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2008/08/29

お題「須田審議委員講演ですが」

結局今週は日銀の公表文書を読むだけで一週間使うという企画になってしまいましたな(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0808b.htm

○基本的には日銀公式見解に沿っていますが

「が」と言うのは何かと申しますとですな、リスク要因の説明のところでして、冒頭の目次を見ていただくと・・・・・

>(3)リスク要因
>(インフレの上振れリスク)
>(景気の下振れリスク)

となっていまして、従来の展望レポートやら金融経済月報などでは必ず下振れリスクへの言及が「景気の下振れ」→「物価の上振れ」という流れだったのですが、この講演では「インフレの上振れ」が先に来ているのが気にかかるのですね。

で、先日ご紹介した白川総裁の講演では「物価上昇の2次的効果」に関する言及があって、第2時石油ショックの時にインフレが抑制されたことに関して「早めの金融引き締め」を評価する部分があったりして「鷹の香りがする」って申し上げましたが、今回に関しても「インフレの上振れリスク」が先に出てきたという辺りには、ちょっと怪しげなものを感じたのは変な深読みのし過ぎですかそうですか。

物価上昇は利上げに繋がらないっていうロジックは依然として景気下振れリスクが高い現状では変化無いとは思うのですけれども、その点をここもと大宣伝しまくった効果が行き過ぎたという認識になったんじゃねえのというこれまた勝手読みですけど、そんな気がします。変に時間軸っぽい動きとか、利下げ期待とかがあるけど、おまいら景気下振れリスクが薄れたら正常化っつーの忘れてるんじゃねえかって言いたいのではないかしらん。

ええまあ全て勝手に読んでるだけで、恐らく「順序が違うのは他意がある訳ではないですよ」って事なんでしょうけれども(^^)。


○景気に関して

基本的には展望レポートやら金融経済月報と同じ話なのですけれども、それに加えてという点ではこのあたりですかね。

『ただ、ここで申し上げておきたいことは、景気がここにきて急に落ち込んだ訳ではないということです。確かに、実質GDP成長率を前期比でみますと、4-6月に急に減速感が強まったような印象を受けますが、もともと振れの大きい統計であることには十分留意しておく必要があります。』

ほほう、急に減速した訳ではないとな。

『成長のモメンタムを弱めているという点では、日本経済は現在「停滞」局面にあることは確かですが、過剰な在庫や設備を抱えている訳ではないため、1998年や2001年のような大幅な調整は想定していません。』

まあここは展望レポートや月報にもある話。

『因みに、前年同期比でみてみますと、足もとにかけて緩やかに減速している姿が、より鮮明にみてとれます。私の景気実感からは、この前年同期比の動きの方がイメージに近いと言えます。』

ということで、緩やかに減速ですよと仰せなのですな。で、現状分析の話を項目別に展開していますが、それはまあ日銀の公式見解と同じ話なので引用割愛。


○先行き見通しを大きく下げていないですよという言及

先行き見通しの話ではこの辺でほほうと。

『8月の金融政策決定会合で政策委員が合意したとおり、景気については、「国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していく」、また消費者物価指数(除く生鮮食品)については、「当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していく」というのが、現在の標準シナリオです。景気の足もとを「停滞」としておきながら、楽観的ではないかとの印象を持たれるかもしれませんが、私どもでは、金融政策を行う立場から日本経済の先行きを見通しています。金融政策はその効果が出てくるまである程度の期間を要しますので、我々の見通しもそうした先行きの姿を念頭において、その蓋然性の程度を確認するという視点から日々の材料をみています。』

えーっと楽観的な気がするんですが、まあいっか。

『これに対し、例えば市場参加者の皆さんは、日々の材料を追いながら先行きの姿を探られていますので、我々の見方とはギャップが生じる可能性があります。ここで、改めて申し上げておきたいのは、今のところ、私どもの標準シナリオは、従来のものから大きくぶれている訳ではないということです。』

ということになっております。ほほーって感じですが。


○グローバルなインフレ圧力が伝播しにくい理由

で、先行きの項目別展開もあるのですが、これまた割愛して物価の方に参ります。

『次に、物価の先行きについて述べたいと思います。最近、市場エコノミストや海外の機関投資家等から、グローバルなインフレ圧力に対する経済のパフォーマンスが相対的に良好な国として、わが国を見直す声が聞かれています。確かに、日本では、他国に比べて国際商品価格の上昇が川下製品へ波及し難い印象があります。なぜ、わが国ではグローバルなインフレ圧力が国内に伝わり難いのでしょうか。』

『その鍵は抑制的な賃金にあると思っています。(その要因部分を割愛しますので(1)とか(2)とか唐突に出てくるのは勘弁してください)このうち(1)と(2)は影響が小さくなったと考えられますが、その他の点については、現在でも構造的な賃金抑制要因として作用していると思われ、賃金がインフレ率にスライドする傾向の強い欧米諸国や新興国との大きな違いとなっています。こうした抑制的な賃金のもとで、エネルギー・食料品価格の上昇が実質的な購買力を減退させてしまうため、消費者に近い川下製品ほど価格転嫁が困難になっていると解釈できます。』

何か川下の物価上昇が抑制的なのは賃金が抑制的だからっていうのであれば、それって別に前半に書いてある「日本の経済パフォーマンスが相対的に良好」って言えるのかいなと少々引っ掛かるあたくし。そんなら物価も賃金も上がる方がパフォーマンスとやらは兎も角、名目上拡大してた方が財政運営とかも楽じゃないのかなあという気がするんですが。

いやまあだからどうだと言われると困りますが。


○で、何故かリスク要因の先はインフレになるのでした

『最初に、インフレの上振れリスクから述べたいと思います。』

ということで、先行きリスク要因にインフレの上振れが出ているのが先程申し上げましたようにちょっと順番逆なのではと思う所です(^^)。んでまあ資源価格がどうのこうのという話があるのですが、その中で須田さんが言及しているのが金融緩和だったりするのも注目しちゃうのであります。

『しかし、私が上振れ方向のリスクを意識しているのは、世界的に緩和的な金融環境が背景にあるからです。今年5月に日本銀行で開催された国際コンファランスで、スタンフォード大学のジョン・テイラー教授が示唆に富む指摘を行なっています。要すれば、「インフレに対する金融政策の対応原則は、一時的変動を均らした上で、インフレ上昇率以上に名目金利を引き上げることである(テイラーの原則)。しかし、ここ数年間、各国の短期誘導金利はインフレ率ほど上昇しておらず、むしろ昨年夏以降は低下している」というものです。つまり、昨年以降の国際商品市況の高騰の背景には、資源制約を超える世界的な需要の増加が、グローバルな金融緩和によって発生した、という面があると考えられます。』

金融緩和で資源価格高騰ネタキタコレ。

『テイラー教授は、講演の中で昨年夏以降の米国の利下げにも言及していますが、米国の利下げの背景には、サブプライムローン問題に端を発する金融資本市場の混乱があります。FRBのバーナンキ議長は、7月15日の議会証言で「金融市場の機能正常化を助けることが引き続き最優先課題(a top priority)である」と述べていましたが、8月5日のFOMCは、金融資本市場に緊張感が依然として残る中、FFレートの誘導目標を2%のまま据え置きました。』

『この結果、ドルペッグ制を採用している産油国等においても、緩和的な金融環境が継続しているということになります。先ほど、金融引締めに動いている中央銀行が増えつつあることをご紹介しましたが、各国のインフレ率の高さを踏まえますと、世界全体でみれば、テイラーの原則に照らし十分な引締めになっていない可能性が高く、グローバルな金融環境は、引き続きインフレリスクを高めやすい状態にあると考えられます。』

ついでに、物価上昇の2次的効果による動向にも注意しているようで。途中とばして結論部分を。

『今のところ、一人当たり名目賃金に目立った上昇は窺われていませんが、消費者物価とともに賃金も上昇するという両者の関係がなくなった訳ではありません。このまま原材料価格の転嫁が進み、消費者物価が上昇し続ければ、賃金も次第に上昇ペースを速め、インフレ率と賃金の相乗的な上昇傾向が思いのほか強まっていく可能性もあります。グローバルな金融緩和の状態が続く中、世界でインフレ率が高まっており、人々や企業のインフレ予想は確実に高まっていると思われます。したがって、足もと国際商品市況が調整局面にあるからといって、インフレリスクに対する警戒を怠るべきではないと考えています。』

ということで、いつぞやの金融政策決定会合で「景気下振れリスクが弱くなってきたら早めの利上げ対応が必要」という発言をしている人がいたのが決定会合要旨から読み取れた筈ですが、やはりその発言は須田審議委員によるものだったんじゃないかなと思わせてくれる部分でございました。


○ということでインフレリスク警戒色が目に付きましたな

今後の金融政策運営という部分でもこんなお話が。

『7月に公表した「金融市場レポート」(日本銀行)では、国際商品市況の上昇持続を背景に、インフレ懸念の高まりが先行きの金融政策運営やマクロ経済環境を巡る不確実性を一層高め、投資家のリスク・アペタイトを削ぐことになったと指摘しています。インフレ懸念による不確実性の高まりは、投資家だけでなく、家計や企業に対しても経済活動の意思決定を難しくします。言い方を換えれば、経済の効率性を高め、持続的な経済成長を達成させるためには、インフレ率の安定化が不可欠だということです。その鍵を握っているのは人々のインフレ予想です。インフレ予想がアンカーされているからこそ様々な危機にも弾力的に対応できるのであって、そのためには、不断にインフレリスクに対峙しておくことが、中央銀行としての重要な責務であると考えています。』

という感じで、講演はインフレリスク警戒の話が多かった感がします。

また、交易条件の話もあったのですがこちらは引用省略します。









2008/08/28

お題「日銀レビューから」

ここのところ日銀から出てくる文書ネタばかりで恐縮なのですけれども、何せ相場様の方が何が何やら訳わかりませんですがな状態が絶賛継続するもんで・・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j09.htm
銀行券・流動性預金の高止まりについて

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j09.pdf


http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j07.htm
本邦外為証拠金取引の最近の動向

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j07.pdf


という2本から少々。本当はもう一つ『実質輸出入の動きをみる上での統計上の留意点』ってのがあるのですがパス。http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j10.htm


ということで銀行券レポートのほうから参ります。

○銀行券は高止まりが続きますというのが結論ですかな

レポートの冒頭部分にまとめがありますが。

『銀行券・流動性預金は、1990 年代後半以降、高い伸びを続け、足もとは歴史的にみても高い水準となっている。銀行券の券種別流通枚数や年齢階層別の流動性預金のデータを用いて分析を加えたところ、こうした銀行券・流動性預金の増加や高止まりは、主として家計、中でも高齢者の貯蓄目的など「取引需要以外の需要」の増加を反映したものである可能性が高いとの結果となった。』

ま、銀行券に関してはそうですねえというのがかつて金貸しの手先だったあたくしの直感的理解だったので、何となくこの部分に違和感は無いのですが、中身は後ほど。

『銀行券・流動性預金の先行きについては、金利変動が小幅に止まる限り、高齢者の保有行動は大きく影響を受けず、高止まりが続くとみられる。ただし、先行きを考える上では、高齢者の金利感応度が変化することによって、こうした資産選択行動が再び大きく変わる可能性にも十分注意する必要がある。』

ということで、一応将来的には「取引以外の需要」が金利上昇によって変化するかもしれませんねえと、輪番を増額したほうがいいんじゃないですかあという一部の(あたくしもそうですけど)意見に対する釘挿しになっています、のかどうかは知りませんが。

まー流動性預金金利が1%くらいにならないと別に金利感応度上がらないような予感がするんですけどね。ええただの非科学的根拠レスな勘ですけど(その頃は定期預金金利が3%くらいになるでしょうから)。ということは政策金利は1%より全然上になっている時代ですから当分も当分先の話かと。


ま、輪番オペに関しては償還ルールが変更になった時点で、従来とちょっと内容が変わっているという事も踏まえますと、輪番オペの買入額にあまり大きな意味を持たせすぎないよう、調節の一手段としての位置に持っていくほうが良いのかなあとは思うのでありますが、まだこのあたりは漠としたイメージしかないので、もうちょっと頭を整理したいと思います。


○現状に関して

最初の部分から現状分析をしているのですけれども、銀行券の高止まりは主に家計の保有増によって説明できるという話になっています。上記レビュー本文の2ページ目です。引用は割愛しますけど、資金循環勘定と法人企業統計を使って分析してます。

では何でその保有増が非取引需要の増大になるのかという話なのですが、その次の項、『非取引需要の拡大(券種別銀行券発行残高からのアプローチ)』という所に分析が。おもろいので引用。

『まず、券種別に銀行券の流通枚数の推移をみると、1990 年代前半までは、千円札と一万円札はほぼ同じ動きを示してきたが、1990 年代後半から2002 年にかけて、一万円札が千円札を大きく上回って増加している。千円札のような小額紙幣は、貯蓄のために保蔵しようとすると場所がかさむ等利便性が低いことから、専ら決済等の取引需要にあわせて保有額が変動すると考えられる。一万円札を用いた決済が、千円札を用いた決済よりも急激に増加するとは考え難いため、一万円札が千円札以上に増加しているのは、非取引需要で保有を増加させていることが推察される。』

なるほど(^^)。

『また、2004 年に改札が行われた旧札の一万円券(D 一万円券)は、依然として約14 兆円が流通している。これは1984 年の改札時に旧札の一万円券(C 一万円券)の流通枚数が急減していることとは大きく異なっている。』

ほほうそれはそれは。

『仮に旧札が取引に用いられ、銀行に持ち込まれれば、新券に引き換えられることになるため、こうした約14 兆円の旧札の一万円券は取引等に使用されることなく、「タンス預金」等の形で滞留している可能性が高い。この点からも、銀行券の増加、高止まりは非取引需要に基づいていることがみてとれる。』

せっかくここまでデータ出してもらっているのでしたら、2004年の改札後に千円券がどのように推移したのかを見せていただけますとなお説明になると思うのですが、その比較が無いのは残念。

聖徳太子から改札になった時と比較して、今回の改札って確かに旧札と新札を並べるとデザイン(D券の方が字と絵が大きい)とかホログラムとか光当たる角度によって色が変わる部分とか(D券にはそのようなものは無い)だいぶ違うのですけれども、ちょっと見た時にそんなに強烈な違和感が無い(違和感はありますが)あたりが安心して退蔵される理由だったりして(^^)。いやまあ冗談ですけれども。


○で、たんす預金が30兆円という話に

その続き。

『銀行券の発行残高約75 兆円のうち、どの程度が非取引需要に基づくものなのだろうか。。おおよその規模を把握するために、先ほどみたように一万円札の流通枚数が千円札の流通枚数の伸び率を超えて増加した部分を、非取引需要に基づくものとして計算すると、1995 年当時は、一万円札の発行残高の12%であった非取引需要が、最近では38%まで上昇しているとの結果となった。これを額でみると、非取引需要は、1995 年の5 兆円程度から、足もとは30 兆円まで増加している。これは、この間の銀行券の増加の7 割を説明する大きさである。』

で、たんす預金が30兆円という一般紙の記事が出ましたねってことなのでしょうかね。これはまあキャッチーな話ですから通信社が流すと皆さん食いつきますわなという感じです。どうやって分析しているかは上記URLの4ページのあたりにございます。なるほどまあそういう感じで分析するのねって所です。

で、そのたんす預金の推移ですけど。

『これまでの分析からは、銀行券の増加、高止まりの背景としては、主に家計部門が非取引需要を高めたことが主因であることが明らかとなった。また、流動性預金が銀行券と極めて似た動きを示してきたことからすると、流動性預金でも同じ現象が生じている可能性が高いと考えられる。』

さいですな。

『こうした非取引需要の増大には、@低金利環境の持続により、銀行券、流動性預金を保有する機会費用が低下したことや、A2002 年のペイオフ部分解禁による定期預金からのシフトも含め、金融システム不安の高まりに伴い、より安全性の高い資産である銀行券、流動性預金の需要が高まったこと、といった、従来からの説明要因が寄与していると考えられる。しかし、近年に至っても非取引需要が高止まりしているのは何故だろうか。こうした疑問に答える手掛かりをつかむために、以下では、流動性預金についてコーホート分析を行う。』

で、そのなんちゃら分析というのはどこにあるのよという話は本文5ページ目にございますが、何か簡単なことをややこしそうに書いてあるような気がするのですが深く突っ込みません(あほですいません)。

途中全部飛ばしてこの結論部分ですけど。

『高齢層ほどより大きく資産選択を変化させたことには、高齢層は他の年齢階層に比して圧倒的に多額の定期性預金を保有していたため、ペイオフ部分解禁前に、定期性預金から流動性預金に資金をシフトさせるインセンティブが高かったといったことからも類推される。ただし、こうした高齢層は、金融システム不安やペイオフ部分解禁といった大きなショックに対しては資産選択行動を大きく変化させたものの、その後はそれほど積極的に資産構成を見直しているとはみられず、少なくとも今までのところ、ひとたび高めた流動性選好を巻き戻す動きはほとんどみられていない。』

で、これが金利上昇したらどうなるかに関してはまさに推測の世界になりますけれども、定期預金金利がアホのように低い状況は継続してますし、金融ショックはともかく、ペイオフ部分解禁はそのまま生きている訳ですから、中々戻らないんじゃないでしょうかと思うのですけれども。

まあ中々オモロイ分析でした。日銀レビュー・シリーズは最後の方にも説明がありますように、小難しい分析で計算を延々とやってるあたりとかは省略してますんで、あたくしのような学が少々(どころではなく)不足しております人でも詠みやすいので、ややこしい部分を読み飛ばしながら読むと面白いと思います。だから金融政策がどうなのよという話はまああまり関係なく読んでもよかろうかと(強いて言えば輪番オペに関するインプリケーションがあるのですが)。



とか書いているうちにもう一本のを紹介する時間と量が無くなって参りましたけれどもサラサラと。念の為URLを再掲。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev08j07.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j07.pdf(本文)


○本邦外為証拠金取引の最近の動向

あたくし外為証拠金取引は個人的には縁が無いので(そもそも職業上やりませんけど)今百歩ほどよーわからん世界っすけど。

htmlの方の要旨からですが、

『近年わが国では個人投資家による外為証拠金取引が活発化している。入手可能な情報をもとに、本邦外為証拠金取引の最近の動向についてみると、昨年夏以降、国際金融市場において所謂サブプライム問題を契機とした混乱がみられる中、外為証拠金取引のポジション残高は減少したものの、口座数や取引高は着実に増加している。』

へー、ポジション減ってるけど口座数とかターンオーバーナイト・レートは増えてるんですか。というのは不覚にも存じませんでしたので軽くびっくり。

『また、この間、レバレッジの低下、売買回転率の上昇、高金利通貨への運用シフトなど、取引手法、通貨選択等にも変化が窺われている。』

スイングよりもデイトレが増えているということですね、わかります。


ということで、本文のほうですが、まあ要旨の中身を分析した内容がありますって感じですが、取引の特徴として、『基本的には「円売り・外貨買い」主体であること』、『短期的な相場変動と反対方向のポジションを取る「逆張り取引」主体であること』というのがございまして、まあそうでしょうねという所です。

まあそんな訳で、取引のフローとしてのインパクトが大きくて、一方でポジションの積みあがりという意味では投資信託がでかいですねというお話が「BOX」ってコラムの中にグラフと共にございます。結論はまあ当然の如く『外為市場に対する影響として、ポジションの積み上がりに伴う長期的な通貨需給という観点からは、投資信託経由の取引の影響が相対的に大きいと考えられる一方、取引フローを通じた市場流動性や短期的な市場へのインパクトという観点からは、外為証拠金取引の影響が相対的に大きいと考えられる。』という結論になっております。

・・・・ということで、個人的にあまり詳しくない話なので超あっさり味になってしまいましたすいませんすいません。










2008/08/27

お題「総裁会見はタカ的な部分はなさそうですが」

寝坊につき今日は短くて恐縮至極。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0808a.htm

○二次的価格上昇に関連して

会場でお話を聞かないで後から講演要旨を見てると妙に物価上昇に対する早めの金融引き締めに言及しているような印象があったのですが、記者会見ではその辺に関しての質問が無かったように見えます。まあ「足元の物価上昇は利上げに結びつかない」というロジックの広宣流布が効を奏した結果、その手のツッコミが飛ばなくなっているというところなのかもしれませんが。

辛うじて最後の質問でそれらしきのもあるんですけど、景気に対する質問でして、金融政策に関する質問ではないですな。

『(問) 本日、トヨタ自動車が34 年振りという乗用車の値上げを発表しました。これまで価格転嫁はエネルギー関連や食料品が主なところだったと思うのですが、今回の値上げは、耐久消費財まで価格転嫁が顕著となってきたという象徴だと思います。こういう動きが今後の景気全体についてどういう影響を与えていくか、総裁のお考えを確認させて下さい。』

『(答) 現在までの物価上昇の主因は、エネルギー・原材料価格の上昇に伴う価格転嫁ということでした。本日の懇談会でも申し上げましたが、それがさらに広がって二次的な価格上昇があるかどうかということに現在注目しているわけです。ただいま乗用車値上げの話がありましたが、現時点ではまだ二次的効果が大きく発生しているとは判断していません。』

と、ここまでは講演要旨にあるとおり。

『もし二次的な効果が広がっていくという事態になれば――今のところその可能性は小さいと思っていますが――、これは持続的な成長の基盤を損なっていくということになると思います。いったんそうなりますと、経済はスタグフレーション的体質になっていきますから、そういう意味で注意してみていく必要があると思っています。』

金融政策でどう対応するのかについて聞かれていないので、それに対しては答えないというのがお上手な対応(これが福井さんだと何か言いそうですよね)なのですけれども、さてこの場合に金融政策はどういう対応になるかという話ですが、講演でもあるように2次的効果広がる前の早目の対応って事になるんですかねという気がするんですけど・・・・ま、いっか。

『ただ、繰り返しになりますが、現状はそうした可能性が高いとは判断していません。』

一応念の為。


○9月末の流動性対策に関して

オモロイ質問がありまして。

『(問) 3点お伺いします。(途中割愛)3点目は、9月末の流動性対策についてです。通常の期末の対応で臨むのか、それとも外銀を支援するような手を考えていらっしゃるのでしょうか。今から10 年くらい前には、邦銀を支援するために両建てオペレーションというのがあったと思うのですが、いかがでしょうか。』

金融市場の状況を知って質問しているのか昔の状況しか知らないで質問してるのかが謎展開ですが。

『(答) 3点目の外銀を意識した流動性対策ですが、日本銀行の金融調節は、邦銀、外銀の区別なく、これまでも日本の金融市場全体の安定性を保つために色々な工夫を行ってきました。幸い、今回、日本の金融市場は、全体としては安定しています。本日のマーケットの状況については出張中のため詳細には承知していませんが、先週末までの状況で判断しますと、9月末越えのレートが──もちろん期末ですからレートは若干上がると思いますが──、従来の期末に比べて大きく上がっているということではありません。金融調節の枠組みは、97 年以降の様々な経験の中で大変整備されてきており、日本銀行が、金融調節の面でこの9月に向けて何か枠組みを変える必要はないと思っています。持っている手段を使って、状況をみつつ、必要に応じて適切に対応するということに尽きると思います。』

まあその通りでございます。さすがに最近は(サブプライム問題が大きくなりだした1年前と違いまして)「FEDやECBは機動的な流動性対策を矢継ぎ早に打っているのに、日銀は何もしなくてケシカラン」とかいう批判する向きも無くなって来ましたが(金利操作に関する話は別次元の話ですので念の為申し添えます^^)、あちらさんは日銀のようなツールが無かったのでヒーヒー言いながら色々とやってた訳で、日本に関しては(利下げすべきか否かの話はさておき)やる必要無しの巻なんですけどね。


○景気回復のキーは?

何が景気回復のドライバーになるのかという質問に対して。

『(答) まず、景気回復のメカニズムと時期ですが、回復のメカニズムを考える際には、なぜ足許景気が停滞しているのかということを考える必要があります。いくつかの要因がありますが、大きく分ければ、足許の景気停滞をもたらしている理由は2つあり、1つ目は交易条件の悪化に伴う内需の減少、2つ目はサブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融市場の混乱および世界経済の減速ということだと思います。この2つは少し性格の異なるものですから、それぞれを点検していくことが回復のメカニズムを考えることになると思います。』

『前者の交易条件の悪化についてですが、これまで続いてきたエネルギー・原材料価格の上昇がいつまで続くのかという点に関しては色々な見方があります。(長いので途中割愛)ただ、エネルギー・原材料価格の上昇がずっと続くわけではないと思っています。なぜかと言いますと、仮に上がっていきますと、先進国の交易条件が悪化して景気が減速することによって、世界全体としての需要が減速するわけですし、また、逆にエネルギー・原材料価格の上昇の背後に新興国経済を中心とした世界経済全体の急激な成長があるとすれば、これはいつまでも続くわけではなく、いずれかの段階で政策的に、あるいは自律的に反落があるのだろうと思います。その時期がいつかは現時点ではなかなか特定し難いのですが、交易条件の悪化もやがてどこかで止まり、そこから先は悪化したレベルから好転していく──マイナス要因がやがて減衰していく──ということになるだろうと思います。』

景気が一旦後退しないと交易条件の悪化が収まりませんとな。

『一方、後者のサブプライム住宅ローン問題に端を発した世界経済の悪化については、少し性格が違うように思います。もしサブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱が世界全体に広がっていく場合には、世界全体の景気を押し下げていくことになります。一方で、米国の金融機関も公的当局も色々な施策を講じてきているわけですから、こうした金融市場の状況が、いつ是正されていくのかということにかかってくるわけです。』

『私どもの見通しの上では、世界経済の減速も――足許は減速しているわけですが――、いずれ徐々に元に戻っていくという想定に立っているわけですが、交易条件についても、サブプライム住宅ローン問題に伴う金融処理についても、色々な不確定性があります。これは日本に限らず、米国もそうですし、欧州大陸諸国、英国もそうですが、各中央銀行の景気判断に関する分析をみてみますと、若干の差はあるにせよ、驚くほど似ているように思います。どの中央銀行もこうした点について色々な議論をしているわけですが、時期がいつかはもちろん特定はできません。特定してもそれにはあまり意味がないといいますか、特定することよりも、標準的なケースを想定しながら、その時期が先ずれするのか、後ずれするのかを丹念に点検するということが、一番賢明な対応であると思っています。』

ということでお話をしているのですが、要するにこの2つの問題が片付かないとダメダメですねっていう結論になっているようにしか見えませんな。打開するのは(特に米国の)政策対応って感じですから、それは早くても来年の頭ということですかそうですか。

総裁会見はこんなところで。以下雑談メモ。


○何がどうなってるのか判りません><

月曜相場では先物だけが突如大爆発でストロス巻き込んで大変なことになりましたが、昨日は昨日で超長期入札は順当ちゃあ順当でしたが伸びイマイチの中、またまた先物堅調でよく見りゃ何気に物価連動国債のBEIがまたまたお死にになっていらっしゃる><;

普通市場の動きってあるていど後付けインチキ説明でも「こうこうだからこうなりまして」というような理屈は書けるものなのですが、ここもとの「他市場は何も反応してないのに先物だけ大暴れ」みたいな動きは正直わけわからん。板が薄い中で一部の大口オペレーションに振らされていると言えばそれまでなんですけど、それにしましても何だかねえ・・・・って感じです。

訳の判らないときには海外ファンドのせいにするというのが債券市場の仕様になっておりますので、まあそういう事にするんでしょうけれども、それにしてもこのロジックもへったくれも無い動きには何だか妙なものを感じますです、はい。











2008/08/26

お題「何か鷹の香りがする講演に見えるのですが・・・・」

すっかり秋の長雨っぽくなってしまいましたね。

あまり材料にならない講演だったのですが、字面を見ると何か鷹の香りがするんですけど・・・・・
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0808a.pdf

○第2時石油ショックの教訓が・・・・・

『エネルギー・原材料価格の上昇と日本経済』という部分から。

『エネルギー・原材料価格の上昇は、資源の多くを輸入に頼るわが国にとって、実質的な購買力の減少、すなわち、所得の海外流出となるため、実体経済を下押しする要因となる一方、物価に対しては上昇圧力として働きます。』

『(過去2回の石油ショックと比較して)、石油価格上昇による海外への所得流出の規模も、今回の局面の方が大きく、GDPに対する比率は、第一次と第二次の石油ショック時が共に約3%だったのに対し、今回は約5%に達しています。』

という導入では例によって物価上昇が所得流出という話になっているのですが、過去の石油ショックの話の途中から展開がちといつもと違う感じが。

『第二次石油ショックの際は、経済成長率は3〜5%を維持し、消費者物価上昇率は上昇したとはいえ、1桁台に止まりました。同じ時期、米国の消費者物価上昇率は10%を超え、英国でも20%を超えていましたから、第二次石油ショック時のわが国は、ドイツと並んで世界の中でも良好な実績を示したと言えます。』

で、その理由はと言いますと・・・・

『第1は、石油ショック以前の経済・物価状況とその後の金融政策対応の違いです。第一次石油ショックの時には、原油価格が上昇する以前から、列島改造ブームのもとで景気の過熱と過度の金融緩和が進んでおり、家計や企業のインフレ心理も高まっていました。実際、73 年の春闘賃上げ率は20%に達していました。こうした下地がある中で、原油価格が急激に上昇したため、インフレ心理の一段の上昇を招き、いわば火に油を注ぐ状況となりました。』

『これに対し、第二次石油ショックの際には、景気の過熱や過度の金融緩和はなく、インフレ心理も沈静化していました。そうしたもとで、金融引き締めも遅れなかったため、インフレ心理は抑制され、原油価格上昇に伴って石油製品以外の財・サービスの価格が上昇する事態、いわゆる二次的効果が生じることはありませんでした。このような状況を指して、「日本経済は、ホームメイド・インフレの抑制に成功した」と言われました。』

ちなみに第2の理由もあるんですが、そっちは経済・産業構造を改革して資源価格上昇の影響を軽減するようにし、国際価格競争力を維持するっていうお話なので引用割愛。

でですな、その後ではこんな話が。

『以上の理由から、第一次と第二次の石油ショックの時の経済の姿は大きく異なるものとなりました。この経験を踏まえると、今後わが国が採るべき基本的な方向は明確だと思います。すなわち、第1に、輸入コストの上昇とその転嫁分を超えるような二次的効果を防ぐこと、第2に、新しい相対価格体系に対応した経済・産業構造への転換を進めることです。』

第2の方はどっちゃでもええのですが、『輸入コストの上昇とその転嫁分を超えるような二次的効果を防ぐこと』ってのは「二次的効果が出る前に金融引き締めをすること」ってお話ですよね。いつもの話よりも何か予防的利上げみたいな成分が強い感じですなあ。話をする相手が金融市場じゃなくて経済団体だからトーンを使い分けているのかもしれませんけど、いつもの会見などで景気下振れの話が圧倒的に多いのと比較するとちょっと「おおっ」という感じを受けたのは考え過ぎですかそうですか。



○となると物価上振れリスクも・・・・

『日本経済の展望と当面の金融政策運営』部分から。

まあ基本的にはいつもの話をしているのですけど、リスク要因の中でこれまたいつもどおりの話をしていますわな。

『物価面では、逆に上振れリスクの方を意識しています。先ほど申し述べたとおり、エネルギー・原材料価格は、供給制約に加え、新興国などを中心とする世界的な需要の増加を背景に、長期にわたって上昇しています。したがって、こうした上昇を「一時的」と考えるわけにはいきません。このようなエネルギー・原材料価格の趨勢に加え、わが国では暫く経験してこなかった物価上昇率となっているだけに、今後、家計のインフレ予想や企業の価格設定行動が変化し、二次的効果が発生するリスクにも注意する必要があります。』

・・・・うーむ、こういう書き方をされると前の部分とあわせると、「二次的効果が発生するリスクに対応して早めの金融引き締めが必要」という風に見えて来るわけでして、この前ちょっとあたくしが書いた気がするんですけど、「物価上昇は利上げに結びつかない」ってロジックを繰り返し過ぎてちょっと効き過ぎたのでここらで「ホームメードインフレには警戒ですよ」って話をしてちょっと釘挿しておかないといけないと思ったのでしょうかねえ。

ちなみに、先般の決定会合における公表文でのリスク要因に関しての物価部分に関する表現はこのようになっていました。

『物価面では、世界的にインフレ圧力が高い状況が続いている。わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』(8月19日決定会合公表文より)

いやまあ同じ話をしているといえばそうなのですけれども、二次的効果というのを明示して、その前の段階で第2時石油ショックを例に出しているあたりを見ますと、先程の繰り返しになりますが、トーンがちょっと違う感じを受けましたですよ。


○ただし二次的効果は高まる情勢ではないです

一応念の為ですけど、メインシナリオではいつものようになっています。

『次に、物価の先行きをみますと、国内の需給バランス、家計のインフレ予想や企業の価格設定行動からみて、先ほど述べたような二次的効果が直ちに高まる情勢にはありません。二次的効果の発生の有無を判断する上でひとつの重要なデータは賃金の動きですが、現在のところ、賃金の伸びは弱含んでいます。』

まあいつもの話ですね。

『結論的に言いますと、消費者物価は、当面、これまで上昇した輸入価格の転嫁の動きが続き、しばらくはやや上昇率を高めるとみられます。しかし、その後は、国際商品市況の上昇が緩やかとなり、価格引き上げの動きが一巡するにつれて、徐々に上昇率が低下すると予想されます。』

物価安定の理解を超えてきそうですので、まあこういう予想をしないと金融政策のロジックが益々難しくなりますわなという所で。

なお、さらに念の為申し添えますと、景気に関する認識はいつものようにもう下振れリスク警戒全開になっています。


○サブプライム問題に関して

サブプライム問題に関する説明ですけれども、現状認識と将来展望は例によって下振れ下振れ不透明という感じです。

『米国の実体経済の停滞を反映して、サブプライム関連商品だけでなく、商業用不動産ローンや消費者ローンについても延滞率が上昇する傾向にあります。この結果、実体経済の停滞が金融機関の資産内容の一段の悪化をもたらし、それがまた景気に悪影響を与えるような状況、つまり、資本市場、資産価格、実体経済の負の相乗作用が懸念される状況となっています。』

『世界経済の先行きですが、先ほども触れたように、米国経済は、資本市場、資産価格、実体経済の負の相乗作用が、いつ、どのように収束に向かうのか、なお帰趨が見えない状況にあります。欧州経済も減速傾向が強まっています。また、アジア経済をみると、中国やインドでは高成長が続いていますが、NIEs・ASEAN諸国では、輸出が減速しているほか、内需にも減速の兆しがみられているなど、世界経済の先行きは、当面、不確実性が高いと思います。』

という話になっているのですが、バブルの発生に関しては行き過ぎた金融緩和に言及しているのですなこれがまた。

『サブプライム・ローン問題だけでなく、日本のバブルも含め、過去の金融活動や資産価格の過熱を振り返ると、その多くは、物価が安定し、低金利が持続した後に発生しています。今回も、投資家や金融機関がリスクの評価基準を緩め、借り入れへの依存度、つまりレバレッジを引き上げながら、証券化商品への投資を通じて「利回り追求」を強めていきました。』

『その背景には、長期にわたって世界的な成長の持続と低インフレが続く中で、グローバルな金融緩和の行き過ぎと信用の膨張がありました。一方、バブルが崩壊し、金融機関の資本が毀損されることを通じて、信用の収縮過程に入ると、経済活動は大きく落ち込み、金融政策の効果は限定的となります。今回のケースをみても、バブルの発生と同様、崩壊をリアルタイムで認識することは難しいということを痛感します。以上のことは、金融政策運営において、金融緩和の長期化がもたらすリスクへの注意が必要であることも示しています。』

FEDビューじゃなくてBISビューですかそうですか・・・・・

ということで、今回の講演ですけど、市場が現状の金融政策長期化擬似時間軸状態になってきている所にちょっと釘を挿しに来るようなトーンを感じたんですよね。あたくしの考え過ぎかもしれませんけど。


以下余談クリップ。

○市場メモとか

・結局何が何だか判らなかった先物爆上げ

昨日は10時10分過ぎくらいから先物だけが大上昇。現物はいやいやついて来た感じでしたが、後場に入って長期超長期ゾーンは今日の20年ヘッジも入って(戻り売りはあったのかね)ヘロヘロの巻。138円マークしたところでストロスも巻き込んだりして踏みあげ祭りになったみたいですが、何でまたこうなったのかよー判らんですな。判らない時は海外投資家の法則(?)で海外筋のせいにしてお茶を濁すのですけれどもね。

・よく見りゃTB/FBは1年までフラットですかそうですか

昨日というより先週後半の話なんですけど、TB/FBに相変わらず買い確りでございまして、金曜の引けの時点でよく見りゃ3か月のカレントは0.565%の引けになっており、6か月と1年のカレントは0.560%の引けという見事なフラット状態。

・・・・いやまあ確かに足元のGCは0.53−0.54で超安定してますからそれでも足元対比のプレミアムはあるんですけど、中間期末越えの共通担保オペって0.56%足きりとかなんですけどそのレートはナンナンデスカという所です。

運用だけじゃなくてキャッシュ潰しだとか、例によって為替フォワードだとかまあ色々な要因があるんでしょうけれども、このリスクプレミアム皆無な状態はちと如何なものかという感じですな。











2008/08/25

お題「7月決定会合議事要旨から」

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g080715.pdf

○情報発信方法の変更に関して

『V.金融政策運営上の情報発信に関する委員会の検討の概要』で検討されたのが情報発信方法の変更です。

『第一に、委員は、政策変更時のみならず、毎回の決定会合後に、「2つの柱」に基づく点検結果を公表することとすれば、より情勢変化に即した金融政策運営の説明が可能となるとの意見で一致した。』

『第二に、委員は、金融政策の効果の波及には長く可変的なタイムラグがあることを踏まえると、展望レポートの見通し期間を延長し、平均して2年程度先までの見通しとリスク・バランス・チャートを示すことが適当であると述べた。』

『第三に、委員は、展望レポートに加え、中間評価の際にも、政策委員の見通し計数やリスク・バランス・チャートを公表することは、情勢変化をより適時に、かつ分かりやすく説明するための有用な手段になるとの認識を共有した。』

『第四に、委員は、適時の情報提供という観点からは、議事要旨についても、出来るだけ早期に公表することが望ましく、次回会合で承認の上、公表することが適当であるとの意見で一致した。』

というのは実施された施策ですけれども、そのうち意見が一致したと書いてあるのは第1と第4だったりしまして、どういう話になっていたのかはその次に。

『多くの委員は、見通し計数やリスク・バランス・チャートはあくまで、文章による経済・物価情勢メカニズムの説明に対する補完的な参考であり、その点について市場関係者等に理解してもらう必要があると述べた。多くの委員は、他の中央銀行の動向などを踏まえると、見通し計数などの公表は、四半期という頻度が適切であると述べた。』

『この点に関し、何人かの委員は、経済・物価情勢の変化に適時に対応することは重要であるが、例えば月次でデータが公表される都度、見通し計数を見直すこととなると、かえって市場を混乱させることになると述べた。』

ということで4半期になったようですけれども、どうもここの書きっぷりを見ていると4半期発表をする必要があるのかという議論もあったような感じですね。それから、月次公表とかして意味があるのかという話は確かにその通りで、変に月次公表とかすると逆に変更しにくくなっちゃったりする弊害が起きる(変更があるたびに市場が一々意味を求めだすのでやりにくくなるのではないかと思う)ような感が致します。

で、ここでは議論にならなかったのかどうか判らないのですが、あたくし的には金融経済月報の基本的見解部分が早くなったのか遅くなったのか微妙な点が少々気に。と申しますのも、今般の変更によって金融経済月報の基本的見解に相当する部分は簡略化されて前倒しで公表されたという感じになっておりまして、景気判断に関する項目別展開が翌日の金融経済月報全文(の冒頭部分)を見る必要があるというのはちと面倒な気がするんですが。


○緩和的な金融環境云々は風前の灯?

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から

第2の柱の検討部分。

『次に、委員は、第2 の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行った。実体経済面では、委員は、@ 国際金融資本市場は不安定な状態が続いており、米欧金融機関の損失拡大懸念等を背景に、各種の信用スプレッドが再び拡大しているほか、株価も下落している、A 米国経済が停滞するなど、世界経済には下振れリスクがある、B 国内民間需要については、国際商品市況の高騰に伴う所得形成の弱まりから下振れるリスクがある、との認識を共有した。』

景気に関しての下振れの話満載という感じです。

『物価面では、委員は、@ 原油など国際商品市況高を背景に世界的にインフレ圧力が一段と高まっている、A わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要であるとの見方で一致した。』

物価が上振れというのもありますが、2番目のほうに関しては2次的効果に繋がる話ですね。でもまあその動きは今のところ認められないのであくまでもリスクシナリオと。

『この間、何人かの委員は、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まるため、こうしたリスクについては、常に念頭におく必要があると述べた。』

7月会合では「何人かの委員」が述べているのですが、これが8月にどうなっているのかは楽しみです。上振れに関する論議はここの部分だけって感じですね。

『何人かの委員は、現在は、景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの双方に注意が必要な局面になっており、物価安定のもとでの持続的成長が達成されるかどうかという観点から、情勢を丹念に分析する必要があると述べた。』

で、景気の下振れと物価の上振れは現状ではどっちも景気下振れに繋がる話ということですので、7月時点でも警戒モード強まるという所ですよね。まあ景気の現状判断下げてますけど。

8月の相場では決定会合前にそれをやり過ぎた感もありますが、先週後半にGSE問題がどうのこうのという話になった途端に金先とか短い所とかちゃっかり堅調になっていましたので、単に米国追随でぶれているのかも知れず、何かここもとの動きは正直よー判らんのであります。


○景気判断に関して

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』に戻りますが。

展望レポートの中間評価に関して。

『中間評価について、委員は、4 月の展望レポート公表時に比べ、エネルギー・原材料価格が上振れており、これが景気と物価の両面に影響を与えているとの見方を共有した。委員は、成長率については、2008 年度を中心に幾分下振れる一方、物価は、国内企業物価、消費者物価(除く生鮮食品)ともに、2008 年度を中心に上振れるとの意見で一致した。』

ということで、まあ金融経済月報やら決定会合公表文にも記載されていますけれども、「エネルギー・原材料価格が上振れており、これが景気と物価の両面に影響を与えている」ということで、物価の上振れのうち、原材料価格上昇要因に関しては景気下振れと同じ話だということになりますわな。でもまあこのロジックに関しては福井総裁退任直後くらいから延々と説明してますので、さすがに浸透したでしょ。

で、まあ別に今日明日の話じゃないですけれども、国内要因による2次的効果での物価上昇という話になりますと、交易条件悪化とは別問題の話になるのですが、だいたいこう世間様というのは話を妙に単純化しちゃいますので、2次的効果での物価上昇という話になっても「物価上昇は景気悪化」的な連想が継続してそうな気がするのがあたくしの取り越し苦労でして、過去の説明が効きすぎていざ景気が復活した時に話がややこしくならないかちょっとだけ気にしてます。

ま、基本的にはそういうときには欧米が利上げモードになっているでしょうから、そっちに釣られて勝手に利上げ観測になってくるのだとは思いますけどね。

個別項目に関しては、輸出、消費、雇用・所得のあたりが。

『わが国の輸出について、委員は、足もと鈍化しているものの、海外経済の拡大を背景に増加基調を続けており、先行きも増加基調を続けていく可能性が高いとの認識で一致した。ただし、何人かの委員は、海外経済減速の影響が輸出に現れつつあるように窺えるため、今後、減速の程度には留意していく必要があると述べた。』

というのが思いっきり顕在化したのが8月の金融経済月報に反映されていますわな。

『個人消費について、委員は、石油製品や食料品の価格上昇が続く中で、このところやや伸び悩んでいるとの認識を共有した。何人かの委員は、7 月の支店長会議において、物価高に伴う個人消費の伸び悩みを背景に、景気判断を下方修正したとの報告が多かったことを指摘した。先行きについて、委員は、個人消費は当面やや伸び悩むものの、価格上昇の動きが一巡してくれば、個人消費は次第に底堅さを取り戻していく可能性が高いとの認識を共有した。』

ただまあその価格上昇が全然一巡しないのが困ったもんです。あとは支店長会議の指摘にもありますが物価上昇が地方の個人消費の伸び悩みに効いている感じはありますわな。

『雇用・所得面について、委員は、雇用者所得は、緩やかに増加しているとの認識を共有した。もっとも、複数の委員は、企業収益が悪化するもとで、賞与は抑制的なものとなっていると指摘した。また、別の複数の委員は、労働力調査による雇用者数は足もと伸び率が鈍化しているほか、有効求人倍率も低下を続けており、限界的には、労働需要が幾分減退している可能性があると指摘した。』

これがコケだすとかなり苦しくなりそうですので気になるところです。

・・・・ということで引用ばっかで恐縮です。新聞ネタになってた銀行券に関するレポートは時間と量の関係上後日。










2008/08/22

お題「金融経済月報から」

一日遅くなりましたが(というか会見と金融経済月報を一度でネタにするのはさすがにしんどいですぅ)金融経済月報から。

先月から「基本的見解」の部分が月報全文の冒頭部分の「概要」という所に反映されていますので、7月の同じ部分と比較してみましょうなのです。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0808.pdf(8月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0807.pdf(7月)

○現状判断、個別項目下げまくり

・総合判断

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に、停滞している。』(8月)
『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、さらに減速している。』(7月)

ここの部分は金融政策決定会合の結果公表文にあった通りで、輸出の増勢鈍化という新たなファクターが加わりました。


・輸出

『輸出は増勢が鈍化している。』(8月)
『輸出は、足もと鈍化しつつも増加基調を続けている。』(7月)

まー7月時点で既に苦しい表現でしたけど、増加基調継続という旗を降ろしました。


・企業収益、設備投資

『企業収益が交易条件の悪化等を背景に減少するもとで、設備投資は横ばいとなってきている。』(8月)
『企業収益は、交易条件の悪化等を背景に減少しており、企業の業況感も引き続き慎重化している。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。』(7月)

設備投資が「増勢が鈍化」から「横ばい」となりまして、下方修正になっています。業況感云々は短観を反映したものですので、ここの部分が削除されているのはそれ以上の意味はありません。


・雇用者所得、個人消費

『雇用者所得の伸び悩みや石油製品・食料品価格の上昇などから、個人消費は弱めの動きとなっている。』(8月)
『雇用者所得は緩やかに増加しているが、石油製品や食料品などの価格上昇が続く中で、個人消費はこのところやや伸び悩んでいる。』(7月)

雇用者所得が「緩やかに増加」から「伸び悩み」へと下方修正。個人消費に関しては「伸び悩み」から「弱め」へと下方修正してますね。


・住宅投資、公共投資

『また、住宅投資は回復の動きが一巡している。この間、公共投資は低調に推移している。』(8月)
『また、住宅投資は回復の動きが一巡している。この間、公共投資は低調に推移している。』(7月)

こちらは変更ありません。


・生産

『以上のような内外需要のもと、生産は弱めに推移している。』(8月)
『以上のような内外需要のもと、生産はこのところやや弱めの動きとなっている。』(7月)

「このところやや弱めの動き」ってとりあえず今は弱いけどそんな事はないですよチックな表現から「弱めに推移」と弱めを断言と。

ということで、ものの見事に個別項目の判断を下げていますね。


○先行き見通し

・基調判断

『景気の先行きについては、当面停滞を続ける可能性が高いものの、国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(8月)
『景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(7月)

これはさっきと同様に一昨日ご紹介した部分と同じです。


・輸出(と海外経済)

『当面の動向を需要項目別にみると、輸出は、海外経済の減速から、ごく緩やかな増加にとどまるとみられる。』(8月)
『すなわち、輸出は、海外経済が減速しつつも拡大するもとで、増加基調を続けていくとみられる。』(7月)

基本的に足元が下がっている分下がる部分が多いのですが、今回に関しては海外経済に関して「減速しつつ拡大」という器用な見通しから「減速」と素直なものに。「増加基調」が「ごく緩やかな増加」とこれまた下方修正しています。


・企業収益とか雇用者所得とか

『企業収益が減少を続け、家計の実質所得も弱めに推移するもとで』(8月)

『企業収益は、当面減少を続けるが、エネルギー・原材料価格の上昇が緩やかになるにつれて、増益基調に復すると予想される。また、雇用者所得は緩やかな増加傾向をたどるとみられる。』(7月)

「増益に基調に復する」という部分がバッサリ削られて、企業収益の見通しを思いっきり下げています。また、雇用者所得に関しては7月は「緩やかな増加基調」で今回は「家計の実質所得も弱めに推移」と表現が微妙に変化しています。まあこれも下方修正ですが。


・国内民間需要、公共投資、生産

『国内民間需要は伸び悩む可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向で推移すると考えられる。以上の需要動向を踏まえると、生産は、当面弱めに推移するとみられる。』(8月)

『そうしたもとで、国内民間需要は、当面やや伸び悩みつつも、その後は次第に底堅さを増していく可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向で推移すると考えられる。以上の需要動向全体を踏まえると、生産は、当面横ばい圏内で推移するが、その後増加基調に復していくとみられる。』(7月)

国内民間需要の先行き見通しを「伸び悩み」に下げ、生産の見通しも「弱めに推移」と下げて、「その後戻ります」という部分がどちらもさっくりと消滅しております。


・削除された部分

『なお、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。』(7月)

この部分が削除されています。



・・・・・うーむ、これだけ個別項目の見通しを下げているのに基調判断の部分があんまり下がらんというのも妙(現状判断は「停滞」に大下げしているので違和感は無いのですけどねえ)ですなあ。

てなことで、まあ先行き見通しに関しては個別項目部分を見ますと「次第に緩やかな成長経路に復する」というのは何か願望チックな香りが致しますわな。

個別に引用したからちょっと判りにくいかもしれませんが、先行き見通しの項目別展開部分が、7月のそれよりもかなり短くシンプルになっていましたので、まあそーゆー点では「吹っ切れた」のでしょうか(^^;



○需給ギャップがバランスという話が微妙に削除

物価の先行き見通しの中でこんなんあります。

『消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品の価格動向などを反映し、当面上昇率がやや高まったあと、徐々に低下していくと予想される。』(8月)

『消費者物価の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、当面、現状程度ないしそれを幾分上回るプラス幅で推移すると予想される。』(7月)

「経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移」ってのが外れている訳ですが、よくよく考えたら消費者物価の上昇率が先行き低下するという見通しを立てるためには需給ギャップのバランスが需要超過だったりバランスしているだったりすると低下の絵が描きにくいからですかいな。よーわからんが。


○金融環境が微妙に変化

金融面なんですけどね。

『金融面をみると、企業金融を巡る環境は、総じて緩和的な状態にある。』(8月)
『企業金融を巡る環境は、緩和的な状態にある。』(7月)

お得意の「総じて」が入ったのはどの辺が原因なのよと申しますと・・・・

『CP・社債の発行環境をみると、下位格付先や一部業種では厳しくなっているものの、全体としてみれば、良好な状況にある。』(8月)
『CP・社債の発行環境をみると、下位格付先では発行スプレッドがなお高めの水準にあるが、全体としてみれば、良好な状況にある。』(7月)

これはまあその通りですな。「発行スプレッドが高めの水準」という状況から「厳しい」と認識を厳しく見ています。その他の部分に関しては変化ないですが、まあそりゃ公募普通社債発行している上場企業が同じような業種で3打席連続あぼーんしちゃいますとこうなりますわなという次第で。


ということで、あちこち随分下げましたなって感じです。引用だらけの手抜きバージョンでどうもすいませんでしたm(__)m











2008/08/21

お題「総裁記者会見」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0808a.pdf

○言い間違えの所は(笑)

発言を慌てて訂正したということで、冒頭部分は言い間違えをスルーになっていますが、最後に質疑を残していますので、言い間違えをしたこと自体は読めば判るようになっています。

『(問) 総裁は本会見の冒頭で、本日決まった政策金利(無担保コールレート)を「0.75%前後」と一旦言い間違い、訂正されました。ここで「0.25%」ではなく「0.75%」と間違えたことに、ご自身では特に違和感がないように見受けられました。直前まで具体的な数字を検討されていたからなのか、憶測を呼びやすい状況だと思いますので、理由があれば説明してください。』

『(答) これは全く理由はありません。私の全くの不注意で「0.5%前後」と言うべきところを言い間違えただけであり、私自身の深層心理の中にあったというわけでもありません。本当に大事なことを言い間違えてしまい、大変申し訳なく思っております。』

・・・・・で、昨日の債券市場ですが、金先は利下げ提案とかが出る方向へのスケベロングの閉じでもあったのかただの利食いか知りませんが続落し、長いところでは5年入札を控えて売りが嵩んで落札結果発表後に一時先物が62銭安まで下落しちゃいまして、実際問題として全然関係ないですけど、これじゃあまるで0.75%発言が相場をぶち下げたみたいで何と言う間の悪さとしか言いようが無かったのですが(−−)、引けに掛けて押し目買いで戻って先物18銭安で済んだのは白川総裁の引きが強かったのでしょうか(^^)。


○景気現状の「停滞」に関して

「停滞」とは政府の言う「事実上の景気後退入り」とどう違うのかという質問に対して。

『まず、景気基準日付上で現在景気後退局面に入ったかどうかを判定することについては、今後、政府において、各種のデータを分析した上で、定義に従って技術的に判断していく性格のものだと思います。』

さよですか。で、その先ですが。

『私どもは、本日の金融政策決定会合で経済の現状、先行きについて真剣に議論しましたが、先程申し上げました通り、景気は当面停滞を続ける可能性が高いが、次第に緩やかな成長経路に復していくと予測しています。日本銀行のそうした景気に関する認識という点では、政府との間に大きな違いがあるとは考えていません。』

微妙に禅問答の香りがしますが、要するに底割れとか悪化とかがメインシナリオではないですよという見方は政府と一緒ですと。

『それから、政府の景気についての見方ということにも関連しますが、「停滞」という言葉について一言申し上げます。今回、表現を変えたわけですが、日本銀行として景気のメカニズムについて判断を大きく変えたということではありません。(途中割愛)今回、様々な観点から議論したわけですが、基本的なメカニズムについて私どもの判断が変わったわけではありません。それから、「停滞」と言っても、これから経済が大きく落ち込むという可能性は小さいと判断したわけです。そうした意味で「停滞」という言葉を使いました。』

で、益々禅問答の香りがするわけで(途中割愛した部分を補充して読んでも正直あたくしもナンノコッチャ状態)、それじゃあ判りにくいですがな(下方修正したけれども大きく判断を変えたわけではないとは何ぞや)という別の質問に対して。

『基本的判断が変わったわけではないという点についてですが、足許の経済情勢について、データで経済が停滞していることがはっきり確認出来たということです。色々なデータが出ましたが、特に、実質GDPの数字のほか、生産が第1四半期、第2四半期と2期連続のマイナスであったこと、また、第3四半期についても、これはまだ見通しの計数ですが、小幅のマイナスということが、確認されたということです。』

経済のハードデータで確認しましたということですね。

『7月の会合においてもそうした可能性は有り得べし、ということでしたが、データでは確認出来ませんでした。それを今回はデータで確認したということです。』

で、今後に関しては。

『この後の景気・物価の経路ですが、従来から私どもが申し上げてきた基本的なメカニズムの考え方は変わってはいないということです。若干繰返しになりますが、交易条件の悪化が日本の景気を下押ししていること、リスク要因として国際金融資本市場が不安定な動きを続けていること、また、世界経済も下振れリスクがあるということ、これらを含めて、私どもはずっと経済をみているわけですが、そうしたメカニズムについての理解が変わったわけではないということです。』

ということですが、時間のスパンは変わっているという話は後ほど致しますが、停滞という表現を10年ぶり位に使った理由に関して質問されましてその答え。

『最初のご質問については、発表文の第3パラグラフにある通りです。現在、日本経済は設備、雇用の面で大きな調整圧力を抱えていません。90 年代から2000 年代の初頭の頃を考えてみると、日本経済は、設備、在庫、雇用、さらにそれと関連しますが債務、これらの面でいずれも大きな過剰を抱えていました。そうした大きな過剰を抱えている中でマイナスのショックが起きると、そのショックが幾重にも増幅され、深く景気が落ち込んでいくということになりやすいし、現になったわけです。』

『現在、日本経済は、設備についても雇用についても調整圧力を抱えていません。あえて申し上げると、足許、在庫が少し増えていますが、この在庫が今大きな調整圧力を抱えているというわけではありません。そういう意味で、景気が大きく落ち込む可能性が高いかというと、その可能性は小さいと現状では考えています。』

ストック調整が軽いのでスパイラル的な落ち込みも無いという認識ですね。


○物価上昇の2次的効果は発生せず、賃金に注目

従来どおりといえば従来どおりですが、本件に対する質問の答えから。

『結論から言うと、二次的効果が現在発生しているとは判断していません。二次的効果が発生しているかどうかを判断していく上で、いくつかの指標を注意深くみていく必要がありますが、その一つは賃金だと思います。仮に、エネルギー・食料品の価格上昇が出発点であっても、そうした上昇をカバーすべく賃金をどんどん引き上げていくと、賃金は価格の中で一番大きな構成要素になりますから、これはやがて一般の物価にも跳ね返ってくることになります。そういう意味で賃金の動きは一つの重要なファクターではありますが、現在、賃金の上昇率は弱含みになっているということで、どんどん上がっていく状況ではありません。』

ということで基本は賃金に注目ですよね。で、もう一つの指標としては予想インフレ率に関してこの続きで言及していますが、正直計測が難しい概念ではありますな。

『あとは、先行き物価がどの程度上がるかという感覚――エコノミストの言葉で言えば予想インフレ率――が、この面では、家計部門については少しずつ上がっているということかもしれません。企業部門については、注意をしいく必要はあるものの、企業はコストの上昇を全面的に価格転嫁できる状況であるとは必ずしもみていません。従って現状、予想インフレ率がすごく上がっているとは判断していません。今、賃金と予想インフレ率について申し上げましたが、いずれにしてもこの指標をみれば必ず分かるというものではありませんから、色々なデータを注意深くみていくことに尽きると思います。』


○回復に関する時間的見方は後ろにずれています

停滞はどのくらい続くのかという質問が最初のほうに行われたのですが・・・・

『今ここで、わが国経済が成長経路に復していくまでどの程度の時間的長さが必要かを数量的に申し上げることはできません。(途中割愛)今年度の成長率がいくらか、あるいはその成長率がどのような坂で実現していくのかを数量的に申し上げることはできませんが、本日の発表文でも申し上げている通り、当面停滞が続くとみており、その先の展開は、エネルギー・食料品価格や世界経済に関する想定に依存しますが、この場で述べたような想定がやがては実現していく可能性が相当に高いと判断しており、この点は従来と変わっておりません。』

という発言だったのですが、もうちょっと先のほうで「復調時期は後ずれしてるかどうか、どう考えてますか」という質問が飛んできたときにはこういうような答えが。

『停滞の期間をどの程度と考えるかということですが、足許、停滞ということがデータで確認され、この先も停滞が続くという見通しを出したわけです。個々の委員が停滞の期間についてそれぞれどれくらいであると議論したわけではありませんが、私が本日の会合での議論を踏まえて受けた印象で申し上げると、多分、最終的に経済が回復してくる時期のイメージは、足許が停滞している分だけ、従来より多少先にずれているということであったかなというようには思います。』

ま、これが正直なところでしょう。その発言の続きですが。

『ただ、ここについても非常に不確実性があります。私どもの見通しではいつもリスク要因を強調していますし、特に今は不確実性が大きいということを重ねて強調しています。それは、上に向かう、下に向かうというリスクの要因もそうですが、その長さについても同じことが当てはまりますので、その長さについて固定的にこの期間だということを申し上げるよりは、ある程度幅のある概念だと考えて、そのうえで毎回毎回点検をしていくということだろうと思います。』

という字面を見ていますと、先行きの回復経路への復活に関しての時間的な見方は結構後ろにずれているのではないかという印象を受けます。そう簡単に戻ってくれないで、ダラダラ停滞が続くのではないかというのが正直なところなのではないでしょうか。


○米国の不良債権問題に関して

米国金融機関のARS証券問題に関する質問の中で、白川総裁が珍しくサブプライム問題1年ということで質問以上の話を行った(質問以上の話が得意な前任の福井さんだと珍しくないのですが^^)のが印象的だったのでその部分を引用しますね。

『この8月はサブプライム住宅ローン問題が顕在化して1年が経過するということで、色々な教訓について色々な論評がなされていますが、一つの問題意識として、米国は日本の97 年以降の失敗を繰り返すのかどうかといった議論がよく行われています。』

さいですな。

『そうした議論を行う際に、米国は不良債権をタイムリーにディスクローズし処理しており、問題の処理が早いが、日本は、適切な言葉かどうかはわかりませんが、不良債権を隠していたという論評がみられます。』

それも良く聞きます罠。

『当時の日本の会計やディスクロージャー制度に改善の余地があったというのはその通りだと思いますが、振り返ってみますと、90 年当時言われていた不良債権の金額よりも遥かに大きな金額が最終的に実現したその最大の理由は、隠す隠さないということではなく、実体経済と金融の相乗作用が予想を超えて遥かに大きかったということだと思います。従いまして、米国についても、その点をどのように認識するかが一番大事なポイントだと思います。』

これは重要な論点ですよね。すぐアメリカマンセーな話になる方々はこの点よく考えていただきたいものであります。

『この点に関して答えを持っている人はいないと思いますが、個々の不良資産だけに関心が集まると、結果として大きな絵を見過ごす危険性があると思いあえて申し上げた次第です。』

ということで、白川総裁にしては珍しく質問されていない所に自ら詳しく話をしている(質問の要点を判りやすくするために補足説明をすることはありますけれども、補足以上の話を自分から振ってくるのは副総裁就任以来の会見などのベースでは珍しいと思う)のでクリップ致しました。













2008/08/20

お題「まあ順当に判断が下がりました」

ということで金融政策決定会合ですが、織込み範囲内の下方修正ですかね。

今回の決定内容
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080819.pdf

前回の決定内容
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715.pdf


○現状判断を下げました

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に、停滞している。』(今回)

『わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高を背景に、設備投資や個人消費の伸びが鈍化するなど、さらに減速している。』(前回)

えーっと、「さらに減速」から「停滞」になりましたので、前に進まなくなって停止しちゃいましたねという事ですからこれはまあ似たようなもんっちゃあ似たようなもんですが、運動として考えますと前進が停止になったのですから、ゼロとゼロじゃないという違いですので、これを大きいと思うのかどうかはよく判りません。大きい気がしますけどね。

さらにもう一つ、今回は停滞の要因として輸出の増勢鈍化を上げています。ここもと(夏休みシーズン前ですが)審議委員の講演などで指摘されていましたが、アジア諸国の交易条件悪化に伴う景気の悪化から輸出に悪影響という話とか、現実問題として輸出が変調になっているという部分がクローズアップされて参りましたという所でしょう。


『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などから、足許+2%程度と90 年代前半以来の高い伸びとなっている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品の価格上昇などから、足許+1%台半ばとなっている。』(前回)

物価の現状に関しては事実関係ですけれども、「90年代前半以来の高い伸び」と上振れを強調する表現になっていまして、「景気下振れ、物価上振れ」という流れを強調してるんでしょうか。


○先行き判断

『先行きは、当面停滞を続ける可能性が高いものの、国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(今回)

『先行きは、当面減速が続くものの、その後次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される。』(前回)


「当面停滞」と「当面減速」の所は現状判断を下げた関係ですが、前回「減速が続く」だったのが今回「停滞を続ける可能性が高い」になっているのは、一応現状判断下げた分足踏みの所を断定調から変化させたって事なんでしょ。

ただ、「緩やかな成長経路に復していく」ための前提条件として、今回「国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて」という前提条件を付けていますので、この分判断を下げたという事になるでしょう。白川総裁の記者会見でも「回復は先ずれ」(こういう場合って国語として正しいのがどっちなのか知りませんが、時間的に後にずれるって文脈で「後ずれ」っていうのが耳慣れしているんですけど)ということで、回復経路への復帰までの時間が掛かるでしょうという事になってましたので、先行き判断も下げの巻。


『(物価の)先行きは、当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していくと予想される。』(今回)

これは前回と一言一句違いませんので前回分引用割愛。

『このように、わが国経済は、物価安定の下での持続的な成長経路に復していくとみられる。』(今回)

『このように、わが国経済は、物価安定の下で持続的な成長を続ける可能性が相対的に高い。』(前回)

現状判断が「停滞」になったので「復していく」に変わったのですけれども、「復していくと見られる」と「成長を続ける可能性が相対的に高い」というのとどっちが強いのか良く判らんですな。


○リスク要因

こっちはあんまり変わっていないのですが、現状判断部分で景気の下振れと物価の上振れを指摘した分、リスク要因の下振れと上振れがどっちも表現として弱くなっているように見えましたがどうでしょ。

『リスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定な状態が続いている。また、米国経済など世界経済には下振れリスクがある。』(今回)

ここまで前回と同じ。

『国内民間需要については、国際商品市況の動向を反映した所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはいえ、景気の下振れリスクには注意が必要である。』(今回)

『国内民間需要については、国際商品市況の高騰に伴う所得形成の弱まりから下振れるリスクがある。このように、景気の面では下振れリスクに注意する必要がある。』(前回)

実質所得の低下を下振れリスクとしてみるのは同じですが、国際商品市況の「高騰」から「動向」に変化している部分、また下振れリスクに対して言及する中で、所謂「3つの過剰問題」が過去の局面とは違い足を引っ張りませんよという所を敢えて指摘していますわなという点で、下振れリスクをちょっと下げた感じもします。

『物価面では、世界的にインフレ圧力が高い状況が続いている。』(今回)

『物価面では、世界的にインフレ圧力が一段と高まっている。』(前回)

ちょっと下がってますかこれって。微妙ですけど。で、以下の部分は前回と同じ表現になっていますので引用だけ。

『わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要である。』

『この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる。』

という事で、このあたりは変化ありません。

総じて言えば当たり前ですけれども現状判断、先行き判断共に下げましたけれども、先行き判断の基調はあくまでも「成長経路に復していく」でありますし、リスク要因に毎度書いてありますように、現状の金融環境が緩和的であるという事になっていますので、外的ショックなどが起きない限りは金融政策の方向性として利下げというのはまだ出てこないという事になるんじゃないでしょうか。ただまあ停滞という状態であるので利上げという選択肢は有り得ないので、現状維持と。ま、もうちょっと言うなら「現状の緩和的な状況を維持する」っていう事でございましょうかねえ。


○人のふんどしコーナー

http://hongokucho.exblog.jp/9326571/

その2ですけれども、まあ一応白川総裁の為に言い訳をすれば、昔の公定歩合(=補完貸付金利ですな)が0.75%なのでついうっかりというところなのでしょうけれども、こりゃまあネタにされますなああっはっはっはっはっはっは。

ちなみに、ブルームバーグニュースではニュース見出しが延々と(内容を後から追加していく関係で(2)とか(3)とか同じお題でニュース見出しが続く)・・・・

JBN 19:08 日銀総裁の発言要旨:「0.75%で全員一致」と言い間違いも(4)
(ブルームバーグニュースのヘッドラインより)

といった感じで延々と言い間違いがヘッドラインになっていたのはテラワロスでございましたな。

で、本石町日記さんの上記エントリーから。

『事務方&記者団の「えっ?」という反応や、広報課長のあせった表情は面白かったです。』

やはり焦るのですね(^^)。

『速水総裁時代にはこの手の出来事は頻発しており、当時の中曾課長(信用機構局)の引きつった顔は忘れられないのであるが、久々の面くらいシーンでありましたね(笑)。』

・・・・・それが速水総裁クオリティ。情報ベンダーのヘッドラインで毎度毎度大変だったのは今でも記憶に・・・・・・orz

#で、深層心理ですよね、ちょっとぬこの被り方が不足してますな、うひょひょひょひょ












2008/08/19

お題「利下げネタで一勝負ですか?/決定会合ですね」

○金先などが盛り上がって参りました

盛り上がっているのか踏みが炸裂しているのかと言われますとこれがまた訳判らんのですけれども(笑)、昨日はユーロ円金先がやたら盛り上がっておりまして、中心限月の2009年3月限は昼過ぎ(13時過ぎ)頃に0.70%をマークしたと思ったらあれよあれよという間に上昇して高値0.68%まで上昇の巻。その後追随なく0.7%レベルになったので、何か大きめのロスカットが発生でもしたのかねという感じではありますが、「2009年3月のユーロ円TIBORが0.7%」っていうのは金利水準として考えると利下げ期待がないと無茶なレートという事になります罠。

金先は昨日も引き続き足元から中心限月までの逆イールドに拍車が掛かっておりまして、(清算値じゃなくてすいませんが)昨日の18時半ごろの値段で見ますと、2008年9月限から12月、09年3月限までがそれぞれ0.83%(これは概ねユーロ円TIBOR金利に収斂されてますな)、0.745%、0.705%といい感じでインバートが進んでいます。ちなみに06月限は0.735%と12月限対比でとうとうインバートの巻となっております。で、こーゆー動きが起点なのか、他のものが起点なのかは良く判らないのですが、他の所でも何か利下げ織込みチックな動きが。

OISでは6か月とか1年とか先の金利が軒並み0.5%を割り込むの巻になったようで、こちらも先行きの利下げ可能性を織り込みに行くという格好ですし、TB/FBでは先週金曜に入札があって0.59%レベルで決着した1年TB438回債が益々強くなって0.56%出合いとかやらかしておりまして、引けも0.560%の巻。他の銘柄だと発行後1か月とか経過しているので引け値は引け値としてそれがマジレートなのかと言われますと微妙な場合があるのですが、438回債に関しては金曜に入札が行われたばかりの銘柄でありますので、これはまあマジレートという事になろうかと思うのですよ。で、このマジな1年0.56%に対して3か月FBのカレント535回債の引けは0.575%で、まあ普通に0.5725%オファー位のようですので、これもまあ実力と考えますと、3か月と1年でこれまた逆イールド。

金先が無茶苦茶強いので引っ張られている感は致しますが、デリバティブじゃないモロに現物のTB/FBの利回りでまともに3か月〜1年がインバートというのはさすがに何と申しますか、こりゃ中々の動き。ちなみにGCレポレートは昨日のレギュラーの所での翌日物が0.56%あたりに上昇(手前も上昇したみたい)しやがりましたので、あのそのちょっと足元のGC足し算にリスクプレミアムがろくすっぽ乗ってないのですけれども1年TBのレートって・・・という価格形成。1年の0.56%買うのはど〜ゆ〜了見なのやら。

てな次第ですので、これはまあ本当にやらかすのかどうかは別にして、利下げ期待ネタで一発やらかしに行くのかもしれませんなあとしか申し上げようがない展開に。しかしまあデリバティブなら兎も角、リアルマネーの最終投資家レベルで利下げ期待で勝負っていうのはさすがにまだだと思われますけれどもね。炙り出しはまだまだこれからなんでしょ(苦笑)。


○金融政策決定会合ですが

昨日からの金融政策決定会合は本日まで。前回から公表の順序が変わったので、決定会合後の声明文で展望レポートの点検結果という形のものが出るのですけれども、まあ順当に考えて今回は景気の現状認識を下げてくるのでしょう。問題は先行きのリスク評価をどの位いじってくるのかという感じなのかなあとも思うのですけれども、こいつをもう一丁下げるのか、また下げるとしたらどの位という所かと思います。ある程度の下げは予想されてるんでしょうけどね。

#念の為
前回はこんな感じで結果が公表されました
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715.pdf
前回発表された公表方法の変更について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715b.pdf

現状維持は全員一致なんでしょうけれども、利下げ提案でも出たらまあビックリして相場は反応するんでしょう(利上げ提案が出る可能性は0%なので気にする必要なし)が、それはまあ提案するひと的に先行きの見通しを相当下げてくる時になるんでしょうね。

ちなみに3月の金融政策決定会合(福井総裁最後の決定会合)の時点で利下げの可能性に関して言及があったんですよね。まあこのときは基本シナリオが利上げありき状態だったので、新体制に向けてその「金利水準の調整」路線を修正するためにこのお題が出たのではないかと思料される部分はございますが。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku08-01.html#seisaku080415

まあ後日の議事要旨も興味深い所です。


ところでですな、話が少々飛ぶんですけど、政府も日銀も景気判断を下げてきましたとなると買いで反応したくなりますし、まあ金融政策の方向性としては引き締め方向は無いってえ事になるのは仰るとおりなのでありますが、政府の場合になりますと、従来「そうは言いましても景気は回復途上で先行きは回復です」と言ってたのを引っ込めるということは、「景気が悪化傾向なので経済対策を打ちましょう」と言えるようになる訳ですよね(景気が回復傾向なのに経済対策を打つのは自己矛盾ですから)。

まあ足元の経済指標もボロボロですし、経済状況に関して別に良い話が出てくる気配も無い昨今ではございますが、これから色々な対策が出るので底打ちですよとか意識すると別にマクロの数字が悪い状態でも相場が走ることだってあると思うんですけどねえ。と妄想が入ってますけど言ってみるテストなのでありました。ほら、財務省様から15年変動国債減額→1年TBと2年中期国債増額のフラグも立ってますし(^^)。

まあ本日はそんな感じで。













2008/08/18

お題「今日もヒマネタなんですが」

お盆明けで今週からは色々とあるでしょう、と思うのですが。

○長いところは妙に動きましたが

珍しく全然動かないお盆ウィークですなあと思っていたのですけれども、金曜は債券市場大動きの大商い。朝方に10年ゾーンに実弾が出た所、追随の売りが出てみたりして下落。ただまあ売りも単売りじゃなくて時間差入替だったりしますし、下がれば下がったで押し目買いも来ますということで、大下げした後は戻るの巻とか中々あわただしい展開。

まー5年1%割れとか10年1.4%接近とか、そこから買い上げるのはさすがに景気大悪化利下げ織込みにでも行かないとちょっと無理がある水準だったので、誰かが売りに動いたらオレもオレも状態になるのも判りますが、一方で下がったら買いに来る動きもあるということで、結局下も堅いですねという感じになってしまいましたわな。しかしお盆ど真ん中で先物出来高がいきなり前日までの倍を越えるというところが実にアレでございまして、やはり皆さん「お盆休みで取引閑散」とか言いながらちゃっかり仕事しに来てるじゃんという感じです。


一方で金先は相変わらず金曜も強かったりしまして、金曜の引け値で見ますと、12月限は0.760%で09年3月限は0.745%、09年6月限は0.775%となっておりまして、ユーロ円TIBORの3ヶ月もの金利よりも低い状態継続(ちなみに今年の9月限は0.83%)なのですが、金曜は期先限月が軒並み3毛ほど買われておりまして、債券市場の下落も関係ないぜという勢いになっています。

という勢いなもんで、債券市場下落する中で2年ゾーンとか1年ゾーンとかの引けも前日よりレート低下してたりしまして、まあこちらの方は徐々に利下げ織込み祭りの準備が進行中という感じです。短い所に関しては先週後半から報道されているように、日銀が今日明日の決定会合で景気判断また下げますってのが思惑として背景にあるのでしょうけれども。

ま、ちと金先の威勢が良いのでOISとかにも波及してる感じですし、1年TBはちゃっかり0.59%で入札やって引けは0.57%とか堅調そのものの展開になっていますし、短い所をネタにして相場祭りやるには良い感じになって参りましたという点は要注意ですな(^^)。



○ネタも無いので決定会合議事録、尾身長官大奮闘(?)の後始末

正直今日のはヒマネタです。98年5月19日の決定会合の冒頭で、前々回の決定会合で大奮闘しちゃった尾身経済企画庁長官の発言をどのように扱うかで経済企画庁からの出席者が収拾に走るの巻。

塩谷経済企画庁調整局長:『議事要旨7ページの、経済企画庁長官の発言について、ちょっと申し上げたい。第二パラグラフの「なお、以上の執行部説明を受け、経済企画庁長官より・・・」と書いてある部分であるが、本人に確認をしたところ、これは特に公開を前提とせずに率直に見解を披瀝したもので、本人は公にするつもりはないということなので、削除して頂いた方が良いのではないかということであった。従って、ここがもし削除されると、その次のパラグラフの「この件については、ある委員から」という発言についても、長官の発言が無くなると意味が不明になるので、あるいは削除して頂いた方が良い気もするが、これはある委員の発言であるので、私として申し上げることではないと思う。』

『この際、議事要旨のまとめ方について一言申し上げておきたいと思う。両方の記述を読むと、あたかも経済企画庁長官が日銀の説明の仕方にクレームをつけて、日銀の説明責任をないがしろにしたかのごとき印象を世の中に与えるのではないかということを心配致しており、長官の意図は、毛頭そういうことではなかったと聞いている。しかも、三番目のパラグラフに書いてあるように、透明性の精神ということが書いてある。この透明性の精神はそのとおりである。これをもしおっしゃって頂けるのなら、もう少し客観的に記述するようにしていただいたらどうだろうかと思う。』

長いのでここで一服。削除された部分の表現がどうなのかは判らないのですが、以前ご紹介した議事録に記載されたいた尾身長官の発言はありゃまあどう見ても「政府が景気対策打つ中で日銀が暗い見通しを出すと足を引っ張るだろうがヴォケ」と言ってるようにしか読めませんでしたけれども、まー新法施行されたばっかりでしたんで、発言した方も慣れてないってのは判りますけどね。

で、なお塩谷局長は頑張るの巻。発言の続きです。

『私は長官の発言の際には、同席していなかったが、このある委員のご発言の際には、同席していたように思うが、その私の記憶では、このような言い方はされなかったと思う。まず、あの時のご発言は、今回の会合では2人の大臣が出席して、意見を述べてくれたことは大変意義のあることであるというように申されたと思う。そして、政府と日銀との関係は、政策の方向において整合性を確保する必要があるということは当然であるということも言われたと思う。そのうえで、経済企画庁長官が景気対策の足を引っ張ることはよして欲しいというように言われたが、その気持ちは良く分かるけれども、日銀は景気対策の足を引っ張るつもりはまったくないように言われたと思う。そのうえで、日銀が公表する文章については、日銀としてのアカウンタビリティを増すという観点から、言うべき事ははっきり言うべきであるというように言われた訳である。』

・・・・・いやもう何かご苦労様でございますとしか申し上げようが。なお続く。

『その点から言うと、金融経済月報の地価についての言及については、長官の心配されているような表現にはなっていないと思うので、このままで宜しいのではないかという趣旨を発言されたかと思うが、それを一般論に置き換えて、しかも長官の体積後に、長官が、日銀の説明責任を含めて、透明性の精神を踏みにじったかのごとき発言をしたように対比をして書かれて、しかもある委員と匿名で天下に公表しようというのはいかがだろうかと思う。したがって、両方の発言を議事要旨から削除、このままの表現では非常に誤解を与えると思うので、削除して頂いた方が良いのではないかと思うが、もしそれが透明性の精神に反するということであるならば、ある委員を実名にしていただいて、しかももっと正確な記述に変えて頂きたいというように思う。最初であるので、議事要旨のまとめ方について、一言ご意見を申し上げた。』

で、まあこの後話が行われたのですが、要はその後に塩谷局長が言及したように『このままの形で公表されると、いかにも尾身経済企画庁長官が、日銀の透明性の精神とか、説明責任について圧力をかけた、変えさせたというように世の中の人は受け取るのを心配している。』というのが経済企画庁の意見で、結局の所は今回は例外で削除となりました。

皆さんが発言しているのを並べるとエライ量になるので中原審議委員の発言から。

中原委員:『色々な議論はできると思うが、私は結論的には今回に限り削った方が良いと思う。但し、これは前例としない、あくまで例外である。理由は幾つかあるが、一つは尾身長官を私は長年良く知っているが、彼とは直接は話さないが、彼から間接的に話を聞いたところでは、やはりオンレコかオフレコか最初は良く分からなかったという話が一つあった。もう一つは、私も尾身長官がえらい勢いで言っていたので良く覚えており、反論しようと思ったが、悪いかなと思って黙っていた。本当はその場で反論すれば良かった。しかし、反論したのは、先程塩谷経済企画庁調整局長が指摘されたように、後であった。そういうことで、反論したらもう少し論争になったかもしれないが、ちょっと間を置いてしまった。私もあの時あれあれという感じがして、午後になってこういう反論が出たのだが、勿論全く妥当な反論だが、ちょっと結び付かないところもある。私はここでは一回限りの例外的な判断をして情状酌量をしたらどうかと思う。』

・・・・まあ何となく尾身長官が発言した時点での光景が目に浮かんで参りますけれども、新法施行直後で慣れてなかったという事でしょうが、逆に言えば新法施行前はこーゆーのが普通だったんでしょうかねとも思わせるここのやりとりなのでありました。

ではでは。













2008/08/15

お題「引き続き雑談モードです」

お盆ウィークで閑散にも程がございまする。

○アーバンコーポレイションの件続き

昨日ロイターニュース記事に脊髄反射した書き物を致しましたが、色々と参考資料とか頂きまして誠にありがとうございます。本当はメールにご返信しないといけないのですが、ちと時間の都合上メールは改めてお送りいたしたくm(__)m

で、まあ色々と読んでみたのですが、同社の開示資料がここ↓
http://www.urban.co.jp/news.html
の13日公表文書にありまして、お題は『(訂正)「2010 年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」の一部訂正及び営業外損失の発生について』って奴なんですけどね。

えーっと、これは酷い!としか申し上げようが無いですわな。

契約内容の条件が何か随分アコギに見えますが、これはまあ追い込まれた時のMSCBとかだってロクでもない条件で出てくるので世の中そんなもんなのかもしれませんが、開示のやり方が物凄くグレー(とだけ申し上げておきますが)でございますわなあとしか言いようがないっすね。

実質的に一体となっている取引を、スワップ取引の形式を取ることによって取引の一部のみ開示。しかも開示するのはCB発行会社に都合の良い部分ってのは何ぼなんでも如何なものかと思われますが。発行会社の姿勢も問題ですが、こんなややこしいスキーム発行会社が考え付くとは常識的に考えて思えないのですけどねえ。いやもう(以下諸般の事情により自主規制^^)。

これね、MSCBみたいにその条件が全部開示されてるならともかく、一部だけ公表して300億円調達しましたって公表するのは同社の資金繰り面に対する一般投資家の判断を誤認させる惧れがあるんじゃないっすかとしか申し上げよう無しですわな。まあ相手が相手ですからどうせBNPパリバが損しないような仕掛けがあるんでしょという風には思う人多いでしょうが、それは別次元の話でありますからね。

実質的に一体条件となっている取引を開示義務の無い(厳密にいうと微妙な気がするが表面上は無さそう)デリバティブ取引に分割して自社に都合の良い部分だけ開示っていうのは、まあ開示に関する法令諸規則の精神に悖るとしか申し上げようがないと思うんですから、伝家の宝刀金融商品取引法51条でも何でも振って頂きたく存じますけれども。

しかしこーゆー事をやられると、同業で資本調達スキームをやってる他社に対しても疑心暗鬼で見られるというような信認問題に発展する話ですから、アーバン社およびBNPパリバだけの問題に留まらない、業界全体の信頼性とか私募形式の資本調達に対する信頼性とかの問題になりかねませんので、焼畑農業でもやってる積りなら兎も角、ちゃんとした投資銀行だと言うのならちょっと勘弁して頂きたいんですけどねえ。

ま、微妙に歯切れが良くない書き方をしているのは一応ネット上に載せる文書としてあまり断定調でこの手の微妙な話を書くのも宜しくないですねということでございますので(^^)。


○市場メモ

・閑散ですけど短いところ微妙に日中は振れてましたようで

まあ今週はTB/FB以外の入札が無く債券先物の出来高も昨日やっと2兆円後半になったけど月曜火曜2兆円われとか中々いい感じで商いが薄いのですけれども、その代わりにTB/FBは火曜に2か月、水曜に3か月、今日が1年と3発もあるのは短期担当者はお盆休みを取るなという事ですね、わかります。

という冗談は兎も角として、短めのところってぼけーっと見てると(おいおい)2年カレントとか日中上がったり下がったりしてまして、昨日も引けは0.69%とかでしたけど、68になってみたり70になってみたり、まあちょっとした投資家さんの動きで反応しているという面はあると思いますが、2年の0.6%台後半まで来ると売る人買う人思惑が出てきますねという印象を受けました。


・短い一般債がやたら無い件について

これはまあ昨日今日に始まった話ではないのですが、ここもと特に顕著なのは1年以内の短期ゾーン扱いされる部分の一般債が在庫払拭モードになっている事でしょうか(一部の超嫌われ銘柄群に関しては全く別ですので念の為)。

これはまあ毎度お馴染みの如く1年未満になると短期公社債投信を中心とする短期リアルマネーの買いがあるVS売る人が少なめという状況の他に、短期資金の運用を他のところでやっていた資金が流入して需給をよりタイトにしているような感がございます。そこへ来てここもとは円転の為替スワップがワークして1か月のタームで0.4%台とかになった人たちが金イラネ状態になり益々運用難になっているという流れのようで。

どうも(真面目に検証した訳ではないですが)1年以内の短い所(債券投資というよりは短期資金運用扱いされる部分)に関して以前から比較してプレーンな商品へのニーズが高まっている感じが致します。基本的には高格付け発行体の社債とかCPとかになると思うんですけれども。背景にどういう流れがあるのかは色々想像してますけれども、まあ妄想の域を出ないの割愛しますけどね。


・地味に1年TB入札

本日の1年TB入札は来年8月償還。TBの引値を見ますと来年の4月償還から7月償還まで0.56%で並ぶわ、多分ショート銘柄になっている435回(5月償還)は0.52%だわということで、地味に3か月FBのカレントよりもレートが低くなるという素敵な価格形成。

ではマーケットが本気で利下げを意識しているかというと多分そんな事はないのです(と思います)が、同残存(5日くらい違いますが)の利付2年が259回債で0.61%の引けとかやっていますので、今日の場合は0.6%近辺なのかもうちょっと流れるのかで、現状のニーズというか市場のレベル感が測れるかなあと思います。

#全然別の話ですが2年264と269のショート銘柄っぷりは何とかならんのかと思います


まあそんな感じで碌なネタもなく恐縮至極です。












2008/08/14

お題「まあ本日も雑談ですが」

どう見てもお盆相場です。本当にありがとうございました。

○3MFB入札堅調

昨日は3か月FBの入札。前日の2か月は10月2日足という事で、よくよく考えたらこの銘柄償還まで持つと9月末越えの所は振替停止期間入りしているので担保に使えねえという問題もありますわなあという(ただまあ償還までのレポとかやろうと思えば出来ますよね)お話もあるのでイマイチ入札でしたが、昨日の入札は実に順当な結果で前回入札と同レベルの結果になりました。

相変わらず円転は効きまくってますし、その影響なのか知りませんけれども1年以内の高格付け一般債とかもやたらニーズあり、CPレートも足元中心に低下(さすがにもう限界だとは思いますが、上昇する気配なし)と来てますので、FB堅調もまあそうですわなという所なのでしょうね。引き続き超足元の資金状況はじゃぶじゃぶさんということで。



○何か釈然としない話

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPnTK017169220080813
アーバンコーポ<8868.T>破たんは今年最大規模、債権者となる金融機関は100社弱

ということでアーバンコーポレイションあぼんぬ。スルガの時はまあ特殊要因がありましたが、その後に来てるのは特殊要因じゃないのが実にナムナムな所でございます。

しかし記事見てて何じゃそりゃと思ったのはこのくだり。

『また、フランスの金融大手BNPパリバ(BNPP.PA: 株価, 企業情報, レポート)を引き受け先として7月に実施した総額300億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)発行に関連して、同社とスワップ契約を結んでいたことを初めて公表。同契約では、300億円の調達資金を一度パリバに支払い、その後、パリバが転換後の株式を売却して得た資金の一部を株価に応じてアーバンに支払うスキームになっていた。しかし、株価が同社の想定以上に下落したため、パリバから支払われた金額は90億円にとどまったという。民再法の申請でスワップ契約は終了し、58億円の営業外損失が発生した。』

・・・・この記事だけではよく判りませんが、これじゃあ単に「自社株を新規発行して売却するのをBNPパリバに代理でやらせてる」だけにしか見えません。足し算が合わないのが不思議なのですが、スワップ契約が終了したので金は入ってこないわ、CBの未転換部分あるは転換して株になった部分の売りそこない部分(が多分300−(90+50)になると思うのですけど・・・・)はアーバン社に戻ってくるわって話しになるんでしょうかねえ。何だかよく判らないですけど。

というか、このスワップ契約の内容って法令上は開示義務があるのか無いのか良く判りませんけれども、発行企業の状況を判断する材料として思いっきり重要な契約内容に見えますけどねえ。CB発行だけだったら300億円のつなぎファイナンスをしたと認識されそうですけれけども、実際は300億円なんて入ってませんよって話ですから全然状況が違うって話になるんですが、この契約内容のどの辺まで当初開示されてたんでしょうか。

なお、あたくし本件に別に詳しいわけではなく、上記のロイターニュースを見て反応してますんで、誤解等ございましたら可及的速やかに追加訂正したいと存じます。まあ脊髄反射だと思ってね。

ま、金融庁様におかれましてはこういうのに関してちゃんと頑張ってつついて頂きたい訳でして。金融士構想とか東京金融街構想とかそういうのはどうでも良いので・・・・


○市場の流動性に関する論考が中々良い感じです

だいぶ前のネタになりますが、先月末にリリースされていた金融市場レポート。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0807a.htm
本文は結構重いPDFですので注意
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0807a.pdf

この中で、市場流動性の低下が市場参加者のリスク許容度の低下につながり、レバレッジの解消に伴う巻き戻しの動きと相俟って流動性の落ちた市場で価格のスパイラル的な下落が生じ、理論価格から大きく乖離するような状況が発生して不測の損失が拡大するというような一連の流れに関して、市場流動性の問題について割と実践的な論考が行われています。

だいたい本文18ページ(その前にリスク・アペタイトの説明コラムがあるので、そのあたりもございます)あたりから読むと面白いです。で、これをまた全部引用しているとエライコッチャなのですが、本文21ページにあるコラムが端的に纏まっているのでちと長いですが引用させていただきたく存じます。なお、図表などもオモロイので本文に当たっていただくことを推奨いたします。

『市場流動性はつかみどころのない概念である。それは、市場流動性の多面的な性質を反映している。この性質を踏まえた上で、比較的広範な支持を得ている定義は、「流動性の高い市場とは、大口の取引を小さな価格変動で速やかに執行できる市場である」というものである。この定義に沿った市場流動性指標としては、ビッド・アスク・スプレッド(売り手と買い手間の提示価格の差)や価格変動の取引高比率(一単位の取引が引き起こす価格変動幅)などがしばしば用いられる。図表I-2-2 に示した市場流動性の動きは、日米欧の様々な市場に関するこれらの流動性指標を、単一の指標として集約したものである。サブプライム住宅ローン問題の発生によって、市場流動性は大きく収縮したが、流動性の変動パターンには、今回の局面に限らず、過去の局面と共通した幾つかの特徴が見出せる。』

『第一の特徴は、順循環性である(図表I-2-2)。好景気時には、多様な経済主体が、リスク・アペタイトの増加を背景に、資金運用を積極化させるとともに、市場での資金調達も活発化させる結果、市場流動性は潤沢になる。』

『第二の特徴は、共変性――流動性が複数市場間で共変動すること――である(BOX3 図表1)。市場流動性が地域間で、あるいは金融資産間で共変するのは、横断的なショックの発生に加え、投資家の地域や市場を跨いだポートフォリオ・リバランスが影響している。特に、多くの投資家が資金流動性制約に直面した場合には、共変性が高まることが指摘されている。』

まあ左様ですな。で、この続き部分は市場の中および周辺の皆さまにおかれましてはご存知の話ではあると思いますが、改めてこのように文章に落としていただきますと、腑に落ちるものであります。

『第三の特徴は、稀に発生する急激な収縮である(BOX3 図表2)。これは、今回の局面で特に顕著に表れているが、市場取付け(market run)の発生――すなわち、群集行動を伴ったパニック的な資産売却の発生――に起因する。個々の投資家は、群集行動に追随せずに、資産を満期まで保有し続ける選択肢もあるが、満期前に流動性ショックに直面する可能性がある。その場合には、出遅れた分だけ、より低い価格で売却せざるをえず、大きな損失を被る可能性がある。このため、投資家は、市場の流れに沿って、資産を今日売却した方が得と考える。全ての投資家が一斉に、こうした予想を持つようになると、実際に市場取付けが発生する。』

『最後の特徴は、ボラティリティとの相関の高さである(BOX3 図表3)。これは、マクロ経済の不確実性(ボラティリティ)が上昇し、リスク・アペタイトが低下すると、非流動的な金融資産に対する投資が抑制され、市場流動性が収縮していくためである。』

ということで、レポートの後半の方でもうちょっと敷衍した話もあったりするのですけれども、市場流動性という計測しにくいモノに関して色々なアプローチをしているあたりが中々結構なお話かと。でもまあその市場流動性の低下がどのような部分にどのような指標として出るのかっていう話になりますと、これまたケースバイケースとしか言いようが無い話でもありまして、一義的にこの指標を見れば定量的に計測できるってもんじゃあないでしょうと思います、というのは現場職人叩き上げ系のあたくしのポジショントークも混じってますけどね(笑)。

ということで、この手の市場モニターをする際には、以前この指標を見たら計測できたけど今回はどれを見るのかというような所に思いを馳せて頂きつつ動いて下さると誠にありがたく存じます。

ではでは♪










2008/08/13

お題「まー今日もヒマネタですが」

米国市場もコロコロ注目材料が変わってオモロイですなあ(棒読み)。

○2MFBが0.6%だったりした件とか

昨日は2か月FBの入札。発行日は積み最終(年金定時払いにぶつけているのだから当たり前ですが)で償還が10月2日と末越えの残高稼ぎには丁度良い商品ですが、ロールも無いので投資的にはイマイチ使いにくいし、そもそも末残調整をする時期でもないという事もありましてニーズがイマイチのようでしたな。

前場引けの時点で0.595%出合いとかなので、まあ足きりが0.6%に届いたのも仕方無しという感じですけれども、期内物に対するニーズやキャッシュ潰しの勢いに対して思いの他ぱっとしませんでしたねという所で。

今日の3か月FBは通常の入札なのでこっちの方がニーズ来るのでしょうとは思いますが、レギュラーの受渡ベースで積み最終を抜けた所でどうなるのかねというのは少々。積み最終の週末にFB発行日要因があって15日スタートのGCは0.56−57に上昇してましたが・・・・・

一方でCPのレートが益々低下してたみたいですが、この時期は発行体が夏休みに入ったりする中なので、運用圧力が強いと需給がいきなりタイトになるの巻になっちゃいますけど、3wとか1Mあたりの高格付けネームで0.57レベルとかさすがにそれはちょっとあのそのGCレートとか考えた方が(まあ今日からまた下がるかも知れませんが)宜しいのではないかと思うのですけど、いくら需給がタイトで物無し状態とは言え。

などと昨日の超短い所のクリップでした。中長期の昨日一昨日の動き(10年超がアホのように強くなったと思ったら昨日の後場に中期がいきなり切り返した件)は正直ワケワカラン。



○決定会合議事録ネタ:古くて新しい議論ですな(98年5月19日より)

相場がアレなもんで98年5月19日の決定会合議事録を読んでおりましたら10年前からこのネタですかというのを査収。以下98年5月19日の金融政策決定会合議事録からで、本文30ページ以降の議論になります。米国株式市場に関す論議の流れからこの話が(発言の長いところは適当に段落分けしておりますので、前に発言者の名前がない場合は直前の続きと思ってください)。

三木委員:『前にお話があったかと思うが、日本の今の低金利とか流動性の供給が、アメリカの株高とか債券市場のバブルにつながっているのではないかという議論、それについて、現実の日本から米国への資金の流出の動きを踏まえて、日銀としてはどう考えているのか。』

永島理事:『単純な結論から申し上げると、まず日本の資金が直接アメリカの株に行っているかどうかという点については、87年のバブル期には、アメリカから見た非居住者の株の買いと、日本からの米国株の買いがほぼマッチしているというか、要するにかなりの程度日本の投資家がアメリカの株買いに向かったという事実がある。ところが今回は、97年中の動きで見ると、アメリカの非居住者からの株買いのうち日本からの買いは5分の1位である。そういう意味では、直接的な株買いは非常に少ない。ただ、昨日の新聞に出ていたが、日本は経常収支の黒字があるので、当然のことながらその裏として資本が出ている訳である、80年代後半の資本の出方というのは、アメリカの不動産を買収したという直接投資、それから直接債券とか株を買う、こういう形で出ていた訳であるが、今回はバブルの後始末とかジャパン・プレミアムとかがあり、基本的には債務の返済という形でお金が出ていっている。』

『この債務の返済で出ていったお金が回り巡ってアメリカの株に回っているということはあるかも知れないし、これがいわゆる円キャリー・トレード論の背景にある訳だが、一旦出ていったその後がどうなっているかという実態については、よく分からない。ただ、当然のことながら経常黒字があり、その裏で債務返済の形で日本からお金が出ている訳であるから、直接日本のお金がアメリカの株買いに回っている、あるいは米国債券の買いに回っている、アメリカの不動産の買いに回っているということは、前回と違ってほとんどないにせよ、お金が出ていっていること自体は間違いがない。』

山口副総裁:『その議論は、三木委員の提起されたようなアメリカの株だけではなく、例えば東南アジアのバブルに対しても日本の低金利がかなり影響を持ったのではないかという議論として一般化できるが、ヨーロッパ勢の言い分と、アメリカ勢の言い分というのは実はかなり違ってきている。私の印象では、もし間違っていたら永島理事に訂正頂きたいが、日本の低金利が例えばアジアのバブルにかなり影響したのではないかという言い分が、ヨーロッパ勢からはかなり聞かれる。これは、勘ぐって考えると、アジアの債務処理に当たって邦銀にも相応の負担を求めたいという魂胆が見え隠れしているという感じである。ところが、アメリカの株をバブルと言うのかどうかはともかく、それと日本の低金利の関係ということについては、私はFRBの人にも繰り返しそういう問いを投げかけてきているが、肯定的な答えを得たことは一度もない。彼等はアメリカ国内の要因で大体説明できるということを一貫して言ってきている。』

中村大蔵政務次官:『補足させて頂くと、まさに山口副総裁が言われるように、どういうものか、ヨーロッパのしかも中央銀行筋でも、日本の低金利がアメリカないし自国の株も上がっているが、それを招いているのではないかという、そういう議論がある。ただ、アメリカについては、むしろどちらかといえば逆の議論であり、アメリカの財務省筋等は、むしろ日本は国債を買って量的緩和をすべきであるというような議論を国際会議でやる位であり、まったく逆である。ここは奇妙であるが、見方が欧米で少し違う。』

三木委員:『今の債務の返済というのは、こちらが持っている債務か。』

永島理事:『そうです。色々な段階の債務があるが、企業段階の債務としては、アメリカで色々投資をやった訳であるが、巧く行かなくて、向こうで大変な借入金を抱えたものを、結局バブルの総決算でこちらからお金を送って返済するとか、銀行段階ではご承知のようにジャパン・プレミアムが付いて取れなくなってしまったので、最初は海外で自分が持っている預け金で両建てになっているものを落とし、それもできなくなったので、結局本店から円投を行って返したということである。』

で、ちょっと途中を飛ばしまして・・・・・

速水議長:『ビック・バンの影響もあるかも知れない。』

永島理事:『ビック・バンの影響は、一番出るのはやはり個人の投信の買いとかそのようなところに出てくる訳であるが、これはまだ千億円の単位に止まっている。兆円の単位ではなくて、まだ千億円程度のものが始まったところということである。ただ、長い目でみればじりじり、じりじり出てくるので、これからはそういう要因も資金の流出要因として、無視できなくなってくるように思う。』

で、この議論が終了してますが、ビックバンとか無茶苦茶懐かしいわと思うのですが(あたくしが社会人デビューした時は大口以外の預金金利は規制金利でしたが、笑)、低金利がバブルをどうしたこうしたという話ってこの頃から延々とやってたんですねという感じです。背景状況が今とは違う部分が沢山ありますが、何か議論されてることって昔も今も同じような所っていうのは沢山あるんですねと思います。

ということで、欧米の中央銀行は今般公表された議事録半年分をを1万回くらい熟読すると金融システム問題に関して重要なインプリケーションが得られる宝の山なのではないかと思料されるところでございまする。

と、引用タイプ打ち大会という手間は掛かるが手抜きヒマネタで恐縮でした。











2008/08/12

お題「相場が閑散ですので小ネタで」

今週に入って突如通勤電車がガラガラになりましたが、債券先物の出来高が20000枚を切るとは(−−)

ということでまあ世間話というか蒸し返しネタにヒマネタを。

#オリンピックの活躍は素晴らしいのですが、おそロシアな南オセチア情勢も少しは思い出して下さい>テレビ報道各社


○その理由は判らないこともないですがやはりどうかと思います

こんなインタビューがあったのね。
http://money.jp.msn.com/newsarticle.aspx?ac=JAPAN-331565&cc=03&nt=00

『[東京 8日 ロイター] 財務省理財局の貝塚正彰国債企画課長は8日、ロイターとのインタビューに応じて、15年変動利付国債の発行減額について、発行残高をこれ以上増やさないという強いメッセージを出したことが重要との認識を示した。』

ということで、15年変国を減額して2年とTBを増やした件についてこのように説明しています。(以下上記URL記事より引用)

──1年物TBと2年債を増額する一方、超長期債の増額を見送ったが。 

「国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会で、1年物TBと2年債と合わせて、超長期債の増発議論があったことは承知している。しかし、単年度のことだけを考えているわけではない。今年3月のベアー・スターンズショックの時に、ポジションのアンワインドで大きく売られたのは超長期債だ。超長期債市場を育成していく考えはあるが、レベル感と需要の関係、投資家の投資戦略などをもう少し知りたい。年限が長いだけに短絡的に決められない。超長期債の増発議論をもう少し深める必要があると判断した」 

・・・・・まあ言いたいことは判らんでも無いですが、突っ込みどころの多い発言なので失礼を承知で敢えてグチグチ突っ込みますか。


・『国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会で、1年物TBと2年債と合わせて、超長期債の増発議論があったことは承知している。しかし、単年度のことだけを考えているわけではない。』

えーっと、単年度のことだけを考えているのではなくて2年増発したということでしょうか。あのその中短期って先行きの金融政策に関する思惑で一番振らされるゾーンであり、イールドカーブの手前でありまして、そのイールドカーブの手前の需給を今安定しているからと言って増発というのは何のこっちゃ感が拭えませんがな。

そもそもPD懇の意見なんぞ毎度毎度その時の市場環境で言ってることコロコロ変わる(ぶれない真っ当な参加者も一部いるようです、為念)というのはここ数年の動き見てりゃ普通気が付きませんかなとか言うと話が台無しにも程がありますかそうですか。



・『今年3月のベアー・スターンズショックの時に、ポジションのアンワインドで大きく売られたのは超長期債だ。』

ということで超長期債の金利がドカンと上昇するのは宜しくないというのは判ります。いわゆる運用部ショックといわれるものに対するトラウマが今でもあるんでしょうかねえというのは10年以上選手だとその気持ちよく判ります。

でもね、ポジションのアンワインドってそもそもは海外投資家主体で、そのうち国内のアービトラージャーなども巻き込まれたんですけど、海外IRして国債販売しようってやっておりまして、国内投資家よりも一般的に足が速い海外投資家(所詮はマザーマーケットじゃないですから)に国債を売ろうとしてるんですから、まあそういう事はある程度(まあこの前の動きは尋常じゃなかったですけどね^^)織り込んでくれませんと困りますなあ。

と申しますかね、「単年度のことだけを考えているわけではない」って言ってますけどその話って正に単年度の話のような気がしますが。

逆に現在の市場環境を勘案して取りあえず増発しやすい年限を増発しましたが、来年度は来年度で改めて検討するっていうのならまだ判るんですけれども(それでもタイムラグが半年あるので、その間の市場環境の変化によっては神展開になってしまいますが^^)。


・『超長期債市場を育成していく考えはあるが、レベル感と需要の関係、投資家の投資戦略などをもう少し知りたい。年限が長いだけに短絡的に決められない。超長期債の増発議論をもう少し深める必要があると判断した』

よく判らんのですが、投資家懇談会では超長期ゾーン増発余地ありって話になってませんでしたっけ。というか中短期はホイホイ増発できるけど超長期はそう簡単に増発できないっていうのは、短期金利がど安定している時ならその通りなんですけれども、先程も申し上げましたように、金融政策が動きますって状態になった時には必ずしもその通りではないと思うのですが(去年の前半におけるPD懇の年限別需給論議あたりを見ると吉ではないかと存じますが)。

ということで、あたくし的には微妙に何だかな感の漂う今般の措置でございました。


○超ヒマネタですが

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/mos0808a.pdf
共通担保オペ(本店貸付)の平成20年度対象先公募の結果について

去年と一昨年のメンバーはこの通り
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/mos0708a.pdf
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mos0608a.pdf

何でこのURL年度ごとに違うですかという話はさておきまして(^^)、オペ対象先には微妙に毎年出入りあるんですけど、今年は銀行さんで本店オペ対象外になったところが多めですねという感じです。去年本店オペ対象から外れた静岡銀行さんと労働金庫連合会さんが返り咲き(?)してますけれども、それ以外ですと銀行業態が何気に外れてまして、農林中金さんまで本店オペ対象外とはちょっと「へ〜」なのでした。

まあ皆さまの資金ポジションや債券ポートの都合があるでしょうから何がどうなのかってのは良く判りませんし、あたくしは本店オペの対象選定の基準にも詳しくはございませんけど、ふーんという感じで。

ちなみに、19年度に本店オペ対象外になって今年度復活したのは静銀、労金連さんの他にはクレディスイス証券、ドレスナークラインオート証券、日本証券金融の各社でございました。どうもおめでとうございます(何がめでたいのか良く判らんが^^)。



○財政タカ派と上げ潮の区別が判らなくなりました><

またまた蒸し返しネタで恐縮ですが中川秀直センセイ。
http://www3.nhk.or.jp/news/t10013455711000.html

『自民党の中川元幹事長は東京都内で開かれた会合であいさつし、「財政再建の目標を先送りするとか、借金で景気対策を行うことには断固反対する」と述べ、景気対策を優先して、国債の発行を機動的に行うことは認められないという考えを強調しました。』

小泉さんだって新規国債発行には・・・という話はこの前の繰り返しなので割愛。

『この中で中川元幹事長は、麻生幹事長らが、西暦2011年度に基礎的財政収支の黒字化を実現する目標にこだわらず、景気対策を行うべきだとしていることについて、「子ども名義の借金でぜいたくをしようという発想は日本の伝統にはなく、子どもたちの世代にツケを残すべきではない」と述べ、目標を堅持すべきだという考えを重ねて示しました。』

今の景気対策云々っていうのは景気が悪化しているからそれを止めるために景気対策をするという話をしているのであって別に贅沢しようという話じゃないと思うんですけど、『子ども名義の借金でぜいたく』って発想がシバキアゲの香りが強烈に漂ってくるんですがねえ。

まともに財政超タカ派じゃないですかという所で。何だかねえ。















2008/08/11

お題「下半期利上げ観測復活フラグですね、わかります」

ええ、相場の方は全然違うんですけどね・・・・・

○本当に2年振替で来やがりました

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/p200808.htm

先般のPD懇(国債市場特別参加者会合)と投資家懇で議題になっておりました15年変動利付国債の減額ですが、先週末に財務省から正式にアナウンスされました。別紙のPDFに表とかございますが、要するに今年の15年変国の入札を2回スキップ(6000億2回)して、その分を2年中国と1年TBを1000億円6回増額ということで、今年の10月から2年と1年の増発を行うそうな。

まー確かにPD懇では超長期増発の意見言ったのが1社を除いて殆どいなかったという話を仄聞するのですけれども、投資家懇では議事要旨見るとどう見ても超長期増発という話が多かったですし、中長期的視点で考えますと、30年国債の市場を育成とか、40年国債の発行とか始まった所ですから、当然ながら超長期ゾーンの増発(20年か30年かはともかく)をして足りない分はTB増発とか(法律上の位置づけでそれは難しそうですが)FBで繰り回せば良いじゃん(来年度の発行計画で再検討)とかすりゃいいじゃんとか思うのですが。というか第2非価格入札とかで前倒し発行が出来てる分あるんじゃねえのとも思うんですけど。

ということで、まあ2年増発とはこりゃまた超目先的視点になっておりまして、ポジショントーク満開(超長期増発を提唱した一部のメンバーを除く)のPD懇大勝利状態となった今回の措置ですが、ついこのまえ15年変動利付国債を増発しろ増発しろとPD懇が言ってホイホイ増発した反省が生かされているのでしょうかという感じでありまする。

2年って確かに今は安定してますし、需給もタイトですけれども、利上げがどうのこうのというような観測が強まってくれば、このゾーン一番ヘロヘロになるのでありまして、そもそも論として今後過去増発した中長期国債の償還が短くなってくる中で2年を増発ってのはどうなのかねえと思います。2年のところを需給不安定にしちゃいますと、イールドカーブの起点に近いところが不安定になりますよって事にもなりまして、債券市場的にはよろしくないと思うのですが。カーブのケツが振り回されるのも困りますけど、手前がぶれるのはちょっとねえという感じです。


とまあそういう辺りが真面目(?)なあたくしの愚意見なのですけれども、やはり市場の片隅できゃあきゃあ言いながらポジションを抱えるあたくしとして気になるのはこの措置が相場に対してどうなのかという所でございます。で、目先(今週とか今月とか)の相場的には足元の経済指標は悪いものだらけでトリシェも白旗という事で、利上げとはナンジャソリャ状態なので2年債が明日増発されても別に無問題なのでありますが・・・・・

だいたい世の中(というか相場)というのは上手く出来てるもんで、こーゆー事をやる際の判断が超足元の状況に引っ張られると碌な事がないというのが定説のようなもの(超足元の需給が良好だからと言ってホイホイ増発して相場が大崩壊した15年変動利付国債が良い例ですがな)であります。

・・・・そう考えますと、下期のどこかで利上げ観測復活という神展開が発生してPD懇で「2年債を減額して欲しい」の大合唱になり、投資家懇では(口には出さないでしょうが)「ほら言わんこっちゃない」となるようなビューテホー展開が現出すると実に香ばしいというか爆笑の発作が止まらなくなりますので、是非そのような神展開をお願いしたいものであります(不謹慎)。

相場って先を読むのですから、米国が新政権になって不良債権問題抜本処理とか、日本でも大型経済対策とか、別に全く無理筋の展開ではないと思うのですが、まあナローパスはナローパス(^^)。



○短い所の相場雑談

・金先

金曜の金先ですけれども、9月限は0.83%と変わらずなのですが、12月限と3月限は上昇しやがりましてそれぞれ0.78%に0.775%とTIBORのレートをちゃっかり下回るレートだわ逆イールドだわというこれまた結構な展開になっております。何か勢い余ってショートカバー大会とかいうのもあるのですが、その他資金取引の中での需給問題とかもあるらしいです、よー知らんが。

・TBFBとかCPとか

キャッシュの金利もまた低下の巻でして、期内ものは殆ど0.52%の引けで、9月29日償還の525回でやっと0.53%ということで、先月末くらいまでGCが0.54%近辺で安定推移していたことを考えますとそりゃもうエライコッチャなのですけれども、足元GCも0.51%近辺ですし、この辺のFBを売る人がいない(売ってもその後のキャッシュの処理に困る)という状況ですので、まあそんなレートになるのよねという所で。まーこれぞまさにキャッシュ潰しって感じですけれども、これがどういう感じで反転するのかイマイチ良く判らんですわな。

より長いところですと、3か月カレントの533回が0.57%、6か月カレントの532回が0.58%と見事なイールドフラット状態なのですが、より長いTB436回(10か月もの)が0.56%でTB437回(11か月もの)が0.56%という引け値になりやがっておりまして、ええもう6か月から後ろが(TB/FBだけですが)逆イールドですよ先生という状態。ついに現物でもやりやがりましたねという感じです。

今週は2か月の入札とかもあるんですけど、この状況でちゃっかり消化しちゃったりするんでしょうか。10月頭の償還で、純粋に新発というのが微妙っちゃあ微妙なのですが、さてどうなることやら。


CPに関してはまあレート下がりましたねという所ですが、イメージとしては既に短い所ではそれなりにスプレッドが詰まっていたのでそうでもなく、ここもとの金利低下はやや長いところのレートと短い所の銘柄間較差を潰しに行ってるような感じなのですかね。代表的なその他金融銘柄の3か月もので前週末に0.79%−0.80%近辺だったものが、先週末0.73%-74%という感じでしょうか。この辺りの金利が一番下がった感じが致します。


まあしかし金曜の朝は2年0.67%テイクンとか中々豪気な展開になりまして、大変にこういい感じの踏み展開でございましたよ。まだ戻り売りみたいなのもあるだけ祭り成分が不足していますが。

ではでは♪














2008/08/08

お題「15年変動国債の災難/その他小ネタ少々」

ということで国債投資家懇談会。


○15年変動利付国債の災難

先般の市場懇(特別参加者会合)に続いて火曜日に投資家懇談会が実施されておりまして、議事要旨はこちら。
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b200805.htm

今回のお題は15年変動利付国債をどうしましょというお話なのは市場懇と同じなのですけれども、投資家懇談会はメンバーが少なめなので意見もちょっと詳しくなります(最近は市場懇も全員が全員発言するわけでも無いみたいで一つ一つの発言内容が詳しくなっていますけどね)。

まあ現状の問題は需給が極端に悪いことと、流動性がまるっきりないことでして、需給が悪化しすぎてレラティブバリューで買い向かうこともできないような状態になれば流動性は無くなりますんで、この2つの問題はコインの裏表みたいな話ですわな。

『15年変動債については、現在の不振は需給の問題と考えており、需給を改善するためには発行額をネットでゼロ又はマイナスとすることはやむを得ないのではないか。』

『15年変動債は、流動性が非常に低下していることから、ほとんど投資対象にはならない状況だというのがマーケットの一般的な考え方ではないか。リスク許容度の高い投資家であれば長期的な投資対象として保有できるが、今の金融業界の状況では少々難しいのではないか。したがって、粛々と需給を改善するために、ネット発行額をマイナス又はゼロにすることを検討すべきではないか。』

『15年変動債は、流動性が非常に低下していることから、ほとんど投資対象にはならない状況だというのがマーケットの一般的な考え方ではないか。』

というような状態。でも方向性として(先日もご紹介しましたが)商品そのものを無しにするという話ではないので、そうなりますと新規発行そのものはある程度継続的に行うべきものだと思われます。というか新発が極端に減ったら流動性が益々無くなります罠。

『15年変動債の理論値との乖離は、需給の問題が大きく、ネット発行額をゼロとするのがよいのではないか。方法としては、新規発行額の額と買入消却の増額があるが、例えば新規発行額を6,000億円減額し、買入消却を6,000億円増額するというように、半々で対応することが考えられる。新規発行額の減額のみで対応すると、流動性の問題等も出てくるかもしれない。』

まあそういうことですわな。


○商品を残す前提にするのかどうかですよね

とは言いましても、需給が悪くて激安の殿堂状態になっているということは、投資家としてはウマーな商品でもあるわけで、こんな意見も。

『15年変動債の市場性は確保してほしいというのが基本スタンスである。低αで投資魅力のある新規発行となっており、現在の発行量を変えずにそのまま継続してもよいのではないか。ただし、市場環境を見る限り非常に厳しい環境にあるということは事実であり、ネット発行額の減額は止むを得ない。』

『一般論からすれば、ネット発行額を減額する方向でよい。かなりの評価損が出ている状況ではあろうが、例えば48回債がα=20となっている等、魅力がある商品ではある。』

でも状況として実勢価格が延々と理論価格を下回ってましてもうお話になりませんなというのが現状ではございます。それでも商品としては残って欲しいというのは既に保有しているからというのもあるでしょうけれども、投資家懇の方が商品性の確保に関してトーンが強い感じを受けました。例えばこんな意見。

『投資家サイドとしては、15年変動債のポートフォリオの中における位置付けというのは、物価連動債とともに、やはり将来の金利上昇に対するリスクヘッジとして、一つの大きな商品セクターであり、この市場が将来的に縮小してしまうことに対しては大変危機感を持っている。あくまでも15年変動債の市場の成長と流動性の確保という点が担保できるような形で、検討を進めていただきたい。その意味では、発行額は別にして、カレント物が出て、市場に新しい価格、流動性が供給されることは、意味がある。したがって、減額方向で検討するのであれば、今後の市場の振興策や発行も含めて、アナウンスメントをしていただきたい。』

『新規発行については、現状では下期で2回だが、その回数を減らしていくこともやむを得ないのではないか。しかし、年間で1兆円程度の市場流通規模は維持すべきである。この商品は、長い目で見れば金利の状況等では見直されることもあるので、長い目で見てこの商品を育てていただきたい。』


○減額分の振り替えはやっぱ超長期ゾーンですよねえ

投資家懇でも新発減額分の振り替えについて意見が述べられてましたが、さすがに投資家懇の方が冷静でして、市場懇で超少数派のようだった超長期ゾーンへの振り替えが多い感じでした。緊急避難でTBというならともかく2年増やせのオンパレードにはさすがにポジショントークにも程があるということで、もしかしたら市場懇の議事要旨見て投資家懇メンバーが危機感持ったのかもしれませんね(^^)。

『15年変動債の新規発行額減額の振替先としては、当社の負債サイドのデュレーションが毎年短期化していくことで長期化入替のニーズがあることや、また、超長期ゾーンは比較的安定的であり、20年債・30年債に増額ニーズがあるので、超長期債の発行で対応していただきたい。』

『新規発行額を減額した後の振替先については、20年債や30年債といった超長期ゾーンに増額余地が十分あるのではないか。特に今年度に入って、マーケット全体の流動性が低下している中で、20年債や30年債の入札は比較的順調である。生保等ではALMの観点からも潜在的な需要があり、20年債や30年債の絶対金利を注視していることから、金利の水準次第で需要が変動し得るが、他の年限に比べれば発行の増額余地があるのではないか。あえて言えば、30年債の方が発行額・発行回数ともに20年債に比べかなり少なく、流動性の面で劣っており、30年債の増発を検討してはどうか。』

まあ超長期増やしてねっていうのもポジショントークっちゃあそれまでですけれどもね(^^)。2年を増やせばという意見もございました。

『新規発行額減額の振替先については、20年債等の需要はあると考えている。全部20年債や30年債で賄えるのであればよいが、ボリュームとの兼ね合いがあるため、比較的需要がしっかりしているTBや2年債も合わせて対応してはどうか。』


○しらっと書かれている意見に茶を噴いたあたくし(^^)

という議論を読んでいたのですが、途中であたくし盛大に茶を噴いてしまった部分があるんですよ。いやはやなんと申しますか・・・・・

『15年変動債は、金融庁の検査項目の中で仕組み債の一環ということになっており、非常に厳しく見られている。この春に価格が大きく下落したときに購入しが、一旦ある程度リバウンドをした後、4月以降に再び崩れるという流れの中で、買い増しをした場合の理由について報告を求められることを考えると、なかなか買い増しがしづらい。』

『15年変動債が発行された当時や割安と言われている時期に購入した場合の合理的な説明を求められることから、ここまで乖離が拡大しそれが続くと、投資に対する一つの制約といかないまでも、気になる可能性がある。』

・・・・ま た 金 融 庁 で す か そ う で す か


○しかしまあ何ですけどね

まー何だかんだとありますが、15年変動利付国債に関しては目先のニーズ(その目先のニーズを当局様の「ご指導」が後押ししたとか、バーゼルUの市場実態を反映しないアウトライアー規制の標準的金利ショックのキメだったりしますが)で増やせ増やせ言う市場の意見というか要望をホイホイと受け入れ過ぎて(単なるプレーン物じゃなくてイールドカーブとかに影響与える/受ける仕組みのある商品だというのに)バカスカ発行を増やしたというツケがここへ来て回ってきているという認識は持って頂いてると存じますが、その辺に関してはよくよく肝に銘じて頂きたいものであります。

この前も申し上げましたが、市場の動向ガン無視もさすがにどうかと思いますけれども、基本的に月次だの四半期だので収益がどうしたこうしたとゴリゴリやられている市場参加者は、好むと好まざるに関わらず視点がどうしても短期的な方向になりやすくなる傾向にある訳でして、その意見を一から十まで全部受け入れていると長期的な発行計画もあったもんじゃないという状態になっちゃいますんで、今回の15年変動利付国債増発し過ぎて兵どもが夢のあと状態になったのを今後に生かして頂きたいと思いますです。はい。

ということで15年変動利付国債関連はこんな感じで。


○何か短い所が益々堅調なんですけど

昨日も短い所堅調の巻で、引け値ベースでカーブを見ると1年から3年のゾーン最強という素敵な展開でして、TB/FBの引けを見てますと、9月29日償還のFB524が0.535%で、その手前は9月償還が0.53%で8月償還は0.52%という有様。いやまあお馴染みのキャッシュ潰しって奴だと思いますが、足元のGCレート低下にここまで付き合うとは恐るべしとしか申し上げようが無いです。

などと思ってもうちょっと長いところも見る訳ですが、今週入札があった3か月FBの533回(11月10日償還)が0.575%で、6か月FBの532回(来年2月10日償還)が0.585%なんですが、先月発行された1年TBの437回(来年7月21日償還)が堂々0.58%の引けになってまして、まあ入札実施されてからの日数が違うから一概に比較できませんが、イールド的にはフラット状態になっておりますわな。

#というか来年3月償還のTB433ってショートカバーだとは思うのですが、引けが0.485%とコール誘導目標切ってるんですけど・・・・・

まーここもとのQKK地合いが絶賛拡大中って話でしょうけど、こりゃまた凄いですねとしか言いようがないです。まだ続くのかいな。


○小泉さんも柔軟対応してたと思うんですけどねえ

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080806/stt0808061953004-n1.htm
麻生氏の「PB先送り論」に秀直氏「路線転換は政局だ!」

・・・・まあ言わんとすることは判らんでもないのですが、小泉首相の時だって公約で「新規国債発行30兆円」と言ってたけど経済状況の悪化に対応してあっさり30兆円反故にしました訳でして、プライマリーバランス黒字化達成に向かうという舵取りそのものを変更させると麻生さんが言ってるわけでは無い中で路線転換とか言うのも何だかなって感じです。それじゃあ景気悪化しても財政再建路線堅持というのとどこがどう違うのかとツッコミ受けちゃうんじゃないのかなあ。

いやまあ政治的にあんな事情やそんな事情があるというのもあるからこの手の話を一々大きくしようとするのもあるんでしょうけれども、別にあたくし的好き嫌いを差っ引いても、麻生さんの発言そんなに無茶だとは思わないのですけれども。。。。。

いやまあそれだけの雑感ですけどね。













2008/08/07

お題「だいたい市場雑感」

えーっと、今日から残暑お見舞い申し上げますですけど・・・・

○金先が久々に逆イールドになっている件

昨日は株高だというのに債券は上昇するは短期の金利は軒並み下がるわという実にハートウォーミングな展開になっておりましたが、そんな中で金先の逆イールドが復活しておりまして。

清算価格いくらだか知りませんが(とやる気ない状態で恐縮ですが)昨日の夕方5時半位の値段を見ますと、9月限が0.830%(実際は99.170なんですがレート表示しますね)の12月限が0.815%。09年3月限が0.815%で6月限が0.835%となってまして、09年6月限の所で順イールドになっているのが惜しいのですが(笑)、9月限に対して年末越えの12月限とか3月末越えの3月限(まあそれを言い出すと9月限も期末越えですが)に対してレートが低いという素晴らしい展開。

まー金先ですので毎度おなじみの如く勢いでやってる面はあると思うのですが(OISはまあ殆どフラットですけど一応順イールドっぽいのでそっちは冷静)、それにしても金先の期近と期先が逆イールドって4月18日以来(念のため申し上げますと、この頃も金先の4限月目だけは順イールドでした。何でじゃろ^^)の巻でございまして、あの当時というと3月までの市場無茶苦茶状態が何となく脱却して、米国の利下げ停止観測が強まったという感じでしたね。

とは言いましても、まだ現物のTB/FB金利はそこまで行ってません(だからOISもそこまで行ってないのですが)ので、まーこの金先は勢い余ってやっちゃいましたになるのか、現物に波及するのかは今後のもっと長いところ(2年)とかを要ウォッチでございますな。ちなみに4月18日は3か月FBカレントが0.575%、6か月FBカレントが0.550%、1年TBカレントが0.545%、2年利国カレントが0.645%という感じでしたんで、まー現状よりも全然金利低かったという所です。


○FBが昨日も堅調だった件と輪番オペの件

そういや昨日GCの話とか書きましたが、一昨日はレギュラーのGCが0.50−51まで下がっておりましたようで、円転地合い恐るべしというところですわな。いやはや何とも。

まーそんな流れもあって、一昨日からいきなりやってきたQKK(急に金が来たので)攻撃によりまして期内物のTB/FBは昨日はとうとう軒並み0.54%ビット状態になりまして、CPも全般的にレート低下。一昨日の6か月FBが入札で0.60%を割り込んで引けは0.585%とかでしたが、昨日の3か月FBも0.575%レベルでの入札になりまして平均0.5755%で足切り0.5784%といやまあそんなもんかも知れませんけどこれ一応9月末越えてるんですけどねえってレートに。

しかしながら、需給には勝てませんですなあという所でして、円転地合いで海外勢のファンディングが無いですなって状況が今回はちと長めになってきてるので、税揚げとか通過して様子見地蔵をしてる訳にも行かずにQKKとかあるのでしょうかねえというイメージで。正直よく判らんが(おいおい)。

で、そんな地合いですので、東京レポレートは昨日公表分のS/Nがストンと2bp下がったんですが、資金需給的に不足ということで昨日もまたトムスタート8000億円のスポットスタート8000億円の共通担保資金供給堂々の打ち込みが実施されやがりまして、当然ながらトムの4Wは0.53%1本値になるわ、スポットの10月末足は0.565/0.56に低下するわと、いい感じで低下地合いに追い討ちを掛けております。いやまあ資金需給見ながらオペ打つとど〜してもこういうことになっちゃうのは判るんですけどねえ・・・・・


オペつながりで余談ですけど、相場が上昇した日に堂々の輪番打ち込み攻撃でございましたので、昨日の輪番はどうみても期近債打ち込みでしたね。国債買入といいつつ、同じ日に打ち込んだ共通担保オペよりも足が短い(えーっと厳密に申し上げると1年TBに償還乗換をするので実質的な足もう1年ほど先ですが)資金供給ってどこがどう長期的な資金供給なのか意味不明にも程があるのですが。だいたい以前から輪番のタイミングが相場上昇の時が多くて本当に長期債買う気あるんかいなと陰口を叩かれる事もありました(基本的に相場が上昇すると短いものが打ち込まれるので)輪番ですが、9月以降の振替決済機関に対する元利金取扱手数料の減額が行われても状況が変わらない場合、運用の方法を変える必要があるんじゃないですかとは思われますけど。



○まだ斜め読みですが

決定会合議事録読み(すっかり本石町日記さんがハマッておられるようですが^^)のせいで斜め読みしか出来てませんが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0807a.htm
金融市場レポート

本文は上記URLにリンク先ございまして、これがまた本文63ページとかありやがる代物ですので、まあ興味を持ったネタを読むというのが吉なのかと思います。上記URLには要旨が記載されていますが、そちらにあります金融市場の流れの説明は確かにその通りって感じで、ちょうど本邦で不動産価格の調整(というかバブルの崩壊ですが)が進行する過程でどのように他の資産や、実体経済に悪影響が広がっていって、その結果負の相乗作用が起きた(本レポートにある『国際金融市場の混乱:金融部門と実体経済の負の相乗作用』の表現をお借り致しました)かというのが、その何倍かの速度で進行してるのねっていうのが改めて認識できるところだと思います。

ということでちょっと引用させていただきますと。

『同問題が顕在化した2007年夏の時点では、証券化商品の裏付け資産は、サブプライム住宅ローンを除くと、目立って劣化していたわけではなかった。07年下期の調整は、主に、「組成販売型」金融仲介モデルに内在した情報の非対称性のもとで進行したリスク評価の緩みを修正する動きだったといえる。しかし、2008年入り後、米国の景気減速の影響が徐々に拡がるにつれ、サブプライム住宅ローンのみならず、企業向けローンや消費者ローン、商業用不動産ローンなど、証券化商品の様々な裏付け資産の劣化がみられるようになり、これが証券化商品の価格下落圧力を高めるようになっていった。』

『証券化商品の価格下落が続く中、市場の取引は細り、市場流動性は収縮した。その結果、証券化商品の市場流動性が存在することを前提に組成販売型金融仲介モデルに基づいて収益機会を拡げてきた金融機関は、証券化商品の評価損の計上のみならず、リスクの再仲介を余儀なくされ、バランスシートの膨張と自己資本の低下圧力に直面した。銀行は与信スタンスをより厳格化し、これが景気を下押しする方向で作用するようになっていった。』

『こうした金融部門と実体経済との負の相乗作用が米国で進む過程において、金融経済環境を巡る不確実性は高まり、これが、投資家の間で、リスク資産の保有を全般に抑制しようとする動き――リスク・アペタイトの低下――につながっていった。(途中割愛)投資家のリスク・アペタイトが低下した結果、証券化商品のみならず、金融資産の市場流動性は広く収縮するようになった。市場流動性が収縮すると、価格変動リスクが高まるため、リスク・アペタイトの低下した投資家は、相当な価格の割引がない限り――つまり、相当高いリスク・プレミアムが支払われない限り――、流動性の低下した資産を購入しようとはしない。証券化商品の中には、価格が、裏付け資産の劣化に見合ったレベルよりも下落する動きもみられるようになった。こうして、ファンダメンタルズに関する市場の価格発見力が弱まり、市場機能は低下していった。』

『流動性の低下した資産をバランスシートに抱え込んだ金融機関は、それをファイナンスするために、短期金融市場での資金調達圧力を高めるとともに、流動性の比較的高い債券(地方債や政府系金融機関が組成したエージェンシーRMBSなど)の売却を行い、資金繰りの確保に努めた。この結果、3月中旬にかけて、流動性の高いと考えられてきた債券までが、売却圧力の高まりから市場流動性の低下に見舞われ、それを担保とするレポ市場の機能も低下するなど、金融機関が資金流動性の制約に直面するようになった。そして、市場流動性と資金流動性が相乗的に収縮する中で、米大手証券会社のベアー・スターンズの経営が行き詰まる事態にまで発展した。』

適当に用語を入れ替えると本邦でも通じる話、というか本邦の動きをイメージにおきながら書いたのかなって思ったりもしました(^^)。








2008/08/06

お題「相場雑談とかFOMCとか」

○FB6か月入札が強かった件についてなど

昨日はFB6か月の入札。前回の6か月もの(つまり5か月もの)が0.60%オファーとかやっていた筈なのですが入札の方は0.6%を割り込む(0.5981%)妙に確りした入札になりまして、足きりは0.6%台に乗った(0.6021%)のですが、按分2.8%とかで極薄となりました。どうも市場観測では発行量3兆円に対して不明札が1.3兆円あって1社で1.1兆円落札したお方がおいでのようでございまして、どこぞに大口のニーズがあったんでしょう。で、入札が妙に強かった事もあってショートカバーで0.585%まで進むの巻となりやがりました。えーっとあのその新発って期末と年末を跨ぐんですけど・・・・・

まあ一部大口買いの人の懐具合は良く判りませんけど、ここもと超足元では為替フォワードの関係で調達圧力が低くて、GCレートが月末月初以外では0.53〜54に張り付いており、運用に関しても月末直前あたりからCPレートなどの上昇が止まって低下気味に推移という状態。そんな状態なのに何故か月曜はトムスタートの本店オペ2本で1兆4千億円とか運用側涙目の供給が打ち込まれておりましたんで、まあ(0.585%の6MFBはちとやり過ぎ感が漂いますが)どっかで運用圧力が顕在するのかなあという感じではあったのですが、それにしてもちと威勢良すぎ。

この前金融調節に関するペーパーをご紹介する時にちと申し上げたと思うのですけれども、先日ご紹介したペーパーとか見てると最近の日銀は即日オペの実施をわざと避けているのじゃないかという感がするのですが、当日の地合いってのは(特に最近のインターバンクとかは為替要因とか、バンキングのALM要因とか妙なモノが効く事もありますので)当日にならんと判らん部分もありますんで、即日オペで微調整すりゃ良いのにと思うんですけど、何か先日付のタームオペで完結させようとするからイベント(月末とか期末とか)前のタームの需要が逼迫する時に供給オペが実施されず、逆にイベント通過後の足元金イラネというタイミングで何故か供給オペ大打ち込みという変な展開が目に付くんですよね。

いやまあ最初から放置プレイで昔のECBみたいにメインリファイナンスオペレーションだけっていうのならそれはそれで良いのですが、どうもオペの打ち方を見てると”コール翌日物以外の”レートの上げを放置したり下げを加速させたりしてるようにしか見えないですわな。え、無担保コール翌日物以外まで気にしてられませんというのはあるかも知れませんが、もうちょっとその辺の要因もご勘案賜りたく存じます。

もう一つ気になるのは、タームオペを多く打っている事によって、参加者がオペ待ちで口をあんぐり開けてる状態になってやしませんかという論点でありまして、特に長いタームのGCのオファーって本店オペに参加してれば別にマーケットでしゃかりきになって取りに行かなくてもじゃんじゃん打ってくれますので、皆さん揃って日銀のオペだらけという状態になってるように思えるのですが。ターム取引の活性化をしたいというのならタームオペをじゃんじゃん打つのもどうなのよという気はせんでもないです。もうちょっとその点に関しては掘り下げて考えないと結論でませんけど何となくね。



○FOMCステートメント

今回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20080805a.htm

前回の声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20080625a.htm

今回と前回を比べると、先行きのリスクの話が上下共に強調というどこかで見たような展開になっておりまする。第2パラグラフを比較。

(今回)『Inflation has been high, spurred by the earlier increases in the prices of energy and some other commodities, and some indicators of inflation expectations have been elevated. The Committee expects inflation to moderate later this year and next year, but the inflation outlook remains highly uncertain.』

(前回)『The Committee expects inflation to moderate later this year and next year. However, in light of the continued increases in the prices of energy and some other commodities and the elevated state of some indicators of inflation expectations, uncertainty about the inflation outlook remains high.』

インフレ期待に関する指標が上昇している点について言及ですね。で、第3パラグラフ。

(今回)『Although downside risks to growth remain, the upside risks to inflation are also of significant concern to the Committee. The Committee will continue to monitor economic and financial developments and will act as needed to promote sustainable economic growth and price stability.』

(前回)『The substantial easing of monetary policy to date, combined with ongoing measures to foster market liquidity, should help to promote moderate growth over time. Although downside risks to growth remain, they appear to have diminished somewhat, and the upside risks to inflation and inflation expectations have increased. The Committee will continue to monitor economic and financial developments and will act as needed to promote sustainable economic growth and price stability.』

えーっと、前回は緩和的な金融政策がmoderate growth over timeに寄与するというような書き方があったのですが、今回はしらっとその部分がヌルーされておりますし、先行きの下振れリスクに関して徐々に何とかなるでしょうみたいな物言いも外れていますので下振れリスクを上げていますが、第2パラグラフの書き方およびこちらの書きっぷりはどう見てもインフレ警戒を上げておりますと。

・・・・・両方の警戒を上げた結果とりあえずどっちも動きませんよということですな(^^)。

で、今回もまたFisherさんが利上げ主張してますが、これはもう前回以前からもそういう芸風になっていますのでまあそんな所かと。NY株式が威勢よく上昇したのがFOMCの結果を受けてという講釈をテレビ番組様がやってましたが、そうなのかねえ。普通に考えてこうなると思うというか、利上げ警戒というのはワケワカラン(まあ日本と違ってベースの物価上昇率が全然違いますが)。



○ローゼン閣下キタコレ

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003008&sid=aBDDFWk_YqB0&refer=jp_politics

『8月5日(ブルームバーグ):自民党の麻生太郎幹事長は5日午後、党本部で報道各社のインタビューに応じ、日本経済の現状について「景気は後退に入っている」と述べ、後退局面に突入したとの認識を明らかにした。その上で、政府の経済財政運営に関して「財政再建のための増税はなかなかやりにくい」と指摘、「景気対策が優先されてしかるべきだ」として、財政再建のための増税論議は当面封印すべきだとの立場を示した。』

ということで、財政再建よりも景気対策が優先という当然のお話で、景気の現状に関しても厳しい見方ということですので、まあ変な逆噴射は起きなさそうで誠に結構。

『麻生氏は、2011年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとの政府目標について、「今の経済状況では前より難しくなっている」とし、黒字化の時期を11年度から2、3年先送りすることも「選択肢としてあり得る」と語った。』

まーそれが現実的じゃないですかっていうか、景気が良くならないと黒字化もへったくれも無いですからね。

まっちーとしては立場上そこまではまだ言えない所でしょうが・・・・
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003008&sid=a8Rn0Ocb_PZA&refer=jp_politics

『8月5日(ブルームバーグ):町村信孝官房長官は5日午前、閣議後の記者会見で、政府が掲げてきた2011年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとの財政健全化目標を先送りする考えはないことを示した。』

この黒字化目標先送りに関しては、扱いによってはすっかり忘れてた懐かしのネタでありますところの財政リスクプレミアムネタでひと勝負を掛ける(実際問題として財政リスクプレミアムって意味あるのかという気はしても、相場のテーマとして使い易いネタでございますので・・・・)動きが出てもおかしくはないので念頭の片隅くらいには入れとかないといかんかな、どうでしょうかね。













2008/08/05

お題「市場懇/また期近債/また議事録ネタで」

○テラカワイソス

国債市場特別参加者会合議事要旨
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c200801.htm

冒頭のお題は15年変動利付国債ですが・・・・・

『15年変動債については、2000年度より公募発行を開始し、その後2005年度まで発行額の引き上げを行ってきたが、発行残高の増加やイールドカーブのフラット化に伴う需給の変化に対応し、一昨年から発行額の調整を行ってきた。しかし、本年春以降、サブプライム問題の影響等を受け、需給の悪化が進む中で、発行当局として更なる需給の改善策が必要と考えている。』

『先般主要な市場参加者からヒアリングをしたところでは、これ以上15年変動債の残高を増やさないよう、今年度のネット発行額を、ゼロ又はマイナスにするよう見直すべきとの意見が数多く聞かれたところである。当局としても、市中発行の計画については、時々の市場状況に応じて必要な場合には柔軟に変更するべきものと考えており、こうした意見や本日の議論を受けて、早急に対応を検討したいと考えている。』

>今年度のネット発行額を、ゼロ又はマイナスにするよう見直すべきとの意見が数多く

・・・・テラカワイソスというか何と言うか。つい3年半前までの増やせ増やせ攻撃は何だったのでしょうとしか申し上げようが無いですけれども・・・・

まあ国債発行ってのは1年2年の話じゃなくて長期的な物になりますので、確かに市場の意見をガン無視というのもどうかと思いますが、必ずしもここの参加者全員がそうだという気は全く無いですし、長期的な視点での意見を言ってる参加者様が確実に居るのも議事要旨読んでいると判るのですけれども、おめーどーみても目先の話してるだろって意見もあるので、そのあたりの取捨選択は難しく、結局は財務省サイドも色々と見ていかないといけませんですねなどというのは先刻ご承知ですねすいません。

で、今回下期から減額という話になった場合の振り替えなのですが、何故か2年ゾーンの要望が多いのがテラ不思議でありまして、利上げ観測がどうのこうのとか言ってた昨年は2年の増発余地無しとかお前ら言ってやがりませんでしたっけとか思うんですが。いやまあ総発行額の中の割り振りの問題ではあるのですが、そうホイホイ発行額を増やしたり減らしたりしますと、新発の消化は良いとして、既発債になったときに変なデコボコがでませんですかいなとか思うんですけどね。ま、足もとではTBとか増発して来年改めて考えるというのが現実的なのでしょうけれども。

なお、15年変動国債の発行に関しては・・・・

『なお、15年変動債については、将来の金利状況の変化に対するヘッジ手段にもなるなど、商品の多様化の観点では重要な商品であると認識しており、今後の発行を打ち切るといったことは全く考えていないことを予め申し上げたい。』

ということで、とりあえず無くなるという事態は免れるようでございます。発行無くなったら益々流動性が無くなる(既に無いといえばそれまでですが)悪寒。

原則リオープンの話も面白かったのですが、まーこれに関しては話がひたすら平行線になるんでしょうなと思われます。正直言ってカレントが重視されやすくなってしまう現行の会計制度をどうにかしないと原則リオープン皆さん大賛成という方向には成りにくそうですよねとい所です。引用はまあ割愛。



○また期近債か!

日銀が保有する国債の銘柄別残高(7月末)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0807.htm

えーっと、あたくしの手控えで計算させてるので念のためご確認頂いたほうが吉なのですが、一応多分大丈夫だと思うんですけど(ヘッジクローズ大杉^^)、先月もまあ豪快に期近債が打ち込まれたようでございまする。前月対比で一番増えてるのが10年205回(4791億円)で、それに続くのが5年30〜32回の各銘柄で、3銘柄あわせて5679億円なのですが、この4銘柄は9月償還の銘柄でございます。ということで3か月以内の債券が1兆円以上輪番に打ち込まれているという次第。

えーっと、輪番このままで良いんですかマジで・・・・・まあ元利払い手数料要因が剥落するまで様子を見るというのはあるとは思いますけど、それでもこの調子が続くような場合ってどうなのよという感じは致しますが。



○議事要旨ネタ:低め誘導時代の金利操作に関する議論

昨日の続きで、98年4月9日の議論から。

議事録の9ページ以降から。

篠塚委員:『昨日の日経金融の記事だと思うが、オーバーナイト・レートが0.35%から0.42%に上がったことについて、日銀は0.40%〜0.50%の幅に誘導しようとする意図が見てとれると書かれていたようだ。それについてじゃ、どのように考えているのか。』

山下金融市場局長:『ご指摘の点は、まさにここでご議論頂くことであり、私どもとしては頂いているディレクティブということで、オーバーナイト・レートについて公定歩合をやや下回るように調節してきている、実績としても、ここ数か月は0.43%前後のところで調節している。その点を捉えてそういう意見が外部にもあることは承知しているが、これについては本席でご議論頂きたいと思う。』

で、この時間帯は基本的質問コーナーなのですが、各委員から見解が出ているのがあたくし的には興味深く感じましたが、多分興味深く感じるのは当時から超足元の金利を触ったり興味津々だったマニアさん位しか感じませんかそうですか。マニアでどうもすいませんm(__)m

武富委員:『その場合、これは仮定の話だが、レンジが示唆されると市場参加者のうちビット側が、低いところ(下限)にあわせてビットしてくることにならないか。自分の資金事情とかマネー・ポジションの度合いを反映して、素直にビットしてきて市場が自然な形で形成されればいいのだが、一種の下限が示されると、それに左右されて却って市場が歪むということはあり得るのか。観念的な質問で恐縮だが。』

山下局長:『要するにレンジの決め方であると思う。例えば、1日の取引だけを考えても、ご承知のとおり朝方は出合いを付けるために慎重に出てきてやや高めになるが、交換尻を過ぎてからは、急激に金利が下がるという展開になる。もし”mandate”を頂くとすれば、レンジについては日々の上下限といったことではなく、一定期間の平均という形で頂かないと”mandate”を守れなくなってしまう。平均ということであれば、それぞれの出合いにおいてはそれは意識するにしても、日々の需給の変化等による振れはならされるので、レンジ自体が制約的になることはないのではないかと思う。まだ、着任したばかりでマーケットの感覚が十分身についていない部分もあるが、直感的にはそう思っている。』

山口副総裁:『レンジを決めて、そのレンジからびた一文コールレートを飛び出さないようにすると決めた場合には、武富委員がおっしゃるように、状況によっては、何とか上を突き破ってみせようとか、あるいは下値をもっと出してみようとか、ということである種の攻撃がかけられる可能性があると思う。それを何が何でも守るということを日本銀行の調節の方針とした場合には、我々は非常に硬直的な資金の供給なり吸収なりを強いられるのではないか。』

中原委員:『その場合、どちらかに張り付く危険性が非常に高い。』

後藤委員:『この問題は、恐らく午後の金融調節のところで議論になると思うが、ちょっとアンビバレントなところがある。透明性という観点からすれば、公定歩合をやや下回るというのは、余りにも漠然としているので、ある程度レンジを示したほうが透明性が高まるという議論がある。ただ、同時に、金融調節というのは一種のカード・プレイみたいなところがあって、要するにマーケットと駆け引きをする訳だから、余りに硬直的にそこにこだわると、逆に市場から発信される情報を制約するということにもなりかねない。結局、「透明性」と「市場との対話」をどこで兼ね合わせるかという問題になってくる。』

植田委員:『学会でもコールレートではないが、例えば為替レートについてターゲット・ゾーンがあっても、ゾーンを公表しないほうが却って為替は安定化するという議論もある。』

武富委員:『私も為替のことを念頭において先程の質問をしたのだが。』


その後の各審議委員議論の中(概ね87ページ目あたりから)で金利誘導数値を出すのかという話も入っているのですが、そっちを引用するとキリがないのでそっちは割愛で勘弁。


規制金利とか指値オペみたいな時代から市場での金利形成になってからそんなに年数が経っていないせいもあって、「市場機能」とか「市場との対話」という議論が昨今の同じお題とはだいぶその内容が違っているのが見て取れると思います。というかここ数年のインターバンクレートガチガチの市場しかご存じない若い衆からしたら上記の議論ってポカーンだと思いますが。

また、この時期(10年前)は(昨日ご紹介した議論の部分でもそうですが)金融調節の中でディレクティブで金利を明示するのかどうかという部分も論議になっていたというのも興味深い所です。引用してませんが午後の議論で、ここ数か月のオーバーナイト・レート水準が0.4%台前半に収まっている(その前は0.4%台後半でした)ことについて各委員が納得し、ファインチューニングとして評価していたのですねというのは議事録公開できっちりと判った点ですね。市場ではさっきの篠塚委員の発言にあるように、この頃は何となく0.4%台前半なのでしょうか状態だったと思われますが。

ただ、10年経って後知恵で思い直しますと、このファインチューニングってのも良し悪しで、ファインチューニングの範囲内ならば再びコールレートの誘導水準が0.4%台後半になる(0.5%を平均的に超えることはないというディレクティブがあるのでそれ以上は上がらないが)可能性はありありですので、足もとのコールレートは下がるにしても、ターム物金利やら中長期の金利形成に対する期待の誘導がしにくい面があるというのが結果としては言えたのかもしれません。

この時の議論(86ページ目以降ね)の中で、委員会では最終的に0.4%台で誘導って話になった(0.3%台までの低下を容認するかという意見の流れで利下げの話もありましたが全員一致で現状のディレクティブ維持)ものの、それに関して議事要旨での公表や、ディレクティブの中で内々に示すという事は行われなかった(100ページ目以降)という流れになっておりました。

#マニア向けの話ですいません











2008/08/04

お題「議事録シリーズ:積み上の議論に関して/その他」

○内閣改造、自民党役員人事雑感

与謝野経済財政、伊吹財務ということですのでこれは債券を買っておけば良いということですね、わかります。

そんな次第ですので、まあ小泉チルドレン外しの香りが大変に漂う今回の布陣って世間的にはチョー受けが悪そうな感じがするのですが、ここまで開き直られると却って清々しいものでありまする。不人気覚悟のヤケクソ内閣というか何と言うか。

とりあえず金融担当大臣が茂木さんに代わったので、例の「金融士構想」は消滅という理解で宜しいかと思いまするが、茂木さん自体どういう人なのか良く分からんのでお手並み拝見。山本、渡辺と2代続いてどっかの外資コンサルにでも吹き込まれたかのようなロクでも無い構想(ほぼ妄想というか暴走)をぶち上げる大臣が続いたので、今回こそは普通の大臣であることを希望。

ま、あたくし的には(以前のログを読んで頂ければ分かると思いますが)郵政民営化構想の根本部分で賛成致しかねる所があるんですよね。あたしゃ現状の業態または国営状態で、郵便事業を継続し、金融事業は段階的縮小(廃止まで行くかは微妙ですけど)で、あくまでもミニマムアクセスの供給をする存在として規模を縮小すべしと思うんですが。「民間活力の活用」ってんだったら巨大企業を打ち込むんじゃなくて民間企業の活躍の場所と広げる方が筋なんじゃないの。

それは兎も角として、財政引き締め方向になると益々金融政策はやりようが無くなりますな。緩和しないといけない状況になるのは勘弁ですけど。


○また金融政策決定会合議事録:積み上の議論

この頃の金融政策決定会合におけるディレクティブは「無担保コール翌日物加重平均金利を公定歩合をやや下回るように調節」だった(当時はそれを「低め誘導」と言ってましたが)のですが、このディレクティブによって調節をしてて金利水準が動いていたのねということを思い出しましたのがこの間の議事録を読んだあたくしの感想。

4月9日の決定会合議事録の5ページ目から山下金融市場局長の説明部分を引用。

『前回会合以降の金融調節を、年度末31日までと新年度に入った4月1日以降の2つの局面に分けてみることとしたい。(年度末までは大幅な積み上を作った話割愛)その後、新年度入り後は、季節的な資金余剰期に入ったこともあって、需給がかなり引き緩んできたので、ターム物金利等の落ち着き具合をチェックしながら朝方の積み上幅を徐々に圧縮し、オーバーナイト・レートの過度の低下を牽制する調節を行ってきた。』

『新年度入り後の調節において特に留意してきたポイントは次の2点である。第1の留意点は、オーバーナイト・レートの過度の低下を回避するということである。4月の大幅な資金余剰期に入ったこともあり、これまでのように朝方にかなり大幅な積み上を作るような緩めの調節を続けていると、オーバーナイト・レートは自然に大きく低下するようになっている。現に、4月3日、6日と積み上幅を7千億円にまで圧縮したにもかかわらず、オーバーナイト・レートは0.35%まで低下した。仮に7日以降もオーバーナイト・レート0.35%という水準で調節を行った場合には、15日までの今積み期間中の月間平均レートは0.4%を下回る水準まで低下してしまうことになる。また、2日に公表された短観で景気情勢の悪化が改めて確認されたこと、あるいは国会答弁等で日銀首脳の景気に関する厳しい認識を表明されたことから、オーバーナイト・レートが2日連続0.3%台を付けたことを眺め、マーケットの一部
では「金利低め誘導実施か」といった観測が台頭してきていることも、私ども調節担当としては意識をせざるを得ないところである。(第2の留意点はターム物金利の話などですが割愛)』

で、この後金利誘導をどうするのってお話が続くのですけれども、その中で後藤審議委員が『4か月半振りでリザーブ・ニュートラルに戻して、その割にターム物金利がそれほど跳ねなかったのは多いに慶賀すべきことだと思う。』と発言してまして、最近の市場しかご存じないとナンノコッチャだと思うんですけど、かつての状況を知る者としては懐かしいですね。

で、例によってあたくしが読んだのが全然まだまだ全部を網羅しておりませんので、他の議論となりますと6月25日の会合になるのですけれども、この時は長銀問題でインターバンクにプレッシャーが掛かっていた時期なのですけど、中原審議委員がレートを下げる為にどうするかという質問を山下金融市場局長にしているやり取りがやはりなるほどねえという感じで。5ページ目から。

中原委員:『現在の状態でオーバーナイト・レートを、前回私が申し上げた0.4%まで下げるとしたら、どの程度の追加供給が必要となるのか。』

山下局長:『現在の状況であれば、おそらく2、3兆円の追加供給により、積み上幅を大きく増やし、しかもある程度そうしたアナウンスをしていかないと、なかなか難しいと思う。つまり、マーケットは日本銀行の誘導目標は0.4%から0.5%の間にあり、0.5%を超えると抑え込んでくると考えている。従って、0.5%に近づいてくると資金供給を大量に増やしてくると受け止めており、0.48%〜0.47%のレートであれば、ある程度大量の資金供給をしても、それを日本銀行がさらに抑え込もうとしているとは考えていないと思う。』

中原委員:『クルーグマンが言っているように、大量の資金供給が必要という考え方があるが、その際、一遍にやるか、少しずつ下げてみて市場の反応を見るというやり方があると思う。今の状態では、少し下げるにも2〜3兆円増やさなければならない感じなのか。』

山下局長:『今の状況で例えば3兆円出すとマーケットは驚くと思う。それは日本銀行の意図は何かということになる。一時的に少し過熱感が出てきたのを冷やすということなのか、それともレートの誘導値を下げてきたのかを明確にしないとなかなか的確に調節できない。』

以下続くのですけれども、この時期は明確なアナウンスをしないで金利水準を何となく下げて行った(低め誘導開始当初はオーバーナイト・レートは0.50%近い0.4%台後半だったのですが、短期市場にプレッシャーが掛かっていたこの前後には0.4%台前半が中心になっていましたが、この間ノーアナウンスで調節で意図を出すという形だったんですよ)ので、積み上がどうのこうのとか非常に重要視してやっていたんですねという所です。

まあ後から見ると0.5%を下回る云々というよりはレンジかポイントをアナウンスした方が誘導はやりやすかったと思いますが、この当時も市場機能の問題とか、本当にアナウンスするのが効くのかという議論があったんですけれども、その話に関してはまた明日。










2008/08/01

お題「そこら辺の小説より断然面白いです」

金融政策決定会合議事録が公表されましたので個人的な感想などを。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm

こちらに決定会合議事録へのリンクがございますが、ご覧になれば判るようにファイルサイズが鬼のように重く(スキャナーで読んだPDFになっていますな)、150ページを超えるような回もありということでもうエライコッチャでございます。

○でも一度読み出したら止まりませんな

今回公表されたのは98年前半なのですが、97年後半に三洋、山一、北拓の経営破綻で一部の大手銀行まで信用不安だとか言う話になったという動きがあり、98年前半はアジアではインドネシアでスハルト政権が退陣に追い込まれたとか、長銀の経営問題で大揺れだったとかという時代。当時あたくしはクレジット物などの対顧ディーラーやって日々ヒーコラ言ってました(個人的には97年後半に相場様にボコボコにされて泣きそうだったせいで98年度入りしてからはだいぶ耐性が出来てたんですけど)時代ですので、もう読んでて涙が出るほど懐かしいです。

で、とりあえず新しい分(98年6月)から読んで行ったのですが、6月25日(これは50ページしかないのでお勧め)と12日を読んで(ただし25日は熟読したけど12日は全部熟読できてません)、あと話題になってた所をチョロチョロと読んだだけですけど。

あたくしなんぞのような年寄りと致しますと、当時まさに現場にいたという事もあり、昔のアルバムや日記を読むような気分で超感慨深く読んでしまうのですけれども、ふと冷静になると、10年前に弾の飛び交う現場でヒーコラ(えー10年経ってもまだ現場労務者ですがorz)言ってたとか言うと歳が思いっきりバレますわな。というか「当時は学生さんでしたよ」どころか当時義務教育中だった人とかそこら辺にいる訳で(苦笑)。


ということで、まあ今回はあたくしが読んでほうほうと思ったあたりを少々。読むのに気が遠くなるほど時間が掛かるのでまあ追々ご紹介したいと思います。


○6月25日の会合は山下金融市場局長の説明が臨場感あります

・・・と申しましても、その臨場感って多分当時現場にいたから記憶がよみがえって来たとかいうクチだと思うんですけどね。本文3ページからスタートするんですが。

『お手許の資料の1、3ページをご覧頂きたい。前回6月12日会合以降の短期金融市場の動きをみると、長銀の経営悪化問題が取り沙汰される中で、ターム物金利が金融システム不安再燃への警戒感から徐々に強含む傾向が目立っている。例えば、ユーロ円TIBOR1か月ものをご覧頂くと、12日の0.55%から次第に上昇してきて、昨日の0.59%まで4bpの上昇となっている。この間、極めて落ち着いた推移を辿ってきたジャパン・プレミアムも今週に入って次第に上昇の気配を示している。』

『こうした状況の下での金融調節運営を振り返ってみると、積み最終日となる15日には長銀株を始めとする銀行株価の下落を背景に地銀等が慎重な資金放出姿勢を示したことから、レートが0.50%を窺う気配を示した。このため、朝方の追加オペ分も含め所要額に対して4千億円多い資金を供給したが、結局オーバーナイト加重平均レートは0.48%まで上昇した。この結果、5月の積み期間中の平均レートは0.44%での着地となった。』

『積み明け後の16日以降は、一部で資金を取り急ぐ動きが見られたため、朝方のオペで連日7〜8千億円の積み上幅を造成した。最終時点でもそれを残す調整を行った結果、レートは徐々に低下し、特に18日には協調介入実施に伴う円相場の反発と銀行株価の持ち直しもあり、オーバーナイト加重平均レートは0.41%まで低下した。しかし19日の午後、政府筋が長銀の自主再建は困難と発言したとの報道が流れたことを受けて、出し手が一斉にオファーを引いたため、取り遅れた一部外銀が0.6%を上回る水準まで取り上がり、マーケットの地合いは再び悪化した。』

『そこで22、23の両日は朝方1兆円の大幅な積み上幅を造成した。23日にはさらに2千億円の追加オペを行い、レートの上昇を牽制する調節を行ったが、加重平均レートは0.48%まで上昇した。昨日はレートが寄り付きから0.5%を超えて出合う展開となったので、やや過熱感が出てきた市場心理を落ち着かせるためには、早めに思い切ったシグナルを出す必要があると判断し、朝方の積み上幅を1兆5千億円に拡大した。さらに最終でもこれをそのまま残す調整を行い、準備預金の積みを一気に進捗させたところ、オーバーナイト・レートは午後に入り急低下し、結局1日の加重平均レートとしては0.45%まで低下している。こうした昨日午後の動きを受けて、市場がどの程度落ち着きを回復するかが注目される。』

『マーケットは信用不安の再燃懸念からかなり不安定な地合いとなってきているうえ、当面4月(原文ママ、7月だと思いますが)初めにかけてボーナスの支給や税揚げ等から資金需給が不足方向に振れるため、引き続き潤沢な資金供給により市場の安定確保に全力を挙げていきたいと考えている。』

確かこの決定会合の翌日に住友信託銀行と長銀の合併報道が出たんですよね。結局幻に終わったのですけれども・・・・というか文書手打ちすると疲れますがな(笑)。



○金利誘導の方法も手探りだったのでしょうか

で、この後中原審議委員が山下局長と「どうすれば翌日物を0.4%まで下げられるか」という論議をしていて中々興味深いものを感じました。この前の会合の流れとかも読んだのですが、当時は「低め誘導」の枠組みの中で調節によってコールを0.4%近傍に誘導して緩和効果を出そうという流れだったんですね。

まあ後知恵にも程がありますが、今にして思えばそれなら明示的に金利ターゲットを0.4%とアナウンスしてくれれば市場はそれに沿って金利形成するので、逆にそんな積み上が必要なかったのかも知れませんけれども、当時は今と考えも違っている部分があったということですな。言われてみりゃあたくしにも思い当たる部分があります。

で、この回の議論じゃなかったと思うのですが、一時緩和策の一つとして準備預金率の操作を行って、金融機関の準備資金需要を緩和させるという議論があったんですよね(物凄い勢いで斜め読みした議事録の中にあったので、どこにあったか忘れた)。計算したら金利下げた方が効果高いということで結局お蔵入りになったようなのですが、当時は色々な手段を使って金融緩和の方策を練っていたというのが良く判るところでありました。


○尾身経済企画庁長官(当時)大暴れの図

まあこのあたり散々報道されているのですが98年4月9日の尾身経済企画庁長官の発言は何とも(35ページ目以降)。

『今度のレポートは大変大事だと思っている。今の分析を全体としてみて、パターン認識的に景気が下に行きそうだということを説明するためにいろいろなことをくっつけているような感じがする。私どもも景気の現状の厳しさについては、日銀とそれほど違わない考え方を持っているが、政策責任官庁としては、この日本の景気を上げなければならないということで、いろいろな手を打っている訳である。そのいろいろな手を打つという状況の下で、明日、月例経済報告を出す。そして、「景気が停滞をしていて、厳しさが増している」という表現でいく。しかし、資料−3の1ページは「マイナス方向に働き始めており」と言っている。つまり景気の循環局面がマイナスの方向であるという表現になっている。』

『我々は、今度の対策で、景気を上に向けようとして、対策を出す訳である。だから、景気の底は3月か4月であるという方向でやっていく。それを片方で、日銀がいわゆるエコノミスト的な分析で、「マイナスの方向に働き始めており」という感じにすると、我々としていろいろな対策をやった時にコンフィデンスが回復しない要因がこのレポートにあるというようになる可能性がある。』

『確かに、数字の動きは全部マイナスであるから、日銀としてはある部分のエコノミスト的な感覚で言えばそういう感じを持つのも分からなくはないが。それは良く分かっているが、このレポートそのものがマイナスの暗示に非常に敏感に反応しているものになっていて、プラスの暗示に反映していない。全部が感性が鈍くなっている状況である。感性が鈍くなっている状況の下において、それをやや強調するような下振れ圧力とか、マイナスの方向に働き始めているとか、そのような方向に行くと、せっかく我々が4月に対策を出した時に、経済の動向が下を向いているというレポートになり、「政府がいろいろなことをやっても気分が悪くなっているのでうまくいきませんよ」というような、我々の景気対策の効果を、ここではっきり申し上げるが、足を引っ張るようなレポートはなるべく避けてもらいたいと思う。』

『それと同時に、例えば地価についても、商業地等については上がっているところもあるというのが最近発表された時の新聞の記事である。それをここではそのようなことを何も書かない。地価の問題は一番大事である。何故大事かというと住宅建設にも関係があるし、マーケットでは外国が今商業地等を買いに来ている訳でもある。私は1月にグリーンスパンFRB議長にも聞かれたが、「地価が下げ止まったか」というのが彼の第1の質問であった。地価が下げ止まったかということについての判断が、また下がり始めたという判断であると、買う人も買わない。地価の統計を見ると、必ずしもそう断定できないような部分も私はあると思う。』

『例えば、計表10の商業地の地価の公示価格の上から2つ目の欄で、地価の下落幅が、商業地は、1月は−7.5%になっている。少なくともずっと前を見ていくと、1月といえども対前年比で見れば下落幅が小さくなっている。それから東京の中心部の商業地については、外人が買い向かってきているので、地価が上がっているところもあるというような記事がある。そういうところも取り上げてもらい、傾向として、図表31の図で10月と1月を比べて少し下がっていることは分かるが、全体としては上向きのラインになっている。1回下がっただけでそれが傾向として下振れしているとか、下に向かうかということは簡単に決められない訳であるから、もっとその辺のことも考えながら慎重な表現にしてもらいたいと思う。そのような表現が微妙にあることによって、我々が4月にやる対策の効果が減殺されてるのは困る。意見として申し上げておく。』

『それから、私の認識としても、地価が下げ止まり感があると思っている。金融システムがあれだけパニック的な状態、1月15日位までパニック的な状態であった訳であるから、その状態のしたでもこのような数字になっている訳であるから、少し落ち着いてくればそのような実態ではないのではないかと思っている。やはり委員会のメンバーの方々がある程度日本経済に自信を持ってもらわないと、悪い暗示に感受性が強くなっていて、良い暗示に感受性が弱くなるような状態で、我々は勝負を賭けて、内閣の命運を賭けて政策をやる訳であるから、そこは是非ご理解を頂きたいと思う。』


・・・・・すいません、発言全部引用しないとフェアじゃないかなと思って手打ちしたら死にました。

えーっと、後知恵で尾身さんプギャーというのは簡単なのですが、最後の所にもあるように、まあそういう勢いで景気を何とかしようと頑張っている状態だったという点で気持ちは何となく理解できないわけではないですわな。同意はしないけど。

他の部分でもチョロチョロとあるのですけど、当時の景気悪化に関して日銀が悪いのオンパレードだったりしますけど、こーゆーやり取りを見ていますと、どうも政府の楽観というよりは希望的観測による判断のほうに大いなる問題があったんじゃないのでしょうかと思うのであります。

後知恵だから何とでも言えますというのは申し訳ないのですが、この98年がまだまだ終わりの始まりだった事を思いますと、負けが込んで来て希望的観測入るって大東亜戦争末期入りって感じなんですかというところで。

もう一つ思ったんですけどね、不動産価格って確かに先に暴落したのですけれども、不良債権問題ってここから今度は資産デフレからデフレ不況に波及した訳でして、そう考えると今の米国の問題にもインプリケーションがあるんじゃないのと思ってみたりして。


○ところでこれ出版してくれませんかなんて思うのですが

正直申し上げて、これをPCモニターで読むの疲れますし、紙に出すのは紙代とトナー代が気になる(しかも時間が泣きそうにかかる)次第。

モノが議事録をスキャナーで読んだという感じで、建て付け的に何となく美しくないというのは分かるのですが、この際ヤケクソでこのPDFを製本したようなもんでも良いので出版してくれると買う人が・・・・・・

・・・・・冷静に考えたら精々200人くらいしか居なさそうな気がしてきましたので今の発言はあくまでも独り言という事でお願いします(汗)。


あと、議事録本文読みも面白いのですが、参考資料がまた実に良い内容でして、毎日の交換尻と最終の積み上が幾らあってオペがどう打たれたかとか、もうマニアにはたまりませんです。

#ふ〜疲れた