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2005/11/30

お題「つれづれ雑感」

楽天とTBSが和解ですかそうですか。金融機関としてはそりゃまあ資金需要旺盛な楽天はお客様ですけど、こんなところで和解して延命させたらまたいつか狙われるんだからTBSが和解するメリットが良く判らん。徹底的にやっつける小泉流ってのはその是非は兎も角、確かに旧来の微温的な対応とは違うわな〜って妙な所で感心したあたくし。


○昨日ご紹介した投資家懇談会の続き

続きと言うよりはご紹介し忘れたところなんですが、何と申しますかまぁ「この正直者!」でもあるのですが、トホホ感漂う意見のオンパレードがあったんですな。

30年債の増発問題についてこんな意見がござんした。

『30年債については、投資家層がまだ限られているものの、買入消却の対象にする等の環境整備が行われるのであれば、多少の発行増は可能かもしれない。』

「市場環境整備」ってのはあれかい、「最後はお上がケツを持ってくれる」ってえ担保が無いと出来ないってえのかい?という印象を与えてくれるご意見で、誠に頭の下がる思いでございます。現実はそうなんだけどぬけぬけと発言が出てくるところが正直者と申しますか・・・・

まー確かに現在の国債流通市場でも日本銀行の国債買入の対象銘柄になっているものとなっていないものでは「最終処分場」の有無ということで価格形成が妙だったりします。あんまり表に出てこないけど、2年国債なんかはその傾向が顕著で、一頃は平気で銘柄間で逆イールド(当然オペ非対象銘柄が嫌われて利回り上昇)となる(引値は揃えるんですけど、笑)ような事態が起きたりしておった訳ですな。

そんな事ですから、最終処分場(失敬)があると流通市場が整備されるってのは現実に即しますとその通りではありますが、その「お上頼り」ってのを堂々と表明しちゃう所が何ともこう情け無いお話ですなあって思うのでした。

つーか昔は日銀の国債買入って全銘柄対象じゃなくて、一部の銘柄(指標と旧指標銘柄主体)だったんだぞ。何でもかんでもケツ持ちしてくれって何だかな〜と年寄りのあたくしは思うのでございました。


ついでに申し上げますと、発行が始まって20回債しか出てなくて市中流通額も大したことの無い債券を何で財務省が買入消却しないといけないのかが意味不明。意見を言うのは自由でしょうが、一応投資家の中から厳選された代表として出席してるんだから、買入償却制度の趣旨を考えた意見をお願いしたいものでございます。

ちなみにこの人だけ叩くのは一方的になりますんで、同じ議事要旨の中で理財局の中の人からこんな話があった事を伝えておきましょう。何でもかんでも「お上頼みかよ!」って感じですなあ。

『実際にマーケットメイクに当たっている証券会社の間には、マーケットメイクする際の最終的な担保として30年債も日銀国債買入オペの対象とすることを求める意見が強く、市場の立ち上げ時期にある30年債をバイバックや日銀オペの対象とすることが、流動性の向上に寄与する面があることも踏まえて対応していく必要があると考えている』

いやはや。


○OECDの話に??

と言っても報道を聞いて脊髄反射しているので、実はトンチンカンな突っ込みをしているかもしれません。その節は平にご容赦を。

朝のブルームバーグテレビでOECDの経済報告に関して報道されていましたが、その中で量的緩和政策の解除に関して「早期解除は長期金利の予期せぬ急上昇を起こすリスクがあり慎重に対処すべき」というお話になっていたそうな。CPIが1%くらいになるまで解除待てって話に関してはまあ兎も角として、その長期金利云々の理屈はちと違いわせんか?

短期金利を低位で押さえつけている間に景気が拡大してインフレ懸念まで起きるようになってくれば長期金利はより上昇しやすくなってイールドカーブはスティープしやすくなりますんで、解除を遅らせる方が本来長期金利の上昇リスクを残す事になりますわな。

で、「出口は市場が連れてきてくれる(by植田前審議委員)」のキモはその辺にある訳で、景気拡大+インフレ懸念って状況下で緩和政策を続けてれば長期金利上昇。政府方面からは「長期金利を下げてくれ」ってなもんで長期国債買え買えとか日銀に言うでしょうが、それをすると財政規律喪失懸念あるいは更なる流動性供給によるインフレ高進懸念(後者の方がでかいんでしょう)で益々長期金利上昇という素晴らしい展開が待っている(瞬間的には抑えられるかもしんないけど)ので、最後は泣きながら「日銀様長期金利上昇を冷やす為に金融引き締めして下さいお願いします」という話になって堂々金融引き締めとなる訳ですな。

ま、それは極端な例ですけど、早すぎる解除は景気減速やらデフレに戻るリスクやらを意識させるんで長期金利の予期せぬ急上昇ってのは起きないと思うんですけどねえ。OECDも何言ってるんだか・・・・


○岩田副総裁講演ですな

だいぶ前に審議委員のマトリックスもどきを作りましたが、岩田副総裁は量的緩和政策の解除(福井総裁に言わせると「枠組み修正」)に関して「再びデフレに戻らないリスクを意識」と再三主張してます(以前は糊代論を唱えて、あやうく国会審議中に正副総裁の不一致が答弁で思いっきり出る所だったというお話もございましたが)のでその辺りに関してどういう言及があるかってのと、物価安定目標あるいは参照値に関して何か見解が出るかって所でしょう。

講演(というか挨拶)は10時半から予定されております。場所は鹿児島。日銀担当記者の皆様におかれましては昨夜から鹿児島入りしてるんでしょうな。さすがに本日は大挙ご来襲でしょう(^^)。記者会見は午後ですね(聞いたんだけど何時からだか忘れた。場中だよ〜)。





2005/11/29

お題「材料待ちで国債投資家懇談会でも」

米国の感謝祭商戦が好調なので日本のハイテク株が買われるってのも(ゲーム機器とかの販売好調って事なんでしょうが)何か風が吹けば桶屋が儲かるっぽい連想で誠にアレなのですが、まぁ勢いというものはございますのではあはあそうですかという所で。しかし先週末は感謝祭商戦の出足好調の見方とか言ってて今朝ニュースを見れば思ったほど出足が良くないってのも何かこう訳判らん話でございますわな。昨日の朝及び今朝の米国株式市場後講釈は毎度おなじみのモーサテ様によるものなので、まぁ本当はどうなのよってのもございますけど。

今週は明日の岩田一政副総裁、金曜に武藤副総裁と講演が行われますし、本日は鉱工業生産などの経済指標発表ということで、まあとりあえずは材料待ちモード(ちょっと売られましたが)で数字や講演が出てからの話って事になるんでしょうな。


○国債投資家懇談会議事要旨

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyousi/b171125.htm

国債市場特別参加者会合の議事要旨と比較しますと、毎度思うのですがポジショントークの見本市のような内容(いやまあ特別参加者会合も然りなんですけれどもね、あっはっは)でして、まぁ正直っちゃあ正直ではありますが、これじゃあ財務省としても参考になるんですかねえっていう気も少々致しますです、はい。

今回のお題は国債発行計画関連でして、長期超長期の発行額と変動国債や物価連動国債の発行額をどうするよって話。

長期、超長期ゾーンの増発に関して色々と意見が出ているのですが、ものの見事に意見がバラバラ。まあ意見がバラバラなのは投資家層が多様化しているということで誠に結構なのですが、もうちょっと長期的に国債発行のあり方はどうよって意見を読んでみたい気がしますな(そういう趣旨の会合だとは思って無さそうだけど^^)。

という訳で、そんな中であたくしの心に響いた意見を少々。

・『また、日銀の金融政策の変更が、今後の金融市場に対するリスクとなっていくことを考えれば、短期のイールドカーブが上昇するなかで、10年から30年にかけてのイールドカーブがフラットニングする可能性が高く(以下割愛)』

正直なご意見かと存じます。しかし量的緩和政策コミットメントの本来の枠組みを忠実に実行していれば「日銀の金融政策の変更がリスク」などと言われる事は無かった筈でございまして、まぁ何とも申しますか実に涙が出るのでございました。


・『中短期ゾーンについては、基本的には全てのゾーンについて、現行の発行額を据え置き、減額の必要があるのであれば、他のゾーンを減らすべきと考えている。』

中短期ゾーンの国債発行額に関しては、あたくしが想像(というか懸念)しているほど気にしていない意見が多く、2年債を減額しても良いのではって意見も2008年の償還集中問題と絡めて話をするケースが多いですな。

まぁ短期金利がまともに上らなくなって久しいですし、その間に中短期ゾーンの発行量が増えてきてますんで割と慣れているのかもしれませんが、過去に景気回復で政策金利の上昇懸念が起きたり、信用不安で長めの短期金利が跳ね上がったりというような時に中短期ゾーンの債券を主に受け持っていて死にそうな思いをしたあたくしから見ると、5年債は兎も角、現在の2年債の発行量はゼロ金利継続を前提にしないと消化がしんどいのではと思います。

今回もやややり過ぎ感はありましたが、2年カレント物は0.3%台まで売り込まれてしまいました。イールドカーブの手前だけ金利上昇となってくれれば発行側はそんなに痛くはないかも知れませんが、やはり起点に近い所の金利が上昇しやすいのは良くないと思うし、中短期金利は貸出金利とかにも影響するし、あんまり宜しくないと思いますがどうでしょうか。



で、もう一つのネタである15年変動利付国債関連のお話。

・『超長期債については、消化に懸念がある訳ではないが、15年変動利付債の価格形成に影響を及ぼす面があり、安定的に発行していくのがよいと考える。』

何か本末転倒の香りのするご意見ですが、まぁ15年変動沢山持ってるのね。


・『15年変動利付債 の価格下落は、イールドカーブの攪乱要因になっている面もあり、月0.2 兆円程度の減額が必要。』

そもそも15年変動利付国債自体がイールドカーブにフラット化圧力をかける商品であるという事を判ってるのか判って無いのか謎な意見でありますが、似たような感じでちと???感を催すコメントがちらほら。


・『諸外国のマーケットと比較すれば、日本国債のマーケットに占める15年変動利付債と物価連動債を合わせた変動金利物のシェアは低く、引き続き着実に増やすことが必要。』

単純フローターの検討をしていただいた方が宜しいのではないかと思うのですが、CMTなんて発行増えれば増えるほどイールドカーブがフラットして本質的に長短スプレッド(と信用スプレッド)で勝負する債券運用者の首を絞めると思うんですけれども、気が付いて無いのかな?(まぁインデックス対比でどうのこうのって話で言えば別に良いんでしょうが、インデックス自体の収益性が下がるでしょ)


・『15年変動利付債は、昨今のイールドカーブの平たん化により、価格が大きく下落し、変動利付債でありながらボラティリティも高いということを投資家は身をもって体験することとなった。一方で、証券会社が出すアスクとビッドを見ると非常にタイトなマーケットメイクがされており、市場の育成は進んでいる。』

身をもって体験することになったって正直で結構なのですが、商品性をちょっと見ればイールドカーブのスペキュレーション商品だって気が付きませんかって申し上げたくもなりますが。まさかどこぞの証券会社の推奨レポートを鵜呑みにして監督官庁うわ何おするやめrくぁwせdrftgyふ

で、証券会社が出しているアスクビットが狭いのは証券会社が過当競争モードになっているのと、何だかんだと言っても短期金利がぶれてないのが大きいと思うんですけど。そんなの相場が本格的に荒れだしたら当てになりませんぜ。


で、最後に心を打った意見は「その他」の二つの意見です(^^)。

『国債を発行していくにあたって重要なことは、長期的に低コストで出せる間に長いところにシフトしていくべきということではないか。』

『国債投資家懇談会や国債市場特別参加者会合等において、市場参加者の意見を聞くことは非常に良いことではあるが、各社の意見には、業務的なバイアスや短期的なビューに基づくものもあることから、発行体としてこれに耳を傾けすぎない方が良い部分もあるとも思っている。』

誠に仰るとおりでございます。


○こちらも心を打ちました

心を打ったので人のブログを勝手にご紹介。と申しましても読者の皆様にはお馴染みの本石町日記なんですが、昨夜アップされたエントリー

http://hongokucho.exblog.jp/3835524/

エントリーの内容もさることながら、コメント欄での本石町日記さんのコメントに物凄い勢いで同意いたしたく存じます。






2005/11/28

お題「雑感を少々+同友会の提言を肴に」

土日は基本的に緩みまくって呆然モードなので、月曜の朝はどうもこう調子が出ませんですなぁ。


○日銀法改正で恫喝ですかそうですか

えーっと、中川政調会長が話をしているのもアレでございましたが、竹中大臣様も日銀法改正がどうのこうのというご発言のようで、まぁ調子乗りすぎじゃネーノと思うのでございますが。

量的緩和政策のコミットメントをさておいて「利上げありき」でせっせと地均しを行った事が政治からの干渉大爆発を招いたという訳でして、3月とか4月辺りから文句垂れまくっていたあたくしどもの危惧が大当たりしたのは当たっても全く嬉しくないお話でございます。

しかし政府の経済成長目標達成の為に日銀が協力っていうのもちとそれは中央銀行が何で政治から独立性を付与されているかってのを判っていない(というか竹中センセイのことだから何でなのか判って言ってるでしょう。だからこそ悪質なんですが)お話でして、実に困ったものだと思う今日この頃。

金曜日は全国コアCPIが前年同月比ゼロになったわけですけれども、その数字が出た後で各閣僚から日銀叩き総攻撃モードになっている訳でして、ポスト小泉の政争ネタとして皆から叩かれるとひねくれ者のあたくしとしては何とかして日銀をフォローしたいと思うのですが、はてどうなる事やら。


○歳出削減連呼に関してどうも素直に頷けないあたくし

増税の前に徹底的な財政支出削減をしてからどうのこうのという2年後の参議院選挙を意識しつつポスト小泉の大騒ぎという風情を醸し出している昨今の騒動。いやまぁ不要不急の歳出は削減して逝きましょうというのは正論なだけに反論しにくいのですが、反論しないでいると金曜日にご紹介した日経金融コラム大機小機の風説氏のような『郵政改革の論理に従えば、郵貯簡保が集めても、税金で集めても、無駄にお金が使われると考えるのが正しい。』などという驚くべき理屈まで飛び出す訳で(苦笑)。

で、まぁ無駄な歳出を削減しろってのはその通りであっても、素直にそのキャンペーンに頷けないのは、上記のような無茶苦茶論理展開に関する違和感(というか正直言うと嫌悪感ですが、爆)と共に、昨今の小さな政府キャンペーンへの違和感もあったりする訳でございますわな。

小さな政府を標榜して先般は道路公団が民営化されて分社化された訳ですが、その間に何が起きているかと申しますと、道路公団その他の発行していた債券(財投機関債)は「債務返済に対する政府の関与がより明確になった」という理由でS&P社では承継機関の債務格付けを道路公団時代よりも引き上げている訳ですなこりゃ(日本道路公団がA+に対して日本高速道路保有・債務返済機構はAA-)。

いやー民営化して高速道路保有部門の格付けが引き上げってのが何とも香ばしい訳でして、この格付けが付与された時はまぁそういう結果になるでしょうなって話にはなってましたが、それにしてもギャグですわなあなど市場の一部では話題になってましたにゃ。

ま、一事が万事って奴で、歳出削減とか小さな政府で民営化とか標榜してはいるんですが、何と申しますか結局単に付け替えやってるだけじゃネーノとか思っちゃうので増税の前に歳出削減って話に対してはどうもこう何だかね〜って眉に唾モードなあたくしなのでありました。


○経済同友会の提言について今更ですが

「量的緩和政策からの転換に向けて」http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2005/051121b.htmlにあるのは目次だけで、そこに提言の全文があるPDFファイルへのリンクがありますのでそこから読んで下さいませ。

先日もちょっと書きましたが、日銀応援団の積りなんでしょうが、こーゆーのは贔屓の引き倒しと申しまして、まぁ困ったもんだなというところですけれども、よく中身をみるとこれがまた「???」な提言だったりするのでちょっと肴にしてみましょう。

最初の方もちとアレですが、4ページ目の「量的緩和政策の副作用」というあたりから香ばしくなって参ります。曰く、

『日本経済が正常化に向けて動き出し、金融のシステミックリスクやデフレスパイラル懸念が大きく後退したなか、緊急避難的に導入された量的緩和政策はその目的をほぼ達成したと見られ、最近では、むしろ副作用が将来の日本経済に与える悪影響が懸念されている。』

ふーんそうですか。

『すなわち、経済が正常化しつつあるにも拘らず、それに相応しい適正な金利が金融市場で形成されない状況、あるいは金利がリスクに応じた水準より低位に止まる状況を生み出していることである。金融市場における価格機能が低下していることから、資金調達者・供給者いずれにも与せず、公平であるべき金融市場のポジションが、調達者に偏る状況が生じていると考えられる。』

いやあの世の中絶賛景気回復してインフレ期待が高まり、投資需要も大発生って状況であれば短期金利がゼロというアンカーは兎も角、中長期の金利はそれなりに上昇するんですが。つーか別にそれならゼロ金利政策を実施してても正常な状況では無いという話になるんですが。

で、「公平であるべき金融市場のポジション」って何ですか?以下微妙に途中をスキップしつつ肴にしましょ。

『第1 は、債権・債務者間あるいは債務者間における、不適正なリスクシェアリングである。短期金融市場では金融機関の信用力に応じたレートが付いておらず、銀行貸出市場や資本市場でも信用スプレッドは異常とも言える縮小状態が続いている。』

それは信用収縮が一段落した後に民間分野の資金需要に対して相変わらずオーバーバンキング状態になっているとかの問題であって、金利を上げたから信用スプレッドが拡大するという議論にはならないと思いますが。

『第2 は、適正な金利収入の喪失である。経済が正常化する状況でも従前どおりの量的緩和政策と超低金利が継続され、金利水準が適正水準より低位に止まるのであれば、企業・家計にとって本来得られた金利収入が失われる恐れがある。これは、リスクに応じた適正なリターンが得られないことでもあり、上記で指摘した不適切なリスクシェアリングの一つの側面でもある。』

で、世間ウケを狙ったのか、この後に「家計部門の利子所得と利子支払いの推移」ってグラフが出ているのが笑えるのですが、いやまぁ民間セクターの不良債権問題をせっせと政府部門に押し付けて自分たちが資金余剰セクターになった途端に金利よこせと主張するその清々しいまでのツラの皮の厚さには敬服するしかございませんですわな。

だいたいからして金利を低位に抑えることによってポートフォリオ・リバランス効果を狙うってのが量的緩和政策導入当時にはございまして、その点で言えば信用収縮とデフレ期待がまぁ終了しつつある現在に到ってやっとその効果が顕在化してきたんじゃネーノって思うんですけど、そっちに関してはスルーですかそうですか。

『第3 は、財政規律の低下に伴い財政状態がより悪化することで、国債利回り、ひいては長期金利が急騰する恐れが高まることである。』

この理論が素晴らしい。

『量的緩和政策によりもたらされた長期金利の低位安定により、国および地方公共団体など公的部門は、個々の財政状態にあまり左右されず極めて低金利での資金調達(国債、地方債の発行等)が可能であった。』

『今後、財政改革を進めていくにあたり、公的部門が資金調達する際には、そのリスクに見合った金利が付される必要があるが、今のままでは、金利を通じた財政規律が不十分となる恐れがある。これによって財政赤字の削減が遅れ、わが国財政、ひいては国債に対する信認が低下する場合には、金融市場において長期金利が急上昇し、経済を混乱させる恐れがある。』

金利を通じた財政規律っていうその理屈は、銀行をシバキアゲると不良債権問題が片付いて景気が回復するという清算主義と相通じるものがあるんですが。

おまけですが、「公的部門が資金調達する際には、そのリスクに見合った金利が付される必要があるが」って件ですが、各種民営化のお話であればさっき申し上げたように格上げ現象も発生してますけどって感じですわな。


『第4 は、資産価格について、実体経済と乖離した上昇を加速させる懸念である。』

まぁここに関してはヲチが必要なのは同意しますが、そもそもポートフォリオ・リバランス効果ってそういうもんなんですし、そもそもが下げすぎだったという見方もあるでしょうし、まぁ難しいところなんじゃネーノ。

『第5 は、日本銀行の今後の政策転換が、よりドラスティックなものになる恐れが高まることである。将来、原油価格の高騰によるコストプッシュなど物価上昇圧力が高まることも想定されるが、その場合、超低金利から金融引き締めの方向へと急激な政策転換を強いられる可能性がある。』

金融引き締めができるような状況になればそれはそれで日本経済の為にめでたいと思うのですが、どうもこう心配のしすぎというか、要するにフォワードルッキングのやり過ぎではないかと存じますが。

ま、全部で11ページになるものですんで、悉く紹介していると時間も量も大杉になってしまいます。よってその他突っ込みどころは皆さん是非ご覧いただければと。




2005/11/25

お題「決定会合議事要旨(10月11、12日)ウオッチ/その他」

さあ、CPIですよ♪ってな訳でまずは決定会合議事要旨から甚だ簡単に。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051012_f.htm

○情報発信を自賛してるよおおおお

毎度毎度最初に見るのが3番目の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」で、肝心の経済見通しをろくに読まないというのも実にアレでございますが(汗)。

『この間、今後の金融政策運営に関する情報発信のあり方についても、議論が行われた。委員は、これまでの情報発信によって、市場参加者の間に、景気回復の持続性や、「2006年度にかけて」量的緩和政策の解除の可能性が高まっていくとの見方が浸透したとの認識を共有した。』

いや何と申しますかウェーハッハッハハと申しますかああそうですねよかったですねと申しますか。市場機能を封殺するのがケシカランという議論をしている側から市場誘導の成果を自賛(しかも認識を「共有」してるんですけど。特定委員の発言なら兎も角)されてもなぁとしか申し上げようが無いのですが。何度もお話してるので言う方も疲れてきたよパトラッシュ。

『また、多くの委員は、解除後の金融政策運営に関する情報発信に当たっては、金融市場における円滑な期待形成に配慮する一方、金融経済情勢の変化に応じた機動的な金融政策運営が可能となるようバランスをとっていくことが重要であると述べた。』

それを人はマッチポンプと言うのであった(-_-メ)。黙ってりゃあ別に「お前のやってる事はこの前言ってたことと違うじゃねーか」という突っ込みを受ける事も無くって思うんですが。

『そのうえで、委員は、こうした点については、展望レポートに向けてしっかりと検討していく必要があるとの認識を共有した。複数の委員は、情報発信に当たっては、決定会合での議論を経て共通の認識になっている内容を出発点とすべきであると述べた。』

展望レポートに関してはその通りの内容で。共通の認識云々は、各委員から出てくる話のどこからどこまでが個人的見解と決定会合での共通認識なのかが曖昧じゃねーのかって事なのかなあと勝手に想像しますが、まぁ最近の水野&福間審議委員のように、議事提案とかの行動を伴ってくれれば別に良いのじゃないかと思います。


○ここのやり取りは(10年後に忘れてなければ)見たいもんです

今回は前回比妙にこの「当面の金融政策・・・」部分が短くなっております。前回は結構長くなっておりまして、まぁそういう意味では政策委員会の多数は金融政策の方向性で意見一致という理解でよいのかなあと勝手に思うわけですが、実はその前の部分でオモロイやり取りがございまして、そこで何気に議論が盛り上がったのではないかと愚考(^^)。

『この間、ある委員は、(1)デフレか否かの判断のために、家計が消費する対象となる消費財やサービスの価格を中心にみるなら、民間投資、政府支出、純輸出等を含むGDPデフレーターは必ずしも適当な指標ではない、(2)仮にGDP統計でみるのであれば、家計最終消費支出デフレーターを使うべきであるが、その場合でも、連鎖方式化されたとはいえ、パーシェ指数としての下方バイアスがあり、パソコン等の価格下落を過大に反映する傾向がある点に留意する必要がある、と指摘した。』

なるほど、下方バイアスですかそうですか、って突っ込みが次に入るのであった。

『別の委員は、物価情勢の判断に当たっては、消費者物価指数の上方バイアスも考慮した実勢ベースでみていくことが重要であるとコメントした。』

当然ですわな。えー何と申しますか、下方バイアスを強調して上方バイアスはスルーという最初の「ある委員」様の意見に「ざけんなてめぇ」って勢いでバトルでもやっていると楽しいのですが(おいおい)、このあたりのやり取りは10年後に公表される予定の議事録を読んでみたいものです。

『また、別のある委員は、デフレという言葉は多義的なので、注意して使う必要があると述べた。』

これは多分この前の記者会見内容からして福井総裁の発言ですな。


#まぁ議事要旨はとりあえずそんな所で。金融面の動向ってところで妙に細かい話をしてますなあってのもあったんですが割愛。



○バーゼルU関連(メモ)

22日付けで金融庁から「バーゼルU第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について」っていうペーパーが出ておりました。これをネタにすれば良かったのですが、不覚にも気が付きませんでしたごみんなさいごみんなさい。

昨日の債券市場では後付け理屈として、「アウトライヤー規制関連が思ったほど厳しくなかったので債券買いを誘った」みたいな話がありました。まぁ確かに思ったほどガチガチの規定じゃ無さそう(まだ全文精読できてませんすいません)ですけど、結局こーゆーのって監督官庁の運用次第でもあったりするので、だから債券買いってのもちと???かと。

それよりは、今まで早期緩和解除+金融引き締めで盛り上がっていたポジションの解消の動きの継続って所かと思いますけど、板に張り付いている訳ではないので、まーよー判らんとだけ申し上げておきましょう。



○何じゃこのコラムは?

日経金融新聞という金融のプロ向けに発行されているという新聞がございます。で、ここの1面コラムに「複眼独眼」という金融関連の識者な方々が交代で皆様ペンネームでお書きになっているものがございます。で、昨日のコラムから強烈な電波を感知したのでご報告申し上げます。

お題は「財政再建は支出削減から」というものでして・・・

『郵政問題にカタがついて、いよいよ財政赤字削減が政治目標に上ってきた。赤字を埋めるには二つの方策がある。支出を削ることと、税金を増やすことだ。現実にはこの両方の組み合わせが解になるのだろうが、両極端を議論すれば、その中間はおのずと議論したことになる。』

何か両極端を・・・のあたりで???が飛び交いますが次。

『税金を増やすという方策は、今使っているお金は削減すべきでないものだから税金を上げなければならないということだ。一方、支出を減らすというのは、現在の支出には無駄があるから削ればいいということだ。』

いきなり極端な話がなお極端になっておりましてその強烈な電波に肩こりも治る(大嘘)というものです。つーかこの話の飛躍振りに却って肩が凝りますな、あっはっは。

・・・この調子で引用していくと全部引用になっちゃいますんで端折りますとこのあと郵政民営化に話が繋がっていくのですよ。もう凄いの何のって。

『ここで何故郵貯簡保の民営化が必要かという議論を思い出してみると、(中間部分割愛)すなわち、無駄に使われるのはお金を集めるからであり、だからこそ郵貯簡保を民営化しなければならないという理屈だった。』

『郵貯簡保が集めたお金が無駄に使われるのなら、税金であつめても無駄に使われる。(途中を省略して後の段落部分の引用と繋げます)郵政改革の論理に従えば、郵貯簡保が集めても、税金で集めても、無駄にお金が使われると考えるのが正しい。』

貴方は無政府主義者ですか?と突っ込みたくなるような凄い論理展開。何でそう簡単に何でもかんでも一般化するですか?で、この「風説」氏なんですが、この素晴らしい論理に関してこのようにも仰せです。

『これまで郵政民営化に熱心だった人は、増税よりも支出削減で財政再建という議論にくみしているようだ。首尾一貫している人は信用される。信用される人が改革を行えば改革が信用される。』

首尾一貫という点で言えば、共産党だって又吉イエスだって(笑)。


・・・・ま、というよりは「増税論議をする人間は郵政改革の論理を判っていない人間であって、それらは地獄の火の中に投げ込まれ・・じゃなくて、抵抗勢力であって大変にケシカラン」という誠に政治的にほにゃららなお話なんでしょうけど、プロパガンダにしてもちょっとこうレベルがどうなのよ(電波レベルは極めて高いが^^)と申しますか、などと書いているとあたくしも抵抗勢力扱いですねそうですね。

まあ、電波覚悟で鏑矢を打ち込んだって事かもしれませんけど、これもポスト小泉を巡るプロパガンダ合戦の一環なんでしょうかね(吐息)。





2005/11/24

お題「総裁記者会見続き+その他少々」

まずは火曜日の続きから。

○潜在成長率がどうしたこうした

こんな質疑応答があった訳ですが、

『(質問前半部分割愛)また、2年続けて2%成長を遂げているが、日銀は日本の潜在成長率を1%近辺と述べている。すなわち、潜在成長率を1%超える成長を2年続けているので、それなりに需給ギャップは縮小していると思われるにも拘わらず、物価が上昇していない。こうした背景には、生産性の上昇に伴って潜在成長率が上昇している可能性がある。潜在成長率上昇の結果、需給ギャップの縮小が緩やかになる中で、消費者物価指数が0.5%を超えて1%に向けてどんどん上昇するということはなかなか想像し難いのではないか。』

即ち、現在の環境で拙速に緩和解除する必要があるんでしょうかという質問なのかはちょっと判りませんが(^^)。

『(答)大変重要な質問である。今後の日本経済の安定的な姿を最終的にどのように認識できるのかということにつながる重要な問題である。とりあえず、この先の当面の見通しも、少なくとも1.5%を上回る成長とみており、民間の予測でも2%に足をかけている。これは潜在成長能力を少し上回っている可能性が非常に高く、需給ギャップがかなり縮んで来て、今後も縮小し続ける。これは少なくとも明確に言えることであると思う。需給面から物価の基調が変わる。』

あのだから質問者は「日銀の言う潜在成長率を1%上回る成長を2年続けてまだデフレって事は潜在成長率の読みが低くないっすか」と聞いてると思うんですが、将来の話じゃなくて。

『しかし、もう一つは生産性がどれくらい上昇しつつあるか、従って日本経済の潜在成長能力がどの程度のスピードで上方修正されつつあるのかが大事である。』

「上方修正されつつある」という言い方ですから、現在見積もっている潜在成長率1%というのは「過去2年間の経済成長でも物価絶賛下落」という実績を見ても見直さないのでしょうな。まぁ潜在成長率は最終的には類推するしかないものだと思うんですが、結果を見てから過去の推計を見直すって発想は無いんでしょうか?(さすがにあると信じたいのだが)

『ここのところは、どこの国でも前もって読みとれないところであるが、生産性が上がり、潜在成長能力が少しずつ上方に向いているとすれば、それだけ成長を嵩上げする力が増している。その一方で生産性が上がって潜在成長能力が上がり、潜在成長能力通りの成長が続いていく過程にあっては、需要が増えてもインフレにはなりにくい面があると思われる。』

インフレになりにくいのなら何故いまそんなに慌てて緩和解除と小一時間。

『需給ギャップが縮まることと、生産性が上がって物価上昇圧力を吸収する余地が広がることの両面から考えていかなければならない。今後はその点について究明努力をしっかりやっていかなければならない。これは日本銀行だけでなく、能力のあるシンクタンクの方々や経済分析家に、少しエネルギーを割いて頂くと私どもとしても大変助かるところである。』

暫く前の内閣府のフォーラムだかで「潜在成長率2%台前半」とかいうのがあったような気がする(その割には確か内閣府公式見解は潜在成長率1%台前半だったと思うが)し、もうちっと潜在成長率あるんジャマイカというレポートとかもあったような気がするが。しかしこの「能力のあるシンクタンクの方々」とか「経済分析家」ってのは何か慇懃無礼というか嫌味なものを感じてしまうのは気のせいでしょうか(笑)。


ま〜それはそれと致しまして、潜在成長率が1%そこそこだという認識を変えないというのであれば、そりゃもう2年連続で2%成長してて来年度も2%以上の成長をしそうですよって見通しであれば「すわインフレ」ってことになる訳でして、そりゃもう量的緩和政策をとっとと解除してインフレ発生に対して機動的な対応をしなければいけないというものですな(えー

解除で慌てる前に潜在成長率1%そこそこってのを見直す事もご検討ありたいところなんですが・・・・・


『物価について言えば、いろいろな面からファンダメンタルズをきちんと分析していかなければならない。それに加えて、グローバル化の影響、すなわち海外との競争圧力が引き続き日本企業に厳しく向かってくることを上乗せしながら、物価がどの程度上がりにくい経済なのかを注意して見ていかなくてはならない。私どもはそれらすべてを考慮に入れて、量的緩和政策の枠組みを修正した後でも、急にインフレ圧力が高まるとは考えにくく、しばらくは余裕を持った政策運営が出来るのではないかと今のところは想定している。今後、時間の経過とともに、その一番大事なところに分析のメスをさらに詳しく入れていかなければならない。』

何というか、量的緩和解除は先にやっちまってからご検討のようですね。もう今となっては量的緩和政策のコミットメントが与える期待(緩和解除がビハインド・ザ・カーブになるという例の話)そのものがぶち壊しではありますが、緩和解除しちゃうと益々「ちょっと経済成長したら日銀はいきなり引き締めに走るんじゃネーノ」という期待(というか思惑というか)が強くなるような気が致しますですわな。困ったもんだ。


#しかし突っ込みどころの多い記者会見ではあります


○早期解除を囃し立てるのが日銀応援団なのか

昨日は週の真ん中にある祝日というせいか、ネットを徘徊しておりますと議論があちこちで盛り上がっていまして誠に結構でございました。あたしゃー参戦しないで見るだけですけど。

で、まぁ毎度お馴染み本石町日記さんが、前田全銀協会長(みずほFG社長)の「量的緩和早期解除はいかがなものか」発言に関連したエントリーを挙げていまして、「前田発言を採り上げて経済同友会提言を採り上げないのは日銀批判の為ですか(意訳)」という突っ込みに関連して議論が(休日なのに)盛り上がっていて中々でございました。→http://hongokucho.exblog.jp/3809042/

その中で頷くコメントはハンドルネーム「dosanko」さんのものでして、勝手に引用しちゃって申し訳ないけど、心に染みたので。

Commented by dosanko at 2005-11-23 23:09
私自身もそうですが、日銀のためを思えばこそ批判的にならざるを得ないという局面もあるということだと思います。じっさい、いまの局面で解除を囃し立てることが日銀のためになるとはとても思えません。失敗したときのリスクがあまりにも大きいからです(それこそ日銀法再改正もありうる)。その意味で同友会などただのおっちょこちょいとしか思えません。
(引用終わり)

いやまったくその通りです。早期解除を囃し立てる日銀応援団の皆様は如何お考えでしょうか?


話は全然変りますが、火曜日に久々に総裁会見突っ込み砲撃を行っておられたbewaadさんのエントリーに銀行ALM関係者を自称する人が妙な突撃の仕方をしておりまして、何と申しますか、ろくに理解しないままでただのアンチリフレだった昔の自分もあんな感じだったのかなー(ブログなんて便利なものは普及してなかったので突撃する場所もあんまりなかったけど)と思うと別の意味で何というかムズムズ感がするのでありました(^^)→http://bewaad.com/20051122.html

ま、あちこちで盛り上がっておりますわな。またぞろ日銀に注目が集まっている証拠でもあるんでしょう。





2005/11/22

お題「俺様理論爆発の総裁記者会見」

先週末の総裁記者会見がアップされました。金融経済月報で穏やかにやっていましたが、記者会見はまぁ実にアレな訳でございまして、もしかしてと思ってbewaadさん(http://bewaad.com)のところを見に行ったら厳しいツッコミをしており、つい読みふけってしまいました。確かにこの会見要旨突っ込みどころ満載というかどこをどうネタにするべえかってなもんですので、まぁ本日は簡単に。思いついたら続編を出すかもしれません(と言ってまぁ出さないと思うが)。

総裁記者会見はこちら→http://www.boj.or.jp/press/05/kk0511b.htm

○まずこちらに出てきた文書の全体的印象

ブルームバーグニュース端末で視聴可能な記者会見のストリーミング放送を全部聞けば良かった(まぁ今からでも聞けるんで無問題ですが)という感じですが、どちらかというとやる気満々感が漂ってくるという所ではあります。いやはやそうですかって所ですが、全体トーンの余りと言えば余りなハッスル振りに呆然としつつ、そうさいのもくろみどおりにぶっかがばんばんじょうしょうするといいですね(棒読み)と思うのでありました。


○量的緩和政策はデフレスパイラル阻止ですかそうですか

bewaadさんの所でも突っ込みが入ってましたので簡単に。最初から3番目(実質的には2番目)の質問に対する答えの一節から。

『量的緩和政策は、日本経済がデフレ・スパイラルに陥るリスクが懸念された状況において導入された異例の政策である。そうした異例の政策を、消費者物価指数に基づく約束に従って、条件が満たされるまで続けるということである。日銀当座預金残高を操作目標とする思い切った緩和政策を継続する基準として、この約束を示したのである。』

で、デフレスパイラル云々と言うフレーズをこのあと2回発言しているのですが、まぁ当然最後の方でこんな突っ込みが来るわけです。

『(問)そうすると、量的緩和政策というのはデフレ・スパイラル対策であって、デフレ対策ではないということになるのか。』

『(答)デフレ対策である。それは妙な質問であると思うが、デフレ・スパイラルを免れるように努力するというのがデフレ対策そのものであるし、デフレ・スパイラルに陥るのを防ぐことにある程度成功して、安定的な拡大に戻っていく過程すべてがデフレ脱却のプロセスである。その間、量的緩和政策が効果を発揮し続ける限り、それはデフレ対策と言って良いと思う。』

「妙な質問」ってあなた様が3回もデフレスパイラル対策って言ってましたから〜残念!


○いや何と申しますか・・・・

『現状、消費者物価指数がまだ僅かながらマイナスの領域で推移している状況のもとで、私どもは引き続き量的緩和政策をコミットメントに従って堅持するということであり、現状消費者物価指数がマイナスであることを前提に政府の発言が色々あっても、私どもの基本的な認識と相違はないと思っている。』

もうすぐ解除するぞと言いまくるのは「コミットメントに従って堅持」でも何でもないんですけれどももう何というか泣数行下ると言った所でございましょう。

『先程も申し上げたように、景気が回復を続ける中で、物価上昇圧力が高まらないのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持することができると思っている。』

いやあの物価上昇圧力が高まる時に引き締めをすれば良い訳で、物価上昇圧力が大した事無いのなら何故量的緩和解除を急ぐのかと小一時間でございます。


○篠塚理論キター

毎度お約束のこんな質問がありまして、

『(問)量的緩和政策を続けることの副作用について改めて伺いたい。また、インフレ・ターゲティングについて、今の段階でどのようにお考えか伺いたい。』

『ごく大掴みに一般論で言えば、量的緩和政策は、経済を健全に運行していくメカニズムの中で一番大事な金利メカニズムを封殺しながら運営してきている。そのような大きな犠牲を払いながら、デフレ・スパイラルから脱却するためのかなり異例な措置であるという点を忘れずに、私どもが今後することについて、なぜそのような転換が必要かを是非正しく理解して頂きたい。従って、消費者物価指数に基づく約束が満たされたという判断に至った以降も、そのような大きな犠牲を払い続けた場合に、よりダイナミックで健全な息遣いが聞ける経済になるか、ということが問われなければならない。』

はあはあそうですか。金利機能ってそんなに大事ですかそうですか。いやまあしじょうかんけいしゃとしてはまことにきょうしゅくしごくでございます(棒読み)。物価がゼロ近傍でちょっとしたショックで直ぐにデフレになってしまうような状況において、金利機能がデフレに陥るリスクよりも大事とは参りました。

つーか(後でも出てくるけど)一度プラスに戻ったら、物価がデフレ方向に戻る可能性は無いと確信というか信仰状態になっているんジャマイカと。

別の質疑でとうとう来ました預金金利ゼロ理論(-_-メ)。

『量的緩和政策は、あくまでもデフレ・スパイラルに陥って経済が死んでしまうことを捨て身で防ぐための異例な措置であり、これには大変コストがかかっている。金利機能を封殺しているし、多くの消費者の皆さんも、ほとんど一文も預金利息を受け取れないという犠牲を払ってこの政策を支えている。』

いやあの一般物価の上昇率が5%で預金金利が2%の方がよっぽど預金者の犠牲が・・・・・・というか、篠塚英子元審議委員の主張を思い出すのでありました。まあ篠塚さんの場合は是非は兎も角(というかかなり???でしたが)として、それはそれで主張一貫して金融緩和に反対するある意味清算主義的主張だったのですが、福井総裁様におかれましてはどうも量的緩和政策解除の為に世論を味方につけようとしてこの理屈を持ち出しているのではないかという邪推をしたくなりますわな〜ってところですな。


○お前が言うなって奴ですな

総務省のCPI改定に絡む質問に対して奥が深いご答弁がございました。

『これ(引用者注:コアCPI)を共通の基準として約束してきているので、あまり技術的な理由で中身を入れ替えるようなことをして、また国民の皆様に頭の中で整理し直して頂く必要はないのではないかと思う。』

『人々のインフレ心理やデフレ心理にどのような影響をもたらしているか、これから行おうとする行動を前向きに刺激しているのか、足を引っ張ろうとしているのか、といったことを十分頭に置きながら数字を読むということである。数字の読み方の問題であって、数字の中身を入れ替えて自己満足するというようなことを私どもはやらない。』

本石町日記さんのところで紹介されていた「机上のエコノミスト」発言はどうもこのやりとりの中で出ていたらしいのですが、惜しくも会見要旨には載って来ないようです(また聞きなおすか)。まーそれは兎も角として、「数字の中身を入れ替えて自己満足」ですか。潜在成長率を算定するのにまさか結果から逆算しておられませんでしょうなあ。

ま何と申しますか、どこにあったのか判らん流動性危機とか、「短期金融市場でターム物取引が活性化しないのは金融機関の信用力が復活して無いから」とか大変に素晴らしい話がポンポン飛び出す人たちに言われてもねぇ・・・・


○そしてバンザイアタックですか

最後の質疑。

『(問)先程から、量的緩和政策は異例な金融政策だと繰り返されているが、いったん解除した後に予想し得なかったリスクも含めて経済が悪化してしまった、あるいは物価が下がってしまったといった場合に、中央銀行としてどのような手の打ち方があるのか伺いたい。』

長いので段落分けますが、前半は気合、後半は願望の表明と言いますか・・・・

『(答)異例な金融政策に帰ることをあらかじめ想定して金融政策はしたくない。それゆえに、私どもは粘り強く消費者物価指数が安定的にプラスになるまで量的緩和政策を続けると、政策運営の手足を縛り、ある意味で国民の皆様にコストを払って頂いている。預金金利が低いという状況が一つの典型であるが、国民の皆様にコストを払って頂きながら異例な金融政策を粘り強く行っているということは、また簡単に量的緩和政策に戻ればいいという気持ちがないがゆえである。』

『ショックが色々及んでくる可能性が全くないとは言えないが、ここまで日本経済において、特に民間部門の構造改革が進み、バランス・シートの健全化が進み、イノベーションが強いという経済を前提とした場合、何か強いショックが来たからといって単純に量的緩和政策に戻らなければならないような弱い経済であろうか。その点を私どもはしっかりと点検した上で量的緩和政策の枠組みの修正に踏み切るということである。』

いやはや。


#その他「マジで鳥インフルエンザ話してたのね」とか、何か香ばしいフレーズがいくつか拾えるのですが、引用も長いし時間も無くなったのでこの辺で。




2005/11/21

お題「金融政策決定会合あれこれと昨日の続き」

構造強度計算書(でしたっけ?)偽造問題、エライコッチャになっておりますが、施工主が一方的に被害者面をしている(ように見える)のはどうもこう今一歩「???」感が。おまいらが建築費叩いている点についてはスルーですかそうですか。つーかシロート考えだけど、そんな強度で設計してたら建築現場とかでも気が付く様な気がしますが。末端の建築士が悪徳でしたねそうですねという話で終了とならないように願いたいものです。

珍しくTBSの朝ニュースを見たら建築士のインタビュー見て「当事者意識が無い」とか言ってるコメンテーターの何とか大学の先生がいましたが、ああこいつは下請け現場に掛かるプレッシャーとかノルマとかに全然意識の無い幸せな人生を送ってきたお花畑なひとだなーって思っちゃいました。

と、前置きの雑談が長くなりましたが、まずは市場懇。


○15年変動利付国債続き

金曜に実施された国債市場特別参加者会合(昨日懇談会とか書いちゃいましたが間違いです)。議事要旨に関してはおそらく今朝の9時前にはアップされるのではないかと思います。

で、ヘッドラインだけ見たんですが、案の定15年変動利付国債に関しては「ニーズが減衰しつつあるとの見方で一致」ということになったようです(正確には議事要旨参照されたし)。まぁ現象としては全くその通りなのですが、金曜も申し上げたように前回また増額したばかりで今回減額ちゅうのも何というかトホホ感を催しますわな。

しかも前回の会合では『15年変動利付債については、引き続き全体の発行の中の一角を占めるのは間違いないはずであり、今後どういったマーケットに育てていくのかという点を明確に示していくことが必要。』なんて勇ましい意見も(イールドカーブ考えるとここから先ちょっとやばいんじゃネーノという意見もありました。為念)出ていたのに、1ヵ月後には全員一致でニーズ絶賛大減衰という有様。まぁ市場はいきものと言えばそれまでですが、市場参加者ちゅうのはまぁ勝手なポジショントークの集団でもありますわなあと、お前が言うなといわれそうですが(爆)、思うのでありました。市場の声を全然聞かないのも困りますが、全部を全部聞いてあげる必要も無いと思うんですけどね、あたしゃ。

金曜日は余りにも悲惨な15年変動国債入札に呆れてつい勢い余って導入当時の人たちをやり逃げ呼ばわりみたいな発言しちゃいましたが、当時のメモとか資料とかを引っ張り出すと、別に導入当時には「金利上昇ヘッジ商品」とは銘打って無かったようで(あたりまえですが)関係者の方には大変失礼致しました。

どこぞの業者が勝手に宣伝したとか、その後(ここ1年くらい)のご指うわなにおするくぁwせdrfとか、バーゼルU対応とかで「経済的に必ずしも正しくないニーズ」がアフォのように発生して、今般のような発行量になってしまった訳ですが、まぁ買った人の自己責任ではあるのですが、ご指導云々に関してはちょっとどうにかならなかったのかと思う次第。

イールドカーブにスペキュレーションをするという商品性格上、バカスカ発行増額して良かったのかとか、金利上昇ヘッジ商品という変な誤解をしたまま走っていて良かったのかとか。まぁ商品というか制度の運用面には問題なしとは言えない訳でして、設計した時にその辺までちゃんと後に伝える必要はあったんでしょうな。おなじみの「前後不接連」って奴ですわな。


○金融経済月報(11月)

今回はまーそんなに過激路線ではありませんが。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0511.htm

前月と比較してどうよって話で少々比較。

・住宅投資強含みキター

(11月)『住宅投資も、強含みの動きとなっている。』
(10月)『住宅投資にはこのところ増加の動きがみられる。』

そうなんんですかという印象しかないのですが、まぁ住宅投資が強いというのは景気判断的には効くんですかなってところで。

・円安キター

(11月)『国内企業物価は、国際商品市況高や円安などを背景に、上昇を続けている。』
(10月)『国内企業物価は、原油価格上昇の影響などから、上昇している。』

(11月)『国内企業物価は、国際商品市況高や円安などを背景に、上昇を続けている。』
(10月)『国内企業物価は、原油価格上昇の影響などから、上昇している。』

「円安の影響」キターですな。昔のことを思うとこの程度の速度と値幅で円安の影響ですかあと思うのですが、まぁそういうんだからそうなんでしょう(謎)。

あと一箇所あるのは銀行貸出がプラスになってますよって所ですが、引用を省略致します。他の部分は10月と11月で同じ事を書いてますが、いじったところが住宅投資と為替市場ということなので、それはそれで一応気にはしておく必要ありかなあと思いました。


○総裁記者会見ですが

記者会見要旨は例によって例の如く本日午後にでもアップされるのですが、ブルームバーグニュースが行う会見ストりーミング放送(ただし録画もの)を3分の2ほど見た感想を少々。

・だから今からインフレファイターになってどうする

「インフレマインドが来る前に解除(手元のメモにはそう書いてあるけど、表現は違うと思う)」という部分でかなり腰の砕けたあたくし。いやまぁもうインフレファイターですか今はデフレですよ総裁って感じなんですが。

全体的にインフレ抑制っぽいトーンの発言が多いというか、インフレという言葉に妙に反応するのは日銀マンの仕様でしょうか?

・一応撤退路確保作戦もしてるのかな?

「経済に何らかのショックがあれば解除は遅らせるのは当然(脳内メモリーベースの意訳)」という発言がございました。まぁここまで振り上げた拳を下ろすには、まさか「政府のご指導」って訳にも行かないですから、それなりに「経済にショックを与えるような突発事態」というのが言い訳として必要とされる今日この頃ではございます。そのために今回布石を打っているのがこの発言なのではないかとも取れる訳ですわな。

そこで鳥インフルエンザですよ(笑)。先日与太話をしている時に「しかしSARSって言うと語感的に何だか恐ろしい病気っぽいけど、鳥インフルエンザだと何かこう間の抜けた感じがしますわな。日銀の政策決定文書に載せるとなると」などというしょーもないネタで盛り上がりましたが、何か言い訳があれば量的緩和を引っ張るという「名誉ある撤退」もできるかも知れませんな。


○しょうもないおまけ

財務副大臣が替わって最初の決定会合ですが、今回は毎度お馴染みの「決定会合終了後に会合の内容を喋る人」がいなかったようで、その手の報道がございませんでした。大変に結構でございますな。





2005/11/18

お題「変動15年国債の悲劇(何度も)リターンズ」

昨日「トピが1500抜けませんなあ」と言った途端に1500抜けということで、誠に結構なお話なんですが、もしかしてあたくしが相場神への道を歩んでいるのではないかと思うとそれはそれで困るというものでございます(笑)。

華麗にスルーした15年変動利付国債の入札なんですが、入札は「おーのー」状態でございましたので、あまり細かい値動きまではフォローしてませんが状況メモに雑感なんぞを。

○安値99円40銭ですかそうですか

前日引け時点でα値ベースで73くらいだった新発変動国債ですが、また例によって例の如く事前の先回り買いだか何だか知りませんが、少々仕掛けっぽい動きがあったらしく前場の引けでは発行α=75に対して100円の出合い。

で、まぁさすがに何ぼなんでも買いが来ますわなぁって事で入札の事前予想は100円からちょっと下くらいっすかねーって感じでやっていたのですが、平均落札価格99円96銭はまぁ良いと致しまして、最低落札価格が99円80銭で按分が95%ちょっとと80銭の札が殆ど入っちゃいました状態というヘロヘロの結果。

落札結果発表直後から99.90−99.80と平均落札価格なんぞはさっくりと陥落しているのはまぁ仕方無いとして、最低落札価格の80銭も割り込んでしまうと「ああしょーがねーなー」ってなもんで一旦外しの動きがでてしまって、何と安値99円40銭。そんなにイールドカーブがバタバタ動いた訳でもございませんが、まー需給って事で勘弁なんでしょうが、それにしても一日で上って下がってかよって感じです。さすがに50銭割れからはもう一段の実需買いもあったようなんですけれども。(引けは70銭近辺だったような気がする)


○お腹一杯だったのですね

何度か申し上げているように、この商品は「長期金利上昇への備え」というお話になっておりまして、一昨年、昨年とあった「景気回復期待で早期量的緩和解除観測相場(あるいはVaRショックに捏造された武藤ショック相場とも言うのですが)を受けて「銀行ポートは金利上昇への備えをしましょう」モードとなった上に、バーゼルUにおけるポートフォリオの金利ショックに対するoutlier銀行認定のメソッドも影響して銀行業態中心にニーズ大爆発。量的緩和政策のコミットメントがビハインド・ザ・カーブの性格を持つ事から「景気回復での金利上昇は長期金利から」という意識もあったかと思いますが。

ところが、2ヶ月前の前回入札以降ご案内のように地均しモードになってしまい、債券相場が中短期金利主導での金利上昇でイールドカーブはベアフラット化というこの商品にとって最悪の展開。もともとが「ヘッジ商品」という触れ込みでもあるのでそうそうぶん投げる訳にも逝かなかったんでしょうな。どーせポートでもリスク管理上は時価評価してるんでしょうから持ってる中短期国債中心のポートはいかれた上にアンダーパフォームだわ変動国債はいかれるわと涙涙の展開であったんでしょう。

で、まぁそれなりに警戒モードではあったんでしょうが、結局入札は思ったより低調で入札後ボロボロという状態(最後は少し持ち直しましたが)になっちゃいまして、この入札がそーゆー形にならなければ(例えば低調であってもそこから買いが来て下がる事も無しとかね)良かったのですが、この入札あんどその後の状況で「おーのー」感が漂う形になってしまいましたわな。

ということで、どうも投資家の皆様におかれましてはお腹一杯でございますかそうですかって感じ。まぁそもそもこの商品って始まって日が浅く、発行はあれども償還は当分(10年以上)ございませんので(^^)、今の時点でお腹一杯とは困ったもんでございますなぁ。


○で、発行減額の話になるんでしょうが

本日は国債市場特別参加者懇談会(昔の国債市場懇)が実施されますので、15年変動国債の発行を云々って話が出てくるかと存じます。いやまぁ投資家さんはもうお腹一杯だから発行減額してくれって話が出まくるのは間違い無い所です(というかそういう話をする会合だし)し、まぁ市場の強い要望があれば来年度の発行計画に反映されるって話になるんでしょう。

それはそれで致し方ない事ではございますが、この前発行を増額(まあずっと増額が続いてたんですが)しておいて今回はおもむろに減額とは何というか大変に脱力感爆発の流れでございます。おまけにこの商品の触れ込みは長期金利上昇への備えでもありますわなってお話でもあったのに、いざ量的緩和政策の出口がどうのこうのって話になり、今までの話だったらこれからまさにニーズが高まるって時に発行減額の話になる訳で、もうこれは悪い冗談としか言いようの無い展開ではございます。

まー以前から折に触れて申し上げてますけど、そもそもこの商品の変動利付部分って10年金利を基準にして決定されるので長短金利スプレッドに対するスペキュレーション商品という性格あって、もともと金利上昇に対するヘッジになっているのかというと甚だ怪しい性格を持っておりましたが、それが爆裂した格好でご愁傷様としか言いようがございません。今後もイールドカーブと相場の位置によって発行が増えたり減ったりする事になっちゃうのかと思うと涙無しでは見ていられませんですな。正直、ワケワカメ商品のお守をする破目になっている理財局国債課の中の人たちには同情を禁じ得ません。

いやまぁ組織って面で言えばまぁこんな変な商品設計にしたから自業自得じゃんと言う所ですけど、(出た頃から市場の一部では囁かれていた)問題が噴出するまでに時間が随分経っているので中の人は入れ替わっている(と思う)のがどこぞの中央銀行の自業自トークショー(ってフレーズがツボに嵌ってしまった^^)とは大いに違う所でして、中の人カワイソスって所でしょうか。ど〜せこの商品導入した人は「画期的な新型の国債の設計を行った」っていう「素晴らしい業績」を上げたことになっているんでしょうから、まるでバブル時代の逃げ切り経営者VSケツ拭き世代の対比のような風情を醸し出して甚だアレな物を感じるのはバブル崩壊と共に金融業界に入って(その時点で相場観が悪いから自己責任ですかそうですか)ケツ拭き仕事をした(あたくしは大してしてませんが)世代の僻みですかそうですか。


○シンプル・イズ・ザ・ベスト

しかしまぁ何度となく申し上げておりますが、フローターの国債発行するのに何でしょっぱなから「イールドカーブのスペキュレーション」というような商品を発行したんだか。確かにまあゼロ金利状態の中で短期金利フロート商品を作ると要求されるスプレッドがでかくなるでしょうなって事はありましたし、短期国債の入札って奴も色々と妙な挙動をするのでリファレンス金利が難しかったという事情も判るんですが、だからと言って何もヘッジのやりようが難しく、しかも固定利付債で組んだポートのヘッジ商品にもあんまりなっていないという商品を作るこたあねーだろーにと言う事で。

何と申しますか、日銀の「金融高度化」じゃないですけれども、頭のよろしいお歴々によくある傾向なのかもしれませんが、単純化すりゃあ良い事をわざわざややこしくして「レベルの高い事をやっている」という風にしたくなるのは出来ればご勘弁頂きたいものだと思う今日この頃でございます。

いやね、やっぱりシンプルイズザベストだと思うんですよ。泥臭いかもしれないけれどもあたくしはそう思いますよ。





朝のドラめもん

2005/11/17

お題「昨日のエントリーに関連して」

昨日は「だから言わんこっちゃない」とお話をさせていただきましたが、そのお話の続きと申しますか、人の褌で絶賛大相撲と申しますか(謎)。

○政治的過ぎて自縄自縛、まさに・・・・・

田中秀臣先生のブログ「Economics Lovers Live」であたくしの拙文をとりあげて頂きまして誠に恐縮です。ってブログにコメントする前にこっちで書くのは申し訳ないのですが(汗)、思うことがコンパクトに纏まらず、結局ここでうだうだと書いてしまうの巻でございます。

当該エントリーはこちら→http://reflation.bblog.jp/entry/248259/

で、今回俄かに巻き起こった日銀をめぐる大騒動(って程でも無いかもしれませんが^^)に関して田中先生は『政治巧者の福井日銀、政治的すぎて自縄自縛へ?』というお題をつけているのですが、禿しく同感でございます。明快かつコンパクトな内容で、勢いでうだうだと冗長になるあたくし、もっと勉強しなければいかんと思う今日この頃。まぁ上記URLを読んで頂戴ませ。

『ま、日銀の政治好きな傾向が招いた自作ジエーン、あるいは自業ジトークショーということですな。』

本石町日記さんも指摘していましたが、そろそろCPIのプラス転換が見えてきたかな〜くらいの段階でおもむろに中央銀行としてのインフレファイター振りを発揮して「量的緩和解除先にありき」状態になったのが間違い(ええまあそりゃこのまま絶賛大回復して結果として正解になるかも知れませんけどね)の元としか申し上げようがございませんですな。


しかしまあ今回の一騒動ですが、以前にも申し上げたかも知れませんが、現場のトレーダーお仲間的には「日銀エエカゲンにせえ」という意見が多い(ただし、類は友を呼ぶという点をディープディスカウントしていただくと誠に幸い^^)わけでして、「期待の安定化」とか日銀が言い出すと「ひょっとしてそれはギャグで言ってるのか(AA略)」という反応(というのか?)になっておりますよってのは日銀様ご理解頂きたいものだと存じますです、はい。


○中央銀行の独立性に関連して

毎度お馴染みbewaadさんのブログ(http://bewaad.com/)の昨日のエントリーの中で中央銀行の独立性と今回の騒動に関連したコメントがございました。非常に判りやすいので思わず引用させていただきます。

『そもそも日銀などの中央銀行に独立性が一般に要請されているのは、通常の民主的政策決定過程は金融政策の決定には不向きであって、限られた専門家が国民の多数の意向に逆らってでも経済学により導き出される「正しい」政策を実施すべきと考えられているからこそ、中央銀行の独立性は多くの国において認められているわけです。』

やはりまぁ「常に」政権と政策一致云々という中川政調会長のご発言はちとスピード違反と申しますか、勢い余りすぎでございますなあと思う次第。

ただまあその後に出てくる安倍官房長官の発言やら小泉首相の発言やらというのは、昨日(安倍さん)と一昨日(小泉首相)にあたくしコメントしたように、ちゃんと読んでみると「CPIがマイナスなうちから量的緩和解除話が盛り上がるのはどうよ」程度のお話のように思える次第でして、最初の中川政調会長発言が「政策目標の独立性無し」「日銀法改正」という点でセンセーショナルだったので、騒動好きの人たちが後続発言を益々盛り上げたんでしょうな。ポスト小泉を巡るさやあて合戦もあるのかも知れませんけど。

ま〜昨日の債券相場はあっさり下落で、ドル高円安+株価指数絶賛上昇(日経高いけどトピが終値ベースで1500行かないで弾かれた形のままなのがとっても気にかかるんですけど・・・・ま、いっか)という要因はあったにせよ、そんなに盛り上がって無さげなんで、案外冷静に受け止めているのかもしれませんね(でも今朝は米債大爆騰してますからまた違うかも)。


とここまで書いてふと気が付いたのですが・・・・・

中川政調会長発言として伝えられた中に「政策目標の独立性」って話なのですが、中央銀行の政策目標ってどこでも総括的な表現(物価の安定とか)で法的に定めてますんで、そもそも「政策目標を独立して定める」という事例は有りえませんわなぁなどと下らぬツッコミを考えてしまいました(笑)。

それにしても「国民主権の下での中央銀行は、常に国民が選んだ政権と政策目標を合致させていく責任がある。」ってのは勢いで言ったにしてもさすがに如何なものかですわな。


ま、そうは申しましても、今回の問題はbewaadさんがご指摘のように、

『とはいっても現に独立性のある中央銀行が失敗したらどうするのよ、というのが今の日本の直面する状況でして、』

という事に尽きるのかと思います。


○べき論を離れて予想屋さんとしてどうよ?って事ですが

じゃあ本件のお年頃じゃなかった落とし所は如何に?って話でございますが、今の経済情勢の延長線上ということで考えた場合は・・・・昨日のエントリーで申し上げた「量的緩和解除を行ってもゼロ金利が続く」という日銀的には不利なオプション売り状態が妥当な線になるんでしょうなぁって感じです。

オプション売りと申し上げても行使されなければ丸儲けな訳(ただし本件オプション料がタダなのが泣き所ですが^^)ですから、世の中が無事にインフレ期待が沸き起こって物価がそれなりに上昇してくれれば堂々利上げできる(でも急ぐべきではないと思いますが)ので、そうなる事を天に祈るしかございませんな。政策のロジックという観点で言えば茶番以外の何物でも無いですけれども。

ま、ゼロ金利にして別の時間軸を設定するという選択肢も無くは無いですが、それでは日銀としては却っててめぇの手足を縛る話になりますし、大体からして「解除が遅れるリスクと早すぎるリスクを天秤に掛ければ早すぎるリスクの方が問題」とか言っておきながら、いざデフレ脱却が展望できそうになったらいきなり「解除!解除!さっさと解除!」と大声で連呼(元ネタ判りますよね)しちゃった素晴らしい「実績」があるので市場の方も「ど〜せまた時間軸設定してもフォワードルッキングになるんでしょ」って半身に構えると思いますし(笑、だけど笑えない)。



一番困るのは、量的緩和政策解除モードあるいは解除後に景気が循環的に減速して、何らかの要因が重なってまたデフレ傾向が強まる事でして、何せ当座預金残高の効果についてこの前の展望リポートで「危機対応の流動性需要」と言い切ってしまっただけに、打つ手が無いわけですな。またありもしない「流動性懸念」を捻り出して流動性供給しますかね(苦笑)。そういえば「鳥インフルエンザ」という絶好の言い訳が!(ちなみに、かつて日銀が当座預金残高目標を引き上げる名分に「SARS問題がアジア経済に与えるショックに対応」というようなものがございました)

しかし「ひとたびCPIがプラス転換するともうマイナスに戻るリスクなんか無いですよ景気は拡大してるんですよ何言ってるんですかあなたたちは(意訳)」というご発言(以前紹介したと思いますが)をする福井総裁様におかれましては、一番困る場合のリスクとか対策って考えてるのかな〜って心配になります。

この前の講演でも「景気の上振れ要因」に関して延々と話をしてましたが、あーた本来この状況での上振れは歓迎すべき話じゃネーノということで(-_-メ)。


#そういえば本日は15年変動利付国債入札に決定会合でしたが、華麗にスルー



2005/11/16

お題「何で急に燃料投下モードになってるの?」

モーサテさま曰く、「(米国)債券は上昇(=買われた)しました。バーナンキ次期FRB議長がインフレ抑制に積極的な考えを示したことから買い優勢になりました」って説明になっている(ブルームバーグTVでもおねいさん同じ事言ってますが)のですが、それで10年は兎も角2年債まで買われるというのは何か良く判らん説明でございますな。まぁ既にだいぶ先まで引き締めを織り込んでいるのはありますけど。

で、その後朝からハイテンションのおねいさんがキャスターの東京からはマクラの話題で「フリーターやニートに向けた(職業訓練)講座をローソンが行う」というのをやっていたが、フリーターとニートを一緒くたにするのは如何なものかと思いますが。つーか働く意思がある人間と意思が無い人間だと教える事全然違くね?


○バーナンキ氏インフレ目標設定を語る

ということで、テキストを読まないといけないのですが、そんな話は朝起きてから気が付いてますので当然ながら本件はパス。インフレ目標の設定なんですが、目的は当たり前ですが物価安定であり、インフレ期待の安定化なのでありますんで、何でもかんでも金融緩和するというものではございませんわな。デフレ脱却あるいはデフレ回避に関する政策提言に対する印象が強烈なんでインタゲ導入=緩和的金融政策という妙な理解が罷り通っているのが米国市場での債券上昇の原因だったりして(苦笑)。というよりは、同日に発表されたPPIのコアが前月比▲0.3%になったこと(とかGMのクレジットがどうのこうの)の方が効いているのではないかと存じますが。

インフレ懸念とか言っている状況でのインフレ目標設定はごくフツーのインフレ抑制モードだと思うんですけど。まぁ日本の場合はCPIがマイナスのうちから量的緩和解除するぞ解除するぞと言い出す中央銀行がいるので、緩和継続の時間軸が伸びますなあって事になるんですが。


○日銀叩き大会になってますが・・・・・だから言わんこっちゃ無い

昨日の安倍官房長官は量的緩和政策コミットメント3条件について「どう判断するかについては、政府・日銀でしっかり対話をしていくこと、協調していくことが必要だ」と発言したようでございます(ブルームバーグニュースより)。

13日の中川政調会長による「日銀法改正」まで持ち出して「常に」政府と一致すべしとか言い出したそりゃ恫喝じゃネーノかと言いたくなる発言よりはまぁマシですけれども、「日銀が判断する事に関して政府は当然干渉」っぽいフレーズが飛び出したという報道が出てくるのもまぁ何だかな〜。

で、なんで「という報道が出てくる」って言ったかともうしますと、同じニュースを真面目に見ていると、安倍官房長官の発言には「日銀は3条件を示しているので、そのなかで、当然、日銀が判断されていくのだと思う」っていうのもありますんで、報道する方が趣旨を微妙にアレしているのではないかという気もしますんで、判断は保留って所でしょうか。

非常に困るのは、官房長官記者会見のテキストを内閣官房のWebで見ようと思っても、肝心の質疑応答部分に関して掲載されていないこと(あたくしの調べ方が悪いのかもしれませんが)です。折角始まった「政府インターネットテレビ(正式な名前は忘れた)」の官房長官記者会見でも質疑応答部分はカットされているんで、誠に困ったものでございます。


まぁそれは兎も角と致しまして、何か消費税問題からここの所急にポスト小泉の政争モードが始まっているのではないかという感じでして、微笑の貴公子政府税調石会長が煽りを食らって抵抗勢力呼ばわりされましたが、日銀も見事に叩きの対象になってしまったという事で。

まー何ですな、変にやる気満々になって「地均し」なんぞをおっぱじめるから強烈牽制球が飛んでくる訳でして、量的緩和政策コミットメント本来の姿であるビハインド・ザ・カーブ体制でやっておけば何の問題も無かったはずでございますな。

当座預金残高目標下限割れ明文化のあたりから始まり(その前からお前は悪態をついているだろうろいうと言われそうですが)、ここもとの地均し全開モードに関してもう無茶苦茶に悪態をついておりましたが、まぁ懸念していた通り(ちとタイミングが変な気はしますが、それは政争と絡んでいるからか)のことになってしまいました。

本石町日記さんのところで、植田前審議委員のかつての発言として「出口は市場が連れていってくれる」という表現があったというエントリー(本石町日記さんの過去ログをご参照ありたし)がございましたが、量的緩和政策の解除は日銀が地均しするのではなく、あくまでも物価も上昇しだしてインフレ期待(というかこの場合は懸念という感じですが)が醸成され、誰が見ても引き締めやむなしって所まで引っ張る方が良かったですねぇという感じではあります。

一連の動きで益々日銀動きが取れなくなりましたな。ここまで拳を振り上げておいて下ろすのは権威失墜もいいところですし、緩和解除を強行して(除く生鮮食料品CPIが前年比プラスになったら強行するでしょうが)景気が減速したり、再びコアCPIがゼロとかマイナス転換したら、中川政調会長じゃないですけど日銀法改正まで逝きかねません。


こーゆー事を言うのは甚だ品が無いと承知して敢えて申し上げますが、日銀の地均しモード突入を散々煽っていた日銀周りの関係各位の皆様におかれましては、福井総裁以下の意向を尊重あるいは忖度して日銀のために良かれとお考えになられたのではないかとは存じますが、日銀のために本当に良かったんでしょうかそれはって申し上げたくなってしまいますわな。

量的緩和解除を行ってもゼロ金利が続くのであれば、「量的緩和解除をした」という結果だけ残って、経済効果としては変らず(と日銀は言ってますよね)で何かあったら日銀のせいにされるという、まるでタダでオプションを売っているような悲惨な状況になるだけなんですけど。量的緩和解除するなら短期金利を少なくとも0.25%、普通に考えれば一気に0.5%くらいまで上げても無問題って状況になってからやるもんじゃネーノって思うのですが(これは毎度記者会見で噛み付いているブルームバーグニュースの日高記者の受け売りでもございますが)、何だかね〜って感じです。

ま、CPIの安定的プラス転換まだ時間はありますので、日銀が傷つかないように何とか上手いこと一時撤収していただければと存じますが・・・・・難しいでしょうな。



2005/11/15

お題「盛り上がってまいりました(ただし妙な方向で)」

○要人発言で債券反発

量的緩和解除時期尚早というコメントが自民党政調会長から出たと思ったら今度は安倍官房長官が昨日午前中の記者会見で量的緩和解除時期尚早発言。

まぁ先週後半あたりからちょっと中期債の売りすぎ感がございまして、中短期ゾーンが反発モードになっていた所でもありましたので、日本株価指数の弱含みも相まって先物と中期が引っ張る形で大戻し。2年カレントものも気が付けば0.265%とほぼ3週間前の水準を回復しておりますわな。

まぁ政府キターって所で売り込んでいた人が買い戻したのもあるでしょうし、そもそも月末に出てくるCPIの数字が相当良くなるとでもいう見方でもあるのなら兎も角、ちょっと目先これ以上売り込む理由も無いんで「売らないのなら買い」って話なんでしょうな。

まぁ問題は戻った後の今日でございまして、特に週初のようにややエアポケット的な時に大動きすると、その翌日になってから会議室から売りや買いが出てくる(笑)という動きが近年目立つようでございます。戻った所で「やっぱり量的緩和解除は直ぐにはできないから中期買い」と言って大手銀行あたりが買いに来るのか「とりあえず利食い」とか言ってエクスポージャーを軽くしに来るのか次第のような気が致しますな。って当たり前ですが。


○これで債券市場が反発してしまうのは・・・

中川政調会長の発言の本来の趣旨は量的緩和政策解除に前のめりになる日銀に対して牽制するって事ではあるのでしょう(が、ここまで日銀をやる気満々モードにする前に何らかの牽制をした方が良かったんでネーノと思うのですが、まぁ日銀やる気満々モードでもう大変ですよなんて言ってるのは今までは債券市場と日銀ヲチャーだけだったって事かもしれませんな)。でも「政策目標の独立性がない」として「場合によっては日銀法改正も視野」ってのはさすがに勢いで言ったのかも知れませんが、乱暴な発言かと思われます(理由は後で)。

そういう話もあるのですが、昨日の債券市場で「おいおい」となったのはその反応(まぁ勢いというのがあるのですけどね)。政権与党から「日銀の独立性?ハァ?」「場合によっては日銀法改正!」などという発言が出てくるのは本来債券に対しては売り要因になる筈でして、まぁイールドカーブはスティープ致しましたが、何と債券相場大反発となった訳ですわな。

まぁ今までの中期売り売りベアフラット相場の反動が日柄的にも需給的にもそろそろ来るという所で発言が後押ししたというのはあるのですが、それにしても本来的に債券市場の売り材料になっても全然おかしくない発言で債券が買われるというのは、政策委員会の中の人たちはちょっと考えて頂きたいものでございます。

日銀様の熱心な地均しによって中短期債を中心に債券相場(と短期金融市場)は量的緩和解除待機モード(利上げ待機モードに関してはまだ半信半疑っぽい)になっていた訳ですが、本来の量的緩和政策のコミットメントを実施していれば、コミットメントが達成そうな時になって政府からこんな発言が出たらもう債券市場はインフレ高進懸念で売り売りですよ先生って事になる筈でございますわな。

然るに、昨日の反発にありますように、日銀が地均しをして雰囲気を自ら作っていくという、こっちから見ればジサクジエーンなのですが、政策委員会の中の人から見ると「経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われるよう配慮(総裁の講演要旨その他)」するという動きによって形成されたイールドカーブなので、昨日のような本来そりゃねーだろっていう反応を債券市場が示したという事ではないかと存じます。

ま、ここまで拳を振り上げておいていきなり梯子を外された日銀ですが、先日は政府税調石会長が抵抗勢力呼ばわりされておりまして、まぁその辺の流れからみるとちと同情を禁じ得ない(早期量的緩和解除もこの時点での課税強化策にも賛成は致しかねますが)所ではございますわな。


○中川政調会長の発言なんですが

「政策手段について日銀の独立性は認めるが、国民主権の下での中央銀行は、常に国民が選んだ政権と政策目標を合致させていく責任がある。その意味で政策目標の独立性なんてない」(実は孫引きなんですが)との事ですが、一般的に政権党が短期的視野で財政拡大→通貨膨張を指向して歯止めが効かなくなる事に対してチェックアンドバランスということで独立性を持った中央銀行が長期的視野で政策目標(物価の安定だったり、雇用の安定だったり、通貨価値の維持だったりお国によって微妙に違いますが)の達成を図るってのが、「中央銀行の政治からの独立」ってことだとあたくしは理解しております。

その理解(誤解だったら指摘してください)によりますと、政調会長の「常に政権の言う事聞きやがれコノヤロー(と言ったとは中川さんもさすがに言わないとは思うのですが、そう取られそうな報道ではありました)」というのは如何にも暴論ではないかと思うのですが如何なもんでしょうかねぇ。だいたい今の政権ですらいざ財政再建路線を始めようかと思ったら、急に政府税調を「抵抗勢力」扱いしてみたりする次第ですから・・・・・

まぁ何ですな。何度か引用してますが、この「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会」議事要旨でも読んで財政問題の本質(民間の問題点を財政に寄せているのが景気回復の重要なファクターの一つ)でも考えましょう。

http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm

と、いつの間にか話が変ってしまった(苦笑)。


○で、小泉首相も時期尚早発言ですが・・・・

ドル円が反応したらしいのですが、ニュースはこんな感じ

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051114AT1E1401H14112005.html(現在はリンク切れです)

『小泉純一郎首相は14日、日銀の量的金融緩和政策の解除時期について「まだ早いんじゃないですか」と述べ、現在の経済情勢では解除すべきではないとの見解を示した。そのうえで解除の条件について「物価が(前年比で)ゼロ以上ないとね。まだデフレ状況だ」と指摘した。首相官邸で記者団の質問に答えた。』(NIKKEI NET)

よく読めば「物価が前年比プラスになってデフレ状況が解消されたら解除してよし」とも取れるので、文脈だけでは判断しずらいのですが、ど〜せ小泉首相のことですから、そんなに強力に緩和解除遅くしやがれコノヤローって言ったわけでは無いものと思われます。ニュースの出た時間が海外市場タイムで、海外市場ってのはどうも日本語での発言ニュアンスを汲み取れずに反応する傾向がより強い(国内市場でも変に反応する事があるのだから当たり前ですが)ので、まぁそれはどうなんでしょうねって感じです。

いずれにしても今日の中期債動向、注目ですな。



2005/11/14

お題「もう完全に既定路線化ということで」

「政策目標で日銀に独立性は無い(中川自民党政調会長)」ちゅうのもまぁ金丸さんを思い出しますなぁってもんで、そりゃ一体どういう事なのよって気もしますけど、今月の月刊現代にあった論説(ちょっと人に貸与中なので詳しく覚えてませんが)にあるように、日銀の独立性が獲得されるまでに「政府に抗して狂乱物価を止めた」みたいなことがあったら、ここまで言われるこたぁ無いのかもしれませんな〜などと思いつつ。


先週金曜日には福井総裁の講演がまたまたございましたが、基本的に金融政策に関しては「量的緩和を解除する」というのが既定路線状態になっている訳でして、金融政策に関しては緩和政策解除を前提にした話になってますわな(ブルームバーグテレビ見てたら量的緩和解除してからもゼロ金利継続って言ってる人がいたのですが、まだその見方のほうが強いようですな)。まぁ何だかなと思いつつ。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0511a.htm

○量的緩和政策を総括してますが

今回の講演は基本的に前回の展望リポートを踏襲したような内容になっておりますので、展望リポートのレビューだと思って読むと吉ではないかと思います。で、展望リポートでも話題になっていた量的緩和政策の総括をまた行っております。

『潤沢な資金供給は、金融システムに対する不安感が強かった時期──大手行の不良債権処理がピークを迎え、ペイオフの部分解禁を控えた2001〜02年や、りそな銀行への公的資金注入が行われた2003年頃──においては、金融機関の流動性需要に応えることによって、金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持し、経済活動の収縮を回避することに大きな効果を発揮しました。』

コミットメントの方はまあ良いとしまして、展望リポートではここまで個別具体的な言及は無かったような気がしますが、まぁこういう事のようですな。で、その頃に金融機関の流動性需要ってそんなにございましたっけ?というとどう考えても個別要因以外でんな物はありませんでしたがという結論。

で、このように口喧しく悪態をついておりますと、「結果的に景気が回復しているのだから無問題」というご批評を頂くのですが、例えば実験でも生産でも良いんですが、プロセスの分析が不正確なままであれば、幾ら結果が出ても「後に繋がる」事にはならんと思うのですわな。特に経済なんてのは毎度毎度前提条件(化学実験だったら反応条件ですな)が違うのですから、今まで行った政策のプロセスをちゃんと分析しておかないと、新しい前提条件に適切な対応が取れないと思うのですが。

ということで、先日の展望リポートの後に本石町日記さんがご指摘していた事と重なりますけど、いつの間にか「2003年頃には金融機関の流動性需要があった」という事に「なってしまっている」という事に関しては懸念を感じるあたくしなのでした。


○金利上昇はデフレ脱却インフレ期待によるものでしょうか?

『そもそも、「約束」に伴う量的緩和政策の継続期間は、市場参加者の物価見通しによって伸縮するという性格を有しています。最近のように消費者物価の前年比が近い将来にプラスに転じるとの見方が増加するもとでは、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間は短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退しつつあります。このことは、「約束」の性格上、自然なことと言えます。』

まぁ何ですな、デフレ脱却からその先の物価上昇期待が醸成されれば、金利は量的緩和政策の出口を展望するので足元金利がゼロであっても上昇するってぇお話ではございますわな。

ところで、最近確かに金利は上昇しておりますが、国債市場におきましてはイールドカーブは思いっきりフラットニングしておりますわな。このインプリケーションは上記のような総裁様の話と整合性が取れませんが如何でしょうか?もしかしてやや長めの金利形成って2年金利くらいまでの話をして10年以降の長期金利に関しては華麗にスルーなんでしょうか???

ど〜みましても、2年あたりの金利は早期利上げを織り込みながらも長めの金利に関してはそこまでの物価上昇期待(懸念)を持って動いていないというお話になりそうな気がするんですけど、イールドカーブの中で自分に都合の良い部分だけ取り出して見てませんかぁ??


○ということでやる気もへったくれも無く

『今後、量的緩和政策の枠組みの変更に当っては、経済・物価情勢を点検し、「約束」で示した条件──「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」──が満足されたかどうかを確認していくことになります。枠組み変更の可能性は、経済・物価情勢が今回の展望レポートの見通しに沿って展開していくのであれば、2006年度にかけて高まっていくと考えられます。より具体的な時期については、今後の金融経済情勢次第であり、予断を持つことなく、適切に判断していきます。』

やる気満々というよりは最早やる事を前提に淡々と話をしているという感じでございますわな。

『将来、量的緩和政策の枠組みを変更する場合には、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することになります。現在も、量的緩和政策の効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていますので、枠組みの変更それ自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではありません。その後は、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済の実勢に見合った金利水準に調整していくことになると考えられます。』

で、まぁこの期間についての見方が色々と分かれている所だというのが現在の金融市場といった所ですわな。で、ゼロ金利政策が暫く続くという見方も多いのですけれども、最終的に金利水準がどうのこうのという話をしている事を踏まえますと、そんなにゼロ金利が続くと考えるのはどうかと思いますし、量的緩和終わってもゼロ金利だったら何のために解除したのか(日銀的に)訳判らんと思うのですが。

で、実はもう一つ気になってるのは前回の展望リポートからそうなのですが、「経済の上振れ要因」に関してやたらと事細かに言及するようになった事。もちろん展望リポートは毎回先行き見通しに関して「上振れ、下振れ要因」に関して言及しているのですが、前回のレポートでやや上振れ要因を強調しだしたなぁと思って見ておったのですが、今回の講演でも上振れ要因に関して細かく話をしております。細々とはご紹介しませんが。


○うーん

物価見通しに関連して。

『ただ、2003年度以降、既に2年以上の間、潜在成長率を上回る成長が続き、需給バランスが改善してきたとみられる割には、物価の反応は小幅なものにとどまっています。生産性の上昇と賃金の抑制のもとで、製品やサービスを作り出すために必要とされる単位あたりの人件費──ユニット・レーバー・コスト──が低下し、物価を上がりにくくする方向に作用してきたことが主な要因と考えられます。ユニット・レーバー・コストの先行きについては、賃金は上昇するものの、生産性の上昇による低下圧力は続くとみられるため、近い将来、明確な上昇に転じるとは考えにくい状況にあります。このため、物価の上昇ペースが加速していく可能性は低いと考えています。』

この後こちらでも上振れ要因について言及してますが、「加速していく可能性が低い」のであれば何も急いで量的緩和政策を解除しなくても良いと思うのですが、まぁ福井総裁としては、インフレ期待が加速してから引き締めに転じる為には今のうちに金利政策に戻しておいた方が後でやりやすいっていう意識なんでしょうな。

それはそれで一つの考え方だと思うんですが、それはCPIがプラスに転じてから考えればいいことであって、何もマイナス継続中の時にそんな話をするこたぁねぇだろうと思う次第。つーかゼロ近傍のプラスだったら何かの拍子にまたマイナスになるかもしれないんですけど。


そういえばしょうも無い雑談の類ですが・・・

『以上が、景気の見通しに対する下振れ要因ですが、上振れの可能性についても頭に置いておく必要があります。』

で、マインドの話になるのですが。

『日本経済の先行きに関する国内の見方は、10年以上にわたる低成長の経験もあって、どうしても悲観的になりがちですが、海外では、英国のエコノミスト誌が『日はまた昇る』と題する特集記事を掲載するなど、日本経済の先行きに対する楽観的な論調が目立ってきているように思われます。』

つい数年前には日本は滝壷逝きとか何とか言ってた雑誌様がこの期に及んで「日はまた昇る」とか言い出すと「えー後追い指標ですか〜持ってあと1年かな」などとつい思ってしまうあたくしはひねくれ者ですかそうですか(笑)。


まぁそんなことで。今回の講演は先ほど申し上げたように、展望リポートの判り易い説明って感じですので、まぁ現在の日銀を見る上では読みやすくて良いと思いますよ。



2005/11/11

お題「今日も世間話」

日経平均とトピが爬行色というのはまぁ兎も角、ここの所決算発表があるにせよ個別銘柄しかも大型株とかで上ったり下がったりが激しいんじゃないだろうかという気がします。そんなに脅威の上方修正とか下方修正とかしてるかなぁ?

いかにも高値波乱の光景ですが、じゃあ転換調整するかって言うとそれは日柄不足のように思えますし、良く判らんですなぁ。

政策委員の一大地均し大会によって、来春には量的緩和解除というのがコンセンサスになってしまいまして、まぁその解除で利上げが出来るのか出来ないのかというのがテーマ(利上げしないで解除するなら解除しない方が日銀的なリスクリターンとしてお得感漂うので、解除するなら利上げも伴うと思いますが、あたくしは)になってますので、これ以上の燃料投下は日銀からそんなに出てこないかなぁと思いつつ雑談。


○あんまり稼動してないけどWI取引雑考

WI取引開始前に散々いちゃもんをつけていた国債入札前取引なのですが、結局のところ発行条件確定前の国債を買う投資家がいる訳でもなく(既発債で十分)、事前ヘッジ売りのニーズはあれども、買い手がいない中で売りに行っても仕方なし。という次第で、入札前取引に関しては、クーポンなどが確定した後に行われる売買(呼び値も単利なので判り易い)が主流となっておりますわな。

この状況、実は別の意味でも理に叶っておりまして、っていうのを先日の東証システムトラブルの時に思い出したのでちょっと今更感が強いですけどメモメモ。

えー、この取引なんですが、日本証券業協会のガイドラインによりますと、「停止条件付きの売買予約取引」とかいう扱いだったような気が致します。まぁ実務上どういうリスクがあるかと言いますと、財務省が発表した入札予定が中止あるいは延期になった時には「停止条件が不成就」になるので「取引が無かったことになる」というリスクなわけですわな。

勿論、債券売買は相対取引だから無かったことにしないで何らかの措置をすることも可能なんですけど、まぁ証券業協会のガイドラインがそうなっている以上、業者間売買が一番多く行われている日本相互証券では「入札が延期や中止になったら過去のWI取引は不成立」という扱いにならざるを得ませんですわな。

入札が延期だの中止だのって事件が起きるかよとか思っていたのですが、よくよく考えれば債券先物でシステム停止するとヘッジとかやりにくくなるからどうするんでしょう(業者間市場まで止まらない限りは何とかなるんでしょうけど)と昔のネタを思い出したあたくしでございました。

ま、先ほども申し上げましたように、実際問題としてはWI取引の殆どは発行条件決定後(当日10時30分以降)に行われています(その時間以降になると投資家の購入があったりもする)ので、まぁ破壊的大災厄でも起きない限り入札が延期になるって事は無いでしょうから無問題ではあるのですが、一応メモということで。



○甘いささやきに乗ってませんか?

という小見出しで反応できる貴方は日銀ストーカーの資格十分です。

最早「年末から年始に掛けてコアCPIがプラス転換」→「先行きのCPIは既にプラス予想なので3条件成就」→「解除!解除!さっさと解除!」というのが織り込まれてしまっているので実にアレなのですが、どうも不気味なのは谷垣さん以外が妙に物分りが良さそうに見えること。

経済財政諮問会議には出席してますが、竹中さんは金融絡みの政策ラインからは外れた格好ですし、与謝野さんは福井総裁と日銀法改正時代の「同士」だそうですし、何か日銀に対する風当たりが妙に弱い(一部ヲチャーと、地均しに振り回されている現場のディーラー始め担当者からの評判はどうでも良いので^^)気がするわけですなこりゃ。

でも消費税上げがどうのこうのとか定率減税廃止(年末調整見た瞬間にガックリ来るんだろうな〜)とか楽しい財政再建路線はせっせと実行方面に向かっている訳で、下手打つと金融緩和解除と財政健全化で国民負担増路線のダブルパンチの悪寒も。

ま、それだけ景気の回復に自信があるという事なのでしょうが、ここでどっかの誰かさんじゃないですけれども、陰謀論を逞しくするとこうなる訳ですな。「日銀に量的緩和解除をさせる」→「増税(減税縮小)路線は継続」→「景気失速」→「緩和解除のせいだ!日銀の独立性はケシカラン!」→あんまり想像したくない結末・・・・

というようなアフォなことは無いと思うのですがねぇ・・・・・

ちなみに、さっきの「甘いささやき」ってのは2004年7月13日の総裁記者会見でのお言葉でございます。昨年7月15日のドラめもんでご紹介致しましたんですが。

(昨年7月13日の総裁記者会見より)
『(問)先程、何としてでもデフレ克服が必要だとおっしゃっていたが、景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況で推移しているのだが、「デフレを克服しなければならない」とそこまで強く言うほどの問題を抱えているとお考えか。』

『(答)その甘いささやきには決して乗らない。やはり、将来のことを深く考えると、物価がマイナスに陥って国民の皆様が苦しい状況を再度経験しなければならないという不幸な状況をもう見たくないという気持ちが非常に強い。』
(ここまで)

ちなみに、昨年7月16日のドラめもんではあたくしこの記者会見に関してこんな事を申し上げておりました(^^)。

(昨年7月16日に書いたドラめもんより)
自分の発言意図を強調したいためにやたらと形容詞や副詞を多様する傾向にある日銀総裁のホンネはやはり「今の量的緩和はやりたくないけど我慢してやっている」って事なんでしょう。別に淡々と説明すればいいと思うのですが、自分の意図が市場にきちんと伝わっていないという認識があるために、自分の発言意図を強調しようとして却って裏読みされるという状態。

「市場との対話」ってのは市場を自分の意図する方向に持っていこうとする事ではないと思うんですが、どうも市場に対して何か働きかけたいという意思が見え隠れするんですよ、日銀総裁の言動を見てますと。
(ここまで)

ま、CPIがプラス転換したからって直ぐに飛びつくのはどうかと思いますが、日銀オープンリーチ状態になっておりますんで、今さら後戻りもできない状況になってますんでどうなる事やら。まだインフレ期待って状態までにはなってないと思うんですけどねぇ。。。。




2005/11/10

お題「長期国債買入と金融調節の柔軟性(昨日の補足)」

今日の話はかなりマニアックな気がする。マニアックな割には自分で書いていて完全にクリアカットになっていない自覚症状がありますので突っ込みキボンヌ。

○長期国債買入と金融調節の柔軟性

昨日になって遅ればせながらご紹介した先月31日の福井総裁記者会見に関してあたくしこんなことを書いてみたのですが・・・・(以下昨日の再掲)

『しかし、その際に重要なことは、金融調節の柔軟性を確保する観点である。その観点から、銀行券発行残高を上限としてオペレーションの額に制限を設けてきた。引き続き、こうした考え方に沿って実施していく方針である。』

成長通貨供給だから銀行券発行残高が上限(その説明もアレですがまぁ兎も角)であるという話じゃなかったっけと思いますが。柔軟性確保するなら上限設けない方が良いんじゃないでしょうか(苦笑)?

(以上昨日書いた話ね)

で、何か別の理屈があった気がするとか思いなおしまして、人に聞きつつ考えてみたのですが(汗)、この柔軟性確保って意味は「本来短期のオペレーションで対応すべき物を長期のオペレーションで対応すると、オペレーション上不都合が生じる可能性がある」って事なんですな。謹んで昨日のあたくしの発言を撤回致しますが、その理屈はちゃんと説明してくれんと理解されないと思う希ガス(日銀ストーじゃなくてヲチャーを詐じゃなくて自称するあたくしもついうっかりの巻ですから、ってそりゃあたくしの頭が弱いからですか)。

ということで、何がどう不都合なのかというお話をば。正直、妙に単純化している嫌いがあるので、変な点はご指摘下さいませ。

日銀のB/S(という話を始めるとまた以前ややこしく論議を呼んだお話になるのですが、本石町日記さんの過去ログでもご参照下さいと書いて華麗にスルー)で考えると銀行券(日銀券)ちゅうのは日銀の長期負債になってまして、その長期負債の見合い資産として長期国債を持っているという次第であるというお話になりますわな。

で、その日銀が長期負債以上に長期資産を持つと言う事になりますと、その分短期負債(だから今だと売出手形とかになるんですかな)を発生させるという理屈になるのですが、まぁそこまでは良い(やや良くなさそうだが華麗にスルー)と致しまして。

何らかの事情でこの状況から吸収オペレーションが必要になった場合(インフレ高進で引締必要とか銀行券が減るというテクニカルな場合とかですか)に何をするかちゅう事を考えますと、

1.短期の調節で回収するとただで無くさえ銀行券オーバー分の売出手形がある所で回収となるので、短期回収オペレーションのロールオーバー大会になって短期金利の乱高下要因になりそう(つーか、長期国債買いながら短期の回収というのも間の抜けた話)

2.長期の調節で回収を対応するとなると、それは長期国債売切(または買切をいきなり停止)なんで、長期金利が乱高下要因

という事が想定されるので、機動的に動かしやすい短期のオペレーションで対応すべしってことから「柔軟性の確保」って言ったんですな。資金の短期的繁閑を調節する事を考えると、最初に述べたように資産に長期国債が沢山あって負債に銀行券と売出手形が入っているという段階で、短期のオペレーションに制約を受ける形になるのでそもそも柔軟性が確保できていないのですけれども。

普通の会計と一緒くたにして説明するのはかなり乱暴ですけれども敢えてなおざっくりと概念的な話をしますと、、日銀券見合い以上に長期国債を保有しているという図は、保有している長期資産に対する長期負債が不足していて短期負債まで食い込んでいる状況と言う事になるので、言ってみれば設備投資のファイナンスを短期借り入れのロールオーバーで対応しているの図(あっしが昔勤務していた銀行では「固定長期適合率が100%未満」って言い方してたですな)ということで・・・・却ってややこしくなったか??


とまぁこういう事を書きますと、日銀が国債を買いまくった分を回収する必要がどこにあるのかとか、日銀が国債を買い捲れば銀行券は増えるのではないかとかいう指摘もやってくるのですが、それに関するお話は、だいぶ前にbewaadさんとマーケットの馬車馬さん(http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/)がブログで議論をしておりましたのでそのあたりをご参照ありたしとまたもスルーするのでありました。

#うーん、考えながら書いていたので、他の雑談を書く時間がまたもなくなってしまった。だいたいこれってネタとして突っ込みだすとややこしいですな。





2005/11/09

お題「古いネタを虫干し(31日の総裁記者会見)」

その前にニュースで気になったことをひとくさり。

「道路特定財源を一般財源化すると5兆超あるので消費税率2%に相当します」って今まさに目の前の経済ニュース番組でお話してるのですが、ちょっと待て。特定財源が無くなった分の道路関連の予算はどこから手当てするのかと小一時間。どうしてそういう説明(テレビ東京が独自にそういう説明してるのなら救いはあるのだが、内閣方面でそういう宣伝をしているのではないかという激しい悪寒がします)になるんだろうか。道路建設も整備も来年度から一切行わないってのならその説明でも結構ですけどね。

郵政公社を民営化すると資金が官から民に流れる(形式上は半官企業から民間になるから確かに流れるが)とかいう説明もそうでしたが、この手のトリックというかインチキな説明が罷り通る「改革」に対して物凄く不信を感じるあたくしは抵抗勢力ですかそうですか。

一般財源化するんじゃなくて、目的税部分を廃止して本当に揮発油税とか重量税とかが必要なのかって事を考えて改めて必要ならば賦課するって話じゃないのかと。シロウト考えの思いつきで恐縮ですが、この辺りの税金を廃止あるいは大幅に下げると輸送用燃料価格の下げに繋がって経済効果が高いような気がするんですが。消費税上げてこっち下げる方が良くねぇか?(って政治的に無理ってツッコミを受けそうだが)「既に確保した徴税手段は手放さない」ってのも一種の既得権益(以下自粛)。


○31日の総裁記者会見

すいません遅くなりました。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0511a.htm

会見の中盤でこんな質問がありました。

『(問)展望レポートで、インフレ予想が進むというリスク要因も指摘されているので改めて伺いたい。総裁は経済の持続的成長にとって望ましい物価水準はどういうものであるとお考えか。数字でなくてもいいので、基本的な考え方を伺いたい。』
『また、展望レポートの末尾に「金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努める」という表現があるが、総裁ご自身としては、こういう目的を達成するために必要な具体的な措置について、どのようなことをお考えか。』

で、この答が思いっきり長く、この質疑応答部分だけで1ページ分になっております。

・マイルドインフレという発想は・・・・・?

『(答)望ましい物価水準について具体的なイメージを持っているかと言われれば、持っていない。これから、物価がある時点以降プラスの世界に移った後、ダイナミックかつ均衡のとれた日本経済の姿がどのように形成されていくのか、その中で安定的な物価水準とは一体どういうものかということは、さらに検討が進められていかなければならないと思う。』

総裁は相当前からこの「均衡の取れた日本経済」っていう言い方をしてるのですが、まぁ「具体的なイメージは無い」ってのはいつものことですし、変に言及しても日銀としてコンセンサスを取ってる問題じゃないからマズイんでまぁ仕方ないでしょうな。で、途中を一部割愛してその後。

『大事なことは、インフレ方向であれデフレ方向であれ、人々が物価の変化を常に念頭におかなければ安定した事業計画や安定した家計部門の経済生活ができないということがあってはならない、という点であると思う。』

えー、ゼロインフレ論ですかー。

『あまり物価変動リスクを念頭におかず、事業計画をきちんと立てることができ、人々の生活設計もできる、ということでなければならない。それが物価安定の一番基本的なエッセンスであるという点は、時代がどう変わろうと、経済構造がどう変わろうと、どこの国であろうと、普遍的という言葉は少し言い過ぎかもしれないが、共通項であると思っている。』

うーん、まぁ好意的に読めば「デフレにならない程度の低インフレが望ましい」とも読めるのですが、どうも上段の一節が気になりますわなぁ。


・期待の安定化と市場誘導を混同しているのではないかという・・・・

この次に質問後半に対応する期待の安定化がどうのこうのって話をしているのですけれども、微妙に禅問答っぽくて要点が引用しにくかったりするのであった。

前半に金利機能復活の話をしてるのですが、微妙に蒟蒻問答なので引用するのは控えておきます。後から記者会見のストリーミング放送聞きましたが、このあたり確かにナンノコッチャ感が漂ってました。

『従って、この間(現在は経済が望ましい状態に向かう過程だという話だそうで)の金融政策は通常の局面以上に、日本銀行がその時々の時点で、何を目的にどのような意図で政策運営をしているか、その目的ないし意図に沿ってどのような行動をしているか、またそれらを如何なる表現で説明していくかということが、市場関係者の方々に少しでもクリアに理解され続けていくことが、市場機能が一層活きていくためのひとつの大きな前提条件である。また、それらのことは、最終的に市場の中で金利その他の市場条件が決定される時に、人々が共通して認識する将来の日本経済・物価の姿にフィットするかたちで、金利その他の市場条件が決定される基になると考えられる。 』

うーん、何か微妙にアレなのですが・・・と思うとその続きがありまして、

『それが市場の安定化という最終的に望ましい解であるが、人々の期待の安定化があって、安定した市場条件が形成される。人々の期待の安定化ということは、日本銀行の力だけではできるものではないということは良く承知しているが、日本銀行は人々の期待の安定化に努めることができるポジションにいると思っている。期待は自由に操作できるというおこがましいことは全く考えていないが、期待の安定化のためには全力を尽くさせて頂きたいという強い意思表明である。』

とは言ってますが、どうも「市場の安定化」が先にあるというか市場誘導先にありきなのではないかという風に思う訳なのですよ。

『何か具体的なやり方を今念頭に置いているわけではない。コミュニケーションは大事であるが、そのコミュニケーションを前提として、私どものものの考え方が明確であり、私どものとる行動がそれと平仄がとれて一貫性があり、説明との間にも齟齬がないということは念頭に置いている。』

ものの考え方が明確で行動が平仄がとれているってのはまさに現在仰せの通りではあるのですが、何かちと違う気がする。。。。


・長期国債買入についてちと???に思ったこと

これは別の質疑での総裁コメント。

『長期国債の買入れについては、現在の量的緩和政策のもとでは、円滑な資金供給を実現する上で必要と判断される場合に、これまでも増額を行ってきており、現在も月々多額の国債オペを実施している。』

量的緩和政策導入時に審議委員だった植田さんがダウトを出している割には長期国債買入増額を「これまでも行ってきており」って福井総裁になってから増額してねぇだろうよと思うのですが、微妙に我田引水の香りが漂いますな。

『しかし、その際に重要なことは、金融調節の柔軟性を確保する観点である。その観点から、銀行券発行残高を上限としてオペレーションの額に制限を設けてきた。引き続き、こうした考え方に沿って実施していく方針である。』

成長通貨供給だから銀行券発行残高が上限(その説明もアレですがまぁ兎も角)であるという話じゃなかったっけと思いますが。柔軟性確保するなら上限設けない方が良いんじゃないでしょうか(苦笑)?

ということで、何か説明がアヤシイですわな。まぁ『量的緩和政策の枠組み変更後における長期国債買入れの運営については、解除時点での金融情勢に即して判断すべきものであり、現時点では、具体的なことは申し上げられない。』ということのようですが。


会見全体を読むとどちらかというと「やる気満々」に見えましたが。会見要旨には出てませんでしたが、また「政策が最もライトタイミング」って言ってましたし、ビハインド・ザ・カーブはどこへ逝ったのやらと小一時間ですな。


#もう一つ雑談ネタがあったのですが、まぁ雑談なので後日







2005/11/08

お題「雑談を少々」

○その先まで周到に用意しているようで

先日の日銀レビューでは「CPIの上方バイアスは以前よりも大したことがありませんな」というのが出ておりましたが、その次に出てた日銀レビューは「新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義」というお題でして、またまた企画局のお方(三尾仁志さん)のお名前で2日に日銀Webにアップされています。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j15_f.htm

で、こちらの内容なのですが、恥ずかしながらにあたくしの理解能力ではご説明致しかねますので(滝汗)華麗にスルーしますが(おい)、どうもここの所何回か日銀レビューの形で出ている金融政策の理論的なお話をしているようですな。まぁ色々と先を見据えて企画局におかれましては理論武装に余念が無いという所なのでしょうか。本ペーパーの末尾にはこんな記述がございます。

『こうした限界を意識しつつ、政策運営上の諸問題を理論的に整理し、現実の政策運営に役立つアイディアを抽出する努力を重ねることは、金融政策運営の理論的基礎を固める作業の一環として重要であると考えられる。』

願わくば結論先にありきの理論固めという事になりませんように。


○書けば反転のジンクスは健在か・・・と思いきや

随分とゲロゲロになってから変動15年国債話を書いたのですが、案の定(笑)昨日はイールドカーブ反転。しかし7年(チーペスト)VS30年で金曜日は8.5毛フラットニング(しかも7年は前日比利回り上昇で30年は利回り低下)したのに昨日は6毛スティープニング(おまけに昨日は7年利回り低下の30年利回り上昇)。

イールドカーブ様も反転してくださったので15年変動利付国債は戻ったかいなと思ってみたら何の事はない大体前日比5銭高の引けということで、金曜に60銭下げておいて昨日は5銭しか戻らんのですかそうですかという所で。

いやまあこの商品自体ポートで持っていたらヘッジがやりにくい(一応店頭オプションでヘッジできないことはないようですが、あんまり活発ではないと思う)訳でして、というかそもそもの触れ込みが金利上昇リスクヘッジ商品なんですが(笑)、こういう風な状況になると投げるか塩漬けにするかという悲しい二者択一になってしまうんでしょうな。で、そもそもがヘッジ商品なので金利上昇で大やられするという発想は(そりゃまぁ現場じゃカーブのリスクがある位は判ってたと思いますが)無いですわな。想定の範囲外って奴ですか。

こうなりますと、まぁ塩漬けモードにするのが致し方なしという事になろうかと思うのですが、さすがにこりゃ戻ってくると「やれやれ助かった」って売りも出てくるんでしょうな。他のカテゴリーの商品と全然違う動きをするだけに「変動国債アンダーウェイトだから上ったら買わないと大変だ〜」みたいな踏みっぽい買いもあまり期待できないでしょうし、まぁ困ったもんです。

ただまぁ今度相場が戻る時はさすがに中短期債が買われる(=量的緩和解除が遠のくというケース)んでしょうから、相場が戻りながら15年変動利付国債も戻ってくれるのではないかと期待はしてますけどね。これがどう「金利上昇ヘッジ商品」なのか理解致しかねますが。


○5年国債入札ですが

昨日カーブ上は反転したとは言え、絶対水準で0.9%台後半。まぁ米国債券市場が反発してるんで少々戻るかもしれませんが、それにしても0.9%台で入札をやってくれるので、さすがに何とかなるのではないかと愚考。つーか戻ったとは言えさすがにこの5年は叩き過ぎのような気がするんですが、正直ちゃんと板を見てないので勝手な傍観者の感想でゴメンナサイ。

ここである程度需給不安が払拭されてくれれば底打ち感も出てくれるものと激しく期待。ただ5年の主要投資家が銀行勢主体で、変動国債でいかれているのが少々気になりますわな。


○物価に黄信号(か?)

というネタになると早速反応する某大手証券の有名ストラテジスト(あたくしはこのお方が自分の経済というか相場見通しに都合の良い話が出ると物凄い勢いでレポートを出す姿がまるでネタ芸人状態なんである意味感心してるんですけど^^)様が昨日すかさずレポートを出していた(顧客向けレポートで一般公開されてませんので悪しからず)のですが、本石町日記さんのところでも電力料金や診療報酬のお話が(^^)。

http://hongokucho.exblog.jp/3739484/

まぁエントリーをご覧いただければと。で、あたくしも日銀の勢い見てるとCPIが年末から来年にかけてプラス転換しようものなら(市場で言われている3ヶ月じゃなくて)2ヶ月くらいであっさり量的緩和解除しちゃいそうで非常に懸念している訳です。何せ暫く前の記者会見で福井総裁は「足元の物価がプラスで先行き見通しがプラスならマイナスに戻るって事は無いでしょうあんた何言ってるのアフォですか(激しく意訳)」というようなコメントをしていた(ご紹介したと思いますが)位ですからねぇ・・・・・

#コメント欄で「家賃が上昇」ってあったのが激しく「?」なのですけれども


そんな訳でまたまた先週月曜(31日ね)の総裁記者会見レビューが後回しになってしまいました。こりゃ証文の出し遅れもいい所なんですが、バーゼルで何か話をしてたみたいなんでその話と一緒に(^^)。





2005/11/07

お題「15年変動利付国債の悲劇」

朝のブルームバーグニュースに相場神降臨。曰く「日本株は年末までにあと5%位の上昇」「ここもとの上昇は意外だった」・・・・・そうか意外だったのかそれはそれは。

○2ヶ月で3円ですかそうですか

先週末の債券相場はドル高円安+株高+米債よわよわということでアフォのように売られて5年カレント0.97%とかまで売られる(引けは0.965%)わ2年カレントは0.325%などと本当に短期金利ゼロなのかよ!って状態になっておりますわな。

で、長期超長期ゾーンは相変わらず下がりにくいようでして、30年20回の引けが2.335%ってそりゃ何よって感じですわな。何せ18日の入札日の引けベースでは先物が136円84銭で2.510%だったのに金曜は136円05銭で2.335%ですからねぇ。

とまぁそんな状態で中短期の金利は威勢良く上昇しているのに、長期以降の金利はアガランチ会長(というか20年30年は下がってるんですけど)ということで、直撃弾を食らっているのが15年変動利付国債。ご存知のように年2回の利払いが「10年国債利回り−α」という形式で発行されているので、中短期金利が上昇するわイールドカーブがフラットするわということでダブルパンチ。金曜日の引け値(日本相互証券ではなく某大手証券様のものです。為念)を見れば、直近発行のα=95の35回、36回債がそれぞれ96円90銭になってまして、逆算して出てくるカレントαは73〜74という大変な状況。2ヶ月で3円下げですよ。


○アウトライヤー規制

先日(確か先週の火曜かな?)の日経金融新聞の「ポジション」欄に関連記事があったのですが、「長期金利上昇への備えで購入した15年変動利付国債がイールドカーブのフラット化で価格下落という意外な落とし穴」みたいな書き方になっていてまぁ相変わらずですなあと言った所ではあります。昔からあたくしの駄文をご覧の方はご存知のように、この商品は短期金利が上昇しながらイールドカーブがフラットするという本格的金融引き締めモードになった場合には「短期金利(=調達コスト)の上昇に受取利息の上昇が追いつかない」という素晴らしい商品だというのはちょっと考えれば判る話でしょうにって感じです罠。過去においては日本でもイールドカーブがフラットしたり逆イールドになった(バブル潰しで金利をアフォのように上げた最終局面)事もあるんで、まぁそう考えるとこの商品って金利上昇ヘッジになってるのかというのがアレなのですが。

でまぁこの15年変動利付国債なんですが、おまけに何が問題かと言いますと、これまただいぶ前に「アウトライヤー規制対策で需要が高まる」などということが言われましたんですが、BIS2次規制(バーゼルU)において債券ポートの金利リスクを計測する際に、変動利付債券は「利息変更サイクルの年限の債券を保有している」という扱いになってる訳ですな。即ち、本来イールドカーブのリスクを背負っている債券なのですが、6ヶ月債券のリスク量扱いになってしまうという魔法のような扱い。何せバーゼルUに於ける「標準的な金利ショックの計算」というのは、「全ての年限において100bp(=1%)の金利上昇が起きた場合に発生するポートの損失」となってまして、イールドカーブのパラレルシフトしか想定してないので、確かに「標準的な金利ショック」には対応している(=パラレルシフトなら大して影響は無い)んですなこれが。

でまぁ困った事に、15年変動利付国債だけじゃなくて、「長短金利差」を対象にした仕組債形式の変動利付債券なんかも世の中に結構あるようなのですが、まぁその話は置いておきましょう。


○いや〜困りましたな

とまぁそんな訳で、「金利上昇への備えはしとるんだろうな」などという有りがたい「ご指導」もあったらしい(微妙に伝聞体な書き方なのは勘弁ね)んで、ひところは15年変動利付国債ブームになりました。ご指導もさることながら、量的緩和政策のコミットメントが存在し(今も一応存在しますが・・・)、次の金融引き締めは「ビハインド・ザ・カーブ」で行われるという認識が市場にまぁあった事から、「金利上昇の時にはインフレ期待による長期金利上昇が先に来て、一方で短期金利はビハインド・ザ・カーブで長期間押さえつけられる。よって金利上昇時にはイールドカーブがベアスティープ」ってシナリオも十分に書けたんで、「こりゃ確かに金利上昇ヘッジにもなってます」という話になっておりました。

2つ上で書いたように、イールドカーブが(ベア)フラットニングするっちゅうのはどっちかというと「金融引き締めの最終局面(というかそろそろ打ち止め観測というか)」という場合だと思うので、短期金利ゼロの世界から脱出するとか言ってるのにイールドカーブがベアフラットするというのがそもそも強引な話なのですけれども・・・・。何せ日本銀行の政策委員さまが量的緩和政策払いの呪文を熱心にお唱えになっておられますので、市場的にはインフレ期待発生の前に政策金利上昇期待(懸念)が発生するという状態で、まぁそんな事逝っても引かれ者の小唄ですけど、日銀に足を掬われましたわなぁという話でもあったりする訳ですな、あっはっは。

ご指導(があったらしいというだけですので念の為^^)にバーゼルU対策と要因が重なりまして銀行業態の皆様保有債券の年限は短期化するわ、15年変動利付国債を買うわとなっておりまして、この「中短期債売られ+変動15年利付国債売られ」でダブルパンチでもう大変ですわな。ご愁傷さまです。


この変動利付国債、来週入札をやるんですが、まぁそれまでには何とかなってくれるんじゃないかとさすがに思うのですが(過去カレントαが一番安くなったのはイールドカーブがスーパーブルフラットした時で60割れとかやってましたが、幾らなんでもそこまでは行かんでしょ。ただの勘ですが。)、まぁ例によって例の如く、規制に変な歪み(今回の場合は「標準的な金利ショック」)があると変なところで落とし穴に嵌ってエライコッチャになるという事例ですわなぁという感じではございます。

#総裁記者会見ネタをまたスルーしてしまったorz
#ついでに申し上げるともう一本ネタがあったのですが・・・・



2005/11/04

お題「CPI上方バイアス話続編〜読者様からのメールより」

米国の引き締め継続観測でドルが昨日も上昇というニュース。

いつも「金利差拡大観測でドルが買われました」って説明があるのですが、米国が金利を上げるって言ったってここから1%も2%も上げるって話じゃないわけ(このまま物価上昇したら1%くらいは上げるかもしれないけど)で、スポットの為替が1%(ドル円なら現時点で1.15円ですわな)もドル高にされたら金利差分って飛んでしまうじゃあーりませんかと思うんですけど(という言い方もやや怪しい論理です)ね。金利差だけじゃないんだから。

2年前にどこぞの銀行に突如公的資金注入ニュースが出て翌月曜日に慌てて屁の様な額のドル預金を円転した(何せその銀行に入れてましたんで。あのニュースは焦った)分をそろそろ戻そうかと思っているうちに、あっという間に円転時のコストを超えてしまったのでクヤチイと思って書いているというのはここだけの話です。


さて本題。総裁記者会見のお話の前に水曜日にご紹介したCPI上方バイアス問題に関する日銀レビューシリーズに関しまして、読者様からメールを頂きまして大変勉強になりました、ありがとうございます。で、ご本人の許諾を頂きましたのでメールの内容をご紹介したいと思います。


○以前のレポートはこうなっていた訳ですが

以下『』は頂きましたメールからの引用でございます^^

『いささか血圧が上がったのは、CPIの上方バイアスについて「10年以上過去の1990年基準指数について、筆者自身が行った0.9%という推計値がある」などと、遠い過去のように書いていること。』

ということで、文体まであたくしと同じようにしていただきまして(^^)、大喜びのあたくしなのでありました。って話じゃなくて、水曜にご紹介した日銀レビューはまさに白塚さんが書いていまして、CPI上方バイアス問題に関しては先日の国会で山本幸三議員が過去の白塚さんのペーパーなどにも言及してましたですね。で、その辺は「遠い過去」にして早速新しいペーパー(結論は「CPIの上方バイアスは絶賛縮小ですよ先生(意訳)」ですわな)を出したちゅう事なんでしょうね。

『ちなみに、この分析はhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/all99/abst/me17-3-3.htmlで、アップデートされているようです(0.9%の結論は変更なし)が、言及なし。』

このimes.boj.or.jpというあまりお馴染みでないドメインは「日本銀行金融研究所」のものでして、良く見ると過去の寄稿論文や講演なども掲載されてます。http://www.imes.boj.or.jp/japanese/fkouen_index.htmlに出ている過去のお題を見ていると「おうおう」と思うものが転がってますが、それはまた後で読むとしまして。

で、上記の分析なんですが「Measurement Errors in the Japanese Consumer Price Index」というお題で本文は英文34ページ(表紙含む)ですのでまぁ要旨だけ目を通すということで。

『この分析をもとにこんなことhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/kouen/ki0103.htmを書いたりして当時の総務庁統計局を論難していたhttp://www.stat.go.jp/data/cpi/3.htmのに、急に遠い過去のことのように言うのは何とも...』

こちらのリンク先資料はどちらも日本語ですのでご安心下さい(^^)。


○で、色々とツッコミ

『だいたい、0.9%という推計値は正しかったのか。2000年基準への変更の際の乖離が0.26%だったことをどう考えるのか。今回は「上方バイアスは縮小している」などと定性的なことしか書かずに数字を出さないのは何故なんだなどと問いつめたいところです。』

皆で小一時間問い詰めにいかないといけませんな。正直この辺のことに関してはあたくし思いっきり不勉強もいいところでして、あのペーパーを単独で読むと「ふ〜んそうなんですか」と思わず納得しかねない(何となく怪しげだと思ったからご紹介したんですが^^)ので、突っ込んでいただける人がいると非常に勉強になりますです。感謝感激。


『くだんの論文は読み返すたびにムムムなのですが、1点だけ』

ということでとりあえず突っ込み場所その1について。

#代替効果によるバイアスは、相対価格の変動が大きくなるほど拡大する。インフレ率が高いほど、相対価格の変動も大きくなる傾向があるため、一般論として言えば、低インフレ国は高インフレ国に比べ、代替効果によるバイアスは小さくなる傾向があると考えられる#

という部分が当該論文にございましたが、この点について色々と疑問というかツッコミをして頂きましたので、以下ご紹介します。『』でくくるとちと読みにくいので頂いた形式そのままで行きますね。

?高インフレ国ってどんな国?過去20年間、ディスインフレという言葉しか聞かないんだけれども。デフレでなければ高インフレということでしょうか。

?インフレ率が高いほど相対価格の変動も大きくなるって本当
?まあ、そういうことは言えるとは思うけれども、インフレ率が高くなったら相対変動などゴミみたいなもの

?そもそも、CPIバイアスの大部分(0.9%中0.7%)は品質変化要因だったはずなのに、何で代替要因がトップにくるの...。
 
ちなみに品質変化は最近こそ激しいはず。それ故に、代替要因もある。

(ここまで頂いたメール)

ちゅうことで、まぁツッコミどころ満載のようですので、一つ宜しくです(誰に?)。


○結論先にありきですからねぇ

『平成11年当時、CPIがマイナスに沈んでいるときに、これでもCPIには上方バイアスがある(もっと下がっているはずだ)と言っていたのですから、当時の日銀の物価観たるや。。。(今も本質的には変わっていないようなので尚更ですが。)』

ということで、結論先にありきで理屈後付けの香りが漂いまくる今日この頃でございますが、それはそれとして、日銀はどうも望ましい物価水準が本当にコアCPIベース(もしかしてコアじゃないのか??)でゼロと思っているのではないかという気もしてきました、おー恐ろし。

ってあたくしも昔は「ゼロインフレ」という言葉というか宣伝文句にに幻惑されて「物価上昇率がゼロなのは良い事だ」など思っていた時代もありましたので、インフレを極端に忌避するメディアとかを何とかしないと行けないですなぁなどと考えるとちょっと大変だなぁと思う次第です。

ちなみに本石町日記さんが昨日の朝(というか一昨日の深夜)に上げたエントリーhttp://hongokucho.exblog.jp/3716652/で祝日中だというのにコメント欄で論議が充実しております(本件ではなくて展望リポートネタですが)のでそちらもご覧下さい。



2005/11/02

お題「地均し理論武装編」

いつものパターンですと今日は総裁記者会見なのですが、今回は既に展望リポートを見た瞬間に「既定路線キター」状態になってしまい、本質的な興味は失せてしまった(ネタとしての意味はあるが)ので、記者会見分析(笑)は明日じゃなかった明後日にでも。

何せ昨日ご紹介しましたように、4月の展望リポートで量的緩和政策の時間軸効果について「より強い緩和効果を発揮していくと考えられる」と言ってたのに地均しはするわ、公式文書で堂々(記者会見などでは何度もその話になっていましたが、こうやって公式文書になったのは初見の筈)と「量的緩和は現状では実質的にただのゼロ金利」というコメントをしちゃうくらいですから、まぁ量的緩和解除をやりますよ話しかど〜せ無いんでしょって所ですか。


○今度は消費者物価指数の上方バイアスに関して

で、毎度お馴染み日銀レビューシリーズで昨日投下された燃料もといレポートは企画局の白塚氏執筆によるものでございます。で、毎度の事ですが、「レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません」ってヘッジクローズ入り(そりゃ日銀の最高決定機関は政策委員会ですから当たり前ですが)なんですけど、調査統計局とかの人が書くならまだしも、企画局という肩書きで「日銀レビュー」ってだされて「それは日銀の見解かどうかは存じませんが」と言われましても思惑は呼ぶでしょうなぁ。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j14_f.htm

上記URLはサマリーのご紹介となっておりまして、そこの先に全文のPDFファイルへのリンクが張ってあります。7ページしかございませんので、ご覧になるとヨロシアルね。

で、あたくしはさっくり手抜きでサマリーを拝見。

『消費者物価指数(CPI)は、消費者の購入する財・サービスの価格変動を捉えるための総合的な物価指数として広く利用されている。現行CPIは、すべての家計が基準時点の財・サービスのバスケットを購入し続けると仮定して、物価変動を捉えようとするものである。このため、相対価格の変動や新製品の登場・旧製品の消滅などに伴う消費者行動の変化を十分的確に反映させることが難しく、上方バイアスが存在すると指摘されてきた。』

ふむふむなるほど。

『しかしながら、わが国では近年、2000年基準改定においてパソコン等新製品の取り込みが行われ、またその後も、プリンタ、インターネット接続料等が新たに採用されるなど、統計作成当局による指数精度向上への対応が続けられている。』

ということで言いたかった結論。

『そうした結果として、上方バイアスは、縮小方向にあると考えられる。もっとも、CPIの上方バイアスについては、その大きさを固定的なものと考えることは適当でなく、統計作成法の改善、基準年からの時間的経過や経済環境の変化によって変動するとの視点を持つことが重要である。 』

サマリー部分(=Webで思いっきり目に付く所)に書くのは刺激が強いとご判断したのかど〜かは知りませんが、本論の「おわりに」という部分ではこのように結論付けております。

『CPIは2000年基準改定において、指数精度の改善に向けて意欲的な対応がなされた結果、上方バイアスも縮小している。このため、上方バイアスの存在自体は、物価情勢の判断にさほど大きな影響を与えるものではなくなってきていると考えられる。』


暫く前に「テーラールールがどうしたこうした」って日銀レビューがでて「適正金利論議キター」と一部の日銀ヲチャー界隈(そんなものがあるのかどうかは知らんが)で大いに話題になっておりましたが、今回は「CPIの上方バイアス物価情勢の判断にさほど大きな影響はございませんが何か?」という事で、CPI基準改定を物ともせずに我往かんという所(とは関係ないというのが日銀のご回答でしょうけど)でしょうな。実に勇壮すぎて涙が出てしまいます。

ちなみに本石町日記さんの所では展望リポートにあった「適正な金利水準」というくだりに関して2000年と同じ事やってますとご指摘が。


本論に関しては本文の方をご覧頂ければと。基本的にあっしのような初心者が読んでも判るように書いてあります(と思う)ので日銀レビューシリーズは毎回読むようにはしております。


○ところであたくしのシロート考えなのですが

もともとがトレーダーのあたくしは興味はあっても結局シロートなので物価統計がどうのこうのって話になるとあまり突っ込めないのが悲しいのですが(ってちゃんと勉強しやがれということですな)ちょっと気になった所。

CPIの上方バイアスの他にある問題として、統計作成技術上の問題点として、なお残るものを列挙しているのですが、その中で家賃の問題に関して触れております。この部分読んでいると「うーむ」と思ってしまうのですが。

・民営家賃には継続賃料のみを対象としており、新規賃料が含まれていない
・帰属家賃の価格データは民営家賃の調査結果が使用されているが、民営借家と持ち家では平均的な質が違う
・しかも帰属家賃はCPIに占めるウェイトが高い(2000年基準ベースで13.6%)

ほほうなるほどと思うのですが、あくまでも個人的体感的なお話をすると、民間借家の家賃ってここの所下がってきてるような気がするんですけど。個人的に一番判りやすいと思うのは入退去コストが比較的安いので結構出入りの多い公営(や公団、家賃が中位以上の物件の方が観測対象としてはオモロイ)住宅の空室状況ですが、これは別にデータが公表されている訳でもないので定点観測あるいは中古住宅空室募集状況(公団はネットで受付してます)を見るんですが(笑)。ご存知のように家賃をあまりいじらない(最近は都心の高額物件中心に家賃を少々下げたらしいのですが)ので、周囲の相場が動くと入居率が動くと言う判りやすい構造になっております。

どうも家賃が下がっているのか需給バランスが崩れているのかは良く判りませんが、まぁ最近は都心の物件を中心に空きが絶賛増加中です。確かに都心部では土地価格は上昇してるんでしょうけれども、そりゃ高度利用によって上っているという面もあると思うのでして、個別家賃はどうよって気もしますわな。

だからどうだと言われると漠然とした感覚で恐縮なんですが、ちと気になったもので自分の備忘録代わりに書いてしまいました。


などと書いていたらもう時間切れなので総裁記者会見は休み明けに。


2005/11/01

お題「量的緩和解除事前宣言ですかそうですか」

ある意味予想通りではあるのですが、これはやって欲しく無かったという展望リポートが出てしまいましたな。

今回の展望リポート(正式名称は「経済・物価の展望」)の基本的見解が発表されました。いつもだと前回分と比較検討するという感じでご紹介と言いたいのですが、今回は前回と思いっきり違ういわば「量的緩和政策の事前解除宣言」となってしまいました。にちぎんのおもわくどおりにぶっかがちゃんとじょうしょうするといいですね(棒読み)。

今回の展望リポートはこちら
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0510.htm
ちなみに前回(4月)は
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0504.htm
ですんで両方見ると一目瞭然。

○量的緩和政策解除の具体的手順キタ---------!

経済・物価情勢の見通しも何か実に自信満々な内容になっていて実に微笑ましいのですが、そっちまでご紹介しているといつまで経っても終わりませんし、だいたい本職の人が解説してるでしょうから金融政策運営に関する部分を例によって例の如く拝見。

『今回の展望レポートの経済・物価見通しが実現することを前提とすると、現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていくとみられる。』

まぁそうですね物価がちゃんと上昇するといいですね。

『枠組みの変更は、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融市場調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することを意味する。』

枠組みの変更=量的緩和解除という意味ですが、どうも「ゼロ金利解除」でミソをつけたせいで「解除」という言葉は縁起が悪いとお感じなのでしょうなぁ(苦笑)。

『当座預金残高の削減に当たっては、長期にわたって量的緩和政策が続けられてきただけに、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要がある。もっとも、前述のように、物価見通しの好転とともに、量的緩和政策の効果は次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていることを踏まえると、政策の枠組みの変更自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではない。』

もっとも云々のところは最近日銀が言い出している「時間軸効果が無くなってきているからただのゼロ金利になっている」という理屈。CPIがまだマイナスなのに時間軸効果が無くなっているとはこれ如何にって感じですが。

『枠組み変更後のプロセスを概念的に整理すると、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序をたどることになると考えられる。』

『こうした枠組みの変更やその後の短期金利の水準・時間的経路については、言うまでもなく先行きの経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する。日本銀行としては、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、全体として、余裕をもって対応を進められる可能性が高いと考えている。』

ということで、具体的にどうするという話まで延々としている訳で、まぁ量的緩和政策を解除するぞ解除するぞと大変に威勢良く宣言しているという所ではあります。緩和解除は既定路線ですんでよろしく。


○しかしまぁ舌の根も乾かぬうちにとはこのことで

先ほど申し上げた「時間軸効果が無くなってきている云々」という部分ですが、今回の展望リポートではこのように書いております。

『また、物価が下落から上昇に転じるとの見方が増加し、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間も短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退する方向にある。そうしたもとで、量的緩和政策の経済・物価に対する刺激効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきている。』

市場参加者が予想する継続時間の短縮が皆様の地均しが原因ではないでしょうかなどというツッコミをするのはお約束すぎるので省略(笑)。前回ではちゃんとコミットメントの効果について言及してたんですけどねぇ。

『(4月の展望リポート「基本的見解」より)さらに、消費者物価に基づく量的緩和政策継続の「約束」は、景気回復が続くもとでも企業が低い金利で資金調達することを可能としており、先行き、企業の将来に対する自信が強まっていくにつれ、金利を通じてより強い緩和効果を発揮していくと考えられる。』

と4月には言ってたのに、自ら「地均し」して約束を事実上空文化するという大技を使う日銀に涙を禁じ得ません。


○それはひょっとしてギャグで言っているのか

『資金需要が極めて弱い場合には、調節運営上の対応により当座預金残高目標を維持するとしても、その方法如何によっては、自然な金利形成からの乖離をもたらし、市場機能が十分に発揮されなくなる可能性も否定できない。』

量的緩和政策というのは「緩和効果を出すために金融機関がイラネという位に量を出す」のでは無かったでしたっけ?相変わらずレビューしないでなし崩しで政策を転換するのがお得意ですなぁ。

『最近では、景況感が改善するもとで、期間が長い資金供給オペレーションに対する金融機関の応札が増加しており、このため、本年初以降大幅に長期化したオペレーションの期間を幾分短期化しても、当座預金残高目標の達成が可能となっている。これらの対応は、金融市場において経済・物価情勢を反映した自然な価格形成がある程度回復することに寄与している。』

地均しの効果が出ているのを「景況感が改善」って言われましても「まっちぽんぷ」という言葉しか思い浮かばないあたくしはきっと景気実態をよく理解していない認識不足な人間なんですよきっと。

でまぁ最後の一節も悪い冗談にしか見えないあたくしは素直さに欠けるわけですよ。そういえば小学校の時に担任の先生が産休入りして、代打でやってきた超厳格超真面目なオバハンセンセイが通信簿に「態度が不真面目」と酷評してたという大変に懐かしい思い出(虎馬とも言う)が。PTSDになったので謝罪と賠(ry

『量的緩和政策の導入と同様、枠組みの変更も先例のないものであるだけに、金融市場において経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われるよう配慮することが重要である。日本銀行としては、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していくため、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努めるとともに、今後の情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応していく方針である。』

ま、確かに市場っちゅうのは放置しておくと暴走する傾向がございますが、「経済・物価情勢に応じた価格形成」ってその「情勢に応じた」というのを誰が判断するのでしょうかと禿げ上がりすぎてテレビCMでハッピーニューイヤーって言うユル・ブリナー(歳がばれるがな)状態になりそうでございます。で、結局は「優秀な叡智を結集して調査分析をして、ポジショントークとかに無縁であらされる所の日銀様による分析に応じた価格形成をしやがれ」という理解で宜しいのでしょうか?(などと書くから怒られるのですが^^)

まぁそこまで悪態をつくのもアレですが、そりゃ「期待の安定化」じゃなくて「期待の誘導」でしょうね。

まぁそんな感じで。


○内閣改造雑感

いやまぁあんまり興味なかったんですが、竹中さんが金融行政絡みから外れたのはちょっと驚きました。で、与謝野さんが後任なのですが、金融政策的な話になると割と日銀よりな人が金融担当大臣になったんで、日銀としては量的緩和政策の解除(とは言ってはいけません、枠組みの見直しです^^)に対するプレッシャーがちょっと弱くなるでしょうなって感じですか。やや金融市場的には早期解除というか早期の金利引き上げへの思惑が強くなりそうな気がします。

どっちかというと「銀行シバキアゲ」政策が(りそな救済で事実上政策転換しているとは言え)終わってくれるのを期待したいのですが、既に銀行に対する大昔の産業政策状態路線は確立されているともいえるのでまぁどうなんでしょうかねぇという所です。

やたら論功行賞が目立ちますなぁという所でしょうか。ところであの記念撮影で赤い絨毯にやたらと映える青い服を着ていた人がいましたが、あの場所にドレスであの色は(以下自主規制)。