トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「1000506」というような形式でつけていますので「URL+#日付(6桁表示)」で該当日の駄文に直リンできます)


2010/05/31

お題「バーナンキ議長の東京講演とか」

○とりあえずパニック的な動きは落ち着いたような

足元では欧州市場というか欧州のドルファンディング市場にひたすら振らされる相場が続いておりましたが、先週の火曜あたりをピークにして取り敢えず急性症状は収まった感じのようで何よりではございます。まあ以前より周知状態だった筈のスペインでの小規模な地域金融機関の再編問題で大騒ぎとかパニックにも程があるという所でしたが、ちったあ冷静になってくれたようですわな(ただしスペイン格下げの件はまだ影響がこれから)。

まー取り敢えず急性ショック症状の方は一旦収まったという事ではござますが、じゃあ問題は解決したのかというと話は残念ながらそういう訳にはいかないですし、米国にしろ欧州にしろ規制の流れとかそもそも金融機関の行動の流れとかが、レバレッジの解消方向に進んでいるというのは変わらないのでありまして、そーなりますと急性症状は起きないかも知れませんけれどもダラダラとリスク解消方向のポジション閉じという流れになるんじゃないですかね。

ユーロとか足元落ち着いているように見えますけど、これってよーするにユーロのショートポジションがアホのように積み上がっていたのがポジション閉じの方向になったからという気が凄くするのでございまして(気のせいかも知れないけど)、まあそんなこんなを考えると長期戦になるんでしょ。で、その長期戦中に欧州では徐々に無担保のファンディングがしんどくなる(先日はBBVAがCPのロールがどうしたこうしたとかいう記事が出てましたが、別に大した額でも無いのにネタにし過ぎ)でしょうし、ショートファンディングは溜まって来て益々ECBのオペ頼みになってくるでしょうから、何かがあった時にECBの機敏かつ適切な対応が無いとエライコッチャになるリスクもまた拡大という所かと。

ということでまあ今月の相場は何だかんだと言って欧州に振り回されたような気がするのですが、良く良く考えると実は欧州もそうですけど、実は超長期入札前後の動きでいきなり相場の位置が変わったというのもあったりしますな。まあその時に株も動いているので何がどうなって反応したのかは難しいですけどね。


で、バーナンキ議長講演に関して少々。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)

○全体的には一般論の話です

本文2ページ(PDF版ベース、PDFファイルの3ページ目です)から。

『In my remarks today, I will outline the general case for central bank independence and review the evolution of the independence of the Federal Reserve and other major central banks. I will also discuss the requirements of transparency and accountability that must accompany this independence.』

ということで、基本的には一般論とFRBの話が多いのですが、その中での話は普通にオーソドックスな話をしてまして、どうもバーナンキ議長というとヘリコプターベンのイメージが強いですけど、実際には(まあ本来元々からそうなので驚く話では無いのですが)高インフレは経済に良くないとか、金融政策は短期的な成果に過度にフォーカスすべきではないとかいう話をしていまして、別に常に緩和しろという主張をしている訳では無いのですな。

例えば本文3ページから(この前も引用しましたが)。

『In contrast, policymakers in a central bank subject to short-term political influence may face pressures to overstimulate the economy to achieve short-term output and employment gains that exceed the economy’s underlying potential. Such gains may be popular at first, and thus helpful in an election campaign, but they are not sustainable and soon evaporate, leaving behind only inflationary pressures that worsen the economy’s longer-term prospects. Thus, political interference in monetary policy can generate undesirable boom-bust cycles that ultimately lead to both a less stable economy and higher inflation.』

短期的な成果を求め過ぎると緩和のやり過ぎになってバブル発生と崩壊のサイクルになって、高インフレを招いて経済に良くありませんとな。で、その次には中央銀行がインフレファイターとしての信認を得れば、経済社会が自己実現的に適切な低インフレを実現するようになるという話をしていますが、その辺も引用したような気がするので華麗にスルー。

で、その後にはこれまた先日引用したと思いますが、政府が中央銀行をコントロールする場合には中央銀行の紙幣印刷の力を財政穴埋めに使う恐れがあり、その懸念がある事から中央銀行の独立が必要という話をしてますけど。

で、今回の講演のもう一つのお題にもなっている中央銀行の透明性についての話が続きますが、まあこの辺りに関する説明は微妙っちゃあ微妙な部分がございます。


○中央銀行の透明性とプルーデンス政策

中央銀行の独立性は無制限ではないよという話をしている本文5ページ目から。

『Second, the independence afforded central banks for the making of monetary policy should not be presumed to extend without qualification to its nonmonetary functions. For example, many central banks, including the Federal Reserve, have significant responsibilities for oversight of the banking system. To be effective, bank regulators and supervisors also require an appropriate degree of independence; in particular, the public must be confident that regulators’ decisions about the soundness of specific institutions are not unduly influenced by political pressures or lobbying.』

マネタリー以外での政策というかプルーデンスに関する部分では中央銀行がその矩を超えないようにという話をしているようで、説明は米国のケースにも続くのですが、そこは引用割愛。また、中央銀行の「最後の貸し手」機能における与信行為は極力最小限にすべきであり、金融機関を救済するかどうかという話は財政が決定すべきという話をしていますが、引用すると長いのでその辺は割愛しますね。


○金融政策と財政政策の区分け問題、量的緩和政策に関して

本文7ページから。

『The issue of the fiscal-monetary distinction may also arise in the case of the nonconventional policy known as quantitative easing, in which the central bank provides additional support for the economy and the financial system by expanding the monetary base, for example, through the purchase of long-term securities.』

ほほう。

『Rarely employed outside of Japan before the crisis, central banks in a number of advanced economies have undertaken variants of quantitative easing in recent years as conventional policies have reached their limits. In the United States, the Federal Reserve has purchased both Treasury securities and securities guaranteed by government-sponsored enterprises.』

はて、米国の危機対応は「日本のような量的緩和政策では無い」という話では無かったでしたっけと疑問が起きるのですが(後でもう一回ツッコミを)。

『Although quantitative easing, like conventional monetary policy, works by affecting broad financial conditions, it can have fiscal side effects: increased income, or seigniorage, for the government when longer-term securities are purchased, and possible capital gains or losses when securities are sold.』

長期債証券を購入するとインカムとシニョリッジが増えて、売却した場合には損益が発生するから財政的な意味があるという話をしているようですが、それはまた随分と金融政策と財政政策の間をガチガチに見てますなあという感じがするんだが。

『Nevertheless, I think there is a good case for granting the central bank independence in making quantitative easing decisions, just as with other monetary policies. Because the effects of quantitative easing on growth and inflation are qualitatively similar to those of more conventional monetary policies, the same concerns about the potentially adverse effects of short-term political influence on these decisions apply.』

『Indeed, the costs of undue government influence on the central bank’s quantitative easing decisions could be especially large, since such influence might be tantamount to giving the government the ability to demand the monetization of its debt, an outcome that should be avoided at all costs.』

ということで、量的緩和政策は通常の金融政策の延長線上でもあるので、短期的な政治的な関心によって実施すべきでは無く、財政マネタイゼーションに使うのは持っての外という話をしていますわな。


○中央銀行の独立性の歴史とか、金融政策の透明性とか

その次には中央銀行の独立性とか金融政策の透明性の話をしていますが、めんどいのでその辺は引用スルーします。米国FRBの従来からの流れの説明はちょうど良い勉強になるので読んで味噌という感じです。

で、その中ではボルカーのインフレファイターぶりに関する評価と、ボルカーの政策を一貫して支持した当時の政権(カーターとレーガン)を高く評価していまして、単なるヘリマネの逆絵オヤジでは無いという事ですわな。


○ところで長期債購入に関する説明が支離滅裂なんだが

この講演、まあ一般的な話をしているのですけど、FRBの長期債購入に関する説明が講演の中で違っているのが実に味わいの深いものを感じます。

本文1ページ目から。

『In the United States, we lowered the federal funds rate target to a range of 0 to 1/4 percent to help mitigate the economic downturn; we expanded the scale, scope, and maturity of our lending to provide needed liquidity to financial institutions and to address dislocations in financial markets; we jointly established currency swap lines with foreign central banks (including the Bank of Japan) to ensure the global availability of dollar funding; and we purchased a large quantity of longer-term securities to help improve the functioning of financial markets and support economic recovery.』

ということで、長期債購入に関しては「金融市場の機能を改善し、景気回復をサポートする」という話をしているのですが、先程引用したように、後の部分では米国の長期債購入が「量的緩和政策」という話をしていまして、いやまあ導入した時点での市場環境からすると「何か派手にぶち上げないとテラヤバス」という状態だったからヤケクソで実行したという感じだと思いますけれども、未だにこの政策に関しては(特に国債購入の方に関しては)どういう位置づけでどういう効果だったのかというのがグダグダになっているのだろうなあとは思います。

MBSの購入に関してはまあ露骨に市場介入だったので、あれはあれでという感じはします。まああっちは要するに生ゴミを腐らせる前にグルグル巻にして冷凍庫にぶち込んでおくという施策でして、問題点としては冷凍庫の容量をあまり拡大すると別の点で不具合が生じる(拡大そのものは出来る)のと、ゴミの日が来るまでの時間が呆れるほど長い(償還までですから)ことだという所でしょうか、朝からしょうもない例えでスイマセンが。

一方で長期国債購入に関しては、派手派手花火ではあったものの結局何がどうなってどういう効果があったのか意味不明という事のようで、FRBのエライ人の講演とか議会証言とか見てても未だに説明が二転三転するのがテラオモシロスという所でしょう。











2010/05/28

お題「総裁講演と市場雑談」

何か日々日替わりメニュー相場だわ海外の動きが訳判らんわで正直目先の動きはカオスとしか申し上げようが無いですわな。

ところでFTはせっせとドーバー海峡の向こうに放火報道をしているのだが、お前の国の心配をしろと思うのですけどね。あの新聞、他国の報道をする時には放火報道ばっかりしやがるので個人的には好かんのだが。

○要するに目先の注目点は欧州ということで

昨日ちょっと書いたECBのドルオペの件ですが。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/USD10004_all.en.html

昨日はとりあえずメモ状態でしたが、その後まあ聞いてみたりしたところ、上記URLにある詳細のように、応札してた参加者が『Tot Number of Bidders: 3 』ということで3社だったという事もございまして、まあそんなにややこしい話にはなっていないというのが判るかと存じます。

で、今度は「ドルオペがあるから安心安心」という話が逆に蔓延しだしているような気がするのですが、それは「ロンバート貸出があるから大丈夫」と言ってるのと同じレベルの話でございまして、冷静に考えたらロンバート貸出があっても無担保のファンディングが回らなくなった時に飛ぶというケースもありますので、そこまで安心しまくるのもどうかという感じはせんでもない。

つまり、長目のドルファンディングがしんどくなってくれば、当たり前ですけれども市場のファンディングが徐々にショートファンディングに傾いて来るのでありまして、長目のファンディングのロールが来る傍からそのショートファンディングが溜まってくるという構造になる訳ですから、金詰まりが起きた時のストレスが拡大するのでありまして、まあ長期戦になるんじゃねえのと思いつつ、とりあえず目先急にどうのこうのという話は一旦(何で後退したのか判らんが)後退という事で宜しいのかな??

まあ何ですな、後は欧州の問題が欧州金融機関のリスク資産圧縮というルートから始まって金融が実体経済に悪影響を与えます流れになるかどうかが問題になる訳ですし、その流れが欧州から全体に波及するかどうかという話を考えましょという事でしょうか。いやまあ欧州域内だけヒーヒー言って不景気ですなあという状態で勝手に虫の息になって頂くのであれば世界的には関係ねえという事になるんでしょうけれども、さてそうなってくれますかなと言った所で。

しかしECBのドルオペって市場混乱モード時にはこれ使いたければ使えばっていうような設定(金利にしても担保のヘアカットにしても)になっているので、応札が増えるとそれはそれで「ああドルファンディング市場が北斗の拳状態になっているのですなあ」というシグナルになってしまうのも逆に言えばどうなのかという気もするのでして、個別機関のstigma問題とは違いますが、何かこう微妙なテイストを感じないわけでもない。でもまあ市場がピーピー言うと直ぐに餌が出てくるという風にすると、毎度毎度市場が催促するというそれはそれで一種のモラルハザードの温床に成りかねませんし、匙加減は難しいですわな。

まあいずれにせよ、まだ取り敢えずは余裕があるようなので一息とゆー所なのでしょうかね、ただまあ別にそれで財政問題が解決するわけでは無いのですが、市場の催促によって欧州各国の財政赤字縮小に向けた動きが加速してきた観があるのでそれはそれで結構なお話でございます。

なお、さっきも書いたように、この調子だとたぶん欧州のショートファンディングが拡大していく傾向は変わらないと思いますので、時間の経過とともに何かのショックに弱い状態が拡大はする点には注意が必要なんジャマイカと思いまする。



で、白川総裁講演ですが、これは色々と凄い講演(挨拶)でございます。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1005a.pdf
中央銀行と中央銀行業務の将来

もう大変にお腹がいっぱいというような感じ(別に悪態の意味では無いので念の為)ですが、最初の部分の話は以前のどっかの講演でも話があったので華麗にスルーして本文4ページ目(PDFファイルの5ページ目)のあたりから参りたく存じます。


○物価に過度にフォーカスするのは如何なものかという話

『当時(引用者追記:1980年代後半の事です)日本では、極めて緩和的な金融政策からの転換の必要性が議論されていました。実際、ただ1つのデータを除いて、すべての経済指標―― 高い成長率、労働市場の逼迫、銀行貸出の急増、資産価格の高騰―― が金融緩和政策の修正の必要性を示唆していました。しかしながら、ただ1つの例外とは、他ならぬ消費者物価上昇率だったのです。このため、低インフレは、日本銀行への強力な反論として立ちはだかり、金融引締めに向けた政策転換が遅れることとなりました。その後に起きたことは、資産価格・信用バブルの膨張と崩壊、そして金融危機でした。以降、物価の安定が経済の安定を自動的に保証するものではないことを多くの国が経験するようになりました。』

というのは暫く前の講演でもありましたが、物価指標だけを見た金融政策運営は如何なものかといういつもの話でございます。

『幾分脇道にそれますが、今回の危機発生以前は、ゼロ金利制約を回避するための糊代(safety margin)が、しばしば若干プラスの物価上昇率を目標とすることを根拠づける理由の1つとして指摘されていました。しかしながら、今次金融危機では、主要国はいずれも事実上ゼロ金利制約に直面するに至っています。リーマンブラザーズ破綻以降の厳しい経済活動の落ち込みを振り返ると、より高い目標インフレ率によって可能となったであろう、あと数パーセントポイントの金利低下によって、経済の回復軌道が大きく変わったと考える人はほとんどいないでしょう。このことは、金融システムの不安定化がマクロ経済に対していかに甚大な経済的影響をもたらすかを示しています。』

というのは脚注にありますがIMFのブランシャール論文に対する反論なのですけれども、ブランシャールの問題提起は「経済のショックに対しての利下げ幅の余地を広くすると言う意味でより高いインフレ率を設定する」という話であって、「若干プラスの物価上昇率が必要」というのは物価指数計測時のバイアスと、経済におけるショックに対するマージンという意味で必要な話なんじゃねえのと
ツッコミを入れたくなるのですが・・・・・

『To digress a little bit, before the current crisis, a safety margin against the zero lower bound of nominal interest rates was often pointed out as one of the justifications for targeting a small but positive rate of inflation. In the end, major countries found themselves virtually constrained by the zero lower bound under the current crisis. Looking back at the serious economic downturn after the failure of Lehman Brothers, very few think that reducing interest rates by a few percentage points, enabled by having a higher target rate of inflation, would have materially changed a recovery path of the economy. That suggests how devastating damage financial system instability inflicts on the economy.』

本ちゃんの文でもこう書いてあるので、まあ上記の通りのようですが、その理屈は微妙に論点をずらしている気がする(バーナンキ議長もブランシャールの提案にはダメ出ししてるけど、それは「高インフレを目標にすると安定が損なわれる」というロジックですから)。

まあそれはともかく。

『我々は過去数十年の経験から、2つのことを学びました。第1に、物価の安定と金融システムの安定のいずれもが、マクロ経済の安定に欠くことのできない前提条件であるということです。第2に、物価の安定はそれ自体望ましいものではありますが、経済主体の過剰な自信や、低金利の継続予想と組み合わされる場合には、将来の金融システムを不安定化させる複雑なメカニズムを秘めているということです。』

それはそうなのだが、だからと言ってデフレ状態が延々と続くのが良いという話にはならんと思うのだが、その辺は微妙にアレですなあ。


○金融システム問題

正直、こっちのネタに関しては非常に同意する所が多いのでありまして、本文5ページ目からの金融システムの安定に関する話には傾注。

90年代以降に金融危機の様相が変化してきたという話から始まります。

『第1に、金融危機の発生頻度が以前に比べて高まりました。このことは、近年の、日本、北欧、東アジア、LTCM、ロシア、および今回の世界金融危機をみれば明らかです。これに加えて、危機の規模は拡大傾向を辿っています。』

『第2に、危機は、国際的な広がりが増しています。日本の金融危機は日本にとって深刻な事態でありましたが、世界の金融システムからみると、局所的な出来事(isolated event)でした。その後の危機は、そのグローバルな性格を強めています。今回の危機は、特に、リーマンブラザーズ破綻以降は、文字通りグローバルな金融危機となりました。』

『第3に、金融危機は以前とは異なる性格を有するようになっています。金融危機はいつも流動性不足という形で表面化します。今回の危機では、資金流動性の不足だけでなく、市場流動性の不足も問題となりました。さらに、そうした流動性の不足は、伝統的な銀行システムの外側にあるシャドー・バンキング・システムにおいて先鋭化しました。』

いや全く左様でございます。で、引用ばっかですいませんが(ってこれ変に突っ込んだりする所が無いんですもん・・・)その次。

『過去数十年間の歴史が示すように、中央銀行は物価や経済活動の安定という面で大きな成功を収めました。皮肉なことに、中央銀行は正にその成功の結果として、新たな難題に直面しているように見受けられます。以下では、これらの難題について説明したいと思います。』

以前もこの話をしていたのですが、今回はまた力が入っていますな。

『第1に、経済の不均衡が物価の不均衡という形で直ちには表れにくくなったことです。良好なマクロ経済環境のもとでは、経済主体が闇雲に強気化し、そのリスク認識が甘くなります。しかしながら、低インフレのもとで、緩和的な金融政策の転換は遅れがちとなります。この状況のもとで、何らかの理由で過剰な自信が生まれることで、資産価格の上昇、信用やレバレッジの膨張、期間ミスマッチの拡大が始まります。経済の不均衡が物価の不均衡という形で表れれば、中央銀行は、オーソドックスな金融引締めにより対応できたはずです。しかし、経済の不均衡は金融面の不均衡として表れました。それでは何故、物価は経済の不均衡に直ちには反応しなくなったのでしょうか。』

『経済不均衡の顕在化の変化』って所から。

『しばしば指摘される理由の1つは、中央銀行の金融政策に対する信認の向上です。この場合、価格変動が一時的であると認識されれば、企業は直ちには価格を引き上げません。もう1つの理由は、企業が価格以外の要素によって競争を行う傾向を強めていることです。低インフレ環境のもとで、企業は、単純な価格引上げで顧客を失う一方、単純な価格引下げでは他企業の追随値下げを招くと懸念していると考えられます。』

『今申し上げたような分析に、私自身、基本的に同意しますが、より本質的な理由は、価格を計測すること自体が近年難しくなっているためではないかとみています。もちろん、物価指数は理論上、品質変化を調整したベースの価格の変動を捉えるものです。しかし、現実には、情報化、サービス化、ネットワーク化が進むほど、付加価値と付随するリスクを把握することが難しくなります。』

つまり物価指数にのみフォーカスした金融政策ではなくて、マクロプルーデンスの観点から金融政策をすべきであるという話で、まあなんちゅうかブンデスバンクのマクロプルーデンス版みたいなテイストですな。

『バブル崩壊後の政策対応』って所から。

『第2の難題は、政策対応が短期的に成功したとしても、そのことが必ずしも長期的な成功を意味する訳ではないということです。中央銀行は、迅速かつ積極的に対応し、バブル崩壊後の深刻な経済の落ち込みに対処しました。こうした政策措置は、資産価格・信用バブルの発生など、また別のリスクを引き起こす可能性があることに注意しなければいけません。先ほど触れた1990 年代以降のバブルの発生頻度増加と規模拡大を踏まえると、金融政策運営が成功したかどうかは、より長い時間的視野から判断していく必要があるように思われます。』

つまり前回のグリーンスパンのバブル崩壊後の政策対応が成功していなかったということですね、わかります。

『民主主義社会における中央銀行』って所から。

『第3の難題は、政策対応の成功は、民主主義社会において、中央銀行がどのような責任を負うべきかという新たな問題を提起していることです。』

というのは金融政策が財政政策の領分に入って行くという正に最近は世界的なお題になっている件でございますが、これは中々イイハナシダナーなお話。

『金融経済危機に直面し、主要国の中央銀行はいずれも非伝統的な政策措置に踏み切りました。この点、日本銀行は真っ先に金融危機を経験し、真っ先に異例の措置を採りました。1990 年代以降、日本銀行は、証券会社に対する資金供給を含め、最後の貸し手として積極的に行動してきました。また、金融機関保有株式の買入れ、ABCP、ABS の買入れ等、様々な異例の措置を講じました。』

さよですな。

『日本銀行の政策対応面でのこうした革新性が、必ずしも十分に認識されていないことは、残念なことです。実際、主要国の中央銀行は、今回の金融危機において、日本銀行の政策対応と同様に、異例の措置を講じています。』

おお!これは力強い発言というか何と言うか(^^)。

『中央銀行による非伝統的な政策措置は、損失が生じた場合に納税者の負担となって跳ね返る危険があること、また、ミクロレベルの資源配分に介入する要素があることといった点で、準財政政策(quasi-fiscal policy)的な側面を有しています。危機の渦中では、中央銀行に対し非伝統的な政策措置を求める声が高まりますが、そうした政策措置は程度の差はあるものの、準財政政策的な側面を有しています。民主主義社会において、中央銀行は一般に、そうした政策を政府・議会が遂行する必要があると考えており、このような決定が政府・議会によって先送りされると、中央銀行は難しい立場に置かれます。』

これはバーナンキ議長へのエールでもあると共に、自分の国が日銀にやれやれとばかり言うのに対する悪態なんでしょうか、わかりません><;

『純粋な金融政策と準財政政策の境界線は、時として曖昧なものとなりえます。1990 年代以降の各国の経験を振り返ると、準財政政策に近い政策措置の発動を可能にする条項が中央銀行法に規定されている場合、中央銀行はぎりぎりの判断として、そうした政策措置の実行を決断してきました。』

日銀法43条ですね、わかります(^^)。

『そうした中央銀行の非伝統的政策措置の効果もあって、ひとたび経済が危機から脱すると、中央銀行は、その行動が民主主義社会におけるルールを逸脱しているとの批判に曝されました。そうなると、中央銀行への信認が損なわれ、政策遂行能力にも悪影響が及ぶことになります。』

たぶん日本ではあんまり晒されてないと思うんだが、つーかもっとやれという方が多いように見えますけど・・・・まあ米国は物凄い勢いで議会がああだこうだと言っているのでその点なんでしょうけれども、何か微妙に日本の話と米国の話をブレンドしているような気がするだよ。


○この後も沢山あるのですが、引用してると全然終わらないので

ほほーと思った所が沢山あるのですが、その中でもあたくしが読みながら2重傍線3重傍線を引いた所を引用しますです。

本文8ページより。

『結局のところ、通貨の太宗を占める預金通貨は、民間金融機関における期間ミスマッチとレバレッジの結果として生み出されるものです。中央銀行は、そうした民間金融機関の行動を含め、金融環境の変化を的確に把握しなければなりません。今回のグローバルな金融危機を経て、重要性が改めて強調されているマクロ・プルーデンス的な視点は、そうした民間金融機関行動の変化を十分に認識したうえで、実体経済と金融システムの相互作用を点検していくものとして理解する必要があります。』


本文10ページより。

『中央銀行文化の第1の側面は、銀行業務です。中央銀行は、単にマクロ経済や金融システムを抽象的に議論する象牙の塔ではありません。むしろ、中央銀行はそれ自体が銀行であり、金融政策にせよ、最後の貸し手にせよ、銀行業務を通じて実践に移されます。こうした業務は、担保掛け目の設定、カウンターパーティの選定、資金や証券の決済、破綻時の債権回収をはじめ、様々な実務に関する知識を必要とします。』

『また、銀行業務の実務に関する知識は、中央銀行が金融システムの繊細な役割(subtle working)やその実体経済との連関を評価していくうえでも有用なものです。マクロ経済学の入門書に描写されているマネーは、信用乗数とマネタリーベースの掛け算で生み出される無機的な概念です。このようなマネーの理解の仕方では、その果たしている重要な役割を見落としてしまいます。』

『すでに申し述べたように、マネーは、金融取引における期間ミスマッチやレバレッジの結果として生み出されるものです。つまり、中央銀行は、銀行がどのように業務を行っているかについての実践的な知識なしには、金融システムやマクロ経済の動向について理解していくことはできません。今回のグローバル金融危機は、この点を端的に示しています。』


本文11ページより。

『金融政策を例にとると、中央銀行が政策を運営していくうえで、マクロ経済理論の果たす役割は大きなものがあります。経済理論は、複雑な現実を理解するための枠組みを提供するという重要な役割を果たしています。しかし、同時にある1つの理論に固執することは、我々の見方を歪める危険を内包していることも冷静に認識する必要があります。』


大変に力のこもった講演ですので必読かと思われます。








2010/05/27

お題「色々と講演とかあったのですが今日はメモ程度で勘弁」

ネタが出るのはアリガタヤですが一度にどどーんと出るとしんどい(汗)。

○4月後半決定会合議事要旨ですが

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100430.pdf

『V.「中長期的な物価安定の理解」の点検』の所がほほーという感じでありますのでその辺から少々。

『委員は、まず、「中長期的な物価安定の理解」を検討する上での論点について議論を行った。わが国の消費者物価指数のバイアスについて、多くの委員は、引き続き大きくないとの認識を示した。』

ということでこの辺はあまり変わりませんなあという所です。

『また、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」について、多くの委員が、これを勘案する必要があると述べた。』

『ある委員は、ゼロ%を僅かしか上回らないようなプラスでは十分とはいえないとの意見を述べた。別の一人の委員は、競争激化により賃金が下押しされやすい環境が続くことや、潜在成長率が低いこと、財政赤字が大幅に拡大していることなどを挙げ、のりしろを確保する必要性がより高まっているとの見解を示した。』

ということで、のりしろをもっとという話がでるのは「ほほー」という感じではございまする。

『何人かの委員は、今回の金融危機の反省からのりしろを厚めに持つべきとの見解がみられる点についても言及した。これらの委員は、金融危機の発生や趨勢的な成長力の低下といった大きな問題に対しては多少ののりしろを持ったとしてもその意味合いは限定的であり、加えて厚めののりしろが平常時にもたらすコストを踏まえると、厚めののりしろは必要ないのではないかと述べた。』

なんかブランシャール論文への駄目出しみたいなことを言ってるような気がしますが、FRBコーン副議長がブランシャール論文に対して駄目出しをするのは「高インフレ目標を設定するのは不要」という論点なのであって、もともとの数値が低いとみられている日本の場合に同じ話をするのも何だかなあという感じは致しますがどうでしょう。

まあこういうのが出ているという時点で、そんなに物価安定の理解の数字が上がらないんですなあというのは把握した。

『企業や家計の物価観について、何人かの委員は、人々の中長期的な予想物価上昇率は、概ね安定的に推移しているとの見方を示した。ある委員は、わが国は物価が低位で安定する状態が長く続いているため、人々が安定していると考える物価水準は諸外国と比べて低いと考えられると述べた。』

『別の一人の委員は、アンケート調査で「物価下落は好ましい」との回答が減少しており、人々の意識に変化が窺われると述べた。この委員は、今後とも人々の物価観の安定が保たれることが重要であると付け加えた。』

てな感じで、一部では「もうちょっと引き上げた方が良いのでは」っぽい意見も見られるのですが、大勢は現状維持という感じなんでしょうなあと思いましたです。


『こうした議論を踏まえ、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の数値についての議論を行った。多くの委員は1 % 程度を中心値として上下0.5% ないし1 % の範囲内であるとの見解を示した。』

さよですか。

『一人の委員は、0.5% 〜 2 % で、中心は1 % より幾分上の値との見方を示した。一人の委員は、1 % よりゼロ% に近いプラスを中心に考えているとした上で、中心値である1 % を過度に強調するのは望ましくないのではないかと述べた。』

高い方はまあそうですなと思うのですが、低い方の人もいるんですなあ。

『以上を踏まえ、委員は、昨年12 月に明確化した表現、すなわち、「『中長期的な物価安定の理解』は、消費者物価指数の前年比で2 % 以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1 % 程度を中心と考えている。」を維持することで一致した。』

と結局は同じ結論なのですが、まあ少し目線が上がっている人がいるのはほほーという感じですが、所詮1名ですからにゃあ。

#で、展望レポートに関する部分は今日はスルー(大汗)


○バーナンキ議長の東京での講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)

一応ざっくり読んでみたのだが、色々と論点があって結構な大ネタ。

まあ大ネタなので今日はとりあえずちょっとだけ。

『The Case for Central Bank Independence』という小見出しの所から。

『In contrast, policymakers in a central bank subject to short-term political influence may face pressures to overstimulate the economy to achieve short-term output and employment gains that exceed the economy's underlying potential. Such gains may be popular at first, and thus helpful in an election campaign, but they are not sustainable and soon evaporate, leaving behind only inflationary pressures that worsen the economy's longer-term prospects. Thus, political interference in monetary policy can generate undesirable boom-bust cycles that ultimately lead to both a less stable economy and higher inflation.』

短期的な成果を求める政治の介入は宜しくないと仰せのようですな。

『Undue political influence on monetary policy decisions can also impair the inflation-fighting credibility of the central bank, resulting in higher average inflation and, consequently, a less-productive economy. Central banks regularly commit to maintain low inflation in the longer term; if such a promise is viewed as credible by the public, then it will tend to be self-fulfilling, as inflation expectations will be low and households and firms will temper their demands for higher wages and prices.』

望ましく無い高インフレを抑制する中央銀行の姿勢が物価ならびに経済の安定に寄与するっちゅう話をしているようですな。

『However, a central bank subject to short-term political influences would likely not be credible when it promised low inflation, as the public would recognize the risk that monetary policymakers could be pressured to pursue short-run expansionary policies that would be inconsistent with long-run price stability. When the central bank is not credible, the public will expect high inflation and, accordingly, demand more-rapid increases in nominal wages and in prices. Thus, lack of independence of the central bank can lead to higher inflation and inflation expectations in the longer run, with no offsetting benefits in terms of greater output or employment.』

ということで、まあこの辺りを見てますと「通常のインフレ目標値を引き上げてゼロ金利制約へののりしろを作るべき」というブランシャール論文の意見には(まあコーン副議長が講演でケチョンケチョンに駄目出ししてますけど)与しないということですかな。

『Additionally, in some situations, a government that controls the central bank may face a strong temptation to abuse the central bank's money-printing powers to help finance its budget deficit. Nearly two centuries ago, the economist David Ricardo argued: "It is said that Government could not be safely entrusted with the power of issuing paper money; that it would most certainly abuse it.…There would, I confess, be great danger of this, if Government--that is to say, the ministers--were themselves to be entrusted with the power of issuing paper money." Abuse by the government of the power to issue money as a means of financing its spending inevitably leads to high inflation and interest rates and a volatile economy.』

ケチャップ先生のお言葉とも思えませんが、まあこの話は「高インフレを阻止する」という論点によるものでありまして、デフレ脱却の為にどうのこうのという話とは別だということなのでしょうなあとは愚考しますが、中央銀行が財政ファイナンスを行うべきではないという話を「デフレ脱却の時はしても良いが通常は駄目」というような器用な事が本当にできるのかと言う問題はあるんジャマイカ(蟻の一穴という奴でございまして)という気もするのでありました。

んでまあ話は中央銀行の独立性の重要さから始まりまして、中央銀行のアカウンタビリティーとか、中央銀行の独立性確立の歴史とか、そんなに長文という程でも無いと思うのですが、大ネタは大ネタですのでじっくり読んでみたいと思います。


○白川総裁の講演はまだちゃんと読んでない(大汗)

同じく国際金融コンファランスにおける白川総裁の開会挨拶。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1005a.pdf(日本語訳)
http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/data/ko1005a.pdf(本物は英語だそうな)

『おはようございます。日本銀行での国際コンファランスで挨拶することは、私にとって大きな喜びです。中央銀行、国際機関、学界からご参加頂いた皆様に、日本銀行の同僚を代表して、心から歓迎の気持ちをお伝えしたいと思います。』

というのを読んで、これって元は英語なのかなあとやっと気がついたあたくしはうっかり八兵衛ですかそうですか(汗)。

で、こちらもまた中々いい感じで大ネタ挨拶となっているようですが、本日は諸般の事情で華麗にスルーで勘弁。



○ところで昨日のECB

ECBが実施したオペはこちらにあります。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html

下の方にある『Non-EURO operations』ってのに傾注。

USD10002 OT 20/05/2010 12/08/2010 84 1.24 % 1.032 bn
USD10003 OT 20/05/2010 27/05/2010 7 1.22 % 0 bn
USD10004 OT 27/05/2010 03/06/2010 7 1.23 % 5.4 bn

最初の84日オペはまあ良いとしまして、7日オペは一発目の先週実施分では応札が無く坊主オペとなったのですが、昨日実施した7日オペ(先週実施分のロールオーバー扱いだが、元々が坊主なのでロールというべきかどうかは知らん)には応札が登場でござるの巻。

あたくし不勉強にも程があるので、この応札額が多いのか少ないのかという土地勘が働かないので申し訳ないのですが、あんまりサービスレートでは無い(と思われる)オペですが応札が来ましたなあという事で、まあドルスワップやっておいて良かったですなあという感じです。これがドンドン増えてきたらヒャッハー状態なんでしょうし、減るようだったらまあ市場が徐々に落ち着いて来ましたなという所なのでしょうから、ここの推移もぼーっと観察したいなあとは思いますです、はい。


#ということで、今日はメモばっかでどうもすいません











2010/05/26

お題「10年1.2%割れとな」

(↑さっき2%割れとか書いてたのはタイポですすいませんすいません)

昨日の引け後にユーロはうんこになるわ債券先物は上がるわ現物は上がるわ。

○スペインがどうしたこうした関連の俺様備忘録

まあ俺様備忘録なので特に考察は無い。正直スマンカッタ。

今般お飛びになられたCajaSurをWikipediaで検索したら英語版だとスペインアンダルシアのツーリングチームが出てくるのだが(^^)、さすがにスペイン語だとちゃんと出てくる(^^;

http://es.wikipedia.org/wiki/CajaSur

冒頭にあるこの銀行の沿革の説明にこんなのがあるが。(追記:下の文章ってスペイン語表記なので本来は色々な記号があるのですが、ホームページビルダーおよびテキストファイルの都合上、単純にアルファベット表記だけになっている点はご容赦ありたし)

『Surge en 1995 de la fusion del Monte de Piedad y Caja de Ahorros de Cordoba, vinculada a la Iglesia Catolica, y la Caja Provincial de Ahorros de Cordoba, vinculada a la Diputacion Provincial.』

まあ何だ、スペイン語は判らんのだが、Iglesia Catolicaってカトリック教会って意味の筈だから(そのくらいなら判らんでもない^^)、要するに物凄い地域金融機関で何かもう地元のしがらみの佃煮のような金融機関ではございますな。で、まあ元々この手の金融機関が不良債権のデパートのようになっているという話はあったようで、スペイン中銀の金融システムレポートのようなものが今年の3月に出ていてですな。

http://www.bde.es/informes/be/estfin/completo/estfin18e.pdf(1MBあるので注意)

これは英語なのでまあ何とかという感じですが、ここのPDFだと19ページ(本文も19ページ)から『Deposit institutions and other financial market participants』のコーナーになっていて、貯蓄金融機関の経営状態の香ばしい話が書いてあるようでありんす。

んでもって21ページの頭にBOX 2.1ってのがあって『BANCO DE ESPANA ACTION IN CAJASUR』というお題で、そもそも経営に問題があるので、同じアンダルシア州の貯蓄金融機関のUnicajaとの経営統合がどうのこうのという話が書いてある訳で、まあ昨日ニュース見て想像した通り、そもそも本件って昔から判ってた話(今回はCajaSurが経営統合を拒否して中銀送りを選んだ)であって、何でそれが急に売り材料になるのかさっぱり判らんというのはまあ昨日の朝の想像通りでしたわなという所です。

なお、28ページの所に貯蓄金融機関の不動産建設業向け融資の状況について書いてあるように読めるのですが、潜在的な不良債権が同業向けの貸出の25%とかいう落涙を禁じ得ない数字が載っておりますな、まあオソロシスですが日本の時ってどうでしたっけな。

んでもって、これまた昨日書いたことの繰り返しばっかで恐縮ですが、まあここって別に金融システムに影響を及ぼす訳でもないです(全体としてスペインの金融機関の不良債権問題がどうのこうのというのはありますが)し、そもそも上場とかいうレベルと隔絶しているような小さい金融機関なので、これをネタに欧州市場が動揺っていうのは話としてはアリエネーという所なのですが、それでも動揺する所に欧州市場がうんこ状態でどうにもこうにもという事になっているというのが判るというものですな、ナムナム。

で、昨晩もこの有様ですよ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aZE8j2PdNZpU
Libor for Dollars Rises for 11th Day on Debt Concern (Update2)

『May 25 (Bloomberg) -- The rate banks say they pay for three-month loans in dollars climbed for an 11th day as concern mounted that Europe’s debt crisis will prompt financial institutions to question one another’s creditworthiness.』

はあそうですかという感じですが、まあ欧州市場の(ユーロじゃなくて)ドルファンディングが問題になるちゅうのはコマッタモンデスなという所でございます。いやまあスワップ協定は入りましたのでオペは出そうと思えば出せるのでしょうけれども、ECBってどうもケツが重くて、いざ動くといきなり強烈に動くというのがここまでの仕様だと思う(急に超大量オペやら無制限オペを打ってみたり、急に1年固定オペを打ってみたり、買わないと言ってた国債を急に買ってみたりとか)ので、どうなるかはよー判らんとしか申し上げようが無いですが、このまま週末まで放置すると催促相場状態が続いて遺憾としか申し上げようが無いですな。

いやまあただの催促相場状態でファンディングそのものは回っているという状況なら別にまあ最終的には何とかなるのですが、これが欧州系金融機関の資産圧縮という流れになりますと、ファンディングがどうのこうのという問題では済まなくなるので宜しくありませんわなと思うのでありまして。

という大した考察も無い俺様備忘録でどうもすいません。


○こうなると金融経済月報が様式美の世界に(−−)

今月の金融経済月報
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf

先月はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf

例によって『概要』部分を何となく比較するのですが、まあ声明文で比較したことと大体重なるのであります。

・現状認識部分

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』

『輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まっている。この間、公共投資は減少している。』

ということで、こちらは声明文比較にもありましたように、基本的な認識が「回復」になり、設備投資が「持ち直し」になり、おまけに雇用、所得に関しては「厳しい雇用・所得環境が続いているものの」という部分が抜けるという中々の強さ。

で、その雇用なんですけれども、本文8ページ(PDFファイルだと10ページ)にはこのような記述があります。

『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』

前回はどう書いてあったかと言いますと。

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(前回の月報)

ということで、「厳しい状況」というのは変わっていないのですが、そういう認識をしているのであれば声明文および概要の方から「厳しい雇用・所得環境」の文言をわざわざ外したのかというのがどうも微妙ではございますな。


・先行き見通し部分

『先行きについては、景気は緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものとなると考えられる。』(前回)

ということで「持ち直し」が「回復」に昇格したのは声明文と同じで、その後の部分はこうなっています。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。国内民間需要は、持ち直しを続けるものの、設備・雇用の過剰感が強いことなどから、当面、緩やかな持ち直しにとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(前回)

ということで、国内民間需要が「横ばい圏内にとどまる」から「緩やかな持ち直しにとどまる」と判断を引き上げつつも微妙な程度ということで、まあそういう意味では「テクニカルな判断引き上げであって、メインシナリオが上振れた訳ではない」というのはまあそうですねという所ではございます。

で、前回まであった個人消費の所がこれまたバッサリ抜けているのですが、本文の方を見ますと個人消費の先行き見通しは(本文6ページ)、

『先行きの個人消費は、各種対策の効果が下支えに働くものの、雇用・所得環境の厳しさが残る中、当面、緩やかな持ち直しにとどまるとみられる。』

とありますが、ここの文言って前回と全く同じでありまして、声明文ベースや概要ベースでは何か雇用所得環境の見方を強くしたように見えるのですが、本文を見ると必ずしもそうではないという中々芸が細かいんだか何だかよく判らん技を繰り出しています。

ということで、声明文は割と威勢よく見えるのですが、月報概要から本文とみていくとそこまで威勢が良いのかなという面もあるなあとは思ったのですけれども、何せ4月入ってからの白川総裁様の発言が素敵なまでに威勢が良いのでありまして、ど〜してもそちらの印象がまず最初に来て、それが頭にある中で声明文とかを読むのが市場参加者の仕様でありますので、まあ印象として「随分と強気ですなあ」というのを与えると思います。

で、そんな印象を与える中で欧州市場がうんこになって何か円は上がるわ株は下がるわ債券は買われるわという状況になってしまうという間の良さ(悪さなんですけど^^)に様式美の世界を感じてしまうのはあたくしだけではございますまい。


○その他ネタですが

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j05.htm
日本の生産変動:グローバル金融ショックと世界経済の構造変化

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j05.pdf

色々と図表があって楽しいのですが、結論だけ引用するだよ。

『本稿の分析は、2000 年代中盤の日本経済の拡大とその後の大幅な悪化が、グローバルな金融ファクターの影響を強く受けていたことを示した。それと同時に、日本経済にとって新興国の重要性が、2000 年代を通じて明確に高まってきたことも、改めて確認された。後者の点は、新興国経済の規模自体が拡大してきたことのほかに、日本企業が新興国需要を取り込む方向で構造変化を遂げてきたことも、意味していると考えられる。』

なるほど。

『新興国経済は、今後も高めの成長を続け、世界経済におけるプレゼンスを一段と拡大すると予想される。そうした変化が、日本経済の成長力強化に、さらに上手くつながっていくことが期待される。現に、多くの日本企業から、「新興国需要を取り込むべく、仕様やデザインの見直しを図っている」、「内陸部も含めて中国市場での積極的なマーケティングを展開している」といった声が聞かれる。』

何か新興国輸出用の生産に関する融資とかが今度の成長基盤強化措置の対象になりそうな気がしてきましたが(^^)まあそれはともかく。

『ただし、新興国需要を巡ってのグローバル競争も、激化していくことが予想される。また、新興国において、資産価格の下落や実体経済の調整が大規模に生じるような場合には、日本経済に大きな負の影響が及ぶ可能性に注意する必要がある。』

たぶん一番最後の文が足元ではリスクシナリオとして懸念される所ではないかと存じます次第。













2010/05/25

お題「総裁会見など」

東京の気温変化はユーロ相場みたいですな(><;

○日替わりユーロ相場のようで

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ardB44XDsXWA
NY外為:ユーロ下落、スペインの銀行救済で域内の損失懸念高まる

ということで、スペインの貯蓄銀行が中銀傘下に入ったとかいうニュースはたぶんこの辺(ただしスペイン語)。

http://www.elpais.com/articulo/economia/Banco/Espana/expedientara/administradores/Cajasur/elpepueco/20100524elpepieco_2/Tes

どの位の規模とか正直知らんのですが、米国のように年がら年中地域金融機関が預金保険公社入りしている国では別に今更話題にならないのに、スペインで起きた場合にはいきなり大きな話題になるというのは、まあそもそもが新ネタであるという事もそうですけれども、よーするにユーロ圏の市場センチメントが極悪な状態だから、たぶんそんなに規模がでかい訳でも無いと思う(事実誤認でしたらすいません)所の公的管理入りという話でも騒ぎになるということでしょうなあと。

#スペインの貯蓄金融機関と言えばバルセロナに行った事のある人なら必ず見た事がある筈のロゴが印象的なLa Caixaが有名かつ巨大ですな

とまあそんな次第ですので、どうも欧州の金融市場に関してはまだまだ落ち着かないというか、暫くはああでもないこうでもないとやらかすのでしょうなあ、と思った朝のひとときなのでございました。


○テイラールールがどうのこうのというレポート

こんなんでてました。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j06.htm
今次金融危機の経験を踏まえた金融政策ルールの拡張について

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j06.pdf

でまあ図が多くて中身はシンプルな上に、数式が殆ど無い(まあテイラールールは計算式の話ですから、その点では数式はあるのですが、笑)ので、とりあえずエッセンスを纏めたような感じですわな。

要するに結論はアブストラクトの所にありますように・・・・

『近年の研究では、企業や家計への貸出金利と政策金利のスプレッドや、金融機関の貸出量に反応するテイラー・ルールの拡張が提案されている。このように拡張されたルールは、経済へのショックが金融要因であることが明らかである限り、経済の安定化に貢献する。しかしながら、実際には、ショックが金融要因であるか、技術進歩等の非金融要因であるかをリアルタイムで識別することは困難であり、拡張ルールのように金融環境の情報に対して一律な政策対応を行うことは難しい。そのため、ルールを基本とし金融政策運営の一貫性と予見可能性を確保した上で、金融環境の変化等を考慮した裁量的な政策対応を行う「制約された裁量(constrained discretion)」の重要性が改めて認識されている。』

という事のようですが、まず最初にテイラールールの基本バージョンの説明がありまして、その中で(本文3ページ)、

『ここで従来のテイラー・ルールにおける均衡名目金利について改めて考えてみたい。この金利は、前述のように、インフレ率・実体経済活動が目標水準で安定している場合の名目金利の水準である。この均衡名目金利に政策金利が一致しているとき、企業や家計の資金調達環境は引締め的でも緩和的でもない状態にあるというのがテイラー・ルールの考え方である。この前提として、金融仲介機能が正常に機能していることが暗黙裡に仮定されている点には留意が必要である。』

ということで、金融環境の悪化による名目均衡金利の低下を考慮したテイラールール拡張(はテイラー教授も示唆しているのですが)として、2つの代表的な研究を紹介して説明をしているのですが、まああたくしがここで引用してどうのこうのと書いても無知の大公開時代になるだけなので華麗にスルー致します(こら)。

まあ読んで味噌。



○総裁会見から:景気にはまあ自信がありそうですなあ

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005c.pdf

・景気の基本的な判断を変えないのはまあ判るのだが・・・・・

現状判断を上方修正した点についての質問に対する回答から。

『(答) 4月末に展望レポートを公表し、今、その見通し通りに推移していると思っています。その意味で、見通しの経路との比較において上方修正したわけではありません。私どもの見通し通りに改善しているということです。』

ほうほう。

『今回の特徴は、国内民間需要について、前回までは自律回復力はなお弱いという表現を残していましたが、今回その記述を落としました。もちろん、自律回復力が非常に強いと判断しているわけではありません。4月初めの段階で、自律回復の芽が見られると申し上げましたが、その後、そうした芽を裏付けていくデータがだんだん発表されてきたことで、確認ができたということです。』

ほうほう。

『詳しくは、月曜日に発表する金融経済月報をご覧頂きたいのですが、設備投資について、従来の表現から一歩進めました。具体的には、「設備投資は持ち直しに転じつつある」としています。これは、機械受注や資本財供給の数字等で確認ができます。』

いやまあ生産統計は強いんですけどね。

『また、家計の雇用・所得環境について、もちろん今も厳しいわけですが、その厳しさも若干和らいできていることが雇用・賃金のデータで確認されつつあります。』

厳しいなら声明文での表現をばっさり切ったのは何故??

『個人消費も政策効果で支えられている耐久消費財以外の分野が注目点でしたが、これについても少しずつ改善していることがデータで裏付けられています。その意味で、自律回復はまだ十分なものではありませんが、そうした方向に一歩進んできていると思います。』

どう見ても自信満々です本当にありがとうございました。


・欧州問題に関して

んじゃまあ欧州問題に関してどうなのよという質問が次に飛ぶのですが、それに対してはこんな話を。

『(答) 欧州経済は、これまでのところ、国ごとのばらつきを伴いながらも全体として持ち直しが続いています。もっとも、ギリシャ等の財政問題に端を発する欧州金融市場の緊張は、EUやユーロ加盟国による緊急支援の枠組みの決定、ECBによる各種措置の導入、主要中央銀行による米ドル資金供給オペの再開などの様々な公的な措置によって若干和らぎましたが、依然不安定な状態が続いています。』

さいですな。

『今後は、一部欧州諸国において財政再建と経済改革に取り組んでいく必要がありますが、その過程で金融市場の緊張がさらに高まるような場合に、様々なルートを通じて欧州経済さらには世界経済を下振れさせるリスクがあり、この点には十分な注意が必要であると考えています。』

と言った傍から・・・・

『ただし、現時点では、世界経済が新興国・資源国に牽引されるかたちで回復を続けていくという中心的な見通しを変える必要はないと考えています。欧州経済の不確実性は高まっている一方で、現在の世界経済を牽引している新興国・資源国経済は、内需を中心に国際機関や民間の予測を上回る力強い成長を続けており、先行きも高い成長率を維持するとみられること、米国経済も、輸出が増加し個人消費も増加する中で緩やかに回復していることがその理由です。』

ということで、まあ確かにメインシナリオを変える話をせんでも良いとは思いますけれども・・・・

『こうした世界経済の動向を踏まえると、現時点では欧州経済の不確実性の高まりが日本経済に与える影響は限定的であるとみています。わが国の輸出は、新興国・資源国向けを中心に増加しており、先行きも世界経済の回復が続くもとで増加基調を続けるとみられます。また、わが国の金融・資本市場をみると、海外市場と同様、株価が不安定な動きをみせているものの、短期金融市場やCP・社債市場は欧米諸国に比べ安定的に推移しています。』

という風に、リスク要因の話よりも「メインシナリオでおっけー」的な話が続くのがちょっとまあ(今回のネタが欧州圏の市場不安定という所から来ているので)あたくしなんぞからすると「もうちょっとリスク要因を強調するんじゃないかなあ」と思っていたのでイメージと違いますな。

なお、この答えまだ続いてまして、最後は「注視していく」という事は言及していますので念の為。

『もっとも、今回の欧州金融市場の不安定化の背景には、欧州一部国における財政の持続可能性・再建可能性に対する市場の信認低下や、これらの国の競争力の低下という大きな問題があります。欧州諸国の経済・財政改革が着実に成果を上げ市場の信認を確保していくことは、時間のかかるプロセスであり、その過程で国際金融市場や世界経済にどのような影響が及んでいくのかといった点は、既に展望レポートでも指摘しているように、注意深く点検していくことが重要だと考えています。特に、このところ金融市場の動きはやや急なものとなっており、日本銀行としては今後の市場動向を引き続き注視していく考えです。』

ただまあリスクリダクションの動きが起きてしまった場合には、そのコトが他国で起きている状態であったら尚更のことですが、まあ中央銀行が何をするかって言っても特にできる事は無い(そらまあ無茶すればできますが)のでして、流動性供給くらいしかできませんなあというのが残念な所ではございますわなという所ですにゃ。

で、昨日も申し上げたように、リスクリダクションの動きが起きた場合、前回はサブプライムをはじめとした各種証券化商品市場にその影響が来たのですが、欧州の場合は域内の銀行貸出とか、新興国の銀行貸出とか、そっちの方にモロに効いてくるのではないかという懸念がある訳でして、従来誤魔化し誤魔化しで来ているのが欧州圏の仕様でもありましたので、まあ色々と不具合が起きるんじゃネーノという心配性のあたくしは心配があったり無かったりするのだ。よー知らんが。


○総裁会見から:成長基盤支援なんちゃら

・たぶん金融機関の計画に対して日銀はそんなに細々審査はせんのじゃろう

成長基盤強化に関する質問の答えから。

『その上で、現時点での考え方を申し上げると、当然、成長基盤強化という趣旨に沿ったものである必要があるわけですが、実際に趣旨に合致するような融資や投資は、金融機関の特性や取引先企業の業務分野、事業に応じて当然異なり得るものであり、金融機関全体としてみると、かなり多種多様なものであると思われます。日本銀行としては、そうした多種多様な融資や投資を幅広くサポートできるような仕組みを設計する方針です。』

『こうした観点からは、これまで政府や各種の経済団体が公表している各種の成長戦略の考え方が参考になると考えています。これらの成長戦略では多くの分野や事業が包括的に取り上げられており、そうした分野や事業に対する融資や投資が幅広く対象となるようにしていきたいと考えています。』

ということですので、まあ個別案件を捕まえて「これは成長基盤支援融資か」ってな事はさすがに審査しない(大体からして出来ないでしょ)という感じが致します。

ただまあそうなのであれば、何で政策投資銀行あるいは政策金融公庫とのタイアップという話にならないのかねえというのは???なのですけどね。


・期限が長いのか短いのか判らん

同じ答えから。

『また、期限についてですが、これから具体的な条件を決めていくわけで、最終的にはすべてが連関するものです。その意味で、この部分だけを切り離してお答えすることは少し難しい面もあります。一言で言えば、成長基盤の強化という本措置の趣旨に照らして適切に定めたいということです。まず、日本銀行としては、今回の措置を恒常的なものとして設計することは考えていません。一定の期間を区切り、中央銀行の有している機能を使って成長基盤強化に向けた金融機関の取り組みを効果的に後押しする時限措置と位置付けています。』

ほほう時限措置とな。

『他方で、成長基盤強化に向けた取り組みが効果を上げるには相応の時間がかかります。金融機関側でも融資等の体制整備に時間を要することを踏まえると、このスキームを実施する期間は金融機関の取り組みをある程度じっくりと支えることができるように設定する必要があります。従って、貸付期間や貸付受付期限等については、こうした点をバランスよく踏まえて、これから固めていきたいと考えています。』

ということですので、「本件の制度に則って実施する日銀の資金供給はロールオーバーも含めてそれなりに長い期間で出しますが、制度による貸出実行に関しては申し込み受付期間をそんなに長い期間で取る訳ではありませんよ」という話になるんでしょう。

だから(引用割愛しますが)このオペ自体はあくまでも「貸出案件紐付きのようなもの」であって、1年の金利に影響を与えるというものではないということでしょうな。


・まあロジック突き詰めて行ったらこうなったのね

このオペって中央銀行としてどうよという質問に対しての答えが象徴的だと思いましたです、はい。

『(答) まず、日本経済が現在置かれている状況を改めて整理したいと思います。現在、日本経済は、リーマン・ショック以降の世界的な景気の落ち込みの影響から脱し、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復帰するという循環的な課題と、人口の減少や生産性の低迷・低下による趨勢的な成長率の低下という中長期的な課題の両方に直面していると考えています。わが国のデフレ、すなわち持続的な物価の下落についても、このような循環的な要素と中長期的な要素の両方を反映していると言えます。前者については、展望レポートで示したように、需給ギャップは現在縮小に向かっており、今後もその方向に向かっていくということです。しかし、日本経済が直面している根源的な問題は、後者の潜在成長率の低下だと思います。このことが、わが国の物価下落の基本的な要因であるとかねがね申し上げています。』

というのは今まで総裁がお話をしていた通りですが・・・・

『このような認識に立った場合に、潜在成長率を上げていくことは、主として民間経済主体の努力、そしてそれをサポートする政府の役割が大きいと思いますが、一方で、中央銀行として出来ることはないか、貢献できることはないかということを真摯に考えていくことは必要であると思います。その意味で、この新しい取り組みは、日本銀行法に謳われている、物価安定を通じて国民経済の健全な発展に資するという金融政策の使命に合致していると判断しています。』

ということで、まあ従来より主張していたロジックを突き詰めた結果が今般の施策という話で、極めて落涙を禁じ得ない所ではございますが、恐らく白川総裁におかれましては、引用した発言にありますように、「潜在成長率の低下を防ぎ、引き上げていくために日銀が何か貢献できないのか」と言う事を大真面目に考えた結果なのでは無いかと(これが俊ちゃんだったら芝居の可能性があるのですが^^)思われますがどうでしょうかねえ。


とまあそんな感じで。トーンとして下振れ懸念があたくしのイメージというかまあ市場がちょっと微妙に変調な中ですなあという感覚から見た場合に、もうちょっと下振れリスクを意識した物言いがあっても然るべきかなあとは思ったので、その意味でちょっと景気にまだ自信があるんですなあ、という印象を受けるのでありました(4月の会見の印象がまだ残っているのもありますが)。









2010/05/24

お題「決定会合レビュー」

謎政策キタコレ。

○テクニカルとは言ってるけど随分と強くなってますなあ

まずは決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(前回)

今回は謎政策に最初に注目が集まりますが、良く良く見れば決定会合声明文の方があちこちで上方修正されているのがこれまたアレでございますです。

・景気の基調判断が「回復」に昇格

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(前回)

さあ回復ですよ回復♪ということですが、会見(詳しくは今日出る)によりますと「これは景気が緩やかな回復をするというシナリオのラインに沿った中でのテクニカルな表現変更」という事らしいのですが、会見のニュアンスとして情報ベンダーから出ていたヘッドラインを見ると、白川さんはマジで先行きの回復に自信があるっぽいような印象を受けるのでして、それは如何なものかという悪態は後ほど(^^)。


・現状判断の個別項目では設備投資と雇用・所得を引き上げ

雇用・所得の引き上げが結構ビックリしたでおじゃるよ。

『設備投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『設備投資は下げ止まっている。』(前回)

まあそうですなという所ですが、今回ばっさり抜けたのが前回まであった雇用・所得に関する表現です。

『個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』(今回)
『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。』(前回)

ということで、早くも「厳しい雇用・所得環境」というのが抜けるって何か随分と強気だなあ(ECBはあんまり詳しく見てないからアレですが、FRBにしろBOEにしろ雇用の部分に関しては随分と厳しい見方をしているのですが、それと比較して日本がそんなに好調なのでしょうか)と思ってしまう訳ですが。


・で、先行きもストレートに「回復」とな

前回までのああでもないこうでもないという表現からいきなり直球に。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』(前回)


なお、物価に関しては同じ表現(言い回しが微妙に違うが)です。



・リスク要因も何か微妙なのですが

下振れリスク要因のメインに国際金融市場の動向が入ったのは当然なのですけど・・・

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(前回)

国際金融面に関しては前回はリスク要因のリスク要因(表現がヘタクソでどうもすいません)だったのがメインに昇格したのですが、そのどさくさに紛れて「米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向」が抜けているのはどうなのかと。いやまあ企業の成長期待の動向に関しては今回成長力強化の新施策を打ちますっていう事で外すのかも知れませんが、国際金融情勢は単なるギリシャのソルベンシー問題ではなく、リスクリダクションの動きになってきているのではないかと思われる部分が多く、そう考えると欧州のバランスシート調整はこれからなのではないでしょうか。何で外しちゃうのか意味が良く判らないんですけど。

『この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(今回)

『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』(前回)

ということで、まあここは国際金融面がリスク要因のメインに昇格した影響。

なお、物価面のリスク要因とデフレ脱却に関する決意表明みたいな文言に関しては同じ表現となっています。



○総裁会見では先行きに自信があるようですがそうなのかなあという市場雑感

総裁会見は今日出ますが、ロイターニュースから。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK041248420100521

『世界経済のマクロ展望については「現状、新興国を中心に世界経済が改善するとの中心シナリオは変わらない」と強調。国内については4月30日に日銀が公表した展望リポートの見通しに沿って推移している、とし、「国内民間需要に自律回復の動きがみられる」と強調。国内民間需要について「前回までは自律的回復は弱いと判断していた。今回自律的回復が『強い』と判断していないが、(各種経済指標などで)芽を確認でき、従来の表現を一歩進めた」、「個人消費も耐久消費財以外での投資も少しずつ改善している」と指摘。「まだ十分なものでないがそうした方向に一歩進んできている」と述べた。』(上記URLより)

ということのようですが。

>芽を確認でき、従来の表現を一歩進めた

って何かこう「偽りの夜明け」という話を米国に行ってしてた人の同じ口が言うのかと思うのですけれども、とりあえず白川総裁の判断としては回復に自信があるのは把握した。

ただですな、さっきからチョロチョロ申し上げているように、ここもとの海外市場の動きって、単なるギリシャ問題だけではなく、ユーロ圏全体のソルベンシーの話になり、それがドイツの謎施策の辺りから今度は市場全体のリスクリダクションのようになっているように思えるのですよね。

つまりですな、問題がユーロ危機云々だったら先週後半のユーロの戻しと、円の強さって何なのよという話ですし、一方で商品価格がゲロ下げしている中で資源国通貨が下落するとか、米国の物価連動国債が売られている(日本も影響受けてますが)とか、ど〜も動きが「リスク許容度の低下」あるいは「ポジションの解消」方向になっているのがアレなのでござんす。欧州系はドル建てで外向けのエクスポージャーをそれなりに抱えている(だからドルファンディングが大変でどうのこうのという話が出て来ざるを得ない)ようなのですが、これを閉じる方向という事になると、新興国とかのクレジットアベイラビリティの低下方向という話になるでしょうし、その一方で世界的に「財政の維持可能性」がテーマになっている中では、リーマンショック後のような威勢の良い財政出動がしにくいという点で、リーマンショックの時とはバッファーが違うようにも思えます。

ま、あたしゃ現在は債券屋ですし、その上日本人と来てますので心配症なのよという事なのかも知れませんけれども、足元の循環的な回復よりもど〜にもこ〜にもこっちの流れの方が気になる次第でして、そらまあ杞憂なら別に問題ないのですが、欧州にリスクリダクションの動きという中で「新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因」という見方が堂々維持されているのも(いやまあデータ上はそうなんでしょうけれども)そうなのかなあという感じでありまして、まー詳しくは今日の会見要旨を見ないとですけれども、白川総裁の会見トーンが強めな気がするのが懸念される所ではございます。


ということで、まあ結果出た当初は次の「施策」の方が気になったのですけれども、良く良く考えたらこっちのネタのほうが気になってきたのでありました。以下は謎施策に関連して雑感少々程度。



○謎の施策に関して

3ページ目の「別紙」に注目。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf

わけわからんから全部引用という暴挙に出る。

『成長基盤強化を支援するための資金供給の骨子素案

1.対象先
共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち希望する先

2.資金供給の方式
共通担保を担保とする貸し付け(共通担保オペと同様の方式)

3.貸付期間
原則1年とし、借り換え(ロールオーバー)を可能とする。

4.貸付利率
貸付時の無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準

5.対象先毎の貸付額
対象金融機関から成長基盤強化に向けた取り組み方針の提示を受け、そのもとで行われた融資・投資の実績に基づき、当該金融機関に対して貸し付けを行う。

6.貸付総額、貸付受付期限等
成長基盤強化に向けた融資・投資への金融機関の取り組み状況等を踏まえ本措置の開始時に、、貸付総額、貸付受付期限(新規に貸付を受け付ける期限)、借り換え可能な回数を定める。』


まず最初にあたくしが思った事を少々。

その1:昭和脳のあたくしは(前も書いたかもしれないけど)「傾斜生産方式」というのを思い出しましたが、ここはどこの昭和20年代かと小一時間問い詰めたい

その2:金融機関が出した案件に関して、日銀が判断できるんですか???何せ「日銀+成長分野への資金供給」というお題を並べると(略)

その3:これって恒常的な措置になるのかねえ

で、会見記事(実際にあたくしが参考にしている記事は共同通信が金曜の夕方に配信した「会見詳報」(一問一答形式)なのですが、共同のサイトを見ても見当たらないので引用しない)によりますと、まあ1番に関しては兎も角として・・・

その2の答え:どうも日銀はそのへんの個別判断は特にしないようですな

その3の答え:どうもこの措置は臨時措置になるらしいですな

と言う事のようですが、まあ詳しくは会見要旨が出てから改めて書きますし、そもそも内容がまだ詰まっていないと思われますので何ともかんともなのですけれども、現在は「貸出はしたいけど肝心の貸したくなるような資金需要が無い(貸したく無いような資金需要ならあちこちにあるでしょうけれども)」という状態になっているのでして、そんな状況の下で臨時措置として実施というのも何かどうなんですかねえという気が思いっきりするのであります。

でもまあそうは言っても日銀様が施策を出して、銀行にヒアリングして回るという話になるでしょうから、銀行も手ぶらという訳にも行かないでしょうと考える訳ですが(−0−)、まさかいきなりの新規先への貸出に対して「成長基盤強化支援融資でござる」と持ちこんで貸出があぼーんと言う訳にも行かないでしょうから(たぶん持ちこみという話になると頭取とは言わないけどかなりの上の方にもお話をするでしょうから、「日銀に持ちこんだ案件の貸金コケた」って訳にはいかない(実際の貸出担保は共通担保だから関係無いっちゃあ無いけど)でしょ)、そうなると最後はヤケクソで今流行りの「スマートグリッド」あたりを「成長基盤強化支援」と称して、東京電力様辺りへの貸金を「成長基盤強化支援」とか言って持ちこむに100ドラクマ(^^)。

5番にあるように、この貸出は「融資または投資を実施した分に対しての実施」となりますので、まあ「この日銀施策をあてにして貸出ましょう」というような直截的な行動には金融機関は出にくいのではないかと思いますけどどうなんでしょうかねえ、金融機関の行動原理からすると。


あ、それから(略)の所で「一萬田総裁のぺんぺん草発言」と言われるネタを思い出した方も多いかと存じますが(^^)、」von_yosukeyanさんの過去のエントリーでこういうのがありまして、まあ当時の背景としては当然の発言(発言したのかどうかは不明らしいですが)とも言えるので、そう単純なものではないという説明がございますので御参考までに付け加えさせて頂きたく存じます、と最後はいつものように人のふんどし(^^)。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/400504
一萬田総裁と「ぺんぺん草」












2010/05/21

お題「金融政策決定会合ですが/FOMC議事要旨から資産売却関連」

最近は寝てる間(というか夜に飲んでる間というか)に相場ネタが爆裂するので甚だ遺憾と申しますか何と申しますか。

○決定会合の直前に逆風とな

http://jp.reuters.com/article/jpmarket/idJPnJT866106220100520
欧州株式市場=続落し2週間ぶり安値で引け、規制強化懸念で金融株売られる

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aW_.OpTfhlDA
米国債:上昇、10年債利回り年初来の低水準−欧州危機の悪化を懸念

ということで、本日はど〜せ株安に円高とかになると思われますが、日経1万円割れとかドル円90円割れとかになりますと、暫く静かだった政治方面からああでもないこうでもないという話が出てくるに1万ドラクマな訳でございまして、そのタイミングがまさにこの金融政策決定会合というのが様式美の世界。

ここの所は割とその流れが無かったのですが、昨年末くらいからは政策決定会合前になると急に為替やら株価がアンフェーバーな方向に動いて日銀にああでもないこうでもないという人達大騒ぎの展開でござるというのが毎度毎度の決定会合で示されていた訳でして、今日はまた久々にこの動きをやってくださっているのが中々香ばしい所ではございます。

・・・じゃあ今日の会合で何かあるかというとそれは昨日の今日とかなので何か出るという訳にも行かないのでしょうけれども、何かこういう感じで足元できな臭い状態になっている時に「成長戦略の為の資金供給がどうのこうの」という長期的なネタを出すのは何と言うかタイミングとしてとーーーーーってもアレというのが何だかなあって感じが致しますが、微妙に間が悪い事が多いのが白川日銀の仕様でもあるので致し方無しということで。

ま、ユーロの問題ってとりあえず足元の政府債務の支払いという点での流動性に関しては何とかなりますよという状況にはなっているとは思うのですが、じゃあ財政再建がサステイナブルなのかというような、ソルベンシー問題に関しては1ミリも解決されていない(そらまあ1日や2日で解決される問題ではないが)のが問題という話になって来ると、まあ足元の動きに対して外野の中央銀行ができる事って特に無いのですから、そーゆー点で言えば日銀が何かやりますって言う話は無いのですけれども。


○とりあえず注目してないけど成長戦略向けの資金供給雑感

何をやるのでしょうと色々と妄想をたくましくしているのですけれども、結局の所思いつくのは「政策投資銀行とか政策金融公庫に貸付けをすればいいじゃん」という結論しか出てこないのですが(汗)、まあ経産省あたりが成長戦略関連の制度融資に関するネタを作って、それに関連する貸付債権に関しては日銀が担保適格とするとか、その貸出債権に関してはより長い期間の融資を行うとかいうような事くらいでしょうか。

まー常に足元の話でヒーヒー言ってる市場の皆様(ってあたくしもその上がりをかすめて生きているのだが)的にはマーケットインパクトのあるような話にはならないのでありまして、それよりも足元の円高株安でまた追加緩和観測とか出てくるのかねという方が気になる所ではございますけれども、いずれにせよ今回出るであろう成長戦略がどうしたこうしたというネタは金融政策として出すようなネタとしてはだいぶ筋違いな気がします。

いやまあ「デフレ脱却には経済の潜在的な成長力を高めることが重要」という話に力点を置いたからこーゆー事をやらないと話として整合性が取れない(「成長力を高めるという事は金融政策の仕事ではない」とかばっかり言ってたら、金融政策の存在意義を問われるという話になりますからねえ)という事になったんですなあとは思うのですが、白川さんらしくああでもないこうでもないという説明をせっせとやっている内に、その理屈が自分の首を絞めて今回の謎政策に至るという感想を受けるのでございました。

毎度比較してカワイソスではありますが、あの学者様バーナンキ議長が今般の金融危機以来すっかり福井の俊ちゃんみたいにインチキロジックを駆使して気合でイカサマ説明を繰り返しつつ、結果として(リーマンをこかして危機を招いたのはトンマというか戦犯モノではございましたけれども)最悪の事態は回避して回復軌道に(とりあえずは)乗せたというのを見ますと、やはり危機モードでは中央銀行が財政の領域に入ってみたり、政治などからの軋轢が起きたりというような事が起こるのでありまして、そーゆー時には白川総裁はイカサマパワーが足りないことがちょっと惜しいかなと思います。政治だのなんだのというような所に出る時にはイカサマパワーが必要とされるので、本来的に言えばそっちを武藤さんにやって貰って、より「本来はどうあるべきでどういうロジックで動くのが正しいのか、効果をちゃんと分析できるのか」というような冷静な部分を白川さんがやって行けば役割分担がきっちりと出来たんでしょうなあと思うと民主党の罪の重さは政権獲得前から始まっていたと言う事ですな。

じゃあ白川さんがダメダメなのかというとそういう訳ではなく、イカサマパワーでその場を何とかするのは良いのですが、インチキロジックで色々とやってしまうと、その後始末というのがひじょーに難しいのでありまして、米国であればMBSだのエージェンシー債だの長期国債の買入だのの後始末が将来的には問題になりますなあという話がFOMC議事要旨にありましたなという所で。


○んな訳で昨日の続きでFOMC議事要旨の資産買入関連の部分

最初の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』コーナーのケツ(というか真ん中以降)の方にその話が。

『Meeting participants agreed broadly on key objectives of a longer-run strategy for asset sales and redemptions. The strategy should be consistent with the achievement of the Committee's objectives of maximum employment and price stability. In addition, the strategy should normalize the size and composition of the balance sheet over time. Reducing the size of the balance sheet would decrease the associated reserve balances to amounts consistent with more normal operations of money markets and monetary policy. Returning the portfolio to its historical composition of essentially all Treasury securities would minimize the extent to which the Federal Reserve portfolio might be affecting the allocation of credit among private borrowers and sectors of the economy.』

と、FEDのバランスシート問題に関連して、買入を行った各種資産の規模を経済の正常化に合わせて縮小していくと、利上げなどを実施する時にオペレーション上やりやすいってな話が最初にある訳ですが。

『Most participants expressed a preference for strategies that would eventually entail sales of agency debt and MBS in order to return the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet to a more normal configuration more quickly than would be accomplished by simply letting MBS and agency securities run off. They agreed that sales of agency debt and MBS should be implemented in accordance with a framework communicated in advance and be conducted at a gradual pace that potentially could be adjusted in response to changes in economic and financial conditions. 』

償還まで待ってのうのうとするよりは売却した方がFEDのバランスシート縮小が早くなるのはそらまあそうなのですが、実際に行うとなると事前にどういう方法で売るのかとかをきっちりと公表して実施します(どっかの国の国債買入のようなダマテンスキームではないという事ですな^^)ちゅうような話ですし、それに関しても経済と金融環境を見ながらということのようで。

『Participants expressed a range of views on some of the details of a strategy for asset sales.』

で、実際の作戦について。

『Most participants favored deferring asset sales for some time. A majority preferred beginning asset sales some time after the first increase in the Federal Open Market Committee's (FOMC) target for short-term interest rates. Such an approach would postpone any asset sales until the economic recovery was well established and would maintain short-term interest rates as the Committee's key monetary policy tool.』

ということで、まあ実際の利上げを行うまでは資産売却せん方がよかろうというのが大勢の見解ということで、その辺りは妙な逆噴射リスクが低いという点で安心して見てられる話です。

『Other participants favored a strategy in which the Committee would soon announce a general schedule for future asset sales, with a date for the initiation of sales that would not necessarily be linked to the increase in the Committee's interest rate target.』

『A few preferred to begin sales relatively soon. Earlier sales would normalize the size and composition of the balance sheet sooner and would unwind at least part of the unconventional policy stimulus put in place during the crisis before conventional policy firming got under way.』

まあ正直このA fewなメンバーさんの見解には同意致しかねる。

『Some participants saw advantages to varying the FOMC's holdings of longer-term assets system-atically in response to economic and financial developments. However, others thought that a pre-announced pace of sales that was unlikely to vary much would provide a high degree of certainty about sales, helping to limit disruptions in financial markets. 』

まあいきなり売却というよりは徐々に売却するとして、そのスケジュールもかなり慎重にやるべきではないかと、インフレ大スパークという話になればまあ当然別ですけど、主要国がどこもかしこもコアベースではディスインフレという状況なんジャマイカという状況でしたらね。

『The views of participants also differed to some extent regarding the appropriate pace of asset sales. Most preferred that the agency debt and MBS held in the portfolio be sold at a gradual pace that would complete the sales about five years after they began. One possibility would be for the pace to be relatively slow initially but to increase over time, allowing markets to adjust gradually.』

『A couple of participants thought faster sales, conducted over about three years, would be appropriate and felt that such a pace would not put undue strain on financial markets. In their view, a relatively brisk pace of sales would reduce the chance that the elevated size of the Federal Reserve's balance sheet and the associated high level of reserve balances could raise inflation expectations and inflation beyond levels consistent with price stability or could generate excessive growth of credit when the economy and banking system recover more fully. 』

そらまあ最終的にはインフレ動向次第だとは思いますが、現状での大勢意見は資産売却急がないという話になるでしょう。これって実は今みたいな状況が続く方が出口戦略が楽という流れなのは皮肉は皮肉ですわな、と思う。

『Participants saw both advantages and disadvantages to not rolling over Treasury securities as they mature. On the one hand, redeeming Treasury securities would contribute to a more expeditious normalization of the size of the balance sheet and the quantity of reserves. On the other hand, such redemptions could put upward pressure on interest rates and would tend to work against the objective of returning the SOMA to an all-Treasuries composition.』

財務省証券に関しては、まあ償還乗り換えを止めるのが現実的な解決法だと思うのですけれども、そうすると今度は償還乗り換え分の財務省証券が市中消化に回る事になりますので、結局の所資金需給調整上買入を行わないとバランスが悪くなるような気もせんでもない(^^)。まあ売ると言うのは難しいでしょう。

で、結論は無いと言うのが結論。

『No decisions about the Committee's longer-run strategy for asset sales and redemptions were made at this meeting. For the time being, participants agreed that the Desk should continue the interim approach of allowing all maturing agency debt and all prepayments of agency MBS to be redeemed without replacement while rolling over all maturing Treasury securities. Participants agreed to give further consideration to their longer-run strategy at a later date.』

引用大会でどうもすいません。まあFRBの資産売却に関しては当面は懸念する必要は無さそうだと思うのですけどね。










2010/05/20

お題「今日も小ネタ雑談とメモとかクリップで」

材料が欧州から来るので朝のうちに消化できずに困りますぅ。

○ドイツがどうしたこうしたのクリップ

URLが長いよ・・・

http://www.bafin.de/cln_161/nn_720788/SharedDocs/Mitteilungen/EN/2010/pm__100518__cds__leerverkauf__allgemeinverfuegungen__en.html

どうもこの辺りに例の空売り規制に関するリリースが出ているようで、何かこのリリースって昨日の(日本時間の)昼間には出てなかったような気がするんだが、大体からして欧州時間帯の取引終了後にこの話が出て、地球を一周してから下げスタートで始まるとかドイツの当局者何考えているのかサッパリ判らんですな(話が出た時は「結局の所詳細が判らんのでとりあえずポジションを閉じとくか」状態だったんじゃないかと)。

ついでに申し上げますと、空売り禁止がどうのこうのというのはまあ良いとして(良くないが)、銘柄を限定列挙するとか更に意味判らん。こーゆーの列挙したらマーケット感覚的には「この銘柄から逃げて〜」といってるようなもんなんですけど、何を考えているんだか。

でですな、あまりにも斜め上なドイツ当局の対応にも程があるので、もしかしたらドイツは斜め上の対応を取る事によってユーロ安誘導を行って、財政問題を通貨安で解決しつつ、自国の輸出産業はウハウハになるのでドイツ大勝利とか考えているのかと妄想を入れたくなってしまうのですが(^^)、昨晩はユーロ防衛介入的な思惑が出ていたらしいのでそれはさすがに考え過ぎで、単に何かヤケクソになって斜め上の話をおっぱじめたという事なんでしょうかねえ。まあよー判らんですな。

たぶん一般的と思われるマーケット感覚として、何か唐突に妙な施策が出ると、その背景に何かとんでもない事が起きているのではないか!と思うのが仕様だと思われますので、まあ正直ゲルマンさんの国がどうのこうのとかさっぱり判らんのですが、ひじょーに気になる所ではございます。


○一方日本では短国利回りが相変わらず低い訳だが

昨日の3か月TB入札結果。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220519.htm

平均0.1119%の足切り0.1123%となりやがりました。

先週水曜の3か月TBの入札が平均0.1139%で足切り0.1143%だったのですが、それよりも堅調という事でございます。その後の業者間では0.11%の出合いとかだったらしいので、まあ5兆4千億円の打ちこみがあっても堅調堅調。さすがに0.105%だの0.10%だのという事になると、そこまで行くと日銀の預金ファシリティに置いても同じでしょという事になりますので、預金ファシリティと関係ない人(非居住者とか)が「円建て安全資産としてのTB」という「モノ」としてのニーズだけで発行量全部充足という訳にも行かないでしょうと思うので、ここから先の金利低下は逆に行ったら行ったで結構腰を抜かす事態のような気がするざますわよ。

ま、それはそれとして、昨日の入札結果を見ましても、ま〜市場のベースの部分で円の安全資産へのニーズがやや増えているんジャマイカと思わせるような感じっすねえというメモでありました。なお、今日は2か月TBの入札があるのですが、どっからどう見てもニーズが強いという話になるんでしょ。よー知らんが。


○水野前審議委員発言メモ

http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK040989820100519
UPDATE2: ユーロはまだ下をトライする可能性=水野・前日銀審議委員

『日銀の成長基盤強化の取り組みについては「あまり市場で話題になっていない」としたうえで「(決定には)いろいろな政治的背景もあったろう」「非常に危ない橋を渡っているという感じがある」などと述べた。取り組みへの評価については「出てからにしたい」としたものの「必要なものかどうかと考えた場合、絶対なければいけないものかといえば、私自信は、そういうものはない」と述べた。』

・・・・・・いやまあそうだと思うのですが、先日の田谷さんと言いもう皆さんそんなキビシイ事を仰らなくても(^^)。



○FOMC議事要旨(寝起きで読むのは無理ですすいませんすいません)

4月28日の議事要旨が公表されました。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100428.htm

何かロイター見ると(というかモーサテでも言ってたが)こんな話があるそうなのですが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT865880620100519
モーゲージ関連証券はいずれ売却が必要との見方、経済見通しは引き上げ=米FOMC議事録

とりあえず最後の最後の部分だけ見るのだ。最後の所って『Committee Policy Action』からのパラグラフです。

『In the members' discussion of monetary policy for the period ahead, they agreed that no changes to the Committee's federal funds rate target range were warranted at this meeting. On balance, the economic outlook had changed little since the March meeting. Even though the recovery appeared to be continuing and was expected to strengthen gradually over time, most members projected that economic slack would continue to be quite elevated for some time, with inflation remaining below rates that would be consistent in the longer run with the Federal Reserve's dual objectives.』

3月会合から景気認識には大きな変化は無く、景気回復のペースが遅くて経済のスラックが高水準で当面の間推移すると見込まれ、インフレは低い状態が続くと。

『Based on this outlook, members agreed that it would be appropriate to maintain the target range of 0 to 1/4 percent for the federal funds rate. In addition, nearly all members judged that it was appropriate to reiterate the expectation that economic conditions--including low levels of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations--were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

(ホーニッグさん以外の)殆どすべての委員が「for an extended period」の文言継続で見解一致と。

『As at previous meetings, a few members noted that at the current juncture, the risks of an early start to policy tightening exceeded those associated with a later start, because the scope for more accommodative policy was limited by the effective lower bound on the federal funds rate, while the Committee could be flexible in adjusting the magnitude and pace of tightening in response to evolving economic circumstances.』

前回会合の議事要旨にもあった「早すぎる引き締め転換のリスクは、引き締めが遅れる弊害よりも大きい(ので現在の異例の緩和的な金融政策を継続すべきである)」という指摘に関してもご丁寧に言及しています。

『In light of the improved functioning of financial markets, Committee members agreed that it would be appropriate for the statement to be released following the meeting to indicate that the previously announced schedule for closing the Term Asset-Backed Securities Loan Facility was being maintained. 』

金融市場の環境改善に伴い、各種流動性供給プログラムは予定通りに出口へ向かうとな。


とまあこの辺を読んだだけの感想としては、まあ予想の範囲内ではございますが、出口政策に関してはあくまでも「緊急対応の流動性供給プログラム」部分の出口の話だけで、利上げだの引き締めだのという話では全然ございませんですよ〜ってなイメージを受けるのですが、当然ながら(と威張っても仕方ないですが)この前の部分を全然読んでいないので判断は保留。


『Mr. Hoenig dissented because he believed it was no longer advisable to indicate that economic and financial conditions were likely to warrant "exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period."』

ということで今回もホーニッグさんはガイダンスの文言に反対ですが、反対の理由がまたまた変わっていますな。

『Mr. Hoenig was concerned that communicating such an expectation could lead to the buildup of future financial imbalances and increase the risks to longer-run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee's flexibility to begin raising rates modestly in the near term.』

というのは前回と同じなのですが。

『Mr. Hoenig believed that the target for the federal funds rate should be increased toward 1 percent this summer, and that the Committee could then pause to further assess the economic outlook. He believed this approach would leave considerable policy accommodation in place to foster an expected gradual decline in unemployment in the quarters ahead and would reduce the risk of an increase in financial imbalances and inflation pressures in coming years. It would also mitigate the need to push the policy rate to higher levels later in the expansionary phase of the economic cycle. 』

これは新しい説明!!FFを一旦1%に引き上げて金融の不均衡拡大と先行きのインフレ圧力拡大のリスクを抑制するということですか。

ちなみに前回のホーニッグさんの反対理由を引用しておきますね。

『Mr. Hoenig was concerned that communicating such an expectation could lead to the buildup of future financial imbalances and increase the risks to longer-run macroeconomic and financial stability. Accordingly, Mr. Hoenig believed that it would be more appropriate for the Committee to express its anticipation that economic conditions were likely to warrant "a low level of the federal funds rate for some time." Such a change in communication would provide the Committee flexibility to begin raising rates modestly. He further believed that making such an adjustment to the Committee's target for the federal funds rate sooner rather than later would reduce longer-run risks to macroeconomic and financial stability while continuing to provide needed support to the economic recovery. 』(3月FOM議事要旨より)

ほほーという感じですが、予定調和的な考え方をすれば、バーナンキさんやコーンさん、イエレンさん(は今はFOMCメンバーではないですが)などが割と「ハト派」的に見られていると思われるので、鉄砲玉としての意味もあるのかなあとか思っちゃったりもするのですが、まあそれは考え過ぎでしょう(^^)。













2010/05/19

お題「決定会合の直前に市場がアレになるのは仕様のようで」

気のせいかもしれないですけれども、決定会合の直前になると妙に株が下がったり為替が円高になったりしますよね。何か素晴らしく間が悪いタイミングなのでしょうか???

というお題とこの先の中身は全然関係ない(おいおいおい)

○ECBの吸収オペレーション

まず最初に訂正しますと、ECBの吸収オペレーションの概要に関してはECBのウェブサイトに思いっきり掲載されていましたです。とは言いましても、トップページに載せないでオペレーションに関する所に載せているのが何だか不親切感を受けるのですけれども。

こちらのページ(トップページの「金利が幾らです」の下にある『Open market operations』をクリックすると出る画面だよ)の真ん中あたりにあるタブの『Ad-hoc communications』というのをクリックすべし。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html

『17/05/2010 Fine-tuning operation

As decided by the Governing Council on 10 May 2010, the ECB will conduct specific operations in order to re-absorb the liquidity injected through the Securities Markets Programme. In this regard, the ECB will carry out a quick tender on 18 May at 11.30 in order to collect one-week fixed-term deposits with settlement day on 19 May. A variable rate tender with a maximum bid rate of 1.00% will be applied and the ECB intends to absorb an amount of EUR 16.5 billion.』

ということでこのアナウンスに伴い昨日吸収オペが実施されただよ。

『The latter corresponds to the size of the Securities Market Programme, taking into account transactions with settlement at or before Friday 14 May. The benchmark allotment amount in MROs takes into account the liquidity effect of non standard measures, assuming an unchanged size of the Securities Markets Programme and full sterilisation of this amount via the above mentioned liquidity-absorbing operation. Fixed term deposits held with the Eurosystem are eligible as collateral for the Eurosystem´s credit operations. The ECB intends to carry out another liquidity-absorbing operation next week.』

1%(=通常の1週間オペおよびまたフルアロットメント方式になった3か月オペの資金供給金利)を上限として吸収を行うのですが、その吸収した預金は資金供給オペの担保として使えるという中々良く判らんシステムではございます。まあ通常のオペに使うと逆鞘になりそうな気がするからもし使うのだったらドルオペの担保にでも使うのかいな??何かユーロシステムのオペレーション関連はあたくしの不勉強のせいで良く判らんので誠に申し訳ないのですが。

ちなみに、この下の方にも『Fine-tuning operation』というのが載っていますが、その説明を見ていると、Fine-tuning operationというのは準備預金の積み最終日に大きな積み上が残りそうな資金需給になった場合に、調節の為の吸収オペレーションを実施する(実施しないとオーバーナイト金利が預金ファシリティ金利(現在は0.25%)まで低下してしまうから)というオペレーションのようで、今回の吸収オペも名前が同じという所からしますと政策的な位置づけは同じようなもの、ということになるんすかね。

で、そのオペの結果は、さっきの画面の『Tender operations 』タブをクリックすると出てきます。オペ番号20100037番のOTって奴ですな。

オペ実施明細
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20100037_ann.en.html

落札結果
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20100037_all.en.html

7日間のオペレーションで、平均落札利回りは0.28%で足切り利回りは0.29%だそうですな。高いのか低いのかは良く判らんが、まるっきり同じ期間のMROが実施されているのですよね。何がどうなっているのか教えてエライ人!!!!

#と最後はただの自分のアホぶりを晒しているのが悲しい所です



○日銀のドル供給オペレーション

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100518.htm

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100518.htm

2億1000万ドルですかそうですか。ということは200億円くらいのオペという事になるのかと存じますので、まあ坊主じゃなかったけど実質的には坊主みたいなもんという感じ。これはこれで予想通りの展開(東京市場でのドルファンディングに大きな支障をきたしているという人はいないでしょうと思われるので)ではございました。

まあこの結果を受けて、次回のオペはのんびりと実施するとかいう話になるのでしょうなあとは思いますが、こーゆー物はとりあえず置いておく事に意味がある(ただし、コーンFRB副議長が指摘する(あとで引用します)ように、それを常設化するのは、「最終的にオペ頼り」という流動性リスク管理を生みだすリスクもあるので、必ずしも常設化が正しいとは言い難いというのもその通り)ので、とりあえずドルスワップ協定の延長有無があるかどうかにもよりますけど、協定が生きている内は実施をいつでも可能という状態にしておくという感じっすかね。



○そういえば決定会合ですが

先週金曜に産経が報道してましたな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100514-00000510-san-bus_all
金利0.1%前後、期間3カ月以上 日銀の企業金融支援

まあこちらの記事だと要するに企業金融支援オペを焼き直しみたいな話なのですけれども、あたくし的にはどちらかと言えばそういう良く判らんオペよりも、普通に政策金融公庫とか政策投資銀行が「成長分野への支援制度融資」みたいなのを実施するとか、金融機関に代理貸し付けさせて、それに対してバックファイナンスを日銀が付ければ良いんじゃねえのと思うのですが・・・・・

この記事だと短期の支援オペになっちゃいますよね。まあやるのは良いけど長期には引っ張りたくないって事なのでしょうかなあとは思うのですけれども、例えば6か月なり1年なりの時限措置で優遇金利でファンディングできるからって言って設備資金みたいな長期貸しに対するインセンティブになるのかねというのは普通に疑問符が100個くらい頭の中を飛び回るんですけど。

まー雰囲気的に今回の会合で決まるとは思えないので気にしないことにする。



○目を付ける所は同じですなという話(一発ネタ)

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp10j11.htm
金融政策が投資家行動に及ぼす影響:社債の発行条件形成における検証

http://www.bis.org/publ/work298.htm
Does monetary policy affect bank risk-taking?

まあ時期的に見て丁度同じ時期に別の人達が同じネタでああでもないこうでもないと研究してたんですなあと思うと中々楽しいですな(^^)。

まあ要するに低金利だと社債などのような市場でのクレジットスプレッドが縮小しますよって話ですが、そらまあベース金利が3%の時に社債の対国債スプレッドが20bpくらいあっても誤差の範囲内ですけれども、ベース金利が0.1%になったら20bpあったら金利3倍になっちゃいますからね、単純に言ってしまえば(^^)。

あとまあ長期停滞モードになると期待収益率も下がって、「低リスク低リターン」が嗜好されるようになるんジャマイカと思うのでして、そーゆー意味で低金利政策の長期化期待が期待インフレ率の上昇とか期待成長率の上昇を伴わない場合はスプレッド縮小(ただしこの場合全体で見たスプレッドは縮小するかもしれないけれども、リスク回避方向に動くような気もするので弱い部分に対してどうなのかという気がする)するんじゃねえの、などと上記の2本のペーパーの全文をちゃんと読んだ訳ではないが(おいおい)何となく思うのでした。



○コーン副議長講演ネタを更に引っ張って

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

『It is certainly too soon to fully assess all the lessons learned concerning the conduct of monetary policy during the crisis, but a few observations seem worth noting even at this early stage.』

最後の部分『Lesson from Conducting Monetary Policy in a Crisis』からですが、引用すると長くなるので勝手にまとめてみたでござるの巻。本文15ページからになりますのでご興味のある方は読むべし。6点あるのですが・・・・

(1)「時間軸政策(のようなもの)の効果はある」という話を最初にしています。時間軸というか金融政策の将来パスに対する期待を作る事によってより長目の金利形成に影響を与えるという話で、その中でカナダ中銀のケースも説明しています。

(2)「確実に安定化されたインフレ期待は常に重要である」という話をしています。最初何のこっちゃと思ったのですが、そこから延々と1ページ分を使って説明しているのは「金融ショックのような事態になった場合にゼロ金利制約に引っ掛からないようにする為に、通常時のインフレ目標を引き上げる方法が考えられる」というIMFのブランシャールさんのペーパーなどで言われている論点に対して全力でダメだしをするでござるの巻でした(^^)。

ここの部分が一番長いので、相当この件に関してはコーン副議長が力入れているんでしょうなと思いますが、この論点については先日ご紹介したコーン副議長の別の場所での講演での説明と同じ(当たり前だが)です。

(3)「金融政策のゼロ金利制約に達した時に実施する大規模の資産買入は金融環境(financial conditions)を緩和する」という話をしています。ただしここでの金融環境の話は社債やモーゲージ債などのような信用スプレッド縮小の話をしていまして、「金利の低下」とは言ってますがトレジャリーの買入による金利の低下(って低下してないのだが)に関しては華麗にスルーしているのがチャーミング。

(4)「中央銀行は自らのバランスシート拡大が潜在的に持つインフレ期待の引き上げ効果に対して注意深くあるべきである」という話をしています。つまり、現状のような状態では大丈夫だけれども、経済が通常の状態に戻った場合にはインフレ期待に火を付ける可能性があるちゅうことですので、まあこの辺りは出口戦略におけるバランスシート縮小あるいは流動性吸収手段活用の重要性という所でしょうな。

(5)「中央銀行は必要な時が来た時に、異例の政策を巻き戻す政策ツールを持つことが必要である」という話で、これは現在のFRBの出口政策ツールに関する説明も兼ねています。まあ4番目の論点と同じかと。

(6)で最後ですが、これまた先日ご紹介した講演でも論点になっていましたが、「金融の不均衡を抑制するのに金融政策を割り当てるべきか」という論点に対して、コーン副議長は「プルーデンス政策を割り当てるべき」という、日銀では白川総裁が良く指摘するいわゆる「マクロプルーデンス」の観点が重要という話をしています。ただ、プルーデンス一本やりというのは理想的だが難しいですねとか、プルーデンスで追いつかない不均衡には金融政策適用も必要、というようにまあ柔軟というかケースバイケースな面もしてきしています。

ということでそのパラグラフだけ引用しますね。本文18ページ。

『Finally, let me close with some comments on a “lesson learned” that some observers have emphasized--that long periods of low interest rates inevitably lead to financial imbalances, and that the Federal Reserve should adjust its policy setting to avoid the buildup of such imbalances.』

『As I have indicated at other times, I don’t think we know enough at this point to answer with any confidence the question of whether monetary policy should include financial stability along with price stability and high employment in its objectives. Given the bluntness of monetary policy as a tool for addressing developments that could lead to financial instability, given the side effects of using policy for this purpose (including the likely increase in variability of inflation and economic activity over the medium term), and given the need for timely policy action to realize greater benefits than costs in leaning against potential speculative excesses, my preference at this time is to use prudential regulation and supervision to strengthen the financial system and lean against developing financial imbalances.』

『I don’t minimize the difficulties of executing effective macroprudential supervision, nor do I rule out using interest rate policy in circumstances in which dangerous imbalances are building and prudential steps seem to be delayed or ineffective; but I do think regulation can be better targeted to the developing problem and the balance of costs and benefits from using these types of instruments are far more likely to be favorable than from using monetary policy to achieve financial stability.』

ということで、一応あたくしの読んだので合ってますよね(^^)。











2010/05/18

お題「各種雑感/またまたコーン副議長講演ネタ」

昨日になって口蹄疫の対策本部設置とか遅いにも程があるだろう鳩山内閣。

○各種雑感

・その前に昨日の訂正

サルコジがユーロ離脱云々と言うElPaisの記事ですが、読者様からこれですよとご教授賜りました。ど〜もです。で、これなら(スペイン語は「ビール一杯ちょうだいな」程度の旅行用会話しか出来ませんが^^)何となく字面でそういう話なのは把握した(^^)。
http://www.elpais.com/articulo/espana/Zapatero/Sarkozy/amenazo/salirse/euro/elpepuesp/20100514elpepinac_2/Tes


・ECBが吸収オペをアナウンス

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15351220100517
ECB不胎化計画、ターム物預金で165億ユーロ吸収へ

『ECBは、ロイターの情報ページで明らかにした文書で「ECBは5月10日の理事会での決定に従い、証券市場プログラムを通して供給した流動性を吸収するために特定のオペを実施する」とした。』

は良いのだが、その肝心のアナウンスはECBのホームページだと見当たらないという情報開示姿勢として如何なものかというのが欧州クオリティなのは今に始まった事では無いのですが。

で、目の前のテレビ番組では「国債買入の不胎化オペレーションを行うからユーロが上昇」というニュースになっていますが、そもそもユーロ安はユーロシステムへの不安によって発生しているのであって、別に流動性がどうしたとか利下げがどうしたという話じゃなく、国債買入を不胎化したらユーロが買われるとか嘘でしょ(そもそも国債買入のアナウンスでギリシャ危機後退期待でユーロは買われただろうと小一時間問い詰めたいのだが)と思うのだが、ブルームバーグはマジでそういう後講釈してるのか、幾ら後付けでも従来の流れと全然違うんじゃねえのかと思うのだが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aqFonw6DMgAA

なお、ロイターは全然別の理由を説明してます(^^)
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnJT865446220100517

まあこの措置は「うちはジョンブル野郎とは違うんですよ、フフン」という以外の意味があるのかは謎でございます。



・そ、それはゆうてはならんことじゃあああああ

元審議委員の田谷さんのロイターインタビューから一発ネタ。

http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-15341520100517
財政再建は消費税の2─4倍引き上げ必要=田谷元日銀審議委員

まあ財政再建がどうしたこうしたという話は良いのですが。

『日銀が検討を表明した「成長基盤強化支援策」は、企業の資金需要が伸び悩むなか金融機関の貸し出しを強く促す施策が打ち出される公算は大きくないとして、信用創造面で「あまりインパクトはないだろう」との見方を示した。ただ、政府から量的緩和政策を強いられるよりは「まし(な施策)だ」として、日銀の立場に理解を示した。』

・・・・・いやあのそれはたぶんオトナとしてはゆうてはならんことではないかと思うのですけれども(^^)。


・短国が相変わらず強いけれども短い所限定な件について

昨日の1年TB入札は概ね0.13%をちょっと切る水準で落着。まあこちらの方は概ね0.13%辺りで安定して推移しているのですけれども、その一方で3か月以内の短期国債は強いわ強いわということで、多分BBさんの引けは3か月カレントで0.115%とかになっているような気がするのですが、実力はどう見ても0.11%という水準(つーか絶対金利の水準がここまで低い状況なのに引けと実勢が違うのは勘弁してくれと思うのだが、その悪態はまた後日^^)ですし、より短い所もまあそんな感じなのかもうちょっと強いのかという感じです。

まあ何ですな、短国のうち期間が3か月以内程度(たぶんニーズが伸びて半年程度かなあ)という状況っていうのは、「運用商品」というよりも「キャッシュの置き場所としての安全資産」というような意味合いの買いが強い時のお話(これが利下げ期待とかだと更に長い期間まで低下しやすくなりますよね)でございまして、まあそれこそユーロ懸念でユーロから金引っこ抜いてきて他通貨に振るって事になった場合、そらまあ最近の地合いだとカナダだのオージーだのにも人気が出るでしょうけれども、それなりにロットを捌くとなるとどうしても円だのドルだのという所を使わない訳にはいかないでしょという流れなんですかねえ、と妄想。

今週は明日3か月TB、明後日2か月TBの入札がありまして、この水準がどの程度まで行くかという話ですが、短国の短い所が強くなった影響で運用商品的な面も考えている投資家が足元の強さで弾き出されている面があり、その金がGCに流れていたり、一部ではCPに流れていたりという雰囲気は感じる(感じるだけで本当の事は知らんので念の為)のですが、そうは言っても何週間も買わないという選択肢は基本的に無い(何せ長期債投資と違って短期はターンオーバーが物凄い勢いでやってくるので待つという時間もそれほど取れない)筈ですので、そのあたりの人達の動きがどうなるのか次第ですかね、よー知らんが。



んでもってコーン副議長の講演の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

○時間軸の話とか資産買入の話とかに関して

10ページ目が『Monetary Policy and the Zero Bound』というコーナーですが、まあそこの話は前回ご紹介したコーン副議長の講演と同じような話なので基本的にスルーですが少々。

まず時間軸(のようなもの)に関する話をしてまして。

『After short-term rates reached the effective zero bound in December 2008, the Federal Reserve also acted to shape interest rate and inflation expectations through various communications. At the March 2009 meeting, the Federal Open Market Committee (FOMC) indicated that it viewed economic conditions as likely to warrant “exceptionally low” levels of the federal funds rate for an “extended period.” This language was intended to provide more guidance than usual about the likely path of interest rates and to help financial markets form more accurate expectations about policy in a highly uncertain economic and financial environment.』

まあこれはコミットメントがついている訳ではないので、日銀がかつて実施したような強力時間軸とは違う(ちなみにカナダ中銀がより長期に渡った低金利維持の説明をした件に関してコーンさんも説明しています)のですが、まあ先行きの金融政策のパスに関する説明をして足元の金利を下げられなくなった所での新たな金利への働きかけ手段と。

本文11ページ目から。

『To provide the public with more context for understanding monetary policy decisions, Board members and Reserve Bank presidents agreed in late 2007 to prepare more frequent forecasts covering longer time spans and explain those forecasts. In January 2009, the policymakers also added information about their views of the long-run levels to which economic growth, inflation, and the unemployment rate were likely to converge over time. The additional clarity about the long-run level for inflation, in particular, likely helped keep inflation expectations anchored during the crisis.』

ということで、より長期間の経済見通しに関する公表を行うことによって、金融政策の将来パスに関する期待を醸成し、一般ピープルのインフレ期待を安定化させましたとな。ふーむ。

んでまあそれだけでは足りないので資産買入をしたという話をしているのですが、その目的に関しては「金利の引き下げ」と言っているのですな。同じく11ページ目。

『Indeed, once the Federal Reserve reduced the federal funds rate to zero, no further conventional policy easing was possible. The Federal Reserve needed to use alternative methods to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, the Federal Reserve initiated large-scale purchases of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities (MBS), and agency debt.』

でもそれで下がったのはスプレッドであって、国債利回りは上昇したんですよね。


○時間軸とか資産買入の効果に関して

でまあその説明に関しては相変わらず資産買入の説明がロジックが怪しげですなあというのはあるのですが、その効果に関するコーン副議長の説明が中々。

まずは短期金利引き下げと時間軸に関して本文12ページより。

『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting short-term policy rates and influencing expectations about future policy rates, and the underlying theory and practice behind those actions are well understood.』

さよざますな。

『The reduction of the policy interest rate to close to zero led to a sharp decline in the cost of funds in money markets--especially when combined with the creation of emergency liquidity facilities and the establishment of liquidity swaps with foreign central banks that greatly narrowed spreads in short-term funding markets.』

金利が下がるとスプレッド縮小という話に関しては先般日銀から実証研究のペーパーが出ていましたが、BISからもこの前そんな実証研究のペーパーが出てまして、まあ信用スプレッドがどうのこうのというのはちょうどネタとしてタイムリーなんでしょうな。余談ですけど。

『Event studies at the time of the release of the March 2009 FOMC statement (when the “extended period” language was first introduced) indicate that the expected path of policy rates moved down substantially. Market participants reportedly interpreted the characterization of the federal funds rate as likely to remain low for “an extended period” as stronger than the “for some time” language included in the previous statement.』

なるほど。で、一方で資産買入に関する効果に関してはまあ当たり前ですが、従来そんなに例がある訳ではないので良く知られていないと。

『By contrast, the economic effects of purchasing large volumes of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base in the banking system, are much less well understood.』

で、買入に関するFRBのロジックに関してはこの前ご紹介した講演と重なりますが、大事な所なので今回も引用(^^)。

『The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly, and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, purchasing longer-term assets (and thus taking interest rate risk from the market) pushes up the prices of the securities, thereby lowering their yields.』

で、コーン副議長は「FRBの考えはクリアです」と言っているのですが、ここでの説明は「市場機能が働いて、マーケットの裁定機能が働けば、短期金利を引き下げた事による波及効果が経済全体に影響する」というロジックだと思うのですよね。「だから買入の時に『金利を下げる』というような言い方をするんだ」と言ってしまえば、そらまあそうなのですけれども、一方でマーケットの機能不全が伝統的金融政策(=短期金利の引き下げ)の政策効果を阻害するから資産買入を行うというのであれば、当時市場機能に不全状態というようなものは全く無かった国債市場における買入を実施したのは何だったんでしょうか、という話になりますわな。

#その点で言えば欧州中銀の国債買入は一部市場機能不全の国債市場があったので「量的緩和じゃないですよフフン」というのはまあロジックは通っているにはいる

で、その疑問に対する説明は残念な事に華麗にスルーされているのはFRBの中のエライ人達の仕様でありまして、コーン副議長の今回の講演でも説明は無いのでございました。


で、買入そのものが市場に与える効果として、買入のフローが重要なのか、買入を行った累積としてのストックが重要なのかという考察に関しての話が続くのですが、こちらはこの前ご紹介したコーン副議長講演と同じ話なので結論だけ、本文13ページ。

『My presumption has been that the effect comes mainly from the total amount we purchase relative to the total stock of debt outstanding.』

その後は「買入によって生じた莫大な超過準備の効果」という話になりますが、こちらもまた先般の講演と同じ話をしていまして、リザーブの拡大はあくまでも買入の副産物であって超過リザーブ自体が単独で効果をもたらす訳ではないという話をして、まあこれもこの前引用した事と同じですが、また引用しておきましょ(^^)。

『This view, however, is not consistent with the simple models in many textbooks or the monetarist tradition in monetary policy, which emphasizes a line of causation from reserves to the money supply to economic activity and inflation.』

『According to these theories, extra reserves should induce banks to diversify into additional lending and purchases of securities, reducing the cost of borrowing for households and businesses, and so should spark an increase in the money supply and spending. To date, this channel does not seem to have been effective: Interest rates on bank loans relative to the usual benchmarks remain elevated, the quantity of bank loans is still falling, and money supply growth has been subdued. Banks’ behavior appears more consistent with the standard Keynesian model of the liquidity trap, in which demand for reserves becomes perfectly elastic when short-term interest rates approach zero. 』

まあモロにこの前ご紹介したのと同じ話ですけどにゃ(^^)。

あとまとめ部分があるのですが、時間と量の関係で後回しだす(汗)。












2010/05/17

お題「またコーン副議長講演をネタに(^^;」

その前にちょっとだけ市場メモ。

○市場雑感メモ

・何故か積み最終日のコールが0.10%に乗せた件

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp100514.htm

何と金曜日の無担保コール翌日物の加重平均金利が0.10%台になったでござるの巻。何かそんなに日中高い出合いあったっけと?????感が強いのですが、まあ何かコールを取りに行った人がいるのでしょうかねえ、よー知らんが。

まあ先週は月曜から木曜まで0.08%台が続いていたので、金曜もその流れで0.08%とかだと「実質的な低め誘導状態」とか言われそうなところでしたから下がらなくて良かったですねえ(棒読み)という所でございますな。


・一方で短期国債は相変わらず堅調のようで

ブルームバーグの記事から。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920015&sid=a9N6jlwyAzRk
TB3カ月物利回り低下、国内外の需要旺盛−安全資産に資金シフト

何か水曜に入札があった短国が早速0.11%とかお強いようでして、しかもロット物の売買が強そうな感じですから、まーそれなりのロットでのニーズがあるちゅうことでしょうな。うむうむ。


・で、ユーロですが

これまた手抜きでブルームバーグの記事から。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=abVdx7FbORao
NY外為(14日):ユーロ、リーマン破たん以来の安値(Update1)

何か益々盛り上がっているようですが、国債買入砲を打ちこんでおいて今更ああでもないこうでもないとか言ってる時点で金融危機に対処する動きじゃないという気がするんだが。で、ブルームバーグの記事にあるエルパイスの記事だが多分これのような気がする(けどスペイン語はよー知らんので良く判らん)。
http://www.elpais.com/articulo/primer/plano/Europa/reinventa/noche/elpepueco/20100516elpneglse_2/Tes




ということでコーン副議長の講演ですが。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

PDF版で本文が19ページになる結構長いモノですが、先般ご紹介した講演と内容的には共通の部分もあるのでその辺りに関しては引用やら拙訳やらはスルーの方向で(^^)。

○FRBは他の中銀以上に新しい施策を実施したのですがその背景は・・・・

冒頭の部分で「金融危機の規模とその悪影響が大きく、FRBは色々とチャレンジングな事をしました」という話をしているのですが、その中(PDF版の本文1ページ、PDFファイルでは2ページ目になります、以下同様)にこんな話が。

『Many central banks made substantial changes to traditional policy tools as the crisis unfolded. But the epicenter of the financial shock was in U.S. mortgage markets, with severe effects on many of our financial institutions, and our financial markets had perhaps evolved more than many others. As a consequence, no central bank innovated more dramatically than the Federal Reserve.』

FRBが最もドラマティックに新しい施策をしたということですがその次に・・・

『We traditionally have provided backup liquidity to sound depository institutions. But in the crisis, to support financial markets, we had to provide liquidity to nonbank financial institutions as well. Just as we were forced to adapt and innovate in meeting our liquidity provision responsibilities, we also needed to adapt and innovate in the conduct of monetary policy.』

ということで、従来FRBは通常の資金供給やらディスカウントウィンドウのような流動性供給を預金金融機関に対して行っていたというのがミソでございまして、その後の流動性供給プログラムの説明をしている本文3ページにこのような説明がございましたです、はい。

『At the Federal Reserve, we had to adapt somewhat more than most, partly because the scope of our activities prior to the crisis was fairly narrow--particularly relative to the expanding scope of intermediation outside the banking sector--and partly because the effect of the crisis was heaviest on dollar funding markets.』

ということで、FRBは元々流動性供給の対象が狭かったので、それに対して色々と供給措置を取らなければいけなかったという話をしている訳でありまして、その点で言えば日本の「共通担保資金供給」というのは最強ツールというか超便利ツールというか、まあそういう物だと思うのですが、地味なだけになかなか一般的(というか短期金融市場以外の市場関係者も含めて)に評価されませんですなあとか思うのでありました(^^;


○これは新しい理由づけ

またまた本文1ページに戻りまして、ここを見て「これは新しい」と思った部分を引用するのだ。

『Very early in the crisis, it became evident that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient to counter the adverse shock to the U.S. economy and financial system. We needed to go further--much further, in fact--to ease financial conditions and thus encourage spending and support employment.』

短期金利を下げただけでは不十分なので色々な非伝統的政策を実施しましたという話なのですが、その次が「ほほー」という感じで。

『We took steps to reinforce public understanding of our inflation objective to prevent the development of deflationary expectations; we provided guidance on the possible future course of our policy interest rate; and we purchased large amounts of longer-term securities, and in the process created unprecedented volumes of bank reserves.』

一般の皆様のデフレ期待の拡大を防ぐために私たちの物価に対する目標に対する理解を深めてもらうステップを取ったというのは初見の説明のような気がする。

ただ、この後での話ではインフレ期待がどうのこうのという話はあまり無かったりするのでして、まあ定量的にどうのこうのというよりは「一般の不安心理を鎮静化させる」という意味なのではないかなあと勝手に想像するのでありました。


で、前振り部分の最後(本文2ページ目)はこのように締めています。

『My discussion today will focus on innovations in both our role as liquidity provider and in our monetary policy tools: their motivation, their effectiveness, and their lessons for the future.』

ワクワクテカテカして読むべしという所ですが、どのような背景で実施したのかという話に関しては先日ご紹介したコーン副議長の講演をもう少し丁寧に説明した感じになっていますので、基本的には(面倒なので)その辺りはスルーしますし、まあ市場の中の人的には「はあはあそうですか」というような説明のような気がします。金融政策ネタが面白いという変人的には論点整理として詳しいので超お勧め。


○金融危機の教訓のうち動的な面は中々認識されないんですねという雑感

『The Federal Reserve’s Liquidity Tools』の部分ですけれども、先日ご紹介した講演と同じく、資産買入以外の各種流動性供与に関しての背景とかの説明でして、まあいつもの話が多いので基本的にスルーなのですが、この辺を読んでいてあたくしが勝手に思った件がありましてですね。

本文4ページから。

『Why couldn't the Federal Reserve maintain its routine lending practices and rely on lending to commercial banks, which in turn lend to nonbank firms? The reason is that financial markets have evolved substantially in recent decades--and, in retrospect, by more than we had recognized prior to the crisis. The task of intermediating between investors and borrowers has shifted over time from banks--which take deposits and make loans--to securities markets--where borrowers and savers meet more directly, albeit with the assistance of investment banks that help borrowers issue securities and then make markets in those securities. An important aspect of the shift has been the growth of securitization, in which loans that might in the past have remained on the books of banks are instead converted into securities and sold to investors in global capital markets.』

FRBは危機が来る前には(さっきも引用したように)預金金融機関限定の流動性供与ツールしかなかったが、証券化市場の発展によって金融市場の仲介機能が証券市場にシフトしていて、金融仲介機能の維持という意味では預金金融機関に限定していたFRBの流動性供与ツールが不十分だったというよいうな話ですわな。

でですな、あたくしこの辺読んでてふと思ったんですが、リーマンをこかした時も現在のユーロ危機状態の時も思うのですけど、日本の1997年における金融危機の教訓のうち、マーケット(インターバンクと債券取引市場)の流動性消滅が如何に大きな問題かという点については、実際に食らってみないと判らないという面がやっぱりあるのかなあと思うのですよ。つまり、マクロ的な不良債権問題の影響とか、資産デフレの問題とかって随分と研究されている(計量データだってありますし)から「金融政策は危機において一気に緩和」みたいな教訓は広く認識されていると思うのですが、実際問題として97年の金融危機で債券市場で無担保コール取引のデフォルトから一気に「フライトトゥーリクイディティ(あるいはキャッシュ)」みたいな動きが起きて資金繰りが詰まる連鎖が起きたり、流動性の低い債券が大変な事になったり、カウンターパーティーリスク意識が超高まったりとかってのが起きた(時には何か債券ディーラーやってた気がする年寄りですが何か?)のが非常に大きな問題だったと思うのですけど、今般の欧米の動きをみていますと、どうもそっちの方への考察が不十分だったのではないかと思うんですな。

いやまあ本論とは違いますけれども、何となくそんな事を思った次第であります。


○流動性供給と資本の供給は別の主体が実施すべきと

本文6ページから。

『Importantly, lending against good collateral to solvent institutions supplies liquidity, not capital, to the financial system. To be sure, limiting a panic mitigates the erosion of asset prices and hence capital, but central banks are not the appropriate authorities to supply capital directly; if government capital is necessary to promote financial stability, then that is a fiscal function.』

流動性供給は中央銀行マターで資本供給は政府マターということですが、同じことを白川総裁あたりが言うと思いっきり「庭先論」扱いされて批判されるのがカワイソス。

『This division of responsibilities presented challenges in the crisis. The securitization markets were impaired by both a lack of liquid funding and by concerns about the value of the underlying loans, and broad-based concerns about the integrity of the securitization process. To restart these markets, the Federal Reserve worked with the Treasury in establishing the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF): The Federal Reserve supplied the liquid funding, while the Treasury assumed the credit risk. The issue of the appropriate role of the central bank and fiscal authority was present in other contexts as well.』

ということで、FRBの流動性供給の施策に関しては(まあご案内の通りでしょうが)TALFを始めとしたプログラム共通で、「流動性はFRB、クレジットリスクは連邦財務省」という分担をしているという事ですが・・・・

『We were well aware that we were possibly assuming a risk of loss when we lent to stabilize the systemically important firms of Bear Stearns and American International Group (AIG). Unfortunately, at the time, alternative mechanisms were not available and we lent with the explicit support of the Secretary of the Treasury, including a letter from him acknowledging the risks.』

ベアスターンズとAIGに対する融資に関しては毀損のリスクがありますが、これは当時の状況で止むをえなかったという話で、今後の状況を注視しますという話ですな。まあこの辺りコーン副議長は中央銀行としての矩を結構意識していると思います。


○流動性供給プログラムの将来に関して

本文8ページ目から『Lessons for Handling Future Liquidity Disruptions』という話になるのですが、ここに関しては先日ご紹介した講演と概ね同じ話をしています。

で、勝手にあたくしが解釈しますと(本文は長くなるので引用しない)、

(1)米国の金融システムは証券関連市場に大きく依存する部分があり、FRBは銀行だけではなく、より幅広い主体に向けた「健全な対象に向けた優良担保を確保した流動性供与手段」を確保すべきである

(2)広い範囲の市場参加主体を対象にした流動性供与プログラムの常設化は、参加者に対して「流動性プログラムをあてにした安易なリスク管理」を促すリスクがあるので、対象者の流動性管理やリスク管理体制の監視が必要である

(3)金融システム安定などの理由で参加者を救済する判断は中央銀行ではなく政府が行うべきである

(4)異例の政策を行う場合には特に一般公衆向けの説明が重要である

(5)流動性供給プログラムの設計においてはいわゆる「stigma問題」への配慮を行う事が重要である

という所です。で、金融政策やら資産買入やらの話と言うメインイベントに来る前に例によって例の如く時間切れになってしまったのはあたくしの仕様です。どうもすいませんすいません。











2010/05/14

お題「相場が海外次第にも程があるので無担保コールに関する雑談で」

何か昨日は東京の夕方6時ごろにいきなりユーロが下がったのでナンジャラホイとか思っていたのですがorz

○無担保コールに関して雑談

今回の積み期間(4月16日から今日(正確には明日)まで)の無担保コール翌日物金利ちゃんでございますが、預金ファシリティレートであります所の0.10%を恒常的に割った状態で推移しているのはまあここもとの仕様なのですが、四捨五入して0.09%という状態が延々と続いていまして、加重平均金利が0.095%以上になったのが4月16日(0.095%)と20日(0.096%)と30日(0.096%)の3営業日だけ(ただし16日は週末で30日は5連休前なので日数に引き直すとちょっと多目にはなる)という状況。おまけに今週に入ってからはギリシャ問題の火消しの為に即日オペをどどーんと実施して準備預金の進捗をおさえなかったことでもありますので、加重平均金利は0.08%台に低下して推移という誠にお洒落な展開になっております。

ということで、まあ普通に0.09%が定着というのがここもとの無担保コールでございまして、預金ファシリティの金利を下回るという楽しい状態になっているのですが、今回の積み期間に関してはちょうど都合良く「ギリシャ問題に対応して大量供給したからねえ」という言い訳もできるのですが(実際はその前から0.09%定着だったのですけどね^^)、こ〜延々と0.09%となってしまうと参加者の目線が変わってしまうのではないかと思う次第でして、次の積み期間も貫禄の0.09%とかになるんジャマイカと思料。


この背景ってどうなのというと、まあ人様の懐具合は良く存じませんので勝手な想像モードになりますけれども、やはり新型オペの額が大きくなっているのが効いているんじゃないかなあと思います。即ち、以前から粘着質状態になって申し上げておりますように、3か月オペの額が増えてきた分だけ足元のオペの打ち余地が減り、「ターム物金利を抑制する」という政策方針がある(そもそも新型オペの導入はそういうお題目)関係上GCレートの上昇を放置する訳にも行かない(GCレートがホイホイ上昇すると債券ディーラーが低い金利の短期国債を保有するのがしんどくなるので、結果として短期国債のレートが上昇しやすくなる)ですから、供給の方はきっちりやる事になり、コールの方が金余ると。

まあ何ですな、大昔(90年代)のようにターム物金利と言えばCD3か月とかターム物のコール取引みたいに、銀行のファンディング中心の無担保市場だった時代であれば、無担保コール市場とターム物市場が密接にリンクしていた訳ですが、現在は短期国債(政府短期証券)の市中公募もそうですが、そもそもの短期国債の発行量がアホのように増えて、ターム物取引での運用として3か月TBの方が安心安全な上に一発でロットも捌けるという超便利な商品になってしまいましたので、ターム物金利と言えば3か月短期国債金利ですな、という事になった訳ですよ(ターム物はTIBORではないかとか銀行さんから言われそうですが異論は認めようか審議中^^)。電子化になってより使い勝手が良くなったCPのレートも投資家の目線って短国対比でどうのこうのというのが普通だと思いますしね。

つまりですな、金融政策の波及効果とゆー意味では当然ながらターム物の金利が重要になるのですけど、そのターム物金利が銀行中心の無担保取引市場の金利じゃなくて、債券市場の金利の方がベンチマーク状態になっている訳でして、そ〜なりますと無担保コール市場でそんなに資金を取る訳にもいかない債券ディーラー(証券会社は商業銀行と違って預金を受け入れてないから無担保市場での資金取引のクレジットラインが銀行よりも少ない)の資金繰りレートであるGCレポ市場のレートがポイントになるという事で、銀行のファンディング主体の無担保コール市場の金利と必ずしも1対1で対応する訳ではないというのがムツカシヤという事でござんすな。

まあコール市場とレポ市場で市場間裁定するから対応はするのですけれども、かならずしもその裁定が効く訳ではないですし、資金需給のブレも国債発行要因でのブレと財政資金の受け払い要因でのブレでは証券と銀行のどっちに影響するのかとかも違ってくる訳でして、まあほったらかしておくと短期金融市場全体での資金需給は余剰状態になっているけれども、個別業態(あるいは個別参加者)ごとの資金偏在があってGC市場では資金がタイトというような事は起きえる訳ですな。

で、そういう時は本来はツイストオペを実施して、資金余剰の参加者から資金を吸い上げる一方で資金不足の参加者には資金を供給するというようなオペレーションを実施すれば、同じ資金需給の状態でも資金偏在を均す事によってコール市場とレポ市場間の価格形成の関連性を強めることができるのですけれども、うっかり吸収オペを実施するとまたぞろ「金融引き締め」とか言うアホウが多い(いやさすがに国内の金利市場系の人間でそう言うのはリアルのアホウだと思いますが、為替市場様などや経済新聞様などがギャーギャー言うのは間違いないに1万ドラクマ)ので、吸収オペがやり難いというのが困りものという所だと思われます。

特に、ここもと期間の長いオペ(新型オペ)の資金供給に対するシェアが上がって来ている事もありまして、足元の短い資金出入りに対応するオペが減ってしまい、GC市場の金利を跳ねさせないようにする為にはそれなりに短いオペも実施して当預残を多目にしておかないと(ツイストを実施できないので)、となりますと、無担保コール翌日物金利とGCレポ金利のスプレッドが微妙に開いてくるんでしょうな。で、ターム物金利を上げる訳にも行かないので無担保コールが下がっちゃうと。


とまあそうなってきますと、無担保コール金利を精密誘導していた過去の流れと微妙に話が違ってきますなあという事になる訳でして、うっかり新型オペをこれ以上拡大ということになりますと、更に無担保コール金利とGCレポ金利のスプレッドが開きやすくなり、結果としてコールのディレクティブ0.10%が維持しにくくなりますなあと思うのですよ。いやまあもちろん金融政策の波及効果を考えたら、ターム物金利を跳ねさせる訳にいかないですから、その結果としてコールだけ見ると低め誘導ちっくになってくるという事なのですが、従来の精密誘導状態からすると黙ってそういう流れになるのはちと微妙な気がするんですけどどうでしょう。

米国みたいにFF金利アンコントローラブル上等モードでやっている国ですと(ついにヤケクソで0%〜0.25%というような誘導目標になってしまいましたが^^)元々市場がそれを前提に価格形成をしているのでそれはそれで市場のお作法としてアリなのですが、日本の場合は精密誘導が仕様でしたから話がヤヤコシヤではないかと存じます次第でありまする。

まあこのまま今月末くらいまでこの調子で推移するとどこぞの経済新聞あたりが「コール金利の低下を容認」とか書きだすと思うので先にネタにしてみたでござるの巻でございましたとさ。うだうだと話がウシの涎のような書き方でどうもすいませんでした。


○その他雑談と宿題ネタ

・ほほうエストニアがユーロに加盟とな

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100512.en.html
12 May 2010 - ECB publishes its Convergence Report 2010

まあ元々加盟の方向みたいですし、エストニアのMDY格付けは現時点でも確かA1(記憶ベースなので違ってたらゴメンナサイ)と優秀でございますから、別にこれはこれで既定路線の一貫という所なのでしょうけれども、ギリシャ問題がどうしたこうしたという話で大騒ぎする中で貫禄のリリースという所に欧州委員会の意地を感じました(^^)。

一方でスペインでは財政削減に関する話が色々と出る中で、与党のPSOEの国会での議席が微妙に足りないのがこれまた微妙みたいですな。(スペイン関連のニュースを見ようにもスペイン国内の大手新聞ってサイトに英語版が無いので良く判らんのが困りものですが、誰か英語版サイトご存じでしたら教えて下さいませなのであります)。


・コーン副議長講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
The Federal Reserve's Policy Actions during the Financial Crisis and Lessons for the Future

もしかしたらこの前の講演(延々とご紹介した奴)と同じような話なのかなとも思いますけれども、多分面白そうな気がするので週末読む(つもり)。


・次の副議長と言えばジャネット姐さん

http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0415.html
The Outlook for the Economy

URLにありますように、4月15日の講演なので虫干しネタにも程があるのですが、読んだのは良いとしましてまとめるのが微妙にアレで虫干しをしてませんですどうもすいませんすいません。

基本的には景気認識やらインフレの認識に関してはいつも通りで「要するに現在の異例の緩和金融政策は暫くの間続きますよ」という話なのですが、その中で最近話題の「緩和政策による金融の不均衡」に関する考えと、現状認識に関して説明している部分が中々興味深く読みましたので、お暇な方はど〜ぞ(ネタが無かったら来週ちょっとだけご紹介の所存)。









2010/05/13

お題「市場雑談と虫干しネタで勘弁」

ああでもないこうでもないと言いながらも結局欧州ネタ一発で相場の風景が変わってしまうのであまり悩まないことにする(^^)。

#ところで、ハングパーラメント打開案として、ヤケクソでスコットランドを独立させればどうでしょうか(嘘)
ご参考→http://news.bbc.co.uk/2/shared/election2010/results/


○3か月TB入札は0.11%前半

ということで昨日は3か月TBの入札があったのですが、入札前に0.114%を近辺の水準で業者間をやっていたようなのですが、落札結果は平均0.1139%で足切りが0.1143%と言うことで、こちとらまあ0.11%台前半だったら覚悟の上だったのでこんなもんかなあとは思いましたが、やはりまあ冷静に考えると強めの入札のようで。

昨年12月の固定金利オペの導入が決定された以降の3か月TB入札はまあ大体0.12%近辺となっていましたが、0.11%台前半というのは今年の1月半ば辺りにもありました。この時は年末越えのオペがドバドバと出た余波で足元のGCファンディングがやたら軽くなって、GCレートが0.105%(まあ下限のようなもの)で安定するわCPレートはAA格の発行体さんで3か月が0.11%を割るわという物凄い素敵な状態になっていました。

ちなみに1月27日の3か月TBの落札結果が平均0.1112%の足切り0.1125%というオソロシスな強さだったですので、昨日の入札はそれ以来の強さという感じですが、今回の場合はそもそもの足元GC水準が当時のようなベタベタの0.105%水準という訳でもないので、印象としてはやはり強いなあという感じですな。

ま、海外の状況が落ち着いてくればオペをそうドバドバ出す必要も無いので、固定金利オペの長いのが多い関係上、ショートタームのオペの入れ余地が減るということもありますから、GCレートがそうベタベタと0.105%とかに張り付くことも無い(今回の積み期間は低かろうと思ってたのだが昨日は0.11%水準っすかね)とゆー所でござんすので、まあそんなこんなを勘案すると昨日の入札は中々強いですが、これが0.11%を切って更に強いという話になって来ますと「短国のモノ化」という奴ですのでその背景を良く考える必要がございますねという所っすな。


○とりあえず一発実施ですかそうですか

早速ドル資金供給オペの実施日程が。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005b.pdf

とりあえず一本実施してその応札状況を見ながら2回目以降をどの程度の頻度でやるかを決めるという感じでしょうか。まあ根本的には東京市場でドル資金の流動性が枯渇している訳でもなく、欧州市場でのドル資金ファンディングの為にわざわざ東京市場でドル資金を取らないと行けないというようなことも無い(取りたきゃECBで取ればよい)でしょうからそんなに札が集まるとは想像しておりませんけど。


○例によって虫干しネタ

1か月前の今更ネタですが4月14日のバーナンキ議会証言
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100414a.htm

お題は「Economic outlook」ということで、まあそんなに長い物ではないのですが、この時の証言の流れを小見出しで追うと、「The Economic Outlook」→「Financial Market Developments」→「Fiscal Policy」という流れになっていまして、金融政策の話よりも財政政策に関する話をしているのがチャーミングなのでその辺りから。

『In addition to the near-term challenge of fostering improved economic performance and stronger labor markets, we as a nation face the difficult but essential task of achieving longer-term sustainability of the nation's fiscal position.』

経済のパフォーマンスを改善させ、労働市場を改善させる為には、長期的な財政の維持可能性(サステイナビリティ)を確保するという困難だが本質的な問題に我々は直面しています。という事で、その次には現状の具体的数値です。

『The federal budget deficit is on track this year to be nearly as wide as the $1.4 trillion gap recorded in fiscal year 2009. To an important extent, these extremely large deficits are the result of the effects of the weak economy on revenues and outlays, along with the necessary actions that were taken to counter the recession and restore financial stability. 』

現在の財政赤字に関しては経済のリセッション回避と金融安定化の為に実施した支出増加と、経済の落ち込みによる税収の現象によるものですけれども・・・・

『But an important part of the deficit appears to be structural; that is, it is expected to remain even after economic and financial conditions have returned to normal. 』

ということで、構造的な財政赤字問題があって、経済金融情勢が通常レベルに戻ったとしても赤字問題があるという点について以下で説明しています。

『In particular, the Administration and the Congressional Budget Office (CBO) project that the deficit will recede somewhat over the next two years as the temporary stimulus measures wind down and as economic recovery leads to higher revenues. Thereafter, however, under the Administration's budget, the annual deficit is expected to remain high through 2020, in the neighborhood of 4 to 5 percent of GDP.』

緊急財政対策終了と共に赤字は減りという試算になるのですが、向こう10年は年次ベースの財政赤字がまだまだ高い状態が続くでしょうとな。

『Deficits at that level would lead the ratio of federal debt held by the public to the GDP, already expected to be greater than 70 percent at the end of fiscal 2012, to rise considerably further.』

ほほう12年度で政府債務がGDP比70%とな。

『The CBO baseline projection assumes that most discretionary spending grows more slowly than nominal GDP, that no expiring tax cuts are extended, and that current provisions that provide most taxpayers relief from the alternative minimum tax are not further extended. Under an alternative scenario that drops those assumptions, the deficit at the end of 2020 would be 9 percent of GDP and the federal debt would balloon to more than 100 percent of GDP.』

で、各種の減税だのなんちゃらクーポンみたいのなのを継続した場合には向こう10年間で財政赤字がGDPの9%という状態になるという話っすな。

ということでこの議会証言のトリの部分になるのですが。

『Although sizable deficits are unavoidable in the near term, maintaining the confidence of the public and financial markets requires that policymakers move decisively to set the federal budget on a trajectory toward sustainable fiscal balance.』

目先に関してはかなり大きな財政赤字は避けがたいものの、金融市場や国民の信頼を維持するためには連邦予算の財政維持可能性を確保するために政策当局が動くというのは重要だという話のようで。

『A credible plan for fiscal sustainability could yield substantial near-term benefits in terms of lower long-term interest rates and increased consumer and business confidence.』

まあ当然のことですけれども、ここに出ている「A credible plan」という部分はわが国の状況を眺めると実に身につまされる話ではございます(−−)。いやまあバーナンキ議長は別に嫌味言ってる訳ではないですけれども(^^)。

『Timely attention to these issues is important, not only for maintaining credibility, but because budgetary changes are less likely to create hardship or dislocations when the individuals affected are given adequate time to plan and adjust.』

ということで、「財政支出構造に手を付けるということは、それにとって影響される人々に痛みや混乱を与えるものなので、早くに着手すればそれらの人々にとっても対処の為の時間ができる」というような話をしているのが更に現在の日本の状況を見ると身につまされるにも程があるのでございます(−_−メ)。

『In other words, addressing the country's fiscal problems will require difficult choices, but postponing them will only make them more difficult.』

いやもう更に耳が痛いです。まあこの時点でもギリシャ問題はギリシャ国内でああでもないこうでもないとゴネゴネモードになっていたと思う(ゲバ棒モードでは無かったとは思いますが)ので、そーゆー意味では良い(というか良くない)見本もございますなという所だったのかもしれませんね。


なお、経済見通しに関してはいつものように労働市場問題に詳しく言及していまして、更に(これは昨今のFOMC議事要旨や先般のイエレン次期副議長講演などでも何度も言及されていますが)長期間の離職者が増えることによる労働者のスキルの低下から来る労働生産性低下懸念とかを示しています。


金融市場に関しては金融監督が経済活動の足を引っ張らないようにというようなあたりが「ほほー」と思いましたが、その金融市場に関する部分では「またまたご冗談を」というのがあったので引用するだよ。

『Last spring, the Federal Reserve and other banking regulators evaluated the nation's largest bank holding companies under the Supervisory Capital Assessment Program, popularly known as the stress test, to ensure that they would have sufficient capital to remain viable and to lend to creditworthy borrowers even in a worse-than-expected economic scenario.』

えーっと、あのストレステストの前提のマクロ経済環境が「worse-than-expected economic scenario」とはこれまたご冗談を(−−;

『The release of the stress test results significantly increased market confidence in the banking system. Greater investor confidence in turn allowed the banks to raise substantial amounts of new equity capital and, in many cases, to repay government capital.』

正直言って、あのストレステストを例えば90年代後半の日本で日本の政策当局が実施したら飴公どもは「インチキお手盛りストレステスト」とか騒いで更に状況を悪化させたでしょとか思うに、何だかなあ感は思いっきりするのですが、まあ大狸政治家へと成長されたバーナンキ議長の狸ぶりを示す部分だなあと思ったので、狸鑑賞の一環として引用しただけでございます。政策インプリケーションは無い(^^)。






2010/05/12

お題「欧州騒動で微妙にスルーしてたネタを今のうちに」

結局何も決まらないで先送りとなって普天間固定ですか。テラヒドス。

○4月前半決定会合の議事要旨から

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100407.pdf

・景気認識に関しては循環と構造のバランスが取れている

えーっとですな、まあ景気認識に関する部分とかは基本的に先日の展望レポートの線とそんなに大きな変化はないと思います。と言いつつ肝心の展望レポートに関してもその他の政策のフォローに追われて結構スルー気味なのですが・・・・(汗)

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から色々な話をスルーして日本経済の先行きに関する部分を引用。

『先行きについて、多くの委員は、今後、各種対策の効果が次第に減衰してくることを踏まえると、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いと述べた。もっとも、何人かの委員は、新興国を中心に海外経済が引き続き改善する中、一頃、市場等でみられた「二番底」に対する懸念は、かなり後退したとの認識を示した。』

『ある委員は、今後、政策効果が剥落していくまでに、足もと僅かにみられ始めた自律的回復の芽がしっかりと育っていくかどうかが、先行きの景気を見通す上で重要なポイントになると指摘した。この点に関し、別のある委員は、グローバル競争を背景とする企業の賃金抑制姿勢といった構造的な要因が、今後の景気動向にどのように作用していくのか、留意する必要があると述べた。』

ということで、基本的には「足元の経済指標および景気は上振れて推移しているものの、構造的には自律回復するのかどうなのよ」という線になっていまして、まあその理屈からすれば先般の謎の成長戦略的な政策を出すというのはロジック的には有りなのですが、しかしそれを中央銀行がやる話なのかというのは超絶的に謎ではございます。

で、その成長期待が低いという話がその次のリスク要因の部分で示されていますので続いて引用。

『わが国経済のリスク要因について、何人かの委員は、企業の中長期的な成長期待に目立った改善が窺われず、引き続き景気の下振れ要因になっていると述べた。この点に関連し、複数の委員は、経済の水準がなお低いことに加え、やや長い目でみた景気回復の道のりやわが国経済の将来像が依然明確に見出せないため、多くの企業で、設備・雇用の調整や積み増しに慎重にならざるを得ない状況が続いていると指摘した。』

だから成長戦略が必要ということですか、よー知らんが。

『何人かの委員は、新興国の更なる経済成長は、わが国経済の上振れ要因となり得る一方で、各国の政策対応次第では、新興国経済の減速や、景気過熱後の大きな巻き戻しを招き、わが国経済の下振れ要因にもなり得るとの認識を示した。』

つまり新興国上昇で日本が恩恵ヤッホーとか能天気に言ってる場合では無いという話ですが、良く良く見るとこのリスク要因の話って(この後は個別の需要項目別の先行き見通しの分析コーナーになるので)下振れの話が殆どという中々お洒落な状態ですな。まあその点でも足元の回復とのバランスは取れた議論になっているような気がする。

・・・・・のだが、何か総裁が会見を行うと循環的な景気回復の話が妙に強調されるのが白川総裁様クオリティなのが微妙なのですよね。コマッタモンダ。


・ところで金融面ではと言いますと

で、同じ部分ですが、経済情勢の議論の次に金融面の議論があるのですけれども、その結論はと申しますと・・・・・

『こうした議論を経て、何人かの委員は、マクロ的にみれば、金融面の動きが景気や企業の支出活動を制約する状況ではなくなっていると指摘した。これに関し、何人かの委員は、中小零細企業では資金繰りがなお厳しいとする先が多いが、この点については、こうした企業を取り巻く経営環境や産業構造といった側面も含めて、点検していく必要があるとの見解を述べた。』

>金融面の動きが景気や企業の支出活動を制約する状況ではなくなっている

・・・・いやまあこの認識はマーケット的にはそうですねと力強く思うのですけれども、そのような認識があるのなら何で4月30日の決定会合での、

『このような議論を受けて、議長は、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。』(これは4月30日の決定会合声明文です^^)

という声明文の文言が「全員一致」で承認されるのかと小一時間問い詰めたい。



・固定金利オペの効果に関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、3月に講じた固定金利オペの拡充の効果についても、議論を行った。』

えーっと短期市場的には効果というよりは短いタームの資金供給オペが窮屈になってGCと無担保コールのスプレッドが微妙に開いてしまったような気がするのですが。

『ターム物レートへの影響について、ある委員は、もともとレートに低下余地が乏しくなっていたこともあり、今のところ、追加的な影響は限定的との見方を示した。他方、何人かの委員は、やや長めの金利に対する効果として、短国レートなどが低位で安定しているほか、これまで粘着的であったユーロ円レートが低下するなど、ターム物金利は弱含んで推移していると述べた。』

「これまで粘着的であったユーロ円レートが低下」というのが何かオモシロイ表現ですが、ユーロ円レートってTIBORの話なんすかねと思いますけど、その低下は恐らく期末を抜けて銀行の貸出スタンスに微妙な変化があって金利を下げようとなったとか、リファレンス銀行の顔ぶれを微妙にいじったことの影響とか、まあTIBOR金利がいい加減下がらない件について大人の配慮でもあったのか、正直良く判らんですけど、これは別に固定金利オペの拡大そのものが直接影響しているとは思えんのだが。

それに短国レートって(ちょっと今日の3か月入札は注目と言う話を後で書きますが)3か月物の新発TB入札の落札利回りベースで言えば、最初に固定金利オペ実施のリリースがあった直後の入札が直近で一番利回り低いのでございいますけどねえ・・・・・


『また、何人かの委員は、3月の措置は、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていくという、日本銀行の姿勢を改めて明確に示すものであり、これが企業マインドの下支えに寄与している面もあるとの認識を示した。更に、複数の委員は、こうした日本銀行の姿勢の明確化や企業マインドの改善が、最近の株価や為替の動きにも相応の影響を及ぼしている可能性があると述べた。ある委員は、今後、政策効果が貸出金利にどう波及していくかについても、しっかりと確認していく必要があると述べた。』

何か貸出金利に株価の話まで出てくるとか凄いのですが、2年後くらいに「固定金利オペの効果について」とかいうようなペーパーが日銀から出てきて、「増額したら株は上がるわ貸出金利はさがるわともうウハウハです」という内容となって、あたくしがまた「そんな定量的な効果は無かったと思いますけれども」という悪態を書くに100ドラクマ(その頃まであたくしが駄文書きを継続してればの話ですけど^^)であります。

ま、現在の政策って一応お題目としてはターム物金利を低位安定させてその効果がどうのこうのって話にはなってますけど、実際問題としては市場金利ルートでの波及効果というよりは、「世間様の期待に働きかける」という政策メソッドだと思います(ので正直者で狸芝居の苦手な白川総裁が会見をすると微妙にアレなのですが)から、まあこーゆー効果はあるはあると思うのですけれども、それは定量的に「増やしたらどうのこうの」というような計量的な話では無いと思いますけどどうでしょうかね。

『なお、何人かの委員は、固定金利オペを含め、引き続き、潤沢な資金供給を行っていく中にあっても、市場機能の維持に配慮した適切な運営を続けていく必要があるとの認識を示した。』

6か月に延長とかもう10兆円増額とかすると通常の機動的な出し入れに更に支障を来たすのではないかという懸念があるという話は以前申し上げた通りでございます。まあ4月30日の総裁会見を額面通りに取ると固定金利オペをこれ以上拡充するのもどうなのよという話のようですが、白川総裁の様式美の世界もありますので何とも良く判らんっす。



○月曜の山口副総裁記者会見メモ

特に政策インプリケーションがどうのこうのという話ではないですが、場面が場面というのもあるでしょうけれども、山口副総裁の会見トーンは「循環的な回復局面」を強調したがる仕様の白川総裁のここもとの会見にあるような楽観トーンが無いなあとは思いました。

ただまあ今申し上げたように、今回の会見はいつもの話とは違いますので、実際にその辺の温度差があるのかどうかという話はまあ正直判らん。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005b.pdf

『(問) 今回のドル資金供給オペの導入措置はリーマン・ショック時の対応以来ということですが、市場の緊張感なり影響はリーマン・ショック直後とかなり似た深刻度合いというご認識でしょうか。(後半割愛)』

『(答) まず、リーマン・ショック後の状況との比較ですが、ドル資金について申し上げれば、やはりあの当時はドルの流動性が枯渇すると言ってよいような状況だったと思います。一方、足もとについては、先程、欧州短期金融市場において米ドルの流動性が低下していると申し上げましたが、リーマン・ショック後と比べれば、流動性の低下の程度は相対的に落ち着いたものに留まっていると思います。ただし、既に生じている流動性低下という緊張感が、グローバルにみてこの先金融市場全般の流動性低下につながる可能性がないか、あるいは不安定化を助長させる惧れがないかという点については、やはり注意深くみていく必要があり、こうした判断が今回の決定の背景にあったということです。(後半割愛)』

東京市場はともかく、欧州市場での流動性問題が世界的に拡大する前に各国中銀の協調対応を示しましたという話ですな。


『(問) 先程の質問にも関連しますが、米ドル資金供給にしてもCP・社債の買入れにしても、日本銀行では臨時の措置を順次止めてきています。今回、各国中央銀行とともに臨時・異例の措置を再び採用するということは、そうした臨時・異例の状態に戻ったという理解でよろしいのでしょうか。また、先日の展望レポートでは、経済・物価の見通しを若干上方修正されていますが、海外経済が日本経済にもたらす影響を現状どのようにご覧になっているかお聞かせ下さい。』

『(答) 臨時・異例の状態に戻ったのかどうかということですが、非常に定性的に申し上げれば、通例行わないようなオペレーションを実施するということですので、臨時・異例ということになろうかと思います。しかし、先程リーマン・ショック後の状態との比較についてのご質問に対してお答えした通り、状況についてはリーマン・ショック後とは比較にならないという感じを持っています。その上で採った措置と認識して頂ければと思います。』

『今回、私どもが採ろうとしている措置および既に発表された欧米の措置によって、現在拡がろうとしている金融市場の困難、それから生じるかもしれない実体経済面への悪影響が封じ込められることを私どもは期待しています。それを前提にする限りにおいては、4月の終わりに展望レポートにより私どもが示した日本経済の先行きについての評価を変える必要はないと思っています。』

つまり問題が長期化すれば下振れ要因ということですな。で、あと即日オペに関連して。

『(問) 先週金曜日と本日に即日オペを実施していますが、この狙いについて教えて下さい。また、このオペでは少し札割れが起きていますが、この評価についてもお聞かせ下さい。』

そうそう、こういう場合は札割れしても別に構わんと思います(で、一旦目先の欧州市場流動性枯渇モードが解消した昨日は即日オペ行わずというのはお手本通りですわな)。札割れの評価ってナンジャラホイという気がするというか質問者のポイントがずれていると思います。で、山口さんの答え。

『(答) ご承知の通り先週金曜日と本日に2兆円ずつ即日オペを行いました。実際には札割れが生じていますが、こうしたかたちで果敢に資金供給行動を行っていくことは、市場に対して私どもの姿勢を明確化するという点でも、また、実際に資金を供給するという点でも、ともに市場の安定化に資するものであると考えています。』

『実際にマーケットの反応等をみる限りにおいては、そうした効果は一応得られたものと認識しています。結果として札割れになったわけですが、それは市場の資金需給の状態や金融機関の資金繰りの状態といったものの結果ですので、札割れの規模などにあまり大きな意味はないと思っています。』

誠にその通りかと存じますです。はい。


○今日の3か月TB入札にちょっと注目(メモ)

昨日は6か月TBの入札があったのですが、堂々の0.12%割れとなりました。連休前は3か月TBが0.12%辺りにいたので、まあ足元で強くなっていますなあという所なのですが、何でも昨日は残存1か月程度のTBでは業者間で0.10%の出合いもあったようで、ここに来て短国が妙に強くなっています。

もともと業者の在庫が軽めの所に来て、何か知らんが買い意欲が高まってという所ではあるのですが、日銀当座預金に放り込んでおけば0.10%で回るのですから、まあそういうのと関係ない買いが無いと中々0.10%までレートは下がらないと思うのでございまして、3か月TB入札のレートがどの辺で収まるのかはちょっと気になる所でございます。まあ残存1か月とかですと業者の在庫がスカスカの時は見事に無かったりするので0.10%とかがいきなり出合うというのはアリエールなのですが、5兆4千億(今月の入札分から何と減額ロール)の入札がどどーんと出てくる中でレート形成がどうなるのか、既発並みに強いのならほほーという感じでございます。

と、判ったような判らんような書き方で誠に恐縮至極でございます(汗)。


あとおまけの単なる備忘メモですが。ECBのオペレーションに関して。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html

昨日のドルオペの結果は下の方にあります( All.(=Allotment)という所をクリックすると結果の詳細が出ます)のでご参考までに。










2010/05/11

お題「ECBの信用緩和キタコレ」

ということで大幅反発ですが、それだけ先週金曜のメルトダウンが凄かったと言う事だったのですな。

で、まずはそこに至るまでのメモからあたくしの備忘も兼ねて。

#なので何か勘違いがあったら是非ご教示頂きたく


○先週末は欧州のドル短期調達がエライコッチャみたいだったのですかね

いやね、一旦片付いてから申し上げるのも何なのですが、どうも金曜の2兆円即日臨時供給を見た時に「これは何としたことぞ」と嫌〜な予感がしてましたのですが、やはり金曜の欧州のドル調達がメルトダウンに近い状況で、まあ日本の円調達がどうのこうのという話では無かったので日本の円金利市場的にオペが必要だったかは兎も角、「まあ落ち着け」というのと「各国で協調しないとこりゃやばいですよ!」という意味もあったのではないかというオペでございましたなというのが結果から後付けすれば言えたっちゅう所なのですかな。

だから昨日はロールした筈の即日オペをご丁寧にもう一発打つという動きになったのでしょうなあ、と思うのですがどうっすかね。

ということで今更先週のニュースですがやはりこうだったのねとゆーところで、まあだからこそ昨日は欧州が寄る前に色々な声明がドバドバと出たと言う所でしょうな。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK040655820100507
〔焦点〕ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候(先週金曜時点)

ということでスワップ協定復活とECBの渾身の欧州国債買入攻撃(ただしマネーの供給ではなく信用緩和ですので念の為)となったのですが、そもそも先週の木曜時点では・・・・・・


○先週木曜には国債買う話は華麗にスルーだったのでして

http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is100506.en.html#qa

先週木曜のECB定例理事会後のトリシェ総裁の会見から(上の方に行くと決定会合の内容説明部分になります)。

『Question: Mr Trichet, I have three questions for you.

The first one is: is the purchase of government bonds an option to fight the consequences of Greece’s fiscal crisis on financial markets? Did you discuss this option today?(2番目以下割愛)』

『Trichet: On your first question, we did not discuss this option. (2番目以下割愛)』

その他延々と似たような質疑応答があって国債買入の議論はしていませんのオンパレードだったのですがとりあえず話が長くなるので割愛。

いやまあこの辺りが市場の失望を呼んで急速にエライコッチャになったということのようですが、何せこちらは国内ドメスティックな人間でございますので、どうもこの辺りに関しては直接欧州でドルファンディングをやっている訳でも無いのでどうにもこうにもという感じではございますが、まあ過去何度か調達市場が急にシュリンクしたのでというのを体験した(信用不安がどうしたこうしたというのは大きいので3回位っすかねえあっしの場合)身としては何か金曜の東京も気持ち悪かったですわなと。

で、それが欧州時間で案の定出てしまい、週末に何とかしないとおそロシアな事になってしまうのでこらどうにかせねばという話だったという所ですかな。

まあどっからどう見てもトリシェ先生初動で市場の暴走リスクがここまであるとは思って無かったのか、そらまあ国債買入は最終兵器にも程があるから使いたくないというのがあったのか、まあどうなのか知らんっすけど、国債買入の議論はしてませんよと言ったのが木曜で、月曜の朝には君子豹変して対応というのはまあ取り敢えず物凄いにも程がある豹変ですが、豹変しないよりは良い事なので良かったねという所で。

#なのでECBの対応は迅速は迅速でしたが、その前に地雷を盛大に踏んだから火消しに走らないと行けなかったというマッチポンプな面もありまして、リーマン破綻後の対応が迅速と評価する前にリーマンを突然コカした措置がうんこだったというのと流れは似ている(いやもちろん現実にリーマンこかして大混乱を呼んだのに比べれば100億倍マシですけど)と思われますがどうでしょう


○各国中銀でスワップラインの復活と日本は早速ドル供給オペの実施

まあそんな事でスワップライン復活(先週金曜の時点で「どうせ欧州でまたまたドル調達の問題って話になるんですからスワップライン復活でしょ」というような観測は言われてましたけど)となったので日銀のリリースを。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005b.pdf
中央銀行の協調対応策について

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005d.pdf
米ドル資金供給体制の整備について

『日本銀行は、本日公表した「中央銀行の協調対応策について」に基づき、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、米国連邦準備制度との間で米ドルスワップ取極めを再締結すること、および米ドル資金供給オペレーションの実施体制を改めて整備すること、を決定した。日本銀行としては、今後とも、適切な金融市場調節の実施を通じて、金融市場の安定確保に努めていく方針である。』

まあしかしこれに関しては別に使わない状態でも何かの為に使えるようなセーフティーネットというか保険の為にスワップラインを残しておいても良いんじゃないかなあとか金融危機を何度も見せられた日本人的には思うのですが、本件に関しては米欧(なのか米国様なのか知らんが)の方が出口政策による危機対応終了というのに拘っておられたようで。日本の場合は何故か知らんがこの手の決定をするのに(引用文にもありますように)臨時でMPCを開かないと行けない(他の中銀はMPCマターでは無いみたい)のでヤヤコシヤ。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005c.pdf
金融政策決定会合の臨時招集について

このヘッドラインが出た瞬間に追加緩和と勘違いした人が債券先物に買いを入れて先物が20銭近く(だったかな?)持ちあがったのは実に香ばしい反応でした(^^)。


んでもって日本ではドル資金供給の復活と。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005a.pdf
「米ドル資金供給オペレーション基本要領」の制定等について

基本的には東京でのドル調達が欧州のようにエライコッチャになってという話ではなかったですし、そもそも国内勢はサブプラだのリーマンショックだのという流れの中で外貨資産も相応に圧縮しているんじゃねえのという所ですので、まあそんなに応札が爆発的にやって来るという話にはならんのでしょうが、そうは言ってもご時世がご時世ですので東京にも安全網を張っておかないとっつー所でしょうな。


http://jp.reuters.com/article/jpeconomy/idJPJAPAN-15216420100510?sp=true
今回の日銀措置、市場の困難などの封じ込め期待=日銀副総裁

『そのうえで、日銀の今回の措置については「米欧中央銀行との協調行動の一環として、国際金融市場の状況の改善に資する。わが国金融市場の安定確保に万全を期するもの」として「わが国金融機関のドル資金繰り支援を意図したものではない」と説明した。』

まあそうでしょうね。


○欧州の国債買入ですが・・・・・

日本時間の月曜午前中(なので欧州だと日付は月曜の早朝というか)に出た順で。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510.en.html
10 May 2010 - ECB decides on measures to address severe tensions in financial markets

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided on several measures to address the severe tensions in certain market segments which are hampering the monetary policy transmission mechanism and thereby the effective conduct of monetary policy oriented towards price stability in the medium term. The measures will not affect the stance of monetary policy.』

ということで、各種措置は金融緩和スタンスに影響を与えないとわざわざ言っているので、あくまでも「市場機能の代替を中央銀行が務めます」といういわゆる信用緩和の話ですと銘打ってますな。

『In view of the current exceptional circumstances prevailing in the market, the Governing Council decided:』

『1. To conduct interventions in the euro area public and private debt securities markets (Securities Markets Programme) to ensure depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional. The objective of this programme is to address the malfunctioning of securities markets and restore an appropriate monetary policy transmission mechanism. The scope of the interventions will be determined by the Governing Council. In making this decision we have taken note of the statement of the euro area governments that they "will take all measures needed to meet [their] fiscal targets this year and the years ahead in line with excessive deficit procedures" and of the precise additional commitments taken by some euro area governments to accelerate fiscal consolidation and ensure the sustainability of their public finances.』

つまり財政再建に向けて努力する国の国債買入を実施して市場機能の回復を図り、それらの国の市場ファイナンスを確実なものにするという話をしていると思われます。

『In order to sterilise the impact of the above interventions, specific operations will be conducted to re-absorb the liquidity injected through the Securities Markets Programme. This will ensure that the monetary policy stance will not be affected.』

ここがまたチャーミングで、国債買入で供給した流動性はその分吸収オペで吸収しますよということで、この施策は「量的緩和」ではなくて「市場機能の回復の為のオペレーションですよ」というのをわざわざ銘打ってますな。英仏海峡の向こうで「国債買入による量的緩和」(波及効果に関する検討がいつの間にかスルーされながら買入は終了しちゃいましたが)を実施していた中央銀行があるので、それとは違いますよフフンという話でもありますな。

『2. To adopt a fixed-rate tender procedure with full allotment in the regular 3-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted on 26 May and on 30 June 2010.』

『3.To conduct a 6-month LTRO with full allotment on 12 May 2010, at a rate which will be fixed at the average minimum bid rate of the main refinancing operations (MROs) over the life of this operation.』

LTROsを固定金利のフルアロットメントで出すのでその傍から結局無制限供給をするのがなおチャーミングな所であります。まあさっきの吸収する云々はあくまでも「ジョンブル野郎の量的緩和とは違うんですよ」と言いたいだけなんでしょう(^^)。

『4. To reactivate, in coordination with other central banks, the temporary liquidity swap lines with the Federal Reserve, and resume US dollar liquidity-providing operations at terms of 7 and 84 days. These operations will take the form of repurchase operations against ECB-eligible collateral and will be carried out as fixed rate tenders with full allotment. The first operation will be carried out on 11 May 2010.』

ドルスワップラインを復活させて7日物と84日物のドル資金供給オペを11日から実施しますと。

んでまあその各国中銀がドル資金供給をしますよという話のECB版は次のURLで、こちら。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_1.en.html
10 May 2010 - Reactivation of US dollar liquidity providing operations

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_2.en.html
10 May 2010 - ECB announces details regarding the reactivation of the US dollar liquidity-providing operations


○さて今後はどうなるのやら

で、何だかにゃあと思うのはどうも買入の状況が良く判らんところで。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15222020100510
ユーロ圏の中央銀行が政府債買い入れ開始、購入規模は未定

ということで買入をしているようなのですが、このへん→http://www.bundesbank.de/index.en.phpとかこのへん→http://www.ecb.int/home/html/index.en.htmlを見ても何がどうなっているのかよく判らんのですんが、誰かどこかにリリースされているのとかご存じないっすかお願いしますお願いします。

しかし米国にしろ日本にしろ、こーゆー時には「このような方法で買入(なり新しいオペレーションなり)を行います」って実施要項と参加要項を世間一般向けにもリリースして対象先に打ち込むというのが仕様だと思うのですが、世間一般へのリリースとか無いのにさっさと実施というのは何と言う欧州的不透明さという所で、さすがはいざとなると不透明にして有耶無耶にする欧州クオリティと感心するものであります。


でまあ国債買入をするのは良いのですが、当然ながらECBなのか加盟国の中央銀行かは知らんですが、楽しい国債を抱えることになりますので、肝心の参加国の国債の発行に対するサステイナビリティーに疑問がありますよという状況が続いたら問題の先送りにしかならないですし、それどころか将来的に問題が放置されてしまうと今度はユーロシステムが通貨としてどうなのよというようなことになるんでしょうな。

つーか、安定化基金をどどーんと作るのは良いのですが、その金を加盟国が負担するったってあーたスペインとかポルトガルとかそんな金どこにあるのよという気がせんでもないですし、IMFが出すという話になった場合に何でうちらが出さにゃならんのよという意見が飴公あたりから出てきたり、英国ちゃんとかも出すという話みたいですし、ノルトライン=ヴェストファーレン州の選挙ではCDU負けちゃうし・・・・とまあ色々と冷静に考えるとここからも中々アレな話ですな。

しかし、この期に及んでこういう事を言うのはもう何だかねえと思うのだが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15222920100510
ポルトガルを格下げの可能性、ギリシャはジャンク級も=ムーディーズ

・・・・・全く首吊りの足を引っ張ると言うか何と言うか(−−)


なお、あたくしがうだうだと書く駄文よりも毎度お馴染みの厭債害債さんのエントリーの方が参考にするのは吉かと存じます(自爆)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201005/article_1.html












2010/05/10

お題「色々と雑談系で」

超高速取引が急落を増幅したというのが米国での課題となる一方で東京証券取引所は超高速取引向けにシステム変更をついこの前行ったばかりというのが実に様式美の世界としか申し上げようがございませんなあ。

○即日資金供給実施とな

金曜のオペですが、即日オペ定例時間じゃなくてわざわざ9時5分に即日オペをオファー。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100507.htm

資金需給的に金曜は財政の揚げがちょっと多目で何も無いと当座預金残高が15兆を切る勢いだったのですが、まあギリシャだのNY瞬間株価急落だのが無ければ積み進捗も進んでいるので従来の平常ペースだと少々当座預金残高を削ってくるのかなあという感じでしたので、今回の即日供給はまあ市場向けに「落ち着いてくんなまし」と言った所でしょう。GCが急に跳ねられても困るという所なんでしょうかね。

で、1兆5000億程度の募入となったので札割れは札割れなのですけれども、T+0で割と実需があったという事は、丁度連休絡みでショートファンディングをT+1とかT+0とかまで引っ張って(先日付が若干下げ渋っていたので手前で資金が余るまで頑張るメリットはあったのですな)いた向きもそれなりにあったというところでしょうか。

9時20分の定例時間ではなくわざわざ9時5分にやって「緊急オペ」とする所がチャーミングでして(^^)、2008年の時にはGCレートなどが上昇してロンバートに張り付いて現先レートは上昇するわCPレートは上昇するわって状態なのに妙に普通のオペばっかりしていたというのに、今回はまた逆の意味で妙に気の効くオペですな(^^)。

で、金曜のオペの更に気が効いているのは上記URLの一番下にある13時にオファーされたトムスタートの1兆2000億円のオペでございまして、これは即日オペのロールオーバーも兼ねているのですけれども、2週間物に乗り換えてショートファンディングを少し軽くさせるというのと、即日オペで多目に出した分をちゃんと維持しますよというのが伝わってくるので、これを見ると「今回の積み期間は最後に調整で当座預金を絞ってくる訳では無さそうですな」という連想になってGCも下がるというものであります。まあ実際には市場が変な動揺をしなくなったらそれなりに絞っては来ると思いますが、自然体でレートが上昇してもこういう時には変な憶測を生みかねないので、余程あほみたいにレートが下がらない限りは16兆円程度でこのまま行くのかなあとは思いますが。

まー根本の問題はユーロ圏で、ど〜せややこしい事になるのはユーロ圏のドルファンディングでしょうから、別にまあ日本でどうしたこうしたという話には直接はならないのですけれども、そうは言ってもこーゆー時ですので「緊急で2兆円供給」というのは良いアピールだったですな。ちょうど財政が下ブレして打ちやすかったのもラッキーちゃあラッキーでしたね(^^)。


○買入長期国債に関して雑談

もう段々ただのメモ状態になっていますが。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1004.htm

手元のエクセルでへこへこ集計したところ(という俺様集計なので正確性は保証致しかねます)残存2年以内の打ちこみ額が6500億円程度となりまして、今回は2月と同じパターンになっています。というかここもと相場が普通に推移していると打ちこまれる国債の足って比較的長目になっているような気がしますが、ものぐさ太郎のあたくしは「じゃあ平均残存期間はいくらでしょう」という計算をするのはその時だけは思うのですが、後になると忘れるのが仕様でございまして(おいおい)、まあどこかで本職の人がちゃんと計算していると思いますから、それでも見たいなという所で(^^)。

#いやまあ各銘柄の償還日を手元の集計表に入力すれば良いだけの話なのですけれどもね。忘れなければ来月までにはメンテしてみたいですにゃ。

あと、4月の輪番オペで「???」だったのは残存1年以内のオペが妙に安い打ちこみが入っていたことで、4月5日のオペでは平均7糸甘の足切り6糸甘でまあ少々甘め程度だったのですが、21日のオペでは平均2毛2糸甘で足切りが9糸甘と訳の判らん大打ちこみが入っていまして、これはナンジャラホイと思っていたのですが、6月に償還が来る5年47回と48回がそれぞれ1457億円、1550億円と残高が増えているので、まあ要するにこの辺りが打ちこまれたのでしょうなあというのは把握しました。まあ何となく期末対策で買った物の外しがお家の事情的にあったんだなあという風に妄想するのですが、実際はどうだったんでしょうかね。



○総裁会見から少々

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005a.pdf

新型オペに関する話はこの前引用したので、「追加緩和はしないでおじゃる」の部分を引用しておくでおじゃる。

『(問) 昨年12月に始めたいわゆる新型オペについてお聞きします。開始してからそれなりに時間が経ってきていますが、その効果と副作用について総裁はどのようにお考えになっているでしょうか。』

『(答)(オペの説明部分割愛)そう申し上げた上で現時点での評価を申し上げます。固定金利オペに加えて、従来の金利入札型の様々なオペを活用した潤沢な資金供給によって、短期国債金利などやや長めの金利は政策金利と遜色ない水準まで低下し、銀行間の取引金利も低下が続いています。貸出金利など民間企業の資金調達コストにも効果が波及してきています。このように、固定金利オペは、やや長めの金利の低下を促す効果を着実に発揮してきています。』

はあはあそうですか(棒読み)テクニカルには無制限応札ができる訳ではないので単体での評価ってのは無理だと思うのですけどねえ。

『さらに、固定金利オペの導入と拡充は、きわめて低い金利を維持するという日本銀行の姿勢の明確化を通じて、企業マインドの下振れを回避する面でも一定の効果があったとみています。』

マインドの話ってまあ口の悪い言い方をすれば「鰯の頭も信心」の世界も含まれるのでございますが、今般の妙な資金供給策検討指示といい、鰯の頭スキームを採用する福井の俊ちゃんメソッドに入ったというのであればそれはそれで日銀の為(って日銀が無用にバッシングされないという論点で)に慶賀すべきことかも知れませんし、ロジック的にどうなのよという点で言えばどうなのよというのはありますが。

『もっとも、固定金利オペを含めた日本銀行による潤沢な資金供給が市場取引を代替し、短期金融市場の取引が縮小することにより、金融機関からみれば、市場調達に対する安心感、すなわち必要な時にいつでも必要な額の資金調達を行うことができるという安心感が低下する可能性も意識しています。また、やや長めの金利の低下は、企業にとって資金調達コストが低下する一方で、金融機関の利ざやが極端に圧縮されると今度は資金仲介活動に対するインセンティブが低下し、結果として企業の資金調達にマイナスとなる懸念もあります。(以下割愛)』

前半ですけれども、まあ正直言って現在の短期金融市場って日銀のオペが無いと回らん状態になっているのでして、無担保取引もそうですけど、レポ取引が普通のコールと同じくらい(は無理かもしれないけど)にお手軽にできて参加者の層が厚くなる(取引そのものは大きいですけれども、資金の出し手が大口の少数固定メンバーに限られているので市場としてのバラエティーさが無いにも程がある)という風にならんと、短期金融市場の市場機能がどうしたこうしたという話以前の問題のような気がせんでもない(まあそもそも短期国債の発行が莫大にあるからその分資金供給オペを打たない訳にもいかないというのもあるけれど)。

また後半に関してはまあそらそうなのですが、それを言い出すと「じゃあ何でターム物のレートを下げる」ような措置を実施したのよという話になるので、あまり副作用云々は言わない方が良いと思うのだが。まあ総裁が個人的にそういうのが嫌だというのは伝わるが、マインドがどうのこうのというような事を言及するのですから、まあそういう本音は(俊ちゃんのように)見せないのが正しいお作法(?)だと思います。


『(問)2点お伺いします。1つ目は、3月の決定会合で新型オペの拡充をした時は、景気と物価の改善を後押しするというご説明がありました。本日の展望レポートの分析を踏まえると、この新型オペをさらに拡充する必要性が薄れたとお考えなのか、それとも、今後も引続き検討する余地があると現時点でお考えなのか教えて下さい。(2点目は先日引用したので割愛)』

『(答) まず、最初の問についてですが、いつも申し上げている通り、先々の金融政策については、2つの柱に基づいて経済を点検し、最も望ましい金融政策を決定していくというスタンスです。予断をもって政策運営を考えるというアプローチはとっていませんし、またとるべきではないと考えています。』

まあそれはそうですが。

『ご質問の趣旨に即して具体的にお答えしますと、日本銀行はこれまで金融面から経済を下支えするために積極的な金融緩和措置を実施してきました。政策金利については、現在世界で最も低い金利水準を維持しているほか、やや長めの短期金利の低下を促すために、昨年12 月に固定金利オペを導入し、本年3月に固定金利オペを大幅に増額しました。これら一連の措置により、コールレートはきわめて低い水準で推移しているほか、ターム物金利や貸出金利も低下傾向が続いています。』

ターム物って12月の瞬間で下がっただけでその後は横ばいのような気もしますがまあいっか。で、ここでチャーミングなのは「貸出金利」という所でして、TIBORの話をしているのねという所です。最近やっと下がってきたのは期が変わったのも影響してるのかどうか知らんけど、まあ低下してますな。

『この間、企業収益や実体経済は改善してきており、低金利の持つ景気刺激効果は強まってきています。先行きについても、こうしたこれまでの金融緩和措置の効果が強まっていき、国内民間需要の自律的な回復を後押ししていくと期待されます。従って、現時点で追加的な金融緩和が必要とは考えていません。』

>従って、現時点で追加的な金融緩和が必要とは考えていません。
>従って、現時点で追加的な金融緩和が必要とは考えていません。
>従って、現時点で追加的な金融緩和が必要とは考えていません。

言い切りキタコレ。

何かね、そんなに言いきらなくても良いと思うのでして、「今回は追加緩和は行っていませんが、先々の金融政策運営に関しては先程申し上げたように予断を持って臨むものではありません」くらいにしておけばと存じますが、こういう言い方をするのが俊ちゃん的な狸芝居が苦手な真面目な白川さんらしい所でございます。

『繰り返しになりますが、先程申し上げた2つの柱に基づいて金融政策を点検していくということを、毎回の会合で行っていきたいと思っています。』

と言う事で、まあ今回の会合での謎の施策に関して言えば、「新成長戦略の具体化向けに呼応した政策を出しましたけれども、追加緩和はしたくありませんので宜しく」という所でしょうな。というのが判るのでありました(^^)。


しかしまあ何ですなという感じなのですが、今回の会見では折角展望レポートで構造的な問題と循環的な回復のバランスを取っているのに、循環的な回復の話と、追加緩和しませんよ発言で何か「ああやはり循環の回復に注目しちゃっているのね」というようなイメージになるのが残念。

で、もっと残念なのは展望レポートの基本的見解の家計部門の中で今回わざわざ入ったこの一節。

『また、企業収益の回復を背景に、株価も上昇してきている。』(今回の展望レポートより)

・・・・と書いて、ついでに総裁が追加緩和必要無い発言をした途端にこの相場とかもう何と言うか何かのフラグを立てているとしか思えない美しさなのですがorz










2010/05/07

お題「展望レポートから」

ダウの瞬間の謎の1000ドル下げはともかくとして、為替市場とか見事にヒャッハー状態ですなあ。いやーあっはっはorz

#本当は総裁会見の補足もしたかった(要するに「追加緩和はしとうないでおじゃる」という話です、で、その話の直後にバルカン半島方面が欧州の火薬庫の名に恥じない働きをしているのが更にチャーミングなのでございます)のですが時間と量の関係で今日はスルーですm(__)m


○冒頭に構造問題を強調した展望レポート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1004a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回=昨年10月)

基本的見解の冒頭部分を前回と今回で比較するとだいぶトーンが違うというのが判るかと存じますので比較引用。

まずは今回分。

『わが国も含めた世界経済は、金融危機に起因する急激な落ち込みから脱出し、昨年後半以降は回復基調を辿っている。』(今回)

と回復の話をしていますが、その後は構造的な話を。

『もっとも、世界経済は、危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない。この間、世界経済の構造に大きな変化が生じていることや、よりバランスの取れた持続的成長に向けて各国が新たな課題に直面していることも、明らかになってきている。すなわち、新興国や資源国の世界経済に占めるウエイトが大きくなるとともに、それらの国々における経済活動が、資源価格の変動やグローバルな資金の流れに大きな影響を与えるようになってきている。わが国も含め先進国では、大規模な財政支出の結果、公的債務残高が未曾有の水準にまで達している。また、金融危機の経験を踏まえて、金融の規制や監督の見直しの議論が進んでいる。』(今回)

新興国どうのこうのというのが微妙に謎なのですが、先進国での政府債務問題の話までしてますな。

『わが国においては、少子高齢化・人口減少などを背景とした国内需要の減少が見込まれる中、実質成長率や生産性を引き上げていくことが、重要な課題となっている。』(今回)

この結果謎の指示が出たということのようですが。

『以下では、世界経済およびわが国経済におけるこうした中長期的な変化や課題を念頭に置いた上で、わが国の経済・物価情勢の展望について、先行き2年程度の中心的な見通しと、リスク要因の双方を検討することとする。』(今回)

ということで、構造的には問題含みという話をしているのですが、これを読んでいてもう一つチャーミングだと思うのは、日本のデフレ状態に関する問題の話を構造部分に入れていない事ですな。まあ物価見通しが一応先行きにプラスになるからというのを入れたように、そのうち上昇しますよという話をしているのと、そもそもそこの部分を入れてしまうと「じゃあ追加緩和しろ」と言われるからという所ではないかと思いますけどね。


ではまあ前回の当該部分を引用してみます。

『わが国を含め世界経済は、昨年秋以降の金融危機がもたらしたパニック的な経済・金融活動の収縮という深刻な事態からは脱出しつつある。国際金融資本市場には改善の動きが拡がり、世界経済は持ち直している。もっとも、これまでの国際金融資本市場や世界経済の安定化は、民間部門における様々な調整の進捗に加え、各国当局による大規模な政策発動に支えられている面も大きい。』(昨年10月)

『今後の世界経済は、米欧におけるバランスシート調整の帰趨、世界経済の持ち直しに大きく貢献している新興国経済の動向などに左右される。これらに関する不確実性は、一頃に比べ低下したとはいえ、依然高い状況にある。こうした点を踏まえ、先行きの経済・物価情勢を展望するに当たっては、中心的な見通しと様々なリスク要因に十分注意を払って点検を行うことが必要である。』(昨年10月)

前回と違うのは先程申し上げた件に加えて、欧米のバランスシート調整がどうのこうのという部分が抜けています。これは今回の見通しの中で、今後の欧米でのバランスシート調整に関して「着実に進捗する」という見方をメインにおいている所が影響していると思います。

ということで、まあ構造問題を強調しているのは強調しているのですが、その内容がモロに下押し方向でのデフレとかバランスシート調整とかの部分だけでも無い所が微妙は微妙な感じはします。ただまあ前回のトーンよりも「回復していますが危機以前とは違います」というのを冒頭に入れた部分で構造問題を強調してますなあという感じでしょうか。


○循環的には回復を更に強調

で、その次の経済情勢の見通し部分。

『2009年度後半のわが国経済は持ち直しを続けた。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりを背景に、輸出・生産は増加を続けた。また、企業収益の回復に伴い、設備投資は下げ止まりに向かった。個人消費も、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直した。この間、公共投資は減少に転じた。』(今回)

というのがレビューでして、その次は見通し。

『先行き2010年度から2011年度を展望すると、わが国経済は回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

これが前回はこうなっていたのですな。

『先行き2009年度後半から2011年度を展望すると、わが国経済は、他の先進国と同様、世界経済の動向に引き続き大きく左右される展開を辿る可能性が高い。』(昨年10月)

どう見ても上方修正です本当にありがとうございました。

『耐久消費財に対する各種対策は、その需要刺激効果が次第に薄れていき、2010 年度中には完了すると見込まれる。もっとも、新興国・資源国の力強い成長を背景に輸出は増加を続けるほか、企業収益の回復に伴い設備投資も持ち直す可能性が高い。』(今回)

『また、企業活動が活発化するにつれて、雇用・所得環境の改善も次第に明確化していくため、個人消費や住宅投資の伸び率は高まっていくと考えられる。これらを踏まえると、2010年度のわが国の成長率は、潜在成長率を上回る水準となると見込まれ、2011年度には更に高まる見通しである。』(今回)

どう見てもダム論です本当にありがとうございました。ちなみに前回はどうなっていたかと言いますと。

『現在、わが国の景気は持ち直しつつあり、2009年度後半は、海外経済の改善と経済対策の効果を背景に、景気は持ち直していくとみられる。2010年度もこの傾向は維持されるものの、世界経済の回復のペースが緩やかなものに止まるとみられること、国内においても需要刺激策の効果が減衰する中で、雇用・賃金面の調整圧力が残存することなどから、年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高い。』(昨年10月)

『その後は、米欧におけるバランスシート調整が相応に進捗するとともに、わが国においても、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられる。このため、2011年度には、わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通しである。』(昨年10月)

で、潜在成長率が実質で『0%台半ば』(この数字は前回と同じ)となっている中で実質GDPの見通しが2010年度で+1.6%〜+2.0%(前回は+1.2%〜+1.4%)となり、2011年度で+2.0%〜+2.2%(前回は+1.7%〜+2.4%)となっている(2011年度の見通しが前回より若干下がっているのは、単に2010年度の見通しを引き上げた分だけ11年度の発射台が変わっている為で、実際には10年度の見通しが0.5%ほど上方修正されているので11年度も上方修正になっていますな)という強い数字を出していまして、そ〜ゆ〜状況だと物価もそのうち上昇するでしょという見通しになりますわな。うーむ。



○項目別展開の企業部門と家計部門

項目別の話はサラサラと流しますが、まずは企業部門の今後の見通しから。

『今後、世界経済に関する企業の中長期的な成長期待が維持される中で、生産は増加基調を維持し、企業収益も回復を続けると考えられる。こうした動きに加え、後述のように金融環境が改善していくことから、設備投資も持ち直していくことが見込まれる。』(今回)

前回との比較で目が行くのは「ヘッジクロースが抜けた事」です(^^)。

『今後、在庫調整の影響が後退していくほか、内外における需要刺激策の効果が減衰するにつれ、生産の増加ペースが一時的に弱まる局面はありうるが、世界経済の緩やかな回復傾向が持続する限り、生産の増加基調は失われないものとみられる。また、グローバルな需要に関する企業の中長期的な成長期待が大きく下振れするという事態が生じない限り、生産の増加や企業収益の復調に伴い、設備投資も徐々に回復していくと見込まれる。』(昨年10月)

前回のヘッジクローズ入りまくり状態からいきなりのヘッジ解除ですよ先生。

『非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力の継続などから、業績の改善は相対的に遅れる可能性があるものの、輸出関連製造業における業績回復の影響は、徐々に波及していくと考えられる。』(今回)

『一方、非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力が需要の押し下げ圧力として働くほか、後述するような家計部門の厳しさを踏まえると、回復は製造業より遅れる可能性が高い。』(昨年10月)

どう見てもダム論全開です本当にありがとうございました。


で、家計部門ですが。

『雇用環境をみると、所定外労働時間が増加を続けているほか、有効求人倍率も緩やかに上昇するなど、一頃に比べ、改善の動きがみられ始めている。こうした状況のもとで、個人消費は、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。これらの対策は、2010 年度中に完了すると見込まれるため、個人消費の回復ペースは一時的にやや鈍化するとみられる。』(今回)

ふむふむ。

『もっとも、生産増加の影響は、徐々に雇用・所得環境に波及していく方向にある。また、企業収益の回復を背景に、株価も上昇してきている。今後、企業活動が活発化するにつれて、雇用の回復もさらに明確化するほか、賃金にも改善の動きが出てくるため、個人消費の自律的回復の動きも次第に現れてくるとみられる。また、雇用・所得環境の改善などを背景に、住宅投資も緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)

いやあこちらもダム論みたいな話ですな。しかも株価上昇まで(^^)。こちらの前回はこんな話になっていましたです。

『個人消費は、各種対策の効果により耐久消費財で持ち直しの動きが続くとみられるものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きが続く可能性が高い。』(昨年10月)

『最近では、輸出・生産の増加を背景に、所定外労働時間が増加しているほか、新規求人倍率も下げ止まるなど、雇用指標の一部に変化がみられる。もっとも、労働需給の緩和基調は当面続くとみられるほか、賃金も特別給与を中心に厳しい状況が続くものと考えられる。雇用・所得環境の改善は、企業収益の回復に遅れる傾向があるため、個人消費の持続的な回復が展望できるのは、見通し期間の後半となる可能性が高い。』(昨年10月)

いや〜こちらも強いですなあ。


○ということで循環的には回復を強調するわダム論みたいな話はでるわ

ってな感じでして、企業部門と家計部門をサラサラと(といいつつ殆ど引用したのですがorz)比較してみましたが、昨年10月時点とは随分とトーンが違っていますなあというのが見えて参ります。逆に言えばこちらばかりを強調すると無茶苦茶強いという印象ばかりが目立つ次第なのですが、それを冒頭の構造問題で中和したという感じになってますなあという所ですか。

そんなに強いかねという気もするがとか思ったら5月1日の東京新聞社説が中々良い感じでしたな(^^)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010050102000068.html
日銀リポート デフレ脱却はまだ先だ

『日銀は現状で資本と労働を過不足なく稼働した場合に実現できそうな潜在成長率を0%台半ばとみている。したがって、一〇年度は潜在成長率を上回る成長を実現し、一一年度はさらに加速するというシナリオになる。

 だが物価も成長見通しも、いささか手前みそにすぎないか。潜在成長率を低めに見積もったうえで、現実の経済を楽観視したきらいがある。そうすれば景気は過熱気味の形になるから、物価上昇という予想が出てくるのは当然だ。』(上記URLより)

・・・・・・(^^)


○ところで金融環境なんですけど

今回の展望レポートで金融環境の部分ではこのような説明がございます。

『一方、資金需要面をみると、企業収益の回復に伴いキャッシュフローが増加することに加え、これまで手許資金を潤沢に積み上げてきたこともあり、企業の外部資金に対する需要は弱い状態が続くと見込まれる。こうしたもとで、設備投資の回復が本格化するまでは、企業の資金繰りの改善と、銀行貸出やCP発行残高の減少とが、並存していく可能性が高い。』(今回展望レポートより)

・・・・・えーっと、では何で今回成長戦略を資金面から支える施策を実施する必要があるのでしょうか???????????????

#という悪態で引用大会終了ということで(汗)






2010/05/06

お題「謎の成長戦略でぽかーんでござるの巻」

展望レポート全文と会見要旨を1日に公表したので、微妙に色々と素材があって困りますな。

○謎の指示がでました

決定会合声明文で市場がぽかーんだったのですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100430.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』

『2.本日の政策委員会・金融政策決定会合では、「経済・物価情勢の展望」に関する検討を行なった。会合では、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であるとの認識のもと、金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針が確認された。』

で終了すれば別に何の問題も無い予想通りの話だったのですが・・・・

『併せて、現下の日本経済の状況を踏まえると、成長基盤の強化を図ることが必要であるとの認識が確認された。こうした認識に基づき、日本銀行としても、成長基盤の強化に資する新たな取り組みを行うことが必要である、との考え方が共有された。このような議論を受けて、議長は、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。』

・・・・・・?????

ナンジャソリャという感じですけど、「成長基盤強化」の為って全く持って意味判らん(いやまあ意味は判るが)ものでございまして、最初「何かあったっけ」と思って人と話をしていたらこんなものがあったのね。

1998年11月13日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/k981113a.htm
最近の企業金融を踏まえたオペ・貸出面の措置について

1998年11月27日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/mok9811b.htm
企業金融支援のための臨時貸出制度基本要領

すっかり忘却の彼方ですが、これは年末と期末の金詰まり対策という面もあって、貸出を伸ばしたらその半分をバックファイナンスしますよという趣旨で、期末に掛けての時限措置としての貸出制度でございましたようです。

でですな、今回の総裁会見でもそのような話が出ていますので、まあそんな感じの物が出るのでしょうかねえ。よー知らんが。

今回の総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005a.pdf

『資金供給面から支援する方法と申し上げましたが、これについては成長基盤の強化を支援するという狙いが円滑に実現できるように、民間金融機関や企業のご意見・ご要望を十分踏まえるとともに、日本銀行がこれまで実施した措置を通じて得られた経験も参考にして、検討していきたいと思っています。ちなみに、日本銀行では、これまでも、その時々の経済金融情勢や政策目的に対応して多種多様な資金供給の方法を採用してきており、この点では、日本銀行は先進国の中央銀行の中でも、最も豊富な経験とノウハウを有していると思っています。例えば、1998 年から1999 年にかけて実施した「企業金融支援のための臨時貸出制度」のような枠組みは、民間金融機関の自主的な融資努力を資金供給面から後押しするという点で、今回の検討においても参考になると考えています』(上記URLより)

はあはあそうですか。

ちなみに、あたくしがあと勝手に予想した措置としては(1)保証協会保証付の証書貸出を全部適格担保にする(もともと適格だったら勘違いです)、(2)日本政策金融公庫や日本政策投資銀行の制度融資にバックファイナンスをつける、という程度のものですが、はてさて何をやるのやら・・・・・・

ちなみに市場ちゃんの反応はと申しますと、債券市場は「ぽかーん」状態で反応の仕様もなく、金先が「これはもしかしてTIBORが下がるような動きになるのではないか」という事で若干買いで反応したのですが(1ティックほど)、総裁会見を見ると追加緩和する気無さそうなのでまた元の木阿弥に(^^)。


○ところで企業金融オペを終了したばっかの筈ですが

とまあそういう事で内容が良く判らんのですが、98年の臨時措置みたいなものが出ますという話なのですけれども、えーっとあのその3月末で目出度く企業金融関連の措置を終了して、企業金融特別オペは新規の実行が無くなって後は落ちるだけとなり、行きがけの駄賃でCP買現先オペの残高がゼロになったのですが、いきなりそれと整合性の取れないようなネタが出てくるのは何ということぞという所ですわな。

いやまあこの点に関しては「従来は危機対応の流動性対策で、今回の措置は成長戦略なので話は違う」という理屈で説明してくるとは思うのですが、それにしても話として何だかなあ感は払拭できませんわな。


○日銀が個別企業への資金配分に関与するのですか???

日銀様におかれましては、先般(昨年1月)CPやら社債の買入を公表した時にはこのような文章をわざわざ公表しているのですよね。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf
企業金融に係る金融商品の買入れについて

ええ今回の措置は買入じゃなくて金融機関への融資だから関係無いと言ってしまえばそれまでですけれども、この中には中々良い指針が出ていますよねえ(^^)。

『3.実施に当たって留意すべき事項

(1)個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

? 日本銀行による買入れの実施が個別企業への恣意的な資金配分となることを回避しうるよう、例えば、@発行体からの直接買入れではなく日本銀行の取引先である金融機関等を通じた買入れとすることや、A入札方式による買入れとすることなど、適切な買入れ方式を採用する。』(上記URLより)

>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

いや勿論今般の措置は買入でも無いですし、どうせ金融機関への貸出なり担保政策なりという話になるので個別企業への恣意的な配分にはならないですという言い訳になると思うのですけれども、今回の総裁会見ではこのような話をしていますよね。

『それから、成長力の強化ということ自体は第一義的には民間経済主体が取り組むことですし、基盤という点については政府が果たす役割が大きいということはその通りです。政府でも昨年12 月に成長戦略をまとめ、現在その肉付け作業を急いでいると認識していますし、民間企業も様々な取り組みを行っています。その意味では、今も様々な主体が取り組んでおり、日本銀行も自らの行動を通じてこうした動きにさらに弾みをつけていきたいという思いがあります。ただし、これは政府に対して要請することが主たる目的ではなく、日本銀行として、日本銀行の持っている機能を使って民間を後押ししたいということです。』(4月30日総裁会見より)

・・・・・はてさて、政府の成長戦略と言いますと、この辺になるのかなあと思いますけれども。
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/index.html
「新成長戦略(基本方針)〜輝きのある日本へ〜」について

その中に色々と書いてあるのですが、そこの2番目にあるプレゼン用の資料のようなものを見ますと、2ページ目(というか表紙の次のページ)に『新需要創造・リーダーシップ宣言』というのがあって、新たな成長戦略の「第3の道」とやらにこのような事が。

『第3の道 「需要」からの成長
→環境・健康・観光で100兆円超の需要
→国民生活の向上に主眼』(新成長戦略(基本方針)のイメージ資料から)

・・・・・この辺を見てますと、何か日銀が成長戦略に協力という話になると、上記のような分野に対する融資の後押しをしますよというような話にも見えて来る訳でして、確かに個別企業がどうのこうのという訳ではないですけれども、特定の産業分野に対して日銀が融資の後押しをしますよというような話になりますと、ど〜考えても去年言ってた話と違いわせんかなという感じですな。

#「傾斜生産方式」という言葉を思い出したのは昭和脳ですかそうですか


でまあ会見でもその点にツッコミが来る訳でして(^^)。

『(問)(前半割愛)2点目は、今回、中央銀行としての矩(のり)を超えてしまうのではという懸念も与えかねない行動に出ようとしているのは、成長戦略を考える上で、政府から日本銀行に何か新しく政策を出してほしいという要望があってのことなのかを伺います。』

『(答)(前半割愛)オーソドックスな中央銀行の業務ではないという意味では、ご指摘の通りと思いますが、現在、日本経済の最も本質的な問題が生産性の低下である以上、その問題に対して何がしかの貢献をしていくということは必要なことだと思います。』

で、日銀がそういう貢献をするというのは違和感が。計画経済じゃ無いんですし。

『ただ、繰り返しになりますが、中央銀行としての矩を超えることはあってはなりません。何が矩を超えることになるのかと言いますと、1つは個別産業や個別企業に対するミクロの資源配分への介入となることは避ける必要があると思っています。』

成長戦略だの生産性だのという話をしている時点で恣意性が入ると思うのだが。

『また、日本銀行が金融政策を行っていく上で、資産の健全性がしっかり確保されていないと、将来の金融政策の遂行能力に対して信認が低下してしまいます。その2点は少なくともしっかり意識し、矩を超えることのないような制度設計を考えていきたいと思っています。』

資産の買入じゃなくて銀行向け与信だったら別にまあそんなに懸念する話でも無いと思うのだが。

『また、政府の方から要請があったのかということですが、そのような要請があったわけでは全くありません。』

はあそうですか(棒読み)。


○しかし現状の問題は別に金詰まりでも貸し渋りでも無いのだが

金詰まりというのは流動性の問題で、貸し渋りというのはバランスシートの問題でございますが、現状の金融機関の状況を勘案すると、どちらにも問題は無い筈でございまして、巷間貸し渋りがどうのこうのとか言われますけれども、そもそも前向きの資金需要でそれなりにちゃんとした企業さん相手だったら銀行は貸出をしたくて仕方ない状態になっている筈でございますので、そんな中で日銀が何をするのよというか、日銀の変なアピールのダシに使われる金融機関カワイソスという感じがするのですけどねえ。

総裁会見より。

『(問) 成長基盤強化について2点お伺いします。まず、政策の発表を聞いた際に、政府系の金融機関でしっかりやればよいことではないかと感じました。また、民間の金融機関に聞くと、先程おっしゃった1998年の企業金融支援の臨時貸出制度は貸し渋りの改善を促すものであり、今は、成長力のあるところには貸したいけれども貸し出し先がないというジレンマがあると思います。その中で日本銀行が出ていく余地はあるのか、違和感があり理解できないのですが、お考えを伺います。(2点目は先程引用したので割愛)』

どう見ても正論です本当にありがとうございました。

『(答) 政府系の金融機関も、様々な取り組みを行っていると思います。ただ、政府系金融機関の場合には、自らが企業に貸し付けることが業務のベースになるわけです。今回、日本銀行が検討しようとしていることは、日本銀行自身が直接企業に貸し付けようというわけではありません。あくまでも、民間金融機関の取り組みを支援していこうということであり、政府系金融機関とは役割が異なっていると思います。』

?????

『それから、先程も申し上げました通り、日本銀行の出す資金の量によって勝負をしていこうというものでは決してありません。』

ますます意味判らん(ちなみに、この部分って今回の会見でのもう一つのポイントでもあるのですが、「追加緩和はしたくないでおじゃる」という話に繋がるのですな)・・・・

『今、おっしゃったように、金融機関から見ると、資金需要がない状況だと思います。ただ、何か障害があり、工夫をすれば様々な資金需要の芽がもっと生きてくる、という可能性はあると思います。』

いやだからそれは補助金とか予算の世界ですから。

『だからこそ、民間金融機関もこうした面の取り組みを始めているのだと思います。従って、あまり大きなことは言えませんが、日本銀行としても、民間金融機関の業務を見ている立場から、また、中央銀行として資金を供給する立場から、日本銀行がどのような工夫をすれば民間金融機関の努力が後押しできるのかをしっかり考えていきたいと思います。』

これで考えた結果特にありませんでしたという回答が執行部(事務方)から来たら理事や局長の皆様を神認定して毎日崇めたいと思うのですけれども(^^)、まー従来の流れから常識的に判断すると何か無理矢理にでもネタをひねり出すんでしょうな。


○いずれにせよ意味は謎ですな

他にもまあ謎な点は多々あるのですが、本件が(1)マジで日銀が成長戦略を実施するんじゃああああ、といきなり産業金融もどきの話を始める意欲満々なのか、(2)単に日銀の謎のアピールあるいは政府への「御接待」なのか、がさっぱり判らず、実際に出てくる施策を見ないと判断のしようもない所なのですけれども、いずれにせよ上で引用したように「実際には金融機関に貸出のボトルネックがある訳でもない」という状態なのに謎施策の指示を出したと発表するとか、特に量を出したり金利を下げたりという話でも無さそうな時点で、まー今回の対話もまた「市場との対話」ではない所との対話ですなあという感じでございます。

#だからすっかり置いてけぼりとなった市場は反応できずにぽかーんだったのですが

まあしかし市場からすると(つーか市場じゃなくてもですが)企業金融措置を終了させた(企業金融特別オペは残高残ってますけど)直後にいきなりこの施策(指示しただけですが)というのは謎としか申し上げようがございま千円ですなあ。

それとね、会見でも質問されてましたけど(今日は引用割愛)、成長戦略だの生産性向上だのという話になってきたら、本政策が臨時措置で済ませる訳にもいかなくなる(臨時措置如きで成長だの生産性だのが向上したら誰も苦労はしない訳で)と思うのですけれども大丈夫かねという感じもするのでございますがどうなんすかね。


○1998年の決定にあたって中原伸之審議委員(当時)が反対しているのだが

さて、昔話ネタになりますが、さっきURLを乗っけたように98年11月に臨時貸出制度の創設を公表したのですが、まあそれを実施しましょうというのを先行して発表した回の決定会合で当時の中原伸之審議委員が反対しているのでして、その理由が中々読み応えがあるので最後に引用しますね。

1998年11月13日の金融政策決定会合議事録(超どうでもいいけど、この辺りの決定会合には谷垣禎一大蔵政務次官が出席してますな)から。

採決前の各委員の意見表明部分(議事録84ページ)より。

『中原委員

私はCPについては賛成であるが、他の二案については十分に検討し、議決した度毎に公表すべきだと考える。まずCPについては、昨年から一年間オペを行ってきておち、非常に実績もある。今回の措置を採れば、民間の方でも先程2兆円と説明していたが、然るべき反応はあるだろうと思う。また、CPオペの積極化は先般の提案の延長線上としても捉えられるので、賛成である。

他の二つについては、方針自体をここで発表しない方が良い。やはり、実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。そもそも今回の議案を企業金融の円滑化として直接打ち出すことにも反対する。やはりセントラルバンキングである以上、まず銀行に対し一般的な形でのオペを行い、先程山口副総裁が言われたようにそれが滲み出る格好であるならば結構であるが、セントラルバンキングの立場として筋を通すべきではないか。特に、証書貸し付けを担保化することは十分考えられるが、現段階で行うことになると、例えば企業のリストラ、再編成の動きに対し、それを緩めるようなことになりはしないか。あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。現在の段階で行えることはCPオペの積極的な活用であると思っている。』

もうね、「実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。」とか「あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。」とかイイハナシダナーと申し上げるしか無いですな(^^)。

また、採決後の中原さんの反対理由部分(議事録106ページ)も内容がだいぶ被りますが引用しますね。

『中原委員

反対の理由を申し上げる。基本的な反対理由は中央銀行としての在り方に関係するものである。中央銀行は主要目的に専念し、その他の機能については出来るだけ保守的に機能すべきであると思う。銀行に対する流動性の供給は一つの大きな業務であるが、企業金融は元々民間銀行の領域であり、そうした仲介機能には極力踏み込まない方が良いというのが基本的な理由である。

具体的に申し上げると、第二の貸出制度は昔の制度が復活する印象を世間に与える。最も懸念すべきは、銀行に対する直接貸出が今後拡大されていくのではないかという危険性をはらんでいることである。第三の社債、証書貸付等については、一つはこれが仮に恒久的な制度になるとするならば、十分考える必要があり、時期尚早だということであるが、もっと根本的には適格の社債が限定されてくるということである。これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。また、証書貸付等については、債務者の承諾が必要な訳であり、むしろ方向としては極力印紙代を200円にして手形に切り替え、その手形をオペに活用するのが正しいと考えている。いずれにしても、CPオペのように実績があり、限られた分野で日銀が重要な役割を果たしてきたものを拡大することは意味があると思うが、現時点において貸出制度を臨時に創設したり、社債、証書貸付等を担保としてオペを行うことについては非常に疑問があるし、日銀の中央銀行としてのイメージを傷つける恐れがある。日銀も信用の最後の砦ではなく、何でもありかと、それならばさらにやれということになりかねない点を危惧する。』

「これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。」と言う部分がスバラシス(^^)。



○その他メモ(明日のネタとか)

ということで今回は謎の措置に関する感想(悪態とも言うが)で終了しちゃいましたけれども、あと今回の会合でのポイントのような気がするのは以下の通り。

・展望レポート

循環的には結構楽観というか強気っぽい内容になっているので「ほほー」と思ったのですが、構造要因のリスクにきっちり言及している所は割とバランスを取っているんじゃないかとは思います。ただし、会見のトーンがやはりまあ景気に強気なのと、追加緩和を思いっきり否定するような内容だったので、結局強い内容ですねというのが印象に残ってしまったような気がする。詳しくは明日。

・総裁会見

今回引用したのは成長戦略関連の指示に関する部分でしたが、追加緩和に関する質問については結構きっぱりと「現時点で追加緩和の必要はない」とか言いきって、しかも特に含みを持たせるような言い方をしていなかったのが「あちゃー」という感じでございまして、また例によって例の如くの様式美コースかと思うのですが、まあそんな感じで追加緩和に関して華麗にゼロ回答なのがポイントかなあと思いました。


あと、全く別の市場ネタですが、3か月TBの入札額が今月から減額になっていますな。