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2009/08/31

お題「選挙雑感とバーナンキ議長講演と」

http://www2.asahi.com/senkyo2009/kaihyo/A13001.html
唯一ネ申によって地獄の火の中に投げ込まれる事になる東京1区の718名以外の皆様が心配でございます。

で、幸福実現党とは一体なんだったのか・・・・・・

○選挙雑感

朝起きてみたら開票速報での各社予想よりも民主が少なくて単独3分の2にならなくて正直ホッとしました。しかしまあ小泉劇場のワンフレーズ選挙での学習効果とかが1ミリも無いのが泣けてくる次第です。まあ個人的にはもう51対49でアホのように差がつく小選挙区は勘弁して欲しいので、完全中選挙区とか、大選挙区制限連記制にするとかに直して欲しいものであります。それから相変わらず「比例復活」というのは意味不明にも程がありやして、何のための小選挙区投票なのかと思うのですけどね。

でまあ相変わらず悪態をつく訳ですが、当選したミンスの皆様が口々に「官僚に独占されていた利権がどうのこうの」とか言うのを聞いておりますと、あたくしとしては「俺たちに利権を寄越さない今の行政はケシカラン」と言っているようにしか聞こえない訳でありまして、壮絶な利益誘導政治をやらかすんじゃねえかと思う次第。つまり昭和初期の腐れ政党政治みたいな有様になるのが懸念されますが杞憂だといいですね(棒読み)。

何せミンス様におかれましては、日銀の金融政策に関連して「与党が利上げ反対で圧力を掛けるのはケシカラン」と言いながら、いざ総裁人事になった時に武藤さんの就任に対して「低金利政策を長期化させてケシカラン」とか言い出す(他にも大蔵省だからケシカランという最早説明になってない説明をしてたけど)次第で、「日銀に政治干渉する自民党はケシカラン」というのは「お前らじゃなくて俺たちに政治干渉させろ」って意味だったんですわな。

「国策捜査はケシカラン」と言ってたのが同じ意味で全くもってシャレにならないのですけどねえ・・・・「政治主導」で何をしだすのかガクガクブルブル。

つーことですから、日銀の審議委員人事(現在1名欠員で水野さんが12月に任期到来)に関しても訳の判らんことを言い出すのでは無いかと大変に心寒いものを感じますです、はい。

政権交代したからと言って急に褒め称えるとかいう事はしないあたくしですけれども、どうもあたくし根がひねくれ者なせいか「皆が良いと口をそろえて言うものは碌なもんじゃない」という素敵な根性があるようで、郵政民営化も政権交代もナンジャソリャとネガっていましたので、今回もまた世に背を向けてせいぜいネガる事としとう存じます。


○バーナンキ議長の金融危機に関するスピーチから少々

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20090821a.htm

Reflections on a Year of Crisisってお題のスピーチでして、特に2008年秋からの金融危機拡大の状況およびそれに対する金融政策対応に関する説明をしています。

んでまあ色々と説明しているのですが、危機に対応する金融政策対応に関して最後の方で説明しています。18パラグラフから参ります。

『In response to these developments, the Federal Reserve expended the remaining ammunition in the traditional arsenal of monetary policy, bringing the federal funds rate down, in steps, to a target range of 0 to 25 basis points by mid-December of last year.』

と、まずは利下げをしまして、資産買入に関する政策に関しては、

『It also took several measures to further supplement its traditional arsenal. In particular, on November 25, the Fed announced that it would purchase up to $100 billion of debt issued by the housing-related GSEs and up to $500 billion of agency-guaranteed mortgage-backed securities, programs that were expanded substantially and augmented by a program of purchases of Treasury securities in March.』

ということで。で、この政策目的ですが・・・・

『The goal of these purchases was to provide additional support to private credit markets, particularly the mortgage market.』

いつものFRB声明文にあるとおりですけれども、民間クレジット環境の改善とある事に関して「特にモーゲージ債市場」と言っていますね。で、あたくしメがここの所「信用緩和と量的緩和」の整理をしている中で申し上げておりますし、水野審議委員の講演でもありましたように、FRBのこれらの買入って「潤沢な資金供給」は行うけれども、その資金の量に関してどうのこうのという政策ロジックなのではなく、あくまでも市場機能の回復あるいは市場への信用供与という文脈なのですな。

『Also on November 25, the Fed announced the creation of the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF). This facility aims to improve the availability and affordability of credit for households and small businesses and to help facilitate the financing and refinancing of commercial real estate properties.』

で、TALFは家計や中小企業の信用のクレジットの供給可能性を高める事によって商業用不動産のファイナンスやリファイナンスをサポートするとな。

『The TALF has shown early success in reducing risk spreads and stimulating new securitization activity for assets included in the program.』

ということで、証券化関連の活発化やリスクスプレッドの縮小が顕著に見られたという効果を発揮しましたと、こちらでも個別市場の改善の話をしているのであります。

次のパラグラフでは他国の政策に関して。

『Foreign central banks also cut policy rates to very low levels and implemented unconventional monetary measures. For example, the Bank of Japan began purchasing commercial paper in December and corporate bonds in January. In March, the Bank of England announced that it would purchase government securities, commercial paper, and corporate bonds, and the Swiss National Bank announced that it would purchase corporate bonds and foreign currency. For its part, the ECB injected more than ?400 billion of one-year funds in a single auction in late June. In July, the ECB began purchasing covered bonds, which are bonds that are issued by financial institutions and guaranteed by specific asset pools. Actions by central banks augmented large fiscal stimulus packages in the United States, China, and a number of other countries.』

ということで、バーナンキ議長は他国の政策に関してはとりあえず事実の説明のみを行っています。で、ここ見てて思うのですが、日本の強力オペ「企業金融支援特別オペ」の話が残念な事にスルーされている(ECBの1年オペは説明あるんですけど)のですな。指値無制限オペの金利押さえつけ効果についての言及が無いのは話が長くなるからスルーしているのか、それともFRBはその手のオペをやっていないからその強力効果ぶりにイマイチ認識が無いのかというのが少々気になる所であります。

んで次の(第19)パラグラフはストレステストの話をしているのですが・・・・・

『On February 10, Treasury Secretary Geithner and the heads of the federal banking agencies unveiled the outlines of a new strategy for ensuring that banking institutions could continue to provide credit to households and businesses during the financial crisis. A central component of that strategy was the exercise that came to be known as the bank stress test.』

はいはい。

『Under this initiative, the banking regulatory agencies undertook a forward-looking, simultaneous evaluation of the capital positions of 19 of the largest bank holding companies in the United States, with the Treasury committing to provide public capital as needed.』

ふぉわーどるっきんぐなしみゅれーしょんですって??

『The goal of this supervisory assessment was to ensure that the equity capital held by these firms was sufficient--in both quantity and quality--to allow those institutions to withstand a worse-than-expected macroeconomic environment over the subsequent two years and yet remain healthy and capable of lending to creditworthy borrowers. This exercise, unprecedented in scale and scope, was led by the Federal Reserve in cooperation with the Office of the Comptroller of the Currency and the FDIC. Importantly, the agencies' report made public considerable information on the projected losses and revenues of the 19 firms, allowing private analysts to judge for themselves the credibility of the exercise. Financial market participants responded favorably to the announcement of the results, and many of the tested banks were subsequently able to tap public capital markets.』

それはそれはとっても良かったですねえ(棒読み)。しかし金融機関の資本不足問題とか本当に再燃しないんでしょうかねえ・・・・・

ということで、政策対応に関する説明の最後が第20パラグラフなのですが、ここでもあくまでも市場機能に関する話、即ち量がどうのこうのの話ではなく、信用緩和という文脈になっていますな。

『Overall, the policy actions implemented in recent months have helped stabilize a number of key financial markets, both in the United States and abroad. Short-term funding markets are functioning more normally, corporate bond issuance has been strong, and activity in some previously moribund securitization markets has picked up.』

ということで、死亡寸前の市場を引き上げるという話ですな。市場機能市場機能。

『Stock prices have partially recovered, and U.S. mortgage rates have declined markedly since last fall. Critically, fears of financial collapse have receded substantially.』

『After contracting sharply over the past year, economic activity appears to be leveling out, both in the United States and abroad, and the prospects for a return to growth in the near term appear good.』

そういやバーナンキの景気底打ち発言で株式市場が反応したとかこの講演のあたりでございましたが、もしかしてここの部分に反応したのかしら??

『Notwithstanding this noteworthy progress, critical challenges remain: Strains persist in many financial markets across the globe, financial institutions face significant additional losses, and many businesses and households continue to experience considerable difficulty gaining access to credit. Because of these and other factors, the economic recovery is likely to be relatively slow at first, with unemployment declining only gradually from high levels.』

ということで、底打ちしたとは言っても色々懸念はありますよと。

で、この講演ですが、第8−9パラグラフで「リーマンをこかしてAIGをこかさなかった理由」についてまあ苦しい言い訳をしているのとかが香ばしかったりするのとか、今引用した部分の次に『Interpreting the Crisis』という小見出しの部分があるのですけれども、こっちの話は主にリクイディティ供給の話が多くて、FEDビューVSBISビューみたいな観点は華麗にスルーしているのがチャーミングなのでありますが、それはまあ紹介するかもしれませんし、紹介しないかもしれませんです、はい。











2009/08/28

お題「各種雑談と水野審議委員講演からまたまたネタ拾い」

既に民主党圧勝が織り込み済み状態になっているので、なんか投票する前からオタワ感がしますが、投票は忘れずに(^^)。あたくしも忘れずにいかないと♪

○先生!うちの2年債市場ちゃんが(以下同文)

昨日は2年国債の入札でございましたが、一応何か配慮してくれたのかどうか知りませんが0.3クーポンで発行。残存短くなってからのニーズ考えるとオーバーきつくならない方が買いやすい人がいるので、別に0.2でも同じじゃんとか思いましたが(笑)、一応ご配慮恐縮のクーポンでございます。

で、前場引けの板が0.245/0.250でガチガチにされて、間のレートがWIで出合って足きりが0.247%(100円10銭5厘)というどっかで見たような入札だと思ったら、こりゃ昨日の短国みたいな入札ですねえという感じでありまして、時間軸効果によって短国化が後ろに波及でござるの巻という講釈をしておけば良いのでしょう。落札メンバーを見てるとどう見ても銀行勢の余資潰しです本当にありがとうございましたという感じです。

まあ本当に短国化すると平均がオファーサイドの向こうとかにならず、より一層のガチガチ化が進むのですが、そうは言いましても一応短国よりは金利がついてる(って2年なんだから当たり前だが)し、足元から見たら10bpとかのカーブがあります(量的緩和で玉吸い上げ時代のつぶれ方は半端なかった)し、週に5兆7千億みたいな無茶な状態では無いので、さすがに空振りオソロシス(短国と違ってSC市場もあるのでショートは出来ますけど、やはりコスト考えるとショートは間尺に合わない)ということで必殺の札は上に入った(平均落札は0.243%の100円11銭2厘)という所で、これまた投資家のニーズが強い状態だったのねということです。でもセカンダリーでそこまで突き抜けずに第U非価格入札がゼロだったのがチャーミングなのですけれどもね(^^)。

ということで、まあ何と申しますか、入札の感じが徐々に短国のそれに似てきましては〜時間軸時間軸♪って所ですが、冷静に考えますと7月の展望レポートを見た時に時間軸というのを意識する筈なのに、今更時間軸という話がポピュラーになって来たのは単に期末が近くなって時間切れ・・・いやまあいいです。

ま、要するに「先生!うちの2年債ちゃんが息をしてないの!!」(AA略)という事ですな。それでいいのかどうかはよー知らんが。


○末初GCは上昇するけどタームは安定

昨日もそんな話をしましたが、まあ昨日はスポ末だったのでスポネの国債買現先は0.14%に上昇。GCもちょっと強い感じみたいですけど、これまたタームのレートに影響を与えるでもなしという状況は昨日と同じ。

でですな、スポネの買現先オペなんですけど、まあ月末月初で上昇(正直言って四半期でも期末でも無い月末に上昇しなきゃいけない合理的根拠は無いと思うのですが、金の出し手がそう言ってレートを渋るのだから仕方ない)するのはこのマーケットの仕様のようなもんで、そーゆー意味では「月末に向けてレート上昇気配」というのは予想されるのですけれども、これに対してスポネの買現先オペがスポ末になる前に増額されて昨日のスポ末も増額となっているのが地味なのですが市場への配慮を感じられる所です(とエラソーで恐縮)。

つまりですね、この手のレート推移とか需給動向ってのは慣性があるのと、GCレートに関してはそもそもがスポットやレギュラーでのスタートで取引される物が多いので先を予想というか思惑によって動くという傾向があるので、仕様として「ここでは上昇しやすい」っていうのがあって、その跳ね上がりを抑えたいって考えるのであったら、モノ日になって資金供給を厚くするのではなくて、その前から徐々に供給を厚めにしていく方が結果的にはコスト(というか出す資金量というか)が掛からないのですよね。無担保コール翌日物のように当日一発勝負物であれば当日の資金需給やら動向見ながら出し入れして間に合うのですけれども、レポ市場は先渡しで動く世界ですので、金利が跳ねてから供給を厚めにしても下がるまで時間がかかり、それに対応して厚めの供給を拡大するとレートが下がりだした時には出しすぎ状態になってしまい、今度は下げすぎちゃって困るの♪になるのですな。

と、うだうだ申し上げましたが、要するに何がいいたいかと申しますと、今月末に対応した「スポ末前日とスポ末で2000億ずつ増額」というのは中々市場的には好感度の高いオペの打ち方なんじゃないですかねという事です♪


○まー選挙期間中なのであまり言いたくは無いが

どっかの政党のエライ人が「新規国債発行額を今年度2次補正予算ベース(2次補正じゃなくて1次補正でした)から増やさないように抑制する」という話をしてまして、足元の地合いが買い材料に反応したがってる債券市場的には「選挙結果によって強い政権基盤の政権になったら、少数政党のバラマキ的な動きを排除するんじゃないでしょうか」と反応してたりしてるのかしないのか知りませんが、まあそんなのも債券の買いネタあるいは後講釈に使ってみたりしてるようですな。異論は認める。

でも何か相変わらず同じ口から「財源は埋蔵金」とかいう話は出ている訳でして、埋蔵金を財政措置の財源に使うのでしたら、そもそも政府の純債務に対しては中立ですし、大体からして「埋蔵金」ったって山下財宝やら徳川埋蔵金みたい(どちらも実在しませんかそうですか^^)な金地金みたいな本当の「埋蔵金」な訳ではなく、その分って当然ながら国債の購入やら日銀の対政府売現先に化けているのでありまして、まあ売現なら兎も角、国債の購入に化けてる分っていうのが減れば新規財源債ベースでの発行を抑制しても借換債だったり特別会計の国債引受余力が減るとかで皺寄せ来るんじゃないのと素朴な疑問が。

ま、あたくしの勘違いだったら良いのですけど。

小泉政権の「国債30兆円」ってのもさっくり反故にされた後でも「財政の無秩序な拡大を抑制する小泉政権の姿勢」ってのが債券市場的には評価されていたという事になっていましたという事を勘案致しますと、ま、その新規財源債と借換債がネットで結局同じじゃねえかみたいな細けぇこたあ良いんだよ!(AA略)という事で、「財政の無秩序な拡大を抑える明確な姿勢を示している」というのが評価されるという面もあるので、こーゆー姿勢をまずは示すというのも重要ではあるのですけど、それならそれで小泉元首相のようなインチキ力をきちんと発揮して頑張っていただきとう存じます。


○またまた小出しですが水野審議委員講演から

小出しシリーズですいませんが。

今般の金融危機対応に関して、利下げを行っているのは各国共通ですけれども、資産買い入れなどで各国の政策対応が異なるのは、そもそも国によって金融市場や企業の資金調達構造などが違い、その国による最適化をした結果として違いが出ているという指摘をしています。

『各中央銀行が非伝統的な金融政策運営に踏み切る場合、直面している状況によって政策対応は異なってきます。違いは、(1)金融資本市場、特にクレジット市場の発達度合いや市場機能の低下度合いの違い、(2)間接金融中心か直接金融中心かの違い、などに起因します。』

『まず、(1)は、金融資本市場の規模によって、中央銀行が買入れオペなどを実施できる規模が制約されることを意味します。クレジット市場の機能低下は、欧米主要国に共通する問題でしたが、市場規模が大きく、各種クレジット市場へ積極的に介入しても市場機能を損なうリスクが最も低い中央銀行はFRB でした。dysfunctionに陥ったクレジット市場の機能回復を狙った非伝統的な措置なら、クレジット・リスク資産の購入は適切な政策対応といえます。』

市場機能を損なうリスクというよりは、後半にあるように機能不全に陥ったクレジット市場が金利ルートによる金融緩和効果を相殺する、というかそれ以上にクレジット市場崩壊による悪影響が大きいので、中央銀行がその市場の梃入れを行ったという感じなんでしょうな。

『(2)について言えば、欧州では、銀行借入が企業の資金調達に占めるウエイトは90%程度と、40%程度である米国に比べて高くなっています。こうした状況を踏まえ、ECB は、金融機関の資金繰り支援や信用創出能力を回復させる政策手段を導入してきました。例えばカバードボンドの買入れについて、トリシェ総裁は、「enhanced credit support operation」と表現しています。』

『5 月に買入れを公表した後、カバードボンド市場は、発行・流通市場ともに一定の回復をみせました。ユーロ圏の銀行の資金繰りの改善に効果があったかどうかの判断は早計ですが、少なくともアナウンスメント効果はあったといえます。』

さよですな。

『なお、個人的には、現在のECBの政策のうち、最も力を発揮しているのは本年5 月に導入した「固定金利・金額無制限方式の1 年物という長期のターム物資金供給」であると考えています。』

それもそうだと思います。

『この間、国債の買入れについては、日本銀行、FRB、BOE ともに行っているものの、国債買入れの主な狙いは異なっています。まず、日本銀行では、長期国債買切りオペについて、資金供給手段であり、したがって「通常の金融政策運営の枠組み」に属するものとしています。』

ということで以下長期国債買入の論点。

『次に、BOE ですが、国債を中心に金融資産の買入れを決定した3 月5 日の金融政策委員会の声明文をみると、「中期的なインフレ率目標を達成するため、マネーと信用の供給量の拡大を通じて名目支出を拡大させる更なる金融緩和措置を採用することが適当と判断した」とあります。すなわち、非伝統的な金融政策である「量的緩和政策」の柱との位置付けです。』

『一方、FRBがMBSの追加購入や国債の買入れを決定した3月17・18日のFOMC議事要旨をみると、国債買入れは「信用緩和政策」の一環と位置付けられています。FRBが国債の買入れに踏み切った背景には、モーゲージ金利の低位安定を期待したエージェンシーMBSの購入等を補完する目的があったのではないかと思われます。』

『実際、6月23・24日開催分のFOMC議事要旨には、「FRBは、資産買入れプログラムについて、市場機能を改善し、モーゲージ金利や家計や企業に対するその他の長期与信にかかる金利を、プログラムがなかった場合に比べて引き下げることにより、経済活動をサポートすることを意図している」と記されています。』

で、その金利低下の効果に対して買い入れないといけない額が大きくなり過ぎて逆に財政ファイナンスによる実態の景気回復を伴わないインフレ懸念が発生して長期金利が上昇するリスクも感じた事から長期国債の買入プログラムを停止する事になったというのがFRBな訳ですな。そのあたりの違いをスルーして全部一緒くたにしちゃって主要国の中央銀行の対応に対してああだこうだという話をするのもちょっと雑じゃないのかなあという気は致しますです、はい。









2009/08/27

お題「短い所はどうにも盛り上がらないもんで雑談大会」

「株高債券高で流動性相場」と皆で言い出してるのでひねくれモノのアタクシとしては・・・・・・

○ほとんどただの備忘録メモ状態の市場雑感

先生!短期市場ちゃんが息をしてないの!!(AA略)という誠に遺憾な状態が続く今日この頃ですが、例によって何も書かないと後で自分が見直した時に訳判らなくなるので短国入札の翌日にメモメモ。

えーっと、昨日は3か月TBの入札があった訳ですが、前場の時点で0.14%オファーの0.145%ビットでガチガチという素敵な流れとなり、落札結果も0.14%前半(ってまた細かい刻みの話ですが)の平均と足切りと相成りましてあまりにもガチガチの結果。セカンダリーは確りのようですので、まー順当かつ良い入札みたいですの。

一方、GCレートだけここもと中々下がりにくい展開になっていまして、朝8時前に日銀が公表する準備預金残高見込み額が9兆円を切る水準で推移しているせいか、スポネの国債買現先のレートが0.13%按分で推移ということで、GCも微妙にレートが下がらんという展開。昨日はスポネの買現先の額を2000億円増額して1兆円にしてましたが、まあそれと関係あるのか別の要因かは兎も角として、そろそろ低下しそうな感じにもなって来ましたけど、今月は積みが変わってからの準備預金残高推移が微妙に少なめ推移だったので足元GCは13近辺の推移が継続という感じでしたな。

まーその13って別に高いという数字じゃないと言ってしまえばそれまでなのですけど、とりあえず参加者的な感覚からして「あらちょっと高いですね」という数字が継続していると、従来の流れだとファンディングコスト勘案で短国などのレートに影響を与えたりしてたもんなのですが、この間のターム物レートを見ていますと、タームオペの金利も特に上がる気配無くスポットウィークの国債買現先は足きり0.12%按分で推移(平均は0.12%台前半から後半に微妙に動きましたが)してましたし、それよりも3か月物短期国債のレートが延々と0.14%の所で安定してたのが従来(今年の2月くらいまでね)のイメージから変わった所ですわな。

つまり何を申し上げたいかと言いますと、(同じ話をこの前もしているかもしれませんが)足元の資金が微妙に絞られても、ターム物に対する投資(というかキャッシュ潰しと言うか)資金はきっちりとあって、ついでに言えばレート水準に投資家の目が慣れてきたので買う方も買う方で既に「3か月TBが0.14%」とか「3か月の高格付けCPが0.13%だとか0.12%台」だとかいう数字にすっかり違和感がなくなってしまったようで(^^)、まあレートはとっても安定でござるの巻であります。

・・・・いやまあ安定なのは良いんですけど、CPに関しては日銀の担保適格で一般メーカーネームの物だと何でもかんでも短国よりレートが低いのはまだしも、銘柄による利回り較差が相変わらず全然ないどころか、その傾向が益々顕著になってきているのが、実に良い感じで市場の価格形成メカニズムもへったくれもあったもんじゃねえという所でありますが、まあこれは日本銀行様におかれましては企業金融支援という信用緩和みたいなもんをしていて、市場の代わりに0.10%のファンディング絶賛保証になっているので致し方ない事でございます(とほほ)。

と、定期的に同じ話をしているような気がしますが(笑)、まあ同じような「先生!うちの短期市場ちゃんが息をしてないの!!」(AA略)状態が継続するにつれ、そのウゴカンチ会長ぶりが徹底されてきたようでありまして、相場的には実にしょーもない状況になってきているのであります。これでゼロ金利だと参加者一家離散状態になるのですが、まあ一応金利がついているので辛うじて一家離散にはならずに市場は閉店にはなっておりませんけど、何かまったりと動かんという点では残念な展開になっておりますな。まあ仕方ないけどね。

以上半分グチでした(^^)。


○バーナンキ議長再任雑談

そりゃまあこんな中途半端な所で次の人に引き継がれましても、ご本人としてはやり残し感満々でしょうし、後任が変に方向性を変えてくると今までの非伝統的政策というか信用緩和路線というそれなりに大変な政策のバランスが崩れてエライコッチャになるかもしれませんので再任は妥当なところでしょう。まあ年末までにまた不良資産問題再燃して議会様大激怒とかになるとテラカオスなのですけれども・・・・

#このインプリケーションは「そういやもう直ぐ任期が来る審議委員の方もこの際再任でお願いします」という事ですな(大嘘)。

まーオバマ先生が褒め称えるようなヒーローなのかは微妙にアレなのですが(ちゃんと問題を理解してたら少なくともリーマンを突如法的整理させて短期金融市場その他を崩壊させるようなことはせんじゃろうし、長期国債買入に関しては結局何をやりたい政策だったのか訳判らんまま開始して訳判らんまま終了となり、後世への政策インプリケーションというかロジック的には微妙なツッコミをしたくなる)、リーマン破綻やらかし後の対応は中々宜しかったので、非伝統的政策の信用緩和の入り口をやった以上、出口まではやってね(はあと)ということで。

#髭が随分白くなった気がしますねえ


○ところで水野審議委員講演の続きですが

すっかりスルーしてたんですけど、このまえの続きを少々(なお積み残しあり)。

先日ご紹介したのは出口政策の論点整理でしたが、今日はその前段階になります、(非伝統的な金融政策運営の概念整理)という小見出しの部分を早足で引用。

『主要国の中央銀行が採用している「非伝統的な金融政策」には様々なものがあり、その定義は必ずしも統一されていません。政策対応の波及経路や出口政策の理解に資するべく、非伝統的な金融政策について、以下では私なりの整理を試みます。』

何せリクスバンクなんぞは日銀の現在の政策を「量的緩和政策に復帰した」とか解説するくらいで、論点整理は未だカオスな面があると思います。

『第1に、純粋な概念的な整理をすれば、非伝統的な金融政策は、中央銀行が自らのバランスシート(B/S)でテイクするリスクと超過準備の取扱いによって、以下の2つに分類できます。すなわち、(1)中央銀行が通常負担する水準を超えた信用リスクやターム・リスクをとりながら、B/Sの構成や規模を変化させるが、超過準備は原則吸収するケースを「信用緩和政策(Credit Easing Policy)」、(2)B/S上に信用リスクのない国債等の安全資産を計上して、短期金利の実質的な下限を達成する上で必要な金額を超えて準備預金を拡大させ、超過準備を放置するケースを「量的緩和政策(Quantitative Easing Policy)」、と定義できます。』

つまり水野審議委員の最初の整理は、非伝統的政策を実施した後の現象面に注目して、「潤沢な資金供給」を行うルートがどうなっているのかに注目しているのですね。

『このように考えると、BOE はクレジット・リスクを極めて限定的にしか採っていないため、自らも「量的緩和政策」としており、FRB とECB は「信用緩和政策」と主張しています。日本銀行は本年入り後、CP と社債の買入れオペを導入しており、限定的な「信用緩和政策」を導入しているといえます。』

という整理になりますが。

『しかし、実際の政策運営をみると、程度の差はあれ、信用リスクのある資産を購入すると同時に、超過準備が発生しているため、(1)と(2)の両方の特性を併せ持つ中央銀行が多い状況です。特に、FRB は2 月までは「信用緩和政策」を採用していたといえますが、米国債購入を決定した3 月のFOMC 以降は、ハイブリッド型の非伝統的な金融政策にシフトしたと考えることができます。』

つまり、信用緩和によって発生した超過準備を吸収オペを使って引くという動きに出ていないので、現象面として信用緩和措置に加えて量的緩和も行われているという話ですね。


『第2 に、各中央銀行が想定する政策波及メカニズム、および、購入する金融資産の信用リスクの大きさに着目すると、以下のように整理できます。すなわち、(1)金融資産購入政策、(2)信用緩和政策、(3)そのハイブリッドともいえる政策運営です。』

『BOE は3 月、マネーサプライ、貸出、名目支出を増加させるために国債・社債・CP を合計で750 億ポンド購入する「金融資産購入策(Asset Purchase Programme)」を決定しましたが、購入する金融資産の大半はギルト債(国債)です。5 月の金融政策委員会の議事要旨によれば、BOE は「景気が低迷するとの見通しが根強く、追加の金融緩和がないと、インフレ率が中期的にみて目標である2%を著しく下回る可能性が高い」との判断から、金融資産購入策の規模を500 億ポンド拡大し、総額1,250 億ポンドとすることを全会一致で決定しました。8 月の金融政策委員会では、「イギリスの景気後退は従来の想定よりも深刻である。余剰生産能力はまだ暫く拡大する可能性が高く、中期的にインフレを抑制するであろう」との声明文とともに、「金融資産購入策」の規模をさらに500 億ポンド拡大し、1,750 億ポンドにすることを決定しました。』

『一方、FRB は信用緩和政策に踏み込んでいましたが、前述の通り、3 月に新たに3,000 億ドルの米国債購入を決定し、エージェンシーMBS、エージェンシー債を含め、購入する資産の総額を1 兆7,500 億ドルまで拡大しました。その後、8 月11・12 日に行われたFOMC 後のステートメントにおいて、米国債の購入については、「買入れペースを徐々に落とすことを決定し、10 月末までに総額の購入を完了すると予想している」としました。』

つまり、資産購入などの措置を行う際の政策意図およびその目的、どのルートから金融緩和効果を発揮するのかという「政策の入り口」に立って整理するというアプローチですね。あたくし(僭越ながら)個人的に最近頭の中を整理するときには、ご案内のようにワタクシめは屁理屈が大好きな人間ですので、政策ロジックの方から整理していく方が馴染むもんで、こちらの整理に近い整理をしております次第ですが、文章にするのがまだ微妙なレベルでしか整理できてない(アホでスイマセン)のでそれはまたいずれ。

ということで、景気認識に関する話とかはまたいずれ。








2009/08/26

お題「金融危機対応に関する白川総裁講演」

・・・・なのですが、「低金利長期化でバブルが発生する」というヘッドラインの方ばかりが話題になるというのも何だかねえという感じがするんですけどね。ロイター辺りの報道を各社がネタにしているのでしょうけれども、別に総裁は「今の低金利政策」の話してるんじゃないのですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0908c.pdf

○ヘッドラインを見つつ「トラックレコードは大事だ」と思うのでした

http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20090824-00000460-reu-bus_all
金融政策がバブル加速させることを回避する必要=日銀総裁

ってこれロイターの記事ですな。

・・・何かね、このニュースのヘッドラインの書きっぷりを見てると、あたかも「現在の低金利政策の継続によってバブルが再燃することを懸念しています」と言ってるような印象を受けるのですけど、今回の講演では別に危機対応後の話をしている訳ではなくて、危機の発生の前の話をしているんですよね(記事の中身をよく読んでも判るのですけどね)。

ま、金融市場は別にこのヘッドラインに1ミリも反応してませんからマーケット的にはどうでも良いのですけれども、それこそモーサテ辺りでも似たような報道のされ方して、こりゃ世間的に叩かれそうな燃料になっちゃいますなあと思ったら案の定っぽい感じで。

・・・・・ただまあ仮に同じ話をバーナンキ議長がしても「早期利上げの必要性を示した」とは間違っても受け止められないという事を勘案しますと、「日銀はどんな時でも利上げバイアス」というイメージが強いのは、速水総裁時代のやらかしゼロ金利解除が強烈に効いているんでしょうなと思うのでありまして、やはりトラックレコードは大事ですねという所でしょう。

白川さん、市場との対話という点では明示的なコミットメントを出していないのに1年くらいまでの金利が堂々の時間軸状態になっているという点では随分と「日銀の利上げバイアス懸念」を払拭させて、金融市場へのアピールは上手く行っている(まあ白川さんの対話だけじゃないですけど)のですが、政策の効果という点では市場との対話だけじゃなくて一般世間向けの対話をこれからは考えていかないといけませんなあという感じなのでしょうか。

・・・・・でね、そう考えたときに、伊藤隆敏先生が執行部にいらっしゃったら一般世間向けのアピールがより円滑に(って別に西村副総裁や須田審議委員がダメとか言ってるわけでは無いので念の為申し添えますが)進むのではないかとか思うのでありまして、今回の報道ヘッドラインを見ていると何だかねえ感が漂うのでありました。

#問題なのは「キャッチーなヘッドラインを打とう」として一々バイアスを掛けた書き方をしたがる報道機関の姿勢にもあるんですけどね

などと下らん雑感を述べまして恐縮ですが、講演の方から少々。


○安定→リスクテイクの過剰→崩壊の流れ

最初の所で危機の原因という話をしておりますが。

『危機に先立つ局面では、通常、今回の危機の前にみられた「大いなる安定(great moderation)」のように、良好な経済状態がしばらく続き、経済主体のリスクテイク姿勢が積極化します。経済分析では、選好(preference)は時間を通じて不変であると仮定されますが、実際には、良好な経済環境のもとで、経済主体のリスク認識は楽観的となり、リスク許容度は高まっていきます。』

んでまあそれが拡大する訳ですな。

『残念なことですが、こうしたリスクテイク姿勢の内生的な変化、つまりリスクテイキング・チャネルについてのわれわれの知識は、極めて限られています。規制、評価、報酬等の制度的な取決めはミクロレベルでのインセンティブを規定しますが、制度的な取決めを所与とすれば、そうしたインセンティブは、マクロレベルでの金融経済環境に大きく影響されます。この点、低インフレと高成長、さらにインフレと成長率の低いボラティリティは、強気の期待を醸成するうえで、確実に重要な役割を果たします。また、いつでも流動性を確保できるという安心感は、そうした強気の期待を、現実の行き過ぎたリスクテイクへと変化させました。』

『リスクテイクの過程では、信用量やレバレッジの増大、満期構成のミスマッチの拡大、資産価格の上昇など、様々な形で金融面の不均衡が累増していくことになります。こうした金融面の不均衡の累増は持続可能なものではなく、いずれかの時点でバランスシート調整が生じることになります。調整は当初ゆっくりと進みます。しかし、何らかのショックをきっかけとして、資金流動性不足という形で危機が表面化し、金融市場参加者間での信認が崩壊することによって、危機は深刻化していきます。幅広い市場で市場流動性が低下し、金融システムと実体経済の負の相乗メカニズムが働き出します。この過程で、金融機関の資本不足が明らかになりますが、危機のもとでは、そもそも流動性不足と資本不足を識別すること自体が困難になります。』

というのが今回の流れでしたが、まあ局地的に起きた日本の80年代後半のバブルなんかですと、それが銀行セクターなどによる不動産融資やら株式などの投資およびそれに対する与信行為に特攻してたのですな。うんうん。


○ということで今回の信用バブル拡大に関して

『それでは、日本のバブル崩壊や東アジア危機と異なり、なぜ今回の危機はグローバルな危機に至ったのでしょうか。』

ということで。

『第1に、危機に先立つ局面において、世界的な規模で過剰流動性がみられ、この結果として、金融面の不均衡が大きく拡大し、さらにこれが世界中の多くの地域に広がっていたことです。その背後には様々な要因が複雑に作用しており、先進国で低金利が長期化するという予想がいつでも流動性を確保できるという誤った認識を作り出しましたが、これが金融面の不均衡拡大に大きな役割を果たしたといえます。』

一方で日本の80年代後半バブルに関しては局地的な問題でしたと。

『これに対し、日本のバブルの事例では、インフレと経済成長率の顕著な高パフォーマンスは、かなりの程度、わが国に限定された現象でした。1985 年から89 年における日本の消費者物価の平均上昇率は、総合でみて1%をわずかに下回り、すでに低い水準にありましたが、日本とドイツを除くG7 諸国平均では、依然として5%程度となっていました。インフレのパフォーマンスの全体としての構図は、食料とエネルギーの価格を控除したようなコア指標でみても、概ね変わりません。このため、低金利が長期化するという予想が世界的な規模で同時に発生することは、ありませんでした。』

ということでしたな。で、今回世界的に広がったのは80年代後半の日本とは違って世界的に金融取引が拡大して相互の連関が拡大していたからという話がありますがそこは引用割愛。


○過剰貯蓄よりもグロスの資本移動だそうで

こういう話になってくると頭の悪いあたくしは徐々に煙に巻かれて行くので、煙の中で訳判らんコメントを入れて話をややこしくせずに引用だけで勘弁なのれす。

『関連する論点として、今回の世界的な信用バブルの要因の1つとして、「世界的な貯蓄過剰(global savings glut)」がしばしば挙げられますが、私は、こうした議論にやや懐疑的です。』

『確かに、世界全体の実質金利が世界経済全体の貯蓄・投資バランスによって決定されることを考えると、エマージング諸国における貯蓄は、実質金利の決定要因の1つとなります。しかしながら、世界的な信用バブルという現象を理解するためには、ネットの資本移動よりも、グロスの資本移動が圧倒的に重要になります。』

『グロスの資本移動は必ずしも、各国・各地域の貯蓄・投資バランスに対応するものでありません。実際、ユーロ圏の銀行はクロスボーダー貸出を大きく増加させましたが、ユーロ圏全体として経常黒字になっていたわけではありませんでした。』

・・・・・あたくしの頭の周りに先程から煙が掛かっているような気が(とほほ)


○で、金融政策運営に関する考え方という話

そのあと国際協調の話をしているのですがそこは華麗にスルーしまして、その次の『通念(conventional wisdom)への挑戦』って小見出しから続く部分から。

『簡単化すると、中央銀行やそれ以外の政策当局の間で有力な政策運営哲学は、次の3つの「予定調和」ともいうべきものに立脚しています。』

『第1に、マクロ経済の安定は、低水準かつ安定的なインフレ(low and stable inflation)を追求する金融政策によって実現できるというものです。このとき、マクロ経済の安定は、金融システムの安定と補完的と考えられています。』

『第2に、金融システムの安定は、ミクロプルーデンス的なアプローチを追求することで、実現できるというものです。このため、規制・監督当局は、個別金融機関の規制・監督を適切に行う必要があるとされます。そのための重要な手段として、自己資本比率規制は、具体的な業務分野におけるリスクを測定するよう、一段と洗練されてきました。』

『第3に、金融機関は、十分な自己資本を有してさえいれば、金融市場で流動性を容易に調達できるというものです。従って、流動性への配慮は、規制・監督の枠組みの中で、副次的な役割しか与えられていませんでした。』

ということですが、

『しかしながら、これまで有力であった政策運営哲学は、今回の危機に照らして、再検討する時期に来ていると思います。』

ということで、その第1の論点に関しての話が例の「金融政策でバブル加速させることを回避する必要」って話になるのですな。

『第1の予定調和であるマクロ経済の安定について、金融政策は低水準かつ安定的なインフレを目指し、過去20 年の間、極めてうまく運営されてきました。皮肉なことではありますが、この金融政策の成功が問題の一部にもなってしまったのです。人間心理と様々な制度的条件のもとで、低金利が継続するとの根拠のない期待は、良好な経済環境のもとでインセンティブのねじれ(perverse incentive)を醸成することにつながってしまいました。こうしたインセンティブのねじれはさらに、金融面の不均衡の蓄積と顕在化というプロセスを後押しし、やや長い目でみて経済を不安定化させてしまいました。』

で、これが微妙にチャーミングなのは、ここの部分の脚注に『金融面の不均衡の蓄積とマクロ経済環境についての詳しい議論については、Rajan [2006]、Bank for International Settlements [2009]をご参照ください。』とあることで、BISビューキタコレとかまた言いたくなる訳でございますな。

『私たちが直面している問題は、不適切な表現ですが、物価安定と金融システム安定の同時点におけるトレードオフ(intra-temporal trade-off)と捉えられることがあります。ここでの本当のトレードオフは、現在と将来の経済の安定という異時点間のトレードオフ(inter-temporal trade-off)です。』

ほほー。

『この点に関し、金融政策が担うべき役割についての議論が活発に続けられています。金融政策のみでバブルを防ぐことはできませんし、金融政策のみで防ぐべきでもありません。実際、金融政策は、もう少し控えめな、しかし重要な役割を担っています。インセンティブが結局のところマクロレベルの金融経済環境によって規定されることを考えると、低金利が継続するとの根拠のない予想を醸成することを通じて、金融政策がバブルを加速させることは回避しなければなりません。』

ということで、BISビュー的な香りは確かに微妙に漂ってくるのですが、いわゆる予防的引き締めのような話をしている訳でもないですわな。というか白川総裁はこの手の話をする時に、従来からバブル発生に対する予防的引き締めという発想を否定する説明を繰り返していますので、あたくしがこの件を読んでも別に「今の危機脱出モードの金融政策運営について話をしているんじゃないなあ」と思うのですけれども、まー普段から細々と毎度毎度講演要旨を熟読するヒマ人ばかりではございませんから、単体でこれを見たときに「日銀に利上げバイアス」というのが頭に入っていると「白川総裁が現在の低金利長期化に警鐘を鳴らした」という解釈になってもおかしくは無いなあと思うのでありました。

じゃあその手の話を避けとけば良いかというとそーゆーもんでもありませんし、まあ匙加減が超難しいところですわな。

で、第2、第3の論点に関しては長くなるのと時間が無いので華麗にスルー致します。ご興味のある方は講演要旨を読んで味噌。


#最近おまえ引用ばかりしてるだろうというツッコミはその通りでございます(汗)












2009/08/25

お題「BOEの資産買入拡大は積極的なのかヤケクソ特攻なのか」

水野さんの講演が片付かないうちに白川総裁の講演やらバーナンキ議長のスピーチやらと急にネタが満載で追いつかないのでありました。

といいつつBOEのネタもフォローしとかないととネタ在庫が溜まるのでありました(><)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2009/mpc0908.pdf

○まあ実は金融政策絡みの所しか熟読してないのですが(汗)

資産買入拡大を決定した8月5、6日のBOE議事要旨なのですけど、んじゃど〜ゆ〜ロジックで買入拡大に突っ込んできたのかというのに興味があった訳でして、景気認識とかインフレ認識とかを華麗に全部スルーして、金融市場の動向と金融政策に関する部分だけマジメに読んでみたでござるの巻なのれす。

ということで、論議は第2パラグラフから第32パラグラフ(番号が振ってある)まであるのですが、その中で2〜6と25以降のあたりから少々。

ところで余談なのですけど、FRBの議事要旨って表現に使う単語が割と金融関連で良く見られるお馴染みの言い回しを使う傾向があって、慣れるまでは読むのがめんどいのですが、慣れると割と読みやすいのです。その一方でBOEの議事要旨って一つ一つの単語は難しくないので表面上はサラサラと読めるのですけれども、読んでいてよくよく考えると意味を取りにくいという内容。いやまあお前の頭が悪いだけとかいうツッコミはありますが、「表現が平易で意味が判らん」というのが英国クオリティなのかなあとか思ったのですけど、詳しい人教えて下さいませ(って米英比較だったら本石町日記さんですね)。キング総裁のスピーチになるとこれがまた気取った表現でなお意味を取り難かったりするのです。

んな余談は兎も角。


○ギルトの買入効果の説明が思いっきり謎なのですけれども・・・・・

第5、第6パラグラフから。

『5 Medium and long-dated gilt yields had increased by around 25 basis points during the course of the month.』

ということで中長期の国債金利は上昇したとな。

『But spreads between government bond yields and OIS rates had fallen markedly since the beginning of the year. This was in contrast to the United States and euro area, where central banks’purchases of government bonds had been smaller relative to the size of the outstanding stock.』

えーっと、国債金利とOIS金利のスプレッドが縮小していますが、これは米国やユーロシステムのように、国債流通残高に対しての国債買入額が比較的少ない国と対照的ですと。

『That suggested that the MPC’s asset purchases had played a part in reducing gilt yields relative to where they might otherwise have been.』

というのがBOEの資産買入プログラムの効果の一つではないかという話になっているのですけれども、国債の金利が上昇しつつOISとのスプレッドが縮小しているというのが本当にそれ効果なのかよというのは微妙に訳の判らん話に見えるのですが。時間軸効果が出てくればOISの方が低下するじゃんとか思うのでありまして・・・・・・

『6 Market expectations were for Bank Rate to remain unchanged at 0.5% for the rest of 2009, but for an increase beyond that horizon to around 1.5% by the middle of 2010.』

マーケットの政策金融パスの期待(=OIS市場の値動きを見てるのでしょ)は2009年中は現行金利の0.5%ですが、2010年半ばに1.5%ですよと。

『That was around 50 basis points higher than at the time of the July MPC meeting.』

・・・・・んーっと、ということはOISとギルトのスプレッド縮小ってOIS金利が上昇して現出したものだという話にならんかねと思うのでして、肝心の国債金利が低下してる訳でも無いのにどこがどう長期国債買入の効果なのかが良くわからんのですけど。

一万歩譲って考えると、OISレートの上昇=早期利上げ期待の台頭=インフレ期待の高まり=(一方で名目金利がインフレ期待高まりほど上昇しないので)実質長期金利の低下=長期国債買入の効果!!という理屈(相当無茶な理屈に見えるが)なのかよとか悩むのですけど・・・・何かあたくし重大な読み間違いしているのかなあ。

『The sterling effective exchange rate had appreciated by almost 3% on the month, and by 15% since the start of the year, although it remained some 20% below its mid-2007 level.』

これは英国ポンドの実効為替レートの話なのでスルー。


○更に政策効果に関してですが・・・・

途中を華麗にスルーして金融政策決定の論議をする第25パラグラフから。

『25 During the month, the Bank had met the MPC’s target for purchases of £125 billion of assets financed by the issuance of central bank reserves. Although it remained too early to assess the full effect of the asset purchase programme, there were some promising signs that it was having a positive impact.』

ということで、資産買入プログラムの効果を測定するにはまだ早いけど、ポジティブインパクトを持っている有望なサインが幾つか見られるという微妙なお話。先ほど引用した話の他にこんな話を。

『The United Kingdom had seen a large reduction in the spread between government bond yields and OIS rates by comparison with similar markets overseas. Corporate bond spreads had fallen, gross issuance had been strong, and the rate at which the Bank had been acquiring corporate bonds had slowed, consistent with a pickup in private investor demand.』

一方でまだまだ効果が足りないという話も。

『26 By contrast, another diagnostic for assessing the initial impact of the asset purchase programme, underlying broad money growth, had been surprisingly weak.』

肝心のマネー拡大が弱いですとな。

『To some extent, however, that might have reflected the impact of institutional investors’ acquisition of banking sector assets, which should, in time, encourage greater bank lending. It might also reflect companies using the proceeds of capital market issuance to pay off bank debt. But this would still be consistent with the asset purchase programme boosting nominal demand.』

つーことで、資産買入プログラムの需要創出効果ってどうなんですかねえと思うのですけど。

で、次のパラグラフではGDPの話などをしてまして、最悪の事態に陥るというダウンサイドリスクは軽減されましたという話をしています。めんどいので引用割愛しまして、次のパラグラフではインフレレポートで時間軸みたいな話をしているように見えます。

『28 In Inflation Report months, the Committee considered the likely future evolution of the economy through the analysis and discussion of its quarterly projections for GDP growth and CPI inflation.』

『Those projections suggested that, without a greater monetary stimulus than embodied in the combination of implied market expectations for Bank Rate and the current £125 billion scale of the MPC’s asset purchase programme, nominal demand would likely be insufficient to prevent inflation remaining below the 2% target, perhaps substantially, throughout the forecast period.』

『The publication of such a projection might cause market participants to re-evaluate the likely path of Bank Rate and the market yield curve to fall. That could provide an additional stimulus to current activity, and lessen the need for further asset purchases. But such an effect was far from guaranteed.』

ほほう。で、次のパラグラフ。

『29 The projections indicated that an increase in asset purchases of £50 billion would probably need to be combined with a lower path of Bank Rate than implied by market yields to balance the risks of inflation around the 2% target in the medium term. Assuming that Bank Rate followed the path implied by prevailing market yields, a larger increase in the scale of the asset purchase programme was likely to be necessary to counterbalance the risk that inflation would fall short of the target.』

とりあえず買入拡大によって時間軸みたいな話を金利低下するのは物価上昇率の低下のリスクを相殺するという話をしているような気がします。



○アグレッシブな姿勢なのか単にヤケクソ特攻なのかが微妙なのですが

で、第30パラグラフが今回の買入拡大に関する理屈なのれす。

『30 There were arguments in favour of a considerable expansion of the programme at this month’s meeting.』

もともと買入拡大は最初から前提の元での議論でしたと。

『The potential adverse consequences of adding another large monetary stimulus might be less severe than the possible costs of acting too cautiously.』

緩和が積極的過ぎることの弊害と、慎重すぎることの弊害を考えたら積極的にやった方が良い!!という大変に勇壮で素晴らしい話です。

『Insufficiently stimulatory monetary policy would cause inflation to remain below the target for a sustained period of time, depressing inflation expectations, and might harm public confidence in the recovery causing it to falter.』

『Confidence in the efficacy of monetary policy might also be damaged, limiting policymakers’ ability to stimulate the economy in future.』

と、ここまでは実に勇壮で素晴らしいのですが、最後の一文を見ると、勇壮なのではなくて単なるヤケクソ特攻ではないかという悪寒もするのであります。

『In addition, if it became apparent that monetary policy had been overly expansive, policy could be tightened by a combination of asset sales and increases in Bank Rate.』

えーっとですね、政策効果が出るのにラグがあるという事を勘案しますと、「効果が出すぎて問題になったら債券売り飛ばして利上げすりゃ良いじゃん」というのは大丈夫かねという気が。いざそうなったら物凄い勢いで金融市場がエライコッチャになって、長期金利が無茶な状態になって今度は引き締めのやり過ぎになるのじゃないのかっていう気がするんですがねえ。

で、環境は改善しているのですからもうちょっとマイルドにという議論がその次に。

『31 But there were also arguments for a more moderate expansion of the programme, given that some of the most immediate downside risks to the economy seemed to have receded.』

『The channels through which large-scale asset purchases affected the economy, and the magnitude and speed of those effects, were uncertain. The substantial injections of liquidity into the economy might result in unwarranted increases in some asset prices that could prove costly to rectify or in inflation expectations moving upwards.』

効果が効いてきたときの速度も判らんし、そもそもそれで資産価格無駄に上昇しやせんですかという話も。

『Moreover, if the asset purchases proved to be more effective than anticipated, an early withdrawal of some of the monetary stimulus might prompt a sharp rise in market interest rates that was unwarranted by the economic outlook.』

で、議論の最後の方になります。

『32 There was a range of views amongst the Committee over the precise balance of risks to the outlook for inflation and how much significance to ascribe to the various arguments about the appropriate policy response to that outlook, although all members agreed that substantial further asset purchases were needed over the next three months.』

でもって、

『For most members, an increase in the size of the asset purchase programme of £50 billion to a total of £175 billion was warranted, while for others there was a case for a larger stimulus.』

となったのですが、もっと多いほうが良いと主張したのはその次にありますが、(the Governor, Tim Besley and David Miles)の3名でありました。


○ということで

買入拡大をアグレッシブに行ったという今回の会合議事要旨でありましたが、どうも買入の効果が確認されている訳でも無い中でとりあえず拡大してみますかっていう雰囲気はアリアリでして、本当に量的緩和の効果が出て、それが効きすぎになった場合に大丈夫なのかよという感じのヤケクソ特攻の香りが思いっきり漂ってくるMPC議事録ではございました。








2009/08/24

お題「水野審議委員会見を先に」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0908b.pdf

○グローバルな労働分配率低下の懸念

会見要旨の4ページ目の質疑応答から。物価に関する質問と時間軸に関する質問があったのですが、まずは物価に関する説明が結構長いのでそちらを。

『まず最初のご質問にお答えしたいと思います。私の定義では、2011 年度は「中長期的」には入らないと思っています。そうした上で申しますと、2011年度については、需給ギャップは幅を持って見なければならないということ、それから日本の潜在成長率はすでに私どもが思っているよりも下がっているかもしれないという話をしました。それと言うのも、マイナスのギャップが存在し、それが縮小するペースが鈍いことを考えれば、当然、2010 年度から2011年度にかけて、マイナス幅の縮小が緩慢であるということが言えると思うからです。』

という話の続きが中長期的なお話。

『より中長期的には、日本の潜在成長率をどうみるか、期待成長率をどう考えるか、ということに加え、個人的に注目しているのは、財とサービスで分けて考えると、サービス価格については賃金上昇率が大幅に下がってきていることです。』

ということで労働分配に関するお話ですが・・・・

『この動きが、世界経済が先行き不透明な中、企業がコスト削減のために賃金を抑制しなければならないという、当座の話なら良いのですが、経済のグローバル化が進む中で労働分配率をもっと下げていかなければならないという話になると、賃金のマイナスが長引くということになります。』

なるほど。

『そのときは、企業が考える期待成長率の低下、それから家計からみた恒常所得の低下ということになってきますから、当然、サービスの物価の回復が遅れるということになると思います。このため、需給ギャップについては、財の価格の動きとサービスの価格の動きに分けて、2011 年より先のもう少し長い期間を捉えて頂きたいと思います。』

つまり労働分配率の低下がトレンドになった場合に負のフィードバックが起こる懸念があるという話でしょうか。


○時間軸が必要なのは米国とな

同じ質疑の続きですが時間軸に関する話。

『それから2つ目のご質問ですが、少し先走り過ぎているご質問という感じがします。今日はあくまで一般論として申し上げました。』

日銀が次に時間軸をする場合何にコミットメントをするのかという質問でしたから。

『わが国は、過去2回時間軸効果に働きかける政策をとった唯一の国であり、デメリット・副作用もあったが効果もあったということで、私どもはそれなりの経験・知見も持っていますし、それに対して他の中央銀行が関心を持っていることも確かです。』

『ただ、各国政策当局がどのようなタイミングでこうした政策をとるかを考えた場合、やはり日本と欧米主要国では、期待インフレ率や為替レートの先行きに対する見方がかなり違うと思います。そういう点では、日本では、日本銀行が時間軸政策を採ったり、あるいは私どもが明確に言わなくても、そうした期待が形成されるような動きになる可能性も将来的にあり得ると思います。』

まあ今時点で時間軸っぽい感じになってきてますからねえ。

『逆に、欧米については、もう少し明確に時間軸に働き掛けることを言わないと、長期金利が不安定になる可能性もあると思います。』

つまり時間軸が必要なのは米国という事ですね、わかります。

『何れにしても、今後の具体的な政策のイメージがあってそれを念頭に申し上げたわけではないということをご理解ください。』


○足元の物価に対して金融政策はどうするのかという話

今回の質疑の後半は物価の話が多かったのですけど、『デフレ対策として金融政策に期待する声が高まるのではないかと考えられますが、足もとの物価の状況を金融政策でどのように考慮するかについて教えてください。』って質問(他にもお題があったのですが)がありまして、それに対する説明がこれまた長いのですが引用。

『2つ目の質問について若干付言しますと、物価が下がっている理由は何かということを考えると「景気が弱い」ということです。』

ほうほう。

『先ほども申し上げたとおり財とサービスに分けて考えると分かりやすいのですが、財については明らかに需給ギャップのマイナスが存在するところが大きいと思います。また、最近の動きの中で個人的に非常に気になっているのは、雇用者所得の動き――7月の毎月勤労統計確報では現金給与総額の前年同月比増減率がマイナス7.0%という数字が出ていますが――をみていくと、当然サービス価格、CSPIでは広告収入、家賃その他が今後下落する可能性があります。』

『この影響は、「BtoB」だけでなく「BtoC」にも出てくると思います。中央銀行が「物価の安定」といったとき、まずそれは中長期的にみた場合の話です。今起きている物価の下落は、世界経済の景気の低迷に起因するものに加えて、世界経済、日本経済の期待成長率が若干下がるのではないか――あるいはもう下がってしまったのではないか――と考える一部の企業が、キャッシュインフローの減少をコストカットで乗り切ろうとして、それが家計にしわ寄せされている状況だと思います。』

んでまあそれが負のフィードバックになるとイカンという話をさっきしてたのですね。

『こうした現状認識の中、金融政策で出来ることは、0.1%という政策金利の中では実際には非常に限られています。』

と、ここだけ切り取られるとまた色々と批判されるんでしょうな。まあ続きも読んでつかあせ。

『結局、私どもが今しなければならないことは、金融面からの景気の底割れを回避すること、金融システムの安定を維持すること、という2つのサポートのほかありません。0.1%という低金利の中では需要創出効果は極めて限られているという認識ですので、金融政策だけでどうこうなるというものではないと思います。』

『中央銀行の仕事は中長期的な物価安定を目指すものであり、今の低金利の中では、短期的に物価を押し上げるような、あるいは景気を刺激するような政策は持っていないという状況です。今回の世界の金融危機後の厳しい情勢の中では、ある程度長期戦で臨まなければならないと考えています。』

ということで、金利をこれ以上下げられない水準まで下げた(いやまあマイナス金利だとか言うツッコミはあると思いますが、金融市場の中の人的にはそれは残念ながら実務上無茶な部分が多過ぎでしょと思うのですが)所になったので、金融政策で物価を短期的に押し上げるのは難しく(金融市場に直接介入して資産価格を短期的にどうこうするというのは可能だが)、現在の低金利政策を長期的に継続する事によって回復をサポートするしかないという話ですが、まあツッコミが来そうな話ではありますな。


○そういうことで規制緩和

では何をするのかという話ですが。

『最初の2つのご質問について、可能な範囲でお答えします。ニューケインジアン的なマクロ政策理論を前提に考えると、やはり規制緩和だと思います。』

『財政刺激策で一時的に景気を押し上げても、その後の増税を想定する賢明なる国民からすると、その効果に持続性はないというのがマクロ政策を考える上での基本的な考え方です。需給ギャップが非常に大きくなり、景気が底割れしそうな状況であった昨年の第4四半期、今年の第1四半期に、政府が補正予算を行ったことはそれなりに必要だったと思います。ただ、景気が最悪期を脱し、底割れを何とか回避できるようになれば、今度は財政再建に中期的な目標を持ち、持続的な景気回復を民間主導でどうやって引き出していくかということを考えなければならないので、規制緩和が必要になると思います。』

あと、同じ質問の中で講演で(紹介してませんが)「雇用創出力や租税負担能力の高い大企業のリスクテイク能力を高める」という話をしていた事についての質問もありまして、続きはその話です。

『それから、民間の力を引き出していくためには、税制改正の問題であるとか、岡山県内の話でも申し上げましたが、企業の研究開発を応援するような何らかの仕組みあるいは政策面からのサポートが必要になってきます。持続性を維持するためには、政府の役割が少しずつ小さくなっていかなければならないと思います。』

『確かに市場の失敗が起き政府の介入が必要となりましたが、いつまでもそれに頼っていくと今度は民間活力の低下に繋がり、結局、潜在成長力の回復に繋がってこないという話になります。』

ということで規制緩和という話になるのでした。

『私の個人的な考えと断った上で期待しているのは、やはり規制緩和です。それから民間主導の回復を促すような政策を考えていくべきであると思います。』


○そういえば財政ファイナンスに関して

『(問) 民主党の大塚耕平政調副会長が今月のマーケット関係者への説明会において、「財政政策と金融政策の関係について、結果として財政ファイナンスに協力してもらうことも少しはあると推測している」と発言したことについて、どのように考えていますか。』

『(答) 何れの質問に対しても、日本銀行としては、国会で決められた日銀法の精神に則って行動するしかないということになります。』

つまり財政ファイナンスを目的に長期国債の購入を行なうのは日銀法の精神に則っていないので論外という事ですね、わかります。


#月曜に続くと言っておきながら講演の方が先送りになってどうもすいませんm(__)m











2009/08/21

お題「水野審議委員講演から(多分月曜に続くと思う)」

自動車買い替え制度前倒し急遽打ち切りとは何という間の良さ・・・・と申しますのは昨日の水野審議委員の講演のお題が『内外の金融経済情勢と金融政策運営―― 政策対応に依存した脆弱な景気回復――』だからなのでありまして・・・・・・(^^)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0908b.pdf

○えーっと長くて一度に紹介できないのですけど・・・・

水野さんの講演は長いというのが仕様になっていますが(ちなみに須田さんと西村さんも長い)、今回はいつもの日銀PDFよりも小さいフォントで本文19ページもありやがりますので、これはさすがに一度にご紹介するのはしんどいだす。ということで話の流れだけ申し上げますと、(1)とても慎重、というか弱気と言って良さそうな景気見通しのコーナー、(2)各国がこれまで実施してきた金融政策に関する論点整理のコーナー、(3)出口政策に関する論点整理のコーナーという感じでして、(1)の部分では「個人的見解」として政策委員会見の中心的な見通しよりも厳しい景気認識を示してまして、(2)の部分は金融政策に関する整理をするのに吉、(3)の部分は(2)の発展ですが、出口に関する論点整理となっています。


ということで、景気に関する見方のあたりから引用するのが正しいあり方のように思えますが、そこはひねくれ者のあたくしでございますので、出口戦略に関するコーナーからご紹介が始まるのでした(^^)。なお、景気に関しては講演のお題の通りの厳しい認識でござる。


○バランスシートのコントロール力

本文12ページ目(PDFファイルの13ページ目、以下同様)に『5.中央銀行のB/Sのコントロール力と『出口戦略』』という小見出しがございます。中央銀行のバランスシートコントロールに関する話は以前も水野さんはしていましたので、やや繰り返しになるのですが引用致します。

『中央銀行のB/Sの規模は、金融システムが正常に機能している局面(平時)においては、銀行券発行高と所要準備という負債サイドの要因によって決まります。また、金融システムにストレスがかかる状況(金融危機局面)では、超過準備を許容する緩めの金融調節を行うため、バランスシートは超過準備の規模だけ平時よりも膨らむことになります。』

とさらっと説明していますが、この入り口時点でも実は毎度お馴染みの「金融政策の話と金融調節の話」問題が生じるのでして、読者様におかれましてはその辺も整理しておくと吉かと存じます(^^)。

『一方、B/Sの構成項目も平時か金融危機局面かによって異なってきます。』

どう変わってくるかと言うと、いわゆる信用緩和政策をとった場合には変わってきますよという話が説明されてますが長くなるので(^^)割愛。

『主要国の中央銀行で政策金利の引き下げ余地がほぼなくなった現在、B/Sのコントロール力の高さが、その金融政策の自由度を計る一つの基準になります。主要国の中央銀行は、今のところ、マクロ経済の安定性の観点から適切と判断されるときに、程度の差はあれB/Sの規模や構成の変更ができる状況にあります。』

というのは暫く前の国際コンファランスで水野さんが指摘していた事です。で、以下の各国の説明はその時点からのアップデート版で、FRBが最近各種施策の一部を縮小したり停止したりという点を踏まえていますが、長くなるので割愛(^^)。

で、その次が『(非伝統的な金融政策の「出口戦略」)』という話になります。

『非伝統的な金融政策の「出口戦略」については、前述したように、できるだけ早い段階で丁寧に情報発信しておくことが肝要です。市場には「実体経済と金融の負の相乗効果が顕在化している最中に、非伝統的な金融政策の「出口戦略」を議論するのは時期尚早」との声もあります。しかし、非伝統的な金融政策は、過去に例のない政策対応ですから、出口のぎりぎりになって情報発信すると金融市場が混乱し、スムーズに退出することが困難になる可能性があります。』

ということで、「非伝統的な政策の」出口をどうやってスムーズに進めるかという技術的な話をしていますが、そこでは上記のバランスシートコントロールの力が必要になる訳でございまして、要するに「非伝統的な政策の実施によって拡大したバランスシートをどう無難に縮小させるか」というのが重要だというお話をしてます。で、30兆円からさっくり出てしまった日本の場合は何でさっくり出たかという話は、ご案内の通りですけれども引用しましょうです。

『やや技術的になりますが、「出口戦略」をスムーズに実行するために、日本銀行の手形売出オペのように、多様な短期の資金吸収手段を事前に準備しておくことも重要です。日本銀行が比較的スムーズかつ短期間で量的緩和政策から脱却できた背景として、(1)量的緩和政策の採用時、超過準備を主に短期資金供給オペで供給していたこと、(2)出口が視野に入ってきたタイミングで、オペの期落ち時点をずらす「期日管理」という手法を活用し、オペをロールオーバーしないことによってB/Sを自然に圧縮できたこと、(3)手形売出オペという便利な資金吸収手段を持ち合わせていたこと、を指摘できます。』

(3)の場合はバランスシートが拡大(というか両建てになる)する話ではございますが、話としては同じようなテーマでして、「非伝統的政策による潤沢な資金供給」によって発生した資金を引くという話でして、本来ならば短期オペのロールオーバー主体であれば、オペの期落ちを利用すれば割とスムーズに以降できるのですが、買った物が長期資産だったりすると、資金を引くのにその資産を売るちゅう訳にも行かないでしょうから、資金吸収手段が必要ですよということで、日銀の売出手形や、預金ファシリティの活用をするという話になるんでしょうな。

で、米国の場合はどうなるかというところですが、これは米国に対する悪態成分が入っているように見えますが・・・・・・(^^)

『FRBのバーナンキ議長は、7月21日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「Fedの出口戦略」というタイトルで寄稿しました。大意は、(1)FRBのB/Sが大きく膨らんでいても、準備預金への付利と、準備預金額を減らすための様々な政策手段という金融引き締めを行うための手段が2つある、(2)さらに、準備預金を減らし、超過準備を吸収する策には4つの選択肢があり、それは、@金融市場参加者との大規模なリバース・レポ取引、A財務省が債券を売却しその代金をFedに預金すること、B銀行に対するターム物預金の提供、C保有長期債の市場売却である、(3)このように金融引き締めを実現する多くの効果的な手段を持ち合わせているが、自分を含むFRB幹部が情報発信しているように、米国経済の現状をみると、長期間に亘って金融引き締めは必要にならないと判断している、といったところです。』

あたくしは本件に関して、寄稿のほうじゃなくて議会証言の方で引用をしましたが、まあ同じ話をしていますな。で、この次が悪態。

『ただし、バーナンキ議長が指摘した4つの選択肢が、非伝統的な金融政策からのスムーズな「出口戦略」を保証するものかどうかは未知数であり、財政政策とのバランスという観点から非伝統的な金融政策の「出口戦略」に影響が出てくる可能性があるとの見方もあります(例えば、7月27日付の英紙フィナンシャル・タイムズへのWolfgang Munchau氏の寄稿を参照)。経済・金融情勢が目まぐるしく変化する中、各国中央銀行は市場参加者も未経験の非伝統的な金融政策を採用していますので、その「出口戦略」について丁寧に情報発信することが極めて重要であると思います。』

つまり、保有債券の売却とか大規模リバースレポとか本当に大丈夫かと言いたい訳ですね、わかります(^^)。


○信用緩和から時間軸へ

次の論点は重要な話でして、小見出しは『6.伝統的な金融政策運営に軸足を移し始めた主要国の中央銀行』であります。

『既に述べましたが、リーマン・ショック後、主要国の中央銀行は、「信用緩和」、「量的緩和」といわれる非伝統的な金融政策に踏み切りました。しかし、最近の主要国中央銀行は、非伝統的な金融政策をさらに進めることよりも、大きな方向感としては、現在の超低金利政策を継続することを強調する情報発信を行っています。』

んでまあ米国がそうなってますけれども、折角ですから米国がどうなっているのかの説明部分を引用します。

『例えば、FRB幹部からは、最近、景気回復力の脆弱さやインフレ圧力の弱さを理由に、「政策金利の引き上げはまだ遠い先のことである」という趣旨の情報発信が増えてきているように思います。このような情報発信は、サンフランシスコ連銀のイエレン総裁が「景気回復ペースはいらいらするほど緩慢である」、「主要政策金利であるFF金利は今後2年間程度、ゼロ近辺にとどまる可能性がある」と発言した6月末頃から始まりました。』

『このように伝統的金融政策の強調が始まったのは、米国クレジット市場の機能が完全に回復したとはいえないものの、クレジット・スプレッドが縮小するなど、「信用緩和政策」の効果が一部で見えてきたからであると思います。超低金利政策を継続する姿勢を強調するFRB幹部発言の頻度が増えて以降、ターム物金利及び短期債利回りの安定を通じて米国債イールドカーブ全体が安定してきました。』

ということで、長期国債買入に関してもとりあえず一旦終了という措置も実施しましたし、米国の政策が徐々に信用緩和から低金利の時間軸政策に移行しているという話ですわな。

ただまあ現状ではカナダやスウェーデンのように時期の話まで明確にして低金利政策が維持されるという期待感に働きかける政策をとっている所は多くなく、FRBの「expended period」だったり、日銀の「展望レポートの物価見通し数値」みたいに、まあお前ら察しろという感じで回っているのですが、こんな話をしていまして、日本の経済見通しを弱めに見ているという事を勘案すると、先々の時間軸政策強化も有り得べしって話をしとるんでしょうな。

『一方、伝統的な金融政策については、主要国の中央銀行は低金利を維持しており、中には先行き低金利を維持するとの見通しを示す、いわゆる時間軸政策を打ち出しているところもあります。今のところ、これら主要中央銀行は、新たに時間軸政策を採用したり、「時間軸」を強める明示的な表現を使用したりしていません。もっとも、先行きの景気・物価情勢が下振れる蓋然性が高まるような場合には、超低金利政策へのコミットメントを打ち出すということも、選択肢としては考えられます。』

ほほう。


○流動性供給が過剰になるのではという論点

で、その話の流れで、潤沢な資金供給および財政拡大のポリシーミックスのやりすぎによる弊害はどうなのよという点の説明をしています。

『この間、伝統的、非伝統的な金融政策運営を問わず、主要国中央銀行は金融市場に潤沢に流動性を供給しています。また、主要国、新興国で大規模な財政刺激策が発動される下で、市場参加者のリスク・アペタイトが回復するにつれて、株価、不動産価格、資源価格などの資産価格がファンダメンタルズで説明できる以上に押し上げられる可能性があります。』

『その場合には、金融危機解決の目処が立たないうちに中央銀行が引き締め的な政策スタンスに転じたと解釈されることがないように注意しつつ、各国中央銀行は潤沢な流動性の供給を見直すべきではないか、といった意見が出てくるかもしれません。ITバブル崩壊後に、主要国の中央銀行が超低金利政策を必要以上に長く続けたことが、世界的なクレジット・バブルを発生させ、世界的な金融危機を招いた原因であるとの見方が根強いためです。』

しかしそんな器用なことをしようとすると、結局オーバーキルになっちゃうんじゃないでしょうかというのが水野さんのスタンスのようですにゃ。

『ただ、政府や中央銀行の政策対応は、世界経済の持ち直し自体を支えていることも事実です。また、欧米金融機関の貸出態度は緩和的とは言えないと言われています。』

そしてこの次に個人的な見解キタコレ。

『個人的な見解ですが、(1)資産価格上昇は「副作用」というよりも、企業・家計部門のコンフィデンス改善に寄与するポジティブなものとも解釈できること、(2)いわゆる様々なキャリー・トレードの復活は、市場参加者のリスク・アペタイトの回復を示唆するものと解釈できること、(3)米国と中国を除き、来年に入ると財政刺激策による景気押し上げ効果が一巡するため、世界経済の「景気二番底」を警戒する声が絶えないこと、(4)非伝統的な金融政策の「出口」と超低金利政策の「出口」の違いに関する市場の理解の定着には今暫く時間を要すると考えられることから、潤沢な流動性供給の扱いに関しては十分な議論が必要であると思っています。』

つまり信用緩和政策の長期化絶賛容認という事のようですな。


○で、日本の政策ですけど・・・・・・

『(一連の政策をワンセットでとらえ、金融市場全体への効果を考える)』だそうな。

『日本銀行の政策対応を受けて、CP市場で格付けの高い企業が発行するCPの金利が短期国債の利回りを下回る官民逆転現象が起こりました。しかし、一つ一つの市場の歪みを見て効果の良し悪しを論じることは必ずしも適切ではなく、最終的には企業金融全体で判断すべきです。』

そらそうなのですが、じゃあCPレートが官民逆転するような状態になるわ、担保適格だと殆どの場合同じようなレートになっちゃうわという状態になって、それが本当に中小企業への染み出し効果が有効に出ているのかとゆーよーな点は日銀の中では検証しているのでしょうけれども、仮にその効果が大した事無いとなった場合に、政策資源の割り振りとしてどうなの(大企業だけ超優遇になっているのではないかという論点)という話は出てくるんじゃないかなあという気はしますです。既に話の論点が金融政策じゃないですけど(汗)。

『リーマン・ショック後に日本銀行が採用した金融政策面での措置については、前述のような3本柱の形に整理して対外的に情報発信してきましたが、本来、これらの措置を明確に峻別することは難しく、評価するにしても、総合的対応としての政策効果を考えるべきです。例えば、企業金融支援を主眼とした措置は、現在ではターム物金利の低位安定に寄与しているとみられます。』

ここが微妙なんですよね。どっからどこまでが効いているのか、指値無制限というのは確かに強力なのですが、よくよく考えてみると実はここもとの金利低下は(先般来申し上げているように)単に銀行セクターの資金ポジションが変化したからという感じもする(というかGC市場とか短国市場の動きから体感的に思うだけなのですが)し、やっぱり指値無制限効果が効いているような気もするし。

んでまあ企業金融環境は厳しいですよという認識を示していまして、それはまあさよですなという感じですけどね。一応引用します。

『わが国の短期金融市場、クレジット市場、債券市場は安定した動きが続いていますが、企業金融は引き続き厳しい状況にあると判断されます。』

『といいますのも、第1に、企業のキャッシュ・フローは厳しい状況が続いています。日銀短観(6月調査)では、2009年度上期の当期純利益は、全規模・全産業は前回比修正率が-62.9%、大企業・製造業では欠損となっています。また、第2に、法人向け貸出が減少し、貸出金利が低下している中で、貸出市場は再び借り手優位になっているはずですが、6月短観の全規模・全産業の借入金利水準判断D.I.(「上昇」-「下落」)は、3月-5→6月+3→9月予測+14と、今後の上昇見込みを示しています。』

さいですな。

『この背景には、昨年末あるいは昨年度末にかけてのCP金利や銀行借入金利上昇という苦い経験のほか、格付機関による格下げや金融機関における自社の信用格付の悪化等によって、将来的に借入金利が上昇することへの警戒感があると思われます。』

これは他の政策委員も指摘していますし、月報でも指摘されていることでして、企業の金融環境に関する先行き不安感が強いというのがあると、中々企業金融支援措置を止めるのもムツカシヤという話になるのでしょうが・・・・

『そして第3に、以上の話とも平仄がとれますが、足許のCP金利やターム物金利は低下しているものの、企業からは企業金融支援策の継続を求める声が根強いことです。』

・・・・単にCP金利がサービスレートで発行できるからのポジショントークで無いことを切に願いたいのですけど・・・・・


○で、企業特オペ延長に関して

CPと社債買入はバックストップで残しておきましょうという話もしていますが、その部分は割愛しまして企業特オペに関して。

『また、「企業金融支援特別オペ」についても、条件の見直し等を一切せずに3ヶ月間の延長が決定されました。個人的に考えたことは、ターム物金利に影響を及ぼしているとみられる「企業金融支援特別オペ」を現時点で見直すことは、金融市場のボラティリティーを無用に高めるリスクがある、ということです。』

『もっとも、金融市場が異例措置である「企業金融支援特別オペ」への依存をさらに強めた場合、(1)金融市場や経済の自律的な調整を阻害するリスク、(2)同オペの各種見直しや撤廃する際、金融市場が混乱するリスクなど、長い目でみれば副作用があり得ます。また、企業金融を取り巻く環境は厳しいといっても、一頃に比べれば改善方向にあるのも確かですので、私は、2月の金融政策決定会合で決定した6ヶ月間延長ではなく、7月は9月末で期限が到来する同オペを3ヶ月間延長することが適当であると判断しました。』

ということですが、まあここまでの話を総合すると、水野さん的には年度末越えをフォローする事になる「もう3か月延長」というのを展望しているのでしょうな。


#話の半分、しかも結構端折ったのにこんなに量が多くなってしまいました。長文講演恐るべし(汗)








2009/08/20

お題「小ネタ雑談で誠に恐縮至極」

長いところはそれなりに動くのですけど・・・・・・・

○短い所の市場雑談

えーっとですな、まあここの所市場雑談をろくすっぽ書いていないのでありますが、んじゃあ何で書かないかと申しますと、短い所に関して言えば達観しちゃえば無風も無風という大変に素敵な状態であるからですからね!で話が終了しちゃうのですよ。でもまあ俺様備忘録としてはあまりにもスルーすると後になって「さてこの頃の相場どうだったっけ」と「???」状態になりますので、最近の状況を確認してみるのがあたくしクオリティ。

てな訳で昨日は3か月ものTBの入札があったのですが、前場引けの時点で0.1425%が出合ってビットサイド。ここもと足元のGCレートが0.13%辺りでやや確り目(たぶん今日から下がる)で推移していたので、債券ディーラー的にはファンディングコスト勘案すると在庫として持つ動機に乏しくなる水準ということで、プライマリーで売れる分にはきっちりと札は入るけどそれ以外に特攻する向きも無く、落札は平均で0.1408%で足きりが0.1428%と前場の板通りの結果と。

・・・・とは言いましても、先月末あたりに何かイミフながらも0.17%近辺までやっていた時からの流れという点で見ますと、8月入り以降徐々にレートが低下するという流れになっておりまして、平均0.14%カツカツというのはまたまた入札水準が強くなりましたなという感じであります。この間(当たり前ですが)手前の金利は殆ど動いていない(GCはこの数日ちょっと上昇しましたが)のでありまして、即ちど〜ゆ〜事が起きているかと言えば「期末越えのプレミアム剥落」というお馴染みの展開。

既発になるほどあまり当てにならないBBの引けを見ますと、期内償還物のTBの引けが0.13%(では買えないと思うのだが)で置いている中で3か月カレント(なので11月後半に償還が来る)ものは0.14%(昨日の入札も0.14%)という値付けになっていますので、この価格のつき方見てますと「期末越えだからどうのこうの」と言うのではなく、単に「1か月と3か月のタームプレミアム分がついてるだけ」というとても素敵な状態になっているように見えますな。実際には期内償還物って玉がろくすっぽ無い筈ですから、まともに買おうとすると物なしの為に0.13%よりも強い所にあると思いますけどね。


で、毎度のCP阿片窟市場ですけど、こっちはこっちで期内償還の銘柄がAAクラスの銘柄で堂々0.12%割れとか、Aクラスの銘柄でも0.12%台とか、レートの低さもさることながら銘柄間の較差がろくすっぽ無い状態が継続し、ついでに高格付け銘柄だと期間を延ばしてもレートがあんまり変わらないとか、こちらもいい感じで金利商品というよりはモノ状態。時期的にちょっと発行が少ない所に当たった面もあるのですが、今週火曜のCP買い現先は華麗に札割れするの巻でしたので、まー要するにキャッシュを何かして潰しておきますかっていうニーズが強いんでしょうな。

政府以外の資金調達ニーズが減衰し、一方で運用すべきキャッシュは余っておりという状態になっているので、期末越えプレミアムがどうしたこうしたという話をしてる場合では無しという状態になっていると思われますし、とにかく金が余ってるなあと思うのは、水準感から売ってくる人がいてもおかしくないのですが、そういう動きが無さそうな所でございまする。売るのは良いけど売った金をどうするのかという所でハタと手が止まるから別に売る必要なしという状態なのですね。

そーゆーターム運用ニーズのある資金がウジャウジャしている所ですので、足元でGCが1bpから1.5bp位上昇しても特に短国のレートに影響を与えることも無いという動きになっているのかと思われます。これがファンディングの動きが結構あるような市場環境にありますと、GCレートが上昇すると3か月くらいまでのタームの金利にも影響を与えるのですが、その動きが無いというのは市場全体に調達圧力が軽いという事なんでしょうね。


という雑感でしたが、要するに「短い所って何というか取っ掛かり材料が無いですわねえ奥様」という事なのでありました。


○総裁定例会見の続き

古いネタでどうもスイマセン。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0908a.pdf

今回の会見って、この前ご紹介した物価の話以外で目についたのは、金融機関の資本とか収益とかの話だったりします。

まずは欧米金融機関関連。

『(問) 金融機関の経営問題についてです。欧米主要行の4〜6月決算は、概ね黒字を維持し、業務純益ベースでは邦銀を上回るような非常に高い利益を出している一方、不良債権の発生は明らかに増えてきているようにみえます。総裁はこの欧米主要銀行の健全性についてどのようにみておられますか。』

『(答) ご質問にもありましたように、この4〜6月決算をみると、前期に比べて収益内容は改善しています。改善の主たる理由は、金融市場全体の改善を反映して、トレーディングの収益が上がっている、また、様々な債券あるいは株式の発行が増加したことに伴って手数料収入が増加しているということです。』

『ただ一方で、信用コストのほうは増えています。米国についてみると、商業用不動産に関連する信用コストの増加が前期に比べ更に大きくなっている状況だと思います。世界経済の様々な不均衡の調整、好況期に積み上がった過剰の調整は経済全体としてまだ進行中ですし、その内容は金融機関の収益内容、資産内容にも反映してくることだと思います。現在、金融機関の健全性という面では、まだ取り組むべき課題があると認識しています。』

ということで、これは7月末の野田審議委員の講演及び会見とトーンは同じかと思います。

で、銀行の自己資本に関する話。

『(問) 先程、損失バッファーとしての金融機関の資本の問題に触れられました。その水準や構成等をどのようにするかという議論が国際的に進んでおり、経済への影響等を吟味することが重要とされていましたが、この点についてもう少し噛み砕いて説明して下さい。』

『(答) できるだけ噛み砕いてご説明しますが、規制にはかなり技術的な内容がありますので、必要に応じて日本銀行の担当部署で聞いて頂きたいと思います。』

『先程は自己資本比率について説明しましたが、規制についてはこれ以外にも様々な議論があります。例えば流動性についてですが、今回の危機からの教訓の1つは、金融機関の流動性リスク管理が甘かったということです。その結果、金融機関がもう少し流動性保有を強化するように議論されています。』

『しかし、流動性と自己資本の関係をみると、両者には密接な関係があります。例えば、ある金融資産について流動性が非常に高ければ、市場で売却して最終的には資金調達ができます。流動性が低ければ、状況が悪い場合、値段が大きく下がり、自己資本の不足につながっていきます。その意味では、自己資本と流動性は同じものではありませんが、密接に関連しています。』

なるほど。

『それ以外でも、例えば会計制度の見直しを行うなど、色々な見直しが行われています。ただし、1つ1つを単独にみた場合にはそれぞれ望ましいことであっても、それを合成した場合にどのような帰結をもたらすかということは必ずしも十分に議論されていないと思います。こうした意味で、規制全体を合わせた時にどうかということを議論することが必要です。1つ1つの規制の議論について否定するものではもちろんありませんが、それと並行して、少し振り返りながらその意味合いを議論する必要があると思います。』

これはその通りであるかと存じます。つまり次の質疑に繋がるのですが・・・・

『(問) 今の自己資本を巡る国際的な議論に対して、邦銀が「日本の銀行は十分である」とか「粘着性のある預金がある」など、反論のような見解を発信しています。今の欧米の議論が一方的というか配慮がないのではないかと邦銀は言っているのですが、それについてはどう考えていますか。』

『(答) 規制には様々な論点があり、一括で議論するのは難しいのですが、まず言えることは、この2000 年代に入り良好な経済が続く中で、内外金融機関が様々なリスクをとってきたことです。従って現にとっているリスクに照らしてどの程度の自己資本が必要かという議論が求められます。』

『今回の危機の経験が示したように、最終的に公的資本の注入が金融機関において必要になったということは資本が不足していたことを意味するわけです。そういう意味で、まず一般論として、現にとっていたリスクに照らして自己資本の強化を図っていくことは、頷ける方向だと思います。』

それはそうです。

『現にとっているリスクに照らして最適な自己資本を考えていく、その結果、資本の量と質を高めていく、そのこと自体は大事なことだと考えています。一方で、自己資本規制という制度の設計をしていく時に、自己資本だけに着目して議論をしていくことはバランスがとれず、様々な他の規制との関係も考える必要があります。そしてなによりも金融機関自身が与信管理や、信用リスク・流動性リスクの管理をしっかりと行っていくことが一番大事なわけです。そういう意味では、バランスのとれた規制・監督が必要ということです。』

『ご質問に関する直接的なお答えにはなっていないかもしれませんが、私が申し上げたいのは、そうした規制・監督をバランスよくやっていく必要があるということです。』

判じ物のような話ですが、金融機関の自己資本問題で最近の国際的な論調として「資本の質」の話がやたらクローズアップされるるわけですが、資本の質論議一点張りではなく、そもそも論として資産の構成を勘案して、資本バッファーがどの位必要になり、そのバッファーとしてどのような質の資本が適切なのかというような話も良く考えましょうという話なんでしょうな、と勝手に脳内補完をしながら読みましたがどうでしょう。

金融機関の資本問題と言う意味では、金融システムレポートとその後に出ていた日銀レビュー(日銀レビューの方は暫く前にご紹介しましたが)にも色々とありましたので、改めてその辺りも読み直してみるのも吉かもしれませんね。

『(問) 欧米で進んでいる議論を単純に日本に適用することは、あまりふさわしくないのではないかとお考えですか。』

『(答) 先程申し上げた通り、欧米と言いましても各国それぞれ歴史的な経緯で規制・監督の制度が違いますから、欧米との対比で議論するのではなく、現在浮かび上がってきているマクロ・プルーデンスの問題について、日本の状況に則して、どのような活動、分析をしていくかを考えていくことが大事だと思います。それから、ミクロ・プルーデンスについてもさらに充実を図ることが大事だと思っています。欧米との比較で議論することは、少し難しいという感じがします。』

つまり、資本の質がどうのこうのという話でよく言われる話としては、資本の質としてふさわしいのは負債性も持つようなものではなく、普通株で行うべきであるというような話だったりするのですが、まあこれって主張する側のポジショントークも入っているように思えまして、その点に関して日本は単純に欧米に追随するのではなく、きっちりと論点提示を行っていくという事を白川総裁は言っているのだと嬉しいなあと脳内補完しながら思うのでありました。

ま、金融機関の資本問題は今後のテーマとしては結構影響がある話かと思いますのでクリップしてみました。


○メモメモ

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2009/mpc0908.pdf

票決割れたけど、反対票はもっと買えだったのね・・・・・というのは読んだが、量的緩和政策に関する議論はまだちゃんと読めていない。まだ始めたばかりで効果についてはこれから出てくるみたいな部分だけは目に入ったのですが。










2009/08/19

お題「量的緩和に関する各種論点:1999年4月9日会合から」

諸般の事情により今日も虫干しネタです。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm

先日来引用しています1999年4月9日の決定会合における議論の続きです。ゼロ金利政策のようなもの(まずは0.15%に下げてその後出来るだけ低下させるという誘導目標ね)を2月に実施し、3月の期末越えでも0.03%〜0.05%で推移していた頃で、まだまだ都銀などは超過準備を積まないような運営をしていたという時代でした。

ちなみに、この時の議事録の最初の方では金融市場情勢について山下金融市場局長の説明および質疑があったのですが、超過準備に関する所で、引き続き都銀には超過準備を積まないようにしているという話をしていて、本文10ページから11ページで、3月積み期に都銀2行が超過準備で着地してしまったので、「ブタ積みしてどうもすいません」と担当部長が謝りに来たという話が紹介されていて、おお懐かしい話じゃと思いましたですよ。

ということで、積み上1兆円くらいでの運営の結果そんなレートが形成されてましたという状況だったということを念頭に置きつつ、今日は三木審議委員と中原審議委員の意見をまたまた全文引用しつつ、当時今の非伝統的政策に関して色々と整理されつつある論点が議論されていたことを見ていきたいと思います。


○三木委員の論点から:出すのは良いけど資金需要があるのか

三木委員が企業金融の現状について指摘しています。

『企業向けの貸出マーケットにおいては、正常な企業活動に必要な資金は十分に出回っている状況にある。むしろ企業の設備資金や運転資金需要が細っているために、銀行側がいくら企業の前に資金を積んでも借り入れにつながらないという状況になっているのではないか。また、そうした銀行の融資スタンスの前傾化を受けて、企業の流動性リスクに対する疑念が大幅に後退しており、4月に入ってから多くの企業が手許流動性を取り崩しつつある。』

なるほどなるほど。

『この間、銀行間の資金マーケットをみると、必要な資金は十分に取れる状況が続いており、余資がマーケットに滞留する中で、予想外の資金放出圧力から技術的にも短期金利のコントロールが難しくなる場面が散見されるような状態である。』

という状況ですよとなってます。で、この指摘っていうのは10年後の今になって考えてみると重要な論点でありまして、先日ご紹介した同じ席での武富審議委員の指摘にも通じるのですが、資金需要の無い所にマネーを出すという行為をしても、結局使う人がいないのであれば短期金融市場の中で金がババ抜きのように回るだけであって、究極的にはブタ積みが積みあがるだけとなるという話ですねという事に繋がる指摘だと思います。

つまり、昨日ご紹介した白川総裁の非伝統的政策に関する論点整理(悪態もおまけについてましたが)にもございましたが、量そのものが定性的には意味があったのは確かですけれども、それが定量的な効果を出していたのかが微妙ではございませんですかという話になる訳でありまして、当時量的緩和がどうしたこうしたという論議を行う中で、量の定量的効果に関する指摘がこのように行われていたという事なんでしょうね。

『こうした点を考えると、本行の現在の金融政策は当面十分に目的を達していると評価し得る。短期金融市場の市場機能を損なわないように、資金の流れに注意深く目配りする配慮は怠れないが、漸く経済にみえ始めたコンフィデンスの回復の動きを確かなものにするとともに、構造調整問題に積極的に取組もうとする実体経済に対して、引き続き資金を潤沢に供給し、オーバーナイト金利をゼロ近傍に据え置くことが望ましい。今回は現状維持である。』

ということで。


○三木委員の論点から:財政と金融について&政策の手段について

で、その続き。

『若干付け加えると、前回も申し上げたように、現在の日本は金利収入が経済活動から消えかけている世界で唯一の国になっている。これは正常な経済の安定成長を考えた場合には、企業にとっても、個人にとっても誠に異常な事態である。その点を明確に認識しておかなければならない。』

そういやこのときは日本だけがこんな有様でしたね(涙)。

『本行のゼロ金利近傍への誘導と潤沢な流動性の供給は、日本経済がデフレの悪循環に陥ることを回避するために行っているのであり、企業の構造調整リストラ、銀行貸出の増加、設備投資へと繋がっていく期待を込めた、財政政策をサポートする金融政策である。』

ということで、その辺は「低金利政策で財政サポート」というのは当時は普通に話をしてたんですね。まだ財政マネタイズがどうのこうのとかはあまり言われてなかったのでしょうか。

『この金融政策の置かれているポジションと、政策の効果を十分に引き出すことを考えると、金融政策へのさらなる過度の期待は日本経済再生にとってもマイナスの副作用が非常に大きいと思う。』

当時の論点がどうなっていたのかとかさすがに記憶が怪しい(というかこの頃短期金融市場から遠い所にいたので正直よく判らん)ので何ですけれども、何か意見の流れを見ていると「闇雲にマネーの量を拡大させる政策をして効くのか」という話をしているのか「財政マネタイズ政策をするのはマズイんじゃないか」という話をしているのか、それとも他の話をしているのか良くわかりませんが、まあこういう指摘をしているということでそのまま引用してみました。

『後藤委員が言われるように、量的緩和という言葉が一人歩きしているという感じが非常に強い。この問題について具体的なアイデアがある訳ではないが、政策の目的は何かということと、政策目的を達成する金融調節の手段の問題とは峻別して議論をしておく必要がある。本会合での議論でもこの点を明確に分けて考えていかないと、量的緩和論の一人歩きはいつまで経っても直らない懸念がある。』

後藤審議委員の論点は先日武富審議委員の論点とともにご紹介したのでそっちをご覧頂きたいのですが、コントローラビリティーとフィージビリティーの件と、インフレ期待を醸成するのはいいけどそれって長期金利が上昇して金利ルートでの悪影響の方が先にでてこねえか?という話ですな。


○中原委員の論点から:名目金利がゼロになった後の量は・・・・・

次の発言者は中原伸之審議委員です。

『私は現状維持には反対であり、後程別途の提案をする、委員方と私の一つの大きな違いは、前途に対する見方が非常に異なることである。私は先行きをシビアに考えており、一段と金融政策で手を打たなければ益々失速するということをまず申し上げておく。』

という景気認識だったんですな。ほほう。

『また、先ほどの山口副総裁の指摘もそうであるが、名目金利がゼロになっていない段階までは名目金利と量は確かに裏表の関係がある訳であり、なかなか区別し難いところがある。ただ、2月の積み期では4兆1500億円、今月は昨日までで約7兆円の過剰準備があった訳であり、量的な緩和が裏腹の裏の関係であるにしても効果が出ている。私はそれでは不十分だと言っている訳である。』

実はここだけを読むと中原さんが何を言っているのかというのが10年後の今読むとイミフな所が思いっきりあるのですが、どうも前後の発言を読みながら中原さんがどういう認識をしていたのかという事を想像すると、金利を下げて当面の低金利が継続するという市場の認識が広がって金利が低下していく動きに対して、中原審議委員的には超過準備の「量」が「定量的に」効果を現しているという認識を持っていたのではないかと思われます。

10年後の後知恵で考えると、超過準備が4兆だろうが7兆だろうが、その金が短期金融市場の中で留まっているだけであったら定量的な効果ってそんなに変わらない(なお、突っ込まれるのやだからこの辺で申し上げますが、「じゃあバーナンキの背理法」とか言われるのですが、それは財政の話が絡んでくるので話が違ってきますよね、あくまでも財政中立の命題で定量的な効果がどうのこうのという話をしているので念のため)ように思える(「ように思える」と書いたのは、本当の所が今でも良く判らないからですな)わけでして、ここでの中原審議委員の主張も何か微妙な気がするのですけど、当時はそういう事を世界初に実施しましたという状態ですから、手探りで色々な意見が出るのは当然だと思います。

『仮に、本当に名目金利がゼロになれば、そこで裏腹の関係は切れ、今度は実質金利と量が裏腹の関係になる。現時点はそこまで到達していないため、山口副総裁と私の違いは裏腹でも構わない。』

中原審議委員的にはマネーの量を出す事によって実質金利の引き下げを行うという話をしたのかなあという気がしますが、また後日紹介しますが、ここの部分に植田審議委員が壮烈なツッコミをしてお互い湯気ポッポー状態になったのではないかと思われる部分があるのですけど、まあそこは後日お楽しみに。

『しかしその先、私が申し上げていたようなマネタリーベースの伸び率が10%ということになれば、全く違った世界である。2月の超過準備が1000億円とすれば、3月は恐らく約3000億円という感じであろうが、まだそれよりも上のオーダーの話をしている訳であり、それは全く別の世界の話である。量的緩和とは、名目金利がゼロになった後の話だと理解している。』

名目金利がゼロになった後では超過準備の機会費用がゼロ近傍に低下するから量を出しやすくなるということで、「量的緩和は名目ゼロの後の話」というのは誠にその通りであります。量が定量的にどうなのという話はまあ兎も角と致しまして。


『さらに、武富委員がマネー需要の有無を言われたが、それは大量に資金をつけた時に貸出先があるかどうかという話であり、幾つかのルートが考えられる以上、それがなくても緩和をする必要があるというのが私の意見である。マネー需要がないとしてもやらなければならない状態であると申し上げている積りである、ターゲットをどうするとか、コントローラビリティ、フィージビリティについては、一応それなりの研究を済ませており、量的緩和は十分に可能だと信じている。』

まあ確かに後日30兆円というのを実施したので、中原審議委員の言うように量的緩和は可能だったのですけれども、マネー需要が無い中で30兆円出した時の効果としてどうだったのかというのはまた別問題でしたわなという所で。

ただ、中原審議委員が出していた提案によるディレクティブでは、マネタリーベースの前年比増加率をターゲットにしていたのでありまして、それってコントローラビリティーやフィージビリティ的にどうなのよというのは今読んで疑問が物凄い勢いで起こる所であります。研究してるなら具体的にどういうオペレーションをするのかとかの研究結果を説明している部分を見たかったなあとは思います。もしかしたら他の所にあるのかもしれませんが・・・・


○中原委員の論点:じゃなくて指摘というか苦言です

『ここで是非申し上げておきたいことは、色々なマスコミに日銀幹部という名前で色々な意見が出てくる。例えば、ブリッジニュースの4月2日号に「日銀のある幹部は、量は十分出して、下手なターゲットは作らない」とある。こういうことを言われたければ、政策委員会で堂々と言ってもらいたい。マスコミを使って言うのであれば、名前を出して言ってもらいたい。本当に透明性、あるいは独立性、アカウンタビリティーというのであれば、政策委員会に出てきて議論すべきである。こうしたところで勝手な意見を流さないでもらいたい。執行部の方も宜しくその辺をお願いしたい。』

これは全く仰るとおり。まあ旧法時代の残滓って所で、最近この手の匿名幹部氏による発言みたいなのって出てこなくなりましたよね。

続きはそのうちやるでしょう。今日も虫干しネタで夏休み中のような話でどうもすいませんでした。






2009/08/18

お題「虫干しネタでどうもすいません」

エテ公の皆様におかれましては夏の終わりと共に熱が冷めてきましたんですかねえ、しかしFOMCで景気判断引き上げてから株下げとはタイミングが凄すぎで何とも(^^)。

#昨日の下げについて今日の某新聞朝刊では「一時的調整」とのコメントを集めているようですが、いつの間に「上げはバブル」から論調が変わったのでしゅかねえ(ニヤニヤ)

んでもって虫干しネタは先日ご紹介した中国人民銀行主催の国際コンファランスにおける白川総裁の講演(要旨の日本語訳)から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0908a.htm

上海での中国人民銀行国際コンファランスにおける講演ですけれども、「当時海外の皆様は随分と勝手に実務に落とせないような無茶な政策提言をしてくださいましたが、実際に自国の問題になったら無茶言わないですなあ」(超意訳)という話をした結びの部分が話題になりましたけれども、よくよく見たら最初から何気にチャーミングというかアピっている元気な講演なのでありました。


○日銀の過去の施策をアピるでござるの巻

『2.1990年代後半以降の日本銀行の金融政策運営』って所から。

『最初に、本コンファレンス出席の皆様の記憶を呼び起こすため、日本銀行が前回1990年代後半以降に採用した金融政策のうち、革新的な(innovative)要素を―ただし、当時、外部の人からは必ずしも革新的とは見られていなかったものも含めて―挙げてみます。 』

>ただし、当時、外部の人からは必ずしも革新的とは見られていなかったものも含めて
>ただし、当時、外部の人からは必ずしも革新的とは見られていなかったものも含めて
>ただし、当時、外部の人からは必ずしも革新的とは見られていなかったものも含めて

良い感じで「外部の人」への悪態が最初から入っているのが今回の講演クオリティだった訳ですな(^^)。

んでまあ日銀が当時何をしましたかという話をしてますが、やったことはご案内の通りで、

『第1に、オーバーナイトのインターバンク金利を文字通りゼロ%、正確に言えば、0.001%まで引き下げました。』

『第2に、当座預金残高を操作目標とした上で、所要準備をはるかに上回る水準にまで増加させる、いわゆる「量的緩和政策」を採用しました。』

『第3に、資金供給オペレーションの期間を長期化しました。』

『第4に、ゼロ金利ないしは量的緩和政策の継続期間に関するコミットメントを行いました。』

『第5に、今日の言葉で言う「信用緩和政策(credit easing)」に該当するABCPやABSの買い入れを行いました。』

『第6に、金融政策には属しませんが、日本の金融システムを不安定化させる大きな要因となっていた、金融機関の株式保有に伴う市場リスクを軽減させるため、金融機関保有株式の買入れも実施しました。』

・・・・・とどさくさに紛れて第5のあたりで信用緩和政策を実施とアピっていますが、実は速水総裁のときに実施するという方向で検討を開始したのですが、福井総裁の時にいざ実施となったらちゃっかり信管は抜かれていたのですけどね。実際問題として資産管理証券関連市場で何かエライコッチャになっていた訳でも無くて、どちらかというとアナウンスメント効果的な施策だったと思いますけど・・・・・いやまあいいです。

なお、引用時にスルーした中にもいい感じでアピってる部分がございまする。量的緩和政策の部分ですけどね。

『実際、ピーク時の超過準備額は29兆円と名目GDPの5.8%に達しました。この水準は、現在のグローバルな危機のもとでの、FRBの6.2%、ECBの3.5%と匹敵するものです。』

でも後日の研究によりますと、超過準備の規模じゃなくてゼロ金利の時間軸効果が効いていたって話じゃなかったでしたっけ、いやまあいいですけどね(ニヤニヤ)。

『このように、日本銀行は、現在、世界的に導入されている革新的な措置の多くを既に行っていました。』

まあ他国のやってる施策が(BOEを除いて)段々言ってる事が近くなってきていることはその通りですけど、何か大きく出ましたなあ。


○悪態を再掲しつつ非伝統的政策の論点について

途中を飛ばして「ではどういう事を中央銀行はすべきか」という話の部分ですけれども・・・・・・・

『このような問題にどう対応すべきでしょうか。答えは、様々な要因に依存しています。中でも、そうした要因としては、それぞれの中央銀行が置かれた経済・金融環境、中央銀行の責任や利用可能な政策手段を定めた法律が挙げられます。国を越え、時代を越えて普遍的に妥当する答は存在しません。』

伝統的チャネル以外での政策をするという話になると、その国の金融市場や資本市場の構造によって「具体的な処方箋」が違ってくるという話をしたいというのは判りますが、最後の所が悪態成分に見えるのは気にしすぎですかそうですか。

『前回の日本の危機や今回のグローバルな危機の経験を踏まえつつ、非伝統的な金融政策について私が感じていることを述べてみたいと思います。』

ということで。

『第1に、金融危機への対応で最も重要なことは、金融市場や金融システムの安定の維持です。』

これはそうですな。

『そのために、中央銀行は最大限の努力を行う必要がありますが、結局のところ、危機の際には、金融市場や金融システムの安定を維持することこそがセントラル・バンキングというものです。』

大きく出ましたな。

『この点、日本銀行は、量的緩和政策、信用緩和政策、株式の買入れを行いました。量的緩和政策について、エコノミストの中には、マネタリスト的なチャネルを通じた経済活動の刺激効果は自明なものと考えている人もいましたが、金融システムへの影響という視点は十分には認識されていませんでした。』

また悪態成分が。

『しかし振り返ってみますと、量的緩和政策の最大の意義は、潤沢な流動性の供給を通じて金融市場と金融システムの安定に貢献したことでした。今回、主要国の中央銀行は、自らのバランスシートを拡大させていますが、イングランド銀行以外の中央銀行は、こうした金融緩和政策を量的緩和政策とは位置付けていません。この点は、量的緩和政策の実体経済に対する有効性が、これまでのところ確認されていないという日本の経験からみても、肯けるものだと思います。』

つまり、潤沢な流動性供給は有体に言っちゃえば金融市場における機能を中央銀行が代替することによって、金融市場の機能低下を定性的に補完するという機能があるけれども、マネーの量がどうのこうので景気刺激というような定量的な効果については良くわからんとしか言いようが無いですという話。うーん悪態成分。

で、この後は悪態の成分が減るのであります。

『第2に、金融システムの安定には、流動性供給と並んで公的資本の注入が不可欠なことは先ほど述べた通りです。しかし、こうした政策対応は、金融仲介機能を改善させるものですが、危機を引き起こした根本的な問題を解決するには不十分です。』

『この点は、第3の論点を提起しています。問題解決のためには、民間非銀行部門で積み上がった様々な過剰の解消が必要であることは論を待ちません。しかも、銀行部門への公的資本の注入や量的緩和などを通じた潤沢な流動性供給は、非銀行部門の過剰解消の必要性自体を帳消しにするものではないことも忘れてはいけません。』

ということで、バランスシートから外すことが必要ですという話ですな。

『こうした過剰の解消が完了し、経済が持続的成長軌道に復帰するには、ある程度の時間を要することを認識しなければなりません。どの程度の時間が必要かについては、バブル期に積み上がった過剰の大きさや、バブル崩壊後に発生する危機時において、信頼の喪失によって増幅される負の相乗作用の厳しさに依存しますが、いずれにせよ、その時間は短くないということを肝に銘じる必要があります。』

つまり景気回復にはかなり時間が掛かりますという話ですね、わかります。

『第4に、金融政策と財政政策の境界線についてです。』

という話をしていますが、こちらまで引用していると長くなりすぎるので割愛。危機対応で踏み込んだものを未来永劫踏み込む訳には行きませんというお話をしています。


○スイッチが入りつつある論点は「非伝統的政策と市場とのコミュニケーション」でした

『第5は、市場とのコミュニケーションについてです。』

『金融政策を有効に実施するには、中央銀行という組織に対する信認が必須の条件です。信認の確保のためには、言葉と行動は一致しなければなりません。』

ほほう。

『非伝統的金融政策はその効果に不確実性が高いほか、異例の措置は金融政策の境界線を拡げるものであるため、現在の局面では、市場や国民とのしっかりとしたコミュニケーションがより一層大事な課題となります。』

『その際には、採用した政策の効果と副作用を常に検証しながら、丁寧に説明していくことが重要です。危機時だからといって、時間的整合性のとれない政策を採用すると、かえって、中央銀行の信認に悪影響を及ぼし、結果として、金融政策の有効性を低めることになります。』

段々スイッチが入ってきていますな(^^)。

『結局のところ、中央銀行が信認を確保していくためには、経済が直面している問題の性格に応じた情報発信と整合的な政策の実行が必要です。特に、金融危機時には、金融市場・金融システム安定へのコミットメントを明確にするとともに、そのための政策を果断に実行していくことが何よりも大事であることを改めて述べたいと思います。』

で、最後の「政策提言と称して実務に落とせない無茶な事ばっかり言いやがって、特にそこのクルーグマン!」(超越的ウルトラ意訳)という結びの部分になるのでありました。

理念的な部分は判りますけれども、政策の具体案に落とすときにその理念がいきなり無茶な話を振るコースになられましても困りますがなというのは主張として判らんでも無いのですが、ここの部分&先日(先週水曜)引用した結びの部分ではそれ以上にスイッチが入っている印象でして、まあ何と申しますかという感じではございますな。


ということで虫干しネタで恐縮至極でございます。









2009/08/17

お題「各種措置を延長した7月会合から」

お盆休み中は通勤電車が空いてて良かったですが、いつもあの調子の混み具合しか無い経済水準だったら商売が上がったりなので盆明け混雑もまた致し方なしと。

で、7月会合議事要旨なんですけどね。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090715.pdf

○企業金融環境の認識を確認

執行部の報告部分は月報どおりなのでスルーしまして、政策委員の討論内容を。本文9ページから。

『わが国の金融環境について、委員は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いているとの認識を共有した。』

という所から始まるのですが、途中をスルーして問題点を。

『多くの委員は、下位格付先の社債発行が依然として厳しい状況にあるなど、二極化現象は解消されていないとの認識を示した。こうした中で、資金繰りや金融機関の貸出態度について、委員は、大企業、中小企業とも幾分改善しているものの、厳しい状態が続いているとする先がなお多いとの見方を共有した。』

『何人かの委員は、企業による金融環境に対する見方について、厳しい収益環境が続く中で、在庫調整が一巡した後の景気回復の足取りなどについて、なお不確実な面が大きく、今後の資金調達環境に対する不安感を払拭できない状況にあるのではないかとの認識を示した。』

ということで、二極化問題と今後の調達環境悪化への不安感というのがキーワードになっていて、企業金融特別措置の延長という結論に繋がっています。

先日ご紹介したように、8月の金融経済月報(基本的見解)では金融環境に関る部分の表現に変化がありましたが、変化があったということはこの辺りの論議にも変化があったと考えるのが妥当ですので、この部分、来月見るべしということで。


○各種措置の延長について、CP買入延長

本文11ページ以降で、各種措置について議論しているのですが、まずはCP買入に関する部分を選んで引用します。以下引用は途中を飛ばしてピックアップした格好になっているので、『』で分けた部分は段落分けしたのではなく、途中飛んでたりしますのでその辺よろしゅうに。

『その上で、大方の委員は、わが国の金融環境について、格付間での二極化が依然解消されていないことや、景気回復の不確実性から先行きの資金調達環境への企業の不安感が解消されていないことなどから、全体として、なお厳しい状態にあるとの見方を示した。これを踏まえ、委員は、企業金融の円滑化を引き続き図っていく観点から、措置の延長が適当であるとの認識を共有した。』

『何人かの委員は、C P 買入れは3 月以降大幅な札割れとなっているが、安全弁として資金調達に対する安心感を与える役割を引き続き果たしていると指摘した。また、ある委員は、C P 買入れの大幅な減少などにみられるように、これらの措置の必要性は大きく低下しているが、現時点では、措置を取り止めることに伴う心理面への負の効果は無視できないと述べた。』

まあ妥当な話ですけど、二極化云々はCP買入で対象になっていない銘柄に関して直接どうこうできる話でも無い訳で、そりゃまあ高格付けのCP買入でモノ無くなりとなって仕方が無いから低格付けを買える人はそっちも買うという流れになりますけど。まあバックストップで置いておく意味は大きいですからその点は仰るとおりかと存じます。


○各種措置の延長について、企業金融特別オペ

ターム物金利云々に関して。

『多くの委員は、これらの措置について、昨年秋以降の金融危機の中で企業金融の円滑化に果たしてきている役割が大きいこと、企業金融支援特別オペはターム物金利の安定化にも寄与していることを指摘し、現在の金融環境のもとでは、こうした支援措置が引き続き必要であると述べた。』

ということで、ターム物金利の安定化の話が出ているのですが、それはまあ副次的な効果であって、あまりその話を出すのはどうかという気も。まあそこまでターム物金利を抑制したいのでしたらECBみたいに指値オペを共通担保でやれば良いだけの話でして、企業金融オペだからという訳ではなく、指値無制限オペだからターム物金利が下がっているという事じゃないでしょうかねえ。まあいいけど。

『また、別の複数の委員は、ターム物金利の安定について、企業金融支援特別オペの効果が過大視されており、実際には、長めの共通担保オペ等その他のオペも含めた潤沢な資金供給全体としての効果が出ている点に留意する必要があると述べた。』

指値無制限オペとしての効果は大きいのですが、実際問題としてはたぶん大手中心に銀行業態の資金ポジションが3月以降徐々に変化し、たぶん6月以降益々金余り状態になってきているという状態になっていると思うのですよね。銀行業態が金取り状態になっていた時だと、タームの共通担保を打ったら銀行がGCレートとかの位置をあまり気にせず上のレートでゴッソリ持っていってしまい、債券(というか国債)業者は仕方が無いので現先オペでショートファンディング状態にならざるを得ないという状態になっていたのですけれども、銀行がタームの資金を無理無理に取りに行かなくて良くなり、長めの共通担保で債券業者が安定的にファンディングできるようになって、益々タームやら短期国債やらの金利が安定して、おまけに期末越えのプレミアムも潰れてきたという事でしょうな(文章が長いって)。

ということで、まあ指値無制限というのは効くのですが、共通担保じゃなくて企業金融という所が微妙で(共通担保で指値無制限をやってたら大変なターム物金利潰れまくりになってましたわな)、この効果がどの位なのかというのは複数の委員の指摘どおりだと思われます。

で、副作用に関して順番逆ですが上記の直前の指摘を引用します。

『この間、何人かの委員は、企業金融支援特別オペに関し、高格付C P の発行金利が国庫短期証券の金利を下回る副作用をもたらしている可能性はあるが、当オペの見直しや終了については、部分的な影響や副作用だけではなく、金融市場・企業金融全体の状況やこれに与える影響を踏まえて判断していくことが大事であると述べた。』

という話で、さっきのターム物金利云々の話になるのですね。うだうだとさっき
書きましたが、現状では銀行業態の資金ポジションが変化して金余りでござるの巻となっているのでして、共通担保を今のように普通に打って、CP買現先オペを多く打って(今はCP買現先って概ね0.10%ですわな)おけば、そんなにターム物金利が跳ねる気もしませんけどねえ。


○各種措置の延長について、3か月後の見直し

『もっとも、委員は、措置の延長にあたっては、金融環境が昨年度末までとは異なり、改善の動きが続いていることにも留意する必要があるとの認識を共有した。この点を踏まえ、委員は、臨時措置によるサポートの必要性について、年末までに改めて点検することが適当であるとして、延長期間は3 か月とすることで一致した。何人かの委員は、今後、情勢が一段と改善していけば、新たな期限である年末には、時限措置の終了または見直しを行うことが適当だが、情勢が十分に改善せず、必要と判断する場合には時限措置を再延長することもあり得ると述べ、予断を持たずに判断していくことが大事であると付け加えた。』

とまあそんな感じで、一応ベースとして改善しているから6か月じゃなくて3か月にしましたよという話なので、まー今後は(どうせ利上げなんぞ遠い未来の話ですから)企業金融を含めた金融環境への認識がどのように変化していくのかを見るのが大事という話でしょうな。


○各種措置の延長について、超過準備付利の常設ファシリティ化??

佐藤藍子ですが導入された時から臨時措置じゃ済まなくなると思ってました(^^)。

『補完当座預金制度の取り扱いについて、多くの委員は、本制度は、日本銀行が金融調節を通じてコールレートを適切に誘導しながら、積極的な資金供給を行い得るよう導入したものであることを踏まえて、検討する必要があると述べた。その上で、委員は、わが国の金融環境がなお厳しい状況にあり、景気の下振れリスクに注意が必要な状態が続いている中では、引き続き、潤沢な資金供給を通じて金融市場の安定を確保するため、本制度も期限を延長することが適当との認識で一致した。』

と、ここまではよろしい。

『このうち、何人かの委員は、本制度は、市場金利の下限を画するという金融調節のインフラとしての役割を持っていることを指摘し、海外の金融調節の仕組みなども参考にしながら、今後、将来的なあり方を検討していく必要があるとの意見を述べた。』

まあそうなるんじゃないかと思ってましたよ。


○偽りの夜明けじゃないかもしれないという指摘

政策委員が経済情勢を点検している部分で「ほほー」という箇所を。まあ議論の基本は予想の通りで下振れ懸念のオンパレードにも程がある展開なのですけれども、本文7ページの米国経済の点検部分でオモロイ指摘が。

『(状況改善してるけど下振れリスクと言う話が続いて・・・)更に、何人かの委員は、不良債権問題の解決、家計のバランスシート調整の完了までには、なお相当の時間を要するとの見方を示した。』

のですが、ある委員が敢然と(?)ツッコミ。

『この点について、ある委員は、米国経済の回復テンポについて、バブル崩壊後の日本の経験に引き摺られて過度に慎重な見方になっていないかどうか、という観点からの検討も必要ではないかと述べた。』

・・・・・・確かにそれはそうなのかも知れません。まあ米国が完全に立ち上がったのを見てから重い腰をのんびり上げておけば良いのでそうナーバスになる事もないとは思いますけどね(^^)。


ま、あと景気に関連する話とかは基本的に声明文や金融経済月報に示される通りでありますので、引用は割愛しますです。

#引用大会で手抜きにも程がありますかそうですか(汗)












2009/08/14

お題「日銀ってまー慎重は慎重ですが・・・」

月報その他の日銀ネタをば。

○金融経済月報(概要)は金融環境に変化がありますが・・・・

全文は結構な量(56ページとか)がありますのでご注意を。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0908.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0907.pdf(前回)

でまあ例によって【概要】部分を比較するのですが、これがまた声明文と同様に景気に関する所の変化がろくすっぽ無いのよ。

『わが国の景気は下げ止まっている。

公共投資は増加している。輸出や生産は、大幅に落ち込んだあと、持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。雇用・所得環境が厳しさを増す中で、個人消費は弱めの動きとなっており、住宅投資は減少している。』(今回)

という部分では、声明文と同様に企業の業況感部分が抜けただけでして、それは短観絡みなので特に変わった意味はないですな。

『先行きについては、景気は次第に持ち直しに向かうと考えられる。

すなわち、輸出や生産は、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善などを背景に、持ち直しを続けるとみられる。また、公共投資も増加を続けると見込まれる。一方、国内民間需要は、厳しい収益・資金調達環境が続き、雇用・所得環境も厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(今回)

ここでは前回に無かった「海外経済の改善」という文言が入って来ました。まーサラッと入れているのですが、先行き見通しの中で海外需要動向というのは大きなファクターを占めるので、この部分がしらっと改善するのはポイントとしては大きいですね。

んでもって物価の所はスルーしまして今回表現が変化しているのは金融環境。

『わが国の金融環境は、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』(今回)

というのは変化無いのですが、今回は語順からして色々と変化がございまして、まあこの辺りの改善について認識という所なのではないかと思われます。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低水準で横ばい圏内の動きとなっている。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、CP・社債発行金利や貸出金利の低下から、一段と低下している。ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(前回)

言ってることは基本的に同じだと思います(「低水準で横ばい」というのはそもそも論としてかなり下がった状態にあるから)。相変わらず「低金利の緩和効果は減殺」というのは残っているので、企業金融関連の各種施策を延長したのは妥当でしたという話になる訳で(^^)。

で、今回の書きっぷりが変わっているのは企業金融に関して需要要因と供給要因を分けた所でしょうか。ということ比較の都合上前回分を先に引用します。

『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びは低下しているものの、大企業向けを中心に高めの伸びを続けている。CP発行は減少しているが、これは手許資金積み増しの動きの一服や運転資金需要の後退による影響が大きいとみられる。社債発行銘柄の拡大等もあわせて考えると、CP・社債の発行環境は一段と改善してきている。ただし、下位格付先の社債発行は依然低い水準にとどまっている。』(前回)

で、今回ですが。

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、幾分改善している。CP・社債の発行環境は、下位格付先では依然として厳しい状態にあるが、全体としては、信用スプレッドの低下や社債の発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いている。』(今回)

『一方、資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びが鈍化してきている。社債の発行は高水準となっている一方、CPの発行は減少している。』(今回)

書き方が変わっているので一瞬比較しにくいのですが、企業金融面に関して言えば、資金需要の面では資金需=調達圧力が緩和されてきたというのが変化としては大きく、資金供給の面では改善傾向が続くものの二極化的な状態は依然として継続という書き方になっているものかと思われます。

で、最後の部分。

『こうした中、企業の資金繰りは、なお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている。この間、マネーストックは、前年比2%台半ばで推移している。』(今回)

『こうしたもとで、資金繰りや金融機関の貸出態度度については、なお厳しいとする先が多いものの、大企業、中小企業とも幾分改善している。この間、マネーストックは、前年比2%台半ばで推移している。』(前回)

改善進行ということで、金融環境の改善は着実に進行というところでしょう。ということで、今回の月報(概要)では金融環境の部分に関する書きっぷりが変化しているのが目立ったかなと思います。


○総裁会見から

会合はさっくり終了したのに会見は45分実施。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0908a.pdf

・物価に関する答弁は相変わらず判ったような判らんような

現在CPIのマイナスが拡大している事への影響如何という質問が来たのですが、例によって例の如く。

『物価のマイナスが続く状態というのが、いわゆるデフレというものですが、これについては様々な論点がありますので、ここではデフレ・スパイラルということについての日本銀行の見解、という点についてお答えしたいと思います。』

ということで説明が超長いので引用の途中を思いっきり端折るのですが。

『物価情勢を判断していく上で重要なことは、今回世界経済に加わったショックは非常に大きなものであったと思いますので、そういう意味で先程の物価下落圧力が解消されるにはやはり相応の時間がかかることを念頭に置きながら、中長期的にみて、物価の安定が実現する方向に経済が向かっているのかどうか、を点検していくことだと思っています。』

でまあ端折った部分でも強調してたのは「日本だけじゃなくて世界的に同じですよ」という話でして、世界的な金融のデレバレッジに伴うショックで急速に悪化した需要の変化がここものとの下げの背景にありますよということなのですが・・・・・

『この点、米欧においても、成長率や物価見通しが出され、また各国の潜在成長率あるいは中長期的な物価安定に関する見方──定義や目標──が示されています。足許は、そうしたものから下方に大きく乖離した状態が続いていますが、先行きについては、相応の時間をかけて、緩やかに、物価安定のもとでの持続的成長経路に回復していく姿が展望されています。』

ということで、意地悪く解釈すると、今回の下げに関しては「需給ギャップの急速な拡大によるものですからとりあえず一過性で、デフレスパイラル入りの懸念は小さいよ」と言ってるようにも見えますわな。まー市場的には「先行き戻るのにかなりの時間がかかる」っていう認識を強調している方を重視して、少なくとも金利の部分に関してそう簡単に利上げだ何だという話にはならないですねという読み方になるのですけれども、どうも「デフレ」と言われると説明にスイッチが入るのは日銀の仕様なんですかねえ。

と言いつつ総裁の説明はなお続く。

『そうした姿を展望できるかどうかを判断する上で、大事なポイントはいつも申し上げている2点だと思います。1つ目は、金融システムの安定性が維持されるかどうか、2つ目は、中長期的なインフレ予想が下振れることがないかということです。この2つが崩れると、物価下落と景気悪化の悪循環、いわゆるデフレ・スパイラルが生じることになります。』

金融システムの状況とインフレ予想がポイントとな。

『日本銀行の現在の判断としては、冒頭申し上げました経済・物価情勢の判断のもとで、そうしたデフレ・スパイラルのリスクがあるとは考えていません。ただ足許、物価の下落幅が拡大していますので、注意して丹念に経済情勢を点検していこうと考えています。』

注意して丹念にっていうことで、慎重に点検というのを強調しているので、まーどっかの俊ちゃんみたいなやんちゃなことは無いでしょうという点は判るんですけど、デフレネタになると反応がにゃんとも。


でですね、次の質問でBOEの量的緩和拡大に対する見解を求められて、そっちのコメントはしないで、上記の説明の続きみたいな話をしているんですけどね。

『BOEの政策自体についてのコメントは差し控えますが、非常に大事なのは、物価の下落が経済活動の悪化と相乗作用をもたらすという事態を避けることであると考えています。』

そらそうですな。

『過去の色々なデフレの歴史を振り返ってみると、物価が下落すること自体は全く無いわけではありません。戦後でも物価の下落は局面によっては生じています。もっと長い歴史を遡れば、物価が大きく下落したという時期もあります。』

『ただ、物価の下落が経済活動の収縮をもたらしたケースを調べてみると、米国の1930 年代が典型的であるように、実はほとんどが金融システムが不安定になっている時期です。もう1つ考えられるのは、中長期的な予想インフレ率自体が下振れていくというケースです。』

中長期的な予想インフレ率の方はともかくとして、金融システム云々っていうのは「デフレが継続した結果、金融システム内の資産劣化が発生する」っていうような因果関係で回ってくるケースもあるんじゃないのという気がするのですけど。これだけ見てると「足元金融システムに問題が無いので大丈夫」と言ってるように見えますけど、物価下落の継続が金融システムにも悪影響与えませんかねえということで。

『金融システムの安定については、現在、日本銀行も含め各中央銀行がその安定確保に最善を尽くしています。それから、中長期的な予想インフレ率については、その性格からして短期的にすぐ変動するものではありませんが、経済の需給ギャップが拡大すればそれが物価の下落要因になっていきますから、日本銀行としても、政策金利を非常に低い水準に維持しているほか、企業金融支援措置よる企業活動のサポートを通じて状況の改善を働きかけています。』

だそうです。


・まあ時間軸は時間軸

今後の経済見通しに関してどうですかという質問に対して。

『景気の現状評価および見通しを語る時に、短期的な動きと少し長い経済の動きをどのように分けて説明していくのかというのは悩ましい課題だと思っています。足許の景気の動きについては、先程申し上げた通りですので繰り返しませんが、私どもが気にしていることは、現在の内外の政策効果、あるいは在庫調整が一巡した後の最終需要の強さにまだ確信が持てないということです。』

確信が持てないキタコレ。

『そうした確信が持てないのは、2000 年代半ばにかけて蓄積された世界経済の様々な不均衡が非常に大きく、その結果、その調整にも時間がある程度かかるということが背景にあります。その意味で、回復した場合でも、その強さについては目覚ましいものではないという判断があるわけです。』

どう見ても低金利継続です本当にカムサハムニダ。


・アコードがどうしたこうした

最初の方で民主党のマニフェスト説明会でアコードどうのこうのという話が出てた件について質問があったときにはコメントしなかったのですけど、最後に改めて米国での1950年代のアコードをネタに「アコードの結果長期国債買入を行なったら銀行券ルールに引っ掛かるケースも出そうですね」と上手いスイッチの入れ方をしたら、ちょっとだけコメントが(^^)。

『米国の政策アコード導入以前の金融政策は、国債価格のペッグと申しますか、国債価格を支持するということに割り当てられていました。しかし、アコードの導入により、そうしたことから解放されて金融政策が物価安定という目的に割り当てられるように変わり、中央銀行が独立性を回復しました。』

『日本銀行については、1998 年の日銀法改正によって、金融政策については既に独立性、つまり日本銀行の責任と判断で決定するということが法律で定められています。そのもとで、どのような金融政策、どのような金融調節が良いのかということは、経済・金融の状況を毎回の会合で点検しながら判断していく以外に方法のない話だと思っています。』

ほうほう(^^)。

んでちょっと脱線してあたくしの愚見を申し上げますと(おめーの話なんぞ要らんというツッコミは理解しますが)、国債価格支持策がかつての米国でワークしたからそれを活用ってえ話は良く出てくるし、アコード云々の話も良く出てくるのですけれども、それがワークしてた時期っていうのは金融取引が今のようにホイホイ自由に回って(国際的な取引もそうですけれども、一国内での金融取引もそうでしょ)無かった時代ですから、そもそもの前提条件が全然違う状況な訳でして、その当時上手く行ったから今回もというのはちょっと実務面への配慮が欠けているんじゃないですかと思うのですけどね。

と、ここまで書いておりました所、時間と量の関係で他の部分は来週にご紹介するかもしれませんししないかも知れません(すいません)。

あと、突如上海でスイッチが入った白川総裁の講演ですが、スイッチ全開の結論部分だけ引用しましたが、スイッチ入る前の部分に関しても今日ご紹介とか申し上げてましたが、こちらも後日ですいませんえんです。





2009/08/13

お題「日銀ネタの前にFRBネタでしょう」

景気底打ち祭りが偽りの夜明けになりませんように、ナムナム。

#まあ楽しいお祭りやってる横でそういう事言うから債券屋は受けが悪いのですけどね(笑)

○良く判らないのですがこの結果がコンセンサスだったのですかね

長期国債買入は本当にテンポラリーで終了となってしまいました。

総額を増やさないで期限を1か月延長した事が何で「市場に配慮した」事になる(とモーサテのコメンテーター諸氏が大合唱しているので米国市場のコンセンサスなんですかねえ???)のか外野には1ミリも理解できないのですが、きっとメリケン様におかれましては、残念ながら朝三暮四という故事成語をご存知ではないのでございましょう。つまり狙公の飼ってる(以下悪態)。

まーそれは兎も角として、緩和が効いて目先底打ちしたように見えたところで景気底打ちで出口政策ってもうどっかで見たような景色のようで誠に遺憾なのですが、いやまあそうじゃなくて本当に回復して頂いた方がありがたく存じますので、精々景気底打ち祭りの水差し野郎とか言われないようにしないといけないのですけどね。

・・・・・また祭りを冷笑するようなことを書いてしまった(苦笑)。

ま、長期国債買入に関してはヤケクソ気味に実施したものですから、政策ロジック立て直しという事を考えますと今が丁度良い撤退時期だとは思いますので、あとはまあ戦術的退却の筈が総崩れの敗走にならないように注意して頂きたく存じますという所です。

で、なお嫌味を申し上げますと、こんなにさっさと長期国債買入終了とかバーナンキ先生日本に向かって仰ってたこととやってること違うじゃねえのよとか思うのですが、その話は別件で後ほど(^^)。


○では声明文を寝起きで斜め読み

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090812a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090624a.htm(前回)

・冒頭の景気認識

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June suggests that economic activity is leveling out. 』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the pace of economic contraction is slowing.』(前回)

はいはい底打ち底打ち。

『Conditions in financial markets have improved further in recent weeks. Household spending has continued to show signs of stabilizing but remains constrained by ongoing job losses, sluggish income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment and staffing but are making progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales.』(今回)

『Conditions in financial markets have generally improved in recent months. Household spending has shown further signs of stabilizing but remains constrained by ongoing job losses, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are cutting back on fixed investment and staffing but appear to be making progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales. 』(前回)

金融市場は更に改善しているというのと、消費支出の改善が続いていることを指摘しつつ、所得の増加が不活発みたいな指摘を加えているのですかな。うむうむ。

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee continues to anticipate that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a gradual resumption of sustainable economic growth in a context of price stability.』(今回)

めんどいので前回分は引用しません。なぜかと言うとこの部分は全文一致でございまして(ご確認あれ^^)。

・物価に関して

『The prices of energy and other commodities have risen of late. However, substantial resource slack is likely to dampen cost pressures, and the Committee expects that inflation will remain subdued for some time.』(今回)

これまた前回と全文一致。うーむ・・・・・・


・と言うわけで肝心の金融政策

ここはあまり前回と比較する話では無いので今回分を読みつつ。

『In these circumstances, the Federal Reserve will employ all available tools to promote economic recovery and to preserve price stability.』

まあここは毎度のお約束のような文章。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

で、ここの部分も前回と全文一致で変化無し。特に時間軸を強化している訳でも無く、強力コミットメントしている訳でもないのですけど、この辺りの認識がどういう論議になっているのかという点に関しては議事要旨を改めて見た方が宜しいかと思いますけどね。

『As previously announced, to provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve will purchase a total of up to $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and up to $200 billion of agency debt by the end of the year.』

ここの所も変化無しですわな。またまた全文一致(^^)。

『In addition, the Federal Reserve is in the process of buying $300 billion of Treasury securities.』

なのですが・・・・・

『To promote a smooth transition in markets as these purchases of Treasury securities are completed, the Committee has decided to gradually slow the pace of these transactions and anticipates that the full amount will be purchased by the end of October.』

10月以降はどうするとは言ってませんが、まあ買入ペースを落としてその分期限を1か月延長しますという言い方ですし、smooth transition in marketsをするって言ってますので、これはまあ長期国債買入フェードアウトですよという普通の解釈で無問題でしょうな。

『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. The Federal Reserve is monitoring the size and composition of its balance sheet and will make adjustments to its credit and liquidity programs as warranted.』

これまた毎回同じ表現(前回と全文一致)なのですが、この部分が以前は「今後の買い入れ拡大や期限延長の可能性も示唆」というような読み方をされていましたが、今回そういう解釈にはさすがに成らないでしょうなと思いますと、中々素敵なワーディングマジックでして、FED文学ここにありという所ではないかと思います(^^)。腰折れしたらまた慌てて長期国債買うんでしょうかねえ。


○という事でFRB堂々の一番槍

昨日あたくしは「各国中銀でダチョウ倶楽部状態になるんじゃないですか」とテキトーな事を書き散らした訳ですが(^^)、FRB堂々の一番槍と相成りまして、いやもうこれはという感じではあります。一応向こうのマーケットコンセンサスっぽいのですが(正直、本件に関しては予想がバラバラでどこにマーケットコンセンサスがあったのかサッパリ判らなかったですよ)、もう出口には慎重かなあと思っていたのであたくし的には意外でした。

まーこれで偽りの夜明けに引っ掛かったでござるの巻って話になったらケツ持ちはFRBということで、バーナンキ先生は植毛と髭剃りをして詫びるべきということになるのでしょうな。

とりあえず「出口政策」と言いましても今回の出口は長期国債買入の部分だけでありますので、そーゆー点では「異例あるいは非伝統的政策部分の出口だけですよーん」という事ですが、市場ってえのは先走るのが得意技ですので、「ではそろそろ超低金利見直し」とかいう話はそのうち出てくるんでしょうかね、ニヤニヤ。

一方で、どーせ日銀が当面動く気配はございませんが、「米国が異例政策の出口」ってえ話になりますと、日本における異例と言えばもうCP市場阿片窟とかのような部分がございますので、こちらに関しては次回見直しタイミングで何らかの動きがありますかねえなどというような思惑は出てきても不思議じゃないかなあとは思いますけど、ど〜せ先の話っすけどね。


○白川総裁の中国人民銀行コンファランスでの講演からちょっとだけ

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0908a.htm
「非伝統的な金融政策─中央銀行の挑戦と学習─」

というお題でのお話。資産ショックからデレバレッジを伴いながら金融危機が起きる中では伝統的な金利操作のみの金融政策トランスミッションだけでは不十分で、どのような点について留意しないといけないのかという話をしています。

で、まあ本当はここを全部ご紹介するのが正しいのですが、時間と量の関係上、今日は最初の部分だけで話をぶっ飛ばしてしまいます。続きは明日。

『第1に、金融危機への対応で最も重要なことは、金融市場や金融システムの安定の維持です。そのために、中央銀行は最大限の努力を行う必要がありますが、結局のところ、危機の際には、金融市場や金融システムの安定を維持することこそがセントラル・バンキングというものです。』

『この点、日本銀行は、量的緩和政策、信用緩和政策、株式の買入れを行いました。量的緩和政策について、エコノミストの中には、マネタリスト的なチャネルを通じた経済活動の刺激効果は自明なものと考えている人もいましたが、金融システムへの影響という視点は十分には認識されていませんでした。しかし振り返ってみますと、量的緩和政策の最大の意義は、潤沢な流動性の供給を通じて金融市場と金融システムの安定に貢献したことでした。』

ちょっと張り切り感も見られて中々。

『今回、主要国の中央銀行は、自らのバランスシートを拡大させていますが、イングランド銀行以外の中央銀行は、こうした金融緩和政策を量的緩和政策とは位置付けていません。この点は、量的緩和政策の実体経済に対する有効性が、これまでのところ確認されていないという日本の経験からみても、肯けるものだと思います。』

ということで量的緩和に関する話になると微妙にスイッチが入ってますな(^^)。


で、更にスイッチが入っているのはこの講演の「結び」って所でして・・・・・・

『先ほど申し上げた5つの論点は、かつて日本銀行が非伝統的金融政策を実施した際に、苦心しながら対応してきた問題です。現在と当時との違いは、当時は、これらの問題に対応することの実務上の難しさが、多くのエコノミストに十分には認識されていなかった点です。』

なるほど。

『1990年代後半以降、日本の政策当局に対し、国内外のエコノミストや国際機関から様々な政策提言がなされたことは記憶に新しいと思います。非常に大胆なものも含め、様々な提言が日本銀行に対しなされました。』

ほうほう。

『典型的な政策提言としては、「日本銀行が行うべきことは、高めの目標インフレ率を設定し、その目標を達成するため、実物資産を含めてあらゆる資産を購入することだけである」、「日本銀行は財政赤字のマネタイゼーションを行うべし」などがありました。中でも、最も有名な提言の1つは、、「無責任な政策にクレディブルにコミットすべし」というものです3。』

えーっと、何で最後に「3」とか変な数字があるかと言いますと、これは脚注の意味です。あたくし引用する時に基本的に脚注の数字を削っているのですが、今回に関しては脚注を残しました。さてその脚注付きという名指しで出て来た「最も有名な提言の1つ」は誰の提言でしょう??

(答)『3 Krugman [1999]を参照。』

・・・・(^^)

『興味深いことに、今回の危機では、急速な景気の落ち込みにもかかわらず、エコノミスト達からは、同様の大胆な政策提案は行われていませんし、そうした急進的な措置も実施されていません。』

・・・・(^^)(^^)

『初めて課題に直面すると、政策措置に関する議論は極端に振れがちです。そうした議論は、実際に危機への対応という課題に直面して初めて、真に地に足のついたものになるのだと思います。』

・・・・(^^)(^^)(^^)

『私は、かつてと現在のエコノミストの主張の変化をみるにつけ、人々が過去の経験から学びながら前進していく過程、つまり学習過程が確実に働いていることを感じます。』

・・・・(^^)(^^)(^^)(^^)

ということで、あたくしなんぞは所詮外野で市場に振り回されながらきゃあきゃあ言ってるだけのボーフラみたいなもんですからコメントするのもアレですが、まあ何と申しますかいやはやということで。んで最後も引用しますね。

『我々にとって重要なことは、中央銀行としての基本的な責任を果たしていくことです。そのためには、今後とも、経済や金融の変化に対して常に謙虚さを保ちながら学習を重ね、経済のメカニズムやセントラル・バンキングに関する知恵を磨いていくことが、我々に課されている重要な課題であると考えています。』

ではでは♪





2009/08/12

お題「動かざること山の如しとな」

ということで決定会合結果ですが。

○これは速い

結果の公表文を読む前にトップページの新着情報を熟知すべし。

http://www.boj.or.jp/
『2009年 8月11日 当面の金融政策運営について(現状維持、11時51分公表)』

>11時51分公表
>11時51分公表
>11時51分公表

・・・・午前中に終わったのってかなり久しぶりだと思うので、これはもう何と言う速さという所ですが、まあ各種宿題を前回会合で全部片付けてましたからね。ということで、佐藤藍子ですが今回の会合は速いだろうなあとは思ってました。ヒルメシ前に「今日は午前中終了あるで」とか言いながらメシサクサク終了して正解でした(^^)。

・・・・って別にこの結果だから慌てて見なくても無問題なのですが(爆)。

その割には総裁会見が45分とかやってたのが(前回は各種措置の延長をしたというのに30分)極めて謎なのですが・・・・・


○声明文比較・・・・をしようとしたのですが

てな話はともかくとして声明文はこちら。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090811.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090715.pdf(前回)

ここで声明文を比較するのが毎度の仕様なのですが・・・・見事に前回と同文が並ぶと言う動かざること山の如し状態。景気判断が全くウゴカンチ会長とはやりますな。まあ金融経済月報今日出るのでそっちも読まないといけませんけど・・・・・ということで、以下の引用は全部今回の声明文からの引用でござりまする。

・景気の現状判断

『わが国の景気は下げ止まっている。』

『すなわち、公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。』

ということで今回の声明文を引用したのですが、景気に対する現状認識部分の中で、今回変化している部分は日銀短観を受けた企業の業況感に関する表現が抜けただけです。企業の業況云々というのは日銀短観が出た直後の声明文のみに入る表現ですから、実質的なことを考えますと、景気の現状判断に関して、総括判断及び需要項目別の判断も全く変化が無いですねという話になります。


・物価の現状判断

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナス幅が拡大している。』

マイナスとなっている要因に関しても変化は無く、変化があるのは現象面の部分だけでして、今回『マイナス幅が拡大』となっているのが前回は『マイナスとなっている』となっていました。ということで現象面の話だけ変化ということで、これまた実質的に変化無しの助であります。


・先行き判断、リスクバランスは全く同文です

ということで、今回はまあ物の見事に7月の声明文を踏襲していまして、先行き判断、リスクバランスに関しては7月会合の声明文と全文一致という素敵な状態。違うのは頭についている番号だけ(7月は各種オペの期限延長と展望レポート中間レビューがあったので)という素晴らしさで、改行位置まで全部同じですから、7月声明文と8月声明文をプリントアウトして当該部分を透かし読みすると綺麗に一致しますよ(^^)。

・・・・で終了すると書き物が終了してしまいますので今回の声明文を引用してお茶を濁すこととしましょう(汗)。

『先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。』

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』

『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、下落幅を拡大していくものの、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくと考えられる。こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』

つまり標準シナリオどおりに推移しているということですね、わかります。

『リスク要因をみると、景気については、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』

ということで、相変わらずの下振れリスクのオンパレード。月曜にご紹介したECBの「Overall, the risks to this outlook remain balanced.」「Risks to the outlook for inflation are broadly balanced.」とかいう端から見てるとナントカ蛇に怖じずと申し上げさせて頂きたくなるようなリスクバランス認識とは大違いなのでございます。


○会見もたぶんネタが無さそうな悪寒

ということで昼休み中に堂々結果が出るわ、内容が全然変化が無いわと意外感が1ミリも無い結果になったのですが(というか意外感があったらビビるわ^^)、何も動きが無いということは総裁記者会見もスルーで良いのでしょうという感じになりやがりまして、会見がエンバーゴになって各ベンダーがヘッドラインを打ち出しても債券先物が微動だにしないというとってもお洒落な展開に。確かイブニングセッションって上下3銭位しか動いてなかったような気がするのですが・・・・・・(汗)

ということで、ネタを無理やり拾う為には金融経済月報を熟読すべしということにでもなるんでしょうか(^^)。まあそれよりも何故か45分も会見をやってたことの方が気になりますけどね。



○一番槍は誰だ?

まー今回日銀が見事に動かずですし、モーサテなんかの報道っぷりを見ていますと最近になってようやく「日銀は出口政策にそう簡単に動きはしない」という認識になったのか、今朝も「最終需要の回復に自信が持てないと総裁はコメント」みたいな(自信だったか確信だったか記憶ベースが曖昧ですまんのですが)紹介になっていまして誠に結構。

日本はまあそんな状況でどっからどう見ても出口がどうしたこうしたという話では無いのですけれども、一方で目を外に転じますと、今晩はFOMCの結果が公表されるという段取りになっていまして、その場の勢い(というか何かやらないとマズイという追い込まれモードの中)で訳判らん理由で大々的に実施した財務省証券絶賛大量購入をどうするのかというのが注目材料とな。

まー出口政策と言いましても、これは2段階で考えるべきものでありまして、「通常の金利操作で超低金利の脱却をする」というのと「金利操作以外の資産買入などの措置を終了する」というのは別物でして、主要国が軒並みデフレ懸念の有る中で前者がそう簡単に出口に至るとは思えませんけれども、後者をど〜すんですかというのがまあ出口問題という所でしょうな。

そしてその出口なんですけど、BOEは先日買入を堂々拡大する位ですので出口どころかドンドン洞窟の奥に突っ込んで行くでござるの巻でして、日銀は上記の通りに動く雰囲気毛ほども無し。問題はECBとFRBという事になりますが、ECBってあんまり派手に資産購入に突っ込んでいないので、やっぱりFRBが一番槍を付けに行くのかどうかが注目される所でございましょうか(景気認識的にはECBが何故か一番強気ですけど)。

しかしここで一番槍付けて突撃じゃああああってFRBは突っ込みに行くのでしょうかと考えると、何か(金利じゃないほうの)出口政策に関しては、資産買入拡大の弊害が本当に出てくるような事態(懸念がどうのこうの程度ではなく)にならない限り、主要各国の中央銀行様におかれましては、「どうぞどうぞ」とダチョウ倶楽部状態になるんジャマイカという気もするのですけど・・・・・・って書いて今晩早速あたくしの大予想が外れても謝罪はするかも知れませんが賠償はしませんので悪しからず(^^)。


○そういえば3か月TBの入札ですが

オペは安定してるわ、銀行業態は金が余っているわ(融資が伸びないんでしょうかね)という昨今でございますので、足元の短期市場は運用難にも程がある状態になっておりますようで、先週の6か月TB入札前に一瞬金利が上昇したものの、その後の3か月TB入札で買い方ご一行様絶賛御到来と相成りまして、今週に掛けてはオペ金利も下がるわ、業者の在庫は軽くなるわということで、普通に考えるといらない子の10月2日償還2か月TBも堂々の0.15%割れとなっています。

ということで、まー普通に考えて今日の3か月入札も足元の資金状況の安定を反映した素敵な入札になるものと思料されます。運用担当涙目の展開はまだまだ続くのでありました。

しかしオペも安定的に共通担保が打たれているし、見事なまでに超短い所は安定していますなあということで。










2009/08/11

お題「量と金利に関する論点:1999年4月9日会合から」

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm
に一覧がありますが、その中の1999年4月9日議事録を。

先日(8月3日)の駄文で時間軸の概念に関する山口副総裁の発言をちょっと引用しました。当面の金融政策に関する各委員の意見表明部分でして、本文62ページからなのですけれども、山口副総裁に続いて発言をした後藤審議委員および武富審議委員(肩書きは当然ながら全部当時のね)の意見を引用するでござるの巻。

で、まあ一部切り取りというのも何ですので、頑張って全部引用してみますです、なお一応タイポは確認した積りですけれども、転記間違いがございましたらご勘弁頂くという事で、議事録の本ちゃんを当たっていただきとう存じます。なお、適当に改行を入れます(本文は一段落がとても長い)のでよろしゅうに。

また、2月に事実上のゼロ金利政策を実施して1か月強経過し、色々と見えてきた物がある中での議論となっているので、本当の意味で手探りっていう感じを受けまして、まあ10年後にのうのうと後知恵でああだこうだ言うのは簡単ですけれども、それよりも現在の欧米の金融政策に関する論点にも通じる考察を手探りで行っていたという事に対して敬意を表するべきものであると考えます。


○後藤審議委員の意見から:(1)量と金利の関係、ターゲットの実現可能性

『私も現状の思い切った緩和スタンスを継続する下で、これまでの緩和が呼び起こしつつあるいろいろな変化を見定めていくことで宜しいのではないかと思う。』

現状維持に賛成ということです。

『中原委員と山口副総裁の間でご議論があったことにも関連して若干申し上げさせて頂く。量的拡大とか量的緩和という言葉が両義的に使われ、やや混乱しているのではないかという気がする。金利と量は同時決定であり、金利をターゲットにすれば量はマーケットの需給均衡点として決定されるし、量をターゲットにすれば金利は市場で事後的に決定される。』

『これまで金利をターゲットにして金利を引き下げてきた訳だが、これまでの利下げの誘導も各種のオペ手段を駆使して積み上供給を行ない、また為決時点の余剰資金を放置するといった量的な拡大により利下げを図ってきた。その意味で、金利をターゲットとしつつ、量的な拡大により金利の引き下げを誘導してきた訳である。狭い意味の量的緩和とは、そうした金利と量の関係を一応前提にしながらも、金融政策の操作ターゲットをどうするかという議論において、量をそのターゲットにする立場を量的緩和の立場と呼んでいるのだろうと思う。』

名目ゼロ制約に引っ掛かって物理的な低下余地が無くなるまでは後藤さんの指摘の通りかと存じます。で、その次にターゲットをどう置くべきかという話になります。

『確かにターゲットとしてどちらを採るかについては、先験的にどちらが良いか悪いかはなかなか断定し難いところがある。その時点の経済状況が例えば期待インフレ率が非常に振れ易いような状況であれば、名目金利のターゲットをみているだけでは、場合により間違うリスクを抱えることになる。反面資金需要が実体経済とは離れてシステム不安や2000年問題等により振れ易い状況であれば、量的なターゲットの下で量を拘束的に固定してしまうと、他の要素、例えば金利が乱高下するリスクを伴う。』

『その時々の状況判断が選択の条件になるだろうし、量の目標の算定値がフィージブルであるのかどうか、また拘束的な目標としてのコントローラビリティが十分にあるのかどうかを踏まえて、検討されるべきである。』

これは重要な論点でして、量の目標を作るにしてもその数値が日銀の日々の金融調節でコントロールが可能なもので、目標数値として現実的なものであるかどうかという観点が抜けると、通常の金融調節で何をやりゃ良いのよという話になり、結果として市場に影響するとすれば金利が不安定になっちゃいますよという事になるんでしょうな。

じゃあ「金利目標を設定しながら量の目標を」という意見もあるのでしょうけれども、この場合は両方の目標を同時に満たせなくなるケースでどちらを優先するのかという議論が生じる訳でして、まあそんな細けぇこたあいいんだよ!とか言われそうですけれども、政策実務面で立ち往生するような施策を出されましても政策運営担当者も困りますし、市場の方はもっと困りますのでありまして、政策運営の細部設計っていうのはとっても重要な話だと思うのですよね。


○後藤審議委員の意見から:(2)実質金利の話、期待形成の話

『さらに申し上げると、量的ターゲット論が特に実質ゼロ金利の状態が達成された後でリザーブの供給を増やすことにより、デフレ的な状況の下で期待インフレ率を高める実質金利の引き下げ策として提唱されている面もある。』

ということで実質金利の話。

『これは色々な期待形成に関わるため、植田委員もご意見があると思うが、一つのポイントは実質金利を引き下げ、かつマイルドなインフレに止めるというコントロールが巧く出来るかということである。』

『第二に本当にインフレ期待が生じるとすれば、長期の名目金利がそれを織り込んで上昇する可能性はないのだろうか。仮にそれを織り込んで長期の名目金利が上昇すれば、実質金利の引き下げにならない可能性がある。』

この辺の論点に関しては(今日は引用しませんというかできませんが)この後に植田審議委員や中原審議委員の意見表明部分でも更に論じられています。

で、この点をどうにかする為に長期国債買入っていう話もあるのでしょうけれども、実際問題として「民間クレジット環境の改善の為」と称して事実上は市場に対して「長期金利引き下げの為」と解釈できるような長期国債買入を行った昨今のFRBが結局長期金利を下げられませんでしたという状況もこれありという事で、短期と言うか政策金利という部分での実質金利引き下げというのは(政策金利はコントローラブルだから)議論として有りであっても、中期以降の金利という話になると実質金利がどうこうという話をするとこれがまた難しいパズルのようになるので、論点として持って来るとこういう話になるのではないかと。

で、第三のポイントは10年後の今読みますと「????」という感じなのですれども、当時の状況ってこうだったんですねという事で歴史的な背景が透けて見えるのではないでしょうか。

『第三に政策的にインフレ期待を醸成するということは、ここ3年余りの長きに亘って継続・強化してきた低金利政策に対する社会的な批判を激化させることになりはしないかということである。』

・・・・・・!!

『仮にそうした政策を採った場合にどうなるかはなかなか予測し難いが、名目金利ゼロでも必ずしも貸出が伸びていない状況下で実質金利を引き下げても、−金融機関のリスクテイク姿勢が藤原副総裁の言われたように進んでいけばともかく-流動性が証券投資に向かってしまい、投資や消費を刺激するよりも、円安を通じて経常黒字の増加や資本の流出という結果に終ることになりはしないかが気になる。』

・・・・・・!!

『全てに確定的な答えを持っている訳ではないが、そうした問題を検討してからでなければ、実質金利ゼロの下で期待インフレ率を高めるための量的ターゲット論に踏み切るのは難しいのではないか。』




○武富審議委員の意見から:(1)量を人工的に出せるのか

『私も結論は金融政策は現状の極めて大胆な緩和姿勢を継続するということである。』

ということで現状維持賛成。

『翌日物の金利が実質ゼロになった下で、これまで明らかになったこと、あるいは分からないことが明らかになったことを少し申し述べたい。』

『中央銀行はシステムに対してリザーブを人工的に注入出来るのか、あるいはコントロールが自由自在なのかといえば、そこにマネー需要さえあればかなりのことは出来る。しかし、マネー需要がそもそもない場合は、それはやはり出来ない。』

ここで「でも結局当座預金残高目標が出来たじゃないか」とツッコムのは多分各委員の発言の真意からするとズレたツッコミだと思うのですよ。つまり、福井総裁時代に当座預金残高目標30兆円とかやりましたけれども、この時ってその積み上がった当座預金残高って金融市場的にはブタ積みが積み上がったでござるの巻でありまして、勿論時間軸だとかそういう効果はあったと思われますけれども、量そのものに定量的な効果があったのかというと(ゼロ金利にして超過準備を出すという定性的な部分での効果は当然あったのですけれども)微妙な話だと思う(まあそこは議論が分かれるところで、あくまでも当時の市場現場労務者のあたくしがそう思うというだけの話です、為念)次第でして、ここで武富さんが言っている話と30兆円の話はちょっと意味合いが異なると思います。

『仮に、マネー需要があるならば、極端な言い方をすれば金利水準がゼロでも0.5%でも同じ量は出ていくとみている。0.5%の時点では調節が色々難しく、足の長いものを出して、最後は0.5%に収めるために回収するといった調節を要したのは、市場に個別金融機関の信用リスク問題がある大変異常な事態が発生していたからである。これがある程度正常化してくる中では余り複雑な調節をしないで済む訳であり、そこにマネー需要さえあれば現在供給しているのと同じ程度の量も本来出せたはずだと思う。』

ちょっと話は違いますけれども、このくだりを読んでいたら、FRBの資産買入が金融市場正常化と共に自然減になっている姿とダブって参りました。



○武富審議委員の意見から:(2)期待形成の話

『マネーサプライ目標の議論やインフレ目標の議論は結局その中に期待形成という非常に分かり難いものが入っており、これについては議論しても恐らく始まらないと思う。むしろ問題はこちらサイドが金融調節で出来ること、出来ないことを明確にわきまえた上で、市場や世の中に良い意味の錯覚-金融の量と実体経済なりインフレとの間に安定した関係があるという錯覚-があるとすれば、それをどう巧く活用するかということだと思う。』

『その観点からは、ゼロ金利に見合うリザーブの残高は、ある程度マネー需要がある時には程々伸びるところに着目し、それを今少し見えるようにしていくことは量に対する期待にもある程度応え得ると思う。つまり、仮に量から出発し、期待形成というブラックボックスを通じて実体経済に何か波及するルートがあるとすれば、それも遠望して使っていくのが良い。』

ということで、実務的に出来る事を使って期待形成をどう行っていくのかということを考えていかなければいかんのじゃないかという意見だと思います。


で、この先は武富さんの市場に対する現状認識と見通しの話ですが、折角ですので引用させて頂きます。ということで、後藤さんと武富さんの意見を今日は引用したでござるの巻です。

『現在は市場の良い流れが続いており、大変結構であるが、撹乱要因があるとすれば、内外の資本移動がどのようになるかであり、その点を多少用心してみておくべきである。例えば、国内に入ってくる外国資本が対象として株式市場に向うと、当然円高の方向で為替市場にも響く訳であり、現在の微妙な市場全体の均衡がどこから向きを変えるかが心配である。さらに、企業収益の実体と株価形成の整合性、あるいは非整合性が出発点になるかもしれないし、当面一部の金融機関の破綻が起きた場合に個人資金の動きがどうなるか気掛かりである。この面ではまだ枠組みが出来たとはいえ、安心していられる問題ではなく、現状の枠内でいかにスピーディーに運用管理していくかが小康を得ている広い意味の市場の均衡を維持していく上で極めて重要である。』

ほほー。


#以下上記と関係ない余談を

○良く考えたらこの人は何を言ってるんだ

昨日引用した民主党の市場向けマニフェスト説明会ネタで悪態つき忘れたのがありましたので悪態の追加(^^)。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009080700398

『大塚氏は、日銀の国債買い入れに関連し、「保有状況を見ると、若干の余力があるかもしれない」と指摘。「財政ファイナンスに協力していただく余地はある」と語った。』(上記時事通信記事より)

しらっと読み流しましたが、「中央銀行が財政ファイナンスに協力」っていうネタで米国の長期金利が素敵に上昇して問題になり、FRBも長期国債買入に関して「これ以上の拡大の効果は不確か」という議論になったりして財政マネタイゼーションから連想される悪性インフレ期待(というか懸念)に対する火消しをしましょうという話になっているというのに、この人は財政ファイナンスとかいう微妙な表現をさっくり言い出す次第(時事が書いているだけなので、間違ってたらスイマセン)で、センスが全くもってございませんなあ本当にこの人日銀出身ですかねと思ってしまうのでありました。まあどうでもいいけど。









2009/08/10

お題「ECBの景気認識(ただし質疑応答を除く)/その他少々」

最近雇用統計が微妙に後から修正されるのですが、まさか今回の雇用統計・・・・とか言い出すと最早陰謀論になりますのでまあ良いっすけどね(^^)。まあ株が上がるのは良いことじゃ。

んでまあECBなんですけど。
http://www.ecb.int/press/pressconf/2009/html/is090806.en.html

前半が説明で後半が記者会見なのですが、実はあたくし説明部分の方しか読んでおりませんで(後半は日本時間の土曜に更新されたものと思われます)、説明部分だけを読んで書くのでありますが、読んでてほほーと思うのですが、景気状況的に一番悪い筈のユーロエリアの中央銀行が一番景気に対して(他の主要国中銀対比)強めの見方になっているのかが正直訳判らんというか不思議な気がするのですが、質疑応答の方も読まないといけませんな。

ということで、前半部分の説明だけ見たお話を以下に。

○景気認識がそんなに弱くない

まずは景気認識。第3パラグラフから。

『Let me now explain our assessment in further detail, starting with the economic analysis. The data and survey information that have become available since our meeting on 2 July 2009 have broadly confirmed our previous expectations.』

『While uncertainty is still high, there are increasingly signs that the global recession is bottoming out. As regards the euro area, recent surveys suggest that the pace of contraction is clearly slowing down. However, economic activity over the remainder of this year is expected to remain weak.』

ということで、シナリオ通りの展開なのですが、世界的なリセッションは底を打ちつつあるという認識でして、BOEの景気認識と比較すると温度差がございますなということで。景気は依然弱いという話ですが、明確な下げ止まりという話になっています。

『Looking ahead into next year, after a phase of stabilisation, a gradual recovery with positive quarterly growth rates is expected. The significant policy stimuli in all major economic areas should support growth globally, including in the euro area.』

ということで、金融財政の刺激策により景気回復基調へと。

んで第5、6パラグラフに物価の話が。

『With regard to price developments, annual HICP inflation was, according to Eurostat’s flash estimate, -0.6 % in July, compared with -0.1% in June. This further decline in annual rates of inflation was anticipated and reflects primarily base effects resulting from the peaks observed in global commodity prices a year ago.』

『Looking ahead, owing to these base effects, annual inflation rates are projected to remain temporarily in negative territory, before turning positive again later this year. However, such short-term movements are not relevant from a monetary policy perspective.』

ちゅうことで、足元の物価下落は一時的要因によるもので、デフレ圧力ではございませんとな。


○リスクはバランス

日銀のように先行きのリスクを全部悪化方向で見ているのとはだいぶ違います。

第4パラグラフから。

『In the view of the Governing Council, uncertainty remains high and we have to be prepared for ongoing volatility in incoming data. Overall, the risks to this outlook remain balanced.』

ということで、景気に関する上下のリスクがバランスとな。

『On the upside, there may be stronger than anticipated effects stemming from the extensive macroeconomic stimulus being provided and from other policy measures taken. Confidence may also improve more quickly than currently expected.』

景気に関する世間の認識がECBの予想より速く改善している辺りから、金融財政政策の刺激が効きすぎる事をアップサイドリスクに。日銀がこんな事言ったら物凄い勢いで総叩きに遭いそうですが(苦笑)。

『On the downside, concerns remain relating to a stronger or more protracted negative feedback loop between the real economy and the turmoil in financial markets, renewed increases in oil and other commodity prices, the intensification of protectionist pressures, more unfavourable than expected labour market conditions and, lastly, adverse developments in the world economy stemming from a disorderly correction of global imbalances.』

下方リスクは金融と実体経済の負のフィードバックの話が一番強調されていますな。どう見てもそれってユーロエリアやばいんじゃないですかと思いますが。

物価に関する第7パラグラフから。

『Risks to the outlook for inflation are broadly balanced. They relate, in particular, to the outlook for economic activity and to higher than expected commodity prices. Furthermore, increases in indirect taxation and administered prices may be stronger than currently expected owing to the need for fiscal consolidation in the coming years.』

ということでインフレリスクもバランスとな。


○出口政策に関して

第12パラグラフなんですけどね。

『As the transmission of monetary policy works with lags, our policy action should progressively feed through to the economy in full. Hence, with all the measures taken, including our covered bond purchases, monetary policy will provide ongoing support for households and corporations.』

金融政策の効果浸透には時間が掛かるのでという話が来ました。

『Once the macroeconomic environment improves, the Governing Council will take care that the measures taken are quickly unwound and that the ample liquidity provided is absorbed.』

ということでマクロ環境が改善したら流動性供与プログラムは終了します(別に利上げするとは言ってないと思われますので念のため)とな。

『Hence, any threat to price stability over the medium to longer term will be effectively countered in a timely fashion. The Governing Council will continue to ensure a firm anchoring of medium-term inflation expectations. Such anchoring is indispensable to supporting sustainable growth and employment and contributes to financial stability. Accordingly, we will continue to monitor very closely all developments over the period ahead.』

ということで、まあこの辺って予想されている範囲内だとは思うのですが、それにしてもBOEの超慎重というか弱気認識と対照的で目立ちますなあというところです。


○M3とM1の話

読んでてほほーと思ったのが第9パラグラフ。M3の伸び率が低下しているという話の後なんですけどね。

『The declining pace of monetary expansion since the last quarter of 2008 continues to be accompanied by volatility in the short-term developments of M3 and its components. This reflects to a large extent the impact that absolute and relative changes in interest rates have had on the allocation of funds between financial investments inside and outside M3 and between the different deposit categories within M3.』

『In this respect, the shift in allocation from short-term time deposits to overnight deposits within M3 has led to a further substantial strengthening of annual M1 growth in June. 』

M3の伸びは鈍化しているけれども、M1が伸びているというのはふーんと思いましたです。


ということでQ&Aは読んでいないので、読んだらご紹介するかも知れませんが、何となくスルーしそうな希ガス。


以下別の話です。

○調子の良い事を言うのが「市場との対話」ではありません

民主党が「市場関係者向け説明会」とやらを実施したそうですが当然の如くあたくしが見に逝く訳も無く、報道ベースで悪態つくなと言われそうですけどね。

まずはブルームバーグから。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aoGSdloL3zig
民主大塚氏:来年度予算で国債依存度下げたい−公約説明会(Update2)

・・・・えーっとですね、財源が怪しげな中で色々な景気対策をやるって話をしているのに何をどうすると国債依存度が下がるのでしょうか。いやまあ市場どころかメディアから「この政党のマニフェストは財源が怪しいから悪い金利上昇になって長期金利大丈夫か」と言われる(実際問題としては、日本の資金構造が変わらず、悪性インフレを伴わない限りは需給懸念で長期金利が上昇しても高が知れてるし、金利上昇で景気悪化するんでしょうけどね^^)ので、急に財政再建路線堅持みたいな話をするんでしょうが。

『「景気浮揚と市場の安定を念頭に置いたマクロ経済運営は当然のこと。市場が混乱をきたすのは厳に慎むべきだ」と述べた。』(上記ブルームバーグ記事より)

それが簡単に出来ないから苦労してるんでしょうがと。


で、時事通信から。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009080700398
年内にも財政再建目標=日銀と政策協定も−民主・政調副会長

ということで、こちらでも「悪い金利上昇懸念への火消し」をしようというのが良く伝わるのでありますが、そもそも君たちの政策が(以下同文)。

何かね、市場向け説明会だからとりあえず市場が安心するような話を前後の脈絡なくその場しのぎで話しておけば良いでしょっていうのが見え見えな訳でして、「その場で耳障りの良い適当な話をして支持を取ってしまえばこっちのもの」ってポピュリズムにも程がある政党の浅すぎる底は何とかならんのかと思うのですが、小泉劇場以来の系譜なんでしょうな(吐息)。

#そういう意味では小泉政治の踏襲者は民主党なのですが


で、なお吹いたのはこのくだり。

『大塚氏は、日銀の国債買い入れに関連し、「保有状況を見ると、若干の余力があるかもしれない」と指摘。「財政ファイナンスに協力していただく余地はある」と語った。』(上記時事通信記事より)

えーっと、武藤前副総裁を総裁に任命する人事に反対した時ミンス様はこのように仰っていましたのですが・・・・・・

http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008030801000690.html
国債買い入れも問題視 「財政規律緩めた」

『武藤氏の昇格に当初から異論を唱えた仙谷由人元政調会長は「中央銀行の役割は通貨価値の安定。そのためには(景気対策などで)政府から財政政策との一体化を強いられても、適切な金融政策を貫くことが重要だ」と強調する。』

いやまあ仙谷さんは政策決定に関与してませんから関係ないですって言うのでしょうけれども、大塚さんの説明として時事の記事には「日銀と政策協定も」とまで書いてありまして、もうお前ら何なんだと。

即ち、大塚大先生様が仰せになる話と、かつて武藤副総裁の総裁就任に反対したミンス様の理屈を総合いたしますと、「日銀が自公連立政権と協力するのは悪い協力で、我が党政権と協力するのは良い協力」という事だと理解できる訳ですが、そういうのが「中央銀行の政治からの独立」に悖る理屈だとしか申し上げようがございませんが、もう馬鹿かと阿呆かと。










2009/08/07

お題「BOEが資産買入拡大」

オルタナ資産のETFが拡大した結果、商品と株式の連動性が強まって分散投資の効果が低下して来たんじゃないかという今日のモーサテの米国市場コメントは煽りが多くてちょっとねえというモーサテにしては珍しく水差し系の話(^^)。中々良い観点ですね、やればできる子じゃないですか!

○BOEの厳しい景気認識&買入拡大

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/063.htm
News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and Increases Size of Asset Purchase Programme by £50 Billion to £175 Billion

ということで金利据え置きはさておきまして、前回の会合で「買入プログラムの件に関しては枠を使い切る次回になってから考えますが何か?」というあっさり味にも程がある声明文だったのですけれども、今回はどどーんと買入プログラム拡大でござるの巻。

『The Committee also voted to continue with its programme of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves and to increase its size by £50 billion to £175 billion.』

リリース出たのは東京の夜8時だったのですが、出た途端にポンドがドスンと下がった次第でして、事前の市場予想が「買入プログラムが縮小されるのではないか」という方向が強かった事を意味しているものかと存じますです、はい。

『The world economy remains in recession, though there have been increasing signs that output in the UK’s main export markets is stabilising. Financial market strains have eased and banks’ funding conditions have improved a little, although financial conditions remain fragile. Household and business confidence has picked up, albeit from the very low levels experienced in the wake of the financial crisis last autumn.』

世界経済はまだリセッション金融環境は脆弱ですかそうですか。

『In the United Kingdom, the recession appears to have been deeper than previously thought. GDP fell further in the second quarter of 2009. But the pace of contraction has moderated and business surveys suggest that the trough in output is close at hand. 』

悪化のペースは弱くなってきたけど、英国のリセッションは従来の想定よりも悪化していますと申しております。それでしたらまあ緩和拡大となりますわなあというところですな。で途中(インフレ見通しなどですから本当はそっちも大事な話なのですが、汗)をすっ飛ばして先行き見通しの話。

『The future evolution of output and inflation will be determined by the balance of two sets of forces.』

で、その2つというのは。

『On the one hand, there is a considerable stimulus still working through from the easing in monetary and fiscal policy and the past depreciation of sterling.』

まあ前から話をしてるネタですけど、金融政策と財政政策の緩和に為替の話も出てくるのがBOEの仕様でございます。

『On the other hand, the need for banks to continue repairing their balance sheets is likely to restrict the availability of credit, and past falls in asset prices and high levels of debt may weigh on spending.』

銀行のバランスシート調整が継続する事によってクレジット環境がタイトになることと、資産価格下落や過剰債務が消費を押し下げるというのが悪化要因で、不良資産問題とバランスシート調整に対する厳しい認識を持っているのは、まあ米国なんかと違う所ではないかと思われます。

ということで、またまた途中(はインフレの話ね)を端折って結論はこうなります。

『In the light of that outlook, the Committee also agreed that it should extend its programme of purchases of government and corporate debt to a total of £175 billion, financed by the issuance of central bank reserves. The Committee expects the announced programme to take another three months to complete. The scale of the programme will be kept under review.』

ということで、向こう3か月での買入を継続した上で額を拡大するでござるの巻と相成ったようです。

BOEの場合はFRBや日銀のような「相当前に延長決定しちゃいますよ」というようなことをしないで、本当にギリギリになってからリリースという事で、今回の決定の場合は「買入増額とかしないんじゃないか、下手したら減額も」っていうような思惑が高まっていたらしいので、期待が外れて金利低下に株上昇でポンドが下落となった次第で、この瞬間だけ切り取るとBOEウハウハの展開になってはいるのですが、まーそこに至るまでに「英国も出口政策なのですかね」という思惑で逆に市場が動いていたら差し引きチャラのようなものだし(すいません、あんまりマジメに見てないから良くわかりません)、まーこの手の「市場との対話」というのも難しいモンです、と思います。

何も言わないでいきなりやる攻撃が多いとそれはそれで金融政策に関する思惑やら、何しでかすか判らんのリスクプレミアムを拡大させるとか、まあそんなこんな市場の安定化を損なうかもしれないですし、変な地均しをするようになると、今度は地均ししないと市場が動かなくなるので、地均しを裏切った時に大変な事になりますし、市場はいつも催促するしということで、対話が変な相互作用をするようになるでしょうし、その辺のバランスはムツカシヤという所でしょうか。

以下その他雑談。

○オペ金利が低位安定

えー、昨日はスポネの現先を2000億円減額したのですが、そっちのレートは引き続き足切り0.10%となりました。で、午後の共通担保でも短い方ですが積み最終日越えのオペが足切り堂々の0.10%しかも按分2割とか。

というような状態でござりますので、一昨日の入札で強さを見せてくれた短期国債もまたまた買い優勢となっておられるようで、昨日は10月エンドとかの期末越えの所がレート低下したようで、またも軒並み0.15%割れの水準になりまして、まあ期末越えのプレミアムが縮小という感じでしょうか。1年どころとかもレート低下してますし、運用圧力というか金余りが益々高まるでござるの巻ですな。

以前も申し上げましたが、共通担保のターム物供給が安定的に推移している所に加え、銀行が一頃のように金無し芳一状態じゃなくなった(貸出が伸びず資本は増強してますもんね)こともあって、オペでターム物を比較的安定的に取れるようになったのがGC市場の安定に大いに寄与してて、オペレートも安定するし、短国市場も安定するしという感じになっているというのはあるかと思います。

まあスポネとかスポットウィークとかも必要ではあるのですが、どちらかと言えば(現在は超過準備付利もあるんですし)少々長め(あまり長すぎると使いにくいので3週間から2か月程度ですかねえ、目の子ですけど)の共通担保オペを安定的に打って最終調整をスポネとかに回す位の方が、短期国債市場的には業者のファンディングが安定しやすくなって、その結果レートも安定しやすくなるという気が致しますので、ここもとの金融調節は(短国やらGCを安定させるという観点からしますと)まあうまくワークしてるんじゃないでしょうか、と思いますけどどうかな?

ま、レートがあまりにも安定しちゃうと「一緒や!誰がやっても!!」(AA略)状態になるのでジジイの出番が無くなって痛し痒しなのですが(笑)、金利の安定で金融緩和効果を確実にするという観点からすれば良いお話なんじゃないですか。

ではでは♪














2009/08/06

お題「またまた小ネタが並ぶのは仕様です」

まずは読者様からご教授いただきましたお話から。

○ブラジルの可耕地がどうしたこうしたという話の続編

昨日ブラジルの可耕地面積ってそんなにあるのかいな?という与太話を書いたのですが、詳しい読者様からこんな事を教えて頂きました。感謝感謝でございます。

『確かにブラジルには熱帯雨林がたくさんありますが、それを切り開かなくても耕作できる土地がたくさんブラジルにはあります。セラードと呼ばれているところです。』

ということで、例えばご参考でこちらのページに説明がある(というのも教えていただいたのですけど、汗)のでご参考までに。
http://www.knaes.affrc.go.jp/jnews/64/64p06.html

んでもって上記URLの中にもございますが、セラードを開発したことでブラジルでは大豆の生産量が増えたようでして、その多くが中国へ輸出されているようですな。一つ利口になりました。やっぱネットって良いですね、うんうん。

あと、川島博之氏の『「食糧危機」をあおってはいけない』(文芸春秋)という本もご推奨頂きましたので申し添えますです。

ということで、昨日の悪態は謹んで取り下げる事と致したく。どうもすいませんですm(__)m


○結局短期市場に金余りですかそうですか

昨日は3か月短国の入札がありました。

何か朝からスポットスタートの買現先を減額(1w物の方)しているのにスポネの足は0.10%に下がる(極薄按分ですが)という素敵な状態で何だかねえとか思っておりましたら、入札前の前場引けは新発WIが0.155/0.1575という状態で、既発物が確りとかになってまして、これはそう簡単に流れないのかなあとゆー感じでしたが、落札結果は平均が0.1544%で足切りが0.1564%に。一応前場引け板からみたらそこはさすがに入るでしょというレベルが平均になってまして、そんなに上で切れたイメージでも無かった気がするんですが、必殺で入れた分に毛が生えた位しか業者が取れなかった格好になったようで、売り物が無い中で気配が確りとなって行きました。

結局終わってみれば0.145%の引けとかになってしまいまして、またまたショート銘柄(たぶんショートなのではなく、在庫なし銘柄だと思いますけど)現るという格好ですが、昨日は午後の共通担保オペでは期越え2か月物の足切りが0.12%になって(先週の期越えオペは2か月と3か月があったのですがどっちも0.13足切りでした)ましたし、相変わらず何がどう金余りなのかよー判らんのですが、何かちょっと需給が緩むかと思わせる展開があってもあっという間に強くなるでござるの巻というのが続きますなあという感じでございます。

ここもと長いところが微妙にヘロヘロになる(昨日は大引け直前に急に超長期が強くなるという入札前に嫌がらせとしか思えないフラットニングやってましたけど)中で2年とか確りしてるので、こじつけようと思えばこじつけられない事も無いのですが、何かそーゆー問題では無いような気がしますな。このいつまで経っても金余りという状態は・・・・・・

なお、CP市場は相変わらず市場というよりは単に阿片窟状態になって弛緩しているようなので、あまり寄り付かないようにしております(−−)。



○非伝統的政策の解釈は現在進行形なのですね

暫く前にリクスバンクがこんなレポートを出していました(英語版ですのでご安心を)。

http://www.riksbank.com/templates/Page.aspx?id=32225
Economic Commentaries: The central banks’ extraordinary measures during the financial crisis

本文はこちらですが、何かやたら長いURLですわな(PDFで7ページ)
http://www.riksbank.com/upload/Dokument_riksbank/Kat_publicerat/Ekonomiska%20kommentarer/2009/ek_kom_no9_eng.pdf

でまあお題の通りで「金融危機下における主要国中央銀行の非伝統的政策措置に関して」というお話(簡単な小まとめ)。各国の施策に関してその施策のポイントを5点に分けて見ています。本文3ページ目のあたりから

『What have the central banks done about the problems?』

『We divide the extraordinary measures taken by the central banks into the following five categories:

1. extended opportunities for the banks to borrow from the central bank
2. Loans or direct purchases to support certain markets
3. Quantitative easing
4. emergency liquidity assistance
5. changes in deposit and lending facilities

the division into these five categories is not selfevident, but it has the advantage of making the boundaries between the categories rather clear.』

・・・・えーっと、どういう仕様なのか良く判らんのですが、テキスト引用でコピペをしたら一部の大文字が小文字になるという不思議なプレーが発生(これをホームページビルダーにコピペしてFTPした時になお変な挙動をするのではないかという悪寒がするのですがえいままよ)しているので、微妙に変なのは勘弁して下さいませ。

ま、要するに「新しい資金供給手段の設定」「特定市場への紐付き資金供給または資産購入」「量的緩和」「緊急的流動性供給」「預金ファシリティーや貸出ファシリティーの改良」という事のようなのですけど、その中で3番目の「量的緩和」の所でこんな記述が。

『When policy rates recently began to approach zero in several countries, the central banks also began to experience problems in conducting a sufficiently expansionary monetary policy ? problems which were not directly related to the problems in thefinancial system. several central banks therefore introduced quantitative easing (Qe).』

さよですが。

『this measure entails the central bank setting an operational target for growth in the reserves that the banks keep in accounts with the central bank. the ultimate objective, however, is to squeeze the interest rates of those securities the central bank buys and of securities that are close substitutes for these.』

・・・・・えーっとですね、リザーブの量的目標を引き上げても金利が下がるかというと足元は下がるのですが、実際に金利が下がるという点では時間軸政策のようなことをやらないとイールドカーブに働きかけるという結果になりにくいというのは嘗ての量的緩和政策でもそうですし、直近での米国における動きも、長期国債買入という直接行動よりは時間軸を意識させる政策の方がイールドカーブに効いているのではないかと思われる結果になっていると思うのですが。

で、まあ途中を端折りまして(具体的に何やってるのとかの話です)。

『the Bank of Japan is the central bank that has most experience of quantitative easing, which the bank already used in the period 2001?2006. this measure is now being used in Japan once again.』

・・・・・ええええええ!今は量的緩和はしちょらんじゃろうよ。実質的な時間軸政策は取ってるけどさ。

『the Fed has also initiated a programme to buy government bonds with the aim of squeezing interest rates at longer maturities.』

・・・・・いやまあ確かにFEDはそんな風に取れるような行動をしましたけど、表面の説明は「民間クレジット市場の改善の為」だし、6月のMinuteでは「これ以上の買入拡大の効果は不確実」とか言い出しているのですけど。

ということで、今般の「unconventional measures」に関しては中央銀行の世界でも解釈がまだ一定の確立がされていないという話だというのがこーゆーのを見てると伝わってくる感じがします。まあ動きとしては必ずしも派手な話ではないのですが、こーゆーのを(ただの路傍の傍観者ですけど)眺めることができるのは中々オモロイですなと思いますです、はい。


○これは久々に「政策新人類」の香りが・・・・・・

一昨日のブルームバーグニュースなんですけどね。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=a5pEasNxoR18
経済危機後の「出口戦略」議論へ−経財相が有識者懇談会を設置

『8月4日(ブルームバーグ):林芳正経済財政相は4日午前の閣議後会見で、経済危機克服後の出口戦略などを議論するため、「国家と市場の関係の再構築」に関する有識者懇談会を設置することを明らかにした。来週中をめどに論点整理を行い、来年度の予算要求などにも反映させたい考えだ。』(上記URLより)

とりあえず最先端っぽいことをやりたいというのは良く判ったが、この数か月間米国の市場展開などに引っ張られて日本でも「出口政策がどうのこうの」とメディアが言い出して、日銀が必死こいて出口云々の変な思惑拡大を抑えたという動きがあり、折角出口云々の思惑が沈静化したというのに、この人は一体全体何を考えてこのタイミングでこんなお題で話をおっぱじめるのやら。

こと金融ネタになりますと、「東京金融街構想」とか「政府系SWF構想」とか「金融士構想」とか出入り商人の口車に乗せられてるとしか思えない構想が飛び出す「政策新人類」(笑)の議員が目立ち、誠に遺憾極まりない次第でありましたが、与謝野さんが財務金融経済財政大臣になってからやっとその手の話が立ち消えになって良かった良かったと思っておりましたが、どうもこの大臣からはまたぞろ「政策新人類(笑)」の香りがプンプンと漂ってくる次第で誠に遺憾に存じます。












2009/08/05

お題「暑いので雑談でも」

○何となく入札雑感

昨日は10年国債の入札と6か月短期国債(国庫短期証券ね)の入札ちゃんが実施されたでござるの巻。米債が下落して戻って来たことから1.45%近辺で入札条件発表タイムを迎える事になってしまいまして、それまではどう見ても302回(1.4cpn)リオープンです本当にありがとうございましたと言う事で、それなりに302回にヘッジが入っていた(前回入札が梯子外され入札だったのでそれなりに警戒という事になったと思う)ので、301回(1.5cpn)リオープンとなりますとヘッジが(同償還とは言え)空振りになって両建てでレポコストが掛かってしまいますので、301回に強めのビットとか入れて久々に「どっちでリオープン攻防戦」をやっていたようですな。

で、攻防戦空しく301回リオープンで出たので、301と302の需給がいきなり逆転して302回のレポが▲40bpとか瞬間やらかしてたらしいですが、そーなりますと投資家からも玉がさっくり出てくるとかゆー動きも出るとか、久々にリオープン攻防戦の色々な動きがあったようですな。まーそれが大勢に関係ある話かと突っ込まれますと困るのですが(苦笑)、こーゆー細かい話が大好きなのであたくし。

そー言えば昔々5年42回と43回がカレントの時には攻防戦じゃあ無かったですけど、入札直前まで5年カレントが0.5%だったのですが、入札当日に相場下落して0.6cpnの42回リオープンになりまして、43回と42回の需給が(その時は大したこと無かったのですが)その後延々と変な状態になっていた何てえのがございましたな。手控え見たら2005年2月9日の入札なんですが、その前の43回債が0.5%クーポンで出たのですが、全然オーバーパーにならないで推移するという素敵な銘柄だったので、皆で0.5クーポンリオープン勘弁とばかりにせっせとヘッジを入れていたみたいですな。ええまあ大勢には全然関係ない昔話ですけどね!(もっとど〜でも良いですが、帳面の2005年2月8日を見たら「ライブドア、ニッポン放送株式の35%を取得(子会社の投資顧問分を含め)したと発表」とか書いてありましたよ^^)

ま、発行量も増えましたから需給が極端に偏るという事も減ったとは思いますので瞬間的な話だとは思いますが、暫くはカレント2銘柄の需給が微妙な話になるんでしょうか、よー知らんが。


ところで、6か月TBの入札も地味に実施されていたのですが、こっちは前場頑張って叩いて0.175%ヒットまでやって入札。入札不明玉が2兆2000億もあったのですが、落札水準自体は入札時点で普通に予想される位置にありましたので、前々回の3か月TB入札のように「頑張って甘くしたら投資家がドカンと行って業者空振りでござるの巻」というのではなく、「投資家も行ったけれども業者も普通に取れてる」という入札になったようで、別に踏みあがるではなく、まあ普通に17乗せ水準だと安かろうという感じで確りしていたようですな。3か月と違って6か月(何せ2月10日償還ですからねえ)となると、そうそうドカンと買える人も多くない(3か月対比で)ので、先々週みたいな感じにはならないという所でしょうか。

こちらは相変わらずGCやらターム物のオペ金利が安定していることもあって、別に下を叩かなければ行けない人もいる訳でもなく、何となく消化されていく感じで、引き続きまあ安定。6月末みたいに無駄に金が余って踏み上げみたいな事が無ければこの辺でウダウダやってるんじゃないっすかねえ。よー知らんけど。


○残存2年以内の買い入れは幾らだったでしょ

月初2営業日目恒例のネタ
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0907.htm

例によって例の如くあたくしの手控えエクセルファイルでヘコヘコ計算させたものでござりまするので、間違ってたらごめんなさいなのですけど、一応計算させたら17629億円の残高増加に対して、残存2年以内の増額が10935億円(1年以内も含めてです)。1年以内というのはゾーニングの結果として最初から額が確定みたいなもんでして、まあそれに準ずる所として2年以内って感じで見ると、まあ多少の出入りはあるのですけれども、大体この額もこの程度の数字で安定推移しているかなあって思うのですがどうでしょ。

ということで、輪番ゾーニングを行い、ついでに(日銀とは直接関係ないですけれども)中長期国債の元利金取扱手数料の大削減が実施された効果として、一頃の「期近債ばかりが打ち込まれるので何が長期資金の供給だか訳判らんですがな」状態の輪番オペというのが本来の長期資金供給に無理な変化を伴わずに徐々に正常化されてきましたねという所なんでしょうかね。



○昨日ご紹介した金融市場レポートネタの追記(雑談ネタ)

まあ追記と言うか何と言うかなんですけど。

実は昨日金融市場レポート引用するネタ書いている時に、小見出しを最初「ターム物金利の引き下げと企業金融支援オペ」というような感じで書いていたんですが、引用大会が終わってふと見ると話の流れが特オペ効果恐るべしというのになったので小見出しを変えた次第。

それはつまり何でしょと申しますと、後半の「企業金融支援オペがCPのレートを引き下げました」の要因分解に関する引用と雑感の方が長くなってしまいましたので、話の流れがそっちになっちゃったなあと思って変えたという事なんですけど、実際問題として最初に読んだ時に気になったのは先に引用していた本文部分なのですよ。つまりですな、昨日引用したのの繰り返しになるんですけど。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf

『(金利上昇圧力の緩和)

日本銀行が積極的な資金供給を続けたことで、短期金融市場における需給の逼迫感は徐々に後退していった。また、年度末に向けた企業の予備的な資金調達が一巡してからは、企業向け貸出に備えた銀行の資金需要も減少したため、銀行間取引金利の上昇圧力は弱まった。こうした中、TIBOR などの銀行間ターム物金利は、緩やかながらも着実に低下し、先行きも当面、低水準で推移することが見込まれている。』

『CP 市場では、企業の在庫調整の進捗などにより運転資金需要が減少する中、日本銀行による一連の企業金融支援措置等の効果もあって、高格付け銘柄については、発行レートがTIBOR を安定的に下回るようになったほか、ロットやタームの面でも特段の制約を受けることなくCP を発行できる企業が増加した。また、企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP を抱え込む動きがみられたことから、国庫短期証券利回りを下回る発行レートも散見されるようになった。』

『大手銀行の短期余剰資金は、短期国債運用やレポ運用にも振り向けられたことから、証券発行増加による需給悪化が懸念されていた国庫短期証券の利回りや、そのファンディングを行うGC レポのレートに対する上昇圧力も徐々に緩和された。』(本文40ページ)

ということで、企業金融支援措置における資金供給が増えることがターム物金利の低下を促しているという話になっていたりしまして、まー結果としては仰せの通りなのですが、先日ご紹介したように、企画局謹製『今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について』では『また、日本銀行が導入した企業金融支援特別オペは、期間は最長3か月と既存のオペの範囲内であるが、翌日物コールレートの誘導目標水準の固定金利で、民間企業債務の担保範囲内であれば金額に制限を設けずに資金供給することにより、ターム物金利の低下を促す効果が期待されている。』となっていまして(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdfの本文5ページ目ね)、何か「企業金融支援の為に実施した施策が結果的にターム物金利を下げた」というのが、いつの間にか「ターム物金利に働きかける為に企業金融特別オペを実施する」という話にすり変わるのではないかというのが微妙に気になります。

入り口と出口で言う事が違って来ますと、本来の政策意図を逸脱した使い方になりますねという話になる訳でして、企業特オペで言えば企業金融支援じゃなくてターム物金利誘導というのに使うのであれば、本来的に言えば個別市場に突っ込むのではなくて、それこそ共通担保指値オペでも実施するとかすれば良いのであって、手元にある果物ナイフが便利だから魚でも捌くかっていうような使い方は、魚が小魚だったら良いですけど、大きくなった時には困るでしょと(例えがヘタクソでスイマセン)思うのですな。

何かこの前も同じ話してねえかという説もあるのですが、CP市場の阿片窟というか銘柄間の信用力格差も無い弛緩しきった状態を見てると何ともねえって感じになるもんでまた書いてしまったという所です(汗)。

ところで、しらっと書いてありますけど、良く見たら金融市場レポートで特別オペの恐るべき効能「後から担保繰りの為にCP買いますか攻撃」についてしらっと『企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP を抱え込む動きがみられたことから』って指摘してありますね(^^)。つい読み流してしまいましたけど良く判っていらっしゃる(^^)(^^)(^^)(^^)(^^)。



○耕作可能地が多いから買いという凄い理屈(与太話)

まあモーサテで米国市場のピットから後付け講釈している人たちの話に突っ込むというのは「ネタにマジレス」の世界なのでどうでもよい雑談なのですが。

いやね、さっきモーサテ見てたら「ブラジルは投資対象として魅力的」という話をしてたのですが、その理屈が「耕作可能面積が広くて食糧供給国としての魅力が非常に高い」というのだったので飲んでる紅茶を吹き出しそうになって「んがぐっぐ」状態になってしまったんですけど。

えーっとですね、ブラジルの「今は耕作地になっていないけれども耕作が可能な広大な面積」ってそれアマゾン流域とかの事ですよね、あれだけ巨大な面積を示されたところを見る(テレビ見てない人はすいません。合衆国と中国とブラジルの「可耕地面積と現在の農地面積」の比較グラフみたいなのがあったんです)と、普通にそれは「熱帯雨林を切り開けば農地がバンバン造成できますよ」って話だと思うのですが、それって森林切り開いたらCO2排出どうなるのよとか思いますし、それ以前の問題として、熱帯雨林を物凄い勢いで切り開いたら気候のバランス大丈夫かよ(古代レバノンとかみたいに)思うのですが・・・・・・

飴公の考えることはよー判らんですわ・・・・・ってネタにマジレスかっこ悪いですかそうですか(^^)

追記:読者様から間違いの訂正を頂きましたので6日の追記分もご覧下さい





2009/08/04

お題「金融市場レポートなどなど」

S&P500が1000回復ですかそうですか(棒読み)。

んでまあ金融市場レポートから少々。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf
(PDFで表紙を含めて65ページでございますのでご注意を)

○やっぱり特オペ恐るべしという話

今回の金融市場レポートは(毎度面白いのですが^^)中々読み応えがございまして、各市場のリスク許容度復活の状況が市況のグラフなどと共に紹介されているので楽しめます。でもって今日はターム物金利が抑制されましたねという話のあたりから。本文38ページ(ファイルだと41ページ)から。

(日本銀行による積極的な資金供給)って辺りからなんですけど、まあ色々なオペを実施しましたねという話が色々と書いてありますけれども、企業特オペが増えていますというあたりが次の話のマクラになるのれす。

『積極的なオペ運営の結果、資金供給残高(長期国債買入れを除く)は、08 年末に続き、08 度末も50 兆円を上回る水準となり、その後も高水準での推移が続いた。内訳をみると、企業金融支援特別オペが、国債買現先オペに並ぶ割合を占めるようになった。』

で、ど〜なったかというと次の小見出しが(金利上昇圧力の緩和)でありまする。

『日本銀行が積極的な資金供給を続けたことで、短期金融市場における需給の逼迫感は徐々に後退していった。また、年度末に向けた企業の予備的な資金調達が一巡してからは、企業向け貸出に備えた銀行の資金需要も減少したため、銀行間取引金利の上昇圧力は弱まった。こうした中、TIBOR などの銀行間ターム物金利は、緩やかながらも着実に低下し、先行きも当面、低水準で推移することが見込まれている。』

『CP 市場では、企業の在庫調整の進捗などにより運転資金需要が減少する中、日本銀行による一連の企業金融支援措置等の効果もあって、高格付け銘柄については、発行レートがTIBOR を安定的に下回るようになったほか、ロットやタームの面でも特段の制約を受けることなくCP を発行できる企業が増加した。また、企業金融支援特別オペの担保繰りのため、オペ対象先の金融機関が高格付けCP を抱え込む動きがみられたことから、国庫短期証券利回りを下回る発行レートも散見されるようになった。』

えーっと、散見どころの騒ぎじゃないのですが・・・・・

『大手銀行の短期余剰資金は、短期国債運用やレポ運用にも振り向けられたことから、証券発行増加による需給悪化が懸念されていた国庫短期証券の利回りや、そのファンディングを行うGC レポのレートに対する上昇圧力も徐々に緩和された。また、地銀や外銀などでは、運用難の余剰資金が日銀当座預金に滞留する傾向が強まった。』

となった訳ですが、企業特オペがCPレートに与えた影響という説明が本文40ページ以降にあるのですけれども、CPのスプレッド(ところでこの分析でリスクフリーレートらしきものを短国レートじゃなくてOISレートを取ってくるのは何でじゃろと思うのですけど)を要因分解して分析したのでありますが、途中を割愛して企業金融措置でCP発行残高のうち幾らが吸収されているのかという要因を分析した結果部分を引用。

『(1)企業金融支援措置による資金供給が増加するにしたがって、CP 発行レートに低下圧力がかかっていった。このことは、政策金利の引き下げという伝統的な政策トランスミッションを経由せずに、企業金融支援措置によって、CP 発行レートを引き下げる政策効果があったことを意味する。』

まあそう言ってしまえばそうなのですが、そもそも論として企業金融特別オペが「金利指値オペ」というモノでありますので、それこそかつての公定歩合貸出みたいなもんで、市場金利を強力誘導するツールとして機能する訳ですわな。つまりアレですよ、指値オペって規制金利の残滓みたいなもんでありまして(おおげさ^^)そりゃもう別の意味で言えばこれこそ「伝統的政策トランスミッション」だったりするのではありませんかとか言うのは屁理屈ですかそうですか(^^)。

まー指値オペ最強という事実に加え、企業特別オペの場合は入札形式ではない「全部出します」攻撃な上に、現先オペのように資金供給と担保玉が1対1で対応する訳ではなく、資金供給に見合う担保を出せばよいという話になるので、在庫ファンディング空振りリスクが現先と比較して皆無というオソロシスな話ですからそら効くわ・・・・ということで、企業支援措置の効果でこのような指摘があるのですが、体感的にはちょっと違和感がございまする。

『2008 年秋以降、企業の資金調達環境を取り巻く不確実性が増加し、CP 投資家のリスク・アペタイトが低下する中――つまり、株価のインプライド・ボラティリティが大幅に上昇する中――、CP の発行レートに大幅な上昇圧力がかかったが、日本銀行による企業金融支援措置はその影響がCP 市場に波及するのを最小限に食い止めることに貢献してきたと解釈できる。』

で、その部分なのですが、脚注でこういう説明を。

『2008 年10 月以降、企業金融関連オペを増加させても、CP 発行レートの上昇傾向が続いたが、このことは、オペが効かなかったことを意味するのではなく、オペの増額がなければ、CP レートはさらに跳ね上がっていたことを示唆している。』

えーっとですね、10月14日の臨時政策決定会合で資金供給の強化という決定したのですが、何故かその後の資金供給が市場の期待に対して出し渋り感がございまして、特にCP現先オペに関しては拡充すると決定したのにその頻度が少なくてオペが足りなかった(「効かなかった」ではなく)という事だったんじゃないですかねえと思うのですけど。

で、企業特別オペを打ち込んだ上にその額がジャンジャン増えてきて、当初導入時に白川総裁が発言した数値を思いっきり上回りだした以降から官民逆転とかおっぱじまったような気がするので(もうちょっと途中色々とあったのですが書き出すと話のポイントがボケそうなので割愛^^)、やはり企業特別オペのツールとしての強力性があるという話になるのかなあと。

それから、株価下落が止まって、大手銀行を中心とする資本増強策が実施されて、企業の予備的資金需要および売上減少に伴う運転資金需要増加が売上サイクル一巡で減退したこととかも要因だと思いますが、まあその辺は要因分解の別の項目で説明できるのでしょうね。


『(2)CP 発行レートに対する引き下げ効果は、格付けによって異なり、a-1 格において最も大きくなっている。2008 年秋以降の金融混乱の過程でも、高格付けであるa-1+格については、投資信託など最終投資家の購入ニーズが引き続き存在したため、a-1格に比べると、需給環境はまだ良いほうであった。つまり、a-1+格に対しては、a-1格に比べ、政策効果の及ぶ余地がもともと小さかったと考えられる。また、買入れオペの対象はa-1 格以上であり、対象外のa-2 格に対する政策効果は小さくなっている。』

これはそうですなと思いつつ、a-1+とa-1でそんなに違ったっけとか一瞬思いましたが、そもそもa-1というのも幅が広い話ですから平均するとそういう話になるんでしょうな(^^)。

『(3)なお、買入れオペの対象外であるa-2 格に対しても、不確実性(信頼区間)が大きいとはいえ、引き下げ効果が発生しているのは、オペのスピルオーバー効果によるものと考えられる。すなわち、オペによって、a-1+やa-1 格など高格付けCP の市場環境が改善したことから、銀行などの投資家による低格付けCP の引受け余地が何某か増したものと考えられる。』

ここの所はa-2とかをホイホイ買う人じゃないと正直よーわからんですが、高格付けCPでそこそこレートが出るうちは別に格付けが1枚下のモノを頑張って買う必要が乏しくなると思われますので、そーゆー効果はあるんでしょうなと。

ところで、ここのBOXでの分析ですけれども、TIBORの説明でここの部分は余計じゃないですかね。超蛇足ですけど。

『また、TIBOR は、本来、銀行の資金調達コストでもあり、CP のファンディング・コストが上昇すれば、CP の発行金利にも上昇圧力がかかる。』

えーっと、本来はそうなのですけど日本のTIBORって・・・・・(^^)


という事で、ダラダラ引用しましたが、お前は何を言いたいかと突っ込まれますと、あたしゃ要するに「指値無制限オペ恐るべし」と言いたいのでありました(笑)。



○というのを書いていたら時間が無くなったのでメモだけ

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=au2kLXcv5EB4
民主・直嶋氏:ドル中心の外貨準備の運用続ける−単独会見

ということでまたまたブルームバーグニュースがインタビューをして、ネクスト財務大臣の面白発言のインパクトを減らそうと努力しているようで誠にご苦労様としか申し上げようがございませんです。

ところで、記事にコメントしてる人がいて、『日本の外貨準備について「少しずつ減らすことが基本。』って言ってるのですが、その意味が判らんのですけど、何で外準を減らすのが基本なのでしょうか????

いや現状の水準が多いか少ないかという議論の中でそういうコメントしたのだと思うんですけど、何かまたぞろ変な世論様が外準減らせ米債売れとか言い出すと小泉劇場以来ポピュリズム政治爆裂の昨今、何が暴走しだすか判らんのでオソロシスと思うのですけど、もしかして世の中の一般ピープル的に「外貨準備は財産だからどんどん使え」というような流れになっているのではないかとちょっと気になってしまったあたくしでした。杞憂だと思うけど。






2009/08/03

お題「野田審議委員会見など」

まずは野田審議委員の会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0907c.pdf

○長期金利と財政規律

日本経済のリスク要因として「経済実態に合わない長期金利上昇」をわざわざ挙げただけに、長期金利と財政規律に関する質問が結構多かったのが今回の会見の特徴の一つですな。

『(問) 午前中の懇談会で、長期金利についてのお話がありました。今ちょうど、政治の世界で財政についても論じられているところですが、財政について、特に政治に対して、どのような要望・注文をお持ちでしょうか。』

いやあのそういう直球質問をするとこういう答えしか返ってこないのですけれども・・・・・・

『(答) 確かに、財政の規律が重要であるという趣旨は、今朝の挨拶で申し上げましたが、政治に対する注文がどうであるかという質問については、審議委員という立場であり、コメントは差し控えさせて頂きたいと思います。』

その後の方で長期金利に関する質疑が続いた後にこういう質問が出ましてですな。

『(問) 8月30 日に衆議院選の投開票を控えています。政治への要望というよりは、蓋然性、可能性の問題ではあると思うのですが、政権の枠組みや、政策運営の仕方によって、長期金利に悪影響を与える可能性は十分あり得るという認識でよいのでしょうか。』

『(答) 私は、財政規律の確立が重要であるということを申し上げているわけであり、その観点から、仮にも、財政規律に対して不安を国民あるいはマーケットに与えるようなことであっては、私が今朝申し上げた、財政規律の確保が重要であるという趣旨にはもとるということで、ご理解頂ければ有り難いと思います。』

ということで、財政支出の空手形がホイホイ出てくる昨今の状況に対して暗に苦言を呈している訳ですな(^^)。まー立場的にそうそうきつい事は言えないでしょうけれども・・・・・


○長期金利抑制の方策に関して

金曜に引用した脚注「中央銀行による国債の買入は実施直後の一時的なアナウンスメント効果はあっても長期金利の誘導を行うような長期的効果は認められない」という件に関して質問が出て、その流れでこんな質問が。

『(問) 前段の「実施直後の一時的なアナウンスメント効果は相応に認められる」ということについても同意されていることになると思いますが、これは、日銀が今後政策を考えるときにも、こうした一時的な効果を狙って政策を決めることがあり得ると考えればよろしいでしょうか。』

まーこれは「No」を期待した質問なんでしょうけれども。

『(答) 私は、短期的・一時的な効果と中長期的な効果ないしは影響ということを区別して申し上げております。短期的な効果は、日にちが経てば消えてしまうため、私どもは、基本的には中長期的な立場に立って政策を打つというのが基本的なスタンスです。短期的なアナウンスメント効果があるから、直ちにこれでもって政策云々という考えは、少なくとも私には全くありません。』

で、長期金利が上がったらどうするのですかという話なのですけど・・・・

『(問) 長期金利についてお伺いしたいのですが、午前中の挨拶で、「実体経済の回復と乖離した長期金利の上昇は、ただでさえ弱い実体経済の回復力を、さらに弱めることにもなり、警戒を怠れない」と発言されていますが、日本銀行として、何か長期金利の上昇を抑制するような政策を、今後、採る可能性があるとみてよいのか否か教えて頂けますでしょうか。』

『(答) 私ども日本銀行の政策手段は、短期金利に働きかけるという手段しか持ち合わせておりません。基本的には誘導目標です。それに、ご案内だと思いますが、少し長めのターム物に働きかける政策も、年初来、採ってきておりますが、ご指摘のような、いわゆる長期金利の分野に対して、私どもが政策として直接的に働きかけるような手段は持ち合わせておりません。』

というまあ普通の回答。これだけではつまらんのですが、質疑の最後に「時間軸政策の採用についてどう思いますか」という質問がありまして、そちらに関する回答がこうなっています。

『(答) かつて採った時間軸政策といわれる政策を現在視野に入れているかと言われると、入っておりません。ただ、もう少し、長い将来どうですかと言われると、かねてから申し上げている通り、私どもは、あらゆる政策手段について予断をもって臨むということはしておりませんので、選択肢の一つであるかと言えば、選択肢の一つであるという答えになろうかと思います。』

まあ現状はコミットメントこそ無いですけれども、展望レポートの物価見通しが実質的な時間軸みたいな状態になっているので、金利市場だけの事情で言えば敢えて時間軸を明言する必要も無いのですけれども、後はまあ一般向けのアナウンスメント効果をどう評価するかという話になるのではないかと思われます。


○基本的にハトさんですので

米国不良債権プログラムの規模縮小に関して。

『(答) (引用者追記:米銀の資本不足問題が再燃する)リスクについては、挨拶要旨で述べている通りであり、繰り返しは避けますが、米国の当局に対してどうするのかという前段の質問に対しては、この不良債権買取りプログラム(PPIP:Public-Private Investment Program)のみならず、これまでの不良債権処理でわが国が経験したこと、あるいは政策としてやってきたこと、あるいはその効果等々については、グローバルなミーティングの席、あるいは個別のバイラテラルなコミュニケーションの場を通じて、これまで繰り返し述べてきました。今後も、その姿勢、そういったことについて私どもの経験を十分に説明していくという考え方には全く変わりはありません。』

で、講演で懸念しているという話をしていましたので、結論からすると本件に関しては懸念しており、日本でもあった「偽りの夜明け」にならないかと危惧していますわなという話でしょう。

で、この質疑応答を見ていて「ほほー」と思ったのですけれども、今回の質疑応答の中では「出口政策」に関る質問が全然飛んできておらず、「これこれは景気下振れの話だと思いますが審議委員はどうお考えですか」というトーンの質疑応答が延々と続くという流れになっておりまして、これは野田さんの講演のトーンがかなりハト派というか先行きの景気に対する厳しいトーン(字面で感じるよりも!)だった為に会見での質疑応答もそのトーンに引っ張られたのではないかと思料されます、っていうのはあたくしの勝手な想像なんですけどね(^^)。

ということで、野田審議委員は特に今回の経済状況に関しては、金融機関の不良資産問題というポイントを重視しており、その不良資産の規模および欧米の不良資産処理に関する施策が甘いと評価する事から、景気の回復は相当遅れるし、処理を誤れば再び問題発生もという金融面を重視しているのでは無いかと思われます。まあ銀行出身ですからね。


以上が野田審議委員会見でした。以下別の話です。


○1999年4月19日の金融政策決定会合議事録

1999年前半の金融政策決定会合議事録が公開されていました。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm

でね、まあ普通は2月12日の会合での利下げの話を見るのですが、あたくしは何故か「量的ターゲットVS時間軸」の議論があった4月9日の会合議事録を先に熟読するでござるの巻。

こちらの議事録はワープロソフトで作成した議事録の冊子をスキャナーか何かで読んでいるという代物ですので、引用となると手打ちをしないといけない(それ用の装置とかもあるのでしょうけれど持ってません)ので、準備しておりません(週末は読み物で忙しかったので、と言い訳)ので本日はちょっと引用できないのですけれども・・・・・・

えーっとですね、議事録本文の60ページから75ページのあたりに、量的ターゲットを出す話と、それよりもゼロ金利の時間軸政策(という用語は当時ありませんでしたけれども)を実施した方が良いのではという議論がございまして、興味深く読む事ができました。

議事録63ページにある山口泰副総裁(当時)の発言から一部引用します。

『ただ、このオーバーナイトレート・ゼロという政策をいつまで続けるべきかについては、あるいは今少し明確にした方が良いのではないかとも感じている。この点、総裁の様々なご発言の中でかなり明確な方針が表明されてきているし、ターム物金利の低下振りなどをみると、マーケットの中での理解も徐々に浸透している。しかし、現在の政策は経済の自律回復がみえ、且つ物価の下落圧力が減衰し始める局面までは維持する必要があると個人的には思っており、そのことを今少し鮮明にする方が良いのではないかという趣旨である。』

『換言すると、現在のオーバーナイトレート・ゼロ金利政策がある程度長期化するのを覚悟するということであるが、その点を鮮明にすることにより、結果的には金利の全期間にわたる低位安定を促し、政策効果を極大にしていくことになると思われ、その方がこの期間が比較的短くて済むことに繋がるかもしれない。』

ということで、まともに「時間軸政策でイールドカーブ全体を低位安定させる」という話をしていますね。他の審議委員もこのあたりの議論で色々と良い論点が出ているので、この15ページの部分はお読みになりますと吉かと存じます。

#そのうちテキスト起こしする積りではございます


○金融市場レポートが出てました

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0907a.htm

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/data/mkr0907a.pdf

国際金融市場におけるリスク・アペタイトの回復と世界経済の脆弱性
2009年上期の本邦金融市場の動向 ―― 市場環境の改善と神経質な展開 ――金融資本市場の今後の展望

ということですが、これまた長いので後日ネタにするかもしれません。基本的には今年前半の流れを細かく追っていまして、図表も豊富なので相場レビューにいかがでしょうかというところですが、PDFの本文が64ページという中々の長いものですので念の為。