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2009/06/30

お題「市場メモ/白川総裁講演」

今年も半年終わっちゃいましたね。

○末初レート上昇しましたな

金曜には末初のGC資金取りが当然のように残っていたようでして、末初のGCレートは強含みで推移。昼から共通担保オペで6000億円末初の供給を実施しましたが、0.189/0.18(51.7%)の結果。まー結局のところ金曜にオペ打ってもまだ足りなかったようで、共通担保での取り残し組が0.20%とかちょっと上とかの水準まで取る破目になったようで(最後は20割れたみたいですけど)、まあこりゃご苦労様でございましたですなあという所で。

まー期末ですので瞬間上昇するのはしょーがない面は多々あるのですけれども、今回に関しては期末接近した所で急にタームの資金供給オペをロールしない攻撃(&減額攻撃)でタームの供給をいきなり絞ったという現象がございまして、オペを淡々とロールしておけばここまでややこしい事になら無かったと思われます。ということで、正直言って今回の期末直前の調節スタンスは意味判らんという結論になるのでありました。

金曜と昨日は共通担保の資金供給が実施されていますけど、金曜にウィーク物一本実施している以外は1日に落ちる短い物でありまして、結果としてショートファンディングが溜まる格好になっておりまして、足元が重いってえ感じになってます。資金需給上は金がある筈なのですが、資金が偏在していて偏在している金がGC市場に出てこない金となっていたり、まあそうやって資金の回りが悪いという認識が広がると、念のためちょっと安全を期して資金を抱えるかという人が増えたりするとこれまた予備的需要が増大しちゃうでしょうし、まー変な話になりますわなという所かと思います。

そういや3月にも直前にタームの末越え供給を絞ってGCレート上昇でござるというのをやらかしたのですが、このときはスポ末の26日の引け辺りからレートが低下(って元が0.30とかだったので位置的にはだいぶ違いますが)してトム末の27日には0.15レベルに金利低下となったので、トム末までレート上昇した今回とはちと動きが違いますなってえ所で。

微妙に抱え込み状態になっている資金が6月末および末日を抜けてGCあたりに出てくるのかどうかは注目したいですが、何と申しますか今回のレート上昇にはイマイチ釈然としないものがあるのでございました。別に上がらんでもええじゃろと思うのですが、どうも何ちゃって量的緩和状態であっても四半期末の国債大量償還に対応して資金供給を期末前に絞るという仕様になっているのが今の調節スタンスのようで、それってどうなんじゃろという気はするのでありました。


一方、短い債券とかはやたら確りしてまして、先週入札をやった2年カレントは更に金利低下して0.30%とロンバート水準まで低下するでござるの巻となっておりますし、短期国債の方も堅調。普通こんな感じでショートファンディング溜まって足元重いとなりますと、短期国債に業者の外しが出てレート上昇してもおかしくは無いのですが、まるでビクともしないとは何ぞやという感じです。まー普通に考えれればGCには資金は回らないけれども債券には資金が回るというのが現状の抱え込み(?)資金の状況ですよというのと、そもそも投資家の買い意欲が強くて、業者の在庫がスッカラカンになっているとなっているんでしょうなと想像される次第でありまして、このGCとの微妙なミスマッチが何か味わいの深いものを感じます(てか単に市場間裁定が効かないだけのような気がしますが、苦笑)。

以上マニア向け市場雑談でした。



○バブル対応の金融政策・・・・ですが、単純な予防的引き締め論ではありません

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/ko0906e.htm
第8回国際決済銀行年次コンファランス(スイス・バーゼル)における白川総裁講演(6月26日)の邦訳「危機を未然に防止するためのミクロ・マクロ両レベルでのインセンティブを巡る考察」

ということで、本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906e.pdf

本文7ページしかないのですが、講演している場所が場所なだけに、論点をコンパクトにまとめていまして、重要そうな所を引用しようとすると全部引用しないといけなさそうな講演です。

・・・・ということで、まあおまいら全部読めと言うとネタとして終了してしまいますので、無理矢理かいつまんで引用するでござるの巻です。


○冒頭に掲げた「質問」が結構重いです。

『はじめに』って所から。

『こうした点(引用者注:ミクロプルーンス的な観点での金融監督・規制へのアプローチ手法)に関連して、2つ質問を発してみたいと思います。』

ということで。

『第1の質問は、「法的に有効なネッティングは、金融システム全体のリスク削減に寄与してきたのであろうか」というものです。』

『確かに、ネッティングはカウンターパーティリスクの削減という点で意味があったと考えられます。しかしながら、一旦リスクがある程度削減されると、金融機関はより大きなリスクをとろうとします。その結果、ネッティングがマクロ的なリスクを削減することに寄与したかどうかは、必ずしも明らかではありません。』

確かに・・・・・

『第2の質問は、「低インフレ、高成長、低金利という良好な経済環境に将来再び直面した場合、金融機関は、レバレッジの拡大といった戦略とは異なる戦略をとるだろうか」というものです。』

『確かに、今回の金融危機の教訓に学び、慎重な戦略をとる先も存在するでしょう。しかし、多くの先では、厳しい競争のもと、株主のROE(資本収益率)引き上げ要求に抵抗することが難しいのではないでしょうか。』

ということで、マクロプルーデンス関連のテーマでお話が始まります。

『ミクロレベルのインセンティブの問題としては、金融機関が「大き過ぎてつぶせない」(“too big to fail”)という問題にどう対処するかが、最大の論点となりますが、マクロレベルでは、金融政策が重要なポイントとなります。そこで本日は、バブルに対する金融政策対応に主として焦点を当てたいと思います。そのうえで、金融規制・監督についても、若干触れたいと思います。』


○リスクテイキング・チャネルに関連して

で、最初の小見出しは『リスクテイキング・チャネルの重要性』となります。

これまた説明部分のどこを切り取って引用したらいいか悩む所なのですが(超大汗)、バブルに対する金融政策という論点で、従来支配的であった考え(資産価格変動に金融政策が事前対応するのは将来のインフレや成長率に影響を与える場合のみで、バブル崩壊したら積極的に対応)を紹介した上で、このような話に。

『バブルに対する金融政策の対応を議論する際には、金融政策の波及経路をどう理解するかが極めて重要です。ニューケインジアン・マクロ経済学に代表される近年の金融政策分析では、インフレ率と産出量を安定化させる最適金融政策に研究の力が注がれてきました。インフレ率や経済成長のボラティリティの低下は、それ自体経済厚生を間違いなく改善させるものですが、経済のダイナミクスは、それだけでは終わりません。一旦、マクロ経済が安定化すると、標準的なニューケインジアン・マクロ経済学では考慮されていない波及経路が重要になってきます。これは、しばしば、金融政策の「リスクテイキング・チャネル」と呼ばれています。』

『具体的には、良好な経済・金融情勢のもと、経済主体のリスク認識やリスク許容度は、徐々にではありますが着実に変化し、そのリスクテイク姿勢に影響を及ぼします。これにより、金融機関の貸出やレバレッジの拡大が進み、背後で金融面の不均衡の蓄積につながります。このような不均衡は、ある閾値を超えると、何らかのショックを機に突然顕在化します。この結果、金融システムが不安定化し、経済活動は著しく悪化します。』

というのが、まあ現下で現実に起きていることではございます。で、そのリスクテイキング・チャネルがどんな形態を取るのかという説明があるのですが、これを引用し出すと益々全文引用の世界になって、何やってるのかという話になるので引用割愛しますけれども、具体的には「満期構成のミスマッチ」「資産価格の上昇」として表れ、これが相互作用を起こすことによってレバレッジの拡大により順回転を起こすという説明になっています。で、結論。

『リスクテイキング・チャネルを考慮すると、金融政策運営に当たって、以下の2点を認識することが極めて重要です。』

『第1に、銀行は、金融政策効果の波及の媒体として重要な役割を果たしています。銀行行動は、金融仲介における銀行部門のシェアにかかわらず、経済に大きな影響を与えます。(具体的な説明は割愛しますが、状況が良いときに上記した相互作用の順回転が起きて、一旦逆に向かうと銀行部門のバランスシートが毀損するという話です)』

『第2に、上昇局面と下降局面の間には、非対称性が存在しています。上昇局面はゆっくりとしか進行しませんが、下降局面は、資金流動性の不足に対して銀行が待ったなしの対応を迫られますので、非対称的に速いスピードで進みます。さらに、一旦コンフィデンスが失われると、その修復には長い時間がかかります。金融市場参加者が指摘するように、クレジット・ラインを切るのは一瞬でできますが、これを再構築するのには、はるかに長い時間がかかります。』

これまたその通りの現象が発生した訳ですが、別に市場性のものだけじゃなくて、この手の非対称性は色んな所にあると思うのですが、大学受験の数学で頭が止まっている無知なあたくしの脳味噌では理解に苦しむ数式を駆使する皆様におかれましては、数式処理しやすいからなのかどうか知りませんが、この手のノンリニアな挙動を反映してくれない話をされまして、10ウン年も現場で労務者をやっておりますと何度も見る破目になるノンリニアな挙動の話をするといきなり会話が噛み合わなくなるのが誠に遺憾の極みでございまする。いや勿論最先端ではそういう事を反映した研究がなされているのでしょうけれども・・・・・・


○で、金融政策を巡る論点ですが

『以上のようなリスクテイキング・チャネルに関する理解を前提にすると、バブル崩壊の前後における非対称な金融政策は、どのような帰結をもたらすでしょうか。仮に中央銀行がバブルの崩壊まで金融政策対応を行わないとコミットしたと受け取られてしまうと、民間経済主体は間違いなくこの根拠のない期待をもとに行動するでしょう。すると、満期構成のミスマッチと資産価格の上昇が加速し、その結果、バブルは一層拡大し、バブル崩壊後の落ち込みもより深刻化します。』

となりまして、標準的なニューケインジアン・マクロ経済学の話をしていますが、そこの部分は引用割愛して、バブルに対する追加的措置という点に関して。

『では、バブルに対する追加的な措置(extra operation)については、どう考えればよいでしょうか。資産価格の変動は、それがインフレや成長率に影響を与える限りにおいてのみ考慮すべきという命題自体には、私も異論はありません。しかし、ここで真に問われるべき問題は、「インフレや成長率に影響を与える限りにおいてのみ」という表現を、金融政策の実践上、どう理解するかであると思われます。』

『今申し述べたリスクテイキング・チャネルを通じた波及メカニズムの時間的パターンは、住宅投資や設備投資といった通常の金利チャネルを通じた波及メカニズムの時間的パターンと大きく異なります。リスクテイキング・チャネルにおいては、前半のプラス効果と後半のマイナス効果の発現の仕方は非対称的です。そして、何よりも、マイナス効果の発現タイミングに、著しく大きな不確実性を伴います。こうしたリスクテイキング・チャネルの特性から、中央銀行が道具として用いる通常のマクロ経済モデルには、満期構成のミスマッチや資産価格から生じる効果が、短期についても長期についても、十分取り込まれていません。』

ということで、中央銀行の取るべき課題はどうなんでしょうという事ですが、これまた論点の提起という形になっていまして、ってまあ今まさに起きている事態に対することですから結論が出るのは先の話ではありますが、論点を色々と提示しています。

『第1は、バブルに対する金融政策の対応です。』

と来ると、「BISビューキタ-----(゜∀゜)-----!」と言いたくなるのですが、どうもそうでもなさそうな話でございます。

『この問題は、金融政策がバブルの流れ、すなわち過剰な資産価格上昇に対し逆らうべきかという形で、しばしば単純化された議論が行われてきました。しかし、この論点をこのように考えることは、議論をいたずらに混乱させるだけのように思います。いかなるセントラルバンカーも、金融政策のみでバブルを防ぐことができるとも、防ぐべきであるとも考えていないと思います。』

ということで、

『より適切な論点の立て方は、「インフレ率以外のすべての指標が政策の引き締めを必要とする兆候を示している状況、すなわち、資産価格が上昇し、貸出やレバレッジ、満期構成のミスマッチが拡大すると同時に、経済が過熱する一方で、インフレ率のみが低位安定している状況において、金融政策をどのように運営すべきか」ということだと思います。』

ということで、この場合白川総裁は「対応が必要だが、金融政策だけでの対応ではなくて、プルーデンス政策手段などの手段が必要だという第2の論点の話をしていますが、いい加減引用がくそ長くなってきたので割愛。

で、最後の論点はミクロレベルでの規制の対応力という話でして、こちらも金融政策運営のありかたと同じく重要だという結論になっています。

『金融機関の自己資本や流動性の状況は、そのビジネスモデルに大きく左右されます。金融機関のビジネスモデルは、国により、時代により、また金融機関により異なります。問題は、規制当局がビジネスモデルを評価できるかどうかです。ビジネスモデルの違いを踏まえ、自己資本比率規制を見直していくことは、金融政策の運営のあり方と同様、重要な政策課題だと言えます。』


○で、結局結論はこれから出していくのでしょう

で、最後の結びを引用。

『結びにあたり、経済全体としてのリスクテイクの規模を決める要因は結局のところ何であるかを自問してみましたが、単純な回答はないように思います。しかしながら、将来の危機を防ぐうえで、ミクロ・マクロ両面からのアプローチが必要とされていることは間違いありません。』

ということで、これはまあ大変に難しい課題なんだろうなあとは思いますが、今般の知見を将来に生かしていただきたく存じます次第であります。

で、それはそれとして、何かまた例によって例の如く、この講演をニュースに仕立てると、どうせ「白川総裁はバブルに対する金融政策の事前対応の必要性に言及」とかいう書き方になって日銀批判したい人の良い燃料投下になるんでしょうなあとか思う次第ですが、実際に講演内容を読みますとそんな単純な話をしているわけでは無いという事が判るかと思います(^^)。

#結局今日も引用大会になってしまいましたな









2009/06/29

お題「中村審議委員講演など」

その前に市場メモ。

○金曜は資金供給実施とな

金曜に申し上げた不思議オペによりましていきなりGCレートが上昇した四半期末でございますが、金曜はスポットウィークの国債買現先は同じように8000億円に減額になりましたが、スポネの国債買現先を2兆円に増額し、全店オペ2本で1兆4000億円のショートタームの供給を実施。

金曜に1兆4000億円打ち込むなら木曜に共通担保ロールしておけよとか思うのですが、案の定結果は高めでして、末初の国債買現先の0.170/0.16はまあ良いとして、共通担保の末跨ぎ2日物も0.170/0.06となり、共通担保の9日物は0.154/0.15とこりゃまたちょっとお高めですねという感じ。

いやまあ0.2とかになってないので高くないと言われてしまえばそれまでなのですが、暫く前までのオペレーション姿勢は「潤沢にオペ実施してコールもさることながら、GCレートも0.1台前半の低い水準で安定させる」という感じだったので、4半期末前に急に資金供給を絞ってレート上昇っていうのはちょっとギャップがあって、今までの供給スタンスに何かあったんですかという思惑を呼びやすいですなという所で。

共通担保のロールを落としたり国債買現先を減額したりで金曜に来るまでに供給を3兆円以上減らしてまして、いやまあ減らした分に関して資金需給要因上金がちゃんと市中に出てくれば良いのですが、今回の余剰は国債償還要因が大きく、その資金余剰分がマーケットにきちんと回っていないという状況ですんなり供給絞るとGCが重くなりますわなという所かと思います。

何かこう暫くやってなかった微妙な不思議調節がまた炸裂という感じで。


では中村審議委員の講演と会見から。

講演(挨拶)要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906c.pdf

会見要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0906c.pdf


○珍しく日銀の業務やら財務諸表の話が先に

金曜にご紹介した記者会見にもありましたが、講演の説明が景気に冠する話の前に、日銀の役割(金利を上げた下げたの話じゃなくてインフラに関る部分)に関する話などを展開しています。まあ皆様におかれましては先刻ご承知の話だと思いますので華麗にスルーしますが、日銀券ルールに関する説明はどうも日銀ご担当の記者様におかれましても理解されておられないお方がおいでのようですので(笑)、改めて引用(^^)。

『わが国では、国債発行や年金の支払い、税金の徴収等、財政関連の資金の変動幅が大きく、時には10 兆円近くも資金の過不足が生じることもあります。機動的に金融調節を行うためには、負債の伸縮に合わせて、資産を伸縮させることが重要です。こうした観点から、短期的な振れが大きい政府預金等や、機動的に残高をコントロールする必要がある当座預金に対しては、短期オペ資産を保有する一方、長期性負債である銀行券残高に対しては、主として長期の資産である長期国債を保有して、円滑な金融市場調節運営を行っています。一般企業が財務体質を安定させるために、流動性と固定性とに分けて、それぞれの資産、負債残高を調整していることと、基本的には同じ考え方だと思います。』

と、企業財務の話を引いて説明するのが企業経営者出身の審議委員さんらしくて宜しいかと。だから銀行券ルールを設定しているのですよという説明はもう何度もあちこちで引用しているので割愛しますが、現状に関してはこんな状況のようで。

『因みに、本年3 月以降、長期性資金供給のために、毎年21.6 兆円ペースでの長期国債購入を行っていますが、当面は「銀行券ルール」に抵触する事態は発生しないと考えています。』

だそうです。


○経済には慎重

海外経済の話に関しては、まあ基本的に金融経済月報で示されるような慎重な見方になっていますが、特に先行きに関しては商船三井出身らしい例えで、厳しい見方をしています。

『世界経済は暴風雨圏からは抜け出しつつありますが、極めて濃い霧の中をレーダーを頼りに、減速航海している状況にあり、引き続き先行きの不確実性は高い状況です。』

というころで、全体感の他に地域別の動向についても説明していますが、米国に関しては住宅市場動向の先行きに対して注目しつつも極めて慎重な見方。欧州に関しては在庫調整の進捗遅れや中欧東欧の金融や経済ショックへの懸念(先般のラトビア通貨切り下げ懸念も引き合いに)、新興国に関しては財政以外での牽引役がいない点と、まあ先行きに関しては極めて慎重な見方を示しています。引用すると長くなるので勝手に端折ってご紹介しました(^^)。


で、国内経済に関しても展望レポートの線よりちょっと慎重っぽく見えますな。

『これまでのところ、国内経済は、只今申し上げたシナリオに沿うかたちで展開しています。足許、わが国景気は下げ止まりつつあり、4〜6 月期にかけては、これまでのフリーフォール的な状態からは脱し、前期比でみた成長率はプラスに転換できると思います。(説明部分割愛)ただし、この半年間に経済活動の水準が大幅に切り下がってしまったため、輸出、生産が持ち直したとしても、回復を実感し難い状況が続くと思います。』

『個人消費は、今後、自動車減税等の経済危機対策による押上げ効果と、物価下落による下支え効果が見込めますが、雇用調整や賃金の引き下げが更に拡大すると、足許、改善傾向にある消費者マインドが再び悪化し、消費全体が弱めに推移する可能性もあります。設備投資についても、先行きの需要がどの程度の水準まで回復するか見極め難いだけに、新たな投資に対しては抑制的とならざるを得ず、大幅な増加は期待できません。』

ということで、まあ慎重ですわな。また物価に関してですが、原油価格上昇を経済に対する悪影響要因として懸念しているのもポイント。

『なお、このところ原油価格が再び上昇していることには注意が必要です。中国が原油、鉄鉱石、銅など様々な原材料の輸入を増やしていることや、リスク許容度が回復してきたファンド等の投機資金が相場を押上げている、といった見方があるようですが、こうした価格上昇が続き、仮に物価全体の上昇に繋がると、所得が減少する中で家計を圧迫することとなり、経済の回復に水を差しかねません。』

で、先行きリスクに関しては下振れリスクと不透明感意識ですが、引用の方は割愛。それほど強烈な下振れリスク意識ではないですが、まあ慎重は慎重です。


○金融環境に関して

金融環境に関する部分で、現状認識と先行きの政策運営に関る部分から。

『これまでに導入してきた各種措置は、市場の安定化にそれなりの貢献ができたと思います。CP や社債の発行環境は昨年末に比べて、大きく改善しています。CP の発行金利は低下しているほか、社債についても、当初計画を増額して発行する企業もみられるほか、昨年末には起債が難しかったシングルA 格企業の案件も増加しています。』

さいですな。

『全体でみましても、CP、社債の発行金利の低下などから、企業の資金調達コストは一頃に比べれば低下しているようです。この間、6 月5 日にオファーされたCP 等買入れオペは、応札額がゼロとなりましたが、これはCP 市場の機能が改善してきたことの証左と捉えることもできます。』

これもそうですね。

『もっとも、世界経済回復に関する不透明感が強い中、今後、企業業績の悪化によるキャッシュフローの減少も見込まれ、合理化等に伴う資金需要の増加も予想されるだけに、先行きの企業金融の環境は全体としてはなお厳しい状況が続く可能性があります。また、金融市場も改善傾向にはありますが、未だ正常な状態に復したといえる状況ではありません。』

ということで、まだ金融環境に関しては厳しいと。

『一方、これまでの政策対応は、中央銀行の政策手段としては異例の措置も含まれており、必要な期間に限り、必要な規模で実施することも肝要です。このため、実施期限を9 月末と定めている措置の今後の取り扱いについては、金融経済情勢の推移をしっかり点検しながら、予断を持たずに検討していく必要があると思います。』

ということですが、まあこれは普通に考えますと、「今の状況のままであれば企業金融に関する各種措置は延長しますよ」という話になるのかと思います。


では記者会見。

○企業金融支援関連の措置に関して

話の流れということで、その辺りの質疑から。

『(答) 現在の政策の期限は9月末ということでまだ時間がありますし、来月には短観が公表されますので、現在の措置が必要かどうかということは、時間をかけてみていきたいと思います。』

現状に関しては講演と同じですが、より具体的にはこんな感じ。

『足許については、確かに社債の増発などがみられますが、まだBBB格についてはスプレッドが非常に高い状態ですし、金融市場においてもまだ神経質な動きがみられます。企業金融全般としては、一時に比べれば随分緩和的になったと思いますが、これから先については、やはりまだ厳しい面があります。』

ということで、現状のままであればどうなるかと言いますと・・・・・・

『これから色々な資金需要や、業績の悪化といった問題もありますので、現時点の情報で判断すると、まだ少し早いのではないかと思いますが、ただ、まだ2か月ありますから、よく様子をみて総合的に色々なことを考えていかなくてはならないと思います。講演でも述べましたように、こういった異例な措置については、常に出口のことを考えながら行うのが当然です。ただ今のご質問は仮定になるかと思いますが、現時点に限って言えば、以上のような感じを持っているということです。』

現状から著変が無ければ時限措置は延長ですということですな。


ではバックストップの措置に関してどう考えるかという話なのですが。

『(答) まず最初にCP、社債の買入れについてお答えします。これは、セーフティーネットではありますが、セーフティーネットがあればそれを前提に色々なことも想定されます。そのままにしておいても良いのではないか、といった意見もありますが、この措置があるからそれを前提にした行動をとる、ということも考えられますから、必要がなくなれば止めるべきではないかと思っています。』

なるほど、それもそうですね。原理原則に関る部分についてはきちんとしている方なのですな。うんうん。


それから、これらの措置はセット物なのか別々物なのかという話ですが。

『(答) 2つご質問がありました。1点目は、どういう状況になったら止めるのかということですが、導入したときに色々なマーケットに歪みが出ており、非常に緊張感があったため、その状態がかなりの程度回復しているかどうかということを総合的に考えなくてはならないと思います。どの数字が変わればということは言えるものではありませんし、先行きに対する不安感も含めて、総合的に判断しなくてはならないと思います。CP、社債の買入れなど色々な施策があり、実際の施策は個々に行っていますが、例えばCP市場が回復したら良いというのではなく、総合的に考えていかないと政策を見誤るということにもなり兼ねないと思います。』

ということで、企業金融措置は全体として1セットとなっており、それに対して現状認識としてはまだ継続の必要があるという話かと思います。更に具体的にどうなったらどうするというような具体的な考えを聞かれまして、その中での回答はこんな感じです。

『(答) 非常にお答えするのが難しいのですが、完全に全て正常化するまでということではないと思います。現在非伝統的な施策を何のために行っているかというと、やはり企業金融を支援するためですので、金融マーケットがどのような状況にあるかということ、企業金融がどのような状況にあるかということ、そして足許と将来の状況――例えば、先行きに対する不安感――なども影響してくると思いますので、それらを総合的に考えなければならないと思います。』

ということで、答えにくい話ですが、回答のポイントとしては「非伝統的な施策を何のために行っているかというと、やはり企業金融を支援するため」という所かなあと思いましたです、はい。

また期限延長をいつ決定するのかという質問ですが。

『(答) 例えば、期限が切れる前日にいきなり止めるようなことはやってはならないと思います。期限が来たら自動的に止めるというのではなく、きちんと説明し、ある程度の時間軸を置いて行っていかなければならないと思います。』

『(答) こういう異例な対応ですから、そういう意味ではぎりぎりまでみていくということにはなると思いますけれども、あまりぎりぎりでも分かり難いということです。来月か再来月かという質問には答えに窮します。』

ということですので、まあ普通に考えると8月の決定会合で決まるという事ですね。


○景気に関してなど

景気に関してですが、企業業績に関してこのような認識を示しています。

『また、倒産件数についてですが、地方経済は非常に厳しい状態だということを是非理解してほしいという意見がありましたが、具体的な計数を挙げてのお話はありませんでした。日本全体では、先月の倒産件数は少し減少しました。今後について詳細は判りませんが、フリーフォール的に悪化した経済が少しずつ下げ止まりつつあることと整合性があるのかもしれません。ただ、1か月だけの数字ではわからないので、これからもみていく必要がありますし、これまでは製造業がダメージを受けていましたが、それが非製造業などに波及することも考えられます。企業業績等はこれから厳しい局面を迎えることも考えられるため、まだまだ予断を許さないと思っています。』

ということで、企業面に関しては厳しい見方のようですな。

また、今回の懇談会では経済情勢に関する話を色々と聞いたという話をしていたのもまあ印象的ですな。冒頭の中村審議委員の説明から。

『先程申し上げました経済情勢については、色々な方からお話を頂きました。中でも、昨年秋以来の内外経済情勢の急激な悪化が、県内の中小企業に及ぼしている現状について、数多くの指摘がありました。また、新潟県経済の特徴として、経済が回復していく際には、その足取りが全国比で遅めになる傾向があり、最近の全国的な景気の下げ止まり感は、まだ県内では広くは実感されていないとの意見も紹介されました。』

『他方で、県内経済は、食品加工をはじめとする多様な産業がモザイク模様になっていることから、今回の景気悪化の深度は全国ほどには深くないとか、非製造業におけるインフラ関連の設備投資の事例なども紹介されました。このほか、昨年来の為替の円高によって、新潟県に来る海外――ロシア、中国、韓国など――からの観光客が大きく減っているという話もございました。』

『それ以外の話題としては、日銀の金融政策に地方の経済、あるいは地方の声が十分に反映されていないのではないか、きちんと吸収していただいているのか、といった意見も頂戴しました。』

なるほどという所で。中村審議委員の講演関連はこの辺で。



○その他少々

・これはオモロイレポート

金融機関の流動性リスク管理に関する日本銀行の取り組み
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fss0906a.htm

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/fss0906a.pdf

まー何ですな。金融政策というと金利上げ下げだの国債買うの買わないのという話がとにかくクローズアップされるのですが、現場労務者的にはこういう話もまた非常に面白いので、そーゆーのに興味のある方や現場労務者の皆様におかれましてはご一読を。じゃあこのレポートのどこをどう紹介しますかと言われましてもちょっと引用がムツカシヤなので(汗)、気が向いたら紹介します。


・FRB各種措置の延長・・・・というかとりあえず現状追認の減額がメイン??

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090625a.htm

お題は『Federal Reserve announces extensions of and modifications to a number of its liquidity programs 』でして、冒頭もこうなっているのですが・・・・

『The Federal Reserve on Thursday announced extensions of and modifications to a number of its liquidity programs.』

でも、この延長って12月末だったのが2月1日になってるという程度の延長で、それよりも後の方に延々と書いてある各種措置の減額や一時停止の方がメインのような気がするんですが。ただまあ今回の減額または停止に関しては、必要になったら復活しますし増額しますよって説明を入れています(当然ちゃあ当然ですけれども)ので、まー今回は微調整は微調整。

ただし、方向性として従来は「質的緩和どんどんやりますよ」だったのが、中立から出口模索になっているという点では、ここもと地均しが行われているからサプライズにならないとは言え、まー方向性としては一旦中立にという感じでしょうか。







2009/06/26

お題「中村審議委員講演・・・・の前にネタが幾つかあるもんで」

順番がひっくり返ってどうもすいません。

○無風の筈だったのに不思議調節が久々に炸裂でござるの巻

小見出しが長いですが(笑)。

2年国債入札とか増発なのにオファーサイドの向こう側で落札になってその後も踏み踏みさんとか、3か月TBは堂々の0.155%ビット(前日の入札日は0.158%オファーの0.16%ビットだったので貫禄のレート低下でございます)となるわと債券市場に流入すべき金がとっても余っているんですねえという状況は昨日も継続していたのですが、足元のGC市場では変調が。

えーっとですね、昨日は3か月TB入札の話しばっかしておりまして、オペの話をだいぶスルーしちゃってましてどうもすいませんなのですけれども、超無風の筈だった6月末のところで急に久々のワケワカメ調節が登場しておりまして、昨日はその影響がモロに出て来ましたという結果になりました。

と申しますのは、水曜の調節からの話になりますが、水曜に何故かスポットスタートの1wの国債買現先を従来の1兆円から8000億円へと減額ロールを実施。ついでに午後イチ恒例の共通担保オペ実施が無しとなりまして、手前の資金供給が急に絞られたので、T/NとかS/Nとかのレポレートが上昇して手前からレート上昇となったんですな。

で、昨日も昨日でスポットウィークの国債買現先を同じく減額してきまして、共通担保オペも無しという不思議調節を打ち込んでまいりまして、結果どうなったかと言えば、T/NやS/Nのレポレートが15水準に上昇して、レギュラーの30日スタートは17水準までレート上昇しちゃいましたという展開に。ちなみにCP買現先オペは火曜日が0.124/0.12(89.3%)だったのに対して、昨日は0.144/0.13(18.7%)という上昇。国債買現先オペもレート上昇となっております。

いやまあこれが調節スタンス変わらない中で6月末の資金放出を絞る動きでレート上昇っていうのであれば、まあ自然体の中なので「そんなもんですね」という感じなのですが、6月末という四半期末直前のタイミングでいきなり足元の資金供給を絞るという攻撃を打ち込んでレートが上昇というのは、久々に見るワケワカメ調節。


背景なんですけどね。22日の国債大量償還に伴いまして、資金需給的には当座預金残高とか大積み上がり状態になっているのですが、どうもその資金は債券市場に向かってもレポ市場に向かわない資金なんじゃネーノかっていうような感じ(実際のところは本人じゃないから知る由も無いですが)でして、即ち、資金余剰になっている人が偏在した上に、その人が資金を抱え込んでいるんじゃネーノっていうところなのですけれども、どうも当座預金残高の積み上がりと、超足元の資金の回り方がリンクしていない状況があるんですな。

そんな状況なんですが、その中で何故か6月末を前にいきなり足元の資金供給をシーボル先生な調節を実施するでござるの巻となりまして、レポレートが華麗に上昇という展開になりましたというのがこの2日の展開。


・・・・えーっと、昨年6月末に「四半期末につき」レポ市場が結構ドタバタと大変だったという事はよもやお忘れ無いと思うのですが、別に供給減らしたかったら7月に入ってから絞れば良いのではって気がする中で何も四半期末直前にこの調節とは何か意図でもあるんですかと言いたくなってしまう久々の不思議調節がご登場。多分意図があるんじゃなくて単に22日の所で当座預金残高が積み上がりすぎているのを調節しているだけだと思うのですけれども、同じ国債買現先でもスポネじゃなくてタームを減らしてくるのもげげって感じですし、(確かに2000億×5で1兆円減らしたいところでスポネで対応したらスポネ5000億円とかになっちゃうのでやり難いってのは判らんでもないですが)何かここ暫く安定的に何となく量的緩和(ただし金利付き)っぽい資金供給スタンスだったのを何もこんなタイミングで変えなくても・・・・という所でしょうか。

ついこの前「6月末って何でしたっけ」とこちらで申し上げたような気もするのですけれども(汗)、さすがにこの調節は前提にしておりませんでして、ってゆーか水曜の朝まで誰もこうなるとは予想してませんでしたでしょうから、まあ外れになったの勘弁してちょ(と言い訳)。

まー、四半期末の所抜ければ落ち着くとは思うのですが、積み上がった当座預金の資金が妙に偏在している状況がある程度シャッフルされないと、数字上の資金余剰と実際の資金余剰が変なアンマッチ状態というのが続くんでしょうね。


○国債買入にやたら拘る面白い人がいるようなのですが

順番が逆なのですが一昨日の中村審議委員の講演(挨拶)後の会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0906c.pdf

2ページ目でこんな質問をしている面白い人がいます。誤解の起きないように質問を全文引用といういつもとは真逆の展開になります(笑)。

『(問) 2点お聞きします。日銀の政策委員の方は、白川総裁を含め何度も講演されていますが、本日の講演録を拝見すると、今までの講演と比べてユニークな点が1つあったと思います。冒頭の「1.はじめに」の後、「2.日本銀行の業務」で随分紙幅を割いています。経済の話に入る前に、銀行券ルールについてかなりご説明されています。これまでは、海外経済などから始めるのが講演の常だったと思いますが、今回、いきなり銀行券ルールが最初にきています。』

まだ中村審議委員講演要旨のご紹介してませんので恐縮ですが、これはその通りで、最初にいきなり銀行券ルールの話を始めているのは「へ〜」と思いました。で、質問は当然ながらまだ続きます。

『先般の定例会見で銀行券ルールについて総裁に聞いた際、何度も同じことを聞くなと言わんばかりだったのですが、なぜ銀行券ルールを初めに持ってこられたのか、その意図をお聞きしたいというのが、1点目です。』

多分貴殿のような人がいるんで、尚のこと説明しなけりゃ行けないという事になったんじゃないでしょうか??しかし「何度も同じことを聞くなと言わんばかりだったのですが」にはワロタです。ちなみに今月18日にこちらで書きましたように、会見要旨ではマイルドに編集(要旨ですから^^)されてますが、時事メインの報道によれば『この席で何度ももう話したので、わたし自身は「またか」という感じで、あまり気乗りはしないが』と大変に素敵な回答を貰っています。


『2点目は、それに関連しますが、銀行券ルールを守る理由として2点挙げられています。総裁も同様ですが、日銀のバランスシートにおいて長期の資産が長期の負債を上回らないように持たないと、調節が非常に難しくなるということを第一の理由に挙げています。ただ、FRB をみると、日銀でいう銀行券を1.5 倍ぐらい上回るほどの長期資産を抱えており、時間が経つとともにもっと大きくなってくると言われています。白川総裁は前回の定例会見で、出口政策を考えていない中央銀行はない、どの中央銀行もしっかり出口政策を考えているとおっしゃっていました。FRB は銀行券を1.5 倍も上回る長期資産を抱えて金融政策運営を行っていて、出口政策をしっかり考えているのであれば、なぜ日銀も同じことができないのか、というのが2点目の質問です。』

・・・・この質問、先日の総裁会見でも同じこと聞いているのですが、そもそも論としてFRBの長短アンマッチに関しては出口政策に関して色々と「大丈夫か?」的な議論がある訳でして、そりゃまあこの質問者の言うように「FRBは出口政策をちゃんと考えている」でしょうけれども「考えている」というのと「スムーズな出口政策が対応可能」というのは話のレベルが全然違いますわな。

先般ご紹介した水野審議委員のスピーチ(6月8日にこちらでネタにしました)では今般の金融危機対応で主要各国が実施した金融政策が出口という話になった時に「バランスシートのコントロール力の高さがポイント」という趣旨の話をしておりまして、FRBの出口政策だってそう簡単な話じゃない(危機対応の出口は兎も角として、インフレ高進となって引き締めモードに入る時に長短ミスマッチが巨大だと、ボルカー的な荒療治モードになる可能性が)ですわな。


というような前提をまず勉強した上で質問に臨んだ方が宜しいのではないかと思うのですけれども、新潟まで出かけて熱心に同じネタに絡むのは見苦しいにも程があるのでございますけどねえ。

と、質問をネタにしたので質問の引用および質問への突っ込みで終了してしまいましたが、中村審議委員の答えも引用しますね(^^)。

『(答) まず、最初の点ですが、一般の方に、日本銀行が金融政策を行っていることは理解していただいていると思いますが、日本銀行のそれ以外の業務については、意外に理解されていないということを踏まえて、今回、業務についてお話しようと思いました。5月末に決算を公表したので、バランスシートについて説明をしようと思ったのです。』

ほっほー(^^)。

『バランスシートにおける長期国債の保有残高は、古くて新しい話題になっていますが、銀行券ルールが理解されてない面もあるほか、一般の方々にとっても分かりにくい面があるため、決算について説明する機会を捉えて、長期国債について説明してみたらどうかと考えました。そうした流れの中で、講演の最初に出てきたのであり、これが最重要課題だから最初にお話したということではございません。』

>銀行券ルールが理解されてない面もある
>銀行券ルールが理解されてない面もある
>銀行券ルールが理解されてない面もある

・・・・・(^^)。

『それから2点目については、海外の中央銀行の金融政策についてコメントするのは差し控えさせて頂きたいと思います。中央銀行は、それぞれ長年の色々な伝統などがあると思います。各国の中央銀行の政策のやり方などは同じではないと思います。FRB の政策はともかく、日銀券ルールがあるから必要な資金がマーケットに出ていない状態でもありませんし、日銀は日銀のやり方でやるということかと思います。』

これはその通りですわな。


ということで、中村審議委員の講演と会見ネタが週末積み残しになってしまいました。気が向いたら週末書くかもしれませんが、基本的に週末は頭がホリデーモードになるので期待しないで下さいませm(__)m











2009/06/25

お題「やはり金余り/FOMC/中村審議委員講演(とりあえずメモだけ)」

さっきからモーサテの兄ちゃんがFOMC結果についてしつこく「出口政策期待」みたいな質問をコメンテーターに連発してて、答えるほうが段々うんざりした感じになっているのに苦笑を禁じ得ません。


○やはり金余りでした

国庫短期証券(第35回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul210624.htm

>募入平均価格 99円96銭0厘1毛
> (募入平均利回り ) (0.1583%)

まあ0.16%割れですわ奥様困っちゃいますわねえ♪ってことでございますが、いやまあ引け値ベースだと0.165%とかですけど、実際問題としての実力は0.16%ってえのはある(BBの引け値が投票形式になってから引け値が業者の総意を反映した格好になってしまい、今の環境ですと強いので打ち込まれるのが嫌なのか弱い値付けになってて引け強でしか買えないような値付けになっているのよね〜)のですが、5.75兆円を一発入札してるのに堂々の平均0.16%割れとはナンデスカという感じで。

まーよーするに金が余っていますってえ話なのですけれども、オペの資金供給自体は微妙に引いてきてますけど、何かそれはそれとして運用資金というよりも潰しキャッシュがあるのですかねえという事で。

しかしまあ何ですな、ここへ来てちょっとCP発行が多く(賞与対応とかもあるんでしょうかね)しかもショートタームが多い(もうちょっと言うと、決算資金対応と思われる1か月以内のショートターム物の他に、より期間が長い3か月〜9月中間期末越えの発行という感じで、ダンベル状態になっていますね^^)せいか、ちょっと足元では短いCPのレートがやや上昇って話を昨日も申し上げましたが、こーやって短国のレートが低下しますと何となく官民逆転現象が緩和されてきたような気がするのでありました(^^)、って官のレートが民に収斂されるという流れなので何か違う気がするんですけどね(爆)。

ま、昨日は長いところも良い感じで、狸が穴から燻し出されるような感じになって来ておりますというイメージっすかね。踏まれた投資家が悲鳴を上げるの図って感じにはまだまだ(^^)。よー知らんが。



○時間軸も長国買入拡大も無しですかそうですか(FOMC声明文斜め読み)

思ったより回復に自信モードになっているような感じを受けたのですけれども・・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090624a.htm(今回の声明)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090429a.htm(前回の声明)

冒頭から。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the pace of economic contraction is slowing. Conditions in financial markets have generally improved in recent months』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that the economy has continued to contract, though the pace of contraction appears to be somewhat slower. 』(4月)

4月のeconomy has continued to contract(手元のデイリーコンサイス英和辞書^^だと「病気などにかかる」です)が、今回economic contraction is slowingになってまして、その上、「金融環境が最近数ヶ月で全体として改善している」という文言がこれは今回新たに加わっていまして(後の方まで見ましたけど、これは(あたくしが読み落としていなければ)新しく入った文言かと)、微妙な日銀文学を見慣れてしまった(笑)あたくし何かが見ますと「おお!」とか思っちゃいます(^^)。

『Household spending has shown further signs of stabilizing but remains constrained by ongoing job losses, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are cutting back on fixed investment and staffing but appear to be making progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales. 』(今回)

『Household spending has shown signs of stabilizing but remains constrained by ongoing job losses, lower housing wealth, and tight credit. Weak sales prospects and difficulties in obtaining credit have led businesses to cut back on inventories, fixed investment, and staffing. 』(4月)

住宅投資の判断は変わっておらず、企業の設備投資や雇用に関してもまだ削減中という話になっているけれども、消費に関してはやや改善傾向みたいな話なんですかね。

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee continues to anticipate that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a gradual resumption of sustainable economic growth in a context of price stability. 』(今回)

『Although the economic outlook has improved modestly since the March meeting, partly reflecting some easing of financial market conditions, economic activity is likely to remain weak for a time. Nonetheless, the Committee continues to anticipate that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a gradual resumption of sustainable economic growth in a context of price stability.』(4月)

economic activity is likely to remain weak for a timeってことで、この辺り、先行き見通しに関する部分はそんなに変えてないという事なんでしょう。

で、次のパラグラフが物価関連ですが、こちらも改善。

『The prices of energy and other commodities have risen of late. However, substantial resource slack is likely to dampen cost pressures, and the Committee expects that inflation will remain subdued for some time.』(今回)

『In light of increasing economic slack here and abroad, the Committee expects that inflation will remain subdued. Moreover, the Committee sees some risk that inflation could persist for a time below rates that best foster economic growth and price stability in the longer term.』(4月)

increasing economic slack here and abroadってのが外れて、slackに関してはsubstantial resource slackが物価上昇圧力を抑制って話になっていまして、inflation will remain subdued for some timeという見通しには変わりは無いのですが、ご覧の通りで「物価上昇率が望ましい水準を下回って推移(して長期的な経済成長と物価安定を阻害)するリスク」に関する言及が外れておりまして、「下振れリスクを外しましたかそうですか」って感じではないかと。

ということで、まあ日銀がやたら下振れリスクを意識して先行き不透明要因に懸念しているのと比較すると随分と威勢が良いですねって感じがします。一応先行きの基本観はあんまり変わってませんけどね。

んで最後のパラグラフは金融政策に関する部分なのですが・・・・・・

『In these circumstances, the Federal Reserve will employ all available tools to promote economic recovery and to preserve price stability. The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)

前回との違いはanticipatesがcontinues to anticipateになっただけなので4月分の引用は割愛します。時間軸に関する何らかの言及があるかという話も結構あったと思いますけれども、基本的に言っている事は同じでfor an extended periodのまんまですかそうですか。

ってまー普通に考えて、上段部分で景気現状認識を引き上げて下振れリスクへの言及を減らしているのに時間軸強化はねえわなという所でありまして、従いまして当然ながら資産買入プログラムに関しても同じとな。

『As previously announced, to provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve will purchase a total of up to $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and up to $200 billion of agency debt by the end of the year. In addition, the Federal Reserve will buy up to $300 billion of Treasury securities by autumn.』(今回)

これまた前回と同じですので前回分引用割愛。即ちロジックもご覧の通りで相変わらずの謎というか鵺のような買入理屈が継続。

『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. The Federal Reserve is monitoring the size and composition of its balance sheet and will make adjustments to its credit and liquidity programs as warranted.』(今回)

『The Federal Reserve is facilitating the extension of credit to households and businesses and supporting the functioning of financial markets through a range of liquidity programs. The Committee will continue to carefully monitor the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet in light of financial and economic developments.』(4月)

これはあたくしの気にしすぎというかFRBの出口バイアスを意識しすぎなのかもしれませんけど、monitoring the size and composition云々の部分が前回はin light of financial and economic developmentsって言い方してて、将来の増額や期間延長に含みを持たせるような感じを受けたのですが、今回はmake adjustmentsってなっていて、どっちとも取れるような言い方になったのではないかとか思ってしまった次第で、今後の増額というニュアンスが弱くなったように見えるのですが、まあこーゆーニュアンスはnon-nativeのあたくしが変に勘ぐっても全然違うかもしれませんので判断は留保しておきますけど、あたくしとしてはこの最後の部分もちょっと気になりました。

#斜め読みとか言いつつ声明文全文引用になってしまってどうもすいません


○中村審議委員講演(メモだけ)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906c.pdf

えーっと、FOMC声明文で時間と量を食ってしまったので詳しくは明日。基本的には企業金融関連の時限措置に関しては一応短観で示される企業金融環境に関する数値に注目って話になっていましたが、先行きの企業金融環境の悪化を懸念している部分もありますので、どっちかといえば延長って事になるんですかねえ。その辺だけ引用するだよ。

『もっとも、世界経済回復に関する不透明感が強い中、今後、企業業績の悪化によるキャッシュフローの減少も見込まれ、合理化等に伴う資金需要の増加も予想されるだけに、先行きの企業金融の環境は全体としてはなお厳しい状況が続く可能性があります。また、金融市場も改善傾向にはありますが、未だ正常な状態に復したといえる状況ではありません。』

『一方、これまでの政策対応は、中央銀行の政策手段としては異例の措置も含まれており、必要な期間に限り、必要な規模で実施することも肝要です。このため、実施期限を9 月末と定めている措置の今後の取り扱いについては、金融経済情勢の推移をしっかり点検しながら、予断を持たずに検討していく必要があると思います。そして、各措置に関する判断については、日本銀行の政策意図が正確に伝わるように、国民や市場参加者との対話に当たって、慎重な対応が必要だと思います。』

ということで詳しくは明日(すいません)。


○1年オペ実施でござる(ECB)

#ただの俺様メモです。

1年オペ実施したでござるの巻。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20090055_all.en.html

Longer Term Refinancing Op.-Allotment
Reference Number: 20090055
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION
Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER
Tender Date: 24/06/2009
Start Date: 25/06/2009
Maturity Date: 01/07/2010
Duration (days): 371
Auction Type: FIXED_RATE

371日オペですかそうですか(^^)。で、結果は右の方にありますけど。

Fixed Rate: 1 %
% of All. at Fixed Rate: 100
Tot Amount Allotted: 442240.5 mn
Tot Bid Amount: 442240.5 mn
Tot Number of Bidders: 1121

1121社が応札して4422億ユーロ供給ですかそうですか(^^;

なお、本件のニュースを某モーサテも報じていましたが、何故か背景の画面がロンドンのBOEの周囲だったので盛大に茶を噴いてしまいました。謝罪と賠償をお願いします(嘘)。







2009/06/24

お題「今日も雑談小ネタですいませんが」

FOMC結果マダー?っと。

○ヒマネタ国会ネタ

6月10日の衆議院決算行政委員会に白川総裁が出席。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/005817120090610005.htm

で、5分の3ほど行った所(後半ですな)で、民主党・無所属クラブの津村啓介委員の質問に対する白川総裁の答弁でして、最初の部分はちょっと端折って(まあ面白い話はしているのですが)その中盤から。

『○津村委員 (最初割愛)それからもう一点は、今、金融と実体経済の相互作用という意味でプロシクリカリティーのお話をされたんだと思いますが、少し話を財政のことと絡めていきたいんですけれども、財政の方は、逆に実体経済と、いわゆるスタビライズ機能といいますか、実体経済が大きく振れることに対して、今総裁は金融がそれを増幅することがあってはならないというお話をされましたけれども、財政にはそれを逆にスタビライズする役割があると思うんですね。』

ふむふむ。

『しかしながら、最近の、小泉政権以来の、新自由主義という言い方がいいのかわかりませんが、さまざまな政策や、あるいは、そもそも財政規律が低下して財政力が低下している中で所得の再分配機能が大きく低下をしている、そういう中で財政の実体経済との相互作用の機能が低下しているのではないか、そういうふうにも見えるんですけれども、総裁、どう思われますか。財政と実体経済の相互作用の力が落ちているのではないか、そういう質問です。』

質問したいことの意味は何となく判ったような判らんような感じですけど、結局津村さんとしては「財政がスタビライザーになるべき」という話をしたいのですかねえ。

で、白川総裁の答え。

『○白川参考人 (前半割愛)それから、財政と実体経済の関係でございますけれども、この十数年の大きな流れの中で考えますと、経済の安定化、景気の安定化という面で財政政策を裁量的に使っていこうという思想は後退してきたというふうに思います。基本的には、経済の安定、物価の安定ということは金融政策の仕事であるというふうになってきていると思います。』

ほっほー。

『ただ、現在のように金利が世界的にゼロ金利に接近してきて、かつ金融システムの機能が大きく低下してきているという状況のもとでは、これは一定の範囲で財政政策を活用することに意味があるというふうに今なってきております。ただ、これは、一般的に、財政政策を景気安定のために使っていこうということではないというふうに思います。』

『そういう意味で、今の御質問については、一般的に、財政と実体経済の相乗作用というふうに考えるよりか、現在のこの局面で財政政策をどのように適切に使っていくのかということが問題意識になっているように思いました。』

という話でして、景気安定は金融政策って話をしてて、割と直球ストレートな答弁をしているのが「へ〜」って感じがしました。「金融政策単独で出来る事は限界もある」みたいな答弁をするのかと思ったもんで。

あたくし的雑感としては、金融政策ってベースの部分を作る話で、その上に規制とか制度設計とか財政政策とかが乗っかって来て効果出るのかなあとか漠然と思っている(レッセフェールにすると上にも下にも年がら年中暴走するので、遅効性の金融政策対応では追いつかなく、緩和し過ぎと引き締め過ぎの連続になるんじゃないか何て思うのですが)んすけどね、まあずれた感想のような気もしますが(汗)。

で、この話もうちょっと突っ込んで欲しかったのですが(・・・いつも思うのですが、この手の会議で質問する委員さんって質問時間で色々なネタを盛り込みすぎで、結局のところ個別の質疑応答が一発限りになってしまって、論議にならないってのが多いんですよね。一部ちゃんとした委員さんもいるんですけどね)、話題は次の話になるのでした。

『○津村委員 少し質問を急いでしまうんですが、報道によれば、日本銀行の景気判断の上方修正ということが最近盛んに言われておりまして、総裁御自身は、前回の金融政策決定会合後の記者会見では「定義による」という言い方をされているんですけれども、少し報道との間でコミュニケーションのとり方があるのかなということと、もう一つは、私も政治家なので感じるのかもしれませんが、選挙の前だからか、政府の景気判断が妙にこのところ調子がいいというか、基調判断がどんどん上方修正をしていくんですね。その割に、一方では、景気対策が必要だ、あるいは金融政策も緩和を続けろということで、調子だけはいいなという感じがするんですが、当然のことですけれども、日本銀行の景気判断がそれに引きずられてはいけないと思うんですね。』

これは良いご指摘。確かに政府って「調子だけはいいな」でありますわな。

『そういう中で、端的に伺いたいんですけれども、前回、悪化を続けているという判断をされている。そして、先行きの見通しとしては、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げどまっていくというシナリオをたしか触れられているんですけれども、このシナリオどおりになることは上方修正ではない、シナリオどおりなんだという言い方もされていたかもしれませんが、しかし、文言が変わっていくのは絶対値で見れば上方修正なので、今回、そのあたり、まだブラックアウト前だと思いますので、景気判断としてどういう御判断を考えていらっしゃるのかということが一点。 そして、先ほど私は意地悪な、政治的な配慮のことを申し上げましたが、そうした政府に引きずられているという印象を払拭する意味でも、上方修正をされるのであれば判断の根拠をより明確に御説明いただきたいというふうに思います。』

ということで説明をしているのですが、まあ答弁自体はそう変な話ではないようで。

『○白川参考人 お答えいたします。日本銀行は、来週、金融政策の決定会合を開きまして、そこで前回の会合以降のさまざまなデータを点検して、景気判断を行っていきたいというふうに思っております。(で、判断の部分はいつもどおりなので途中割愛)これは、結局、日本の経済自体の動きもそうですけれども、世界経済全体の影響が内需の方に出てくるわけでございますから、そこは丹念に毎回毎回判断していくことしかやはりないんだろうというふうに思っております。来週の決定会合でそうしたことをすべてあわせて、今八名の委員で議論しておりますけれども、入念に点検した上で情勢判断を対外的に説明していこうと思っています。』

『議員が御懸念のようなことは全くございません。日本銀行は、日本銀行法に定められた目的に従って、経済、金融の情勢をしっかり判断し、それを説明し、それから金融政策を運営していくという点においては、これは全く揺るぎがございません。』

ふ〜んそうですかってな感じですが、この辺りの距離感って難しいですねという点もあるのですが、民主党政権になったら益々色々と注文が飛んできそうな気がしますわなという感じです。

で、津村さんは総裁の現時点での判断について答弁して欲しかったようで、その後のやり取りの中でこんな質問してるんですけどね。

『○津村委員 総裁もルールにのっとってお答えになっているということだと思いますが、私もルールにのっとって御質問差し上げていまして、いわゆるブラックアウト期間があした以降ですから、合議体のリーダーとして御配慮なされる期間ということだと思うんですけれども、きょうは国会で、しかも総裁の御見解を伺っているわけですから、私は、きちんとお答えをいただいてもよろしいのではないかと思います。』

いやまあ津村さんの言いたいことも判らんではないのですが、市場の中の人的には、不規則的に日銀総裁を国会に引っ張り出して発言をさせるっていうのはやはり勘弁して欲しい訳でして、「何日の何時から日銀総裁が景気に関する議会証言をします」っていうのを事前告知した上で実施してくれませんと、ちょっと困るなあと。あまり不規則発言で相場が動くってえのをやらかしますと、やはり市場の安定化という点ではよろしくないかなあと思うのですけどね。ま、動いた方がオモロイからそれはそれで良いって考えもありますけど・・・・・

ということで、津村さんの質問は確かに国会のルールには則っているのですけれども、まあマーケット的な常識からはちょっと違うんじゃねえのと思う次第。いやまあ国会での半期報告みたいに、最初から予定が決まってて経済情勢に対する質疑応答をするってのが判っているものだったら良いんですけどね・・・・・・

ちなみに、この回の委員会ですけれども、最後の質疑応答で足利事件問題に関して鈴木宗男委員が法務大臣にゴリゴリ突っ込んでいるのが迫力ありました。金融と全然関係ないけど。


○金融政策的には民主党政権ってどうなるんでしょ

全然纏まっていない雑感段階なのですけど。

今回の質問をしている津村さんはどうも質問っぷりからすると財政のスタビライザー機能みたいな点については評価しているような感じですけれども、一方で党では「減税しますが財源は埋蔵金や無駄の排除で」みたいな話をしてますし、暫く前にご紹介したように、同じ委員会の中で最初の質問者と次の質問者が聞くこと真逆とか、まあある意味自由な発言してますねって事なんでしょうけれども、党として何をやりたいのかさっぱりワカランチ会長。

「外貨準備で持っている米国債を円建てにする」というような意味不明な発言をするネクスト財務大臣(まあ利払いの部分を円建てに切り替えてちょって話なんでしょうけれども、それって外貨準備の意味あるのかねという気がします)とか、中々の面白不規則発言が見られそうで、相場張る方としては「おらあワクワクしてきただ!」って感じになるのですが、国民経済的には・・・・・・・

一頃は「まー選挙やってもまた自公政権でしょ」って感じもあったのですが、友達の友達がアルカイダのおじさんの効果抜群で政権交代も現実味を帯びる中では、経済政策とか何を打ち込んでくるのかひじょーに気になります。まーあたくしが思うのは「実務的なフィージビリティーをまるで無視した変な書生論で政策打ってきて現場大混乱でござるの巻」なんですけどね、あっはっは。

#まあ全然纏まっていない話でこれから考えるのですけど


○地味に3か月TB入札に注目

いやまあ別に注目するほどのもんでも無いのですけど、今日は3か月TBの入札。ここもとというか超直近の動きを見てますと、アホウのように低下&信用スプレッドの潰しをやっていたCPレートがさすがに下げ止まりになって、ショートターム物のレートは若干上昇(と言っても0.14%が0.14%後半になるとかいうようなしょぼい話ですが)してみたり、一頃やたら玉が薄かった1年ゾーンとかでも玉なし状態ではなくなってまして、まーGCとかはジャブジャブなのには変化無いのですけれども、少しは短い所に滞留している資金が動いてくれているのかどうかが気になる所です。

#昨日ご紹介した投資家懇談会での相場見通しをそのまま解釈すれば、待機資金が結構短期市場に滞留してるでしょと思いたくなりますしね

ということで、ここの所入札の度に強いわ、先週なんぞは入札直後にショートカバー大会までやらかすわとなっている3か月TBなんですけれども、資金フローに変化が出ているのかただのダマシなのか、入札前後のニーズ状況見ながら考えたいと思うのであります。


・・・・・そういやすっかり忘れていましたが、今月末は四半期末でありまして、バーゼルUがどうしたこうしたという話で去年はSCやらGCやらがちょっと暴れてくれてましたが、今年は物の見事に無風にも程がある展開でありまして、金利付き量的緩和(もどき)恐るべしというところでございますな。

と、延々と雑談でどうもすいません。












2009/06/23

お題「ネタ無し相場なので雑談でございます」

○ネタが無い市場ですねえというネタ

いやーもう最近ネタが無いですなあというのが超短い所の市場でございまして、とにかく良く言えば低位安定なのですが、まー相場的な展開皆無の状況になっておりまして、あたくし的には工夫のしようが無くてコマッタモンダ状態でございまする(−−)。

まー背景がどうなのよとか言われても良く判らんのですが、先日ご紹介したPD懇議事要旨にもありましたように「30兆円時代よりも資金余剰感が強い」という状態になっておりまして、金利付き量的緩和恐るべしという感じです。

ま、一応それでも足元と短国とかのスプレッドが存在する(30兆円時代は短国100円落札とかいう無茶苦茶な話が大手を振って歩いていたのですから)のでマシとでも思わないといけませんなあという所なのでしょうが(ヤケクソ)、やはりゼロ金利なのとゼロ金利じゃないのでは、ターム金利のプレミアムの付き方が違うということなのか、単にまだ時間が経っていないのでタームプレミアムが潰れないのかは良く判りませんな。

ただまあタームプレミアムに関してもうちょっと前の事を考えますと、「低め誘導」という上限金利付き政策をやっていた時代(10年以上前の話ですよん)には、無担保コール翌日物レートが0.50%をちょっと割り込む水準となる中でCDレート(当時CPはそんなに市場が大きくなく、短期国債は需給と日銀オペの関係でコールよりも低い水準で取引されていて、現物ターム物の指標金利はCDでした)は1〜3か月で0.50〜0.53とか(期末越え要因とかで上がると3か月が0.55)いう感じでタームプレミアムがあんまり無かった感じでしたな。

とか何とか考えますと、タームプレミアムってえのは要するに足元のファンディングレートに上限があるかどうかってえ話に依存するという冷静に考えれば当たり前の話に帰着する訳でございまして、これが足元GCレートが全然上がらないですぅというような感じになってくるともうちょっとタームプレミアムが無くなるんでしょうが、この辺りはGC市場の資金出し手と取り手の構造がかつてのコールのような資金取引市場とはちょっと違うという点とか考える必要があるのかなあと思いましたが、頭が整理されていないので追々考えるとしましょう。


ところで何ですな、昨日の長いところは素敵にスティープニングしてたんですが、何か日中の動き見てると昨日なんかだと午後に超長期ヘニャヘニャモードが拡大した感じでして、まあ実際にどういう売りが出てたのかは知りませんが、何かこうちょっとした動きで直ぐにカーブがぐにゃぐにゃ動くようで、大きな動きって入札直前直後位しか無いんじゃねえのかという感じでこちらも何かネタ無いですねえという感じです。

超長期絡みだと、入札直後から10年売りの超長期買いみたいな動きでカーブが動いて、金曜あたりからは10年以降超長期が全部フニャフニャという動きで、まあいずれカーブポジションとかやってる人がいるんでしょうけれども、そんなに派手な大口売買があったと思えない(いやまあ本当はこっそり大口売買してるのかもしれないけど)中でちょっと動かすとカーブがこうホイホイ動かれるとカーブポジションをアクティブにガンガン動かすのも難しいのでしょうかね。よー知らんが。


てな訳で、よーするに相場が熱気を持って動きませんなあというのが最近の動きなのですが、そのネタ書きながら「さてタームプレミアムってどうなるの」というあまり考えたくない(これ以上タームが潰れたらその辺の市場関係者は毎日もやしとパンの耳ですわ)ネタも思いついてしまいましたが、そちらの推移がどうなっていくかは追々ご報告できるのでは無いかと思います。ここへ来てCPのレートとかもさすがに下げ止まってきた感じもしますし、本格的にタームプレミアムをもう一段潰さないとって話になるんでしょうかね。

なお、ここまで書いて申し上げるのも何ですが、タームのプレミアムがどうのこうのと言ってますが、足元GCが0.12平均くらいで推移する中で3か月の短国が0.16−17%位で1年の短国が0.20%位というような感じでして、実は3か月から後ろのプレミアムの方が先に潰れているので(最近3か月が下がってまた形の上では復活した格好になっている)、タームと言いましても本当に超短いところの話をしている事を念のため申し上げますです、どうもすいません。


○国債投資家懇談会からちょっとだけ

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/b210615.htm

先週月曜に実施されたもんでして、まあ今更の虫干しネタで恐縮なのですけれども、PD懇の話と同じお題に関してですから、物価連動国債とか15年変動利付国債に関する残念なお話が続きます。残念なのであまり引用しませんけど、いつも指摘されている事ながら、問題はこの一言に集約されるのでしょう。

『物価連動債や15年変動債は、ALMの観点から必要な資産ではなく、コアの投資対象としていないため、』

結局のところ、普通に機関投資家が持つ場合、コアCPI連動となる負債というものが別にある訳ではなく、インフレ対応がどうのこうのという話であれば、株式でも商品でも不動産でも他に色々とアロケーションするものがあり、債券というアセットクラスで敢えて突っ込む必要があるのですかというそもそも論があって中々ニーズが拡大せんのじゃろうなあと思うのであります。

では海外だとどうなのという話に関しては、あたくしそこまで勉強してないのでわからんのですが(いきなり開き直り)、投資家懇談会の発言から見ますと、

『インフレ見通しといった外部環境や元本保証の有無といった商品性の違いはあるものの、世界的に物価連動債のBEIが相当回復する中で、我が国の市場では新たに購入に向かう投資家がおらず、価格も回復しない状況となっている。』

という事らしいので、それなりに物価連動債への投資家ニーズがある(日本で見られたようにBEIトレードをするようなアクティブファンドみたいなのがいるのが効いているんじゃないのかという直感もするのだが)のかなあとか思うのでありますが、この辺はどういう状況なんでしょうかね。

なお、日本ではどうかというと、上記の発言の続きにこういう話が。

『こうした状況の背景には、インフレに対する過度に過小な評価や、フロアがないこと、そしてインフレ等の見通しに関係なく価格が変動していくような状況が続いているため、割安とは思いながらも、積極的に投資する市場関係者がいないことが挙げられるのではないか。』

なお、この論議の最後に微妙に異彩を放つ発言が。

『物価連動債については、内閣は、増税をやらなければ財政がもたないといっており、それが財政プレミアムを抑制し、名目金利の長期的な上昇を抑制している。また、消費税を7%引き上げるという話もあり、物価連動債は正常化するであろうと予想していた。このような議論がなされている中で、なぜ物価連動債が買われないのか。フロア等も関係ないはずであり、インフレ期待にしても消費税により7%上昇するということであれば、仮に2011年度から7年間で1%ずつ上げるということを考えても買いであると思われる。』

市中残存額も絶賛減少中ですので、そんな力強い発言をわざわざ表でせんでも、黙ってせっせと買いを入れたら如何でしょうか、ニヤニヤ。


で、市場の見通しに関する話がPD懇よりも色々と出ていて中々結構でございましたけれども、基本的にはレンジ内という話ですけれども、じゃあどっちの方向があるかという話になると、7月以降の国債増発が実際に行われた後の動きとか、米国の動向とか、世界的な金融緩和環境の長期化観測とか、今後の日本の更なる財政拡大または歳入不足とか、まあ金利上昇の可能性に言及している人の方がだいぶ多目という感じですな。願望も入っているんでしょうけれども(^^)。

という見通し表明と足元の資金余剰感というののコンボからすると、金利が下がる時にはヒャッホーって下がり方するんですかねえ。よー知らんが。


○一応確認メモ

殆ど自分用で恐縮ですが。

これがFOMCの前回声明文。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090429a.htm

4月30日の駄文で何となく前回比較をしましたけれども、このときは長期国債買入のロジックを「provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets」としてまして、実はこの時点で既に米国10年国債金利はその前のFOMC(3月18日)声明文公表前のレベル(3.0%)に上昇してまして、現在はそこから70bpとか上昇したレベル。

ということで、この長期国債買入ロジックどうするのか。ロジック継続だったら長期国債かモーゲージ債を強力購入という話になるのですが、その辺りは良い意味でも悪い意味でもロジック崩壊状態になっておりますので、今回どういう理屈を捏ねてどういう結論を出してくるのかよー判らんですわなという感じです。今回特に増額のアナウンスしなくても別に長期金利が跳ねる感じでもなさそうだったら、アナウンスは避ける方向じゃないのかなあとは思いますけどね。

後はインフレ認識と経済状況の認識がどうなるのかですわな。

#って誰でもご存知の話で正直スマンカッタ











2009/06/22

お題「だいたい5月の決定会合議事要旨から」

えーっとですな、ど〜にもこ〜にも最近の相場がネタを捻り出すようなものがございませんで、ここの所引用ばっかりの話で誠に遺憾の極みなのでございます。

○最初に市場雑談ネタ

えーっと、CPとかTBの金利が相変わらず低いんですが、どうもここもとはTBは3か月から手前全部0.16%レベルになっている(引け値は0.165%になっていますけど、どう見てもビットサイドです本当にありがとうございました状態)わ、CPは0.14%〜0.16%の間に日銀適格銘柄の多くが詰まっているわというとても素敵な状態。

何でそう買うのよと思いますけど、まー何だか知らんがこの辺りの市場に余資がアホのように余っておりますので致し方なし。しまいにや「GCが0.11とかの超低位安定しやがっていることを考えたら、これだけスプレッドが載っているのだから問題ないでしょう」とか何か間違えとしか思えない発想が出てきて、現在のレートを脳内で正当化しそうな勢いでございます。というかしないとやってられんのだが、笑。

何でこう金が余っているのかのメカニズムがよー判らんのですけど・・・・・


と、ひとしきり悩んだ所で決定会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090522.pdf

○6月日銀文学炸裂への布石

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

最初の所の話は後にしまして。

『この間、委員は、経済情勢及び金融政策に関する情報発信について議論を行った。』

ほいほい。

『ある委員は、経済情勢の現状評価について、「上方修正」という方向感のみ強調されかねないことから、情報発信の際には、経済活動の水準評価も含め、丁寧に説明していく必要があると述べた。また、別の委員は、景気は4 月の展望レポートに概ね沿って推移していることについても、対外的に説明していく必要があると付け加えた。委員は、これらの認識を共有した。』

ということで、6月の決定会合声明文でいきなり水準の話が出て来たという事になるんでしょうな(^^)。ここの所は議事要旨最初に読んでいきなりツボに嵌ったところです。


○暗黙の時間軸発生に関して

こういう指摘をする委員もいました。

『ある委員は、4 月末に公表した展望レポートにおいて、先行きの経済・物価情勢の不確実性を強調したことから、市場では、当面、金融緩和が継続するとの予想が形成されていると指摘した。この委員は、このように日本銀行と市場が、先行きの経済・物価情勢についての見方を共有しながら、市場において、先行きの金融政策に関する予想が形成されることは、望ましいと述べた。』

これに対しては認識を共有とかいうような文言が入っていないので、さっきのような「これを受けて6月決定会合の声明文に変化」みたいな話にはならないのですけれども、まあこーゆー感じで指摘が入り、特にカウンターの意見らしきものが無い所を見ると、まあ「日銀の見通しを前提にすれば暗黙の時間軸」というのは察してね(でも明言してる訳じゃないからそこんとこ宜しく)という所なんでしょうなあ。


○FRBやBOEのバランスシートと比較する人たちがいるので・・・・・・

その次にこんな指摘が。

『このほか、別の委員は、金融資本市場の機能障害に対処する非伝統的政策の効果について、日本銀行のバランスシートの拡大・縮小をみて、その度合いを測る向きもあるが、中央銀行のバランスシートの変化は、市場環境の改善度合いにも依存するため、政策効果を対外的に説明する際には、こうした点も含め丁寧に説明していく必要があると述べた。』

バランスシート拡大=マネーの供給というマネタリー的な側面にやたらフォーカスした議論をすると(勿論マネタリー的な部分も重要ですけど)、米国でもその論議がございます(というのは先日ご紹介したと思いますが)が、ちょっとズレた話になるという点に関しては・・・・・上方修正云々であの有様な日本のメディア相手に説明するのは無理でしょと思います。

BOEのように直球ストレートでマネタリー的拡大政策と銘打って実施するのであれば説明としては判りやすいですけれども、FRBの場合は特に政策ロジックが何だか訳判らんでござるの巻で展開しているので、米国でもあんな議論が出てくる次第なのですが・・・・・


○CP阿片窟に関して

同じく当面の政策運営に関する議論の部分から。

『多くの委員は、一部銘柄のC P 金利が短国金利を下回るなど、措置の効果が強く出ている面もあるが、金融環境は全体として引き続き厳しい状態であるため、これまでに導入した様々な施策を着実に実施していくことが望ましいと述べた。何人かの委員は、各種臨時措置の9 月末以降の取り扱いについては、今後の金融市場や企業金融の動向を丹念に点検した上で判断すべきであると述べた。』

ということで、各種施策が「強く出ている」点に関しては5月会合時点でも論点になっていた訳ですが、金融環境が全体として厳しいので継続っちゅう話にはなっているようです。ということで、毎度申し上げていますが、企業金融に関する認識がどうなっていくのかというのが、今後の施策の行方を考える意味では重要ですよという話になろうかと思います。

当面、利上げがどうのこうのという話よりも、金融政策運営の3つの柱のうちの残り2つ(潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定確保、企業金融円滑化の支援)の出口がどうなるのかという話の方が普通に考えて先に来る(仮に先に来ないにしても利上げだけ先に来るのは考えにくいので同時でしょ)と思われますので、まー暫くは経済に関する議論もさることながら、金融面に関する話を見るのが良いのかなあとか勝手に思って金融面に注目するでござるの巻なのです。

で、その金融面ですけれども、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分で金融面に関してどのような話をしているかと言いますと。

『わが国の金融環境について、委員は、一頃に比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いているとの認識を共有した。』

5月声明文にあったとおりです。

『多くの委員は、C P の発行金利が更に低下しているほか、社債発行銘柄も拡大しており、政策効果が浸透してきていると述べた。もっとも、何人かの委員は、市場の企業に対する選別姿勢は根強く、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多いなど、二極化の様相を呈していると指摘した。』

で、さっきの「措置の効果が強く出すぎている面もある」という話が当面の政策運営に関する部分にあったのですけどね。

以下かなり妄想寄りになりますけど、このCP金利の短国金利との逆転現象に関して、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』ではなく、『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に載っているというのは、即ち5月会合時点では現状認識の中の大きなネタにはなっておらず、単に「発行金利が更に低下」という認識だというのが政策委員会を全体としてみた場合の見解という事になるのですかねえという感を受けましたです。

ま、マーケット的にはこの会合以降最近までの動きが強烈でして、既に低下しきっている電力会社などの超優良発行体は兎も角として、A格くらいの銘柄であっても信用スプレッドをホイホイ潰しに行くような動きが継続して、メーカー系で日銀オペに入るような銘柄だと何でもかんでもレートが短国以下とかいう信用リスクプレミアムまる無視状態の阿片窟状態になり、ついでに金融系ネームでもレートがどんどん低下する有様となっておりまして、まあ緩和効果っちゃあ緩和効果になっております。何せCPに引っ張られて短国の金利も下がるくらいですから(CPだけの要因じゃないのでそれは大げさですが^^)ねえ。

では、そもそも論として執行部報告ではどのようになっているでしょうか。

『短期金融市場では、金利の上昇圧力が緩和されてきているが、市場流動性の低い状況が続き、市場間での裁定が十分には行われないなど、神経質な地合いが続いている。』

ほっほー。で、具体的にはこんな感じだそうです。

『すなわち、G C レポレートや短国レートは、概ね横ばい圏内で推移しているが、需給の変化に反応しやすい地合いが続いている。ユーロ円レートは、緩やかな低下傾向を辿ってきたが、取引の薄い状況が続く中、長めのタームを中心に、なお高めの水準となっている。C P 市場では、投資家の銘柄選別姿勢が依然強い状況にあるが、企業の資金需要の低下などを背景に、比較的落ち着いた発行環境が続いており、高格付先の発行レートは、TIBOR以下の水準で推移している。』

てな状態でしたっけねえとか思うのですが、確かにまあこの1か月でこの辺の状況は変わったですねえと思うのでして、この辺りの書きっぷりを来月もチェックしないといかんかなあと思ったのであります。


○金融面に関しては下向きリスクのオンパレード

さっきの金融面に関する委員会の議論の部分からですが、金融環境に関する議論では下向きリスクのオンパレードであったりするのです。

以下「ある委員」さんの指摘なのですが。

『ある委員は、景気低迷の長期化により不良債権が増加し、金融機関の資本制約から、企業金融面に悪影響が及ぶリスクがあると指摘した。』

『また、別の委員は、今後、景気の低迷が長引いた場合、営業キャッシュフローも低迷し、市場の企業をみる眼が再び厳しくなるリスクがあると述べた。』

『このほか、ある委員は、今後、国債発行の増加が見込まれる中、長めの金利のボラティリティーが大きくなる可能性も含め市場動向に注意する必要があると述べた。』

ということで、この辺の問題は6月相場に入ってやや改善された部分もあり、企業収益などに関する部分で言えば別に改善されていない部分もありという状況になっておりますが、6月会合でどのような話になったのかが注目される所です。

ま、その議事要旨がでる前に短観が先に出ますけどね!

#引用大会で恐縮至極でした










2009/06/19

お題「例によって金融経済月報(ただし概要部分)の比較」

ほっほー、「個人投資家に劣後債がブーム」でございますか。今流行の人気商品(棒読み)を早速紹介するとはさすが経済クオリティーニュース番組でございますなあ(棒読み)。

#新大臣が西川さんに辞任打診してたってどんな迷走だよ・・・

○景気認識、物価動向に関して

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0906.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0905.pdf(5月)

・現状認識部分

『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(5月)

これは一昨日ご紹介した通りの日銀文学炸裂です(^^)。

・現状認識部分、項目別展開

『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。』(今回)

・・・・とここまでが前回と同じでして。

『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直しに転じつつある。この間、公共投資は増加している。』(今回)
『一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、下げ止まりつつある。この間、公共投資は増加に転じつつある。』(5月)

輸出、生産が「下げ止まり」→「持ち直し」となり、公共投資は増加に「転じつつある」というのが増加「している」と言いきり型になってまして、これは皆様ご存知の通り、言い切り型になっているのは表現として前進ですね。


・先行き予想部分

『先行きについては、景気は下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(今回)
『景気は、当面、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(5月)

ということで、まあ前進っちゃあ前進なのですが、下げ止まりの「動き」が「次第に」明確に「なっていく」「可能性」が高いってあーたヘッジクローズがいい感じで入りまくりにも程がありますわな。

・・・・まあこの部分に関しましては、そもそも先行きの回復にそんなに自信度が高くないというベースがある筈なのですが、それに加えて昨今の「底打ち」宣伝モードに対して楽観の広がりを牽制する日銀文学でもあるという話でしょうな。


・先行き予想、項目別展開

『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。』(今回)

この下向き予想に関しては5月と同じ表現を継続しています。先行き暗いですね。

『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。この間、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(今回)
『一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、下げ止まりから持ち直しに転じていくとみられる。この間、公共投資も増加していくと見込まれる。』(5月)

ということで一応こちらは先行きの表現が強くなっていますが、まあ現状認識部分で「下げ止まり」「増加」にした分の反映でもありますので、そう考えますと別に先行き見通しの項目別展開が上方修正になった訳では無いという残念な結論になる訳ですな。


・物価の現状部分で・・・・・・

国内企業物価の現状認識部分で軽く表現の変化が。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況安や製品需給緩和の影響から、緩やかな下落を続けている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況安や製品需給緩和の影響から下落を続けているが、下落幅は縮小してきている。』(5月)

「下落幅は縮小」が外れているのですが、「下落を続けている」が「緩やかな下落を続けている」に変わっております。後で出てきますが、先行き予想に関して5月も「緩やかな下落」の表現になっているので、そういう意味ではこちらも予想シナリオどおりとは言えます。

・・・・・ま、下落継続というのは変わらないってえ事ですけどね。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きなどを反映して、ゼロ%程度まで低下している。』(今回)

こっちは前月と変わらず。


・物価の先行き見通しは前回と全く同じっす

全く同じなので引用だけ。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給が緩和した状態が続くもとで、当面、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』(今回)


○今後注目の金融環境に関して

ではまあ今後注目の金融環境ですけれども。

『わが国の金融環境は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『わが国の金融環境は、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(5月)

ということで、これもまあ全般ご紹介した通りですが「厳しい状態」という認識に変化は無いという点からすると、各種時限措置の出口って話はちとまだ時間掛かりますわなって話になるんでしょ。

ただし、今回は方向感として「改善の動きがみられるものの」というだいぶヘッジが入った状態ではありますけれども上向きになっていて、厳しい状態に関しても頭に「全体としては」というヘッジ文言が入りまして、金融環境に関しては方向性としては改善傾向って話になりますので、こちらは今後の表現変化に注目したいところです。


・企業の調達コスト

『企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利の低下などから、一段と低下している。』(今回)
『企業の資金調達コストも、本年初に低下した後、低水準で横ばい圏内の動きとなっているものとみられる。』(5月)

ということで、一段の低下になりましたわな。CPレートは銘柄間格差も潰れて来ましたもんね〜。

・企業に対する低金利の緩和効果

『ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)
『ただし、悪化を続けている実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(5月)

ということで、低金利の緩和効果は減殺されているというのは継続でして、今回は実体経済活動や企業収益に関して「悪化を続けている」というのが抜けたのが改善点となるかと。

・社債・CPの発行環境は更に改善

『社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境は一段と改善してきている。』(今回)
『社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境はひところに比べ改善してきている。』(5月)

ということで、一段と改善という事になっていますが・・・・・

・でも二極化なのですよね

『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっている。また、資金繰りや金融機関の貸出態度については、悪化に歯止めがかかる動きがみられるものの、なお厳しいとする先が多い。』(今回)

『しかし、そうしたもとでも、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度が厳しいとする先は引き続き多い。』(5月)

ということで、逆に言えば二極化拡大という話にもなっている次第でございますな。

・・・・と、この辺見てますと、CPや社債などの部分では改善しているものの、その辺りの恩恵を直接享受できない人たちに関してはまだまだ改善しちょりませんという話になってまして、まー各種特別措置の出口論議をするにはもうちょっと改善したっていう認識にならないと土俵に上がってこないでしょという所なんですかねえ。


以下雑談。

○素敵な金余り(ただし超短い所)

えーっと、水曜に3か月TBの入札があったんですけどね、相変わらずの落札レート堂々の0.17%台とか言ってた訳ですが、セカンダリーで更に強くなって0.16%までレート低下。引け値ベースでは0.165%とかになっているのですが、昨日は新発どころか1個前の3か月ものも0.165%の引けへと強いほうに収斂されて来てますので、まー普通に考えてこれは実力0.165%より強いんじゃないですかねえって感じなんでしょ。

CP発行金利も何か銘柄間格差が潰れるわ短期国債よりレート低いわという流れは継続しておりますし、GCレートもちゃっかり低下してますという事で、何かよー知らんが超短い所ではそこら中で金余っている感じ。

まー何かとにかく余資の積み上がりが超短い所にやってきて、この辺のレートが見事に潰れているという状態でして、昨年11月頃に見られた「短期が妙に高止まりするので中期あたりまで金利が下がりにくい」という状況の逆のような感じになっているのですかねえって感が致します。まーイールドカーブの短期の部分がとにかく安定するっていうのはまあ良い話なんでしょ。

ただ、余資が積み上がったモノってえのは金融緩和効果という点ではその金がもうちょっとリスクのある所に染み出して頂くというお馴染みのポートフォリオリバランス効果が望まれる所なのですが、現在の現象面は「短期」で「日銀オペ適格レベルの信用リスクの高い銘柄群」に対してカーブやスプレッドをひたすら潰しに行くという動きでありまして、よくよく考えてみれば「金は余っているけれどもリスクの低い所に滞留しっぱなし」という状況でもあります(と思います)。

・・・・うーむ、そう考えると一面「金が回っていない」という言い方も出来るようでもありますな。まー昨年10月11月の「金が回っていない」とは全然違う贅沢な「回っていない」ではありますけどね(^^)。








2009/06/18

お題「総裁はメディアのミスリード報道っぷりに不機嫌のようです(^^)」

毎朝の経済ニュース番組(笑)ではメリケン駐在の人たちのコメントが楽しいのですが、今朝は「金融規制法案の規制改革で米国が世界の金融規制のリード役を担う」って・・・・ガイトナーの「厳格なストレステスト実施要請」といい最近のメリケンさんは頭に虫でも沸いてるんじゃないですかね。今に始まった事じゃないのかもしれないけど・・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0906b.pdf

○どう見ても売り言葉に買い言葉です本当にありがとうございました

今回の会見要旨なんですけど、発言のあちこちに白川総裁がいらっとしている感が伝わる感じがして誠に(;∀;)イイハナシダナーというものでございます。まずは上方修正だの底入れだのという話に関する冒頭のやり取りから抜き出して引用。

『なお、ご質問の中で、大幅な見直し、あるいは上方修正という言葉を使われていましたが、先月の会見でも申し上げました通り、日本銀行では、4月末に公表した展望レポートにおいて、既に、「わが国経済は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かう」との見通しを示しています。繰り返しになりますが、本日の判断は、こうした見通しに沿った動きが続いていることを確認したものであり、従来の見通しを修正したのではないことを、改めて付け加えておきます。』

という話に対して「底打ちではないのか」という質問が出まして・・・・・

『先程は、今回公表した文章に沿って説明しましたが、改めてご説明します。(下げ止まりの説明割愛)この3点は、それ自体としては先行きの自律的な民間需要の回復を保証するものではなく、公表文で触れている通り、今後の景気動向は内外の在庫調整が進捗した後の最終需要がどのように推移するかがポイントです。』

『この最終需要の回復について、日本銀行はまだ慎重にみていることは文面からご理解頂けると思います。ご質問の底入れという言葉は人によって色々な定義で使われる言葉であり、定義論争を行いたくありません。重要な点は、内外の在庫調整が終わった後の最終需要であり、現在、日本銀行はその点を慎重に判断しているということです。』

と、慎重だという話をしているのにも関らず、その後引き続きこの質問。

『(問) そうしますと、まだ底入れとは言い難いとお考えでしょうか。』

・・・・これはまた挑発ですかという感じですが、答えがどう見ても売り言葉に買い言葉です本当にありがとうございました。

『(答) 繰り返しになりますが、人それぞれで定義が異なる言葉を使って議論しますと混乱を招きますので、あくまでも日本銀行の表現を用いてご説明したいと思います。』

・・・・・いやはや。

ま、昨日も申し上げましたように、過度な楽観ムードになっている報道姿勢(および政府というか政治に対してもそうでしょうねえ)に対して「おまいらそんなに簡単に楽観してるんじゃねえ」と慎重な話を強調したいという考えがあるのに、質問者の方は「景気底打ち!」というヘッドライン先にありきの質問をして来るという状況に対して、白川総裁が会見当初からご機嫌斜めになってしまいましたという感じでございまして実に心温まる展開。

この後の質疑でも『ご質問の点は、本日の発表文でも明示的に触れているほか、その背景にある展望レポートにも詳しく書かれています。』とか『この席でも何度か申し上げていますが、金融機関が抱えているリスクを一定の前提をおいて計算すると、日本の大手行の場合、株式保有リスクがもっとも大きい状況にあります。』など、要するに「判り切った質問すんじゃねえ」的な回答が出ているのには苦笑を禁じ得ないと共に、不勉強な記者は出席するんじゃねえとも思う質疑応答でございました(^^)。

で、その白眉は最後の銀行券ルールの質疑応答。FRBの長期国債買入に対していわゆる銀行券ルールに関する質問があったのですが、それに対する回答から。

『また、長期国債の買入れおよび銀行券ルールについては、この席で何度も話しましたが、ご質問ですのであえてお答えします。』

これなんですけど、会見「要旨」ですのでこのようにマイルドになっていますけれども、会見日に会見詳報ということでテープ起こしをしたのかなあと思われる時事メインの報道によりますと、この部分はこうなっているようですな。

『長期国債の買い入れ、あるいは銀行券ルールについては、この席で何度ももう話したので、わたし自身は「またか」という感じで、あまり気乗りはしないが、質問だからあえて答える。』(時事メイン16日18時58分配信、「白川日銀総裁の会見詳報☆10」より引用)

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー


○CPの官民逆転はシャーナイナイとな

異例の措置で歪みが生じてないのかという質問に対して、CP市場の官民逆転を引き合いに出しているので、さすがに阿片窟市場状態という事の認識はあるのですな。でも・・・・・

『例えば、企業金融に関して色々な措置を導入していますが、今年の1月に「企業金融に係る金融商品の買入れについて」を発表しました。そこに書かれていますが、CP市場の機能の低下が企業金融全般に悪影響を及ぼしているかどうか、ということがCP買入れの判断材料の一つでした。つまり、CPを買入れることが企業金融全体の改善に繋がっていくのかどうか、という観点で判断したのです。従って、一つ一つの市場の歪みをみて判断するのは必ずしも適切ではなく、全体として企業金融がどのような状況になっているのかという観点から判断すべきだと思います。』

というのが前提にあって。

『歪みという点では、例えば、格付けの高いCPの発行金利が同じ期間の短期の国債金利よりも低いという逆転現象が生じていると報道されています。確かにCPを買入れることに伴ってそうした現象が生じているのは事実です。しかし、そうした現象が摩擦的に起きていても、企業金融全体の改善を図るためには、最終的には企業金融全体で判断しなければなりません。そこに私どもの考え方のポイントがあると理解して頂きたいと思います。』

という話をしています。で、声明文(および今日は時間の都合上スルーする金融経済月報)にありますように、金融環境は全体としては厳しい状況が続いているという話になっておりますので、結論としてはCP社債買入継続という話になるのであります。

ただですな、実際問題として官民逆転になったのっていうのはCP買入よりも企業金融特別オペ効果が大きいのでして、そっちの話を上手いことスルーしているので、そちらに関する見解には興味津々でございます。まー企業金融特別オペだけじゃなくて、CPディーラーのリスク許容度大復活とか、予備的需要も含めて膨らんだ資金需要が一服して引受余力が拡大したとかいうのが要因でもありますけどね。

まあここの質疑応答と、声明文の表現をコンボで考えれば普通に継続でしょという事になるんでしょうが、まあ今後の環境次第でしょう。ただし、日銀の標準シナリオで推移すると仮定すれば、金融環境の改善も時間がかかるでしょとなるでしょうが。

その次の質問でCP社債買入に関する質問が。

『(問) CP・社債の買入れに関してご質問します。導入当初は、市場機能の回復、すなわち、中央銀行が市場メカニズムを改善させるということを言われていたかと思うのですが、市場機能が回復すれば、買入れ措置は廃止するのが普通かと思います。しかし、先行きの下振れリスクが大きい中で、そうした措置を止めると効果は下がってしまうのでしょうか。さらに、金融緩和の効果がある点も否定できないと思うのですが、如何でしょうか。』

これは良い質問ですね。

『(答) 企業金融の現状をどう評価するかが、もっとも大事なポイントです。前月あるいは前々月からの状況をみますと、確かにCP・社債市場の環境は随分改善してきました。先程CPについて触れましたが、社債についても足許は発行ラッシュとも言えるような金額になってきています。しかし、同じ社債でも格付けの低い先、具体的にはBBB格以下については、リーマン破綻前までは一定規模の発行がみられましたが、現在BBB格の発行はほんの僅かであるなど、二極化現象がみられています。』

『また、先程の景気に関する見方とも関連しますが、恐らく多くの企業が懸念していることは、現在の内外の在庫調整が終わった後、本当に景気は回復していくのかということだと思います。何らかのきっかけで金融市場が再び悪化するかもしれないと意識し、企業金融についてまだ自信を持てない状況だと思います。そうした状況を踏まえ、私どもとしては、企業金融の現状について毎回の決定会合で丹念に点検していきたいと考えており、今回は厳しさが残っていると評価しました。次回以降の決定会合でも、入念に点検していきたいと考えています。』

ということで、まだまだ慎重だという話をしています。トーンがより慎重っぽくなっているのは、政府の妙な楽観っぽい動きやらメディアの底打ち報道に対する牽制でもあるのでしょうけれども、今回の会見はこんな感じのが多いですな。


○ところで9月までに見直し云々ですが・・・・

時限措置の議論がどうなってるのって質問に対してですが。

『昨年秋以降、各国の中央銀行は大変に厳しい金融経済情勢を踏まえ、各種の異例な措置を実施してきています。同時に、金融経済情勢が改善していくにも拘わらず、そうした措置を必要以上に長期間に亘って続けると金融市場に歪みを与え、結果的に景気や物価の振幅を大きくするリスクがあることも、最初から十分に意識しています。このため、各国中央銀行は、常にそうした異例の政策の終了時期と円滑な終了方法を意識しつつ、各種措置の制度設計とその運営を行ってきています。そもそも、そうした異例の措置を実施するに当たり、中央銀行がこうした注意深い対応をしていなければ、却って市場の不安感を高めることになりかねないと思っています。』

というのがそもそも論。で、途中端折って。

『そこで、次に、日本銀行が現在実施している時限措置について申し上げると、9月末を念頭に置き、期限を設けて実施している時限措置としては、CP・社債の買入れ、企業金融支援特別オペのほか、米ドル資金供給オペや補完当座預金制度などがあります。このように多くの時限措置があり、それぞれ措置の目的や仕組みが異なっているほか、金融市場や金融環境に与えている効果も様々です。従って、時限措置毎にその対応を検討していく必要があると考えています。』

ここの部分なんですが、「時限措置毎に対応を検討」というのがそのまんま時限措置一本一本に対するものなのか、金融政策対応に対する「3つの柱」即ち(1)政策金利の引き下げ、(2)金融市場の安定確保、(3)企業金融円滑化の支援、の3本になるのですけど、この一本一本という形(まあ利下げの出口はずっと先なので2番と3番の話ですが)でセット販売になるのかはこの辺だけ見てるとよー判らんですな。

『具体的には、今後の経済や金融市場の動向がどのようになっていくかということが、個々の政策を判断する上でもっとも重要な要素です。金融市場や企業金融の動向、各措置の与えている効果などをしっかりと点検した上で、市場参加者からみて予測可能性のあるかたちで9月末までの適切な時期に判断していく方針です。』

ということで、一応必ず延長するとも延長しないとも言ってないのはまー当然ですけれども、そんな感じですわな。

『長く申し上げましたが、要は企業金融の状況を丹念にみて判断していくということに尽きます。』

ということで、さっき引用したCP市場の話になるので、まあ今の状況がそのまま横で推移するなら自然に延長するでござるの巻になるんでしょうね。


ということで、例によって引用ばっかりでどうもすいませんでした。









2009/06/17

お題「上方修正?出口政策?またまたご冗談を・・・・と声明文は言ってます(と思います)」

お題が長いですかそうですか(^^)。ということで、何も無かった割に色々と見所のあった今回の決定会合でした。

で、今回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090616.pdf
前回はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090522.pdf

見た瞬間に前回対比で書きっぷりが妙に変わっていることに気が付くかと思います。で・・・・・

○本石町日記さんが指摘しています(^^)

http://hongokucho.exblog.jp/11278464/
日銀って本当に面白いことするね(苦笑)=日銀ヘッジ文学の妙?

というお題でエントリーがございまして、まあ背景などはそちらをご参考にされると吉かと存じますが(また人のふんどし)、あたくしも今回の声明文見て「おお!これはまた芸が細かい」と感心した口でございまする。

で、本石町日記さんがご指摘の通りで、今回の声明文から一番強烈に伝わるのはあたくしがお題に書いた通りのメッセージ(?)でございまして、とにかく「上方修正」というのに対して火消しをしたいというのが判る書きっぷりであります。

でも政府の見通しが妙に威勢が良くなっているので、それに対して「まだ偽りの回復かもしれんじゃろ、政府の早とちりにも困るわな」とか冷やすのも微妙にアレな所があって、あまり暗い一辺倒の話もできないという所で、まあそんな辺りも配慮せにゃならんというヤヤコシヤな所なのでしょという感じかと思います。

ただまあ本石町日記さんが懸念する日経辺りが鉦や太鼓で出口政策炸裂で債券市場のショート筋歓喜の展開ですけれども、さすがに債券市場はそこまではやらない(現状では金利がちんたらと上昇する分には困る人が少ない(爆発的に急じゃ困るが)のもありますし)でしょとは思いますです、はい。

と申しますのも、今般「上方修正」とかメディアが踊っていますが、日銀から出てくる情報発信からは「出口模索」みたいなものは殆ど感じられない訳でございまして、白川総裁の会見(今日要旨が出ますが、内容見たら結構色々なインプリケーションがありそうです)や最近の講演などから見ても、前任者の量的緩和解除への一連の流れ時に見られたような「隙あらば出口政策」というような雰囲気は全然感じられませんし熱気もなさそうという所でして、まー金利市場におきましてもその辺りのニュアンスはきっちり伝わっているかと思います。

まーそんな訳で、「上方修正」報道が連発してもそっちには全然市場が反応しないのであります。

しかしまあ何ですな。会見でも(時事メインの会見詳報とか見た感じでは)白川総裁は「今回は別に上方修正では無い」って言ってるのに、その発言が出た後でも相変わらず「上方修正」とか報道するのはどういう了見なんでしょうかって感じです。

さて、中身に参りましょ。


○わざわざ「大幅に悪化」を遡及して入れるでござるの巻

『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は悪化を続けているが、』(5月)

はてわざわざ大幅に悪化を入れてますがという話は先ほどの本石町日記さんの指摘の通りでございますが(^^)、ではこの大幅に悪化というのはいつの話かと申し上げますと、4月7日会合の声明文にはこんなのがございました次第で。

『わが国の経済情勢をみると(途中割愛)わが国の景気は大幅に悪化している。』(4月7日会合声明文)

ということで、5月に引っ込めた大幅に悪化をわざわざ突っ込んでおりますし、そもそも方向性に関しても下げ止まり「つつある」であって下げ止まりを明言している訳でもないということで、実は先行き慎重かつ警戒モードなのは全然変わっていませんがなというのが判る筈なんですが、大手メディアにおきましては(以下悪態につき自粛)。

で、項目別展開ですが、項目別には上げてるものもあります。一応先行指標らしきものが上がってますが、基本的に厳しいものも多いですから、これまた従来の流れどおりかと思います。

・現状判断、輸出、生産、公共投資は引き上げ

『輸出・生産は持ち直しに転じつつあるほか、公共投資も増加している。』(今回)
『内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出や生産は下げ止まりつつある。』(5月)

・現状判断、雇用、消費、企業収益を今回挿入とな

『企業収益や雇用・所得環境が厳しさを増す中で、国内民間需要は弱まっている』(今回)

これは前回の声明文に対応する部分が無くて、金融経済月報(概要)から該当する部分を引っ張ってくるとこうなります。

『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており』(5月金融経済月報)

ということですので、まあ基本的な所は前回同様の判断という事になるのでしょうが、今回この部分をわざわざ声明文の方に打ち込んだ事に意味があるのでしょう、即ちさっきの「大幅に悪化した後」を挿入したのと同じ理屈で、「判断上方修正」とされるのはミスリードだよって事を言いたいんでしょうねという所かと。

・先行きの総括判断

『当面は、こうした景気下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(今回)
『このため、わが国の景気は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まっていく可能性が高い。』(5月)

まあここだけ切り取れば上方修正なんですけど、元々の展望レポートの見通し通りであるという点には留意が必要。


・金融環境は全体として厳しいとな

『この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(今回)
『金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。』(5月)

ということで厳しいという判断が継続していますので、所謂企業金融に関る時限措置の出口がどうのこうのという話はまー普通に考えたら出てこないですねという話になるかと思います。

市場の中の人的にはCP市場がびっくりするほど阿片窟になってしまって、そこだけは激しく改善しているのですけれども、逆に言えばそこで信用スプレッドを無茶苦茶潰されてしまったので、一般的な企業金融環境に対する市場からのインプリケーションが得られませんですがなという状態になっているので、全体感という話は短観の数字でも見るしかございませんなというところであります。


・物価は相変わらず

会見では「マイナス」見通しをより強調していたようなヘッドラインが出ていましたが。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(今回)

5月の引用は割愛します。何故なら一言一句全部同じですので(^^)。


○もうちょっと先行きの見通しにも日銀ヘッジ文学(by本石町日記さん)が見られます

『2010 年度までの中心的な見通しとしては』から始まるより長い期間での見通しですけれども、こちらの部分には最初にこんな文言が挿入されました。

『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。』(今回)

前回までこの文言はございませんでして、まあこれもわざわざ「先行きも最終需要の動向に大きく依存する」というのを強調(で、肝心の最終需要のうち国内民間部分に関しては先行き見通しを厳しいとしているのですよね!)してまして、変に「偽りの夜明け」的な回復期待が盛り上がるのを避けようとしているのが良く判ります(^^)。

なお、標準シナリオどおりで推移しているので、前月とまるっきり同じ話になっています。一応引用しますね。

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないもとで、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が想定される。』(今回)

『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(今回)

前月と一言一句変わりありません。


○リスク要因も全然変化無し

で、リスク要因も一言一句変化無しというところがチャーミング(^^)。

『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(今回)

下振れリスクしかねえええええええええ!!!


○ところで特別措置の延長関連ですが

一応ヘッドラインではとりあえず9月末までに判断って話にはなっていますが。

16:12 16Jun09 RTRS-市場参加者から見て予測可能性ある形で9月末までに判断=出口論議で白川日銀総裁
16:12 16Jun09 RTRS-時限措置ごとに対応検討する必要ある=出口論議で白川日銀総裁

と、こちらは日本語版ロイターからですけれども、まー先ほど申し上げましたように、現状の判断は「金融環境は厳しい状態が続いている」ということですので、現状判断が継続するようでしたら普通に延長でしょという話になるんでしょ。ということで今度の短観での金融環境関連の数値に注目なのと、結局は株価水準次第という所が多分にあるのが金融環境クオリティでもありますので、やっぱ株価注目という話になるんでしょ。

しかし企業金融の中でも銀行貸出ルートに関しては金融政策だけでどうこうするのは難しい話で、政策金融ルートもそうですけれどもやはりこれは最終兵器金融庁様の活躍(?)が待たれる所では無いかと思いますが(^^)。

ところで、どこだか忘れましたが、このあたりの発言を受けて何故か「CPや社債買入の解除の方向性のアナウンスが企業金融支援特別オペより先に出る」というコメントをしている人がいたような気がするのですが、CPや社債買入はバックストップとして必要な措置であって、現状は利用率(?)が低下していますが、また何らかの事情で短期金融環境が悪化した場合に必要なモノ。一方で企業金融特別支援オペは手形貸付や証書貸付などの市場性の無い債権に対して0.10%でのファンディング催行確約という点で貸出に対するフォローになるのですけど、まあこれらのモノって共通担保でも使える訳ですから、共通担保オペでもファンディングは可能な話でありまして、あくまでも特オペはその名の通りで企業金融向け債権に特別優遇措置を行うものであります。

と考えますと、もし企業金融関連措置におけるCP、社債買入と企業金融支援特別オペを分離して考えるのであれば(これって一連のセット措置であって分離して考えるのが正しいのかどうかという議論もあるような気がするのだがここでは措く)、普通に考えれば特オペ見直しの方が先に来るんじゃないですかと思います。どうも「今現在残高があること」と「必要なセーフティーネットであるか否か」という事に関して判ってないのか判っていてポジショントークするのか存じませんが、何だかとーっても???なコメントがあったので一応あたくしの愚意見を申し上げた次第でございます。

まーこの辺りの論点はもうちょっとあって、順序が逆にも程がありますが、企業金融支援特別オペがCP金利の絶賛低下をもたらして官民逆転状態になった結果、従来CPを購入していた最終投資家の資金が短期国債に流れて(逆転してるのだから当たり前)実は絶賛増発中の短期国債(国庫短期証券ね)市場の需給を大いに支えているのではないか(というか多分結構な支えになっている)という思わぬオペの効用(企業金融優遇措置が国債市場の金利低下に繋がるとはオシャレですな^^)もあって(って市場規模の差から言ってそれだけで説明するのは少々無茶なのは念のため申し添えますが)、中々一筋縄ではいかない絶賛金利優遇措置でもあったりするのですが、その辺の話はまた追々。







2009/06/16

お題「国債市場参加者特別会合議事要旨でも読んでみる」

どうもこう相場そのものが盛り上がらないもんで本日はPD懇議事要旨をまったり読んでみるでござるの巻で勘弁。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c210612.htm

○物価連動国債の受難は続く

今回のお題の最初は買入消却に関するお話で、財務省の説明が最初に。

『平成21年度の買入消却の具体的な配分は、四半期毎に市場の状況を見ながら決定することとしており、資料1-1のとおり、本年4-6月については、15年変動債を計3,400億円、物価連動債を計6,600億円配分した。今回の会合では、本年7-9月の買入消却の実施額についてご意見を頂きたい。なお、3月の会合資料と同じく、参考までに同じ期間の日本銀行の長期国債買入予定額を括弧内に示した。』

と言うわけで、物価連動国債の発行は依然として停止中の中で買入消却はこの4半期で6600億円実施(6月分はこれからですけど)した訳ですが。

『資料1-2は、物価連動債の市況を示しているが、依然として実質利回りは3%を超えており、最近をみても5月後半など大きく振れる場面もあった。資料1-3では、15年変動債の市況を示している。15年変動債については、銘柄間で値動きに違いもあるが、カレント銘柄をみると実勢アルファーは徐々に上昇している。』

5月って買入消却が一瞬強かったり、どっかの閉店セールっぽい売りがあったかのような動きがありましたが、まーちょっとした需給で振れるというのは変わらないようですし、もっと悲しいのはこれだけ買っているのにろくすっぽ戻らないところですわな。

でまあ参加者の意見からですが。

『4-6月の市場環境等を踏まえ、第1四半期の買入額を継続することが望ましい。』

っていうのはまあ大方一致(あとでちょっと申し上げます)の話でして、その中身なんですけど、悲しい話が続きます。

『現在の市況については、商品市況の回復やインフレ期待等を背景に、米国のBEIが上昇してきているが、日本の物価連動債については未だ需給バランスが崩れた状態が継続しているため、米国の物価連動債と歩調を合わせる形にはならないと見ている。カレント銘柄では80円から90円近辺のレンジ相場となっているが、現在各月2回の買入消却入札を織り込む形での相場形成がなされており、本価格帯にとどまっている間は細かい値動きまで過度に警戒せず、市場参加者に不要な思惑を作らせないよう、淡々と買入れを実施していけばよい。ただし、物価連動債の市況は相対的には不安定であるため、15年変動債に影響が出ない範囲で物価連動債を7,000億円程度、15年変動債を3,000億円程度という形で若干物価連動債に比重を置いてもよいと考えている。』

というのが最初の人の意見ですが、まあ皆様同じような話が続きます。で、まあ実態がそうなのですから仕方ないのですが・・・・・

>現在各月2回の買入消却入札を織り込む形での相場形成がなされており
>現在各月2回の買入消却入札を織り込む形での相場形成がなされており
>現在各月2回の買入消却入札を織り込む形での相場形成がなされており

・・・・・これはこれはもう何と申し上げればよいのやら。市場の壊れっぷりをよく反映しているこの議事要旨、落涙無しに読む訳には参りませんな。

『物価連動債については、買入消却増額後も今のところ改善が見られず、BEIが▲100bp台後半で推移しており、引き続き集中治療が必要な状況と考えている。ただし、BEIが▲200bp程度では押し目買いも出てきており、逆に言えばこういった手当てによって、大きく崩れるリスクも多少減少している。』

『物価連動債については、買入消却入札のタイミングを狙ったような売買しかなかったところから、足元では水準によっては店頭での売買も少し見えるような状況となったが、価格のボラティリティは相変わらず落ち着いていない。不安定要素の一つとして、将来に対する継続性の期待が非常にぶれていることが要因ではないかと考えているが、今後これを安定させていくことで、ひいては、物価連動債の価格のボラティリティをある程度下げることに寄与していくのではないか。』

この「将来に対する継続性の期待」ってのは(この先を読めば書いてありますが)別に物価動向のパスの話でも何でもなくて、買入消却の継続性とか発行計画とかの話である所が残念感が漂う話ですな。いやはや何とも(実際にそうだから仕方ないけどね)。

『現状のマーケットでは、物価連動債・15年変動債ともに、ある程度は業者間で取引はされているものの、1日の売買高は数億円から数十億円と少額にとどまっている。こうした中で、1回の買入消却入札に対する応札倍率は3〜4倍という状況が続いており、多少価格が上昇してきたからといってマーケットでの安定性が元に戻ったとは思っていない。』

業者間の1日当たり売買額と買入消却の応札倍率のギャップに落涙。

『また、最近国内投資家からはこの商品を将来的にどのようにしていくのかといった質問も出ており、買入消却の継続ということではなく、例えば、フロアの付与などを含めて、発行当局がどのように考えているのかを投資家は絶えず懸念として頭の中に描いているのかもしれない。ただし、フロアを付与してほしいという意見はあるものの、実際にフロアが付与されれば買うかというと必ずしもそうではないと思われる。』

ということなんでしょうな。で、物価連動に関するこの意見はふ〜んと思いましたですよ。

『今後の日本の経常収支の黒字は縮小していき、ある程度海外投資家に国債の消化を依存せざるを得なくなる時期がいずれ来ると思われる。現状では、物価連動債の評判が悪く、結果的に日本国債全体に対する海外のイメージがなかなかよくならないという面もあるため、国の一つの施策として対応していく必要があるのではないか。』

なるほど、そういう発想はあるのかもね。

ということで、まあ相変わらず受難の続く物価連動国債でありまして、市場の素敵な崩壊ぶりは全然変わらないというのはどーゆー事やという感じでございまする。


○変動利付国債のこともよろしくとな

物価連動国債買入に関する大合唱の中、一人変動利付国債買入消却増額を主張する意見があったのは目だって中々宜しい。

『15年変動債の買入消却に厚めに配分していただきたい。国内の銀行等、長く苦しんで保有している投資家がいるため、こちらを優先して買入消却するのが筋ではないか。』

『物価連動債の方へ配分を厚くするとの意見が多いが、物価連動債の商品上、ある程度CPIの動きに準じた動きがあって当然であり、将来的に発行再開を考えているならば、足元のCPIのマイナス幅が大きくなり価格が下がってしまうため早めに買い入れる、ということではなく、ある程度の動きは許容してもよいのではないか。』

まー何ですな、確かにそういう発想もあるんですが、15年変動に関しては市場が増やせ増やせと大合唱して財務省としてはその市場の意見を反映した形で大増発をしていったという経緯もある訳でして、お気持ちは判りますが、筋論で言うと変動利付はてめえらのチョンボ色が強いんじゃねえのって感じがしますが。

ただまあその変動利付国債に関する妙なニーズが盛り上がった経緯まで考えますと、これがまた「金利上昇に向けたヘッジ商品」とか「バーゼルUにおけるアウトライヤー規制での「標準的金利ショック」に対応する商品」(確かにそうなんですがね)とかいうことで、まあ無駄に余計なニーズを発生させたのが金(以下激しく自主規制^^)。

まー物価連動国債の方を今後も育成したいって話だから集中治療が先にこっちになるのは仕方ないのかなあとは思いまする。いやまあ変動利付国債の方も涙なんですけど、まーその代わりっちゃあ何ですが、理論値採用おっけーになったのですから、市場そのものはちょっと落ち着いてきた、というか単にフリーズドライ状態になっているだけのような気もしますが。上記の人と別の意見ですけど。

『15年変動債に関しては、会計上の評価に理論価格を採用する投資家が増えておりマーケットの安定に資している。一方で、それが流動性を低下させているといった面もあるが、地合いがよくなってきているため、理論値を採用していない地方投資家から買いも出てきている。個人的意見ではあるがキャピタルゲインを目的とするならば、興味深い債券になってきたのではないかと思う。理論値を採用している投資家は出てこないため、相場全体として復活するわけではないが、相場が少しずつよくなるというような兆しがあると感じている。』

にゃるほど。


○市場環境に関して

3名の意見だったのでちと一人ひとりが長くてアレなんですが、2番目の人の指摘が一番しっくりきますな。特に短期市場の余資積み上がり状況に関する感覚は激しく同意。

『アノマリーを信じたくはないが、今年も6月が最も金利の高い月になるのではないかと考えている。7月から増発となるが、既に額はわかっている。市場参加者が懸念するのは常のことである。実際に増発が開始される前が最も金利が上昇しやすいのではないか。ただ、7月からの増発懸念が払拭されても、市場では2次補正や来年度当初予算などを話題にし、年末に向けて需給懸念を引きずるかもしれないので、引きつづきうまくコントロールできればよいと思う。』

ここの所6月安値(金利が高い)を連発しているせいか、このアノマリーを意識している人が多いので、あたくしは逆張りの発想で「7月22日の皆既日食(本土では部分日食ですけど)で相場トレンド反転して金利低下」(根拠が無茶苦茶というツッコミは認める^^)という珍説を提案たいのですが(^^)、ここもとの米債を見ていますと今年もアノマリー大当たりなのかなあ・・・・・(−−;)

『一方で、2003年に長期金利が0.4%まで低下した頃よりも短期金融市場での余剰資金は多いような感覚もある。4月時点で国内銀行の公社債残高が過去最高の148兆円という統計などは、その裏付けといえるかもしれない。今後、銀行貸出が伸び悩み、更に余資が積み上がることが見込まれる中、国債の需給懸念が払拭される局面が来ると、市場は景気減速を織り込み始めるだろう。円債市場では、来年も景気は低迷し、米国の金利上昇も続かないといった点が意識されるだろう。』

『したがって、今後の金利上昇をあまり心配する必要はなく、国債発行については年末まで市場は増発懸念を持ち続けると思われるので、それに対してうまく対応できればよいのではないか。』

昨日とか早速税収不足のニュースとか出てましたような気がしますが、特に債券市場が反応していた気配も無く、まあ増発懸念の話は出てきますが、余資の積み上がり状況が短期国債あたりの市場に見事に反映されておりますので、目先は「買い手が様子見をする」理由になる程度なんでしょうかね、と思います。ここの所金利が下がる日が勢い強いのは「様子見ている買い手」が多くて、市場の気分がショートになっているからなんじゃネーノかなって何となく思うのですが・・・・間違ってたらゴメンナサイ。


んでもって最後の人の意見ですが、この論点は確かにそうですな。市場の話と国債管理政策の話があるのですが、国債管理政策に関する部分だけ引用します。

『米国債金利の急上昇については、米国の国債管理政策やFRBによる市場との対話が機能していないことに伴う需給バランス悪化の結果であり、仮に米国10年債金利が4%を超えたとしても、それが直ちに日本国債の金利上昇圧力にはならないであろう。』

『先に、海外投資家の日本国債のイメージがなかなかよくならないといった話があったが、米国債の値動きの激しさを考えると、日本国債の安定感というのは際立っていると思う。これは財務省を中心とした国債管理政策が適切に運営されているということであり、日本銀行も各種のオペを通じて金融市場の安定化に尽力している成果が出ているということではないか。こういった面は、本会合などを通じて十分に機能しているということを積極的に言っていった方がよい。』

『特に、当局の対応が後手に回っているというような誤解がマーケットにあるならば、むしろ、足元のボラティリティが多少なりとも減ってきたのはこうした政策が先手を打ってうまく行われているということの表れだということや、今回の17兆円という非常に大規模な増発を結果的にサプライズなく消化したということなどをアピールすることにより、ひいてはアナウンスメント効果により市場の安定化に繋がるのではないか。』

まーちょっとヨイショヨイショって感じもしますが(^^)、これに関してはその通りの話でありますわな。米国様におかれましては、ご案内の通り長期国債買入アナウンスして10年国債2.5%まで下げておいてその後は大増発攻撃で4%近くまで上昇というのを3か月もしないうちにやらかす(当の米国ではモーサテ出演の株式市場の人のコメントによれば「これは金融危機脱却で正常化したから問題ない」とか不思議理論を持ち出しているみたいですが・・・・ホンマカイナ)とかオシャレな展開になっておりますが、それに対して日本の国債の安定消化っぷりは大変なもんでございます。あ、そこの人、単に期待成長率が低いからとか悪態つかないように。

ただまあ戦術がいくら巧緻になっても、大戦略(ゲームではない^^)で失敗しちゃうとど〜しよ〜も無いので、そっちの方はもっと上のほうで色々頑張ってねという感じです。


#以下何となくひとりごと

○決定会合ですが

えーっと今回は事前報道もまるっきり盛り上がりませんが、あの「景気判断を上方修正」っていう言い方何とかならんのかという気はします。これって要するに「急激な落ち込みが止まりましたよ」っていう話で、「急激な落ち込みが止まって徐々にチョー緩やかな回復へ向けて進んでいくでしょう」っていうのは4月展望レポートにおけるメインシナリオなのでして、単に「メインシナリオ通り」なだけの話なんですけど・・・・・・

まーメディア的には何か煽りネタが無いと記事にならんというのも判らんでは無いですが、何でもかんでもキャッチーな話で煽るという姿勢ってどうにかならんのかと思いますです。本当に大事なのは「話を聞いていると退屈だけどきちんとした話」をすることではないかと思うのですけど、それじゃあ商売として成立しないってのが残念な話ですわな。

で、CP市場の阿片窟状態に関する議論を是非お願いしたいとは思いますけど(^^)。


○またリスクシナリオ書き直しですなあ

千葉市長選挙結果を見てまた政治リスクシナリオを書き直さないといかんじゃねえのと思う今日この頃でございますが、どうもあちらの政党さんの金融財政政策論議(しか見てませんけど)を見てると、それが党の主張なのか個人の主張なのか訳判らん上に、ネクスト財務大臣あたりから電波成分の強い発言が出てくるのが実に不透明要素でありまして困ったもんです。

「官僚主導から政治主導に」とか言い出して金融政策に一々口出ししてくるのではないかといういやーな予感はするんですけど、その予感は外れて頂きたく存じます。










2009/06/15

お題「月曜に付き雑談」

モーサテは何で月曜の朝だけ米国債券市場の気配を放送しないのかさっぱり理解に苦しむのですが、特に最近長期金利ネタになってるでしょ。

○金曜の訂正

金曜の国会ネタのときに「景気回復を背景に金利が上昇したら歳入が増えて利払い増と相殺される(たぶん歳入増の方がでかいでしょと思うが)ので問題にならんでしょ」って申し上げたのですが、普通に間違えでございましたので謹んでお詫びして訂正しますが賠償はしません。

えーっとですね、現在の一般会計の税収が約50兆円でして、景気回復で成長率が1%上昇して金利も1%上昇しましたって仮置きしますと、税収の弾性値が1ちょっとですから増収は1兆に遠く届かずという事になります。

一方で毎年の国債発行は借換債含めて100兆円以上ですので、利払いは軽く1兆円負担増になるという素敵なお話になるのでありまして、どう見ても税収増が追いつきません本当にありがとうございましたという話でした。

勢いで書きますと碌なこと書きませんな。どうもすいませんでした。



○超過準備に関するお話:金融調節レポートより

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0906a.pdf
の本文20ページのコラムから。超過準備等の保有状況って話からなんでございますが。

『超過準備や準備預金制度非適用先が保有する日銀当座預金は、9月積み期以降、地方銀行、第二地方銀行、外国銀行、信託銀行、証券会社等を中心に大きく増加した(図表15)。』

ということで、9月以降は保守的な資金繰りやクレジットラインの絞込みによって運用しないで足元に抱える動きがあったのが原因という話を。

『さらに、12 月19 日以降、補完当座預金制度の適用利率と誘導目標水準が同水準(いずれも0.1%)となり、超過準備等を保有する機会費用がほぼゼロとなった。この間、外国銀行の中には、海外市場の不安定化等を背景に、為替スワップ(ドル投・円転)やユーロ円により0.1%を下回るレートで資金調達し、日銀当座預金に置くことにより裁定を行う先もみられた。また、こうしたもとにあっても、補完当座預金制度により、無担O/N コールレートが誘導目標水準から下方乖離しにくくなったことから、年末までに比べて資金吸収オペの頻度を大きく減少させたことも、超過準備等が大きく増加する背景となった。』

『補完当座預金制度による付利対象預金(準備預金制度適用先が保有する超過準備と準備預金制度非適用先のうち証券会社、短資会社等が保有する日銀当座預金)の金額をみると、11 月積み期が1.0 兆円だったのに対して、12 月積み期が3.9 兆円、1月積み期が4.3 兆円、2月積み期が5.3 兆円、3月積み期が7.1 兆円と大きく増加している。』

としらっと書いてありますが、12月に利下げをするちょっと前までってそもそも資金供給をした側からツイストで引いてコールレートをディレクティブ通りに推移させる事を中心にした運営(ディレクティブがそうなっているのですから当たり前ですが)をしていた結果として、そもそも超過準備があまり溜まらなかったですがなという話ではネーノという気がしますな。

当時は「潤沢な資金供給」というような話があり、かつ補完当座預金制度導入の時にも「潤沢な資金供給を行った時に金利の下限を設定しておく」っていうような話だったのですが、そっちの「潤沢な供給」というのがディレクティブに反映されなかったので、事実上のトン調節みたいな動きが続き、結果GCなどのレートがやたら高止まりしてしまったという事になったんですよね。

で、補完当座預金制度の金利が誘導目標と一緒になった後も、何故か当初は0.10%よりちょっと上で無担保コール取引を推移させるような感じの調節が続き(大手銀行の取りベースで0.08%が出来て、翌日調子に乗ったどこぞの大手銀行が0.07%の取りとかやったらいきなり売手(だか売現先だか忘れましたが)を打ち込んだってえのもありましたね)、1月にまたGCレートが上昇とかしておった訳でして、その後何かが吹っ切れたのか何だか知りませんが、やっと潤沢な供給をしたのが最近の流れって感じですな。

まーこーゆーレポートでそういう話をしにくいのはよーく判りますけど、その辺りの微妙な匙加減が主にGCやら現先レート経由で色々と波及しておりましたのでありまして、その辺りに関しては内部的にはきっちり考察をお願い致したいものでございまする。ってやってると思いますが。

というのが現象面の話で、調節運営上の話が続きます。

『金融市場調節運営の観点からみると、日本銀行が積極的な資金供給を行うもとでも、超過準備等は市場運用されずに日銀当座預金に止まるため、無担O/Nコールレートの下限を画す機能はかなりよく発揮されている。反面、高水準となった超過準備等は日々の振れが大きくなりやすく、結果的に準備預金残高も振れることから、準備預金の積み進捗を調整することにより無担O/N コールレートを誘導するもとではやや撹乱的な要因となり得る点に留意が必要である。』

ほほう。

『市場機能の観点からみると、日本銀行が、金融市場の安定確保等の観点から、補完当座預金制度の適用利率と誘導目標水準を同水準としたもとで積極的な資金供給を行うことは、無担保コール市場残高の減少等市場機能の低下に繋がっている面がある。こうしたもとで高水準の超過準備等の保有が市場参加者間で定着していくと、市場流動性の一段の低下に繋がる惧れもある。』

まあ無担保コール翌日物とかは見事に取引落ちてますけど、積極的な資金供給するんだからそれは仕方ないんじゃないでしょうか。金利がついているのでとりあえず(かなり息絶え絶えですが)完全死滅にまでは到っておりませんから。

『この点、所要準備額が大きい都市銀行が、余剰資金をレポ市場で運用すること等を通じて準備預金の積みの進捗管理を維持し、超過準備をほとんど保有しない運営を続けているのは、短期金融市場の機能維持の面で重要な意味を持っている。』

ここの所が微妙に良くわからん。どっちかというと振れやすい余剰資金のケツをそのまんまレポ市場に持ってこられる(実際はそういう動きにはなっていないと思われるのですが)とレポ市場の金利が振れやすくなるのではないかという気がせんでも無い。どっちかといえば最近は都銀がせっせと市場間で金を拾おうとして動くから無担保コール翌日物金利を押さえつけ攻撃があちこちに波及(企業特別オペに関しては波及しすぎですが、笑)している気がする。まあそれが市場機能っちゃあ市場機能なんだが。

『また、このことは、日銀当座預金が高水準となるもとでも1日当たりの残り所要準備額が安定的に維持される背景となっており、無担O/N コールレートの安定的な形成に資する面がある。』

ほほう。ということで、微妙に判ったようなわからんような話でした。判らんのはあたくしの頭が悪いからのような気がするが(自爆)。


○人のふんどしでベースマネーの話

本石町日記さんの所から。
http://hongokucho.exblog.jp/11244689/

記事にあるアトランタ連銀ブログをちょっと見たのですが。
http://macroblog.typepad.com/macroblog/2009/06/price-stability-and-the-monetary-base.html

まあ要するに本石町日記さんのエントリーの説明にあるような話をしているのですけれども、ラッファー氏が「FRBは従来のインフレ抑制政策(それによって緩和が遅れたとも批判してます)を180度転換してデフレ抑制政策に立場を過激に転換した」という批判に対する説明を読んでると微妙にアレな気も。

『To begin with, the notion that the Federal Reserve signaled a 180-degree shift in focus to move "from an anti-inflation position to an anti-deflation position" is about equivalent to saying that the temperature control system in your house has a fundamentally different objective when the heater kicks off in June and the air conditioning kicks on.』

というのは本石町日記さんの所にあったとおり。

『The essence of an inflation objective?even an implicit one?is that a central bank will lean against price-level changes substantially below the desired rate, as well as changes substantially above the desired rate.』

『You can certainly argue with the policymakers' forecasts and diagnoses of risks at any given time, but it serves the debate well to not muddle tactics (focusing on inflation or deflation as the economic weather requires) and objectives (the control of the inflation rate that is Mr. Laffer's true concern).』

やろうとしているのは物価安定であって、経済の見通しおよびリスク要因が変化してるのだから変化したのでありますがと言ってるように見えます。

ま、そりゃそうでしょうと思いますけど、確かにこの論点は「期待形成が上手く行くのかどうか」という点で考えないといかんのかなとも思われるところであります。FRBの基本的な目的は変化していない筈であっても、期待形成に失敗しちゃうと政策の動きが増幅されて期待形成に繋がったり、逆に全然意図した期待が形成されないとか、色々と弊害が生じてくる訳で、そーゆー意味ではFRBの政策ロジックに関してはいい感じで複雑骨折状態なので、今後の運営難しくなるんじゃないかと思われる次第なのれす。

で、ラッファー氏のもう一つの論点、ベースマネー回収する段になった時に大丈夫か(1兆ドルベースマネー減らせるのか)という指摘に対しては、アトランタ連銀のロックハート総裁のスピーチを引用しています。

『"The concerns about our economic path are crystallized in doubts expressed in some quarters about the Federal Reserve's ability to fulfill its obligation to deliver low and stable inflation in the face of very large current and prospective federal deficits. In a word, the concerns are about monetization of the resulting federal debt.』

『"I do not dismiss these concerns out of hand. I also recognize that the task of pursuing the Fed's dual mandate of price stability and sustainable growth will be greatly complicated should deliberate and timely action to address our fiscal imbalances fail to materialize. But I have full confidence in the Federal Reserve's ability and resolve to meet its inflation objectives in whatever environment presents itself. Of the many risks the U.S. and global economies still confront, I firmly believe the Fed losing sight of its inflation objectives is not among them."』

・・・・・えーっとこれって単に「大丈夫」って言ってるだけじゃねえのかよと。

まー長期債買い捲りんぐ(トレジャリーにMBS)なのは事実でして、これを引くという話をした時に、米国の政策当局のエライ人は普通に売り切りとか言い出しそうでオソロシスなのですが、まあ売出手形みたいな機動性の高い吸収手段を設けるしかないでしょという話になるかと思います。

で、その売手発行なんですが、長短ミスマッチという点で言えば、売手でもFRB債でもそうなんですが、短期市場に対する強烈な資金吸収になるので、政策金利のコントロールが難しくなるのではないかという気が思いっきりするのがこれまた寒い話ではございまする。なお、日銀方式で売出手形吸収をすると、事実上の無担保吸収になるので、リスクマネーが減って(相手が中銀だから資本制約的な意味でのリスクマネーは食わないけど)レポ市場などの金利が跳ねないかって懸念があったりするんすが、そのあたりの件に関してはもうちょっと考えないといけませんな。


○今日から決定会合

時間が無いのでメモ箇条書き。

・景気判断上方修正するかも

・・・・って大騒ぎしてますが、もともとの見通しどおりに推移しているって話だと思うのだが、どーしてそう報道ってのは上にも下にも煽る話ばっかするんだか。

・企業金融特別オペとか

8月あたりが一旦の見直し時期だと思うのですが、CPレートの銘柄間格差の異様なまでの無さとか、相変わらずの短国との逆転現象とか、サービスレートオペ効果にも程があると思うのですが、この状況に関する論議はやるのかねという感じです。まあ議論でてもその概要が読めるの来月会合後ですけどね。







2009/06/12

お題「ネタが無い時の国会ネタ」

株価が期待先行とか割高とかどうみても買いたい弱気の集団です本当にカムサハムニダ。

で、ネタが無い(訳でもないが)ので6月4日の参議院財政金融委員会。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/171/17106040060018a.html

○財政規律がどうしたこうした(白川総裁)

この回には白川総裁が出席して答弁したのですが、財政問題に関する発言がヘッドラインでも目立ったなあという感じだったのですけれども、改めて会議録見ると「ほほー」という感じです。

民主党の富岡由紀夫委員の質問に対しての答弁から。

『(長期金利の上昇に関する説明部分割愛)問題は、今まさに議員御指摘のとおり、将来の財政に対する運営あるいは金融政策に対する運営について、これが疑念が生じてくる、つまり長期的な安定にコミットする政策ではなくて、短期的な動向で財政なり金融が運営されることになりますと、そうすると今度は、そこにプレミアムというものが上乗せされることになります。この分は、これは経済活動に対して悪影響を及ぼしていくというふうになります。

そういう意味で、長期の国債市場の金利が安定的に形成されていくというためには、長期的にしっかり財政のバランスを維持していくという姿勢が大事だと思いますし、それから金融政策も本来の目的である物価の安定を通じて持続的な成長に貢献していくということでしっかり運営されていくということが大事だと思っております。

また、後から御質問あるかもしれませんけれども、私どもの長期国債のオペにつきましては、これはあくまでも金融調節を円滑に進めていくために必要な範囲で行っているということでございます。決して財政のファイナンスを側面から支援していくということで行っているものではございません。万が一にもそうした目的で運営されているというふうに認識されますと、これはまさに先生がおっしゃったようなプレミアムの発生を通じて経済に対して逆に悪い影響が出てくるというふうに思っております。』

で、その後富岡委員がマーストリヒト条約をネタに財政規律に関する白川総裁の答弁を求めたところ、このような答えになっております。

『マーストリヒト条約がなぜ生まれたかという背景を考えてみますと、域内の各国がそれぞれの通貨の主権を放棄して金融政策は一本で行う、経済の安定化政策というものについて金融政策を放棄する、そのときに財政政策についても各国が規律を持っていませんと、先ほど来の先生のお話でございますけれども、結局通貨のコントロールもうまくいかないということで、各国が共通の枠組みを設けて、それが財政の規律、今おっしゃった基準だというふうに思います。

欧州の場合はそういう形で具体的なルールを設計したわけでありますけれども、各国、例えばイギリスも、それからアメリカも、それから日本もそうでございますけれども、各国のそれぞれの法の枠組みの中で財政規律をしっかり保つためのいろんな工夫をしているというふうに思います。そういう意味で、日本の中でマーストリヒト条約と全く同じやり方がいいかどうかについては私は発言差し控えますけれども、ただ、大事なことは、まさに先生がおっしゃっているように、財政の規律を長期的にしっかり守っていく、それから金融政策についても本来の目的に沿って運営していくということについて政策当局がしっかりコミットをし、それから、それを国会あるいは国民がしっかりサポートしていくということが大事だというふうに思います。』

ということで、まあ振られたネタではありますが、日銀総裁が財政規律に関して言及って所は先日ご紹介したバーナンキ議長の議会証言にも通じる流れにも見える訳でして、まあこのテーマが徐々に議論になってくるでしょうという感じです。



○金利上昇に関する論点が残念ながら混乱するでござるの巻(民主党富岡由紀夫委員)

で、上の白川総裁答弁ですが、最初の答弁に対応する質問はこうなってます。

『景気回復、確かに必要かもしれませんけれども、今言ったように、国の信認を、ベースをどこに置くかといったところだと思います。やっぱり財政再建のところがしっかりしておかないと、それこそ日本の信用、幾ら経済成長、景気対策、いろんなことを言っても、そこがぐらついてしまったら日本はもうもたないと、一遍に吹っ飛んでしまうというふうに思っております。今何とかやり繰りできているのは、金利が非常に低い水準で推移しているからこれで済んでいるんですね。今年度予算も九・五兆円ですか、利払い費、計上しておりますけれども、これはもう非常に過去に類を見ないような低い金利水準で推移しているから何とかやっていけるというふうに思っております。

金利というのは、これはそれこそいろんな経済要因、様々な要因が関係しますけれども、いつまでも低い水準でいることはできないというふうに思っております。必ず景気の循環、金利のいろんな循環があって上がってくることがあります。一%上がると、これはもうそれこそ八百十六兆円、純債務八百十六兆の一%でも八兆円ですか、それこそ社会保障費なんかはもうほとんど、ほとんどというか、二十八兆のうち八兆また削らなきゃいけなくなったり、どこで削るかは別として、予算が全く組めなくなるというふうに思っております。金利が上がってくると、削ることはもちろんなかなかできないでしょうから、そうするとまた追加的に赤字国債を発行しないといけない。赤字国債を発行するということはまた国債の供給が増えるわけですから、金利の上昇要因になってくるということで、金利上昇の完全なスパイラルに入る懸念が非常に高くなってくるわけですね。そうすると、経済活動もなかなか、金利が上がってくれば低迷していきますから税収の方も少なくなってくる、そうするとまた赤字国債を増やさなきゃいけないということで、二重、三重に、一度金利が上がり始めるともう歯止めが効かなくなってしまうリスクが非常に私はあると思っています。』

何と申しますかツッコミ所が多い雑な所が残念なのですが、まあ突っ込むと致しましたら・・・・・・・

(1)金利が1%上昇した所でいきなり調達コストが全部1%上昇する訳では無いですがな。借り換えの部分で利払い負担が増えるとは思うけど全部がいきなり借り換えになる訳では無い。(2)景気回復を背景に金利が上昇したら歳入が増えて利払い増と相殺される(たぶん歳入増の方がでかいでしょと思うが)ので問題にならんでしょ、(3)最初に「景気循環で金利が上昇した場合」という話をしているのであれば、金利上昇して景気が冷えたら金利下がるでしょ。というような話になるのでして、何と言うか微妙に残念な話です。

なお、富岡委員の名誉の為に申し上げますと、この質問の続きの部分で「財政の維持可能性に関する懸念で金利が上がったらどうなるの」というのが富岡さんの質問趣旨だと思われます。

『そうじゃなくても今回、世界中がこういう景気対策ということで国債、債券を発行しておりますので、債券市場は供給過剰になってくるということが容易に想像できます。実際、日本の長期金利なんかも上がってきておりますし、アメリカなんかもその心配を今しているところですけれども、金利が上がったらどうなるのかと。私は、もう一遍に日本の財政状況は、予算なんか全く組めなくなってしまって、それこそ国家破綻にあっという間につながってしまうんじゃないかというふうに思っておりますけれども、(この後全然読点がないので途中強制省略^^)この金利上昇リスクについて、そうなった場合どうなるのかということを含めて、お考えがあればお示しいただきたいというふうに思っております。』

であれば、前半の部分にある「景気循環がどうのこうの」という話は論点が混乱するだけなので余計なんですよね。まあ白川総裁が答弁でフォローする格好になっているのがチャーミングなのですけど(^^)。

ま、外貨準備を円建てにシフトというような意味不明発言をするセンセイもいるミンスさんの中ではちったあ普通の話に近いかなという感じですが。


・・・・ところで話は全然違いますけど、この「金利上昇したら利払い負担増大」という論点は忘れると困る話でして、長期国債の発行減らして短期にシフトして長期金利を押し下げて景気対策って事をしますと、いざ景気回復した段になって金利が素敵に上昇した時に、景気回復による歳入増加よりも借り換え負担が一気に来る(短期にシフトすれば当然借換債の発行が増えるから)方がでかくなったら本末転倒にも程がある状態になるのでありまして、国債発行額が少なくて、市場も規制でガチガチだった時代の施策が上手く行ったから今でも機能するかというとそれはまた全然別問題でしょと思うのであります。ってFRBに対する悪態ではございませんので念のため(^^)。


○あんまり相場と関係ないですけど大門先生

例によって最後の質疑が大門先生なのですが。

『○大門実紀史君 大門でございます。

今日は四十五分もいただきました。ただ、質問は時間より中身でございますので、前向きないい答弁をいただければ若干早く終わってもいいのかなと思っておりますんで、お含みおきのほどお願いしたいと思いますが。』

『質問は時間より中身』にワロタ。

『今日は、金融商品取引法のお客さん保護といいますか、利用者保護の趣旨を全く分かっていない銀行について取り上げたいというふうに思いますが、大体全部の銀行がそうなんですけれども、話を具体的にするためにあおぞら銀行と住友信託銀行の具体例で質問していきたいというふうに思います。』

ということで、相場とはあんまり(というかほぼ)関係ない話なのですが、金融商品の販売専担職員みたいな人たちの雇用体系に関する問題提起と、金融商品の過剰な乗換販売が行われているのではないかという問題提起をしておりまして、これはうーむというような指摘になっております。まあこういうのは使用者側の見解も聞かないと判断に苦しむ部分がありますので何とも論評し難い話ではありますが。

しかし『大体全部の銀行がそうなんですけれども』とか言葉の端々に毒成分が入る大門さんのキャラってどーゆー感じなんでしょうかね(^^)。ちなみに最後の部分になるのですが、今回は質疑応答というよりは大門さんが問題点と思われるものの指摘および提起をするの巻となっているので、政府側の答弁が論争形式になっておりませんで、殆ど大門さんのオンパレード状態になっているのが微妙にオシャレな展開になっています。



○勘違いだと良いのですけど・・・・・・

ということでネタが無い(正しくはまとまって色々考えるヒマがない+考えがまとまらない)時の国会ネタという事で書いたんですけどね、実は会議録見ようと思って国会出席状況を見たんですよ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kokkai09.htm

まー基本的にネタ拾いに行く時はここを見て(印象にある質疑応答しているときは「後日見る」とチェック入れて衆議院/参議院ホームページをちょくちょくチェックしますけど)国会会議録情報を見に行くのですけれども、今回見ようとしたら・・・・・

・ 6月 5日 衆議院外務委員会 雨宮企画局長出席

外務委員会なんて無茶苦茶珍しい!これはどんな話をしているのか見なきゃ!!・・・・と思ったらどう見ても答弁がありません本当にありがとうございました。


・ 5月25日 参議院予算委員会 西村副総裁出席

えーっと、西村で検索しても引っ掛かってこない(追記:出席はしています、答弁なしということです)のですが。


・・・ってえのがあったりですね、


・ 5月22日 衆議院財務金融委員会 山本理事出席

での山本理事の答弁っていうのが・・・・・

『○山本参考人 お答えいたします。まず、日本銀行は、二月二十三日に金融機関からの株式買い入れを再開いたしました。その後、五月二十日までに私どもが買い入れた株式の累計額は約六十億三千万円でございます。日本銀行の株式買い入れは、銀行の株式保有リスク削減の努力を支援するため、有価証券の保有実態や日本銀行の財務の健全性確保の観点を踏まえまして、一定の信用力を有する株式を対象に行っております。現時点で、この枠組みを変えることは考えておりません。私どもとしましては、こうした株式の買い入れ、また、今月末に初回の入札実施を予定しております劣後ローンの供与、これらが金融機関にとって一種の安全弁として機能し、円滑な金融仲介機能の維持と、これを通じた金融システムの安定確保に貢献していくものと考えております。』

というだけの物だったりするのですが、日銀の副総裁だ理事だ局長だって人を参考人で呼んでおいて質疑応答無しとか(そりゃまあ質疑の流れでそうなる事はあるんでしょうけれども)、別に理事が出張って答えないといけないような話でもない一言(一言よりは長いけど)答弁をさせる為に呼び出すとか、ちょっとどうなのよという気が致しましたですよ。

ちょうど直近の数回が連続してこうなっていたから目についたんですけどね。

#相場ネタに関しては何か色々と考え中なのですが考えが纏まらないでござるの巻









2009/06/11

お題「金融市場レポートから」

金融市場は米国だけじゃないのですが米国の話一辺倒なのが仕様の某モーサテによりますと、ダメリカ様での流行語がグリーンシュート(新芽の芽生え)とはまたまたご冗談を。昨日のガイトナーの「欧州銀行にも厳格なストレステストを」ネタも中々のヒットでしたが、連日モーサテの米国市場コメンテーターのネタ振りが面白いっす。

しかしまあ何ですな。メリケンの辞書に最も必要なのは「謙虚」という言葉であって、それを持ち得ない連中の集団という中身が変わらないのであれば、連中の強欲がまたまた暴走して馬鹿バブルを作るんでしょうなあ。で、そーゆー「アメリカ脳」の連中が考えるからFEDビューになるんでしょうなとも思うのであります(既に諦観)。

さて金融市場レポートから。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0906a.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0906a.pdf(本文、長いです)

○今回は色々ありましたので

2008年度という事ですが、流れとしては9月のリーマンあぼんぬまでと、その後、それから12月の各種政策打ち込み後に効果が出て来た1月以降という感じで大別されると思いますが、この間の各市場の流れと施策について比較的詳しくかつコンパクトに書いております。

まー実際問題としては10月以降に「潤沢な資金供給をする」と言ってる割には何故か潤沢な資金供給というのには足りなかったですねとか、0.1%に利下げして付利金利も0.1%に下げたのに何故か「金利付き量的緩和」への移行が遅れてその間はレートが中々下がりませんでしたなあとか、ツッコミ所はあるのですけれども、同期間にあたくしが散々悪態ついておりましたので、その繰り返しになりますから割愛。

と言いつつ、スイッチが入ったら急にネタにして悪態モードになるかも(笑)。

まあそれは兎も角、そんな感じですので関係者の皆様は読むもんでしょこれって感じです。特に昨日も申し上げたように、図表コーナーが中々面白いのでお勧めです。


ところで、リーマン破綻に関連してですけれども、取引のフェイルによる市場の縮小に関しての話は良くされるのですけれども、実際に売買をする立場になってみますと、取引がフェイルになる事もそりゃ面倒なのですが、実際問題としては約定が遡及でさっくりとキャンセルされてしまった方が困る話でございます。

と申しますのも、まあレポに関しては取引そのものはでかいですけれども、ポジション的な金利エクスポージャーが巨大になるのはアウトライトの約定がキャンセルになる方でありまして、リーマン破綻に伴い売買約定の決済履行が止まって結局(後付けで)全部取り消し状態になったのが非常に困る事態。

と申しますのも、当然ながら売買取引って約定時点でポジションを認識する訳ですから、約定したものが事後的にキャンセルになると遡及でポジションがずれることになりますし、当然ながら遡及で損益もずれることになります。そうなりますと、まあふつーに自己勘定の所(証券会社とか銀行ポートとか)だとまだ何とかなるのですが、例えばオープン投信のように他人勘定で常時資金の出入りがあるような物だと遡及で基準価格を変更する破目になる訳でして、顧客向けに遡及訂正をするという話になると手間は大変だわ、顧客への補填をしないといかん(この場合補填は正当な行為ですので念のため)ので運用会社涙目だわと、結構痛いのよねこれが。

勿論決算跨ぎで遡及訂正されたら自己勘定でも面倒な話になりますし、まあ約定キャンセルリスクってのを意識するとアウトライトの取引もやりにくくなるんすよね。だから証券決済の期間短縮という発想そのものは方向として正しいのですが、事務的に全然耐えられない人が投資家の世界に多いので、そっちも中々難しい話だったりしますし・・・・・

んな訳でございまして、リーマン破綻後の市場混乱に関連してレポ市場のシュリンクの話が多いのですが、約定のキャンセルに伴うアウトライト取引先の絞込みという観点も結構大事な要因だったと思うのでありまする。

従って、市場取引の約定だけはちゃんと履行させるべきであったという結論でありまして、金融庁が取引全部止めてしまった事に関してはどう見ても過去の教訓活かしてねえだろ感が強いのでありました。


○長期国債保有に関するコラム

本文26ページにございますコラム。

『BOX2 金融市場調節と日本銀行のバランスシート』

『金融市場調節を通じて取得した資産や負担した債務は、日本銀行のバランスシートに計上される。日本銀行のバランスシートをみると(図表25)、主な負債項目として、銀行券、当座預金および政府預金等がある一方で、主な資産項目として、長期国債、引受国庫短期証券のほか短期資金供給オペに係る資産(以下「短期オペ資産」)を保有するかたちになっている。』

ということで説明があるのですけれども、内訳は割愛しまして・・・・

『日本銀行は、銀行券や財政等の受払いによる当座預金残高の増減を予測した上で、それを勘案して必要な資金供給オペや資金吸収オペを行い、これにより当座預金残高をコントロールすることを通じて、無担O/N コールレートを誘導している。』

という入り口の時点で話が噛み合わない方が相変わらず存在するのが甚だ遺憾としか申し上げようが無いのですがそれは兎も角。

『これをバランスシートの動きでみると、銀行券残高や政府預金等残高が増減(下記図表中@)する結果、当座預金残高が増減し得る(同A)のに対して、必要に応じて短期資金供給オペ残高や短期資金吸収オペ残高を増減させる(同B)ことにより、当座預金残高をコントロールしている(同C)。』

図表は引用できません(というか図表の貼り方判らんのですが)ので本文見てちょ。

『こうしたもとで、短期的な振れが大きい政府預金等や機動的に残高をコントロールする必要がある当座預金といった短期負債に対しては、短期資産である短期オペ資産を保有する一方、長期的な負債である銀行券残高に対しては、長期資産である長期国債を保有することにより、円滑な金融市場調節運営が可能になっている。』

でも準備預金制度で積むことが義務付けられている部分に関しては当座預金=長期負債あるいは永久負債であるという認識で宜しいのではないでしょうか。それに預金受入金融機関の預金量って基本的に経済成長すれば伸びるものだと勝手に思っているので、法定準備預金量って結構下方硬直性があるんじゃないのかなあとか妄想。

ま、それはそれとしまして。

『仮に長期国債残高が増加し銀行券残高を上回るような場合には(下記図表中(参考))、短期負債である政府預金等や当座預金に対しても長期資産である長期国債を保有することになる。この場合、金融情勢に応じて当座預金残高を機動的にコントロールするために、例えば長期国債の市場での売買を頻繁に行ったり、資金吸収オペを継続的に実施すること等が必要となる可能性があるが、これは市場金利を大きく変動させる等市場に攪乱的な影響を与える惧れがある。特に足許のように市場流動性が低下し、市場分断が強まっている状況のもとでは、こうしたオペにより市場に大きな影響を与える可能性が高い。』

これもまーさよですなという話。

『こうした事態を避け、政府預金等や当座預金の増減に応じて機動的に残高を調整できる短期オペ資産を保有することにより、円滑な金融市場調節運営を確保する観点から、長期国債の保有残高については、銀行券発行残高の範囲内とするようにしている。こうした取扱いは、同時に、長期国債の買入れが、国債価格の買支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も果たしている。』

という説明をしているのですが、この説明のロジックは実務担当者的にはとても判りやすいのですが、実は一つ重大なツッコミ所が生じるのではないかという気が致します。

と申しますのは、バランスシート的に言えば「長期国債を短期オペ見合いで売却するなんてもうエライコッチャですよ!」という話なのですが、長期国債と申しましても残存期間が色々とある訳でして、例えばの話残存3か月になった長期国債となりますとそれは短期オペの世界と変わらない(実はちょっと違うが)のではないでしょうかという話になりますわな。それこそ残存1年の国庫短期証券の売り切りオペやるのと残存1か月の中期利付国債の売り切りオペやるのとどっちがエライコッチャになるのよという比較をおっぱじめると素敵な話に。

ということでですな、この理屈推し進めると、残存1年以内の長期国債買入は実質短期オペレーションではないか(実際は中長期国債を買入すると償還時に償還乗換が発生するので実質的なオペの足は1年を超えるし、再乗換をやったらもっと長くなる)という議論になってくるのでして、中々素敵な諸刃の剣な説明ですなあと思うのでありました(^^)。


#米国10年金利3.9%超えでヒャッハー状態なのですが、その話はまたいずれ












2009/06/10

お題「本当は大ネタがあるのですが小ネタで」

微妙に忙しいもんで勘弁。

○白川総裁講演メモ

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906b.pdf

『中央銀行の役割』って所からメモメモ。最初は『システム全体のリスク評価』という話。

『第1の役割として、中央銀行には、実体経済と金融市場、金融機関行動の相互連関を意識して、システム全体のリスクを評価することが求められます。そうしたリスク評価が、金融システムの安定に向けた政策対応の基礎となります。』

と、ここまでは兎も角として、この次からが何とも。

『もっとも、これは「言うは易く行うは難し」の典型的な例と言えます。今回の金融危機が発生する以前から、中央銀行は、金融システムに関する報告書の中で、リスクの高まりについて警告を発してきました。警告を発すること自体は、それほど難しいことではありません。』

>警告を発すること自体はそれほど難しいことではありません
>警告を発すること自体はそれほど難しいことではありません
>警告を発すること自体はそれほど難しいことではありません

全く仰るとおりで。講演の前の方ではこんな話を白川総裁は行ってまして。

『もし将来、あの当時と同じような良好な経済環境、すなわち高成長、低インフレ、低金利と市場の低ボラティリティーに恵まれたとした場合、皆さんは、今度は違った経営戦略を選択されるでしょうか? また、もし皆さん自身は違った戦略を選択されるとしても、競争相手の金融機関経営者は、どのような戦略を選択すると予想されるでしょうか?』

という話ですわな。いやまあ結果から逆算してアホバカ言うのは簡単ですけれども、実際にできるかどうかというのは難しい話。でも「百年に一度だから」をエクスキューズにして「自分もいかれたけれども他人もいかれている」で済ませるのであったら経営者(だったり投資銀行だったり運用担当者だったりクオンツモデルだったりしますけど・・・・)がプロとして存在する意味が1ミリも無い訳でして、可及的速やかに切腹すべきであるという話になるんでしょうな、とか書いてて自分も耳が痛いが(自爆)。

つまり、さっきの続きになりますと。

『また、銀行経営者や市場参加者自身も、そうしたリスクの高まりに、ある程度は気付いているものです。ただ、その上で、本気になってリスクの削減を進めようと思えば、状況を是正するための行動を起こすことが必要となります。分析から一歩進んで、状況の是正に向けた行動をとっていくためには、的確な分析と評価、強い意志、有効な行動を可能とする強固な法的枠組みのすべてが必要です。いずれにせよ、システム全体のリスク評価がなければ、行動は起こせません。』

ということですな。で、そこで中央銀行の出番という話になります。

『中央銀行がそうしたリスク評価の役割を担うのは、極めて自然なことであると考えています。そう考える理由を申し上げますと、中央銀行は、金融政策の運営主体として、マクロ経済に焦点を当てた情勢分析を行っていますし、金融市場の参加者と日々密接に意見交換や情報交換を行っています。さらには、リサーチを重視する組織文化を有している、ということが挙げられると思います。』

ということで次の話になりますが、こちらは『金融政策運営の再考』という話になりますが、ポイントはここですな。

『どの中央銀行も、金融政策だけでバブルを防止できるとか、防止すべきであるとは考えていません。中央銀行にとってより現実的な問題設定は、「資産価格の上昇、信用量とレバレッジの拡大、経済活動の過熱といった、金融引締めの必要性を示唆するような明らかな現象が見られる一方で、一般物価だけは安定しているという情勢に直面したとき、金融政策をどのように運営すべきか」ということだと思います。』

ということで、ここだけ見るといわゆるBISビューといわれるものともちょっと違う言い方をしてますかね。物価と資産価格の乖離が起きた場合にどうするかというもうちょっと現実的な論点ですわな。「バブルは崩壊してから対応」というFEDビューとは全然違いますけど。

『そのような強気のマインドが支配的な状況の下では、金利を多少上げたとしても、短期的には、バブル的な経済活動の鎮静化に大きな効果はないかもしれません。そうかと言って中央銀行が極めて緩和的な金融政策運営を継続すると、信用量やレバレッジの膨張を一段と加速することになります。金融政策とバブルの関係を議論する際には、極端な楽観主義にたつことも、過度の悲観主義に陥ることも適当ではありません。』

『金融政策だけでは、金融・経済活動における様々な過剰の積み上がりを抑えることはできませんから、他の様々な政策との組み合わせが必要になります。ただそうではありますが、金融政策運営が不適切であれば、バブルはさらに膨張し、ついには破裂して経済を急激に縮小させることになってしまいます。』

ということで、やっぱりFEDビューは現実的ではないということですね、わかります。

・・・・・なんてえのを引用しててふと思ったあたくしの雑感なんですけどね、いわゆるFEDビューの問題点って「バブル破裂が小さい時はワークしても破裂が大きい時にはどうにもならん」っていう最近の事例もあるんですけれども、その前のロシアなどの通貨危機での騒ぎとかITバブル崩壊とかの後処理およびその後の状況というのを考えて見ますと、「危機回避」というために打つ施策というのは、その状況が危機下で行われるだけに常に「やり過ぎバイアス」が掛かってしまうんじゃないかと思うのですな。で、そのやりすぎの反動によって次にまた別のバブルが発生して崩壊の連続で徐々にそのバブルが大きくなって行ったのが今般の状況なんじゃねえのかと。

最近の日本の事例で言えば企業金融支援特別オペレーションがそうかなと思うのですが、あのサービスにも程がある施策自体は、導入当初(昨年12月)ではあの位やらないと企業金融の逼迫を緩和する効果が出なかったかも知れないと思いますので、あの時点では適切だったのかなあとも思う次第ですが、市場に資金が戻ってきた現在になってみるとCP市場の阿片窟化を推進する強力ツールになってしまった訳でありまして、まーCP市場の局地的な所で話が止まっているから問題ないちゃあ無いのですけれども(まーあるけどね)、やはり危機下において打ち込む政策は危機脱出の為の強力ツールとなり、それが強力であるが故に諸刃の剣にもなってくれるもんなんじゃないかなあと思った次第です。

・・・・と、余談が長くなってどうもすいません。

でもって、その先のお題は『プルーデンス規制の再設計』『中央銀行サービスの強化』と続きますが、プルーデンス規制の再設計というお題に関しては、先日西村副総裁が講演で指摘していた話題と重なりますのでちょっとだけ引用。

『例えば、プロシクリカリティ(金融と実体経済の間の相互作用)の削減を目的として、所要自己資本に関するプルーデンス規制や引当に関する各種慣行を見直すことが、具体的な課題の1つとして挙げられるでしょう。経済環境が良好なときには、銀行が資本のバッファーを積み増し、経済が悪化したときには、バッファーとして積み増したその資本を金融仲介機能の維持のために使用できるような仕組みを設けることが大事です。』

で、中央銀行サービスの強化というのはこちらは先日白川総裁が「中央銀行は配管工」という話をしていましたが、その話と同じでございます。比喩が面白いので引用するでござるの巻。

『しばしば、金融市場は、比ゆ的に、「継ぎ目のない(seamless)」市場という方向に次第に向かっていると言われます。しかし、金融取引や決済の状況を見るだけでも、実際には、「継ぎ目のない」状態からは程遠いことがわかります。』

で、具体的に日中信用供与の問題とか為替市場でのラグの問題とか、市場急変におけるマージンコールの発生とかを指摘しまして。

『それらの結果として、金融取引の過程において、流動性の漏出(leakage)や一時的な保蔵(storage)が生じることは避けられないため、「継ぎ目(seam)」が生まれてしまいます。危機時においては、そうした「継ぎ目」によって生じる流動性の不足が、状況をさらに悪化させる可能性もあります。中央銀行としては、こうした「継ぎ目」を埋めていくため、どのように中央銀行サービスを提供していくかについて、不断に検討していく必要があります。』

実務担当者的には実にアリガタヤな論点でございます。


○実は大ネタがあるのですが

2009年度の金融調節について
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0906a.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0906a.pdf

上が紹介コーナーで下が本文ですが、まだろくすっぽ読めてないので明日以降で勘弁。本文も面白い(かどうかは趣味の世界^^)ですが、図表も中々面白くて、準備預金の進捗状況の昨年対比とか、業態別の超過準備保有額推移とか、オペ平均期間の比較とか楽しい図表が色々とございます。

・・・・が、多分趣味人向けなので普通に見ても眠気を催すかもしれません(笑)。後日紹介します(つもりです)。


○メシウマあるいはメシマズな入札

昨日は2か月短国と30年国債の入札。まあ短国もやっちまった入札でしたが、30年国債も何だか落札自体は前場引けの板どおりだったのですが、終わってみれば前場引けからバランス悪化。先週の10年国債入札も似たような感じでございまして、「プライマリーで買う人はいるけどセカンダリーが様子見地蔵の集まり」という状況になっており、プライマリーで買う人にとってはメシマズな入札が続き、様子見地蔵的にはメシウマ状態になっている次第。

まーびみょーなのではありますが、このメシマズ入札が連続すると段々プライマリーで買う連中がどん引きしだすのが日本投資家仕様となっておりますので、次の5年でちょっと是正することキボンヌ。ちなみに本日は3か月短国もあるのですが、さすがに2か月をやっちまった入札(入札は0.16台前半の平均でしたが引けは貫禄の0.17%)した直後ですので、冷静に0.18%台での決着になるでしょう・・・・って結局先週より強いんじゃないのかという説はあるが。


○公的資金返済ですかそうですか

よく判らないけど米国財務省のURLを置いときますね。
http://www.ustreas.gov/press/releases/tg162.htm

『Following consultation with the primary banking supervisor of each institution, Treasury has notified the institutions that they are now eligible to complete the repayment process. If these firms choose to do so, Treasury will receive $68 billion in repayment proceeds.』

さいですか。

『These repayments follow a period in which many banks have successfully raised equity capital from private investors. Also, for the first time in many months, these banks have issued long-term debt that is not guaranteed by the government.』

・・・・・いやまあ良いんですけど、政府が全面バックアップして大手は何か色々フォローして突然潰すようなことはしませんよ(中小は絶賛潰してますが)っていうセーフティーネットを引いたから「not guaranteed by the government」な長期借入ができるようになったんだし、民間からの資本増強ができるようになったんでしょとかツッコムのはオトナの態度では無いということですかそうですか。

まーそこまでは良いのですが、ズッコケになったのはモーサテで紹介されていたWSJだか何だかの記事でして(書き物しながら聞きながらだったので当該記事が見つかりませんが)、「ガイトナーが欧州の銀行への厳格なストレステストとその結果公表を求める」みたいな記事があったようですが、もう何だか「またまたご冗談を」(AA略)としか申し上げようが無いですな。

ストレステストの前提条件よりも悪化した経済指標の下で公的資金返済おっけーとかどんなペテンだよと思うのに、欧州に対して厳格なストレステストの実施を求めるとか頭沸いているんじゃないのという感じですが、強欲プリオン脳の脳味噌の回路がどう構成されているのかとても興味がございます次第です。










2009/06/09

お題「だいたいバーナンキ議会証言」

まずは先週水曜に行われた議会証言から少々メモ。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20090603a.htm

○景気に関連して

最初は『Economic Developments and Outlook』ということで、経済物価動向に関して説明していますが、そこをざっくり読みますと・・・・

雇用に関しては目先数ヶ月は厳しく、消費に関しては戦地面との改善で悪化傾向から横ばい(底ばい)傾向に(ただし家計のバランスシート調整が終了していないのはリスク)なり、住宅関連はやや改善中。企業活動は低調だが在庫調整の進行で生産の回復の動きが、という事で、『We continue to expect overall economic activity to bottom out, and then to turn up later this year.』と年後半の底打ちから上昇に対する期待を示しています。また、最近の海外経済に関しては安定化しつつあるような指標が出ていますが、これが正しければ輸出も景気に好影響と、何か先進各国どこもかしこも「海外頼み」状態なのねって話です。

ただし、金融システムの安定化と信用市場の改善が継続することが条件で、その状況がコケるとエライコッチャという話をしてます。まあそうなんでしょうけれども、議会証言なだけに、「FRBが今後出してくる施策に議会がウダウダ文句垂れると景気回復への水差し野郎になるんでよろしく」という釘挿しモードなんでしょうなと。

『An important caveat is that our forecast also assumes continuing gradual repair of the financial system and an associated improvement in credit conditions; a relapse in the financial sector would be a significant drag on economic activity and could cause the incipient recovery to stall. I will provide a brief update on financial markets in a moment. 』

それから、インフレ懸念に関しては経済見通しの最後の所で。

『In this environment, we anticipate that inflation will remain low.』

原油やら商品市況が望ましくない上昇をしてるけど特に物価上昇圧力は無く、おまけに経済状況の改善とインフレ期待の安定に言及してて、デフレ懸念に関してもスルーになってますな。

『As a consequence, inflation is likely to move down some over the next year relative to its pace in 2008. That said, improving economic conditions and stable inflation expectations should limit further declines in inflation.』


○金融市場に関してですが、相変わらず長期国債の買入が・・・・・

『Conditions in Financial Markets』の所から始まります(パラグラフは第8から)

金融市場は改善してきているが、低水準の資産価格や信用市場のタイトさがあるので、まだストレスがある状態におかれているというのが、最初に示されていまして、現在の市場環境について説明しています。

『Among the markets where functioning has improved recently are those for short-term funding, including the interbank lending markets and the commercial paper market. Risk spreads in those markets appear to have moderated, and more lending is taking place at longer maturities.』

つーことで短期市場のファンディング機能が改善し、信用市場におけるリスクスプレッドの改善によって長期貸出も伸びているという状況ですと。

『The better performance of short-term funding markets in part reflects the support afforded by Federal Reserve lending programs. It is encouraging that the private sector’s reliance on the Fed’s programs has declined as market stresses have eased, an outcome that was one of our key objectives when we designed our interventions.』

『The issuance of asset-backed securities (ABS) backed by credit card, auto, and student loans has also picked up this spring, and ABS funding rates have declined, developments supported by the availability of the Federal Reserve’s Term Asset-Backed Securities Loan Facility as a market backstop.』

ということで、ABS買取策が市場の安全弁として働き、市場に掛かっていたストレスが軽減されて、ABSのもとになってる各種ローンの状況が改善ということですな。で、次は長期市場のお話。

『In markets for longer-term credit, bond issuance by nonfinancial firms has been relatively strong recently, and spreads between Treasury yields and rates paid by corporate borrowers have narrowed some, though they remain wide.』

こちらでもやはり信用スプレッドの改善について言及しています(まだスプレッドが大きいとは言ってますが)。

『Mortgage rates and spreads have also been reduced by the Federal Reserve's program of purchasing agency debt and agency mortgage-backed securities. However, in recent weeks, yields on longer-term Treasury securities and fixed-rate mortgages have risen.』

さて金利上昇の話がキタキタ。

『These increases appear to reflect concerns about large federal deficits but also other causes, including greater optimism about the economic outlook, a reversal of flight-to-quality flows, and technical factors related to the hedging of mortgage holdings.』

ちゅうことで、真っ先に財政赤字拡大の話をしておりますが、その他にも景気楽観、質への逃避の巻戻し、MBSのヘッジによる動きという指摘をしています。

・・・・・で、この先は金融機関のストレステストとか資本増強という話になっちゃうのですよ。ということで、資産買入プログラムの効果に関する説明はしているのですが、今回もまたまた長期国債買入に関する説明は微妙にスルーされるでござるの巻。強いて言えば、さっき引用した「モーゲージ金利の低下」という部分になるのかもしれませんが、ABS買取プログラムのように政策目的および効果を強調するような言及を今回もさっくり避けましたな。いやーあっはっはっは。

金融機関の資本増強の話はスルーします。


○財政に関して

最後の『Fiscal Policy in the Current Economic and Financial Environment』がそこそこ長いのが今回の特徴ですかね。よー知らんが。

で、そちらでは今般の財政措置に関する効果に関する考察とかをしたあと、その財政赤字の規模に関してこんな事を。

『As a consequence of this elevated level of borrowing, the ratio of federal debt held by the public to nominal GDP is likely to move up from about 40 percent before the onset of the financial crisis to about 70 percent in 2011. These developments would leave the debt-to-GDP ratio at its highest level since the early 1950s, the years following the massive debt buildup during World War II.』

そんな話しだしたら日本なんてと思いますが(笑)、その後で今後のベビーブーマーの年金問題やら医療費増大などの問題もあるので、現状ではリセッション回避だの金融安定化だので財政支出を増やしていますが、財政バランスに関しても今から考えていく必要があるという話をしています。そこ引用しますとこんな感じ。

『Certainly, our economy and financial markets face extraordinary near-term challenges, and strong and timely actions to respond to those challenges are necessary and appropriate. Nevertheless, even as we take steps to address the recession and threats to financial stability, maintaining the confidence of the financial markets requires that we, as a nation, begin planning now for the restoration of fiscal balance. Prompt attention to questions of fiscal sustainability is particularly critical because of the coming budgetary and economic challenges associated with the retirement of the baby-boom generation and continued increases in medical costs.』

で、これら財政問題に関しては、今後政府がどこまで負担するかという政府の大きさに関する議論を避けて通れないし、政府の大きさに応分した納税者の負担が必要になるという話をしてましてこの部分最後の所。

『Clearly, the Congress and the Administration face formidable near-term challenges that must be addressed. But those near-term challenges must not be allowed to hinder timely consideration of the steps needed to address fiscal imbalances.』

『Unless we demonstrate a strong commitment to fiscal sustainability in the longer term, we will have neither financial stability nor healthy economic growth.』

ということで最後の締めは、財政の維持可能性に対する我々の強力なコミットメントなくして金融市場の安定も経済の健全な成長も無いという話でございました。


○これはレポートを読めという事かにゃ

『Federal Reserve Transparency』って所なんですが、先月に話しましたけど、またもう直ぐ出るのでよろしゅうにと言ってるのですかこいつは。

『That group has made significant progress, and we expect to begin publishing soon a monthly report on the Fed's balance sheet and lending programs that will summarize and discuss recent developments and provide considerable new information concerning the number of borrowers at our various facilities, the concentration of borrowing, and the collateral pledged.』

ということで議会証言でございました。簡単メモの積りが結構長くなってどうもすいません。


○米国2年債1.42%とかもう何が何だか

雇用統計を受けまして利上げ観測とか何のギャグだと思っていたのですが、米国市場では益々2年金利上昇するでござるの巻らしくて、さっきテレビが米国2年物財務省証券利回りが1.42%近辺に上昇と仰せです。雇用統計前の先週木曜の引けレベルが0.91%あたりだったので2日で50毛の金利上昇。

・・・・えーっと、抜き打ち利上げでもありましたっけ?????

まー何と申しますか、外野的に申し上げますとナンジャソリャ状態なのですが、市場が暴れだすと手に負えないでござるの巻ですわな。まあ景気回復期待とか色々と要因はあるかも知れませんが、一方の問題としては「長期国債買入で長期金利を下げる」と言わんばかりの説明をして長期国債の大量買入実施を表明して変な期待を持たせた為に、その期待が剥げて逆の動きが起きたちゅう面もあるんじゃねえのと正直思うのであります。

で、国内市場でも2年とか3年とか5年とかが弱めだったみたいで、何も日本が律儀に反応しなくてよかろうにと思いますけれども、まーこーゆー時に律儀に反応するのがニッポンクオリティだったりするんですな。金先MAR10が6毛甘とかナンナンデスカというところですが。

あと、景気ウォッチャー調査がまた改善というのも何だか良いのかその雰囲気の転換って感じですけど、まあ日本に関して言えば株価上昇に関してイチャモンつけてるコメントが経済メディアに多いうちは「買いたい弱気」の集団がいるということですから、そう簡単に下がらんでしょという所で(^^)。

#市場ネタを他に書く積りだったのですが、前半書いているうちに話したい事を忘れてしまいました(苦笑)忘れるくらいだからあんまり大した話じゃないですが










2009/06/08

お題「水野審議委員講演、非伝統的政策の論点整理」

5月29日に実施された日本銀行アジア金融協力センター主催のセントラルバンキング・セミナーにおける水野審議委員講演要旨がアップされておりました。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/ko0906b.htm
本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906b.pdf

○とりあえず論点整理にはちょうど良いので読んどけと

まず最初に勝手にまとめますと、こちらは各国(と言っても日米欧ですが)の中央銀行の最近の非伝統的政策に関して論点を整理しております。ECBのカバードボンド(ファンドブリーフ)購入決定を「ECBが量的緩和政策を実施」とか報道するようなどこぞの新聞社の担当記者および整理部デスクあたりは一万回精読すべきものであると思います。また、金利市場の中の人でもうっかりすると各国の非伝統的政策遂行における視点をごっちゃにしている人がいると思いますが(他市場の人とかはもっとそうですけど)、とりあえずこちらを百回精読する事を推奨。

・・・・で話が終わってしまうと何なのですが、後は景気見通しに関する話が最初にありますが、景気見通しに関しては下振れ絶賛警戒中という感じなのと、日本における財政の維持可能性に関する論点に言及しているのが注目って所です。


○財政維持可能性問題に関して

景気に関する部分の引用は華麗にスルーしまして財政問題に関して。

『主要国のうち日米の財政出動の規模は目立って大きい。それにもかかわらず、(1)費用対効果の議論、例えば、大型財政支出に伴う財政刺激策が長期金利上昇によって相殺されてしまうリスクや、財政に起因するインフレを発生させるリスク等、(2)学術的・経験的な観点からの財政面からの刺激策の有効性――例えば、財政面から景気刺激策による乗数効果は低下しており、景気を持続的に押し上げる効果は期待薄であるといった論点――、(3)財政赤字や政府債務残高の持続可能性、(4)財政拡張路線からの「出口戦略」などに関する議論はさほどなされていない。』

ということで米国に関して。

『米国などでは従来、景気循環の振幅を小さくするマクロ政策は主に金融政策で対応すべきであり、財政政策は「ビルト・イン・スタビライザー」としての役割に徹するべきとの議論が主流であったが、今回は金融政策の余地が限られる中で、財政支出拡大による景気刺激が期待されており、2009 年財政年度の財政赤字が名目GDP 比12.9%と巨額になる財政出動に対する学界からの批判は限定的である。』

現象面ではご指摘の通りですが、これは学会に対する皮肉に見えるのはあたくしの邪推ですかそうですか(^^)。

『しかし、例えば日本について言うと、公的債務の水準は改めて持続可能性を考えるべきレベルに達しつつあり、財政面から景気刺激策を持続できる余地が相当限られてきている。そうした中、少子高齢化という人口動態的な変化が急速に進む下で、社会保障関連費用は構造的に増加すると考えられる。同時に、産業構造の転換に伴う雇用のミスマッチ等の下で、雇用安定のための歳出も膨らむ公算が高い。現役世代は将来負担が増える一方、退職後に想定される年金受給額が現在の年金受給者よりも大幅に減少するとの試算結果がコンセンサスとなってきた。財政支出を巡る前述の論点は避けて通れないのではないだろうか。』

全くでございます。で、大昔ネタにしたことのある財務省の審議会議事要旨がこちらにありますが、これって5年前の議論なんですよね。恐らくこの時点で池尾先生が指摘していた件(冒頭の部分をご参照あれ)は解決に向けて進むどころかまあ普通に悪化してますわなという事で。なお、この議事要旨はオモロイのでお暇な方はど〜ぞ(大昔にご紹介してます)。
http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm


○各国政策の論点整理、現象面から

各国中銀の政策対応に関してまずは現象面からの整理。ま、あたくしは毎度毎度あちこちで引用してますから皆様におかれましてはいつもの話で恐縮ですがまたもしつこく引用するのがドラめもんクオリティ。

『第1 は、政策金利の大幅な引き下げである。(各国の金利水準部分割愛)主要国の中央銀行が非伝統的な金融政策に踏み込むなかで、主要政策金利を完全にはゼロにしていない点は各国共通である。これは、わが国のゼロ金利政策や量的緩和政策の経験から、主要政策金利を完全にゼロにすると、短期金融市場の機能を損ない、非伝統的な金融政策からの出口戦略がスムーズにいかなくなる、という副作用についての認識が共有されているためである。』

この点に関しては後ほどまた説明されてます。

『第2 は、潤沢な流動性供給を通した金融市場の安定維持である。これには日々のオペレーションによる潤沢な資金供給のみならず、最後の貸し手としての資金供給も含まれる。』

市場への資金供給による流動性供与に関る部分とプルーデンス政策に関る部分ですな。

『第3 は、クレジット市場など個別の金融市場の機能回復を促す措置である。すなわち、企業・家計向けの各種貸出の金利上昇や、アベイラビリティーの観点などから、全体として逼迫をきたしている場合、中央銀行が民間債務の買入れや適格担保を拡大する政策である。』

FRBのMBSやらCPの購入とか日銀の企業金融オペやらCP、社債買入とかですな。


○別の論点から

というのが現象面からの毎度お馴染みの整理ですけれども、別の論点がございます。

『第1 に、中央銀行自らのバランスシートにおいてとるリスクと超過準備の取扱いに基づく概念的な分類である。』

というのが第1の論点でして・・・・

『(1)バランスシート上にクレジット・リスクのある金融資産を計上すると同時に、超過準備は全て吸収するケースを「信用緩和政策(Credit Easing Policy)」、

(2)バランスシート上にクレジット・リスクのない国債等の安全な金融資産を計上し、超過準備を供給する(完全には吸収しない)ケースを「量的緩和政策(Quantitative Easing Policy)」、と大別できる。』

ということで、各国はどうなっているかというと・・・・

『BOE はクレジット・リスクを極めて限定的にしかとっていないため、自ら「量的緩和政策」、FRB とECB は自ら「信用緩和政策」と主張している。しかし、実際の政策運営をみると、程度の差こそあれ、信用リスクのある資産を購入すると同時に、超過準備が発生しているため、(1)と(2)の両方の特性を併せ持つ中央銀行が多い。』

ということですが、この次にFRBのろくすっぽ論議と説明の無い中における緩和政策の枠組み転換に対して皮肉を利かせているような気がするのは(ry

『特に、FRB は2 月までは「信用緩和政策」を採用していたといえなくもないが、米国債購入を決定した3 月のFOMC 以降は、もはやハイブリッド型の非伝統的な金融政策にシフトしたとも考えられる。』

で、次の論点。

『第2 に、各中央銀行が想定する政策波及メカニズム、および、購入する金融資産の信用リスクの大きさに着目すると、以下のように整理できる。』

『(1)金融資産購入政策、(2)信用緩和政策、(3)両者のハイブリッドともいえる政策運営である。』

んでまあBOEとFRBとECBの措置と、その狙いついて説明してます。端折って引用しますが。

『BOE は3 月、マネーサプライ、貸出、名目支出を増加させるために国債・社債・CP を合計で750 億ポンド購入する「金融資産購入策(Asset Purchase Programme)」を決定したが、購入する金融資産の大半はギルト債(国債)としていた。』

『FRB は、クレジット市場の機能回復を目指す、非伝統的な「信用緩和政策(Credit Easing Policy)」に踏み込んでいるが、3 月に3,000 億ドルの米国債購入を決定した。』

『ECB は5 月の定例理事会で、カバードボンド(ファンドブリーフ:ユーロ圏の金融機関が主に発行するユーロ建ての債券)を600 億ユーロ購入することを決定した。』

『この間、すでに企業金融支援特別オペレーションやCP・社債の買入れ等の非伝統的政策を打ち出してきた日本銀行は3 月、国債買切りオペの規模を年16.8兆円から年21.6 兆円へと増額した。』

ということで、各国の違いに関する背景として、金融資本市場や金融システムの構造が違っているという話があるのですがそこは引用割愛。ま、引用割愛しますけど、この辺りに関しても、そこら辺でも「米国がこういう措置をやっているのだから日本もやるべきである」とか市場構造の背景とかマル無視で主張しだす人たちに対する皮肉になって(以下同文)。


○長期国債の買入に関して

『国債の買入れについては、日本銀行、FRB、BOE ともに行っているものの、対外的な説明ぶり、すなわち国債買入れの主な狙いは異なっている。』

ということで長期国債の買入に関してですが、これって各国中銀向けのセミナーでの説明ではありますが、中銀実務担当者的には先刻ご承知の話だと思いますので、それよりも対外的に(以下同文^^)。で、これまた皆様におかれましては先刻ご承知の話だと思いますが、しつこく引用するのがドラめもん(ry

『BOE が国債を中心に金融資産の買入れを決定した3 月5 日のMPC の声明文をみると、「中期的なインフレ率目標を達成するため、マネーと信用の供給量の拡大を通じて名目支出を拡大させる更なる金融緩和措置を採用することが適当と判断した」とされている。』

『一方、FRB がMBS の追加購入や国債の買入れを決定した3 月17・18 日のFOMC 議事要旨をみると、FRB は、国債買入れは「信用緩和政策」の一環と位置付けており、米国債購入は、モーゲージ金利の低位安定を期待したエージェンシーMBS の購入等を補完する効果があると考えていると推測される。』

BOEはマネー拡大ですが、FRBはモーゲージ金利などの低位安定の為に実施しているように見える(実際問題としてはそのあたりが極めて曖昧な説明になっているというのは最近あたくしが悪態をつきつつご紹介しておりますのでご案内の通りかと思います)というところでございます。

『なお、ECB がユーロ圏諸国の国債買入れに慎重であることは想像に難くない。ユーロ圏には、財政規律の重要性等が明記された「成長安定協定」が存在し、財政政策との役割分担を明確にしているためである。ECB は5 月、非伝統的政策に踏み込んだが、敢えて分類すれば、信用緩和政策を採用したと言えよう。』

ECBは財政政策が各国別で金融政策が一本化なので難しいという事です。で、更にBOEとFRBの長期国債買入に関して。

『日本銀行は、2001 年3 月〜2006 年3 月まで量的緩和政策を採用したが、その当時の経験に照らして、BOE やFRB の国債買入れについて考えてみたい。』

で、BOEに関して。

『BOE の金融資産購入政策はマネーサプライ(マネーストック)の増加を通じて資産価格と期待に働きかけ、最終的には需要を喚起することを目的としているが、わが国の5 年間にわたる量的緩和政策では、ベースマネーは膨張したものの、そのような効果があったとは確認できなかった。経済効果という観点からは、景気刺激効果よりも、金融システム対策として機能したという印象が強い。』

『また、FRB は、米国債買入れについて、これを決めた本年3 月のFOMC の声明文において「民間クレジット市場の改善を企図」したとしている。実際、米国債の購入後、クレジット・スプレッドは全体的に縮小している。しかし、その後、モーゲージ金利は乱高下しており、FRB による米国債購入は必ずしもモーゲージ金利の低位安定にはつながっていない。』

どう見ても悪態です本当にありがとうございました(^^)。

『ちなみに、わが国の量的緩和政策の経験でも、いわゆる「ポートフォリオ・リバランス効果」は明確に認められなかった。』

ただまあ、これまた日本と英米は事情が違うという話を。

『もっとも、日本銀行は当時、金融調節目標を日銀当座預金残高とし、国債購入についても国債保有高を日銀券発行残高の範囲内に止めるルールを設定していた。現在のBOE やFRB のような大規模な国債購入は実施していないため、2 つの中央銀行の国債購入の効果について、何らかの判断を下すには時期尚早である。さらに言えば、米英は、わが国に比べてインフレ期待が高いため、中央銀行のバランスシートの大規模な拡大を伴う金融資産購入策が、現在低下傾向にあるインフレ率に、将来何らかの影響を与えるのかどうか注目していきたい。』

ということで。


○出口政策に関して、バランスシートの操作能力

で、その出口政策を云々する意義ですけど。

『「実体経済と金融の負の相乗効果が顕在化している最中に、出口政策を議論するのは時期尚早」との声はあるかもしれない。しかし、中央銀行の信認を確保し、ファンダメンタルズに合致しない長期金利上昇や自国通貨の過度な下落といった潜在的コストを回避するために、その異例な政策の狙い、出口政策等について十分に情報発信をしておくことは重要である。』

まーこの辺の匙加減は難しいのでありますけれども、米国長期金利市場がいい感じでカオスになっているのを見ますと、まあこの辺りに関しては放置プレーで市場の大暴れを容認していると、市場が勝手に走ってオーバーキルとかのやらかしちゃんになったでござるの巻になるんでしょう。

『主要国の中央銀行は、今のところ、マクロ経済の安定性の観点から適切と判断されるときに、程度の差はあれ自らの意思でバランスシートの規模の拡大・収縮ができる状況にある。政策金利の引き下げ余地がほぼなくなった現在、バランスシートのコントロール力の高さが、政策の自由度を計る一つの基準になる。』

えーっと、本当にそうですかねという疑問はだいぶあるんですが、特にFRB。

『こうした視点から、クレジット市場の機能回復を目指すFRB の施策をみると、

(1)CP 買取りプログラムなどの流動性供給ファシリティーのように、市場環境が正常化すれば自然に活用する魅力が低下するバックストップとしてデザインされたもの、

(2)インフレ懸念が高まった際、米国債やエージェンシーMBSの市中売却や、リバース・レポを通じた一時的な売却によって過剰流動性を吸収するもの、

に大別できる。』

と、しらっと説明しています。まあ(1)は良いとしまして、当然ながらこの(2)の方での「市中売却」って大丈夫なのかよという指摘が後の方にございます。

『米英の中央銀行については、既にかなりの規模の金融資産を購入しており、出口の段階でバランスシートを圧縮しながらオーバーナイト・レートをコントロールすることは、技術的に簡単ではない。また、実際に保有する金融資産を市中で大量に売却する場合も、国債発行当局や市場参加者とのコミュニケーションを十分にとったとしても、金融市場に不測の事態を招かぬように、相当な時間をかけて資産売却を行うことになろう。』

つまり出口政策は簡単ではないということですね。ちなみに途中割愛しましたが、日銀の量的緩和政策がすんなり金利政策に移行できたのは、資金供給オペレーションが主に短期物によって実施されていたので、オペの期落ちを利用して30兆円をサクサク落とすことができたという説明もございました。

ということで、米英の長期国債絶賛購入、特に米国に関しては市場規模対比でアホウのように購入したMBSもある訳ですから、出口って言ったって簡単な話じゃないのですけれども、先日ご紹介したコーン副議長の講演でもしらっと「売却」とか言ってる所に寒さ爆発というところでは無かろうかという感じなのでございます。


○日本に関連して、時間軸導入や長期国債買入増額も検討ですかね

で、最後の所に日本の政策対応に関する話をしているのですが、その中にしらっとこのような記述が。

『追加経済対策が打ち出され、これまでにない国債増発が見込まれる下で、わが国金融市場では金利の安定性確保が一つのテーマとなっている。日本銀行は、潤沢な資金供給を行う中で、

@ターム物金利への働きかけを通じ、イールドカーブの短期ゾーンを安定させたり、

A長期資金供給手段を一層活用して円滑な金融市場調節を行う趣旨から、一定のルールに基づいて、国債買入れオペを活用したりすることが可能であり、

これら積極的な流動性の供給が、結果として金利安定に寄与することはありうる。』

ということで(機種依存文字はPDF原文ママでマカー勘弁)、まあ日本だとそう簡単に財政リスクプレミアムの議論にはならない(相場のネタで軽くやる事はあっても本質的な話にはならないという意味)と思いますので(その理由は「1回そのネタで相場やったから」でありますが^^)、水野さんが懸念する状態になるかどうかはよー判らんですけれども、国債の市中消化がしんどいという話になってきた場合に、時間軸導入(その時点で長期国債買入を露骨に増やすのは財政ファイナンスという話になりそうなのでやるならその前)とかで短い(2年位までの)金利を抑えて長期金利の跳ね上がりを防止するという話なのでしょうな。

ところで、日本の非伝統的政策ですが・・・・・

『CP・社債買入れオペは、バックストップという機能を十分果たしていると言える。また、2 つの買入れオペにおいて、市場のニーズ次第で残高が減少する仕組みが有効に働いていると認められることから、日本銀行が現在採用している非伝統的政策からの「出口政策」はスムーズにいく公算が高いといえよう。』

CP買入は先週金曜に何と応札ゼロというラトビアもびっくり(ラトビアの政府短期証券入札応札ゼロとは意味が真逆ですので念の為^^)の結果になっておりますが、これって買入というよりは企業金融特別オペの効果でCPと短期国債金利逆転などという阿片窟相場が絶賛展開されているのが大きな要因で、そもそも発行が減っている中で政策投資銀行の買入もあって需給が更にタイトにというのもあると思いますが、まあ要するに特別オペ効果恐るべしなのでありまして、そっちをどうやって出口へ向かうのかの方が難しいと思いますけれども、しらっとスルーしている所がチャーミング(-_-メ)。

とまあそんな感じで、論点整理がきちんとしておりますので、一読どころか百読くらい推奨です。引用が無茶苦茶長くなってどうもすいません。


#以下雑談

○雑談コーナー

・CP買入応札が何とゼロ

上で書いたとおりの素敵な結果に。これはまあ市場の機能回復が進んだという証拠なのかというと、企業金融特別オペと危機対応での政策投資銀行買入の二つの効果(殆ど前者の効果と思われますけど)も強力なので、これはまあ出口という意味で言えば、CP(や社債)買入オペを減らしたり無くしたりする前に、企業金融特別オペの見直しをするのが順序として先であって、特別オペの強力フォローをやや弱くした時点で市場がどうなるのか見てからっていうのが順番でしょうなと思いますです、はい。


・米国雇用統計

失業率が9.4%とかに上昇してストレステストの前提が既に崩壊状態になっているのに、非農業部門雇用者数の底打ちをネタに株価上昇するとはプリオン市場恐るべし。


・バーナンキの議会証言

というネタも用意したのですが、(スルーとか言いつつ結局週末よんでしまった)水野さんの講演引用してたらとんでもない量になったので後日。







2009/06/05

お題「亀崎委員会見/日銀レビュー/ラトビアとか」

お、ラトビアネタをモーサテでもやってますな(と思って期待して見たら内容が残念でしたな)。で、米債は今日も大動きのようでご苦労なことです。


○亀崎審議委員の会見から少々:ハトさんですな

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0906a.pdf

・長期金利に関して

足元の金利上昇に関してどのように考えているかという質問がございまして、まあとりあえず模範解答という感じです。

『このところの長期金利の動きについては承知していますが、長期金利は基本的に、先行きの経済成長見通し、物価動向に関する市場参加者の予想をベースに、見通しの不確実性をバランスして水準が落ち着いていくものと考えています。』

『従って、物価や経済成長率が高い場合には長期金利も高くなるなど、経済成長率の見通し、或いは物価の見通しと整合的な水準となるように、長期金利が形成されることが望ましいと考えています。そのためには、財政規律が確保され、また、物価安定の下で持続的成長を目的とした金融政策が運営されることについて、市場の信任を確保することが大事だと考えています。』

ということで財政規律のコメントが出たのですが、それに対して別の質問で各国の長期金利上昇の原因は国債大量発行が主因と考えているかって言われまして、それに対してはこのように。

『先程も、長期金利の考え方については申し上げましたので繰り返しませんが、実際、今の金利の動きについては、一方向だけの見方があるとは考えておりません。経済の先行きに対する見方、或いは底入れ感への期待等もある一方、財政面での見通しに関する見方など、複合的な要因で金利水準が決まっていきます。そうした様々な見方、――基本的には先程申し上げたような長期金利水準を決めるプリンシプル――に基づいて決定されるものであると考えています。』

ということで、長期金利上昇に関して国債増発問題をリンクされるとあまり政策当局としては話がうまくないということですね、わかります(^^)。


・景気認識は厳しいです

これは良い質問。

『(問) 景気の認識で2つ質問があります。1つは、景気は先行き遠からず回復に向かうとの表現が使われています。先月の金融経済月報を発表された段階から、認識としては前進している、良い方向にシナリオどおり進んできている、というお考えなのでしょうか。もう1 つは、本日の挨拶で現状の景気悪化が続いているとの表現を使っていますが、総裁は4〜6月のGDPはプラスになるとの認識を以前から述べられていたかと思います。ここでの悪化というのは、何を意味しているのでしょうか。4〜6月のGDPがプラスとなった場合でも、なお悪化という表現を使うとすれば、それをどう捉えたらよいのか、お考えをお聞かせ下さい。』

で、1点目に関しては、各国の経済指標を持ち出して改善という話を。細かい数字の部分は割愛して結論はこうなります。

『今、申し上げた指数が少しずつ改善している動きを見ますと、一応、私どもが描いているメインシナリオに向かって動いているのかなという感じは持っています。』

でも悪化とは何かと。

『次に、先ほど何をもって悪化と言っているのかという点でありますが、確かに色々な指数が改善してきていますが、従来の水準と比べて見ますと、大幅に落ち込んだ後、それがやっと戻りかけているなど、水準でみてみるとまだ悪化したレベルと申し上げている訳です。』

ということで、特に金融市場が微妙に変な楽観気分になっている事に対して「おめーら最悪状態から止まったくらいで楽観すんじゃねー」と指摘したいということなんでしょうかね(^^)。その楽観を煽ってるのが経済クオリティー(ry


・非伝統的な政策の出口に関して

4月30日の決定会合議事要旨にあった「異例の非伝統的政策からの出口」問題の見解を問われたのですが。

『異例の政策の終了は、金融市場が安定しその機能を平時のレベルと判断できるまでに取り戻すことが前提となります。現時点での金融市場は、一頃に比べ全体として落ち着いてきてはいますが、今回の金融危機の根源である様々な問題につきましては、まだ解決の道筋が見えておらず、引き続き不安定な状況にあります。こうした中で、異例の政策の終了について、考える時期には至っていないと考えています。』

ということで、まあ講演でプロアクティブに今後も対応って話をしてるのだからこういう答えになるのは当然なんですが一応引用。で、その前にこんな指摘もしてるんですけどね。

『こうした政策は、異例であるがゆえに必要な期間に限って実施することが大切であるため、実施期限を設定しています。CP や社債の買入については、実施期限のほかに、適切な最低応札利率を設定することで、金融市場の機能回復とともに日本銀行への依存度が低下する仕組みを設けています。』

まあそうなんですけど、現下の「CPと短国金利逆転」の原因はどっからどう見ても企業金融支援特別オペで「金額の上限無しでサービスレートをご提供」をしていることによるものでございまして、セイフティーネットとしての社債やCP買入の話と強力過ぎじゃねえかという金利低下をさせてしまうツールとなっている企業金融支援特別オペの話はまた別問題のような気はしますけどね。

とまあそんな感じで、ハトさんな亀崎審議委員の会見でございました。


○日銀レビューがまた来ました

これはまた出るタイミングが微妙な(^^)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j05.htm
キャリートレードと為替レート変動
―― 金利変動が市場参加者のリスク認識に与える影響 ――

本文はこちらです。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j05.pdf

んでまあ最初にあります要約部分でござんすけどね。

『2007 年夏まで続いた世界的なマクロ経済の安定化や先進国の緩和的な金融環境は、投資家のリスクアペタイトを高め、様々な金融資産価格の上昇をもたらした。為替市場におけるキャリートレードを背景とした投資通貨の増価もその一例とみることができる。』

これはまた微妙なネタを投下しますな(^^)。

『円キャリートレードの超過収益の発生は、新たな投資家を次々と呼び込み、投資通貨の増価と調達通貨である円の減価をもたらし、それがまた、トレードの収益拡大を自己実現化させるという循環につながった。しかし、キャリートレードの超過収益は、「カバー無しの金利裁定式」からの乖離によって発生するものであり、収益が拡大するほど、投資通貨の急落リスク(円の急騰リスク)を溜め込んでいく性質がある。』

これはまあ市場現場的には経験的に当たり前っちゅうかその辺の感覚が無い人間は相場反転の時に大怪我して退場になる話。本文にあるように『しかし、標準的な為替レートチャネルの基礎となる「カバー無しの金利裁定式(UIP:Uncovered Interest Parity)」は、現実には――少なくとも短期的には――成立しないことが多くの実証研究により指摘されている。』とあるように、実証研究とかもあるんですな。

『その意味で、キャリーポジションの拡大は、いわゆる「金融の不均衡」の拡大の一形態と解釈することもできる。サブプライムローン問題の顕在化やリーマンブラザーズの破綻を契機とした、金融経済環境の不確実性の拡大や資金流動性制約のタイト化が、投資家によるキャリーポジションの巻き戻しを誘発し、投資通貨の減価と円の増価という形で、為替レートの大幅な変動を引き起こす一因になったと考えられる。』

というのが冒頭のまとめの部分でして、中身に関してはまあその分析するのに微妙に式が入っている所もあってアレですけど、別に式をいじって訳判らん話をしている訳ではなく、フツーにサラサラ読めます。まあ市場の中の人よりは外の人向け(ただし基礎知識無いと何がなにやらなので単に外のひとだとこれまたちょっと難しいかもです)というかポジション持ったことの無い人向けという感じでございますかね。

まあ内容は読んで味噌なのですが、各項目の最初の所を数行読むだけで読み飛ばしてもまあオモロイです。

3ページ目の小見出し『円キャリートレードの超過収益』の冒頭。

『為替レート変動に関する標準的な理論であるUIP によれば、投資通貨と調達通貨間の金利差収益は、投資通貨の減価によって相殺されるため、キャリートレードの超過収益率の期待値はゼロとなるはずである。しかし、現実には――少なくとも短期的には――、UIP が成立せず、キャリートレードにおいて超過収益が発生し得ることが、多くの実証研究によって示されてきた。』(フォントの関係上計算式部分を割愛して文章の繋がり上一部削除しています)

7ページ目の小見出し『市場参加者のリスク認識と金利変動』の冒頭。

『投資通貨と調達通貨の金利差が大きいほど、あるいは、キャリートレードの超過収益が大きいほど、先行きにおいて、投資通貨の急落リスクが高まるにもかかわらず、なぜ、投資家はキャリートレードのポジションを積み上げるのであろうか。』

『個々のファンドマネージャーが、通貨急落のリスクを認識していても、他のファンドがキャリートレードで収益をあげている時には、ファンドの顧客の維持・獲得のために、自らも収益を拡大させる必要がある。このため、他ファンドと同じ投資戦略を採用する誘因が発生し、これが群集行動(herd trading)へとつながっていく。』

・・・・・耳が痛い(汗)。


・市場の中の人的にはレポートを7ページ目から読むとヨロシアルね

まあそれはそれとして、最後の小見出しの『金融政策の波及:リスクテイキング・チャネル』って所の最初にこんなもんが。

『金利の変化が、投資家のリスク認識やリスクアペタイトを経由して、為替レート変動の動学的特性に影響を与え得るという点は、金融政策の波及においても発現し得る事象として意識しておくべきであろう。』

『これまでの経済理論は、利下げが自国通貨安(減価)をもたらすという為替レートチャネルに関して、UIP をベースに標準的な理解を形成してきた。また、多くの中央銀行のマクロ計量モデルにおいても、為替レートチャネルはUIP に基づいてモデル化されている。』

『UIP によれば、内外金利差の変化を相殺するように、将来にかけての為替レートの期待変化率が瞬時に調整されるため、利下げは、当期の自国通貨安と来期以降の通貨高(予想)をもたらす。自国通貨が調達通貨の場合であれば、中央銀行の利下げによって、「投資通貨は、エレベーターで急上昇した後に、階段でゆっくり下る」というパスを描くことになる。』

ほほう。

『しかし、既述の通り、UIP は現実の為替レート変動を正しく描写していない。金利差の拡大が持続するという予測のもと、投資家のリスクアペタイトが高まれば、キャリートレードを促して、「投資通貨は、将来いずれかの時点でエレベーターで急降下するというリスクを抱えながらも、階段を何段も上っていく」ことになる。』

さよですな。

『したがって、金融政策の波及を考えるうえでは、金利の動向が市場参加者のリスクアペタイトの変化を経由して、彼等の投資行動と資産価格変動に大きな影響を与え得るという、「リスクテイキング・チャネル」について認識を深めておくことが重要だといえる。』

ということで、以下なんか大事な話をしている気がしますが(^^)、後は本文を読んで下され。


○東方は赤く燃えているか

http://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/wbusiness/JAPAN-383938.html
★ラトビアの5000万ラト(1億0080万ドル)規模の短期証券(TB)入札、応札がなく失敗に終わり、通貨切り下げの圧力が一段と高まる。

札割れで債券相場大騒ぎなんて話がチャチに聞こえてしまう豪快にも程がある「応札ゼロ」という楽しい短期国債入札がラトビアで実施されたようで。

で、こちらはヘッドラインだけなのでアレですが、元記事を読みますとここの通貨ラトってえのはユーロとペッグしてて上下1%変動すると中銀が介入するという仕様になっているそうなのですが、ペッグ維持に対する懸念でラトが下がるので「ユーロ売り/ラト買い」の介入をやりまくった結果、短期金融市場でラトが吸い上げられまくって短期国債誰も買えなくなったという話みたいですな。何せ応札ゼロ入札当日の翌日物銀行間金利が16.40%になって、翌日物預金金利は24.0%になったそうで。

何か欧州通貨危機を思い出すようなオシャレな話でございますが、暫く前も東欧で金融システム不安がどうのこうのとかあってオーストリアとかがえらい騒ぎになっておりましたし、まあ何気に欧州は今後も微妙に火を吹くでござるの巻という感じじゃないでしょうか。







2009/06/04

お題「亀崎審議委員の講演/その他雑感少々」

バーナンキ議長財政再建の必要性に言及だそうですが、さすがに朝から議会証言を速攻で読むのはアレですので、場合によっては後日何かネタにするかもしれません(多分スルーの予定)。

まずは亀崎審議委員の講演ですけれども・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906a.pdf

○講演をご紹介する前に別のネタでございまして・・・・・・

今回の講演に関して報道する日経と共同通信(引用するのは東京新聞ですが共同の転電)のヘッドラインの打ち方が真逆なのに注目するという素敵な根性のあたくし。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090603AT2C0300A03062009.html
日銀の亀崎委員「景気、遠からず下げ止まる」

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009060301000366.html
景気回復「道筋見えず」 日銀委員、先行きに慎重な見方

どう見ても真逆です本当にありがとうございました(-_-メ)。

・・・・・んじゃあ実際の講演内容はどうなのよという話なのですが、他社のヘッドライン(一々ご紹介しませんが)も概ね共同通信の線でございまして、まあ実際の内容も先行きに対する懸念の方が強いものでありまして、日経新聞だけ(実はクイックも慎重寄りのヘッドラインだったと思います)が何か全然トーンの違うヘッドラインを打って来る理由は何なんでしょうと妄想を逞しくすると色々と楽しいインプリケーションが得られるような気が思いっきりするのですが、保身の為以下自主規制(^^)。

まあその妄想方面は兎も角としてですな、ここもと大して経済状況が改善している訳でもなく、雇用・所得面の本当の悪化はこれからで、それが消費に悪影響与える可能性だって高いという状況だというのに、何だか妙に景気底打ちみたいな話が出てきて、「偽りの夜明け」に騙されて政策対応を間違えるのがリスクだという時ですから、本来「経済のクオリティーペーパー」でありますところの日経さんにおかれましては、「根拠無い楽観」に対する警鐘を鳴らすのがクオリティーペーパーとしての存在意義なんじゃないかと思うのですよね。

然るに、毎度のことではありますが、どうも経済のブームとか雰囲気で流れる動きに対してこのクオリティーペーパーさんはそれを煽る方向で記事書く傾向でもあるんじゃないですかと申し上げたくなってしまう次第でありまして、まあそんな編集姿勢で経済クオリティーペーパー然としておられる(これがそこらのどうでもいいタブロイド紙だったらどうでもいいのですが、現場じゃなくて会議室あたりでふんぞり返っているようなエライ人がこういう編集方向に煽られて現場に変なご下問をしてくるのが一番迷惑なのよね)所に日本における無用なプロクシカリティー発生の一因があるのではないかと思いますけどね。

という悪態はさておきまして(^^)。


○景気に対する見方は厳しいですね

基本的には展望レポートの線に沿って説明してるのですが、まずは海外経済から。

『まず、海外経済の現状と先行きの見通しについてお話します。足もとの海外経済は悪化を続けていますが、そのペースは一頃に比べて緩やかになっており、年内には下げ止まりから持ち直しに向かうとみています。但し、その回復力は、大変弱いものではないかと想定しています。』

ということで、国別展開をしているのですが、リスク要因てんこ盛りでござるの巻。

『国別にみると、米国については、これまで悪化一辺倒だった景気指標の中に、少しずつですが明るいものも出始め、悪化の加速度は落ちてきたように思います。

今後は、2 月に決まった総額7,872 億ドルの景気刺激策が実行に移されていけば、その効果もあって下げ止まりから回復へと向かっていくのではないかと考えています。しかし、家計の過剰な消費や借入れ、金融機関の過剰なリスク資産投資など、長期に亘って蓄積された様々な過剰の調整には相応の時間を要すると思われるため、回復の足取りは弱いものになるとみています。』

家計と金融機関のバランスシート調整に相応の時間を要するというのは資産バブル崩壊で散々な目にあった我々には違和感の無い見通しですが、こればっかりは一回食らわないと判らんということで、米国の見通しは楽観なんでしょうなとも思うのでありました。

『欧州については、経済実態を表す指標の大幅悪化が続いています。先行きについても、期待できる具体的材料には乏しいため、悪化が続くものとみられます。特に、中東欧の経済混乱が、経済の重石となってくる可能性もあり、注意が必要です。』

こりゃまた救いの無い見方で(汗)。

『中国については、輸出の減少は続いているものの、金融・財政政策の効果から景気の減速に歯止めがかかりつつあるように窺われます。これは、金融システムの問題が相対的に小さく、また潜在需要の強い新興国であることから、政策効果が出やすいためと考えられます。

しかし、先進国経済の回復は弱いものに止まり、経済の一方の牽引役である輸出の低迷が続く可能性が高いことから、ここ数年続いてきた2 桁成長ほどの力強い回復は望めないものと考えています。』

結局のところ中国様次第ということですね、わかります。


・・・・で、国内経済。

『日本については、景気の悪化は続いていますが、製造業の大幅減産の効果から在庫調整に目処がつきつつあり、これまでのような急な坂道を転げ落ちるかのような状況にはブレーキがかかってきたように窺われます。』

『先行きは、減産ペースの緩和や政府の施策の効果から遠からず下げ止まり、回復へと向かうものと思います。』

というここの所を日経さんは見出しにしたのですけれども・・・・・

『しかし、その後を展望すると、企業の生産や売上がかつての水準に戻るまでには相当時間がかかり、厳しい収益環境が続く中、設備投資の回復も緩やかなものに止まるものと考えられます。また、家計の雇用・所得環境は、むしろこれから悪化するとみられる中、個人消費も一段と弱まる可能性があります。従って、減産ペースの緩和と財政政策の効果の一巡後は、輸出の回復とその内需誘発効果に依存した回復になるとみています。』

で、肝心の輸出の回復が上記の有様なのですから、結局のところ先行き暗いじゃんという話になるのであります。

物価に関しても何気に厳しいのですよね。後で出てくるのですが、デフレスパイラル入りを相当警戒しているようでして、まー元々亀崎さんはハト派だと見られるのですけれども、益々ハト派面目躍如という感じでしょうか。特に今回特徴が出てたのは物価の見方に関して個別品目の動きやマインドに注目した指摘があることでして、展望レポートの基本的なラインよりも厳しめで見ているのではなかろうかと。

『実際、CPIの個別品目の動きをみると、依然、多くの品目が前年比プラスながらその幅を縮小しているものが増えています。これは原材料価格の下落の影響に加え、利幅を犠牲にしてでも売上数量の確保を重視せざるを得ない企業が増え始めていることを示している可能性があります。』

なるほど。

『また、先行きの物価上昇を見込む人の割合も低下しており、消費者の価格に対する目線も厳しくなりつつあるようです。そのため、企業収益や、雇用・所得環境が一段と厳しさを増すとみられる今後、前年比マイナスとなるものが増えてくるものと考えています。』

ということで。


○デフレスパイラル入りへの強い懸念などなど

以下、先行きのリスク要因などの話になりまして、財政拡大からの長期金利上昇の指摘もちょっとだけあったのですけれどもそっちはスルーして物価に関する部分に注目。

『物価面で注意すべきは、インフレ期待の動向です。経済の回復がメインシナリオ通りとならず、一段の需要不足を招いた場合、中長期の成長期待とインフレ期待が下振れる可能性があります。これは、デフレスパイラルに繋がりかねないため、大変危険だと考えます。』

ということで、この前公表された金融政策決定会合議事要旨(4月30日)で先行きの経済状況が悪化しそうになったら追加の施策を早く打つ必要ありますみたいな発言をしていた複数の委員のうちの一人が亀崎さんなのでしょうなという感じですね。

したがって、結論としてはこんな話になるのです。

『このように、経済・物価情勢のリスク要因としては下振れ方向が中心と考えられ、特に海外経済の回復力が弱く、輸出の回復が捗々しくない場合には、日本経済全体が再び落ち込む可能性も相応にあると考えています。』

ただまあ一応上振れの話もしています。

『但し一方で、中国をはじめとする新興国の成長が予想以上に加速することも、全く考えられないシナリオではありません。』

何かもうとりあえず付けてみましたという感じですが(^^)。

『また、G7諸国やスイスなど主要国の政策金利が軒並み1%以下となるなど、多くの国で低金利政策と大量の資金供給策が採られているほか、各国とも大規模な財政政策が実施されている状況下においては、過剰流動性の発生など効果が出過ぎた上に、その認知と対応が遅れることによる上振れ方向のリスクについても考える必要があります。』

『現に足もとでは、原油価格など国際商品市況がやや上昇しており、市場がこうした上振れリスクを意識していることも考えられます。』

多分「偽りの夜明け」シナリオだと思うのですが、まあ市場の反応は亀崎さんご指摘のような所では無いかと思いまする。



○そういえばこういう考え方があったわけだが

金融政策の話に関しては今般の各種措置について時系列で説明しているので、改めて確認するのには良いのですが、まあ一々引用していると終わらないのでそのあたりはスルーしまして、読んでて思ったあたくし的雑感。

『1月22 日には、企業金融に係る金融商品の買入れについての基本的考え方を公表しました。内容は図表22 のとおり、ある金融商品の取引市場の著しい機能低下が企業金融全体の逼迫に繋がっており、そうした商品の買入れが日本銀行の使命に照らして必要な場合に限り実施する、というものです。』

えーっとCP市場なんですが(以下いつもの話になるので華麗にスルー。短国との逆転現象恒常化とかもうアホかと馬鹿かと。最終投資家絶賛離散させたら角を矯めて牛を殺すにも程があるじゃん)。いや全く困ったもんでございますわよ。

ま、それは兎も角、最後の所で亀崎さんはこのように指摘しています。

『今後についても、先に述べたような不確実性の高い経済・物価見通しの下では、これまで導入した低金利政策、流動性供給策、企業金融支援策を継続して市場の不安を抑え、実体経済における需要の増加を促し、日本経済を金融面から支えていかねばなりません。また、状況変化の度合いによっては、可能かつ有効な施策をプロアクティブに考え、素早く実行していく必要があると考えます。』

ということですので、当然ながら4月30日の決定会合で異例の政策からの出口がどうのこうのという話をした人とは別人28号であることが明白ですな。会見要旨は今日出ると思いますが、報道された内容を見た限りでは亀崎審議委員は「まだ出口政策を云々するのは時期尚早」と明言していたようです。


○さて本当は後半部分が亀崎さんの本領発揮なんですけど・・・・・

で、この本文8ページ目から『4.日本経済の持続的な成長に向けて』(この見出し自体は7ページ目の最後の最後です)というコーナーが始まりまして、日本経済をより長い目で見たときにどのような事が必要になるのかという話をしています。

『今回の景気悪化から得られる教訓は、輸出依存の経済成長には限界があるという事実です。そこで、輸出関連産業の強化は引き続き重要ですが、加えて内需関連産業を育成していくことも必要になります。そうした産業の主要な柱としては、食料、少子高齢化、環境に関連する分野が中心となるのではないかと、私は思っています。

これらは内需の潜在的な成長余地が大きいため、海外経済に左右されない経済基盤の確立という面で重要だと思うからです。しかも、これらはいずれも情勢が急速に悪化しており、緊急性が高い分野でもあります。』

ということで、「食料」、「少子高齢化」、「環境」に関する話をしていて、金融政策の話とは別に面白いのですが、時間と量の都合上本日は割愛します(すいません)。


以下余談。

○各種余談

・雇用統計が楽しみな訳だが

今週は米国雇用統計がございます。情報ベンダー見て各社の予想サーベイを見たら失業率の市場予想が9.2%くらいのようでございます。

・・・・・はて、ストレステストの前提って今年の失業率8.9%でしたよね。

という話になるのかならんのか。何かこう大本営発表にも程がある昨今の米国様の動きからすると、「ストレステストの結果はともかくとして、金融機関の増資も進んでおり何の問題も無い」とか言い出しそうな気がするのが強欲プリオン脳恐るべしという所なのですが、まあ生暖かく週末を待ちたいと思います。


・さて長期金利上昇懸念

最初に申し上げたバーナンキ先生の議会証言。本ちゃんの中身まだ見てないので何とも申し上げようがございませんが、そもそも「クレジット市場の支援」という無理筋のロジックで長期国債買入をどどーんとアナウンスした時点でこーゆー話になるタネは撒かれている(ついでに言えば、長期国債買入決定したFOMCの議事要旨を見ると施策の狙いや波及効果についてまともに議論した形跡が無いというのは、もう何か慌てて実施した感が見え見え)次第でして、まあ市場介入みたいなもんをする時には市場規模を良く考えてから行ってねという感じですわな。

#そもそも最初に市場介入してたときは「機能不全になっている市場への市場機能補完」だった筈で、米国債市場は機能不全じゃ無かった時点で話がねじれてますな

そしてまあ長期金利上昇に懸念を示した上で、財政健全化の話をするのがちょっと苦心の口先介入っぽくて泣けますな。財政せっせと出している中で先行きの話をしないといけないというのも残念感がしますが、6月FOMCで長期国債買入に関する追加アナウンスをするのかどうか、微妙な気もしてきましたなあというところです。

#他に雑談があった気がするんだが忘れたでしゅ










2009/06/03

お題「今日は雑談で」

英文和訳大会の次は雑談とは手抜きに過ぎるというツッコミは慎んで却下。

○月初いつものネタですが

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0905.htm

5月の買入でほほーと思ったのは短い所の買入額が前月対比で減ってその分ちょっと長くなってきたかなという所。残存1年以内の部分はゾーニングしているから変らないので良いとして、残存2年以内の部分の買入額が4月の2400億円から5月は1100億円に減っております。つまりより長いところの買入が増えたという事でございまして、まあ長期資金の供給という意味ではこの方がヨロシカロという所でしょうか。

まあ輪番はゾーニング以外の部分に関しては何を買入しますってのは日銀が能動的に決めるのではなくて、その時の市場参加者が都合のいいものを入れてくるモノですので、要するに5月の相場付きが短期ゾーンよりも中期以降のゾーンが相対的に重かったということだったとは思います。


○どこぞの新聞が長期金利上昇とか言い出したので懸念なさそうですが

どこぞの経済ニュース番組(笑)を見ておりますと、あたくしが購読していないどこぞの経済クオリティーペーパー様の朝刊ご紹介とかをやってくれるので、中々便利なのですけれども、そちら様で米国の長期金利上昇を大々的にネタにしておられたようで(日本のもネタになってたのかね)、そろそろ長期金利上昇も一服ですかという感じですかね。まあそれは兎も角。

まあ週初ご紹介したコーン副議長の講演で色々と分裂気味に説明していましたけれども、FRBが「金利上昇抑制」という話を全面に押し出している結果として、金利上昇するとさあドウスルドウスル状態になる次第でありまして、今日の経済ニュース番組で為替のコメントしていた人が思いっきりこんな話をしていました。曰く、

「インフレ懸念で長期金利が上昇してドル安になっているので、長期国債の買入増額がドル安を止めるのに期待されています」

・・・・長期国債の買入増額ってマネー供給拡大なんだから期待インフレ率に対しては上昇要因じゃねえのかよというのが従来の金融政策論から出てくる話になる筈ですし、そもそも実際問題としてマネー拡大はマネー拡大なのでござんすからそりゃあーたインフレ懸念で仮に金利が上昇しているなら長期国債買入増額行なってもそっちには効かないでしょとかツッコミをしたくなるのでありますが、まあ金利市場以外からコメントするとこんなもんでしょうなと思う次第。

と申しますか、メリケン様の債券市場でも似たような感じになっているような気がせんでもない(実際に市場の中の人じゃないから知らんが)次第でありまして、ここもとの米債相場特に長期の部分ってえのは単に国債需給に関する思惑でホイホイと大ぶれしているだけに見えてしまいます。入札ウィークになると徐々に売られて行って、入札を通過すると戻るのですが、直ぐに次の入札が来るのでまたまた値を崩すという感じで、その間に金利が徐々に上昇して行ってFRBに対して政策(長期国債買入増額)を催促するという流れになっている印象ですわな。BEIが拡大してるらしいので(あんまり細かく見てないからよー知らんが)一応物価に関する思惑もあるんでしょうが、マジメにインフレ懸念って考えてるのかは疑問。

まーそーゆー事でありまして、下手に「金利を下げるために」とか言い出して長期国債の大規模買入を実施してしまった為に、市場から買入増額を催促される展開になってしまったでござるの巻となってしまいまして、個人的感情論だけでは「FRBプギャー」としか言いようがございませんが、今このタイミングで長期金利上昇は世界景気に宜しくございませんので、早急にロジックの建て直しをして頂きたく存じます次第。6月のFOMCで長期国債の買入プログラムに関して買入額の増加に関する何らかのアクションをしないとまた長期金利上昇するんでしょ。

では買入を増額したら長期金利の上昇が止まるのかというと、市場に催促されて買入増額ってそりゃ正しくかつての日本政府の絶賛為替介入状態でございまして、これまたナポレオンのロシア遠征状態になるでしょという事で誠に遺憾の限りでございます。


○ロジックがねじれていると大変ですなあ

引き続きコーン副議長講演絡みの雑談(やや悪態成分入り)が続きますが。

ご紹介したコーン副議長講演では「イールドカーブがスティープしているのでFRBの資産購入プログラムで買った証券は期間収益が上がります」ってえ話をしてましたが、どこで見たか忘れましたが(スイマセン)イールドカーブのスティープに関しては銀行セクターの期間収益の向上になるってえ指摘をしている(コーンさんじゃないけど)紙を見たような気が。

いやまあ色々とモノは言い様だというのはございますけどね、長期国債買入プログラムを実施する時に「金利引き下げ」の話をしているのに、実際に長期国債の金利が上昇しても「各種買入を実施してなかったら100bpは金利が高かった」(先日のコーンさんの講演)でオトボケしちゃうとか、何かこうロジックの良いとこ取り的な論理ねじれモードで乗り切ろうというのはちょっと大丈夫かなあという所です。

まー正直申し上げて、国債などの発行額が大したことなくて中央銀行の買入で需給を強力にコントロールできるって時代(米国で言えばかつてのFRBと財務省のアコードとか、日本で言えば新発国債を1年経ったら全部日銀が買入していた国債不流通時代とか)では無いのに安易に「長期金利コントロール」みたいな市場を舐めくさったスタンスを出すからこうなるのでありましてですな、直接コントロールが困難なものを「コントロールする」とか言い出して、まあ結果オーライで上手く行けば良いですけれども、今回のように必ずしも上手く行かなくなって市場が催促モードとかになると、政策運営に対する信認の低下にも繋がり兼ねないんじゃネーノと思う次第なのでありまする。

まーここは出来る所から波及効果を出すということで、MBSとかスプレッドの方は市場規模対比で買入効果が出るので良いとして、長期金利コントロールの話は上手いこと撤収して、コントロールしやすい短期ゾーン(2年位まで)の金利を抑えてイールドカーブのアンカーにする方策が宜しいんじゃないのかねえと思う次第でありまする。つまり時間軸のコミットメントですな。買入は勿論続けるけれども金利抑制は全面から撤退ということで。

・・・・ただ、時間軸のコミットメントと言われましても、米国の場合はじゃあ何の数値にコミットするかというのが難しくて、ヤケクソで遅行指標様であります所の失業率にでのコミットするかという話にでもしないと強力コミットメントにならないですなあとか思うところで思考が止まるのですけどね。


悪態成分の入ったあたくしの雑談ばっかでどうもすいません。


○FXのレバレッジ規制雑感(人のふんどし)

厭債害債さんの所から。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200906/article_1.html

そもそもあたくしは職業柄FXなどのようなモノへの投資は出来ませんので(レバレッジ効いてない外貨預金とか外貨MMFなどの円投なら出来ますが)よー知らなかったのですが、コメント欄のところで指摘されていました『くりっく365でも100倍まで許容していることには驚きました』というのを見た時にはあたくしも驚愕のあまり椅子から落ちそうになりました。東京金融取引所恐るべし。

・・・・えーっと、金融庁様におかれましては、まずくりっく365のレバレッジ制限を早急に実施させるようご指導された方が宜しいのではないでしょうかと思うのでありますが、やはり東京金融取引所相手にご指導(以下諸般の事情により自粛)。

ちなみに、東京金融取引所の会社概要を置いときますが他意はありません(棒読み)。
http://www.tfx.co.jp/about_tfx/profile.shtml

・・・・というのは兎も角として、まーFXのレバレッジ制限とかやっても、ど〜せ今度はCFD取引でレバレッジ掛けた取引しませんかってキャンペーンになっていくのではないかと思ったりもするんですけどね。なおCFD取引って何ぞやというのは、あたくしも最近マネー雑誌みたいなの見て「最近は個人相手にこんなのもあるのか」と思ったりした程度なので詳しくないけど、ヤフー先生やグーグル先生に聞いて味噌。






2009/06/02

お題「コーン副議長の講演(続き)」

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20090523a.htm

という事で昨日の続きです。非伝統的政策に関する話の続きから最後は出口政策の話がおっぱじまるという素敵なものでございます。

○市場の仲介機能に中銀が入る意味は

第11パラグラフではCP買入などのクレジットファシリティの担保範囲および参加者の拡大を行いましたという指摘をしまして、その意味をこのように説明しています。

『And we have intervened more directly in severely impaired markets, such as those for commercial paper and securitized consumer and mortgage debt. We believe these interventions have been successful in supporting economic growth by bringing down interest rates on the instruments involved, preventing fire sales of assets by intermediaries that would otherwise not have access to liquidity, and facilitating new lending.』

この理屈っていうのは最初に色々な資産購入/担保プログラムを実施して行く中で推し進めたロジックでして、「機能不全になっていた市場に対して中央銀行が市場の仲介機能を代替して機能回復を図る」というものでありますが、その仲介に突っ込む目的として、「中央銀行が流動性を付与する事によって、そのままだとファンディングが付かない参加者が投げ売りをするのを防止して、これらの商品の金利を引き下げる事によって経済への効果を狙う」というような話になっているのは何かちと微妙な気がするのですがね。そんなに金利引き下げに拘らなくても良いと思うのですが。


○FRBのクレジットリスクの問題

昨日ご紹介した第10パラグラフでは「金利が上昇した時にFRBが抱える潜在的な損失」に対する考察でしたが、ここから先はクレジットリスクの話になりますが、ここから先もまた「一つ一つ仰っている事はご尤もなのですが、何かロジックがねじれてませんかねえ」という話になってまいります。まずは第12パラグラフから。

『These unusual extensions of our lending facilities have raised concerns about the Federal Reserve taking on credit risk. 』

てなわけで話がスタート。

『While those concerns are understandable, I want to emphasize that we have taken a variety of steps to minimize credit risk in setting up the various nontraditional and temporary credit facilities that we have made available to a number of new borrowers.』

ということで、各種プログラムの実施によってFRBが負うであろうクレジットリスクを減らすように色々な手を打ってますという説明がその後に続きます。借入者の返済能力を精査するとか、担保に関してはきちんとヘアカット(担保掛目)を取っているとか、ノンリコースローンを担保に取る時はローン裏付け資産の価値も精査するとか、そんな説明をした結果こういう事になります。

『In these instances, we typically have taken only the highest-quality collateral, and, in many cases, we have coordinated with the Treasury to have other sources available to absorb any losses that might nonetheless occur. An example of a program that relies importantly on monetary-fiscal coordination is the Term Asset-Backed Securities Loan Facility, whereby protection against credit risk takes the form of capital provided by the Treasury, using funds appropriated by the Congress for the Troubled Asset Relief Program.』

損失が出たときには財務省のTARP資金での補填があるという後半の話は兎も角として、前半の「我々は最も高い質の担保のみを取っている」というのは確かに現象としてそうなっているのですけれども、そこを強調するとそれって本当に「Credit Easing」なんでしょうかという話になって来る訳でございまして、ここら辺でもロジックの複雑骨折が垣間見れるというものです。

とは言え、それだけ強調するのも何なので、次のパラグラフでは「そうは言っても通常よりもクレジットリスクを取っている」という話をしているのですが・・・・・

『To be sure, loans or credit protection offered in association with government help to stabilize individual systemically important institutions likely have higher credit risk than our more general liquidity facilities.』

というのが今言ったことですが、その先での説明では緊急対応で取ることになったクレジットリスクを中銀のバランスシートから外して財務省つまり政府部門に移す話を妙に強調してますが、これは次のパラグラフから始まる「中銀の財政政策」に関する話の前振りでもあります。

『But even in these few cases, which occurred under emergency conditions, we have taken steps to protect the Federal Reserve from credit losses and have asked the Treasury to take these loans off our balance sheet. To reduce the risk of future problems here, a new regulatory regime should be developed that will allow the U.S. government to address effectively at an early stage the potential failure of any systemically critical financial institution.』


○中央銀行が財政政策の領域に踏み込むのは慎重に

ということで第14パラグラフに参ります。

『Finally, there is the question of whether the Federal Reserve has become involved in the inherently fiscal function of allocating credit to specific sectors of the economy. 』

経済の特定セクターに対するクレジットのアロケーションを行うという行為は財政固有の機能であって、それを中央銀行が行うのが良いのかという論点であります。

で、ちょっとだけ脱線するとですね、コーン副議長がこういう話しても何も言われないのに(言われてるのかもしれないけど)、日本でクレジット物買う施策を始めた時に考え方みたいなのを出すと「積極的じゃない」とか言われたり、社債買入でBBBまで買えとか言い出す市場関係者がいたりとか、何だかなあって感じがするのですけど。

という悪態はともかく、ではそのようなクレジット市場への介入をどういう狙いで実施するのかという話ですが。

『Because of the lack of liquidity, risk-taking, and arbitrage in markets, we have been forced to counter tight financial conditions through interventions in particular markets, which can have differential effects.』

市場機能の崩壊によって金融環境がタイトになることによって様々な弊害が起きるという、まさにその通りであります現象面に言及して、市場に突っ込む狙いをこのように説明。だいたいさっきと同じロジックですが。

『But our actions have been aimed at increasing credit flows for the entire economy, and they have been effective in that regard.』

クレジットのフローを復活させるという話で、レートを下げると言ったりフローの回復と言ってみたりご苦労なこったと思いましたが、この先でまた金利を下げる話をしているのでありました。

『For example, our large-scale asset purchases of agency securities and agency-guaranteed MBS have helped mortgage markets, but they also appear to have put downward pressure on other long-term interest rates, as we expected.』

ということで、金利下げの話をした後、市場への流動性付与という観点から、これらの市場への流動性供与を行うことによって、銀行や投資銀行、MMFなどが再び金融仲介機能を回復させるようにするという話をして次の第15パラグラフになります。

『Both the Treasury and the Federal Reserve understand, and have acknowledged in the joint statement released on March 23, that it is important for theFederal Reserve to avoid credit risk and credit allocation.』

ということで、中央銀行はクレジットリスクを持ったりやクレジットのアロケーションをするのを避けるべきであるという話が始まります。その理由がその先に。

『Our lender-of-last-resort responsibilities should only involve lending that is appropriately secured.』

『Actions taken by the Federal Reserve should also aim to improve financial and credit conditions broadly and not to allocate credit to narrowly defined sectors or classes of borrowers, as any decisions to influence the allocation of credit is the role of fiscal policy. Moreover, I believe the essential role for an independent monetary policy authority pursuing financial stability, economic growth, and price stability remains widely appreciated.』

ということで、中央銀行は特定企業あるいは特定産業セクターの救済を行うべきではなく、あくまでもマクロ的な流動性供与であるという指摘と、金融政策が政治から独立して達成すべき目標は金融安定化、経済成長、物価の安定であるという話を。

で、最後の章は出口政策の話になります。


○出口政策キタコレ

『Transition Back to More Traditional Monetary Policy』という小見出しで話が始まります。

第16パラグラフでは景気が回復したら非伝統的政策からの脱却して通常の金利操作による製作に戻る必要がありますが、非伝統的政策によって巨大になったFRBのバランスシートを持った状態からの出口政策というのが論点ですというマクラです。

ただ、そこで次の第17パラグラフで念を押しているのですが、現在はまだ正常化の全くのスタート段階であり、金融や家計のバランスシート調整をゆっくりと行っている最中であって、『As a consequence, it probably will be some time before the FOMC will need to begin to raise its target for the federal funds rate.』とは釘を差しておりますが、将来の為に出口政策の枠組みを作ることが重要という話を。

で、第18パラグラフですけれども。

『Our expanded liquidity facilities have been explicitly designed to wind down as conditions in financial markets return to normal, because the costs of using these facilities are set higher than would typically prevail in private markets during more usual times. Indeed, some of our emergency facilities--the Term Securities Lending Facility and the Primary Dealer Credit Facility--have already seen reduced use as funding markets have returned to more normal functioning. 』

TSLFとかPDCFとかのプログラムの場合、これらの適用金利が市場が混乱している状態を前提にした一種のペナルティー金利になっておりまして、普通の市場状況だと市場調達した方がお得になるという建て付けになっているので、市場が回復したら残高が減る事によって自然に出口に向かうという話で、まあ実際問題としてこっちは最近残高が減ってきています。ではMBSやら財務省証券やらの買入の方についてはどうなるのでしょう。

『Managing the assets acquired under our large-scale asset purchase program will require a different set of techniques.』

ほうほう。

『As I have already noted, some portion of these assets will run off on their own. 』

昨日ご紹介した部分にございましたが、短いものは償還まで持ちきりでよろしいとな。

『In addition, we can actively manage the asset levels down by selling the assets outright or on a temporary basis through reverse-repurchase transactions. 』

物凄くさらっと書いてあるのですが、残高減らすのに『selling the assets outright』ってそりゃ無理です。やっぱりこの人たち日本の事例を勉強してねえなあと思う次第でありまして、ファンディングが国内投資家で完結できている日本であってもいざ国債売却という話が出たら物凄い勢いで大騒ぎになったのに、世界からファンディングしないといけない米国が「中央銀行がこれから保有する長期国債を売却しますよ」ってやったらアセットの圧縮はできるかもしれませんが、長期金利が破壊的に上昇してオーバーキルになっちゃいますって。

売現先(リバースレポ、所謂マッチド・セールっていう名前のオペですよね)で資金吸収してアセット減らすと言ってますが、それは長短ミスマッチの問題とアセットの問題は解決されません(資産は相変わらす長期で吸収する資金は短期、そもそも売現先なので支配残高は変わらない)。まあ売り切り打つよりはマシですけれども。

『Moreover, we could run off these holdings slowly while still raising the federal funds rate if we increased the rate paid on excess reserves held at the Federal Reserve. In principle, the rate paid on excess reserves should act as a floor on the federal funds rate; although recent experience suggests that it may not establish a hard floor, that experience has been influenced by the unwillingness of banks to arbitrage in size in the current circumstances when they are worried about their capital.』

金利正常化局面においてFRBへの超過準備付利金利を引き上げるという話をしてますが、これも単に両建ての話なので、バランスシートそのものは減らないんじゃないかと思うのですが。上記の話の後半は超過準備付利金利は本来は市場金利のフロアーとして働くという話でして、要するに利上げをしていく中で超過準備付利金利を引き上げて行けば、金利付きの超過準備保有へのインセンティブが起きるために、超過準備の存在という形で市場の流動性資金を引くことが出来るというお話ですな。

『Finally, as I've already noted, the Administration has said it will work with us and the Congress to get us an additional tool for absorbing reserves. 』

さっき申し上げたようにの部分は引用割愛しましたが、まあ要するにこれは日本で言う売出手形オペ(またはFRBが短期債券を発行とかですかね)のような機動的な資金吸収手段を新たに導入することを検討中という話です。つまり、超過準備付利だとあくまでも超過準備持つか持たないかの話は受動的になってしまいますので、(超過準備付利金利を無茶苦茶高く設定すれば別ですが、そうなると何のための金利操作なのか訳判らなくなる)より積極的な資金吸収手段が必要という話が最後の所でした。


で、ちょっと脱線しますけど、こんな話を日本でやった日には、どんな原則論の話をしてもメディアが揃って物凄い勢いで大騒ぎするわなと思うわけですよ。それからこの部分の最初の所で説明があった「市場機能が回復したら残高が減る」という理屈ですけれども、日本だと「残高が増えないからもっと低格付けのものを買え」と言いだす市場の中の人これありという状況な訳でして、そういう意味で言えば米国ウラヤマシスともいえるのであります。


○最後に中央銀行の独立性の話が

『Conclusion』ということで最終の第19パラグラフです。

『Experiences studied over a range of countries and periods of history tell us that central banks need a degree of insulation from short-term political pressures if they are to consistently foster the achievement of their medium-term macroeconomic objectives of price stability and high employment.』

というのは仰せの通りで。

『This independence in the conduct of monetary policy has been supported by minimizing the fiscal implications of monetary policy operations. 』

金融政策が財政政策的な意味合いを極力持たないようにすることが金融政策の独立性をサポートするってのはなるほどと思いましたです。

『The Federal Reserve has attempted to maintain this separation while extending the range of our open market operations and discount window lending. But changing policy interaction and greater cooperation between fiscal and monetary authorities have been an inevitable aspect of effective policy initiatives to meet our macroeconomic objectives in the current financial and economic crises. 』

とは言え、金融危機や経済危機においては政府当局とのより緊密な協力と政策の協調が必要だという指摘も勿論しています。では最後です。

『As the economic recovery takes hold, we will need to return to more normal modes of operation--a circumstance this central banker is very much looking forward to.』

#2日に渡って延々と引用大会で大変恐縮でございましたm(__)m








2009/06/01

お題「FRBコーン副議長の講演が中々良いネタでした」

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20090523a.htm

23日に行われたコーン副議長の講演(スピーチ)ですが、これが中々良い感じのネタだったので一読推奨です。ちなみにA4の紙に打ち出すと実質4ページちょっと(脚注があるので6ページになる)になりますが、現在のFRBの政策ロジックおよび各種施策の意図と波及効果に関してコンパクトに説明しているので、FRBの論点整理にはちょうど良いと思いますです、はい。

○まず勝手にあたくしが感想

構成としては最初にゼロ金利制約のある中での金融政策と財政政策の話、次に所謂非伝統的政策の説明とその効果、最後に非伝統的政策部分の出口政策に関してという話です。で、その説明なんですけど、まあ一つ一つのお話はさよですかという所なのですが、各種の狙いや効果に関して「それはさっきの説明と整合性が取れているのか」とか「それはちょっと違うような気がするが」というツッコミ所が微妙に転がっておりまして、まあFRBは政策とりあえず色々やってみたけど、ロジックよりとりあえず何かやる事優先でやってきたのでしんどくなってきたのかなあという感じでございます。

ということで順にご紹介して参ります。


○まずは論点をサラサラと

これ実は全部引用しながらお話するのが一番宜しいのですが、それをやってしまうと3日くらい掛かってしまいますので(汗)、かなり端折っちゃうと思いますけど、さっきも申し上げたように上記URL先は一読推奨。

冒頭の3つのパラグラフではこの後に出てくる各種論点について話をしていますのでベタ引用します。

『Our current economic situation has altered some of the usual interactions between monetary and fiscal policy. One change regards the relative effects of monetary and fiscal policy. The depth and persistence of economic weakness has meant that traditional monetary policy--the target for the federal funds rate--has become constrained from easing as much as might be desirable under the circumstances, and, as a consequence, the target federal funds rate is anticipated to remain near zero for some time. But as a result, fiscal stimulus has potentially become more effective in boosting economic activity than it usually would be. 』

後で説明が出てくるのですが、ゼロ金利政策を継続する中、つまり時間軸政策のようなものをとる中で財政政策による刺激効果がより有効になるという論点がございます。で、次のパラグラフ(第2パラグラフ)。

『Another change involves the potential for monetary policy actions to have greater fiscal implications than usual. The Federal Reserve has extended both its open market operations and lending programs in unprecedented ways to ease financial conditions and to help revive economic activity. In our open market operations, we have embarked on large-scale purchases of intermediate- and long-term Treasury securities, agency debt, and agency-guaranteed mortgage-backed securities (MBS) in order to put further downward pressure on borrowing costs, greatly increasing the degree of maturity transformation on our balance sheet. In addition, our traditional liquidity operations have been extended to include new borrowers and new markets, with the potential for greater credit risk than usual.』

ということで、ベタ引用しちゃいましたが、この中で現在の資産購入プログラムに関して『in order to put further downward pressure on borrowing costs』と例によって例の如く借入コストの引き下げを政策の効果として認識しているというお話になります。で、これはこれで従来のFRBの声明文などにもあった説明なのでその通りなのですが、実はその後の説明で「あらら?」というロジックが出てくるのでお楽しみに。

『In my view, our nontraditional policy actions have been necessary to avert a far worse economic outcome, and they remain consistent with the traditional goals and principles of monetary policy. Moreover, as I will be discussing, we have structured these policies with the aim of accomplishing our objectives with few, if any, fiscal consequences. I will conclude with some thoughts about the transition back toward more typical monetary policy as the economy and financial markets improve.』

非伝統的政策は更なる経済悪化を食い止めるために必要な政策であり、これは従来の金融政策によって目的としていることを達成することと矛盾しませんよってことと、FRBのバランスシート毀損問題とかの話と、最後に出口政策の話をしますということで、さて各論に参ります。


○ゼロ金利および時間軸の下における財政政策の効果に関して

『Fiscal Policy When Monetary Policy Is at the Zero Lower Bound』って小見出しの所から参ります。

こちらの最初になります第4パラグラフ(以下パラグラフは全部通しで書きます)はいわゆるマンデル・フレミングモデルと言われている話の説明でして、通常の経済状況の下で、財政支出による需要の拡大を行っても、金利上昇と金利上昇に伴うドル高の双方による経済への悪影響によって中長期的に見れば効果が殆どないというお話をしています。ではそうでは無い状況でどうなるかという事が次のパラグラフに。

『But in the current weak economic environment, a fiscal expansion may be much more effective in providing a sustained boost to economic activity.』

ほほう。

『With traditional monetary policy currently constrained from further reductions in the target policy rate, and with many analysts forecasting lower-than-desired inflation and a persistent, large output gap, agents may anticipate that the target federal funds rate will remain near zero for an extended period. 』

期待インフレ率がFRBが望ましいと考えるレベルよりも低い水準で当面の間推移し、生産ギャップが大きく、政策金利がゼロ近傍で長期間に渡って維持されるという期待の下という条件だそうですな。

『In this situation, fiscal stimulus could lead to a considerably smaller increase in long-term interest rates and the foreign exchange value of the dollar, and to smaller decreases in asset prices, than under more normal circumstances. Indeed, if market participants anticipate the expansionary fiscal policy to be relatively temporary, and the period of weak economic activity and constrained traditional monetary policy to be relatively extended, they may not expect any increase in short-term interest rates for quite some time, thus damping any rise in long-term interest rates. 』

そういう条件下では政策金利のゼロ近傍据え置き期待がアンカーになるので、財政支出による金利上昇やドル安は限定的ですと。

『Moreover, if the initial boost to aggregate spending from fiscal stimulus raises inflation expectations, then real short-term interest rates would tend to decline, given that the nominal short-term interest rate is constrained at the zero lower bound. All told, the result is likely to be considerably less of the usual crowding out of fiscal stimulus in these circumstances, thereby increasing the effectiveness of fiscal policy to boost the level of aggregate economic activity in the short to medium term.』

その上、財政支出によってインフレ期待を引き上げることが出来た場合は、実質金利の引き下げが出来るという話もしておりまして、そんなことで財政支出の効果が通常の経済状況よりも高いという話なんですが・・・・・ついさっきは大体ゼロ金利の時間軸効果の下での財政支出効果の話をしていたのに、同じ口で実質金利の引き下げの話をするのはちと虫が良くないか?という気がする。

『This scenario is supported by simulations using the Federal Reserve staff's FRB/US model, assuming all agents have rational expectations.』

だそうなのですが、先般バーナンキ議長がボストンカレッジの卒業式で・・・いやまあいいです(笑)。ちなみにその説明が第6パラグラフと脚注にあるのですが割愛。

なお、その次のパラグラフで上記した効果には不確実性があるという話をしていまして、貸出姿勢が慎重化する中では財政刺激効果が予期するほどにならないケースとか、財政支出の規模が長期的に不確かな時、って言うのですから要は財政に対する懸念が出るときという事でしょうが、この時にはタームプレミアムが発生するという説明をしていますが引用割愛。


○非伝統的政策に関して:実施した政策の目的と効果

『Nontraditional Monetary Policies 』って小見出しから

でまあ前の部分では財政の話をしていますが、次が金融政策の役割の話になっております。で、ゼロ金利制約の下でも金融政策によって経済への刺激を与える事ができるということで、非伝統的政策の登場という話になります。経済の不確実性が高まり、金融仲介機能に対するプレッシャーが掛かり、通常の信用仲介機能が阻害されている時に何をするかという話で、第8パラグラフの途中から。

『 In these circumstances, the Federal Reserve has provided additional monetary stimulus by easing financial conditions more directly through its interventions in a variety of financial markets. In effect, we have stepped up our intermediation by making large volumes of asset purchases and loans, which have been associated with a very substantial increase in bank reserves on the liability side of our balance sheet.』

ということで、FEDのバランスシートを使った政策といういつもの説明になりますが、その政策としてこんなんやりましたというお話をして、その目的と効果について。

『This program is intended to stimulate real economic activity by holding down intermediate- and long-term interest rates by bringing down the term premium on these securities--a mechanism that is distinct from the traditional channel whereby a shift in the stance of monetary policy affects longer-term yields by changing the expected path of short-term interest rates.』

ここでも『by bringing down the term premium on these securities』ということで資産購入による金利引き下げの意図を明示していまして、また『a shift in the stance of monetary policy affects longer-term yields by changing the expected path of short-term interest rates』ということで、政策金利のパスに対する期待を変化させることによって長期金利に影響を与えるという時間軸っぽい話をしています。

『The preliminary evidence suggests that our program so far has worked; for example, our announcements regarding the large-scale asset purchase program coincided with cumulative restraint on the average level of longer-term interest rates, perhaps by as much as 100 basis points by some estimates.』

資産購入プログラムの実施アナウンスによって1%は金利下がりましたという話ですがホンマカイナという気はするけどまあいっか。

と言うところでちょっとあたくしの雑感を申し上げますけど、この時間軸の話って現在のFRBは明示的なコミットメントは特に無く、FOMCの声明文でインフレの見通しを低位においてみたりというような形で時間軸っぽい動きをしているのですけれども、日本での例を見ると、03年に長期金利がアホほど上昇した時って(まあその前に変にバブった反動の面も大きいのですが)足元CPIが全然上昇しない中で勝手に長期金利が上昇した訳でして(結果として量的緩和政策の継続に関する明示的なコミットメントを出す破目になった)、何となく時間軸みたいな政策を実施している場合って、市場が勝手に景気回復期待や正常化期待で突っ走りだすと、コーン副議長の言うような状況にはなってくれない可能性が高いと思います。当然ながら理論的背景は無いけど。


○非伝統的政策:FEDの損失発生の懸念に対して、金利面から

実はさっきの所で大体前半の部という感じでして、作っているあたくし的に時間と量がお腹一杯になってきたので明日に続くにしようと思ったのですが、やはりこの部分は引用しないとということで第10パラグラフ。

金融危機の前にも実は財務省証券とかの購入をしてましたよってのが話のマクラになってますが、そうは言って今の買入規模は大きいですねという話をしています。で、その買い入れによる中央銀行の損失可能性に関連して。

『Holding such a large portfolio of long-term assets does expose the Federal Reserve, and thus the taxpayer, to potential losses as short-term interest rates rise. We could end up financing our holdings of some low-yielding long-term assets with more expensive short-term liabilities or, we might have to sell some of these assets at a loss as long-term rates rise. 』

短期金利が上昇した時の保有証券とファンディングコストのギャップによる損失、および長期金利が上昇した時に保有証券を売却する必要になった時の損失という金利面からの問題について説明しています。

『First, some of the Treasury and GSE debt that we are acquiring will run off over the next few years without any need for outright sales, as will some of the MBS as individuals sell or refinance their homes. 』

償還まで短いのに関しては持ちきりとな。

『Second, the yield curve currently has a steep upward slope. Accordingly, we are now earning an abnormally high net rate of return by funding our acquisition of long-term assets with almost zero-cost excess reserves--and this relative yield relationship is likely to last for some time. Thus, in judging the potential budget cost over time, any possible future interest-rate-related losses need to be balanced against the current elevated level of our net interest income. 』

えーっと、長短金利差が大きく、買った証券の利回りが短期金利対比結構高いし、当面は低金利政策を持続するのだから、その間の期間収益があって長い目で見れば損失にならないという話です。いやまあそりゃその通りなのですが、それって「金利を押し下げる」という政策効果の話をする中ではちと変じゃネーノと。

『Third, our purchases of long-term securities are boosting economic activity and, in the process, increasing government tax receipts relative to what they would have been in the absence of such purchases.』

これらの政策が効果を発揮すれば景気が回復するから税収の増大によって政府収入が増えますという論点。いやまあそれもそうなのですし、政策目的が達成されて経済が回復するのはまさに良い話なのですけれども、それってさっきの「期間収益がどうのこうの」みたいな話とこれまた整合性の取れない話でありまして、何かちょっとこの辺グダグダになってますなあという感じです。

・・・・・というところで時間が無くなったし量も大杉なので明日に続く(予定)なのでした。