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2007/05/31

お題「何となく8月警戒ですかそうですか」

前日比金利が下がってる表示が画面にあるのに「ニューヨークの債券市場はやや売られました」とか言われると朝から脱力すると申しますか、債券市場って所詮そんな扱いですかそうですかっていじけてしまいますなあ。というか画面を見て気が付かないアナウンサーって(他局ならともかく)テレビ東京として如何なものかと思うのですけど、とか言ってるあたくしはまだまだ日本経済新聞社に対する期待が有るんです。修行が足りんな(^^)。


○8割強の警戒でございますかな

昨日のFB入札ですが、6月4日発行9月3日償還で平均落札利回りが(例によって財務省公表数字は経過日数を両端で計算してるので通常の呼び値と違いますのでご注意)0.575%位となりまして、引けも0.575%となっておりました。テールが8厘でちょっと広がりましたが、まあそこの所はケンチャナヨ。

で、この0.575%とは何ぞやということになるのですが、FBの利回り=GCレートの足し算(ただし複利無考慮^^)として、8月の金融政策決定会合までのGCレートを最近めっきり落ち着いているので0.55%(ちなみに国債買現先オペは17日物で0.55%でした)と置きまして、8月23日以降のレートが幾らでしょとこれまた単純計算ですけど電卓叩くと0.76%位になると思います(計算間違えてたらスマン)。で、昨日申し上げたように利上げした後のGCレートを0.80%(コールとのスプレッドが今と同じだとする)とすると織り込み度合いが84%という誠にそれらしい数字が出てくるのでありました(^^)。

来週もFBの入札が当然のようにありますので、今回出来た階段がこの調子で続くのかというのが注目される所でありますが、まあ今回は9月償還に敬意を払った感じですにゃ。短期金利との比較での持ち切り/現先対応のニーズが主というか殆どでありますCPのレートは8月半ば過ぎあたりの償還から若干上昇しているようですので、まあ目線が短期市場にフォーカスしている投資家的にはさすがに8月利上げのリスクは注意しているという所のようですね。


○福井総裁の講演

国際コンファランスにおける福井総裁の挨拶(は英語で行われたようでして、その日本語訳)から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0705e.pdf

情報ベンダーでも報道されてましたけど、挨拶の中で「またこれですかあ」というのは本文2ページ目の最後の部分。

『東アジアと世界との結びつきの強まりは、国際金融面でも、このところ着実に進んでいます。金融面の結びつきが強まると、東アジア地域には様々な便益がもたらされます。(例えば・・部分割愛)しかし、金融面の結合が深まり、国際資本移動が活発になると、ある国や地域で発生した負のショックが、他の国や地域に伝播しやすくなります。こうしたショックの伝播は、先進国から新興市場国・地域という方向だけではなく、新興市場国・地域から先進国という方向でも発生することがあります。資産価格、とりわけ株価は、世界的にも地域的にも密接に連動しています。そうした状況の下では、資産価格が、時として経済のファンダメンタルズから離れて過剰な変動を示し、それが引いては実体経済に悪影響を及ぼす可能性があることに留意しなければなりません。』

一般論の話をしているとも読めますが、どうも最近の総裁様の発言をフォローしてますと、「バブル警戒」→「第2の柱強調」と読んでしまいたくなりますなあって所でしょうか。

まあ確かにバブルが発生するとその処理はややこしい(単純に退治モードに入ると悲惨な事になるのは実演済み)のでそれはそれで判るのですが、経済のファンダメンタルズから過剰な変動というのには下げの方もあると思うのですが(^^)、どうも上の方への警戒感しか見えてきませんなあ。。。。

なんだかね、どうもここもとは「第2の柱に傾斜してますなあ」と取れるような情報発信が多くて、何かそれで良いのかよと思うのでした。



○またまた余談ですが麻生さんの「異論」

あたくし的にファンだと言ってる割には最近すっかりチェックを怠っておりますローゼン麻生閣下の公式サイトを久しぶりに読んでみました(^^)→http://www.aso-taro.jp/

で、あたしゃhttp://www.aso-taro.jp/lecture/index.htmlにある文章なんぞを読む次第なのですが、3月号と4月号の資産デフレ不況の話は中々面白かったというか、あたくしが漠然とイメージするツボを突いてますな。まあ一般向けに書いてる文章だから説明がちとざっくりになっている所もありまして、全面同意は致しませんけど。
http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2007_3.html
http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2007_4.html

3月号の資産デフレの説明の中盤くらいを読んで思わず飲んでいた茶を噴きそうになりましたが^^;

『よくいわれた不良資産、貸しシブリ、貸しはがし、etc。全ての元凶はこの土地価格の暴落に端を発したと私は思っています。そこに竹中平蔵という経済現場の解っていない人の、銀行の不良資産一掃策が追い打ちをかけました。』(強調は引用者が勝手にやりました^^)

(^^)(^^)(^^)。

いやー、やはりあたくし麻生待望論者ですなあと思うのでした。







2007/05/30

お題「ちょっと注目しておきたい3か月FB入札/その他」

結局短いマーケットが何月の利上げを織り込んでいるのかどうもよく分かりません><

○9月償還のFBが入札になる訳ですが

昨日は雇用関連の数字がよろしく、消費の統計もよろしいということで、またまた相場が下がってしまった訳ですが、さすがに雇用関係の数字に関してはこれがこのまま改善続くのか大注目って事でしょうか。2年新発のクーポンが1%になったのでこれは1%100円まで売るのかと瞬間思ってしまいましたが(笑)、さすがにそれはちょっとという感じでしたな。

ちなみに、3か月後(ただし発行日から3か月なことに注意)から半年毎に0.25%利上げで誘導目標金利を積み上げていくと2年1%になるんで、まあメドの1つではあるのですが、実際のコストはコールじゃなくてGCじゃないですかというようなツッコミは兎も角、以前国債市場懇で話題になっていたと思うんですが、持ってる間の逆鞘にどの位我慢できるかという問題もあるので、まあ売るときは売るでしょ(^^)。

問題は雇用関連の改善によって、現在市場での常識というか定説となっております「経済は確りであっても物価は上りにくい」(よって政策金利が上ってもイールドカーブはフラット化)というのが「本当にそれで良いのでしょうか」という疑問が生じると大変に香ばしい相場展開が待ち構えておるのですが、はてさてどうなるんでしょ。


と、小見出しと違う話が続きましたが、本日入札される新発3か月FBの足は9月3日。8月の決定会合が22、23日ですので、8月に利上げがあったとすれば最後11日間が足元0.75%(たぶんGCレートは0.80%〜0.85%位になるんでしょ)という計算になりますので、これをどの位織り込みに逝くのかが気になるところです。

・・・・と申し上げたのですが、既発の3か月FBの利回りというのがこれまたアレでございまして、8月20日償還も8月27日償還も0.555%とGCレートとまるで同じ水準という状況でございまして(先週までは一応451回は450回以前の銘柄と差がついてたのですが、月曜になって買われてレートが並びやがりましたのですぅ)、ここだけ見てると8月利上げ織り込み度合いは堂々の0%だったりするのですな、ナンノコッチャ。

とは申しましても、CPの発行レートの方は一応8月末償還ものになると微妙にレートが上昇しておりまして(と言っても別にこうビビットに上昇してるわけではなく気持ち上昇程度のようですが)、こっちを見てると何となく8月警戒モードが入っているという感じのようですな。ま、別に100%織り込むのはアリエネーと思いますので、さてまあどの辺までやるのかしばらくは当てっこモードになるんでしょうにゃ。

OISとか金先は織り込みが早くなる傾向があるので、実際の居場所がどこなのかがリアルタイムで把握しにくいですけど現物の居場所も見ないと「市場はどういう政策変更を織り込んでいるのか」が見えてこないと思うのでした。

でね、まるで利上げ関係なしモードのFBレートなんですけど、商品カテゴリーが国債でありますので、短期金融商品としての利回りベースでの買いとはちょっと違う買いが入っている場合もありますので、ニャンとも判りにくいのでございます。ここの所毎回のように炸裂する不明札1兆だの2兆だのという人は今日も登場するのでしょうかねえ。

そういやまた話が飛んで恐縮ですが、足元金利の足し算する時に注意しないといけないのは「利上げを織り込みに逝った場合に準備預金の積み上げニーズから足元金利に上昇ドライブがかかる」ということですわな。最近だと1月、2月にそんな事がありましたんですが、マジ織り込みモードになるとそんな所まで織り込みに逝きますので、現物金利見る際にはその辺に注意しましょう。

ということで以下小ネタ。


○まあ金融政策と関係ない話なんですけどね

衆議院財務金融委員会の会議録情報を見ておりますと、ここのところ「株式会社」日本政策投資銀行法案の審議に関する物が続いておりまして、昨日アップされていたのは5月22日の衆議院財務金融委員会の会議録。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516620070522014.htm

まあ普段は参考人に日銀の人が出てこないと会議録本文は読まない(一々読んでたら時間が足りない^^)のですが、たまたま冒頭部分を読んでいたら何ともアレな質疑応答にぶつかったもんで。(以下の強調は引用者が勝手にやっております)

○古本委員 『民主党の古本伸一郎でございます。(長いので冒頭部分思いっきり割愛)その上で少しお尋ねしたいと思いますが、総裁におかれましては、たしか先回の委員会質疑の際に、政投銀にとっての財産は若い人材であるという趣旨の御説明をいただいたかと承知をいたしております。(またまた割愛、ちょっと気になる部分後掲します)これまでの労働条件で採用された方々におかれましては、新生、新しく生まれるこの政投銀の民営化後に、労働条件としては今のままで継続をするのか。あるいは、民間の金融機関、どこと比較するかにもよりますが、その民間に伍していくだけの源泉である処遇なり対価なりという意味で今の労働条件を見直していく、つまり上の方に、上方に修正をしていくというおつもりがあるかどうか、まずお尋ねをしたいと思います。』

○小村政府参考人『これからの金融界は大きな変化があると思います。その対応力を持っているかどうかがその金融機関の力になってくると思います。幸い、私どもの銀行には、先般申し上げました、二十代、三十代の優秀な人材を抱えております。この者たちがこの銀行を去ってしまうと、私どもの将来もございません。ただ、幸いなことに、この職員たちは私どもの銀行で働くことを誇りと考えております彼らの実力を最大限に発揮させること、これが私どもの任務であると思います。ただ、給与の点においては民間金融機関よりも劣ります。その分、プライドでどれだけ彼らが辛抱してくれるかということでありますが、行く行く、先生御指摘のとおり、将来は私どもの銀行が成功いたしますれば、ほかに例もございますが、社長よりも高い、そういう技能を持った職員というのも出てまいると思います。そういう給与体系も考えていかなければならない、こう考えております。』

これはこれで良い話(中の人にとっては)ので本件にケチをつける気は毛頭ございませんが、与野党マスコミ様が絶賛推進しているらしい公務員制度改革やらって上記の小村総裁答弁のような発想の逆を逝ってると思う次第でして、冷静に考えてそれで効果が上るのか公務員制度改革と思うのですけどねえ。

民営化するとバッシングどころか野党から「待遇を上げましょう」扱いとは・・・・公務員じゃなくなると随分扱いが良くなるんですなあ・・・・・

#まあ今すぐ待遇が上るわけではないようですけどね

ちなみに、この次の質疑で給与比較してるんですが、自分のところの職員平均給与とメガバンクの「持ち株会社」の職員平均給与を比較するのはそりゃちょっと我田引水じゃないんでしょうか小村総裁。まあ上の質問を読んでも判るように、質問者が「待遇を上げましょう」という方向で聞いているのでこの我田引水に関して質問者は華麗にスルーしているのでありました。「わが意に沿う答弁」とでも思ってるんでしょうね。わが意に沿ってても突っ込むべきは突っ込まないとダメだと思うんですけどねえ。

ところで古本委員の質問なんですが、引用の割愛部分には政策投資銀行に見学に行ったときの感想などが含まれていたんですが、その質問の中に妙な表現が。

『きょう、そのオフィスのフロアの中に本当に若い方々が大勢いらっしゃって、恐らく、今後のさまざまな業務に向けた、民営化を控えた上での改革におつき合いをしなきゃいけないという気持ちを押し隠すかのような雰囲気の中で、何とかおつき合いしますという雰囲気が満ち満ちてございました。』

褒めてるんだか貶してるんだか判りません><;


○レポ指標レート公表へ

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0705c.htm
レポ指標レートに関する検討結果およびパブリック・コメントの募集について

ということで、レポ指標レートが公表される運びとなったようです。関係者の皆様お疲れ様でした、というかこれから実務を回していって良い(信頼性の高い)レートが出るようになるのを期待すること大なのであります。

レポ市場でT+0(当日スタート)の市場が拡大すると色々な変化が起きてくれそうなのですが、まあ現状では無担保/有担保コールのようにホイホイ取引するには事務負担が鬼のように重いので、この事務負担をどう軽減するかちゅう話なんでしょうか。

#まあそんなことを考えると時点決済と無担保コールのコンボってのは効率が物凄く良い運営だったんですなあと思うのですが(^^)







2007/05/29

お題「雑談と人のふんどし」

ここんところスーパーやドラッグストアで買い物すると「割引が悪くなったなあ」という印象(というか多分事実だと思うが)が強いんですよね。常時値引き状態だったものが時々値引きになってみたり、閉店近くの惣菜値下げを粘るようになってみたり。牛丼230円の頃とは隔世の感を受けるんですけどね。

というような統計の話は本職の人から勉強しないでテキトーな話をしても自分の頭が混乱するだけなのでお勉強しないといけませんな。で、本日はこの話のマクラとは全然関係ないお話だったりしますが(笑)。


○ストリップス債のクーポン部分の買入消却

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c190525.htm

先週金曜に行われた国債市場特別参加者会合で買入消却に関する議論が行われていた訳ですが。

『また、ストリップス債残高が伸び悩んでおり、諸外国との比較をみてもわが国のストリップス化率は非常に小さいものとなっている。将来におけるLDI運用の広がり等を展望すると、デュレーションが長いストリップス債の元本部分に対する潜在的なニーズは高いものの、クーポン部分については今後もニーズが見込まれず、こうしたニーズの偏りが市場の拡大を阻害している旨、市場参加者から意見がある。』

『こうした状況を踏まえ、当局では、市場参加者からの要望があるということであれば、ストリップス債の市場の育成にはずみを付けるため、当面の間に限って買入消却を実施することを検討したいと考えている。もっとも、クーポンあるいは元本のどちらかのみを買入消却すると、残る片方が再統合できなくなるというデメリットもあり、そうした点も踏まえ、ストリップス債の買入消却ニーズの有無や、買入消却するとした場合の規模、さらにはストリップス債市場を今後どのように育成していくべきか等、意見を伺いたい。』

ということで議論が行われています。まあ確かに残存30年とかのゼロクーポンのニーズは物凄い勢いでありそうですが、分離後の利息部分残存6年のゼロクーポンなんて誰が買うのよって言われれば確かに仰せの通りでございますな。

で、ふと単純に思ったのは「元本部分のニーズがあるのならゼロクーポンの30年国債を発行すれば良いじゃないの」という事なんですが、よくよく考えたら(というか実はそのネタで仕事仲間と世間話して指摘されたというのが正解なのですが^^)、割引国債は償還差益に対する課税問題がある(割引短期国債と政府短期証券は特例扱いだったと思うんですが)んでしたな。残念無念。

過去(というか大昔の金利があった時代)の国債窓販実績から勘案しますと、マル優や特別マル優で利子が非課税扱いになるということで利付債が基本的に選好されてた(で、マル優や特別マル優の人はクーポン収入が好きですし)と思うんですが、長期の割引債ってのもニーズ無いわけじゃないと思うんですが。とは言いましても米国のトレジャリーゼロくらい割引率(というか利回りというか)が高ければの話なのかもしれませんが。

まあどっちにしても償還差益に関する源泉徴収(発行時に源泉徴収される、源泉徴収という表現が正確かはちと怪しい)問題はクーポンへの源泉徴収問題も絡みますので、一朝一夕に改善できる話じゃないですけど、そんなにストリップスの元本にニーズがあるんならクーポンの買入消却するのもまあ時限措置(のようですが)として良いでしょうが、償還差益に対する発行時源泉徴収問題をクリアして超長期のゼロクーポンを発行した方が話が早そうにも思えますが。将来金融商品関連課税が総合課税化するようになって、所謂課税玉問題がクリアになったら個人にも売れると思うんですけど。


などと言う話ですが、半分以上自分の古い記憶で話をしているので、実はそうではありませんという指摘がございましたらマジで教えてくださいませ。一応書き物をネットに晒している身としましては間違いをそのまま残しておくのは本意ではありませんので、その場合この辺の記述に打ち消し線打って(消すのはそれはそれで自分の間違いっぷりを忘れてしまうので良くないのですよ^^)正しいこと書かないといけませんので。。。。詳しい人教えてくださいませm(__)m

#と、クレクレ君になっているドラめもんなのでありました

(追記:確かにこの手のニーズが一定量あるようで、超長期のゼロクーポン(ただし課税玉では意味が無い)は必要かもしれません。40年国債発行する前にこっちをやった方が良さそうにも思えるのですが・・・・)



○植田前審議委員の日経新聞インタビュー

例によって本石町日記さんのエントリーを見て存在に気が付くあたくしは日経ヨクヨマナイの巻でありました。元記事は5月26日の日経新聞3面の「月曜経済観測」コーナーですが。
http://hongokucho.exblog.jp/6910909/

植田氏の主張は大変明快かつ仰るとおりとしか申し上げようが無いのですけれども、記事にある発言(の一部)を自分の備忘録として引用させて頂きたく。

『利上げの説明で日銀は政策判断の第二の柱、つまり確率は高くなくても起こると経済が混乱するリスクをかなり強調した。低金利がバブル的行動を招く恐れがあるというわけだが、上昇率がまだ「物価安定の理解」の下限でリスクを強調するのは理解しにくい』

『デフレの結果、人々の予想インフレ率がゼロ近辺で安定してしまった。物価をもう少し上げるのに金融緩和で経済をどの程度刺激すべきかが不明確だ。むしろ日銀は経済を潜在成長率近辺で安定させることに重点を置き、少しずつ金利を上げていこうとしている』

『一%程度の物価上昇を実現するには潜在成長率以上に経済をふかさなければならない。過熱は危ないから嫌だという態度を貫きすぎると結局物価が上昇せず、一種のワナに陥る。地価や株価上昇は金融緩和で経済を刺激する時に必然的に起きる』

いちいち頷くことしきりです。本石町日記さんのコメント欄も盛り上がっておりますのでこれまた勉強になりますな。と人のふんどしなのでした。



○利回り積極追及ですかそうですか

これまた人のふんどしなのですが、スラッシュドットジャパンにありますvon_yosukeyanさんの日記でどこぞの銀行様が絶賛販売中の商品について話題にしてましたのでほうほうと思いながら商品概要など拝読するのでありました。で、von_yosukeyanさんのエントリーはこちら→http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/404336

件の商品はこれです→http://www.bk.mufg.jp/tameru/toushin/fund/00314800.html

えーっとざっと読むと日経225インデックスを買って、ATMのコールを売ってオプション料を稼いで、20%下にノックアウトのあるATMのプット買って何となくヘッジしてるという商品ですな、たぶん(プットにノックアウトをつけないとオプション分のポジションが単なるシンセショートになるので意味が無くなる^^)。

・・・・・いやあのそういうのダブルバリアとは言わないと思うんですけど(というのはvon_yosukeyanさんの日記のコメントでもツッコミありましたけど)、それより「ええー?」と思うのはこのファンドの命名にある「利回り積極追及型」って所でして、確かにオプション売って利回りを嵩上げしておりますのでその意味では「利回り積極追及」なのかもしれませんがこれって入ってくるオプション料はイニシャルで確定なんジャマイカと思うわけで、別に運用期間中に積極運用をする訳じゃないと思うのですけど、何か途中で積極運用するような微妙なネーミングですなあと思うのでした。

まあ金融業界におりますと、その手の微妙なネーミングに苦笑することが多々あるのですが、時には実は自分も片棒を担いでいたりしても何らおかしくないケースも有り得ますのであまりゴリゴリ悪態をつくのも何なのですけど(苦笑)、このネーミングにはさすがに微苦笑を禁じ得ませんでございました。

なお、商品性に関する感想はあえて言わぬが花(^^)。




2007/05/28

お題「月曜なので色々と雑談」

とりあえず盛り上がってまいりました(のか?)。

○利上げ予想時期が微妙に前倒しでしょうか

金曜日に公表されたCPIは一応事前予想通りに4月の全国コアが▲0.1%となりました。中身の詳しい話はあたしゃ専門家じゃないので知らんですが、年度替りに伴う価格改定がそんなに来てないらしいですな、よー知らんが。

でもまあ何か金曜は(というか木曜からそうだったんですけど)中期ゾーンと先物中心の売りでまたまた安値引けとなってしまいまして、2年0.915%とか5年1.3%とか中々やるなその金利上昇という感じです。先物の出来高が先週水曜以降は久々に多かったですし、何かこう「盛り上がって参りました!」って感じでございますな。

寄りではCPIの数字が予想通りだったことを受けて為替こそ円高に振れたのですが、金先は指標発表後上昇で反応し、債券も朝は買い(というか買い戻し)で反応してて、どっちかというと前日までにマイナス幅縮小は織り込んでより警戒モードから売られてたと思ったのですが、その後も売りが出るとはちとビックリではありました。

いやあのですな、多分次回の利上げって概ね8月(前回利上げから半年、参院選後)から10月位までの予想で収斂してたと思う(7月予想とか年内無しというストラテジストの方はいますが、短期国債の価格形成状況を見るとまあそれは市場的には読みの範囲外かと)ので、その利上げ時期予想が8月に収束したとしても、短期は兎も角5年とか先物とかにそんなに影響するのかと思ってしまうのですけれども、まあ現実に売ってる人にはそれなりの理屈があるんでしょう。


○ということで、注目するのは2年入札と3か月FB入札

今週は火曜に2年国債、水曜に3か月FBの入札があるんですけれども、水曜以降の相場で5毛近く居場所が変った2年カレントものの入札がどうなるのかがまず注目。とりあえず目先は2年カレント0.95%くらいを目指しにやってる感じは致しますが、はてどうなんでしょうかな。2年くらいの金利になりますと(少々無理はありますが)足元金利の定積分みたいなイメージで考えられない事もないのですが、まあ8月に政策金利0.75%になって年度内に1%になるとか思うとそりゃまあ今までやってた2年0.8%台ちゅうのもちょっと割高モードということでしょうか。

それから水曜の3か月FBですが、こちらは足が9月4日と9月に突入します。前回のFBは8月決定会合越えではありましたが、8月の会合が少々後寄せになっている関係上越えた後の経過日数が少なくてイマイチ反応しにくかったので、そーゆー意味では今回の入札で既発債とハンデをつけてくるのかが注目かなあとは思います。それから、ここに来てどう見ても利上げないでしょという7月償還物へのニーズは高まっているようですし、まあ8月利上げをどのくらい織り込みに行くのかという所でしょう。全部織り込みに逝くのはさすがにやり過ぎだと思うのですが、まあ9−10月に利上げと予想してた人(あたくしもそうですけど)がその予想時期を8月に前傾してきている観(あたくしはまだ前傾してませんが)はあるようで。


○一番の敵は無能な味方であるという話なのでしょうか

金曜日は衆議院決算行政監視委員会に福井総裁が呼び出されるの巻。全ての委員会で呼び出される可能性があるようで、誠にご愁傷さまとしか言いようが無いのですが、かつて民事係争中の案件に関する質問主意書をご提出するという誠に香ばしい行為をされた岩国委員が香ばしい質問をしております。ソースは5月25日12時06分配信のブルームバーグニュース記事(記事表題は『福井日銀総裁:為替など資産価格への影響を念頭に置き金融政策』です)です。

『民主党の岩国哲人氏が、「現在の円安には国際的な批判はないのか」と質問。福井総裁はこれに対し「各国の金融政策は、それぞれの経済実態、物価の動向、その先行きいかんを基軸に判断することになっている」と述べた上で、冒頭のように語った。』

ちなみに、その冒頭のようにというのを引用すると、『相互にグローバルな時代なので、自国の経済政策運営、金融政策運営が他国、あるいはグローバルな経済に同時に影響を及ぼす。この面も十分、視野に入れながら金融政策を行うことになっている。したがって為替への影響等、あるいはその他、資産価格への影響等を十分に念頭に置きながら金融政策を行うことになっている』という発言でして、この前もそんなこと言ってた(「難しい多元方程式を解くようなもの」とか何とか)けど、他国の心配する前に自国の心配してくださいおねがいしますおねがいしますって感じですがねえ。

まあそれは兎も角として、別にどこをどう叩いても円安批判がどうのこうのという話は大きいわけではない(無い、と言いたいけどまあ皆無って事はないでしょうからこう書く)ですし、そもそも為替水準操作の為に金融政策をいじるというのは過去に何度も悪事例が発生していると思うんですが、何なんでしょうこの質問は、意味が判りません><;

『岩国氏は低金利による家計の逸失利益額についても質問した。福井総裁は「私どもの1つの計算では、たとえば1991年の家計の受取利子額が最近まで続いた場合、家計の累計の逸失利益額は330兆円くらいだ。1993年くらいをスタート時点にすると197兆円になる」と述べた。』

えーっと、そんな金利水準を延々と続けてたらとっくの昔に日本終了してるので家計の逸失利益額もへったくれもないと思うのですけどねえ。何せ10年前も無担保コール翌日物誘導金利は0.50%を少し下回る(懐かしの低め誘導ね)水準でしたので、思いっきり昔の水準を持ってこないといけないんでしょうな。

いずれにせよ、他のファクターを全部無視してそんな話をするのは無茶もいいところでして、まあ質問しやがる輩がいるから答えないといけない面はありますが、この問答は如何なものかと。


どうも民主党が金融政策に関して国会で話題にする時は、「政府与党は利上げに反対して日銀に圧力をかけている」という認識が先にあって、「それなら利上げ擁護したら与党批判になるに違い無い」という発想からどうもこう利上げ擁護っぽい質問をする傾向にあるようなのですが、今回の岩国氏のように無理筋というかどう見てもトンデモ系の話をしましても、アホアホぶりが目立って却って説得力が無くなるというか突っ込みどころを与えるだけではないかと思うのですよ。特に後者の逸失利益に関しては「昭和の高度成長時代(バブル経済時代でもいいけど)のペースが延々と続いたら今頃日本のGDPは幾ら」とかいうくらいのファンタジーな試算だと思うんですけど。

まあこういうピントのずれた質問に答えなけりゃいけない日銀にも同情の念を禁じ得ませんが、応答してると日銀が自ら進んでトンデモ話をおっぱじめているように外から見えてしまう(現にこの件は一般紙とかでもネタになってたと思う)のが実に遺憾なところでして、まさに無能な味方は最大の敵とはよく言ったものだと思うのでした。

#実は岩国氏は利上げ大反対で、わざとピンボケ質問をしたのだったら甜菜としか申し上げようがありませんが(^^)






2007/05/25

お題「相場が動いているような気がするが何故か雑談」

○さてCPI

本日はCPIの公表。確か市場予想は4月全国コアが▲0.1%だったと思うのですが、まあここの数字で次の利上げ時期に関して思惑が浮上するでしょうということでまあ注目。

でね、市場の中の人たちが利上げ時期いつなのという予想をどのへんに置いてるのかが微妙にアレなのですけれども、先日の8月決定会合越えFBの入札がそこそこ確りだった事とか、TB/FBの値付けの感じ(10月足の辺りから上昇してる感じですか)からすると、現物金利からすればまあ9月から10月の利上げ予想って感じなんですかな(どうもロングタームのGCレートとかちゃんとフォローできてないので誰か教えてちょ)。

当たり前ですが新発3か月FBの足は暫く9月ですし、高格付けと言うか指標性のありそうなネームで中々9月末越えのCPとか出てこないので(これはってのは4月の終わりごろちょっとありましたが、あの時は3月全国コアCPI▲0.3%が出る前で、ついでにちょっと利上げ話が出てたときでしたけれども、この時は目の子で換算すると8月利上げでブレークイーブンって感じでした)微妙な所が良く判らんのですけど。

ということで、コアCPIがゼロとかになると利上げ予想時期が8月くらいには寄ってくると思うので、来週以降の3か月新発FBレートとかにも影響すると思う、というか影響しないとビビルんですけど、もしかしたらFBはあんまり上らないけどCPレートが上る(CPは国債じゃないので、長期国債代替の現金というイメージで買う人が相対的に少なく、より運用目的色が強く、政策金利上昇を読み出すと買い手の手が引っ込みやすい)のかも知れませんな、などと書くとコアCPIがマイナス方向にサプライズになったりするのですが(とほほ)。

世間の一部(というか短期市場から距離のある人、具体的には為替市場とか)で言われてる「7月利上げ説」ですけど、まあそれは今日の4月全国コアCPIがプラス0.1%以上で、5月東京コアCPIもプラスっていうような「こいつはびっくりだ」というような数字でも出やがらないと、何ぼ何でもムツカシイのではないかと思うのであります。

#では、その利上げ観測時期が1か月前倒しになったら長期金利がどうなるかというのはまた需給とか需給とか需給とかいうややこしいファクターがあるんですが、短期の方がその点わかり易い。


まあ2年がとうとう0.9%(というか0.905%とかついていたらしいですが)とかやらかしてまして、この辺りは「さあ盛り上がって参りました」って感じもするのでして、その意味では「利上げ時期前倒し」というか、「利上げペースの前倒し」といった(年度内1.5回が2回とか)ところでございましょうか。

#となるとやっぱり「思ったほど年度替りの価格上昇が無かった」というケースの方がサプライズになって相場が暴れるような希ガス


○武藤副総裁の日本金融学会での講演(5月12日)

あたくしがお休みしてた時のネタのサルベージ。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0705c.pdf

お題は『中央銀行の政策決定と委員会制度』ということで、FRBとECBとBOEの事例を挙げながらの講演でございまして、まあ教科書として読むのにはお勧め。で、現在の日銀の金融政策のありかたがどうのこうのという問題ですが、最後の方で情報発信(というか説明責任という方が正しいかな)の有り方云々というお題がありまして、その最後の部分で(最近の情報発信に関する教訓)というのがございました。3点述べているのですが、まさにおっしゃるとおりでございますと思います。

『第一に、金融政策決定会合前の情報発信に関しては、合議制である金融政策決定会合では、審議や討議を通じて意思決定がなされる訳で──例えば、委員会における討議を通じて、「会合後の私は、会合前の私とは異なる」ということが起こりうる訳で──、採決が行われるまで結果は判明しませんので、会合の決定に関する情報発信が会合前に行われることはありえないということをご理解頂くことが重要だと思っています。』

ということで、これは事前のフライング報道というかリークもどき報道に対する苦言でもあろうかと思います。で、これまた調子に乗って引用してると終わらないので第2の引用は割愛しますが、少数意見が出ることによって討議のプロセスが明確化されるという話です。ということは、武藤副総裁としては先般の岩田副総裁の利上げ反対のような少数意見が出ることこそ望ましい(講演本論中にもそれに類した話があったように読めましたが)という節があるのではないかと。

『第三に、こうしたプロセスで、中央銀行が発信すべき情報とは、経済・物価情勢に関する判断と金融政策運営についての基本的な考え方の2 つです。市場参加者は、こうして発信された情報を、自らの経済・物価に関する情勢判断と照らし合わせて金利観を形成し、中央銀行は、形成された金利、イールド・カーブから市場の経済・物価認識を読み取ることができます。』

『市場との対話とは、こうした双方向のコミュニケーションです。一般論として、こうしたプロセスにおいて、具体的な政策変更のタイミングを示唆することは好ましくありません。そうしたことをすれば、市場参加者は自らの経済・物価観に基づいて取引を行うことなく、中央銀行の示唆するタイミングを前提とした取引を行うことになり、双方向のコミュニケーションとは言い難いものとなるからです。』

ということで、まあ地均し(というと物凄い勢いでそうじゃないと言われそうですが^^)路線については否定的(当然ですが)ということで、これは武藤副総裁前々から言ってますけど、仮に武藤さんが次の日銀総裁に就任された日には、会見や講演などでの不規則発言は中々見られなくなるかもしれませんな(^^;


まあそんなところで本日もサルベージシリーズでした(汗)。

#あと、昨日でた日銀レビューには偏微分記号のようなあたくし読むと人間マーライオンになる記載が無くて興味深く読んだのですが、いざ感想文書こうと思ったら自分の感想(というか疑問点)の論点がそれでいいのかという疑問が涌いてきたので書いたもの全部削除してしまいました(苦笑)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev07j06.htm









2007/05/24

お題「5月10日の参議院財政金融委員会続き」

まあ昨日は先物が8兆も出来てたとかFB3か月の入札が思いっきり無風だったとかございましたが、そのようなネタは華麗にスルーしまして、昨日ちょっとご紹介した5月10日の参議院財政金融委員会での質疑応答から参ります。と申しますのも、昨日申し上げましたように、参議院・新緑風会の平野達男委員が先般のNHKフライング報道についてツッコミを入れておりましたんで、「おお!」と思ったからなんですが。

ということで、ソースは参議院HP→会議録情報→30日以内に行われた会議→財政金融委員会で5月10日の会議(今朝の時点ではトップなので指定しなくても出てきます)でございます。平野委員の質疑応答は大体真ん中あたりでして、その中で3番目の質疑お題がNHK報道問題です。大体質疑の半分以上をこれに割いているのでありました。


○追加利上げ提案云々報道のタイミング

に関する質問に対する福井総裁の答弁から。

『御指摘の報道は、私も電光掲示板で見ておりました。そのときには明らかに金利変更の議長提案はしておりませんでした。そういうことでございますので、提案を行う前の報道という意味では、私は憶測に基づく報道ではないかというふうに申し上げているわけであります。』

で、憶測という表現じゃなくて事実かどうかという質問に改めて総裁が答弁。

『今申し上げましたとおり、私が議長として提案を行う前に報道されているという意味では、事実ではないということであります。』

まあ「結果としては事実でした」ってことなんですから、この質問のやりかたじゃなくて、ど〜せなら「議長提案をする前だったということは既に別のところでご答弁いただいていましたが、実際は報道時点で議事はどの段階だったのでしょうか」と突っ込んでくれた方がオモロカッタと思うのですが。提案してなくても議事の方向が利上げで収束するタイミングだったのか、その全然前だったのかによっても話が違ってくると思うんですけどね。(ただまあその話って議事録公開前に任意ベースで詳しい答弁をするのが本当に出来るのかという点も考えないといけなさそうですが)


○過去にもフライング報道があった話も出てくるのでした^^

平野委員の質問から。

『ブラックアウトルールというのがございますが、これは日銀の内規です。この委員会の中でもいろいろ議論がございまして、当然、財務省も内閣府も政府全体としてこれは遵守すべきものだと、守るべきものだということで、財務省からも内閣府からもそういう答弁がございました。』

『過去のいろんな報道を見ますと、量的緩和の解除、十八年三月と、ゼロ金利の解除、十八年七月の報道でも、これは私は知らなかったんですが、後で聞いたら、日銀総裁がその提案をした直後に、量的緩和の解除の提案をしました、あるいはゼロ金利解除の提案をしましたという報道が流れたそうですね。そうしますと、ブラックアウトルールというのは、要するに総裁のその記者会見まで一切そういう情報は外に流れないということになっているわけです。にもかかわらず、報道は推測でも何でもない、経過報告をしているわけです。』

『今回の二月二十一日は経過報告どころじゃない、事実に反する報道をしちゃったからまたこれいろんな問題が出てくるわけですが、このブラックアウトルールというのは、今までの財務省、内閣府、情報漏えい、情報の漏れはなかった、二月二十一日もなかったというふうに理解してよろしいでしょうか。財務省、どうでしょうか。』

えーっと、ブラックアウトルールとちょっと本件は別問題だと思う(単なる情報管理の問題)のですが、まあそれは措くとして、情報漏洩がなかったかという質問になっておりますが、当たり前ながら財務省、内閣府、日本銀行ともに既に情報漏洩が無かったことを確認済みであるという答弁になっております。


○憶測フライング報道をするという報道機関のあり方とは

という論点になっている訳ですが、これまた平野委員の質問から。

『そうしますと、マスコミさんは、もしそれが今皆さんがおっしゃったことが事実だとすれば、全く事実に基づかない報道をしたと、完璧に憶測に基づく報道をしたということになるわけです。それか、皆さん方の調査が甘くて実は漏れていたという、二つに一つなわけですね。そこで、こういう憶測報道、あえて憶測報道としましょう、あるいは金融担当大臣はもっと厳しく言いました、揣摩憶測と言いました。私、本当そのとおりだと、いいと思います。そういう憶測報道がなされるというこの状況につきまして、日銀総裁はどのように思われますか。』

福井総裁の答弁。

『マスコミの基本的な在り方というところにも絡む問題でございますので、余り私の立場で軽々なことは申し上げられませんけれども、金融政策決定会合における決定内容というのは、私どもは明確にこれは公表すると、決定が終わればそんなに時間を置かないで公表することでございますので、公表を待って明らかにされると、そのことをマスコミあるいは市場関係者により十分理解していただきたいと、私どもはそれを強く願っております。』

で、まあ願ってるだけじゃなくて厳正な対応をして欲しいと言う話を平野委員がしております。この話の部分だけで紙に打ち出すとA4で1ページになってしまうので、適宜割愛しますが。

『(前段の情報管理の部分割愛)ところが、今回は、この金利引上げというのは、もうこの短観どころじゃなくて、大変なその情報、情報というか、市場に対するインパクトは物すごく大きいわけです。もちろん、マスコミですからいろんな要するに予測報道をすることまでは制限できませんよ。ところが、報道自体が、先ほど提案をしましたという、これはプロセスの報道なんですよ。ところが、プロセスの報道をやること自体実は、ブラックアウトルールが出されている状況においてはやること自体おかしいんですよね。そして、もっと言えば、NHKさんは、ある報道機関からの、NHKさんに対する報道によると(ブルームバーグニュースの取材の件だと思います、引用者補足)、いや、しっかりとした取材に基づいてやっていると言っているんです。それが事実だとすれば、だれかがそれに対する、利するような報道を流している。ブラックアウトルールというのは、途中で余計な報道が出てきて市場に混乱を与えさせないということが、これが社会的正義ですよ。』

『(中間割愛)今回の案件については断固として、市場に対してこれ悪影響を及ぼすんですから、強い姿勢で臨まないかぬと思います。ましてや、NHKがやった後、日経新聞まで後でテロップ流したんですよ。日経新聞は、私は日経新聞愛読しているから余り悪口も言いたくもないけれども、本来ブラックアウトルールが分かっていて、この状況の中にそういう報道するというのはおかしいというのは分かんなくちゃならないんです。しかし、日経新聞のみならず、共同通信とか全部流したでしょう。(中間割愛)これは、遠慮して言うというんじゃなくて、じゃ、マスコミに、だれに対してそういうことに対していやそれはおかしいじゃないですかと言うんですかということなんです。本来であれば、私は、日経新聞辺りがこの報道自体がおかしいんだと、日本の報道姿勢がおかしいんだという報道をしていただきたかった。』

『ところが、そのマスコミ、日経新聞にしたって、今この財政金融委員会でこれだけの議論しているんですが、一言も報道していない、その後。それは自分が、要するに日経新聞は、その二月二十一日、NHKの多分報道を見てばばっと流しちゃったからでしょう。だけれども、そういうこと自体がおかしいんだということはだれかが言わなくちゃならないと。唯一私が言ったと思うのは、金融担当大臣言っていると思うんです、揣摩憶測が渦巻く市場はおかしいと、不健全だと。だけれども、それはもっと、それ以上の言葉は私は総裁として、今決定会合をやっているときにそんな憶測を流されることは本当に不健全だと、困ると、そういうことを強くはっきり言っていかないと、マスコミだって悪気があって言っているわけじゃないです。(以下割愛)』

ということで、質疑はこの後山本金融大臣と平野委員との間で、報道のありかたという論点になるのでありましたが、まあお暇でしたらご一読ありたし。(これ以上引用すると長くなりすぎるので^^)


○山本金融相の「報道と相場」のお話

とは申し上げましたが、山本金融大臣の答弁からそのあたりの部分を引用致します。

『しかしながら、今、私が近年の報道と相場というテーマで考えてみますと、一面トップに上場廃止というように書かれれば廃止されるだろうというように思うのが一般投資家の考えでございます。そうすると、やっぱりそこに損する人、得する人が出てくるわけでありまして、そこに根拠がなければやはりそれは誤った報道であり、先ほど先生御指摘されたようにインサイダーの懸念がございます。また、黒字予測を急に赤字にしたりする決算報告だってそうですし、また犯罪事実があって捜索差押報道ということもやはりそこは行き過ぎた報道ではないか。しかも、捜索差押えをしていないにもかかわらずその三十分前に報道されるだとかいうことがもしあるならば、やはりそれはインサイダー取引や相場操縦の懸念がございます。』

『そんなことを考えましたときに、必ずしも最も決定に携わった方々からの情報発信以外の部分で、そうしたニアリーであるかもしれないけれども誤った報道を出すことによって、市場関係者が損得をするという、この部分についての規律というものを我々は議論しておく必要があるだろうというように考えております。』

で、まあこういう意見を切り取るとどこかの人が「権力による報道規制はケシカラン!」とか言い出しそうな気もしますが(苦笑)、まあやはりこう市場の中の人としては、山本大臣の指摘に同意することと致します。

#という訳で、今日は引用だらけで膨大な量になってしまいスイマセン。結構どこを切るかで悩むんですよね。引用だけでも結構時間食うので、やはり国会会議録ネタは扱いがムツカシイのでありました(^^)





2007/05/23

お題「ロンバートに関する議論・・・かな」

昨日公表された議事要旨は4月9、10日分だけでしたので、先日日経新聞が報道していた展望レポート作成決定会合の内幕話らしき記事に関する話は次回のお楽しみといった所のようで。

で、今回はその4月9、10日の決定会合議事要旨から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070410.pdf

○ロンバートに関する議論が行われた訳だが

本文8ページ(ファイルでは10ページ)目の「V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」の頭の部分で興味深い議論が。

『短期金融市場の動向について、多くの委員は、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、期末最終営業日に上昇したが、総じて0.5% 前後でしっかりとコントロールされていると述べた。(途中割愛)このほか、補完貸付の利用額が期末最終営業日に増加した点を踏まえ、複数の委員は、補完貸付制度が有効に機能したこともあって、期末を波乱無く越えることができたと述べた。』

で、その次にこんな話が。

『一方、別の複数の委員は、補完貸付制度が金融機関行動や市場機能に与える影響を吟味する必要があると述べた。こうした議論を経て、これらの何人かの委員は、今回の期末最終営業日の短期金融市場の動向は、今後、短期金融市場の機能向上や補完貸付の適用金利のあり方について検討する際に参考となるとの認識を示した。』

これをあたくしなりに解読致しますと、期末だと言ってガンガンロンバートが使われるちゅうのは、ロンバートが金利回廊設定としての機能はしているけど、市場機能という意味では金利回廊が狭くねえかという論点で「複数の委員」が話をしていたということですわな。

まあ利上げ前では足元0.25%VSロンバート0.40%でしたけど、今回は足元0.50%VSロンバート0.75%で回廊の幅は広がっているのですが、誘導目標が倍になっているのに回廊の幅は倍まで広がっていないという見方も出来る訳でして(というのも妙な理屈ではありますが、苦笑)、さてまあこの誘導目標とロンバートの金利差をどうするのという議論は次回の利上げの時に課題になるのかもしれませんな。

・・・・というような話を同じように読む人はいると思いますので、恐らく本職の人からも「次回利上げ時にロンバートの幅が拡大するのではないか」という指摘あるんじゃないかなと思います。次回の誘導目標75bpでロンバート125bpってのも微妙に座りが宜しくない気もしますんで(何たる根拠レス^^)、どっちかと言うと誘導目標が100bpになった時にロンバートの幅を拡大して150bpにする方が座りがよさそうにも思えますが。


○これは・・・・・

本文7ページ(ファイルの9ページ)から。

『多くの委員は、既往の原油価格反落の影響や携帯電話の低料金プラン導入の影響などから、3月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比は、2月に続き小幅のマイナスになる可能性が高いと指摘した。一人の委員は金融経済月報の「ゼロ%近傍」という表現は、こうした小幅のマイナスを含む意味であると付言した。』

4月の金融経済月報が出たときに「物価表現の非対称性」などと悪態をついた訳ですが(笑)、一応気にしている人はいたんですかそうですか。本当にカムサハムニダ。


○内閣府の方は引き続き注文多いですな

まあ今回の決定会合議事要旨ではあまり「おお!」というのは見当たらなかった訳ですが、最後の政府出席者からの発言を見ると何と申しますかねえという感じも。本文10ページ(ファイル12ページ)の真ん中あたりに『また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。』から始まるくだりがあるのですけれども、この部分が長い長い。で、その2番目ではこうなっておりますです。

『先行きの経済・物価については、上振れリスクよりもむしろ世界経済の動向等がわが国経済へ与える影響や企業部門から家計部門への波及等が今後の経済動向の鍵となると考えられ、そうした観点から下振れリスクには十分留意する必要があると考えている。』

『(前半割愛)日本銀行におかれては、政府の政策取り組みや経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向にも配慮しながら実効性のある金融政策運営に努め、経済活動や物価の下振れリスクを考慮して、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を維持することにより、責任を持って金融面からしっかり経済を支えて頂くことを要望する。』

いやあのそれだけ言うなら2月に議決延期請求をするという行動を示していただきたかったんですけど。というか今の金利水準がその「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境」なのかどうかの内閣府様のご意見が良く判らんのですよね。大変恐縮ですが「言うだけ番長」の香りがしますなあという感じではあります。


○これは別件ですが参議院財政金融委員会でもロンバートの話が

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/166/16605100060011a.html
上記URLでちゃんと見られるかちと怪しいのですが、その場合は
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/main.html
から見ると吉かもしれません。5月10日の参議院財政金融委員会会議録より。後半の西田実仁委員(公明党)の質疑の中盤あたりから。

(西田委員の質問から抜粋です)『特に長短金利の形成システムということについてで、まず短期金利でございますけれども、これはちょっとやや技術的な話ですけれども、短期ゼロ近傍金利は、今、日銀の金融調節に時として異常な現象が出来してきておりまして、それは突発的な巨額の日銀貸出しの実行であるというふうに思います。今年の一月二十六日に一兆二千七百億、二月十六日が一兆七百、二月二十一日が一兆八千百億、三月三十日は二兆七千八百億円と。日銀貸出しがこの今申し上げたところでも非常に突発的にまた巨額に出ているわけですね。これはなぜでしょうか。』

ということで、ロンバート貸出に関する質問があったんですけれども、稲葉理事の説明の後に西田委員からは「それはそれとしてロンバート貸出に対する金融機関の行動審査みたいなものも必要ではないか」というような趣旨の質問がありまして、福井総裁が説明を。ちと長いですけれども。

『市場関係者の行動は、できるだけ日本銀行がいわゆる口頭指導でお行儀を正すというよりは、できる限り市場の中で適切な行動を取らなければ、あるいは読みを誤ればペナルティーを受けるということが望ましいというふうに思います。ですから、本来ですと、資金繰りの予測を誤った金融機関は市場の中で非常に高い金利で最終的な帳じりを合わせるというふうなのが一番いいわけでございます。』

『しかし、そうはいいましても、私どもは政策金利を目標とする、今であれば〇・五%前後と、この金利を実現しなければいけませんので、両方の要請を満たしていくために、補完貸付制度といって市場の中で普通に取れる金利よりは少し高い金利を払わなきゃいけない。そういう意味では市場の中で罰則金利を払いながら帳じりを合わせる金融機関が時として出ると、こういう仕組みで運営しているわけであります。諸外国の中央銀行でも多かれ少なかれ似たような仕組みになっています。』

『今の補完貸付金利の水準が十分そういう両目的を達成するために適切な高さに設定されているかどうかというのは、今後また経済がより望ましい方向に行き市場の機能もより円滑に動くようになった場合に今の水準が適切かどうか、つまり目標としている政策金利に比べて補完貸付金利が幾らか高いわけですが、この高さが十分かどうか、もっと高い方がいいんじゃないかというふうなことはこれから更に検討していく課題として残っているというふうに思っています。』

ということで、まあロンバートの幅がいつまで経っても0.25%の訳は無いとは誰もが思っているでしょうが、幅拡大は案外早めに論議になってくるのかもしれませんな。ただまあこれ自体は一般論のお話でもありますし、先ほど引用した決定会合議事要旨も単に3月期末を受けた「時候の世間話」みたいな面もあると思いますので、これだけを見て「すわ、次回からロンバート拡大」と騒ぐのは早計でしょう。

#ま、足元100bpの時はロンバート150bpでしょ

ちなみに、この時の質疑で平野達男委員(民主党・新緑風会)がNHKのリーク報道問題を突っ込んでおりまして、ほうほうなるほどと思いながら読んだのですが、その話は後日。それと、今回引用した西田委員なんですが、前職は東洋経済副編集長だそうですが、質問の内容が物凄くアレでございまして、東洋経済大丈夫かと誠に憂慮の念に耐えないのでありました。まあ読んでみると凄いですよマッタクモウ。







2007/05/22

お題「遡及ネタ:5月金融経済月報/久々に書評」

ちょっとお休みしてた分の遡及ネタで恐縮ですが、まあ相場がこの調子でございますし(おい)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0705.htm(5月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0704.htm(4月)

○目に付いた変更点は国内企業物価

既にご存知のことかとは思いますが(^^;

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の反発などを背景に、3か月前比でみて上昇に転じている。』(5月)
『物価の現状をみると、国内企業物価は、既往の国際商品市況の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて弱含んでいる。』(4月)

ということで、ここぞとばかりに反転してますよって現状のお話ですが、先行き見通しに関しても上昇という事に。

『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先、国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。』(5月)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、国際商品市況の下げ止まりに伴い、目先、横ばい圏内の動きになるとみられる。』(4月)

まあ物価のトレンドが上昇だという基本的な発想(というか願望というか・・・・)があるからなんでしょうけれども、どうもこの手の物価に関する表現を拝見しておりますと、下落方向の時は「弱含み」だの「ゼロ近傍」だのという表現をして直接的な言い方にならないのですが、上昇方向の時は「上昇」という表現になるような気がするのはあたくしの気のせいですかそうですか(^^)。


でまあその他マイナーな変更点ですが。

・公共投資

『公共投資は、足もと横ばいとなっているが、基調としては減少している。』(5月)
『公共投資は、足もと幾分増加しているが、基調としては減少している。』(4月)

まあ基本的な部分は変らないですな。あとはまあ見事に同じ表現になっています。4月月報では短観を受けて『総じて良好な業況感』という表現が入っていたのが抜けたくらいでございます。


○ということで月報の基本的な内容が全然変化ないのですな

まあさすがにCPIが下がった分に関しては表現を変えております(でも+0.1%が小幅のプラスで▲0.3%がゼロ近傍なのは日銀クオリティなのですけど^^)し、個人消費が伸び悩んでいることに関してとか微妙に表現が後退したりはしてるんですけど、基本的な部分であります所の冒頭のお言葉は、『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』というのが昨年7月(つまりゼロ金利解除)から変ってませんなという所なのであります。

#まあ昨年7月に一気に表現を前進させたノリノリ状態から基本的に変っていない(一部トーンダウン)というのは景気の拡大(してんのかという話は措く^^)ペースが相変わらず緩やかであるということも意味してそうですが。。。

金利調整(=利上げ)路線継続なんでまあ「緩やかに拡大」の旗はよー降ろさんということなのでしょうけれどもね。



○読書感想文

お休み中にちょっと読んだのですが、今回はうち2冊がbewaadさんお勧めの本だったりしますのでbewaadさんの書評の方が役に立つかと存じます(汗)。

(追記:ちなみにこの3冊ともお休み前に丸の内OAZOの丸善で買ったのですが、全部「在庫僅少」でしたので念の為)

・「武装解除 紛争屋が見た世界(伊勢崎賢治著、講談社現代文庫)

もともと建築家を目指していた著者が都市計画分野へ関心が移り、留学先のインドで40万人のスラム住民組織に加わり行政から開発を勝ち取りインド公安にマークされて国外退去処分になったのを振り出しに、シエラレオネやアフリカでの開発援助、東チモール、アフガニスタンなどでの紛争処理に携わった話を中心に進行します。いやあの何と申しますかこういう生活と全く縁が無い金融業界の片隅での現場職人であります所のあたくしとしては興味津々で読めました。

特に国際情勢に関しては日本のソースだけ見ててもアレですので、できるだけ海外の報道とかも見ようとするのですが(でも悲しいかな英語メディアを何となく読むというか眺めるだけで精一杯)、我ながらよくわかっとらんかったなあという認識を受けました。

ISBN4-06-149767-7 C0231 \740E


・「勘定奉行 荻原重秀の生涯−新井白石が嫉妬した天才経済官僚(村井淳志著、集英社新書)

日本史の教科書を見ると「元禄時代に貨幣改鋳をして幕府は差益を得たが、物価騰貴を招いて混乱した」という趣旨のお話が出てくる勘定奉行の生涯。著者があとがきで書いているのですが、当初は氏の生涯を小説にしようとしてリサーチを始めたのですが、小説にするのではなくて資料から氏の生涯の事跡を説明する形になったそうなのですが、この形式は中々良いのではないでしょうか。まあこちらもお勧めですが、この時代にして管理通貨制度の原型みたいな発想を持っていた荻原重秀に感心することしきり。

ISBN978-4-98-720385-1 C0221 \700E


・「厄除け詩集(井伏鱒二著、講談社文芸文庫)」

あたくし不覚にもつい最近まで「さよならだけが人生だ」っていう名文句が実は井伏鱒二さんの漢詩訳によるものだと知らなかったのですな(大汗)。巻末見てたらこの初出が昭和10年だというのに再度ビックリしたのでありました。何たる素晴らしい詩人。

ということで、訳詩も良いのですが、それだけではなくて、井伏さんが実は詩人でもあったというのを不覚にもこれを読んで認識致しましたです。いやあの何かこう読んでいるうちに井伏ワールドに引き込まれるような詩が続きますよ。

追記:ちなみに「さよならだけが人生だ」が出てくるのは同書53ページの「勧酒」です。

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトエモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

・・・たぶんね、原詩の風景とは全く違う(恐らく唐詩なんでしょうから当たり前ですが)んだけど、何かこうあたくしたちが想像できるような光景が広がってきませんか?

個人的には最初の方にある「厄除け詩集」の詩が良かったです。「つくだ煮の小魚」なんて何かドキッとしちゃいましたよ。

ISBN4-06-196267-1 C0192 \940E







2007/05/21

お題「中身は穏当な総裁記者会見」

お休み中のネタ(金融経済月報とか武藤副総裁講演とか)は追々お出しすると致しまして、まずは木曜の総裁記者会見の要旨が出ましたのでそちらから。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0705b.pdf

○CPIがマイナスでも利上げ云々の部分ですが

日経などの報道では利上げの方がヘッドラインになっていたのですけれども、質疑応答を見ると展望レポートの公表時の記者会見での発言よりも慎重な感じでございます。上記ファイルの10ページ目のあたりから。

『(問) 総裁はひとつの指標だけで金融政策を判断するわけではないと常々おっしゃっています。ただ、消費者物価指数が水面下にある中で、第1の「柱」と第2の「柱」に照らしてタイミングが適当であると考えるならば、消費者物価指数が水面下にあっても利上げはできるとお考えですか。また、一般論で言えば、フォワード・ルッキングに考えたとしても、足許の数字がマイナスであるのに、これから先本当に上がる保証はあるのかという批判の声が予想できると思います。これをうまく説明するための条件があるとすれば教えてください。』

もう答を誘導するような質問ですが(笑)、こういう質問ということで総裁の発言も逆に慎重になったのかもしれませんな。で、質問に対する答がやたらと長いので肝心の部分というか最後の部分を引用しますが、一応ここの所はURL先に当たって頂きたいと思います。

『(説明部分割愛)足許の物価が若干のマイナスの時にできるかできないかと言われましても、今私が申し上げましたようなことをきちんと点検し終わらないでマイナスであってもいつでもできると申し上げているわけではありません。今申し上げましたようなことを全て判断し尽くした後で、仮にその時まだ消費者物価指数が多少のマイナスという場合であってもそれは十分利上げは可能だと思いますが、日本銀行は消費者物価指数がマイナスであっても何が何でもやるんだ、やることを先行して考えているというコメントは、大間違いです。』

ということで、最後に「(利上げありきという見方は)大間違い」とコメントしてますが、早期利上げ思惑否定方向でこういう強い言い方するのも最近あまり見なかった次第。まあ質問がいかにも誘導色強かったのである意味で売り言葉に買い言葉(と書くと何か喧嘩腰みたいで表現良くないけど^^)になってしまった面はあるのかも知れませんけど。

ということで、日経やらモーサテで「CPIマイナスでも利上げ」を強調して報道してたのは、明らかに強調する部分を間違えているでしょという事ですな。



○金利の変更をサボると云々発言について

実質冒頭の質問は先日の講演での発言について(2ページ目)。

『(問) 総裁は、先日講演をした際、「日銀が金利の変更をサボると、リスク発生の可能性が少ないとは言えなくなり、われわれの責任を果たせなくなる」と発言しました。どちらかと言うと金利引き上げの方向に力点を置いた発言かと思われますが、この発言の真意について改めてお伺いします。』

『(答) 講演を聴いておられた数多くの方は、私は展望レポートの通り喋ったと聴いておられることを確認しております。いつも申し上げており、また今も説明しました通り、日本経済は物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いという判断です。この見通しは、市場や企業が先行きの政策変更をある程度織り込んだ上で意思決定していることを前提としたものであると繰り返し申し上げています。経済・物価が今後とも見通しに沿った動きを続けていくならば、政策金利水準の調整を行っていくことが必要になる、と展望レポートで明確に書いているところです。(以下割愛)』

ということで、「経済物価情勢が日銀のメインシナリオ通りに好調であれば利上げを淡々と行いますといういつもの話ですよ」という発言となっております。割愛した後半部分でも同じようなトーンになっておりまして、まあ今回の会見ではあまり過激な事を言わないように注意しているという感じが伝わって参ります。

ここからはあたくしの勝手な想像の世界になるんですけど、ここもと海外経済とか株式市場等が比較的いい感じで来ている事もあって、CPIは相変わらずですけど、先行き経済に関しては福井総裁は自信を深めているというか余裕をかましていて、その結果として今回の会見では割と穏やかな話をしてるんジャマイカという気がするんですよね。または市場のほうも「CPIがいくら%にならないと日銀は利上げしない」といったような発想をしなくなっている(とは言え流石にマイナスで利上げはねえだろという発想は多いと思うんですが)ので今更利上げを強調する必要もないという風に思っているのか、まあどっちかなのか合わせ技なのかと思うのですけれども。ま、あくまでもあたくしの勝手な想像ね。


○円キャリートレード問題

6ページ目になります。

『(問) 総裁は、国会答弁において先程の資産価格について、円キャリー・トレードという言葉をあえて使われたと思います。私の記憶では、円キャリー・トレードという言葉が、総裁の口から公的な場で出た記憶はなかったのですが、あえて国会で円キャリー・トレードや資産価格の歪みをご指摘されたのには何か理由があるのでしょうか。』

『(答) 特にありません。国会は双方向のQ&Aですので、頭の中に不動産価格を念頭に置いておられる方とか、為替相場のことを念頭に置いておられる方とか、色々な方がいらっしゃいます。頭の中にどのような問題意識を持っておられるかを理解しながら、私はいつも的確に答えを差し上げなくてはならないと思っています。そのように特定の事柄とは関係なく、皆様からより広く問題を捉えて質問を頂戴している場合には、私の言葉としても、展望レポートに書きました通り、資源配分等に歪みが生ずる恐れがありますというような全てをカバーするものの言い方をしています。(以下割愛)』

うーむ、何という模範解答。要するに相手が円キャリートレードを念頭に質問してきたから資源配分の歪みの具体例として円キャリートレードを答えで具体的に挙げただけだと言う事ですかそうですか。何かうまく言いくるめられているような気もするが(苦笑)、まあ今回の会見は全体的なトーンがこんな感じのものが続いておりまして、特に「利上げ前のめり」という印象は受けませんし、総裁もあえてその雰囲気を出さないように注意している感じを受けるのでありました。ただまあ余裕かましているように(字面だけ見てると)見えるのはちょっと気になるんですが。


○その他ですけど

何かこう今回の会見要旨を読んでて思うのは「福井節完全復活か?」ってのであります。実際の会見を見てるわけじゃないから勝手な想像ではあるのですが、例えば6ページ目の真ん中あたりの応答を読んでいるとお得意の横文字がでてきて福井総裁節って感じを受けるんですよね。

『家計は長い将来の生活設計をどのように考えるか、そして企業は次の中期計画、さらにはその次の長期計画と幾重にもロングランなプロジェクトに工夫をこらしながら、一方で足許の企業経営をし、家庭生活を営んでいます。』

一番最後の質問に対する答えの部分(17ページ目)でも何か福井節ですなあ感じです。

『次に、経済が安定するのだからペースも一定で金利を引き上げられるのではないかという極めてわかりやすいご質問ですが、答えは当然わかりにくくなるわけで、先程からもお尋ねの通り、そうは言っても全く波のない経済というのはないわけです。(途中割愛)やはり波のない経済というのはダイナミックな経済ではないので、安定した世界経済の拡大や日本経済の拡大といっても、ダイナミクスがベースになっていますので常に波のある経済です。従って、常に安定したペースは何かということをいつも翻訳しながらでなければ判断できないので、翻訳作業の前に金利調整のペースを先にセットするということはできないということです。』

何かこうまた口が滑らかになってきたんじゃないですかな(^^)。

あとまあ英国のインフレーションターゲットの話とか、物価と経済のどちらか一方を優先しないといけない時にどっちを取るかという話、それからGDPや機械受注に関する質問などもございまして、内容が多くなっておりますんで全部で17ページとなってます。基本的には景気に関して引き続き強気の感じですけれども、どちらかというとあたくしには「余裕かましてますな」という感じに読めました。勘違いかもしれませんけど。。。








2007/05/18

お題「メモメモ」

お休み中にも1日300〜400アクセスいただきまして恐縮至極(汗)。

まあ詳しい話はまた来週ですけれども、来週向けのメモを少々残しておきます。

○メモ1:物価安定の理解云々

月曜の日経記事にそんな話が出てたんですけど、内容を云々する前にあたしゃ言いたいんですけど、4月の決定会合に関する話は4月の議事要旨の公開によって判るというのが原則の筈でして、こーゆー話がメディアにリークされるのってどうなのよと思うんですけど。いやまあ何か正式なルートで公表されたのかもしれないんですけど、あたくし日経の記事しか見てなくて「今回明らかになったのは云々」ということで議事進行の簡単な話まであったというのしか把握してないのですけど、議事要旨の公開まだですよね。

なんかね、市場との対話っていうんだから公開情報を元に対話を進めて頂きたいわけでして、正規以外のルートでのリーク情報って物凄く不公平ですよね、市場を大事にする気持ちがあるならもうちょっと改善して欲しいわけよ。いやまあ市場はコントロールするもんだというのも一つの考えだからそれならそれでも良いのですが、そんなら都合のいいときだけ「市場との対話」とか奇麗事言わないで欲しいんですけどねえ。

○メモ2:金融経済月報

こちらは昨日公表された奴ですが、ざっと見たところ景気判断は変らず、物価に関しては国内企業物価の強含みを背景に先行きを強めにしてるので、日銀的にはフォローでしょうな。

○メモ3:総裁会見

これもまたテレビ東京のニュースだけですけど、また発言の前半だけ切り取って報道してるでしょこれ。でもまあその総裁発言為替市場が反応しなかったのはまあ学習効果が働いているということなのでしょうかねえ。

来週から本格的に復帰しますんでよろしくですぅ。




2007/05/11

お題「総裁講演自体は穏当だったのですが・・・」

えーっと、どこぞの内閣府政務官のモーサテインタビューですが、論評未満としか言いようが無いですな。美しい理念らしきものはあるけど具体策なしですかそうですか。大体からして放送される発言部分が細切れなのは、余程話の内容が(以下自主規制^^)

#と思いながら見てたらインタビュービデオが終わった後でゆっこ様(インタビューしてたのは別のお方)が「言ってることはキャッチーですが、打ち上げ花火で終わらないように」とコメントしたので茶を噴いてしまったではありませんか。今朝はゆっこ様に正直感動した。

という話は兎も角(^^)。

昨日は午前中には参議院での半期報告、午後は内外情勢調査会での講演がありました。で、参議院での質疑に関しては会議録出てから改めて確認するとして、内外情勢調査会での講演と質疑応答(質疑応答のソースはブルームバーグニュース)を確認しておこうかと。

ということで、講演要旨は
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0705a.htm
質疑応答に関してはブルームバーグニュース10日15時57分配信記事より。(質疑応答なので内容は日銀のサイトには掲載されないと存じますので、誠に恐れ入りますが参照させていただきます)


○やっぱり極めて低い金利水準ですかそうですか

全体的な流れとすれば、展望レポートの説明という感じです。そりゃまあ展望レポートが出てから10日位しか経ってないのですから基本的な話が展望レポートになるのは当たり前ですけれども、現在の景気状況に関する説明部分で金利水準に関して言及しておるのです。

『今回の景気拡張局面のもう一つの特徴は、この間、極めて緩和的な金融環境が続き、民間需要を後押ししていることです。設備投資の増加の背景には、先ほど述べました、グローバル市場の拡大と過剰設備の調整進捗に加えて、緩和的な金融環境もあります。金利は、経済や物価との関係でみて、かなりの低水準で推移しています。』

ということで、かなりの低水準ですかそうですかという所ですけれども、展望レポート公表の時に「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら」という文言が抜けていることについて注目されていた(本石町日記でも言及ありましたし、当日の総裁記者会見でも質問がありました。質疑応答では「極めて低い金利水準だ」と総裁は返していますが)んですよね。この先に具体的な数値を出して説明しているのですけれども、ここの辺りに関しては「現状の金利水準が極めて低い水準なのか」という点について政策委員会の中でも議論が分かれているのかなあという想像をさせてくれる部分ではございます。

『例えば、実質成長率と実質短期金利を比べてみますと――実質金利を計算するに当たっては期待インフレ率をどうおくかという論点はありますが、一つの方法として、その時々の消費者物価を用いて実質化するとすれば――、この間、2%程度の成長が続く一方で、実質短期金利は0〜0.5%程度で推移してきました。』

実質短期金利ってそんなもんでしたっけ。いまだともうちょっと高いような気も。

『金融機関は、財務面の改善によるリスクテイク能力の拡大を背景に、積極的な貸出姿勢を続けており、銀行貸出は増加してきています。このように、金利と資金のアベイラビリティの両面で金融環境は緩和的な状態が続いています。また、為替相場は、実質実効レートでみて、プラザ合意後の最安値圏で推移しており、企業の輸出増加に寄与してきたと言えます。大都市部を中心に、地価の上昇地点が拡がってきているなど、資産価格が上昇していることも、民間需要を増加させる方向に作用していると考えられます。』

どう見ても金融緩和のバブル警戒です。本当にありがとうございました。

つーことで、まあこの辺りの点に関して政策委員会の中でも意見が分かれてて、福井総裁はバブル警戒スタンスだという話なんでしょうかねえというのは次にご紹介する質疑応答部分により如実に現れておりますです、はい。

で、先ほども申し上げましたように、講演要旨自体は展望レポートと同じ話になっているので、まあ質疑応答の方がオモロイでしょうか。市場的には何かHawkishなものが出るかと期待というか懸念というかしていた面がありましたので、「講演内容に新味なし」という反応を示しておりました。


○金利変更をさぼるとリスク高まるですかそうですか

「金利変更をさぼるとリスク高まる」というのは先ほど申し上げたブルームバーグニュース10日15時57分配信記事の小見出しでございます(^^)。以下同記事より。(5月10日、ブルームバーグ、日高正裕記者)

『福井総裁は「現に市場を見ると、先行き幾ばくか金利は上るという見通しを皆さんが立てている。そういう見通しを持って経済活動をしながら、こういう穏やかだが好ましいバランスの取れた経済が実現していくので、われわれがそれにもかかわらず金利を今の水準で据え置いていった場合、経済の実態から比べて金利がより低すぎる方向に行ってしまう」と語った。』

どう見ても円環性です。本当にありがとうございました。

『福井総裁はさらに「その場合には経済を変に刺激する。資産価格を刺激したり、為替相場を刺激したり、あるいは必ずしも効率的とは言えない投資をしてしまうリスクがある。好ましいシナリオ通りに経済がいく場合、われわれが誤りなきタイミングでゆっくり金利を上げていけば、常に経済のアップサイドリスクとダウンサイドリスクがバランスの取れた状態でいける」と指摘。』

『その上で、「われわれが金利の変更をさぼると、起こるリスクが少ないとはいえなくなってしまう。こちらの方が起こる可能性が少し増したと言われることになる。自分が動かないことによってそうなるといった状況にすることは、われわれが責任を果たせないということになる」と語った。』

いやあのですな、市場の金利がどうのこうのというのであれば、ゼロ金利解除の頃から比較してろくすっぽ上昇しないどころか低下している長いところの金利を見て頂きたいんですけどね。短期市場の金利は最終的なコールレートの決定権限が日銀大魔王様にあるんですから大魔王のご意向を忖度して動きますから、それを捕まえて「市場がこう思ってるから」はねえだろと思うのですけどね。

#とは言え、中長期金利を見ても先行き半年とか1年の政策金利の変更タイミングを市場がどう見てるかなんぞ計測不能ですけど(苦笑)


で、当記事の最後の小見出しを見て驚倒したのですが、何と小見出しが「海外のバブルも防ぐ必要」ですわよ奥様。

『福井総裁は「各国の中央銀行はそれぞれの経済・物価情勢を見据えながら、金融政策をやっていく。そうすると金利差は避けられない。そうすると、為替相場は従来のように経常赤字、経常黒字には必ずしも素直に反映しない相場が形成されることがある。これがかく乱的な影響を跳ね返すところまでいくかどうかを十分注意しながら、各国の金融政策は行われていかなければならない」と述べた。』

『さらに「国内でバブルが起こらなくても、海外のどこかでバブルを起こして跳ね返ってくるということも防ぎながらやっていく必要がある。しかし、そこをあまり急ぎすぎて、肝心かなめの国内の経済・物価のリズムを乱すような政策は絶対取れない。この複雑な作業は多元方程式を解くようなものだ。その方程式自身が毎回変るややこしいものだ」と語った。』

いやあのそんなに複雑な多元方程式解く努力するよりも、「他国のバブルなんぞシラネーヨ、お前らで何とかすればぁ」と割り切って頂いて、国内のフォローをきっちりしていただきたいのですけれども・・・・・・・orz

何か報道される発言順からすると最後の肝心かなめの部分が後回しになっているのではないかと懸念するのはあたくしだけではありますまい。というか日高記者(か編集の小沢さん)がこの部分の発言紹介で『海外のバブルも防ぐ必要』って書いたんでしょう。

なんだかなあって感じではあります。延々と引用して誠に恐縮でございましたm(__)m


○来週お休みのお知らせ

大型連休が終わってまだ1週間しか経っておりませんが、諸般の事情によりまして来週はドラめもんお休みさせていただきたく存じます。金融政策決定会合があったり、注目経済指標の発表があったりするような気もしますけれどもそういうことはケンチャナヨ。

という訳で、来週はお休み致しますが、ちゃんと生存しておりますので何卒よろしく。もしかしたら来週金曜日、多分再来週の月曜から復帰の予定でございます。大型連休後また大型連休かよというツッコミはしないように(笑)。




2007/05/10

お題「何となく利上げ警戒ですか」

いやあの昨日「こりゃどうにも動きませんなあ」という話をしたらいきなり当日にこの有様なのがドラめもんクオリティなのですけれども。

○FB入札は堅調でしたが

昨日実施されたFB入札は0.565%挟みの落札となりまして、引けは0.565%ということで、先週入札の1週間短いFBが0.56%でありますからまあ順当な結果でございましたが、一昨日の6か月FBは0.615%と前日比5糸甘。まあ一昨日の引け時点で0.61%は思いっきりオファーサイドでしたんで0.615%でも仕方無いのかもしれませんが、もうちょっと長いところを見ると、ユーロ円金先が昨日も小甘かったり、2年が1毛甘の0.86%だったりとなってまして、目先7月位までの話じゃなくて、秋口に掛けての利上げ警戒モードっぽい雰囲気を値動きは示しておりますな。

ということで、うごかねえんジャマイカなどと昨日書いた途端にこの有様という所に髪様モードを感じるのですけれども、まあ強いて後付け理屈を並べるとすれば、(1)来週出るGDPがどうも強い数字になるでしょう→前回利上げの時はGDPが最後に背中を押す格好になりました。何のかんのと言ってもGDPの数字が強いと政府部内を納得させやすいですからねえ、(2)翌日(というのは今日)福井総裁の講演があるので、何か利上げ前のめりな姿勢が出てくるんジャマイカ、(3)月曜日午後に公表された3月の決定会合議事要旨で岩田副総裁と推定される発言の中に「0.5%という水準は市場機能の面から必要」という今まであまり岩田さんが言及しなかった論点が出てますなあ、などという辺りなのでしょうか。


そうは言いましても、新発3か月FB(8月6日償還)の入札が堅調だったということは、「利上げの警戒はあるけど7月会合までの利上げはねえだろ」という事かとは存じます。あたくしのべき論は別にして(べき論で言えばコアCPIの上昇基調が明確化するまで利上げ待って何の実害があるんだとは思いますが)予想屋(は別に本業ではないが)さんとして考えても最速で8月でしょと思うので、まーこの流れはそんなもんかなと思います。

なお、3月の決定会合議事要旨ご紹介するときにスルー致しましたが、財務省からの出席者からの発言にこのような部分があったのは注意しておくべきではなかろうかと思うのですが。

『先月、政策金利の引き上げが決定されたが、その経済への影響が現れるまでには時間を要することも踏まえれば、現在の金融市場調節方針のもとで、引き続き経済を金融面から支えて頂きたいと考えている。』

ということで、先般の利上げが経済に与える影響を確認する前に次の利上げを行うとなると、内閣府だけではなく財務省からも「それはいかがなものか」砲撃が飛んで来るんじゃねえのと勝手に想像しておりまして、まあ今のようなちんたらとした物価の動きだとどう頑張っても秋口以降ということになるんじゃないですかねえというのがあたくしの勝手な予想なのでした。

ちなみに8月だとまたGDP見て利上げといわれてしまい、基本的に「単一のデータに依拠しない金融政策」というのを強調している今の流れから考えると、よほど差し迫らない限り2打席連続でのGDP直後利上げは避けてくるんじゃないのというのもこれまた予想屋さんとしてのあたくしの見解。そう考えると11月も同じ理由でパスとなりますんで、短観見た後の10月なんて所を勝手に本命にしてみますが(べき論は別よ)どうでしょうかね。

しかしまあこれで来週のGDPで強い内容が出るとちったあ祭りモードになってくれるんですかな。ワクワクテカテカ。


○レポ指標レートに関して

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0705a.htm

こちらに議事概要へのリンクがございまして、リンク先ファイルを見るとPDFファイルで議事概要が読めるのですが、議事内容は正直言って関係者以外が読んでも何が何のことやらという所と存じますので別に一読はお勧めしませんが(^^)、まあ順調に進んでいるようで何よりであります。というか思いっきり実務担当者が揃ってるから話が具体的で良いですなあと思うのですけれども。

最後のスケジュールを拝読致しますと、5月中旬くらいにパブコメ取って7月くらいから具体的に公表するって事になるようでございますな。レファレンス方式になるのはあたくしも賛成。

で、今回の案では、ちゃんと個社別のレートを開示するということですので、将来このレートの重要性が高まって来た時にポジショントーク祭りになってしまう惧れはさほど高くないとは思うので、その点もまあ宜しいんじゃないですかねえと思う次第です。トレーダブルレートを出すわけでは無いんですが、レート聞きに逝ったら全然違うレートが出るなんて事のないようにお願いしますね(はあと)。

まあ具体的な部分に関しての議論も面白いというか興味深いものがありまして、極めてテクニカルな話が延々と続いているのですが、将来的に資金取引市場がこっちに移行していく(と良いな^^)というイメージはあたくしも持っておりますので、短期市場に何となく関心のあるかたはお読みになって「なんですかわかりません><;」という部分はそこらの知ってそうな人に聞くということで^^;

#さてあたくしも聞いて回らナイト(^^)







2007/05/09

お題「相場雑談など」

○6か月FB入札と3か月FB入札

大型連休の関係でしばしスケジュールが無かった短期国債の入札が昨日から戻って来ました。ということで昨日は6か月FBの入札がございましたが、落札結果はまあ穏当に0.61%近辺となって、引けも0.61%(はオファーのようですが)とまあそんなもんかなって結果になりました。穏当は穏当。

今回の6か月FBは11月12日償還でして、まあ目の子になりますけれども、手前からGCレートを何となく積み上げて行ってどこで利上げなのと考えると9月とか10月あたりの利上げを織り込んでいる(期末要因とかそもそものベースGCレート幾らで置くかとか目の子な部分が多いですのであくまでも適当ね)という所でしょうか。先月発行された10月10日償還の6か月(今は5か月ものですが)FBの利回りが0.580%などとなっておりまして、この1か月の金利に階段が出来ているという点を注目すると10月利上げ警戒とかになるんですが、そもそも前月の6か月FB入札が踏み踏み入札で、銘柄の需給が全然違うから必ずしも10月一点張りの利上げ警戒では無いと思います。

まー4月期初のスーパー金余りモードからちょっと冷静になっているという事でしょうかな。運用資金が余っているのは相変わらずのようなんですけどね。


で、本日は3か月FBの入札がありまして、今回から8月償還物になるのですが、どう見ても7月会合まで(8月頭の償還なので)の利上げ警戒は無いに等しい(警戒すべしというストラテジスト様もいますが、価格形成的には無警戒もいいとこ)というところですので、まあ運用する方としてもこっちの方が買いやすかろうというのはあると思います。よって昨日の6か月よりもこっちが本命でしょうな。レート的にもまあ既発債の7月後半償還ものの引けが0.56%でベターっと並んでいますので、入札は0.56%台で決着(0.57%まで流れれば目出度いが)すればするんでしょうなあという感じですか。

まあ3か月0.565%くらいだと勝手に想像して、そこから6か月が0.61%ってどうよって考えると、8月スタートの3か月が(例によってチョー乱暴な目の子計算ですので念の為)0.655%とかになるんですか。利上げ時期の置き方によりけりですけど、まあこんなもんちゃあこんなもんですけど、リスクプレミアム自体はもうちょっと欲しいかなって気もしないでもない。と申しますのはですな、一応理屈の上からは「手前3か月で抜けているのだから後半でここまでやられても無問題」という発想は成立するのですけれども、やはりそのやられ部分というのはやられ部分として厳然と存在しますので、そのやられがちょっと目立つ形になる(利上げ後の0.61%だとコールから14bp、GCから20bp程度逆鞘になる)のもあまりうまくない話だという訳でして。

という訳で、前月の踏み踏み入札(先月の頭は妙に6か月ゾーンの債券が買われておりましたな)で品薄になっているFB441に変りましてカレントがFB447になってくれましたので、まあ何となく短期国債市場が秋口の利上げを警戒しているというのが形に出てきた感じな昨日の入札ではございました。


○えーっとこんなレートで良いの??

昨日は6月4日の税揚げにぶつける形での国債売現先オペも実施されておりました。4000億円で5月9日スタートでエンドが6月4日なのですが、このレートが何と平均0.555%(足切り0.56%)なんですが、これってこんなもんで良いのでしょうか?うーむ。応札刻みが0.01%なのですから0.55%で札を入れた人が2000億円分はあるという計算になるのですけれども、積み期間が変ると何となくレートが強含みという最近のお約束のような展開が今月も発生するとそれは途中から負けそうな気もするんですが・・・・・

まあ先月の新しい積み期間から準備預金見込み額の公表が前倒しになって下さったのが影響して、朝一から妙に資金を取り上がる人が減ってくれて、結果としてコールが上りにくくなってGCなどのレートも上りにくい雰囲気にはなっておりますので、0.55%ですかそうですかというところなのかもしれませんし、このオペレートがホンモノになるのかちょっとこの先の動きに注目しておきたいと思います。


○まあしかし運用圧力は強い訳で

などと極めて細かい話を注目するとか申しておりますが、何せ展望レポートも出ちゃいましたし、コアCPIは▲0.3%だしと言うことで、3か月くらいのスパンのチョー短い所では注目するような話もないというのが実際のところなのであります(苦笑)。相変わらずCPレートも低位安定してて、おまけに発行体によるスプレッドも絶賛縮小し、短期国債とのスプレッドも低水準で安定と来た日には「やあ皆さん運用圧力大変ですね」ってなもんでございます。おまけに昨日なんぞは5年ゾーン1.5毛甘とかやっている中で1年ゾーンあたりの2年債の引けが強くなっているような次第で、またこのゾーン買い来てるのかよと行った所でああ運用圧力運用圧力。

まあね、こうなって来ますと次に相場が動いてくれそうなネタは何でしょかという与太話に花が咲くのでありますが、結局出た結論は「えーっと、来週GDPが出て決定会合もあるけど、GDPで強い数字が出て決定会合でいつもの公式見解がでたところで、ガイジン様あたりが『早期利上げ!』と勘違いしてビックリ売りでもしてくれますかなあ」と行った甚だ何も考えない他力本願(←という使い方は誤用ですので念の為)丸出しの話くらいしか出てこないのでありました(爆)。

細かい話をすれば、6月に向けて需給的にちょっとタイトになりやすくなる(超短い所の話ね)というのはございますので、その辺くらいなんでしょうけれども、特に方向性が出そうな感じでもないかなあって所です。


#と、延々と話をして結論が「動きませんなあ」で恐縮至極






2007/05/08

お題「3月の決定会合議事要旨」

相場的には特にインパクトありませんでしたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070320.pdf

○岩田副総裁の現状維持賛成に関して

本文8ページ(ファイルでは10ページ)に岩田副総裁と推定される人の現状維持賛成に関する見解がございます(PDFをテキスト引用してるので機種依存文字があります)。

『この間、一人の委員は、前回の利上げについては、4月の展望レポートで十分な経済・物価情勢の説明を行うまで待つ余裕はあったと思うが、@一旦決めた政策の方向性を細かく変更することは市場に無用な混乱を与える惧れがあること、A 0.5% 程度の金利水準は市場機能の維持・強化の観点からも必要と考えられることから、現在の金融市場調節方針を維持することが適当であると述べた。』

ということでして、まあこのあたりを読みますと、岩田副総裁が2月に利上げに反対した理由は「まあそんなに急がなくてもよいんじゃないでしょうか」というタイミングの問題であって、景気の先行きに関して強い懸念があって利上げに反対するという訳では無かったということなのかと推察されるのであります。もし景気の先行きに強い懸念(というか先行き悲観と言うか)があるのなら利下げ提案するでしょうから。。。。

念の為再掲しますが、3月8日に岩田副総裁が講演を行った時の記者会見(講演内容は日銀執行部としてのモノでして、政策委員としての岩田さんの見解は記者会見で示されておりました)で、2月の決定会合での利上げに反対した理由について以下のように答えています。同日の会見要旨から。

『今ご質問で実体経済について触れておられましたが、賃金あるいは個人消費の弱めの動きは──2006 年12 月の金融政策決定会合後の記者会見でも総裁が触れたと思いますが──、現在、必ずしも払拭されていない、そしてIT部門を中心に生産面で軽度の調整が起こる可能性もあるという状況のもとで、物価上昇率の先行きに不透明性が強いということが、私が反対した半分の理由です。』

『もう半分の理由は、私どもは現時点では2007 年度までしか成長率や物価の見通しを出していませんが、中長期の意味での物価安定が重要だということを考える場合、やはりそうした点も含めて展望レポートなどで丁寧に説明してからでも遅くはないのではないかという点から反対票を投じました。』

ということで、不透明なのは物価であって景気先行きに関して特に悲観しているとかいう訳ではない(楽観はしてないと思うけど)という所なのでしょう。まあ元々岩田副総裁は量的緩和時代には景気に関しては強気に見る傾向のある人でしたし。


で、この2番目の理由、『0.5% 程度の金利水準は市場機能の維持・強化の観点からも必要と考えられる』とはこれはこれは。市場機能云々といえば福間前審議委員(この会合の時はまだ審議委員でした)の得意のネタ(とか言ったら失礼ですね^^)でございましたが、岩田副総裁が市場機能維持強化の論点を出すとは少々意外というか新鮮というか。あまりその方面からの話に関する印象が薄かったもんで。

ちなみに、この部分をとりあげてブルームバーグニュースがややセンセーショナルっぽくヘッドラインを打っていましたが、惜しくも(??)市場は反応しておりませんでした(^^)。

まあ余程景気が失速してこない限り残念ながら次に利下げがあるという選択肢は無さそうですな、というかそんな経済状況になられたら困りますが(苦笑)。


○利上げ後の短期市場の動向

岩田副総裁(と推定される人)の見解の続き部分から。

『2月の利上げ後の短期金融市場の動向について、多くの委員は、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、月末にかけて一時上昇する場面もあったが、0.5% 前後にしっかりとコントロールされていると述べた。また、これらの委員は、ターム物金利も横ばい圏内で推移しており、2月の利上げは、市場の金利観に大きな変化を与えずに、順調に消化されたとの認識を示した。』

というかターム物金利が横ばい圏内なのは12月以来延々と利上げするのしないのとやっていた上に、次回の利上げはど〜せ早くて(2月利上げ時点での市場の一般的な予想としては)選挙シーズン以降だから早くて8月9月でまあ10−12月期じゃないでしょうかという解釈だから金利がぶれなかったという事かと。ま、そーゆー意味では「市場の金利観に大きな変化を与えずに、順調に消化された」ともいえるのですが。

コールレートが2月末に上昇してどこぞのストラテジストが「日銀の金融調節がヘボだから円キャリーの巻き戻しが起きた」という意味不明の言説を公表して市場の失笑を買っていましたなあ何て事を思い出すのですが(笑)、まあ決定会合時点では余裕余裕と言った所なんでしょう。テクニカル的には相変わらず積み前半に金利が高止まりして積み後半のある時点から金利が急に下がるという(コールの加重平均ベースだとあまり動いてないんですけど、レポとか現先のレートあるいは雰囲気ベースだと相変わらずその傾向は継続してますな。ややマイルドになってきた感じですが)傾向はまだございますけど、まーそのテクニカルな話まではケンチャナヨということでしょうか。


○市場との対話について

で、その続き。

『市場との対話について、多くの委員は、合議制による意思決定のもとで日本銀行が発信すべき情報は、経済・物価情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方であり、この点に関する市場の理解をより十分に浸透させる努力が必要であると述べた。』

『また、多くの委員は、「新たな金融政策運営の枠組み」に基づきフォワード・ルッキングな政策運営を行っていくことについて、適切な情報発信に努めていくことが重要であり、そうした観点からも、2008年度までを見通し期間とする4月の展望レポートにおいて、経済・物価情勢の見通しとリスク評価、それを踏まえた政策運営の基本的な考え方をしっかりと整理し、分かりやすく示していくことが重要であるとの認識を示した。一人の委員は、その際、「中長期的な物価安定の理解」について金融政策運営との関係を改めてよく説明する必要があると付け加えた。』

という事を議論しておりまして、その点を受けて今般の展望レポートならびにその後の総裁会見などで説明されているのですが、相変わらず何と申しますかこうワケワカランのですよね。この前も書いたと思うのですが、そもそも「中長期的な物価安定の理解」で示される消費者物価がヘッドライン(総合)の物価指数であり、展望レポートで示される審議委員の物価見通しの数字がコア(除く生鮮食品)の物価指数という時点で話がややこしくて敵わんのですが。

結局「何か特定の経済指標に一点張りしてる訳ではない」といいたいのでしょうけれども、どうもその辺りを変に説明しようとするから話がややこしくなると思うんですけれども。


○あとはややおまけですが・・・・生産について

まあどうでも良いのですが(^^)、本文6ページ目。

『生産について、委員は、昨年10〜 12月期の大幅増加の反動から足もと小幅の減産となっているが、均してみれば増加基調にあり、先行きも、内外需要の増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高いとの認識で一致した。』

なるほど、これが3月の金融経済月報(基本的見解)で『生産も増加を続けている』→『生産も増加基調にある』となった背景でございますかそうですか。


○おまけ2・・・消費者物価について

『多くの委員は、既往の原油価格反落の影響や携帯電話の低料金プラン導入の影響などから、2月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスになる可能性があると指摘した。複数の委員は、3月以降についても暫くは同様の状況となる可能性があるとの見方を示した。』

『もっとも、物価を巡る基本的な環境について、多くの委員は、設備や労働といった資源の稼働状況の高まりを踏まえると、今後とも潜在成長率を上回る成長が続くのであれば、消費者物価への上昇圧力が高まっていくと考えられると述べた。一人の委員は、マクロ的な需給ギャップの改善と消費者物価の上昇との関係が近年変化している可能性があるほか、サービス価格は非製造業の賃金の影響を受けやすいことにも留意すべきであると指摘した。』

この潜在成長率ってのも推計の世界なんで、本当に消費者物価への上昇圧力が高まっていくのかっちゅう話はありますけれども、まーこの部分に関してはいつもどおりのお話になっておりますな。展望レポートで示された通りです。








2007/05/07

お題「休み明けでボケボケな雑談を^^」

デリバティブ取引の目的は損失の回避に限り投機的な取引は認めないとか言ってる時点で根本的発想が如何なものかと思われますけれどもね。>土曜の某新聞記事

しかし経済指標が強くても弱くても買いとは恐るべきNY株式ですけど、まー警戒感とか言ってるうちは下がらないんでしょ。M&Aネタで上昇っていつか聞いた「土地含み益を勘案した企業価値」とどこがどう違うのか小一時間ですけど、まああれから18年とかですからね。

#と思ったらモーサテ某評論家(後追い講釈と発言時系列の整合性の無さが実に香ばしい人)のコーナーで「日本株出遅れ論」が出てきましたな。海外がバブっているかも知れないという点検は全く行わずに中国や米国の株高は所与ですかそうですか(^^)


○CPIに展望レポートでスティープとは

ご案内の通り先月末(もう先々週末なのですが^^)にCPIなどの指標と展望レポートが出た訳ですが、CPIは上りにくく、展望レポートでは弱気になったとは言え一応金利調整(というか利上げ)路線は踏襲しておりましたな。で、そー考えると「利上げはするけど物価は上りにくい」ということで、2年ゾーンあたりで年度内で1回半くらい(2回までは織り込んでないでしょ)の利上げを織り込んでいると思われる(0.85%位ですから)中短期ゾーンの金利は低下に限界があるものの、長期とか超長期ゾーンは物価上昇しにくいから、中短期対比で堅調になるのかなあとあたしゃ漠然と思ったんですな。

で、連休中の相場でございますが、1日は物の見事に5年から先物に掛けてが堅調となり、2日は下落しましたが、この日もマイルドなスティープ商状と2日続けて緩やかにイールドカーブはスティープ(5年VS20年で1.5毛)の巻。1日の中期ゾーンの買いが「ほええ」という感じなのですが、展望レポートと総裁記者会見を受けて市場の考える利上げペースが遅くなったという解釈なんでしょうか。

まあ1日や2日の動きでどうこう結論を出すのは早計なんですけど、(1)展望レポートなどが「利上げ路線継続」よりも「経済見通しがやや弱気になっている」点を重視した(2)もともとあたくし(というか除くデリバティブの短期市場)が思っていた利上げペースよりも債券ポートの皆さんの方が利上げペースを早めに見ていた(まあ早期利上げ説とか先月後半にも出てましたしね)のどっちか/合わせ技なのかなあと漠然と思うのでありました。

#などと後追い講釈をすると外すのがドラめもんクオリティ


○雑談その1:色々な意味で実に味わいの深い話

ちょっと前(確か4月10日近辺)の日経金融新聞で話題になっておりましたが、先日の世界同時株安騒動で某投信が実に香ばしい事態になっておったというのが一部の人たちで世間話ネタになっておりました。
http://www.morningstar.co.jp/fund/sr_detail_snap.asp?sts=dt01&nlk=1&fnc=4431104C

で、この投信なんですが、要するに株価指数先物のオプションを上と下の両方売って日銭を稼ぐというスキームで、まあその売り方を調整しつつリスクコントロールするちゅうものですから先般の同時株安のようにドカンと下がってドカンと戻られるのが一番悲惨な結果を招く(その間運用会社が気を失って何もしなければ無事ですけど、笑)27日のクイックのニュースでまた市場の一部に健やかな笑いを引き起こしておりました。

QUICKが4月27日の14時03分に配信したニュースからかいつまんでご紹介しますと、この投信、3月23日に「基準価格が7000円以下になった場合、繰上償還する」という約款があるので、5月15日に償還すると発表してたそうなのですが、この措置に異議申立を行った受益者の受益権口数が総口数の63.5%となって繰上償還の取りやめになったそうですな。

どう見ても受益者の怒り爆発です。本当にありがとうございました。

まあね、オプション売りって基本的に勝率は高いんですけど、相場の急変とか乱高下(相場が一方方向に動くだけだったら売ったオプションインマネ攻撃でも対処のやりようがあるんですが・・・)で派手に食らうリスクがあるんですから、オープン投信のようですが信託期間が長いというのもちとその商品設計的にどうだったのよとは思いますけど(当初から短期売買してもらう積りで売っているのなら理解できますが)。

そういや2005年5月9日の日経金融で「個人も参戦『プロ市場』」なんて記事があって、そこでは当時の相場環境を反映してかオプション売りを「それなりのリスク」とミドルリスク扱いしておりましたな。ちなみに一番低リスクが実質NT倍率のスペキュレーション(裁定取引と称してましたが)で高リスクは株先と債先の両方スペックでしたが、今にして思えば株先買いの債先売りが一番ワークしてたとはあたくしも予想できませんでした(苦笑)。その時書いた駄文がこの辺に残っておりますな(^^)。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/zatsudan05-01.html#za050512


○雑談その2:これまたいつも悪態をついておりますが

あたくしの脳味噌がまともに機能している頃に検定試験に合格して検定会員とやらになった日本証券アナリスト協会というものがありますが、今年もまた定時総会の開催通知がやってまいりました。

で、総会の式次第を拝見致しますと、今年は6月14日木曜日の午前10時から実施。会場はアナリスト協会の会議室と今年もまた平日の午前中に実施ですかそうですか。

どう見ても会員に出席してほしくないようです。本当にありがとうございました。

『ここ数年、総会成立に必要な過半数の定足数を確保するため、ご提出依頼を何度か実施しており、郵送費用も嵩む結果になっております』とか通知の紙に記載されているわけですが、そもそも企業IR表彰とかする団体なのに、会員の8割以上(だと思った)を占める検定会員(アナリスト試験に合格して会費年1万8千円払っている人たち、会社が持ってくれる所もありますけど^^)がどう考えても出席できないような日程を設定して、会場の場所も明らかに大人数がくる事を想定してない場所を会議場にする時点で総会のシャンシャン化を目論んでいるようにしか思えないのはあたくしの下衆の勘ぐりですかそうですか。

せめて平日の夕方からの実施にするくらいのやる気(?)を出せば委任状もうちょっと集まるんじゃないんでしょうかねえ。

・・・ってこれ2年に1回位のペースで同じ話してますので、いつも読んで頂いている方におかれましては「またこのネタ使い回しか!」と言われそうですが(滝汗)。







2007/05/02

お題「総裁記者会見、それほどタカでもなさそうな」

報道段階では「CPIマイナスでも利上げ」というヘッドラインが踊っていた為にホーキッシュな印象を受けましたけど、会見要旨を見ると地均し的なニュアンスはあまり受けませんでした。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0705a.pdf

○CPIマイナスでも利上げ云々について

本文4ページ、5ページのあたりです。「経済・物価情勢の改善」という点についての突っ込みに対する答から。

『経済と物価を分解して別々の部品のように判断するのではなく――経済と物価は有機的につながっていますので――、経済が想定通り拡大する中で経済全体の循環メカニズムがどうか、最終的に経済が物価にどのようなメカニズムで変化を及ぼしつつあるかということを、全体として判断して改善ペースを確認した上で金利の調整を行うという意味です。物価がマイナスでも景気が良ければ行うのかという質問に対しては、答えられません。ダイナミックな姿をきちんと認定しなければわからないということだと思います。』

ということで、再度念押しの質問。

『(問)物価がマイナスの状態でも金利水準の調整を行う可能性はあると解釈してよろしいのでしょうか。』

『(答)物価が短期的にどのような動きをするのかということを無視し得ませんが、金融政策運営上大事なことは、やや長い目でみて物価の基調的な動きがどうかという点を判断することだと思います。従って、目先物価の動きが弱いとか、あるいは場合によって前年比マイナスという状況がみられることがあったとしても、経済の拡大メカニズムがしっかりしており、長い目でみて物価の基調もしっかりとしている場合、先程申し上げたような経済・物価の好ましい方向への変化のペースが十分確認できるのであれば、それに則して金利の調整を行っていかなければ、かえって資源配分等で後々好ましくない結果、ひいては安定的な景気の拡大ではなく、波を打った景気の変化に結びついてしまう惧れがあると考えています。』

ということで、確かにこれを見ると「げげえ〜」という感もあるのですけれども、普段から想定問答集の範囲内の答えを見慣れておりますと、「はあはあそうですか」という感じでございまして(^^)、特にこう前のめりになって想定問答から一歩踏み込んだ発言をしているという印象です。

まあ昨日ご紹介したように、展望レポートの(上振れ・下振れ要因)部分で物価上昇率の先行きに関して『上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。』と言及してますんで、下振れ要因として挙げている中で経済に対するネガティブ要因となりそうな賃金動向に対する日銀の今後の見立てには注意しておく必要はあるでしょうな。

ということで、あたくしの勝手な印象&解釈ではありますが、この物価マイナスでも利上げの可能性云々は、「早期利上げするぞコノヤロー」の地均しではなくて、「まあそうは申しましても絶対に利上げしないという訳でも無くてですなあ」という可能性を否定するのを避けましたってあたりが妥当ジャマイカと存じます。


とは申しましても、例によって例の如く、きっちりと予防線というか伏線(またの名を罠^^)を張っているのが日銀クオリティでございまして(^^)、昨日もご紹介しましたが、展望レポートの最後の部分で「物価安定の理解」の点検をしていましたが、そこにはこのような記述が。以下本年4月の展望レポートより引用。

『「中長期的な物価安定の理解」の検討に当たっては、(1)消費者物価指数の計測誤差(バイアス)、(2)物価下落と景気悪化の悪循環のリスクに備えた「のりしろ」、(3)物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率、を考慮した。』

『この点、バイアスは、昨年の基準改定を踏まえても、引き続き、大きくないと判断される。』

『「のりしろ」に関しては、企業部門の体力や金融システムの頑健性が高まっていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクはさらに小さくなっていると考えられる。』

『また、物価上昇率の変動が小さい中で、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率には、大きな変化はないとみられる。』

一瞬読んだ時に「はて?」と思いましたが、念の為昨日は知人友人とこれはどう解釈するんだとお話をした結果の解釈は・・・・

(1)CPIの上方バイアスは大きくないのでゼロ近傍でも好々
(2)デフレスパイラル再突入に対するバッファーは企業部門や金融システムが健全化し、強化されているので少なくても好々
(3)企業や家計は引き続き物価があまり上昇しないことを物価安定と理解しているので、そんなに物価が上らなくても好々

となりましたがどうでしょうかね。まあそうやって物価が上らない状況でも無問題ですって理論は撒かれているのでありました(^^)。


○「経済・物価情勢の変化に応じて」→「改善の度合いに応じたペースで」

昨日ここを引用しませんでしたが、展望レポートで微妙に表現を変化させているのでありました。先ほど引用した質問の前半部分です。

『(問) 展望レポートについてお伺いします。金融政策の部分で、これまでは「経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行う」となっていましたが、今回は「経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで」と変更されています。表現を変更した理由をお聞かせ下さい。』

『(答) 「経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペース」というのは、特に新しい意味を持っていません。これまでもしばしば申し上げてきたように、金利の調整について事前に一定のスケジュール感を持ち、そのスケジュール感に則って一定のペースで金利の調整をしていくということではありません。フォワード・ルッキングに判断して金融政策を行っていくといっても、足許までに出てくる全ての情報をつぶさに分析し、先々の経済・物価の姿を抽出しながら、その変化に則して金利政策を行っていくと申し上げてきました。このことを短い文章でもう一度表現しておきたいということです。』(この後半部分は先ほど引用した部分です)

ということで「特に新しい意味を持っていない」と言ってますが、公表文書の表現が変るというのに意味が無い訳は無いのでして、確かに総裁の発言にあるように現状のスタンスを表現したものかも知れませんが、それは裏を返せば昨年4月の展望レポートを出した時点ではゼロ金利解除からその先の利上げをある程度スケジュール感を持って展望していたってことだったんジャマイカと思うのであります。これまたあたくしの勝手読みではありますけど(^^)。


○えーっと結局わかりません><;

最後の質疑応答から。

『(問)「中長期的な物価安定の理解」についてお伺いします。導入されて1年経ちましたが、金融政策の運営の関係について、市場においてもわかりにくい部分があると言われています。これまでは、あくまでも念頭に置くものでこの数字が政策を縛るものではないとおっしゃってきましたが、今回の展望レポートでは、「物価安定の理解に沿って」という表現がかなり重要な位置付けとして語られていると思います。「中長期的な物価安定の理解」と金融政策の運営の関係について改めてお伺いします。』

これまた鋭い質問ですな。で、その答え。

『(答)大変重要な点であります。いわゆるインフレーション・ターゲティングではない「中長期的な物価安定の理解」という新しい概念でありますから、それをどのように金融政策運営上意識しているかということは、できる限り詳しく説明していく必要があると思っています。ほぼ1年経過したところで点検しましたが、金融政策運営上、私どもがこれをどのように位置付けているのかということについても、従来よりわかりやすく説明したいという気持ちをもって今回の点検作業をしました。』

から始まって物凄い勢いで長い説明(1ページ半くらい^^)が続くのでございますが、あたくしこれ読んでおりまして結局なにがどういう話なのかどうも判りかねる次第でございまして、誰かこの部分をあたくしに判るように説明していただけると誠にありがたく存じます(><;

そもそもですな、中長期的な物価安定の理解で言われている消費者物価指数ってヘッドライン(=総合)の物価指数だという話だったのに、展望レポートで示される政策委員の見通し数値で出てくる消費者物価指数がコア(=除く生鮮食品)の物価指数という時点でもうかなりお手上げなんですよあたしゃ。

中長期的な物価安定の理解と目先の見通しに関しては考えている時間軸が違うというので、別のモノが出てくるということなんでしょうけれども、このあたりが実に曖昧模糊としているのが何ともという感じなのでございます。

何だかんだと引用長くなりまして恐縮至極。





2007/05/01

お題「展望レポートは前回よりも弱めになったように見えます」

木曜の「急に熱が来たので」にビビリましたが、幸いにしてインフルエンザに非ずでただの風邪でした(^^)。という事で展望レポートを見に逝ったのですが、結論を先に言えば、内容的には弱くなった印象です。その中で利上げのポーズを見せるのはちと無理あるんじゃネーノという感は致します。

総裁記者会見で「物価マイナスでの利上げの可能性」って威勢の良い話が出ていると報じられてますが、まあそちらに関してましては本日出るであろう会見要旨をじっくりと読んでから改めて申し上げますが、展望レポートが弱いのをそこでバランス取りに行くのは無理筋の香りが。。。。

ということで、本日は展望レポート4月号(の基本的見解)を前回10月号と比較して読んでみるの巻でございます。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0704.htm(今回4月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0610.htm(昨年10月)

○で、まず結論

先ほどもちょっと申し上げましたが、全体的な結論を先に申し上げると、内容的には弱くなった印象で、利上げに関するロジックがより「バブル警戒」にシフトした為に論理展開に無理っぽいものを感じるという所です。ただまあバブル警戒にシフトした分だけ物価水準が低めでも利上げする理屈(あたくしには屁理屈に思えますがまあそこは措く)が通せるといえば通せるので、その点からの利上げ警戒を残させるって事にしてバランスを取ったのでしょうか。(よって総裁会見での物価マイナスでも利上げの可能性言及もその一環でしょ)

先行き見通しが強いので先行き順調に推移すれば利上げって理屈じゃないところが、まあ現実的といえば現実的ですけれども、ちょっと目先の利上げはやりにくい感じですなあ。


○経済見通しに関して

まずは冒頭部分ですが、

『好調な企業部門に比べると、家計部門の改善テンポがやや緩慢であるが』(今回)
『企業部門は幾分強め、家計部門は幾分弱めとなっているが』(前回)

とありますように、家計部門の改善が弱いという事をより強調しています。まあ確かにその通りでございますけど、冒頭にこれがありますので、まあトーンダウンですなあという感じを受けましたです。で、先行きですが、成長率の部分にちょっとふ〜んです。

『成長率の水準は、2007年度、2008年度とも、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(今回)
『成長率の水準は、2006年度は2%台半ば、2007年度は2%程度と、潜在成長率近傍に向けて徐々に減速する可能性が高い。』(前回)

でね、前回と今回比較すると、今回の2008年度の実質GDPの大勢見通しが+2.0〜+2.3(中心+2.1)%でして、前回の2007年度は+1.9〜+2.4(中心+2.1)%ですので、多分これは同じ数字と見てよいはずなのですが、前回は「潜在成長率近傍」で、今回は「潜在成長率を幾分上回る」ですな。前回の場合は「上ったあと巡航速度に下がる」という予想になっており、今回は2007年度の見通しが下方修正されていて「巡航速度のまま推移」という形になっているので、表現を工夫していると言えばそうなのかもしれませんが、前回の伝で言えば「潜在成長率近傍で推移する可能性が高い」となるんじゃないのかなあ。。。


企業部門から家計部門への所得移転と個人消費に関して。

『第3に、好調な企業部門から家計部門への波及が、緩やかながら着実に進んでいくとみられる。グローバルな競争や資本市場からの規律の高まりを意識した企業の人件費抑制姿勢は続くとみられるが、雇用者数の増加が続く中で、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、賃金の上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される。』(今回)

『第3に、雇用者所得や配当の増加などを通じて、好調な企業部門から家計部門への波及が進んでいくとみられる。雇用者数は着実な増加を続けるとみられる。賃金の上昇は、これまでのところ、企業の根強い人件費抑制姿勢などから緩やかであるが、労働市場の需給が着実に引き締まってきていることを踏まえると、いずれは上昇が明確になる可能性が高い。』(前回)

「進んでいくと見られる」→「着実に進んでいくと見られる」というのと「(賃金の)上昇が明確になる可能性が高い」→「上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される」ということで、先行き見通しが随分と穏やかになったという印象を受けます。結果として個人消費に関しては・・・

『個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(今回)
『個人消費は、着実な増加を続けるとみられる。』(前回)

どう見てもトーンダウンです。本当にありがとうございました。


○物価見通し

まあこれは見ての通りですが一応メモメモ。

『先行きは、原油価格の動向にもよるが、前年比でみて目先はゼロ%近傍で推移する可能性が高いものの、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大するとみられる。その結果、2007年度はごく小幅のプラス、2008年度は0%台半ばの伸び率となると予想される。』(今回)

前回とは比較致しませんです。


○上振れ・下振れ要因に関して(その1)

引用してると終わらなくなりそうな予感がしてきたので、ここの部分はちょっと引用しませんけど、読んでてふーんと思った点を。

説明している分量ですが、米国経済に関する言及が前回比増えております。また、米国のインフレに関しては前回の「インフレ予想が高まる可能性」が「インフレ圧力が減衰しない可能性」に変化してまして、米国のインフレに関してはよりリスクを強調してるんじゃないのかという希ガス(これは勘違いかも知れないので本編を読んだ方が良さそうですけど)。

それから前回はさらっと触れていたIT関連財の在庫調整に関連する部分が要因の一つとして昇格(?)しているのが注目されるところであります。説明もやや詳しくなっておりますね。


○上振れ・下振れ要因に関して:金融面をより強調してバブル警戒にシフト(か?)

まあ誰が読んでもここは気が付くと思いますが(^^)。

『第3に、金融環境などに関する楽観的な想定に基づく、金融・経済活動の振幅の拡大である。』(今回)
『第2に、企業の投資行動の一段の積極化である。』(前回)

ということで、今回はより金融面への注目を強くしていますわな。

『企業や金融機関などの財務面での改善が進む中、実質金利が極めて低い水準にあることから、金融・経済活動が積極化しやすい環境にある。』(今回)

この部分に対応する前回の言及はこの先で引用する中にある『極めて緩和的な金融環境のもとで』という部分かと思います。

『また、大都市で地価の上昇傾向が明確化してきているなど、資産価格の動きも、そうした行動を活発化させる方向に作用すると考えられる。』(今回)
『また、大都市を中心に地価の上昇地点が広範化してきていることなど、資産価格の動きも、民間需要を押し上げる方向に作用することが考えられる。』(前回)

ということで、金融環境、地価動向に関しては前回よりも表現を結構強めにしておりますわな。

『こうした中で、仮に、期待成長率や資金調達コスト、為替相場や資産価格の見通しなど、先行きの採算に関する楽観的な想定に基づいて金融・経済活動が積極化する場合には、金融資本市場において行き過ぎたポジションが構築されたり、非効率な経済活動に資金やその他の資源が使われ、長い目でみた資源配分に歪みが生じるおそれがある。』

『このような行動は、短期的には景気や資産価格を押し上げることがあっても、その後の調整を余儀なくされ、息の長い成長を阻害する可能性がある。』(ここまで今回)

『もっとも、極めて緩和的な金融環境のもとで、企業が、期待成長率や資金調達コスト・為替相場見通しなど、採算に関する楽観的な想定に基づいて投資を一段と積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性がある。』(前回)

ということで、今回に関しては思いっきりバブル警戒シフトになっているように見えますな。まあ正直ここくらいしか前回対比で表現が強めになっている部分(細々とした所ではもうちょっとありますが)は見当たらないという感じです。ここを強めにしたのはそれこそ「金利当分据え置きでワッショイワッショイ」とならないように釘をさしたという風に解釈したんですけどどうでしょうかねえ。


○物価上昇率の先行き部分

当たり前ですが、ここはトーンダウンです。

『次に、物価上昇率の先行きについても、上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。』(今回)
『次に、物価上昇率の先行きについても、上振れ・下振れ両方向の要因に留意する必要がある。』(前回)

要因が不確実性に化けておりますな。

『景気拡大が続く中にあっても、賃金の上昇テンポが生産性との対比で高まっていかないような場合には、物価への下押し圧力が根強く残ることが考えられる。』(今回)

『景気拡大の長期化にもかかわらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には、物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられる。』(前回)

賃金の上昇が遅れるが高まっていかないに化けた結果、物価に関しては上昇しにくいが下押し圧力に化けたのでありました(^^)。

それから前回は『第3に、潜在成長率の影響である。』ということで、潜在成長率の上昇が物価の押し上げ要因になるという部分がごっそり抜けております。まあ全体的にトーンダウンもいいところ。


○金融政策に関して

基本的には上記の「上振れ・下振れ要因」で引用した部分を踏まえていますので、前回との比較結果も同じようになります。よって引用は一箇所「ほほう」と思った部分だけ。

『ただし、企業部門の体力や金融システムの頑健性が高まっていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクはさらに小さくなっていると考えられる。』(今回)

『ただし、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることから、それが物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さいと考えられる。』(前回)

ここに関しては表現を強くしていまして、デフレスパイラルへ再突入のリスクをより小さく見ているという所は「こりゃ表現強くしてますな」って感じです。まあ好景気が続いているってのならそうなんでしょうけど。


○「中長期的な物価安定の理解」の点検、政策委員の見通し

という箱が出てまして、ここの点検を実施してるんですが、CPIの計測誤差とCPIの糊代に関してどっちも小さいですかそうですかというのは何となく把握しましたが、イマイチあたくし腑に落ちない点がありますので総裁会見などを見てから再度お話するかもしれません。

で、政策委員の見通しなんですけど、大勢見通しではなくて最後の表にあります全員の見通しの中で、コアCPIの見通しの下限数値が▲0.1%になっていた訳でして、えーっとこれは岩田副総裁でございますな(^^)。

まあその他気が付いた事が有りましたら明日。