トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「100104」というような形式でつけていますので「URL+#日付(6桁表示)」で該当日の駄文に直リンできます)


2010/01/29

お題「月報とか総裁会見とか」

あらま、もう月末なんですか(驚)。

○金融経済月報はまあ微妙な変化だけっすな

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0912.pdf(前回)

読み物が多いので手抜きで最初の【概要】部分を比較。

・現状判断部分では住宅投資を引き上げ

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

引き続きカワランチ会長なのれす。で、項目別展開。

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。この間、公共投資は頭打ちとなりつつある。』(今回)

この部分ですけれども、12月月報では日銀短観を受けた業況感の話が入っていまして、そこが抜けていますが、それは短観直後の月報に挿入される仕様なのでキニシナイ。で、その他の文言ですけれども、他は一致しているのですが、住宅投資の所だけ違っていまして、前回は、

『住宅投資は減少している。』(前回の住宅投資の部分)

となっていました。減少から下げ止まりですけど住宅投資は何気に波及するものがでかいと思われるので今後持ち直すかどうかですね。


・先行き見通しは見事に不変

いわゆる一つの全文一致って奴ですので比較引用できませんがな。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。

すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』(今回)

まあ先行き見通しが不変という事は即ち上方修正に非ずという事でございまして、かつ「緩やかな回復」ではあっても「ペースは遅い」ということでありますので、金融政策的なインプリケーションはそれこそどこかの「for an extended period」状態だという事になりますわな。いやまあ基本的な見通しがもっと急回復とかなら話は違いますけれどね。


・物価は引き上げで基本は原油価格

原油価格上昇が基本での物価見通し上げで、しかも別に内需が盛り上がってディマンドプルみたいな上昇をしている訳でも何でもないというのは、まあ金融政策的には動くような文脈でもなかろうとは思いますけど。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(前回)

下落幅が縮小となりましたな。で、先行き見通し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況の上昇が押し上げに働くことから、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の強含みが押し上げに働くものの、製品需給緩和の影響が続くことから、当面、弱含みで推移するとみられる。』(前回)

国内企業物価は弱含みから横ばいに変化しましたが、あたくし的にはこの時の書き方の語順を先に見るのでありまして(^^)、つまりAだけどBだからどうのこうのという言い方っていうのは、要因としてはBがメインになる訳ですから、こーゆー時にはああなるほどとか思ってしまうんですよね(^^)。

『消費者物価の前年比は、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小すると予想される。』(前回)

ということで、まあ見通しを上げたということでしょうか。ほうほう。


・金融環境は地味ながらちゃっかり改善

書いてある所に関しては市場動向に関する部分でも文言変更がありますが、これは現象面の記述で特に判断に関わる部分でもないので割愛しまして、金融環境について。

全体的な判断は、

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(今回)

と同じでして、項目別展開も同じなのですが、企業の資金調達コストの部分と金融緩和の効果部分を変更しています。つまり、

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎつつある。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、幾分低下している。実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎ始めている。』(前回)

資金調達コストが「幾分低下」というのが「低下傾向が続いている」となっているのと、低金利政策による実体的な緩和効果に関して従来より効果が減殺されているという認識ですが、この減殺度合いが緩和されてきているという書きっぷりが更に改善しているという状態。

ま、企業金融関連については金融大臣様もうるさいので、この辺りは改善していかないと困るってえのもありますな。まあ足元市場調達に関する部分だけで言えば、米国金融危機以来発行するのが微妙扱いされちゃっていた発行体さんとかでも普通社債発行してたり、超足元で言えばCPレートも誠に結構な状態になっていますわなという事ですが、ただまあ月報でも指摘されているように(引用はしませんけど)、そもそも企業の資金需要が伸びていないので調達環境が良いというのもありますけどね。

ということで、今回の月報は若干上方修正っちゃあ上方修正ですし、方向性としてはまあ明るめの話も交じっていますが、基本的な部分には変更無しという感じではなかろうかと存じます。


○総裁会見ですが

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1001a.pdf

今回はあんまり派手な話は無かったですが・・・・


・原油価格上昇に関する話

原油価格上昇の影響での物価見通し上方修正というのはコストプッシュなのではないかという趣旨の質問が少々出まして、それに関する総裁の回答から。

『(答)ご指摘の通り、物価の見通しが前回の見通しに比べ上方改訂されました。その主因は原油価格高の影響です。これは、新興国経済の成長が予想よりも強いことと非常に関係している話です。世界の各地域の経済が同じテンポで成長することは、経済のダイナミズムを考えると現実にはなかなか起きにくいので、ある時期はこの商品が上昇し、また別の時期は他の商品が上昇するということが、経済が生き物である以上必ず起こります。』

『ご質問を経済の言葉に置き換えて言うと、物価は上がるけれども、一方で交易条件が悪化し、景気に対して悪影響を与える面があるということは事実です。しかし、そもそも原油が上がるという現象の背後には、新興国経済を含めて世界経済が拡大するというプラス要因があるわけですから、最終的には全体として判断するしかない、そういう性格のものだと思います。』

ということで、その後はこんなツッコミが。暫く後の質問です。

『(問)新興国の需要による原油高や資源高によって物価のマイナス幅が縮小していくのは、交易条件の悪化になるということでした。2008 年4月にも新興国や海外経済が強いために所得が日本から流出し、交易条件が悪化して若干需給ギャップが広がっているという話もありました。原油高からくる物価上昇率のマイナス幅の縮小は分かりますが、交易条件の悪化からくる需給ギャップの悪化に関しては現状でどのようにみているのでしょうか。』

『(答)今後、原油価格が急激に上昇していくという姿を想定しているわけではありません。原油価格の上昇それ自体をとってみると、これは交易条件の悪化にはなりますが、そもそもそれがなぜ生じているかという背景まで考える必要があると思います。』

ほうほうそれでそれで?

『世界経済全体、特に新興国を中心として経済が拡大するということのプラスの影響は、日本経済に確実に及んでくるわけです。どんどん先回りして心配するというのが日本人の美徳でもあるのですが、ご指摘のあったマイナスもある一方で、その前に大きなプラスがあります。プラスとマイナスの両方を評価せずにマイナスだけ心配するのはややバランスがよくない議論という感じがします。』

この辺りの回答を見ていますと、2通りの解釈(またの名を妄想とも言うけど)が可能であります。

つまりですな、まあとりあえずこちらにあるように「あまり暗い話ばっかりしないで行きましょうよ」ということを発言している訳でありますが、これって「無策付きデフレ宣言」によってデフレマインドを一気に広めるというお洒落なプレイを実施している政府が居る中で、日銀も暗い話をすると更にマインド面に与える影響が大きくなり、マインド面からの負のスパイラルが発生してしまうのを懸念しているという事ではないかという気はややするのであります。

当局というのはある意味チアリーダーみたいなもんで、そりゃまあエライ人が辛気臭い話ばかりするよりは先行きは明るいですよという話をした方がマインドが良くなりますし、景気は「気」の部分もある訳ですから、政府が無策のまま碌でもない話をする中で日銀まで暗い話をするのもとなったんじゃねえの(米国当局なんてもうチアリーダー全開っすからねえ)という風に捉えてみたりするのでもあります。ということはこっそり政権に嫌味プレイという話にもなりますが(^^)。

とまあ一応好意的解釈をすると上記のようになりますが、これがまた白川総裁が個人的には景気認識を月報やら展望レポートなどに示されているコンセンサスよりも素で強めに持っているという見方も当然ながらアリエールな訳でありまして(−−;)、その場合は将来的には総裁様のKYプレイ発生→バックラッシュという9月ごろやらかしていた香ばしい展開が発生するリスクはオオアリクイの悪寒も致します。

#正直どっちだかは判らん。


・新興国経済拡大で本当に国内最終需要が伸びるのかというネタから成長戦略へ

でまあ新興国経済が伸びても企業の生産活動が海外シフトしてたら国内最終需要の拡大に繋がらないのではないのではないかという質問もありまして、その説明をしているのですが、これがまた回答が長いので(^^)、ポイントの部分を引用します。

『ご質問の趣旨は、もちろんこうした中心的なシナリオ(引用者注:要するに月報や展望レポートで示される外需が内需に繋がる循環の話です)は一応分かるが、それだけなのかということかと思います。私どもでもこうした見通しには不確実性があり、特に企業の中長期的な成長期待は大事な要素であると考えています。これは展望レポートでも指摘している点です。』

『申し上げた通り、企業は常にグローバルな視野をもって活動しています。このため、例えば新興国の持続的な成長が展望される一方、わが国の成長期待が回復しない場合には、新興国への投融資が増加する一方で国内投資が抑制された状況が続く可能性もあります。こうした傾向が進み、国内の生産・雇用の減少を招かないためにも、わが国の成長期待を高めるとともに、企業の経営努力が最大限発揮されるように、グローバルな競争条件を規定する制度を不断に見直していく努力が並行して必要だと感じています。』

ということで、成長戦略の必要性という話になる訳でありまして、まあさいですなという所ですが、じゃあ金融政策ではどうするのと言われると、その答えは無さそう、というか金融政策でどうこうという話でもなさそうではございますな。


で、会見の続きも含め他にもネタは満載(特にもう決定会合議事録がオモロイ事オモロイ事)なのですが、今日はこの辺で勘弁ざます。







2010/01/28

お題「ネタは小出しでお願いしたいのだが(^^)」

金融経済月報に総裁会見に日本の短国レート低下にFOMCと来ている訳でございまして・・・・いやはや。

○寝起きでFOMCステートメントを斜め読み

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100127a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20091216a.htm(前回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December suggests that economic activity has continued to strengthen and that the deterioration in the labor market is abating. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November suggests that economic activity has continued to pick up and that the deterioration in the labor market is abating. 』(前回)

既に最初の所で景気認識に対する単語が強くなっていますな。

『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software appears to be picking up, but investment in structures is still contracting and employers remain reluctant to add to payrolls. Firms have brought inventory stocks into better alignment with sales. While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth.』(今回)

『The housing sector has shown some signs of improvement over recent months. Household spending appears to be expanding at a moderate rate, though it remains constrained by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Businesses are still cutting back on fixed investment, though at a slower pace, and remain reluctant to add to payrolls; they continue to make progress in bringing inventory stocks into better alignment with sales. Financial market conditions have become more supportive of economic growth. 』(前回)

書きっぷりがだいぶ変わっているので何ともなのですけれども、住宅セクターの改善の所がばっさり抜け落ちているのが下げで、企業部門に関しては在庫投資の拡大の所は抜けてます設備投資の拡大というのは上げっぽいです。家計に関しても拡大に関する表現の頭にappears to beというのがあったのが外れているので拡大をより明言で上げ、その他についてはたぶんあんまり変わってないと思う。

『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(今回)

『Although economic activity is likely to remain weak for a time, the Committee anticipates that policy actions to stabilize financial markets and institutions, fiscal and monetary stimulus, and market forces will contribute to a strengthening of economic growth and a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(前回)

前回までは経済活動について「当面弱い」だったのが、今回は堂々の「回復のペースは」という言い方ですな。まあ緩やかなペースだという話ですけどね。で、ふーんと思ったのはその次で、FRBの政策で金融市場安定がどうしたとかマネタリーの刺激がどうしたというような部分がごっそり抜けているのですね。ほうほう。

で、第2パラグラフ。

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and with longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time.』(今回)

『With substantial resource slack likely to continue to dampen cost pressures and with longer-term inflation expectations stable, the Committee expects that inflation will remain subdued for some time. 』(前回)

これまた微妙なのですが、インフレに関して抑制されていくというのがlikely to be subduedとなっていて、前回がwill remain subduedなので、ちょっとだけその抑制されていく予想を微妙に変えているとか、その前のresource slackによる価格への影響がもはやあたくしのドメドメ英語読解力ではその微妙さが判らんのですが、手元のデイリーコンサイス英和辞典(お前は高校生かというツッコミは謹んで却下)によると、「restrain=抑制する、拘束する」「dampen=しめらす、落胆させる、くじく」と書いてあるのですが、多分ここまでの話のながれからすると、今回は表現を緩和というか前進させているという話ではないかと思いますけれども、英語が得意な本石町日記さん召喚呪文を唱えておきます(^^)。


第3パラグラフ以降が決定内容。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)

というところは前回と全く同じですので前回分引用割愛。for an extended periodは今回も継続ですかそうですか。

『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve is in the process of purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about $175 billion of agency debt. In order to promote a smooth transition in markets, the Committee is gradually slowing the pace of these purchases, and it anticipates that these transactions will be executed by the end of the first quarter.』(今回)

ここまでも前回と同じ(正確には前回はfirst quarterの後にof 2010というのが付いているが、さすがにこれは同じ意味でしょ)なので、つまり各種買入は引き続き撤退方向ですな。


『The Committee will continue to evaluate its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets. 』(今回)

『The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets.』(前回)

最早ここまで来ると前回のthe timing and overall amountsつーのが抜けたインプリケーションがよー判らんのだが(涙)。

で、第4パラグラフですが。

『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve will be closing the Asset-Backed Commercial Paper Money Market Mutual Fund Liquidity Facility, the Commercial Paper Funding Facility, the Primary Dealer Credit Facility, and the Term Securities Lending Facility on February 1, as previously announced. In addition, the temporary liquidity swap arrangements between the Federal Reserve and other central banks will expire on February 1. 』(今回)

上記の各種買入メニューは予定通り2月1日に閉店宣言となりましたな。書き方はちと違ってますが言ってる事は前回と基本的に同じだから前回分引用すると長くなるので割愛。

『The Federal Reserve is in the process of winding down its Term Auction Facility: $50 billion in 28-day credit will be offered on February 8 and $25 billion in 28-day credit wil be offered at the final auction on March 8. The anticipated expiration dates for the Term Asset-Backed Securities Loan Facility remain set at June 30 for loans backed by new-issue commercial mortgage-backed securities and March 31 for loans backed by all other types of collateral.』(今回)

この辺が今後の縮小計画ですよね。

『The Federal Reserve is prepared to modify these plans if necessary to support financial stability and economic growth. 』(今回)

というヘッジクローズも前回と同じです。


ということで、まあここまでの話は「景気判断を上げたね」というのと「何気に物価判断も上げてねえかこれ」っていう所ではないかと存じます。で、最後の所でこれまたほほー。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin M. Warsh.』(今回)

と、ここまではヨロシのですが、

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that economic and financial conditions had changed sufficiently that the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted. 』

経済金融情勢は十分に変化して、例外的な低金利水準を十分な期間継続することは既に正当化されないとはこれまたキタコレという感じですな。


つーことで、まあ今回は瀬踏みみたいなもんだとは思うのですが、これがまた色々と考えられる訳で、いやまあ本当にエマージングアジアが威勢よく伸びているので米国経済も回復ですよあっはっはという話なら良いのですけれども、まあそうじゃないとしたらどうなのかと妄想するのは妄想ネタとしては楽しいですが、時間がないので妄想は妄想のままにしておきます。


○さてまあ時間がないのでその他ネタは勘弁

今回は文言が結構変わったので、さすがに斜め読みと言っても「前回と同じ」という訳に行かない部分が大杉勝男でありまして、これだけ書くのにそこそこ時間が掛かってしまいましたので、予想通りに(もっと早起きしろというツッコミは却下)明日のネタに回るのでありました(汗)。

でも短国レート低下だけ書いておきますね!


○ということで短国レート低下キタコレ

昨日の3MTB(もう割引短期国債全部償還になったんだからTDBっていうの止めてTBに戻しませんか皆様??)入札結果はこの有様。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220127.htm

(1)応募額 30兆4,311億円

(3)募入最低価格 99円97銭3厘5毛
(募入最高利回り)(0.1125%)

(5)募入平均価格 99円97銭3厘8毛
(募入平均利回り)(0.1112%)

・・・・(;∀;)イイハナシダナー

えーっとですな、何がどうなっているのか良く判らんのですが、お金様が短い所にワサワサとやって来ておられるようで、GCレートは0.105%(もしかすると0.10%も)でベタベタだわ、新発CPレートはこれまた電力会社さんなどの超優良発行体扱いされているネームだと期内もので0.11%を堂々割り込んでおられますし、まあ過去ゼロ金利政策実施や量的緩和政策実施の際に、本当にベタベタになる前段階があって、それから一段低下して短期市場暗黒時代が到来するのですけれども、今回のまあ量の目標は無いけどターム物金利下げましょう「広義の量的緩和」(ってナンジャソリャという気はする用語だが)攻撃の効果が出て参りました。

いやまあ短期市場暗黒時代になっても、その政策実施効果によって回復が速くなって、結果として再び市場が回復してくれれば良いのですが、中途半端に生殺し状態で暗黒状態にされた挙句に回復が遅れるとなりますとこれがまた困る訳ですな。長くなるとまたまた市場関係者が離散してしまう訳でして、大体からして直近の金利復活時代だって既に金利が動いている時代を知っているのが年寄り(含むあたくし)だらけで、若い衆の頭の中が金利が動かないとか流動性はいつでも大丈夫とか思ってねえかコレっていうような市場のアクションを見て微妙なテイストを感じたのですが、ここで暗黒時代が長くなると本当の本当に人とノウハウが離散しちゃいますので、まあ可及的速やかに景気が回復して頂きたく存じます次第なのですけれどもね。

まあ米国の回復が偽りの回復で無く、エマージングバブルがもうちょっと続くとか、バブルじゃなくてマジでしたちゃんちゃんという楽しい結論になることを強く希求するものであります(^^)。

#短期市場の暗黒度を暗黒阪神(過去形)や暗黒広島(現在進行形)と比較するのは馬鹿話ネタとしては使えそうですな(あほ)








2010/01/27

お題「決定会合レビューなど」

○経済見通しの文言にほぼ変化はないです

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf

前回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf

んでまあこの声明文を並べて比較すると、12月の通常会合で物価安定の理解の明確化を公表した関係で微妙に違う部分があるのですが、中心的な文言には見事に変化がありません。

・・・と書くと話が終わってしまいますので今回の声明文を引用しつつということで。

・現状認識で新興国経済の認識を引き上げています

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』

ここのところですが、前回は『新興国の回復』となっていまして、新興国経済の現状認識を引き上げましたというのが前回と違う所。

『設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』

ということで、12月の現状認識と違うのは新興国経済が強いという話。まーこの前ご紹介した日銀レビューでは「新興国への資金流入」というお題があったように、エマージングはアジア中心に活況みたいですからね。


・先行き見通しは変化無いです

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』

変化無し。

『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』

これまた同じ。本当に波及するのか存じませんが(−−;)

『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』

ここで『マクロ的な〜』という文言が前回無かったので一瞬「おお上方修正」と思ったのですが、良く良く考えてみたら今回は展望レポートの中間レビューがありますので、ここの部分は10月の展望レポートとの比較をしないといけない訳でありまして(^^)、10月の展望レポートの基本的見解の5ページ目に、

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回の基本的見解)

『消費者物価指数(除く生鮮食品、以下同)の前年比は、(途中割愛)2010年度以降は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移すると見込まれる中で、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することから、消費者物価指数の前年比下落幅は、引き続き縮小していくと考えられる。』(10月の展望レポートから)

てな訳でありますので、今回は物価見通しの基本的な見方を変えたとか上方修正したという話でもないと思われます。


・原油価格の上昇の影響ですが・・・・

『10 月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、原油価格高の影響などから、見通しに比べてやや上振れて推移すると予想される。』

で、まあここの部分で「原油価格高の影響」というのが結構引っ掛かったりするのかもしれませんな。昨年10月の時点でWTI先物がバレル70ドルから80ドルとかでございますので、今とあんまり水準的には変化無いですが、一昨年10月よりも昨年1月の方が原油価格低かった(昨年の今頃はWTI先物で40ドル近辺)から前年比が上がるという話なのかとも思いますが、10月の水準がヨコだと今頃前年比での数値が上がるのは明らかだったので、この辺の趣旨は背景説明を含めた全文を読まないといかんのかなとも思います。


・リスク要因では国際金融面の動きの書き方があっさり味に

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』

これは前回と同じです。

『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』

で、この部分ですが、前回はこのように書いてありました。

『当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても、引き続き注意する必要がある。』(12月声明文から)

だいたいこれはいわゆるドバイショックを受けた文言だったのですが、その時点からは為替、株価ともに状況が好転しているので、やや書き方があっさり味になったという事でしょう。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

これは同じですが、マインド統計がここへきて物価下落方向になってきている点について何かの言及は無いもんかという気はあたくし的にはするのですけどね。


・最後の決意表明のような物には変化なし

まあ当たり前ですけどね、引用だけ。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』



○ところでヨコですがBOEの物価見通し

ちなみに、話はここでいきなりヨコに飛びますが、1月6、7日のBOEのMPC議事要旨が先日公表されてまして、ネタにしようとしつつもスルーしていたのですけれども、こちらの議事要旨の第23、24パラグラフ(議事要旨本文6ページ)にこんな記述がございます。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1001.pdf(BOEの1月MPC議事要旨)

『It was increasingly probable that CPI inflation would rise to well above the 2% target in the early part of 2010 and remain elevated for several months.』

何と言う景気の良い話。

『The most recent intelligence about the likely pass-through of the January VAT rise and the potential impact on energy prices from the unusually cold weather suggested that inflation in the short term would be further above target than the Committee had previously expected.』

と思ったら下げてたVATの引き上げ影響と寒波襲来によるエネルギー価格の予想以上の上昇が影響ですかそうですか。

『There was a risk that a sustained period of above-target inflation could cause inflation expectations to drift upwards. 』

(2%という)ターゲットを上回る物価上昇率が継続すると、世の中のインフレ期待が上振れるリスクがあるとはこれまた景気の良い話ですが、上記にありますように、物価の上昇自体が景気が良くなったからという要因でもなさそうなので、残念感が伴うのでありますが。

『The Committee would monitor closely the extent to which price-level shocks affected inflation expectations. But so long as expectations remained consistent with the 2% target, the medium-term outlook for inflation ? the key consideration when setting monetary policy ?would reflect the balance between demand and the supply potential of the economy. The available evidence continued to suggest that this balance would bear down on inflation for a considerable period.』

途中で切るのも何なのでこの段落最後まで引用しましたが、まあ中長期的には安定しているけれども、足元上昇という状況で、別に景気が良い訳でもない(引用始めるとお題が変わってしまいますので引用はしませんが、景気見通しはまあパッとしません)ので中々大変ですなあというお話。なお、事務方からの説明でも物価上昇要因について、

『CPI inflation had risen to 1.9% in November, largely as a result of an increase in petrol price inflation. This factor, along with the reversal of the December 2008 VAT cut, was set to boost inflation further in forthcoming months. 』

とありまして(第18パラグラフ)、この辺の文言をこの前読んだばっかりだったので、あたくしが今回日銀の物価の先行き見通し上方修正(してもマイナスですが)されるような文言があっても「ふーん」程度で終わったのかもしれませんな(^^)。

しかし何ですな、BOEの場合は「上振れた物価状況が続いた場合のインフレ期待の上方シフト」が懸念材料なのでありますが、日銀のおかれた状況はこの逆なのでありまして(−−;)、さてその辺どういう認識になっているのか。いやまあ「そのために中長期的な物価安定の理解の明確化」を出したという事なのでしょうけれども、インフレ期待(というかデフレ懸念というか)の下方シフトに関するリスクを、どの位懸念しているのか、その状況に変化があるのかという所が、決定会合声明文比較だけだとあんまり見えてこないのが微妙に遺憾に存じます次第でありますが、これまた背景説明を含む全文を読んでみると致したく存じます。


○そりゃまあ上方修正っちゃあ上方修正だけどさあ(一部産経電波浴も含みます)

ということで話を戻すと、今回はビューをほとんど変えていないという結論になるのですけれども、まあ見通しに関しては2009年度の実質GDPと、先行きのCPI見通しを引き上げになっています。(書くのめんどいから声明文見てちょ)

ということで、某モーサテ辺りでは「上方修正」というヘッドラインを打っていましたが、今年度の見通しなんぞレビューみたいなもんでそれが上方修正されても意味無いし、GDP見通しに関しては2010年度で0.1%しか上方修正してなくて、2011年度は不変ですので、普通に金融政策へのインプリケーションとしては「変化無し」という話になると思うのですが、まあこういうヘッドラインになるのが、ネタを欲しがるメディアクオリティなんでしょうな。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100126-OYT8T00786.htm
成長見通し、上方修正…日銀決定会合

いやだから全然上方修正じゃないって。まあ物価の見通しは上げてますけど、上げた結果2011年度でもまだ▲0.2%(従来▲0.4%)なのでして、これまた金融政策へのインプリケーションは同様に「まあ事実上の時間軸が続きますなあ」という話なのですが、日銀を何でも良いから批判するというのが仕様になっている産経に掛かるとこの有様。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100126/fnc1001262013017-n1.htm
日銀“楽観シナリオ”に危うさ 原材料高・内需不足のダブルパンチ懸念

・・・・えーっと、これを楽観シナリオ(一応カギかっこ付いてるけどさ)ってどんなマゾ属性だよという感じではございます。いやあのね、産経新聞ってそれなりに一定の主張があって、それはそれで悪くは無い話なのですが、その主張を補強する為に事実の一部だけを恣意的に切り取って来るとか、限りなく曲解に近い解釈をして報道をするとか、それってもう報道機関というよりは単なるアジビラじゃねえのと思うのでありまして、いやまあアジビラもアジビラとしてのニーズはありますから、商売的にはそれでも成り立つと思いますけど、報道機関としての姿勢としてどうなのよと思うのであります。経済記事よりもどうも外交とか軍事とかの話がもっと斜め上らしいのですけれども、最近は経済記事がすっかりこんな調子になっているのは困ったもんです。

なお、普通に解釈するとこうなる筈というのが東京新聞。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2010012602000226.html
日銀 政策金利据え置き 景気判断も変えず

これは会見前に出た記事みたいですけれども(夕刊記事)、普通に読むとこういう記事になる筈なのですが、これじゃヘッドラインとして面白くないと言ってオモシロヘッドラインにしようする動きにイデオロギー(?)まで入った挙句に電波ゆんゆんの記事になってしまうというリスクにはご注意ありたいものです。



○財金分離じゃなかったんでしたっけ

まあ今に始まったことではないですが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aULOZtkDOzGo
菅財務相:もっとという気が率直のところある−日銀の金融緩和策で

『1月26日(ブルームバーグ):菅直人副総理兼財務相は26日午後の参院予算委員会で、日銀の金融政策について、極めて緩和的な環境を維持しているとする一方、「もっとという気が率直のところある」と述べ、さらなる緩和策が必要との認識を示唆した。その上で、日銀とはデフレ克服に向け「方向性は一致している」と述べ、物価をプラスに転じていくため日銀と協力していく姿勢を示した。民主党の辻泰弘氏への答弁。』

昨日は日経新聞だかの朝刊で「財政演説で日銀に追加緩和を求める」云々みたいな記事もあって、金利市場の人は別に何もないでしょとは思ってましたけど、金融政策ネタになると斜め上にも程があるレポートが乱発される為替市場様におかれましてはそれなりに期待もあったり無かったりという感じだったみたいですね。

お前ら財金分離とか言って武藤総裁を潰したんじゃ無かったのかよと小一時間なのでありますが、まあこういう話をして市場が勝手に変な期待をするというのは当面続くという感じじゃないでしょうか。12月の2回の決定会合で市場的な評価って「ああ日銀は政治圧力に弱いのね」という扱いになっていると客観的に思われる次第でありますが、その政治が何せシロウト集団でありまして、何を言い出すかさっぱり読めないという人達でございますので、まあナントカに刃物とは良く言った物だと呆れる次第であります。

まあ政治屋さんとしてはアピールが大事なのは判りますけどね。









2010/01/26

お題「オペ雑感とか」

オバマの金融機関規制法案の構想で困るのって預金だらけの邦銀(特にメガ)じゃねえのと思ったが、そもそもそんなにレバレッジ投資をしてないという気もする(−−;)

#という話を詰めていくと大ネタなのですが色々と微妙なネタなので取扱注意レベルなのでありました

○やっとショートファンディング推奨スキームでは無くなり

昨日の資金供給オペで国債買現先のS/N取引の供給額がゼロになりました。ネタの無い短期市場ニュースには干天の慈雨の如き事案だったので「1年2か月ぶりにスポネ買現先をゼロに」というニュースになっていましたが、実はスポネの買現先が4000億円減っている間に同時に実行しているスポットスタートの1週間物買現先を6000億円から8000億円に増額してまして、このオペが毎日8000億円になりますと1日あたり2000億円増えるので、5日間で1兆円増えますから実は差引で4000億円のオペ増額となるのです(^^)。

だいたい当座預金残高が15兆円位をキープするような調節を実施しているのですが、共通担保オペの残高が(ちゃんと計算してないからアレなのですが)固定金利物(新型オペ)も含めて増えた分国債買現先が減った格好になったような感じになるのかな。まあ後でちゃんと計算してみますが、ここもと共通担保オペをターム物でコンスタントに打ってきているので、ターム調達が安定化してきて、結果的に足元でのショートファンディングが減り、足元のGCレートが安定してきて国債買現先のスポネ供給を減らしても良くなったという事ですな。

まあそもそも常々申し上げておりましたように、GCレートを安定させたいというのであれば、GCで資金を取る人の調達を安定化させるようなオペを打つべきでありまして、スポネの買現先だのトモネの共通担保資金供給だのというような足の短いオペばかり打っているとどうしても(結局のところファンディングは日銀オペに依存しているという現実がある以上)ショートファンディングに調達サイドが傾く事になって、モノ日のようなイベントが発生する傍からレートが不安定になり、不安定な状態が続くとプレミアムが乗りやすくなってしまうという悪循環になります。従ってそーゆー点では現在のようなオペレーションを打っていれば、GCの資金調達サイドの足元での要調達額が軽くなり、結果としてレートは安定するわ、コマネズミのようにオペを頻繁に出し入れしなくて済むわと皆さんハッピーな展開になるのでございます。

ただ、まあ1月から2月第1週までは資金需給上不足なので、それを埋めるために資金供給を打ちやすいという技術的な面もありまして、これが資金余剰シーズンでもある程度足元の調達が軽くなるようなオペレーションを実施していけばGCはこのまま安定して3か月などのTBの金利も安定する(ので増発上等となる^^)んじゃネーノと思う次第であります。

本来はこーゆー感じでターム中心で打つのは年末月でもある12月からやって下さいなという感じなんですが(12月はスポネで2兆だの、末初オペだけで4兆だのという調達を足元に傾斜しろと言わんばかりのオペでしたわな)、まあ12月の時点では「新型オペの実施をした」という事で、その政策決定が多分に「他市場やら一般向けアピールを狙った」ものであった面が強く(じゃなかったらヤマダ電機の特売チラシみたいな「超低金利」などというチラシじゃなかった説明ペーパーとか出てこないわな^^)、その点で言えば「ほらこんなに資金供給をしましたよ!!!」というのを見せつける必要もあったと思います。

つまりですな、ターム供給を行うよりは翌日物供給をロールした方が見た目の資金供給オペの実施額は増えるのでありまして、特に為替市場あたりへのアピールを考えた場合、「とにかく沢山資金供給をしてますよ!!!!!!」と見せつけるという効果を考えれば、地味にターム物供給でターム物金利を押し下げるよりは、とにかく目立つ形で資金供給をしたように見せる方が重要というのもヒジョーに良く判る話でもありまして、そっちを重視したという事なのでしょうかねえ、と勝手に想像。

ただし、本来はターム物下げるという意味ではGCレートを低位安定させた方が効くので、供給は足元で派手派手に行うのではなくてターム物をじっくり出した方が良い(さっきから書いているように)のでありますが、一旦足元を派手派手に出しちゃいますと、ターム供給にシフトしていく時に足元の供給をバランス上減らす事になるのですが、その時に他市場辺りから「供給を減らした」と言われて変な反応が起きるのは「アピール政策」をやっている時としては本意では無いにも程があるとゆー事ですから、まあ(12月は資金余剰で元々タームではなくてぶつ切りオペになっていたというのもありますが)ほとぼりが冷めるまで足元派手派手供給(実際は今の方が緩和感が高いのだが、オペの総額に目が行きやすい短期村の外側じゃあ気がつかんわな)を行っていたというのであれば、調節担当大勝利という所ではないかと思います。

・・・と勝手に想像してますが、これが単に12月は資金需給のコブが沢山ある上に末初だけ供給したかったからぶつ切りオペになり、現在は2月第1週の資金不足に向けて供給しているからこうなっているというだけの事だったら、色々深読みしたのが全部空振りとなる俺様涙目ですな(−−)

まあ何にせよ、ターム物が増えてショートファンディング傾向が軽くなっているのはGCレートの安定からターム物とか3か月とか金利の安定にとって非常に良い傾向でございます。



○デフレ宣言の次はこれが出る悪寒

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=afYWmzRkAXH4
仙谷戦略相:日本の財政、「説明のつかないほどひどい状況」(Update1

『1月25日(ブルームバーグ):仙谷由人国家戦略相兼行政刷新相は25日夕に開かれた「中期的な財政運営に関する検討会」の初会合の冒頭であいさつし、「わが国の財政は極めて厳しいと言うよりも、説明がつかないほどのひどい状況になっている」との認識を示すとともに、「ミクロ、マクロの視点で予算改革の道筋を示していくことが私たちのミッションだ」と語った。』

・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

何度もあたくしが悪態をついておりますように、先般政府によって実施されました堂々の「デフレ宣言」によりまして物価関連のマインドが急速に悪化しまして、それこそ「デフレ懸念から物価下落を招く」という形のまさにデフレスパイラル入りしてもおかしくはないというマインド面の悪化を招いているという大変に(;∀;)イイハナシダナーとしか申し上げようがない展開になっているのでありまして、無策のままマインド悪化だけ呼び込むアホウ宣言をした連中は全員揃って牢屋か西方浄土にでも逝っていただきたいと存じます次第ですが、今度の何かよく判らん検討会の初回挨拶にこの発言ですよいやですわねえ奥様♪

何つーかね、戦略的に大ボケ発言をかましているのであれば別に良いのですけれども、どっからどう見ても現内閣の閣僚たちが(約1名を除いて)作戦を練って発言しているのではなく、思いついたことをホイホイと口走るだけなのではないかと思われる次第でございまして、まーどうでも良いネタならともかく、財政破綻宣言とか何も考えずに出したらどういう話になるんだかとかあまり想像したくない光景ではございます。

大体からしてさ、「わが国はデフレです景気悪化でどうしようもないですけど金がないので財政も打てません」とか言ってる国に投資する奴がいるのかよ(除くホームバイアス)とゆー風に思われるのでありまして、もうちょっと物を考えて動いて頂きたいものだと思うのであります。


#と、書いているうちに1月6、7日のBOE議事要旨ご紹介ネタを書く時間が無くなってしまいましたが、まあ実は淡々と議事が進んでいて、従来色々と議論になっていた量的緩和政策の量の定量的効果に関る話がすっかりスルーされているのがトピックスだったりするのでありまする。













2010/01/25

お題「金融政策も金融行政も政治の季節ですかね」

名護市長選挙の結果で益々話がややこしくなりましたな。

#以下本日はやや妄想成分入りの雑談であります

○米国様の金融規制なんちゃらかんちゃら

微妙な解説記事があっただよ。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13471120100122?sp=true

何かマサチューセッツ補欠選挙の結果でオバマさんファビョってしまったのかいなという感じではあるのですが、金曜はこの影響で金融機関の収益が減ってどうたらこうたらとか言ってNY株が続落してダウは先週初の引けから3日で450ドル下げるという華麗な展開。

いやまあ「金融システム救済は国民経済の為だ」と言って税金突っ込んで救済した金融機関の幹部が早速巨額賞与とか言われたらそりゃ有権者は発狂するわなと思うのでありまして、まあ決済システムなどは保護するのは判るけれどもレバレッジ効かせて高収益というような部門を何で保護せにゃいかんのじゃという話は正論といえば正論。

ただ、決済部門だけじゃなくて市場仲介機能まである程度何とかしないと、金融ショックに対する意味はイマイチだと思われる次第でありますので、そうなって来るとじゃあどこからどこまでが保護されるべきものなのかという線引きもこれまた難しい。日本の不動産バブル時代は商業銀行業務の貸出として不動産融資に突っ込んでいたのですし、じゃあバランス規制をすればよいかと言うと、それは色々と回避策がありそうですし。

ま、流れとしては米国的にはその辺を分離するという昔の銀証分離をイメージしてるのでしょうが、実務上のフィージビリティってどうなのよという気がする。まあそれよりも、マサチューセッツの補選結果でいきなりこういう話になってきたというのが極めて政治的な感じですな。


○金融政策が政治っぽくなってきていますなあという与太話

今日と明日は金融政策決定会合。金曜のNY市場でドル円90円割れとかになって(今は90円台みたいですが)、金曜も申し上げましたが、ここもと金融政策決定会合の前になると計ったように株安と円高が進行するという嫌がらせのような展開になるのが日銀の間の悪さのようですな。と思ったのですが、逆に考えたら、決定会合前に外部環境が良くなって大喜びして引き締め方向に行って後で大失敗でしたでござるの巻になるよりは、極めてマシなのでありますので(^^)、実はこれは白川日銀に対する市場の見えざるメッセージなのではないかとか訳判らん事を言い出すあたくし。

まあそれはそれとしまして、日銀の政策決定会合を前に何がどうなるかという話をした場合、12月1日の臨時会合以降はまー日銀の動きを予想するのが経済指標でどうのこうのというよりは政治動向を見ないといかんという感じを強くする所が何とも遺憾なのですが、経済指標云々よりも政治動向というかぶっちゃけ政治方面からやって来る圧力に注意という話ですわな。

そもそも論から言ってそんなのを注目しながら動向を読むという時点でナンジャソリャという感じですが、政府の無策デフレ宣言以降、経済無策の中で日銀に何とかしてくれ状態になるのが仕様となっていますし、(そういやまとめを作ってませんが)そういうモードになるとその圧力の掛け方も露骨ですし(自民党政権時代は党幹事長で日銀法改正と恫喝するのはいたが、政府のメンバーになった場合には露骨な干渉発言を表だって堂々とするのは居ませんでしたからね)という事で、日銀もなんかそれにお付き合いして(させられて)いる感じですからね。

で、その政治動向ですが、何か批判されて困った時に火の粉を逸らすために経済問題経由日銀行きというルートがあるのですけれども、それよりもこちらの政府は何だかよー知りませんが、「市場の圧力」というのに対する煽り耐性が妙に低くて、「財政懸念から長期金利が上昇」と言われると埋蔵金まで全部吐き出して兎に角目先を凌ごうとして44兆円がどうのこうのと無理繰り回しちゃうし(で11年度予算はどうなるんでしょ、オラシラネ)、為替が円高になって株が下がると日銀に圧力を掛けるしと、市場が追いこみを掛けるとすぐにファビョーンとなってしまうのが民主党政権クオリティ。まあ為替に注目なんでしょうな。


ということで、まあネタとしては円高(というかドル安ユーロ安だが)が進行した時に政府から毎度お馴染みの圧力がやって来ると、この前実施した「超低金利、固定」のオペの実行額を拡大するかオペ期間を3か月から6か月に延長するかのどっちかを実施して「決意表明」をするっちゅう事になるんでしょうな。為替市場に効くような形のテイストを混ぜないと行けないのが難しい話ですが。

問題は財政懸念だの国債消化懸念だのという話になった時でして、そーゆー時に輪番拡大をする圧力がどうせ掛かるんでしょうけれども、その時って下手な増やし方をすると財政ファイナンスがどうのこうのという話になってガイジンさんあたりが大喜びして「財政マネタイズヒャッハー」とかやり出しそうでオソロシスなのですよね。

あと話はヨコですけれども、何か民主党におかれましては、どうも「日銀に圧力掛けて金融政策が動いた」というのを自分達の「輝かしい実績」だと思っているのでは無いかと思われる節もある訳でございまして、すっかりネタに使うつもりで使ってない気がしますけれども、12月1日の決定会合の時なんぞぞの直前から主要閣僚が競うようにして日銀に対する露骨な圧力発言を繰り返していた訳でありまして、それは鳩山白川会談を前にまあ近いうちに何かのアナウンスを日銀がやってくれるだろうというという事から(スケジュール感を無視した鳩山白川会談をセットされた為に、日銀としても手ぶらという訳に行かなかったんでしょ)、その時のアナウンスは自分の手柄だという手柄合戦状態になったのが露骨な発言になったんでしょうなあと思うのであります。

まあそんな感じですから、浅ましい人たちの浅まし発言も注目せにゃならんとは情けない話であります。


○バーナンキ再任がうんたらかんたら

さあ盛り上がって参りました!
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnJT858122020100122

一方で米国様におかれましても何か上記のような微妙なテイストの話が。さすがに再任されるでしょうと思うのですが、こういう感じで世の中の空気を読まないと行けないという展開になった場合、元々からバーナンキ先生は俊ちゃんメソッドで空気を読みながら、市場的にそれは無茶振りのような気もするがという施策を出しつつも、福井の俊ちゃん流の融通無碍と申しますかインチキ成分入りと申しますかな信用緩和策を行っておりましたけれども、今後の流れをどうやっていくかというのが、これまた政治的な読みを入れながらという観点が必要になりそうな気がする。

で、その場合正常化路線とかになるのか、バランスシートを縮小する方向になるのか、それとも緩和政策を長期化させる従来の流れを堅持できるのかというような話って米国人じゃないから正直判らん。誰かご存じでしたら教えてちょという所でございます。

まあそこまで読みに行くのはだいぶオッチョコチョイ成分の入った読みだと思うのですが。

#時間切れの為1月のBOE議事要旨話は後回し(−−)






2010/01/22

お題「金融規制がどうしたとか決定会合プレビューとか虫干し雑談とか」

○米国はじまったな

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13459120100121
オバマ米大統領が金融機関に対する新規制提案
2010年 01月 22日 04:50 JST

『[ワシントン 21日 ロイター] オバマ米大統領は21日、金融機関のリスクテークに関する諸制限を一段と厳格化するよう提案した。政権が2年目を迎えるなか、低迷する支持率の底上げにつなげたいとの意向があるとみられている。提案を受け、午後のニューヨーク市場で株価は大幅安となった。』

ということで、マサチューセッツの補欠選挙で負けた影響が早速出るとは実にお洒落な展開でありまして、これはまたどこかで見たことのある流れになって参りましたという事ですか。

まあ公的資金突っ込まれて回復したと思ったら高額報酬復活とか金融機関サイドの動きが下品かつ強欲豚な上に空気を読まないアホウと来ているのでこういう話が出てくるのも致し方なしという感じですが、まー日本の場合は別に米国みたいな高額報酬とかいう話で無くてもあの有様という残念なお国柄でしたが、そうでない米国様におかれましてこういう話が出てくるというのは如何にウォール街とかが品性下劣かというお話なんでしょうなあ。まあその辺はちったあ空気読んで大人しくすりゃ良いのにとは思うのですが、強欲がエネルギーでもあるので全否定もできないという所でしょうかねえ。

それはそれとして、現在BIS方面でやっている各種規制に関しても、特に流動性規制とかかなーり厳しいものがあると存じますし、英国に次いで米国でも個別国での規制がという話になりますと、前もちと書いたと思いますけど、投資銀行業務を国際展開ってのがひじょーにしんどくなってくるので、業務展開の形態に変化が出るようになるんでしょうが、それが債券市場的にどういう話になるのかは正直判らん。判らんなら書くなと言われそうですが(^^)、流動性規制だのレバレッジ規制だのという話になって、商業銀行業務がナローバンキングに近くなってくるとゆー話になりますと、プレーンな債券とか国債とかのニーズが高くなるんでしょうかねえという位の妄想が湧きますけど。

なおも金融規制と全然違う話を続けると、じゃあナローバンキングちっくな状態でメシ食えるかという事になりますと、米国みたいにFF金利が(実効レートで)0.1〜0.2%位で回って2年国債が1%をちょっと切る位で10年国債が3.7%だの3.8%だのとかいう状態なら、低リスク資産でも期間ミスマッチそれなりに泳げると思うのですが、日本のようにイールドカーブが潰れておりますと如何ともし難い所がありそうですな。

でもまあ世の中そんなにウマーな話は無いと思いますので、米国において金融規制強化だの商業銀行の保有資産をより安全な物にするだのというような話になって来ると、米国のイールドカーブがそのままで済まないのではないかなどという妄想もまた湧いてくるのであります。まあただの妄想ですけれども。


○しかし決定会合前に微妙な動きに

今月の決定会合は来週なのですけれども、まあ今朝の米国の動きがどの位トレンドになるのか知らんので何とも言えませんが、またぞろドル安という話になって参りますと、決定会合前に市場がいい感じで嫌がらせモードになってきましたという感じで、実にビューテホーなものを感じる次第でございます。何つーかここんところ毎度毎度の如く決定会合の前になると金融市場が嫌がらせモードになるのが仕様のようになっておりまして大変に結構なお話です。

ということで、今回の会合で何かあるかと言うと普通に考えると無いというのが一般的な読み筋になるのですけれども、オバマ大先生がお洒落なことをやってくれましたので、会合前にまた円高株安とかが急速に進行してくると、只で無くさえ困った時に日銀を空爆するのが仕様になっている現政権の事ですから何を言い出すか判らんのがオソロシスな所。

#まあこの前の安値を見に行くまでの距離があるから今回は大丈夫でしょうけど

普通に考えたら無いというのは、外部環境の水準感もさることながら(という風に考えると12月に実施された俊ちゃんメソッド採用のなんちゃって金融緩和政策は為替市場と株式市場に対する効果は中々高かったので今のところは日銀大勝利なのですが)、もし今回何かやらかすとなると3打席連続で会合で何かやる攻撃となるので、しまいには毎回何かやらないと逆に市場ががっかり状態になるという訳判らん展開になり兼ねないというのも有りまして(^^)、そーゆー変な意味での期待を市場に与えすぎちゃうのも何ですので今回はさすがに何もないでしょという読みなんですけどね。

更に蛇足にはなりますが、一昨日ご紹介した新興国バブルがどうしたこうしたレポート(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm)を日本以外の主要国が緊急避難政策からの正常化(ただし正常化するのは信用緩和部分だけで金利は変更しないという話ですが)という中で日本だけ蚊帳の外状態になっているという微妙な中で微妙にしらっと公表などとゆーのを見ておりますと、まあ追加緩和は(追い込まれれば別ですが)そうホイホイ出てこないという感じなんでしょうなあ、と思うのであります。

#追加緩和を出し渋った結果、回復が遅れていつまでたっても金利市場の人がおまんま食い上げになるのは勘弁という論点はとりあえず措く

いやまあ日銀レビューとかワーキングペーパーとかって基本的には中の人の自由課題みたいなもんですという建付けは理解しておりますが、どうも(日銀レビューの方がその傾向強いのですが)出てくるタイミングとそのお題が微妙にある意味で空気を読んだ出方(^^)をするのが仕様となってますからねえ。



○虫干しネタですが1999年4月9日会合議事録ネタ

で、会合の最後の方で各委員が今後の金融政策運営に関する意見表明を行っている部分が現在の主要国における金融政策運営にも通じる論点が満載ですねという話をここしばらくやっておりましたが、今日は先日(14日)にご紹介した速水総裁の発言の続きを。

過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html

本文76ページから、ということで先日ご紹介した発言の前の部分になります。

『なお、市場関係者の間には現在のゼロ金利政策によって、日銀が何を目指しているのか分かり難いとか、ここ二、三回の会合でもそうした問題意識からご意見を述べられた方々も少なくない。』

ほうほうそうだったんですか。

『この点については、日本銀行の目的はあくまでも日銀法2条に明示された物価の安定であり、物価の安定を通じて健全な経済成長を促していくことにある。現在の金融緩和はデフレ懸念が払拭されるような状況を目指して行っていると申し上げる以外にないのではないか。』

まあそれは良かったのですが、ゼロ金利解除が果たして「デフレ懸念が払拭されるような状況」のタイミングだったかというとそれは怪しかったですが、それはこの翌年のお話。

『確かに、金利と量についての考え方はあると思うが、日々変化する市場に適切な措置を打っていくことが大切であり、私共の出したディレクティブを忠実に守っていれば、現在のところ私共の責任は一応果たしていける。こうした日本銀行の考えはこれまでも対外的に十分明らかにしてきているが、それでもなお日本銀行の狙いが分かり難いということがあるとすれば、一つには、日本銀行が物価の安定について具体的な数値で示していないことを言いたいのかもしれない。』

んでまあ結局時代が後になってみれば量的緩和政策のコミットメントや、中長期的な物価安定の理解というような物が出てきた次第。

『そうした議論の中で暗に問われていることは、仮にデフレ懸念がなお存在しているとすれば、日本銀行はさらに量的緩和でも何でも追加的な措置を打っていくべきではないかということかもしれない。ただ、物価の安定を一つの指標で単純に数値化することは難しい。あるいは、そうすることが適当なのかについては、慎重に考えなければならない側面も少なくない。例えば、仮に消費者物価を0〜2%にするという目標を作ったとしても、このレンジから少しでもはずれれば問題で、逆にこのレンジに入っていれば安心といった機械的な運用は実際問題としては極めて危険である。』

まあさすがに最近はガチガチのターゲット運用をすべきという話では無くなっていますが(BOEなんかターゲット通りに厳格運用して金利を上げ下げしたら大変な事に^^)、まだこういう話もあったんでしょうな。11年前ですからね。

『結局のところ、物価の安定に何らかの数量的な定義を与えようが与えまいが、最終的にはその時々の情勢を踏まえて日本銀行が判断していく訳であり、毎回の決定会合において金融経済情勢の入念な点検と質の高い議論を積み上げ、それらを対外的に明らかにしていくことこそが何といっても最も重要なことではないかと思う。』

で、先日引用した部分の対外的に判りやすいメッセージとは何ぞやという話になるのですが、短期市場やら債券市場みたいに日銀の一挙手一投足を細々チェックした上で通常のオペレーションとかも見ているという人達には速水総裁の言う方法でも話は通じると思われるのですが、結局のところ景気は「気」でもありますので、(特に金融政策についてあーでもないこーでもないと言うのに短期資金取引に関しても怪しそうな)為替市場の中の人達(日米のLIBOR金利差で円高円安とかあれは短期市場の実務者から言わせると都市伝説の一種ですからね^^)やら株式市場やらといった全般的なマーケットとか、より広く一般ピープルという所に向けての説明とゆー事になると、更に政策の「見せ方」に工夫が必要だったという事もあるんでしょうな。

で、その結果として福井の俊ちゃんメソッドやらバーナンキ先生のメソッドなどが発生したという事でもあるのでしょうけれども。


○そう言えば尾身先生は正しかった(のかもしれない)というお話

これだいぶ前にネタにした話ですけれども、ここの下の方のお話ね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html#gijiroku080801

1998年4月9日の会合で尾身経済企画庁長官が大暴れした事をネタにした訳ですが、これも今になって読むと味わいが深いものがあります(^^)。ということで再掲しますけど。

1998年4月9日の決定会合議事要旨35ページから。

『今度のレポートは大変大事だと思っている。今の分析を全体としてみて、パターン認識的に景気が下に行きそうだということを説明するためにいろいろなことをくっつけているような感じがする。私どもも景気の現状の厳しさについては、日銀とそれほど違わない考え方を持っているが、政策責任官庁としては、この日本の景気を上げなければならないということで、いろいろな手を打っている訳である。そのいろいろな手を打つという状況の下で、明日、月例経済報告を出す。そして、「景気が停滞をしていて、厳しさが増している」という表現でいく。しかし、資料−3の1ページは「マイナス方向に働き始めており」と言っている。つまり景気の循環局面がマイナスの方向であるという表現になっている。』

『我々は、今度の対策で、景気を上に向けようとして、対策を出す訳である。だから、景気の底は3月か4月であるという方向でやっていく。それを片方で、日銀がいわゆるエコノミスト的な分析で、「マイナスの方向に働き始めており」という感じにすると、我々としていろいろな対策をやった時にコンフィデンスが回復しない要因がこのレポートにあるというようになる可能性がある。』

『確かに、数字の動きは全部マイナスであるから、日銀としてはある部分のエコノミスト的な感覚で言えばそういう感じを持つのも分からなくはないが。それは良く分かっているが、このレポートそのものがマイナスの暗示に非常に敏感に反応しているものになっていて、プラスの暗示に反映していない。全部が感性が鈍くなっている状況である。感性が鈍くなっている状況の下において、それをやや強調するような下振れ圧力とか、マイナスの方向に働き始めているとか、そのような方向に行くと、せっかく我々が4月に対策を出した時に、経済の動向が下を向いているというレポートになり、「政府がいろいろなことをやっても気分が悪くなっているのでうまくいきませんよ」というような、我々の景気対策の効果を、ここではっきり申し上げるが、足を引っ張るようなレポートはなるべく避けてもらいたいと思う。(以下割愛、さっきのURL先には後半部分もあります)』

大した対策も用意しないでデフレ宣言を堂々実施した結果、すっかりデフレマインドが人口に膾炙してしまって、マインド調査関連での物価見通しに関する数値が物凄い勢いで悪化してしまうという大変にセクシーな実績を残しておられるお遍路カイワレ大先生および閣僚一同は尾身さんの言葉を百万回味わうべきだと思います。






2010/01/21

お題「懐かしの輪番(事実上の)札割れとかその他雑談」

あんまりまとまった話が無かったりします。

○輪番オペでやたら強い所まで落札

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100120.htm

で、その結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100120.htm

結果の方の上から4番目に何か桁が全然違う表示があると存じますが、残存1年以内対象の輪番オペで最高落札利回り格差が▲0.129%となりました。最初見た時に桁間違いかと目をゴシゴシやったのはあたくしだけではありますまいて(^^)。

確か残存1年ゾーンの銘柄の一昨日のBB引けが0.13%とかだったので、この数字というのは要するに「出来上がり0.001%で応札したら堂々の落札」という話でありますので、落札した人ウハウハでございますが、まあ無駄と判っていてもラッキー札は差しておくべきであるというお話ではありますな。

じゃあこの結果に何か凄いインプリケーションがあるかと言うと、いやまあこじつければ色々とあるのかも知れませんけれども、よーするに業者の在庫が軽くて、別にまあ昨日のオペにしても、前場の時点で残存1年近辺って堅調は堅調ですけれども、5糸強から1毛強あたりがオファーサイドだと思われますので、普通に輪番に入れようと思えば別に出来上がり0.001%などというお洒落な札じゃなくても入れられたのですが、ここもと短い所の買いニーズも強いみたいだし、在庫も軽いしということで、別にちょっと強い程度の所で輪番に入れなくても良いやって感じだったのかと存じます。

で、そういう人が多かったのでこんな結果になったという事では無いかと思います。

ちなみに、輪番札割れって前もあった(今回は札割れではないが似たようなもん)よなあと思ってちょっと調べてみたら前回は2006年2月22日に堂々の輪番札割れがあったんですね。

昔懐かしい前回の輪番札割れ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba060222.htm

その時の駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/mitoushi05-02.html#mitoushi060223

まー結局単に相場付きのアヤでたまにこういう事が起きるのですが、2006年の札割れが9年半ぶりとかなのですけれども、まあそれはそれとして、時々札割れに近いような事が起きるのはその前にもあったのですけれども、ある時(すっかり忘れた)輪番が札割れ近くなってやたら強い所まで札が入った時に、あたくしの冗談札が入ってラッキーと思ってたら後場の寄りから相場がちゃっかり強くなって結局同値だか踏みで買い戻してしょぼーんとなった事があったなあ(遠い目)とか思うアタクシなのでありました(^^)。

でね、今回の輪番札割れですけれども、じゃあ今後札割れするかと言えば、まあ次回以降「ラッキー札は入れておくべき」というご教訓を思い出した人達がラッキー札を入れて来るので、暫く札割れはしない(前回の札割れの時も同じ現象が起きたと記憶している)でしょう。まあ人の記憶からそういうご教訓が抜けるのに4年くらい掛かるという事が今般のインプリケーションちゃあインプリケーションなのでありますな(嘘)、つまり、バブルがどうのこうのという教訓が抜けるのに大体4年という事も言える訳で(超大嘘^^)。

それとですな、これはまあテクニカルというかトリッキーな話になるのですけれども(^^)、資金供給オペと吸収オペっていうのは、それぞれ落札金利の下限と上限が日銀の預金および貸出ファシリティ(預金ファシリティは今の所常設じゃないので常設ファシリティとは書かない)レート、つまり資金供給の下限が0.10%で資金吸収の上限が0.25%(ではなく0.30%ですね、単なる間違え)になるのですが、国債売買系のオペの場合は、落札の出来上がり売却レートが0%以下(0%を含む)というのが却下される(というか昔は間違えて(利回り格差なのでボケていると間違える)0%以下レートの応札をすると日銀から電話が来たのだが最近はどうなんですかね)のですが、預金ファシリティの金利までは気にしないので、預金ファシリティの存在を勘案した場合の実質的なマイナス金利の応札が可能という事になりますわな。

と考えますと、まあ今後オペが札割れという懸念は普通に考えると無いという事になるかと存じます。コール誘導金利をゼロ金利状態にしていた時は、実質的なマイナス金利での応札もへったくれも無かったのですが、今回は預金ファシリティが存在するので実質的なマイナス金利応札が出来るので札割れというのは考えにくいという結論になるかと存じます。

つまり、国債売買系のオペでの資金供給(つまり国債買入と国庫短期証券買入)を使えばなんぼでも札割れ対策になるという事でもあって(いやまあ以前の量的緩和でも札割れ対策で短国買入を乱発しましたが)、しかも実質的なマイナスレートでもオペが打てるので調節のテクニカル的な意味では今回の方が使いやすいとも言えるのではないかと愚考するのでありました(^^)。

#またマニアネタを書いてしまいましたorz


○これは見事な責任転嫁ですね

昨日のロイターニュースから
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK035309920100120
亀井金融担当相と白川日銀総裁が中小企業めぐり議論、月例経済報告関係閣僚会議で

あまりにもアレな話なので記事をだいぶ引用しちゃいます。どうもすいません。

『津村政務官によると、亀井担当相が白川総裁に対して「中小企業の資金需要はどうか」と質問。これに対して、白川総裁は「売上が急に落ちて資金繰りを苦しくしている状態だ。一昨年来の緊急保証制度によってとりあえず金融機関から資金を受ける形で、いったん上がった倒産リスクは、その後は比較的抑えられている」と説明した。』

そうですな。

『この説明に対し、亀井担当相は「そういうことを聞いているのではない。中小企業の設備投資意欲はどうなっているのか。新たな資金需要はあるのか。中小企業の設備投資意欲はなお極端に低いのではないか。そういうことを全体的に聞いているのだ」とさらに質問。白川総裁は「ご指摘の通りで、設備資金は全体としても弱いが、特に中小企業の資金需要は弱い」と答えた。』

それもそうですね。

『亀井担当相は「こうした中小企業の厳しさが日本経済全体の悲観的な見方につながっているのではないか。それとも、大企業が大丈夫だが、中小企業はもう構わないということなのか。そのあたりはどうなんだ」と白川総裁に迫り、これに対して、白川総裁は「中小企業には注目している」と中小企業の軽視を否定した上で、「ただ、新興国経済が非常に強いという話の中で、これを直接享受するのは大企業であったり、特に製造業ということになると思う。中小企業が経済を中心となって引っ張っていくという高度経済成長のときのような姿とは少し違うかもしれない」と答えたという。』

・・・・えーっと、で日銀に何をしろと井脇ノブ子じゃなかった亀井センセイは仰せなのかさっぱり判らんのですが、中小企業の設備投資意欲が弱いのがケシカランとか日銀に言うのじゃなくて、それは経産省やら(銀行の貸出態度を変えるという話だったら)金融庁のお仕事ではないかと存じますが。

何かね、もうとりあえず日銀を空爆しておけば経済無策(いや一応何かビジョンみたいなのはあるけど、あれのどこがどう成長戦略??という感じで、総花的に並んでいる施策を全部実行したら成長力が更に低下するような話ではないかね)のツケ回しを日銀に一部は持っていけるという点で政治的なセンスが素晴らしい発言である事は間違い無かろうという所でございまして、さすがは井脇センセイだと感心することしきりのあたくしでございました(棒読み)。


#本当はここで柄になく政治雑談(というか悪態)コーナーの予定でしたが、悪態が幾らでも出て来て話が全然まとまらないので頭の中でまとめてから参ります(^^)。








2010/01/20

お題「新興国バブルに関する日銀レビューとな」

JAL問題で「過度に公共性を重視させられた結果としての経営悪化」という事を指摘するのであれば亀井・・・いやまあいいです。

#日銀への政治圧力ならまだお笑いで済まそうと思えば済ませない事はないレベルだが、検察への政治圧力ってどこの国家社会主義労働者党だよという感じがするんだが今日は悪態省略

○これはまた一読した瞬間に微妙なテイストを

本文はPDFで8ページですのでまあ重くはありませんです。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j01.pdf(本文)

んでもってお題が『新興国の国際資金フローと資産価格の変動』というものでして、これはまた微妙なお題ですなあと思ったら、最初に出てくるサマリー部分が案の定この通り。

『新興国への海外資金の流入は、リーマンブラザーズの破綻後に急速に減少したが、2009 年春以降、グローバル投資家のリスクアペタイトの改善を背景に、再び増勢を強めている。』

さよですな。

『新興国の経済が回復に向かう中で、先進国における低金利長期化の予想が強まったことなどが、投資家のリスクアペタイトの改善につながったとみられる。新興国への資金流入の大幅な増加は、こうした国々の拡張的な金融財政政策と相俟って、景気の過熱や資産価格の高騰をもたらし、先々の調整圧力を高める可能性がある。』

中身を読みますと(後で一応紹介しますが)「こうした国々」というのは先進国ではなくて新興国を意味するようなのですが、新興国への資金流入がバブル的になるとその反動が発生するよという指摘ですな。

『現在、バランスシート問題を抱えた米英など先進国の景気回復テンポが緩やかなもとで、世界経済の回復を牽引しているのは新興国である。新興国が持続的な経済成長を維持し、世界経済の拡大に寄与し続けるには、拡張的なマクロ経済政策を適切なタイミングで修正し、新興国における大幅な国際資金の流出入と資産価格の変動を回避していく必要があると考えられる。』

ということで、新興国は金融緩和政策を抑制的にする必要があるという結論になっているので、まあそれはそれでさいですなという感じですけれども、新興国への海外資金の流入の元はどこかと言えば、それはどう見ても先進国における低金利政策なのでありますから、この日銀レビューをパッと読んだ場合には「じゃあ先進国の拡張的な金融財政政策の出口政策を検討しろという事ですね」という印象を思いっきり受けるのですが、書いている皆様(国際局の国際経済調査担当と、珍しく個人名になっていないのですが)の真意はどうなんでしょうかねえ(^^)。

ということで中身について少々。


○リスクアペタイトの改善による資金流入

本文2ページが『2. リスクアペタイトの改善と新興国への資金流入』という項でして、こちらでは主要国における投資家のリスク許容度復活によって新興国への資金流入がどうしておきますかねという話と、その結果どうなっているかという話を説明しています。例によって全部引用していると長くなりますので適当に端折って引用。

『さらに、各国における積極的な金融緩和は、投資家のインセンティブ構造を経由して、リスクアペタイトに影響した側面もあると考えられる。』

ほほう。

『すなわち、低金利が長く続くと、機関投資家は、目標運用利回りを達成することが困難となるため、リスクテイク姿勢を強める傾向がある。また、ヘッジファンドの報酬は、一般に、運用純利益や運用純資産に連動しているため、低金利の継続によって、純利益や純資産が伸び悩むと、ファンドマネージャーは、報酬の引き上げを狙って、リスクテイク姿勢を強めていく傾向がある。』

まあ低金利継続と資金繰り環境改善のコンボによって特に短い年限ではターム物金利が潰れるわクレジットスプレッドは潰れるわというのは、本邦でも普通に発生してますので、実は報酬によるインセンティブが無い(普通にその辺りの世界はヘッジファンド云々とは関係ない世界ですからね)状態でも起きるのだ(^^)。

『こうした金利水準と投資家のリスクアペタイトの関係を調べるために、先進国G5 の平均金利(2 年物、10 年物)を用いて、グレンジャーの因果性検定を行ってみた(図表3)。』

で、そりゃ何じゃという話はスルーしまして結果ですが・・・

『以上の分析結果を踏まえると、主要先進国(G5)の金利低下は、ラグを伴いながら、投資家のリスクアペタイトに影響するとみられ、足もとのリスクアペタイトの回復も、リーマンブラザーズ破綻後の先進国の大幅な金融緩和の効果に支えられている側面があると考えられる。』

そらそうですな。んでもってその結果どういう事が起きやすくなるかと言うのが新興国への資金流入という話。

『リスクアペタイトの改善した投資家が運用利回りを高める一番の近道は、流動性の低い金融資産への投資である。新興国の株式や債券は、先進国の証券に比べ、市場流動性が低く価格変動リスクは高いことから、平均的にはハイリターンを享受できる。』

で、「流動性が低いんだったらいざと言う時に逃げられないのではないか」とゆーツッコミをしたくなると思いますが、まあその「いざと言う時」の事を考えていたら流動性の低い市場に突っ込むこたあ出来ないのでありまして(−−;)、流動性が低くても後から金を突っ込む人がいたら無問題でしょとばかりに次々とハーメルンの笛吹き男よろしくレミング現象となって特攻していくのが悲しき金融市場クオリティなのであります。

『こうした理由から、リスクアペタイトの改善した投資家は、新興国への証券投資を拡大させている。新興国の株価の上昇や、債券の対米国債スプレッドの低下には、こうした海外からの資金流入が寄与している(前掲図表1、図表5)。特に、2009 年春頃から、先進国と新興国の成長率格差の拡大が投資家に意識されるようになったこと、そして、先進国における低金利長期化の予想が強まっていることなどが、新興国への投資を後押ししている。』

という事で、その次の部分で実際の事例として『キャリートレードの活発化』と『コモディティ市場への資金流入』という項を設けて説明しています。で、キャリートレードの所はスルーしまして商品価格の所を引用。

『グローバル投資家がリスク資産への投資を増やしていく中で、コモディティ市場への資金流入も継続した。2008 年夏をピークに大幅に下落した原油をはじめとするエネルギー価格は、2009 年春頃から再び上昇基調に転じた(前掲図表5)。資源効率の低い新興国の経済成長と、それらの国の通貨の増価に伴う購買力上昇が、コモディティ価格の上昇圧力につながっている。』

『しかし、最近のスポット価格の上昇傾向には、こうした実需要因だけではなく、投機要因も影響しているとみられる。例えば、原油在庫が、例年に比べ多めに推移しているにもかかわらず、先物価格がスポット価格よりも高い順鞘(コンタンゴ)の状態が続いている(図表7)。』

在庫が多いから先安感があってしかるべきなのだが順鞘の状態になっているというお話なのですが、あたくし商品先物のこと詳しい訳じゃないけど、普通は商品先物って保有コスト勘案すると現物よりも先物の方が高くなって、当限よりも先限の方が高くなるもんじゃないかと思うのだが、商品先物に詳しい人教えてジェネラル。

『先物価格カーブがこうした形状となる背景には、低金利による在庫保有コストの低下を受けて、コモディティ現物への在庫投資を拡大させ、値上がり益を得ようとする投資家の動きがあると考えられる。』

そうなんですか。まあこの前振りの部分はちょっとあたくし的にびみょーに引っ掛かる部分もある(単にあたくしが無知なだけだと思う)のですが、その先の所はほほーという感じで。

『ちなみに、原油価格は、2008 年上期に、140ドルまで上昇したが、当時は、在庫水準も低く、かつ、先物価格がスポット価格よりも低い逆鞘(バックワーデーション)の状態にあった(図表7)。このため、当時は、「原油価格の上昇は、先進国の低金利を背景とした投機によるものではなく、実需の増加によって牽引されている」という指摘が多く聞かれた。この点を踏まえると、2009 年春以降の原油価格の上昇の背景は、2008 年上期の上昇とは異なる側面があるように窺われる。』

何か当時はそういう事意識した事無かったけど、確かにこの辺りの論点はオモロイ(あたくし的には期先が逆鞘になっている方が変な気がするので、逆鞘状態の方が現物(または当限)が思惑人気で高くなっているという意味なのじゃないかと思うのですが、あたしゃ商品相場には素人さんですのでてめえのアホウを晒す積りで書いてみただけ)ですな。


○ということで新興国の出口戦略

その次は『3. 新興国の資産価格上昇と景気の過熱感』って項で、新興国への資金流入が過熱しているかどうかに関して、まず資産価格の現象面についての説明をして、その後マネーサプライなどのマネー部分に注目して説明しています。

『新興国への資金流入の増加は、資本市場における企業の資金調達環境の改善や資産価格の上昇による資産効果を経由して、新興国の内需増加を後押しする効果がある。こうした動きが新興国の持続的な成長につながるか否かは、新興国の資産価格の上昇がファンダメンタルズを適切に反映しているかどうかに依存する側面がある。』

てなことで、中身はまあスルーしますが結論部分。

『アジアを中心とする新興国の先行きを展望した場合、稼働率の上昇から設備投資が増加し、エネルギー価格の上昇などから運転資金の需要も増加していくもとで、企業向け貸出の伸びは徐々に高まっていくと考えられる。さらに、海外からの資金流入の継続が、資本市場を経由して、企業のバランスシート拡大を後押しする方向に作用すると考えられる。また、足もと、企業向け貸出の低迷から、貸出全体の伸びは鈍化していても、韓国や豪州などでは、家計向けの住宅貸付は増加しており、住宅価格の上昇と家計のバランスシートの拡大が同時に起きていることには留意が必要である。』

ということで、次が『新興国の金融財政政策の出口戦略』という項。

『新興国や資源国への国際資金の流入が継続すれば、景気や資産市場の過熱感を強め、国内経済主体のバランスシートの拡大を引き起こすことで、その後の経済調整圧力を高めることになる。また、ひとたび調整が始まれば、海外投資家の資金引き揚げを誘発し、資産価格や自国通貨の急落を招き、経済のハードランディングを強いられる可能性もある。』

ここ15年位の間に何回も見ましたな。

『こうしたハードランディングのリスクを小さくするには、金融緩和政策を適切なタイミングで修正していく必要がある。実際、資源国の豪州やノルウェーが2009 年末にかけて利上げを開始している。いずれも、国内経済が予想以上に速いテンポで回復していることを踏まえたものである。』

『また、財政政策の適切な運営も重要な要素となる。特に、固定相場制や管理フロート制を採用している国では、拡張的な財政政策を適切なタイミングで切り替えていく必要がある。すなわち、マンデル・フレミング・モデルが示すように、固定相場制のもとで拡張的な財政政策が採られた場合、自国通貨に生じる増価圧力に対応するため、通貨当局が外貨買い・自国通貨売りを行う結果、マネーが増加し、景気浮揚効果が大きくなる。このため、景気の過熱を抑制するには、財政支出を縮小させる必要がある。』

ということで、まあこちらは「新興国経済のバブル大発生&バブル大崩壊を予防する為に」「新興国での」抑制的な金融財政政策運営が必要という話になっています。


○まとめでしらっとこんな話が

という話だったのですが、まとめ部分でしらっとこんな話を。『4. おわりに』って所です。

『金融緩和が、どういった経済主体のリスクテイクを後押しし、経済に影響を与えるかという点については、バランスシート問題の有無が重要なポイントとなる。米国の家計はバランスシート問題を抱えているため、過去に比べると、金融緩和が米国内の家計支出や不動産価格を通して、景気を刺激する効果は弱まっているとみられる。一方、米国など先進国の金融緩和は、新興国自身の金融緩和と相俟って、バランスシート問題を抱えていないグローバル投資家のリスクテイク(新興国への投資など)を促し、同じくバランスシート問題を抱えていない新興国経済に対する景気刺激効果を強めているように窺われる。』

なるほど。

『この点は、1929 年に始まった世界大恐慌のケースと全く逆の現象と解釈することもできる。世界大恐慌が、文字通り、「世界」的に波及した背景には、米国の引締め的な金融政策の影響が、金本位制採用国に伝播したためとの指摘がある。』

ほほう。

『すなわち、金本位制を早期に離脱した国や銀本位制を採用していた国では、恐慌の深刻な影響を受けなかったが、金本位制からの離脱が遅れた国ほど、米国の金融引締め政策の影響を受け、景気後退が長期化し、かつ深化したとの見方である。』

つまり新興国は為替ペッグや管理フロートを離脱すべきだということですか(たぶんそれはあたくしが飛躍して読み過ぎ^^)。

『一方、今回の局面では、米国の徹底した金融緩和が、固定相場制や管理フロート制を採用する新興国の景気拡張効果をもたらしている側面があると考えられる。市場では、当面、米国など先進国の金融緩和が続くとの見方が支配的となっており、その場合、固定相場制や管理フロート制を採用する新興国経済をオーバーシュートさせるリスクも同時に高まっていく。こうしたリスクをできるだけ回避するには、抑制的な財政運営が必要となっていく。』

主語が抜けているのでアレですが、まあこれは新興国の抑制的な財政運営が必要という話なのでしょうが、言外に米国の出口戦略の適切な運営が必要ではないかという悪態をついているように見えるのはあたくしが飛躍して読んでいますかそうですか(^^)。

まー何ですな、金本位制がどうのこうのという話になると、英国が国際金本位制を維持するために行っていた役割を米国がきちんと引き継がなくて金本位制を不安定なものにしちゃいましたというような指摘を思い出す次第で、上記の指摘に何か重なるものを感じますな。うんうん。

#と書いていたら時間切れなのでその他の雑感はスルー








2010/01/19

お題「さくらレポートとか雑談とか」

まあ何と申しますか次のネタ探しの相場状態でして、細かい動きは色々とあるのですが、結局レンジですなあ状態なのが誠に遺憾(平和でいいけど)な所でありまする。

○さくらレポートから少々

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1001.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1001.pdf(本文)

冒頭部分ですが。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、全ての地域が足もとの景気について、「持ち直している」との判断を示したが、ペースや広がりには引き続き差異が認められる。また、ほとんどの地域が、業種間、企業間等におけるばらつきの存在を指摘しているほか、引き続き水準の厳しさに言及している地域が多い。』

『なお、今回の地域別総括判断を前回と比較すると、5地域(北海道、東北、北陸、中国、四国)が基調に変化なしと判断した一方、4地域(関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄)では基調に改善方向の変化がみられると判断した。』

まあ全部が良いなどというような結構な話は中々ないのですが、毎度お馴染みの「方向は持ち直しだが絶対水準はダメダメですよ」という話になっているという形なのは予想通り過ぎですけど。

2010年1月(今回):4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

・・・・うーむ、何ちゅうか鉱工業生産指数とかも禿げしく下げてその後禿げしくリバウンド(でも別に倍返しで戻る訳ではない)しておりましたが、それに似たよな推移をやらかしていますなあという感じではございますけれども、9地域で上方修正が2連発した後で上方修正地域が減るというのは思いっきり足踏みの香りがするのでありまして、いやあ先行きちょっとヤバイかも知れませんねえ的な気分が出ているような感じを受けるのはあたくしの勝手読みですかそうですか。

んでもって個別展開。

・個人消費

『個人消費は、全ての地域が政策効果による家電販売、乗用車販売の増加に言及したが、全体としての地合いについては、9地域中7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)で「引き続き弱い」と判断された。この間、東海と中国では、全体としての基調も改善方向に変化したと判断された。』

政策効果で堅調な部分はあるが基調は弱いとはダメじゃん状態。

『耐久消費財以外の主な動きをみると、百貨店等大型小売店については、全ての地域から、売上高の減少傾向が続いているとの報告があった。観光については、4地域(北海道、東北、関東甲信越、九州・沖縄)が観光客の減少を報告しているが、四国では、堅調に推移していると評価された。』

四国が堅調とは何故??


・設備投資

『設備投資は、企業収益の悪化等を背景に、各地域で大幅な減少が続いている、ないし低水準で推移していると判断された。もっとも、関東甲信越は「減少幅の拡大には歯止めがかかりつつある」、九州・沖縄も「下げ止まりつつある」と、基調変化の兆しに言及した。』

ほほう基調変化とな。


・生産

要するに生産が景気を引っ張っているのでありまして。

『生産については、改善ペースや広がりは異なるものの、引き続き全地域で、増加基調にあると判断された。』

『主要業種別の動きをみると、全ての地域で、自動車・同部品、電子部品・デバイスについて増加基調にあるとの報告が行われた。また、鉄鋼については6地域(北海道、東北、北陸、東海、中国、九州・沖縄)、化学については4地域(北陸、東海、中国、四国)、非鉄金属については3地域(東北、北陸、四国)で、生産水準が上昇ないし高操業が続いているとされた。この間、一般機械については、4地域(東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄)で下げ止まりないし持ち直しと評価された一方、3地域(北陸、中国、四国)では低操業ないし大幅な減産が続いているとされた。紙・パルプについては、3地域(北海道、東北、四国)から、減産継続ないし低操業との報告があった。』

例によって例の如く自動車と電子部品デバイスが好調ですが、一般機械がイマイチとはどう見ても輸出のお蔭です本当にありがとうございました・・・・なんですよね?


・雇用所得環境

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢は、全地域から厳しい状況が続いていると報告された。すなわち、各地域とも有効求人倍率が低水準で推移しているほか、雇用者数についても多くの地域で減少傾向をたどっている。この間、東海では、労働需給が持ち直していると判断された。』

『雇用者所得は、冬季賞与等を中心に、全地域で引き続き減少していると判断された。』

ダメじゃん・・・・・


ということで、要するに海外様のお蔭で生産が何とかなっているから何とかなっておりますよという話のようですな。まあそうなんですけどね。


・地域の視点

さくらレポートの本文だと4ページ目(PDFの6ページ目)から毎回のトピックスを「U.地域の視点」として特集しているのですが、今回のお題はもう狙ったように『根強い価格下落圧力の中での企業戦略』というお題。

んでまあ価格が下がりそうな話が製造業、非製造業の順に色々と並ぶのでありますが、その辺はスルー致しまして先行き見通しのまとめ部分から。

『● 先行き、製商品・サービス価格は、当面、弱含みの状況が続くとの見方が多いが、流れを変えるものとして期待されているのは、値ごろ感の台頭(不動産、卸・小売)や消費者の節約疲れ(小売、個人向けサービス)、企業収益改善による需要増加(一般機械、企業向けサービス)等である。前述したような価格競争以外の需要獲得策については、相応の手応えを感じている実施先が少なくない。今後、こうした取り組みがさらに広がりをみせれば、全体としての物価の下落傾向に対する歯止め効果が期待できるのではないか、との声も聞かれるところ。』

だいぶ願望が入っているような気もしますが・・・・

『▽ 先行きについては、需要回復への道筋が不透明な中、非製造業を中心に、企業の経費節減や個人の節約志向・低価格志向を背景に、当面弱含みの状況が続くとみている先が多い。』

『具体的には、製造業では、前述のように、素材業種を中心に、原材料価格上昇に伴う値上げを図る動きがみられるものの、電気機械、輸送用機械、一般機械などで引き続き価格は弱含みの状況が続くとの見方が多い。実際、自動車では、既に納入先から1年後の価格を半額以下に引き下げるように要求されている部品メーカーがみられるほか、いち早く自ら大規模な原価低減方針を策定した完成車メーカーもみられる。また、非製造業では、雇用・所得環境の目立った改善が見込めないこと(小売、個人向けサービス)や、政策変更による需要減少(建設)等から、当分の間、価格の下落が続くと見る向きが多い。』

「1年後の価格を半額以下に引き下げるように要求されている」自動車部品メーカーカワイソス。

『▽ 一方で、卸・小売や個人向けサービスおよびその関連業種では、「揺り戻し的に足もとの下落幅が縮小したことを眺め、値下げを見合わせる先がみられる」(青森)とか、「値下げしても需要が伸びず疲労感が残るだけとの認識も徐々に強まりつつあり、川下からの値下げ圧力もそろそろ歯止めがかかる」(新潟)、「低価格実現のために品質を落とす段階に入りつつあるが、特に食料品では品質引下げに限界がある以上、これが値下げ合戦にブレーキをかけるきっかけになるかもしれない」(高松)、「値下げ商品も毎回同じものでは飽きられてしまい、リピーターが減少している」(熊本)等、企業の価格設定方針の転換点が近づきつつある、との見方も聞かれ始めている。』

・・・・何かもう「これ以上絞れないので雑巾絞りませんが何か?」という感じが漂って参ります次第で、あまり威勢の良い話ではないようですな、ナムナム。

ちなみに、こちらのお題って基本的に「現在キャッチーなネタ」を扱ってりますので、3年前から過去のお題を全部並べると、景気失速前からの推移が読めて落涙を禁じ得ませんので、久々に過去の分を全部ならべてみませう。


・『根強い価格下落圧力の中での企業戦略 』(今回)

・『1.最近の雇用・所得動向――企業の雇用・賃金調整を巡る動きを中心に――
  2.環境・省エネビジネスへの取り組みと関連企業の対応』(2009年10月)


・『最近の個人消費動向の特徴点と消費関連企業の対応』(2009年7月)

・『1.地場企業を取り巻く経営環境の悪化とその対応──設備投資、雇用を中心に──
  2.各地域からみたインバウンド観光の現状と課題』(2009年4月)

・『わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し
──最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に──』(2009年1月)

・『1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応』
 2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─』(2008年10月)

・『最近の企業の設備投資動向 』(2008年7月)

・『1.グローバル需要の取り込みに向けた企業の対応について
── 中堅・中小製造業や非製造業の動きを中心に
 2.地域からみた最近の雇用・賃金情勢について』(2008年4月)

・『原材料価格上昇のもとでの企業の対応
── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』
(2008年1月)

・『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
 2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)

・『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)

・『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
 2.近年の東京における高額消費市場の特徴
――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)

・『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)


・・・・2007年あたりのお題を読んでいるとつい3年前の話なのに遠い昔の事に(涙)。



○しかしまあデフレネタを色々と出しますねえ

で、その支店長会議の開会挨拶概要がこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/siten1001.htm

まあ景気に関する話は相変わらずの文言ですが、今回は最後に12月通常会合でも示したやる気元気井脇宣言のような決意表明のようなものを打ちこんでみましたとな。

『(6)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』

今回のさくらレポートでの「地域の視点」のお題もそうですけれども、政府がやたらデフレデフレとやかましいので、まあ日銀もそれにお付き合いちゅう感じですけれども、まあそれこそ内閣支持率が下がったりすると、政府は自分の所に降りかかった火の粉をどっかにかぶせようとする訳でして、「困った時のイラク空爆」のような外交ネタが使えない(いやまあ一応米国ネタを使うのが民主党政権のDNAだとは思うのですが、早速藪蛇状態になっているのがテラアホスなのでそうは使えないでしょ)所でもありますので、またぞろ景気回復の為に日銀何とかしやがれコノヤロー状態になってくる懸念が大蟻という所なのではないかと。

とまあ考えますと、企業金融関連施策でわざわざ大騒ぎして解除して波風立てた分で余計な日銀の政治資本を使ってしまったのは勿体なかったという風にも思えます(微妙な固定金利オペを導入しなくて済んだのかもしれないし・・)が、そうは言いましてもまあ黙って3か月継続していて今の時点で「企業金融関連の臨時措置は臨時措置だから解除」と言えたかとゆーとそれも微妙なので(米国は思いっきり臨時措置解除モードなのですけれどもね)、とにかく臨時措置解除先にあるのであればあの時点で解除しとかないと解除できませんでしたねという言い方もあるので、まあその辺はどっちもどっちなのですけれども、まーCPや社債の買入は継続しても継続しなくてもそんなに利用自体が多くない状態が継続してただろうと思うと、政治資本をちょっと派手に使っちゃったですかねとは思います。

まあ株価だの為替だのがまたコケてこないと追加緩和圧力が来ないというのが基本的な発想だと思う(というかあたくしもそう思う)のですが、デフレ継続をネタに自分たちの火の粉軽減の一環として日銀に圧力掛けて世間の批判を日銀に向けようとか平気でやってきそうなのが民主党政権クオリティだと認識しているあたくしは、何気に内閣支持率の動向とかも気になる今日この頃でございます。


○おまけの雑談で不思議な言説クリップ

・出口戦略ってどこの国の話でしょうか

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010011800871
出口戦略、時期尚早で一致=雇用情勢など考慮−首相とIMF専務理事

・・・・追加緩和だとか言っている国にやってきて「出口戦略時期尚早」って何と言うピントの外れた話をしているのでしょうか???しかしまあ「出口戦略は時期尚早だけども財政健全化の道筋を示せ」とかまたナローパスな話をしますなあ。まあいいけど、どうもIMFの話ってすっ頓狂な話が出てくる事が多いっすなという気が昔からするのであります。


・産経電波浴シリーズ

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100118/fnc1001180302000-n1.htm
【経済が告げる】編集委員・田村秀男 国際通貨戦争、勝者は人民元

毎度お馴染みの産経新聞の電波浴でございますが、

『中国共産党は通貨戦の遺伝子を先人たちから引き継いだのだろう。国際的に信用度の低い共産主義国家の紙切れに価値を付与するよう腐心してきた。朝鮮戦争により米国との関係が断絶しても、裏帳簿をつくって人民元とドルの交換レートを固定した。米中国交正常化後は一貫して人民元をドルに連動させ、外国企業の投資を呼び込み、輸出を増やして、ドルをため、世界最大の米国債保有国になった。』

『党中央は2008年9月の「リーマン・ショック」を奇貨ととらえた。米国がドル札を平時の2倍も一挙に刷り出すと、党は大号令を発した。人民元供給の担い手である国有商業銀行は前年比で一挙に3倍、人民元融資を増やせ、と。財政支出と相まって内需は喚起され、8%台の成長を確保した。』

確かこの先生は「日銀はもっと金を刷れ」(という表現が既に変なのですがそこは措いて)つー話をしている筈なのですが、これを見ますと「通貨の信認が大事だ」と仰せのようでありまして、それならあーたサブプライム以降の勝ち組は日本と言う事になりますが、それでよろしいのでしょうか???

で、最後に産経読者が喜びそうなテイストの中国脅威論で締めているのが産経電波浴の醍醐味でもございます。

『決済通貨は軍事戦略を支える。米軍はドル札を海外で自由に使えるから海外の基地や軍事行動を展開できる。米国に倣うなら、中国軍は人民元を手に、シーレーン防衛を名目に東南アジア、さらにインド、中東周辺などに基地を建設し、原潜、空母をわが物顔に遊弋(ゆうよく)させるだろう。』

通貨ってそんなに偉い物ではなくて、軍事的および経済的なプレゼンスがあるから通貨が国際的な決済通貨として通用しているのだと思いますけど、この理屈だと日本なんかもう大変な事になっていると思いますが(笑)。まあ産経新聞の読者が好きな中国脅威論をしたいのか、通貨の信認が大事だ(というとこの先生の従来の話から全然違うのですが)と言いたいのか、まあさっぱり訳の判らない話ですが、きっとあたくしのような凡下には判らぬ高尚な話をしているのでしょうなあ(棒読み)という所で。

・・・つーか米国ドルにペッグしている状態で決済通貨も糞もねえだろと思うのですが。






2010/01/18

お題「唐突ですが決済システムレポートから少々」

年初に出てた決済システムレポートから雑感を少々。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/psr/psr2009.htm(内容紹介)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/psr/data/psr2009.pdf(本文)

本文はPDFで68ページございますので注意。で、最初の方には日本の決済に関する概要説明とかありましてコンパクトな説明になっていて大変によろしゅうございますよ。

○破綻法制の不備に関連して

で、その辺りをスルーして本文11ページ(PDFファイルの20ページです)から引用&雑感。

『リーマン証券の破綻は、1997 年の三洋証券の破綻以来、わが国金融市場が約10年ぶりに経験する「債務の一部が履行されない主要金融機関の破綻」であった。実際、リーマン証券の破綻に伴って、決済が停止された同社の約定済み取引は数兆円に達したとみられる。』

つーことでここの脚注なのですが、

『このうち、証券取引と上場デリバティブ取引に関する決済の一部については、清算機関の業務方法書や当事者間の基本契約の定めに従い、決済を停止したうえで、一括清算や反対売買などの手続が実施された。この間、金融庁による業務の一部停止命令や民事再生手続の開始申立てに伴う保全命令で、顧客預り資産の返還や双務契約に基づく証券取引の履行等を念頭に、リーマン証券が決済を継続できるよう除外規定が設けられた。しかし、一括清算等が行われた取引以外については、決済内容が国内外に跨って輻輳していたことから、正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する旨が同社自身によって決定された。この結果、16日朝以降、同社を当事者とするすべての決済が約定どおりには履行されないこととなった。』

こちらは決済システムレポートなんで、この先も基本的にレポなどの取引で生きていた物がどういう形で正常化できたかという論点の話になってしまうのだと思うのですけれども。上記の「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する旨が同社自身によって決定された」というのが実はまあ困った話だったんですよね。つまり、レポなどのような一括清算が契約上行えるという事になっていた物は一括清算できたのですが、一般売買に関しては結局その間に相場が物凄い勢いで上昇して連日下落した結果として、リーマン破綻前の相場水準に偶々戻ってくれましたので、そのどさくさに紛れて約定を事後的に取り消すという対応でもそんなに莫大な差損益がカウンターパーティーに発生しませんでしたが(という点は軽く後の方でも述べられています)、結局一般売買はそっちで勝手に取り消してくれ状態になるわ、何故か取引所売買の委託取引まで決済が遅延するとか信用取引などの反対売買が数日間出来なくなっただのと投資家的には大迷惑な事案が続出した訳であります。

まあそれは決済システムと直接関係しない破綻法制の問題ですからこちらのレポートでその話までおっぱじめると話が無限に広がるのでそっちの話をゴリゴリとやらなかったのだと思いますが、実際問題として投資家の動きがやたらシュリンクしたとかカウンターパーティーリスクがどうのこうのという話になったのは、取引がフェイルになって決済が遅延した事もさることながら、約定が事後的に取り消しになるリスクの方が巨大な問題でありまして、まあモノが来ないと買った物が売れない(投資家もフェイルしようと思えば出来るようになっているのですが、実際問題として投資家がフェイルした場合の計理処理とか法的建付が不明なのでそっちのリスクがある)程度の話ならまあ仕方ないのですが、遡及で損益がぶれるのはかなーりマズーですわな。というのと、リーマンの場合個人向けの取引を実質してなかったから良い様なもんで、取引所取引まで建玉処理が止まるとかを広範に一般個人に対してやらかしたらそれこそ大変な騒ぎになっていたと思われる次第でありまして、今回の処理は破綻処理の法的な進め方としては相当の問題含みであったのではないかと思います。

って前も書きましたけど、こんなレポート出たからまたしつこく繰り返すのでありました。


○ということで決済動向に関して

次の本文12ページから。

『相対決済の取引については、リーマン証券の破綻後、同社とその取引相手方が取引の約定の規定に基づき(規定がない場合には協議のうえ)、契約の解除や一括清算11などの対応を行った(ポジションの解消)。また、取引相手方は、これと並行して、リーマン証券から支払いや引渡しを受けられなかった資金や証券をみずから調達することとなった(ポジションの再構築)。』

対投資家の一般売買に関しては「協議のうえ」というよりは暫く何をどうするのかさっぱり判らん状況で、最終的には相場水準戻ったからやれやれ取り消しになったという感じだったと思いますけどまあいっか。

『清算機関を通じた決済についても、清算機関がその業務方法書の定めに基づき、リーマン証券に対して一括清算などの対応を行った。また、清算機関は、これと並行して、リーマン証券から支払いを受けられなかった資金について、銀行からの借入枠の行使や市場取引等によって資金調達を行い、他の参加者への資金支払いに充当した。さらに、リーマン証券から引渡しを受けられなかった証券については、清算機関がみずから市場等で調達し、他の参加者への証券引渡しに充当した。』

清算機関関連の取引も中々素敵なフェイルになったようですが詳しくはパス。

で、時系列の話はその先に説明がありますが、その中身に関するツッコミは決済やらレポやらの関連の皆様に聞いて下さいませという所ですが、まあこちらは決済レポートにつき決済遅延の解消に関する話なのは仕様です。

で、証券決済の次が外国為替決済なのですが、そっちはまあ正直よく知らんのでありますが、読んでいてほほーと思ったのはこの辺(本文16ページ以降)。

『この間、国際金融市場の動向をみると、米ドル資金市場の流動性が大きく低下したため、日本や欧州など米国以外の金融機関は、米ドルの調達を為替スワップ市場における自国通貨と米ドルの交換に依存することとなった。この場合、仮にCLS による PVP 決済の仕組みが存在せず、時差に伴う決済リスクを意識せざるをえなかったとすれば、金融機関どうしの信認が大きく揺らぐもとで、外為市場での米ドル調達はより困難となった可能性が高い。そうした観点からみて、CLS によるPVP 決済の提供は、国際的な金融ショックの増幅を抑制する防波堤として効果的に機能したとみることができる。』

これは確かにそうなんでしょうね。で、その先がほほーという箇所。

『なお、CLS では、比較的少数の直接参加者を経由して非常に多くの間接参加者が決済を行っている。このような構造のもとでは、直接参加者が大きな信用リスクや流動性リスクを抱え込むことになる。今次金融危機において金融機関の信用リスクに対する懸念が高まるもとで、こうした構造上の課題が改めて認識された。また、取扱対象通貨の拡大や、当日約定・当日受払い取引の取込みなどが今後の課題とされている。』

この後で出てくる日本の証券決済期間短縮に関する話でもこれっていうのは論点になりうる物ではないかと思われます。つまり、証券決済期間を短縮化することによって、一般個人投資家などの取引が繋がっているような部分のように取引が山ほどある場合とか、証券決済期間短縮に対する事務負担やら設備投資がしんどいという所では、証券決済期間が即日化に近くなってきた場合に、クリアリングバンクにぶら下がって決済(直接の決済から離脱する)という事になって来るのではないかと勝手に妄想するのですが、そーなった時に今度はクリアリングバンクがどうあるべきなのかという論点にも繋がりそうですね。



○証券決済期間短縮に関して

本文18ページから

『一方、リーマン証券破綻に伴う決済処理が金融市場に及ぼした影響をみると、国債市場ではフェイルの急増を眺めて、投資家等がフェイル発生の可能性を懸念し、レポ運用を減少させるといった事態がみられた。もっとも、市場参加者に破綻が生じる場合、これに起因して証券市場でフェイルが発生することは避け難い。リーマン証券の破綻にあっても、フェイルが増加したこと自体は自然であり、その後の対応も、清算機関等が規則等であらかじめ定めていた方法、手順等に従い着実に実行された。その意味で、わが国の国債清算・決済システムは、今回の国際金融危機の局面にあって、国債市場の機能を下支えしたと評価される。』

まあその通りなのですが、今回は破綻の取り扱いに関して結局一般売買なども含めて取引を履行しませんでしたよねというか、履行するのかしないのか判らん状態が暫く続いた辺りに問題があったような気がします。まあ確かに一般売買といえども取引にはリスクがあるので、まあ取引相手が飛んで損益が発生するという話は仕方ないのも上記と同じ理屈でその通りなのですけれども、計理的には「約定事後取消」となる証券事故扱いになったのも何かどうだったのかなとは思います。ということで、レポ運用のシュリンクもさることながら、一般売買のカウンターパーティーリスクがいきなり顕在化した方が取引の縮小につながったのではないかというのはさっきの繰り返し。

『その一方で、後述のように、債券決済期間を短縮することなどによりフェイルの発生額を抑制し、投資家のフェイルに対する懸念をやわらげることができれば、ストレス下におけるレポ市場の機能低下も緩和されるものとみられる。フェイル慣行の定着とともに、これらを実現していくことが今後の課題となる。』

というよりは、証券決済期間短縮って「未決済約定残高の削減」というカウンターパーティーリスクの削減であって、フェイルそのものは証券決済期間を短縮した方が物理的に増えないかという気がするんだが(ただし発生したフェイルの解消も早くなると思うけど)どうなんでしょ。

ということで、次の「安全性向上に向けた課題と取組み」という部分になりますが、そこでさっきあたくしが申し上げた事が少々。本文20ページより。

『上記のとおり、リーマン証券の破綻にあって、わが国決済システムは全体としてその機能を十分に発揮する一方、いくつかの課題も明らかとなった。また、今回の場合には、破綻日以降2 週間程度、市場価格の変動が落ち着いていたことから、決済処理における損失額が比較的小規模にとどまったことにも留意する必要がある(図表2-5)。』

いやそのファクターはかなり大きかったと思いますよ。で、課題の中に証券決済期間の短縮があるのですが。

『第2 の課題は、国債の決済期間の短縮である。証券の約定・決済にあっては、約定から決済までの期間が長いほど、未決済状態にある取引が決済リスクに晒される期間が長くなる。これは、日々の取引金額が同じならば、決済期間が長いほど未決済残高が積み上がることを意味する。決済期間の短縮によって、市場参加者のエクスポージャーや市場全体での未決済残高を抑制することができれば、以下のようなメリットが享受できる(BOX2 参照)。』

んでもってそのメリットの説明がありますが、まあ割愛します。これはその通りの話かと存じますけど。

『このほか、決済期間の短縮は、市場全体におけるフェイルの連鎖やフェイル残高の積み上がりを抑制する効果もある。たとえば、証券決済の不履行により当該証券を再調達する必要が生じた場合、上述のように決済期間が短いほど、短期間のうちに再調達を行えるようになる。この結果、フェイルの解消がより早く進み、フェイルの連鎖的な発生も抑制されるようになるため、投資家等のフェイルに対する懸念をやわらげる効果が期待できる。』

こらまた微妙な書き方でして、さっきは「フェイルの発生額を抑制」と書いて居ましたが、あたくしのようなツッコミをする人がいるのを予期してか(^^)、フェイルの発生そのものよりも、フェイルの積み上がりやフェイル解消への時間が減るという話をメリットにおいているので、これはまあその通りなのですけれども、「フェイルに対する懸念をやわらげる」かというとそれはまた微妙なのではないかと思います。

『さらに、国債決済期間の短縮には、国債の魅力を高める効果もある。金融資産としての国債の換金性が高まれば、金融機関の安全で迅速な資金調達手段が充実し、投資家にとっても短期の余資運用手段が多様化するほか、当日物・翌日物といった短期のレポ市場の発展を後押しすることにもつながる。』

だいぶこの辺になると我田引水っぽい話になっていますな。いやあの今でも別にT+2とかT+1とか売ろうと思えば売れますし、短国だったらたぶんT+0だって売れる(長期国債でも大丈夫なんじゃないかな?)と思うのですが、そりゃまあ1000億2000億売るとなると話は別だが。

『国債取引の決済は、わが国では約定後 3 日目決済が慣行となっている。一方、英国や米国では翌日決済が実現している。わが国でも、証券決済制度改革推進会議のもとに、日本証券業協会を事務局として、国債決済期間の短縮を検討するワーキング・グループが組成され、現在、検討が進められている。わが国金融市場の一層の整備に向けて、こうした検討が着実に進むことを期待するとともに、日本銀行としても、市場参加者の取組みを強く支援していく方針である。』

えーっとですね、T+1決済という事になると、在庫だの資金繰りだのがT+0で対処しないといけないという話で、それはつまりリアルタイムでの資金繰りおよび玉繰りが必要になるという話でありまして、取引を一人でやっているなら兎も角、多数の人間が色々な取引をした総体としての資金や玉の動向があるという事は、やはりシステムで管理するとなりますと、バッチ処理をする時間が欲しい訳でありまして、それをリアルタイムで把握するというのはハードルがかなり高いと思います。T+2をすっ飛ばしてT+1をやろうという気が満々みたいな報道やらレポートやらを見るにつれ、それはちょっと時期尚早なのではないかと思うのでありまする。とりあえずT+2で様子見た方が良いのではないかと。

ということで、思いっきり虫干しネタなのでありました。








2010/01/15

お題「生活意識アンケートとかニュース雑感とか」

つまり雑談ということですが(−−;)

#目の前の某経済ニュース番組で「日本の不良債権処理に学ぶ」とか言って昔の政策責任者が「90年代前半には日本の銀行は不良債権を不良債権扱いしないで問題を悪化させた」とか他人事のように仰せですが、当局でそれを絶賛指導してたのお前の筈だろう何じゃその上から目線はと小一時間


○調査時期極悪の生活意識アンケート

3か月1回の恒例行事ですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1001.pdf

1ページ目にこんな記載が(^^)。

調査実施期間:平成21年11月12日(木)〜12月8日(火)

・・・・これはまた極悪な期間に調査したもんですが、さてその結果は。

数字だけのデータが16ページ以降にありますのでそっちから引用。()内は前回9月調査時の数値でありますが。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった 1.6 ( 1.8 )
2 変わらない 29.1 ( 23.5 )
3 悪くなった 68.6 ( 74.1 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い 0.1 ( 0.1 )
2 どちらかと言えば、良い 0.8 ( 0.8 )
3 どちらとも言えない 11.7 ( 10.6 )
4 どちらかと言えば、悪い 46.4 ( 46.5 )
5 悪い 40.6 ( 41.6 )

実は9月の時も「悪くなった」というのが減っていまして、どうも単に「悪くなった」と思うのではなくて「そもそも悪いのですが何か?」という人達が増えたというのが現状なのではないかと思う次第でして・・・・・

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる 8.6 ( 14.9 )
2 変わらない 58.8 ( 63.4 )
3 悪くなる 31.7 ( 20.6 )

まあそんな感じでしょうな。でもって例によって例の如く物価に関する見通しの所なのですが、そっちはこんな感じ。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか
(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった 4.4 ( 8.0 )
2 少し上がった 24.4 ( 39.4 )
3 ほとんど変わらない 35 1 ( 31 5 )
4 少し下がった 31.5 ( 18.6 )
5 かなり下がった 3.4 ( 1.5 )

えええ、まだ上がったというのがこんなにあるのかねというのが不思議ちゃんな所なのですが、何か値段上がってましたっけ????ただ、物価統計の「品質向上効果で物価下落」という攻撃もございますし、言われてみれば家電製品とか新製品出て品質向上しながら名目の値段は上昇(して旧モデルの値段が下がるのであたくしはそっちを買うのですが^^)してたりするから「上がった」という印象を持つ人もいるのかなあと勝手に妄想。たぶん的を外していると思うが。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+0.2 ( +3.6 )
中央値:0.0 ( +0.1 )

・・・+3.6が+0.2とはどどーんと下がったのですが、そうは言ってもまだ上昇ですかそうですか。何か不思議な結果ですな。

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる 3.0 ( 4.0 )
2 少し上がる 30.8 ( 41.9 )
3 ほとんど変わらない 46.2 ( 42.4 )
4 少し下がる 17.3 ( 10.3 )
5 かなり下がる 1.1 ( 0.4 )

さすがに下がる系の答えが増えてますので、これは「デフレ懸念の払拭」を意識すべきなのではないかと存じます(^^)。

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+1.7 ( +3.1 )
中央値:0.0 ( +0.1 )

・・・・うーむ、まだ上昇なのかという感じですが、まーこういう結果になっているという事は、足元の物価下落が継続すると世間の期待インフレ率が低下してきていると言う事でもありますので、従いまして緩和政策を継続しないといけませんねという話になる筈なのでございますが、この結果に関する話とかが決定会合議事要旨でどの位ネタとして扱われるのかはそれこそ議事要旨を後日見るしかないですな。一応参考にはしてるみたいな感じではありますが。


○エライ人の会見ら少々

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aXtVz5.Zid.g
財務相:人民元の議論出れば日本としても主張−2月のG7(Update1)

最初に見てた時のヘッドラインは人民元云々じゃ無かった気がするんですがまあいいか。

『財務相就任直後に「もう少し円安に進めばよい」と発言し、物議を醸した為替政策については「基本的には市場が決めることで、国際的にも合意されている。よほどの急激な変化がない限りは、そういう原則にのっとっていく」と慎重な言い回しに終始した。』

何だつまらん。どうも最初に深く考えずにホイホイ発言して、後でいきなりチキンになるというのは鳩山内閣の仕様(亀井金融担当相を除く^^)なのでしょうか。結局のところ、そのあたりを戦略的に発言してるなら例の円安発言も大したもんなのであります(そもそもデフレ退治に一番即効性があるのは為替操作でしょ)けれども、結局毎度お馴染みのように、単なる深い考えのない発言でしたかと残念無念。


『一方で、金融政策については「日銀法で政府・日銀が連携すると同時に、日銀の独立性を認めていくという2つの原則があることは十分頭に入れておかなければならない」と述べた上で、「政府と日銀の連携はかなりうまくいっている」との認識を示した。』

『政府による緊急経済対策の策定に合わせて日銀が昨年12月1日に発表した新たな資金供給手段の導入を具体例として挙げ、「いろいろな見方はあるが、かなり大きな決定だった。その後の市場の受け止めも効果があったとされている」と高く評価した。』

ふーん。

『さらに、同18日の決定会合では、物価について「ゼロ%以下のマイナス値は許容しない」と表明したことにも触れ、「デフレに関しても日銀としてデフレ脱却を明確に位置付けた。政府と日銀の金融政策の方向性はしっかりと協調が取れている」と重ねて強調。具体的な政策手段は、日銀の権能の中で決めるべきだとの認識を示した。』

というのは良いのですが、結局の所デフレがどうのこうのって話を言うだけ言っても、じゃあ具体的にデフレ脱却の為にどういう政策をするのかという話になると、政府サイドから出てくる経済対策ってそれデフレ脱却って点から見てどうよという感じはしますし、日銀もとりあえずオペ実施はしたけど、後はやる気元気井脇宣言程度の話ですが、はてさてまさかお遍路先生は言っただけでデフレが脱却できるとお思いで??

ということで、為替のやらかし発言が結局単なるやらかしであった事が判明した事でもありますし、為替ルートで強力にどうこうという事がやりにくくなったように見える次第ですので、米国再失速で金利低下とかになり出すとまたぞろ円高とかいう話になって来て、政府サイドから日銀に何かやれ攻撃が飛び出すに100カイワレ。


http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aFFQA6Ojm3Oo
野田財務副大臣:外為特会の積み立ての在り方議論ある(Update1)

ヘッドライン見た時に何の話かよく判らなかったのですが(つーか一見して何を言いたいのか判らんヘッドラインと打つなよ情報ベンダーはと小一時間)、どうも外為特会の準備金を積み立てを減らすとかいう話のようで。

『1月14日(ブルームバーグ):野田佳彦財務副大臣は14日夕の定例会見で、外国為替資金特別会計(外為特会)の積立金の見直しについて「積立金は必要だが、どういう積み立ての在り方が妥当かとの議論はあり得る」と述べ、現在、保有外貨資産の100分の30が目安となっている積立金の水準を見直す考えを示唆した。』

準備金に関する見なおしたから為替市場に急に何かが起きる訳では無い(と思う)のですけれども、繰り入れが増える分だけFBの発行が増えるとかいう程度の話になるんですか(トレジャリーのクーポンで繰り入れする訳には行きませんからね)ねえというのがテクニカルな話ですけれども、それよりも円高に振れて含み益が飛んでいる最中に準備金の水準を見直すとは中々ファンタスティックな論点で大変に素敵なお話ではございますなという方が気になりますな。


http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aWl.MYG0LIR4
亀井金融相:金融庁職員を東証など証券業界へ大量出向 (Update2)

『1月14日(ブルームバーグ):亀井静香金融・郵政担当相は14日午後、視察に訪れた東京証券取引所内で記者団に対し、金融庁職員を東証など証券業界へ大量に出向させる考えを明らかにした。多様化、複雑化する市場取引の実態を金融庁職員が実際に現場で仕事をしながら把握することで、今後の金融行政に生かす狙いだ。』

いやあのそういう事に対応するために金融庁って民間からの採用を積極的に実施していると思うのでありまして、そういう屋上屋を架すというか二重投資みたいなことをする必要あんのかいなと。

#それ以前の問題として「複雑化する市場取引の実態」って取引所にいてもよー判らん(証券会社に出向するなら話は別だが)ような気がするんですが・・・・

まあそれよりも銀行に出向させて分類債権の債務者の実態がどういうものかとか、貸出増やせと言ってもそうそうお客様からお預かりした貴重な預金を貸し出す適切な先が無いんですよという実態をですなあ・・・・いやまあいいです。


○市場雑談を書こうと思ったけど時間が押して来たのでメモ

まあその前の部分もメモですが、まあ相変わらず金余りですなあというメモ。

何かよー知らんですけど、昨日はTBの期内償還とかの引値がちと強めに。まあ実態ベースにおいついただけとも言えますが、ここへきて引値(日本相互証券の引値は主要参加者の投票制度)が強くなっているというのは、よーするにTBに買いがやってきてるので、まーしょーがねっかという感じで強くしてきたのかなあと勝手に妄想。CPのレートとかも相変わらず低いですし、まあ1年以内という所で言えば一般債の銘柄間格差も(BBB以下になるといきなり段差が付きますが)絶賛圧縮中なのは継続という感じですし、まあ潰さないといけない短期資金が湧いて来たんでしょうかねえと、昨日の続きみたいですけれども。

ということで、ここの資金がどういうルートでやってきたのかがよー判らんのですけれども、最近ちと短期の方には金が余ってる感があって、その資金が短期に留まるのか長い所に行くのかどうなのかなあとか思っておる次第です。

#ただの感想でスイマセン










2010/01/14

お題「市場雑感と虫干しネタとで少々」

某掲示板にあった「お縄一郎」というのがツボに入りました(^^)。

○足元にお金がだいぶ溜まっているようで

昨日は毎度お馴染みの3か月TB入札。前回は年初1発目という事もあったのかまあ普通の入札になって平均落札と最低落札が0.01銭(利回りで0.1233/0.1237)の差だったのですが、今回は平均落札が0.1223%と前回よりもちゃっかり強くなってテールと0.05銭離れたと思ったら不明玉2兆近くだわショートカバーだか何だか知らんが0.12%までしっかり買われるわということで、まあ投資家のニーズが割と確りありましたねという感じです。0.125%じゃないと買わないとかセコイ事を言い続けて結局上を踏むことなる欲張りさんプギャーって感じですな。まあ、特に資金の所ってゆーのは普段は細かい事をうだうだ言っていても、「潰さないといけないキャッシュ」というのが出てくるといきなりそれを踏み潰してしまうの巻になりますし、そもそも短期資金取引って投資対象のターンオーバーも短いですから(一番短いのは翌日物ですからね!)長期債の長期投資みたいにじっくりと利回り上昇チャンスを待って押し目買いなどという技が使えない事もあるので、中々その辺の間合いの取り方はビミョーだったりしますな。

で、その最近の流れなんですが、どうも年初になってCPレートが微妙に下がって、既にたいがいに低いTB利回りよりも更に低かったりする現象は継続するわ、銘柄間の格差が益々無くなってきて「とりあえずa-1格付けのCP」と名前が付いていれば同じような利回りになっちゃう(というのは典型的な市場機能喪失状態ですが)とか、まあ何かキャッシュを潰したい人がそこかしこにいるんだろうなあという感じはしておりましたが、昨日のTB入札でその辺りがしっかりと出てきましたなという感じですかね。もうちょっと引っ張るかと思ったけどあっさりキャッシュ潰しパワー炸裂しちゃいましたな。

んでもって、昨日はスポットが15日で今回は積み最終だけど積み初日にも掛かる週末というGCの主要な資金出し手が資金を出し渋る言い訳がある日だったのですが、朝いちのスポネ国債買現先オペをしらっと連日の減額となりやがりまして、足切りレートも0.11%になったもんですから、GCレート上がる流れになり「また微妙にGCを下げ切らないオペを」と思っていましたが、それでも結局はGCは普通に0.11%とかになったようで、さすがに当座預金残高を15兆円ペースで積み上げてきた効果が徐々に効いてきたのかなあとか思うのでありますが、次の積み期間に来週から(正確には今週土曜日から)入りますので、そこでのGC動向とかも勝手に注目しております。

まあ何となくのイメージですが、当座預金残高は積み上げるものの、オペのタームは短いのが多い(昨日の共通担保も14日スタートとか微妙に要らないスタートで25日足という比較的使いやすいのを打ってみたり(20日エンドはちょっと)気を使ってるんだか使ってないんだか良く判らん、というか多分あまり気を使って無さそうなオペが続くので)ので、まあショートファンディング状態は継続するという感じのようですな。ただまあオペのテクニックみたいな話になっちゃうような気がしますが、実際問題として少し長めのタームの共通担保を安定的に打った方が「少ないオペでもレートが安定しやすくなる」とは思う(つまりスポネの買現先を今みたいに出し入れしなくても良くなる)のですが、短期村だけじゃなくて市場一般向けのアピールという点を考えた場合には、当座預金残高の数値自体をある程度積み上げた方が判りやすく(GCレートがどうしたとかって5bpでもぶれれば別ですが、長期債の世界の人でもそんなに細かくは気にしないっしょ)なるので、そーゆー意味では「当座預金残高を積みつつオペを実施」という事を優先するとなると、どうしてもショートファンディングちっくなオペになっちゃうのかも知れませんね。

#またマニア話になってしまったよorz


○FRB最高益関連続き

昨日FRBが最高益でどうのこうのという書き物をしている時に書き忘れたのですが、そのニュースを報道してた某経済ニュース専門番組様に出ていたコメンテーターズ(なので当然市場の関係者ね)が「金融危機対策が効果を発揮したという証拠ですね」とか「??????」なコメントをしていて悪態を書こうと思ったのですが、書き忘れた(別の書き方したけど)ので念の為。

えーっとですな、FRBって別に購入した債券を時価評価している訳ではない(というか主要国の中央銀行は別に金融政策でトレーディングをしている訳ではない(ジャファール総裁のマレーシア中銀とか古き悪事例はありゃ特殊事案ね^^)ので、今般の最高益っていうのは「安い所で買ったから買ったものが儲かった」というような種類の話ではなく、単に実質ゼロ金利でファンディングした金で高利物の証券を買ったからキャリーで収益が出ただけの話ですから。いやまあBOEみたいに買ったものを本当に売り飛ばして儲かったというのなら本当の実現益ですからそれはそれで別問題なのですけどね。

いやまあ、昨日は本職と思われる方がそんな説明をどこぞの専門番組でコメントしてたのがちょっと何だかなあという感じだったので敢えてツッコミなのでありました(^^)。


○1999年4月9日の金融政策決定会合議事録ネタリターンズ

過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html

今回は速水総裁の発言から。発言は議事録本文75ページからなのですが、まさに先般の「中長期的な物価安定の理解の明確化」に繋がる論点についてとか、財政ファイナンス問題に関してとかの話をしていた部分がありましたので、発言の最後の方を先に引用します。単に時間の都合で今日はちょっとだけ引用ですというのもあるのですが(汗)。

本文77ページからです。

『一方、デフレ懸念があるならば、日本銀行は一段の緩和を行わないのかという論点についても、そもそも一段の金融緩和の余地が残されているのかという本質的な問題に関わってくる。つまり、金利の引き下げ余地がほとんどなくても、何か量的なターゲットを持つようになれば、本当に追加的な金融緩和の余地を作り出すことができるのか、その場合、際限のない財政赤字のマネタイゼーションに繋がるリスクはないのか、といった点である。』

暫定的にとか言っておっぱじめた事が延々と続くのが日本の仕様でもありますので、ここの論点ってやはりなおざりにしない方が良いと思うのであったりします。

『そして、この財政赤字のマネタイゼーションの問題を物価安定の観点から理解しようとすると、目先のデフレ懸念を払拭するためには、将来のインフレリスクをためこんでいくリスクがある。そうしたリスクを内包する政策であっても、次々に行なっていって良いのかという厄介な論点をはらんでいる。』

ふむふむ。

『金融政策は打ち尽くしたというイメージを与えないためにも、量的なターゲットを設けるべきではないかという考え方もあるかもしれない。しかし、私はやれることとやれないこと、あるいはやってはいけないことを整理したうえで、仮に現時点で対外的に分かりやすいメッセージをより明確に伝えるべきであるのであれば、そのメッセージは我々が経済情勢をどう判断しているかに関する詳しい説明とともに、デフレ懸念の払拭に向けて日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置くものであると考えている。そうすることが、わが国全体の経済政策を考えるうえで、地に足のついた議論を促すことに資するのではないか。』

経済情勢をどう判断しているかに関する説明とデフレ懸念の払拭という話のセットというのはまさに「展望レポート」と「中長期的な物価安定の理解」のセットと同じ話でありますな。

で、そこまでは良いのですが、「日本銀行としてやるべきことは全て行っている、あるいはほとんど行っていることに重点を置く」という結果として、「日銀は引き締めバイアス」という認識が世間一般に広がってしまうのもこれまた困ったちゃんな所で、金利市場の人達だけが理解すれば金融政策そのもの問題無いという話かというと、期待に働きかけるとかいう論点を考えるとこれまた不十分じゃないのという気もするのであります。難しい所ではありますけどね。

ところで、この時期っていうのは「デフレ懸念の払拭に向けて」という言い方で金融緩和政策を継続していくという話でしたが、現在はデフレ懸念どころかデフレな訳でございまして(−−;)誠に遺憾の極みであると存じますという所でしょう。






2010/01/13

お題「相場が手詰まりなので雑談」

まあいつも雑談なのですがね(−−)

○またまたバーゼルUおよび雑談

エライ人がBISに集合してこんなのが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/data/bis1001a.pdf

バーゼル委員会の親分として総裁・長官グループというのがあって、その人達がリリース出したのの日本語仮訳が上記URLということでございますな。で、最後の部分にスケジュール感が出ています。上記PDFファイルの3ページ目ざます。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、本年中に、これらの各項目に関する具体的な提案内容を検討する予定である。』

ほほう。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、本年末に資本の最低水準及び最低水準を上回るバッファーの最終的な水準調整を行う前に、銀行セクター及びより広範な経済双方への影響を含んだ、改革案に係る広範な市中協議及び包括的な評価についてのバーゼル委のアプローチを承認した。中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、新しい国際基準の目的は、銀行セクターの安定性と持続可能な信用供与の増加のより良いバランスを達成することにあるべきであることを強調した。トリシェ総裁は、「総裁・長官グループは、改革案の最終決定及び水準調整の双方を含む局面において、バーゼル委による作業を強力に監視していく」と述べた。』

項目別の話はその前にうだうだと書いているのですが、ゴリゴリと実施されると銀行業務なんぞやってられっか状態になるような気がせんでもない。

『2012 年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に実施に移せるようにするため、完全に水準調整された一連の基準は2010 年末までに策定される。これには、新基準への円滑な移行を確保するため、適切な段階的実施に向けた措置及びグランドファザリング(既存の取扱いを一定期間認める措置)を十分に長期に亘り設定することが含まれる。』

ということで、2012年でゴリゴリ実施という話では無さそうですが、いつぞやにどこぞの新聞が大々的に記事にした「10年延期」というような「租借期限99年」を彷彿させるようなお話にはなりそうも無く、まあ銀行さんも大変ですなという事のような希ガス。

で、最初の部分ですけれども。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、国際的な自己資本及び流動性に係る基準の水準及び質を強化するためのミクロ・プルーデンス(ミクロ健全性)の視点からの改革とともに、プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)やシステミック・リスクへの対応としてのマクロ・プルーデンス(マクロ健全性)の視点の導入の双方にバーゼル委が焦点を当てていることを歓迎した。また、中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、ガイダンスを示し、以下の鍵となる分野における進展を図ることの重要性に言及した。』

ということで、各分野についての言及があるのですけれども、そこを見ているとマクロプルーデンスの視点の導入とは書いてありますが、まあその部分っていうのは一律的な規制ではどうにもならん所があるのではいかと思料。即ち、信用格付けを反映した自己資本規制の概念によって「格付けが高いけれども利回りが高い魔法の証券化商品」がバカ売れした(まあそれだけの理由ではないですけど)ように、規制ができるとその規制を微妙にスルーして別のバブルをでっちあげるのが強欲金融資本主義および最先端の金融工学の仕様だとあたくしは思っておりますので、中々この規制だけでどうこうというよりは、規制内容の不断の見直しや、各国の金融当局による適時かつ包括的な協力が必要って話になるんでしょうかねえ、と微妙にエラソーな書き方ですな(汗)。

でまあ個別の話ですが、全部引用しても良いのですが一部だけで勘弁。

『カウンターシクリカル(景気連動抑制的)な資本バッファーの枠組みの導入: こうした枠組みは、以下の相互に補完し合う2つの鍵となる要素を含み得る。一つ目の要素は、個別の銀行及び銀行セクター全体におけるストレス期に使用可能な適切なバッファーの構築の促進を意図している。これは、過度な配当支払、自社株購入、報酬支払の制限を含む資本維持措置の組み合わせを通じて達成されるであろう。二つ目の要素は、一つまたはそれ以上の信用変数に連動するカウンターシクリカルな資本バッファーを通じて、過度な信用拡大期から銀行セクターを守るというより広範なマクロ健全性上の目的を達成するであろう。』

ここだけではないのですが、書いてる事が寿限無寿限無みたいで(^^;

資本規制の中にプロシクリカリティーを抑制するような要素を打ちこむという話で、その中にどさくさに紛れて配当規制や報酬制限なども設けられるという話のようで、信用バブルの再発を防止したいのは判るのですが、こうなって来るとまたぞろ銀行業の看板を下ろす投資銀行とかが出てくるのではないかという悪感も。その悪寒は最後の所にある流動性規制の方で益々漂ってくるのですが。

『流動性: 定量的影響度調査を通じて集められた情報に基づき、バーゼル委は、30日間の流動性カバレッジ比率とより長期的な構造に関する流動性比率の双方を含む、国際的な流動性に係る最低基準の詳細を具体化すべきである。』

流動性規制に関しては、ストックビジネスとしての銀行業という点では導入するという話はよーく判るのですが、フローとかブローカレッジビジネスやっている所に銀行並みの流動性規制を掛けられるとこれまたエライコッチャになりませんかねえという感じもするので、そうなって来ると益々GSみたいな所は銀行業の看板を下ろすんじゃないかなあとふと思うのでありました、よー知らんが。


話は横になりますが、金融機関の報酬制限がどうしたこうしたという話で英国で打ちこまれた施策に関して金融村の評判はあまり宜しく無いと存じますが、「金融システムが壊れると経済に悪影響だからと言う事なので税金で救済したのに、ちょっと良くなったからって何で高額報酬という話になるんだ」という一般ピープル的な理屈はあたしゃ共感する所が多うございましてですな、つまり決済システムなどのインフラ部門と、ハイレバレッジでどうのこうのというような投資銀行部門が同じ所にいるのが話をややこしくしている面は多々あるのではないかと思う所でもあります。じゃあナローバンキングで食っていけるのかという話になると、それなりに金利水準が高く(高いと言うのは5%だ6%だとゆー世界ね)ないとナローバンキングで食っていくのは難しいように思われる(何となく経験則とイメージだけの話ですが)ので、これまた難しい話ではあるのですが、その辺りを分割管理するという訳にはいかないもんなのでしょうかねえと思うあたくしでありまする。

ところで、また邦銀が普通株増資ですかそうですかというのはこの辺。

『コンティンジェント・キャピタル(条件付資本): バーゼル委は、コンティンジェント・キャピタル及び転換可能資本商品が、規制資本の枠組みにおいて果たし得る役割について検討を行っている。これには、損失吸収力を確保するためのこれら商品のTier1資本、Tier2 資本のいずれかまたは双方への算入基準や、より一般的に最低規制資本及びバッファーとしてのこれらの資本の役割の検討が含まれる。』

まあ資本の質の問題ってえ話は前々から出ていますが、これもどういう扱いになるのかで条件付き資本調達がそこそこある邦銀には影響するんでしょうな。まあその前にこの部分の不確実さで影響されたくないという発想でTier1参入確定の普通株増資をしたくなるという流れなんでしょうけれども・・・・


ということで、まあ雑談でございました。なお雑談ですけれども・・・・


○とりあえず材料一段落のようで

米国様の雇用統計が弱いんだか強いんだかよく判らん内容(人のレポート見ると書いてる人によって評価が微妙に違う)で、米国の金利上昇っぽい動きが一段落。日本を見ますと菅直人先生のオモシロ発言でちょっと盛り上がったのですが、週末の内閣支持率調査を見るとこれがちゃっかり横ばいとなりまして、とりあえず政権がおかしくなってどうのこうのというネタも一段落ちゅう感じ。

今月は決定会合もFOMCも月末週に実施されるので金融政策ネタでどうのこうのというのにも時間が少々ありますし、とりあえず何か一通りの目先的なネタが片付いてしまいましたので、まあ様子見地蔵をしている言い訳も減りましたなあ(ニヤニヤ)という感は致しますが、何せまだ1月でございますので時間がある(これが2月末とか3月とかだと素敵な事になるのですが)つー所なんでしょうかね、よー知らんが。

昨日は昨日で前場何かよーわからんが先物がホイホイと上昇して、「???」と思ってたら後場になったらホイホイと下がって結局1毛強になってましたが、結局その間何があったのかよー判らん(先物の出来高は月曜にしてはあったような気がするが)という謎展開でもございましたが、まあガイジンさんだか何だか知りませんけれども、先物とかスワップとか振り回している人も一旦目先的に戻す人とか淡々とポジション仕込んでいる人とかいるんですかねえという所っすかね。

とりあえず次の相場ネタが出るまでは淡々と平準買いと入札をこなしながらという感じなんでしょうかね。まあ先週の様子見大会の中での下げが動きましたなあって感じでしたので益々膠着っぽい印象になっているのかも知れませんけどね。


○ほほう最高益とな

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13303220100112
米FRBの09年純利益・国庫納付額が過去最高、債券購入や融資拡大で

FRBのリリースは多分この辺。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20100112a.htm

『For immediate release

The Federal Reserve Board on Tuesday announced preliminary unaudited results indicating that the Reserve Banks provided for payments of approximately $46.1 billion of their estimated 2009 net income of $52.1 billion to the U.S. Treasury. This represents a $14.4 billion increase over the 2008 results ($31.7 billion of $35.5 billion of net income). The increase was primarily due to increased earnings on securities holdings during 2009.』

いやああれだけイールドカーブが立ってると期間収益もでかいですわなとイールドカーブが寝っ放しで長短スプレッドが米国様から比較したら鼻糞のようなもんという日本から見ると裏山歯科としか申し上げようがございませんですな。

というのは良いのですが、そんだけ期間収益が出ているということは、そんだけ長い物を買っているという素敵な状況でもある訳でして、出口政策とか言って金利が上がる話になって来ると一転してビューテホーな状態になるのでしょうなあと今から楽しみに(何と言う野次馬状態)するあたくしがここにいるのでありました。

と、全部雑談でしたな、どうもすいませんm(__)m











2010/01/12

お題「菅直人大先生とか12月FOMCとかで雑談」

第2週目にしてすっかりお疲れモード。

○これじゃドリフのコント状態ですな(菅直人先生関連)

菅財務大臣堂々の為替言及に関連して金曜は鳩山さんと何故か仙石さんが火消しコメントをしておりましたのはご案内の通り。ブルームバーグニュースから引用。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aorP3IaD5AC4
鳩山首相:為替の相場水準に政府が言及すべきでない(Update3)

『1月8日(ブルームバーグ):鳩山由紀夫首相は8日朝、菅直人副総理兼財務相が円ドル相場の水準などに言及したことについて聞かれ、為替の急激な変動は良くないが政府が言及すべきではないとの認識を示した。公邸前で記者団に語った。』

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aeP7gFBC.3jw
仙谷国家戦略相:影響ある立場で言わない方がよい−為替(Update1)

『1月8日(ブルームバーグ):仙谷由人国家戦略相兼行政刷新相は8日午前の閣議後会見で、菅直人副総理兼財務相が前日の会見で円相場の水準に言及したことについて「特に経済財政金融にある種の影響を与えかねないポジションにあればあるほど、あまりレートの高い、安いを言わない方がよいというのが持論だ」と語った。』

何と申しますか揃って火消し発言という感じですが、何か流れがドリフのコントみたいでして、あっちに走って行ったらハリセンで頭はたかれて上からタライが落ちてくるし、反対側に走って行ったら今度は小麦粉が降りかかるみたいな様式美すら感じてしまうのであります。

ということでですな、まあ菅さんは前も円高良くない発言をしていましたし、そもそも「デフレ宣言」の張本人でもありますからして、円高よりは円安の方が良いという話をするのは従来の政策ロジックからしたら特におかしくはない(というか言わない方が不思議な位)のですが(90円台半ばだのもうちょっと円安が良いだの、具体的な水準に言及してサービス発言をしたのはトンマではありましたが・・・・)、翌日になって総理大臣が副総理の発言に火消し作業をして回るというビューテホーな状況というのは、要するに菅財務大臣の発言が特に事前の根回しも下ネゴも無くホイホイと出てきた発言なのではないかと思わせてくれます。

つーかですな、報道のされ方を見てると、「こりゃ米国様辺りから何か言われたんじゃネーノ」くらいの邪推をしたくなってしまう次第でありまして(^^)、菅さんの円安支持それ自体は別に悪いことではない(他の主要国だって最近は自国通貨安の輸出に対する好影響に関して金融政策決定会合の議事要旨とかで言及してる事ですし、別に円安支持をしても良い話、問題はその出し方をスマートにって事でしょ)と思うのですが、まあ全然事前の打ち合わせもへったくれも無かったでござるの巻という所なのでしょう。あっはっは。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=auSIGVev.aQc
財務相:「従来より重い立場の自覚必要」−為替発言で釈明 (Update2)

『1月8日(ブルームバーグ):「従来よりも重い立場にあるという自覚が必要だとあらためて思った」−。菅直人副総理兼財務相は8日午前の閣議後会見で、自らの為替水準に関する発言の影響で前日から円が急落したことについて「経済界にマイナスを与えることになったとは思っていない」と強気の姿勢を示しながらも、為替介入の権限を持つ自らの発言の重さを認めた上で、反省の弁を述べた。』

ということですが、ご案内の通りそんなに反省してなかったりするのでして(^^)。

『菅氏は8日午前の会見で、「為替は基本的に市場が決めること」とした上で、前日の為替発言について、為替相場が「大きく変わってくると、景気にいろいろな影響を与えることが同時に起こり得る。経済界の期待も十分勘案しなければならない立場にあるということで申し上げた」と釈明した。』

『ただ、市場に影響を与えたことへの責任を問われると、「経済界の多くの意向がどうあるかを申し上げた。経済界の皆さんにとっては、何か大きなマイナスを与えることになったとは思っていない」と強調した。』

(;∀;)イイハナシダナー

『一方、菅氏は一般論と前置きした上で、「いざという時には為替に対して何らかの行動をとるということも、財務大臣の権能の中に入っている。そういう権能があるということも自覚しなければならない」と言明。さらに、藤井裕久前財務相が就任当初に円高容認とも受け取れる発言をし、市場に混乱を招いた前例にも触れ、「発言には責任を感じなければならない」と語った。』

(;∀;)イイハナシダナー

・・・ということで、日本総売りにならない程度に円安ということで宜しくお願い致したいと存じますが(^^)、副総理発言を総理が速攻火消しするという素敵な展開を海外投資家はどう見るのでしょうかね(ニヤニヤ)。まあ暫くは菅さんからは楽しい不規則発言が飛び出して楽しませてくれるでしょう。


○12月FOMC議事要旨から少々

12月15日から16日のFOMC議事要旨から少々であります。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20091216.htm

と言いましても、細々と読んだのは後半の委員による議論の部分(前半のスタッフによる経済状況や金融環境の説明部分は流して読むのでありました)ですので、まあ手抜きは手抜きなのですが。

で、これを前回11月FOMC議事要旨と比較するとまあ面白そうなのですが、残念ながらそこまで細かくは見ていない(次回以降もうちょっと細かく見るかもです)のが惜しい(読んで赤ペン入れたそばからホイホイ捨ててたもんで、前回の細かく読んだ紙が手元に無いのだ、汗)のでそこは軽く。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』以下の所なんですけど、まず最初の部分では、景気の回復に関しての全体観は一応トーンが強くなっているような気がします。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants agreed that the incoming data and information received from business contacts suggested that economic growth was strengthening in the fourth quarter, that firms were reducing payrolls at a less rapid pace, and that downside risks to the outlook for economic growth had diminished a bit further. 』(12月)

『In the meeting participants' discussion of the economic situation and outlook, they agreed that the incoming data and information received from business contacts suggested that economic activity was picking up as anticipated, with output continuing to expand in the fourth quarter. 』(11月)

つーことで、回復はより強くなっているという話が最初の全体観にあるのですけれども、回復はしているものの、インフレや雇用に関しては上に振れるような見通しにはなっていないというのが大勢の意見で、生産と雇用の回復が従来の景気回復より遅れるだろうというような話をしてるよいうに見えます。

『Participants expected the economic recovery to continue, but, consistent with experience following previous financial crises, most anticipated that the pickup in output and employment growth would be rather slow relative to past recoveries from deep recessions. A moderate pace of expansion would imply slow improvement in the labor market next year, with unemployment declining only gradually. Participants agreed that underlying inflation currently was subdued and was likely to remain so for some time. 』

ということで、インフレ圧力も抑制されているという話ですが、一部の委員はインフレリスクが向こう2年程度の期間を見た場合に拡大する圧力がある可能性を示したとこの次に書かれていましたです。

で、そのインフレに関する所もこれまた前回と同じ指摘をしているのですが、とりあえず引き続きファイティングポーズだけは見せているという事で引用。

『Most participants anticipated that substantial slack in labor and product markets, along with well-anchored inflation expectations, would keep inflation subdued in the near term, although they had differing views as to the relative importance of those two factors. The decelerations in wages and unit labor costs this year, and the accompanying deceleration in marginal costs, were cited as factors putting downward pressure on inflation.』

『Moreover, anecdotal evidence suggested that most firms had little ability to raise their prices in the current economic environment. Some participants noted, however, that rising prices of oil and other commodities, along with increases in import prices, could boost inflation pressures going forward. Overall, many participants viewed the risks to their inflation outlooks as being roughly balanced.』

というのが全体観でまあリスクはバランスなのですが、これまた毎度説明されているように、雇用環境やら企業の価格政策態度などが足を引っ張って物価の上昇はリスク少ないですねという話。

『Some saw inflation risks as tilted to the downside, reflecting the quite elevated level of economic slack and the possibility that inflation expectations could begin to decline in response to the low level of actual inflation.』

これまた毎度の指摘ですが、需給ギャップが大きい状況が継続した場合に従来のインフレ期待に下向き方向への変化があるのではないかという指摘ですよね。

『But others felt that inflation risks were tilted to the upside, particularly in the medium term, because of the possibility that inflation expectations could rise as a result of the public's concerns about extraordinary monetary policy stimulus and large federal budget deficits.』

ただ、さっきのがsomeでこっちがothersなので、基本的にはFEDの拡大しまくっているバランスシートと米国財政赤字問題がインフレ期待を高める方向へのリスクを考えている人が多いのでしょうかね。まあこれまた11月と同じ表現ですが。

『Moreover, a few participants noted that banks might seek, as the economy improves, to reduce their excess reserves quickly and substantially by purchasing securities or by easing credit standards and expanding their lending. A rapid shift, if not offset by Federal Reserve actions, could give excessive impetus to spending and potentially result in expected and actual inflation higher than would be consistent with price stability.』

ということで、金融緩和政策の行き過ぎによる資産価格や貸出のバブル的な伸びによってインフレが拡大するリスクを一部の委員が指摘というのも今回も載せています。つまり・・・

『To keep inflation expectations anchored, all participants agreed that monetary policy would need to be responsive to any significant improvement or worsening in the economic outlook and that the Federal Reserve would need to continue to clearly communicate its ability and intent to begin withdrawing monetary policy accommodation at the appropriate time and pace.』

というのが毎度の結論なのですけれども、こちとら米国人じゃないからよー判らんのですけれども、金融緩和政策のやり過ぎに関する部分を相変わらず指摘し続けているのは、本当にマインド(物理的にインフレへに影響するというよりはマインド経由で)にこの辺りの話が効いているのか、それとも何か政治的配慮があるのかというのがあたくし的には少々興味がある所でありまする。

後の部分は引用するかもしれないし引用しないかもしれません(^^)。そう突拍子も無く話が変わった部分は見当たらなかったような気がしますが、まあ念の為再度確認してみます。












2010/01/08

お題「就任早々から盛り上がって参りました!/その他少々」

いやあ今週は長かったですなあ。

○さすがは菅直人クオリティ

就任記者会見で早速色々とやって下さるとはさすが菅直人。

会見要旨のような記事

http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK034917520100107
UPDATE2: 財政再建は需要拡大政策が基本、もう少し円安がいい=菅財務相

市場の動きとかの記事

http://jp.reuters.com/article/politicsNews/idJPJAPAN-13244520100107?sp=true
もう少し円安がいい、財政再建は需要拡大政策が基本=菅財務相

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aT1HFJmLidoI
東京外為:円が急落、菅新財務相の発言を受けて午後の上昇幅打ち消す

この発言のヘッドラインが出た所で為替が飛んで(ドル円で瞬間50銭くらい飛んだ)そっちに反応したというのもありますが、最初の所にございます

『菅氏は予算編成の過程について「今、緊縮財政にしていいとは一度も思わなかったし、そのような主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政をとるべきと多くの内閣のメンバーも考えていた」と景気への配慮と説明。』
(ロイター記事最初のURLから)

というのが、ロイター日本語版がヘッドラインで「緊縮財政にしていいとは一度も思わなかった」というようなオシャレ発言として報道したのもありまして、債券先物は下落致しまして、結局東証イブニングセッションでは15時引けの138.91円から15銭下がって138.76円まで下落しやがるという素敵な流れになりました。いやあお洒落お洒落。

いやもうツッコミどころの多い素敵な会見で、これはまた就任早々から早速市場が動いてくれましたので、今後はメディア的にもオイシイ大臣という事になりますから、益々不規則発言が出て来て各市場にノイズを与えてくれそうなお話になって参りました。いやまあ円安になるのはそれはそれで結構な話なのですけれどもね(^^)。


つーことでこの辺から。
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnTK034917520100107

『為替動向については「うかつに答えると、とんでもないことになる」としながら、「経済界からは(1ドル)90円台半ばあたりが貿易の関係で適切との見方が多い」と指摘。』

・・・・・どう見てもうかつに答えています本当にありがとうございました。

まずですな、為替問題というのは基本的に露骨に水準の話をしない方が吉だと思うという所はさておいて、まあ国際政治的に色々と微妙な問題にあたりまして、どう見ても米国や欧州の通貨当局と握りが出来ていない中で堂々この露骨にも程がある為替介入発言をしますと、今後国際金融問題とかの話になった時に(ただでなくさえ金融担当大臣があの人だというのに)日本がハブられてしまう惧れが益々高くなるのでありますが、時あたかも新たな金融市場やら金融機関経営に関する管理監督態勢を構築しようというような話を国際的に行っている訳でありまして、そーゆー時にドシロートの横紙破りが代表となりますと、そっちでも日本が相手にされない中勝手に欧米の都合のよいルールがまたしても構築されてしまうでござるの巻になってしまうんじゃねえのかね。とそっちの方がとっても懸念されるあたくしは心配のし過ぎですかそうですか。

あとね、水準が90円台半ばあたりって随分としょぼい水準で、どうせ言うなら120円位じゃねえの(その数字に特に根拠は無いがこの前の安値水準をイメージ)と思いますが、どっちにしても具体的水準を言うと市場がそれこそアタックして来るだけですので、まあ数字は言わない方がとは思いますけど。


『菅氏は予算編成の過程について「今、緊縮財政にしていいとは一度も思わなかったし、そのような主張はしてこなかった。ある程度、景気刺激的な財政をとるべきと多くの内閣のメンバーも考えていた」と景気への配慮と説明。』

この発言が前後を切り取られて「緊縮財政は良くない」という発言にされている(発言の趣旨は一般的な緊縮財政に関する話では無くて現在の景気状況下における緊縮財政はどうかという話と思われるのでそう無茶な話ではないが)のが、まあこの手の発言をすると切り取られて市場が反応するマーケットクオリティに対する無理解(あの「マーケットアイミーティング」だか何だか知らんが、謎のヒアリング大会は何だったんだと小一時間)な所ですし、まあ財務省の中の人がご説明する間もなくやりましたなあという感じですな。

でもって、まあそう無茶な発言では無いとは言いましても、藤井財務大臣の時には(実態としては恒久財源に使えないものを無理無理繰りまわしているので2011年度予算になったら話がハチャメチャになりそうですがそれはともかく)一応何とか新規財源債44兆円という事で何となく財政規律っぽい流れと債券市場が一応理解して動いておった次第ですが、まあ早速こう来ましたかという感じですな。

いやまあ今申し上げたように、どうせ2011年度予算編成になったら話はエライコッチャになるというのは市場の中の人たちも認識していても、まあ実際問題としてそれが具体化するのは今年の年末ですし、実際に国債が出てくるのは更に先の話だという事を勘案しますと、目先の相場的にそこまで気にしてたら収益機会を逸する(何も買わないというのはそれだけ利息負けしますからね^^)し、もしかしたら参議院選挙が終わって強力政権になったら財政健全化してくれるかもしれないしとか、まあそんなこんなの見方がありますが、こーゆーのが出てしまうと、その財政云々の話が少し前倒しになって来る惧れがございますなっちゅうことで。

あと、まあシナリオドリブンでポジションを仕掛けるストーリーとして今まさに使いやすいネタは「主要国の財政破綻シナリオ」というのが最も描きやすい所にわざわざネタ投下というのが中々お洒落な所であります。いやまあそれで円安が進行してデフレ脱却するなら長期金利上昇しても無問題(短期的にはそうなのですが、長期的に見た場合にそれは日本売りになって結局日本人が誰も得しないような気がするという話はありますけどね)という議論はあるかもしれませんけどね(^^)。

でもまあ市場が暴れると直ぐに色々な発言が飛び出す現政権クオリティからすると、「財政懸念で長期金利が上昇!」とか言われると急に発言が変わって「財政規律が必要ないと言った事は無い」とか言い出すに100万カイワレ。


『景気の先行きには依然として不透明感が広がっているが、「金融政策との連動を含め、景気の二番底を回避したい」と日銀の金融政策への期待感も表明した。』

えーっと、確か武藤副総裁の総裁就任に反対した時の理由は「財金分離」じゃなかったでしたっけ????????????

しかし金融政策との連動ってまたてめえは何もしないで日銀にクレクレ攻撃ですかってえ所で、とんだ抱きつき心中ヤローですなという所でございます。いやまあこれでどどーんと単独介入でもするんだったらそれはそれでオモロイですけど、何の握りもない中で為替市場の水準発言しちゃったから、逆に介入をする為のハードルが上がってしまったような気がする。


とまあそういうことで、早速不規則発言で楽しませてくれました菅直人大先生でございますが、メディア的にオイシイ財務大臣登場ということで、益々発言がクローズアップされて相場的には楽しませてくれる(無用な撹乱要因とも言うが)に100お遍路でございます。

#あの先生の表情から出る微妙な幸せオーラを見ると故ノムたんを思い出すのは私だけ?


○その他少々

・BOEは据え置き
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/001.htm

『The Committee expects the announced programme to take another month to complete. The scale of the programme will be kept under review.』

んまあBOEのトップページにありますように、

Inflation Report Nov '09 Next due: 10 Feb '10

ということで、次回のインフレーションレポートが出て、今回の資産買入プログラムが終了する2月会合で延長決定という話でしょうけれども、12月のMPC議事要旨を見ますとまあ普通に延長するでしょうし、最近量的緩和の結果が微妙にマネタリー関連の数字に出ていないという議論もあるので増額とかしてもあまり違和感がないような気がするのは傍観者モードだからなのですけどね。(次回のMPCは2月4日)

(1月8日の夜追記:何かベンダー見たら量的緩和の買取なんちゃらは2月でオシマイみたいな意見が多いのね。なんかあたくしがほかのプログラムと勘違いしているような気もしますが、量的緩和の枠組み自体がこのタイミングでなくなるのかなあって素朴に思うのですが・・・出口は早い気が)


・これはこれは

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/fsc1001a.htm
ワークショップ「VaRの活用と留意点」を開催

『本ワークショップは、2007年以降の市場環境の急変や金融危機の経験を踏まえ、VaRの活用方法とその留意点を改めて議論し、リスク指標としてのVaRの利用可能性について、金融機関のリスク管理の技術的な側面から、経営上の活用の側面に至るまで、幅広く理解を深めることを目的としたものです。第1回は、午前の部に「市場急変時におけるVaRの活用」、午後の部に「VaRとストレステスト」を、第2回は「『定常性の仮定』の緩和とその活用」をテーマとしました。なお、第3回は「リスクと資本の管理」をテーマとする予定です。』

ということで、パワーポイントの香りが漂うプレゼン資料へのリンクが上記URL先にありますので、何となく雰囲気は分からんでもないという感じでございまする。まあグレートモデレーションだか何だかという中で、リスク管理の細かい計算モデルのようなものは恐ろしく精緻化されていきまして、そういう話にどうもついて行けない現場のトレーディング職人叩き上げで数学と聞くと尻に帆掛けて逃げ出すあたくしのようなアホウとしては、そんな細かい所を精緻化するよりストレステストの概念だよと思っておりましたので、まあ何となく嬉しいような嬉しくないようなお話ではあります。

そういやこの前どこかの掲示板かブログかすっかり忘れましたが、「年がら年じゅう「100年に1度の危機」とか言ってる金融屋ってどこのボジョレーヌーボーだよ」とかいう(正確な記述は忘れた^^)のがあって、妙にツボにはまったのを思い出すのでありました(^^)。

ま、だいたい企業が飛ぶような損失が出るのって、精緻なモデルで行う管理の外側にある斜め上の事態(普通は過大なポジションですよねえ)でありまして、そういう鼻が効くのが現場叩き上げ職人クオリティだとは思ってるのですけれども、多分それは自分勝手な思い込みなんでしょうな(−−;)。














2010/01/07


お題「各種小ネタ雑談で」

ううう、まだ木曜日ですよおおおおorz・・・と疲れ気味なので今日は雑談で勘弁。

○菅直人さんですかそうですか

藤井財務大臣辞任で後任が菅さん。というのが出たのが昨日の夜7時回っていたので市場がどう反応するのか今日にならないと正直よー判らんのですが、債券の売り材料なのか買い材料なのかとゆー話に一応頭の整理をしておくと・・・・

国家戦略担当相としての動きと言えば、一番アレだったのは「対策を何も打たないデフレ宣言」というお洒落な行為の印象があたくし的には強うございまして、まあどう見ても経済オンチです本当にありがとうございましたという感じでしょう。ということはこれがまたコインの表裏みたいな話ですが、経済オンチなので財務省ベースの動きを取ってくれるのではないかという可能性もありますし、逆に国家戦略相やってる時にも変てこりんな「市場の声を聞く」とか言ってどう見てもやってみただけで全然聞いた意味ねーだろというような動きをしてた位ですので、独自色みたいな物を出そうとしてカオスになる可能性もありますしと、まあ出てみないと分からんですな。

それからまあ財政健全化問題とか、為替市場とかの問題を考えた場合には、債券市場的に藤井さんよりも金利低下しやすい人は居なかったので、そっち的には(わざわざ売るかは兎も角)買い材料一つ減りましたっすかねえ位。問題の財政健全化云々ですけれども、菅さんは財政健全化への思い入れはなさそう(というか何も考えてなさそう)なので、あとはこれまた菅さんが(小沢さんあたりに対する対抗意識から)どういう動きをしてくるのかがこれまた読みにくいですかねえという所だと。

まあ菅さんは経済閣僚というよりは政局の人だと思われますので、どう出てくるのかは正直よーわからんですが、今の内閣が大物閣僚揃いなので、予算を総括する部門の大臣が軽量級だとキツかったと思いますので、その点では重量級大臣で宜しかったのではないでしょうかね。よー知らんが。

あとですな、「菅さんに安定感」と言われますと、まあ確かに大物だから安定感あるんでしょうけれども、未納3兄弟に示されるように、どうも「行動力があって良い動き(薬害エイズ問題とか)もするのですが、オッチョコチョイで台無しにする」のが仕様のような気がしますけどどうっすかね(^^)。



○購入長期国債がちょっと長くなってますな

日銀購入の中長期国債12月の購入実績
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei0912.htm

12月は償還があるので、前月対比の購入増加額がいつもの数字と合わないのですけれども、まあ似たようなもんということで。

えーっとですな、あたくしが例によって手元のエクセルでヘコヘコ集計したところ、前月比で1兆5000億円ほど増えている中で残存2年以内の銘柄の増加額が5300億円程度と、結構長い所が入っている感じです。

まあ先月はご案内のとおり、月初に臨時金融政策決定会合が実施されて債券市場はビックリ高値を付けましたが、その後は米国様の株高債券安とか円高修正とかで何となくダラダラと売られる展開となった次第でありますので、金利上昇する中で(国債買入はその日一番売られているゾーンが打ちこまれるという仕様になっているので)比較的長めのゾーンが入りましたという所ではないかと存じます。

あとまあワロタのは1年以内の所でして、今回は増加額3500億円程度と、いつもの6000億円程度から見て少ないのでありますが、これは要するに12月に12月償還ものが2000億円以上打ちこまれたという事でありますので、まあ相変わらずの日銀ゴミ箱利用も続いてますなあという所すし、何かこの辺りを見ておりますと、輪番オペのゾーニングっていうのは物凄い地味な話ですが、効果という意味では大変に結構な施策でしたなあと思うのであります。もしかしたらゾーニングをしないでいたら先月も1年以内の大打ちこみモードで長い所を日銀に投げ込めなかったかも知れませんですな(^^)。

そういや一昨日の債券市場では「期待されていた輪番オペが無かったので下落」という場面がございましたが、一時は連発する超短い所の大打ちこみ攻撃によって輪番あってもああそうですか状態っぽい頃もあったと思いますと、まあ長い所もきっちり入るようになった最近の地合いを反映しているんですかねえなどと思うのでありました。


○GC市場雑談

昨日はGCレポレートが上昇。レギュラー渡しが12日で、短国発行が2発重なった事から、落札して在庫になった分のファンディングを行うニーズがある分GCの売り(資金調達)圧力が高まったんで前日までよりも1bp程上昇したみたいでございます。

元々ここもとの資金供給オペが積み最終の15日を越えない打ち方になっておりますし、まあ金利水準が下がって足元から短期ゾーンのイールドカーブが潰れてしまっているという市場の金利環境もGC市場での必要調達額を増やしてしまう(のは何故かという話をすると長くなる上に微妙にアレなので割愛)とゆー事もあって、短いオペしか実施されないとどうしてもこの手のイベントがあった時にレートに上昇圧力が掛かりやすくなるのは現在のGC市場の仕様という感じになっております。

まあどうもターム物金利誘導っぽい話はしていますけれども、じゃあGCレートをガチガチに押さえ付けるオペレーションをしているのかというと、どうもオペレーションそのものはそこまでの感じもしないですな、というのが最近のオペの動きじゃないっすかねえと思うのでありました。だからどうしたと言われますと困りますけど。


○何となくウダウダと金融政策決定会合議事録ネタが続くのだ(今日は軽く)

ということで、引き続き1999年4月9日に実施された金融政策決定会合の議事要旨からのネタを引っ張るのであります。折角タイピングしたので使わないとMOTTAINAI精神ではないかというツッコミに関してはその通りと申し上げておきましょう(^^)。

・藤原副総裁の論点、構造改革をサポートする為には金融緩和を継続とな

藤原副総裁の発言。議事録本文73ページから。

『現状維持という判断のナイーブな趣旨説明としては、結局、財政政策、金融政策ともに最大限やれることはやってきたということだと思う。世の中のコンセンサスであるこれまでの金融システムの再構築路線をさらに確実に進めていきながら、今後は企業・産業を中心としたサプライサイドの構造調整を推し進めていく方向になってきているのではないか。』

結局構造調整って永遠に言われ続けているような気がしますな(寂)

『しかし、構造調整も具体論になるとなかなか大変である。しかも、調整を進める企業自体のリストラが不可避であることを考えると、マクロ的にはプラスの効果よりもマイナスのデフレ効果が先行することを十分に覚悟していく必要がある。従来のように、年度後半に景気が息切れするだろうという見通しの下に、再び同じような考え方の需要拡大策に安易に依存していくのは余りにも教訓を生かさない展望のない話である。』

何かこれまた永遠に・・・

『信用不安というパニッキーな事態が一応遠退きつつある訳であり、臍を固めて構造改革の問題に取り組むことが重要だと思う。勿論、その際に付随して起きる深刻な雇用問題に万全の対応で臨みながら新規事業活動の環境を整備していくべきである。その上で民間部門から新しいビジネスが育っていくのを待つという基本的スタンスが重要である。』

『その間、金融政策は現在の十分な緩和基調を維持し、経済活動の下支えの役割を引き続き果たしていかなければならないし、それにより構造調整を進める企業部門にとっての資金繰り不安を和らげ、且つ資金調達コストの引き下げにも役立っていく。それが調整過程における痛みを中和する作用を果たすことになろうかと思う。金融政策は現時点でそれ以上の役割を担うことは出来ないのではないかと考える。これまで発揮してきた下支えの効果を今後も持続させていく必要があるという意味で、現状維持を主張したい。』

まあ特にコメントはせずに引用だけしてみました(他の人の意見を紹介しているのに藤原さんのを引用しないのも何ですから)が、金融政策の具体的な論点についての話じゃないのでまあ軽く引用だけでありました。後日速水総裁の発言の引用を致したく存じます。








2010/01/06

お題「引き続き昨日の続きです」

藤井さんの後釜はやはり亀井さんでウルトラ円安召喚をして一気呵成にデフレ脱却でしょう(大嘘)。

#斎藤次郎とか武藤敏郎とか福井俊彦なんてのはどうでしょう(^^;

まあ何はともあれ思ったより早く政局が動きそうですが、そんな流れを全く気にせず昨日の続きで1999年4月9日の金融政策決定会合議事要旨ネタです。

過去の関連駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html

昨日の駄文
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/doramemon1001.html#100105


○植田委員の指摘(その2):政策スタンスに対する強い決意を示すことに関して

つーことで昨日の続きですが、植田委員の発言順からすると次のネタが先にあるのですが、書き物の都合上昨日の続きと書きつつちょっとだけ発言の中の順序で後にある部分を先に引用します。まあモノが議事録というそのものズバリですので、あまり恣意的に順番変えたり割愛するのは良くないと思ってますがどうもすいません。

ということで、議事録本文72ページの真ん中辺りから。

『その点を申し上げた上で、前回お話した点とかなり重なるが、山口副総裁が言われたことと関係があるため、若干敷衍して私の意見を再度申し上げてみたい。すなわち、コールレートの最近の低下幅と比べると、色々な金融資産の価格、特にターム物金利の低下幅等は非常に大きいが、これをどう解釈するかという問題がある。量的緩和等への期待も織り込まれているのではないかという話があったが、別の角度からもある程度説明できるのではないか。』

その点というのは後で引用しますが、中原委員が指摘した実質金利とマネーの量が対応するという議論に対する反論部分です。

『つまり、金融政策のその他金利への影響はコールレートの水準そのものよりは、現在から将来にかけての金融政策のスタンスについてマーケットがいかなるパーセプションを持つかで決まってくると思う。』

ということで、後に時間軸効果と言われる件についての論点です(^^)。

『今回の場合も25bpからゼロに下がった変化幅が重要だったというよりは、ゼロにすることがもたらす何らかの決意やコミットメントをマーケットが感じ取り、それがオーバーナイト市場以外の市場にも波及したと解釈できる。すなわち、かなりの期間に亘りオーバーナイト金利がゼロの水準を続けるという決意をみせているのではないかというところに反応し、それがターム物等、イールドカーブの長目のところに徐々に波及していったプロセスであると解釈できるのではないか。』

10年以上経った今にしてみればこの結論なんでしょうなと思われる次第で。

『その意味では、量的緩和が目指しているものと同様の効果を、そうした決意をマーケットが感じ取ってくれたことにより作り出しているように思われる。量を出すことが重要というよりは、強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝えるというところに力点がある。』

バーナンキ議長の実施した各種買取に関しても、個別にどれがどういう風に効いたのかと言う話になると財務省証券買入のように最初に言ってた狙いに関しては全然効いていないけれども、恐らく「強いコミットメントを通じて金融緩和の強い姿勢をマーケットに伝える」という点での効果は思いっきりあったのではないかと見られる次第でありまして、まさにこの辺りの指摘に通じるものがありますな。

『これに関してテクニカルになるが、注意すべき点はオーバーナイト市場に限れば金利の低下余地はなくなっており、変動余地があるとすれば上向きの方向である。従って、他の手段による緩和を除けば、金融政策の将来像について若干でも不確実性が出てくると、金利を上げる方向でマーケットは受け取る。そうした不確実性が増大すれば、オーバーナイトをゼロに据え置いてもターム物金利は上昇を始める可能性があることになる。勿論、景気が良くなる中でそうした状況が起こるのは自然なことであるが、そうでない時に不確実性が出てくることは極力避けたい。』

これはまあ匙加減が難しい話なのですが、その後の量的緩和解除に向けた動きの中で、いわゆる地均しのようなものが始まった時に植田さんはその動きに対しては批判的な発言をしてまして、まあその辺りあたくしも以前にご紹介したのがこの辺りにございましたです。ご参考までに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenueda.html#ueda051031

『従って、山口副総裁が言われたように、何らかの形でオーバーナイトゼロの政策に強いコミットメントを持っていることをマーケット等に表明することは私も共感を覚える。我々の経済に対する見方は経済月報に示されるのであり、月報の中でデフレリスクがなくなったとか、持続的経済成長のパスに乗り始めたという見方が示されるまでは続けると表明すれば、非常に強いコミットメントになると思う。あるいは、総裁の記者会見等で表明して頂くという手もある。とにかく三木委員が指摘したような副作用も我々としては認識しつつ、オーバーナイトゼロの政策を当面続けることを追加的に表明してみることは賛成である。』

ただまあ残念なことに、と言うべきなのかどうか知りませんが、金融政策に関する話って金融市場でもよく伝わらない面が多々ございまして、先般の日銀の「中長期的な物価安定の理解の明確化」みたいなもんを出さないと話が始まらないという困ったちゃんの事態もござんすが、まあこれらの「見せ方」に関しては日本だけではなく他の主要国でも悩んでいる所でしょうな。


○植田委員の指摘と中原委員の反論・・・なのですけど・・・・

で、先程飛ばした部分なのですけれども、植田さんと中原さんが論争をしていると言うと美しいのですが・・・・・

議事録本文72ページの頭の辺りから引用。

『中原委員の先程の意見の中で一つ賛成できない点がある。それは名目金利がゼロになった後は実質金利とマネーの量が対応するという議論である。』

中原さんの議論は詳しくは以前ご紹介しましたので最初方のリンク先をご参照くださいませ。

『これは極めて難しい議論をされるのであれば別であるが、普通に考えられる範囲では初歩的な誤りである。』

初歩的な誤りキタコレ(・∀・)

『すなわち、期待インフレ率が上昇し、実質金利が低下し、IS曲線を通じて景気がよくなり、それが貨幣需要を押上げ、マネーサプライを増やしていくルートがあるかもしれない。しかし、いわゆるLM曲線に金融政策が直接働きかける場合は、量と金利の関係は量と名目金利の関係である。別に表現すれば、仮に何らかの理由で期待インフレ率が上がったとすると、名目金利は後藤委員も言われたように、場合によっては上昇する可能性があるし、せいぜい低下しないということである。債券等の名目金利が若干上昇する。』

中原委員はどうもマネーを出して実質金利を下げるというような話をしていたみたいなのですが、期待インフレ率が上昇した場合って当然ながら中長期の名目金利には上昇圧力が掛かる訳でありまして、「期待インフレ率を引き上げながら名目金利も下げる」というような虫の良い話というのは机の上での話では出来るのかも知れませんが、中々難しいんじゃねえのかというのはそれこそ先般実施したFRBの長期財務省証券絶賛大購入でも示されているんじゃねえのかと思われますがどうなのでしょうか。とは言え、期待インフレ率が上昇してくれりゃあ名目の金利が上がっても実は問題無い(実質が上がる訳ではない)のだからそれはそれで政策としては十分にアリエールな話だと思いますけど。

で、前半で引用した部分が続くのですが、この「初歩的な誤り」に中原さんが反論した部分が議事録本文74ページからございます。実はその前に藤原副総裁の発言がありまして、これはこれでまたネタになるのですが、そこは飛ばしまして植田VS中原の議論を引用。

『中原委員

植田委員に反論したい。一つは初歩的な誤りだと言われたが、それはそうかもしれないが、私はこの点についても世界的な金融論の先生と色々ディスカスして申し上げており、もし論争されるのであればその方々を紹介する。

植田委員

それはフェアーな議論ではない。中原委員の意見としてここで述べて頂きたい。

中原委員

納得しているから言っている訳である。

植田委員

そうであれば、私の言ったことに反論してもらいたい。

中原委員

IS曲線の影響など色々あるとは思う。ただ、ここで長々と言っても仕方ないが、私は若干違うということである。今回の緩和が何故効いたかといえば、2月12日がサプライズだったということと、2月25日以降に非常なスピードをもってアグレッシブに引き下げたことである。しかし、それは先ほど言われたように、日銀の意思とは離れてどこかでフェード・アウトしてくる危険性がある。私は現在のスタンスを続けていくと、仮に経済の実態が悪くなればそこで効かなくなると思う。』


・・・・最後は明らかに中原さん話を逸らしてフェードアウト状態になっておりまして、まあ中原さんも変に意地張らなくても良いのにという感じでして、別に政策論として中原さんは実質金利がどうのこうのという点に固執する必要は無い訳で、単に「より緩和効果のある政策手段を実施すべきである」という点での主張をすりゃ良かったのではないかと思うのですが。

ただまあその手段について中原さんはマネタリーベースやベースマネーに関する数値の部分に対する拘りが強かったので、話として噛み合わなかったんでしょうなあと思われる次第。この頃の議論って「短期金利の誘導水準がゼロ制約に引っ掛かってしまった後でより緩和効果を出す政策ツールがあるのかないのか、あるとすればどのような物か」という点で盛り上がっていたと見られます。

後知恵で議論を読めば色々と意地の悪いツッコミもできますけれども、まあそれよりは10年以上前にも現在の主要国での金融政策論議に通じる議論が行われていた事や、その内容を読むことができるという事を素直に喜ぶべきなのでしょうな。

#ということで、続きは次にネタの無い時または近日中に(^^)











2010/01/05

お題「久々の虫干しネタで1999年4月9日の決定会合議事録です」

昨年の決定会合議事録シリーズなのは年初ネタなし状態だからだというのは仕様です。何せ前回このネタやったのが昨年8月でございましてですな(大汗)。

以前の決定会合議事録ネタはこちらに。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakugijiroku.html

で、決定会合議事録は日銀サイトのここにリンクがございます(PDF8Mとか平気であるので、当該議事録の直リンは控える)。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm

前回(去年の8月ですいませんが)引用した続きなのですが、この辺りの議論は10年経った現在になって読みますと中々味わいが深いものがあります。というか量的緩和だのマネーのどうのこうのだの、金融市場機能だのという話をまさにこの時もやっていたと思いますと、現在主要国の金融政策でああでもないこうでもないという話をしている議論に通じるものがございます。


○篠塚委員の指摘:ゼロ金利政策による市場の緊張緩和(なのかな?)

上記URLから1999年4月9日の議事録(この回は割とページ数が多く無くて議事録は93ページ立て)を見て頂くとしまして(高速インターネット回線じゃない人はPCが固まるのでご注意)、そちらの69ページから。

なお、こちらの議事録は議事録の紙ベースの物をスキャンしてPDF化した(と思われる)ものですので、引用と申しましてもあたくしが自力でタイプ打ちしたものなので、(一応確認しましたが)誤字脱字などがございましたらご勘弁賜りたく存じます。

では引用開始。

『篠塚委員

私は、これまでGDPのコアを形成している消費、設備投資に資金需要がない時に、資金を大量に供給しても実体経済への効果が不明であるという立場をとってきたが、ここにきて、ゼロ金利に誘導した結果、確かに小康状態にあるとみている。ただ、小康状態にはあるが、かなり不安定な状況であるとも思っている。』

ということで、資金需要が無い時に資金を供給して実体経済に波及するのか(そりゃ無限に出せばどこかで凄い影響が出てきますけれども、それこそ昨日ルワンダ中央銀行総裁日記ネタで紹介した服部正也さんの国会答弁関連じゃないですけど、政策実施において効率というものも考えないとって話でしょうな)という話ですが、公的資金注入とゼロ金利政策の影響について以下のように指摘しています。

『まず第一点は、公的資金7.5兆円が投入された結果についてである。数字で整理して漸く分かったが、3月30日時点で日本銀行から1.2兆円、農中から3.3兆円、外銀等から3兆円と預保に合計で7.5兆円入った。その7.5兆円の公的資金を受け入れた金融機関がどのように動いたのかであるが、3.8兆円とかなり大きい額がコール市場で運用されていた。準備預金や本行オペに流れたところは除くと、その他負債等の返済として投信、地銀等に2.6兆円流れていた。その2.6兆円のうち2兆円がオープン市場に流れ、残りの0.6兆円がまたコール市場に戻るというように、結局7.5兆円の公的資金からコール市場に3.8兆円、負債から0.6兆円と入ってきている。外銀は3兆預保に貸付けたが、外銀はコール市場から1.9兆円取っていた。農中は3.3兆円預保に貸付けたが、その際、コール市場から(空白)兆円取っていた。』(引用者追記:個別行の非公開係数のため、空白で公表されたものと思われます)

と、数字の話が多くて何ですが、公的資金注入と言いましてもじゃあ実際問題としてその間のキャッシュフローベースでの動きはどうだったのかという話でありますな。

『これまで日銀とインターバンクとの間で資金が往復していたところに、預保が入って資金が回るようになった、というイメージが出てきた。問題は、日銀がゼロ金利政策を採った結果、こうした事態が発生したことである。仮に、ゼロ金利でなければ、農中も外銀もこれ程大量には出せなかったであろう。私共は日本銀行が預保の必要資金の半分以上を受け持たなくてはならないと思い、非常にパニックになった時期があった。現在小康状態にあるにしても、預保の借入れ期限が来た時にはどうなるのかという問題が残る。外銀がいつまでもこうした資金運用を繰り返して行くのかどうか非常に不安定な材料である。現時点だけをとれば、これもゼロ金利によってもたらされたということができるが、非常に先行きが不安である。』

篠塚さんはご存じのように(って最近の人は知らんか)ゼロ金利政策に常に否定的な立場をとっていた少数派(というか1名だけでしたが)でしたので、こういう説明になっていますが、この説明をゼロ金利政策の効果としてみた場合、預金保険機構による銀行への資本増強(この時の資本増強って同年3月に行われた大手行への7.5兆円投入ってやつですね)とゼロ金利政策による流動性供与の拡大によってインターバンク市場のストレスを軽減したという議論になると思われる訳でして、後になって言われている「量的緩和によって金融市場の流動性問題を軽減した」という論点や、それこそFRBによる信用緩和政策が「中央銀行が市場の代替となって機能する事によって市場機能毀損による経済への悪影響を防ぐ」という動きとなっている事にも通じていく指摘なんじゃないかと思います。

『昨年9月と今回とで二回の金融緩和措置を実施してきたが、9月の金融緩和と今回のゼロ金利を比べて、銀行収益にどのようなインパクトがあったかを分析してみた。資金調達利回りから運用利回りを引き算してどうなったかという単純なアプローチをしてみると、9月の場合の利鞘は+0.02%と僅かであるが鞘があった。しかし今回の2月22日の週から3月23日までの期間の計算では、調達利回りと運用利回りの差はほとんどゼロであった。従って、両方(9月と2月)合わせれば若干の利鞘はあるが、特に今回のゼロ金利誘導により、銀行収益へのインパクトはかなり厳しい状況になっている。そうした状況の下で公的資金が注入され、来年3月までに貸出残高を総額6.7兆円にする方針である。各銀行は慎重に審査をしながら、融資を伸ばしていかざるを得ない。低金利水準の下での難しさがあり、やはりゼロ金利というのは非常事態であると認識した。』

例によって結論が篠塚さん仕様なのですが、そこを気にしないで読みますと、不良債権処理をするのだから銀行収益へのインパクトがどうなのよという論点。最近はこういう論点に関しては意識的なのか無意識なのかは別として微妙に避ける傾向がありますが、銀行の財務リストラを行う状況下において、銀行収益が何らかの形で出る(米国のようにイールドカーブがスティープして国債の長短スプレッドでも期間収益が出るというのが美しいのだが)かどうかというのは実はバランスシート調整途上の中では重要な話でもあるかと。

『三番目はやはりゼロ金利の結果、ベースマネーは緩やかに上昇してきたし、マネーサプライも徐々に増えてきている。このマネーサプライの緩やかな上昇と名目GDPとのギャップがどういうところに流れていくかについては分からない。ゴルフ会員権や店頭株の上昇に表れたという意味では、あるいは二次バブルのような状況になっているのかもしれない。いずれにしても、ゼロ金利によって実体経済にどのような影響が出てきているのかが非常に不明である。以上、現在は小康状態にあるが、非常に不安定な状況にあると思っている。』

で、2000年初頭にかけてIT関連株式を中心にバブルが絶賛大発生して大崩壊したのはご案内の通りかと存じます。そのITバブル景気にうっかり煽られてゼロ金利解除をしたのはあっちゃーという感じですが(-_-メ)。

ということで、後になって読みますと中々重要な論点がいくつも指摘されているのですなあと思われるのでありました。また、現在の米国や英国、欧州なども実質的には低金利政策でもゼロ金利にベタベタに張り付ける政策をしていないという(というか英国なんぞは0.5%から下げても効果が少ないとか言ってるくらいですし)のも、実は味わいがあるのかも知れません。



○植田委員の指摘(その1):量か金利かという論点

その1と書いている位ですからその2があるのですが、その2は(どうせ今日もネタが無いでしょうから)明日に続くでござるの巻、とネタを引っ張る伏線でどうもすいません。

#というような姑息な事をしていると今日の市場で大ネタが出たりするフラグなのですが

議事録本文71ページから。

『植田委員

私は現状維持ということだけ申し上げようと思っていた。しかし、再び量か金利かという議論が出ており、私はこの点に関しては十分申し上げた積りだったが、やや議論が混乱しているため、再度意見を申し上げてみたい。』

というのは具体的には中原委員の議論(さっき上の方でリンク入れておいた昨年8月に書いた駄文をご参照くだされ)に関する所です。

『まず第一に、量的緩和といっても色々あるが、前回も申し上げたように、日本銀行は日々の金融調節のインストゥルメントとして朝方の積み上、積み下により量を取り敢えずみている。それを用いて日々のターゲットであるコールレートをヒットしようとしている。ただ、その第一段階での量としてのインストゥルメントを量的目標とは呼ばない。』

さよですな。

『その上で、間にコールレートがあり、その先に量的緩和という場合は量に関する中間目標を設定するということだと思う。勿論、間にあるコールレートを飛ばして中間目標であるマネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法もあり得る。コールの先にある量についての何等かの新目標を持つのが良いのかどうか、が通常の量的緩和論の議論の対象ではないか。』

これまたそうですな。

『その点については色々議論してきたが、私個人はそうした目標を掲げることにある種の魅力は感じつつも、様々な理由から難しいため取り敢えず提案していないし、本席での平均的な議論としては設定は難しいということだったと思う。私なりの理由としては、目標をどのように設定するのかという基準が難しいことと、設定した場合にヒットできるかどうかにも若干難しい問題があるということである。』

その後当座預金残高ターゲットという誰が考え付いたのか存じませんが(企画局の中の誰かじゃないのとは思いますが)極めて画期的なコントローラブルな「目標」が開発されて2001年3月に量的緩和政策と言われるものが実施されましたが、この量的緩和政策って実際問題としては植田委員がここで指摘し、中原委員がこの会合だけでない折に触れて提案していた「マネタリーベースやベースマネーをヒットしようとする方法」とはちょっと(どころではなく)話が違うのでは無いかと思うのであります。

#つまり、中原委員が「私の言っていた量的緩和政策が実施された」と鬼の首を取ったように著書で書いていましたが、それは看板は量的緩和政策だけども中原さんが主張してたマネタリーベースあるいはベースマネーの目標とは別もんだったんじゃないのかねという観が思いっきりあるのですけど、まあそれは蛇足

で、この続きもオモロイのですが、時間と量とあたくしのタイピング能力(さすがにこのタイピングは予め行ってますけど見直しが結構手間だったりするのと、引用大会をするとあっという間にタイピングのストックが無くなるので^^)の問題から続きは明日または後日ということで。

#以上超虫干しネタでございました、明日も続く(つもり)







2010/01/04

お題「謹賀新年で雑談ネタで」

週末拡大版のような年末年始でしたな。

○東証アローヘッドですかそうですか

この辺に資料というかパンフレット集がございますが。
http://www.tse.or.jp/rules/stock/arrowhead/pamphlet.html

いやまあ時代の流れっちゃあ時代の流れなのかもしれませんけれども、日本の証券取引所の約定付け合わせ方式というのは小口投資家の保護という観点からも非常に良く練られた方式だったと思うのでありまして、まあ最近どんどんその古き良き方式が廃止の方向となる流れの止めみたいなもんであります。

まあぶっちゃけ大口投資家と大手業者優遇のシステムでありまして、そりゃまあアンディー社長さんあたりはあるべき姿だとお考えだったかと存じます。まあ別に取引所がそうだっつーならそれでも結構ですけれども、こういうシステム入れる同じ口で「個人投資家の育成」とか寝言を言うのは勘弁して欲しいもんだと思います。取引システムで小口投資家を冷遇しておいてそういう事言うかねってゆーことで。まあ新システムが無事に稼働するといいですね(力強く棒読み)。

と新春一発目は悪態でどうもすいません。以下もうちょっと真面目な話。



○BOEの量的緩和政策の効果に関する議論

と言ってもそんなに大ネタではないですので。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2009/mpc0912.pdf

12月のMPC議事要旨なのですが、景気に関する見方はまあ見通し暗いですなあという感じでしたが、本文7ページ(PDFファイルの8ページ目)でこんな話を。第30パラグラフから。

『But equally there had been some less favourable developments. Money growth had been disappointing.』

ということで、マネーの伸びが失望だよ!という話。

『And while the growth rate of households’ and non-financial companies’ money balances had held up better than aggregate broad money, it remained weak in absolute terms. The narrowing of the spread between gilt yields and corresponding OIS rates, which Committee members had viewed as an indicator of the positive impact from the asset purchase programme, had partly reversed over the previous two months.』

一部英文の意味が良く判らん(単語一個一個の意味は分かるのだが言ってる事のニュアンスを取りにくいのは私の脳味噌の問題ですが)けど、ここで資産買入プログラムの効果に「ギルトとOISのスプレッド」を挙げているのは、それって量的緩和と言っておっぱじめている政策の筋としては異筋っぽい気がするんだが。

まあマネーも減ってる(後で関連部分を引用します)し、このスプレッド低下もここ2か月逆方向というのは「うちは量的緩和でFRBともBOJとも違います」(キリッ)と銘打っておっぱじめて継続中の量的緩和政策としてはロジック的にややこしそうな感じっすな。

『The reasons for that were unclear, however, and it remained likely that the full impact of the asset purchase programme on the economy would be felt only with a lag. The Committee would continue to monitor closely the evidence on the impact of its asset purchase programme.』

量的緩和政策の効果が出るのに時間が掛かるからというのは何だかね(^^)。

さて、そのマネーの部分に関する云々は金融状況に関する本文3ページの第12パラグラフと4ページの第13パラグラフにございます。第12パラグラフから。

『M4, adjusted to exclude the money holdings of institutions that intermediate funds between banks, had declined by 5.3% on a three-month annualised basis in October, weaker than in earlier months.』

ということでマネーが減りましたとな。

『That fall in money balances was a source of concern.』

そらそうでしょうなあ。量的緩和政策でマネーを出すと言っているのですから。

『Households’ and non-financial companies’ money balances had, however, continued to grow, albeit at weak rates, together increasing by 3.3% on a three-month annualised basis in October. Instead, the weakness of adjusted M4 remained centered in the money holdings of financial companies not involved in intermediation between banks, primarily institutional investors. These had fallen by £31 billion between August and October.』

で、第13パラグラフ。

『It was likely that such financial companies had been running down bank deposits partly to finance the acquisition of corporate sector assets. That would have depressed aggregate money growth if those assets had been issued by banks or by other businesses that had subsequently used the proceeds to repay bank borrowing. Both capital raising by banks and increased capital market issuance by non-financial businesses seeking to reduce their reliance on bank credit were symptomatic of the ongoing weakness of the banking sector.』

つーことで、例によって直訳は出来るけど意味がイマイチという部分があるのがあたくしの知能の悪さなのですが、どうも英国では相変わらず銀行部門のバランスシートのリストラ過程にあるため、銀行部門は資本増強をするし、非金融部門は銀行借入に頼らないようにしてこれまた市場調達できる所は市場調達するという動きになっているようですな、と何となく読みました。

『But such developments might prove beneficial to the economy if they enabled banks to restructure their balance sheets faster, and while they did so allowed businesses to access an alternative source of credit. Having fallen back during the late summer, total capital market issuance by UK non-financial companies had picked up more recently, including among a few lower-rated issuers. Throughout the year to date, capital market issuance had been running some way above the levels seen in the years leading up to the financial crisis.』

まあ調達市場の状況はリーマンショックの頃よりは改善しているようですし、これらの動きが銀行の財務リストラを促進すれば結果としては経済に有益でもありますというような前向きな話にしておりますわな。じゃあ資本市場へのアクセスが無い中小企業はどうなのよという話は次の第14パラグラフにありますけれども、マネーの伸びがどうのこうのという話じゃなくなってくるので引用割愛。

ちなみに、MPCメンバーの景気と物価に関する話は第31パラグラフと第32パラグラフにありますが、「ポンド安と世界経済の回復で期待された程輸出が伸びていない」とか「ドバイやギリシャなどの問題は英国経済への潜在的なショック圧力を示した」とか景気はどうもパッとしない話。物価に関しては、中期的な見通しは変わらないとしていまして、「足もとの物価は上昇しており、目先上昇圧力があるが、英国経済の過剰設備は大きく、インフレ圧力を抑制するでしょう」という話をしています。先行きに関しては銀行の貸出態度や家計のバランスシート調整、雇用悪化懸念による貯蓄率の拡大や財政健全化問題などが影響するとか言ってるように見えますが、あたくしがそのように読んだだけの話ですので、正しくは本文をご覧あれ。

ということで、量的緩和政策を打ったものの効果が微妙な状態になっておりまして、ちょっとBOEちゃんも大変ですなあ(棒読み)という感じかと。


○新春読書室(ただし1冊のみ)

・「ルワンダ中央銀行総裁日記(増補版)」(服部正也著、中公新書)

本石町日記さんの所で紹介されていましたが、めでたく復刻されて今回は増補版として登場。で、年末年始に一気に読了しましたけど、内容に関しては下の方にリンクつけときますのでまあそちらをご参照(手抜き)という感じで。

あたくしはとりあえず引っ掛かる部分を気合で流して読んでしまいましたが、本当は通貨改革実施(二重為替が中心問題)に関する部分とか、経済改革に関する部分とかは、紙と鉛筆を用意して服部さんの説明部分を図に直して考えていきますと、通貨制度がどうしたこうしたとか、経済学がどうしたこうしたという事になると拒絶反応が起きてしまう一般ピープルでも分かるのでは無いかと思いますよ。ということで、入門書にもなるのではないかとふと思うのでありました。

問題の真の所在を突き止めていく為に表面的な理解では足りないという口で言うのは簡単だけど実際に実行するのは難しい事を実践して、ルワンダ経済の立ち上げに寄与したという服部さんの行動には素直に感心しました。

で、ご案内の通りルワンダはその後戦争で大変な事になってしまったのですけれども、増補版ではルワンダ情勢に関する米国中心の報道に対して服部さんがもの申した文章が収めされています。露骨には書いてませんけど、内戦の一方の当事者に肩入れして武器などの供与を行い、悲惨な状況を拡大する事になった大国(って米国でしょうな)への批判がありまして、大国が後ろから支援する事によって民族間抗争の悲劇が拡大する現実の一端を垣間見させてくれます。

ISBN-978-4-12-190290-0 C1233 \960

関連書評はこの辺
http://hongokucho.exblog.jp/11458398/
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20091012/hattori_masaya

服部さんの国会答弁ネタ
http://hongokucho.exblog.jp/11660175/