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2010/03/31

お題「CP現先オペ減額とか/虫干しネタ系」

今年も早いもんで4分の1が終わっちゃいますよorz

#為替や株の何とかストがモーサテで金利の話や金融政策の話をするのを聞いていると頭がクラクラしてくるのですけどまあ悪態は止めときます

#今ニュースで説明しているのですが、ゆうちょ銀行が国債を買うと財政規律がおかしくなるという理屈はさっぱり訳判らん

○CP現先オペがフェードアウトとかその他

昨日のオペでの話題と言えばCP買現先オペがロールされなかった事でございます。これまでCP買現先オペは3000億円が7本あって2兆円弱の残高(というのは札割れの分がある為です)があったのですが、今回は期日が来る分を華麗にスキップ。

まあこの前もちょっと書きましたが、ここもとCP買現先オペに関しては、オペの期日をそろえるような実施の仕方があったりして、「ロールの時に減額しますよ」とゆーのが見え見えの展開ではあった(現在オペのエンド日が揃っている日が2日分あって、そのエンドで減額ロールをすると、2本減る勘定になる)のですが、期日揃え攻撃だけではなくロールをしない攻撃と来ましたかそうですか。

元々CP現先オペの増額はリーマンショック後の短期市場におけるオープン金利の上昇に対応してCPレートの上昇に対応する施策として積極活用という話になった(なったのに実際に増額したの1本だけだったので効果はほんの一瞬でその後更に金利が上昇して大変な事になった件については当時物凄い勢いで悪態をついていたのでその辺りをご覧ください)所から増えまして、その後利下げ&企業金融特別オペの実施とかになって更に増額となったという流れのものであります。

ということで、CP買現先に関しても危機対策の一環で増額されたと言えばまあそうです(通常は期末あたりに思いだしたように1本実施するだけです)ので、金融市場の機能回復に伴いCP買現先も縮小というのは流れとしてはおかしくは無いという所でしょうか。

特オペがこれから残高が落ちて行きまして、CP買現先も減るという話になりますと、オペを使った場合には共通担保オペでの在庫ファンディングとなるので、従来0.10%で取れていたものが1bp弱上昇するようなイメージになるという感じでしょうか。そうなりますとファンディングコスト由来の短期国債とCPの恒常的なレート逆転もやや是正されるのではないかとは思うのですが、何せ発行企業さんの資金需要が無い状況が続いているので、CP発行額そのものが少なくて需要の方はあるという状態ですので、そんなにレートが上昇するかというと上昇はせんのでしょうけれどもね。


同じくオペの話ですが、末初でオペ残積み上げて当座預金残高も積み上がる形になっております。結局今日の当座預金残高は23.4兆円とかになるようで、当然ながらレートちゃんの方も落ち着きまくっている訳ですが、問題は1日以降どうなるのよという所っすな。つまり当座預金残高をまた減らす中で共通担保オペの期落ちがドカドカやって来る(末初の1日物オペはまあ良いとして、新型オペじゃない方の共通担保オペ残高が1日には1.2兆円、2日には2.2兆円程度落ちる)ので、その分市場調達が増える格好になると思います。まあ昨日までの感じだとGCで資金調達する主体の債券ディーラーでも資金には余裕があるような感じなので金利はまだ落ち着いていますが。

でですな、新型オペの方は増額されるのですけれども、こちらのオペは何せ1回で調達できる額が少なく(按分が15%とかなので応札限度額から計算すると300億程度しか入らない)、債券ディーラーが店頭売買やら入札やらでぶれる在庫ポジションの変化に対応した調達という意味で言えば屁のような額になりますわなという所でして、まあそんなこんなを考えますと、入札方式のオペが減るのもどうなのかねという所でしょうか。

だからCP買現先を減額したという事もあるのでしょうけれどもね。


○すっかり忘れていましたが金融経済月報

いやまあ忘れてた訳ではないですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1003.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(2月)
PDFでページ数が多いのでご注意ありたし。

例によって手抜きで概要部分だけですが、これがまた概要の所だけ見ていると上方修正にしか見えない所がチャーミング。

・現状判断

まずは現状判断部分。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

という所は同じでして、需要項目別の展開で言えば、設備投資と住宅投資の判断を引き上げて、公共投資の判断を下げています。

『設備投資は概ね下げ止まっている。』(今回)
『設備投資は下げ止まりつつある。』(前回)

『住宅投資は下げ止まりつつある。』(今回)
『住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。』(前回)

『公共投資は減少している。』(今回)
『公共投資は頭打ちとなっている。』(前回)

まあ低い水準中での話ではありますが(−−)


・先行き見通し

で、先行きに関しても総括判断の、

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(今回)

というのは変わらないのですが、先行きに関しての需要項目ですが、設備投資の所で企業収益の水準を引き上げています。

『設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(今回)
『設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(前回)

ということで収益の回復という話になったのですが、ところでこの「など」というのはどういう意味があるのでしょ?

で、公共投資の先行きは引き下げていますが、まあこれは上記の現状判断と同じ話ですので引用割愛します。


・物価

物価に関してはこれまた現状判断や見通しに関しての基調判断は変わっていないのですが、経済全体の需給バランスに関しての表現が微妙に上方修正されているのでありまして。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(前回)

ということで、経済の需給バランスが「緩和」から「緩和状態」となったのは毎度の上方修正パターンでございます(^^)。


・金融環境

殆ど変っていないのですが、その中でしらっと緩和政策の緩和度合いに関する表現を前進させているのはこれまたお洒落。

『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(今回)

『実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎつつある。』(前回)

ということで、企業収益の上方修正を受けて金融環境に関しても、緩和政策の効果がより出るようになってきましたという上方修正をしているのは何気にポイント高いと思います。まあ実際にそうなのですかねという話は置いときまして、ですけれどもね。

#ということで虫干しネタでどうもすいません

#しかし期末になると帳尻合わせのように日銀から色々なレポートが出てくるので読むのに出るのが(出るのに読むのがのタイポです)追いつかないですぅ













2010/03/30

お題「宮尾審議委員就任会見/その他雑感」

こうやってPCでヘコヘコ書き物をしている人間が言うのも何ですが、あたしゃPC画面で纏まった文章を読むのって目にきびしゅうございまして、電子書籍とか言われましてもしんどいのですよね。と、長い物は一々紙に出さないと読めないエコロジーに反するあたくしの雑感です。

#iPadがどうしたというニュースを見て思っただけです

まずは宮尾審議委員就任会見。最初ですのであっさり味。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003d.pdf

○超過準備の効果は定量的ではなく定性的な側面で

過去の量的緩和政策に関する評価についての質問に対して。

『(答) まず、過去の量的緩和政策の評価に関しては、私自身、過去の論文等で少し触れたことがあります。私自身がどのように考えているかというと、流動性危機あるいは金融システム対策としては効果があったのだろうと考えています。一方で、最終的な景気・物価に与える影響がどれだけあったかということについては、まだ結論が出ていないのではないかと思っています。』

つまり超過準備の存在が金融市場の流動性問題を解消するという面についての効果ですが、ではその超過準備が景気や物価にどういう効果を与えたかは微妙ですという話ですな。

昨日ちょっと引用しましたが、現在のバーナンキのFRBでは資産買入に伴って生じた超過準備がMBSなどのスプレッドを縮小させ、金利の引き下げによって効果を与えたという理屈を展開しています。実際問題として本当にそうなのかという点はツッコミどころ満載だと思うのですが。

『当時の日本経済の場合は、銀行部門が傷んでいましたので、その意味では効果が限定的ではなかったかという評価が大勢ではないかと思います。ただし、これについては現在、学術的な実証研究・検証が進行中です。このため、今、私が申し上げた評価というのは最終的な結論ではありませんので、その点は是非ご注意いただきたいと思います。私自身、今後の研究の進展を注目していきたいと思っています。』

そういう意味で米国と比較した場合、米国の場合は個人部門のローンなどでもMBSとかの金利が貸出に跳ねる部分があるので、金融市場の機能回復をするのが実体経済により跳ねやすいというイメージ的な話はできますけれども、恐らく実証研究したらそう簡単な話でもないんでしょうなあと思うのですが、何せ米国の個人借入がどうのこうのなんて向こうに何年か住んで生活しないとよー判らん類の話ですので、ドメドメのあたくしが知る由も無しとな(涙)。


○今回の新型オペ増額に関して

で、同じ質問の中で新型オペに関する見解も聞かれましたが。

『次に、3月17 日に決定された新型オペの拡充については、これまで外部から新聞の論調等を見て様々な議論があるということを承知しています。その評価や政策効果については、本日着任したばかりですので、具体的にコメントすることは差し控えたいと思っています。』

何だつまらんと思ったらその後に今回の措置に関しての見解が。

『ただし、きわめて一般的な考え方ということで申し上げると、今回は、景気判断として、ある程度景気が持ち直すという局面で追加緩和を行ったということですが、景気が持ち直す局面で金利をわずかでも低下させる、あるいはきわめて低い金利を維持するということは、考え方としては実体経済に対してより刺激的な効果を持ち得る可能性があるということは指摘しておきたいと思います。』

そらそうです。押し上げ介入みたいなもんですわな。

『この点は特に、景気の持ち直しが持続的かどうかということに関わってきます。例えば、経済に対して中立的な金利水準というものがあるわけですが、企業の収益力が持続的に向上して、経済に対する中立的な金利水準が上昇する場合に、効果を持ち得る可能性があると言えます。』

中立金利論に関しては以前福井の俊ちゃん時代にその手の議論が出て、まあ正直言ってあたくしの個人的にはですが、量的緩和の出口戦略の方便として使われていたようなイメージが甚だ強くてどうなんでしょという気がする。いやまあ概念としてそういう話はアリなのですが、結局のところその「中立金利水準」というのが明確に算定できる類の物でも無いと思われる(経済指標の数値などが全部確定した後付けでは算定できるのかもしれないですけれども)ので、結果後付けの理屈に使いやすそうな希ガス。まあいいけど。

『ただ、今申し上げたことは、現在の景気回復がどれだけ持続的であり、中立的な金利水準が上昇しているのかということが大きな論点でもありますので、今後、注意深く検証していく必要があると思います。いずれにしても、そのような可能性を含め、様々なデータをよく分析して今般の政策効果を見極めていきたいと考えています。』

さよですか。


○本質的な問題は金融政策単体では解決しないと

これはまた見事なツッコミ。

『(問) かつての著書を拝見すると、日本経済の長期的な停滞の原因として生産性の低下を挙げています。言い換えれば、金融政策で総需要を調整することについてはどちらかといえば懐疑的であり、おそらく、日銀の仕事ではない構造調整の方をむしろ重視している立場であると思ったのですが、その基本的なスタンスに変わりがないか教えて下さい。』

すいません著書一冊買ったのですが、あたくしは何せハクション大魔王(歳がばれますかそうですか^^)ですので数式が山ほど並んでいるのを見ると卒倒しそうになる為にまだ読了してません(涙)。

『(答) 私がこれまでの色々な著作あるいは論文等で申し上げてきたことは、1990 年代末から2000 年代初頭にかけての、日本が本当に苦しく、いわゆるデフレスパイラルと言われたような、あるいは資産デフレが非常に深刻であったり、不良債権問題の解決の出口がみえない、そういった時の評価です。その当時は、金融政策で何かするというよりも、問題の根源は例えば不良債権問題であったり、様々な構造調整が重要であるというように認識していました。その当時の経済状況のもとではそうした評価をしていたということには変わりありません。』

『ただし、これからまた同じかというと、その前提がもしかして違うかもしれません。具体的に申し上げると、例えば金融システムの問題に関しては、欧米先進各国は現在、かつての日本のように非常に傷んでいるようですが、日本は、相対的にはそれほど問題が深刻ではないと思います。このように、議論の前提が変わってきているということは言えると思いますので、そういうことも踏まえ、今後は政策効果について、データや情報の収集等を通じて見極めていきたいと思っています。』

何かシロウト考えにも程がありますが、あたしゃ金融システムが傷んでいる時の方が非伝統的な金融政策が効くような気がする(まあ金利操作じゃなくて個別市場への介入を金融政策と言うのかという論点はありますが)のですが。つーか金融システム問題やら企業部門の過剰債務問題がかなり解消されている状態で金融政策の効果がという話になると、早速「ではデフレ脱却の為に金融緩和をもっとやらないか」というツッコミが飛んで来るような気がするんだが(^^)。


最後にもこんな質問(^^)。

『(問) これまでお書きになっている様々な論文や著書を拝見すると、金融政策の力に対して懐疑的と思われ、それならばなぜ審議委員に就かれたのかというところが、率直に言うと疑問でした。こうした我々の理解は一方的であり、委員としては、これまでのご所見にとらわれずに柔軟に考えていく用意があるということなのでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) ご質問にあったとおり、金融政策に対するかつての私の評価は、非常に懐疑的、あるいは慎重な見解だったかもしれません。ただし、それは先程申し上げたように、本質的な問題が金融政策で解決されないということが主要な理由であったので、その意味では、前提は少し違っているということは申し上げられると思います。』

まあ今後の展開を楽しみにしております。


以下市場雑談。

○市場雑談です

・追加緩和政策を行ったのに追加緩和政策前より金利が上昇している件について

いやまあ追加緩和政策の実施によって景気回復期待が更に盛り上がってその結果中長期金利が上昇したというのであれば、まあそれもまた追加緩和の効果という話なのですが、多分単なる期末の需給要因と米国の金利が何気に上昇して2年が1%乗るわ10年がまた3.8%後半になるわというのが要因だと思いますけど・・・・

先月の例の日経記事の前という事になりますと3月の頭という事になりますけれども、記事の出る前日には微妙に怪しげな挙動をしていたので、記事出る前々日の3月3日の引けを見ますと、10年306回債が1.330%で、5年87回債が0.495%だったのですが、昨日の引けはそれぞれ1.400%の0.535%と大変にお洒落な展開に(ちなみに2年は横ばい、20年は0.025%の金利上昇で30年は0.020%の金利上昇ざます)。

まあ美しく考えるのならさっき書いたような「景気回復期待」となるのですけれども、結局単なる米国と欧州要因だけのような気がする所でありまして、あの騒動は何だったんだという空しさが残る今月の緩和騒動であった事よという感じが致します。


・期末の資金調達レートは落ち着いて推移してますが

そらまあ末の当座預金残高が24兆円だか何だか良く判らん(財政がぶれている分が期内に入るのだとあと1兆少々上振れするのかな)のですが、まあ兎に角やたらめったら積み上がる状態になりましたので、市場調達が減るわなという所もありまして、末初のGCレートは金曜に瞬間0.13%とかもあったらしいですが、その後は弱含みで推移して昨日のスポネベースでは0.105近辺という大変に落ち着きまくった展開。

いやまあそっちが落ち着いているのは良いのですが、GCが低くて要調達額が減りますと今度はSCがご多忙になるようで、5年カレントとかチーペスト近辺とかご苦労なこった状態になっておられると仄聞しますが、世の中にフェイル慣行を定着させたいというお話でしたら末初でバットフェイルとかするんじゃねえよと思うのはあたくしだけですかそうですか。

ただまあ足元やたらめったら積み上げてしまった結果として、昨日のオペも国債買現先のロールだけとかお洒落な展開になっております。来月の前半の運営は中々大変な感じですよねえとは思いますがどうなることやら。

ということで最後は意味不明のマニア話になってしまいましてどうもすいません。





2010/03/29

お題「亀崎審議委員会見/バーナンキ議会証言続き」

まずは亀崎審議委員会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003c.pdf

質疑は短かったのですが、妙にツッコミがゴリゴリと来ていました。

○まあこのくらい威勢良い話をした方が良いのではないかと

講演の中で「プロアクティブに行動」という話がありましたが、それは何ぞやという点と、では今回の追加緩和措置に関する質問に対する答えから。長いので途中から。

『その間、金融政策や財政政策を積極的に活用することによって先行きに対する安心感を作り出すとともに、各経済主体が様々なイノベーションや地道な努力を重ねて内外の需要を創出し、生産性向上を反映した中長期的な所得増加期待を高めていくことが肝要だと思います。』

『こうした考え方のもと、日本銀行は、今後とも極めて緩和的な金融環境を維持して、わが国経済が物価安定の下での持続的成長経路に復していくことを粘り強く支援していく考えです。そして、その過程においてどのような措置を講じるかということについては、その時々の経済・物価情勢、金融情勢を踏まえて判断していきますが、その際、プロアクティブに政策を行っていくということは、適時適切に、遅れたり早まったりということではなく、その状況に最も適した政策は何なのかということを、追い詰められたり、圧力を受けたり、様々な雑音のようなものを考えながら行っていくわけではなく、自らの判断で実行していくということであり、受け身ではないということです。』

白川総裁にもこの位威勢の良い言い方をすれば良いのに(どうせなんちゃって緩和政策を実施するのだったら、威勢よくやってますよって言えば・・・)って感じが致します。

『このところ景気は幾分上振れ気味で推移していますが、日本経済が物価安定の下での持続的成長経路に復するには、なお時間を要する状況が続いています。こうした中では、金融政策の面からまだ可能な施策があるのであれば、プロアクティブに実施することが肝要であり、そうした意味で今回は企業金融支援特別オペの受け皿としての額以上の大幅拡充を行うことを考えました。景気は若干上振れ気味ですので、実質的な効果はより強いのではないかと考えています。』

ということで、まあやってる内容は兎も角、積極的な緩和姿勢を見せるというのは良い傾向なのではないかと存じます(^^)。


○これは良い言いくるめロジック

同じ質疑の中ですが、新型オペの増額に関する部分の説明はこうなっております。

『今回は、やや長めの金利の低下を促す措置の拡充を行ったわけですが、なぜこのタイミングで行ったのかという点については、まず企業金融支援特別オペが今月末で終了することも踏まえ、その受け皿として固定金利方式の共通担保資金供給オペを拡充することを考えたことが挙げられます。』

それは去年の10月に既に話がありましたが・・・と先日は突っ込みましたが。

『昨年10 月に企業金融支援特別オペを3月で完了すると決定したときは、この共通担保資金供給オペは入札方式しかありませんでした。現在は、企業金融支援特別オペと同じ0.1%の固定金利方式の共通担保資金供給オペという手段があります。』

で、さっき引用した「プロアクティブに実施」という話に繋がるのですけれども、「このオペは長目の短期金利を引き下げる効果があるので通常の共通担保オペよりもより効果が高いからこちらにしました」という話で攻めていますな(^^)。

実際は全体のオペとの兼ね合いがあって、あまり長いオペを乱発すると短いオペが窮屈になる(輪番オペを増やし過ぎると短期オペが窮屈になるのと同じ理屈)ので必ずしも金利押し下げができるのかというとこれがまた難しい面があるのですけれども、そこまでの話はまあ一般向けにしてもシャーナイナイという所ではありましょうな。

で、何がプロアクティブなのかというツッコミが更にやってきたのでそれに対して答えているのですが、これがまた中々いい感じで言いくるめっぽくて結構(誉め言葉ですので為念^^)。

『(答)現在の金融政策・金融環境をみると、まず1点目は、政策金利は0.1%、実質的に金利ゼロの状態です。2点目は、短期金融市場に潤沢に資金を提供する措置を採っています。3点目としては、日本経済が持続的な成長パスに乗っていくよう極めて緩和的な金融環境を維持していくということをコミットしています。』

ここまでは前置き。

『しかし、物価の上昇には相応の時間を要する状況です。経済の実態は、輸出の増加を受け、生産も伸びてきていますが、まだ政策効果および在庫復元効果が大きく効いている段階で、民間最終需要の自律的回復に繋がっている状況ではありません。こうした中で、特別オペが3月で終了するのを控え、その完了を決めた時点ではまだ存在しなかったこの3か月物、0.1%という固定金利オペを拡充することが適当と考えた次第です。何に対してプロアクティブかと申しますと、金融緩和度の一層の深化に対してプロアクティブに手を打ったということです。』

何か判ったような判らんような説明ですが、何となく積極的な姿勢を出しているというのは伝わりました(^^)。


○しかし今回の質疑はやたら突っ込む突っ込む

で、上記応答の次の質問が更にツッコミ。

『(問)金融緩和度合いの一層の拡充にプロアクティブに行動されたというお話でしたが、先行きもデフレが続くということに対してプロアクティブに行動されたというのであれば、例えば4月末の展望レポートにおける物価の見通しで先行き2 年間マイナスが続くということになれば、また一段とプロアクティブに行動しなければいけなくなるということでしょうか。』

何と言う連続ツッコミ。これは高知の激ウマな食べ物を食いに東京から記者が出張したと見ました(^^)。

『(答)プロアクティブというのは、先取りという意味ではありません。受け身ではなく、金融緩和を図るのに遅れてもいけない、早すぎてもいけない、総合的に経済・物価、金融情勢を判断して決断したということであって、決して先取りではありません。』

威勢の良い話をし過ぎたのでトーンダウンですかそうですか。

『また、展望レポートを出した後に何かをしなければならないかどうかについては、まだ全く何も考えていません。政策運営は、常に、その政策を決めるその時、その当日まで、物価だけでなくて実体経済も金融市場も考慮して、その時に最適な、しかも効果のある施策を判断するということです。展望レポートが出た時にまた何か措置を講じなくてはならないといった考えは今の私の頭の中には全くありませんし、そうした見方は適切ではないと思います。』

まあだから本当は4月に展望レポートで厳しい物価見通しを示した所で追加緩和(のようなもの)した方が政策として整合性が取れたのですけれども、どこぞのアホウ新聞がキャンペーン張るもんだからねえ。


○で、威勢の良い部分へのツッコミが続く

次の質問もこれまた中々。

『(問)各経済主体が先行きの持続的な成長に対する自信を取り戻すために、日銀は何ができるとお考えでしょうか。政府はデフレ脱却のために日銀にさまざまなことをやってほしいと言っています。日銀として、自信を取り戻すための施策ができるのなら、なぜ今すぐにやらないのでしょうか。もし限界があるのであれば、できないことをできると幻想を振り撒いていることになってしまうようにも感じますが、その点いかがでしょうか。』

何と言う鬼ツッコミ(^^)。

『(答)日本銀行が発信している様々なメッセージについて読み込んで頂ければ、日本銀行が金融政策だけでデフレから脱却できると思っているという理解は成り立たないと思います。デフレ脱却のために必要なものは、基本的には需給ギャップを解消することであり、そのためには生産性を上げなければいけませんし、経済の成長がなければいけません。また、政府も企業も前向きに努力していく必要があります。』

で、日銀は何をするかというと、要するに緩和的な金融環境を継続するですよという事のようで。

『こうした中で日本銀行としてできることは、金融政策の面からその実体経済活動を支えていくということです。従って、日本経済がデフレから脱却して、成長経済に復していくためにできるだけのことを行うということは、日本銀行として、金融政策の面からでき得ることを行うということであって、需給バランスを解消する、成長性を高める、あるいは企業の収益を上げるということを直接的にできるわけではありませんし、そうした万能の力を持っているわけでもありません。しかし、日本銀行として、金融政策を通じてその成長を支えていくという点については、精一杯の努力を粘り強く続けていくということです。』

ということで以下割愛しますが、まあこの辺はそうですなあという所でございます。


○中長期的な物価予想の下振れ懸念に関して

最後の質疑応答は中々味わいがあります。

『(問)今回の講演の中で、「中長期的な物価上昇率の予想は変わっていないが、1年先には物価が下がると思っている人は増えている」と言及されていますが、この点を懸念して先週の追加緩和を実施したということでしょうか。』

『(答)挨拶の中では、今のところ、中長期的な予想物価上昇率には大きな変化はないように窺われるが、1年後の予想物価上昇率が低下しているほか、1年後の物価が下がるとみる人の割合も一頃より増えていると述べました。こうした物価に対する短期的な見方が中長期的な見方にも波及するとデフレ脱却が難しくなるという側面は、追加緩和を実施したさまざまな要因の中の1つではあったと思いますが、そこだけを見て決めたわけではありません。金融緩和度の一層の深化は、そういった数字もみながら考えたということです。』

これはあたくしの勝手な想像(妄想)なのですが、この部分に関してはまだ政策委員会の中で意見が分かれている論点なんじゃネーノという感じがします。また、あるいは別の妄想になりますけれども、日銀は実はこの論点に関しては相当の危機感を持っているのだけれども、モノが物価というそう簡単にホイホイと上がったり下がったりするものでも無いのが相手ということで、下手に危機感を表明してなお一層のマインド悪化を惹起(政府のトンチキなデフレ宣言の二の舞)しないようにしているのか、まあ微妙なんですけれども、世の中の物価上昇に関する期待の変化に関してはかなり重い論点なんだなと思います。

とまあそんなところで。



あとはバーナンキ議会証言続きでも。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.pdf

概ね2月10日(大雪で順延になった時の証言)のダイジェスト版(最初にそう言ってます)という所で、以前ご紹介した時とそんなに変化もなく、政策インプリケーションもそんなに新しいモノは無いと思われます。

・・・・・だけだと話が終わってしまって甚だ遺憾なので少々。

○議会証言なだけに納税者向けの話もあり

流動性供給プログラムに関する説明の中で今回もこの話を。

『In its role as liquidity provider of last resort, the Federal Reserve developed a number of programs to provide well-secured, mostly short-term credit to the financial system. These programs, which imposed no cost on taxpayers, were a critical part of the government’s efforts to stabilize the financial system and restart the flow of credit to American families and businesses.』

no cost on taxpayerというのは端折り過ぎ(2月の証言の時にはもう少し丁寧に説明してて、担保も沢山取って結果としてはコストも掛かりませんでしたという話になってましたが)ではないかと思うのですが、まあこの辺りは議会対策なんでしょうなあという感じです。折に触れて政策効果の中でAmerican families and businessesの金融環境を改善して助けるというフレーズが出てくるのがチャーミング。

ちなみに、流動性供給プログラムに関しては、目的:市場機能の確保、効果:企業や家計の借入へのアクセスを容易にする、ポイント:短期間かつ十分な担保を確保して納税者負担無し、という感じでしょうか。


○資産買入プログラムはless conventionalとな

資産買入と利下げの話がセットになっているのはこの前と同じ。

『The second part of the Federal Reserve’s response to the crisis and recession, besides the provision of liquidity to the financial system, involves both standard and less conventional forms of monetary policy. After reducing short-term interest rates nearly to zero, the Federal Open Market Committee (FOMC) provided additional monetary policy stimulus through large-scale purchases of Treasury securities, agency mortgage-backed securities (MBS), and agency debt.』

ここで「ふーん」と思ったのは資産買入プログラムをless conventionalという話をしている事ですな。伝統的な政策よりちょっと伝統的じゃないって言うのは何気にチャーミング。日銀は年がら年じゅうless conventionalな政策をしてますという話になりますなあ(というのは実は説明にインチキ成分が入っているのですが、そのインチキ成分については敢えてスルーします^^)。

で、その政策効果に関しては今回も超過準備の存在が金利を押し下げたという話になっていますが、実際の財務省証券利回りが下がっていた訳ではなくてスプレッドが縮小したのですよという部分は華麗にスルーしているのがチャーミング。

『The Federal Reserve’s purchases have had the effect of leaving the banking system highly liquid, with U.S. banks now holding more than $1.1 trillion of reserves with Federal Reserve Banks. A range of evidence suggests that these purchases and the associated creation of bank reserves have helped improve conditions in mortgage markets and other private credit markets and put downward pressure on longer-term private borrowing rates and spreads.』

で、それが「量的緩和じゃない」って言ってた説明と違うじゃんという話は以前も申し上げた通りでございまする。


○まあ基本的には2月10日の議会証言の簡略版ということで

あと、出口政策の実施の際には準備預金付利を利用しながらという話とか、多くの超過準備が存在する中ではFF金利のコントロールが難しくなるという認識とかも同じです。超過準備の吸収に関しては、リバースレポとターム預金ファシリティを主に利用するものの、それだけだとFEDのバランスシートは両建てになるだけなので、資産縮小が必要な時には保有証券の売却も、という話をしていますが、その辺りの順序に関しては従来言われているものと特に変化があるようには見えませんでした。


#ということで引用大会でどうもすいません







2010/03/26

お題「亀崎審議委員はハト的ですな/その他いくつか」

ハト派と書くとどうも最近は「とらすとみー」を連想してイメージが宜しくありませんな、と思うのはあたくしだけですかそうですか、トラストミー。

○バーナンキ議会証言

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100325a.htm

今日のはあんまり長くないが、さすがに寝起きでネタにするのは他にネタあるのでパスですが、ちょっと見た所資産買入プログラムの効果についてこんな話を。

『The Federal Reserve's purchases have had the effect of leaving the banking system highly liquid, with U.S. banks now holding more than $1.1 trillion of reserves with Federal Reserve Banks. A range of evidence suggests that these purchases and the associated creation of bank reserves have helped improve conditions in mortgage markets and other private credit markets and put downward pressure on longer-term private borrowing rates and spreads.』

資産買入による超過準備の発生がモーゲージ債やその他のクレジット市場の市場環境を改善させて、これらの長い金利の金利およびスプレッドを縮小させました。という話をしてやがるのですが、2月の雪で順延になった議会証言を読んだ時にも申し上げましたが、この説明は元々「我々はリザーブの額に注目する量的緩和政策を実施している訳ではない」と言ってた話と思いっきり違いますし、ついでにツッコミを入れると長期金利のベースになります財務省証券利回りちゃんの方は資産買入プログラムを実施して金利の方は上昇したのですけどね。

しかし何ですな、モーサテの言ってる市場後講釈が正しいという前提ですけれども、議会証言のこの部分を好感してダウ急騰というのはイミフなのでございますが。

『At its meeting last week, the FOMC maintained its target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and indicated that it continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』

というのと、最後のパラグラフに

『The economy continues to require the support of accommodative monetary policies.』

という話をしてるのに反応したのかねという感じですが、その他は例によって例の如く出口戦略の説明で、従来の話と変わらんのですが、逆に考えるとそんなに早期引き締めをみてるのかなあという所ですな。

基本的には前2回の議会証言の線です(と思う)ので、詳しくは後日やるかもしれませんしやらないかもしれません。


○亀崎審議委員講演

亀崎さんは講演ではコンセンサス対比ハトなのを示しますし、会見でも結構フリーダム発言をするのであたくし的には楽しく見ておりますが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003c1.pdf

・世界経済について

途中を端折って結論を。

『以上をまとめますと、世界経済は、様々なリスクはあるものの、全体として緩やかに回復しており、今後も回復傾向は続くとみられます。ただ、各経済主体のバランスシート調整圧力が強く、自律的な回復に向けた動きが緩やかに止まる先進国と、そうした圧力がなく、世界の金融・財政政策の間接的な効果もあって力強く成長している新興国や資源国とのコントラストは、今後、より際立っていくものと思います。』

つまり先進国の回復は遅いと。

・日本経済ではこのような指摘を

『先行きについては、まず、これまで景気の押し上げ要因であった、在庫復元や政策の効果は次第に剥落していくものとみられます。そうした中、厳しい雇用・所得環境の下、足許で持ち直している個人消費は横這いとなる可能性があります。一方、設備投資は、更新需要を中心に先送りが限界に達し始めることから、次第に持ち直しに転じてくるものと思います。従って、緩やかな持ち直し傾向自体は続くと考えています。』

やや慎重ですな。

『ただ、企業からは、先行き見通しの不透明感から、国内での投資や雇用の拡大を躊躇する声も多く聞かれており、慎重にみていかねばならないと考えています。』

この部分ですけれども、2月の決定会合議事要旨の中で先行きリスクの中でこのような話がありましたな。確か引用したと思いますが。

『また、何人かの委員は、海外への直接投資の増加による国内での設備投資の圧縮や、企業の根強い賃金抑制姿勢による家計所得の伸び悩みなどから、好循環メカニズムが想定どおり作動しないリスクがあると述べた。』(2月決定会合議事要旨より)

ということで、本件に関しては亀崎さんも指摘していますが、他の委員でも指摘している向きがありまして、毎度お馴染みの「企業収益改善による好循環メカニズム」に関してちょっと大丈夫なのという話が出ている点は、時間軸(のようなもの)の長期化につながる論点ではないかと思われます。


・デフレに関連して

デフレに関連しての話も執行部あたりとはちょっとテイストが違う感じがするです。

予想物価上昇率に関しての話の辺りから。

『需給ギャップと物価上昇率との関係は図表15のとおり、あまり明確ではありませんが、局面ごとに分けてみると、需給ギャップのマイナス幅が拡大すると物価上昇率は低下する、という緩やかな関係があるように思われます。ただ、長期的には、同じ需給ギャップでも実現した物価上昇率は次第に下がってきています。』

なるほど。

#ちなみに図表は→http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003c2.pdf

『これは、各経済主体が抱く中長期的な予想物価上昇率が低下したためだと言われています。誰しも、ある商品の価格が今後さほど上昇しない、あるいは低下すると見込めば、急いで購入する必要はないと思うでしょう。そうした状況下では、商品の供給者は購買意欲を喚起するため、価格設定を低めとすることが考えられます。経済全体でこうした度合いが強まれば、同じ需給ギャップでも実現する物価上昇率は低下するものと考えられます。』

企業の価格設定行動という点に関してですけど、BOEのMPC議事要旨(読んだのにまだご紹介してなくてどうもすいません)を見ますと日本とはまた違った企業行動が見られて面白いのよ。

『Business contacts of the Bank’s Agents reported that a combination of credit constraints, weak cash flows and uncertainty about the economic outlook had made them wary of cutting prices so far.』(3月のBOEのMPC議事要旨の第20パラグラフより)

で、このwaryってのが「用心深い」という事でして、金融環境が悪くて借入の確保に不安があって、キャッシュフローに対して不確実性がある中では、キャッシュフロー確保の為に価格引き下げに慎重という話だと思うのですが、これはやはりベースのインフレが違うと企業の価格設定行動も違ってくるんですなあと思ったのでありまする。

ちょっと脱線しましたがその続き。

『70 年代から90 年代前半にかけて、中長期的な予想物価上昇率が低下した理由としては、原油価格の落ち着きや、趨勢的な円高とそれに伴って拡大した内外価格差の是正圧力、規制緩和などの競争促進策が、関連商品の価格を引き下げるとともに、一般物価全体の上昇予想を抑えたことが考えられます。但し、90 年代後半以降は現在に至るまで、需給ギャップと実現した物価上昇率との関係は安定しており、今のところ、中長期的な予想物価上昇率には大きな変化はないように窺われます。』

『ただ、先にみた通り、1 年後の予想物価上昇率が低下している上、1 年後の物価が下がるとみる人の割合も増えています(前掲図表12)。こうした見方が、中長期的な予想物価上昇率の低下にまで繋がる場合には、デフレ脱却が困難となりかねません。従って、予想物価上昇率の動向は、十分注意してみていかなければならない重要なファクターだと思います。』

ということで、結構デフレ定着に対して警戒しているという事ですな。


・デフレのコストに対してもきちんと説明

きちんと「デフレのコスト」というコーナーがあるのが中々。そらまあ商社出身ですからデフレのコストに関しては実感もありますもんね。

『デフレ特有のコストには、名目金利がゼロ以下にならないことによって実質金利が経済の活動水準に見合う水準まで下がらなくなることが挙げられます。また、負債の実質価値が上がることで債務者の負担が増し、景気が悪化する面もあります。』

というのはまあ一般的に言われますが。

『債権者にとっては資産の実質価値が上昇することになりますが、通常、お金を貸す人より借りる人の方が、支出性向──収入のうち支出に回す分のことです──が高い傾向にあるため、経済全体としての支出額の縮小に繋がるからです。』

これは直感的に判り易い説明(^^)。

『このように、デフレには、インフレにはない特有のコストがあることに注意が必要です。』


・追加緩和に積極的な姿勢とな

最後の所でこんな説明を。

『日本銀行は、必要な場合には、プロアクティブに政策を実施していかなければならないと、常々意識しており、先週の金融緩和措置もそうした方針に基づいたものです。今後とも、各経済主体が先行きの持続的な成長に対する自信を取り戻すことができるよう、最大限の努力をしていきたいと思います。』

これはまた追加緩和にも積極的っぽい言い方。いやまあだから急に追加緩和という訳でもないでしょうけれども、(長くなるので引用をスルーしちゃいましたが)この前の部分で新成長戦略と中期財政フレームに関する期待感を表明していまして、まあ次に追加緩和のようなものを実施という点で言いますと、6月の政府のこれら政策フレームが出てくるタイミングで呼応して成長戦略下支えという形で打って来るというのは絵として美しいと思われます。

#なお、その前の物価安定の理解と展望レポートも何かあるとは思いますけど

とまあそんな感じでハト派的な講演ですし、会見でも報道ベースだとハト全開という感じのようでしたが、亀崎さんの講演は表示形式が箇条書きっぽくて独特だったり、話の中でも独自性を出すので、本当は全部図表も含めてじっくりと鑑賞するのが吉であると思います(ので後日追加するかもしれないししないかもしれません)。


○市場メモとか雑談とか

・財政要因が下振れしている件について

足元でGCレートがちと上昇してますし、コールレートも当座預金残高自体はじゃぶじゃぶな筈なのに何故か0.10%に乗っている状態。

・・・・・まあ外野だと正直良く判らん面が多々ありますが、今月は月末に掛けて財政大幅払い超になる所で、25日(24日でしたすいません)ではないかと予想されていた交付税交付金の払いが遅れている(交付税の払いは国庫から地方公共団体への払いになるので財政要因になる)為に資金繰りがぶれたことによるものなのか、財政要因での資金余剰に対応してオペが減っている(共通担保(含む新オペ)+国債買現先+CP買現先+企業特オペの合計で先月のピークから10兆以上落ちている)事によって市場での要調達額が増えた事によるものか、複合要因なのかは判らんですが、多分そんな背景があるかなと。

で、まあ財政要因に関しては数日後寄せになるだけだと思いますが、資金需給が読みにくいですねという所では暫くは足元が下がり難いのかなあという感じもせんでもないです。交付金の払いがずれるとなると、オペを予想する方としても予想が狂うので、そういう点では読みにくい要素が増えるのもあまり宜しく無いという感じでしょうか。

ちなみに、オペ残高が現在30兆円台半ばとかになっている筈ですので、実は新型オペをここからあと10兆増やすと、より期間の短いオペを打つのが激しく不自由になるケースが出てくるという意味でございまして(国債買現先を今のペースで実行したら3兆円、CP買現先が2兆円弱となるので、ショートタームの共通担保を打つ余地が無くなる)、何と「新型オペを増額したら足元のGCレートが上昇したでござるの巻」というようなお洒落な事態になるのかなあという感じで実に味わいの深い物がございます(^^)。

#そういや特オペ最終回は久々の増額ロールでしたな、最後のご祝儀入札ですか(^^)


・舛添センセイの観察(続き)

昨日の
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0114/174/17403120014011a.html
の続きを少々(^^)。

国債買入について

『○舛添要一君 いや、だから、二十一・六を十二で割ったら一兆八千億になるんで、同じじゃないですか、月を十二で掛けりゃいい数字だから。だから、一兆八千億円なんですよ。だけど、まだ余力ありませんか。五千億円ぐらい余分に買えませんか。』

前半の方は良いとして、最後のはナンジャコリャ???魚屋の店頭じゃないんだからさあ・・・

で、この質問に対して、白川総裁がこのような発言をしていた件について、市場の中で「ということは今後の輪番拡大の時にしらっと超長期の買い入れを減らすのではないか」という変な説が出ていたという話は後から聞いた(^^)。

『○参考人(白川方明君) まず最初に数字を申し上げます。その上で考え方を申し上げたいというふうに思います。 現在、銀行券の発行残高は、二月末で七十七・一兆円でございます。長期国債の保有残高は五十一・六兆円でございます。したがって、両者の差は二十五・五兆円ございます。(途中割愛)

 静的な現時点でのバランスシートを考えますと余力があるというふうな印象をあるいは与えるかもしれません。しかし、国債の買入れをどんどん行ってまいりますと、これは最終的にはだれかが日本銀行の負債を持ってくれている、つまり銀行券を持ってくれているからこそ実は買入れができるわけでございます。もしそれを超えてどんどん買っていきますと、最終的には日本銀行自身が国債を売る等の形で調整をしないといけないというふうになってまいります。(以下割愛)』

で、まあそれに対して舛添センセイは何をカリカリしているのか知りませんが、このような発言を。

『○舛添要一君 目先にデフレのこんな大変なことがあるときに、大胆に政策をやらないと意味がないんです。ですから、コマーシャルペーパーもまだ余力があるし、三月にこれ担保の時期が切れますから、是非そこを考えて、何度も申しますけれども、マネタリーベースを広げるということが円高の阻止策にもなるわけですから、これは是非、政策決定会合は白川総裁だけが決めるわけではないですけれども、是非、金融政策決定会合の前に、政府はそこまでデフレ一生懸命やるというんなら、その政策手段というのをよくお考えいただきたいというふうに思います。(以下話が変わるので割愛)』

最後の一文とか主語述語が訳判らんし、「デフレ一生懸命やる」とか(何を言いたいのかは判るが)ナンジャソリャ状態になっているのがオソロシス。そんなに興奮したら毛が抜けると思いますので程々に。

と申しますか、「コマーシャルペーパーもまだ余力があるし、三月にこれ担保の時期が切れますから」ってえのが訳判らん。CP買入をしてマネタリーベース拡大というのがそもそも変だというのもありますけれども、担保の時期が切れるというのが益々意味不明。別に3月末で適格担保基準を急に厳しくするという話は無いのですが何を話しているのか訳判らんですな。

何つーかこの人大丈夫かいなという感じですな。











2010/03/25

お題「今日は何故か国会ネタで」

前々から思うのだが、メリケン国は中国を為替操作国認定どうのこうのと言ってるけど、基軸通貨特権を存分に享受しているお前が言うなという気がするのは気のせいですかそうですか。

さてBOEの議事要旨とか日銀の金融経済月報とか、その他日銀からペーパーが出てたりするのですが、今日は何故かそれではなくて国会ネタで。

3月12日の参議院予算委員会
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0114/174/17403120014011a.html

相変わらず微妙な議論やらこの人大丈夫かというような物が散見されるのですが、「融資のスプレッドに関するネタ」と「次期首相候補の人気ナンバーワンの人が質問で物凄くファビョっている件について」という辺りから参りますです。

まずは大久保勉(民主党)委員の質疑から。

○そのスプレッドは信用スプレッドでは無いと思う

中小企業金融に関する質疑なのですが、その金利が高いがなという話をしていまして予定調和の如く話が「銀行ケシカラン」になっているのですけどね。

『○大久保勉君 十八兆円使われているということで、私の前に亀井大臣もいらっしゃいまして大きくうなずいていらっしゃいまして、しっかりと中小企業対策がなされていると認識しております。

 私も地元で銀行関係者に話を聞きましたら、この制度は非常に使い勝手がいいという話がありました。中小企業の社長さんに関しましても、大宗はいいということなんですが、一部金利が高いという話もありました。〇・八%の保証料を取っていて、さらに銀行の金利が高いと、こういった批判もありました。

 この点に関して、主要銀行の貸出金利の平均、そして貸出金利と市場金利の差、いわゆる信用スプレッド、この点に関して質問します。』

えーっとですな、あたくしはこれを読んだ時点で既に話が変だなと思うのでありまして、そもそも数百万や千万円台程度の貸出の金利に信用スプレッドの概念を持ち出すと話がワケワカメになりますが、その流れを鑑賞しましょう。

『○副大臣(大塚耕平君) 大久保委員にお答え申し上げます。

 昨年の四月から九月までの間に貸し出されました貸出期間三年から五年の信用保証協会一〇〇%の保証付きの融資の主要銀行の平均金利は一・七二%、また同じ期間の五年の金利スワップレートの平均値とのスプレッドは平均で〇・八三%となっております。』

『○大久保勉君 こちら注目しておりますのは、いわゆる信用スプレッドが〇・八三%ということなんです。信用保証協会が一〇〇%保証しておりますから、銀行は一切中小企業の信用リスクを取っていません。それなのに〇・八三%は高いんじゃないかと思っているんです。

 是非、この辺を認識してしっかりと対策を行ってもらいたいと思いますが、直嶋大臣、いかがでしょうか。』

『○国務大臣(直嶋正行君) 結論からいいますと、大久保議員の御指摘のとおりだというふうに思っています。(まだ続くがいったんここで切る)』

・・・・orz

えーっとですな、例えばかつて流動性選好が極端に進んだ時(97年前半だったかなあ)には政府保証債の対国債スプレッドが30bpだの40bpだのになった事はございますように、別に信用保証協会が100%保証しているからと言ってスプレッドがゼロにならなければならないという理屈はどこにも存在しないのであります。

しかも小口の貸出と電話一発でドカンと数百億ロットで取引される金融市場の取引では、同じ金額を扱う場合に取引に掛かる手間が格段に違うのでありまして、その手間賃がスプレッドの形で乗るのは当然の話。

つーか大久保先生って証券会社にいたと思うのですが、株式を市場取引する時の手数料って大口と小口で料率違うこと位ご存じではないか(しかも証券会社って小口客相手だと基本的に売買代金前受(またはMRFの残高がある事を確認)するからそれこそ小口相手にはカウンターパーティーの信用リスク取ってませんよねえ)という感じですが、単に金利が高いのを金融市場での取引と同じような切り口で話をするとか何と言うナイーブな議論。

まあそれに対して大臣がそうだそうだと返すのもどうかと思うのでして、保証協会融資の中で制度融資形式で金利が決まっているものとかもあるでしょうし(最近はどうなのか知らんが)、何と言う雑な話という所でございますが、直嶋大臣の続きの話も中々凄い。

『お話のように、信用保証協会が融資額の一〇〇%を保証するために金融機関のリスクはなくなるということで、このため、私としては金融機関はそれに応じた金利の引下げを行うべきであると考えておりまして、金利の引下げがもし十分になされていないとすると、国費で手当てをしている信用保証によって実態は金融機関の財務基盤強化を支えているのではないかという批判も招きかねないというふうに思っています。』

『この点は、実は昨年の十二月の十日に亀井大臣の御指示で民間金融機関の皆さんを集めていただきました。それから、先日、三月二日にも同様の機会がございまして、その場で私の方から直接、金融機関の代表に対してもお願いをいたしました。それから、中小企業庁の方から金融庁に対して、貸出金利の引下げなどの中小企業への配慮の状況について検査・監督を通じて確認してほしいと、こういう要請を今させていただいておるところであります。』

『○大久保勉君 やはり政権交代をしたという実感ですね。政治家主導できっちりやってください。』

つまり政権交代をしたら金融業が国家統制状態になるということですね!!!
 
この次の話も訳判らんのですが・・・・

『もう少し細かい点を言いますが、次は、銀行と信用保証協会に何らかの癒着があって、信用保証協会の職員が金利を下げろとなかなか銀行に言えない、こういう実態もあるんです。例えば、全国五十二信用保証協会の役員が九百八十九人います。そのうち、銀行関係者が三百十二人です。約三割が銀行関係者です。ですから、役員が銀行関係なのでどうしても職員の方は余り銀行に強く言えないんじゃないかと、こういったこともあります。』
 
えーっと、最近の制度がどうなっているか貸出の現場にいないから知らないので軽々とは申しませんが、あたくしが金貸しの手先をやっていた時の信用保証協会の保証の形式って、貸出金利に関しては、制度融資で金利がそもそも決まっているものを除けば金利に関する定めは無かった(銀行と債務者間で決定した金利)筈なのでして、信用保証協会の職員が銀行に対して金利設定がどうのこうのという話はそもそも強く言うもへったくれも無いと思うのですけれども。

#しかも小口の貸出に関しては(あたくしの時代だと)課長補佐とか課長とかのクラスが決裁してて役員なんぞ見た事は無かったんですけどねえ(笑)

ということで話がそれましたが、小口貸出の金利という点では、ブログを卒業されちゃったようですが、こちらの方のエントリーに参考資料がございますので(まあマイクロファイナンスなのでこの件とは話の質が違うけど)ご参考までに(^^)。
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2006/10/27-115140.php



○もう何年も議員をやっている筈なのにこの人何か凄いですね

続いて自民党の舛添要一委員の質問ですが、これがまたある意味面白いのだが、次期首相候補の人気ナンバーワンでこれかよと考えると暗黒臭が漂って来るのは気のせいですかそうですか。

その前に白川さんがここでも為替の話をしているのでそのくだりから。

『○舛添要一君 今の総理の御答弁にありましたように、じゃ、マーケットに任せているんだから何もできないかというんだったら、何のために政府があるか分からない、日銀があるか分からないんで、政策があるはずなんですよ。ですから、その政策はどういうふうにやるんですかということをちょっと日銀総裁に聞いてみたいと思いますけれども、白川総裁、円高対策、日銀としてはどういうふうにやりますか。』

日銀総裁に円高対策と言われても困るのですが・・・・・

『○参考人(白川方明君) お答えいたします。

 最初に、今、政策というお話ございましたので、金融政策の目的、これは日銀法に規定されていますとおり、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。この目的を達成するために、日本銀行は、為替レートも含めまして、経済、物価、金融情勢を幅広く点検して政策を運営をしております。

(中間割愛)

いずれにせよ、日本銀行としては、現在、極めて緩和的な金融政策を続けるということを明確にしておりますので、これは為替レートにも相応の影響を与えているというふうに思っております。』

ということで、「為替に影響を与える」という話をすんなりとしているのは、まあ従来の総裁の話よりは踏み込んでますねという所でして、これは決定会合の前の週の金曜日でございましたのでそんなに市場に影響しなかった(追加緩和政策のようなものが実施されるのは織り込んでいたから)ですけど、まあ今後も為替に関しては配慮する姿勢を出す(アメリカに怒られない程度に)のは吉ではないかと存じます。

で、まあそれはそれとしてその次辺りから何を興奮しているのか(さっきの質問も微妙でしたけれども)というような感じになって参ります。

『○舛添要一君 今、日本銀行法の第二条をおっしゃっていただいて、これは、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」。しかし、今見ると、デフレということの退治ができなくて、日本経済の健全な発展どころか日本経済の破壊を行っているというふうに極論すれば言わざるを得ないんです。

 そこで、菅大臣、全部日本銀行に任せていい話じゃなくて、金融政策の道具はもちろんどの道具を使ってもいいんです、結果が出れば。しかし、結果が出ないということは、今かじ取りをやっているのは鳩山総理であり菅大臣でありますから、日銀法第四条を、菅大臣、読んでみてください。──時間がないんで、通告してありますから、きちんと。総理、こういうところが、私はあの遅刻したのを注意したので、こういうところが緊張感足りないというんです。ちゃんと通告してありますよ。ですから、そのときぱっと出るようにしないと。政治主導じゃないじゃないですか。』

何か「日本経済の破壊」みたいな過激なフレーズを使ったのに自分で興奮しているのか何だか知りませんが、後半の話は何を言ってるのか訳判らないですなあと思ったら菅さんがこのように答弁。

『○国務大臣(菅直人君) 四条の趣旨は分かっていますけれども、少し、余りかりかりしないでお願いしたいと思います。

 第四条、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」。

 以上です。』

イラ菅に「かりかりしないでお願いしたいと思います」とか言われるなよ(^^)。


○で、この人事実誤認が多過ぎじゃないのかと

で、上記の部分に則してこんな事を言っているのですが・・・・・

『○舛添要一君 日銀の独立性ということの話でこの日銀法を変えましたけど、私は、日銀と政府がばらばらの方向を向いているようではもう一遍日銀法を変えざるを得ないと、それぐらいに思っていますが、菅大臣、どうですか。』

・・・・えーっと、一応どっちも「デフレはケシカラン」という話はしているのでありまして、それに対して手をこまねいているのではという批判ならアリだと思いますが、そういう方向に議論を持って行くとその時点で説得力が無くなってしまうのでありまして・・・・・

『○国務大臣(菅直人君) 日銀との関係はいろいろ議論があるところで、法律を変えてまだそう時期がたっていない中でそこまで言い切るのはちょっと早過ぎるかなと思っております。

 ただ、はっきり申し上げて、昨年の十二月の一日に政府が方針を決めた中で、日銀の方も三か月物のレートを〇・一にするとか、あるいはその後、プラス〇からプラス二のインフレ率を言われるとかということで、そういう意味ではこの間の方向性、目標は、私は政府と日銀は基本的に一致していると。今まさに舛添さんが言われたように、それを実現するために政府は政府としていろいろな対策、政策を打っておりますが、日銀はそれを実現するために、まさにその手段は日銀の独自の判断でいろいろやられるだろうと、それを期待をしているということであります。』

これはまあ「期待している」っていうことで圧力っぽい報道になっていましたけれども、会議録を見るとそんな無茶な文脈で話をしている訳でもなさそうですね、菅さん悪態つきまくって失礼致しましたどうもすいません。

で、もっと凄いのはこの辺り。

『○舛添要一君 (前半割愛) そこで、私は実は金融政策について、その当時は速水日銀総裁でしたけれども、自分の国会のこの質疑をもう一遍取り出して読んでみましたけど、全く同じ失敗を日銀は私は繰り返している。二〇〇〇年の八月のゼロ金利解除、これをやって、これで大失敗をやる。それでニューヨークのテロがある。そして、また量的緩和をやる。二〇〇六年の三月にこの量的緩和政策の解除をなさいました。』

あのー、順序が間違ってますが。量的緩和復活が01年3月で9.11は01年9月なのですけど大丈夫ですか?????

『私は、これちょっと見ていただくと分かりますが、皆さん方の紙ありますけれども、二〇〇〇年のときに、当座預金残高、国民の皆さんに分かりやすく言うと、お金というのは体を流れている血液だと思ってください。貧血状態になったら倒れるんです。三兆とか四兆とかその辺ぐらいの供給をしなきゃ、もう完全に貧血で倒れる。だから一気に量的緩和しろということで、青天井ですよ、三十五兆ぐらいやった。それで良くなった。ところが三月に、何が理由なのか、量的緩和政策を解除しちゃった。がたっと落ちてきて、そしてリーマン・ショックがある。』

すいませんあの量的緩和の拡大って別にいきなり35兆にした訳じゃないです。

『だから、当然、常識で考えれば、六年三月に量的緩和政策を解除すれば一年か一年半後にはこういう状況に陥るよというのは分かったはずなんですけど、何で性懲りもなく金融政策の失敗を繰り返すんでしょうか、日銀総裁。』

量的緩和解除したらリーマンショックが起きるとはさすがに誰も予想できないと思うのですが、常識とまで言われるようでしたら政治家なんぞやってないでヘッジファンドでも立ち上げて頂いて国民の皆様のお金を増やすべくその天才的な先見性で国際金融市場で海外投資家と闘って頂きとう存じます。

で、その答えをする白川さんがどさくさに紛れて「量的緩和政策の失敗」についての答弁にして話をはぐらかしているのには笑いましたがその引用は割愛します(^^)。

しかしここの質問部分を見て感じるのですが、何かあまり理路整然と淡々と話すというよりは興奮して話しているようにしか読めない(全体的に読むとなお判るのですけれども、途中で語尾やらてにをはやらがグチャグチャになって来てます)んすが、これで総理大臣とかどうなのよという悪寒がするのでありますが・・・・



○これは更にワロタ

『○舛添要一君 (殆ど割愛ですが最後だけ)だから、デフレと戦いなさいということで、続けて質問しますけれども、月曜日、火曜日に金融政策決定会合があります。私の今言ったことを前提にして、日銀は、答えはまだ月、火にならないと言えないということであろうかと思いますけれども、更なるやっぱり金融追加策をやらないといけないと思いますが、いかがでしょうか。』

・・・・・・orz

まあ答えは言うまでも無いので引用しません。で、その後。

『○舛添要一君 それもちょっと私は疑問符を呈したいと思いますが、円高にどう対応するかということで我々視察先での議論をしてきたわけですが、それについて言うと、ベースマネーを拡大すれば効果あるんですよ。よその国と比べてください。そこで、ベースマネーを拡大するときに、伝統的な、つまりコンベンションなやり方じゃなくて、非伝統的な、アンコンベンションなやり方でもいい。

 そこで、CPの買取りやっていると思いますが、買い取っているCPの格付はどうなっていますか。コマーシャルペーパー。』

えーっとですな、ベースマネーを拡大したら効果がある話はまあ永久ループの議論になりますが、それが本当に常に相関するんだったら量的緩和政策の時にもっと強烈な円安になってないと話がおかしい(90年代後半の方がよっぽど円安になっていましたよね)ですし、単に超過準備が積み上がっている時のベースマネー比較に定量的な意味があるのかどうか(定性的な意味はあるかもしれないけど)というのは議論が分かれる所で、そう簡単にきめつけられてもという所ですが、まあそれは良いとして。

えーっと、ベースマネー対比でCPの発行額っていくらだと思ってこの発言をしているのかさっぱり判らんのですが舛添先生。と思ったらお洒落な答弁が。

『○参考人(白川方明君) 委員の御指摘でございますけれども、CPにつきましては、現在買入れは、これはもう完了いたしました。昨年二月からCP買いまして、そのときには、CPの買入れにつきましては、これはシングルAという格付で買入れを行っておりました。』

ちなみに、日銀の営業毎旬報告を見ますと、当然ながらこの国会の前の3月10日は買入残高はゼロになってまして、じゃあいつ無くなったかと言いますと、昨年12月10日が50億円で20日にゼロになっているので、その間に最後のCPが償還を迎えたものと思料されます(^^)。

『○舛添要一君 それをもう少しアンコンベンショナルということで、それだとコンベンショナルですよ、極端に言うと。格付がもうちょっと下がったものまで買わなければ、コマーシャルペーパー、ベースマネーの拡大にならない。』

いやあのそれ財政政策の世界なんですけど、というかそもそも格付けが低い企業はCP発行とか殆どしてないですし、そもそも企業は金もいらないのにCP発行する訳でもないですし、買えばベースマネー拡大とかあまりにもそれは乱暴な話ではないかと思うのですが、この程度の認識で総理大臣になられたらちょっとどうなのかと。

いやまあ別に素人でも本質的な部分での理解力があれば(小泉さんとかみたいに)良いのですが、変に中途半端に妙な知識があって判ったつもりになっているのが一番タチが悪い(と書きながら自分を省みると冷汗が大量に出てくるのだがorz)という所でございまして、ひじょーにこう寒いモノを感じるのは今日の陽気のせいではありますまい。

#もうちょっとオモシロ質問(真面目に考えると寒いが)がありますが時間と量の関係でこんな所で勘弁。まあ期末のくそ忙しい中ですが、お暇な時に会議録当たってちょという感じです












2010/03/24

お題「ネタを先入れ先出しで勘弁」

あれ???郵政選挙の時民主党は「郵貯は限度額を段階的に縮小していく」ってマニフェスト出してませんでしたっけ???

○新型オペ2本立てで実行とか

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100323.htm

下2本に注目なのですが、新型オペを2本立てで実施という個人的には意表を突いたオペの打ち方でしたが、エンドは微妙にずらしているので、ロールの時には週2本になるというやり方。まあ同じ日に2本実施した方が応札する方としては入り易いのかとも思いますので、これはこれでアリかなと思いましたし、「8000億円を週2本」というアナウンス通りでしたけど、初回の実行ベースでは「1兆6000億円」という形になったからメディアアピール的にも結構な話ですもんね。

・・・まあ基本的にその結果として為替や株が動いたとも思えないので実はまあどうでも良かったりしますけど(汗)。

でもって、そのオペの按分ですけれども、今回は2本それぞれが18.5%に18.3%でしたが、前回(先週の水曜日)が16.8%、前々回(先々週の金曜日)が14.5%ですので、着実に按分率も上昇してますな。まあ足元当座預金残高がやたら積み上がってますし、通常のオペの金利も低位安定状態というのが、今回の増額措置と相俟って按分を上げているという所ではないかと思います。

だからターム物金利が下がるかと言うとこれがまた短期国債の金利は既に限界に近い(足元のGCを買う投資家が0.105%までしか買わずに、業者を全部足した場合にファンディングが超過になっていると想定した場合ですが)所になっていますので、特にレートが下がってどうのこうのという話には成り難い様な気がしますけどね。



では続いて2月の金融政策決定会合の話をほんの少々なんですがね。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100218.pdf


○まあ2月の時点で何かやらないとという話があるのは把握した

だったら国会とかで白川総裁は原則論を展開してばかりというのもどうなのかと思うのでありまして、この前悪態を申し上げましたように、外野から見た場合には「原則論を披露」→「政治が差し込む」→「あっさり陥落」としか見えないので、どっからどうみても政治やら市場が追い込みを掛けるとその通りに動くとしか解釈のしようが無いのであって、それはやはり日銀の見せ方として上手くないと思われます。

とか何とか考えますと、やはり中央銀行の総裁には良い意味でのインチキな所が必要なのであるかと思われる次第でありまして、まあ平常時ならそんなにインチキパワーは必要じゃないのでしょうけれども、どっからどう見ても政治家の風格が漂うバーナンキ先生のロジック整合性もへったくれも無い堂々の姿勢(誉めてますので念の為^^)を拝見するに、平常時じゃない時に原則論を披露してばっかというのも如何な物かと思われる所でございます。

で、その該当部分は『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』です。

『先行きの政策運営について、委員は、わが国経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく必要があるとの見解で一致した。その上で、委員は、金融政策運営に当たっては、金融市場における需要を十分に満たす潤沢な資金供給を行うとともに、極めて低い金利水準を維持することを通じて、極めて緩和的な金融環境を粘り強く確保していくとの考え方で一致した。』

まあここまではいつもの話。で、その次ね。

『この間、複数の委員は、企業経営者の間で、中長期的な成長戦略が描きにくく、焦燥感が強まっている結果、金融政策への期待が高まっていると述べた。』

ふむふむ。

『この点に関し、何人かの委員は、本格的な回復には、生産性を高めることが不可欠であると指摘した上で、これを金融政策面からも下支えするため、必要と判断される場合には迅速・果断に行動していく必要があるとの見解を示した。』


なるほど。この辺の指摘を誰がしたのかなというのは興味がある所ですが、10年経たないと判らないのが残念な所ですな。



○プロセスが良くてもパフォーマンスが悪ければ意味がないのですが

という小見出しが微妙に琴線に触れた貴殿は(以下自主規制)。

あと、金融政策に関する最後の部分で、インフレターゲットがどうのこうのという話をしているのですけど・・・・・

『委員は、現在、日本銀行が採用している金融政策運営の枠組みと、インフレーション・ターゲットとの関係についても意見を交換した。』

まあ要するにこの件ってあたくしが思いまするに、「物価指数は遅行指標だし、金融政策の効果も遅行性があるので、物価指数を単一の目標にして機械的に金融政策の上げ下げを行っていると(安定している時にはいいけど)ぶれ出すと緩和にしても引き締めにしても全部後追い&やり過ぎになりますね」という話が「目標値」に対する問題じゃないかねという希ガス。

で、期待の安定化とか言う意味で言えば、硬直的なターゲットではなくて物価安定の理解みたいなもんでも用は足りると思うのですが、日本の場合はそれによって示されている数値に糊代が足りないのではないかという議論をするともうちょっと論議が発展すると思うのですがどうなんでしょうかね。

それは兎も角。

『何人かの委員は、今回の金融危機の経験を踏まえ、インフレーション・ターゲットの枠組みが持ちやすい短期的な物価の動向に焦点を当てて政策を考えていくというバイアスをどのように克服するかが、金融政策運営を巡る、国際的な議論の俎上にのぼっていることを指摘した。』

ここでは短期的な物価変動の変化がどうのこうのという話をしているということですが、一時的な要因での上げ下げのノイズを除去する話はどちらかというとテクニカルな問題のような気がするんだが。まあいいけど。

『このうちの複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲットの採用国・非採用国とも、@ 物価安定に関する数字的な目標や定義、理解の公表、A 先行き数年間の経済物価見通しの公表、B 中長期的な経済・物価・金融の安定の達成をより重視することへの認識の高まり、という点で、共通した柔軟な枠組みになってきていると指摘した。』

まあBOEは金利の上げ下げ(やら量的緩和政策やら)をCPI通りにやっていたらエライコッチャになっておりますが、そこは財務大臣に詫び状1枚で(・∀・)キニシナイ!という所ですからね(そのBOEの2月と3月のMPC議事要旨での議論の豹変が凄いのですがその話は後日)。

で、ツッコミどころは最後。

『この点に関し、別の複数の委員は、日本銀行の金融政策運営の枠組みは、物価の安定だけでなく、金融的な不均衡の蓄積等の様々なリスクにも目配りできるなど、従来のインフレーション・ターゲットを進化させたものであり、最近の国際的な議論を先取りしたものであると付け加えた。』

・・・・・orz

いやまあ確かに枠組みの作り方とかはリードしてます(キリッ!)というのは判らんでも無いのだが、現実問題として(政府が足を引っ張ってる面も多々ありますが)物価見通しが延々とマイナスという状況は状況としてある訳でして、まるであの何と申しますか、金融業界でよく散見される事案と致しまして、「このような最新の金融理論に基づいた投資手法を用いまして・・・」とか宣伝しながら結果がアレなアレとかが御座いますが(汗)、それに極めて似たテイストを感じるのは気のせいですかそうですか(-_-メ)。


○リスクバランスはこれを見るとバランスよりも下のような気がするが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の中でリスク認識の話があったのですが・・・・

『わが国経済のリスク・バランスについて、何人かの委員は、リスクはバランスしつつあるとの認識を示した。』

バランスしつつあるというのはまだバランスしていないという話ではないかと思うのですが・・・・

『複数の委員は、景気の下振れリスクは相応にあると述べ、このうちの1人の委員は、特に今年の夏場まではショックに対してかなり脆弱な状態が続くことに注意が必要と述べた。また、何人かの委員は、海外への直接投資の増加による国内での設備投資の圧縮や、企業の根強い賃金抑制姿勢による家計所得の伸び悩みなどから、好循環メカニズムが想定どおり作動しないリスクがあると述べた。』

まだショックに対して弱いとか、企業収益が回復しても国内投資や個人セクターへ回らないとか、パッとしない話なんですよね。

『一方、ある委員は、全体としてリスクはバランスしているとの認識を示した上で、下振れリスクだけでなく、新興国のバブルと商品市況の上振れリスクにも配意する必要があると述べた。』

・・・・ということで、ここら辺を見ているとあまり「リスクはバランスしている」という感じでも無い様な気がするんですが、この辺がいまいちよー判らんのでございまする。

#前のネタが積み残しになっていてどうもすいません













2010/03/23

お題「総裁会見その他とか虫干しネタとか」

ではまずは総裁会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003b.pdf

○良く見たらさすがに認識してましたな(^^)

金曜に新型オペの乗り換え方式に関して悪態をついた訳ですが、よくよく見たら(汗)最初の所でこんな説明を。「何でこのタイミングで実施したんですか」という質問がありまして、それに対する総裁の答えがありました。3ページより。

『次に、なぜこのタイミングかという点です。(割愛)今回は、企業金融支援特別オペが3月末で完了しますので、4月以降はこの残高が漸次減っていくわけです。既に昨年秋に公表した通り、この特別オペの残高が減っていった後は共通担保の資金供給オペを拡充してこれを活用していくという方針を公表しています。』

当たり前ですがその点は言ってたということで(汗)。

『この共通担保の資金供給オペの中に、固定金利型と金利入札型があり、こうしたオペをどのように使っていくのかということを示していく必要があります。そこで、改めてこのタイミングで日本銀行として粘り強くデフレからの脱却という政策課題に対処していくという方針を明確にしました。』

・・・・しかしこれだと金曜に嫌味ったらしく引用した「期間を伸縮的に選べる共通担保の方が企業特別オペよりも柔軟性が高いので利用者にも便利」という話とは合わないのですけれども、もしかして「固定金利型で実施するのは企業特別オペと同じように金利を低い状態にすること」であり、「3か月の期間で実施するのはより長い金利の低下を促すこと」というヤヤコシイ説明になっているのでしょうか、わけわからんけど。


○為替とか株価に関する言及をよりトーン強めに

まあ要するに今回の措置って政治および日経新聞(しかし決定翌日の自慢たらたらの解説記事は見苦しいったらありゃしませんでしたな、だから日経新聞は嫌いなんですけどね。相変わらず政治屋的な発想と結論先にありきの取材姿勢が反映されてますなあという感じです)との対話であり、為替市場や株式市場(まあ基本的には為替市場だと思われますが)との対話であって、金利市場がどうなっても知らんがな(短期金利だけは上昇されると困るでしょうけれども)という所でしょうからこういう話になるのも宜しいのでありますが。

固定金利オペの効果に関して説明している同じく3ページめからの総裁の説明も殆ど「市場金利」の事はスルーとなっているのが味わいの深いものがあります。

『(答) まず、固定金利オペについて、改めて金融緩和の効果がどのように浸透しているかを点検してみる必要があると思います。昨年12 月に固定金利オペを導入して以降の変化について3点申し上げたいと思います。』

『1つ目は、ターム物金利が低下し、その結果、貸出金利も低下してきているということです。』

ターム物金利はまあ確かに2bpとか3bpとか下がりましたが、いきなり貸出金利の話が出てくるのが味わいのある所です。下がってるんですか本当に?

『2つ目は、昨年11 月末にかけて、企業を中心にマインドがかなり下振れていったということがありましたが、こうしたマインドの下振れに対して、この措置は一定の歯止めをかける効果があったと思います。そのことが株価あるいは為替レートにも反映されていると思います。』

株価と為替への言及キタコレ。

『3つ目は、これは固定金利オペの効果だけではありませんが、大きな金融政策の効果を考えてみた場合に、企業の収益率と資金コストの関係が、確実に金融政策の効果が発揮される方向に変化していると思います。(数字的な説明割愛)』

ということで、要するに企業収益率が上昇して借入金利が低下したので緩和効果がより強くなるという話をしているのですな。もはや市場金利だの社債のスプレッドがどうしたこうしたという話ではない世界になってきているという事でございますが、まあ今後の金融政策というか追加緩和で何がどうなるという話に関しては、正直言って金利市場見てても別に何の示唆も無いということですな、うんうん。


○具体的な数値を決定会合で決めなかった事に関するツッコミ

まあ実際問題的には金曜に申し上げたように、本来は金利がディレクティブであってその中でどういう運用をするのかは決定会合マターでは無いと思いますけれども、その逆サイドの論点からのツッコミ質問が8ページめから。

『(問) 今回、固定金利オペの増額が決まりましたが、金額について20 兆円と決まった背景をお聞かせ下さい。金融政策決定会合で採決されたのは、20 兆円についてではなく、大幅に増額することによって、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することであり、具体的に10 兆円から20 兆円に増やすということは、採決の対象ではなくて執行部の裁量であると理解しています。』

そういう結果でしたな。

『まず、15 兆円あるいは25 兆円ではなく、どうして20 兆円ということを執行部が決めたのかということが、大きな疑問としてあります。また、各メディアが今回措置を追加緩和と受止めた理由は、オペの金額が10 兆円から20 兆円に増えたからで、その金融緩和の度合いが10 兆円から20 兆円に増えたことをもって理解しているわけです。その具体的な20 兆円という数字自体が、ボードメンバーの採決ではなくて執行部の裁量によって決まるということは、大きく言えば、日本銀行の政策決定の枠組み自体が軽視されているような印象を受けるのですがいかがでしょうか。』

そりゃまあそう言われるわな。ということで、中々今回の措置はロジック的には苦しい所が多いのよね。で、その答えですが、大変に苦しいロジック展開をお楽しみください(^^)。

『(答) 先程説明したこととかなり重なると思いますが、かつての量的緩和政策の時には、量それ自体を誘導目標として設定し、これを達成するように調節をしていたわけです。』

で、今回はそうではありませんという話が続く。

『つまり、量それ自体に意味を持たせて運用していたわけです。今回、私どもが採用している金融政策は、量的緩和ではありません。あくまでも、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するように促すということです。また、やや長めの金利の低下を促していくということが私どもの考えです。』

だったら決定するのはその点だけであって、その実施の為に新型オペを増額するのか単に通常の共通担保オペを強化していく(期間を長くするとかオファー額を増やしていくとか)のかは決定事項である必要はないと思うのですが、なにゆえ今回はわざわざ「新型オペの強化」を謳ったのかという話になると、「やっぱり量をアピールしてるじゃん」という話になる訳ですな。

いやまあそれを言い出すとFRBだって資産買入や各種流動性オペ実施の際にやたらめったら「量が沢山ですよ」というのをアピールしつつも「我々の実施する政策は日銀が以前実施した量的緩和政策ではない」と言ってた(流動性供給プログラムは市場機能の回復であって、買入は金利の押し下げという話をしてました)ので、まあその辺は日銀も遅ればせながらインチキロジックの世界へようこそという所なのでしょう。

なお、FRBは最近になって資産買入の効果を超過準備による市場金利の押し下げみたいな話をしだしているのがチャーミングなのですが、それを平然と主張するバーナンキ議長はもはや学者ではなく政治家的な風格を漂わせているのが大変に(良い意味でも悪い意味でも)素晴らしい所でございますが、白川総裁はそーゆー大狸の芝居をするのは失礼ながらヘタクソそうに見受けられるのでありまして、今後この辺の説明大丈夫かいなと思うのであります。

とひとしきり悪態をついた後で総裁の説明の続き。

『これを実現する上で、どの程度のオペの金額が適切かということについては、更なる金利の低下を促すという要請と短期金融市場の機能を維持していくということのバランスが大切です。それからターム物金利にも色々なものがあります。』

いやもう市場機能って短期のイールドカーブがフラットになってしまった時点で終わってますし(元々金利があってまともに市場が機能してた時代が短すぎてターム物の資金取引市場が拡大するヒマも無かったというのもありますが)、市場機能維持とか言う前に短期市場関係者がワシントン条約の対象になりそうな絶滅危惧の珍獣状態になってますからねえ。

ターム物金利にも色々なものがあるってえのはTIBORの話だと思うのですが、空気を読まず(懐具合という点で言えば意味空気を読んでいるのだが^^)にTIBORの金利は大して動かないのでありました。なお苦しい説明は続く。


『従って、オペの金額をあらかじめ幾らというかたちで設定すると、結果として、先程申し上げたバランスをうまく達成できません。そこで、具体的なオペレーションは金融市場の調節の現場部署に委ねるということです。ただし、必ず毎回の金融政策決定会合で、執行部が、どのような方針で調節の運営をしたかを報告するわけです。その対応が適切でなければ、そこでまた判断していくことになります。このように、オペの金額それ自体が操作目標ではありませんので、先程のご質問にあったような、日本銀行の政策決定の枠組みに関する法律の立て方に鑑みておかしいのではないかという批判は、まったく当たらないと思っています。』

というかそもそもオペの細かい金額まで政策決定会合で決める方が如何なものかという所ですので、確かにまあおかしいのではないかという批判は当たらないのはそうなのですが、本当はここで記者の方が逆に「そのようにおっしゃるという事は逆に言えば具体的なオペを特定して増額をするという話をわざわざ決定事項に加える必要は無かったのではないですか」という質問をして欲しかった所ではございます(そうすると引用の最初の答えが返って来るのでしょうけれども^^)。


○反対理由を見てみたい

さっき引用した最初の質疑の所ですが。

『まずは2人の委員の反対理由ですが、「当面の金融政策運営について」の公表ペーパーの脚注に書いている通り、「固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することについて、反対した」ということです。背後にある詳しい考え方については、議事要旨等で公表する扱いにしておりますので、ご容赦下さい。』

理由として勝手に妄想しますと、(1)既に短期国債などの金利は低下しており、リファレンスレートであるLIBORやTIBORを下げるのは今般の措置によっても直接的な効果が無いので実施する意味が無い、(2)景気見通しを引き上げている上に、リスク認識を特に変化無く引き続きバランスしているという状態の中で追加緩和を実施するのは政策ロジックとしておかしい、という所ですが、これはまあ議事要旨を見たいものです。

とまあ総裁会見はそんな感じで。


ジャネット姐さんの講演が途中でしたのでその続きを少々。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf

○オークン則がどうしたこうした

労働市場に関する話の所で終わってましたのでその続きからです。最初は労働市場には微かに明るい光も差してきているという話をしていますが、そのパラグラフの最後は「回復は弱く、失業率は2011年末でも依然として8%近辺にあり、完全雇用からは程遠い状態」としている時点でまあこりゃ先行き見通しが暗いですなという感じですが、その後がオークンの法則がどうのこうのという話になります。PDFだと7ページめからです。

『I should warn that there is a great deal of uncertainty surrounding this forecast. In the past, a given level of economic growth produced a more-or-less predictable change in the unemployment rate. Historically, a pattern emerged in which unemployment declined by half as much as the difference in the growth rates of actual and potential GDP.』

景気回復において潜在成長率と実際の成長率増加との差の%表示の半分の数値が失業率の改善になりますとな。

『This is commonly referred to as ”Okun’s law” after the economist Arthur Okun, who first described this relationship back in the 1960s.』

で、それがオークン則とか言われるそうですが、今後の回復においてそれを当てはめるとこうなるという話が次に。

『Let me sketch out how this should work. In my forecast, GDP growth exceeds the growth rate of potential GDP by 1 percentage point this year and 2 percentage points next year. According to Okun’s law, the unemployment rate should fall by about one-half percentage point by the end of this year and a full percentage point during 2011. These figures are in line with my unemployment forecast.』

でも、2009年のGDP推移と失業率の急上昇の説明がオークン則だとつかないという話です。

『However, Okun’s law let us down big-time in 2009. Given that GDP was stagnant last year, the unemployment rate should have gone up by about 1-1/4 percentage points, according to Okun’s law. In fact, it shot up 3 percentage points. Understanding what happened last year has important implications for what unemployment does in the future.』(機種依存文字部分を改変しました、1.25%の所ね)

ということで、2009年のGDP推移をオークン則に当てはめると、本来失業率の上昇は1.25%となる筈なのに、実際には3%の上昇になりましたよという話ですな。で、その理由って何じゃろというという話が延々と続くのでありますが、とりあえずその部分はスルー(後日紹介するかこっそり追記するかも知れません)しまして、結論部分をば。9ページめになります。

『There is an alternative explanation regarding the events of last year though that bodes poorly for rapid employment gains going forward. According to this view, last year’s large increase in productivity is here to stay. In that case, we won’t see a quick drop in unemployment and may be in for a jobless recovery akin to those in the early 1990s and early 2000s. This is closer to my view and broadly consistent with my forecast.』

ということで、イエレンさんは今次回復においてもジョブレスリカバリーを展望しているようでございます。

『According to this perspective, the recession has forced businesses to reexamine just about everything they do with an eye toward restraining costs and boosting efficiency. Strapped by tight credit and plummeting sales, businesses have overhauled the way they manage supply chains, inventory, production practices, and staffing. Stores don’t order merchandise unless they think they can sell it right away. Manufacturers and builders don’t produce unless they have buyers lined up.』

『My business contacts describe this as a paradigm shift and they believe it’s permanent. This process of implementing new efficiency gains may have only begun and we may be in store for further efficiency improvements and high productivity growth for some time. If so, the rate of job creation will be frustratingly slow.』

という事で、今回の急激なリセッションより雇用環境に関して、というか企業行動に関してパラダイムシフトのような現象が起きており、景気回復が進んでも企業行動が変化しているのであれば、雇用の回復は「いらいらするほど遅い」という事になるという話ですな。

となりますと、物価の安定と完全雇用を目指すというデュアルマンデートを持たされているFRBの政策は緩和的なものになるという話になるのではないかってえ事をイエレンさんのスピーチからはうかがわせるつー話ですな。


○予告編という名の備忘録メモ

一々予告編を書いてますが、要するに自分の備忘録なので勘弁。

えーっとですな、BOEの議事要旨ってのは読みにくいのが仕様でありまして、言い回しがFRBの米国語と比べて妙に難しい(=簡単なのだが意味が多い単語を使うのでうっかりすると誤読しやすい)とか、話の流れが急に飛ぶので訳判らんとか色々とあるのですが、2月と3月のMPC議事要旨を読んでたらこれがまた話が2月と3月との間で素晴らしくワープしているのですよこれが。全然論点が違うと言うのがオソロシスでございまして、まあ1月分も改めて引っ張り出して確認する事が必要な今日この頃(なので今日は間に合わなかったです)でございまする。

あと、月報をスルーしているのでその辺もですし、実はイエレン姐さんの講演の最後で金融政策話をしているのがこれまた微妙に「???」な部分もあるのでその辺もということで。最近ネタが無い時とネタが押す時の差が大きすぎ・・・・






2010/03/19

お題「決定会合レビューの続き」

職業野球のレギュラーシーズンが始まると気分は春本番♪

・・・と昭和時代から出てきたオッサンは思うのでありました。

○もうちょっと今回の決定に関して

昨日は途中から悪態三昧になっておりましたのでもうちょっとトサカを冷やして今回決定に関連しての論点を適当に。

まあ今回のややこしい所は、緩和強化を決定したのは決定したのですけれども、その額については決定会合マターじゃ無くなったという所がヤヤコシヤな点だと思います。まあ記者会見でもツッコミ入ってましたけれども、「新型オペの量を増やす」というのを決定しておいて「その額は現場で決めてちょ」という形を取った(まあ実際には決定会合で額自体は決まっているとは思いますが、形としては決定会合結果を受けてそれに沿って執行部が決めたという形で20兆円と発表しているので、建前と本音の2重構造状態と思われますが)のはヤヤコシヤ。

ただ、もっとそもそも論を言えば、新型オペって単なる「指値方式の共通担保資金供給オペレーション」なのでして、わざわざこのオペを特別視する必要は無いっちゃあ無いですし、逆にこういう形で特別扱いして決定会合マターのような事にしちゃいますと、将来また何かの都合(短期金融市場の事情)で指値オペを打ちたいという時に機動的に実施できなくなっちゃうので後々の事を考えると、どこかで本オペは「現場執行における裁量の範囲内」の話に落としておくべきだと思われます。

#まあそれを言うと輪番もそうなんですけどね

本来的に言えば、決定会合で決定するのはディレクティブの最初の部分の金利の所(金利ターゲットの場合ね)であって、それをどうやって実際に行うかというのがオペレーションの世界であって、そのオペに関しては細かい事まで決定会合でああでもないこうでもないという話をするのもどうなのかという感は致します。


では続きまして総裁会見から色々と論点整理の続き。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003b.pdf

○オペの量を増やす決定を緩和としながら量的緩和ではないとな

質疑応答の6ページの下から始まります。

『(問) 今回の措置は、広い意味での量的緩和政策の強化という位置付けでよろしいでしょうか。また、足許、金利は実質ゼロ金利にあるわけですが、今後の政策運営の柱というのは、資金供給の量の操作になっていくという理解でよろしいでしょうか。』

『(答) この席で何度も申し上げている通り、当座預金残高を目標にして金融政策を運営していくといった運営方式は採っていません。その意味で、量的緩和政策を拡充するということではそもそもありません。』

量を増やす決定をしているのですが、声明文に『固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした』(決定会合声明文より)とあるように目的が金利という事ですな。

#本当は3か月TBも6か月TBも0.12%なのに何の金利を下げる積りなのでしょうか??という質問を記者の方にして頂きたかった訳だが

『昨年12 月に申し上げたのは、日本銀行が供給する資金の供給量が制約になって金融機関の行動が制約される、あるいは企業の行動が制約されるという事態は防ぐということです。』

金融システム問題もクレジットクランチ問題も無いのに今更何の話だか。

『これは常々申し上げています。今回の措置は、発表にある通り、やや長めの金利の低下を促すという措置を拡充したということです。』

で、さっきの話に戻るのですが、もし「やや長めの金利の低下を促す」というのを決定するのであれば、そもそも論としては決定すべきはその金利に関する話の部分だけであって、その手段として新型オペを増やすのかそれとも共通担保オペを拡大するのか、はたまたオペ期間を長くするのかとかというってのは本来は調節担当部局が市場動向を見ながら決定するものだとは思うのですけど、政治との対話や日経新聞との対話がややこしい事になるにつれ、その辺の本来手段の話であって、政策決定会合で決めるような話ではない部分にドンドン決定会合が入り込んで来るの図という何だかな〜という所であります。


○そう思うなら物は試しに期待を外してみたらと思うのだが

この会見って中々オモローな質問が多いので本当は延々と引用したいのですけれども、時間と量の都合上(朝書いてるから時間がねえんじゃネーノというツッコミは全力で却下)今日はたぶん少なめになる予定ですが、この質問はまたキツイですなあ。11ページのケツから。

『(問) いくつかのメディアが、今回の決定会合に先立つ事前報道で、日銀の固定金利オペが拡大されるのではないかとのニュースを報じました。これがマーケットに織り込まれて、日銀のアクションがなかった場合には失望のリアクションがあるのではないかとの懸念がありました。また、従来から続いていることですが、今回の決定会合の前に政府の側から、日銀の緩和についての期待が連日のように寄せられました。こうしたメディアの事前報道と政府からの期待表明という2つのファクターは、今回の日銀の決定にどのような影響があったのか、あるいは政策委員の皆さんはどのように受け止めたのかについてお伺いします。』

・・・・これはまた答えられない質問を(^^)。まあこんなの聞く位ですから日経新聞の人では無いでしょう(^^)。

『(答) ご質問は政策委員の皆さんということですが、私自身がどのように感じたかということについて申し上げます。』

で??

『まず、市場との関係ですが、市場というものは、経済の先行きに関する様々な見方が投影されており、それだけに重要な情報を提供する場だと考えています。しかし、近年の金融危機の経験が改めて示すように、金融市場は時として行き過ぎるということも事実です。また、金融政策が、市場の期待に添うかたちで常に運営されると、結果として政策が経済の変動をかえって大きくするということも今回の危機の教訓の1つだったと私自身は受け止めています。』

アラン・ブラインダー元FRB副議長が「自分の尾を追う犬」に例えた件でございます。誠にその通りであると存じます。

『その意味で、私は、市場の動きを注意深くみると同時に、金融政策の運営にあたっては、あくまでも中長期的な経済・物価の姿を点検していく姿勢が重要であると思っています。端的な言葉で申し上げると、金融市場の短期的な動きに過度に引きずられて政策運営をしていくことは、中央銀行としての仕事をしっかり果たすことにはならないと思っています。』

全くその通りでございます。

『また、逆に、金融市場がある反応をしたからといって、その織り込まれたことは実施しないという考え方も適切ではないと思っています。市場の反応について時として自分達と感覚が違うというケースであっても、また、感覚が合っているケースであっても、中央銀行としては中長期な姿をしっかり見据えて運営していくという軸からぶれてはいけないと強く思っています。』

では何故景気の現状判断を引き上げて、先行き判断を据え置いて、リスク認識を上下バランスのまま据え置く中で(=現状判断を上げたとしてもリスク認識を下げれば緩和強化は理屈としてはあり得ると思います)緩和措置の強化をしたのでしょうか??という質問はもうちょっと前の方にありますが(^^)。

『次に、政府との関係ですが、まず、今申し上げた通り、中央銀行が、物価安定のもとでの国民経済の健全な発展ということを意識して中長期的な観点から金融政策を行っていくことは非常に大事なことです。』

はあそうですか。

『中央銀行がそうした目的に照らしてしっかり行動している、あるいは、しっかり行動していると認識されているということは非常に大事なことです。また、そうした中央銀行の姿勢を社会が尊重しているということも非常に大事です。』

この前は「政府が」って言ってましたが、「政府VS日銀」的なフレームアップの絶好のネタにされてしまいましたので、反省して言い換えたものと思料されます(^^)。

『私としては様々な意見を聞いた上で、日本銀行法の精神に従って、政策委員会が責任を持って判断し、決定することを貫いていくことが大事だと思っています。』

だったら今回はパスして4月に物価安定の理解の点検作業と共に時間軸の強化というか、物価目標の見直しを行うのが筋だったんじゃないんですかねえと思うのですけれどもね。


○これまたヤケクソ説明なのですが

まあ今回の質疑応答は中々いい感じでロジックが崩壊してる件についてのツッコミが大量に入っているのが実に(;∀;)イイハナシダナー的な会見なのでございますが、今回の声明文にもあったように、特別オペの残高が減る中で今回のオペ増額をしたという説明をしています。「何故この時期に緩和?」という質問に対する回答の最後の部分でございます。質疑応答の8ページ。

『その上で、そういう時期になぜ追加緩和を行うのかということですが、先程申し上げた通り、まず、企業金融支援特別オペの残高は4月以降確実に減少していきます。そこで、これに対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります。また、今このタイミングで私どもが姿勢を明確にすることにより、少なくとも金融緩和の姿勢に関する理解がより広まり、景気に対してプラスの方向に作用するわけです。もちろん、これだけで直ちに景気の雲が晴れるということではありません。』

後半部分の説明はほとんどヤケクソの香りが漂って参りますが(^^)、姿勢を見せてどうにかこうにかとか最早気合というか精神論の世界でございまして、いやまあそれを美しく言えば「アナウンスメント効果」であり「期待形成に働きかける政策」という所なのでしょうけれども、いい感じでヤケクソになっております。


で、更に「またまたご冗談を」というのは実は前半部分。『これ(=特オペの残高落ち)に対してどういう方針で臨むのかということについては、いずれにしても明らかにする必要があります』という話をしているのですけれども、実はこの点って、特オペの終了を決定した10月30日の決定会合でこのような事を声明文に書いているのですな。

『4月以降は、より広範な担保を利用できる共通担保オペ等の金融調節手段を活用して潤沢な資金供給を行う態勢に移行する。』(昨年10月30日決定会合における声明文から)

まあその点を今回明確化したと言えばそれはそれで話の筋は通るかなあとか思ったのですが、そこであたくしは当日の総裁記者会見の発言を見つけてしまう所がチャーミング(^^)。

『来年4月以降は特別オペを完了し、共通担保資金供給オペ等、従来からあるオペで資金を潤沢に供給する態勢に移行することを今の時点で明らかにしておくことによって、市場での様々な不確実性が生まれることを防げると思います。』(10月30日白川総裁記者会見より)

・・・・・「明らかにしておく」とかいるとか言ってるじゃんorz

『共通担保オペと特別オペの違いを考えた場合、特別オペは、金利を0.1%に固定して金額無制限で供給しているほか、期間を3か月と限定しています。このような方式は、リーマン破綻以降のように金融市場が極端に収縮している時には非常に効果的であったと思います。ただし、現在のように金融市場の混乱が解消した後は、中央銀行が資金を潤沢に供給する上で、担保にしても、期間設定にしてもある程度伸縮的に選べる方が一般的には対応力が高いと思います。』

・・・・・期間3か月の固定金利オペよりも通常のオペの方が使いやすいとなorz

いやはや、まああたくしも「特オペの後継として新型オペを実施する」というのが一番日銀の説明で無理にならないとか申し上げていたクチなので、あまりこういう嫌がらせのようなツッコミをするのもブーメラン的な部分があるのですけれども(笑)、これはまた凄いブーメランではございましてオソロシスという所でしょう。

ま、それ言い出したらBOEとかFRBとかも最近の資産買入に関する見解がコロコロ変わる(バーナンキの議会証言とか雪で延期になった回と、本番の回でニュアンスが違っている位なのですから)位ですので、この程度のブーメランをは(・∀・)キニシナイ!という所でしょうね!!!!


#という訳で他の論点は後日やるかもしれませんしやらないかもしれません


○その他世間話少々

・CP買現先オペが減りそうな話

昨日のCP買現先のエンドが4月16日なのですが、その2日前にオファーされたCP買現先のエンドも4月16日でして、これは新型オペで他のオペに皺寄せが行くことを想定して、ここもと応札倍率も常に低いCP買現先を減らそうという事なのでしょうな。現在は3000億円×7本走っているのですが、エンドをそろえて半分だけロールという形で本数を減らすのでしょうかね。

ただまあそれによって何かあるかと言うと、そもそもCP市場は投資資金の方が余っている状態だと思われますのでただちに影響はないでしょうかね。

・テイラー先生講演

http://facta.co.jp/taylor/

平日の昼間だわ有料だわでまあ出席する金もヒマも無かったのですが、ブルームバーグニュースがヘッドラインを打ってまして、それを見てて「ありゃりゃ?」と思ったあたくし。英語のヘッドラインばっかだったのですが、何か「FRBが2000年代に実施した低金利政策が住宅市場崩壊の原因」「FRBの酷い政策が2008年の金融危機を悪化させた」とか「2000年代の日銀の量的緩和が日本の失われた10年脱出に効果」「以前の量的緩和政策は今回日本で実施してもあまり効果がないのでは」みたいなヘッドラインだったんですよね(スクリーンショット取るの忘れたから手元に無くてすいません)。

えーっと、Factaだしこの講演のお題だし、テイラー先生にバーナンキ万歳して貰って返す刀で日銀をボコボコのギタギタにしてもらう積りでお呼びしたと思うのですが、本当にこんな話だったら主催者涙目にも程がありますな、あっはっは(^^)。

何ぼ何でもこれだけヘッドラインがずらずら出てくるという事は、話の趣旨がそういう流れなのでしょうから、ブルームバーグの記者が一部聞き間違えという事でもないと思われるのでして、これは一体どうした事ぞという所ですな(^^)。


日本語のニュースではこんなあっさり味なのですけど(ヘッドラインは色々とあったのですけどねえ)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=amwtHOa4Wyb0
テーラー元財務次官:円は下落の公算、日銀は他の中銀より長期緩和へ

まあそうなると思われますのでこのビューはアグリー。






2010/03/18

お題「決定会合レビュー」

どう見ても政府の押しこみです本当にありがとうございましたorz

○という訳で週2回8000億円でした

今回声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf

『2.日本銀行は、昨年12 月、金融緩和の一段の強化を図るため、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション(固定金利オペ)を新たに導入し、やや長めの金利の低下を促す措置を実施してきている。4月以降、企業金融支援特別オペレーションの残高が漸次減少していくことを踏まえ、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした(注2)。』

で、この注2というのが反対2票という事ですが(^^)。

「やや長めの金利の低下を促す措置の拡充」ってえのですから追加緩和は追加緩和という事になりましたが、企業金融オペの代替に熨斗を付けて10兆円増額という理屈でやってきました。まあこれで「期末対策」とか言い出さなかっただけマシでしたが、4月になると特オペの残高が減るから実施するので3月に決定したというのもまあ頑張って理屈作りましたなという感じです。と申しますのも特オペの日程がこの通りでして。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912b.pdf

何の事はない実はまだ特オペってあと1回実施されるんですけど、まあ確かに4月1日からは落ちていくのでその落ちの前に実施を決めるという意味ではこのタイミングという事になりますわな。そう考えるとどう見ても期末対策でも何でもないので、それを言わなくて良かったねという所ですが。


○で、反対2名とな

『(注2)須田委員および野田委員は、本文中、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することについて、反対した。』

野田さんに関しては4日に講演を行ったら翌日の5日の日経朝刊にあの記事でございまして、あまりといえばあまりの展開になってしまいましたが、講演および会見で説明していたロジックを敷衍すれば反対というのは態度として一貫しています。須田さんも先日のシンポジウムか何かでの発言からしたら反対しても不思議では無かった所ですので、まあ反対になったんでしょう。

為替市場は最初この反対2名に反応したのか、単に市場予想通りの結果であったことから一旦材料が出尽くしただけなのか良く判りませんが、最初円高という反応をしましたが、その後は円安方向に振れた(ったって90円台の中での動きで誤差の範囲内だが)というややこしい反応で、最初の円高を見て為替系の何とかストとかの皆さんが情報ベンダーにコメントした記事が円安に振れ出した14時ごろに続々と出てきたのには爆笑の発作を禁じ得ませんでした(^^)がそれは兎も角。


しつこく申し上げておりますように、本来の政策枠組みがどうのこうのという本筋の話をするのであれば、4月から宮尾委員が加わる事でもありますし、展望レポートに物価安定の理解の確認という所で、例えば物価安定の理解に関して下限上限の表現を取っ払う(=中心値の1%だけ出す)とか下限のプラスの領域というのを引き上げるとか、そーゆーのが筋であって、正直本件はどうでも良い話だと存じますということで、筋論としての反対が入ったという事でしょう。大体からして景気認識に変化無いのに追加緩和とか筋通ってないし。

須田さんはやや微妙ですが、野田さんの場合は従来の講演での発言などを見ますと、金融機関の不良債権問題が経済に与える影響の長さや深さについて(銀行界出身だけに)より強い懸念を持っていると思われますので、別にタカ派は無いと思われます。で、その野田さんが反対したのは筋論で反対したという風に思えるのですが、これは議事要旨や議事録を見ないと何とも言えませんけどね。


○声明文の景気判断は上がっているのですが・・・・

まあここもとの経済指標全般的に強いですもんね。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(前回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

というのがそもそも変わっていませんし、その後もここまでは同じです。

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)

で、その後が設備投資で上方修正。

『設備投資は概ね下げ止まっている。』(今回)
『設備投資は下げ止まりつつある。』(前回)

個人消費は変わらずで、公共投資を下げています、ってつまり政府は足を引っ張っているだけだというのが良く判りますな(-_-メ)。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している』(今回)

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなっている。』(前回)

金融環境は変化なし。

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(今回)

物価認識では経済全体の需給に関する言及に変化が(^^)。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(前回)

これはまた微妙な文学ですが(^^)、緩和というのが緩和「状態」になるのは、超微妙な上方修正で、縮小傾向を「続けている」というのはこれまた微妙ですけれども、物価下落幅の縮小がトレンドになっていますよというアピール感は伝わって来るのであります。


○声明文の先行き判断とリスク要因は見事に同じ

なので引用だけ。

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

毎度見ているのでしまいには暗記しそうです(^^)。で、決意表明文では今回の措置に言及している部分は当然違うのですが、その他では「今後とも」という文言が入っているのがチャーミング。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)

さてこの「今後とも」とは何ぞやという所ですが、英文での声明文を見るとこのようになっております。該当部分だけ引用(^^)。

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100317.pdf
『in the conduct of monetary policy, the Bank will continue to aim to maintain the extremely accommodative financial environment.』(今回)

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100218.pdf
『In the conduct of monetary policy, the Bank will aim to maintain the extremely accommodative financial environment.』(前回)

「continue to」というのが入りましたな(^^)。


○相変わらずの自分は働かずにクレクレ状態の政府閣僚

冷静に考えたらトップがママンから月の小遣い1500万両とかなのですから、自分は働かずにクレクレ状態なのは仕様なのかもしれませんが、もはやドラ息子というよりは継続的なゆすりたかりの域に近づいてきていると申し上げざるを得ませんとか言うと悪態にも程がありますかそうですか。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a45JqtEA8LYs
菅氏:デフレ脱却へさらなる政策決定と評価−新型オペ拡充(Update1)

『一方で政府・日銀の定期協議について「オフィシャルに懇談する機会があってもいいと思っている」と述べ、前向きに検討する姿勢を示した。』(上記URLより)

・・・・今後も圧力を掛ける気満々です本当にありがとうございました。

何かね、もう支持率低下を景気で何とかしようとして日銀に圧力掛け続けるとか、何が財金分離の精神で武藤総裁に反対だよと存じますが、他の閣僚も碌な事言いませんな。

それから、日経の本紙の記事になってた割にその後ネットに出てこないのですが、先日もそうですし折に触れて「外為特会見直し」の話が財務大臣や財務副大臣辺りから出てくるのですが、円高でデフレ進行とか言ってる状態なのですから、外為特会見直しって円安方向の材料になり得ない話をする時点でセンスがゼロというよりマイナス無限大なのでありまして、そこまで真剣にデフレを懸念しているのでしたらば財務大臣の権限なんですから為替介入すりゃいいじゃんと思うのですがねえ(まあ米国が激怒しそうですし、中国の為替政策に文句言えなくなる話だから無理筋でしょうし、ついでに言えば介入して本当に為替が動いてくれるのかも判りませんけどね)。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auH9_626ngws
平野官房長官:追加的なデフレ対策も−日銀決定は歓迎(Update1)

『平野氏は、追加経済対策の必要性について「現状、上向いてきたという流れの中にデフレの状態が続いている、このことをしっかりと受け止めた対策が必要なのかなということは考えられる」と語った。』

・・・・「必要なのかなということは考えられる」って何と言う緊張感の無いお話。まあ大体からして高校無償化法案でコアCPIが0.4%だか0.5%だか下がるというような物を通しておいて(実質的には関係ないけど、統計数値で物価下落が進行したらそれはそれでマインド悪化するでしょ)「デフレ対策が必要なのかな」とか頭がプリオン状態になっておられるのではないかと。


http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ahcCdNwl9ixc
鳩山首相:日銀の金融緩和を歓迎、政府が期待している方向(Update1

『首相は日銀の決定について「基本的に日銀の今回の対応を歓迎する。政府は日銀が機動的にデフレ克服のために政策を行動で示してくれるということを期待しているし、今回のこのようなデフレ克服に向けての、ある意味でのさらなる金融緩和の方向というものは政府が期待をしている方向だと思っている」と語った。』

「期待をしている方向」とか政府が圧力掛けて差し込みましたと思いっきり言っているのに等しい訳ですが(まあ他の人達の言い方はもっと強いトーンですが)、相変わらず自分たちの手柄にすることだけは熱心という現内閣のテイタラクを良く示したコメントではあると存じます。

とまあそういう事で、今回の措置って普通に外野から見たらどう見ても政府が差し込んだという風にしか見えないのに、それをわざわざ補強するような話を閣僚がそろって発言するとか、経済の成熟した先進国での出来事とは思えない状況が相次ぐ訳でございまして、これからもこの調子で支持率が低下すると益々日銀に圧力掛けて緩和させようとするのは明らかという事ですから、まあ材料出尽くしでも何でもなく、それよりも薬物依存症患者の如く益々そのクレクレ頻度が高まるだけではないかと思われます。

まあ正直申し上げて、あたくしと致しましては現内閣の皆様におかれましては、是非とも西方浄土にでもお出かけになられて頂けると大変に有り難く存じます次第なのでございますとでも言いたくなる所でございます。



○しかしまあ何ですなとテキトーに悪態

まあ政治に差し込まれてへんてこな事になっておりますが、これまたマズーだと思うのは白川総裁が国会とかで話す時はいつもの理屈を開陳している事でして、「原則論を披露」→「政治が差し込む」→「あっさり陥落」というコンボを続けているという格好になっているのはどう見ても都合が悪い。

確かに現政権がやってる事が支離滅裂というか行き当たりばったりにも程があるので、相手にするのも無理が多いのですが、どうせ差し込まれて突っぱねる訳でもないのであれば、最初から俊ちゃんスキームで「SARSの流行による経済への悪影響懸念」とかトンチキにも程がある理由で華麗に当座預金残高引き上げて大真面目に「緩和強化」と言うというような芝居を打てば良いのでありまして、今般の流れって外野というか金利系の市場的な見方からすれば、「政治の差し込みに異常に弱い中央銀行」という認識になって来ると思うのですよね。

今回の措置自体に既に限界に近い所まで低下している短期金利を下げる効果はあんまり無い(そういや2年新発を0.135%10億だけBBで買ってるお茶目な人がいたみたいですが、0.140%をあっさり10億叩かれたのはワロタです)のでござんすが、長い所って徐々に「このやたら外圧に弱い中央銀行と無茶苦茶にも程がある現政権の組み合わせっていうのが続くと通貨価値の毀損とかに繋がらないか」というようなことまで考え出しても正直おかしくないのじゃないかっていう懸念までしてくる今日この頃。大体からして「追加緩和」のニュースが出て以降長い所の金利が下がったかと言えば10年カレントの金利なんて3月5日(ニュースの出た日)の引けより高くなっている訳でございますし・・・・

いやね、それが日銀の「デフレ対策」が期待インフレ率の引き上げに繋がってその為に長期ゾーンの金利がその分だけ上昇したというのであれば別に良いのでございますが、その辺って結局の所出来上がりの金利しか見えないのでありまして(物価連動国債市場のBEIは1ミリも指標として使えない)、後付けで何とでも言える面があるのですが、漠然とした気持ちの悪いモノは無いでもないという所でございます。

もちろんあたくしは終末論者でも何でもないので、杞憂である事を希望しますがね。

#ということで謎の悪態になってしまいましたが、悪態の整理がつかないのも事実(^^)










2010/03/17

お題「寝起きでFOMCステートメントとかその他ネタ少々」

そういやどこぞの政治家が自分の行動を坂本龍馬になぞらえているようですが、高知県観光協会と坂本龍馬ファンから抗議声明が届いてもおかしくないレベルだと思います(-_-メ)

○FOMCは景気認識を引き上げつつ肝心の所は維持ですが・・・

どちらかと言うと岡目八目じゃないけど、日本の人達の方が今回for an extended periodが外れるとは予想してなかったんじゃないかなあと思うのだが、報道ベースでの反応を見ると米国市場ってマジでリスクとして認識してたのかよという感じですが、確かに微妙な部分で微妙にアレな所もあったり無かったりという感じの声明文だったりするのですよね。

今回の声明
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100316a.htm

前回(1月27日)の声明
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100127a.htm


・景気認識はあちこち改善してます

いきなり冒頭から変化しているのは労働市場に関して。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is stabilizing. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December suggests that economic activity has continued to strengthen and that the deterioration in the labor market is abating. 』(前回)

労働市場が安定してきているに改善しとりますのう。でもってその後もこんな感じだす。

『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(今回)

『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained by a weak labor market, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(前回)

家計消費支出の拡大に関する認識は同じなのですが、ここでも拡大を抑制する要因としての労働市場に関して「弱い労働市場」を「高い失業率」に変更するという細かい芸を見せています。

で、何気にこの次の書き方が色々と変わっているのよ。

『Business spending on equipment and software has risen significantly. However, investment in nonresidential structures is declining, housing starts have been flat at a depressed level, and employers remain reluctant to add to payrolls. 』(今回)

『Business spending on equipment and software appears to be picking up, but investment in structures is still contracting and employers remain reluctant to add to payrolls. Firms have brought inventory stocks into better alignment with sales. 』(前回)

企業の支出に関する部分の判断を更に引き上げていまして、設備投資に関する部分は従来一緒くたで調整中という形だったのが、nonresidential structuresとhousing startsに分けて住宅投資が下げ止まったという言い方になってまして、売上の改善と共に在庫を引き上げ(って事ですよねこれ)って部分が抜けているのはよー判らん。消費そのものに関してはさっき引用したように見通しに変化は無いですからにゃあ。

『While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth. 』(今回)

ここは前回と同じなので前回分の引用は省略。


・んで肝心な所は変化無いのでありますが

資源の活用状況(って言えばいいのか?)とインフレに関しては前回と同じであります。第1パラグラフの最後と第2パラグラフですな。

『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability. 』(今回)

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time.』(今回)

とまあそういうことで、低金利継続がどうのこうのという話をする前提の部分が同じなので第3パラグラフ頭の注目の一文も同じなのでありました。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)


・何気に芸が細かい変更があるような気がするのはあたくしの読み過ぎでしょうか

で、その次はいつもの「モーゲージ貸出と住宅市場のサポートおよび民間クレジット市場の全体的な環境を改善する為に実施している各種買入に関しては現在粛々と規模縮小および終了しますがな」という話です。当然ながら閉店に向けての進行中なので前回と書き方は違ってきますがそれは本質的な問題ではないと思いますので、今回分だけ引用。

『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve has been purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about $175 billion of agency debt; those purchases are nearing completion, and the remaining transactions will be executed by the end of this month.』(今回)

んでもって今後の所ですが、従来は「金融市場環境に変化あるいは見通しに変化があったら買入規模を見直す=買入終了しません」という言い方をしていましたが、今回は「景気回復や物価安定に必要があったら必要な政策ツールを使います」と言っているのがこれがまた(あたくしが勝手に思っているだけなのかも知れませんが)芸が細かいと思うのですがどうでしょう。

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic recovery and price stability.』(今回)

『The Committee will continue to evaluate its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets.』(前回)

これってよくよく考えると「物価安定の為に必要だったら超過準備の吸収措置を実施しますよ」という方向にも解釈できるのでありまして、いやまあその点については最近出口戦略に向けての説明をせっせとしている流れからすれば変ではないのですが、バーナンキやイエレンの講演見ているとそんなにとっとと出口に行く感じもしないのですが、ここの所の微妙な変化は出口政策の進展に関して前のめりにも読める(どっちにも解釈できる書き方だが、前回までは「やばかったら出口プログラムを止める」方向でしか書いていないのですから)のでちと気になる所でござる。


・各種流動性プログラムに関して

次のパラグラフは前回対比チョー短くなっているのですが

『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve has been closing the special liquidity facilities that it created to support markets during the crisis. The only remaining such program, the Term Asset-Backed Securities Loan Facility, is scheduled to close on June 30 for loans backed by new-issue commercial mortgage-backed securities and on March 31 for loans backed by all other types of collateral.』(今回)

でもって今回消えた文言は

『The Federal Reserve is prepared to modify these plans if necessary to support financial stability and economic growth.』(前回)

っていう所でありまして、まあ確かに終了の巻なので今更modifyもへったくれも無いのですが、ここに関しても先程の表現と同様に出口モードっぽい雰囲気は出していますな。


・ホーニッグさんの反対理由がより強くなっています

票決は賛成多数。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin M. Warsh. 』(今回)

で、ホーニッグさんの反対票ですが、今回はその反対理由がより強いトーンになっています。

『Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to the buildup of financial imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability. 』(今回)

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that economic and financial conditions had changed sufficiently that the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted.』(前回)

前回は「『経済および金融の環境は十分に改善したので』FF金利をfor an extended periodにexceptionally low levelsとする事は既に正当化されない」という言い方でしたが、今回に関しては「FF金利をfor an extended periodにexceptionally low levelsとすると『金融の不均衡や長期的なマクロ経済や金融環境の安定に対するリスクを拡大する』」と要するにバブル懸念という意味だと思いますが、まあ反対のトーンがかなり強くなっていますな。


つーことで、日本の例から考えて「そんなに早々に利上げとかねえだろ」と思うあたくし(というか結構日本ではそう思っている人多いと思うのだが)ではございます(議長副議長などがハト的な見解を折に触れて示している点もあるし)が、米国で年内利上げがどうのこうのとかマジで言ってるのもなるほどねえと思った朝のひとときでございました。

#ということで寝起きで前回と比較しながら読んでみましたが、何せあたくしのインチキ英語力なので原文は何だかんだと言いつつ今回分は全部引用しているから正しい解釈は英語を読んで下さいませなのです(汗)




と、書いている内にイエレン姐さんの講演ネタの続きを書く時間が無くなって参りましたので(どうもすいませんが講演も先月の22日と虫干しネタなので一つご勘弁ありたく)別ネタで。


○で決定会合ですが

えーっとですな、まあ色々レポート出てるからお気づきだと思いますが、暫く前にあたくしが特オペの残高書いた時に手元の計算間違えてまして(1本分加え洩れがあった)、9日に書いた数字から3000億円ちょっと多い数字が正解でして、実際の特オペ残高は昨日時点の残高が5.4兆円とです。過去ログには訂正入れておきましたです。お詫びはしますが賠償は致しません。

で、まあ新型オペの拡充に関してですが、額を20兆円にするのは良いのですけれども、昨日の時点での各種資金供給オペを計算すると(一応2月末時点でのオペ残高は東京短資さんのページにあったオペ残高推移で照合しておきましたが、例によってあたくしの手元集計ベースですので間違ってたらゴメンナサイ)、共通担保オペの金利入札方式が25兆円、指値方式(=新型オペ)が10兆円、国債買現先が3兆円、CP買現先が2兆円、企業金融特別オペが5兆円(全部四捨五入してますが、実際は新オペ9.6兆で特オペは5.4兆です)ということで、合計で45兆円という計算になります。

つまり、特オペって増やすのも結構限界があるという話でして、20兆円にした後で期間を6か月にしようとすると、オペオファーの頻度を下げないと(例えば今回20兆にする時に8000億円週2本にしておいた場合は期間延長時してそのまま週2本8000億円打つと実施額が40兆円になる)他の短期オペ(って新型オペも短期ですけどまあそこは比較の問題ということで勘弁)を打つのがえらく窮屈になるという話になりますわな。特に財政要因などで資金が余剰になる時には、ツイスト打たないと足元の資金偏在を均せないというお洒落な事態になる悪寒がしますが、何せツイスト打ったら物凄い勢いで金融引き締めとか外野から言われるでしょうからツイストは打てずという事で、これはまあややこしい事になりますな。

とまあそんなテクニカルな事を考えますと、新型オペって30兆台までは行けるのかもしれませんけれども、意外に増額余地が無いのねという事をつらつらと考えてみた所なのでございます。だからどうしたと言われても困りますが(^^)。


○明日以降向け備忘録

まあ本日は決定会合ですのでオモシロ声明やオモシロ記者会見をヲチャーとしては楽しむという事で目先そのネタなのですが、SF連銀イエレン総裁の講演ネタの続き(全然タイムリーな話じゃなくてすいませんが)とか、先日のPD懇とかが積み残しネタになっていたりするのでありまして、一応備忘で書いておくのでございました。

#単なるリアル俺様メモですいません

あとまあ国会ネタですけれども、山本幸三先生ネタは先般の他にももう一回あったのですがそれは華麗にスルー予定ですけど、先週金曜の参議院予算委員会での舛添先生の白川総裁への質問ネタと、昨日は昨日で毎度お馴染みの大門先生が登場してたみたいなので会議録出たら後日チェックですな。

しかし大門先生は共産党バイアスが掛かるといきなり訳判らん話をしますなあ。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100316/fnc1003161634020-n1.htm

集団暴行を伴う強盗行為を「オヤジ狩り」と言ったりするのと変わらんと思うのでございますが、何ちゅうくだらん話をしているのかとは存じますが、国会での論議ってオモシロ部分だけ切り取られるのが仕様でして、こういうのは良く良く中身を見ないといかんとは思います。

#で、中身を見たらもっと脱力するのが国会の仕様なのですけどね











2010/03/16

お題「決定会合前であれこれと/イエレン講演続き(ちょっとだけ)」

民主党が統治以前のテイタラクだというのに、自民党で俺が俺がと言ってる連中はアホか馬鹿かと・・・・orz

○しかし不思議ではあります

株式市場のコメントから。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-14320220100312
来週の株式市場、一段の金融緩和なければ海外勢の失望売りも
2010年 03月 12日 19:12 JST

『[東京 12日 ロイター] 来週の東京株式市場は、堅調地合いが続きそうだ。日銀が一段の金融緩和策に踏み切るかどうかが最大の焦点となる。』(上記URLより)

・・・・・国内円金利の市場は全くと言っていいほどどうでも良し状態になっているのに何故最大の焦点???

『緩和に踏み切った場合には、円安/株高に振れるとみられるが、材料出尽くしで売りに転じる可能性も指摘されている。』

・・・・・だから今言われている追加緩和措置が出ても短期金利は全く動かない(理由は既に下がり切っているから)のですが、緩和で為替が動くとか材料出尽くしになる(いやあの別に特別オペの拡充以外にもやろうと思えばやることあるのですが)とか意味分からん。

為替市場のニュースから。
http://jp.reuters.com/article/forexMarketOutlook/idJPnTK037039720100315
〔外為マーケットアイ〕ドル90.70円付近、菅経済財政担当相は日銀決定会合控え「直接的な言い方はしない」
2010年 03月 15日 17:59 JST

まあ表題の発言に関してはもう何を寝言を言っているのかと呆れ果てる次第でありますが、その後のコメントがこれまた意味判らん。

『ただ、市場は新型オペの拡充をかなり織り込んでおり「規模を10兆円拡大して20兆円とし、期間を6カ月まで引き延ばすのが追加緩和としては最大。ここまで出れば材料出尽くしで追加緩和観測は終息する。』(上記URLより)

えーっと、新型オペの拡充は小手先の問題で、金利市場としては本来的には物価安定の理解をどうするかとか展望レポートでの見通しやリスク評価がどうなるのかというような点が本来的な意味のある話でありますので、新型オペ拡充で出尽くしとかアホじゃねえのかという感じなんですけどねえ。

#期間を6か月に拡大したら(実施ペースが同じなら)勝手に20兆円になるのだが

『それ以上の緩和を考えるとすれば、国債買い入れの増額など(マネタイズの観測を生む)悪い緩和になる」』

意味が判らんのだが、国債マネタイズ観測を生んだら円安がもっと進行するんじゃないのかと思うのだが、まさか悪い緩和って日本の長期金利が上昇すると為替は円高になるとか意味不明にも程がある話をしているのでしょうか????

なお、どこの誰が発言しているかは一応引用しませんでしたので念の為申し添えます(^^)。


まあしかし何ですな、政府が景気認識を上方修正しながら日銀に追加緩和を要請するとか、最早何をやっているのかサッパリ判らん国になっておりまして、これじゃあ海外投資家が「この国は何を考えているのか判らん」とばかりに投資をしたくなくなる(5日に急に飛び出た追加緩和報道および前日の相場動向に関しても日本市場の不思議ちゃん振りに随分と評判が悪かったと仄聞しておりますが)のではないかとゆー話ではございますな。

で、ここもとのマインド指数が全体的に良い内容になってまして(と考えると麻生補正の執行停止とデフレ宣言が無かったら(というか政権交代が無かったら、ですかねえ)もうちょっと立ち上がりが早かったのではないかと思われるのでありますが)、そうなると短観がそこまでメタメタな内容になるとも思えません(がそんなに良くは無いでしょうね)し、逆に追加緩和をする名目に益々無理筋成分が高まって来るので、3月に追加緩和(というか緩和措置の強化という言い方になりそうだが)するのも一つの考え方かもしれませんね(^^)。

いずれにせよ今回何かやるとなりますと、その理屈をどうでっちあげるのか(本筋だったら物価下落をリスク認識ですし、こじつけコースだったら現在固定金利で実施している企業金融オペを同じ固定金利の新型オペで継続しつつニーズに応える為に10兆円実施とでも言うのでしょうか)という点をヲチャー的にはニヤニヤしながら眺めるのでありました。



○新しい審議委員は産業界から(金曜のネタですが)

http://www.asahi.com/business/update/0312/TKY201003120218.html
日銀審議委員に森本・東電前副社長提示 国会同意人事案

東京電力からは以前もこれまた副社長を務められた春英彦さんが審議委員になられた事がありまして、同じ企業から2人目というのは新法になってからは初めてですかね。

で、こうなりますと田谷さん→水野さんと続いたエコノミストなのか証券系という括りなのか知りませんが、まあその席が無くなって我こそはと思っておられた一部の何とかストの皆様におかれましては誠に痛惜の念を禁じ得ませんという所でございますな、あっはっは。

という話はどうでも良いのですが、資産大公開されて任期中には株式売買みたいなこともできず、ついでにフルタイムでこき使われてプライベートな時間も十分に取れず(休暇で出掛ける先も片道1日掛かりみたいな所には行けないんじゃ無かったでしたっけ)金融のクソ細かいマニアな事でああでもないこうでもないと言われるという大変なお仕事ではございます。これが金融業界の人とか学者さんだったら本人に箔も付きますが、東京電力副社長だったら別に箔がどうのこうのという話でもなく、恐らくは収入もダウンするでしょうな。公にご奉仕の心でお引き受けになられたかと存じます次第でございます。

つーことで、産業界の人が増える訳ですが、その事によってどうこうというのはそもそも森本さんがどのようなお考えを持っているのかとかは残念ながらあたくし全く存じ上げませんので何とも言いようがありませんが、実体経済の現場の雰囲気を金融政策決定会合により伝えられるような流れになって頂ければいいのかなあとか漠然と思うあたくしでした。


○とか書いているうちにイエレン講演の時間が無くなったので

ジャネット姐さんの講演続きは明日も続きます予定になってしまいましたが。
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf

・オークンの法則がどうしたこうしたというような話の結論を先に

昨日の続き部分は失業率に関する現状認識というか現状分析が結構長く説明してございまして、その中身は(アホのあたくしでも何となく)なるほどこうやって色々と考えるのですねという感じがしてこれはこれで興味の深い所なのですが、そこをやっていると時間がないざますので、その結論に掛かる部分になります。上記PDFの9ページ目後半以降になりますが。

『There is an alternative explanation regarding the events of last year though that bodes poorly for rapid employment gains going forward. According to this view, last year’s large increase in productivity is here to stay. In that case, we won’t see a quick drop in unemployment and may be in for a jobless recovery akin to those in the early 1990s and early 2000s. This is closer to my view and broadly consistent with my forecast.』

その前の理解を端折ったので何ですが、まあ要するに今次回復はジョブレスリカバリーになるというビューにイエレンさんも同意しているという事で、それを基に経済予測を立てていますという話っすな。

『According to this perspective, the recession has forced businesses to reexamine just about everything they do with an eye toward restraining costs and boosting efficiency.』

『Strapped by tight credit and plummeting sales, businesses have overhauled the way they manage supply chains, inventory, production practices, and staffing. Stores don’t order merchandise unless they think they can sell it right away. Manufacturers and builders don’t produce unless they have buyers lined up.』

『My business contacts describe this as a paradigm shift and they believe it’s permanent. This process of implementing new efficiency gains may have only begun and we may be in store for further efficiency improvements and high productivity growth for some time. If so, the rate of job creation will be frustratingly slow.』

てなわけで、まあ今回のリセッションによって経済活動に根本的な変化が生じており、生産性の向上(その前の部分で話をしているのですが、ここでの生産性向上は生産は拡大するけれども雇用が拡大しないという話のようです、その前では生産が横ばいで雇用が減る状況について話をしていました)はするけど雇用は拡大しないという事になって、雇用創出ペースは「いらいらするほど」遅れるという所でしょうか。

そのほかはまた後日(汗)








2010/03/15

お題「イエレンさんが副議長になることですし」

イエレンSF連銀総裁がFRB副議長に就任予定ということで、折角ですので先日のイエレン講演でも読んでみようかと。

http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf

HTMLとPDFの違いで中身は同じです。

○景気に対してはハト派であるのはご案内の通り

内容ですが、半分以上が経済見通しでして、その後ちょっとだけサンディエゴ経済の話があって、最後は出口戦略の話をしておりますです。

で、その経済見通しの中でやたらめったらスペースを割いているのは労働市場問題でして、当然ながらその労働問題はダメダメ感が漂っている、ということで話のトーンはハト派になっているってこってすな。でまあ労働市場なんてそう簡単に回復するもんじゃないですから、結論として緩和的な金融政策が長引くんでしょうなあという感じです。

また、出口戦略の説明の中では、そもそも論として出口戦略以前の所でインフレ懸念に対して、経済のスラックがインフレを抑制するという立場にたっているという事を明言して、これまたインフレに対しては懸念が低いという発言でこれまたハト的。

まあこの辺りは基本的にFOMCメンバーの中心的見解でもあるのですけれども、労働市場の問題についてやたらと説明しているのが印象に残る感じではございます。


○失業率は許容しがたい高さとな

講演の冒頭で経済の状況について説明があるのですが。

『Given the dismal economic news we faced for so long, it’s a great relief for me to report that the tide appears to have turned. We are seeing convincing evidence that an economic recovery is well under way. Still, as I’ll explain in greater detail in a few minutes, the fact that the economy is growing again doesn’t mean we’re where we ought to be. Far from it. In particular, the unemployment rate is unacceptably high, creating real hardship for millions of Americans. But, at least we’re heading in the right direction.』

ということで、景気に関しては回復傾向にありますという話はしていますけれども、そんなに力強いものではないという事でして、特に失業率に関してunemployment rate is unacceptably highだそうですな。

んでもってその続きではGDPが好転している話を説明していまして、その主因としては在庫復元だという話をしていますがそこはスルー。

その次に消費支出の回復の話をしていますが。

『On that front, the most recent data show consumers releasing somewhat their tight grips on their wallets. But that doesn’t mean that people have thrown caution to the wind and returned to their spendthrift ways.』

財布のひもが緩むってのを米国的に言うと上記のようになるのね(^^)。で、その次にあるように、そうは言っても以前のような浪費モードじゃないよと。

『Indeed, my business contacts tell me the consumer mindset is still in a fragile state. Clearly, the big weight hanging over everyone’s heads is jobs.』

ということで個人消費を抑制しているのは雇用環境ですよとして、この後やたら説明をしていますがそこはスルー。


○MBS買入終了後の住宅市場に関して懸念を示す

住宅市場に関しては回復しているけれども力強い回復ではないという話をしていまして、その要因として税制によるサポートと「低金利」を挙げてしらっと金融政策のアピールをしています。で、そのサポートに関しては、税制のサポートが外れるし、MBSの買入終了後に金利が上昇した場合には住宅市場が再度悪化するのではないかという懸念を示しています。というパラグラフを途中から。

『Existing home sales surged late last year in response to the homebuyer tax credit. But, the credit expires this spring, so this source of support won’t be around much longer. The housing sector has also been benefiting from the Fed’s policy of buying mortgage-backed securities. These purchases appear to have helped keep home finance rates low. But, the Fed is now in the process of tapering off these purchases and plans to stop them at the end of March.』

んでもって、懸念の部分は以下の文。

『As support from Federal Reserve and other government programs phases out, there is a risk that the housing market could weaken again.』


○金融環境に関して

で、その後は企業活動に関する見方があって、リセッション後の回復にあたってはその記憶が残っている間は企業はどうしても慎重になりますなという話をしてますけれどもそこをスルーしまして、特に中小企業において金融環境が依然として障害になっているという話をしてます。また、直近でクレジットクランチを見ているだけにどうしても保守的になると言う話を。

『Even for those businesses ready to expand?especially smaller ones?financing remains an impediment. Credit is becoming more available, but terms such as collateral requirements can be onerous.』

『What’s more, the crisis made businesses keenly aware that they can’t count on being able to get credit. Some of my contacts say they plan to keep more cash on hand, rather than investing it, as protection against a renewed credit crunch.』

まあそうですよね〜という感じです。

その次には商業用不動産市場の話がありますが、これはまあダメダメですよという話をしていますがそこはスルー。でもって銀行の回復が必要という話がその先に。

『In addition to some of the weak spots I already mentioned, a number of other factors are holding back recovery. 』

ということなのですが。

『First, even though the banking and financial systems are gaining strength, they still bear wounds from the financial crisis, and these will take a long time to fully heal.』

『Second, losses on mortgages, commercial real estate credits, and other loans continue to mount, and the full weight of foreclosures and bank failures on the economy has yet to be felt.』

傷の回復には時間がかかるわ、今後も商業用不動産関連与信を中心に不良債権の発生は続くわという明るくない話ですな。

『Finally, the Fed, as well as central banks in other countries, has faced limits in the amount of monetary stimulus we have been able to generate.』

金融緩和余地は限られているという話をしてますな。正直でよろしい、というか白川総裁が同じような事を言ったら(金融市場以外からは)総叩きになりそうな話ですなあ(^^)。

『That’s because we can’t push interest rates below the near-zero level where they’ve been for more than a year. To be sure, we’ve developed many innovative programs to make credit cheaper and more readily available. But, all in all, monetary policy can’t give the same kick to the economy that it delivered in past recoveries.』

全く仰せの通りでございまする。


○回復はするけれども当面は潜在成長力を下回る回復です

ということで、その先には今後のGDPなどの見通しがあるのですが、来年いっぱいまでは潜在成長を下回る成長が続くと予想していまして、産出ギャップ(だと思うけど、output gapって書いてるので間違ってたらすいません)に関しては、現在のマイナス6%から2011年にはマイナス3%となるが、解消するのは2013年という話をしています。

で、そのギャップ縮小が遅れると「我々全ての最近の主要な懸念」である雇用環境が改善しないという話をしていて、これまた雇用の話が出ましたなという感じですが、ここから延々と労働市場の分析が始まるのであります。PDF版で言いますと、ここまでが全体で15ページある中の6ページなのですが、そこからほとんど3ページを使って延々と労働市場に関する説明をしているのですな。


○労働市場には微かに光もあるが

現状が悪いという話をした後に、先行きには微かに光もありまして、失業率が低下したとか、一時的な雇用に関しては改善しているという話をしていますが、やはり結論はこうなっています。

『Nonetheless, given my forecast of moderate growth and a shrinking, but still sizable, output gap, I expect unemployment to remain painfully high for years. The rate should edge down from its current level to about 9-1/4 percent by the end of this year and still be about 8 percent by the end of 2011, a far cry from full employment.』(機種依存文字があったので改変しました。9-1/4の所ね)

んでもって、その見通しに不確実性があるということで、分析を色々としているのでありますが、時間と量の関係で以下は割愛、というか明日のネタで勘弁。

ちなみに、じゃあ何ですねんという話ですが、オークンの法則に関する話(って書いてるあたくしも無知無学によってよー知らんが、経済回復で失業率が改善する時には、潜在GDPと実際のGDPの差分の増加(だから実質GDPの改善幅なのか?)の半分の%で失業率が減りますということだそうな)をしてて、それに当てはめると2011年には1%失業率が低下しますって話をしてますが、2009年の大幅な失業の悪化を説明できていなくて、これは労働市場のファンダメンタルズの変化を示しているのではないかという説明と、他の仮説を説明していますです。

まあややこしい話は明日なのですが、結論としてはイエレンさんは今次回復に関してもいわゆる「ジョブレスリカバリー」となる事を展望しているようです。まあそう考えますと労働市場に関するイエレンさんの見方はかなり厳しいのではないでしょうか。


#ということで審議委員人事はスルーしちゃってどうもすいません






2010/03/12

お題「金利市場は盛り上がらないので雑談ばっかです」

普通追加緩和だという話になると金利市場が盛り上がるものなのですが、見事にドッチラケ状態になっているのが実に味わいの深いものがございます(−−;

○追加緩和がどうのこうの

インターネットで該当記事を見つけられなかったのでソースが張れなくて申し訳ないのですが、昨日の夕方に共同通信が「日銀、追加緩和の検討に入る」という記事を出していまして、今朝の日経にもそんな記事があるそうですな。で、その共同記事を見て???と思ったのですが、共同は「11日に検討に入った
という記事の書き方をしてたんですよね。

・・・・えーっとあのその決定会合は来週なんですけれども何故昨日から検討に入るのかがさっぱり判らないんっすけど???

まあここもとの流れは金融政策のロジックがどうのこうのという点からしたらもう訳判りません状態でして、最近の狂想曲には本石町日記さんとこも呆れて観察中というのが判る訳ですが(えーっと話は全然違いますが、ついったーってえのはブログの更新が止まる魔物ですなあ。あたしゃブログ以前の人なのでよー知らんが)、→http://hongokucho.exblog.jp/12967001/結局の所綺麗に言えば「金融市場以外の他市場などのマインドなどにも広く働きかける」政策という所でしょうから(敢えて身も蓋も無い言い方はしない^^)ややこしい事はキニシナイ。

正直言って他市場あるいは政治家様あるいは日経新聞様(^^)あたりにおかれましては、何だか知らんが毎月のように追加緩和政策をしろとでも仰せのようでありまして、あのその金融政策ってそんなに毎月ホイホイ変更するものでもないのですがと通常より金融政策回りをメシの種の一環にしているあたくしなんぞは思うのであります(具体的にはこの辺とか、と言いましても記事中身は日経ヴェリタス読者向けページなので最初の数行しか読めませんが→http://veritas.nikkei.co.jp/bojwatcher/index.aspx?id=MSFZ1000O%2010032010)けれども、そーゆースカタンを相手にして「マインドに働きかける」というのも大変ですなあという所で。

本来もうちょっとちゃんとした事をというのであれば、4月の展望レポートや物価安定の理解の所での議論をすべきであって、3月に何かやるとするとどう見ても「金利市場的には既に織り込んでいる状態のものを緩和扱いですかそうですか」という話になっちゃうので本質論にならないという点でどうかと思いますけどまあいっか。


ところで、昨日は野田財務副大臣からこのような発言が。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK038668020100311
UPDATE1: デフレに日銀も危機感、来週の決定会合に注目したい=野田財務副大臣

えーっと、政府は危機感を持って何を実施されておられるのか全く理解致しかねるのですが、実施してるのって日銀に何かやれ攻撃をするだけだとしか思えませんが何のギャグでしょうかねえ。と思ったらそういう事を言われるのを最近はちったあ意識しているのか、良く良く見ると発言にはこんな部分もあるのね。

>「政府としては(2010年度の)本予算を通すことが最優先」と指摘。

・・・・はて?本予算は衆議院通過したから放置プレイでも(ちゃんと審議してくれとは思うけど)成立は確定しているのですが、まさか参議院での予算審議を自分たちが何もしないで日銀にクレクレ言う事のエクスキューズにする積りでございましょうか。全く意味が判りませんが。

しかしまあ経済見通しを引き上げて緩和というのも中々こう香ばしいものがございまして誠に結構な話です。
http://www.47news.jp/news/2010/03/post_20100311113320.html
政府、景気判断を上方修正へ 3月経済報告、8カ月ぶり


ところで、何か日経新聞によりますと新型オペ20兆円に増額の方向という事のようで、珍しくもあたくしが本命とか書いたのが日経の本命になっていて、益々落馬あるいは落車の懸念がある訳ですが、落馬や落車は投票券が返還されませんのでフライング返還位で勘弁して頂きたく存じます(意味不明)という所で。

この調子ですと「週1回8000億円3か月で合計10兆円」という現状の新型オペは追加緩和の名目で「週2回8000億円3か月で合計20兆円」→「週1回8000億円6か月で合計20兆円」というオモシロコースになるのか(それだと途中で20兆円を維持していくのに変なテクニックを弄さないといけなくなりそうなので^^)、「週3回8000億円で30兆円」というコースになるのかという感じでしょうかねえ(^^)。ただまあ昨日も書きましたように、3か月のオペ残高があまり積み上がってしまいますと、短い所での微調節部分に皺寄せが来てしまいまして、資金の回りが悪くなるので、コールは下がり易いのにGCは資金余剰月になるとやたら確りしてしまうとかのような不思議相場になる事が予想されますので、実を言えば新型オペをむやみやたらと増やせば金利が下がるというもんでもないというのが奥の深い所でありまする。

と書いている事の理屈が判らない場合はお知り合いのレポ市場関係者にでもご質問してくださいませ(^^)。



○ヒマネタで金融政策決定会合議事録シリーズ:1999年7月16日の議事録から

例によって例の如く冒頭部分の金融市場の状況に関する山下金融市場局長の報告とその感の質疑応答なのですが、今の市場状況と比較してみると隔世の感があるというか何と言うか。まあ面白いと思うのはごく一部のマニアだと思いますけど構わず引用。


・皆が市場調達をするのでオペが札割れになるという現象(^^)

現在は市場調達よりもオペという世界になっておりますが(その要因は財政が大幅資金不足になって全銀ベースが大幅資金超過になってという資金保有構造の大きな変化があるので、別に昔が正しいとか今が正しいとかいう事ではありませんけど)、当時は皆が資金供給オペのタイミングまで引っ張らずに資金を市場調達するのでオペが不人気になるという今では考えられないお話。

1999年7月16日決定会合議事録本文7ページより。誤字脱字がありましたら勘弁。

『中原委員

本行オペの応札は低調になってきたのか。

山下金融市場局長

例えば、短国は6月7日のオペで0.71倍、手形買入が6月4日には完全に空振りになり、6月17日も札割れの状況である。5月、6月とイールドが非常にフラット化し、その中で資金供給が難しくなってきていた。その後金利先高感が生じ、ターム物の特に3か月あるいは6か月物が多少強含んできた時には、次第に応札倍率が上がってきたため、若干楽になった局面も一時的にはあったが、現在は、再び金利先高観が後退し、イールドカーブがフラット化してきているため、応札倍率が下がっておち、再び札割れが起きる可能性のある状況となってきた。

三木委員

オペと先日付で行うと当日物との間にこのような形で差が出るのか。

山下金融市場局長

最近は当日物金利が0.03%で安定しているため、各行とも私共のオペ以前の9時頃には皆取引を大体固めてしまう。従って0.01%や0.02%で資金調達ができるとしても、当日にわざわざ本行のオペに応じる事務処理コストをかけてまで資金を取る必要はない。もう十分だということになる。最近は都銀などでは明日スタートの翌日物についても0.03%で取れるため、次第に前倒しで調達を固めていくようになっている。従って、先日付でオペを打てば、0.01%や0.02%でとれるのであればマーケット・レート(0.03%や0.04%)よりはオペの方が有利だということになる。いずれにせよ明日や明後日の資金であればまだ全て固まっていないため、オペに入ってくる可能性が高まるという意味である。

三木委員

やはり流動性の心配がなくなったことと、金利が安定していることの二つから、こうした結果が出てくるということか。

山下金融市場局長

ご指摘の通りである。1か月以下のところは0.03%、ないし0.04%で完全にフラットになっているため、当日物は余り焦らなくても良い訳である。』

いやあ今とは全く違いますな。環境が違うとオペの打ち方とかも違いますし、市場慣行もまた変化するのでありまして、過去こうだったから今度こうやるとどうなるというのはあまり単純に考えるとエライコッチャになるのでしょうな。


・大阪コール市場涙目

その先で武富審議委員がコール市場の話をしていますが、まあ細かい話で(^^)。上記引用部分の続きで9ページ目からです。

『武富委員

コール市場残高の有坦比率が上昇している中で、大阪市場が厳しいと聞くが、それはコール市場全体の機能に対してダメージングな影響をもたらす状況ではないのか。

山下金融市場局長

基本的には大阪のレピュテーションの問題であり、コール市場の機能自体にマイナスの影響をもたらすものではない。大阪市場の取引規模が縮小しているのは、大阪に本店を置いている都銀等が地元に配慮して取引してきた資金調達・放出の額を減らしてきたことによるものである。現在は通信手段の発達等に伴い東京に全て繋いで取引すれば良い訳であり、大阪市場がなくなったといっても格別問題が起こる訳ではない。短資も大阪に人と建物を手当してコストをかけながら営業しており、東京に集約できればコスト削減が図れるメリットもある。

武富委員

短資会社の経営問題という側面からみて大阪に拠点を置くのは如何なものか。

山下金融市場局長

元々取引が大幅に減少しており、お荷物になっているのは明らかである。それを従来はそれなりに厚いスプレッドでカバーしてきたが、それが適わなくなってきており、各社とも真剣にリストラを考えている。大阪の拠点は将来的には大幅に縮小される状況になってくるとみられ、現にそうしたリストラの動きが出始めている。』

各社とも大阪に拠点はあったと存じますが、これはまた何と言う指摘。大阪に本店があった短資さんがいらっしゃった(まあ基本は東京でしたけど)と思いますが、というか名古屋に本店があった名古屋短資さん(今は合併してセントラル短資ね)もありましたが、決定会合の席でこんな話をされているとは涙目というか何と言うかという所ですが、そう言えばOIBORだのとか昔そんな言葉がありましたなあと感慨深いものがあります。

さっきちょっと各社のHP見たら、さすがに大阪が発祥の地であるだけに上田八木短資が東京本社のほかに大阪本社がある(登録機関が近畿財務局ですし)んですな。で、セントラル短資は山根、名古屋短資の流れもあって大阪と名古屋に支店があって、東京短資は大阪に支店ということで、大阪コール市場そのものはどうなのか存じませんが、大阪拠点はまだ存続していると言う事で誠に結構な事でございます(何が結構なのかというツッコミをしないように)。ちなみにセントラル短資と東京短資は登録機関は関東財務局でございまする。(各社HPより)

だからどうしたと言われると困りますが(^^)







2010/03/11

お題「虫干しネタとかその他少々」

そういや新日本石油が日経225から除外予定ですが、日本石油と言えば東証指定銘柄だったと思うのだが時代は変るもんですなあ。

まずはバーナンキ議長の議会証言(2月24日)ネタから少々。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100224a.htm

○景気に関してはそんなに強気ではないのは変わらず

冒頭の景気見通しの部分ですが、現状の回復基調に関しては政策効果および在庫調整などのサイクルによる一時的なものであり、持続的な回復基調に乗る為には財やサービスに対する民間最終需要が継続的拡大するかどうかに掛かっています、という話をしているようですな。

『Although the recession officially began more than two years ago, U.S. economic activity contracted particularly sharply following the intensification of the global financial crisis in the fall of 2008. Concerted efforts by the Federal Reserve, the Treasury Department, and other U.S. authorities to stabilize the financial system, together with highly stimulative monetary and fiscal policies, helped arrest the decline and are supporting a nascent economic recovery.』

良く見たらここでも金融緩和の成果って話をしてるのね(^^)。

『Indeed, the U.S. economy expanded at about a 4 percent annual rate during the second half of last year. A significant portion of that growth, however, can be attributed to the progress firms made in working down unwanted inventories of unsold goods, which left them more willing to increase production. As the impetus provided by the inventory cycle is temporary, and as the fiscal support for economic growth likely will diminish later this year, a sustained recovery will depend on continued growth in private-sector final demand for goods and services. 』

ということです。で、民間最終需要に関しては昨日引用したように、金融緩和政策による金融環境の改善も後押しして緩やかな基調で回復しているという話をしています。設備投資とソフトウェア投資や、輸出に関しても好調という話ですが、商業用不動産は駄目ですよ、という感じですな。長くなるので引用割愛。

で、まあ問題なのは労働環境でして、そっちに関しては相変わらずダメダメという話をしています。

『The job market has been hit especially hard by the recession, as employers reacted to sharp sales declines and concerns about credit availability by deeply cutting their workforces in late 2008 and in 2009. Some recent indicators suggest the deterioration in the labor market is abating: Job losses have slowed considerably, and the number of full-time jobs in manufacturing rose modestly in January. Initial claims for unemployment insurance have continued to trend lower, and the temporary services industry, often considered a bellwether for the employment outlook, has been expanding steadily since October.』

とまあここまでは明るい話をしているのですが・・・

『Notwithstanding these positive signs, the job market remains quite weak, with the unemployment rate near 10 percent and job openings scarce.』

労働市場の現状は極めて弱いと。

『Of particular concern, because of its long-term implications for workers' skills and wages, is the increasing incidence of long-term unemployment; indeed, more than 40 percent of the unemployed have been out of work six months or more, nearly double the share of a year ago.』

前もFOMCの議事要旨でこの論議が出てたのですが、長期離職者が増えると労働者のスキル低下に繋がり経済に更に宜しく無いというお話ですわな。

んでまあその後が物価に関する話ですが、住宅市場の改善が遅いことを受けて帰属家賃が上昇しないという話をしているのが「ほほう」という感じでありましたがこれまた割愛。で、経済見通しの結論部分は要するに1月のFOMCで示された話と同じでして、経済は緩やかに改善して、インフレ圧力は抑制されています、といういつもの話でありますのでこれまた引用割愛ね(手抜き)。


○金融政策に関して:のっけからfor an extended period

金融政策のコーナーでは最初からキタコレ。

『Over the past year, the Federal Reserve has employed a wide array of tools to promote economic recovery and preserve price stability. The target for the federal funds rate has been maintained at a historically low range of 0 to 1/4 percent since December 2008. The FOMC continues to anticipate that economic conditions--including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations--are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

とまあそういうことでのっけからキタコレという所でして、出口政策に関する話も当然この先にあるのですけれども、まず掴みの部分でこれをカマすのがバーナンキ議長の見せ方のお上手さなのかなあと思います。


○金融政策に関して:MBSとエージェンシー債買入の説明がこの前と微妙に違う

雪で流れた議会証言の原稿の時には資産買入プログラムによってもたらされた超過準備が効果を出したというような「量的緩和」的な説明をしていて、従来「我々の政策はバランスシートの資産サイドに注目している政策で、負債サイドで行う量的緩和ではない」という話をしてるのと話が違ってやしませんかという話をした訳ですが、今回のテキストでは量的緩和的な部分が無くなって元に戻っているのは何なんでしょという感じです。

『To provide support to mortgage lending and housing markets and to improve overall conditions in private credit markets, the Federal Reserve is in the process of purchasing $1.25 trillion of agency mortgage-backed securities and about $175 billion of agency debt.』

で、今後は縮小方向ですが必要に応じてそれは見直すと言う文言はいつもと同じなので割愛しますが、今回の説明では(その後でもそうですが)拡大した超過準備の効果についてはスルー気味での説明になっておりまして、前回の雪で流れた回での説明と微妙に違うのが不思議ちゃんなのでございまする。

まーよーするにバーナンキ先生としては、そのあたりのロジックの一貫性だのという事よりも、良くも悪くも政治家チックな柔軟というか実践的というか狸というかとゆー動きであって、学者先生的な動きとは違う人になっているなあというのが(何度も申し上げているような気がしますが)如実に表れているんじゃないかなあとか思うのでありました。


○ディスカウントウィンドウの変更は引き締めではないと強調

で、資産買入の次には各種の流動性プログラムに関する説明をしていますが、こちらは前回(および従来)と同様に中央銀行が市場機能が壊れた所に出張って行って最後のカウンターパーティーとして機能して金融環境の修復を図るという説明と、その結果改善したので現在各種プログラムを終了してきましたという話をしていますが、そこは割愛。

で、その一環としてディスカウントウィンドウの機能も元に戻すという説明をしています。

『In addition to closing its special facilities, the Federal Reserve is normalizing its lending to commercial banks through the discount window. The final auction of discount-window funds to depositories through the Term Auction Facility, which was created in the early stages of the crisis to improve the liquidity of the banking system, will occur on March 8. Last week we announced that the maximum term of discount window loans, which was increased to as much as 90 days during the crisis, would be returned to overnight for most banks, as it was before the crisis erupted in August 2007.』

でもってその目的ですが。

『To discourage banks from relying on the discount window rather than private funding markets for short-term credit, last week we also increased the discount rate by 25 basis points, raising the spread between the discount rate and the top of the target range for the federal funds rate to 50 basis points.』

ということで、銀行に対して市場調達を促すということですな。まあ当然ちゃあ当然の説明ですけれども。そしてその後に、本件は引き締めでは無いということを強調しています。

『These changes, like the closure of most of the special lending facilities earlier this month, are in response to the improved functioning of financial markets, which has reduced the need for extraordinary assistance from the Federal Reserve. These adjustments are not expected to lead to tighter financial conditions for households and businesses and should not be interpreted as signaling any change in the outlook for monetary policy, which remains about the same as it was at the time of the January meeting of the FOMC.』

この点も強調しているということで、まあ「引き締め政策は先ですよ」というアピールを必死こいてやっているなあという感じです。


○次の引き締め過程では付利金利をコミュニケーションツールに使うんでしょうな

と、ここまで緩和の話満々でしたが、その先が今後の流動性吸収に関する話。

『Although the federal funds rate is likely to remain exceptionally low for an extended period, as the expansion matures, the Federal Reserve will at some point need to begin to tighten monetary conditions to prevent the development of inflationary pressures. Notwithstanding the substantial increase in the size of its balance sheet associated with its purchases of Treasury and agency securities, we are confident that we have the tools we need to firm the stance of monetary policy at the appropriate time.』

流動性を引くツールも充実してて大丈夫ですという話をしていますが、本当の本当に大丈夫かという話に関しては正直怪しい気がするんだがまあスルーして。

『Most importantly, in October 2008 the Congress gave statutory authority to the Federal Reserve to pay interest on banks' holdings of reserve balances at Federal Reserve Banks. By increasing the interest rate on reserves, the Federal Reserve will be able to put significant upward pressure on all short-term interest rates. Actual and prospective increases in short-term interest rates will be reflected in turn in longer-term interest rates and in financial conditions more generally. 』

『The Federal Reserve has also been developing a number of additional tools to reduce the large quantity of reserves held by the banking system, which will improve the Federal Reserve's control of financial conditions by leading to a tighter relationship between the interest rate paid on reserves and other short-term interest rates.』

ということで、超過リザーブの下では準備預金付利が重要なツールになるという話をしていますので、まあ超過リザーブがあるうち(=引き締め局面の初期過程)では、やはり先般の雪で流れた版議会証言テキストにあるように、当面は準備預金付利金利をメルクマークにして金融政策のコミュニケーションポリシーとするんでしょうなあ、と思うのでありました。

で、以下流動性吸収の具体論になりますが割愛。


○この先もまあ論点あるけど割愛で勘弁

この先なのですが、FRBの政策に関する透明性に関してという話が延々と続いているのが「ふーん」という感じですが、とりあえず目先の金利政策に関してどうのこうのという点に関してはまあ関係無いので(透明性と個別金融機関の風評リスク問題をどのように折り合いをつけるかとか中々面白い論点ですが)割愛しますです。

で、最後の章がプルーデンス政策に関する話になるのですが、これまた割愛することと致します。(やりだすとキリが無いので)


以上バーナンキ議長議会証言ですが虫干しネタでした。


○須田さんのセミナーでの発言ですが・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003b.pdf

そんなに長い話では無いのでちょっとだけ。

・リスクはバランスですかそうですか

『以上お示ししたシナリオが、私ども日本銀行政策委員のメインシナリオです。ただし、こうしたシナリオに関する不確実性は、リーマンショック以降高い状態が続いています。詳細は10月の展望レポートでご覧頂けますが、(途中思いっきり割愛)。なお、私自身としましては、以上でお示ししたリスク要因は、不確実性が高いもとで、上下両方向にほぼバランスした状態であるとみています。』

・構造問題と金融政策

『最初に、構造問題に対して金融政策がなし得る役割は、基本的に二つあると考えています。第一に、中長期的に物価安定を維持させるということです。ここで重要なポイントは中長期的な見通しであり、先行き物価が安定に向かうかどうかという点です。日本銀行政策委員の「中長期的な物価安定の理解」は、消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度が中心となっています。こうした物価安定のもとで、各種の経済主体は相対価格の変化を正確に認識することができ、構造的変化への対応を適切に行なうことが可能となると考えられます。』

『第二に、痛みを伴う構造改革が進んでいる場合には、金融緩和によってその痛みを和らげることが可能になります。例えば、1990年代のバブル崩壊後や、1990年代後半のアジア通貨危機時における日本のケース、1990年代初頭の米国のケースなどでは、金融政策が景気底割れを防ぐ役目を果たしました。』

でも、金融政策は構造問題を解決しないですよと。

『ここで注意しなければならないのは、金融政策は構造改革の進展を間接的に支えることはできても、構造改革そのものを進展させる効果はないということです。現在のところ、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを促すために、緩和的な金融環境を維持することが最優先課題ではありますが、景気回復と並んで、必要な構造改革を果敢に進め、構造変化に応じた新陳代謝を促していくことも、現在の日本経済にとって重要な課題と言えます。また、構造改革が先送りされたままでは、金融政策に期待される景気浮揚効果も減殺されてしまいかねません。』

この構造改革ってえのも定義がよーわからん言葉でアレなのでございますが、まあ金融政策単独で構造問題の解消はできませんですよ、構造問題で生じる痛みの軽減は出来るけども、という話をしているのはまあそうでしょうなあという感じです。

・・・・でまあそれはそれなのですが、ここの部分をより意地悪くというか穿って読みますと、「何でもかんでも金融政策にケツ持ちをさせようとする現内閣は逝って良し」という発言をしているように思えるのは、日経新聞をはじめとする新聞メディアによる「政府VS日銀」のフレームアップに頭が毒されていますかそうですか(^^)。

#ということで超簡単版でございました






2010/03/10

お題「緩和に関する雑感とか市場雑感とかバーナンキ議会証言予告編とか」

CDSのせいでギリシャ国債のスプレッドが拡大って20年前の日本での「株式先物悪玉論」みたいですなあ(ニヤニヤ)。

#まあ商品先物の建玉規制みたいな観点は必要だと思いますけどね

○まあロジックの世界では無くなっていますので

昨日は金融緩和やるならどうなのよという話をうだうだと行いましたけれども、まー正直言って現状はロジックの世界でも何でも無くて、ドラ息子状態になっている政治とか他市場(2月の会合前にモーサテで他市場の人が「2月にも何も無いとすれば2か月連続で金融緩和措置がありませんが」みたいな面白発言をしていましたな)とかの対話、というか対処が眼目になってしまっているので、金利市場の状況からロジック立てて考えるだけ時間の無駄という感じでしょ。

ドタバタの発端はどう見ても12月1日の臨時会合ですが、臨時会合やる破目になったのはスケジュール感を何も考えない(=政府と日銀の連携とは何ぞやというのを理解していない)政治サイドの無作為デフレ宣言が発端だったりして、まあ政府(というか政治)と日銀の連携がダメダメでしょうとしか傍目には見えないという根本的な所にあると思うのだが。まあ山口副総裁お疲れ様ですな。

#返す返すも武藤さんが総裁だったらと思いますし、金融政策を巡る論議を見ていると武藤、伊藤、白川体制だったらとも思います

ところで、まあ金利市場的には追加緩和(のようなもの)が3月に出ようと4月に出ようとどうでも良いので、きっと今月の会合で何も無くても1ミリも反応しないと思いますけれども、何せ相手が蒟蒻問答状態の政治家であったり他市場であったり日経新聞であったりする訳でありますので、スキップしてどうなるのかもよー知らんがなという所もござんす。ということで、3月に何か追加緩和(のようなもの)を実施するんですかねえ。まあ金利ポジションを持つ人としては正直どうでも良い(どうせ市場金利的に言えばターム物金利が下がり切った状態なので)ので・・・・

そういえば昨日書いた後に不覚にも気がついたのですけれども、現在の新型オペって毎週8000億円で期間3か月を12本実行して9.6兆円になっているのですが、期間を6か月にして毎週8000億円をキープすると実行本数が24本か25本位になるので、出来上がりのロットは20兆円近くになるんですな(^^)。つまり「期間を6か月に延長して実行額を約20兆円にしました!!!!」と堂々とチラシじゃなくて説明文書に書けるではございませんか(^^)。

足元のGC需給という超ミクロ的にな話をすると、6か月という長い期間(3か月オペでもまあ微妙なんですが)のオペが20兆円も打たれると、バランス的に短いオペが打ちにくくなる(ツイストすれば問題ないのですけれども、ツイストすると「資金吸収して引き締め」とか言い出すアホウが出るので現状は吸収オペ打ちにくいでしょ)ので、資金需給的に余剰が大きい月になると足元の資金供給額が減り、結果としてGCレポ市場における市場調達が増えたり、市場の資金偏在が中々こなれなくなったりするので、実は足元のGCレートだけ安定しないような事態になるかもしれません(コールは安定だと思うけど)。まあ細かい話ですけどね。


なお、もっとそもそも論をするならば、デフレ解消して緩和的な金融環境を作りたいってえのだったら財務省がドカンと為替介入をすべきだと思うのでありますが。ほら、この前スイスだってスイスフラン売りユーロ買いの介入を実施しましたし(^^)。



○市場雑談

一昨日なんですけれども(昨日書き忘れた)、末初オペという毎度お馴染みの何でそういうオペやるのかねえ(出すなら末越えのタームで出してよ〜と思うのだが)というオペが実施されました。結果は1兆円のオペに対して平均0.113%で足切り0.10%(按分11.8%)と落ち着いた結果。

まあ落ち着いた結果ちゃあ落ち着いた結果ですけれども、できればタームで取りたい(のですが、実はこの先の資金需給を考えるとそんなに末越えの資金供給オペを打つ余地は無いので取っておいた方が利口のような気がする)とか、末初だけ取るとその手前をショートファンディングで繋がないといけなくなるかもということで、そんなに上の札が入らなかった(平均が上にいるので最低限必要分だけは皆さん確保したのだと思います)のかなあという所です。

で、先日申し上げていた資金余剰月問題ですが、案の定資金余剰の影響が出てきて供給オペが減って来て、数字上は資金が減っている訳では無いのですがGCに関してはやや需給が変化してきたでござるの巻。15日の積み最終に向けて進捗も順調なので、コールレートは0.09%台での推移(昨日は0.099%と上昇してますが)となる中で資金偏在がこなれない為に今週に入ってGCが先週の0.105%水準からやや上昇して0.015%レベルになっているようでございますな。同じ文脈ですが、昨日は国債買現先は0.11%に上昇してますし、共通担保オペの3/25エンドも0.11%按分となっておりまして、まー今後余剰気味で推移する中でオペが打ちにくくなるのでレートは確りするかもしれませんなあという感じですか。

ということで、GCレートとかっていうのは別に当座預金残高が16兆になったから低下するとか14兆になったから上昇するとかいうものでも無いのでありまして、当座預金残高にそんなに注目されても困りますがなって思うのでございますが、まーこればっかりは100回説明をされるよりも1回資金需給の表を自分で作ってオペ予想をした方が理解が早く進むと思いますが、別にマニア以外には全く推奨しませんので念の為(^^)。



○などとウダウダ書いていたら肝心のお題を書く時間が無くなってしまいました

最近「時間がない」というのが仕様になっていますが、寒い中だと目が覚めてから布団でウダウダとする時間が至福だから結果としての寝坊が多いなどというのはここだけの話でございます(^^)。

で、ネタの予告編ですが、これまた古いネタですけど、バーナンキ議長の雪で流れた議会証言の本チャン版が割と「ふーん」という感じだったので、その辺でもと思っておりまして。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100224a.htm

まあいくつか「ほー」と思った所はあるのですが(詳しくは明日)、これを読んでいて最初の部分でいきなり「ほほー」となったのは、冒頭の「The Economic Outlook」って所の第2パラグラフの頭。

『Private final demand does seem to be growing at a moderate pace, buoyed in part by a general improvement in financial conditions. In particular, consumer spending has recently picked up, reflecting gains in real disposable income and household wealth and tentative signs of stabilization in the labor market. Business investment in equipment and software has risen significantly. 』

いやまあお話自体はそうですねって事なのですが、民間最終需要の回復傾向に関してわざわざ「buoyed in part by a general improvement in financial conditions」ってフレーズを入れているのは、恐らく議会(や一般ピープル)から「FRBはウォールストリートの利益の為に行動していてケシカラン」と言われやすいという点を踏まえて、「我々の金融緩和の結果として皆様の経済活動が回復傾向にあるんですよ!!!」と掴みの部分でアピールしようとしているのではないかと思ったのですがどうでしょうかね(^^)。

あと、急にワープしますが最後のほうに「Regulatory Reform」ってのがありまして、その中で例のストレステストを自画自賛しているのはまたまた御冗談をという感じが致しました。一応引用。

『Last spring the Federal Reserve led the successful Supervisory Capital Assessment Program, popularly known as the bank stress tests. An important lesson of that program was that combining on-site bank examinations with a suite of quantitative and analytical tools can greatly improve comparability of the results and better identify potential risks. 』

前提条件が失業率8.9%のストレステストですかそうですか・・・・・

とは申しましても、こ〜ゆ〜ストレステストっていうのも本当に閉店投げ売りモードになっている時と、時間的余裕があるときとでは全然話が違いますからね。

個別の主体として見た場合に投げ売り価格で見るのが最悪の場合を考えたリスク認識としてはその通りとしても、金融システム全体が投げ売りモードを前提にしたリスク認識をするのが本当に正しいのかどうか(それこそ負のプロクシカリティー状態になってしまう訳ですから)という話もあるので、まー難しい論点ではありますし、当然ながら監督当局の皆様におかれましてはそういう論点も考えながら色々と新たな監督のフレームを作っていることかと存じますし、そんな細けぇ話を議会でしても仕方ない所ではありますが、そう簡単に上記のような話になるかというと難しい問題を含むんじゃないですかねえ、と思いました。

#その他の部分に関しては明日以降どこかでサラサラと









2010/03/09

お題「昨日の大訂正&金融緩和って何すんでしょとか」

気温が乱高下するので頭のネジが外れてしまったようで誠に相すいませんm(__)m

○昨日の訂正&物価に関連して

昨日野田審議委員の会見に関して「ハト」という用語を素で間違えて使っておりましたのでここに謹んでお詫びすると共に訂正しますが、賠償は致しませんので念の為申し添えます。鳩の支持率が下がっているだけに鬼門ですな(違)。

昨日引用した野田さんの発言ですけど。

『(問) 山口副総裁が2月の講演で、物価下落幅の縮小ペースが想定よりも若干遅いといったことを発言されました。この発言にかかる委員のご見解と今後の対策についてお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)個人的に申し上げれば、少なくとも物価下落率の幅が1月の想定に比べて大きいとか小さいとはっきり申し上げるほどの動きは今のところ観察できていません。』(以上3月4日野田審議委員会見より)

ということで、山口副総裁は「物価のマイナスが想定より戻りが弱い」と言っている(=ややハト)に対して野田さんが否定しているのですから、ハトではないですな。まあ山口副総裁の発言が(執行部の人ですけれども)公式見解対比ハトなのかというとこれがまた解釈が難しいのですな。と申しますのは2月の金融経済月報での物価見通しでややこしい事をしていまして・・・・

『消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(2月の金融経済月報概論より)

ということで、2月の月報で「中長期的には需給バランス改善」「足もとは下落幅の改善が遅れる」という器用な訂正をしているのでありまして、中長期的な物価安定の理解という意味ではどっちに政策インプリケーションがあるのか判らん(というかどっちにも取れるようにしているんでしょこの日銀文学は^^)という代物。足元のマイナス継続に対応という言い訳も出来ますし、中長期的には需給バランスは改善するのでとりあえず追加で何かする訳でも無いっすよという事ですな(^^)。

で、その日銀文学っぽい動きに対してなのか、山口副総裁の微妙な発言に対してなのか知りませんが、野田さんは「そんなに急に下落幅縮小に対して反応しなくても良いのではないでしょうか」という話をしていると言う事ではないかと思います。過去の野田さんの発言とか決定会合の投票とか見ていると、野田審議委員って結構ロジックの整合性を重視するタイプで、執行部が時にやらかす「急に今までの話と全然違う事をおっぱじめる」という動きに対しては批判的ということなのでは、と思いまする。

まあ何はともあれ昨日の間違いはどうもすいませんでした。



○で、緩和って何をどう緩和するのでしょうか???

大体からして「ターム物金利誘導」とか言いましても、2年カレント国債の金利が0.14%などという楽しい状態になっているのでありまして、はてさて何をどうするんだという話は思いっきりある訳ですが(−−;)まあ何せここもとの金融政策は「市場との対話」というよりは「金利じゃない別の市場との対話・・・・というか大体の場合「3か月LIBORの金利差とドル円相場の相関」とか「2年物国債の金利差とドル円相場為替市場の相関」とかいうような意味不明の供述を繰り返す為替市場の人達との対話というか蒟蒻問答ですけど・・・・とか、「政治との対話」とかいうような話になっている訳でありまして(−−;)あまり金利市場的にはああでもないこうでもないと言ってもオモロナイですなという感じでしょうか。

どっちかと言えば他の市場が妙に期待しているのでありまして、先週金曜のロイターの記事ですが、追加緩和記事に関する株式市場識者のコメントに噴いた。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14198520100305?pageNumber=3&virtualBrandChannel=0&sp=true
株が日銀の追加緩和報道で反発:識者はこうみる

色んな人のコメントがツッコミどころ満載(まともなコメントしている人もいますけど)なのですが、「4月の緩和では遅い」とか「米国の利上げは今年後半」とか意味不明の供述をする方がおられまして誠に香ばしい次第。まあこういう手合いに対する対話って難しいというか何と言うか。金利市場から見たら「ナンジャソリャ」となるけれども、何となく凄そうに見える施策が出てくる可能性も高そうですな。

とひとしきり悪態をついた所で幾つか思いつくままに妄想。

・新型オペの拡充その1:期間延長

従来の3か月を6か月に延長するという話ですが、まあ既にご案内の通りTBの金利って3か月でも6か月でも大して変わらん水準(金曜の入札は例の記事の関係で強くなっちゃいましたが、まあそれが無くても3か月から1bp差は無いと思います)でありまして、何を今更という感じではございますが、象徴的な意味合いという事で中期ゾーンあたりの金利の安定化には役立つかもしれない(既に安定しているが)という程度の話。

そもそも展望レポートの見通しと物価安定の理解を組み合わせて考えると、どう考えても来年の終わり位まで利上げとかいう話が出るとは思えませんというのは既に金利市場で全部織り込んだ結果2年国債金利が0.14%になっているのですから、今の時点ではあまり金利市場的には意味が無い(将来出口が見えてくるような時点になったら意味が出てくるとは思うのですが、それはだいぶ先の話)為替市場や株式市場(特に為替のガイジンかなあ)は理解してなさそうな節がありますからね。

・新型オペの拡充その2:金額拡大

ちょうど4月から順次企業金融オペが落ちますので、名目としては「企業金融オペの落ち分を共通担保オペで代替するのですが、それを通常の共通担保オペではなくて新型オペで対応しましょう。あ、全部で10兆ね」というのがございますがどうすかね(^^)。

ちなみに、企業金融オペの残高は昨日実施したオペロールオーバー後で5兆円程度(現在は5.3兆円程度)5.4兆円程度(現在は5.6兆円程度)(←オペ1本計算洩れてました)となりますので、それだけですと5兆円増額(1回8000億円を12000億円に増額ですかね)という話もありますが、それだとちょっと出し惜しみ感が出て逆効果のような気がするので、週2本8000億円ずつという形になる(実は新型オペは12本しか回っていないので、それだと19.2兆円になるのですが、そういう細けぇこたあいいんだよという事にするんでしょうかね、よー知らんが)のではないかと愚考。

意味に関しては通常のオペがバランス的にどうなるか次第ですが、0.1%の指値オペが増える分足元レートの上昇が抑えられるので、既にターム物金利が潰れてしまっているという点を勘案すると、上昇抑制効果があるのはこっちの方ではないかと思います。

ちなみにあたしゃ3月に何かやるならこの「金額拡大」を本命にしたいと思いますけれども、あたくしが本命にすると落馬しそうなのでダメですかね(^^)。

「企業オペの落ちが来るから企業オペのロールも兼ねて実施です。もちろんこのオペは企業金融債権を担保に入れられますからね」っていうと何となく企業金融への目配りを欠かさずに行っているっぽくて絵として綺麗なのと、期間延長というよりも増額の方が判り易いという辺りが絵として使えそうという風に思うのですがどうでしょ。

それに日銀的にはそもそも企業オペの落ちは共通担保でロールすると言っていたのですから、それが金利入札方式ではなく指値方式になっただけの違いという話ですので飲みやすそうな気がするんだが。


・時間軸の強化になるかどうか判らんが:物価安定の理解をどうにかする

先般の内閣府フォーラムで岩田一政前日銀副総裁が言及してたと思うのですけれども、「中長期的な物価安定の理解」に関して現在の「0%〜2%」というのが下に0%という数字があるので、「0%まで戻ったら自動的に正常化路線をおっぱじめるのではないか」という連想が働く(今の時点ではまあ先の話ですけど)というのは、まー仕方無い面もありますので、その辺のマインドをもうちょっと明るくする為に、この公表の仕方を変更するという話ですな。

確か岩田一政さんは(ちょっと記憶が怪しいので間違ってたらすいませんが)中心値の1%をピンポイントで中心値として示した方が判り易いという指摘をしていたと思いますが、まあその辺りはアリなのかなと。別に1%を硬直的な目標にする訳ではないので実質的にはあまり変わらないのですが、下限にあるゼロというのがどうもアレなので、その数字を取っ払うという事ですな。

または、下限の0%を0.5%位にまで上げるというのもあるかもしれませんけれども、それは(審議委員が一人入れ替わったとは言え)ちょっと唐突感があるような気がする。まあそもそも論としては下限上げた方が良い様な気がするが。

当たり前ですがこれをやるなら4月ですな。


・時間軸の強化というか何と言うか:展望レポートのリスク評価を下向き全開に、とか

これまた4月の話ですが、次回の展望レポートを出す際のリスク評価をする所で、物価がマイナス圏で推移する事に関する下振れリスク評価をより強く打ち出すことによって、時間軸の強化あるいはその先での追加金融緩和を示唆する(で、示唆だけで効果が出ればなお結構)という話ですな。

ただまあこの難点は「他市場との対話」という意味では多分理解されにくいところと、何となく世の中的にはクレクレ状態になっている(小遣いをせびりに来る財務大臣もいますし^^)ので、そういうのって通じるかなというのは微妙。

もちろん、3月に何もしないで、4月の展望レポートやら物価安定の理解やらのタイミングのセット販売でさっき書いた新型オペ拡充を出すという手はあると思います。


・輪番拡大・・・・は財政政策のフレームとセットじゃないの??

輪番については妙にこれまたヤレヤレいう人がいるようですが、ここもと財政赤字発散問題が世界的にもネタになっているという今日この頃で、日銀が単独で長期国債買入を拡大すると、財政赤字発散懸念のプレミアムが乗っかった形でのイールドカーブのスティープ化が進行するだけではないかと思われますので、財政の何ちゃらかんちゃらが出てくる6月とかの話ではないかと思われるのでございますけどね。

#財政なんちゃらがただのポンチ絵だったらこれまたややこしい事になりそう


・当座預金残高の目標復活・・・はちょっとねえ

当座預金残高を目標にするのを復活という手はあって、これまた判り易いと言うメリットはあるのですが、これはまあ見事にコール市場壊滅コース。米国方式で超過準備の付利を残しながら、当座預金残高だけはバカバカ出すという戦法はありまして、ただしこの場合はディレクティブの維持が難しい(超過準備の付利の恩恵にあずかれない人、主に投信になると思いますが、その人達がコールを0.10%以下で出してくるから。当座預金取引先は0.10%で付利されるからその人達のコール0.10%以下の出しは無い)ので、ディレクティブは0.10%を目標にするが若干の下振れは許容というような書き方になるのでしょうな。

この場合、コールは下がりますが、これはまあ限界的な世界の話でして、短期国債が0.10%に近くはなると思いますが、0.10%を割ると当座預金取引先は短期国債を購入する経済合理性が無くなる(担保需要としての購入はあるが)ので、それ以外の人達の買いだけで現在の短期国債の発行量を買えるかというと無理でしょうから、そう簡単にレートだだ下がりという事にもならないでしょうかねえとは思います。もちろん残高をアホ程増やすと担保需要での短期国債の会が増えまして0.10%を割り込むと思いますけど。

ただまあこれはまた短期市場壊滅して市場関係者一家離散状態になるのであたくし的にはご勘弁願いたいものでありますけど。政策としての費用対効果がイマイチにも程があると思いますけどねえ、とポジショントーク成分入りですが思うのでありまする。


まあ他にもあるかもしれませんがとりあえずこんな所で。










2010/03/08

お題「金曜の記事続きとか野田審議委員会見とか」

気温の上げ下げが激しくてしんどいですぅ。

○ということで金曜の日経記事を読んでみたわけだが

ネット版の記事はこちら
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt37/20100304ASGC0402A04032010.html
(3/5)日銀、4月にかけ追加緩和を検討 短期金利、一段の低下促す

本ちゃんの記事(5日の日経新聞1面)を見たのですが、記事の中身的には別に新味のある話がある訳でもなく、これは別に1面トップで堂々書くほどの内容かよという感じでございますわな。

ということで、まあ妄想満開モードで書く訳ですが(^^)、金曜に悪態申し上げた時は「リーク記事だったら」という感じで話をしたので誠に申し訳ございませんという所でありますが、これはまあもしかしたら「書かせ記事」の類かもしれませんけど、それにしては別に新しい話が1ミリも無いです。

上記記事中で追加緩和を行う理由が『消費者物価が下げ止まらないなかで企業や家計の行動が慎重になるリスクがあると判断。』というのがあるのですが、つい先日の山口副総裁の講演では

『ごく最近の消費者物価指数の動きをみますと、マクロ的な需要と供給のバランスが改善している度合い──これを正確に把握することが難しいという問題はあるのですが──この改善度合いに比べると、物価下落幅が縮小するテンポは若干遅いような印象を受けています。また、持続的な物価の下落、いわゆるデフレが続いているだけに、物価に対する人々の見方が下振れることがないか、十分な注意が必要です。』(2月24日の山口副総裁の講演より)

という話をしている中で記事にある理由だとちと唐突というかロジックが弱い(いやまあバーナンキあるいは福井方式でロジック無理筋で実行というのはありますが)のでありまして、そりゃまあ4月の展望レポートや中長期的な物価安定の理解の見直し(審議委員が入れ替わりますし)の時点で何かするのならまだ話としては判りますが、3月は普通にねえだろという感じで、1面トップでどどーんと出すネタとも思えませんな。

でですな、金曜に悪態書いた時に「先に織り込ませたら緩和した時に材料出尽くしになってしまうので意味ねえじゃん」と申し上げた訳でございますが、日経の記事読んで冷静に考えますと(^^)、利上げの場合は(本格的に引き締めをしたい場面なら別ですが)あまりインパクトを与えない方が良いのでいわゆる地均しみたいなもの(をするというのは筋としておかしいとは思いますけどそれは措く)をする意味はあるのですけれども、緩和方向の時にわざわざ先に言わなくても良い訳でありまして、その意味からしてもこれはまあ「地均し記事」では無いでしょという読みになるのでございますな。

では誰が何考えてこんな記事になったのかという点については考察してみたものの保安装置が発動した為に以下自主規制(^^)。



○あの人はまたアレでございましたとさ

まあ金曜も書きましたが、予想通りの財務大臣反応が実に遺憾。

http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK036954320100305
UPDATE1: 日銀がデフレ脱却に努力することは好ましいこと=日銀追加緩和報道で菅財務相

『[東京 5日 ロイター] 菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は5日の閣議後の会見で、日銀が新型オペ拡充などの追加金融緩和を検討しているとの報道について「日銀から直接的なメッセージが来ているわけではない」としながら、国会答弁などにおいてたびたびデフレ脱却に向けた日銀の対応に期待感を表明していることに言及し、「そういうこともあり、日銀で検討しているかもしれない」と語った。日銀の追加緩和について「デフレ脱却に努力することは好ましい」とも述べた。』

ということですが、その先の部分を読んで腰が砕けた。菅さんの発言部分ですが。

『「この間、いろいろな委員会に日銀総裁・副総裁が出席されていて、私も同席しており、政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので、日銀も同じ目標に向かってさらなる努力をお願いしたいと常に申し上げている。そういうこともあって、日銀の方で検討されているのかもしれない」』

>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので
>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので
>政府は政府としてデフレ脱却に向けてさらなる努力をするので

・・・・おまいら何の努力してるんだよ。対策無しのデフレ宣言をしてすっかりマインドを冷やす努力はするわ、麻生内閣の補正予算は止めるわ、おまけに(指数だけの問題ではあるが)高校無償化とか高速道路料金下げ(何かまた戻すのこれ?)とか素晴らしい努力ですなあ(棒読み)。

普通「さらなる」というのは従来に加えてという意味だと思うのですが、もともと努力どころか下手したら足引っ張ってないですかという状態でございますのにまた日銀に緩和をせびりにやって参りましたというようにしか見えんのだがあたしには。

と思いつつ知人と話をしてたら、「まるで小遣いを年がら年じゅうせびりにくるドラ息子みたいなもんですな」という指摘がツボった訳だが(^^)、まあ何考えてるんだか(菅さんの事だから何も考えて無く日銀に何か言えば魔法のように物価が上がるとか思ってそうだが)という感じでございまする。



○書いたり消したりしているうちに時間が無くなったので簡単に

野田審議委員会見はあっさり味
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003a.pdf

・これはまた正直な質疑応答

『(問) 本日の挨拶要旨の中でターム物金利の引き下げが景気に対して効果的なサポートになるとのお考えを示しています。現在、3か月物の固定金利オペを6か月に伸ばすことによって、より効果が高まるとみているかについて教えてください。』

『(答) 挨拶要旨の中で話したように、日本銀行は市場に潤沢な資金供給を行ってきました。新しい資金供給手段もその一環として導入しましたが、こうした手段の導入により通常の共通担保オペ――やや長いターム物――の平均落札金利は、私共の誘導目標金利である無担保コールレート・オーバーナイト物に限りなく近づいた水準になっています。したがって、金利水準だけで判断すれば、今後例えばご指摘のような追加緩和措置を採っても、限界的な効果はかつてよりも小さくなっているものと考えています。』

金曜の6MTB入札は例の記事があった影響で水曜の3MTB入札よりもレートが低くなってしまいましたが、まあとりあえずそれが無くても水準としてはここもと3Mと6Mって1bp差があるか無いか(大体無い)という世界でありますので、これはこの通り。まあ実際の短期ターム物レートよりは中短期の国債金利あたりの上昇を抑える心理的効果があるでしょ、という話になるでしょう。

という関連で、追加緩和措置に関してまあてきとーに想像してみたのですが、上手くまとまらなかったので明日それは書きます(^^)。


・執行部よりもハトなのかなやっぱり(この部分間違えがあるので訂正します。詳しくは9日の本文を)

従来野田審議委員はハト派的な発言が多かった印象がありまして、その背景には金融危機というか信用収縮に端を発したデレバレッジの動きが経済に与える悪影響の深さについて、銀行出身者としてより強く実感しているからというところのようであります。

今回はそんなにハトハトっぽくは無かったですが、この質疑では「執行部と比較したら私はハトですよ」と言っているようにも見えたのですがどうでございましょうかな。

『(問) 山口副総裁が2月の講演で、物価下落幅の縮小ペースが想定よりも若干遅いといったことを発言されました。この発言にかかる委員のご見解と今後の対策についてお聞かせ下さい。』

『(答) 山口副総裁の発言は承知しています。ご案内のとおり、私共は1月の金融政策決定会合で昨年10 月の展望レポートを見直し、改めて先行きの物価上昇率の見通しについて「中心値」と「幅」をお示ししました。このうち、「幅」を捉えれば、政策委員のどなたかはそうした物価下落幅の縮小ペースの遅さを感じているという見方ができるのかもしれませんが、私から個々の政策委員の見方についてのコメントは差し控えたいと思います。個人的に申し上げれば、少なくとも物価下落率の幅が1月の想定に比べて大きいとか小さいとはっきり申し上げるほどの動きは今のところ観察できていません。』

ということで、個人的に申し上げればと言いながら山口副総裁の見解に対して異議ではないですが、微妙に「その判断は時期尚早ではないっすか」と言っているように見えます。

で、この発言最後にもう一文あるのですが・・・・

『したがって、1月あるいは2月の金融政策決定会合で示した金融政策の運営方針を現時点で変える必要はないと判断しています。』

・・・・という発言の直後の金曜に日経記事が出るとは野田さん微妙にカワイソス。


・これはワロタ

『(問) 今週、菅財務大臣が国会で希望的観測も含めて今年中に物価の上昇があると良いと発言されていますが、それに対するご見解をお聞かせ下さい。』

『(答) 私も希望としては今年中にそういう状態になれば良いとは思います。しかしながら、希望と私共が想定している見通しには差があることはご承知のとおりだと思います。その差についてコメントするほどの材料を、菅大臣の発言の背景として持ち合わせていないので、これ以上のコメントは差し控えたいと思います。』

「その差についてコメントするほどの材料を、菅大臣の発言の背景として持ち合わせていないので」ってこれはまた良い嫌味ですね(^^)。


#追加緩和策に関しては依然勝手に妄想中ですので妄想が纏まったら









2010/03/05

お題「野田審議委員講演とか」

何か日経新聞の1面に記事が出ているようですが・・・・・

○追加緩和検討ですかそうですか

で、あたくし日経新聞読まないので良く知らんのですが、日経新聞の内容を報道するテレビ番組様によると(最終版1面限定記事は朝5時だ6時だという時間帯にはNIKKEI NETにアップされないのが日経の仕様)追加緩和検討でございますかそうですか。何か昨日は中短期が妙に強かったのですが(自主規制)。

それは兎も角。

でまあ記事を一行も読まずに勝手に妄想する(ので日経記事と全然違う斜め上の話をしていても気にしないようにお願いします)のだが、GCレートが0.105%〜0.12%辺りの間にいて、3か月TBが0.12%ちょっと割る位で、1年TBが0.125%位でと言う事で、短期のターム物は既に潰れる所まで潰れている(ちなみに2年国債が0.15%辺りなのだが)のですが、何をどう緩和するのでしょうかねえという感じです。

いやまあ何ちゃって緩和するんだったら、今の枠組みをいじらないのであれば指値オペの期間を長くするとか実行額10兆円を20兆円にするとかはあるんですけれども、上記のように既に3か月も1年もレートが存分に低下しているので、実際問題としてはそんなに変わるのかいな(まあ0.12が0.11になって0.125が0.115になるのかもしれないけど)という所でございまして、まあ綺麗に言えば「アナウンスメント効果」ですが、どっちかと言えば「プラシーボ効果」と言った方が良さそうなネタになるとは思います。

と、書くと誤解されると困りますので申し上げますと、指値オペの期間延長の効果が一般的に無い訳ではなく、指値オペ実施およびやや多目の資金供給継続モードと展望レポートによる経済見通しや市場の経済見通しのセットによって、既に政策効果として指値オペの期間延長分まで先食いして表れている為に、今更やってもやらなくてもあんまり金利的に変わらんがなという事でございます。

まあ「景気」は「気」でもありますから、とりあえず緩和姿勢を堂々見せる福井の俊ちゃん方式というのも普通にある訳ですから、緩和強化をする振りをする攻撃というのはそれはそれでありですので一向に構いませんけれども、別に期末でどうのこうのという動きが(金融市場的には)皆無という中(世間様で期末資金繰り危機とか話題になってるとも思えんが)で緩和強化ってのは何かまたスケジュール感が宜しくありませんなあという感じではございます。スケジュール感からすれば4月の展望レポートや物価安定の理解のタイミングで緩和強化した方がもっと堂々の緩和強化策が打てると思うのだが、このタイミングだと小出しになるだけジャマイカ。

あとまあ考えられるのは金利地方では別にどうでもいいと思ってるのですけれども輪番(中長期国債買入)の拡充なんでしょう(業者的にはゴミ箱が大きくなるのは歓迎だからやるのは結構という感じでしょうが)けれども、それが長期金利の低下に資するかというとはっきり言って出たとこ勝負で知らんがなという感じです。為替や株が好感して円安株高になったら長期金利上昇しても何らおかしくは無かったりするけど、まあ日銀も一発知らんがな攻撃を打ちこむのも一興ではないかと存じますけれどもね(ヤケクソ)。

とまあそんな感じですが、相変わらず決定会合の前に観測記事だかリーク記事だか判らないテイストの物が出てくるというのはコマッタモンダという感じですな(いやまあ単に予想しているというのであれば別にそれはどうぞどうぞなのですけど、どうせリークみたいな味わいの記事なんでしょ、と新聞を見ずに言うあたくし)。

でまあ以下リークのようなテイストを前提にして悪態を書く訳ですが、大体からしてこの手の実際問題として効くか効かんか微妙な狙いの政策を実施するのだったら事前リークして市場に織り込ませたら政策出した時には「材料出尽くし」で終わってしまうではないかとゆー懸念があるのですけれども、大丈夫でございましょうかねえ。FRBの財務省証券買入のように延々と「買う買う詐欺」で引っ張るというような感じで、日銀も「緩和緩和詐欺」をするのであれば期待で相場を暫く引っ張れると思いますけれども、そうはならないんでしょうしねえ。

ま、あたくし的にはこの時期に実施というのは馬鹿大臣がまた手柄顔で威張り散らすだけならまだしも、それでまた安心して何もやらなくなるという光景を見る事になるのが正視に耐えない事でもありますし(−−;)、為替市場とかがまた変に毎度毎度の期待をして市場に追い込まれるモードという、ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態に日銀が完全に陥るのもアホラシカと思うので、何かやるなら4月じゃないっすかねえとは思うのですけれども。

(3月6日追記:で、新聞の内容を読んでみたのですが、これはまあ普通に考えると日銀の地均しでは無さそうという判断になります。では誰がどうという話ですが、そこはまあ週明けにでも書いてみますが、あまり憶測で書くのも何ですなあという感じです)



#野田審議委員講演の話の前のネタが長くなってしまった(汗)


で、野田審議委員講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003a.pdf

お題が『金融政策FAQ』ということで、まあ金利市場的には既に周知のネタなのですが、今朝の日経ネタがなければ今日もネタ無し状態(緩和期待で金利が下がったみたいですが、という市場雑談をする積りだったけどね^^)で、もっとうじゃうじゃ書こうとかと思ったのですが、モーサテが余計な事を言うものですから(笑)、まあ簡単に参ります。本文が17ページで表紙が1ページで、図表が14ページという図表の多い講演録でございます。


○講演での景気見通しは公式見解ベース

最初のFAQは『(FAQ1:日本経済はこの先、どうなるのか?)』という事で(どうせなら「日本経済はこの先生きのこれるか」でお願いしたかったのですが^^)経済見通しですが、基本的には公式見解ベースに近いと思われますので、個人的見解に関しては会見の方をみないといかんですかね。

基本的には緩やかな回復ですけれども、慎重は慎重という事で・・・

『もっとも、わが国経済について、なお慎重な構えを崩せない状況であることも指摘しておきたいと思います。その理由は、経済活動の水準が依然として相当低いところにあるということに求められます。』

『経済活動水準が低いということは、企業にとっては、収益や生産の水準が低く、設備や雇用に過剰感が発生していることを意味します。こうした状況では、企業は設備投資や雇用の増強には慎重にならざるを得ません。個人消費も、政策効果に支えられた耐久消費財を除けば、雇用・所得環境の厳しさが続くもとで、弱い動きが続く可能性が高いとみられます。国内における「民需の自律的な回復」はなお見えにくい状況にあります。』

ただし、リスクに関しては「下振れリスク緩和」となっています。

『昨年10 月の展望レポート作成時と比較すると、新興国経済が上振れていることなどから、総じて上下のリスクがバランスする方向にシフトしていると評価しています。』

ということですから公式見解ベースですね。まあ公式見解ベースなので一々引用しませんです。


○財政維持可能性問題に関して

んでもってそのリスク認識の中に財政維持可能性問題に関するお話が。

『わが国をはじめ、多くの先進国は財政バランス悪化の問題を抱え、財政の出動余地は限られてきており、財政健全化と景気失速の回避のバランスをどう確保するかという難しい課題に直面しています。』

『また、こうした財政バランスの悪化が、長期金利を上昇させ、金融政策の効果を減衰させるリスクにも市場の意識が高まっています。所謂ソブリン・リスクもこの延長線上にあります。事実、ユーロ圏加盟国の中で最も深刻な財政問題を抱えるギリシャでは、長期金利が急上昇しました。財政の持続可能性への信認がひと度失われると、市場の評価が急落するリスクというものを如実に示しているといえます。財政規律の確保、すなわち財政再建の道筋を明らかに示し、それを適切なタイミングで着実に実行することが重要と考えます。』

まあさよですなという感じで。



○今後の金融政策はターム物金利引き下げ方向ですかそうですか

時間が無いので(というのはあたくしの都合だが^^)思いっきり端折って『FAQ2:金融政策をどのように運営しているのか?』に関して。

従来実施した施策に関する説明の話は全部端折りまして、今後の件について。

『ターム物金利の引き下げ 〜最も効果的なサポート〜』

ほほう。

『日本銀行の政策金利は無担保コールレートO/Nですが、リーマン・ショック以来、私が重視してきたのは、やや長めの金利――ターム物金利――の引き下げです。何故ならば、企業や家計の借入金利は、このターム物の金利に基づいて決められることが多く、このレートを引き下げることが景気に対して最も効果的なサポートになると考えているからです。』

リーマンショックの後問題になったのは「足もと下げてもオープン市場のターム物金利が上昇」だったのですよね(しみじみ)。

『具体的には、企業金融支援特別オペ、新型オペという、新しい資金供給手段を導入し、やや長めの資金(3か月もの)を政策金利と同じ0.1%(固定金利)で短期金融市場に潤沢に供給しました。ターム物金利は、ピンポイントの金利ターゲットに誘導することに馴染むものではありませんが、その低位安定化は、実体経済の細部に至るまで金利コストの低減効果を及ぼしています。』

で、ターム物金利のターゲット誘導云々という所に脚注がありまして・・・・

『LIBORやTIBORは、報告銀行が申告する「想定レート」であり、実際の資金取引のレートを示す「実勢レート」ではないこともあり、指標として利用するには限界があります。詳細は、日本銀行の「金融市場レポート(2010 年1月)」の「BOX4 LIBORに関する留意点」(日本銀行のホームページに掲載)をご覧下さい。』

という事ですから、まあ普通に考えるとターム物金利の引き下げを促す政策が追加緩和策なのですが、既にターム物金利もいい感じで下がっているのですけれどもという無粋なツッコミを金利村の方からしてはいけませんですかそうですか。


で、輪番に関して。

『国債の買入れ 〜長期金利の上昇リスクに留意〜』

ほうほう。

『「金融緩和の手段として長期国債の買入れをもっと増やさないのか」というのもFAQの一つです。ここで注意しなければならないことは、日本銀行の長期国債の買入れが財政ファイナンスと誤解され、長期金利が実体経済の見通しから乖離して上昇するという副作用が発生するリスクがあることです。』

『先程2つめのリスク要因でご説明した通り、長期金利の上昇リスクは、多くの先進国が直面している重大なリスクであり、米英の中央銀行が昨年、国債買い入れに踏み切った際に、長期金利が直後の一時的な低下の後、大きく上昇した事実を放念してはならないと考えています。日本銀行は、今後とも、財政ファイナンスとの誤解を与えないように注意を払いながら、長期資金供給のために長期国債の買入れを続けていく方針です。』

まあぶっちゃけて言っちゃえば埋蔵金を恒常的な支出に使うような内閣だったら財政ファイナンス扱いされちゃうから、そっちの方もうちょっとしっかりやってくんなましという事でしょ。


○市場機能論はまあ微妙

『潤沢な資金供給の効果と副作用 〜安心感の醸成と市場規律〜』

『金融市場への流動性供給についても、効果と副作用の双方を勘案する必要があります。先程述べた通り、日本銀行は、潤沢に資金を供給し続けていますが、こうした中でも、「かつての量的緩和16を再開しないのか」、「日本銀行はバランスシートをもっと拡大しないのか」というFAQがあります。』

ほうほうそれでそれで?

『量的緩和の効果については、(1)2001 年の量的緩和政策採用時のように、金融システムに大きな不安がある際には、その不安を和らげ、金融市場を安定させるという効果を発生させるが、(2)経済主体の支出活動を刺激し、物価を上昇させるという効果は非常に限定的である、と評価しています。中央銀行のバランスシートの大きさについては、(1)準備預金の量は各種流動性供給策等の結果であり、(2)準備預金の量と金融緩和の程度は直接的に結び付くものではない、と考えています。』

まあ「効果は限定的」というよりは「需要不足を補うようなサポートが無い中では力不足」位にしておけば良いのにと思うのですけれども、これがまたオモローな事に、2月の終わりに当座預金残高が16.5兆円あった時にはGCレートが0.125%辺りまで上昇した場面がありましたけれども、昨日は当座預金残高が14.2兆円ですけれどもGCレートは0.105%と実質下限レベルに低下している訳でありまして、当座預金残高だけ注目しても良く判らんというのが奥の深い所なのですが、奥が深すぎて恐らく短期市場の超局地的な人達しか理解できないかと思います。つーかあたくしも何がどうなってこうなってるのよという感じなんですけどね(大汗)。

ただまあ市場の実感としては今も「量的には緩和」でしょという風に思う次第でありまして、野田さんはその辺も指摘しています。

『こうした中で我々が金融機関に提供した大量の資金は、銀行が日本銀行に保有している準備預金に残高として積み上がっており、資金余剰感が強まっています。現在は、かつての「量的緩和政策」のように、日本銀行の当座預金残高に目標を設けて資金供給を行うという方法をとってはいませんが、市場の需要を満たす流動性を十分供給してきており、市場における流動性に対する安心感を与えているという点では、かつての「量的緩和政策」と同様の効果を発揮していると思います。』

まあそもそも流動性不安自体が今は落ち着いてますけどね。


で、肝心の市場機能の話は副作用の点で。

『一方、副作用についてみると、市場機能を低下させないという観点が重要です。中央銀行による介入――この場合でいえば、資金取引における日銀オペの依存――が強過ぎると、正常に機能している市場が、中央銀行の介入自体によって、その機能を低下させるという本末転倒な結果をもたらしかねません。』

でもターム物金利誘導とかしたらその時点で市場機能を殺すと言っているのにひとしいのでありまして、そこはあまり強調しないで欲しいと思います。

『かつての「量的緩和政策」は、資金供給量にターゲットを設定していたことから、市場機能を低下させていた可能性もあります。この点、現在の日銀のオペは、市場機能を極力活かしながら、市場が必要とする流動性を十分に供給していると思います。』

とは言いましても、世の中的にターム物取引が随分と減ってしまった訳でありまして、最初のゼロ金利の時にはまだ銀行間のターム物コールとか随分あった訳ですが、今や調達はオペ、運用は国庫短期証券で十分回ってしまうのでありまして、中々こう市場で活発にターム物取引が・・・という感じにならんでしょうなあという所です。まああんまり無理に意識しなくても良いんじゃないっすかと思いますけどね。

#第3のFAQはデフレ話でしたが時間が無いので割愛(大汗)







2010/03/04

お題「益々市場ネタが無いので国会ネタで(−−;」

5連休を地域分散して1か月使ったら、その月の支手決済とか証券決済とかどうするんでしょうか。店頭取引で相対で決済日をお互いの休日を外せる取引なら兎も角、取引所取引の決済で全く意図せざるフェイルが続出するんじゃないでしょうか???

#肝心な事は何もしない癖にどうでも良い事は一生懸命にやるのがミンスクオリティなのは分かっていますがorz

んでまあ市場ネタがイマイチさんなので国会ネタでも(^^)という手抜きシリーズで誠に申し訳ありません。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001817420100216012.htm
2月16日の衆議院予算委員会

オモロイのは山本幸三先生のコーナーでして、上記URLの画面で概ね下半分が山本委員による質疑で、話は色々とあるのですが、デフレがどうのこうのという部分(下から3分の1少々)を読むとこれが中々面白いです。そうは言っても上記URL先に当たって読むのもめんどいでしょうし(^^)、本当は全部ご紹介したい所でござんすが引用してると量が莫大になるのでテキトーにピックアップするのだ。


○この手のレッテル貼りは微妙に説得力を落とすから止めた方が良いと思う

山本先生の政策論は筋の通った話をするので、賛成するかしないかは兎も角として大変に読み応えがあるのですが、主張をキャッチーにしたいのか何だか知らないですけれども、余計な一言が入っていきなり脱力しちゃう部分があって残念なんですよね。という苦言(こんな場末で書いてないで山本先生の事務所にでも直接投書しろと言われると困りますが、汗)からで恐縮至極。


今回デフレ云々の話を読んでいる中で目にとまったのは以下の2点。

『まず、新経済成長戦略、これを菅大臣は一生懸命自画自賛しているんですが、私はこれを読んで、単なる役人の作文で、いつもながらの話だな、できもしないような数字も並べて、作文をいろいろ書いて、自画自賛しているなと思いますが、唯一評価すべきだと私が思っているのは、最後のところでデフレ克服というのをはっきりうたっている、それから名目成長率を最優先課題だと言っている、これだけは私は評価したい。あとは評価できないね。』

えーっとですな、言ってる話はあたくしもまあ同感する所が多々ございますが、ここで「???」と思ったのは「単なる役人の作文」って所。

つまりですな、本当に役人が時間を掛けてじっくりと作成したらあんな福笑いみたいな戦略が出てくる訳はない次第でして、これは役人の能力どうのこうのではなく、民主党の問題であって「役人の作文」と役人が悪い様な言い方をするのは筋違いじゃないのと思うのですよね。単にこれは確固たる方針の無い中でやっつけ仕事をしたからでしょと思うのですが。

役人が悪いと言う話をするのがキャッチーだからと言って批判する場所は別の論点であるだろうと思うのですけどねえ・・・・


もう一つはこのあたり。

『各年収は、総裁は三千四百九十二万、アメリカのバーナンキの倍ですよ。副総裁二千七百五十九万、審議委員二千六百四十六万、理事二千百三十二万。理事でも国会議員より高いんだね。大変な高額ですよ。それだけ、アメリカのバーナンキの倍もらっていて、デフレがいまだに解消できないというのは何なんだということですよ。(発言する者あり)ちゃんと仕事をしてもらいたいということですよ。』

これは日銀総裁とかの収入の話なのですけれども、米国の場合は政府機関での収入はそれほど高くなくても、民間との所謂「回転ドア」によって回転ドアの外側に出た時には日本とは比較とかいう世界の斜め上に行きそうな位の高給取りになっているのであります(金融の場合は、他は知らんけど)からして、年収がバーナンキより少ないからどうのこうのとかを単純比較するのはフェアでは無いでしょと思いますけれどもどうなんでしょ。

まあ確かに給料がどうのこうのなんてえのは一般ウケしやすい話ですけれども、そもそもフェアな比較をしているかどうか怪しいネタを使って「お前は給料泥棒」みたいな話をするのは、折角の政策論議の品を下げると申しますか、まあそんな話をしなくても別に良いんじゃないのかなあと思うのですよ。


というどうでも良いツッコミをした所で、その他少々ピックアップをば。まあ元の会議録を全文読書されること推奨です。


○このやり取りはもはや何が何だかわからんが妙にワロタ

成長戦略がどうのこうのという部分から。思いっきり引用ばっかですいませんが、まあご鑑賞ありたし(なお、改行は適宜変更しています、念の為)。

『○山本(幸)委員 そのデフレのところ以外は評価できないというのは、例えばグリーンイノベーション、環境分野で、これによって二〇二〇年までに五十兆円超の新規市場をつくる、百四十万人の環境分野の新規雇用をつくると言っていますね。これはちゃんとできるんですか。

○菅国務大臣 読んでいただければわかると思いますが、それなりの方向性を示して、これから具体的な工程表、どういう制度をつくり、どういう形でやっていくかということのより具体的なものは六月に向けてやるわけですが、目標としては、そこに挙げた数字を目標に何とか実現にこぎつけたい、そういうことで提示をしたわけであります。

○山本(幸)委員 これがどういうことを意味しているかというのはわかっていますか。五十兆円の付加価値をつくるというわけだ。では、五十兆円のうち労働者の手取りは幾らだ。通常の労働分配率で見ると七割、三十五兆円ですね、労働者の取り分が。三十五兆円を百四十万人で割る。つまり、一人当たりの手取り、一人当たりの所得は幾らになるか。どれぐらいになると思いますか。ぱっと、これは計算すればわかるんだけれども。

 計算すればわかるので意地悪はしませんが、三十五兆円を百四十万で割ると二千五百万円なんですよ。二千五百万円の所得というのは、今の通常の労働者の五倍から六倍だよ。二千五百万円の高額所得者を百四十万人もつくれると思いますか。』

・・・・何かもうこの時点で話が良く判らんけれども(^^)。なお引用は続く。

『○菅国務大臣 所得という表現をしていましたか、していないんじゃないですか。つまり、市場全体としてそれだけの生産を上げるということであって、それが所得というふうになっていないはずですが、いかがですか。

○山本(幸)委員 もちろん、それは所得になっていないけれども、付加価値が……(発言する者あり)違う、違う。計算すればそうなるんだよ。付加価値が出て、そして新規雇用が出れば、それは手取りが幾らになるかという計算じゃないですか。そういう計算になるんでしょう。どうですか。

○菅国務大臣 ちょっと今十分聞き取れなかったんですが、つまりは、所得が先ほどの三十五兆円上がるということではなくて、そこに新しいマーケットとして生産あるいは需要がそれだけふえる、そういう認識だと思いますが。

○山本(幸)委員 いやいや、市場がふえるというのは付加価値がふえるということなんでしょう。違うんですか。新規の市場というのは付加価値がふえるということじゃないんですか。

○菅国務大臣 ここに具体的に書いてあるものがありますが、新規市場五十兆円超、新規雇用百四十万人、さらにはCO2排出減を、これは世界全体にわたる影響によって十三億トンの削減。これがこの新成長戦略の環境・エネルギー、いわゆるグリーンイノベーションの二〇二〇年までの目標です。

○山本(幸)委員 だから、付加価値をこういう雇用者で割るとそういう取り分になるんじゃないですか。そんなことができるんじゃないですか。では、そうじゃない、私の解釈がおかしいというのなら、それを証明してくださいよ。どう解釈したらいいんですか。』

で、菅さん微妙にイラ菅モード(^^)。

『○菅国務大臣 つまり、新規市場が五十兆円というのは、もちろん付加価値も含まれていますけれども、それ以外のいろいろな要素も含まれるというのは当然じゃないでしょうか。

○山本(幸)委員 では、付加価値以外で何ですか。

○菅国務大臣 私は大学では経済をやっておりませんけれども、普通に言う場合には、付加価値以外に、例えば材料費とか、中間的ないろいろなものが入っているんじゃないでしょうか。当然じゃないですか。

○山本(幸)委員 コストになるようなものが入ってそうなるというわけですね。では、それはまあいいや。これは、要するに、そういうきちっとした分析までできていないということがはっきりわかったので、今度詳しくやるということですから、ちゃんと示してください。詰めたことをやっていないということですよ。大したことないという話だ。役人の作文だ。』

そらまあ詰めた事なにもやってないでしょうとは思いますが(^^)、付加価値の一言でここまで突っ込める(というか食いつける)山本先生さすがです。



○これは確かにそうですな

上記の続きの部分から。

『○山本(幸)委員 (前半は上記引用なので割愛)そこで、もう一個聞きます。一番大事なところ。名目成長率三%なんですね、目標が。これは、そう簡単に達成できるものじゃないんです。例えば、名目成長率の来年度の見通しは〇・四%ですね。その後どうなるかというと、これはこれから出るんだろうが、菅大臣が提出した、二十二年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算、財務省が出した。大体、去年のマクロモデルからきているんだけれども、そこに一応のものが書いてあります。それを見ると、二〇一〇年度は〇・四、二〇一一年度は一・七、二〇一二年度は二・〇、二〇一三年度は二・二と見てある。これは、財務大臣、あなたが出したんだからね。

 これを見ると、名目成長率の当初四年間の平均は何%になるかというと、一・五八%です。そうすると、十年間の平均で三%を達成するためには、残り六年の平均で四・四三%の名目成長率がないとできないんだ、毎年平均で。四・四三%の名目成長率がどうしたら達成できるか。実質、潜在成長率が今非常に低い。これについては言いません、詳しく今度、別途やりますが、実質成長率、まあ二%ぐらいがせいぜいでしょう。そうすると、物価で二・四%、つまりGDPデフレーターで二・四%ないとできないんだ、これは。GDPデフレーターと消費者物価の関係はいろいろ動くんだけれども、大体、GDPデフレーターの方がちょっと下。そして、消費者物価指数の方が上に行くことが多い。今回みたいに、があっとショックが大きいと反対のこともありますが。

 そうすると、私のラフな計算でいえば、これを達成するためには消費者物価指数は三%以上にならないとだめだ。こんなこと日銀が受けると思いますか。こんなことできますか。菅大臣、どうですか。』

で、念の為「新成長戦略」を見たら確かにそこの28ページ(PDFだと38ページ)に『具体的には、2020 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長、2020 年度における我が国の経済規模(名目GDP)650 兆円程度を目指す。』ってどう見ても無理な数字が書いてありました。「名目3%実質2%」は知ってたけど、2020年までの平均での目標だったんですか。そら無茶な・・・・
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2009/1230sinseichousenryaku.pdf

で、菅さんこれはヒドス。

『○菅国務大臣 いろいろある種の仮定を置かれるのは結構なんですが、後年度の影響というのは極めて機械的にその数字を延長して出されているということは、もちろん、山本議員もそういう職責におられたからおわかりだと思います。例えばの話、過去の例でいえば、税収見通しなども後年度がかなり高い水準に書かれていたわけですけれども、現実は、御承知のように、二十一年度も見通しよりも大変下がりました。逆に言えば、私たちは、その機械的な計算の値は、予算の審議の中で出すようにと言われましたから従来の方式で出しましたけれども、まさにそのままいったのでは三%の成長にならないということはそのとおりですよ。

 ですから、そのままいかないようにするには何をすればいいかということで、成長戦略を出し、またこの予算も含めて、こういうことを実行する中でそういう機械的な延長上にならないようにしていきたいという中で、目標値として三%を掲げているわけです。』

当然ながらこうなってますが。

『○山本(幸)委員 全く答えになっていないんだけれども、それは機械的な試算ですよ。だけれども、あなたは、もうすぐ六月までに出すんでしょう。これとそう違ったものを出せますか。そんなもの出せませんよ。(発言する者あり)私は、言葉の遊びなんかどうでもいいんだよ。私が信頼するのは緻密なロジックと数字なんだ。(発言する者あり)だから、数字で言っているんだよ。簡単なことじゃありませんよ、四・四三%、残り六年でやらなきゃいかぬのだから。

 このためには、大事なことはデフレの克服ですよ。マイナスがずっと続いていたら、こんなことできないんだから。日経センターの試算では、十年間デフレだと言っていますよ、十年間デフレだと。(発言する者あり)何もわからないのが何か言っているけれども、そう出ているんだよ、数字が。数字しか僕は信用しない。(発言する者あり)間違えていない。

 そこで、デフレ脱却が大事なんだけれども、あなたは去年の十一月にデフレ宣言をやりましたね。菅大臣、デフレとは何ですか。定義してください。』

だから最近菅さんは急に「今年中にデフレ脱却」とか無茶な話をするようになったのかというのは判りましたが(^^)、以下デフレとは何ですかがこれまた楽しいのです。



○デフレの定義はどうなのよ

これまたワロタ。

『○菅国務大臣 先ほども申し上げたように、私はそういう言葉の定義をすべて知っているわけではありませんけれども、通常を言えば、物価が下落をしていく状況をデフレだ、こういうふうに認識しております。』

ほとんどヤケクソですな菅さん(^^)。

『○山本(幸)委員 物価が下落していく状況。一度だけ下落したものをデフレと言いますか。

○菅国務大臣 これを当時事務方にいろいろ聞きました。基本的には、たしか二〇〇一年当時にもデフレ状況に入ったということを言い、その後、デフレ脱却の宣言がないまま一時的にはデフレの状況がやや緩和したわけですけれども、この二年ほどの中で、たしかQEで二度三度続けてデフレ状況、さらには先の見通しとしてもその状況が続くという中で、デフレ状況にあるということを申し上げました。

 つまりは、一回こっきりの物価下落でデフレ状況というふうに言う必要はないでしょうが、ある程度継続的な中でそういう宣言をした、宣言というかそういう状況認識を申し上げたということです。』

『○山本(幸)委員 デフレ宣言をするんだったら、デフレの定義ぐらいきちっと理解してからやってくださいよ。デフレというのは物価の継続的な下落をいうんですね。そこで、継続的というのはどれぐらいの期間をいうんですか。(発言する者あり)』

「デフレ宣言をするんだったら〜」の部分で不覚にもペパーミント茶噴いた。


『○海江田委員長代理 御静粛にお願いします。

○菅国務大臣 いろいろな見方があるということも聞いております。二年程度ということを言う人もありますし、国際的に。しかし、必ずしも、それこそニュートン力学のように、あるいはアインシュタインの定義のようにE=mc2なんというほどしっかりした定義があるとは認識しておりませんが、意見としてはそういう意見がある、二年程度の継続を一つの定義としているところもある、こう認識しています。』

菅さんついに経済学じゃなくて物理学の例えを持ち出してきました!!!!!

『○山本(幸)委員 それは結構だと思います。まさにデフレを、定義がぐらぐらしたら議論できなくなるんですよ。だけれども、ある人はデフレと言い、ある人はデフレじゃないと言ったら、議論にならないじゃないですか。そこで、一応の定義をきちっとしておかなきゃいけない。それからいうと、おっしゃったように、IMFは最低二年以上続かないとデフレとは言わないんだという定義を与えて、私はこれで結構だと思うし、そういうことでいく。

 次に、では、物価の下落なんですが、物価は何を指すんですか。』

・・・・・以下物価の話が延々と続くので割愛(^^)。


○メインイベントの前で時間が無くなりましたがorz

で、流れとしてはこの後にメインイベント(山本委員が『そこで、いよいよ本題、日銀総裁とやりたいと思います』と言ってるのに更にペパーミント茶を噴いた訳だが^^)になるのですが、話の筋はマネタリーベースを出せという話で、まあそれに対しては白川総裁は当然ながら想定問答が無限にあるので話は平行線をたどるのが残念な所でございまする。

しかしこれは確かにヤジも飛ばずにポカーンとするわなという所(本石町日記さんの先般のエントリーご参照→http://hongokucho.exblog.jp/12853094/)をとりあえず引用しておきます、ご参考(何の?)までに。

『○山本(幸)委員 (前半部分、というか殆ど割愛)今、GDPギャップが三十五兆円ぐらいあると言われていますね。物の世界で三十五兆円の超過供給の状況だ。そうすると、お金の世界ではどうなるんだと。ワルラスの法則というのがありますね、ワルラスの一般均衡。これは、あなたは御存じでしょうけれども、どういうことになるかわかりますね。』

『○白川参考人 先ほども申し上げましたとおり、私は、決して自分の理論にこだわっているというわけではございません。自分自身は理論を編み出すほど頭もよくありませんので、内外のいろいろな学者あるいはエコノミストの声を、研究を総合して、自分なりに判断していきたいということでありますから、これからも常に経済の動きを虚心坦懐に見て判断していきたいというふうに思っています。

 こういう席でワルラスの法則という言葉をちょっと申し上げるのはあれですが、ワルラスの法則は基本的には経済が完全雇用の世界での話ですから、今先生が議論されているこの不完全雇用、つまり大きな需給ギャップが問題になっているもとでワルラスの法則を当てはめてというのはどうかなという感じはいたします。』

『○山本(幸)委員 私はそう思わないんだけれどもね。だって、ワルラスが言っているのは、ある分野で超過供給があったら、他の分野では超過需要が起こっているということを言っているわけでしょう。それで、全体を見れば均衡しますよ、そういうふうに価格が調整しますよと言っていると私は理解しているんですよ。それからいうと、財の世界で三十五兆円の需給ギャップがあるんだ、つまり供給超過ですね。そうすると、お金の世界ではその分だけの超過需要があるんですよ。そうしないと、均衡しない。

 つまり、世の中の人は、今、一番安心で安全なキャッシュが欲しいんですよ、現金が。そういうふうにみんな動いているから、何か物を持っていたらそれを売って、あるいは、買いたいものがあろうとそれを買わないで、とにかくキャッシュあるいはキャッシュに近いものを持とうとする意欲が強過ぎるんですよ。だから、お金の超過需要が起こって、その逆が、物の世界で超過供給になっているわけだ。これが原理じゃないですか。

 だから、安心、安全なキャッシュというものをそんなに欲しがっているんだから、これを十二分に供給してやらない限り、動かないんですよ。これが量的緩和のやるべきことですよ。

 マッカラムという人がいまして、マッカラム・ルールというのがある。これは、必要なマネタリーベースでの、名目成長率でどれだけのマネタリーベースが要りますかというのを計算するのがあって、欧米で参考にしていると言われているわけですね。これでいうと、例えば、これは流通速度の平均を何年でとるかによるんだけれども、一年でとると二〇%、二年で一五%、三年だと一〇%。少なくとも一〇%以上はマネタリーベースをふやさない限り、名目三%成長というのは達成できない。

 それから、本多先生の研究は一つだと言いましたが、別の、これは文科省の数理統計研究所でやったものがあるんだけれども、どうしたらデフレをなくせるか、どれぐらいマネタリーベースを出したらなくせるかという研究があって、ちょっと古いんだけれども、それだと、まず三〇%一気にふやせ、そして半年続けろ、それからその後一年半、一五%ふやしていけば、そうすると二年後に物価はプラスになりますよという成果も出ているわけです。

 こういうマッカラム・ルールとかあるいはそういう研究成果を無視して、そして、リーマン・ショックの後、三カ月も四カ月もたってからようやく金利を下げたり、一回やめると言ったものをもう一回形を変えてやり直したり、ちょぼちょぼとやって、何をやっているんですか。デフレを本当に解消しようとする気があるんですか。どうですか。』

・・・・・こりゃポカーンだわな。ちなみに白川総裁の答弁まで引用するとキリがないので割愛しますが、白川さんもしっかり反撃してますのでそこだけ。

『その上で、今度、マッカラム・ルールということについてお話がございました。先生、これは欧米で参考にされているというふうにおっしゃいましたけれども、私が知る限り、欧米で参考にされていることはないように思います。』

本石町日記さんの感想と同じなのですが、マネタリーベースで攻めるのはどうも攻撃が単調になるので、ネタ的には正直あんまり面白くないです。やはり日銀理論に乗っかりながら綻びを狙う作戦にしてみたら如何かと存じます。


#大手抜き引用大会でどうもすいません






2010/03/03

お題「まあ今日も小ネタシリーズです」

何せ相場ちゃんがこの有様でございますとニャンともはや・・・

#とは言え10年国入札が久々に順調とか変化っぽいモノはありますよね

○短観のCP計数に関して

http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/nttk30.htm
短観の「CPの発行環境」に関する参考系列の公表開始

『短観(全国企業短期経済観測調査)では、現在、調査項目の一つである「CPの発行環境」について、「回答企業がCPを発行する場合の全般的な発行環境についての判断」と定義し、実際のCP発行の有無にかかわらず、全ての企業に回答を依頼しています。』

そうなんですよね。

『こうした中、統計ユーザーから、CP発行実績がある企業に対象範囲を限定した「CPの発行環境」について高い関心が寄せられていることを踏まえて、2010年3月調査から、参考系列として「CPの発行環境(発行企業ベース)」の公表を開始することにしましたのでお知らせします。』

これは大変にアリガタヤなお話。あたくしは「この数字参考にならんがな」と最近あまり真面目に見なくなった訳ですが。で、過去の計数がこちらに。

http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/data/nttk30.pdf

で、これを過去の数値(CP発行しない企業まで含めた数値)と比較すると非常に味わい深いものがございます。数字は過去の短観からあたくしが手で拾って来たものなのでよろしゅうに。

    (発行企業ベース)(全企業ベース:従来の公表値)
2009年12月  +24      ▲9
2009年09月  +23     ▲11
2009年06月  +15     ▲14
2009年03月  ▲22     ▲24
2008年12月  ▲55     ▲20
2008年09月  +13      +1
2008年06月  +18      +3
2008年03月  +17      +3

・・・・ということで、調査時点のタイミングとかを考えますと、一昨年の10月末の利下げにも関わらずCPレートやらGCレートやらが上昇するという無茶な展開になり、特にCPレートがエライコッチャになっていた状態や、昨年の2月後半あたりからの急速なCP発行環境の改善や、4月以降のCP市場亜空間状態とかを物の見事に反映した数値になっているという実に味わいのある数値になっています。

まあ日銀様におかれましては当然ながら内部ではこの分析はしていたのではないかと存じますけれども、CP市場がどうしたこうしたで大騒ぎしていた時期に出して頂きとうございましたが、まあ今まで出していなかった物が出てくるのは良い傾向。

とはいえ、参考系列扱いで発表当日には出ないし時系列統計データ検索サイトにも反映されないのが微妙に残念感を漂わせているのですけれども、無いよりは良い話なので今後ともよろしゅうに。ま、ただの趣味で手元で計数保存しておきますけどにゃ。


○国債保有が少し足伸び気味な件について

2月は見事な反復横飛び、というよりはメタボのオッサンがヨタヨタと左右に動きましたという感じの相場でしたが、その間に日銀に打ちこまれた中長期債の集計結果がいつものように出てました。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1002.htm

例によって例の如くあたくしの手元にあるエクセル様に数値を貼り付けて前月比の数値をヘコヘコ計算させて手元でヘコヘコ集計しているという人力にも程がある集計ベースなので以下の計算間違ってたらごみんなさいと先にヘッジクローズを入れておきますが。

今月は残存1年〜2年で増えた額面が2060億円とやや少ないのですけれども、月の頭には残存1年超で月末には残存1年未満になっている2年277回の残高が1054億円増えている分がある(ので2月末ベースで見ると残存1年未満が4346億円増えている格好になっている)ので、まあそこを加味すると3114億円の増加という結果。

基本的に下げ相場の時は長目のものが入り易くなるのですけれども、まあ従来のベースからすると相場がレンジだった割には長いモノが入りましたなあという感じでござんして、基本的に先月の相場が長めの所が重そうにしていたことや短い所の需給が比較的良好だった事を反映していると思うのですが、段々自然体でも長いモノが入り易くなってきていますねえという所にどういうインプリケーションがあるのかは良く判らん。こじつけようと思えばこじつけ可能だけどね。


○今月は財政が前年比大幅払い超な件について

益々マニアな話で恐縮。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/juqp/juqp1003.htm
日銀当座預金増減要因(2010年3月見込み)

財政の払い超が前年比10兆円上振れしてて、うち6.5兆円が「その他」要因でございますが、詳しくは財務省の方を見るあるヨロシある。

http://www.mof.go.jp/1c013.htm
財政資金対民間収支(対民収支)

3月見込みはこちら↓
http://www.mof.go.jp/taimin/2203a.pdf

こちらにございますように、今年は補正予算関連での払いとかが前年と違うパターンで入って来るので(日銀と財務省の見込み計数が違うのは恐らく政府預金の出入り分によるものではないかと勝手に想像する)、今月は絶賛資金余剰月になりまして、短資さんが昨日の夜発表した資金需給日足予想を見ると3月の国債償還超過に伴う財政大幅払い超となる23日以降に財政要因による資金大余剰日が連発していまして、一方で資金不足日がほとんどないというお洒落な状態。

さてこの結果何がどうなるのよという事に関しては最早マニアにも程がある話なので以下割愛。世の中に100人くらいはいる(日銀も含めて^^)と思われるものの昨今の金融市場環境で絶滅危惧種に指定されているのに(嘘)ワシントン条約で保護されてない(本当^^)金融調節マニアの皆様だけさて今月の調節どうするんでしょうねえと話題にするネタなんですよね。

・・・ネタ無しだからと言ってマニアネタを書くなですかそうですか(汗)


○GCが相変わらず極端な件について

先週はGCレートが高い(ったって0.125%とかですが)とかいう話をこちらにちょいと書いたと思いますが、金曜の後場あたりから低下したGCレートは何でそう勢い付くのか知らんけど月曜には威勢良く低下しまして最後は0.105%ビット(=資金運用希望レート)とかまたまた素敵な低下。余っている時の地合いと足りない時の地合いの差が極端過ぎてまるで最近の関東地方の気温のようです(おおげさ)。

まあ3月に入っても当座預金残高を16兆円台(先日1.6兆とか書いたのはタイポですすいませんすいません)キープの調節して、その上財政の揚げ超にぶつけて供給すりゃあオペが沢山入ってレートも下がるわなとか思っていましたら、コールレートが0.09%に下がって昨日の加重平均は0.091%まで低下。そら金余るわな。

で、さすがに足元が下がったので引いたのかどうか知りませんが、昨日は国債買現先を6000億円に減額してきて、今日の当座預金残高は今の所14.5兆円程度になりそうな所まで削って来ました。ただまあ昨日は足元の好需給を反映しまして期末越えの共通担保資金供給の足切りは0.10%で平均0.104%と平和に推移しておりますが、あまり当座預金残高を削ると今度はまたGCの金の回りが悪くなるでしょうし、はてさてどういうオペレーションになるのやらという事に関しても世の中の調節マニアが絶滅危惧種でしたね、どうもすいません。


#ということで細かいネタばっかでした










2010/03/02

お題「月報の見通しをもうちょっと詳しく見る/またも国会ネタ」

ということでお題の件ですが、金融経済月報の本文を珍しく1月と比較してみたりしたのでその辺りから。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(2月月報)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(1月月報)

でまあいつもは概要の部分を比較するのですけれども、今日は珍しく本文の方を読んでみます。と言いましても本文は全部で10ページもありますのでそれを一々比較していると

○個人消費の部分が割と下がっているのだ

輸出、生産、設備投資に関する部分でも微妙に表現が変わっている部分がある(実質輸出と実質輸入が両方とも強めになっているのはまあ傾向としては良い話なんでしょ、ネットの純輸出は同じ表現ですけど)のですけれどもそこはスルーして個人消費の部分から。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している(図表12、13)。まず、財消費の動きを小売業販売額(実質)でみると(図表12(1))、10〜12 月は3四半期連続の増加となった。』(2月)

という所までは1月と(当然ながらデータが1か月前の物になるので、1月の表現は11月までのデータを基にしている点が違いますけれども、現状の認識はここまで同じということです)です。

『耐久消費財についてみると(図表12(2))、家電販売額(実質)は、エコポイント制度などを背景に、薄型テレビを中心に増加を続けている。ただし、単月でみると、前月比マイナスが2か月続くなど、増加テンポは一頃に比べて緩やかになってきている。』(2月)

『耐久消費財についてみると(図表12(2))、家電販売額(実質)は、11 月は前月比減少となったが、均してみると、エコポイント制度などを背景に、薄型テレビを中心に大幅な増加を続けている。』(1月)

ということになっていまして、増加は増加ですけれども、そのテンポが緩やかになっており、「大幅な増加」→「増加」となっていますが、まあ要するにこれって政策による刺激が徐々に弱まっているという話になるんでしょうかね。


『乗用車の新車登録台数(除く軽自動車)は、減税や補助金の効果などから、急速に回復したあと、足もとは横ばいの動きとなっている。』(2月)

『乗用車の新車登録台数(除く軽自動車)は、昨年3月まで大幅に落ち込んでいたが、4月以降は減税や補助金の効果などから急速に回復している。』(1月)

こちらも下げと。

『一方、全国百貨店売上高、全国スーパー売上高、コンビニエンスストア売上高は、一頃に比べて減少ペースが和らぐ兆しもみられるが、減少傾向を続けている(図表13(1))。』(2月)

『一方、全国百貨店売上高、全国スーパー売上高、コンビニエンスストア売上高は、数量および単価の弱さを反映して、減少傾向を続けている(図表13(1))。』(1月)

「数量および単価の弱さ」という部分が抜けてやや改善。


『サービス消費をみると(図表13(2))、10〜12月の旅行取扱額は、雇用・所得環境の厳しさが続く中、シルバーウィークなどにより押し上げられた7〜9月から減少した。外食産業売上高は、客単価の落ち込みを主因に、減少傾向にある。』(2月)

『サービス消費をみると(図表13(2))、10〜11 月の旅行取扱額は、雇用・所得環境の厳しさが続くなか、シルバーウィークなどにより押し上げられた7〜9月から減少した。外食産業売上高は、10 月は販売促進策の奏効などから、幾分持ち直す動きとなっていたが、11 月は客単価の落ち込みが響き、大きく減少した。』(1月)

こちらは引き続き減少傾向が続くとあまり良くないお話で。


『財について生産者段階で包括的に捉えた消費財総供給をみると、耐久消費財(自動車)の動きを反映して、10〜12 月は3四半期連続の増加となった(図表14(1))。需要側の統計について、家計調査の消費水準指数(実質ベース)を、GDPの推計に利用される品目にほぼ限定した「除く住居等」のベースでみると(図表12(1))、7〜9月に続き、10〜12 月も増加した。一方、家計消費状況調査の支出総額(二人以上の世帯、実質ベース)は、7〜9月まで3四半期連続で増加したあと、10〜12 月は減少した。』(2月)

ここの部分はデータがアップデートされた分以外の現状認識に変化はないです。


『この間、消費者コンフィデンス関連指標は、総じて一進一退の動きとなっている(図表15)。』(2月)
『この間、消費者コンフィデンス関連指標は、昨年末にかけて、改善が頭打ちないし幾分悪化する動きとなった(図表15)。』(1月)

頭打ちないし幾分悪化したものが一進一退なので水準はあまり変わっておらず、方向性としては若干改善という事ですな。というのを踏まえた結論が・・・・

『先行きの個人消費は、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(2月)

『先行きの個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。』(1月)

ということで、この結論部分だけは概要の所にありましたので、先日比較して「下げましたねえ」という話になった訳ですが、こうやって中身を見ておりますと割と下げているなあという感じがしますがどうでしょ。特に最初の辺りですけれども、各種政策による刺激効果が剥落するという話になっている辺りがマズーな感じがします。


○鉱工業生産関連は割と引き上げてます

その次の住宅投資は総じて同じ。持ち直しの明確化には時間が掛かるという表現が入っているので、方向性は変わらないものの水準感およびその角度に関しては厳しい見方なんでしょう(引用割愛)。

で、鉱工業生産なのですが。

『鉱工業生産は増加を続けている。』(2月)
『鉱工業生産は、内外の在庫調整の進捗や政策効果を背景に、増加を続けている。』(1月)

前月比ベースで10か月連続増加と強いのですけれども、在庫調整の進捗と政策効果という部分が抜けているので微妙は微妙。まあ普通は余計な言葉が無い方が上方修正なのですけれども、さっきの所でも政策効果が抜けているのですよね。

出荷に関して。

『出荷も、10〜12 月の前期比は+5.2%の増加となった。出荷の動きを財別にみると(図表18)、耐久消費財や生産財は、昨年初の水準から大幅に回復している。資本財は、低水準ながら持ち直している。建設財については、引き続き弱めの動きとなっている。非耐久消費財は、横ばい圏内で推移している。』(2月)

『出荷も、4〜6月、7〜9月と増加したあと、10〜11 月の7〜9月対比は+4.7%の増加となった。出荷の動きを財別にみると(図表18)、耐久消費財や生産財は急回復しているが、生産財の回復ペースはこのところ幾分鈍化している。資本財は持ち直しつつある。建設財については、引き続き弱めの動きとなっている。非耐久消費財は、横ばい圏内で推移している。』(1月)

生産財を若干下げて資本財を若干引き上げていますな。


在庫に関して。

『在庫は緩やかに減少している。財別に出荷・在庫バランスをみると(図表19)、耐久消費財、電子部品・デバイス、その他生産財(化学、鉄鋼など)は、出荷の持ち直しもあって在庫調整圧力が解消している。また、資本財(除く輸送機械)も、在庫調整圧力はほぼ解消している。一方、建設財は、出荷の落ち込みを背景に、在庫調整圧力が依然大きい状態にある。』(2月)

『在庫は緩やかに減少している。財別に出荷・在庫バランスをみると(図表19)、耐久消費財、電子部品・デバイス、その他生産財(化学、鉄鋼など)は、出荷の持ち直しもあって在庫調整圧力が解消している。また、資本財(除く輸送機械)も、在庫調整圧力はかなり減衰している。一方、建設財は、出荷の落ち込みを背景に、在庫調整圧力が依然大きい状態にある。』(1月)

ということで、在庫に関しては「在庫調整圧力はほぼ解消している」というのが上方修正ですな。で、その先行き見通しですが。

『先行きの生産については、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、輸出同様、増加基調を続けると予想される。企業からの聞き取り調査によると、1〜3月は、伸び率が鈍化するものの、増加を続けると予想されている。』(2月)

『先行きの生産については、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、輸出同様、増加基調を続けると予想される。企業からの聞き取り調査によると、1〜3月は、伸び率が鈍化するものの、増加を続けるとの感触にある。もっとも、4〜6月以降の需要見通しについては、引き続き不確実性が大きい。』(1月)


ということで4〜6月期の需要に関しての不確実性が大きい云々がばっさり削られていますので、そういう意味では増加基調に自信を深めたという事になるので、これはこれで結構な上方修正ですな。


○ということでどうなんだと言うとこれが良く判らんのですが

消費の現状判断および先行きを下げる中で鉱工業生産は在庫調整終了&先行きは引き上げという事でありますので、トータルするとどっちなのかよー判らんのですが、要するに「外需次第」という話になると思いますけど、何となくシロート的に考えると、消費の先行き見通しを厳し目にする中で他の物が良くなるという話にも無理があるような気がするんですけど・・・・とは思います。

で、その辺りが消費者物価の先行き見通しに反映されているのではないかと思いますけれども、これは概要部分にもあったのですが。

『消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(2月)

『消費者物価の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(1月)

需給バランスの改善という文言が入ったのが大きいのですが、一方で目先に関しては1月よりも見通しを下げているという器用な事をしていまして、この辺りが見通しをどう置くのかという所で微妙な匙加減というか味付けをしているというような所なのではないかと勝手に予想するのでありました(^^)。


以上月報本文を読むというお気楽企画でございました。以下政治放談。


○結論はどうかと思うが途中までは亀井さんの方が・・・・・

昨日もまた山本幸三先生の質疑があったようで、菅さんと亀井さんも答弁をしていたようでありまする。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aP6eVxyF059U
菅氏「年内に物価プラスに」、亀井氏「国債引き受けを」−日銀に要請

『3月1日(ブルームバーグ):菅直人副総理兼財務相は1日午前の衆院財務金融委員会で、消費者物価指数について「今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べた。さらに、亀井静香金融・郵政担当相は同じ委員会で、日銀は「直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良い」と主張。16、17日の金融政策決定会合を前に日銀に対する要請が相次いだ。』(上記URL記事より)

普通は半月以上後の決定会合に対して「決定会合を前に」とは言わないと思う次第で、まあ相変わらずスケジュール感もへったくれもない人達ですわなあというのはまあ良いと致しまして。

菅さんは『消費者物価指数について「今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べた。』と仰せのようですが、あのその日銀だけで簡単にプラスに移行出来るのでしたら何も苦労はしない訳でありまして、この人は日銀を打ち出の(以下毎度同じ悪態なので割愛)。

つーかね、高校授業料無償化とか高速道路料金引き下げとかCPI指数を下げるような予算案を出しているのに今年いっぱいくらいにプラスに移行とかアホじゃねえのとしか言いようがないのでありまして、そんなにCPI上げたいのでしたら、4月から公共料金全部20%引き上げるとか、輸入関税を死ぬほど引き上げるとか、揮発油税を思いっきり引き上げるとか、要するに生活に密着する所で料金が引き上げになるような政策を実施すれば宜しいのではないでしょうかと存じますが如何でしょうか。勿論誰も得しない話なので全然推奨しませんけど(−−;

しかし上記URLの記事にありますように、『欲を言えば(昨年11月に)デフレ宣言をして、今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたいと感じている』って菅先生は発言しているようですが、デフレ宣言して何の対策もしなくて世間様でデフレを流行語状態にするというマインド大悪化攻撃をしておいて何がどうなったらプラス移行とか言えるのか脳味噌をかっぽじって頭の中を調べてみたいのですが。

どうも菅さんは「物価が上がると景気が良くなる」と因果関係を取り違えているのではないかと思われる節がある訳のですが(マイルドインフレの方が構造調整とかをはじめとして各種政策的にやり易いというのはその通りだと思いますが)、一方で亀井さんの方が話の筋だけは通っている所がオソロシスというかエッシャーの騙し絵というかという所でして。

『一方、亀井金融相は「金融政策だけでデフレを解消できるかと言うと、私は無理だと思う」と言明。「政府が財政出動を含めて需給ギャップを解消していく努力をしなければ、日銀の責任だけで解決できる問題ではない」と語った。また、インフレ目標の導入についても「数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない」と述べ、否定的な見方を示した。』(上記URL記事より)

いやもうね、こう言う風に日銀の理屈に乗っかって突っ込んでくる方が実は追求としては厳しい訳でして(^^)、『数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない』とかさすが亀井センセイそこにしびれるあこがれるぅ!という所でございまする。

まあ結局の所亀井センセイの場合は「財政出せ」攻撃になるのでして、結果として出てくる結論はちとあのそのそれは如何な物かと思うのですが・・・・

『亀井金融相はただ、「日銀も政府が大胆な財政出動をしていくときに協力できる点がある」と指摘。「財源は税収が37兆円を超えてどんどん増えるという見通しはない」とした上で、国債について「日銀が市中から買い入れていくだけでなく、直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良いと思う」と述べた。 』(上記URL記事より)

たぶん国債引き受けを行うと、世界はまさに財政リスク問題をネタにしている最中でありますので、長期金利上昇と円安になって大変にオソロシスな展開になる恐れがあるのでござんすが。

いやね、別に1回こっきりで終わるのならば何とかなるのかも知れませんですけれども、そんな「打ち出の小槌スキーム」を政治家に与えて一発で終わる保証は1ミリも無い訳で、普通に乱発されて行きつく先は財政インフレになるでしょと普通に想像できると思うのですけれどもどうなんでしょうかねえ。大体からして一発物の筈の「埋蔵金」とやらに関しても何故か経常的に使われる政府支出に充当されるという現政権(来年度予算どうするんだよ)を見れば、国債引受を財源にどうのこうのとかいうような打ち出の小槌を政治家に与えたら危険極まりないとしか思えんのですけど。

という事で、まあ結論は全く賛同する気になりませんけど(仮に日銀が財政ファイナンスするというのであれば、日銀から政府に対して国債発行に関して命令権を持たせる位の歯止めを付けないと話にならんでしょ)、そこまでの話の筋が通っているだけに亀井さんオソロシスという所でございますな。






2010/03/01

お題「月曜につき相場放談と床屋政治放談で勘弁」

早くも3月ですな。期末期末。

○GCがあっさり落ち着きましたが・・・

金曜のGCレートはあっさり落ち着きまして最終的には0.105-0.11レベルに低下したようで、あたくし的予想より半日ほど早くレートが落ち着きました。金曜はトムスタートの共通担保オペが1.2兆円実施されて、1日の当座預金残高が現在の予想ベースで1.6兆円に乗るペースとなりまして、26日よりも当座預金残高を積み上げるような調節になったのがやや予想よりも多目の供給だった事から、GCの市場調達分が充足されてレートが低下したみたいですね。

とまあレートが低下したのはほうほうそうですかという感じなのですけれども、微妙にアレなのは例によって例の如くGCレートに対してで見ると資金供給が後追いになっている感じがする所でしありまする。毎度申し上げているように、GCレートって先日付で動くので金利が上がりだしてからコールレートに影響するまで若干のタイムラグがあり、ついでに言うとモノ日が絡んで来てレートが上昇すると約定日ベースでそのモノ日を通過しないと出し手が出し渋り(出す金が無い訳は無いのですが、出し手の頭数が少ないので、ちょっと需給がタイトになるとレートを上げようとする)ますというように、(昔の)無担保コール翌日物のように調節にビビットに反応してくれないのがGCレートなのであります。

まあ市場機能重視らしいので今の調節はそういうやり方になるのでしょうけれども、GCだけで言えばレートが上昇してきてから供給を多目にすると、そのタイムラグの関係上レートが下がるのに時間が掛かる上に、下がり出した頃には出し過ぎになってしまうという罠がございますので、足元GCだけ振れるという妙な展開になるかなあとも思われます。現在みたいに上がって0.125%とかであれば、まあ3か月TBの利回りが0.12%前後で推移する程度なので気にしませんよってえ所なのでしょうけれども、1月の調節ではGCを抑え込んで0.105%で張り付かせる調節をするのかなあと思わせてくれる場面もあったので、どうも調節スタンスがよー判らん所ではございまする。

#毎度毎度調節の超細かいマニア話ですいませんが備忘メモなので


○なんつーかもうこの人グダグダ過ぎで困りますわ

最近の菅先生と言えば毎日のようにこの発言。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aantacmzTjCg
菅財務相:日銀にもいろいろな形での努力を期待−デフレ脱却で

これなんかまだCPI受けてからの発言だからマシなのですが、この前なんぞ金融政策決定会合の翌日の国会答弁で同じような発言をしている訳でありまして、何と申しますか相手のスケジュール感とか何も考えて無いでしょうという所がそもそも論としてナットランでしょうと思う今日この頃。

えーっとですな、ローゼン麻生内閣の時はちゃんとした経済対策の発表と日銀の利下げの日程を合わせていた(2008年10月30日の夕刻に政府が真水5兆円の緊急経済対策を発表して10月31日に日銀が利下げを実施した)というように、「政府と日銀の連携」というのをスケジュール感からもきちんと見せていた訳ですな。

然るに、現内閣の場合はと言えば2009年11月20日に何の対策も無いデフレ宣言を行ったのですが、その日が正に金融政策決定会合という全くスケジュール感の無い展開。で、対策も何も無い状態で首相と日銀総裁の会合を12月頭にセットするという無茶振りスケジュールで、お互い手ぶらで会合するのも間抜けということで結局12月1日に臨時会合を実施されてマーケット大迷惑だったという流れですわな。

で、まあ菅さん的には日銀を叩けば何か出てきて株が上がったり為替が振れたりしてくれるとでも思っているのか、てめえらが「財金分離」とか言って財務省出身の武藤さんを外す人事をやっておきながら、その財務省の大臣様が連日のように日銀何とかせい攻撃をするというのが何とも無定見にも程がある話でありまする。

まあ折しも内閣支持率も下がってますし、益々菅さんの叩き攻撃が激しくなるのでしょうけれども、本当に金融緩和が経済の為に必要で圧力を掛けないといけないのであれば、表立って日銀の顔をぶっ潰すような掛け方するんじゃなくて、裏から圧力掛けてちゃんと政府と日銀ともに顔の立つようなやり方をした方が良いんじゃないの(なお、「圧力を掛ける」という行為が存在しているかどうか、それが効くのかどうかという点に関してはあたくし一切存じませんので念の為)と思うのですけど、まあ結局のところ菅さんとしては「日本経済の為に何が大事か」じゃなくて「民主党政権の維持と自分の政治的存在意義の確保の為に何が大事か」という軸で考えているから、やたらめったら日銀への圧力をアピールしてるんでしょという感じっすなあ。

あたくしの杞憂だったら良いんですけど、この流れで輪番拡大したら真面目に「財政ファイナンス」扱いで下手したら長期金利が上昇してもおかしくはないと思われるのでありまして、菅さんの口に誰かチャックしとけと思うのですけど・・・



○具体策が何と言うかこれ・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aN2LJ7EgTQw8
みんなの党代表:潮目変わった、政界再編狙う−インタビュー(Update1

暫く前に出てたインタビュー。

いやまあ日銀の庭先論についてはそう批判されても仕方のない面がありますので良いとして、デフレへの具体策が訳判らん。

『具体的な対策としては政府と日銀がアコード(政策協定)を結んだ上で、日銀が金融機関の持っている中小企業向けの債権を20兆円分を買い取り、その毀損(きそん)分は政府が補てんする制度の導入などを求めた。』

ってそれやってどういう経路でどういう効き方をしてデフレ対策になるのかがさっぱり判らんですし、そもそも中小企業向け債権を買い取るって言ったって買い取った債権の管理をどうやって行うのとか、買い取りするのは良いけど具体的にどのような価格で買い取るのよとか、具体的施策に落とせないとしか思えない問題大過ぎ。

大体からして20兆円買い取った分がそのまま中小企業融資に回る訳も無いですし(今新規で20兆円も中小企業に金貸せないでしょ、いや全額焦げ付いても良いのなら幾らでも貸せますけど・・・)、そんなややこしい事しなくても政策金融公庫(のうち昔の国民金融公庫)とか商工中金に政府が予算付けて制度融資を実施して対応すればいいじゃんと思うのですけれども。

もし予算出したくないというのであれば、政策金融公庫に債権の買い取りをやらせて、日銀は政策金融公庫保有の債権を担保に資金供給を実施すればよろしいんじゃないかと思う(適格担保の問題があるが、それなら政府が保証すれば良いのでは)のでありますが、政策金融公庫だったらそれこそ旧国民金融公庫の支店もありますし、従来より民間向けの貸出を実施しているのですから与信管理のノウハウも事務能力もあるのですから、そちらにやらせりゃ良いだけの話でして、わざわざ日銀が買い取る理由がさっぱり判らんのでありまする。

何かね、みんなの党って割と金融市場的には評判良いのですけれども、どうもこのような感じで出てくる政策がいかにも「机上で頭の良い人が考えました」っぽい所があって、結局民主党と同じになりゃせんかという不安があるんですよねえあたしゃ。


#月初だというのに超雑談でどうもすいません