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2010/02/26

お題「山口副総裁会見など」

本当はバーナンキ議会証言と参りたいところですが、今月って日数が少ないから色々な進行が押して忙しいのよね。

ではまあ山口副総裁の会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002c.pdf

あたくしの確認間違いでしたら申し訳ないのですが、昨日の結構遅めの時間(夜の時間ね)に日銀HPにF5攻撃を行った時にはこちらがまだアップされていなくて、さすがに今朝はあるだろうと思ってサイトを見に行ったら上記URLのようにアップされておりました。

いやまあ別に他意は無くて、それこそ決裁する人が出張してたとかそういうことだとは思うのですけれども、妙に更新される時間が遅かったのはどうした事ぞというのはふと思いました。

#まあどうでもいいけど

割と質疑応答もあっさり味でしたが、ブルームバーグのオモシロヘッドラインに関連する質問があったのはチャーミングというか中々鋭い(つーかブルームバーグの人が質問したのかな^^)。


○財政リスクがどうしたこうした

財政の話は現在キャッチーということで。

『(問) 最近、世界的に財政状況の懸念と長期金利の上昇ということが言われています。日本においては、国債のストックベースでみて9割方を国内の人々が持っています。基本的には日本の期待インフレ率とか成長期待が上がらなければ、長期金利は上がらないと言われていたように思いますが、日本の財政状況と長期金利の今後のリスク(上昇懸念)に関してお伺いします。』

『(答) いくつかの側面に分けてお話しした方が良いと思います。1つ目は、日本の財政の状況について市場がどうみているかという点。その上で、2つ目は、この先の長期金利の展開について財政との関係でどのように考えるのかという点。この2つに分けてお話しします。』

『まず、日本の財政状況についてのマーケットの見方ですが、長期国債の消化という点で言えば、問題なく消化が行われています。それから、長期金利は非常に低いところでほぼ安定的に推移しています。従って、財政に対する日本のマーケットの評価は、非常に安定した状態が続いていると言えます。』

それはまあその通りですが、経済状況だけを勘案するともうちょっと金利が下がってもエエンジャネエノという気もするんですがまあそこは置いとく。

『その上で、今後、財政状況と長期金利との関係をどのようにみていくかということですが、長期金利がどうなるかということについて、私の立場から色々と申し上げるのは適当でないと思います。日本の財政バランスが、やはり非常に厳しい状況にあることは事実だと思います。従って、どのような形で財政バランスを回復していくのか、あるいはどのような形で財政規律を発揮していくのか、これが非常に重要なポイントだと思っています。長期債市場に限らず、広い意味での金融資本市場は、そうしたことについて政府がどのような対応をするのかという点を常に注目していると思っています。』

まあ綺麗に言えばそういう感じですが、どちらかというと金融資本市場は政府のオモシロ対応をお笑いネタとして生温かく見守っているという所ではないかと思いますが(^^)、まー財政発散がどうのこうのというのは政府の財政規律に関するポンチ絵もそうですが、実際問題としての国債入札の消化状況がどうなのよ的な部分から静かに進行していって、それがどこかで大騒ぎになるのでしょうなあとか思うのですけどどうでしょ。

とりあえず先日の白川総裁の会見が「政府に異例の注文」みたいな報道のされ方になって外野的に余計な波乱を起こしたような感じもする(金融市場的には全然反応してませんが)ので、ちょっと発言に工夫をしたような感じは受けましたです、はい。


○追加緩和に関して

『(問) 2つお聞きします。1つは、先程、物価の下落幅の縮小テンポがやや遅いという質問とも多少関連していますが、講演ではデフレが起点となって景気の悪化をもたらす点に注意が必要と繰り返していらっしゃいます。その上で、「デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないためにも、企業マインドが萎縮しないように働きかけていくことが大切」だとおっしゃっています。日銀として、デフレや物価上昇率ゼロは許容しないと言っているわけですが、「デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないために、企業マインドが萎縮しないように働きかけていく」ということについて、日銀として追加的に何かやるお考えがあるのかどうか、というのがまず1点です。』

第2点は後ほど引用します。

『(答) デフレがさらに進行して企業マインドの悪化ということが起きないように、日本銀行としては何らかの追加策を考えているのかということが最初のご質問だったと思います。これについては直接的にお答えすることは難しいです。私どもは、状況に応じて必要と考えられる政策をその時点で実行していくという構えにあります。これは日本銀行として一貫して変わらない姿勢です。今後ともこの姿勢を貫いていくということであり、それ以上の答えはできません。』

これはまあ要するに先行きの物価や景気に関する見通しあるいはリスク認識が下がらないと実施されないという話ですが、じゃあそれが下がる為には何が引き金になるのかという事を勘案しますと、まあ普通の結論ですが経済関連のデータが悪いの続くか、それとも為替市場あるいは株式市場かというごく常識的な話になりますわな。

で、スケジュール感からしますと、(マーケットの方は無視して考えると)短観が出て展望レポートが新しく出て、中長期的な物価安定の理解の見直しが行われる4月がその手の認識を変更しやすいという所でしょうから、まあ自然体でなんか見通しをいじりやすい4月は注目という事になるでしょうな。


○やはりこの質問が来たか

きっとブルームバーグの人なんでしょうな(^^)。

『もう1つは、逆の観点での質問です。講演では「デフレ克服という課題は、より長い目でみたわが国経済の課題に直接繋がっている」とおっしゃっています。それから「90 年代以降、日本経済は、低い成長率やインフレ率を続けている」、「長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残った」ともおっしゃっています。低金利がこの10 年、20 年と続いているわけですが、この低金利自体も根強いデフレの一因になっているというご認識をお持ちでしょうか。』

これはまた判っててイヤミな質問を(^^)。

『それから、低金利自体が、デフレ的な状況を継続させることに一役買っているのではないかということですが、これは原因と結果をどう考えるかという非常に難しい問題を含んでいます。』

それって非常に難しい問題なのかな?単に悪循環のスパイラルとか、ゼロ金利制約の問題とかいう話のような気がするんだが。

『ただ、私自身の素直な感じで申し上げれば、日本経済は2002 年から数年間に亘って景気の拡大局面を経験しておりますが、それに先立つ90 年代から始まる日本経済の動きに対応して、中央銀行として必要な施策を採ってきたということです。その結果が、概して言えば低い金利であったということであろうと思っていますし、日本経済にとって、そうした政策対応は必要不可欠であったと認識しています。』

でしたら講演でわざわざ「長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残った」とか唐突に「低金利と財政支出拡大はケシカラン」みたいな話を入れなきゃ良いと思う次第でして、不用意&脇が甘いっすなあという感じであります。


つまりですな、そらまあ政策金利を動かせるような状態になった方が良いというお気持ちは理解できますし、そういう意味では現在の状況が不本意にも程があるのは判りますが、そうは言いましても現状ではどうせ緩和政策をやらないと行けない訳ですから、それならば「いや本来こうあるべきなのですけれども嫌々やってるんですよ」とか言わないでもっと大真面目な顔をして「ほら、私たちはこんな緩和政策をしてるんですよ凄いでしょ」ってやった方がそれこそ中央銀行の政策に関する期待形成という点からしても同じ政策で緩和効果が出やすくなるという物ではないかと。で、そうすれば結果として異例の政策からの出口も近くなると思うのですが、どうもこう上記のような「ポロリ」をやってしまうのが白川執行部の仕様のようでございまして、その点に関しては福井大狸を参考にすべきではないかと。

まあ経済の新陳代謝が必要という話だけしておけばよかったんじゃないですかねえという所でございます。


まあこの2つの質疑以外は特に大きなネタもなく、淡々と終始した感じではないかと思いますので堂々の割愛。


○GCレートが相変わらず微妙に下がらない件について

昨日も微妙にGCレート堅調。日銀の資金供給オペ自体は木曜の財政要因が事前の市場予想よりも8000億円程度上振れとなったこともあって、当座預金残高は15兆円台後半で推移していますし、朝8時発表ベースの準備預金残高予想値は11兆円近辺でこれまた安定的に推移していますので、1月後半の実績から行けば「資金が結構ありますよ」という状態になっている筈なのですけれども、どこがどういう具合なのか良く判らんのですけれども、資金の偏在が起きているのではないかという印象。

つまりですな、オペ残自体もそんなに変っている訳でもなく、かつ当座預金残高もきちんとあるという状態でして、普通に考えるとどこかに金がある筈なのですが、何故か足元では微妙にGCレートが強いという状態になっているのが不思議っちゃあ不思議なのでありまして、まーこれは市場の全部の人達の懐具合が判らないと話にならないのでこうやってうだうだ書いていても結論は出てこないのですが(−−;まあ不思議だなあと。

一方でTBは3か月の入札が0.12%に上昇したけど別に下を叩いたり在庫を投げたりという人はいる訳でもなく(というか普通いないわ)、CPのレートは相変わらず低いですし、特に長めの方が安定して低いというチャーミングな状況にありますので、これは単に足元要因であって、約定ベースで月末を抜けたら下がるのかとは思いますが、ここから先3月23日の財政大量払い超と期末がありますので、その前に不安定化するのもどうかと思うので来週の動きは注意っすかね。まあ普通に考えれば落ち着くのですけれども。

#今月は早かったですね









2010/02/25

お題「GCレート上昇とかその他とか/山口副総裁講演」

暖かくなるのは良いですが花粉は勘弁願いたいものです(−−;

○米国財務省の流動性吸収プログラム

昨日出てたのですが正直気がつかなかったです(汗)。

http://www.ustreas.gov/press/releases/tg560.htm
Treasury Issues Debt Management Guidance on the Supplementary Financing Program

『"Treasury anticipates that the balance in the Treasury's Supplementary Financing Account will increase from its current level of $5 billion to $200 billion. This will restore the SFP back to the level maintained between February and September 2009.』

『This action will be completed over the next two months in the form of eight $25 billion, 56-day SFP bills. Starting tomorrow, SFP auctions will be held each Wednesday at 11:30 a.m. EST, unless otherwise noted."』

つーことで国債発行上限問題もあって暫く止めていた流動性吸収というか短期国債発行プログラムの再開ちゅうことで、これで市場の超過準備を2500億ドル引きますよという話ですな。

んでもって、まーこいつも一連の正常化路線の一環で、直接に利上げに直結する話では無いのですけれども、現実に超過準備を引くという話でもある訳ですので何の影響も無いですよという話ではないと思います。

・・・ま、それだからこそ先般の公定歩合引き上げ以降物凄い勢いで連銀理事やら地区連銀総裁やらから「低金利政策は当面継続」という火消し発言が出まくるという流れになっているのでしょう。

とりあえず「火消ししつつ正常化路線の継続」というスキームは今のところ上手く進行しているようですが、今回は財務省がしらっとリリースをしただけとかいうのを見ると、各種の正常化措置を出来るだけおおごとにしないでしらーっと遂行していこう意図があるんじゃネーノと思う次第。

なお勝手に妄想を続けると、今後の超過準備吸収に関してもこんな調子でしらーっと実施していき、いつの間にか利上げしてもFFレートのコントロールが出来ますよえっへっへという状態にして行きたいとゆー所なんでしょうと妄想をする次第なのですが、そう世の中上手く行くのかどうかは神の味噌汁でございますし、ある程度超過準備を引いてくると市場の方が(FRBの意図するタイミングよりも早いタイミングでの)利上げ路線を織り込みに行く可能性もあるんじゃネーノと好き勝手な妄想をしておきますです、はい。


○GCレートなどが微妙に上昇している件について

昨日の3か月TBの落札結果。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220224.htm

(3)募入最低価格 99円96銭9厘0毛
(募入最高利回り)
(0.1243%)

(5)募入平均価格 99円96銭9厘4毛
(募入平均利回り )
(0.1227%)

・・・・・ここもと0.12%割れで推移していたのですが、昨日は0.12%乗せの水準。いやまあ超ミクロの世界で細けぇこたあいいんだよ!と言われてしまいますともう土下座するしか無いのですが(笑)、これはまあ足元でGCレートが0.115%だの0.120%だのという水準に上昇している事と関係が無いとは言えないでしょという感じです。

えーっと、今回の積み期間は財政払超の積み最終日を抜けた所(積みの最初のあたり)では当座預金残高が16.5兆円だったのですが、先週末の財政揚げ超の所から15.5兆円レベルに下げてきて、今週になってから15兆円ちょい程度のレベルになるという推移なんですが、当座預金残高をその辺の水準におく中でトムスタートの共通担保供給が打たれない(いやまあ無くても15兆円コースだったのですが、もしかしたらトム打って16兆円に戻して来るのかなとか思う中でオペが無いとちょっと残念感が)とかで、ちょっとGC市場での売り(資金調達)が増えましたねという所でしょうか。

まーGCちゅうのも参加者限定状態の市場で、両サイドともいつものメンバーでいつもの方向での細かい市場で、まあそのロットも結構ございますので結局の所は日銀の資金供給状況次第の面が強い訳ですが、そんな中で何故か知らんが市場機能が大事だとか仰せなので、結果としてオペの打ち方を見ながらああでもないこうでもないという動きになるんでしょうな。

しかし3月入る前に足元上がるような感じで良いのかねという気は若干する。まあさすがに昨日の3月29日エンドという使いにくそうなオペの落札金利は0.11%按分でしたが、そんなオペでも0.11%なのねえという気もするし・・・・

#と、超マニア向けですいません


で、山口副総裁講演ですが、そんなに変った話をしている訳ではない。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1002b.pdf

○例によって成長期待がどうしたこうした

景気見通しに関る部分の最後に、今後の不確定要因のうち特に重要だと思う点について2つ挙げています。

『1つは、海外経済の展開です。これまでお話したとおり、わが国の経済の見通しは、海外の経済情勢に大きく影響されます。このうち、中国などの新興国は、これまで予想外に速いペースで改善してきました。この点、今後もよい意味で予想が裏切られていく可能性は十分にあります。』

そうだといいですね(棒)

『ただ、経済が急速な成長を続けるなかで、景気が過熱するリスクを孕んでいることにも意識しておく必要があります。』

人のリスクを心配する前に(以下悪態につき割愛)。

『また、米国や欧州も、金融危機の負の遺産を引き摺っているだけに、先行きの見通しには不確実性があります。特に、金融機関の不良債権問題や家計の過剰債務問題がどのように解消されていくかを巡っては、様々な見方があります。かつての日本は、バブルの崩壊後、金融機関の不良債権問題が解消されるまでに非常に長い時間を費やしました。このような歴史が繰り返されることがないか、注目していきたいと思います。』

どっちかと言うとこっちのほうがリスク何じゃネーノという感じですけど、まあここまでが海外経済で、その次が最近良く日銀が言う成長期待がどうしたこうしたというお話ね。


『もう1つは、企業が、将来に向けた展望をどう描いていくかということです。先ほど申し上げた見通しでは、経済が徐々に改善していくなかで、企業が設備投資や新規雇用などに踏み切っていくと考えています。ただ、現在は、金融危機もあって、先が見通しにくい状況です。ここで、将来への悲観的な見方が強まりますと、支出活動が必要以上に萎縮してしまいます。日本経済が多くの課題を抱えていることは事実ですが、これらの課題を克服していくためにも、企業の成長期待を引き上げていくことが重要です。この点については、後ほど改めてお話したいと思います。』

んでまあその具体的な話は色々と後ろの方にあるのですが、先日の白川総裁の記者会見や、従来白川総裁が話している事とそんなに変わらないので割愛。


○デフレの問題に関して

『デフレの根本的な原因は、需要と供給のバランスが悪化していることです。物価は、やや比喩的にいえば、経済の体温にあたります。これに従いますと、デフレ、つまり経済の体温が下がった状態にあるのは、日本経済の基礎体力が低下していることの顕われといえます。』


つーことでまあ現在はデフレだというのを認めた上で、問題としては・・・・

『ただし、デフレについては、こうした結果という面だけではなく、これが起点となって景気の悪化をもたらしうる点にも注意が必要です。』

ということで、まあそれは要するにデフレスパイラルという事ですねということで、その説明部分は全部スルーして結論部分を。

『以上、デフレが起点となって景気の悪化をもたらす可能性について、企業経営の視点から何点か指摘しました。先ほどの体温の比喩に戻りますと、体調不良によって体温が低下するだけでなく、逆に体温の低下が病状を悪化させるリスクも意識しているということです。このようなリスクが存在するからこそ、デフレの克服は一層重要になります。』

ということだそうですが、では何が必要なのかという結論部分は・・・・

『デフレを克服するためには、需要不足という根本的な原因に対する治療を粘り強く続ける必要があります。また、併せて、デフレが起点となって経済を悪化させる状況、つまり、デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないためにも、企業マインドが萎縮しないように働きかけていくことが大切です。そのためには、設備投資や家計の消費といった民間需要の回復が鍵を握りますし、前提として、企業の成長期待を引き上げていくことが重要だという点は、先ほどお話したとおりです。その意味で、デフレ克服という課題は、より長い目でみたわが国経済の課題に直接繋がっている問題と捉えられると思います。』

それは判ったが日銀は???

で、この次は、成長戦略がどうのこうのという点で、成長を取りこんでいくために成長するアジアの需要を取り込んだり、国内でも将来伸びそうな分野もありますしという話をしているのですが、これまた先日の白川総裁の会見などで示された話を敷衍したような感じですので全部割愛。


○で、日銀は当面の政策を継続しますよと

『以上、日本経済が直面する課題について述べてきました。これらの課題は、その解決に向けて、民間企業と政策当局がそれぞれの立場で地道な取り組みを進めていくことが大切です。もちろん、その中では、日本銀行も重要な役割を果たすべきであると考えています。』

『1つは、デフレの基本的な要因の解消を目指すことです。これは、需要と供給の乖離を、持続的に解消していくことを意味します。このような観点に立って、日本銀行は、これまで思い切った金融緩和を行ってきました。』

ということで従来の政策の説明をしてますが割愛。

『もう1つの取り組みは、人々の物価に対する見方が下振れないようにすることです。このため、日本銀行は、消費者物価の前年比がプラスの状態を実現することが大事であるという姿勢を一層明確にしました。これは人々の物価に対する見方を安定化させる取り組みの一環です。』

まー執行部様的には中長期的な物価安定の理解の明確化で安定化させる取り組みをしたという話になるのでしょうけれども、この部分って諸刃の剣みたいな説明でもありまして、「それなら下振れしないようにするならもっと物価安定の理解を引き上げるべきではないか」とか「下限の部分に0というのがあるのは如何なものか」という話になってくる訳でして(^^)、はてさてどうなんでしょという感じっすな。ニヤニヤ。

つまり、(この前も申し上げましたが)目標がどうのこうのとかいう論点で話をするよりは「物価安定の理解」の下限数値が低すぎるのではないかとか、中心の1%ってどうなのとかいうような議論をした方が議論の実りが多いと思われる次第でありますがどうでしょうかね。

まあよーするに「現状の政策は当分(1年どころではなく)維持しますし、出口政策とかそんなのファンタジーにも程がありますけれども、追加緩和ってのも何ですねえ」という所なんでしょ、と思いますが、会見に関しては明日にでも。


○ブルームバーグさすがにこれはどうかと

で、昨日は講演に関するベンダーのヘッドラインを見てたらのけぞったのが
ブルームバーグから出てました。

ネット版を見るとこういうお題なのですが・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ay.q1_RhVShM
山口日銀副総裁:必要と判断すれば適宜適切な対策講じる(Update2)

ここの小見出しで『低金利が新陳代謝を阻害』ってのがあると思いますが、ベンダーの方でのヘッドラインでは11時29分の所で

『低金利と公共投資が経済の新陳代謝を阻害している』

と打ってたのですな。

?????と思って講演内容をもう一度熟読したら、確かに成長を高める話の中でこういう部分がありましたが・・・・・

『企業にとってみれば、技術革新を進めるためには、経営資源や人材を投入することが必要になり、その分だけ大きなコストがかかります。振り返ってみますと、90 年代以降、日本経済は、低い成長率やインフレ率を続けてきました。長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残りました。その結果、企業の収益期待を全体として低めてしまい、思い切った技術革新を妨げてきた面もあると思います。今後、どういった要因に働きかければ企業の技術革新に向けた取り組みをより促すことができるのか、という点を改めて考えていく必要もあると思います。』

なるほどまあそういう話はしてますなあとは思いますが、足元および先行きの金融政策運営に対するインプリケーションというよりは、単にこれは「低金利が長期間継続したり、大規模な公共投資が長期間継続するような経済環境にあるのは良くないですねえ」という話をしているのに過ぎない話で、前後の流れから言えば「だから成長戦略が必要です」という話だと思うのですが。


普通に報道するとロイター日本語版の報道のようになる筈でしょ。
http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnTK038093420100224
UPDATE2: 今後、必要なら適時適切な対応講じていく=山口日銀副総裁

・・・講演の趣旨を踏まえればこうなると思うのだが。


なんかね、ヘッドライン打つのにまあオモシロヘッドラインを打ちたいというのは判るのですが、あまりにも一部分を切り取ってセンセーショナルに報道しようというのはベンダーとして如何な物かと思うのでありまして、あんまりそういう事ばっかりやっているとニュースベンダーとしての競争力に悪影響だと思うのでございますけどねえ。>ブルームバーグ

ま、山口副総裁も山口副総裁で、現状で財政金融政策による経済へのサポートが必要な中で、こういうフレーズをわざわざ入れて揚げ足を取られるのは不用意にも程があると思われる次第。いやまあ本音はシバキアゲで今からすぐにでも正常化したいんですぅというのをどうしても言いたいのでしたら堂々それを主張して内外から総叩きにあえばヨロシと思うのでありますけどね(−−;

#本来は大狸と化して本音を見せない福井の俊ちゃんが正しい姿と思われます
#経済が良くなってからそういう話をすりゃ良いだけの話でしょ

正常化路線を着々と実行する中で火消しに余念がなく、その火消しが市場から(今のところは)信用されているFRBの動きから見ると、あまりにも脇の甘い話ですなあという感じではございます。

まあそんな感じで。




2010/02/24

お題「MPCの議事要旨ネタを日英両方で」

公定歩合引き上げたらCPIが下がり消費者信頼が下がるとはある意味様式美の世界でもあります(−−;)

んじゃまあ日本の決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100126.pdf

まあそんなに驚くようなネタは無いのですけれども少々。

○マインドの悪化と中長期的なインフレ期待に関連して

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から幾つか。

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。。委員は、輸出や生産の増加や、個人消費の持ち直しを背景に、わが国の景気は持ち直しているとの認識で一致した。また、委員は、これまでの景気の持ち直しは、内外における各種対策や在庫復元の動きに支えられたものであり、民間需要の自律的回復力はなお弱い状況が続いていると述べた。』

というのはまあ基本的な話で、まあ政策次第ですねという話ですけれども、企業マインドがどうのこうのという所がほほうという感じでございまして。

『また、何人かの委員は、業況の改善度合いに比べ、企業マインドの改善が弱いことを指摘した。これらの委員は、企業が中長期的な成長ビジョンを描けていないことが背景にあるのではないかと述べ、こうした慎重な企業マインドが設備投資等に与える影響を注視する必要があると指摘した。』

・・・・うーむ、パッとしない話ですが、これがまた個人消費でもマインドの悪化についての指摘が。

『ただし、複数の委員は、冬季賞与の大幅減少やデフレを巡る議論などを受けて消費者マインドが悪化している点も踏まえると、先行きの消費持ち直しのペースは慎重にみておく必要があると指摘した。』

対策も打たずにデフレ宣言ですからねえ。宣言するならどどーんと補正予算出すとかポンチ絵じゃない説得力のある成長政策もセットにするもんでしょ。少なくともローゼンはやってましたけどねえ。

『ある委員は、厳しいグローバル競争を背景とした企業の賃金抑制姿勢などを踏まえると、企業部門の好転が家計部門にも徐々に波及していくというメカニズムが期待通りには働かない可能性もあると述べた。』

こっちはマインドの話では無いですけれども、物価予想に関る話に繋がるので引用しやした。で、この論点って前回の回復局面でも同じような事象が発生していた訳でして、ダム論とか染み出し効果みたいな話は絵に描いた餅になりやすい話ですわな。

で、消費者物価ですけど。

『物価の先行きに影響を及ぼす要因として、中長期的な予想物価上昇率や企業の価格設定行動についても議論が行われた。』

『何人かの委員は、最近、アンケート調査で、消費者の短期的な予想物価上昇率が低下している点を指摘した。この要因として、複数の委員は、昨年夏場にかけて物価下落幅が拡大したことや、秋以降にデフレを巡る議論が活発になったことが、消費者の見方に影響を与えた可能性があると述べた。もっとも、複数の委員は、これまでのところ中長期的な予想物価上昇率はさほど低下していないと指摘した。』

・・・・と、議事要旨の中ではさらりと片付いていますが、実際問題としてマインド悪化が直撃したら中長期的な物価期待ってやっぱり下がるもんであって、そういう意味で言えば「物価下落」→「マインド悪化」→「マインド悪化の結果更に物価下落」のスパイラル一歩手前にいるのではないかと思うのですが。まあマインドが極端に悪化しないのは何だかんだと言っても株価とか為替とか世間的に判りやすい市場価格が持ちこたえているからのような気がする。全く根拠は無いけど。


○企業活動が戻っても賃金が上がらないのではないかという論点

さっき引用したあたりに雇用所得環境に関する部分もありまして。

『ある委員は、高水準の雇用保蔵などを背景に企業の雇用過剰感が強いほか、賃金に対する企業経営者の厳しい姿勢も窺われており、今後景気が持ち直しても、雇用者数や所得の増加に繋がりにくい可能性もあると述べた。』

で、さっき引用した

『ある委員は、厳しいグローバル競争を背景とした企業の賃金抑制姿勢などを踏まえると、企業部門の好転が家計部門にも徐々に波及していくというメカニズムが期待通りには働かない可能性もあると述べた。』

というのもありますし(同じ人が指摘しているのだと思いますが)、まー雇用所得環境が改善するのは時間掛かるんじゃないかというのと、ダム論的な話も中々難しいという所かと存じます。とは言いましてもまあ企業活動を上向きにしない事にはそもそも話が始まらない所でありますので、是非企業経営者の皆様におかれましては活動を上向きにする段階で賃金をですな、っていつの間にか自分の都合の話を(汗)。

まあ冗談は兎も角、じゃあ企業から召し上げて個人に回したとしても、企業活動が委縮して雇用環境が悪化したら意味無いですから、この話からいきなり企業ケシカラン攻撃という現政権が斜め上モードにならないように願いたいものでありまする。


○先進国の金融緩和が新興国のバブルをどうのこうの

海外の経済情勢のところでの話ですが。

『先行きを巡るリスクについては、何人かの委員が、金融緩和を続ける先進国からの資金流入の増加などが、新興国経済の過熱や、その後の巻き戻しに繋がる可能性に留意する必要があると述べた。』

まあこれは月報やら展望レポートやらにもある話ですけれども、いやあのそんな先の心配するよりも目先の下振れリスクの方を心配するんじゃないのでしょうかという気がする次第ですけど、実は(話が議事要旨ネタじゃなくて総裁会見ネタになりまして恐縮ですが)総裁会見でこんな話をしてたんですな。

『もう1つ私どもが強調していることは、先程、先進国の金融緩和が新興国に波及するということを申し上げましたが、そのことがまた日本も含めて先進国の方に戻ってくるということです。外需を完全な外生変数として扱うという議論がよくあります。確かに相当部分が外生であるというのは、多くの場合その通りですが、すべてが外生ではなく、先進国が全体として行っている金融緩和の効果が、自らにブーメランの様に跳ね返ってきているという面もあるわけです。色々なかたちで金融緩和の効果が浸透中であるといえます』(2月18日の白川総裁記者会見より)

・・・・まあ「先進国の金融緩和が新興国のバブルがどうのこうの」といういつもの話からはトーンダウンした話で誠に結構だと思うのでありまして、バブル懸念がどうのこうののネガティブ話よりも足元および目先はポジティブ話なんじゃないですかと思うのであります。

とまあ大体そんな感じで。新型オペの効果の話もあったけど、まあ議事要旨の通りかと存じます。


続きまして南海ホークスなBOEネタ

こちらが2月3、4日の資産買入を一旦停止した会合の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf

こちらは昨日実施されたたぶん議会での総裁ご挨拶
http://www.bankofengland.co.uk/publications/other/treasurycommittee/ir/tsc100223.pdf


○BOEの政策効果の説明が時間軸効果っぽくなっている件について(^^)

先般のFRBバーナンキ議会証言原稿絶賛大紹介シリーズの中では、FEDの長期国債&MBS&エージェンシー債買入に関連して、当初導入時には「金利を引き下げる」という(まあ中銀マニアからすると一般的に言えば)結構チャレンジャーな企画をして、「我々の実施しているのはバランスシートの負債サイドではなく資産サイドに注目しているので、量的緩和とは違いますよ!!!」と思いっきり説明していたものが、先般の議会証言では「超過準備が金利や信用スプレッドの押し下げに効果を与える」みたいな量的緩和政策っぽい話をしていますねえという事を申し上げたと思います。

でですな、今回の一連のBOEの発表を見ていますと、堂々「量的緩和」を銘打って実施していた資産買入の効果についての話が微妙にファジーになっておりまして、一方で金融市場環境の改善については時間軸的なお話をしているという、中々味わい深い物を感じる所であります。

議事要旨の頭のところですが、金融市場環境の認識に関する部分では市場環境、特にリスク資産の価格回復が顕著(一部まだ駄目なのあるけど)という話をしているのですが、その最後の部分になる第5パラグラフから。

『Market intelligence indicated that strong cash inflows combined withlow official interest rates may have led some asset managers to seek out higher yielding investments in recent months.』

どう見ても低金利によるポートフォリオリバランス効果(本当にそうかという話は華麗にスルー)です本当にカムサハムニダ。


昨日のキング総裁挨拶でも似たような話をしてまして・・・・

『To offset the effects of these headwinds, the MPC decided at its February meeting to maintain the unprecedented level of monetary stimulus, by holding Bank Rate at 0.5% and maintaining the stock of assets purchased over the past year at £200 billion.』

maintainingっていうのが如何にも緩和政策のように言ってますけど、そらあんた売却はよーせんじゃろと思うので、それはただの現状維持だと思うのですけど市場的に言うと。

『The effects of the money-financed asset purchases will persist and together with the low level of Bank Rate, will continue to provide a substantial boost to money spending for some time to come.』

これは実はMPCの議事要旨の方でも似たような説明になっているのですけれども、買入をスポット実施してハイおしまいというのがその後効いて来るのかなあというのはこれまた市場的には(目先しか見てねえだろというツッコミはあると思いますが)微妙な感が。

となりますと、結局のところ緩和政策のキモが「低金利の継続」という話になってやせんかいなと思うのでありまして、はてなんざんしょという気がするのでありまする。いやまあ「買った効果これからしばらくも続くんです!!!」と言われたらまあそうですねえ(棒読み)としか申し上げようが無いのですけどね(汗)。


○では資産買入の効果はどの辺りにという話ですが

MPCの議事要旨に戻って、第11パラグラフからの『Money, credit, demand and output』って所にその手の話が。第12パラグラフから。

『The latest data for 2009 Q3 indicated that nominal GDP had begun to expand again, at a quarterly pace of 1.1%. Taken at face value, these data were promising given that the objective of the accommodative stance of monetary policy, including the MPC’s asset purchase programme, was to increase nominal demand sufficiently to meet the inflation target.』

という話のようですな。

で、実はこの後、名目GDPはまあ兎も角、実質GDPが期待外れという指摘があって、その理由に関して4つ並べてああでもないこうでもないという話をしていて、これがまた正直読んでてワケワカランのですが、めんどいので華麗にスルーしますが、もしかしたら(結構うだうだ説明しているので)色々と検討している所なのかもしれません。第13〜16パラグラフですのでご参考までに。

で、最後の『The immediate policy decision』ちゅう所ですが、第29パラグラフではこんな話を。

『During the month, the Bank had completed the MPC’s programme for purchases of £200 billion of assets financed by the issuance of central bank reserves. That stock of past asset purchases would continue to impart a substantial degree of monetary stimulus for some time to come.』

『The completion of the previously announced purchase programme had resulted in little immediate impact on market yields, consistent with the fact that market participants almost uniformly expected the size of the asset purchase programme to be left unchanged at this MPC meeting.』

買入を一旦停止しても、今後も買入の効果がでるでしょうという話と、買入完了ですよというアナウンスの中でも市場金利が上昇していないのは「額は維持されるでしょうという期待から」というのは何か説明として訳判らんのでありますが、ここの部分って理屈が激しく途中割愛しているのか、論理が飛躍しているのかどうなんじゃろという感じでございまする(涙)。


○んでまあ資産買入をこれから増やすとインフレ加速や資産バブル発生リスクと

まあその辺りの理屈はそんなに話が飛躍してませんけどね。第33、34パラグラフから。

『A case could be made for increasing the degree of monetary stimulus at this meeting. The Committee’s February Inflation Report projection, conditioned on Bank Rate following market yields, indicated that CPI inflation was more likely than not to be below target for much of the three-year forecast period if the asset purchase programme was maintained at its current size of £200 billion.』

んでもって買入拡大した場合どうなるかと言うと・・・・

『An expansion of the asset purchase facility could bring inflation back to target more quickly than otherwise. That could also further attenuate, beyond the measures already taken, damage to the supply capacity of the economy caused by the recession.』

しかし(引用してなくて恐縮ですが)景気認識においては「底割れリスクはほぼ払拭」としながらも、足元の数値は期待以下だし、先行きのリスク要因はありますよという話でありまして、引用すると長くなるので、昨日の総裁挨拶の冒頭を引用しておくとこういう感じだすな。

『Since members of the MPC last came before this Committee, there have been some signs of a recovery in demand around the world, and also at home. But this nascent recovery is fragile. The tensions that underlay the build up of large world imbalances have not been resolved. And, at home, bank lending to the non-financial sector continues to fall. So the risks to the Committee’s central view of a gradual recovery of output remain to the downside.』(昨日のキング総裁の議会での挨拶から)

てな具合の中で資産買入の拡大を行わないというのも何だか話としてどうなのよっていう気はする、つーかロジック的にはかなり支離滅裂の世界に向かっていないかねとは思いますが、まあ一応第34パラグラフでは理屈は何となくつけています。

『But there were also arguments for leaving the scale of the asset purchase programme unchanged at this meeting. The February projections did not imply an overwhelming risk of inflation being below the target over the forecast period, and so did not suggest an immediate need for a further relaxation of the policy stance.』

物価下落リスクは少ないので目先の追加緩和は特に不要とな。

『Indeed, given the exceptional degree of uncertainty over how the economy would evolve, there was little merit in attempting to fine-tune monetary policy in the hope of achieving comparatively small changes to the future path of inflation.』

ファインチューニングなんて細けぇこたあいいんだよ!と読んでしまったのはあたくしの誤読ですかそうですか(^^)。

『Furthermore, CPI inflation was currently above the target, and the near-term outlook was for it to increase further. Consequently, there was a risk that inflation expectations might rise, and a possibility that expanding the size of the asset purchase programme at this meeting might add to that.』

ということで、現状CPIがターゲットを超えて推移し、目先も上昇するという中でのインフレ期待の上方修正のリスクがあり、買入を拡大(というか継続実施というか)するとその期待に燃料投下のリスクがあると。

『For some members, there also remained risks that adding to the size of the asset purchase programme might increase the chance of unwarranted increases in asset prices, and that attempting to eliminate the degree of spare capacity too rapidly might eventually result in more inflationary pressure.』

数人のメンバーは買入を拡大(継続して実施というか)した場合には資産バブルの懸念があるという指摘をしているだすな。うーみゅ。

ということでBOEのMPC議事要旨ネタでありましたが、FRBの議事要旨はどうしたというツッコミはしないように(他のネタもあるとしんどい^^)。






2010/02/23

お題「総裁会見続きとか」

今日は20年の入札で昨日はフラットニングしてたんだが、カーブじゃなくて20年の引けだけ見てると先週から延々と2.16%と2.17%辺りで全然動いていないんですな。とほほ。

#日米の3mLibor金利差がそんなに重要なんだったら米国FF金利が3%だ4%だとかで推移してた時にはドル円が500円くらいになってねえかと思うのだが(−−)

ということで20年国債入札はあるのですが、カーブ上の話は兎も角、絶対水準的には「先生!うちの超長期国債ちゃんが息をしてないの!!」状態になっているので、まあ何かあまり面白くない入札になるんでしょうな、とオモシロ入札になるフラグを立ててみる(^^)。

そんな話はヌルーして昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002b.pdf

どうでも良いのですが、暫く前から【記者会見】というような項目の入れ方をしているのですが、ついどこぞの某巨大掲示板のスレタイを思い出すので、この際頭だけではく後ろにも【】で何か入れるというのはどうでしょう(嘘ですよ嘘)。


○デフレ脱却には所得上昇期待が必要ですよと

最初でデフレの構造的要因がどうのこうのという質問があったのですが、例の体温がどうしたという言いたいことは判るがちと難しいのではないかという比喩の話をしているのでその辺から。

『次に、デフレについてのもう少し大きな文脈でのご質問にお答えします。やや比喩的に答えると、デフレは経済の体温が低下した状態です。より根源的な問題がデフレというかたちで症状として現れているといえます。従って、その克服のためには、基調的に体温を上げていくための体質改善あるいは治療が必要だと考えています。』

とはいえ、体質改善や治療をする時に体温を人工的に上げておいた方が治療に役立ちませんかとか言われそうな気がするのでこの説明も何か微妙な気がするのですけど。

『生産性の向上に地道に取り組むことによって、趨勢的な成長期待を高めていくことが大事だと思っています。』

というのもここの所良く説明してますな。

『将来にわたって所得が増えていくという期待が生まれてきて初めて、本格的に物価が上昇していくと思います。』

これはまあそうですねと思うのでありますし、経済の体温がどうのこうのという話をするよりも、一般向けにはこういう話をもうちょっと強調した方がよろしいのではないか(共感されやすいでしょうし)と思うのですがどうなんでしょ???

ただまあこれを強調し過ぎると「最低賃金時給1000円にすべし」とか言い出す人が連立与党内にいるので、いきなり連立与党方面が斜め上の方向に施策を打って来そうな悪寒もするのがテラオソロシスな所なのではございますが。

『生産性の向上は、現在日本経済が直面している最も大きな問題だと思っています。生産性の向上自体がわが国経済にとって不可欠であるとともに、デフレの克服のために大事な課題であると考えています。』

んでまたいつもの話をしているのですが、一応引用しておきますです。

『では、その生産性の向上をどのように図るかというと、民間企業と政策当局双方の努力が必要であるということです。やや抽象的な言い方になりますが、民間企業については、高い成長が見込める新興国の需要を積極的に取り込むとともに、国内では消費者の財・サービス需要を掘り起こし、これに対応した供給体制へと資源配分を見直していくことが必要だと思います。こうした需要の掘り起こしと資源の再配分によって、経済全体の新陳代謝が高まるとともに、企業の生産性も向上すると思います。』

『政策当局については、このような企業の経営努力を後押しするために、企業が熾烈なグローバルの競争環境に置かれていることも踏まえて、様々な制度や仕組みを見直すことが重要だと思います。また、このような経済の大きな変化・調整が生じる過程では、雇用をはじめ様々な面で資源の移動が避けがたいわけです。この間に生じる摩擦を最小限に抑え、資源の移動を円滑にするため、社会的なセーフティーネットを用意することも、政策当局の重要な役割であると思います。』

ちょっと思うのですが、段々この部分の説明が長くなっているような気がする(今度ちゃんと確認してみますが)のですが(^^)。

以下日銀が金融緩和をして云々の部分は割愛します。


○インフレ目標がどうしたこうしたの話はなお続く

これはまた巧みな釣り質問。

『(問) 先程、インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行とそうでないところの相違はそれほど大きくないとのご説明がありました。しかし、総裁ご自身あるいは日本銀行としては、インフレーション・ターゲティングを採用すると大きな弊害があるとお考えだと思うのですが、どうして目標の数値を固定してしまうと危ないのかという点について、もう一度詳しくご説明下さい。』

これは「金融政策を単一の経済指標の数値に固定的な目標を置くと弊害が大きいですよね」と白川さん的には聞こえる質問ですが、そこにインフレターゲットという言葉を入れる所がチャーミング。

『(答) 先般、G7に参加しましたが、G7の国の中でインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行は、英国とカナダです。残り5つの国は採用していないわけです。なぜ日本銀行がインフレーション・ターゲティングを採用していないかという問題設定もありますが、逆に言えば、英国とカナダはなぜ採用しているのかという問いの立て方もあるかと思います。』

残り5つったってECBはみんなまとめて金融政策一緒なのですから、日米欧はターゲットとしては実施してないという方が良いのではないかと思うのですが、そこはちょっとだけ工夫してますね(^^)。

『インフレーション・ターゲティングについては、「ターゲティング」という言葉に皆の関心が集まりがちですが、私自身は、実際には金融政策を運営していくときの説明の1つの枠組みだと思っています。』

で、BOEの話。

『例えば、BOEの先日の金融政策決定会合発表文、あるいはインフレーション・レポートをみると、物価上昇率を、通常言う意味での「ターゲット」すなわち「目的」にした政策運営をしているわけではありません。現在、英国の足許の物価上昇率は、3%を超える上昇率に上がってきています。そうなると、通常は、そこで金利を引上げていくということが自然に想定されます。これが、通常言うところの「ターゲット」という言葉に最も馴染む感じです。しかし実際には、そういう政策運営はしておらず、むしろ今、英国はきわめて緩和的な金融環境を維持しています。』

さいですな。次がECBの話。

『ECBはインフレーション・ターゲティングを採用していませんし、自分たちは採用しないということを繰り返し言っています。これは、通常言う「ターゲット」の意味で短期的に足許の物価上昇率と目標値との間を埋めていくような政策運営をしていくという見方が生まれると、結局、金融政策が最終的に目標とする持続的な成長にむしろマイナスになる側面もあると判断しているからです。必ずこうなるというわけではありませんが、そういう側面もあるのです。』

『インフレーション・ターゲティングが成功するための大事な条件は、インフレーション・ターゲティングとは中長期的な経済・金融の安定を実現していくための説明の枠組みである、ということについて十分に理解があることです。逆に言えば、インフレーション・ターゲティングが、通常言う「ターゲット」の意味で議論されているような政策運営であると理解されると、おそらく上手くいかないと思います。』

結局のところですな、メディア的に言えば「インフレ目標の採用で政府と日銀が対立!!!!!!」という話をするとネタとしてはオモロイので煽るのですけれども、「目標を設定してどうしたこうした」という話になると上記のような話になって、話が無限に平行線あるいはループするだけの話だと思うのですよ。それよりも論点とすべきなのは、「0%〜2%で中心1%」という「中長期的な物価安定の理解」で示された数値の設定がどうなのかという所だと思うのですが、どうも「インフレ目標」という言葉そのものがキャッチーなせいで、報道ベースを見てるとそちらの話ばかりで話が空転しているような気がする。

でも、これがまた惜しい事に、菅直人大先生におかれましては、何故か「目標1%」という話をしているので、「中長期的な物価安定の理解」で示される数値と数値面で言えば同じであって、政府VS日銀という絵が描けないという問題点があるのですな。まあどうせ菅直人大先生の場合はこの前出していたそれを実施して何がどう成長するのか全く意味が判らない「成長戦略」とか言う名前の便所の落書きで「名目3%成長、実質2%成長」と銘打ったから「物価上昇目標1%」って言ってるんだと思うのですけどね!!!


○ブランシャールペーパーの話キタコレ

ここのやり取りはウケタ。

『(問) 先週、IMFが論文を出し、目標とすべき物価上昇率は現在各国が示している2%といった水準ではなく、もっと高い、例えば4%程度が望ましいのではないかと問題提起をしています。それについてどのように受け止められたかお聞かせ下さい。』

もう待ってました!!と言わんばかりの(かどうか知らんが)切り返し。

『(答) ご指摘の論文は、IMFのブランシャール調査局長らによる個人名論文であり、IMFの提言が示されたものではないと思います。IMFのホームページを見てみますと、大変な量のペーパーが公表されておりまして、たくさんあるペーパーの1つだと認識しています。』

何と言う返し。しかし日銀だってペーパーとかレビューの類を「これは個人の見解」とか言って出してますけどいやまあいいです。

『この論文は、今回の世界的な金融危機を踏まえて、金融政策のほか、財政政策や金融規制を含む経済政策全般について改めてどのような教訓を引き出すべきかを検討したものです。論文では、物価下落のリスクに備え、予めある程度の物価上昇を容認し、金利の引下げ余地を確保するという、いわゆる「のりしろ」の議論を取り上げています。』

『このペーパーでは、今回の危機を踏まえてもう少し高めの目標インフレ率を設定した場合のコストやベネフィットを再検討してはどうかと提案しているわけです。ただ、ご質問にあった4%という数値は、あくまでも例として挙げている数字であり、しかも、これが望ましいと結論が出されているわけではない、ということも書かれています。よって、このような議論をどう考えるのかという問題提起だと受け止めています。』

と、あっさりと砲撃。

『日本銀行の物価安定の理解は、論文で指摘されているインフレ率の「のりしろ」も考慮に入れて設計しています。これは議事要旨等でも公表されていますのでご覧下さい。また、高めのインフレ率がもたらすコストやベネフィットのほか、過去のインフレ率の実績や国民の物価観など、様々な要素を考慮しています。こうした要素を考慮した結果、物価安定の理解について、「消費者物価指数の前年比で、2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」ということを示しています。』

しかしのりしろを考慮したら下限はゼロにならん気がするのだが、まあ色々と説明している件は確かに読むには読んだ。

『あえて、ご質問の4%ということについて申し上げると、インフレーション・ターゲティングを採用している国の目標物価上昇率が2%だとし、そこに2%オンするということは、要するに2%の金利の引下げ余地があるということを意味するわけです。しかし、今回の世界的な金融危機を振り返ってみた場合に、あともう2%の金利引下げ余地があったら、この事態は防ぐことができたかという問いを立てた場合に、私にはとてもそのようには思えません。』

『これだけのショック、あるいはそのショックを引き起こす原因となった大規模な信用バブル、この発生をどう抑えていくかということの方が遥かに重要な問題意識だと思います。この点、IMFの論文では、金融の規制監督のあり方、それからこのペーパーでは必ずしも論じられていませんが、物価上昇率が低い状況のもとで長期間にわたって金融緩和政策を続けると結果としてバブルが起きてしまうということも深刻な反省となっているわけです。個人的に4%をどう考えるかということについては、今申し上げた感想になります。』

ほうほうそうですか。


○金融緩和継続と市場機能

強力な緩和効果と市場機能がどうのこうのという質問に対して。

『まず、金融緩和の効果についてです。日本に限らず他の先進国もそうですが、この1 年間を考えるとオーバーナイト金利は横這いとなっており、日本でいえば0.1%の状態が続いているわけです。このように、オーバーナイト金利自体は変わっていませんが、この1年間、あるいはこの半年、この3か月と区切ってみても、様々なかたちで金融緩和の効果は強まっていると思います。その意味で、金融緩和の効果は強まり、その効果が浸透しつつあり、それが現在進行形であると思っています。』

ということで固定金利オペの効果もあってターム物金利の低下や信用スプレッドが低下しているという話をしていますがそこは割愛して市場機能の部分。

『次に、市場機能についてです。ご質問の趣旨は、短期金融市場における市場機能の維持は図られているのかということだと思います。確かに、これだけ潤沢に資金を供給していますし、現在の低金利が続くということを明確にしていますから、どうしても市場取引が不活発になり市場機能が低下しやすいという面があることは、ご質問の背後にある問題意識の通りです。』

つーか低下してますが。

『しかし一方で、市場機能をしっかりと維持するということも非常に大事です。私どもの金融市場局で行っているオペでは、できるだけ市場機能の維持を図るための様々な工夫をしています。従って、以前と全く同じように市場機能が働いていると言うのは多分言い過ぎだと思いますが、私どもなりに努力しています。』

ただまあ短期の市場機能って言いましても、無担保コール市場はそもそも銀行のオーバーローンが解消された時点から機能が微妙に変わっている上に最近は益々取引低調なのは変わらないですし、レポ市場に関して言えば取引の規模としての額はでかいにはでかいですけれども、参加者のネームって資金の取り手も出し手もまあ固定メンバーみたいなもんで、そのミクロ中のミクロの中で動いてるという状況でして、しかも国債発行がこれだけ増えた関係でそもそも金融調節に頼らないといかん部分が大きいという状況なので、まーそこの部分で市場機能と言われましてもねえと。

それよりも、市場ちゃんとしては、動かないのも困りますが、イールドカーブが寝てしまうと最早やることが無し子ちゃんになるのでありまして、そういう意味で申し上げると「ターム物金利の引き下げ」というのはその時点で市場が干上がるのでありまして(涙)、あまり市場機能市場機能言わんでもよろしいがなという気はします。それよりも、手前で死ぬのは良いから、早い所金利が動かせるような経済情勢にしていただきとう存じますとは思いますが(涙)。

という悪態は兎も角(^^)、まあこの辺りの発言を見てますと、「ターム物金利は抑えるけれども、何となく足元のGCレートだけはベタベタ状態は避けますよ」という事なんでしょうな。なんつーか微妙にアレなオペレーションはこれからも続くと言う事ですので、来月23日の財政払い超の資金需給のコブ対策は今回も毎度お馴染みの四半期状態になるような悪寒。とフラグを立ててみる(笑)。


○時間が無くなったので予告編

資産買入の継続を停止したBOEの議事要旨が訳判らん点について、というのがお題になる予定なのですが・・・・・

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf

2月は資産買入を停止したのですが、この回の議事要旨を(例によって辞書片手に)読んでみた訳なのですが、これが何かもうロジックがあちこちでワープしてて意味分からんがなという代物なのです。いやまあ単にあたくしの英語力が貧弱の為何が何だか分からないだけなら良いのですが、英語の特異な人ちょっと教えてくんなませという感じでございます(><;

なお、まあご案内のように資産買入は継続しなかったのですけれども、肝心の景気認識について、いきなりこのMinuteの第2パラグラフ(番号振っているので見やすい)が出オチ状態になっているのはどうなのかと。

『2 Weaker-than-expected macroeconomic data, including the preliminary release of UK GDP for the fourth quarter of 2009, had contributed to a decline in near-term sterling interest rate expectations over the month.』

>Weaker-than-expected macroeconomic data
>Weaker-than-expected macroeconomic data
>Weaker-than-expected macroeconomic data

どう見ても出オチです本当にありがとうございました。





2010/02/22

お題「月報は微妙に変化/総裁会見とインフレ目標とか報道バイアスとか」

ではまず月報比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(前回)

例によって手抜きで概要部分のみ。

○先行き見通し項目別展開が微妙に違う

ということで、現状判断部分は声明文通りです。一応引用。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。この間、公共投資は頭打ちとなっている。』

この部分ですが、声明文と同様に公共投資の部分が『なりつつある』から『なっている』に変わっただけです。で、先行き見通し。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』

という所までは同じですが、ここから微妙に変化。

『設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(今回)

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(前回)

この部分を鑑賞致しますと、個人消費の見通しを下げている(『耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い』→『当面、横ばい圏内で推移』と変化)のが当然ながら下方修正なのですが、語順に変化がありまして、前回は個人消費は明るいけれども設備投資はイマイチですねという書き方だったのが、今回はどっちもイマイチということで、パッとしませんなあというイメージを強くさせているのもチャーミング。

『この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』

というのは前回と同じです。


○物価はちょこちょこと訂正

まずは現状認識。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、既往の国際商品市況高の影響から、足もとは強含んでいる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。』(前回)

ということで「既往の国際商品市況高の影響」による強含みとな。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(前回)

消費者物価の方の結果は同じですが、「影響が薄れてきたことなどから」が抜けるとは何でじゃろ(って全文読めば良いのですが^^)。

で、次は先行き見通し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みないし横ばいで推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況の上昇が押し上げに働くことから、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(前回)

ということで強含みキタコレ。


『消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

ここでは「需給バランスの改善」というのが出てきたのが「おお!」という感じですが、出来上がりの数値に関しては「現状程度の下落幅で推移したあと」に下落幅縮小となっているので、需給バランスは改善するものの、下落幅縮小には少々時間が掛かるというややこしい結論に。まあデフレ宣言以来のマインド悪化で人々の物価予想が下がっているせいなんでしょうかねえ。


○金融環境はほぼ同じにも程があります

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』

という金融環境ですけれども、こちらは思いっきり前回と同じで、違うのは銀行貸出の部分だけです。一応引用。

『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって減少している。』(今回)
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって減少に転じている。』(前回)

まあこれじゃ変化という程でもありませんけど、「減少に転じた」ものがそのまま「減少した」になっただけなのですな(^^)。

以上、声明文よりもあちこち微妙に変化があるのでした。しかし経済指標はそんなに悪くないと思うのですが、結局のところ雇用・所得と物価に関する所がパッとしないのが影響してるのかなあって感じですかね。


では総裁会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002b.pdf

○ブルームバーグは何ぼ何でも煽り過ぎだと思う

こんなニュースがありましたが・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ai8OR4yQatgc
日銀総裁が政府に異例の注文−市場安定のため「中銀の姿勢尊重」を

・・・・該当する部分を見るとこういう話をしているのですけど。

欧州ソブリンリスク問題に関する質問に対して。

『もっとも、今のご質問にもある通り、最近では欧州周辺国におけるソブリン問題を契機に、欧米先進国や日本を含め、財政の持続可能性に対する市場の関心が世界的に高まっていると思います。金融市場がグローバル化していることを踏まえれば、国際金融市場の安定を維持するために、私自身は2つのことが重要だと考えています。第1は、財政再建の道筋を示し、この点について市場の信認を確保することです。第2は、中央銀行の金融政策運営が、財政ファイナンスを目的としていないこと、言い換えれば、物価安定のもとでの持続的な経済成長を目的として政策運営が行われていることです。また、そうした中央銀行の政策姿勢を政府が尊重し、市場も信認しているということだと思います。国際金融市場の動きをみると、現在市場はソブリンリスクをそうした観点からみていると思います。』


日本の財政再建に関する質問に対して。

『日本銀行の使命は、適切な金融政策運営を通じて、日本経済が、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復帰するように努めることです。そうした経済の姿を実現していくことは、財政再建を進める上でも、重要な条件の1つを整えることになると考えています。先程、中央銀行の金融政策運営は、財政ファイナンスを目的としたものではなく、物価安定を通じて持続的成長に貢献していくものであるということを申し上げましたが、そうした姿勢で臨むこと、そうした中央銀行の政策姿勢が十分信認を受けている、尊重されているということが大事だと思っています。』


・・・・・えーっと、これのどこがどう「政府に異例の注文」なのか全く理解に苦しむのでありまして、これはもう誤報のレベルに達してませんかと思うのですが、まあ一応ブルームバーグさんを擁護してみようとすれば、白川総裁が普段から民主党の財政運営姿勢に対して苦々しく思っているのを忖度したというかそういうのが思いっきり判ってしまうような表情だの言い方だのという事から、そういうヘッドラインになったともいえるかもね、と無理矢理ブルームバーグに代わって言い訳してみます。ただまあニュアンスが日銀公表の要旨通りだとすればちょっとあのヘッドラインはねえわと思うところであります。

そうやってメディアが「政府vs日銀」みたいなのを煽るのはデフレ脱却に向けた政策効果を心理面から減殺する作用もある訳でありまして、どうなのかよとは思いますが、まあ菅さんはあの調子で直ぐに「日銀に俺様が圧力を掛ければ動くんだ」というアピールというか力の誇示に余念がないですし、白川さんはまあ多分その辺を適当に韜晦するのがヘタクソそうですし、まあコマッタモンダという感じであります。


○物価安定の理解は目標数値ではありませんという話

火付け質問はこれでした(^^)。

『(問) 物価安定の理解は、CPIが0〜2%、中心値は1%です。先日の国会答弁でも、インフレターゲットというキーワードを使って色々ご説明がありました。これは、日銀としてインフレ上昇率1%を目標に定めていると受け止めてよろしいのでしょうか。』

まあ火付けを狙って質問しているのならお上手ですし、狙わないで質問しているのなら(物価安定の理解に関する根本的な部分を誤解しているという点において)記者クラブに出てくんなという質問ではございますが、きっちりと火付けになったようで、総裁はゼミ生に対する説明の如き説明を。これがまた超長いのよ。

『(答) 12 月18 日の金融政策決定会合後の説明の繰返しになりますが、私どもが発表しているのは、中長期的な物価安定の理解、物価安定とはどういうものかという一種の定義です。それについて各政策委員の理解を集めて、その結果は2%以下のプラスの領域であり、大勢として1%程度を中心と考えているということです。これは、あくまでも中長期的にみた物価安定とはどういうものかを明確に示したものです。』

目標ではないという話ですが、まあこういう言い方したら判り難いわな。

『その上で、ご質問では目標あるいは、インフレーション・ターゲティングという言葉が使われましたので、その言葉に則してお答えします。国会の席でも申し上げた事ですが、インフレーション・ターゲティングは、金融政策を運営する時の枠組みの1つであり、英国やカナダ等では定着しています。しかし、今回の金融危機を通じて、インフレーション・ターゲティングという枠組みについても、反省の気運が生まれてきているように思います。』

はて何ぞや。

『足許の物価上昇率が目標物価上昇率を下回る状況が長く続くもとで、物価の動向だけに過度の関心が集まった結果、物価以外の面では静かに蓄積されつつあった金融・経済の不均衡を見過ごし、結果として、金融危機発生の一因になったのではないかとの問題意識が、以前に比べて高まってきているように思います。』

つまり、足元の物価が安定しているので「バブルは崩壊してから対処すれば間に合うのでおっけーおっけー」と言ってたグリーンスパンのやらかしが直近にありましたし、まあその前の日本の資産バブルもそうですということなのでござんしょうな。つまり厳密に物価指数だけ見ての金融政策で良いものなのかという論点。

『インフレーション・ターゲティングが不適当だと言っているのではありませんが、インフレーション・ターゲティングを採用してきて、これまで比較的上手くいったと思われてきた国において、実は今、インフレーション・ターゲティングの問題をどう克服するかというのが、彼らの問題意識になってきているように思います。』

まだ全部読めていないのと、何を言ってるのかがイマイチ訳判らん事もあって、前回の量的緩和政策延長せずのBOE議事要旨のご紹介をしていませんが、どう見てもBOEの政策ロジックは足元矛盾だらけというか強く言えば論理的破綻状態になってねえか?という状況に(論旨が論理破綻してるから読んでて何を言ってるのか判らんというのもあります^^)なっておりまして、いやまあ苦労してるなあとは思います。

『私自身は、インフレーション・ターゲティングということや、どういうラベルを金融政策の枠組みに貼るかということを議論することにあまり多くのエネルギーを割いても生産的ではない、という感じがしています。インフレーション・ターゲティングを採用している国も採用していない国も、結果として金融政策の枠組みが、近年非常に似通ってきているという感じがしています。』

というのは重要な論点なのですが、惜しい事に報道ではこの部分の前半だけを切り取られてヘッドラインにされるので、「政府vs日銀」の話ばかりが煽られるという事になるのであります。

『似通っている点を3点だけ申し上げます。1つ目は、物価安定に関する何らかの数値的な定義あるいは目標を有しているということです。日本銀行に則して言えば、「中長期的な物価安定の理解」になります。2つ目は、先行き数年間というかなり長い期間の見通しを公表しているということです。日本銀行に則して言えば、展望レポートです。3つ目は、その上で、金融政策運営に際して、足許の物価動向だけではなく、中長期的に見た物価や経済、金融の安定をより重視する必要性への認識が高まっているということです。日本銀行に則して言えば、2つの柱による点検ということになります。』

インタゲ採用国の英国でもファンチャートや先行きの見通しなどを出していますし、米国ではその手のターゲットは無くて、「PCEコアデフレーターで1%から2%」が「何となくの目安」のようなファジーな設定になっていますが、こちらでも先行きの見通しを出すようになっていて、足元の数値に対してリジットな目標を設定してそれこそエアコンの自動運転みたいな事をするような政策運営はしていませんよというお話でございますわな。

『インフレーション・ターゲティングを採用しているかどうかということは、現在の金融政策の枠組みを議論する上で、意味のある論点あるいは切り口ではなくなってきているという印象があります。日本銀行自身は、各国の色々な経験を見ながら、インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行の良い部分、採用していない中央銀行の良い部分、それをすべて私どもなりに咀嚼して、それを組み込んだ日本銀行独自の枠組みを採用しています。』

ということなのですが、これがまたメディアに掛かると最初の部分だけをきっちり切り取って報道するのが報道バイアスというもの。いやまあ白川さんも会見で「説明すれば理解してくれる」というスタンスで説明していると思う(まあそれが当然の態度ではありますが)のですが、何せ相手の中には総裁の説明を理解しようとするよりもキャッチーなヘッドラインが取れれば良いというのもいるうようよといる訳でありまして(そういや福井総裁の時に阪神の快進撃に対して質問した某テレビ局のアナウンサーが今や国会議員orz)、まー正直会見に出てくる連中相手にお勉強会でもみっちりやった方が良いのではないかと思われますが(本当は資格試験でもした方が良いと思いますが、それはまあ報道の何とやらに引っ掛かるでしょうからね^^)どうでしょ。

と悪態を書きましたが、まあこれだけ説明するのだったら、「インフレ目標とは違いますが、それに似た形を取っています」くらいの言い方したらどうでしょとも思うのですが、白川さんはその辺のファジーな物言いが苦手なんでしょうなあ。

『ただ、いずれにせよ、この枠組みがいついかなる時もベストだと言うつもりはありません。各国とも常に自らの金融政策の枠組みをどうするのが良いのかを議論しており、そういう観点から私どもも考えていきたいと思っています。その上で、私どもとしては現在はこの枠組みが最適だと考えています。』

さいざますな。

・・・・・えーっと、まだ他の話およびインフレ目標に関する話がある(つーか質疑応答の1問分しか引用していないorz)のですが、例によって時間と量の関係上本日はここで勘弁ということでどうもすいませんすいませんm(__)m

でですね、インフレ目標がどうのこうのに関する話ですが、インタゲ実施をしているのか否かに関らず、各国の政策の枠組みが収斂しているという話に関しては、2008年10月にこのようなペーパーが出ている(こちらでもネタにした筈)のでまずはそこを熟知すべしと思うのですけどね。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev08j11.pdf
こちらは日銀レビュー版なので4ページとさらさら読めます

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp08j15.pdf
こちらはワーキングペーパーシリーズ(同じ人が同じお題で書いている)のでちと長いですが、細かい流れとかまでフォローしている。枚数の割にはそんなにしんどくない(ただし数式はあたくしスルーして読んだのですけどね、あっはっは)です。








2010/02/19

お題「これはきっちりと現状維持ですな」

5年で財政均衡達成に向けてとは頑張りますなあ米国様は(棒読み)

#一方で本邦はまあいいですもう(ヤケクソ)

#ディスカウントウィンドウレート引き上げとな(by公共放送速報)

んでもって、昨日は決定会合がございましたのでその関連ですが、声明文よりはその周辺の話の方がオモローだったので。

○これは見事な現状維持

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(今回の声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf(前回の声明文)

・・・・・これはネタにならん(^^)。

えーっと、前回との違いは2箇所(展望レポートの中間レビューに関する部分は除く)でございまして、

・景気の現状認識部分の公共投資

『公共投資は頭打ちとなっている。』(今回)
『公共投資は頭打ちとなりつつある。』(前回)

公共投資が頭打ちになっちゃいましたと。

・物価の現状認識部分の石油関連に関する部分

『石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(今回)
『石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(前回)

結論は同じですし、まあここの部分ってテクニカルな話なのであんまりキニシナイのですが、まあ一応そういうことで。

・・・・・とまあそういうことで前回の現状認識、先行き見通し、リスク要因に関しての大筋に変化は無く、特に先行き見通しとリスク要因はワーディングまで一緒という素敵な現状維持なのでございました(^^)。

一応先行き見通しとリスク要因を(後で自分が見る時の為に)まる引用して置きたく存じます。これ全部前回と同じ文言(リスク要因の番号だけ違うけど)なのであります。

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』

まあナローパスな気はしますが、何気に出てくる経済指標は微妙に良かったりしているのもチャーミング。

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

あたくし的には黒い白鳥さんがエーゲ海から飛んでくるリスクが気になるところでありますが(北禿先生のお告げのせいではありません^^)、その辺りに関する議論はどういう風に進んだのでしょうというのは気になる。


ということで、見事に現状維持でして正午前に終了とは恐るべし。これじゃあ金融経済月報もあんまり変わらないのでしょうかねえ。


以下決定会合レビュー的雑感を少々。


○金利市場的にはサプライズは無かったのですが・・・・・

まあ昨日も申し上げたように、金利市場的な発想だと外部環境は(色々と黒い白鳥の影が見えるのですが)前月から横ばいあるいは若干の好転という感じでありますので、そらまあ金融政策決定会合では何も無いでしょという事になるのですけれども(展望レポートの見通しと物価安定の理解を掛け算すると向こう1年以上は金融緩和状態を継続しますと言っているので、引き締めだのという話はそもそも発生しない)、何か相変わらず金利市場じゃない所(特に為替市場)からの変な期待と変な講釈が飛んでいるのが実に香ばしい所です。

何せ(斜め読みしかしませんでしたが)足元のGCレートが落ち着いてきていて当座預金残高が16.5兆円に増えてきている翌朝(=昨日の事ですが)の朝刊に何故か資金供給が絞り気味でどうのこうのみたいなマーケット解説記事を出す経済クオリティーペーパー様があらされる位でございまして、まあ金利の世界でも短期金融市場のおまけに調節がどうのこうのという話になると、マイナーな上にもマイナーな世界ですから素っ頓狂な話が出てくるのは仕様なのでありますけれども(-_-メ)、

アナウンスが無かったによって、今後もそんなアホウな話は無いと思われますので申し上げますと、昨日の会合では「もしかしたら新型オペをロールする」という話を堂々とするんじゃないかという与太話で友人と盛り上がっていたあたくしでございまして(^^)、何か知らんですけれども、どこぞのレポートを見たら(さすがに金利系レポートではない)「新型オペは既に8.8兆円実施されており、間もなく10兆円に達するので今回何らかの措置がないと枠を使いきる」とかいう指摘があったりして、まあ金利市場以外での理解ってその程度のもんなのかなあと思う次第。まあ資産買入と混同してるんでしょうけれどもね。


つまりですな、金利市場以外への作用のような物を考えて「まあ意味が無さそうだけどもあんまり害も無さそうなのでやっときますか」というのを大真面目な顔をして実施するという福井の俊ちゃんスキームを導入するというのであれば、それこそ(1ミリも意味は無いのですが)新型オペのロールという話でもやって来るのではないかとか思ったのでありますが(笑)、良く良く確認したら新オペ導入時の会見で総裁はオペを当然の如くロール前提の話をしていました(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912b.pdf
の最後の質疑から。

『もちろん、将来絶対にこうなるとは言えませんが、今回の措置は金融緩和措置の一環として行っているわけですから、このオペを見直す時というのは、基本的には私どもが経済・物価情勢をみて、金融政策の運営スタンスを変えなければいけないと判断する時だと思います。』

・・・・・ということで、そもそもオペのロールをアナウンスするということはございませんでした(苦笑)。まあ実行額を増やすとか期間を長くする(3か月を6か月にするとか)はアナウンスして来る事になるのでしょうけれども、超将来的な事を勘案すると、この「指値オペ」自体は機動的に使えるように残しておいた方が便利なような気がするので、臨時措置として使っちゃうのも勿体ない気がします。


まあしかし今回の決定会合結果に関しては、先程申し上げたように物の見事に現状維持という結果でありまして、12月に示された俊ちゃんスキームっぽい(新型オペとその後の供給は3か月から2年くらいまでの金利に見事に作用しているので俊ちゃんスキームなだけではないが)路線だったもんで、ついに白川さんも転向して俊ちゃんスキームに走るのかと思ったのでありますが、どうもBOEは資産買入停止するし、FRBは出口戦略の手順書を出すしと、周囲の中央銀行の動きを見ている内に俊ちゃんスキームへの転向を思い止まってしまったようで誠に遺憾の極みでございます(−−)。


○白川総裁の説明が素人向きじゃないのか報道バイアスに問題があるのか

総裁会見のテキストは今日出るのでそっちを読んでからなのですが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK036419520100218
UPDATE3: インフレターゲット採用・不採用は意味のある切り口でなくなっている=日銀総裁

白川さんとしては「短期的にCPI数値を厳密に目標にして金融政策(というか金利の上げ下げ)をやるのは如何な物か」という話をしようとしているのだと思うのですが、メディアバイアスに掛かるとこうなる訳で。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100218-OYT1T01331.htm
日銀総裁、インフレ目標導入に否定的

『日本銀行の白川方明総裁は18日、金融政策決定会合後の記者会見で、一定の物価上昇率を金融政策の目標に設定するインフレ・ターゲット政策について「金融政策の手法として意味のある論点ではない」と述べ、導入には否定的な考えを示した。菅財務相が16日の衆院予算委員会で、1%程度の物価上昇を政策目標にすべきだとの考えを表明、インフレ目標の導入を事実上促していた。』

そもそも菅さんが短期的な目標を導入すべしという話をしているのかもファジーな話なのですが、まあ報道する方としては「政府と日銀が対立している」という書き方をした方が絵になる訳ですから、そうなる方向にフレームアップして報道するバイアスが掛かるのでありまして、どうしてもこういう話になるんだろうなあと。

大体からして今まで政府が「何とかを目指す」みたいな経済政策目標のようなものを掲げてその通りに行かなくて誰か辞職したか(竹中先生の「ITで雇用650万人(でしたっけ?)」とかね^^)のかと小一時間な訳でありまして、その辺は「目標」が「ノルマ」なのか「目指して頑張ります」というものなのかという論点を良く考えないといかんと思いますし、最近はさすがに「CPIだけ見て金融政策実施しろ」とか言う人はあんまりいないと思う(BOEなんかCPIにまともに連動してたら大変な事になりますが)ので、この辺りの話って定義をちゃんと詰めないでああでもないこうでもないと言うと、議論が無限ループするだけで生産的な話にならんと思うのですけどねえ。

#西日本新聞(なので共同なのか??)はもうちょっとマシかな。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/153334
『短期的なインフレ目標の設定について』ってのを入れているので


ブルームバーグのこれはなお凄い。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ai8OR4yQatgc
日銀総裁が政府に異例の注文−市場安定のため「中銀の姿勢尊重」を

・・・・いやあのそこまで対立構造を煽らなくても良いと思うのですけれども。これって要するに「長期国債買入拡大を財政ファイナンスとして捉えられたら長期金利が上昇しちゃって緩和しようとしている逆の事が起きちゃうから財政発散みたいな話は勘弁してね」という話をしているのだと思うのですけれども・・・・・

ま、今日出る会見要旨を見ないと何とも言えませんがね。


でですな、白川さんもまあ丁寧かつ厳密に説明しようとしているのだと思うのですけれども、報道する方の理解力(いやまあちゃんと分かっている人も沢山いるのですけれども)および報道バイアスと言うものにももう少し配慮をした方が良いのではないかと正直思う所でございまして、そもそも日銀は何だか知らんが妙に叩かれやすい存在のようでございますので(叩いても反撃しないしね)、その辺をよーく考えまして発言を工夫した方がよろしいのではないかと思うのでありまする。

あと、まあブルームバーグあたりが上記のような報道をする位なのですから(ちょっと最近の煽りヘッドラインは目に余る場面が多いのですが、ブルームバーグ自体はそこまでアホウじゃないと思ってますので)、白川さんもどうせ心の中では「政府はしょーもない事ばかり言って結局全部日銀にお願いじゃねえかよ」などと苦々しく思っておられるのではないかと勝手に忖度する次第ではございますが(^^)、金融政策は技術的な問題もさることながら、経済とか景気という人間がカオスとなってやっている物に対して働きかけるものでもありますので、やはり本音を適当にはぐらかす猫を被るとか狸状態になるとかいう技を身につけるべきではないかと思われる次第でございます。


○米国様公定歩合引き上げね

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100218a.htm

『The Federal Reserve Board on Thursday announced that in light of continued improvement in financial market conditions it had unanimously approved several modifications to the terms of its discount window lending programs.』

『Like the closure of a number of extraordinary credit programs earlier this month, these changes are intended as a further normalization of the Federal Reserve's lending facilities. The modifications are not expected to lead to tighter financial conditions for households and businesses and do not signal any change in the outlook for the economy or for monetary policy, which remains about as it was at the January meeting of the Federal Open Market Committee (FOMC).』

『At that meeting, the Committee left its target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and said it anticipates that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

ということで、ご丁寧にもfor an extended periodな金利継続に関してもアナウンスしていますので、今回はあくまでもテクニカルな話で、危機対応の正常化の一貫であるという話をしています。

『In addition, the Board announced that, effective on March 18, the typical maximum maturity for primary credit loans will be shortened to overnight. Primary credit is provided by Reserve Banks on a fully secured basis to depository institutions that are in generally sound condition as a backup source of funds. Finally, the Board announced that it had raised the minimum bid rate for the Term Auction Facility (TAF) by 1/4 percentage point to 1/2 percent. The final TAF auction will be on March 8, 2010.』

えーっと、ディスカウントウィンドウの期間を翌日物にするという話と、TAFの事が書いてあるような気がするが、最早時間が無いので引用しただけでスルーします。その先も書いてありますけど、まあ本職の人達が何か解説してくれるでしょう。

#何のために引用したのかというツッコミは却下










2010/02/18

お題「各種雑談/引っ張りまくってすいませんでしたがバーナンキ議会証言」

今更気がついたのですが来週は月末週じゃないっすか。

#中年老い易く学まるで身に付かずと

○決定会合プレビューなどなど

今日の決定会合は金利村の人達からすると普通に考えると何もなしとなるのですが、そうは言いましても為替とかの外周部分では金融政策に対する期待は相変わらずあるのでして、どこかの人と話をしてたら「今回何も無いと2か月連続で何も無いのだがそうなるのか」とか言われてちょっとコケたりしたのですが(えーっとあのその金融政策ってそうホイホイ動くもんじゃないのですが・・・・)。

何せここもとの日銀の金融政策って(一応ターム物金利の誘導という話はしてますが)ヤマダ電機のチラシのような「超低金利」という落涙を誘う見出しを載せるように、まあ金利市場の人達というよりは外周部分の皆様に向けてのアピールを行うのがポイントになっているだけに、従来の金利市場ムラ的な発想で決め打ちしていると外す悪寒も。

とは言いましても何せ政策そのものが外周部分へのアピールでありますので、そんなに金利市場ムラに凄く影響があるモノが出てくる訳でもないという気もするのであります。

まあ何かの拍子でハチャメチャな円高株安になったら利下げでもするんでしょうけれども、金利政策という名前で打てるタマは(0.10%を0にして短期金利は兎も角、中長期金利に何の意味があるのかという話はさておきまして)最後なので出し惜しむと思われますんで。

#実際問題としては「ゼロを目標」とするのはFRBもBOEも「それは実務上問題」というスタンスでゼロの手前で寸止めしているのではございますが

ということでまあ結論は無いのだが(いつものこと)、菅さんがまたああだこうだ言ってますので、何かしょーもない「やった振り」政策のようなものが出てくる茶番モードの可能性は排除しない所でありまする。


○その他市場など雑感

・短国入札とか

昨日の3か月TBは0.118%レベルとあたくし的にはあらまそんなに強くなかったのねという感じですが、まあどうせ売れていくでしょうからあまりキニシナイ。ただちょっと気になったのは昨日のオペでスポットスタートが共通担保指値オペ8000億円だけで、今日トムスタートのオペが1.6兆円位打たないと当座預金残高16.5兆円コースにならない点。

まあ明日の場合財政揚げ超で資金不足になる所でありますので、別に16.5兆円にしなくても余剰感は変わらないような気もしますが、多分出しが少ないと何か考える人も出るかもしれず(全然反応しないかもしれないけど)、その辺のオペの打ち方と市場の反応をちょっとだけ気にするのだ。ただまあその前からトムスポのGCが落ち着いていれば特に問題無いかもしれませんので気にし過ぎだとは思うのだが・・・・


・ギリシャ問題(一発ネタ)

昨日の害債さんの所のエントリーにございましたが
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20100215ATGM1502R15022010.html
ゴールドマン、ギリシャの債務隠しに加担か 米紙報道

『報道によると、ギリシャは2000年に将来の宝くじ収入を、01年には将来の空港税収入をそれぞれGSに引き渡すことを約束し、見返りに多額の現金を受け取った。』(上記URLより)

・・・・税収担保で借入とかどこの後進国だよという感じでバロスという所でありますが、まあ正直言って報道見ていると状況がコロコロ変わり、何がどうなるのか判らん訳ですな。

で、そーゆー時には全く科学的根拠はございませんが、頼りになるのは髪様のお告げとゆー事でございまして、久々に北ハマー先生のボログを拝読するのであります。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51657643.html
2010年02月17日
ドイツ頼りのギリシャ財政危機問題

で、そこを読みますと・・・・・・

>少し安堵できる情報です。
>少し安堵できる情報です。
>少し安堵できる情報です。
>少し安堵できる情報です。
>少し安堵できる情報です。

((((((;゜Д゜))))))ガクガクブルブル



と言う訳で引き続き引っ張り続けましたがバーナンキ議会証言で。BOEとFRBの議事要旨が出ているのに前のネタでどうするというツッコミは却下(^^)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm

昨日の続きから。

○低金利政策は「for an extended period」で継続とな

『The FOMC anticipates that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

ということですな。

『In due course, however, as the expansion matures the Federal Reserve will need to begin to tighten monetary conditions to prevent the development of inflationary pressures. The Federal Reserve has a number of tools that will enable it to firm the stance of policy at the appropriate time.』

当面低金利を継続するけれども、いずれかの段階で金融環境を引き締める必要はあるという話はまあ普通ちゃあ普通。ただまあ緩和モード全開の時にはこの話は無かったので、モードとしては最近は出口検討モードというのはその通りなんでしょうな。


○出口政策の手順書:準備預金付利金利

『Most importantly, in October 2008 the Congress gave the Federal Reserve statutory authority to pay interest on banks' holdings of reserve balances.』

ということで準備預金付利がどう効くかの説明ですが、要するに短期市場金利のフロアになるという説明です。

『By increasing the interest rate on reserves, the Federal Reserve will be able to put significant upward pressure on all short-term interest rates, as banks will not supply short-term funds to the money markets at rates significantly below what they can earn by holding reserves at the Federal Reserve Banks. Actual and prospective increases in short-term interest rates will be reflected in turn in longer-term interest rates and in financial conditions more generally.8』

で、この8番の脚注が泣ける。

『8. Increases in the interest rate paid on reserves are unlikely to prove a net subsidy to banks, as the higher return on reserve balances will be offset by similar increases in banks' funding costs. Indeed, on balance, banks' net interest margins will likely decline when short-term rates rise. 』

準備預金付利は銀行への補助金ではありません!!!!とわざわざ説明。ただまあ「金利が上昇したら銀行のファンディングコストが上昇するからトータルではどうのこうの」というのは説明としてかなーりのインチキ成分だと思います。


○出口政策の手順書:流動性吸収手段

『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools it will be able to use to reduce the large quantity of reserves held by the banking system. Reducing the quantity of reserves will lower the net supply of funds to the money markets, which will improve the Federal Reserve's control of financial conditions by leading to a tighter relationship between the interest rate on reserves and other short-term interest rates. 』

ということで、まあ後でも話があるのですが、超過準備の存在を放置したままでFF誘導金利の引き上げを実施しても実効FFレートがコントロールできるのかという点についてはさすがに「無理でしょ」と思ってるんでしょうねという認識だというのは把握した。

『One such tool is reverse repurchase agreements (reverse repos), a method that the Federal Reserve has used historically as a means of absorbing reserves from the banking system.』

ということでまずはリバースレポ。以下はリバースレポの内容説明と、リバースレポの実施方法をより広い相手に対して実施するとか、対象証券を拡大するとかいう話をしているので、まあ一応引用だけしときます。

『In a reverse repo, the Federal Reserve sells a security to a counterparty with an agreement to repurchase the security at some date in the future. The counterparty's payment to the Federal Reserve has the effect of draining an equal quantity of reserves from the banking system.』

ここまでが取引の説明で以下が最近の工夫。

『Recently, by developing the capacity to conduct such transactions in the triparty repo market, the Federal Reserve has enhanced its ability to use reverse repos to absorb very large quantities of reserves. The capability to carry out these transactions with primary dealers, using our holdings of Treasury and agency debt securities, has already been tested and is currently available. To further increase its capacity to drain reserves through reverse repos, the Federal Reserve is also in the process of expanding the set of counterparties with which it can transact and developing the infrastructure necessary to use its MBS holdings as collateral in these transactions. 』


で、次はこの前実施が公表されたターム預金ファシリティ。

『As a second means of draining reserves, the Federal Reserve is also developing plans to offer to depository institutions term deposits, which are roughly analogous to certificates of deposit that the institutions offer to their customers.』

定期預金みたいなもんですよと。

『The Federal Reserve would likely auction large blocks of such deposits, thus converting a portion of depository institutions' reserve balances into deposits that could not be used to meet their very short-term liquidity needs and could not be counted as reserves.』

なのですが、この場合、ターム預金ファシリティ部分はマネタリーベースにカウントするのでしょうかカウントしないのでしょうか。うーむ。

『A proposal describing a term deposit facility was recently published in the Federal Register, and we are currently analyzing the public comments that have been received. After a revised proposal is reviewed by the Board, we expect to be able to conduct test transactions this spring and to have the facility available if necessary shortly thereafter.』

ということで、実施要項を決めて早々にテスト実施するようです。

『Reverse repos and the deposit facility would together allow the Federal Reserve to drain hundreds of billions of dollars of reserves from the banking system quite quickly, should it choose to do so.』

ほうほうそうですか。



○出口政策の手順書:具体的な手順

『The sequencing of steps and the combination of tools that the Federal Reserve uses as it exits from its currently very accommodative policy stance will depend on economic and financial developments.』

そらそうよ。まあここで具体的な実施時期に関しては徹底的に曖昧にしているのは当然ちゃあ当然ですが正しいスタンスですな。

『One possible sequence would involve the Federal Reserve continuing to test its tools for draining reserves on a limited basis, in order to further ensure preparedness and to give market participants a period of time to become familiar with their operation. As the time for the removal of policy accommodation draws near, those operations could be scaled up to drain more significant volumes of reserve balances to provide tighter control over short-term interest rates. The actual firming of policy would then be implemented through an increase in the interest rate paid on reserves.』

つーことで、この前も書きましたが、(1)各種吸収ツールのテストを行い、(2)徐々にその規模を拡大して超過準備を引いて、(3)実際に利上げの実施を行うが、その時はFF目標金利だけではなくて準備預金付利金利も引き上げる、という手順ですな。

『If economic and financial developments were to require a more rapid exit from the current highly accommodative policy, however, the Federal Reserve could increase the interest rate paid on reserves at about the same time it commences significant draining operations.』

急ぐ場合は(2)は割愛ということだが、多分大して引けないうちに利上げになるのではないかという予感はする(^^)。


○証券売却はしないようですが・・・・・

『I currently do not anticipate that the Federal Reserve will sell any of its security holdings in the near term, at least until after policy tightening has gotten under way and the economy is clearly in a sustainable recovery.』

この部分に関しては一部のホーキッシュな地区連銀総裁とかからは証券売れやという発言もあるのですが、バーナンキ師匠は否定しているのがほほーという感じです。

『However, to help reduce the size of our balance sheet and the quantity of reserves, we are allowing agency debt and MBS to run off as they mature or are prepaid.』

基本的には償還期限が来て普通に償還されるか、繰り上げ償還された分での落ちというのを考えているのでしょうな。

『The Federal Reserve is currently rolling over all maturing Treasury securities, but in the future it may choose not to do so in all cases.』

償還乗り換えルールを変更して財務省証券の持ちも減らす(昨日紹介したSF連銀のグラフを見ても判りますように、長期財務省証券の市場買入を実施していない時期でもFEDの保有する財務省証券の残高が減らないのは償還乗り換えの問題ですな)可能性も示唆とな。

『In the long run, the Federal Reserve anticipates that its balance sheet will shrink toward more historically normal levels and that most or all of its security holdings will be Treasury securities. Although passively redeeming agency debt and MBS as they mature or are prepaid will move us in that direction, the Federal Reserve may also choose to sell securities in the future when the economic recovery is sufficiently advanced and the FOMC has determined that the associated financial tightening is warranted.』

ということで、普通は償還での縮小でおっけーだが、必要な時は売却もとは一応言ってますが・・・・・

『Any such sales would be at a gradual pace, would be clearly communicated to market participants, and would entail appropriate consideration of economic conditions.』

ということなので、そうそう過激な売却はしないという話。ただまあそう世の中上手くいくもんなのかという点はひじょーに気になる。


○FF誘導目標に関しての論点

で、最後はさっきも話があった「超過準備が潤沢にある下でのFF誘導目標の有効性」という話になります。

『As a result of the very large volume of reserves in the banking system, the level of activity and liquidity in the federal funds market has declined considerably, raising the possibility that the federal funds rate could for a time become a less reliable indicator than usual of conditions in short-term money markets.』

ではどうするのかという話は以下。

『Accordingly, the Federal Reserve is considering the utility, during the transition to a more normal policy configuration, of communicating the stance of policy in terms of another operating target, such as an alternative short-term interest rate. In particular, it is possible that the Federal Reserve could for a time use the interest rate paid on reserves, in combination with targets for reserve quantities, as a guide to its policy stance, while simultaneously monitoring a range of market rates.』

FFを誘導目標水準に持って行くのが困難になった場合のポリシーコミュニケーションツールとして「準備預金付利金利」+「リザーブの額」の合わせ技を使うという可能性を示しました。つまり超過準備の存在によってコントロール不可能になった場合にその数字を目標にするよりは、コントロールが可能なものを指標にした方が政策のコミュニケーションツールとして有効ですよね、という話でありまして、これはこれで実務的には「そうですね」の一言で片付く話ではありますが、金融政策に関する色々な論議の中で言えば結構重い論点なのではないかとも思われますがどうでしょう。

『No decision has been made on this issue; we will be guided in part by the evolution of the federal funds market as policy accommodation is withdrawn. The Federal Reserve anticipates that it will eventually return to an operating framework with much lower reserve balances than at present and with the federal funds rate as the operating target for policy.9』

ということで、正常に戻ったらまた通常のFF誘導に戻るという話ですが、最後の9番の脚注では、準備預金付利を常設ファシリティ化するという話をしています。

『9. The authority to pay interest on reserves is likely to be an important component of the future operating framework for monetary policy. For example, one approach is for the Federal Reserve to bracket its target for the federal funds rate with the discount rate above and the interest rate on excess reserves below. Under this so-called corridor system, the ability of banks to borrow at the discount rate would tend to limit upward spikes in the federal funds rate, and the ability of banks to earn interest at the excess reserves rate would tend to contain downward movements.』

常設ファシリティによるコリドア形成の話ね。

『Other approaches are also possible. Given the very high level of reserve balances currently in the banking system, the Federal Reserve has ample time to consider the best long-run framework for policy implementation. The Federal Reserve believes it is possible that, ultimately, its operating framework will allow the elimination of minimum reserve requirements, which impose costs and distortions on the banking system.』

だそうで。


○まあまとめはどうでも良いのですが。

折角なので「Conclusion」も引用。

『To sum up, in response to severe threats to our economy, the Federal Reserve created a series of special lending facilities to stabilize the financial system and encourage the resumption of private credit flows. As market conditions and the economic outlook have improved, many of these programs have been terminated or are being phased out.』

『The Federal Reserve also promoted economic recovery through sharp reductions in its target for the federal funds rate and through purchases of securities. The economy continues to require the support of accommodative monetary policies. However, we have been working to ensure that we have the tools to reverse, at the appropriate time, the currently very high degree of monetary stimulus. We have full confidence that, when the time comes, we will be ready to do so. 』

ということで、まあこれはここまでのまとめなので特にインプリケーション無しと。

#ということで、やたら延々と引っ張ってどうもすいません。結局全文引用の巻でした







2010/02/17

お題「雑談+しつこく昨日の続き」

何かスワップ取引(とデリバティブ)に関する某テレビ番組での話が凄くピンボケしているように見える。取引実態の透明性の問題は取引形態の問題じゃなくて開示の問題の筈なのに「相対取引だから不透明」とか意味分からん。まあキャスターのおねいさんが判らんのはシャーナイけど、解説してるどこぞのコメンテーターはあれでプロなのか??

#大体からしてデリバの決済機関はカウンターパーティーリスクの連鎖防止の為に導入する話じゃねえのかと小一時間

と、テレビ見ながら一々悪態をつくおまいは何者だというツッコミはしないように(^^)。

なお、やってる取引そのものが如何な物かという点については厭債害債さんの所で熟知すべし。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201002/article_4.html


○雑談ばっかですいませんがGCとかのメモ

昨日のオペも当座預金残高16〜17兆円(つーか16.5兆円)になるような感じでの調節になっておりまして、GCレートちゃんも落ち着いて来ましたでござるの巻。今月はこの調子で16.5兆円をキープするのか何だか知りませんが、とりあえず先月の感覚からすると不足月で15兆円の当座預金残高で結構余剰感が出たので、16.5兆円だと何となく余剰感が爆発してきそうな予感。よー知らんがの。

で、早くも来月の話をしますと、来月は20日(正確には23日)に国債償還要因による大幅財政払い超がございまして、これがまた例によって例の如くここの払い超を跨ぐ資金供給が足りないという事になると、その前で足元レートがアレな事になるというような四半期ごとにやらかしているパターンになる悪寒もするのでありますけれども、今回はどういうオペレーションになるのやら。何か今の調子だと、足元余剰でレートが低いからということで、ショートファンディングが無駄に溜まって3月23日に向けたオペ期落ちでファンディングが重くなって足元が急に逼迫するとか言うようなお洒落な流れになるんでしょうな。とだけ申し上げておきたく存じます。

まあ足元落ち着いたからディーラーが持ちにしやすくなった事ですし、今日の3か月TBは別に安くはならんでしょ、と思います。


で、雑談その2ですが、昨日は衆議院予算委員会で山本幸三さんの質問があったようで、中継見てないから知らんですけど白川総裁との話はまたまた例によって例の如く平行線になったようで残念な事であります。本石町日記さんのエントリー(人のふんどしにも程がありますが)をご参照ありたし。
http://hongokucho.exblog.jp/12853094/

でまあ菅さんの発言が「追加緩和圧力」という文脈で解説されるのが何だかなあという感じですが(この記事ではそうは言ってません、念の為)。
http://mainichi.jp/life/money/news/20100217k0000m020060000c.html
菅財務相:消費者物価上昇1%程度を目標 衆院予算委

1%って低くねえかという話はさておいて(菅さんも言ってるけど)、目標とかデフレ宣言とか言うのは良いけど、おまいらのやっとる施策のどこがどう物価を上昇させるような政策なんだと小一時間問い詰めたいのでありまして(いやまあ思い切って財政発散させて悪性インフレにするのかも知れないが、それは国民厚生上全然幸せにならんじゃろ)、菅さんにおかれましてはとっとと具体策を出せと思うのであります。

#しかしまあ政府の役職に無い党の人が日銀にああだこうだ言っただけで物凄く批判してた野党時代のアレは何だったんだろうねと


ではまた性懲りも無く月曜からの続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm

○資産購入プログラムを「利下げ後の追加金融政策」と位置づけるとは

やっと後半なんですけどね(汗)。

『Monetary Policy and Asset Purchases』から始まる部分なんですけれども、途中から先は出口政策の手順の話になって、まあ将来のFEDのアクションがどうなるのかという話を考えた場合当然ながらそっちの方が重要なインプリケーションを持つのでありますけど、マニア的にはその前のパラグラフにも味わいを感じるのであります。

『In addition to supporting the functioning of financial markets, the Federal Reserve also applied an extraordinary degree of monetary policy stimulus to help counter the adverse effects of the financial crisis on the economy. In September 2007, the Federal Reserve began reducing its target for the federal funds rate from an initial level of 5-1/4 percent. By late 2008, this target reached a range of 0 to 1/4 percent, essentially the lowest feasible level.』

2007年9月から利下げ開始をしましたという話。で、現在の0〜0.25%は実務的にフィージブルなレベルとしては最低金利ということで、ゼロ金利とかマイナス金利というのも中々(話の上では可能となりますが)実務的には難しいざますということでしょうか。まあその辺はどーでも良いですが、あたくしが「ほほー」と思ったのはその次。

『With its conventional policy arsenal exhausted and the economy remaining under severe stress, the Federal Reserve decided to provide additional stimulus through large-scale purchases of federal agency debt and mortgage-backed securities (MBS) that are fully guaranteed by federal agencies. In March 2009, the Federal Reserve expanded its purchases of agency securities and began to purchase longer-term Treasury securities as well.』

伝統的政策(とは金利操作ですな)が弾薬打ち尽くしになったので、追加的な金融緩和策としてエージェンシー債とMBS債と財務省証券の大規模な買入を実施したと仰せです。それって今まで言ってた話と違いませんかねと思うのですが、その話は後ほど。

『All told, the Federal Reserve purchased $300 billion of Treasury securities and currently anticipates concluding purchases of $1.25 trillion of agency MBS and about $175 billion of agency debt securities at the end of March.』

というのは買入実績の話で、次がその効果に関して。

『The Federal Reserve's purchases have had the effect of leaving the banking system in a highly liquid condition, with U.S. banks now holding more than $1.1 trillion of reserves with Federal Reserve Banks.』

資産買入の効果のルートとして、銀行システムに潤沢な流動性を供給し、現在は超過準備が沢山ありますよという話をしています。

『A range of evidence suggests that these purchases and the associated creation of bank reserves have helped improve conditions in private credit markets and put downward pressure on longer-term private borrowing rates and spreads.』

ということで、資産買入とそれによってもたらされた超過準備がクレジット市場の環境を改善し、非金融セクターの長期借入金利低下やスプレッド縮小に寄与しているという説明になっています。


○何か微妙に説明が「量的緩和政策」になってね?という件について

とまあそういう事で、こちらの説明では銀行システムの超過準備がどうのこうのという話をしているのですな。これは話の流れ(今日は多分間に合わないので引用しませんが、この先に出口戦略の手順書の話があって、まず流動性吸収をするという話と、その際に超過準備が大量に存在した場合に実務上の問題点が生じると説明しているのだ)上そうなったのか、それとも「超過準備そのものの量に効果があった」と言っているのかが、微妙に曖昧な所がチャーミング。

と申しますのは、そもそも財務省証券の大規模買入を実施した時の昨年3月のFOMC声明文ではこんな話をしていた訳ですわな。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090318a.htm

『To provide greater support to mortgage lending and housing markets, the Committee decided today to increase the size of the Federal Reserve’s balance sheet further by purchasing up to an additional $750 billion of agency mortgage-backed securities, bringing its total purchases of these securities to up to $1.25 trillion this year, and to increase its purchases of agency debt this year by up to $100 billion to a total of up to $200 billion. Moreover, to help improve conditions in private credit markets, the Committee decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury securities over the next six months.』(2009年3月18日のFOMC声明文より)

まあ確かにさっきの議会証言にあるように、最終的には非金融セクターの借入環境が改善したのですけど、この当時の説明は「FRBは日銀のようなバランスシートの負債サイドを目標にした政策を実施していませんが何か?」という話ではなかったかと存じます次第です。

という点に関してはイエレンSF連銀総裁の昨年1月の講演が参考になるのですけれども、それまで引用してるとエライコッチャになるのでモノのURLと、参考になると思われるURLをつけておきます(とまた人のふんどし)。

http://www.frbsf.org/news/speeches/2009/0104b.html(イエレン講演)
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090111(himaginaryさんの解説)
http://d.hatena.ne.jp/a-kun/20090117(a-kunさんの解説)
http://hongokucho.exblog.jp/10230080/(本石町日記さんの解説)


ついでにSF連銀のサイトには中々便利な説明がありまして・・・・
http://www.frbsf.org/econanswers/response.htm

これは判りやすい(^^)。

でもって、こちらを拝読いたしますと、トップに出てくる連銀バランスシートのグラフなんぞが判りやすいと思うのですが、実際問題としてはFEDのバランスシートって資産買入を実施する前の各種流動性供給オペで既に絶賛大拡大しているのでありまして、そっちが減る中でここもとはエージェンシー債やMBSを買い取ってその規模が更に拡大しているという形になっているのですな。

つまり、超過準備の存在が各種スプレッドを下げているのではなくて(そらまあ危機が発生した後だったら流動性が無い中ではスプレッド下がらんから超過準備そのものは必要だと思うが)、あくまでも従来のFRBが説明していたように、連銀バランスシートの資産サイドで保有する特定市場の資産の構成によって、その特定資産市場の価格形成に影響を与えるというのが本筋なんだろうなあと思われます。超過準備の量があればスプレッドが縮小するというのであれば財務省証券だけ買っていれば良い話ですし、そもそも前半の拡大局面でスプレッドが縮小していて然るべきという話になりますし。

#実際のMBS金利の推移は「What has the Fed done about the economy?」って所をクリックして、そこから出てくる「Purchased longer-term securities to lower borrowing costs」という所をクリックするとグラフが出てきます

ただまあそれを議会証言で露骨に説明すると、またぞろ変な批判(金融業者救済批判)が出てくるので、超過準備がどうのこうのという見た目判りやすい上に特定業界救済と言われにくい説明をしてるんじゃないかという気がするのは気のせいでしょうか。

それから、さっきMBS金利の推移を出すためにここクリックしてねというのを書きましたが、そこには思いっきりこういう書き方に。

『Purchased longer-term securities to lower borrowing costs

The Federal Reserve purchased longer-term securities to lower the costs of mortgages and other loans.』

ということで、まあFEDの言い方を借りれば「量的緩和ではなく信用緩和」という話になるんでしょうなあと思うのですが・・・・・・・


○そこで思い出すのが福井俊ちゃんの説明。

まあおまけですが(汗)。

2005年5月13日の俊ちゃん講演より。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0505a.htm

最後の方に(金融政策の効果)ってのがありまして、そこでの説明が何か今般のバーナンキ議長議会証言(の原稿)に重なる所があるのかなあとか思うのは気のせいですかそうですか。

『こうした金融経済情勢の下では、機動的に潤沢な流動性を供給することで、人々や市場参加者の流動性に関する不安心理を抑制し、金融市場の安定化を達成することにより、緩和的な金融環境をしっかりと維持することが必要でした。例えば、2002年秋には、銀行株価の下落や不良債権処理についての方策を巡る不透明感が高まる中で、金融機関の流動性需要が増加傾向を辿りましたが、これに対応した潤沢な資金供給を続けることによって、金融市場は安定的に推移しましたし、企業金融の急激な引き締まりもみられませんでした。』

『この時期、見方によっては、「約束」の効果<いわゆる「時間軸」効果>よりも、流動性不安を鎮めることを通じる「量」の効果の方が大きかったといえるかもしれません。』

『その後、金融経済情勢は改善傾向にあります。2002年度以降、実質成長率が前年を上回って成長を続ける中で、消費者物価の前年比もほぼゼロ%近傍まで下落幅を縮小しました。緩和的な企業金融の環境が維持されていることがその支えとなっています。金融機関の自己資本比率の上昇、企業の財務体質や収益性の改善とともに、量的緩和政策の枠組みのもとで資金調達に対する安心感が定着していることが、こうした望ましい環境を作り出しています。』

『量的緩和政策の枠組みは、景気が回復に向かえば向かうほど、サポートする力も強くなります。この場合、「量」の効果との比較では、「約束」の効果の方に徐々にウエイトが移って来ます。』

それをFEDの場合はバランスシートの資産サイドの構成変化で示しているというのはちと拡大解釈にも程がありますかそうですか(汗)。

で、流動性吸収するのは良いけど、あの莫大なMBS債をバランスシートに置いたままで(償還まで5年とか掛かると思うのだが)どうするんでしょという話は明日以降(おいおい)。
















2010/02/16

お題「ほぼ昨日の続き」

本日は昨日の続きですがその前に雑談を少々。

○いろんな雑談

・GCレート当然ながら低下ですが

昨日は約定ベースで15日になったのでGCレートは当然の如く低下。おまけに昨日は当座預金残高を17兆円近く(昨日の速報時点で16.8兆円)に持って行くわ、今日の当座預金残高も現在の予想時点で16.5兆円となりまして、明日も今の時点で16兆円レベルに持って行ってます(明日の日銀券と財政需給は上田八木短資予想ベース)ので、そもそも当座預金残高をやや多めに持って行っている感じです。

つーこともありまして、オペによる供給ロットは減っているのでオペレートがまだ0.11%レベルなのですが、GCそのものは低下という感じになっておりまして、まあ結構な話ではないかと。ここで当座預金残高をキープとかやらかしていると、供給オペのロットがもうちょっと減る事になっていたので、中々GCが下がらなかったかもしれませんので、その辺りは考慮したオペの打ち方なのかなあという気も。まあ実際にどのあたりを考慮してるのかはよー知らんが(^^)。

ま、先週のレート上昇で「オペの供給が消極的」とか言われだした所でもありますので、ここで当座預金残高が増えた(実際のテクニカルな話をすれば資金余剰を抜けたので、ちゃんとトン調節に拘らない供給をすればまあ当然残高は増えるのですが・・・・・)のは「見せ方」としては宜しかったのではないかと思料。20日(というか22日)を跨ぐ共通担保も多めで無駄に短いオペが少ないのもまずまずなのかな。


・菅直人様最近どうしたのでせうか

http://www.excite.co.jp/News/politics/20100214/20100215M10.047.html
2010年2月14日 20時07分 ( 2010年2月14日 21時15分更新 )
<菅財務相>消費税議論「3月から」 大幅前倒し意向

まあ今更のニュースですけれども、先般のサミットで何か変な物でも食べたのか、首脳会談で現(?)実に目覚めたのか、はたまた小沢幹事長問題で支持率も下がってきたのでここで一発独自色を出そうという政治的配慮なのかは全く存じませんが(^^)、急に言ってる話が変わってきた気がします。

前もネタにしましたが先日の発言→
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK037453620100208

もびっくらこきましたが、菅先生はどうなってしまったのでしょ。

#理念先行の無茶ではない現実的な対応をするようになったというのであれば慶賀の限りですし、選挙するなら大歓迎ですけどね

というのが雑談でした。


以下昨日の続き。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm

○ドル資金スワップの説明でも議会向け説明成分が

次の部分は各国中銀間のカレンシースワップの導入の説明でして、米国市場の緊張が世界のドル取引市場に広がった為に、各国の中央銀行と協力してドル資金供給を行ったという話をしています。

そこでの議会向け成分としては、「そもそもそれは米国の為にもなる話」というのと「そのドルスワップでの資金供給は各国の中央銀行の責任によって行われる」というのがあります。まあそれを議会向けご説明とするのもちと意地悪かな?

『Liquidity pressures in financial markets were not limited to the United States, and intense strains in the global dollar funding markets began to spill over to U.S. markets. In response, the Federal Reserve entered into temporary currency swap agreements with major foreign central banks. Under these agreements, the Federal Reserve provided dollars to foreign central banks in exchange for an equally valued quantity of foreign currency; the foreign central banks, in turn, lent the dollars to banks in their own jurisdictions. The swaps helped reduce stresses in global dollar funding markets, which in turn helped to stabilize U.S. markets. Importantly, the swaps were structured so that the Federal Reserve bore no foreign exchange risk or credit risk.3』

で、脚注3ですが。

『3. In particular, foreign central banks, not the Federal Reserve, bore the credit risk associated with the foreign central banks' dollar-denominated loans to financial institutions.』

とまあご丁寧に「これはFRBがクレジットリスクや為替リスクを取ってはいませんですよ」という説明をしている訳ですな。


○んでもってその他の各種措置の説明が続く

金融市場の問題は従来のFRBのオペレーションの主対象である預金金融機関だけに留まりませんというのがまずはマクラ。

『As the financial crisis spread, the continuing pullback of private funding contributed to the illiquid and even chaotic conditions in financial markets and prompted runs on various types of financial institutions, including primary dealers and money market mutual funds.4』

脚注4はプライマリーディーラーとは何ぞやという話なので引用割愛。

『To arrest these runs and help stabilize the broader financial system, the Federal Reserve used its emergency lending authority under Section 13(3) of the Federal Reserve Act--an authority not used since the Great Depression--to provide short-term backup funding to certain nondepository institutions through a number of temporary facilities.5』

で、そのSection 13(3)について脚注5で説明してます。

『5. Section 13(3) of the Federal Reserve Act authorizes Reserve Banks to lend to individuals, partnerships, and corporations in "unusual and exigent circumstances" as determined by the Board of Governors. The Federal Reserve invoked Section 13(3) on two occasions during the 1960s to establish lending facilities for savings associations; however, no credit was extended through either facility.』

ということで、非常かつ緊急と連邦準備委員会が認定した場合は、個人や企業や組合組織みたいな所への貸出を行えるということで、2度ほど貸出ファシリティーを作ったことがあるけれども、結局発動はしなかったという事のようです。

で、以下各種流動性ファシリティの説明です。

『 For example, in March 2008 the Federal Reserve created the Primary Dealer Credit Facility, which lent to primary dealers on an overnight, overcollateralized basis.』

ということで、PDCFですが、翌日物で担保の掛け目を確保した状態で実施していますと説明しているのですな。以下まあそんな感じで説明が続くのだ。

『Subsequently, the Federal Reserve created facilities that proved effective in helping to stabilize other key institutions and markets, including money market mutual funds, the commercial paper market, and the asset-backed securities market.』

MMFやCP向けや資産担保証券向けの流動性ファシリティですわな。


○で、その各種流動性プログラムは終了の方向ですよと

次のパラグラフは、金融環境の改善でこれらのファシリティーの利用が減って来て、TAFとTALF以外のプログラムは終了ですという説明をしています。で、その利用が市場環境が改善すると減るようになったのは、(1)ファシリティーの金利を市場が改善した場合には利用されないようなやや高めの金利に設定していること、(2)そうでないファシリティーではオファーの額を徐々に減らしていること、という説明になっております。脚注も含めてまる引用。

『As was intended, use of many of the Federal Reserve's lending facilities has declined sharply as financial conditions have improved.6』

『6. In designing its facilities, the Federal Reserve in many cases incorporated features--such as pricing that was unattractive under normal financial conditions--aimed at encouraging borrowers to reduce their use of the facilities as financial conditions returned to normal. In the case of other facilities, particularly those that made available fixed amounts of credit through auctions, the Federal Reserve has gradually reduced offered amounts.』

で、各種ファシリティーが2009年中や、2月1日で終了し、TAFやTALFの今後の措置について説明しています。まあこれは予定通りのスケジュールの話ですがきちんと説明しています。俺様備忘録として整理の為に引用しますが、皆様既にご案内の通りかと存じます(汗)。

『Some facilities were closed over the course of 2009, and most other facilities expired at the beginning of this month. As of today, the only facilities still in operation that offer credit to multiple institutions, other than the regular discount window, are the TAF (the auction facility for depository institutions) and the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF), which has supported the market for asset-backed securities, such as those that are backed by auto loans, credit card loans, small business loans, and student loans.』

『These two facilities will also be phased out soon: The Federal Reserve has announced that the final TAF auction will be conducted on March 8, and the TALF is scheduled to close on March 31 for loans backed by all types of collateral except newly issued commercial mortgage-backed securities (CMBS) and on June 30 for loans backed by newly issued CMBS.7 』

残っている流動性ファシリティは「自動車ローン、クレジットカードローン、小規模事業主向けローンや学生向けローンなどのようなローン」を対象にする資産担保証券市場をサポートしているものですが、とわざわざ説明している所が議会対策っぽくてチャーミングな所でもあります。



○とまあここまで読むと「公定歩合引き上げ」が全然利上げと関係ない話と判るかと

てな話の流れの先に「ディスカウントウィンドウ金利の引き上げ」(小見出しでは長いので思わず公定歩合とか書きましたが^^)の話が出てくるのでありまして、これ即ちディスカウントウィンドウの引き上げそのものへの政策的インプリケーションはあくまでも「金融市場の機能不全対策の終了」という事であって、金利政策の変更を企図するものではないという事が読みとれるかと存じます。次のパラグラフにディスカウントウィンドウの話が。

『In addition, the Federal Reserve is in the process of normalizing the terms of regular discount window loans. We have reduced the maximum maturity of discount window loans to 28 days, from 90 days, and we will consider whether further reductions in the maximum loan maturity are warranted. Also, before long, we expect to consider a modest increase in the spread between the discount rate and the target federal funds rate.』

ということで、ディスカウントウィンドウの借入期間を90日から28日に短くしましたが、その一環として遠くないうちにFF誘導金利とディスカウントウィンドウのスプレッドを拡大するという話をしているのですな。

『These changes, like the closure of a number of lending facilities earlier this month, should be viewed as further normalization of the Federal Reserve's lending facilities, in light of the improving conditions in financial markets; they are not expected to lead to tighter financial conditions for households and businesses and should not be interpreted as signaling any change in the outlook for monetary policy, which remains about as it was at the time of the January meeting of the FOMC. 』

ここまでの説明の流れからすればそーゆー話になるという事でございます。


○ということで金融市場の機能不全対策に実施した政策のまとめ

次のパラグラフが金融市場の機能不全対策に実施した政策のまとめですが、ポイントとして(1)期間が90日以内の短いターム、(2)FEDはこれらの流動性供給プログラムは担保掛け目をしっかり確保するか、法的に保全された形で行っている(って言ってるけどそれはマジかいなという疑問はあるけどね、特に掛け目部分)、という所で、その効果として、金融市場の機能不全を解消する事によって、経済の回復に資するという説明になっています。

『In summary, to help stabilize financial markets and to mitigate the effects of the crisis on the economy, the Federal Reserve established a number of temporary lending programs. Under nearly all of the programs, only short-term credit, with maturities of 90 days or less, was extended, and under all of the programs credit was overcollateralized or otherwise secured as required by law. The Federal Reserve believes that these programs were effective in supporting the functioning of financial markets and in helping to promote a resumption of economic growth.』

で、これらのプログラムでFRBは損失が発生していないし、将来も損失は発生しないと思いますとわざわざ強調するのが議会証言クオリティ。

『The Federal Reserve has borne no loss on these operations thus far and anticipates no loss in the future. The exit from these programs is substantially complete: Total credit outstanding under all programs, including the regular discount window, has fallen sharply from a peak of $1-1/2 trillion around year-end 2008 to about $110 billion last week.』


○流動性対策の最後にしらっとベアーとAIGへの融資の話をしています

まあここは苦しいのでうだうだ説明しないというのも議会証言クオリティ。

『Separately, to prevent potentially catastrophic effects on the U.S. financial system and economy, and with the support of the Treasury Department, the Federal Reserve also used its emergency lending powers to help avoid the disorderly failure of two systemically important financial institutions, Bear Stearns and American International Group.』

さよですな。

『Credit extended under these arrangements currently totals about $116 billion, or about 5 percent of the Federal Reserve's balance sheet. The Federal Reserve expects these exposures to decline gradually over time. The Board continues to anticipate that the Federal Reserve will ultimately incur no loss on these
loans as well.』

ほうほうそうですかそうですか(棒読み)

『These loans were made with great reluctance under extreme conditions and in the absence of an appropriate alternative legal framework.』

わしはこんなローンはやりとうなかったが、金融システム全体に影響を及ぼす非常事態で他に方法は無かったと。

『To preclude any future need for the Federal Reserve to lend in similar circumstances, we strongly support the establishment of a statutory regime for the safe resolution of failing, systemically important nonbank financial institutions.』

ということで、今後は別の法的枠組みが必要です、という所で締めています。以下明日以降へ。


#まだまだこのネタを引っ張るのは相場がネタ不足だからだろうというツッコミはしないように











2010/02/15

お題「読んでみると中々味わい深いバーナンキ証言」

中々興味深いモノでマニア歓喜という感じでありまする。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm

○まず最初に感想その他を並べておきます

この議会証言(の原稿)ですが、前半が今次金融危機に対応した各種施策の説明、後半が今後の政策に関する説明になっております。

従いまして、当然ながら今後の政策インプリケーションという意味で言えば後半の方が相場的には大事なので、大体そっちの解説が多い訳なのですが、前半部分の各種政策の説明部分も中々味わいの深いものでありまして、まあその辺りから読むとこれがマニア的には大変に宜しいのではないかと存じますが、問題は世の中にそんなマニアがいるのかが判らない所であります(−−)。

つーことで前半も読んでみますが、その前に感想を申し上げると、(1)資産買入(=米国財務省件とMBS)と流動性供給プログラム(=TAFその他諸々)の区別を行っている、(2)資産買入の効果に関して「銀行システムに対しての流動性供給」に加え「大規模な超過準備の供給」ルートを言及している(ので益々説明がカオスになっているのですが・・・・)、(3)議会向けの説明だからだと思うのですが、やたらと「FRBに損失が生じない」「銀行への補助金ではない」という話が目立つ、という感じでしょうか。

あと、後半の出口政策の手順ですが、その手順的には普通に行けば、(1)各種の流動性吸収措置のテストを実施して徐々に慣れる、(2)各種措置の額を拡大してリザーブを目に見える形で減らす(3)準備預金の付利金利を引き上げる(=利上げ)となるようなのですが、場合によっては(2)を端折ることもあるとゆー話。では資産売却はど〜するのかと言いますと、基本的には実施しなくて済むものなら実施しないというのが今回の講演で示されたという所です。強烈な引き締めが必要な時には実施するという説明になっていますな。ちなみに実施タイミングに関しては正直言って曖昧な説明、今日明日に実施する訳ではないと言うことだけは明らかですけれどもね。

それから、FF金利がコントロールできない(まあ今でも結構怪しいのですが)事に関連して、引き締め過程の中では「準備預金の付利金利」と「超過準備額」を政策の「スタンスを示す」指標として使うというコミュニケーションポリシーについても言及しているのが興味のある所でして、まあ要するに超過準備の存在によって、FFレートの能動的なコントロールが難しくなった場合に「政策がちゃんと出来ていないのではないか」と言われるのを防がないといかんという極めて実務的な話をしているのですな(だからリザーブ目標を設定と言っても日本の量的緩和政策でのリザーブ目標とは全然意味が違いますわな)。

とまあそんな感じでございますが、さてまあ最初の方から読んでみたく存じますです、はい。


○政策を「流動性供給プログラム」と「利下げ+資産買入」に分けています

従来は資産買入に関して、流動性供給プログラムとの違いについての説明を曖昧にして通していましたが、今回は資産買入を利下げと同じ方向で説明しているのが「ほうほう」という感じでございます。

『Broadly speaking, the Federal Reserve's response to the crisis and the recession can be divided into two parts.』

ということで二つに分かれるとな。

『First, our financial system during the past 2-1/2 years has experienced periods of intense panic and dysfunction, during which private short-term funding became difficult or impossible to obtain for many borrowers. The pulling back of private liquidity at times threatened the stability of major financial institutions and markets and severely disrupted normal channels of credit.』

ここまで金融市場の混乱で流動性危機が生じましたという話ね。

『In its role as liquidity provider of last resort, the Federal Reserve developed a number of programs to provide well-secured, mostly short-term credit to the financial system.』

で、そのために中央銀行が最後の流動性供給者(って言葉があるのか)として金融システムに「well-securedでmostly short-termな流動性プログラム」を作りましたということで、ここでは「短期資金の供給」と「担保を十分に取って」という所をポイントにしていますな。つまりTAFとかの流動性供給プログラムのことになるのですが。

『These programs, which imposed no cost on the taxpayer, were a critical part of the government's efforts to stabilize the financial system and restart the flow of credit.1』

ここの所が議会向けだなあと思う所でして、「no cost on the taxpayerですよ」という話をした上で、脚注では「上手く行ったら収益も出ますけれども、まあそれはおまけみたいなもんです」という話までわざわざするのがチャーミング。

『1. Indeed, when the final accounting is complete, these programs are likely to generate significant positive returns for taxpayers. Of course, stabilization of the financial system, not profit, was the principal goal of the programs.』

この先でもこういう議会向けの話、つまり「FRBは納税者の資金で金融業界への利益誘導を行ってケシカラン」という類の批判に対応した説明が随所に出てくる所が、議会(など)からの風当たりが強いのですねえというのは把握した。

『As financial conditions have improved, the Federal Reserve has substantially phased out these lending programs.』

ということでこの辺の各種プログラムは現在既に出口過程ですという話ですな。


んでもって資産買入は次の分類になるのでして・・・・・

『Second, after reducing short-term interest rates nearly to zero, the Federal Open Market Committee (FOMC) provided additional monetary policy stimulus through large-scale purchases of Treasury and agency securities.』

ということで、財務省証券の購入とエージェンシー債の買入に関しては、利下げに続く「monetary policy stimulus」という位置づけになっています。まあそりゃエージェンシー債は兎も角、米国国債市場の方は別に機能していない訳では無かったのですから、最初の部分に入れるのは無理がある話だったのですが、財務省証券の買入を決定した時にはこういう切り分けをしないで曖昧な状態で実行していたのでありまして、まあ事後的に整理したという感じでしょうか。

『These asset purchases, which had the additional effect of substantially increasing the reserves that depository institutions hold with the Federal Reserve Banks, have helped lower interest rates and spreads in the mortgage market and other key credit markets, thereby promoting economic growth.』

というのが資産買入の効果という話なのですが、ここの説明は結構インチキ成分が入っていると思われるのでありましてですな、銀行リザーブ(超過準備)に関しては、各種流動性プログラムの実施(つまり分類の前の方)によって急速に拡大したものでありまして(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0907c.pdfの44ページにある図表17-1をご参照)、金融機関に対する超過準備供給がモーゲージ金利やクレジットスプレッドの縮小に効いたというのは(タイムラグを伴って効いたというのかも知れませんが)説明としてどうなのよという感じです。

ついでに言えば、財務省証券の買入に関してはアナウンスを行った所で金利が下がったものの、その後は金利が上昇しましたよねという話はあります(買入によって国債増発による金利上昇をあの程度で抑制できたという説明はあると思いますが)ので、これまた微妙な話ではあるのですが、まあそれは兎も角。

『Although at present the U.S. economy continues to require the support of highly accommodative monetary policies, at some point the Federal Reserve will need to tighten financial conditions by raising short-term interest rates and reducing the quantity of bank reserves outstanding. We have spent considerable effort in developing the tools we will need to remove policy accommodation, and we are fully confident that at the appropriate time we will be able to do so effectively.』

と言う事で、米国経済は依然として緩和的な金融環境を必要としているけれども、将来のどこかでは短期金利の引き上げと過剰なリザーブの吸収を行って金融引き締めを行なう必要が出るでしょう、というのは当然な一般的な話ですが、引き締め実施の為の道具に関しては色々と努力していますよという話ですな。


で、この次は「Liquidity Programs」と「Monetary Policy and Asset Purchases」の二つに分けて説明が行われます。特に流動性プログラムに関しては「どのような施策を行いました」という点について調節技術的な論点も加えながら説明しているのがチャーミングなのであります。


○各種流動性プログラムに関して:ディスカウントウィンドウとTAF

『With the onset of the crisis in the late summer and fall of 2007, the Federal Reserve aimed to ensure that sound financial institutions had sufficient access to short-term credit to remain sufficiently liquid and able to lend to creditworthy customers, even as private sources of liquidity began to dry up.』

という流動性枯渇状況に対応してまず最初に行ったのはディスカウントウィンドウへのアクセスを容易にしたという話が続きます。

『To improve the access of banks to backup liquidity, the Federal Reserve reduced the spread over the target federal funds rate of the discount rate--the rate at which the Fed lends to depository institutions through its discount window--from 100 basis points to 25 basis points, and extended the maximum maturity of discount window loans, which had generally been limited to overnight, to 90 days.』

ディスカウントウィンドウとFF誘導目標の間のスプレッドを100bpから25bpに下げて、借入期間を翌日物(1日)から90日に延長しましたと。

『Many banks, however, were evidently concerned that if they borrowed from the discount window, and that fact somehow became known to market participants, they would be perceived as weak and, consequently, might come under further pressure from creditors.』

次にありますけど、いわゆるstigma問題って奴でディスカウントウィンドウへの借入をしたがらない銀行が多くて、中々この改善を行ってもワークしなかったので、次にあるTAFを突っ込んだと。

『To address this so-called stigma problem, the Federal Reserve created a new discount window program, the Term Auction Facility (TAF). Under the TAF, the Federal Reserve has regularly auctioned large blocks of credit to depository institutions. For various reasons, including the competitive format of the auctions, the TAF has not suffered the stigma of conventional discount window lending and has proved effective for injecting liquidity into the financial
system.2 』

TAFプログラムがstigma問題を回避する為に実施されたという話ですが、んじゃ何で回避できたかという点についえ、オークションが競争入札方式であるという話と、脚注の2番も見ますと、当日取引じゃなくて先日付取引なのも理由ですという説明をしています。うーんそうなのかなあという気もするけどまあいっか。

『2. Another possible reason that the TAF has not suffered from stigma is that auctions are not settled for several days, which signals to the market that auction participants do not face an immediate shortage of funds.』


#お気づきになられていると思いますが、延々と逐語訳をしている状態(冒頭の挨拶だけスルーしましたが)ですので長くなりまくりで今日は時間と量の都合上ここまでなのでありました。どうも長くてスイマセンが、ここまでの各種施策の整理に丁度良い講演だと思いますのでまだまだ続くのであります










2010/02/12

お題「国内の相場がどうにもこうにもなので外ネタで」

あまりの寒さに冬眠状態でしたな。

ところで、今朝のモーサテの「五味さんが斬る」みたいなコーナーの冒頭に五味さんが「間違いない」「確実に言える」とか言ってる画像を出しているのだが、いやまあ金融取引業者じゃないから言っても良いんでしょうけれども、金融庁長官だった人が「断定的判断の提供」っぽくて何だかなあ。どうもモーサテって編集のセンスが微妙にアレなのよね。

#っていちゃもんが細かいあたくしのセンスが変ですかそうですか


○カード業界の会合みたいな所でのNyberg副総裁の講演から

水曜に予告編と申し上げたRiksbankのネタですが。
http://www.riksbank.com/upload/Dokument_riksbank/Kat_publicerat/Tal/2010/tal_100120e.pdf

まあ金融政策とは関係ないですが興味本位で読んでみた。

・カード払いが発達しているようで

『The payment behaviour of the Swedes』って所を読みますと、スウェーデンでの支払いに関する状況の話があってほほーと思うのでありまする。

『According to the surveys conducted in 2006, approximately half of the interviewees used cards as the means of payment for at least 80 per cent of all purchases. Today, almost two-thirds of the interviewees use cards as the means of payment for all purchases.』

日本とはだいぶ違いますな。

『The great majority of the interviewees in the autumn survey, 95 per cent, had a debit card. A much smaller percentage, 40 per cent, had a credit card. Debit cards were used in 96 per cent of all card payments. This is an increase since the survey in 2006, when debit cards were used for 80 per cent of all card payments. Credit cards thus seem to have become relatively less important ? at least in terms of the number of payments.』

あたしゃカード払いというものを全然しない(手元に金がある限りは現金払いで、無い時は買わない)人なのでよー知らんのですけれども、確かに日本でもスーパーとかの小口決済でもカードを使う人がいますなあとか思って読んでたのですが、クレジットカードよりもデビットカードの方が利用が多いと書いているようで、益々イメージしにくいあたくし(^^)。

『Despite the fact that card payments predominate in terms of both the number and value of payments, the Swedish public still prefers cash to cards for purchases of less than SEK 100. Our survey shows that as many as 22 per cent choose cash for purchases between SEK 100 and SEK 500. For amounts under SEK 100, cash is preferred by 63 per cent. There are no fully?comparable figures from any of the surveys carried out in 2006, but in 2006 the "average consumer" did not choose to pay by card until the purchase sum exceeded SEK 123.4』

SEKって10円から15円くらいの間だったと思いますので、平均的な消費者は2000円程度を上回る支払いは主にデビットカードを使って決済してるという話のようですな。結構なカード社会ですなあ。


・カードと現金のどちらを使うのか

『So what governs the choice between cash and cards? The most important factor, according to our survey, is that the means of payment is perceived as being convenient.』

そらそうですな。

『Those who prefer cash also say that to a certain extent it may be a case of old habits dying hard, or that they happened to have cash on them and therefore used it. Those who prefer cards say instead that one of the reasons is that they do not like to walk around with cash.』

(^^)。

『A comparison of the interviewees' attitudes to cash and cards also reveals that cash is perceived as being more secure, while cards are seen as being somewhat less secure.』

まあ確かにアンケート調査でそういう答えを人に向かってするのもちと気が引けるのですが、ここで現金の匿名性に関する話が特に無い(まあ強いて言えば「現金がカードより安全」という所に含まれるのかもしれませんけれども)のが興味深い所です。

どっからどこまでがという線引きは難しいですが、日本の現金志向には現金の匿名性を選好する面もあるやに聞いております(正直、あたしも日々の全部の買い物のデータがカード会社に行くのは、カード会社に毎日の行動をディスクローズしてるみたいで気分的にどうもと)のですが、その辺りの話がそんなに強調されていないのが、まあ国によって違うんだなあと思うのでした。


『There is also a clear generational aspect to the choice of means of payment. The youngest age group, those under 25, feel a greater sense of security when using cards than the other age groups and are more than willing to use their cards to pay small sums.』

ああはいはいあたしゃ年寄りですよ年寄りですよ。

『Those who are 45 or older pay with cash to a greater extent. The oldest age group, those who are 65 or older, prefer to pay with cash, even when they buy something that costs over SEK 500. This tendency is the same now as it was in the previous survey.』

はいはいあたしゃ65歳以上65歳以上(違)。


・現金とカードの社会的なコスト差に関して

その次の『What does it cost to pay?』って所から。

『Should the trend towards increasing card payments and decreasing cash payments be regarded as positive or negative? One way of attempting to answer this question is to consider the cost to society of various payments. If the payment system is to be efficient, these payments should reasonably cost as little as possible.』

ということですが、この調査をしているのがRiksbankということで、決済システムに関する調査なんだから中銀がやっても不思議でも何でもありませんが、なんかチャーミングですね。

『A study of data from 2002 conducted by the Riksbank revealed that each cash payment cost society an average of SEK 4.6, while each card payment cost SEK 3.0.』

へー。

『The costs associated with the use of cash included not only the handling and transport costs of the banks and shops but also an estimate of the time consumers spent on fetching and taking care of the cash.』

上記の数値には色々なものを勘案しているということだそうで。しかし細かいわ。

『The variable costs are considerable, that is it costs more to handle a large sum than a small sum. Cash has to be counted, transported and stored. This is not the case with cards. There are major fixed costs in the form of an infrastructure that includes terminals and communication lines, but the variable costs are small. It is not more expensive to handle a card payment of SEK 50 000 than a payment of SEK 50.』

決済の額が大きくなると更にカードの優位性が高まるということですが、現金は現金として貯蓄というか保管可能という面はまあ決済に関しては別の話ですが、さらりと触れているのがチャーミング。

『From this it was possible to calculate that, in 2002, it cost society less when payments were made using cash providing that the sum involved was less than approximately SEK 70. For sums higher than this it was cheaper to use cards.』

ということで、SEK70とは結構小額ですなあと思う次第で、スウェーデンって行った事無いから全然判らないのですが、カード社会でインフラが整っているのでしょうか。人口密度とかも影響するのかなあとシロートながらに思うのでした。

従ってさっきありましたように平均的な消費者はSEK123以下では現金で決済するようですので、このような結果になります。

『If we now compare this with the choices that the consumers actually made, the conclusion is that in 2002 it would have been better from the point of view of the Swedish economy if the consumers had made more payments by card and fewer payments in cash. From society's point of view, it was profitable to pay by card when the sums were higher than SEK 70, but, as was the investigation from 2006 made evident, the “average consumer” nevertheless chose to wait until the sums were higher than SEK 123.』

何と言うお節介な推奨(^^)。いやまあカード協会みたいなところ(Nordic Card Markets, Stockholm)での講演だからそういう話をしてるというのもあるでしょうけれども(^^)。


・結局は手数料などで選好されるとな

その次の『Highlight the charges!』って所では、まあ要するに価格で差を出すのが大事でしょというお話をしてたりするのであります。つまり、上記のような社会的なコストがどうしたこうしたなんぞは一般消費者が知る訳でもないのでして、実際はどうなのよとなりますとこうなるのでした。

『Previous experience in both Sweden and Norway shows that the choice of means of payment is price-sensitive.』

そらそうよ。

『In Norway, electronic payments, including card payments, increased very quickly after the banks introduced charges better reflecting the actual cost of the various means of payment. Among other charges, there exists in Norway a small charge for cash withdrawals from ATMs.』

それはそれは。

『In Sweden, we virtually stopped using cheques when the banks began to charge for them. These two examples show that consumers' choices between the various means of payment change significantly when they become aware of the costs.』

つーことで、まあ日本で何だかんだ言って現金決済が選好されるのは、現金を扱うコストが安いというのがあるでしょうし、この状況っていうのは中々簡単に変わらない(ATM使うたびにチャージするような事をしたら一気に顧客が全員離れてもおかしくないですからね)でしょうし、じゃあカード使ったらお安くしますみたいなのって、まあ色々とやってますけど、現金選好の強い人がわざわざ移行する程のものでもないでしょうし、という所なのでしょうか。

で、以下はカードのセキュリティに関する話があって、その取り組みに関する話も結構面白いのですが、まあ割愛します。最後の『Summary』の所にその辺りに関する部分が2つあるのでそれを引用で勘弁。

『The increasing use of cards places increasingly high demands on safety and on the reliability of the technical infrastructure that supports the cards. Banknotes retain their value as a means of payment even if the technical infrastructure is off line. Cards only work when the infrastructure does.』

『Private individuals feel a greater sense of security with cash than with cards. If card usage is to increase, it must become safer to use cards in shops as well as on the Internet. Clear information on the frauds that are committed can also serve to reduce uncertainty among consumers.』

さよですな。


○本当はマジメに読まないと行けないのですが出口政策云々の講演原稿

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100210a.htm
Federal Reserve's exit strategy

お題がもうモロにアレなのでして、おまけに昨日の朝には出ていたのでして本当はこっちをネタにしやがれという所ですが、何分にも昨日は冬眠をしておりまして、いわゆるひとつのスリープ状態のPCのようなもんでしたので、まあ本職の方がレポート出してるでしょうから読むのが吉。

・・・・で話を終わらせるのも何ですが、超いい加減に読んだ所では、利上げプロセスに入った所での流動性回収に関して結構気にしている(当たり前だが)感じです。つまりまあこの辺とかね。

『In due course, however, as the expansion matures the Federal Reserve will need to begin to tighten monetary conditions to prevent the development of inflationary pressures.』

ほうほうそれでそれで。

『The Federal Reserve has a number of tools that will enable it to firm the stance of policy at the appropriate time.』

まあそのツールが動くかが怪しいと思ってるからそういう話になるんでしょうな(^^)。でもってそれをテクニカルにどうするのという話は、この辺にある準備預金への付利とか。

『Most importantly, in October 2008 the Congress gave the Federal Reserve statutory authority to pay interest on banks' holdings of reserve balances. By increasing the interest rate on reserves, the Federal Reserve will be able to put significant upward pressure on all short-term interest rates, as banks will not supply short-term funds to the money markets at rates significantly below what they can earn by holding reserves at the Federal Reserve Banks. Actual and prospective increases in short-term interest rates will be reflected in turn in longer-term interest rates and in financial conditions more generally.』

ただGSEみたいな人の所に金が行った状態が継続すると、結局の所実効FFレートが誘導目標よりも下がるという状態になりそうな悪寒も。


『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools it will be able to use to reduce the large quantity of reserves held by the banking system. Reducing the quantity of reserves will lower the net supply of funds to the money markets, which will improve the Federal Reserve's control of financial conditions by leading to a tighter relationship between the interest rate on reserves and other short-term interest rates.』

『One such tool is reverse repurchase agreements (reverse repos), a method that the Federal Reserve has used historically as a means of absorbing reserves from the banking system. In a reverse repo, the Federal Reserve sells a security to a counterparty with an agreement to repurchase the security at some date in the future.』

というような感じで、リバースレポだのトライパーティーのリバースレポだの資産売却だのという話をしておりまして、この前実施する事を決定したという定期預金プログラムもありーのと、まあ色んな道具だけは揃えていますという話をアピールして、金融機関救済批判がやかましい議会へのアピールもしているということでしょう。

まあ議会向けアピールは兎も角として、続々と色々な道具を用意しているという事は、逆に言えばそれだけ流動性回収に関して気にしているという所なのではないかと思います。

と、出口政策の技術的な話をしているのですけれども、さっきの頭の部分で、毎度お馴染みの文言があるのでして、出口政策のネタから早期利上げ観測が起きても困るというのがまた運営の難しい所という感じでしょうか。本命は「早めに1%位まで利上げしてからゆっくり利上げ」としたいのですが、何かこの調子だと「利上げの着手が遅れて結局ホイホイと利上げをしないと間に合わなくなる(でも間に合わない)」という前回の流れを踏襲しそうな悪寒がしますわな。

『The FOMC anticipates that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』


#まあ超簡単にしか読んでないので読みに抜けがあったら勘弁







2010/02/10

お題「あまり変わった事も無いので雑談は続く」

救済観測やら死亡観測やら毎日ご苦労なことですなあ(棒読み)

○ということで一応ニュースに釣られてみる

ロイター(ただしインターネット版)で「ギリシャ」で検索を掛けるとニュースヘッドラインが出るわ出るわ。下記以外でもうじゃうじゃ出て来るのですけれども。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJT862267720100209
UPDATE1: ECB当局者がギリシャ支援不可能と再表明、他国への拡大を懸念
2010年 02月 10日 01:59 JST

http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-13811520100209
ユーロ圏、ギリシャ救済で原則合意=ドイツ与党筋
2010年 02月 10日 02:31 JST

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJT862275320100209
ドイツ政府、ギリシャ救済決定めぐる報道を「根拠なし」と否定
2010年 02月 10日 03:11 JST

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13812920100209
EU、必要ならギリシャ支援すると確信=ボルトガル財務相
2010年 02月 10日 04:55 JST

結局救済するのか救済しないのかさっぱり分からないのですけれども、市場の動きを見ますとまあ救済の線みたいですし、そもそもからしてEMUを維持する為に突っ込みましょうという話に最終的にならざるを得ないのでしょうけれども、ドイツやフランスとかベルギーとかから見てギリシャなんぞ何で救済せにゃならんのよという一般ピープルの声が出てきても不思議じゃないと思うのですがどうなんでしょ。

いやまあドイツから見てイタリアとか比較的ご近所さんですし、フランスから見てスペインはお隣さんですし、まあそのあたりにどうのこうのという話ならまだ政治的に話を付けやすいでしょうけれども、バルカン半島の先っぽとか思いっきり視野の向こう側のような気がするんだが大丈夫なんでしょうか。

#まあ国の規模が小さいからそんなにコスト掛からないというのが救いなのかな

EMUって追放するという仕組みになっていないので、自主的にご退出頂かないとどうしようもない所でして、今回は救済するにしても相当厳しいことをしないと、ユーロシステムただ乗り攻撃が横行してそもそもユーロがカオスになってしまいますでしょうから、まあ生温かく見守って参りたいと存じます。

#ということで結論は無い

そういやちょっと調べたい事があって、ギリシャ中銀のサイトを見に行ったのですが、何か新着情報が全然更新されてないような気がする素敵なサイトでございましたとさ。

http://eng.bankofgreece.gr/en/(英語トップページ)
http://eng.bankofgreece.gr/en/lateinfo/(新着情報なのかこれ??)

なお、ギリシャ語版は無教養のあたくし1ミリも解読できません><;
http://www.bankofgreece.gr/Pages/default.aspx


○まだ0.11%台ではございましたが

昨日の3か月TB入札結果
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220209.htm

(3)募入最低価格 99円97銭0厘5毛
(募入最高利回り)(0.1183%)

(5)募入平均価格 99円97銭0厘7毛
(募入平均利回り )(0.1175%)

・・・・ということで資金余剰感爆発でGCレートがベタベタになって、あたくしが「先生!うちの短期市場ちゃんが」とか言ってた先々週(1/27)の3か月TB入札では平均0.1112%という素敵なレートになりました(で、先週は平均0.1138%でしたが足切りも0.1138%でした)が、今週は昨日書いたように、と思ったら何と日経朝刊のマーケット面でも「日銀の資金供給鈍化 短期金利、一部で上昇」という記事が出てたようですが(日経読まないから人から聞いて知ったのがアホウな所ですが)、まあ今週の共通担保期落ち祭りに対応してやや足元GCの市場調達ウェイトが上がってGCレートが上昇した事を反映してレートが上昇でござるの巻となったようですな。昨日の新型指値オペの応札も増えて按分減ってたから「超低金利」のニーズも相対的に増えたということですな。

まーこの前からしつこく書いておりますが、2月は月初に財政の揚げ(主に法人税納税)で大きな財政揚げ超があって(5日には10年国債発行で2兆以上の揚げ超もある)、第1週の大幅資金不足に対応してオペが結構な勢いで打たれていたので、資金調達サイドがオペでのファンディングをしやすくなり、結果として市場での要調達額が軽くなって、GCレートが0.105%だのオペレートが0.10%だので安定しておった訳ですな。で、その間のスタンスが割と安定してましたし、1月は無担保コールの月中平均金利が0.10%を堂々割り込みましたが特にキニシナイという感じでしたから、市場的には「ああやっと日銀はGCなどを下限で張り付けるような運用をするようになったのね」というイメージを持った所だったんですなこれが。

ところが、15日の4兆円資金余剰を前にしての今週のオペ期落ち祭りに対応しての動きは、まあそこまでバンバカロールしてくる訳でもなく、普通に4兆円とかのコブを削りに行く動きになっているので、まあ市場的には肩透かしというか期待空振り感で、ああ結局変わっていないのねという話になってしまったんでしょうな。

#先週変な未達オペを打って、資金需給下振れ分を埋めきれなかった為にそれが早く来たというのはありますが

資金余剰月と資金不足月だと同じ当座預金残高でも(結局のところオペでの資金調達がメインなので)資金供給オペの量が違ってきますので、資金余剰月の方が逼迫感が高いという「余剰月の方が市場の資金繰りはタイト」というもはや達人の禅問答の域に達するようなお話なのではありますが、オペレーションそのものが淡々と当座預金残高水準を維持するような感じで実行されていく中では、資金不足時期になるとレートがベタベタになって、余剰時期になるとちょっとしたことでGCが0.12%辺りまで上昇というような動きが当面続くという事になるんでしょうかね。まあその間の動きは別に「超低金利」の一環だと言われてしまえばああそうですかとしか申し上げようが無いのでございますが、ターム物金利を誘導という話をしてた筈なので、足元をもっと押さえ付けなくて良いのかねというツッコミは飛んでこないのかという懸念も少々。

#まあ微妙ですが、資金不足シーズンで当座預金残高15兆円だと結構な余剰感が出るというのは今回の動きで見えてきましたな。うんうん。


しかしまあ微妙に不思議なんすが、昨日の日経記事の幹部発言によれば緩和状態を評価する尺度は「量では無く、あくまで金利動向」(2月9日日経本紙マーケット面の記事「マーケットウォッチャー」欄より)だそうなのですけれども、では尚更足元のGCレートが上昇した件はどうなのよという感じではありますけどね。まあカレンダーベースで15日になればGCどうせ下がりますからそこまで目くじら立てないという事なんでしょ、という風に普通に考えると理解されると存じます。結局1月の間じゅう「おお!日銀のスタンスが一段と資金じゃぶじゃぶモードにして短期市場ちゃんを瀕死状態に持って行っているわ!!」と思って動いていた皆さん(ええ勿論あたくしも思ってましたが何か?)期待を思いっきり外されてプギャーと言った所でございますな。

とは申しましても、まだ3MTBの落札利回りは0.11%台なのでありまして、12月の0.12%台よりは低い水準にいますし、新型オペ実施のアナウンスや物価安定の理解の明確化を出す前の11月以前の0.14%〜0.16%という水準からはきっちりと低い水準にある訳ですから、まあ細けぇこと言うなよとゆーのが日銀様の思う所なのではないかと妄想成分を入れながら好き勝手に邪推するあたくしでした。

#まあベタベタで全く動かないよりはちったあ動いた方がポジショントーク的には助かるのですけれども


○他のネタを書く時間が無くなったので予告編

#実は目覚まし様の電池が切れていて微妙に寝坊したから時間切れになったというのはここだけの話です(−−)。

この前何の気なしにRiksbankのページを見ておったのですが、そこにこんな講演が(^^)。

http://www.riksbank.com/templates/Page.aspx?id=43143
Nyberg: Time to change cash to cards?

スピーチ全文はこちら
http://www.riksbank.com/upload/Dokument_riksbank/Kat_publicerat/Tal/2010/tal_100120e.pdf


いやまあ中身はカード決済の話で、まあ債券市場とも短期金融市場とも関係の無い話ではあるのですが、そこで色々とサーベイデータの話が出ていたり、現金決済とカード決済に掛かる社会的なコスト(インフラ構築とか現物搬送とかセキュリティ対策とかを含めた)が幾らする(ちなみにカードの方が低いが、70スウェーデンクローネ以下の小額決済になると現金の方が有利だとかなんとか書いてある気がする)とか、読んでいたら中々オモロかったので、忘れる前に予告編を入れておきました(^^)。

ご興味のある方はど〜ぞ♪








2010/02/09

お題「今日も今日とて雑談なのれすが」

有楽町そごうの跡がビックカメラですが、今後は有楽町西武の跡がヤマダ電機になるのかあ・・・・

○GCレートが微妙に上昇している件について

昨日はレギュラー渡しが12日で積み最終の着地が近くなる所なのですが、15日に財政払い超(年金定時払いが主要因と思う)を控えて共通担保オペの期落ちが今週やたら多い事から、そもそもオペ期落ち分のロールニーズがある所に対して、15日跨ぎになるオペの実行が少ない為に市場調達が多いのと、15日が積み最終と財政の大きな払い超とぶつかる(のは偶数月の仕様ですけれども)事から、GCの資金出し手が着地を意識するというのもあって、レートが微妙に上昇でござるの巻。

先週半ばまではGCは0.105%に張り付くわ2月10日エンドの共通担保オペは未達になるわと余剰感爆発でしたが、未達で出せなかった分を減らした状態で走ったら今週のオペ期落ち祭りにぶつかって昨日は0.12%辺りまでGC上昇となという感じ(金曜とかは超足元のGC取り上がる人がいたみたいですが)でして、いやまあ自然体は自然体でも良いのでありますが、「やっぱりGCを0.105%に張り付ける訳ではないんですかそうですか」という認識になるとさすがに3か月TBを0.11%台前半定着とゆーのも何ですなという感じになりますので、はてさて日銀様の考えている「ターム物金利を低めに推移するように促す」という「低め」とはナンノコッチャという気はせんでもない。

まあそれで3か月TBの金利がどうなるかと言われましても、別にそんなに上昇する訳では無さそうなのはCPのレートが全然上がらないのを見ると(AA格のメーカー系さんだと相変わらず3か月で0.11%を割ったりギリギリだったりですから)、運用資金としての余剰感は別に全く変わっていないと思われる次第ですから、TBの利回りだって0.11%台前半だったのが0.11%台後半になるとか0.12%台前半になるとかその程度のミクロの世界でありますが(^^)、そうは言っても先日の「うちの短期市場ちゃんが息をしていないの!」状態から一応何となく反応はしている程度の状況になるので、まあそれはそれで良い話(なのかどうかは知らんが)。

つまりですな、ターム物レートをどうのこうのという話が、本当に0.10%に向けてターム物金利をベタベタに下げに行くのか、それとも0.10%〜0.13%程度のTB3か月物金利だったら総じて言えば低金利であることには変わりは無いのだから、その辺は振れてよろしゅおすえという話なのかが、ど〜もオペ見てるとよー判らん部分があるのでございまして、いやまあ別にそんなの気にするのは短期村の一部の人達でありますからど〜でも良い(つーか曖昧にしておいた方が何かと便利でしょ^^)のですが、まあそういう状態ではありますなという感じです。

何度もしぶとく申し上げておりますが、GCレートを下限近辺でベタベタにしたければ、出来上がりの当座預金残高よりも、オペを安定してロールした方がレートは安定するのでありまする。ただそれをやっちゃうと、資金余剰時期と不足時期の間で当座預金残高が一定にならない(オペの量をある程度一定にすれば出来上がりは当然ぶれる)ので、一般世間様向けには分かり難いったらありゃしないというか、短期的な資金需給を反映しただけの当座預金残高の上げ下げをみて緩和だ引き締めだとか言い出すトンチキ講釈が出たりして政策運営的に微妙という所なんでしょうかね。

#しかしこう微妙に生殺しというか半殺しというかの状態はコマッタモンデ


○またまたご冗談を

昨日ニュースヘッドラインを拝読しておりまして腹筋の訓練になったのが2本ほどございましたのでクリップしておくのだ。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20100208ATGM0800Z08022010.html
米国債の格下げ「起こりえない」 ガイトナー財務長官

『【ワシントン=大隅隆】ガイトナー米財務長官は7日のABCテレビで、米国債の格下げ懸念について「我が国に関しては決して起こりえないだろう」と語った。(以下割愛)』

・・・・正直、米国債を格下げしないと格付け機関も信用されないと思うのですが(^^)、格付けの標準物が米国債でそれをAAAと置いて比較するというのであればそれはそれで判りますが、そうなるとAAA+とかいうのも出てくるという事ですな(大嘘)。つーかガイトナー先生存在感無いっすねえ最近(棒読み)。

というのは前座でして、昨日紅茶を吹いたのはこのニュース。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK037453620100208
世界経済、過剰流動性の広がりへの警戒も必要=菅財務相

『[東京 8日 ロイター]菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は8日午前の衆院予算委員会で、リーマン・ショック後の世界的な金融危機について「過剰流動性を止められない各国の金融経済政策が背景にあり、それに対する対応が必要」とし、新興国も含めた「過剰流動性の広がりへの警戒が必要だ」と語った。加藤紘一委員(自民)の質問に答えた。』

・・・・えーっと、菅先生今までおっしゃってた話とまるで方向性が違う話になっておりますけれども、如何なされたのでしょうか????

と思ったのですが、良く考えたら白川総裁と飛行機でご一緒して洗脳じゃなくてご説明を受けてすっかり丸めこまれじゃなくてご理解されたということでございましょうか。

いやまあ白川さんの説明やら主要国の論調を聞いて勉強した結果そうなったというのならそれはそれでまあほうほうそうですかという感じなのですが、まさかどこかの鳩ぽっぽ先生のように「最後に説明を受けた人の話を信用する」というのだとすると中々薄ら寒い物を感じるのでありますけれども、まさか一国の総理と副総理が二人揃って・・・・・orz


○ただひたすら解説を入れずに引用だけする企画(1999年8月13日議事録から)

ネタに困ると議事録シリーズなのですが(汗)、まあどこの議事録でも良いのですけれども、ほうほうこりゃオモロイと思いながら読んだのが1999年8月13日の議事録。

この時期(もうちょっと前から)はオペレーションの技術的な問題とか、市場の流動性の問題(Y2K懸念とかね)が色々と問題になっていたようですが、こういう場面になると武富審議委員がやたら活躍している印象がございまして、まあ武富さんも細かいことご存じですなあと感心しながら見ておったあたくしなのであります。

と前振りをしておいて何ですが、今日は武富さんの話がどうしたこうしたというのではなく(おいおい)、こんな細けぇことまで政策委員会で見ているのですねというのを、会議冒頭の山下金融市場局長の説明から引用致します。まあ市場が安定している無事モードだったらそこまで気にしなくても良いのでしょうけれども、時あたかもゼロ金利政策という非常時モードなのでありますからね。

で、長い(3.5ページ分)ので変にあたくしの講釈を入れずにベタ打ちしたものをそのまま並べます。まあ手抜きとも言うけど(大汗)。で、これは中々細かい話が多くてマニアとしてはオモロイのと、「引き締まる」の反対語が「引き緩む」というのかと初めて知ったです(^^)。冒頭の説明で3ページ目からです。


『1.最近の金融調節に関する報告(資料−1)

山下金融市場局長

前回政策決定会合以降の金融調節については、引き続き1兆円の積み上幅を維持する資金供給を行ってきた。その結果、オーバーナイト・レートは0.03%の実質ゼロ金利水準で極めて安定した推移を辿った。大手都銀等の資金ポジションが貸出の伸び悩み等から好転傾向を持続していることなどを背景に、オーバーナイト資金の要調達額が減少しているため、コール市場の需給は一段と引き緩んでおり、0.02%での出合いも一段と増えてきている。この間、調節面では短期国債の市場規模がFBの公募入札により飛躍的に拡大しており、流動性の高いマーケットに育ってきたため、供給、吸収の両面で短期国債オペを軸に据えた運営を行ってきた。特に資金吸収面では売出手形を使わず、専ら短期国債の売現先を使用してきた結果、売出手形は8月4日の税揚げ日に全額期落ちとなり、96年3月以来久方振りに残高がゼロとなった。この間、短期国債の売現先の残高は8兆1,000億円に達しており、本日のオファーで10兆円を超えることになる。

この1か月間の短期金利動向を振り返り、三つの特徴点を指摘したい。

第一は、短めのターム物を中心にレートが再び弱含み傾向にあることである。ユーロ円出合いレートの推移をみると、例えば1W、1Mは8月に入り0.03%まで低下している。また、CDでは1Mで0.025%、2Wで0.015%など、0.03%ないしそれを下回る水準でかなりの額が発行されている。イールドカーブの変化をみると、前回政策決定会合直前の7月15日と昨日の形状はほとんど変わっていないが、1M以下のところでは僅かにではあるが、先程申し上げた動きを反映してイールドカーブが下方にシフトしている。また、昨年の同時点のイールドカーブと比較すると、昨年は9月の中間期末が意識されて2Mのところがこぶになっているのに対し、本年は2Mの上がり方は極めて小さく、むしろ年度末越えとなる6M以上の跳ね上がりが目立っている。これは本年の場合、9月中間期末の流動性リスクについてほとんど意識されていない一方で、年末越えについては、Y2K問題の存在に加えて、6月10日のGDPショック以降、ゼロ金利政策の解除懸念が台頭してきていることを映じたものと思われる。

このように短期金利は短いターム物を中心に総じて弱含んでいるが、例外はT/Nレートであり、昨日は0.05%まで上昇している。オーバーナイト物とT/Nの出来高とも都銀のオーバーナイト資金調達ニーズの後退を背景に大きく減少してきている。T/Nを含むオーバーナイト資金調達は引き続き徐々に減少する傾向にあるが、特にT/Nの調達額が落ち込んできている。因みにT/Nの出来高をT/Nとオーバーナイトの出来高で除したT/Nの比率が特にここにきて低下傾向にあり、7月の中旬頃までは25%程度あったものが、昨日は10%まで低下してきている。このようにT/Nのウェイトが落ちてきているのは、都銀等では低利の超短期CD調達等が可能となっているため、これにシフトしているからである。つまり都銀等が0.02%〜0.03%で調達していたT/Nの分がCD調達等へのシフト等で落ちたため、信用度の低い高利調達先のウェイトが高まってしまい、その結果としてT/Nの加重平均レートが上昇している訳である。いわば、資金需給が引き緩み、市場規模が縮小した結果として、レートが上昇するという皮肉な姿となっている。

第二の注目点は金先レートが再び緩やかに上昇していることである。これは7月29日に公表された6月の鉱工業生産指数が市場予想を上回る好転を示したことと、その後も景気改善を示す指標が相次いでいることに反応したものである。3月限は7月23日の0.25%をボトムに昨日は0.38%まで上昇している。もっとも、9月限はキャッシュマーケット同様に弱含み基調と続けており、これから推すと金先レートでは0.25%程度の利上げがあり得るとすれば来年度初以降という見方を織り込みつつあるのではないかと思う。

第三はY2K関連の動きであるが、全体としては落ち着いた状況が続いている。まず、ジャパン・プレミアム(6M)は、6月に年末越えになってから大幅に上昇しており、富士銀行で23bp、東京三菱銀行で15bpまで上昇していたが、昨日はそれぞれ19bp、8bpへ低下している。金先レートでみたY2Kプレミアムと円とドルの推移でみると、円は7月中旬以降ほぼ横ばいで推移しており、変化がない。年度末越えCD・CP発行状況をみても、概ね0.1%台後半での調達が散発的にみられており、これもレート水準としては落ち着いた推移となっているが、ここにきてにわかにクローズアップされているのが国債の玉繰り問題である。大手機関投資家がリスク回避の観点から年末越えは貸債レポを停止するとの噂が流れており、国債の玉繰りに対する不安、担保不足、あるいは先物等のショートポジションの決済玉が不足するという不安が高まっている。こうした状況下、昨日は192回債、193回債等がスクイーズされた形になり、貸債レートが大きく跳ね上がるといったややパニック的な現象が生じている。これがY2K問題と直接関係するのかどうかは分からないが、国債市場では玉繰りについて不安感が高まっており、十分注意してみていく必要がある。


最後に短期資金需給の一段の引き緩みに関連した動きを二点報告する。

一つは私共のオペの落札レートの低下である。資金供給オペでは応札倍率が低下し、落札決定レートも0.01%まで低下しており、かなりの工夫をしないと札割れのリスクが大きくなっていると度々報告しているが、資金吸収オペの方は運用難を背景に人気が高くなっている。例えば、短期国債売現先の応札倍率は5倍から9倍と高まっており、連れて落札レートの方も0.03%まで低下してきている。本来であれば資金の取り手である都銀等でさえ、我々の売る短期国債で運用したいという動きが非常に強まっており、同オペにおける都銀落札シェアが高まるなど、金余りの状況が一段と進んでいる。

今一つは準備預金の積みの進捗テンポがかなり遅くなっていることである。都銀の積み進捗率をみると、7月15日以降の今7月期は日割進捗率に比べてかなり遅れた形で積みが進んでいる。これは資金ポジションの好転に伴い放置しておくと準備預金の積みが進み過ぎてしまい、積みの最終局面では超過準備の保有を余儀なくされるリスクがある一方、必要な資金はいつでも0.02〜0.03%で取れるため、都銀各行が意図的に積みの進捗を遅くしている訳である。この結果、今積み期は非準備預金先に対応する預金残高がかなり膨らんできているのが特徴である。これも資金のだぶつきを象徴する動きである。

以上のように短期金融市場ではオーバーナイトを含め短いタームの資金需給が一段と引き緩む情勢にある。一方、年末越えについてはY2K問題やゼロ金利政策解除の思惑からややナーバスな展開になってきている。』


#一応手打ちしたのを読みなおしましたが、誤字脱字があったらゴメンナサイ






2010/02/08

お題「月曜ですので小ネタをパラパラと」

○書くと言ってて忘れてた議事要旨ネタの続き

すっかり書くのを忘れていたので書くのでありますが(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091218.pdf

肝心の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分が明日書きますとか言いながらやるやる詐欺となっておりましたので、お待たせ致しまして恐縮至極(誰も待ってないですかそうですか)。

『委員は、「中長期的な物価安定の理解」についての検討も行った。』

急にこのネタが出てきた訳ですが。

『ある委員は、先般決定した金融緩和の強化措置が十分な効果をあげていくためには、その背景にある物価安定に関する日本銀行の考え方が正しく理解され、浸透していく必要があると述べた。』

と思うのであれば「主要国の低金利政策が必要以上に長期化すると新興国バブルを発生させるので問題」みたいな話はあんまりしない方がよろしいんじゃないかと思うのでありまして、いやまあ言いたい事は判りますし、話としてもまあ現実に起きている事からすると懸念されるっちゃあ懸念されますけど、そんな話は一部の超タカ派扱いされているような人に言わせるようにしとけばヨロシがな。

ってのは上記会合の後になってペーパーだの総裁の講演だので出て来ているネタですが(^^)、まあ一事が万事と申しますか、別にタカ派ちっくな発言をせんでもよろしがなと思われる所で妙なタカ派発言をする事から「日銀は大変なタカ派」という期待形成が出来ちゃいやすいと思われるのですよねえ。

『その上で、この委員は、現在の「中長期的な物価安定の理解」のうち、「0 〜2 % 程度」という表現が、ゼロを含むマイナスの領域を許容しているかのような印象を与えている可能性があると指摘した。』

CPIマイナスでも経済成長してた時期があり、その時期の評価をどうすべきかとかいう話があったのはすっかりワープでござるの巻。いやまあ別にいいですけど(棒読み)。

『ある委員は、政策委員会が合議制のもとにある以上、止むを得ない面があるが、「委員毎の中心値は、大勢として、1% 程度となっている」という表現も、国民や市場からみて分かりにくいものとなっていると付け加えた。』

そういやネタにしませんでしたが、先般のESRIのセミナーでのパネルディスカッションでは岩田一政さんが「0〜2%という表現よりも、1%という数字をピンポイントで出した方が判りやすくて良い」というような発言をしていたやに報道で読みましたが(そういや水野温氏さんは「本来もっと緩和すべき」とかハト派全開だったとの報道もありましたが、もと身内(日銀生え抜きから見たら身内じゃないのかもしれないけど^^)からああだこうだ言われる日銀って・・・・・><)話をしていましたね。

『こうした議論を経て、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の表現を明確化することは、物価安定に関する日本銀行の考え方や金融政策運営を国民や市場に十分理解してもらううえで有益であるとの認識で一致した。』

ということで、決意表明のようなものになりましたとな。

『次に、委員は、具体的な表現に関する検討を行った。』

まあ色々と指摘されている事はあるんじゃが、基本的には最初の部分にある

『多くの委員は、「中長期的な物価安定の理解」の水準を検討する場合の主要なポイント、すなわち、消費者物価指数のバイアス、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」、物価が安定していると企業や家計が考える物価上昇率に対する認識は、前回議論した本年4月以降、大きく変化していないと述べた。』

という事のようですのでそこの段落はスルー致します。で、今回の明確化に関してああでもないこうでもないという議論がある部分が中々味わいがあるというものです。いやまあ一言で言えば「意見割れてますねえ」という所なのですけれどもね(^^)。

『ある委員は、今回の明確化は、「中長期的な物価安定の理解」がもつ中長期的なインフレ予想のアンカー機能の強化に繋がる可能性もあると述べた。』

なるといいですね(棒読み)。

『また、ある委員は、展望レポートで示している経済・物価の見通しや、毎回の決定会合後に公表する金融政策運営方針とともに、物価の安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透することは、これら全体として、金融市場における金利形成にも相応の影響があるとの認識を示した。』

『この点に関し、別のある委員は、今回の明確化の趣旨は、現在の委員の考え方をより分かりやすく示すことであり、時間軸効果を狙ったものではなく、金利に与える影響の度合いも定かではないと述べた。』

まあそりゃそうなのでありまして、「デフレ脱却を目指しつつ時間軸政策」というのは、前回の量的緩和政策で日本では短期金利だけでは無く長期金利まで安定しやがってくれましたが、それは本質的に日本のインフレ期待が全然盛り上がらないからという所によるものでありまして(涙)、まあフツーに考えるとデフレ脱却してまともに+2%とかのインフレ国だったら長期金利が2%とかいう話は無い訳でありまして(今は1.3%ですかそうですか)、時間軸で効く期間が長くなるのも変な話(本当に政策実施によって期待形成に変化が起きるのであれば)ですわな。

ただ、それを思いっきり言っちゃうのもどうかなと思われる所でありまして、そのあたりは、金融政策がすっかり俊ちゃんメソッドになって狸政治家の風格を確立しているバーナンキ先生のメソッドを参考にすべきかと思われる次第でもありまして、米国長期財務省証券の買入で、最初は金利誘導のような雰囲気を見せておいて、実際に長期金利が結局上昇しても平然とその辺に触れずにスルーしまくるという、まあぶっちゃけて言えば「市場の誤解を利用する政策」ってえ狸ワールドもこういう時には必要なのではないかとゆー気はする訳でして、多分まあそういう論点からの意見が次に。

『他方、何人かの委員は、かつての量的緩和期に採用した時間軸政策とは異なるものの、今回の明確化が市場における金利形成の安定化に資する可能性はあり、これを広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そのこと自体を否定する必要はないとの認識を示した。』

まあ少なくとも展望レポートとの合わせ技で考えれば、景気が上振れない限りは2011年度半ば位までの利上げは無いですよという事になるので、それは時間軸でもありますしね。

#ということでやるやる詐欺どうもすいません


○中村審議委員会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002a.pdf

・デフレがどうしたこうした

最初の中村さんの話がやたら長いのですが、まずはその中から少々。

『それから、3つ目のデフレに関するご質問については、昨年政府が「デフレ宣言」しましたが、いろいろなところで「デフレ」という言葉が飛び交っています。講演でも申し上げましたが、物価の継続的な下落ということと同時に、景気が悪いことを称しての「デフレ」、中には、鶏と卵の関係ではありますが「デフレがあるから景気が上向かない」と言われることもあるようです。このように「デフレ」はいろいろな意味で使われておりますので、説明しておく必要があると思いました。』

『また、講演の中でも申し上げましたが、こういう事象までデフレと言えるのだろうかというものもございます。例えば、消費者のニーズが変化する中、それに対応した新しい製品・サービスを適正な価格で提供する、あるいは今まであった機能を本当に必要なものだけに削ぎ落として、その分安い価格で提供する、といったことまで「デフレ」というと、物事の本質を見誤ることになると思います。もちろん、「デフレ」は経済にとって良いことではないですし、日銀としてもデフレ脱却に向けて取り組んでいる訳ですが、そのことについて良い機会でありますから、自分自身も含めて考えてみた次第です。』

とは言いましても、名目上の低価格競争になること自体は景気が宜しく無いから低価格競争という話ですし、そもそも「機能を落として低価格」っていうのは名目は低価格だけど実質はどうなのとか、まあ世間的に言われるデフレ話と統計上の話はまた別というのがありますからね。

#ま、それよりも無駄に使いもしない高機能になっていくPCとかの「統計上の価格急落」の方が個人的には「何がデフレなんぞや」と思いますが


・これは泣いた

『(問) 地元の経済界の方からの質問や提案などで、何か特徴的なものはありましたか。』

という質問に対しての最初の部分に泣いた。

『(答) 冒頭申し上げましたように、金融経済懇談会では「早くデフレから脱却して欲しい」とか、「為替の安定を図って欲しい」などの声がございました。(以下略)』



・足元の対策と長期的な財政安定化と

このツッコミは鋭い。

『(問) 講演挨拶の中で「時期をみて緊急対応的な施策を見直すと同時に、中長期的な財政再建策について真剣に検討し、持続可能なバランスが取れた成長に繋げていく必要がある」と発言される一方、「現在の経済の持ち直しは財政政策の効果に支えられている面が強い」とも発言されています。その整合性、バランスについて、ご意見をお聞かせ下さい。』

『(答) その点が一番難しいところです。』

いきなりそう来たか(^^)。

『足もとは、海外もそうですが、いろいろな景気刺激策によって経済が回復している面があります。こうした状況に弾みがついて自律的な回復に向かった時には、アメリカでもおよそ5年以内にと言っていますが、今すぐということではないにせよ、財政再建の道筋をそろそろ考えていかなくてはならないと思います。』

『私がこういうことを言っても、長年に亘って長期金利は上がってないので、オオカミ少年と言われそうです。しかし、景気がボトムを打って回復する過程において、財政規律の問題に光が当たりつつありますし、日本国債の外国人保有比率は今のところ7%程度ですが、これから先どうなるか分かりません。また、経済が発展して長期金利が上がっていくことはノーマルな形ですが、財政規律の面から国債保有のリスクプレミアムが高騰すると大変なことになります。これは今年すぐに起こるとは思えませんが、マーケットより先に取り組んでいかないと大変なことになるのではないかと思い、敢えて申し上げた次第です。』

まあこれはそらそうよとしか申し上げようが無い話ですので、そうなりますとやはり金融政策に掛かるウェイトが高くなるちゅう話になりゃせんかねという気はせんでもない。


・これはどう見ても民主党政権に対する嫌味成分(^^;

『(問) 政府は6月までに「中期財政フレーム」を作ろうとしていますが、中村審議委員として、その財政フレームにどのようなものが含まれた方が良いとお考えですか。』

『(答) それは、政府が考えることですし、それを考えるときには日本を将来どのような国に持っていくかということとも当然絡んでくると思います。現状の財政の問題は福祉の問題に絡んでいますし、結局そういうところまで踏み込んでいかないと解決しないように思います。また、国民に痛みを求めなくてはならないこともあると思います。』

と、まあここまでは普通の話なのですが・・・・・

『やはり数字の辻褄合わせではなく、日本の国をどういう方向に持っていくか、また、これから高齢化社会も進んでいく中、これにどのように対応するかという点まで踏み込んでいかないと、国民の納得は得られないのではないかと思います。そういう意味において、このプランを作るのは簡単ではないという認識は持っています。』

つまり、民主党政権が出してくるビジョンとやらは数字の辻褄合わせで、将来のビジョンもへったくれも無いものであり、なおかつ安易にやっつけで作ってばかりだという事ですね、わかります(^^)。

他にもいくつか質疑応答ありましたが、まあ基本的にそう突拍子もない事は無かったので会見はこんな所で。


○オペの足切りがまた0.11%になった件について(メモ)

金曜実施の資金供給オペはこの通り。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100205.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100205.htm(結果)

・・・・0.11%に上昇するわ応札は増えるわということですが、実は木曜の時点で(金曜に書かなくてすいません)オペレートやGCレートが上昇してまして、それまで堂々0.10%の按分が入りまくるわ、下手したら札割れするわというような中々香ばしい展開だったのが「ありゃ」という動きに。

で、そのありゃりゃなんですが、まあ冷静に考えますとありゃりゃでも何でもございませんでして、先週の大幅資金不足に対応して先週前半までは資金供給をバンバン実施していたのですが、そのオペの落ちが今週これまたバンバン設定されていまして、GCレポ取引とか先日付のオペとかは当然ながら先日付の資金需給を見ながら動く訳で、オペの落ちが多いと言う事は市場での要調達額もそれだけ多くなる(調達をギリギリまで粘れるかというと流動性リスク管理の観点からそう何でもかんでも粘れる訳ではない)ので、その分がオペの結果に反映しましたという話かと存じます。

#つまり、例の「資金不足時期の方がレートが下がる」という短期市場の人以外が聞いても蒟蒻問答よりも意味が判らない事象が発生しとる訳ですな

まー何か金利を押さえ付けようとしているのか押さえ付けないで市場機能とやらを生かそうとしているのかよー判らん調節ですなあという感じですが、落ち着かせたいのならば、市場の資金需給はともかくとしてコンスタントにオペ打った方がよさそうな気がするんだが。つまり今の短期市場での資金調達主体って債券ディーラーとかで、国債発行関係以外の財政要因で資金繰りがそんなにぶれないと思われるので、GCレートを気にするとなると、昔からのインターバンク需給とまた別の視点が必要な気がしますが、正直言ってよーわからん。

#と、ただのメモでした






2010/02/05

お題「中村審議委員は日銀大勢対比ハト派ですかな」

ということで中村審議委員の講演ですが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1002a.pdf

○デフレがどうのこうのについて

最初の部分では日銀の公式見解をベースにした景気見通しの話とリーマンショック以降の日銀の政策対応の流れについての説明をしておりますので華麗にスルー致しますとしまして、『4.国内の物価動向について』の(デフレについて)という部分から。

『一般的に「デフレ」は、一般物価の継続的な下落を指す場合が多いと思いますが、それ以外にも、資産価格の下落や、経済活動の停滞、といった意味で使われることもあると思います。』

『ところが、昨今、デフレという言葉が、様々な意味を込めて、やや安易に使われている印象を受けます。』

まあ政府様のデフレ宣言以降は何かあるとデフレに結び付けて報道のネタにする向きが多いですわなあという話ではあるのですが、この先を読むと、この話は一部の人が時々言ってるのが聞こえてくる「ユニクロ悪玉論」みたいな話に対するカウンターの話をしているっぽいですな。

『日本全国で、小売業やサービス業の現場を中心に、激しい価格競争が繰り広げられていることも、デフレ的な現象として、問題視されています。一方では、必要なものを、必要な時に、必要なだけを適切な価格で買い求めたいとする、賢い消費者が増えてきています。こうした消費者行動の変化を見据えて、消費者の価値観に合った、新しい商品やサービスの提供を行ったり、不必要な機能を削ることによる価格の見直しなどにより、消費の取り込みや拡大を図っている企業も少なくありません。このような価格の見直しについては、デフレ問題と切り離して考えるべきだと思います。』

なるほど。

で、その次が物価の見通しなのですが、物価の先行き見通しに関しては厳しい見方っぽいです。まあそもそもの日銀政策委員会コンセンサスも厳しいのでコンセンサス対比どうなのかはこちらでは読めませんが。

『現在、わが国が直面している持続的な物価の下落は、幾つもの要因が複合的に作用しています。すなわち、雇用や企業の継続性が最優先され、賃金が下方硬直的ではないとか、利益率よりも取引関係の継続性や売上数量の確保が優先される傾向にあるとか、様々な要因から米欧諸国に比べて、物価水準そのものが長期に亘って低目に推移してきました。そうした中、一昨年の140 ドルを超える石油価格高騰の反動に加え、金融危機を契機として世界的に需要が急減したことから、物価が下落していると思います。』

『このため、経済の回復が緩慢なものに止まるとの見通しの下では、
供給に比べて大幅に不足している需要は早急には回復せず、短期間に
物価の下落圧力が解消できるとは考えられません。』

ただまあ書きっぷりそのものは、「持続的な物価の下落」とか「大幅に不足している需要は早急には回復せず」とか、トーンとしては厳しい感じではないかと思います。


○デフレ脱却には流動性供給だけではなく需要の持続的な拡大が必要です

次の段落ではそういう話をしているように読めるのですけれども、どうも情報ベンダー的にはそれだと今一歩刺激的なヘッドラインにならないからなのか、どうも前半だけをヘッドラインにするのが仕様のようで、困ったもんですなあと思うのでした。

(ご参考)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-13713120100204?sp=true
流動性供給増だけでデフレから脱却できるとは考えにくい=中村日銀審議委員

このヘッドラインだけを見るとまるで「流動性供給増に消極的」と読めそうなのですが、講演全体を読むと中村審議委員の認識は政策委員会コンセンサス対比ハト派と思われるので、別に流動性出さないと言ってる訳じゃないと思うのですけどね。では講演に戻りまして引用。

『現在の金融政策は、金融機関に対する流動性を潤沢に供給することに加え、短期金融市場における金利の低下を促すことを通じて、需要の下支えに寄与してきていると思います。』

つーかターム物誘導でしょうと思いますが、ターム物誘導と言っても短期市場と債券市場の人以外には訳判らんと思われますのでそれはそれとして。

『財政政策も耐久消費財への刺激策など、需要を支える政策を行っています。しかし、需要が持続的に高まっていくためには、民間部門における体質改善も必要です。このように、需要不足解消のためには、日本銀行、政府、民間企業がそれぞれの役割を果たしていくことが重要であると思います。』

日銀が何やるかは後でありますが、要するに緩和的な金融環境を継続しますという事のようですが。

『ところが、デフレからの脱却のために、日本銀行が民間金融機関に対し、大量の流動性を供給しさえすれば良い、といった、将来に亘っての大きな課題に目をつぶり、即効性のある対策が存在するかのような主張も聞かれます。』

これはこれは。

『日本銀行が2001年から2006年に実施した量的緩和政策では、日銀当座預金残高の積み上がりに比べ、市中銀行から民間への貸出は増加せず、直接的なデフレ脱却策としての効果は小さかったように思います。』

時間軸効果とかのルートでの円安とか低金利とかは効いたと思われる節があるのですが、量そのものが定量的に効くというよりは定性的に効いたというような整理ですかな。その辺りの話が微妙に端折られているので良く判らん(まあそもそも効果の検証自体が検証する人によって微妙に違うという中々蒟蒻問答な状態でもあるのですが)ですな。

『足許でも、本行の緩和的な金融調節オペレーションにより短期金融市場の資金余剰感は高まっており、やや長めの金利を含め、補完当座預金制度の付利金利である0.1%に向けて金利は一段と低下しています。』

さいですな(実は昨日はGCが0.11%になってたけどミクロの世界につきスルー)。

『企業の資金需要が減退していることなどを背景に、金融機関の貸出意欲が弱くないにも拘らず、資金余剰感が貸出増には繋がり難い状況になっており、通常の金融緩和政策の波及メカニズムが働きにくくなっています。』

『このため、流動性の供給を増やすなどの施策だけでは、わが国がデフレから脱却できるとは考え難く、日本銀行が物価の安定に向けて金融面からの貢献を行うと共に、各経済主体が様々なイノベーションや地道な努力を積み重ねて内外の需要を創出し、生産性向上を反映した中長期的な所得増加期待を高めていくことが肝要だと思います。』

ということで、別に日銀が流動性を出さないとか言ってるわけでは無いので念の為という所ですわな。


○物価安定の理解の明確化について

『昨年12月18日の会合では、本行の金融政策運営に関連する「中長期的な物価安定の理解」について、日本銀行の考え方を正しく理解してもらうために、改めて「物価の安定」についての考え方を確認し、公表しました。』

さよですな。

『背景としては「日銀はいわゆるインフレ・ファイターではあるが、デフレ・ファイターではない」とか、本行が物価の下落よりも上昇圧力に対する取り組みに軸足を置き、デフレ脱却に対する取り組みに真剣でないとかの印象を国民や市場関係者に持たれているとすれば、払拭する必要があると判断したからです。』

と、この辺りの表現に関しても、12月にこれが出た時の総裁会見ベースの説明で使っていた白川さんの言い方よりもトーンが強めの印象があります次第でして、この辺りも中村審議委員がややハト派寄りだと思われる所でありまする。


○先行きリスクも「バランス」ではなく「下振れリスクが若干大きい」

1月の展望レポート中間評価公表後の白川総裁記者会見ではこのような話をしていました。

『(答)上振れ下振れ両方のリスクを挙げていますが、各委員によって微妙にバランスは異なっていると思います。ただ、私は本日、各委員の議論を聞いて、全体としては概ね上下のリスクはバランスしていると受け止めました。私どもは、先行きの経済成長について、決してどんどん成長率が上がっていく姿を想定しているのではなく、比較的慎重な見通しを出していますが、この見通しとの比較でみると、リスク要因は概ねバランスしているという評価です。』(1月26日の総裁会見より)

一方で中村審議委員は先行き見通しのリスク要因に関しましてこのように指摘しています。

『こうした上振れ、下振れ要因のバランスは、1 年前に比べれば下振れ要因が小さくなってきているとは思いますが、金融危機のショックが極めて大きかっただけに、下振れリスクが引き続き若干大きいように思われます。』

つーことで、下振れリスクを意識しているという事して、この部分はまあ明確に政策委員会大勢見通しよりもハト派寄りということで、そもそも中村審議委員は従来よりハト派寄りの認識を示す事が多かった事も勘案すると、中村審議委員は引き続きハト派寄りという理解で宜しいのではないかと思われますです。


○最近話題の空洞化問題

リスク要因の続きでこんな話を。

『また、損益分岐点の引き下げや、新興国市場の取り込みを目指して、多くの企業経営者は不採算部門からの撤退や他社との部門統合、新規分野の開拓、最適な生産・供給体制や製品開発体制の見直し等を行っています。このため、生産設備の廃棄や海外移転が一段と進む可能性も否定できず、その場合、海外経済が本格的に回復したとしても、国内の設備投資が抑制され、雇用環境の回復が限定的となることも否定できません。』

先般の日銀支店長会議の後で、日銀大阪支店長(理事)の早川さんがこの点を指摘していましたな。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK035112720100118
UPDATE1: 企業の海外移転で日本経済は世界の成長についていけなくなる懸念=早川日銀大阪支店長

『例えば、薄型テレビや携帯電話等の情報通信機械は、国内需要分についても海外への生産移管が進行しており、輸入比率が高まりつつあります。製品の研究・開発拠点の現地化も進行しているほか、従来は障害となっていた現地インフラも整備されつつあり、新興国を中心とする海外生産移管は着実に進展するとみられます。これらの動きが、国内の空洞化に繋がるような広がりとなるのかについては注意が必要です。』

じゃあどうするのかと言われるとこれまたムツカシヤな話ですが、この際やはり円安誘導ですな円安誘導(^^;


○財政赤字問題

まあこれは仰る通りの話ですわな。

『リーマン・ショック以降、各国が積極的な財政政策で経済を下支えしてきた結果、多くの国で財政赤字と政府債務残高が極めて高い水準まで増加しています。経済金融情勢が一昨年のパニック的な状況を脱したことなどもあり、最近では政府債務の持続可能性に関する懸念が世界的に高まりつつあります。例えば、ギリシャでは、10 月の政権交代に伴い、従来公表されてきたよりも財政が深刻な状況にあることが明らかになり、国債が格下げされ、金利が大幅に上昇しています。他にも、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインがユーロ圏において財政懸念が強い国と認識され、金利が上昇しています。』

昨晩も地中海クラブ絶賛延焼中のようですな。で、途中をスルーしまして。

『米国や英国、そしてわが国も足許の財政状況をみる限り、決して「対岸の火事」として安穏としてはいられません。』

さいですな。

『経済活動の水準が未だに低く、民間需要の回復のペースが緩慢な中では、短期的な財政支援継続と中長期的な財政再建とのバランスを取ることは極めて難しい問題です。しかしながら、一時的であるべき非常手段に過度に依存すると、将来、より大きな問題を惹起しかねません。このため、時期をみて緊急対応的な施策を見直すと同時に、中長期的な財政再建策について真剣に検討し、持続可能なバランスがとれた成長に繋げていく必要があります。』

でもまあ民主党ですからねえ・・・・・

#ということで中村審議委員はハト派ですなあというのが結論でした






2010/02/04

お題「今更ですが先週の総裁講演」

今更ネタで恐縮ですが昨日の予告通りに。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1001a.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 内外情勢調査会における講演 ──


○またエマージングバブル警戒ですかそうですか

どうも白川総裁の仕様のようでして、景気の現状認識と先行き見通しに関する部分で、新興国バブルの崩壊を警戒するフレーズが引き続き出ているのでありまして。

『これに対し、新興国・資源国経済は、予想を超えて急速に回復しています。新興国・資源国の急速な景気回復については、主として3つの理由が考えられます。』

で、第1(そもそも潜在的に内需が伸びやすい)と第2(積極的な景気対策の実施)は引用割愛して第3の理由ですが。

『第三に、先進国内では十分な投資機会を見出せないリスク・テイクの資金が新興国・資源国に大量に流入していることが挙げられます。このため、新興国・資源国では、国内の銀行貸出の増加や不動産価格の上昇などを通じて、経済の回復が後押されています。こうした動きは、多くの新興国・資源国で、ドルに連動した固定的な為替政策が採用されていることによっても加速されています。』

で、その次が最近白川総裁からよく出てくる話。

『しかし、緩和的な金融環境が長く続き過ぎると、新興国・資源国経済の過熱や金融の混乱をもたらしたり、将来、資本流入の動きが逆方向に向かうことによって、その後の景気の落ち込みを招く可能性があります。このため、これらの国では、既に政策金利の引き上げなど金融政策の面で対応をとる動きも出始めています。』

で、先行きの所で金融緩和政策に関する話でまたこんな説明を。

『金融緩和政策に関してもうひとつ申し上げたいことは、先進国の金融緩和政策は、以前と比較すると、自国内というより、域外、なかでも新興国でその効果を発揮する面が大きかったということです。』

この前ご紹介した日銀レビュー(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm)でも思いっきりそういう話をしているのでありまして(というように余りにも出てくるタイミングがドンピシャなモノが時折みられるので、「日本銀行の意見ではありません」と言われてもはいはいそうすかそうすか(棒読み)となってしまうのよね)、まあ所謂BISビュー的な発想だとこのバブルちっくな動きをオーダリーに着地させる為にはもう少し抑制的な金融政策をってイメージになるのではにかと勝手に想像する次第ですが、まあ米国的には(少しは反省しているっぽい部分もありますが本質的な動きって)バブル崩壊の傷を次のバブルで何とかしましょうという感じで動いているっぽい節が多々あるのでござんして、FRB次第じゃないっすかと思われる次第。よー知らんがの。


○財政政策で一旦肩代わりした後は

その次にさらっと話している部分ですが、白川総裁は長期国債買入に関する釘をさす為に話を出したみたいですが、あたくし的には時折引用しますが、5年半前の中々味わい深い財務省の『日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)』議事要旨を思い出すのであります(^^)。

『マクロ経済政策という点では、財政政策の役割も重要でした。リーマンブラザーズの破綻以降、経済・金融の急激な収縮に対応して、各国政府は金融機関に対し公的資本を注入すると同時に、財政面から大規模な景気刺激策を講じました。』

『政府によるこのような大規模な政策介入は、金融システムの安定を維持し、経済活動の大幅な落ち込みを防ぐために必要不可欠の措置でした。実際、これらの措置は、所期の目的を達成しつつありますが、同時に、財政赤字は拡大し、政府債務残高は著しく増大しました。比喩的に言えば、今回の危機において、政府は民間のリスクや債務を肩代わりした訳ですが、経済や金融市場が安定を取り戻すにつれ、国際金融市場の参加者は、政府の取ったリスクやそれに伴う問題、すなわち財政赤字や財政規律の問題にも大きな関心を払うようになってきています。』

時々引用するのでご存じの読者様も多いかと存じますが、またこの味わい深い話を引用しましょう(^^)。

http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm
日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)

冒頭の池尾先生の指摘ですが、改めて今読みますと「さてこの5年間日本は何をやっとったんじゃいな」という残念感が湧きあがって来るのであります。

『バブル崩壊によって生じた問題からの脱却の第1局面、すなわち、民間部門の債務を公的部門に付け替え、民間部門の健全化を進める局面は終わりを迎えつつあり、そろそろ公的部門に付け替えられた債務の償却を考えなければならない第2局面に入ってきていると思われる。第2局面を打開するには、家計の過剰な金融資産を増税等により実質的に圧縮し、公的部門の債務の償却にあてる必要があるのではないか。』

『現在、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化の目途は立っておらず、足元の回復も構造的な要因ではなく、循環的な要因であると考えられる。過去の経験から名目利子率が名目成長率を上回るという可能性を考慮すると、プライマリー・バランスがゼロになっただけでは、対GDP比債務残高の発散は止まらない。公的債務残高をGDPの2倍程度で安定化させるなら、対GDP比4%程度の黒字化が必要である(名目利子率が名目成長率を2%上回る場合)。』

『なお、巨額の公的債務残高の存在にもかかわらず、世間的に危機感がさほど抱かれていないのは、低金利状況の下で、債務維持負担(debt service burden)が非常に軽いものに済んでいるからである。日本銀行のゼロ金利政策とそれに続く量的緩和政策が、こうした債務維持負担が軽い状況を作り出している。』

『換言すると、日銀が量的緩和政策を続けざるを得ない経済情勢が続くことが、財政の安定が維持できる条件になってしまっているともいえる。そうした経済情勢とはデフレの持続にほかならず、デフレの脱却による日銀の政策スタンスの変更が財政危機の顕在化につながりかねない状況と言える。』

(以上、平成16年6月1日に実施された財務省「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)」議事要旨冒頭の慶應義塾大学経済学部池尾和人教授の発言要旨から)

などなどまあ読んで味噌という感じですが、この話を5年先の今に持って来ると、より状況は寒くなっているのでありますけど、他の主要国ではちょうど今こんな話をしている(当時の日本よりはもうちょっと症状が軽いと思いますが)のですなあとか思ったのでありました。


○で輪番について

実際はさっきの部分ってその次の輪番話の枕みたいなもんだと思われますので、そっちの方を引用するのだ。

『この点で興味深いのは、FRB が昨年3 月から10 月まで行った国債の買入れです。FRB は、実施に当っては、この買入れが中央銀行による財政ファイナンスや長期金利の特定水準への誘導を目的としたものでないことを繰り返し強調していました。FRB による買入れ規模は日銀の国債買入れと比較すると、経済規模との対比では日本よりもはるかに少ないものであったにもかかわらず、中央銀行として通貨コントロールへの信認確保をそれだけ重視していたように思われます。』

要するに財政ファイナンスとか長期金利上昇抑制とかの目的で輪番を増やせという意見に対する反論ですね、わかります(^^)。

ただ、FRBの長期国債買入の時は『Moreover, to help improve conditions in private credit markets, the Committee decided to purchase up to $300 billion of longer-term Treasury securities over the next six months.』(2009年3月18日のFOMC声明文から)と言っているので、普通に考えると当初の目的にはモーゲージ金利の引き下げ(モーゲージ金利のベースレートとなる国債金利を引き下げる)を企図していたと思われますので「長期金利の特定水準への誘導を目的としていない」というのは確かに特定水準へのイメージがあって実施した訳ではないからその通りですが、若干我田引水成分の入った説明ではないかと。

#まあそれよりも買入を実施してから長期金利が結局上昇したのがセクシーなんですが

このあとの質疑応答で長期国債の買入額が適当であるという話をしていましたようで、ここの13時46分の所にございます。
http://jp.reuters.com/article/forexMarketOutlook/idJPnTK037388220100129

『日銀の白川総裁は講演で、為替自体に金融政策をリンクさせることは望ましくないと発言した。長期国債買い入れについても、今の買入金額が最適だと述べた。』(上記URLより)

で、まあそんな事一々言わんでヨロシと思うという話は昨日申し上げた通りです。


○更に日銀バランスシートについての説明も

もうちょっと先に行くと『4.金融政策運営の考え方』というのがありまして、各国中銀がどういう事をしましたかという話に続いて「バランスシートの拡大が足りないからケシカラン」論に対する説明を。

『まず、急性症状については、多くの中央銀行では、金融危機の悪化を防ぎ、民間経済活動に必要な金融の流れを確保するため、市場機能が壊れた金融市場に的を絞って特定の金融資産を買入れるなどの措置を実施し、市場機能の回復に努めました。日本銀行も、CP や社債の買入れなど中央銀行としては異例の措置を講じました。』

『なお、この点に関連して、日銀に比べて米国FRB のバランスシートの増加率が大きいことを理由に、日銀は積極姿勢が足りないという批判が時々聞かれます。しかし、これは全くの誤解です。』

『FRB のバランスシートの大幅な拡大は、資金調達の約7割を占める資本市場の機能が極端に低下し、中央銀行が全面的に市場を肩代わりするしかないという不幸な状況に立ち至ったことを端的に表しています。これに対し、日本の場合は、社債やCP 市場の機能が低下したとはいえ、それでも欧米に比べると、金融システムは相対的に安定性を維持することが出来ました。これは1990 年代後半以降の苦い経験を経て様々な努力を積み重ねたことの成果でもあります。このため、日本銀行のバランスシートはFRB ほどには拡大することはありませんでした。日本銀行のバランスシートの規模は、今回というより、むしろもっと早くから、大きく拡大していました。』

という説明を既に何回見たことやらと思うのですが、多分この論点で突っ込んで来る人のポイントがFRB的な言い方をすれば「信用緩和」と「量的緩和」をごっちゃにして突っ込んでいるという点からすると、そもそも論として話が永遠に平行線と思われるので、百万回説明しても同じような気はしますけどね。

量的緩和で資産買入がどうのこうのというのを前面に出しているのはBOEだけだと思われます。でもBOEも別にリザーブを目標にしている訳でもなさそうなのですけれどもね。
http://www.bankofengland.co.uk/
の真ん中の左のほうに『Quantitative Easing Asset Purchases 』ってのがございますわな。


○デフレ問題に関してはまあそもそも論の世界を展開です

最後の章は『5.「デフレ問題」と持続的成長の実現』ということで、

『最後に、いわゆる「デフレ問題」についてお話します。最近は様々な経済現象がデフレと結び付けて議論されることが増えています。それだけにデフレの原因を正確に理解することが極めて重要です。』

という話をしていまして、これまた結構なスペースで説明していますが、要するに

『いずれにせよ、デフレの根本原因は需要不足です。』

という話に。で、需要不足を解消するためには一時的なことよりはそもそも論として成長戦略が必要ですという根源的な話をしつつ、しらっと日銀批判への説明もしていますな。

『デフレ対策に関しては、かつては「中央銀行がバランスシートを拡張しさえすればデフレは止まる」という主張がなされることもありました。しかし、量的緩和政策を採用していた2000 年代前半の日銀も、また、2007 年以降の米国FRB もバランスシートは随分と拡張しましたが、それに見合って物価が上がることはありませんでした。このような経験から、欧米では、「中央銀行がバランスシートを拡張しさえすればデフレは止まる」という議論は、最近ではあまり聞かれなくなりました。』

ほうほうそうですかそうですか(棒読み)。

『はっきりしていることは、金融システムが不安定化の危険に晒されている時は、中央銀行のバランスシートの拡大、流動性の供給は、金融システムの安定を確保することを通じて物価のスパイラル的下落を防ぐ上で極めて効果的であるということです。現に日本銀行はそのように行動しました。』

まあそれはそうですな。

『しかし、一旦、金融システム不安の状況を脱した後は、流動性の増加だけでデフレが解消される訳ではありません。我々はデフレの根本的な原因を直視する必要があります。』

で、こんなたとえ話を。

『物価は、しばしば経済の体温に例えられます。体温だけを人為的に長期間にわたって引き上げることは可能ではありません。基調的に体温が上がるためには、それ相応の体質改善や、場合によっては、適切な治療も必要です。』

どう見ても低体温症が継続しています本当に(涙)。

『同じことは、デフレ問題への対応についても言えます。重要なことは、緩やかではあるが趨勢的な物価の下落傾向に歯止めをかけるために、趨勢的な成長期待を高めること、言い換えると、生産性の向上に地道に取り組むことが不可欠であるという基本認識を持ち、その上で、この課題にしっかり取り組むことだと思います。』

つーことで、その方向性としては『第一に、グローバル需要、とりわけ高い成長が見込める新興国・途上国の需要を積極的に取り込んでいくことの重要性です。』、『第二には、潜在的な需要に対応する供給体制を作り上げ、生産性の上昇を図っていくことです』とありますが、まあそこは引用割愛します。



○チアリーダーに転向するのか??

更に最後の部分でほほーと思う部分が。

『以上、日本経済の潜在成長率を引き上げるために重要と考えられる2つの方向性について申し上げました。過去のわが国の経済を振り返ると、困難な時期においても、人々の知恵と努力によって難題を克服し、繁栄を築き上げてきた実績があります。日本経済を真に持続的成長経路に復帰させるためには、ただ今申し上げたような主体的な取り組みが不可欠です。これを実際に実行に移す過程では痛みも伴いますが、世界的な規模で経済が大きく変化している以上、避けて通れない道です。』

というのが前振り部分でして、その次をみたら「ほほー」と思った訳で。

『その際、最近やや気懸かりなことは日本経済の強みを強みとして認識しない「気分としての悲観主義」とも言うべき傾向がみられることです。』

この前の会見でもそんな趣旨の話を言ってましたが、白川総裁は米国金融財政当局のあの危機においての妙な明るさから何かを感じ取ったのでしょうか??と思う今日この頃でございます。

#以上虫干しネタにも程があるネタでした






2010/02/03

お題「共通担保オペ札割れとな/その他」

虫の息の市場でもネタは尽きないもんですな。

○共通担保オペが札割れとな

以下思いっきりマニアネタなので以下の内容で書いている話は皆様の周囲にたぶん一人はいるマニアに聞くアルヨロシね。

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100202.htm

その結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100202.htm
共通担保オペの2月10日エンド分に傾注!

えーっと、CPとか社債とかみたいな特定市場対象のオペですと札割れというのも「まあその市場の需給関係で」という話になるのですが、何せモノが共通担保オペですので、なんちゃら市場の需給問題によりまして札割れみたいな話にならない所がお洒落なのであります。何と言う素敵な札割れ。

まず札割れの背景ですが、要するに1秒で言えば「その期間の資金ニーズが無い」という事なのですが、では何でその期間のニーズが無いかと言えば、今回の準備預金積み期間は進捗も順調で積み期間内の資金ニーズがそんなに高くなく、更に今月は15日に財政の払い超(年金定時払い)があるので、オペで取りたい資金はそこの資金需給のコブの部分の先に足が来るもの(15日の手前で落ちるオペが多くなるから)と相成りますので、いまさら10日エンドがイラナイという事で札が入らなかったという事ですな。

ついでに申し上げると、まあ市場の皆さんのコンセンサスがどこにあったのかはよー知らんですけれども、あたくしが昨日の朝時点で考えていたのは、今週に入って(前日の速報時点での想定ベースで)当座預金残高が1日が14.88兆円、2日が14.50兆円と足元の資金余剰感を背景に当座預金残高を削って来たように見えたので、昨日はトムスタートの資金供給オペを、3日の出来上がりで14.5兆円アラウンドになる1.4兆円程度打って来るものかと思ってまして(その時点で3日の資金需給予想は日銀から出ていないので、3日の資金需給予想は上田八木短資さんのデイリーレポートベースで計算)、そもそも2兆円の共通担保が多いなあとも思った訳ですよ。

3日は税揚げだからということで当座預金残高を再び15兆円に持って行こうとしたのかなあとは思うのと、昨日の引け時点で発表された日銀の資金需給予想が若干不足方向にぶれているので、その為に1兆円2本の供給になったのかとは思うのですけれども、しかしまあ大幅札割れとは何だかなあという感じです。



んーとですな、多分マーケット的には10日に落ちるオペへのニーズが無いというのは1日の共通担保オペでの12日エンド1兆円オファーの応札が減っていたあたりからも読めそうなので、いまさら10日エンド1兆円とか打たれると「まあイラネ」となるでしょうなあってえのは(ここまで札が無いというのは別として)想定できそうなもんなのですけれども、素で普通に供給する積りでオペを打ったのか、それとも札が割れそうなオペをわざと打って足元の資金余剰感を演出したかったのかは中の人のみが知るお話でありますな。どうなんすかね(棒読み)。

#同時に行われた3月3日エンドのオペは17920億円の応札ありましたから、足が先ならニーズがある訳です


でまあその大幅札割れもさることながら、応札6020億円に対して落札2020億円となっていて、脚注にある『応札レート(貸付利率)0.03%以下は不採用としました。』というのがまた素敵なのであります。

4000億円0.03%で入れた人がいるという事ですが、どこか1社(1行?)が0.03%などというギャグのような応札をしたという話になる訳でございますが、預金ファシリティの金利が0.10%というのもさることながら、前日(1日)の無担保コール翌日物の最低金利(日銀公表ベース)が0.07%なのでありまして、それよりも激しく低いレートでの応札とはこれまた良い感じでオペに対しての抗議活動っぽくてもうメロメロでございますわよ奥様♪

まあ即ち「こんなオペに資金ニーズは無いので0.03%だったら入れてやるわいヴォケ」という意思表示を応札レートで示したという事であるかと存じます次第でありまして、中々楽しいお話ではございますな。何せ日銀のオペで未達になったからと言っても、別に日銀は全部の応札を募入にする義務は規定上1ミリも無いのでありまして、そもそも預金ファシリティの存在がある以上、建前上預金ファシリティより安い金利での募入というのは(瞬間的にあからさまな補助金状態になるから)できんでしょというのは自明(ちなみに全然別の話ですけれども、国債入札でも同じなので、未達になりそうだからと言って1円とかで応札するのは大きい葛籠を持ち帰る欲張り爺さんであります)。

つーことで、まあ中々これは素敵な応札ですねという話でありますけれども(実はまあ以前からオペの落札が0.10%一本値の筈なのに按分比率が微妙に合わない事案はあって、0.10%より下の札を入れている人がいるなあとは思っていたのですが、0.10%までで供給予定額が充足されていたので不採用がどうのこうのという話にならなかった)、これがオペに対する悪態活動の一環として実施されているのではなく、素で「今日のオペは流れそうだから0.03%も入るかなあ」とか思って応札してたらこれまた痛い話で、オペ規定を百万回読むべきではないかと思うのでありますが、はてさてこの辺の事情はどうだったんでしょうかねえ、いやまあ中の人じゃないから判らんけど。

ちなみに、12月1日にも共通担保資金供給オペで0.09%以下の応札がありましたけれども、この日はご存じのように臨時金融政策決定会合の招集がありましたので、もしかして利下げがあるかもしれないという意識から下の札を入れたというのは話としては大変リーズナブルな所でありますが、今回の場合は別にあのその10日までに利下げがある可能性はまあ無いですし(つーかそういう意識があったら3月3日エンドの方のオペに札が集まりませんわな)、まあ単に「その期間の金はイラネ」というお話で、0.03%という勇者レートの応札がありましたねという話ではないかと思われます。


しかしこれで「共通担保オペが札割れすると言う事はオペ手段としてもっと長期のオペを行わないと「広い意味での量的緩和」が出来ないではありませんか」という話になって来るとこれまたセクシーなのでありまして、そうなった場合は当然ながら「より長い資金供給&札割れ懸念なし」と言えばそれはもう輪番オペですよ先生という事になって来るというものでありまして(^^)、思わぬ所から輪番拡大論議になったりするとこれまた実にお洒落な展開ではありませんか♪

#まあそんな話になるかどうかは知らんが

まあ何はともあれ虫の息で殺伐とする元気もない短期市場に一陣の風と健やかな笑いを提供してくれた昨日のオペでありました。



○月初第2営業日恒例の計表から

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1001.htm
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

1月末時点での数字が出たのでヘコヘコ手元のエクセルちゃんで集計したのでございますが、今回は前月比17626億円増えている中で1年から2年のゾーンで4766億円の増加となっておりまして、概ね通常ペースの入り方になっているかと思われます。

まあ本来は日銀保有銘柄の平均デュレーションがどうなっているとか、今後の償還ペースと増加ペースがどう読めるかというような分析をちゃんとしないといけないのですが、そーゆー分析は本職の人達がちゃんとやっていると思われますので(というか月イチ作業とは言え、データ見てヘコヘココピペする程度の手間では済まなさそうなのでやる気が湧かないというのが正直な所ですどうもすいませんすいません)、輪番のシミュレーションは本職の方に願います(こら)。


○以下メモ

・12月17、18日の決定会合議事要旨ネタ

物価安定の理解の話とか金利誘導に関する話とかの議論の部分をスルーしていたので、本日のネタにする積りだったのですが、時間が無くなってしまったので明日に書きますどうもすいませんすいません。

・白川総裁が輪番増額に釘を差した件について

先日の講演後の質疑だか何だかで、輪番の額について「現在の額が適正」とかまた自分で自分を追いつめるような発言をしているのは何だかなあという話をしようと思っているうちにこれがまた時間が無くなっておりまして誠にあいスイマセン。

輪番に関しては白川総裁余計なこと言い過ぎだと思う。いやまあ言ってその通りに増やさないのなら兎も角、去年もそうでしたけれども、当面増やさないとか言った傍から結局増やす事になってしまうと、「ああ白川さんは追い込まれると結局前言を撤回するのね」という評価になる訳でありまして、政治資源と表現するのが適切かどうか判りませんけど、まあ資源の無駄遣いにも程があるので信念の発露も程々にと思うのであります。

という話をもっと色々書きたいのですが、とりあえず書くタイミングを逸する前にメモ書きだけしておきましたの巻。











2010/02/02

お題「12月17、18日会合議事要旨/その他雑感」

日米金利差で為替がどうのこうのとかって直先スプレッドに影響するのは判るが、スポット価格の変動の理由に使う理屈がさっぱる判らんのだ。しかし最近は短期金利差どころか長期国債入札まで金利差ネタにするというのはもっと判らん。

んでもって、金融政策の話を為替系の何とかストがレポート書いてるの時々見るのだが、これがまたちょっとおまえそりゃ如何なものかいなというクオリティのものが大杉勝男でありまして、おまいら月に向かって飛んでしまえとか思うのでありますがどうでもいいですかそうですか。

と、ひとしきり悪態をついた所でまずは市場雑談から。


○うちの短期市場ちゃんが(ry

えーっとまあ今に始まった事ではないのですが、足元の資金余剰モードは素敵な状態でありまして、先週の3か月TB入札はこの前申し上げたように0.11%台前半まで突っ込んでしまいましたし、GCは延々と0.105%ですし、CPレートは期内もので高格付けのメーカーさんとかでも0.11%行くか行かないか(つまり0.11%割れとか)という有様。

んでもって昨日ちょっと申し上げましたが、1月は無担保コール翌日物の加重平均金利の月中平均値が0.10%を割り込んだ訳だが、これは何ですのと申しますと、コール市場での資金放出者の過半数(金額ベース)がよーするに0.10%を割るレートで放出しているということになる訳でありますが、そもそも所要準備預金以外の当座預金には0.10%の付利が行われておりますのでありまして、銀行とか証券とか短資とかは当座預金に放り込んでおけば0.10%で付利される事から、普通に考えた場合にはわざわざ0.10%を切って無担保コールに資金を放出する意味は無いざますので、そーゆーレートで資金放出を行っているのは、生損保、投資信託、年金という所になると思います。

で、その平均って歴月ベースの12月まではまあ何とか0.10%以上をキープしていたのですが、1月になって割ったということは、無担保コール市場の(残高ちゃんと見てないで言うのも何ですが)取引が益々「うちのコール市場ちゃんが息をしていないの!(AA略)」状態になっているという事でしょうな。

でもって、GCレートはターム物供給が増えたのが効を奏して足元のファンディングが軽くなった(ターム物オペが増えたのでターム調達にシフトできた)ので足元で時々動いたりするようなことも無くなり、すっかり0.105%でベタベタになっておりますというのは先日も申し上げた通りでございますが、GC安定が効いたのか単に足元の資金余剰を反映したのか知りませんがTBも上記のように低下と。

あとまあ昨日は毎度の固定金利オペの応札総額が減って按分が増えたのがベンダーネタになっていました(昨日の応札が46740億円でその前の先週月曜の応札が59918億円)が、足が4月30日だから使いにくい(どうせなら大型連休越えの方が良い)というのもあると思いますけれども、そもそもこのオペはロール前提と理解してますので、それはそんなに気にせんでもとは思いまして、まあそれよりも全般的な金利の低下によって、ターム物のオペでも0.10%按分が定着し、按分比率もそこそこ高くなってきたので、別に指値オペに入れなくても他のオペでも0.10%取れるからそんなにガツガツしなくても良いですか状態になったんじゃないかなと思うのであります。

まあ何ですな、感覚的には14日とか15日位から落ち着きが見えて来て、その翌週の火曜の2MTB入札が強くて金余りですなあという感じになって、その週から金余り傾向が鮮明になって、先週の動きで止めを差しましたという感じでしょうか。


・・・・ということで、先生!うちの短期市場ちゃんが(ryの第2弾が到来という感じでありますが、いやまあターム物金利を低い水準に誘導するって12月1日の会合で堂々宣言しているのですから、そりゃまあ市場が虫の息になるのは政策効果として当然なのでありますが、更に暗黒感が強まって来ましたという感じではございます。

#最近長い所も暗黒化の傾向があるんじゃないっすか??


○12月17、18日の決定会合議事要旨から少々

謎の決意表明が行われた会合ですな
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091218.pdf

例によって『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済の見通し

『海外経済の先行きを巡るリスクについて、何人かの委員は、金融緩和を続ける先進国からの資金流入の増加などが、新興国経済の予想以上の上振れや、その後の巻き戻しに繋がる可能性に留意しておく必要があると指摘した。』

『何人かの委員は、バランスシート問題の重石を抱える米欧先進国を中心に、政策効果が剥落した後の景気回復のペースや持続性については、引き続き不確実性が大きいと述べた。』

エマージングの上振れについて指摘しているのですが、どうも総体でみた場合には、先行きリスクってバランスしているというよりはやっぱり海外に関しては下のような気がする。

んでもって国際金融環境ですけれども。

『多くの委員は、11 月下旬のドバイ・ショックを受けて、各国の株価や為替相場は一時不安定化したが、その後は、債務返済に関する不透明感の後退もあって、足もと落ち着きを取り戻しているとの認識を示した。』

ということですが、12月の月報ではドバイショックの影響によるマインド悪化への下振れ懸念をわざわざ書いていた(表現ではドバイショックなどとは書いてませんが)ので、まあ1日の臨時会合の顔を立てたっちゅうことでございますかそうですか。

『ある委員は、これまでのところ投資家のリスクアペタイトが大きく低下するには至っておらず、新興国への資金流入は当面続く可能性が高いとの見方を示した。一方、何人かの委員は、国際金融資本市場の不安定化に繋がり得る要因として、ギリシャの格下げや中東欧諸国経済の停滞などに言及した。これらの委員は、今後、市場参加者のリスク回避姿勢が再び強まることがあれば、金融面を通じて、ファンダメンタルズの弱い国や地域の実体経済に悪影響が及ぶ可能性があると指摘した。』

でね、これはこれでその通りなのですが、そこを土台にして12月月報で企業マインドがどうしたこうしたと細かく下振れリスクについて言及したのであれば、1月になっても別に欧州ソブリン問題とか全然解決していないですから、その辺りの表現が継続されて然るべきだと思うのでありまして、1月月報で表現がソフトになったのはどうしてかと考えると、微妙に理屈としてしっくりと落ちないのでありまして、12月1日の臨時会合が理屈を超越した部分があったのではないでしょうかと思わせる次第でもあります。

#勝手読みのし過ぎではありますが


・ユーロエリアでは銀行貸出に注目

へーって思ったので引用。

『何人かの委員は、銀行貸出やマネーストックの伸び率が急速に低下していることを指摘した。これらの委員は、欧州では間接金融の比重が大きいだけに、こうした動きが今後の実体経済に及ぼす影響について、注意深くみていく必要があると述べた。』

なるほど。


・中国はまあ当然ながら当局動向に注目

『何人かの委員は、中国当局が、来年入り後も現在の拡張的なマクロ経済政策を維持する姿勢を示していることなどから、当面、高い成長が維持される可能性が高いと述べた。他方、何人かの委員は、先行き、金融経済活動の過熱が住宅価格の高騰やインフレの昂進に繋がるリスクは否定できないとの見方を示した。この点に関し、複数の委員は、最近では、個人の住宅販売にかかる免税措置の見直しなど、バブル抑制的な施策を強化する動きも一部にみられると指摘し、今後の政策当局の舵取りに注目していく必要があると述べた。』

でまあ中国は年明けになると当局が何となくスピード制限をしている感じになってきたので、そういう意味ではエマージンングバブルをバブル崩壊にしないで、何とかうまく飼いならして頂ければ誠に慶賀に耐えません。


・で、国内経済の話ですが

『先行きについて、委員は、輸出や生産が増加基調を続けることなどを背景に、わが国の景気は、持ち直しを続けるとの認識を共有した。もっとも、何人かの委員は、今後、在庫復元や景気刺激策の効果が減衰していくと見込まれるため、来年度半ばにかけて、景気持ち直しのペースは鈍化していく可能性があると述べた。』

というのはいつもの話ですが、ふーんと思ったのはその先。まずは生産が伸びてるけど戻っている訳ではないですよという指摘が。

『その上で、この委員は、生産の水準がピーク比8割程度までしか回復していないうえに、多くの企業が中長期的な成長ビジョンを描けていないという状況を踏まえると、この時期、わが国経済が下方ショックに対してかなり脆弱であることについては、改めて意識しておかなければならないと指摘した。』

ほほうこれはこれは。一瞬水野さんかと思いましたが、良く考えたら水野さんは退任してますから、別の方ですね。うんうん。


で、世の中のマインドが委縮しているという話。

『この間、何人かの委員は、今回の短観の結果が、市場やメディアにおいて比較的慎重に受け止められたことについて言及した。ある委員は、短観調査先企業の経営者と話をしていても、業況感は改善していると現に回答しているにもかかわらず、経営者自身のマインドの弱さを感じる面があると述べた。』

確かに左様でございますな。

『これらの背景について、何人かの委員は、景気ウォッチャー調査の結果が足もと悪化していることなども合わせて考えると、最近の国際金融面での動きやデフレに関する議論の拡がりが、企業や消費者のマインドに影響を与えている可能性があると述べた。』

つまり何の対策も打たないでデフレ宣言して「大変だぁ」とだけ言うという図は有り得ないですという政府批判ですね、わかります(^^)。

ということで、まあこの辺りの話って難しいのでありますが、やはり当局があまりにも景気の悪い話をするというのもどうかという感はこの一連のマインド悪化を見ていると思うのでありまして、いやまあデフレ宣言しちゃ悪いとは思いませんけれども、「このようにデフレですが、それに対してこんな効果的な対策を打ちましたので、いついつまでにデフレ脱却ですよ皆さんもう少しです頑張りましょう」というような方向で話を持って行かない事にはいかんちゅうこってしょ。

米国でそういや金融機関のストレステストを実施した時の前提となる失業率が8.9%というギャグのような数値で、外野から見ると「何ちゅう大本営発表」と呆れたもんでありますが、何故かその後失業率が8.9%を抜けた(直後に8.9になりましたわな)時も別に米国メディアで「インチキストレステスト」という話になる訳でもなく(というのは日本で見た印象なので米国でどうだったのかは知らんですけど)推移して現在は金融機関が公的資金を何故か返済しているというのを見ますと、マインドというのもまあ大事な話だなあと思うのであります。

ま、だからと言って1から10まで大本営発表で良いかというとそれは勿論ダメな話ですし、狼少年みたいなもんで威勢の良いチアリーディング攻撃というか市場の誤解に働きかける政策メソッドというかってえのも、大概使いすぎると信認問題になって後で大変な事になるでしょうし、まーその辺ってえのは永遠の課題なのではないでしょうか。


・物価のデフレ循環警戒ですな

消費者物価に関連しての指摘から。

『ある委員は、最近の民間エコノミストの予想などをみると、中長期的なインフレ予想が若干ながら低下していると指摘した。複数の委員は、こうした動きだけをもって、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率が下振れているとはいえないが、最近の経済・物価情勢を踏まえると、予想物価上昇率の動向については、引き続き、丹念に点検していく必要があると述べた。』

一番マズーなシナリオは、企業や家計の予想物価上昇率が下振れる事によって、デフレマインドが更なる物価の下落を招く事態で、従来は物価下落が金融経済活動の下振れを招いて更なる物価下落を招くというスパイラルの警戒をしていた訳ですが、ここへ来てマインド面の悪化からのスパイラルというのが懸念されるという認識になっているものと思われます。


・どうでも良いがこれは違うと思う

『ターム物金利について、多くの委員は、先日の臨時会合以降、短国レートや銀行間取引金利など、やや長めの市場金利が一段と低下していることを指摘した。また、何人かの委員は、年末越えプレミアム、年度末越えプレミアムについても、落ち着いた動きをみせていると付け加えた。』

実際には1日の公表で一回短国レートがどどーんと低下した後、実際にはGCレートがイマイチ下がらなかったのではしごを外された格好になってレートは若干上昇したのですけれども。それに年末越えプレミアムは単に足元で量を出したからだけだと思うのだが。

『こうした状況を踏まえ、多くの委員は、固定金利方式の共通担保資金供給オペは、既にその効果を発揮し始めているとの認識を示した。』

いやまあアナウンスメントという意味での効果はあったと思うけど、この会合時点ではそれは無いと思う。



○議事要旨ネタの続きですが

さっきのマインドどうのこうのという所の続きにこんなのがあるので、そこから妄想力を発揮して超越的勝手読みをしてみる。

『また、複数の委員は、より長い目でみたわが国経済の将来像や、そのもとでの企業戦略が見出せないことに対する不安が反映されているのではないかと指摘した。こうした点に関し、何人かの委員は、デフレからの脱却を実現していくうえでも、わが国経済の成長力強化というより根源的な問題に取り組んでいくことが必要であるとの認識を示した。』

いやまあそれはその通りなのですが、じゃあ日銀は具体的に何をするの??という話はここからは残念ながら見えてきませんわな。いやまあ実際は議論しているけれどもここでは端折っているのかも知れないので何とも言えませんけれども、結局これは政府マターですねみたいな話ですよね。

一方で政府は政府で、この前の菅財務大臣の財政演説でも「デフレ脱却に向けて日本銀行と一体となって」取組むみたいな話を折に触れて行っていまして、政府は政府で日銀に何とかしろというような感じの物言いが目立つように思えます。

つまりですな、よく「政府と日銀の認識は同じ」という話が出ているのですけれども、妙にそういう事を強調する中でこういうようなモノが出ているというのを見ますと、傍目にはまるっきり政府と日銀の間の一体感が無いんじゃないですかという風にしか見えないんですよね。いやまあ自公政権の時も時々その辺の隙間風というか齟齬を感じる事もありましたが、民主党政権になった現在ほど酷い状態ではなかったと思うのですよ。

などと言う事を議事要旨のこの部分を読んでてふと思ったのでありました。







2010/02/01

お題「決定会合議事要旨2題と思ったが結局1本だけ」

12月に実施された決定会合議事要旨が2丁出ましたので、本日はそちらから少々と思ったのですが、思ったよりも話が長くなってしまったので、本日は12月1日の会合議事要旨をネタに少々。

12月1日の唐突に実施された臨時会合(新オペ導入)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091201.pdf


○イベントをネタに何か実施というのは福井メソッドですね

もうね、最初の時点でまあ何ですな。「T.臨時金融政策決定会合開催の趣旨説明」って所ではこんな話が。

『このところの国際金融面での動きや 、為替市場の不安定さなどが、企業マインドなどを通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクが高まっているように見受けられる。』

んでもって「U.最近の金融市場動向に関する執行部報告の概要」でもこのように。

『最近の国際金融市場では、一部に不安定な動きがみられている。すなわち、ドバイ・ショックの影響から、欧州株が大きく下落しているほか、一部新興国の通貨や株価で大幅な低下が観察されている。また、為替市場では、特にドバイ・ショック以後、円高方向の動きが強まっている。』

『こうした国際金融市場の動向の影響もあって、わが国の株価は、電気機械、自動車といった輸出関連株を中心に下落傾向が続いている。市場では、金融市場の不安定化による企業マインドの悪化を懸念する声が拡がっている。』

ということで、一応理屈としては、ドバイショックの影響から株価は下がるわ為替は円高になるわで、しかもその動きがショック症状みたいになっているから金融強化が必要、という事にはなっていますが、そんなん一々反応して緩和してたら政策幾らやっても足りないのでありまして、イラク戦争で臨時会合を招集したり、SARSやりそな救済で当座預金残高目標を引き上げた福井メソッドにも通じるものがあるのですが・・・・・

ただね、福井総裁の場合は自分からホイホイと当座預金残高を拡大するというお芝居の打ち方がうまかった訳ですが、白川総裁の場合はどっからどう見ても政府(というか政治)サイドからの要請が来まくりでございますがな状態。まあ普通に考えますと、その前から主要閣僚から「日銀何かしてクレクレ」コールが出まくっていた事を勘案致しますと(以下自粛)。

いやまあ一昨年10月の緩和の時もちょっとゴタゴタした感じはありましたが、それでも自公政権の場合はそのあたりは比べものにならないくらいにスマートだったと思うのでして、素人恐るべしというかなんちゃらに刃物と言うか。


○出たな中原三原則

んでまあ「1.執行部提案に関する委員会の検討」から。

『多くの委員は、わが国経済は持ち直しているものの、来年度の半ば頃までは回復ペースが緩やかなものに止まると見込まれる中で、このところの国際金融面の動きや為替市場の不安定な動きが企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクが加わってきているとの認識を示した。』

というのはさっきと同じ話。

『ある委員は、最近のデフレを巡る議論の拡がりが、家計や企業のマインド面に悪影響を及ぼし、実体経済に対する下押し圧力が強まる可能性も懸念されると付け加えた。』

で、現実問題として、消費者マインド系の調査では物価に対するマインドが11月の政府によるデフレ宣言以降急速に悪化していまして、その辺の結果はこの指摘の後に出てきた12月以降というか1月に随分と出てきましたわなという所で。


んでまあそれはそれで良いのですが、その次は論理展開がアレな所。

『こうした情勢判断を踏まえ、委員は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することを支援するため、金融政策面からの追加措置が必要であるとの意見を共有した。』

というのははあはあそうですかっちゅう事ですが、直前に実施された11月19、20日ではこのデフレに関してああでもないこうでもないと話をしていたのでありまして・・・

『委員は、物価に関する情勢判断の情報発信の仕方を巡って議論を行った。ある委員は、展望レポートで2011 年度まで物価下落が続くという見通しを示したあと、予想されたとおり、「デフレ」に関する議論が高まってきたと述べた。多くの委員は、これまで日本銀行が説明してきたとおり、「デフレ」という言葉が使われる場合には、財・サービス価格の持続的な下落、厳しい景気の状況、資産価格の下落など、様々な定義で用いられており、論者によって異なるため、日本銀行が「デフレ」という言葉を使用する時は、細心の注意を払う必要があるとの見方を示した。』

『もっとも、何人かの委員は、こうした説明は正しいものの、このような言い方をすることによって、日本銀行は「デフレ」という言葉をあえて避けているとの印象を与えている可能性があると述べた。その上で、ある委員は、「持続的な物価下落」を「デフレ」と定義するのであれば、そうした物価動向の評価は、日本銀行が展望レポートで示した見方と異なっていないという点を対外的にも説明していく必要があると述べた。また、別の委員は、「デフレ」について情報発信する際には、それ自体がマインドに悪影響を与えることのないよう留意する必要があると付け加えた。』

(以上は11月19、20日の決定会合議事要旨より)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091120.pdf

えーっと、このようにわずか10日前にはあーでもないこーでもないと言っていた訳でして、つまりわざわざ臨時会合を実施した結果「最新の注意を払って」デフレという話になったということですね(棒読み)。

ま、それよりも大きなファクターは、11月20日(まさにこの会合やっている日の夕方に出たのでして間が悪い話ですが)に政府がデフレ宣言とかしちゃったので、政府が「デフレだ」と言ってるのに日銀が「いやそのりくつはおかしい」とか言う訳にも行かずという事だと思うのですが、こんな感じで急にポッキリと折れる時にはまあ大体アレですよアレ。

・・・・いやまああくまでも妄想で仮定の話ですから「アレ」としか申し上げませんけどね、うひょひょひょひょ。この回の議事録は10年後に忘れてなければ読みたいもんですな。

なお、こういう現象に関して、中原伸之元審議委員は「日銀の政策変更に関する三原則」というのを指摘してまして、それをネタにして(というか正確にはそのネタがあった時事通信の記事をネタにしたのだが)書いた駄文がこの辺にございます。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugensonota.html#nakaharanobuyuki050520

まあ今回は政策変更というよりは「デフレ」定義の所で中原三原則発動ということですから、福井総裁が君子大豹変したような政策ロジックのワープじゃないのですが、それまでがああでもないこうでもないと言ってたという印象を与えていたので、「まあ政府のデフレ宣言に押し切られましたなあ」というイメージが強うございますわなということで。

あ、一応付け加えておきますが、11月の会合で「日銀がデフレと言って世間のマインドが悪化するかも」と指摘してる中で政府が堂々デフレ宣言しちゃったので結局同じ事になったのですが、まあ政府デフレ宣言の結果消費者の物価マインドが悪化したので、ああでもないこうでもないと言ってたこと自体が全くの無駄だとは思わないですし、キャッチーな話をしないけれどもまあ展望レポートで物価見通しマイナスを11年度まで出しているので察してくださいなというメソッドも無くは無いかなあとは思うのですけどね。と一応何となく書いておく。


○まあ要するに緩和措置は他市場対策ですね

『具体的な措置について、多くの委員は、オーバーナイト物金利が実質ゼロ金利となる中で、追加的に金融面から景気回復を支援していくためには、短期金融市場におけるターム物金利の更なる低下を促すことが、最も効果的であると述べた。』

ということでターム物金利誘導になったのですけれども、実際問題としてはこっちの方がメインでしょというのがその続きに。

『ターム物金利の低下の効果に加え、ある委員は、景気の下振れリスクが強まる中で、金融緩和を強化する姿勢を示すことが、各経済主体の不安心理を和らげる効果も考えられると述べた。』

これを平たく言うと、為替市場や株式市場への効果が出るような政策を打たないと行けませんなという話でしょ。

『別のある委員は、現在、政府も経済対策の取りまとめを進めており、今回日本銀行が追加的な措置を実施すれば、政府の取り組みとも相俟って、企業・家計のマインドを安定させる効果も期待されると指摘した。』

良く考えたら11月20日にデフレ宣言して12月1日の時点ではまだ政府経済対策の「取りまとめを進めている」状態とはこれまた何と言うスケジュール感の無い政府だことという感じですな。普通は一昨年の麻生政権のように、対策を用意して動くもんだと思うのですがねえ。


○情報発信に関して

『委員は、今回の措置の導入に当たり、情報発信の観点から注意しておくべき点について議論を行った。』

ということで。

『多くの委員は、市場の一部に、量的緩和政策導入などを巡る思惑が生じている点を指摘した。これに関し、多くの委員は、日本銀行は、金融機関の流動性需要を十分満たす供給を行う旨を明確にしており、今後とも、新しい資金供給手段も活用しながら、潤沢な資金供給を続けていく方針を市場にしっかりと伝えていくことが大事であるとの見解を示した。』

まあ元々量は出してますという話みたいですけれども、ディレクティブが金利な時点で量は後付けで決まる問題。ただし、預金ファシリティと誘導目標が同じなので、それなりに量は出そうと思えば出せるという事ですけど。

『これらの委員は、そうした日本銀行の姿勢を、誤解が生じない形で情報発信する必要があると述べた。ある委員は、情報発信にあたっては、今回の措置がターム物金利の引き下げを企図したものであることを明確にし、特定の量的指標を目標としたものと受け止められないように留意することが必要であると述べた。』

でもオペを出す時に「超低金利、固定、10兆円」と言って出していた訳でありまして、為替市場とか株式市場向けには「量」を意識させるようなプレゼンを行い効果を出そうとしているとしか思えない動きですので、ここのところはどうなんでしょうかね。

『別のある委員は、市場の需要に応えて大量の資金を供給し、日本銀行からの資金供給量が金融機関行動を制約することのない状況を作り出すという意味では、広い意味での量的緩和と言うことができると述べた。』

まあFRBも自分たちは信用緩和で量的緩和じゃないですと思いっきり言っていましたが、徐々にその定義論争をスルーするようになったように、まあこの辺っていうのはファジーな話なんじゃないですかねということで。


ということで本日はまあそんな所で。


○あとメモだけですが

1月は無担保コール翌日物加重平均の月中平均が0.1%初めて切りましたね。いやまあそれだけの話ですけれども。