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2007/12/28

お題「亀崎審議委員記者会見/年末のご挨拶」

ブット元首相暗殺とは年末に良からぬニュース。

金融政策決定会合議事要旨の話はどうしたと言われそうでございますが、年末中に更新するか年始のネタにするかということでご勘弁でありまして、今日は亀崎審議委員の会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712c.pdf

全体的には景気に対する慎重な見方が目に付くのと、金融政策に関しては「経済状況を見ながら判断」というスタンスでありまして、中立金利に向けて淡々と調整するという感じではなさそうです。大体最初の4ページ(半分)で亀崎さんの意見が集約されているような感じですのでお急ぎの方は前半だけお読みになっても宜しいんじゃないでしょうか。

○景気に関しての慎重な見方を改めて表明

展望レポートがうたう「生産・所得・支出という好循環メカニズム」に関してどうなのかという質問に対しての亀崎さんのコメント。

『足許の指標をみますと、景気にはやや減速感が出ております。もともと中小企業を中心に、企業から家計への所得の波及は緩やかなものに止まっておりましたが、先ほど申し上げた住宅投資の大幅な落ち込み、あるいは原材料高、円安修正等マイナスの要素が出てきておりまして、生産・所得・支出という好循環メカニズムは、このところ幾分弱まっているように伺われます。』

と、まず弱めの話をしまして・・・・

『ただし、海外景気は全体としては拡大を続けており、これを受けて、わが国の輸出やこれに関連した設備投資は堅調です。また、賃金動向がやや弱めの中にあっても、雇用者数の増加を受けて、所得の総和は緩やかながらも増勢を続けていることなどから、個人消費も今のところは底堅い動きを示しております。住宅投資の大幅な落ち込みについては、改正建築基準法施行により認可が著しく遅れていることに起因する現象で、いずれは反動増も予想されます。』

ということでバランスは取っているのですが、結局の所堅調なのは輸出関連で、とりあえず持ちこたえているのが個人消費という所でございましょうか。住宅投資に関しては野田審議委員が以前指摘してたと思うんですが、反動増するのかというのはどうなんでしょうかねえとは思うところですね。話はそれますが、最近交代した審議委員の皆様が景気動向に一家言あってカラーが出てる感じがするのは中々結構なお話じゃないかと思いますです。

『こうしたことから、生産・所得・支出を巡る好循環メカニズムは維持されていると認識しておりますが、今後の景気動向については予断無く、注視していきたいと考えております。』

ということで講演(挨拶)要旨でも見られたような慎重な見方が示されています。


○米国の住宅市場動向

これもまた講演要旨にあったお話ですが改めて。

『米国商務省が50州の売上税額を発表しています。この50州の売上税額の推移を見てみますと、2004年頃からずっと6〜10%程度の高い伸びで売上税が入ってきていたわけですが、それが昨年の第4四半期頃から、段々下がり始めて、4%、3%、さらに低い水準まで伸び率が下がってきています。これを州別に見てみますと、伸びが落ちているところは、カリフォルニア、ネバダ、フロリダ、メイン、といったところです。今、申し上げた州は、実は住宅価格の伸びも著しく低下してきています。』

なるほど。

『米国の場合、住宅を担保にして借り入れを行って、それが消費に回るというようなメカニズムがありますので、住宅価格の伸びが低下している州で売上税の伸びが低下しているのは、やはり住宅価格の動きが個人消費に影響しているのではないかという目で、私はこのところずっと注目して見てきています。なお、売上税は伸びが減速しているだけで、マイナスになっているわけではないのですが、米国のGDPの7割を占め、世界のGDPの約2割に相当する米国の個人消費が本当に落ち込んでくるとこれはかなり深刻な状況になるため、このところよく見ています。』

『FRBの発表のように、来年の米国のGDP成長率が1.8〜2.5%程度の間で減速し、その後リバウンドしていくのであれば、世界経済が堅調なこともあり、さほど心配する必要はないのではないかとみています。従いまして、住宅価格の下落、そして金融市場の混乱といったものが、実体経済、特に個人消費にどう影響してくるのかを今つぶさにみているところでございます。』

ということです。付け加えますと、最後の方の質疑でデカップリング論に関して亀崎さんはこのように指摘していますんで、米国の個人消費動向に関してかなり懸念しているのではないかと見受けられます。

『過去に比べて、米国経済の世界へのインパクトは、同じというよりも、むしろ若干減っているのではないかと思います。ただ、中国からの輸出はどこが相手先として多いのかというと米国ですし、また中国以外のアジアも米国へ輸出しているものが随分あるし、日本からの輸出も中国・アジアを通して米国に出ているものがあります。そういったことで、米国経済の減速が、世界経済に影響を与えないということはないと思います。』


○金融政策に関して

先ほど申し上げましたように、金融政策に関しては経済情勢睨みというスタンスのようです。先ほどご紹介した最初の質疑応答の後半が実は金融政策に関するお話でして。

『金融政策ですが、先行きの金融政策運営についての基本的な考え方は、これまでと変わりはありません。金融政策の効果が波及するには時間を要するわけですから、先行きの経済・物価の動向を予測しつつ、日本経済が物価安定のもとでの息の長い成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。』

『もともと実勢より低過ぎる金利は、将来に危険性を孕んでいるわけでございまして、これはタイムリーに金利を上げていかなければいけないと思っております。』

という所までは日銀の政策ロジックのお話ですが、

『ただし、米国景気の減速、あるいは米欧金融市場の混乱、原油価格の高騰、更には国内の住宅投資の動向などが実体経済に与える影響には、不確実性が出てきております。こうしたもとで、足許の景気は基調としては緩やかな拡大を続けておりますが、やや減速感もみられております。経済は生き物です。絶えず変化して、絶えず動いておりますので、今後の金融政策運営につきましては、先行きの景気・物価・市場の動向を予断を持つことなく、つぶさにみながら、総合的な観点から判断していきたいと考えております。』

ということで慎重な見方ですわな。で、その後「利下げについてどう考えているか」って質問があったんですが、それに対して亀崎さんはこのようにコメント。

『現状、米国発のサブプライム住宅ローン問題関連の影響が日本の金融機関に深く影を落としたり、あるいは短期金融市場における年末越えの資金調達で日本銀行が通常の枠組みを超えて特段の対応をしなくてはならない、というような状況ではありません。更には、わが国の景気判断に関しましては、足許、住宅投資の減少や企業の先行きの業況判断に慎重さは見られますが、12月の金融政策決定会合での基本的見解にあるとおり、日本経済は基調としては緩やかに拡大していると判断しており、現状は金利を引き下げる必要はないと考えております。』

『最も大事なことは、スケジュール感のようなものを持たずに、絶えず景気や物価の動向を丁寧に見ていく、その注意を怠らないということです。これは金利の引き上げにしても、引き下げにしても同じことで、常に実態をみながら、なおかつ先行きもみて日本経済の中長期的な成長の維持が確認されるという時に調整をしていくということであり、その逆もあるということです。』

ほほうその逆もあるとな。ってな訳でその後「その逆もあるとは利下げもあるということですか」と質問された訳ですが、その質問に対しての亀崎さんの発言は以下の通り。

『中長期的な成長の維持が確認できない場合には、そういうこともあり得るということです。今はそのような必要はないと私は申し上げています。そのような特別な状況というのは、その状況に遭遇してみなければわかりませんが、一般論として述べた次第です。しかし、今はそのような状況にはありません。』

福井総裁あたりになりますと「そのような状況になることは考えられません」的な答えをして、一般論としてでも利下げに繋がるような発言をしないというのは皆様既にご案内の通りでございます。そーゆー意味では亀崎さんのスタンスが柔軟ですなというのが読み取れるのではないかと思います。

1月の展望レポート中間レビューで何らかの軌道修正はあるかも知れない(というかあるんでしょうが)ですが、まあ来年の執行部交代に伴い現在の論理に無理が出てきた金融政策の枠組みをどう整理していくのかが益々楽しみになって参りましたな(と思いっきり野次馬にも程があるスタンス)。


○年末のご挨拶

営業日が少ない事もありましてドタバタしているうちに大納会がやって参りましたが、あたくしの駄文にお付き合い頂きまして誠に恐縮至極でございまする。ご意見ご指摘ご質問などいただきました皆様にも改めて感謝申しあげますです、はい。

最近西暦ばっか使うのでうっかりしちゃいますが、来年って平成20年なんでございますな。いやはや時の経つのは早いもんですが(単にあたくしが年寄りになっているからだろというツッコミは却下)、来るべき2008年が皆様に取りまして素晴らしい年になりますようお祈りしつつ、来年もまたご愛顧賜りますと幸いに存じます。

皆様良いお年をお迎え下さいませ!













2007/12/27

お題「亀崎審議委員の講演」

年末押し迫って亀崎審議委員講演と決定会合議事要旨2本とネタを打っていただかなくても(苦笑)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712d.htm

箇条書きで紙に打ち出すと7ページということで(図表は別)コンパクトに纏まっておりまする。

○先にあたくしの印象というかまとめ

今回の挨拶要旨を読みますと、亀崎審議委員は景気に関してはやや慎重な見方をしているように見えます。特に米国サブプライムローン問題の帰趨、国内に関しては消費者マインドの悪化を注視しているような感じですな。で、金融政策に関してはとりあえずのところはあまり独自色は出して無さそうですけれども、文章を見てると何となくそのうちカラーが出てきそうな気が(根拠レスな予感ですけれども)します。

あとですな、ちょっと面白いなと思ったのは、今回の挨拶要旨が箇条書き形式になっていること。他の政策委員の皆様の挨拶要旨って文章形式になっていまして、亀崎さんの挨拶要旨の形式が独自だなと思う訳でして、さっき根拠レスな予感と申し上げましたが、一応根拠としてはこの点なんですわな(^^)。こういう形になったのって亀崎さんの独自色ってイメージしたんですけど読みすぎですかね?


○米国経済について

『足もとは米国を中心に海外景気の先行きに不確実性が高まっています。』ということで海外経済の動向に関しては米国サブプライムローン問題の影響に関しての記述が主となっております。まあ当然と言えば当然ですが。

『こうした中、(引用者注:サブプライム問題が発生している中)住宅融資に対する金融機関の態度が厳格化したことから、住宅販売は大幅に減少し、在庫調整が長引き、住宅価格も下落に転じています。企業部門でも、社債発行が減少するなど資金調達面への影響もみられています。これに自動車市場の減速や、原材料高もあるため、これまで海外景気の拡大にも支えられて好調を続けてきた企業収益もさすがに伸びが鈍化し、企業の景況感指数をみても改善幅は縮小しています。』

『こうした中にあっても、雇用は引き続き堅調ですが、消費者コンフィデンス指数は住宅価格下落、株の乱高下、金融機関による融資基準の厳格化、ガソリン高などから、ハリケーン「カトリーナ」の影響を受けて大きく落込んだ2005年10月以来の水準にまで悪化しています。』

『ここへ来て個人消費関連指標もやや軟調となっているほか、主要指標以外にも気になる動きがあります。』

ほほう。

『商務省が発表している全米50州の売上税の前年比は、個人消費と高い連動性を示しており、2004年以降は5%を上回る伸びを続けてきましたが、2006年10-12月からは前年比伸び率は5%を割り込んでさらに鈍化しています。州別の動向をみると、住宅価格の下落幅が大きいカリフォルニア、フロリダ、イリノイ、メイン、ネバダといった諸州では、売上税の落ち込みが大きくなる傾向がみられています。このことは、住宅市場の減速が個人消費に影響を及ぼしつつある可能性を示唆しています。米国の個人消費は、GDPの約7割、全世界のGDPの約2割を占めるだけに、注意してみていく必要があると思います。 』

10月10、11日の金融政策決定会合議事要旨でこんなのがあったのは以前ご紹介したかと存じます。

『別の委員は、住宅価格が下落している州ほど売上税の伸びが低いという傾向が窺われており、住宅価格の下落が個人消費に影響を与え始めている可能性がある、と指摘した。』(10月10、11日の決定会合議事要旨)

そうですか、この指摘は亀崎さんがしてたんですね。なるほどなるほど。

でまあ他の地域に関してはサラリと流している感じですが、他の地域に関しても米国サブプライムローン問題の影響を受ける可能性がある点について注意が必要(そりゃまあ全世界のGDPの2割ですからね)とコメントしておりまして、本件の実体経済に与える悪影響に関しては結構懸念しているという印象を受けました。


○国内景気について

・企業部門

『日本の景気は、基調としては、緩やかながらも、息の長い拡大を続けています。もっとも、その牽引力は引き続き輸出やこれに関連した設備投資であり、個人消費にまでは好影響がなかなか波及しない中で、後程申し上げる住宅投資の大幅な落ち込みもあって、足もとは景気に減速感が出てきています。このため、先行きの景気動向は、原油を含む原材料高、円安修正、株安などの影響も踏まえつつ、丁寧に見ていく必要があろうかと思います。』

ということでこちらに関しても慎重な感じが致しますな。

『日本銀行が先日公表した短観では、企業の業況判断に、やや慎重さが窺えます。特に中小企業については、需要拡大が緩慢なもとで、原材料高を販売価格に転嫁しにくいという事情もあって、このところ業況が芳しくありません。』

『こうしたもとで、生産も引き続き高水準です。但し、改正建築基準法の影響から、住宅投資が大きく落込んでおり、鋼材・セメント等の建設財では一部メーカーが減産に踏み切り、資機材価格も下落しています。住宅投資のGDPに占めるウエイトは3%超ですが、関連産業への生産波及効果があり、サッシ、ガラスなど建築工程の長い業種については、これから影響が出てくる可能性があります。』

『また、電子部品・デバイスに関しては、DRAM等の半導体価格が下落してきています。IT製品の多様化の影響もあって、世界的な需要は引き続き概ね安定的とみられますが、やや供給過剰になっているリスクもあります。』

ということで、二極化が進んでいるという点と、改正建築基準法による住宅着工の遅れが与える生産への影響、IT関連の生産がやや過剰になっているリスクに関しても言及してまして、企業部門に関してもやや先行きを慎重に見ている印象を受けました。ただし輸出に関しては堅調という話になってます。


・家計部門

家計部門に関してですが、雇用については賃金が上がりにくくなっているという認識を示しながらも、中身に関してはもうちょっと細かく見る必要があるのではないかという指摘になっています。

『雇用・所得面をみると、労働需給については、引き続き雇用不足感がみられています。一方、一人当りの賃金をみると、やや弱い動きが続いています。これは、第一に、グローバル競争の強まりが影響しています。(説明部分割愛)第二に、中小企業では、グローバル展開の恩恵が相対的に小さいうえに、原材料高もあって業況が厳しく、人件費を抑制せざるを得なくなっています。全就業者数に占める中小企業のウエイトは大きいだけに、その影響には留意する必要があります。』

『但し、雇用者数が増加するもとで、雇用者所得の総和は、緩やかながらも増勢を続けています。これに株式配当の増加などのルートも経由して、企業から家計への所得の波及は、徐々には進んでいます。また、賃金動向がやや弱めとなっている点については、必ずしも景気拡大ペースが緩やかであることだけでなく、ライフスタイルの変化など、労働市場の構造的な変化を反映している可能性があります。(パートが増えていると言う部分割愛)こうしたライフスタイルの選択は当面続き、その間は統計上の平均給与の抑制要因となると思われますので、賃金動向については、これも踏まえたうえで、丁寧にみていく必要があると考えています。』

個人消費関連については、当然ではありますがマインド悪化について指摘。

『こうしたもとで、個人消費関連指標は、総じて底堅く推移していますが、年金不安や、ガソリン高などもあって、消費者コンフィデンス指数は、このところ悪化しています。最近、英国が97年以降の10年間の移民の数を従来公表していた80万人から110万人に大幅に上方修正しましたが、これらの中には新興国からの若い世代の移民も多いため、衣食住に亘っての需要は力強いものがあります。米国経済における移民によるダイナミズムも極めて大きいものがあります。一方、日本は、移民は少なく、かつ人口減少・高齢化社会であり、また高度成長期と違って殆どの必需品は充たされている成熟社会です。こうした事情も、個人消費がなかなか力強さを持ちづらい背景にあると思われます。』

この移民の話は講演の後半で日本経済の今後の課題として改めて指摘していまして、この点は亀崎審議委員独自の問題認識として興味深い所です。


○物価に関して

たぶん報道ではこの部分だけ切り取られて、それを見た日銀批判スキーな人たちがまた「日銀は生活感覚的な話を持ち出して物価上昇をアピールして利上げを正当化しようとしており、統計を軽視している」と批判するんだろうなあと思う次第。

『こうした状況にあって、物価の基調をしっかりと捉えていくためには、CPI(除く生鮮食品)の数字1本ばかりではなく、中身を丁寧に検証していく必要があると考えています。』

『この点、CPI(除く生鮮食品)を構成する523品目の動きをみると、上昇品目数が下落品目数を上回る状況が、昨年8月以降15ヶ月連続で続いています。とくに本年4月以降、数多くの身の回り品の値上がりが顕著になっており、人々の先行きの物価観に変化が生じていることには留意する必要があります。』

でもこの「こうした状況」ってどうした状況かと申しますとその前の部分を読まないといけませんわな。

『すなわち、日本のCPIは、過去20年平均0.6%という上昇率で、このところも景気拡大が続く中にあっても、ゼロ近傍で推移しています。こうした動きについては、賃金と同様にグローバル競争の強まり等が影響していますが、物価の基調はしっかりとしており、かつ安定的に推移していることが、経済の持続的成長に資するものと考えています。但し、CPI上昇率の水準が低いために、石油製品や携帯通話料・デジタル製品群の価格動向など極めて限られた要因の影響を相対的に大きく受けています。』

ということでありますので、別に統計を軽視している訳じゃないと思う次第でありますし、まあそれ以前の問題として、ここまで延々とご紹介したように、亀崎審議委員は景気に関して慎重な見方をしているように思われますので、物価上昇即利上げという単純な話にはなっていないと思うんですけどね。

ただまあ先行きの物価に関してはやや強気かなという感じです。


○少子高齢化問題

金融政策と直接関係ないですが、あたくしが興味深く思ったので最後にご紹介。なお、金融政策に関する部分もありましたが、ここはあまり独自色が無かったように見えましたので今回は引用を割愛します。

『日本経済の持続的成長に向けて』という部分の冒頭に『少子高齢化への対応』というのがございまして。

『少子高齢化の中にあっても、成長力を維持・向上させていくためには、一人当りの労働生産性を高めていくことが不可欠であり、そのためには、企業がすでに取組まれている設備投資による合理化・省力化、能力増強や、新たな技術の研究開発投資(R&D)を一段と進めるとともに、製造業の優れたモノづくり技術等をしっかりと伝承していくことが重要であることは、改めて申し上げるまでもないかと思います。(以下割愛)』

まあ左様なんですけれども、第三次産業の労働生産性ってどうしたら良いんでしょうかねえとかいつも思うあたくしですが、そんなこと考えてる暇があったらお前の労働生産性を上げなさいというツッコミをされると痛惜の念を禁じ得ません。

『また、高齢化は、経済成長にとって制約要因となる面があるのは事実ですが、一方では、医療・介護に加え、文化・教養といったサービス産業の付加価値を高めるチャンスでもあります。特に、日本は、金融資産の多くを高齢者が保有し、文化・教養等への関心も高いため、将来性は大きいように思います。』

医療介護はともかく、文化教養に関しては・・・・・ま、いっか。

『日本は他国よりも早いペースで高齢化が進展していますが、いずれ米欧、アジアも高齢化時代に入ります。他国に先んじてこうしたサービス産業の生産性を高めていけば、将来的にグローバルにビジネスを拡げる余地も大いにあると思われます。』

そこをどうするのかがムツカシヤと思いますです。どっちかというとこの手のサービス産業って生産性の向上よりは日本ローカル独自の付加価値(と言えば聞こえがいいけど要するに特殊な形態)を追及する方向に行ってるような気がしないでもないですが、それはあたくしの勝手な勘違いかも知れません。で、移民の問題。

『但し、英では15年間、米では10年間の長期間に亘り持続的成長を達成しており、その原動力の一つは、先ほど申し上げた移民によるダイナミズムであると思います。日本についても、社会全体への影響等、難しい問題はありますが、持続的成長を確保するための方策の一つとして、検討を深めていく余地はあるのではないかと考えています。』

この問題に関しては門前の小僧以下のあたくしは論じる基礎的な知見もございませんのではあそうですかとしか申し上げようがございませんが、亀崎審議委員が問題意識として捉えておられるというのは「ほほー」と思った次第でございます。

#明日は大納会ですな。














2007/12/26

お題「相場雑談でございます」

○年末受渡もまあ順当に

昨日は債券の通常受渡ベースが年内最終日。まあ年内最終に受渡を山のようにぶつけると受渡部門が早上がりできなくて申し訳ないので(かどーか知らんが)あまりドタバタはしないと言う感じのようで、債券相場は下がりましたが、昨日勝手にあたくしが注目してたのは年末年始の資金取引部分。

午前中に実施された国債買現先は27日スタートの1月4日エンドというもうまさに末初ファンディングして下さいと言わんばかりのオペでございまして、このオペ結果が平均0.735%で足切りが0.72%でした。平均の0.735%ってえのが末初0.75%で27日〜28日が0.63%で計算すると丁度その金利になりますなという事でしてまあお約束どおりのレート。

その後も昼からは共通担保で26日スタートの本店と27日スタートの全店と打ってきまして、額も9000億円(ってあまり見ない数字なんですが)に8000億円と景気良く打っておりましてレートも特に跳ねることなく妥当な結果でして、末初のGC取引もほぼ0.75%での取引となってたようで、当初の予想通りという感じでありました。まあファンディング高いねという所ではございますが仕方ないでしょうかね。

でまあ今回ほほーと思ったのはGCとSCのスプレッドが末初で特に開かなかった事でして、金利の絶対水準が上がればGCSCスプレッドが開いても不思議じゃないですし、末初要因で玉の出が悪くなればやはりスプレッド開いても不思議じゃないという風に思ったんですが、年末だからということで玉を出さないという動きも無く、それよりも在庫ファンディングをより有利にする為にSC市場への玉放出がせっせと行われたことからGCとSCのスプレッドがあまり開かなかったと言うことのようですな。バーゼルU最初の四半期末だった6月末に急にレポ市場の回りが悪くなってエライコッチャになった事を思うと隔世の感(おおげさ)がする次第でありまする。

まあGC(というか資金)レートの方は仕方ないにしましても、SC取引が変にシュリンクしちゃいますと債券市場の流動性が落ちてしまいまして、業者も投資家も困る(だからこそ投資家様におかれましてはレポ市場への品貸しを積極化すべきで、スクイーズ類似行為をするのは長期的に見て自分の首を絞めるだけであって、そんな輩は地獄の火の中に投げ込まれるべきであると思うのですが)し発行体だって困る訳ですから、まあこんな調子で変な期末要因とかが軽くなって頂きますと幸いに存じます次第であります(絶対金利が上昇した時にGCとSCのスプレッドが拡大しても別にそれは変じゃないと思うんですがそれはまあ別の話としまして)。

今回は特にSCレポで玉が出てこないだの飛んでもない水準にレートが低下(=玉が締まる)するだのということも無かったようでありまして誠に結構至極でございましたという所です。3月末もこの調子でお願いしたく存じますが本決算ですからどうでしょうかね。


○2年国債について雑考してみる

今週は国債入札無しということですが、先週行われた2年国債がナンノコッチャという状況になっておりますな。

入札は金曜に行われた訳ですが、前場から妙に煽る動きがあって前場の引けでは0.695%−0.70%の気配で、落札は平均が0.698%で足切りが0.702%でまあその時点でナンノコッチャという入札ではございましたが、金曜の引けが0.72%で昨日の引けが0.74%ってことで、入札から4毛ということで8銭もいかれという何だかな〜という状態。

まあ何ですな、そもそも論として2年0.75%を単純に期間按分(ちなみにそれはざっくり計算にも程があるので念の為)してみると、半年後に足元が0.75%に上昇して1年半後に足元が1%に上昇するとちょうど足元金利の足し算と一緒になりますわなあという話になります(でも普通はそこに期間のリスクプレミアムが乗らないと変ですが)ので、それを切る金利と言う話になると中々下がりにくいという話になるのかも知れません。まあさすがに2年カレントの0.7%割れは時間軸確定ですよって織り込みに行かないと中々難しいのかもしれませんな。

冷静に考えてみるとゼロ金利で時間軸があった時の2年カレントだって(そりゃまあ0.01%くらいまで下がったこともありましたが)そこそこ金利がついてた訳でして、あたくしの手控え帳面を見ますと2年カレントが0.1%越えたのが2005年の7月28日実施の2年新発国債入札(0.1%クーポンで引けが0.11%でした。ちなみにWI取引ベースでは27日に2年新発WIが0.11%になったようでございますが)でございまして、この頃の平均株価12000円割れてるわTOPIXは1200そこそこだわ、2005年6月の全国コアCPIは前年同月比マイナス0.2%(ちなみに2005年7月東京都区部コアCPIは前年同月比マイナス0.4%)だったわ(全部あたくしの手控え帳面ベースなので誤記あったらゴメンナサイ)という有様なんですよ。

そう考えますと、やはり2年の0.7%割れが抵抗されるのは仕方ないのかもしれませんね。ちなみに2年カレントはその後0.15%センターで推移してたんですが、2005年9月28日(このときあたしゃ休暇を取ってましたな)に0.225%に上昇しまして、その後は0.2%台定着となりましたとさ。なお、その時の平均株価は13500円越えでTOPIXが1400越えでございます。もっとおまけに2005年10月の日銀短観ですけど大企業製造業の業況判断DIがプラス19だとな。ふむふむなるほど。

#と、たまには昔のノートを引っ張り出すのも面白いもんです




2007/12/25

お題「総裁記者会見」

今週は入札もないし、3日休んだ後ですし、どうも調子が出ませんですなあ。まあ年末だからいっか。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712b.pdf

○水野審議委員の据え置き賛成理由

冒頭の質問で当然ながら水野審議委員が利上げから据え置きとなった理由について説明がありました。

『水野委員は、今回は他の委員と同じく、金融調節の方針を現状維持とすることに賛成されました。水野委員の議論の内容は改めて議事要旨等でご確認頂きたいと思いますが、住宅投資の足許の急激な落ち込みや、エネルギーあるいは海外商品市況高の影響を受けたコスト高が、特に中小企業を中心に収益に影響を及ぼし、企業マインドにも影響している、さらには消費者マインドにも影響を及ぼしているという点を指摘しておられました。』

会見のヘッドラインでは「住宅の落ち込みと中小企業部門」というような書き方でしたけど、総裁の応答を読みますと、中小企業部門がどうこうというよりは、企業物価の上昇と生活関連商品の価格上昇がコストプッシュとして景気に悪影響を与えているという点を指摘しているように見えます。

てなことで、何度か申し上げていると思いますが、ここもとの物価上昇に関してはコストプッシュということで景気に対する悪化材料として働くんじゃないでしょうかという認識が政策委員会の中でもあり、物価上昇即利上げという話にはなりにくいでしょうと所ではないかと思います。でもまあ現在の政策ロジックが利上げ前提になっているので、「日銀はCPIが上昇したら利上げ体制復活するんじゃないか」と相変わらず(市場の中の人たちは来年前半まで利上げ無しでしょと思ってますけど)言われるのはまあ不徳の致す所って奴なんでしょうな。


○景気の現状に「減速」が入った点について

この質問をしたのはあたくしではありません(^^)。

『(問)本日公表の月報で、景気の現状についても先行きについても、「減速」という言葉が入っています。この「減速」というのは、何がしかの景気判断の変更を意味しており、それを踏まえて水野委員が賛成に回ったということでしょうか。』

答えが例によって長いのですが。

『(答) 水野委員だけを抜き出してお考えになるのは適当でないと思います。私どもは本日、月報の基本的見解をお示ししましたが、その中で書いていることの一つは、足許における住宅投資の減少が急激だということです。(途中割愛)こうしたことは、ここしばらくの間の経済の推移をご覧になって、私どもも含めすべての方々が等しく認識していることであり、今の時点でそれらをまとめて表現すればこういうことになる、ということです。従って、少なくとも足許はわが国の景気は減速しているとの判断を率直に示しました。』

率直に示しましたっていうのが微妙に総裁のホンネと言うか無念感があるような気がするのは気のせいですかそうですか。

『もっとも、住宅投資の動きは基本的には改正建築基準法施行に伴う手続き面の問題が主因であり、その遅れが徐々に解消していくことを期待しておりますし、期待して良いと思います。その遅れが徐々に解消して行けば、その後の需要として現われてくる筋合いのものです。(以下割愛)』

えーっとですね、たぶんあんまり期待できないような気がするのでございますけれども。供給サイドのショックが発生して需要が変化無かったら物不足で人気殺到でもう大変ですよにならんかね。


○今回の決定でスタンスは変化するのかという質問に対して

『(答) 一言で言えば、先行きの金融政策運営についての日本銀行の基本的な考え方は、これまでと全く変わっていないということであります。日本経済が物価安定の下で息の長い成長軌道を今後とも辿るのであれば、金利水準を徐々に引き上げていく方向にあるとかねてより申し上げております。この基本線にいささかの揺るぎもありません。しかし、同時にこれまでも、目を瞑って一定のペースで利上げをするということを一度も申し上げたことはありません。』

結局このあたりが一番わかりにくい所でありまして、現状が緩和的であり、景気が下に向く懸念があまりない(というのが今の展望レポートで示されている見解ですな)というのであれば中立的な水準に向けて淡々と金利調整をするという話になるでしょうし、そうじゃなくて現状の金利水準が適正であるというのであれば経済物価情勢とその先行き見通しを踏まえてて政策金利を上げるまたは下げるという話になると思うんですよね。特に今のように先行き不透明という状態になっている時は現状のロジックが苦しくなりますわなということで。

『目先、ダウンサイドリスクが高まっているということは率直に申し上げていますが、金融政策というものは、より長い目でみて、将来可能性は低くとも、もし起こればコストが非常に高いリスクがないか、ということまで十分念頭に置きながら毎回適切な判断をしていくということであり、私どもは今後とも極めてフレキシブルに対応していくと思います。硬直的な判断をもって私どもの行動をご覧になることは、適切ではないということを断言したいと思います。』

いやあの総裁のスタンスが硬直的なんで世間様が「日銀は何が何でも利上げしようとしている」と批判すると思うんですが・・・・・・


○物価と景気に関して

物価に関するインフレのリスクと日本経済の下振れのリスクをどう見ているのかという中々良い質問がありまして、その答えから。

『いずれにしても、物価が上がる、特にグローバルな要因によって物価が上がる場合には、国内経済に引き直してそのインプリケーションを探り当てようとすると、一つは、どうしても交易条件の悪化、海外への所得移転という要素がありますので、景気に対して何らかの下押し圧力があるとの面があります。その一方で、今申し上げました通り、グローバルな要因があるといっても、国内での先行きの物価観、インフレ期待というものを上方に修正するといった力も持っていますので、私どもはダウンサイド、アップサイド両方の変化というものを今後正確に受け止めながら対応していかなければならないと思います。』

ということで、ここの見解は先ほど総裁から説明があった水野審議委員の見解とは微妙に差があるような感じは致します。しかしどう見ましてもダウンサイドの方が具体的にマインドの悪化として出ておりまして、アップサイドの方は将来のリスク(なのか?という議論もありますがそれは措く)ですからダウンサイドとアップサイドが全然バランスしてないと思うんですけど、総裁はそのあたりどう思っているんだか。

『金融政策としては、上下両方のリスクを適正に判断しながらやっていくことは常道であり、何か異常な世界に入りつつあるとか、際立って私どもの仕事が難しくなっているとは考えていません。しかし、リスクの変化度合いがどのように出るかを、上下両方しっかりとみて、総合的に正しい判断を毎回出さなければならないという意味では、私どもの仕事は、物価が凪のように動かない状況と比べて、よりダイナミックになっていくといえると思います。』

ダイナミックに利下げじゃなくてダイナミックに利上げしたいんでしょうかねえとは思いますが、まあど〜せあと3か月ですのでど〜ぞど〜ぞお好きにご発言頂ければと存じます、あっはっは。


○コックピットがどうしたという発言

最後の部分で今年を振り返ってどうでしたかという質問に対して例のコックピットがどうしたという発言が出たのですが。

『日本経済に関しては、この一年間の推移はそれほど悪いものではなかったと思います。極めて頑健に前向きの回転速度が上がったといえるとは思いませんが、さほど悪いものではなかったと思います。』

ほうほう。

『しかし、コックピットの中から経済・物価情勢の推移を確認しながら金融政策の舵取りをするといった観点に立ってみますと、今年は春先から夏場以降にかけて、やや視界不良の中での操縦過程に入った、あるいは多少乱気流気味の中での操縦過程に入ったといえると思います。』

今度は飛行機ですかそうですか。

『海外、特に米国経済の調整やグローバルな金融資本市場での調整の動きが、視界不良ないし乱気流気味の状況を大きく形成していると思います。足許、国内では住宅投資の急減がありますし、コスト高による中小企業への心理的な影響、業況感へのマイナスの影響がやや強まっており、これに一人当たり賃金の上昇圧力が弱いという問題が上乗せされ、やや視界不良、乱気流気味の中での操縦を余儀なくされたと思っています。』

お、ここでは物価上昇の景気下押し圧力にちゃんと言及してますな。

『しかしながら、私どもは、そのようなコックピットの中にいて、方向感覚を失っている、あるいは失いそうだと思ったことは一度もありません。基本スタンスは極めて明確であり、方向も極めて明確です。』

そういうことを言うから利上げ先にありきと言われるんですけど。というかそれならそれで最初から「中立金利水準までは経済に相当の下押し圧力が働かない限り淡々と利上げしますよ。だって現状は緩和水準なんですから」とやってもらった方が判り易いんですが。

ということで、まあ最後のところで総裁節が出てきましたなという所でありました。基本的には総裁節を除けば月報基本的見解での「減速」に沿った会見だったでしょうと言う感じです。サブプライム関連の質疑応答も結構スペースがあったのですが、こちらに関しての引用は割愛致しましたです。

それでは皆様メリークリスマスですぅ。








2007/12/21

お題「ここで下方修正ですか」

ネタにならねええええと覚悟してた決定会合が思わぬ展開でネタの山。何か最近いい感じで逆指標となっているのが誠にトホホでございます。

○景気見通し下方修正で全員一致です

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/k071220.pdf

ご案内の通り全員一致で現状維持。この結果が出て債券先物は10銭ちょっと上昇しましたが、そもそも市場が既に来年前半中の利上げ確率をまあゼロ近傍(^^)と織り込んでおりますので「ふ〜ん」で終了というところでしょうか。

あたくしは全員一致になったということは金融経済月報を下げてくるでしょうと思いつつ、これでもし下げなかったら絶好の悪態ネタとか不埒なことも考えていましたが(^^)、案の定月報も下方修正。あたくし的にはまだ暫く頑張るのかなあとか思ってた(執行部変ってからがらっと変えると踏んでいた)んでちょっと早めでしたが、まあ先日来申し上げている利上げが前提になっているかのような金融政策の現在のロジックの建て直しには良いお話ですな。

正直、今回は総裁会見よりも水野審議委員の会見を聞きたいところでしたが、報道されている総裁会見(のヘッドライン)によりますと住宅投資の落ち込みと中小企業下振れを理由に判断を変更したそうですので、11月7日の講演で物価の上昇が家計所得の実質的な低下に繋がる点や、中小企業の景況感の弱さを指摘してたことの流れなんでしょうと思われますです。はい。



○12月月報を11月月報と比較する

例によって例の如くですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0712.htm(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0711.htm(11月)

・現状判断

『わが国の景気は、住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している。』(12月)
『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(11月)

まあ言うまでもなしですが、「拡大」の前につくフレーズが長すぎです・・・


・現状判断の展開部分

『輸出や生産は増加を続けている。企業収益が総じて高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にある。また、雇用者所得が緩やかな増加を続けるもとで、個人消費は底堅く推移している。一方、公共投資は低調に推移しており、住宅投資は大幅に減少している。こうしたもとで、原材料高の影響もあって、企業の業況感にはやや慎重さがみられている。』(12月)

『公共投資は低調に推移している。一方、輸出は増加を続けており、企業収益が高水準で推移する中、設備投資も引き続き増加基調にある。住宅投資は足もと減少しているが、雇用者所得が緩やかな増加を続けるもとで、個人消費は底堅く推移している。以上のように、内外需要が増加する中で、生産は増加基調を続けている。』(11月)

今日は細々分けるのが面倒だったので全部ベタ引用しちゃいましたが、12月は11月対比で生産を「増加基調」から「増加」と上方修正していますが、住宅投資は「足もと減少」から「大幅に減少」と思いっきり下方修正してます。


・先行き判断

『景気の先行きについては、当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる。』(12月)
『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』(11月)

これはまた器用な見通しですな。


・先行き判断の展開部分

『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。また、設備投資や個人消費も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高い。住宅投資は、当面低調に推移するものの、次第に回復へ向かうと予想される。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少傾向で推移すると考えられる。』(12月)

『すなわち、輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少基調で推移すると考えられる。』(11月)

なんでそういう器用な見通しになるかというと、住宅投資の減少は一時現象であり、今後は回復に向かうという以外は先行き判断を変えていないということなんですな。

ちょっと話が逸れますが、確かにまあ建築基準法改正の影響で住宅着工が遅れているのはエライコッチャなんですが、本当に需要が大盛り上がりだったら、供給が減った分だけ住宅販売が大盛り上がりになって住宅価格がもう大変なことですよ先生となると思うんですが、とんとそういう話を聞きません(販売数減るのはまあ供給の問題かもしれないけど、需要がそもそも強いのなら成約率が上がって然るべき)わなあと思いまするに、近年の強気にも程がある(とあたくしは思うのだが)価格設定によって需要が実は減退してて、建築基準法改正での着工減少は需要減退が顕在化する引き金になっただけじゃねえのかとか思ったりもするのでありますが。


・物価

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%近傍で推移している。』(12月)

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%近傍で推移している。』(11月)

全く同一文言です。いやまあ10月全国コアCPIがプラス転換したのでここを「若干のプラス」と書いたら早速「物価表現の非対称性」に悪態をつこうと待ち構えていたのですが、マイナス0.1%がゼロ近傍ならプラス0.1%もゼロ近傍ということになったのは待ちぼうけでした、って待ちぼうけの方が良かったのは言うまでもありません(^^)。


『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価の前年比は、当面は、石油製品や食料品の価格上昇などから、また、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(12月)

『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、国際商品市況高などを背景に、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価の前年比は、目先、ゼロ%近傍で推移するとみられるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(11月)

先行き見通しは強くなっていますが、これが利上げに結びつくかと言えば、これまた先般ご紹介した水野審議委員の指摘にありますように、家計所得の増加を伴わない状況における物価上昇はただのコストプッシュなので利上げに結びつかないでしょという話になっている・・・・と思うんですけど。


金融環境に関してはいつものことですが割愛。



○もうちょっと月報ベースでの柔軟な動きが出来ると良いように思えます

いやまあ小見出しの通りなんですけど、せっかく毎月金融経済月報をだしているのですから、本来で言えば月報で現状判断(や先行き見通し)をホイホイいじるのもアリだと思うんでございます。もうちょっと柔軟に対応できんもんかと思います。

ただまあそれが難しい理由としては、やはりこれがまた展望レポートにおけるロジック展開に結びつくのでありますが、もともと展望レポートで出していたロジックが「前向きの循環」全開状態で先行きの政策金利調整(要するに利上げ)を全面に押し出した物になっている所が柔軟対応への阻害要因となっているんじゃないのかなと思うのであります。

即ち、先行きのアセスメントを下げる(今回もまあ下げてるには下げてますけれども、あくまでも先行きはヘッジ文言満艦飾ながら「拡大」になっているわけですし)と展望レポートのロジック修正という話になってしまいますので、話として重くなるんでしょうな。君子豹変大いに良かろうと思うのですが、豹変すると「それ見たことか責任取れ」となるのも残念なところであります(無責任になられても困りますが)。

でですな、そういうややこしい話にならないようにするためには、やはり展望レポートの段階ではあくまでも両睨み(世の中何が起こるか判らないんですから)でリスクアセスメントを淡々と記述し、展望の方はまあ上もあるし下もありますなあという形にして、目先の判断は月報ベースでホイホイいじっても良いんじゃねえのかとも思うんですよね。ただまあそうすると一々市場が反応するリスクがあり、ブラインダー元FRB副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」状態になるかも知れませんが・・・・・まあ今回やっと判断下げましたけれども、市場の見る景気の先行きは量的緩和解除以降随分を揺れ動いた訳でして、その間日銀の判断が基本的な部分で全然変ってないんで、次第に市場との距離が出てきてるんじゃねえのかと懸念するのですよ。というか市場は既に福井総裁が何言っても反応しなくなっているんですけど・・・・・

ま、この辺りに関しては政策委員会の中の人たちが一生懸命考えてくれていると思いますが、少なくとも今生きてる展望レポートにあります「前向きの循環」というダム論的な前提はとっくの昔に崩壊してると思われますので、そのあたり1月の中間レビューで見直してくれることを期待したいですな。

#今年もあと1週間ですね














2007/12/20

お題「相場雑談など」

○全然終了してませんでしたな(大汗)

昨日の朝は「年末金利高止まり終了のお知らせ(か?)」などとこちらで書いた訳ですが、実際に蓋を開けてみればまたまた超足元金利が上昇の巻となりやがりました。何という外しっぷりでしょうまさに髪様状態(とほほ)。

朝の時点では前夜のECBによる豪華絢爛資金供給も影響したんだかどうだか判りませんが、まあ年末越えのGC取引が大体0.60%ビットとかでやってたようなのでございますよ。そんな次第ですからまあ足元も落ち着いて推移するもんだと思った訳ですが、昨日は共通担保オペの結果が出てから「ありゃりゃ」となった次第のようですわな。共通担保オペは20日スタートで1月24日エンドだったのですけれども、こちらの落札レートが平均0.635%で足切りが0.62%となりまして、GCの気配から見てそりゃちょっと高いんジャマイカという結果に。

という結果が出やがりましたので、まだ需給が締まっているという連想から足元のGCレートも上昇の巻(そもそもレギュラーが25日渡で、今月は月末が年末となる関係上25日の国債発行銘柄が通常比集中する要因もあったんですけど)となって前日の0.6%割れから一転して0.62%だの0.63%だのと上昇したようで、世の中ムツカシヤでございますなあという所であります。

・・・・しかしオペにGCからそんな上を入れんでもと思うのですが、共通担保オペというくらいですから国債以外の担保も入る訳でして、国債以外のファンディングに関連してちょっとまだ重い人がおいでになったということなんでしょう。まあ今日は落ち着くと思うんですけど。


○その他短い所の話

・年度末越えのニーズは低いのですかねえ

昨日は3か月FB入札が実施されたのですが、入札前にはやたら気配が強くなってましたけど、落札結果は平均が0.558%相当で脚きりが0.569%相当と中々素敵な流れ方をしやがりまして、引けてみれば0.57%が引け値(0.565%がオファーサイドのようで)と何とも冴えない展開。

まあここもとカレント3か月のFBがやたら堅調だった背景には期内物への実需投資(とか現先運用とか)のニーズが高かったというのがあったようで、それに対して期末越えて直ぐに償還が来るという今回のFBはそんなにイラネということだったのかもしれませんな。でも6か月とか1年とかはそれはそれで堅調なので、年度末を越えるからイラネという訳でもなさそうな所が奥が深いですけど。


・金先凄いですね

ここの所中短期の現物国債とまるで関係なく金先がアホほど踏みあがる光景が良く見られるのですが、昨日も金先は威勢良く相場上昇の巻でしたようで。どうも今までLIBORレートが高くなっていたことからスワップの固定払いをしてLIBOR受けてウッシッシというのがあって(で、そのヘッジにJGB買ったりするんですけど)、昨日の場合は前夜のECB攻撃によりLIBORがここから落ち着くでしょうから取引閉じに行きますかということでスワップの固定受けに回るの巻となりますなという所なんでしょう。

でも実はユーロ円金先ってリファレンスレートがTIBORですんで、ユーロ円金先買っても本当の意味ではヘッジにならんというのが残念なところなのでけど、他に適当なヘッジ商品がないですからなんちゃってヘッジではありますが、金先が振り回されるの図となっているようで、TIBORと必ずしもリンクしている動きではないでしょということのようですな(まあLIBOR下がればTIBORもそれなりに下がるので全く意味が無いわけではない)。


・ポジション調整に振り回されますな

てなことで、年末までの一戦終了したかなとか昨日は申し上げましたけれども、昨日の短い所の動きは局所的(ただしそこそこでかい)ポジション調整に振り回されましたなあと言った所のようでございますわな。まあそれを言い出すと長いところも何かポジション調整とディーリングタッチで年末一勝負組の動きで相場動きやがりますわなあという観がする(20日渡しのあたりでかなーり動きがあったこともありますので、インデックス系以外は20日渡しの時点でかなり片付いてると思うのですが・・・)ので、まあモードとしては年末モードになっているっちゃあなっているんでしょうが・・・・・何か良く動きますな。

短い所の話とか言いながらいつの間にか債券市場の話にもなってますけど(苦笑)、海外要因がアレなせいもございますが、年末モードと申しましても今年の場合はあちこちに調整しなければいけないポジションの偏在化(資金の偏在とかいうのも含めまして)があるようで、動き自体はもうちょっと派手派手な展開が続くのかもしれませんね。

#などと書くと急に鏡のような相場になってしまうのがドラめもんクオリティ



○そういえば決定会合ですな

まあ正直申し上げまして注目材料もへったくれもないのでありますが(何たる暴言^^)、恐らくは金融経済月報の内容も短観を受けた部分以外そんなに書き換えもないでしょうし、票決が9対0になっても8対1になってもあんまり関係ないと思います(まあ相場は短期的に反応するかもしれませんが)。強いて言えば月報でここもとのマインド悪化現象をどう評価するかという所でしょうが、月報段階でそう書き換えてくるとは思えませんですな。

一昨日も申し上げたように、現在の金融政策の枠組みと展望レポートのロジックを足し合わせるとそもそも利上げを継続しないと論理的に変ですよという壮絶なロジックとなっているのが現在の金融政策の枠組みでもありまして、どうせ月報で今月も「先行きについては景気は緩やかに回復」なんでしょうから、その判断を継続している以上は利上げしないと理屈の整合性が取れないというオソロシイ事に(-_-)。

てな訳ですから、正直票決がどっちでもあんまり本質的な問題ではない次第でして、今の金融政策の枠組みというかロジックを組み替える(一番早ければ来年の1月中間レビューで展望レポートの修正はできますけれども、執行部交代後の来年4月に出る展望レポートがタイミングとしては適当なんでしょう。幾らなんでもその頃にはサブプラ問題の帰趨も見えてくるでしょうというか見えてるといいですね^^)までは、何にせよやりにくいんじゃないでしょうかね。

#まあこれだけ先行き不透明モードの中で政策ロジックに殉ずるのもちと何だかなと思うのですが、現状維持賛成してる方々も展望レポートや月報をろくすっぽ下方修正しないですからねえ・・・・・

総裁会見注目という話もあるんですけど、確かにまた楽しい不規則発言が聞けるかもしれませんけど、もう退任まで政策いじれない状況の総裁会見に注目するのも何ですなという気はします(が、ネタにはしますよん^^)。

ではでは。











2007/12/19

お題「今日は人のふんどしシリーズ」

信用不安の火付けレポートを散々出してる側からクレジットショートで最高益(「最後の2週間は厳しかった」なんてのは火付け盗賊扱いされないためのリップサービスでしょと思う性格の悪いあたくし^^)というのは何ともこう釈然としませんなあなどというあたくしはメリケン流金融の世界は向きませんですかそうですか。

相場の方が微妙にひと勝負終了の観があるので今日は人のふんどしを主体に(こら)。


○年末金利高止まり終了のお知らせ(か?)

えーっと、「か?」でございますのでお間違えの無い様に(^^)。

昨日は国債買現先はありましたが、共通担保オペの実施がなくてGCレポ金利はどうなるのかと思ってたら結局レギュラーのところは0.5%台後半に低下しましてほほうという感じであります。金利低下の要因としては、(1)20日の大量償還を抜けて(本当に償還になるのは明日ですけど)、輪番オペや買入消却で大投げするほど重かった在庫負担が軽くなった(償還間際の銘柄は担保などに使えないのでファンディングが厳しい)、(2)20日のところで投資家の買いがそこそこ入って在庫が軽くなった、(3)年末越えのターム資金が取れて来たので足元の資金が余りだした、などなど考えられますが、まあとりあえず「何で高止まりしてるんですかあ?」と不思議に思う人も多かったGCレポレートがようやく足元は落ち着いて来ましたなあという感じ。

短い所のFBもちょっとレート低下っぽくて、年末越えの部分に関して(円資金限定ですが)大分落ち着いたのかなあとか思うのですが、CPの1か月とかは相変わらず金利が高めでございますので(さすがにここからまだ上昇という感じはしませんけど)無担保の部分に関してはこれからターム物のコールとかに動きが出てくるんでしょうな。


昨日の債券市場の動きって20年国債の入札があったくせに、それで盛り上がったという感じはしませんで、それよりも何か一部参加者のポジションの動きでフラフラするという感じのする相場でして(20年入札なのに引けに掛けて10年が強くなるとかナンジャソリャって感じですわな)、あとは月末に掛けてのリバランスがある程度という(長いところの入札も終了しました)ところでしょうか。まあ一部参加者のポジションの動きで動くということですので、訳判らんところで急に踏みが来たのでとか急に投げが来たのでとかあるかもしれませんので警戒は怠れませんけどね。


○資金供給の「総額」報道はかなり無意味というのに同意

今日は本石町日記さんのふんどしを勝手にお借りする次第ですが。
http://hongokucho.exblog.jp/7837445/

この前のパリバショックでECBとかが派手派手に資金供給した時にちょうど積み最終近かった日銀はお付き合い供給したのはいいけど積み最終でコール金利がアホほど低下。そういう意味では世界で一番緩和をしてた(2日間だけですが^^)中央銀行だったんですが、最後に積み最終だからテクニカルに吸収したら散々な言われようという実に落涙を禁じ得ない事態がございましたのはご案内の通り。

んでまあ今回も「大量の資金供給がどうのこうの」という報道が出ているのですが、その供給って各回のオペ金額の総額を計算しても意味ないでしょというお話が本石町日記さんのエントリーです。まあ市場の中の人的にはかなーり常識だと思うのですが、金融調節にあまりお詳しくない人もおいでのようですので念の為リマインドちゅうことですな。

>分かりやすい例として、「銀行券」と「財政等要因」による資金需給が中立だとし、銀行の予備的な資金需要が通常よりも1兆円多い状態が続いたとしよう。

から始まる説明がわかりやすいと思うのですが、続きの部分で本石町日記さんが指摘しているように、こういう時は当然ピークに合わせて長いオペを打ち込むのが本来のあり方で、短いオペを延々と打ち続けるのは意味がないというか実際問題としては予備的需要に応えていませんという話になります(だってオペがロールされるかどうか判らないですし、ロールされた時に自分の札が空振りするかもしれないし)ので、実は先を見越して予備的にタームもの供給を行っている方が足元でわけわからなく繋いでいるよりも供給「総額」は減るという事態が発生するのでございます。

とは言ってもこれって国内だけじゃなくて海外のそれなりにちゃんとしていると思われるメディアでも理解してないで報道してるだろってのが多いんですよね(吐息)。


○もう一丁人のふんどしですが

またまた本石町日記さんの尻馬に乗るあたくし。
http://hongokucho.exblog.jp/7833900/

んでまあこちらのエントリーの元を辿っていくと多分この記事なんでしょうなというのが見つかりました。ほうほうなるほど。
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/423801/

なるほど日銀が量的緩和政策を解除して資金を回収したら株価が下がりましたと仰せですな。いやまあ全くの無関係かと言われますと良く判りませんなあとしか申し上げようが無いですが、そもそもこのグラフを平成17年よりも前(要するに平均株価が最安値だった頃)に引っ張った時にどういう関係になるんでしょうかねえとあたしゃ思うんですけど、(部分だけ切り取って「回収したときに下がった」というなら、「増やした時には上がった」というのもないといけないと思うんですけどねえ)が、まあそこまでは一万歩譲って良いとしまして。

んでまあこちらのセンセイは『日銀資金は銀行など金融機関が企業や個人に貸し出す源泉で、言わば貯水ダムの水である。マネーがたまると、銀行はカネを放出する、つまり貸し出しを増やすよう圧力を受けるが、少なくなると逆に圧力が減る。』と仰せでありますが、そもそも量的緩和政策でゼロ金利になっている時に銀行は超過資金を保有するコストがゼロに近くなる(預金保険料率がどうのこうのというツッコミはここでは話がややこしくなるので措く)ので、そもそも超過資金があっても別に貸出が増えるわけではございませんが何かという感じですわな。

『銀行の貸し出しは都市銀行を中心に昨年半ばから減り方がめざましい。都銀などは中小企業向けに積極的に貸そうとしない代わり、余ったカネをヘッジファンドなどに超低金利で流し、ファンドはこの円資金をたたき売って高金利のドルやユーロで運用して荒稼ぎする。この結果円はドル不安にもかかわらず弱い。大企業は海外法人の為替差益で収益を増やすが、給与を上げないので一般の家計は改善しない。従って個人消費は今ひとつ盛り上がらない。』

以下の論議はもはや何を言いたいのか一々突っ込んでいると泣きそうになるので割愛しますが(^^)、結局銀行の貸出が増えれば良いのか減れば良いのかどっちだか判りません(><;という論理展開で、これで『経済がわかれば、世界が分かる』とか言われても困るんですけど・・・・・・

ま、それ以前の問題として予備的需要を大きく上回る規模の超過準備が発生するような資金供給を継続的に(単発ではないですよ)行うとコールレートは勝手にゼロ近傍に低下するのですけれども、その辺ご理解して書いてるのでしょうかねえ・・・・・

などと書いているうちにこの筆者様の名前どこかで見たことあるなあと思い出しましたら、日頃から勉強させていただいている「週刊オブイェクト」さんのところで今年7月に話題になっていたのを思い出しました。どうも何だか思い込みのお強いお方のようでいやはやですな。
http://obiekt.seesaa.net/article/49298967.html
(その他今年7月に関連エントリーがありますが適当に探してね)

という訳で本石町日記さんに勝手に乗ってしまった(荷物が重くてスイマセン^^)の巻でありました(超大汗)。









2007/12/18

お題「金融政策の枠組みなどに関する雑考」

今日はちょっと目先を変えまして、ここのところつらつら考えている事をダラダラと申し上げますんで、思考の叩き台にでもして頂きますと幸いでありまする。

#ところで「インフレ懸念で株売り」ってインフレなら株買うじゃろ。「スタグフレーション懸念」ならまだ判るんですけど・・・・・


○というわけで1年9か月前の文書を読んでみる

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k060309b.htm
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0604.htm

どうでも良い話ですが、昔のリンク(自分が去年書いたものからリンクを拾ったら繋がらないのは如何なものかと。んで上が「新たな金融政策運営の枠組みの導入について」で、下がその年の4月に出た展望レポートです。

2つの柱による点検ってえ奴ですけれども、これって暫く前にちょっと話題にしたと存じますが改めて。

(2)2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検

 金融政策の運営方針を決定するに際し、次の2つの「柱」により経済・物価情勢を点検する。

 第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。

 第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因についての点検が考えられる。

(以上06年3月9日公表文書より引用)

まずこの2つの柱が判りにくいですなあというのは(何せBISが間違えたくらいですから)ございますわな。第1の柱が「メインシナリオの点検作業」であって第2の柱が「それ以外の点検作業」というのは以前お話したと思いますが、そもそもが「柱」という言葉でイメージされるものと違うでしょということですわな。

んでまあ2本の柱を立てるなら「上向き」「下向き」の点検をするというのであればまだ判りやすいんですが、これってその当時の経済物価情勢判断に伴い将来的な金利引き上げというか正常化というか、「金利調整」というか知りませんが、そのプロセスを円滑に進める為に使いやすい理屈を動員したという観が正直言ってございますわな。

んでまあ経済物価情勢がこの当時描いていたように進行してなくて、根本のシナリオが変調となっているので、徐々に論理的な整合性がおかしくなっているということでしょう。この先でご紹介する昨年4月時点(随分昔の気がしますが、まだ1年9か月しか経ってないんですよね)での展望レポートのロジックですが、基本的な部分ってえのは今でも変っていない訳でして、そのロジックで行けば利上げしてないと論理的な整合性が取れなくなっているという素敵な状態になっているのが現状の困った所であります。

もっと話が飛びますが、(ちと最近のことは置いといて)経済物価情勢として潜在成長率近辺での巡航速度の成長をしていながら物価が安定というのは本来ならば日銀ウハウハの展開の筈なのですけれども、そうなった時点で金融政策のロジックが利上げしないと変という状況になっているのが如何なものかという感じでして、まあ昨年の時点で景気を強気に見過ぎて、徐々に利上げしていかないと論理的に変という枠組み(枠組みと展望レポートの併せ技で出来た枠組み)にしちゃったのが残念なところです。

#しかしこの枠組み出た時に「ゼロ金利政策が長引く」とか解説してた人が多かったのは日銀文学の真骨頂を見せたとしか申し上げようが(^^)


○んでまあ展望レポートのロジック

んでまあ上の方にリンク置いときましたが昨年4月の展望レポートの論理を見るわけですが。

『第3に、企業部門から家計部門への波及がより明確になってくるとみられる。企業部門の好調の影響は、雇用や賃金の増加に加え、配当の増加や株価の上昇を通じて、家計部門にも波及している。そうしたもとで、個人消費は、着実な増加を続けると予想される。住宅投資も、都心部などで地価が上昇に転じる中で、金利の底値感が台頭していることもあって、緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。この結果、家計支出は、国内民間需要の主たる牽引役になっていくとともに、その堅調が企業部門にフィードバックして、前向きの循環メカニズムが維持されていくと考えられる。』(2006年4月の展望レポート)

まあこの前向きの循環メカニズムに関してはここに至ってはどう見てもシナリオ崩壊(ただし個人消費がコケなければ来年も別に景気腰折れせんでしょというのが統計的な数字になってるようですが)だと思われるのですが、本年10月の展望レポートを読みますと相変わらず『生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大を続けると予想される。』となってるのが涙を誘うのでありまする。

ちなみに家計部門に関してですが、本年10月の展望レポートではこうなっております。

『第3に、好調な企業部門から家計部門への波及が、緩やかながらも着実に進んでいくとみられる。雇用者数の増加が続く中で、雇用者所得は緩やかに増加し、株式配当の増加など様々なルートによる波及も続くとみられる。賃金については、グローバルな競争や資本市場からの規律の高まり、原材料高などを背景に、中小企業を中心に人件費抑制姿勢が根強いことに加え、賃金水準の高い団塊世代の退職やパート比率上昇に伴う人員構成変化などもあって、やや弱めの動きとなっているが、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、徐々に上昇圧力が高まっていくと考えられる。こうしたもとで、個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(2007年10月の展望レポート)

まあ随分とトーンダウンしてまして、昨年4月時点で中に記載されていた『前向きの循環メカニズム』っていうのが外れているだけ現実は見てますねえとは思うんですけど、その前の『好循環メカニズム』が残っているところが何とも素敵でございまする。何かこの「循環メカニズム」って形を変えた「ダム論」っぽくてアレなんですけどね(^^)。



んでまあ昨年4月の段階での第1の柱、第2の柱ですけど・・・・・・

『まず、先行き2年間の経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて点検すると(第1の柱)、(途中部分思いっきり割愛)わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いと判断される。 』

『この間、より長期的な視点を踏まえつつ、確率は高くなくても発生した場合に生じるコストも意識しながら、金融政策運営という観点から重視すべきリスクを点検すると(第2の柱)、(割愛)中長期的にみると、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクは意識する必要がある。一方、経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、(割愛)物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さくなっていると考えられる。』(以上2006年4月の展望レポート)

ということですが、この部分って実は今でもあんまり変ってない(どころかデフレスパイラルの可能性については「さらに小さくなっている」となっています)んですよね。うーむ何とも。


まあいずれにせよ、今のロジックだとちょっとこう話に無理があるように思えますので、論理をもうちょっと整理して判り易くしたほうが良いのではないかと思います次第。執行部新体制になった所が良い機会なんじゃないかと存じますが如何なもんでしょう。


○ところでこの先行き見通しも中々の謎なんですよね

んでまあ毎回一応話題になってくれる展望レポート最後の部分の例の表(審議委員の経済物価の大勢見通し部分ね)なんですが、これがまた何というか謎な部分があるんですよ。昨年4月の展望レポートに示された先行き見通しの表の注記にこのようなものがあるのは皆様ご案内の通りかと存じますが。

(注2) 各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。なお、10月時点の見通しでは、政策委員の見通しを作成するに当たって、先行きの金融政策運営について、不変を前提としていた。

でね、この『市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ』ってえのが謎というか曲者でして、例えば今年4月の展望レポート公表時点と今年10月の展望レポート公表時点では市場が織り込んでいた政策金利見通しって前者では「まあ本年度内に2回は利上げあるでしょ」だったし、後者では「本年度内に1回できるかどうか微妙になってきましたなあ」ですので、そもそも見通しの前提となる数字が違っているのですよね。

と言うことはですな、物価見通しも本来その政策金利パスに則って数字を変えないと話がおかしい(本年10月のケースで言えば、数字不変だったら実は見通し下方修正になりますよね。政策金利が前回比あまり上昇しないという前提にしたのに見通しを引き上げないんですから)という話になるのですけれども、そもそもそのパスがどこら辺にあるのか良くわからんので、出てきた数字を見ても下方修正なのか上方修正なのか判らんがなという事態になるざますわな。

#などと言ってるあたくしも何が何だかとなってしまう謎展開ですが(^^)

まあこの部分も本来は「政策金利不変」の予想をしてもらうとか、不変の場合と市場金利インプライドのパスを併記するとか、何かその辺のブラックボックスは外して頂きますとより判り易くなるんじゃないでしょうか。


以上、つらつら思っているお話をダラダラと並べましたが、まあ来年は新体制になる事でもありますし(全員留任したら凄いが^^)、もうちょっと判り易い枠組みを作っていただきたいなとか思いながら。。。。。








2007/12/17

お題「短観でした/岩田副総裁の講演」

月曜はいつものようにボケボケなので簡単に。

○例によって短観

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0712.pdf

大企業製造業の業況判断DIが+19と世間様の事前予想より芳しくなかったのですが、よくよく見ると中小企業製造業の業況判断DIが+2と前回調査比改善してまして、大企業と中小企業の格差がどうのこうのという話はどうなっとるのという結果でもありましたな。まあそんな調子で、ヘッドラインの数字はあまりよくないのですが、前回は大企業の内容が良い中で中堅中小企業の数字がパッとしないという状況だったのですが、その点では今回の短観の中身は微妙っぽいですな。

ではまあちゃんとした分析は本職の方がするでしょうからいつもの趣味的チェック。

・業況判断DIの達成度合い

いつものでございます。

            (9月時点)       (12月時点)
           現状→12月予測  現状→3月予測
製造業大企業   +23→+19    +19→+15
製造業中堅企業  +10→+10    +10→+6
製造業中小企業  +1→+3      +2→▲3

非製造業大企業  +20→+21    +16→+15
非製造業中堅企業 +4→+3      +2→▲3
非製造業中小企業 ▲10→▲11     ▲12→▲17

実は製造業は前回時点での業況先行き判断DIが概ね達成されているという結果だったりしまして、あまり前回予想通りに行ってないのは非製造業大企業だけだったりしますが、そもそも論として前回時点での先行き予測が堅めだったんでこのくらいは達成してくれませんととも。ちなみに9月の短観では6月時点での比較的弱めの先行き予想DIを中堅中小企業が達成しませんでしたなあという内容でして、その点では前回よりは(絶対水準は別にして)マシと言えばマシ。

ただまあ先行きの予測DIは今回厳しめに出ております。そりゃまあご時世がご時世ですから当然ですけれども。


・雇用判断

前回は雇用不足感拡大は止まったものの不足状態継続という感じ。


            (9月時点)       (12月時点)
            現状→12月予測  現状→3月予測
製造業大企業    ▲7→▲8      ▲7→▲7
製造業中堅企業  ▲8→▲10      ▲8→▲12
製造業中小企業  ▲3→▲6      ▲3→▲7

非製造業大企業  ▲17→▲21    ▲20→▲22
非製造業中堅企業 ▲14→▲18    ▲13→▲18
非製造業中小企業 ▲9→▲13     ▲11→▲12

9月時点で想定していたよりは雇用不足感は拡大していないけれども、じゃあ9月時点と比較して雇用不足かどうかというと不足感拡大という数字になってます。どうもこの雇用判断DIに関しましては、先行き予想DIが常に「現状を拡大する方向(=不足時は先行きの不足拡大、過剰時には先行きの過剰拡大)」に出る傾向があるので先行き予測はひっくり返りでもしない限りあんまり気にしなくて良いのかもしれません。



・今回はどうだったか証券業の業況判断

前回9月は▲30でしたが、その前のDIは現状判断+34で先行き判断が+54でして、3か月でそこまで下方修正とは市況産業とは言えそれはあまりにも短期的な視点でも判断で実に香ばしいというかお経営お企画部門のおエリートの皆様におかれましては何考えてるんでしょうかねえとか悪態の一つもつきたくなるのはあたくしがおエリート様の部門に1ミリも縁が無いからですかそうですか。

        (9月時点)       (12月時点)
        現状→12月予測   現状→3月予測
証券業    ▲30→+23     ▲26→+4

前回比の変化幅は+4なんでそれだけ見たらはあそうですかという数字なのですが、よくよく見りゃ9月時点での先行き予測DIは超大幅改善というものだったのにまるで改善してないという大本営発表にも程がある内容でございましたわな。

で、今回はさすがに先行き予測DIがゼロ近傍まで下がってきましたが、まあ逆に言えばこの予測数値が先行き悪化になる頃には証券業を取り巻く環境が改善するってことじゃないですかねえ。あっはっは。



○岩田副総裁の講演

お題は『テール向け金融ビジネスの将来像』ですのであまり金融政策の話はしてないんですけどね。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712b.htm

(サブプライム住宅ローン問題の教訓)って部分から。

『今年の金融ビジネスを振り返ってみると、やはり最も大きな関心を集めたのは、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融市場・金融システムの動揺だったといえます。米国サブプライム住宅ローン問題は、米国におけるリテール金融ビジネスの問題でした。これがなぜ世界の金融市場や金融システムを巻き込む大きな動揺に繋がったのか、簡単に整理しておきたいと思います。』

ということで、証券化されて拡散されてますって話をしたあとに、投資銀行ビジネスとリテールビジネスは並存させると効果があるという話を。

『第一に、サブプライム住宅ローン問題の展開をみてもわかるように、投資銀行ビジネスは、儲かるときには儲かるが、タイミングや戦略を誤ると収益が不安定化するリスクを負っています。このため、投資銀行ビジネスを手がける商業銀行は、安定的な収益源の一つとして、リテール金融ビジネスや資産運用ビジネスをビジネスラインに取り込むことで、グループ全体の収益の安定化を図ろうとしていると考えられます。』

『第二に、投資銀行ビジネスとリテール金融ビジネスの間には、シナジー効果が働くことです。投資銀行ビジネスでリスクを加工・移転する対象となる資産として、リテール金融ビジネスから安定的に供給され、大数の法則により統計的な扱いが容易な資産が適している面があります。住宅ローンを証券化したRMBSはその典型といえます。』

第二に関してはまあそりゃそうなんですけど、本当に大数の法則により統計的な扱いが容易なのかはちと疑問があるんですけどね。

『ただし、投資銀行ビジネスとリテール金融ビジネスのシナジー効果を享受することは、投資銀行ビジネスに伴うリスクがリテール部門にも影響を及ぼす、またその逆の可能性もある点には留意する必要があります。』

それは仰るとおりで。


あと、今回の講演でニヤニヤしながら読んだのは『わが国におけるリテール金融ビジネスの課題と展望』ってところです。

『わが国の大手金融機関が、リテール金融ビジネス収益性向上のために近年新たに取り組んできた課題として、次の二つが挙げられます。第一に、投信・保険等、リスク性商品の販売拡大による手数料収入の引き上げです。第二に、定量モデルを用いた中小・零細企業向けビジネスローンの拡大による、低コストでの取引先開拓と貸出利鞘の拡大です。』 

『本日は、残念ながらこれらの課題に向けた取り組みが、いずれも足許やや行き詰まり感を示しているというお話をさせて頂きます。』

第一は兎も角、第二に関しましてはもう日銀様も金融庁様も絶賛ご推進されておられた案件でございましたですねえあっはっは。随分とこのネタは悪態の材料にさせていただいた覚えがあるんですが。というわけで第二の話。

『ここ数年大手金融機関を中心に導入され、残高も徐々に増えてきていました。ただ、2006年以降、倒産件数が上昇、商品が想定していたスプレッド設定では採算が取れないレベルまで貸倒率が上昇していることを受けて、モデルの精緻化や審査手続きの見直しを行ったり、商品の取り扱いを停止した先もあるようです。』

あっはっは。

『第二の課題である中小・零細企業融資ビジネスについては、財務データのみに依存せず、決済口座モニタリングを通じた資金フロー情報や定性情報も活用しながら、資金の流れ・商売の流れを把握することの重要性を再確認する声が聞かれます。』

そんなの昔金貸しの手先やってたあたくしは当然のように仕込まれましたけど、最近の現場はどうなってるんでしょうかねえ。

『とくに大手金融機関では、比較的規模の大きい中小企業にはアジアとのビジネス機会を持つ先も多くなっていることを捉え、国際戦略や資本戦略まで含むトータルな資金調達提案力を備えることで、ビジネスチャンスを広げることを期待しているようです。リテール金融ビジネスの基盤がしっかりしていれば、これを通じて多様な顧客情報が集積され、この情報基盤を活用することで商品開発力も向上し、そのコストも低減するという好循環が働くことが期待できます。』

何かいきなり話のスケールが巨大になっています。

『顧客重視の戦略は、低コスト化、クイック化というここ数年の発想とは一見逆向きのようにもみえますが、実は一段発展させた戦略ともいえます。こうした戦略を、採算度外視でボリュームを追求するといういつか来た道に陥らず、新たな発展に繋げるには、リテール金融ビジネスに閉じない、大きなグループ戦略を描くことが不可欠です。すなわち、世界にネットワークをもつ大手金融機関ならではの資産運用力や資金調達力が競争力の鍵となるといえ、そのためにグループ力を高めることが一つの解決策になると考えられます。』

どう見ても中小零細向けのビジネスローンとは無関係のお話です。本当にありがとうございました。


・・・・いやね、別にそういう話はそういう話でよいと思うんですけれども、主に金融庁様が絶賛推進して日銀様も結構絶賛してたと思うんですけど、「中小零細向けビジネスローン」ビジネスに関する反省の弁が結局ねえじゃんって感じでありまして、岩田副総裁が悪いわけじゃないんですけど、こーゆーどう見ても現実を見ないで理念先行で行った「リテール金融の高度化」に対してはきちんと総括をして頂きたいと思うんですよ。そうしないと結局またどこかで同じような「理念先行現実無視」施策が出て(改正建築基準法とかもそういう香りがしますよね)世の中大迷惑になるんですよね。と思うんですがどうでしょうか・・・・・










2007/12/14

お題「昨日の相場などから今朝は軽めで勘弁」

今年もあと2週間、というか実働あと1週間ちょっとですね。

○例の流動性対策云々に関連して追加の雑談を少々

・ドル流動性対策の面とか

一昨日の夜に打ち出された施策ですが、昨日は各国の文書などをもうちょっと読んでみたのですが、要するに欧州系金融機関のドル資金繰りが短期金融市場の信用収縮によって息も絶え絶えさんになっているので、手持ちのドルがそんなにない欧州各国中銀がスワップ協定結びましたというお話でございますかな。タームの自国通貨の金は出るけどドルは出ませんということなんでしょ。


・裏口公定歩合下げみたいなもんですかという面とか

今回のオペですけど、連銀貸出でフォローしていたものをオペ方式に切り替えるという話でして、その最低応札レートがOISレートということですので、出来上がりのレートは多分公定歩合よりは安くなる(場合によってはFFより安くなるのかも知れませんが)と考えますと、連銀貸出の金利を引き下げる効果がございますわなという所になるんでしょう。

そんなら最初から公定歩合をどどーんと下げてFFとの差をもっと狭くすりゃいいじゃんよとか思うのですが、それはやらんというのは、連銀貸出が色々と借り難いという面があるにせよ、どうも「結局のところFRBは金利をどどーんと下げるのは避けたいのね」ってことなんでしょうなあと思うのです。

何か対策が今後も小出しになる悪寒がするんですけどねえ。。。。


・しかし1日待ったのはどう見てもトンマです

んでまあ今回の施策。FOMCミーティングが終わる時間に欧州中銀は閉店で日本は丑三つ時にも程がある時間帯だから同時発表するためにFOMCの翌日にしたという説が濃厚らしいんですけど、その1日の間に米債市場は強烈に金利低下して、流動性対策公表で今度は強烈に金利上昇となりやがりました訳で、米債やってる人たちからすれば余計な怪我人を続出させやがってコノヤロウとなってるんじゃネーノって感じです。再任大丈夫かバーナンキ先生。

やる気あんならマネタリーポリシーとは別にとっとと出しやがれと思う次第でして、1日待ったという所に脱力感を受けるのでしたよ。


○ほほうCPオペ

日銀のサイトには出てませんが、時事メインの報道する所(13日の早朝というか夜ですが1時29分配信)によりますと、12日23時30分に行われた稲葉理事の記者会見で「明日(13日)は変な即日オペとかやるんでしょうか」というような皮肉にも程がある質問が出てたそうですな。というか記者会見の内容が皮肉質問の連発でかなり楽しめるので記事は必見(^^)。

んでまあ昨日はCPオペが久しぶりに堂々実施されました(^^)。

買現先で期間は17日〜1月22日で3000億円。落札結果は4465億円の応札で3015億円の落札。平均が0.762%で足切りが0.71%(全取)となりましたが、他のオペの金利と比べると無茶苦茶高いんですけど、CPの実勢レートからするとまあこんなもんでも仕方ないかなというレート。ここまで上を取りに行かなくてもという感はしましたが、このオペでとりあえず3000億円分CPディーラーの年末越え在庫が軽くなった(現先だから後で帰ってきますが)効果か、CP発行レートも昨日は中盤戦以降ちょっと低下した感じですので、まあそれはそれで効果がありましたなあという所でございます。

まあCP発行レートが下がるのが欧米の流動性対策と何の関係があるかと申しますと全然関係なかったりするとか、CPオペやるのに忙しかったせいなのかどーか知らんが昨日はT+1の本店オペが無くて、足元のGCがいきなり上昇したためにレギュラーのところも上昇しちゃいましたね残念でしたねとかいうような無粋なツッコミはこの際行わないのがオトナの対応というものであります(って十分行ってますが^^)。


○わけわかめな短い所の挙動

昨日はユーロ円金利先物が朝っぱらから上昇し、何かじりじりと上昇を続けて気が付けば5毛強とかやらかしておりました。その一方で債券の現物を見ると2年ゾーンが一番甘いイールドカーブという有様でして、FBも短い所中心に重めで推移ということで、現物と先物が全然かみあってません><;

後付けでありそうな話をでっち上げてみますと、ユーロ円金利先物市場での買いはLIBOR金利上昇に対するなんちゃってヘッジ(清算はTIBORなのでまさになんちゃってヘッジ)の買戻し(流動性対策が出たからT-Lのスプレッドが縮小するでしょという話)でして、一方の短い所の現物がアホほど重い(6年から9年は1毛強なのに2年近辺は2毛甘ってどんなカーブだよ)というのは正直良く判らんです。質への逃避の巻き戻しといえばそれらしいんですけど、そもそも論として質への逃避なんぞ起きてなかろうよと言われると多分それが正しいと思われますので、キャッシュ潰しの巻き戻しなのか、それとも米国がベアフラットしたから日本もお付き合いしてベアフラットとかいう根拠レスにも程があるトレードをする人がいたのか。まあ知らんがなとしか申し上げようがないですぅ。(12月16日追記:よくよく考えてみたら、スワップスプレッドでJGBロングのスワップペイしてた人間(理由はサブプラ)のアンワインドが入ってスワップレシーブを受けたスワップディーラが金先を買った(その一方でアンワインドのため2年のJGBが弱い)というのが一番話としてありそうですね)


○予告編

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712b.htm

本当はこれも今日のネタにするよていだったんですが、そもそものお題が『リテール向け金融ビジネスの将来像』でして、サブプライム問題の話とかありますが、景気物価に関する話がございませんのでとりあえず今日は時間の都合上(というかそれがメインの理由ですが、汗)華麗にスルー致します。月曜にちょっとだけ書こうかとは思いますが。


それでは素晴らしい週末をお迎え下さい。あ、今日は短観じゃねえか・・・









2007/12/13

お題「何か施策が出ておりますが・・・・」

このニュース朝6時半と7時のNHKニュースでトップ扱いですよ。

で、先にお断り致しますと、昨晩の今朝ネタにつきあたくし以下を勢いで書いてますんで、誤訳とか勘違いとかご指摘いただけると心から有り難く存じます(ので声明文をまる引用しちゃってますけど)。


○何で一日遅れで実施するんだか・・・・

忘年会とかで酒飲んでる場合じゃなかったではありませんか。
http://hongokucho.exblog.jp/7816632/

で、日銀のウェブサイトではこの発表。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/un0712c.htm

日本銀行もまあお付き合いがよろしいですな(国内の年末越えはそこそこ高いと言っても別に取れなくて瀕死の人がいる訳でもなく)という所ですが、何で米国さんは今回の施策をFOMCと同時にやらなかったのかは良く判らんでございますな。まあ日本時間の夕方にCNBC(日経CNBCではない)で「利下げ以外の対策が打たれる」云々ってニュースが出たとかあったような気がしたのはこの話だったんですね。


○ということでFRBのサイトを見に行きました

で、まあFRBのサイトを見に行きますとこんな感じになってます。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20071212a.htm

Actions taken by the Federal Reserve include the establishment of a temporary Term Auction Facility (approved by the Board of Governors of the Federal Reserve System) and the establishment of foreign exchange swap lines with the European Central Bank and the Swiss National Bank (approved by the Federal Open Market Committee).

ターム物のオペやって外貨スワップのラインがどうのこうのと書いてますな。ドル資金調達が大変だからどうのこうのって話なんでしょうが、日本でかつてジャパンプレミアムなどと言われてた時には、スワップ取引使って泣きながらマイナス金利で円投させられて、外銀ウハウハだったのを思い出しますと、何たる至れり尽くせり。

Under the Term Auction Facility (TAF) program, the Federal Reserve will auction term funds to depository institutions against the wide variety of collateral that can be used to secure loans at the discount window. All depository institutions that are judged to be in generally sound financial condition by their local Reserve Bank and that are eligible to borrow under the primary credit discount window program will be eligible to participate in TAF auctions.

えーっと何せ今この場で斜め読みしてる(正直後で読み直すのに便利なようにここにコピペしてるという説がある^^)のでなんですが、スタンディングファシリティ(連銀貸出)の担保基準と同じ基準でこのオペに参加できますってことなので、実質連銀貸出の緩和って話のように見えますがどうでしょ。(12月16日追記:要するにセカンダリーディスカウントウィンドウをオペ形式にしているというイメージのようです)

All advances must be fully collateralized. By allowing the Federal Reserve to inject term funds through a broader range of counterparties and against a broader range of collateral than open market operations, this facility could help promote the efficient dissemination of liquidity when the unsecured interbank markets are under stress.

短期金融市場にストレス掛かってるからこういう施策をとりましたというお話なんですかねえ。日本では短期金融市場とかクレジット市場にストレス掛かるの散々見ましたので「まあ落ち着け」という感じですけど。

Each TAF auction will be for a fixed amount, with the rate determined by the auction process (subject to a minimum bid rate). The first TAF auction of $20 billion is scheduled for Monday, December 17, with settlement on Thursday, December 20; this auction will provide 28-day term funds, maturing Thursday, January 17, 2008. The second auction of up to $20 billion is scheduled for Thursday, December 20, with settlement on Thursday, December 27; this auction will provide 35-day funds, maturing Thursday, January 31, 2008. The third and fourth auctions will be held on January 14 and 28, with settlement on the following Thursdays.

The amounts of those auctions will be determined in January. The Federal Reserve may conduct additional auctions in subsequent months, depending in part on evolving market conditions.

左様でございますか。何か別にこんなに細々とスケジュール感を出さなくても「ジャンジャンやりますよ」で良い様な気がするんですが。まあいっか。

Depositories will submit bids through their local Reserve Banks. The minimum bid rate for the auctions will be established at the overnight indexed swap (OIS) rate corresponding to the maturity of the credit being auctioned. The OIS rate is a measure of market participants’ expected average federal funds rate over the relevant term. The minimum rate for the December 17 auction along with other auction details will be announced on Friday, December 14.

Noncompetitive tenders may be accepted beginning with the third auction. The results of the first auction will be announced at 10 a.m. Eastern Time on December 19. The schedule for releasing the results of later auctions will be determined subsequently. Detailed terms of the auction and summary auction results will be available at http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/taf.htm.

だいたいこの辺は実務的な話(最低応札金利がOISレートだとか、非競争入札をどうやるかとか)をしているように読めます。(12月16日追記:上でも書きましたが、最低応札金利がOISということは、実質的にはセカンダリークレジットウィンドウの利下げを行っているのと同じような効果があるといえそうです)

Experience gained under this temporary program will be helpful in assessing the
potential usefulness of augmenting the Federal Reserve’s current monetary policy tools--open market operations and the primary credit facility--with a permanent facility for auctioning term discount window credit. The Board anticipates that it would seek public comment on any proposal for a permanent term auction facility.

スタンディングファシリティが機能してねえからこういう措置をとりましたってのは正直でよろしいですが、何か月その状況を放置してたのよと考えると何ともこう米国当局様の出遅れ大丈夫かとか思っちゃいますが。(12月16日追記:まあドル資金のファンディングが大変ということですから欧州のせいでもあるんですけどね)


○全部見てたら時間が無いのですがBOEのサイトを見る

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2007/158.htm

さすがにこれまで全部読んでたら時間が無いので端折りますけど、斜め読みしたらBOEもこんくらいの規模で出しますとかいう話をしてますね。で、担保基準の緩和をしてるんだかしてないんだか良く判らんが色んな担保とりますとも。

それはそれとして最初の所を読んで微苦笑したんですけど。

The Bank of England has already scheduled long-term repo open market operations (OMOs) on 18 December and 15 January. In those operations reserves will, as usual, be offered at 3, 6, 9 and 12-month maturities against the Bank’s published list of eligible collateral.

うちは既にターム物の資金供給を実施してるんですけどねと言ってるように見えますが気のせいでしょうか?一応以下引用だけ。

But the total amount of reserves offered at the 3-month maturity will be expanded and the range of collateral accepted for funds advanced at this maturity will be widened.

The total size of reserves offered in the operations on 18 December and on 15 January will be raised from £2.85 billion to £11.35 billion, of which £10bn will be offered at the 3-month maturity.

スケジュール感って出すもんなんですね。ふーんって感じですが。

The Bank will accept a wider range of high quality securities as collateral against funds advanced at the 3-month maturity. The additional categories of eligible collateral are:

wider rangeと言いながらhigh qualityと言い出すのはBOEの仕様ですかな。

・Bonds issued by sovereigns rated Aa3/AA- or above (in addition to those currently eligible), subject to settlement constraints.

・Bonds issued by G10 government agencies guaranteed by national governments, rated AAA.

・Conventional debt security issues of the Federal Home Loan Mortgage Corporation, the Federal National Mortgage Corporation and the Federal Home Loan Banking system, rated AAA.

・AAA-rated tranches of UK, US and EEA asset-backed securities (ABS) backed by credit cards; and AAA-rated tranches of UK and EEA prime residential mortgage-backed securities (RMBS).

・Covered bonds rated AAA

この基準が緩いのか緩くないのかは外債の専門家先生に判定してもらいますということで後日追記の所存。.

Securities must be denominated in sterling, euro, US dollars, Australian dollars, Canadian dollars, Swedish krona, Swiss francs, and, in the case of Japanese Government Bonds only, yen; and must be capable of being delivered via a settlement channel specified by the Bank.

何で円建てだけJGB限定なのかよく判らんが(^^)、まあ対象債券が無いとも言えるんですけど。で、以下引用だけしかしませんけど、実務的な話で、従前のスケジュールされてるオペは予定通りやりますよ&これは年末向けの期間限定措置ですよって話をしているように斜め読みしたのですけれども、ちゃんと読めたら追記するかも。

There will be no further changes to the scheduled operations on 18 December and 15 January. As usual, those eligible to bid in the operations will be the Bank’s OMO counterparties and the operations will be conducted as variable rate tenders with funds offered to successful bidders at the rate(s) that they tender.

Consistent with the Bank’s objective of keeping overnight market interest rates in line with Bank Rate, the Bank intends to offset the additional reserves taken up in the long-term repo operations in December and January in its other operations.

The Bank will review whether to make any changes to operations scheduled after January in the light of market conditions at the time.

The Bank will announce further operational details, including details of collateral and settlement arrangements, in a Market Notice on Friday 14 December.


○という訳で・・・・・

要するにスタンディングファシリティがちゃんと機能してないからこういう話になりましたってことでして、好感して株高とかトンマな話ですなあと思うんですが、まあ市場が誤解して上がっても効果としては効果ですんでよかったですねえ(棒読み)というところでしょうか。どっちかというと公定歩合を下げて担保基準を緩和して従来のディスカウントウィンドウがきちんと機能させるほうが筋なんじゃねえのとか思いますけど、年末近くてケツに火が付いて涙目モードということでございますか。ナムナム。(12月16日追記:それに加えて短期金融市場のシュリンクによって欧州系金融機関がドル取れずに大変な事になっているというのがありますんで、欧州もどうなのよというのはありますわな)

てなわけで、本石町日記さんのエントリーにございます指摘にあたくしも同意ですけど、いやあ海外の株式市場は無邪気に上昇しますねえとか言うあたくしはひねくれ者にも程がありますかそうですか。これでサブプライムローン問題が解消にとかちょっとあのそれは過大評価って奴じゃないでしょうかと思うんすけどね。

それから、本当は海外から邦銀に依頼が来たのどうのこうのというネタに関する雑感を書こうと思ってたんですが、まあ結論は本石町日記さんのお書きになっていること(http://hongokucho.exblog.jp/7815350/)に同意ですで終了でございます(^^)。









2007/12/12

お題「相変わらず雑談ばっかで恐縮です」

夜の街を歩いてますと「それでは良いお年を」って声がよく聞かれるようになって参りましたな。

○さあまだまだ催促されますよ

米国FFと公定歩合0.25%引下げですが、何気にあたくしも0.5%思い切ってやるでしょと(雇用統計出たところでこりゃ出し惜しみの言い訳ができるかなと思いましたが)思ってた次第でして、何かケチな利下げですなあという感じですな。

んでまあ米国株式市場大下げの米債上昇ということでして、追加利下げを示唆してもこの有様ですんで、これはもう1月のFOMCに向けてクレクレ相場相次ぐといったところでしょうか。

#まあ下げた下げたと言ってもその前に上げてますから所詮レンジワークのままなんですけどね

実際問題としては信用収縮市場においては金利水準が高くても低くてもファンディングできない時はファンディングできない物でありますので、利下げして何の足しになるのよという所なんですけれども(利下げしてカーブをスティープさせることによって金融機関の期間収益へのフォローを行い償却原資を稼がせるというパスはありますが、そもそもファンディングできるかどうかという瀬戸際な人にはそれ以前の問題)、まあやらないよりはやった方がマシですし、下げ余地があるならあまり小出しにしない方が良さそうってのは日本のサンプルがあった気がするんですが。

先日発表されたサブプライム対策も結局の所利下げが最大の対策でしょとか言われるくらいですから、まあ利下げだけどどーんとやるのも癪なのかも知れませんが(^^)、何か当局間の連携がイマイチですなあという感が拭えない利下げ幅でございました。


○国債市場懇関連メモ

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c191207.htm

その前に投資家懇談会とかもあったんですが、そのあたりを端折りまして直近の市場懇からちょっとだけ。

・買入消却に関して

『・通常の買入消却については、15年変動債の買入規模を1.2兆円程度に大幅に増額するとともに、名目利付債及び物価連動債の買入規模についても、19年度よりは増額を図る方向で検討することとしたい。』

『・また、ストリップス化が円滑に行われるようになるまでの時限的措置として、新たにストリップス債の利札の買入消却を導入することとし、買入規模については半期に1回、各200億円程度で実施するという方向で検討することとしたい。』

というお話のようで、要するに買入消却が全体として増えるというお話でございますか。まあ参加者としては追加発行(流動性供給とか第U非価格とか)と買入消却が拡充されるのはアリガタヤなのですけれども、霞ヶ関埋蔵金ブーム真っ盛りの昨今ですので、変につつかれて両方とも減らせという話にならないことを祈ります。

ところで、ほとんど黒歴史化しつつある15年変動利付国債ですけれども、発行の方が6000億円×4回(第U非価格で追加される可能性はおいといて)で買入消却が1兆2000億円ですから、発行の半分を買入消却ってもう何か落涙モノなんですけど、意見を見るともっと落涙を禁じ得ません。

『・0.6兆円×4回ということだが、昨今の需給を踏まえると、0.5兆円×4回に減額して欲しい。』

というのはまあよしとして、その次からの意見が泣かせます。

『・新規発行額から買入消却額を控除した今年度のネット発行額は3兆円を切っているが、それでもダブつき感がある。20年度は、2.4兆円の新規発行に対して、1.2兆円を買入消却し、ネット発行額を1.2兆円とすれば、割安感を修正するという発行当局の意思が明確に市場に伝わり、非常に良いと考える。』

泣かせますなあ。

『・0.5兆円×4回への減額がより望ましいと考える。また、来年度以降、減額後も割安さが解消されず、一方で市場流動性を確保する観点から更なる新規発行の減額ができないというジレンマに陥るケースも考えられる。投資家は発行継続を強く要望していると思うので、大幅に減額しても割安が解消されない場合においても発行を継続する理由を考えておいた方が良い。』

・・・・・何と申しますか。

『・買入消却を1.2兆円実施しても、15年変動債の市中残高は増える訳であり、減額後の発行ロットとして、0.6兆円または0.5兆円のいずれが適当かと問われれば、0.5兆円が望ましいと考える。』

>15年変動債の市中残高は増える訳であり
>15年変動債の市中残高は増える訳であり
>15年変動債の市中残高は増える訳であり

『・割安さの解消に向けた当局のクリアなメッセージ性という点で言うと、0.6兆円ではなく、0.5兆円まで減額すれば、更に良いのではないか。』

しかしあーた発行が年間2兆円で買入消却が年間1.2兆円ってもうマッチポンプ状態と言われそうな状況ではございませんか。現在の状況ってざっくり言っちゃえば「アウトライヤー規制バブル」の後始末させられてる状態ですので、色々と悲しいお話になるのは仕方ない面はございますが、落涙を禁じ得ない状態ではございました。


・・・ところで、やはり発行当局におかれましては、超長期のゼロクーポンを適格機関投資家限定で良いと思いますので、課税玉問題をクリアした状態(この税金問題が常に一番のネックですけど・・・・)で是非発行して頂きたいものと存じます。



○引き続き足元(除く超足元)だけ妙に高いですな

昨日は2か月FBの入札がございました(市場的に注目だったのは5年ではないかというツッコミは華麗に却下)。で、この2か月FBは基本的に単発物(3か月FBは基本的に償還分がロールオーバーされる根雪部分)でして、償還ロールの買いというのものが無く、またロールされないので償還後の再投資をどうするんのよという問題もございまして、基本的に使いにくい商品です。その上2月4日償還でして、3月償還だとニーズもあるんですがちょっと短いと来てますので、ちと低調な入札で、平均0.590%の足切り0.597%ということでして、ええっと先週水曜の3か月FBが平均0.541%だったのはありゃ一体全体何だったんですかという感じな結果でございました。

まあ引き続き足元の現先とかレポの金利が確りしてますが、コールとかのもうちょっと足元の金利は積み最終の接近と共に低下傾向とか中々ややこしくなっておりまして、CPが重いですねえというのはあるので何となく高止まり状態なのですが、でも資金が全然出てこなくて大変とかいう訳でもなくて、何となく先渡しの短い金利が微妙に下がらないという状態なんで、年末越えの資金放出がどっかで出て実際の年末までには落ち着くでしょうと思ってるんですけどね。

今日の3か月FBは償還が実に使いやすい(3月後半)ので、さすがにそこそこニーズ集まるでしょと思いますが。。。。。


足元といえば何か償還銘柄が業者間スクリーンでお安く出合っていたようですし、この前の国債買入消却でも現物のイールドカーブを超越したレートでの持ち込み(12月16日追記:月曜の輪番オペでも同様の持込がありました)があって、どう考えても償還銘柄ですなあというのがありましたけど、償還銘柄は振替停止期間に入りますと担保とかとして使い物にならなくなる(筈)ですので、その分ファンディングしなきゃいけませんという事でございますので、微妙にレポとかのレートが高めの時は仕方ないのかなという感じでもあります。ちょっとビックリしたけど。

ということで、担保付に関しては別にまあちょっとレート高い位ですけれども、無担保部分に関してどうなってるのよというのがやや気になる今日この頃でございまする。何かここのところ同じような話ばかりしてねえかというツッコミは却下。










2007/12/11

お題「相場雑談など」

本日の某公共放送朝のニュースのまちかど情報室のお題は「ブーム到来!?デジタル音楽」で初音ミク登場キタコレ。

○足元だけ金利上昇

昨日のTB/FBの引け値表を見ると殆ど前日比利回り上昇となっております。具体的に見ますと、先週水曜日に平均0.54%で入札をやらかした3か月FB(489回、3月17日償還)が前日比1.5毛甘の0.57%となりました。まあ足元CPの在庫が一部で重くて現先レートがやたら高いとか、GCレートがこれまた高止まりとか、CPの新発レートがやたら高いとかという事情があってさすがにFBにも影響してるというところなのですけれども、先週前半の状況は何だったんでしょという所ですな。いやはやなんとも。

んでまあこのTB/FBの引け(全部日本相互証券ベース)を並べますと3か月カレントの489回が先ほど申し上げたように0.57%なのですが、2月償還ものは0.58%、1月11日償還の475回は0.60%ということで(12月25日償還の474回は0.55%)緩やかですけど逆イールドとなってますわな。実はまあ「年末越え1週間のファンディングコストが上昇するけど年末年始越えたらレート落ち着くでしょ」という風に考えればこういうイールドになるのは当然ちゃあ当然でございますので、そーゆー意味ではようやく普通のレート形成になりました(年度内利上げの可能性?そんなのは知らん)なあという所でございます。

でも甚だ残念なことに、期末越えがある筈のFB489(3月17日償還)とFB477(4月10日償還)は引けが0.57%と0.57%で並んでまして、ここの期末越えプレミアムはねえのかと小一時間問い詰めたい利回りになっているのが甚だ遺憾の極みでございまする(^^)。

なお、先週同じく入札が行われた6か月FB488回の引けは0.56%となってまして、需給関係とかあるから仕方ないですが、何もそこを逆イールドにするこたあねえと思うんですが(苦笑)。


んでまあGCレートが0.5%台後半で高止まり(というか半年前はこの辺にいるのが普通だったんですが、調節担当の中の人が変ったのか何だか知りませんが、最近は加重平均を0.5%プラスマイナス0.005%に抑えるようなオペレーションを細かく打ってきますので、最近は0.55%越えると上がったなあって感覚)となってまして、どこが先なのかと見るとどうもCPのレートっぽいのですけれども、在庫絶賛増加&サブプライムとかあるんでどうしても金融ネームは心理的にもディスクロ的観点からも買いにくいという需給要因これありで、レートが上昇傾向となってまして、これがまあ徐々に全般に影響中。年末越えの無担保のファンディングが意識されてくると(需給って心理戦でもありますから)暫くレート強いのかねという感じです。

昨日は例によって共通担保オペが実施されてたんですけど、3月足のオペの足切りは相変わらず0.57%按分だったんですけど、月内もののオペの足切りが0.55%と前回の0.54%から上昇しやがっておりまして、11月中まで全然盛り上がって無かったのは一体全体何だったんでしょという感じであります。

でも2年カレントとか売られないんですよね。。。。。時間軸時間軸。


○金融関連の「提言」ってどうして斜め上にずれるのでしょ

木曜に書きました外準積極運用のお話ですが、ネットの議論をちょっとだけですがみてたら、(サンプル少ないですが)市場に参戦してる人の意見があたくしと似たような論調でちょっと安心しました。と申しますか、こんな話を政治家に吹き込んで巨大カモ発生させてよだれじゅるじゅるとか考えるのって私利私欲にも程があるとか思うのですけれども。

何かね、東京(というか日本橋)金融街構想ってのも以前出てたんですけれども、あの議連会長さんって何かこう変なこと吹き込まれるのが得意ですなあと思っちゃう次第でして、民主党(除く小沢鋭仁さん)の国会での金融関連のお馬鹿質問に散々悪態をついてるあたくしではございますが、自民党かつ金融担当大臣を務めたお方がアレ(木曜に書いた悪態の中にあります発言をご覧あれ)とは正直がっかりですよ。

どうもここもと金融立国がどうのこうのという話もございますけれども、その辺りに関してvon_yosukeyanさんがなるほどという考察(いつも参考になります)を最近のエントリーでしてましたので、これもまたお読みになるのが吉かと存じますです。
http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/423896

結局のところ、所与の条件とかを華麗にスルーして「海外がこうやって成功してる(実は短期的な成功と長期的な成功は別もんなのですが)ので日本でもどうですかお代官様ウッシッシ」というのが一番吹き込みじゃなかったプレゼンしやすいので(以下悪態なので禿しく自主規制)。。。。。


○景気ウォッチャー調査また悪化

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2007/1210watcher/bassui.html

現状判断が前月比▲2.7の38.8で先行き判断が前月比▲4.3の38.8ということで、マインド益々悪化となっております。で、そのネタで本石町日記さんが既にエントリーを上げてましてまあ左様でございますなとか読んでいたら何だかあたくしが名指しされておりますので(^^)。
http://hongokucho.exblog.jp/7807558/

ええまあそうですな、都心の繁華街に出掛ける(世の中を観測するだけで買い物って何ですか状態ですが)のが趣味(なんちゅう趣味ですかというツッコミは却下)ですけど、これがまた毎週が数年前の年末状態という有様(土日の東京駅コンコースなんて凄いっすよ)でございまして、景気腰折れって何ですか状態になってますわな。

で、機械受注もそうでしたが、経済指標だけ見てると「個人消費がこけなければ大丈夫でしょ」という感じに見えるんですけど、結局このあたりって本石町さんも指摘してる二極化現象なんでしょうかなとか思うのですが・・・・

#ちなみに観光客と思しき人たちの購買パワーは中々なもんだと思いますよ。海外からの観光客も目に付きますし。

家計関連の価格上昇の影響が見られてるってのが非常に気になる所でして、個人消費がやっぱりコケましたとなりますとガクブルもんでございます(だからといってあたくしが個人消費を伸ばす訳ではないのが合成の誤謬ですかそうですか^^)。それこそ昨日ご紹介した水野審議委員講演における論点(とあたくしが勝手に解釈した)家計の実質所得低下の影響が顕在化ですからこりゃ困ったもんよというところでございますわな。

ということでまたまた雑談で恐縮でした。国債市場懇談会ネタをスルーしているのは気のせいです(斜め読みしかしてないもんで)。











2007/12/10

お題「週初なので例によって雑談を少々」

○すっかり遅くなりましたが水野審議委員講演

11月7日に行われた講演なんで今更にも程がありますが。

http;//www.boj.or.jp/press/koen07/ko0711d.htm

例によってやたら長い(紙に打ち出すと15ページ)のですが、中心のテーマはサブプライム問題。で、そちらに関しては突っ込みを入れるよりも「まあ読め」という感じでして、よくまとまってるんじゃないでしょうか。ということで別の部分から少々。

・消費者物価上昇に関して

『1.経済・物価情勢の現状判断と見通し』の消費者物価指数の部分から。

『「展望レポート」では、物価の見通しについて、(1)マクロ的な需給ギャップの引き締まり、(2)賃金上昇圧力の高まりに伴うユニット・レーバー・コストの下げ止まり、(3)国民のインフレ期待の上昇、を背景に緩やかに上昇していくとのロジックを展開しています。』

そうでございますな。

『もっとも、この論理展開はまだハード・データで十分に確認できていません。すなわち、個人消費に力強さがなく、改正建築基準法施行等により住宅投資が下振れしている中、今年度は実質2%成長に到達するか微妙です。需給ギャップが需要超過方向で推移するにしても極めて限界的なものと思われます。また、国民が感じているインフレ感は、石油製品や食料品の価格の上昇を映じたものとみられます。』

『また、物価に関しては、(1)このところの素原材料価格の上昇にもかかわらず、個人消費の回復力に力強さがないため、仕入れ価格上昇を販売価格に転嫁できず、中小企業を中心に収益を圧迫し、賃金が弱めの動きとなっていること、(2)国民が物価上昇を肌で感じ始めており、生活実感と消費者物価統計とのずれが拡大していること、(3)全国にチェーン展開する小売業種では地域別価格制度を導入し始めていること、といった論点も存在します。』

前半の部分と論点の(1)のあたりを併せて読みますと、家計の所得が伸びない中での消費者物価上昇は実質所得の低下につながり、景気押し下げ要因になるのではないかという論点が浮かんでくるように見えます。物価上昇即利上げという理屈ではないということでしょうな。というか水野さんはこの実質所得低下を気にしてますねという風に読めます。

(2)の論点をそのまま読むと統計に対する文句にも見えますが、そこまでの話の展開から行きますと、「生活関連商品の物価上昇が実質所得低下のマインドを発生させて個人消費に悪影響を与えるのではないか」と指摘しているように見えます。


・金融政策に関して糊代論の香りが

サブプライム関連の話をしている中での『資産価格変動に対する中央銀行の役割』という部分から。

『資産バブルについての対応は、(1)資産バブル発生の予防を意識した金融政策運営が望ましい、(2)資産バブルの発生は容易に発見できないため、資産バブル崩壊後に景気下振れや金融システム不安を回避するため、思い切った金融緩和措置を採用することが望ましい、という2つの考え方に大別されます。このどちらの対応が適切であるかは、ケース・バイ・ケースだと思います。ただ、金利が低く、低下余地が十分確保されていない国では、(2)のような対応を採用しにくいため、資産バブル発生の予防を意識した金融政策運営が望ましいと思います。』

何か糊代論の香りが致しますが・・・・・


・最後に中々良いお話をしておりますな

一番最後の所は大変に宜しいお話をしているような気がするんですが。ちなみにこの講演は企業年金連絡協議会で行われていますです。

『最後になりますが、私は、わが国の金融サービス業が米英に劣後しているひとつの理由は、リスク・マネー(長期的な視点からリスクをとって高いリターンを目指す資金)がまだ十分に育っていないためだと思っています。欧米では最近、「ファンド資本主義」と言われるように、プライベート・エクイティー・ファンド、事業再生・不動産ファンドなど巨大な投資ファンドがリスクを引き受ける主体になっています。年金運用には様々な制約条件があるのは承知しているつもりです。ただ、個人的には、わが国の企業年金を運用する皆様が、スマートなリスク・マネーの提供者、すなわち、プロの投資家として、グローバルな金融市場において脚光を浴びることを期待して、本日の講演を終わりたいと思います。』

つまりですな、企業年金という本来長期的な視点から運用を行うべき主体がやれ四半期決算だ何だと短期的な視点で動いているのは如何なものかと水野さんは仰せであると理解致しましたのですけれども。というか『わが国の企業年金を運用する皆様が、スマートなリスク・マネーの提供者、すなわち、プロの投資家として』って結構厳しいご指摘に見えるのはあたくしの気のせいですかそうですか(^^)。

なお、サブプライム関連の背景説明とか影響の説明とかの部分は勉強になりますのでご一読されるのが吉かと存じます。


○サブプライム関連雑談

サブプライム救済策が出てまして、金利減免とかになってましたが、それって住宅ローンを証券化した商品にとってはまともにイベントオブデフォルトじゃネーノとか思った次第なのですが、その辺に関しましてのまともなレポートが全然ねえなあとか思ってたら、厭債害債さんの明快なエントリーが(^^)。

http://ensaigaisai.at.webry.info/200712/article_2.html

まあ上記エントリーを読めで話は終了するのですが、今回のサブプライム対策って要するに「FEDが利下げする」以外は何だかね〜って感じでして、まあFEDは結局市場だけじゃなくて当局にも追い込まれて利下げですねえと言った所かと存じますわな。あたくし的勝手な予想をするとまだまだFEDはねじ込まれるでしょと思うんですけれども。

金利引き上げ先送りをしていわゆる「ゆとり返済」の破滅を先送りするというお話ですけれども、要するに「先送りしていれば住宅市況が回復して物件売って返済できるかもしれません」というお話だとなりますと、まさしくどこかで見たお話でございますなあとしか申し上げようがございません。

その上、今回の救済策で強調されていた「税金の投入は行わない」ってそりゃあのまんま「住専国会」の論議を思い出す次第でございまして、不良債権問題で日本を散々叩いたアメ公ざまあみろなどと不見識な発言をしたくなりますが、必ずしも対岸の火事で済まない(というか厭債害債さんの指摘どおりで、世界に問題を振り撒いているのがアメ公オソロシスなところ)のが残念無念(こら)。まあこりゃ当分迷走が続くでしょうなという感じがします。

ちょうど大統領選挙とぶつかってしまって、政治が思い切った動き(というか短期的に評判を悪くするけど実施すべき施策)ができないというのは悪い偶然でございますわなとしか申し上げようがございません。しかし皆さん他人事になると抜本対策の話をしますが、自分のことになると中々出来ませんなあと思うのでした。ま、あたくしも自らを省みればそうなんですけどね(汗)。


○相場雑談

先週はアホのように持ち上げられて入札でなお持ち上げた後で今度は下に持っていかれるという中々オイソガシヤの展開でございましたが、よくよく考えてみれば上に持ち上げやがった切っ掛けって福井総裁の発言の一部が切り取られて報道された事でして(まあ上昇しそうな感じだったところに良い燃料が投下されたの図)、まああの発言を取っ掛かりのネタにして相場上昇でひと勝負をかけた人がいるんでしょと存じます次第。総裁のサービスフレーズが無かったらここまでやらかしたかどうかと考えますと、また罪作りなサービスフレーズでしたなという所で(^^)。

ま、福井総裁の場合その手の意図が無くサービスフレーズを出して、それが切り取られて報道されるという点で実にこう残念なお方なのですが、相場が動くのでオモロイとも言えますが、後任のお方が誰になるのか存じませんけど「意図せざるサービスフレーズ」は勘弁して欲しいものです。意図的に言ってるんならまだ良い(良くないが)のですけどねえ・・・・・・

それから何かCPとかのレートは高止まりでして、年末モードが盛り上がって参りましたという感じですな。という所で本日は雑談ばかりで恐縮でございました。









2007/12/07

お題「相場雑談/「埋蔵金」雑感」

今年の12月は土日の入り方が絶妙でして、どう見ても最終週がヒマヒマになる代わりに通常の仕事を3週間で終わらせないといけないというカレンダーになっておりますな。ということで皆様におかれましては多忙を極めておられることと存じますが如何お過ごしでしょうか??

○相場雑談

まあ昨日も結構下がってましたが、とりあえず新発の1.55%の手前で止まってたのに引け直前にぶち抜きに行きましたという感じでしたな。下がる過程で10年289には買いが来てそうでして、不明玉1兆なんぼの行き先が気になりますわな。あたくし的には正直言って限月交代と5年国債入札がぶつかる来週火曜日くらいにピークを打ってそこから押すのかなと思ったんで結構ビックリなんですけれども、ちょうどまあ相場環境ネタ的にはスティープニングしやすいものが出てきてますんで、長いところ売られるの巻なんでしょうかね。

一方で相変わらず1年くらい(さすがに一昨日のように3年未満全部引けとかいうのは無かったようですが)までは似非時間軸状態で1年(というか11か月ですが)FBが0.59%と前日比利回り低下してて、ネタ的には信用不安解消に向けて進む中で低金利継続(米英は利下げ)するので長期金利は上昇って絵を描きやすくなりましたなあオッホッホという所でしょうか。実際にそうなのかは別ですけど。。。。

短い所を見ますと、一昨日の入札で0.54%なんぞをやらかした3か月FBですけれども、昨日の共通担保オペ(期日12月20日)が0.54%足切りでございましてどう見ても逆鞘です本当にありがとうございましたとなってまして、昨日の引けは0.55%になってました。あと気になるのは年末越えでして、昨日の日本相互証券の引けで見ますと1月11日償還のFB475回が0.575%、1月17日償還のFB476回も0.575%と、後ろと比べて逆イールドを形成。

年末年始のファンディングコストが上昇するという前提に立てばこの逆鞘も当然なのですが、ついこの前までこのあたりのイールドが普通に順イールド(というかほとんどレート並びでしたが)になっていたんで、ようやく年末越えらしくなってきましたなという所ですね。CPの発行レートもまた上昇した(昨日は10日スタートなので発行が多め)ようですし、共通担保オペの金利も微妙に上昇ということですから、今までの余りにも無風モードからだいぶ「らしく」なりましたが、どの位盛り上がるかによってその後の展開も変るかと(^^)。傾向としては大盛り上がりした場合は20日くらいがピークになりますし、ダラダラとやってると末日にピークとなるという感じでしょうかね。


○埋蔵金のいろんな雑感

財政投融資の準備金を10兆円取り崩して国債償還というお話で、外為特会じゃなくて良かったですねという所ですが、完全に「埋蔵金がある」みたいな報道になってるのはちと「???」でもあるあたくし。ということでこのネタって色々インプリケーションがあるような気がするのですが、誠に遺憾なことにあたくしもよー判ってない所が多々ありますのであくまでも雑感ということで。


・特別会計の透明化というのは異論ありません、が・・・・

昨日ご紹介した「外為特会のクーポン収入で政府系ファンド」というのはちょっと(どころではなく)筋が悪そうな話ですけど、まーその辺はアピールしやすい話題で特別会計の透明化推進の起爆剤にしようってのが真意じゃないのかと好意的に解釈するあたくしでございます。

でも昨日ご紹介した山本有二さんの「ファンドマネージャー4人で40億円の利益をだすことができる規模で、完全にリスクがない仕組みを開示してスタートできるモデルを考えてみたい」にはぶっ飛んだ次第でして、まあ鉄砲玉の発言としても如何なものかという感じですけどね。

ま、特別会計が訳判らんので透明化を進めましょうという趣旨に関してはあたくしも異論無いのですけれども、そもそも何で今まで透明化されなかったのかと考(激しく自主規制)。


・財政投融資の準備金積み立てって別に埋蔵金じゃないと思うが

でまあ今回の財政投融資積み立ての取り崩し話ですが、そもそもこの積み立てっていうのは財政投融資での「運用収入マイナス調達コスト」によって発生した順鞘を引き当て金として積んでいますよという話でして、ただの引当金取り崩しであって「埋蔵金」という言葉にイメージされるような「どこかに隠してあった金が出てくる」って話じゃないと思うんですが。

財政投融資の準備金取り崩して国債償還するという話ですが、一般会計の国債を現金償還するという話ですから会計上はその分の益が必要になり、キャッシュフロー上はその分の資金が必要になるという話になると思うんですよね。で、会計上の益は財政投融資の準備金を戻し入れして益を発生させて、その分を一般会計に繰り入れますということなので一般会計での収益捻出は不要となると思います。ではキャッシュフローはどうなるかという話ですが、財政投融資資金では国債も保有しております筈なので、これを使えばよろしいという話でして(現金償還を厳密にやるなら国債売却なんでしょうが、政府内で回す話なの別に売る必要なかろう)、結局これって単に一般会計と財政投融資の両建てが落ちるだけの話じゃねえのとか思うんですけれども・・・・・・

ということで債券市場的には(市中消化額に影響がなさそうな話ですから)中立という話じゃないのかなあと思うんですが。


・準備金取り崩すとどうなるでしょう

ではこの準備金なんのためにあるのかという話ですが、要するに財政投融資は期間ミスマッチで収益が上がっていますという話でございまして、今までフロー(金利差)で上がってる収益ってのは調達コストがバンバン上昇するとか逆イールドになるとかしやがりますと無くなるどころか損失計上になる場合もございますので、それに対応する準備金って話だと思います。

まあその適正規模はどのくらい(積みまくっても仕方ないですし)なのでしょかという議論はありますが、「この手の話が出た後に市場環境が逆に行くの法則」が発動された場合は金利上昇ですかねえ(笑)。

というヨタはともかくとして、準備金に関する考察はbewaadさんが先日行っていましたのでそちらをご覧になると吉かと存じます。
http://bewaad.com/2007/11/03/321/


・もうひとつのインプリケーションというかツッコミどころ

があるような気がする(というかある)のですが、微妙に自主規制なので割愛いたしますですよ。はいはい。(追記のヒント:フローでは収益上がってますけど肝心の・・・・自主規制自主規制)










2007/12/06

お題「0.55%割れはさすがに/外準運用ねえ・・・」

○3か月FB入札などなど

昨日は3か月FBの入札。で、前場から何かこう買わないといけないお方だか何だか知りませんが、せっせと買いが入ったらしくて入札結果は平均も足切りも0.54%台ということになりました。で、3か月もあるのに0.55%割れというのは足元のレポや現先レートとあんまり変らんのですがどうですかということでさすがに0.545%の引けとなりましたわな。でも0.55%はビットのようで、こりゃまあ国債でのキャッシュ潰しニーズは相変わらずという感じです。

で、火曜に入札があった6か月FBは相変わらず0.555%の引けとなっておりまして、この辺のレートはもう利上げって何ですか状態。もうちょっと長いところでも3年より短いゾーンの強さは(長いところは昨日下げてたんですけど)目立っておりまして、1年TBの引けなんかも0.595%とかになってますし、短い所に資金を退避させているのか、プチ質への逃避なのか、単に利上げが当面無いと見てキャッシュを潰しに行く擬似時間軸なのか良く判りませんけれども、まるで時間軸があった頃のようにイールドカーブの手前がアンカー状態になって来ております。これでいいのかなあとも思いますが・・・・・

しかしもはや3か月0.55%が押し目に見えてくるのが目の錯覚とは言え(苦笑)オソロシス。


○外貨準備の積極運用ねえ・・・・

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071205-00000103-jij-pol

一般向け記事だとこんな感じなんですけど、ブルームバーグニュース(たぶんネット版でも見れるはずなのですが、あのページの記事検索の仕方が判らんのでいつも往生します)がもうちょっと詳しく報道してまして、読んでて頭が痛くなって来たんですけど・・・・・

ブルームバーグニュース5日17時10分配信記事から引用しつつ疑問な点を少々申し上げてみましょう。(追記)部分は記事にはないですがあたくしが補足してる部分です。

『山本氏(追記:前金融担当大臣の山本有二氏)は同日午後、自民党本部で開かれた設立総会後の記者会見で「ファンドマネージャー4人で40億円の利益をだすことができる規模で、完全にリスクがない仕組みを開示してスタートできるモデルを考えてみたい」と意気込みを示した。』

・・・・・・もうね、こんな発想が出てくる時点でちょっと頭が痛いと申しますか何と申しますか。何をどうすると「完全にリスクが無い仕組み」で40億円儲かるんでしょうか?????


『山本氏は「(追記:外為特会で保有する米国債の)利子収入で利益が上がれば、特別会計で負債を立てなければならないというドグマ(教条)の中に入っている。利子収入で何兆もあるものが、さらに増えていく世界を見いだしたときに、日本の金融市場の刺激になるのではないか。日本の金融機関のトップレベルの方々にも賛成していただいている。あとは、(所感の財務省)国際局がどう考えるかだ」と述べた。』

えーっとですね、そりゃこんなファンドが出来てバカスカ売買したり運用委託なんかをしてくれたら巨大取引先(またの名をカモという)が発生して業界のあたくしたちはよだれじゅるじゅる毎日ウハウハですから自分の庭だけ考えりゃ賛成するのは当然なんですけどね。

#というかそういう人たちが吹き込んで(以下自粛)。


で、ど〜も勘違いしてるんじゃないかと思うんですけど、外為特会で持ってる資産(だいたい米国債だと存じますが)って財政の余剰金で買ってるものじゃなくてFB(政府短期証券)発行して買っているものでして、入った利息に対して払う利息が多ければ逆鞘になりますわな。現在は米国の金利が日本の金利より高いからたまたま益になっているだけのことで、日本の金利のほうが高くなって外為特会で赤が出た時に外為特会の益を全然リザーブしてなかったら即座に一般会計から補填しないといけなくなりますけど、それで良いんでしょうかねえ。

名目成長を加速して上げ潮政策というのが実現したら日米金利差が逆転する場面が起きても何らおかしくないと思うんですが、そういう政策を提案する同じ口で外為特会の準備金取り崩せ(=日米金利差が逆転したら逆鞘発生で一般会計に惨事発生の危険あり)とかいうのを拝見致しますと、もう何だか疲れたよパトラッシュという感じですな。

それから利子収入部分ですけど、利子収入部分をまともに円転したら為替市場が大変な事になりますので、結局のところドルベースで再投資しないといけなくなりますわな。で、その利子収入部分と調達コストの差(計算上の換算為替レートが幾らだか知らんですが省令レートなんですかね)が益として認識されるという次第。

で、たぶんその中から将来の元本の毀損による損失(というのは円高による為替差損分ですけれども、まあ逆介入(通貨防衛でドル売り円買い)しない限り円転しないから実現はしないですかな)とか、将来の保有資産の利子収入と調達コストの逆鞘(具体的には日米金利差の逆転)に備えるとかいう目的の準備金を立てて、残りの部分が外国為替特別会計の益金として一般会計に繰り入れになってると思う訳でして、利息収入による益金は一般会計にも繰り入れになってる筈なんですけどね。で、それらに関してFBが発行されるという話だと思うんですが、外為特会に関しては何か難しいので誰かご指摘してくださいという感じです。


それからですね、外為特会の利息のうちの一般会計部門繰り入れを積極運用するというのならまだ話は判るんですけど、外為特会の利息収入が円転できないのと同じ理屈で、積極運用の果実を日本に持ってこようとすると円高ドル安要因になってしまいますわな。まあそんなの関係ねえというのならそれはそれで結構ですが。


何か最近は埋蔵金ブームらしいですが、少なくとも外為特会にそんな埋蔵金があるとは思えんのですけどね。とゆーか増税を「安易な発想」とか言ってる人たちが「埋蔵金」に飛びつくのが何ともアレでございまするとしか。。。。(あ、ちなみに増税容認してるわけじゃないので念の為)










2007/12/05

お題「入札が・・・・/記者会見もあったようで」

外為特会の「益金」って実現させに行ったら為替市場が大変なことになると思うんですけど。あれってクーポン収入部分は円転しないで帳簿上は益だけど見合いのFB発行が増えてるだけでしょ。

・・・というのは勉強しないと良く判らんが確かそんな感じじゃなかったでしたっけ。だいたい準備金取り崩した後に外為特会で損出たらどうするんでしょうねえ。

ま、それは兎も角。


○入札がございましたが・・・・・

昨日は6か月FBと10年国債の入札がございましたが、その両方とも前場引けのオファーサイドの向こう側での決着になるわ、「不明玉」が大量だわという久しぶりに豪快な入札になってしまいました。10年も強かったですが、FB6か月(6月10日償還)が0.58%台での決着になってその後0.55%まで進む(引けは0.555%)とは何たることでありましょうか。年末越えも期末越えも5月までの政策変更リスクもそんなの関係ねえという利回りで、こりゃもうGC対比でも負けそうな(というか1か月GC0.6%くらいなんで年末越えの足元GC1か月だと負けなんですが)レートでございまする。おそロシア。

まあ昨日の場合は2年カレントが3毛強だの5年カレントが3毛5糸強だのと中短期も先物や10年ゾーンなどと遜色なく強いですし、入札をきっかけにドカンと特攻した人たちがいたという事なんでしょうかな。月曜も上昇して「あっちゃー」という感じでしたが、昨日の場合は現物が軒並み強いので、物凄く強くなりましたな感がよりございますわな。ナムナム。


まあ10年1.5%って大体今年度の見通しという名前の紙芝居を作った時に金利の下限に置いている人が多かった訳で、願望も込めて(かど〜か知らんが)1.5%割れ定着は景気悪化モードでしょという感じでしたから、まずは1.5%割れのところで戻り売りをした人多かろうと思うんですよね。でまあ勢い余って10年1.395%までやらかした時にはさっくり戻って1.5%近くまで押し込んだのですが、残念なことにそこで値持ちしてしまいまして、時間が徐々に経過。

1.4%台の売りはそこまで引っ張ったロングの外しとは到底思えませんので(苦笑)、売った分どこかで戻す必要があるのに結局値持ちして時間が経過という有様だった所に昨日ご紹介した総裁発言の報道がちょうど良い導火線になってしまって見事に着火炎上の巻となったんでしょうな。

しかし2年0.71%とか5年0.965%とかつい半年前には6か月と2年のカレントの居場所だったんですけど先生勘弁して下さいよって感じでございまするな。今日の3か月FB入札とかど〜なっちゃうのよと結構ガクガクブルブル。


○記者会見もあったのね

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712a.pdf

・徐行運転発言は講演後の一問一答でした

昨日ご紹介した結果的に衝撃の発言となってしまった「徐行運転」はやはり講演後の一問一答でのもの(記者会見は13:45から実施)のようでして、こちらにはございませんでした。残念無念。

その部分は「懇談でこんな話がありました」って冒頭の総裁発言部分にございましたです。

『懇談でお伺いした意見をもう少し具体的に申し上げますと、(途中の具体的な部分思いっきり割愛)金融政策面では、これらの景気減速リスクとともに、原材料価格上昇などに伴う物価上昇リスクにも十分配慮することが重要である、ブレーキとアクセルを踏み間違えないように適切な対応をお願いしますというお話でした。』

さすがに目先では物価上昇がコストプッシュっぽいですから、長期的な話は別にして早期利上げにむかって好材料とは中々いかないでしょうと思いますし、さすがに政策委員会様もそこはコアCPIプラス復活を利上げ論議に直結させてはこないと思いますけどね。


・経済物価情勢の見通し

経済物価情勢に関して端的に説明した部分もございました。

『経済及び物価の情勢については、改正建築基準法施行に伴う建築着工面の不規則な動き(イレギュラリティ)が含まれていると思いますが、全体として日本経済の成長はより長い期間をとってみると均して実質2%絡みの安定した成長軌道を決して踏み外していないと思います。』

「より長い期間をとってみると」「均して」「決して〜と思います」ってあたりが強がりっぽいとか言うのは意地悪ですかねえ。

『それから消費者物価指数についても、需給のタイト化とともに目立たないけれども徐々に物価の基調が強まってくるという従来の見通しの線上で動いてきています。CPI は10 月から除く生鮮食品でみて+0.1%とごくわずかのプラスに入りましたが、引き続きゼロ近傍の推移で今後これがプラス幅を徐々に拡大していくだろうという見通しについても私どもは変える必要はないという状況ですので、今後内外のリスク要因を十分判断に入れながら、毎回の政策決定会合で従来通り丹念に分析し議論し、正確な結論を見出していきたいと思っています。』

この「引き続きゼロ近傍」という言葉を見た瞬間に、あたくしの今月の決定会合(その前に短観がありますが)の注目材料は「金融経済月報でのCPIの表現」になった次第です(^^)。(まあこのCPIも実はヘッドラインのCPIの話をしてたような気もするんで話がややこしいのですが・・・)

『米国の経済については、住宅市場の調整はなお長引くということですが、やはり個人消費にどのような影響が最終的に及んでくるかが一つのキーポイントだということは皆さまと問題意識を共有していると思います。(以下割愛)』

暫く前にご紹介した10月の決定会合議事要旨にありますように、この部分がサブプライム問題の実体経済への波及を考える点ですなということで。


・これは良い質問

『(問) 2つお聞きします。ひとつは、講演要旨の中で日本経済について「緩やかな拡大を続けている」とありますが、その前に「全体としてみれば」という表現があります。日銀の11 月の金融経済月報その他の情勢判断では、「緩やかな拡大を続けている」だけで「全体として」という表現は入っていません。これは、「全体として」という表現を入れなければならないという意味で若干景気判断を下方修正されているのかどうか、これが1 点です。』

『もう1 点は、講演でお話がありました通り、日本経済を巡る海外の状況や国内の中小企業の問題など日銀のシナリオに対する下方リスクというのは強く存在している訳です。金利が低い水準にあるが故に中長期的に引上げていくという方向性は常々おっしゃっていることですし十分理解はできるのですけれど、もし下方リスクが顕現化した時には、それに対応する十分な政策というのがあるのかどうか、日本経済が2%成長という持続的な成長ができないと判断された時には果断に金融緩和方向に対応を採られる用意があるのかどうかという点をお伺いします。』

ということで総裁の答えですが、長いのでポイントっぽいところだけ。

『無条件に同じテンポで改善が続いていると言ってもいいぐらいなのですけれども、先ほど申し上げましたように改正建築基準法施行に伴う不規則な動きなども入っていますから、少し違うのではないかと言われる部分もありますので、「全体としてみれば」と丁寧に言っている訳で、目障りであれば取っていただいても結構です。』

・・・・・(^^)

『それから、ダウンサイドシナリオにつきましては、長い目でみたダウンサイドリスクというのは目先、特に海外において多少高まっていると率直に認めています。しかし、長い目でみてやはり金利が低すぎることに伴うアップサイドリスクは十分あるということも、その程度を和らげることなく我々はリスクとして感じ続けているということです。』

ほうほうなるほど。しかし「率直に認めてます」とか言いながらリスクの話をするあたりかなりトホホ状態なんでしょうな。福井総裁もまもなく任期満了でして、燃料投下総裁としては結構秀逸だったんですけど、先行き見通しの確信モードの時は割と穏やかな発言をして、確信が揺らぎだすと妙に威勢の良い発言をして、そのあとちょっとしょんぼりモードになるというのが福井総裁の仕様なんですねえと思いましたよ。


んでまあ2番目の質問に対してはこう答えてます。

『先行きダウンサイドリスクが本当にリスクとして顕現化した場合の金融政策については、その時の政策委員会で正当な結論を出せばよいわけであり、予め何らかのシナリオが用意されているような性格のものではないということです。』

まあ今までだったら「ダウンサイドリスクが顕在化する可能性は低いと思っている」ってトーンの返しが多かったので、微妙にヤケクソ発言のような雰囲気もありますが(^^)、当然の発言ですわな。。。。

ま、トーンダウンはトーンダウンなんでしょうね。










2007/12/04

お題「何と間の悪いタイミング・・・・」

本業が多忙なので本日も簡単で勘弁。

○総裁講演後の発言で・・・・・

昨日は名古屋での各界代表者との懇談がありまして、そっちはまあいつもの話だったんですが、昼前に報道された講演後の発言内容が(本当に直接の原因だったのかどうかは微妙ですが)先物主導の相場上昇大攻撃のきっかけになったという事になっております。

ブルームバーグ日本語版のヘッドラインを見るとこんな感じ。

JBN 11:17*福井日銀総裁:徐行が必要なときにはきちんと徐行する−金融政策
JBN 11:12*福井日銀総裁:適切なタイミングでは果断に金利引き上げる
JBN 11:11*福井日銀総裁:利上げを急いでいるわけではない
JBN 11:11*福井日銀総裁:今の金利水準は低すぎる

・・・・徐行云々だけで上ったの??と思って英語版をみるとまあ当たり前ですが似たようなヘッドライン。

BN 11:18*FUKUI SAYS MISTAKEN TO SAY BOJ IS BENT ON RAISING RATES
BN 11:18*FUKUI SAYS BOJ CAN PUT THE BREAKS ON POLICY WHEN NECESSARY
BN 11:18*FUKUI SAYS CURRENT RATES ARE LOW GIVEN ECONOMIC STATE
BN 11:18*FUKUI SAYS BOJ NOT IN RUSH INTEREST RATES

まあでも福井総裁が必要なら利上げ休むって言ってるのって重要なのかなあ・・・だけどそもそも来年6月くらいまでの利上げ無しは織り込み済みじゃなかったんでしょうかねえとか思いつつロイター英語版のヘッドラインを見るあたくし。

11:11 03Dec07 RTRS-BOJ FUKUI: WILL RAISE RATES AS SLOWLY AS POSSIBLE

・・・・・・・・(゜д゜)・・そりゃまあ先物踏みあがるわな・・・

関連ヘッドラインの2つ下には「NEED TO RAISE RATES DECISIVELY AY APPROPRIATE TIME」ってありまして、何考えて矛盾するヘッドラインを打ち込んでいるんだとロイターの報道姿勢に疑問を感じざるを得ませんわなというところではございまする。発言切り取ってセンセーショナルなヘッドラインを打って営業に役立てようとか思ってねえだろうなと邪推したくなります。

今回の講演後の発言は「懇談会での主なやりとり」として報道されてましたんで、毎度お馴染みのサービス発言なんでしょうが、こういうミスリードな報道が行われた時は何らかの形で否定できないもんかねとも思うんですが、そもそもが切り取られやすいサービスフレーズなんでこればかりは福井総裁の仕様ですかなという所である程度諦めるしか無いのかもしれません。

ちなみに、この部分を時事メイン12時47分配信の記事から引用するとこうなっています。読みやすくするために質問と思われるところに「質問:」総裁発言の冒頭に「福井総裁:」と入れていますのをお断り致します。

『質問:日銀はブレーキとアクセルの踏みわけを』

『福井総裁:われわれは金利をあげたがっていると思われているが、何が何でもアクセルを踏みたがってはいない。アクセルを踏むべき時は踏む、ブレーキを踏んで徐行運転すべき時は徐行するのがわれわれの政策判断だ。政策決定会合で金利を変えないことも重要な判断。金利を上げる判断も、上げない判断も同じウエートだ。』

えーっと、これをどう翻訳するとさっきのロイター英語版のヘッドラインになるのか判りませんが、冷静にこの発言を読みますと、金利を「上げる」のと「上げない」のが「同じウエート」でして、金利を「下げる」方向が微塵も無い時点でやっぱり利上げ前提発言に見えてしまうのですが、そこは総裁様の布教が効いているので一件不思議じゃなく読めるのですな。奥が深い(?)。


てな訳で、この発言で債券市場が本当にあがるのかよと考えると実に微妙なのですが、昨日の場合は「要するに債券相場が上がりたがってた」というのが相場上昇の原因でしょうな、とか言うと関係者以外はナンノコッチャと言う感じですけど(^^)、月末のインデックス系の長期化が相場の位置が位置ですし、直ぐ先の火曜日に10年国債の入札もありますし、さてさてどうしたもんかとかいう状態のタイミングだったので、絶妙の燃料になってしまったという感じでしょうか。

これで現物が爆裂したらエライコッチャでしたが、昨日の所は先物主導っぽいのでその程度ということで・・・・でも米債がまた強いのですけれども(最近さすがに米債にバカスカ振り回されるわけでも無いですが)、、、どうなるんでしょ。



○一応総裁講演

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712a.htm

例によって展望レポートをベースにした話をしていますが、先行きの『上振れ・下振れ要因』ってところを読みますと、どう見ても下振れが満載でございますな。

『まず第一に、海外経済の動向です。』から始まる下振れの部分ですが、明らかに景気下振れの話が21行分。その部分で世界的なインフレの話もしてまして、実はコストプッシュだったらどうなのよという論点はあるのですがそこはカウントしてませんです(^^)。で、毎度お馴染みの『第二に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性があることです。』から始まる上振れの部分が9行分ですな。

あんまり今までこの文章量を気にした事がないのですが、今回はこれまた下振れリスクの分量が多いですわなあという感じでして、10月くらいの総裁の勢いはどこへ行ってしまったのと存じます次第。

それはそれとして、あたくし的に気になるのは講演のこの辺なんですが。

『一方で、世界経済が全体として高い成長を続けていることを考えると、インフレ方向の動きにも注意が必要です。米国では、労働や設備といった資源の稼働状況が高い状態が続いており、原油価格の動向などと相俟って、基調的なインフレ圧力が減衰したとは言い難い状況です。』

この認識だとインフレ方向の動きがディマンドプルな認識に見えるのですけれども、少なくとも日本は(たぶん米国も)物価上昇がコストプッシュじゃねえのかという感じがするんで、その辺の総裁の真意はどうなんでしょうか(下振れの話ばかりするとバランスが取れないので敢えてインフレの話をしているという面もありそうなので)と思うんですな。


それから、今後の金融政策に関する部分ですがいつもどおりです。

『先ほど申し述べたとおり、金融環境は極めて緩和的ですので、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道を辿るのであれば、金利水準は引き上げていく方向にあると考えています。具体的なタイミングについては予断を持つことなく、経済・物価の見通しのパスやその蓋然性、上下両方向のリスクなどを、十分に点検しながら、決定していく所存です。』

左様ですか。

『私どもとしては、物価の安定のもとでの持続的な成長が続く可能性が高いと考えていますが、そうした見通しの蓋然性を確認していくことは当然必要です。同時に、見通しに影響を及ぼし得るリスク要因を点検することも重要であり、その際には、目の前のダウンサイドリスクだけに囚われることなく、上下両方向のリスクに目を配っていかなければならないと思っています。』

上のリスクですかあ・・・・

『金融政策は、経済・物価に影響を及ぼす事象を幅広い視野でバランス良く点検していくことが極めて重要であり、そうした点検の上に立って、適切な判断を行っていきたいと考えています。』

と、まあそういうことでいつも通りの話をしてたんですが、講演後の質疑応答がまたサービスフレーズ出やがったなという感じであります。

ただまあ福井総裁の任期中に利上げって無理でしょっていう予想が共通認識だったと思うので、昨日の先物アゲアゲは発言のタイミングの問題だったような気がしますけどね。

#でもモーサテで「当面利上げは難しい」とか解説してて、円金利市場の中の人からすれば何を今更言ってるのと思うんですが、一般的にはまだ早期の利上げあるという方が多いんでしょうかねえ。よーわからんが。








2007/12/03

お題「またまた雑談及び雑感」

家計の非金融資産が沈んでいるよ日本が沈んでいるよという話を目の前のテレビでどこぞの経済評論家がしてますが、比較する年次が1990年12月と直近というのはそもそもの比較が理解不能(非金融資産の一番でかいのは不動産です)ですわな。しかもその後の話が証券優遇税制廃止反対(となぜか知財の話)になるのは全く理解不能(ちなみに金融資産は増えてます)でして、ネタが無かったんですねというのはご同情申し上げますけれども、議論の根本も流れも無茶苦茶というのを公共の電波で放送するのは如何なものかと・・・・・・

とあまりの酷さに悪態が長くなりましたが、今日も雑談。


○金曜の補足というか訂正というか

参議院財政金融委員会での議論で、大久保勉委員が「日銀の保有株式(金融機関の持ち株を購入した奴ね)を政府に移管して財源にしてしまえ」という結構ビックリな提案をしていた点についてあたくしが突っ込んだのですけれども、それに対して解説を頂きました。ど〜もです。

あたしゃ大久保さんの『この中(日銀保有株式ね)には株式の含み益としまして二兆円弱の含み益がありますから、非常に国庫に対して寄与すると思います。』というのに対して『あのー大久保先生「贈与税」ってものご存知でしょうか????』と(実はちょっと乱暴な言い方なのは承知してたんですが、他に良い言い方が思い浮かばなかったもんで・・・と言い訳)申し上げましたが・・・・

そもそも贈与税ってのは相続税を補完する目的で設けられていますので、個人から個人への利益提供に課税されますんで、実は本件のようなケースは対象外なのですな。

んじゃあこの場合どうなるかと言いますと、形としては法人間の低額譲渡に近く、低額譲渡を受けた法人に益金が発生するのですが、受けた法人が国庫ですのでこれまた税金の支払いは不要(国庫が国庫に税金払ってどうする)となりますわな。

つー訳で、税務上の問題は発生しないというのが正解になるんですけど、まあこのケースは時価で国庫に移管して日銀に益を発生させてもほぼ全額が日銀納付金として国庫に吸い上げられる話ですから、大久保委員ってナンセンスな土台の上でしょうもない議論をしてますねというご指摘も頂きましたことも念の為申し添えます(^^)。

そもそも論としてプルーデンス政策で実施した施策で益が出たその益を日銀が無駄遣いするとか取り上げろという大久保議員の論点が訳判らんのですけど。しかし渡辺金融担当大臣の『大変面白い御提案だと思いますね。預金保険機構でいただけるものだったらいただきたいと思いますが、なかなかそう簡単でもなさそうであります。』という答弁、「いただけるものだったらいただきたい」って物言いのあたりに皮肉っぽい感じを受けますんで、アホウに対する皮肉答弁じゃないのかなとは思う(期待する)のですけれども、素で「面白い御提案」だと思っていたら・・・・(-_-メ)


○コアCPIがプラス0.1%ですが

先週末は経済指標が色々と出ていたのですが、10月全国コアCPIがプラス0.1%ということで、数か月前に予想されていたよりもちょっと早かった感じがするのですけれども、まあプラス転換ですねというところです。

でもまあ今回のプラス転換って需要が盛り上がるとか雇用者所得が上昇するとかそういう形で上っているというよりは、単に原材料価格(というか企業物価というか)などの上昇が流通段階で吸収できなくなって消費者物価に跳ねてるんじゃないのというのが印象(本当の分析は本職の方がしていると思いますが)でして、物価上昇だから金利正常化だワッショイというのは何ぼ何でも話に無理があると思うんですがどうでしょ。

金曜は失業率横ばいでしたけど有効求人倍率ちょっと下がってましたし(内容が本当に悪いのかどうかはよーわかりませんが)、春先には先行きかなりいい感じに見えてた雇用まわりの経済指標も何かもたついている中での消費者物価上昇ってのは個人消費への悪影響を通じて景気下押しに働くんじゃねえのかいなと存じます次第で、個人消費がここからコケないことを祈るのでありました。


○福井総裁講演

最近妙に講演が多いのですが、先週金曜のお題は『わが国金融システムの競争力強化に向けて』ですので、まあそんなにややこしい話をしてるわけではありません。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711h.htm

相変わらず日本の金融機関の収益性が低くて、それは一般事業法人にも言えますねというような話をしてますが、それを高めて証券化とかした結果どうなってるのよというツッコミもあるんですけど、まあその辺は置きまして、最後の部分でサブプライムローン問題に関するお話をしてるのでその辺りから。

『まず、サブプライムローン問題のわが国金融システムへの影響ですが、海外市場における問題の一段の拡がりと深まりに伴い、わが国金融機関にも、当初の想定に比べて影響はじわじわと拡大しています。』

『しかし、わが国金融機関の場合、クレジット市場への関与の度合いは相対的に小さく、これまでのところ損失は各金融機関・金融グループの期間収益や経営体力の範囲内で十分吸収可能とみられます。欧米金融市場の動向については、今後とも注意深くみていく必要がありますが、現時点において、今回の問題がわが国金融システムの安定性に大きな影響を及ぼすものとは考えていません。 』

概ね今までと同じ話ですが、影響は当初想定よりも拡大、でも日本の金融システム不安まで行くことはないって所ですので、先日の中村審議委員の会見じゃないですけれども、着地を見極めるまで様子見というほどではないが、でもまあ様子は見ましょうという所なんでしょう。で、この次に『以上を踏まえたうえで、この問題からは、金融機関経営や金融市場のあり方を考えるうえで、幾つかの教訓を学び取ることができると思いますので、二点お話しします。』が中々良かったなと思うのですけど。

『第一は、金融機関からのリスク移転や遮断の難しさです。サブプライムローンは、通常の住宅ローンに比べるとリスクの高い商品ですが、その大部分は証券化され、リスクは投資家に移転されるはずでした。しかし、この問題の表面化以降、様々な形で金融機関にリスクが飛び火する展開となっています。』

『例えば、証券化商品の投資家への転売が困難になったため、金融機関は予想外に同商品の在庫を抱えることとなりましたが、市場流動性が枯渇したため、多額の売却損や評価損を計上する事態が生じました。また、証券化商品に投資していたファンドの市場からの資金調達が困難化したため、一部金融機関では、――明示的なコミットメントラインの設定がない場合にも、――関連ファンドに対し、多額の流動性を供給するといった事態が生じています。』

『こうした事例は、高度にリスク分散が進み、金融機能の分業が発達した現代においては、金融機関は実に多様な形でリスクの仲介に関与しており、市場にひとたび大きなショックが発生すると、想定外のリスクをも引き受けざるを得ない面があるということを示唆しています。』

証券化によるリスク遮断が実はできていない場合もあるんじゃないですかという論点ですが、あたくしちょっと別の面から思うというかツッコミをしたいんですよね。と申しますのは、(引用してないけど)総裁の講演でもありますように「証券化(とかデリバティブ)などの技術によって金融機関のROEが改善されます」みたいな話がよくある、というか普通に一般常識モードになっているのですけれども、このような事例から考えますと、本当にそれで良いのかというお話でもあるんじゃねえのと思うんですけど。

ちなみに、第2の点は「透明性が大事ですよ」という話ですので割愛致しますですよ。ちなみに、総裁はこのようにも仰せです。

『今回のサブプライムローン問題では、証券化によってリスクが世界中に拡散され、リスクの所在の把握が困難になったことを問題視する声が挙がっています。しかしながら、証券化やクレジット・デリバティブズなどのリスク移転取引自体は、リスクの分散により金融システムを安定させる機能を有するものです。』

ま、そりゃそうですけど前段と微妙にずれてる気もせんでもない。。。