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2010/10/29

お題「決定会合レビューとFOMC雑談」

決定会合前倒しを受けてモーサテのにーちゃんが「あくまでも独自の判断というのが本来だと思うのですが」とやや小さめの声で言っていたのですが、この前の緩和決定の翌日に「更にやれ」という発言を大声で言ったのは会社様のシナリオで、今日の発言が本音とゆーことですね、わかります(^^)。

何か色々と雑談的なネタの多い決定会合ちゃんでございました事よ。

○次回会合前倒しとかワケワカンネ

まずは声明文。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101028.pdf

資産買入の明細に関しての話は後ほどという事で、ワケワカンネというか昨日の後場に10年ゾーンの全力買い(引値を見ると10年がやたら強いのでそうなんでしょ)を誘発したのが決定会合前倒しの話。

『3.次回金融政策決定会合の開催予定日の変更

次回金融政策決定会合の開催予定日については、指数連動型上場投資信託(ETF)および不動産投資信託(J−REIT)の買入れを早期に開始できるよう基本要領の審議・決定等を行うため、11 月15 日および16 日から、11 月4日および5日に変更することとした。』

えーっとですな、つまりFOMCが2、3日の日程で実施されるのでその直後に設定しましたという話ですな。大体からして早期に開始するためにどうのこうのって言ったって、市場に問題が発生していて状況が切迫しているとなら別ですが、特に一刻一秒を争うタイミングでもないので、1週間程度前倒しする意味は無いですわな。

とゆー風に考えますと、普通にこれは「FOMCシフトですね」という発想になり、当然ながら「FOMCでの結果次第で円高が進行したら追加緩和措置を実施します」という思惑を盛り上げてくれと言ってるようなもんでして、別にこんな事しなくたって、必要ならば臨時会合開催して追加緩和すりゃ良いですし、そもそも為替介入の番ジャネーノという所であって、まあわざわざ思惑盛り上げてくださいという動きをするのはワケワカンネ。

まー普通に考えますとヤケクソ気味にやる気を見せるという話ですが、従来そういうことやってなかったのに急にやる所が毎度おなじみの「白川節で白川総裁的な威勢のいい話というか白川総裁的正論をぶちあげておいて、いざ差し込まれると急にポッキリ折れる」という白川日銀クオリティーを髣髴させる訳で、就任早々にイラク戦争で臨時会合を召集するという意味不明な攻撃をかました福井の俊ちゃんの「端から開き直りスキーム」に対して見せ方というか一貫性がねえなあという所ですが、その他に雑感を。

まー何ですな、この前倒しって今申し上げたようにわざわざ「期待を盛り上げて下さい」というような動きなのですけれども、これまた後で申し上げる展望レポートの内容がやたらめったら強気の見通しになっておりまして、期待を盛り上げるのは良いのですけれども、実際問題として来週の会合で追加緩和を実施という話になりますと、前回決めた追加緩和が実際にオペレーションに乗ってくる前に更に追加緩和ということで、じゃあ前回の決定はナンダッタンダという事にもなりますし、その上展望レポートが強い内容なのに更に追加緩和決定となりますと、この展望レポートでの景気見通しを1週間で変更したんですか意味判りませんねえという話になりますわな。

ということで、実はFOMC後に円高進行して、追加緩和の追加緩和をしますよという話になった場合に、どういう屁理屈を繰り出してくるのかが今からワクテカしている(している方もヤケ気味ですがorz)のであります。

あとですな、この「FOMCシフト」というのがあたくし的には実にこう味わいを感じる次第でしてですな、FRBに対する新手の嫌がらせではないかという気もするんですよ。9月の仕返しって奴ですな。まあ与太雑談ですが(^^)。

つまりですな、今回のFOMCシフトによって(1)FOMCによる決定は日銀が追加緩和の可能性を考える程のインパクトのある物なのか!!という思惑を与える事によってFRBに追い込みを掛ける、(2)日銀がわざわざFOMCシフトしないといけない位、FOMCで何をやるのかがまだ全然纏まっていないんですよおおおお、とアピールしてFRBに嫌がらせをする、(3)FOMCで何が決まるのかというような中銀同士の連携が全然出来てなくて、FRBがQE2で暴走気味なんですよお、とアピールする、などというようなFRBへの新手の嫌がらせを実施するという意図も実はあるのではないか等と考えるあたくしの根性及び性格が捻じ曲がっておりますですかそうですか(あほです)。

まあいずれにせよ、わざわざFOMCシフトするとか正直イミワカンネというかワケワカンネという感じでございます。


○資産買入明細に関して少々

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1010f.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の制定等について

内容がやたらあって(PDFで31ページ)中々めんどいのですが、こういうオペレーションに関しては「神は細部に宿る」じゃないですけれども、細かいオペの実施要綱の細かい部分が非常に重要になったりするので、あまり斜め読みベースでお話をするのは何ですからもっと読んでから書くなら書きますが、とりあえず簡単に。

・ETFとかは良く判らないのでパス

ETFとJ−REITの配分がもうちょっとREITが多いのかと思いましたけれども、まあこれはフィージビリティーの問題とかもあるのでしょうからとりあえずスルー、というかREITに詳しい人教えてジェネラル!


・国債と短国は金利的なインパクトはそんなに大きくないと思いますが

で、国債と短国なんですが・・・・

『7.買入方式

売買利回りの下限(以下「下限利回り」という。)を年0.1%とし、買入対象先が売買利回りとして希望する利回りから下限利回りを差し引いて得た値(以下「売買希望利回較差」という。)を入札に付してコンベンショナル方式により決定し、これにより買入れる方式とする。』(別紙2「資産買入等の基金の運営として行う国債等買入基本要領」)

ということは、輪番オペや短国買入と違いまして、出来上がり0.1%未満の利回りでの買入は行われないというのが第一の特色。それから、今回は「前日の引値対比の利回り較差入札」ではなく「絶対金利水準での入札」となりますので、この場合は当然ながら「対象となる期間のイールドカーブを潰す効果」というのがあるでしょうなあという所です。

ま、2年の金利とか大概に潰れていますけれども、ちょっと足元では若干上昇というのもありましたので、それはまあ普通に潰れるでしょうという所かと存じます。ただまあ・・・

『4.買入残高および貸付残高の上限

(1)買入残高の総額は5兆円程度、貸付残高の総額は30兆円程度を上限とする。
(2)3.(2)に定める買入対象資産ごとの買入残高の上限は以下のとおりとする。
イ、利付国債 1.5兆円程度
ロ、国庫短期証券 2兆円程度』(別紙1「資産買入等の基金運営基本要領」)

とありますので、1年から2年の国債に関しては1.5兆円ですから月割りすると1250億円とかになる訳で、マーケットインパクト的にはそんなにあるのかいな(うっかりすると2年新発国債が第U非価格競争入札で追加発行される方が多い)という所でございますので、そうバンバン潰すという話にもならんでしょ。勿論金利上昇のアンカーにはなるでしょうけれども。

あとですな、短国もかつての量的緩和で30兆円をやるのに他にオペ手段が無くなって短国買入を連発して市場の流通玉が無くなって毎度毎度100円(利回りゼロ)入札になるというようなお洒落な事案がございましたが、今回はそもそも短国の発行量が増えている事もありますし、今回の2兆円というのを全部3か月TBが入ったとして目の子計算をすると、月に6700億円とかになる訳でして、一見多そうですけれども、3か月物だけで週に4.8兆円発行されている短国の発行量から勘案するとまあそんなにインパクト無しという所でしょう。

それから、利付国債の方を「1年以上」としているのは何か微妙。短国の方に1年以内の利付国債を入れても良いと思うのですが、残存で切らないでカテゴリーで切る形にした結果、1年以内のところでは短国は入るけれども利国は入らないという珍妙な市場分断状態になるのですよね。まあそんなに価格形成に影響は無いでしょうが。


・CPと社債は影響ありそうですが

(別紙4)の「資産買入等の基金の運営として行うコマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領」から。

『4.買入対象

「資産買入等の基金運営基本要領」3.(2)に定めるCP等または社債等であって以下の要件を満たすもののうち、買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。

イ、「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日付政委第138号別紙1.)に定める適格担保基準を満たすものであること。ただし、格付および残存期間に関し、(2)ないし(7)に定めのある事項については、当該規定の要件を満たすものであること。

ロ、6.に定める入札を実施する日以前に発行されたものであること。』

2番目の方はまあ「買入オファーにぶつけて発行する」というあからさまプレイを避けるという効果の話なのでまあ良いとして、「適格担保基準を満たすもの」という条件がついているので、適格担保銘柄になっているもので、更に格付け要件があるという話ですな。で、どの辺りが適格担保になっているのかという話とかはよー知らんのでパスしますが、よくよく見ると上の方に『買入対象とすることが適当でないと認められる特段の事情がないもの』というのもありまして、よーするに個別審査するという事なのでしょうか。

まあオペ参加希望者向け説明会が実施されるみたいなので、その辺りで内容は見えて来ると思います。

『(2)コマーシャル・ペーパーおよび短期社債

格付について、次のイ、またはロ、を満たしていること。

イ、適格格付機関からa−2格相当以上の格付を取得していること。ロ、イ、に該当しないコマーシャル・ペーパーまたは短期社債であって、その額面金額または元利金の全額につき連帯保証している企業がある場合には、当該保証企業が、適格格付機関からa−2格相当以上の格付を取得していること。

(6)社債

格付について、次のイ、またはロ、を満たし、かつ、残存期間が1年以上2年以下であること。

イ、適格格付機関からBBB格相当以上の格付を取得していること。ロ、イ、に該当しない社債であって、その額面金額または元利金の全額につき連帯保証している企業がある場合には、当該保証企業もしくは当該保証企業が発行する社債(保証付社債を除く。)が、適格格付機関からBBB格相当以上の格付を取得していること。』

ということで、まあ今回はこの部分はインパクトあるでしょという感じですわな。

『5.買入残高の上限等

(2)一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については1,000億円、社債等については1,000億円とする。ただし、CP等、社債等のそれぞれについて、買入れの時点において、買入残高が買入毎に日本銀行が別に定める時点における一発行体の総発行残高の2割5分を超えているものについては、買入対象から除外する。』

発行体の総発行残高の25%まで買うという事ですので、社債の場合は全体の発行額が多い場合には対象年限の銘柄全部買えちゃいますよ位のケースもアリエールなのかなあとちょっと思いました。

『6.買入方式

売買利回りの下限(以下「下限利回り」という。)を年0.1%とし、買入対象先が売買利回りとして希望する利回りから下限利回りを差し引いて得た値(以下「売買希望利回較差」という。)を入札に付してコンベンショナル方式により決定し、これにより買入れる方式とする。』

さっきの国債の時と同じ理屈になりますが、利回り絶対水準入札になりますので、これは該当する期間の社債・CPの銘柄間スプレッドが強力に縮小する要因になると思います。社債の場合1年を切るものは買入しませんので、まあ売るなら残存1年切る前に、ということになりますし、オペのタイミングというのもございますから投資家がオペを意識して外すのでしたら償還1年3ヶ月くらい前に売るのが吉と言う事に成りますかな(^^)。

というような事はとりあえず思いつきました。


○展望レポート一言メモ

いやーん、時間が無いわあああ(寝坊するあたくしが悪いのだが)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010a.pdf

時間が無いのでメモだけなのですが・・・・

『▽2010〜2012 年度の政策委員の大勢見通し

消費者物価指数(除く生鮮食品)

2012 年度  +0.2〜+0.8 <+0.6>』

えええええええええ!この数字強すぎじゃないですかああああああ!!

と思って基本的見解を斜め読みしたのですが、やたらめったら見通しが明るくて、米国ってコケるリスクが大きいんじゃなかったでしたっけとか、前向きの循環メカニズムって新しい料理の名前でしたっけとか、突っ込みたくなるのですが時間が無いので割愛。

でですな、「2012年度が+0.6%だから2012年度まで利上げ無い」とか言ってるどこぞのモーサテの説明は素人にも程がある話でありまして、物価安定の理解におけるホライズンは「中長期的な物価見通しとして2%以内のプラスの数値で中心が1%」なのでありまして、例えば来年の今頃になって、2012年度の数字をそのまま引っ張って2013年度が+1.0%とかになったら、普通に「中長期的に+1.0%という水準が展望できますので現在の異例の緩和措置は正常化しましょう」ということが理屈上は可能になりますので、そこの数字だけで時間軸が伸びたという訳ではございま千円。

しかも「大勢見通し」で+0.8%が一番上の数字ですから、上下2名を切った数字のベースで+0.8%ということは+0.8%が2名いますよという話ですが、+0.8%だったらそれこそ思いっきり2013年度が+1.0%超えを展望できるという話でして、そらあーた時間軸全然伸びないじゃないのよというような話にも。

勿論、実際問題としてはこのような数字になる訳無いじゃんという経済見通しのもとで「結局緩和は長期間継続するでしょう」という予想はありでして、まあ昨日見た本職の皆様のレポートはさすがにそういう論理展開になっておりましたと思います(全部見たわけではないけど)が、まあモーサテちゃんで「+0.6%で+1%に満たないから2012年度までの現状の政策確定」みたいな話をしておりましたので念の為申し添えますという所でありますけどね(^^)。

一方で2012年度で0.0%予想をしている人もいまして(全員見通しの方にある)、エライまた今回は分布が広いですなあという感じでありまする。いやまあ先の話だから分布が広いのは良いのですが、中長期的な物価安定の理解の数値からすると微妙なラインにある所なので、ここでの広い分布というのは政策インプリケーションがありまくって何ともという感じです。

しかし何ですな、先ほども申し上げましたが、内容的に結構強めのレポートになっていまして、まあ今回の追加緩和を織り込んでいますからという話だとは思うのですけれども、それにしてもこれだと次回追加緩和する時にどういう屁理屈をこねてくるのかが非常にワケワカランチ会長でございまして、わざわざ自分の手足を縛るというマゾ属性疑惑も起こりそうな白川日銀恐るべしという所でございます。

いやまあ一応物価見通しに関しては「CPI改定の影響はスルーしてます」という逃げがありますし、経済見通しでは米国の景気は基本的に回復という話を大前提として維持していますので、そういう意味では「いやあ米国がこけちゃいましたわあっはっは」という逃げも打てそうなのでそれはそれで逃げ場はあるのですけれども、何もこんな強めのトーンの展望レポート(願望レポート)を出さんでもという感じでございまする。


ということで、色々とインプリケーションがあるのですが、表面的な話で突っ込み不足っぽくて誠に申し訳ないです。


○これは酷い

時間が無いのでニュースURLだけ。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aISVTyn8TvIg
米FRBが国債購入規模予想で政府証券公認ディーラーに調査(Update3

『ニューヨーク連銀は、プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)を対象に調査を実施。「国債購入が発表され、6カ月間で完了した」場合の名目と実質の10年物国債利回りの変化を推定するよう求めた。プライマリーディーラーは購入額がゼロ、2500億ドル、5000億ドル、1兆ドルの4つの選択肢から回答する。』(上記URLより)

おいおいおいおいおいおい・・・・そんなの大規模ヒアリングしてどうするんだよ。

何かこう市場との対話とか期待のコントロールに失敗しつつあるという感じがするのでありまして、これはバーナンキ議長がお詫びに髭を剃る日も近いのではないかとガクブルの展開でございます。













2010/10/28

お題「本日も雑談で(汗)」

○米国金利上昇とな

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aS8G3LXT8Hz0
米国債:10年債、6日続落−追加緩和が小規模にとどまるとの観測で

ブルームバーグによりますと米国10年債が2.720%で30年債が4.056%とゆーことのようで、30年が4%抜けちゃいましたなあ(とりあえず寸止めで粘っていた)というのもありますし、10年も2.7%とは随分戻りましたなあという所でございます。

でまあそれはそれで良いのですが、記事にありますように『30年債利回りは続伸。2年債利回りはほぼ変わらず。良好な経済統計の内容を背景に、FRBの金融緩和策では追加購入する国債の規模がトレーダー予想を下回るとの見方が広がった。』(上記URLより)ということで、何でもWSJとかにその手の記事が出たとか言ってましたけど、こりゃFRBの捌きが難しくなって来ましたなあという感じがするざます。

つまりですな、元々金融緩和期待で米国長期金利が低下してきたのは良いのですけれども、9月のMinuteが出る前後からその追加緩和ネタが「通貨(切り下げ)戦争」だの「プリンディングマネー」だのという扱いになってインフレ期待のような物が盛り上がったと思うので、実際に国債買入を大規模に実施したら瞬間は買われるにしてもその後ってやっぱ「プリンティングマネー」「財政マネタイズ」というネタで長いところの金利は上昇しても不思議じゃないと思っていたのですが、昨晩の米国債市場の結果からすると追加緩和の規模が小幅だとそれはそれで売られるという事なのでしょうか。

何か単に足元の経済指標がそんなに悪くないので、ここもと実は景気悪化の方を織り込みすぎていた反動が来ているだけなのかも知れませんが、金融緩和というか国債の買入の規模に関してもマーケットがどの程度の期待をしていて、規模によってどのような反応をするのかという点に関してFOMCの市場コミュニケーションがどのようになるのかをニヤニヤしながら眺めたいと思いまする。

一応あたくし基本的にメインで考えているのは、米国はそうは言ってもFOMC議事要旨などにあるように、長期金利(30年のMBSとか)低下によってゲロゲロの住宅市場の支えになっているというような認識でいると思われますので、長期金利(特により長い所)の金利をホイホイ上げるわけに行かずという事なので、そんなに派手派手に国債買入をぶち上げて「プリンティングマネー」の発想が先に来て市場だけ金利上昇で走っちゃうというのを避けるから、そんなに急にでかい規模での国債買入を打ち込まないかなあとか漠然と思っていたのですけれども、上記のニュースのような感じで「小規模だったら失望売り」が30年金利の辺りまでどどーんと来るのであれば、小規模というのも難しいのかなと思い出しまして、益々来週のFOMCが楽しみになって参りました。


まあいずれにしても「国債買入が大規模」→「期待インフレ率が市場だけ先行して盛り上がって長期金利上昇」→「長期金利上昇が景気の足を引っ張る」→「実際のCPI上昇率が回復する前に景気悪化でデフレの罠に」とか、「国債買入が小規模」→「期待インフレ率が上昇しない」→「引き続きCPI上昇率低下でデフレの罠に」などという神展開を見せていただきまして、バーナンキ大先生におかれましてはお詫びに髭でも剃って頂くという神展開になる事を妄想して止まないあたくしは性格に問題がありますですかそうですか(^^)。


○GCが下がったと思ったらまた上がったでござるの巻

昨日はGCレートまた0.12%水準に。

いやあ何か今週になってオペがGC放置プレイじゃ無くなって来ましたね何てことを昨日書いたのが変なフラグになったのかどうか知りませんが、昨日は資金供給オペがそんなに多くなくてまたさっくりGC0.12%水準に戻ってやがりますな。まあトモネとかは一応低いみたいなのですが、ど〜もGCの水準が暫く0.12%乗せで推移していたせいか、目線がちょっと高くなってしまっていて、ちょっとこう供給が気持ち少なめですなあとなるとあっさり0.12%に戻るというのも何ですなあという感じです。

いやまあ昨日もああでもないこうでもないと書きましたので繰り返しになっちゃうのですけれども、金融政策決定会合およびその後の会見などでの話のトーンだけ見ると直ぐにでもホイホイと資金供給を増やすかのようなトーンではございますが、一方で実際のオペレーションでそんなにホイホイと供給オペが出るでもなく、いつもと同じ状況ですなあというのって、2008年後半の動きを彷彿させる所ではあるのですけれども、まあ2008年の時みたいにGCレートがロンバート水準まで上昇してオープン金利が高止まりになってCPレートが爆発というような切迫したような動きではなく、単にGCが0.105/11なのか0.12/125なのかという話ではありますと言ってしまえばまあそれだけとも言えるので、この状況でいきなりどうしたこうしたというのがある訳では無いのですけど・・・・

で、ついでに話の筋が脱線しますが、確かにまあ介入の時の総裁談話とか見ますと威勢の良さそうな話をしていますが、冷静に今月の追加緩和の内容を読めば「向こう1年掛けて資産買入を行っていきますよ」という話であって、しかもその内容はこれから決まるという事でもありますので、そーゆー意味で言えば別に当座預金残高が現時点で大して増えていないで、GCレートに反映されるようにタイト目の資金供給オペが実施されていますなあという現在の状況は、まーそれはそれで良く良く考えますと別にインチキでは無いのですけれども、ど〜もこう何だかなあという感じがする訳ですな。そんなこんなでちょっとこう市場との温度差があるんジャマイカとゆー気がする今日この頃なのでありますが、別にあたくしの脳内妄想で考える市場との温度差というのがただの脳内妄想なのかも知れないので、その辺の判断は留保しておきます。ただ、例えば金先とか2年債利回りとかTB利回りとかのプライスアクション見てると温度差あるんじゃないの??って気はしますということで。


○西村副総裁講演はメモだけ

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010f.pdf
金融セーフティネットの重要性と中央銀行の役割
── 国際預金保険協会主催・国際コンファランスにおける挨拶の邦訳 ──

題名を見た瞬間に「これは目先の金融政策に関するインプリケーション皆無だろう」と思ったのですが、その通りの内容でありました。超お暇な方以外は特に読まんでもというものです。

・・・・とそれだけでは何ですので一応引用しますが。

『2.金融システムの安定と金融セーフティネット』という所から。

『(2)金融セーフティネット整備におけるバランス確保の重要性』 というのがございましてですな。

『こうした金融セーフティネットの整備は重要なものですが、単に拡大・強化していけば良いというものでもありません。長い目でみた金融システムの安定維持を考えると、さまざまな面で「バランス」を確保していく必要があります。以下では、この「バランス」というキーワードを用いながら、金融セーフティネットのあり方に関するいくつかの重要な視点についてお話しします。』

ということでお話が始まるのですが、その小見出しがこんな感じで、まあ一般的というか穏当な話になっています。何かこう国際基準よりも独自に厳しい基準を作りましょう!!!!などというようなマゾヒスト的な話になっていないのは実に結構なお話だと思います。

(規制の強化とマクロ経済のバランス)
(金融セーフティネット整備とモラルハザードのバランス)
(セーフティネットの規模における地域間のバランス:協調の必要性)

で、金融システムがどうのこうのという話をする中でマクロプルーデンスの話があるかなあと思ったら、今回は一応言及はあったのですが、先般の白川総裁の講演のようなマクロプルーデンス節満開というようなKYな話になっていなかったのは、まー良かったのではないでせうかという感じです。

『この点、日本銀行は、従来からミクロ・マクロの両面で、金融システム安定上の役割を担ってきています。すなわち、ミクロ・プルーデンスの面では、日本銀行は、証券会社も含め幅広い先に考査やモニタリングを行い、必要に応じてリスク管理や経営状況の改善を促すための助言・指導を行っています。一方、マクロ・プルーデンスの面では、金融市場の状況や金融機関から得られた情報も活用しつつ、金融システム全体を分析・評価し、政策に活かしています。今回の金融危機に際しても、マクロ・プルーデンスの観点から、金融機関からの株式の買入再開や金融機関に対する劣後ローンの供与を実施しました。』

「マクロプルーデンスの観点から物価安定の理解の第2の柱に基づいて政策判断をします(キリッ)」というような話になっていないのは結構結構(^^)。







2010/10/27

お題「FOMCまで連銀高官発言以外のネタが無いので雑談モード」

明日は展望レポートがありますし、それよりも資産買入の具体的な中身が出てきたりすると思われる(どこからどこまで出るのかはさっぱり判らないけど)のですけれども注目されるのはFOMCだったりするのが残念な所で(−−)

○GCが高止まりですなあと書こうと思ったら低下しました

まあ要するに小見出し書いたらそれで終了という話なのですが(^^)。

えーっとですな、9月の為替介入実施で非不胎化介入がどうのこうのという話が一瞬盛り上がった訳ですが、日銀当座預金残高ちゃんはそれ以降17兆円前後での推移という調節が続いておりまして、まあその数字ってどうせ介入実施した9月15日前後の当座預金残高15兆円に介入額の2兆円を足した数字を意識してるんでしょという所なのでございます。

でですな、その数値をそのままキープしていたら新しい積み期間に先週から入ったのですけれども、当座預金残高は相変わらず17兆かつかつの水準で推移するような資金供給という事で推移してたらGCレートが0.12%近辺で高止まりするでござるの巻。7月とか8月とかの数字を見てますと積み前半期間(つまり月の後半)は大体当座預金残高が18兆円ペースで回していまして、その点で言えば微妙に当座預金残高が少なめなのと、資金需給の関係で、当座預金残高水準が17兆円前後だとオペ残が31兆円近辺になってしまいますので(企業支援貸付を乗っけると4600億円ほどそれに乗りますけれども)、オペ残水準が少な目という感じになるのですな(例えば8月後半から9月前半はオペ残が35兆円から38兆円)。

でまあその結果として、積みの前半にしては資金供給がきつめという形になってしまいまして、GCレートが0.12%〜0.125%辺りで妙に高止まりする状態がここ2週間近く継続していまして、そろそろ悪態でも書いてやろうと思ったら一昨日辺りからGCレートが低下してきて昨日のGCレートもレギュラーで0.115%水準に低下と相成った次第で、ちょっとタイミングがずれたなあと思っているのであります(^^)。

ここへ来てのGC落ち着きに関しては、22日の財政揚げ超に対応して資金供給オペが増えて(企業支援抜きベースで)オペ残がやや増えたのと、今週になって当座預金残高が18兆円台になるようなオペレーションになって(今日は17.6兆円になるようですが)来たのが影響していると思われますが、よーするにそれまでは当座預金残高17兆円を意識していたのかどうかは知りませんが、そっちの方はきっちりキープする中でGCレートが0.12%レベルに上昇するのを放置プレイだったという中々こう意味の判らん動きになっておった訳ですな。


いやね、そんな中でも3か月TBは0.11%割れ水準で推移していましたし、(昨日は買いでも入ったのか0.105%レベルにまた低下)1年TBは0.11%辺りで推移していますし、そーゆー意味では「より長めの金利」は大して上昇しなかったのですけれども、追加緩和実施の時に1年は0.105%に低下して3か月は0.10%を買いそうな勢いだったのから比較するとやや残念な展開でもあります。というか2年国債の金利って昨日とか0.135%がオファーレベルだと思うのですが、追加緩和期待というか追加緩和やるんでしょ状態になってい先月末(9月末ね)の水準が0.130%だったので、それよりもレートが上昇しているというのもこれまた残念なお話でありますが、GCレートが0.12%水準定着とかになっちゃいますと、それよりも低い利回りの債券は業者的には持っているだけで逆鞘になりますから、そらまあその辺の利回りが下がりませんなあという事になりますわな。

てな訳で、何でGC0.12%水準が続いているのにオペが増えないのよという悪態でも書こうかと思ったのですが、さすがにそれはどうかという事になったのか今週になってちょっと供給オペが増えましたという所だと思います。


でですな、まあそのGCレートが微妙に高いのが続いているからオペを少し多めにしましたというのは良いのですが、ど〜もこの資金供給オペのスタンスが読みにくいというか明快じゃなくて、今週になって供給オペが増える前の状況を見ていると当座預金残高の17兆円水準を意識しているのか、それともコールレートが過度に下がらないように意識しているのかというイメージを受けるのですけれども、今週になるとGCの高止まりに対応したようなイメージがある訳です。一方で9月15日の介入前後の日銀の声明だか談話だかみたいなのとか、今月の包括緩和実施で示されている話によればもうちょっと威勢良く資金供給オペを実施して金利を下げましょうという話をしているようにも見えますしとゆー感じでありまして(ディレクティブでもコールの下振れ容認しているんですし・・・・)まあ要するに何をターゲットにしてどうしようとしているのかがヒジョーに読みにくいというか首尾一貫していないというかというのが何ともという感じです。

いやね、別に何がターゲットでも良いのですが、オペレーションの上げ下げをするのにどこの数字を見ているのかというのが一定していないように見えるというのはつまり金融調節がどんな感じで回っていくのかが読みにくいという話になりますわな。で、ここもとずーっとそうなのですが、追加の緩和みたいな措置が実施された後に妙に短期国債が強くなってから「あらら」と失速するというようなのが続いたりするのって、もちろん他の要因もありますけれども、オペが何見て打たれているのかが良く判らなくてGCが微妙な振れ方をするのも原因ではないかという気がするざます。

いや別にGCが振れるのが悪いのではなくて、GC放置プレイなら放置プレイな調節を一貫して実施していれば良いのですけれども、時にはGCを気にしたような調節をやるかと思えば、放置プレイみたいな調節になってみたりとか言うのが予測可能性を下げるのでやりにくくなるんですよねという話であります。ただまあエライ人の発言とかだと如何にも資金供給を景気良く実施しますよ的なニュアンスがある、とゆーのもありますので、何だかどうも訳判らんですなあというのがある次第でございます。


#と、延々と債券市場の人でもたぶん関心の範囲外というか何の話をしているのかさっぱり判らない話をしてどうもすいません


○決定会合プレビューのような雑談

まあ何ですな、展望レポートに関しては追加緩和実施しちゃいましたから今更どうのこうのという興味はあまり無かったりしますし、どうせ2012年度のCPI見通しって0%台前半になるのでしょうから時間軸は軽く見積もって2012年前半くらいまでは伸びるという話になるでしょうが、それは既に2年金利辺りをみればちゃんと織り込みまくっておりますので特に大ネタにはならんでしょう。

それよりも資産買入5兆円ちゃんの具体的な施策がどうなるのかというのが気になるのですけれども、国債と短期国債の3.5兆円分に関しては従来のスキームをそのまま流用すれば良いので別に問題なしでしょう。CPと社債の1兆円分に関してですけれども、今回の措置って前回実施したCPや社債の買入と違いまして、「市場が正常化したら応札無くても無問題」という訳にはいかないので、利回り競争入札みたいな方式にするのか、それとも指値にするにしても低い水準での指値にするかとかしないと「1兆円程度」の予算達成(^^)が出来ないわけでありますので、テクニカルにどうするのかはムツカシヤですな。

つまり、CPの場合は利回り競争入札で入れさせるしかないと思います(または例えば短国や国債の流通利回り水準での指値とかですか)けれども、そうなりますと当然ながら銘柄間の信用リスクスプレッドなど知った事かというレート形成がされることが予想されますので、日銀様のご購入対象銘柄に関しては銘柄間のスプレッドが素敵に縮小するでしょう、ということになるんでしょうな(発行量全部を日銀様がお買い上げするとは思えませんので本当にスプレッドが全部なくなるまでには至らないと思います)。社債に関しては売買参考統計値という便利なものがありますので、それ対比で幾らという入札方式を使う事もできると思いますが、流動性が相対的に低い債券に関しては結構この数字が微妙にアレだったりしまして、まあその数字は提供業者の鉛筆なめなめ成分もありますので、更にアレだったりしますなあとか思う今日この頃。利回り絶対水準入札にするんですかねえ。

更に残りの5000億円に関してはなお難しくて、ETFの場合は市場購入をするとしていつ買うのかとかの情報管理をどうするのとか、買った後の明細はどういう形で公表するのかとかも中々難しいとは思いますが、まーそれ自体は何とかなるでしょうという話だと思いますけど、J−REITに関してはそもそもの銘柄選定をどうするのかとかが難しいでしょうから、今回の会合で具体策が決まるのか時間的にどうなのよという気がしますです、はい。

恐らく国債と短国は直ぐに出るでしょうし、CPと社債も一応一回やっているので(ただし今回はスキームを変える必要はありますが)今回の会合で具体的な実施内容とか出るのかなあとか妄想しているのですが、ETFとJ−REITは今月間に合いますかねえという感じではないかと(次回じゃないですかねえ)存じます。


#ということで、何か今日はマニア向け雑談になってしまってどうもすいませんだって債券市場がひたすらFOMC待ちみたいになってるんですもん・・・・・








2010/10/26

お題「今更ですいませんが先週(追記:先々週です)のバーナンキ講演を斜め読み」

公共放送様は「日銀の決定会合で経済物価見通しが出ますが、ゼロ金利政策が長期化することが必至の情勢になるようです」との事で。

#ところで子供手当を増額するらしいのだが財源はどこにあるのかね??

○出遅れまくりだが先週(追記:先々週です)のバーナンキ講演を斜め読みしてみた

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101015a.htm(html版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20101015a.pdf(pdf版)

お題は「Monetary Policy Objectives and Tools in a Low-Inflation Environment」というものなのでワクテカして斜め読みした(これがまた本文15ページもございまして結構長い)のですが、そんなに面白いネタがなくて若干拍子抜け(いやまあもちろんあたくしが肝心な所を読み飛ばしてしまった可能性はあるので判っていたら教えてくんなましという所なのですが、汗)だったりするのれす。

で、講演のマクラの部分も妙に長いのですが、そのマクラの最後に今回の講演の流れが書かれております。

『In the remainder of my remarks I will discuss these issues in the context of current economic and policy developments. I will comment on the near-term outlook for economic activity and inflation. I will then compare that outlook to some quantitative measures of the Federal Reserve’s objectives, namely, the longer-run outcomes that FOMC participants judge to be most consistent with its dual mandate of maximum employment and price stability. Finally, I will observe that, in a world in which the policy interest rate is close to zero, the Committee must consider the costs and risks associated with the use of nonconventional tools when it assesses whether additional policy accommodation is likely to be beneficial on net.』

という事で、まず最初に経済見通しに関する説明があって、その次にFEDの今後のいわゆる量的緩和政策に関する政策ツールに関する説明があるのは良いのですが、最後にあるのが微妙にチャーミングなネタで、ゼロ金利制約の元での非伝統的な金融政策による追加緩和のメリットデメリットに関する話というどこかの麿総裁のような話をしているのが何だか微妙だったりしますわな。うーむ。

で、講演のページ数を見ると予想がつくのですが、今回のこの講演は割と項目別の中身に関しては細々と話をしている感じですので、そういう意味ではバーナンキ議長の現状認識に関する整理にはなると思います。基本的には従来の講演やFOMC議事要旨などにあるもののまとめみたいな話でそんなに新しいネタはなかったように思えます。

・経済見通しに関して

『The Outlook for Growth and Employment』ってのが3ページ半ほどあるのですが、これを大体一言でまとめると「雇用の改善に時間がかかるので経済の回復には時間がかかりますなあ」という所ですな。あと金融環境の改善に関しては景気にサポートという話をしておりますが、特にその恩恵は直接金融市場へのアクセスができる大企業が受けているものの、銀行の貸出態度も改善しているので、クレジット的に借入に値する債務者であれば、中小や個人でもやや状況が改善してますなというな話をしています。

ただまあ個人消費の所など、幾つかの場所で折に触れて「個人消費やそれに連なる最終需要の更なる回復は雇用・所得状況の改善に依存します」という話が出てますので、まあ基本は雇用所得状況ですなあという事ですわな。


・物価見通しに関して

『The Outlook for Inflation』という所ですが、雇用の改善が遅れてリソースのスラックが大きいのでインフレは抑制されるでしょうという毎度の見通しです。それだけで終わると何ですので、先般ご紹介したFOMC議事要旨にあった「雇用のミスマッチ解消が進まないのは労働者のモビリティーが低下するという構造的な要因があるのではないか」という指摘に関してダメ出しをしているのがチャーミングなのでそちらから。

『In gauging the magnitude of prevailing resource slack and the associated restraint on price and wage increases, it is essential to consider the extent to which structural factors may be contributing to elevated rates of unemployment.』

ということで、構造的要因が失業をどの位引き上げているのかという点を認識するのは重要、というのがあるのですが、そこれああでもないこうでもないという話をしている部分は華麗にスルーして(おいおい)結論を。

『Overall, my assessment is that the bulk of the increase in unemployment since the recession began is attributable to the sharp contraction in economic activity that occurred in the wake of the financial crisis and the continuing shortfall of aggregate demand since then, rather than to structural factors.』

ということで、あまり構造的な失業の増加要因という考えには与していないというのが結論だったりします。


・金融政策ツールに関してですが、現状の物価と失業が望ましくない水準と言及

『The Objectives of Monetary Policy』のところですが、これまた理念的な話をああでもないこうでもないとしておりまして、「デュアルマンデートの実現にあたっては一つの目標にフォーカスし過ぎないようにしないといけません」などとどこの日銀かというような話もしらっとしているのがチャーミングです。

『The Federal Reserve has a statutory mandate to foster maximum employment and price stability, and explaining how we are working toward those goals plays a crucial role in our monetary policy strategy. It is evident that neither of our dual objectives can be taken in isolation: On the one hand, a central bank that aimed to achieve the highest possible level of employment in the short run, without regard to other considerations, might well generate unacceptable levels of inflation without any permanent benefits in terms of employment. On the other hand, a single-minded focus by the central bank on price stability, with no attention at all to other factors, could lead to more frequent and deeper slumps in economic activity and employment with little benefit in terms of longrun inflation performance.』

まあこの辺りは基本的に当たり前の話をしているのですが、ふーんと思ったのは(ある意味当たり前なのだが)「より重要な事ですが、金融政策担当者は長期的な物価上昇率を決定する能力はあるが、長期的なサステイナブルな失業率を決定する能力は乏しい」とか言っているのも「ほうほう」と。昨今の日銀法改正がどうのこうのと言ってる人たちが「日銀のマンデートに雇用の最大化を明記すべき」という話をしていますが、バーナンキ議長のこの部分に関してはどのようなご感想をお持ちなのかお聞きしたいもんで。

『Although attaining the long-run sustainable rate of unemployment and achieving the mandate-consistent rate of inflation are both key objectives of monetary policy, the two objectives are somewhat different in nature. Most importantly, whereas monetary policymakers clearly have the ability to determine the inflation rate in the long run, they have little or no control over the longer-run sustainable unemployment rate, which is primarily determined by demographic and structural factors, not by monetary policy.』

それがつまりどういうことかと言いますと・・・

『Thus, while central bankers can choose the value of inflation they wish to target, the sustainable unemployment rate can only be estimated, and is subject to substantial uncertainty. Moreover, the sustainable rate of unemployment typically evolves over time as its fundamental determinants change, whereas keeping inflation expectations firmly anchored generally implies that the inflation objective should remain constant unless there are compelling technical reasons for changing it, such as changes in the methods used to measure inflation.』

まあだからそっちに関しては努力しないというのではなく、コミュニケーションのツールとして「Summary of Economic Projections(要するに展望レポート^^)」を出してますよという話をしてますわな。

でその説明の後に、現状の物価水準と失業率の水準が望ましくないという話をしているのが今回の講演で注目された所になるんでしょうなあ(=望ましくないので追加緩和が必要=11月のFOMCで追加緩和確定、という話)という所なのでそこを引用するだよ。

『In contrast, as I noted earlier, recent readings on underlying inflation have been approximately 1 percent. Thus, in effect, inflation is running at rates that are too low relative to the levels that the Committee judges to be most consistent with the Federal Reserve’s dual mandate in the longer run.』

まあFOMC声明文でも出てましたけどね。

『In particular, at current rates of inflation, the constraint imposed by the zero lower bound on nominal interest rates is too tight (the short-term real interest rate is too high, given the state of the economy), and the risk of deflation is higher than desirable.』

ということで、短期名目金利が下げられない中での物価低下がどうのこうのという話はFOMC議事要旨の中にもありましたが、ここでは「実質短期金利が高止まりしていてデフレリスクが高まっている」というのが示されているのが新しいちゃあ新しい話で、先般のFOMC議事要旨で実質短期金利がどうしたこうしたという話をしていたのはバーナンキ議長だったんでしょうかねえというのを思わせてくれる部分だったりします。

・・・・で、余談になっちゃうのですけれども、上のほうで「中央銀行は長期的な物価水準を決定する能力があります(キリッ)」って話をしているのですけれども、一方で先般の9月FOMC議事要旨では「インフレ期待を引き上げる為に名目GDPターゲットや物価水準ターゲットなどの政策オプションも検討課題」みたいな部分があった訳でして、もしその話をバーナンキがしているのであれば、ジャクソンホールでの講演などで物価水準ターゲットに関してケチョンケチョンの扱いをしていたのにどうした事ぞという感じでありまして、物価に関しては結構バーナンキ議長が懸念してさてどうしたもんだと悩んでいるのではないかという感が致しますわな。

失業率に関してはこのように。

『As of June, the longer-run unemployment projections in the SEP(引用者追記:Summary of Economic Projectionsの事です) had a central tendency of about 5 to 5-1/4 percent--about 1/4 percentage point higher than a year earlier--and a couple of participants’ projections were even higher at around 6 to 6-1/4 percent. The evolution of these projections and the diversity of views reflect the characteristics that I noted earlier: The sustainable rate of unemployment may vary over time, and estimates of its value are subject to considerable uncertainty. Nonetheless, with an actual unemployment rate of nearly 10 percent, unemployment is clearly too high relative to estimates of its sustainable rate. Moreover, with output growth over the next year expected to be only modestly above its longer-term trend, high unemployment is currently forecast to persist for some time.』

だからどうするという話は無いのですが、足元の失業率が高すぎるというのと、先行きに関しても暫くの間は失業率が高止まりしやすいという話をしているので、必然的に金融緩和が必要ですよという話になるんでしょうな。


・『Monetary Policy Tools: Benefits and Costs』とは何ぞね

最後の部分がそういう小見出しでして、今回ナンジャソリャというのがこの部分。

『For example, a means of providing additional monetary stimulus, if warranted, would be to expand the Federal Reserve’s holdings of longer-term securities. Empirical evidence suggests that our previous program of securities purchases was successful in bringing down longer-term interest rates and thereby supporting the economic recovery. A similar program conducted by the Bank of England also appears to have had benefits.』

と言う話はまあ良いのですが、期待インフレ率を引き上げて長期金利は引き下げるなどという都合の良い政策が出来るのかというツッコミは勿論ございます。まあ結論としては、どっちも実施というのは無理でして、恐らく長期金利の動きの方が判り易いですし、直ぐに市場が反応しちゃいますから、そっちが上昇する方を懸念して長期国債の買入が小出しになるとあたくしは予想するのですが(そして小出しの結果期待インフレ率は上がらずに日本化が進行してバーナンキマズーの神展開を妄想)まあそれは兎も角。

『However, possible costs must be weighed against the potential benefits of nonconventional policies. One disadvantage of asset purchases relative to conventional monetary policy is that we have much less experience in judging the economic effects of this policy instrument, which makes it challenging to determine the appropriate quantity and pace of purchases and to communicate this policy response to the public. These factors have dictated that the FOMC proceed with some caution in deciding whether to engage in further purchases of longer-term securities.』

ということで微妙な日和見姿勢が見られますな。

『Another concern associated with additional securities purchases is that substantial further expansion of the balance sheet could reduce public confidence in the Fed’s ability to execute a smooth exit from its accommodative policies at the appropriate time. Even if unjustified, such a reduction in confidence might lead to an undesired increase in inflation expectations, to a level above the Committee’s inflation objective.』

あれだけ威勢の良い話をして市場の期待を煽っておいて、今更どの口が「あまり買入を増やしすぎると出口政策が困難になるリスク」とか言うのかという感じではございますが、まあそこでお勧めなのは「長期国債買入」ではなくて速攻で出口政策が可能な福井の俊ちゃん謹製の「リザーブターゲット」ですよ(^^)、というのは半分冗談ですけれども、まー微妙にこんなヘッジを入れているという時点で今回は派手派手な政策をいきなり出すのではなくて小出しスキームになるんだろうなあという気がせんでもないです。

一応、「我々は出口ツールを持っていますよ(キリッ)」というのはありますので最後に引用しておきますです。

『To address such concerns and to ensure that it can withdraw monetary accommodation smoothly at the appropriate time, the Federal Reserve has developed an array of new tools. With these tools in hand, I am confident that the FOMC will be able to tighten monetary conditions when warranted, even if the balance sheet remains considerably larger than normal at that time.』

ということで、本当は今日は市場雑談も書こうと思ったのに時間がなくなったのでこの辺で勘弁ということで(大汗)。






2010/10/25

お題「もはやターゲットなのか裁量政策なのか訳が判らない件について」

今朝のモーサテの解説者が変な宗教の説法(オバマ教??)みたいで鬱陶しいにも程があるのでチャンネル変えたんだがさすがに6時前に変えたのは初めてだわwww

という話は兎も角、今日はBOEの議事要旨から。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1010.pdf

○経済認識に関する論点

まあ毎回この人たちは論点が平然と変わるのですが・・・・

基本的に今回は「景気認識に変化をもたらすような経済データの変化は無い」という線の話になっているのでというのもあるにはあるのでしょうが、従来の資産買入政策の効果に関する話とかをすっかりスルーしているのがある意味チャーミングですな。まあスルーしているので引用のしようもないからアレですけれども(^^)。

・クレジット環境

でですな、今回景気認識部分で妙にスペースを取っていたのが「クレジット環境」の部分でして、マーケットのクレジット環境は改善しているけれども、中小企業や個人などの直接金融市場へのアクセスが厳しい人たちに対しては銀行のクレジット態度が依然として厳しいという話をしていまして、どうもそれが先行きの景気に対する悪影響ですなあという話をしています。第14パラグラフから第15パラグラフ辺りになりますが。

『Bank credit availability remained tight, reflected in the continued weakness of money and credit data. But there had been some indications of a more general improvement in credit availability for larger businesses with access to capital markets.(具体的なサーベイデータの部分割愛) It was therefore possible that many firms would be able to finance additional investment if they desired.』

『Households and small businesses unable to access capital markets and dependent on bank finance had seen less, if any, improvement in credit conditions. But it was mildly encouraging that September had been another month of strong bank term-debt issuance.』

・ポンドの下落による経済への影響

この件に関しても毎度毎度話が微妙に変わるのですが、今回はこうなっているのでございます。第18パラグラフから。

『It was possible that the anticipated boost to activity from sterling’s depreciation would take longer or be weaker than previously assumed, or that the drag to UK trade from the weak demand for exports of financial services might be more pronounced. Net trade was estimated by the ONS to have subtracted from GDP growth in the second quarter, and had yet to add convincingly to growth despite the substantial past depreciation of sterling. Exports of services were difficult to measure, however, and survey evidence on them remained more positive than the official data.』

何かポンド下落の経済への影響に関して微妙な評価になっているような気がする。以前はこのポンド下落が景気に対してフォローという話を思いっきりしていたのですけれども・・・・・


○CPIに関して

前回は「先行き見通しが異例なほど不確実」という話をしていたCPIですが、今回は「企業の余剰生産力の大きさと賃金やマネーが伸びないので物価上昇は抑制されるでしょう」という話をしているです。まず第19パラグラフから。

『Twelve-month CPI inflation had remained unchanged at 3.1% in August. Within that, the price of airfares had risen by almost 25% over the previous year, contributing almost 1/2 a percentage point to aggregate CPI inflation, perhaps reflecting higher fuel costs and capacity pressures within the industry. Following the usual pre-release arrangements, an advance estimate of CPI inflation for September, also of 3.1%, had been provided to the Governor ahead of publication.』

つーことで英国のCPIは毎度のように「一時的要因」が色々と出て全然下がらないという中々お洒落な展開になっているようですが、その次のパラグラフを見ると輸入価格の上昇がCPIの上昇にも繋がっているのですが、生産投入価格と産出価格の上昇にもつながり、しかも投入価格の方が上げが大きいというのはこりゃ交易条件の悪化という話になるんですか、よー知らんが。第20パラグラフから。

『In line with pre-release arrangements, the Governor informed the Committee that producer output prices had risen 0.3% in September, so that the twelve-month inflation rate had eased back a little to 4.4%. Producer input prices had risen by 0.7% in September, taking the twelve-month inflation rate to 9.5% from 8.7% the previous month. Much of the increase on the month had reflected increases in the prices of imported materials. Upward revisions to the implied import price deflator in the National Accounts, along with monthly data, suggested that imported costs might have risen more rapidly than the Committee had assumed at the time of the August Inflation Report, so that CPI inflation in the near term might be higher.』

ただまあこの後はマネーの伸びが弱いとか、余剰生産力のスラックが大きいというような指摘をしていまして、特に「足元では企業が需要回復に対する期待があるので、雇用や設備に対して依然として余力を持っているのではないか(需要回復した場合に生産を直ぐに拡大できるようにする為に)」という認識を示しまして、要するに物価は中期的に見た場合には抑制されますよという結論にしているのですがその辺は引用を割愛します。


○今後の金融政策は「中期的なインフレに対するリスクバランスの認識が重要」とな

とまあそういう話をした後に金融政策に関する議論の部分になるのですが、何かもう毎度毎度「一時的な要因が無くなれば中期的には物価はターゲットに下がるでしょう」という話をしているのですが、毎度毎度新しい「一時的要因」が出てくるのはどうした事ぞという気はするんですけどね。第27パラグラフから。

『CPI inflation had remained unchanged at 3.1% in September. The prospective increase in VAT in January 2011 would affect measured CPI inflation for twelve months, and would probably keep inflation above the target for a period. The temporary impact of higher energy and import prices on inflation remained hard to calibrate. But it was likely to have been accentuated by recent movements in the prices of oil and other imported costs.』

で、その結果として。

『CPI inflation in the near term could be higher than the Committee had previously expected.』

となるのですが・・・・

『The Committee’s central view remained that, as the impact of temporary factors dissipated, the persistence of weak underlying price pressures was likely to cause CPI inflation to fall back towards the target.』

という話になっておりまして、そうでございますねえ(棒読み)という展開になっておる訳でございますが、今後の政策運営に関しては今回こんな話をしています。第28パラグラフから。

『What was crucial for the policy decision was whether recent developments had affected the Committee’s view of the balance of risks to the prospects for inflation in the medium term.』

中期的なインフレに対するリスク認識が金融政策決定に対して重要ですとな。

『As in previous months, there were two opposing key risks: on the one hand, whether the prolonged period of above-target inflation would cause inflation expectations to drift up, making it more costly to bring inflation back to target; and, on the other, whether private demand would grow insufficiently rapidly to replace the waning boost from the inventory cycle and public spending, resulting in a persistent underutilisation of resources that could cause inflation to fall materially below the target in the medium term.』

この話はまあ前回のMPCでも同じ話をしていますが、上方リスクとしては「実際の物価がターゲットを上回った状態が続いた場合に、期待インフレ率が上昇する」という話で、下方リスクは「民間需要の伸びが弱く、その結果生産余剰力が物価の著しい低下をもたらす」という話なのは同じなのですが、今回のMPC議事要旨の特色としてはその下方リスクの生産余剰力に関する話を景気認識の方でスペースを割いている(引用すると長くなるので割愛しちゃいましたが、第22〜24パラグラフの辺りで長めのスペースを取っています)ので、まーそーゆー意味では足元で続く物価上昇率の高止まりとバランスを取っているという話になりますし、その後での説明では下方リスクに関する話がこれまた長くなっています。

上方のリスクに関してはさらっと「特に変化は無い」という話になっているのですが、下方リスクに関する認識は細かく話をしています。第30および31パラグラフから。

『It was possible to draw different inferences about the medium-term prospects for private demand growth from the latest data. On one view, the recent recovery in private final demand, and particularly consumer spending, was encouraging. It was a possible indication that the headwinds to the economic recovery from the fragility of the banking sector and the forthcoming fiscal consolidation - while substantial - might weigh slightly less on activity than previously thought likely. That view was supported by the recent evidence on the access to credit of large firms, and on bank funding conditions. Recent asset price movements, including lower medium-term interest rates, and the most recent depreciation of sterling and recovery of equity prices, should also act to bolster demand.』

銀行セクターの脆弱さと財政再建の負の影響を大企業のクレジットアベイラビリティーの拡大や資産市場の上昇、ポンド安などが打ち消すのではないかという明るい話で、足元の数値はそれに整合的ではないかという話ですな。

『On an alternative view, however, real disposable income growth had been weak and the apparent recovery in consumer spending might be dampened as the impact on household incomes of the fiscal consolidation became more readily apparent. Moreover, the continued absence of a noticeable positive contribution to growth from net trade might indicate that the tailwind to growth from sterling’s depreciation would be less pronounced than assumed in the recent Inflation Report projections. Recent asset price movements might simply have reflected market expectations that further intervention by the authorities might be necessary.』

ということで、可処分所得の伸びが弱くて、消費支出の回復が弱く、更にこれからの財政再建によって家計所得が下がってくるでしょうという下向けの話ですわな。

つーことで、今後の金融政策に関しては「先行きの民間最終需要がどう伸びていくのか」が焦点になるという話でございますわな。


○経済状況からしたら緩和だが足元CPI推移は引き締めですからねえ

てな感じで引用しましたが、まあその辺は全て仰るとおりですなあという所ではあるのですけれども、問題になるのは足元のインフレ率が延々とBOEのインフレーションターゲットを大きく上振れて推移している事でして、インフレターゲットの政策フレームからしたら引き締めを検討しないと行かんでしょという状況なのにどちらかと言えば緩和の拡大を検討しないといけない経済状況というのが実にチャーミング。

てな訳で、今回のMPCではさっき引用したように「中期的なインフレに対するリスク認識が重要」という「中期的な視点」を持ち出してインフレターゲットとの整合性を何とか取るというような論理展開で金融政策運営に関する議論をしているという所でございますが、まあこれってもう「ターゲット」でも何でもなくてただの「裁量的金融政策」じゃないですかねえというか、それこそ「中長期的な物価安定の理解」の世界の話ですなあという所ではございますわな。

で、32パラグラフが最後の議論結果になるのですが。

『Committee members differed in the significance they ascribed to these developments on the overall balance of risks to the medium-term outlook for activity and inflation since the August Inflation Report.』

『Most members felt that the balance of risks had not altered sufficiently to warrant a change in the policy stance at this meeting. On the one hand, they continued to believe that the economy contained a considerable margin of spare capacity and, therefore, that demand could expand significantly before widespread capacity constraints put upward pressure on inflation. On the other hand, there were concerns about the risks to inflation expectations from the persistent and prospective above-target inflation outturns.』

これはさっきと同じ話で上下リスクの話ですが、現状ではバランスに変化無しというのが殆どですよと。

『The risks to inflation in either direction remained great, and these members stood ready to alter the policy stance in either direction as the balance of risks became more decisively tilted in one direction or the other.』

どちらのリスクも大きいというのは前回も同じです。

『Some of those members felt the likelihood that further monetary stimulus would become necessary in order to meet the inflation target in the medium term had increased in recent months. But, for them, the evidence was not sufficiently compelling to imply that such a course of action was necessary at present. The analysis and projections prepared for the November Inflation Report would give the Committee an opportunity to re-evaluate more thoroughly the outlook for activity, the margin of spare capacity and inflation in light of all the news.』

前回は「今後は景気を刺激しながらインフレをトラックさせる政策が必要になるかもしれないという指摘をする向きがあった」という話がありましたが、今回はまともに「現状ではまだそのエビデンスは不足していますが、今後は追加の金融緩和が必要ではないか」という話をしているので、まあそーゆー意味では追加緩和の可能性が高まったという話でしょう。

で、その追加緩和の必要性を「in order to meet the inflation target in the medium」と中期的なインフレをトラックさせるという話にしているのは何かまあ現在の政策フレームでは仕方ないのですが、理屈としてなんかこうチャーミングというか何と言うか。


○ポーセン委員の追加緩和提案理由

最後に第34パラグラフにポーセン委員(とはこちらには書いてませんが、追加緩和を提案したのがポーセンさんでしたので)の追加緩和(金利は0.5%で維持するものの£50Bilの追加資産購入の実施を提案)理由。

『For one member, the accumulated evidence since the Committee had completed its £200 billion programme of asset purchases suggested that a further expansion in that programme was now warranted.』

『In this member’s view, the current degree of spare capacity in the economy was sufficiently large that monetary policy could afford to encourage more rapid growth without risking an undesirable increase in underlying inflationary pressures. Absent such additional stimulus, inflation would fall well below the target in the medium term. And the stability of measures of inflation expectations and wages over several months indicated that the likelihood of their rising sufficiently to cause an overshoot of the inflation target in the medium term was smaller than previously feared.』

ということで追加の資産買入が必要という話なのですが、まあ要するに「景気下方リスクがあるから追加緩和が必要」と言ってしまえば話はスッキリするのですが、政策のフレームワークがインフレーションターゲットなのでこういう論理展開にしないといけないんでしょうな。

#殆ど引用で増量してしまってどうもすいません






2010/10/22

お題「西村副総裁会見とか市場雑談系とか」

「経常収支の目標設定」とか「為替操作国認定」とかお前が言うなお前がと思うのですが、米国政策当局者の面の皮は何で出来ているのでしょうかと不思議に思うのでありまする。

西村副総裁の会見はこちら。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010b.pdf

○展望レポートの見通しに関して

今回の会見を読んでいて「うーむ」と思ったのは展望レポートの見通し作成に関する部分でございましてですな。

『(問) 三点お伺いします。講演の中で、日本経済の先行きについて、7月の中間評価と比べても下振れる可能性が高いというお話がありましたけれども、これは包括緩和の効果を織り込んだうえでも下振れるということなのかを確認させてください。また、次回の会合までに包括緩和の効果を見積もることは可能なのでしょうか。二点目は、物価見通しのところで、たばこ税の引き上げの効果というものを反映するべきかどうかについてお聞かせください。三点目は、CPIの基準改訂による下振れが0.4 とか0.5 とかいわれていますが、いずれも織り込んでやったらどういった形になるのかという点について教えてください。』

で、これに対する西村さんの答え。

『(答) まず最初に、包括緩和の効果に関する見通しですが、見通しは現在検討中ですので、直接のお答えは出来ません。また、政策を決めたときの見通しというのは、当然のことですが、それがないとどうなるかということを考えてやったということです。包括緩和の効果が次回の展望レポートの見通しに反映されるかどうかということですが、それはそれぞれの政策委員の方々の判断に依存するわけです。もちろん、将来に向けてどういうことが起きるかということをそれぞれの皆さんが考えて見通しを立てるわけです。その中の一つとして、それぞれの皆さんがご判断されるという形になります。』

何か禅問答というか蒟蒻問答のような話ですが、どうも「見積もるのか見積もらないのかはそのとき次第」みたいな話のようですわな。

で、物価の話もあったのですが、次の質問に対する答えの方が判り易いのでそちらを引用。

『(答) 基準改定を取り入れるか取り入れないかということですが、これは展望レポートの中で明らかにすることですので、私からは前回のケースについてご説明します。前回の場合は、基準改定が実際どのくらいの大きさになるのかに関して、信頼性の高い予測が難しかったということに加え、コミュニケーション上色々な難しさがあるのではないかとの懸念から、前回の基準改定の前の展望レポートには基準改定を取り入れませんでした。今回どうなるかについては、今回の展望レポートにおける政策委員の判断によるということになります。』

ということなのですが、こういうのってある程度共通のプラットフォームでやってくれないとその度ごとに一々「このときどうだったっけ」って話になるのである程度共通化して頂きたいのでありますが。まあCPIの基準改定もそうなのですが、その前にありましたような「今回から実施する追加緩和政策の効果を見積もるのか見積もらないのか」という辺りっていうのはある程度共通化して欲しいなあとは思うのですけどね。

・・・で、つらつら考えるにこれだと今回の展望レポートには包括緩和の政策効果を織り込まないって話になるのかもしれませんが、それも何だか謎な話で、そうなりますと包括緩和の効果が出てきた時点で(出なかったら涙目ですがそれは無いと言うことにして)「景気は展望レポートよりも上振れて推移しています(キリッ)」って話になってくる訳で、そうなりますと一旦展望レポートで示された時間軸がまた変わってしまいますがなという話になりかねない訳でして、そーゆーのは期待形成っつー意味ではちとどうなのかねという感じはするのですが。

いやね、これがまあ包括緩和を展望レポートと同時に出すという話でしたら織り込みにくいというのもあるのかも知れませんが、一応(具体的内容が出るのが今回というのはあるのですが)前回会合で緩和を実施したという流れなのですからその分を出したほうが良さそうな気がするんすけどね。


○米国経済と新興国経済に関して

『(問) 2 点ご質問します。ご挨拶の中で新興国の米国向け輸出に着目されて、そこにもリスクがあることに触れていらっしゃいましたが、最近、こういう発言をされる方はあまりいらっしゃらなかったと思います。新興国の経済について少し慎重にみ始めたというメッセージであるのかどうか確認させてください。(2点目割愛)』

『(答) 最初の点について、発言の真意ということですが、これは昔から言っていることでありまして、急に考え方が変わったということではありません。データを虚心坦懐にみて頂ければ分かりますように、新興国と先進国との間の貿易の重要性というのは明確ですから、そういう意味で考えれば、特に米国における経済の停滞は、新興国からの輸出、そして新興国間の産業内貿易に影響を及ぼしてくることは十分に考えられます。そういったことは常に考えておかなければならないことですから、そういう観点からご説明した次第です。』

確かにそうなのですが、決定会合議事要旨やら声明文などでは特に本年前半においては「新興国の上振れ」という話のほうが多かったので、今回は久々にきちんと指摘しましたねっていう感じだったかと存じます。

ま、あんまり政策インプリケーションは無かったというか、会見で誰か「第2の柱による点検」の部分とか「マクロプルーデンス」の部分に関するツッコミをして頂きたいところだったのですが、その辺の質問が無かったのでまあこんな感じで。



○市場雑談系の雑談

・20年国債入札でしたが

えーっとですな、まあ結局トレンドが出るような話にはなりませんでしたなあというありがちな結論なのですが、入札そのものは何となく前場引けよりも強くしてみたり、そもそも前場にそんなにコンセッションしなかったりという感じで中々結構な感じだったのですが、終わってみれば10年カレントの方が20年カレントよりも強いというワケワカランチな引けに。何か20年入札の落札結果出た後に20年から10年に入替でもしたのかよというような動きでございまして、前場のバランスでは10年のほうが弱かったので、なんちゅう嫌がらせのような動きですかという所ですが、まあトレンド出るような話にはなりませんですわなあという感じだったんですかね、よー知らんが。


・GCが妙に下がらない件について

先週更新をサボっている間に積み最終を迎えて今週は新しい積み期間に入っているわけですが、先週末の積み最終日とかコールの加重平均が0.098%とかいう大変にお洒落な数値になっていたのですね。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/md101015.htm

いやまあディレクティブは『無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す。』ということで「程度」というのが入っているので0.1%をちょっと越えても「程度」の範囲内なのかも知れませんが、「包括緩和ですよ実質ゼロ金利ですよ」と鉦や太鼓で触れ回った直後にさっくりコールが0.1%に乗ったらそれはそれで極めて香ばしい展開になっていたかと思うと意味不明の感に耐えないのでありまする(−−)。

何かよー判らんのですが、足元のGCが妙に下がらなくて、0.10%台どころか0.11%〜0.12%辺りで相変わらず推移していて、一方でTBは3か月で0.105%で1年で0.11%というような感じになっているという微妙な展開。GCの資金のところがあんまり回っていないのか、ショートファンディングが溜まっているのか(まあその合わせ技っぽいですが)という所なのですが、そもそも論として別に今日明日に追加緩和の追加緩和で利下げが来る訳でもないと思うのに、何でそうショートファンディングが溜まるのかねという気はするざます。固定じゃな方のオペでも0.11%が取れるのですから、そんなにショートファンディングに傾くもんなのかなあとか不思議に思ったりする今日この頃なのでありますが、ど〜ゆ〜感じなのか教えてエロイ人という所です(結論は人のふんどしなのですが)。

あとね、「包括緩和」だの「介入資金も利用して潤沢な資金供給」と言っている割にはそんなにオペが増えてないような気がしますなあとか、6Mの固定オペってまだ2本しか打ってませんよねえ(あたくしの計算間違ってたらすいません)とか、まー微妙なところはありますな。つーか包括緩和でディレクティブ変更した時のイメージからするともっとオペがバンバン出て銀行はブタ積み(付利があるからブタには成らないが)をバンバン増やすという感じだったのですが、そんなに大手銀行さんが超過準備を積み上げている風も無く、何だかねえという感じはするのですが・・・・どうもこれって08年の時の何つーか微妙なオペレーションの匂いを感じるのは考えすぎですかねえ。

#08年の微妙なオペレーションというのは当時(09年の10月〜11月あたり)の悪態並べた駄文をご参照下さい(^^)







2010/10/21

お題「西村副総裁講演2本なんですけど」

あんまり詳しくないんだけどさ、この前メドレーって「QE2無し」みたいなレポートを出したとかいう話が出てたと記憶してたんですけど。現物見たこと無いからよー知らんけれども、あちらさんって日銀の金融政策に関しても見事な大外しばっかりですし、何でああ有り難がられるのかよく判らん。

#まあ雨公は何でもいいから相場動くネタが好きというのがあるみたいですけどね。

○20年国債入札ですなあ

最近相場雑談をしておりませんが、微妙に相場見るのさぼっていたらすっかりプライスアクションのイメージが訳判らなくなってしまいましたというのと、追加緩和炸裂で中期までが安定しちゃって動くのがカーブの一番後ろだけみたいな感じになっているというのもありまして、ど〜もこうピンと来ないのはあたくしのせいなんですけれども(汗)。

と言う訳で(どういうわけだ)本日は20年国債入札なので、これでちったあ動くかなあと思うのでございますが、足元では超長期の所が売りが出ていたっぽくて何となく重そうにしているようにも見えるし、そうは言いましても売りが出たとかいう割には相場の位置が下がると買いたい人もいるみたいで重い重いという割には妙に値持ちしているようにも見えますし、こーゆー微妙な時には需給動向に変化が起きるという意味で入札前後の動向でも見ておきましょうという話になるって感じなんでしょうか。

まあここもとの入札って頑張ってその前に調整しておいて入札を迎えるからそこまで悲惨な結果にはならないのですが、何か知らんが入札後のセカンダリーでそんなに売れない上に別の年限売りに来るアホウとかがいたりして結局の所ロングが残るという変なパターンが続いているみたいですけれども、さて本日はどうなるのやら。ここ2日ほどはあんまりコンセッションしてませんけど、そもそも10年とかから見たら散々甘くなっていますのでそういう意味ではやはりコンセッションはしてるちゃあしてるのですが・・・・

ということで別に予想でもなんでもなくて、単なる俺様備忘メモでございましたです。結局の所米国FOMC様に置かれまして実施予定のQE2ちゃんの結果で米国のイールドカーブ(の長い所)がどう動くのか次第でそれの様子見モードですがなという所だと思いますので、目先いきなりトレンドは出ないのかも知れませんが、出るとしたら入札がきっかけになると思いますので、とりあえずメモにしただけという話でした(大汗)。


西村副総裁講演が2本になってしまいましたのでその辺から少々。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010d.pdf
マクロ・プルーデンス政策について―― アジアの視点を踏まえて ――

○まあそらそうなのですが今中央銀行の副総裁が言う話ですかね

つまり昨日の白川さん講演で申し上げた悪態と同じ話なのですが(^^)。

『マクロ・プルーデンス政策に対する関心の高まりは、まぎれもなく、近年生じた世界的な金融危機の厳しさ、さらに、そこから教訓を学び取らなければならないという必要から生じているものです。中央銀行は、インフレが低位で安定しているもとで金融システムに蓄積していたリスクに対し十分に注意を払っていたかどうかを自問自答しています。また、金融規制当局は、金融システム全体の安定という関心が、自らの政策の視野の中に欠けていたのではないかと悔やんでいます。』

『このような深い内省の念とともに、政策当局者たちは、マクロ・プルーデンス政策を、これまでのマクロ経済政策とミクロのプルーデンス政策の隙間を埋めるものとして位置付け、これによって大規模な金融危機が再び発生することを避けようとしている訳です。』

そらまあそうなのですが、足元での「大規模な金融危機の再発リスク」はここから低金利環境を延々と継続する事によって発生し得る「金融の不均衡蓄積」ルートではなくて、より積極的な金融緩和が必要となる「バランスシート調整の実体経済への波及によるスパイラル的な悪化」の方であって、今この時期にこういう話を中央銀行の副総裁というお立場の方が話をするのは如何にもピントがずれていると思うのですけれどもねえ。


○マクロプルーデンスは良いのですがこれでは何か景気抑制方向にならないっすかねえ

というころで、マクロプルーデンス政策に関する話が続くのですが、どうもこういわゆるBISビュー炸裂みたいな話が続いていまして、何だかなあという感じなのですが、一応こう引用してみますね。

『ここで私は、日本銀行は、物価の安定とともに、金融システムの安定を明確なマンデートとして有していることを強調しておきたいと思います。また、こうしたマンデートに基づき、日本銀行は、1990年代以降、実質的にはマクロ・プルーデンス的な政策手段を実際に講じてきています。』

マクロプルーデンスの結果物価低迷が続いたと言う事ですか、わかりません(><;

でまあ金融システムの安定という観点で言えば日本やアジアの場合は銀行セクターの役割が大きいというのはまあその通りなのでその辺も。

『このマンデートを果たすために何をすべきかを理解するうえでは、アジアの、さらには日本の金融システムの特徴として、資金仲介において銀行貸出が支配的な役割を果たしているということを理解することが、とりわけ重要となります。一方でアジアでは、証券化市場といった非銀行部門の重要性は相対的には低めです。このことは、米国のサブプライム住宅ローンの証券化や、これに関連する複雑な証券化商品のリスクの過小評価に端を発する2008年の金融危機において、アジアや日本の金融機関が大きな影響を免れた、一つの要因となっています。しかしながら、「同じコインの裏側」の話として、このような銀行貸出のウエイトの高さは、銀行セクターのリスクテイク能力が大きく損なわれる場合には、その実体経済への影響も大きくなり得るということも言える訳です。』

さいざますな。

『金融危機は、過剰なリスクテイクやユーフォリアの終焉に端を発して起こり、その帰結として、極端なリスク回避やアニマル・スピリッツの喪失を経済にもたらします。このため、マクロ・プルーデンス政策は、何よりもまず、過剰なリスクテイクを示すような金融面のアノマリーを見抜き、これを是正しなければなりません。また、不幸にして危機が起こってしまった場合には、銀行セクターのリスクテイク能力を支えていくことが求められます。』

という話なのですが、何かまあそらまあそうなのかも知れませんが、過剰なリスクテイクを示すような金融面の動きを是正って話をすると、今度は事前の是正という方が行き過ぎになってリスクテイクが消極的になりゃあせんですかねえというのが現場労務者的な印象なのですがどうなんでしょうかねえ。


○金融政策の二つの柱に関して

マクロプルーデンスの観点に金融政策の二つの柱がどうのこうのという話があるのですが。

『この点、2006年以来、日本銀行は金融政策判断において、「2つの柱」という判断フレームワークを採用しています。すなわち、このうちの「第2の柱」のもとで、資産価格の変化や銀行信用の膨張が、「経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因」と捉えられれば、日本銀行はこれに対応し得ることになります。このようなフレームワークを通じて、日本銀行は、物価の安定を金融政策の第一義的な目的としつつ、金融面でのリスクの過剰な蓄積に対応し得る弾力性も備えているわけです。この意味で、日本銀行の金融政策の枠組みは一貫して、今回の世界的な金融危機が勃発する前から、金融セクターのリスクにも適切な注意を払い続けてきています。』

という話なのですが、どうもいわゆるBISビュー的な発想に傾斜して、金融政策が経済活動に抑制的に働くんじゃねえのかという不安がそこはかとなく感じられるのは気のせいあるいは杞憂だと良いのですが・・・・・・

てな所でこっちの講演に関しては終了。


以下広島での講演に関して。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010e.pdf

○景気認識はまあ厳しいと

そらまあ追加緩和したんですから景気認識は厳しいというのは当たり前っちゃあ当たり前なのですけれども。

『米国では、家計部門が住宅ローンなどの債務を抱えているため消費を手控え、経済成長を下押ししています。このように、債務を返済し資産状況を健全にしていく過程は、「バランスシート調整」といわれ、「バブル」崩壊後に支出が持続的に下押しされる要因となります。この調整は日本の例をみても時間のかかるものであり、家計部門のバランスシート調整圧力が大きい米国経済の回復は、緩やかなものに止まると以前から考えてきました。ただ雇用者所得の伸びが高まったり、住宅価格が上昇したりすれば、家計部門の債務返済に向けた余力が高まり、相対的には早めに調整されます。』

というよりは米国の場合って今後注目なのは株価なんじゃないかという気がするのだが。

『このため、米国の雇用と住宅に関する指標が特に注目される訳です。雇用関連の代表的な指標として失業率がありますが、これはリーマン・ショック後に10%程度まで急速に上昇した後、春先に若干改善しましたがその後再び上昇し、高止まったままです。また、住宅販売件数も住宅減税の効果で持ち直しましたが、4月末に減税の期限が切れたとたん大幅に落ち込み、その後、低水準に止まっています。こうした中で、住宅価格は、大きく下落した後横ばい圏内の動きにとどまっています。このように雇用と住宅の情勢は思った以上に弱く、従って「バランスシート調整」には、これまでみていた以上に時間がかかる蓋然性が高まってきたと考えています。』

だそうざます。更に新興国経済に関しても・・・・

『新興国経済に目を転じますと、こちらも減速していますが、軽度の調整に止まっています。やや長い目でみれば、耐久消費財の普及や社会インフラの整備に向けて、潜在的な内需が旺盛であることから、高めの安定した成長を維持していく可能性は十分にあります。ただ、いくつかの新興国は、緩和的な政策を修正し経済の過熱を回避しようとしていますが、未だ過熱抑制策が十分でないとみられる国も多く資本の流入が続くもとで、成長ペースが加速していく過熱リスクが残っています。』

でも過熱した後はその反動でヘロヘロになるリスクですよねえ。

『他方、米国向けの輸出がかなりの規模であることから、場合によっては、米国経済の減速の影響を少なからず受ける可能性もあり、下振れ方向にも注意が必要です。』

ということで、メインは「安定成長維持」なるもリスク認識は下という話ですか。


○円高の物価に与える影響に関して

まあやっとその辺の話をきっちり指摘するようになって来ましたねという感じですが、日本経済に関する物価の部分に関して。

『物価面をみますと、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比の下落幅は、縮小傾向を維持しています。もっとも、先行きについては、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性に、留意が必要です。また、為替円高が、実体経済の悪化を通じる経路だけでなく、輸入物価の変化も通じて、消費者物価を下押しするリスクもあります。』

まあ結局のところ、もう一発円高が進行したら物価下押しと景気下押しを抑制するために追加緩和ですよって話になるんでしょうなあ、てかここ10数年に渡って金融政策がどうのこうのって話って実はドル円レートを見ながらのネタ振りばっかりだったという気がするんですけど(苦笑)。


○改めて今回の緩和措置に関する「目的」を確認しておく

包括緩和って言葉は何かこうあまり威勢の良い感じがしないので、あたくし的には「量的緩和と信用緩和の同時緩和」みたいなもうちょっと景気の良い言い方にすれば良いような気がするんですがいやまあいいですけど。

『今回の措置は、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めのリスクフリー金利の低下に加え、リスク資産のリスク・プレミアムの縮小を促していくものです。』

って既に社債とかCPのリスクプレミアムって大概に潰れていると思うのですけれどもというツッコミは兎も角、こーゆーロジックで来ているという事は、次に追加措置を行うという場合はあくまでも「リスク資産のリスクプレミアム縮小」という話になりますので、利下げ(といっても下げる場合は超過準備付利金利を下げるかどうかという話になるが)方向ではなくて、資産買入の拡大という話になると考えるのが妥当ではなかろうかと。

『これまでも、3か月物や6か月物の資金を0.1%という低金利で貸し出す固定金利オペという手段を活用し、やや長めのリスクフリー金利の低下を促してきましたが、今回は、残存期間1〜2年程度の長期国債や社債を買入れることで、さらに長めの金利の引き下げを促すことにしました。また、リスク・プレミアムを縮小させるため、ETFやJ−REITの購入も検討することにしました。日本銀行にとって初めての試みですが、リスクをとって買入れることにより、株式や不動産のリスク・プレミアムを縮小させる方向に作用することが期待できます。』

つまり株式や不動産価格支持政策という話になるのですが、まあまだ実際に何をどうするのかという話が出てこないからシャーナイ所でもありますが、もうちょっとこうその辺の意図を株式市場も感じてやりゃーいいのにと思うあたくし。


○しかしマクロプルーデンス的なネタを今から出すこともないだろうに・・・・

てな感じで講演の多くは今般の緩和措置と成長基盤強化支援貸出の説明をしているのですけれども、この辺の説明は正直言って丁寧にやらんでヨロシカロと思うのでありましてですな・・・・・

『第2の措置は、実質ゼロ金利を継続する条件を明確化したことです。』

という話の説明部分はまあ良いのですが、その後の話がねえ・・・

『ここで強調させて頂きたいことは、日本銀行は、足もとの物価上昇率ではなく、先行きに想定される物価上昇率の動きが、「中長期的な物価安定の理解」と整合的かを判断基準としているということです。長い目でみて物価安定を実現していくためには、金融政策の効果の浸透には時間がかかる事を考えれば、足もとの短期的な物価上昇率だけでなく、先行きの物価上昇率がどのように推移していくかを予測し、それと「中長期的な物価安定の理解」との整合性を考えていく必要があります。』

まあここまでは百歩譲って良いと致しましてですな。

『さらには、今回の世界的な信用バブルの生成・崩壊において、金融面での不均衡の蓄積といった重大なリスクが見過ごされた結果、長い目でみた経済・物価の安定が損なわれた経験から学ぶことも大事です。つまり、足もとの物価が安定していることに安心し、「バブル」のような金融面の不均衡の蓄積を見過ごすことがあれば、「バブル」崩壊後に再び持続的な物価下落に直面するといった可能性もあります。今回の時間軸の明確化においても、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを、実質ゼロ金利政策を継続する条件としています。』

いやあの足元の問題を片付けるのが先で、その後のバブルがどうのこうのの話を今からしてどうすんですかという風に思う訳よ。まあ(昨日もそんな話したけど)足元ではFED高官発言にやたら注目が集まっていて正直西村さんの講演も市場的にはスルー状態だから良い様なものですが、こーゆー話を今からするこたあねえと思うのですけどね、いやまあ言ってる事自体は正論は正論なのでしょうけれども、物には言い様というものがあるかと。

逆に、こういう発言をしてもスルー状態なのは「そんな話したって結局外部から押し込まれたら日銀って押し込まれた通りに動くんでしょ」っていう認識がここもとの流れですっかり定着したから何言ってもスルーだったりするのだと残念無念感も致しますけど実際のところはどうなんでしょうかねえ(ニヤニヤ)。







2010/10/20

お題「これは正論かもしれないが今話をするネタなのかという話」

一部あたくしのおさぼり中の虫干し成分もあるんですけどね。

白川総裁講演(10日)
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010b.pdf
『金融政策再考── IMF・ECB・FRB共催ハイレベルコンファランスにおける講演の邦訳 ──』

西村副総裁講演(18日)
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010d.pdf
『マクロ・プルーデンス政策について―― アジアの視点を踏まえて ――(中国人民銀行・IMF共催ハイレベルセミナーにおける発言の邦訳)』

えーっとですな、まあ題名をみていやーな予感はしたのですが、まあ予感どおりのお話をしていまして、何と申しますかそのネタは確かに正論は正論なのかも知れませんけれども、何も今そういう話を日本の中央銀行の総裁及び副総裁の肩書きがある人が話をせんでもええじゃろと思うのでありまする。

足元で金利および為替系のマーケットちゃんの注目がFEDの一挙手一投足に向かっておりまして、まー正直日銀ノーケアー状態だと思われますので(^^)、この辺りの講演ネタが華麗にスルーされているように思われるのが救いっちゃあ救いなのですが・・・・・

ちなみにどっちの講演も本当は英語なのですが、手抜きのあたくしは日銀謹製の邦訳版をネタにするでござるの巻。

ではまず白川総裁講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1010b.pdf(再掲)

○どう見ても白川節炸裂です本当に(ry

もうね、見出しの2番目の『2.事前か事後か(Lean or Clean)』ってところで大変にこうアレな内容を予感するのですが、もうその通りの展開になっているのが心温まるのでありまする。

『今回の危機とその後の経験は、私の友人であるBill White が指摘する「事前か事後か」(lean or clean)の議論に関し、より明確な方向性を与えてくれたと思っています。この問題は、「金融政策は、バブルの発生を未然に防ぐために流れに立ち向かう(lean against the wind)べきか、それとも単に、バブルが崩壊した後に後始末(clean up the mess after the bubble has burst)をすることで十分なのか」と言い換えることができます。』

で、その結論は読まなくても判ると思いますが・・・・・

『しかしながら、今回の景気悪化の深刻さや雇用の喪失、さらには最近における主要国の景気回復ペースの減速は、バブルの生成を許してしまうと非常に大きなコストがかかり、「事後的な対応」という戦略だけでは不十分であることを明らかにしています。金融面での不均衡の蓄積を防ぐための行動も必要となります。』

どう見ても白川節炸裂です本当にありがとうございました。

『それでは、バブルを防止するための「事前」の措置に話題を移しましょう。ここでの問題設定は、「低金利、あるいは長期にわたる緩和的な金融政策とバブルの発生は、どのように関係しているのか」ということです。』

更に白川節が続くのである。オソロシス・・・・


○更に白川節が続く(-_-メ)

さっきの最後のところの続き。

『このことは、低金利環境の下では、利回りを追求する(search for yield)傾向や、より積極的にリスクをとる姿勢につながっていきます。実際、今回の危機に向かっていく局面では、高格付け商品でありながら驚くほど高い名目利回りをもたらすサブプライム関連証券化商品への投資が拡大しました。投資家は、意識する、しないにかかわらず、大きな信用リスクと流動性リスクをとっていましたが、そうした行動は、潤沢な流動性を伴う低金利環境において増幅されていたといえます。このような環境下では認識しにくい「テール・リスク」が、投資家のポートフォリオや金融機関のバランスシートに蓄積されていったのです。』

いやまあそれはそうなんですが・・・・・

『こうした投資行動を強めたと考えられるもうひとつの要素が、低金利環境と緩和的な金融政策が継続するという「予想」です。これは、経済環境やインフレ予想、中央銀行の政策といった様々な要因に影響されます。』

いやーん。

『1990 年代以降、金融政策の透明性とアカウンタビリティを高める枠組みとして、インフレーション・ターゲティングが多くの国で採用されました。これは、将来のインフレ予想とともに現実のインフレ率を安定させることに貢献しました。しかし同時に、この枠組みの設計上の特質ゆえに、市場やエコノミストは、金融政策の将来の道筋を予測するに当たり、需給ギャップとインフレ率の動向ばかりを注目するようになりました。こうした見方は、物価が安定した環境の下では、先行きも非常に低い金利が続くという期待の高まりを通じて、利回りを追求する傾向を生じさせがちだったと思われます。』

いやまあ今般のサブプライム金融問題の現象面という意味では仰る事は全くその通りだと思うのですし、今回の講演はそういう問題に関する指摘をしているからというのは非常によーーーく判るのですけれども、何も足元の景気下振れ懸念対応で時間軸を強化(=低金利環境と緩和的な金融政策を継続させる)という決定をしている直後に、その決定をした中央銀行の総裁がそういう話をせんでもええじゃろと思うのですよね。

まあおさぼり中だったから良く判りませんけれども、日本の3連休中の中日に実施されたネタだし、そもそも足元で日銀に対する注目度が下がっている中だと思われるので、あんまりネタにならんで済んだと思われるのですけれども、この講演だって世が世なら変なヘッドライン打たれて早速批判ネタになってもおかしくないと思う次第でして、もうちょっとこうお立場というのを弁えて頂きたく存じますと思いますがどうでしょうか・・・・・


○事前的対応も可能という話をしているようですなあ

『バブルの発生を事前に回避するために金融政策は役割を果たすべきである、という見解に対しては、様々な議論があります。ここでは2つ紹介します。』

『第1に、バブルと関連する資産価格の変動を見抜くことは難しいという指摘があります。』

『しかし、これに対しては、資産価格の上昇自体は問題ではなく、むしろ不均衡の蓄積、すなわち資産価格の大幅な上昇や、これと連動した過剰なレバレッジや期間ミスマッチが問題であるという反論が可能です。個別の金融機関のミクロ情報を入手することが可能で、経済と金融環境の両面を効果的にモニターできる中央銀行は、そうした不均衡を発見するのに最も適した立場にあり、それだけに、どのような政策対応が採り得るのか検討していく必要があります。』

つまり資産価格の動向というよりは金融機関のミクロプルーデンスという話になるのですが、それって突き詰めると金融機関のsearch for yieldをどないかせんといかんという話になってくる話になりそうな悪寒が。

『第2に、過剰なレバレッジといった不均衡については、監督・規制的な手法を講じることにより、最も効果的に対処できるという指摘があります。この場合、ミクロ・プルーデンスの手法を用いることが求められます。』

『しかしながら、このことは、金融政策の活用を排除するものではありません。わが国の場合、かつて日本銀行が民間銀行に対する窓口指導を実施した際、そうした手法が単独で過剰な銀行貸出を効果的に削減できるのかどうかにつき、学界で議論が行われました。その時の結論は、非常に緩和的な金融環境の下で、金融機関が裁定機会を求めて活動するので、窓口指導の有効性は低下する、というものでした。勿論、一方で、金融政策だけで、こうした状況に対応できる訳でもありません。金融政策とミクロ・プルーデンス政策が相互補完的に実施されることによって、より効果的な対応が可能になると考えられます。』

なんつーかまあそれはそういう考え方もあると思いますが、何も追加緩和政策を実施した直後にそういうネタの話をせんでもええと思うんじゃがのう。別に日銀総裁が話せんでも他の人に話をさせれば・・・・


○事前的対応はやはり困難なのではないかという気がしますけど・・・・

次の章になると更に何と言うかの話が続くでござるの巻。

『たとえ我々が、中央銀行が事前的対応を講じるべきという点で合意したとしても、なお課題は残っています。』

・・・・合意するんですかそうですか(−−)

というツッコミは兎も角、次の所の説明は仰るとおりの話でして、中央銀行の独立性がどうのこうのという話で、マーケットの中の人たちと、そうじゃない人たちの中で特に日銀を批判している人たちとの間のイメージギャップの部分でもありますなあという点への話でして。

『第1に、中央銀行が事前的対応を効果的に行うためには、どのような条件を満たす必要があるか、という点です。中央銀行は、経済の中に持続不可能な不均衡が蓄積されていないかどうか、そして、人々が好景気を謳歌している最中に金融を引き締める必要があるかどうか(take away the punch bowl in the midst of the party)を判断する役割を担っています。』

まあ事前的対応をするならそうなるという話ですな。

『そうした判断は、中央銀行が独立して行う必要がありますが、形式的な独立性だけでは不十分です。幅広い社会的な合意が必要です。』

しらっと話をしているのですが、中々この辺りは微妙な論点だと思われる次第でありまして、結局のところ中央銀行の政策判断に独立性を付与されていると言っても、世間様が納得しない中でそれを強行するのが実際問題としては難しいという点に関連して、まあ日銀のケースで言えばマーケットの方から見ると「形式的には日銀って独立性強いように見えるけれども、実際問題としてそこらじゅうから圧力掛けられる中で政策判断しています(=つまり差し込まれて金融緩和とか)よねえ」っていう見方になる次第なのですが、まあその辺りの論点を含む指摘なのではないかと存じますです。

『すなわち、資産価格の上昇やレバレッジの拡大などを通じて金融面での不均衡が拡大すると、それが崩壊した時の社会的・経済的な損失は甚大なものとなること、そして、こうした動きを鎮静化するためには、予防的な政策対応が適切かつ必要であることが広く認識される必要があります。そうした幅広い合意なしには、中央銀行であれ、他の公的当局であれ、短期的には極めて不人気な、景気を抑制するための政策対応に踏み切ることは、非常に難しいと思われます。』

で、そのような合意形成ってたぶん無理で、合意形成できる頃にはどうしようも無いような状態になっていると思われるところが、この事前的対応の難しさを示しているのではないかと思われますが。


○これは・・・・・

『第2に、特に公的な政策に関する議論の中で、金融政策をどのような枠組みの下で運営していくのかという課題があります。』

とは何ぞやという話ですが。

『人々の考え方や行動は、政策をどのような言葉で表現するか次第で変わり得ます。この点は重要であり、過小評価すべきではありません。』

ほほう。

『「インフレーション・ターゲティング」という表現は、金融政策に関する人々の理解、ひいてはその有効性に対して、プラス・マイナス両面の効果がありました。』

!!!!!

『インフレーション・ターゲティングは、多くの国において、金融政策の透明性とアカウンタビリティを高め、金融政策における物価安定目標について、人々の理解を向上させる助けとなりました。しかしながら、バブルが生成された期間を振り返ると、当初の政策意図から離れ、インフレーション・ターゲティングに対する表面的かつ狭い理解が徐々に定着してしまったとの印象を持っています。』

どう見ても白川(ry

『恐らく余り認識されてはいませんが、そうした理解は、マクロ経済と金融環境の全体を踏まえて柔軟に運営されるべき金融政策を、制約し始めました。ひとたび、狭い理解が人々の意識に浸透すると、中央銀行が、その狭い領域の外に踏み出し、新たな状況──例えば、インフレ率自体は安定しているにもかかわらず、長い目でみた経済成長を阻害しかねない不均衡が蓄積している状況──に柔軟に対応していくことは、非常に難しいものとなります。』

どう見ても(ry

『それゆえ、日本銀行は、インフレーション・ターゲティングの長所を取り込みつつ、こうした隠れた問題を回避するための枠組みを導入しています。』

ということで以下中長期的な物価安定の理解に関する説明と第1の柱第2の柱に関する説明になるのですがそこは全部割愛。ついでに言えばもう一つ論点があるのですがそれも割愛しちゃいます。

・・・・・いやまあこれは過去に起きたことのレビューとしては正論だとは思うのですけれども、白川総裁様におかれましては『人々の考え方や行動は、政策をどのような言葉で表現するか次第で変わり得ます。この点は重要であり、過小評価すべきではありません。』と仰っているのであれば、追加緩和政策を実施するような時に「麿はやりとうなかったでおじゃるしこんなの効果はあんまり無いでおじゃる」というような話をするのは是非とも回避して頂きたく存じますし、先行きの政策オプションに関してでもわざわざ過去の話を引き合いに出して「これは効果が不透明」「この効果はあまり観測されませんでした」というようなダメ出し大会をするのも勘弁して頂きたいものだと切に願うものであります。


○西村副総裁講演の時間がなくなってしまいました(おいおい)

相変わらず時間配分とペース配分ができないあたくしでして、折角URLをつけたというのに西村副総裁講演ネタは華麗にスルーなのですが、まあ一言で言えば「どう見てもBISビューです本当にありがとうございました」という所でしょうか。いやまあマクロプルーデンス政策という観点や、今般の金融バブルの生成と崩壊に関する論点からすれば仰るとおりの話なのですが、現在まさに下振れリスクとかデフレ問題対応とかやっている中央銀行の副総裁が今する話なんですかね、という所だとは思うのですけど。

いやまあ「これは現在日銀が実施している追加金融緩和政策とか足元の金融政策という話とはまた別問題の話ですよ」というのは判るんですけれども、読むほうは必ずしもそういう反応を示さない可能性がある、という点に関してもうちょっと注意深くあったほうが良さそうな気がするんですけどね。





2010/10/19

お題「お休みしていた間のネタでさくらレポートとか雑談とか」

ところで「防衛ラインは83円」だった筈なのにあたくしが更新をお休みしている間は無策政府様におかれましては何をしておられたのでせうか。日銀が折角満額回答以上の緩和を行ったのに見事な梯子外しぶりですなあ。

で、まずはさくらレポート。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1010.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1010.pdf(本文)

○前回までは上げていましたが今回は下げとな

『T. 地域からみた景気情勢』から。

『最近の景気情勢については、全地域が基調として「緩やかに回復」または「持ち直し」と判断しているが、3地域(関東甲信越、東海、中国)が政策効果の弱まりと海外経済の減速を主因に、このところ回復ないし持ち直しのペースが鈍化していると報告した。この間、先行きの不透明感の強まりに言及する地域もみられた。また、引き続き、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国、九州・沖縄)ないし地域や業種間のばらつきの存在(関東甲信越)に言及している。』

という事ですが、今回表現が弱くなったなあというのは東海地方でして、

『持ち直しを続けてきたが、ここにきて急速に減速しているようにうかがわれる』(今回)
『生産の増勢が一時的に鈍化したが、その後は再び増勢が戻りつつあり、全体として持ち直しを続けている』(前回)

つまり製造業特に自動車関連が減速という事ですね、わかります。

でですね、まあ泣けてくるのは前回のさくらレポートとの比較でありまして。

『今回の地域別総括判断を前回(10年4月時点)と比較すると、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)では、改善の動きがよりしっかりしてきたと判断した。また、今回は4地域(関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)が「緩やかに回復している」と判断した。

項目別にみると、多くの地域が、生産の増加が続く中、設備投資の下げ止まりや持ち直し、雇用・所得環境の厳しさの緩和の動きがみられていると報告した。なお、過半の地域が、個人消費の下げ止まりや持ち直しの動きを報告した。

この間、多くの地域が水準の厳しさ(北海道、北陸、近畿、四国)ないし地域や業種、企業間の格差の存在(関東甲信越、九州・沖縄)に言及している。』(前回)

前回基調判断を「回復」に前進させたんですよね〜♪いやもう泣けてきますが2008年以来の流れを見るとこうなります。

2010年10月:3地域で下方修正
2010年7月:8地域で上方修正
2010年4月:7地域で上方修正
2010年1月:4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

まあ今回金融緩和措置をどどーんと実施しているのにさくらレポートが上方修正っていうのも変な話ですからそらまあ下方修正なのでしょうけれども、7月に満を持して基調判断を「回復」に上げた途端にこの有様という辺りが実に落涙を禁じえないですな。


○しかし良く見ると個別項目がそんなに極端に下がっている訳でもない

個別項目のところなんですけどね。

・設備投資

『設備投資は、6地域(北海道、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)が「持ち直し」または「持ち直しつつある」、「低水準ながら増加」と判断したほか、他の2地域(北陸、関東甲信越)も「下げ止まっている」と判断した。この間、東北は「減少」と判断した。』

『内訳をみると、製造業では、維持・更新投資や能力増強投資を計画しているほか、新商品・研究開発投資や合理化投資を拡充する動きがみられていると報告された。また、非製造業では、引き続きインフラ関連産業の大型投資がみられるほか、一部の地域が小売業における新規出店の動きを報告した。』

ということで設備投資はそんなに下がっているようでもなく。

・個人消費

『個人消費は、雇用・所得環境の厳しさが緩和しているもとで、6地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)が、「持ち直し」または「下げ止まりつつある」等と判断した。もっとも、ほとんどの地域が、乗用車販売における駆け込み需要の反動を指摘しており、こうした中で、東海は「弱含んでいるとみられる」、中国は「持ち直しの動きに一服感がみられる」、四国は「全体としては弱めの動き」と判断した。』

『品目別の動きをみると、家電販売で猛暑やエコポイント制度の効果がみられているほか、多くの地域が、大型小売店売上高における前年比減少幅の縮小等を報告した。このほか、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄)が、旅行関連需要の増加ないし下げ止まりの動きを報告した。一方、乗用車販売は、エコカー補助終了に伴う駆け込み需要の反動がみられていると報告された。』

ということでこちらは引き続き政策効果に支えられているという話ですか。

・生産

『生産については、引き続き4地域(東北、北陸、四国、九州・沖縄)が、「増加」等の判断を維持しているが、東海は「減少に転じているとみられる」と報告したほか、4地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国)が増勢鈍化を報告した。』

『業種別の主な動きをみると、自動車・同部品では、エコカー補助終了や米国向け輸出の減少から、多くの地域が「減少」または「増勢鈍化」と報告した。また、鉄鋼、化学でも「増勢鈍化」の動きが複数の地域から報告された。一方、一般機械などでは、多くの地域が「増加」等と報告した。この間、紙・パルプについては、一部地域で低操業が続いていると報告した。』

まあさっきの消費の所と生産のところが下がっていますから総体としては判断が下がるという事なのですが、まー極端に今回さがっている訳でも無さそうな感じはしますわな。

・雇用、所得

『雇用・所得環境については、引き続き厳しい状況にあるが、全地域が、その厳しさの度合いが緩和していると報告した。雇用情勢については、ほとんどの地域が労働需給の改善傾向を報告した。また、雇用者所得についても、全地域が下げ止まりに向けた動きを報告した。』

ここに関しては「厳しさの度合いが改善」が継続しているのが何気にお洒落。


という感じでして(一部の項目をスルーしました)、需要項目別にいきなり下がったという感じでもなさそうな。


○地域の視点

『U.地域の視点』ですけれども、今回のお題は『最近の雇用・所得動向』となっています。前回のお題が『最近の家計支出の動向と関連企業の対応』でして、若干前向きの話だったのですけれどもさて今回はどうかというのを端折って(全部引用すると長いので)引用。

『各地域の雇用・所得動向は、企業が慎重な雇用・賃金スタンスを崩していないことから厳しい状況が続いているものの、これまでの製造業での輸出・生産の増加などから厳しさが緩和している。』

ということはしかし生産の伸びが鈍化気味という中で先行きどうなんでしょ??

『なお、エコカー補助の終了等に伴う一時的な生産等の弱めの動きが雇用面に及ぼす影響については、企業からは今のところ大きな雇用調整の動きは回避されるとの声が多く聞かれている。』

ほほう。

『企業の雇用・賃金調整の動きは、これまでの製造業での輸出・生産の増加などによる業況回復から全体では落ち着いた状態が続いている。ただし、@直面する需要減や収益低迷を受けて雇用・賃金調整を継続的に実施している先に加えて、A先行きの需要動向次第ではさらなる雇用・賃金調整を示唆する先もみられるなど、今後も雇用・賃金に対する調整圧力が残存するとみられる。』

総体で見たら大きな調整は回避されるけれども、それはあくまでも総体の話で個別では必ずしもそうではありませんと。

『この間、恒常的な人員・人材不足の状態にあり雇用の受け皿として期待されている介護サービスや農漁業関連企業では、介護サービスを中心に雇用者数の増加がみられているものの、求職者のニーズとのミスマッチなどから人材確保が容易でない状況が続いている。』

さよでしょうなあ。

『ただし、ごく一部にはこの機を捉えて人材確保にさらに注力したことや地公体などの就労支援強化の動きもあって、一定の成果を挙げている先もみられている。また、多くの企業が慎重な雇用スタンスを崩していない状況下でも、中小企業の中には、こうした厳しい雇用環境を逆手にとって、「不況の時期こそ優秀な人材を獲得するチャンス」として積極的な採用を行う先や、今後の需要獲得や業容拡大を目的に人材確保を進める先が少なくない。なお、今後の新卒採用スタンスについては、上記のように一部の企業で積極的な動きがみられるが、大方の先では慎重な採用スタンスを続けている。』

ただまあ今の世の中の雰囲気だと先行き不透明なイメージが強くなればなるほど特に若い人たちが大手志向を強めそうですな。で、最後のほうはやはり残念な見通しに。

『先行きの雇用・所得動向は、エコカー補助の終了など政策効果の減衰に伴う生産の弱まりや最近の為替円高などに伴う不透明感の台頭を背景に、「企業は当面、慎重な雇用・賃金スタンスを続けていく」との見方が多い。』

『また、中・長期的な企業の経営戦略が雇用面に与える影響では、@潜在的に需要拡大が見込める海外での生産強化を図り、国内の新規雇用をさらに抑制するとか、A国内需要の減少に伴う国内販売体制の見直しから雇用調整圧力が強まる可能性、B技術革新の流れに乗り遅れた企業での雇用調整、を懸念する声が聞かれている。』

何か結論があまり威勢良くないのですが、前回の「地域の視点」は「家計消費に関して」の話だったんですが、足元は威勢の良い話をしつつも先行きは不透明ですなあという「足元の強さと先行き不透明のセット」だったのですが、今回のこのコーナーはトーンがやはり全体としてはパッとしませんなあという所でしょうか。


以下世間話雑談。

○どうでもよい雑談ですが

・どういう文脈で言ったのか判らないけど・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=atGBvpOvqCEU
菅首相:公的資金でのETF買い取り制度必要な状況でない−国会答弁

『10月18日(ブルームバーグ):菅直人首相は18日午後の参院決算委員会で、株安対策などとしての公的資金による上場投資信託(ETF)の買い取り制度の導入について、制度が必要な特別な状況には達していないと述べた。荒井広幸氏(たちあげれ日本・新党改革)に対する答弁。 』

えーっと、日銀がこれからETFを買い取るという話をしているのですが・・・・

いやまあ幾らなんでもこれは「日銀がこれから買取をやるので別に政府が実施する必要はないでしょ」という意味で発言したのだと思うのですが、そういう意味では質問するほうも質問するほう(日銀がETF買取を行うの質問者だって知ってるでしょ)ですが、答えるほうも答え方があるでしょうし、ヘッドラインの打ち方も何だかなあという感じですが、国会は何やってるんでしょうかねえ(呆)。

ま、それにしても「株安対策でETF買え」というのもあまりと言えばあまりな質問で、そら何ぼなんでも筋の悪い政策の持ち出し方じゃないですかねえ。まあ質問してる人がアレな人っぽいからどうでも良いですけれども、たちあがれ日本って与謝野さんの所でしょ。何だかねえ・・・・


・米国のプリンティングマネー的な攻撃って・・・・

いやまあバーナンキ講演とか詳しく読んでからまた考えるのですけれども、まあ米国市場的には「米国プリンティングマネーでもう商品価格上昇ですよイールドカーブがスティープですよ」という話になっていると思われますが、そもそもプリンティングマネーって基軸通貨特権を消費というか浪費する話だと思うのですよね。

で、そういう事をつらつら考えているうちに中村隆英さんの「昭和恐慌と経済政策(講談社学術文庫)」の説明を思い出したのでちと引用を。同書42ページから。

『イギリスが国際金本位制を維持するために、国際収支の黒字分のほとんどを、海外に再投資したけれども、アメリカはその通りにはしなかった。かつてのイギリスが果たした国際金本位制を支える役割を、アメリカは十分には理解しておらず、その役割をひき継ごうとしなかったのである。金為替本位制の必要はその点からも生じたのであった。各国の国際収支は、そのためにいっそう不安なものになった。さきにみたようにアメリカの資金がドイツを通じてイギリス、フランスに流れ、再びアメリカに還流するというような複雑な国際資金の流れが生じたのも、基本的には以上のように各国の余裕がなくなっていたためであった。そこに一国の国際収支の危機がただちに各国にはね返るような―たとえばアメリカがドイツから資金を引き上げれば、イギリス、フランスもただちに影響を受けるというようなメカニズムが成立していたのである。』

いやまあですね、別に金本位制度がどうのこうのという話をする訳じゃなくてですな、なんつーか基軸通貨特権の国が通貨を堂々デバリュエーションしてプリントマネーしますよみたいな流れって、管理通貨制度の維持という論点でどうなのよという気がせんでもない訳で、だから足元の市場がどうしたこうしたという話には全然関係ないのですが、恐慌の研究のバーナンキ先生ってその辺どうお考えなのか知りたいもんですなあ、と思うのでありました。

#と自己満足的雑談でどうもすいません







2010/10/18

お題「FOMC議事要旨を見れば普通に追加緩和ですなあという今更ネタ」

どもども、何か米国欧州は金融相場祭りみたいですなあ。で、何で日本の株だけ蚊帳の外なんでしょ??

えーっとですね、延々と追加緩和やるやる詐欺で期待を煽りまくっているのですけれども、何だか大丈夫なんですかねえという気はするんですけど、まあとりあえずは議事要旨ちゃんから本日は少々と言う事で。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100921.htm(htm版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20100921.pdf(pdf版)

○FOMCスタッフの景気見通しを下げと

前半のスタッフの経済認識に関してもまあ何だかパッとしない話が続くのですけれども、その辺りは面倒なので華麗にスルーしまして、『Staff Economic Outlook』という見通しのところからまずは。

『In the economic forecast prepared for the September FOMC meeting, the staff lowered its projection for the increase in real economic activity over the second half of 2010.』

スタッフは2010年後半の経済見通しを引き下げとな。

『The staff also reduced slightly its forecast of growth next year but continued to anticipate a moderate strengthening of the expansion in 2011 as well as a further pickup in economic growth in 2012. The softer tone of incoming economic data suggested that the underlying level of demand was weaker than projected at the time of the August meeting. Moreover, the outlook for foreign economic activity also appeared a bit weaker.』

一応先行きの見通しの基本的な「回復」という線は維持しているのですが・・・・

『In the medium term, the recovery in economic activity was expected to receive support from accommodative monetary policy, further improvements in financial conditions, and greater household and business confidence.』

ということで、先行きの回復に関しては「緩和的な金融政策のサポートを受けることによって期待されます」という辺りからもうアレですし、「更なる金融環境の改善と、家計や企業の信頼感の大きな改善」つーのも必要だという話をしている訳で、まあこの辺りからも追加緩和11月にはやるという話になりますなあという所で。

『Over the forecast period, the increase in real GDP was projected to be sufficient to slowly reduce economic slack, although resource slack was anticipated to still remain elevated at the end of 2012. 』

2012年末までの実質GDPの伸びはリソースのスラックを埋めません(のでインフレは亢進しません)という話ですな。で、インフレ見通しに関しては「特に変化は無く、引き続きリソースのスラックによってインフレは低位に推移するでしょうという話ですが引用は割愛します。


○委員会の経済見通しに関して

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のまずは頭の部分から。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants generally agreed that the incoming data indicated that output and employment were increasing only slowly and at rates well below those recorded earlier in the year.』

ということで生産と雇用の回復は鈍化しており水準も低いと。

『Although participants considered it unlikely that the economy would reenter a recession, many expressed concern that output growth, and the associated progress in reducing the level of unemployment, could be slow for some time.』

サイドのリセッション入りの可能性は無さそうだが、生産の回復と高水準の失業率の改善は当面遅いでしょうとな。

『Participants noted a number of factors that were restraining growth, including low levels of household and business confidence, heightened risk aversion, and the still weak financial conditions of some households and small firms. A few participants noted that economic recoveries were often uneven and were typically slow following downturns triggered by financial crises.』

『A number of participants observed that the sluggish pace of growth and continued high levels of slack left the economy exposed to potential negative shocks. Nevertheless, participants judged the economic recovery to be continuing and generally expected growth to pick up gradually next year.』

何てえ感じで、先行きは改善という見通しは変えていないのですけれども、景気に対する信頼感の弱さとか、リスク回避姿勢に関してとか、まあ景気の足を引っ張るものは多いですなあという事で。んでもってその先に項目別の話が出てくるのですが、その辺をスルーしまして見通しのまとめ部分。

『A number of participants noted that the current sluggish pace of employment growth was insufficient to reduce unemployment at a satisfactory pace.』

多くの委員は最近の不活発な雇用の成長が、失業が満足なペースで減るのには不十分とな。

『Several participants reported feedback from business contacts who were delaying hiring until the economic and regulatory outlook became more certain.』

んでこの先に「ふ〜ん」っていう指摘が。

『Participants discussed the possible extent to which the unemployment rate was being boosted by structural factors such as mismatches between the skills of the workers who had lost their jobs and the skills needed in the sectors of the economy with vacancies, the inability of the unemployed to relocate because their homes were worth less than their mortgages, and the effects of extended unemployment benefits.』

ほほーって感じですが、モーゲージの借り換えが出来なくなって人間の移動がしにくくなるので雇用のミスマッチが解消されないので失業が下がらないという構造問題というお話で、これはふーんって感じですが、つまりどっかの国が推進する持ち家政策は如何なものかという話ですね、わかります(違)。

『Participants agreed that factors like these were pushing the unemployment rate up, but they differed in their assessments of the extent of such effects. Nevertheless, many participants saw evidence that the current unemployment rate was considerably above levels that could be explained by structural factors alone, pointing, for example, to declines in employment across a wide range of industries during the recession, job vacancy rates that were relatively low, and reports that weak demand for goods and services remained a key reason why firms were adding employees only slowly.』

んまあそうは言ってもその辺の構造的な問題だけの話じゃないですよ、という当たり前の話が続いていました(^^)。で、その次がインフレの話。

『Inflation had declined since the start of the recession, and most participants indicated that underlying inflation was at levels somewhat below those that they judged to be consistent with the Committee's dual mandate for maximum employment and price stability.』

イイハナシダナー(;∀;)

だけだと何なので一応申し上げますと「殆どの委員は足元のインフレ水準がFOMCの最大雇用と物価安定という政策目標に対して幾分か低いレベルにあると指摘しました!!」ですからね(;∀;)

『Although prices of some commodities and imported goods had risen recently, many business contacts reported that they currently had little pricing power and that they anticipated limited, if any, increases in labor costs. Meeting participants noted that several measures of inflation expectations had changed little, on net, over the intermeeting period and that analysis of the components of price indexes suggested disinflation might be abating. However, TIPS-based inflation compensation had declined, on balance, in recent quarters. While underlying inflation remained subdued, participants saw only small odds of deflation.』

とまあそういうことで、デフレの可能性は低いとしながらも、物価が伸びないですねえという話が色々と出てくるの巻ですな。


○先行き見通しで「現在の状況のままでは追加緩和が必要」という人が多いとな

で、この部分の最終パラグラフがキターって奴でして、パラグラフの中に小見出しネタが4つくらいあるという中々の濃い部分(なので速読したい人はそこだけ見とけという話になるのですな^^)。

『Participants discussed the medium-term outlook for monetary policy and issues related to monetary policy implementation.』

で、さてどうなんでしょうという所で。

『Many participants noted that if economic growth remained too slow to make satisfactory progress toward reducing the unemployment rate or if inflation continued to come in below levels consistent with the FOMC's dual mandate, it would be appropriate to provide additional monetary policy accommodation.』

ということでですな、remainedとかcontinued to comeとか言っている訳ですから、経済状況が現在のままで推移すれば追加緩和が必要というのが「多くの委員から」指摘されているという事で。

『However, others thought that additional accommodation would be warranted only if the outlook worsened and the odds of deflation increased materially. 』

othersですから一人では無いようですが、更なる悪化がなければ追加緩和要らないんじゃネーノという指摘ですわな。


○長期資産買入は「インフレ期待に効果を与える」というロジックが急に来たので

おまいらついこの前まで長期資産の買入の政策効果を「金利の引き下げ」って言ってませんでしたっけと非常に引っ掛かる部分がその次から始まるのであります。しかしこの辺の理屈の飛躍ってどうなのよと非常に疑問に思うというか、その場限りで適当な屁理屈繰り出しているだけじゃないのかという気がするのですけれどもねえ・・・・

『Meeting participants discussed several possible approaches to providing additional accommodation but focused primarily on further purchases of longer-term Treasury securities and on possible steps to affect inflation expectations.』

しつこく同じ事を書きますが、従来は長期資産の購入に関して「金利の引き下げによって効果が出る」という言い方をしていまして、更に言えばFEDのバランスシート拡大に関して「バランスシート拡大そのものはインフレ期待に対して与える影響は不透明(なので出口政策の際には急速にバランスシートを縮小させる必要は必ずしもない)」という理屈を振りかざしていた筈なのですが、このFOMCではしらっと皆様が「長期国債買入でインフレ期待を引き上げる」という話をおっぱじめています。これは何とした事ぞという感じですけれども・・・・・

『Participants reviewed the likely benefits and costs associated with a program of purchasing additional longer-term assets--with some noting that the economic benefits could be small in current circumstances--as well as the best means to calibrate and implement such purchases.』

で、インフレ期待に効果を与えて副作用の小さいのは長期国債の買入とな。


○短期的な期待インフレ率を引き上げて実質短期金利を低下させるという理屈が出てきました

で、その次に期待インフレ率で短期実質金利を下げるという話を。

『A number of participants commented on the important role of inflation expectations for monetary policy: With short-term nominal interest rates constrained by the zero bound, a decline in short-term inflation expectations increases short-term real interest rates (that is, the difference between nominal interest rates and expected inflation), thereby damping aggregate demand. Conversely, in such circumstances, an increase in inflation expectations lowers short-term real interest rates, stimulating the economy. 』

ということで、ゼロ金利制約のある中では金融緩和効果を出すには期待インフレ率を引き上げて実質短期金利を下げるという話をしていて、それはそれで単体の理屈としてがご尤もなのですけれども、これってよーするに「長期資産の買入によって金利を引き下げる事によって効果を出す」という話をこのまま継続していると、実際に長期国債の買入を行った時に長期金利が上昇した場合(前回買入を実施した時にもアナウンス直後には金利が低下しましたけれども、結局のところ長期金利水準は上昇しましたよね)に言い訳がつかなくなるので、今回ドサクサに紛れて「買入対象資産の金利を引き下げて緩和効果を出す」という話を引っ込めたんでしょうなあという風に思うのはあたくしの意地と性格が悪いからですかそうですか(^^)。

まあこのロジックそのものはそれはその通りですなあという所ですが、長期資産の買入プログラムに関する従来の説明をしらっと放棄しているように見える所がとってもチャーミングなところです。まあ要するに「とりあえず効きそうだからやってみるけれども、本当はどうなんでしょ」という風には内心思っているのではなかろうかってえ気がします。


○短期的な期待インフレ率引き上げの他の手段としての物価水準目標や名目GDP目標

何かね、CNBC(本物のほう)辺りでは「FRBがプライスレベルターゲットを示唆(なので超強力緩和キターーー)」みたいなお祭りのコメントが散見されておりました次第なのでちょっとビックリ(従来バーナンキもコーンもケチョンケチョンに否定している政策オプションだから)なのですが、文脈をちゃんと追うとこの先に出てくる政策手段に関してはあくまでもお話の域を出ないと思うのですけれどもどうでしょう。

『Participants noted a number of possible strategies for affecting short-term inflation expectations, including providing more detailed information about the rates of inflation the Committee considered consistent with its dual mandate, targeting a path for the price level rather than the rate of inflation, and targeting a path for the level of nominal GDP.』

『As a general matter, participants felt that any needed policy accommodation would be most effective if enacted within a framework that was clearly communicated to the public.』

いやまあ確かに可能性が無いとは言わないという所がどこぞの麿総裁と違うテイストなのですけれども(つーかその方が自分の手足を縛らないから普通ですわな)、ここまでの流れから読むと普通に「これはあくまでも一般論の話」という感じに見えますけどね。何故かというと最後にこの一文が入っていましてですな。

『The minutes of FOMC meetings were seen as an important channel for communicating participants' views about monetary policy. 』

ということで、現在のコミュニケーションポリシーはこれでこれでワークしているという話をしているように思えるのですけどにゃ。


○9月FOMCでの金融政策決定に関して

『Committee Policy Action』のところから。

『In their discussion of monetary policy for the period immediately ahead, nearly all of the Committee members agreed that it would be appropriate to maintain the target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent and to leave unchanged the level of the combined holdings of Treasury, agency debt, and agency mortgage-backed securities in the SOMA.』

まあここまでは良いとして。

『Although many members considered the recent and anticipated progress toward meeting the Committee's mandate of maximum employment and price stability to be unsatisfactory, members observed that incoming data over the intermeeting period indicated that the economic recovery was continuing, albeit slowly.』

一応景気回復は遅いながらも継続するも、現状の経済状況はunsatisfactoryとな。

『Moreover, the data had been mixed, with readings early in the period generally weaker than anticipated but the more-recent data coming in on the strong side of expectations. In light of the considerable uncertainty about the current trajectory for the economy, some members saw merit in accumulating further information before reaching a decision about providing additional monetary stimulus.』

ということで、some membersが足元の景気のconsiderable uncertaintyに対応して追加緩和を示唆する文言をステートメントに追加するメリットについて指摘したと。

『Several members noted that unless the pace of economic recovery strengthened or underlying inflation moved back toward a level consistent with the Committee's mandate, they would consider it appropriate to take action soon.』

several members様におかれましては「景気回復ペースが強くなったり、足元の物価上昇が改善しないのであれば、追加の金融緩和を早急に行うべき」と指摘していまして、つまりさっきもありましたけれども、「経済が現状のままなら追加緩和する」という話になるので、そーゆー意味では11月の追加緩和って結構ダンディールに近い話ですよね。

とは思うのですが、じゃあ何で9月に緩和しなかったのかというのが不思議な話ですし、9月には結局後にあるようにステートメント文言をいじるだけの「追加緩和やるやる詐欺」モードにしたのは何でじゃろとは思うのですが、要するに何をやるのかとかどの程度の規模をやるのかという話が結局まとまらなかったのかなあ等と思ってみたり、実際にはまだ半々に近い状態になっているのかもとか、まあ色々と妄想だけはしてみるのであります。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that it was appropriate to adjust the statement to make it clear that underlying inflation had been running below levels that the Committee judged to be consistent with its mandate for maximum employment and price stability, in part to help anchor inflation expectations.』

ということで、全員の意見が一致したのはステートメントに「足元のインフレはFOMCがデュアルマンデートに合致すると判断する水準よりも低い状況である」という点を入れる部分だということのようですな。

『Nearly all members agreed that the statement should reiterate the expectation that economic conditions were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. One member, however, believed that continuing to communicate that expectation in the Committee's statement would create conditions that could lead to macroeconomic and financial imbalances.』

extended periodに関してはいつもの人が反対しているのでここはまあいつもどおり。

『Members generally thought that the statement should note that the Committee was prepared to provide additional accommodation if needed to support the economic recovery and to return inflation, over time, to levels consistent with its mandate.』

generallyつーのは(※ホーニッグを除く)って事ですかな。

『Such an indication accorded with the members' sense that such accommodation may be appropriate before long, but also made clear that any decisions would depend upon future information about the economic situation and outlook.』

という事で、最後は「このような声明文を出しますという議決をした」云々の話になるので引用は割愛します(ホーニッグさんの反対理由もあるのですがそっちも割愛)。


#引用大増量で量だけは多くてどうもすいません








2010/10/08

お題「総裁会見メモ追加」

今日はお休みの積りでしたがちょっとだけメモを。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010a.pdf

○資産買入は「買入額」ではなく「残高」になるとな

今回の「基金」は通常の国債買入のように「購入額が幾らです」という言い方ではないのはちょっと従来と違いますなあという感じです。

『(答) 基金による資産の買入れについては、買入れから1 年後を目途に残高が5 兆円程度となることを想定しています。5 兆円に達した後は、保有資産のうち満期が到来したものについて同種の資産を買い入れることにより残高を維持していくことになりますが、この点は、この基金をいつまで維持するのかという金融政策上の判断にかかってきます。』

『その判断に際しては、初めて行うオペレーションでもあるので、その効果と副作用を入念に点検した上で金融政策運営上の必要があると判断される場合にはこれを維持することになります。その場合には、先ほど申し上げたように、満期が到来したらその分について同種の債券を買っていくことになります。』

従来の国債買入に関しては(まあその額を一々MPCマターにするのがどうなのやらというのもありますがその話は置いといて)年額で幾ら購入をするのかという言い方で決めていましたが、今回は「残高ベース」での買いというのが微妙にお洒落というかBOE方式というか。

つまりですな、BOEの場合は今回のリリースのように、

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/077.htm
News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £200 Billion

てな感じで実際には追加購入をしなくても「額がこの通りですよ」という言い方で緩和のような話をしつつ(実際問題としては「残高を減らしますよ」とか言って売りを打ち込んだらそらあーたエライコッチャやがななので、普通に考えるとこの残高を減らすというのは償還による自然減以外では考えられない)見せるという効果があったりするような気がします。まあ見せ方の問題ですが。

つまりですな、今回の日銀の措置に関しても実は「期間が長くなるかもしれないね」という点に配慮しているような気もするんですよ。なぜならば、これ「年間5兆円」みたいな言い方をすると、来年になってもこの措置が解除できない時(まあ展望レポートでの物価見通しに強化された時間軸を加えるとどう見ても来年もこの基金は継続でしょう)には「おかわり」が必要になってしまいますかれども、残高ベースにしておけば期落ち分のロールをするだけでも「ほれほれ5兆円5兆円」と見せる事ができるので、その点ではBOE方式の方が見せ方としてオイチイということなのかもしれませんね。


○もうちょっとアピールすればよいのに・・・・

まあ「実質ゼロ金利」のワーディングに見事に引っ掛かっている質問者が「過去2回のゼロ金利政策との違いを教えてください」と質問してて、それに対する答えから。

『(答) 日本銀行は、これまでも実質ゼロ金利の金融政策を行っていることを度々申し上げてきましたが、今回の金利誘導目標の変更は、日本銀行が実質ゼロ金利政策を採用していることを、より明確にするものです。日本銀行が潤沢な資金供給を行っている結果、今でも無担保コールレート・オーバーナイト物が、誘導目標水準の0.1%を幾分下回ることが生じていますが、今後、資産買入等の基金を通じて、一層潤沢な資金供給を行うと、日によっては、これがより大きく下回る可能性が高まることも予想されます。資産買入等の基金を通じて、長めの市場金利の低下やリスク・プレミアムの縮小を図ろうという目的を達成するためには、そうしたオーバーナイト金利の一時的な振れを明示的に許容する方が効果的であると判断しました。』

まあここの部分は正直な説明で(^^)、今回の政策金利のバンド化はFED方式と同じで「市場金利がリザーブ拡大によって一時的に下ブレするのを容認する」とゆーことに留まっている訳で、つまりは翌日物金利などを無理無理0%に下げるという事をするわけではない、という話です。

『かねて申し上げている通り、オーバーナイト金利が低下しすぎると、金融機関や投資家の運用金利、ひいては利鞘の低下から、貸出や投資のインセンティブが低下し、信用仲介機能が低下します。その結果、日本銀行の金融緩和によるネットの効果は、かえってマイナスになる可能性があります。そうした金利低下の効果と副作用を勘案の上、日本銀行の当座預金の付利金利は、0.1%としており、今回もこの水準は変更していません。日本銀行としては、「0.1%の当座預金の付利金利と、0〜0.1%程度の金利誘導目標」の下で、金融緩和効果が最大限発揮されると考えています。』

だから副作用の話はしなくて良いのに、と思うのですけれども、どうせ話をするなら「FRBやBOEなども指摘していますが」とか入れてやれば良いのにと存じますけれども、白川さんは(この会見の中でそういう発言をしてますが)「金融緩和のフロントランナー」(謎というか何と言うか、一見凄いけれどもそれって「わが国の経済は世界に先駆けてうんこです」って言ってるだけのような気もするのが悲しいですけれども)ってな話をしてますから、他国がどうなんですよって言いたくないのかもしれませんな(^^)。


それから「包括緩和」っていう微妙な言葉に関してですけど。

『(答) まず、量的緩和関連のご質問については、多分そういったご質問が出るだろうと予測して、自分なりにこれをどう表現するのか考えました。一方で「量的緩和」という表現もありますし、FRBは「信用緩和」という表現もしていますが、私はあえてその両方を含めて「包括的な金融緩和政策」という言葉を使っています。縮めて言えば「包括緩和」になると思います。もう少し丁寧にご説明します。』

で、途中を割愛しまして、

『これは、先ほどの「信用緩和」、「量的緩和」との関係で整理しますと、まず、今回の包括緩和のもとでは、リスク性資産を含めた多様な金融資産を買入対象とすることで、信用プレミアムや流動性プレミアムの縮小を促すことを狙いとしており、この点では、信用緩和という側面を持っています。次に、量という面では、今後、資産買入等の基金を有効に活用して、潤沢な資金供給を行っていくことになります。同基金は総額35 兆円で、買入れの開始から1 年後を目途に、買入資産については残高が5 兆円程度となるように買入れを進めていきたいと思います。こうした意味では、量的な拡大を伴う措置であるということもできます。』

という話をしているのですが、それならもうちょっと「包括緩和」という微妙にこなれない言葉使うよりも「私たちは量的緩和と信用緩和の両方を同時に行うというより強力な緩和政策を実施することにしたんです凄いでしょう!!!」って説明すりゃいいのにと思ったのはあたくしだけでしょうか。


ということで、昨日時間の都合でかけなかった分の補足メモでした。来週は駄文更新をお休みさせていただきますです、はい。







2010/10/07

お題「決定会合レビューの続き」

ほほう米国金利10年2.4%割れに2年0.4%割れとな。

○市場メモ雑談

日経新聞の昨日の社説は「一日前の社説じゃないの」というふざけた内容だったようで、なんつーかもしかしてこの新聞社って実施された金融政策の効果に関して目先のドル円市場のプライスアクションだけ見て評価しているんじゃねえの頭おかしいんじゃねえのという非常に素敵な内容でありまして、まあ日経新聞は各種データだけ正確に報道すりゃええんじゃボケという感慨を深くする昨日の朝のひと時でありましたがそれは兎も角として市場メモメモ。

長いところに関しては、昨日は見事に10年ゾーン(というか9年近辺以降)の買いが強くて10年の所に向けたブルフラット恐るべしの展開に。中期は5年の所がカレントの引けを0.200%にしてまして、一時たぶん0.2割れとかにもなっていたような気がする(よく覚えてない)次第で、まあこちらも堅調ですけれども、さすがに水準が水準なだけに1ミリも売られない(というのはオーバーですが^^)けれども強くなるのも限界的という感じ。

まあ何ですな、強力時間軸攻撃で中期3年半あたりの金利まで0.12%だの0.125%だのという素敵な平坦化となっておりまして(と言う事はまあ3年半は0-0.1%状態ですなあという認識なんざんしょ^^)、辛うじてその後ろからカーブらしいものが発生するという状態な訳ですが、まあそれに引っ張られて5年も0.20%とかになっている次第で、さてそうなって来ると5年の0.2%水準が絶対水準として間尺に合うのかとゆー話になるんでしょうな、うんうん。

で、その先のほうまで手前からカーブを潰していくというのがよくあるお話なのでしょうが、そもそも金利の絶対水準が必要な収益に足りないですがなというお銀行様の懐事情もお有りなのかどうか知りませんが、より金利収入出るところに行かないととなりますと裁定ゾーンの後ろの方にもやってくるという話になりますし、更に言えば従来5年ゾーンでドンパチやっていた分に関しては強力時間軸で5年がウゴカンチ会長&水準が足りませんがなという事になりますと、その先で流動性が高くて利回り水準もまああるって話になるとやはり10年という話になるんでしょうなあ、ということで10年近辺に向けて強い買いご登場と。

一方で超長期はさすがにこの前のお縄先生ショック(本当にお縄要因で売られた訳ではないと思うけどすっかりそういうネタ扱い^^)で痛い目にあった記憶も新しいのでそっちでオリャオリャというのもまだ早いという事なのか、それとも今般の追加緩和によって資産買入を行うと言うあたりにさすがに影響有りと感じているのかどうか知りませんが、こっちは伸び弱し。10年が貫禄の高値絶賛大更新をする間に20年120回という8月の絶賛高値入札が行われた銘柄のお値段は昨日の引けでも99円3銭6厘という入札レベルからほど遠い水準というのが実に心温まる状況。

ま、オリャオリャ大会が「10年の0.8%台では利回りが足りない」とか言い出すと20年にもまた祭りの神輿がやってくるのでしょうが、とりあえずお祭りは裁定ゾーンの後ろで絶賛実施中ということで。


短い所ですが、昨日はTB3か月の入札が行われましたが、こちらの水準はこの通り。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul221006.htm

(3)募入最低価格 99円97銭2厘5毛
(募入最高利回り)
(0.1035%)

(4)募入最低価格に 94.1870%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭2厘6毛
(募入平均利回り )
(0.1031%)

いやまあいきなり0.10%に張り付いたらどうしようとか前日の時点では少々びびっておりましたが、そもそも資金供給ちゃんはこれから増えていく話で、足元で突如何兆円も打ち込まれた訳ではないということで、昨日はGC市場のレートも0.105%水準と特に派手な下げをした訳でもなく、まあ更に愚考するに、昨日は9年とか10年とかを買うのに皆様ご多忙のようで、3か月短期国債のことなんぞ知った事かという状態だったのではないかと(^^)。

いやまあ水準そのものは0.103%ですから十分低いですし、ど〜せこれから超過準備が積みあがって来れば徐々に0.100%に収斂するんでしょうけれども、まあ今回の「金利下振れ容認」はあくまでも自然体で低下するのはOKという事で、無理矢理コールを押し下げに行っているわけではないから当然ちゃあ当然でしたな(汗)。

昨日のコール。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp101006.htm
平均0.085%

一昨日のコール。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/md101005.htm
平均0.090%

ということで、まあ一応下がるには下がってますなあ程度のお話で、いきなり6だの7だのには下がりませんでしたな(大汗)。

それから、TIBORがちゃっかり下がっていて、リファレンス銀行の出したレートの変化を見ると中々こう味わいの深いものがあったり無かったりするのですが、その辺に関する考察は割愛いたします(^^)。



○総裁会見に関して、リスク資産買入に関する部分だけとりあえず引用

寝坊したので(汗)あまりこれをやっている時間が無い、正直スマンカッタ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010a.pdf

とりあえず重要そうなところと勝手にあたくしが認定した部分を駆け足で引用します。まず重要なのは資産買入に関して「各種のリスクプレミアムの縮小を促す」という点についてだと思うのですが、この点についての質問が多かったのは中々結構でした。大体上記会見要旨の7ページ目以降にその質疑があります。

まず最初に「もう少し噛み砕いて教えてください」という質問がありまして、それに対する白川さんの説明から。

『(答) 金利を考えると、国債に代表されるリスク・フリー金利にリスク・プレミアムが乗って、民間の調達する金利が形成されます。ここでリスク・プレミアムというのは、国債金利に上乗せされている金利の幅を表現しています。ETFあるいはETFを構成する株式、REITの場合には、エクイティなので金利ではありませんが、利回りをリスク・フリー金利と比較するとリスク・プレミアムと表現できます。そういうものを総称して、リスク・プレミアムという言葉を使っています。』

つまりETFやREITの価格を上げましょうという事にしか読めませんな(^^)。

『今、リスク・フリーの金利は、相当低い金利になっています。特に短期の金利は非常に低いです。そうしたもとで、金融政策によって金融緩和効果を上げようとすると、論理的に残されている道は、従来より少し長めの方向かリスク・プレミアムに働きかけていくことになります。』

さいですな。で、何の資産を買うか検討した云々の部分を割愛しまして。

『それから、ETFやREITについてですが、もちろん日本銀行の買入れの金額自体はさほど大きな金額ではないので、これ自体が需給的に直ちに価格を引き上げるものではありません。従って、いわゆるPKOではありません。ただ、私どもとしては、日本銀行がこうした市場で買入れを行うことによって、さらに幅広い投資家の買いが増えていけば、価格の形成にプラスの影響が出て、実体経済にも方向としてプラスの影響が及んでいくと考えました。』

いやあ、普通にマーケットインパクトあると思うのですが・・・・・

で、その後11ページの質問では「異例の措置を実施すると言ってますが、それは今現在が異例の状態なんでしょうか」という中々いい感じの質問がありまして、それに対する答えが中々いい感じで踏み込んでいます。

『それから異例の措置については、もちろん政策だけが異例ということではなく、経済の状況が異例であるからこそ、政策も異例になっているということです。改めて「異例」の意味について申し上げれば、長めの金利の低下、あるいはリスク・プレミアムの縮小といった世界に入ってくることによって、中央銀行が買入れた資産が場合によっては損失を計上する可能性があるということです。』

キターーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーー!!!

『また、中央銀行が有する通貨発行権限は、国民の皆さんから中央銀行がお預かりしている機能であり、その機能を使って政策を遂行した結果損失が発生する場合には、国庫への納付金が減るというかたちで国民にも影響します。しかしながら、金融政策によって緩和政策の効果を更に追求しようとすれば、そうした世界に入って行かざるを得ないということです。』

(;∀;)イイハナシダナー

『また、様々な金融資産を買うということは、個別の資源配分に関与する度合いが従来に比べて強くなります。私どもも出来るだけ恣意的にならないよう様々な工夫を行っていきますが、例えば個別のCPや社債を購入すると「個別性」の問題が出てきます。その意味では、純粋に金融政策の世界から財政政策的な要素を秘めた領域に入っていくことになります。』

(;∀;)イイハナシダナー

で、途中を割愛しまして日銀のバランスシートに関する部分まで話が進む(^^)。

『日本銀行のバランスシートの問題は、「日銀は自分の庭先を綺麗にしたいのだ」というかたちで語られてしまうことが多いのですが、そういう問題ではありません。民主主義社会における中央銀行の本質的なあり方ということを考えた上で、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現のために、私どもにどのような貢献ができるのかを、これからも一生懸命考えていきたいと思っています。』

中央銀行の政策が財政の領域に踏み込む件に関しての問題点をややキレ気味(かどうか知らんが)に指摘していますな。

で、その次の人の質問が素晴らしいので質問も引用しましょう(^^)。

『(問) 今後の緩和の一つの方向性は、リスク・プレミアムの縮小にあるとご説明頂きましたが、そもそもリスク・プレミアムが適正価値よりも大きくなっていないと、縮小を促していくという目的が成り立たないと思うのですが、過度にリスク・プレミアムを縮小させてしまうと、かえって民間のリスクマネーの流れを阻害することも考えられると思います。その上で、CPや社債について金融危機の時には、市場が壊れて大きくリスク・プレミアムが高まった経緯があったと思いますが、今はかなり解消されているという判断があると思います。更にリスク・プレミアムを縮小していくことがどのような意味を持つのでしょうか。また、J−REITとETFについては、株価指数や不動産価格が適正価格よりも低いというメッセージにも論理的にはなるかと思いますが、その点について、どのように整理しているのですか。』

何と言う素晴らしい質問(^^)。

『(答) リスク・プレミアムの状況は、金融市場、資産によって異なっており、一律に同じような評価は出来ないと思います。ただ、今言われたように、リーマンショック後の金融市場は、例えばCP市場、社債市場がそうでしたが、そもそも市場で取引ができない、発行ができないという市場機能が大きく傷んでいる時期でした。リスク・プレミアムが拡大し、取引自体が細っていたわけです。そのような金融危機、あるいは日本銀行の言葉で言うと「急性症状」の時期は過ぎ去っています。したがって、日本銀行は昨年の秋以降、個別の金融市場に介入する措置を順次完了しました。その点、現在のリスク・プレミアムが全般として大き過ぎると判断される状況では必ずしもありません。金融政策として、今よりリスク・プレミアムの水準を下げていくという形で、金融緩和の効果を追求しようとするものです。』

・・・・どう見ても価格支持政策です本当にありがとうございました(^^)。

『金融政策については、いろいろな議論がありますが、金融政策でもっとやることがあるのではないかという意見も一方ではあります。その「やるべきことがある」という議論は、言い換えると、必ずしも異常なプレミアムになっていない市場も含めて、「全般に金利水準を下げていく」ということに翻訳されます。』

いやまあ金利水準もそうですが、ETFとREITを買うということは(・∀・)ニヤニヤ。

『一方で、このような政策をやり過ぎると、副作用があるのではないかということも意識しています。今回公表した「時間軸の明確化」の中でも、金融面での不均衡が蓄積するリスクについて点検して、そうした観点から問題がなければ、という条件を付けています。』

と、一応副作用の話。

『これをやれば直ちに金融政策の効果が出てくるというものがあれば、むしろそれを言っていただきたいという思いです。それがないからこそ、このように効果と副作用を見極めながら、金融緩和の効果を追求していこうと我々中央銀行の政策当局者は等しく悩んでいるのです。』

最後はヤケクソ気味になっているのが実にチャーミング。


○おまけですがお知らせ

さて、総裁会見ネタも残っているわ金融経済月報ネタも残っているわ、おまけにFED高官の講演などがネタとしてゴロゴロ転がっているわという足元の状況でございますが、あたくし的事情(^^)によりまして駄文の更新を明日から来週一杯までお休みさせて頂きますのでよろしくお願いいたしますm(__)m





2010/10/06

お題「今回のポイントはパワーアップした時間軸とリスク資産(ETFとREIT)の買入(だと思う)」

2008年12月の決定会合を思い出す展開でしたな♪♪昨日のタイミングで介入すれば完璧だったのに・・・・

#しかし「更にやれ」と言う話が今朝のモーサテで出るとは幾らなんでもお調子者にも程がある。煽り報道の意味が判っているのならモーサテのアホキャスターは肥溜めに頭から飛び込んでそのままの姿勢でまる1日は謹慎すべきであると思いますがねえ。一応仲間内で「次に日経あたりがクレクレ言い出すのいつか」の予想合戦をしたのだが、一番早いのでも来週月曜だったぞ

#雨公やら為替方面の解説の説明が聞いてて不愉快になってきた(佐々木融さんのは別)ので途中でモーサテ見るの止めたからどういう話をしているのか良く判らんですがピンボケの感じがすげーするです

ということであたくしなりにああでもないこうでもないと今回の決定について考えたり人とお話をしたのですが、これは読めば読むほど色々な味わいがありまして、まあその辺を何となく書いてみる。


○マクラ:前場の世間話

昨日の決定会合中の前場は当然ながら結果待ちでダラダラとしていたのでありますが、その間にお友達と話をしていたらこんな感じの会話を何人かとおなじよーにしていたりしてましてね。

ドラめもんの中の人「いやあ会合待ちですなあ」
お友達「何が出るんだかねえ」
ド「そういや○○レポート(海外レポートで日本の金融政策の飛ばしネタを書くので有名な割高レポート)では資金供給50兆円とか言ってるらしいね、人から聞いただけなんど」
友「何かさ、事前の話とかで煽られたけど、新型オペ拡大とか何かそんな事をするならやらない方が良いわな」
ド「そだね、何かアホラシカですぅ」

・・・・てな話をしていたら中々の結果が出たのでありました。いやあまさか「市場の予想以上の本格的な緩和」の方が出るとは思いませんでございました。素直に降参。


http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf
「包括的な金融緩和政策」の実施について


○金利引下げは資産買入によるリザーブ拡大のおまけのようなもんです

最初のヘッドラインは当然ながら「別紙1」の

『当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を以下のとおりとし、公表後直ちに実施することを決定した(全員一致(注))。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す』

でありますので、「えー利下げなのかよ〜」と思いつつ「固定金利オペどうすんだバンドにすると」と???感を持った訳ですが、良く良く見たら公表分の脚注にこのような記載が。

『補完当座預金制度の適用利率、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの貸付利率および成長基盤強化を支援するための資金供給の貸付利率は、引き続き、0.1%である。』

預金ファシリティの0.1%金利が残ると言う事ですので、FED方式のバンド制という形になります。この場合はコール金利は低下(現状でも加重平均金利は0.09%近辺で推移していますが)するのですが、まあ第一勘でコールレートの加重平均が0.06%〜0.07%辺りになるという感じだと思います(将来的に超過準備が大きくなっていけば更に低下するかもです)けれども、取引自体が限界的な部分でして、短期国債のレートやらGCレートがどうなるのという話が問題かと。

で、まあ普通に考えますと、預金ファシリティ以下の金利で資金運用をしないといけない人と言うのは、よーするに預金ファシリティの恩恵を受けない人たちということになりますので、主なところとしては投資信託と生保と海外中銀などの海外勢という事になろうかと思います。で、米国の場合は短期市場におけるGSEといわれる人たちのシェアが大きいのでFFレート(やらT−Billの金利やら)がダダ下がりして制御不能になった結果として、FFの誘導目標のレンジというのが設定された訳ですが、日本の場合は短期金融市場における預金ファシリティの外側にいる人たちのシェアがそんなに大きくなく、TBの発行額はこの人たちの需要だけでは埋まらないので、結論としては「預金ファシリティレートより下の金利でも短国を買う人の需要」<「短国の発行額」という事になると思われますので、とりあえず短国のレートは最終的には0.10%に貼りつくという事になるんでしょう。

で、後で紹介するパワーアップした時間軸が入りますので、まあ常識的に考えて2年位のJGBの金利まで0.10%に貼りつくという形になって、それが後はどの年限まで効いて来るかという話になるかと思いますがその辺は後で。


とは言いましても、まあ日銀が公的にコミットしているのは無担保コール翌日物加重平均金利でして、その誘導目標を下げるのだから利下げは利下げ。実際問題としてはこの先に出てくる各種資産買入によって超過準備額が増えてしまうので、コール金利が低下するのは必至という状態になりますので、金融調節が苦しくならないようにコール金利の低下を容認するというFED方式と同じなのですけれども、当然ながら世の中的に「金利下げ」というのが見せ方として判り易いというのもありますので、公表文書ではこうなっていますわな。

『第1に、実質ゼロ金利政策を採用していることを明確化することとした。』

「明確化することとした」というように、実際は従来の金利も「実質ゼロ金利」と言っていましたので、そーゆー意味では今回は「利下げ」はどちらかと言うと以下に出てくる「資産買入拡大による日銀のバランスシート拡大」に付随して出てくるある意味おまけみたいなもんなのですが、そらまあレートカットの方が判り易いのでこういう書き方になりますわなという事です。良く工夫されていますなあと感心することしきり。

#ですので、朝のニュースで言えば「日銀、ゼロ金利政策復活」という見出しにしているモーサテと、「日銀、基金による資金供給急ぐ」という見出しにしている公共放送ではどちらのほうが政策を理解しているのかは明確という事になるのでありまして、経済専門番組が聞いて呆れるというものであります、余談ですが

ちなみに、「景気の減速場面で日銀はリザーブ拡大を行うからその時に誘導目標を0-0.1%という形にする」とだいぶ前から解説していたのはモルスタの佐藤健裕さんでした。さすがです♪



○パワーアップした時間軸はインフレターゲットにほんのちょっとだけ近づく(のかな?)

『(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化』

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」(注3)に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする。』

で、その説明部分ですけれども。

『第2に、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続するとともに、その際の判断基準が「中長期的な物価安定の理解」であることを確認した。』

とございます。つまりですな、常識的に考えますと、「中長期的な物価安定の理解」というのが・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912c.pdf(昨年12月の「明確化」)

にありますように、

『ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない』
『中心は1%程度』

となりますので、何ぼなんでも+0.1%だの+0.2%だのというような数字が数か月続いた程度でいきなり金利正常化とか言い出すことはなかろう、てえ理解になりますわな。ただまあ物価安定の理解に関しては「中長期的な」というマクラがついておりまして、足元で物価上昇傾向が顕著になり、例えば翌年の予想物価上昇率が2%を超えそうというような状態になれば足元の物価上昇率が+1.0%を切っていても金融正常化から利上げという話になってもおかしくは無いのですが、まあそういう時にはさすがに誰も文句言わないでしょと思います。

前回の量的緩和時の途中で明確化された量的緩和政策の解除条件を比較すると、今回の方が解除条件がより景気フレンドリーになっているというのが判ろうかと思いますので念の為URLを乗せておきまする。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k031010b.htm(量的緩和時の解除条件)

そこの『2.量的緩和政策継続のコミットメントの明確化』をご参考に。

まあこれでちったあ(ベースの「中心1%」という数字が低いんじゃねえのという話はまあございますけれどもそれはさておきまして)インフレターゲットがどうのこうのという話にも0.5歩位かもしれませんが、歩み寄って来たとも言えそうだと思いますので、そーゆー意味ではインフレ目標導入どうのこうのという話にも答えた部分だと思いますけどどうでしょ。

しかも、声明文の中における今回の措置導入の背景説明部分にこのような話がありまして。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の下落幅は縮小傾向を維持しているものの、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要である。以上を踏まえると、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、後ずれする可能性が強まっている。』

展望レポートでの先行き見通しは月末に出てきますので、その時点でリバイスされますけれども、ここにあります文章をそのまま素直に読みますと、展望レポートでの先行き物価見通しは当面「中長期的な物価安定の理解」を下回るもしくはほぼ下限の水準になるでしょうから、その点を勘案すると時間軸は相当先に伸びるという風に理解するのが妥当という所でしょう。

で、市場インプリケーションとしては、先ほど申し上げたようにこの時間軸でどの年限まで0.1%の金利が波及するのかという話になろうかと思います。まあ普通に考えて中期ゾーンといわれる5年とかまでは金利が低位安定するでしょうなあという事になる訳ですが、そんな事を言う前に既に昨日の引けの時点で5年カレントは0.22%だったりしますけど(^^)。



○資産買入のキモはETFとREITの買入でしょ

『(3)資産買入等の基金の創設』

『国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討する(注4)(別添2)。このため、議長は、執行部に対し、資産買入等の基金の創設について具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した。』

バランスシート上に基金を創設ってナンジャソリャという感じですが、要するに特に変なSPCとかは作らないで日銀のバランス上でやるけれども、特別勘定というか別勘定というかで実施しますよってえ事ですな。で、その額ですが。

『2. 基金の規模

@ 基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度とすることを軸に検討する。

A 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。』

で、ここで引き算をしてみないと判らないのがETFとREITの額ですが、普通に引き算をすると「ETFとREITで5000億円」って話ですからこれは結構大きな額だと思うのですけどどうなんでしょ。上場REITって全部で3兆円とかの世界で、仮にREITを5000億のうち1000億買っただけでも時価総額の3%を吸い上げるという話ですから結構なインパクトあるんじゃないですかねえと思うのですが(REITは爆騰したんでしょ)、そっちをスルーしているレポートが多いのは何だかなあと思う次第で、そ〜ゆ〜意味ではこのリスク資産買入に関する部分の言及に力が入っていないレポートを書く奴はモグリと思われます(次に書くけど市場の反応のインプリケーション考えたら当然ここがポイントと気がつくでしょ)ので、この発表を見て「国債の3.5兆円は少ない」とか力込めて言ってる人はちょっとねえという所ですな(どこの誰とは言わないけれども)。

でですね、国債の買入の方もさることながら、こっちの方がどの位株価に効果が出てくるかと言う風に気にするのが普通の反応じゃないのかなあと思ったら、昨日は超長期がこの決定を受けて売られて中短期やら10年などの金利が低下する一方で15年超の金利が上昇したのを見て「うんうん普通の反応普通の反応」と思うのでありました。


会見でも(詳しくは今日出ます)「日銀に損失が出る場合も」とか「必要があれば拡大も」というようなヘッドラインが出てましたように、まあこの箱自体は増える可能性もある話ですし、それに伴いETFとかの買いが増えますよという話になったらそれはそれで中々の話だと思いますよこれ。

従いまして、(途中でトサカに来たのでチャンネル変えちゃったから良く判らないけれども)「FEDの買入額に比べて少ない」とか言っているモーサテあたりに出てきている為替市場の専門家とやらの人間は「買入資産の質を見ろ」という突っ込みを受けるべきでありますな。即ち、FEDは方向として「バランスシート内容の正常化」という事でMBSをトレジャリーに置き換えましょうみたいな話をしている中で、日銀は堂々のリスク資産「買入」でありまして、そのリスク資産の質がうんこであればあるほどヘリコプターマネーに近くなる訳でありまして、あっという間にトレジャリーへの正常化へと走っておられるケチャップ逆さ絵オヤジに比べて日銀のほうがよっぽど踏み込んでいる、という点に関して無頓着というのは如何なものかと存じます。



○信用緩和と量的緩和のセットという話ですが・・・・・

今回は「包括緩和」とか言うらしいのですが、まあその名前はどうでも良いのですが、今回の「信用緩和」は市場環境から勘案すると本当は「信用緩和」じゃなくて「資産市場への露骨な介入的な性格を有するもの」になるかと思います。

つまりですな、信用緩和というのは実際には「市場機能がぶっ壊れて市場の価格発見機能やら市場仲介機能が喪失しちゃったから中央銀行がカウンターパーティーリスクの受け手となって市場機能の復活を図る」というのがキモだった訳で、だからこそ各種資産買入プログラムに関してはFEDも市場正常化と共に撤退した訳ですよね。

然るに、今回の「信用緩和」ですけれどもCP、社債はもとより、ETF市場だって別に市場機能が喪失している訳ではない(REITは良く判らんけど)ですし、普通に市場として機能している訳なので、従来の文脈での「信用緩和」は不要な状況にある訳ですよね。

そういう中で資産買入を実施するというのは、実際には市場介入以外の何物でもない訳でして、声明文にありますように、

『第3に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』

ってありますけれども、現状でリスクプレミアムが市場が壊れて異常値を示している訳ではない、という事を勘案するとこれはまあ相当の措置になると思いますし、本来的には通貨減価に繋がる話だと思うのですが、バーナンキ先生の洗脳が良く効いているらしい為替市場の皆様におかれましては、バランスシートの質は見ないで量ばっかり見て反応しているのが残念というか何と言うかな所でございます。


○銀行券ルール逸脱のあたりはまあ微妙ですよね

『このうち、基金による長期国債の買入れは、現行の長期国債買入とは異なる目的のもとで、臨時の措置として行うものである。このため、基金による買入れにより保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとする。』

『A 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。』

『A 買入れる長期国債、社債は残存期間1〜2年程度を対象とする。』

という事で、まあ(この先増えれば別ですが)この条件だと今回の追加買入分をいわゆる銀行券ルールの範疇に含めたとしても、実は銀行券ルールを逸脱しないんじゃないかなあと目の子の計算では思われますし、仮に超えても残存2年以内なのですから、まあ臨時措置でのマネー拡大という名目を立てているという感じですわな。



○とは言え色々と麿の顔(というと語弊があるが要は従来の日銀の主張ね)も立てている部分もありましてですな

とまあ随分とあちこち踏み込んだ政策決定だったのですが、一応麿の顔を立てている部分もいくつかあるのがチャーミング。上記の銀行券ルールに関する部分もそうですが、他に気がついたのをいくつか。

まず最初にあるのは、時間軸の中にある微妙な但し書き。

『ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする』

これは麿の大好きな「マクロプルーデンス」の論点を入れたものでありますが、結局のところ金融の不均衡の蓄積を含めたリスク要因なんぞ崩壊してみないとわからないものでありますので、そう簡単に「これが不均衡の蓄積だから解除します」とは言えんバイとは思うのでありまして、現実的にはまあ悪魔祓いの呪文みたいな効果しかないとは思います(それよりもCPI上昇が現実になるほうが先でしょ)し、その前に米国が金融正常化を行ってくるのが先で、日本が先行して解除とかまーどー見てもないでしょ。


それから、今回「ふーん」と思ったのは固定金利オペを「基金」に入れていること。

『この点を明確にしたうえで、市場金利やリスク・プレミアムに幅広く働きかけるために、バランスシート上に基金を創設し、多様な金融資産の買入れ、およびこれと同じ目的を有する固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うことが適当と判断した。』

固定金利オペをどさくさに紛れて「異例措置」である事を明確にするなんて言うところも微妙に麿の顔を立てているなあと思うのでありました(^^)。


○須田さんの反対理由

『(注4) 須田委員は、本文中、資産買入等の基金の創設を検討するに際し、買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて、反対した。』

リスク資産の方は反対せずに国債の方を反対するとは妙ですが、どうせ買うなら意味のある買い方をしろという論点なんでしょうか。決定会合議事要旨をマニアとしては楽しみにしたいところです。


○会見ではいつものぶち壊しが無かったのがポジティブサプライズ(^^)

ヘッドラインを見ただけの感想で、会見内容を見てからまた明日続きをしますが、どうも今回に限っては「麿はやりたくなかったが実施したでおじゃる、こんなの効果ないでおじゃる」という総裁の麿節が出なかったようで、大変に結構なお話でございます。

#つーかそれが本来当たり前なのですが

詳しくは明日(^^)。


○しかし今回は短い時間に良くここまで纏めました!!!!

いやあもう企画局恐るべしという所でありまして、一応今日は思いついた点を全部書いたつもり(ですが、ちょっと抜けている部分もありそうです、時間が無いので勘弁)ですけれども、今回の声明文や実施される施策の内容を読めば読むほど非常に良く出来ている内容で、麿の従来の主張も踏まえつつもあちこちで踏み込んだ内容になっておりまして、しかもどう見ても資産市場への直接介入部分まであるというかなりの特攻振りでありまして、この枠組みを作って短い時間でここまでコンセンサス取って、ついでに言えばまあ殆ど情報漏れもしなかったのは素晴らしい頑張りだと素直に敬服する次第です。昨日まで散々悪態ついて(まあ基本的には悪態の方向はメディアと軽薄な市場と一部麿方面でしたけど)どうもすいませんでしたm(__)m

ということで、市場予想が抜けているような気がするが気にしないように(汗)











2010/10/05

お題「決定会合しつこくプレビュー雑談/白川総裁のちょっと前の講演虫干し」

えー、昨日の債券市場ですが、引け後にお縄先生の強制起訴決定のニュース後に先物が上昇。イブニングセッションの引けに掛けて高値更新して143円55銭とかに上昇したのですが、これはお縄先生効果と言う事でよいのでしょうか(謎)。

#人の政党の時には辞職勧告しておいて自分たちの政党の時には「推定無罪」とか発言する人を見てると「この人には羞恥心とかいうものは無いのだろうか」と禿しく疑問を感じる次第です


○しつこく決定会合プレビュー雑談

えーっとですな、正直言って今回何を決定するのかという話に関しては真面目に考えるだけ時間の無駄というか空しさの方が先に立ってくるという大変に遺憾な決定会合でございまして、「目立てば勝ち」の報道機関および政治屋連中および専門家としての倫理規制(昨日引用した権丈先生の言葉を使ってみました)が如何なものかと思われる一部の専門家の方々やら、何でもいいから相場の材料をクレクレというマーケットに押し込まれて最終的になんか適当な緩和演技をするというのもなんだかねえとゆーところでありまする。

いやね、緩和演技するんだったら押し込まれて実施するんじゃなくて先んじて演技しないと今般の決定会合前の報道で言われているように「報道が勝手に盛り上げておいて、いざ実施段階になるとてめえらの報道した内容だと足りないと言い出す」ってどこのゆすりたかりだと言った流れでして、これでまあ事前報道程度の追加緩和のようなものを実施した場合は、報道やら政治方面やらがどや顔で「踏み込みが足りない」とか言い出すだけだと思いますので、まあ本来やるならば「事前報道以上の施策(=輪番拡大とか当座預金ターゲット復活とか)をする」か「何もしないで景気の先行き見通しだけ声明文で下げて、次回以降にもうちょっと本格的な追加緩和(まあ要するに輪番拡大ですが)をする(会見ではまあ追加緩和に含みを持たせるとして)」のどちらかにした方がゆすりたかりの悪循環を一旦切る為には宜しいのではないかと思いますけどねえ。

ま、これも連日悪態ついてますが、そもそも成長基盤強化供給だってまだ1回しか実施してませんし、6か月オペだってまだ(勘定間違えてなければ)1回しか実施してませんわな。成長基盤強化は気の長めの話だからまあ良いとしても、6か月オペのアナウンス以降の効果がどうなっているから6か月オペ(なのか1年オペなのか知りませんが)の追加が必要とかいうのって政策効果の検証とかのロジックが完璧に抜け落ちている時点で茶番にも程がある訳で、まあ意味無いですわなという所で。

金利下げ方向に関しては、FRB(というかバーナンキ及び他の一部連銀幹部)が国債買入拡大方向を明確に示し、更に利下げ方向に関しては効果を疑問視する話が多く出てきた足元では、日銀がこれを実施しても正直あんまり意味の無い話になってきたと思われますので、普通に考えると金利引下げの可能性は低くなったと思います。もちろん当座預金残高ターゲットのような形をとった場合に、超過準備の拡大でコールレートが預金ファシリティを恒常的に下回る可能性が高まるので、その点での「結果としての利下げ状態」はあると思いますが、わざわざ利下げ方向で何かやっても足元の主要国中銀の動きからすると意味が無さそうに思われますがどうなんでしょうかねえ。

てな話をしていると同じ悪態の繰り返しになるのですが、先日の短観で追加緩和の材料にするのもちと無理筋っぽいですし、本当に何かやるのであれば、10月末の展望レポートに向けて経済情勢をじっくりと点検して、より本格的な対応ということで輪番拡大を実施する方が筋として綺麗だし、米国の金融政策の方向性(まあ長期国債買入拡大は良いとしてそれで長期金利を低下させるというロジックは無茶だと思います)に対抗という点でも、まあバランスシート拡大でインフレ期待に働きかける(事が出来るのかどうかは非常に怪しいですが)とか何とかいうネタは判りやすいですし、変なつぎはぎ政策やる位だったらそっちのほうが良いと思うんですけどねえ。

と、どうせ明日以降書いても意味が無くなると思いますので(苦笑)、今朝のうちに書いてみるのでありました。毎日同じネタでどうもすいません。

で、以下虫干しちゃんの話なんですが、話の展開上順序がグダグダになるのでご勘弁願う。

○何故か会見からになりますが、27日の総裁会見から

大阪での大阪経済4団体共催懇談会後の会見から(講演の前に会見で勘弁)。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1009d.pdf

・量的緩和に関する質問を華麗にスルーした件

これは酷い質疑応答。

『(問) 先日の宮尾委員の記者会見の中で、量的緩和の評価について、「金融政策の効果・副作用は、その時々の経済・物価の情勢によって変わってくるので、量的緩和政策に関する評価についても、かつての評価と現時点における評価は当然変わり得るものであると考えています」との説明がありましたが、総裁からみた量的緩和の評価を教えて頂きたいと思います。次に、8月30 日の追加緩和を行った時からみて、ここ1か月間の国内外、特に米国を中心とした景況感については、より下振れリスクは高まりつつあるとみているのか否かをお聞かせ下さい。』

いやね、質問は別に酷い訳ではなくて、極めて普通の質問なんですが・・・・

『(答) 1問目の宮尾委員の意見については、本人に聞いて頂くしかないわけで、私から申し上げるのは不適当だと思います。次に、この1か月間の景況感に関するご質問についてですが、(以下割愛)』

・・・・・・・(-_-メ)

さすがにこれはねえと思ったら後のほうで改めて質問があってですな。

『(問) 質問は3点あります。まず量的緩和についてですが、白川総裁ご自身の評価については、これまでと変わりがないのかという点についてお聞かせ下さい。すなわち、これまでの会見で何度もおっしゃっているように、金融システムの安定には効果があったものの、経済、物価を刺激する効果は限定的であったという見方に変わりがないかということです。(以下割愛)』

『(答) まず1点目について、前回、日本銀行が行った量的緩和政策、すなわち当座預金残高を目標として量を増やすという政策の効果について、私を含めた現在の政策委員会メンバーの評価は、これまで申し上げてきたとおりです。(以下割愛)』

・・・・・・・・まあ要するにゼロ回答ですね、わかります。


・一応こういうサービス回答もしてるんですけど・・・・

基本的に根が正直者だから上記のような大変に楽しい質疑応答になって、それがニュアンスとして伝わってしまうから折角日銀が緩和をしても(実際問題として固定金利オペだって使うタイミングによっては強力緩和ツールになりますわな、3か月オペ実施してから3か月TBのレートって殆ど0.12%割れで推移しているんですし)何かやってるように見えないという事なのでしょうな。

まあそんな中でも一応サービスっぽい発言もある訳で。

『(答) 何回か前の記者会見で申し上げましたが、私どもとしては、下振れリスクの方により注意が必要であると判断しています。下振れリスクというのがリスクというかたちで止まるのか、あるいは中心的な景気見通し自体を変えていくのかについては入念に点検していきたいと思っています。円高は企業マインドを通じて経済に対して悪影響を与えていくというご意見は先程の懇談会でも多く聞かれたところですが、円高の出発点であり、その大きな要因となっている世界経済が、今後どのように展開していくのかということも含めて、来週の金融政策決定会合でしっかり点検したいと思っています。』

『(答) 将来の為替介入という仮定の質問に対してはお答えできません。ただ、日本銀行の基本的な金融政策運営のスタンスは、為替市場の動きについては重大な関心を持ってみているということです。それから、日本銀行自身は、潤沢な資金供給を行っていくということも従来から申し上げている通りです。必要と判断される場合には、適時適切に対応するという日本銀行としての基本的なスタンスに変更はありません。』

ということで、この辺を見れば「為替市場での円高が不必要に進行するようであれば、円高抑制の為に金融政策対応を行います」と言っているように見えるのでありますけれども、何せ具体的な手段になるとさっきのような話になるのが白川総裁クオリティなので困ったもんです。いやね、別に「これをやった場合に効果があるのかどうか疑問です」みたいな話をしなきゃあ良いだけの話で、白川さんは無駄に自分の将来の政策オプションを縛っているだけのようにしか見えませんわな。


・無制限財政マネタイズへの縛りが担保できれば・・・・・

そんな中で「ふ〜ん」と思ったのはこの辺りの発言。

『(答) 銀行券ルールについての基本的な考え方は、これまでの東京での記者会見でも度々申し上げているので、そのこと自体を繰り返すことは差し控えたいと思います。昨日、金融学会での講演では、やや中長期的な中央銀行の政策運営のあり方ということで、国債の買入について申し上げました。只今は、銀行券ルールというかたちでのご質問でしたが、大切なことは中央銀行として現在から将来にわたってしっかりと金融調節ができることであり、それが中央銀行が通貨の安定を図っていく上で大事なことです。そのためにどのような運営の仕方がいいのか、ということが議論の全ての出発点であり根本です。適切な通貨の調節ができなくなった中央銀行を考えると、国民からみれば非常に不安なことになるわけですので、どのようなルールであれ、通貨の調節を適切にできるという信頼感を中央銀行として維持していくことが大事だと思っています。』

まあややこしい言い方をしてますが、要するに無制限財政マネタイゼーションは悪性インフレの元(たぶん悪性インフレというかかつてのアルゼンチン状態になるという話でしょうが)になりますので、それを担保できれば別に国債買入そのものを幾ら実施するかというのは、日本の現在の調節の枠組み上で考えた場合には(米国の場合は償還乗換えを長期国債で無限に実施するので買入はそのままモロに通貨膨張となり、基軸通貨特権があるとは言え本当に莫大な買入実施したらどうするんでしょうかねえニクソンショックにならんのですかねえというのはある)究極的には金融調節技術上の問題(長いオペを行うか短いオペを行うかのバランス問題)になるので、そこの折り合いをどう付けるのかという話になるという気がするのは、この辺の白川さんの発言を見て思うのでありました。

まあ景気見通し関連はスルーして政策インプリケーションの部分だけ軽く引用でした。


○9月16日の講演からちょっとだけ(本当はじっくり紹介したいのですが、汗)

で、昨日の続きを少々。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009c.pdf
特殊性か類似性か?
―― 金融政策研究を巡る日本のバブル崩壊後の経験 ――

冒頭の部分から。

『以上がバブル崩壊後の日本経済や政策動向に関する簡単な要約ですが、日本の経験を金融政策研究に活用する際には、以下の事実に特に注意を喚起したいと思います。』

ということで、フォルスドーンの話は昨日引用しましたが、まあこの辺の話はポイントになる(真面目な意味で)んでしょうなあという感じがする訳で、そこを引用したく存じます。

『第 3 に、就業者一人当たりのGDP 成長率でみると、1980 年代に比べて大きく低下したとはいえ、2000 年代になっても、日本の成長率は米国と比較してあまり遜色はありません(図表7)。他方、GDP 成長率でみると、かなり見劣りがしています。GDP 成長率と就業者一人当たりのGDP 成長率の格差は言うまでもなく、日本における労働人口の減少を反映しています。いずれにせよ、バブル崩壊後の日本経済の分析に当たっては、生産性と人口動態によって規定される潜在成長率を考慮していくことが不可欠です。』

『第 5 に、日本の物価変動の内訳を米国と比較すると、財価格についてはあまり大きな違いはなく、違いは主としてサービス価格の下落でした(図表11)。サービス産業が労働集約的であることに鑑みると、これは、名目賃金が伸縮的に調整されたことを反映しています。』

ふむふむなるほど。

『第 6 に、デフレ・スパイラルは生じませんでした。すなわち、物価の下落が経済活動の低下をもたらし、これがさらに物価の下落をもたらすという現象は、これまでのところ生じていません。実際、日本経済は2002 年以降、物価が緩やかに下落する中で、回復の力強さは別として、拡大期間という点では戦後最長の景気拡大を経験しました(図表12)。』

という話ですが、これって要するにセントルイス連銀のブラード総裁が言う「デフレ均衡状態」って奴なのではないかという気がします。本当はその辺を突っ込んで考察して、デフレ均衡でも景気が拡大するという状況が社会厚生的に問題があるのか無いのかという点への考察があって然るべきじゃないかなあなんて思うのですけど(もしデフレ均衡でも経済が拡大して、その場合に社会厚生的に良い状態というのであれば、既にデフレ均衡を実演した日本の実例がありますよんって話になるのですが・・・・たぶんそうはならないでしょうけれども^^)どうなんでしょうか、とシロートのあたくしはふと思うのでございましたです。


で、この講演ですが、まあ一番良くシロートが読んでも論点が判りやすいのは『3.バブル崩壊後の経済情勢と政策対応に関する4 つの類似点』のところだと思うのですが、これがまた時間切れになってしまいました(汗)ので、そこはまあ読んでつかーせという所ですが。

『第 2 の類似点は、バブル崩壊後の経済活動水準の急激な収縮が、インターバンク資金市場が不安定化した時期に生じていることです。』

『中堅証券会社である三洋証券の破綻によって生じたインターバンク資金市場への悪影響の大きさを目の当たりにした結果、その直後に発生した、より規模の大きい山一證券の破綻の際には、日本銀行が同社に対し無制限に流動性供給を行うことをコミットし、秩序立った処理を可能としました。これによって、日本発のグローバル金融危機は回避されました。』

まあ実際は債券市場で非上場国債(当時の分類による)やら金融債、社債などのスプレッドが拡大したり、換金売りのような動きで中短期ゾーンの金利が上昇してみたりしましたし、結構市場のほうは混乱したのですが、まあその後の危機と比べればという所なんでしょうかねえ。

『第 3 の類似点は、バブル崩壊期において、教科書に書かれているような伝統的な金融政策の効果波及チャネルが作用しなかったことです。その典型はクレジットチャネルでした。』

『今回のグローバル金融危機の発生前までは、量的緩和がデフレ対策として提案されることが多かったように思います。しかしながら、先進国においては、中央銀行のバランスシートの著しい拡大によって、インフレが高まるという関係は観察されていません。この観察事実は、ゼロ金利とバランスシート調整圧力に直面する経済環境のもとでは、伝統的金融政策の効果がかなり制約されたものとなることを示しています。』

ということで、まあさっきの会見とセットにしますと、量的緩和に関しては本当に効果あるんかいなという話になるようなのですが、現在の日本の場合は欧米と違ってバランスシート圧力が相対的に軽微だから、量的緩和政策がデフレ対策に使えるのではないか、という逆ねじ食わされた場合に白川総裁はどういう反応をするのかなあ、なんて思いましたです。

などと書いているとマジで時間が無くなる(つまり読みながらああでもないこうでもないと考えるのに非常に便利な素材ということです、この講演は)のでこの辺でいきなり終了しちゃいますけれども、ああでもないこうでもないとか適宜ツッコミを入れながら読んでみると面白い(ただ単に棒読みしてると面白くないかも)のでお暇なときにお勧めですが、今日は決定会合ですかそうですか(^^)。











2010/10/04

お題「決定会合も近いので雑談(ナンジャソリャ)」

えーっとですな、本来は米国連銀幹部の金融政策に関するお話をフォローした方が次の金融政策をどうのこうのという件に関しては重要だったりするという気がするのでありんすが、あたくしの暇と英語力の関係で今日は決定会合プレビューと虫干しネタと悪態で勘弁して下さいm(__)m

#レーザーで蚊を落とす「画期的な研究」の紹介をモーサテでやっているだが、軍事転用されたらジュネーブ条約違反になるというか悪用されたらマズーだと思うのだが・・・・(ちなみに殺傷目的じゃない場合はジュネーブ条約適用範囲外のはずですからまあ開発すること自体は大丈夫は大丈夫だと思います)門外漢だがちょっと思っただけ。


○決定会合が終わると意味がなくなるのでプレビューという名の超雑談

さてまあ今日明日が決定会合だったりするのですが、散々クレクレ攻撃になっている今日この頃でございまして、金曜のブルームバーグのニュースヘッドラインを見て茶を噴出しそうになったのはあたくしだけではありますまい。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aFErABecC11g
円金利先物、オペ拡大なら失望売りも−日銀の緩和策の内容に注目

すげえええええ!!勝手に市場と報道で煽っておいて「オペ拡大程度では足りないので失望売り」とか意味判んないです先生!!つーか別に金先が上がったから何なのよという感じもしますが(苦笑)、それは兎も角として、最早市場ちゃんと報道機関の煽りっぷりが実に香ばしい展開になっているとは思ってましたが、これでは漫画のナニワ金融道に出てきたヤクザの車にぶつけて全賠償の念書をうっかり書いた農家のアンチャン状態ですなあ(もちろん報道機関と市場がヤクザ側です)というテイストを醸し出している今日この頃でございます。

で、まあ今週何をやるのか存じませんが、まー今回思い切ってドカンと何かやるのなら別ですが、あたしゃしょうもないやった振りのなんちゃって緩和もどきをする位だったら今回は追加で何かをするのを見送る方がよっぽど宜しいんじゃないですかという気はするんですけどね。

つまりですな、上記URLにもありますように、市場(しかも日銀直下の短期金融市場ではなくてそれ以外(ちなみに金先は短期市場ちゃあ短期市場なのですが、日銀直下というよりはちとずれていると思います)の市場が煽る訳ですが)と報道機関の煽り(報道機関にして見りゃ「日銀の追加金融緩和」となればニュースネタですから喜んで報道しますわな)が最早素人がヤクザの車にぶつけてしまった状態と化しており、報道と市場がバンドワゴン状態になっておりますので、一回期待を外して冷やさないとやばいんじゃないでしょうかねえって所で。

でもまあ圧力が煩いのに対して撥ね付けるという程の気合も無いでしょうから(つまり気合も無いのに「麿はこう考えるでおじゃる」とか正論だけど地合いを考えろよというような発言をするのは逆効果という事ですな)まあ予想する方としてはなんちゃって金融緩和もどきのようなものをするのでしょうけれども、新型オペ拡大っつーのも何だかなあという感じですな。

さてじゃあ予想はなんですかという(まあ結局不毛な予想ですが)話ですけれども、新型オペを拡大する増額するよりも、現在の3か月を全部6か月にするほうがまだ「ターム物金利の一段の低下」という話に整合性があるとは思いますけれども、まあそもそもターム物金利自体がとっくの昔に6か月0.11〜0.115%、1年0.11〜0.12%とかに低下しているので今更何をターム物金利低下ですかと言うところではあります。まあTIBORを下げさせるという大技は残っていますが、そもそもTIBORはリファレンス銀行の鉛筆なめなめの集合体金利なので日銀がそいつを直接下げる方法は無い(と言う事になっている)のでありまして、市場金利およびクレジットスプレッドが下がりきっている状況で日銀手の打ちようが無いでござるの巻。

金曜はこんなんが出てましたが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a70BO6jMjDIM
日銀の利下げ観測が浮上−新型オペ拡充は効果薄く「滑稽」との声も

利下げの話がだいぶ増えているらしいのですが、当初から利下げ(というか誘導金利のバンドですな)を主張している人は別として、足元で利下げの話が出てくるというのは正直ピンボケじゃないのと思います。この前もなんか書いたような気がするんですけど、足元での米国連銀のアプローチが「長期国債の大量買入によって長期金利を下げて経済効果を出す」という話(そのアプローチが期待インフレ率を上げるという成功を来たした場合に長期金利って上昇するのでロジックが苦しくなるような気がしますが、まあその時はオトボケで量的緩和みたいな話をして誤魔化すんでしょうなと思います)をしていまして、FF金利の引き下げというアプローチは取っていないのでして、そんな中で日本が政策金利の引き下げ(しかも0.1%という一番低い金利を下げる)をするというのはピントがずれているように思えるのですよねえ、という所でございます。

で、短期国債買入を拡大みたいな話もあるみたいですが、それは何だかなあという感じもするのでありまして、その手の調節の細かい部分を一々MPCで決定するというのもアホのようなだと思います。それをやりだすと今度例えば短期国債の発行が減った時に短国買入を減らしたいのに下手に減らすと金融引き締めとか言い出すアホウが現れるでしょうから(本来的に言えば長期国債買入だってMPCマターにしなくても良いレベルの話だと思うのだが・・・・)、終いには「次回決定会合までの資金供給オペを累計で何十兆円実施します」とかMPCで決定するようになるんじゃネーノとか思ってしまう次第(^^)。まあ「資金供給の拡充」みたいな言い方をするかもしれないけど筋は悪いでしょうな。

ということで輪番拡大が筋だと思うのですが、問題は今の政治屋どもが輪番拡大を財政打ち出の小槌にしようとしている所でして、そこはどこからどう見てもバーナンキさんより白川さんが苦しい点だと思います。バーナンキの場合は別にまあ輪番拡大をしても財政打ち出の小槌の話は出てこないでしょう(まあやる事は財政マネタイズですけど)し、それ以前の問題として米国の場合は基軸通貨特権で財政マネタイズをしても問題ない(基軸通貨国の財政マネタイズは近隣窮乏化政策にも程がありますので他国的には大問題だが)のですが、基軸通貨国以外が財政の大幅マネタイズをすると行き着く先はジンバブエですから、その点でもハードルが違うでしょ、というのはある筈なので、まーその辺をどう折り合いつけるのかは難しいところだと思います。

その辺クリアできたら輪番拡大のほうが円高対策には効きそうな気がするんですけれどもどうでしょうかね。

あ、あと当座預金ターゲット復活と言うのもありますわな。付利金利残して実施というのは有るのかもしれませんが、はてさてそれってどうなんでしょうかね。まあ20兆円程度だったらあまり問題なさそうですが、これが30兆とかになったらややこしい話になりそうです。まあそっちも無い訳では無いと思いますけど・・・・


○雑談が長くなりましたが生活意識アンケートから一点だけ

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1010.pdf

いつもは細々とアンケート結果を引用するのですが、今日は時間と量の関係上引用を割愛して読んだ印象。

えーっとですな、景況感とか物価に関してなんですけれども、これがまた先日の短観と同じような感じでして、足元別に悪化している訳ではない(さすがに短観のように改善と言うほどではないですけれども)のですが、先行きに関しては景況感も物価もちょっと悪化という感じです。

特にまあ先行きの物価に関しては、

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる3.3 ( 3.8 )
2 少し上がる39.4 ( 40.4 )
3 ほとんど変わらない43.7 ( 45.1 )
4 少し下がる11.6 ( 9.0 )
5 かなり下がる0.8 ( 0.4 )

Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる13.1 ( 15.9 )
2 少し上がる53.1 ( 51.9 )
3 ほとんど変わらない20.7 ( 20.5 )
4 少し下がる9.1 ( 8.4 )
5 かなり下がる1.2 ( 1.0 )

ってな感じで、先行き「下がる」が増えてきていますわな。で、この統計常に統計で出てくるCPIよりも高い数字が出てくる(そらまあ生活者意識の中で品質向上修正とか掛けないわな^^)ので上向きなのはどうでも良いのですが、先行きが下がるという点に関しては政策判断的には要注意という話になるのではないでしょうかねえという所です。


○時間が無いが虫干しネタ(後日に続きそう)

今更ですが。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1009c.pdf
特殊性か類似性か?
―― 金融政策研究を巡る日本のバブル崩壊後の経験 ――

・・・・これなんですけれども、極めて良い話をしているのですが、最後のほうに余計なKYネタがあって台無しになっているというのはだいぶ前に書いたとおりです。で、まあ仰るとおりですなあという所が色々とあってイイハナシダナーと思うのですけれども、あたくしは性格が悪いのでツッコミどころのネタから今日は入りまして時間切れになる予定です。

本文2ページの最後から。

『第1に、「失われた10 年」という表現は経済がずっと停滞していたというイメージを与えますが、実際には、日本は1990 年代以降の低成長期においても、3 回の景気回復と3 回の景気後退を経験しています(図表5)。回復の動きが広がる都度、バブル崩壊後の停滞局面から抜け出し景気の本格回復が始まったのではないかという期待が高まりました。私は昨年春、先進国の景気に回復の兆しが初めてみえた際、「偽りの夜明け(false dawn)」という表現を使って楽観主義に陥る危険に対して注意を喚起しましたが、これはそうした日本の経験に基づくものでした。』


本文5ページから。

『第 1 の類似点は、バブルの崩壊後、景気が本格的に回復するまでには、かなり長い時間がかかるということです14。日本の場合、景気が本格的な回復軌道に乗り始めたのは2003 年頃からであり、バブル崩壊から10 年以上の長い時間を要しました。今回の米欧の場合、調整はまだ進行中であり、最終的な調整にどのくらいの期間を要するか、まだ結論がでていません。ただし、本格回復までに、まだかなり期間がかかることは確かでしょう。時間がかかる最大の理由は、バブル期に蓄積された様々な「過剰」が解消されるまでの間、バランスシート調整という言葉で表現される、経済活動への強い下押し圧力が働くためです。』


本文11ページから。

『第 4 に、バブル崩壊後の経済の回復に果たした外需増加の役割を考慮していく必要があることです(図表23)。先ほど申し述べたように、日本経済が本格的な回復軌道に復帰するためには、前述の「3 つの過剰」の解消が必要でした。さらに、これに加えて、世界的な信用バブルを背景とする世界経済の高成長と、日本の低金利持続による円安の進行に支えられ、2003 年以降、外需が増加したことの寄与も大きかったことを指摘できます。現在の情勢のもとでは、多くの国々がバブル崩壊の影響を受けていることから、先進諸国は、「外生的な」需要に依存しない形で、景気回復を本格化させていくことが求められています。その意味で、一国だけがバブル崩壊を経験した場合と、世界の多数の国がバブル崩壊を経験した場合とでは、回復のメカニズムが異なることを意識した分析が必要になると考えられます。』


・・・・えーっとですな、そうお考えなのになぜ今年の4月(というか3月短観以降)から白川さんそんなに景気に強気(会見などの発言が明らかに日銀の公式見解ベースよりも強い話になっていましたよね)になっていたんでしょうかと小一時間問い詰めたいですが、きっと白川さんに問い詰めたらあたくしのような頭の悪い者は瞬殺されるんでしょうな(つーかそれ以前に会話のステージに乗れませんが^^)。

いやね、こういう認識があるのに何でああ強気になっちゃったんですかなあと思うのでして、そもそもあの辺りの間の悪さが足元で金融政策論議がカオスになっているスタートだったような気がするんですよね。

ということで(どういうことだ)ちゃんとした話はまた明日にでも(汗)。


○さらに雑談だがこれは・・・・

権丈先生のページ
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/

で、だいぶ前の原稿なのですが、このようなのが紹介されてまして(PDFでいつもより量が多いのでご注意ください)ですな。

http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare36.pdf
勿凝学問36
どの世界にもいるはずの気概のある異端たちへ ――自民・民主勉強会での説明の正確さを期するためのメモ――

もう現在のグダグダ金融政策議論にも通じる箴言(短くないけど)が色々とあって、ついこちらを熱心に読んでしまって週末の時間を食ってしまったのですけどね(^^)。

例えばこちらの3ページから。

『メディアも、政治家も、研究者も、投票者に代表される国民の幸せなどには関心はなく、国民が完全情報をもたない合理的無知な状態であることにつけこんで、自らの目的関数を極大化させるために、あれやこれやの情報戦略を展開する――という絶望的人間モデルを思考の基礎におく。このモデルにもとづけば、それぞれ違った形で情報を司る職業であるメディア・政治家・研究者たちの基本戦略は、ひたすらに不幸な国民を創り出すという戦略に集中することになるのだが、これはちょうど、医師は、患者がいないと仕事がなくなってしまうために、病を患うひとたちを創出したくなる誘因をもつことと同じ関係にある(余談となるが、だから、本当はこれら専門情報を司る職業では、専門家としての倫理規制がとても重要になるはずなのである)。』

5ページから。

『学者や軍人は、暇なときほど世は幸せなのだし、彼らに政治をやらせてはいけません。大変だぁ、問題だぁと、火のないところにも煙を立てて、自分で勝手に有事を演出しては、自らの出番を作ろうとする。情けない。』

大変に頷きまくりながら読んでしまいました(^^)。









2010/10/01

お題「期初から雑談とかばっかりですいませんが」

ということで今期もよろしゅうに。

○末初のGCが上昇したらしいのですが

全然荒れませんなあとか変なフラグを立ててみたら昨日は末初のGCが上昇。何か朝から成行売り(=GCの売りは資金の調達)状態になっている向きがあったようで、大変に香ばしい展開になっておられたらしく、一時はロンバート近辺まで上昇したようでおじゃる。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920009&sid=aPhvT1sSA0qk
期末のレポ金利が大幅上昇、日銀オペ期待の反動−ロンバートに接近

とは言いましてもここの記事にありますように、

『国内証券のディーラーは、大方の金融機関が通常より高めの金利でも早めに資金手当てを進めており、日銀の対応を期待して行動をとらなかった金融機関にも責任があると指摘する。』

つー感じですし、それ以前の問題としてギリギリまで手前のGCやらコールでファンディングしてその分コスト下げているんですから、別に末初一日だけ0.30取ったって問題ねえじゃんと思うのですが、どこのベンダーだか何かで見たのか忘れましたが、日銀のオペ姿勢がどうのこうのとか言ってる人がいたとか居なかったとかゆー話もあったようで誠に香ばしい話です。

いやね、それって只のポジショントーク&物乞いじゃねえのという感じでございまして、末になったらT+0のGCなんて大手銀行さんが決算の数字を固めるからシュリンクしまくる(末残で銀行が資金取引を増やすとバーゼル規制上カウンターパーティーリスクが掛かってリスクアセットが増えちゃうじゃん)んですから、何でそこまで粘るのよ(前日にT+1で末初GCをやっていた時にも思いましたが)という所で、文句言うほうも言うほうでしょという感じですな。

つーか、文句言いたいのでしたら思い切って嫌がらせにロンバートで千億ロットで借入をしておいてどっかの日銀叩きの好きなベンダーなりに「日銀のオペに問題があるからロンバート借入が出た」みたいなわけの判らんネタでも持ち込めば喜んで記事になって短期市場の中の人たちは失笑するけど、何かとりあえず日銀が悪いという話が好きな人たちがまた喜んで飛びつくの図というのが見られたのにねという感じですが(苦笑)。

ま、その人(人なのか人たちなのか知らんが)の調達が一巡して午後になったらレートは低下したみたいですし、まあ別にここの金利上昇が何かターム物金利などに影響を与えたかといえば1ミリも影響を与えておりませんので、まあ別にど〜でもよかろとは思いますが、最後に妙にドタバタ的な雰囲気でご苦労様でございましたなという所でございます。


○そういえば昨日の悪態の続きとか

昨日悪態ついた日経のマーケット総合面のマッチポンプ系記事(自分たちで(日銀が「その観点での議論はしない」と言っている)非不胎化介入がどうのこうのと煽っておきながら、急に日銀が詐欺師であるかのような解説をおっぱじめるという大変に香ばしい記事)なんですけれども、悪態書いていて何か変だなあと思っていた点をお友達と話をしていて気がついたのでご報告しておきます(^^)。

いやね、期末に金融市場の資金需要が増えやすいって説明の部分で微妙に「???」と思った所がここでしてですな。

『9月末は企業の決算期末とあって資金決済が集中し、金融市場での資金需要が増えやすい。介入などなくても、日銀はこの時期には例年、資金供給を増やすのが常だ。』

ってのに微妙に引っ掛かるなあと思った訳で、昨日はサラッと決算要因で市場取引が縮小するからって申し上げましたが、もうちょっと丁寧に書くと上でも書きましたように期末は市場参加者が決算でバランスシートを縮小するから取引がシュリンクしやすくなり、通常行われる筈の「市場を通じた資金偏在の平準化」が起きないので、その分をオペなどで資金供給しないといかんという事になって資金供給が増えるんですな。

で、企業の決算期末で資金決済が集中するという表現がひじょーに違和感があるのでして、いやまあ確かに決算で取引が色々と起こるのかもしれないですけれども、企業間決済って別に「期末ですから売掛金を全部払ってください」みたいな落語の掛取話をしてる訳じゃないですし、取引が色々と起こるから銀行券需要が起きるみたいな話も現金仕入のバッタ屋なら別ですけど、んなこたあねえでしょと思います。

それに銀行券需要が絡まないのであれば、内国為替の企業間決済がなんぼ多くてもインターバンクの資金需給的には中立要因でございましてですな、何かこの記事冷静に読んでるとマッチポンプ部分もさることながら、この部分が禿げ上がるほどのツッコミどころで、「マーケット総合面」での記事として如何なものかというレベルですなあという所っすな。

#ど〜せ取材受けた誰かが面倒臭くなってテキトーに答えたんでしょうな

ちなみに日経様、昨日は社説で「日銀は小出しの緩和ではなくドカンと緩和すべき」みたいな話をしているのですが、毎月のように煽り報道をされた日には小出しにせざるを得んではないですかと思いますが、最近は日経さんはマッチポンプが芸風になってきたんでしょうかねえ(苦笑)。


○決定会合プレビュー

何かすっかり来週追加緩和のようなものをするという話になっているようで、誠に残念というか訳判らんというか香ばしいというか金融政策が大衆迎合政策でございますかそうですかという所でございます。

で、よー知らんけどまあすっかり回りが追加緩和で盛り上がっているのですから最近の押し込みに弱い日銀としては期待を外した結果として円高に振れた場合に何言われるかとゆー点を考えると空振りという訳にも行かんのでしょうなあという感じなんでしょ。

須田さんが「事前の報道やそれに呼応した市場の動きに反応してその通りに金融政策を行うとキリが無いんじゃないか」と指摘してますし、かつてはアラン・ブラインダーFRB元副総裁が著書の中で市場などとのコミュニケーションの失敗の状況の一つの例として「自分の尾を追う犬」という表現をしていましたが、現在の日銀がまさにその通りになって、市場と一部のメディアに差し込まれる(まあそのメディアの背景に何があるのかを妄想すると色々と面白いのですが、あまりやると陰謀論者になってしまいますので深くは考察しない事にします)「自分の尾を追う犬」状態になっているのが実に香ばしいというか残念無念と言うか。

ま、それは兎も角として、事前報道のように「新型オペの拡大」という話でありましたらこれまた政策ロジック的に何だかなあという感じはするのでございます。

つまりですね、先日6か月オペ10兆円をこれから実施しますよというのをアナウンスした訳ですが、その6か月オペ10兆円ってえのはまだそのうち1回分の8000億円しか実施されていませんわな。つまり、前回実施したオペを拡充しますっていうのはそれはそれで話は通っているように見えますけれども、そもそもオペがまだ殆ど残高として実施されている訳でもない状態と言う事ですから、効果とか作用とかがわからん状態であって、本来はその辺りの効果が足りないから追加するとか、副作用の方が大きいからこの施策は縮小して他の施策を実施するとかいうのが政策アクションを起こす場合の本来の姿だと思うのですよね。

ここまでの3か月オペの拡大、6か月オペの導入にあたっては、前回導入を決定したオペが予定額全部実行された後に決定されたものでありまして、そういう意味では前に打った政策の効果などを勘案して追加を行ったというロジックになるのですが、今回もし追加で6か月オペ実施だか何だか知りませんが、オペを実施してという話になりますと、前に決定した事は何だったんですかっつー話になるんですけどねえと思うのですがどうでしょう。


とか何とか書いているうちにふと思ったのですが、もしかして6か月のオペがまだ1回しか実施されていないのって、既存の3か月オペを6か月オペに変更する布石だったりするんですかね、という気がしてきたのですが只の気のせいだと思いますのであまり気にしないで下さい(^^)。

まあ固定オペの残高か40兆円とかになりますと、じゃんじゃん介入して頂いて短期国債の発行額を増やして頂きたいというところでございまして、日経様の大好きな当座預金残高にリンクした非不胎化という話であれば、今般は当座預金残高が介入前の15兆円から17兆円くらいに増えれば万々歳という話になるかと存じますので(下記参照^^)、固定オペ追加とかすると追加のし過ぎになりますなあという所でございます(笑)。

http://www.mof.go.jp/feio/monthly/220930.htm
○平成22年8月30日〜平成22年9月28日における外国為替平衡操作額
2兆1,249億円


と言う訳で固定オペ拡大というのも何だかなあと思うのですけれども、まあ米国も長期国債買入とか言ってますから普通に考えると輪番拡大というのを本線として考えたほうが良いとは思うのですが、資産拡大を長期金利低下という波及効果で話をするバーナンキって大丈夫かなと思いますけど、日本の場合は今更ここから長期金利下がってどうするのという所でございまして、まー波及効果とかの理屈も大変ですなあという感じです。理屈捏ねる能力が卓越しておられる日銀企画の皆様ですから何か理屈は捻り出してくれるでしょうから、後は白川総裁次第という感じだと思うのですけどねえ。

しかしまあ何ですな、銀行券ルールを廃止して財政マネタイズを連想させても良しみたいな話をする人も多かったりするのですが、財政マネタイズしながら長期金利上昇抑制するのって難しいと思いますし、そもそも論として期待インフレ率を引き上げるような政策を行わおうとしているのに長期金利は上昇したら困るというのも虫の良すぎる話でして、輪番拡大そのものはあたくし的には別にまあ野放図な財政マネタイズの抑止が担保できればドンドン増やしても良いんじゃねえのと思う(ただし、現下の政治状況を見ていると財政マネタイズが始まったら物凄い勢いでそこかしこから財政出せ出せ財源はマネタイゼーションという事になって、歯止めがまるっきり効かなくなるとしか思えない(まるでいつぞやの軍事費のように・・・・)ので、まあ法的担保でも怪しいんじゃないか位の懸念はありますわな)のですが、輪番拡大でまあ最初は長期金利が下がるかもしれませんけど、必ずしも長期金利が下がるかどうかは怪しいんじゃないですかね。

つーか今書いたように、米国の場合もそうですけれども、資産買入によってインフレ期待を高めることに成功したら長期金利って上昇するんですから、金利低下で経済効果がどうのこうのとか言ってるバーナンキの理屈はさっぱり判らないし、極めて危ないロジックだと思いますので、是非とっとと資産買入を決定していただいてプギャーとなる神展開を望んで止みません。


#おお、9月16日の白川総裁講演(これは非常に良い講演です。ただし例の低金利政策の弊害がどうのこうのという余計な部分が全てを台無しにしているのだが・・・・)を虫干ししようと思ったのに時間がなくなってしまった(涙)


・おまけの雑談

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a3U0_d5FNcqk
野村アセット訪日観光投信の設定額、43億円と上限の5%にとどまる

今年に入ってテーマ別投信を打ち込んでいる野村證券(鉄道株とチャインドネシアとかクラウドコンピューティングとか毎月色々なネタで楽しませてくれます)でしたが、訪日観光ネタで投信投入したら尖閣問題発生とは間が悪かったですねという所ですが。

『鈴木氏は野村HDについて、リーマン・ブラザーズとの統合効果が見込まれたM&A(企業の合併・買収)関連など投資銀行部門が振るわない中にあって、「好調な投信手数料が足元で収益の柱の一つとなっていただけに、今回の応募状況は親会社の収益不安にもつながる可能性がある」と指摘していた。』(上記記事より)

・・・・いやまあ「野村プギャー(^o^)/~」と言いたいってえのは判らないでもないでございますが、投信一本空振っただけで収益不安ってそら大袈裟にも程がありますがなあーた(^^)。