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朝のドラめもん

2006/03/31

お題「2年が一番安いとは・・・」

今朝はCPIなどの発表日。今後は「総合判断」になったので本当はコアじゃなくてそのまんまの数字がどうなのよって事も見るんでしょうが、まあ当面はコアの方を気にしながら動くんでしょうな。そういう事は本職の人にお任せ。まあ予想通りの+0.6%(前年比のコア)だと、債券市場が予想してる利上げの時期は10月かそれともちょっと早いのかって連想になるのではないかと思われますが。+0.4だと中短期買い戻し?

しかしまあ米国も利上げ継続警戒モードで何か威勢良く債券売られてますが、そんな中で昨日は台湾とアイスランドが政策金利引き上げをしてましたな。妙にそーゆーニュースが気になってしまう今日この頃。

○2日で0.1%売られですか・・・・

昨日の債券市場。朝方は米債下落にもめげずに鉱工業生産が少々弱い数字だったのに反応した、というよりは前日の7年0.1%金利上昇は何ぼ何でも叩き過ぎでしょうって事で買い戻しをしたくなるお日柄だったのかなあとも思われますが、一旦は上昇。ユーロ円金利先物は中心限月で前日比2.5ティック上昇とかやっていたようですが、その後中短期債やらスワップにぶちかましが爆発したらしく大幅下落。下落した後後場途中からは猛然と先物などが切り返す中で、現実にモノが出たと思しき2年とかはモドランチ会長になってしまい、終わってみれば先物が13銭上昇しているのに2年243回債は0.685%と4毛甘。

一時は2年が0.705%まで売り込まれてまして、あなたそれは利上げ3回織り込みじゃないでしょうかって感じの売り方。前日の2年債が5毛甘でしたから2日でピーク11毛売られた格好でして、いやまあちょっと2年の所何とかならんのかという感じですわな。


で、まあ昨日はこんなニュースも話題になってまして、まあ皆様ご案内の通りといった所でしょうが、含み損処理→保有債券売る→保有してるものは大体中短期債→アヒャヒャヒャヒャってのもあったんでしょうか。

http://www.mizuho-fg.co.jp/release/data/news/news_060330.html

通期の予想が変らんということは、株あたりで益だしをしているものと思料されますが、わざわざ期末前に堂々公表するのも珍しいですな。


○しかしこのカーブは・・・・・

昨日の引けのカーブを物凄くざっくりと見てますと、主要年限のスプレッドが「2年〜5年:60bpくらい」「5年〜7年:35bpくらい」「7年〜10年:15bpくらい」「10年〜20年:30bpくらい」ちゅうことですか。で、足元金利から2年までが70bpくらいですかそうですか。

まあ年限が長くなるほど売る人がいない(長期保有の人が多い)という需給的な要因があるにせよ、何かこう随分フラットニングしちゃいましたなあという印象なのですが、海外のカーブ形状から見たらこれでいいのだという意見もあるようで。

ただまあ米国とかの場合は利上げがそろそろ終了するんじゃネーノって状況になっているのに対して、日本の場合はこれから利上げを開始するって状況なんですが、どうも7年あたりから先のカーブを見ていると既に利上げ最終局面が近くなってきているかのような状況に思えてしまって違和感感じまくりなのはあたくしだけでしょうか。

それにしても、これだけ2年の利回りが上昇しても財務省大丈夫なのかという気はするんですが。まあ見込みはかなり堅めに設定しているでしょうから特に今すぐどうこうって事はないでしょうけれども、10年や20年と違って2年は2年後にリファイナンスしないといけない訳でして、先々も考えるとどうなのよっていう気もするんですが。

ま、ゼロ金利の時間軸あってこその2年債大量消化だったということではないかと思いますな、って特に根拠はないけど昔からの感覚としてあたくし申し上げていた話が2年のイールドがカーブ上膨らむという形で出てしまいましたな。予想は当たりましたが、正直言って量的緩和解除した途端にこうなるとは思わなかったです。利上げ局面入りしてからの事かと思ってましたですよ。それにこの予想当たっても別に嬉しくはないです。

TBFBに関しては上記のみずほFGじゃないですが、もしかしたら中短期債の損失処理に伴いキャッシュが余ってそれを潰しに来ている人がいて突如大いに買い殺到モードになっているのかもしれませんな。しかしながら4月になってから当座預金残高の縮減が始まった時にさてどうなるんでしょうとか、余ったキャッシュが(TBFBなどに来ていると仮定して)また債券に回帰したら今度はどうなるのよとか考えますと、その前の「新発だけ入札で妙に甘くなる」というFBの攻撃を見てますと、こちらの「毎週4.4兆円」も何だか市場の消化能力大丈夫か(最終的には価格で調整すればそりゃまあ捌けますけど)という気もする訳で。

ま、短い所から長い所への発行年限シフトをもうちょっとやった方が良かったっていうのは単に市場のカーブをだけを見て結果から言ってるだけなので好き勝手な感想ではありますが・・・・・・


○期末のごあいさつ

というわけで下期は最初から最後まで色々と暴れてくれた金利市場でございましたが、相場の暴れによって機嫌が悪くなると不必要に悪態の多くなるあたくしの駄文にお付き合い頂きまして誠に恐縮至極でございました。

まあ来期(というか来週)からは当座預金の縮減が開始される訳ですが、何かこうゼロ金利&量的緩和にどっぷり浸かった人たちが結構いて(特に当たり前ですが短期は)こりゃまあ暫く無駄に金利が跳ねたり下がったりするんでしょうなあって感じです。ネタにはしなかったんですが、3月15日の日経金融新聞に出てた「資産運用、「解除後」を聞く」っていう連載インタビュー記事の一発目の某メガバンクの偉い人のコメントとか見てて非常にいやーな予感はしてるんですが・・・

ま、正直自分のお勉強(というほどのこともない雑感ですかそうですか、汗)を垂れ流しているだけですので、あまりご期待せずにお付き合い頂ければと存じます。






2006/03/30

お題「まあ雑談です」

平均株価が上昇して嬉しいのは判る(あたくしだって嬉しい)のですが、某モーサテ東京スタジオ「受渡ベースで実質新年度入りして機関投資家の買いが幅広い銘柄に入り東京株式市場は上昇」ってのはあーたそれは。どうみても先物主導の上げにしか見えない相場だったんですが・・・・ちなみにブルームバーグテレビではきっちりと「先物主導で上昇」って言ってますな。大本営発表も程々に。

米債下げの米株上げで今日も債券相場は下やるんですかねえ。期末期初でエアポケットみたいになるときに上ったり下がったりするのは毎度の芸風ですが大変っす。

ということで債券の話をするところですが何故か短期の話辺りから。


○末初レートが落ち着いたというか・・・

昨日の続きですが、まあ期末期初のレートは落ち着くというか見事に低下。結局期末の運用資金(短期の)出し残り状態になってしまいまして、朝から6月償還のFB(確か前回債だったかな)がレギュラー渡しの一日前になります31日受渡で0.03%が買われ、3日受渡では0.04%−0.05%の気配となるという「期末の資金が潰せませんなあ」状態になっておりました。で、T+2スタートのCP発行はそれなりにあったのですが、銘柄によってはどうみても前日比0.03%くらいは下がっているというような金利になっていたりしてまして、何か運用サイドで「もうどうしても期末越え運用するから渾身のレート提示」って感じの調達側ウハウハの展開になっておりました。

いやまあ昨日も申し上げたのでアレなんですが、ここまで来て最後の最後に超越急低下する金利ちゅうのも何だかな〜って感じです。まあ事前準備のやり過ぎで金利低下するにしてもこりゃどうなのよって所でございますわな。量的緩和解除して最初の期末、しかも口頭ベースですが当預30兆円維持って話もあったのにこの状態ですとまあ先が思いやられますわな。

つーかここまで参加者の動きがへぼくなっているとは・・・・量的緩和やゼロ金利前を知らない若者だらけなのかなあ・・・(-_-メ)

来週からは当預が徐々に削減される訳ですが、どうも極端から極端に振れる傾向が参加者(というか主要参加者というか)から抜けないと削減する日銀の中の人も大変ですなあとは思います。


ちなみに、TBFBの利回りを見てますと、4月償還物がアホのように強く、買うものに事欠いて5月償還物が昨日の途中から強くなりまして、6月上旬に償還が来る銘柄がその次っていうまあ当たり前と言えば当たり前ですがそんな感じ。強さの順で言えば4月償還>>5月償還>6月上旬>>6月下旬ってところで、まあ当預残高削減によって足元の金利が徐々に上昇するでしょうって事を反映してるんでしょう。

しかしそれにしても6月上旬の償還物銘柄で0.035%まで最後買われていたのはちと頑張り過ぎのような気がするんですが、期待リターンとリスクがイマイチ間尺に合わないのではないかと思料。


○???な記事の補足

昨日「また日経か!」などと申し上げた28日の日経金融2面記事。よくよく見たら「BOJウォッチャー」という良く怪電波を発信しているコーナーから電波を感知致しましたので雑談がてらご紹介。

福井総裁が27日の参議院予算委員会(しかし今月何回国会に引っ張りだされているんでしょう。そんなに呼び出さなきゃいけない程の質問をお前らはしているのかと小一時間)で「デフレ脱却の時点を定義し、そこに縛りを設けて金融政策を行うことは好ましくない」って話をしてたそうで、まあその話を敷衍しながらコラムが続くのですが、こんな件に「???」なものを感じてしまいました。

『政府は早ければ今夏にもデフレ脱却を宣言するとの見方も強まっている。しかし、福井総裁はデフレの定義や脱却の時点について「見る人によって見解は分かれる」と指摘。デフレ脱却を宣言することは難しいとの主張を崩していない。』

・・・・・いやあのそもそも日銀はデフレを脱却したと思ったから量的緩和を解除してますし、政府がデフレ脱却宣言するのが難しいって主張はしてないと思うんですが。多分デフレ脱却をジャストタイミングで把握するのは難しい(後になってから「今にして思えばあの時にデフレを脱却してましたねえあっはっは」と言う事は出来るって意味)って福井総裁は言ってるとは思うんですが。ま、文の推敲をしているうちに途中を端折って書いたのかもしれませんが、微妙に怪電波の香りが漂うコラムでございました。

で、毎日申し上げますが、この新聞を金融機関とかの偉い人が読んで真に受けてしまうのが一番困る訳でして、クオリティーペーパーとしてもうちょっと頑張って頂きたいものであります。



○信用保証協会が連帯保証を原則廃止?

暫く前の話ですがこんな記事がありました(一応今朝の時点ではまだリンク先生きてました)。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060320i514.htm

『経済産業省・中小企業庁は20日、中小企業向け融資を公的に債務保証する信用保証協会の信用保証制度について、連帯保証を4月1日から原則廃止する方針を明らかにした。今月中に全国の信用保証協会に通達する。経営破たんすると、連帯保証人となった経営者の家族や知人までが債務を負い、再起が難しくなることなどに配慮した。』(上記URLより)

ふ〜んそうなんですかあと思いながら関連するWebを探してみたのですが、一番「???」と思ったのは上記のお話が経済産業省や中小企業庁のWebを見ても全然載っていないこと。こんな重要な話を何故新着情報に載せないのか経済産業省って感じですが、まあ内部通達の話だからしょうがないのかなあ。

で、その記事の続きを読んでみますと・・・・

『これまでも、5000万円以下の無担保融資には連帯保証人を付けないよう同協会に要請していたが、地域によっては連帯保証人を求めることが多く、2004年度に約120万件あった保証承諾件数の2割程度は連帯保証人を付けていた。』

あれれ?あたくしが金貸しやってた時(10年以上前ですが)は保証協会には法人だったら代表者の連帯保証必須だったんですがどうなってるの??と思って思わず東京信用保証協会のWebサイトを見に行くあたくし。

http://www.cgc-tokyo.or.jp/business/faq.html

の3番目にちゃんと『会社の場合は代表者に、また組合等の場合は原則として理事全員に連帯保証人となっていただきます。』と書いてあるではないですか。「2割程度の連帯保証人」ってそりゃ第三者保証人の話でしょ。あたしゃ代表者の保証も取らなくなるのかそりゃ大変な保証協会融資鷺が飛び回るわと思っちゃいましたよ。ああ人騒がせな。


でね、経済産業省のサイトでは関連するお話で「信用力に応じた保証料率の設定」というのがあってこんなプレゼン資料がでております。

http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/download/060320shinyouhokenhou_kaisei_gaiyou.pdf

これによると保証料率が0.5%〜2.2%に設定されまして、資料によりますとその結果『経営状況が必ずしも良くない中小企業者についての保証機会を拡大』するそうですな。

いやあのその程度の保証料率で信用リスクのカバーになる訳ねえだろうというのは投資不適格格付けの社債のスプレッドがどういう動きをするのかを見ていただければ直ぐ判るお話でして、まあ目くらましのお題目だとは思うんですが、これを経済産業省が本気で考えているのであればちとそれは如何なものかと。一方で第三者保証人を取るなって通達して信用力に劣る債務者の信用リスクカバーを難しくしている(まあ新聞記事によれば別に「保証人になりたい」って人がいれば別に結構って話になってますからその辺は運用で何とかするんでしょうが)訳でして、これが大真面目だったらかなり問題ありますなあ。

その手のお話はあたくしがいつも勝手に勉強させていただいている「シンクタンクのメッ!中小企業金融を考える(30日追記:「中小企業政策を考える」が正しかったです。ごめんなさい)」さんhttp://www.smepolicy.jp/さんのところで既にお話は出ておりまして、このあたりを読むと勉強になります(というか読んでいただければ判りますが、かなーりあたくし受け売りしていますな。とネタバレなあたくし^^)。

「信用リスクに見合った保証料は間違い」
http://www.smepolicy.jp/risktaiou.htm

「リレバンで担保が不要になるか」
http://www.smepolicy.jp/relationship2.htm

で、まあ上記のような勉強になるサイトもありますが、世の中玉石混交と申しまして、まああたくしも石にならないように日々心がけたいとは思っております(が、石も相当混入していると思料されますので、その場合は是非ご指導ご鞭撻を賜りたいと存じます)が、ふと適当にネットを見ておりますと、今般の連帯保証人云々に関しての論考が見つかりまして、まあこんなのが典型的な解説になるんだろうなあって思っちゃうのを見つけてしまったので(別にここの会社に何か含むところがある訳ではないですが、「グローバル投資の視点」とまで言われたら一応突っ込んでおきますよ。いやまあ晒し上げみたいで申し訳ないんですが・・・・)ちょっとURLだけ載せておきます。

http://www.gci-klug.jp/klugview/06/03/20/post_587.php

シンクタンクのメッ!さんの論考と比較してみると宜しいかと。で、最後にある「クイズ」の答えですが、正解は「信用力が相対的に劣る中小企業」ジャマイカと思うんだが。







2006/03/29

お題「また日経か!」

という話の前に一応FOMC声明文ですが、冒頭の部分で「2005年第4四半期における実質GDPの減速は概ね一時的な特殊要因の反映と見られる(訳はあたくしが勝手に行いました)」ってありまして、これは書き方に独自色だしたのかなあって新鮮感を受けたのですけれども、その後はまあいつもの感じでしたな。『The Committee judges that some further policy firming may be needed to keep the risks to the attainment of both sustainable economic growth and price stability roughly in balance.』なんてのも前と同じですわな。

寝起きで斜め読みしただけなのでそんな感じですが。


○これは豪快な期末要因、というか逆期末要因??

昨日の債券市場では朝はブルスティープで終わってみれば結局カーブだいたいパラレルでベアというはあそうですかという動きだったようですけれども、一部地帯で大盛り上がりあるいは大盛り下がりだったのが期末期初の短期市場金利推移でございました。

31日ー3日の期末期初(末初)のGCレポレートは0.04%(前日は0.05%)から始まってさらさらと下落して0.015%近辺になっていたのですが、ここへ来て期末越えの資金を待機させていた銀行勢まで運用に一挙大参戦してきているので、期末接近で急に金利が下がるという時々見られる展開ながらちと下げ方が豪快過ぎ。TBFBの4月償還物は運用残高潰しの買いもあるようで0.01%だとさっくり買われるという誠に豪快な展開が続いてましたが、新発CPのレートも低下とまあ盛り上がらない状況になりました。

で、その動きに拍車を掛けたのが昨日実施された国債売現先オペでして、3月30日〜4月6日で6000億円のオペ(資金吸収)に対して何と落札利回りが0.001%の全取でして、どこか一社(というか一行)が大量落札したようですな。

まあ資金を潰したかったのかもしれませんが、それにしても0.001%はその時間帯のGCレポレートが0.01%くらいだった事を勘案すると幾ら何でもやり過ぎでしょうという事で、間違い入力説とか日経の記事(後で書きます)に対して時期尚早ですという主張を込めた渾身の落札とか色々な読み筋を披露して一部で勝手に盛り上がっていましたよ。実際のお家の事情はよく判らんですが。オペで国債買い現先(銀行から見て)をした場合のバランスシートへの載り方ってどうなるんでしたっけ?現先会計だったらあんまり期末のB/S対策にはならない気がするが。

ちなみに、現先を売買取引で認識する会計を行っていた(金融機関以外だと金融取引扱いでやるのが普通だったと思うが)時代は、期末の国債買現先オペ(当時は売り現先は無かったと思う)は期末の国債残高調整(売買取引なのでバランスから落ちる)に使われてたことがありますな。


まあそんなこともありまして、後場に入りますと益々資金余剰感が高まりまして、4時過ぎにはGCレポの末初レートは0.005%を切る勢いとなり、資金出し残り状態。まあ皆さん事前に準備し過ぎって事なんですが、事前には随分盛り上がっておいてここまで過激にレートの低下する期末というのも実に珍しいです。

結果的には期末が無難に通過って感じですが、事前に準備しすぎて最後金が余りまくるっていうのもちょっとどうかという流れでして、結局オーバーシュートの連続で推移したとも言えますので、これから当座預金残高を縮減していくとまたどこかでアフォのような取り上がり現象が起きるのではないかと一抹の不安も。

まああれだ、大手銀行がメガ化して、影響がでかくなってるんだからあんまり過激に動くなよって思う次第ですな。困ったもんだ。


○また日経か!その1は「オペの刻み幅変更」記事

昨日の日経新聞1面の隅の方にあった記事「金融機関向け資金、最低金利0.01%に上げ、日銀金融正常化へ前進」という見出しで「日銀がオペの金利の刻み幅を0.001%から0.01%に変更して早ければ4月中にも実施」という話題が出てました(というかさっき書いたオペ金利の与太話をしている時に人に教えて貰ったという激しく間抜けなあたくしだというのはここだけの話)。

まあ何と申しますか「ま た 日 経 か」という記事でございまして、恐らくは昨日財務省が公表していた「FB入札の刻み幅を0.01銭から0.05銭に戻す」というのと話がごっちゃになっていて理解力が無い人が書いているのでしょうなあというのがバレバレな記事でございます。

確かに財務省ではFB入札の応札価格の刻みを0.05銭に拡大しますが、この措置は「実勢を反映」したものです。と申しますのは、価格刻みの0.01銭は13週間もののFBの利回りで0.0004%くらい(現在の0.06%くらいの時)に相当するのですが、ご案内のように本年に入ってFBの利回りが上昇し、ここのところは0.06%だの0.07%だのというのをやっているわけで、そんな中で入札の刻みが0.0004%じゃあ面倒なこと夥しい訳です。

ところが、オペの刻み幅を今の段階で0.01%に変更するというのは、無担保コール翌日物金利が相変わらず0.01%を割り込みまくっている状況ですからこれは日銀による「能動的な市場金利引き上げ」になる訳でして、んな事を今の日銀がやるとは思えません(昔ギャグで「こうすれば何も政策変更せずに利上げできます」って書きましたが^^)ですわな。まあ政策金利が0.25%とかになれば当然ながら刻み幅は0.01%になるでしょうけれども、現実問題として刻み幅を0.01%に変更するのは、実勢のコール金利がもっと上昇して刻みが細かいのが面倒だって話になってきてからでしょう。

財務省の刻み幅変更と日銀の刻み幅変更が平仄合って動く必要はさらさら無い訳でして、まあよくもまあこういう記事を書くもんだと呆れる次第でございます。何でも「日銀の金利正常化」って話に結び付けて無理矢理な報道をするのはいい加減止めてもらいたいというか、こういうのが1面に出てしまうのはどういう編集をやっているんだ日経新聞。

ちなみにロイター日本語版には日銀担当部局のコメントとして「んなこたあ無い(意訳)」というのが出ていたようです。当たり前ですが。


○また日経か!その2は毎度お馴染み金融新聞

毎度お馴染みの日経金融2面の「ポジション」欄。

お題は「当座預金ヒントにならず、残高10兆円でも利上げか」というお話でして、当座預金の所要と目されている6兆円前後への当座預金残高への縮減ペースに関して観測記事を書いております。

まあこれもまた無意味な記事でして、量的緩和政策の解除に伴いまして、当座預金残高の量には特段意味が無い(緩め調節とかきつめ調節とかが復活すればその部分に関する意味はあるけど)わけでして、意味があるのは「金利」でございますわな。極端に言えば当座預金残高30兆円だって政策金利の引き上げをすることは可能でして、無担保コールの誘導水準は幾らだけど、まあ当座預金残高あるうちは中々そこまで行きませんなああっはっはって事で運営すりゃいいだけの話。金利をどうしても上げたければ一挙に資金吸収をぶち込めばよいだけですな。

という訳で、記事の結論として「当座預金の縮減ペースは利上げのタイミングを測るヒントにならない」というのは正しいのですが、それは「犬が西向きゃ尾は東」というのを偉そうに書いているだけの話でございます。著作権の絡みがありそうなのであんまり引用しませんが、それにしても頭がクラクラする書き方でして、例えば・・・・

・『日銀は当座預金の残高が6兆円になってから、ゼロ金利政策の解除に踏み切ると見るのが素直な読みだろう』

→上記の理由でんなこたあ無い。大体からして昔みたいな所要きっちりに揃える資金繰りをするのは高金利で時点決済をやっている時代なら兎も角、今はリターン(というか機会損失)対比のリスクがでかいので超過準備の保有(ブタ積み)は残るでしょう(それ以前の問題として郵政公社がそんな芸術的な資金繰りの経験無いし人材もいるわけないでしょ)。よって所要トントンの6兆円まで下げると思っている人は短期市場には多分皆無。

・『万が一、(引用者注:金融機関が)資金繰りを読み間違って資金ショートを起こせば、即座に経営危機につながる。』

→経営状況に問題がありまくりんぐで恒常的に資金ショートだったらそりゃまあ危機ですけど、単なる資金繰りでは経営危機にはなりませんが何か?それとも記者様におかれましてはクレジットカードの支払いが1日遅れたら破産の申し立てを受けても異存は無いとでも仰せで?

・『日銀ウォッチャーらは当座預金の削減ペースから利上げ時期を読み解こうとしている』
→そんな日銀ウォッチャーはモグリですが何か?

いやあの物凄く勘弁して欲しいわけでして、その1の見事な飛ばし記事よりはまだ(結論はあっているので)マシなのですが、それにしても論理展開が変な記事です。どうもこう日経の解説記事やら金融政策にかかわる記事は(滝田編集委員の記事のように大変に良くできた記事もあるんですが)総じてこの手の微妙に変あるいは激しく変なものが目につきます。で、短期市場に近い人は「んなこたあない」と読み飛ばすのですが、中々世の中そうも行かずということで非常に困るわけですな。特に偉い人は相変わらず読むので。

ま、市場との対話を重視するならこの手のしょうも無い記事を書かせないようにするのも吉ですなあ、何てのは嘘ですよ嘘。でももうちょっと何とかして欲しいものでございます。






2006/03/28

お題「今更ですが3月10日の衆議院財務金融委員会」

つーかまあ相場の方が月末の買いくらいしかネタ無いのでちと古いですが量的緩和解除の翌日に行われた衆議院財務金融委員会での質疑応答から少々。

さすがにこの日はあたくしも衆議院インターネットTVを聞きながらお仕事をしてましたが、まあまともに読んでいるとかなり長いので(結構長時間でした)ほんのさわりだけ。

衆議院のウェブサイトから会議録→財務金融委員会で3月10日の分をクリックすると出てきますが、一応URLも置いておきますね。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060310007.htm


○岩田副総裁もフォワードルッキング

最初に質問をした越智隆雄委員に対する岩田副総裁の答弁。

『これでは、ただいま時間軸効果についてのお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと思います。(途中省略)具体的には、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が安定的にゼロ以上となるまで継続するという、これは政策持続効果とかあるいは時間軸効果というように申し上げておりますが、こういう効果を通じまして市場の金利を低目に安定させる、こういう効果が生まれたというふうに考えております。』

『しかしながら、金融政策というのは、本来、十分長い先行きの経済、物価の動きをいわばフォワードルッキングな形で予測しながら、弾力的かつ機動的に運営すべきだというふうに考えられます。したがいまして、今回の新しい枠組みのもとにおきましては、現時点におけます政策委員の中期的な物価安定の理解を示す、それから、二つの大きな柱に従いまして経済、物価情勢を点検していく、さらに、これを前提といたしまして、当面の金融政策運営の考え方を整理して公表する、こういう新しい枠組みのもとで市場との対話を円滑に行っていきたいということであります。(以下省略)』

ということですので、岩田副総裁のこの発言から行きますと、量的緩和解除後には金融緩和政策をビハインド・ザ・カーブで運営するリスク(量的緩和政策のコミットメントには本来ビハインドの運営になるリスクが内包している)は取らないというお話になるかと思います。

でね、岩田副総裁って物価に関してはかなり強気の人でして、量的緩和政策を実施している時から「これだけ量を出しているのだから物価が上らないのはおかしい」という趣旨のお話が時折聞かれたと思うのでして、物価に関して強気で、金融緩和政策の政策効果がかなり有効だと思っている人が金融政策は本来フォワードルッキングという話をすると・・・・何かタカになっちゃうかもしれませんな。

この答弁を聞いた時にあたくしは「岩田副総裁フォワードルッキング発言キター!」と勝手に盛り上がっていたのですが、特に反応していなかったかも知れません。まあ一応こう言ってますんで念の為。


○福井総裁の説明

まあ当然ながら色々と説明しているのですが、まあ代表的な部分はこの辺りかと思います。同じく越智委員からの質疑応答部分です。

『量的緩和政策のときと違います一つの点は、先ほども申し上げましたとおり、コミットメントによって日本銀行がみずから手足を縛るということはしない、フリーハンドでタイムリーな金融政策をできるようにした。』

『コミュニケーションの仕方も変わってまいります。これが二番目でございます。我々は、政策委員の一人一人が持っておられる物価観というものを正直に出して、世の中の人々の物価観と十分すり合わせができるようにした、これは大きな透明性のバックグラウンドでございます。(途中省略)』

『第三の違いがございます。それは、量的緩和政策のときは市場金利の動きは原則的には封殺されている、特に短期金融市場でございますね。今後は、金利が生きてくるということでございますので、マーケットとのコミュニケーションという場合に、金利の動きというものが仲介項になってまいります。言葉のやりとりだけがコミュニケーションではない、本来のマーケットとのコミュニケーションでございます。我々が情勢判断について見解を述べ、市場の理解するところは市場が先行きのレートということで示し出してこられる、見解のすり合わせの中でそういう市場レートが敏感に動くということで、市場レートを仲介項としてダイナミックなコミュニケーションが行われる、これが本来の中央銀行とマーケットとのコミュニケーションでございます。そういうふうに変わっていくということでございます。』

まあそうですかって感じですが、どうみましても「我々が情勢判断について見解を述べ」以下の部分ちゅうのは現状では政策委員による市場の口先介入あるいはアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態にしか思えませんな。


で、その次の質疑応答でこんな発言がありまして、「いつまでも低金利と言うのは勘違いじゃねーのか」ということになったわけですな。

『金利と申しますものは、経済、物価の情勢に見合った金利水準というところにセットされて初めて金利機能が最大限その効用を発揮する、資源の再配分機能というのを最も有効に発揮することによって経済の活力を最大限引き出し、いい経済のパフォーマンスを実現していく道につながる、こういうことになります。したがいまして、いずれは日本の金利も日本の経済、物価の状況に見合った水準に段階的には引き上げていく必要があるわけでございます。(途中省略)』

で、この続きでこういう発言も一応しております。念の為。

『この両面を考慮しながら、しばらくはゼロ金利ないしは極めて低い金利水準というものを保てる期間があるのではないか、こういうふうに想定しております。しかし、いずれは中立的な金利水準に徐々に戻すということがこれからの日本の経済の活力を真に引き出す道につながる、こういうふうに考えております。』

前半の部分と後半の部分両方のうちどっちを強調するかによって与える印象は違ってくるでしょうなあってお話ではございます。



○中盤以降の質疑はどっちかというと・・・・・

自民党越智隆雄委員による質疑応答の部分は日銀が説明しやすいような内容になっていますので、まあその部分だけ読んでれば大体日銀の説明が判るというところですわな。中盤以降はイマイチ。

・佐藤ゆかり委員

2番打者の自民党佐藤ゆかり委員の質疑応答なんですが、「インタゲ導入しろ」という話をしたいのは判るのですが、物の見事に話が噛み合っていませんですな。自分の土俵に話を持っていけないようで。

『ただ、せっかく御回答いただいたんですが、諸外国でインフレターゲットを導入して、そのルールの上にのっとって裁量を使いながらうまく運営をされている中央銀行は多々あるわけでございます。日本銀行の今回御回答された形では、ルールなしに裁量だけが前に出ているという気がしてならないわけですけれども、やはり金融市場にとりましても、それではなかなか期待が収れんしにくいという問題がありまして、期待が収れんしにくいということであれば、ますます最終的な物価の目標も達成しにくいということになるのではないかと思います。』

「ルールか裁量か」ってお話をするのであれば、日銀から「今回の新しい運営方針はルールか裁量か」って所を重点的に突っ込む方が良いのではないかと思うのですが、話の流れで「ルールの上の裁量」って方向に行ってしまいますと、結局裁量が重要ですなって日銀の土俵に見事に乗せられていますなあ。

ま、ご本人も質疑の最後の方では『議論がやや平行線のような印象を受けるんですけれども、ぜひともやはり期待の収れんに向けて、期待が発散しないように、ある程度明確なメッセージをぜひとも金融、経済に向けて出していただいて、そして早期の安定的なインフレ経済の実現に向けて御努力いただきたいというふうに思います。』と言ってますんで話が噛み合ってない点に関してはご機嫌斜めだったものと思料。

最後に変な話をしてましたな。

『実際のところ、短期の金利がかなり金融市場では、金先を含めて、ことし利上げを既に織り込んでしまっている状況ですが、短プラ、短期プライムレートが上がりますと、当然ながら今後貸出金利が上がってくるという状況になると思います。その一方で、利上げあるいはこの当預の引き下げのペースが速いと、預金金利の方はなかなか上がらないというラグの問題が出てきますが、その結果、貸出金利が上がって預金金利はそのままというような、やや国民生活にとってマイナスとも思われるような状況もあり得るのではないかと思われますが、このあたりのペースについて少しお伺いしたいと思います。』

白川理事が答弁してましたが、当然ながらこの部分に関する答えは華麗にスルーしております。まあ答えようがないですわな。


・小沢鋭仁委員

民主党小沢委員なんですが・・・いやまあこの人の質疑は凄くて、15回質問をしているのですが、何を言いたいのかさっぱり判らないという代物です。どうも「日銀は責任を取れ!」という話をしているような気がするのですが、その話をしたいがため何でしょうが、量的緩和政策に対する評価が質問の中でコロコロ変ったりしてるのも凄いのですが、メディアの報道でこういわれている(具体的にどこの新聞で書いてあるじゃなくて「どこの新聞でもこう言ってる」って言いかた)って散々言ってるのに最後には「報道が変にとりあげる点については自分も同じ事を考える」みたいな言い方をしていて、じゃあ今までの質問はいいがかりかよ!と言いたくなるくだりありと、こりゃまあ答える方も相手しててうんざりするだろうなあって感じでした。

まあ質疑になってませんわな。何だかなあって感じです。その中で腰が思わず砕けたのはこのあたり。

『その一つの例として、日本銀行はかつてよいデフレ論という話を言っておりました。これは今、撤回されているんですか。』

まあ勿論日銀はそんなこと言ってませんが何か?でかわされていますが、良いデフレという話に文句を言うなら、まずお前の党の参議院議員でありますところの大塚耕平議員に言えと(笑)。


#ということで本日は引用ばかりで恐縮でした。







2006/03/27

お題「何でこう退任する頃に惜しまれるのやら」

中原審議委員の記者会見で本日は簡単に。しかしまあ何ですな、政策ロジックの整合性を主張した田谷さん、植田さん、中原さんと任期切れで退任する方々が揃いも揃って退任前に大勢に反対側になっちゃう(決定で反対票を投じる)のでしょうかねえと思います。

中原さんの後任はみずほFGの野田忠男さんと報道されてますが、昭和44年第一銀行入行(第一と勧銀の合併は昭和46年10月)ということで、東京銀行出身の中原さんの後は第一銀行出身ということで、いやあ昔の銀行の名前を思い出しますなあということで。

では月曜は例によって例の如く頭の中がお休みモードなので中原審議委員の記者会見を簡単に。中原審議委員の記者会見を。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0603c.htm

○水野審議委員に物申す

順序から言うと最後の質疑応答なんですが、最も素晴らしい応答は政策金利の糊代論に関する考え方を質問されたときの部分ですな。

『まず、「政策金利ののりしろ」についてだが、現実的な発想としては分からないこともないが、私としては、やはり基本的には発想が少し本末転倒ではないかと思う。この「のりしろ」を作るために政策金利を上げていくという発想はあり得ない話だと思っている。従って、政策担当者の現場感覚としてそういう発想が出てくるのは分からなくはないが、今の段階で「のりしろ」論を持ち出すのは必ずしも適当とは思わない。(以下略)』

全く同感でございます。のりしろを作る為に必要の無い利上げをしてその結果景気が悪化してのりしろが役に立ったっていうのは本末転倒もいい所ですから。後任予定の野田さんもこういう指摘はして頂きたいものでございます。

中立金利が幾らなどと堂々講演をしていた人もいましたが、講演(挨拶)では中立金の議論は時期尚早じゃねえのかという話をしてました。その辺りについての質疑応答がもうちょっと前の方にありまして。

『挨拶要旨で述べているように、中立金利というのは様々な前提の置き方などによって相当幅があるものであり、今、仮に中立金利の議論をするとすれば、それら前提の置き方をどうするのかといったことも含めて、幾つかの条件の一つ一つを確定していく必要がある。(途中割愛)このように、中立金利というものを議論し、それを市場と共有していくまでには、幾つか踏むべきステップが存在していると考えており、これが「条件は整っていない」ということを申し上げた趣旨である。』

『(途中割愛)なお、米国の場合でも、中立金利という言葉をイージーに使うことは中央銀行として避けるべきだという流れにあると思う。これは、その時々の環境や経済構造によって、数字が大きく異なってくるためであると思っている。過去には、FRBのボードメンバーが中立金利という言葉をストレートに使ったケースがみられたが、最近ではあまり中立金利という言葉を明示的に使って説明するという手法は採られていないと思うし、仮にその水準にコメントしたとしても、「非常に幅がある」と言ったり、1〜2%くらいのレンジを持たせて言う方が多い。』

『潜在成長率や期待インフレ率がこれくらいだから、中立金利はこうなる、といった単純な議論は非常にミスリーディングであろうというのが私の意見である。』

先般の水野審議委員の講演+記者会見はまあ正直言って市場の評判は相当悪かったと思う次第でして、類は友を呼ぶ人たちはまあ兎も角として、普段はあまり悪態をつかないような市場の人でも「この人は今でもストラテジストの積りなんですかねえ」とか「マーケットから審議委員を採るとこういう人になっちゃうって言われるのかよ」と大変なもんでしたが、中原審議委員にはもしかしてこの辺の声が聞こえていたのでは無いかと思うようなぶった切りでございますな(^^)。


○道しるべあるいはunderstandingに関して

何度か質疑応答があるのでまともに引用すると長くなるのですが、多分このあたりがまとめになっているような気がします。一部を取り出してますが。

『今回、数値を示した趣旨は、市場の期待を安定化させるために、これを一つの「道しるべ」、一つの目安として機能させようという点にある。しかしながら、これは、政策の自由度と期待を安定させる効果とのバランスをどこに置くかという微妙な判断の上で出てきたものである。このため、1%になったらどうする、2%であればどうする、といった政策アクションと直接結びつけたものとはなっていないことは強調しておきたい。この議論は堂々巡りであって、「そんな意味のない数値を出してどうするのか」という質問は当然あると思うが、政策の自由度を確保しつつ、数値を示すことにより、ある種の規範性を持たせ市場の期待の安定化に繋げるという、相矛盾する目的──ある意味では無いものねだりということになるが──を如何にバランスさせるかという趣旨に立脚していることは理解して頂きたい。』

まあ要するに鵺のようなもんで、物凄く緩いターゲットもどきだという理解で宜しいのではないかと思いますが、中原さん以外は政策の自由度の方にさっくり傾斜しているような気がしますが(苦笑)。


○ビハインド・ザ・カーブVSフォワードルッキング

講演でのビハインド・ザ・カーブに関連して当然ながらこんなツッコミが来ております。ここだけは質問も引用しますね。

【問】『挨拶要旨には「金融政策としては、いわゆるビハインド・ザ・カーブとなることを意味する」とあるが、別の審議委員の中には、量的緩和政策解除後はフォワード・ルッキングな金融政策を行うと言っている方もいる。また、「物価の上昇圧力が抑制された状態が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が引き続き維持される」とあるが、なぜ今後の金融政策がビハインド・ザ・カーブになるのかが分からない。ビハインド・ザ・カーブの意味するところをご説明願いたい。また、今後の金融政策がビハインド・ザ・カーブになるということが、政策委員会の中でコンセンサスになっているかどうかも教えて頂きたい。』

【答】『ビハインド・ザ・カーブの定義の問題かもしれないが、フォワード・ルッキングであるということと、ビハインド・ザ・カーブであるということは必ずしも両立しないわけではなく、次元の異なる問題だと思う。』

えーそうなんですかあ?

『フォワード・ルッキングな政策──インフレ・ターゲットなどはフォワード・ルッキングな政策だと言われているが──とは、将来の一定期間後の一定の指標そのものをある程度参考にしながら、現在の政策を調整していくとの考え方であり、国際的にも一つの大きな流れになっており、私もフォワード・ルッキングな政策が必要であると思っている。』

じゃあ講演でのビハインド発言は何だったのでございましょうか??

『ビハインド・ザ・カーブをどう解釈するかということだが、もともと量的緩和政策に3つの条件を付けたのは、ビハインド・ザ・カーブによる金融緩和期待がより強まることを期待したものである。少なくとも量的緩和政策時には、早すぎるリスクは避けて、どちらかといえば遅すぎるリスクを取るという意味において、ビハインド・ザ・カーブとなっていたと思う。今後の政策運営についても、ある時点での実体経済の潜在成長率や期待インフレ率の大きさが仮に分かるとすれば、その時点での適正金利は計算上直ちに得られるとの考え方もあるが、物価の上昇圧力が抑制的な状況であれば、実体経済の成長スピードがある程度早くても、その間の金融政策のアクションは、これまでも展望レポートで既に述べているように、「余裕を持って」対応できると考えられる。このことは、ある種のビハインド・ザ・カーブのリスクを取っていくことが出来るという意味であると理解している。』

いやあのそれはビハインド・ザ・カーブな政策運営なんじゃなくて単に経済の見通しについてお話をしているだけだと思うんですけど。

『このため、本日も、ビハインド・ザ・カーブになることをある程度想定しながら、今後の政策運営を続けることができるということを申し上げたわけである。(以下略)』

ということで、昔々その昔に量的緩和政策を解除してからまたゼロ金利の時間軸を再設定するという中原さんの論法に「???」だったのを思い出してしまったのですが、何かこのあたりの政策話になると時にワケワカメな話が始まるのが中原委員クオリティでもあるのですが。


○量的緩和解除の3条件の3番目から順に達成されてしまった件について

どう見ても量的緩和政策のコミットメントのうち総合判断が最初に達成されていたとしか思えないような動きで量的緩和政策は解除されてしまった訳ですけれども、この点に関して質疑で「解除は時期尚早って思ってたのではないですか」って聞かれた時にこう答えています。

『ただ、量的緩和政策解除に当たっての3つの条件に関する私の考え方を改めて申し上げれば、第1条件や第2条件を重視し、第3条件はそれほど大きな問題ではないと考えていた方もおられるかもしれないが、私としては、最終的には第3の条件、すなわち総合判断が一番大事であったと思っている。第1条件、第2条件は、数字だけの問題であり、どの位の幅があれば「安定的」とみるかという点については意見が分かれるとは思うが、ある程度客観的に判断されるわけである。従って、私としては、第1条件、第2条件の判断に加えて、第3条件においてきちんと総合判断をしていくべきである、と以前より申し上げてきた次第である。』

福井総裁は第1条件、第2条件が達成されてたら第3条件なんか当然のように第3条件達成ですようっへっへという感じでしたから、まあそのあたりにも批判的という感じですなあ。

あと3か月で退任とは惜しい事です。






2006/03/24

お題「中原審議委員孤軍奮闘の巻」

○その前に2年国債入札メモ

板をちゃんと見てたわけで無いので聞き書きメモですが。

引値は2年242回から何故か3毛5糸もスプレッドがある0.61%とあまあま。入札前の前場引け時点ではWI取引0.6%とかやってたのに平均99円99銭6厘はいいとして最低が98銭5厘とはそりゃまあしょんぼりする結果ですなあという感じでして、落札結果みるとどこかが気合を入れた気配も無く業者に分散された格好。引けは最低落札よりも安い(98銭ですから)とは。まあ最悪ではございませんでしたが、こりゃあまり良い入札では無かったなあという感じでございます。


○で、中原審議委員の講演ですが

ご案内のように中原審議委員は恐らく今回の量的緩和解除にも反対票を投じた(講演の内容にそれを示唆する件もあります)お方でして、最もハト派になっちゃった上に少数意見の人になっちゃいました。よってハトな話が出てくるのは至極当たり前の筈なんですが、報道では一応講演に敬意を表して債券相場が反発した事になってます。

でも、講演の内容を見ればお判りのように、中原審議委員は金融緩和状況をビハインド・ザ・カーブの政策運営で行うべしという話をしておりまして、仮にその方向で政策運営が行われるのであれば(べき論は別にして予想屋として考えるとその方向は無理でしょうけど)期待インフレ率の上昇からイールドカーブはスティープする筈なんですけど、何故かカーブはブルフラットするのは相変わらずだが妙ちくりんな反応ですなあという感じ。

まあ何ですな。来週は長期債も短期債も入札が無く、一方で月末のリバランスに伴うインデックス系の買いは待ち構えているので、需給が良いでしょうなあという連想が働くから買い(または買い戻し)を入れてみたくなりますからその言い訳に使われたっちゅう所でしょう。

で、引け後益々しっかりで金先なんぞも買われておりましたが、どうも海外のお投資家様におかれましては講演を好感して短い債券やら(TBFBも?)を買ったのではないかと思われる節がありますわな。でも残念ながら中原審議委員は7対1の1なんでハト派発言をするのは当たり前で、タカ派発言した方がサプライズなんですよね。まあ海外投資家というとやたらありがたがる人が多いですが所詮その程度のもんでしょ。めっきりポジショントーク飛ばしレポート屋となっているように見える○○○○レポートで右往左往する人たちですからねえ。

という話をひとくさりしたところで中原審議委員の講演を少々。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0603e.htm


・量的緩和政策に関する評価をしています

このへん→http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0603e.htm#203

『潤沢な「量の効果」は、金融システム不安の拡大を抑え、銀行の信用仲介機能の回復を促し、極めて緩和的な金融環境を維持することで、債務・雇用・設備という「3つの過剰」に悩む企業がそのバランスシートを調整することに貢献しました。』

『いわゆる「時間軸」の効果は、将来に亘っての潤沢な資金供給と金利の低位安定についての安心感を生み出し、これが市場参加者だけではなく、企業・家計のデフレ期待を後退させることを通じて、実体経済を底支えし、デフレの更なる深化を食い止めることに寄与したと言えると思います。』

量の効果と時間軸効果に関してはこのように言ってますな。時間軸効果にデフレ「期待」後退って話をしてるのがほほうという感じですが。

『これまで余り明確でなかった「リバランス効果」、すなわち、潤沢な資金の供給により、銀行や企業・個人がその資金をよりリスク度が高い資産に振り向けるという効果、につきましても、ここに来て、明確に現れ始めたと言ってよいでしょう。銀行が貸出を積極的に拡大し始めたことや、企業部門が設備・雇用・債務の「3つの過剰」を解消し、事業ポートフォリオの見直しや強化を進め始めていることは、このような効果が現れ始めているものと言えましょう。』

現状をポートフォリオリバランス効果として評価をしている審議委員講演はあまり見たこと無かったのでちょっと新鮮な気がします。どっちかというとバブル警戒の話ばっか最近は聞かされるもんで・・・・・


・「考え方」をアンカーにしたいというお話

まあそれは政策委員のメンバーが代わらないと難しいのではないかと思料。ここあたり→http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0603e.htm#401

『「望ましい物価上昇率」を具体的な数値で示すことによって、政策の透明性を高め、量的緩和政策の解除の過程では、政策のアンカーとして、ある種の「時間軸効果」も期待できるのではないかと考えて参りました。(中間割愛:中原委員の考える数値の話をしてます)今回の「物価の安定」の数値化は、あくまで個々の政策委員が理解するものを幅で示したに過ぎず、その意味では、政策のアンカーとしての役割は制約されたものとならざるを得ませんが、このように数値で具体的に示しましたこと、特に大勢としての「中心値」を示したことは画期的なことであり、政策の透明性向上の観点からは、一定の評価は得られるものと考えています。』

まあしかし何ですな、今回の「物価の安定」の数値化はアンカー役にしたい人はこう解釈するし、手足縛られたくない人はただの数字ですって解釈するしでこういう曖昧なものは運用によって扱いがコロコロ変りそうで非常に困りますというか変なものなら無いほうが良いような気もしますにゃ。


・今後もビハインド・ザ・カーブだそうですが・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0603e.htm#402

『当座預金残高が所要の水準にまで削減された後の政策運営につきましては、基本的にその時点における景気・物価の展開や金融情勢に基づくものとなります。しかしながら、現時点で敢えて申し上げるとすれば、持続的な成長が続く中でも、今後の需給ギャップの減少ペースが緩やかであり、物価の上昇圧力が抑制された状態が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が引き続き維持されることになると考えられます。この点は、金融政策としては、いわゆるビハインド・ザ・カーブとなることを意味します。』

フォワードルッキングの話ばかり出ているので反論しているのかなあと思いますけど、物価の上昇圧力が抑制されていたら金融緩和状況が続くというのは別にビハインド・ザ・カーブじゃないような気もしないでもないですがまあいっか。

中立的な金利水準への変更に着手するのはケシカランと言いたかったのかなあと勝手に解釈しておきます。


・中立金利の議論は時期尚早

『中立金利という概念は、その定義や推計時の前提の置き方、自然利子率の計算の前提となる経済モデル、需給ギャップや潜在成長率の計算方法、期待インフレ率の大きさ、など、種々の条件をどのように置くのかによって変わり得る幅の大きい概念であるということです。また、中立金利の問題は、前に述べましたように、日本経済に課せられた中期的な課題の解決の過程と平仄をとりながら検討していくべき問題であり、日本銀行としても、今後分析を深め、その概念や凡その水準を市場と共有していくことは必要ですが、今の段階で具体的な水準やそれに向けての金利の経路がどうあるべきかを議論する条件は未だ整っていないように思います。』

ということで、利上げモードで盛り上がっているものと思われる他の政策委員の皆様というか、先般の講演で中立金利が何パーセントだとか好き放題おっしゃっているどこぞの審議委員(これがマーケット代表の扱いだというのにあたくしのヘソが茶を沸かすのですが)に対する批判でしょうな。もっとやれ〜♪

ちなみに、講演テキストで見つからなかったのですが、記者会見では水野委員の「金利の糊代論」に関して「本末転倒」と至極当然ながら厳しい批判をしていたようですな。この後にもそんな話が。


・市場との対話

『大きな政策変更後のこの不安定な時期において重要なことは、肌理細やかで市場フレンドリーな姿勢で市場との円滑な対話を図り、政策の透明性と予見性を高め、期待の安定化を図ることにあります。期待の安定化を図るためには、中央銀行が口先で期待をマニュピレートするのではなく、市場や実体経済の足許および先行きや、経済構造面での政策的課題、更にそれらを踏まえての金融政策の先行きの経路につきまして、市場と認識を共有していくための努力を重ねることが必要だと思います。』

「中央銀行が口先で期待をマニュピレート」という指摘も水野審議委員に向けたものでしょう。いや〜心が温まりますなあ(^^)。

でも政治方面からの干渉に関しては批判的でございます。

『今回の量的緩和政策の解除に至る前の段階でも、残念ながら解除のタイミングに関しまして市場の見方が大きく揺れ動きました。不必要な外部からの声によって政策の冷静な議論が歪められるとともに、市場の期待や価格形成が撹乱させられる、そして、その結果が再び政策判断に影響を与える、というような悪循環が、政策の信認を失わせる結果となるリスクについて、中央銀行の立場から十分認識するとともに、広く外部の理解を求めていくことが必要ではないかと感じています。』

いやまあ話はちと逸れますが、昨日駄文でちと書いたように、福井総裁と与謝野大臣の発言が妙に平仄があってる昨今の状況はポスト小泉の政争に日銀の金融政策が巻き込まれるのではないかという危惧をあたしゃーしてるんですけどね。杞憂だったら良いんですけど・・・


・ちなみに順序が逆になりましたが

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0603e.htm#203の最後の方

『現在の消費者物価の前年比上昇率はプラスに転じては来ましたが、昨年12月までのプラス幅は極めて小さく、本年1月単月の上昇率をもってプラス基調が完全に定着したと判断するには、もう少し時間をかけて分析することが必要ではなかったかと思います。』

ということですので、前回の決定会合で量的緩和解除に反対票を投じた1名は中原審議委員でファイナルアンサーでしょうね。




2006/03/23

お題「今日は雑談で」

風邪が治ったと思ったらどうも花粉症を発症したようでorz

○FB入札と2年国債入札

昨日は3か月(13週間)ものFB(政府短期証券)の入札がございました。前場のWI取引は0.07%は堂々のオファーサイドで、0.075%くらいまで行くのかと思わせたのですが、落札結果は前週とほとんど同じ。最低落札価格は前週と同じ99.9814円で平均落札価格が前週よりも0.001円安くなって99.9825円となりました。財務省方式だと0.0694%になるんですが、通常の呼び値だと0.07%に辛うじて乗るという結果。

しかも落札後はまたまた買われまして終わってみれば0.06%オファーの0.065%ビットとかいう感じになってまして、まあ前週と同じ展開になりました。さすがに前週ほどの豪快な戻りは見せませんでしたが確りでした。来週は期末跨ぎなのでFB入札は実施されずですんで、これで年度内は終了。4月になってからの足元金利や現先利回りを見ながら新たな居所を模索することになるんでしょう。

そんなわけで3か月のところは今のところFBで0.06−0.07%という感じで落ち着いてます。まあ4月になったらまたそれはその時の話ではありますが、足元の短期金利水準が修正されるのかという所と、7月の金融政策決定会合以降のエンドになるものに関してが注目かと思われます。


そんな感じでとりあえず平和な3か月に対しまして2年国債はどうなのでしょうかって感じですが、本日ある意味注目の2年国債入札が実施されます。昨日もまたまた中短期ヘロヘロの展開で前月債が0.575%とかになってますんで、何と2年で足元ゼロ金利なのに0.6%クーポンでの入札という大変に豪快な入札になりました。

まあこれだけ売り込んでなおダメダメってのはさすがに考えづらい所ではあるのですが、それは3か月辺りの金利の上昇がさすがに止まっているのを見て安心しているだけかも知れません(笑)。

まあ向こう2年間で利上げ2回半くらい平気で織り込んでいるのですけど、いやまあ2年どころになると償還まで持ちきってペイするのとかいう発想が起きても良いとは思うんですが、何せ銀行業態の皆様は時価会計ですんで持ちきって短期金利対比勝ちましたっていう訳にも行かんのよね。そんな事を考えると足元の金利収入がもうちょっとあった方がいいって話にもなるもんね。

まあ注目しておきましょう。最悪なのは入札だけ妙に堅調で買いが続かずにヘロヘロになるパターン。


○火消しのハーモニーですが・・・・

昨日は参議院財政金融委員会に福井総裁が出席。しかしまあいつも申し上げてますが、なんでそう毎度毎度委員会に日銀総裁を呼び出さないといけないのかさっぱり判らんですな。出席すりゃ不規則発言も出るわけで困ったもんですわなあというところです。

で、昨日はまたまた火消し発言。そりゃまあ解除即利上げみたいな思惑で金利が上がりだすと何言われるか判らんのでとりあえず目先は火消しをしておいて経済状況が予定通りに行くのを見るということですわなあとは思いますが。昨日のブルームバーグニュースのヘッドラインやニュース記事などを見るとこんな感じですか。

「しばらくゼロ金利、その後も極めて低金利続く可能性」
「時間軸効果は不要になった」
「目先の金融調節上、国債買入額の変更必要ない」

ということで、まあ昨日も火消しっぽく発言しているのですが、与謝野経済財政担当大臣の答弁のヘッドラインを読んでいるとまあ福井総裁と良くコラボレートできてますなあという感じである意味感心。

「まだゼロ金利政策の解除を議論するシーズンではない」
「量的緩和政策もゼロ金利政策も他国に例をみない異常な事態における止むを得ない選択だった」
「金融政策自体は、日本経済の再生とともに、徐々に正常な道に戻らなければならないと思う。」

小泉総裁の後継総裁は誰でしょうって話が次のテーマであって、どうも竹中路線への対抗として与謝野さんが妙に日銀に理解を示しているのではなかろうかっちゅう気もする訳でして、そう考えますと何か金融政策が政争に巻き込まれるんじゃねえのかという悪寒もする今日この頃。

まあ大体べき論は兎も角として予想屋として先行きの金融政策を読むと言うことになると経済状況の前に政治スケジュールを気にしちゃったり、政府のデフレ脱却宣言が出ると利上げ〜なんていう発想が起きちゃうので今更なのかもしれないけど、ちょっと気になるところです。

で、与謝野さんこんな発言してたらしいのですが、どうもこの預金者の金利収入がどうのこうのって話はマジで金融政策正常化(!)の大義名分にされそうで誠に遺憾でございます。ブルームバーグニュース記事より引用。

『さらに経財相は、「一般国民が銀行で定期預金をした時に、ほとんど取り分(金利収入)がゼロということは異常なこと」と述べ、「定期預金の金利、預金者の金利を含めて資金を提供している側になにがしかの配分のある社会の方が正しい社会だと思う」と語った。』

好意的に解釈すれば「上記のような状態になってしまうデフレ経済という事態はあってはならない」という事を言ったとも取れますけど、だったらデフレに戻ることの無いような金融政策運営をって話になってくると思うのですが、話が金融政策の正常化に向っているので、どうも金融政策が先にありきという雰囲気が漂って参りますな。

ま、政府がデフレ脱却宣言をするのに日銀にゼロ金利をやらせるわけにも行かないでしょうから、そういう意味では極めて政治的に「金融政策の正常化」プロセスが進行していくって事なんでしょうな、はあ〜。

#ということで雑談で勘弁でした。




2006/03/22

お題「棚卸しその2は1月2月の決定会合議事要旨」

米国はまたまた利上げ継続の見通しですか。コロコロ見方が変りますわなあという感じですが、市場なんてえのは人々の貪欲と恐怖感が集合してる所なんでまあ所詮はそんなもんですがな。でね、そんな市場を一々相手にして対話がどうのこうの(どうみても対話じゃなくて地均しだが)とするこたあねえのよ日銀さん。


まあとりあえず本日も宿題の棚卸ですが、金融政策決定会合議事要旨の格納場所は日銀のウェブページの右側フレームの下のほうにあ「文書タイプ」って箱の一番下にある「公表資料」ってリンクをクリックして、そのページにあります「定期公表資料」ってリンクをクリック。で、そこに「金融政策決定会合議事要旨」ってリンクがあるので、そこから過去の議事要旨へのリンクが出てきます。

もうちょっと楽な探し方があるのかもしれませんが、前のウェブサイトの時に比べて本文に辿り着くまでの手間が余計に掛かるような気がするだよ。

んでまあ1月19、20日の議事要旨は
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060120.htm
2月8、9日の議事要旨は
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060209.htm

なんですが、新しいウェブで気になるのは、この公表文書のフォントのサイズが以前の12から11(単位は何というのか存じませんが)に縮小していること(IEのデフォルト設定で見た場合)でして、前のサイズに慣れているせいもありますが、オッサンにはフォントが小さくて読みにくいがな。普段よく見る政府関連のウェブサイトの文書のフォントは12だったと思うのですが。

あと、リンク先文書に行っても右側にフレームがある(今までは一番下にフレームがありましたが)のは個人的な趣味ですけどイマイチですなあと思うのでした。と、ウェブサイトへのいちゃもんは兎も角。



○フォワードルッキングですかそうですか

1月の『III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。

『枠組み変更後の金融政策運営に関する情報発信についても、議論が行われた。』

ということで、1月からまあ準備万端余念無しですかそうですか。

『量的緩和政策の枠組みの変更という先例のない状況のもとで、金融市場において経済・物価情勢に応じた円滑な価格形成を促していくためにはどのような具体策が考えられるのかという観点から、今後、さらに議論を深めていく必要があるとの見方を示した。この点に関し、何人かの委員は、フォワード・ルッキングな姿勢が重要であることを強調した。』

「円滑な価格形成を促す」というその発想が如何なものかというツッコミもあるのですが、それを言い出すとまた以下同文ですので省略しまして(笑)、量的緩和政策解除後はフォワード・ルッキングで先手先手を打った政策をするっちゅう話を1月の時点で何人かの委員が強調しておりますわな。


で、2月の議事要旨でこの話がどう纏まったのかと申しますと、

『委員は、金融政策運営の透明性確保のための具体的な方法は、今後、諸外国の例も参考にしながら検討していく必要があるが、(1)基本は、金融経済情勢に関する判断と政策運営に関する考え方を丁寧に説明していくことである、(2)その上で、フォワード・ルッキングな視点を組み込んでいく、(3)その際には、透明性と柔軟性のバランスの取れたものとすることが重要である、との認識を共有した。』

フォワードルッキングで柔軟性を確保しておいて透明性がどうのこうのというのはその時点で話に無理があるような気がしますし、その上ここに到るまでの地均し路線で「日銀は超越インフレファイター」という評価が共有されているんで何ちゅうかこうあんまり頑張らなくて良いと思うんですがねえ。

まあとにかくフォワードルッキングですんでその辺勘違いないように。


○インタゲに関して

1月の議事要旨ではこんな提案がありました。中原審議委員ですかね。

『この間、一人の委員は、量的緩和政策の下では、消費者物価指数を基準とするコミットメントが物価の先行きに対するアンカーとして機能してきたと評価したうえで、金利政策に移行する際には、望ましい物価上昇率を示すことにより、これに代わる新たなアンカーを設定することが必要であるとの見解を示した。』

んでまあこの物価上昇率アンカー論に対しまして、

『これに対して、別の一人の委員は、現在、わが国経済は、物価が需給ギャップに反応しにくいという90年代後半以降の経済構造からの転換点にあり、このように経済構造に関する不透明性が高い状況下において、不確実な知識に基づいて長期的な物価安定の数値目標を徒に拙速に示すことは、政策運営の透明性向上につながらないだけでなく、場合によっては金融政策に対する信認に悪影響を及ぼすことにもなりかねないと指摘し、数値目標の設定は中長期的な検討課題とすべきであると述べた。』

と反論してるんですが、まあ当然ながらこれには再反論が入ります。

『これに対し、先の委員は、経済構造の不確実性は常に存在しているとしたうえで、各国の中央銀行も、同様の問題に直面しながら政策運営の透明性を高める努力を行っていると指摘した。』

で、まあこの先も引用してるとここのくだり全部引用になっちゃうのでこの辺にしておきますが、2月はこんな話になっております。

『複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲティングについて、本来は、中長期的に物価目標値の実現を目指すものであり、経済情勢等に応じて柔軟な政策運営を行うことが出来る枠組みとして位置付けられているが、この点の理解がわが国で十分浸透しているか疑問があると述べた。』

『別の複数の委員は、望ましい物価上昇率について何らかの数値を示していくのであれば、その際に、政策運営の機動性と柔軟性が確保できるかどうか、という点も踏まえつつ、検討していくことが大事であると述べた。』

ということで、要するに政策運営の手足を縛るような政策の枠組みは実行したくありませんよということでございます。そうなりますと、既に皆さんもご指摘しているように3月の決定会合で公表された謎の「考え方」には政策の手足を縛るような意味合いはまあございませんですなあと理解する方がよさそうですな。


○その他少々ツッコミどころに関して

1月の議事要旨を読んでいておいおいと思った場所。

『委員は、量的緩和政策の解除は、今後の経済・物価情勢を丹念に点検したうえで、予断を持つことなく、あくまで「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」と言えるかどうかという基準に沿って適切に判断していくとの認識を共有した。』

と書いてあるその直後に

『枠組み変更後の金融政策運営に関する情報発信についても、議論が行われた。』

いやまあそりゃ議論はしておかなきゃいけないかもしれないけど、1月の会合時点ってコアCPIがプラスになったばかり(11月末公表分がゼロ、12月末公表分がプラス0.1%)で、東京都区部がやっとゼロになった所だったんですが、随分とまあ気が早いお話ですわなあって感じですわな。


2月の議事要旨ではこんな指摘をする人がいまして、例の「考え方」にもこの指摘は反映されていましたなあ。何と申しますか。

『ある委員は、わが国では、過去の経験からも、国民の予想物価上昇率は低く、インフレに対する拒否反応が強いことを意識することが大事であると述べた。』

いやあのそりゃあたくしも石油ショックとか知らんわけでも無いです(記憶の片隅にある)から狂乱物価みたいなのも困りますけど、デフレも困るんですけどねえ。しかしよく考えると「インフレに対する拒否反応が強い」と「国民の予想物価上昇率」って低いのか?拒否反応が強いということは国民のインフレ警戒感が無駄に強いって結論になるような気がするんだが、考えているうちに頭が痛くなってきたので本日はこの辺で。





2006/03/20

お題「棚卸しその1は金融経済月報」

某経済ニュース番組月曜日お馴染みのコーナーではライブドア事件の教訓とか言って偉そうな話をしてましたが、「企業の経営者は正直か」「事業計画は確りしているか」「信じられる経営者か」とか後からなら誰でも言えますわな。フジテレビ騒動の時に全力でライブドア熱烈支持してたお方がよく言うわという所ですが、まあ教訓としては「その場その場で調子の良い事を偉そうに言うコメンテーターには注意しましょう」って所ですな。自分の過去の言動に対する反省とかレビューとかって無いのかなあと思うんだが、まあそういう人がうじゃうじゃいるのもまた困ったものです。

と、軽く血圧を上げた所で宿題の棚卸を本日は軽めに。


○日銀のウェブサイトがリニューアルオープン

金融経済月報のお話をしようと日銀のウェブサイトを見に行ったらサイトがリニューアルオープンしておりました。前のデザインに慣れているので少々慣れるまで時間が掛かるかもしれませんが、過去の政策決定会合での発表文書が一覧で探しやすくなっていたり、「教えて!にちぎん」コーナーがトップのど真ん中に昇格してたりと大変に意欲的というか突っ込んで下さいというのか、何か金融政策に関して多くの人に知ってもらおうと言う意気込みは伝わって来ましたよ。

で、後でご紹介しますが、金融経済月報を見ようと思ったら、URLの名前が変っていたのは何でよ〜と思わずツッコミ。まあ「このページは移動しました」ってのが出てちゃんと新しい行き先にジャンプする(環境によってはジャンプしないのでURLをクリック)仕様になっているからまあ良いんですが、過去の駄文で日銀の文書にことごとくディープリンクしているんでどうしようかと。とほほ。

もちろんトップはhttp://www.boj.or.jp/です。


○3月の月報は2月と同じなんですが・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0603.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0602.htm

まあURL読めばお判りのように上が3月下が2月でございます。量的緩和解除の発表と一緒に出てたのでちょっとご紹介するのが遅れましたが、今回のポイントは何かと申しますと「月報の内容が2月と思いっきり同じ」ということですな。

・現状判断で変化があるのは個人消費の一箇所だけです

『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』って所から始まる月報の現状判断ですが、まあ景気の良い文言が並んでおりまして、3月月報で2月と違う箇所は個人消費です。

『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅さを増している。』(3月)
『雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費は底堅く推移している。』(2月)

ということで、「底堅く推移」→「底堅さを増している」と当然ながら上方修正。


・先行き見通しは何と一言一句同じ

同じなのでまあURL先でも見ていただきたいのですが、しかしまあいつまで「海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられる。」って書き続けてるんでしょうかというくらいここの文章見慣れてしまいましたな。


・物価の先行きに関して

物価の現状に関しては「円安」の文言が消えたくらいであとは基本的に事実関係の話をしているだけなので省略。消費者物価の先行き見通しですが・・・・・

『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、若干の振れを伴いつつも、プラス基調で推移していくと予想される。』(3月)
『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、電話料金引き下げの影響が剥落していくこともあって、プラス基調になっていくと予想される。』(2月)

まあプラス基調で推移していくと予想されないと量的緩和政策の解除はできませんので(笑)、先行きに関してはこんな感じになるんでしょう。


・ということで書いてあることが殆ど2月と同じなのですが・・・・・

えーっと2月の月報と書いてあることが殆ど同じって事はですな、2月の時点でまあ経済見通し的には量的緩和解除ですがなあっはっはということで、1月分のCPIを一応確認したらもう解除解除ってことでしたって事なんですかな。で、2月の月報は2月9日に出たのですが、こいつを紹介した2月10日の駄文にありますように、実は2月の月報は1月の月報から生産の現状判断と消費者物価指数の現状判断を前進させただけでして、月報の内容がカンカンの強気になっていたのは1月の時点でございました。

ということで、まあ1月の月報(出たのは1月20日)時点で物凄く強気になってるたのが伏線にございましたなあという事だったんでしょうな。この辺りから総裁の発言もカンカンの強気になっていましたし(1月23日、24日あたりのドラめもんご参照)。

#と、後講釈なら誰でも言えますかそうですか(自爆)。







2006/03/17

お題「宿題は残ってますが雑談で勘弁」

今後FF金利3回利上げ観測から今度は利上げ打ち止め観測ですか、いやまあ海の向こうでも極端に振れますなあ。

○脊髄反応の続き

昨日脊髄反応して湯気をポッポーと立てておりました過誤発注がどうのこうのという一件、金融庁のWebに当然ながら掲載されておりました→http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/syouken/20060315-2.html


で、こちらを見ますと誤発注の件数が14,318件とか書いてあって、「売買代金1億円超の誤発注は667件。損失金額1億円超の誤発注は1件。」だそうです。

でね、その直ぐ次に『(注)全国証券取引所の平成17年の約定件数(現物株式)は概算で549百万件。これに対する誤発注発生率は100万分の26(0.0026%)となる。また、売買代金1億円超の誤発注発生率は100万分の1.2(0.00012%)となる。』と書いてあるのに、この点について報道で触れていたニュースは昨日朝の時点であたくしが複数のニュース番組をはしごして見ている中では皆無でした。

ちなみにhttp://www.tse.or.jp/market/yakujo/index.htmlを見ていただきますと判りますが、「約定件数」ではなく「注文件数」で考えますと、一日あたり軽く400万件以上ありまして、立会いが年間250日くらいあるのだから注文件数で言えば10億件/年はあるわけでして、その中でまあ委託注文はいくらくらいあるのか知らんですが、まあ誤発注の率は物凄く少ないという話になるような気がするんですが(どこからどこまでを誤発注にしてるのか良く判らんですけど。委託取引で過誤訂正した分を誤発注扱いにしたんじゃねえかと勝手に想像)。

報道では「1万4千件誤発注してるんですよ」という言い方になってしまうのは甚だ遺憾でございますが、よく見りゃ金融庁の発表内容も何だかな〜って感がします。管理体制についての実態調査結果みたいなのが上記URLの『(3) 株式等の売買発注業務の管理』って所にあるんですが、曰く、

@ 発注制限・警告の解除への管理者の関与の状況
A 売買システムを統括するCIOなどの選任状況
B 株式売買発注業務に関する研修等の実施状況

売買の現場でどういう状況が生じているのかちゃんと把握しているのでしょうかとか(@ね)、形式的な責任者を設置したり、実戦と関係ない研修をやってどの程度の意味があるのかお判りでしょうか費用対効果というお言葉をご存知でしょうか(しかも何故だかOJTは研修等じゃないそうです・・・・)って(A、B)とか突っ込みを入れたくなるようなたいへんにすばらしいじったいちょうさをしておいでのようで。

まあアレだ。どうもこの公表文書を読んでいると「証券会社の管理体制に不備が多いから1万4千件誤発注が生じてますよ酷いですねえ」という風に読めてしまいまして、まあそんなニュアンスで報道発表してるからニュース番組でもそういう扱いになってるんじゃないかなどと勝手に妄想を膨らませるのは被害妄想ですかそうですか。

別に調査するなとかいう事をいう積りはないですけど何だかな〜って感じ。


○火消しご苦労様です(総裁の国会答弁)

昨日は福井総裁が都内で講演を行いましたが、そちらよりも相場を動かしたのは参議院財政金融委員会での答弁だったようですな。ブルームバーグニュース16日14:49のニュース(第1報はもっと早くでてます。この時間に出てるのはまとめ版みたいなもんです)から引用するとこんな感じだったようですな。曰く、

『具体的にゼロ金利を修正する時期がいつかを考えるには、まだ量的緩和の枠組みに終止符を打った直後なので、それを論じるにはあまりに早すぎると考えている』

『私どもが意図しているのは、直ちに金融引き締めに向うことではない、日本経済が最終的に物価安定の下で持続的な成長の実現に向けてしっかり軌道を歩んでいくように、引き続き金融面でしっかりとサポートしたい。緩和的な金融環境を維持することで、経済に対するサポートをしていきたい、というところに主眼がある』

で、まあ債券先物はこのあたりの報道を受けて20銭くらい上昇したようですが、まあたった20銭ぽっちしか上らなかった(笑)という印象もあるようでして、まあさすがに今まで総裁のハト派っぽい発言を信じて何度も足を掬われている経験が量的緩和解除直後ということで効いているのかなあなどと思ってしまいました。

水野審議委員が過激発言をしてその後福井総裁が火消し発言をするという構図は昨年も似たような組み合わせがあった(直ぐにいつだったか思い出せませんが、汗)ように記憶しておりますが、さてその後はどうなったでしょうかなどと言う所ですが。


まあやや解釈にタカ派バイアス(あたくしがタカ派なのではなく、福井総裁をタカ派と見立てて少々バイアスが掛かるって意味です、為念)が入りますが・・・・

この発言もよくよく見ますと、最初の部分だって「早すぎる」のタイムスパンがどの位なのか判らんですし、次の発言に関して言えば「金融引き締め」局面入りを否定はしてますが、だから利上げが無いと思うのは実は早とちりでございます。

と、申しますのは、同日の別の答弁(講演でも同じような話もしたようですが)や先日の記者会見にも見られましたように、『金利が一定水準の下で経済が良くなり、物価上昇率が上れば、刺激効果は逆に強まる。』とか『現在(の金融政策)もビハインド・ザ・カーブの状態』というようなお話を福井総裁は行っている訳でして、景気刺激的な金融政策から中立的な金融政策への転換」をする場合には必然的にゼロ金利状況からの脱却、即ち利上げを行う事になりますわな。

ということで、「金融引き締め局面に入らない」というのは「利上げをしない」と同義にはならないのですが、さすがにこの辺りの表現の微妙な違いもだいぶ人口に膾炙してきたようで誠に結構な事でございます。

ま、これが英訳されてニュースになるとまたニュアンスがちゃんと伝わっているのか甚だ疑問ではありますが、笑。


という訳で宿題だらけですが、相場も気温もボラティリティが高止まりしてて物凄くお疲れモードなんで勘弁賜りたし。






2006/03/16

お題「れんぞくりあげおりこみでよかったですね(棒読み)」

○その前に朝からニュースに脊髄反応

オール証券会社@日本で発注ミスが年間に1万4000件もありましたとか鬼の首を取ったように発表されてますが、1秒を争う発注業務をお前らやった事あるのかと小一時間(という自分も大してやった訳ではないっす。証券自己ポジションの売買注文なら山のようにしましたが・・・)ですわなあ(しかも最近は取引所の詳しい板情報が情報ベンダー経由で提供されているので、注文入力までの速度がが早いか遅いかってのが発注している顧客様に直ぐ判ってしまうんですよ)。

そりゃまあ間違えないのが良いに決まってますし、ちゃんと確認して間違えないように努力するのは当然ですが、人間のやることだからミスは一定比率で発生する可能性はありますわな。だからこそ間違えが起きた時に被害が最小で済むような方策を考える方が重要なのではないかと思いますけどねえ。ありえない過大注文をそのまま通して板に5分間晒しっぱなしの取引所なんてのは勘弁ということでしょうなあ。

そうですなあ、公正中立な報道にとっては、放送での過誤というのは大変に重大な問題ではないかと思料されますので、例えば生放送のニュース番組での過誤放送(要するに言い間違え^^)は1年間に何件あるんでしょうか実態を知りたいですなあ。金融庁さまが大変に有益なご検査をなさったようですので、総務省でも検査してみたら如何でしょうか、おほほのほ。

ついでに、NHKの7時のニュースのヘッドラインでは「株式市場を大混乱に陥れたみずほ証券の売買誤発注。証券会社全体で同じような誤発注が1年間で1万4000件もあったということが金融庁の調査で判りました」などと言ってます。しかもニュースの場面では画面に「大量誤発注」の文字が。「同じような」誤発注はそんなに起きて無いでしょうよ。なんちゅう印象操作だ(ちなみに7時29分にもう一度ヘッドラインを読むのですが、この時には「同じような」は言いませんでした。あたくしの念波が到達したのでせうか、笑)。

#と、脊髄反応で証券会社が開き直って悪態ついているとしか思えない事を書いてしましたただの愚痴ですすいません


○3か月物は落ち着き2年はヘロヘロ

昨日の3か月ものFB(政府短期証券)は落ち着いた展開。前日はWI取引で0.075%あたりまでやってましたが、まあ冷静に考えて3か月くらいの間に政策金利が上るようなことも無いですし、まあ先行きの金利上昇リスクを考えると短い所に資金を逃避させておきたいという考えも出てくるでしょうって事で先週までの入札利回り上昇攻撃がストップした形。

最低落札価格こそ利回りベースで0.07%乗せになりましたが、平均落札価格(市場の呼び値ベースで0.0695%とかになります)よりも価格上昇利回り低下水準になりまして、まあ堅調と言って問題ない動きになりました。ここ2週間ほどは落札が大いに弱くてその後大いに戻るという極端な展開が続いていましたが、今回はあまり無茶な動きにならずで、ようやく落ち着きましたねえって感じでございます。


で、長いところはヘロヘロ。2年カレント物の利回りが0.56%で引けているんですが、ハーコリャコリャという感じですなあええ金曜から3日で0.47%→0.56%ですよトホホ。

ちなみに1年TBの利回りがだいたい(というのは手元のメモのデータソースが売買参考統計値なのでちょっとアレなのですが)0.27%とかになっておりまして、これが大体「向こう1年間で1回半の利上げを織り込む」って感じです(1回半とか訳判らん言い方でスイマセン)が、2年の0.56%となると「向こう2年間で2回半の利上げ織り込み」って感じですかねえ。

物凄くざっくりとした計算になりますが、向こう2年間の運用をするって話になったときに2年債を買えば0.56%確定で、1年債を買うと手前0.27%確定だとしますと残り1年幾らで運用すれば良いのでしょうって話をすると(0.56*2−0.27)ですから1年後の1年もの金利が0.85%以上になると間尺に合うってお話ですわな(ちなみにこれは再投資だの複利だのという観点を一切無視してます。そんなに厳密な計算じゃないんでその点お含み置きを)。そんなわけで「まあ向こう2年間で2回半」って話になる次第。

いやあもう福井総裁様が『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。』と9日の記者会見で仰せでございましたが、早くもひじょうにだいなみっくでほんらいのすがたになってすばらしいですなあ(棒読み)という所でございまして、しかも水野審議委員様が13日の講演で『ターム物金利に上昇圧力がかかり、早期利上げを催促する展開も想定されます。』と仰せになられましたように、マーケットでは連続利上げを織り込みに逝ってますので適正金利水準とやらへのきんりへんこうをさっさとおやりになるのもしじょうとのたいわなんでしょうねえ(またも棒読み)。

もう疲れたよパトラッシュ。何だか眠くなってきちゃったよ。パトラッシュも眠いのかい?



○気を取り直して(笑)その他色々と

・熟読すべし

昨日ご紹介した本石町日記さんの「金融政策“糊しろ”論の陥穽」はコメント欄での議論も大変に参考になるかと思いますので改めてこちらにURLを置いておきますね。→http://hongokucho.exblog.jp/4261074/

で、その次に投入されたエントリー「解除の論点整理A=日銀史上初めてフリーハンドを握ってまとな対話できるのか」は尚の事読むべきであるかと思いますので読むべし。→http://hongokucho.exblog.jp/4265947

でね、最後の「そこで提案」以降。特に最後の4行は政策委員の皆様にも熟読して欲しいものです。


・「日銀文学」ではなくて・・・・・・

で、その本石町日記さんの解除の論点整理の方を読んでいて、追伸の所に『日銀内部の声を代弁する側面もある。』ってのがありまして、日銀内部でも現在の謎の対話路線に関して疑問視する人もいるのかなあなどと思っているうちに、今般の金融政策で出てきた訳の判らん目安を「日銀文学」と称したのは日銀全部ダメって言ってるようで中の人に悪かったかなあと。

きっとあの文学は「日本銀行政策委員会文学」なんですよ(笑)。


・積み残しの宿題

考え方云々の正式版の読み込み
10日の国会での審議委員などの答弁(会議録が出てから)
福井総裁会見(9日)をもう一度熟読
水野審議委員講演と記者会見(13日)について
4月以降のオペレーションがどうなるのかという考察

いやはや。




2006/03/15

お題「これは酷い手前味噌ですね(水野審議委員講演続き)」

宿題積み残しだらけで誠に遺憾でございますが。

○益々ヘロヘロの中短期

昨日の1年物TB入札ですが、まあ前場引けに掛けて安くしたので大流れしなくて良かったですねって感じですが、平均落札が0.293%で最低落札が0.314%(財務省方式と市場の一般的な方式の差異は期間が長くなると小さくなるので併記はしません)という事は、半年後に0.25%の利上げを行って1年後の償還を迎えると想定しても楽勝で持ちきれるレベルですが、まあそんなシナリオにならない場合(=利上げペースが速い)のやられとの対比を天秤に掛けますと全然ペイしませんが何か?といった所でしょう。一応引けでは0.27%程度と大体同償還の2年国債くらいのレベルにはなっているようですが。

それより悲惨なのは2年国債。金曜の引けから2日で6毛5糸も甘くなってしまいまして、0.535%となってしまいました。もう思いっきり連続利上げを織り込んでいるわけですが、そんなに物価って一方的に上昇するものなんでしょうかねえ。

FB3ヶ月物の入札が本日行われますが、金曜日に瞬間最大風速0.045%までやってたFB378回が機能の最終は0.06〜0.065%近辺の居所。まあその0.01%の世界でどうでも良いと言われそうですが、利回りの変化率として考えるとかなり豪快な動きです。何か昨日は売りが出たという話らしいのですが、何でそうバタバタやるのかなあって感じですな。WI取引では0.075%〜0.08%あたりが居場所らしいのですが、1週間償還が違ってそんなに利回り違うのかよというのもありますが、それはまたいずれ。


○当座預金残高

それから地味な話ですが、昨日の日銀当座預金残高は前日の時点で30兆円割れ確定状態で当日スタートの即日オペ無しで、終わってみれば29兆9600億円。本日の予想は日銀から昨日公表されていますが、今日は即日オペ実施しなければ前日から9100億円減りますので29兆500億円まで減少の見込み。まあ無担保コール翌日物金利自体特に上昇してないので減少しても別に無問題だし、方向性は減少なんですから別に突っ込むほどのものでも無いのですが、記者会見でわざわざ福井総裁が「3月は30兆円」とか言ってたのは何だったのかなあって感じですな。

別に厳密に遵守するものでもない事柄に関してわざわざ特定の数字を出して話をするから話がややこしくなる(わざわざほじくり返してややこしくしているのはお前だろうというツッコミは勘弁^^)訳でございます。質問での答だから仕方ないちゃあ仕方ないのかもしれないけど、このときだって別に「短期金利が跳ね上がる事の無いように当座預金残高を注意して調整する」とでも言えば良い訳でして、殊更30兆円という数字を出す必要はなかったんじゃないでしょうかねえ。


○これは酷い手前味噌ですね

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0603c_f.htm
で、水野審議委員講演の続き。

いやまあ何ちゅうか困ったもんです。普通にA4の紙に出すと10ページ目くらいの部分に当たると思うのですが、『5.漸進的なアプローチによる「金融政策の正常化」 』の最初であります『(量的緩和政策の枠組み変更)』に関する部分は酷かろうよ。まあこの漸進的アプローチってのもナンジャソリャなんですが、内容のほうがもっと。


・量的緩和政策はプルーデンスが主だったんですかあ??

『量的緩和政策を維持する目的は、「時代の変遷とともに変化してきた」と思います。量的緩和政策を採用した当初の2001年3月時点では、(1)金融システムの安定化、(2)金融システム不安に起因するデフレ・スパイラルの回避、でありました。』

『金融市場の一部からは、「デフレ克服が主目的になったのは、国債買い切りオペの増額や当座預金残高目標の引上げによって『デフレ・ファイター』の役割を果たすことを宣言してからである」とか、「日本銀行が当座預金残高目標を段階的に引き上げる際、その理論武装や情報発信をしているうちに、量的緩和政策は変質し、非常にポリティカルな金融政策の枠組みになってしまった。」とみられたこともありました。』

さて、そんなことを仰っているようですが、日本銀行様が量的緩和政策を導入する際に出した文書がございますので目の玉をよく開いて熟読すべし。

http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319a.htm

あたくしはこの文書をもう何度読んだか覚えてませんが、どこをどう読んでも水野審議委員の仰せになる「目的」とやらは全く記載されておりません。念を入れて申し上げますと、わざわざこの時にはQ&A形式の説明文まで用意してありまして、そちらを読んでも水野審議委員の仰せになったことは書いてございませんですなあ。(デフレ阻止とは書いてありますが、別に金融システムの話は一言も書いていないという意味ですので念の為)

http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319c.htm

量的緩和政策はいつからプルーデンス政策になったんでしょうかねえ水野様って感じでございます。まあずっとマーケットストラテジストとやらをやっておられた人ですので、当時の公表文書を知らぬとはいえない(そもそも今でも読めますが)筈なんですが、これは一体全体どういうことなのでしょうか。


・これはまた素晴らしい自己正当化ですね

『この半年の債券市場の動きを振り返ると、昨年9月以降、ボードメンバーの情報発信に対して、政府の一部から「量的緩和解除は時期尚早である」旨の発言があったとの報道が多くみられました。これを受けて、市場参加者の間では、政治的圧力を受けて、日本銀行は量的緩和政策をなかなか解除できないとの観測が広がり、金利先高観が後退する局面がありました。しかし、その後、昨年10〜12月期のGDP等の経済指標によって、日本銀行の経済・物価見通しが裏打ちされたこともあって、政府側から3月時点での量的緩和解除を容認する声が出始めたとの報道が多くなり、2月下旬から国債イールドカーブが大幅にベア・フラット化しました。』

量的緩和政策のコミットメント通りに政策運営をしていけばそもそもイールドカーブのベアフラット(早すぎる利上げ懸念)は起きないと思うんですがねえ。それで?

『こうした一連の動きについて、個人的には、政府要人から金融政策に注文がついたと市場参加者が捉えたことで、無用なボラティリティーが高まり、債券運用の損失額が膨らんでしまった面があるのではないでしょうか。このことは、債券相場を展望するうえでは、経済・物価見通しに立ち返ることが重要であることを改めて示唆していると思います。』

自分達が債券市場に対して地均しをしていることは無視ですかそうですか。それで悪いのは全部政府要人ですって。日本銀行政策委員様の言うことは全て正しいので意見は言っちゃあ駄目なんですねそうですね。


・自分で火をつけて「市場が催促するから」ですかそうですか

そのちょっと先なのですが、『(金融調節面の措置)』って部分(11ページ目位)の最後の方にも好き勝手なお話がございます。

『量的緩和政策の枠組みを変更した後は、コミットメントのないゼロ金利となります。「量的緩和政策の解除は4月以降」と判断してきた市場参加者が少なくなかったことを考えると、強めの経済指標や株価上昇に対して債券市場は過敏に反応する可能性があります。今後の金融政策運営は全くオープンですが、ターム物金利に上昇圧力がかかり、早期利上げを催促する展開も想定されます。』

えーっとすいません。量的緩和解除前にブルトーザー地均しが始まったのは2月の決定会合後でございましたが、3月3日のCPIの公表までにそんなに市場が驚くような経済指標や株価推移ってありましたっけ?それに3日のCPIも予想0.4%の所0.5%でそんなに驚倒するほどの数値じゃありませんでしたが。

で、今日は紹介しませんが、記者会見では中立的な金利水準が幾らだのまあ具体的な数字を好き放題言っておいて「市場が利上げを促す」もあったもんじゃねえだろうって呆れてしまいます。


・政策金利の糊代??

もうちょっと後ろの方ですが。

『金融市場では、再び「デフレ」に戻らない「インフレ率の糊しろ」の議論が盛んであるが、将来の景気減速局面で機動的に対応できるマクロ経済政策として金融政策を位置付けるのであれば、「政策金利の糊しろ」は不可欠です。』

凄い理屈です。将来の景気減速局面があるかもしれないなら今の緩和環境を引っ張るんじゃないですかねえ。それとも「自分の利上げは良い利上げなので経済に悪影響は及ぼさない」とでも言いたいんでしょうかねえ。

まあ詳しくは本石町日記さんhttp://hongokucho.exblog.jp/4261074が「金融政策“糊しろ”論の陥穽」というお題で一席打っておられますのでそちらをご覧下さい。まあ本末転倒というかマッチポンプな理屈でございますなあと呆れる次第です。(追記:私が呆れているのは水野審議委員の糊代論に対してです。本石町日記さんを指しているわけではないのはお判りかと思いますが読み直してみて文章の座りが悪かったので念の為追記します)

このひとあと何年審議委員をやっているのかと思えば・・・4年後まで任期あるのかよ勘弁してくれよ。。。。。




2006/03/14

お題「また水野か!を書くつもりでしたが相場概況になりました(汗」

まだ金融政策決定会合絡みの文書やら月報やらの読み込みが終わってませんが、やはりこちらに反応しておかないといかんでしょう。ということで水野審議委員の講演なのですが、その前にいくつか。と言って書き出したのですけれども、相場の概況も中々でしたのでそっちの話が主体になっちゃいました、と追記いたします(笑)。


○NHKスクープ問題なおも補足

昨日引き続き本件に関して指摘のメールを頂戴致しました。いや〜どうもありがとうございますm(__)m

「日銀のHPによると今回の金融政策決定会合が終わったのが14時7分で、対外的に公表したのがベンダーのフラッシュニュースを見ると14時40分ごろ」と言われまして改めて金融政策決定会合のディレクティブを見ると確かに14時7分に会合終了しております。で、あたしゃー金曜に脊髄反射で拙文を書いた時に「14時7分に途中退席した人云々」などと書いてましたが、んなこたあねえ訳でしてまあ自分の迂闊さに恥じ入る所であります。

ではなぜそのような迂闊な勘違いをしたかと申しますとこれには理由というものがございまして、実は当日のベンダーニュースで「決定会合が終了、間もなく結果発表」というヘッドラインが打たれたのが、14時20分ごろ(ちなみにブルームバーグの過去ログにあるタイムスタンプを見ると14時22分となっています)だったようです。そして結果発表がご指摘のように14時40分頃という事で、確かに時間かかり過ぎです(まあその前に何かフラッシュが出たりしてて無茶苦茶な状態にはなっていたようですが)。

ちなみに、NHKのフラッシュは14時ごろに出てたと記憶してたのですが、ブルームバーグの過去ログ見ると13時51分になっておりまして、まあ決定会合終了前のような気もしますし、何だかちょこちょこ手元で調べられるものを見ているうちに訳が判らなくなってまいりました(大汗)。

ま、いずれにしても決定会合終了から結果の発表まで恐ろしく時間が掛かったことは事実ですんで、日銀的には晴れの舞台の筈の量的緩和解除の段取りがよろしくございませんでしたなあと思うと同時に、もしかして3月解除は事務方にも不意打ちだったのでしょうかなどと妙な連想をしてしまうあたくしでした。



○結果公表までの時間は一定に戻して欲しいのですが

当初は金融政策決定会合終了から結果公表まで5分だか10分だか忘れましたが(多分5分)終了のアナウンス時に結果発表時刻の公表がありまして、その間債券市場は見事に板がスカスカになるという状況もあったりしたのですが(まあ何かあるかもしれないって時には当然ですわな)、その後「発表時間の迅速化を図る」というような大義名分で「終了後速やかに公表」という今の形になりました。

でもこの「速やかに公表」が曲者でして、何も無いときは3分程度で結果発表するのに、ややこしい話があるとき(当時だと当座預金残高引き上げとかね)には5分とか7分とか掛かるという傾向がありまして、一頃は発表まで時間がかかると何か先物を仕掛ける人とか出てきたりして甚だ迷惑(いやまあスペキュレーターにしてみりゃ面白いのでしょうが、対顧客取引でマーケットメークしているようなディーラーにとっては甚だ迷惑なのよ)でございました。

いやまあ大変なのかもしれませんが、終了後結果発表までの時間は一定時間(それが大引けとかにぶつかるのであれば配慮してもらうとなお結構、と言っても2日制だからそんなことも起きないでしょう)にして貰いたいものです。




○これは日銀ウハウハの展開ですか?

昨日の債券市場ですが、後でご紹介する水野審議委員の講演やら記者会見が出る前から中期債主導での相場下落。一方で株式市場ではゼロ金利政策がまだ続く(って技術的に2ヶ月くらい続くの当たり前なのですけれども・・・)ということで威勢良く上昇。どうも昨日朝ブルームバーグテレビでやっていた福井総裁BISでのぶら下がりインタビューと言うか突撃インタビューでの英語での受け答えが「ゼロ金利長期化」と取れるような(少なくともあたくしにはそう聞こえたんですが)ニュアンスになっていたので海外のお投資家さまも好感したのかなあ何て勝手に妄想。ちと利上げを舐めているような気もしますがねえ。

まあそんなわけで、金利は「適正水準」とやらに向って上昇し、株式市場も上昇とはこりゃまた日銀ウハウハのてんかいでじつにすばらしいですなあ(棒読み)と逝った所でしょうか。ふ〜ん。

まあユーロ円金利先物やら中短期債券(というかどうもスワップの払いのようですが)がドカドカ売られて長期債はそれなりに確りっちゅうのはまたまた「景気実態よりも利上げのペースが速い懸念あり」っていうのがインプリケーションという事になる訳でして、日銀それでいいのか(いいんでしょうが)と思うのでありました。

ちなみに、本日入札予定の1年もの短期国債(TB)のWI取引の最終気配は0.23%−0.25%で、同償還(2007年3月20日)の2年230回債の居場所が0.26%あたりのようですので、本日の入札は普通に考えると0.25%から下に流れるということになるんでしょう。冷静に考えると半年後0.25%利上げなら手前半年勝てるのですが、まあそれこそ当預引いた後にサクサク利上げでもされたらアレでございますので、プレミアムついちゃってるって事なのでしょうか。

ちなみに3ヶ月物FBは0.05%が居場所のような感じでして、こちらは先週末対比であまり変っていませんので、「とりあえず3ヵ月後までは大丈夫でしょう」って感じなんでしょう。ついこの前は当預引く間の「ゼロ金利」に関しても「ロンバート金利(0.10%)までの金利上昇を容認するとなると0.03%から0.05%あたりに足元金利があるのではないか」などという人までいたのが嘘のようですな(苦笑)。

ただ、3月までは足元押さえつけてくるという雰囲気は昨日の手形オペでも垣間見られました(全店買入手形3月15日〜3月28日を6000億円実施)のですが、このオペの足をあたくしは「4月以降はシラネーヨ」とも読んでしまうという大変に性格がねじくれた人間でして、まあ期末前に金利が跳ねる事は避けてくる(期末日ピンポイントは別)としても、4月以降当座預金を引いていくと無担保コール翌日物0.01%割れが恒常的という光景が継続してくれるかに関してちと疑問を感じるのでありました。



○で、やっと水野審議委員の講演になるのですが時間がないので・・・

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0603c_f.htm

まあ詳しくはまた明日ですが、全体を通しての感想は「日本銀行政策審議委員としての立場を弁えない発言が多すぎ」でありまして、そういう発言は証券会社のストラテジストがするもんでしょうという所です。あたくし一人がそう言ってる訳ではございませんので念の為。

で、ストラテジストが相場に対して話すような事を言ってるんですが、お前がその状況を作るように持って行ってるんじゃねえのかと小一時間という所で、マジでこんな言いたい放題を審議委員が言って良いのかと甚だ疑問に思うのでございます。もしかしてこのお方は自分の発言で債券相場が動くのに酔ってるんじゃないかって疑いたくなりますね。

山のように突っ込みどころがありますが、ちょうどbewaadさんが突っ込み(最近金融政策の話にそんなにスペースを割いてなかったbewaadさんが突っ込みを入れたのはよほどのことで)を入れておられましたのでそちらもご参照頂くと致しまして(と人のふんどし)、鶏並みの記憶力を誇るあたくしのトサカに来たくだりを。

『今後、当座預金残高を引き下げ始める場合、(1)資金供給オペの頻度の減少、規模の縮小、期間の短縮、(2)将来の政策金利引上げ時期に関する憶測に伴う金利先高観、(3)RTGS(Real-Time Gross Settlement、即時グロス決済)導入後初めて金利先高観がある局面であるためターム物での資金調達に動く金融機関が増える可能性、という3つのルートに加え、テクニカルな要因から、ターム物金利に上昇圧力がかかりやすい状態になります。中短期セクターの債券相場のボラティリティーは量的緩和政策の解除後も暫く高止まりすることが予想されます。』

1と3はまあ良いとして、2番の憶測ってのはあんたらが地均しして強引に織り込ませに逝ったものですが何か?ボラティリティーは高まりやすいってその原因は強引な地均しによる政策金利早期引き上げ観測によるものですが何か?証券会社のストラテジストが言うなら兎も角、金融政策を決定する9票のうち1票を持つ人間がしらっとこんな話し方をしてるのを見るとかなり頭に来ますな。

で、ボラティリティーが高まるとまあさっきも申し上げましたが、自己売買のディーラーみたいな人たちは大喜びかもしれませんが、自己売買で相場を張るような人じゃなくて、フツーに経済活動をしている人にとっては、資金の調達コストにまともに跳ね返ってくる中短期セクターの金利がボラタイルになるというのは迷惑なお話だと思うんですが他人事ですかそうですか(怒)。

どうも市場機能の回復というのは市場の一部の方を見てのご発言なのではないかと勘ぐりたくもなっちゃいますなあ。

#いかん、また悪態の限りをついてしまった。

まあ悪態が多くて誠に申し訳ございませんが、またまた市場の不評を買っている(相場が無駄に動くとウハウハな人を除く)と思うんですがねえ。マッタクモウ。


しかしまあ「利上げもできないような環境で量的緩和解除しても仕方ない」って趣旨の発言を以前してたのが水野審議委員ですので、無茶苦茶タカ派な発言が出てくるというのはある程度想定の範囲内だとは思ったのですが、まあ地均し路線の先鋒剣士みたいな人ですので、先鋒が吼えたらその次が出てくるって警戒感が強くなったんでしょうかねえ。後場の一段下げに関しては(ちなみに記者会見ではもっと金利上げます金利上げます発言が出てました)。

つーかあの結果で「ゼロ金利長期化」と読む方が勘違いなのですが。向こう3ヶ月のゼロ金利をゼロ金利長期化とは申しませんですし、そもそもさっき申し上げたように3月はともかく4月以降の無担保コールがいつまでも0.005%以下だと思うのもどうかって気はしますけどねえ。


○ところでこんなんあるんですが

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/ron0603a_f.htm
「近年における個人消費の底堅さとその背景」

という論文(上記URLの先にリンクがあって、70ページの論文がございます)が出ているようなのですが、当然中身を読む気力は無く(おい)、要旨を見ただけなのですが、「シニア層の消費」という言葉に思わずピクピクしてしまうのは預金金利上昇で個人所得に効果とかいうメルヘンなお話が最近妙に気になっているあたくしがナーバスなっているからですかそうですか。

意図は無いって言いたいんでしょうが、最近この手のレポートが出るタイミングが実に嫌らしい。どう見ても意図があるとしか思えません。本当にありがとうございました。

#というわけで積み残しだらけです。






2006/03/13

お題「色々とございますので順に」

金曜に「週末に書き物するかも」と申し上げましたが、読む物が多い上に過去の駄文の整理を読みながらやってたら週末が終わってしまいましたよorz

○NHKのスクープに関して補足

さて、金曜日にNHKのスクープを「どっかのリーク」と決め打ちして書いておりましたが、リークではない可能性もあるようで、決めうちして書いて悪態をついて大変失礼しました。当該部分は謹んで撤回させていただきますがNHKには悪態継続です。

読者様からのご指摘によりますと、9日にどこぞの民放ニュース番組で「今日の動き」みたいなのを報道していたそうなんですが、実は9日の決定会合では議長提案で解除の議事になって、採決が出る前に最終確認の為に担当大臣に連絡が行ったそうです。で、テレビでは国会出席中の大臣にメモを渡す光景(とそのメモのズーム映像)が放送されていたそうです。

まあそんな状況があれば大体解除の提案があったであろうという想像はできそうな気はしますし、国会にはカメラを各局入れてるんですからそのメモを気合入れて望遠レンズで見るとかすればなおのこと判るでしょうな(つーかその民放も気が付いていたかもしれませんね。ニュース速報を打たなかったのは適切な判断だと思います)。

しかしそれにしても、決定会合が終わって日銀から発表がされる前に報道するのはちょっと酷いんじゃないでしょうかねえ>NHK


○いやあの短期国債そこまで買うの?

金曜日の短期国債市場は呆れてしまいました。前日の最終では新発FB3ヶ月ものは0.06%近辺だったのですが、朝っぱらから買い買い状態になってしまい、より直後から0.05%が買われて0.045%まで買われるの巻。どうも大手銀行組が参戦してきたようなのですが、いやあの様子見する言い訳が無くなった途端に我も我もと買いが来ちゃうというのはちょっと如何なものかと呆れてしまいました。引けに掛けては国会での総裁以下皆様の答弁によって「ゼロ金利長期化は期待するほどのものでも無いんじゃねえの」って事にでもなったようで、ユーロ円金利先物やら債券やらが売られたことで少々戻りましたが。

まあ期末ですから「量的緩和解除したってゼロ金利ですからこのレベルはオーバーシュート」と言ってリスクを取りに行くというのも難しいというのは非常によーーーく判るのですが、ここで買うなら何故0.08%だの売り込んだのよ貴方達はってまあちと情け無いものを感じてしまった訳で。



○オペがやたら芸細かいです

金曜日には国債買現先オペが行われました。このオペなんですが、期間が3月14日から20日となっていまして、3・9月の利払銘柄の振替停止期間をちょうどまたぐ形での資金供給となっております。

ところがですな、3・9月利払い債の在庫ファンディングの為に行われるGCレポ取引は既に前日の時点で終了しているので、証券業者の在庫ファンディングのニーズはこの時点で無し状態。要するにこのオペは打っても札が集まりにくい期間設定になっていまして、レポ取引関係者的には「これはわざと札割れになるオペを打ってきたな」というお話になります。

結果は案の定予定額4000億に対して応札が3640億円と未達と相成りまして、「未達オペを打って金利が上ってないってのを見せようとしたんでしょうかねえ」という思惑大当たりでおめでとうございます。そんなオペでしたが、何となく笑ってしまったのは平均落札利回りでして、どう考えても未達必至のオペなのに何故か平均落札利回りが0.002%というのは、上の札を入れた人間が札読みのできないスカでない限り、未達必至オペに対する嫌がらせの応札だったんじゃネーノなんて穿った読みをしてしまいました(笑)。


また、金曜日には短国買入も実施されまして、額が3000億円に減額になりました。まあいきなりゼロにすると騒動になるので(予想している人はあたくしを含めて結構いたのですが)これも芸が細かいですなあと感心することしきり。

ついでに、今回から短期のオペレーションに関して落札限度額が設定されまして(というか限度が復活したのかな?)、1社で落札できる限度はオファー額の半分になりました。時々「1社が実勢よりも高いところに札を入れて全部落札」っていう事件があって「あらら」ってケースがあったのですが、そのような「金利上昇大作戦」は許さんという事でしょう。

そんな訳でして、日銀の短期市場オペレーションに関して言いますと、変に金利が跳ねないように色々と気を使っているなあってのはよく判る金曜日の動きでございました。



○そんなわけで日銀総裁記者会見

総裁記者会見の前に国会での説明に関して気になったのが一点あったので付け加えておきます。事実関係は会議録を見ないと判らんのですが、インターネットでの国会中継を見ていたら、金融政策に関して岩田副総裁が「政策はフォワードルッキング」という事を発言してたように聞こえたのですが、岩田副総裁ってビハインド路線じゃなかったのかなあと思いまして、いつの間に宗旨変えしたのだろうと思いつつ、こりゃ政策委員会の止め役は中原審議委員しかいないようですなあとちょっと不安。

時間も長く量も多いのであたくし的に気になった部分を。多分明日に持ち越しになるものと思われます。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0603a.htm


・フォワードルッキングでありルールベースではありません

最初の説明の部分で早速発言してますが。

『「中長期的な物価安定の理解」を示し、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていくが、いわゆるインフレーション・ターゲティングというものと違って、ルール・ベースの金融政策の運営をするわけではない。物価についての理解を念頭に置いて金融政策を行っていくが、金融政策運営そのものはフォワード・ルッキングであり、総合判断でやっていく。』

別の質問に対する回答ではこんな感じです。

『それから先程、皆様のご理解を頂くためにわざわざ、ルール・ベースの政策運営をするわけではない、フォワード・ルッキングで総合判断でやっていくとわかりやすく申し上げた。各国の中央銀行の政策運営のやり方をみても、ルール・ベースに近い運営とか裁量による運営など、概念的な整理を試みることはある程度可能である。しかし実際には、例えば、インフレーション・ターゲティングを採用している国の中央銀行でも、文字通り、機械的なルール・ベースの政策運営をしている中央銀行は殆ど存在しないと認識している。』

フォワードルッキングで、物価安定の理解が総合CPIで0−2%って組み合わせは物凄い勢いでインフレバスター政策になるようにしか思えないんですが。

「参照値でも無い」と最後の質疑で言ってますんで念のためそちらも引用しておきますね。

『政策委員の認識を数字で表すと、こういうことになる、ということである。これは金融政策の透明性と機動性の両立を真剣に考えて出てきた新しい知恵のようなものであり、私ども自身が出した知恵を私ども自身が活かしていくことによって、おっしゃるような懸念を払拭していくことができると思われる。そのためにも、「理解」というものの概念を、皆さん方からもきちんと報道して頂きたい。「参照値」と同じようなものだと報道されると、世の中に混乱をおこすと思われる。「理解」については、英語で言えばunderstandingという言葉を私どもは使用していく。そういうunderstandingを政策委員会のメンバーでbroadly shared(広く共有)するというものである。新しい概念なので、日本だけでなく海外においてもきちんと理解してもらうためには、しばらく努力がいると思うが、こうした新しい知恵がきちんと理解されれば、そういうリスクは減っていくであろう。数字が一人歩きする心配を私どもも持っているが、それを打ち消していく努力をこれからもやっていかなくてはならない。』


・経済物価情勢に見合った金利水準

という言葉を福井総裁はよく使います。で、質疑の最初の方ではこんなことを言ってたのですが・・・・・

『それでは、所要準備額までの調整が終わったらすぐゼロ%でなくなるのかというと、私どもはそういうことを言っているわけではない。つまり、準備を削減していく過程は基本的にゼロ%で、おそらくその後もしばらくはゼロ%で、その次に極めて低い金利となり、さらには経済・物価情勢に見合った金利水準への調整過程となろう。』

ほほうゼロ金利長期化ですか・・・・と思いたくなるのですが、最後の質疑ではこんな表現をしております。

『量的緩和政策の枠組みからの脱却によって、イールドカーブのショーターエンド(オーバーナイト物)以外のところにまで強い下方プレッシャーをかけるというディストーション(歪み)は一応なくなる。この意味では、金利機能を封殺している度合いは少し緩和されると思う。しかし、経済・物価情勢に見合った金利水準という意味では、まだかなり離れた状況にあるのではないのか。これから相当時間をかけて、ギャップを埋めていくことになるので、本当の意味での金利機能が生きて、資源再配分機能を本来金利が持っているキャパシティの通りに機能を発揮していくということと比較すると、極めて低い金利を続けている以上は、そこに何がしか犠牲が生じていることは否めない。』

どうもここを読むと福井総裁がイメージする「経済物価に見合った水準」はゼロ金利じゃあないと思うんですけどね。

それから、金曜もご紹介しましたが、こんな事も言ってますんで。

『量的緩和政策そのものも、極めて大幅なビハインド・ザ・カーブの金融政策である量的緩和の枠組みを脱出してゼロ金利からスタートするが、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりのプラスを続けている状況のもとでは、これはかなりビハインド・ザ・カーブのところを出発点にした金融政策である。この金融政策との組み合わせで、緩和のしすぎのリスクが中長期的にあるということを指摘しており、一方を強調しているということにはならない。』

現状で既にビハインド・ザ・カーブ状態だそうです。それで政策をフォワードルッキングにした場合に何が起きるのでしょうかねえ。



・別にダイナミックにならなくて結構なんですが

『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。市場は市場の見方を市場レート、特に先物の市場レートの中に反映するだろうし、私どもは毎月の金融政策決定会合の後、あるいは展望レポートの中で私どもなりの先行きの見通しを出していく。それが市場の見通しと合っているか合っていないか、合っていない部分については市場が改めてレビューしながら、市場金利の変動というかたちで映し出してくる。私どもはそれを読み取りながら、私どもの情勢判断を更に磨いていく。こういう市場金利の動きを仲介項としながらのコミュニケーションになっていく。量的緩和政策のもとでは、市場機能を封殺していると申し上げていたが、封殺している限りはそういう仲介項がないために、さかんに日本銀行の言葉のみを探るということがあった。これから先はそういうことはなくなり、よりダイナミックになっていくと思う。』

いやあの日銀がもうちょっと黙って頂ければ別に言葉を探る必要もないのですが、そうするとドラめもんのネタも無くなるという諸刃の剣(笑)。今までも経済状況とか見ながら相場が動いてた面もあると思うんですが、自分で書いた駄文を週末せっせと読み直しながら整理してると、やっぱ日銀の偉い人喋りすぎ(喋らされすぎの面もありますが)ではないかと思いますけどね。まあ頑張ってくださいね〜。

#といった所で時間切れ。




2006/03/10

お題「量的緩和解除あれこれ」

何だか疲れちゃたよパトラッシュ・・・・

金融調節方針の変更について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309_f.htm
新たな枠組みの導入について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309b_f.htm


○NHKの報道姿勢を批判致します

昨日の決定会合ですが、ご案内のようにまだ会合中の14時過ぎにNHKが「福井総裁が量的緩和政策の解除を提案」とニュース速報のテロップを流しました。

総裁が提案したって事を知りえるのは出席者(まあ事務方も知ってるでしょうが)しかありえません。で、昨日の会合を途中退席したのはhttp://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309_f.htmの下のほうをご覧になれば判るように財務省と内閣府の出席者しかいませんですな。しかも退席時間が14時07分ですので、まさにNHKのニュース速報のタイミングとドンピシャです。

いままでも会合終了後に決定会合での票決が何対何だった(今は票数まで発表されるようになりましたが)などという事が報道される事があり、あたくしは文句言いまくりましたが、会合終了「前!」にニュースが出てしまったのはさすがに酷すぎます。主要先進国の中央銀行の政策会合とは思えない。って日銀が悪いわけではなく、事の重要性を全く理解せずにペラペラ喋る人間(まあ誰だか想像はつきますが)が悪い、というか万死に値する行為であって、罷免ものでしょう。何で罷免にならないのかなあ。

しかしまあ喋る方も喋る方だが、
報道する方も報道する方としか言いようが無いです。知人の某通信社外国人記者なんて「何で日銀が発表する前にNHKが報道できるのか全く判らない」って完全に呆れてましたよ。

最近のNHKのニュース速報は、LD本社の地検強制捜査報道、文仁親王妃紀子殿下のご懐妊報道と、情報の入手方法と公表のタイミングに関して大いに疑問を抱かざるを得ない事例がございました。本件に関しても報道のモラルという点に関して大いに問題があるものであったと言わざるを得ません。

などと丁寧に書きましたが、要するにアレだ、NHKと会合内容をリークした大馬鹿野郎は逝って良しって事だ。

(追記:必ずしもリークではなさそうな傍証があるというメールを頂きまして、確かに仰るとおりですので、リークと決め打ちして書いた部分は一旦取り下げておきます。それにしてもNHKの最近のスクープ報道は現場の暴走なのか上層部の焦りなのか判りませんが、何か大丈夫かって感じですね)


○ゼロ金利長期化?どう見ても勘違いです。本当に(ry

で、この結果に関してですが、どうも「物価の安定化」についての明確化という所を「ゼロ金利政策が長期化される」という香ばしい解釈をした人が多く平均株価上昇。債券先物は上昇したあと「物価水準の下限0%ってどうよ」と思う人もいたようでやや上昇を打ち消しました。で、ユーロ円金利先物市場は一旦上昇して反落したあと、夜間取引でまたまた上昇。

色々なマーケットストラテジストの見解をざっと斜め読みしたのですが、とりあえず最初からいきなり冷水ぶっかけ系の「ゼロ金利長期化は誤解でしょ」ってレポートは2本か3本位しかみつからず、「これでまたゼロ金利長期化ですよウェーハッハッハ」というものの方が圧倒的に多かった印象。

まあね、今回の文書ですけど、読めば読むほどよく出来ていまして、日銀文学の最高傑作のひとつに挙げられるんじゃないのって思いますよ。市場(と政府)に妙な期待はさせているものの何のコミットもしていないというとても凄い内容でございます。まずは決定内容部分に相当する「金融調節方針の変更について」という部分をば。


○金融市場調節方針の変更について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309_f.htm

順序が逆ですが、最後の「当面の金融政策運営の考え方」の部分から先に。

・時間軸は存在してませんが何か?

『量的緩和政策の経済・物価に対する効果は、現在、短期金利がゼロであることによる効果が中心になっているため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではない。』

えーっと、これは「本件の措置は金融引き締めではない」と言ってるのですが、同時に「別にゼロ金利にコミットはしてませんよ」ということも意味してますわな。コミットすれば時間軸が発生するわけですから。


・景気過熱リスクに言及

『先行きの経済・物価情勢については、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく可能性が高いと評価できる。ただ、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると経済活動の振幅が大きくなるリスクには、留意する必要がある。』

景気が悪化するリスクには言及してません。そりゃまあ悪化するリスクが極めて少なく言及する必要も無いって判断で量的緩和政策を解除した(んですよね?)のですから書かないって事なのかもしれませんが、本件に関しては記者会見で突っ込みを受けてまして、それに対する福井総裁の答えはこんな感じだったようです(9日19時19分配信のブルームバーグニュース記事より)。

『量的緩和政策そのものも、きわめて大幅なビハインド・ザ・カーブな金融政策だ。量的金融緩和の枠組みを脱出して、ゼロ金利からスタートする、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりプラスを出している状況のもとで、これはかなりビハインド・ザ・カーブを出発点としてスタートしているので、金融政策との組み合わせで、緩和のし過ぎのリスクは中長期的にあるということを指摘しているのはフェアだ。』

『ビハインド・ザ・カーブの金融政策でも、物価上昇率に圧力がかからない限りは、なお当面かなり緩和的な環境が維持される可能性が高いと言っている。両面フェアに記述している。一方にウエートをかけて書いているという理解はされないでいただきたい。』

どうみても量的緩和解除をビハインド・ザ・カーブで実施しているとのお考えにしか見えません。本当にありがとうございました。


・短期のターム物金利は下がりにくいというか上昇圧力かかりやすいというか

『当座預金残高の削減は、短期の資金オペレーションにより対応する。長期国債の買入れについては、先行きの日本銀行の資産・負債の状況などを踏まえつつ、当面は、これまでと同じ金額、頻度で実施していく。補完貸付については、適用金利を据え置くとともに、2003年3月以降、利用日数に関して上限を設けない臨時措置を実施しているが、この措置は当面継続する。』

まあ予想通りちゃあ予想通りですが、これはFBの素晴らしい発行残高とあわせますと、やはりターム物の短期金利は需給関係で下がりにくいというか上りやすいという状態が続くと思います。一応ロンバート(補完貸付)のキャップはありますが、ロンバートに使えない担保では意味がないですし、政策をいじればロンバートの金利も変化するでしょうからそこまでの金利に何となくキャップが掛かりますなあって感じですな。勿論翌日物金利はそれなりにキャップがかかるでしょうが、何せロンバートは有担保貸し出しですんで、限界的な部分での無担保コール翌日物金利が上昇することはあるでしょうね。


○新たな金融政策運営の枠組みの導入について

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309b_f.htm

・「物価の安定」で言われてるのはコア指数じゃないですよ〜

「物価の安定」についての考え方の後ろの方をみませう。

『消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。』

「消費者物価指数」としか書いておりません。コア指数ではないんですが(記者会見でもその部分の質疑はあったらしいが手元に記事なし)、最近のCPIの推移がこの辺http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htmにありますが、総合の前年同月比を見るとここ1年は前年同月比マイナスの月の方が多いような気もするんですけど(苦笑)。まあ解除しても緩和状態だっていうことだからいいでしょって理屈なのかなあと思いますが。

で、その前の部分ですが。

『本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。』

ってことなので、やはり物価に関しては低めを見ていますって話ですわな。しかし下限0%ってのには引っ掛かりますなあ。せめて1%〜3%なんじゃないかと思うのですが。

で、中心が1%にあるからゼロ金利が長く続くぜウエーハッハッハとう見解が出てくるのですが、あたくし思いまするにこのレンジだと現在のCPI0.5%(総合もコアも)でも「物価水準は現在中立的な状況にある」といえる訳ですから(だってレンジ内だもん)「今後の過熱を予防する為に中立的な金利水準に戻しますが何か?」といっても思いっきり政策ロジックに整合性が取れていると思います。


・これはリフレ政策提唱の皆様への燃料でございましょうか

何か後ろから戻ってくるような書き方で恐縮ですが。

『わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。』

世の中の「物価上らないマインド」を十分に留意するということですかそうですか。。


・この部分今の時点での小まとめ

これは物価水準の話をしているのですが、現在の物価水準は既にここで述べているレンジ内に入ってますし、だいたい0%でも安定範囲内って話だと、まあ制約条件なしに等しいですわな。これを見てCPIが1%になるまでゼロ金利が続くと理解するのはもうすこしがんばりましょうって判子を押したくなりますわな。もし2%を抜けそうになったらもう一大引き締め大会になるんですけどねえ。

という訳で大いなる勘違いをしているようですが、まあ暫く日銀さまにおかれましてもおとなしくして長期金利が上昇するのは避けるように動くとは思いますんで、変な期待が蔓延するようなことになるんでしょうなあ。で、また金利上げようって話になると地均し一座の公演を見る事が出来ますので乞うご期待(吐息)。

しかもこの参照値(もどき)は政策運営に関して何のコミットもしてませんので、まあアレですな、政府への「おみやげ」って奴でな。

で、この2つの公表文書に関してもまだ読むべきところあると思いますし、記者会見に関しては重要な発言が色々とあったようです。また金融経済月報の公表も同時に行われていますので、そのあたりも盛りだくさんなのですが、さすがに時間と労力がそこまで回りませんので、週末にも書き物をしようかなどと言うと将来の予定を縛ることになって休日の柔軟性を阻害致しますので注意しましょう(笑)。





2006/03/09

お題「安定化策で不安定化はご勘弁を」

まあさすがに今日解除でしょ。という前提で色々とお話を。

○FB入札乱高下

昨日のFB入札(そういえばまたまた訂正ですが、FBの発行額は毎週4.1兆円じゃなくて4.4兆円でした)も大暴れ。前日のWI取引0.08%レベルからスタートして前場引けは0.085%ヒットのビット残り。で、入札はと申しますと平均99.9782円で0.0874%(財務省方式だと0.0865%)となり最低落札価格は99.9762円で0.0954%(財務省方式だと0.0944%)とまたまた流れました。しかしそこで相当の買いがあったようで、0.085%あたりのオファーは瞬間で捌けてしまい、落札が少なかった人がちとショートにでもなったのかショートカバー的な買いで何と0.055%まで上昇。最終的な居所は0.06%くらいなんで結局先週の入札とあんまり変らないのですが、よくもまあ派手派手に動いたものです。

入札最低落札0.095%から30分くらいで0.055%まで動くとはこりゃまたキングオソロシスですが、まあこんな動きをすることも多くなるのではないかと。いやはやめまぐるしい。

でですな、何か勘違いしてないかと思うのはこの買い上げ方。まあカバーで仕方なく買った面もあると思う(それなら0.09%くらい札入れられるだろうと思うんですが、ちなみにあたくしは勝手予想でせいぜい0.09ひげ位じゃないのかと思ってましたが)んですが、量的緩和解除したら当座預金残高を引く事になるというのを忘れていないかという感じですわな。

長期国債買入は減らせないですし、いきなり売出手形を打ってくるのはちと3月末という事を考えると刺激的なので避けるとなれば、どう考えても短国買入は削減対象。3月後半に向けて資金は余剰になりますので、ただで無くさえ吸収をしないといけない状況下で売出手形を派手に打てない(オペレーションに急に注目が集まるから。ノーケアー状態ならそんなに話題にならないのでまあオペ打てるでしょ)となると今週分から短国買入が無しになっても何らおかしくは無いので5000億円×4回分で2兆円となるとFB発行2分の1回分になるんですけど、大丈夫でしょうかねえ。


○これは凄い期待ですね

昨日はスワップ市場のほうで相当のレシーブがあったらしく中期債やらユーロ円金先やらが派手派手に上昇。まあここまで散々売り込んでいましたので戻りも派手になるんでしょうが、しかしまあ「安定化策」に関しての期待が政府の一連の牽制発言によって盛り上がっているちゅうことでもあるのでしょうな。

で、その期待がどう盛り上がっているかと言いますと、昨日のブルームバーグニュースの債券市場概況解説記事(8日16時55分配信)をみますと、どこぞの誰かさん(名前はここでは出さん)の指摘として「日銀は少し厳しい環境のなかで解除に踏み切るのであれば、時間軸が短くならないように配慮するであろうし、市場もそのへんを先読みしてこの日の相場急騰につながったと分析」なんて出てました。いやはや「時間軸が短くならないように配慮」ですよ何ですかそりゃ。

いやまあ確かに緩和解除してもまたビハインド・ザ・カーブに戻してゼロ金利引っ張るという選択肢はあるんですが、それなら何で量的緩和解除を行ったのか意味が判らんですわな。まあ日銀がそんな逆戻りみたいな事をするとは到底思えませんが、そこまで期待が盛り上がると何だかなあって感じです。まあこのお方の見立てであってマーケットのコンセンサスかどうかは別ですが、スワップの強烈な受けは何かそんな感じもしますわな。あ、この記事は「」書きの記事じゃないんで記者さんがコメントを端折って書いた可能性が高いので、このコメントした人は別の意味で言ってるかもしれません。念の為。


○変なリップサービスなら出さない方が良いと思うんですが

まあそんな感じで盛り上がっているようですが、昨日も申し上げましたようにあたくしの予想はそんなに時間軸を縛るようなものが出る訳無いと思います。ただし、解除と同時に長短金利が上られても困るので、何となくゼロ金利を引っ張るような雰囲気を漂わせるようなモノが出てくる可能性は大だと思います。

で、そうなりますと市場の方はまたまた「ゼロ金利が引っ張られる」と勝手に期待して金利形成を行いだしますんで、我儘放題の市場ちゃんは「延々とゼロ金利じゃねーのかよ利上げなんてしらねーよー」状態になってしまい、さて金利の引き上げでもしましょうかって時にまたぞろ地均しをしないといけないっていう悪循環になりそうな悪寒が致します。で、そこの時点で強引な論理展開で今までの妙な期待をぶちこわしにかかるといつまでたっても市場との対話とやらも達成できないと。

市場の期待安定化とか対話がどうのこうのとか言いますが、要は一貫した論理で政策運営をしていけば経済物価情勢を市場のほうが適宜判断して右往左往じゃなかった動く訳でして、ビハインド・ザ・カーブの筈がいつのまにかジャストタイミングになり前傾姿勢になるというようにスタンスが変化するからそっちの読みの方が金融政策予想のキモになってしまうというのはご勘弁願いたいものですな。

どうも市場との対話と言いつつその場その場で火付けと火消しを繰り返しているようにしか見えませんし、一々何か言ってくれみたいな状態で日銀の一挙手一投足を見る市場も市場ってところかと思いますが、正直言って。


米国でもついこの前までは利上げあと1回だの利上げ打ち止めだの言ってたのにここの所はいきなり利上げ3回でFF金利の予想が5.5%まで上昇しちゃうという位で、市場にメッセージ出さなくても散々右往左往するのが市場クオリティ。まあこういう感じで市場の期待が極端から極端に振れる時ってのは色々な意味で転換点を迎えているのかなあとは思うんですが、中央銀行が一々それに併せて何かメッセージをだしていたら、それこそアラン・ブラインダー元FRB副議長が言う「自分の尾を追う犬」状態になってしまうと思うのでありました。



○まあだいたい大まかな読み筋

いやまあ読み筋どおりに行くわけは無いのですが一応。

とりあえずは何か市場が買い材料と勘違いするようなものと一緒に量的緩和解除を行うのでとりあえず一旦買われて金曜の5年国債入札となるざますか。まあ「市場は皆が困る方向に行く」の法則どおりの展開になりそうですわな。解除直後かつ雇用統計前で週末の入札とはご愁傷様でございます。

まあ足元の金利は運用側も足元にシフトしている関係で上り難く、期末越えもそう波乱は起きないでしょう。問題は今月末(ですよね)のCPIとか来月の短観とかの数字という感じになって、またまた注目はファンダメンタルズに回帰してくると思います。というか思いたい。

政治日程とあわせた読み筋という点では、政府のデフレ脱却宣言に合わせて金利の引き上げって目はある(デフレ脱却しているのにゼロ金利を引っ張っているのは変という理屈が出てくるでしょう)と思いますんで、そうなると勿論物価情勢次第ですが、夏の利上げ懸念は続くと思います。今回出るであろう安定化策もどきで変な期待が発生すると話がややこしくなるんですが、既に量的緩和解除でお約束を見事に骨抜きにしたのに、リップサービスでまたまた期待が発生したら市場も随分お人好しですなあって感じですけど、笑。






2006/03/08

お題「6か月ものTBであらら」

○恥ずかしながら訂正とお詫び

お題のお話をする前に以前申し上げたことに間違いが思いっきりあったので訂正を致します。あー情けない。と申しますのは、短期国債&政府短期証券の利回りの話。

国債の入札を価格競争でやった場合に落札結果を発表する財務省では「平均落札価格」「最低落札価格」を発表しるんですが、その時におまけで「利回りいくら」ってのを発表します。で、その利回り計算なんですが、短期国債&政府短期証券の場合には(100円落札の時以外)常に財務省発表の利回りは市場の呼び値の利回りより低い数字が出てくるようになっています。

で、先日はこれを端数処理の関係などと大嘘を書いてしまいましたが、よくよく検証してみたら(というか昔からそういう計算方法だったんですが)財務省発表の利回り計算は残存日数を発行日から償還日までの両端入れで計算していまして、債券流通市場での呼び値は経過日数を受渡日から償還日までの片端入れで計算している(よって財務省の方が経過期間の日数が常に1日長くなる)から違うのでございました。どう考えても端数処理でそこまで数字が違わないだろうと思って検証すること5分で気が付きました。

謹んでお詫びいたしまして訂正致します。

昔は国債の利金が両端入れ方式で計算されていまして、その当時からの計算方式を財務省発表利回りでは踏襲しているということかと思います。いや過去においては割引短期国債の流通市場でも経過日数を両端入れで計算して利回り⇔単価の換算を行っていたのでついうっかりしておりました。

たぶん国債の特殊利金が無くなって、利息計算が片端入れになったことの影響だと思いますが、記憶が定かでないので誰か教えてと申し上げたいところですが、大体間違えるとメールがやってくるのに、さすがマニアかつ参加者僅少市場だけのことはあって自分が気が付かないと放置プレイになるという商品のようで誠にアレでございますな(笑)。


○そんなマニア市場であらら

昨日は物価連動国債の入札もあったのですが、あたくしはこの手の商品を苦手としているので華麗にスルーしまして6か月ものTB(割引短期国債)の入札話でも。

前日のWI取引の気配がだいたい0.08%−0.10%というお話でしたが、当日になってみるとちと弱めでして前場の引け時点では0.11%にはビットがございますなあという状況。昨日も申し上げましたようにこの債券は品薄のせいもあって妙に確りだったので、まあそんなに元気に入札する人もいなかったんでしょうが、入札の蓋を開けてみれば平均落札価格が利回り換算0.1218%(財務省発表利回りは0.1211%)で最低落札価格が利回り換算で0.1401%(財務省発表ベースで0.1394%)とまあ気持ちよく流れること流れること。

先週のFB入札でも平均0.07の最低0.08(正確にはちと違いますがだいたいね)という入札で流れやがりましたなこれはって感じでしたが、前場の引けのビットサイドから3bpも安いところが最低落札とはまあ今回もまた威勢良く流れましたって感じでして、そのせいなのかは知りませんが落札結果発表(12時40分)後債券先物も下落。それまで前日比上昇していたユーロ円金先も下落(こっちは当たり前だが)致しまして、こりゃまたビックリでございました。

まあ償還が9月11日ですから保有期間中にワンチャンス利上げの可能性なきにしも非ずという事もあり、あまり頑張って入札する必要もないんでしょうが、先月の入札の時は入札空振りでのショートカバー(かどうか知らんがたぶんそんな感じ)で買いあがる人がいたことを思うとまさに隔世の感というと大げさですな(苦笑)。


本日のFB入札ですが、WI取引の最終は0.08%だったらしいので、まあそこからスタートしてどこまで下をやるのかねえって感じですな。何せ4兆1千億円ありますんで、金融政策決定会合祭りで流れると笑えるのですが、何ぼなんでもねえって気もします。発行日が14日の月曜ですんで、うっかりすると保有期間の全てが量的緩和解除後にかかりますな。その間に期末ありGWあり6月2日の税揚げありと短期金利が瞬間風速を出しそうな日が続々ありますが、まあそんなに無茶苦茶なことにはならんでしょう。昨日の6か月TBも流れた分は戻って引け時点では0.12%レベルはビットだったようですので。


○で、政策決定会合ですが

NHKの7時のニュースでは2番目の扱いでしたが、解説つきで大きな扱いになってます。で、焦点は「物価見通し」という話になっているようでして、まあ話は解除を前提になってますな。ご参考までに。

2日制の初日は昼過ぎから1時間ちょっとしかやらないようなのですが、今日はさてどうなるのでしょうという話はさておいて、一応予想をしておくと、量的緩和は解除して、金利政策のディレクティブは「ゼロ近傍」という表現になるかと思います。道しるべ云々に関しては良く判らないですが、時間軸再設定みたいな話は出てこないと思います。ただし、市場が勝手に時間軸再設定と解釈して反応するような書き方をしてくる可能性は大いにあると思います(そうやって市場の期待を目先安定先行き不安定化させるわけだが、笑)。

まあ色々と読み筋は披露されるのですが、結局は物価情勢次第なのでして、量的緩和解除にもめげずに物価が順調に上昇してたら政府は堂々デフレ脱却宣言をして、日銀も短期金利を0.25%まで持っていくという話になるんでしょう(ベストシナリオですが、果たして上手く行くものか?)し、そうじゃなかったら結局ゼロ金利を引っ張るしかないですわな。

毎度毎度のことですが、結局今回も市場では政治的な読み筋の話で大盛り上がりになって、本来の物価の話が霞んでしまった(ちゃんとCPIの分析とかしている人たちは市場にもいますんで市場の名誉の為に念のため申し添えますが)のは日本の伝統芸能なのでしょうか。と書いてる自分が率先して新聞記事の意図読みとか要人発言の意図読みとかに走ってるんで人の事は全く言えないというまさにブーメラン発言とはこのこと(自爆)。何か今回もまた「結論ありき」でさてどうなるのやらという話になっちゃいましたな。まあ地均しから始まっているので仕方ないということで勝手に責任転嫁(こらこら)。

日銀の考えていることを表明して透明性を確保するってのはまあ頑張ってねとは思うのですが、日銀総裁があっちこっちで講演したり国会にやたらめったら呼び出されて話をさせられたりとお喋りにならざるを得ない状態になっている上に、審議委員の皆さんにも何かこう不意規則発言が多い人が散見される状態でこれ以上「透明性」に熱心になられても困るなあというのが正直な印象でございます。






2006/03/07

お題「まあ様子見モードではございますが」

○なんちゅうか整合性の無い反応ですなあ

海外の為替市場では(モーサテが言ってるのが正しければ)量的緩和が解除されても超低金利は続くので円安らしいのですが、じゃあ昨日の国内債券市場はどうなっていたかと言うと先物とか中短期国債が売られていたわけで、引けで2年カレントは前日比2毛甘の0.5%ですが20年や30年は変らず。短期ゾーンは影響なしという反応してまして、「量的緩和政策が解除されても超低金利が続く」というのと全然整合性がございませんわな。

で、その短期ゾーンなのですが、本日のスポットスタートの1日物(スポネ取引)現先やレポ取引は政策決定会合2日目であります9日スタートの10日エンドですが、昨日の感じでは全然金利が上昇する気配無し。というか短期資金の運用サイドも警戒モード全開となってまして(多分無いと思っていても間違って9日午後の決定会合後に足元金利がいきなり跳ねたらシャレにならんので)運用待機資金の方も転がっているという感じのようですな(^^)。

本日は6ヶ月TBの入札が行われますが、この債券はどこの誰がせっせと買っているのか知りませんが、妙に割高になっておりまして、とは言えショートで向うには流動玉が全然無いので向うためのコストが掛かりすぎ。よってここもとの金利上昇局面下において万年割高状態になっています。あまり参考にならない入札でしょう。だいたいこの辺のゾーンから1年ちょっと位までのゾーンに関しては一般債の売りが結構出ているのでわざわざTB買わなくても買うもの色々とあると思うんですが。


○微妙な答弁が続きますが

参議院予算委員会のインターネット中継を何となく聞いていたのですが、結局ソースはブルームバーグニュースで参ります。

・小泉首相の牽制だか牽制じゃないのか判らん発言

『デフレ脱却の兆しはみえてきたものの、このまま脱却といっていいのかどうかという点については慎重的な立場だ』
『仮に金融緩和を解除した場合には、二度と、失敗したら元に戻すというようなことがあってはならないと考えている』(以上ブルームバーグニュース)
『賢明な日銀総裁のことですから、私の発言も含めて、状況を見極めて判断すると思います』(ここの発言だけ自分のメモ書きベースです)


特に賢明な日銀総裁がどうのこうのってのは民主党の平野委員に何度も「首相は日銀に申し入れることは無いのか」と念を押されて、そのたびに「賢明な日銀総裁」を繰り返してました。

これを聞いているときは「ひえーこわいよー」などとと思ったのですが、世の中には冷静に聞いている人はいるわけで、「量的緩和の解除」じゃなくて「金融緩和の解除」と言ってるので、これは実は量的緩和解除を牽制しているのではなくて「利上げの牽制ではないか」という意見も聞きました(いやまあネタバレしちゃうと本石町日記先生に言われて気が付いたんですけどね、あっはっは)。確かにそれなら別に量的緩和解除しても良いけど利上げは駄目よって読めるので話がだいぶ違う。

まあ小泉首相の場合は素で言い間違えているだけとか、量的緩和解除と金利引き上げの違いを判って無いんじゃネーノとかいう気もしますが。

それと2番目の「失敗したら二度と元に戻うようなことがあってはならないと考えている」ってのも、まあ多分小泉首相は何も考えてないとは思いますが、意味持って言ってたらそれはそれで示唆深いお言葉(^^)。と申しますのは、この「元に戻すようなことがあってはならない」ってのがまさに量的緩和政策のコミットメント3条件にある「再びデフレに戻らないという見通し」そのものである訳でして、デフレ脱却という重要なテーマを抱える日銀が「ビハインド・ザ・カーブも辞さず」で行っていた筈の量的緩和政策のキモだったんじゃないんでしょうかねえという感じですわな。

ま、市場的には牽制が入ったという反応にはなっていると思いますが。


・福井総裁本当に安定化策とやらを出すのか??

『今週8、9日に3月の金融政策決定会合を予定しているが、ここにおいても、経済、物価情勢を総合的に点検したうえで、金融政策運営について適切な判断をしていきたいと思っている。(中略)会議の討議を通じて、創造的な結論を出すプロセスを出していきたい』(ブルームバーグニュースより)

まあ以前から散々それらしい話をする上に新聞各紙でリークだかアドバルーンだか上げているので、本当になんか出てくるのかもしれませんが、正直こっちも白紙で臨むしかないなあという感じです(笑)。インタゲみたいなものが出てくるとは到底思えませんので、展望レポートのおまけみたいなものがちょろっと出てくるだけではないかと思いますが。

ま、これだけ言ってるんだからおためごかしみたいな物になる気はしますが、何か出てくるんでしょう。まあ日銀の先行きの行動を縛るようなものは出てこないでしょうし、そもそも量的緩和政策コミットメントに見られるように最終的には色々理屈をつけて空文化するでしょって思いますけど、市場はそこまで意地悪じゃないからちゃんと反応してくれると思いますよ。おっほっほ。


○以下与太話ですので話半分に聞いて下さい

で、まあ何で3月解除を猛スピードで地均しして解除することになった(かどうか確定してませんが)のか未だに良く判らんのですが、この際政府に嵌められたという陰謀論を元に(笑)、日銀が責任を取らされない経路を妄想すると・・・・

(1)解除しても景気の腰折れも物価の下落も発生しない

→まあこれが普通に何とかなって欲しいシナリオですが、今般の解除強行(?)によって「いざとなったら日銀のせいにできる」ということで暫く大人しくなっていた財政再建路線が大強化されると困りますな。景気失速しても日銀のせいで、ついでに日銀法改正しちゃったらなおオイチイですかそうですか(まさかそんなあくどいことは考えて無いと思いますが、と一応付け加えておかナイト^^)。


(2)解除を延期して日銀の信認が低下となって・・・・

→で、プチ日本売りみたいになってしまうとこの場合は政府のせいですなあ。「金融引き締めをしても低インフレ」ってシナリオだからこんな金利の中でもフラットニングしている訳でして、これが逆回転して長期金利が上昇でもしたらそっちの方が大騒ぎになるでしょう。陰謀論を元にしておりますので(笑)、これで「予期せぬ長期金利上昇」が発生して政府が泣きを入れるのも大笑いなので許す・・・・ってかなり冗談なシナリオですが。そもそも解除延期してそういう動きになるかというとそれ自体が怪しいですな。どうせ4月に解除するんだし。


(3)解除して時間軸再設定

→その結果、再度ビハインド・ザ・カーブの政策運営に戻って、インフレ期待の醸成と共に長期金利が上昇する形での金利上昇が発生すれば、もともとの「出口は市場が連れて行ってくれる(by植田前審議委員)」の図になるのですが、まあそれをすると何のために量的緩和政策を解除したのか(解除した側にとっては)訳判らんでしょうから残念ながらその可能性は殆ど無いとは思いますが、やったら驚く。

#この部分はおまけ与太話で書いてみただけですので、あまり真に受けないようにお願いします(^^)。





2006/03/06

お題「3月解除のようですが」

自分の書き物を整理(12月分まで分類終了)してたら、11月から12月頃は「2段階解除(量的緩和解除してもその後の利上げに時間がかかる)ならば3月解除したって無問題」って書いていたのですな。とは言え今の解除は2段階解除っぽい動きじゃないんですがね。

それにしても福井総裁の講演やら発言やらが多すぎだなあと過去の駄文を整理していて思うのでありました。市場との対話というよりはマッチポンプにしか見えないんですが、笑。


○コアCPI+0.5%

まあ形式要件としての「数ヶ月ゼロ以上」は満たしましたが、先行きデフレに戻るリスクは無いのかとか言う話に関しては何せ福井総裁におかれましては「先行きの見通しがプラスなのにデフレに戻るリスクってある訳無いでしょ」的なご発言を繰り返しておられますので無問題って事なんでしょうな。

でも、展望レポートでの先行き見通しって「量的緩和解除後の金融政策推移」を考慮しないで出している数字だったと理解しているのですが、解除した後の影響を加味した上でなお大丈夫だっていう話を聞いたことは無いですなあ(さすがに解除する時には解除した後の状況での先行き予想を出して下さると思いますが、何せ「政策に非連続的な変化が無い」という事になってますんで気にしないかも)というツッコミは野暮ですかそうですか。

まあ市場予想の+0.4%以上だったら3月解除でしょって話になってますんで解除は解除になるんでしょうが、市場に折角織り込ませた4月解除をかなり強引に1ヶ月前倒しして市場から総スカンを食って(そういやロイターがストラテジストなどに緊急アンケートして日銀の市場との対話に100点満点で何点?ってのをしたら平均が71点らしいのですが、そりゃまあ名前を出されるのに0点とはつけにくいだろうな。完全匿名でそれをやって同じ点数が出るんでしょうかねえおっほっほ)まで突撃する意味はどこにあったんでしょうかねえ。

なお、相場神であらされるところの某証券のM先生は量的緩和解除で株式市場は悪材料出尽くしになるそうです。ガクガクブルブル。


○ただのアリバイ作りかそれとも・・・・

想像垂れ流しで恐縮ですが。

CPIの数字を受けまして閣僚の皆様をはじめとして小泉首相までが「まだ極めて緩やかだがデフレ状況ではないかと思うんですが」というような発言が連発。与謝野さんや谷垣さんと言ったどっちかというと日銀寄りと目される人たちの発言が真っ先にヘッドラインに出てきたのには「ああこの人たちアリバイ工作してるんだろうなあ」などと意地の悪い見方をしておりましたが、小泉さんまでそう来るのかとちとビックリと言うほどでも無いですがやや意外。

日銀寄りと見られている人たちが釘をさしておくのは、今回の解除が上手く行かなかった時に日銀の巻き添えを食らわない為に重要な事でしょうが(笑)、小泉首相やら自民公明の幹部まで「ちと早いのでは」と合唱しちゃってるのはこりゃまた何なんでしょう。

まあアリバイ工作なのかもしれませんが、何かそれ以前に「日銀さまどうぞ解除をおやりなさい全然お止めしませんよ」って雰囲気が政府方面に流れていたことを考えると、もしかしてこれは日銀をその気にさせて「前倒し解除」に踏み切らせておいて梯子を外す大作戦の一環だったりしたらキングオソロシスでございますな。解除がうまく行ったら別に良かったですねで終了だし、景気が何らかの事情で減速したらここぞとばかり「皆がまだ早いと言ってるのに解除を強行した日銀はケシカランので日銀法改正」という作戦だったりして。もしや日銀は嵌められたのではないかという悪寒もするのでありました。


○そんな訳で短期ゾーンは相変わらず動いてますが

水曜日に入札が実施された3ヶ月ものFBは、ご案内のように入札前日からは0.06%から売り込まれて0.08%の入札最低落札価格となり、さすがにそれは安いだろうという買いがゴッソリ入ってショートカバーを巻き込んで0.065%に戻った後、木曜日には「金利安定化策」や「物価参照値」の話もネタにして0.06%近辺となり金曜は何と0.06%割れの水準まで買い進まれました。

ところがその後、何か大口の売りがあったらしく、金曜の夕方になってみるとまた0.07%近辺まで売られてしまったようですな。いやまあ水曜に買ったものもう利食いですかそりゃまた節操ございませんなあって感じですが、それだけ短い所も動くようになってしまったという事でもありましょうな。ちと無節操っぽいが。

そんな訳で、3ヶ月ものだけじゃなくて残存1年近辺とか如何にも利上げの直撃弾を食らいそうな地帯にも売り物があるのか業者の在庫が重いのかしりませんが、終わってみれば債券相場はブルフラット(というのも株が下がっているからとかあるんでしょうがそれはそれでどうなのよと思うが)してますが、1年だの2年だのというゾーンはヘロヘロになっておりますわな。

今週は火曜に6ヶ月TB、水曜に3ヶ月FBの入札がございますが、何故か6ヶ月ものは品薄気味で妙に利回りが低いのであまり参考にならないんで、参考にするのはまあ3ヶ月FBっちゅうことですわな。次回債は発行日が来週の月曜ですので保有期間全期間が量的緩和解除(したらの話ですけど)後にあたりますんで、解除後の現先金利水準とかをどの位で読んでいるのかとかが見えるかなと楽しみにしております。ただまあ期末にGWに6月2日の税揚げという資金需要が高くなりそうな3発のイベントを越える債券ですんで、プレミアムはちとつくんじゃないかと思いますが。


#まあそんな訳で本日もまた雑談で恐縮至極でした。





2006/03/03

お題「今度は物価参照値もどきの投入ですか」

さあCPIですよ〜♪

○アンワインドの動きなのかそれとも

昨日の10年入札は・・・・・実はあんまり真面目に見てなかったというあるまじき状況だったんで、正直「ああ1.6%をやっとぶち抜けたのね」以外の感想はあまり無いのですが(おい)、前日に米国30年債がゲロゲロになって、本邦でもイールドカーブがスティープ(5年は1毛強で20年は4甘とか毎度毎度極端です)しましたな。まあ今までのフラットニングが「おいおいどこまでやるんだよ」ってところで、まあイベント(ECBの利上げは昨晩やりましたが)前にアンワインドなのかもしれませんし、フラットニング一辺倒から少し見方が変ってくるのかもしれません。

と、全然分析になってない両建ての話をしてますが(笑)、もともと「何でこの短期金利水準でフラットニングの流れになるのよ」って思ってるあたくしの場合、昨日の動きをみて「それ見たことか」と言いたい所ではございますが、最近はダマシが無闇やたらと多いのでここで喜ぶとまた赤恥青恥かも(笑)。よって判断保留。

まあとりあえずは連続利上げ(来年3月まで2回から下手したら年内2回の利上げ)を織り込む勢いの中短期債と全然金利が下がらなかった長期超長期ゾーンの行き過ぎたバランスのズレを修正しているだけなんでしょうが。


○昨日のFB3ヶ月もの

一昨日の入札で何か疲れたよパトラッシュということで昨日は落ち着いたと言うか閑散のようで。まあ大体入札のある水曜日に祭りになって木曜は翌日の短国買入に向けて皆さんシーンとなるというのが短期国債クオリティなのでいつものパターンですが、0.062−0.065%くらいの気配のようですので、まああたくしの個人的イメージとしては妥当な所(ちとこれでも売りすぎっぽいが期末前だしイベント前だし需給も悪いし)なんじゃネーノとは思います。とりあえず落ち着いたように見えますが、本日のCPIと短国買入の結果でまた新発WI取引(当然ですが来週の新発FBの償還は今週のFBから1週間先になりますのでまあ利回りは上るでしょ)でちょっと動きがあるかも。


○で、物価参照値の公表がどうのこうのという話ですが

一昨日の「金利安定化策」報道に続いて昨日メディアから報道されたお話は「物価参照値の公表」というものです。まあ報道されている内容も微妙にまちまちでして判断しにくいですな。ちなみにこのニュースを最初に出したのが時事通信ですが、大和SMBCの白石さんがその前(1日午後)に同趣旨のレポートを出してます。

いくつかの見方があるようですが、一応私見をば。

・望ましい物価イメージを上回る状況まで低い金利を保つという趣旨

日経新聞の報道によるとどうもそんな感じになっているようですが、仮に「時間軸の再設定」という話になるのであれば、今まで何のために量的緩和解除の地均しをやってきたのか全く意味が判らなくなります(以前「金融引き締めして金融緩和」などと申し上げたと思いますが)わな。まあそういう「誤解」を市場に与えて金利を安定化させるという作戦を取るのかもしれませんが、それは筋がかなり悪いですわな。

「低い金利を保つ」と言いながら「別に翌日物金利1%は高くありませんが何か?」ということで堂々利上げするという手もあるでしょう(と言うかどうせそうなるでしょう、苦笑)が、申し訳ございませんが現在の日銀はグリーンスパン流をやる為のトラックレコードが不足しておりますので、そういう運営をすると「話が違うじゃないか」ということになるかと存じます。やらない方が吉かと。


・望ましい物価上昇率の数字を一定のレンジで公表する

大和SMBCの白石さんによれば1%を挟むレンジあたりの数字を政策運営を縛らないようにやや広めに(0%〜2%とか)出すのではというではないかとのこと。確かに今までの日銀偉い人発言から類推するとそんな感じの数字になるんでしょうな。

で、その数字内にあれば金融政策をいじらないという訳では無いのでよろしくって話になるのかもしれませんが、これまた市場が妙に誤解しそうでして、市場が誤解しちゃうとその反動もまた凄まじい物になりますんでまあ生煮えで出すのはどうかなあと思いますが。

それからCPIの先行き見通しを示すというというのも出てたらしいのですが、展望レポートとどこがどう違うのか意味判らん。またお馴染みの「今までやってるものを新施策でございって出す作戦」ですかな?



で、これらの話は基本的に債券の買いなのかどうかって話になりますが、まあ売りになるような出し方をする訳は無い(売りになったら大笑い)のは当然として、本当に買い材料になる内容なのか、それとも目先の目くらまし物件を市場の誤解を利用して買い材料らしく仕立てるかって話になりますと、あたしゃー後者を予想しますがね。

例えば望ましい物価上昇率が0%−2%とでもしたら、コアCPIがレンジの中心の1%になるまで利上げ無しと市場が勝手に解釈するかもしれませんが、例えば0.5%になっても別に金融政策をいじる事は可能なので、勝手に「時間軸が設定されたぜベイベー」と喜んでいると足を掬われるの巻になるかもしれませんな。BOEなんて住宅価格の上昇をネタにCPIがレンジの下限にあるのに金融引き締めしたことある訳で、そのあたりは日銀の中の人は念頭においていると思います。


まあ何と申しますか、あまり議論が練れてないのではないかと思われるこの段階で、量的緩和解除のバーターのような形で玉虫色のものを出すというのは(目先は良いかもしれないけど)将来ややこしいことになるだけなんで、もうちょっと議論を深めてからぶち上げて頂きたいものです。

まあ時間軸でビハインド・ザ・カーブとか言ってたのにいつの間にか「ライトタイミング」になり、気が付けば「失敗を恐れずリスクを取って」とかフォワードルッキング状態の発言が炸裂してしまうような人が本当に「約束」を守るのでしょうかねえという突っ込みをしたくなる所でもありますが。結局語句の解釈問題で先行き骨抜きになる予感。


ま、これもアドバルーン大作戦の一環なのかなあって思うのですが、それにしてもこういうやり方はあたくし的には何か物凄く政治的な感じがしてどうも如何なものかと。あたくしはこのやり方が日銀の総意だとは思いません(関東軍みたいな人がやってるんじゃないかと邪推)です。出すなら出すで決定会合で深く論議したというのを見せて(議事要旨は1ヶ月〜2ヶ月後に公表されるんだし)スパッと出せば良いじゃんと思うんですがねえ。何で直前になって観測気球リークみたいなことをするのかなあ。

しかしまあ火付けと火消しの繰り返しってのは勘弁願いたいです。と、今日もまた雑感で恐縮至極。







2006/03/02

お題「ますますグダグダになってきましたが」

相場は大荒れでただでなくさえ忙しい本業がなお多忙となりヘロヘロなのでまあ本日はあっさりとまいります。

○3週間で利回り何と10倍!

はい、毎度お馴染み3ヶ月ものFB(政府短期証券)の話です。昨日実施された3ヶ月ものFB入札ですが、平均落札価格が99円98銭2厘で0.0714%、最低落札価格が99円98銭で0.0793%とテールが0.8ベーシスも流れるヘロヘロ入札。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/fb/fbnyusatu/resul180301.htm

セカンダリーでも当初は0.08%(発行体の発表ベースの利回りは単価→利回りでして、流通市場での呼び値は利回りなんで、利回り→単価の方向で計算します。で、その間の端数処理の関係上財務省発表ベースの利回りはちょっと低めになってしまいます。実際は流通市場の呼び値0.08%は単価の99円98銭0厘になるので最低落札価格と一緒です。追記:最初に書いたのは思いっきり間違えです。財務省が発表する利回りは発行日から償還日までの経過日数を両端方式で計算しているので、市場の呼び値計算方法の方端方式よりも1日長くなるのが原因です。)で売り物があったようなのですが、さすがに幾らなんでもそりゃねえだろうって事で買いが入って一挙に0.065%まで戻る展開となりました。

と、申しましても、そもそも一昨日のWI取引では0.06%をつけちゃったよあーあーなどと言って状況でして、朝一番には0.06%乗せからスタートしていたので、戻ったというよりはまあ適正水準近辺に落ち着いたという方が残念ながら正しい(苦笑)。

3週間前の2月8日に実施されたFB入札の平均落札価格の利回り換算が0.0069%で、最低落札価格が0.0073%でしたので、何と利回り10倍ですよ先生・・・・って先週2週間で利回り5倍とか言って騒いでいましたのですがorz

なんぼ3月に量的緩和政策が解除になっても6月5日までの現先利回りがずーっと0.05%よりも高いって事は無いんじゃネーノと思うとさすがにこれはやり過ぎ感が漂いますが、何せ需給がねえ。


○金利抑制策検討???

昨日の日経新聞1面トップには「日銀が金利抑制策検討」という記事がありまして、そんなものは露知らずのあたくしはドラめもんのネタに当然使わなかったんですが・・・・なんじゃこの記事は??

えー、まあ色々と書いてあるのですが、一応項目別に撃破してみますね。

・翌日物金利0.1%上限に

ロンバード貸し出しというのがございまして、担保があれば日銀は公定歩合で個別に貸し出しをします(一般人には貸してくれませんよ^^)。従って基本的には短期金利(オーバーナイトなのか数日物のタームなのかというのは解釈が微妙ですが)の上限は0.1%になるというのは公定歩合とロンバード貸し出しの枠組みが今のままであれば当たり前の事です。ただし担保が無い場合は無担保で市場から取りに行かないと行けませんから高くなる場合もありますが、それは限界的な話。

つまりこれは安定化策でも何でもなくて、既に実施されている施策をただ説明しただけのことです。

それ以前の問題として、(この前も同じことを書きましたが)量的緩和解除をしたら日銀の金融政策の誘導目標は「当座預金残高」から「無担保コール翌日物金利」になるのですから、その時点で無担保コール翌日物金利の誘導目標が呈示されるので、「翌日物金利0.1%上限に」というのは金利抑制策でも何でもなくて、日銀が当然やる事(上限金利を明示的にディレクティブとして呈示するかは別問題ですが)でありますわな。

量的緩和政策と金利政策の違いを理解しているとは思えない大変頭の良い記事で、1面トップでこんなことを書く新聞に金を払ってなくて良かったと心の底から清々しい気持ちになった朝のひとときでした。


・長期国債買い入れ額維持

長期金利の急上昇を抑えるために日銀は長期国債の買入を維持という記事もあるのですが、現状ではこの前もお話したように2年債とかがじゃんじゃん買われてまして、その分償還もじゃんじゃん来ますので、日銀券ルールに抵触する気配は今のところ無し。

その上、福井総裁時代になってからは当座預金残高目標はじゃんじゃん増やしましたが、長期国債買い入れ額は維持しっぱなしですので、少なくとも速水総裁時代の15兆円(でしたっけ?)まではそもそも減らす大義名分がございませんわな。長期国債買入は当面維持してもそれほどややこしいことにはならないんじゃないかと思料されます。

なおもそれ以前の問題ですが、長期国債買い入れは別に長期金利の安定化のためにやっているのではなく、成長通貨の供給のためにやっておりますので、これを「金利安定化策」として公表するのは無理筋です。もっと勉強しましょう。


・短期金利の跳ね上がり防止

当座預金残高を削減する段階で翌日物金利が跳ね上がりそうになった場合には削減のペースを落としたり資金供給オペを行って市場の過熱を防ぐ案を軸に検討する。などという記事に関してはもうアホかと馬鹿かと。

そんなのは当たり前であって、金利政策をやっている最中に機械的に当座預金残高を落として金利の跳ね上がりを放置したらそりゃ本末転倒。どうも当座預金残高の数字のことばかり頭にあって、金利政策をご存じないお方が書いているのではないかと言いたくなるような低レベルの記事でございます。


・で、そもそも論なんですけど

この記事のお題が「日銀が金利抑制策検討」なんですが、翌日物金利に関しては抑制も糞もなく誘導目標なんですから日銀が主体的にコントロールするもの、というのは先ほども書きましたとおり。で、それ以外の金利に関してもコントロールするかのような書き方にも見える記事でございますが、そもそも量的緩和解除をするのは、金利の正常化によって市場機能を復活させることではなかったでしたっけ?何で(翌日物金利や短めのターム物金利は兎も角)市場に手を突っ込むような「施策」を検討するって筋が出てくるかなあって思うのよ。

量的緩和解除後にそんなに市場に手を突っ込まないといけないんだったら何のために解除するんだかって感じですし、記事にある話の範囲内であれば・・・既に存在する施策と、金利政策に移行した時には当たり前となる施策を並べて「金利安定化の施策でござい」って目くらましをするのは政策を行う者としての誠意に甚だ欠ける行動ではないかと思うんですが如何でしょうか。



○ところでこの記事は何のために?

と考えますと、まあ何かやらかす時に何故か日経あたりに変な観測記事が出てくるという日銀クオリティが以前からございますので、この記事見た瞬間にあたくしは「ああこれで3月解除確定だなあ、とほほ」と思った訳ですが、まあ毎度お馴染みのアドバルーンなんでしょう。

それにしても今回の記事は金利関連の市場関係者のかなりの人が「何だこのピンボケ記事は?」と突っ込む内容でして、誰に向けて書いた(書かせた??)記事なんだかって感じでございます。ちょっと幾らなんでもこれは如何なものかと。

でもまあ今朝のブルームバーグニュースの後講釈が正しければ「ゼロ金利状態が継続するという見方から対円でドルが上昇しました」ってんですから、何も判っていない海外のとうしかさんにめくらましができてよかったですね(棒読み)というところですかねえ、あっはっは。



・・・・もう何か3月解除先にありきでグダグダになってますな。

#という訳でドラめもんもグダグダでございました(汗)






2006/03/01

お題「もうちょっと落ち着いて考える訳だが」

昨日のドラめもんでは(昨日申し上げましたように)債券市場の中の人たちが今までになく憤激モードだったのであたくしも脊髄反射不機嫌モード全開で書きましたが、早速冷静に分析してくださったメールも頂戴しまして(ありがとうございます)色々と新聞記事なども出てきましたので、まあ昨日の続きという感じで。

○「コミュニケーション論」と「政策論」(頂きましたメールより)

ネタバレしますとこの部分は頂きましたメールからお話をしているのですが、というか誠に仰る通りなのでメールそのままですが。

『先週の国会以降の一連の発言が、(1)4月解除を前提としたものであれば、これはコミュニケーション戦略のミスの可能性がありますが、(2)3月解除を前提としたものだとすると、これは(コミュニケーション戦略以前の問題として)政策判断のミスの可能性がある、という違いがあるのではないかことです。(頂きましたメールより)』

昨日は脊髄反射モードで書いていましたのでその辺がごちゃごちゃになっておりましたが、こうやって切り分けていただくと頭の中が整理できて大変に助かります。

(1)4月解除前提だった場合

昨日の日経金融新聞2面の「ポジション」記事に一連の強気発言に関して「市場の量的緩和解除時期が4月解除一点張りになっているのでその予想を散らす」「強硬姿勢を見せて3月解除の振りをして、政府に譲った形で4月解除という元々の予定通りの行動をする」というような読み筋が披露されていたのですが、確かにまあそんなことがあってもおかしくはないですなあという感じですね。べき論で言えば無茶苦茶な話ですが。

しかしまあそれは何というか意味のある事ではないとメールを下さった方もご指摘しておられましたように、「また余計なノイズか!」と市場参加者大怒りと言うところでしょうね。今回の解除はマーケットを荒らさず(という訳でもなく、9月から11月に掛けてのフラットニングで怪我人は続出したので別に荒れなかった訳ではない)に行くかと思ったのですが。

(2)3月解除前提だった場合

先ほど申し上げたように市場が4月解除1点張りでそれを前提に動いている訳でして、3月解除をする事を前提に一連の強気発言が飛び出したのであれば、こりゃもう明らかな話でして「今から3月解除を徐々に織りこませるのは困難なのでブルドーザーを持ち出して地均しをしました」ということでしょう。このコミュニケーション方法もどうかとは思いますが、まあ3月解除するのに当日奇襲攻撃をするよりはマシという考えに立てば話としてはまあ一億歩譲って有りということにしましょう。

でこの場合ですが、こちらは政策論のお話になる訳でして、「わざわざ(市場が織り込んでいる)4月じゃなくて3月にする理由は何なんだ」という話になりますわな。

4月でも3月でも同じじゃんと凡下のあたくしは思うのでありますが、まあその1ヶ月を引っ張ることによって悪影響があるという政策判断が働いたというのが正しいのであれば3月解除を前提としたブルドーザー地均し攻撃もやむなしということでございましょうな。

そうなりますと、昨日「3月解除の意味する所は」などと書きましたが、3月解除を急がないといけないほど量的緩和政策の副作用(?)があるのか、はたまた物価安定の観点から3月解除を急ぐ必要があるのか。物価安定の観点で急ぐということであればその後の金利引き上げも急ぐという連想が起きますわなあ。

でも、2月9日の記者会見で総裁はこんなことを言ってた訳でして、あの発言はどこへ行ったのかと小一時間です。

『物価はプラス基調を強めていくと思うが、日本の物価に固有の粘着性、そして経済全体から見て物価が上がりにくい環境が当面続く可能性が高いと思っているので――そういう見通しが外れれば別であるが――、この前の展望レポートでお示しした通り、金利のレベルを修復していくプロセスはなお余裕を持って進められる可能性が強いと判断している。(2月9日福井総裁定例記者会見)』


#と、ここまで書きましたが、もしこれで「別に深い意味はありませんが何か?」という話ですと、まあ市場関係者揃って「逝ってよし!」と言い出すでしょうな。


○いやあの何だかな〜って感じの記事

昨日の日経金融新聞2面の左上にある囲み記事「BOJウォッチャー」。何か微妙にアレな記事が多く、血圧が上昇したり茶を噴いたりと読んでて忙しい代物なのですが(笑)、昨日の記事で「ハァ?」と思ったのは「当預残高削減ペースの思惑に日銀の中の人が困惑している」という趣旨のお話。

手元に当該記事が無いので記憶で書いちゃって大変恐縮ですが、要するに「早期の金利引き上げを織り込みだした市場に日銀困惑」って話でして、その内容ですが、「当座預金残高を所要額近辺まで削減する作業は市場動向をみながら慎重に行い、とりあえず10兆円程度(所要+4兆円)まで落としたところで様子を見るつもりでいた(日銀が)ようだ」「しかし、先日の国会答弁で福井総裁が『数ヶ月かかる』と発言したのが英語で報道された時に『2、3ヶ月』と解釈されて利上げペースが思ったより早いという思惑を産んだようだ」「従って日銀も困惑している」って話の展開だったと思います。

でも「6兆円」発言したのは中曽金融市場局長(と時事で報道されているらしいのですが、手元に時事通信のベンダーが無いので時事の記事を直接確認はしてませんスイマセン)ですから、残念!

まあ実際に調節をやる人は短期金利が無駄に跳ね上がらないように当座預金残高の縮減を行うと思うんで、間違え記事と断言するほどのことも無いのですが、まあ「6兆円」という数字を出したのはまずかったですな。



○で、まあこちとら3月解除でも何でもしてくれとヤケクソですが

一応悪態をつきまくりながらも日本銀行に置かれましてはちゃんと政策運営をして頂きたく思うあたくしとして一つだけ申し上げておきたいのは・・・・・

「市場は量的緩和解除を既に織り込んでいるので解除しても以前から申し上げているように非連続的な変化が生じているわけではない」というような趣旨の発言を3月解除(するならば)にあたって総裁が行うことだけは何とかして避けていただきたいなあと。

勿論個人的な感想であって、全体が皆そう思っているかどうかは別問題ではありますが、「市場が物価動向を見て解除を織り込みに来たんで後追いで解除しただけだぜベイベー」と取られるような発言をすると恐らく債券金利市場関係者のかなりの人たちの血圧が急上昇して机を叩いたりゴミ箱を蹴ったり悪態をついたりする人たちが続出するのではないかと思料されますので、そのような趣旨の発言だけは何とかして逃げてくださいませ。

だってかなり強引に織り込ませに行ったんですから・・・・


#ということで、2年国債入札の「またノムラか!」ネタを出せなかった。