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2010/04/30

お題「FOMC声明文/展望レポートですな」

水曜の引け後(欧州の朝方)のギリシャ国債は中々のヒャッハー状態でしたな。


○FOMCは予想通りガイダンス文言の変更無し

FOMC声明文。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100428a.htm

ちなみに前回3月の声明文はこちら
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100316a.htm

・労働市場の「改善」を指摘

まあ今回の声明文変更の中で「ほほー」というのは労働市場の改善に言及しているところですわな。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is beginning to improve.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is stabilizing. 』(前回)

「安定している」→「改善を始めている」という事ですのでこれはこれはという感じですわな。じゃあこれで利上げが早まるかと言うとその辺りは以下でご紹介するように、ガイダンスの文言とかを変更しないことによってバランスを取っているという感じですな。


・消費も判断引き上げているけれども、背景の認識を変えない

『Growth in household spending has picked up recently but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)

『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(前回)

家計消費支出に関しても「緩やかなペースの拡大」から「成長が引き上がっている」というような説明になって判断上方修正しているのですが、抑制されている理由に関しては変化無しと。

・企業支出とか住宅セクターとか銀行貸出とか

『Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures is declining and employers remain reluctant to add to payrolls. Housing starts have edged up but remain at a depressed level. While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth.』(今回)

『Business spending on equipment and software has risen significantly. However, investment in nonresidential structures is declining, housing starts have been flat at a depressed level, and employers remain reluctant to add to payrolls. While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth. 』(前回)

新築住宅の判断が若干引き上げられていますが、その他に関しては変わらずと。


・現状判断のまとめ

『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(今回)

ここの文言は前回と全く同じです(^^)。


・インフレに関する文言も同じとな

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(今回)

これまた前回と全く同じで。かなりの資源活用のスラックが物価上昇圧力とより長い期間のインフレ期待を安定化させるので、インフレは暫くの期間抑制されるでしょうというのは見事に変わりませんな。


・で、ガイダンスも変更無し

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』(今回)

まあ予想通りですけれどもガイダンス文言の変更はございませんでした。異例の低金利が相当の期間に渡って維持されるでしょうという理由に関しても資源の活用の低さ、抑制されたインフレトレンド、安定したインフレ期待という3点セットには変化無しということで。

以下は流動性プログラムに関する部分で比較的どうでも良いので割愛。


・ホーニッグさんの反対理由に「利上げ」に関する文言が

でまあ今回もホーニッグさんはガイダンス文言に関して反対したのですが。

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to a build-up of future imbalances and increase risks to longer run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee’s flexibility to begin raising rates modestly. 』(今回)

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to the buildup of financial imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability. 』(前回)

前回の反対理由は「ガイダンス文言の維持を行う事は、金融の不均衡を積み上げ、より長い期間におけるマクロ経済や金融の安定に対するリスクを拡大させる」となっていましたが、今回はその後に「FOMCが金利を徐々に引き上げる事を開始する事に対する柔軟性を制限する」というのを付けまして、反対のトーンが強くなっていますな。


○循環と構造のバランスのとり方

んな訳で今回のFOMCではガイダンスの文言を変えないのは普通に予想通りの世界ですけれども、上でご紹介しましたように、現状判断を引き上げながらも、より改善に時間のかかりそうな構造的な部分に関しては従来の判断を継続するという形になりましたな。

まあギリシャ問題の方が目先は大きいのかも知れませんが、何となく後付け講釈だとFOMCの低金利継続期待とイニシャルクレームの改善を債券と株とで好感しているという反応らしいものを示している所が実にこう楽観的なメリケンクオリティとも思いますが(^^)、まあその辺りは確かに見せ方が難しいですねという感じです。

一方、日銀ちゃんは今日の展望レポートという大ネタ(は良いのだが5連休前しかも月末の引け後(15時)に出すんじゃなくて28日に出して頂きますと有難く存じますのですが)がございますが、こちらでは白川総裁が物凄い勢いで循環的な回復の話をするという先般の記者会見にありますような有様なのがひじょーに懸念されるのでありますが、日本の場合はレバレッジ拡大し過ぎて不良資産問題というのは確かに軽いかもしれないけど、物価の方が相変わらずうんこな状態になっているという問題はあり、財政は楽しく発散過程入りっぽいわ、成長期待は全然盛り上がらないわという事ですし、それ以前の政治的な問題を考えたら、またどこかで追加緩和カードを切らないと行けないと思われる状況でもあります。

というような状況をつらつら考えると、まあ展望レポートでそんなに上振れを強調する必要があるのかよという気はしますわな。大体からして現状で金融緩和を継続していても日本の場合は(残念ながら)経済の不均衡拡大とかいうような場面でも無いでしょうし、まーそーゆー事を考えると日本は金融緩和政策を引っ張り易い環境にあるのですから、あまり循環的な回復を強調する必要もないと思うのですが・・・・・・


ということで、まあその辺りのバランスのとり方が変だとまた対話(誰との対話なのか良く判らんが^^)で苦労するんじゃないですか、という気がしますけど、先般の西村副総裁の講演&会見ではその辺バランス取ってたような感じがするので、多分出てくる公式文書は大丈夫なのでしょうけれども、何かまた総裁会見で飛ばしてくれるかもしれないなというのがリスクではないかと・・・・









2010/04/28

お題「各種雑談/BOEが国債買入の話をスルー気味な件について」

お縄一郎キタ-------------(・∀・)-------------っと。

○まずは雑談

・格付け会社雑談

何かS&Pがギリシャの格付けをBB+格に下げたと言う事で話題になっているようですが、ソブリン格下げと言えば年寄りはアジア通貨危機を思い出すのでして、そういやあ韓国とかの格下げスピードはとんでも無かったわなというのを懐かしく思うのですが、先般のサブプライム関連問題でも格付け会社がコロコロ格付けを変えていたりして、何と申しますかどういう判断基準でそうコロコロと格付けが変わるのかという感じがしますけど。

つーか、そもそもギリギリになって思いっきり格下げとか、単にそれは市場のプロクシカリティーを加速させるだけの作用にしかならないのでありまして、そういうのを事前に分析するのが格付け機関の仕事じゃねえのかという気がするんだが、って格付け機関だけじゃなくてアナリストも同じか(^^)。

だいぶ前のエントリーですが厭債害債さんが以前こんなエントリーを書いておられますので懐かしく読みませう(^^;

http://ensaigaisai.at.webry.info/200703/article_4.html
世紀の誤訳−「格付け機関」

http://ensaigaisai.at.webry.info/200708/article_12.html
格付け会社再説

と結局は人のふんどしなのでした(大汗)。


・更に人のふんどしで国会小ネタ

本石町日記さんのエントリー
http://hongokucho.exblog.jp/13211182/
「むちゃくちゃな話に(日銀は)耳をかさないように」=共産党・大門先生にしびれる

ちなみにこの日の国会会議録(4月13日の参議院財政金融委員会)では冒頭に延々と香ばしい質問をしている香ばしい人がいるのですが、読んでいると精神衛生上あまり宜しく無いので、ご紹介しようかどうか検討中なのでありました(汗)。

今回は大門先生の質疑テーマは金融政策ネタでは無かったので、上記エントリー内容にあります質問の後は全然違う話になっておりますので、特に本石町さんのエントリーに付け加える話が無いのが残念な所であります(^^)。


・オペなどの雑感その1:コールレートの件

この前もちょっと話をしましたが、今回の積み期間のコールレートって何気に0.09%台で推移しているのは良いのですが、最近はすっかり0.09%台前半で推移するようになっています。16日以降で0.09%台後半になったのは16日の0.095%と20日の0.096%だけでして、それ以外は0.09%台前半での推移となっていますので、この調子で今回の積み期間のコールレート平均を取ると0.10%よりも0.09%に近くなるような勢いですわな。

要因としては新型オペなどの固定金利オペの比重が高まってしまったことでして、オペ増額の影響はもちろんあるのですが、おまけに3月の財政払い(予算執行関連)と4月の財政払い(年金定時払い)の余剰が効いているので資金供給オペの総額が減っている(ここもと32兆円近辺、ピークで49兆円近辺あったんですよね)為に、GCレートが中々下がらないという要因があって、ターム物金利を低位安定させると言ってる手前レポレートの上昇も抑えないといけないというのがあって、結果としてコールが0.09%定着モードになっているという話ですわな。

まあ0.10%でも0.09%でも究極的には大差ないと言ってしまえばそれまでなのですけれども、コールを精密誘導するのが仕様となっております日銀様としては、このまま1回の積み期間で平均が(臨時ファシリティ扱いですけど)預金ファシリティのレートを切るというのは、今までの日銀らしからぬ(いやまあ物理的に仕方ないのは判ってますけどね〜^^)プレイですなあという感じです。


・オペなどの雑感その2:新型オペの按分が地味に上昇している件

例の新型オペちゃんですが、まあ大体導入以降の按分比率って12%〜14%位で推移していた(よって1社当たりの応札限度額から計算すると240〜280億程度の落札になる)のですけれども、今週に入ってこのオペの按分率が地味に上昇傾向にございます。つまり23日のオペでは按分13.0%だったのですが、月曜のオペでは16.4%、昨日のオペでは17.0%と300億以上が入る勢いになって参りました。

・・・・まあだから何なのと言われると困るのですが、単に3打席連続オペの為に入れる人が減っただけの話かもしれませんし、そうではなくオペが累積してきた結果、冷やかしで入れてた人達の担保玉が減って来て参戦者そのものが減ってきた可能性もあって(っていうような参加者の懐事情は調節課の方がヒアリングしているから知っているでしょうけれども)、もし後者のような状況だとすると、新型オペの按分率上昇が恒常化して、大手の債券お取り扱い業者の皆様に回る0.10%の金がより増えてくるので、短国あたりの金利は段々上がり難く(いやまあ今でも大概に上がり難いのですけど)なるかもですなあとか妄想モードに入るあたくしなのでありました。


○BOEの議事要旨から(ちょっとだけ)

雑談をしてたら長くなってしまいましたが(汗)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1004.pdf

4月MPCの議事要旨なのですが今回に関しては、

・景気に関しては特にユーロ圏の下振れを強く警戒している・ポンド安に関しての評価は「景気にポジティブ」だが「物価上昇」や「交易条件の悪化」のデメリットも指摘していまして、ポンド安を一時は一方的にウハウハですよと言ってたのとトーンは異なる

というのがあるのですが、最も「あちゃー」と思ったのは「私は皆さんとは違うんですフフン」と言わんばかりの勢い(かどうか知らんが)で堂々「量的緩和」を銘打った量の話に関して物の見事にスルーされている所ですな。

んでもってスルーされているだけに引用のしようも無いのですが、まあ関連する部分をちょっと引用してみますとこんな感じです。

『The immediate policy decision』の第26パラグラフから。

『For many members, the developments at home and abroad over the two months since the publication of the February Inflation Report had helped ease concerns about some of the downside risks to the near-term economic outlook for the United Kingdom. Output looked more clearly to have begun to recover at the end of 2009 and, abstracting from the effect of erratic factors, with a momentum that appeared to have been carried forward into the beginning of 2010. That was broadly as had been anticipated as the most likely outcome in the Committee’s February projections. Moreover, short-term interest rate expectations had fallen. And, notwithstanding this month’s appreciation, the sterling effective exchange rate index was lower than two months ago. Those factors should also support growth.』

ということで、先行き見通しの中で国債買入による効果の話はすっかりスルーとなっていて、(この前のマネーに関する討議部分でもそうなのですが)金融面においては「市場の短期金利予想が低下している」という話は出てくるのですが、すっかり量の話はスルーという状況になっているのでありました。

んでまあ27パラグラフと28パラグラフは先行き回復のメインシナリオに対するリスクの話でして、ダウンサイドリスクはユーロ圏経済とソブリンリスク、そしてインフレのアップサイドリスクについては商品価格の上昇と、足元のインフレ率上昇が現在アンカーされている一般のインフレ期待を押し上げるリスク、という風に指摘しています。で、その結論の29パラグラフ。

『Looking ahead, there remained a number of factors restraining activity and inflation. These included the impairment of the banking sector, the need for fiscal consolidation in the United Kingdom and elsewhere, and despite some recovery in activity, the continuing degree of spare capacity in the economy. Offsetting these downside factors were the past depreciation of sterling and the exceptional degree of monetary stimulus. There was a range of views among Committee members about how the balance of risks to inflation and activity had altered over the past few months. But, overall, the Committee agreed that it was appropriate to maintain the current stimulatory stance of monetary policy at this meeting.』

ということで、先行きのダウンサイドリスクや、景気回復を阻害する要因(銀行セクターのバランスシート調整、財政支出によるサポートが必要な点、経済全体の過剰生産力)に対してカウンターになるのは以前から継続しているポンドの下落と異例の規模の金融緩和という話になっていますので、まあここでは金融緩和政策の効果の話をしているのですが、国債買入がどうのこうのという話はどうも華麗にスルーされているっぽいのが実に味わい深いものを感じるのでございます。

BOEはどう総括するんでしょうかね(^^)。







2010/04/27

お題「虫干しネタやら雑談ネタやら」

米国の利上げ観測って海の向こうから見ていると「またまたご冗談を」と思うのですが(資産バブル崩壊後の動きを確り見ていたからニッポンジン的に更にそう思うのかもしれないけれども・・・)そんなに盛り上がっているのでせうか???

○CPオペの残高が落ちる件についてなど

CP買現先オペなんですけれども、過去に実施した分がドンドン期落ちになりまして、残り2本で5000億円ちょっととなっています。で、そのエンドが2本同時に明日来るのですが、それをロールするのであれば昨日実施(スポットスタートだから)するものなのですが、昨日も堂々のCP買現先見送りでござるの巻。

ということで、CP買現先オペはめでたく(かどうか知らんが)残高ゼロと相成りましたので、今後は一応道具として必要な時に発動できるように期末前に1回単発的にオペを実施するという避難訓練モードという平時の運用に戻るということになりそうでございます。まあ既にこの辺りは織り込み済みですし、運用する資金はあって発行企業のCP発行需要は伸びないと来ていますので、特にまあ問題は無いでしょう。

そういや以前「10月のCP買現先オペ増額がCP金利を引き下げる効果があった」というどう見ても結論先にありきの市場感覚まる無視レポートが日銀から出ていて悪態を軽く書かせて頂きましたが、将来何らかのストレスが発生した時にこのオペを増額すれば金利が下がるかというとそれは時と場合によるでしょうけれども、ストレスが掛かっている時っていうのは大体バランスシート制約の問題がありますので、「現先」単体ではあまり意味がない(問題が単にファンディングだけなら現先だけでも意味があるけど、普通そういう環境にはならないと思う)ので、その辺に関してはくれぐれもお間違えの無いように願いたいと存じますです、はい。


○証券決済期間短縮とかフェイル慣行定着は正論なのですが・・・・

不覚にも金融ファクシミリ新聞で気がついたのだが。

http://www.jsda.or.jp/html/houkokusyo/failwg_final.html
債券のフェイル慣行の見直しに関するワーキング・グループ最終報告書について

この件と証券決済期間短縮の件に関してが日証協やら短取研関連での最近の大ネタのようでございますけれども、まあ証券決済期間の短縮に関しても内国債の売買(レポとか現先も含めて)でフェイル慣行を定着させて短縮化した決済を円滑に回すというような話に関しても、それは正論は正論なのですが、じゃあべき論で突っ走れば良いのかというとそれは別問題ジャマイカと思うのですが。

まあ細かい話は置いといて、結論にワープしますとこれって受渡実務の部分とかを詰めればそれでハイ実行という単純な話では無く、計理規定とかの「実際の会計処理をどうするのか」みたいな話の細かい部分が実際にやる場合には重要なのれす。で、まああ日証協はちゃんとその辺は詰めるのが仕様なので問題無いと思いますけれども、これは業者だけで話が済む話でも無くて、投資家サイドの方での計理処理とか運用に関する規定とか(自己勘定は最終的にどうでにもなるようだがやはりややこしいのは他人勘定とその受託)をきっちり詰めないでエイヤーで発車しちゃうと肝心のフェイル慣行が相変わらず定着しないままでフェイルのチャージだけ始まって業者の負担が一方的に増えるだけとかいう結果になりかねない悪寒が。

#導入が米国と同じスケジュール感というのにも違和感があるし

それから、(ここには無いですが)証券決済期間短縮もT+2にするのならまだそれほどややこしいことにはならないとは思いますが、ただまあ業者や銀行のトレジャリー部分などでは資金繰り管理がまさに本業の一部であるので1日期間短縮で支障は生じないでしょうけれども、投資家サイドでは資金繰り管理が運用とは別のレベルの話になっているケースも多々ありまして、それはそれで何か対応が必要になって来ると言う話でしょうな(大体からしてリアルタイムの資金やポジション管理をするようなパッケージシステムが銀行や証券じゃない投資家向けにあったっけという気がするのだ)と思います。T+1にされたら死亡確定なのですけどね(−−;

別に証券決済期間短縮するなとは申しませんが、あまりにもべき論の究極まで持って行きますとシステム対応の投資が死ぬほど必要になると思われるのでございして、短期金利が鼻糞のような水準ですと只でなくさえ受託業務とか短期資金取引とかでの収益が上がらない状態ですので、T+1だのという話はデフレを脱却して頂きまして政策金利が堂々2%(せめて1%)位になった所で実施して頂きますと助かりますなあと思うのでした(苦笑)。


○コーン副議長講演の更に続き:プライスレベルターゲットに関して

どうも引っ張ってすいません。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

講演の13ページから。この前の部分ではインフレ目標の設定に関連して、「ゼロ金利制約の糊代を作る為に通常のインフレ目標を4%のような高めの数値にするのはどうか」という意見に対する砲撃を行っていたのですが、その次は所謂プライスレベルターゲットに関する意見です。

『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI near that line.』

グラフでも描いて張り付ければ良いのですが(時間とスキルが無い)書いて説明すると、「物価安定の目標の安定化の為に「年率2%の上昇になるようなレベルでのターゲットを設定」するという方法。つまり前年比ではなくて先行きまでのレベルが1次関数のグラフみたいに示されるという話ですわな。

『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative shock drives prices below the target level, people will automatically expect the central bank to increase inflation for a while to get back to trend. In principle, that expectation would lower real interest rates without the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make long-term economic decisions because they could anticipate that inflation misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future price level.』

で、このアプローチのメリットとして言われるのは、まず第1に「前年比」ではなくて「具体的なレベル」を目標にしているので、何らかのショックで例えば前年比の物価上昇が少なかった場合には、「プライスレベルに戻すために」金融緩和を継続するという形になるので、結果としてその後の前年比ベースで見た物価上昇期待が高まる(逆ゲタを履く分を挽回しないといけないから)ので、実質金利をより引き下げることができるという言ってみれば「前年比ベースで見たインフレ目標の自動修正装置」が付くというものと、「人々の経済活動における物価変動期待の安定化」という観点からすると、将来の物価水準をターゲットにしているので期待が安定化しやすいという事ですな。

『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I have serious doubts that it would work in practice.』

ということで、アイデアとしては非常に美しいのだが金融政策運営の実務としてワークしないという話をしています。ポイントは以下の通り。

『Central to the idea is that the Federal Reserve would be committing to hit a price level that was growing at a constant rate from a fixed point in the past. The specific inflation rate that could be expected in the future would change over time, depending on the inflation that had been realized up to that point. You could know what inflation rate to expect only if you knew both the current consumer price index and the Fed’s target for the index in the future. In addition, the inflation rate that you could expect would be different for different horizons.』

『 Moreover, central banks are able to control inflation only with a considerable lag and even then only imprecisely, so the process of hitting a target would likely involve frequent overshooting and correction and consequently frequently shifting inflation objectives.』

正直、前半部分の途中の意味が何となくは判るのだがちゃんと訳せない(あほです)のでスマンカッタのですが、プライスレベルの固定はいいのだがそれによって物価上昇率のターゲッティングという点では色々な期間を取るとぶれてくるとかいう指摘をしているような気が(汗)。まあそもそもプライスターゲットのアイデアのキモは過去の一時点からコンスタントな上昇率での物価上昇にコミットすることができるという話ですが、後半部分にありますように・・・・

(後半だけ拙訳^^)中央銀行は物価を制御するにあたって、かなりの時間的なラグを伴い、そして精密調整というには不十分なレベルでしか行えません。従って、プライスレベルのターゲットをヒットさせるような金融政策運営を実施した場合には、金融政策の頻繁なオーバーシュートを招く結果となり、インフレ目標が頻繁にぶれることになるでしょう。

『Contrast this approach with the communications required of central banks when targeting a specific inflation rate. For example, central banks targeting a 2 percent inflation rate typically put that target prominently on their webpage. If those banks were instead targeting a price level growing at 2 percent, their webpages would have to provide a table of inflation rate targets for a variety of horizons, and the targets would change each month. I fear that rather than anchoring people’s expectations about prices, it could leave them perplexed.』

(拙訳)プライスレベルターゲットとインフレ目標を中央銀行のコミュニケーションという観点から比較してみます。例えば、中央銀行がインフレ目標を2%に置いた場合には中央銀行のホームページに目立つように掲載すれば済みます。一方でプライスレベルターゲットで2%の目標を設定した場合、中央銀行は将来の様々な期間に関するインフレ目標値を掲載しないといけなくなり、しかもその数値は足元のCPI数値によって毎月変更しないといけなくなります。私はそのようなコミュニケーションによって、プライスレベルターゲットによって価格推移のレベルが安定化するよりも、インフレ期待を混乱させることになることを懸念します。

『As you can tell, I see compelling reasons why central banks should stick to their current inflation objectives. Those reasons relate most importantly to the effect of a central bank’s communications and behavior on its credibility and on the public’s expectations.』

(;∀;)イイハナシダナー(皮肉じゃなくて)って要するにここでは「中央銀行の物価などの期待安定に関するコミュニケーションとクレディビリティの観点から現在のやりかたが適切ですよ」と仰っているようですな。うんうん。

『More study leading to a better understanding of the linkage between central bank actions and expectation formation should improve the ability of central banks to achieve society’s inflation and output objectives more effectively under a variety of circumstances, including in a severe negative shock of the type we recently experienced.』

ということで、最後のまとめはもう引用だけ。

『Conclusion

Many central bankers and economists, myself included, were a little complacent coming into the crisis. We thought we knew enough about the basic structure of the markets and the economy to achieve economic and price stability with relatively minor perturbations. And we thought we had the tools necessary to deal with liquidity shortages and maldistributions.』

『The reality is that we didn’t understand the economy as well as we thought we did. Central bankers, along with other policymakers, professional economists and the private sector failed to foresee or prevent a financial crisis that resulted in very serious unemployment and loss of wealth around the world. We must learn from our experience.』

『The questions I’ve posed are tough, but addressing these issues successfully should enable central banks to reduce the odds of future crises and respond more effectively to any bouts of instability that still might arise.』

ということで(^^)。先日の白川総裁の米国での講演はコーン副議長のこの講演に呼応するようなテイストがございますね(^^)。






2010/04/26

お題「NYでの総裁講演続き(というか今日がメイン)」

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1004e.pdf(日本語訳)
http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/data/ko1004e.pdf(こちらが元)

○単なるインフレ目標政策に対する話では無く大きな話なのよね

金曜にざっと斜め読みした時には物価に過度にフォーカスした機械的な金融政策運営に関する批判的な意見の部分が目についた訳ですが、まあ中身をよく見ますと話はそ〜ゆ〜単純なものではなくて、バブルの発生と崩壊を何度も起こす中で金融政策はどうあるべきかという話をしていまして、これは中々の内容。

今回のキーワードは「自信の循環」でして、本チャンの講演では『cycle of confidence』とあるのですが、この「自身の過剰」がバブル発生を生み、その自信の過剰は別に民間だけではなく中央銀行などの監督当局にもあるのであって、我々はより謙虚でなければいけない、という大変に良いお話をしているのですが、まあどうせインフレ目標批判の部分とかを報道ベースではクローズアップするでしょうから今日はメモをしておくのだ。

で、今回の講演はわからんちん向けではないせいか(^^)、講演内容は直球ストレートでございまして、いやまあ一つの正論でございますけれども、こーゆー話を日本に持って行っても報道バイアスにより政府と日銀の対立がどうしたこうしたとフレームアップされるだけなのでありまして、世渡り的には微妙ではございますな。ど〜せなら5月に来日するバーナンキ議長にこの手の話をしてもらえば宜しいのではないでしょうかなどと思うのですがね(^^)。

まだ最後まで紹介できていませんが(どうもすいません)3月に実施されたFRBコーン副議長の金融政策に関する今後の課題に関する講演も非常に素晴らしい内容でしたが、今回の講演も問題提起という点では大変に良い内容だと存じますです、はい。


○自信の過剰

金融危機はなぜ繰り返して起きるのかという部分の最初の部分ですが、観賞用に。

『金融危機、そして、それに先立つバブルは何故、繰り返し起きるのでしょうか。その原因については、リスク管理の甘さ、過大なレバレッジ、大きすぎて潰せない(too big to fail)とみられる金融機関の存在、金融監督の失敗、過度に緩和的な金融政策など、様々なことが挙げられています。』

『そうした分析に私も同意しますが、それら個々の原因だけでは捉えきれない全体論的な視点も必要だと感じています。』

『そのような視点に立った場合、非常に長い時間の中で発生する「自信の循環」とも呼べるものが決定的な役割を果たしていることを強調したいと思います。すなわち、成功が自信につながり、それがやがて自信過剰に、あるいは傲慢にさえ変質していきます。自己満足感も高まっていきます。そして、自信過剰のもとで生成されたバブルが崩壊すると、自信喪失へと変わり、その後、再生に向けた努力が始まります。こうして、一連の循環が再び動きだしていくのです。』

ちなみにここだけ原文を引用しますが。

『Why do financial crises, and for that matter bubbles which precede them, occur repeatedly? Many reasons are given -- lax risk management, excessive leverage, existence of financial institutions which are perceived to be too-big-to-fail, failure of supervision, excessively accommodative monetary policy and the list goes on.』

『I generally agree with such assessments, but we also need a holistic perspective which cannot be captured just by focusing on individual causes.』

『From this perspective, I would like to emphasize that, what one could term as a “cycle of confidence” which evolves over a very long time horizon, plays a decisive role. Success breeds confidence which unfortunately turns into over-confidence or even arrogance. Complacency also sets in. The collapse of the bubble based upon this over-confidence leads now to under-confidence, which is followed by rebuilding efforts. Then the cycle begins once again.』

という感じで、まあ原文と訳を並べて読むのも味わいがございます(^^)。


○「バブルは崩壊してから対処すれば良い」というのは自信過剰では無かったか

で、日本経済の自信過剰の表れとして80年代後半の資産バブルの話をしているのですが、米国に関してもしっかり指摘しています。

『上述した「自信の循環」は、日本経済だけでなく、米国経済についても当てはまるように思います。1960 年代後半以降、米国経済のパフォーマンスは悪化し始め、1970 年代後半から1980 年代初頭にかけての時期は高インフレ率と低成長率、いわゆるスタグフレーションに悩まされた最悪の時期でした。しかし、正にこの試練の時に、米国経済を再生しようとする政策努力が始まりました。ボルカーFRB元議長によるインフレ退治とレーガン政権下の規制緩和の双方が動きだし、その効果が長い時間をかけて徐々に成果を挙げていきました。米国経済の成長率は1980 年代の年率3.1%から、1990 年代後半には4.0%へと高まりました。そうした経済の拡大は2000 年代初頭のITバブルの崩壊で一旦途切れましたが、比較的短期間にその影響から脱することに成功しました。』

と言う所までは良かったのですが・・・・

『マクロ経済に関しては、成長率と物価上昇率の変動幅の低下をどう解釈するかについて活発に議論がなされ、いわゆる「大いなる安定(Great Moderation)」が喧伝されました。このような状況の下で、先行きの経済に関する非常に強気な見方が次第に社会を支配するようになっていきました。』

『住宅価格の上昇を巡っても、これがバブルかどうかについて活発な議論が行われましたが、米国の政策当局者や学界からは、「住宅価格が全国的に下落することはない」、「仮にバブルが崩壊しても積極的な金融緩和によって対応可能である」という見解が繰り返し表明されました。金融システムについても、欧米の金融機関のリスク管理は日本の金融機関よりもはるかに洗練され効率的であることが当然視されていたように思います。』

『しかし、その後の展開が示しますように、こうした楽観論は大きく外れました。日本のケースも米国のケースも、自信過剰がいかに弊害をもたらし得るかを物語っていると思います。』

まあ「コケてから積極的な金融緩和をすれば対応可能」というのは市場が普通のグラフみたいに連続的に動くのなら可能なのかもしれませんが、市場はいきなりジャンプしますし、コンフィデンスというものは「ほど良く信頼が落ちる」というような器用な事にはならない(落ちたらいきなり地のそこまで落ちる)ですし、ま〜机上で数学のややこしい式を振り回して考えるような話だけでは行かないでしょ〜♪と思うのが現場叩き上げ労務者の感覚なのでございますな。


○で、金融政策運営の課題

その続きから。

『「自信の循環」という観点から、駆け足で日米のバブルについて振り返りましたが、同様の事象は過去四半世紀に限っても、1980 年代の北欧経済のバブルとその崩壊、1990 年代のアジアの奇跡と通貨危機など、日米以外の多くの地域でも観察されます。』

『人間は、自らが時として自信過剰になり、行動が行き過ぎることを知っています。だからこそ、我々は、行き過ぎた行動にブレーキを掛けるメカニズムを予め構築しています。民間部門は様々な制動装置を持っており、例えば、金融機関には内部リスク管理部署が存在します。金融機関経営者の行動の行き過ぎに対しては、株主や債権者、カウンターパーティによる規律付けのメカニズムが作用します。また、中央銀行や規制・監督当局も、制動装置として機能します。しかし、今回の危機では、残念ながら、民間部門の装置も公的部門の装置もうまく作動しませんでした。これらの装置が機能しなかったことは、重要な問題を提起していますが、以下では、時間の制約から公的部門による制動装置のみを取り上げます。』

『私はセントラル・バンカーとして、中央銀行や規制・監督当局の失敗の問題を真剣かつ十分に検証する必要があると思っています。』


ということで金曜に引用した部分ですが。

『最初は、金融政策についてです。金融政策とバブル発生の関係については、既に多くのことが論じられてきました。はっきりしていることは、自信過剰が、バブルを生み出す必須要因であるということです。そうした意味で、 低金利の持続予想は、これだけでバブルを生み出すことはありません。』

『しかし、それ無しには、バブルが発生しないこともまた事実です。私にとって重要な問い、それは日本銀行とFRBを含む多くの中央銀行にも向けられるものですが、当時、バブルの兆候に不安を感じつつも、中央銀行は、何故、低金利を続けたのだろうかということです。考えられる理由としては、以下の三つが挙げられます。』

というのは金曜に引用しましたが、まず第1に「経済の不均衡が一般物価ではなく、資産価格上昇や過剰な信用膨張の形で起きる」という指摘です。

『第1に、近年、経済の不均衡が財やサービスの物価の変化としては直ちには表れにくい環境になってきたことです。物価安定の達成に成功したことによって、中央銀行は金融政策運営に対する民間部門の信認を獲得するようになりました。その結果、民間主体の予想物価上昇率は低い目標物価上昇率にしっかりと固定されるようになり、経済の不均衡は、財やサービスの物価上昇率以外の形、すなわち、資産価格の上昇や信用の膨張という形で表れるようになりました。』

でも、この話ってよくよく考えたら日本の80年代後半の資産バブルの時がまさにそうでして、消費者物価指数は資産バブルの最終時点を除いてほぼアンカーされて動いていて、その間に資産価格がアホほど上昇し、不動産関連融資を中心に信用がアホほど膨張していたのでありまして、そ〜考えるとその後米国でバブルが発生して崩壊したのは何ででしょという話ですが、それは第3のポイントとして示されています。

『第2に、政治的、経済的、社会的な力学がセントラル・バンカーに影響を及ぼすようになり、物価上昇率以外の要素を勘案した金融政策を行うことが次第に難しくなっていったことです。この背後には微妙なメカニズムが働いています。物価安定が経済の安定のための前提条件であり、その条件を満たすには、中央銀行の独立性が必要であるという論理は、1990 年代以降、徐々にしかし着実に定着していきました。中央銀行の独立性は、同時に、当然のことながら説明責任の要請を高め、国民が容易に判別できる基準が求められるようになりました。』

なるほど。

『そうした要請に最も上手く応えたのがインフレーション・ターゲティングの枠組みでした。しかし、インフレーション・ターゲティングのもとでは、物価上昇率の目標値と実績値あるいは予想物価上昇率との関係に議論が集中しがちです。その結果、物価以外の形で表れる不均衡への対処を理由に金融政策を変更しようとすれば、それを根拠立てて説明するためのコストは、中央銀行の立場からすると非常に高くなります。』

まあ今回の金融危機での英国のように危機モードになったら毎回詫び状攻撃で済ますという話になるのでしょうけれども、BOEの議事要旨を(面白いので)見ていますと、ここもとの議論はもうかなり複雑骨折状態になっているのですよね(3月のMPC議事要旨も何となく読んだのですが後日)。

『エコノミストの関心は、専ら需給ギャップと物価上昇率の関係に集中し、金融面の不均衡(financial imbalances)への関心は限定的なものとなりました。財やサービスの価格変動という形では把握しにくい要素に対しては、関心が薄れるようになりました。中央銀行から金融の規制・監督の権限を移す制度的変更も、そうした傾向を加速させました。』

さいですな。で、関心が何故そちらに向いたかというのが第3点。

『第3に、「デフレに陥る危険」ということの意味について、必ずしもバランスの取れた形では正しく理解されなかったことです。これに関し、財やサービスの価格の持続的な下落がもたらす悪影響の明白な事例として、「失われた10 年」という言葉で呼ばれる日本のバブル崩壊以降の経験がしばしば引き合いに出されました。』

さよですな。

『しかし、日本経済に深刻な問題を引き起こした主因は、一般物価の下落というより、圧倒的に資産価格の下落でした。日本では、主要都市の不動産価格がピーク対比70〜80%も下落しましたが、消費者物価指数の下落は1997年から2004年にかけて累積で3%でした。それにもかかわらず、日本の経験は誤って解釈されました。』

過剰な信用の崩壊による不良資産の積み上がりからのバランスシート調整圧力恐るべしというのは日本のバブル崩壊の教訓だったとは思いますが、まあこういう話をするとまた「白川総裁はデフレの害を軽視してケシカラン」とか言う批判が飛んでくるんだろうなあと思います。

『そうした当時の雰囲気は、2003年4月に公表されたIMFのWorld Economic Outlook や、同じく2003 年にカンザスシティー連銀によって主催されたジャクソンホール・コンファレンスの議事録をみると、容易に確認できます。2003 年6月のFRBの金利引き下げでは、その理由として「好ましからぬ大幅なインフレの低下(unwelcome substantial fall in inflation)」を避けることが挙げられました。振り返ってみると、デフレの危険が大きくクローズアップされた裏側で、金利の果たす動学的資源配分機能は軽視されがちでした。そして、正にその時期に、信用やレバレッジの増加、期間ミスマッチの拡大という、その後の危機の種が蒔かれました。』

信用の拡大に起因するバブルの発生とその崩壊の方がダメージが大きかったという話をしたい訳ですな。ふむふむ。


○実は裁量っていうのも重要ですよね

という話をしててまたこれは燃料投下とか思うのですが(^^)、プルーデンスの観点と金融政策運営の観点の双方から裁量の重要性に関して指摘しているのがチャーミング。

まずはプルーデンスに関する部分から。

『第2は、(引用者追記:個別金融機関に予防的な是正措置を求めなくなった理由として)当局が裁量的な監督権限の行使に慎重になったことです。金融システムの安定を確保するためには規制が必要ですが、すべての状況を想定した規制を事前に設計することは不可能であり、だからこそ、有効な監督が重要な役割を果たすことになります。ここで求められるのは、個々の金融機関のリスク特性に応じた監督であり、当然のことながら、裁量的な要素が含まれることにならざるを得ません。しかし、厳格かつ迅速な説明責任が求められるようになればなるほど、監督当局がそうした裁量的な権限の行使に慎重になることは避けられません。』

最後の金融政策の運営に関する部分から。

『(引用者追記:白川総裁が必要と考える金融政策哲学の見直しの方向性としてのポイントの)第3は、適度な裁量性の重要さです。公的当局は、金融政策についても金融監督についても、適切な裁量性を保持する必要があります。かつて、ジェラルド・コリガンがニューヨーク連銀の総裁であった時に、中央銀行による「最後の貸し手」機能の発動基準に関して「建設的曖昧さ(constructive ambiguity)」という言葉を使いましたが、近年、時計の振り子は透明性の方に大きく振れました。しかし、結局のところ、中央銀行も規制・監督当局も、その役割は自由市場の競争だけに任せた場合の市場や経済の不安定化を防止することにあります。』

で、この次が「ほほー」と。

『もし、当局の政策行動が機械的なルールに基づいていて、それが市場参加者の行動に予め織り込まれてしまうと、市場や経済はむしろ最終的には不安定化してしまいます。したがって、少なくともある程度は、時計の振り子を裁量性の方向に戻すことが必要になっているように思われます。』

そうかもしれませんな。


○んでもって白川総裁の考える見直しの方向性とは

第3の部分は上にありますような話でして、じゃあ残りの2つはどういう話かと言うのを最後に引用しますです(引用ばっかでどうもすいません)。

『第1は、中央銀行の政策目的の重要さです。通常、金融政策の目的は物価の安定と定義されます。実際、こうした定義で全く差し支えない時代が比較的最近まで続いてきたように思います。しかし、中央銀行に期待される役割は、物価の安定と1対1には対応しないことも分かってきました。』

ふむふむ。

『バブルの経験が示すように、物価が安定していても、経済は大きく振幅することがあります。中央銀行に求められていることは、安定的な金融環境(a stable financial environment)を実現することであり、それを通じて持続的な成長を達成することです。物価の安定は、金融環境の安定を構成する重要な要素ですが、これだけに限定されるものではありません。それどころか、短期的な物価の安定に釘付けになると、究極の目的である経済の持続的成長を困難にする可能性すらあります。』

つまり物価指数を見ながらエアコンの自動温度調整装置みたいなイメージで金融政策が回ると考えるのは話にならないんですね、わかります。


『第2は、金融環境の安定性を効果的に測定することの重要さです。中央銀行は貸出やレバレッジ、期間ミスマッチの状況など、金融環境を特色付ける幅広い指標に注意を払っていく必要があります。「安定的な金融環境」とは抽象的な概念であり、金融経済の状況が全て反映されるような単一指標はありません。』

真面目な話、超越的に難しいと思うのだが・・・・

『しかし、同様のことは物価についても当てはまります。技術革新によって可能となった財やサービスの価格を計測することは――検索エンジンの価格が良い例ですが、――大変難しい課題です。仮に単一の有効な指標をみつけたとしても、経済・金融は常に変化していることを考えると、幅広い指標を丁寧に点検することが不可欠です。難しい課題ですが、挑戦していかなければなりません。』

つまり昨今すっかりまた国内では日銀がどうのこうのと言われてますが、物事はそう単純じゃないんだよこのわからんちん共めがということですね、わかります。

で、第3はさっき引用した通りです。


#手抜き引用大会でどうもすいませんでした










2010/04/23

お題「西村副総裁会見とか白川総裁講演とか」

超長期国債の入札なのに先物の日中値幅10銭とかどうなのよと。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1004b.pdf

○追加緩和には含みを持たせる

3月の追加緩和(のようなもの)に関する理由を改めて説明してくんなましという質問に関する西村副総裁の説明から。

『それから、金融政策についてですが、前向きなモメンタムがある時に効果があることについて特に東北の方々に分かりやすい別の例えをすれば、雪の中で車の後輪が空回りしている時にいくら押してもうまくいきませんが、後輪がうまく土を捉えた時に押すと大きく効く訳です。そのようなことで、私どもは追加的な対応をとったということです。これは、いわばその時々の金融・経済情勢、そして市場の状況、それから諸々の経済政策を考えなければならない状況の下で、どのような時期が一番よいかを考えたということになります。従って、毎回の金融政策決定会合で常に精査し、必要な措置を必要な時期にとっていくというかたちになります。』

例えの方はまあどうでも良いのですが、これはまあ「押し上げ介入」っぽい説明になっていますので、まあそーゆー文脈からすれば、「構造的な物価の問題に対応するために更に押し上げ介入」という説明はできると思うのですが、あんまりそのロジックで行くと「効いてくるまでラグがある金融政策で押し上げのような事をするとやり過ぎにならないんですか」という話になって来るんじゃないかなあとは思います。

んでもってデフレ脱却に関する時間が掛かるのではないかという質問が後の方に出ていまして、まあそこの答えを見ますと、とりあえずポーズとしては緩和的な話をしていますなあという感じです。そらまあ選挙で負けそうな民主党様からまた色々と圧力が来てますから下手に藪をつついても仕方ないですもんね!

で、西村さんは会見での説明が素晴らしく長いのが仕様なので、引用するのも中々アレなのですけれども、こちらに関しては物は試しに全部引用してみませう。

『(答)デフレ脱却、デフレに象徴される経済の沈滞というのは非常に根深いものであるということはここで述べたとおりですし、その理由についてもこれまで述べたとおりです。物価の見通しについては、少なくとも過去のデータを見る限り今のところ大きく変化していませんが、たとえ経済活動がある程度の回復をみせたとしても、それが具体的に物価水準に影響を及ぼすにはやはりかなり長いラグがあることへの注意が必要です。講演でも申し上げたとおりそのラグは大体1年というのが今までの平均ですが、これは早い場合もありますし遅い場合もあります。』

ほほう。

『この点は、実は日本だけではなく、欧米においてもそうした問題が考えられています。ある種の非常に大きなショック、しかも構造的なショックが起きた場合には、物価が正常な水準に戻ってくるのに時間がかかるということが、日本だけではなく他の国でも考えられています。このショックに対する構造という点では、日本も他の国も同じです。日本の場合には特に金融環境から生じるショックは比較的小さかったということから考えると、日本における実体経済面のショックというのは、他国に比べてもかなりの大きさであったというかたちになります。』

ふむふむ。

『そうすると、このショックを経済が吸収し、新たな安定した状態に戻るにはかなりの時間がかかると予想されます。私どもはこれまでそうしたことを情報発信してきたつもりですが、ここでももう1度申し上げたいと思います。』

かなりの時間がかかるキタコレ(・∀・)

『そのうえで重要な点は、この大きなショックの上にさらに大きなショックが重なるような事態は絶対に避けなければならないですし、それへの対処はしていかなければならないと思っています。また、長いラグがあるということを同時に考え、その時間のラグをきちんと頭の中に入れながら、それに対応した政策を行うことがもっとも望ましいと考えています。』

ここはまあ微妙で、効くのに時間が掛かるのだから効果を見ながら小出しにしていくとか、良くなってきたら緩和を終わらせるとかとも読めますけれども、まーその前段で「かなりの時間が掛かる」攻撃をしているので、そこまでは気にする必要はないのではないかと愚考。一応将来のヘッジは打っているということですかねえ。

『具体的な政策方針は政策委員会で決めることですし、毎回の政策決定会合の中で具体的に検討しますので、ここでそれについて言及することは控えますが、私どもの基本的な考え方、すなわちデフレに象徴されるような経済の沈滞に対して、日本銀行としてこれを克服するための最大限の粘り強い貢献をしていくということに関しては全く振れはありませんし、今後も振れはないと私は確信しています。』

まあそういうことで、白川総裁の決定会合直後の会見のトーンからはだいぶ違うというか空気読んでますなという所でございまして、あたくし的には大変に結構な傾向だと思います。


○インフレ目標がどうしたこうした

こんな質問が。

『(問)物価の中長期的なインフレ期待が大事であるということですが、これについて、日銀が今している以上に何かできることはないのでしょうか。菅大臣などからはインフレ目標という言葉も出ていたり、物価上昇率について、今の1%ではなく2%というもう少し高めがいいのではないかという発言も出ていますが、それについてどのようにお考えになっているのか改めてお話頂きたいと思います。』

ほほう。

『(答)日本銀行としては、現在、過去、将来もそうですが、金融政策に関しては、その幅、種類といったものに関して一切予断を持たずに全ての可能性を追求し、全ての可能性をツールキットの中に入れて、それを毎回きちんと吟味することとしています。そして、以前にもお話したことがありますが、そのツールキットについても、様々なかたちで可能性の幅を広げるということを今までもしてきましたし、これからもしていくつもりです。』

とまあとりあえず頭からダメだしするようなことはしないという空気の読みっぷりは中々結構ではございます(^^)。

『(現在の中長期的な物価安定の理解の説明部分割愛)インフレーション・ターゲッティングに関しての色々な議論がありますが、私どもの枠組みは、インフレーション・ターゲティングの基本にある考え方の重要な部分である、私どもの考え方を明確にする透明性と、国民との対話という重要な点を含んだものです。』

さいですか。

『そのうえで、単純に時間の限られた意味での物価上昇率だけではなく、2つの柱によって、より長期的な物価の安定をめざすほか、金融不均衡の蓄積といった様々なリスクにも同時に目配りするかたちで作られています。その意味では、様々な金融環境の変化にも十分対応できるように作られていますし、実際にこの2つの柱の仕組みができてからうまく対応できていると考えています。』

まあでも最近の主要国のインフレ目標(やっている所では)に関してもその数値ってリジットな短期的な目標ではなくて、中長期的な話になってきてますので、ここでの説明は厳格なインフレ目標の方を意識しているような感じでど〜なんでしょという所ですな。

『当然ですが、中長期的な物価安定の理解と2つの柱で金融政策を運営するという私どもの仕組みは、別に最終形ではありません。常に状況に応じてより良く変わることができるならば、変えていくべきですし、実際に私どもでも物価安定の理解を明確化するということをしてきた訳です。したがって、私どもは今のかたちがベストであると思っていますが、今後、経済・物価情勢や環境の変化、様々な世界的な経済状況の変化があれば、当然ツールキットを広げますし、それについて毎回吟味するという原則に従って、私どもの今の仕組みを洗練されたものにしていくということは、当然のことながら私どもの責務でもあります。』

と、最初に言った話を繰り返して、別にインフレ目標そのものを頭ごなしにダメだししているのではないですよ(まあ実際には厳密誘導を想起させるようなインフレ目標に関してはダメだししているのですけど)というのが割とソフトな物言いにしているのが中々。


ということで、西村副総裁の質疑応答はやたら長いので、答えを引用するのを3つ位やったらもう全部引用と変わらないという世界になるという問題がございましてアレなのですが(^^)、今回の会見に関して言えば、まあ色々と風当たりが強い(特に選挙が怪しい政権与党様的には日銀のせいにする気満々でしょうから)という流れを読んで当たりをソフトにしているのが特徴的な所でしょう。




ところで、昨日の夕方にはまだアップされた無かったと思うのですが、日銀のサイトにこんなものがアップされていました。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1004e.pdf
中央銀行の政策哲学再考
── エコノミック・クラブNYにおける講演の邦訳 ──

いやまあ11ページ(本文の量)を寝起きで斜め読みするのも何ですので詳しくはまた後日攻撃になるかと思うのですが、中々これはまた白川クオリティですなあという感じです。


○CPIに過度にフォーカスした金融政策運営によって起きたこと

最初の『金融危機は何故、繰り返し起きるのか?』という所から。

『1980 年代後半、日本のマクロ経済のパフォーマンスは、先進国の中で際立って良好でした。この期間の実質成長率を見ると、他のG7諸国の平均が年率で3.4%であったのに対し、日本は5.1%でした。一方、消費者物価上昇率をみると、他のG7諸国の平均が年率で3.9%であったのに対し、日本は1.1%でした。』

さよでした。

『1990 年代に入って、インフレーション・ターゲティングが拡がりをみせましたが、これを採用している国の基準に照らしますと、当時の日本経済は圧倒的な優等生でした。』

(;∀;)イイハナシダナー

『対外的には、経常収支の大幅な黒字の持続を背景に、日本は世界最大の対外純債権国となりました。このような良好な経済状況のもとで、日本人の間に過剰な自信が生まれました。』

で、バブル発生のご教訓と言う話になるのですが・・・・・

『勿論、気懸かりなことがない訳ではありませんでした。1980 年代後半における信用の膨張と資産価格の上昇です。しかし、そうした懸念を打ち消す、「根拠なき楽観論」が社会を支配しました。地価について言うと、日本では地価は決して下がらないという「土地神話」への信仰は絶大でした。勿論、金融政策については、引き締めへの転換の必要性が議論されました。実際、ただ一つのデータを除いて、全ての経済指標 ―― 高い成長率、労働市場の逼迫、銀行貸出の急増、資産価格の高騰 ―― が、金融緩和政策の修正の必要性を示唆していました。その「ただ一つのデータ」とは他ならぬ物価上昇率でした。』

(;∀;)イイハナシダナー

『1990 年代に入ると、バブルの崩壊によって状況は一変し、日本経済は大きな困難に直面しました。成長率は1980 年代後半の年率5.1%から1990 年代の1.5%へと低下しました。その結果、今度は過度に悲観的な、言わば、「根拠なき悲観論」も生まれました。近年の日本経済の低迷については、様々な要因が関連しており、バブル崩壊や資産デフレの影響だけを過大視するのは適当ではありませんが、バブルとその崩壊が日本経済の中長期的な活力に対して大きな影響をもたらしたことは疑いがありません。』

つまり物価上昇率だけを見て金融政策をやるのは如何なものかと言いたいと(^^)。


○で、金融政策運営における物価との関係が面白いのですが後に続く(おいおい)

『政策当局は、何故、ブレーキを掛けられなかったのか?』というのがその次に来るのですが、『金融政策運営』という所ではこんな話を。

『最初は、金融政策についてです。金融政策とバブル発生の関係については、既に多くのことが論じられてきました。はっきりしていることは、自信過剰が、バブルを生み出す必須要因であるということです。そうした意味で、 低金利の持続予想は、これだけでバブルを生み出すことはありません。しかし、それ無しには、バブルが発生しないこともまた事実です。私にとって重要な問い、それは日本銀行とFRBを含む多くの中央銀行にも向けられるものですが、当時、バブルの兆候に不安を感じつつも、中央銀行は、何故、低金利を続けたのだろうかということです。考えられる理由としては、以下の三つが挙げられます。』

ということで、3つの説明があるのですが、その前にど〜せこのような部分を見て「白川総裁が低金利の長期化の弊害を指摘」とか言って「日銀も出口政策を模索」とか報道するアホウが出てくるに百万トラストミーなのですが、ちゃんと『低金利の持続予想は、これだけでバブルを生み出すことはありません』と断っていますし、前段にあったように、そもそも日本は「根拠なき悲観」状態になっているので、別にバブルを心配するような話はねえじゃろという風に思うのですけどね。まあでもきっとどっかの報道機関がそんな報道をしてまた政府対日銀を煽るんでしょうなあと。


『第1に、近年、経済の不均衡が財やサービスの物価の変化としては直ちには表れにくい環境になってきたことです。』

『第2に、政治的、経済的、社会的な力学がセントラル・バンカーに影響を及ぼすようになり、物価上昇率以外の要素を勘案した金融政策を行うことが次第に難しくなっていったことです。』

『第3に、「デフレに陥る危険」ということの意味について、必ずしもバランスの取れた形では正しく理解されなかったことです。』


でもって、この第2と第3の説明が昨今国内で妙に盛り上がって参りましたインフレ目標がどうしたこうしたという話に対するカウンターとしての説明になっているのですが、例によって時間と量の関係上週明けにでも。まあ一読推奨。










2010/04/22

お題「西村副総裁講演は先般の総裁講演とはトーンが違う感じが」

お題が長いですかそうですか(後でインデックス作った時にお題が単に「副総裁講演」とかだけだと自分が何年後かに見なおした時に困るのよね^^)。

ということで西村副総裁講演ですが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1004d.pdf

○まず読んだ感想なんですけどね

お題に書いた通りの感想でございまして、景気や物価見通しに関しては「循環的には回復しているけれども回復の持続性にはリスクがある」「物価の先行き期待の低下への懸念」などを指摘していまして、先般の「判断を一歩前進」とやたらと元気の良い(KYとも言うが)白川総裁の会見とはトーンが違いますなあという感じです。

また、「景気見通しを引き上げる中での追加金融緩和(のようなもの)の実施」に関する説明もしていまして、まあこの辺りを読みますと、追加緩和をしそうも無かった(ので何を考えとんじゃゴルァ!という書き物をしましたが^^)白川総裁定例会見のトーンを火消しするような感じを受けましたです。

つまりですな、間もなく出てくる展望レポートでは「循環的な回復を指摘しながら物価などの構造的な下押し要因を強調する」というロジックを出して、追加緩和(のようなもの)実施のロジックを用意しておくという形になるんでしょうなあという予想を強めてみたくなったあたくしなのでした。

あたくし的にはそーゆー論理展開をしておかないと景気が腰折れするまで追加緩和出来なくなってしまうから、まあ上記のようなロジックを出して欲しいもんですなあと申し上げていたクチですので、いやあこれは無難な方向になりそう(白川総裁会見のKY突撃のトーンのまま展望レポートを突っ込まれたらさすがに日銀マズイでしょと思ってましたからね)で良い傾向じゃのうという所です。

#ではその追加緩和のようなものをしたら債券市場がどうなるかと言うと、これがまたリアルの短期金利はそんなに下がらないのですから金利の下げよりも例によって他市場の動向に影響されそうな気がしますけどね

では内容をサラサラと。基本的に現状認識に関する部分は華麗にスルーして先行き見通しに関する部分を引用しますね。


○世界経済のリスクで中国に注目とな

世界経済の先行きに関して。

『先行きは、国際金融資本市場の安定が続く中で、海外経済も改善が続いていくとみています。新興国が拡大を続けるほか、欧米経済も、バランスシート問題の解消に時間がかかるとはいえ、徐々に回復の度合いが高まるとみられます。ただし、こうした見通しには、様々な不確実性があります。』

で、その不確実性ですが。

『まず、国際金融資本市場は、長めの期間の資金取引で、市場取引の厚みや流動性の回復が遅れています。また、欧州周辺国の財政赤字を巡る問題を契機に、各国で財政の健全性や持続可能性への関心が高まっています。』

まあこの部分は「はあはあそうですか」という感じですが、長めの期間の資金取引って色々な流動性供給プログラムを実施したら市場取引減るわなという気がするです。

『次に、海外経済の先行きにも、不確定要因が数多くあります。先ほど述べた欧米先進国のバランスシート問題の解消が想定以上に時間を要しますと、それだけ経済の足を引っ張ります。』

日本の経験からすると足を引っ張るだろうなあと思います。

『また、新興国経済の過熱懸念という新たな悩みも生まれつつあります。中国では、住宅価格が都市部を中心に急上昇しています。このような上昇は、従来からの沿海部に加え、最近では内陸部でもみられます。加えて、賃金や物価の上昇率も徐々に高まりつつあります。また、その他の多くの新興国でも、インフレ懸念が生じています。これらの新興国では利上げや貸出抑制策などを発動していますが、いずれも難しい対応を迫られています。』

ということで新興国の話があるのですが、これが白川総裁様あたりにかかると物価方面の上振れとかの話になってもおかしくは無いのですけれども、この後のトーンも警戒的ですな(^^)。

『抑制策が強すぎますと、経済のメインエンジンに急ブレーキがかかってしまいます。他方、抑制策が不十分な場合には、目先は景気の上振れ要因となりますが、先行き、行き過ぎを大きく是正する必要が生じ、結局経済を不安定化させてしまう恐れがあります。』

これは下振れリスク強調ネタという感じですわな。で、その後ですが、

『特に中国経済の先行きには注意が必要です。』

ということで中国経済に関してこのように指摘しています。

『情報通信技術の発展を最大限に利用して、世界的な分業体制の構築が進む中で、中国は「爆発的」ともいうべきペースで成長し、一部では「世界の工場」と言える存在となりました。これまで先進各国は、成長の過程で、人的・技術的・資金的な面での制約を乗り越えながら、いくつもの段階を経て発展してきました。ところが、中国は、技術や金融のグローバル化の恩恵により、これらの制約を一度に乗り越え、かつ同時にいくつかの発展段階が混在するような発展を遂げつつあります。』

ほうほう。

『しかしこのような成長が続いていけば、いずれ労働力や資源などの面にボトルネックが生じ、急速にインフレ圧力が強まり、あるいは成長の天井に達してしまう可能性も否定できません。その場合には、わが国の経済にも大きな影響が及びます。』

と言う事で、中国失速リスクを警戒というお話でした。


○国内景気回復持続力について

国内景気に関しては先行き持ち直しという話で、各需要項目に関する指摘がありますがその辺はスルーしまして。

『市場などでは、一頃、いわゆる「二番底」の懸念もありましたが、景気が再び大きく落ち込む恐れはかなり後退したと判断しています。』

なのですが・・・・

『では、その先の回復持続力はどうでしょうか。ポイントは、金融危機に際し講じられた景気刺激策の効果が次第に弱まっていく時点で、民間需要の自律的な回復力が高まり、うまくバトンタッチできるかです。』

さいですな。

『民間需要が十分に回復していなければ、懸念されていた景気の落ち込みが、後ずれしたタイミングで起きてしまいます。しかし輸出・生産の改善が持続すれば、設備の稼働状況は改善し、売上げ増加から収益も回復します。そうなれば設備投資が回復する条件が整いますし、次第に産業の裾野を構成する中小企業、あるいは給与や配当などを通じて家計へと、回復の広がりが見えてきます。このように、持ち直しが持続すれば、いわば助走区間が長い分だけ、景気回復の基盤がより固まっていく形になります。』

では自律的な回復をするのかという点ですが、

『ただ、中小企業や家計へと回復が広がるタイミングは、やや幅をもってみておく必要があります。輸出や生産を担う企業は、厳しい国際競争圧力に晒されています。競争力維持の観点から海外投資を優先したり、従業員への還元を抑制する可能性もあります。部品調達先が海外にも拡がり、国内関連企業に波及する度合いが低下しているようにも見えます。これらの結果、中小企業や家計への波及が遅れる可能性も意識しておく必要があると考えています。』

これは前回の景気回復過程を勘案すると「可能性を意識する」というよりは「蓋然性が高い」というレベルのような気がします。所謂ダム論的な考え方は残念ながらシナリオとしてはちょっとねえという感じがしますので、そーゆー辺りを考えると回復の持続性ってどうよという話になるような気がせんでもない。


○成長期待の低下も不確実材料とな

『景気の先行きを巡っては、このほかにも上下両方向に様々な不確実性があります。このうち、海外情勢に関する点は、先ほど申し上げた通りです。加えて、国内に起因する不確実性として、企業の成長期待の動向が極めて重要です。』

なるほど。

『金融危機の発生以降、企業は将来に対して慎重なスタンスを急速に強めました。その後、徐々に改善しましたが、企業経営者の方々からは、先行きに自信が持てないという声が根強く聞かれます。先行きに対する悲観的な見方が強まりますと、企業活動の萎縮にも繋がります。この点、内閣府が実施した大企業を対象とするアンケート調査では、中長期的な成長期待は維持されています。ただし、企業数でも従業員数でも、圧倒的多数を占めるのは中小企業です。今月初に公表された短観では、中小企業の業況感は、改善しているとはいえ、大企業、あるいは景気全体の持ち直しに比べ、遅れが目立ちます。』

ということで、短観って割と良さげな数字だったような気がするんですが、中小企業の持ち直しの遅れをここで指摘するというのも何かこう先般の白川総裁会見に見られた「循環的な回復は絶好調だぜヒャッハー!」的な雰囲気とは違いますなあという所で。


○物価見通しに関して

物価に関してはまああまりパッとしない見通しになっていますが、その中で先行きに関する好材料に関する指摘が幾つか。

『しかし、デフレ克服へ向け、幾条かの光が見え始めているとも言えます。』

『1つは、企業の価格設定態度や消費者の購買行動に生じている微妙な変化です。』

ということで、際限のない価格競争に歯止めが掛かりつつあるという指摘。

『2つめに、昨年春先に輸出や生産が底を打ち、その後景気が全体として持ち直しを続けている影響が、今後次第に出てくることが挙げられます。』

って何ですかという話ですが。

『過去の経験則では、景気変動が物価上昇率に影響を与えるまでには1年程度の時間的なずれがあります。その意味では、昨年央から今年春までは、その1年前の急速な景気の落ち込みが、時間差をもって物価に強い下方圧力をもたらした時期といえます。そして昨年春以降の景気持ち直しの影響が物価に及んでくるのは、むしろこれからと見ることができます。』

これはまあ先般白川総裁も指摘していました。ホンマカイナという気もするが。

『3つめは、今まで述べた企業の価格設定態度の変化や、景気持ち直しのずれを伴った影響を反映して、物価の基調的な動きに変化がみられることです。』

ということですが、コアCPI刈込平均の下落幅が縮小している点を指摘しています。引用は長くなるので割愛。

『以上を踏まえますと、先行きも景気の持ち直しが続いてマクロ的な需給バランスが改善していくため、物価下落幅の縮小傾向が続いていくとみています。』

と日銀のメインシナリオに沿っていますが、リスクに関しては2点を指摘。

『1点目は、海外経済に起因するリスクです。これはデフレ方向、インフレ方向の双方向にリスクがあります。』

となっていますので、まあこちらでは上振れのリスクも示していますが、もう1点の方には注意でしょうな。

『2点目は人々の物価観です。人々が今後もデフレが続くという予想を強めますと、物価には押し下げ圧力がかかります。この点、人々の中長期的な予想物価上昇率は、サーベイデータで見る限り、1%程度で維持されています。しかし主観的な要素であるだけに、今後変化が生じる可能性は否定できません。』

『従来から、人々の物価観は、過去の物価変動に影響されやすいと言われています。この点で注意したいのは、今年度からの高校授業料の実質無償化が、消費者物価の変動率を0.5%前後押し下げるとみられる点です。こうした制度変更に伴う特殊要因の影響は1年間で剥落するもので、基調となる動きとは切り離して考えるべき性格のものです。しかし、表面上は当面の物価下落幅を拡大させるだけに、人々の物価観に影響を与える可能性には注意しておく必要があると思います。』

ということで、そーゆー点では先般の消費者意識アンケートでも微妙に物価見通しが下がっているので、懸念材料ではないかという話になるんでしょうな。



○金融政策に関して

で、金融政策に関してですが・・・・・

『金融危機のように大きなショックが生じた際にとるべき対応は、ある意味で明確です。そこで必要とされるのは、適時に(Timely)、対象を絞り(Targeted)、期間を限った(Temporary)、応急措置です。CP・社債市場の急激な機能低下に対処した時限措置は好例です。対照的に、デフレに象徴される経済の沈滞は根深い問題であり、その対応は金融危機への対応とは性格が異なります。生活習慣病に即効性が高い薬がないように、直ちに目覚しい効果がみえるわけではありませんが、粘り強く金融緩和を続けていくことが大切だと考えています。』

という辺りから「循環的な回復とデフレの問題は切り分けて考える」というようなロジック展開が見える気がするのはあたくしの思い込み成分も入っているとは思いますが、まあそういう気がするですな。で、ちょっと先に行きまして、先般景気上振れの中で金融緩和を行った理由について。

『景気が上振れ気味であるなかで追加緩和に踏み切ったことに、意外感を持たれる向きもありました。しかし、日本経済が、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するにはなお時間を要する状況が続いているため、追加的な緩和措置を通じ、経済・物価の改善の動きを確かなものにすることが必要であると判断しました。』

『この点は、次のことを考えて頂くとご理解頂きやすいのではないかと思います。企業活動が萎縮しているときには、低金利の効果が十分に発揮されない恐れがあります。企業に意欲がない限り、低金利が投資や雇用の増加に繋がるとは限らないからです。』

経済が回復してコンフィデンスが戻ったら従来の緩和措置の効果が高まるという話はこの前コーンさんも言ってましたし、まあそれはそうでしょうなあと存じます。

『このことを、古くからある慣用句を用いれば、「馬を水辺に連れて行くことは出来ても、無理やり水を飲ませることはできない」と表現することがあります。しかし逆に、消耗していた馬が少し元気になったタイミングを捉えて水辺に連れて行けばどうでしょう。喜んで水を飲み、また元気に走り出すようになる可能性が高まる、と言えるのではないでしょうか。今回の追加緩和措置は、このような形で、経済・物価の改善を確かなものとすることに資すると考えています。』

まあ何か判ったような判らんような話ですが、回復過程において金融緩和を継続した場合には押し上げの効果が高まりますよという話ですが、そっちのロジックで今後も突き進むのは追加緩和のような物をやるのに中々ムツカシヤという感じも致しますし、デフレの構造要因を強調した方がロジックが楽なのではないかという気がします。で、今回は何気に下ぶれとデフレの話を強調しているようなので、展望レポートではその辺りを強調するんじゃないかなあというのはあたくしの勝手な妄想です、はい。

ただまあさすがに追加緩和のような物をして金利が下がるかと言う話に関してはこれまた判ったような判らんような説明で「回復過程で効果が高まるんです」という話をしてますわな。

『金利が既に相当低いことから、金融緩和による低下余地は自ずと限られてきます。』

そらそうよ。

『しかし、これは、金融緩和が限界に達しているということは意味しません。企業にとっては、資金調達金利の水準は、収益率との関係でこそ意味を持つからです。仮に低コストで資金を調達できても、有望な投資案件に乏しければ、企業活動を活発化する力は限定されます。逆に、低金利が継続するなかで、景気が回復し、収益性の高い案件が増えてくれば、低コストで調達できる資金の使い勝手が大きく向上します。今後、景気は持ち直しを続け、企業の収益率も更なる改善が見込まれます。その中で、日本銀行は、極めて緩和的な金融環境を維持することを明確にしています。つまり、金融緩和の効果は、今後、一段と強まっていくことになります。』

まあそういうことですので、基本的には「このままでも緩和効果は高まりますよ」という事なのでしょうけれども、景気判断上振れの中でも緩和はしますという話をしたので、その点では先般の白川総裁のKYちっくな会見とはトーンが違いますねえという感じがしましたです、はい。


#引用大増量企画でどうもすいません







2010/04/21

お題「オペに関するマニア雑談/しつこくコーン副議長ネタ」

GSがどうのこうのってやってますけど、金の卵を産む鳥を潰す訳無いんですから(金融以外で米国が新たに稼ぐネタをでっちあげるというなら別だが)ど〜せガス抜きの域を出ないんでしょ、などという事をつらつら思う今日この頃。

#しかし相場が1.3%台だとヒャッハー感が無くてどうもねえ

○オペのバランスに関する雑感

という程の話でも無くて単なるマニア雑談なのですが(汗)。

えーっと、昨日当座預金残高が17兆円だという話をしておりましたが、ここもとというか今回の積み期間に入ってから当座預金残高が17兆円台で推移するようなオペレーションになっております。でもGCレートちゃんは0.12近辺で推移しているようで、昨日も資金供給オペの足切りが全部0.12となっていた(新型オペは別ですが)ですわな。

何でGC下がらんかなあとか思うのですが、良く良く見ると朝8時前に日銀が公表する当日需給見込みで出てくるベースの準備預金残高が相変わらず12兆弱で推移しているので、一部に資金が妙に偏在しているという状況がありますのと、もともと資金不足時期に沢山あったオペ残が資金余剰の為減って来ている上に、最近では固定金利の期間が長目のオペが増えている事から短いオペに皺寄せがきている面があるのかなあなどとつらつら思うのでありました。

つまりですな、資金不足期のピークで49兆とかあった供給オペ残高ですが、直近では32兆レベル(先日は30兆割ってました)となっているので、そもそも債券ディーラーの在庫ファンディングとしてオペで調達している分がマーケットに出てくるようになり、一方で財政の入り払いの関係で資金は余剰と言っても基本的に債券ディーラーにその金が回ってくる訳でもない(市中で余剰になっている部分ってまずは預金受け入れ金融機関に入るから)ので、その分だけ足元での市場調達が増えるのでGCレートが下がりにくくなるという話。

その上、固定金利で3か月というオペが徐々に増えてきている訳でして、これが直近で12.8兆円まで増えた(明日は13.6兆円)ので、これが短いオペの実施余地を食っている格好になって、出来上がりとして当座預金残高は積み上がっていても短いオペはそんなに増えずとなってGCレートは下がり難くなる(ので財政要因での揚げが出てくるとオペは自然に増えてGCも下がるのですが)一方で資金そのものは当座預金残高17兆円というように全体としてはあるので、コールレートはしらっと下がっているって格好になっているのですな。


で、まーそんな感じの推移なのですが、ここもとコールの加重平均が0.1%を割るのが平常の風景になって参りまして、そりゃまあディレクティブでは0.10%近辺ということですからまあ別によろしゅおすのですが、従来やたらめったら精密誘導していたのが、固定オペが増えたり、ターム物金利がどうのこうのということでGCレートを気にしたり(っていうか短国の金利に影響してより長い所にも効いてくるのだから気にするのは当たり前なのですけれども)という事をやっていく中で、吸収オペによるツイストを併用しないとなると、徐々に精密誘導がしんどくなってくるんじゃないですか、という感じがするのであります。それを決定会合的にどうするのでしょ、ってツッコミは今の所そんなに出てないと思うのですが(まあ月中平均でそんなに大きくはずれていないから)、なんちゃって緩和を強化するという事になると益々調節担当課の方はやりにくくなるでしょうな、と思います。

あと、それはそれとしてもう一つ思ったのは6月末問題でございまして、6月って年金の払い月な上に国債の4半期大量償還がある(けど法人税やその他の税揚げもあるから3月と比較してどっちがより余剰地合いなのか良く判らんが)ので、またまたオペが打ちにくくなる中でやってくる4半期末というのもど〜なんでしょうね、というのを忘れないうちに申しあげておきたく存じます(^^)。



○コーン副議長の3月24日講演ネタはまだ続く(しつこい)

ではまたコーンさんのネタで(引っ張ってどうもすいません)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

本文11ページの『Inflation Objectives』というの所は、まあ論点としては他の人も扱っているネタでそんなに特殊な話を展開している訳でも無いのですけれども、これはこれで中々興味深かったです。

『The final homework assignment concerns the inflation objectives of central banks. Central banks have widely chosen to target inflation rates near 2 percent. The Federal Reserve is required by law to conduct monetary policy to achieve maximum employment and stable prices.』

『We haven’t announced an explicit inflation rate target consistent with that dual mandate, but the Federal Reserve governors and Reserve Bank presidents publish our individual forecasts for inflation over the longer run, conditional on our individual views of appropriate monetary policy. Those forecasts indicate that most of the FOMC participants believe that inflation should converge to 1-3/4 to 2 percent over time.』

ということでインフレ目標の話ですが、多くの中央銀行は2%近くのインフレ目標を設定していまして、FRBは明示的なターゲットを示してはいないですが、地区連銀総裁やらFOMCのボードなどが個人的なビューとして表明していて、その数値は1.75%〜2%に収斂してますよと。

というマクラの次に出てくるのがインフレ目標に関する最近のトピックに関するお話です。


○ゼロ金利制約を逃れる為に平時にインフレ目標を引き上げる件について

IMFの人が個人的見解として出していた論文で一時話題になっていましたが。

『Recently, some prominent economists have called for central banks to raise their inflation targets to about 4 percent. Shifting inflation targets up would tend to raise the average level of nominal interest rates and thus give central banks more room to lower interest rates in response to a bad shock to the economy before running against the zero bound.』

(拙訳)最近、一部のエコノミストが「中央銀行がインフレ目標値を4%近辺に引き上げる」という事を提案しています。その考えによりますと、インフレ目標値を引き上げる事は、平均的な名目金利水準の引き上げに繋がり、それによって経済にショックが起きて金利を引き下げる場合に、名目ゼロ金利制約に到達するまでの糊代を作ることができるということです。

で、その件に関してコーンさんの見解ですが、結論から申し上げると否定的見解です。

『Although I agree that hitting the zero bound presents challenges to monetary policy, I do not believe central banks should raise their inflation targets. Central banks around the world have been working for 30 years to get inflation down to levels where it can largely be ignored by businesses and households when making decisions about the future. Moreover, inflation expectations are well anchored at those low levels.』

(拙訳)名目ゼロ金利制約は金融政策運営を難しくする点に関しては私も同意しますが、中央銀行がインフレ目標値を引き上げることは反対です。中央銀行はこの30年間に渡って、家計や企業が物価上昇を気にしないで経済活動を出来るような水準にインフレを引き下げるように努めてきていました。また、インフレ期待もこの低い水準で落ち着いています。

『Increasing our inflation targets could result in more-variable inflation and worse economic outcomes over time.』

『First of all, inflation expectations would necessarily have to become unanchored as inflation moved up. I doubt households and businesses would immediately adjust their expectations up to the new targets and that expectations would then be well anchored at the new higher levels. Instead, I fear there could be a long learning process, just as there was as inflation trended down over recent decades. 』

『Second, 4 percent inflation may be higher than can be ignored, and businesses and households may take inflation more into account when writing contracts and making investments, increasing the odds that otherwise transitory inflation would become more persistent.』

(拙訳)中央銀行がインフレ目標値を引き上げることは、インフレ率の振幅の拡大を招き、先行きの経済の悪化をもたらすでしょう。

まず第一に、現在安定しているインフレ期待は実際にインフレが進行すると安定化しにくくなるでしょう。また、家計や企業のインフレ期待が新しい4%のインフレ率にシフトして安定するかという点にも疑問があります。その代わりに私が懸念するのは、インフレ期待のシフトに長い時間が掛かることです。現在のようにインフレ期待が安定状態に至るまでに10年以上の時間が掛かっています。

第二に、4%という物価上昇率は経済活動において無視できない数値であり、家計や企業の経済活動において、物価上昇を考慮に入れないとならなくなり、その結果として一時的なインフレがより持続的になる可能性を高めると考えられます。


・・・・とまあそういう事で、長期的なインフレ目標を引き上げる件については否定的で、より大きな物価変動を招くだけですよという話なのですな。

『For both these reasons, raising the longer-term objective for inflation could make expectations more sensitive to recent realized inflation, to central bank actions, and to other economic conditions. That greater sensitivity would reduce the ability of central banks to buffer the economy from bad shocks. It could also lead to more-volatile inflation over the longer run and therefore higher inflation risk premiums in nominal interest rates. It is notable that while the economic arguments for raising inflation targets are well understood, no major central bank has raised its target in response to the recent financial crisis.』

(拙訳)これらの理由によって、中央銀行がインフレ目標数値を引き上げる事は、最近の安定したインフレや金融政策や経済状況に対する期待をより過敏なものにするでしょう。そのようによって引き上げられたセンシティビティーによって、中央銀行が経済のショックに対して行動する為のバッファーを引き下げることにもなるでしょう。また、長期的な物価上昇幅がより大きくなれば、名目金利に対するインフレリスクプレミアムを引き上げることになるでしょう。中央銀行がインフレ目標値を引き上げる事に対しての経済学的な議論内容は広く認識されているにも関らず、世界の主要な中央銀行の中で最近の金融危機に対応してインフレ目標値を引き上げた所が無いという事は注目すべきことです。


○プライスレベルターゲットについて・・・・は時間切れ

どうも時間配分が悪くて(涙)ノリノリになってくる頃に時間切れという誠に遺憾極まりない状態が最近多くて困ります(早起きするか前日に作れというツッコミは認可する^^)。

一応冒頭部分だけ引用しておきますが続きはまたそのうち(汗)。

『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI near that line』

『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative shock drives prices below the target level, people will automatically expect the central bank to increase inflation for a while to get back to trend. In principle, that expectation would lower real interest rates without the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make long-term economic decisions because they could anticipate that inflation misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future price level.』

所謂プライスレベルターゲットの議論に関してのアプローチに関するコーンさんの話がこの後に出てくるのですが、その前にプライスレベルターゲットのメリットについての説明ですな。「期待の安定化」という意味で言えばプライスレベルターゲットの方が優秀じゃないのかねという話はまあそれはそうかもしれませんが・・・・・

『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I have serious doubts that it would work in practice.』

超意訳するとすれば、「プライスレベルターゲットの考えってお話としてはとっても美しいけど、実際にワークしないですよねえwwww」と言った所ですが、じゃあ何でそう考えるかの話は後日(まあ上記URLの本文18ページ以降に書いてあるので読んでちょ)。






2010/04/20

お題「すっかりFED虫干しネタばっかで恐縮です(汗)」

と言いつつ最初は展望レポート雑談(^^)

○展望レポート関連余談(^^)

まあ展望レポートというのは待っていますが、それで追加緩和のようなものが出ても債券市場にどういう影響が出るかというと結局他市場次第な面があるので何だかねって所もございまする。

まあつらつらと今考えている所なのですが、時々展望レポートで物価見通しがどうなるというような観測報道が出ていると思いますが、まあ腰折れは無いにせよ別にこのまま順調に回復するかどうか怪しいという中で循環的な回復をやたら強調する白川総裁の定例会見でのスタンスはどう見ても調子に乗り過ぎ。

そもそも足元は何となく円高が止まって株も比較的順調ですし、政府閣僚の皆様もやっと現実というか市場がどう見るのよという点を認識してきたようで、そこまで露骨な政治圧力発言をしなくなったのでだいぶ落ち着いてはいるのですが、ど〜せ今の内閣支持率とか見ておりますと「困った時には誰か叩く」という事で日銀を叩く圧力がまた出てきても何らおかしく無い。

そうなった時に、今の調子で総裁様が循環論による回復を強調していると、その後追加緩和のようなものをやる破目になった場合(というか6月に今の内閣が持ちこたえていれば^^出てくるであろう新成長戦略とセットで追加緩和のようなものをするのは絵として美しいですし)にまたまた言ってることとやってる事の整合性が取れずに、「ああまた日銀は差し込まれたのね」という見方が広がり、更に日銀の言動に対する市場の信用が無くなるという話になりませんかねえと。

それから、政治的な面もさることながら、12月以降の一連の緩和のようなものによって「デフレ脱却への強い姿勢」を示した訳でして、その中で今年度の物価見通しがマイナス(さすがに今年度は高校授業料無償化を差し引いてもマイナスでしょ)となるというのであれば、「向こう1年程度のデフレ継続を予想するのであれば、そのデフレを脱却するために何か追加措置を取らなくて良いのか」というツッコミが来ても何らおかしくは無いのでありまして(−−;)、そう考えた場合もやはり循環的回復の強調ばかりするのも間抜けだと思うのですよね。


ということで、まあ展望レポートですが、足元の循環的な回復は回復なのですけれども、そればかりを強調すると「じゃあデフレの方はどうなの」という話になってくるのでありまして、そういう点を考えるとあたくしが思いますに、デフレの問題に関する問題意識の強調というのは相当強いトーンでやっておかないと、将来の日銀の金融政策に関して変な意味で展望レポートが足かせになってしまう(展望レポートで上方修正したのに追加緩和をしたのは政策コミュニケーションとして整合性が取れていないでしょ、というコミュニケーションの問題)のでございまして、その辺りをノーガードで回復ばっかり出してこられるとまた6月に向けて楽しい不協和音という感じになるのではないでしょうか。

#と何となく考えている事をつらつらと雑談で


○当座預金残高が17兆円ペースな件について(メモ)

昨日は共通担保12000億円実施。なんか金曜の資金供給もちょっと多目の感じがしましたし、昨日も昨日でどちらかと言えばスポットで新型オペを打って8000億円かなとか思ってたら1兆2000億のトム共通担保。まあ月曜火曜の資金需給がちょっと短資各社の事前予想よりも若干下ぶれしたのはあるのですが、新しい積みに入った所なので最初からそんなに当座預金残高を上振れさせてこないかなあとか思っていたので、オペ実施によって今日も当座預金残高が17兆円に乗ったのはあたくし的には「ほー」という感じです。

今年は連休が5連休になるので、大型連休前にあまり進捗を進めてしまうと連休明け後にバランスとるのが大変なような気もするのですが、足元のGCレートが先週強めだったから配慮しているのでしょうかねえ。

というメモでした。



相変わらず引っ張りますがコーン副議長の3月24日講演ネタ続きの続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

○資産バブルのような金融市場の不均衡に金利操作を割り当てるべきか

PDFだと本文9ページ目から。

『The past few years have illustrated two lessons about the relationship between macroeconomic stability and financial stability. First, macroeconomic stability doesn’t guarantee financial stability; indeed, in some circumstances, macroeconomic stability may foster financial instability by lulling people into complacency about risks. And second, some shocks to the financial system are so substantial, especially when they weaken a large number of intermediaries, that decreases in aggregate demand can be large, long lasting, and not quickly or easily remedied by conventional monetary policy.』

ここ数年の教訓ということですからサブプラ問題発生以降の教訓ということで、マクロ経済の安定と金融の安定に関する点に対する教訓が2つですと。で、その1つ目は「マクロ経済状況が安定しているからと言っても、金融が安定するかというと必ずしもそうではなく、ある種の状況の下では、金融機関のリスクテイク行動が拡大して金融の不安定さを蓄積していく場合もある」という点で、2つ目としては「金融システムに大きなショックが起きた場合、特に市場参加者の多くに影響するような場合には、そのショックによって市場が大きくシュリンクして影響も長く続き、伝統的な金利操作だけでは不十分である」というような事を書いているようですな。

ということは、いわゆるBISビュー対FEDビューってのが気になる所ではございますが、まあ「バブル崩壊してから積極的な金融緩和で何とかなる」というのはダメだというのは身を切って証明されたと思われますが、じゃあ事前対策に関する方法についてのお題がコーンさんの3番目の研究課題なのでございます。

『Given the heavy costs of the financial crisis, the question naturally arises as to how it could have been avoided. My third assignment is to reexamine whether conventional monetary policy should be used to lean against financial imbalances as well as aim for the traditional medium-term macroeconomic goals of maximum employment and price stability.』

(拙訳)金融危機のコストが大きいと言う事は、それを防ぐための方法はどうすべきかという問題が浮上します。私の3番目の研究課題は、通常は中期的なマクロ経済の安定に対して割り当てるべき伝統的な金融政策を、金融の不均衡拡大に対して割り当てるべきかどうかを再検討することです。

と言う事ですが、その先にあります回答は結論から先に言っちゃうと「金融の不均衡に伝統的な金融政策(=金利操作)」を割り当てるのは不適切ではないかという話です。

『One key question is whether we are likely to know enough about asset price misalignments and the effects of policy adjustments on those misalignments to give us the confidence to deliberately tack away for a time from exclusive pursuit of our macroeconomic objectives. Obviously, reducing the odds of financial crises would be very beneficial, but we need to balance that important objective against the potential costs and uncertainties associated with using monetary policy for that purpose.』

めんどい(+書いててヘタクソな日本語なので我ながらこっぱずかしい)ので拙訳をしないのですが(^^)、よーするに資産価格のミスプライスというかバブル現象と言われましても、そもそもがそのミスプライスがいかほどの物なのかというのを正確に計測する事は難しいですし、中期的なマクロ経済の安定とのバランスを取るのも難しいですし、金融の不均衡に金利操作を割り当てる事のコストもあるという話ですな。

『One type of cost arises because monetary policy is a blunt instrument. Increases in interest rates damp activity across a wide variety of sectors, many of which may not be experiencing speculative activity.』

(拙訳)金融の不均衡に金融政策を割り当てる場合に起きる問題は、金融政策が経済全体に幅広く効く事によって引き起こされます。金利の引き上げは投機活動だけではなく、経済活動に対して広範な抑制効果をもたらします。

『Moreover, small policy adjustments may not be very effective in reining in speculative excesses. Our experience in 1999 and 2005 was that even substantial increases in interest rates did not seem to have an effect on dot-com stock speculation in the first episode or on house price increases in the second. And larger adjustments would incur greater incremental costs.』

(拙訳)更に言えば、少々の金利引き上げを行っても投機活動を抑制する効果は低いでしょう。99年と05年における私たちの経験によれば、かなりの金利を引き上げた場合でも、それぞれの時期に起きたITバブルや住宅バブルの抑制に有効だったとは思えません。そして、更に大きな金利調整を行えばより大きなコストを招く事になります。

『As a consequence, using monetary policy to damp asset price movements could lead to more variability in output and inflation around their objectives, at least in the medium term. Among other things, greater variability in inflation could lead inflation expectations to become less well anchored, diminishing the ability of the central bank to counter economic fluctuations.』

(拙訳)結果として、金融政策(金利操作)を資産バブルに割り当てることは、生産活動や物価の中期的な安定などを阻害する結果になるでしょう。さらにより物価変動が大きくなった場合には、現在安定しているインフレ期待が不安定化し、その結果としてFRBが経済の安定に対する能力を弱めることになるでしょう。


ということで(実は寝坊したので量が少ないのですが)、ここまでがコーンさんの基本認識でございます。ではどうすれば良いかという話なのですが、後で引用するかもしれない(一々本文にしないで週末にこっそり書いてこっそりアップするのが妥当ですかそうですか)のですが取り敢えずあたくしが読んで何となく把握したのは・・・・・

「基本的には金融の不均衡(資産バブル)問題に関しては金融政策ではなくて、監督行政を割り当てるべきである」、というのがコーンさんの認識。

では中央銀行は単純にプルーデンス政策をやってりゃ良いのかというとそれだけでもなくて、コーンさんは実質金利が極めて低い状態が継続した場合には、より高い利回りを求める行動によって資産バブルが発生しやすくなるという指摘を受けて、貯蓄と投資のバランスや実質金利、更に実質長期金利に関する考察も重要であると指摘しています(ような気がします、詳しくは本文を見てちょ)。

ということですが、4番目のお題が中々大ネタですので明日以降にまた(ネタの無い時に)参りたいと存じます。





2010/04/19

お題「月曜につき虫干しネタ系でFOMC議事要旨」

さあ普天間問題盛り上がって参りました・・・・・って何だかねえorz

まずは虫干しでFOMC議事要旨。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100316.htm

○特にホーキッシュな話は無く

全体的にざざーっと読んでみたのですが、景気見通しに関する部分のトーンでタカ派的な部分ってまあ無くて、基本的には「景気は回復しているけれども、色々と足かせになる要因はあるよね」という話です。

で、最近FOMCの声明文で必ず出てくる「相当の期間にわたって異例の低金利政策を実施する事が正当化される」という所に出てくる条件、つまり『continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』って事で、資源の利用状況の低さ、インフレのトレンドの抑制、インフレ期待の安定という3本柱に関しても特に懸念なしという感じですな。

で、その辺に関しては『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最初のパラグラフにインフレの見通しを示している文言があるのですが、そこに見事に見通しが書いてあります。

『Participants saw recent inflation readings as suggesting a slightly greater deceleration in consumer prices than had been expected. In light of stable longer-term inflation expectations and the likely continuation of substantial resource slack, they generally anticipated that inflation would be subdued for some time.』


ということで、引き続き実際のインフレが抑制されているという話と、より長い期間のインフレ期待に関しても「リソースのスラック」ということで、まあ様するに資源の利用状況の低さという話でして、結論としてはインフレも暫くの間抑制されているって事で、特にガイダンスの文言をいじる雰囲気も無しという感じではないでしょうか。


また、先行きに関してですが、その2つ先のパラグラフにありますけれども、「先行きに関しては経済活動が強まるという見通しに一致するデータが出ているが、回復を阻害する要素がありますよ」という話を並べています。

『While participants saw incoming information as broadly consistent with continued strengthening of economic activity, they also highlighted a variety of factors that would be likely to restrain the overall pace of recovery, especially in light of the waning effects of fiscal stimulus and inventory rebalancing over coming quarters. 』

では何ですかというと、

『While recent data pointed to a noticeable pickup in the pace of consumer spending during the first quarter, participants agreed that household spending going forward was likely to remain constrained by weak labor market conditions, lower housing wealth, tight credit, and modest income growth.』

労働市場に関しては一応改善という話にはなっているのですけれどもね。

『For example, real disposable personal income in January was virtually unchanged from a year earlier and would have been even lower in the absence of a substantial rise in federal transfer payments to households. Business spending on equipment and software picked up substantially over recent months, but anecdotal information suggested that this pickup was driven mainly by increased spending on maintaining existing capital and updating technology rather than expanding capacity.』

『The continued gains in manufacturing production were bolstered by growing demand from foreign trading partners, especially emerging market economies. However, a few participants noted the possibility that fiscal retrenchment in some foreign countries could trigger a slowdown of those economies and hence weigh on the demand for U.S. exports.』

とまあ今の回復に関しても必ずしも万全でない、というのをアピールしているのでございまして、米国で年内(どころか下手したら秋とか)利上げとかいう話が出たり出なかったりするのはナンナンデショという気がするのですけどね。

それから労働市場に関しては「改善の動きがみられる」ものの、それは今の所フルタイム労働などには及んでおらず、サーベーイによる企業の行動はまだ大規模な新規設備投資や新規雇用にまでは及んでいないという話をしています。その結果として、

『A number of participants pointed out that the economic recovery could not be sustained over time without a substantial pickup in job creation, which they still anticipated but had not yet become evident in the data.』

ということで、「労働市場の回復無くして景気回復なし」(どっかで聞いたセリフだなおい)ってな話になっていまして、これまたそんなに簡単に引締めモードにならないんじゃないかなあとか外野的には思うのですが。

また、住宅セクターに関する懸念に関しても言及されていまして、こちらに関しては住宅減税関連措置が切れた所でどうなるのかという点を指摘していますな。なお、商業用不動産に関してはどうしようもないのですが、こちらに関しては現状の景気認識に関するところで散々書かれていますが割愛。

で、ここの最後の部分でもう一回インフレ見通しに関する話をしているのでして、「大事なことなどで2回言いました」ってなもんでしょう(違)。

『In discussing the inflation outlook, participants took note of signs that inflation expectations were reasonably well anchored, and most agreed that substantial resource slack was continuing to restrain cost pressures.』

『Measures of gains in nominal compensation had slowed, and sharp increases in productivity had pushed down producers' unit labor costs. Anecdotal information indicated that planned wage increases were small or nonexistent and suggested that large margins of underutilized capital and labor and a highly competitive pricing environment were exerting considerable downward pressure on price adjustments. Survey readings and financial market data pointed to a modest decline in longer-term inflation expectations over recent months.』

ただまあ一部の委員からはこのような指摘も。

『While all participants anticipated that inflation would be subdued over the near term, a few noted that the risks to inflation expectations and the medium-term inflation outlook might be tilted to the upside in light of the large fiscal deficits and the extraordinarily accommodative stance of monetary policy.』

ということで、財政支出の大幅拡大と金融政策の緩和的なスタンスが中期的なインフレ期待を引き上げるのではないかという指摘をしている人がまあいるのですが、先般来引用していますコーン副議長講演(もうちょっと引用すべき所が残っているのですが、現状の金融政策運営に関するインプリケーションとしては先週までに引用した部分でネタはほぼ終了しています)にありますように、現状では超過準備が直接的にインフレに作用していませんという話になっているので、先行きの景気見通しがそんなに強くないうちは中期的インフレ期待も引き続き抑制、というのが少なくとも議長とか副議長とかの認識なんじゃネーノって思うのでありました。


○償還乗り換えの変更に関して

前半の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』というまあ要するに事務方報告みたいな部分の最後の方に「ふーん」という話が。

『The staff also briefed the Committee on potential approaches for managing the Treasury securities held by the Federal Reserve.』

ほいな。

『To date, the Desk had been reinvesting all maturing Treasury securities by exchanging those holdings for newly issued Treasury securities, but an alternative strategy would be to allow some or all of those Treasury securities to mature without reinvestment.』

これは「償還乗り換え方法の変更」という話ですな。ちなみに日銀では償還された買入中長期国債は1年物の短期国債に乗り換えて、それを更に1回短期国債に乗り換える事もできるし償還する事もできる(どちらにするのかは年度ごとに決めてたと思うのだが)のですが、まあそういう方式。以前は新発10年国債に乗り換えていたのですけどね。

#結果として日銀の長期国債買入は「成長通貨の供給」というよりは「長期の資金供給オペレーション(買った長期国債の残存期間+1年か2年の資金供給オペ)」的な性格が強まったのですがその話は以前もしましたよね

『Redeeming all of its maturing Treasury holdings would significantly reduce the size of the Federal Reserve's balance sheet over coming years and hence could be helpful in limiting the need to use other reserve draining tools such as reverse repurchase agreements and term deposits.』

そらそうなのだがその場合には財務省証券の市中消化が増えるのですけどね。

『Redemptions would also lower the interest rate sensitivity of the Federal Reserve's portfolio over time.』

FEDのポートフォリオの金利感応度を減らすっていうのは要するに「長期金利が上昇したらFEDのバランスシートが毀損する」という論点だと思いますが、そーゆー指摘をするんだと「ほほー」と思いましたですよ。

『Nevertheless, the initiation of a redemption strategy might generate upward pressure on market rates, especially if that measure led investors to move up their expected timing of policy firming.』

償還乗り換え方式の変更によって市場で金融引き締めの思惑から金利が上昇するんでネーノという指摘もしているのですが、それはまあはっきり言ってしらっと実行したら誰も気がつかないというのが日本の例だと思います(^^)。

『Participants agreed that the Committee would give further consideration to these matters and that in the interim the Desk should continue its current practice of reinvesting all maturing Treasury securities.』

ということで、まあ今後の検討課題という事ですけれども、結構ネタにしちゃったからこの件でも変な思惑が浮上する可能性もあるのかも知れませんね(少なくともFOMCではその辺を気にしているんですな)。


ということで虫干しネタ恐縮至極。よーするに「特にホーキッシュな話は無いっすけどねえ」という話でございました。










2010/04/16

お題「さくらレポートも上向きとな/コーン副議長が敢えてスルーする論点とは」

寒暖差が無茶苦茶でございますのでお体に注意ありたし。

○さくらレポートから少々

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1004.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1004.pdf(本文)

『各地域の取りまとめ店によると、最近の景気情勢について、前回(10年1月時点)同様、ペースや広がりに差異があるものの、全ての地域が基調判断を「持ち直し」の動きがみられると報告した。』

『今回の地域別総括判断を前回と比較すると、2地域(四国、九州・沖縄)が基調に変化なしと判断したが、それ以外の7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国)では、改善の動きの広がりやペースの加速など、基調に改善方向の変化があると判断された。』

『もっとも、ほとんどの地域が水準の厳しさ(北海道、東北、北陸、近畿)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)に引き続き言及している。』

ということですが、前回1月の冒頭部分ではこういう書き方になっていました(^^)。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、全ての地域が足もとの景気について、「持ち直している」との判断を示したが、ペースや広がりには引き続き差異が認められる。』

『また、ほとんどの地域が、業種間、企業間等におけるばらつきの存在を指摘しているほか、引き続き水準の厳しさに言及している地域が多い。』

『なお、今回の地域別総括判断を前回と比較すると、5地域(北海道、東北、北陸、中国、四国)が基調に変化なしと判断した一方、4地域(関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄)では基調に改善方向の変化がみられると判断した。』

ということで、この前回分と上にあります今回分を比較した場合、ひじょーに良く判ると思いますが、前回は「持ち直しているけどねえ・・・」というようなニュアンスが強いですけれども、今回は「いやあ持ち直してきましたな〜」っていうような感じが伝わって来るのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

まあ基調判断そのものが大きく変わった訳ではないですが、内容が良くなっているという感じではないかと思います。で、前回は上方修正が4地域だったのが、今回また上方修正が増えています。だいぶ前からの時系列を並べると以下のようになりますです、はい。

2010年4月:7地域で上方修正
2010年1月:4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

こうやって見ますと、11月の政府のデフレ宣言によってマインドが悪化したり、その間の円高やら株式市場の下げなどでヤバそうな雰囲気になっていたのですが、ここもとの環境改善に伴い目出度く回復基調のレールに戻ってきましたよ!!というような美しい絵になるのですが、まあ循環的にはそういう感じっすかねえ。

項目別展開

・個人消費

『個人消費は、引き続き全地域が政策効果の持続に言及しているほか、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、耐久消費財以外の分野での持ち直しや下げ止まりの動きを報告した。しかし、過半の6地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)が、引き続き全体としての地合いは弱い、と判断した。』

全体としての地合いは弱い上に政策効果次第ですかそうですか。いやまあそうだと思います。

『品目別の動きをみると、引き続き、全ての地域が政策効果による家電および乗用車販売の増加に言及したが、うち2地域(四国、九州・沖縄)から、乗用車販売の増加ペース鈍化が報告された。百貨店等大型小売店については、全体としては厳しい状況が続いているが、4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)は「売上高の前年比減少幅は縮小している」等と報告した。また、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きに言及した。』

ローゼン麻生のエコポイント恐るべしという所ですな。


・設備投資

『設備投資については、6地域(北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「下げ止まりに向けた動き」を報告したほか、「低水準ながら増加に転じた」との判断もみられた(北海道)。しかし、東北は「大幅な減少」、東海は「低水準での推移」が続いていると報告した。』

水準はまだまだとな。

『内訳をみると、電気機械や輸送用機械等の輸出関連製造業における維持・更新投資の再開の動きを中心に、能力増強投資に踏み切る動きも報告された(北海道、中国、九州・沖縄等)。また、非製造業では、インフラ関連産業の大型投資に複数の地域(東海、九州・沖縄)が言及したほか、小売業での新規出店の動きも報告された(北海道等)。』

で、その設備投資に関しては『地域の視点』でネタになっております。


・生産

『生産については、引き続き全地域で、「持ち直し」ないし「増加」との基調判断が示された。また、一部の地域(北陸、中国等)は、持ち直し傾向を示す業種に広がりが出ていることを報告した。この間、一部地域(東北、四国)は、全体としては持ち直し傾向が続く中にあって、一部高操業先で増産ペースが鈍化していることを指摘した。』

生産に関しては鉱工業生産の数値が良いのと同じく(当たり前か)判断は強めですね。

『業種別の主な動きをみると、自動車・同部品、電子部品・デバイスについては、全地域で「増産」ないし「高操業」の状況にあることが報告されたが、一部地域(東北、四国)で増産ペース鈍化の動きが指摘された。鉄鋼については4地域(北海道、東北、東海、中国)から生産水準の上昇が報告された。一般機械については、6地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)から生産水準の上昇が報告されたが、四国では低水準の操業継続が指摘された。この間、紙・パルプについては、3地域(北海道、東北、四国)から、減産ないし低操業が続いていることが報告された。』

ということで基本的には強い話の方が多いです。


・雇用・所得

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢については、全地域が、厳しい状況が続いていると判断しているが、4地域(東北、関東甲信越、東海、中国)が、改善方向ないし下げ止まりの動きを指摘した。この間、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国、四国)で、有効求人倍率の改善の動きが報告された。』

全体としての水準は低いが、方向性は改善方向と。

『雇用者所得については、ほとんどの地域で減少傾向との判断が示された。この間、2地域(東北、東海)からは「名目賃金の前年比増加」、4地域(北陸、東海、中国、九州・沖縄)からは「所定外給与の増加」が報告された。』

まだ減少傾向ですかそうですか。

・・・・ということで、全体的に水準はダメですなあという感じで、方向性がまあ上向いているから良いようなものの・・・・という所なのではないかと思います。ただまあ方向性が上だから総裁様におかれましては妙に元気になっておられるように見える所がややオソロシスなのですが。


・地域の視点

今回のお題は『最近の地場企業の設備投資動向』となっていまして、この中身はまだざっと読んだだけなのですが興味深いです、がその辺は華麗にスルーして最初と最後の部分だけ。

『各地域における地場企業の設備投資動向をみると、業種間、地域間、規模間に格差を残しながらも、下げ止まりの動きがみられる。即ち、製造業をみると、輸出関連製造業では大企業を中心に、設備投資の抑制姿勢を緩め、能力増強投資に踏み切る先もみられる。一方、内需関連製造業では、需要低迷や価格競争激化による収益悪化を背景に、抑制的な姿勢を続ける先が多い。この間、非製造業については、公共投資の減少傾向や消費者の節約志向、企業の経費節減等を背景に抑制的な姿勢を続ける先が多いものの、生き残りをかけた業種転換や営業力強化のための投資を行う先や、独自の経営戦略で業績を伸ばし、地価下落等を梃子にむしろ投資姿勢を積極化する先も少なくなく、二極化傾向がうかがわれる。』

外需関連は強いけれども内需は厳しいとか、毎度のパターンになっているようで。

『先行きについては、企業による費用構造改善の取組みが進み、世界的な需要回復と相まって収益が改善するにつれて、設備投資も、増加の裾野を広げ、回復傾向が明確化していくものとみられる。しかし、上述の通り、(1)製造業大企業では、今後の需要増加に対応する能力増強投資のかなりの部分を海外で実施することを計画ないし検討している先が多いこと、(2)その結果、一般機械製造業や建設業等の設備投資関連産業への波及効果も割り引かれる可能性があること、(3)下請け中小企業では、取引先の海外進出について行けず、海外企業に受注を奪われる先も少なくないと思われること、等の事情を勘案すると、設備投資およびその関連最終需要の増加テンポは、比較的緩やかなものになる可能性がある。そうした中で、中小企業を中心とした業種転換や業務範囲拡大を企図した新規分野での設備投資の動きに期待が高まる一方、これらの動きを促進、サポートする体制の整備・強化を求める声も強まっている。』

まあ結局の所先行きは慎重な見方になっていまして、元々の基調判断もあまり強く無く、水準感は低いという状態になっていますので、そーゆー点では設備投資はまだまだ回復まで時間が掛かるでしょうなあと。


ということで、つらつら見ると「7地域で回復!」という辺りを見ると強そうに見えるのですが、方向性は上でも水準はまだまだといった所なのではないでしょうか、と思われます。

#ほとんど引用大会でどうもすいません


○コーン副議長が敢えてスルーしたと思われる論点。

今日は昨日の続きでは無く、ちょっと話を戻してみますね(^^)。

さてさて、一昨日と昨日引用したコーン副議長の講演の「長期資産購入の効果」に関する部分でございますが、何気に華麗なまでにスルーされている論点があるのをお気づきになられている方も多いのではないかと存じます。

つまりですな、「ところで長期財務省証券の買入の目的と効果はどうなっておられるのでございましょうか????」という論点でございまして、こればっかりはどうもコーンさん(というかFOMC的にというか)説明が苦しいので敢えて説明せずにスルーしたと言うことろでしょうか。

即ち、一昨日引用しましたように、長期資産買入の目的と効果をコーンさんは、

『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities, and agency debt.』(3月24日講演)

という事で、長期金利を下げると思いっきり言っているのですが、じゃあ財務省証券の買入によって長期金利が下がったかと言えばその結果は皆様ご案内の通りで、アナウンスした瞬間は金利が下がりましたが、その後金利は絶賛上昇して、結局の所10年金利は買入のアナウンスをする前よりも上昇した状態が継続となっています。しかもコーンさんは同じ講演の中で買入の動機および効果として、

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves. The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly; and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, reducing the supply of long-term debt pushes up the prices of the securities, lowering their yields.』(3月24日講演)

通常の状態であれば、政策金利(=短期金利)の操作によって長期国債金利や長期のその他社債などの資産の金利に影響を与える事ができるが、通常の長短金利差などの鞘取りを市場参加者が行わないという状態になった場合に、直接的に金利を引き下げるということで買入を実施しました。で、その買入の効果は金利低下で測られますというような話が続くのですな。

然るに当時の状況を考えますと、確かにまあMBS市場とかどうしようも無い状態にあったのはその通りですが、一方で財務省証券市場は何の問題も無く普通に市場機能が堂々とワークしていた訳でございまして、その点からも何で長期財務省証券を購入したのかは全く持って意味判らんという話になります。

まあその辺を当然ながら自覚しておられるでしょうから、MBSやエージェンシー債の買入と財務省証券の買入を敢えて「Large-Scale Asset Purchases」の一言でごっちゃにするという荒業に出ているのではないかと存じます。


で、話をもっと昔に戻しますと、買入決定した時のFOMC議事要旨の時点ではどういう話をしてたかという事になりまする。

『In the discussion of monetary policy for the intermeeting period, Committee members agreed that substantial additional purchases of longer-term assets eligible for open market operations would be appropriate. Such purchases would provide further monetary stimulus to help address the very weak economic outlook and reduce the risk that inflation could persist for a time below rates that best foster longer-term economic growth and price stability. 』(2009年3月18日のFOMC議事要旨より、以下同様)

から始まる議論の部分なのですが。

『One member preferred to focus additional purchases on longer-term Treasury securities, whereas another member preferred to focus on agency MBS. However, both could support expanded purchases across a range of assets, and several members noted that working across a range of assets and instruments was appropriate when the effects of any one tactic were uncertain.』

まあそもそもかなりヤケクソ気味に突っ込んだというのは把握した。

『Members agreed that the monetary base was likely to grow significantly as a consequence of additional asset purchases; one, in particular, stressed that sustained increases in the monetary base were important to ensure that policy was consistently expansionary. 』

『Members expressed a range of views as to the preferred size of the increase in purchases. Several members felt that the significant deterioration in the economic outlook merited a very substantial increase in purchases of longer-term assets. In contrast, the potential for a large increase over time in the size of the balance sheet from the TALF program was seen as supporting a more modest, though still substantial, increase in asset purchases.』

最初の方で買入によるマネタリーベース拡大の話をしているのですが、まあ結局のところ、コーンさんの講演ではその直接的な物価や経済に与える効果は限定的って話になっているのがチャーミングという感じで、まあ再掲(去年の4月10日と13日にネタにしております)部分も多いのですが(汗)、結局財務省証券の買入に関する話が、従来の(この時までに行われていたFOMCにおける)ロジックであります所の、「機能不全に陥った市場の回復を行う」という個別市場介入理由とは違う点については結局華麗にスルーしたまま特攻したという感じですな。

でまあ特攻したのは良いのですが、それを引く時になってさてどうしましょというのが昨日引用したコーンさんの講演の最後の部分でありまして、講演の中では「経済が正常になってきた場合には超過準備を引く」という話をしているのですが、じゃあ本当にそれが可能なのかという話になると、まあ正直言って大丈夫かねという感じは思いっきりするのでございます。

まさか無理無理長期債売る訳にもいかないでしょうから、超過準備を持ちながら金利引き上げて、しかも実効FFレートが誘導難しいとか中々お洒落な事になるのかもしれませんね。とりあえずはバーナンキ講演にありますように(週末に読みます)景気見通しは厳しいですから当面その話にはならないのでしょうけれども、物価「だけ」上がって来ると中々お寒い気がします。

#ごちゃごちゃとあまり纏まって無くてどうもすいません









2010/04/15

お題「今日も小ネタと虫干し大ネタで(^^;」

ふーん新党ですか。党名は「新党口だけハゲ」が良いと思いますよ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100413-00001370-yom-pol

という悪態は兎も角としてまあ市場雑談というよりは備忘録から。

○大したネタは無いのですが市場メモ

・CP現先オペが着々と削減中な件について

まーこれは3月24日にオペの足をそろえて、30日にロールが無かったという時点で「こりゃCP現先オペ減るわ」という認識は共有されていたと思いますが、この前出た3月の決定会合議事要旨でも新型オペ増額のテクニカルな話で減らされるという話になっていたので、まあ驚く話でも無いのですけど昨日もまたまたCP買現先のロールはありませんでした。

4月に入ってからエンドの来たCP買現先オペは全部そのまま終了という事になっていますので、この調子ですと通常時モードに戻って半期に1回思いだしたように期末越えが1本打たれるというような「いざという時の為に半期に1回避難訓練ですよ」状態になるのかも知れませんな。

だからどうなると言いますと、まあCPがTBよりも利回りが低いとか担保適格CPだと何でもかんでも同じようなレートになってしまうというような阿片窟状態からリハビリが徐々に始まるかとは存じますが、何せ肝心の発行体様の資金需要がCP方面に回って来ないですが、足元の資金運用(というか潰しというか)ニーズは相変わらず旺盛という事でございますので、そう簡単にレートは上がらないでしょうなあ。

一応足元何となくレートは強含みなのですけど、強含みってったって相変わらず銘柄間の差も殆ど無いですし、電力さんあたりでの短国マイナスの利回りがフラット位に戻るかな程度の話なので正直どうでも良い状態なのですけどね。


・一応オペ残のメモ

今日は偶数月の15日ですので恒例の年金定時払いで財政払い超となりますが、積み最終も重なるので当座預金残高は18.5兆円と積み上げ攻撃になります。で、今日のオペ残高は30.2兆円程度となっておりますが、明日は(今日トムスタートのオペがなければ)オペ残高が28.7兆円程度となりますな。当座預金残高は16.6兆円位ですからそれでもそこそこ当座預金残高は積み上がっているのですが。

ということで、財政払い超があって資金余剰地合いになるとオペ残高が30兆円以下でも十分な当座預金残高があるという状態になるというのが把握された次第(ちなみにあたくしの予想では今日は国債買現先6000億円のロールだけで、月曜のオペ残高は27.9兆円程度になって当座預金残高は16.1兆円程度になると思うので、もうちょっとオペ残は減るのですよね)でして、その点から考えても次に新型オペをいじるのであれば期間を6か月にするという話になりますな。

でですな、その場合にちょっとだけオモシロイのは、現在足元で走っている新型オペの残高が(今週のオファー分を含めて)12.8兆円なのでありまして、期間を延長するとなりますとその分オファー頻度が減るので、折角の0.10%での資金供給が行きわたるまでの時間が掛かってしまうのよというオソロシスな落ちが待っておりますと事ですな(^^)。現在新型オペの按分比率がだいたい12%から14%程度の間で推移していまして、1社辺りの応札限度額が2000億円ですので、1回に入る0.10%の資金って250億円程度な訳ですな。これが累積していくとオペが24本とか25本とか実施されると思いますので、最終的には1社当たり6000億円の0.10%供給が行われますから、まあ溜まればそれなりに良いお話なのですが、そこまでの道のりのまだ6割位なのですな。これが6月までにコンプリートするというのが今回の流れなのですが、オペ残高が累積する前に期間6か月に延長されると、積み上げのスピード調整をしないといけなくなるので20兆円になるのに時間が掛かるんじゃないかという気がしますがどうでしょ。

いやまあ足の置き方を工夫して(つまり最初から全部6か月で打つのではなく、短いのと6か月を併用する)いけばそれは回避できると思いますし、実際はそうやりそうな気もしますが、それにしてもオペやる方は中々ややこしい手間がかかりそうですな(^^)。


以上マニア雑談でした。


ではコーン副議長講演(虫干しネタ)の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

○資産買入によって拡大したリザーブの効果についてが次の論点です

『A second issue involves the effect of the large volume of reserves created as we buy assets.』

ということで「資産買入によって形成された」巨額のリザーブの効果に関する論点にやっと辿り着きました^^(段取りが悪いだけというツッコミはしないように)。

『The Federal Reserve has funded its purchases by crediting the accounts that banks hold with us. Those deposits are called "reserve balances" and are part of bank reserves.』

さいですな。


○リザーブの拡大は副次的な話でメインの経路やはり金利引き下げ

で、その次の説明ではコーンさんこんな事を。

『In our explanations of our actions, we have concentrated, as I have just done, on the effects on the prices of the assets we have been purchasing and the spillover to the prices of related assets.』

これは昨日ご紹介した中にもあったと思いますが、FRBが資産買入によって想定した政策パスは「対象資産の金利を引き下げること」という直接的なものに加え、低金利による所謂「ポートフォリオリバランス効果」によって他の資産クラスにも価格上昇の効果が及ぶという形、即ち基本的に「金利」パスによる効果を見込んでいるという話ですな。


○特定の経済状況においてはリザーブ拡大の効果は単独では乏しいという見解

『The huge quantity of bank reserves that were created has been seen largely as a byproduct of the purchases that would be unlikely to have a significant independent effect on financial markets and the economy.』

(拙訳)FRBによる大規模な資産買入プログラムによって形成された巨額の銀行リザーブは主として買入の副産物として作られたものであり、それ単独で意味のある効果を金融市場や経済に影響を与えるという事では無さそうです。

#えーっとですね、この文の2番目のthatが関係代名詞なのか接続詞なのか良く判らんのですが(あほ)、以下引用する文章の流れからするとthatは購入じゃなくてリザーブにかかるような気がするのでそう読んだのだがどうでしょ

『This view is not consistent with the simple models in many textbooks or the monetarist tradition in monetary policy, which emphasizes a line of causation from reserves to the money supply to economic activity and inflation.』

(拙訳)この見方は多くの教科書やマネタリストの伝統的な金融政策に関する見解にある単純なモデルが示す、リザーブの形成が直線的な因果関係をもってマネーサプライや経済活動やインフレに影響を与えるという考えとは一致しません。

『Other central banks and some of my colleagues on the Federal Open Market Committee (FOMC) have emphasized this channel in their discussions of the effect of policy at the zero lower bound. According to these types of theories, extra reserves should induce banks to diversify into additional lending and purchases of securities, reducing the cost of borrowing for households and businesses, and so should spark an increase in the money supply and spending.』

(拙訳)他の中央銀行やFOMCの数人のメンバーなどにはゼロ金利制約の下でのリザーブ形成の直線的な因果関係の効果を強調する人もいます。このタイプの考えでは、銀行に超過準備があることによって、銀行が追加の貸出や証券購入を行うように仕向けられる為、家計や企業の借り入れコストの引き下げに繋がり、それによってマネーサプライや消費の拡大につながるであろうという事になります。

『To date, that channel does not seem to have been effective; interest rates on bank loans relative to the usual benchmarks have continued to rise, the quantity of bank loans is still falling rapidly, and money supply growth has been subdued. Banks' behavior appears more consistent with the standard Keynesian model of the liquidity trap, in which demand for reserves becomes perfectly elastic when short-term interest rates approach zero. But portfolio behavior of banks will shift as the economy and confidence recover, and we will need to watch and study this channel carefully.』

(拙訳)今日では、上述した経路による効果は乏しいと見られます。銀行の貸出ベンチマーク金利は上昇を続けていますし、銀行ローンは依然として急速に減っています。そしてマネーサプライの増加は抑制されています。銀行の投融資行動は、標準的なケインジアンの示す流動性の罠のモデル、短期金利がゼロに到達した場合にリザーブへの需要が完全に弾力的になる(直線的な因果関係がなくなる)という状態により近いようにみられます。しかし、銀行の投融資行動は経済状態やコンフィデンスが回復してきた場合には今日の状態からシフトすると思われますので、我々はこの超過ザーブの効果についての注意深い研究および観察をしないといけません。


とまあそういうことで、超過準備に関する話ですが、米国の現状においては資産買入によってもたらされた超過準備がそれ単体でマネーサプライを通じて効果を与えるというマネタリスト的な経路で効く訳ではなく、現状ではケインジアンモデルの流動性の罠状態に陥っているという話をしていますが、経済状況が好転した場合にはその限りでは無いという話をしていまして、この辺りに関しては銀行の投融資行動を見ていく必要があるという話ですな。

つまり、その辺りの活動がどう動いているのかによって、将来の出口政策における流動性吸収の速度(ちんたら吸収するのか過激に吸収するのか)も見えてくるのではないかというのが政策インプリケーションとなるのではないでしょうか。



○長期資産を沢山買った場合の期待形成に関する話

リザーブの話の次は別の論点。

『Another uncertainty deserving of additional examination involves the effect of large-scale purchases of longer-term assets on expectations about monetary policy.』

長期資産を大規模に購入した場合の金融政策への期待形成に関する論点とな。

『The more we buy, the more reserves we will ultimately need to absorb and the more assets we will ultimately need to dispose of before the conduct of monetary policy, the behavior of interbank markets, and the Federal Reserve’s balance sheet can return completely to normal.』

より多くの長期債を買うと平常に戻す時により多くの吸収や資産の売却などが必要になると。

『As a consequence, these types of purchases can increase inflation expectations among some observers who may see a risk that we will not reduce reserves and raise interest rates in a timely fashion.』

(拙訳)結果として、長期資産を大規模に購入した場合、中央銀行がバランスシートをタイムリーに平常状態に戻す事が困難になるリスクを意識する向きに対してインフレ期待を引き上げる効果があります。


『In fact, longer-term inflation expectations generally have been quite well anchored over the past few years of unusual Federal Reserve actions. And we are developing and testing the tools we need to remove accommodative monetary policy when appropriate. I am confident the Federal Reserve can and will tighten policy well in advance of any threat to price stability, and successful execution of this exit will demonstrate that these emergency steps need not lead to higher inflation.』

(拙訳)実際問題として、ここ数年のFRBによる異例の金融政策の実施にも関わらず、長期的なインフレ期待は一般的に非常によくアンカーされています。そしてFRBは適切な時点で緩和的な金融政策を終了させる為のツールを作り、テストしている所です。私はFRBが望ましくないインフレが発生する前に十分に金融引き締めを行うであろうし、それは可能だという事を確信しています。そして、この出口政策の成功によって、FRBがこれまで実施した緊急措置が高インフレを招かない事の証明となるでしょう。


てなわけで、後半でこのような話があるという事は、リザーブ(あるいはFEDのバランスシート)拡大によるインフレ懸念の拡大に水を差そうという意識もあるのではないかという気もせんでもないので、前半における「リザーブの効果」の話もやや「効果は単独では無いですよ」の強調に軸足を置いているという可能性もあるのかなあとも思うのでありました。


#なお続くのですがまた後日(汗)





2010/04/14

お題「雑談を少々/コーン講演の続き」

○各種雑談を少々

・某新聞がネタにしたら終了でござるの巻

昨日は某新聞のマーケット欄でGCレートが上昇している事をネタにして「市場機能重視でレート上昇を容認するオペレーションをしている」というような記事がありましたが、準備預金の積み着地が見えてきたのが要因なのかどうか知りませんが、その肝心のGCレートちゃんは昨日のトモネから下がりまして、レギュラーの16日のGCも低下。

昨日のオペ実施後ベースで明日(積み最終)の当座預金残高が18.7兆円になり、多分今日は新型オペ新規と国債買現先のロールがあるので、16日の当座預金残高は17兆円近辺になると思われるので、週末3日でいきなり積みが進捗しちゃうでしょとなり、GCで運用しとかないとマズーな人も出てくると思われ、そらまあレートは落ち着いてくるわなという感じですわな。

つまり、まあ積み最終手前になると積みの着地を見るまで資金を出さないという人がいるので、その時点で資金余剰地合になっている場合は供給オペが多く無く、その分でGCが上昇する場合もありますなというお話でして、この間に3MTBのレートが殆ど上昇しなかった(さすがに0.12%割れだったのが0.12%レベルに上昇というような動きはあったけど、まあそれは動いたという程の物でも無い)辺りにその辺の事情を参加者も判ってますがなってえのが反映していると存じます。

ということで、どこぞの新聞がネタにしたら相場終了でござるの様式美を昨日も見る事が出来ました。つーか折角相場動いて楽しめるというのに記事書いて相場止めるなと(笑)。

ま、それ以前の問題としてのそもそも論で、ターム物金利が無駄に上昇しているというような事態になっていない上に、誘導目標のコールレートは0.09%に近い水準の日が多いという中なのに「上昇放置」みたいな書き方をするのは意味が判りませんなあと存じますがね。


・国債デフォルト前提の話を国会議員がしてどうする

昨日市場で失笑を誘った(笑うより呆れる世界かも)ネタですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ayIkOmkaIDXc
山口日銀副総裁:国債デフォルト前提に資産多様化は取り得ない選択肢

『4月13日(ブルームバーグ):日本銀行の山口広秀副総裁は13日午前、参院財政金融委員会で、民間資産の購入などにより日銀の資産の多様化を図る可能性について「あり得ないとまで申し上げるつもりはない」としながらも、今は「考える時期ではない」とし、「国債のデフォルトを前提にして多様化を図るというのは取り得ない選択肢だ」と述べた。民主党の田村耕太郎氏の質問に答えた。』

えーっと、国債がデフォルトする位の状態だったらその前に民間資産の方が先にデフォルトすると思うので、そういう論点で資産の多様化とか意味がさっぱり判りませんが。で、この件であたくしの知り合い全員が真っ先に突っ込んだのは「国会議員は国債をデフォルトさせなるようなことを起こさないようにするのが仕事じゃないのか」という点でございましたです。

さすが「外為特会や年金資金を原資に政府系ファンドを作れ」という議連をリーマンショック前に堂々立ち上げて活動されただけのお方だと感心する次第でございますが(−−)、まあ更なる悪態は国会会議録が出てからするとしますかね。これでご自身では専門分野を財政金融分野とか言っておられる(本人のサイトなどでそう言ってますな)のがもう痛いというか落涙を禁じ得ないというか。「生兵法は怪我の元」という言葉がこれほど似合うのも珍しいですなあと悪態をつきつつ、まあ「人の振り見て我が振り直せ」という言葉を自分に言い聞かせたいものだと思うのであります(^^)。


という雑談はともかく、コーン副議長講演(虫干しネタ)の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf


○資産買入の話の前にしらっと時間軸の話

本文5ページ(PDFファイルの6ページ目)の『Large-Scale Asset Purchases and the Buildup of the Reserve Base』(大規模な資産購入と超過準備の積み上がりに関して)というお題の部分が中々興味深く読めたのでありましてその部分から。

まず最初に資産買入に至るまでの経緯に関しての簡単な話があります。こちらでは、利下げで短期金利をゼロ近くに下げ、その後は金融政策の先行きのパスを示すことによって更に緩和的な金融環境を作るという時間軸っぽい話をしらっとしているのがチャーミング。

『The Federal Reserve and other central banks reacted to the deepening crisis in the fall of 2008 not only by opening new liquidity facilities, but also by reducing policy interest rates to close to zero. Such rapid and aggressive responses were expected to cushion the effects of the shock on the economy by reducing the cost of borrowing for households and businesses, thereby encouraging them to keep spending.』

ここまでが金利を下げた話。

『In addition, the Federal Reserve and a number of other central banks have provided more guidance than usual about the likely future path of interest rates to help financial markets form more accurate expectations about policy in a highly uncertain economic and financial environment.』

時間軸ですなあ。で、その次も同じくその説明の続きです。

『In particular, we were concerned that market participants would not fully appreciate for how long we anticipated keeping interest rates low. If they hadn’t, intermediate- and longer-term rates would have declined by less, reducing the stimulative effect of the very low policy rates.』



○資産買入は金利引き下げを目的にしたとな

で、その後が資産購入を行いましたという話ですが、ここまでのマクラから判るように、資産買入は金利の引き下げを目的にしているという説明をしているのでありました。

『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities, and agency debt.』

ということで、政策金利(=短期金利)の引き下げだけでは不十分になったので、我々は財務省証券やエージェンシーMBSやエージェンシー債を大量に買いましたって言ってるので、やっぱり資産買入は金利引き下げを目的にしたとな。


○次の課題は資産買入の効果およびリザーブの拡大の効果の検証とな

『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting short-term policy rates and influencing expectations about future policy rates, and the underlying theory and practice behind those actions are well understood. However, the economic effects of purchasing large volumes of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base in the banking system, are much less well understood.』

(拙訳)中央銀行が短期金利を調節したり、先行きの政策パスへの期待を示すことによって実体経済に影響を与える効果については多くの実績および理論があります。しかし、中央銀行が大量に資産を購入し、その結果をして民間銀行のリザーブが拡大する事に関する効果についてはあまり経験も無く理解も不十分です。

『So my second homework assignment for monetary policymakers and other interested economists is to study the effects of such balance sheet expansion; better understanding will help our successors if, unfortunately, they should find themselves in a similar position, and it will help us as we unwind the unusual actions we took.』

(拙訳)従いまして、金融政策担当者や、金融政策に関連するエコノミストにとっての2番目の研究課題は、これらのバランスシート拡大の効果を検証することです。より良い理解をする事によって、将来不幸にも似たような事が起きた場合の助けにもなりますし、我々が行った政策を通常に戻す場合の参考にもなるでしょう。

ということで、この課題なのですが、実は2つのパートに分かれていまして、最初に、

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves.』

と、買入そのものに関する直接的な効果についての検証が課題になっておりまして、その後、

『A second issue involves the effect of the large volume of reserves created as we buy assets.』

と、買入によって引き起こされたリザーブの拡大の効果の検証が課題になっているのです。


○買入の直接効果は市場の新規供給量対比なのか市場残高対比なのか

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves. The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly; and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, reducing the supply of long-term debt pushes up the prices of the securities, lowering their yields.』

まず最初に買入をして金利を下げる理屈についての説明がありますが、ここでは流動性供給プログラムを実施する時と同じような背景の説明を行っています。即ち、上の文中にありますように、「短期金利と長期金利の間の鞘を取りに行く動きよって短期金利が長期金利に影響を与えるのだが、金融危機によって引き起こされた市場機能低下の中においては、その動きが機能しにくくなるので、長期資産の購入を行う事によって、当該証券の価格を引き上げ金利を下げる」という話をしています。

でですな、それってFRBが流動性供給プログラムを次々実施していく中で「市場が機能しなくなっている所にFRBが市場機能の代替をする」という理屈をだしていたので、それはその通りなのですが、では何故機能が喪失している訳でもない財務省証券の購入を行ったのよ???というツッコミをしたくなる所ではございますけれども、その部分に関してはこの先でもごにょごにょとした説明になっています。

それから、上記説明の中で「長期資産のサプライを減らせば金利は下がる」という話をしてまして、そらまあ需給だけ見たらそういう話になりますし、極端にサプライを減らせばそらまあ金利も下がるのですが、少々の変化の場合は需給だけではなく、別のファクターが効いてくるのではないかと思われるので、単純に「買入をすれば金利が下がる」というもんでも無いと思います。

まあそんな話がその次に。

『But by how much? Uncertainty about the likely effect complicated our calibration of the purchases, and the symmetrical uncertainty about the effects of unwinding the actions--of reducing our portfolio--will be a factor in our decisions about the timing and sequencing of steps to return the portfolio to a more normal level and composition. Good studies of these sorts of actions are sparse. Currently, we are relying in large part on studies that examine how much interest rates dropped when purchases were announced in the United States or abroad. But such event studies may not be an ideal means to predict the consequences of reducing our portfolio, in part because the economic and financial environment will be very different, and also because event studies do not measure effects that develop or reverse over time. We are also uncertain about how, exactly, the purchases put downward pressure on interest rates.』

では効果を量的に考えた場合どうなのよという事ですが、これがまた効果を測定するのは難しいですなという話ですけど、一つの考え方として、買入のアナウンスを行った時にどの位金利が低下したかというものがあるでしょう、と指摘しています。ただし、環境が違うのでそれを出口に当てはめる場合には当てはまるかどうかは不明確ですし、将来に行う場合にも当てはまるかどうかは不明確ですね、という前提をおきつつ何となくのコーンさんのまとめがその次に。

『 My presumption has been that the effect comes mainly from the total amount we purchase relative to the total stock of debt outstanding. However, others have argued that the market effect derives importantly from the flow of our purchases relative to the amount of new issuance in the market. Some evidence for the primacy of the stock channel has accumulated recently, as the prices of mortgage-backed securities appear to have changed little as the flow of our purchases has trended down.』

(拙訳)私の推測では、資産購入による金利引き下げ効果は、主に当該資産の市場残高に対して我々の資産購入額がどのくらいの割合であったかによって、その度合いが決まっていたのではないかと考えています。しかしながら、当該資産の市場残高ではなく、新規に発行される額との対比で効果が定まるという意見も別にあります。ただし、最近の市場動向を見ますと、我々がモーゲージ債の買入を減らして行く中で、モーゲージ債の価格に大きな変化が見られていませんので、前者の推測の方が正しいのではないかという見方ができるかもしれません。


ということで、本当は次の拡大したリザーブベースの話がメインイベントなのですが、例によって前座で終了してどうもすいませんすいませんm(__)m








2010/04/13

お題「3月決定会合議事要旨から」

中々今回のはワロタ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100317.pdf

○まずは何と言っても2名の反対理由が正論過ぎる件

これは昨日市場関係者の皆様がお読みになられた事かと存じますが、採決の部分での須田さんと野田さんの反対理由がどちらも正論で「いやもう仰る通りですなあ」という感想が多かったのではないかと存じますです、はい。

まず須田さん。

『須田委員は、

@足もとの各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、追加の緩和措置を講じる明確な理由が見当たらないこと、

A 日本銀行の金融政策は、あくまで金利水準を目安にしているにもかかわらず、特定のオペの資金供給量で金融緩和の度合いを測るといった誤解が、市場などに拡がる可能性があること、

B 市場が織り込めば、それに従わざるを得ないとの見方が強まるリスクがあること等から、長い目でみた場合には、実施することのコミュニケーション上のデメリットが大きい

として反対した。』(機種依存文字は原文ママで勘弁)

まず循環的に言えば回復しているという点を突いて、循環的に回復しており景気判断も前進させる中での追加緩和措置の実施という話は、従来のロジックからすれば変というのはまあその通り。これが従来から先走り型というかプロアクティブというかな動きをしていれば別なのですが、まあ12月の対応にしても構造問題(デフレ)対応で動いたのですが、あくまでも「デフレマインドの拡大懸念」というような対応であって、「下振れリスク対応」という名目でしたから、今回の措置は「従来のロジックから飛躍している」という点ではまさにおっしゃる通り。

これがですな、今月の展望レポートで先行きの物価見通しが引き続き基調的にマイナス継続ですよというような見通しでも出る中であれば、「中長期的なデフレ定着を阻止するために緩和拡大」というようなロジックを持ち出す事ができるのでそこまでのロジック飛躍にならんのですよね。と、考えますと本来は4月に追加緩和した方が話には無理が無かったという所でしょう。

で、2番目の論点はまあそうですなということで、金利市場の実際の価格形成という意味で言えば、新型オペの量が幾らだから金利がどうなるという話は実は実態を反映していないのであります。確かに固定金利オペの無い世界からある世界になった場合には意味がある(現実問題として3か月TBの金利は2bp程度低下した)のですが、それを増やしたからどうなのという点に関しては他のトータルの資金需給の関係があって、別に新型オペを増やしたから緩和度が上がるのかというとそれは微妙。つまりまあぶっちゃけ(短期金融市場以外の)ミスリードに期待した措置であり、そのようなインチキはどうなのかという話ですわな。

従って、公表文では新型オペの増額を決定という形にしていますが、公表文の決定事項という意味では『当面の金融政策運営について(やや長めの金利の低下を促す措置の拡充、12時49分公表)』という事で、あくまでも「金利」という事になっているのですが、それはあくまでも表面的な話で、やはりそらインチキでしょというのが須田さんの主張で、それはまあ誠に御尤も。(参考)→http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/kettei/index.htm

んでもって3番目は正しくアラン・ブラインダー元FRB副議長が言う「自分の尾を追う犬」状態になる事の弊害でありまして、これは野田さんはより強い調子で指摘していますが、まあ3月の追加緩和(のようなもの)に関してはどっからどう見ても「日銀は差し込めば動く」という印象を与えたのでごさいまして、これはもう仰る通りと。


で、野田委員。

『野田委員は、必要と判断される場合には、迅速・果敢に行動する用意はあるが、

@ 経済見通しが若干上振れ、物価見通しは中間評価での想定に概ね沿って推移し、金融市場の急変等の事情もないこの時点で追加緩和を行うことは、これまでの金融政策の枠組みと整合的ではなく、市場とのコミュニケーションの持続性の観点から不適当であること、

A 追加緩和策による金利低下の効果が限定的であり、アナウンスメント効果も期待しにくい一方で、観測報道等に金融政策が振り回されたとの誤解を与え、金融政策の信認を低下させるという副作用が懸念されること

等から、反対した。』

野田さんの場合は須田さんとややトーンが違うのは「追加緩和を行わないという訳ではない」というのが最初にある所で、従来野田さんは金融機関の不良資産問題が実体経済に与える影響について、かなり厳しく見ており、それは循環的な問題ではなく構造的な問題であるだけに悪影響は長引くという見解を示していましたので、そういう意味では別にタカ派では無いので間違えないようにしましょう。

で、1番目はまあその通りでございまして、「これまでの金融政策の枠組みと整合的ではない」というのが正しく先程も申し上げた通りで、従来の下振れ対応型の政策と話が違うじゃねえのというのは正論も正論。本来は3月のあのタイミングで追加緩和するというのであれば、「日銀はより積極的に緩和を続けるのですよ」というような転換をアナウンスする位であれば良いのですな。

そして2番目ですが、新型オペ20兆円に増額して金利低下の効果が限定的というのは誠に仰る通りにも程があるのでして、3月の財政大幅払い超によって新型オペと企業金融特別オペという長い期間の資金供給オペが短いオペに食い込む形になってしまい、足元で短いオペが足りなくなってきたせいでGCレートが昨日ベースで0.14-0.145とかに上昇している(ただし3か月TBは0.12%のままですけど)というような動きになっておりまして、実際問題として新型オペを増額したからと言って金利が下がるかというと下がらないのでして、これはまあ野田さんの指摘通り。

で、アナウンスメント効果に関しては、金利市場という意味では正直言って無いと思うのですが、金利市場以外の皆様の誤解、あるいは野田さんの反対理由にあるような「従来の枠組みと整合性の無い緩和措置を実施した」という点から来る「ということは日銀は従来の枠組みから踏みこんだ措置を取ったのではないか」という理解(または誤解)を招くという意味での効果はあるのかなあと思うので、その点だけは微妙な気がします。

で、「観測報道等に金融政策が振り回される」という話は全くもってその通りでございまして、最早何を付け加える事もございませんな。

と言う話は昨日の市場で思いっきり話題になっていましたので今更でございますけれども、あたくしの備忘録でもございますので書いておくのだ。


○で、当面の金融政策運営に関する検討部分もオモシロス

ネタが多いので箇条書きで。

・これは4月声明文の布石ですね

検討の最初の所から。

『こうした政策の効果について、何人かの委員は、政策金利を0.1%で維持することで、物価下落幅の縮小に伴って実質金利が低下するとともに、企業収益の回復が鮮明になっていることも相俟って、金融緩和効果が強まってきていると述べた。』

これが4月声明文での金融環境の認識前進につながったという事ですね、わかります。


・新型オペの効果について

まあターム物金利が何となく下がった(3か月TBで0.02%ですけどね)のはそうなのですが。

『多くの委員は、昨年12 月に固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション( 固定金利オペ) を新たに導入して以降、

@ 短期金融市場における長めの金利が総じて低下しているほか、貸出金利も更に低下している、

A 企業マインドの下振れを回避するという面でも一定の効果があった、

と指摘した。』

1番目に関しては、総じて低下ってまあ2bp位の世界なのですけど・・・・それが貸出金利に影響するのかというと正直言ってそれよりも別のファクター(銀行の融資姿勢とか企業の資金需要とか)の方が効いてるんジャマイカと思いますが、そう言っては身も蓋も無いというのはオトナの話ですかそうですか。

で、2番目は「ふーん」という感じで。企業マインドもそうですけれども、デフレ克服姿勢を見せる事による企業だけではなく全体的なマインド改善に向けてどうしましょっていう文脈なら判るのだが。

『これらの委員は、景気が持ち直し、物価の下落幅が縮小しているこの段階で追加的な緩和措置を実施することは効果的であり、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充すれば、経済・物価の改善の動きを確かなものとすることに資するのではないかと述べた。』

ただまあそれが従来の枠組みと整合性あったんでしたっけというのは野田さんの
指摘の通り。


・ところで20兆円は決定会合で決めたのか執行部が決めたのか???

で、その20兆円に関しての話がややこしい。

『委員からの問題提起を受けて、執行部より、

@ 特別オペの残高は約5兆円だが、4月以降、漸次減少し、6月には残高がゼロとなる予定であること、

A CP買現先オペの残高は約2兆円だが、CP市場の改善を踏まえると、今後、平時の運用に戻していくことが適当であると考えられること、

が説明された。更に、執行部からは、これらの資金供給を代替するとともに、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充するとすれば、固定金利オペの資金供給額を10 兆円程度増額し、合計で20 兆円程度とすることが考えられる、と付け加えられた。』

『多くの委員は、固定金利オペの資金供給額を20 兆円程度に増額するという今回の措置の拡充は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために中央銀行としての貢献を粘り強く続けていくとの方針を、改めて明確に示すものであると述べた。』

・・・・・えーっと、これだと20兆円を決定したのが決定会合なのか執行部なのか良く判らん、というか結局決定会合で決めているように見えるけど、特定のオペの増減を一々決定会合で決めるのってどうなのよ、という須田さんの反対理由に繋がるツッコミどころではございます。

しかしまあ何ですな、この説明ですけれども、「改めて明確に示す」ということで要するにマインド面向けの政策ですよという話ですが、こんな話をする人もいるのね。

『何人かの委員は、特別オペが、3 月をもって完了し、4 月以降、オペの残高が漸次減少していく中で、固定金利オペによる資金供給額を大幅に増額することで、追加的な金融緩和の効果が得られると述べた。』

・・・・たぶんそれは無い無い。


・で、須田さんと野田さんはこのように反対してましたと

念の為引用。

『これに対し、複数の委員は、足もとの各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、日本経済は現在持ち直しの過程にあることなどから、今回、追加の緩和措置を講じることは不適当と述べた。このうち、ある委員は、市場機能に与える影響等も踏まえると、追加緩和については、慎重な検討が必要であると指摘した。』

市場機能に与える影響というのは野田さんかなという感じもしますが、固定オペを増やし過ぎると足元のコントロールが難しくなるという点について指摘したのであれば野田さんではなかろうかと。



・要するに日経新聞はケシカランということですね、わかります

『委員は、情報発信のあり方について議論を行った。』

キタコレ。

『多くの委員は、今回の金融政策決定会合のかなり前から、追加金融緩和策を検討しているとの報道がなされ、市場にも様々な思惑が高まったことに言及した。何人かの委員は、事前の報道や市場の思惑が高まってしまうと、金融政策決定会合の結果が予想に沿ったものでも、逆に予想に反したものとなっても、結局、中央銀行の政策運営に対する信認が失われる可能性があると述べた。』

つまり日経新聞は日銀の邪魔ばっかりしやがってケシカランと言う事ですね。

『多くの委員は、金融政策の運営は、あくまで、中長期に亘る経済・物価情勢の判断に基づいて行うものであり、事前報道や市場の思惑と反する場合には、情勢判断や政策運営に関する説明を丁寧に行うことによって、国民の信頼を得ることが出来ると述べた。こうした議論を経て、委員は、情報発信のあり方については、今後、これまで以上に細心の注意を払っていく必要があるとの見方で一致した。』

まあつまらんリークみたいな話は止めなさいなという所ですが、何せ今回の緩和措置のように「従来の枠組みと整合性が無い」事をするのが日銀クオリティなので取材する方もそりゃ頑張るわなと思うのであります。


○物価に関してやたら強気の人が少なくとも一人いるのですが・・・・・

で、更に戻って経済状況の認識についての検討の概要に関してですが、こちらに関しては割と慎重な見方が多くて、引用すると長くなるので引用はスルーしますけれども、輸出と生産が強めの見方ですが、設備投資に関しての先行きは結構慎重で、雇用・所得環境も同様に慎重。個人消費はまあ普通の見方ですが、やや見方が分かれている感じですな。

で、物価に関して。

『消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比について、委員は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けており、こうした動きは、1月の展望レポートの中間評価で示した見通しに概ね沿っているとの認識を共有した。』

『複数の委員は、消費者物価指数の基調的な傾向を示す刈り込み平均の前年比マイナス幅がこのところ縮小してきていると指摘した。もっとも、ある委員は、価格下落品目数が引き続き増加するなど、物価下落の裾野が拡がっていると指摘した。』

ということで、現状に関してはやや弱めの意見1名にちょっと明るめが複数となっていますが、先行きに関しては・・・・

『先行きについて、委員は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくとの見方を共有した。』

まあこれは良いのだが。

『ある委員は、実体経済の持ち直しが物価に波及するには相応のラグがあり、今後、物価面で、景気持ち直しの影響が現れてくる可能性が高いと述べた。』

・・・・・・これはまた強気な。もしかしてもしかしてこの前の会見で妙に強気な事を言ってたどこぞの総裁様ですか????

『ただし、何人かの委員は、需給環境の改善は緩やかであるため、物価のマイナス幅の縮小も緩やかにならざるを得ないと述べた。ある委員は、過去、短期間で物価が大きく上昇したのは、資源価格の高騰や税制の変更といった場合のみであり、需給環境の改善に伴う物価上昇には時間がかかると述べた。』

こっちの見方の方が妥当だと思うのだが。資源価格は上昇気味だからそっちから来る可能性はあると思いますが、それは単なる交易条件やマージンの悪化という話でして、別に嬉しい価格上昇ではないですわな。

『物価のリスクについて、何人かの委員は、中長期的な予想物価上昇率の下振れには引き続き注意する必要があると述べた。一方、ある委員は、新興国・資源国経済の過熱に伴う資源価格の上昇により、わが国の消費者物価も上振れるリスクにも注意する必要があるとの見方を示した。』

また1名上振れリスクとな・・・・うーむ。しかも資源価格の上昇は交易条件(以下同文)。


#ということで市場雑談とか(GCが上がった話とか補完供給で先週木曜にロールしてる人がいて、そういやロール出来るんだったというようなメモ)菅さんの講演ネタ(どうみても財務省です本当にありがとうございましたというメモ)を書こうと思ったのですが、時間が無くなったので本日はスルーで勘弁









2010/04/12

お題「これまた昔のネタなのですがコーン副議長講演」

炎上ヲチャー的にはオモロイのだが、政治家の皆様がTwitterで相次いでポロポロと失言を連発する(遅刻しながらTwitterしてて遅刻を部下のせいにした大臣もいましたねえ)のは情けなくなって来る次第ですな。

というのはどうでも良いのですが今日はこれまた昔のネタですいません。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

URL見れば判りますように、3月24日の講演なのですが、これが読んでいると非常に面白くて、マジになって読んでいたら(あたくしの頭がアレなので)中々読めなくて時間が掛かった(というかまだ精読が最後まで行けていない)のであります(汗)。

お題は『Homework Assignments for Monetary Policymakers』ということで、金融政策に関する幾つかの論点についてコーン副議長の見解を示しているのですが、ひじょーに興味深いのです。で、PDFで16ページ(本文は実質14ページ程度)と結構量があるので、多分1回では無理だと思います(と最初から言い訳)ので念の為申し添えます。


○主要な4つのお題とは

『The events of the past few years have raised many questions for central bankers.』から始まるこの講演ですが、4つの課題を挙げられるということで、最初にその4点について説明しています。

『I’ve titled my presentation “Homework Assignments” because I don’t think the answers are clear, though I will venture some tentative thoughts. I have four assignments on my list; I could easily have more. And others would have yet a different list. I recognize that the complexity of these questions could keep us profitably engaged for a whole semester, but let’s see if I can outline some of the challenges and possible responses in an evening.』

ということで、その4つの宿題となる研究課題のポイントですが、

『The first two assignments concern the policy actions the Federal Reserve and other central banks took during the financial crisis.』

ということで、最初の2つは金融危機下に実施した政策に関するポイントですが、1つ目が各種流動性供給プログラムに関しての話、2つ目が資産購入プログラムとそれによって起きた超過準備の効果に関する話で、この2つ目に関する話は後で出てきますが中々面白いです。

『One assignment is to evaluate the implications of the changing character of financial markets for the design of the liquidity tools the Federal Reserve has at its disposal when panic-driven runs on banks and other key financial intermediaries and markets threaten financial stability and the economy.』

『My second assignment involves improving our understanding of the effects of those purchases and the associated massive increase in bank reserves.』

んでもって3番目と4番目は平常時における金融政策に関する問題でして、3番目は「資産価格の不必要な変動に対して伝統的な金融政策を割り当てるべきか」という話で、4番目は「政策金利のゼロ下限制約到達を避ける為にインフレの目標数値(でも参照数値でもいいけど)を調整すべきかという話ですな。

『The third and fourth assignments relate to whether changes to the conduct of monetary policy in normal times could make financial instability and its wrenching and costly economic consequences less likely. 』

『Number three involves considering whether central banks should use their conventional monetary policy tool--adjusting the level of a short-term interest rate--to try to rein in asset prices that seem to be moving well away from sustainable values, in addition to seeking to achieve the macroeconomic objectives of full employment and price stability. 』

『The fourth and final assignment concerns whether central banks should adjust their inflation targets to reduce the odds of getting into a situation again where the policy interest rate reaches zero.』


○流動性供給プログラムの今後の課題について

で、最初の所では各種流動性供給プログラムの実施の話がありまして、その中の経緯としては「市場機能が喪失して通常の金利政策が効かなくなっている」為に実施したとか、ディスカウントウィンドウのStigma問題から各種プログラムを工夫したというような話がありますが、まあこの辺はバーナンキ議長の議会証言などでも示されている話なので割愛しまして、さてまあ各種流動性措置を終了して行く中での今後の課題というのを最初の課題にしています。

講演4ページ(PDFだと5ページ目)の後段のパラグラフからになりますが、(拙訳)というのはあたくしが勝手に辞書引き引き訳してみたもの(自分が読んで判るように適当に補足も入れているので一部余計な文言があるかも)でして、正直全然本文のテイストが出ていないと思うのですが、まあ「おまえここがおかしい」とかいうのあったら指摘して下さると誠に幸いでございますので一つ皆さん宜しく(汗)。

『The homework assignment is to think about the design of liquidity facilities going forward. I’ve tentatively concluded that the recent crisis has demonstrated that in a financial system so dependent on securities markets and not just banks, we need to retain the ability to lend against good collateral to certain groups of sound, regulated, nonbank financial firms.』

(拙訳)今後の研究課題は今後の流動性供給プログラムの設計の検討です。私が試みに纏めてみると、直近の金融危機は金融システムが銀行ではなく、証券市場に過度に依存した為に引き起こされた面があり、我々は銀行だけではなく、内容が優良な銀行以外の金融市場参加者に対して、優良担保を取った上での貸付手段を保持する必要があります。

『I’m not suggesting that we establish permanent contingency liquidity facilities, just that the Federal Reserve retain the authority to create the tools necessary to meet liquidity needs of groups of nonbank institutions should a panic impair the ability of securities markets, as well as banks, to function and the Board of Governors find that the absence of such functioning would threaten the economy. The collateral would have to be of good quality and the institutions sound to minimize any credit risk to the Federal Reserve.』

(拙訳)私は緊急的な流動性供給プログラムを永久的に実施すべきという訳ではありません。FRBは金融パニックが発生して金融市場などの流動性が枯渇して市場機能が喪失し、実体経済を悪化させる事の無いように、銀行同様に証券市場参加者の銀行以外の主体に対しても流動性供給手段を保持すべきであるという見解です。FRBのクレジットリスクを極小化する観点から、その流動性供給においては優良担保で、かつ優良な主体に対して行われるべきでしょう。

なお、この部分で脚注がありまして、AIGへの貸付に関する説明があります。AIG自体は優良かというとこれがまた微妙なので、「AIGを破綻させると金融市場がとんでもなく混乱するから救済した」という話をしています。

『Holding open this possibility is not without cost. With credit potentially available from the Federal Reserve, institutions would have insufficient incentives to manage their liquidity to protect against unusual market events. 』

(拙訳)FRBがそのような手段を保持する事はコストが無い訳ではありません。FRBからの流動性供給が潜在的に確保されているという認識があると、それら金融市場参加者は自分たちの流動性(が最終的にFRBに担保されるので)をマーケットのイベントリスクから守る事に対するインセンティブが低下します。

『Hence, the emergency credit would generally be provided only to groups of institutions that were regulated and supervised to limit such moral hazard. If the Federal Reserve did not directly supervise the institutions that would potentially receive emergency discount window credit, we would need an ongoing and collaborative relationship with the supervisor. The supervisor should ensure that any institution with implicit access to emergency discount window credit nevertheless maintained conservative liquidity policies. The supervisor would also provide critical insight into the financial condition of the borrower and the quality of the available collateral and more generally whether lending was necessary and appropriate.』

(拙訳)それゆえに、緊急対策としての流動性供与を行う相手としては、一般的には各種の規則や監督に服する主体に対して限定して行うようにするのが望ましいでしょう。もし、FRBが緊急連銀貸出制度を受ける事のできる主体に対して直接的な監督を行わない場合には、関係する監督当局と常時継続的な協力体制を結ぶ必要があるでしょう。監督当局は、緊急流動性供与を受ける事のできる主体に対しては、その流動性プログラムへのアクセスとは別の流動性確保のポリシーを持たせるべきでしょう。そして、監督当局は同時に、流動性供給プログラムの借入人の金融市場における状況や、担保余力、また一般的にその貸出が必要かつ適切であるかについて、常に批判的な見方を忘れずに精査をすべきでしょう。


・・・・とここまでヘタクソ訳をしたら時間が無くなったのですが(汗)、最初の課題に関する部分はここまでであります。今後の展開という話ですが、各種流動性供与措置を銀行以外にも供与する(日銀はそーゆー意味では日銀当座預金取引先が証券会社やら地域金融機関やらと多いので、既にそれは可能となっていますな)事の重要性についての説明と共に、その流動性供給措置が一種の制度ただ乗りを引き起こさないようにする為に監督が必要(日銀はそーゆー意味では当座預金取引先への検査やらモニタリングやら行っていますな)だという話をしているのが、中々興味深く読めましたです、はい。

#あと3つも課題があるのにこんな調子でいつ終わるのやら(大汗)








2010/04/09

お題「月報と総裁会見のトーンが違うのだが・・・・」

まずは月報(ただし概要部分のみ)比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1003.pdf(前回)

○月報のトーンを見ると「判断前進」とは普通言わんと思うのだが

という小見出しで正直話は終了しているのですが(^^)、例によって例の如く比較するとこれがまた全然変わらんのよ。

・現状判断

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

というのは声明文の比較で申し上げたのと同じですが、ここの所持ち直しって言ってるのが「続けている」と入ったのでそりゃまあ表現としては少し強くなったっちゃあ強くなったのですが、これを判断前進というのかよという論点については本石町日記さんがブログネタにしていますのでご参照ありたし(^^)。

その次の需要項目に関しては設備投資の所だけが変わっているのでして・・・・

『輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(今回)

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は概ね下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(前回)

えーっと、ここでは設備投資が「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に変化したのと、短観を受けた企業景況感に関する言及だけ変化しているのですな。まあ声明文と同じですが。


・先行き見通し

で、先行きに関してですが、昨日ご紹介した声明文比較では、前回あった「2010 年度半ば頃までは」というのが「当面」に変わっているのはどういう意味でしょうなという事を書きましたが、月報ベースでの表現は前回も今回も同じですな。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものとなると考えられる。』(今回)

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(前回)

いつもは並べないのですが、念の為並べてみました(^^)。全く同じでございますので、これはやはり声明文の違いは単に「2010年度半ば頃」という時間が手前にやってきた事によるものと解釈するのが妥当のようですね。

項目別判断も同様に全く同じですので今回分だけ引用。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)


・物価の現状判断

これまた前回と全く同じです。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況高の影響から、足もとは強含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)

先行き判断に関しては、消費者物価の判断を若干引き上げていますね。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

ということで、消費者物価の部分で「現状程度の下落幅で推移」という部分が抜けた所が判断を引き上げになっています。なお、「基調的にみれば」という部分は高校授業料無償化によるCPI押し下げ(▲0.5%弱)を意識した部分ですな。


・金融環境が謎なのだが・・・

金融環境に関してですが、市場の価格動向はまあ事実関係であって判断項目ではないのでスルーして、金融環境の総括判断に関して。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

というのは声明文にあったように変化しているのですが、各項目を見ると特に表現に変化が無いのが謎でございます。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(今回)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、低格付社債の発行環境にも改善の動きがみられている。資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている』(今回)

とまあこの部分なのですが、前回と変化しているのは低格付社債の発行環境だけでございまして、今回は「改善の動きがみられている」と前回の「CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境が続いている」から判断を前進させていますが、まさかこれを持って「緩和方向」という事では無いと思いますのでどこでどう「緩和方向」としたのか謎でございます。

まあ本文中身をもっと読み込めば良いのかもしれませんが(汗)


・ということで

ま、そんな訳でして、月報全体でみるとそんなに前進をしているようには見えないので、声明文を最初に見た時の印象とそんなに変わらないという所でございます。問題は総裁会見なのよね・・・・・・


白川総裁会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1004a.pdf

○たぶん短観の数字が良いからやたらと強気のトーンになっているのではないかと

報道ベースでも強気ヘッドラインが並んでいましたが、会見要旨でも妙に強気な物言いっぷりが並んでいますが、現在の問題は循環的部分での景気がどうこうではなくて、ベースとなっているデフレに対しての戦いをしているのでは無かったか(つまり循環要因が回復しているからと言って肝心のデフレ脱却姿勢の手を緩めるような事をしちゃダメでしょという意味ね)という所ですな。

何せ最初の所で「判断を一歩進めました」ですからねえ・・・・

『こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。まず、わが国の景気については、「国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている」と判断しました。景気持ち直しの持続傾向がより明らかになってきたことを踏まえて、先月から一歩判断を進めました。』

で、本石町日記さんのブログによりますと想定問答では「心もち前進」だったようなので、短観を見て大喜びした総裁様大喜びで強いトーンの話をしたという事でしょう。まあのっけから上記のような状態ですので先行きの説明でもこのような感じです。

『先行きについては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いとみています。一頃は市場等の一部で、二番底を懸念する見方もありましたが、そうした懸念はかなり薄れたと判断しています。また、その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるため、成長率は徐々に高まってくると予想しています。』

まあ確かにここもとの指標など見てると2番底懸念はかなり後退しているというのはその通りでござんすがね。


○展望レポートで上方修正するんでしょうな

判断を前進させたということは上方修正ですかという質問に対して。

『1月に実施した中間評価との関係でみると、概ね想定の範囲内、あるいは幾分上振れているなど、人によって評価には若干ニュアンスの差がありますが、いずれにせよ、私どもは今、当初想定していたシナリオを確認できています。今回、その中心的な見通しを上方修正したのかというご質問ですが、そのことについての点検は、次回の展望レポートを議論する金融政策決定会合で行いたいと思っています。』

どう見ても上方修正です本当にありがとうございました。いやまあそれは市場的にも想定されている(景気ウォッチャーも良かったですし、本職の皆様がGDP予想を引き上げてますよね)次第。で、その理由ですが。

『先程、判断を一歩進めたと申し上げた意味を、今一度ご説明します。第1に、景気の持ち直しの持続性について明確になってきた、特に、一頃言われていた二番底の懸念はかなり薄れたということです。第2に、個別の需要項目をみると、今回、設備投資については、従来の「概ね下げ止まり」から、一歩進めて、「下げ止まり」と判断しました。それから、先行きの自律回復の芽、萌芽がいくつかみられます。そうしたことを念頭に置きながら、次回の展望レポートを議論する金融政策決定会合で、包括的に点検していきたいと思います。』

まあ何か良く判らんがここもとの環境改善で総裁がご機嫌になっているというのは把握した。


○物価に関するツッコミにも妙に元気な切り返し

短観の販売価格判断DIが改善していない件について(ちなみに仕入価格判断は上昇しているのでマージンが悪化方向なのですが)質問されたのですが、妙な答えになっている気がする。

『(答) ご質問の通り、先般公表した短観では、企業の販売価格判断DIはやや大きな下落超となっています。こうした動きは、製商品あるいはサービスの需給判断DIが引き続き大きな供給超となっていることにも現れています。つまり、需給バランスが悪化した中での厳しい競争環境などを背景に、販売価格の引き上げがこれまでのところ限定的であることを示していると思います。もっとも、この下落超幅の大きさ自体は2002〜03 年頃に比べると小幅にとどまっている上、このところは緩やかな縮小もみられます。』

いやあのそんな時期と比べてマシだからマシとか言われましても。

『この先の物価の基調をどうみるかということですが、需給バランスの動向と人々の予想物価上昇率が重要になります。この点、中長期的な予想物価上昇率に大きな変化がみられない中で景気は持ち直しを続けており、これに伴う需給バランスの改善は時間的なラグを伴いつつも物価に波及してくると判断しています。そのため、今後の物価下落幅はさらに縮小し、販売価格判断DIも徐々に改善していくとみています。』

えーっと、先般日銀が実施した生活意識アンケートで先行き5年間の物価見通しは順調に低下(9月、12月、3月調査の平均値がそれぞれ+3.9%、+3.5%、+3.0%)しているのですが・・・・と思ったらさすがに後ろの方でツッコミがありまして、それに対する答え。

『1年前に比べ物価が下がったとみる割合が約4割まで増えたということですが、これは現実に消費者物価が前年に比べて下がっているわけですので、物価が下がっていると答える家計が多いということは、そうしたマクロのデータと整合的だと思っています。予想物価上昇率については、この先向こう1年間、向こう5年間がどうかということが問題になってくるわけですが、先々については、中央値の低下は観察されていません。』

『これは多少技術的なことになりますが、物価上昇率に関するアンケートの個別の回答結果をみると実に散らばりが大きいです。今、現実に消費者物価指数がマイナスになっていますが、現時点での評価でも大変高いプラスという回答の方もいれば、大変に低いマイナスという回答の方もいます。平均値では、ある程度上下の極端な値を調整しないとなかなかみにくいと思います。私どもは、平均値のほかに中央値を注意してみていますが、中央値では、向こう1年、あるいは向こう5年の変化は特にないという結果です。その意味では、「生活意識に関するアンケート調査」の数字はこれはこれとして注意してみていますが、様々な指標を含めて注意してみていきたいと考えています。』

・・・・いやあのまた物価に関する非対称性のやぶれですかそうですかという感じなんですけど。だったら最初から平均値公表すんなやボケという感じでございますが何なんでしょこの言いくるめモードは。


○まあ景気に関してはやたら回復感強調していますね

全体のトーンとして強いですねというのはありますが、特に5ページ目の所での説明を見ると「こりゃ公表文より総裁の方が上方修正モードだわ」というのが伝わって来る感じっすな。長いけど全文引用します。

『(答) まず、景気の自律回復の芽とは何であるかについてです。今回、企業部門については、企業収益が改善していることが確認されました。3月短観はちょうど決算月でもあり、最終的に収益の数字が固まっていないという時期の数字ですので、2009 年度の最終的な数字や2010 年度の見通しは、多分上振れる可能性が高いとみています。そうした過去のパターンやこの景気局面の中での企業収益をみると、企業収益が着実に改善してきていると思います。』

『設備投資については、今はまだ下げ止まった段階にありますが、既に設備投資の水準が相当下がった水準であるだけに、企業収益が改善し、世界経済が全体として持ち直していることを併せて考えると、今後増えてくることも想定されます。』

『今回の短観は、2010 年度の設備投資計画のスタート時点でしたが、前年比伸び率は過去の平均並みのスタートでした。景気が悪い時にはもちろんここから下方修正されていくことになりますが、景気が上向いていくときにはここから上方修正されていくことになります。過去の平均的なパターンからすると、数パーセントのプラスになってきますし、景気の回復がもう少し着実なものになれば、さらに上乗せされてくることも考えられます。』

とりあえず短観を見て物凄くご機嫌になっているのは把握した。しかもよくよく読むと先行きに関しては「ここもとの上向き傾向が続くから大丈夫大丈夫」ってな感じで、相場が強くなると強気になる人みたいなテイストですな。

『次に消費、家計部門について考えてみます。消費を規定する最も大きな要因は雇用および賃金の動向です。これまでは非常に大きな雇用不安があり、現実に雇用情勢が悪化してきたわけですが、ここ数か月の動きをみると、雇用の悪化には明らかに歯止めがかかってきたと思います。雇用関係、労働関係の統計は振れが大きいため、ある程度の期間をみて判断する必要がありますが、これが下げ止まりから少しずつ改善してきているということは、消費を規定する最も基調的な要因が改善しているということです。ただ、この点も含めて包括的な点検を展望レポートを議論する次の金融政策決定会合で行いたいと思っています。』

はいはい強気強気。

『それから2点目の物価についてですが、先程申し上げたことに特に加えることはありません。物価については、景気が全体として持ち直しており、マイナスの需給ギャップが縮小していく方向にあるわけですから、ラグを経て物価の下落幅が縮まっていくというのが現在のシナリオです。それが正確にどの程度のものになるかということについては、次回の展望レポートで包括的に点検してお示ししたいと思っています。』



○で、例の副作用発言

これは見事な引っ掛け質問。

『(質問の前半部分を割愛)3つ目は、景気についてです。予想の範囲ということなのかしれませんが、幾分上振れしているという話もあります。5月下旬に公表されるGDPも相当強いものになるだろうという予想が出てきていますが、そのような中で量的緩和も含めた緩和政策を持続する必要がどうしてあるのか、あるいはそれに伴う副作用はないのかをお聞かせ下さい。例えば、足許の円安に表れているように円キャリートレードのような動きが出始めているとみる向きもあると思いますが、金融緩和の長期化による副作用はないのでしょうか。』

・・・・・これ狙って質問してるでしょ(−−)

で、対応する回答部分。

『3つ目の、現在の金融緩和を持続することによって弊害・副作用がもたらされるのではないかという点についてです。まず、私どもはいわゆる量的緩和政策を採用しているわけではありません。量は潤沢に供給していますが、当座預金残高をターゲットにして金融政策を運営しているわけではもちろんありません。』

まあここまでは良い。

『しかし、現在のように世界で最も低い金利で量を潤沢に供給していると、今後もこのような状況がずっと続くという予想が生まれ、これが副作用をもたらさないのかということは大事な論点です。』

大事な論点かもしれないが今はデフレ脱却最優先じゃなかったんですか????

『ご質問にありました円キャリートレードについては、若干の動きはありますが、これが大規模に起きているわけではないと認識しています。ただ、この点も含めて金融緩和が長く続いた場合に経済に様々な不均衡をもたらし、それが少し長い時間をかけて蓄積し、最終的に大きなショックを経済にもたらすことがないかどうか、これは大事な論点だと思います。』

もうね、足元の経済の問題は循環的な問題じゃなくてデフレだってこの前あんたら言ってませんでしたっけ?????

『だからこそ、日本銀行はいわゆる2つの柱の枠組みの中で点検を行っているわけです。第2の柱は、様々な金融的な不均衡についても明示的に点検をして、そうした点検を踏まえた上で金融政策を運営していくということです。そのような必要性があるということについては、今回の決定会合を含めていつも認識されている点です。』

いやまあそれはその通りなのですが、何も今言う事じゃないんでは無かろうかと。



○という訳でまた様式美の世界がやってくるに1万ドラクマ

とまあそういう事で、今回の総裁会見はやたらめったら強気でして、月報や声明文のトーンと明らかに違うというのがシュールな所でありますが、暫く前にあたくしが申し上げたと存じますが、これはまた昨年末以来の様式美の世界に突入しているのではないかと存じます。つまり・・・・・

(1)白川総裁が原則論を披露する

(2)政治方面からの差し込みが来る

(3)あっさり陥落

というのが11月末以来見られた世界でして、様式美の様相を呈しているのでございますが、まあ米国金利上昇とか米株高とかギリシャ問題の何となくインチキ先送りという欧州得意のスキーム発動(がここの所怪しげなので困りますが)という外部要因のラッキーパンチもあって、株は上昇するは為替は円高一服して反転するわと、まあやっと良さげな流れになって、菅さんあたりもご機嫌モードになってようやく「政府VS日銀」みたいな不毛な話も収まりつつあるという中でございますわな、今の所。

で、折角良い流れが続いているのですから別に「緩和長期化の副作用」なんぞは言わなくても良い話だというのに、いきなりこの有様でございまして、まあ今の所米国が調子良いからそんなに問題になってなさそうですけれども、まあしかし総裁会見以降は今の所流れが止まった感じでもありますよね、ユーロも怪しくなってきましたし。

となりますと、上記の様式美にあります(1)にまさに今到来したというひじょーにいやーな予感がするのがあたくしの仕様なのでありまして、毎度繰り返される様式美というか吉本新喜劇というか何だか存じませんが、またぞろ為替とかが逆転しだしたり株価がヘナヘナになってきたりしたら同じ騒ぎが起きるのではないかという方に1万ドラクマと言った所でございます。


大体ですな、物理的に金利を下げるというネタがほぼ尽きていて、おまけにターム物金利だって下がっていて、テクニカルに言えばこれ以上の下げ措置のような物を発動すると却って足元金利のボラが上昇してターム金利は下がるのか上がるのか訳判らんという状態になっているのであって、金融緩和をどうのこうのと言っても、表面上は兎も角として、金利村の理屈からするとここから先はアナウンスメント効果の世界になるとしか思えないのですよね。

然るに、そのアナウンスメント効果に対して「緩和長期化の副作用は重要な論点」とか発言するのはどこからどう見てもアナウンスメント効果を減殺あるいは否定するような効果しかもたらさないのでありまして、今まで政治(および市場)に差し込まれて涙目になりながら追加緩和した行動をいきなりパーにしてもおかしくない(たまたま米国が良いからあまり目立たないけど)発言をするとか何を考えとるんじゃと申し上げたくなりますが、まあきっと「麿はこんな追加緩和はしとうなかったでおじゃる」といった所なんでしょう。でも、そういうのは緩和解除できるような外部環境になってから言いなさいという所でありまして、今の状況で利上げとか有り得ないのに言わないでちょと存じます次第でございます。

まあ様式美リターンズは見たくないのでこの予想外れることキボンヌ。

#悪態成分が足りませんかそうですか(^^)






2010/04/08

お題「詳しくは会見要旨を見ないといけませんが・・・」

決定会合結果自体はまあこんなものでしたけど・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(前回)

○声明文はやや判断前進で展望レポートで上方修正ですかね

前回と例によって比較した時に、一番気になったのは金融環境の部分でござんした。まあとりあえず最初の部分から比較しますです。

・現状判断では新興国経済を引き上げ

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

ということで、持ち直しを「続けている」になってますので、流れの中ですから継続してという所ではありますが、表現としては強くなっていますわな。で、項目別に見た場合には、海外経済というか新興国経済に関しての表現を引き上げています。

『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)
『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(前回)

でもって、今回は短観を受けて企業の景況感に関する指摘が入っているのが前景と違いますが、後の部分に関しては同じですな。ということで今回分だけ引用です。

『企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している。』(今回)


・それより重要なのは金融環境かなと思います

今回真っ先に目が行ったのはこちらです。

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

・・・・・えーっと、これはどういう話かと申しますと、先般の短観にも出ていましたが、企業収益環境が改善する中で金融緩和の効果がより強まるようになっているという話ですわな。金融経済月報(概要)ではそのあたりを説明していますよね。例えば先月の月報では『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』という表現になっていますが、この部分が改善している結果として、緩和政策の効果は更に強まって来ているという説明になっていると思います。よく福井総裁が量的緩和継続する中で景況感が回復するステージでこういう話してましたな(^^)。

つまり、12月以降の日銀の緩和強化+デフレ脱却への姿勢強化という流れからすると、この説明は「緩和政策の効果も強まって来たのでデフレ脱却への効果も強まりますよ!」という事で、ここに「引き続きデフレ脱却の為に粘り強く金融緩和を継続」って姿勢を出しているので、セットとしては「緩和政策の継続で景気押し上げ効果を高めますよ」という話になって、「デフレ脱却に向けて頑張る日銀」という姿勢を明確にできるのですけど、会見で総裁様が何か微妙にぶち壊し発言をしているように見えるのが如何なものかと思ったのですが、その話は後ほど。


・物価判断に変化無し

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)


・先行き見通しは一言だけ変化

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』(前回)

ここは単に「2010年度半ば」というのが時間的に近くなってきたから「当面」に差し替えたのか、それとも「緩やかな回復から順調な回復への進化が前倒しになった」のかは良く判らんのですが、展望レポートでより詳しい話が出てくると思います。ただまあ会見報道を見る限り、やたらめったら回復をアピールしているみたいですから後者なのかもしれませんな。会見報道見る前は前者だと思っていやのですけれども。

『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる(注2)。』(今回)

で、(注2)というのは高校無償化のCPI低下分は(・∀・)キニシナイ!という話をしていますので、今後原油価格上昇でCPIが上昇しても気にしないんですよね、ウッシッシ。

という悪態は兎も角、こちらは同じです。


・リスク認識も同じ

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

前回と全く同じです。


・決意表明文では1か所だけ違います

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)

緩和措置追加に関する文言部分はさておきまして、どこが違うのかと言いますと、最後の一文でして、『金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』って所で先月にあった「今後とも」というのが抜けているので、一瞬「ええ?」と思うのですが、2月の時点ではこの「今後とも」という文言が無かったので、前回追加緩和措置を実施したから「今後とも」というのが入ったのかなあという気はするのですが、こういう所微妙に変化させられると気になって困りますな。


とまあそういうことで、正直言ってこの声明文が出た時にはまあ想定通りですなあ程度だったです。月報ではもう少し強い話を書くのかなあとか思った次第でして。



○会見に関してだいぶ気になる部分があったのですが・・・・

で、会見なのですが、ブルームバーグのニュースだとこんな感じで。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=akmxIYhlxPUA
日銀総裁:景気は着実に持ち直し、自律回復の芽−判断前進(Update3)

時事通信ではこんな感じ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010040700769
経済・物価見通しを上方修正へ=「自律的回復の萌芽」−日銀総裁

ヘッドラインでやたらめったら判断前進の話が出てくるのが「うーむ」という
感じだったのですが、ロイターではこんなヘッドラインの打ち方を。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK039404820100407
UPDATE2: 景気判断を3月より一歩進めた、緩和長期化で不均衡蓄積しないかが大事な論点=日銀総裁

・・・・・orz

で、これロイターだけかと思ったらクイックも似たようなフラッシュを打ってまして、共同通信は会見詳報の中の最後の方(会見の詳細を何本かに分けて流す記事)の題名に同じような話を入れているので、まあ発言はしてるんでしょうと思います。

まあブルームバーグとか時事のニュースではスルー気味なので、恐らく話としてはメインの話でも何でも無くて、単に一般論として答えたと思うのですが(詳しくは会見要旨を見ないと何とも言えませんが)、それにしてもこれはまたロイターはバイアスの掛かったヘッドラインを打ちやがるという感じです。一時ブルームバーグが妙に「政府VS日銀」みたいなヘッドラインの打ち方をして如何なものかと悪態をついてましたが、ここへきてロイターがまた本領を発揮してバイアス入りまくりのヘッドラインを打つ始末。ロイターの記者とデスクは何考えとんじゃという感じでございますわな。


とまず悪態をつきましたが以下白川総裁向け悪態。

ただね、例え一般論であったとしても白川総裁は今「緩和長期化の副作用」というような話をすべきではないと思うのであります。現在日銀は「デフレ脱却の為に戦う」という姿勢を12月以降更に明確にしているのでありまして、その為に追加緩和(のようなもの)を実施し、物価安定の理解の明確化を行い、声明文にあるように『きわめて緩和的な金融環境を維持していく』と言っているのですよね。

折角12月以降にそのような姿勢を強化している中で、肝心の総裁がいきなり「緩和長期化の副作用がどうのこうの」とか言い出したら、12月以降の日銀の施策が全部パーになる位の逆効果になり兼ねないものでありまして、そらまあ白川さんとしては政治やら市場やらに押しこまれて緩和政策を追加する破目になったという思いがおありになるのでしょうけれども(あくまでも憶測)、実際に緩和政策を実施して「緩和継続してデフレとの戦いをする」という事を日銀の組織として行っているのですから、それを日銀のトップとしてアピールしないでどうするんだと小一時間問い詰めたい訳でございます。


最近の良い例というか悪事例というかで例えると、ローゼン麻生太郎さんがまだ首相だった時に「あの時は郵政民営化に賛成したけど実は反対でした」とか言い出して支持率を死ぬほど下げたという実績がありましたけれども、今回なんか過去の話じゃなくて現在やっている「金融緩和を続けてデフレとの戦いをしますよ」に対して能天気に「緩和長期化の副作用」とか言ってるので、ローゼン以上にタチが悪いとも言えそうですわな。

いやね、今朝のモーサテとか日経のネット版とかを見た感じでは、この発言がさほどおおごと扱いされなさそうなのでややホッとしているのですが、うっかりしたら「緩和打ち止め」どころか「出口政策」とまで言われだしか兼ねない不用意にも程がある発言ですし、先程申し上げた通り、12月以降の日銀の努力をいきなり自己否定するような発言をするようでは困ったお方だと申し上げたくなって参ります。


いやまあ勿論「第1の柱」「第2の柱」の点検という意味では緩和長期化の副作用についても点検しますし、そりゃまあ緩和長期化には副作用があるのも当たり前なのですし、質問されたから答えたと思うのですが、そもそも論として12月の2回目の会合で「中長期的な物価安定の理解の明確化」を行ったのは「日銀のデフレ脱却に対するスタンスに対する誤解を払しょくするため」に実施した筈なのでありまして、またぞろそのスタンスを誤解されるヘッドラインを打ちこまれるリスクのある物の言い方は無いですわな。

例えば「全ての政策には作用副作用があるが、現在日銀はデフレ脱却に向けて粘り強く金融緩和を続けている所であり、緩和政策長期化の副作用について論ずるのは時期尚早である」とか何とか言えば全然違うと思うのですけれど・・・・・・


#と、悪態大会になりましたが、会見要旨を見て悪態に取り消し線が入る事を希望


ま、とりあえず今回はやたら強気っぽいヘッドラインが多かったのにはちょっと何だかなあという感じで、「偽りの夜明け」とか言ってたのあんたじゃないのかよとかあたしゃ思いましたですよ。










2010/04/07

お題「細かいネタを少々ということで」

どこぞのテレビ番組での為替コメントで「日銀金融政策決定会合において市場の期待通り金融緩和政策が決定された場合は為替市場はどうのこうの」とか言ってるのだが、どこの市場の誰が「今日の会合」での金融緩和を期待しているのか小一時間問い詰めたいと存じますけど、ニューヨークでは(コメントしてたのどこぞのNYのお方)脳味噌がスカスカになるのが仕様なのか??

と、悪態ネタが尽きないので某番組の視聴はネタ番組としては実にエンタテーメントでございます(^^)。

#そりゃ全く無いとは言わないけど普通にやるなら4月末でしょ


○短観のCP発行環境

この前(3月2日)こんなリリースがありまして、
http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/nttk30.htm

その時に過去分の発行環境判断DIに関して「実際に発行している企業ベース」数値も公表されていまして、3月3日の駄文で過去の計数確認をしたら「やっぱり市場環境をきっちり反映してるわ」と感心した訳ですけど、さて今回はと言いますと。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/ref/tkref1003.pdf

    (発行企業ベース)(全企業ベース:従来の公表値)

2010年03月  +32      ▲6
2009年12月※ +24      ▲9
2009年09月  +23     ▲11
2009年06月  +15     ▲14
2009年03月  ▲22     ▲24
2008年12月  ▲55     ▲20
2008年09月  +13      +1
2008年06月  +18      +3
2008年03月  +17      +3

※2009年12月は調査対象企業の旧ベース(今回より見直し)の数値で、新ベースに直すと全企業ベースの数値が▲10になります。

でこの数値ですが、12月の新型オペで3か月TBの金利が低下して、主に3か月以内の発行が多いCPレートに関してもその分きっちりと低下しましたし、そもそものCP発行が減ってきた事から投資家の要求する銘柄間較差も無くなって来て、何かもう同じようなレートが並ぶでござるの巻という状況になっていましたので、ここでのDI上昇は市場の金利環境をきっちちと反映しています。

つーことで、中々この参考計数は備忘録として有益(実際にCP市場の中にいる人としては発行状況をレート推移を毎日見てますから状況は判りますが、そうじゃない人とか、後からどうだっけと思った時にはこの数字は便利だわという事ね)ですなあという所で。



○新型オペを増額するのはテクニカルにややこしいと言うオペ雑談

3月の大幅財政払超の影響で、準備預金は絶賛進捗して当座預金残高も期末前に随分積み上がった訳ですが、今週には当座預金残高を15兆円台に戻したのですが、その時点で資金供給オペ(除く買入系のオペ)残高が30兆そこそこになって参りました。

日銀のオペ落札公表数値ベース(なので額面ベース)の数値を手元でヘコヘコ集計したあたくし謹製の数値によりますと(ということなので間違ってたら教えてちょ)今週に入ってのオペ残高は、5日が31.5兆円、6日が30.5兆円、今日が30.5兆円となっています(即日オペは無いと思います)。で、明日はこのままトムスタートのオペが実施されなければの話ですが29.8兆円となる予定(トムスタートはあるかもです)。

ということは、新型オペを30兆円に増額しますと、完璧に他のオペが打てなくなるような場面が財政要因次第では生じてしまうという話になる訳でございまして、まあその場合どういう事になりますか申しますと、債券ディーラーの足元の資金繰りのブレを日銀のオペを利用して調整をしにくくなりますので、その分が市場に出てくるという事になり、その結果として足元のGCレートが振れやすくなるという話になる訳ですな。

#ここまでの説明で判らなかった場合は近所にいる短期デスクの人間に聞いて下さいませです(^^)

足元のGCレートが振れやすくなるとその分ターム金利に要求されるリスクプレミアムが上昇するので、ターム物の金利も微妙に影響を受けるというのが奥の深い所でございまして、即ち(この前からしつこく申し上げているように)ターム物金利の押し下げという名目での新型オペなのですが、打ち過ぎると却って逆効果になるという大変に味わいのある事が起きる訳ですな。

いやまあ勿論足元で吸収オペ打ちながらツイストを行って、足元でのファインチューニングをする余地を作ればその問題は解消されるのですけれども、吸収オペを打つとそれがテクニカルであっても「日銀が引締を行ってケシカランですムキー!」とファビョった報道をする人や勘違いする他市場の皆様がおいでになりますので、まあ現在の地合いでそのような事は出来ないと言うのが惜しい所です(−−;)

#まあそんなのもあってか、昨日もCP買現先オペのロールは行われずに、CP買現先は撤収の方向のようですね。

ということで、新型オペに関してはここから先は残高を積むよりは期間を伸ばす方が話としては本線になると思うのですが、まあ敢えて新型オペ30兆円攻撃にして足元の市場調達を促進するという荒業も無い訳ではなく(^^)、その場合は市場機能とやらも動くという(ただしレポ市場のみ)何か判ったような判らんような不思議展開になるのですかね(謎)。

#足元の短期オペが苦しくなってくるとすると短国買入を減らすともう少し足元の供給オペが楽になるという気もするが(長国買入は減らせないですからね^^)今思いついただけの話なのでよーわからん


でですな、これって丁度今回新型オペという実例が出たから判り易くなりましたが、長期国債買入と短期オペとの関係も同じようなフレームで理解出来るかと存じます次第。

つまり、長期国債買入をジャンジャン増やした場合、その分って当然ながら資金供給要因になっていますので、短期オペでの資金供給余地をその分食う形になってしまいますわな。で、短期オペでのファインチューニングが難しくなってくると、足元金利がその分不安定になり、特に銀行券にしろ財政にしろ出入りが巨大で足元の資金需給がぶれやすい日本の短期金融市場においてはその弊害が大きくなりますよという話。まさに身をもって説明という感じになっておりますが、身をもって説明状態でもその点について「うんうんなるほどそうですね」と共感してくれるのが短期市場でキャッシュをいじっている人しかおいでにならないというのが実に残念な話ですので、こうやってマニア話を延々と書くのでありました。

#だから国会で白川総裁が「長期国債の買入をやり過ぎると、どこかで売却をしないと行けない場面が生じる」と説明するのですが、まあそんなテクニカルな話をしても世間様には普通に理解してくれないと思います。今後FRBが保有有価証券の売却をおっぱじめてくれると中々お洒落な展開が生じて「あれが実例です」と説明もしやすくなるとは思いますが(^^)。



○FOMC議事要旨(週末に真面目に読む所存)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100316.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20100316.pdf

まあどちらでもどうぞという所で。

何か市場の反応は「低金利政策維持」という元々そうでしょという話を確認したと言う事になっていますが、議事要旨の読書は中々オモロイのでこれは週末にヒーヒー言いながら辞書片手に読みたいと存じます。

で、最後の方にインフレ期待に関してはこんな記述がありますな。最後の最後のCommittee Policy Actionの手前のパラグラフから。

『In discussing the inflation outlook, participants took note of signs that inflation expectations were reasonably well anchored, and most agreed that substantial resource slack was continuing to restrain cost pressures.』

インフレ期待はアンカーされてて、潜在的な資源のスラック(要するに俗に言う需給のギャップみたいな話ですわな)が価格上昇を抑制していると。

『Measures of gains in nominal compensation had slowed, and sharp increases in productivity had pushed down producers' unit labor costs. Anecdotal information indicated that planned wage increases were small or nonexistent and suggested that large margins of underutilized capital and labor and a highly competitive pricing environment were exerting considerable downward pressure on price adjustments.』

えーっとシンプルに要約できないのですが(あほ)、稼働が上昇する中でもまだ賃金は上がらない(ので結果として労働生産性が上がっている)上に、依然として全体としては過剰生産力があるので価格設定行動にも上昇圧力は掛かり難いと。

『Survey readings and financial market data pointed to a modest decline in longer-term inflation expectations over recent months. While all participants anticipated that inflation would be subdued over the near term, a few noted that the risks to inflation expectations and the medium-term inflation outlook might be tilted to the upside in light of the large fiscal deficits and the extraordinarily accommodative stance of monetary policy. 』

んでもってサーベイや市場データからは長期的なインフレ期待はここ数カ月低下しているとして、全ての委員はインフレは近いタームでは抑制されていると予想するものの、数名の委員はインフレ期待や中期的なインフレ予想が、財政の大きな赤字や前例のない緩和的な金融緩和によって上昇するリスクがあるという話ですな。

という話はまあここの所毎回行われているには行われているのですが、最近この辺の指摘がどう変わっているのかというような面まで読む時間はさすがに無いので勘弁。

で、最後の部分でたぶん話題になっていたと思われる所を備忘的に引用しておきますが、時間が無いので引用だけという超手抜き状態。

・ホーニッグさん反対の理由は「低金利継続が金融市場のインバランスを招く」

『Nearly all members judged that it was appropriate to reiterate the expectation that economic conditions--including low levels of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations--were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period, but one member believed that communicating such an expectation would create conditions that could lead to financial imbalances.』

・ガイダンスの文言に縛られるべきではないとか何とか言ってる部分

『A number of members noted that the Committee's expectation for policy was explicitly contingent on the evolution of the economy rather than on the passage of any fixed amount of calendar time. Consequently, such forward guidance would not limit the Committee's ability to commence monetary policy tightening promptly if evidence suggested that economic activity was accelerating markedly or underlying inflation was rising notably; conversely, the duration of the extended period prior to policy firming might last for quite some time and could even increase if the economic outlook worsened appreciably or if trend inflation appeared to be declining further.』


・引締めが遅れるリスクよりも早いリスクの方がまずかとうという指摘を「数名が」行う

『 A few members also noted that at the current juncture the risks of an early start to policy tightening exceeded those associated with a later start, because the Committee could be flexible in adjusting the magnitude and pace of tightening in response to evolving economic circumstances; in contrast, its capacity for providing further stimulus through conventional monetary policy easing continued to be constrained by the effective lower bound on the federal funds rate.』

ということで、確かにまあ市場の一部が妙に警戒しているようなホーキッシュな面は出てませんわなという所だったんですかね、よー知らんが。









2010/04/06

お題「もうすぐ次のMPCがあるというのにBOE虫干しネタ」

米国の公定歩合関連ってあれお笑いネタ(通常の政策委員会は通常実施されるもので公定歩合の話は別に特別なネタじゃなくて毎回話をするもんじゃないのですかね)だと思ったんだがマジでディスカウントウィンドウ話があったのですか??

#今日もモーサテは電子書籍の話をしていますが、あたくしは紙ベースの方がやっぱり楽です、調べる時に一度に複数を一覧して読めるし。検索とか面倒かもしれないけど、実は書類なり文献なりの中身を人力検索する過程でその分野の「土地勘」が付くと思うのですよね。いやまあ就職する頃までは手書き書類が基本だったからという訓練の問題だと思うのだけど・・・・・

実は10年国債入札というイベントがあるような気がするのだが、ここもとの相場、特に超長期が訳判らんにも程があってコメントのしようがございませんなのですぅ。

で、、まあネタとしては超今更なのですが、折角あたくしがヒーヒー言いながら読んだBOEのMPC議事要旨の2月と3月分に関して備忘メモを残しておかないと調べた物がゴミと共に去ってしまい兼ねないという超個人的理由からBOEネタから参ります。

3月の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1003.pdf

2月の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf


○話の流れが3月と2月で全然違う件について

BOEの議事要旨ってMPCから2週間くらいで出てくるのですげーと思っていたのですが、最近読むようになったら思うのは、議論の途中を端折り過ぎていて話の筋が飛んでいる事が多い上に、前回の議論を踏まえた話を飛ばしていきなり今回の話題になるので、ここもとのように資産買入を一旦止めましたという時になると前後の比較をした場合に話題がワープしている感がして「???」となる事多し。

ということで、今年は1月〜3月の間でインフレに関する話とかがだいぶ変わってきた(足元のCPIがインフレターゲットを大幅に上振れしてきてるのだから当然なのかもしれませんが)のが非常に興味深い所であります。まあ全部引用してるとキリがないのでその辺をてきとーに拾いながら参りたく存じます。

主に3月のMPCを中心に(2月も読んだのですけどね)参りますね。


○ポンド下落の評価について

『Supply, costs and prices』の辺りから。

3月議事要旨の第18パラグラフから。

『CPI inflation had increased to 3.5% in January. The Governor’s open letter to the Chancellor had identified three factors driving up the CPI measure of inflation temporarily.』

ではその3点とは。

『First, the restoration of the standard rate of VAT to 17?% had raised prices relative to one year ago. Second, over the past year, oil prices had increased by around 70%. That was pushing up petrol price inflation, which, in turn, had raised overall CPI inflation. And third, the effects of the sharp depreciation of sterling in 2007 and 2008 were continuing to feed through into consumer prices.』

で、特に最近のポンド下落について、

『The depreciation of sterling since the start of the year was likely to put additional upwards pressure on inflation over coming months.』

という話をしています。まあこれはこれで良いのですが、2月の議事要旨では同じ第18パラグラフでこのような切り方をしています。

『Against the background of a substantial, and growing, margin of spare capacity, it was notable that CPI inflation outturns had tended to surprise to the upside during the past year. CPI inflation had increased by 1 percentage point to 2.9% in December ? chiefly the result of higher petrol price inflation and the effects of the reduction in the standard rate of VAT a year earlier dropping out of the twelve-month comparison. It was likely that inflation had risen further in January, as the standard rate of VAT had been restored to 17.5%. 』

BOEは「margin of spare capacity」って言い方をしますなあというのはこの前も書きましたが(^^)、3月では17.5%を17と2分の1%と書いていたり、何だか微妙に見てくれ重視なのか何だかしらんが、ジョンブル様たちの書き英語は難しいですなあと思いますがそれは兎も角。

2月にはCPI上昇に関して石油価格上昇と付加価値税の暫定引き下げの廃止による要因と書いていまして、ポンドの下落に関する話はここには無く、その次の第19パラグラフにございます。

『Excluding food and energy prices, and abstracting from the effects of changes to the VAT rate, CPI inflation had been broadly stable since the beginning of 2009. That was most likely because the upward pressure on firms’imported costs and prices from sterling’s depreciation had acted to counterbalance the downward pressure on inflation from the margin of spare capacity.』

これだと大幅な通貨安が経済の生産余剰による物価下落圧力を相殺したという話をしているように見えますな、というか従来この線で話を進めていたのがBOEでありまして、自国通貨安の効果を決定会合議事要旨でここまで堂々と評価しているのも中々(米国だってそんな話はせん)チャーミングだと思っていたのですけれども。

『But it was difficult to judge the size of the impact of each of those two forces. Other advanced economies, including those that had not experienced significant currency depreciations, had also seen inflation hold steadier than might have been expected given the reduction in activity. This suggested that there might be other common factors helping to offset the downward impetus to inflation from weak demand. A smaller effect of a given change in demand on inflation had been observed across the major economies even prior to the crisis.』

でも本当にそうなのかというのについては正直難しいという評価もしているのですけれども、この話が3月になるとさっきのようにポンド安でインフレという話になっている所が話題のワープにも程があるのですが、まあ現実のデータを見て修正してきたと言えばそうなのかも知れないですし、その辺りに関する内容がもうちょっと見えると「どこからどこまでポンド相場を気にしたら良いのか」(って別にあたくしは外野だからどうでも良いけど)という点なんかも見やすくなるような気がしますな、と極東の国で日本語でBOEに文句言っても仕方ないですかそうですか(^^)。


○資産買入効果

話は戻って『Money, credit, demand and output』になりますが、第12パラグラフ(さっき悪態は付きましたが、基本的にはパラグラフごとの話題は同じものを使っていまして、その中の要因分解などが全然違うので話がワープした印象が強いのだ)の書きっぷりが3月と2月で違うのでした。

まずは3月。

『The latest data from the ONS suggested that nominal GDP had grown by 1.1% in the fourth quarter. In the past, these data had been subject to sizable revisions, but this rise was similar to that recorded in the previous quarter, reducing the likelihood that the pickup in nominal demand growth was erratic.』

一応そういう数字だけど後からの改定もありますという話をしてますな。

『Taken at face value, that was encouraging given that the MPC’s policy actions were aimed at increasing nominal demand sufficiently to meet the inflation target. But it was a concern that the pickup in money spending was largely associated with a rise in the GDP deflator rather than in real activity.』

てな話をしてるんですが、2月はこの辺りに関して資産買入プログラムなどの金融政策に関する話をこういう言い方をしてます。


『The latest data for 2009 Q3 indicated that nominal GDP had begun to expand again, at a quarterly pace of 1.1%.』

まあ2月でもそんな数字でしたが。

『Taken at face value, these data were promising given that the objective of the accommodative stance of monetary policy, including the MPC’s asset purchase programme, was to increase nominal demand sufficiently to meet the inflation target. It was, however, possible that the increase in nominal demand was being absorbed by higher prices, and lower real output, than the Committee had anticipated.』

で、このencouragingとpromisingってどっちがエライのか良く判らんのですが(こういうのは本石町日記先生に聞かないと判らんので教えてちょ)、まあとりあえず資産買入プログラムが終了した事から資産買入の話を抜かして単なる「金融政策」としているのかどうかは謎なのですが・・・・・


3月議事要旨では、資産買入(停止)に関する部分は物凄く端折られていまして、『Financial markets』の第4パラグラフでこんな話をしているだけだったりするのでした。

『Yields on UK government bonds had risen. Ten year ahead nominal forward rates had increased by around 30 basis points, while real forward rates had risen by rather less. Uncertainty about UK fiscal prospects could have contributed to that rise. The suspension of the MPC’s asset purchases had not had much impact on the gilt market.』

ということで、最近の英国長期金利の上昇は財政の維持可能性問題に関する思惑が寄与していて、BOEの資産買入を停止した事は長期金利に大きな影響を与えなかったという話をしています。

ちなみに2月には資産買入終了に関して『The immediate policy decision』という所の頭になる第29パラグラフでこのような指摘をしています。

『During the month, the Bank had completed the MPC’s programme for purchases of £200 billion of assets financed by the issuance of central bank reserves. That stock of past asset purchases would continue to impart a substantial degree of monetary stimulus for some time to come. The completion of the previously announced purchase programme had resulted in little immediate impact on market yields, consistent with the fact that market participants almost uniformly expected the size of the asset purchase programme to be left unchanged at this MPC meeting.』

まあその流れで3月の金利上昇について話をしているから、上記のような話になるんでしょうけれども、資産買入はマネタリーの刺激策という話なのかというとその辺がまた微妙でしてですな、これは以前ご紹介したと思いますが、2月の議事要旨では「キャッシュフローの増加や低金利によって社債などへの投資意欲が高まり社債のスプレッドが縮小」というような「ポートフォリオリバランス効果」チックな話をしてたりしてまして(引用割愛、第5パラグラフです)、何かこう結局BOEの資産買入に関して、どのような経路でどのように効いたのかという点について有耶無耶のうちにしらっとフェードアウトした感じですな。

特にここもとの議事要旨では、その辺の話が前回からいきなりワープしたりして、かなりヤケクソになっているのではないかという気がせんでもない。


○当たり前ですが3月はインフレに関する話が多い

2月はちょうどインフレーションレポートを出すタイミングということもあって、経済見通しに関する話がより多くなっています。でもってその中で2月では3QGDPが11月のインフレーションレポート時点での見通しより弱かった(のに堂々資産買入を停止したというのも何だか良く判らなかったですけど)理由に関して延々と書いてありますが、さすがに引用するのは何ですのであたくしの貧弱な英語力で勝手にまとめますと、(1)生産などは強いのでそもそものONSのGDP推計値が先行き上振れするかも、(2)金融環境における逆風は依然として強い、特にクレジットのタイトな状況とバランスシート調整問題、(3)先行き経済の不透明感が依然として高いので投資や消費よりも貯蓄傾向を強めている、(4)輸出と製造業は回復しているが、その効果が国内に波及するのが遅れているかも、というように読みましたが、違っていたらゴメンナサイ。

一方、3月はインフレ数値が更に上に振れた事から、延々とインフレに関する話をしていまして、ああでもないこうでもないという話をしているのですが、金融緩和とポンド安に関して諸刃の剣的な指摘もしています。第27パラグラフから引用。

『The significant degree of policy stimulus and the substantial past depreciation of sterling were two factors supportive of growth, and both the expected near-term path of official interest rates and the exchange rate had fallen further over the month.』

ほほう。

『The scale and timing of the impact of the monetary stimulus remained highly uncertain. Some boost to net trade was likely as a result of the depreciation. However, it was not obvious, against the backdrop of increased uncertainty about demand growth in some of the United Kingdom’s main exports markets, how quickly this would happen.』

ということで、結局の所その辺の影響度合いは中々計測が難しい(そらそうだが)って話になっておりますけど、ポンド安と金融緩和に関する話では1月辺りから「金融緩和の長期化で期待インフレ率の上昇リスク」という話をしていたので、その流れからすると不思議では無いのですけれども、まあ3月の議事要旨ではちょっとこの辺りに関するトーンが強くなっています。基本的には経済の余剰生産力による物価押し下げ圧力があって、経済活動に関してもそれほど水準が高まっている訳でもないので、中長期的なインフレは抑制されるだろうという見通しですが、足元のインフレ率上昇による期待インフレ率上昇を懸念するという感じのようです。


○で、結論部分もちょっと違う

時間が無くなってきたので3月と2月の最後の部分だけ引用するだよ。

まずは3月議事要旨の第30パラグラフ。

『Although different inferences could be drawn from recent data, all Committee members agreed that the monetary stance should be left unchanged at this meeting. That would allow the Committee to continue to assess the effects of the cumulative loosening of monetary policy since September 2008, alongside emerging evidence on the upside and downside risks to inflation.』

ふむふむ、全員一致でも微妙に見方は違うと。


2月議事要旨の第35〜37パラグラフ。

『In addition to those arguments, maintaining the current stance of monetary policy, without adding further stimulus, would allow the Committee an opportunity to judge more thoroughly the effects of the cumulative loosening of monetary policy that it had implemented since September 2008. In particular, while Committee members agreed that the stock of past asset purchases would continue to impart a significant monetary stimulus for some time, views differed about the precise duration and size of that stimulus. It would also enable the Committee to assess the strength of the emerging economic recovery as more reliable data became available.』

『The Committee would be able to provide further monetary stimulus should the outlook for inflation in the medium term warrant it.』

『Taken together, all members felt that the arguments in favour of leaving the size of the asset purchase programme unchanged at this meeting were more persuasive. But for some members, the arguments were very finely balanced.』

ということで、2月は買入停止を決めたものの再開に含みを残していますが、3月はインフレの話が多くなっている所からしても、買入の再開に関するイメージの湧かない内容でして、この1か月で随分と話が飛びやがりましたなあというのが結論であります。

#英文引用大会で増量セールスでどうもすいません








2010/04/05

お題「週初なので(ただの言い訳)雑談」

小選挙区落選比例復活の分際で新党結成とか頭に虫でも湧いているんでしょうかねえ。与謝野さんはそこそこちゃんとしてる人かと思ったが正直失望した。早く選挙になって落選しやがれ。

#ちゃんと小選挙区落選の分際をわきまえて小池さんだって中川秀さんだって表面上は大人しくしているというのにねえ

極端な事言うアホウが横行する度合いが選挙の度に酷くなっているようにしか思えないので、極端さを排除する為には中選挙区制度(とか1回だけ実施された大選挙区制限連記)の方が向いているのではないかと思うのですけれども。


○そう言えば今週は決定会合なので雑談的論点整理

ちょうど読者様からご質問も頂きましたので(どうもです)うだうだと論点を整理してみるのでありました。

・この前緩和したばかりなのに追加緩和ってどうよ

金曜もうだうだ書きましたが、金融政策ってそんなにホイホイと変更するものなのかという話をつらつら考えますと・・・・

例えばの話インフレが昂進してて物凄い勢いで引き締めをしないといけないとか、何らかのショックが生じて急速に緩和しないといけないとか、緩和あるいは引き締めをやり過ぎたので中立金利に戻す為にホイホイと金利を動かす場合とか、まあそういうのはあるとは思います。

でもって、先般の金融危機のように金利政策じゃなくて市場機能が崩壊した部分に中央銀行が突っ込んで行って流動性を供給するという話になりますと、これまた手探りの部分がありますし、市場のパニックって連鎖するから一発で全部解消という訳にもいかずにホイホイと追加で流動性供給策を打たないと行けないという事もあるでしょう。

・・・・でですな、じゃあ現在の日本の状況ってどうなのよと言いますと、金融市場で特に流動性枯渇してエライコッチャになっていて実体経済に悪影響を与える所があるという訳でもなく(まあ資金繰りという点で言えば全部が全部流動性あるかというとそこは違いそうだが)、景気の動向に関しては(少なくとも循環的には)回復基調でどちらかと言えば上振れしているし、おまけに株式市場も上昇と、まあ切迫した話は無いでござるの巻。

そんな中で何で追加緩和を打たにゃあならんのよという話になるのですが、理屈の話に関しては12月の緩和2連発から話としてはグダグダになっておりまして、もうロジックでも何でもない状態になっている所に来て、3月の緩和措置とか金利市場的には知らんがなという内容の物となっており、今や本来相手にすべき金融市場ではなくて、為替市場やら株式市場やら政府(というよりは民主党政権)やら日経などのメディア対応で緩和をするという有様でございますので、正直申し上げて追加緩和のある無しというのはあまり理屈で考えても仕方ない面がございますなあと思うのでございます。


・でも理屈をつけるならどういう風になるか

まあ正直言って福井の俊ちゃんのようにSARSで当座預金残高を拡大するような豪快なスキームがございますので、理屈何ちゅうのは後付けで何とでもなると言ってしまえば身も蓋も無いのですけれども(^^)、まあ何となく美しく作ろうとすれば、(1)物価安定の理解で「中心1%」をもう少し強調する事によって何となく消費者物価指数が戻ってきた時の金利正常化路線への復帰の目線を引き上げなんちゃって時間軸を強化する、(2)次回の展望レポート(って今月末ね)で先行きの物価見通しを弱めに出して「循環的には景気は回復しているが、物価下落による構造的な下押し要因は強いので、物価下落の悪影響を緩和する為に追加緩和政策を実施する」として追加緩和実施(新型オペの長期化か増額がメイン)、(3)6月の政府の新成長戦略および中期財政フレームの発表に合わせて「政府の戦略を金融面から下支えする為に緩和政策の一層の強化を行う」として追加緩和実施(輪番拡大がメイン)、という感じでしょうかねえ。

ただし、上記のうち(1)はそもそも一般的にウケるかどうかが微妙な上に、物価安定の理解が「中長期的なフレーム」として置いたものですので、そう簡単にホイホイと変えて良いのかという話はありますので、やや微妙な気はせんでもない(岩田前副総裁が内閣府ナントカ研究所のセミナーで「中心1%」を強調した方が判り易いと指摘してたんですけど)所でございまする。(2)と(3)はあり得る話だと思うのですが、さて外部環境が改善する中で実施するのかはよー判らん。

ただまあ従来白川総裁が妙に原則論の話をしやがって、その後差し込みが来て結局訳判らん理屈で緩和強化を行うというのが連続している状況でございますので、ここらで日銀が何となく緩和強化について積極的な姿勢を見せることによって、どうもウケの宜しく無い状況を打開するというのはアリだと思うのですがどうでしょ。

ついでに言えば、米国が出口モードとか言ってる(まだ早いにも程があると思うし、今やったら2000年のゼロ金利解除と同じ結果になると思うが)ので、日銀が逆行して緩和強化と言えば為替市場が円安に振れやすくなり、デフレ脱却にとっても有益だと思うのですけどね。


・ところで3月の追加緩和って効果あったの??

えーっとですな、金利市場的には全然意味が無くて、例えば3か月TBの金利は全然下がらないですし、2年以降の金利に至っては上昇しているという有様ですが、為替が円安に振れたり株式が上昇しているので効果があったように見えない事も無いのがオソロシス。

まあ正直言って海外要因がラッキーに働いたからだとは思うのですけれども、確かにまあ「日銀の緩和姿勢が明確になった」とか為替市場とかがネタにする(バーチャル金利であります所のLIBOR比較とかいい加減にして欲しいものだと金利村の住民的には思うのですが)所を見ると、金利市場的にはなんちゃって時間軸政策はすっかり浸透していましたが、為替市場あたりでは日銀の今の政策金利がどう見ても2年近くは続くんじゃネーノという従来から金利市場が見ているモノが伝わっていなかったのではないかという気もするのであります。

つまりですな、その辺FRBは上手いというか、バーナンキさんが狸オヤジで政治家にも程がある(中身が福井の俊ちゃんの生霊なのではないかと思う位でございますが)ので、金利村だけではなくてより一般にアピールしないと話にならんという事を重視している中で、日銀はと言えば12月の新型オペ導入に際してどこぞの電気屋の安売りチラシのようなキャッチーなフレーズまで使ってプレゼンの工夫をする傍から、肝心の誰かさんが「麿は意味が殆ど無い政策を意味があるように言うのは嫌でおじゃる」とばかりに微妙な発言をするもんだから「渋る日銀を政治家と新聞報道と為替市場や株式市場が追い込む」みたいな図に外野から見えてしまうのが残念って感じですか。

なお話がそれますが、じゃあバーナンキ方式が全部正しいかと言うと、それはそれで問題がある訳でして、資産買入やら超過準備に関する説明が二転三転するFRBは出口戦略の説明がどんどんグダグダになって来ているのでありまして、そういう意味ではツケを払わされモードに向かっている所ですし、過去の自分達の説明によって変に追い込まれると出口の政策判断において異常に早すぎたり異常に遅すぎたりするリスクが高まるので、FRBが本当に難しいのはここからだと思われる所なのであります。

とりあえず、「展望レポートと中長期的な物価安定の理解を踏まえれば日銀が金融緩和の出口戦略とか言うのは相当先の話ですよね」という金利村的に極めて当たり前の話をやっと為替市場ちゃんが理解したと考えれば、そういう点で3月の追加緩和も効果があったという話になるんでしょうかねえ、何だか訳判らんが。まーそれより米国がラッキーな事に出口戦略がどうのこうのと言い出したラッキー要因の方が大きいと思うのだが。


#てなわけで、つらつらと従来書き散らしている話の蒸し返しになった上に、結局うまく纏まっていないというのがテラアホスな所でどうもすいません



○ここの所短い所の打ちこみが安定してますなあ

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1003.htm

例によって例の如く手元のエクセルでへこへこ集計したら、3月の買入総額が17629億円で、うち2年以内が7895億円(1年以内も含め)増加しています。

総額がいつもとあんまり変わらなかったのは、当月償還銘柄の打ちこみがそんなに派手じゃ無かった事に起因すると思われますが、2年以内で見た場合の打ちこみ額がここの所見ていると大体6000億円から8000億円のあいだ位で推移(12月は償還の関係で良く判らん)していまして、そこだけ見てますと割と安定した感じになっています。

で、その前の昨年秋くらいまではこの額が1兆円ほどで推移していた事を勘案致しますと、安易に結論を付けるのも何ですが、やはりまあ長目の所の需給が昨年の秋以降は若干悪化したということで、その要因として無理矢理理屈をつければ増発とか景気回復とか民主党政権のリスクプレミアムとか色々とこじつける事は可能ですけれども、まあそこはこじつけずにもうちょっと真面目にデュレーションとかの推移も見たい(どっかで本職の人が分析してるでしょ)という所でございましょうか。


#つらつらと雑感を考えながら書いていたら時間が無くなってしまったので雑談大会でご勘弁ねがいとうございますですm(__)m










2010/04/02

お題「短観その他アンケートとか」

昨日の株高債券高円安は正直驚いたが何を書いたら良いか判らないので華麗にスルー(汗)

○短観与太分析

まずは短観ですが。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1003.pdf

大企業製造業DIが▲14ってよくよく考えたら強い結果ですし、市場予想通りではあったのですが、予想じゃなくて期待ベース(^^)では、あたくしも調子に乗って「マイナス一桁あるで♪」とか勝手に盛り上がっていたので数字が出た瞬間はどちらかというとしょぼーんという感じでした(^^)。

ということで、いつもの不真面目なチェックをば。

・業況判断DIの達成度合い

前回は「9月時点ではもうちょっと改善するつもりだったのにあんまり改善しませんでしたね」という感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲24→▲18     ▲14→▲8
製造業中堅企業 ▲30→▲31     ▲19→▲20
製造業中小企業 ▲40→▲42     ▲30→▲32

非製造業大企業  ▲22→▲19    ▲14→▲10
非製造業中堅企業 ▲29→▲33    ▲21→▲21
非製造業中小企業 ▲35→▲41    ▲31→▲37

今回は12月の予測DIよりも全セクターで改善という素晴らしい結果。特に企業規模の小さい所で先行き見通し対比大幅に改善しているのはまあいい感じなんじゃないでしょうか。

先行き予測数値が中堅以下で横ばいまたは下向きに出ているのですけれども、これはまあ12月時点でも同じ(9月は中堅以下が横ばいで出ていた)でしたので、改善状況の下でのアンケートの仕様だと思われますが、まあ次回コケなげれば堅調継続なんじゃないっすか。


・雇用判断DI

前回は「9月調査時点で改善が頭打ちになりやがったけれども、今回に関してはお先真っ暗みたいな話が出ている程悪くは無いですね、先行きも判断タイト化してるし」という結果でしたが。


        (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業  +21→+18     +17→+13
製造業中堅企業 +26→+23     +18→+16
製造業中小企業 +29→+27     +20→+17

非製造業大企業  +8→+7      +9→+6
非製造業中堅企業 +9→+9      +7→+8
非製造業中小企業 +9→+10     +8→+13

まあ一見するとこりゃまあ改善してますねという所ではないかと。予測DIよりも好転しているセクターが多く、特に製造業が全規模で改善しているのは良いお話ではないかと思うのですが。前回の時は「へ〜意外に落ち込まないもんなのですね〜」と心強く思った(何故かと言うと金融市場と報道ベースがお先真っ暗っぽい話だったから)とか書きましたが、やはりそういう事でしたという結果ですな。

とはいっても相変わらず「過剰」超なのは変わりませんが(−−)


・証券業業況判断DIを見ようと思ったら・・・・・

証券業の業況判断DIというのは足元のブレっぷりと、先行き予測数値の外しっぷりの豪快さに定評があるので長期的に楽しんでいたのですが・・・・・

『8.金融機関の業況判断等』の箱を見たら、その中の業種分類に見慣れない文言が。

『金融商品取引業』

・・・・orz

金商法改正がどうしたこうしたの影響があるのですけれども、案の定12月計数を確認したら前回出ていた12月計数と今回出ている12月計数が違ってまして、良く良く見たら前回まで『貸金業・投資業等』というのが『貸金業等』になってまして、こちらも修正になっているのでまあカテゴリーの見直しがあったんでしょう。

ということで、証券業の楽しいDIのブレっぷりを見る事が出来ないというのは実に残念な所でありまする。今回は一回パスということで。


・資金繰り判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    +6     +9
中堅企業   ▲3     +1
中小企業  ▲16     ▲14

中堅企業までプラスに(^^)。


・貸出態度判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    ▲1      +2
中堅企業   ▲5      ▲1
中小企業   ▲11     ▲8

大企業の+2ってもっと良いだろと思うのだがまあこれも改善と。


ということで与太分析でございましたが、証券業のカテゴリーが変わってしまったので正直しょんぼりしちゃいますなという感じです、とほほ。


○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1004.pdf

これまた細々見ると味わいが非常に深いのですけれども、とりあえず政策インプリケーション的に重要なのは物価に関する所でしょう、ということで物価に関する部分を見るのだ。ちなみに()が前回調査の数値ですので念の為。

『Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、
「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが
購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった    3.4  ( 4.4 )
2 少し上がった     20.2 ( 24.4 )
3 ほとんど変わらない  36.0 ( 35.1 )
4 少し下がった     35.9 ( 31.5 )
5 かなり下がった    3.9  ( 3.4 )』

ということで下がっているというのがまた増えているのですが、前回調査の期間以降に益々デフレがどうのこうのという話が出たという事も勘案すると(前回調査は11月12日〜12月8日が調査期間で、政府様が対策皆無のままデフレ宣言をするという意味不明な供述じゃなかった行動をしたのが11月20日)シャーナイナイという所。

で、問題は先行き見通しだと思う訳ですが。

『Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    2.1 ( 3.0 )
2 少し上がる     30.1 ( 30.8 )
3 ほとんど変わらない 50.2 ( 46.2 )
4 少し下がる     16.2 ( 17.3 )
5 かなり下がる    0.7 ( 1.1 )


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +1.7 ( +1.7 )
中央値 0.0 ( 0.0 )


平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +1.8 (前回調査<21/12月実施>:+1.7)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・ほほう、意外に悪化していないですな。

『Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    10.2 ( 12.4 )
2 少し上がる     53.6 ( 49.8 )
3 ほとんど変わらない 24.0 ( 23.4 )
4 少し下がる     8.6 ( 10.2 )
5 かなり下がる    1.5 ( 1.6 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +3.0 ( +3.5 )
中央値 +2.0 ( +2.0 )

(なお、この数値は5年間トータルではなく「毎年平均何%ですかという設問です)

平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +3.2 (前回調査<21/12月実施>:+3.6)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・・うーむ、平均値が下がっているというのを重視すべきなのか、それとも見通しの向き(Q16)が上昇しているのを重視すべきなのかが微妙。

で、基本的にここで出てくる物価数値っていうのはヘドニックが掛かっていませんので(^^)、実際の物価指数より上にぶれるのは当たり前にも程があるので、そこはフィルター掛けてみないといかんですけれどもね(^^)。


あと、これは何の意味がと思ったのですが、今回からアンケート項目に『電子マネーに関する利用状況等』というのが入りまして、その代わりに『日本銀行に関する認知度、信頼度等』というのが抜けています。まあ最近は電子マネーとかの話って日銀レビューでも出てましたし、この前なんぞあたくしの趣味でRiksbankの副総裁がカード決済に関するスピーチをしていたのをご紹介しましたように(^^)、まあこの点に関しては益々重要性を増してくると言う事でしょう。


なお、景況感に関して言えば、これもまた若干の改善となってまして、雰囲気的には少しはマシになってきたという所でしょうか。


○入行式での総裁挨拶

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/nyukou10.htm(今年)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/nyukou09.htm(昨年)

俊ちゃんみたいに妙なキャッチーなフレーズは無いのですが、まあ敢えてネタにすると致しますと、今回の挨拶では通貨価値の話の所が微妙に長くなっている所ですな。

・・・・って声明文じゃないのだから前年比較とか野暮な話をするのは我ながらどうかと思うのですけれども(苦笑)。

『皆さんが普段使っているお札、すなわち銀行券は、素材としての価値はわずかなものです。しかし、それにもかかわらず、銀行券が額面通りの価値を持つものとして人々から使われているのは、銀行券に対する信認があるからです。金融市場では毎日膨大な取引が行われており、その決済には中央銀行の当座預金が使われていますが、これも中央銀行の当座預金への信認があるからこそ可能になっているものです。通貨が信認を維持するためには、物価が安定していること、金融システムが安定していることが重要な前提条件となります。こうした仕事を行っているのが中央銀行です。したがって、通貨の信認を得るためには、中央銀行という組織に対する信頼が必要不可欠になります。』(今年)

『普段はあまり意識されないことですが、銀行券が使われるのは、その価値が守られるという安心感、言い換えれば、通貨に対する信認があるからにほかなりません。そのためには、物価の安定と金融システムの安定が不可欠です。そうした通貨への信認は自然に生まれるものではありません。社会の中で誰かが通貨への信認を維持するという仕事に専念する必要がありますが、わが国では日本銀行がその仕事を担っています。通貨への信認を維持するためには、日本銀行という組織に対する信頼が不可欠であり、さらに、そうした信頼は日本銀行で仕事をするひとりひとりの努力を通じて築かれていくものです。』(昨年)

銀行券の価値がどうのこうのという部分の話が長くなっているのがチャーミングでありますが、そもそもそんなもんをわざわざ比較するお前の方が変人というツッコミはお受付致します(^^)。

なお、『本日の入行式に当たり、いくつかのお願いを申し上げたいと思います。』以下の部分は日本銀行じゃなくても基本的な所は同じですよね。



○追随報道は無さそうですけれどもナンジャソリャ報道

まあ何と申しますか、海原雄山状態になって「この記事を書いたのは誰だ〜!」と厨房に乗り込みたくなる(厨房に乗り込んでも記者はいませんが)レベル。

共同通信(47NEWS)から。
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040101000833.html
日銀、追加緩和論が浮上 景況感改善もデフレ懸念

いやまあ憶測するのは勝手(憶測記事なんだか取材記事なんだか判らない書き方はどうかと思うのだが)ですけれども、記事の中身にあるコメントとか、これ書いた人意味判ってるのかねという感じでして、どこの素人が書いたのかと小一時間。

『このため、日銀内には「景気に過熱感があるわけではなく、追加緩和は検討対象」(幹部)との意見が出ている。具体的には、新型オペで供給する資金の返済条件を現行3カ月から6カ月程度に延長することなどが検討対象となっているもようだ。』

????????∫dx

えーっと、景気に過熱感って何のギャグかと。そもそも過熱を心配するような景気だったら引き締めが検討対象になると思うのだが、幹部とか言われる人がマジでこういう言い方をするとは思えず、記者が脳内変換したのか、記者がおちょくられているのかのどっちかだと思うのだが。

で、新型オペで供給する資金の「返済条件」とか用語の使い方が金融市場関連取材する人の使う言葉として有り得ない(そりゃまあ新型オペは共通担保資金供給でして、形式は日銀による担保付貸出ですので返済っちゃあ返済ですけれども)ので、ど素人が取材しておちょくられたのかなあという気もしてきました(当初は脳内変換で変なこと書いていると思っていたのですけど^^)。

つーか、この前決定した「新型オペ増額」がまだ始まったばかりなんですけどねえ(ま、あたしゃ追加緩和そのものはどこかであると思ってますので念の為^^)。

#そりゃまあ常に金融政策の変更は検討対象でしょ。変更するかしないかを毎回議決しているのが政策決定会合なんですから・・・・











2010/04/01

お題「今更虫干しで2月のイエレン講演(続き)/備忘メモとか雑感とか」

「ビル・グロス氏が30年続いた債券の強気相場は終わりに近づいたと発言して話題になっています」というモーサテの市況レポートがあったのですが、「話題」を「笑い」と空耳したあたくしは相場観が偏ってますかそうですか(汗)。

#なお、あたくしはエイプリルフールネタは取り扱いませんので念の為

○今更ですが1か月以上前のイエレン講演ネタの続き

期初だと言うのに棚卸しネタでどうもすいませんm(__)m

http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf

だいぶ前にご紹介した時には労働市場に関する話を詳しくやってるという部分を引用しましたが、本文11ページ目(PDFの方で)からインフレと金融政策の話になるのでございます。(初回が3月15日、2回目が3月23日ね)

・財政赤字とFedのバランスシート拡大がインフレには直結しないという話

『Let me move on to the outlook for inflation nationwide. You can get into quite a debate on this topic. Some people worry that sustained federal budget deficits and the huge increase in the Federal Reserve’s lending and stimulus programs could eventually lead to high inflation. Others take the opposite view, arguing that economic slack and downward pressure on wages and prices are pushing inflation down. I would put myself squarely in the second camp.』

米国のインフレ見通しについて(nationwideって言ってるのは、その直前までサンディエゴの経済に関しての話をしているからだと思う)、持続的な財政赤字とFedのバランスシート拡大がインフレを起こすという見解と、経済のスラックや賃金の引き下げ圧力が物価引き下げ圧力に働くという見解があるが、「私はきっぱりと後者の陣営に与する」と仰せでありますので、まあ普通にハト的(とらすとみーではない)だと思いますイエレンさん。

では財政赤字無問題かというとそうではなく、問題点について言及してもいるのでして。

『I’m no fan of persistently large budget deficits. I’ve warned against them throughout my career. But the real danger I see from them is not inflation.』

財政赤字の継続の問題はインフレでは無いと言う事ですが、では何かと。

『Rather, they may be harmful once the economy recovers because they are apt to boost interest rates and absorb private savings that would otherwise finance productive investments.』

『This is potentially a serious problem in the long term that could reduce investment and lower living standards, although, in the short run, federal deficits have cushioned the blow from the financial crisis and recession.』

短期的には財政拡大は金融危機やリセッションへの緩衝材として機能するというメリットはあるけれども、財政部門が個人の貯蓄を吸収してしまい、景気が回復する段階において、金融仲介機能によって生産性の高い分野に資金が流れるのを阻害するという問題点があるという話をしているようですな。

市場の現場労務者的にはホンマカイナ(回復した時にはどうせレバレッジ効かせたりして金は回るんじゃネーノという素人考えですが)という気もせんでもないですが、仰る話はなるほどと思ったです。

で、次の説明部分に吹いた。

『As far as inflation is concerned, there’s no evidence that big government deficits cause high inflation in advanced economies with independent central banks, such as the Fed. Japan is a case in point. Japan has run enormous fiscal deficits for many years and its government debt has risen to very high levels. Yet is has suffered from persistent deflation, not inflation.』

・・・・・いやはや(涙)。


・ということでインフレに対する見通しは弱気ですな

で、次のパラグラフではインフレの見通しを述べています。

『I believe that the more worrisome challenge for price stability over the next few years stems primarily from the sizable amount of slack in the economy.』

経済のスラックがかなり大きいとな。

『Whether measured by the output gap, the unemployment rate, the manufacturing capacity utilization rate, or whichever measure you like, the economy is running well below its potential. As a result, inflation is already very low and trending downward. Over the past 12 months, the personal consumption price index, excluding volatile food and energy prices, rose a modest 1.5 percent. This increase in core inflation was below the 2 percent rate that I and most of my fellow Fed policymakers on the Federal Open Market Committee (FOMC) consider an appropriate long-term price stability objective. And, with slack likely to persist for years and wages barely rising, it seems quite possible that core inflation will move even lower this year and next.』

超どうでもいい話ですが、FRBは「the manufacturing capacity utilization rate」という言い方をするので字面を見ただけで何を言いたいのか判るのですが、BOEはこの事を「the margin of spare economic capacity(economicが抜ける場合もあったと思う)」と書いてあるので、ネイティブじゃないあたくし的にはBOEの文書の方が読むのにホネでございます。まあどっちもホネなんですけどね(爆)。

まあそれは兎も角として、最後の一文にもありますように、スラックが暫く続き、賃金はちんたらしか上昇しないのでコアインフレは来年くらいまではより低い状態が続くでしょうと言う話。

と言うのを見てると早期利上げ観測ってナンジャソリャと思ってしまうのですけどねえ・・・・


・ここの所の説明は微妙に違和感が

『So where does all this leave Federal Reserve policy? Traditionally, the main tool of Fed monetary policy is the federal funds rate, which is what banks charge each other for overnight loans. The Fed controls that rate by varying the amount of reserves it supplies to the banking system and we have pushed that rate to zero for all practical purposes. This is as low as it can go.』

まあ説明としてはそうなるのかもしれないですけど、実際問題として政策金利の上げ下げにマネーの量は後付けでついてくるものであって、政策金利を変更した瞬間には別に金融市場のマネーの総量は変わらないと思いますけどどうなんでしょ。

つーか単に超過準備出し過ぎてFF金利のコントロールが出来なくなったから0〜25bpというお洒落な金利ディレクティブにしているのじゃないかと。いやまあ細けぇツッコミっちゃあその通りなんですが。

それは兎も角。

『Such accommodative policy is appropriate, in my view, because the economy is operating well below its potential and inflation is undesirably low. I believe this is not the time to be removing monetary stimulus. Consistent with that view, the FOMC has repeatedly stated that it expects low interest rates to continue for an extended period.』

ということで、イエレン姐さんは緩和的な金融政策の長期化に対しては親和的な態度ですし、まあここまでの話しっぷりからして(労働市場の改善に時間が掛かるという話も含めて)緩和的な金融政策の長期化上等というスタンスであるというのは見えるかなあと思います。


・保有証券売却による流動性吸収には消極的

で、その後は出口政策の説明になるのですが、それは従来Fedのあちこちから言われている話なので華麗にスルーしますが、保有証券売却に関する流動性吸収に関してはこのような話をしています。

『In normal times, the Fed raises interest rates by reducing the size of its balance sheet, say by selling Treasury securities to the public.』

さっきも細けぇいちゃもんを付けましたが、別に中銀がバランスシートを無理くり縮小しなくても「政策金利を引き上げますのでよろしく」と言えば普通は金利が上昇すると思うのだが、さっきの説明と言い何か微妙に現場労務者的には違和感がございますがまあそれは兎も角。

『This draws in cash from the economy, or, as we say, reduces the supply of bank reserves, which in turn causes the price of those reserves, that is, the federal funds rate, to go up. Since the fed funds rate is the benchmark for banks’ cost of money, other short-term market interest rates tend to follow suit. Higher interest rates in turn help slow the economy and reduce inflationary pressures.』

まあこの辺の説明は一般的な話ですが、では現在はどうなのよと言いますと。

『But these aren’t normal times. Our securities purchases have caused the quantity of reserves in the banking system to swell to something like $1 trillion?far above the pre-crisis level of around $50 billion. If we were to follow our standard approach of selling securities to raise interest rates, we would have to sell off many hundreds of billions of dollars of securities to reduce the supply of reserves enough to have any chance of pushing rates higher.』

バランスシート縮小を企図して保有証券を売却するとなるとエライ量の証券を売らないとマズーという状態でござるの巻ですと。

『The problem with doing that is that such massive sales of mortgage-related and Treasury securities could be disruptive to markets and cause mortgage interest rates and other long-term rates to shoot up when we are still in the early stages of the recovery and the financial system, although improving, is still not at full health.』

従って、そのような売り方をしたらモーゲージ債市場が崩壊したり、長期国債金利がアホのように上昇して、回復中の経済が爆死してしまうという話をしていまして、それは正に仰る通りだと思います。

一部の連銀幹部からは保有証券売却の話も出てますが、まああれはリップサービス(というのかどうか知らんが)の類であって、市場環境を考えたらまともに売って来るような話は起きないと思った方が良いのではないかと存じます。


・最後の止めにハト発言

で、講演の最後の部分を引用します。

『The bottom line is that we are already unwinding the emergency programs we set up during the financial crisis. When the day comes to start raising rates again, we have tools at the ready. But, for the time being, the economy still needs the support of extraordinarily low rates. Thank you very much.』

経済は現状では依然として例外的な低金利によるサポートを必要としています、という言葉で締めていますね(^^)。


#てなわけで随分前の講演ネタでどうもすいませんでした


○雑談一発メモと備忘録メモ

・しかし何ですなあ(超雑談)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100331-00000618-san-bus_all
公共事業?国家ファンド? 郵貯マネーの使い道に閣内騒然…

まあ産経フィルターが掛かっているので何ですが、郵貯さんも大変ですなあという感じはしますけど、

『前原誠司国土交通相は郵貯マネーで国家ファンドを立ち上げ、「海外の発電所や高速鉄道など、インフラ輸出の資金として活用できないか」との持論を述べている。』(上記記事より)

って先程引用したイエレン姐さんの講演の論法を使えば、「民間貯蓄を吸収して、国内の成長分野ではない分野に投資する」って話ですから、まんまダメ事例ではないでしょうかという話になると思うのだが・・・・・


・備忘録メモ

大体期末というのは帳尻仕事のような事案が多いというのは仕様なのですが、日銀様におかれましても山のようにレポートが出て読むほうが全く追いつかない(昨日慌てて書いたら逆に書いちゃいましたよね、すいませんすいません)のですが、このままだと忘れるので備忘メモ。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j03.pdf
最近における中国の不動産価格の上昇について

→斜め読みしかしなかったけど面白そう

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp10j06.pdf
レバレッジ規制の有効性に関する一考察

→これから読む

#上記の2本に関しては本石町日記さんがブログで紹介してます


http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/kousa/kpolicy10.pdf
2010 年度の考査の実施方針等について

→超斜め読みしただけなのでこれから熟読する

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/hoshin/data/hoshin10.pdf
中期経営計画(平成22〜24年度)

→『また、人事ローテーション上の工夫や能力開発プログラムの充実等に加え、開かれた組織作りの観点から、人材の外部派遣や外部人材の受け入れにもより積極的に取り組み、職員のモチベーションの一層の向上を図るとともに、人材の育成・確保を推進していく。』という所だけ読んだ(^^)。


で、日銀じゃないですが・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

Homework Assignments for Monetary Policymakers
Remarks by Donald L. Kohn Vice Chairman

→とりあえず斜め読みだけしたのですが、かなり面白いので熟読する

#と、これだけ並べておけば自分へのプレッシャーになるというものです(^^)