邪魔してのんびりと観光客があまり行かないようなフツーの生活を楽しみつつ観光もという感じで。

一応休み中もそれなりに日銀チェックはしてましたが、何せ昨日は(途中起きながらですが)都合16時間も寝ておりましたので、今朝は以下旅行与太話で勘弁。

○物価がたけえぇぇぇぇよ

実は去年も英国に行ったというより他の国に行くための基地にしただけなのですが、相変わらず鉄道などの運賃は毎年上昇しているとのこと。で、ロンドンのHeathrow空港から市内のPaddinngton駅を15分で連絡する某成田特急もビックリのボリボリショイショイ列車HeathrowExpressのお値段を去年の切符をひっくり返して比較してみると確かに去年の£13から£14に値上がりしておりますわな。(ちなみに£1は概ね200円)地下鉄で行く方が圧倒的に安いのですが時間がかかる(中心部まで45分)のと土日の地下鉄運行が当てにならない(工事とか何とか理由をつけてあちこち運休になる)という素晴らしいロンドンクオリティなのでつい乗ってしまうあたくしもアレなのですが(パディントンに着いた後乗ろうと思っていた線が見事に運休で大回りする破目になったのは内緒です)。

どうもこんな調子で物価は全般的にお高いようでして、安いのは食い物(日用食料品)くらいではないかという感じではございます。エレクトロニクスものとなると日本は確かに安いんですなぁと思ってしまいましたのはお出かけ前に慌てて購入した某社の型落ちデジカメ(500万画素)。某量販店で3万円ちょっとだったのですが、そこらの家電屋で同じものが£230(記憶ベース)とかで売ってまして、そりゃ日本に観光客が来て買物にきますわなぁ(さすがにヨーロッパから買物に来る人はいないと思うが)と感心してしまいました。


○観光振興を目指すなら

ようこそジャパンだとか都知事の観光振興策とか日本でも色々とやってはいるようなのですが・・・・・・

大英博物館などの国営だか何だか知りませんが、その手の公営施設は基本的に入場無料(寄付金を入れましょうという箱はあるが)のようでして、まぁその代わりになんちゃらギャラリーなどというように企業の協賛やら金持ちの寄付やらがあります。そのあたりの寄付がどうのこうのとかは日本の公営施設では今のところ難しい話なんでしょうから一概には言えないとは思いますが、ちとまぁ何でもかんでも金がかかるのはアレですなぁという感じ。日本でも日銀の貨幣博物館みたいに入場無料の所もあるんですけどね。

滞在中に某ミュージカルなんぞを観たりもしたのですが、同じものを日本で観るとS席12600円A席9450円とかするの(そりゃまぁ呼んで来る費用がかかるのは判りますが)ですが、あたくしが行ったお値段は£25.6(一番安い席、席代は£23.5)とまぁほぼ半値(金曜と土曜は£36でした。念の為)ですわな。日本では結構客の年齢層が高かったらしいこのミュージカルも若者が沢山きていまして、まぁこの手の物が安いというのは有りがたいお話で。

と考えますと日本が世界に誇る(かどうか知らんが)歌舞伎だの何だのってやっぱ割高過ぎではなかろうかと思うのでありまして、もうちっと安くならんのかねぇと思う次第でございました。

地下鉄の駅の表示に中国語やハングルを入れるのが観光振興策じゃねぇと思うんですが。。。。。


○その他雑感

最近しか行ってないので比較のしようが無いのですが、メシがまずいと百万回くらい言われていた国にしては食い物はいけてますな。と申しましても住人が散々あちこち食い歩いた成果のお勧め店にしか行ってないのでその辺は禿しく微妙な所ではありますし、そもそも美味いという事で行った店が中華にイタ飯に韓国にって所が実にアレですが(^^)。

オートミールとかを毎朝食うとなるとさすがにちょっと・・・・とは思いますが、まぁ外食するのであれば「うまい店もあるし、そうじゃない店もある」ってなもんではないかと思いますわな。さすがにお勧めの店はそれなりに繁盛しておりました。

まぁ地下鉄の行き先がいきなり変ったりとか、土曜の午前中に主要道路で工事やってて工事区間で3車線をいきなり1車線にしてて(しかも工事区間を見れば1車線にする理由が判らん)大渋滞で空港に遅れるのではないかと心配したりとかの英国クオリティもございましたが、街には活気があって景気は良さそうな感じを受けました。


#まぁそんなところで何の役にも立たない旅行与太話でありました。


(9月20日〜22日は夏休みのため休載です)


2005/09/16

お題「審議委員の発言に反応するのは・・・」

○岩田副総裁講演の一箇所に反応した?債券市場

昨日の債券市場は寄り付きこそ確りでしたが、朝方ちと弱かった株価指数が威勢良く上昇するとヘロヘロになりました。特に昨日悲惨だったのは例によって中短期ゾーンでして、後場先物が139円近辺で何とか耐えていた時(その後平均株価が13000円をうかがう勢いになってきたので9円割れになりましたが)5年49回債は前日比2毛甘の0.65%あたりの出合いになっておりました。

で、まぁこれがど〜ゆ〜悲惨な状態かと申しますと、火曜日に入札が行われた時の前場引け時点の価格が先物139円02銭で5年49回債の入札前取引(単利)が0.64%オールテイクン。入札の平均落札価格はだいたい0.63%な訳でして、2日間相場が振幅している間に入札レベルから2毛甘くなってしまった訳ですな。

さて、昨日14時過ぎにヘッドラインが流れ出した岩田副総裁の名古屋での講演ですが、このあと軽くご紹介しますが最近の講演と同じく景気には超越ブル(なのは今に始まった事ではないというのはドラめもん読者の皆様ご存知かと)だったのですが、フラッシュで出てきた「量的緩和解除再びデフレに戻らないための歯止めをしっかりと置くことが必要(という意味の内容)」という内容が伝えられますと、139円そこそこでもみ合っていた債券先物は反発。それまでヘロヘロだった2年ゾーンがまぁ確りしてきて相場は上昇しちゃいました。最初債券先物があがりだした時には「この講演内容でどうして債券買われるの?(=景気に超ブルなので)」というお問い合わせまで頂く位、一言に反応したって感じですわな。

まぁ朝から超長期が全然下がらないとか相変わらず長期ゾーンも押し目買いとかあったのも効いてるでしょうし、期末大接近で債券購入圧力はあるんで実需買いが押し上げた面も大いにあるでしょうが、どうも2年あたりとかも派手派手に動いていまして、ま〜思惑で動いている部分もありますわなという感じです。


岩田副総裁は景気に関してはご案内の通り強気の最右翼で、金融政策に関しては「再びデフレに戻らない為の糊代が必要」という話を以前からしている人なので、本来はこの講演内容には新味が無い筈なのですが、債券相場が妙に反応して引けて見ればイールドカーブがブルフラット。まぁ今回の講演で副総裁がいきなり宗旨変えして熱烈金利上昇歓迎派になるとでも心配していた向きが多かったという解釈をすればできない事は無いのですが、それはちょっと幾らなんでも。

今までの岩田副総裁の発言からみるとごく当たり前の講演の前後に相場が反応してしまうというのは、日本銀行政策委員会審議委員さまにおかれましては「市場との対話」という名の下にまたぞろ行いだしかけている「市場への独白」が機能(苦笑)しだしているとも言えそうです。

経済指標に素直に反応すれば無問題なのに、市場を鏡にして行う審議委員の皆様の独白に反応しだす債券相場が始まるというのはあまり良い傾向ではございませんな。

この「市場への独白」ってのは例によって本石町日記さんの最近の替え歌エントリーでのコメント欄と、Hicksianさんのブログ「Irregular Economist」でのエントリー「私を出口に連れてって」でのコメント欄で取り上げられています。また、Hicksianさんはこちらのエントリーで先日の岩田副総裁のカンサスシティ連銀での英語講演のポイントについて解説して下さってます(と、人の褌で相撲を取るあたくし、汗)ので、そちらも必読です。当該エントリーはこちら→http://econ.cocolog-nifty.com/irregular_economist/2005/09/post_0eec.html



○岩田副総裁の講演に関しては甚だ簡単に

いやまぁ寝坊したのと、前半書くのに3歩書いて1歩書き直すという感じで書いたというのもあって(汗)。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509d_f.htm

とにかく景気と物価には強気なんですよ。

・GDPギャップについて

『以上の大まかな計算(は講演要旨をご参照ください)を将来についても延長して適用すると、2005年度の成長率が潜在成長率を上回るようであれば、年度の途中からプラスに転じてもおかしくないということになります。』

・コアCPIについて

『従って、GDPギャップが引き続き縮小し、特殊要因が剥げ落ちてゆくにつれてコア消費者物価指数の上昇率はゼロからプラスになってゆくと期待出来ます。』

・ということでデフレ脱却に明るい見通し

『9月の金融政策決定会合では、コア消費者物価指数の先行きについて、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスになるとの判断を示しました。日本経済が、緩やかではあるけれども持続性のある、自律的な成長を今後も維持できるとすれば、デフレ脱却の展望は明るいものであるといえます』


で、リスク要因としてあげているのが米国経済でして、原油高騰とハリケーン被害問題、それから米国の経常収支赤字の拡大を挙げてます。


金融政策運営に関して

・債券先物買戻しモードになったくだり

『コア消費者物価指数が安定的にゼロを上回るようになり、3条件を満たす状況になった場合には、量的な枠組みから金利を中心とした枠組みに移行することが考えられます。私は、金利を中心とした枠組みへの転換を行なう場合にも、「再びデフレに戻ることがない」という歯止めをしっかりとおき、期待の不安定化から長期金利に過度の変動が生じないようにする上で「条件付きコミットメント」を通じた「物価安定の錨」の役割を活用することが望ましいと考えています。』

ちなみに、あたくしが超越斜め読みしかしなかった岩田副総裁の前回講演のお題はと申しますと「The Role of the Price Stability Anchor in Extricating Japan from Deflation」な訳でして、物価安定の錨としてのコミットメントがどうのこうのって話をしていたような気がする訳でして、この話も言ってみれば「想定の範囲内」であり、ノーサプライズの筈なんですよね。

ま、勝手に勘違いする市場も如何なものかと思いますし、特に最近の2年ゾーンの動きなんぞは経済指標などに反応している訳ではなくて、要人発言の片言隻句を捕らえて勢いで大きなポジションを振り回しているという感じで、池の中で無節操に暴れる鯨に戦々恐々ですよ全くもうって思います。まぁそう考えるとどっちもどっちではありますな、爆。


時間の都合で本日は簡単にご紹介で勘弁でした。

#福間審議委員の会見要旨もツッコミたかったのですが





2005/09/15

お題「日銀様ネタ供給し過ぎです」

正直、細かくツッコミを入れるのが追いつきません(笑)。

○昨日の債券相場

ご案内のように昨日の債券相場は大動きもいいところで、先物の売買高が6兆円を超えるという大商い。詳しく書いているとこれがまた面白い(というか腹立たしいというか、爆)のですが、本日の本題に到達しない懸念があるので端折りますが。

朝方は前日の5年債入札後の中期ゾーンつよつよ攻撃と、米国市場での株安債券高(おまけに債券は中短期債がしっかり)ということもありまして、朝から威勢良く堅調推移で、昨日入札が行われた5年49回債は前日比1.5毛強の0.60%までマーク。毎度お馴染みの2年236回債も前日比1.5毛強の0.145%まで買われまして、出合いは無かったものの、瞬間2毛強0.14%のビットまでございました。

昨日の今日で0.6%ですかやりますなぁなどと思っていたら岩田副総裁がどこぞの講演で月曜に公表されたカンサスシティ連銀での講演と同じような話を英語で行い、その中でまたも「量的緩和政策の出口が近くなっている」というような話をおっぱじめた(英語でI think now we are very close to the exitって言ったらしい)事が報じられますと、「今日(14日)は福間さんの講演で、岩田さんは明日(15日)」と思っていた為に先日と同じ話とは言え市場へのインパクトは「不意打ち」となった為に中短期債中心に売り売りになりました。

後場になりまして先物や中期債が益々叩かれまして、途中からは売り回転という形になりまして10年1.4%に逝ったのも中々ですが、5年49回債は安値0.655%までマーク。一日の間に中期債上下5毛5糸しかも経済指標じゃなくて単に要人発言で暴れ相場ってのは何ともまぁって感じです。2年236回債も安値1毛甘だか1.5毛甘だか忘れましたが(というか余りにもドタバタだったので記録とる余裕なし)こっちも3毛以上平気で動いておりました。

圧巻だったのはその後の展開でして、まぁ今回はそもそもの下げのきっかけが要人発言(しかも総裁ではない)だった事も影響していたのかはたまた久々の10年1.4%だったせいなのか存じませんが、世の中投資家様の押し目買いが絶賛御到来。プロップ系の売りに対顧ディーラーの買いがぶつかると言う展開になりまして(笑)、途中から売り叩き過ぎ分の踏みも入って先物は安値から50銭上昇して前日の終値を奪回しちゃいました。

いやはや、端折って書いてもこんなもんですよ。


○何かのサインですか?

小ネタですが。

昨日安値マークしてから先物が138円80銭台で何となくフラフラしていた時の事、債券先物に「成行300枚売り」が出たので「また下をやるのかよ」と思っていたら瞬間的にその成行きが無くなり(すかさず買いが入ったのか取り消しなのか判然としませんが)まして、その後は138円80銭をマークすることなく債券先物は引けに掛けて上昇。

そういえば先月の16日には債券先物に成行き1000枚売りってのが出て5銭くらい先物が下がったところ(500枚くらい出合い)でいきなり注文が取り消しになってそのあと相場が上昇。成行き売りの直後についた137円99銭が目先の安値になったという事例がございまして、その時も不安定な地合いの時にこのオーダーが出てましたなあと思うわけですよ。

ということで、あれはもしかしてなんかのサインなのではないかと思うあたくしは陰謀論者ですかそうですか(笑)。


○岩田副総裁発言について

岩田副総裁の講演及びコメントは本日行われる講演を改めて見ようって話になるとは思いますが、そもそも岩田副総裁は(先日も申し上げましたが)量的緩和の「量」の効果に対して最も積極的な意味を見出していたクチのお方でございまして、その伝で言えば「これだけ量を出しているのだからインフレ期待が醸成されて然るべき」と思っていた筈のお方。

よって元から景気に関しては物凄い勢いで強気のお方ですが、金融政策に関しては量的緩和政策コミットメントの3条件の2番目「再びデフレに陥る懸念が無い(意訳)」という部分に関して「再びデフレに逆戻りしない物価上昇水準を確保しないと」っていう糊代論を展開していた人ですので、その辺に関してどのようなコメントが出るのかを注目しないと「すわ岩田副総裁ハト派から降りた」と騒ぐのは先走りの悪寒もします。

つーか、CPIがプラス転換する前に色々思惑を入れても、結局はその時点での状況次第なんであんまり決め打ちするのも如何なものかという話は昨日も申し上げたばかりですわな。岩田副総裁は景気に関する見通しが相当強気でCPIがプラス転換する時には十分なインフレ期待が醸成されていると予想しているのかもしれませんけど。

いずれにせよ本日が注目。


○そして本題は「それはギャグで言っているのか」の福間審議委員

いや〜、やっと本題になりました。ってここまで読んで頂いて誠に恐縮なのですが。

何か地均しをしているつもりなのか何だか判りませんが、毎度毎度この人が講演をすると実に香ばしいネタが投下されまして、一々ツッコミを入れていると2日分くらいのネタになってしまうという実に素晴らしいお方が福間年勝審議委員でございます。

どうもこのお方と水野審議委員さまにおかれましては、「我こそはマーケットを熟知した市場の代弁者」という意識がお強いようでして、まぁその気概をお持ちになられるのは壮としたいですが、その意識によって出てくるコメントは正直市場に手を突っ込んで誘導しよう(「地均し」などという発想がそもそもね)という物であって、昨日も申し上げましたが、類は友を呼んでいるあたくしの市場の現場労務者であるところのディーラー仲間には「市場の対話じゃなくてお前が市場を撹乱してるだろう」と評判が宜しくありませんな(ここの所は私の類友なので割り引いてね)。

という訳で、昨日は福井県金融経済懇談会で福間審議委員が講演をしてまして、経済情勢と金融政策に関して箇条書き形式で原稿がございまして、やたら図表も満載ですのでまぁ読むには面白いのかもしれませんが、本日はこの中で驚愕の福間大先生の新理論(笑)について肴にしたいと思います。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509c.htm


・福間審議委員の珍理論

上記講演録の最後の方になりますが(3−3−3)「現状維持」のデメリットって小見出しの部分に福間大先生の素晴らしい理論が展開されています。

『景気が持続的に回復し、消費者物価のプラス転化が視野に入りつつある中では、私は残高目標を金融機関の所要準備額を遥かに上回る水準に据え置くことについては、主に2つのデメリットがあると考えています。』

で、そのデメリットの第一が実に素晴らしい。

『第一は、巨額の資金供給によりオペ金利が低位に抑えられる中では、ターム物の市場金利がファンダメンタルズの改善を背景に上昇すれば、それに伴いオペ金利と市場金利の差がさらに拡大すること』

オペ参加者を2名とか3名とかに限定して、カルテル的状況が発生しているのなら兎も角、普通にオペを行っていればオペ金利≒市場金利になるんですが、この大先生におかれましては「市場金利」ってのは最新の金融工学でも駆使すると(笑)算定できるものであって、オペの金利は市場金利じゃないとでも仰りたいのでしょうか。

で、この珍理論が技術論的当預目標引下げ主張の理由の一つになっていたというのはもう情け無いというか何というか。

『第一のオペ金利と市場金利の乖離については、4月の展望レポートに記されているように、来年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まっていくと見られる中で、日本銀行としては、より自然な形で金利が形成される環境を整えながら、市場との対話を行っていくことが必要です。そのためにはできるだけオペ期間の短縮化を図る必要がありますが、現行の方針の下では30〜35兆円程度という残高目標は変わらないため、目標レンジを下回っても、極力短期間のうちにレンジ内に戻すこととなります。このため「なお書き修正」ではオペ期間の長期化を抑える効果は限定的と考えられます。この点が私が前月まで残高目標の減額を提案してきた主な理由の一つです。』

どこをどう突っ込んだら良いのかと言いたくなる全面これ突っ込み所満載状態ですが、こういう人に「市場の対話」などと言ってもらいたくは無いですな。血圧急上昇です。昨日ご紹介した8月8〜9日の金融政策決定会合における議論の中であたくしが「それは因果関係が逆だと思うぞ」ってツッコミを入れたくだりがございましたが、どうもこの辺を見てるとあの話は福間さんのお話だったんでしょうね。



で、その後の記者会見では量的緩和解除の進め方について色々とお話しているのですが、コミットメント3条件を達成してから当座預金残高目標を引き下げていくのでは遅いという趣旨の話をしておりますが、あーた3条件達成前に引下げを始めて条件が達成しなかったらどうするのよと言いたい訳でして、ニュースソースから読める記者会見を見るともうひたすら市場を俺様の思うように誘導しまくりたいんじゃネーノこの人はって感じで実に困りますな。

いやまぁ誘導したけりゃしてもいいんですが、その場合誘導する方は景気や物価見通しに対して神のように正確な見通しを持つ事が必要不可欠になると思うんですが、それでもいいんですか??

ま、会見要旨もネタの宝庫になりそうな予感。






2005/09/14

お題「日銀方面からネタ少々」

○岩田副総裁の講演(備忘録)

昨日の債券市場では、前日に公表された岩田副総裁の講演で「量的緩和政策からの出口が展望できる段階になってきた」というような発言があったとブルームバーグニュースが報じた(月曜日の17時半頃)というのがネタになっておりました。

で、この講演なのですが、8月25日に行われたカンサスシティ連銀主催のシンポジウムでのものでして、講演テキストはこちら
http://www.boj.or.jp/en/press/05/ko0509a.htm
でございます。

中身が英語でございますのでまぁアレなのですが、あたくしが読んだ所では「deflation」からの「exit」というのは見つかったのですが、早期金融引き締めを意識したようなテキストは見つからなかったのですけど、一言一句細かく見てないので備忘録と言うことで。

講演はCPIコミットメントが物価下落に対するアンカー役として役に立っていますってお話のように読めましたが、岩田副総裁の今までの傾向からして、物価動向に関しては強気(量的緩和政策の量の効果について積極的な意義があると考えている節があるから)であっても、将来の金融引き締めに関しては「糊代論」を提唱してたりしてますので、岩田副総裁が早期金融引き締め論を唱えているというような理解もちと先走りな気がします。

と言いながら、中身をまじまじと読んでいる訳ではないのでメモでした。


○金融政策決定会合議事要旨

昨日は7月27日分、8月8〜9日分の金融政策決定会合議事要旨が公表されましたが、ちょうどむりむりに強くなった5年国債入札をやった後で、中期ゾーン反発モードにあたっておりまして、そっちの方が相場の原動力になっていまして反応する向きもあまりございませんでしたな。

ま、その前に岩田副総裁講演に関する報道で朝っぱらから下げ下げでスタートしていましたし、昨日も例によって派手派手に動いた2年国債の安値が0.185%と直近安値に面あわせしていたように、どちらかというと昨日の前場時点までの動きは「日銀の強気」を織り込んでいる状態であったので、議事要旨に少々の事があっても「新味なし」となったのだと思います。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050727.htm(7月分)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050809.htm(8月分)

本日はちょっと気が付いたところを少々簡単に。

・踊り場脱却ですかそうですか(8月分)

8月の金融経済月報では景気の現状判断を7月の月報対比大いに強気にして、福井総裁の記者会見でも『前回、「踊り場局面から脱却しつつある」と言ったが、今回も同じかというと同じではなく、少し前進している。』と発言がありましたが、決定会合の議事要旨でも同じ話になっていましたという事を念の為確認。

(8月分)『以上のような議論を踏まえて、多くの委員は、(1) 個人消費や設備投資といった内需がしっかりとした状況が続いているほか、輸出の伸びも回復しつつあること、(2) IT関連分野の在庫調整も着実に進展しているとみられることから、わが国の景気は「踊り場」を脱却したとの見方を示した。』

ということです。ちなみに先週の金融政策決定会合後に示された金融経済月報では上記の(2)に相当するIT関連分野の在庫調整も終了という認識になっていますので、益々景気に関して強気になっていると言えます罠。

・だからあまり仮定の話で盛り上がらない方が良いと思うんですが(7月分)

時々話題にでてくるネタとして「量的緩和政策の解除のステップはどのようになるか」ってぇのがございます。今週号の日経公社債情報あたりにも同じような話があったりしたのですが、量的緩和政策を終了させた後にゼロ金利政策に移行する(その代わり着手が早めになるので、当座預金残高目標の段階的な引下げが先に来る)のか、それとも一気に金利政策に移行する(その代わり着手が遅くなる)のかというようなお話で盛り上がるのは思考実験としては楽しめます。

ただ、最近あたくしが何度も申し上げてますからドラめもん読者の皆様は耳タコかもしれませんが、んなものはその時の経済物価情勢次第でして、その時に物価上昇の角度が急になっていてインフレ期待が盛り上がり、かつ景気が良いというのであれば一気に金利引き上げですし、ゼロ近傍でちんたら動いているのであれば慌てる必要無しですわな。かつて植田前審議委員がインタビューか何かで「出口は市場が連れて行ってくれる」という名言を残したそうですが、まぁそういうものであって、日銀が意識的に引っ張っていくのは日銀の景気判断が正しければ無問題ですけどそうで無い場合は逆噴射。

という事でして、シナリオとして本職のストラテジストの先生方が予想するのは予想屋(失敬)として当然のお仕事ではありますが、政策委員の皆様が仮定の状況を設定してその時の政策がどうのこうのという話を金融政策決定会合やら講演やらで盛り上がるのは、それが「仮定の状況を置いた思考実験である」と市場にちゃんと認知されないで行われた場合に、一昨年の6月〜9月のような「超先走った早期引き締め警戒モード」を呼び起こす一因となり得ると思いますがどうなんでしょう。政策委員会のご機嫌モードが変な思惑を生んだことが「コミットメント3条件の明文化」などという事をする破目になった一因でもあるという事を忘れてはいけません。

引用する前に延々と毎度お馴染みのごたくを並べましたが、7月分の議事要旨でまたまたこんな話をしている人がいるのにはちょっと困りますわな。

『この間、このうちひとりの委員は、「約束」を守ることは当然として、物価の先行きに関する第2の条件は、民需主導の自律的回復が展望できるとすれば自ずと満たされる面があり、ある程度柔軟に解釈しても市場の理解は得られるのではないかとコメントした。』

この件、市場のなんちゃらという話をしている所を見ると「マーケット代表」ということになっているお方の発言っぽい(のであまり反応しなかったのかもしれませんが、笑)ですが、コミットメント3条件を柔軟に解釈というのはコミットメントの形骸化をしましょうという話に通じる訳でして、こんなことを例えば福井総裁が言い出したら金融政策のコミットメントもへったくれも無くなるんですがそんな事で良いのでしょうか?と思いますが、予想が正しければこのお方は「金融政策をゼロベースで見直す」という主張をしているので、それからすればご本人的に斯くあるべしって話をしているのでまぁ本人としては筋通ってますな。

ま、「市場の対話」の一環の積りなのかもしれませんが、日銀がシナリオを作って市場を引っ張っていくという発想は、その日銀の判断が常に100%正しい訳ではないという事を考えますと、あたしゃー(言い方きつくなりますが)傲慢な発想ではないかと思いますがね。引っ張った挙句間違いだったらどうしようも無い訳で、あまり「乃公出でずんば蒼世を如何にせん」みたいな感じでやっていくのはどうかと思いますがね。もちろん市場は年がら年中行き過ぎますからその行き過ぎを「どうどう」と宥めるという「対話」までを否定する訳ではございませんが、為念。


・どうも因果関係が逆のような気がする(8月分)

資金供給オペレーションの札割れ問題に関して。

『ある委員は、金融機関の応札インセンティブとしては、(1) 流動性需要と(2) 金利観に基づく長めの資金確保ニーズがあり、前者が減少する中でも、長めの資金供給オペレーションで無理に金利をつぶさなければ、後者のニーズはある程度残るのではないかと指摘し、資金供給オペレーションを無理のない範囲で短期化しつつ、当座預金残高を維持することが可能なのではないかと述べた。』

最初の要因分解までは良いのですが、その後にある話が因果関係が逆です。当座預金残高を維持するために長めの資金供給オペレーションを行った訳でありまして、それは金利の長期低位安定期待によって短い資金供給オペレーションに対するニーズが乏しくなった為に長めの資金供給オペレーションを行うことになったのであって、日銀が能動的に長めの資金供給オペレーションを行って金利を無理に潰しに行った訳ではありません。

同じ理由で金利の先高感が生じてくれば、短い資金供給オペレーションでもニーズが発生してくる(極端に言えば5分後にコールレート誘導水準が上ると思えば1日ものの資金供給オペレーションにだって札は集まりますわな。そりゃより長いほうがもっと集まるけど)訳であって、その金利先高感は日銀が無理矢理作りにいくものではなく、物価や景気動向を勘案して早期デフレ脱却が展望できるかもしれないって金融市場の中の人たちが思いだしたから発生している訳ですわな。

ということで、仮に先行き景気失速懸念が出てくればまたぞろ金利低位安定感がでてくるのであって、オペレーションでどうのこうのという上記のコメントはどうも因果関係を取り違えているでしょ。勿論オペレーションを行うことによって長めの短期金利に低下圧力がかかるのも正しいのですが、順序として話が逆の香りが致しますわな。

どうもそういうところにボタンの掛け違いがあると後々どうなんでしょって懸念しちゃいますけどね。



2005/09/13

お題「金融高度化セミナーですかそうですか」

○選挙雑感その2

ま、分析してるひとが沢山いるので感想だけですが、得票率を見てたら「いやー小選挙区って凄いですなぁ」という当たり前の事ではありますが理解いたしました。ニュース映像を見てると小泉総裁が笑顔の中にも妙に緊張した表情だったのは「時と場合によってはこの逆だって有り得る」という事を感じていた表情だったんですな。これじゃあ「白紙委任」であっても、郵政6法案以外の話で失政したら次の選挙は判らんぞという感じではあります。構造改革自体は継続なんで、そちらに関しては「清算主義は勘弁してね」と思いますが。

まぁやはり皆が選挙に行けば政治に緊張が生まれるって事で良かったのではないかと思いますが、今回使った手法をまた使ってスケープゴート作って盛り上がろうって動きが継続すると実に嫌な世の中になりかねませんので、諸刃の剣である事は変わりなし。この選挙結果でメディアが「自分たちがブームを作った」などと勘違いしまくって思いっきり増長するのではないかというのが非常に懸念されますわな。

民主党に関しては、前々回の衆議院選挙のマニフェストだのネクストキャビネットだのというあたりから、どうも上滑りしてませんでしょうかって感じでしたが、今回バブル崩壊して建て直して貰いたいものです。政権担当が出来る受け皿作りをすれば110議席がいきなり倍以上になっても不思議ではないですし、まぁ希望はあるんじゃネーノ。あまりにも負け捲くったので、逆に民主党に期待する向きも出てくると存じますが。


○相場雑感

昨日の各市場は自民党歴史的圧勝でこんなもんかよと言いたくなるような動きでして、引けで戻ったから格好は付いたものの日経225はどっちかというと寄り天っぽい感じ(違ってたらごめんなさい、見てた印象です)でしたな。どうも相場神の某著名ストラテジスト様が「日本株には持たざるリスクが意識される」などと強気コメントをしていたのが平均株価の上値を抑えてしまった悪寒が(^^)。

それはともかくとして、債券市場は朝方は先物が叩かれていましたが、途中からの流れは中短期売りの動き。まぁ要因を挙げるとすれば、平均株価の上昇、GDP2次速報の上方修正、木曜に発表された日銀の金融経済月報でやたら強気な現状判断が示されたというののあわせ技とは思いますが、日銀の月報は木曜に出てるんですが、ど〜してそう時間差攻撃で反応するかな〜って思ってしまいます。

毎度お馴染みの2年債が昨日は前日比2毛甘の0.165%となっておりまして、9月2日の終値0.110%(高値は確か0.105%)は一体全体何だったんだという感じですな。ちなみに日経平均はそこから300円弱上っただけなんですけど。

そんな中で5年国債入札を迎える訳(迎えるからこそ昨日は中期債がより叩かれたのですが)ですが、償還のびるから何とかなるでしょうし、長期債の水準を正当化するのであえばの話ですが、5年がそんなに高い訳でも無いので、まぁ何とかなるでしょ。前場は下げるかもしれないけど。

ただし、時間軸がどうのこうのという時代の中期債は、時間軸が確りしている時と比較して、ボラティリティが高くなるのでリスク対比のリターンという意味では現在のイールドカーブ形状で良いのか(中期がもっと膨らむのでは)という考えは当然ございますわな。


○金融高度化雑感

日銀の看板施策にまたイチャモンをつけるのですが(^^)。

先日、日本銀行様主催の「金融高度化セミナー」というものが実施されたようです。7月に行われた日銀の組織改編で出来た「金融機構局」の中に「金融高度化センター」というのが出来まして、日銀のWebを見ると色々書いてあるのですが、まぁ専属10人他部署との兼任21人とかいう豪華陣容で金融高度化を行うそうな。

で、先般の初回公開セミナーで福井総裁がご挨拶してたので、それにグダグダと非生産的なケチをつけるあたくしなのでありました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509a.htm

『皆様、本日は、金融高度化センター主催のセミナーに、全国各地から、多数ご参加いただき、真にありがとうございます。』

という事で全国各地から多数ご参加した金融高度化とは何ぞやという事で。

『こうした金融システムの安定性回復(引用者注:不良債権処理とペイオフ全面解禁)を踏まえ、日本銀行は、金融システム面での政策運営の舵を、従来の「危機管理重視」から、「公正な競争を通じて金融の高度化を支援していく」方向へと切り替える必要があると判断いたしました。』

ペイオフ全面解禁は思いっきり尻抜けなんですが・・・というツッコミはさておいて、金融の高度化についての必要性をこの後話しているのですが、正直あなたそれはお節介というものではないかという話が延々と続くのであります。

『より良い金融サービスの提供によって、金融機関自身が安定的に収益を確保していく必要があります。そのために基本となるのは、金融機関のリスク管理や経営管理の高度化と、それに基づいた金融サービスの向上――すなわち金融の高度化、だと思います。金融の高度化というと何か特別のことに聞こえるかもしれません。しかし、それは基本的には、メーカーやサービス業がそれぞれの業務特性に応じて行っている取り組みと同列のものに他なりません。』

ということはですな、日銀さまにおかれましてのご認識は、「日本の銀行は世の中の一般的企業が取り組んでいるような企業努力やっていない」ということであらせられる訳でして、そのために日銀さまがわざわざ金融高度化センターをお作りになられて業界のご指導を実施あらせられるという事で宜しゅうございますでしょうか?

いやまぁ金融庁さまが年がら年中出している施策にも同じような香りを感じるのですが、お前らは昭和30〜40年代の通産省かと小一時間(監督権限があるので昔の通産省よりもタチが悪いのですが)問い詰めたくなるような産業政策状態で、幾らなんでも銀行業界そこまで前時代的では無いと思うんですけど。というかリレバンの具体的施策みたいな話って各行創意工夫して昔から色々やっていたと思うぞ。最近の監督ガチガチ+法人取引の集約化で支店における裁量範囲が狭くなっている(らしいと聞いたのですが)現状ではどうだか知らんが。

『金融機関が、企業や家計によりよいサービスを継続的に提供するためには、メーカーやサービス業と同様に、金融サービス提供に伴うコスト・リスクと採算を的確に管理する必要があることは言うまでもありません。そのためには、様々な金融資産のリスク量を計測したり、それを統合して金融機関全体のリスクを把握することが大変重要になります。』

で、この後リスクの計測をする事によって新たな金融サービスがどうのこうのとか色々と話をしてるのですが、計測できない部分というのがあるからこそ経営ってのは面白いのでして、どうも話のトーンを読んでいると行間から「最先端の金融技術を使うと素晴らしい未来が待っている」的な金融工学熱烈信奉的な香りを感じるのが非常に気にかかるところであります。

『金融工学の発達とともに、リスク量の計測技術やコントロール手法が近年めざましい進歩を遂げている現在、私どもでは、先端的な金融技術の研究・開発やセミナーの開催を通じて、民間金融機関における金融高度化の進展をしっかりとサポートしていきたいと考えています。』

金融の高度化は特別の事では無いという話をしているうちにいつの間にか最先端の金融技術の開発という話になっているのが実に香ばしいのですが、結局最先端の金融技術を使いやがれゴルァという香りがすると思うのはあたくしの悪意のこもった読み方ですかそうですか。

まぁ別に先端的な金融技術を否定する気は無いんですが、こういうのを日銀が一々手を出してやるものなのかというのは甚だ疑問を感じますわな。大体先端的な金融技術(といわれるもの)ってそれなりの陣容を揃えた大手の金融機関や専門的な企業が開発して利用し、時と場合によっては(昔の大手米銀みたいに)リスク管理モデルとして売って歩くものでございまして、日銀が研究開発をして公開セミナーでお勉強会をするのは民業圧迫(笑)ではないでしょうか?

だいたい須らく金融機関が金融高度化をする必要があるのかと言えば、それは各企業体の判断によるものであって、必要だと思えばやればいいし、必要じゃないと思ったらやらなければいい話。その結果として優勝劣敗が出てくるから結果として高度化が進むんじゃネーノって思うのですが。日銀や金融庁が一々手取り足取り「ご指導」する話じゃなかろうに。最先端の金融工学を導入して新しい運用商品に手を出した結果アヒャヒャヒャヒャになるケースだって有り得るんですし、やるかやらないかは各金融機関の自己責任じゃネーノ?

『また、本日は、地域金融機関の方々も多数ご出席頂いていますが、中には、金融の高度化は、地域金融機関とは縁遠いことと受け止めている方もおられるかもしれません。しかし、金融の高度化は、いわゆるリレーションシップ・バンキングと矛盾したり、対極にあるものでは決してありません。(中間割愛)この目標(引用者注:顧客ニーズに応えて収益を上げる)を達成するには、結局のところ、リスク管理や経営管理を高度化することによって、経営資源を有効に使っていくことが鍵になると思います。』

と、結局「金融の高度化」というお題で最先端の金融工学を駆使した(笑)リスク計測管理手法のお勉強をしようとしているのか、一般的な経営管理をしようとしているのか(どうもその両方をしようとしてそうですが)何とも曖昧模糊としたお話で、日銀の中の人たちも大変でございますなぁとしか申し上げようがございませんし、んなセミナーに出頭する全国金融機関の中の人たちも大変でございますなぁという所ですか。ナムナム。

と、イチャモンつけても生産性がございませんですかそうですか。最新の金融技術の研究を日銀が行うことは別に悪い事とは思いませんけど、それをコンサル会社よろしく組織として「金融高度化センター」とかの企画をおっぱじめるのはちょっとねぇ・・・・って思ったので全面これ悪口雑言を並べさせて頂きました。





2005/09/12

お題「余裕を持った対応とは?(福井総裁記者会見)」

○一応選挙雑感

いや〜、ここまで大差が付くとちょっとどうよって思うけど、まぁ単独過半数の方が良いですかね。法案の国民投票とか言いながら法案の中身の話にならなかったのは誠に遺憾なのですが、対案が無くて法案の比較に話が行かなかったというのもあるけど、一応案らしき物も出てたんですからもうちょっと報道すりゃあ良かったのにねって感じです(が、そもそも報道する方が判って無いでしょ)。現在の6法案は郵政焼け太り法案にしか見えないんですけど、まいっか。

しかし3分の2確保なので全く同じ法案を出して参議院で否決されても衆議院で全部再可決可能。何と解散理由が達成されたとは何ともまぁビックリ。そんな中で共産党以下の各党が議席を減らさなかった(自民党分派は死滅状態ですが)のは興味深いですな。

ま、今後は(も)構造改革に反対しても仕方ないので、中身を骨抜きにする(道路公団みたいに)とか焼け太りを狙うとか、改革の対象になっている方々におかれましては大変に難しい作戦を練ることが必要でしょうな(^^)。


○先行きの金融政策に関して慎重な物言いの福井総裁会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0509a.htm

会見要旨を見ると、月報で景気判断を上方修正した割には大人しい内容になっております。

・物価に関しての質疑応答

長い質問なのですが、押さえるべきポイントを押さえているので質問も引用します。

『(問)物価の評価とその総合判断について伺いたい。先程から、年末頃にかけて物価がプラス方向に行く可能性が高まっている、と言われているが、原油高という背景もあるが、基本的には、物価がプラスになるということは、景気が回復していることを裏付けていると思う。現状として、日本銀行の政策は物価にコミットメントしており、先行きデフレに戻らないということを考えるうえで、物価の先行きをどうみるかも重要であるかと思うが、それはやはり景気の持続性や強さにかかっていると思う。これが、日本銀行で言われている総合判断という考え方で良いのか。景気の持続性や物価の強さを含め、考え方を伺いたい。』

『(答)年末頃にかけてゼロ%ないしプラスに転じていく可能性があると申し上げたのは、前々から皆さんと関心を共有している生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比変化率についての話である。これについても、原油高の影響がガソリン等の最終製品にどのように転嫁されるかということとある程度絡んで動いているということは、ご指摘の通りである。』

『金融政策との関連では、そうしたことを含めて、少なくとも消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまでは、現在の量的緩和のフレームワークは続ける。これは、固い約束であるので最後まで堅持されるということである。』

『先行き、このフレームワークの修正如何という判断になった場合は、単に表面的な物価指数の現れ方というだけでなく、本当に日本経済がデフレに逆戻りしないかどうかについて、より踏み込んだ判断が必要である。まず景気回復の持続性の確かさをしっかりと確認しなければならないし、物価の面でも、表面的な動きだけでなく、その時あるいはそれ以降の経済の中で、生産性の上昇がどのように展開していくか、一方でユニット・レーバー・コスト(単位当たりの労働コスト)がどのように変化していくのかというような基本的な物価形成メカニズムの部分について、踏み込んだ分析と判断をしていかなければならないと思っている。』

ということで、とりあえず「持続性の確かさをしっかりと確認」とかいう辺りで月報での判断の強い内容を緩和するような感じになっています。月報をまんま読むと既に確りと確認しているような気もするんで、踏み込んだ判断もへったくれもないのですがそこはそこって感じですかね(^^)。


・金融政策の「余裕を持って」とは?

『(問)先程、コアの消費者物価指数の前年比変化率が年末頃にかけてプラスになる可能性が強く、景気についても持続可能性のある軌道に向かいつつあるとの判断を示された。量的緩和の解除についてもそう遠くない将来に展望できる状況になってきているのではないかと思われるが、一方で日銀が金融政策運営について、余裕を持って対応するとしていることもあって、金融市場では量的緩和の解除後も相当期間にわたって、金利がゼロ%に据え置かれるのではないかという見方が根強くある。この「余裕を持って」という言葉の解釈としてこうした見方が正しいかどうか伺いたい。』

まぁ相当期間にわたってゼロ金利政策が続くと考えている人だけではないと思いますが(ちなみにあたくしは当座預金残高30兆円を6〜8兆円程度に落としていく段階で結果としてゼロ金利状態になっている事はあってもゼロ金利政策にはしてこないと思ってます)、確かにこの様な解釈をする人は結構多いというか今はメジャーな見方かもしれない。

『(答)「余裕を持って」というのは、景気が着実に回復しても物価上昇圧力が相対的にかかりにくい経済、インフレ期待が急に昂進するリスクが比較的少ない経済として進展していく限り、私どもとしては緩和政策の維持ないし緩和政策を修正する場合にも、その修正のテンポというものにゆとりを持たせながら金融政策運営をしていけるのではないかということである。少なくとも、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでは、明確にそのことが言えそうだということで、先般からそう申し上げている。』

で、この後も答えは続きまして、そちらもお読みいただければとは思いますが、要するに上記の部分にもありますように、その時点でのインフレ期待がどうなっているかという事によって「余裕をもって」金融政策の対応が出来るのかが決まるというお話をしております。従いまして、この「余裕をもって」というのは実は金融政策のペースに関する話をしているのではなくて、あくまでも現在の経済動向を踏まえて、「インフレ期待が発生していない」と言っているに過ぎないという意味と見た方が宜しいのではないでしょうか。

ですから、実際にCPIがプラス転換した場合にその時点でインフレ期待が高まっていれば別に「余裕を持った」対応をするには及ばずということでもありますので、「量的緩和解除の3条件成立後にゼロ金利が長期間続く」という考えをあまり固定するのも如何なものかという所でしょうか。


この点に関して同じ質問が最後の方に出ております。

『(問)先程の量的緩和解除後もゼロ金利が相当期間続くという見方について、総裁のお答えからして、そういう可能性もあると理解して良いか。』

あたしゃー上で書いたように、そういう可能性もあるけどその時次第でしょって読んだのですが、どっちかというとこの質問は「続く」方に力点置いてますな。

『(答)そこのところについては全くのオープン・クエスチョンである。量的緩和解除後、ゼロ金利の状態が短期間で終わるという材料を持ち合わせていないし、それが非常に長く続くと判断する材料も今のところ存在してない。』

『普通の経済──普通というのはおかしいが──、昔の経済であれば、量的緩和が終わって景気回復が着実であれば、当然中立的な金利を目指して金融をさらに正常化させていくことを一挙に視野に入れながらでなければ、正しい金融政策にならないと思うが、先程も経済の姿が変わっていることを申し上げた。つまり物価の形成のされ方が昔と違っているので、そこを当然考慮に入れながら、どの程度余裕を持つことが適当であるか、もう一枚スクリーニングをかけた判断がいるかどうか、ということを申し上げた。しかしそれが、長い期間になるかどうかの判断は、その時点においてきちんと判断しなければならないことなので、前もって予見を与える──いくら予見性のある金融政策をするといっても、根拠なく予見性を与えることは無責任である──ことを今はできないということを申し上げた。』

ということで、解除の進め方とかに関しては出来るだけオープンというか話を決め打ちさせないようにしてます。当然では有りますが。

まぁそんなところで。




2005/09/09

お題「景気回復宣言キターーーーー」

○本題の前に余談:盛者必衰の理

実質的に取引最終日となっていた10年182回債は利回りベースでは最後とんでもない利回り(最後は日本相互証券の業者間スクリーンに表示しない付出約定という形での売買でしたので、いくらで売買されたかというのは日本相互証券様に聞いて下さい)で売買されておりました。

指標銘柄として2年以上に渡って栄耀栄華を誇った銘柄の最後は余った玉の投げ攻撃という平家一門壇ノ浦で入水の図のような寂しいものでございまして、まさに盛者必衰の理をあらわすといった所でございました。ディーリング相場は春の夜の夢の如し。


○銀行貸出がプラス云々

昨日発表された8月の貸出・資金吸収動向等で、銀行の貸出が特殊要因調整後ベースの8月平残が前年同月比プラスになったというのが結構話題になっていました。

http://www.boj.or.jp/stat/zan/kasi0508_f.htm

それは良かったですねぇという話で、銀行貸出復活でどうのこうのってコメントがあちこちから聞こえて来るのですが、ちょっとイチャモンを付けさせていただきますと、この貸出増加に際して平均約定金利がどうなっているんでしょうなぁというのが気にかかる所。

貸出の約定金利が上昇しながら貸出が伸びているというのであればこれはもう資金需要大復活で景気回復万々歳ということになるのですが、貸出の平均約定金利って相変わらず下げトレンドだったような気がしてますが、調べている暇がなかったのでとりあえず疑問点として書いておくだけに致します(何と無責任な>自分)。

ま、減るより増える方がパイ拡大なんですから良いんですけどね。


○景気回復宣言ですよ先生

昨日の金融政策決定会合で発表された手形オペの電子化と適格担保の掛け目云々というのはわざわざ金融政策決定会合で議決するような話なのかイマイチ判らん話なので割愛。で、材料投下なのは金融経済月報でして、先日あたくしがドラめもんで「今月はそんなに判断動かさないだろう」などとテキトーに考えていたら判断が結構前進状態で個人的にはちと驚き。もうちょっと経済指標を見て来月の展望レポート中間評価のタイミングでやるのかなぁと思ってたんですが。


今回は景気の基調判断を思いっきり強くしてきたのと、物価の先行きにプラス転換という見通しをぶち込んできたのがとにかく目立ちます。これじゃあ量的緩和政策のコミットメント3条件のうち、何故か2番目と3番目が先に達成とも取れてしまう訳でして、正直日銀落ち着けと思うのですが。

例によって前月と比較。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0509_f.htm

・総合判断

(9月)『わが国の景気は、回復を続けている。』
(8月)『わが国の景気は、IT関連分野における調整が進むもとで、回復を続けている。』

既に本石町日記さんがご指摘のように、ヘッジクローズが抜けて直球ストレートで景気は回復を続けているという事ですので、これはインパクトございますな。福井総裁の会見でも「回復しているとシンプルに言える」と発言しておられたようです。


・景気の現状判断

総じて言えるのは、総合判断の変化に見られるようにヘッジクローズが抜けているという点でしょう。

輸出と生産
(9月)『輸出は緩やかながら増加を続けており、生産も振れを伴いつつ増加傾向にある。』
(8月)『輸出は緩やかながらも増加しており、生産も、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、振れを伴いつつ増加傾向にある。』

輸出は「増加しており」が「増加を続けており」と変化。生産はヘッジクローズが抜けました。


設備投資と企業収益
(9月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、引き続き増加している。』
(8月)『設備投資は、高水準の企業収益を背景として、増加を続けている。』

この「増加を続けている」が「引き続き増加している」になったのもは表現的には強調と思われますが。


雇用者所得と個人消費
(9月)『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』
(8月)『また、雇用面の改善や賃金の持ち直しから、雇用者所得は緩やかに増加しており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』

雇用と賃金の状況が「持ち直し」→「改善」と判断を前進、雇用者所得も増加を続けておりという上昇トレンドを連想する表現になってます。


住宅投資と公共投資は毎度同じなので割愛。


・先行き見通しについて

先行き見通しの文で一箇所変化がございます。

(9月)『IT関連分野の調整一巡』
(8月)『IT関連分野の調整進展』

総合判断の部分でIT関連文分野の云々という箇所がなくなったのと同じ話でして、以前「先行きの懸念材料」とされていたIT関連分野の調整が一巡したというのは誠に結構なお話でございます。


・物価について

(9月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、米価格のマイナス寄与が剥落していくことや、電気・電話料金引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される。』

(8月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続くとみられるものの、電気・電話料金引き下げの影響もあって、当面は小幅のマイナスで推移すると予想される。』

プラス予想キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!!

ということですが、まぁ今のところ過去のマイナス要因が剥落するからプラスになるっちゅう言い方にして微妙にヘッジを入れている気がしますが、プラス予想はプラス予想。ま、実際にコアCPIがどのようなトレンドを辿って推移するかという問題で先行きのインフレ期待がどうのこうのって話になってきますので、今から大騒ぎする話でもないかなって気もしますが。


・おまけ

その他の表現は前月比変らずなのですが、量的緩和政策の継続への確信が少々剥落している今日この頃のため、札割れ現象もだいぶ緩和されてきた(ご紹介省略しましたが、先日の武藤副総裁のインタビューでもその点の言及がありました)事もあり、資金供給オペレーションにおける札割れ云々という話は無くなっております。


なお、記者会見の方では割と抑え気味のトーンでお話をしていたように(ヘッドラインや会見関連記事をざっと見ただけの印象ですが)感じられました。




2005/09/08

お題「10年182回が償還ですかそうですか/先物9月限最終日」

○その前に昨日の続きになっていない昨日の続き

昨日話が発散したまま片付いていない「市場との対話」ネタも大変示唆に富むお話で、http://hongokucho.exblog.jp/3422113/のコメント欄での議論が益々興味深くなっております。別に特段の意図も無い一挙手一投足に一々「意図」を妙に深読みされて日銀も大変ですなぁという気もしますが、まぁ永遠のテーマなのかもしれませんな(と訳の判らぬお茶の濁し方をするあたくし)。

以前ご紹介したアラン・ブラインダー元FRB副議長の著書にありました指摘、「中央銀行がマーケットのご機嫌とりに力を注ぎすぎると、マーケットの持つ極端な短期的視野を暗黙のうちに採用してしまう可能性が高い。すなわち、マーケットは中央銀行が何をするかを予想し、ともすればそれに過剰に反応することになる。一方で、中央銀行は、政策をどうするべきかを考えるにあたって、マーケットの動向に注目する。経済学者が使う専門用語でいえば、単位根(unit root)を持つ差分方程式をつくりだしそうな、危険な状態ということになる。」ってあたりが誠に頷けるものでして、まぁ難しい話でもございます。

・・・結局結論になってない(滝汗


○嗚呼10年182回債

昔々その昔、国債市場におきましては「指標銘柄」というものがございました。もう今はそんなものは無いのですが、要するにディーリング相場の名残でして、発行量の多い長期国債の特定銘柄に売買が集中し、「流動性プレミアム」という(今にして思えば)妙なものが発生していたという代物。このため各銘柄の複利利回りをプロットしてイールドカーブを引っ張ると指標銘柄だけ下に異常値(流動性プレミアムが乗っかっている=値段が高い=利回り低い)となっておりました。

で、この182回債というのは当時にしてはやたら発行量が多い債券で、残存7年近くになるまで延々と指標銘柄になっていたというもの。そのせいか「指標プレミアムっておかしくねぇか?」って認識が徐々に広がってきたように思えますが、それは兎も角として要するにこの銘柄は長期債時代にはひたすら割高に売買されていたのですな。


さて、そんな182回債も今月20日に目出度く償還。償還直前となった昨日の業者間取引では何か0.009%だの0.10%だのという利回りまで売られておりました。償還近くの銘柄は元利金支払い手数料(話すと長くなるので激しく端折ると、登録債制度時代の名残で、元利金の支払いに関して利付国債の場合1銘柄につき500万円を上限に元本の万分の9、利金の万分の18だと記憶してますが、その料率で取扱金融機関に手数料が払われるというもの。端折って書いているので厳密性については担保致しかねます)見合いの買いニーズなんかが発生するものなのですが、何せ大量発行銘柄なもので皆さん「お腹いっぱい」状態で特にニーズ無し状態のようです。

とは言え、昨日入札のあった3ヶ月FBはまたまた100円落札(しかも100円での按分比率が9%って・・・・)となっている位ですからまるでニーズが無い訳ではない筈なんですが、色々と他の理由もあって見るも涙の売られ方となったのですな。

ちゃんと計算してないので激しくいい加減ですが現先利回りに直すと実はこの利回りでもそんなに魅力が無いとか、だいたいからして償還まで残り8日なので0.009%も0.10%も単価が同じだとか(笑)、この債券が叩かれて世の中で余っているいると言っても1000億も2000億もある訳でもないのでメンドクセとか、昨日時点での売買単価が100円6銭近辺で12日持っていて6銭も償還損が発生(その分金利収入はありますが)して見掛け上激しく損が出る形になるのでイラネとか色々と要因を並べることはできますな。

まぁそんな訳で、長期債時代には長期間に渡って指標銘柄と呼ばれ、もうJGB界の王様状態(ナンジャソリャ)であった10年182回債の最後は業者間でボコボコにされて終了の巻と相成った次第。何とも感慨深いものがございます(本当か?)わなぁという世間話でございました(^^)。


○先物9月きり最終日ですが

債券先物9月きりは本日で最終日。今回の先物にはあまりドラマらしいものもございませんで、実に平和な先物でございました。まぁ最近は先物チーペストのスクイーズ狙いおよびその思惑による攻防戦などというものも見られなくなって大変に結構なことでございます。日銀の流動性供与貸出スキームが抜かずの宝刀としてワーク(というのも変な表現ですが)しているのかも知れませんし、まぁそもそもスクイーズなどという下劣な力技は如何なものかと思うあたくしとしては血圧も上がらず健康に宜しいですな。

今回の先物チーペスト銘柄は10年241回債でしたが、業者間での値付けは延々とビットサイドで値付けを行いひたすら頑張っておりまして、ネットべーシスも碌につかない状態で引っ張り続け、最後の最後に業者の皆様予定通りに投資家様から玉が出てきて無事終了の巻といった所でしょう。昨日の業者間売買でのべーシス売買は2.2銭〜2.4銭あたりで取引されていましたが、ネットべーシス換算で若干のマイナス。9月20日渡しのべーシス売買はマイナス0.2銭あたりで取引されており、無事終了の香りが漂うのでありました。

と、チーペストで波乱がなくてよかったですねという話はしましたが、先物そのものズバリとに関しては正直知らんので、変に建玉を残したせいで損をこいたと言ってあたくしに怒鳴り込まれても謝罪も賠償もしませんのでその旨お含み置きください。つーか先物建玉のロールオーバーはカレンダースプレッドの板が厚いうちにさっさとやりましょうと思うんですけど、建玉見てると毎度毎度前日まで2兆円とか残ってるんですよね。今回はそれでも割と片付いているようですが。

もっと念を入れておきますと、今日いきなりチ−ペストに波乱が発生してもあたくしの関知する所ではございませんので悪しからず(笑)。

12月きりは値付け上チーペストのネットべーシスが若干ついてスタートしてますが、これがどうなるのかは神の味噌汁ですな。お楽しみに。





2005/09/07

お題「市場の相手をどうしましょ」

ニューヨーク原油先物、やっとハリケーン前の水準に戻ったようで。

まぁ何ですな、いつまで経っても復興しない訳はないし、そもそも何の為に原油(など)を備蓄しているのかというわけでして、原油価格が上りっぱなしというのも妙な事ではあるのですが、この手の自然災害はその規模が「今まで見たこと無い」ものであればあるほど目先過剰反応しちゃうってことなんでしょう。まぁ仕方の無い話ではありますが。

本日から明日までの日程で金融政策決定会合が実施されます。で、まぁ金融政策に何かアクションがあるとは誰も思っていないのでそれはよいのですが、明日(全文は明後日)に公表される今月分の金融経済月報は確認かと思います。恐らく今回に関しては景気判断を前回と変らずという形にしてくるのではないかと思いますが・・・・・・

という話は兎も角、昨日も相場の動きに半ば呆れながらつらつらと「市場との対話」に関して思っていたので、その辺を(今までの話の重複部分もございますが)徒然なるままに。


○昨日もぶれる中短期ゾーン

先日の武藤副総裁のブルームバーグインタビューは意外に効果(?)があったのかど〜か知りませんが、昨日の債券市場でもまた中短期ゾーンが見事にヘロヘロの巻。朝っぱらから前日比1毛甘の0.145%ヒットとなっていまして、さすがに引けに掛けて持ち直しの動きもあったのですが、債券先物は前日比プラスだというのに、ずーっと前日比利回り上昇の香りがしておりまして、誠に遺憾の極みでございます。

毎日2年債の話ばかりで実に恐縮ですが、先週金曜日の高値が0.105%で昨日の安値が0.145%ってのは利回り変化が0.04%ですから元々の金利が0.1%台の債券としては中々素晴らしい変化率(まぁミクロの世界ではありますが)とも言える訳で(^^)。

まぁ将来短期金利が動くようになったらこんなもんじゃないと考えれば良い演習になっているのかも知れませんが、何か米国債券市場が動けば反応し、そんなに過激発言をしているとも思えない(昨日と一昨日のドラめもんをご参照下さい)武藤副総裁のインタビュー記事に反応してみたりと、まぁご苦労なことでございます。

過去に金利が付いていた時と比べて2年以下のゾーンの国債流通量が物凄い勢いで増えているので、ちょっとした動きでも結構相場へのインパクトがあり、昔から一方方向に振れ易い傾向のあるこのゾーンが将来どうなるのよって考えると若干ガクブルの香りも致します。とは言いましても、そんなことは別に今から騒ぐ事でもないのでして、せいぜいゼロ金利のアンカー付きとなっている今のうちに「一々材料を見つけて反応する」ことのアホらしさを勉強して欲しいものです。


○興味深い議論

人のブログの議論を勝手にネタに使ってすいませんすいません。

先日日銀レポートでテーラールールを具体的に取り上げながら「金融政策ルールと中央銀行の政策運営」ってのが発表されていましたという話をネタにしたと存じますが、紹介しただけで放置していたら(大汗)、毎度ご紹介している(ので読者の皆様もご覧になったかも知れませんが)本石町日記さんの所で面白いエントリーがあったのでご紹介。

http://hongokucho.exblog.jp/3422113/

あたくしは前回のゼロ金利解除の時には債券市場周りに居なかった事もあり、詳しい状況を判っていないのですが(残念!)、なるほどそんなこともあったのねと勉強をしつつ、当エントリーのお題に思わず笑ってしまう(ちとブラックですな^^)次第ですが、最後のまとめ部分には激しくうなずくのでありました。

『量的緩和が解除されるとき、テーラールールを前面に持ち出すかどうか何とも言えないが、仮にそうする場合、取り扱いは相当に慎重にしないといけないだろう。下手な使い方すると、マーケットが恐怖してしまう。』

『教訓 ルールは、その使い方によっては政策を正当化するために改ざんされるリスクがある。テーラールールなら、テラー(恐怖=テロ)ルール、エラー(間違い)ルールとなってしまう。』

まぁ当座預金残高目標下限割れ前後での騒動(苦笑)も、一部からは「当預残高目標引下げありき」みたいな感じで理屈(市場機能だの金利機能だのの正常化という奴)が持ち出されていたような印象を受けた(あくまでもあたくしの個人的感覚ですが)んですが、どうも昔から理屈後付けの傾向はあったのでしょうかね。

あたくしはルールを厳格に決めてその通りに運用しろとは全く思わない人ではあるのですが、その時々に応じて適当に政策を正当化する理屈を持ち出してくるのは益々如何なものかと思います。本来「総合判断」でやるべきものだと思うのですけど、どうもその「総合判断」に自信が無いから何か理屈を持ち出してくるのでしょうかねぇなどと意地の悪い見方をするあたくしなのでありました。

まぁ「○○先にありき」で何かやらかそうとするのではなく、経済状況をじっくりと見て金融政策の対応を行うって姿勢を維持していれば、「総合判断」だけで十分だと思うんですがね。現在の状況で言えば要するに「量的緩和解除先にありき」は止めてくれということですが。最近ようやく落ち着いてきたのは喜ばしいことです。


ところで、上記エントリーに送られたコメント欄での論議もまた興味深いものがありまして、あたくしも先週金曜日にこのレポートのお話をした時に「別に他意はないんでしょうが・・」と言いながらもこんなことを書いたので、ラスト何マイル?さんのコメントとその後の議論については頷くものがございました。

あたくしは(金曜のドラめもんで)こんな事を書きました。
『いやまぁ公表のタイミングが2週間早かったらまたぞろ日経新聞あたりがネタに取り上げて「テイラー・ルールが示す金利政策の復活」みたいな観測記事を書かれて大騒ぎになったかもしれませんなぁという感じ。たまたま米国ハリケーン攻撃で金利低下の雰囲気がでているので話題にはならないんでしょうけれども、市場の時間軸に関する見方が揺らいでいた時にこういう燃料を投下するのはどうかとおもいますけどね。』

で、ラスト何マイル?さんのコメントとしてこんなのが(勝手に引用してスイマセン)。
『「市場の感覚」ですか・・・あまたある個人名論文の1つ1つの公表タイミングについて、どこに軸があるのか分からない「市場の感覚」に合わせて、執行部がコントロールしようとすることが、適切かつ現実的だと思うその感覚に、私はむしろ疑問を覚えます。』

確かに一々コントロールするのは現実問題として不可能ですし、そのためにちゃんと「個人論文であって日銀の見解を示すものではない」と書いてあります。一々反応する(今回は反応しなくて良かったですねって所ですが)方がおかしいですな。

ただまぁあたくしが上の方で書いたように、問題なのはその手の個人論文が「日銀からのメッセージ」と取られる風潮があることでして(本石町日記さんが続くコメントで指摘しているのですが)それを煽っているのがメディアというか思いっきり個別名を名指しすると日経新聞だったりするのが困りものであろうかと。

まぁそんなのは無視すれば良いのですけれども、たちの悪い事に、このメディアさまにおかれましては、直近実績として「なお書き修正リーク」ってのが(内容に一部誤解がありましたが)あったりするので、年がら年中日銀に粘着している暇の無い人たちにとっては「やはり日経の報道はエライ」って話になり、そうなると市場の自己実現機能が発揮されて益々その通りになるという困った状況に陥るわけですな。


書いているうちに話が発散してきたので、ぜんぜん纏まって無いですけど本日は一旦ここで終了してもうちょっと考えてみます(ナンノコッチャ)。


2005/09/06

お題「良く動く中短期債」

例によって相場雑談

○昨日の債券相場

昨日の債券市場では中短期ゾーンのヘロヘロぶりが目立ちました。出だしから140円をあっさり割れたところから先物がスタートしたのですが、その後はやや押し目買いも入ったのか先物140円台を奪回してもみ合い。で、相場がもみ合う中で朝っぱらからいきなり前日比5糸甘オファーでスタートしていた2年ゾーンがいきなり1毛甘ヒットと先週金曜の強さはどこへやらという展開。

で、前場はまぁ先物140円台のもみ合いだったのですが、2年あたりが妙に弱く、時間の経過と共に5年辺りまでヘロヘロとなり、まぁまともなビットがあるのは業者がショートになっている一部銘柄と5年カレント銘柄だけという形になりました。

後場に入りまして、中期ゾーンが益々弱くなってきまして、先物が140円、5年48回債の0.515%が叩かれるとその後は益々中短期ゾーンがヘロヘロになりまして、それに対して超長期ゾーンなどが無茶苦茶確りという見事なベアフラット相場となりまして、終わってみれば日本相互証券の引値ベースで2年236回債が前日比2.5毛甘の0.135%で5年48回債が3毛甘の0.53%ですが、先物は23銭安。20年80回債は5糸甘(というか20年ゾーンは引け変らずのビットが残っていたのですが)の1.96%となっておりまして、先週木曜あたりにやったブルスティープ相場の裏返しみたいな展開になってしまいました。


○妙に動く中短期ゾーンな訳だが

要因としては、金曜日の引け後に報道された武藤日銀副総裁のインタビューということになるでしょうな。昨日ご紹介したインタビューでも記者が質問をしていたのですが、武藤副総裁は6月23日の記者会見で割と慎重なお話をしておった訳でして、その部分を引用するとこんな感じ。

『「2005年度がゼロ%近傍で、2006年度が若干のプラス」ということイコール「デフレ脱却」であると断言するのは、なかなか簡単ではないということを申し上げたかったわけである。展望レポートに書いてあることよりも、意味を変えようとか付け加えようと意図してデフレ脱却の姿がなかなか描けないと申し上げたつもりではない。展望レポートでデフレ脱却がもう描けたという意見はなかなかとれないのではないかということである。』(6月23日会見)

5月のなお書き修正、6月の当座預金残高目標下限割れを巡る一連の流れの中で「なお書き修正をしてからわざと(=供給しようと思えばできるのに)当座預金残高目標を割り込ませた」という批判が出ており、その間に水野審議委員による「金利の正常化」という発言が飛び出していたので、この発言が出た時には「ついに大魔神動く」というような受け止め方をされた訳ですな。武藤副総裁がハト派の立場を鮮明にしたって感じで。

で、金曜のインタビューではそのあたりに関してあっさりと「そんなに強い調子の話をした覚えは無し」ということになったのですが、まぁ確かに武藤副総裁が言うように「展望レポートの見通しが即デフレ脱却と言うのは早計」という解釈もできますわな。ただあの時点では中々そうは読めないと思うのですが。

てな訳で、武藤副総裁パワー(と勘違いしたもの)で量的緩和政策の長期化を見越していた向き並びに、そういう人がいるでしょうなぁと思っていた人の巻き戻し(妙な表現ですが)によって2年がいきなり前日比0.025%も売られたりしたのでしょう。

(相場には自己実現性があるので、参加者が本気でそう思ってなくても、相場がそっちに逝ってしまうと「ああみんなそう思っているのか」という暗示が働き、勝手に相場に織り込まれたことになってしまいますんで・・・・)


と、武藤副総裁のせいにしておりますが(笑)、先週一気に強気相場になった米国債券市場で、金融引き締め打ち止め観測(ハリケーン被害の為)が発生して中短期ゾーンが物凄い勢いで買われた動きが何故か日本に波及してブルスティープしまくった為に、その反動で昨日は派手派手に中短期が弱くなったというのが正しいかとは存じます。

しかしそれにしても先月来2年カレントゾーンの動きは派手派手でして、今回も金曜日に0.105%まで買われたと思ったら昨日は0.125%と、まぁ立派に(?)動くようになったのは、強力時間軸がだいぶ短くなってきたという事の証拠のようではありますな。


○武藤副総裁インタビューの追加

金曜日のブルームバーグニュースによるインタビューの追加引用をします。何気に結構ポイントになる話が多いので。

・CPIの基準改定に関する問題に関して

『物価の改定によってどういう結果がもたされるか、いろいろな予測があるが、それはあくまで予測でしかなく、確たることは申し上げられない。これは一般に言えることだが、実質国内総生産(GDP)も速報から確報へ、いろいろな形でデータの改定が行われる。しかし、われわれがある時点で政策判断をするとき、その時点で利用可能なデータを使うしか他に方法はない。そういう意味で、その時点で利用可能なデータを用いるということで十分なのではないか』

『その結果、多少、事後的に変わっても、それは仕方のないことだと思う。ただし、そのときに物価の基調をみるわけなので、単に現象としての上昇率だけでなく、背後にある基調を見るので、そういう実体的な判断が行われれば、判断に間違いはないだろうと思っている』

ということで、一見するとCPIの基準改定によって事後的にCPIがマイナスになるような状態での量的緩和解除を否定していないので、タカ派っぽくも読めるのですが、要はその時点での「基調」が重要なのであって、CPIのその時点での数字のみを取り出して判断するのではない(勿論その時点でマイナスだったら判断も糞もありませんが)という事を言ってますので、まぁあまりタカ派タカ派した発言でも無い所に注意が必要ですな。


・量的緩和政策の解除プロセスに関して

『いつ、どういうプロセスを経て量的緩和を解除するかという問題は、その時々の金融経済情勢を十分点検したうえで、毎回の金融政策決定会合で決定していく。今後の金融経済情勢いかん、としか申し上げようがない。ただ、金融政策運営について、市場などに判りやすく説明する努力をしていくことは非常に重要なので、その努力を最大限やっていかなければならない。審議委員それぞれにはいろいろな考えがあると思うが、現時点でそれを議論する段階にはない』

まぁ当たり前ではあるのですが、その時になってみないと解除プロセスは判らないですし、その時になればどういう解除プロセスを取ればいいかというのはある程度明白でもありますので、まぁそうなる前に仮定の話を色々としても単にマーケットにノイズを振りまくだけの結果になると言う事かと存じます。この点は毎度毎度他の審議委員が時に話し出す「仮定のお話」をあまりしすぎないようにって思いがこめられているのではないかと勝手に妄想しております。

昨日も申し上げましたが、実にこう模範的な回答が並んでおりますな。>副総裁





2005/09/05

お題「武藤副総裁のブルームバーグインタビュー」

○株高債券高ですが

国内株式市場では平均株価堅調推移ですが、債券もまた確り。朝からブルームバーグテレビでは「目先の景気減速懸念を受けた金利低下は、株式市場への資金流入を促すので株式にとっても悪くない」と言っている人がいると報道してました。米国みたいに金利の引下げ経路を使った金融緩和余地があるのならその理屈も判らん事もないのですが、日本の場合は何せ日銀様が既に金融緩和余地を自分で狭めている(今度当預目標を引き上げても意味がないって話になるでしょうな)ので、その理屈はどうかと思うぞ。

という訳で、基本的な景気の見方をどっちかが勘違いしていると思うのですが、まぁ短期的にこういうことも起きるでしょう。

ところで、同じくブルームバーグニュースを見ていたら真・相場神の人が株式市場展望を電話インタビューで話していましたが、「9月はレンジで下落するのは10月以降」だそうです。目先のレンジは12700〜12200だそうで。で、「景気の踊り場脱却」という考え方には無理があるらしいです。目先は米国長期金利の低下が相場を下支えするらしい。何のこっちゃという感じではありますが。


○武藤副総裁は最もセントラルバンカーなお方ではないかと

ブルームバーグニュースが金曜日の15時24分に配信した武藤副総裁のインタビュー記事、先般の会見でハト派的な発言がクローズアップされたり、札割れ容認騒動前後に当預引き下げに傾きかけた執行部を抑え込んだという報道が一部で行われたりとすっかり「ハト派」のイメージが市場に蔓延していた為に、その内容が知れ渡ると「ありゃりゃ」感が漂い、引け後に債券先物は10銭ほど売られていたりしておりました。

ポイントは記事の前半部分にもありましたが、

・物価と景気の先行きに関しては結構強気
・当面は量的緩和政策継続だが、先行きは緩和解除の条件を満たしていく
・財務省よりと言われるのは心外

で、勝手にあたくしの解釈をすると、武藤副総裁としてはあまり「こうあるべきだ」という思い入れ(「金利の正常化をするべきだ」みたいな考え)を持たずに、経済物価状況を見ながら自然体で対処するという事なのではないかと思う次第。まぁ一番正統的な考えなのではないかと思うんですが。


一問一答もかなりの量になっていますが、ちょっとだけ引用させていただきます。

・景気と物価に関連して

『わが国の景気は情報技術(IT)関連分野の調整が進むもとで、回復を続けている。設備投資は高水準の企業収益を背景に増加を続けており、個人消費も雇用者所得が緩やかに増加するもとで底堅く推移している。国内の民間需要は総じて堅調に推移している、輸出は中国向けが引き続き伸び悩んでいるが、海外経済が拡大基調を続けているので、全体としては緩やかな増加を続けている。こういう状況を踏まえると、景気は踊り場を脱却したといって良いのではないか』

『コアCPIの前年比は、電気、電話料金の引き下げの影響もあって小幅のマイナスで推移すると予想している。もっとも、今年末から来年初にかけて、コメ価格の下落や電気、電話料金の引き下げといった、いわゆる特殊要因の影響がはく落していくとみられるので、そういう過程でプラスに転じていくだろう、06年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきているのではないか』

ということで強気ですわな。

・6月23日の記者会見について

『わたしとしては、6月の会見でそれほど難しいことを言ったつもりはない。あの時申し上げたかったのは、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しだけに基づいて量的緩和政策解除の時期を予断するのは適当ではない、ということだ。現実の政策判断は、今後の経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断していくものだということを申しあげたかった』

『現実の政策判断は今言ったような判断基準(引用者注:量的緩和政策のコミットメント3条件)に従って、今後も、経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断すべきだと申し上げたわけで、その点は今も考えは同じだ。ただ、4月の展望リポートの見通しが仮に実現すると言う前提を置けば、06年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まっていくというのも確かであって、このことは4月の展望リポートでも明確に書かれている。この点についても、わたしはまったく同じ考えだ』

『また、4月の展望リポートから今日までの時間的な経過のなかで、その後いろいろなデータが出てきているわけで、現時点で考えると、展望リポートの見通しが実現するがい然性は次第に高まってきていると考えてよいのではないか』

上記の景気物価強気と同じ話ではあります。どうも武藤副総裁のスタンスに関して「強力ハト派」と安心し過ぎるのはよくなさそうですわな。


・財務省寄り云々について

『わたしは03年3月に副総裁を拝命して以来、一貫して日銀副総裁としての役割を忠実に遂行してきたつもりだ。ひとたび日銀副総裁に任命された以上、財務省寄りという物差しを持つようなことがあってはならないと思っている。もし、市場などで、わたしが財務省寄りという見方があるのであれば、それは全くの誤解であり、大変心外だ』

・財政と金融政策にかんして

『確かに、長期金利が極めて低い水準で推移していることで、財政面で国債の利払い費が抑制されているのは事実だ。財政規律だけでなく、市場規律についてもモラルハザードを起こしているのではないかという指摘もある。金融資産の保有者にとってもメリットが少ないなど、いろいろなことが副作用として言われている。しかし、われわれが何の為に現在の金融政策をやっているかというと、財政のためではなく、あくまでデフレ脱却と経済の持続的な発展が目的だ』

『量的緩和政策、あるいはゼロ金利政策という今の金融政策は、効果と副作用の両方のバランスを考えて、日本経済をデフレから脱却させることが大事だという判断のもとで行っている。したがって、いろいろな問題があることは常に認識していなければならないが、政策選択ということになれば、現状の金融政策を当面続けていくのが適切な政策だろうと思う』

まぁ総じていえるのですが、非常に模範的な回答ではないかと思います。何か思いいれとかが入っていないので、今後とも政策委員会のバランサーとして機能する事が期待できそうですわな。




2005/09/02

お題「トホホな入札/他意は無いんでしょうが・・・・」

大統領とFRB議長その他が緊急会合ですか。いやもう大変なことですな。話でしか知らないジェーン台風(江東区のゼロメートル地帯に行くとあちこちで「あの時はこの高さまで水が入った」という表示がありますが、とんでもない高さです)などを激しく上回る凶暴な台風(ハリケーン)のようですが、自然災害のパワーが最近強大化しているように思えるのは気のせいでしょうか?

○10年国債入札と暴れイールドカーブ

昨日は10年国債入札が実施されました。朝一番は米国市場の株高債券高(10年国債4%って2日で0.15%金利低下ですよ)の債券高の方に見事に反応する形になって先物寄り付きは前日比16銭高の139円78銭のスタート。

しかし高値の滞空時間は殆どなく、あっさり60銭台まで売られてその後は株高に反応して少し下落したりもしたのですが、基本的にもみ合い。で、この間に20年ゾーンがやたら弱く(何せ寄り付きの時点で20年80回債の出会いが前日引け変らず)、時間の経過と共に何故か10年カレントゾーンが強くなってくるという凶悪な展開。

前場の引け時点で、先物は前日比変らずの139円62銭だったのですが、10年新発債の入札前取引は1.36%−1.365%の気配から1.36%を買ってから1.355%まで買うという時々見る入札直前の買い煽りという困った状態。

なんちゅう割高な入札をやりやがるんだこの野郎という感じではあるのですが、今回債は償還が3ヶ月延びる初物であり、かつ上半期最後の10年国債入札という事もあり、まぁお家の事情で入れないといけない人も世の中にはおいでだったようで、煽り攻撃に煽られて最低落札価格が100円65銭(1.352%)の平均落札価格が66銭(1.351%)と涙の出るような結果になってしまいました。


で、まぁ入札が超越割高であってもその後イールドカーブや相場の上下で調整して誤魔化してくれると何とかなるのですが、入札がそれなりに強いという前提で上昇していた債券相場の中で、10年の伸びは大したことなく、入札後139円75銭近辺でようやく平均落札価格の1銭上の1.35%がビットサイドになっていまして、その後は前場の引けよりも先物が高いのに1.355%だの1.36%だのという出合いが発生するという状態。ヘッジしてても負けで、裸でロングにしていても負けというのはあまりと言えばあまりの展開で、大変に血圧が急上昇する相場でありました。

市場推定の落札結果によりますと、某大手証券さんがまるっきりボウズで、別の某大手さんは満額落札なんてぇのがありましたので、意地悪く陰謀論をめぐらせてみますと、お家の事情で大量落札しなきゃいけない人がいるのを狙って10年カレントゾーンにアオリイカ攻撃をして、落札後に投げさせようとした・・・・ナンチャッテ。まぁそんな計画的作戦をするわきゃーねーので、結果がそうなっただけでしょうけど。

ま、それにしても高値落札してるんだからちったぁ支えろよと大量に落札した有力業者さまには思う訳で。入札だけ割高にしちゃったら事前に買いの予約を入れてくれている投資家の皆様に失礼だと思うんですがねぇ。


どさくさに紛れて結構動いていたのは中短期ゾーンでして、2年236回債は朝方は引けの0.135%ビット(もしかしたら5糸強出合っていたかも)となっていたのですが、前場の安値近辺では引けオファー。で、後場になると大復活して引けどころか5糸強買われてビットとなりまして、結局引値は前日比1毛強の0.125%となっておりました。

この2年債同様、中期ゾーンも後場途中から復活。ここのところ米国債券市場ではイールドカーブがブルスティープ化していまして、それにつられているのかどうかは知りませんが、まぁ何となく中短期確りの雰囲気を出しておりまして、イールドカーブがあちこち乱高下した一日でございました。


○今回の「日銀レビュー」は・・・

「日銀レビュー」というのが毎月日銀から出ておりまして、日銀によりますと『日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。』ということで、毎度出るたびに読むようにしております。

で、今回でた日銀レビューは「金融政策ルールと中央銀行の政策運営」というペーパー。金融政策をマクロ経済指標に連動した形で運営する方式ってどうよ?ってお話でして、まぁ本件に関してはちゃんと下調べをしてから書かないと恥ずかしい思いをするネタですので、ちゃんとした話は週末の宿題(と言ってやらないのがドラめもんクオリティだったりするのですが、汗)と言う事で。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j13_f.htm

まぁこの関連のネタは時々日銀レビューで取り扱われている話題ですし、日銀としては常に研究しているテーマなので、発表するのは全く他意は無いと思うのですけれども、この中のレビュー本文(上記URLのリンク先にPDFファイル形式で本文があります)の5ページ目のグラフなんぞを見ますと、「オリジナルのテイラー・ルールが示す日本の政策金利の例」ってのがあって、「テイラー・ルールから算出される政策金利」ってのが(グラフが長期間なので細かく見難いのですが)2003年だか2004年には絶賛プラス転換していますが何か?って図になっているんですよ先生。

いやまぁ公表のタイミングが2週間早かったらまたぞろ日経新聞あたりがネタに取り上げて「テイラー・ルールが示す金利政策の復活」みたいな観測記事を書かれて大騒ぎになったかもしれませんなぁという感じ。たまたま米国ハリケーン攻撃で金利低下の雰囲気がでているので話題にはならないんでしょうけれども、市場の時間軸に関する見方が揺らいでいた時にこういう燃料を投下するのはどうかとおもいますけどね。まぁ「必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません」ってペーパーまで一々考えて出してられるかゴルァというのは判りますが、ど〜もこう「市場の対話」がどうのこうのという割には変な時に変な燃料を投下する傾向が昔からあるのが気になる所でありますわな。>日本銀行

市場で時間軸に関する思惑が変に揺らいでいたので発表のタイミングをずらしていたのであれば素晴らしいですけど(^^)。





2005/09/01

お題「相変わらず雑談ばっかで恐縮ですが」

米債またまた大幅反発で10年債で4%接近ですか。まぁ動きが激しいのは兎も角として、こっちで10年国債入札をやろうという日に米債上昇で入札どうしましょ?

○結局もとの木阿弥ですかそうですか

昨日の債券市場は米債反発と鉱工業生産指数の足元数値が事前予想より弱い数字であったことを受けて上昇したのですが、今まで出遅れていた5年債などの中期ゾーンを中心に相場が上昇しました。先物は寄り付きで値が飛んでしまってから下10銭に上4銭という値幅しか取らなかったのですが、時間の経過と共に5年を中心にした中期ゾーンの気配が強くなってくるという形で、いかにも「朝から断続的に5年に買いがありました」と言わんばかりの展開。

前場早い時間帯では先物が139円60銭割れで5年カレントゾーンが2.5毛強の0.565%位だったのですが、先物が振幅する間に次第に中期ゾーンの気配が強くなってきて、終わってみれば先物が139円62戦と前日比27銭上昇に対して5年48回債が0.55%と堂々4毛強と相成りまして、イールドカーブ上5年最強という偶に発生する「中期債買われて相場上昇の図」が発生致しました。

8月相場は中短期ゾーンがヘロヘロになってスタートしてその後も2年ゾーンが金融政策に関する見方によってフラフラと振り回されながら相場が上ったり下がったりしましたが、結局月末近辺になって大体修正して終了ということで、8月1日の引値(先物139円51銭、30年19回債2.445%、20年79回債2.035%、10年271回債1.345%、5年47回債0.55%、2年235回債0.12%)と対比して月末の値段(先物139円62銭、30年19回債2.40%、20年80回債1.985%、10年270回債1.34%、5年48回債0.55%、2年236回債0.135%)を見ていると「何のこっちゃ」感が漂う相場でございましたな。結局元の位置に戻って来ましたな。



○「金利の正常化」という論理にあたくしが感じるもの

東短リサーチレポートで紹介されていた「グループ提言」のWebおよびグループが行っている提言を拝読いたしました。(http://www.teigen.jp/

で、このWebで政策提言第1回として本年2月10日に「金融政策の正常化を通じて財政規律の強化を」というテーマで提言を行っています。2月に行った提言ですので、オペ札割れ問題に関する話あたりはその後の市場情勢の変化で「うーむ」という点も散見されるのですが、まぁそれはともかくと致しまして、提言はこちら。http://www.teigen.jp/teigen/teigen1_sum.pdf

まぁだいぶ前の提言ですので、既にご覧になられているお方も多いかと存じますんで誠に恐縮至極でますが、この提言を呼んで思ったことを少々。

提言の中で述べられている「国債市場が横並び意識が強く少数寡占のプレーヤーによって成立しているので、金利変動のトリガーが引かれると変動率が加速度的に高まる危険と隣り合わせになっている」というのはまさにその通りですわなとか、「金融行政は政治的に中立行うべきであり、金融行政のトップは国務大臣ではなく政治的に中立な役職にすべき」というような指摘はなるほどと思ったりしました。

全体的には(作ったメンバーがメンバーなだけに)なるほどと感心する点が多いのですが、どうもあたくしが引っ掛かるのは「金利の正常化を通じて財政規律の強化を」ってフレーズでございます。

提言の中にも勿論「金融政策の正常化にあたっては財政規律の回復に政府が最大限の努力を払う事が前提で、そうでなければ有効性を失う危険性が高い」とありますので、何が何でも金利の正常化をしましょうって話ではないと信じる所ではあるのですが、提言の要旨の部分だけを拝読(http://www.teigen.jp/teigen.html)しておりますと、そこのあたりが『金融を取り巻く環境を見てもゼロ金利の元で財政と金融が互いに規律をなくしモラルハザードを発生させている。金利の正常化を通してこの先の政策経路を示すことが国民の利益と一致すると考える。』って表現になっておりまして、何かこう構造改革主義というか清算主義というか、かつての「銀行シバキアゲ政策を行うと不良債権問題が解消される」という話を思い出す次第でございます。

かつてはあたくしも構造改革原理主義というか清算主義に傾いていた頃もあったのですが、実際問題として銀行シバキアゲ政策を取って何が起きたのかという事を考えますと、さすがに清算主義は如何なものかという考えになっておりますです。

提言を全部読んだら別に清算主義的なお話ではないのでこ〜ゆ〜文を書くのも言いがかりっぽくてアレなのですが、どうも「金利の正常化」というフレーズが一人歩きして、「金利の正常化を行う事によって財政の健全化を促進する」とかいうような本末転倒のお話が出てくるのではないかと不安になってしまう今日この頃。どこぞで「量的緩和政策の早期解除」とかいうのを言い出した党がいましたように・・・・

昨日の時事メインコラム「金融観測」でも「量的緩和政策が微害微益なら解除条件が満たされた場合であっても、解除が必要なのは成長期待が強まり、インフレリスクが台頭する場合であり、そうでないのに解除を強行すると、日銀の、日銀による、日銀のための解除になってしまうのではないか」という記事がございました。全く同感でして、あまり「金利の正常化」とか「市場機能の回復」というような点を強調するのは如何な物か、というか本末転倒になってしまうのではないかと思うのでありました。目的はデフレ脱却、景気回復であるわけですから・・・・

#取り留めのない雑談に終始しちゃいましたな。