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2009/07/31

お題「野田審議委員講演:景気に対して慎重ですが、脚注にも注意(^^)」

という話の前に昨日テキストコピペが出来なくて(文字化けして)困ったとか申し上げていた、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdf
ですけれども、昨日のうちに文字化け問題は解消されたようでして、フツーにテキストにコピペができるようになっておりまして誠に恐縮至極でございました。昨日は企画局が渾身の勢いでお送りする新手の嫌がらせかと焦りました(^^)。


で、野田審議委員講演ですが、図表を含めてPDF44ページです。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0907b.pdf

特に市場的なインパクトはございませんでした(と思う)のですが、基本的には景気に対する慎重な見方を表明しているのがありますけれども、幾つか独自色を出した論点もありというのが目についた感じです。


○米国不良債権問題

野田審議委員は銀行出身(第一勧銀→みずほFG)ですので、不良債権処理問題に関しては以前から厳しい視点での指摘を講演などで行っていますが、今回もその点をきっちり指摘しています。まず世界経済の全体感として冒頭に『(1)「不均衡」の調整〜調整にはなお時間が必要〜』という小見出しで話をしていますが、そこではいつものように構造問題であるという指摘をしています。

『今回の世界的な不況は、単なる景気循環ではなく、グローバルな構造調整を背景としています。』

『図表からも容易に推測できると思いますが、こうした不均衡の調整には相応の時間が必要であり、世界経済の回復力は暫く弱いものとなる可能性が高いとみています。世界経済の回復力や持続的な成長軌道に復するまでの期間を見極めるうえで、不均衡にかかる調整の進み具合を逐次、確認していくことは重要です。』

で、米欧の金融システムの回復はまだ道半ばであるという指摘をしていまして、その中で野田さんが懸念しているのはこの点です。

『特に、私が懸念しているのは、不良債権買取りプログラム(PPIP:Public-Private Investment Program)の規模が大幅に縮小しかねないことです。』

富士山より高く同意です。即ち・・・・・

『当初、米政府は最大1兆ドルの買取りを目指していましたが、差し当たって証券化商品の買取りに絞って、その25 分の1の400 億ドルの規模でスタートすることを7月8日に公表しました。米国の金融機関は、幾つかの理由――(1)自己資本を拡充したこと、(2)不良債権の安値での売却に繋がりかねないこと、(3)プログラムに参加した後に新たな条件が課されるリスクが懸念されること――から、PPIPの利用へのインセンティブを落としているようです。』

という現状ですが、

『しかしながら、重要な点を2つ指摘すれば、(1)PPIPが本格的に稼動しないとなると、不良債権が金融機関のバランスシートに残ったままとなり、実体経済の回復がストレス・テストでの想定よりも遅れた場合等に、ロスが膨らみ、資本不足問題が再燃するリスクがあること、(2)その場合、金融機関は、政府の経営への介入を嫌がり、公的資本の返済を優先していることから、肝心の「実体経済への信用供与」が進まず、「金融と実体経済の負のフィードバック」が再び強まるリスクがあることです。「負のフィードバック」を解消するための重要なプロセスの全てが着実に進んでいるか、引き続き注視していきたいと考えています。』

まー米国の実体経済のマクロという点ではストレステストよりも状況が悪い筈なんで既に表面上は兎も角として資産の中身ってどうよという話は思いっきり今の話でもあったりしますけど(^^)。


○日本経済に関しても慎重です

で、その後世界各地域の見通しの話があるのですが、そこは引用をスルーしまして(米国の回復はスローで欧州は米国より遅れ、アジアは比較的堅調というまあコンセンサス的な話です)、日本経済に関してですが、基本的には回復基調ですけれども不透明って話で、不透明の方を強調しています。

『その理由を述べれば、第1に、輸出や生産の持ち直しは、最終需要を大幅に下回る水準まで落ち込んでいたところからの、いわば「急落・激落」後の反発(自律的反転)であり、4〜6月期の輸出や生産はピーク(2008 年1〜3月期)比で3割も低い水準に止まっていることです。経済指標については前年比や前期比といった変化率でみることが一般的ですが、今回のように非連続的な変化が発生した後では、水準も併せて点検していくことが適当です。』

『第2に、「内需を含めた最終需要の本格的かつ持続的回復」を示唆する材料がなお乏しく、この点の不確実性が引き続き非常に高いことです。輸出は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続け、公共投資も増加を続ける可能性が高いとみています。一方、国内民間需要は、厳しい収益環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱い動きが続く可能性が高く、加えて、設備や雇用に大きな過剰感が発生している状況下、生産がある程度回復したとしても、設備投資や雇用の増加には繋がりにくいことから、回復には時間を要すると考えざるを得ません。』

と、そもそも論としての水準が大きく下がったでしょという問題と内需の回復が遅れる懸念に関して指摘しています。また、この先でリスク要因として説明をしているのですが、その部分でもこんな言い方を。

『以上、日本の経済・物価の先行きを展望しますと、景気は今年度後半以降持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿が中心シナリオとして一応想定されます。「一応」と申しましたのも、これまでお話ししたことからもお分かりのように、海外経済が回復に向かうことが言わば前提となっています。言い換えれば、中心シナリオの最大のリスク要因は海外経済、就中、米国経済が立ち直るかどうかであります。これについては、前半に詳しく述べました。』

『その他のリスク要因は挙げれば際限がありませんが、ここでは金融環境、国際商品市況、長期金利の3つについて述べてみたいと思います。これらは、いずれも景気の中心シナリオに対して下振れリスクを意識させるものです。』

>その他のリスク要因は挙げれば際限がありませんが
>その他のリスク要因は挙げれば際限がありませんが
>その他のリスク要因は挙げれば際限がありませんが

なお、長期金利の話はこの後。


○物価に関しても下ブレ懸念

『(2)物価〜拡がりつつある価格引き下げの動き〜』って小見出しで話をしているのですが、そういや決定会合議事要旨でも価格引下げの動きが広がっている事をよく指摘している人がいましたねとか思いつつ。

『物価の先行きを考える上で私が注視しているのは、経済全体の需給バランスの悪化が、物価形成のダイナミクスにどの程度の影響を与えるかという点です。現時点では、これまで比較的しっかりとアンカーされていた中長期的なインフレ予想が、トレンドから大きく乖離し、物価下落と景気悪化の悪循環――所謂、デフレスパイラル――が発生するリスクが高まっているとはみておりませんが、いずれにせよ物価関連データを注意深く点検していきたいと考えています。』

これは結構懸念しているということでしょうね。



○長期金利の話が出てきたのはユニークっすな

で、先ほどリスク要因の中にあった長期金利なのですが。

『3つ目のリスクは、実体経済の回復と乖離した長期金利の上昇です。』

ということで、日本も6月に10年国債金利が1.5%台に上昇しましたねという事実の指摘を致しまして、その結論としてどうなんですかというのは、

『実体経済の回復と乖離した長期金利の上昇は、ただでさえ弱い実体経済の回復力を、さらに弱めることにもなり、警戒を怠れないと私は考えています。』

という話になるのですが、では長期金利上昇警戒と言いますがどうやって警戒するんですかという話になった時に、財政規律の話をしているのはまあお約束のようなもん(バーナンキもイエレンも言いますからね!)ですが、脚注のところでしらっと「金利押し下げの為に実施する長期国債買入とは」という話がございますので引用引用。

『中央銀行による国債の買入れが長期金利へ与える影響に関するこれまでの実証研究や海外の事例をみると、実施直後の一時的なアナウンスメント効果は相応に認められるが、価格を一定水準に誘導するといった長期的な効果は認められない、というのがコンセンサスのようです。』

『むしろ、米英の中銀による国債買増しの後、長期金利がともに上昇したこともあり、国債の買入れが財政ファイナンスと誤解されることに伴う長期金利の上昇リスクへの警戒感が高まっています。』

まー複合要因だとは思いますが、結果的にはFRBの長期国債大量購入決定以降、アナウンス効果で10年国債金利が3.1%近辺から2.5%近辺まで豪快に低下したものの、その後金利が上昇した後には3.1%まで低下することも無いままで推移していまして、長期国債大量購入は少なくとも長期金利を押し下げることは出来ませんでしたという話になりますわな。

『FRBのバーナンキ議長は、5月5日、6月3日、7月21日の議会証言において、「我々は特定の金利水準をターゲットにしようとしている訳ではない(We are not trying to target a particular interest rate)」、「連邦準備は政府債務をマネタイズすることはない(The Federal Reserve will not monetize its debt)」と述べるとともに、「財政の持続可能性に対する懸念に速やかに対処することが非常に重要である(Prompt attention to questions of fiscal sustainability is particularly critical)」、「長期的に持続可能な財政のパスについて合意を得ることは、長期金利の低下や消費者や企業のコンフィデンスの改善といったかたちで大きな短期的なベネフィットを産み出し得る(agreeing on a sustainable long-run fiscal path now could yield considerable near-term economic benefits in the form of lower long-term interest rates and increased consumer and business confidence)」と指摘しています。』

ということで、これ本文で書いても良いと思う論点なのですが、脚注になっている所に微妙なモノを感じるのは深読みのしすぎですかそうですか。


○臨時措置に関して

金融政策に関する部分は基本的に白川総裁や山口副総裁の講演やら会見やらと同じような感じですので、その辺は全部スルーしまして時限措置に関する話で。

『次なる課題として、市場では所謂「出口政策(Exit Policy)」――各種の時限措置をいつまで続けるか――に注目が集まっていますが、出口政策で最も重要な点はタイミングです。』

そらそうよ。

『異例の措置を必要以上に長期間に亘って続ければ、金融市場や経済における自律的な調整を阻害し、結果的に景気や物価の振幅を大きくするリスクがある一方で、早過ぎる政策変更により問題が再発することは当然ながら避けなければなりません。』

ということですが、これを『早過ぎる政策変更で問題再発避ける必要』と意味不明なヘッドラインを打っていたお間抜けベンダーがありましたが(その後『早過ぎる政策変更による問題再発は避ける必要』とヘッドラインを訂正してましたが)全然市場が反応しなかったのがチャーミングです。まー他のベンダーがハト派的なヘッドラインを打ってましたしね(笑)。

それは兎も角、今回延長しましたという話をした上でこのように話をしています。

『もっとも、昨年度末までとは異なり、足もとの金融環境は、改善の動きが続いていることは既に述べたとおりです。この動きがどう展開するかを見極めながら、各種時限措置の一つひとつについて日本銀行の臨時措置によるサポートが必要な状況かどうか――終了、見直しまたは再延長のいずれが適当か――年末までに改めて判断することになります。』

ということで、中身の見直しという選択肢があるのと、時限措置も全部ではなく一部の終了のような選択肢があるというのは把握した。で、しらっとこれまた脚注にCP市場阿片窟の話が。

『この点に関して、企業金融支援特別オペをはじめとする一連の措置が、CPのレートがTBのレートを下回るという「副作用」、つまり市場機能の部分的な低下を招来していることは確かに認識していますが、現時点では、このコストよりも、セーフティーネットとしての評価が高い措置を外すことにより生じかねないコストの方が大きく、引き続き市場に資金調達にかかる安心感を提供することが重要、と私は考えています。』

特オペにおけるCPはセーフティーネットというよりは金利押し下げだと思うのですけどね。セーフティーネットという点では買切ではござーませんかね、とは存じますけど、まあとりあえずこういう文脈になっているというのは把握しました。

#コピペが出来るのでご機嫌になって引用し過ぎちゃいましたかね(^^)






2009/07/30

お題「各国中銀の政策まとめペーパーが来ました」

ネタなし相場ですので熟読されるのが吉かと(^^)。

ということで、『今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について』というペーパーが企画局から出まして、これがもう大変に良くまとまっておりますので、夏枯れ相場の中熟読されるのが吉かと存じますがどうでしょ。

要旨
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0907c.htm

本文(PDFで51ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdf

ちなみにこちらの文章部分は22ページ(と最初の要旨3ページ)でして、後は各種資料の表とかグラフになっています。でまあこれを読めば宜しいんじゃないですかで話が終了するとあたくしの駄文のネタが無くなりますので(^^)、別にツッコミどころの無い(当たり前ですが)ペーパーですがご紹介。


○ところで紹介の前に何でこういうファイルの作りにしたんすか??

で、この本文ファイルなんですけどね、いやまあ『本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行企画局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』っていうのは毎度の事ですので承知致しております(あたくしは商用ではございませんので念の為)が、PDFファイルをテキスト引用しようとすると文字化けして引用できないという新しい種類のプレーが登場したのは何か意図でもあるんすか???

いやまあ今後PDFで出す物に関しては、引用したけりゃおまいら文字起こしを自分でしやがれっていう方針に突如変更になられたのならそれはそれなのですけど、昨日出てた他のPDFで『「適格外国債券担保取扱要領」の実施日および適用開始日について』ってのは普通にテキスト引用できるので益々謎。まあ「引用ご相談」に関して簡単には引用させねえぜ!っていう事なのかもしれませんけどね!!(というか、こちらの文章もテキストに落とした時にアルファベットとかはちゃんと落ちているみたいだったりします)

ということで、散々確認した為に時間が無くなって若干トサカに来ておりますので(−−)、意地になってテキスト文字起こしする(htmlのところにあるのはコピペしますが^^)よって、今日の引用は少量になるかと存じます、と事前予告。

・・・・と書きましたが、単にあたくしの個人で使ってる年代物PC(確か6年選手くらいのノート)に存在する何らかのソフトのバージョンの関係だったりするというのがオチのような気もしますが、無事にテキスト引用できた人がいらっしゃいましたらご教授頂きますと有りがたく存じます。


追記:上記の件、特に他意はなかったようで、30日の昼間にファイルが差替えになっていました。ちゃんとテキストに落とせます。


という前置きは兎も角。


○金利引き下げ+時間軸

今回のペーパーで言及されている主要中央銀行は、『対象とする中央銀行は、日本銀行のほか、米国連邦準備制度(FED)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、カナダ銀行、スイス国民銀行、スウェーデン・リクスバンクの7行である。』ということで、この7行になっているのですが、今回の特徴として、金利政策部分においては「利下げ(ただし完全なゼロ金利にはしない)」と「時間軸のようなもの」のセット販売というのが一つの特徴として挙げられますというお話。

本文3ページ目から(テキスト起こし中に乱丁落丁があるかもしれませんのでその時はゴメンナサイです)。

『いくつかの中央銀行では、政策金利の引き下げに加え、ターム物金利など長めの金利を低位安定化させる目的で、政策金利の先行きに関する方針を表明することによって、金融緩和効果を補強している。』

というのが時間軸のようなものですな。具体的には・・・・・

『カナダ銀行は、2009年4月に政策金利である翌日物レートの誘導水準を0.25%に引き下げた際に、それを実質的な下限としたうえで、同時点のインフレ見通しを前提とする限り2010年第2四半期末までこの誘導水準を継続する方針であることを表明した。カナダ銀行は、その趣旨について、政策の透明性の向上によって将来の短期金利に関する市場の期待に働きかける効果を狙ったものと説明している。』

『また、リクスバンクは2009年7月に政策金利を0.25%に引き下げ、同水準程度の低金利が2010年秋まで継続するとの見通しを示した。』

『このほか、FEDも、一定の金利水準を継続する期間や金利水準を変更する条件を明示しない定性的な表現ながら、2009年3月以降、「経済情勢を踏まえると、極めて低水準のFFレートが長期間に亘って続く蓋然性が高いと考えている」と先行きの金融政策運営に関する基本的な考え方を表明している。』

ということで、カナダとスウェーデンと米国の話をしているのですが、まあそれを言い出すと日銀の場合は展望レポートにおける物価見通しの表明によって、堂々物価マイナス予想が来年度まで出ていますので、「結果的に時間軸みたいなもん」状態になっていると言えるでしょうが、これは時間軸としての意思決定をしたというよりは、物価見通しから考えると結果的に時間軸になっているという事なので、そーゆー意味からここに日銀の例を入れてないのですなあと思ってしまいました。


○ターム物金利誘導の話の中でどさくさに紛れて・・・・・

で、金利を下げて時間軸のようなものを設定したりしなかったりする各国中銀でございますが、潤沢な資金供給の一環としてターム物金利の上昇を抑えるオペレーションを行っていますという話が本文5ページに。

『加えて、各中央銀行はターム物金利の跳ね上がりに対応するため、通常よりも期間を延長したターム物オペを活用した。』

『カナダ銀行は、危機前には原則として翌日物オペのみを利用していたが、危機発生後は、ターム物レポ・オペの実施頻度を当初は臨時措置として高め、その後、定例的に実施する事にした(オペ期間は最長1年間)。』

『また、スイス国民銀行およびリクスバンクでは、平時におけるオペ期間は1週間であるが、それぞれ、3か月物、3〜12か月物のオペを導入・実施した。』

『ECBは危機前から長めの資金供給手段として、予め定めた資金量に対して入札で金利を決定する3か月物オペを有しているが、定例の実施に加えて臨時のオファーを行ったほか、固定金利かつ金額無制限とする措置を講じたうえで、最長1年物までタームを延長した。』

『この間、FEDは、入札型ターム物資金供給ファシリティ(TAF)の導入により、ターム物資金をより積極的に供給するとともに、既存のオペの枠組みの中においても、平時におけるオペは14日物までであったが、28日物のオペを定例的に実施するなどの対応を採った。』

で、日銀とBOEは元々そういうオペがありましたので・・・・・

『日本銀行とBOEは、危機以前より翌日物から最大1年物までの多様なオペ手段を有し、実際にその多くを比較的頻繁に利用していたが、危機発生後は年末越え資金の供給などに際して長めのオペを通常より多用した。』

ということですが、その次に何か微妙な説明が。

『また、日本銀行が導入した企業金融支援特別オペは、期間は最長3か月と既存のオペの範囲内であるが、翌日物コールレートの誘導目標水準の固定金利で、民間企業債務の担保範囲内であれば金額に制限を設けずに資金供給することにより、ターム物金利の低下を促す効果が期待されている。』

・・・・・・えーっと、企業金融支援特別オペに関しましては、導入当初このように説明していた筈なのですけれども、ついに「ターム物金利引き下げ」を全面に出すようになったということでしょうか???

『企業金融支援特別オペレーション基本要領』

『1.趣旨
この基本要領は、最近の企業金融情勢を踏まえ、適切な金融調節の実施を通じて、金融市場の安定確保を図るとともに、企業金融の円滑化に資する観点から、企業金融支援特別オペレーション(適格担保を根担保として、共通担保として差入れられている民間企業債務の担保価額の範囲内で、金額に制限を設けずに、無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利により、年度末越え資金を供給する公開市場操作としての貸付けをいう。)を行うために必要な基本的事項を定めるものとする。』(昨年12月の導入当初バージョンの基本要綱より。期限延長した時に年末越え云々が改正されていますので念の為)

・・・・いやまあ「金融市場の安定確保」にターム物金利の安定も含まれますよと言ってしまえばそれまでなのですが、上記の理屈を逆に言えば企業金融支援特別オペを廃止あるいは手直しをする場合はターム物金利上昇を容認というメッセージになりますよという話になりゃせんですかと思う次第でありまして、何かそれって「企業金融支援」と別物の話になってるような気がするのが何だかなあという感じであります。

と、ここまでやった所で(一番最初の所と、特オペの要綱以外の)引用手打ち大会に力尽きましたので、本日はこの辺で。以下人のふんどしメモ。


○人のふんどしメモ

最近話題のIAS第39号の改訂がどうしたこうしたという話ですが、厭債害債さんのところでエントリーが。
http://ensaigaisai.at.webry.info/200907/article_10.html

んでまあそちらの最後にリンクがあるのですが、新日本監査法人さんが解説をしています。
http://www.shinnihon.or.jp/knowledge/global/IFRS_Supplement_200907.pdf

・・・・日本の会計とまた微妙(どころかだいぶかなあ)に考えというかロジックというかがワケワカメ(包括的利益ってどういう概念なのとか、あほですいません)でございますが、どうも勉強しないと行けないようなので、泣きながら勉強することにせざるを得まい。

ではでは♪







2009/07/29

お題「相変わらずの相場展開で雑談ばっかりなのですが」

とか何とか言ってるうちに7月が終わろうとしていますが。

○と言いつつ相場雑感

まあすっかり10年1.4%近辺での磔刑状態だわ、GCレートは0.11%から0.13%までの0.005%刻みのどこかだわと大変におとなしい展開になっておりまして(長いところのカーブはそこそこ動くのですけど)、誠に遺憾極まりない今日この頃なのでありますが、そんな中でも何となく雑談。

えーっとですな、昨日はスポットが30日でして、CPの発行はまあ製造業さんとかのややロットのある発行とかも幾つかありまして、ついでに8月の夏休み前があるので少しCPの足も長くなって(手元流動性を厚めにするのと休み中のロールを避けるから)10月末近辺に足が来る3か月ものが複数の発行体さんから出たのですけどね・・・・・

たぶんどこかの情報ベンダーに記事出てるかと思うのですけど、これがまた例によって例の如くなのですが、A格あって日銀のオペ適格の事業会社ネームだと何でかんでも0.15%近辺(0.15%割れ水準から0.16%あたりまでかなあ)に収束するという状態で、短国と同じレートまたは逆転になっている(日本相互証券の引けは10月26日足の短国で0.155%ざますが、これをまともに買いに行くと多分0.15%だと思います)のは毎度の事ですが、発行体の信用リスクとか見事にスルーというレート形成。

いやまあ毎度お馴染みの阿片窟状態なので別に今更どうのこうのという話ではないと言ってしまえばそれまでなのですが、銘柄がどうのこうのというのがすっかり忘却モードになって「CPという名前のモノ」状態になるというどこの昔の利金債だよ(意味が判らない人はあなたの周りの15年選手に聞いてください)という感じで誠に困ったもんでありますが、企業特オペがアレなので致し方なし。


○改めて米国時間軸雑感

先日引用した6月のFOMC議事要旨なんですけどね。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20090624.htm

『The Committee also agreed that changes to its program of asset purchases were not warranted at this time. Although an expansion of such purchases might provide additional support to the economy, the effects of further asset purchases, especially purchases of Treasury securities, on the economy and on inflation expectations were uncertain.』

というのは先日(7月21日)も引用しましたけど、長期国債の買入拡大に関しては出口政策を実施する時に相当の無理をしないと行けないリスクが拡大するので時間軸にシフトして行くのでしょうなあという感じだと思うのですな。引用してると長くなる(英文だと切りどころが難しくて結局パラグラフ丸引用とかになってしまうんですぅ)よって、今更ですがここの中でのボードメンバーの議論で出ている話をあたくしが箇条書きにしますと・・・・・

・金融市場環境は改善しているが、クレジットの悪化は続いているという点を強調
・雇用の悪化から来る消費悪化を懸念、最近の消費拡大は財政措置による一時的なもの
・その雇用環境に関しては一時的なレイオフではなく恒久的な人員削減が目立ち、
実際に統計に出てくる数字よりも実体は悪い
・経済活動の悪化が非製造業に広がっている
・欧州の景気回復は米国より後になるだろう、アジアは中国中心に好調

というような感じで、まあ経済見通しに関して厳しい見方を並べていまして、インフレ懸念に関してはヘッドラインの数値には原油やら商品市況の影響が出ているけれども、コアインフレは抑制された状態という話になっております。

で、そのインフレ懸念のところでは、この回の議事要旨でこんな話が出ていまして、FEDのバランスシート拡大ポリシーも限界がってえ話に向こうでもなっているんだろうなあと思わせる訳です。

『A few participants were concerned that inflation expectations could continue to rise, especially in light of the Federal Reserve's greatly expanded balance sheet and the associated large volume of reserves in the banking system, and that as a result inflation could temporarily rise above levels consistent with the Committee's dual objectives of maximum employment and stable prices.』

『Most participants, however, expected that inflation would remain subdued for some time.』

まああくまでも一部の意見ですけど、この点は先般のバーナンキ議会証言でも出口政策は大丈夫ですよ安心ですよって話になっている位ですので、まー長期国債買入拡大というよりは方向性としてはショックを与えずどうフェードアウトしていくのかという段階に入っているのではないかと傍観者的には思うのですけれども、実際に米国債をやってる人たちはその辺どういう考えがマーケットコンセンサスなんでしょうかね。

ということで、「民間クレジット市場を改善するため」と称して開始した長期国債買入はまあやってみたけどイマイチでしたので撤退し、金利安定の為には時間軸政策の強化が有効という認識になったんでしょうかねという所ですので、日米共に時間軸時間軸ちゅうことで宜しいのではないでしょうか、と思います。というメモ書きをこの前したのですが、もうちょっと長く書いてみました。


○これは何だか難しそうな話

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j06.htm
ハイブリッド型日本経済モデル:
Quarterly-Japanese Economic Model (Q-JEM)

『本稿は、日本銀行のスタッフが開発したマクロ経済モデルの一つである「Q-JEM」の2009年5月時点版の解説論文である。Q-JEMは、海外経済、原油価格、金融変数、人口動態といった日本経済を分析するうえで重要な多くの変数を持つ大規模モデルである。また、経済理論との整合性を考慮した長期均衡を持ちつつ、データとの整合性も重視したハイブリッド型モデルである。』

ということで、本文はこちらなのですが、PDF99ページにもなりますのでご注意を。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j06.pdf

何せこちらのWPは本文が19ページで残りが延々とモデルの計算ロジックの説明になっているというものでありまして、ハクション大魔王よりちょっとマシな程度しか数学の知能が無いあたくしと致しましてはもう何がなにやらという話なのですが、序論のところと読んでて「ふーん」と思ったところだけ引用を。

最初の所から。

『中央銀行におけるモデル開発は、1970 年代以降、Lucas (1976)による理論なきモデルへの批判もあって、理論をより重視する方向で発展してきた。まずは、経済理論との整合性を考慮して決定される長期均衡の概念を導入し、短期的には均衡からの乖離を許容してデータとの整合性を高めつつ、最終的には経済変数が長期均衡に収束していく誤差修正のメカニズムを持つモデルが導入された。このようなモデルは、理論と実証のバランスを取ることからハイブリッド型と呼ばれ、FRBのFRB/USが例として挙げられる。』

『近年は、短期的な動学まで含めて理論的な整合性を重視したDSGEモデルの開発が盛んになってきており、中央銀行の政策分析や経済見通し作業においても用いられ始めている。もっとも、FRBが最近でもハイブリッド型モデルを利用しているように、主要な中央銀行では、必ずしもDSGEモデルのみに依存したモデル運用を行っている訳ではない。』

だそうですが、何がなんだかよく判りませんが、DSGEとかいう言葉だけ聞いた事があるので何となく引用してみた。意味は特にない。

で、本文15ページのところで、『4−3.ゼロ金利下での期待』っていう分析があるんですけどね。

『前小節では、民間主体が金融政策ルールに基づいて政策金利に対する期待を形成することなどを説明した。これに続き、本小節では、Q-JEM で期待が果す役割に対する理解を深めるため、ゼロ金利時のエピソードを例に挙げる。』

『具体的には、2005 年7〜9月時点のことを考える。このときは量的緩和政策の最中であり、政策金利がほぼゼロ%に固定されていた。また、インフレ率、GDP ギャップともに低かったことから、すぐに利上げされていくとはみられておらず、将来の政策金利に対する期待も低かった。』

ということで分析して結果が出ているのでありますが・・・・・

『ここで、長期期待政策金利(ZCALL10)をH-VAR を用いて計算すると、7〜9月時点では約0.6%であったが、10〜12 月には約0.8%まで0.2%ポイント程度上昇したとの結果が得られた。この間、実際の長期金利(IRL)は1.3%から1.5%まで上昇しており、その上昇幅は、H-VAR で算出した長期期待政策金利の上昇で概ね説明できるものであった。なお、長期金利から長期期待政策金利を差し引いたものとして定義されるターム・プレミアムは、概ね0.7%で安定していたことになる。』

ほほう。ではこの間の背景はと言いますと(引用としては文の順番を逆に引用してます)・・・・

『もっとも、H-VAR の算出結果をみると、政策金利、インフレ率、GDP ギャップの全てに対する期待が、ほとんどの期間で上昇した。この背景には、インフレ率やGDP ギャップのマイナス幅が縮小し、期待を形成するうえでの発射台が、それぞれ−0.2%、−0.6%程度まで上方シフトしたことがある。また、GDP ギャップに対する期待形成式の特性として、一度GDP ギャップが上昇すると、慣性が働き上昇を続けやすいとの期待が形成されることも寄与していた。結果として、政策金利がプラスになるのは2006 年4〜6月と期待されることになり、2四半期先まで一気に近づいた。』(ちなみにその前の四半期は8四半期先という期待の形成になっていたという分析です)

えーっとですね、実際問題としては2005年7−9月期って景気回復期待の中で量的緩和のコミットメントがあるから短期金利動きませんがな状態だったのが、「急に地均しが来たので」状態になって2年とかの金利がいきなりどどーんと上昇した時期でして、ついでに9月には郵政解散があって自民党圧勝で株価まで上昇したので金融政策変更の期待がいきなり盛り上がった時期でもありまして、ケースとしては前章で説明があった『金融政策ルールが政策金利に対する期待に影響する』という話なのかなあなんて思ったりするのですが(^^)。

まー長期金利がどう動いたかという話になりますと、確かにこの時期に上昇したのは中短期の金利であって、長期の期待という点では中短期ほどぶれていない(から変動利付国債が死亡したのですけど)ので、そーゆー意味ではこちらでの分析が上記のようにどんぴしゃになっているのですよね。

何か良く判らないけど引用してみた。少し反省している。









2009/07/28

お題「珍しく床屋政談的与太話雑感とか市場雑感とか」

○岡田幹事長のインタビュー記事

昨日はブルームバーグニュースで岡田幹事長がインタビューを受けていたようでこんなニュースが。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aGeWzKgb83EY
民主・岡田氏:外貨準備多様化など改革案、党方針ではない

『岡田氏は、日本の外貨準備の在り方に関する自身の考え方については「一言、一言が市場に影響を及ぼすから、コメントするのは適当ではない」と強調。円の望ましい水準についても「政権交代が行われるかもしれないので、そういうことについてあまり発言しない方がいいと思う」と述べるにとどめた。』

と思うのでしたら、政権準備政党とやらを昔から標榜しておられたと存じますけど、「ネクスト財務大臣」というご大層な肩書きをお持ちの方の発言を野放し状態にしてテキトーな「個人的見解」をペラペラ喋らせ無い方が宜しいかと考えるのですが、その辺がカオスなのはどうなんでしょうかねえ。

大体からして個人的見解がどうのこうので済むのでしたら、麻生首相の「郵政民営化に当初は反対でした」発言が物凄い勢いで叩かれて大騒ぎになる理由が1ミリも存在しない訳でありまして、麻生首相の個人的見解は悪い個人的見解でネクスト財務大臣(笑)の個人的見解は良い個人的見解とか意味判らんですわな。

という悪態は兎も角として、まあさすがに外準を何かの打ち出の小槌と勘違いして訳判らんプレーに出るというのは、少なくとも為替をいじって来るような無茶プレーをしなさそうな気がして来たのに関してはちょっとホッとしました。というか当たり前なんですけどね!

と申しましても、ど〜せ「財源は埋蔵金」とか言い出して外貨準備の帳簿上の利益を使うという話は出てくるのでしょうと思うのですけど、外貨準備で数字上計上している利益って当然ながら外貨建てで出てきますので、為替市場での円転を伴わない限り(って伴ったら大変な話になるのですが)、その利益金を使うという話は資金繰り上は国債(か国庫短期証券)を発行しないと行けませんので、(益金なのですから)赤字国債ではないですけれども資金繰りとしての国債発行は増えますがなというお話になるんじゃないですかね。赤字国債じゃないですし、2兆とか3兆とかなら3か月TBの発行を2000億円とか増やす位の話ですから目立たないとは思いますけど・・・・・

ついでに、上記記事より。

『現在の麻生太郎政権がまとめた2009年度補正予算については「必要のないものはやめる。財源がそこにあるわけだから、財源対策としても考える」と一部事業の執行停止を明言。具体的な見直し対象としては「公共事業や基金」を挙げた。』

おじちゃん頭悪いから良く判らないのですが、執行始まったものをいきなり止めたりしたら事業を受けてる人って大変な事にならないのでしょうか。よー知らんけどさ、「必要のないものはやめる」って簡単に云うけど、現実問題としてそういうのって直ぐにホイホイと出来るものなんですかね。

まあ段々現実的に修正を始めているのは結構な事ですが、どうも相変わらず頭の中で考えたけど実務上の実現可能性について検討した雰囲気の無い話が出てくるのは誠に遺憾としか申し上げようがございませんけどね。


○ある意味自民党にブーメランなのですという考察

で、民主党様政権公約発表ということですが・・・・
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200907270365.html
民主党がマニフェスト発表 主要政策に初年度7.1兆円

んで財源の話ですが、上記記事によりますと・・・・・

『一方、消費税増税については、鳩山氏は27日の記者会見で、かつて「議論の必要もない」と語ったことを「訂正したい」として議論の必要性は認めたが、「4年間は増税の必要はない」と改めて強調。直嶋正行政調会長は財源として「赤字国債発行はありうる」と明言しており、財源を確保できるかどうかについて、不透明な部分が残る。』(上記URLより)

ほほうこれはまた何と言う現実的なお話。まあ補正予算やら本予算の時に散々文句言ってたのはナンダッタンデショウという気はしますが、政権取ってもお花畑な政策を打つよりはマシですわな。

で、現実的と言えば数日前に出てたこの話ですか。
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200907230147.html
民主、「インド洋撤収」を政策集から削除 現実路線へ

そりゃまあ北海道新聞の社説みたいな話とか、
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/179093.html

与党の方からはこんな批判も出るわけですが・・・・・
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090724ddm005010019000c.html

『公明党の北側一雄幹事長も同日の会見で、民主党が海上自衛隊によるインド洋での給油活動継続を当面容認する方針を示したことに「現実路線に転換というなら、今まで非現実的な国会対応をしてきたことになるのではないか」と批判した。』(上記毎日jpの記事より)

いやまあこれは北側幹事長の仰せの通りと思ってしまうのですけど・・・・・


でもね、政治目標を達成するためにペテンでも何でも良いから世論を味方につけて選挙に勝っちゃえば勝ちっていうポピュリズム的手法を派手に実施したのはそもそも郵政解散における自民党の手法でありまして、その手法で大当たりしたのを民主党が政権批判を絡めながら同じように使っている(という割に微妙に統制が取れてない部分がある気もしますが)のであって、自民党にブーメランが飛んできてるだけという風な気がするんですよ。ブーメラン投げたのが小泉さんで突き刺さっているのが麻生さんなのがローゼンカワイソスとは思いますけど。

ということで久々にこんなのを見て楽しみましょう。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/hayawakari/contents/01.html

今現在実際にどういう事が起きているのかという事を後付けで知った上でここにある宣伝文を読みますと、何かこうおじちゃんが昔少年漫画雑誌の最終ページで良く見たインチキ広告の宣伝文句みたいなノリ、即ち「郵政民営化のお蔭で背が5センチ伸びるわ美人の彼女は出来るわもうウハウハです!」みたいなものを感じるのですが(^^)。

#なお、以前はもっと素晴らしくも香ばしい図表みたいなのがあったのですが、さすがに削除されていたのか見つかりませんでした。

しかし最後にこういう事書いている筈なのですが・・・・

『(3) 3年毎に 「経営形態のあり方を含む全ての事象」 につき民営化委員会で見直しを行うこととしており、国民に不便を生じさせる場合には、適切に対応。』

ということだから「適切に対応」しようとしたら郵政民営化教団の皆様が大騒ぎして支持率は下がるわ地方選挙に負けるわもう涙目ですって話になったのが昨今の動きだったんですなあ(ニヤニヤ)。


と、柄にもなく床屋政談与太話でした(汗)。極論なのは認める。



○市場雑感

まー市場雑感もへったくれも「選挙結果を見ないと何とも」というお馴染みの売買手控えするのに絶好のネタがございますので(^^)、そうそう派手な動きはせんとは思うのですが、こーゆー時は「ど〜せ様子見」とか「ど〜せ方向感出ない」と思っていると不意討ちのように動くこともオオアリクイなので(というか8月ってそもそも動くっていう印象があるのですが)注意は注意だと思いますが、そんな長いところは兎も角、超短いところは安定安定。

先週の3か月TB入札を前にちょっと押し込んだりした場面もあったのですけれども、結局GC+5相当の0.17%の寸止め手前で反転したでござるの巻になりましたが、さすがに6月末の大量償還金余り状態と違うのはオファーも出ている所でして、極端に需給が偏るような感じでもなさそうですし、足元も安定しているので安定安定と。

で、なお局地的な話をしますと、ここもとの資金供給オペでスポットスタートの現先をやや減らし気味にしている一方で使いやすいタームの共通担保オペを厚めに実施していまして、お蔭で今月も(あんまり月末関係ないですけど)月末でどうのこうのというのも無く、スポットの買現先を減額してもレートは安定推移と中々結構なオペとなっておりますな。まあ足元をちょこちょこ細かく調整するよりも、やや長めのターム(資金繰り安定と担保繰り安定を考えると3週間から1か月ちょっと位のオペが一番双方のバランス上良いんじゃないかと思う、ただのヤマカンですが)オペを厚めに打って行くのが宜しいのではないかと思われます。まあ足元GCの運用がやたら多いのは他にも要因があるような気がせんでもないが。

まーとにかく、ここもとの共通担保多目攻撃はGCレートを安定化させるのには良い効果がありそうですなということで。

6月末は22日の大量償還資金を特に引かなかった代わりに、一応四半期末になる月末に向けて何故か末跨ぎの資金供給を絞る(というかオペの期落ちをロールしない)格好で積み上がった当座預金残高を削ったらGCレート上昇しちゃいましたけど、次の大量償還の時にどういうオペしてくるのか今からちょっと楽しみにしておきましょう(ニヤニヤ)。

#と、いつもの事ですが一部のマニア以外何の話か判らない雑談でどうもすいません








2009/07/27

お題「今更ですが金融経済月報とその他いくつか」

株価が低迷してるところで山ほど持ってる上場子会社を幾つかTOB。何だかんだ言っても結果的にはよーするに食い逃げですよね、株式市場をナメトリマスナ>6501


○7月金融経済月報(概要)はしらっと上方修正

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0907.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0906.pdf(6月)

声明文では引き続き下振れリスクてんこもりですし、白川総裁や山口副総裁の会見などでは同じく先行きへの厳しい見方を示しているのですが、月報概要は色々と芸を駆使して上方修正をしております。

・日銀文学その1:水準の話を削除

まずは冒頭部分。

『わが国の景気は下げ止まっている。』(7月)
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(6月)

前回「下げ止まり」を入れた時に変に出口政策への思惑が出るのを気にした為に入れたと思われる「大幅に悪化したあと」が1か月にしてさっくりと削除されたでござるの巻(^^)。

まあ市場的には企業金融関連などの臨時措置を延長したり、先行きの下振れリスクを強調したり、物価が相変わらず弱かったり雇用関連が弱かったりと、どちらかと言えば時間軸を意識するような展開になっていますので、メディアが変に回復宣伝で出口政策みたいな事を言い出さなくなった所でさっくりと削除ですかそうですか。


・日銀文学その2:語順の変更

これがまた芸が細かいとしか申し上げようがありません。冒頭の次なのですけど、長いけど引用しますね。

『公共投資は増加している。輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直している。そうしたもとで、企業の業況感は、製造業大企業を中心に、悪化に歯止めがかかっている。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱めの動きとなっており、住宅投資は減少している。』(7月)

『企業収益が大幅に悪化するもとで、設備投資は大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱まっており、住宅投資も減少している。一方、輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直しに転じつつある。この間、公共投資は増加している。』(6月)

で、小見出しとして「語順の変更」と書いたので何の事かは判るかと存じますが(^^)、6月は「(悪い話)。一方(良い話)」という順番になっていたのですが、7月は「(良い話)。一方(悪い話)」という順番になっておりまして、当然ながら先に良い話が来るので、現状判断の文面が何となく前月より明るくなっている訳ですな。

ちなみに、先行きの部分に関しても同じ芸を見せておりまして、今回の月報で語順を変更して良い話を先に持ってきており、全体のトーンが明るくなっているのですな。何という芸の細かさ(^^)。


・現状判断の項目別展開

で、現状判断部分は上で全部引用したので改めては引用しませんが、比較をしますとこんな感じです。

(輸出、生産)『持ち直しに転じつつある』(6月)→『持ち直している』(7月)
(個人消費)『弱まっており』(6月)→『弱めの動きとなっており』(7月)

というのが上方修正。

(企業収益)『大幅に悪化するもとで』(6月)→『厳しい収益状況など』(7月)

これは微妙なのですが、方向感が底ばいになったという感じだと思います。後の文章とか見ますと特にここの部分で上方修正をしたという感じにはなっていなさそうです。

あと、業況感のところは短観を反映したもので、四半期ごとに入るお約束です。


・先行き見通し

『先行きについては、景気は次第に持ち直しに向かうと考えられる。』(7月)
『先行きについては、景気は下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(6月)

これはまた上方修正で。


・先行き見通しの項目別展開

語順が変わっている点は先ほど申し上げたとおりです。まとめて引用してご鑑賞ありたし(^^)。

『すなわち、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(7月)

『すなわち、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱まっていく可能性が高い。一方、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗を主因に、持ち直しを続けるとみられる。この間、公共投資も増加を続けると見込まれる。』(6月)

で、項目別で言うと変化は微妙でして、雇用、所得の部分で、『引き続き弱まっていく可能性が高い。』(6月)→『引き続き弱めに推移する可能性が高い』(7月)となったところだけだったりするのですけどね。


・物価に関して

ここでは低下要因の中にあった「国際商品市況の下落」が外れたという点があるのですけれども、まあそれは現象面の話でして、消費者物価の見通しの中で微妙な一節が。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナスとなっている。』(7月)

ここに「経済全体の需給が緩和した状態が続く中」という表現がありますが、6月月報では物価の先行き見通しで需給バランスについて言及しています。

『消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きに加え、経済全体の需給バランスの悪化などを背景に、マイナスになっていくと予想される。』(6月)

さて、この「悪化」(6月)というのと「緩和した状態が続く」(7月)というのはどっちがどうなのか微妙ですね!

それから、消費者物価が前年比マイナスとなった訳ですが、さて先行き見通しはどうなのでしょうかと言いますと。

『消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動などから、当面、下落幅を拡大していくと予想される。』(7月)

「当面」ですかそうですか(-_-メ)。


・金融環境の全体感でも語順の変更が(^^)

『わが国の金融環境は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(7月)
『わが国の金融環境は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(6月)

えーっと、こちらでは結語部分が「厳しい状態が続いている」から「改善の動きが続いている」となっていますので、単純に語順を変更したのではなくて結論が変わっているのでありますが(^^)。

じゃあ内容はどうかと言いますと、金融面の現状についてはマーケット数値通りなので変化どうこうは割愛。金融環境に関しても内容には変化は無く、変化があるのは全体感の部分だけなのですな。一応基本部分だけ引用しますが、6月と同様なので今回分だけ引用します。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利や貸出金利の低下から、一段と低下している。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(7月)


・ということで

今回の金融経済月報の(概要)部分は何気にいろいろな芸を駆使して細かく上方修正を積み上げている印象でして、声明文や会見のトーンよりも経済に対して強めの物を感じましたです。しかし細かい芸には感心しました。



○市場雑考

今月は増額発行入札が連発でござるの巻となった(除く短国)のですが、一応情報ベンダー的には入札は無難に消化されたことになっているのですけど、実際にどうなのよというのは微妙にアレだったりします。

10年はカーブ上の踏み入札みたいになってその後長期ゾーン失速ですし、40年はもっと踏み入札のような前場引けに対して3毛5糸流れて入札というカオス入札。5年もカーブ的には踏み入札で、その後相場が上昇して第U非価格は満額入ったのですが、そんなに業者がオイチイ入札でもなさそうだったし、20年に至っては結構調整して入札迎えて当日も調整したのに、結局(相場が下がったのもあって)平均オファーのままで当日のカーブバランスでは勝ったものの翌日から超長期がカーブ上カオスに。

とまあつらつら並べると、今月に入ってからの入札って落札した人があまり良い目を見てないですわなあという感じでして、これが増額発行パワーなのか、単に相場水準が高く(金利が低く)なり過ぎてしまったからなのかはよー知らんですけど、何だかなって所でございまする。

今週は2年の入札がありますが、2年は前回から増額(入札の翌月15日発行ですから)になってまして、時間軸だ何だと堅調でございまするので、さすがにこの入札はどうとでもなるんでしょうと思いつつ、来月の中長期入札は(相場の位置がこのままであれば、ですが)ちょっと水準が変わって迎える事になるので、要因がどっちなのか見えてくるのかもですね。



○またまた日銀ペーパー関連で読んだもの2題(メモ)

『近年の中国におけるホットマネーの動き』

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j08.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j08.pdf(本文)

内容は正直あたくしにはよー判らんというかほほーそうですかで終了してしまう(あほです)所なのですが、一つだけの統計数値では読みにくい資金の動きをきちんと捉えるために各種データを積み上げていって分析する進め方に感心するのでありました。


『わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察
─ 地域経済の視点から ─』

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j04.htm(紹介ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j04.pdf(本文)

もはや金融政策とかの話では無いのですが、これまた中身が面白く読めましたです。

ちなみに、読んでてウケたのは「英国の都市化率89.7%」って所でして、そりゃまあ一極集中だけど英国ってそんなに都市化してたっけとか思ったら、その定義を日本にあてはめて試算したら日本の都市化率100.0%になってしまった辺りとかですが、まあそんな事よりも、各県の都市化率とか、一例として埼玉県の地図から都市化している地域の分布図とか、いろいろと面白い図表がてんこ盛りでございまして、こちらに関しては紙に打ち出して本文編と図表編に分けてから読むのを強力推奨いたします(^^)。










2009/07/24

お題「物価に関するツッコミを受けると中々大変ですなあ(棒読み)」

他にも調べ中のネタとか読み中のペーパーとかあるんですけど、微妙に多忙なもんで纏まっておらずで、今日はは山口副総裁の会見で勘弁して下さいませ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0907b.pdf

○物価見通しと金融政策に関する質問がメインでしたな

会見要旨が7ページ弱で、最初の2ページが北海道経済に関する話になっていますのでそんなに量は無いのですが、何故か長文質問と長文回答の応酬になっております。

で、物価に関する話が今回はメインのお題になったようです。まずは需給ギャップ拡大中なのに物価見通し大丈夫かという質問に対する山口副総裁のお話から。

『ご質問の趣旨は、2つに分けられると思います。1つは、需給ギャップが存在する中で、物価情勢についてどうみているのかという点、もう1つは、物価が下落していくとすれば、そうした中で成長期待に何らかの影響が生じるのではないかという点です。』

ということで、その2点に対する説明ですが。

『物価についてですが、ご指摘のように、経済成長率は今年度3%を超えるマイナスになりそうですが、来年度についてはプラス成長を見込んでいます。従って、その間、潜在成長率について変化がなければ、需給ギャップは一応縮まっていく方向と理解しています。先週の決定会合後に公表した私どもの景気観、物価観でも明らかにした通り、消費者物価の前年比は、当面マイナスを拡大していくけれども、今年度の後半以降はマイナス幅を縮小していくという見通しにあります。』

まあこの部分の突っ込みどころについてはその後の質問で突っ込まれているのでそこでまた。

『問題は、そういう物価情勢が続く中で、企業が抱く成長期待が何らかの影響を受けるかどうかということです。はっきり申し上げれば、ここには不確実性があります。』

つまりヤバそうだということですね、わかります。

『しかし、大きな流れとして、2010 年度にかけて経済成長率はマイナスからプラスに変わっていくということを私どもとしては予想しています。また、物価上昇率のマイナス幅についても、先ほど申し上げましたように、今年度後半以降、マイナス幅が縮まるという推移を予想しています。そうした景気・物価の展開を前提とすれば、企業が抱く成長期待が下方屈折する可能性は大きくないのではないかと思っています。』

まあメインシナリオ通りに行けば良いのですけど。あの米国株式市場様の戻りがホンモノだったら意外や意外に生き返るの早いかもしれませんけど・・・・


○これはまあ理屈上こう回答するしか無いわなとは思いますが・・・・・

で、その次の質疑では微妙に意地の悪い質問が。

『(問) 今日の講演の中でも、物価の安定とはあくまで中長期的な概念であるということ、またデフレスパイラルに繋がらないようにすることが、何よりも大事というお話をされていたと思います。日銀としては、年度後半以降、物価上昇率のマイナス幅が縮小していく姿を想定されていますが、そういうことであれば、現状、物価上昇率はマイナスですが、デフレスパイラルに陥るようなことがなければ、特に追加緩和をとる必要性がないという理解で良いのでしょうか。』

そりゃまあ数日前に現状維持の決定をしたばっかなのですから、答えの仕方としては「現状では追加緩和不要」というか「デフレスパイラルが顕在化したら追加緩和が必要」というかのどっちかしか有り得ないわな、と思って答を見るとこうなっていました。

『(答) 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、物価について、方向としては来年度にかけて下落幅が縮小するという展開を想定しているということです。私どもが物価情勢について最も注意しているのは、物価下落と景気後退の相乗作用が起きないかということですが、現状そうした状態に陥るリスクは小さいと思っております。従って、物価についてのそうした状況認識を前提に置きますと、今の段階で更なる金融緩和を行わなければならない状況にはないと理解しています。』

まあ無理無理インプリケーションを探すとすれば、先ほど申し上げたように、「リスクが顕在化したら追加緩和が必要」と答えるのではなく「現状では追加緩和不要」と答えたという点が山口副総裁の心象風景により近い、つまり現状維持寄りのスタンスですねという解釈は可能ですが(^^)。



○成長すると言ってるがそんなに成長しないじゃないかというツッコミ

で、その次の質疑応答がまたいい感じのツッコミ。質問がクソ長いので勝手にこっちがまとめますと、(1)2010年度プラス成長するからデフレスパイラルの心配無いと言うけどそもそも2009年度に落ち込むのだから水準として低いままで本当に大丈夫か、(2)割と有りそうなシナリオとして、10月に出る展望レポートで2011年度物価上昇率マイナス予想が出た場合には3年マイナスとなるが、それは中長期的な物価安定の理解から外れているでしょ。というツッコミです。

『(答) 2011 年度まで物価を見通してどうかということですが、決定会合では、2011 年度の見通しについての具体的な議論を行っていません。従って、これから申し上げるのは一般論であると同時に、私自身の意見ということになります。』

という前置きをしまして、山口さんの説明になります。

『繰り返しになりますが、私どもは2010 年度にかけて経済の成長率が回復していくとの見通しを立てています。その延長線上で考える限りでは、2011 年度以降も、海外経済が回復を続ければ、わが国の経済も回復基調を持続するであろうと思います。そうだとすると、物価上昇率を左右する要因の1つである経済全体の需給バランスは、2011 年度以降も改善していくことになり、その限りでは、物価の下落圧力は低下していくと思います。2011 年度までの見通しについては、今の段階ではこの程度の「ふわっとした」ことしか申し上げられません。』

つまり不確実ですという話ですね、わかります。

『この点について付け加えておかなければならないのは、経済全体の需給バランスを的確に捉えることは非常に難しいということです。それに加えて、需給バランスが改善したとして、それが物価の下落圧力の低下にどの程度繋がっていくのか、あるいは繋がるとしてもそのタイミングはいつ頃になるのか、こういった点についても不確実性が大きいということです。従って、2011 年度にかけて、物価の下落圧力が低下していくといった方向感を申し上げましたが、それについては不確実性がかなり伴うものと理解して頂きたいと思います。』

需給ギャップの計測が難しい攻撃をしていますが(^^)、ここでの話は「需給ギャップが改善しても物価が戻るかはまた微妙な問題」という趣旨になっていまして、結構物価見通しに関しては弱気なのですかねと思わせてくれます。


『もう1つのご質問は、2011 年度についてもマイナスの物価上昇率にとどまるとすると、追加緩和が必要になるのではないかということかと思います。まず、そうなるかどうか今の段階では何とも言えないという点は、繰り返し述べさせて頂きたいと思います。』

まあそう答えるしかないですが。

『その上で、今日の講演でも述べましたが、欧米も含めてグローバルにみて、景気や物価に与える非常に大きなショックが、特に昨年秋以降に生じたわけです。これだけ大きなショックが経済に加わると、その影響はかなりの期間に亘って続くだろうと思います。経済の振幅もその分大きくなると思いますし、物価についても私どもが物価安定と考えるレンジに収まるには、それなりに時間がかかる可能性が高いと思います。』

『従って、物価が安定していると考えられるレンジにいずれ収まっていくという方向感を持てるかどうかが非常に重要であると思います。』

何かもうかなりのファジー問答状態になっておりますが、まあ物価に関して言われますと答えが大変ですわな、おっほっほ。

『私は、今の段階では2011 年度までについて見通しを明確に申し上げる材料を持っていませんが、大きな流れとしては、私どもが物価が安定していると考える状態に向けて進んでいくであろうと思っています。そうした判断に立つ限りは、政策面からの追加的な対応が必要とは認識していないということです。』

大きな流れって何年後の話ですかとかというような追加ツッコミはございませんでしたが(笑)。


○企業金融措置に関して

講演では企業金融の先行きの改善が広がるのか不確実という話をしていましたけれども、不確実な状況だというのであれば12月での終了は考えられないですよねという質問がございまして、それに対する回答。

『2点目の、企業金融の先行きについて不確実性があるとすると、12 月末まで延長した企業金融支援措置をさらに延長する可能性があるのか、というご質問についてです。この点に関しては、つい先週の金融政策決定会合で延長を決めたばかりです。私どもとしては、これからの企業金融の状況を確りと見極めながら、企業金融支援措置を終了する、見直す、あるいは再延長する、いずれの対応が望ましいのか、予断を持つことなく考えていきたいと思っています。』

まー予想通りややこしい答えにならないようにスルーしていますが、ここでは企業金融支援措置に関して「見直す」という選択肢もあるというのが判りましたなと言うのがインプリケーションっちゃあインプリケーションかも知れませんわなという所ですか。まー単なる勝手読みかもしれませんけどね!!


ということで、他のネタ全部スルーでどうもすいません。









2009/07/23

お題「山口副総裁講演、オーソドックスにまとめている感じです」

ホントは金融経済月報とか日銀から出ている各種ペーパーの話とか短国市場雑談とかもあったりするんですけどにゃあ。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0907a.pdf

○景気回復に関してはとっても慎重ですが・・・・・

というのは既に散々色々な場で政策委員の皆様がお話をしている訳ですが、今回もまた同じ趣旨でございます。景気動向に関する話をしている本文4ページ(PDFファイルの5ページ目に相当します、以下同様)から引用。

『もっとも、こうした市場や人々の期待の改善度合いが、わが国経済の今後の回復力、つまり回復の力強さやその持続性と整合的か、という点については、もう少し詳しい点検が必要だと思います。』

で、点検の結果は予想通りケチ付き捲りなんですけどね(−−)。

『先ほど、最近の景気下げ止まりについて、輸出や生産の動きからご説明しましたが、こうした動きの背後に何があるかを確認してみます。改めてまとめると、大きく3つあると思います。』

ということでその3つがナンデスカという事ですが。

『1つ目は、国内外における在庫調整がかなり早いペースで進んでいることです。』

『2つ目は、各国において積極的な財政・金融政策、あるいは金融システム安定化のための施策が幅広く実施されていることです。』

『そして3つ目が、経済の先行きに対する極端な不安心理が薄れてきていることです。』

そして・・・・・

『しかし、こうして整理してみると、これら3つの要因は、それだけでは経済が自律的に回復し続けること、言い換えれば、民間の最終需要が持ち直してくることを保証するものではないということに気づきます。』

ということで、民間の最終需要が自立的に回復するんですかという話ですが、これは毎度お馴染みのように『不確実な面が大きい』となります。その不確実要因は2つ挙げられていまして、まー既にご案内の話とは思いますが、整理をするためにも引用するのだ。

『第1に、今後のわが国の最終需要の動向は、海外の経済情勢に大きく依存します。』

で、その海外動向ですが、金融と実体経済の負の相互作用は一段落しているものの、それがまた復活した場合は宜しくないでしょという話をしてますが引用の方は長くなるので割愛します。

『第2の不確実要因は、「企業の中長期的な成長期待」の変化が経済にもたらす影響です。』

これも先般ご紹介した決定会合議事要旨の中でも議論されていますし、リスク要因として挙げられている話ですが、企業の成長期待が低下して、設備投資や雇用に悪影響を与えるリスクがありますという話です。



で、そんな話の中でちょっとだけ希望があるのはこのまとめ部分の中にこんなコメントがある事ですかな。本文5ページ目なんですけどね。

『経済の先行きを不透明なものとする要因はほかにもいくつか存在し、想定以上に景気が上向く可能性もあります。ただ、日本銀行としては、只今申し上げた点を中心に、下向きに振れる可能性により注意が必要な状況にあると考えています。』

・・・・基本下向きなのですが、「上向く可能性もあります」というのはイイハナシダナー。



○デフレスパイラルの可能性は低いとな

物価の話はまあそりゃ説明が苦しめだわなという感じ。物価下落予想の後こんな話をしております。

『ところで皆様は、どのような状態のときに、「物価が安定している」と感じるでしょうか。概念的には、「物価の安定」とは、次のような状態を指すものと考えられています。すなわち、「企業や家計といった様々な経済主体が、物価水準の変動を気にすることなく、投資や消費などの経済活動に関する意思決定を行うことができる状況」です。』

CPIが下がりだすとこのネタが出ますなあ(^^)。

『このため、企業や家計が、日頃、どの程度の物価変動を前提として経済活動を行っているかが重要なポイントとなります。この点については、過去の歴史、すなわち、企業や家計が、これまでどのような物価上昇率を実際に経験してきたかにも大きく依存します。』

ということで、以下は引用しなくても何を言ってるかはお分かりになるかと存じますのであえて引用はスルー致します(^^)。ただまあそれだけだとやはり説明にこじつけの香りが漂いますので、一時的な物価下落とデフレスパイラルを分けた説明をして微妙に凌ごうというのは把握した。

『そう(引用者追記:物価安定の理解の中央値が1%程度となっている話です)申し上げると、皆様の中には、消費者物価が、当面、前年比マイナスになることとの関係をどう考えたら良いのか疑問をもたれる方がいるかも知れません。この点については、先ず、「物価の安定とは、あくまで中長期的な概念である」ということをご理解頂きたいと思います。』

『特に、経済にこれだけ大きなショックが加わると、現実の物価上昇率が短期的に大きく変動することは、どうしても避けられません。その上で申し上げたいことは、日本銀行としては、そうした状況においても、「物価の下落が、デフレスパイラルにつながらないようにすることが何よりも大事である」と考えているということです。』

ほほう。

『デフレスパイラルとは、物価下落が景気を悪化させ、そうした景気の悪化が更なる物価下落をもたらす悪循環のことです。先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、中心的な見通しとして、物価のマイナス幅は一旦拡大するものの、本年度後半以降は、景気の持ち直しに伴い、物価のマイナス幅も縮小していく姿を想定しています。従って、現時点では、わが国経済がデフレスパイラルに陥り、物価安定の状態からどんどん離れていってしまう可能性は低いと考えています。』

ほっほー。


○企業金融の一層の改善に関しては先行き不確実

で、その次は企業金融に関する話になりますが、これまた声明文やら6月会合議事要旨にあるような話が主なのですが、先行き見通しに関してはこのようになって
います。

『先行きの企業金融についても、このまま改善の動きが拡がっていくのかどうか、不確実な面があります。』

即ち・・・・

『わが国の金融機関は、サブプライムローン問題の発生後も相対的に安定した経営を維持しており、米欧のように、金融機関の破綻が現実の問題となっている訳ではありません。しかしながら、2008年度の金融機関の決算は、業務純益の減少や有価証券損益の悪化などから、銀行では5年ぶり、信用金庫では6年ぶりの最終赤字となりました。こうした中、今後の景気動向や企業業績次第ではありますが、先行き、企業の信用力に対する金融機関や市場の見方が厳しさを増す可能性は否定できません。』

『そうなると、金融機関の融資姿勢が慎重化し、企業を巡る金融環境が十分に改善していかない可能性もあります。日本銀行としては、全国の支店ネットワークも活用しながら、引き続き、企業金融の動向について丹念に点検していきたいと考えています。』

ということで、ポイントになりそうなのは株価動向と企業業績動向という事になるのでしょうかね。



○金融と実体経済の負の相互作用

本文8ページ目から12ページまでが上記お題での話になっておりまして、よーするに金融と実体経済の負の相互作用オソロシスという話なのですが、負の相互作用そのものは散々っぱら見聞しましたのでその辺の話はスルーして。

『このように、「負の相乗作用」が経済に与えるインパクトは非常に大きいものがあります。しかも、次に述べるような厄介な問題を抱えており、政策当局に対し、非常に難しい対応を迫るものでもあります。』

でまあその問題ですけど・・・・・

『第1の問題は、「負の相乗作用」は、はっきりとした前触れがない中で一気に進行するという性質を持っているため、これを事前に予測することが難しく、必要な政策対応が遅れる可能性があるということです。』

説明はまあ本文みてちょという感じですが、要するに資本制約などの臨界点を超えた所でいきなり非線形的な変化が発生するという厄介な代物だということで、政策当局は金融情勢の変化を常にウォッチする必要があるという指摘をしています。

『第2の問題は、一旦「負の相乗作用」が強まり始めると、これを食い止めることが非常に難しいということです。』

これまた説明は本文見てくんなましという所ですが、対策としては金融システム問題への対処だけでは不十分で、経済への下支えを行う為の利下げや財政刺激政策が必要になりますという話で、かつての日本の取り組みや最近の世界的な取り組みについて説明しています(とだいぶ引用を割愛しましたな^^)。

で、この章の最後の部分にもしらっとこんな話があったりするのがチャーミング(^^)。

『金融と実体経済の関係について、最後に1点付け加えたいと思います。ここまで、景気悪化局面において金融と経済が下向きに落ち込んでいくことについてお話してきましたが、景気拡大局面では、これとは反対方向の現象が生じる可能性があります。(途中割愛)今回の大幅な景気後退と、それに先立つ世界的な景気の過熱を経験し、現在、国際的には、こうした景気変動の増幅を緩和することを目指し、金融機関に対する具体的な規制のあり方を含めた幅広い議論が活発に行われています。』

プロクシカリティーがどうしたこうしたという白川さんのお話もありましたが、まーFEDビューでは上手く回らないんじゃないですかというのは実際にそんな感じになりやがりましたもんね。


○で、具体的な金融政策に関しては企業金融オペ関連

企業金融オペに関する話をしていまして、いわゆる「染み出し効果」チックな説明をしまして、あたくしのような輩が申し上げる「CPばっかりやたら優遇してませんかねえ」という悪態にお答えしています(^^)。

『これらの措置によってメリットを受けるのは、CPや社債を発行する大企業に限られる訳ではありません。大企業の資金調達環境が改善すれば、これを起点とした企業間信用の条件が、金利水準や返済期日の面で緩和されるなど、政策のプラス効果が中堅・中小企業にも広く波及していくと考えています。』

この手の「染み出し効果」的な話って時々出てくるのですが、たいがいの場合実際問題としてそーゆー効果があるかと言うと「やっぱり染み出し効果はありませんでした」となるのがオチというのが仕様のような気がするので、この理屈は思いっきり眉に唾モンだと思いますけどね。

ただし、今般(昨年10月から12月)の企業金融逼迫期間というのは、大企業の売上減や、予備的資金需要に基づく資金需要が急増して、おまけに短期金融市場が機能低下していましたので、銀行借り入れに大企業がワンサカ到来して、その結果中小企業貸出が弾き飛ばされるような勢いになったという事例はございまして、そーゆー文脈からの効果は当然ながらあると思います。

でまあその先では「これは異例の政策」という話をしてまして。

『また、CP・社債といった特定の市場に介入し過ぎると、日本銀行の買入れ対象銘柄に取引が集中するなど、本来であれば、自らの手で効率的に資金を配分するという市場の機能を却って歪める惧れがあります。更に、こうした支援措置を必要以上に長期間に亘って続けると、経済活動を過熱させ、景気や物価の変動を大きくする可能性もあります。』

後半部分に関しては喫緊の問題ではございませんが、前半部分に関しましては既に散々あたくしが悪態ついている通りでございまする(-_-メ)。

『従って、こうした異例の措置を、いつ、どのような形で終了するかということも、重要な政策課題です。その場合、企業金融や金融市場の動向、各措置の効果をしっかりと点検していく必要がありますし、市場に無用の混乱を生じさせないためには、市場参加者が先行きの対応を予測できるような形とすることも重要です。』

ちゅーことで説明してたりするのですが、まあ結論はこんな話になってまして、ごく一般的な話に留まっています。

『日本銀行としては、新たな期限である12 月末までには、措置の終了や見直しを行うのか、あるいは再延長するのかを決定することになります。この点に関しては、予断を持つことなく、今後の企業金融や金融市場の展開を注意深く点検したうえで、現在の措置によるサポートが引き続き必要かどうか、適切なタイミングで判断していきたいと考えています。』


てなわけで、基本的にはオーソドックスな話をしているのですが、所々に微妙にチャーミングな部分が混じってるなあという印象は受けましたです。


以下俺様備忘メモですので

○ネタメモです

・FRBが長期国債大量買入れよりも時間軸の効果が断然高いと認識した件

過去の経緯があるから日銀のマネはあまりしたくないのでここまで粘ったというのは理解した(^^)


・日銀の各種ペーパー

色々と出てて面白いのですが、全部フォローしてる暇がないので週末に読みます


・短国市場

0.17%手前でプライマリーにごっそり買いが入っちゃいましたね。もうちょっとやるのかと思ったのですけど残念(^^)。しかし投票形式になってから日本相互証券の短国の引けが誠に遺憾な状態になっているんですけどありゃ何とかならんのかね・・・・・

・金融経済月報

すいませんすいません

#などなどがネタ予定です









2009/07/22

お題「1名より時限措置見直し論とな/バーナンキ議会証言から少々」

モーサテの米国新聞紹介のおねいさん曰く、「日本は(衆議院の)解散の記事が各紙を賑わしていますが、こちらアメリカではその記事はほとんど無く・・・・・」。

・・・・・・・何という自意識過剰(-_-メ)

まあそれは兎も角として、何かここの所日銀レビューとか色々出てくるので読むのが全然追いつかないですぅ。とゆーことで(どういうことだ)6月15、16日の決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090616.pdf

○まあこの辺は声明文にございましたが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

海外経済が下げ止まってますけど金融情勢に関しては必ずしも先行き楽観できませんねえという話をしてまして、国内経済についてはこのようなお話に。

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

『現状について、委員は、下げ止まりつつあるとの認識を共有した。また、多くの委員は、大幅に悪化した後の下げ止まりであり、経済活動の水準は低いと付け加えた。』

ということで6月声明文が妙に器用な日銀文学になった訳ですな(^^)。

『その上で、委員は、当面の経済情勢について、国内民間需要は引き続き弱まっていく可能性が高いが、内外の在庫調整が一層進捗するもとで、輸出・生産は持ち直しを続けるとの認識で一致した。また、委員は、こうした動きに加え、これまで講じてきた経済対策が執行段階に入ってくることから、公共投資も増加を続けると見込まれるとの認識でも一致した。これらを踏まえて、委員は、わが国の景気は、下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高いとの見方を共有した。』

『こうした見通しについて、委員は、4 月末に公表した展望レポートに概ね沿った動きであるとの認識で一致した。』

ということで、先行きに関してもございますがめんどいので引用割愛しますが、要するに声明文どおりでありまする。で、個別の需要項目に関してですが、これまた一々引用するのは長いので割愛しますけど、やたらめったら下振れリスクの懸念が示されているのも先月と同じですが、需給ギャップのマイナス幅に関する部分に関してはこのような指摘が。消費者物価に関る部分からです。

『一方、複数の委員は、産業構造の変化に伴う既存設備の陳腐化などを考慮すると、需給ギャップのマイナス幅が過大に計測されている可能性があるという認識を示した。』

これは(とりあえず直近3回分見ましたが)今回初めて出て来た指摘ではないかと思います。ただまあこれ以外の指摘部分はひたすら下振れ関連の話でして、特に雇用調整圧力が個人消費や消費者物価動向に与える悪影響を大きく懸念しているというのは把握しました。


○金融面に関して

まーそれはそれとしまして、どっからどう考えても金利政策の出口がどうのこうのという話は1年以上先のお話(これで10月の展望レポートで2011年度のCPI見通しがマイナスになったら尚のこと先になりますなあ)でありますので、そっちより先に動く可能性があるのは各種時限措置なのでございまして、そーゆー意味では金融面の検討の方が市場現場労務者としては気になるのですが・・・・・・

『わが国の金融環境について、委員は、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いているとの認識を共有した。多くの委員は、C P 発行金利の更なる低下や社債発行銘柄の拡大など、企業金融に改善の動きがみられるとの認識を示した。』

『もっとも、何人かの委員は、下位格付先の社債発行は依然として厳しい状況にあるなど、二極化現象は解消されていないとの見方を示した。また、複数の委員は、資金繰りや金融機関の貸出態度について、悪化に歯止めがかかる動きはみられるものの、なお厳しいとする先が多いと述べた。更に、複数の委員は、企業業績の悪化が続く中で、先行きの資金繰りに関する企業の不安心理は依然として払拭されていないと指摘した。』

ということで、まあ大体声明文やら金融経済月報で示されている通りでこの辺りに関してはあっさり味の話になっていますわな。


○で、時限措置の扱いについて

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、金利据え置きに関しては物凄いあっさり味で見解一致となっています。まあ当然ですけどね(^^)。で、時限措置の取扱についての議論があったそうでございますわな。

『各種臨時措置の取り扱いについても、議論が行われた。まず、委員は、基本的な認識として、@ 金融経済情勢が改善した後も長期間にわたって維持した場合に、景気や物価の振幅をかえって大きくするリスクを意識しながら、こうした措置の制度設計や運営を行っていること、A 各々の措置は、その目的や仕組みが異なっているほか、金融市場や金融環境に与えている影響も様々であるため、一律ではなく、措置毎に取り扱いを検討する必要があること、B 金融市場や企業金融全体の動向をよく見通した上で、検討していくべきであることを共有した。』

6月会合後の総裁記者会見だと「企業金融措置」はその範囲内でワンセットというようなニュアンスに取れる話をしていたようですが、こういう表現をされると個別措置についての検討の余地もありそうな書き方になってまして微妙ではございますな。7月会合での議論も見たいと思います。

『ある委員は、各措置の効果を評価する際には、実際に介入している市場だけでなく、関連する市場への影響も含めて総合的に検討することや、安全弁としての役割も考慮することが重要であると指摘した。』

企業金融特別オペの結果短国の金利が下がっているという効果がでて国債増発懸念がちゃっかりどっかに逝ってしまった件ですね、わかります。

『その上で、各種措置の現状について、何人かの委員は、高格付けのC P の発行金利が短期国債金利を下回るなど、効果がかなり強く出ているという面もあるが、企業金融を取り巻く環境がなお厳しいことを踏まえると、市場参加者に資金調達にかかる安心感を与えるという役割は依然として大きいとの見方を示した。』

効果がかなり強く出ているというか、高格付けCP発行体とCP引受およびオペへのアクセスが可能なディーラーへの・・・いやまあいいですけど。

『ある委員は、やや長めの金利に働きかけるという目的で企業金融支援特別オペを実施し、効果が出ていると指摘した。』

これまた短国金利から1年とかまでの金利がフラット化した件ですかな。

とまあそんな訳で、企業金融特別オペに関しては効果が派手派手に出ているのですけど、じゃあこれからCPを外すとかしたらどうなるのかというと、CP金利が上昇した場合(目の子でAA格の3か月で10bpくらい上昇するんじゃないですかね)にCP市場だけで影響が止まるのかというとそこもまた不透明な面が。とは言いましても「影響があるから短国金利とCP金利の逆転現象を未来永劫容認」という訳にも行かない筈でして、どーゆー匙加減になるのよという所でしょう。

まー企業金融面という点では何だかんだと言いましても銀行業態の資本制約が軽くなるのが企業金融対策としては効果がでかい筈でございまして、そう考えますと株価水準がここから2〜3割くらいは上昇してくれないと話としては難しいのではないでしょうかとは思う所でありまする。

#その前に米国が出口政策を本格的に開始しないと動けないでしょって話もあるが(^^)


『C P ・社債の買入れでオファー額に応札額が満たないケースが頻発していることについて、何人かの委員は、市場機能の回復に伴う応札額の減少は、制度設計の時点で予想されていたことであるとの見方を示した。』

まあこれはその通りですが、とは言え情勢の悪化に対応するためには安全弁としての買入措置は継続しておいた方が宜しいんでしょうな。

『ある委員は、C P ・社債の発行環境が更に改善していることなどを踏まえると、企業金融全体の逼迫という状況ではなくなりつつあるため、今後は、臨時・異例の措置の解除に向けて、具体的な検討を行っていくべきであるとの認識を示した。』

ということで、別に複数委員の提案と言うわけでもないようで、「ある委員」さんの意見のようですが(須田さんですかねえ)、まあこういう指摘が出た流れが7月の決定会合での延長措置決定に絡んでどういう論議になっていたのかは注目したいですねえ。ということで夏休みの楽しみは決定会合議事要旨ですかそうですか(^^)。

『最後に、本件に関する情報発信という観点から、何人かの委員は、各種措置は金融市場の安定確保や企業金融の円滑化に大きく貢献しているだけに、市場参加者の予測可能性に十分配慮しながら、9 月末までの適切な時期に判断するべきであるとの見解を示した。』

ということで7月に決定されましたという事ですが、先ほどから何度も申し上げておりますように、7月会合でどのような線で議論が進行したのかが議事要旨である程度読めますと吉かなとは思いますです、はい。



○バーナンキ議会証言

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20090721a.htm

真ん中よりちょっと上のあたりの『Monetary Policy』って小見出しの部分と、後半4分の1位のところにある『Transparency and Accountability』のあたりが金融政策的にはポイントのようですが、今回はMonetary Policyの所から引用を。

『In light of the substantial economic slack and limited inflation pressures, monetary policy remains focused on fostering economic recovery. Accordingly, as I mentioned earlier, the FOMC believes that a highly accommodative stance of monetary policy will be appropriate for an extended period.』

ってこれいつも話している事なのですが、はて何でこの証言で米国長期金利が反応するのか訳判らん。何か見落としている話があるような気がしますが、誰かエライ人教えてジェネラル!

『However, we also believe that it is important to assure the public and the markets that the extraordinary policy measures we have taken in response to the financial crisis and the recession can be withdrawn in a smooth and timely manner as needed, thereby avoiding the risk that policy stimulus could lead to a future rise in inflation.』

ということで、異例の緩和的なスタンスが将来のインフレを起こす(あたくし的にはインフレよりもスタグフ懸念じゃねえのとも思いますけど)のではないかという懸念に対する説明をしましょって話なのですが。

『The FOMC has been devoting considerable attention to issues relating to its exit strategy, and we are confident that we have the necessary tools to implement that strategy when appropriate.』

ということで、この先にツールに関する説明とかあるんですけど、まあ鰯の頭も信心からと申しますか、結局のところ「大丈夫だというんだから大丈夫」といういつもの話の範囲内(そりゃまあ新しいツールが出来た訳ではないんだから当たり前ですが)でして、長期資産買い捲りで調節上のテクニカル問題が発生して長期金利に皺寄せをさせざるを得なくなる可能性については、例によって付利で何とかするという議論のようですな。ちょっと先の方から引用しますと。

『Perhaps the most important such tool is the authority that the Congress granted the Federal Reserve last fall to pay interest on balances held at the Fed by depository institutions.』

で、その効用の話は割愛して、それだけではなく売り現先もありまっせと。

『But interest on reserves is by no means the only tool we have to influence market interest rates. For example, we can drain liquidity from the system by conducting reverse repurchase agreements, in which we sell securities from our portfolio with an agreement to buy them back at a later date.』

そして最終兵器への言及もありますが、さすがに売り切りはマズイだろとの認識のようで。

『If necessary, another means of tightening policy is outright sales of our holdings of longer-term securities. Not only would such sales drain reserves and raise short-term interest rates, but they also could put upward pressure on longer-term interest rates by expanding the supply of longer-term assets. 』

この話を日銀がしたら物凄い勢いで大騒ぎになりそうですが、FRBが発言しても華麗にスルーされますわな。まあ日本の方がナーバスになり過ぎなのか米国が無神経過ぎなのかは良く判りませんけどね!

『In sum, we are confident that we have the tools to raise interest rates when that becomes necessary to achieve our objectives of maximum employment and price stability.』

FF付利と売現先と最終兵器しかツール無いのにこの大丈夫っぽい発言ってある意味凄いのですが、ちょっと何だかなあという気はします。











2009/07/21

お題「色々なペーパーから少々」

証券会社が株価目標を引き上げると素直に好感する米国市場って何かウラヤマシスという感じもしますな。

○銀行決算に関する日銀レビュー

概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j10.htm

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j10.pdf

先般決算が出た銀行の財務状況に関して簡単に纏めてあります。毎年出てるのですが、今年のもまた興味深いものでございまする。まあ本文嫁という感じですが(^^)、あたくしが読んでほほーと思った所を少々。

・フローベースは悪化している割にはストックが悪化していない

というのが今回の銀行決算の最大の特徴の一つとされています。本文4ページ目の『(6)金融システム面での施策による下支え』という小見出しの頭の所にあるのですが。

『2008 年度の銀行決算では、銀行収益が悪化するなか、自己資本比率が上昇したほか、不良債権比率も地域銀行では改善するなど、フロー・ベースの悪化にもかかわらず、ストック面の指標はあまり悪化していない。』

ということで、その背景に制度面のサポートがあるという話が。

『すなわち、日本銀行金融機構局の計数調査に基づいて、2008 年度下期に導入された主な制度変更(@金融商品会計基準の見直し、A貸出条件緩和債権の要件見直し、B自己資本比率規制の一部弾力化)が2008 年度決算に与えた影響を試算すると、損益面では、大手行では約2,100 億円、地域銀行では約1,800 億円の税引前当期純利益の押上げ効果があったとみられるほか、信用コスト率については、大手行では約▲4bp、地域銀行では約▲8bp の低下効果があったとみられる。』

時価評価の緩和とか分類債権区分の緩和とかで嵩上げされている部分がありますよってな話ですが、冷静に考えると欧米金融機関の決算ではもっとインチ(自粛)。

『また、財務面では、純資産のうちその他有価証券評価差額金が、大手行では約3,800 億円、地域銀行では約2,500 億円増加し、不良債権比率は、大手行では▲0.2%ポイント、地域銀行では▲0.6%ポイント低下した。』

その他有価証券評価差額金って変動国債っすか?

『この結果、自己資本比率ベースでは、大手行では+0.3%ポイント、地域銀行では+0.5%ポイント程度の押し上げ効果があった。』

ということで、ストックの改善は制度改正の寄与が大きいという話ですな。


・基礎的収益力の低下

本文5ページ目のまとめの所にもう一つの特徴として基礎的収益力が低下していることが挙げられています。

『このように、わが国銀行の収益は、信用コストと有価証券関係損益の動向によって大きく左右されてきており、2008年度決算でもその特徴が色濃く表れているが、2008 年度決算のもう一つの特徴は、基礎的な収益力が低下したことである。先述のとおり、コア業務純益の収益率(対総資産比率)は、2008 年度では1990 年代前半の水準まで低下した先が多い(前掲図表6)。コア業務純益の低下に伴い、信用コストの増加や有価証券関係損益の悪化により赤字決算に陥る可能性がより高まっているといえる(図表16)。』

んでこの図表6というのが2ページ目に示されているのですけれども、これを見ますと(図表は引用できないので勘弁)2005年度決算をピークにコア業務純益ROAが趨勢的に低下しているという図になっていますわな。

2005年度決算がピークということは特に経済状況やら金利水準に対してどうのこうのという関係ではないように見えます。単に不良債権処理を終わらせて拡大路線を復活させたら例によってコア業務純益ROAが低下傾向になったでござるの巻というようにも見えますが、そう考えると銀行経営って何なのよという気もするのですけど。

ちなみにコア業務純益の減少に関しては1ページ目から始まる『(2)コア業務純益の減少』という所に解説がございます。2ページ目から引用。

『コア業務純益が前年対比悪化した最大の要因は、非資金利益が顕著に減少したことである。すなわち、1998 年から2002 年にかけて認められた投資信託や保険商品の窓口販売が手数料収入をもたらし、これらは大手行の外国為替・デリバティブ関係利益とともに2003 年度以降の銀行収益に大きく寄与してきたが、2007年度には減少し、2008 年度には市場環境の急速な悪化から、さらに大幅に減少をみたものである(図表4)。』

ニヤニヤ。

『他方、資金利益は、大手行で若干の増加、地域銀行ではほぼ横這いの動きとなった(図表5)。大手行では、リーマン・ブラザーズ破綻以降の企業金融の逼迫を受けて、大企業向け貸出が増加したことに加え、2008 年度前半までは国際部門の資産が順調に積み上がっていたことが、資金利益の押し上げ要因として寄与していたものである。』

なるほど。

『この間、地域銀行は、大企業向け貸出の伸びが相対的に小さかったことに加え、2008年度後半の貸出については、緊急保証制度を利用した利回りの低い案件が多かったことなどから、利鞘も悪化した。』


・有価証券に関する部分はどうなんでしょうかね

2ページ目からの『(3)有価証券関係損益の悪化 』部分。

『2008 年度銀行決算の最大の特徴の一つは、世界的な金融資本市場の動揺の影響を受け、有価証券関係損益が大幅な悪化をみたことである。すなわち、大手行では前年差▲1.5 兆円の▲1.4 兆円、地域銀行では前年差▲1.0兆円の▲1.1兆円と大幅な損失超となった(図表7)。これは、大手行、地域銀行ともに、株価下落を受けて株式関係損失が大幅に増加したこと、地域銀行では、株式投信やREIT などの減損や売却損が嵩んだため、債券関係損失も大幅に増加したことなどによるものである。損失額は、大手行、地域銀行ともに、コア業務純益の約6 割に達している。』

まあ皆様ご案内の通りでありますがこういう結果に。でまあ株式関係の損益に関して分析をしているのですがその部分は飛ばして結論部分を。

『この結果、有価証券関係損益(実現損益)と有価証券評価差額(含み損益)の増減額を合算した有価証券総合損益は、大手行、地域銀行ともに、2 年連続で大幅な損失超となった(図表10)。損失規模は大手行で5.3 兆円、地域銀行で2.7 兆円と、いずれもコア業務純益水準の約2 倍に達している。このことからもわかるように、わが国の銀行にとって、株式保有にかかるリスクを削減していくことが、引き続き重要な課題である。』

ということでまあいつもの結論になるのですけれども、そうは言いましても貸出が趨勢的に伸びるような経済状況でも無い中では有価証券投資はしない訳にも行かないのかと思いますけど、その辺はどうなんしょと思いますです、はい。

まあとりあえずそんな感じですが中身は面白いです。



○新日銀ネットの構築について

日銀ネットの構築について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/set0907a.htm

基本的な考え方
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/set0907a.pdf

まあマニア向けの話かもしれませんけど、これは結構な大ネタでございます。とは申しましてもあたくしも実務知ってる訳ではありませんので(汗)、中を見ながら勉強しなきゃと思うのですが。

読んでおりまして、ほほーと思ったのは本文3ページの所にある『(3)「新日銀ネット」構築の狙い』あたりからですけど。

『たとえば、日銀ネットの柔軟性やアクセス利便性が高まれば、金融機関におけるSTP 化の一層の推進が容易になり、オペレーショナル・リスクの削減や、コスト縮減に繋がることが期待される。また、他の証券決済インフラと日銀ネットを接続することにより証券決済のSTP 化が一層進展すれば、決済リスクの削減や安全性の高い有担保の資金取引市場のさらなる効率化にも繋がっていくと考えられる。』

つまりSTPの推進を行って証券決済期間を短縮しましょうというのは理解した。

『また、アクセス利便性を高め、稼動時間の拡大が可能となれば、金融取引のグローバル化へのより柔軟な対応や決済の一層の円滑化が展望できるようになり、新たな金融サービスの提供の可能性が拡がるものと期待される。』

(後でも書いてますが)外国為替決済におけるPVP(DVPと同じ話)決済化を可能にして更に外貨VS邦貨決済の決済リスクを削減するという話ですな。


で、システム的な電文フォーマットとかプロトコルの話とかは金融機関関連のシステム屋さん必見の話だと思うのですが、あたくしさすがにそこまでは存じませんので証券決済関連に関する部分をもうちょっと。

5ページ目以降に『3.新日銀ネットの機能面における主な変更点』というのがございまして、幾つか書いてあるのですけれども。

『○ 資金決済の分野においては、待ち行列および複数指図同時決済による流動性節約機能を利用できる取引を拡大し、金融機関等の資金効率の向上を一段と進めることを想定している。

具体的には、現在は、国債以外の証券に関するDVP の資金決済はこの機能の対象となっていないが、新日銀ネットの構築後はこの機能の利用を可能とする予定である。』

ということで保振をかました決済に関してRTGS化するという話みたいです。

担保関連のところを華麗にスルーして国債関連事務に関してはこのような話が。

『(振替停止期間の短縮ないし廃止)

・現行の国債振替決済制度では、元利払日前の2 営業日間を振替停止期間としているが、新日銀ネットの構築後は、振替停止期間を短縮ないしは廃止する。』

となりますと、当然ながら償還銘柄を償還まで担保に使えるように変更という理解で宜しゅうございますでしょうか。というかそうならないのだったら別にユーザーにメリット無いのですけど・・・・・

『(国債の利子配分方法の見直し)』

当期利払口の廃止を行うって話ですが、思いっきり事務的なお話になるので引用割愛します。ちなみに当期利払口に係る決済指図の従来の具体的事務に関しては本文にあります通りでございまして、まあフロントの人間も理解はしておくべきではないかと思われますが(^^)。

『(他の証券決済インフラとの接続等)

・他の証券決済インフラとの接続を可能とすることにより、国債決済におけるSTP 化の一層の進展に寄与する対応を展望する。』

ということで、こちらでもSTPの話となっています。


・・・・・でですな、これ見てて思ったのですが、何でもRTGSとかSTPとかになるのは方向性としては良い方向なんでその通りですなあという話なんですけれども、そうなってきた場合に日中資金繰りが益々複雑になってくるので、日銀ネットに直接アクセスしておらず、日中当座貸越が利用できないような業態がフルインベストをした場合に資金繰りがちゃんと回るのかというのが最初に感じる疑問と言うか不安でございます。何せそういう業態(だけでは無いですが)の場合各種制度の建付けが古ければ古いほどつぎはぎ状態でござるの巻となってるので、決済のプロセスを改革するとなると民間の制度設計の方もそれに合わせて改革しないと不具合が生じるかと思われます。でも制度いじってる人たちって決済事務とか知らねえから困るのよね(愚痴)。


まー裏の意図として付いていけない連中は振り落として、カストディ専業銀行にぶら下がる形にさせたいっていうのはあるのかも知れませんが、カストディ専業で商売が成立する為には、トランザクションフィーを取れる位の金利水準にならないとこれまた不具合が生じるかと。米国だって金利が絶賛低下して色々不具合が生じているようですし。


などということを最初に考えたのですが、『以上を踏まえ、日本銀行は、本ペーパーでお示しした構想に関するご意見を、以下の要領で募集します』ってなってますので、精々考えて見ます。



○FOMC議事要旨より少々

6月23、24日の議事要旨より。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20090624.htm

景気に関する議論とかインフレに関する議論とかも興味深く読んだのですが、例によって書いているうちに時間と量が多くなってしまったので、金融政策の決定に関する部分のみ慌てて引用しますね。

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, Committee members agreed that the stance of monetary policy should not be changed at this meeting. Given the prospects for weak economic activity, substantial resource slack, and subdued inflation, the Committee agreed that it should maintain its target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』

金利据え置きますとな。

『The future path of the federal funds rate would depend on the Committee's evolving expectations for the economy, but for now, members thought it most likely that the federal funds rate would need to be maintained at an exceptionally low level for an extended period, given their forecasts for only a gradual upturn in activity and the lack of inflation pressures.』

将来の金利パスは経済見通しによりますが、現在の所は「for an extended period」で超低金利政策実施が適切と言う話。

『The Committee also agreed that changes to its program of asset purchases were not warranted at this time. Although an expansion of such purchases might provide additional support to the economy, the effects of further asset purchases, especially purchases of Treasury securities, on the economy and on inflation expectations were uncertain.』

ということで、今までの資産購入プログラムは経済への支え効果があったという認識になっていますが、ここから将来の購入に関しては効果が不確か、特に財務省証券の買入の効果は不確かだという話になっちゃいました。

・・・・見事な梯子外しぶりにワロタという感じですが、じゃあ財務省証券の買入はナンダッタンダという感じですけどねえ。

『Moreover, it seemed likely that economic activity was in the process of leveling out, and the considerable improvements in financial markets over recent months were likely to lend further support to aggregate demand. Accordingly, the Committee agreed that the asset purchase programs should proceed for now on the schedule announced at previous meetings.』

ということで、経済は現在水平飛行から上昇する過程にある(というのは経済に関する議論の中にも思いっきりありますが今日は引用割愛)という認識ですわな。

てな訳で、ものの見事に長期国債買入の効果を「不確か」扱いにするFRBの君子豹変振りに福井俊彦の香りを感じるのはあたくしだけでしょうか???

#引用大会でどうもすいませんでした













2009/07/17

お題「平穏な総裁会見」

昨日ごちゃごちゃ書いた文章、どうも我ながら読みにくいにも程がありましたな。どうもすいません。

○一応昨日の補足

何か色々と考えながら書いていたら頭の中で話の筋が混乱しまして、勝手に端折ったり話が飛んだりという感じで、あたくしここもとの暑さにちょっと頭がやられておりましたようでございます。

つーことで、同じこともう一回書きますと、今回の「全部の施策を条件変更せず3か月延長」というのは、ある意味で言えば予想の中央値みたいなもんなのですが、「6か月延長」とか「一部の条件の手直し(きつくする)」というような予想(というより思惑)もある中で思いっきり直球ど真ん中施策だったので大変結構だったのかなという感じだと思います。

8月ではなく7月に延長決定(先月の今頃は8月に延長がコンセンサスだったと思います)したのは無用な不安が発生するのを避ける意味で日銀の意思を示したという格好ですし、6か月延長ではなく3か月延長になったのは金融環境が改善傾向にあるという現状認識からすればこれもまた良く考えれば順当な話で、前倒しの延長決定と見直しサイクルの短縮化がコンボになって丁度良いバランスですねという所なのでしょう。

この決定が出た後、金先やら2年がやや売られたのは、延長長期化の期待がちょっと高めだったのと、キャッシュに関しては6月大量償還に伴う運用資金余剰状態による金利低下の反動も加わったんでしょうね。

というようなことを書いた積りだったのですが、微妙にアレな文章になっておりましてどうもすみませんでしたm(__)m


それはともかく総裁会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0907a.pdf
会見時間30分であっさり味の会見だったようですね。


○金融環境の認識

最初の質問が思いっきり出口戦略に関する質問で、市場機能の現状についてどう考えるかというのがございました。で、それに対して。

『今回、私どもは、金融環境の評価に関する判断として2つのことを指摘しています。1つは、なお厳しいという評価と、もう1つは、方向として改善しているという評価と、2つを指摘しており、それぞれについて説明したいと思います。』

ということで。

『まず、金融環境は全体としてはなお厳しい状態にあるという点についてですが、例えば下位格付け先の社債発行は低い水準に留まっているなど、格付け間での二極化は依然として解消されていません。また、資金繰りや金融機関の貸出態度に関するアンケート調査、あるいはヒアリングでもそうですが、最近では改善しているとはいえ、中小企業を中心になお厳しいとする先が多いとみています。』

貸出の方は存じませんけど、社債発行に関して言えば、ここもとBBB格の会社も発行したりしてまして、金融危機拡大以降に見られた「どんなにスプレッド払っても全然発行が出来ない」という状況なのではなく、まあちゃんとスプレッド払えば発行そのものは出来る筈だと思われますよ、市場の中の人的に言えば。つまり、現在の市場環境って「物理的に発行できない」ではなく、単に「そのスプレッドじゃうちは発行したくないですぅ」っていう状態だという事ですわな。

そりゃまあ以前の何でもかんでもクレジットスプレッド無し無し状態から見たらBBB格付けの発行体様的には「そんなスプレッドで発行できるかゴルァ!」という所でもあるのかも知れませんけど、低格付け不人気銘柄であってもL+二桁とかで発行できるようなかつてのスプレッドぶっ潰れ状態がアレなのでございまして、市場の回復というのをどこまで回復と言うのかという点については、良く考えないと各種施策が社債やCPを発行する企業への過剰な接待モードになってしまうのではないかと思うところでもあります。いやまあ一部ポジショントーク成分が入っていないとは申しませんが(^^)、それこそCPみたいにクレジットスプレッドを徹底的に潰されちゃうと市場が干上がりますんで(汗)。


『企業からみますと、厳しい収益環境が続く中で、在庫調整が一巡した後の景気回復の足取りなどについて、なお不確実な面が大きく、今後の資金調達環境に対する不安感を払拭できない状況にあるのだろうと推測しています。こうした情勢判断を踏まえて、企業金融の円滑化を引続き図っていく観点から、今回措置を延長することとしました。』

先ほどはまあそんな話を申し上げましたが、今回の延長は妥当かと。


『一方、方向として改善しているという点についてですが、昨年末までと異なり、足許の金融環境は明らかに改善の動きが続いているとみています。』

さいですな。

『いくつか例を申し上げますと、CPの発行スプレッドは、リーマン破綻直後に急激に拡大しましたが、年明け以降縮小し、足許では高格付け物を中心にリーマン破綻以前の水準まで低下しています。』

えーっとすいません、官民逆転なので破綻以前の水準どころかそれ以上に低下していますけど。

『また、日本銀行によるCPの買入れについても、3月以降大幅な札割れの状態が続いています。社債については、6月の発行額が月間としては過去最高となったほか、発行銘柄も拡大しています。このように、CP・社債市場の機能は着実に回復しつつあります。銀行貸出は、大企業向けを中心に高めの伸びが続いているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度は、大企業・中小企業とも、方向としては幾分改善しています。』

まあしかし何ですな、中小企業金融の環境が厳しいという状態は相変わらずということなんですけど、銀行貸出の部分って金融政策で直接的にどうのこうのできる部分ってかなり限定的だと思われる訳でして、それを全部金融政策で何とかしようとするのも他への皺寄せが来るんじゃないですかという気がかなりするのでございますけどね。


○一部の副作用はあるけど継続ですよ

次の質問は副作用に対する指摘。副作用がどういうものなのかはあたくしもこちらで1万回くらい申し上げておりますので既にご存じかと(^^)。

『(前置き割愛)もっとも、最近では格付けの高いCPの発行金利が同期間の短期国債の発行金利を下回るなど、一部にやや行き過ぎた動きがみられることも認識しています。こうした状態が続けば、投資家の投資意欲が後退するなど、市場機能を阻害してしまうことになり、却ってCP市場の発展にとって望ましくない可能性があることは確かです。』

というか既にかなり後退しているものと思われますが(-_-メ)。

『こうした行き過ぎの要因として、市場では、企業金融支援特別オペの効果が大きいのではないかという議論があることも承知しています。私どもとしては、今申し上げたことは十分に意識していますが、他方で、現状の企業金融の状況を考えますと、先程の二極化現象はまだ解消されていませんし、足許改善はしていますが先々の資金調達環境について、やはり不確実性が払拭できないという状況です。』

『そういう意味で、先程申し上げた部分的な影響あるいはその副作用だけでなく、金融市場・企業金融全体の状況やこれに与える影響を踏まえて判断していく必要があると考えています。』

だったら市場機能が回復しているCPだけ(買切はセーフティーネットとして残しておいて)特別オペ対象から外して、必要ならCP買現先オペ増やせば宜しいのではないかという気はするんですけどね。企業特別オペって本来的には証書貸付などのローン債権への支援だと思うのですけどねえ。

ま、副作用は認識した上で継続という判断であればそれはそれという事で。


○6か月ではなく3か月延長

の理由についての質問がありましてその答え。

『(時限措置を継続した理由は上記と同じなので割愛して)一方、今回は6か月ではなく3か月の延長としたことについてですが、足許改善傾向が続いており、この後もこの傾向が続くと判断していることを踏まえ、3か月後にもう1回経済金融情勢をしっかり点検することにしました。』

ということですから次回は普通に考えると10月の展望レポートが出るタイミングが点検結果が出る本命になるということでしょうか。

『今後、情勢が一段と改善していけば、新たな期限である年末には各種時限措置の終了または見直しを行うことが適当だと考えております。しかし一方で、今回の中間評価でも指摘したように、先行きの金融経済情勢については不確実性が高いとみています。従って、情勢が十分改善せず、それが必要と判断される場合には時限措置を再延長することになります。』

普通の話しかしてませんな。慎重慎重(^^)。

『繰り返しになりますが、時限措置の取扱いについては結論が先にあるわけではなく、今後の企業金融や金融市場の展開を注意深く点検して判断していくこととしており、今回はその判断を3か月の期間延長の中で行うこととしたものです。』


○んじゃ何で8月じゃなくて7月に決定したのか

という質問に対して。

『先程申し上げた通り、企業金融を巡る環境は改善の方向にありますが、しかし現在でも、なお厳しいという評価をしているわけです。なお厳しいという判断をしている以上、私どもとしても、市場からみて不確実な要因である各種の措置をどのように運営するか検討し、その対応方針を早めに出したほうが良いということで今回合意に至ったものです。』

何という隙の無い回答(^^)。


○ところでGDP見通しを下方修正しましたが

昨日スルーしちゃいましたが、展望レポート中間レビューではGDP見通しを下げておりまして、その点についての質問が。確かに「足元の判断を引き上げたのに、何で先の見通しが下がるのよ」というのは質問したくなりますわな。

『いつも申し上げていることですが、経済の見通しについては、数字ではなく基本的なメカニズムというものを重視しています。これは日本銀行に限らず、どの中央銀行にも共通していることです。脱線しますが、BOEはこの点について徹底しており、見通しを示す数字は一切出さないということにしています。BOEは、見通しについては確率分布で示して、その確率分布の推移を示す図にしており、どこにも数字は出していません。』

『私どもはBOEのような確率分布(ファン・チャート)は公表していませんが、リスク・バランス・チャートをお示ししています。このうちの実質GDPについて、2009 年度と2010 年度の分布をみて頂くと、実は前回の見通しと今回の見通しで全体として大きく変わったという図にはなっていません。』

確かにそうでした。

『本日の決定会合では、展望レポート後の推移について議論しましたが、どの委員からも基本的なメカニズムが変わったという見方は示されませんでした。リスク・バランス・チャートを全体として捉えるとそういうことになります。あえて統計量でみると、中央値は幾分下になっていますが、先程申し上げました通り、今回基本的なメカニズムが変わったという認識を皆持っているわけではありませんし、私どもとして下方修正したという意識はありません。』

つまり、方向感の問題と水準の問題という話はまた別の問題で、そりゃまあ水準が全然違うのであれば兎も角、今回下方修正した程度の数値であればそれはそれ、これはこれちゅう話になるんでしょうな。


ということで月報とか面白そうな日銀のレポートとかFOMC議事要旨とか全部宿題になってどうもすいませんm(__)m










2009/07/16

お題「ほうほう3か月延長」

決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf

政策投資銀行との取引にコミライン設定支援を追加したみたいです。よー知らんが。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0907a.pdf

各種オペレーションの延長措置明細
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0907b.pdf

FRBとのスワップ取引期限延長
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0907a.pdf


○各種オペは3か月延長でした

暫く前から報道されていましたように、各種臨時措置に係るオペは一律3か月延長となりました、3か月延長という事ですので、年末越えのファンディングに関しては引き続き面倒見ますけど、3月末に関してはまたこれから考えますとな。

結果発表後ちょっと金先とか2年とかが反応しておりましたので、6か月延長への期待というか楽勝ムードがあったんですなという所ですが、前回2月に各種措置延長した時は「6か月延長」でしたので、今回も6か月という期待もあったという事ですな。

と言いましても、冷静に考えますと今年の2月は金融環境的が世界的にメタメタだった時でして、この時分だったら安心感を出す為に6か月延長というのもあったのでしょうけれども、現在は金融環境が少なくとも市場性の所に関してはかなり改善している訳ですから、別に6か月延長せんでもええという話になるのはフツーの考え方ですわな。

いやね、あたくし的には次回延長の時に政治的に変なリスクが発生する環境になってたら嫌ですなあとか思ってたので、ど〜せ3か月後も普通に延長になるんだろうから期末越えの所まで延長となる6か月延長になるのかなあとか思ったりもしたのですが、まーそれは民主党様がそこまで無茶苦茶じゃなければ発生しないリスクでもありますので(笑)、それよりは足元の金融環境改善に対応して、市場動向の点検サイクルを短くするのが筋が通った話ですわなという所かと。

で、会見でもあったようですけれども、8月ではなく7月に各種措置を延長したのは「そうは言っても金融環境はなお厳しい状況」だという認識になっているのですから、別に8月を待たなくても良いという話になったんでしょうな。FRBだってこの前12月末期限の措置を延長(1か月ちょいですけど)したので9月末期限の延長を7月に決定しても普通ですという事ですわな。BOEとは全然違いますが(^^)。

それから、特に今回は中身をいじる(=企業特別オペからCPを外すとか)ことはせず全部そのままで延長となりましたので、トータルするとまあ予想通りという話になるんでしょうね。いつまでも未来永劫延長する訳ではないですよというメッセージも伝わったと思われますし、まあ良かったのではないでしょうか。

ニュースのヘッドラインでは「情勢改善したら終了または見直しするのが適当」というのが出てて、それに過剰に反応したのではないかと思われる節もあるのですが、別に臨時措置に係らず、金融政策というのは未来永劫変更なしな訳は無いのですから、その話は「犬が西向きゃ尾は東」位のことであって、それを殊更に記事の題名にしちゃうどこぞやどこぞの情報ベンダーは豆腐の角に頭をぶつけて反省すべきではないかと思いますが。

会見要旨は今日アップされると思いますが、「顕著な改善が見られなければ再延長」という趣旨の発言を総裁はしていたようでして、前任の某福井の俊ちゃんみたいに出口政策を強調する姿勢は見られないので、まー見てて安定感があって誠に結構でございます。

市場的には2年0.225%まで低下(金曜の場中)してたりして、6月の国債大量償還資金が余っていた事情もあると思いますが、過度な安心感でリスクプレミアムを潰し過ぎた面もあったのかも知れませんなあという事で、ここもとの反応は「過度の楽観の修正」で良いのではって気はします、はい。



○結局は「シナリオどおり」なんでしょうかね

声明文比較をば。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090616.pdf(6月)

・基調判断

『わが国の景気は下げ止まっている。』(7月)
『わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。』(6月)

ということで、下げ止まりになりました(^^)。


・現状判断項目別展開

『すなわち、公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直しており、企業の業況感は、製造業大企業を中心に悪化に歯止めがかかっている。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(7月)


『すなわち、企業収益や雇用・所得環境が厳しさを増す中で、国内民間需要は弱まっている一方、輸出・生産は持ち直しに転じつつあるほか、公共投資も増加している。当面は、こうした景気下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い。』(6月)

ということで、6月に示された下げ止まりの動きが明確になった結果が今月ですよって話になってるっちゅうことでしょうかね。企業収益環境が悪くて、それに関連して設備投資や雇用環境が悪いという話は相変わらず継続中という所のようでございます。


・金融環境

『この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(7月)

『この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。』(6月)

あんまり判断が前進していませんな。


・物価

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナスとなっている。』(7月)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ち着きを反映して足もと低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくとみられる。』(6月)

ということで、6月の予想通りマイナスになったと。



・先行き見通しには物価の部分がちょっと

『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』(7月)

基本的に書いてあることは変わっていないのですけれども、実は物価に関する記述が微妙に変わっていまして、6月はここの文に有る『中長期的な成長期待』ってのが『中長期的な成長期待やインフレ予想』となっていまして、物価に関する記述が独立した文として今回掲載されました。

『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅を拡大していくものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。』(7月)

こちらで中長期的なインフレ予想が安定的に推移するという話が出ていますが、やはり物価下落をしているので丁寧に説明した方が良いという配慮が働いているのかなあと思いました。

で、基本的にシナリオどおりですか全体感としての先行き見通しも同じとなります。

『こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(7月)


ということで、基本的に標準シナリオどおりの推移という結論でよろしいかと。


○展望レポート中間レビュー

『4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、原油価格上昇の影響などから、2009 年度は、見通しに比べてやや上振れるものの、2010 年度は、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』

ということで、相変わらず2010年度まで物価はマイナス推移予想になっておりますので、普通に考えると来年一杯くらいまでは現状の金利が継続するんでしょという話になるかと思います。

で、ちょっと脱線しますが、補完当座預金制度も1月15日まで延長されてまして、とりあえず政策金利0.1%は当面継続という話になるかと思います。


○リスク要因に変化なし

『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』

ここに関しても6月と同じで、「全部下振れリスク」という素敵な状況。まー少なくとも債券とか短期金融市場という国内ドメドメで金利もんやってる人たちにはこのあたりの「白川日銀の慎重姿勢」というのは浸透しているものと思われるのですけれども、メディアが福井俊ちゃん時代の延長で物事を考えているような報道姿勢なのがどうなのよ(さっきのヘッドラインとかね)と思うのですが、それも最近はだいぶマシになってきたような感じがせんでもないですな。

会見と月報と何か補足があったらそれも明日ということで。









2009/07/15

お題「今日もヒマネタ雑談でどうもすいません」

郵政法案採決の時は直前で逃亡、今回は総選挙の直前で逃亡。全くもって九州男児の風上にも置けませんなあ>どっかの誰かさん

○市場雑談メモメモ

昨日は金融政策決定会合の日程上火曜日ですが3か月TBの入札が実施されましたでござるの巻。入札ちゃんに向けて先週発行された3か月もの38回債の整理みたいなのが入ってという先週と同じような展開をやりまして、今週は0.1557%/0.1582%の結果と一応予想通りは予想通りですがあんまり伸びず。

不明玉1兆6千とかあった割にはセカンダリーも特に盛り上がらずで平均オファーという感じになってたようで引けも0.155%と、月初恐怖の期越え3か月0.14%というような金余りにも程がある展開は一服してますわな。一昨日の1年もちょっと残っているようですし、まーよーするに7月入りしてから実施された短国入札が全般的に業者の持ちになっているという格好。

・・・・なのですが、一方でCPのレートは何だか知りませんがまた低下(低下しきっている短いモノはさすがに下がらないですけど)してたり、同じ短国でも9月償還までの期内モノは相変わらず0.12%だの0.13%だのという状況で、総体として別に足元が重いという訳でもなさそう。GCレートも特に上昇するでもなく、オペ金利も安定的に推移しているので、短国が業者の持ちになっても別に下を叩く必要もなく、オペだのGCだので引っ張っておけばそのうち何とかなるでしょという所なんでしょうな。

ただまあ3か月短国に関しては現実問題として5.7兆円の入札がありますので、「まあセカンダリーでも普通に買えるじゃん」となると入札がそんなに盛り上がらなくなって「入札で甘くなる」というのが続いてどっかの止まりどころまで上昇というのが従来の仕様であります。たまに6月後半みたいな壮絶金余り状態(国債償還資金の流入とか海外投資家の買いとかによる)によって「プライマリーじゃないと買えない」というような状況になりますと、入札の度に過熱するという楽しい状態になるのですが、入札日程が昨日まで詰まってたこともあって、ちょっと需給は緩和されてきた感じですかね。ただまあ今週はもう入札がなくて、次は来週火曜の2か月になりますし、明日から積み期間が変わるので、その間に需給が引き締まってくるとは思いますけど。

昨日も申し上げましたが、期末みたいな特殊日以外での期中ベースではGCレートが月中平均で0.12から0.125の間くらいになるかと思いますので、まーこの発行量でさすがに期末越えTB3か月が0.15割れ定着というのは何ぼなんでもキツイですねという所ですが、足元の安定感および期内モノに別に売りも出ない状況を見ますと、それが0.20に上がるとか考えるのも無理がありそうですなあという所でしょうか。期内モノへのニーズを見るという意味では来週の2か月入札も面白いかもしれませんな。

・・・・って超局地的な人向けの雑談でどうもすいません。


ところで、昨日って特に大して材料があったとは思えないのですが、10年とか売りが出たみたいな下げ方。先物の出来高も入札があった訳でもない(短国は別世界)のに3兆円近くになって最近にしては多目の出来高(3兆割れで多いとか年寄り的には寂しい話ですが)となってましたんで、それなりに店頭売買を伴って相場が下がりましたですねという感じです。

ま、一応為替や株式市場は動いてたのですが、それを言うなら月曜に円高株安をやっていたのに大して動いてなかったし先物の出来高は1兆円そこそこだったんで、こりゃ一体全体ど〜ゆ〜ことなのよという感じなのですけれども、債券市場お得意の「先行き不透明なので様子見」的な発想でのポジションクローズが行われたってえ感じなんでしょうかねえとか妄想。

つまりですな、都議会議員選挙の結果を受けて会議してたら解散が内定して総選挙の日程も内定したんですが、普通に考えて標準シナリオが政権交代になってしまいまして、債券市場的には民主党の財政政策スタンスがどうなるか読めないというのもあるので一旦ここで(金利もそこそこ低下したから)リスク落としておきますかという会議の結果になったでござるの巻。

・・・・って全部妄想ですけどね。選挙日程も決まって夏休みの日程も決まった(というか結果出た後の9月中盤以降は期末だし何が出て来るか判らんので10月くらいまで休みにくくなりましたよね!)のでエライ人的にリスク量を落としますかってなったら尚オモロイですけど。


○バーゼルUがどうのこうの

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/bis0907a.htm
バーゼル銀行監督委員会によるバーゼルIIの枠組みの強化に関する最終文書の公表について

金融庁にも同じ件で文書が出てますが、各種ガイドラインが(当たり前ですが)英文なので普段こういうの読みなれないあたくしは悶絶するのですけれども、まあこの手の規制関連に関しては各種金融商品の価格形成にも影響があったりなかったりする類のものですので、本当は読んでおかないといけないと思うのですが、元々得意じゃないので誰かが解説してくれるのを心からキボンヌ(あほです)。


○ベターレギュレーションがどうのこうの

久々に金融庁のサイトから

http://www.fsa.go.jp/policy/br-pillar4/20090713.html
「ベター・レギュレーションの進捗状況について」(第3回)の公表について

ってことで、いつの間にやら第3回になってまして、まあつらつらと公表文書を斜め読みしただけなんですけどね。

http://www.fsa.go.jp/policy/br-pillar4/20090713/01.pdf
ベター・レギュレーションの進捗状況について(第3回)−平成20年5月〜平成21年6月−

http://www.fsa.go.jp/policy/br-pillar4/20090713/02.pdf
(参考1)ベター・レギュレーションの進捗状況に係るアンケートについて

本当は参考2というのもあるのだがまだ見てもいません。どうもすいませんです。

・・・・ということで、マジで超斜め読みしかしてないのですけどちょっとだけ。

冒頭の所に良いことが書いてありますわな。『ベター・レギュレーションの今日的意義』ってところなんですけどね。

『金融規制については、今般の金融危機の顕在化が認識されるまで欧米を中心に、規制をできるだけ緩和することが金融イノベーションを促進させ、それが金融・資本市場の発展につながるとする考え方が広く存在していた。』

さいですな。

『他方で、今般の金融危機に直面し、以下のような事例が認識された。

○ 情報の非対称性を利用し利益を上げるため、複雑な金融商品を組成・販売したり、相対取引のような分断された市場での取引が拡大するなど、金融イノベーションは必ずしも市場メカニズムの発揮の向上につながらない。

○ 短期的な利益の追求を誘引する報酬体系や高レバレッジ化による高収益性の追求が、資産価格の振幅幅の増大や経済の不安定化を助長した。

○ 証券化の一連のプロセスにおけるインセンティブの歪みが、組成・転売型(originate-to-distribute)ビジネスモデルにおける関係者のモラル・ハザードを招来した。』

まあ最先端の金融工学(笑)を駆使して訳判らんブラックボックスを作ってどうのこうのというのは確かにさよでありますし、短期的利益云々に関してはその通りとは思うのですけれども、「情報の非対称性を利用して利益を上げる」って言われましても、金融って商売は本質的にそういう側面があるのでして(つーか商業全部そうでしょ)、情報の非対称性云々というのは耳障りは良い言葉なのですし、まあ顧客をだまくらかすのは論外なのはその通りなんですけど、何か言葉が一人歩きすると変に抑圧的な方向になるのではないかという悪寒も。

『金融市場をより良く機能させ、国民経済の安定や国民厚生の向上を図るためには、全く規制のない状況が最適とはいえず、公的関与の必要性についての認識が高まっていると考えられる。』

そらそうよ。

『他方、質の低い公的関与・規制は、レギュラトリー・アービトラージを招くなどにより市場の歪みを拡大させるといった問題を生じさせるため、質の高い規制を実現するための努力が必要と考えられる。規制の質を高めていくこと(ベター・レギュレーション)の重要性が再確認されるところである。』

変(以下激しく自主規制^^)。

まー中身はまた(たぶん)後日。ちなみに、アンケートの方なんですが、時々オモロイ回答があって(基本的にマンセー回答は面白くも何とも無いので読まないのが吉)、今回はちょっと考えさせられるモノが。



○で、そのアンケートでちょっと思ったのですけど(金融監督とは関係ない話)

アンケートの3ページ目から。

『法令案公開の時点で実務上の懸念事項が見受けられることが時々あるが、こうした場合、パブリック・コメントへの回答においてかなり実務に配慮したコメントをもらえるものの、実務の運用面では困難な部分がなお残ってしまうことがある。この数年はこうした不具合が増加しており、今後は法令案がほぼ固まった時点で、業界の実務担当者を交えた意見聴取の場を設け、無理のない範囲でその意見を取り入れ、スムーズに実務へ移行できるような手続が考えられないか(銀行)』

まあ金融庁とは関係ない話に飛ぶんですけど、ここの所色々な規制とか施策に関連していざ施行段階になって実務上ややこしいことが起きるっていうニュースを良く見るような気がするんですよ。先日だと銃刀法改正に伴って牡蠣の殻剥くナイフが届出が必要なモノになってエライコッチャなんていうニュースネタがありましたけど、裁判員制度導入に伴い性犯罪関連での情報管理をどうするかとか、ちょっと前だと改正建築基準法だかの施行に伴い建築確認の為の検査だか何だか忘れましたが、それが止まってエライコッチャになったというような大ネタもありましたが、まあその手のネタに事欠かないですよね。

官民の意見交換の場が減っちゃったというのが背景にあるんじゃないかなあとは何となく思う次第なのですけれども、ちょっとこの意見を見て「そうですなあ」とか思ってしまったのでちょっと引用してみましたです。はい。

何でもかんでも交流禁止というのは、当初はまあそれでも過去の蓄積があるから大きな弊害にならなかったのでしょうが、これが何年も継続した結果、こういう指摘やら事象が増えて来ていると考えますと、これはこれで官民共に不幸な話でありまして、どうにかならんものなのかいなと思いますが、相変わらず公務員制度改革とか言って公務員は悪みたいな言説がのさばる状況では難しいのでございましょうかねえ(吐息)。


○超どうでもいいネタ

昨日ブルームバーグ見てたら何か日本株に超強気のコメントをしている大先生がいて涙で画面が見えなくなったんですけど、よくよく関連ニュースをブルームバーグのネット版で見てたらこんな記事があったんですね!

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=azEmc7PR1V4U

「死ぬまでレポート書く」とかどこの北浜先生ですかという感じですが、記事の日付を拝読致しますと、平均株価が1万円に行きかけたのにあっさり反落したのは・・・・

#昨日の大先生のお告げはネット版では見当たらないのですが、17時27分に配信されてました。ただしJBNの株式とかでは見当たらないので別方法でサーチしてちょ









2009/07/14

お題「様子見の大義名分が来たので今日も与太世間話(おいおい)」

しかしまあ困った相場ですこと。こんなことなら今月夏休みにしておけば良かったのですが、それを読みきれなかったあたくしのヘタクソさ加減に落涙するしかございませんえんですわ奥様。

○総選挙キタキタ

衆議院選挙投票日は8月30日になるとのニュースが出たらその後平均株価がズルズルと下落しておりましたが、まあ政治空白を嫌気して株式市場が売られるのは様式美の世界みたいなもんですから良いとしまして、それを見ても債券市場が1ミリも反応せずというか、朝っぱらから中期ゾーンが微妙に弱かったりした位ですので、まー債券市場的には毎度お馴染みの「○○が不透明であり、今後の推移を注視する」という何となく尤もらしい様子見地蔵になる理由が出来たという所でございましょうか(^^)。

ま、それは兎も角としまして、選挙モードで投票日まで1か月半となりますと、その間延々と政治空白になりますので、政策対応に関しては動きにくくなるという事で様子見観が強くなるんでしょうな。


ところで、話は全然違う床屋政談与太話なんですけど、東京都議会選挙と奈良市長選挙があんな結果になりまして、そりゃまあ自民党に対する不信任というのもあるでしょうけれども、東京に関しては新銀行東京とか築地市場移転問題とかも結構なファクターだったと思いますし、奈良市長選挙の一方の候補者って1回市長選挙落ちて衆院選でも小選挙区で負けたけど郵政選挙パワーで比例復活した人だった筈で、そーゆー地域的事情もあったとは思いますがど〜なんでしょ???

#投票日と24時間テレビがぶつかった日本テレビ涙目ですな



○またまた中川正春先生登場

ネクスト財務大臣様がブルームバーグでインタビューを受けたようで。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a4ItIQEa62jU
民主・中川氏:外貨準備の運用多様化を−IMF債も選択肢 (Update1)

ということで、まあ色々とお話しているのですけれども、少し記事が長くなっておりまして、まあ言いたいことが判らないでも無い部分もある事だけは把握できましたが、引き続きこれで大丈夫かというお話が。

『中川氏は「ドルの信認が揺らいで日本経済が直撃を受けたり、外貨準備に為替差損が出たりするようなリスクは中長期的に回避すべきだ。そのためにも円の国際化を進めるべきだ」と語った。』

まあ何ですな、円が国際決済通貨として使われまくるようになって、貿易に関して為替でああでもないこうでもないという事にならなくなるのは誠に結構という主張に関しては気分としてはまあ判らんでもなく、円の国際化推進と言いたくなるのはまあ把握した。

ただ、「ドルの信認が揺らいで外貨準備に為替差損が出たりするようなリスクは中長期的に回避すべきだ」というのは微妙な話でして、そんなにドルの信認が揺らぐのが心配だったら、「国に円建て外債の発行を要請する」とか「外為特会の通貨を分散する」とか言わない方が宜しい訳でありますわな。言ったらそれで信認が下がるんですから・・・・・

何つーかね。日本とか中国の外貨準備って池の中の鯨みたいな状態になっている訳でして、そーゆー人たちは自分がマーケットのファンダメンタルズの一部になっており、その人たちが動く時のマーケットインパクトというものがある訳でして、そこらの一般投資家みたいにホイホイとアロケーション変更しようとしたら自分で自分の首絞めるだけという事くらい中川先生に置かれましてはご理解頂いているかと存じますが、どうにもこうにもセンスねえなあという感じです。

・・・というか、歴代元金融大臣とかにも言えるのですけど、金融関連の話をする議員連中って、与野党を問わずなんですけど、どっかで聞きかじって来た(あるいは変な取り巻きに吹き込まれた)話を頭でっかち状態で打ち込んで来るので、それこそ「東京金融街構想」とか「外貨準備を元手に政府版SWF」とかあの当時実施してたらお笑いどころか洒落にならなかった構想が続々出てくる印象がありまして、頭がクラクラして参りますわな。

それは兎も角として、相変わらず訳判らん構想ですなあとか思うのですけれども、外貨準備で円建て債券購入というのはそもそも外貨準備としての意味がねえよ!!と思うのですが。それから、通貨分散と言いますけど、ドル以上に外貨準備として信用がある通貨があるのですかねえと思うのですけど(一応まあユーロというのはありますが、続々と東欧中欧貧乏国家が加盟する通貨が本当に信用できるのかよという気がするのはあたくしの偏見ですかそうですか)。

まー本当に分散させたいのだったら、「こいつの償還(または利払い)は相当額の金地金でお願いします」とかでもしたらどうでしょうか??ま、その時も金保有額が減ったのが話題になると通貨の信認に響くような気がしますけどね!!

それから円の国際化という話ですけど、あたくし頭が悪いので良くわからないんですが、基本的に貿易収支が黒だと周辺から通貨を吸い上げる格好になるので、仮に円建てで貿易しても円が世界にばら撒かれるという事にならないんジャマイカという気がするだす。ま、資本収支的には絶賛サムライ債発行とかで円撒いてる気がしますので書いてみただけですが(^^)。

で、同じく記事より。

『中川氏はサムライ債発行について「金利も高く、日本国債より魅力的な商品になる。やり過ぎると日本が危なくなることも念頭に置かなければならない」と指摘。IMF債についても「急激にやりだせばドルが揺らぐ。中長期的な流れをつくっていくことが重要だ」との見方を示した。一方で、政府開発援助(ODA)などを行う際に「円決済を条件とすれば円の需要が高まる」とも述べ、政府として戦略的な為替政策を打ち出す必要性を訴えた。』

うーんとですね、多分米国が円建てで国債を発行した場合、円ベースの金利は日本国債の金利水準と対して変わらない水準にしかならないと思いますよ。日本国内市場で発行するというケースを考えてみたら流動性プレミアムもそんなに乗らないと思いますし、格付け的には(インチキ臭いですが)日本国債よりも高いと来てますし。何で金利が高くなるという話になるのかなあ・・・・

それから、事前にアナウンスしちゃったら中長期的にやっても急激にやっても結局のところ同じですし、「中長期的にドル離れ」なんて宣言しちゃったらそれこそ「中長期的にドルの信認が・・・」って話になりますがなと思いますけどね。通貨分散したけりゃこっそりやれと(先進国かつ民主主義国家の政府部門がこっそり実施というのは物理的に無理がありますな、非民主主義国家で秘密主義上等なら別ですが)。

ま、いずれにせよ、通貨問題っていうのは極めてデリケートな話でして、重大なインパクトのありそうな事をあんまり軽々と話すべきではないと思われます。日本国内では「また民主党か!」で済むかも知れませんけれども、海外での受け止め方はまた違ったものになる可能性があるということを十分理解すべきではないかと思われますがどうでしょ。



○市場雑談

昨日は何となく中期ゾーン軟調。まあ朝から何となく軟調でしたが、金曜の昼過ぎくらいまで中短期絶好調で、金曜のピークで2年カレント0.225%だとか5年カレント0.65%とかやらかしていましたけど、引けに掛けて急失速した感じでして、その流れを継続したのですかなあと何となく思ってみたりするのです。

一応2年0.225%とかになりますとそれはついこの前(4月の前半)の3か月TBの水準になる訳でして、おめーそりゃさすがに時間軸にも程があり過ぎじゃろというだと思いますので、ロングだったら一旦手仕舞いという話になるのかなと思いますし、それこそ都議選に続いて衆院選実施確定となったので、一旦降りておきますかという人がいてもおかしくはないかなあという所で。中短期ゾーンアクティブに動かす人的にはそういう発想になりそうな希ガス。

で、昨日は1年TBの入札があった訳ですが、ここもとこの辺の2年中期国債の成れの果てが大体0.16%少々とかで推移してたのですが、2兆3千億円の打ち込み(新発発行ね)に対してそこまでニーズが無かったようで、入札前から水準訂正を行って0.18−0.185で前場終了して落札結果は足きり0.19%手前まで流れたでござるの巻。

先週の3か月TB入札のタイミングで1週手前の銘柄(10月頭に償還が来るので役立たず銘柄)にちょっと投げらしきものが出てたり、先週の3か月TBもまだ業者の持ちになってそうでして、今日の3か月TB入札でどう動くのですかねえというのはちょっと気になる所。

ま、次の積み期間のGCも特に上がらないと思います(15日の所は上昇しましたけど)し、金利上がれば買う人も出てくるからそんなに変な話にはならないでしょと思いますが、変なフラグにならないことを祈ります(^^)。

#そういや昨日は日銀の参事役、企画役クラスの異動が出てたようですな。だからどうしたと言われると困りますが(^^)







2009/07/13

お題「小ネタ雑談しかネタがないもんで」

○床屋政談雑談

東京都議会議員選挙で投票率上がって自民公明で過半数割れ。おまけに千代田区と中央区で自民党負け(中央区は新住民が増えているから負けがあってもおかしくないけど、地元ガチガチの千代田区で負けるとは)とはこりゃ恐れ入りました。

普通に考えると任期満了までに流れがひっくり返るのは難しそうですので、まー民主党という前提で考えた場合に、頭でっかちで実際の実現性に乏しい政策が出てきたり、あるのか無いのか判らない埋蔵金バラマキとかをやるんでしょうな。よー知らんが。

で、民主党政権になって(既にその心持になっておりますが何か?)金融市場はどうなるのという話になるのですけれども、まあ正直言って何がどうなるのかさっぱり判らんですけど、金融政策に関しては日銀総裁人事に訳の判らん口出ししてくる位ですから、まー色々とややこしいこと言い出す議員が自民党よりも圧倒的に多く、それに対する党の統制がちゃんと利くのかという所かとは思うので、まあその辺りを担当(?)されると思われる山口副総裁におかれましては心労が多くなるのかと。ナムナム。

さすがに金利上げろとかは言い出さないと思いますが、長期国債買入とか、企業金融支援とかで何か言い出すリスクもあり、そう考えると文句言われる前に糊代作り(笑)で各種施策を強化するのも手かもしれませんな(半分以上冗談ですので念のため^^)。

ま、あたくし的には新銀行東京に対してこれ以上公的支援するのは勘弁頂きたいとしか言いようが無い(どさくさに紛れて東京都出身の経営陣が逃げてるし)のと、都知事の帝王趣味にも程があるオリンピック誘致とかアホかとしか思ってませんので、与党敗北ざまあなのですけどね(オリンピックは民主党も確か賛成なので民主が勝っても変化ないんですけど)。

しかし公明党全員当選で1議席増とはさすがとしか言いようが無い。


○日銀から出てるペーパー2題

国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j09.htm

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf

まあ要するに国際金融ネットワークが緊密化する中で、ネットワーク上のハブの役割を果たす所に今般の金融危機が直撃した為に、金融ショックの波及が素早くなりましたという分析でして、そーゆー状況の中で効率的に危機を沈静化させるにはハブ部分の機能を維持するのが有効という話。

国際金融取引の量とかの統計から、金融取引の構造をネットワークとしてモデル化して考察ということで、なるほどさよですかという話であります。

本文の最後の部分から。

『こうしたショックの波及過程でもたらされた資金仲介機能の低下は、国際金融ネットワークが緊密化し、ハブに対するショックをより連鎖させやすい構造になっていたことから、世界中に広がることになった。特に、欧州金融センターを中心に、流動性リスクをとりながら、対外債権・債務の両建てで資金ポジションを拡大していたことで、ハブを中心にネットワーク全体としての結び付きが強まっていた。こうした状況の下で、ショックがハブを直撃したことが、市場流動性を収縮させ、今回の世界的な金融危機に発展する一因になったと考えられる。』

ということで、欧州のドルファンディング問題が金融取引的に脆弱ポイントになっていましたという話は皆様におかれましても記憶に新しいところかと存じますが、欧州金融センターが国際金融ネットワークのハブとしての機能をしていたという話ですわな。

#米国金融の話ばかりする日本の経済メディアは何だかねって感じで

こちらのレポートでは国際金融ネットワークに関する話ですので最後はこうなっています。

『グローバル化につれて緊密化が進んだ国際金融ネットワークの下では、個別金融機関レベルの資金ポジション管理の工夫や、各国中央銀行レベルの自国通貨建て資金供給の枠組みはもちろんのこと、混乱時には、連鎖的な影響を遮断するために、各国中央銀行の国際的な協調の下、ハブに対して集中的に資金を供給する体制にも有効性が認められた。今後、副次的な影響も含め、こうした施策の効果を検証していくことは、金融市場のダイナミクスを理解し、金融市場の安定を図るうえで重要といえる。』

それはさよですなという話ですが、マクロプルーデンスという話からすると、自分たちがハブだから最終的には救済されるというような金融機関が出てくるとまた話がややこしくなるので、そーゆー観点からすると国際金融ネットワークをどう監督していくのかというのも難しい話になるんでしょうね。


こっちは新聞ネタになっていたと思われ。

最近の電子マネーの動向について(2008年度)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0907b.htm

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907b.pdf

あたくしは現金をぶつける人なので(海外旅行くらいでしかカードを使わない)電子マネーってナンジャソリャ状態とは言え、仕方が無いのでスイカは使いますが、電車乗るとき以外には使わないという所は妙に徹底しています。

ということで、レポート読んでもはあはあそうですかという話なのですけれども、現在の利用状況に関して本文4ページ(PDFの6ページ)にこんな話が。

『上記電子マネー発行残高について、現金通貨と比較すると、2009 年3 月末における電子マネーの発行残高は、貨幣流通高の2.02%、銀行券発行高の0.12%、現金通貨全体(貨幣流通高+銀行券発行高)の0.11%に相当する。また、民間銀行の預金を含むマネーストック(M3 末残)に対する電子マネー発行残高の比率は0.009%に相当する。』

ちなみに、「上記電子マネー」とは、Edy 、Suica 、ICOCA 、PASMO 、nanaco 、WAON、SUGOCA、Kitacaの8種類だそうですが、あたくしの知らないものが幾つかあるのはここだけの話(汗)。

暫く前に「紙幣や硬貨を廃止して電子マネー化してマイナス金利も自由自在」みたいな与太記事が海外メディアに載っていたようですが、日本におかれましては現状のこの利用状況で言えば与太以外の何物でも無いというところでございましょうか。現金その場限り主義のあたくしとしては誠に結構な話ですが(^^)。



○BOEは事前予告しませんかそうですか

先日のMPC結果。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/059.htm

News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and continues with £125 Billion Asset Purchase Programme

ということで、金利据え置きはまあどうでもよいのですが。

『The Committee also voted to continue with its programme of asset purchases totalling £125 billion financed by the issuance of central bank reserves.』

ということで資産買入プログラムは増額せず。

『The Committee expects that the announced programme will take another month to complete. The Committee will review the scale of the programme again at its August meeting, alongside its latest inflation projections.』

しかも堂々「来月に終了する買入プログラムの延長に関しては来月決定しますので一つよろしく」ということで、「事前に市場の予測可能な形で継続などに関して判断する」と発言する上にうっかりすると9月終了の措置の延長を7月に決定しそうな勢いのどこぞの中央銀行の対極に位置するBOE.(一応インフレーションレポートとセットという事は言ってますけど)の独自路線ぶりに痺れる憧れるぅ!!


○久々に読書室

2年近くサボっておりますが、全く本を読んでいなかったわけでは無いっす。ここ暫くは感想書く気も起きなかったもんで・・・・・

で、出てくるのが金融と全然関係ない本なのは仕様です(^^)。

・「第一阿房列車(内田百闥、新潮文庫)」
・「第二阿房列車(内田百闥、新潮文庫)」
・「第三阿房列車(内田百闥、新潮文庫)」

注:機種によっては読めないかもしれません。「うちだひゃっけん」さんで、最後の文字は門がまえに月です。

この辺とかこの辺にございますように、あたくしは若干の鉄分入りなのですが、内田百閧ウんの阿房列車(あほうれっしゃ)シリーズは鉄道とか旅行とかが好きな人にも勿論内田百閧ウんの世界が好きな人にも楽しい本のようですが、こういうの合わない人もいるかもとは思いますので、読む人を選ぶかもです。

シリーズ第一作の「特別阿房列車」(東京から大阪まで行って1泊してとんぼ返りするという旅)の有名な書き出しを引用させて頂きたく存じます。

『阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行ってみようと思う。』

本来は旧字旧仮名遣いが百關謳カの文章だそうなのですが、文庫版に関しては新仮名遣いで表記してますので、そのうち旧仮名遣いでも読んでみたいですね。

ISBN978-4-10-135633-4 C1095 \476E
ISBN978-4-10-135634-1 C1095 \400E
ISBN978-4-10-135635-8 C1095 \476E

ちなみに、あたくしは日本で散々営業して収益上げているのに日本に法人税を納税しないような国賊企業では書籍等の購入を行わず、常に書店を回って本を買うあるいは注文する人ですので、相変わらずリンクなどはつけませんが、一応ISBNの番号は付けておきますです。










2009/07/10

お題「相場がどうにもこうにもなので雑談」

いやまあ10年金利が1.3%割れとか良い感じで水準訂正してるのですが、何かあまりお喋りするネタも無かったりするのはナンデジャロと思うのですが・・・・・・

○来週の決定会合で企業金融支援がどうのこうの

一昨日からそんな関連記事が出てたりするのでありますが、はてどうなんでしょと思いつつ。まー先日ご紹介した中村審議委員や白川総裁の会見での発言とかを考えれば、ギリギリの9月会合で決定という事が無いのは確かでしょうが、状況を見て決定という観点で言えばあまり早撃ちするのもどうなのよとは思うので、そー考えると8月が順当という話になるんですが・・・・・

先日FRBが各種措置の一部延長と一部減額と一部停止というどっちに力点があるのか訳判らんリリースをしてましたが、このときの延長って12月末期限のものを2月頭に期限延長ということで、期限をほぼ半年前に延長というプレーでしたので、別に7月にやったから早すぎということでも無かろうというのは判らんでもない。ただし、この時のリリースって良く良く読んでみると「各種措置の一部停止と一部減額」の方が大きくて、かつ期限延長が1か月ちょいというお為ごかしにも程がある延長でして、どっちかというと「各種措置の一部延長」というのをリリースのお題にして「すわ出口政策」といわれるのを避ける為の目くらまし延長にしかあたくしには見えないんですよね。

というようなことをつらつら考えますと、まー今回日銀が企業金融関連措置の延長決定となった場合、それなりにメッセージ性があるという話になると思うのですが。非伝統的政策の長期化と企業金融支援の姿勢を明確化ってえ話になるんじゃねえのと思います。

ま、敢えて7月にするとなると何か別の理由も妄想できない事は無いですが、孟宗竹にも程があるのでとりあえず実際にどうなるかを見てからということで(^^)。


でですな、まー現状の金融環境に関する日銀の認識は「厳しい状況」ということですので普通に全部の措置が延長という話になると思うのですけれども、企業特オペに関しては亜空間状態化しているCPについてどうにかならんですかねという感じはします。

企業特オペそのものは証書貸付などの支援という意味では良い措置なのですけれども、このオペのCP市場への影響と言えば(毎度かいてますがしつこく^^)CP買って特オペ攻撃のディーラーと金利が低けりゃ良い発行体ウハウハの展開となり、回復どころか亜空間または阿片窟状態になって、最終投資家が離散傾向という素敵な状態になっておりまして、いやまあそれはそれで企業金融支援にはなってますけど、市場を阿片窟状態にしてまでCPばっか優遇するのってバランス的にどうなのとは思いますけどね〜とは思うのですが、ポジショントーク成分も入っているでしょというツッコミは否定しません(^^)。

市場性商品のCPに関しては買入(最近ろくすっぽ使われませんが^^)と現先(こっちは毎度2倍程度の応札で0.12%アラウンド)オペがあって、買入に関してはバックストップとして重要ですので、まーこれは企業金融支援措置の最後の出口になるまで置いておくのが妥当だと思いますし、現先はまあ普通にこれも取っておく措置でしょうなという感じです。で、そっちでフォローされていまして、市場の方はすっかり回復した(というかし過ぎ)のだから別に特別優遇金利&常に全額落札可能という所までのサービスを継続せんでもという話なんですけど、「金利を押し下げたい」というのであれば話は別かなって所でしょうな。


まー技術的な話になりますが、現先オペ対比で特別オペが強力な理由は、もちろん「金利が0.1%」というのもありますが、「オペのタイミングで全額落札できますよ」というのと「オペに対して対象玉が紐付けじゃないですよ」というのがあるかと。つまり、前者がオイシイのは「オペに応札したけど空振り」リスクが無いという事でして、何かの拍子にレートが上昇するリスクが無い事にも繋がるのでオイシイという事ですし、後者に関しては、現先だとまず最初にオペに入れる予定の玉があって、それに対して応札という話になるのに対して、特オペだと落札した後「さて担保担保」と言うのがアリな訳でして、極端に言えば(というか多分そういう動きもあるんじゃないかと推定されますが)「オペに入れたので担保玉確保の為にCP買いまひょか」ということで「CP買う事先にありき」でレートはまあオペレートより高けりゃいいでしょという事も可能という話でして、ディーラーの玉保有に対するスタンスがだいぶ違ってくるという話になるんですな。

と、判ったような判らんような事を書きましたが、やっぱ判りにくいですね(汗)。


とまあそんなこんなで、そこまでCP優遇せんでも(他とのバランス的に優遇し過ぎなのではという意味です)とは思うのですけれども、これによって短期国債の金利が低下しているのではないかと思われる節がありまして、そーゆー意味では思わぬ効用(あるいは副作用^^)もありまして、短期市場金利の押し下げ効果が結果として出ていそうな気がします(こういうのは真剣に検証しようと思っても検証はできないと思うのでイメージの世界になりますけど)ので、そっちの観点からするとCP絶賛大優遇措置は継続という事になるのでしょうかねえと思うのでありました(><;


○生活意識アンケートからメモ少々

出遅れましたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0907.pdf

・どう見てもただの底ばいです本当にありがとうございました

話の都合上(^^)Q4から引用。

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる13.9 ( 8.5 )
2 変わらない61.6 ( 49.2 )
3 悪くなる23.8 ( 42.0 )

・・・・おお!良くなるが増えてるし悪くなるが激減!!!!!

と思いますが、当然ながらベースラインはこの有様。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった0.5 ( 0.2 )
2 変わらない17.1 ( 10.0 )
3 悪くなった81.9 ( 89.1)

Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.0 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い0.6 ( 0.4 )
3 どちらとも言えない9.6 ( 5.4 )
4 どちらかと言えば、悪い41.8 ( 36.6 )
5 悪い47.7 ( 57.4 )

えーっとですね、ほら、谷がずーっと続けばそこは平地ですから・・・・・


・物価の先行き見通しはあまり下がらないの巻

で、物価に関して。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。
1 かなり上がった8.1 ( 17.8 )
2 少し上がった39.4 ( 48.8 )
3 ほとんど変わらない29.2 ( 22.1 )
4 少し下がった21.0 ( 9.8 )
5 かなり下がった1.3 ( 1.0 )

まだ上昇の方が多いですが、下落が増えて来たのは怪しい傾向。


Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる3.4 ( 5.1 )
2 少し上がる34.5 ( 40.3 )
3 ほとんど変わらない44.5 ( 37.6 )
4 少し下がる15.6 ( 14.6 )
5 かなり下がる0.5 ( 1.1 )

ということで、上がるがちょっと減って下がるがちょっと増えた程度です。

これを数字で見るとこうなりまする。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+3.5 ( +6.4 )
中央値:+1.0 ( +5.0 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値:+2.2 ( +2.9 )
中央値:0.0 ( 0.0 )

ということで、足元で物価が上がったという人が大きく減った割には、先行きの物価に対するマインドはあまり変わっていないという感じです。


○その他少々メモです

日銀からこんなのが出てまして。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/fsc0907a.htm
ワークショップ「銀行勘定の金利リスク管理の高度化に向けて」を開催

そーですなー。まあ金利リスク管理ってのも重要ですし、計測しやすいから管理を高度化しやすいですなあとは思うのですが、市場現場叩き上げ労務者のあたくしと致しましては、計測しにくいリスクこそ重要と思うのでありまして、具体的には金利リスクの高度化する労力を与信先管理(信用リスク管理)とか、流動性リスク管理(色々な観点での流動性リスク管理)などに振って頂いた方が吉なのではないかと思うのですが。

いや勿論金利リスク管理するなという話じゃないですからそれはそれでしっかり実施する話なんですけどね。



http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j09.htm
国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf

面白そうだがまだ読んでいないので後日。









2009/07/09

お題「SF連銀イエレン総裁がインフレ懸念にお答えします(昨日の続き)」

まあ相場に関しては細けぇ話はあるのですが、全体感としてど〜なんですかとなると「時間軸」の3文字で終了しちゃう所が落涙としか言いようが無しですわな。

で、本当は生活意識アンケートの話をしようと思ってたのですが、イエレン講演の引用で量が多くなったので明日にでも(すいません)。

http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0630.html

インフレ懸念の3つの論点、(1)FRBのマネー供給拡大とバランスシート拡大がインフレに火をつけるのではないか、(2)経済の落ち込みに注目しすぎて物価上昇圧力を軽視した1970年代の失敗をまたまたFRBはやらかすのではないか、(3)巨額の財政支出がインフレを招くのではないか、という点に関しての説明部分です。

○FRBのバランスシート拡大懸念に対して

『First, I’ll talk about the Fed’s balance sheet. As I discussed earlier, the Fed has taken a number of strong steps to avert a financial and economic meltdown, and to support the flow of credit. These policies have caused the assets on the Fed’s balance sheet to more than double, from under $900 billion at the start of the recession to over $2 trillion now.』

というのが現状説明ですが。

『This expansion is largely financed by increases in bank reserves, that is, surplus cash that banks deposit with us. Some worry that the Fed’s balance sheet expansion is pumping money into the economy and will be inflationary. But, as I will explain in a moment, we have the tools needed to tighten policy and head off future inflation. There is also some concern that the Fed could be trapped by conflicting goals if, at some point, a growing economy requires a higher federal funds rate, before credit markets are fully healed. Finally, some worry that the Fed may lack the political will to tighten policy when the time comes.』

インフレになった時の引き締め道具はあるって言ってるんですが、そこに関しては正直大丈夫かよというのは外野的には大有りなんですが。どこぞの30兆円中銀と違いまして、物凄い勢いで長い債券買い捲って拡大させたバランスシートというのは自然体で落とすのは無理無理でして、何か不自然なことをやらないといけないでしょと思いますが。それにFFレートって預金ファシリティ金利を下回って推移するというのが仕様になっている位ですから、バランスシートが拡大したまんまだとFRBの金利コントロール力も大丈夫なのかよという懸念もあります。

つまりですな、いざ引き締めとなった時にFFレートの目標を引き上げて預金ファシリティの金利も引き上げても、バランスシートが大きくて金利付き量的緩和状態になっている時に、金利誘導が円滑に回るのですかという論点でありまして、現状でもFRBはFF金利を精密誘導できてないのに、利上げした時に「誘導目標は引き上げたけれども、実効FFレートは全然下のままで引き締め効果が出ない(のでインフレ抑制に失敗)」という悪寒がしない訳ではないのですわな。

『I will be the first to say that it is always difficult to get monetary policy just right. But the Fed’s analytical prowess is top-notch and our forecasting record is second to none. The FOMC is committed to price stability and has a solid track record in achieving it. With respect to our tool kit, we certainly have the means to unwind the stimulus when the time is right.』

というような一般論と言うか「大丈夫でっせ」というのはまあ良いとしまして。

『Many of the special programs we developed to provide emergency credit to the financial system are already tapering off as market conditions improve. Many of the assets that we have accumulated during the crisis, such as Treasury and mortgage-backed agency securities, have ready markets. And the Fed can push up the federal funds rate by raising the rate of interest that we pay to banks on the reserve balances they have on deposit with us?authority that was granted to us by Congress last year.』

各種クレジット資産買入プログラムに関しては確かに自動出口装置付きなので大丈夫という話なんですけど、問題は長期債券買入の方だと思うのですが。

で、さっき上で書いたとおりで、預金ファシリティ金利を引き上げる事によってFFレートの引き上げが出来るという話に関しては少々懸念するのであります。拡大したバランスを引けない中で預金ファシリティがFF金利の下限として機能できるのかということね。

『An increase in the interest rate on reserves will induce banks to lend money to us rather than to other banks and borrowers, thereby pushing up the federal funds rate and other rates charged to private borrowers throughout the economy. The ability to pay interest on reserves is an important tool because, as I mentioned, it’s conceivable that, even if the economy rebounds nicely, the credit crunch might not be fully behind us and some financial markets might still need Fed support. This tool will enable us to tighten credit conditions even though our balance sheet wouldn’t shrink.』

と、言ってる訳ですが、本当にそうなのかいなというのは微妙に疑問。結局のところ長期債売却攻撃をやらないと回らなくなるんジャマイカという気がするのれす。


○景気悪化対応で物価上昇を軽視しないかという懸念に対して

で、次の論点。

『Let me turn to the second concern, that we could have a rerun of the stagflation of the 1970s. Some economists have argued that the Fed misjudged how low the unemployment rate could go without igniting inflation and, as a result, lowered the federal funds rate too far for too long, an overly accommodative stance that contributed to runaway prices.』

ほうほうそれでそれで?

『This is an issue we have studied in great depth, looking at a wide range of data sources and using a variety of techniques to estimate slack in labor and product markets. Not surprisingly, these estimates vary. But they all plainly show that labor and product markets are currently operating well below the levels that would trigger inflation. We must beware of overconfidence that we have too precise a handle on these questions.』

まあこの論点に関してはこういう話しかしようが無いですわな(^^)。

『But, to me, the evidence is clear that the economy has substantial slack and we are far from the kinds of unemployment rates that would make inflation a danger.』

現状はインフレ懸念とかいう状態ではありませんというのがイエレンさんの認識で、これはまあ普通にFRBの見解でもあるでしょう。


○巨額の財政支出がインフレを起こすのではないかという懸念に対して

んで財政拡大の話。

『The third concern is that big federal budget deficits might eventually be inflationary. In my years of teaching at Berkeley, I regularly lectured on the relationship between fiscal deficits and inflation. A glance at history shows that many countries with massive structural deficits and without an independent central bank turned to the printing press to pay off their debts. That’s a recipe for high inflation and, in some cases, hyperinflation.』

ということで、話の次の展開が読めると思いますがその通りの展開になります(^^)。

『But I don’t believe the United States faces that threat. Looking back in history, runaway fiscal deficits have often been accompanied by high inflation. But, since World War II, such a relationship has only held in developing countries. In countries with advanced financial systems and histories of low inflation, no such connection is found. 』

それはまあ中銀が無条件財政マネタイズとかしないように制度設計が出来ましたもんね。

『So where exactly do the dangers with fiscal deficits lie? To answer that question, it’s important to distinguish between cyclical deficits and long-run or structural deficits. The recent sharp rise in the federal deficit in large part stems from the government’s appropriate response to a severe recession and financial crisis. These near-term cyclical deficits vastly overstate the problem of ongoing structural deficits.』

財政支出が足元の課題に対応するものなのか中長期的な支出なのかという事を分けて考えることが必要ですとな。

『But the United States does have a large structural budget deficit, and it will remain when the economy finally recovers. To a great extent, the structural budget gap reflects demographic shifts resulting in an aging population coupled with a chronic escalation in health-care costs. The issue of rising entitlement and health-care spending is not new. In fact, I spent many of my waking hours grappling with these problems a decade ago when I chaired the Council of Economic Advisers in the Clinton administration.』

で、足元の拡大は金融危機及びリセッション対応ですが、年金とか医療保険問題による財政支出が構造的に拡大する話もありますよと。

『It is essential that we come to grips with structural budget deficits, but not because such deficits will cause inflation. It’s because large, sustained structural deficits vacuum up savings that could be put to more productive uses. Once the economy is back on track, these deficits will make capital more expensive for private borrowers, crowding out the investments that are essential to boost productivity and fuel growth in real wages and living standards.』

ただまあこの関連の支出は投資よりは貯蓄のようなものに回る傾向が高く、拡大したからインフレ発生という話でもないでしょうという事を指摘してるのですかな。

で、この次に1980年代の米国財政拡大に関する指摘がありまして・・・・

『Consider the case of the large deficits in the United States in the 1980s. We did not see a run-up in inflation then. On the contrary, the deficits soared just as inflation was coming down. Those deficits did, however, contribute to higher interest rates, which made education and investment more expensive.』

当時は財政拡大してもインフレ拡大しませんでしたが、高金利政策中でしたということで、財政単体でインフレになるかというとそうではないと。そりゃそうですが、多分懸念している人は「財政拡大と緩和的な金融政策のセットがインフレ加速」という話なのでこの説明は微妙にインチキの香りも。で、何故かこの次に日本ネタ。

『Japan provides another example. Japan has run very large fiscal deficits through much of the past two decades, yet its problem is persistent deflation?precisely the opposite of inflation.』

どうもすいません。

『Finally, there’s the matter of whether the Fed’s resolve is firm enough to tighten policy when the time comes to do so. Let me be unequivocal. The Fed is committed to doing everything in its power to foster recovery while maintaining price stability. When it’s necessary to withdraw the extraordinary stimulus we have put in place, we won’t hesitate.』

ほほー。

『The Fed was created as a politically independent central bank, and that tradition is deeply embedded in our culture and practice. We have worked closely with the Treasury and other agencies during this crisis, and it was appropriate to do so.』

ということですが、多分インフレ懸念を言う人はFRBが財政領域に突っ込んできて足抜け出来なくなることを懸念してるんじゃないかなあとは思うのですよね。

『But, in our conduct of monetary policy, we are guided solely by our statutory mandates of maximum employment and price stability. In March, the Treasury Department and the Fed signed an accord reaffirming our independence in setting monetary policy. 』

まあそうではありますが。ということで、結局この部分全部引用で恐縮ですが、まとめ部分に参ります。あたくし英語力がアレなもんで、どっか切って引用した場合に変な引用になるんじゃないかという懸念がありますし、こうやってちゃんと全部引用したらあたくしが誤訳したり誤解してても読者様が間違いに気が付いて下さると思います(ので、間違ってたら指摘してくれ〜)ので。

『In sum, although I take these concerns about inflation seriously, I do not believe that there is a real threat of high inflation in the current situation. Monetary policy fosters inflation when it loosens financial conditions enough to create excess demand for goods and services. What could be clearer than the fact that right now we need more demand-not less-to offset the slack in labor and product markets?』

当然ながらこれらの論点もイエレンさんは見ていますが、現状の経済状況では需給ギャップが大きいので、緩和的な金融政策が必要だし、緩和的な金融政策によって超過需要が発生した挙句にインフレ発生という状況ではありませんという結論になっています。


#ということで引用大会で手抜きが過ぎるというツッコミは受け付けます(汗)










2009/07/08

お題「イエレンさんの講演関連雑談(虫干しネタ)」

ついこの前まで大楽観モードだったのに今度は景気対策が必要とかどういう脳味噌してるんだよダメリカは・・・・・・

○色々火消しをしたら日本の時間軸が強化されたでござるの巻

この前ちょっとネタにした6月30日のイエレンSF連銀総裁講演。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0630.html

まーこのちょっと前まで米国金融政策の出口政策に関する話が色々と出るわ、実際に各種オペが一部減額されたり停止されたりするわというようなお話もありましたが、FRBさんどこへ行くってえのを考えますと・・・・・・

まーあたくしの超勝手な読み筋としては、各種資産買入プログラムに関しては基本的に市場が正常化すると利用が減る(買入金利が基本的にややペナルティー入ったものなので)仕組みになっているからこっちは目的である「民間クレジットの緩和」が定着するとやってもやらなくても良くなるので「出口政策」という話になるのでしょうと。ただし、もう一つの出口政策としては金利政策という話になりますが、こっちの方は米国実体経済の状況からして全然出口どころの騒ぎじゃないですし、長期金利が上昇されても困るでしょという事で、低金利(FF=0.0〜0.25)は維持し、長期国債買入の継続や拡大は微妙ですが、長期金利上昇されても困るからこっちは減らすのは慎重にという感じでしょ。

で、長期国債買入も財政マネタイズの連想が高まると(ってそもそもが財政マネタイズみたいな面があるし、それこそバーナンキの背理法は財政マネタイズの話ですし・・・・)経済が好転しない中で期待インフレ率だけ上昇して素敵にスタグフレーションというお洒落な展開になっても困りますから、長期国債買入をじゃんじゃん実施するよりは時間軸効果を使って中短期金利を抑え付けて長期金利上昇を抑制した方が政策の費用対効果としては良いでしょという事を考えてるの(FEDも中の人によって色々と意見が違うようで、必ずしも一枚岩じゃないようですが、少なくともイエレンさんとかバーナンキさんあたりは・・・・)ではと勝手に想像するのであります。

#ついでに言えば長期国債買入よりは時間軸の方が金融機関的にはオイシイと思われます

で、以下にあるように今回の講演ってやたら厳しさを強調した内容でして、そういう意味で「だいたいゼロ金利政策の時間軸強化」を図ったのではないかと思われる節が思いっきりあるのですけれども、この講演および雇用統計などが効いて(というのが本当かどうかは知らんが)中短期の金利が益々低下したのは日本でしたというのが微妙にお洒落と。



○ということで講演から少々

などと思いながら、イエレンさんの上記講演をざっくりと読んだ話をしましたけれども、ちょっと虫干しネタで少しだけ引用とかしてみます。

最初の方は今までの状況についての話をしてるので、今後の見通しとか政策ポリシーがどうのこうのという所なんですけど・・・・・

・先行きには慎重そのもの

色々と引用すると長くなるのですが、基本的には『Still, I expect the recession will end sometime later this year.』というような話みたいなのですけれども、それこそ白川総裁の言う「偽りの夜明け」みたいな話をしているのが何とも。

『I don’t like taking the wind out of the sails of our economic expansion, but a few cautionary points should be considered. I expect the pace of the recovery will be frustratingly slow. It’s often the case that growth in the first year after a recession is very rapid.』

『That’s what happened as we came out of a very deep downturn in the early 1980s. Although I sincerely wish we would repeat that performance, I don’t think we will.』

で、金利がゼロまで下げちゃいましたので・・・という話も。

『In past deep recessions, the Fed was able to step on the accelerator by cutting the federal funds rate sharply, causing the economy to shoot ahead. This time, we already have our foot planted firmly on the floor. We can’t take the federal funds rate any lower than zero. I believe that the Fed’s novel programs are stimulating the flow of credit, but they simply aren’t as powerful levers as large rate cuts, so this time monetary policy alone can’t power a rapid recovery.』

これの部分は微妙にそうなのかなって気もせんでもないですが。金利の上げ下げよりも資産市場に突っ込んでいく方がピンポイントで効くような気がしないでもないのですが、それは単に市場の中で商品いじっているので資産価格にあたくしが目が行きすぎだからってえ所かもしれないです。


・インフレよりもデフレ警戒

やはり米国では中央銀行のバランスシート拡大や財政拡張によるインフレ警戒という懸念が高い(ベースの物価上昇率が日本と全然違いますもんね)ので、講演の中盤以降はその話が延々と続きます。

で、現状認識なんですけどね。

『First of all, this very weak economy is, if anything, putting downward pressure on wages and prices. We have already seen a noticeable slowdown in wage growth and reports of wage cuts have become increasingly prevalent?a sign of the sacrifices that some workers are making to keep their employers afloat and preserve their jobs. Businesses are also cutting prices and profit margins to boost sales.』

でもって・・・・

『Core inflation-a measure that excludes volatile food and energy prices-has drifted down below 2 percent. With unemployment already substantial and likely to rise further, the downward pressure on wages and prices should continue and could intensify. For these reasons, I expect core inflation will dip to about 1 percent over the next year and remain below 2 percent for several years.』

ということで、そもそも当面の物価上昇は悪化し続ける雇用状況やら消費低迷に対応する企業の価格調整などによって低いですがなということのようですが、更にデフレ懸念の話も。

『If the economy fails to recover soon, it is conceivable that this very low inflation could turn into outright deflation. Worse still, if deflation were to intensify, we could find ourselves in a devastating spiral in which prices fall at an ever-faster pace and economic activity sinks more and more.』

これはこれはという感じですが、まあこのこと自体はあくまでもリスク要因とな。

『But I don’t view this as likely. The vigorous policy actions of the Fed and other central banks, combined with sizable fiscal stimulus here and abroad, have sent a clear message that deflation won’t be tolerated.』

『Based on measures of inflation expectations, the public appears confident that the Fed will adopt policies that will maintain a low, positive rate of inflation. Evidently, the credibility that the Fed and other central banks have built over the past few decades in bringing inflation down has spilled over into a belief that we won’t allow inflation to get too low either.』

何か米国のBEIの場合は各国中銀のデフレ警戒がどうのこうのというよりは、単に回復期待およびBEIトレードをする人たちのリスク許容度復活による需給関係の改善のような気がするんですが、まあ敢えてツッコミは入れないことにしましょう(ってツッコミ入れてますが^^)。

『This does not mean that a short episode of deflation couldn’t occur, but it makes a prolonged and devastating deflationary spiral less likely.』

ということで、瞬間的な物価下落はあるけど、それが長期化してデフレスパイラルになるようなことはそうそう無いでしょというお話にはなっています。


・やはり続きは後日(多分明日)

『None of what I just said will satisfy those who worry about inflation. Indeed, if you listen to popular business news channels, you might hear a drumbeat of concern that the Fed could let inflation get too high. Those who hold this view point to the rise in Treasury yields and commodity prices this year as signs that runaway inflation is on the horizon. 』

ということで、講演の以下後半3分の1は、インフレ懸念に対する回答になっているのであります。引用開始したらやっぱりあたくしノリノリになってしまい、量と時間が無くなって参りましたので、以下後日で勘弁なのですが(すいません)、論点は3つあって、その論点ごとに説明をしています。

『They muster three arguments. The first is that the Fed has pumped up the money supply and expanded its balance sheet to fund its financial rescue programs, potentially igniting inflation. The second is that the Fed runs the risk of repeating the errors of the 1970s by focusing on mistaken views of economic slack rather than rising prices. The third is that large fiscal budget deficits will create higher inflation. I take all of these concerns very seriously and will address each in turn.』

では以下後日に、ってどこの巨人の星(古いって)かよというツッコミは勘弁。


・ちなみに後日の前にこれは引用しておきましょう

んでもってその説明をした後に、これまた重要な話をしています。まとめの所なんですけどね。

『If anything, I’m more concerned that we will be tempted to tighten policy too soon, thereby aborting recovery.』

早すぎる引き締めへの懸念来ました来ました!

『That’s just what happened in 1936 when, following two years of robust recovery, the Fed tightened policy because it was worried about large quantities of excess reserves in the banking system. The result? In 1937, the economy plunged back into a deep recession.』

さよですな。

『Japan too learned that hard lesson in the 1990s, when both monetary and fiscal policies were tightened in the mistaken belief that the economy was rebounding.』

日本をネタに出さんでよろしいですが(-_-メ)。

『These episodes teach us a valuable lesson that we should heed in the present situation. Let this not be another 1937, but a time when policymakers have the wisdom and patience to nurse the economy back to health. And, when the economy does come back, let it be built on a foundation of sound private investment and sustainable public policies.』

『Only then can we be confident that we can escape destructive boom-and-bust cycles and build a more permanent prosperity. Thank you very much.』

ということで、講演の最後に「早すぎる引き締めへの転換を警戒」と最後まで時間軸という感じだったんですわな。なお、割愛した部分(インフレ警戒への3つの論点に関して)は後日(多分明日)ご紹介します。まあ時間軸強化の話とは別個の話題になりますので(と言い訳)。







2009/07/07

お題「さくらレポートとか相場雑談とか」

まずはさくらレポートから少々。

概要
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0907.htm
本文(量が多いので注意)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0907.pdf

○涙ぐましい芸の細かさ

今回の概要を見て最初に直ぐに目に付くのは『I. 地域からみた景気情勢』の判断前回対比の表に付けられた脚注です。曰く、

『(注)前回との比較の「」、「」(斜め向きの上と下の矢印ですが、貼れないので「」で勘弁)は、前回判断に比較して景気の改善ペースまたは悪化ペースが変化したことを示す(例えば、改善ペースの加速または悪化ペースの鈍化は、「(斜め上矢印)」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化ペースが変化しなかった場合は「(横向き矢印)」となる。』

前回の概要をご覧頂ければ判りますが、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0904.htm
この脚注は今回わざわざ新しく設けられたものでありまして、今回「全地域で現状判断が改善」となってニュース的に「良い」と言われるのを何とかして沈静化させようという意図が露骨過ぎで涙が出てしまいます。

よーするに今回は上記脚注にある『悪化ペースの鈍化』ですよと仰せになりたいという事のようですが、ここまで露骨に「丁寧な対外情報発信」をしないと行けないっていうのも何かこう幼稚園児扱いされているみたいで悲しくなって参りますな。

つーかここまで丁寧に言われてしまうっていうのは、「報道機関が日銀の意図を正確に伝える能力が低いから噛んで含めるような説明しないといけない」って言われてるに等しいのですから、報道機関の皆様におかれましては恥ずかしいとか思わないのかなあって感じなのですけどねえ(苦笑)。

で、ここまで細かくというか丁寧な対応が効を奏したのか、どこぞの経済新聞のネットニュースは時間の経過と共に書きっぷりの景気が悪くなっております(笑)。

7月6日配信記事ですが・・・・

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090706AT2C0600306072009.html
日銀総裁「景気の先行き、下げ止まり明確に」 支店長会議 (10:38)

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090706AT3L0604H06072009.html
景気「下げ止まりつつある」 日銀地域経済報告、判断引き上げ〔NQN〕(06日 16:01)

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090706AT1C0600B06072009.html
地方景気に「薄日」、日銀の地域経済報告 全9地域で改善。(06日 22:01)

ヘッドラインが時間の経過と共に(まあ最初のはさくらレポート出る前ですから仕方ないですけど)徐々に穏当になっておりますが、内容的にも、2番目よりも3番目の方が「でも水準はダメダメですよ」というのがより明確になるような書き方で、日経にしては珍しく、『北海道を除く8地域が景気の現状判断に「下げ止まり」の表現を使ったが、個人消費を含め先行き不透明感はなおぬぐえず、経済活動が低水準の域から抜け出せていないことに変わりはない。』(3番目の記事より)と穏当な書きっぷり。

まー細かい説明(^^)が効果を表して良かったですなあという所でしょうか(^^)。

#あと、もうちょっと細かい話をしますと、2番目の記事は〔NQN〕ってのが入ってますので、日経新聞本紙じゃなくて、クイックの出している記事だと思われますので念の為申し添えます。


○概要および地域別の現状判断時系列

『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、悪化ペースが鈍化しており、下げ止まりつつあるものの、引き続き厳しい状況にある。』

ということで、厳しい状況というのを継続してまして、今回はあくまでも『悪化ペースの鈍化』ですよという話。

『すなわち、公共投資は、増加している。また、在庫調整の進捗等を背景に、輸出、生産は、低水準ながら持ち直しに転じつつある。一方、設備投資は、企業収益の大幅な悪化等から、大幅に減少している。また、雇用・所得環境が厳しさを増すなかで、個人消費は弱い地合いが続いている。住宅投資も減少している。』

というのは金融経済月報で示されている通りです。

『こうしたなか、地域別総括判断をみると、前回との対比では、全地域で悪化ペースの鈍化が報告されている。もっとも、北海道が「低迷」、東北、北陸、近畿が「厳しい状況」としているほか、関東甲信越、九州・沖縄でも「大幅に悪化したあと」等を付言し、引き続き厳しい状況にあることを強調している。』

ひたすら「厳しい」のオンパレードになっていまして、福井の俊ちゃん時代のように「ちょっと良くなったと思うと鉦や太鼓で大騒ぎ」というような雰囲気が微塵も感じられない所に素晴らしさを感じますな。まー世間様的には過去のイメージから「日銀には引き締めバイアス」って言われますから、そーゆー点からも今回の「上方修正」に対して丁寧に「水準はダメです」という話をして火消しをしないといかんのでしょと思っているんでしょうかね。

直近1年間の推移はこうなります。

2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正


で、折角ですから前回からの継続で、昨年1月以来の1年半時系列で各地域の基調判断を引用してみましょうです。

北海道
やや弱めの動きとなっている
→やや弱めの動きが続いている
→弱めの動きとなっている
→やや厳しい状況にある
→厳しさが増している
→厳しさを増しており、低迷している
→低迷している

東北
全体としてみれば、緩やかな回復を続けている
→足踏み感がみられている
→足踏み感がみられている
→弱めの動きが広がっている
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しさを増している
→厳しい状況が続いているが、下げ止まりつつある

北陸
一部で弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
→減速している
→減速感が幾分増している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→依然として厳しい状況にあるが、下げ止まりの兆しがみられている

関東甲信越
緩やかな拡大基調にある
→やや減速している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある

東海
緩やかに拡大している
→緩やかな拡大基調にあるが、その速度は足もと鈍化している
→引き続き高水準にあるが、足もとは減速がはっきりしてきている
→なお高水準を保ちつつも、下降局面にある
→急速に下降している
→急速に下降している
→輸出と生産の持ち直し等から、下げ止まりつつある

近畿
緩やかに拡大している
→一部に減速の動きがみられるが、基調としては緩やかに拡大している
→減速している
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化しており、厳しい状況にある
→なお厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある

中国
全体として回復を続けている
→一部に弱さがうかがわれるものの、全体として回復を続けている
→全体としては緩やかな回復を続けているが、そのテンポは、このところ鈍化している
→一部に弱い動きがみられるが、全体としては概ね横ばいで推移している
→悪化している
→悪化している
→下げ止まりつつある

四国
緩やかながら持ち直しの動きが続いている
→持ち直しの動きがやや弱まっている
→横ばい圏内の動きとなっている
→やや弱めの動きとなっている
→弱い動きが広がっている
→悪化している
→悪化を続けているが、一部に下げ止まりの兆しがみられる

九州・沖縄
緩やかな回復を続けている
→回復に足踏みがみられる
→足踏み感が強まっている
→停滞している
→悪化している
→大幅に悪化している
→大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある

まあ水準感は低いままですなということで、需要項目別の展開は長くなるので割愛しちゃいますが、生産が持ち直しに転じているものの、設備投資と雇用環境の悪さは止まらず、特に雇用の悪化傾向が強調されている感じで、まあ内容的にもあんまり宜しくはないですわな。


○地域の視点

毎度お馴染みの地域の視点ですけれども、今回のお題は

『最近の個人消費動向の特徴点と消費関連企業の対応』

でありまする。でまあこちらなのですが、本文の方には図表入りで色々と詳しい話をしておりまして中々なのですが、概要での説明を引用しておきますね。

『最近の個人消費動向をみると、昨年秋以降、雇用・所得環境が厳しさを増す中、弱い地合いが続いている。5月には、近畿を中心に、新型インフルエンザの影響がみられたが、足もとでは小康を得ているほか、政府の経済危機対策が、自動車販売や家電販売等において一定の需要下支え効果を発揮している。』

という所に関して、本文の方では定額給付金、エコポイント、高速道路料金引き下げ(特に地方では高速道路料金引き下げって効いてるんでしょうかね)に関する調査の表とかもあってオモロイです。

『この間の消費行動については、節約志向・低価格志向が強まっているが、単純に消費マインドが冷え切っている訳ではなく、少ない予算で効率的に満足を得ようとする傾向がみられる。具体的には、(1)部分的節約志向(消費の基本的行動パターンは変えず、頻度の抑制や部分的にダウングレードする)や、(2)選択的節約志向(自らこだわりがある商品・サービスへの支出は可能な限り維持しつつ、その他の商品等への支出は徹底的に節約する)、(3)徹底した事前リサーチ(購入に先立つ事前リサーチ<例えば商品・店舗間比較>を入念に行う)といった行動が、各地域で指摘されている。』

『この結果、個人消費の弱さの影響は、選択的支出品目(贅沢品)、基礎的支出品目(生活必需品)を問わず顕現化しており、同じ財・サービスの中で、商品間や企業間の格差が広がっている。また、元々価格設定が低めの商品・企業や、政府の経済危機対策関連の財・サービスでは、需要が増加する傾向もみられる。』

どう見てもデフレ圧力です本当にありがとうございました。

まあ詳しくはまた紹介するかもしれません。


○市場雑談

さて本日は40年国債入札と6か月短期国債(国庫短期証券)入札。

40年国債の方はよー知らんのですが、2回債リオープンでその2回債の既発がレポでモノが出てこなくてSCでマイナス50だか何だかになったとか、そもそも全然モノ無し状態だとか、まーそんな感じらしいですな、よー知らんが。

でまあそれはそれとして6か月TBなんですけどね、こいつの方はどうなんでございましょというところでして、今回は年末越えの1月12日償還になるのですが、ウソツキWIの引けは無視しまして考慮しますと、前回の6か月即ち年内物の今は5か月ものになってるのが引けで0.145%と書いてありますので、まあ涙の出るようなレートになるんでしょうなあという所で。

ちなみに、3か月TBは昨日は堂々の0.14%出合いとかやってたようで、まー普通に14はビットサイドのようですが、期末越えで0.14%ビットとかどんなギャグだよとしか申し上げようがございませんですが、金が余っているのですから仕方ないという所ですか。

まー何ですな、政府の回復大宣伝モードに対する火消しの意味とか、変に出口期待が出るのを嫌ってという意味もあるでしょうけれども、日銀がここもと「上方修正しながらやたらめったら厳しさを強調する」という芸の細かいプレーを行っていることが、金融市場的には「時間軸の強化」に見えてしまったという仮説も成り立つような気がせんでもない訳でございまして(^^)、あちらを立てればこちらが立たずとはまさにこの事ですなあという所で(本当かどうかは知らん)。

しかし今日明日と6か月、3か月のTB入札があるんですけど、特に明日の3か月なんて0.14%割れとかだったらGCや現先で全期間回しても3毛負けまで行かないでしょとか考えてしまいたくなるのですが、そんな所まで行って利回りベースを考えて買う人がどこまでついていけるのよと考えますとオラもうシラネと存じますがどうなんすかね。









2009/07/06

お題「何か知らんが盛り上がって参りました!/その他少々」

○短観で時間軸とな

金曜の金利市場でございますが、米国雇用統計の残念な結果を受けまして見事に全ゾーンで金利が景気良く(悪くだが^^)低下。先週の場合は金曜が米国独立記念日休みということで、よくあるパターンの「週末の海外市場で足をすくわれるリスク」がございませんでしたので、安心して(??)買えるというものでありまして、もうスイッチ入ったんだか何だか知りませんが、中短期から長期から強いのです。

例に寄って例の如くですが、2年だの短期国債だのも強うございまして、2年カレントなんぞ朝っぱらから0.25%出合いとかやっておりまして、まさか木曜の朝に「これは0.25%くらいまでやらないと気が済まないでしょう」と言ったのが1日にして達成しやがるとは思わなかったのですが(汗)、まあ買ってますわなという感じ。

入札時はちょっと不調気味だった期末越え3か月TBも強い次第でありまして、こちらも朝っぱらから貫禄の0.145%出合いとなり、まーどーせこちらは普通に買いに行ったら0.14%とかになるんでござんしょ。期内物は引けは0.135%になってますけど、多分そんなもんじゃあないレベルにあるんでしょうなあという感じです。

2年もそうですけど、期内償還のTBなんてGCとほぼ同じレートになっているので、こんなの業者は在庫にできない(しても保有コストが下手すりゃネガティブキャリーだし、値上がり期待するにはあまりにも値上がり余地が無さ杉)ので、ふつーに投資家に嵌っているのだと思うのですが、まー全然モノが出てこないとはオソロシスであります。

いやね、こーゆー時に「じゃあ売れば良いじゃん」と言われるのはその通りでぐうの音も出ないのですけれども、こういう感じで「売った後に買う適当なモノが無い」というような状態になっちゃいますと、売るに売れないですし、短期の世界って別に売りをしなくても勝手に償還が素敵にやって来ますので、しなきゃいけない買いの方はございますがなという感じでしょうか。いやはや。

ちなみに、1年は0.16%水準まで低下しているのですけれども、これまたGCレートの足し算との比較発想からすると、そのレートってどうなのよという所なのですけれども、何せ3か月も2年もこんな感じで威勢良く買い進められる中でこちらもしっかり低下の巻という所かと思います。冷静に考えてちょっとその水準ってリスクプレミアム無さ杉じゃないのよという話はもうシラネ。



さて、2年0.25%1年0.16%と華麗な水準になっており、しかもこの水準でも買いスイッチ絶賛作動中という感じですが、これってまあ後付けで言えば「時間軸を強く意識してますよ」ってお話になるかと思います。あたくし的には、4月の展望レポートを見て「これを素直に読めば時間軸」というようなことを5月1日の駄文で書いたのでありまして、今更この期に及んで時間軸ってナンジャソリャという気はするのですけれども、まー言ってみれば「6月短観で時間軸を強く意識するようになりました」ってえ話になるんでしょうか。

いやまあ5月6月は米国の長期金利が上昇しましたし、それよりインパクトあったのは2年金利の絶賛急上昇(2日で50bpとか)だったので、その間は毎度お馴染みの様子見地蔵様がそこら中に鎮座して五百羅漢状態になっていたのでしょうけれども、あーた米国と日本は話が別でしょとか、米国が間違って出口政策とか言い出して(後に申し上げますが言い出さないのですが)も日銀がそう簡単に言い出さないでしょとかゆーよーな議論は様子見地蔵五百羅漢状態に対しては無効な議論らしく、結局安全確認してから0.30%割った2年を威勢良く買うとかもう(以下悪口雑言モードになるので自主規制)。

一応、後付理屈で言えば「日銀短観、日本のCPIおよび米国雇用指数動向で時間軸が強固化されました」ということになるのでしょうが、超短い所の人たち的にはちょっとその言われ方にも違和感あるかな?って所でございますな。

と、市場雑談というか市場愚痴(笑)でした。


○日銀レビューから少々

金曜にはこんなの出てました。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j07.htm
金融混乱下のスワップ市場と国債市場の価格発見機能
―― スワップスプレッドの動きから何を読み取るか? ――

本文PDFはこちら(9ページ(実質8ページ)です)。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j07.pdf

HTMLの最初の所にどういう分析してるか話をしてますけど、

『2007 年夏のサブプライム住宅ローン問題を契機とした金融混乱の影響が拡がる過程で、内外の金融市場は、金融経済状況に対する市場参加者の見方を価格に映し出す「鏡」としての機能(価格発見機能)の低下に直面した。例えば、銀行間取引金利をベースにしたスワップ金利と国債金利の乖離として定義されるスワップスプレッドが低下傾向を辿り、08 年秋のリーマンブラザーズ破綻後はマイナスにまで落ち込んでいることは、その一例である。』

『同スプレッドのマイナス化をそのまま解釈すれば、市場参加者は、金融混乱下にあって、国よりも金融機関の信用度が勝ると認識していることになるが、それは非現実的なシグナルと考えられる。こうした現象は、市場参加者の資金流動性制約がタイト化したり、彼らのリスクアペタイトが低下した結果、裁定取引や投機的取引が減少し、市場の価格発見機能が低下したことが影響しているとみられる。(以下略)』

ということで、スワップスプレッドの説明と、昨年秋以降の動きをそれ以前と比較して分析してます。で、中身はそんなにややこしい話ではなく、サラサラと読めてしまいますが面倒なので引用は割愛して雑感を。

まず、LIBORとGCレポレートのスプレッドで銀行部門のリスク要因を把握する代わりに6か月TB金利を使っていますが、まあ他に適切なものが無いですからそんな感じで良いのかなとは思いますが、そもそも東京レポレートの6MGCって多分TBの金利見て出している節がありますので(^^)、ちょっと微妙っちゃあ微妙かもしれませんね。

とりあえず「現物VSスワップ」ポジションの構築および維持という点で言えば、現物に関るポジションは実際問題としてはGCまたはSCをショートタームで繋ぐしか無いので、そーゆー意味で言えばLIBORとGCレポレートの裁定関係というアプローチも実際問題を考えた場合もう一段階の考察が必要になるんでしょうなとも思いますが、まー今回のテーマは参加者の金利感の反映がどうのこうのという話ではないので、分析としてはこんな感じかなあって思います。


○イエレンさんの講演からちょっとメモ

今更ですがちょっと読んでみました。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0630.html

量がクソ長いので、一々ご紹介しない(時間も無いし)ですけど、一応あたくしが怪しげな英語力で読んだメモ。

金融政策や経済状況に関しては、デフレ警戒、インフレ懸念無し、早すぎる金融引き締め警戒というような話をしてまして、ここもとの出口政策懸念に対する強力口先介入になってますわなという感じです。リンク先にPDF版がありますけれども、6ページ目くらいから先をヘコヘコ読むと良さそう(でも全部で16ページくらいあるんですが)ですね。

ただまあバランスシート拡大策の出口に関するイエレンさんの話って、インフレは制御できるって話なんですけど、「バランスシートはコントロールできる」とか「財政赤字拡大による財政インフレに懸念無し」って話は確かにしてるんですが、どうも外野的にはそれって単に根拠薄弱の中自信満々に言ってるだけじゃねえのという気もせんでもない。つまり、バランスシートのコントロール力って言いましても、付利金利引き上げとか準備預金率引き上げとかいう話にならざるを得ないです(さすがに長期国債やMBSの売り切りは無茶でしょ)し、財政赤字問題に関しては最後には日本まで引き合いに出すのですが、「日本は米国なんて目じゃない財政赤字を何年もやってますがインフレどころかデフレ警戒ですよ」というのはさすがにあーた無理筋の理屈じゃねえのって感じですか。

ま、確かにこの手の話は信じる/信じないによって鰯の頭も信心から状態になるのもあります(FRBはグダグダにも程があると思いますが、世の中的にはそうはなってないのでしょ、どーせ)ので、こうやって自信満々モードというのも重要だというのは判るのですがねえ・・・・・・

色々引用したくなったら(=ネタが無くなったら)蒸し返すかもしれません。






2009/07/03

お題「今日もまあ雑談でございます」

いつも雑談じゃろというツッコミは勘弁して下さいm(__)m

○この期に及んで時間軸ですかそうですか

昨日は10年国債入札でございましたが、入札の方はあまりパッとしなかったようで、長いところはイマイチさん。そんな中で強かったのが2年とかでございまして、カレントの2年282回債は貫禄の前日比1.5毛強で0.275%がマジ出合い。ちょっと手前の2年279とか280回は2毛強と、昨日最強となっておりました。

まあそこまで威勢良く買う理屈もよーわからん(単に長いところからの資金移動なのかも知れませんし)のですが、さすがに0.2%台突入となりますと、これはまー足元金利の足し算の世界で考えてリスクプレミアム乗ってるのかよという水準ではないかと思うのですよね。

と申しますのは、この0.30%割れ水準って今年の1月下旬頃の3か月FBの水準でもあったりするのでして、まあ確かにこの時期は面白調節によって当座預金残高が11兆円近辺で推移させられた事から、無担保コール翌日物が0.12%位の水準でGCレートが0.2%台で推移するという状況で、今とは全然違う(違うからレートが下がったのですけど)次第ではございます。

・・・・とゆー事は、現在の金融政策のディレクティブの下においても調節の匙加減でこの位のレート上昇をすることはアリエールな訳なのでして、いやまあ手前から金利潰しに来てるからそうなりますってえのは判りますが、足元金利の足し算という観点からするとさすがに何だかなあ感が漂うのであります。でも今の勢いだと(米国雇用統計もヒャッハーの内容でしたし)2年カレント0.25%位までやらないと達成感無し無しという所かと存じますが(^^)。


で、またまた強いのが3か月TBでもございまして、入札後の一昨日は0.155%の叩き料理をやっていたのですが、昨日はさっくり0.15%に低下でござるの巻。期内償還物の引け値はやっと0.14%になったようですが、どうせ買いに行ったらもっと強いんでしょと思われる有様。

えーっとですね、GCレートなんですけれども、ファンディングサイドからすると月中平均ってここもとの割と潤沢系の供給の中で、だいたい0.12と0.13の間くらいになると思うのですけれども、それに対して期内償還物で実力0.14%より多分低いという短国の利回りは、どう見てもファンディングコストから見て間尺に合わない水準だと思います。でも世の中には別のロジックで市場に入ってくる人もいる訳でして、GCでファンディングのレートがどうのこうのとか、期中をGCや現先(債券とかCPとか)で回す比較をしてどうのこうのとかとは関係ない人の買いがまだまだ継続ちゅう事なんでしょうな。おーおそろし。

1年どころも気が付けば短国で0.175%だわ2年中期国債の残存1年ゾーンで0.165%だわと、つい数か月前にGCが0.1台後半から0.2台で推移していたのをすっかり忘却せんばかりの勢いになっておりまして、中々ビューテホーな姿焼き状態になっております。

しかし何ですな、数か月前のレートを出すまでも無く、6月の上旬って5月積み期間前半に当座預金残高を14兆円水準に積み上げた分の調整で6月1日から12兆円台に削ったという調節やったらその後暫くGCが0.14−15レベルで推移しましたでござるとかやっていたのですけれども、0.15%を割ってまだまだ買い進まれる短期国債ってあーたそれすっかりそのようなことも忘却しているのでしょうかとツッコミたくなるところではございまする。

ま、さっき申し上げたように、GCだのファンディングだの細けぇこたあいいんだよ!って人の買いが支えているんでしょうけどね!


てな次第で、現象面としては「今更時間軸効果を意識した価格形成」と後講釈をしようと思えばできる(ついでに申し上げれば、そういう後講釈をした方がネタとしては楽しめます)状態になっておりまして、時あたかも相変わらず絶賛弱含みのCPIとか、絶賛ダメダメ水準の日銀短観とかが出た上に、先日はイエレン先生がFRBの金利政策に関して時間軸を意識させるような発言をしたりと、いい感じでネタを補強するものがありますので、ネタとしては「SF連銀イエレン総裁の時間軸発言が日本に波及したでござるの巻」とするとオモロイという事になるかと存じます(^^)。

実際に時間軸どうのこうのって話になると、まー正直言って1年以内の所をやってる参加者的には「1年以内の金利変更なんぞ無い無い」ではあったと思いますが、米国がどうだの増発がどうだの平均株価10000円がどうだのとか微妙にアレな状態が続いており、2年の金利がよー下がらんという感じだったのが、各種買わない理由(リスクシナリオとも言う^^)が徐々に潰される中でシャーナイナイという事になったとでも解釈して起きましょう。

ま、運用資金が余って出てきましたとか、プリオン肉食いすぎ国家の楽しい楽観モードが少し冷えてきたとかの複合要因なんでしょうけど、時間軸意識!ってしておくと話のネタとしては面白い(が、冷静に考えればもっと状況が悪い時に何故時間軸を意識しないというツッコミ論点がありますわな)ので。

イエレン総裁の講演のURLを置いときますね。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0630.html


○先月は短めが多かったのね

毎度お馴染みの国債買入残高
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0906.htm

6月が終わりましたので、6月末時点での残存1年以内と残存1年超2年以内の残高の銘柄が微妙に入れ替わります。で、あたくしが手元のエクセルでヘコヘコ計算させたら残存1年以内銘柄の増加額が7586億円で残存1年超2年以内銘柄の増加額が5338億円となりました。

だいたい1兆8千億円くらいの増分に対して、2年以内でだいたい1兆3千億円くらいを占めるの図となりまして、そりゃまあ6月は12日以降連日債券市場強かったんで必然的に短い所が入りやすくなるという背景もあるのですけれども、結構今回は短い所が入った感じですな。ちなみに5月は同じように計算させたら同じくだいたい1兆8千億円くらいの増分に対し2年以内で7000億円くらいの増分となっておりましたんで、6月の短いゾーンの入りっぷりは中々という感じですね。

まー今申し上げましたように、債券市場がかなりの期間連日強かったのでこーなってしまうのは自然でして、即ち「長期金利が低下傾向にある時は結果として日銀の買入長期国債は短い期間のものになる」という、端から見るととっても不思議な展開になるのでありました。なお、債券市場実務担当者的にはそんなのは全員が知ってるので不思議でも何でもないのですけどね!!

#何か他にネタがあった気がするんですが時間が無いので全部雑談で勘弁








2009/07/02

お題「短観出ました/3か月短国入札とか」

ということで短観。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0906.pdf

○ちゃんとした分析は本職の方のを読みましょう

まずはいつも見てる奴を。

・業況判断DIの達成度合い

3月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。前回は12月時の予測の斜め上を行く悪化を特に大企業が演じましたでござるの巻でして、中堅中小企業よりも大企業の悪化が目立つという結果でした。

で、今回はと申しますと・・・・・

            (3月時点)      (6月時点)
           現状→6月予測   現状→9月予測
製造業大企業   ▲58→▲51     ▲48→▲30
製造業中堅企業 ▲57→▲61     ▲55→▲46
製造業中小企業 ▲57→▲63     ▲57→▲53

非製造業大企業  ▲31→▲30     ▲29→▲21
非製造業中堅企業 ▲37→▲45    ▲36→▲32
非製造業中小企業 ▲42→▲52    ▲44→▲45

今回は前回から大企業製造業DIが10も改善ということですが、そもそも論として前回の予測で8改善になっていたので、その程度の改善はしていただかないと困りますがなという所でしょうか。

3月時点での予測数値よりも実際に6月になった時の数値が好転しているのってえのは、実は上向き方向になっている時の仕様でもありますので、次回短観で今回の予測数値を達成し、それ以上にDIが改善という事になると、中々美しい話になると思います。


・雇用判断DI

前回は全カテゴリーで余剰になるわ、製造業のDIが猛烈に悪化するわという泣きそうな結果でしたが。

            (3月時点)       (6月時点)
           現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業  +35→+32      +33→+24
製造業中堅企業 +39→+37     +37→+29
製造業中小企業 +39→+40     +40→+34

非製造業大企業  +3→+6        +7→+4
非製造業中堅企業 +7→+10      +11→+8
非製造業中小企業 +8→+12      +13→+11

相変わらず全部余剰なのは変化なし。3月時点での見通しから殆ど外れていません(6月だからなのかな?)。今回の先行き見通しが正しければ、製造業中心にだいぶ改善してくれるという話になるので、これはこれで先行きの希望だけは持てるような気がします。気のせいかもしれないけど。


・証券業の業況判断

今回も長期時系列を更新。サブプライム爆発前でありますところの昨年6月調査分から並べますね、前回▲76でしたが・・・・・

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
(6月時点) ▲29→▲21

さて、このインプリケーションですが、この流れを見ると「株式市場は当面堅調に推移する」という答えになるのです!

な、なんだってー!(AA略)と言われそうですが、前回の時にあたくしこんな事を(半ばヤケクソで)書いたんですよ。

(4月2日に短観のインチキ分析をしながら書いた文を引用)
唯一の救いは今回の先行き予測から願望成分がかなり払拭されてきたことではないかと思います(^^)。パリバショック以降毎度毎度先行きの予測に願望成分が入っていて「3か月後は今よりも改善ですよ!」という数値になっていたのですが、願望成分の多さをもって鳴る証券業の業況判断からかなりそれが除去されてきたのは底打ち確認サイン近しということで(本当か??)。
(以上引用終了)

・・・・良く見ると、次回予測が前回同様に、足元の数字とあまり大差が無いのでござんすな。ということは、願望成分入れまくって外すのが仕様となっている証券業DIクオリティを勘案すると、株式市場は当面堅調推移というのが結論になる。とまあこういう話になるのであります、ゲラゲラ。

#なお、念の為申し添えますが、投資は自己責任かつ自己判断で行って頂きたく存じますので、株式市場が底割れしても謝罪も賠償も致しません(^^)。


○企業金融関連は読むのがコツがいりそう

で、短観のもう一丁のネタの企業金融なんですけれども、これマジメに読んで見ると中々読むのにコツがいるのかなあと思いましたです。はい。

・資金繰り判断DI

      (3月時点) (6月時点)
大企業    ▲4     +1
中堅企業  ▲11     ▲7
中小企業  ▲23     ▲20

大企業がプラスに復活していますが、中堅中小企業はまだまだ厳しいですねという絵に描いたような結果になっております。


・貸出態度判断DI

      (3月時点) (6月時点)
大企業   ▲17     ▲9
中堅企業  ▲11     ▲9
中小企業  ▲14     ▲13

中堅中小ほど貸出態度の好転度合いが低いと。しかし3月時点での貸出態度判断DIが大企業の方が悪いってのは何か悪い冗談みたいですね!!

ということで、アンケートだけに微妙な結果も出るんですねとか思いながらその先の結果を見ると、これまた謎な結果が出てくるのです。


・借入金利水準判断(プラスが金利上昇です)

           (3月時点)      (6月時点)
         現状→6月予測   現状→9月予測
大企業      +6→+17     +5→+15
中堅企業    ▲8→+9      +3→+14
中小企業    ▲10→+2     +2→+12

中堅中小企業の借入金利水準が前回低下してたのに上昇ですかそうですかというのは残念感が漂うのですが、大企業では基本的に足元の資金需要が一巡して年末から年始に掛けてウハウハ金利で貸出をしていた銀行のローンがロール時期になっているので、もうちょっとこの辺の数字が改善してるのかと思いましたが。

で、もっと不思議なのは先行きの金利に関して「上昇する」が現状判断よりも増えていることなのですが、これってどうも短観の仕様みたいでして、過去の短観データをクリッククリックしながら眺めていたのですが、量的緩和実施の2001年3月調査時点でも「先行き予測数値」は金利上昇という結果になっていたりするので、どうも「先行き借入金利上昇」というのは仕様ということで。ちなみに、先行き予測で「現状よりも好転」という話になるのは97年とか98年くらいに遡るみたい(全部見てないので見落としはあるかもです)な気がします。もしかしたら、「借入金利が上昇する懸念を持ってると思われた方が日銀に対するプレッシャーになる」っていうような事を答えながら思ったりしてるのかな(^^)。


・CP発行環境判断DI(プラスが楽でマイナスが厳しい)

      (3月時点) (6月時点)
大企業   ▲24     ▲14

えーっと、各種オペを継続して欲しいので厳しいと答えているんですね、わかります。マジメな話、a-2以下の企業とかa-1だけど長期格付的にはちょっと微妙な発行体さんの環境は楽とは言いがたいですけれども、発行している企業の頭数的に考えたら調査時点で発行環境が厳しいとかナンジャソリャという感じなんですが・・・・・


ちゃんとした分析はちゃんとした本職の人のを読みましょう。それから今日出る業種別の細かい計数がマニア向けには大変に楽しいらしいですよ!


○市場雑談

昨日は3か月短期国債の入札。

既発の期内償還物がとにかく堅調、というか業者に持ちが無い中でコンスタントに買いがやってくるでござるの巻になっていて、その流れで期末越の新発36回債も入札前から強くなって、入札前のWIで0.15%絶賛出合いで15ビットで入札を迎えました。

で、結果なんですけど、足きりが99.9620円(0.1524%)になったんですが、前場の板およびここもとの流れからするとその1個上が足きりかという所だったので「あら入っちゃいました」という結果。落札状況的にもいつもよりも不明が少なく、まあ普通に平準的に買う人のオーダーは確りあったのでしょうけれども、大手銀行さんの札がイマイチでござるの巻という所で、セカンダリーもそんなに盛り上がらずとなって、最後は0.155%の出合いとな。

まー「期末越えなんて細けぇこたあいいんだよ!」という人もいるにはいたのでしょうけれども、それはそれとして大口一発で買ってくれる大手銀行さん的には10月5日償還だと償還が期初にしても早すぎで、償還再投資にも困りますし、その上期末の時点でこの銘柄は償還の関係上担保に使えない(筈です、間違ってたらゴメンナサイ)ので、まあ一番使いにくい銘柄という話になるんでしょうな。

ただまあ相場的には、期内償還銘柄は相変わらず強い(引け値0.145%になってるけど、まともに買いに行って0.14で売ってくれるのかね状態だと思う)ですし、1年とか2年とか強くて、とうとう2年カレントがロンバート割ってしまいましたでござるの巻と、何故か今更時間軸状態のような相場をおっぱじめるの図となっておりまして、何という投資家炙り出し相場と言った所です。

しかしまあ何ですな、短期国債のレートが素敵に低下した結果、CPと短期国債の逆転現象が解消という感じになっているのですが、これってエッシャーのだまし絵みたいなもんですな。たぶん(^^)。

で、10年入札に関してはオラもうシラネという所です。さあ炙り出し炙り出し。






2009/07/01

お題「7月ですが絶賛世間話で恐縮至極」

短観ですが今日は絶賛雑談大会です。勝負は今日からですよ(棒読み)。

○短期国債がやたら強いんですけど

昨日は何かよー判りませんが、途中から中期債がヘロヘロになっておりましたが、引け値を見ますと如何にも中期の4年とか近辺に売りが出ましたという感じですので、5年カレント0.7%割れを受けて利食い売り炸裂という事になったんでしょうということで、先物以降はいい感じ上昇というか金利低下しているのですが、中短期は弱いという不思議展開。

それはそれで良いのですが、そんな中でつえええええという状態なのは短期国債の特に3か月以内の所でありまして、まあ強いのは昨日に始まった事ではなくてここもとずーっと強いのですけれども、昨日は3か月カレント物が0.145%で出合いとかやっておりまして、まあ普通に買いに行くと0.14%とかになるんじゃネーノという有様。GCが元の位置に戻ったとしても0.11から0.12位って世界ですから、3か月までの所で全然タームプレミアムが乗っていないでござるの巻(末初抜けましたけれども多分まだ下がって14-15位だと思うんですけどね)。

状況としては業者の持ちが無くて、何か買いたい人はいるって所で、おまけにいつもだと水準感で売ってきそうな人も全然売って来ませんがなという所で、まともにロットをセカンダリーで買おうとしても買えません状態。純粋に運用商品としてみた場合、ここから3か月を0.14%でFIXしますかって話になると、投資妙味が無いにも程がある(GCや現先で全部転がしても何ぼなんでも平均0.12程度では回るんじゃねえのという話で、FIXする事による流動性プレミアムのお値段として間尺に合わないっしょ)かと思います。でもまー今の買いは運用商品としての買いだけじゃなくて、とりあえず「短期国債というモノ」を買いに来ている人がいそうな感じがプンプンする訳でして、そーゆー人にとってみると3か月の1bpなど「細けぇこたあいいんだよ!」って話になりますので、こんな話になるんでしょうなという感じかと。

ちなみに、3か月のカレントTB35回債は償還が9月29日でして、「期内最終物」という点で「使いやすい」銘柄でもありますが、今日入札をやるのは10月償還(10月5日)になりまして期越えになるので、期越えだと買わないのか、単にキャッシュを潰したいので「期越えとか期内償還とか細けぇこたあいいんだよ!」となるのかはその手の買い手さんのご判断次第ではございますな。


でね、まあそれはそれとして、日本相互証券の短期国債引け値が暫く前から業者の投票方式になった訳ですけれども、昨日の引け値でやっと8月4日償還以降が全部0.15%になってますが、ここもとずーっと実力よりも弱い(レートが高い)引け値にされていまして、いやまあ店頭取引をベースにしたモノの引け値で、あくまでも相対の世界ですから業者様が「これが引け値」と言ったら別にまあそれが引け値で宜しいのでありますが、いざその引け値表を見て買いに逝くと、しょぼいロットなのに「1毛強です」とか(昨日の0.14%だと1毛5糸強だわな^^)とか言われるのが恒常的になりますのは、「その引け値ってナンナノヨ」という話になる次第でありまして、まー投票方式も良し悪しという所ですなあという感じございまする。

あ、念のため申し上げますと、需給が偏っている状態ではask-bidのスプレッドが開くから、そもそも引け値を一本値で出すというのが問題であって、スプレッド開いている状態なのに文句いうのは筋違いとか、お前のいう実勢って何だよという論点は当然の如くございますので一応ここでヘッジしておきますね(^^)。



○さて短観

短観は大体前回より改善というのがコンセンサスみたい(大企業製造業で現状判断DIの予想が▲40台前半でしたっけ)ですが、あたくし的に今回注目するのは企業の資金繰り関連などの企業金融環境に関連する数値がどの位改善する(または全然改善しない)のかですという話は以前申し上げました通り。

企業金融支援関連の日銀の各種施策でございますが、常々申し上げておりますように企業金融支援オペ効果でCPレートが官民逆転(ここへ来て短期国債が下がって逆転が解消になったんですが、それは逆転解消というのとちょっと違う気がする)でござるの巻となっております次第ですが、企業金融支援策がワンセットなのか個別なのかという話も微妙(中村審議委員の会見ではワンセットというニュアンスでしたけど、白川総裁の会見ではどっちだか読み取れなかったかな)ではございますが、その辺りも含めまして今後の動向は気になる所でございます。まあ8月会合で結論は出ると思いますが。

各種施策が条件も含めて全部でワンパッケージというのであれば、少々の短観改善如きでも関係なく延長という話になるでしょうが、一部中身をいじるというのが選択肢として存在できるのであれば金融環境改善を認識した場合にはまー何かやる事もできそうだとは思いますが、はてさてどーなるのでしょうかね。



○珍しくも国の債務管理の在り方に関する懇談会ネタメモ

珍しくこんなネタを。これ書いてる時点ではまだ前回会合の議事要旨が出てませんが。

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/top3.htm

「資料3」の物価連動国債に関するお話
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/siryou/d210624_3.pdf
(資料作成しているのはバークレイズ・キャピタル証券です)

・・・・中々泣けるのですけれども、物価連動国債をもうちょっとワークさせるにはどうしたら良いですのって話はなるほどねえと思いつつ読むのでありました。まーBEIトレードの需要だけじゃあしょうがないので、需要を喚起する方策が必要って話ですが、その中ではやはりCPIに連動する負債がどっかに出て来るような方策を採りましょうねって非常に迂遠な話かもしれませんが、やっぱ本質的な解決は最終投資家需要を掘り起こすことじゃないかなあと思います。


「資料4−1」の個人向け3年固定金利型国債導入
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/siryou/d210624_4-1.pdf

毎月発行で個人向け3年を出すという話ですが、かつての2年中期国債の窓販をイメージさせるような「毎月発行」でございます。まー個人向け販売という点で言えば確かに毎月発行の方が使いやすい(それこそ毎月ラダーで買って償還ロールをしておけば利息が毎月入ってくるので年金感覚になりますしね)なあと思いますので、この形態は良さげですね。3年だとそんなに長くないし(5年ものだとさすがにちと長いなってイメージが)。

あとは利率がどのくらいになりますかってえ話にはなると思いますが、2年中期国債は窓販商品としてはそれなりに機能してた(大昔の話ですが)と思いますので、元本保証付きで3年だったら今の5年よりは売れるかなとは思います。できれば3年よりも2年の方が買いやすいとは思うのですが。

あとはこの中途換金の部分ですが、「ペナルティー払えば換金可能」にした方がイメージ的には買いやすくなるような気がするんですけど。個人向け国債で元本割れるというのは確かにあんまりイメージ的に良くないですけれども、「中途換金可能かどうか」っていうのは(経済的に同じであっても)「可能」となっているのと「不可能」となっているのとでは買う方的にはイメージが違うと思います。特にじーさんばーさんとかだと「病気などになって急に必要になった時に中途換金が出来ないんじゃあねえ」って思うんじゃないかなーって気がするんですけど・・・・

#5年はクローズの期間が2年もありましたが、今回の3年はクローズが1年なので少々マシだとは思いますけど。



「資料4−2」の国債金利情報の提供
http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/siryou/d210624_4-2.pdf

これはまた新企画。と思ったら売買参考統計値がベースになるんですかそうですか。


ところで、財務省繋がりで別の話ですが、今年分の「特別会計のはなし」が出ているようですが、まだ読んでいない(というか量が大杉ですからねえ)のでURLだけおいときますね。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/tokkai2106.htm