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2009/02/20

お題「決定会合あれこれ」

ドル円相場は中川酒効果ですかねえ(たぶん違う^^)???

さてまあ決定会合の結果が出ましたので少々。

決定会合決定事項、声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090219.pdf

企業特別オペの延長と内容手直しに関して
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0902b.pdf

社債買い入れの概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0902c.pdf

社債買い入れの基本要綱の概要
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902b.pdf

各種オペの期間延長に関する文書
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902c.pdf

政府保証CPが発行される事への対応(今日入札が行われますね)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902d.pdf

国債補完供給関連(変動利付と物価連動が輪番拡大によって本格的に日銀の手持ちになる(本格的じゃない持ちはあったけど^^)ことへの対応)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0902e.pdf

まあ細かい意味では最後のも「なるほど!」なのですけれども、まあ声明文と社債買入のあたりから少々と市場の反応への雑感。


○景気認識に変化なし(つまり厳しい判断のまま)

最初の声明文のある所から。

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、厳しい状態が続いている。』

から始まる部分なのですが、このくだりは展望レポートの中間レビューに関する部分(2月は中間レビューが無いのでその分バッサリ無い)と日銀の施策に関する明部分以外、つまり景気の現状認識、先行き見通し、リスク要因の部分になりますけれども、ものの見事に同じ文章になっています。違っているのは金融環境の所ですが、前回と比較するとこうなります。

『金融環境をみると、厳しい状態が続いている。』(2月)
『金融環境をみると、厳しさが増している。』(1月)

ということでありまして、まあ環境は厳しいままということですが、前回から益々悪化しているとまでは行きませんと。そりゃまあCP買入の本格稼動があったので、その辺りは改善されてますし、最近妙に評判がよくなった「やればできる子」オペレーションによってターム物金利が落ち着いて推移していることも良い傾向。

ただまあそれは市場の中だけの話でして、全体的に見て改善しているかというとそりゃまあ改善してないんでしょうという所なのでしょう。

経済情勢に関する判断部分は前回と同じなので比較引用はさぼってとりあえず引用だけで勘弁(手抜き)。

『わが国の経済情勢をみると、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっている。金融環境をみると、厳しい状態が続いている。これらを背景に、わが国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高い。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、春頃にかけては、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』

『景気・物価の先行きについては、2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、2009 年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。こうした下で、見通し期間の後半には、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられるものの、このような見通しを巡る不確実性は高い。』

リスク要因部分は引用割愛します。


○各種オペの期限延長

発表文別紙にございます(ちなみに発表文別紙は決定会合結果リリースの一発目文書(=ワードか何かで打った文をスキャンしてPDFにしたモノ)では間に合いませんので改めて見るのが吉^^)が、

『3.各種時限措置の期限延長(公表資料4参照)
@ コマーシャル・ペーパー等買入れ(3 月31 日→9 月30 日)
A 民間企業債務の適格担保としての格付要件の緩和(4 月30 日→12 月31 日)
B 資産担保コマーシャル・ペーパーの適格担保要件の緩和(4 月30 日→12月31 日)
C 補完当座預金制度(4 月15 日→10 月15 日)
D 米ドル資金供給オペレーション(4 月30 日→10 月30 日)』

(機種依存文字は原文ママなので勘弁)

微妙に期限がずれておりますが、概ねオペは9月の中間決算越えを意識してますわなという所ですね。担保の緩和に関しては年内まで延長と。


○で、ターム物誘導の話が無いといえば無いのですが・・・・

昨日はこの発表があって暫くしてからユーロ円金先が売られたり、中短期の国債が売られたりしておりました。情報ベンダーの後付け講釈としては「ターム物誘導に関する決定が無かった」という話になっていますけれども、プライスアクションを見ていると「補完当座預金制度の実施期限延長」というのがベンダーのヘッドラインに出たところから反応したようにも思えます。まあどっちでも良いのですが、この反応に関して超短い所、即ちレポとかをやっている短期の人たち的には「ポカーン」という感じでありました。

と申しますのは、本石町日記さんのところでもありましたが、2月の最初の週あたりから、それまでやたら細々と微調整を繰り返してオペの足が短めのウェイトが高い感じだった日銀の資金供給オペが変化しておりまして、安定的にターム物の共通担保オペなどを打つようになり、当座預金残高もやや増えた状態で推移しておりまして、その結果としてGCレートなどが落ち着くようになり、タームのオペ金利も低下。需給悪化懸念とかで3か月TBで0.3%乗せとかになっていた短期国債の金利も0.25%をちょっと切る位の水準で安定推移するようになっているという環境になっているので、今更ターム物金利どうこうと言わなくても現状のオペを継続してくれれば結構という感じだったからというのがございます。

また、決定会合の公表文の中にもこう書いてあるので、まあ読み方によってはファジーですけれども、これも一応「ターム物の金利を落ち着かせます」って言ってるという解釈になるんでしょとも思う次第。

『@ 企業金融支援特別オペレーションを強化し、期間3か月のやや長めの資金を低利・安定的に供給する。』

これは企業金融オペに関する長めの金利供給って話ですけれども、この意図するところは名目上では企業金融に関するコストを下げて企業金融に係る実効的な金利を下げていきましょうということ(効果の程は知らんが)でしょうから、普通にこれを読むと当然ながらリスクフリーの部分のターム物金利に関しても上昇しないように注意していきますという話になるんでしょう、と思うのだが。

あと、どこぞの情報ベンダー見てたら「短国買入増額されず失望」とかいうコメントをしている本職のストラテジストとかいたりするのですが、そもそも常に申し上げておりますように、短国買入は単純にオペレーションの問題でありまして、増えたり減ったり割と変動してたものです。逆に言いますと、これを変に「増額する」とか「減額する」とか決めてしまうとオペがやりにくくなるので、「活用する」位の事は言っても「増額する」とか公表文ベースで明言することは普通有り得ません。

ということは短期の人(金先の人たちは別世界なのでここでは別、現物の資金取引とか国債とかCPとかやってる人ね)たちは先刻ご承知の助でありまして、「短国買入増額の発表がなく失望」とかいうコメントを見てまたまた「ポカーン」という所でしょう。普段トレードで忙しい人たちはそこまで細かく見てないと思いますからまあ仕方ないのでしょうが、本職ストラテジストからそーゆー類のコメントが出るのは勉強不足にも程があるので看板を(以下自粛^^)。


○超過準備付利10月15日まで延長

公表文にはこんなのもありました。
『C 補完当座預金制度(4 月15 日→10 月15 日)』

まあこれはどう見ても「ゼロ金利にはしたくないなあ」という所ですが、この金利そのものは別に途中の決定会合で0.05%にしたり0.01%にしたり0%にしたり出来ますので、ゼロ金利が100%無いかというと必ずしもそうではないという話。

ただまあ「誘導目標=付利金利」政策が決定された時に期待されていたオペレーションが最近行われておりまして、ターム物金利もいい感じで落ち着いておりますのでとりあえず無問題じゃねえのという所です。

会見では市場機能が云々という話がまた出ていたようですが、市場機能というか市場の「体温」という感覚的な話を持ち出しますと(判りにくい言い方ですまん)、無担保コール翌日物は12月の「誘導目標=付利金利」以来すっかり体温が低下してゼロ金利量的緩和時代のような温度になっているようですし、ここもとの長めのオペを厚めに安定供給という動きによってGC市場関連の体温もすっかり低下気味となって、オペの度に金利幾らよとかシャカリキになって悩むような地合いからすっかり変化しているようですな。GC市場とかはここ2週間くらいですね。

まあ市場機能をするならもっと広義の話をする方がよいのではと思います。


○社債買入実施ですかそうですか

まあそんなもんですかねえという所です。

概要の説明から

『社債買入れの概要
1.買入対象
担保適格社債のうち格付がA格相当以上のものであって、買入日の属する月の月末日において残存期間が1年以内であるもの。』(2以下割愛)

要綱の決定から

『4.買入対象
以下の要件を満たす社債(短期社債を除く。以下同じ。)のうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

(1)「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること。

(2)適格格付機関からA格相当以上の格付を取得していること(発行企業またはその元利金の全額につき連帯保証している企業もしくは当該保証企業が発行する社債(保証付社債を除く。)がA格相当以上の格付を取得している場合を含む。)。』(3以下割愛)

えーっと、CP買入の場合はこんな書き方になってました。

『以下の要件を満たすコマーシャル・ペーパー(資産担保コマーシャル・ペーパーを除く。以下同じ。)、短期社債、保証付短期外債、資産担保コマーシャル・ペーパーおよび資産担保短期債券(本要領において「コマーシャル・ペーパー等」と総称する。)のうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

(1)通則
イ、「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること(「資産担保コマーシャル・ペーパー等の適格性判定に関する特則」(平成20年10月14日付政委第93号別紙2.)に定める適格担保基準を満たすものを含む。)。』(ロ以下割愛)

ということで、こちらでも同じように書いているのですが、『買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。』という表記になっておりますので、基本的にはこちらに関しても個別に信用判定を行って買入の可否を判断するという話になるかと思います。証券会社はこの信用判定関連ってあまり慣れていない(一部CPを熱心にやっている証券会社を除く^^)と思います(期間がCPより長くなりますので、当然ながら信用判定の基準がCPと微妙に変化するでしょと思いますがそこまでやらないかもね)ので、買入要綱の説明会の後にはブーブー文句垂れレポートが出てくる事でしょう、と予言しておきます(笑)。

まあこれがあったからと言って社債の発行が増えるかというと全然そんな事は無く、単に証券会社の在庫繰りが楽になるだけの話だと思うので、何をわざわざ実施するのよとは思います(CP発行市場と社債発行市場では引受ディーラーまたは引受業者の位置づけが全然違うという話は既に何度かしておりますよね)けど、まあアナウンス効果も含めて別に効果無いとは思いません。ただCP買入みたいな顕著な効果は出ないでしょと思いますので、コスト(発生しないで済むかもしれないけど)と効果を天秤に掛けると割に合わない施策だなあとは思います。

レートはこんな感じだそうで。

『以下の区分で下限利回りを設けたうえで、当該利回りからの利回り較差(ゼロ以上)を入札(下限利回りは状況に応じて変更がありうる)

・残存期間6か月以内:無担保コールレートの誘導目標+40bps
・残存期間6か月超:無担保コールレートの誘導目標+60bps 』

まあそんなもんですかね。これだとAA以上のクラスで格付けが安定している(最近は安定してないのが多いので、安定的と見れるのは希少です)銘柄はハイランチ会長でございますな。


○ところで月末の忙しい時期でございますが

金融経済月報とか白川総裁会見要旨とかネタがこれからあるのですが、来週は諸般の都合によりましてこちらの更新をサボらさせて頂きとう存じます。3月になりましたらまたよろしゅうに♪






2009/02/19

お題「FOMCに脊髄反応とかすっかり忘れたネタとか雑談ネタとか」

えー、1万2千円貰えないのかよおおおおお!!!ふざけんなああああ!!!小泉息子なんか刺客向けられて落選しちまえよおおおおおおお!!!!!

ということで、やはりここは定率減税復活でお願いします(^^)。


○インフレ目標設置と言いますが

まずはFRBのニュースに脊髄反応。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090218a.htm

『The Federal Reserve on Wednesday released, for the first time, longer-run economic projections made by Federal Open Market Committee (FOMC) participants--the Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents--in connection with their regular quarterly projections.』

で、従来3年間の見通しを出していたのですがという話が次に。

『Since November 2007, the Federal Reserve has been publishing a quarterly Summary of Economic Projections (SEP), which has included projections typically up to a three-year horizon. The latest SEP, in addition to projections for 2009, 2010, and 2011, includes longer-run projections for output growth, unemployment, and inflation.』

『The longer-run projections represent each participant's assessment of the rate to which each variable would be expected to converge under appropriate monetary policy and absent further shocks to the economy. "Appropriate monetary policy" is defined as the future policy deemed most likely to foster outcomes satisfying the Federal Reserve's dual mandate of maximum employment and price stability.』

んでまあより長い数値はFOMCの考える望ましい水準でもありますという話ですな。ちょっと途中を割愛して数値のあたりの話を引用します。

『The longer-run projections of inflation may be interpreted as the rates that each Federal Reserve Board member and Federal Reserve Bank president sees as most consistent with achieving the dual objectives of maximum employment and price stability.』

ちゅうことで、その数値はこの通りと。

『The central tendency of FOMC participants' longer-run projections, submitted for the Committee's January 27-28 meeting, were:

2.5 to 2.7 percent growth in real gross domestic output
4.8 to 5.0 percent unemployment
1.7 to 2.0 percent inflation, as measured by the price index for personal consumption expenditures (PCE).

Most participants judged that a longer-run PCE inflation rate of 2 percent would be consistent with the dual mandate; others indicated that 1-1/2 or 1-3/4 percent inflation would be appropriate.』

以下続く、というかMinuteを見ればどのようなロジックでこの数値を出しているのかという話がわかるのですが、何せ寝起きで脊髄反応してるのでそれはまた後日読むかもしれません。

で、これが「インフレターゲットの導入!」という話になっているそうなのですが、何かここに出ているのだけ見てると「いやあバーナンキのFRBって見せ方がお上手な運営するわな」というのが正直な感想。ケチつける訳じゃない(やや訳もある)ですけど、コアPCEが2%程度が望ましい水準っていうのは昔(あたくしの記憶がある限りではブラインダーが副議長とかの時代)から折にふれてFRBの幹部連中が公言している話だと思うのだが。長期国債の買入に関しても最初に「断固実行」っぽい言い方をしながら延々と「やる準備をする」「やる用意がある」って引っ張り続けるとか、何かあたくし的にはバーナンキ議長の中の人がちょっと変わって福井俊彦系のタヌキっぽくなっているような気がします(良い意味でね)。

と言うわけで今回に関しても、何を今更その数字を仰々しく出すのよとは思うんですけど、まあ世間様がそうやって反応してくれる(10年国債が売られているのが正しい反応なのかよー知らんけどな)のは、FRBの今までのトラックレコードが信頼されているというのと、バーナンキのFRBが現実路線で実行していることが市場の評価を受けているからこその賜物なんでしょうなと思うので、別にコレに必ずしもケチをつける訳ではございません。といいつつどうせ皆さんが絶賛すると思うので、ちょっとカウンターの雑感を入れてみるの話なのでした。

Minute見た後になると上記の感想はいきなり大変化するかもしれませんので何卒よろしくお願い申し上げます。寝起き脊髄反射系なのでその辺よろしゅうに(最初から言い訳)。

#モーサテではこっちの話をクローズアップしてましたけど、公共放送様はこのネタではなくて経済見通しを非常に厳しく見ている方を報道してまして、目先の金融政策がどう動くかという観点から言えばそっちの方が重要な気がしますです、はい。


○すっかり忘れてたネタ(1月の!金融経済月報)

決定会合があって金融経済月報が出ようという今日になって1月の月報を読むのを忘却していたのを思い出しました(大汗)。今更の話なのですが、こちらはあたくしの備忘メモでもありますので、1月分抜けを補完ということで恐縮至極。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0901.pdf(1月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0812.pdf(12月)
PDFで60ページ近くあるのでご注意ください。

よく見ると(よく見なくても)物凄い勢いで判断を下げているのがわかります。月報の概要部分から。

・総括判断

『わが国の景気は大幅に悪化している。』(1月)
『わが国の景気は悪化している。』(12月)

大幅悪化と。

・現状判断要因分解:輸出、企業収益、設備投資

『輸出は大幅に減少している。企業収益は悪化を続けており、設備投資も大幅に減少している。』(1月)
『輸出は減少している。企業収益は減少を続けており、企業の業況感も悪化している。そうしたもとで、設備投資も減少している。』(12月)

業況感のところは短観を受けた部分なので抜けているのですが、輸出の減少は大幅になるわ、企業収益は悪化になるわ、設備投資の減少は大幅になるわとゲロゲーロであります。

・現状判断要因分解:消費、住宅投資、生産

『個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資を新設住宅着工戸数でみると、再び減少している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産の減少幅はさらに拡大している。』(1月)
『個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、弱まっている。また、住宅投資は横ばい圏内で推移している。この間、公共投資は低調に推移している。以上のような内外需要を反映し、生産は大幅に減少している。』(12月)

個人消費は変わっていませんが、住宅投資が再び減少というのもキツイ話で、生産は前月に大幅に減少だったのが更に拡大とは・・・・ちーん。


・先行き見通し総括判断

『景気は、当面、悪化を続ける可能性が高い。』(1月)
『景気は、当面、厳しさを増す可能性が高い。』(12月)

厳しさを増すから悪化を続けると更に下げましたと。ところが要因分解するとこちらは前回と同じなのですぞ。ということで、下向きな流れが続けば前月よりも水準が悪化するということなのでしょう。

・先行き見通し要因分解

『すなわち、輸出は、海外経済の減速や為替円高を背景に、減少を続けるとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力の高まりを背景に、生産は減少を続けるとみられる。』(1月)

『すなわち、輸出は、海外経済の一段の減速や為替円高を背景に、大幅に減少するとみられる。国内民間需要も、企業の収益や資金調達環境が悪化し、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、さらに弱まっていく可能性が高い。この間、公共投資は低調に推移すると考えられる。以上の需要動向と在庫調整圧力を背景に、生産は大幅な減少を続けるとみられる。』(12月)

「大幅な減少」ってのが「減少を続ける」になっておりますが、まあそりゃ大幅減少が無限に続いたらゼロになっちゃいますので、下げ止まりしてくれませんかなあというところですか。この月報の後に出た経済指標の一部には下げ止まりになるのかもという数値出てましたもんね(とポジティブ思考)!


・物価に関しては製品需給の話が出ています!

まずは物価の現状。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、プラス幅が縮小している。』(1月)

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、3か月前比でみて大幅に下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+2%程度となっており、石油製品価格の下落を主因にプラス幅が縮小している。』(12月)

と、こちらでは食料品価格の落ち着きというのが消費者物価に加わったのですが、これは次に引用する先行き見通しで指摘されていたことの現われです。で、先行き見通しなのですが・・・

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落や製品需給の緩和などを背景に、当面、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、さらに低下し、マイナスになっていくと予想される。』(1月)

『当面の物価動向についてみると、国内企業物価は、国際商品市況の下落を主因に、下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して、低下していくと予想される。』(12月)

製品需給の緩和というのと需給バランスの悪化というのが見通しにしらっと出ておりまして、いやまあ悪化のオンパレードですねという所であります。


・1月になっても金融環境は厳しくなっていると

マーケットだけ見てるとそうなのかと思ってしまいますが、経済全体では利下げを行っているのに(追加利下げしたのは12月ですぞ)12月より金融環境が厳しいというイメージなのですね。

『わが国の金融環境は、厳しさが増している。コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。』(1月)

ちなみに12月は「厳しい方向に急速に変化」だったのですが、各種緩和措置をアナウンスしたり実施した後の1月月報でもこの有様ということですから、これはまあ素直に読めばこれからも追加緩和措置をどういう形かは兎も角実施しますよという話になりますわな。


○その他雑感ですが

・決定会合関連雑感

社債買入なんですけどね、市場の作りがCPと社債ってだいぶ違います(CPは現先取引以外でそんなに転々と流通するものではない)し、そもそも論として短期の資金繰りの世界と社債調達と言う長期資金の世界って世界がだいぶ違うので、CP買入と社債買入の間には相当な壁があると思っているのですけれども、何かCP買入やるまであんなに時間が掛かったのに社債買入の話がサクサク進むかなあというのは今でも疑問です。

両方の市場を見たことのあるあたくし的には「両市場の違いとか意味合いとかちゃんと理解してるのかなあ」とか思うのでありますがね。と悪態。

あと、すっかり忘れてましたが、超過準備付利って4月15日に切れるのですけれども、これを延長するのかどうかはちょっと影響あるかも。付利を継続すれば「利息付きのナンチャッテ量的緩和みたいなもの」政策になるんでしょうし、継続しないとなると「すわゼロ金利政策導入」って思惑になるんでしょうなあという所であります。

まあ他の措置延長するならこっちも延長なのでしょうけど、水野さん撤廃提案するかな?


・政治リスクで日本復活(ウソ)

中川酒大臣辞任のせいかどうか知らんが昨日今日と対ドルで円が下落しております。まーそもそも円買いの理由が「他の国が死亡しているから」という消極的なものでもあったと思いますが、政治リスクでグタグタになって行けば「日本売り」になって円安傾向になって日本復活ですよ!

・・・・だと中川酒辞任が画期的景気対策なのですが(笑)

#郵政民営化見直しの敵を定額給付金で取るとか何だかなあと思いますけど

ではでは♪









2009/02/18

お題「引き続き雑談系で恐縮ですが」

えーっと最近思うのですけど、金融政策決定会合の度に海外市場が妙に盛り上がる(悪いほうですけれども)んですけど、決定会合のタイミングと相場のリズムがどうも悪い方向になっているとしか思えま千円ですから、原則第3週っていう今のタイミングは変えた方が良いのではないですか??

NY市場が盛り上がって参りましたが、何がなにやらよく判りませんので(汗)、引き続きマターリと相場世間話でも。

○ユーロ円TIBORとユーロ円金先の雑談

まあそもそも論としてユーロ円金先というのはキャッシュのヘッジになっているかというと、なんちゃってヘッジというかオマジナイ程度にしかならないのでキャッシュ命のあたくしにはあまり興味が無いのですけれどもタマにはネタにして見ますが、ずれている話かもしれません(最初から言うなって感じですが、汗)のは勘弁。

えーっと、ユーロ円金先の当限ですが昨日の清算値が0.655%となっておりますが、一方で昨日のTIBORユーロ円フィクシングの値は0.71308%となっておりまして5.8bpの乖離。このユーロ円金先って当限の納会ではユーロ円TIBOR(多分フィクシングレートを丸めた数字だと思いましたが)でSQ決済になりますので、最終的にはユーロ円TIBORに収斂される筈なのですが、残り1か月切ってまだこれだけの乖離とは。

ちなみに、過去2回の当限ですけど、12月限が11月18日時点で0.785%に対してTIBORが0.81846%、9月限が8月18日時点で0.835%に対してTIBORが0.84358%でありまして、現在ほど乖離しておりません(11月時点というのはTIBORがじり高状態になっていた所でしたね)ので、まあこの数字を見ますと一応「これはTIBOR低下期待込みの価格形成」という理屈が成り立つのであります。本当かウソかは知らんが。

でもまあ正直申し上げまして、TIBORって名目は市場金利(トーキョーインターバンクオファード(だったかオファーだったか自信ねえが)レートですからね)なのですけれども、実体としては大手銀行様を中心とする銀行の皆様の貸出基準金利だったりしますので、それを誘導とか言いましてもこれは難しい問題。まあ企業のローン需要が低下すれば需給問題からレートが下がるかもとか、銀行の資本制約が緩くなれば同様にレートが下がるかもという話になるので、これはまあ金融政策で直接的な影響を与えるのは難しかろうという所で。

というのは短期市場方面におけるキャッシュ担当の皆様は先刻ご承知の助の話だと思うのですけれども、金先というのはこれまた参加者が微妙にキャッシュじゃない人で構成されているらしい(キャッシュのヘッジとしての物の役にあまり立たないから仕方ないけど)ので、どの位の意識を持ってこの乖離が生じているのかは金先プレーヤーさんに聞いてくださいませ(^^)。

一応無理無理理屈をくっつけると「ターム物金利誘導期待があるから」という話かも知れませんが、次に申し上げる「やればできる子金融調節」によりましてターム物というか短国の利回りが既にピークから6bpくらい低下して落ち着いた推移となっておりまして、今更ここから下がるのですかねえという感じだったりしますんで、この5.5bpの乖離ってここから納会に向けてどう動くのかちょっとだけ気にしてみたいと思いますです、はい。


○やればできる子な金融調節(何と言う上から目線^^)

先日も「最近のオペが好評な件」というようなお話をしたかと思いますが、カレンダーベースでも新しい積み期間に入った今週になっても資金供給のオペレーションがやや厚めに打たれておりまして誠に結構至極でございます。

昨日は共通担保オペのだいたい3か月もののレートが0.228/0.22と12日に実施された同じくだいたい3か月(ちょっとこっちの方が短いが)もので0.235/0.23だったのでこりゃ落ち着いたレートですねという感じ。短国の3か月ゾーンのレートはこの間に引け値ベースでは別に低下していない中ですがオペレートがちゃっかり低下しているというのは落ち着いているという意味では中々結構な展開ですね。

背景には兼ねてから申し上げておりますように、オペが比較的厚めに打たれているというのがありまして、前月の同時期と比較しますと、1月16日の当座預金残高が112800億円で2月16日の当座預金残高が1426000億円。所要準備預金は特に大きな変化は無く、超過準備が1月の17000億円に対して2月が12400億円。また1月19日の当座預金残高が107600億円に対して昨日(2月17日)の当座預金残高が139500億円。超過準備が1月の23200億円に対して2月が24700億円となっていますので、1月よりは厚めに資金供給されているなという所です。

で、このやや厚めな供給およびターム物への安定的な供給という動きがここもと比較的安定しておりまして、従来だと直ぐに何か別のものを調整しようとして資金の出しを止めてみたり妙な吸収をしてみたりとかやって、GCレートを跳ねさせてしまいましたの巻になっておりましたが、今月になってからはその手のやたら細かい微調整が無く、スタンスが一貫してきましたなという感じになっておりますので、GCレートが0.15前後(からちょっと下程度)で安定して推移し、GCレートのボラが下がって目線も安定してきた事から短国の利回りも安定推移となって参りましたという所です。

ということで、金融調節やればできる子じゃんというお話で、まあターム物誘導がどうのこうのというのは実は足元のレートを安定させればそれなりに誘導できるんじゃないですかという素敵なオチが待っているのでありました(^^)。

そもそもですね、展望レポートの中間レビューで物価見通しが再来年までコアCPIマイナスとかやらかしているのですから、常識的に考えて軽く向こう1年は政策金利が引き上げ方向になる訳はないと展望レポート中間レビューは申し上げているのですよね。ということですので、本当は現状っていうのは明示的じゃないけど政策金利引き上げませんよの時間軸が設定されているのに等しいですよね。

#まあ一々明示してくれないとワカランチ会長なのが市場クオリティではありますが

となりますと、「誘導目標金利=預金ファシリティ金利」となっており、「潤沢な資金供給を行うために誘導目標金利=預金ファシリティ金利とした」と言っていたのですから、それを実行することによって本来はターム物金利は落ち着いていて然るべきであったという話で、まあやればできる子調節は良いのですが、最初からこれをやって欲しかったですなあという感じではあります。

#こうなると超過準備付利も延長になるのですかね。水野さんはまた反対するのかな?


○もっと雑談

中川酒大臣が辞任していましたが、庶民のあたくし的感覚だとああいうラリラリ状態だったら周囲のスタッフが「中川大臣は頭痛が酷くなりましたので会見は帰国後に行います」とか何とか言って白川総裁だけの会見にするとか何とかしねえかと思うのですが、何でああなっちゃうのでしょうかねえ。

#まあ酔っ払ってラリラリ会見をして良いのはエリツィンだけだよねーって所ですか

で、後任与謝野さんってどんな兼任だよとか思うのですが、与謝野さんって10月利下げの裏話みたいな日経新聞の記事によれば日銀を利下げに追い込んだ勲一等な人みたいに書かれていましたし、最近でもしらっと「日銀は社債を買え」とか言ってたりしまして、日銀的には味方のように見えて結構バッサリと後ろから斬ってくる人なのでおそロシアなんじゃないですかねえ、と思います。

#もうこの際支持率気にせず森首相とか森財務大臣とかでも良いんですけど(ヤケクソ)












2009/02/17

お題「政策待ちなんだかただの膠着なのか」

ということで小ネタ雑談でございまする。

○CP買入とか企業支援特別オペとかに関して

CP買入と企業支援特別オペが順調に推移しておりまして誠に結構なお話でございます。企業支援特別オペに関しては先週火曜日に行われたのが13834億円となりまして、これで3回合計で38965億円のオペ実施。当初3兆円とか大丈夫かと思ったのですが、全然楽勝で3兆円オーバーとなりましたね。当初悪態をつきましたことをお詫び致しますが(^^)、証書貸付で残高これだけ伸びるもんなのかちょっと微妙な気もしますにゃ。いやまあCPとかで残高伸びてるのかもしれないのですが、残高の順調な増えっぷりにどういう内訳なのか見てみたい気はしますです。はい。

一方CP買入は昨日実施分が利回り較差で0.394/0.300という結果ですので、1か月もの入れたら0.694/0.600だし3か月もの入れたら0.794/0.700ということなので、まあ普通にCP発行している中でもややレートがお高めの発行体さん銘柄が普通に入れられる水準まで低下の巻と、レート的には落ち着いたというか良い感じになってまいりました。最初のレートはだいぶお高いレートの発行体さん銘柄しか入れにくい水準でしたので、落札結果後に入れようと思った銘柄が滑って募入取り下げ続出という素敵な事態もありましたが(2月2日の駄文ご参照)、ここもとは落札がほぼ買入予定額どおりになっていて普通の入札になって参りました。

そのCP買入ですけれども、13日の資金需給を見てたらこんなのが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd090213.htm

そこの「CP買入」って所を見ますと資金需給上▲100となっております。この資金需給っていうのは日銀の対民間資金の受払いを集計しているのですけれども、買入を行ったCPが償還になった場合はCP発行体が日銀に償還金をお支払いすることになりますので、これは民間資金の揚げ要因になりますということで、資金需給に載って来るのねと見ててほほうと思いました(保有国債償還の場合は対民間での資金受け払いが発生しないので計数がここでは判らない)。ちなみに、ほふりに行きますと電子CPのISINが全部載っていますので、おひまな人は全部探してピックアップしたらもしかしてどの銘柄なのか予想つくかもしれません(えーっとそれは物理的にかなり無理ですのでほぼ冗談です)ね。

冗談はともかくとして、16日にも資金需給上▲100となってまして、これはまあ2つとも日銀のCP買入銘柄がめでたく償還になったという事なのでしょう(^^)。


○CP関連とかの雑談

なおも雑談。

そりゃまあ企業業績が急速に悪化してキャッシュフローが悪化していますから格下げしたくなるのは判らんでも無いのですが、ここもと格付け機関がもう先を争うように格下げ大会となっております。で、ありゃりゃと思うのは長期格付けだけでなく短期格付けまで海外格付け機関が格下げまたは格下げ方向のアクションをしてきやがる所でして、まあキャッシュフローの急速悪化が背景にあるから短期も格下げ方向のアクションしたくなるのは仕方ない面はありますけど、通常のキャッシュフローがサステイナブルだろと思うような大手製造業とかにも格下げアクションが起きるのですな。

でまあ短期の格付けって正直言ってA-1(P-1)以外の格付けに用は無いというか投資的に言いますと形式要件上邪魔だったりする次第でして、どこぞの情報端末叩いて企業の格付け一覧みて短期に海外格付け機関の−印が並んでいるのを見ると落涙を禁じえないというか趣きの深いものを感じてしまうのであります。A-2ばっか並べられても何だかちとまあアレなのですよね(汗)。格付けを機械的に見てるだけかよとか言われそうですけれども、そーゆールールになっている所も世の中沢山あるので致し方ないという所でしょう。

まあそんな格付けの形式問題がありますので(苦笑)、最近のCPのレート形成ってその辺りが微妙に反映されたものになってみたり、期間が長くなるとその分格下げリスクが上がるのでタームのプレミアムがついてみたり(それは当然ちゃあ当然ですが、決算発表を跨ぎそうなあたりになるとプレミアムが妙につくのがチャーミング^^)とか、何かまあ微妙なものを感じます。一方で電力会社さんあたりですと格下げの心配も無いぜって事で投資家ニーズが集まり、期間が長くても心配ないぜとばかりのレート形成になるのですけれども・・・・・(^^)

そんなCP市場に(投資家向けには)世紀末救世主伝説現る(おい)の巻。
http://www.jfc.go.jp/ir/bond/shk.html

公募の短期社債で発行するようですが、政府保証でロット1000億円。そこに書いてあるのを見ますと3か月ものを月に2回くらい発行するようなので、目の子では電力会社さんのCP1社分位になるのかしらんと。

これは政府保証なので投資家的には使える(企業支援特別オペやCP買入の対象にはならないように思えますが^^)債券でありますが、まあこういうの出ちゃいますとまさに民間資金吸い上げが現実のものにっていう所でもあるので、市場的には新しい上にニーズが集中しそうな債券でしかも3か月でターンオーバーという回転の良い商品ですから実に(;∀;)イイハナシダナーなのでありますが、ちょっと微妙な気も。

今週金曜に入札みたいですが、3か月TBからどの位乗ってくれるのかな。多分CP買う投資家が持ちきり前提で買うケースが多いんでしょうね。


○なおも雑談

・ちょっと前のニュースですが

http://www.asahi.com/politics/update/0205/TKY200902050338.html
ゆうちょ銀の企業向け融資「解禁を」 自民・園田氏
2009年2月5日21時50分

『自民党の園田博之政調会長代理は5日、京都市で財界主催のセミナーで、「郵便貯金銀行(ゆうちょ銀行)には資金がたくさんある。臨時的に貸出資金として活用する方法はないか考えるべきだ」と述べた。』

何と言う安易な発想。新銀行東京の香りがプンプンするZE!!!


・この前のバーナンキ議会証言

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20090210a.htm

物凄く斜め読みしかしてないのですが、お題がクレジットマーケット関連に対してFRBがどんな政策(オペ)やってますかという話でありまして、日本の国会でもこの位の話をみたいもんだとか思いますがそれは兎も角として。

クレジット市場に対する支援というある意味凄い論理展開(マネタリー対応の為ではなくて金利押し下げを持ち出す所が結構チャレンジャーと思う)で長期国債の買入の話を以前はしてたのですが、今回はそれらしき部分が(あたくしがちょっと見たところでは)見当たらないor特に強調されていないというのが「ふーん」と思いました。

#読み間違っていたらスイマセン

まあ財政マネタイゼーションと言われるのも困るので、どちらかというと財政のサステイナビリティがどうしたこうしたと言って長期金利が上昇したところで長期国債買入カードを切るべく温存しているのではないかという所でしょうか。






2009/02/16

お題「決定会合前につらつら雑感」

支持率9.7%しか無いんですか。そんなに少数意見になると頑張って支持してみようかな、ほら、多数意見が負けるのが相場でございますから(笑)。

○社債買入に関して

金曜の夜に共同通信がこのようなニュースを。東京新聞から。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009021301000829.html
日銀が社債買い入れ対象で調整 格付け「A以上」限定の方向
2009年2月13日 19時08分

『日銀は13日、企業の資金繰り支援策として検討している社債購入について、対象とする社債の格付けを「シングルA相当以上」とする方向で調整に入った。日銀は金融機関からの担保として「トリプルB相当以上」の社債を受け入れているが、財務の健全性を維持するため、買い入れ対象はリスクが比較的低い社債に限定する。』(上記記事より)

ほほう。まあ案としてはそんなもんですかねえという感じですが、これが案として検討されるという話なんでしょう。まあ実施するなら実施したらあとは存じますが・・・・・・

CPの場合はCPディーラーでありますところの大手銀行さんが引受を行って保有をする場合が多い(具体的な数字は判りませんが)ですし、期間も短いので、CP買入スキームはきっちりと効いたのでありますが、一方で社債の場合は別にオペ参加者が持ち切っている物ではないですし、大体からして証券会社が持ってる1年以内の社債を買入したからと言って別に新たに発行が促される訳でも無いですから、まあ正直言ってアナウンスメント面は別にして実際に企業資金繰りへの効果があるのかというと疑問符がつきまくり。

大体ですな、社債買入に関しては最初に報道が出たときにあちこちのセルサイドクレジットアナリストが大歓喜レポートを出して「市場の世紀末救世主現る」みたいな論調になっている時点でこのスキームが企業へのサポートじゃなくて証券会社へのお助けスキームになる可能性が高いのが見え見え。そういえば先日日本綜合地所が会社更生法適用申請した時には「政府日銀の対策が急務」みたいなお題のレポートがどこぞから出てましたわな。いやまあさすがに中身では「政府日銀は倒産しそうな会社の社債を買え」とはなってませんでしたが、どこまでお上頼みなのかよと呆れてしまいましたな(-_-メ)。

なお悪態をつきますと、オペって別にてめえらに収益機会を与える為に実施しているわけではなく、金融調節を通じて金融市場から実体経済に対して政策効果を及ぼすものでありますが、その点をまるで斟酌せずにてめえが儲かる儲からないの観点でレポート出してる時点でオペ参加者としての立場をまるで理解していない訳でして、まあそういうレポートを書く時点で恥を知るべきであろうかと思うのですけどねえ。いやあ浅ましい(なお、結果としてオペで儲かる場合があるのは別に否定しないが、それはオペの目的とは違いますからね)。

ということで、折角社債買入するならば、買入した業者がその後ちゃんと社債のマーケットメークを積極的にやっているかとか、売却した分に対応する社債の引受や購入を進めてるかとか、きちんとモニターして「単なる業者お助けスキーム」ではなく「企業金融支援に効果のあるスキーム」として頂きたく存じます、ウヒャヒャヒャヒャ。

・・・・・いかん、また悪態になってしまった。


まあ悪態は兎も角として、1年以内で格付けA以上というような話になりますと、そんなに買うものあるのかなあと。いやまあ一つだけでもA格があればという話なら銘柄増えますが、CP買入でA-1以上としているの基準との整合性を当然勘案されると思いますので、単に片足A格あるからと言って何でもかんでも買ってはくれないでしょう。で、それらの銘柄の事前審査どうすんの(銀行は担保審査などで事務慣れているけど証券会社ってそんなに慣れてないでしょうと思う)とか、微妙な話が多いのですが、まあ大変ですなあという所です。

なお、ある意味超どうでも良い話なのですが毎度気にしているのは、上記記事にある「財務の健全性」ってフレーズ。

正直申し上げまして、この文言が出てくると「日銀は相変わらず自分の庭先ばかり綺麗にしようとして」という印象を与えるのでありまして、大体からして日銀だって政府の一部みたいなもんですから、究極的には日銀の財務だけ健全でも政府がボロボロなら意味無しでしょと思うのですよ。

ですから、この点っていうのは本当は「議会での議決を経ないで日銀が企業金融という財政政策的な事をするのは本来良くないこと」っていうようなロジックを出した方が宜しいのではないかと思うのですけれども、やっぱりそれは難しいですかねえ。まあそれは難しいにしても、「財務の健全性」っていう如何にも自分の庭だけ綺麗にしようという説明じゃあなくて「社債がデフォルトになった場合には最終的には国民負担になるので」っていう表現にした方が宜しいかと存じますがどうでしょうかねえ。


・・・・結局悪態大会になってしまった(汗)。


○ターム物誘導関連

えーっと、その件に関しては既に色々と申し上げましたので簡単に。

ターム物誘導ってたって、通常の金融調節ではリスクフリーの金利に対応する3か月TBくらいしか誘導しようが無いと思うので、変に何か目標を出すよりは、「ターム物の共通担保、現先オペや短国買入を積極的に活用して潤沢な資金供給を行う」というアナウンスをするくらいしか無いかと思うのであります。短国買入の額を増やすのをアナウンスするのは一つのアピール方法ですが、変に額を縛ると後から調節しにくくなって他のオペに皺寄せが来るのであまりお勧め出来ないスキーム。まあやるかもしれないけど。

ちなみに、短国買入よりも今やってるように共通担保とかのターム物をやや厚め程度で良いので安定的に供給していくのがターム物金利を落ち着かせるのには効くと思うので、何か変に「やりました」観を出そうとしてまた空振りになるのだけは避けていただきますと有りがたく存じます。

しかし「ターム物誘導」と白川総裁がお得意の「市場機能論」っていうのは思いっきりバッティングするお話でありまして(笑)、いい加減に「市場機能」って話を引っ込めていただけると大変にありがたく存じます。まあ屁理屈をつけるとすれば、「ターム物資金の取引が低調なので、日銀がターム物資金を積極的に供給する事によって市場機能の復活を図る」とか何とか言って「市場機能」の話を出すことですか(^^)。

FRBの理屈を引っ張れば、「市場が停止している所に中央銀行が買入などで市場の流動性を供与して機能改善と共にレートの低下を促す」っていう所になるのでしょうか、よーわからんが。


○企業金融オペやCP買入の期限延長

さっき引用した記事で、引用しなかった部分にそういう事も検討課題となっておりました。まあ市場的には「これは延長してくれない訳ないでしょ」と思っているでしょうけれども、まあ3月(次回の会合は3月後半です)まで引っ張って変に不安心理が出てしまうと折角の期末対策も台無しなので、どうせ延長するなら今回アナウンスの方が吉かと。

しかしまあ格付け機関が競争するかのように企業を格下げしているのは如何なものかという感じはするんですけどね。おまいらその前に米国・・・いやまあいいです。









2009/02/13

お題「市場雑感とかその他雑感とか」

何か政治がこうグダグダだと日銀にあれやれこれやれと言われますわなあ・・・・・

○オペレーションが最近好評な件について

先月末から今月頭に掛けましてはTBの増発懸念とかでレートが上昇しましたという話をしておりましたが、ここの所大変に平和な展開での推移となっております。先週の入札では0.30%乗せとかだったのですが、今週に入ってレートは低下して火曜の3か月TBの入札は大体0.255%平均の落札となって、昨日の日本相互証券の引け利回りは0.24%(確か0.235%の出合いもあったと思うが)で貫禄の0.25%割れとなり、需給悪化懸念とか言ってレートが一気に上昇しだす直前の水準まで戻って来ました。

この間のレート上昇って需給悪化懸念というネタだったので、買い手のうちややアクティブに動こうという人の手がすっこんでいたのですけれども、先週の水野審議委員の講演にあった「短期国債市場への目配りも必要」という辺りやら、ターム物金利誘導に関する期待やらで「買い安心感」ってえ奴が出て買い方の背中を押してまあ本来この辺でしょというレートまで低下したというところでしょう。

また、ここもとの資金供給オペレーションが比較的安定的にタームの資金を供給しており、変な吸収とか出し渋りとかが無いのも好感されているというのが小見出しの件になります。この為、レギュラー受渡ベースで16日の新しい積み期間に入ってからもGCレートは落ち着いて推移していまして0.15%近辺での推移。当座預金残高が積み最終を控えても11兆近辺(先週は12兆)で安定推移しておりまして、資金需給的に不足地合いだと供給オペが打ちやすい上に変な吸収も無くという流れなのが安定推移の背景かと。まあこういうオペですと割と落ち着いて推移するようで、概ねオペも好評という所で誠に結構。

ちなみに、1月のこの時期は年末越え対策で準備預金が進捗し過ぎたことから積み最終に向けて当座預金残高を急速に圧縮(ちょっと謎の吸収オペがありましたが、概ね供給オペのロールを落とす事によって対応)しまして、レギュラー渡しが積み最終になる1月9日の所で当座預金残高が9兆円近辺(前日から9兆円近辺)まで圧縮されたことが影響してGCレートがいきなり跳ねて0.16%辺りから最後は0.26%レベルまで上昇しちゃったという展開になって1月後半はGC高い展開に。と言ってもまあ0.2台前半ですけれども、前半が0.1%台前半での推移だったので上がった感が強くなりました。

ま、今月は積み最終に向けても当座預金残高を圧縮して来るような雰囲気が今のところ無く、ターム物オペをある程度安定的かつそこそこ厚めに打ってきているという印象でありまして、市場的にも「これはやっとタームのオペを厚めに打ちだしたのかな」という感覚になってきたのではないかと思われます。とは言え、昨年10月以降毎度毎度「急に金を引いたので」攻撃とか「急に金を出さなくなったので」攻撃によりまして何度も梯子を外されてその度にGCレートが跳ねるという素敵な展開が続いてましたので、さて今回は大丈夫かっていうのはまだ微妙に気にしているものと(あたくしの周囲をヒアリングしたベースでは^^)思われます。タームを厚く打てば当座預金残高積み上がって来ますが、余剰地合いになった所で供給をいきなりストップしたり資金引いたりしたら元の木阿弥ですからねえ。

結局のところですな、身も蓋も無い言い方をしてしまいますと、あまり細かい所を気にして妙に微調整しようとすると、その微調整は調節担当的には微調整すべき自明の事柄であっても、市場(特にインターじゃなくてオープン市場)では「何かよく分からん調整をするオペですなあ」となりまして「???」となって梯子外されたような気になるのでありまして(汗)、まあ細けぇ事はいいんだよ!(やる大矢のAA略)というような調節をして頂きたく存じます次第。

ていうか、当座預金(正しくは超過準備)付利0.10%で誘導目標0.10%っていう政策の枠組みって「金利付きの量的緩和(それを量的緩和とは言うのは変ですがそれは兎も角^^)が可能」と普通に考えると市場は解釈するのでありまして、そーゆー枠組みになっているのですからあまり細かい微調整せんでもええじゃろという風に思いますし、逆に言えば付利金利=誘導目標になっているのにやたら丁寧に微調整するのは市場の期待を思いっきり外すの巻という所なのではないかと思うのですがどうでしょ。

まあ月後半からは徐々に期末モードが盛り上がって参りますので、細かい微調整するよりはざっくり目にやや厚め(極端にバカスカ出さなくても安定的に出ていれば市場は安心するのでそう馬鹿みたいにレートは跳ねない筈)に使いやすいターム物中心に資金供給をしてレポ市場やら現先市場のレートを安定的に推移させて(再三申し上げていますが、レートが乱高下するのが一番困る)頂くように運営していただきますと有りがたく存じます。


○浅学菲才なあたくしも政府紙幣だの無利子国債だのに雑感

・政府紙幣

えーっと、本当に市中流通させようとすると物理的に全然時間が足りない上に社会的に費用が馬鹿みたいに掛かるので、まあ普通に考えると大券を発行して日銀に売却するという方式になるんでしょう(日銀と政府の関係では硬貨と同じ扱い)。まあそれって日銀に無利子永久国債を引受させているのと同じ話ですから、それならば「日銀に国債引受をさせますか」と正面切って議論した方が良いと思うのですが(コインは量的にどうでも良いレベルですけれども、政府紙幣ジャンジャン発行となると話は別でしょ)。

と申しますのは、何かこの話をしている議員さんとかの中ではリアルに打出の小槌だと思い込んで議論している人がいるんじゃないのかと思われる節がある訳で、いやあのそのそういう発想だと物の本質をスルーしたまま導入って一番困ったちゃんな話になるんですけどねえと思うのでありまして。さすがに最近は高橋洋一先生も「日銀に国債引受させるのと同じような話」的な説明をしているようですが、当初はその辺微妙に打出の小槌チックな話が流布されていた感があって何だかなあと思っておりました。

ま、日銀に国債引受させるのも議論としてはアリエールな話ではございますけれども、議会制民主主義で普通選挙やってる国でそれやって歯止めはちゃんと効くのかというのはどうも懸念されますわな。何せ一旦緊急措置として始めた物を止めるのがやたらめったらヘタクソなのが過去から連綿と続くニッポンクオリティなのでねえ。

#まあ勿論日銀引受しないでも財政を絶賛大発散させれば結果は同じになるのでしょうけれども・・・・・・

ま、政府紙幣の議論って要するに「日銀に金融緩和もっとクレクレ」ってプレッシャーを形変えたもんだと思いますけどね(^^)



・無利子国債

これどういう商品性になるのかさっぱり判らんのですが、相続税免除するからどうぞって話になったら、死にそうになってから無利子国債駆け込み購入する人が続出して、他の金融資産からのシフトで意図せざるクラウディングアウトが発生するような気が思いっきりするんですけど。箪笥に寝ている金が出てくると思うのは甘いでしょ。

#ていうか箪笥に現金寝かせた方が捕捉されにくいでしょうに

しかもこれって将来の相続税収入の先食いでありますし、先食いにしてはメリットが「利払いがゼロで済む」程度のものでありまして、現在の金利環境で何が悲しゅうてそういうもんを発行しないといけないのかさっぱりメリットが見えてこないです。期限付きじゃなくて換金性が無かったらそもそも誰も買わないでしょうし。

#大体からして市中の資金が還流してきたらシニョリッジ減るじゃん

なお、当然ご存知でしょうが、本石町日記さんのこちらのエントリーにインスパイヤされておりますので一つ宜しくです。
http://hongokucho.exblog.jp/10331503/








2009/02/12

お題「虫干しネタの続き」

結局休日特別版を作らないのはいつものやるやる詐欺(汗)。

○火曜日の続き、レポ取引に関連していくつか

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0901a.pdf

・カウンターパーティーリスク

リーマン破綻後の市場の影響が良く分かる表がごさいます。ではその影響とは何ぞやというと「カウンターパーティーリスク」って奴でございますな。上記PDFの本文23ページから。

『レポ市場では、カウンターパーティ・リスクやフェイルへの懸念から、資金や債券の運用を停止したり絞込んだりする動きがみられている。』

『GC 取引では、外証との取引を敬遠する動きがみられたほか、都銀や信託でフェイル回避や資金繰りの慎重化から、取引自体を忌避する動きもみられた。このように限られた出し手が資金放出を絞ったことでGC 取引の流動性は低下した。』

資金繰りの予備的需要が増大した場合、最初にやるのは「不要不急の資金放出を控える」となる訳ですから、フェイルに巻き込まれたくないのでレポ取引に慎重というのは致し方ない所です。ということで、火曜日にご紹介した部分で、

『こうした有事においては、信用枠の制約を受けずに資金をやり取りできる有担保資金取引市場が、安全確実な資金の調整手段として重要性を一層増すことになるが、』(本文16ページ)ってあるのですが、レポ市場では資金だけではなく「モノ」のやり取りも発生し、その「モノ」は金と違って色々と種類が沢山あるという点において、据置担保型の有担保取引とは違う側面があるでしょという話ですわな。っていうかそういう指摘って昔からしてる人沢山(あたくしも含めて)いたと思うが。まあそれは兎も角。

『取引を継続した先でも、ターム物や先日付、週末跨ぎの取引を避ける先が増えたほか、JGBCC に参加していない金融機関の中には、JGBCC を介して決済を行っている先を取引の間に入れることで、間接的にカウンターパーティ・リスクの軽減を図る動きがみられた。』

火曜日にご紹介したように、JGBCCが大規模フェイル絶賛継続中だった時にこの逆の事例も見られていました。つまりカウンターパーティーリスクを取ることによってフェイルリスクを回避する動きですな。

『また、流動性が低下し、価格変動の大きい変動利付国債や物価連動国債を担保とする取引を避ける動きが拡大した。』

まあ当然ですな。特に物価連動は担保処分で売るとかやったらエライ事になる(変動の方がまだマシ)ので普通はノーサンキュー状態(ただそれそれ自体はリーマンどうのこうのとは関係ないと思いますが)ですわな。

『この結果、GC レポ・レートは無担保コールレートを大きく上回って推移し日本銀行の補完貸付制度の適用金利を上回る水準まで上昇する場面も散見された。』

で、その図表が本文24ページにあるので見てくださいな。


・フェイルに関して

SC取引に関しては本文24ページから。

『SC 取引では、投資家が国債の貸出を停止または絞込んだことに加え、新発国債の減額発行の影響などから、一部の銘柄の需給が極度にタイト化した。また、このような市場混乱の中でもフェイルを容認しない投資家への国債の引渡しを確実に履行するため、コスト度外視で対象債券を調達する動きが強まったことから、SC レポ・レートが大幅なマイナスとなる銘柄がみられた。この間、市場流動性の低下とショートカバーコストの上昇もあって、意図的なフェイル(いわゆるバッドフェイル)が増加しているとの見方が生じ、バッドフェイルに対する疑心暗鬼が更なる流動性の低下を招く悪循環に陥ったとの指摘が多く聞かれた。』

ということで、レポ市場の課題として本文25ページ目に指摘あるのですけれども、まあ毎度毎度この指摘見てて何だかどうですかねという部分もあるのでツッコミつつ。

『このように短期金融市場の中でもとりわけレポ市場の機能低下が大きかったが、この間、市場関係者からは、レポ市場の当面の課題として、フェイル慣行の定着・見直しなどの「市場慣行の整備」や「清算機関の機能改善と利用促進」を挙げる意見が多く聞かれた。』

まあそうですな。で、日銀のレポートでこういう指摘をしているのですが、肝心の日銀のオペレーションではフェイルって相変わらず不可ですよね。いやまあ「日銀のオペは金融市場への資金需給の調節の為に行っているのだからオペレーションでフェイルすると資金需給に意図さざる変化が生じる結果になるから、フェイルされるのと金融調節の運営に支障を来たすのでフェイル不可」っていう理屈は全くもってその通りなんで反論の余地は無いのですけどね(^^)。

『さらに、未決済残高の積上りによるフェイルの増加や、担保処分損を被った事例を眺め、「国債決済期間の短縮」やリスク管理面で貸借取引より優れた「新現先取引の普及」を検討課題として挙げる先がみられた。』

これはまあ大口参加者の理屈だなあとか思うのですけれども。国債決済期間の短縮をするのだけでも事務的に手間隙掛かる参加者からすれば、決済期間の短縮やら新しい取引導入でコストかける位なら取引先を厳選した方が楽じゃんという話になると思うのですよ。非常に後ろ向きな意見ですが正直なところね。

『わが国では従来から、フェイル慣行が十分に定着していないため、債券・レポ市場における取引の効率性や市場流動性を歪める場面があるとの指摘があった。リーマン証券の破綻に起因してフェイルが多発する状況においてもこれを容認しない先が多いことが、レポ取引の混乱に拍車をかけたとの認識から、市場関係者の間でフェイル慣行に関する問題意識が一段と高まった。』

今回の場合はまあ緊急事態だから仕方ねえなという話もありましたけど、アウトライト取引のキャンセルとかやられちゃった日にはフェイルされた後からキャンセルされたらどうしようとかいう話になるから、本音で言えば「決済されるまで心臓に悪いのでうちの取引はフェイルすんなよ」って話になるかと(苦笑)。

あと、これまた火曜日に申し上げましたが、取引が事後的にキャンセルされた場合に他人勘定の場合、そのキャンセルによって生じたP/Lのブレを受益者に公平に分配(または徴収)という話になると思うのですが、その間に資金の出入りやら決算分配などが出ていたらもう処理がエライコッチャになるリスクがあります(基本的に約定ベースで損益を認識する計理処理になっているから、事後的な約定取り消しに対応するのが大変)ので、まあフェイルよりもキャンセルのリスクが怖いですわな。

#キャンセルといえば相手がデフォルトになった時に債券売ってたりGCレポ買っていたりすると、その分の自己ファンディングが事実上困難というのも他人勘定クオリティでありますがそれはまあフェイルとは別の話。

『フェイルに対する理解不足からフェイル慣行を容認しない先もあるとみられること、また、実務上フェイルに全く対応できない状況は緊急時の市場運営に支障をきたすことから、債券やレポ取引先(特に役員レベル)の理解促進に努めるとともに、これらの先でもフェイル対応が可能となるよう体制整備に向けた働きかけを行うことが重要との意見が多く寄せられた。』

まあそういう事なんでしょうが、「体制整備に金掛ける位なら取引先を厳選」って話になり兼ねないのが低金利クオリティなのであります。


・フェイル慣行の定着に関連して

本文27ページから。

『現行フェイル慣行による安易なフェイル容認は、意図的なフェイルを助長することにもなりかねないとの懸念を払拭し、投資家を含め広く市場参加者がフェイルを受入れやすくするため、フェイルの受け方の経済的便益を高める(フェイルする側にこれを回避する一定のインセンティブを付与する)方向での見直しが必要との意見が少なくなかった。』

さよですな。

『このほか、現行フェイル慣行を悪用し、ショートカバーコストの高い銘柄を意図的にフェイルする行為が増えているとして、フェイルした渡し方がみえないJGBCC 経由決済分を含め、意図的なフェイルを監視・牽制する仕組みの導入を望む向きもあった。』

これはまあリーマン以前からそうなのですが、確信犯的にフェイルする参加者がいるのは指摘されていましたんで、フェイルをした側のコストを高めないといかんでしょという話ではないかと思います。

『このような意見は、再調達コストの請求を可能とする現行フェイル慣行の暫定措置が利用されておらず、手許に滞留する資金の運用益だけではフェイルを受けたデメリットをカバーできない状況を踏まえたものであり、フェイルを受けた不利益と経済的便益が均衡する一定水準、例えば、「取引金額の数%相当額」をペナルティとする提案などがあった。』

で、その辺りの事情については本文26ページのBOX3っていう説明コラムに詳しくございます。

『海外主要市場では、債券・レポ市場の拡大や決済の円滑化のためにフェイルを許容する必要があることから、「多発は避けるべきであるが、発生自体は忌避するべきではない」という認識が定着しており、その多発が回避されるような経済合理性のある仕組みが確保された中で、フェイルが容認される必要があると考えられている。』

で、どういう仕組みかと言えば。

『フェイルの受け方は、フェイル期間中に当該債券を売却することはできないが、同期間中の債券の経過利子に加え、決済未了により手許に滞留する資金の運用益を得ることができる。こうした市場メカニズムを利用した仕組みによってフェイルの発生し易さは自ずとコントロールされると考えられてきた。』

なのですけど、現在の米国の事例ではこうなっています。

『もっとも、現在の米国では、低金利環境下で上記の市場メカニズムが働かず、フェイルが増加し易くなっていることから、市場関係者の間でペナルティの導入が検討されている。』

おお!低金利!!・・・・まあいずこも同じ話でして、日本に関して記述してある次の部分が要するに日本においてフェイル慣行が定着しない背景を説明するものなのでしょう。

『低金利環境の下で、フェイルの経済効果が十分機能しないことも相俟って、フェイル慣行が市場全体で十分に定着しているとは言えないとの指摘がある。』

『なお、低金利環境下では、フェイルした国債の渡し方に十分な経済的デメリットが生じないことから、意図的なフェイルやフェイル慣行の乱用を抑制するための暫定的な取扱いが定められている。これによれば、フェイルの受け方は、国債の渡し方に対して、フェイルされた国債を債券貸借取引等で調達した場合等に要した費用を請求できる(「国債の即時グロス決済に関するガイドライン」)。もっとも、費用の詳細な計算方法が規定されていないこと等もあり、当該取扱いは利用されていない。』


・ファイル慣行の定着状況

本文28ページにあるBOX4を見て微苦笑。

『サーベイ結果をみると、債券やレポ取引においてフェイルを容認する市場参加者は、都銀や証券が中心であり、全体の半数に満たない状況にある。』

どう見ても業者と超アクティブな自己勘定だけです。本当にありがとうございました。

で、その人たちがフェイル慣行定着の為に必要などうのこうのとか言われましてもそれはあまり意味の無い話でして、フェイル容認していない人の意見を聞くのがよろし。

『他方、フェイルを容認していない理由をみると、従来と同様、フェイルを受けた際の社内の取扱いが確立していないとの理由が過半を占めた。』

これ社内の問題だけじゃなくて業界としての会計処理方法の問題とかもあるような気がする。

『一方で、「フェイルを受けた際に余剰資金を運用する機会がない」あるいは「SCレポ市場で国債を別途調達するのが困難」とする先も相応にみられ、市場慣行の整備(例えば、市場取引のタイムスケジュールの見直しやT+0 レポ取引の拡大)も検討課題であることが示唆された。』

この部分は結論が我田引水の香りが。決済期間を短縮しろとかいう話じゃなくて、そもそも建て付けとしてレポでのカバー出来ませんとかいう人とかもいますし、そういう人だと例えばの話SCレポで保有債券を貸出したらフェイル食らいましたとなればその間ポートフォリオ上にある保有債券の売却が出来ないという話になるので、T+0市場を整備すりゃあいいって話では無いと思いますよ。まあ日銀としては決済期間を短縮化してT+0市場を作って欲しいと思っているのは判りますけど、ちょっと強引な気がするだよ。


ということでレポの話に関して色々と引用しましたが、正直このネタに興味があるのは100人も居ないのではないかと思うのでありました(苦笑)。ちなみにもっと訳のわからん話をしますと、レポに関しては現金担保債券貸借取引だから本源的な所有権は元の所有者にあり、当事者間の契約上は取引を清算できそうですが、第三者対抗要件的にどうなのよというのは前から気になっているのですけれども。つまり相手がいきなり破産(破産法に基づく破産)になったときに担保処分を本当の本当に勝手にできるのかってどうなのかしらんとか気にしてる(第三債権者から処分無効とか言われた時に裁判上大丈夫なのって話ね)のですが誰か詳しい人教えてジェネラル!


#えーっと、その他の話は「オペレーションが妙に厚めで好評」という話でしたのですが、時間がなくなったので終了です。









2009/02/10

お題「虫干しネタで恐縮ですが」

米国の金融安定化策も出す出す詐欺ですかねえ(苦笑)。

ということで(どういうことだ)今日はちと昔のネタを引っ張り出して恐縮至極ですが、まあ短期市場に興味のある方は必読かと存じますので少々(ただしマニア向け^^)。

1月26日に出たモノなのですけどね(大汗)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0901a.htm

わが国短期金融市場の動向と課題
――東京短期金融市場サーベイ(08/8月)の結果とリーマン・ブラザーズ証券破綻の影響――

本文はこちら(PDFで39ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0901a.pdf

○前半のサーベイはさっくり流して

前半は去年8月に実施したサーベイの結果分析なのですが、誠に残念なことに9月のリーマン破綻以来世の中が変わってしまった面がありますので、まあこちらは参考という話になるかと思いますがその中から少々。

・レポ市場

本文6ページ以降が今何気に話題のレポ市場のお話。

『現金担保付債券貸借(いわゆる「現担レポ」)および買戻・売戻条件付売買(いわゆる「現先」)の取引市場(以下「レポ市場」と総称)の残高は、概ね横這いで推移したが、2008 年3月に急増後、減少に転じている。取引手法としては、現担レポ取引が引続き多く、課題とされてきた、リスク管理や取引の柔軟性に優れた「新現先」取引への移行はみられない。』

で、以下色々と分析しているのですが、まあそちらにあるように減少したのはSCレポ市場の縮小、即ち業者のグロスポジションを縮小する動きが強まってロングショートが減った事に起因するものでしょうと。

『従来から課題とされてきた参加者の拡大といった観点から、この間のレポ取引への取組み状況をみると、新規先は少なく、裾野の広がりに乏しい点に変化はみられない。また、既にレポ取引を行っている先の一部で取引を拡大したとする先もみられたが、大半の先では、取引頻度・ボリュームに大きな変化はないとしている。』

実に残念ですな。

『なお、レポ取引の開始・拡大に必要な事項として、従来と同様、自社システムや事務体制の整備を挙げる先が多いが、次いで運用利回り(収益性)の向上を挙げる先が目立った。また、外資系証券(以下「外証」)を中心に引続きクリアリングバンク・サービスの普及を望む声が聞かれた。』

事務体制やシステム整備をするには金が掛かる訳でして、GCで資金放出するサイド、SCで保有玉を貸し出すサイド(要は投資家)としては、それだけの金と管理の手間を掛けても見合う運用利回りの上乗せが見られないと導入するメリット無いので、結局このあたりって「収益性」の話に収斂されるかと。

あと、クリアリングサービスの話はこれ永遠の課題なのですけれども、上記と同じ話でクリアリングサービスに払う手数料が出ないのでは話にならないですし、昨今の米国ではカストディバンクなのに株価が絶賛下落してどうのこうのとか言われますとそもそも話の前提が壊れるのでありまして、何と申しますかまあ課題の多い話なのですよね。

もっと詳しい話が本文にありますので読んで味噌。



・OIS市場

本文14ページから。

『短期金利デリバティブ取引は、総じて低調に推移した。日本円OIS 取引では、政策金利の変更が当面見通せなかったことや、主たる参加者である外証のリスクテイク余力が低下したこともあり、取引高や想定元本残高は大幅に減少した。』

『また、日本円OIS 市場の参加者は、上位5先で残高の8割強を占めるなど、引続き限定的となっている。この1年間で新規の取引開始先は1先に止まるほか、取引予定のない先が大宗を占めるなど、レポ取引以上に市場参加者の裾野拡大が課題といえる。』

5社で8割というよりもそちらの表にあるように「3社で66.1%」って方が問題でして、まあ参加者3人の市場を捕まえて「市場が織り込む将来の政策金利」とか言われても困るんですよね。そこの取引予定なしの人たちの意見があるのですけれども、「OISを利用したヘッジの必要性を感じていない」「市場参加者が少なく流動性が不足している」ってのもさることながら、「取引単位が大きく、利用しづらい」ってのが13先ありまして、まあそれが一番でかいんじゃないでしょうか。3社で60%以上のシェアで大玉打ち合い(500億で端モノ扱いとかじゃなかったでしたっけ)してりゃあそら実需が入らんわな。

ま、この件に関しては市場の片隅におります弱小参加者としてはプギャーとしか申し上げようがございませんが、では一方で上場モノはどうなっているのでしょうかと申しますと、まあこの構想出たときに散々悪態ついたと思いますけれどもこんな感じ。

『上場金利先物取引に目を転ずると、2007 年12 月物より取引を開始した東京金融取引所の翌日物金利先物取引(無担保コールO/N とGC 取引S/N が対象)は、取引開始後1ヶ月程度は若干の取引がみられたものの、その後は利上げ観測の後退もあって取引が薄くなり、無担保コールO/N 物については2008 年8月以降、GC 取引S/N 物については2008 年1月以降、建玉残高はゼロで推移した。この間、ユーロ円金利先物取引は、取引数量・建玉数量とも減少傾向にあるが、取引の厚みはある程度維持された。』

だってこの商品って取引所主導で頑張って導入したようなもんでしたからねえ。東京金取と言い、東証と言い、(新商品導入の業務目標でもあるのかも知れませんけど、笑)ニーズがあるのか無いのか判らん商品をぶちこんで無駄な投資をしますわなあと思います。はーナムナム。


○で、本題のリーマン破綻の影響に関して

本文16ページ以降。

『同社破綻を受け、無担保コール市場では、カウンターパーティ・リスクをより強く意識するようになった資金の出し手が、外資系金融機関等向けの資金放出を絞込んだため、その市場機能が低下した。こうした有事においては、信用枠の制約を受けずに資金をやり取りできる有担保資金取引市場が、安全確実な資金の調整手段として重要性を一層増すことになるが、現実には、リーマン証券が主要な市場参加者であったレポ取引は前例のない混乱を呈し、その市場機能が大きく低下するなど、同市場の課題が浮き彫りとなった。』


・レポ市場

で、レポ市場の話は19ページから。

『9月15 日に発出された金融庁の業務停止命令や、16 日の裁判所の保全命令では、顧客資産の払戻し等に加え、約定済みの証券取引等について、リーマン証券の判断でその一部の決済を実行できるよう、保全処分等の対象から除外する措置が採られた。しかしながら、実際には、民事再生手続開始の申立により、契約に基づき一括清算となったレポ取引をはじめ、同社との約定済みの国債取引が履行されることはなかった(受払計で2千件、7兆円程度<9月分>)』

結局ね、まあ法律的に手当てしてなかったから仕方ないのですけれども、この時点で初動が遅れて数日間「取引が行くのか行かないのか判らない」という状態となったのが問題でして、本文20ページ目にもその点が述べられています。

『なお、米国では持株会社の破綻後も決済が行われていたことや、日本における業務停止命令や保全処分上の取扱いを眺め、仕掛り中の決済の履行を期待して様子をみていたため、初動が遅れた先が少なくなかった。このため、破綻先に決済方針を確認し、早期に市場参加者にアナウンスする仕組みを求める声が聞かれた。』

この件に関しては(そりゃまあ初ケースだから仕方ないですし、法律的整合性をどう取るのかというのが難しかったのかも知れないけど)保全管財人は何をやっていたのですかとしか申し上げようが無いです。


で、同じく本文20ページにもこのような記述があります。

『これまで経験のない大量のフェイル処理と並行して、初めて破綻対応を迫られた相対決済の相手方やJGBCCでは、対応マニュアルの未整備、破綻対応と通常事務(フェイル処理を含む)を同時に行うための人員不足、異例処理にかかるインフラ整備不足といった問題に直面した。このため、急遽、具体的な処理方法を定め、他部署や関係先の応援を得て緊急に対応する先がみられた。』

ということで、まあこの事態進行中はJGBCCの取引が一時ワケワカメになったのが結構ブーイングでしたわな。本文21ページ。

『JGBCC では、リーマン証券との間で予定されていた決済について、民事再生手続開始の申立のあった16 日に業務方法書の定めに基づき一括清算を実施した。その後、JGBCC は、同社から受取ったうえで受方参加者に引渡す予定であった国債の調達や、同社に引渡す予定であった国債を払方参加者から受取るための資金の確保に取組んだ。』

『前者の国債調達については、JGBCC がリーマン証券から国債の引渡しを受けることができず、受方参加者に対するフェイルが発生した。こうしたフェイルが積上り、他の参加者とJGBCC との間でもフェイルが連鎖する中、JGBCC によるフェイルは、国債調達に数営業日要したことや、T+3 決済による未決済残高の積上り等もあって9月24 日にピークに達した。その後、JGBCC で国債の市場調達を行い受方参加者への引渡しが進むことで、こうしたフェイルは、9月末にかけて解消した。』

で、リーマン破綻後の1週間は結構JGBCC取引がブーイング状態だった理由は以下の通りであります(本文21ページより)。

『この間、参加者側からは、当初は、フェイルの対象債券の割当ルールが見えにくいことや、26 日までの間、処理状況に関する情報開示が行われなかったこと(この結果、JGBCC による国債調達・処分に伴う損失発生懸念や突然のフェイルを避けるため、JGBCC を介さず相対で決済する動きもみられた)等を踏まえ、情報開示の充実を求める声が聞かれた。』

そうそう、この時期まではGCとかでも「JGBCCじゃなくて直取引で」という話になったりしてたらしいですね。

『その後、月末にかけて破綻対応が着実に行われていることが明らかとなってきたこと、JGBCC による国債調達・処分に伴う損失がリーマン証券の差入担保でカバーされたことなどから、JGBCC 利用による破綻対応に関する事務コストやカウンターパーティ・リスクの削減効果を評価する意見が次第に高まった。』

ということで、現在ではそういう評価になっているようです。まあ事前および初動の対応は悪かったけれども事後的には処理が良かったという事なのでしょうか。まあ次に何かあった時(無い方が良いけど基本的にあるものとして考えないとね)に迅速な処理が出来て、状況を参加者にアナウンスして頂ければと思います。


・一般売買取引

この先にフェイルの話があるのですが、その前にちょっと話を一般売買の話に。

本文20ページより。

『相対決済の相手方では、レポ取引については基本契約書に基づいて契約解除をした後に一括清算を行う一方、アウトライト取引では当事者間で破綻の際の取扱いが定められていないため、事後的に契約自体をキャンセルする事例が多くみられた。』

リーマン破綻後に債券市場って急騰した後、下落(先物ベースで言えば16日に210銭上昇して17日から19日に掛けて243銭下落したので週末には前週末比23銭下落)したので、その間のどさくさで売買取引の再構築コストがゼロまたは殆どマイナスにならない瞬間ってのもありまして、まあそのタイミングで契約をキャンセルできれば実損があまり出なかったケースもあるとは思いますが、実損出た場合はリーマンに対する債権が発生する(けど多分取れない)という話になりますな。5年新発国債とか同社は沢山落札してて当然ながら投資家にも販売していた筈ですが、たまたま相場が上昇したあと下落してくれたから取引再構築コストが大して掛からんで済んだのですが、これ上昇しっぱなしだとか、いきなり破産法適用で初日に取引終了確定だったらどうなっていたのでしょうという所です。

で、このレポートでも惜しくも触れていないのですけれども、というかあまりにも細かい話なのでスルーしたのかもとは思いますけど、他人勘定の場合これまたヤヤコシイ話が。即ち、さらっと「契約自体をキャンセルする事例」って言ってますが、これさらっとできるのは手前の損益だけの問題になる自己勘定の業者や投資家などでして、他人勘定だとまたこの事後処理が大変になると思われます。

つまり、取引を事後的にキャンセルすると、その時点に遡及して資産構成が変化してしまいますので、たまたまその前後に信託財産に追加の預け入れや払い出しがあった場合に調整が必要になったりするケースがあるかと。まあ決算跨がな場合ならそんなにややこしくならないと思いますが、決算跨いだ場合は物凄くややこしい事になりそうですし、オープン投信のように毎日基準価格が変動してしかも毎日資金の受け入れ可能とかだと基準価格が遡及訂正になったらもうそれは涙目の展開になるかと。

従いまして、この手の問題が起きたときって自己勘定よりも他人勘定の方がより一層ナーバスになる(そりゃまあ手前の金よりも人様の金の方がよりナーバスになるのは当たり前ですが)のでして、恐らくはリーマン破綻以降に他人勘定が取引する場合にカウンターパーティーの絞り込みやら取引の見直しやら色々と行われたのではないかと思料されます。

で、あとフェイルに関する話が続くのですが、例によって時間と量の関係上明日ちゃんと元気に起きてやる気あったら休日特別版でフォローしますし、そうじゃなかったら木曜に続きを参ります(^^)。









2009/02/09

お題「水野審議委員のフリーダム会見など」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902b.pdf

○景気に関して

会見の内容はターム物誘導などの追加緩和策に関する質疑が殆どでしたが、会見の最初の質問で経済情勢に関する見方の説明がありまして、

『わが国の経済情勢を捉えるには、グローバルな調整を前提とする必要がありますが、米欧の実体経済の悪化と金融危機の影響は新興国にも波及しており、世界的に金融と実体経済の負の相乗作用が生じていると考えられます。(途中割愛)各国の供給サイドの調整スピードは早いですが、世界的な総需要ショック、金融ショックの大きさはそれを上回っているという状況にあります。』

というのがグローバルな部分の認識で、国内に関しては、

『わが国については、金融と実体経済の負の相乗作用が見え始めた段階だと思います。金融システムは、欧米に比べてなお安定が確保されているといって良いと思います。しかし、昨今の鉱工業生産指数をはじめとして各種の経済指標の未曾有の悪化が続く中で、今後、輸出企業を中心に供給構造を抜本的に修正しなければならない可能性があり、また、設備投資抑制の本格化、とくに能力増強投資が完全にストップするような動きが聞かれています。それから雇用調整が思ったよりも早く、しかも深刻化していく可能性も否定できませんし、金融機関が信用リスクをとることに慎重になれば、さらにこれが景気の下押し圧力にもなりかねないということも考えられます。』

ということでスパイラル的悪化を見ています。その為に講演でも追加の緩和策の話が出てくる次第ですし、会見でのこの後は追加緩和策の質疑になっています。


○企業向け金融政策の強化について

・年度末向け対策の延長に関して

『企業業績の悪化やキャッシュフローの大幅な減少等を踏まえると、年度末対策として考えていた施策についても、金融支援という点では、来年度に向けて引き続き注意していかなければならない大きな政策課題の一つであると思っています。その点では、日本銀行の財務の健全性とのバランスを勘案しつつ、今取り組んでいる策のほかに何かできるものはないかということをできる限り検討していく必要があると認識しているところです。』

という発言をした事から、年度末向け対策で実施した施策を延長するのかという質問が飛んできまして、それに対する説明。

『すみませんが、もう少し一般論として申し上げたつもりです。例えば、CPの買取りについては、個人的にはできるだけ早くやったほうが良いと思っておりましたが、実際に12 月に大きな方向性を示して、1 月に具体策が纏まりました。本日の金融経済懇談会での挨拶要旨にもありますが、CPの買取りが必要だと思っていたことは、あくまでも資金の目詰まり対策、年度末対策という意識が強かったというのが正直なところです。もっとも、日本銀行の企業金融支援に対する期待の声――これまでと同じ施策かどうかは別として――は強く、我々として何ができるかを引き続き検討していきたいという趣旨で申し上げました。私自身、今この時点で具体的なものをお示しできる状況ではないのですが、現状の厳しさを考えると、何らかの対策は必要であろうという一般論として受け止めて下さい。』

・・・・・ええっと、要するに年度末以降も継続って事ですかね。


・株式担保に関して

あたくし的に推奨なのは適格担保に株式を(ただし掛け目50%くらいで)というネタなのですが、『市場関係者等の間では、次は株式ではないかという声が根強い状況にあります。』っていうことで質問がございまして(^^)、それに対して。

『最初に申し上げたいのは、適格担保については、担保不足でオペに応じられないということがないように何か適切なものがないかという観点から考えるべきということです。適格担保を拡大するのが目的ではなくて、金融調節手段を確保するために必要なものとしてどのようなものが可能なのかという観点から考えるべきです。これは様々な選択肢の中で議論していかなければならないということを述べたまでであり、今後の政策の一つの課題として私の念頭にあるということで、具体的なコメントは差し控えたいと思います。』

禅問答的な説明になっていますが、要するに適格担保が逼迫してきそうになったら考えますという話なのですかなあと思うので、株式取るかは兎も角として、担保範囲の拡大というのも先行きアリという話でしょうかね。昨年11月位の方が適格担保逼迫感があったみたいで、米国などでのドルファンディングが楽になった辺りからこの辺りが緩和されてきた感がありますので、そういう意味では国際的なファンディングの緊張状況によって変化が起きるでしょって話かと。


・では何でもかんでもやって良いのかという点に関して

後の方の質疑であったのですが、『公的な資金でエクイティに踏み込むことの必要性、意義、メリット・デメリットについてどのような見解をお持ちでしょうか。』という質問がございまして、

『例えばアメリカですと、TARP という金融システム安定化策の中で、GMAC やGM などに資本を注入するということが行われています。そうした施策は、どこまでが国益の観点からやっている部分で、どこまでが危機対応策かという点で、保護主義的な施策かどうかの線引きが非常に難しくなってきていると思います。』

さよですな。商業銀行やら決済システムという部分だとまあ社会インフラということで百歩譲っておっけーとしても、自動車会社に資本注入ってどうなのよという感は。

『最近は、金融システム対策という名目であれば何をやってもよいといった風潮があることも確かですが、今後さらにエクイティを入れる対象企業を増やしていくとなると、この政策の位置づけを対外的にどのように説明していくか、しっかりと考えていかなければならないと思います。今のところ、あまりうまく説明できていないのではないかと感じています。』

「金融システム対策という名目であれば何をやってもよいといった風潮があることも確かですが」というのに微苦笑。

『日本銀行では、CPの買取りを行うこととしたほか、社債の買取りを検討していますが、それにあたって企業金融に係る金融商品の買入れについての原則を3つ示しており、政府もそのようなことを示していかないと、いくら政策金融とはいえ、アカウンタビリティの観点から問題が出てくる可能性はあると考えています。』

じゃあ何でもかんでも税金で救済やがれ金融システム対策だからというのはやはり無理筋というかマルクス先生大歓喜と言うかですな(^^)。


○ターム物誘導に関連して

ターム物金利誘導に関しての質問がやって参りまして、『挨拶要旨でかなり詳しくご説明されていますが、端的に言うとどのようなやり方があり得るのでしょうか。』ってことで、『例えば、ここで挙げられている3 か月物のユーロ円TIBORをターゲットにすることが可能なのかどうか、その時の問題点・課題があれば教えて下さい。』という中々難しい質問が(^^)。

『二つ目の質問は技術的に非常に難しい問題と言えます。今は適格担保の範囲内で色々なオペを打っている、例えば最近は年度末を越える資金供給オペを打っている訳ですが、銀行のバランスシート制約や資本制約がある中で、ユーロ円TIBOR という所謂無担保のレートが下がるかどうかというと、極めて現状は難しいだろうと感じています。』

TIBORに直接働き掛けるのは技術的に難しいですねという話。

『しかも、今後、信用コストの上昇、貸出先の企業の格下げの問題など色々な問題が生じる可能性がありますから、どのようにターム物金利を補完的に下げられるのか難しい面があります。ドル資金供給オペの効果一つを採っても、1 か月物はまだしも3 か月物になるとほとんど取引はなく、しかも高止まりしているというのが現状です。』

短期国債の利回りだとある程度オペだの何だのでコントロールできますけれども、無担保で信用リスクのある世界の金利と言うのはリスクフリーレートに対するスプレッドの問題がありまして、株価下落などで資本制約はあるわ、企業業績の悪化や企業のキャッシュフローの悪化によって信用リスクは高まるわという状態になっていますので、実質貸出基準金利みたいになってるTIBORレートに関してはそうそう簡単にオペでは下げられませんわなという話ですね。で、それは米国でも同じような話ですねという所かと。

『よって、テクニカルな問題も含めて、まだまだ検討しなければならないことが多く、具体的なものを出すまでに至っていないとご理解頂きたいと思います。』

で、この次に短期国債金利の話をしてまして、ここもとのレート上昇で買いを渋っていた人が急に買う気を起こした(かどうか知らんが)発言になります。


○短期国債金利に関して

『それと同時に、挨拶要旨の中でも少し触れていますが、今後、国庫短期証券の発行が増えていく中で、我々の直接のターゲットではないのですが、この証券の金利が上がってくることも考えられます。』

というか1月後半のGCレート上昇に加えて増発の話で年初の0.2%割れ水準(はちょっと下げすぎでしたが)から先週水曜の入札では0.3%乗せまでレートが上昇いたしましたな(--)。

『これを抑えるための一番オーソドックスなやり方は、GC レポレートをうまく下げていくということになります。しかしながら、現状のように誘導目標金利と同じ水準に付利している状況は、全ての金利に働きかけるようなオペレーションではありませんから、全体として流動性供給は相当潤沢であっても、各市場に満遍なく毎日資金が廻っているかというと、そうではないということも起こりえます。』

うまく下げるというか、うまく安定化させながら上昇を抑えるのが吉かなあと思います。

『これは新たな問題ですが、今後、税収が減少する中で国債の大量発行がしばらく続いていくことを考えますと、色々と検討しなければならない問題が多いのではないかということで、若干問題を提起したということであります。』

ということで、これで短期国債にも目配りしたオペが続くというような期待もあってTBのレートいきなり低下したのですが、まあディーリング的な買いというよりはさっきも申し上げたように買い安心感からの買いという所でしょうか。


○誘導のテクニカルな論点に関して

で、さきほどの「現状のように誘導目標金利と同じ水準に付利している状況は、全ての金利に働きかけるようなオペレーションではありません」とは何ぞやという質問に対して。

『私の認識としては、ターム物金利をコントロールすることと、オーバーナイト金利をコントロールすることの両方を同時に達成することは不可能に近いと思います。』

その理由は以下の通り。

『もしターム物金利に潤沢に流動性を供給していくことになると、どうしてもオペの残高が膨らんできますから、オーバーナイト金利に低下圧力がかかってきます。しかも、投信や生損保といった日本銀行の当預先でない先のお金も入ってくる訳ですから、日によっては0.1%より下のところで一部の取引が成立してしまいます。』

『そうなりますと、ターム物金利に注力することと、オーバーナイト金利を0.1%より下にしないということの整合性をどのようにとっていくのか、技術的にそれが可能なのかどうかという問題と、もう一つは0.1%という付利金利を設定することのメッセージがうまく伝わるのかどうかという問題が出てきます。』

ということで、ターム物誘導をしていくと付利の0.1%が逆に邪魔になるのではというお話をしているように見えます。以下その点をより詳しく。

『このようなゼロ金利への低下圧力がある一方で、私は、政策金利を0.1%にする意味がないとは思いません。何故ならば、ゼロ金利にすると、市場取引がさらに萎んでしまい、無担保コール市場はさらに縮小していき、場合によっては無担保コール市場が死んでしまうというデメリットがあると思っているからです。』

現状は取引高自体はあるのですけど、無担保コール取引に市場としての鼓動みたいなものは感じませんなあというのが正直な所だと思います。

『同時にターム物金利を下げようとすると、オーバーナイト金利に対してはどうしても低下圧力がかかってくるということを考えますと、付利をすることにどれだけの意味があるのか、本当に適切な措置なのかどうかをよく考える必要があると思います。』

なので前回会合で付利0%を主張したのですね、わかります。

『私は、今後の金融市場調節を展望した際、オーバーナイト金利よりも、ターム物金利の方によりウエイトを置いて考えていて、ターム物金利を下げることの方が政策効果が大きいのではないかと思っています。そうした意味で私は意見を表明しましたが、これは私個人の意見に留まっているというのが現状です。』

という訳で個人的見解なのですけれども、最近の白川執行部は某インチキおじさん時代の時よりも執行部の強力な主導っていうイメージがないので、審議委員の個人の意見であっても要注目ということでしょうね。


○会見の発言とは別にあたくしのターム物誘導云々に関する雑感

以下あたくしの雑感なので念のため。

ターム物金利誘導と言いましてもTIBORは毎度申し上げておりますように市場誘導でどうにもならない部分があるので、ちと難しい(いやまあ行政指導攻撃はあるけど^^)と思います。で、短期国債金利を安定化させる話に関して少々。

まず、短期国債レートをピンポイントで下げるというのであれば短国買入を増やせば簡単でして、通常のオペレーションの範囲内なので特に何か措置が必要な訳でもありません。

とは言いましても、増発分をまともに買入増額するというのは露骨にも程がありまして、市場としては将来の国債増発に対して毎度毎度クレクレ攻撃をするようになってしまい、どっかの閾値を越えたところで「維持不能赤字財政の絶賛マネタイゼーション」という話になるリスクを抱えるかと。そもそも3月に下手したら週9000億円の増発になるという状況ですから、そんなにまともに増やせないでしょう。

まあ増やすとして週1回を週1.5回にするとか、1回を1兆円くらいにするかとかの世界が現実的なところではないかと思います。

それよりもターム金利という点では、ターム物オペをやや厚めかつ恒常的に打っていくようなオペレーション、つまり2週間から6週間程度の共通担保オペを厚めに実施する方が足元のファンディングが安定していくのでGCが振れにくくなるのではないかと思います。つまりですね、足元のGCレートが1月前半と後半みたいにやたら振れますと、足元レートが途中でぶっ飛ぶリスクを考えないといけないからターム取引がやりにくくなる(そこでディーリングをやろうというような動きは現在の市場状況では起きない)為に、ショートファンディングが溜まり易くなり、益々足元の需給でGCが振れやすくなるという悪循環になるのですな。従って、足元がある程度安定していって、タームをもっと出合い易くするようにするのが一番効くのではないかなと思うのですよ。

ちょうどここの所、使いやすいタームの共通担保オペがやや厚めかつ恒常的に実施されているのですけれども、これがそういう趣旨を踏まえての物なのか、単に足元の資金需給が不足地合いだからタームが打ちやすいだけで足元余剰地合いになったらあっさり供給が止まる(下手したら吸収するとか)のかがさっぱり読めない(調節スタンスが中の人のロジックは別にしてGC関連市場の人たち的に一貫しているように見えないから)ので半信半疑ながら投資家買いもあって短国のレートが低下したって所じゃないかなあと思いますです、はい。

#最後は一部のマニアにしかわからない話を延々と致しまして恐縮至極









2009/02/06

お題「水野審議委員講演」

相変わらず分量が多いですな(--)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0902a.pdf

○まあとにかく量が多いのですが

全般的には経済見通しに対して極めて厳しい見方になっていて、展望レポートなどの日銀公式見解ベースよりもかなり下ブレをみていますわな。だから講演(挨拶)の副題が『―― 重要な金融と雇用のセーフティー・ネット――』となっているのでしょう。

で、今日アップされるであろう記者会見の内容は何となく情報ベンダーで見たのですけれども、割とフリーダム発言な感じになっていまして、先日の亀崎審議委員の会見もそうでしたが、ここもとの審議委員の会見がいい感じになって来ましたねという感じがするのですが気のせいでしょうか(^^)。

まあ審議委員の皆様の見解と執行部の見解が必ずしも一致しない場面が増えて来ている(特に今般の金融政策をどうするのかに関して)のが背景にあるのかなあとか勝手に想像するのですが、福井総裁時代とはちょっと勝手が違ってきた感じですかね。

ということで講演なのですが、例によってやたら丁寧(というか長いわやたら細かいわというか^^)なので、日本の経済見通しに関する部分と金融政策に関する部分を端折って読むことに致しましょう。金融危機に関する説明の部分も興味深いのですが、正直そこまでやってると長くてエライコッチャになるので今日は勘弁。


○日本経済の見通しは極めて厳しいと見ています

・ここもとの経済成長はやはり米国のクレジットバブルでした

というのが最初に思いっきり出てきますのでまずはそれを引用。

『サブプライム問題の本質は、不良債権問題です。わが国で不良債権問題が発生した際は、まず企業部門のバランスシートが悪化しました。商業用不動産の価格下落を受けて、企業部門の過剰債務・過剰設備・過剰雇用という「3 つの過剰」の解消が遅れ、企業活動は停滞しました。一方、今回の米国では、過剰債務・過剰消費を抱えていた家計部門からバランスシート調整が本格化しました。最近では、住宅投資の減少にとどまらず、生産・設備投資の大幅減少や雇用調整など企業部門のバランスシート調整も始まり、個人消費も減少に転じました。そして、この米国の内需縮小は世界全体に波及しています。』

ということで日本の不良債権問題に重ねています。

『昨年は、「先進国が減速しても、新興国の成長により世界経済は緩やかな景気拡大を続ける」という「ディカップル論」も存在しましたが、実際はそうはなりませんでした。最近の新興諸国の輸出・生産関連の経済指標の急激な悪化をみれば、過去数年間の高成長を支えていたのは、住宅価格上昇を背景にした米国の過剰消費であったことを示唆しています。』

そういわれてしまうと何か身も蓋も無いのですがそうですよね。

『したがって、今回の世界的な経済調整については、循環的な面だけではなく、構造的な面も大きいと認識しなければならないということになると思います。』

つまり回復まで時間が掛かるということですか。ということで、輸出依存の高い日本もこの影響を受けますという話になりますわな。

『また、輸出依存度が高いわが国も、こうしたグローバルな構造調整に巻き込まれざるを得ません。今後、輸出企業中心に供給構造を抜本的に修正する可能性があります。製造業では、能力増強投資の凍結の動きがみえますが、今後、設備投資削減が本格化し、雇用調整も厳しさを増す可能性は否定できません。』

ということで講演の副題にもある雇用面に関する話が幾つか指摘されています。


・雇用や個人消費に関して

さっきの続き。

『今後、設備投資削減が本格化し、雇用調整も厳しさを増す可能性は否定できません。雇用面について言えば、メディアでは、非正規雇用の削減が注目されていますが、最近の雇用関連統計をみると、正社員も、所定外労働時間や賞与が減少しており、雇用者所得は減少に転じています。さらに、今後の雇用調整については、製造業から非製造業へといった面的な広がりのみならず、早期退職者の募集などの踏み込んだ施策の拡大、企業倒産に伴う非自発的な雇用減少という形で深さを伴うことも懸念されます。(途中割愛)家計の消費支出行動をみると、節約志向や生活防衛意識の高まりが読み取れますが、雇用・所得環境の動向次第では、個人消費が一段と弱まるリスクはみておかざるを得ないと思います。』

ということで、その先で鉱工業生産に関して説明している中でもこのような指摘が。

『乗用車販売台数は世界的に冷え込んでおり、輸送機械産業の減産はまだ初期段階に過ぎない可能性もあります。そうなりますと、減産強化にとどまらず、製造業の雇用への悪影響を考える必要が出てきます。雇用面のセーフティー・ネット強化が急務であると、つくづく思われるところです。まさに、輸出の減少を起点とした「生産・所得・支出」の下方スパイラルに入ったと言っても過言ではなく、事態はハードランディングの様相を呈しています。』

>事態はハードランディングの様相を呈しています
>事態はハードランディングの様相を呈しています
>事態はハードランディングの様相を呈しています

また、個人消費の見通しに関しても先行きに厳しい見方を。

『当面は、実質GDP ベースの個人消費は前期比横這いか、マイナスとなっても小幅なもので推移すると見込んでいます。先行きについては、雇用・所得環境がさらに厳しさを増すことが予想される中、個人消費の地合いは引き続き弱まっていく可能性が高いと思われます。仮に、個人消費が腰折れするような展開となれば、先行きの景気はより厳しいものとなってきます。雇用不安を弱める政策対応が待たれる局面といえます。』

ということですが、政治状況がアレでは政策対応は中々厳しいのではないかと(涙)。


・先行きの回復見通しも厳しく

展望レポート中間評価に関して。

『しかし、言うまでもなく、わが国経済の先行きは、海外経済動向や国際金融情勢に大きく依存します。最近の経済指標をみると、欧米主要国のみならず、新興国も急速に悪化していますので、2008 年度と2009 年度の実質GDP 成長率は、大勢見通しよりも厳しい数字になる可能性は排除できません。この間、2010 年度も、大きなスラックが残るという意味で、成長率の数字ほど景気回復は力強くはないとみられます。』

海外が厳しいから中間評価よりダメになるでしょうということですな。で、その海外の見通しですけれども、世界経済に関する説明が色々あるんですけど、結論部分でこのように指摘しています。

『以上、米国経済を中心にお話してきましたが、テーマを世界経済に広げましても、その低迷は少なくとも2009 年前半まで続くと見込まれ、最悪の場合、2010 年まで底打ち感がでない可能性があります。』

ということで見通しは厳しいですねえ。


・リスク要因

で、さっきの続きでして、世界経済としてみた場合のリスクについて。

『この点に関連して、@米国経済の本格回復までには予想以上に時間を要する可能性があること、Aヒト、モノ、カネの往来が縮み出していること、B各国で従来と異なった形ながら保護主義が台頭するリスクがあること、の3 点についてお話したいと思います。』

んでまあその説明をしていますが、これまた全部引用してると大変な事になるので(^^)、端折りまくりで紹介。

『第一の点ですが、仮に、オバマ新政権による大型の財政刺激策の効果によって2010 年から米国経済が一旦回復軌道に乗っても、米国がバランスシート不況から脱却するには時間を要するというリスクです。』

『第二に、ヒト、モノ、カネの往来(行き来)が既に縮みだしている点が気懸かりであるとの見方がありますが、個人的に同感です。(途中割愛)投資銀行によるレバレッジを活用した収益拡大モデルの崩壊、バランスシート制約等を背景とした商業銀行における貸出余力の低下など、主要国の大手金融機関の金融仲介能力の低下は、世界経済の障害になっています。』

で、保護主義の話の前にもう一度この指摘が。

『こうした点を踏まえますと、世界経済が安定成長軌道に復帰するまでの時間が、予想以上に長くなる可能性は否定できません。主要国企業の成長期待は、少なくとも新興国の景気再拡大が始まるまでは低下する可能性があり、設備投資計画の縮小やM&A 活動も低迷するリスクが高い状況です。また、「金融ショック」による資金繰り悪化がその動きに拍車をかける可能性があることも見逃せません。』

そして保護主義云々の点についてはこのような感じ。

『第三に、各国で形を変えた「保護主義」が台頭するリスクがあるということです。米国では、大手金融機関への公的資金注入のみならず、GM 及びその金融子会社GMAC への公的サポートを打ち出しています。』

で途中飛ばしまして。

『こうした政策対応は、もちろん雇用の保護、景気の下支え、金融システムの安定化といった観点から理解できますが、一方で、これらの措置が自国経済・産業の過剰な保護とならないように注意していく必要はあります。』

『仮に、形を変えた「保護主義」的な動きが台頭すれば、各国の利害が一致せず、国際協調体制にほころびが出てしまう可能性がある上、一般に、民間企業の経済活動に対して政府が規制を強め過ぎることはモラルハザードの問題と表裏の関係があります。』

なるほど。

『もちろん、国際会計基準の適用など国際的なルール作りに関しては、話は別です。わが国が影響力を確保できるようにしておかないと、わが国金融セクターの地盤沈下につながるリスクがありますから、「ポスト金融危機」の世界の金融監督体制に関する国際的合意に関する議論には積極的に関与しておく必要があると思います。』

これは全く同意であります。結局日本って海外スタンダードに振り回されっぱなしじゃんと。


○途中をドカンと飛ばして金融政策に関して

『私の金融政策運営に関する基本的な考え方は、中央銀行の経済・物価見通しと整合性のとれる金融政策運営を行うべきである、というものです。』

つまり先行き悪化リスク高いので緩和するということですね。ということでその内容を駆け足で読んでみましょう。

・10月末から企業金融対策をしたかったんですね、わかります(^^)

『日本銀行は、2008 年度に入ってから景気判断を徐々に下方修正してきました。具体的にみると、昨年10 月30 日に公表した「展望レポート」では、「わが国金融経済は、既往のエネルギー・原材料価格高の影響や輸出の頭打ちなどから、停滞色が強まっている」という景気判断としました。その後、金融経済月報の「概要」における景気に関する冒頭表現は、昨年11 月こそ10 月末の「展望レポート」と同じ表現でしたが、個人的には景気の下振れリスクはかなり高いと考えており、本来は財政政策の領域である分野まで踏み込んだ金融政策も選択肢の中に入れておく必要があると考えていました。』

どう見ても執行部批判です本当にありがとうございました(^^)。

『1 月21 日・22 日の金融政策決定会合において、私は、CP 買入れスキームの決定、残存1 年以内の社債の買入れの検討指示、という「異例中の異例」と言われる政策に踏み切る決定に賛成しましたが、そのボトムラインには、以上のような厳しい景気の現状認識及び先行き見通しがあります。』

割愛した途中にあるんですけど、1月の景気に関する表現の「わが国の景気は大幅に悪化している」というのは嘗て使われたことの無い厳しい表現なんですね。


・今後の金融政策のポイント

『こうした見通しに加え、現に足もとの経済指標が急激な悪化をみせていることを踏まえますと、日本銀行としては、(1)コンフィデンスを含めた企業・家計部門の下支え、(2)金融市場における流動性確保、(3)企業金融の逼迫感の緩和など、いわゆる財政政策の領域といわれる分野まで踏み込んだ政策対応の準備が怠れないということを念頭におく必要があります。』

ということでFRB的な面に踏み込むかどうかという話をしていますが、その中での水野さんとしての検討ポイントが3点あるようですな。

『私としましては、政策運営における検討課題として、第1 に適格担保の範囲、第2 に、民間企業債務をどこまで購入するか、第3 に、どのようにしてターム物金利の低下を促すか、といった点を念頭において金融政策決定会合に臨んできました。』

2番がまあ財政政策に係る部分という感じでしょうか。

『この先適格担保の対象をどうするかについては、現時点で特に決めているわけではありません。わが国の金融市場の動向を注視しつつ、都度判断していくということです。』

ということで適格担保については軽くスルーしています。で、2番目の民間企業債務で社債の買入に関してコメントをしています。

『1 月の金融政策決定会合では、景気判断を、「大幅に悪化」に一段と下方修正しました。景気判断を大幅に下方修正したわけですから、私とすればCP に次ぐ買入れ対象として、社債の買切りを検討することに違和感はありませんでした。』

ほほう。

『ただし、社債の買入れに踏み切る場合には、その政策の目的・位置付けを整理し、対外的に丁寧に説明する必要があると思いました。すなわち、個人的には、CP の買入れについては「資金の目詰まり対策」及び「年末・年度末対策」と位置付けてきました。一方、残存期間1 年未満とはいえ、社債を買入れ対象にする場合、(1)先行き企業のキャッシュフローが減少することを先取りした、年度末を越えた金融市場安定化策である、(2)その政策意図は「市場機能が低下している金融商品を買い入れることで、その市場の機能回復を促すこと」である、といった整理ができます。つまり、CP 買入れとは位置付けが異なると考えています。』

この論点は重要なポイントであろうかと。つまりその先にありますが。

『このような整理は、現在のFRB の基本的な考え方と相通じるものがあります。というのも、FRB は機能不全に陥っている様々なクレジット関連市場に介入し、必要に応じて、その金融商品を適格担保や買入れ対象とすることを通じて、自らのバランスシートの一時的拡大を容認し、市場機能の回復を目指す「信用緩和政策」を採用していると考えられるからです。また、クレジット市場の機能回復や金融システムの安定を通じて、景気回復の基盤を整えることを目指しているとも思われます。』

つまり社債の買入って話になると、個別市場に日銀が介入していって流動性を回復させるというステージになる(CPは一応短期の期末対策ということで)ので、またこれは別の論点で考えて当否を考えないといけませんねという話なんでしょう。

で、昨日この関連発言でTB(どうもTDBという略称は帝国データバンクさんを思いだすので暫くTBって言いますね)が買われたのですがターム物金利誘導に関して。

『金融機関は、保有株式の評価損を計上した上に、今後は景気悪化に伴い、貸出金償却・引当が一段と膨らんでいく可能性があることから、自己資本の十分性を気にかけざるを得ません。3 ヶ月以上のユーロ円TIBOR レートが高止まりしている背景には、金融機関がそうしたバランスシート制約に直面するリスクがあると思われます。』

ということで、TIBORのレートって市場要因以外での決定要因がありますねという指摘をしています。その結果どうなるのかと言いますと・・・・

『こうした状況に変化がないならば、仮に、日本銀行がターム物オペを積極的に実施したとしても、3 ヶ月以上のTIBOR レートが大きく低下するかはわかりません。したがって、ターム物金利へ働きかける手法については、民間銀行の資本政策の動きを勘案しながら、具体的な検討を進めていくことが必要だと思います。』

会見でも「技術的にどうしたらよいのか難しい面がある」というような話をしていますけれども、まあTIBORという点で言えば金融機関の融資の状況にも依存するので難しい話だと思います。で、ここの発言に市場が反応してました。

『なお、3 ヶ月物国庫短期証券の毎回の発行額が、昨年12 月までは4.5 兆円でしたが、今年1 月は4.8 兆円、2 月は5.1 兆円へと増額されました。こうした中、入札日に市中消化が円滑にゆかず、荷もたれ感から発行レートが上昇気味となっています。ターム物金利への働き掛けを考える場合には、こうした動きにも目を配っておく必要があります。』

これは細かい目配りですが(^^)、ここのレートが荷もたれして高止まりするとイールドカーブの起点がいつまで経っても下がらないという結果になるので、まあやはりここを見ておかないといかんちゅう点には同意です。TB発行は今後増える一方だと思われますし。ちょっと長期に振りますよってロットでもないですからねえ・・・・


ということで、他にも色々とあるのですが、時間と量の関係でこの辺で勘弁。













2009/02/05

お題「またまたオペ雑談など/総裁会見」

米国10年国債利回りが3%に近づいてきましたねえ。

○オペの話とTB入札の話

昨日は国庫短期証券の第1回ということで、3か月ものの入札が実施されましたが、まあ事前に言われていたように0.3%に乗っかった入札。足きりは0.31%乗せでしたが、まあこんなもんなら流れたうちに入らないということで、その後強くなるのかなあとか見てましたが、セカンダリーの買いはそれなりに入っていたようなのですが、延々と0.30%がオファーのようで、やはり増発したというインパクトはあったのねという感じですわな。増発入札はこれからも続くので、まあ気合入れて買う必要もないでしょとなると、中々レートを押し下げるような買い方はしにくいのかなあと。追加利下げ思惑でも無いとねえ。

ま、今週になって足元の資金が出てきてることからGCレートが絶賛低下(ただし積み最終まで)しているのもゲロゲロ入札にならないで済んだ要因かもしれませんけど、そっちの方ではまた謎のオペが。

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of090204.htm

昨日のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba090204.htm

スポネの買現先を4兆円同額ロールしたら、0.10割れの応札という軽い嫌がらせのようなのが入って0.10%全取で札を切ったので落札額が3兆5千億円と結果的に予定額割れの巻。まあ0.09%以下で応札する方もいい根性してんなあと思いますが(そういうのはオペじゃなくて市場調達してください^^)、要するに「スポネは要らないから(準備預金積み最終越えの)2w位のタームを出せや」と言ってるんでしょと。大体からして応札が40683億円と言う時点で既に札割れ寸前ですけどね(^^)。

で、それはそれとしましてオペを毎日見ている短期市場関係の皆様が「????」となったと思われるのが午後1時にオファーされた本店オペでありまして、期間が5日〜12日というもの。

うーむ、足元GCレートは下がっていて、積み最終までは資金余っている筈なのですが、何ゆえこんな要らない期間の供給を打つのか良く判らんのですけれども、余剰日(年金定時払い)の13日に足が来るのならまだ判るのですが、まあそれにしても積み最終まで足元余り気味なのに資金供給ってえのも何だかなって感じがします。

ま、あたくしのような下々の者には判らん資金フローがあるのかも知れないですから勝手な講釈を垂れるのもアレですけれども、と言いつつエラソーに講釈垂れてみますね。えーっと、現状の市場状況としては、足元の資金が積み最終まで余り気味であって、かつ積み最終を抜けて新しい積み期間に入りますと例によって例の如く資金を持ってる大手銀行が横並びで資金を出さなくなってタイト感が出るというのがお約束のような展開になっているのでありますわな。そうしますと、タイト感の出てくる積み最終を抜けるタイミングまでの資金供給の方が「いる資金」でしょうな。

まあレポ市場どうでも良しというのであれば関係ないのでしょうが、レポ市場も視野に入れながらオペという話になりますと、インターバンクのコール翌日物のような市場と、先日付のターム取引も多いレポ市場の差も考慮に入れながらオペ運営をしていかないといけないのかなあとか外野は勝手に思うのですよね。

即ち、従来のインターバンク一点張りだったら大型余剰日や大型不足日に供給や吸収オペの足を打っておくと丁度良かったと思うのですが、国債関連の財政要因を除けば、レポ市場での資金調達をしている人ってその辺りの余剰不足って自分の所の資金繰りにあまり大きな影響は無いので、そこにオペの足をドカドカ持って来られると却ってその日がオペの足が増えて逆に資金のブレが大きくなる日になるので、その余剰や不足日、または月末や積み最終などを跨ぐオペの方がアリガタヤという事になると思われるのです。あたくしが何となく思っているだけなので間違ってたら指摘していただけると助かるのですけれども、まあそんな気はするのでして、インターもレポもって見ながらのオペをするのは難しいですねと思う今日この頃でありました。


○総裁記者会見より

株式買入方針決定後の会見要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0902a.pdf

まあ大体のところは昨日紹介した説明文書にある内容なのですが、あたくし的に読んでいて何かこう気になったのは「株式保有リスク」の点。

『(問) 今回の措置は、金融機関の株式保有リスクの削減を支援するという、前回の株式買入れと同じような趣旨になるかと思うのですが(途中割愛)。金融仲介機能を担う金融機関が株式を保有するという日本の金融機関経営におけるビジネスモデルについて、総裁としてはどのように考えておられるかご意見をお聞かせ下さい。』

『(答) 非常に難しい問いかけだと思っています。日本銀行として、金融機関が株式を保有することは一切望ましくないと思っているわけではありません。金融機関は、いわゆる政策投資であれ純投資であれ、株式を保有するリスクと採算性を十分に意識し、その上で自らの体力との関係で最適な保有を考えていくというのが基本的な考え方だと思っております。』

ほうほうそれでそれで。

『そのように申し上げたうえで、今の日本の金融機関の現状をみてみますと、やはり株式保有リスクが非常に大きいといえます。少なくとも、信用仲介をする金融機関のリスクの姿、プロファイルをみたときに、株価変動リスクが最も大きいという状態はやはり是正されていくべきだと思っています。』

いやーん。

『なぜ金融機関の株式保有がなかなか減らないかと考えた場合、最終的に一般企業の株式を誰が保有するのかという問題と密接に絡んでいて、それと表裏の関係にあるわけです。この点については、これまで個人の株式投資あるいは機関投資家の役割など色々な議論があったわけで、私共も金融機関の株式保有の問題だけを捉えて、問題が解決すると思っているわけではありません。ですから、私共自身も──中央銀行という意味でも政策当局者という意味でも──、それから一般企業経営者も、現在の状況について時間をかけて是正していかなければならないという意識を持つ必要があると思います。』

難しい言い回しですけれども、要するに金融機関は株持つなと言ってるように読み取れますな。投資銀行涙目と申しますか、欧米では投資銀行が商業銀行に衣替えしつつある昨今ですが、まあ投資銀行は金融機関じゃねえ(ある意味そうかもしれないけど)ということですね、わかります。

『そのためには、色々な枠組みというか、そうした動きを進ませるような環境を制度的にも作っていくことが必要だと思っています。それが何であるかについては、これから関係者が更に知恵を集めて議論していくべき話だと思います。』

という事だそうです。うーむ。


さて、最近話題の政府紙幣に関する質問もありましてその答え。

『(答) ご質問はいわゆる「政府紙幣」についてかと思います。「政府紙幣」の発行は、その仕組みの如何によって、実質的には将来の返済が必要な資金調達である「国債の市中発行」と同じとなるか、あるいは、通貨の信認を損なうなど大きな弊害を伴う「無利息永久国債の日銀引受け」と同じとなるか、そのいずれかになるものと考えられます。』

ということで、その後説明しているのですが、面倒なのでそのまま引用の巻。

『もう少し詳しく説明します。まず、「政府紙幣」が現在の貨幣、コインと同様の仕組みで発行されるというケースを仮定して考えてみますと、次のようなことになります。現在の貨幣、コインは市中から日本銀行に還流してきた段階で、政府においてこれを回収するための財源が必要となるという点で、「政府紙幣」もこれと同じ仕組みになります。従って、「政府紙幣」の発行は、「政府紙幣」が日本銀行に戻ってきた段階で結局は資金調達が必要になるという意味で、これは国債の発行と具体的に変わりはないと思います。』

『他方、「政府紙幣」が市中から日本銀行に還流してきたときにも、仮に政府がこれを回収せず、日本銀行に保有させ続けるという形で「政府紙幣」が発行されるというケースを仮想的に考えてみますと、この場合、確かに政府は回収のための財源を必要としないことになります。しかし、この仕組みは、日本銀行に無利息かつ償還期限のない政府の債務を保有させる点で、「無利息の永久国債を日本銀行に引受けさせる」ことに等しく、大きな弊害が生じます。』

で、その弊害とは。

『この弊害の中身、意味合いについてですが、日本銀行券の裏付けとなる日本銀行の資産として、無利息かつ転売不能な資産を保有することとなり、円滑な金融調節が阻害されたり、日本銀行の財務の健全性が損なわれたりすることへの懸念を通じて、通貨に対する信認が害されるおそれがあります。』

毎度の財務の健全性は兎も角として、金融調節云々に関して言えば、日銀のバランスの資産サイドが全部政府紙幣になったという極端なケースを想定した場合に、インフレ抑制の為に通貨吸収を行わないといけない状態になったら当然ながら売りオペをする事になるのですけれども、無利息の政府紙幣だと売りオペが出来ないという素敵な事態になりますというお話なんでしょうかね。よーわからんが。

『また、政府が、日本銀行による国債の直接引受けと同じ仕組みにより恒久的な資金調達を行うことが、国の債務返済に係る能力や意思に対する市場の疑念を惹起し、長期金利の上昇を招くおそれもあると考えられます。「政府紙幣」の発行については、政府が判断される事項でありますが、以上申し上げた点などを踏まえますと、非常に慎重な考慮を要すると考えられます。』

ということで。












2009/02/04

お題「あらま日銀の株買取/市場雑談小ネタなどなど」

TIBOR金利が下がらないのを「銀行間金利 下げ渋り」という記事を出す新聞は可及的速やかに経済専門紙の看板を下ろして頂きたいものです。TIBORと銀行CDや銀行CPの金利はだいぶ違ったりする(オファービットどころではなく!)んですけどねえ。

ま、TIBORって言ってるから「銀行間金利」だと思いたくなる気持ちは判りますが、シロウトさんなら兎も角、市場関係者様がそーゆー不勉強状態で金融政策あーせえこーせえと言うので話がややこしくなるのよね、と思った朝の某経済専門テレビ番組(笑)なのでありました。

#確かにCPとかTIBORとかは証券会社や債券プロパーの感覚ではワケワカラン所が多々あるのはその通りなんですけどね


○日銀の株式買取復活

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fss0902a.pdf

前回同様にプルーデンス政策の一環での買取。1ページ目に声明文がございますのでそちらを読んでみましょう。第2段落の途中から。

『わが国の金融システムの現状をみると、全体としては安定性を維持してきましたが、国際金融資本市場における緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まり等を通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に大きな影響を及ぼしてきています。』

ほほう。

『とくに株価の影響についてみると、わが国金融機関の株式保有額は2000 年代初頭に比べ減少をみましたが、現在発表されつつある今年度第3四半期決算では多額の減損や評価損が計上されるなど、わが国金融機関にとって、株式保有リスクへの対応が引き続き極めて重要な経営課題となっています』

保有していることのリスクですかそうですか・・・・・

ま、持ち合い解消で売らざるを得ませんでした状態だったのが前回でありまして、このときは市場への売却を一旦日銀が受ける事によって市場への売却インパクトを軽減するという形でしたが、今回はそちらは問題になっていませんのでこういう言い方になるのでしょう。でも「株式保有リスク」って何か嫌な響きだなあ。

『こうした状況を踏まえ、日本銀行としては、金融機関による今後の株式保有リスク削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る観点から、年度末を控えたこの時期に、金融機関からの株式の買入れを再開することが適当と判断したものです。』

ということで「株式保有リスク削減努力」と来ましたけど、政策投資で持ってるのを今更ここで叩き売りとかするのかなあ。

『日本銀行としては、今回の買入れの対象となった金融機関から、株式保有リスクの削減に向けた中長期的な取組みについて考え方の提示を受け、その後の具体的な取組みをモニターしていく方針です。』

何か売れ売れと言ってるように見えるのがちょっと気になる所です。


・・・・ということで、まあ別にこの施策自体は「今更こんな安いところで株を売るかいな」って思うのですが、「株式保有リスク」って話が出ているのに微妙にアレな物を感じるのは考えすぎですかそうですか。ちなみに基本要綱はこうなっています。前回の直しを行った表示になっているので、編集して前回と今回を比較できるようにしますとこんな感じで。

『この基本要領は、金融機関による株式の削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る趣旨から、本行が金融機関の保有する株式の買入等を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(今回)

『この基本要領は、金融機関による保有株式の価格変動リスク軽減努力をさらに促し、金融システムの安定を確保するとともに、金融機関が不良債権問題の克服に着実に取り組める環境の整備を図る趣旨から、本行が金融機関の保有する株式の買入等を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(前回)

価格変動リスクじゃなくて削減努力支援ってのが何とも。いやまあとりあえず適当な大義名分が無いからそういう言い方にしたっつー事なのかもしれませんけど・・・・・

前回は金融機関保有株式自動売却状態だったのに「削減支援」という言い方じゃ無かったのに今回入るのもオモシロイですねという所ですが、今回はそーゆーことで自動売却状態じゃあないので、そもそも論として金融機関の保有株式売却が市場への圧力になっていませんのであまり市場にはインパクトないんでしょう、と思ったら株式市場も後場寄り付き後30分くらいしか反応してませんでしたね(^^)。


○毎度お馴染み国債買入明細などなど

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0901.htm

例によってあたくしの手控えエクセルファイルで計算させた結果ですが、1月は月を通して長めの所が弱めに推移(というか12月の末にかけての日米の超長期爆発振りが凄かったのでその反動なのだと思いますが)したので、割と長いところが入ったでござるの巻。

増加額の額面14212億円に対して1年以内に償還を迎える銘柄の打ち込みが1月は3561億円と近来稀に見る少なめの展開。これはまあ市場環境の影響とか次の大量償還が3月ですからまだ時間が有りますねとか何ですけれども、たまにはやれば出来るじゃん状態になるんですね(笑)。

ということで、2月買入オファー分からはゾーン別入札になりましたので、この楽しみ方もまた変わってくるのでしょうな。とりあえずこの前のゾーン別輪番は1年以内と1年から10年の2本立てでしたが、1年から10年の方も短いゾーンが入った雰囲気でございますけどね。


○FB(今月からTB)のレートとかGCのレートとか

さて今日は記念すべき(かどーか知らんが)第1回国庫短期証券(T-Bill(TDBだそうです)というそうですけれども、あっと言う間にTBと言われるようになるに旧1兆ジンバブエドル)の入札であります。今回は償還対比の発行予定額が6000億円増額という大変に素敵な入札でありまして、昨日はGCレート下がっているのにFBが華麗にレート上昇して0.29とか0.295とかそんな感じっぽく推移。

事前に警戒が強いと入札が流れてもその後何とかなるの法則があるんですけれども、今回はどうなるのやら。入札が下手に流れないでその後全然売れないのが一番いただけないパターンではありますが、さすがに今回はちょっと調整するでしょう。というか調整しないと相場を止めるような買い手が出てこないかと思われ。

#と、あたくしが警戒すると北禿先生状態になる事も多々ありますので念のため

一方でGCレートは金曜の夕方になっていきなりT+1とかT+2の資金が出てきた所から雰囲気変わりまして、月曜はオペレートだけ妙に高かったですがレート低下して、昨日はなお低下してスポネの現先オペレートもドカンと低下。T+1とかは0.1台前半まで低下の巻。

また例によって例の如く月末の資金繰りの所を通過した途端に資金の出し手が市場に資金を放出してきたのですけど、その前が全然資金出さないでいた訳で、その前後のレートが10bp以上平気で違ってくるんですよね。まあそんなレート差が出るくらいですから、出し手さんの行動が皆さん横並びになっているのも容易に想像がつくところかと存じます。何と言うデジタルな動き。

いやあのですね、月末前と月末抜け後にレートが2bpとか3bpとかしか違わないのであれば別にそこで裁定するのも面倒だからってのも判るのですが、横並び的に動いたビックプレーヤーさんのお蔭で10bp以上平気で違うようなパターンが連続しているのに裁定取引に出ないで引き続き機械的に動くのって何だかねえと思うのですけれども。高いお給金で人を張って、これまた値の張る立派なお道具を設置しているだろうに何と言う機械的デジタル行動なのでしょうと外野的には思うのですが、まあきっと中の人は中の人で色々と外野の判らない深遠な事情があるんでしょうね(棒読み)。

で、どうせ積み最終が近くなるとレート上昇して、最終抜けると下がって、月末が近くなるとレート上昇するんですよね。何だかなあ。










2009/02/03

お題「積み残しのネタもあるのですが市場雑感」

どうもすいませんm(__)m

○3か月TB発行が3か月連続で増発されそうな件について

昨日財務省から2月と3月のTB発行予定額が公表されていましたが、その中で短期関係者が目を丸くしたと思われるのは「3月の3か月ものTB発行額は1回辺り5.1兆円〜5.4兆円」という点。

今月入札分から発行額が5.1兆円になったばかりで、その5.1兆円の消化大丈夫かねとかいう話をしているうちに先週の3か月もの(14週でしたけど)FB入札が華麗に0.3%近くまで流れた(債券先物がビックリして15銭ほど下がったのはご愛嬌)のですけれども、期末月にまた増発でこれで3か月連続増発の香り。対応する償還FBは1回辺り大体4.5兆円の発行でしたので、毎週9000億円の増発になる次第でありまして、どう見ても消化不安です本当にありがとうございました。

この予定通りに増発になりますと、単純に言って3か月ものだけでも12月対比で短期国債(名称は色々あるけど)で月に4兆円位の市中資金吸い上げ要因になりまして、「クラウディングアウト」という用語が頭の中をヒラヒラと舞い踊る次第であります(昨年対比で1回の発行額が最終的に9000億円増えるとなると昨年対比ベースではその13倍がトータルで発行増になるのかしら)。その上「財源は埋蔵金」という素敵な施策が次々に出る中で消化大丈夫っすかねえという所で。

いやあ埋蔵金活用って理屈の上では良い話なんですが、実務に落とし込むと中々素敵な問題が生じます(そもそも外為特会の剰余金なんぞはまさしく「数字上は利益だけど円のキャッシュフロー上は1円も剰余していない」ものですもんねえ)ねえって感じで。何か「理念的には仰せの通りですけど、実務にそれを落とし込むとマズーなんですけど」っていう話が色んな所で最近やたら目に着きますなあ、(保安上の見地から自粛)法とかまさにそうですけどね。

と、一部余計な悪態が入りましたが、国庫(特別会計含む)の資金繰りに関しては良く判らんところが多いのですけど、何でこう短国増発が多いのでしょうかねえと不思議なあたくし(と勉強不足を堂々言うのも何だが^^)。


○そういえばCP買入

すいません昨日コメントしないといけませんでした(汗)。

昨日のCP買入ですが、大まかな手順としてはこんな感じらしいっす。

1.前日に入札予定銘柄の事前審査を出す
2.当日9時半に入札オファー
3.日銀ネットから応札レートと応札額を入力
4.10時半にとりあえずどのレートで幾ら落札になったかの連絡
5.各々のレートに対応する銘柄を連絡
6.高いレートから順に募入銘柄を入れていった時に、買入限度を超えた銘柄に関してはレートの低いものを弾いて、その分に関して銘柄の差替または落札辞退のどちらかを選択するように連絡
7.その銘柄に関して6と同じ事が起きた場合繰り返す
8.全部の落札札の明細が確定(=募入が確定)した所で落札結果発表

で、その結果が17時になって出たのはお疲れ様でしたとしか申し上げようがございませんです。5番目から先の手順が人力作業大会だと思われますので、これはもう大変ですよね。

で、落札結果のレートの方は平均較差0.716%で足きり較差が0.511%になっておりますので、普通に考えて期越え3か月以内ものを打ち込んだと考えますと、平均売却レートが1.116%で足きり売却レートが0.911%ですね。平均の1.116%ってのはイメージちょっと高い気がしますが、足きりの0.911%に関してはまあそんなもんかなと。0.8だと低くて1.0だと高いなあと勝手なイメージしてたので違和感はそんなにないです。

#較差0.510%だと按分に掛かると思って0.511%に入れたら同じことを考えている人が複数いて按分になったというのはご愛嬌

で、落札額なんですけど、買入予定額3000億円に対して落札額が2185億円となりました。つまり800億円ほど滑った部分があるのですけれども、この800億円は何なんでしょと考察しますと、まあ普通に考えますと「応札しようとした銘柄が入れに行ったら買入限度オーバーで、他にそんなレートでわざわざ叩き込む差替え銘柄が無かった」という事でしょう。あとは按分の関係で端数が入らないというのもあるかもしれませんが、按分に掛かった人がそんなにいる訳でもないでしょうから些少な額でしょう。

ということで、初回で埋まった銘柄が少なくとも1つ以上はあるという事ですかそうですかという感じでありますな。あ、ちなみに「買入限度額オーバー」じゃなくて「前日の時点で信用判定がオッケーだった銘柄で当日になって信用判定アウトになった」という可能性もあるかなあと(普通はそうそう一夜で大変化せんと思いますが、今回は4半期決算発表の集中時期に被ってますので)は思いますです、はい。

だからどうしたと言われると困りますが、まあそんな入札でしたという所で。今回は決定から初回買入までの期間が短く、CP買現先オペで飛ばしている銘柄も多かったと思いますので、戻ってきた分で入れようという動きも次回以降続くでしょうね。


○FRBの超過準備付利に関連してメモ

こんなん出てました。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090129a.htm

詳しくはそちらに説明文のPDFまたはHTML版がありまして、読みにくいHTML版はこちら。
http://edocket.access.gpo.gov/2009/E9-1996.htm

大手銀行に決済委託をしている準備預金対象な人たちにも超過準備付利用の口座を作れるようにして利息上げますよっていう話っぽい(読み間違いだったらすいません)ので、GSEみたいなところは関係ないみたいですけど、FFレートの誘導目標を超過準備付利レートより低く設定しているという謎展開になっている金融政策的にその措置どうなのよという気がせんでもない。

いやまあとりあえずはそんだけのメモですけど、タカ派バリバリの筈のリッチモンド連銀ラッカー総裁が「マネタリーベースを増やすために長期国債買入を」っていう提案をしたのがイヤミ提案っぽく見えてきましたです(笑)。










2009/02/02

お題「ネタは後入先出で(汗)」

ということで西村副総裁講演関連から。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0901b.pdf(講演)
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0901b.pdf(会見)

○講演の話の流れが・・・

講演の方なんですけれども、経済状況の次に「金融環境」についてわざわざ一項を割いて説明しています。で、その次が経済の展望、金融政策運営と続きます。

まあここもとの金融政策のテーマが金融環境、特に企業金融の環境問題になっておりますので当然ちゃあ当然ですけれども、まあようやくこの辺りが強調されるようになりましたなという所で。

講演(挨拶)要旨の4ページ目から。

『まず、企業の資金調達コストをみましょう。政策金利の引き下げなどから借入金利は幾分低下したものの、世界的に投資家のリスク回避姿勢が根強く、それが日本の投資家にも反映される中で、CP・社債の信用スプレッドは拡大した状態が続いています。このため、全体としては企業の資金調達コストは横ばい圏内で推移しています。』

と、まあそちらはさらりと流してその後がアベイラビリティの問題。

『次は、資金調達の量の面です。CP・社債の発行残高は、発行環境の悪化から、足もとは前年に比べ大きく減少していますし、企業サイドでは、先行きへの不透明感の高まりから手元資金を潤沢に保有する動きが強まり、銀行貸出への需要は急増しています。』

で、途中の説明を全部割愛して。

『しかし、株価の低迷が続き、わが国の景気が急速に悪化する中で、金融機関は、先行きの信用コストの増大懸念や自己資本制約を意識せざるを得ない状況になってきています。このため、企業側からみた銀行の貸出姿勢は、一層厳しさを増しているのが実情です。また、企業間信用の面でも、中小・零細企業では、決済条件のタイト化の動きなどが拡がっています。こうした金融環境や企業収益の悪化を受け、大企業や中小・零細企業では、資金繰りが厳しいとする先が増加しているほか、先行きの設備投資計画を下方修正するという動きがみられています。このように、わが国でも、金融と実体経済の負の相乗作用がみられ始めています。』

で、問題は資本制約のところですという結論になりますので、金融機関の自己資本動向がポイントですという話ですが、その中でまあ現場労務者的にしっくり来るお話をしているのが中々よろしいかと思ったのでその辺りを。

6ページ目から。

『この点を概念的に整理すると次のようになります。銀行の経営が悪化し損失が拡大する状態になっても、それが自己資本で十分に処理できる範囲にとどまっている限り、社会における銀行の枢要な役割である金融仲介機能が直ちに損なわれることはありません。つまり銀行の金融仲介機能において、自己資本がバッファー、緩衝材として機能していると言えます。』

『しかし、損失の自己資本に対する比率がある臨界点を超えると一気に金融仲介機能に著しい支障を来たす可能性があります。こうした関係は、自己資本の規模と金融仲介機能の非線形性の問題と呼ばれています。これはバブル崩壊後のわが国でも、つとに観察されたことでもあります。』

この手の非線形な変化ってのはマーケットでも起きますし、恐らく経済活動でも起きる話なのですけれども、非線形な変化に関する考察ってのは後付けで検証は出来るのでしょうけれども、事前にどこに閾値があって破断界になっちゃうのかってのは中々定量的な分析が出来ないのではないかと思われる次第。まあだからこそマーケットが荒れる時に古狸の「何となくこれは嫌な予感」という非科学的あんど根拠レスな感覚が役に立つと思うのですが(我田引水)。

『バブル崩壊当初は、不良資産の増加が大きな問題として認識される一方で、金融仲介機能自体はあまり問題視されませんでした。しかし、1990 年代後半になると、銀行の自己資本不足が制約となり貸出を伸ばすことができないという、まさにクレジット・クランチの様相を呈したのです。』

ちゅうことでありますな。では経済状況に関する部分から少々。


○経済状況に関しては厳しい見方

3ページ目から。

『世界の金融経済情勢が急速に悪化する中で、各国政府や中央銀行は、様々な対応策を実施しています。景気悪化への対応としては、多くの国で大幅な金融緩和や拡張的な財政政策が行われています。また、金融危機への対応としては、各国の中央銀行は、自国通貨の流動性だけでなく、協調してドル資金を供給しています。各国政府も、経営不振に陥った金融機関の公的管理や公的資金の注入、預金保険の拡充や金融機関の債務保証を実施しています。このように、政府、中央銀行は矢継ぎ早の対応を行っていますが、米欧の金融危機の帰趨と世界経済の先行きについては、依然として不確実性が高いと言わざるを得ません。』

んでどういう不確実性かと言いますと。

『金融と実体経済が、相互にマイナスの影響を与えて悪化が進む負の相乗作用の下では、金融機関の損失額や資本不足額は時間が経つにつれて増加する傾向にあり、現在とられている対応が十分かどうか確実ではありません。金融システムが安定するには、結局金融機関の損失額についてかなり確信がもてる状況になり、それに対応して自己資本が十分であると認められるようになることが必要になります。まだそれがはっきりしていない現在は、金融危機の帰趨については、なお不確実性が高い状態であります。』

金融危機の帰趨に関しては最も肝心な「損失の確定」が未だに不透明な状況でありますので、兎に角まあその辺りがどうにかならんと話しにならんという所。米国の楽観相場を見せ付けられるとついこの点をうっかりしてしまいますので(汗)。

『世界経済の回復については、主要な地域で資産価格の調整が進み、総需要回復への展望が拓け、更に、金融システムの安定化が進み、金融面から実体経済への下押し圧力が低下していくことが転換点になるものと思います。その展望が拓けてくるのは、今年後半以降になるとみていますが、金融危機の帰趨に不確実性が高いため、世界経済の回復時期も、同様に不確実性が高いと考えています。』

つまり、金融問題が片付かないうちは論外という評価ですよね。そう考えるとかなり厳しい見方なのでしょう。


○長めの金利への働き掛けに関して、会見も含めて

当面の金融政策に関して、講演要旨ではサラサラと流しておりましたが・・・・・・

『こうした金利引下げの効果が十分に発揮されるためには、金融市場が安定的かつ円滑に機能することが不可欠の前提になります。こうした観点から、日本銀行は様々な対応を実施しています。第1は、流動性供給を通じた短期金融市場の安定確保です。』

で、流動性強化策の説明をした後輪番増額に関して言及。

『更に、昨年12 月には、長期国債の買入額をこれまでの年14.4兆円ペースから、年16.8 兆円ペースまで増額しました。現在、資金供給においては、短期の資金供給オペレーションを頻繁に実行していますが、円滑な資金供給を行っていくには、こうした短期の資金供給オペを繰り返し行うよりも、長めの資金供給を行っていくことが有効です。こうした観点から、長めの資金供給となる長期国債の買入を増額することを決定しました。』

ということで、輪番増額は調節上のテクニカルな話にしていますが、今般の金融政策に関連してはこのようなまとめをしております。

『これまで述べてきたように、日本銀行では、年末・年度末に向けた資金需要の高まりに対しては、積極的な資金供給を行い金融市場の安定化を図ってきました。また企業金融のタイト化に対しては、新しいオペの導入なども含め様々な措置を実施することで、企業の資金調達を円滑化させるとともに、これを通じて、実際の資金調達金利である長めの金利にも働きかけてきました。』

年度末はともかく、年末に向けて積極的な資金供給ってまたまたご冗談をというツッコミはさておきまして、一応そういうつもりになっているようですからそういう事にしておきましょう。で、「実際の資金調達金利である長めの金利にも働きかけてきました」っていうのが最近のお得意のパターンになるのですが、この点について記者会見ではヘッドラインで瞬間相場が反応したので、会見の方を見てみましょう。

『この説明(引用者追記:ゼロ金利制約が掛かる状態)を前提にお答えすると、各市場が相応に機能して裁定も働いているが、現在の金利ターゲットであるオーバーナイト金利は、これ以上下げたくても下げることができない状況に達した時は、「そもそもオーバーナイト金利をターゲットとする金利政策は何を目的とするものであったのか」、というところにまで遡って考えてみる必要があると思います。』(ここから先は会見要旨より引用)

さいですな。

『「日本銀行のオペレーションを通じて金利形成に影響を与えていく」というのが目的であるわけです。これに照らせば、「企業が実際に資金調達をしている長めの金利のところに影響を与えていく」というやり方が、やはり望ましいのではないかと思います。そのように考えれば、長めの金利に影響を与えていくために、オペレーション面での工夫を考えることが、このようなケースでは有効であると考えることができます。』

そういう認識なら何でターム物のオープン金利が上昇している時にオペレーションが平然と通常運転だったんですか(ドル資金供給とかはせっせとやってましたが、最初積極的実施すると言ったCP買現先は1本やって2週間放置でしたよね)と小一時間問い詰めたいところですが、まあそれは兎も角。

まあこういう言い方ですとターム物の金利を下げるようなオペレーションをしますよと言っているようには見えますな。実際のオペレーションがそうなっていないのは、今後ターム物誘導する時の糊代作りなんですね!(軽く悪態)

『例えば、長めの資金供給オペレーションによって、結果として長めの金利に下方圧力がかかるということは、2006 年までの所謂量的緩和の時代の経験からみても明らかです。もちろん、これは前提なしで常に成立するものではありませんが、状況によっては、これが有効になり得るということです。これは、例示ですけれども、一般的に申し上げれば、長めの金利に影響を与えるということは、「オペレーション面での工夫」ということで考えていくべきであると思います。』

ほうほう。まあ実際問題として2010年度までコアCPIマイナス予想っていうのは、少なくとも2010年度前半までは利上げ方向になりませんと言ってるような物なので、そこまでとは言いませんが、もうちょっと時間軸が効いても良さそうなもんですが、現状は中々そうなりませんな。話が段々ずれますけど、その点に関してはやはり足元のGCレートなどが不安定に推移している要因があるかなと思われます。別に0.2台前半なら前半で安定すりゃ良いのですけれども、時々急低下してみたり時々急上昇してみたりというのをやらかすとやり難くなるというもので。ま、それは兎も角として、この点に関してはオペの工夫よりも時間軸の方が効くでしょとは思いますけどね。

ところで、量的緩和に関しては「金融システム問題の軽減には効いたが、その他の効果は小さかった」という話になっております(時間軸効果による中長期金利の低下が効いたって話なんでしょ)ので念のため引用。

『ただし、量的緩和そのものは必ずしも当初考えていた結果をもたらしたとは言えないと思っております。すなわち、量的緩和は、金融システムの安定性という点では非常に重要な貢献があったわけですが、その他の点についての影響は比較的少なかった、というのが、その後の色々なデータからみる限り、一つの共通的な理解だと考えています。』


で、別の質問でオペの工夫について更に言及。

『まず、オペレーション面で工夫するということは、あくまでもオペレーションによって、長めの金利に対して直接影響を与えるということです。量的緩和の時代に長めの金利が下がったのは、時間軸効果のほか、やはり長めのところに資金を供給することによって、実質的に長めの金利を下げていったこともあるわけです。』

ということで長めの資金供給でターム物金利を下げるって話をしてますね。ほうほう。

『また、中央銀行は、一番短いオーバーナイト金利においては、比較的規模の小さい、参加者が限られたオペレーションによってかなり正確にターゲットを守ることができるわけですが、それが長めの金利となると、期間が長くなることのプレミアムや、個々の企業や金融機関の信用プレミアムといった要素も入ってくるので、どのようなかたちでオペレーションを組んでいくのかということは、それほど簡単に結論が出る話ではありません。』

TIBORみたいなのを意識している感じが窺える発言ですね。

『私は、現時点において、0.1%というターゲットについては、ゼロ金利制約により0.1%になっているということではなく、0.1%が最適だから0.1%になっていると考えております。そういうことから考えれば、長めの金利に働きかけるオペレーションのあり方に関しては、現在は、コンティンジェンシー(不測の事態)に備えて検討するというような段階にあると考えています。』

ふーんという感じですが、さてターム物誘導ねえって事で以下雑感。


○ターム物誘導に関するあたくしの雑感を少々

ターム物誘導と言いましてもじゃあ何を誘導するのよという話と、どうやって誘導するのよという話がございます。やるやると言ってもコントロールできなきゃ意味が薄いですし、意味無いものを誘導してもしょうがないと。

TIBORのレートが主に議論になると思うのですけどね、このTIBORってのはそもそもの発生時点ではLIBORがジャパンプレミアムだの何だので東京の市場実勢と乖離が生じてしまうから東京は東京で作りましょという話だったと記憶しております。そういう意味では当初は市場金利ちっくだったのかも知れませんが、銀行間でのターム物キャッシュの打ち合いというような事が起きなくなってからというもの、TIBORレートはローンの基準金利となっているというのが実情かと思います。

#だから以前(だいぶ以前)に悪態ついたのですけれども、量的緩和解除前に3か月FBのレートがバンバン跳ねている中でTIBORレートは毎日計ったようにちょっとづつしか動かんという素敵な動きをしてたりするのでありまして(苦笑)。

てな訳で、TIBORが下がるにはローンの需要が減衰する必要があるので、これに関しては通常のオペレーションで工夫の世界を超えているような気がしますわな。窓口指導でもすれば別ですが(苦笑)。

#もうね、臨時金利調整法復活で良いんじゃないですか(ヤケクソ)