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2011/02/28

お題「諸般の事情で本日はメモ程度の市場雑談で勘弁」

ということで大体メモでありましてどうもすいません。

○資金供給オペが久々に0.10%よりも高くなった件について

金曜のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110225.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110225.htm(結果)

ということで、28日スタート3月11日エンドの共通担保オペの平均落札利回りが0.103%に上昇でござるの巻なのですが、今年に入ってからはご案内のように連日札割れ攻撃などによってずーっと平均落札0.100%足切りレート0.10%という大変に素敵な展開が続いていたのですが、金曜は今年初の(^^)0.11%応札が入りましたよという結果に。

まあ直接的な背景としては足元で短い所の短国とか2年債とかに投資家売りが出てて業者の在庫が重い事からオペへの応札ニーズが高まったという普通の事情があると思われますが、構造的な話をすると固定金利オペおよび買入系のオペ、つまり基金オペ残高の積み上がりによってこういう事になりますわなという面もありますという事で。

つまりですな、足元で資金供給オペ残高(買入はめんどいので計算割愛)自体はそんなに減っていないのですけれども、固定金利オペがその間に増えていく(6か月オペの実施がつみあがってきている)とその分短い期間のオペとなる共通担保の金利入札方式のオペの残高が減ってしまいます罠。で、まあ証券会社が在庫ファンディングするのにベースとなる部分は固定オペで安定調達しておいてもよかよかという所なのですが、足元の債券打ち込まれ攻撃にもありますように、業者のポジションというのは結構な規模でぶれる(特に銀行勢が短期ゾーンを動かしてくると「面」で買ったり売ったりしてくるので)ので、固定オペで全部の在庫ファンディング需要を充足しちゃうような運営をすると在庫玉持って行かれた時に今度はオペの「入れすぎ」状態になるリスクがありまして、そーなりますと今度はオペ玉を確保するためにGC成行買いみたいなことになってややこしくて敵わんですから、そう考えますとあまり長い期間のオペばかりでの調達構成にするのも宜しくはない、という事になりますわな。

ま、そんなこんなの事情があって、ちょうど足元重いですし、更に言えばどうせこの売った分どこかで買いが来るでしょうから、そーゆー事を考えると3月11日エンドというオペは使いやすかったという所だったと思料されます。


でね、この現象ですけど、今後基金オペが積み上がって来る中で金利入札方式のオペが減ってくるとなりますと、足元の資金需給が国債売買の動きがどどーんとあったような場合とか、年金定時払いとか、税揚げとかの要因があった場合には足元の金利だけぶれるというような動きが起きるかなあとか思うのであります。まあ国債売買の場合はそのものズバリで国債のレートにも反映しますけど、最初からわかっている財政要因の場合、その財政要因に向けて資金の運用調達を調整していく中でレートが瞬間的に跳ねるような事がおき、金利入札方式の短い期間のオペが少なくなっている関係上、その部分の調整がスムーズに行かないケースもあるかなあと思います。2月の年金定時払いを前に積み最終に入ってくる資金と積み進捗の調整を睨みながらコールレートがやや上昇したのとかもその動きの一環ではないかと存じます。

#と、マニア以外に全く意味プーネタでどうもすいません


○不思議な先週の短国市場

終わってから不思議云々とかいうのも何なのですがorz

先週の短国市場ちゃんなのですけれども、その前の週末(つまり18日)のロンドン時間辺りから短国の買いが優勢となりまして、あっという間に玉がスッカラカン状態になり、カレント3か月物は(入札で投資家に嵌っていた事もあって)0.110%オファーサイド近くまでレートが低下したでござるの巻となったんですな。

ところが、水曜の3か月TB入札は足切り水準は0.115%越えになりまして「????」と思っていたら木曜金曜と短国市場では1か月から2か月程度の短国に売りが出ていたらしく重そうにしていましたという感じで、その動きもさっき申し上げた資金供給オペ札入りーのレート上昇しーのの背景になったものと見られます。

いやまあ別にそういう事もあるかも知れませんなあという事なのでしょうけれども、週の頭と週後半でこうまで状況が違う(しかも外部環境が特にその間に何か変わったのかといえば変わったとも思えず)というのも中々でありますのでメモメモという感じです。

短国じゃなくて短い利付国債では残存1年程度とかのモノに売りが出てたようでありますが、まあ利付国債の方はまたぞろ季節的に決算絡みとかの要因でございますかなあとか言うのは判らんでも無いのですが、短国は普通決算がらみでどうのこうのとは聞かない(期末の最後の最後に債券残高の調整で買う人がいる場合はあると思いますが)のですが、資金繰りで売りを入れるタイミングでもないでしょうし、何が何やらサパーリワカランチ会長でございまするのです。ということで誰か教えてくださいな。



○その他雑談

内容が良く判らないのでまあヘッドラインに釣られてみるのだが。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110225/stt11022519160009-n1.htm
みんなの党、予算修正案まとめる 行革で歳出大幅カット
2011.2.25 19:15

・・・・・?????

えーっと、みんなの党って「増税反対」という話をいつもしていると思われる訳ですが、「増税がダメ」なのに「政府支出削減はOK」という話の根拠がさっぱり判らんのですけど、どうも政策ブレーン様の方が相変わらずフローとストックを意図的に混同(当然この先生フローとストックの区別はわかるでしょうから)して「特例公債法案が通らなくても「ストックの」埋蔵金でやりくりが出来る」という大変に奥の深い理論を唱えておられますので、きっと何か奥の深い高度な理論があるに違いないと思います。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110225/plt1102251545001-n1.htm
特例公債法案が不成立でも、埋蔵金でやり繰りは可能だ
2011.02.25

今朝の公共放送ニュースではみんなの党が統一地方選で地域政党と連携を模索というニュースがございましたが、何と申しますか以下悪態になるので自主規制の方向で。













2011/02/25

お題「山口副総裁会見も下振れ警戒感を見せる/超虫干しネタの超虫干し」

昨日だか東京新聞見てたら地方選挙で民主党の議員が無所属になったりみんなの党に鞍替えしたりしているようですが、今朝のテレビニュースによれば減税日本にも鞍替えするのがいるとはもう何とも申し上げようが無い遺憾極まりない話ですなあ。

昨日山口副総裁会見テキストが出たのが何か知らんが遅かったので今朝慌てて読んでみた。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1102d.pdf

○商品価格上昇の影響に質問が集まる

青森県ネタの質疑応答も多かったのですがそこは華麗にスルーして商品価格上昇の影響に関する質問に対する山口副総裁のコメントですが、影響に関してはマイナス面をやや強調するような流れになっているように読みましたがどうでしょうかね。

『(答) 中東情勢、北アフリカ情勢が、このところ不透明感を強めています。そうしたもとで原油価格は上昇してきています。 このことの我が国経済に与える影響ですが、原油価格の上昇がどのような要因によってもたらされていると考えるかが、大事なポイントだと思います。』

なるほど。

『2009年初以来、国際商品市況は上昇基調を辿ってきました。そして昨年の秋以降、その上昇ペースがやや加速してきているわけです。その背景には、新興国・資源国の需要の拡大という要因が存在しており、こうした場合には、我が国から新興国・資源国向けの輸出の増加というかたちでプラスの効果が表れる可能性があります。』

という話をしてはいるのですが・・・・・

『一方で、昨今のように政治情勢が難しさを強めてきている中で、供給ショックによる原油価格の上昇と捉えると、先ほど申し上げたようなプラス効果が表れてこないということになります。その上、原油価格の上昇は、交易条件の悪化をもたらし、我が国の所得の海外流出を発生させることになります。これは明らかにマイナス効果です。』

『従って原油価格、あるいはそれを含めた国際商品価格の上昇が我が国の景気に与える影響は、プラスの面もあればマイナスの面もあるということだと思っています。』

とは言ってますけど、プラスの話をするときとマイナスの話をするときの表現の仕方がマイナスに力点を置いているように読めますにゃ(^^)。

『これら両面が実際にどういうかたちで表れてくるのかについては、今の段階では、なお予断を許さないと思っています。今後の推移を注意深くみながら点検していくべきことです。私どもは1月に展望レポートの中間レビューを行いましたが、今の段階でそこで考えていた景気のシナリオについて見直さなければならない状況であるとは考えていません。』

ただまあ「明らかにマイナス効果」という話をしてはいるものの、このように「シナリオは変わりません」という話でありまして(まあそれは当たり前ではありますが)、トータルで考えて見ますと「景気に対して日銀が楽観的な見方をしている」というようなイメージを与えないようにしつつも、日銀が現在展望レポートなどで示している先行きについての割と強気テイストのメインシナリオは維持というで、前のめり感を出さないように工夫された見せ方であって、下手にここで前のめり感を出すと引っ込みが付かなくなるリスクに配慮しているちゅうことでしょうな。


○商品価格上昇の国際的な検討というG20関連のお話

同じ質問の中の答えなのですけどね。

『2点目は、G20で国際商品市況の上昇について議論があり、今後それについてしっかり勉強していくためのスタディ・グループの設置が決まり、その議長として日本銀行の中曽理事が任命されたわけですが、それに関連して日本銀行としてどのような貢献がありうるかというご質問と思います。』

『1点目のご質問でお答えしたことと重なりますが、国際商品市況上昇の背景ないし原因をどう捉えるかということがまずあります。先ほど申し上げたように、新興国・資源国の景気の拡大に伴う需要の増加なのか、あるいは供給面のショック的なものなのか、さらには先ほどは申し上げませんでしたが、先進国の金融緩和に伴って投資資金が国際商品市場に流入している結果であるのか、その原因を見定めることについては、これから十分に検討していかなければならないという認識がまずあります。』

金融緩和で投機資金流入キタコレ。

『それに加えて、国際商品市況の上昇が、先進国そして新興国・資源国の経済に対してどういうインパクトを与えるのか、このあたりについても十分に勉強する必要があると思います。さらに言えば、そうした勉強の結果として国際商品市況の上昇に対して、各国政策当局がどのような対応を取るべきかについての検討も必要になるだろうと思います。』

ふむふむ。

『そうした問題意識は、グローバルにも共有されているということだと思います。G20のもとにスタディ・グループを立ち上げ、その議長に中曽理事が任命されたということですが、日本銀行としても、今申し上げたような国際商品市況に関連した検討については、非常に重要なテーマだと認識しています。相応の成果が得られるように努力していくことが、日本銀行の仕事および貢献だと思っています。』

とまあ何となく判ったような判らんような一般的な話をむにゃむにゃとしておられますが、別の(次の)質問で「じゃあ金融政策に影響するのか」という直球が投げ込まれたのでその答えを引用。

『まず、昨今の国際商品市況の上昇について、先進国の金融緩和の影響があるのではないか、仮にそう受け止めていく場合には、日本銀行の金融政策に何らか影響が及ぶのかというご質問であったと思います。』

『言うまでもなく、各国の金融政策は、各国の金融経済情勢を踏まえて、各国が独自に判断していくものです。従って、日本銀行の立場で言えば、我が国の経済の状況、金融環境を踏まえて政策を行っていくことが基本的な対応ですし、そのことは今後とも変わらないと思っています。』

『ただ、先進国の金融緩和による資金が、投資資金として国際商品市場に流れ込むことによって国際商品市況の上昇を招いていると理解する場合には、我々自身も、その点を念頭において、日本経済の先行きを考え、物価の状況を展望しながら、政策運営を図っていかなければならないと思っています。先進国の金融緩和が、何らかのかたちでグローバルな影響を持つようになっていることについて、十分な理解をしたうえで、政策対応を図っていくということだと思っています。ただいずれにしても、日本の経済の状況、金融の状況を踏まえたうえで、適切と考える金融政策を行っていくことに尽きると思っています。』

という事で、まあきれいに想定問答ちっくな答えが並ぶのでありまして、山口副総裁の会見対応ってまた随分安定してるなとは思いますけど、「投機資金の問題は金融政策では無くて規制で対応」みたいな話をしない所がこれまた微妙にマクロプルーデンスの観点での政策対応という理屈での動きに対してフリーハンドを残しているような感じがするのは邪推のし過ぎですかそうですか。これがバーナンキとかイエレン辺りだったら「投機資金の流入問題に金融政策を割り当てる必要は無いです(キリッ)」って普通に言うと思うので(^^)。


○デフレ脱却への展望に関して

『(問) 午前中の講演の中で、物価の先行きに関して、消費者物価指数の基準改定もあり、デフレの脱却には紆余曲折がありそうだと仰っていましたが、この基準改定以外に「紆余曲折」の根拠となる見通しや材料があるのであれば教えていただきたいと思います。』

『(答) 消費者物価指数の前年比のマイナス幅は縮小してきており、昨年12月については一時的な要素を取り除いて考えると、+0.1%まできています。こうした状況を踏まえて、今我々が頭に描いている景気展開からすると、消費者物価指数のマイナス幅縮小はさらに続くだろうとみています。そして2012年度にかけて前年比プラスの世界に入っていくという見通しを立てているわけです。』

『その限りにおいては、デフレ克服に向けて我が国経済が着実に歩を進めていることは、間違いないと思っています。ただ、そうは言っても、基準改定によって下方修正されるとなれば、そうした道のりが平坦なものではなく、デコボコした感じも表れてくるのではないかと思っています。そのあたりを念頭に置いたうえで、紆余曲折もありうると表現したということです。』

という事で、基調的な物価下落が止まりつつあるという認識はそれはそれであるというのが読み取れるのですが、昨日読みました講演のように、その状況を表現するときに紆余曲折というような話をしたり、色々な要因を挙げてみたりとゆー風にしていまして、まあこの辺りを見ますと現状では山口副総裁は「ハト風味」ではあっても「ハト」という訳でも無いのではないか、という風に思うあたくしなのでありました。基調はそんなに弱気じゃないけれども、ただまあその表現において強気テイストをあまり見せないようにしている的な感じですかね。

・・・・などと書いていて今気がついたのですが、これではあたくし山口副総裁を狸認定しているように読めてしまうではあ〜りませんかorz


時に、先週金曜にネタにした後の続編が無かった件がありますなあっはっは。

○コチャラコタ総裁の指摘するQE2の話の続き(超虫干しネタシリーズ)

昨年11月22日の講演でありますので何を今更ネタですが。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4571
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_11222010.pdf
Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty

先週金曜にネタにした時はQE2による国債買入の目的を「実質金利の低下」におき、国債の買入による政策効果発生のパスを(1)国債買入の拡大によって発生する時間軸効果の強化による長期金利への影響、(2)長期国債のリスクプレミアムの縮小を促して金利を下げるというより直接的なパス、という2点を(11月22日時点では)示していました、という所まで引用しました。で、その続きの部分を少々。

『In this way, the change to the asset side of the Fed’s balance sheet provides stimulus to the economy. But what about the liability side of its balance sheet?』

つまりリザーブ拡大の効果はどうなのよ?という話であります。

『QE creates more reserves in banks’ accounts with the Fed. The standard reasoning is that this kind of reserve creation is inflationary.』

一般的な理解ではリザーブ拡大はインフレーショナリーということで、その経路はというのが続きます。

『Banks are only allowed to offer checkable deposits in proportion to their reserves. Economists view checkable deposits as a form of money because, like cash, checkable deposits make many transactions easier. In this sense, bank reserves held with the Fed are licenses for banks to create a certain amount of money. By giving out more licenses, the FOMC is allowing banks to create more money. More money chasing the same amount of goods?voila, inflation.』

で、まあ上記の標準的な考えが現在は当てはまりませんよ、という話がこの先に続きます。

『Given some of the criticisms of the Fed that have been voiced over the past three weeks, it is important to understand that this basic logic isn’t valid in current circumstances. Banks have nearly $1 trillion of excess reserves. This means that they are not using a lot of their existing licenses to create money. QE gives them $600 billion of new licenses to create money, but I do not see why they would suddenly start to use the new ones if they weren’t using the old ones.』

まあこの辺は当座預金残高30兆円攻撃を経験しているニポーンの皆様はご案内の通りではございますが、現状では国債の大量購入を行ってリザーブが拡大しても、実体経済に回るマネーは急には増えませんがなというお話ですわな。

『Some observers have expressed concerns that $1 trillion-which will shortly become over $1.5 trillion-of excess reserves represent what they term “kindling” for some future inflationary fire. I believe that these concerns are misplaced for two reasons.』

kindlingってのをあたくしのデイリーコンサイス英和辞典で訳語を見ると「火が点く」みたいな意味のようでござんすが、大量の超過準備が存在する事によってインフレに点火して火がボーボー状態になるという懸念についてはそうじゃないですよと仰せのようですな。

『First, the Fed has several tools with which to combat incipient inflationary pressures. Most obviously, it can raise the interest rate on excess reserves as a way of deterring banks from creating money with their licenses.』

最初の理由は、FEDはインフレ圧力が初期のうちに対応することが出来るツールを持っていますよというまあホンマカイナという気もせんでもない理由であります。

『Second, in recent public statements, Chairman Ben Bernanke has explicitly and firmly committed the FOMC to maintaining low inflation. To use his exact words, he said that he has “rejected any notion that we are going to try to raise inflation to a super-normal level.”』

バーナンキ議長は明確かつ強固にFOMCは低インフレを維持することをコミットしており、インフレをスーパーノーマルなレベルに引き上げようという考えを拒否すると表明しています。という事で、まあ2点とも精神論っぽい気もするのですが、よーはこれらの事によってインフレ期待がアンカーされるという話をしたいんでしょうかね。まあこの辺りの認識がどう変化する/しないのかも気になるのでこの辺の話を最近またアップデートされていたら注意したいですな。

『As I mentioned before, I do not currently vote on FOMC decisions. I did express support for the FOMC’s decision at the recent meeting. As I have said on prior occasions, I believe that there are good reasons to suspect that the ultimate effects of any amount of QE are likely to be relatively modest. Nonetheless, the FOMC’s decision seemed to me to be a move in the right direction.』

この時点ではコチャラコタ総裁はFOMCの票決権は持っていなかった(今は持ってる)のですけれども、明確にQE2の方向性については支持を表明していまして、かつQEの効果については緩やかであるという認識を示していたという事でして、まーこの辺りを見るとコチャラコタ総裁ってタカ分類ではないでしょうな、と思われます。

それから、QE2の説明の前段でのデュアルマンデートの話では、失業率よりも物価に対するウェイトが高そうな話をしてみていたり、引用した部分の後半では労働市場における長期失業者問題を指摘していたりということで、まあこの講演量そのものは多くないと思うので(本文10ページ強)お暇な方にはお勧め。










2011/02/24

お題「山口副総裁はややハト風味か/BOE議事要旨からメモ」

西側の犬化して世界に向いたと思ったら腐敗が始まったでござるの巻だったのか、もともと腐敗していたのかが良く判らんのですが、独裁政権の腐敗を助けるのが誰だったのかとか考えると以下自主規制なのかもしれませんなあとか更に以下自主規制。

○5対3対1とな(BOE議事要旨クイックメモ)

BOE2月MPCの議事録キタコレ。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1102.pdf

斜め読みなのでまた後でちゃんと読むけど。

『The immediate policy decision』の所から。

『The near-term outlook for inflation was markedly higher than at the time of the November Inflation Report and inflation was likely to be between 4% and 5% for much of 2011. Nevertheless, the Committee continued to expect inflation to fall back thereafter as the temporary impact of various factors waned, and the margin of spare capacity in the economy continued to dampen inflationary pressures.』(第30パラグラフ)

何か目先のインフレ予想数値が更に上昇していますな。12月MPC時点では「春先にも4%になるかも」とかだったのですから足元でまあ上がる上がるという感じでありますが、それでも「一時的な要因が剥落した後は経済の余剰生産力がインフレ圧力を弱める」という話をしているのが何かもう物悲しくなってきます。

『Most members agreed that the balance of risks to inflation in the medium term relative to the target had moved upwards in recent months and that the case for withdrawing some of the current exceptionally accommodative monetary policy had consequently been strengthened.』(第34パラグラフ)

ということで、3人が利上げを主張。

『For three members, the case for removing some monetary stimulus at this meeting was compelling. For those members, the upside risks to the medium-term inflation outlook from global inflationary pressures and the possibility that inflation expectations would move up outweighed the downside risks to inflation associated with uncertainty about the strength of the recovery and the possibility of persistent spare capacity.』(第35パラグラフ)

ということで、世界的なインフレ圧力およびインフレ期待の高まりによる中期的なインフレ上昇方向へのリスクが、景気回復のペースの遅さや引き続き存在する経済の余剰生産力によるインフレ低下リスクを更に上回るようになっているとご認識のようです(日本語がヘタクソなのはあたくしの語学力と脳味噌の出来のせいです)。

『In part, this reflected a concern that the level of demand consistent with achieving the inflation target might be lower than previously thought. Two of those members favoured only a small tightening in policy, given the uncertainty about the economic outlook.』(第35パラグラフ)

んでもって、その上方リスク拡大によって、インフレターゲットの水準に到達するのに必要な需要の水準が以前考えていたよりも低い水準になる事が想定されますので、これらのメンバーのうち2名は経済の先行きに不透明感がある中であっても小規模の引き締めが必要であると主張。

『The third member concluded that a larger reduction in the degree of monetary stimulus had now become appropriate. That member thought that there was mounting evidence that firms were able to pass on cost increases to the prices they set and noted also that nominal domestic demand had been growing for some time at near to the top of its typical range prior to the recession. In that member’s view it was significantly more likely than not that inflation would overshoot the inflation target in the medium term.』(第35パラグラフ)

3人目のメンバーはより規模の大きな緩和の除去が必要と主張。その根拠としては、企業が原材料等価格上昇の転嫁をするようになっているという事が明らかになっており、更に国内の名目需要もリセッション前の水準に循環していたうちの高い水準まで拡大しているといいう事。このメンバーの見方によれば、インフレが中期的な水準からオーバーシュートする可能性が更に顕著に高まったとの事。

・・・・・てな訳で中々胸の熱くなるような展開になっております。で、金利据え置きが妥当と主張する意見とかまで引用すると後半のお題ができなくなるのでこの辺にしておきますが(おいおい)、票決はこうなっています。第39パラグラフから。

『Regarding Bank Rate, six members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Paul Fisher, David Miles and Adam Posen) voted in favour of the proposition. Three members of the Committee voted against the proposition. Andrew Sentance preferred to increase Bank Rate by 50 basis points. Spencer Dale and Martin Weale preferred to increase Bank Rate by 25 basis points.』

金利に関しては据え置き6対0.5%利上げ1(センタンス)対0.25%利上げ2(デールとウィール)。前回との違いはセンタンスの利上げ幅が拡大したのと、デールが新たに利上げ派に加担した事。

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Spencer Dale, Paul Fisher, David Miles, Andrew Sentance and Martin Weale) voted in favour of the proposition. Adam Posen voted against the proposition, preferring to increase the size of the asset purchase programme by £50 billion to a total of £250 billion.』

国債買入に関しては据え置き8対買入50bilポンド拡大1(ポーセン)でこちらは変化なしです。

ということで、実質5対3対1という大変にお洒落な展開になったBOEはどうするどうするという感じでありまする。


○ハト風味の山口副総裁かな??

青森での講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110223a.pdf

(世界経済の現状と先行き)って小見出しのところを見ると既にハト風味があるのですよねこれがまた。

『先進国に目を転じますと、米国経済は、緩やかな回復を続けています。輸出が新興国向けを中心に増加を続けているほか、個人消費をみても、昨年末のクリスマス商戦は2000 年代半ば以来の高い伸びとなりました。昨年夏場には、米国景気に関して悲観的な見方が強まりましたが、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度)が大規模な金融緩和政策を実施したことや、減税措置の延長という財政面の措置が講じられたこともあって、悲観論は急速に後退し、むしろ楽観論が台頭しています。そうした中で、株価も上昇しています。』

いやまあ別に普通の話っちゃあ普通の話ですが、「むしろ楽観論が台頭しています」っていう表現には「その前の悲観も今の楽観もオーバーシュートじゃないの?」と仰りたい、というテイストを感じてしまうのは読むあたくしにバイアスが掛かっていますかそうですか(^^)。

勿論、世界経済の基本的な見通しはこのように明るめですが・・・・・

『先行きも、世界経済は、高成長を続ける新興国・資源国に牽引されるかたちで、高めの成長を続ける蓋然性が高いとみています。ちなみに、IMF(国際通貨基金)では、世界経済の成長率について、昨年5%成長を達成した後、本年、来年ともに4%を上回る高い伸びを予想しています。この数字は、2008年の金融危機の前まで数年間続いた歴史的な高成長に匹敵するものです。』


その次の(世界経済の先行きを巡る不確実性)というのが下向きリスクオンパレードだったりするのが中々。

『第1の不確実性は、新興国・資源国経済を巡る過熱リスクです。中国をはじめとするこれらの国では、高い成長や資本流入が続く中で、インフレや資産価格の上昇など経済の過熱現象が目立ってきています。このため、多くの国で、金融緩和策の修正が進められていますが、景気の過熱やインフレに対する懸念は十分払拭されていません。こうした引き締め方向での政策運営を通じて経済の過熱をうまく抑制できなければ、やや長い目でみると、行き過ぎの反動が大きくなり、急激かつ大幅な景気調整を余儀なくされるリスクがあります。』

これまた普通の話ちゃあ普通の話なのですが、よくよく見ると「新興国などが過熱した場合に一旦上方リスクとして作用する」というような文言が無いのに気がつくと思いますが、そのセンテンスが無いだけで何かこう印象が違う訳でして、この「過熱リスク」も堂々の下振れリスク認定に見えますよね。


『第2の不確実性は、先進国経済に関するものです。(欧米の信用バブル発生の経緯部分割愛)家計は、住宅価格の下落によって傷んだバランスシートを修復するため、借入金の圧縮を続けざるを得ません。また、金融機関も、多額の不良債権処理に追われ、新規の貸出に対して慎重になっています。わが国が90 年代以降に経験したように、経済がいったんバランスシート調整という重石を抱えると、景気は上に弾みにくく、下に振れやすい状況が続く可能性が大きいと考えられます。』

『先ほど述べたように、米国では、最近、好調な経済指標などを受けて、先行きに対して楽観的な見方が強まっていますが、先行きこうした楽観論が修正される可能性も否定できません。また、ギリシャやアイルランドなどの欧州周縁国では、ソブリン・リスクと呼ばれる財政悪化問題に直面しています。信用バブルによる投資ブームの中で、政府が外国から過大な借入れを行ったことや、バブル崩壊後の危機対応の過程において、政府が民間金融機関のリスクや債務を肩代わりする形で財政支出を大幅に拡大したことなどが背景です。』

『この問題も政府部門における一種のバランスシート調整とみることができます。財政悪化問題の解決には相応の時間がかかるため、その間、こうした問題に対する懸念の広がりが、国際金融資本市場に与える影響に注意が必要です。』

ということで、先般の白川総裁定例会見では「もしかしたら米国の場合は日本と経済の基本的な部分に違いがあるからバランスシート調整の圧力および改善の速度が日本と違うのではないか」というような趣旨の発言もあっておおおおと思いましたが、山口副総裁のこの点に関する言及は引き続き厳しい認識を示しているという風に思われます。


『第3の不確実性として、国際商品市況の動向と、これが世界経済・物価動向に与える影響が挙げられます。国際商品市況は2009 年初以降、上昇基調を続けています。とくに昨年秋以降は、食料品等を中心に上昇テンポを速めており、一部の非鉄金属や穀物は、過去のピークである2008 年夏頃の水準ないしはそれを上回る水準となっています。』

キタコレ。

『新興国・資源国の高成長による需要の増加に加え、天候不順による穀物供給の減少などがその背景ですが、先進国の大規模な金融緩和が続く中で、投資資金の一部が、商品先物市場に流入していることも、国際商品市況の上昇を後押ししているとみられます。』

まあ普通にこういう話になりますよね。で、山口副総裁の講演からちょっと脱線しますけれども、バーナンキ大先生とかはテメエらの金融緩和に関して株価上昇などの効果を強調するくせに国際商品価格上昇に関しては「新興国の需要拡大と供給制約によるものです(キリッ)」とか言うのは良く考えたら随分と都合の良い話ではございますわなと思った今日この頃(^^)。

『いずれにしても、国際商品市況が今後どのような展開を辿るか、そして先進国あるいは新興国などの景気や物価面に具体的にどう影響を及ぼしていくかについては、中東情勢などの先行き不透明感もあり、目下のところ予断を許さないといってよいと思います。』



で、日本経済ですが。

『次に、以上のような世界経済の動向を踏まえて、日本経済の動向について、お話します。結論をやや先取りして申し上げると、当面の短期的な景気の見通しについては、やや楽観的にみていますが、中長期的には慎重にみざるを得ないというのが、私の現時点での認識です。』

・・・・・ハト風味が致しますな、うんうん、でその結論ですが、

『先行きについては、海外経済の高い成長を背景に、早晩踊り場から脱し、緩やかな回復経路に戻っていくと予想しています。』

という話なのですが、物価とかの話になるとやはりハト風味が。

『先行きについては、景気が緩やかな回復経路に復していくとみられる中、国際商品市況が上昇基調にあることも踏まえると、消費者物価の前年比は2012年度にかけて徐々にプラス幅を拡大させていく見込みです。ただ、本年8月には消費者物価指数統計の5年毎に行われる基準改定が予定されています。この5年間で、薄型テレビをはじめ価格の下落幅が大きい商品の消費ウェイトが高まっており、この要因が基準改定時に反映されることなどから、消費者物価の前年比は下方改定される可能性が高いとみています。この点も含め、デフレ克服が見えてくるまでには、なお紆余曲折がありそうです。』

まあこの辺にもハト風味を混ぜてますなという感じです。


つまりですな、白川総裁の麿テイストが入ると、この手の話をするときにも「そのような指数改定という要因はあるけれども基調的な部分での動きは着実に改善しているでおじゃる」という話が必ず入ってくるのですけれども、山口副総裁の講演ではその手の話を混ぜないで話を進めるというのが仕様のようであって、そのためハト風味が出るんですなあと思われる次第であります。

ただまあ山口副総裁が真性ハトなのか、単にその手の発言を不用意に混入して前のめり感を出さないように注意しているだけなのかという点についてはこれまた微妙な気もする訳でございまして、そらまあ執行部の一員ですから個人的見解っぽいのが講演テキストなどではまず出てこないのは仕様なのですが、ベースの話自体は白川総裁が折に触れて話をしている事とそんなに差があるわけでもなく、まあこの辺りは表現というか見せ方の部分があると思うのです。

ただまあ先行き楽観してたら見せ方がこうはならないですから、少なくともタカであるという事は無いかと思われますので、ハトに分類するよりはハト風味程度で見ておこうかと思います。どちらかというと直ぐに明るい話をしたがる麿クオリティーを「前のめり感は出さないで下さい総裁」って止めてる感じがするのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。

で、今後のべき論であり、本来こっちの話がメインであるような気もする『4.日本経済の中長期的な再生に向けて』という部分と『5.日本銀行の政策対応』の部分(を合わせて講演の半分くらいあるのですが・・・・・)は華麗にスルーということで勘弁。








2011/02/23

お題「今日の議事要旨ネタは普通です(^^)」

昨日のネタは超一部の人向けで誠に恐縮でございましたm(__)m

ではそれ以外の決定会合議事要旨ネタから。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf

○景気認識は12月の割と警戒的なトーンがそんなに変わっていない

ご案内の通り、1月に入ってから日銀から出てくる景況感に関しては、先行きの見通しは変えていないものの、内容的に言えば足踏み局面を脱していく段階というトーンを徐々に強めていましたが、さて決定会合における景気認識は12月から1月ってどうなっているのかなあというのは結構興味があった部分でありました。

で、まあその辺を示す『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の辺りからまずは少々。今回はちょっと前回の議事要旨も引っ張り出して比較してみるという微妙にそれはどうなのかというのをして見ますね。

ちなみに前回のはこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf(12月分)

・米国経済の先行きに関して

『多くの委員は、このところ多くの経済指標が堅調な動きを示していることや、昨年末にかけて、FRBによる追加緩和策や減税措置の延長などの政策対応が取られたこともあって、米国経済の先行きに対する懸念は、一頃に比べればやや後退しているとの見方を示した。』

『もっとも、多くの委員は、住宅市場の低迷が続いているうえ、雇用・所得環境の改善のペースについても、民間雇用者数の増加ペースは緩慢であり、失業率が高止まっているなど、捗々しくないと述べた。多くの委員は、消費の本格的な回復には、雇用・所得環境の改善とバランスシートの修復が不可欠であり、そのため、米国経済の回復ペースは当面緩やかなものにとどまる可能性が高いとの認識を示した。』(ここまで今回)

『ただし、多くの委員は、家計がバランスシート問題を抱え、雇用・所得を巡る環境が引き続き厳しい中で、国内民需の回復ペースは緩やかなものにとどまり、リスクの面でも、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くとの見方を示した。』

『何人かの委員は、金融・財政両面からの景気刺激策が発動されているほか、株価が堅調であることなどから、景気下振れリスクは幾分後退した可能性があると述べた。一方、複数の委員は、このところの長期金利の大幅な上昇が住宅投資などにどのように影響するか十分に注意する必要があると指摘した。』(ここまで前回)

当然ながら論点が時間の経過と共に変わってくるので、直接比較してどうのこうのというのは微妙ではありますが、こうやって並べてみると「下振れリスクが下がった」という認識になっていますし、先行きの見通しに関してもややトーンは明るくなってはいますが、基本的な懸念材料は(モノが構造的な要因だからというのもありますが)あまり変化が無いですねという所ではないかと思います。


・ユーロエリアの先行き懸念

『もっとも、多くの委員は、財政問題を抱える周縁国では、緊縮財政の影響もあって厳しい状態が続いており、中心国との格差が際立っているとの認識を示した。ある委員は、域内格差が際立っている中、ユーロエリア全体としての金融政策面での対応は難しさを増しているとの見方を示した。』(今回)

『ただし、大方の委員は、財政運営が緊縮的となることや、周辺国のソブリン・リスク問題が燻ぶるもとで、長期金利が高止まるなど、金融市場の不安定な地合いが続くとみられることは、長期にわたって景気回復の重石となりうるとの認識を示した。』(前回)

ということで何か相変わらず先行き懸念だったりしますし・・・・・


・新興国のインフレ懸念

1月会合ではこの海外のインフレ懸念ネタが(まあそらそうなのですが)議論として増えています。

中国について。

『また、大方の委員は、基準金利や預金準備率の引き上げにも関わらず、金融環境はなおきわめて緩和的な状況にあるとみられ、インフレ圧力は十分に沈静化されていない状況にあるとの認識を示した。この点について、ある委員は、先進国の金融緩和が、固定相場的な為替制度のもとで、中国国内のインフレ圧力として波及してきているとの見方を示した。』

その他アジア新興国について。

『こうした中、複数の委員は、中国同様、金融環境が依然としてきわめて緩和的なことが、インフレ圧力を高めているとの見解を示した。』

前回はこの辺りの話はそんなに無かった訳でして、まあ今年に入って流れがちょっと変わったですなあという所でしょうかね。


・更に国際商品市況に関しての話も

という事で今回は国際商品市況に関する話も出ています。

『最近の市況上昇の背景について、多くの委員は、天候不順による供給不安の高まりなどの一時的な要因を指摘しつつも、基本的には、新興国の経済成長に支えられた需要の増加による部分が大きいとの見解を示した。』

という話の後に金融政策の話が出てくるのが日銀クオリティ。

『複数の委員は、実需面での動きに加えて、コモディティの金融商品化が進んでいるもとで、先進国の金融緩和も背景となって、投機資金の流入が拡大していることが市況の押し上げ要因になっているとの見方を示した。』

日銀クオリティとか申してますが、まあ「国際商品市況の上昇はQE2のせいじゃないですよ!!!」と主張しまくるバーナンキとかイエレンの話の方に無理があるでしょうと思うのでありまして・・・・・・

『その証左として、ある委員は、今次局面においては、株価と国際商品市況の相関が非常に高くなっていることを指摘した。』

ほほう。で、先行き見通しですが。

『何人かの委員は、国際商品市況は、新興国の需要に支えられて、今後も上昇基調で推移するとみられるが、同時に、投機資金の流入の影響が強まっていることなどから、ボラティリティも高い状態が続くとの見方を示した。』

そうですな。

『ある委員は、そうしたもとでは、国際商品市況の上昇がファンダメンタルズに沿ったものであるかどうか、丹念に点検していくことが大切であるとの認識を示した。』

これはもしかして第二の柱ですかね?とか思ってしまうのは日銀ヲチをしているとつい連想しちゃいますが、まあ常識的に考えて国際商品市況に関しては物価の上昇という政策直球ストレート部分で対応する話ですからこの部分に特に政策インプリケーションは無い、と思うのですけどね。

『この間、ある委員は、先進国の金融緩和の波及ルートとして、商品市況の上昇が、資源国における景気の上振れにつながり、これが資源国で活動する多国籍企業の業績・株価に影響してくるというルートの役割は小さくないとみられるとの見解を示した。』

というのはこれまたオモロスですが、つまり新興国景気の上振れからのポジティブなフィードバックという面もあるから金融緩和で国際商品市況上昇が一概に全部ダメという話をするもんじゃないのではないかという話ですかね。何かこの辺りの評価に関しては実際にどういう話をしているのかってちょっと興味深いですにゃ。



○更に日本経済に関する部分ですが

『委員は、わが国景気の現状については、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられるとの認識で一致した。』

というのは12月会合と同じですな。でまあ色々とお話があるのですがまとめとしては・・・・

『多くの委員は、わが国経済が緩やかな回復経路に復していく蓋然性は、これまでに比べて高まっているとの認識を示した。』

キタコレ。

『その時期について、ある委員は、不確実性は残るものの、大きく後ずれするリスクは後退しており、春ごろが展望できると述べた。また、ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえて考えると、この1 〜 3 月期に緩やかな回復経路に復していく姿は十分に展望可能であると述べた。』

と、威勢のいい話が2名から示されたのですが・・・・

『もっとも、何人かの委員は、緩やかな回復経路に復する蓋然性は高まっているが、その後の景気展開については、不確実性が残っているとの認識を示した。』

ということで、1月会合では「警戒的だけどやや楽観的なトーンに」という感じになったという感じです。需要項目に関する部分ですが、一々引用するとクソ長くなるから引用しませんけれども、各需要項目に関して見ると内容が思いっきり同じという感じになっておりまして、そういう意味からすると1月会合後の総裁会見などから受けた印象でありますところの「1月会合では特に日銀の先行きに対する見方が前のめりになった訳ではないですなあ」というのが確認できたかな、という所かと思います。


さっきの国際商品市況ネタの関連ですけれども、物価に対する影響についての議論もありました。

『多くの委員は、最近の国際商品市況の上昇が消費者物価に波及する可能性を指摘した。』

『ある委員は、国際商品市況高が食品・エネルギー価格の上昇をもたらし、それが産業連関を通じ、他の財・サービスに波及する可能性が高いと指摘した。一方、何人かの委員は、国際商品市況の上昇が最終消費財の価格へ転嫁されていくとしても、マクロ的な需給バランスが依然として緩和状態にあるもとでは、その程度は限定的と考えられるとの見方を示した。』

上昇指摘が1名に対して経済のスラックが基調的な物価上昇を抑制するという人が数名ということですからまあ引き続き物価見通しは慎重と。

『この間、何人かの委員は、物価上昇率が中長期的な予想物価上昇率に収束していく力について、引き続き慎重にみていると述べた。こうした見方の背景として、ある委員は、フィリップス曲線の傾きがフラット化していることや労働分配率が基調的には低水準にとどまる可能性が高いことを指摘した。』

ただまあ2月会合後の総裁会見では基調的な物価下落が止まりつつある件について指摘があったので、この辺に関する議論とか認識とかについては2月議事要旨を見たいなとは思うのであります。

あと、展望レポートに関する部分でリスクバランスに関する部分がありますが、まあそこは基本的に展望レポートで示されている話と同じなので割愛します。


○金融市場に関して微妙な語句が

金融面の動向部分に関して。

『わが国の金融環境について、委員は、引き続き、緩和の動きが強まっているとの見解を共有した。複数の委員は、現在の金融環境を全体としてみると、すでに緩和的な状況に達していると判断できる部分と未だ緩和的とまでは言えない部分が混在しているが、後者の部分についても改善が続き、緩和的な状況に近づきつつあるとの認識を示した。』

ほほう。

『この点、ある委員は、物価との関係でみて低金利の効果はなお減殺されているほか、中小企業の金融環境には引き続き厳しさが残るなど、なお緩和的とは言えない側面も残っているが、金融環境を全体としてみると、緩和の動きが強まっているとの見方を示した。』

なるほど、とまあここは微妙な話ではなくて、その次が微妙なのですな。

『多くの委員は、短期金融市場は、日本銀行による一段と潤沢な資金供給もあって、落ち着いた状況となっていると述べた。』

「一段と潤沢な」というのが有りますので、つまりこれは12月の2年金利上昇以降に資金供給が拡大されて、更に12月決定会合以降に基金買入や短国買入をわんこそば大会のような勢いで打ち込んだ事を意味していると思いますが、それが昨日ネタにした話と関連していると思われますのでして、そーゆー意味では供給を拡大しましたというのはこれはこれで認識があるっちゅう事なのでしょうけれども・・・・・・

なお、昨日のネタに関してはオペレーションがどうのこうのとかに興味津々のマニア以外の人には判りにくく書いているのはわざとですので念の為(^^)。







2011/02/22

お題「1月決定会合議事要旨を見て不思議に思った事から少々雑談」

モーサテが「ブラジル経済が景気がいいですよウエーッハッハッハ」という話をわざわざJETROの駐在員を呼ぶという素敵な新企画を行って絶賛報道しているのはどう見てもフラグです本当にガクガクブルブル。

さて上記のネタでありますが、正直マニア向けの話と思われますのでオペレーションがどうのこうのとか興味ない方にはどうもすいませんとしか申し上げようが無いです、と先にヘッジクローズ。

ところで、このお題と関係ないのですが、G20絡みでフランス中銀がグローバルインバランスに関するフォーラムみたいのをやったようで、講演とかを白川さんとバーナンキ議長がしてたりしましたが、バーナンキ議長の講演の方を斜め読み(本当に斜め読み)したんですけどね。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110218a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110218a.pdf(PDF版)

この講演を50字以内で要約すると「グローバルインバランスも新興国のキャピタルインフローも私たちのせいじゃないですよ(キリッ)」で宜しいのかとは思いますが、国債買入プログラムに関するFOMCの見解も固め切れないバーナンキ議長などの執行部が何でもいいから無理繰り理屈を展開しているの図と読みますとこれはこれで味わいがありますなあ。

つーかさ、昨日軽く流しましたけど1月FOMC議事要旨の中でイールドカーブのスティープ化(即ち長期金利の上昇)に対して「景気回復期に見られる状況」とか言い出してあたかも国債買入プログラムの効果のような開き直り状態を示すとか何と言う厚顔メリケンクオリティーと思うのでありますけどね。

という別件の前振りは兎も角日本の方の1月決定会合議事要旨から、と申しましても今日は景気認識とかの話はスルーでトピック的なネタです。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf

○不思議に思った箇所とはオペレーションに関する部分

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のケツの方に『委員は、包括的な金融緩和政策の効果について、議論を行った。』ということで包括緩和の効果に関する議論の部分がありまして、ああでもないこうでもないという話をしてるんですけど、最後の最後に微妙にアレな一節が。

『この間、複数の委員は、今後とも、市場の状況に応じて、機動的なオペレーションを実施していくことは重要であるが、日本銀行の金融市場調節方針は、金融政策決定会合において決定されるものであり、日々のオペレーションや当座預金残高の推移によって金融政策運営についての情報発信が行われる訳ではないと述べた。』

微妙に微妙な文言になっているような気がしますので、こういう時は英文議事要旨(http://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110125.pdf)の当該部分を読んでみます。

『A few members, while acknowledging that it was important for the Bank to continue conducting money market operations in a flexible manner in response to changes in the market situation, commented that the guideline for money market operations was decided at Monetary Policy Meetings, and that the Bank's communication regarding its conduct of monetary policy was not made through the daily market operations or the changes in the outstanding balance of current accounts at the Bank.』

・・・・・うーむ。

いやね、これって流して読むと「シグナルオペのような事はしていないという事を強調すべきですよね」という原則論を述べているようにも見えますけれども、それだと「日々のオペレーションや当座預金残高の推移によって金融政策運営についての情報発信が行われる訳ではないという点を折にふれて説明すべきである」というような言い方になると思いますし、英訳された(この英文の底本は日本語の議事要旨でして別個に独立したものではない)方でも市場の認識に対してどうこうというよりは「シグナルオペ、あるいはシグナルオペと取られるような事を実施すべきではない」という発言をしたと解釈した方が自然な英文っぽいんですけどね、the Bank's communication ・・・・・ was not madeっていう構文を見ますと。

とまあそんな話を昨日とかも一部のマニアの方とああでもないこうでもないと議論してたのでありまして、まあその辺りから出てきた想像の世界であって実際にどうなのよというのは内容無担保無保証である事はお断りしつつ話は続くのですけどね。


○12月会合でその辺って議論してたのかと思ったのだが・・・・・

んーっとですな、12月会合議事要旨ネタって結構後回しで書いたのですけど、この時に当時の金融市場に関する認識部分が妙だなと思ったんですよ。で、その時の駄文はこちらね。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku10-02.html#seisaku110202

長々と引用するのも何なのでそっち見てちょという事ですが、まあその時に書きましたように、というか12月に散々声明文詐欺だの何だの悪態をついておりましたときの駄文でも見ていただきますとなお判りやすいと思いますが、12月に2年の金利が0.2%台に乗ってから迎えた1年TB入札が大コケした所から大供給が始まり、その後の決定会合で議事要旨に『この点と関連し、何人かの委員は、包括緩和における時間軸の明確化などが、短期ゾーンの市場金利を低位安定させる作用を持っている点を改めてしっかり示していくことが大事であると述べた。』とあったように、短期ゾーンの市場金利安定ということで更にオペレーションを強化する話でもあって、その流れとして年末対策にしては勢いの良すぎる短国買入連発攻撃とかによって短国市場の玉をカラカラにするわ当座預金残高はつみあがるわという流れになったと思ったのですよね。

ところが今回公表された議事要旨を見ると、その辺の市場的に見ればどう見てもオペレーションのスタンス変更っぽい動きに関して「シグナルオペは日銀は実施しないんですよ」という指摘が出てくるというのがちと不思議ちゃんでありましてまあマニア同士の議論も尽きないのですがそこは大人の事情で華麗にスルーの方向で(^^)。


○そもそも包括緩和のディレクティブが曖昧なのが良くないのですよ

いやまあ確かに政策委員会・金融政策決定会合において金融政策の方向性を決めて、それに則ったディレクティブが出てきて、そのディレクティブに沿った日々のオペレーションが行われる、というのが新法下における動きでありますから、いわゆる「シグナルオペ」と取られるような動きをオペレーション部隊が実施するのは越権行為と言われてしまえばどうもすいませんという話になるのでしょうけれども、小見出しに書いているように、そもそも足元で実施している包括緩和実施における政策の枠組みが微妙に曖昧であって、それが問題の根っこにあると思うのよね。

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

『(1) 金利誘導目標の変更
無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準を「0〜0.1%程度」とし、実質的にゼロ金利政策を採用していることを明確化

(3) 資産買入等の基金の創設
短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、リスク性資産を含む資産買入等の基金の枠組みを整え、この活用を通じて、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促進』

ということで、(2)はまあ良いのですが、(1)と(3)って言うのが曖昧な部分になっているんじゃネーノって思うのですよね。


まず、(1)のディレクティブでの0〜0.1%というのが曖昧であって、そもそも原則的にどの金利に持って行こうとしているのかが訳わからんですよね。で、ディレクティブには書いていませんが、預金ファシリティ(に相当するもの)の金利が0.1%に設定されている事を鑑みると「0.1%前後で若干下回る程度の水準」を意識するのかなあとか思うのですけれども、まあその辺に関するMPMのコンセンサスってあるのかねというのが微妙ですよね。

で、この点に関連して大昔の低め誘導(0.5%をやや下回る誘導目標というのをやっていた10年以上前の話ですが)時の議事録が暫く前に公開されていましたけれども、その中で金融市場局長が「どの程度まで下がるのを容認するのかとかをこちらで勝手に決めろというのも困る」的な話をしていたり、中原伸之さんだか武富さんだか忘れましたが(その両方かも)、「低め誘導の中でどの辺のレンジに持って行くのかは公開する必要は無いがある程度議論すべきではないか」というような話をしていたというような記憶がありまして、昨日ちょっとサルベージを試みましたがサルベージ失敗したので記憶だけで勘弁。

まあつまりですね、まず第1にディレクティブの「レンジ」というのがどうなのよという部分があって、まあその辺に関して何らかの内部的な意思表示が政策委員会の方で実施されているならそれはそれで良いのですが、そうじゃないと曖昧にも程があるような気がしますなあというのが第1点。

#どっかの取り手が「ストレステストで試し取り」とかやった途端に加重平均が0.10%台に乗ってしまうコール市場の薄さが金利0.1%攻撃で促進される中で無担保コールを誘導目標にしたままでどうなのよという議論もあるがそれは別の大ネタ


まあそれよりも問題なのは(3)でして、リスク性資産の買入のほうはまあ良いとしまして、『長めの市場金利の低下』というのが曖昧にも程がある話でありますわなと思う次第。

いやまあ勿論こういう事を書かれて、2年までの国債を買いますとか言われますと、そらまあ市場のファーストアクションは「なるほど2年までの金利を下げようということですね」と反応したくなるのでありますし、まあオペレーション部隊としては12月に2年金利が0.2%に上昇と包括緩和どころか0.1%への利下げ以降にそんなレートついてましたっけ状態になってしまった所で「長めの市場金利の低下」に適合するようにオペを実施し、それを12月中旬以降は更に強力に実施しましたですよ、という話だと思うのですが、そうは言いましてもその前の動きがどちらかと言えば中立的な調節で放置プレイだったので「これはスタンスが変更になった」とゆー認識に市場ちゃんがなる訳ですな。

で、その市場ちゃんの認識が(ってあたくしもそういう話をしましたけど)起きたのが如何なものかという話をされましても、それはまあ困りますがなというのがオペ部隊の本音ではないかと思われる(勝手に妄想しているだけなので違ったらゴメンナサイ)のですが、結局のところこの「長めの市場金利の低下」の「長め」とはどの程度なのというような点もこれまた曖昧じゃないのと思うのでありますよ。

一方で、さっき引用した過去の駄文にありますように、ディレクティブにも包括緩和の考え方のどこにも書いていませんけれども、12月決定会合議事要旨においては『ある委員は、包括緩和の中で時間軸を明確にしているにもかかわらず、一部のターム物金利が強含んだのは、短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性があると述べた。』という微妙にアレな発言がありますように、短期市場の「市場機能論」みたいなのが一方であって、その市場機能論とやらを受けると中立的なオペレーションをするようなイメージが沸いてくる部分もある訳で、そらまあオペやる方はあれもこれもみたいな話をされると困りますわなという感じですよね。


つーことでですな、包括緩和で示している文書が曖昧かつ市場機能がどうのこうのとか、そもそもオペレーションは中立で実施すべきという理念的な問題(それは平常時はそうだと思いますが、足元では包括緩和でじゃぶじゃぶにしますと言っているのですから、基本的には市場に対してわんこそば状態で供給オペレーションを実施するのが正しいと思うのですが・・・・)とか、まあその辺の諸々の部分とのコンフリクトが起きたのが包括緩和決定以降12月半ばくらいまでの短期市場の波乱を招いた要因だと思われる訳でして、まあ今後のことも考えますと、包括緩和政策に関しては、現状の微妙に曖昧な部分があちこちある状態に対してもうちょっと詰めた議論が必要だと思うのですよ。

で、その結果に関してはまあ出すか出さないかというのは微妙(例えばコールレートを実際問題としてレンジのどの辺を中心に見るのかという問題とかは、足元のようにある程度レートがコントローラブルになっていると市場が見なしているときに公表すると却って話がややこしくなるから別に公開する必要は無いと思います)ではありますが、というか多分出す必要は無いのですけれども、金融市場局の現場にマルナゲータされても困りますがなという所なので、どの辺までの「長めの金利」なのかとかコールのレンジのどの辺を意識するのかとかと言った面に関しての政策委員会のコンセンサスはコンセンサスで取っておくものではないかと思います。まあ既に取っているのならそれで良いのですけれども、今回公表された議事要旨の引用部分を見ますとそういう感じがしませんので・・・・・

しかしまあどうでも良いですがよくよく考えたらこの2年国債とか短期国債の買入がそもそも金利を下げたいのか量を出したいのかがここまで来ると何だか良く判らんですわな(基金等買入ということで量を幾ら出すという話をしているのですから)という気もしますし、というか少なくとも力技で2年の金利を下げるというのは物理的に無理があると言うのが明白になってきましたし、そういう論点からもこの包括緩和に関する棚卸をした方が良い(公表文書にするのかどうかは兎も角として)のではないかと思いますけどねえ。

以上、超マニアのみにしか意味プーな話が延々と続きまして誠に恐縮でありました。

#最後まで書いてから気がついたのですが、そもそもディレクティブが「コール」だけど「長めの金利低下」にはGCレポ市場のコントロールをしなければいけないという話もありましたな、時間が無いから追記だけで勘弁。











2011/02/21

お題「日銀ネタの前にFOMC記事要旨ネタで(汗)」

決定会合議事要旨ネタやグローバルインバランス問題の白川総裁およびバーナンキ講演の前にFOMC議事要旨とか順番が思いっきり逆のような気がしますし、海外ネタだったりECBの方がネタ的に熱いような気がしますが、何かのんびりとFOMCネタで勘弁。

#だからネタが同時多発すると困りますがなって

ところで見た瞬間に全然相関していないものを並べて「相関がどうのこうの」という某経済番組の為替コメンテーターがいましたが、計測期間が2か月というのは今まで見た「相関」の中での最短期間ですなあ。

#さあ今朝の公共放送は「天然ゴム高騰でタイヤ値上げへ」ですよ

という前振りは兎も角として1月FOMC議事要旨から。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110126.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110126.pdf(PDF版)

今回は本編の他に経済見通しのコーナーもあるのですが、そちらを読む体力はありませんでしたので(大汗)、議事要旨本編ネタである。

○構造的失業要因の分析

今回のFOMC議事要旨は冒頭部分に延々と「年次の決定事項」というのがあって、色々なオペレーションやら何やらの実施要綱らしきものの採決をやっていまして、本編に入るまでが長いのですが、その本編の最初の所に資産買入の実施ラップの報告がありまして(11月以降の国債買入は236bilでして、そのうちMBSの償還再投資が69bilで新規買入が167bilで、デュレーションが5年半、あと80bil/月のペースが必要とな)、その次に『Structural Unemployment』というお題の項目がございまして、まあそのまんまですが構造的な失業に対するFRBスタッフによる分析報告部分がございます。

『A staff presentation on structural unemployment summarized a broad range of economic research on the topic conducted across the Federal Reserve System. Among the factors cited that could affect the level of structural unemployment were demographics, changes in the intensity of job search and worker screening, differences in the geographic locations of potential workers and vacant jobs, and mismatches in characteristics between potential workers and available jobs. Most of the research reviewed suggested that structural unemployment had likely risen in recent years, but by less than actual unemployment had increased.』

構造的な失業に関するスタッフのリサーチから指摘される構造的失業の要因ですが、あたくしの読解によりますと、人口動態、労働者の求職やスクリーニングのインセンティブの変化、潜在的な労働者と新規求人の存在する地域的な違い、労働者に求める企業のスキルのミスマッチなどという事ですが、結論としては「これらの構造的要因はここ数年高まっているが、足元での実際の失業率上昇に比べれば小さい」というまあそうですなという物になっています。

それに対してFOMCメンバーの議論はこうなっています。

『In discussing the staff presentation, meeting participants mentioned various factors that were seen as influencing the path of the unemployment rate. Several participants noted that estimates of the contributions of the individual factors depended importantly on the approach taken by researchers, including the models used and the assumptions made. Participants noted that many of the factors that contributed to the recent apparent rise in structural unemployment were likely to recede over time. Some participants stressed that certain determinants of the unemployment rate, such as mismatches in the labor market and firms' hiring practices, were both difficult to measure in real time and not directly affected by monetary policy. Others emphasized that in the current situation, monetary policy could still play an important role in reducing unemployment.』

「複数名(Several)のメンバーはこれらの分析はアプローチするモデルなどに大きく依存していると指摘している」というのが2番目の文にございますが、これは即ち「計測数値が過大評価かもしれませんね」という話なのでしょうなあと思いますが(^^)、その次の文にあるように「これらの引き上げ要因は先行き減退するでしょう」という指摘になっていまして、更にこれらの要因はリアルタイムの計測も難しいので直接的に金融政策の参考にはしにくいとの指摘もありますわな。

つまり、構造失業率が上昇しているので金融政策が失業率低下に効かないのではという一部からの指摘に対して(最後の文にもあるように)そうではないですよと反論したという結果になっているのでしょうな。うんうん。


○連銀スタッフの景気現状認識からほほーと思ったところのメモ

『Staff Review of the Economic Situation』は項目別に読み込んで見たのですが、これをまともにネタにするとエライコッチャになりますので箇条書きに。結論だけ見たい人はここの項目の最初のパラグラフを見ればヨロシアル。

・景気回復はより頑健なものになっている
・消費、企業支出は更に強くなっている
・鉱工業生産は堅調
・雇用は緩やかな拡大だがペースは弱く失業率は高止まり
・住宅市場は厳しい状態が続く

ということで、まあ読んでてへーと思ったのはこの辺。

個人消費に関する部分から。

『The available data suggested that consumer spending was supported by gains in personal income in the fourth quarter of 2010. Moreover, household net worth appeared to have risen in the fourth quarter, as the large increase in equity prices more than offset further declines in house values. Consumer credit started to increase again in October and November after having generally declined since the fall of 2008. 』

個人消費拡大のファクターとして、所得の増加のほかに株価上昇による家計のネット資産への好影響(住宅価格下落の悪影響をオフセットする)の指摘があるのと、消費者信用が10月以降増加に転じているという指摘がほほうという感じですな。

企業在庫に関する部分から。

『Inventory-to-sales ratios toward the end of 2010 were close to their pre-recession norms, and most purchasing managers surveyed in December reported that their customers' inventories were not too high.』

在庫投資は自動車セール関連の反動で減っているという話の後にこの指摘がありまして、ほうほうそうですかという感じでありまする。


消費者物価に関して。

『Measures of underlying consumer price inflation remained low.』

という基調の話はまあいつもどおりでして、その後色々と分析がありますがそこはスルー致しまして。

『However, consumer energy prices moved up sharply in December, and prices of most types of crude oil increased during December and into January. The prices of nonfuel industrial commodities also continued to rise over the intermeeting period. In December and early January, survey measures of households' long-term inflation expectations stayed in the range that has prevailed for some time.』

ということで、原油価格や商品価格が上昇しているがインフレ期待はアンカーされている、という結論になっています。ただし、この後の方で世界のインフレに関する話がありまして、そちらは上昇しているという話です。

で、その後に金融環境に関する現状分析がありますがそこの部分は全部スルー。


○連銀スタッフの先行き見通し

『Staff Economic Outlook』ですが、前半の経済見通しの所から。

『Because the incoming data on production and spending were stronger, on balance, than the staff's expectations at the time of the December FOMC meeting, the near-term forecast for the increase in real GDP was revised up. However, the staff's outlook for the pace of economic growth over the medium term was adjusted only slightly relative to the projection prepared for the December meeting. Compared with the December forecast, the conditioning assumptions underlying the forecast were little changed and roughly offsetting: Although higher equity prices and a lower foreign exchange value of the dollar were expected to be slightly more supportive of economic growth, the staff anticipated that these influences would be about offset by lower house prices and higher oil prices. In addition, the staff's assumptions about fiscal policy changed little--the fiscal package enacted in December was close to what the staff had already incorporated in their previous projection. In the medium term, the recovery in economic activity was expected to receive support from accommodative monetary policy, further improvements in financial conditions, and greater household and business confidence. Over the projection period, the rise in real GDP was expected to be sufficient to slowly reduce the rate of unemployment, but the jobless rate was anticipated to remain elevated at the end of 2012.』

手抜きで一気に引用しましたが(おいおい)、箇条書きであたくしの読解力による解釈をしますと、

・景気は予想より強く実質GDP見通しを引き上げた
・しかし中期的な回復見通しペースを更に上向きにする程ではない

となっていまして、更にそれらの要因として足元の景気に関しては、株価の上昇とドルの下落が上向き要因として作用して、住宅価格の弱さと原油価格の上昇による下向き要因を打ち消している、という話をしていますな。

そして今後の景気をサポートする要因としては(1)緩和的な金融政策、(2)金融環境の更なる改善、(3)家計や企業の信頼感回復、を挙げています。

で、インフレの見通しに関してですが、経済のスラックが云々といういつもの話をしていまして、商品価格上昇に関してはヘッドラインのインフレを引き上げるけれども来年にはその影響は減衰するでしょうという結論になっていますが引用割愛。


○FOMCメンバーの景気物価見通しから少々

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』ですが、基本的な見通しは上記にある連銀スタッフと同じですので、まずは読んでてほほーと思った小ネタを。

消費のところなんですけどね。

『The incoming data indicated that households stepped up sharply their purchases of durable goods, particularly automobiles, last quarter. Spending on luxury goods also increased, and the pace of holiday sales was better than in recent years. 』

耐久消費財やら年末商戦やらの話の中に「贅沢品の消費も増えていますね」という話があるのがちとお洒落ですなあと思ったであります。

あと、トレジャリーのイールドカーブが立ったという話があったのもお洒落。

『Yields on longer-term nominal Treasury securities were little changed, on balance, over the period, but they had increased quite a bit in recent months, leaving the Treasury yield curve noticeably steeper. Some participants noted that a steep yield curve is a typical feature of an economy in recovery, and that much of the steepening appeared to have occurred in response to stronger-than-expected economic data.』

景気がよくなっている時期にはイールドカーブがスティープするのは当然ですというお話ではございますが、えーっとお前ら長期金利を下げるって話をしてなかったっけという気はせんでもないのですがまあいっか。


インフレに関する部分ではいつもの話をしているのですが、その中でほほうと思ったのは最後の部分。

『However, the importance of resource slack as a factor influencing inflation was debated, and some participants suggested that other variables, such as current and expected rates of economic growth, could be useful indicators of inflation pressures.』

経済のスラックがインフレを抑制する云々の議論は重要ですが、それ以外のファクター、例えば足元や先行きの経済成長ペースなどもインフレ圧力に関する指標として議論すべきではないか、という指摘を数名(some)のメンバーがしていまして、つまりこれは「何とかの一つ覚えのように経済のスラックが中長期的なインフレを抑制するというだけを言っている場合ではないのではないか」という指摘をしていたのではないかと思われますがどうでしょう。


それから、基本的な景気見通しはさっきの連銀スタッフの説明と同じですが、その中で先行きの経済へのダウンサイドリスクやディスインフレやデフレ入りのリスクが消えていきていると仰せになっているのがほほうという感じです。

『Accordingly, participants generally agreed that the downside risks to their forecasts of both economic growth and inflation--as well as the odds of a period of deflation--had diminished. 』

で、上下のリスクに関する説明がありますがその部分に関して箇条書きしますと、下方リスクは(1)欧州ソブリン問題のスピルオーバー、(2)米国の財政再建の影響、(3)住宅価格の弱さ、となっているのですが、上方リスクに関しては思いっきり直球豪速球で「家計消費の強さが国内最終需要を押し上げる」という具体的にも程がある内容となっていました(^^)。引用は割愛。

インフレのリスクに関してですが、読んでてほほーと思ったのはこの辺。

『Some participants expressed concern that in a situation in which businesses had been unable to raise prices in response to higher costs for some time, firms might increase them substantially once they found themselves with sufficient pricing power. 』

その前で原材料価格の上昇に関して今の環境では消費者物価への価格転嫁は行われないでしょうという話をしているのですが、仮に価格転嫁ができるようになった場合には、その影響はかなり大きなものになるのではないかという指摘をしている人がいるのにはほほうという感じを受けました。

あと、FEDのバランスシートがインフレ期待を高めるという指摘をしている人も数名(some)いまして、その理由としては「FEDが金融緩和を適切にコントロールできなくなるのではないかという点」と言っているのがチャーミング。

『Finally, some participants noted that if the very large size of the Federal Reserve's balance sheet led the public to doubt the Committee's ability to withdraw monetary accommodation when doing so becomes appropriate, the result could be upward pressure on inflation expectations and so on actual inflation. 』

プロッサーが思いっきりこの点を指摘していて、先般バーナンキの講演やイエレンの講演などで「そんなことはありません(キリッ)」と応酬していましたが、プロッサー以外にも主張している人がいたとな(^^)。


○金融政策決定に関しては「資産買入の効果がわからん」という大滝秀治状態の委員がいるとな

『Committee Policy Action』のところですけど。

『While the information received over the intermeeting period increased members' confidence in the sustainability of the economic recovery, the pace of the recovery was insufficient to bring about a significant improvement in labor market conditions, and measures of underlying inflation had trended downward. 』

と、回復への確信は高まったが依然として労働市場の顕著な改善には繋がらず、基調的なインフレは下落基調となっている、といういつもの話がありまして、今回はご案内のように全員一致で現在の資産買入を継続するという決定をしていますけど、その後の方にお洒落な話があります。

『A few members remained unsure of the likely effects of the asset purchase program on the economy, but felt that making changes to the program at this time was not appropriate. 』

何となくこれは2名くらいなのかと思いますが、少数(A few)のメンバーは資産買入の効果が依然として不透明だという指摘をしております。で、この人たちと思われる人たちは更にこの後の方でこんなことも。

『A few members noted that additional data pointing to a sufficiently strong recovery could make it appropriate to consider reducing the pace or overall size of the purchase program. 』

景気が良いのでペースの減額や全体サイズ縮小の議論も有りえるキタコレ。

ただまあ最終的には「そんなに公表文書でのニュアンスは変えないほうがよかろう」という結論にはなったようですな。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only small changes were necessary to reflect the improvement in the near-term economic outlook and to make clear that the policy decision reflected a continuation of the asset purchase program announced in November.』

ということで票決は全員一致でしたとさ。


○どう見ても会見実施なんでしょうな

票決の後にこんな話が。

『Next, the Committee turned to a discussion of its external communications, specifically the importance of communicating both broadly and effectively. FOMC participants noted the importance of fair and equal access by the public to information that could be informative about future policy decisions, and they considered approaches to address this issue. Several participants noted that increased clarity of communications was a key objective, and some referred to the central role of communications in the monetary policy transmission process. A focus of the discussion was on how to encourage dialogue with the public in an appropriate and transparent manner. The subcommittee on communications agreed to consider whether further guidance in this area would be useful.』

となっていますが、正直言って「some referred to the central role of communications in the monetary policy transmission process」とか実際に今始めたら議論が更にカオスになるだけ(そもそもメンバーの中で見解が一致して無いでしょ)だと思いますがね。

#と駆け足で引用大会でどうもすいません









2011/02/18

お題「市場等雑談と超虫干しネタ」

何か馬鹿が馬鹿騒ぎしているようですが、そもそもお前らの「国民の約束」とやらは出来もしない詐欺であって、それを現実的に可能な所に落とし込もうとする動きを「既得権益にしがみつく姿勢」とか言ってる連中は誇大妄想がかなり重症になっておられると存じますが。

○市場雑感やその他雑談

・6M基金オペの按分率上昇とな

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110217.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110217.htm(結果)

昨日は6か月ものの基金オペが実施されたのですが、按分率は21.9%となりました。前回の6か月ものは2月1日にオファーされたのですが、按分率が27.0%でしたので今回は按分率低下の巻。

1月終わりから2月の前半に掛けては資金需給の関係上オペのオファーが多く、またGC市場的に見た場合の資金偏在が軽かったということもあって、基金オペの按分率が上昇傾向となっていましたけれども、足元では債券市場でやや中短期債中心に売りが嵩んでいて年末年始よりも業者のポジションが拡大したと見られる(年末年始は決算要因でポジションが縮小する面もありますし)のと、財政払い超での資金は当然ながら債券ディーラーとは無関係な所に回りますので余剰資金が回ってくるまでお時間が少々掛かるというような事であろうかと存じますので、そーゆー所からも按分率上昇ということになるんですかね、よー知らんが。

まあこの基金オペが札割れとかしちゃいますと、当然の事ながら包括緩和における資金供給として「オペと買入の基金で35兆円の資金供給」という数値を掲げておりますので、それが未達となるとマズーでもありましたので、オペレーション部隊的には基金オペの按分率がちょっと低下してホッとしたんじゃないですかね(ニヤニヤ)。

つーてまあ短国のレートがジャンジャン上昇する訳でもなく、新発3か月TBは今週の入札で上昇したと言っても0.12%切っている程度にしか上昇せんわけでして、まー安定していますから、日銀としてはやる事は一応やっていますよという話ですわな。うんうん。


・業態別当座預金残高

一昨日出てたのを今更。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf

1月積み期間では超過準備額について外国銀行と信託銀行が大きく減っていますが、うち信託は単に12月積み期間の絶賛じゃぶじゃぶ供給による増加分が落ちただけと見えますが、外国銀行の方は11月積み期間までの趨勢的な数値からもやや減っているので、これはまあ為替絡みのポジションが縮小したとかゆーよーな事ですかね、よー知らんけど(平残の数値ね)。

で、都市銀行なんですけれども、こちらが何とじゃぶじゃぶ供給だった12月積み期間よりも超過準備が増えていまして、これは一体どうした事ぞという感じがする訳でございますな。

昨年8月くらいまでの数値を見ますとお分かりのように、以前は都市銀行さんの所では超過準備を積まないようなトンペースでの積みをしていくとゆー傾向があったのですが、じゃぶじゃぶ供給の12月よりも超過準備が拡大というのはトンでの準備預金積みをするような姿勢に変化が生じていますわなあというイメージを受けますが、まあ実際にどうしてそうなったというのは中の人じゃないからわしゃ知らんがの。


・どうでもよい雑談ですが微妙に悪態

これまた一昨日のネタですが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aujpOhw45tyc
日銀:金利1%上昇なら大手行は年2兆円評価損−自民に試算提示(2)

これってどうせ金融システムレポート辺りをベースにして単に銀行の債券ポートの100bpストレステストを出しただけの話だと思うのですが、自民党のこの「X−dayプロジェクト」とやらもアホウな事を計算させるわなあと思うのですな。

『宮沢氏は記者団に「初期的な応急措置の意味では、多くの対応は日銀がやらなければいけない。応急措置の中に間違いなく入ってくるのは、金融機関の経営危機に対してどう対応するかということだ」と語った。』

そもそもですな、金利1%上昇って他の条件が何も変わらないで突然金利だけ1%上昇するなんて有り得ない訳でして、もしその金利上昇が景気回復による金利上昇だったらポートのやられの前に大手銀行なんて貸出が伸びてウハウハになるでしょうと思いますし(以前の量的緩和解除の頃に「金利上昇で業績にポジティブ」とか言って銀行株を買っている人(ガイジンとか)が沢山いましたよねえ)、1%上昇するって言ったってイールドカーブの形状がどう変化するかによっても話は違いますし、その間に時間があれば再投資利回りの上昇というメリットもありますしねえ。

それから例えば財政懸念ネタで急に国債が売られるって話になった時に、日銀が国債の買入なんてやったらその場凌ぎの需給対策にはなっても、結局は財政懸念が拡大するだけでしょと思うのですけど。ECBが買って意味があったのはユーロ圏周縁国各国とECBが必ずしも一体じゃないからでありますよね。日銀だって結局政府の一部なんですから、財政危機とかのネタで日銀が買っても同じ事だと思いますし、そもそも国債が暴落した程度で金融機関の経営危機がどうのこうのとか言う前に国庫の方の心配した方が良いと思いますけどねえ。


まあどうせこの手の話で「試算出せ」という時は、そういう指摘の類を政治家センセイに向かって言うと「馬鹿に向かって馬鹿である事を指摘してあげると烈火のごとく怒り出す人が多い」という一般的な法則の通りに政治家センセイ様が暴れだすだけなので、「はあそうですか」と向こうが出してきた前提条件から機械的に計算した数字を出すだけなのが日銀のやることだと思いますけれども、結局こういう風に「日銀が計算した」という見出しが一人歩きするのが困ったもんです罠と思います。


かつても「低金利政策の為に国民の預金の利子収入が幾ら減った」みたいなネタがよく話しになっていましたけれども、あれだって日銀は単純に非現実的な前提条件を出されたものに対して「はいはい」と機械的に数字を出しただけと思われますけれども、それが何故か時間の経過と共に「日銀は低金利政策で国民の利子収入が減ると主張している」などと日銀批判の文脈に使われる始末でして、まあこの手の話っていつの間にか「日銀がこう主張している」というような一人歩きモードになる懸念があるので、先行き懸念しておりますわな。

あ、それから「単に日銀は政治家の言うとおりに計算しただけでしょ」という話をすると、そのカウンターで「そういう質問を日銀が議員にさせるように段取りしているんだ」とかいう説が出てくるのですが、そんなに日銀に政治力があったらそもそも前回の総裁人事で当初人事案が楽勝で通っていたでしょうし、どう見ても日銀批判議連です本当にありがとうございましたというようなものがああホイホイと発生はしませんわなという理解をされた方が吉だと存じます。


○コチャラコタ総裁のQE2に関する目的、効果(超虫干しネタシリーズ)

と小見出しだけ書いたが上のほうの駄文を添削してたら時間が無くなったorz

昨年11月22日の講演なのですけどね。
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4571
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_11222010.pdf
Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty

PDFで本文12ページとそんなに長くないですし、ポイントをQE2の効果および狙いと、労働市場の構造的問題に関する認識という2点にほぼ絞っているので読みやすいと思います、つーかコチャラコタ総裁の講演テキストはどれを読んでも非常に良くまとめられていて、あたくしのような英語能力がアレな人でも理解しやすくて大変にヨロシカです。

で、時間が無いので今日はQE2の効果と狙いに関する部分だけ駆け足で引用します。コチャラコタ総裁がQE2のおかわりに関してどういう意見を出してくるのかというのはこれから追々判ってくるとは思いますが、ベースとなるロジックは以下のようなものだと理解しておくのが吉ではないかと存じますので。

本文5ページ以降になります。

QEを導入した経緯(経済状況)を説明して、QEに関しては「金利操作を用いなくてもバランスシートを使うことによって緩和を実施するもの」と定義しています。

『But the FOMC does have another policy instrument available: its balance sheet. As of the beginning of this month, the FOMC had a portfolio of roughly $2.3 trillion. Over 2 trillion of those dollars are invested in Treasury securities or government-backed securities issued by Fannie Mae, Freddie Mac, and other government-sponsored enterprises. At its November 3 meeting, the FOMC announced that it plans to buy $600 billion of long-term Treasuries in the open market by mid-2011. In exchange for those securities, it will credit the sellers’ accounts at the Fed with more reserves. This kind of action is known as quantitative easing, or QE.』

で、そのQEを実施する事によって動かそうとしているものは「実質金利の引き下げである」と説明しています。

『The main goal of QE is to lower the long-run real interest rate. Just to be clear, by real interest rate, I’m referring to the interest rate net of expected inflation. More specifically, suppose that the interest rate on a 10-year bond is about 2.5 percent and that people expect inflation to be around 2 percent per year over the next 10 years. Then, the real interest rate is about 0.5 percent per year for the next 10 years.』

で、その実質金利の引き下げによって経済に対しての効用としては、(1)借入金利の引き下げ、それによる企業の資本的支出や雇用の拡大、(2)株価や住宅価格などの資産価格の上昇、それによる家計の支出の拡大、などを一例として挙げ、それらの効果が物価の引き上げや失業の低下に繋がります、と波及ルートを説明しています。

『A low long-term real interest rate stimulates an economy in a number of ways. It spurs consumer spending by allowing consumers to borrow and refinance more cheaply. It makes capital expenditures and hiring more profitable for corporations. Stock prices and house prices rise because those assets become relatively more attractive as investments. Households with these assets become wealthier and demand more consumption. All of these effects should lead to less unemployment and upward pressure on prices.』

ではそのQEが実質金利を引き下げる、というルートはどのようにして実施されるのか?という事ですが、そのルートとして2つがあるとコチャラコタさんは指摘しています。

『How does QE go about lowering long-term real interest rates? QE is a sufficiently novel monetary policy tool that different economists may well give different answers to this question. In my view, QE lowers long-term real interest rates in two distinct ways.』

で、その先を引用するとエラク長くなってしまうのですが、基本的にはその2つのルートは、(1)QE政策は「extended period」で示されている時間軸部分を強化する(FOMCの将来の金融政策パスへの期待を更に低金利継続方向で強化する)ものであり、それによって長期金利への働きかけを行うというルート、(2)長期債の購入によって既存の債券ポートフォリオのリスクを引き下げる事によって金利の低下を促す、という話をしているように読めましたけどどうでしょう。引用するので違ってるなら教えて下され。

『The first is that QE is a form of nonverbal communication about the FOMC’s future plans. Here’s what I mean. The November FOMC statement says that the committee will keep the fed funds target range exceptionally low for as long as economic conditions warrant. The statement also predicts that exceptionally low fed funds rates are likely to be warranted for an “extended period” of time. In this way, the statement provides explicit communication about the FOMC’s future plans for short-term rates and so also shapes the level of current longer-term interest rates.』

『QE provides a significant supplement to this explicit verbal communication. The use of QE indicates that the FOMC is likely to keep its target interest rate lower for an even longer period of time. Indeed, one could readily argue that buying $600 billion of Treasuries is a much more convincing form of communication of the FOMC’s plans than any words could ever be.』

という所までがコミュニケーションポリシーの部分。

『Thus, QE lowers long-term real interest rates by signaling the FOMC’s intentions about future short-term rates. However, QE also lowers long-term real interest rates in a second, more direct, way. The holder of a long-term Treasury is exposed to interest rate risk, because the value of that bond fluctuates as interest rates vary. When the Fed buys $600 billion of long-term bonds, the bond portfolio of the private sector is now less exposed to this kind of risk. As a consequence, private investors will demand a lower premium for holding other bonds that are exposed to interest rate risk, and all long-term yields fall.』

というのが直接金利下げますよという話ですな。で、この次は「では超過準備の大きさがどういう風に作用するのでしょう」という「負債サイドはどうなのよ」という話が続きますが時間がございませんのでまあそのうち。






2011/02/17

お題「金融経済月報とか総裁会見とか市場メモとか」

FOMCの議事要旨も最後の所(『Committee Policy Action』)だけ斜め読みしましたが、そもそもの政策決定(現状維持)が全員一致だった事から、漠然とした書き方にしかなっていなくてこれはもうちょっと時間を掛けて前の方とかも読まないとよー判らんという感じ(まあそれよりもメンバーの講演を読んだ方が早いが)でございまする。

ということで決定会合関連で金融経済月報(ただし概要だけ)を。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1102.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1101.pdf(前回)

○声明文と微妙にテイストが違います

というのが最初に読んだ印象でございます。と申しますのは、声明文を見た場合に受ける「これは随分明るくなりましたなあ」というイメージ(実際の内容を比較すると需要項目で上がっているのは輸出と生産なのですけれども、文章構成が強いですねという感じですし、需給ギャップの存在に関する記述が抜けてみたりという流れになっている事もありますし)でしたが、金融経済月報の概要部分を見るとそんなに強い感じがしないなあという所でありまする、あくまでもあたくしの印象ですが。

○現状判断は当たり前ですが声明文と同じ

・総括判断

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(前回)

ということで基調判断は同様に引き上げているのですが、こちらでは文章構成上当然ちゃあ当然なのですが、声明文であった「世界経済の成長率が高まって」云々がございませんで、この先は需要項目についての話が淡々と続くので、声明文のトーンとはテイストが違って来るというものであります。

・輸出、生産

『輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)
『輸出はやや弱めとなっており(途中割愛)、生産はやや減少している。』(前回)

ということでこちらが上方修正なのは声明文通りですな。

・他の項目は変化なし

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、一部の財に駆け込み需要の反動がみられる。住宅投資は持ち直しつつある。一方、公共投資は減少している。』(今回)

細かく言えば住宅投資について「持ち直しに転じつつある」が「持ち直しつつある」に変わっています。これまた声明文どおり。


○経済先行き見通しはほぼ同じ

ってまあ声明文の先行き見通しも同じでしたけれどもね。

『先行きについては、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の改善を背景に、緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の改善を背景に、再び緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、駆け込み需要の反動が薄まるにつれ、再び持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、徐々に持ち直しの動きがはっきりしていくとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、緩やかな増加基調に転じていくと考えられる。』(前回)

めんどいのでまとめて引用しちゃいましたが、よく見るとお分かりのように、変化があるのは輸出の「再び」が抜けたのと生産の「基調」というのが抜けただけで、それはまあ現状判断での判断引き上げに呼応した分でありますので、実質的に先行き見通しには変化が無い訳です。


○物価の所に「マクロ的な需給バランス」の文言がこっちには残っていました

実は個人的に昨日一番注目していたのはここの部分。つまりですね、今回の声明文で物価の現状判断及び先行き見通しの所で「マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで」という文言が外れまして、それはどういう事ですねんというのが微妙に気になっておりましたのですが・・・・・

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)

ということで、今回は企業物価の3か月前比が「上昇」に変わったのが変化になっていますが、それはそれとして注目していた「需給バランス」云々の文言は残りました。

まあどっからどう見ても需給ギャップは残存していると思われるのに、声明文でその文言削ったのはどうしてなのよという話ですが、総裁会見の冒頭部分で

『物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、基調的にみると下落幅は縮小を続けています。特に、高校授業料の実質無償化等の影響を除いてみると、このところ、前年比はゼロ%ないしごく小幅のプラスで推移しています。』(15日総裁会見)

ということになっていて、まあ需給ギャップの改善よりも先に基調的な物価がゼロ近傍まで上昇してきているという動きになってきているので余計な話はしないという所のようではないかという事を人様とお話をしながら認識した次第(有体に言えばこの点に着目している人と話をしながら教わったのですが、あっはっは)ではございます。つまり、今回の声明文での文言カットは別に「需給ギャップが改善して無くなりましたよ」というような政策インプリケーションがある訳では無い、という事になろうかと思います。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇基調で推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

国内企業物価の先行きは更に見通しが強くなっていますが、まあそれはそれとしまして消費者物価に関する先行き見通しについてもマクロ的な需給バランス云々の文言は残っていますな、うんうん。

ということで、この需給ギャップ云々のところの文言が「声明文で削り、月報の概要では残す」という器用な事をしている訳ですが、当然ながら声明文で削った事にはそれはそれで意味があると思われますけれども、じゃあそれが「需給ギャップが解消されたと日銀が認識した」という事にはなっていないという点は留意すべきでございますな。

じゃあどういう事かというのは何となくイメージあるけどパス(^^)。


金融面に関してはまるっきり前回と同じなので割愛します。


んでもって総裁会見から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1102b.pdf

○今回はトピックが少ないですな

「商品価格の上昇」とか「財政健全化」とか「長期金利上昇」に関する質問もあったのですが、極めて穏当な受け答えに終始しているので特にねえという感じです。

一応その辺引用しますけど。

・商品価格の上昇に関して

『以上のような国際商品市況の上昇が、わが国経済に及ぼす影響については、こうした市況上昇の背景をどのように理解するかに依存しています。市況上昇の原因が、新興国あるいは資源国の高成長である場合には、新興国・資源国への輸出の増加や投資収益の増加というかたちで、プラスの影響を及ぼす面があります。一方で、供給不安が市況上昇の原因である場合には、そうしたプラス効果は働きにくくなってきます。また、交易条件の悪化による実質的な所得の減少が、マイナスの影響を及ぼす面もあります。以上が定性的な整理です。こうした定性的な整理を踏まえて経済の動きをみていくことになります。』

で、その見方の結果は、

『わが国の場合、2008年夏頃と比べると、為替相場が円高方向となっている分、交易条件悪化の影響が一定程度相殺されている面があると思います。また、世界経済が減速局面にあった当時と異なり、現在は世界経済の成長率が高まっていくことが見込まれています。このため、現時点では、わが国経済が緩やかな回復経路に復していくという先月の中間評価時点の見通しを変更する必要はないものと判断しています。』

非常に淡々としていますわな。


・財政健全化に関して

『わが国の財政状況は、言うまでもありませんが、大幅な財政赤字が続き、一般政府債務残高の対名目GDP比率は約200%と、国際的にみても極めて高い水準となっています。ただ、このグロスの数値は多少ミスリーディングな面もあり、金融資産を差し引いた純債務残高では、GDP対比約120%に縮小しますが、いずれにせよ非常に高いことには変わりがありません。』

グロスの数値がミスリーディングとな(^^)。

『このような厳しい財政状況にある中で、財政悪化の大きな要因にもなっている現役世代による高齢者の扶養負担の増加が見込まれる場合には、消費の抑制要因となります。また、市場において将来の財政の持続可能性に対する信認が低下すれば、金融市場の動揺を通じて実体経済も下押しされ、財政、金融システム、それから実体経済の間でマイナスの相乗作用が生じることになります。こうした影響を抑制するためには、財政の持続可能性を確保することが重要であり、そうした観点から、財政バランスの改善に向けた道筋をしっかりと示していく必要があると思っています。』

さいですな。

『その際に大事な点として、先週の講演でも申し上げたことの繰り返しになりますが、改めて2つの点を申し上げたいと思います。』

『第1に、日本経済の成長力の引き上げが、まずもって必要であるという点です。実質ベースで経済成長率が高まり、活発な民間の経済活動が行われることにより、歳入の増加も期待できます。ただし、財政バランスの改善は、インフレによる名目成長率の上昇によって達成される課題ではありません。物価が上昇すれば、税収は増加するかもしれませんが、同時に各種の歳出も増加するのが過去の経験ですし、長期金利の上昇を通じて利払い負担が増加することも念頭に置く必要があります。従って、重要なことは、実質成長率の引き上げを実現していくことです。また、そうした経済のもとでは、物価も上がっていくということです。』

経済成長を伴わないで物価「だけ」上昇してもシャーナイナイという事ですな。

『第2に申し上げる点は、現在の深刻な財政状況を前提にすると、今申し上げた成長力の引き上げだけで、財政バランスの改善が自動的に実現するわけではないということです。財政バランスの改善は、実質的に歳出を減らし、あるいは歳入を増やす改革なしには実現しません。』

バーナンキみたいですな(^^)。

『それから、財政問題に対する関心が高まる中にあっては、今申し上げた財政規律の確保に向けた努力と並んで、日本銀行が物価安定のもとでの持続的経済成長を目指して金融政策を行っていることに対する市場の信認を確保することが重要であることも、付け加えておきたいと思います。』

正直言ってこの部分は余計でしょ。


・長期金利に関して

『こうした長期金利の上昇は、わが国だけではなく、米国やドイツ・英国などの欧州諸国、さらには多くの新興国においても観察されています。世界的な長期金利上昇の背景は、基本的には、米国経済の先行き見通しの改善により、米国の長期金利が一段と上昇し、グローバル化した金融市場のもとで、各国の長期金利がこれに連れて上昇したものと理解しています。』

つまりうちはやる事をやっていますので長期金利の上昇はまあそれはそれという話でございますね、わかります。

で、まあ上記の部分は正直想定問答集の世界だと思われますが、次に紹介するところはちょっと「ほほー」と思ったのですな。


○今回の会見でほほーと思った部分はこれ

一昨日ヘッドラインでもあったのですけど見落としていますたorz

米国のバランスシート調整に関してですけどね。

『これも何回かこの席で申し上げましたが、バランスシート調整は、日本にとって大変重い経験でしたが、同時に、米国経済や米国社会には、日本とは違う要素があることも認識しておく必要があると思っています。それは、米国経済・社会が持つ柔軟さと、急速な高齢化あるいは人口減少が現在生じているわけではないこと、――少し長い目でみると、米国も同じような難しい問題に直面するのですが――現在はそこまでいっているわけではありません。私としては、バランスシート調整の厳しさと、それを相殺する要因の両方を注意深くみていく必要があると思います。また、日本銀行の判断がいつも正しいと言っているわけではなく、日本銀行も逆方向に行き過ぎることも有り得ると自戒しながら、みていきたいと考えています。』

・・・・・これはつまり「偽りの夜明け」というリスクを思いっきり気にしていた白川さんの見方よりも足元の米国経済が強いトーンで推移していて、もしかしたら偽りの夜明けが偽りじゃないのかもしれない、と思い出しているのかなあって思ったのですが、それはうがちすぎでしょうかねえ。


とまあそんな感じです。


○市場メモ書く時間が無くなったorz

無くなったのでマジで箇条書き。

・5年国債入札が意外にも滑った件について

いやまあ2月のこの時期ですから来年度への積みったって0.6オーバーを慌てて買う訳ではないって事なんでしょうけれども、事前にあれだけ評判が良かったのは何だったのよと小一時間問い詰めたい。

・2年カレントが0.245%に上昇した件について

来週の2年国債が0.3クーポンになったら胸の熱くなる展開ですけれども、こちらも何だか微妙なテイスト。つーか米国の2年金利とかも先週後半に米債の長いところの金利が低下している中でも全然サガランチ会長になっていているのも気になる所でございます。

・3か月TB入札が0.11%台後半になった件について

いや先週の0.11割れから良くぞ調整しましたねという感じですが、とりあえず0.12手前で寸止めですからここは足元絶賛オペ供給の効果が効いている部分なのでしょうかねという所だったりするのです。








2011/02/16

お題「無難な決定会合/英国雑感/イエレンネタの補足」

早くも2月も後半戦となりましたorz

さて決定会合は超無難な結果になったのですが(^^)。

声明文はこちら→
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110215a.pdf(今回)
前回声明文はこちら→
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110125a.pdf(前回)

○上方修正といえば上方修正ですが「見通しの修正」ではないですから

声明文を読みますと判りますが、見通しが上方修正されている訳ではなく、足元の現状判断の部分の変化というのは従来の見通し部分にあった、『世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから』という部分が足元の現状判断に反映されたという変化でありまして、つまり「従来の見通しの線上にある」ので、「時間の経過と共に徐々に景気が回復していきますよ」というだけの話でもあったりしますわな。

ただまあ皆様読んでお分かりのように、今回は先行き見通しの中の文言が上記の理由で現状判断に反映されることになった事から、先行き見通しが従来と同じではあるものの、表現がスッキリした感が強まりまして、そういう意味ではまあ先行きに自信を深めているという印象を与えますわな。

ということで中身を確認、まずは現状判断から。

・総括判断

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。』(前回)

ご案内の通り引き上げ。

・輸出・生産

『すなわち、世界経済の成長率は、新興国・資源国に牽引される形で再び高まってきており、その下で、輸出や生産は、増加基調に復する動きがみられる。』(今回)

『輸出はやや弱めとなっている。こうした内外需要のもとで、生産はやや減少している。』(前回)

でもって、この世界経済云々の部分と総括判断部分の上方修正というのは、前回までの先行き見通しにあった、

『わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。』(前回)

という見通しが実現しましたね、という事でありまして、その結果として輸出と生産も回復経路に復したとゆー話ですわな。

・・・・ということでまあここの判断はどどーんと上がっているのですが、他の需要項目はそんなに変わっていないのでして。


・設備投資・雇用所得環境

『設備投資は持ち直しつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。』(今回)

前回と文言同じなので今回分のみ引用しました。


・個人消費・住宅投資

『個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しつつある。』(今回)
『個人消費は一部の財に駆け込み需要の反動がみられるが、住宅投資は持ち直しに転じつつある。』(前回)

個人消費は変わらずですが、住宅投資に関して持ち直しに「転じつつ」だったのが「持ち直しつつある」に微妙に上方修正となっていますな。


ということで、よくよく見ると掴みではインパクトがあるものの、需要項目に関して言えば輸出と生産(まあその2項目はとてもでかいと言えばその通りなのですけれども)の引き上げ以外は引き上げになっていませんので、そーゆー意味では掴みのインパクトほどの上方修正でも無いですよね、という話かと。


・金融環境

これまた前回と同じです。

『この間、金融環境をみると、引き続き、緩和の動きが強まっている。』(今回)


・消費者物価

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基調的にみると下落幅が縮小を続けている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』(前回)

需給バランスの緩和状態文言削除キタコレ。といいましてもだからどうなのと言われると相変わらず下落は下落なのですけど、まあ先行き物価見通しがプラスになりますよという願望に繋がる話にはなりますわなという感じですかそうですか。


・先行き見通し

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(前回)

ということで、最初に書きましたように、世界経済の成長率が云々の部分が現状判断部分に移動した事からかなりすっきりした表現になっています。まあこの手の文学っていうのは表現がスッキリしている事が即ち自信の表れでありまして、ああでもないこうでもないというヘッジクローズが多い文章の場合は自信が無かったり何か話を韜晦しようとしていたりというのが基本だったりしますし・・・・・とか書いていたら何かブーメランが飛んできたような気がするorz


・リスク要因

あんまり変化は無いのですが。

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、引き続き、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、米国経済に対する懸念は一頃に比べて後退しているものの、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(前回)

米国経済に対する懸念云々が抜けましたが、でも米国経済ってどちらかというと足元楽観モードですからこれが抜けたのは不思議ではないですかね。それとも米国経済が楽観に振れているから反動のリスクはあるという含意・・・・というのは読みすぎですかそうですか。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

物価に関しては前回と同じであります。


○総裁会見は特に問題も無かったようですな

で、会見要旨は今日出ますけれども、ヘッドラインで特に突拍子の無いものも無く、報道されている内容でもそんなに変な話も無かったように見えました。

まあ何ですな、ここもとの総裁定例会見はすっかり安定気味になってきて、変に自信満々というか妙に強気の話も出ませんですし、市場機能論みたいな麿節も出てきませんし、いい感じで落ち着いてきたと思われます。まあその背景には足元の景気が比較的順調に推移している事から先行きに自信を深め、その結果としてコメントが安定したという事なんでしょうかね、と勝手に思うのでありまする。


○英国の物価4%ですかそうですかという話など少々雑感

12月位のMPCでは来年の春にも4%近くに接近とか予想していたのですが、更に物価上昇が加速でござるの巻。

http://www.bbc.co.uk/news/business-12462901
UK inflation rate rises to 4% in January

『The UK Consumer Prices Index (CPI) annual inflation rate rose to 4% in January, up from 3.7% in December, as the effects of the VAT rise were felt.』(上記URLより)

ということでBBCニュースの記事をほっほーと読んでおりましたが、まあ利上げをすると経済がしょんぼりしちゃいますし、一方で物価上昇をどうすんのというのもあって、中々難しいですな。まあBBCの論調だけ見ていると(ってBBCだけ見て判断しちゃいけませんですので何ですが)「とは言え早期利上げをあまり前のめりで実施するのもどうなのよ」という論調になっているように見えますので、もう少しだけBOEには余裕があるのかなあなどと思いました(が、他の報道機関が大騒ぎしてたりするかもしれないのでよー知らんがの)。

1月のMPC議事要旨にありましたように、経済の余剰生産力のある中では基調的な物価に低下圧力が掛かりやすいので云々というロジックが足元の賃金動向などを見るとやや崩れつつあるというのが英国の場合は遺憾なのでございますが、あたくしの勝手な妄想をベースにすると、英国って日本や米国などよりも金融とかの比重が大きいイメージが勝手にありまして、金融って設備的な意味での余剰生産力という概念は製造業よりも相対的にも低くて結局労働力の問題です罠と思いますからあまりそのスラックがどうのこうのというのが割と柔軟に調整が効くのかなあなどと思うのれす。それから、英国金融業そのものは物凄い勢いで国有化状態とかにされたりしていてヘロヘロはヘロヘロですけれども、グローバルに金が回りだすと英国金融業界というのは何だか知らんけれども金が通過するような構造になっているようで、おこぼれが落ちるというメリットが得やすいみたいですから、そーゆー点からも意外に英国経済の方が(グローバルに金が回っていくという前提の下では)戻りが良いのかも知れませんなあとか思いました。

いやまあ思っているだけなので根拠も何もないけど。


それから更にどうでも良いがスウェーデン利上げとな。
http://www.riksbank.com/templates/Page.aspx?id=46061
Repo rate raised by 0.25 percentage points to 1.5 per cent

声明文を見ると更に利上げをやりそうですな、うんうん。


○昨日端折ってしまったイエレンさんのFAQの所ですがやはりネタに

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

最後の『Will the Asset Purchase Program Have Adverse Effects on Foreign Economies?』のところの理屈も中々強引で泣けるので引用。

『My final FAQ relates to the concerns that some observers have expressed over the potential for the Federal Reserve’s asset purchase program to have adverse effects on foreign economies.』

米国のQE2が他国を踏みつけにする政策でしょという批判に対するお答えですが、まあ最後の最後にはヤケクソのような説明(と言う風にあたくしは思いますが、雨公クオリティーだと本当の本当に「俺様USAは世界の中心でヒーローであるから俺様の景気回復は世界の為なのでお前らも協力せえ」と思っているのではないかという悪寒はマリアナ海溝よりも深く感じておりますが・・・・)をしていますが、一応その前段階の話も。

『One specific concern is that these securities purchases might drive down the value of the U.S. dollar, thereby diverting demand from our trading partners.』

ドル安政策を実施しているからケシカランという論点に対して、なのですが、そもそも金融緩和政策の効果にドルの緩やかな下落で輸出拡大という話をしている時点でまあ答えが苦しい罠と思ったら案の定苦しい説明であります。

『Although purchases of longer-term securities are a less conventional means of conducting monetary policy than the more familiar approach of managing short-term interest rates, the goals and transmission mechanisms are actually very similar, and there is nothing special about these asset purchases that would make them especially likely to weigh on the dollar.』

ちょっと違いはあるけれども、資産買入も普通の金利操作と同じですから、普通の利下げをしているのと同じですよそんなに大騒ぎするもんでは無いですよとな。

『In fact, the evidence available to date suggests that the asset purchases have had only moderate effects on the foreign exchange value of the dollar. This point is illustrated in table 3, which reports the change in U.S. dollar exchange rates against four other currencies (the Canadian dollar, pound sterling, euro, and yen) on each of the four dates referred to in table 1. These movements in exchange rates are not particularly large when compared with the fluctuations that can occur in any given week or month. Indeed, as shown in figure 6, these exchange rate movements are very modest in the broader context of developments over the past several years.』

ということで、Table3というのがあるのですが、これは上記の文章にありますように、初回の資産買入プログラム実施に向けた時期ドルの主要通貨ということでカナダドル、英国ポンド、ユーロ、日本円に対する為替レートの変化を並べて「ほらそんなに大きくないでしょ」という話をしているのですな。

・・・・・えーっとですな、「このようにFEDの資産買入アナウンスメントなどはドル下落にそんなに影響は大きくないですよ」という話をしているのですが、そもそもこの時期はまだ金融不安とかがあった時期でありまして、その時期の為替相場の話をしてもそれはインチキ成分が激しく強いのではないかと思うのでありますよね〜。


で、次の論点。

『A related concern raised by some observers is that the Federal Reserve’s asset purchases may induce excessive capital inflows to emerging market economies (EMEs)--inflows that in turn could put unwelcome upward pressure on the currencies of those EMEs and perhaps even contribute to asset price bubbles. 』

QE2のお金が新興国のキャピタルインフローを招いてバブルを引き起こすという論点なのですが・・・・・・

『As shown in figure 7, net private capital flows to Latin American and Asian EMEs (reported as a share of the aggregate GDP of those EMEs) were substantial in the second half of 2009 and the first half of 2010 but were not obviously outsized compared with levels prior to the crisis. A similar pattern is evident in figure 8, which depicts the net inflows since 2007 into mutual funds investing in EME bonds and equities.』

ということで世界的な金融的なフローの説明をしていますが。

『In each case, the strong inflows over the past year or so reflect a recovery in the wake of the large outflows that occurred during the crisis. In fact, the stock of claims on EMEs has only returned to its pre-crisis trend.』

ということで、最近のキャピタルインフローは金融危機による落ち込みの戻りであって、危機前のレベルに戻ったに過ぎません(図も大体そうなっている)ですよってえ話をしているのですが、そもそも金融危機発生直前と言うのが金融バブル時代であって、そこまで戻っちゃイカンだろうという気がするのですが・・・・・・

『Accommodative monetary policies in the advanced economies, including the Federal Reserve’s asset purchases, have likely played some role in widening interest rate differentials and encouraging capital flows to EMEs. But this role should not be exaggerated.』

QE2の資本フロー効果が過大宣伝されているとな。

『Other factors--including a reversal of the capital outflows from EMEs during the financial crisis and the EMEs’ longer-term favorable growth prospects--likely have also been important. Moreover, it would be a mistake to portray these capital flows as an unmitigated negative for the EMEs. A rebalanced global economy in which EMEs depend more on domestic demand for their growth will likely involve ultimately stronger and more sustained capital flows to these economies.』

新興国の成長期待とかもありますし、成長にインバランスがあるからキャピタルフローによって新興国の資本需要を満たすという効果もありますよ、というのはまあ幾分強引な部分もありますがそらまあそうでしょうと思いますけど、前半の説明はちょっとどうなのよ、という気がしましたです。


つーことで、全般的に無理筋な説明が多いのですが、これはつまり一時のどこかの中央銀行みたいなもんで、政策効果や政策の目的などに関しての意思を固めにくい状態になっているから、その分だけ説明が強引になるという事を示唆しているのでしょうなあというところだと思いますです。










2011/02/15

お題「イエレン副議長のFAQ/その他雑談少々」

どこぞの国技とやらの協会さんですが、以前「今回は不問に付す」と言って事情聴取したのでちゃんと申告したら処罰なのにオトボケしたらセーフという実績を一度作ったら、そらまあよりややこしい本件でまともに申告する奴はいませんわなあ。まあ「信用」とか「信頼」っつーのは崩すのは簡単で築くのは不断の努力が必要っちゅうことですわな。

ということで雑談を先に。

○これはまた盛大なお前が言うなですなあ

まー皆様ご案内の通り、あたしゃー某経済クオリティーペーパー様を読まなくなって10年(以上)選手というひねくれものでございますけれども、たまたま昨日はその経済クオリティーペーパー様が毎週バロンズか何かを意識して日曜に出しているなんちゃらという週刊投資新聞みたいな物の1面にホイホイ釣られてしまった訳よ。で、その1面記事のお題は大きな活字でこのように記載されている訳でございますな、曰く・・・・・

『円高恐怖症のウソ』

・・・・・・・・


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                             |
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      | ノ  _,  ,_ ヽ        ((  | プラプラ
     /  ●   ● |         (=)
     |    ( _●_)  ミ _ (⌒)   J  ))
    彡、   |∪|  ノ
⊂⌒ヽ /    ヽノ  ヽ /⌒つ
  \ ヽ  /         ヽ /
   \_,,ノ      |、_ノ



まあ記事そのものはその副題『日本企業、ここまで来た為替リスク対策』にありますように企業の為替リスク対策が進んでいるとか、輸出依存度ってそんなに高くないよとか、対ドルだけ見ててもあまり意味が無いのですよとかまあ普通の話をしている(斜め読みしかしていないのですが)ので、まあそれはそれで良いのですけどね。

>円高恐怖症のウソ
>円高恐怖症のウソ
>円高恐怖症のウソ
>円高恐怖症のウソ
>円高恐怖症のウソ

えーっと、確か昨年まではそちら様の新聞の本紙では散々っぱらからドル円相場の動きに反応して「円高で大変だから日銀はもっと金融緩和しろ」とか物凄い勢いで煽るわ圧力を掛けるわという大活躍をされまして、しかも実際に緩和が行われた日にそんなに為替が動かなかったら翌朝の系列局の経済ニュース番組で「更なる緩和が求められるかも」みたいな腰を抜かすような話までされておられたと記憶しておりますが、どう見てもあれは幻覚では無かったと思われますけれども。

えーするってえと何だね、お前さんのところでは昨年まであれだけ熱心に金融緩和を主張しまくっていたのは「円高恐怖症のウソ」だったてえ事だって言いたいのかね。それとも何かい、一部辺りのお値段が高い週刊投資新聞には本当の事を書くけど駅売り150円だか何だかの新聞本紙にはウソを書くから週刊投資新聞を買えってえ事なのかい。

『円高恐怖症のウソ』とやらを指摘するのはまあ良いけどよ、嘘とまで言うならそれまでてめえが論説委員だの社説だのまで動員して散々キャンペーン張っていた事に関しては社会の木鐸とやらとしての、というよりは人間としての良心とか羞恥心とか無いのかねと百万回位は問い詰めたいの訳でして、まあ論説委員様とか全員揃って肥溜めに頭から突っ込むべきだと思いますがねえ。

ま、八百長マニフェストで選挙に臨んだのが政権に居座る国だけに仕方ないのかもしれませんけれどもねえ(諦観)。

と、悪態をひとくさりでありました。一晩明けたら悪態ゲージが下がってしまって罵倒成分が抜けてしまったのが極めて遺憾の極みに存じます。


○本当は市場雑談を書きたいのだがイマイチなのでメモだけ

えーっとですね、何か知らんけど昨日は3連休明けのせいなのかどうも頭のエンジンが空回りモードでして(中身が空だからではないかというツッコミはしないように)どうにもこうにもという感じでしたのでメモだけ。

・とりあえず当座預金残高はどどーんと増えますな

http://www.ueda-net.co.jp/uedayagi/02-market/02_1.html

今日は積み最終ですが、年金払い日なので物凄い勢いで財政が払い超になるのですが、その金ってえのは当然ながらGCで資金を取ってる債券ディーラーの方には直接入らないので、GC市場的には資金偏在モードになりますから当座預金残高が増えないと間尺に合いません。まあ金利入札オペは昨日も札割れでしたので足りないということも無いんですよね。コールが微妙に高いのはよーするに今日以降は金が余る予定の人が足元で長い資金いらないからオペに行かず、当然ながら足元で運用もせずという所だったと存じますので。

・1年TBは足きり0.17になりましたですか

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul230214.htm

(3)募入最低価格 99円82銭8厘
(募入最高利回り)(0.1727%)

(5)募入平均価格 99円83銭2厘
(募入平均利回り) (0.1687%)

何か知らんけどここもと1年だの2年だのというような短期に近いゾーンの既発の利付国債が売り物勝ちで1年ゾーンの既発2年国債の利回りが0.16%だの0.165%だのというようなテイストを示していましたので、まあこんなもんっちゃあこんなもんなのかも知れませんが、17まで届きましたかそうですかという感じです。ま、事前イメージよりも流れた時っていうのは得てして「そんなに安いなら俺も買う」というのが御到来するので、投資家買いを誘発して業者の在庫が捌きやすくなる(極端に大流れするとビビリになって更に死亡となる可能性もありますが)ようで、日本相互証券の引けは0.160%に置いてましたんで、まあ入札は流れたけどそこから一段安のようなあばばばばーな事には成らなかったですかそうですかという感じっすかね。


と、短い所の話は書くが、長いところに関しては何が何だか良く判らんので(特に先週の40年とかここもとの20年と30年の動きの差とかもう何が何やら)華麗にスルーするのがドラめもんクオリティーであります。


ではイエレン副議長ネタで。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

後半のFAQから少々。まあ執行部の考えているロジックも中々苦しいなあという感じが致しますです、はい。

○そもそもQE2は空振りだったのではないかという疑問について

『Addressing Some FAQs about the Asset Purchase Program』の最初から。

最初の質問が『Has the Program Been Effective in Promoting the Economic Recovery?』という奴なのですが、それに対しての説明をしています。

『Is the program actually proving effective? My short answer is yes.』

んでもってその理由を説明しているのですが、最初に巻末にある(本文見てちょ)図表で説明して「ほーら金利が下がったよアセット価格は上昇したよ」という話をしているのですが・・・・・・

『Table 2 depicts financial market responses during three key phases in the rollout of the program: (1) August 10, 2010, when the FOMC announced that the Federal Reserve would begin reinvesting principal payments on agency MBS and agency debt by purchasing Treasury securities; (2) the period between August 11 and November 2; and (3) November 3, the date on which the FOMC meeting statement announced the commencement of the program.』

えーっと、それって買入「前」の話なんですが・・・・・

『As shown in the table, the initiation of the securities purchase program at the November FOMC meeting occasioned only minimal market response. The reason is that it was largely anticipated by investors, having been the subject of extensive public discussions by Federal Reserve officials during late summer and early autumn.』

で、その買入が既に織り込まれていたから11月の買入決定時には市場へのインパクトが小さかったと仰せで。

『Importantly, as expectations of the program gradually became embedded in asset prices during late summer and early autumn, the 10-year TIPS yield dropped nearly 1/2 percentage point over the period between the August and November FOMC meetings; moreover, equity prices rose and corporate bond spreads narrowed.』

TIPS利回りは名目債以上に下がった(=期待インフレ率が上がった)とか、株価が上がったとか社債のスプレッドが縮小したとかアナウンスによって効果が出ましたよと。

『Over that period, of course, asset prices were also responding to economic news and some favorable corporate earnings reports, but the overall pattern of the financial market data bolstered my confidence in the effectiveness of the Federal Reserve’s securities purchases in providing additional monetary policy accommodation.』

この説明はわかりますが、では何で国債買入でないといけないのか、他の緩和策でも良いのではないか、という事への説明にはなっていない気がする訳で、そういう意味からもQE3のハードルって高い(時間軸政策なりの別の方策でも良いという話になるので)かなあとも思われる訳で。

『Indeed, market rates might well have backed up significantly following the November FOMC meeting if the Committee had decided not to move ahead with the program.』

そらまああれだけ散々織り込ませたら後戻りできないでしょうけれども、何か11月のFOMC前には市場に向けて「お前らどの位織り込んでいるのかアンケート」を取るというテイタラクになっていたという状況はとてもとてもここの講演での(キリッ)という感じではなく、ブラインダー元副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」状態になっていたように思えますがねえ。

で、それだけではアレという事でさすがにその後の金利が上昇した話をしています。

『As shown in figure 4, longer-term Treasury yields have risen substantially over the past couple of months since the FOMC initiated this round of asset purchases.』

で、その図4というのには長期金利の上昇の折れ線グラフがあるのですが、その中に目盛り線として「雇用統計」というのと「財政パッケージ」というのが入っておりまして、金利上昇の理由は(1)経済のデータが良好だった、(2)オバマ政権の減税策効果への期待およびそれによる財政赤字拡大懸念、(3)それらからFRBが買入を縮小するのではないかという市場の期待が発生したこと、としています。

『I believe that this increase in Treasury yields likely reflects a number of significant factors, including incoming information suggesting a somewhat stronger economic outlook and the fiscal package that was announced by President Obama in early December and approved by the Congress about two weeks later; that package will not only support economic growth next year but will also increase the amount of federal debt issuance.』

『Also, investors appear to have scaled back their expectations about the extent to which the FOMC will engage in further purchases beyond those already announced; however, the effect of that reassessment on market rates tends to bolster the view that the Federal Reserve’s securities purchases do indeed affect yields in the direction indicated by analytical and empirical studies.』

まあそういうような事で、「金利を下げると言って長期国債買入しているのに全然長期金利下がらないどころか上昇してるじゃないか」という突っ込みに対する答えになってはいるのですが、まあ正直だいぶ無理筋な気がする。イエレンさんも説明していますけれども、結局の所、「名目」の長期金利をコントロールする為には要因が多すぎて、昨日引用したような1950年代での研究成果を持ち出して市中流通量をコントロールすればどうのこうの、というのは無理があると思いますです、はい。


○インフレとリザーブに関しては(キリッ)が結論とな

次の質問は『Will the Asset Purchase Program Lead to Excessive Inflation?』ですけれども、単純に言いますと「失業率の高止まりに見られるように経済のスラックが存在するので基調的なインフレ圧力は生じにくいですよ」というのが基本的な話で、その部分はまあ特にツッコミ所は無いような気がします(求人と求職の構造的なミスマッチが拡大しているのでは、というような面白い論点はあるので読むのはお勧めだが)のでスルー。

『Inflation and bank reserves.』という部分なんですけどね。

『A second reason that some observers worry that the Fed’s asset purchase programs could raise inflation is that these programs have increased the quantity of bank reserves far above pre-crisis levels.』

というリザーブの大きさがインフレを起こすのでは的な話ですが。

『I strongly agree with one aspect of this argument--the notion that an accommodative monetary policy left in place too long can cause inflation to rise to undesirable levels.』

ほほう。

『This notion would be true regardless of the level of bank reserves and pertains as well in situations in which monetary policy is unconstrained by the zero bound on interest rates.』

ゼロ金利制約の無い時にはその議論は正しい(が今はそうではないので問題無い)とな。

で、その後は「だから経済が健全なペースで回復した場合は現在の緩和的な政策を徐々に縮小しますよ、FOMCの声明文でもそうかいてますよね(キリッ)」という説明をしていまして、どさくさに紛れてプロッサーさんをDisる話が。

『In contrast, I disagree with the notion that the large quantity of reserves resulting from our asset purchases poses some special barrier to removing policy stimulus when the right time comes.』

どうみてもプロッサーさんに喧嘩売ってます本当にありがとうございました。

『The FOMC will be able to increase short-term rates by raising the interest rate that we pay on excess reserves--currently 1/4 percent. That ability will allow us to manage short-term interest rates effectively and thus to tighten policy when needed, even if bank reserves remain high.』

ま、確かに「実際にその時にならないと判らない」話ではありますが、この辺の論点に関しては、以前引用したプロッサーさんの指摘する懸念に対して「大丈夫だから大丈夫なのですよ(キリッ)」という話にしか見えませんな。で、その後延々と各種ツールの話をしてまして、その結論部分はと言いますと。

『In short, the range of tools we have developed will permit us to raise short-term interest rates and drain large volumes of reserves when it becomes necessary to achieve the policy stance that fosters our macroeconomic objectives--including the objective of maintaining price stability.』

まあ気合の世界ですな。


○金融のインバランスに関しては注目してるのね

『Will the Asset Purchase Program Result in Adverse Financial Imbalances?』という所なのですが・・・・・

『A reasonable fear is that this process could go too far, encouraging potential borrowers to employ excessive leverage to take advantage of low financing costs and leading investors to accept less compensation for bearing risks as they seek to enhance their rates of return in an environment of very low yields.』

低金利の長期化が資産への過剰投資を生んでバブルの発生に寄与するという懸念に関してですけど・・・・・

『This concern deserves to be taken seriously, and the Federal Reserve is carefully monitoring financial indicators for signs of potential threats to financial stability.』

これに関しては真剣に考えるべき懸念であり、FRBはこの件に関しては注意深く観察しています、というのは割と意外っちゃあ意外ですが、まあ住宅バブル発生に関する批判が飛んでくる件を考えるとそうなのかもね。

で、どういう指標を注目しているかというのを延々と説明してまして、まあ結論は「現状でそのような不均衡が発生する兆候はありません」という当然の結論ではありました。ただまあ最後に「不均衡だからと言ってそれを直接金融政策に割り当てるわけでは必ずしもないですよ」とは説明していますが、その辺に関してはめんどいので引用割愛します。


○海外(というか新興国)に対して逆効果かという質問に関しては・・・・

『Will the Asset Purchase Program Have Adverse Effects on Foreign Economies?』という質問に対する答えなのですが、これが何か途中からは開き直りモードになっているように見えて中々香ばしいのですが、例によって時間が無くなった(雪だし)ので最後の所だけで勘弁。最後はもう開き直り状態に見えますが・・・・・

『However, given the moderate exchange rate effects that we believe the Federal Reserve’s asset purchases have had, it seems likely to me that, as seems to be the case with conventional monetary easing achieved by lowering interest rates, our decision to purchase assets will not hinder foreign growth.』

何ででしょということですが。

『In particular, given the importance of the United States in the global economy, it is hard to believe that any foreign country would gain if our economy were to fall back into another recession. Over the longer term, the health and vitality of the global economy will depend importantly on the sustained, vigorous recovery in the United States that our asset purchase program is intended to support.』

何っつーかね、俺様は世界の中心なんだから俺様の景気回復は世界のためになるのでお前らはドルがちょっと位下がっても文句言うなゴルァ!!と読んでしまったのはあたくしの僻みですかそうですか(^^)。






2011/02/14

お題「イエレン副議長の資産買入政策の説明がかなり無理無理的な気がします」

BOEはまあ普通に現状維持でしたね。詳しくは議事要旨が出てから。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/005.htm

ところで今日から決定会合ですが、「景気判断が上方修正される可能性が指摘されていますが、その場合更なる追加緩和の期待が後退する事から・・・・」と解説していた人がテレビの中にいたような気がするのですが、金利関係の人を捕まえて追加緩和観測とか聞いたら爆笑の発作が起きるのではないかと存じますけれどもねえ。

さてさて、3日も休むとニワトリ頭のあたくしは市場の話は華麗にスルーして今更ネタですが1月8日のイエレン副議長の講演ネタでございます。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.htm(HTML版)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20110108a.pdf(PDF版)
The Federal Reserve’s Asset Purchase Program

○まず全体の雑感

『In my remarks today, I will discuss the rationale for the decision by the Federal Open Market Committee (FOMC) in November to initiate a new program of asset purchases, and I will address some frequently asked questions (FAQs) regarding the program’s economic and financial effects both here and abroad. The purpose of the new asset purchase program, like all of the monetary policy actions taken by the FOMC since the onset of the global financial crisis, is to fulfill our congressionally mandated objectives of promoting maximum employment and price stability.』

ということで、11月の国債買入プログラム実施の「理論的根拠」の説明をしますよというのと、最近うるせー質問に対してのお答えをしますよという話であります。

PDF版で本文20ページもありやがる講演なのですが、説明が細かいので長くなっている部分がございまして、では全体的にどうなのよという話なのでありますが、まあ読み方にもよるのですけれども、あたしゃーツッコミ所を探しながら読んでいる口ですから説明の粗というか強引さが目立つなあと思うのですな。

ただまあこれは裏を返して考えますと、そもそもの時点で国債買入プログラムの実施においてその政策の波及効果とか目的とかに関しての議論を全然詰めずに気合の世界で実施してしまったという弊害ってえ所がそういう強引さに表れているとも思えるわけです。一方でCE政策に属する各種貸出プログラムやMBSの買入に関してはあまり連銀幹部の発言にズレが無いので、そういう意味からしてもCEはFOMCの中でもコンセンサスが出来ていたのに対して、国債買入に関しては初回にしても(初回に関してはAIG問題で財務長官が立ち往生状態になったのでもう行くしか無かったという感じでの実行でしたけれどもね)今回に関しても「気合の見切り発車」状態で行ってしまい、さて発車したのはいいけれども目的地はどうなのよというミステリートレイン状態になっている、という所なのでしょうな。

てな事を考えますと、まあ海外からの傍観者としてのあたくしがデュアルマンデート的に考えた場合には6月でのQE2の終了というのはちと考えにくい所なのですが、そうは言いましても現状がミステリートレイン状態になっている中で政策が継続できるのかという気もするわけです罠。つまりはFOMCメンバーがこの国債買入で考えている効果とか波及経路とかが全然一致できていないという訳ですから、時間の経過と共にミステリートレインはドンドンと先に進んでしまうのですからして、見解の不一致が更に拡大でござるの巻となるのかもという感じで。

ま、そうなりますと6月に向けてはQE2のおかわり以外にも時間軸の強化とかのような政策フレームの変化というのも考えられるかもしれませんなあという気がするのですけどどうでしょうかね。あくまでもニワトリ頭のあたくしの妄想ですけれども。


と、前振りが長くなりましたが本文のネタ所から少々。


○政策効果に関する説明に無理がある件について

前半の『The Rationale for the Asset Purchase Program』ですけれども、最初の経済環境に関する説明部分はめんどいので割愛しますが、要するに現状の経済状況および先行き見通しに関しては不十分な改善ペースですよという話でして、特に失業率はNAIRUを大きく上回っており、基調的な物価に関してもディスインフレ傾向ですよというお約束の話をしています。

で、その次の本文4ページ目からの『The Design of the Asset Purchase Program』が中々いい感じでインチキな香りのする説明を交えているのがチャーミングなのですな。

・長期国債の買入を行って残存量に影響を与えることによって金利を下げるという理屈

で、11月に導入した国債買入の理論的かつ経験的な根拠に関しては「長期金利を下げる事によって金融緩和効果を出す」と仰せなのです。その部分を引用。

『In my judgment, both theoretical analysis and empirical evidence suggested that such purchases could provide effective stimulus by keeping longer-term interest rates lower than they would otherwise be.』

で、その基調となる理論が「資産価格と資産現存量についての関係」という話をしていまして、買入を実施したら名目長期金利が華麗に上昇というのが2回やって2回とも起きているという現実を目の当たりにしたので、最近あまりこの理屈見なくなったと思ったのですが、確かイエレンさんは以前もこの話してたわなと。

『The underlying theory, in which asset prices are directly linked to the outstanding quantity of assets, dates back to the early 1950s. For example, in preferred-habitat models, short- and long-term assets are imperfect substitutes in investors’ portfolios, and the effect of arbitrageurs is limited by their risk aversion or by market frictions such as capital constraints. Consequently, the term structure of interest rates can be influenced by exogenous shocks in supply and demand at specific maturities. Purchases of longer-term securities by the central bank can be viewed as a shift in supply that tends to push up the prices and drive down the yields on those securities.』

たぶんそれは1950年代のような資本市場の時代では有効であっても、現在のような状況では有効性が落ちているのではないかと思うのですけれども・・・・・・・

『In the context of such an analytical framework, the effect of an asset purchase program also depends on investors’ perceptions of the future path of short-term interest rates as well as their perceptions of the timing and pace of the central bank’s eventual unwinding of its asset purchases. Thus, central bank communication may play a key role in influencing the financial market response to such a program.』

でまあ恐らくこれは先のほうでさすがに「でも金利上昇したじゃん」というツッコミに対する説明をしているのですが、その説明の頭出し部分にもなっていると思いますけれども、「資産買入プログラムの効果は投資家の将来の短期金利政策の経路の予想と同様に、資産買入プログラムの将来の縮小タイミングおよびペースの投資家の予想の経路に依存します」という説明をしています。ここで唐突に出るのがアレなので最初読んだときに???と思ったのですけどね。


・実際に買入をする前の金利低下を効果として宣伝するという中々アレな説明

んでまあその続きの部分(この辺は本文5ページ目)の説明が中々お洒落。

『Recent empirical work provides a rough gauge of the quantitative effects of longer-term securities purchases. For example, event studies have investigated the short-term response of asset prices to announcements by the Federal Reserve and the Bank of England regarding their respective asset purchase programs. And regression analysis has been used to estimate statistical models that embed predictions from a specific theoretical framework.』

何か回帰分析しただの何だのとか書いてありますが、「announcements」って何ぞねというのがその次に。

『Table 1 summarizes the response of selected financial variables on four dates associated with the Federal Reserve’s first round of asset purchases.』

ということで、巻末の表を見るのですが、表は引用しませんのでそれを見てちょという話になるのですが、第1回の買い入れを実施した時の「金利引下げ効果」を10年の財務省証券利回り、10年の物価連動国債利回り、30年のMBS利回り、10年のBBB格の社債利回りの変化に関して並べているのですが・・・・・・

『On November 25, 2008, the Federal Reserve announced that it would purchase up to $600 billion in agency mortgage-backed securities (MBS) and agency debt. On December 1, Chairman Bernanke provided further details in a speech. On December 16, the program was formally launched by the FOMC. On March 18, 2009, the FOMC announced that the program would be expanded by an additional $850 billion in purchases of agency MBS and agency debt and $300 billion in purchases of Treasury securities.』

・・・・・・ということで、MBSとかに関しては実際に買い入れを実施した後の変化に関しても並べていますが、よくよく見ると金利が低下しましたという話は買入の実施を最終的に決定した09年3月のところで終了していまして、実際に買入が始まった09年3月以降の10年財務省証券利回りの華麗な上昇に関しては見事にスルーしているという「実証分析」でありまする。

つまりね、これって実際の長期国債買入の効果じゃなくて「買入しますよ」というアナウンスの効果でありまして、それなら追加緩和政策と称して他の政策やっても同じジャンという突っ込みを受けた時にどう説明するんでしょうか(MBSの買入は話が別ですのでこの際は措いて考えてください)と思うのですよ。

『As is evident from the table, these announcements were generally associated with a substantial decline in the 10-year Treasury yield and the yield on 10-year Treasury inflation-protected securities (TIPS) as well as in rates on agency MBS and corporate debt.』

そらそうなのだが、この効果は「資産買入プログラムの効果」ではなくて「資産買入プログラムを実施するというアナウンスメントの効果」としか言えないと思うのでございまして、何と言う無理筋な理屈というか最早屁理屈の世界に見えるのですよねえ。


・資産買入の波及チャネルについては良いのだが量的説明が無茶な件

資産買入のチャネルは(1)クレジットコストの軽減、(2)(ポートフォリオリバランスによる)アセット価格上昇による企業や家計のバランスシート効果、(3)「緩やかな」ドル安による輸出拡大、ということのようですが、まあそんな感じなんでしょう。

『Turning now to the macroeconomic effects of the Federal Reserve’s securities purchases, there are several distinct channels through which these purchases tend to influence aggregate demand, including a reduced cost of credit to consumers and businesses, a rise in asset prices that boosts household wealth and spending, and a moderate change in the foreign exchange value of the dollar that provides support to net exports.』

というのはいいのですが、その説明が何だかなあ状態。

『The quantitative magnitude of these effects can be gauged using a macroeconometric model such as FRB/US--one of the models developed and maintained by Board staff and used routinely in simulations of alternative economic scenarios.』

でね、巻末の図3ってのがあるのですが、この説明がワケワカメなのよ。

『Figure 3 depicts the results of such a simulation exercise, as reported in a recent research paper by four Federal Reserve System economists.』

まあ脚注のペーパー嫁ということなのでしょうけれども、それは読んでいませんのですが誰か読んでいる人いたら教えてちょ。

『For illustrative purposes, the simulation imposes the assumption that the purchases of $600 billion in longer-term Treasury securities are completed within about a year, that the elevated level of securities holdings is then maintained for about two years, and that the asset position is then unwound linearly over the following five years.』

図3に絵がありますが、まあ前提となる国債買入のペースとその後の残高減少ペースの話を上記のように置いていますと。

『This trajectory of securities holdings causes the 10-year Treasury yield to decline initially about 1/4 percentage point and then gradually return toward baseline over subsequent years.』

えーっと、実際には長期金利って「gradually return toward baseline over subsequent years」などというペースでは動いていなかったように思えるのですけれども・・・・・

『That path of longer-term Treasury yields leads to a significant pickup in real gross domestic product (GDP) growth relative to baseline and generates an increase in nonfarm payroll employment that amounts to roughly 700,000 jobs.』

ちょっとまて何じゃその効果の説明・・・・・

『It should also be noted that this exercise is performed as a deterministic simulation and hence does not capture the potential benefits of the asset purchase program in mitigating downside risks to economic activity and inflation.』

更に「資産買入プログラムが経済活動やインフレのダウンサイドリスクを軽減した効果に関してはこのシミュレーションでは考慮していませんよ」とまで言う説明って何なんでございましょうかと。


で、今般の買い入れも同様に効果があって、600億ドルの買入が3百万人の雇用を創出します(キリッ)という話をしているのですが、そもそも上記の説明の市場金利のパスが無茶振りにも程がありますし、そもそも国債買入から雇用創出に向かう因果関係が微妙なのでありまして(そもそもの金利低下が追加緩和のアナウンス効果だけの話であれば国債買入ではなくて例えば時間軸政策の強化でも良いのではという話になりますわな)、何かもうこの辺の説明が元々ツッコミ所を探しながら読んでいるあたくしからするとインチキ説明にしか読めないのですれどもどうなんでしょうか。

『I would also like to note that the same research paper analyzed the macroeconomic effects of the FOMC’s full program of securities purchases, including the first round of purchases that was initiated in late 2008 and early 2009, the modification of the reinvestment policy that was announced last August, and the second round of purchases that was initiated in November. Those simulation results indicate that by 2012, the full program of securities purchases will have raised private payroll employment by about 3 million jobs.』

更に図々しい事(とあたくしが思っているだけですが)にはこの買入を実施しない時と比較して実施した場合には物価指数も1%上昇するのですという話も。

『Moreover, the simulations suggest that inflation is currently a percentage point higher than would have been the case if the FOMC had never initiated any securities purchases, implying that, in the absence of such purchases, the economy would now be close to deflation.』

ということで「理論的な説明」の部分が終了しているのですが、結局参考文献となっております所のサンフランシスコ連銀謹製のペーパーを読まないとワケワカメという事になるのでありますが、当然ながらまだ読んでいないし意味が判るかどうか正直不安ではあります。特に説明の後半部分は完全にこのペーパーベースなんでしょうなあと思うのでありました。

Chung, Hess, Jean-Philippe Laforte, David Reifschneider, and John C. Williams (2011).
“Have We Underestimated the Probability of Hitting the Zero Lower Bound?”
Working Paper 2011-01. San Francisco: Federal Reserve Bank of San Francisco,
January.

#後半のFAQは明日以降にでもヒマがあったら





2011/02/10

お題「市場雑談メモ/何かアレなプロジェクト/さあ今日はMPCですよ」

因果関係が怪しい「2年債金利差」の数か月程度の動きで相関が崩れたとか崩れないとか意味の判らん話をするのは何なんでしょうかね。まあモーサテの為替コメントはいつ見てもイミワカラン。


○市場雑談メモ

単なる俺様備忘録メモですが(汗)。

えーっと、昨日の債券市場は米国3年債入札が滑った事から2年が0.85だの10年が3.75だのというような水準に上昇しやがって、前日の40年国債入札が滑って雰囲気が悪化した東京市場ちゃんも朝から威勢良く5年0.605%が出合ったりするなどの流れ。

んでもって朝から中短期が妙に弱くてヘロヘロとなる一方で超長期の30年とかはこれまた確りしててイールドカーブはベアフラット、ただし新発40年国債だけうんこ状態となりました。そして後場の寄りからまた下値トライになりまして(東京の昼くらいにトレジャリーが若干甘くなったのが怪しいかもと勝手に妄想)13時前には10年1.35%まで金利上昇したですな。ところが13時位になって相場が反発となりまして、まあさすがに10年1.35%ということで買いも入ったんでしょうなあとゆー所でありますが、どっちかというと戻りは長期とか超長期。中短期が微妙にアレでして、2年とか0.24%とかまで上昇してたりしてる場面もありましたな。

その後格下げに関するウワサがネタになったのかどうかは知らんけど為替がちょっとだけ円安に振れて債券も下がったのですけれども、そのMoody'sの説明会で、なのかその前なのか知りませんが、ブルームバーグニュースがMoody'sの中の人のコメントとして「格付けは安定的」とか言うのが出たら相場様はまたまた反発して華麗に高値引け(と言っても前日比19銭安ですけど)。超長期ゾーンは前日比金利低下とかするし前場うんこだった40年も引け近辺まで戻るとか、まあ不思議相場ではございました。

というのは単なる俺様メモなのですけれども、しかしまあこの間見てて何ともアレでしたのはやはり中短期でございまして、2年債の引け値を眺めておりますと残存1年半で0.200%となりやがっております次第でありまして、なんぼ売りが出てますねんという感じ(ちなみに売りが出てたのは多分昨日がメインではなくその前から断続的に出てたと思われるが)でございます。5年も引けに掛けてやや戻ったとは言え、先物ゾーンより甘い3毛甘のカレントで0.610%の引けだし、7年との関係は前場引けより悪化してるし、まあ戻る中で長期超長期と比較して戻りが鈍いにも程がある状態で、中短期メインプレーヤーの大手銀行さんがあまり頑張らないという感じですかそうですか。

ちなみに、日銀のオペは引き続ききっちり出してまして、トムとスポットスタートで合計2兆円の共通担保オペをオファーしましたが、うちトムスタートの方が札割れでスポットスタートの方が久々に応札1.8倍と札が入ったでござるの巻。まあさすがに当座預金残高15兆円台が続いておりますし、15日の財政払い超で金が余るのが見えているからあまり長い資金を取らないでショート気味の運営をしている人たち(年金定時払いで資金ポジションが余剰に大きく振れる見込みの人たち)がいる事もあってコールは高めですし、15日の所でオペ残高が自動的に落ちてしまう事もありますしってな感じでオペの札も入って当座預金残高も増えてきそうですな。

足元ではこの当座預金残高の水準だし短国レートも上昇してますからGCに銀行とかからの金が出にくく、一方でオペ残高が高水準なのでそれでGCレートがあまりあがらないというのもあるかなあと思いますので、15日の所でオペ残高が落ちた場合には、足元で中短期の打ち込みが多くて業者のポジションが重くなっている節があるので微妙な気もします。まあ跳ねないように運営すれば良いのですけれども、跳ねてから下げるのはオペレーションのコストが掛かりますのでご注意をってな感じですな、うんうん。


○生兵法は怪我の元なのですが・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aqD0uddByrD8
自民検討チーム:国債暴落の「Xデイ」対策、年度内に提言(Update1

『2月9日(ブルームバーグ):日本国債が暴落した場合の対応策を協議している自民党の検討チーム「X−dayプロジェクト」は今年度中に提言をまとめる方針だ。同党の宮沢洋一参院議員が9日午前、党本部で開いた会合後、記者団に語った。』(上記URLより、以下同様)

ほほう。

『宮沢氏は提言について「極めて短期間で国債が2円−3円急激に下がって、それがスパイラルになりそうな雰囲気がある時に、どういう状況が起こるかをいろんな方に教えてもらい、その時にどういう手を講ずれば少しでもスパイラルになる確率を低くできるか」という短期的な対応とともに、中長期的対策についての考えてをまとめていく方針を示した。』

・・・・・・・( ゚д゚)ポカーン

えーっとすいません、国債が2−3円というのが何を意味するのか良く判りませんけれども、長期金利が0.2%とか0.3%とか言われましてもそれは普通に動くのですけれども(つーかそんな事言ったら米債なんかどうなるのよ)それがどうされたのでしょうか????

『具体策をめぐるこれまでの議論については「どの程度のマグニチュードのことが起こるかにもよるが、国債発行のタイミングの話があり、基金で買い入れするという余地もやってきているということだった」と紹介。「日銀がどう動ける余地があるのか、ないのかという話も出てきた」と指摘した。』

・・・・・わけわからん。

と思いまして、この宮沢洋一先生のサイトを拝見したらこんなんありました。

ttp://www.miyazawa-yoichi.com/vision/mission_02.html(直リン自主規制^^)

『つまり、X-dayプロジェクトとは「国債が暴落し、日本経済が大混乱を引き起こした時、政府・日銀は何をすべきか?」について戦略を練るリスク管理プロジェクトです。』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwww

すいませんあの2円とか3円とかで暴落とか言われても困りますし、運用部ショックでもVaRショックでもはたまた89回債の2.55%からの大暴落(ではまあタテホショックがありましたけど)でも日本経済全体が大混乱とかでも無かったと存じます次第でして、正直言って通常のベースでの動きだったら別に大混乱とかせんと思いますが。

そもそも「日本経済に大混乱を引き起こす」ような国債暴落とか起きたときって「国債発行のタイミング」だの「基金で買い入れするという余地も」とかいうような話をしている場合ではなくて、まあ正直言ってそういう事象ってのはどっからどう考えても時既にお寿司状態、あるいはアフターフェスティバル状態という奴でございまして、その時の対策を今から考えるったって、そもそもブラックスワンがどういう経路で来るのかを考えて対策を今から練るというような話をしてもあまり建設的では無いと思うのですけどねえ。

大体からして政策に影響力のある(今は野党だけど)人たちがそういう話を大々的に行うというのが却って火の無い所に火をボーボーとなる懸念がありますし、更に言えば上記の記事にありますように市場ちゃんというある意味でデリケートな所もあるものに対しまして微妙に中途半端な知見でドヤ顔でその手のネタ振りをするのは如何なものかという感じがするのですけど。いやまあ座長の林さんはその辺の事判っているお方だと言う風な評判を常々聞いておりますのでちょっと意外感があるんですけどねえ。


○ああそういえば今日はBOEのMPC

ということで、議事要旨ネタがすっかりスルーのままでしたが、超駆け足で引用大会だけで勘弁してくんなまし。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

CPIの現状認識と先行きに関してというのは18〜20パラグラフにあります。

『CPI inflation had risen to 3.3% in November from 3.2% in the previous month. In line with the usual pre-release arrangements, an advance estimate for twelve-month CPI inflation of 3.7% in December had been provided to the Governor ahead of publication. A detailed breakdown of the inflation data was not yet available, but increased food, petrol and utility prices were likely to have contributed to the increase on the month.』

食品、原油、公共料金引き上げがCPI上昇に寄与したとのことです。

『Also in line with the pre-release arrangements, the Governor informed the Committee that producer output prices had risen by 0.5% in December, causing the twelve-month inflation rate to rise to 4.2%. An estimate of producer input prices had also been provided, showing a rise of 3.4% in December, an increase materially larger than the average market expectation: the twelve-month inflation rate had risen to 12.5% from 9.2% in November. Increases in food and energy prices could account for the majority of the rise on the month.』

生産者物価指数(投入も産出も)上昇していて市場予想よりもかなり高く、これまた食品とエネルギー価格上昇によりますと。

『Recent developments in the prices of imported commodities and other goods indicated that the most likely near-term path of CPI inflation might be higher than the Committee had thought at the time of the November Inflation Report. It appeared likely to rise above 4% in coming months. The latest reports from the Bank’s Agents suggested that it was also possible that the pass-through into consumer prices of January’s VAT increase would be greater than previously expected.』

ということで近いうちにCPIは4%に達するでしょうという話なのですが・・・・

『These factors represented further shocks to the price level whose direct impact on inflation should dissipate over time.』

という一文を入れているのがチャーミングですが、どう見ても無理無理理屈だなあとか思うのでして、やはりこの後は「輸入物価上昇圧力が持続したり企業の価格転嫁が進んだりすると厳しいかもね」という残念な指摘が。

『But they were a source of concern if imported price pressures were to remain elevated or if businesses were more able or willing to pass on cost increases than might have been expected given the shortfall of demand relative to supply capacity. They were also likely to exacerbate the risk that expectations of above-target inflation would become engrained, affecting wage and price pressures.』

で、その後サーベイの話をしているのですが、そこはスルーして賃金のところのまとめになっている第23パラグラフが今回は結構なポイントだと思うのよね。

『Taken at face value, the strength of employment growth shown by the LFS data over the past year or so had been surprising. Given the large reduction in productivity relative to its pre-crisis trend that had occurred during the recession, businesses might have been expected to be able to increase output during the recovery without taking on many additional employees.』

で、ポイントはこの後。

『If the LFS measure was accurate, then the past strength of employment growth might indicate that the degree of spare capacity in the economy was less than the Committee had assumed, or else was more unevenly spread across different businesses and sectors.』

LFSの統計が正確ならば、ここまでの雇用の伸びが示すことは、経済の生産余剰力の大きさが政策委員会の推量していた程度より小さかったと言うこと、または企業や業種によるばらつきが大きい事を示唆します。

『The downward pressure on prices stemming from the margin of spare capacity would then be commensurately less. But in that case, consideration would also need to be given to the implications for income and spending growth. The Committee would seek to analyse this issue further in the context of the projections prepared for its February Inflation Report.』

その場合、経済の余剰生産力による物価への下方圧力は同様に低い可能性があります。しかしそのケースでも所得や消費の伸びへのインプリケーションへの考慮は必要です。政策委員会は2月のインフレーションレポートの公表に向けて、これらの論点についての分析を更に深める所存です。

・・・とヘタクソな訳をつけてみましたが、この部分というのは、従来MPCが詫び状の説明根拠にしております「中長期的には物価はインフレターゲットに落ち着くんですよ」という理屈の根幹に関わる問題であるとあたしゃ認識していますので、まあさすがに今回いきなり引き締めという訳にはならないでしょうけれども、インフレーションレポートでこの辺りの考察に関するトーンの変化が生じた場合には、財政健全化策が景気に与える悪影響を見ながらもかなりナローパスな舵取りを求められるのではないかと存じます。

まあ今日は結果しか出ないので、更にマニア的興味をそそられるBOEちゃんなのでございます。

本当は金融政策の検討でリスク検討をしている部分もオモロイのですが、時間と量の関係上割愛。まあ24パラグラフ以降はマニア必見かと存じます(そんなマニアが何人いるのか知りませんが^^)。






2011/02/09

お題「今日も小ネタ雑談ですいません」

米国10年債もさることながら米国2年債が0.849%とかいうような素敵な値段になっておられる気がしますが・・・・・(;゚д゚)

さて本日はまずは愛知県と名古屋市雑感から。

○まあオトナの事情もありますからねえ

昨日は「レポートがねえ」などと申し上げましたが、よくよく確認したら7日の時点で愛知県に格付けを付与している(長期AA-)S&Pから格付けに影響なしのリリースが出てまして、三菱UFJ証券さんからも関連レポートが出てました。謹んでお詫びいたします、どうもサーセン(他にも出てたかも知れませんがあたくしが見たのその2本でしゅ)。

ということでネットで閲覧できるのがS&PのリリースですのでそのURLをこちらに。
http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.article/1,0,0,0,1204864627889.html
知事選の結果、愛知県の格付けに影響なし

こちらのリリースはあっさり味となっていますが、何本かのレポートを読みました所、まあとりあえず把握したのは「減税するから地方債を出す」という無茶振りは(普通税率以下に下げる場合は)総務省が許さんらしいって事なのですが、皆様のレポートなどを拝読しますと、「まあそのような法的な問題もありますから減税は歳出削減で賄う事になりますので財政規律自体は維持されるでしょう」という趣旨になっておりましたです。

まあオトナの事情もあるからそれ以上突っ込んで書くのも何だとゆーのも判りますが、本当に読みたいのは「で、その市県民税10%恒久的削減って実際問題としてワーク出来るのですか」という事だったのですが、そこら辺に関しては華麗にスルーというのが心温まるものであります。そして実際に恒久財源が確保できない場合に帳尻あわせでどんな弊害が起きるのかというような話まで突っ込んでいただきますと大変に素敵なのですけれどもまあそれはそれということで(ニヤニヤ)。

しかしまあ何ですな、「財政の組み換えで財源はウン十兆円出ます!」「埋蔵金を活用して財源はウン十兆円出ます!」とかいう八百長政権公約を掲げて選挙で大勝利して発足した政権が「期待外れ」だからと言って既存政党への不信になった結果、またまた財源の根拠が怪しい(としかあたくしには思えないのですけれどもねえ)「減税」を掲げる人を圧勝させてしまうとか、有権者の皆様におかれましてはどんだけ「毛ばり」に弱いのよと思うのですが、そういえば懐かしの「毛ばり」発言のご子息様が最近はすっかり毛ば(以下自主規制)。

しかしこの期に及んでまた減税ネタが席巻となりますと、ソブリンも含めまして財政の維持可能性がどうなんですかねえとガクブルですが、まあ名古屋の皆様には誠に恐縮ながら、その財政改革とやらで減税した結果、どのような事になるのかというのを盛大に実験していただきまして、そらまあ上手く行けば万々歳ですし、市政サービスがボロボロになって大変な事になったらなったで盛大な反面教師となりますわな。まあ日本全国焼け野原になるよりはマシですが、困ったからと言ってつボイノリオさんの歌のように新幹線を名古屋で止めちゃうのは勘弁して下さいね(^^)。


○中銀ネタとかやっているうちに市場が少々アレな件について

昨日はこういうのは普通こけないでしょうとか言われていた40年入札が微妙に滑った結果(前場引けが2.215/2.225に対して落札利回りは2.24%)、前場は何故か堅調だった債券相場(と言っても前場から中短期が微妙にうんこだったのですが)は下落して10年1.30%の買いで暫く支えていましたが陥落したら引けに掛けてベアスティープでござるの巻。

長い所も微妙にアレですし、最近は5年がズルズルと重くなっておりまして、昨日の引けはカレントで0.580%と12月のマーライオン相場の安値に接近中というのがこれまた素敵な展開。今週になって東京時間にトレジャリーが妙に弱かったり、香ばしいテイストを醸し出す昨今の相場ちゃんなのでありますが皆様いかがお過ごしでございましょうか(−−)。

で、その中短期ですが、2年とかその手前とかも最近すっかりうんこ状態になっておりまして、そらまあ5年が0.50どころか0.60に接近となれば2年が0.15とか言ってる訳にも行かないでしょうから売られるちゅう所なのでしょうけれども、今回は11月終わりから12月半ばまでの動きと違って足元の日銀の資金供給は潤沢に回っていてGCレートが動揺している訳ではありませんので、そういう意味で言えば今回の2年金利の上昇こそが昨日悪態を申し上げた金融市場レポートでいう「長期金利などの上昇の影響による金利上昇」でありまして(以下悪態の為割愛^^)。

つまりですな、別の言い方をしますと、前回の中短期金利上昇の時は日銀の資金供給オペのスタンスを変化させた(というかようやく包括緩和本来の趣旨に則ったスタンスになったという事ですが)ところで中短期債に対して心理的に買いを入れやすくなるという止まり所としての切っ掛けがあり、丁度5年金利も0.60%に接近となっていたので止まり所となったのですが、今回の場合はその日銀ちゃんのサポートは既に実施してますから(まあ基金国債買入でも連発すれば効くかもしれないけれども、あんまり意味なさそうですし、オペレーションはあまりホイホイとスタンスを変えないで淡々と実施した方が期待の安定化に良いと思いますし)、今回の止め役は日銀以外となりますわな。米債なのか水準感でどどーんと買いが来るとかなのかは知らんけど。

ということで2年が0.22%とかになりますと(この前は0.23%まで上昇したんでしたっけ)さすがに1年も0.14%などと言ってる訳にもいかず、先週金曜辺りから引け値も修正されて昨日の引けは残存1年の2年289回債で0.160%となりました。一方でGCレートはまあ相変わらず0.105%辺りで推移するという状態で、さてこのバランスはどう取るのやらとか思っておりましたら、昨日の3か月TB入札は足切りが0.11%乗せになったと思ったら結局引けも0.110%(たぶん実力はあと0.001%か0.002%か微妙だけど安そう)となりました。一昨日の6か月TBは0.125%の引けになっていますからそらまあ0.11%割れはGC的にまあそれでも良いかもしれないけれども、後ろとのバランス的にどうよという話になったのでしょうな。

という事で、0.1075/0.1100でイ・マオカ選手(実在のやきゅう選手とは多分関係ありません^^)の三塁守備のように動かないとか申し上げたら変なフラグを立ててしまったようで誠に申し訳ございませんことであります(誰に謝る??)。


○そういえば久々にオペが札割れしなかった件について

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110208.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110208.htm(結果)

トムスタートで16日エンドという短い期間の供給オペが久々に札割れにならなかったでござるの巻です。ついでに言えば基金共通担保の3Mが一昨日より按分率下がってますな。

さすがに当座預金残高15兆円台だと足元がキツく、さらに今月の場合は15日に財政大幅払い超が年金定時払い要因でありますので、年金の払いによって15日に資金繰りが大幅に余剰方向に振れる業態の皆様におかれましては、15日を越えるタームの資金を取っちゃうと15日以降が無駄取りになってしまうという関係上、超足元の資金繰りがタイトになりやすくなるとゆー事情もありまして、無担保コールが一昨日は0.094%で昨日は0.098%と強かったと言うこともあってトムスタートのショートタームのオペが入りました罠とゆー所ですかそうですか。

まあスポットスタートの方は引き続き札割れしておりまして、別にGCが上昇って事も無いですし、オペ残自体も高水準ですけれども、15日の所で財政が大幅払い超になるので、そこで自動的にオペ残が落ちる事になると思いますが、そうなった所でどういう風になるかは一応確認したいなとは存じます。まあちゃんと札割れするまで資金供給するというスタンスが維持されたら(そうすると当座預金残高の水準が足元の16兆とかからまた増えると思います)特に波乱にはならないと思いますけどね。


○その他少々雑感

・実質実効為替レートとは

こんなん出てました。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j01.pdf
実質実効為替レートについて

日銀レビューシリーズなので基本的に難しい事を書いている訳ではないのですが、頭の悪いあたくしは話のイメージは何となく判らんでも無かったのですが、結局実質実効為替レートとは何なのかという事を読んでいるうちに益々訳わからなくなってしまったと言うことは恥ずかしくてとても人に申し上げられません(って申し上げてますが)、とほほ。


・昨日見逃したがこれは・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ajijePRvEFvI
米財務長官:ブラジルへの大量の資本流入−他国の通貨過小評価が増幅

『2月7日(ブルームバーグ):ガイトナー米財務長官は、ブラジルに不相応に大量の資本が流入しているのは、幾つかの国が自国通貨の過小評価を続けているためだと指摘した。』

昨日このニュース見たときにはブラジルの財務長官がコメントしているのかと思ったのですが、良く見たらガイトナーがコメントしてるのかよ・・・・・・・


#もうすぐMPCだと言うのにやりかけのBOEネタが放置状態orz(言い訳するとあれ結構まとめるの難しいのよ・・・・)









2011/02/08

お題「各種小ネタシリーズ」

名古屋トリプル選挙の結果は見え見えでしたし、結果を受けて早速当該発行体の債券やらより広い意味で地方債全般(昨日ご紹介した「machineryの日々」さんの指摘とかに絡んでね)に関するインプリケーションとかのレポートでも出るかとwktkしてたのですが、昨日はそれらしいものが見つからなかったような気がするんだが、もしあったら是非読みたいので教えてくんなまし。

○白川総裁の外国特派員協会での講演

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110207a.pdf
日本経済の復活に向けて

まあ基本的に細かい金融政策の話をうじゃうじゃする訳では無いですし、バーナンキ議長のプレスクラブでの講演のように「政府と議会の財政構造改革に向けた努力が必要」というような厳しい指摘も無く、というか日本の場合はどうもそういう話をすると直ぐに「うるせえ」とか言われそうな勢いでありますので、まあそういう話も無く、という事でありますので、基本的にはそんなに新しい話が出たわけではありません。

でね、そういう講演ではありますが、中身を見ると随所にチャーミングな指摘がありまして、こういう場合はそこを鑑賞しながらニヤニヤするのが吉なわけですよ(違)。ということでまあ鑑賞会でも(^^)。

・米国の政策と単純比較しても仕方ないですよという嫌味

まずは『はじめに』の部分から。

『自国の経済状態を他国との比較で評価するという思考様式には長所も短所もあります。長所は言うまでもなく自国を客観的に捉えるきっかけになることです。短所は、時々の経済状況に応じて、過度の楽観論や悲観論に陥る危険があることです。』

ほうほう。

『比較が表面的なものに止まる場合には、誤ったインプリケーションを引き出し、結果として、政策や経営戦略を誤る可能性もあります。』

つまり「FRBとのバランスシート拡大がどうのこうの」という表面的な比較で政策に関してどうこう言うのは誤ったインプリケーションだということですね、わかります。

・米国だって中央銀行バランスシート拡大する中で物価が下がっているよという指摘

『なぜ、長期に亘ってデフレが続いているのか』って小見出しの部分から。

『デフレについては、中央銀行がもっと積極的に資金を供給しさえすれば解決するとの見解が聞かれることもあります。潤沢な資金供給は重要ですが、これだけでデフレの問題が解決する訳ではありません(図表9)。米国でも、FRBのバランスシートは、2008 年後半以降、約2.5 倍に拡大しましたが、物価上昇率は低下傾向を続けています。デフレの克服のためには、粘り強い金融緩和と成長力を高めるための努力の2つが不可欠です。』

・物価が上がれば景気が回復するのではなくてその逆ですよという話

『日本経済にとって必要な取り組み』って所から。

『この点に関連し、「まずデフレの克服が必要である」という議論があります。言うまでもなく、デフレの克服は日本経済にとって大きな課題です。』

さいですな。

『勿論、物価がまず先行して上昇することもありますが、これは資源・エネルギーや食料等の国際商品市況の上昇が物価を押し上げるようなケースです。しかし、そうしたケースでは交易条件が悪化し、わが国の実質的な所得水準は低下します。国民がそのような物価上昇を望んでいる訳ではありません。』

どう見ても嫌味です本当にありがとうございました。

『過去の景気と物価の関係から明らかなように、経済成長率の高まりによって需給ギャップが引き締まり、その結果として物価が上がってくるというのが経済のメカニズムです。日本の経験している緩やかなデフレという現象は、趨勢的な成長力低下という根源的な問題の表れです。』

・・・・・とまあそんな鑑賞会は兎も角としまして、長期金利に関する所は意味が判らんかったので、そこも引用。


・長期金利に関する話はどう見てもインチキです本当にありがとうございました

『なぜ、日本国債の金利は低位安定しているのか』というまんまの小見出しの所から。

『長期金利の趨勢的な動きは3つの要因、すなわち、予想経済成長率、予想物価上昇率、そして国債保有に伴う様々なリスクに応じたプレミアムによって決まります。』

まあそうですかな。実は会計要因もでかいと思うのだがまあそれはマニアネタか(^^)。

『したがって、長期金利の低位安定に対する1つの説明は、日本経済が、当面、低成長と低インフレを続けるという市場の見方を反映しているというものです。』

たぶんそれで終了だと思うのですが、段々この先から我田引水成分が高まるのだ。

『もっとも、これだけでは十分な説明とは言えません。大幅な財政赤字が続く中、仮に財政の持続可能性に対する懸念が拡がり、投資家が国債保有に伴うリスクを意識するようになれば、長期金利は上昇するはずです。しかし、これまでのところ、現実にそうした現象はみられていません。』

格下げの翌日に金利低下しましたもんねえニヤニヤ。

『この点に関し、国内民間部門の貯蓄によって日本国債の大部分をファイナンスできることが、長期金利の安定に寄与しているとの指摘があります。』

ファイナンスできる、というよりは買わないといけないからシャーナイナイというのが体感的な実感のような気がせんでもないがまあいっか(^^)。

『しかしながら、過去の歴史が示すように、どの国も永久に財政赤字を続けることはできません。そうした観点で考えますと、長期金利が安定している根源的な理由は、日本は税制や社会保障制度の改革などを通じて、最終的には中長期的な財政健全化に取り組む意思があると投資家が認識しているからではないかと考えています。』

というよりは、単に現状の資金循環フローは暫くの間は十分に回せるでしょという認識だから安定しているのであって、真面目にこのフロー回らないとか思い出した時は話は別だと思いますけどね。バラマキならまだしも、一旦減税したら増税なんて難しいというのに「減税日本」なんてのが圧勝するご時世ですからねえ。

ただまあ、本当に火が点いたら危機バネが働いて何とかするでしょ日本だってとは思っているとは存じますけれども、それは総裁の発言のような積極的なニュアンスではないと思うのですけどねえ。

『さらに付け加えれば、日本銀行の金融政策運営が、物価安定のもとでの持続的成長の実現という点において軸がしっかりしていることも、重要な要因だと思っています。』

・・・・・・・いやあの中長期的な物価安定の理解くらいの物価上昇率になるのでしたらもうちょっと長期金利が高くて然るべきなんですけどおおおおお・・・・・・

などと悪態をつきましたが、要するに白川総裁が言いたかったのはこの部分の最後の一文なんでしょ。

『このことは逆に言うと、そうした信認を大事にし、中長期的な財政健全化に取り組んでいく必要があることを意味しています。』


んでまあ成長戦略の話とかもオモシロイのですが、まあ割愛ということで勘弁。


○金融市場レポートは中々面白いのだが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/brp/fmr/fmr110204a.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fmr/data/fmr110204a.pdf(72ページあります)

冒頭から中々面白くて、昨年の米国での景気減速懸念→QE2実施に向けたヒャッハー相場→実際に長期国債買入が始まったら金利が急上昇したでござるの巻、という米国債券市場における長期金利推移に関して要因分解をしている部分というのが本文の3ページ目にあって中々オモロイです。BEIを使って要因分解を期待インフレと実質金利に分解しています。

中々美しい結果が出ているのですけれども、ただまあそもそも論としてBEIを見ると確かに投資家の期待インフレ率ってアンカーされているように見えますけれども、金融政策の時間軸(ちなみにFEDは明示的な時間軸は設定してませんので念の為、まあある意味for an extended periodが時間軸という説明を先日の講演でバーナンキ議長はしていましたけれども)の豪快なぶれ方からするとBEIの推移と実際の市場参加者の認識とはちとズレがあるような気もしますから、美しい結果が出たからと言ってあまり信用しない方が良いとは意識しながら読むのが吉な気はします。

んでね、今回は特に前半部分の米国市場の話が(相場があれだけ動いた、というかFF先物とかで判るように、金融政策の期待がいきなり反転する勢いで動くというオモシロ展開になったからというのもありますが)色々と興味深いというか面白い分析をしていまして、中々読みでがあるのですな。

で、そういうところをネタにするかと思えばネタにしないのがドラめもんクオリティでございまして(ちなみにその辺はネタにはしないが読んで味噌、オモロイと思う)、日本の短期市場の部分に反応するのでありまする(^^)。

本文24ページより引用。

『また、短期金利は、国内の金融緩和期待が強まった10月初にかけて、低下圧力がかかった後、幾分振れる場面もみられたものの、日本銀行による潤沢な資金供給が継続するもとで、概ね低水準横ばい圏内で推移した。』

いやあの確かに達観するとそうなんですけれども、その「幾分振れる」で大騒ぎをしていたと思うのですけれども(大騒ぎをしたのはお前だろというツッコミはしないのがオトナの対応です^^)。

本文25ページより引用。

『レポ市場では、追加金融緩和期待が強まった局面で、目先の資金調達をターム物から期間の短い翌日物にシフトする動きがみられた。また、11 月以降の長期金利上昇局面においては、都銀などによる国債売却の受け手となった証券会社の在庫ファンディング需要が強まった。この結果、レポレートに一時的な上昇圧力がかかる場面もあったが、こうしたファンディングが一巡するとともに落ち着きを取り戻し、通期でみれば、GC(General Collateral)レポレート(スポット・ネクスト物)は、0.1%台前半で推移した。』

いやあのそうじゃなくて市場機能云々みたいな話をしている執行部の誰かさんとかがいて、包括緩和実施後のオペレーションも資金の過不足を市場で調整させようという動きになったからレポレートに上昇圧力が掛かったと思うのですが。

本文26ページより引用。

『ターム物金利のうち国庫短期証券(T-Bill)の利回りは、円高や株価軟調を受け、追加金融緩和期待が高まった局面や、包括緩和政策導入直後に、低下余地の残る1年物を中心に低下した(図表2-5)。もっとも、その後は、円高傾向に歯止めがかかったことを眺め、海外投資家による買い圧力が弱まったことや、長期金利が2 年物など、短期ゾーンも含めて反転上昇したことを受け、レートは上昇した。』

何かその辺の因果関係が怪しげなのですけれどもねえ。GCレートが落ち着かなくなったから3か月の金利が上昇していたと思うのですが。

実際問題として、5年金利が0.5%台で貫禄の推移となっている足元の債券市場の影響を受けて2年金利って0.22%とかにまで上昇していますけれども、連日の札割れ供給攻撃に伴いまして足元のGCレートが堂々の0.100/0.105状態で絶賛安定推移になっている事も影響しているのか、3か月TBはカレント物で0.1075/0.1100の気配でこれまた絶賛安定推移している(6か月TBはご案内の通り昨日の新発が0.12%台まで上昇しましたが、それと比較して3か月TBは不動の三塁手イ・マオカ選手の如く推移していることが判るかと)のでして、まあ長い所は別ですけれども、メインの3M以内に関しては恐らくは足元のGCレートの安定性に依存する所が多いのではないかと。


とまあ肝心の短期のところに微妙なツッコミ所があるのですが、まあ色々とオトナの事情もあるでしょうし、金融市場局の中の人的にもアレな部分があろうかと勝手に忖度する所でもありますので、そんなに盛大に悪態はつかない所存。

まあ今回は色々とテクニカルな分析をしている箇所が多くて、これはこれで面白いと思いますのでその辺は中々読みでがあります(固定オペの超過需要に関する話もオモシロかったですが、今後の課題は固定オペの札割れなので、応札倍率が下がる方のインプリケーションも欲しかったです)が、まあGCとか短国市場に関する部分についてはこれで良いのかねという気が思いっきりするのであります。いやまあその辺に関しては中でちゃんとレビューしているんだったら良い(それを一々表に出す必要もないですし)のですけれども、強力な緩和政策を実施しましょうとか、ショックに対応しましょう的な力技が必要な時に、市場機能重視的な発想で対処すると、市場が意図しない方向に暴れた時にそれを収拾するコストが高くつくというリスクがあるという点に関してはきちんとレビューしていて欲しいものだと思って止みません。

ところで、何時の間にかこのレポートって『本レポートの内容について、転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局まで ご相談ください。』って扱いになっているのですが、以前は『本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』って話だったのですが、ここでの引用は転載や複製の範囲にはならない「引用」と勝手に解釈しちゃいましたけれども(なので「引用」としつこく書いた^^)、これが転載や複製の範囲になるということでありましたらご指摘いただければ当該引用部分は削除致しまして内容を再検討いたします。あたくしの微妙な悪態(というほどでもないと思うのだが^^)は残す方向で内容を検討するんですけどね(^^)。


○超雑談ですがまたこの手の議連かよと呆れる話

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=acdgXuJIFw5g
民主:「日銀のあり方を考える議連」発足へ−山岡氏ら呼びかけ

で、呼びかけ人の山岡賢次さんですけどね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/山岡賢次
の目次に思いっきりこのようなコーナーがあるのでして・・・・

>4 日本銀行人事圧力問題
>4 日本銀行人事圧力問題
>4 日本銀行人事圧力問題
(最後だけリンク付けてみた^^)

そういやこんな事があった罠と思う訳でして、本件を政局にしようとして民主党の当時の党首を始めとした皆様が色々と楽しい事をしたのですが、その中で活躍されたお方が「日銀のあり方を考える議連」の呼びかけ人とかどういうギャグなのかさっぱり理解に苦しむのですが。

いやまあもしかしたら「日本ではこうやって与党の議員が中央銀行に政治圧力を掛けるんですよ!!!」と宣伝することによって、国債の格下げや通貨の信認低下による下落を狙うという高度な作戦に基づいた高等戦術なのかもしれませんなあ、とでも考えないとこの人選はねえわと思うのですけれども、何考えてるんですかねえ。

ま、単に「困った時の日銀叩き」の一環なんでしょうけれども、何が財金分離で何が政治干渉はケシカランだという感じでございますわな、マッタクモウ。

#そういや今日は公共放送ニュースで「民主党の中堅若手議員10名ほどが、『財源を考える勉強会』というのを発足させた」という報道をしていた(ソースは見当たらないのであたくしの脳内記憶ベース)のですが、勉強して財源が出たら誰も苦労せんわな









2011/02/07

お題「バーナンキ議会証言ネタの続き」

愛知県と名古屋市の選挙に関して感想を書こうかと思いましたが、「machineryの日々」さんのエントリーを読む方が吉かと存じます。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-439.html

#だからこの選挙の示唆する事は「菅政権への打撃」ではなくて「財政問題の更なる悪化への懸念」ではないかと思うのであります

という話は兎も角として、バーナンキ議長のワシントンのナショナルプレスクラブでの講演をもう少し(金曜は正直寝起きでしたから)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110203a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke_speech_20110203.pdf

○実はこの講演の主張は「財政構造改革」だったりするのでは??

えーっとですな、この講演なんですけれども、本文は10ページ(PDFの方で換算)構成なのですが、6ページ目の半ばから最後まで、ということで、実はこの講演の半分は「財政の維持可能性の為には歳入および歳出の構造改革をしていかないといけません」という話が延々と続いております。

先般バーナンキ議長が議会証言をした時にもこの財政ネタをしていたのですけれども、そのときは最後の所にちょろっと入れていたという感じではございましたけれども、そらまあ議会証言をする所で延々と「財政構造改革をするのが大事だからお前ら努力せえ」と言ったら「説教しやがるのかヴォケ」と反発されるでしょうからそこは抑え目にしたのかなあとか思ったのは考えすぎですかそうですか。

ということで、その部分もまあ色々と引用するというのもあるのですが、それはまあ金融政策的にはあまりネタにならないので割愛します。基本的な部分は前回の議会証言での話をより詳しく丁寧に話をしているのですけれども・・・・・

・足元での財政赤字拡大はリーマンショック以降の金融危機克服に必要だった
・とは言え、このままの状況が続くと財政赤字がドンドン拡大する
・更に問題なのは、今後米国では高齢化とヘルスケア問題によって構造的に財政支出が拡大するという構造的な要因がある
・したがって、このままの状況を放置すると、財政の維持可能性に対する投資家の疑念から長期金利が急上昇したり、金融の混乱を引き起こしたりというような深刻な問題が生じる

てな話を丁寧に行っていまして、したがって歳入と歳出の両方の構造改革が必要、という話になるのですが、もしかしてバーナンキ議長が本当に言いたかったのは金融政策の話よりこっちだったのではなかろうかと思うのでありました。


○景気に関しては実は強め

『The Economic Outlook』の所なのですが。

『The economic recovery that began in the middle of 2009 appears to have strengthened in recent months, although, to date, growth has not been fast enough to bring about a significant improvement in the job market.』

と一発目に労働市場が改善しない程度の景気回復という話をぶちかまして、ハト派的なテイストを醸し出しております。更にその次が・・・

『The early phase of the recovery, in the second half of 2009 and in early 2010, was largely attributable to the stabilization of the financial system, the effects of expansionary monetary and fiscal policies, and a strong boost to production from businesses rebuilding their depleted inventories. But economic growth slowed significantly last spring as the impetus from inventory building and fiscal stimulus diminished and as Europe’s debt problems roiled global financial markets.』

ということで、09年から10年前半に掛けての回復の要因は「金融システムの安定」「拡張的な金融財政政策」「在庫復元に伴う生産拡大」でしたが、財政刺激および在庫復元サイクルの一巡に加えて欧州財政問題における金融市場の動揺から10年の春から景気は顕著に減速しました。

と言う感じで頭の部分で一旦ぶちかましておくのがバーナンキクオリティなのであるが、その後の話が明るかったりするのですな。

『More recently, however, we have seen increased evidence that a self-sustaining recovery in consumer and business spending may be taking hold. Notably, we learned last week that households increased their spending in the fourth quarter, in real terms, at an annual rate of more than 4 percent.』

と、最近は消費者と企業支出の自律的な回復が進んでいるって話を。

『Although a significant portion of this pickup reflected strong sales of motor vehicles, the recent gains in consumer spending look to have been reasonably broad based. Businesses’ investments in new equipment and software grew robustly over most of last year, as firms replaced aging equipment and as the demand for their products and services expanded.』

更に、最近の消費拡大は自動車販売要因以外の裾野も拡大しているし、企業の生産拡大への支出も拡大している。と結構威勢の良い話が。

『In contrast, in the housing sector, the overhang of vacant and foreclosed homes continues to weigh heavily on both home prices and residential construction.』

てな事で住宅セクターの弱さを指摘するのですが・・・・

『Overall, however, improving household and business confidence, accommodative monetary policy, and more-supportive financial conditions, including an apparent increase in the willingness of banks to make loans, seems likely to lead to a more rapid pace of economic recovery in 2011 than we saw last year.』

その住宅セクターの弱さはあるけれども(ってhoweverって前文に掛かると解釈したのですけど違ってたらごめんなさい)、「改善を続ける家計や企業の信頼感」「緩和的な金融政策」「より景気にサポート的な金融環境、そこには銀行の貸出態度の改善も含まれまますが」というような要因によって、11年は昨年よりもより速いペースでの景気回復を見込みます、という風になっておりまして、この部分を見ると結構景気の先行きには強気なのですな。


○一方でデュアルマンデートの部分に関しては慎重に

『While indicators of spending and production have, on balance, been encouraging, the job market has improved only slowly.』

と、労働市場に関する説明の部分では頭からまたぶちかましております。

『Following the loss of about 8-1/2 million jobs in 2008 and 2009, private-sector employment showed gains in 2010. However, these gains were barely sufficient to accommodate the inflow of recent graduates and other new entrants to the labor force and, therefore, not enough to significantly reduce the overall unemployment rate.』

これは(そういやネタにしてませんが)昨年11月にコチャラコタ総裁が『Monetary Policy, Labor Markets, and Uncertainty』というお題で講演をしている中でも指摘されているのですが、最近の労働市場の問題点として、長期失業率の上昇と、若年労働者層の失業率の高さを懸念していまして、その話に通じる所ではございます(というか労働市場に関するコチャラコタ総裁講演ネタはどうも論点整理の為に一度ネタにした方が良いですかね)。

『Recent data do provide some grounds for optimism on the employment front; for example, initial claims for unemployment insurance have generally been trending down, and indicators of job openings and firms’ hiring plans have improved.』

と、足元では良い兆候はありますが、と言いつつ・・・・

『Even so, with output growth likely to be moderate for awhile and with employers reportedly still reluctant to add to their payrolls, it will be several years before the unemployment rate has returned to a more normal level. Until we see a sustained period of stronger job creation, we cannot consider the recovery to be truly established.』

ということで、当面の生産拡大が緩やかで、企業が雇用拡大をする意欲が弱い中においては、失業率がより正常な水準に戻るまで「several years」掛かりますという話をしていますが、前回の議会証言ではこの部分が『At this rate of improvement, it could take four to five more years for the job market to normalize fully. 』ということで、ちょっとだけ時間が短くなったのがチャーミングだったりするのでありまする。

インフレに関する部分は金曜に引用したので割愛します。


○その他少々

講演の最初の所を読んでおりまして(;∀;)イイハナシダナーと思ったところですけれどもね。

『Your job is not easy, but it is essential. Virtually every American is affected by developments in the economy and in economic policy. But contemporary economic issues can be highly complex, and few nonspecialists have the time or the background to master these issues on their own. The public must therefore rely on the diligent reporting, clear thinking, and lucid writing of reporters determined to go beyond dueling bumper stickers and sound bites to help people understand what they need to make good decisions, both in their personal finances and at the polls. These are weighty responsibilities, and the journalists I know take them very seriously.』

何と申しますかね、市場関連とか金融政策関連とかで碌でもない与太記事やら与太解説やらを飛ばしまくる報道機関の皆様に置かれましては、バーナンキ議長の言葉を耳かっぽじって聞けやという感じでございます。

#BOEネタをやるのをまた忘れた、というか時間配分間違えたorz






2011/02/04

お題「バーナンキ議会証言は現状政策の妥当性を強調/亀崎審議委員会見では従来のハト路線やや後退かな」

八百長問題によって相撲協会が公益法人としての優遇措置剥奪が検討されているとの事ですが、財源の裏付けや実現可能性を真面目に検討もしないで、八百長政権公約を掲げて選挙に臨んだ政党は政党要件の剥奪ないしは政党助成金や議員歳費などの自主的な返上を検討されるべきだと存じます。

○バーナンキ議長講演とな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110203a.htm
The Economic Outlook and Macroeconomic Policy

何かスピーチ部分だけだとそんなに長くは無いが、あたくしの貧弱な英語力では今朝の今朝いきなり詳細読むと言う訳にもいかんので、『Monetary Policy』のところだけ超斜め読みしましたけれども、従来の話及び一般的な話しかしていない気がする、ということでそこの部分からちょっとだけ。

『In sum, although economic growth will probably increase this year, we expect the unemployment rate to remain stubbornly above, and inflation to remain persistently below, the levels that Federal Reserve policymakers have judged to be consistent over the longer term with our mandate from the Congress to foster maximum employment and price stability.』

まあ現在の金融政策は適切というのはある意味当たり前ですかな。で、資産買入政策の説明ということで、資産買入政策の効果に関していつもの説明をしています。金融政策に関する部分の3番目のパラグラフを手抜きでまる引用。

『Although large-scale purchases of longer-term securities are a different monetary policy tool than the more familiar approach of targeting the federal funds rate, the two types of policies affect the economy in similar ways. Conventional monetary policy easing works by lowering market expectations for the future path of short-term interest rates, which, in turn, reduces the current level of longer-term interest rates and contributes to an easing in broader financial conditions.』

この部分までは伝統的な金融政策の効果に関する説明をしているのですが、金利引下げによる金融緩和が「将来の短期金利のパスに対する人々の期待を引き下げることによって、現在の長期金利を引き下げる効果として働き、幅広い金融環境の緩和に寄与する」と説明してて、それっておめえ時間軸の話じゃないの(だって長期金利って短期を下げたからと言ってもその時に仮に「打ち止め」感が出たらもう下がらないかもしれないし、短期金利を上げても長期金利が下がったりする事案は年柄年中ですよねえ)と存じます次第でありまして、この辺りが、バーナンキのFRBの中で現状の金融政策に関する効果とか狙いに関するコンセンサスとか取れてないんじゃないのかねと思われる所ではございまする。

『These changes, by reducing borrowing costs and raising asset prices, bolster household and business spending and thus increase economic activity. By comparison, the Federal Reserve's purchases of longer-term securities have not affected very short-term interest rates, which remain close to zero, but instead put downward pressure directly on longer-term interest rates.』

実際に買入を開始したら金利が上がりましたなあという件については後ほど説明がありました。だからコチャラコタ総裁みたいに「実質金利」を持ち出した方が説明に無理がないと思うのだが。で、この前の議会証言でもそうでしたが、資産価格の上昇による家計の経済活動の活発化(=つまり家計のバランスシート改善)も言及してますわな、というかそっちがとりあえずワークしてますしね。

『By easing conditions in credit and financial markets, these actions encourage spending by households and businesses through essentially the same channels as conventional monetary policy, thereby supporting the economic recovery.』

ということですが、昨日の米国債券市場は
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

米国10年国債 3.545 +0.068
米国30年国債 4.661 +0.042
(2月4日朝の数値です、為念)

長期金利上昇ですかそうですか(^^)。

つーことでその次のパラグラフで実際の市場の動きについて更に説明。

『A wide range of market indicators supports the view that the Federal Reserve's securities purchases have been effective at easing financial conditions. For example, since August, when we announced our policy of reinvesting maturing securities and signaled we were considering more purchases, equity prices have risen significantly, volatility in the equity market has fallen, corporate bond spreads have narrowed, and inflation compensation as measured in the market for inflation-indexed securities has risen from low to more normal levels. 』

資産買入の効果の説明なのですが、「MBSの償還再投資の実施および、今後の追加の購入の示唆を行った昨年8月以降、株式市場のボラテリィティーが低下して株価が顕著に上昇し、社債のスプレッドが縮小し、インフレ連動債によって示される市場のインフレ期待が上昇した」と効果の説明をしております。

『Yields on 5- to 10-year Treasury securities initially declined markedly as markets priced in prospective Fed purchases; these yields subsequently rose, however, as investors became more optimistic about economic growth and as traders scaled back their expectations of future securities purchases.』

さすがに実際の長期金利が買入実施後に上昇した話は記者相手ともなると言及せざるを得ないものと見られまして(議会証言では完璧にスルーしていた)、「経済の見通しが改善し、市場関係者が将来のFRBが国債の買入を減らすと想定するようになった為」という理由付けをしておりますわな。

『All of these developments are what one would expect to see when monetary policy becomes more accommodative, whether through conventional or less conventional means.』

ということで、これらの市場動向は伝統的な金融緩和の実施の時と同様の動きですと説明しているのですが、まあそこまで説明するなら名目金利の話じゃなくて実質の話をすりゃ良いじゃんと思うのですが、何かこう苦しいロジックで話を進めるのが不思議でなりませんです、はい。

『Interestingly, these developments are also remarkably similar to those that occurred during the earlier episode of policy easing, notably in the months following our March 2009 announcement of a significant expansion in securities purchases. 』

2009年3月の買入と同様の動きをしているんですよ、と思いっきり開き直っておりますが、ここでの説明でも資産買入効果に社債のスプレッド縮小とかホンマカイナ的な部分がありますし、先般の議会証言でもそうなのですが、国債買入プログラムの効果と各種貸出ファシリティーの効果を敢えてごっちゃにして説明しているのが何とも微妙なテイストではございます。

『The fact that financial markets responded in very similar ways to each of these policy actions lends credence to the view that these actions had the expected effects on markets and are thereby providing significant support to job creation and the economy.』

はあはあそうですか。で、その次のパラグラフは「内容に関しては適宜見直して必要なときには金融緩和を縮小することが出来ます(キリッ)」といういつもの話をしていますが割愛。

んでもって経済のところまで引用してるとキリが無い&そんなに新しい話はないのでインフレの所だけ引用すると。

『On the inflation front, we have recently seen significant increases in some highly visible prices, notably for gasoline. Indeed, prices of many commodities have risen lately, largely as a result of the very strong demand from fast-growing emerging market economies, coupled, in some cases, with constraints on supply. Nevertheless, overall inflation remains quite low: Over the 12 months ending in December, prices for all the goods and services purchased by households increased by only 1.2 percent, down from 2.4 percent over the prior 12 months. 』

足元ではガソリン価格が顕著に上昇しており、新興国の力強い需要の伸びと、一部要因としては供給能力が伸びない事によって、国際商品価格が上昇していますが、ヘッドラインの物価上昇率はそれほどの上昇とはなっていませんとな。

『To assess underlying trends in inflation, economists also follow several alternative measures of inflation; one such measure is so-called core inflation, which excludes the more volatile food and energy components and therefore can be a better predictor of where overall inflation is headed. Core inflation was only 0.7 percent in 2010, compared with around 2-1/2 percent in 2007, the year before the recession began. Wage growth has slowed as well, with average hourly earnings increasing only 1.8 percent last year. 』

基調的なインフレを確認するために使われる食料とエネルギーを除く物価を見た場合、その伸びは更に低く2010年は+0.7%に留まりますと。で、賃金の伸びも弱いと。

『These downward trends in wage and price inflation are not surprising, given the substantial slack in the economy.』

ということで、いつもの話ですが、大きな経済のスラックがある中では、現状のような物価や賃金の伸びの弱さは不思議なことではありません、と締めていまして、まあ引き続きインフレの部分に関しては特にインフレ懸念無しという事ですな。雇用に関する部分はニュースでも報道されていたと思いますのでめんどいからスルー。

つーことで、質疑応答の詳細でもあると面白いかもしれませんが、まあこれを斜め読みする限りにおいては(つまり詳細に読んでないので読み落としがあったらゴメンチャイなのでありますが)現状の金融政策の妥当性を強調すると共に、デュアルマンデートの物価および雇用に関する見通しとしては、先行きの改善のペースが遅い事を強調していますので、まあ普通にQE2継続は継続で、おかわりがあるかどうかは正直判らん。このトーンだと普通におかわりがあってもおかしくは無いのですけどねえ。

ただし、金融政策の効果に関する話については、コチャラコタ総裁の説明とバーナンキ議長の説明に微妙な齟齬があるように、FOMC内部できちんと纏まっているとは到底思えないのでして、まあおかわりするにしても内部の意思を固めるのは難しいかも知れませんなあと思う次第ではございます。


と、予定外のバーナンキ議会証言ネタが長くなってしまったのですが、次は亀崎審議委員会見から少々。


○亀崎審議委員会見:政策委員会の中心見通しにちょっと近づいたのかな??

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1102a.pdf

『(問) 2点お伺いします。1点目は、講演の中で踊り場局面が短期間で終わるとの見通しを話されていますが、踊り場を脱して回復に復していく時期は具体的にいつ頃とみていますか。もう1点は、足許じりじりと円高が進んでいますが、その背景・原因と日本経済への影響についてどのようにみているかお聞かせください。』

『(答) 1点目の具体的にいつ頃踊り場から脱するかとの質問ですが、本日の金融経済懇談会の挨拶でも申し上げた通り、日本経済は緩やかに回復しつつあるものの、昨年の秋以降は、海外経済の減速、エコ関連施策の段階的な打ち切り、円高進行の影響から景気は踊り場局面にあります。もっとも、最近の経済指標をみますと、海外経済は減速局面を乗り越えたとみられることから、輸出は早晩回復してくるものと思います。また、エコ関連施策打ち切りの影響は、自動車メーカーが補助金終了後に新型車を投入するなどの戦略によって生産や販売が幾分持ち直していることなどからすると、いつまでも経済の足を引っ張ることはないと思います。このほか、円高の進行が一服していることもあります。』

ほほう。

『実際、11月、12月の鉱工業生産指数、それから12月の実質輸出がプラスに転じております。こうしたことから、日本経済は「一服」の状態を短期間で終えて、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと考えています。その時期について、ピンポイントで何月と確定的なことは申し上げられませんが、これから春頃にかけて徐々に「一服」の状態から脱していく可能性が高いとみています。』

ということで、先日の総裁定例会見とトーンがそんなに変わらないという感じでありまして、従来はどちらかと言えば執行部よりは景気の現状およびリスク認識を厳しめにみていたというイメージの亀崎審議委員でしたが、亀崎さんの景気認識が進んだのもあると思いますけれども、足元の状況改善を受けて執行部が逆に前のめり感を出さないように慎重な物言いをしているのもあるのかなあとは思いますがどうっすかね。

『それから円高進行の問題ですが、円高が急激に進んでいくという一頃の状況からは一服感があります。確かにここ数日、81円台の状況まできておりますが、為替の影響というのは企業収益とか、企業や家計のマインドに与える影響が大きいと考えますので、注意深くみていきたいと思います。為替については、急激な変動は望ましくないと考えています。この点、今後とも注意深くみていきたいと思っています。』

ということで、為替に関しては今後も注意ということですわな。

国際商品価格上昇に関してですが、交易条件の悪化についての点検が必要、という点をちゃんと指摘していますわな、まあ当たり前ちゃあ当たり前ですが・・・

『(答) このところの国際商品市況の上昇は、ベースには新興国の強い実需、そして天候不順等の供給ショック、さらには投機資金の流入といった金融要因等、複合的な要因によってもたらされていると思っています。そのうえで、経済・物価に与える影響ですが、資源価格をはじめとする国際商品市況の上昇が日本の経済に及ぼす影響については、資源価格の上昇の背後にある新興国・資源国の高成長に伴ってわが国の輸出や生産が増加する効果と、一方では、交易条件の悪化によって資源国に所得が流出する効果を、よく点検することが大事だと思います。私は、今回の中間評価にあたっては、こうした両面の効果を点検した上で、先行き、緩やかな回復経路に復していくという10 月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移すると評価しました。(以下割愛)』

てな感じで、この会見のトーンとしては亀崎さんのいつもの慎重さは見受けられますけれども、従来のように執行部の見通しよりも明らかに弱いという感じでは無くなっているようだなあと思いました。質疑応答がそんなに多くないのでまあこんなもんです。

あとおまけですがこの質疑は中々。

『(問) 冒頭のお答えにもありましたが、県内の経済関係者は、どちらかというと緩やかな回復という部分で前向きな発言が多かったのでしょうか。出先企業と地場企業で二極化との発言もありましたが、大勢としては前向きな発言が多かったのでしょうか。』

『(答) 達観して申し上げれば、厳しいながらも持ち直しているという、お話でした。いずれにせよ厳しいわけですが、そうした状況の中で、「もうどうしようもない」ということではなく、むしろそれに「どう立ち向かっていこうか」という前向きな姿勢を私は感じ取りました。』

ほほう。

『特に、印象に残っている言葉としては、「他力本願ではだめだ」、「行政頼みではだめだ」、「自らが切り開いていかないとだめだ」、「従来型の同じやり方ではもうだめだ」と、進取の気風に満ちたご発言がありまして、非常に感銘を受けました。こういった長い経済の停滞の中で、「どうやって成長に繋げていこうか」という気持ちが今のような言葉に表れているのではないかと思いました。』

まあ金融政策と関係ない話ですが、イイハナシダナー的な質疑応答でしたので(^^)。

#BOEネタの続きが無いのは仕様です(すいません)










2011/02/03

お題「亀崎審議委員講演/BOEネタとか」

まずは亀崎審議委員講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110202a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110202a2.pdf(図表)

○トーンは上昇気味だがリスクはやはり下方重視っぽい感じかな

前回の講演が7月28日なので直接比較するのはちとアレですけれども、前回は割と公式見解よりも弱く見ているという感じが確り伝わって来る内容だったのですが、今回は基本的な見方に関してはそんなに差が無い(ただし若干弱めは弱め)感じです。ただしリスクに関しては下方重視という風に読みましたがどうっすかね。

と言う訳で世界経済に関してですが、もう思いっきり端折って世界経済のまとめの所から。

『今後も、世界経済は、新興国の高成長と欧米先進国の低成長という二極化の下で、回復を続けるものとみています。もっとも、過剰債務問題を抱える欧米先進国は、何らかのショックで内需が抑制されやすい脆弱な経済環境にあるため、経済の下振れリスクが高いとみております。欧州周縁国を巡る国際金融市場の動揺が、世界経済に再びショックを与えるリスクにも注意が必要です。』

『一方で、生産、所得、支出の好循環メカニズムが作用している新興国や資源国では、金融緩和の修正を進めていますが、先進国の金融緩和がもたらす余剰資金が投資先を求めて流れ込む中、成長が一段と上振れる可能性もあります。ただ、それがインフレや資産市場の過熱をもたらす場合には、強い引き締め策が必要となるため、やや長めにみれば下振れリスクでもあります。』

結局両方とも下振れリスクですな(^^)。でまあこの辺りの認識はそんなに現在の政策委員会の中心的な見通しとは変わりは無いと思いますが、新興国の上振れは結局下振れですよというのを引き続き強調という所ですな。


んでもって日本経済ですが。

『昨年秋以降は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や、エコ関連施策の段階的な打ち切り、円高進行の影響などから、景気は踊り場局面にあります。現在は、この踊り場の先、再び上へと向かう階段を歩んでいくのか、あるいは越えられずに下り階段を降りていってしまうのかの正念場にあります。』

と、ちょっと慎重かなとは思われますが、その先行きに関しては・・・・

『幸い、海外経済は減速局面を乗り越えたとみられることから、輸出は早晩回復してくるものと思います。また、エコ関連施策打ち切りの影響は、自動車メーカーが補助金終了後に新車を投入するなどの戦略により、生産や販売が幾分持ち直していることなどからすると、いつまでも経済の足を引っ張ることはないように思われます。このほか、円高の進行が一服していることもあります。』

つまり輸出や生産、為替がコケなければ大丈夫ですと。

『そのため、日本経済は、踊り場局面を短期間で終え、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと考えています。その結果、雇用・所得環境や設備投資の改善傾向は続くものと思います。』

ということで、基本的なトーンは割と政策委員会の中心的な見通しに近くなっているのではないかと思われますがどうでしょう。前回はどちらかと言うとハト派全開っぽい講演内容だったので、それと比較すると中心的な見通しに近づいてきたイメージなんでございますけど。

『ただ、先行き不透明感が強い中で、家計も企業も、積極的に前向きの支出を行おうとはしないと思われるため、力強い回復は望めないでしょう。』

ということで、まあこの辺は慎重なトーンと言う感じです。


○リスク認識というより問題は構造問題であるとな

この辺は亀崎審議委員が従来より説明している「日本経済の成長力強化」という話に繋がる、と申しますか、講演の後半でその点にスペースを割いて説明しているのですけれども、亀崎審議委員の景気に関する先行きリスク認識としては、国内に関してはそもそも論の世界であったりする次第でして、先ほどの景気先行き認識の続きに先行きの不確実性の話がありまして。

『もっとも、こうした見方には不確実性があります。まず、海外経済には先程述べたような上振れ、下振れのリスクがありますが、それが日本の輸出をはじめとする企業活動全般へ与える影響が考えられます。』

とまあこれは良いとしまして。

『また、国内には、人口減少などにより将来の成長期待が弱まり、年金問題や財政赤字の問題などの不安要素とも相俟って、家計や企業の支出意欲が一段と低下するという下振れリスクも考えられます。一方、そうした不安が和らげば、前向きの支出増加に繋がる可能性もあるものと思います。』

どう見ても構造問題です本当にありがとうございましたorz

つーことで、亀崎審議委員が懸念する日本経済の先行きリスクは循環論ではなくて本質的には日本経済の構造問題ですよ、ということになっておりまして、まあそういう意味では亀崎審議委員がタカ派バリバリになるというのは今後も中々考え難い所ですなあと思います。講演の中で景気認識部分と同じくらいのスペースを取って説明しているのが、『4.物価安定の下での持続的成長経路への復帰に向けて』という章であります。

『次に、日本経済の構造的な問題について触れたいと思います。これまでお話ししてきたとおり、足許の日本経済は緩やかに回復しつつありますが、成長力が弱いためデフレが続いており、バブル崩壊後の「失われた10年」は、今や「失われた20年」となりました。このまま「失われた30年」に陥らないためには、どうすればよいでしょうか。』

ということで、その先に『(1)日本の経済成長過程』、『(2)成長力の再強化のために』とありまして、(;∀;)イイハナシダナーなお話が続くのですが、金融政策関連の話ではないので引用はパスしちゃいますけど、内容的には「ほほー」という感じであります。

色々と話をしていますけれども、骨子としては(1)生産年齢人口の減少対策としての育児支援強化や労働者の新たな能力開発を支援するような積極的な雇用政策、(2)規制緩和ならびに、高成長の継続を前提とした社会制度設計の見直し、(3)年金や財政に対する将来不安の解消として年金制度改革や財政構造改革、というような内容と読みました(亀崎さんの趣旨と違ってたらスイマセン)です、はい。


○BOEネタである

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

今回は中々読み物としては面白かったのですが、正直英国経済がどうこうしても日本の経済やら金融政策に対するインプリケーションがあるのかと言われますと答えに困る次第でありますので、要するに中央銀行野次馬見物人としての趣味の世界ですというご認識でひとつよろしくです(何を?)。

構成はいつもと同じで金融市場の話からになるのですが、実質的に最初のパラグラフになる第2パラグラフの記述が中々微笑ましかったので意味は無いが引用。

『As was typical during the Christmas and new year period, the level of activity in financial markets had been relatively low. So the asset price movements that had occurred within the month were to be interpreted with some caution.』

年末年始は板が薄いから市場のインプリケーションを見るのには注意が必要と(^^)。

で、金融市場に関しては以下こんな感じです。

・BOEの利上げ期待が高まり、OISでは8月に25bpの利上げを織り込むが、長期金利の変化は僅か(第3パラグラフ)

・ユーロエリアのソブリン債市場には引き続き債務懸念によるストレスがある(第4)

・国内の年末の銀行のファンディング市場には動意ない。ユーロ圏のソブリン債と同様にユーロ圏の銀行のファンディング市場では銘柄間のスプレッドが拡大している。ただし一般企業にはその傾向は概ね見られない(第5)

・英国株価は4%上昇、FTSE指数は2007年のピークの1割下まで戻る。米国やユーロ株はそこまでの水準には戻っていない。この要因の一部は英ポンドの下落によるが、多くの要因は企業収益と配当が拡大する期待による(第6)

・英ポンドの実効レートはあまり変化せず(第7)

ということであります。でですな、世界経済に関する所で、インフレに関する構造的な部分への言及が出てくるのですな。

第8パラグラフから。

『The data released during the month had remained consistent with continued firm growth in the global economy, albeit uneven across countries. And, as in previous months, there were continued signs that global demand was putting upward pressure on commodity prices.』

global demand was putting upward pressure on commodity pricesということで、世界的な需要の拡大が商品価格の上昇圧力をもたらしているという話。

第11パラグラフから。

『Indicators had remained consistent with robust growth in emerging economies, which provided almost a quarter of UK goods imports. China and some other countries had tightened monetary policy during the month, in response to heightened inflationary pressures, which could feed through to higher export prices. Unless offset by a movement in the sterling exchange rate, such heightened inflationary pressures could lead to higher UK import prices.』

英国の輸入の4分の1を占める新興国の経済拡大による物価上昇圧力に関しては、英国ポンドの為替による調整が無い場合(つまり、英国ポンドの為替レートがポンド高にならない場合、という事ですな)には、英国の輸入価格上昇に繋がるというお話であります。

となりますとね、英国のインフレ圧力を緩和するという観点では英国ポンドの上昇を容認するというスタイルになる可能性もあるなあとはこの部分だけ取り出すと感じられる次第でありまして、そーゆー辺りからも利上げをするかどうかは兎も角として、ややホーキッシュな姿勢を見せてポンド安にしない方がヨカロという感じになっているかもしれませんなあとは思います。ただし、それをやっちゃうと従来の英国の輸出回復のサポートになっていた英ポンド安が逆回転する訳ですから捌きが難しいですわなあとか思います。

第12パラグラフから。

『Oil prices had risen by almost 8% in sterling terms since the Committee’s previous meeting, while industrial metals prices had also risen. Since July 2010, oil and other commodity prices had risen by around a third or more. It was possible that demand and supply pressures could lead to further increases in the prices of some commodities and exert further upward pressure on UK import prices.』

原油価格やら商品価格の話の見通しはまだまだ上昇するという話が前半の分ですが、後半にはディマンドプルのインフレ圧力が今後も商品(主に原材料ですな)価格の上昇圧力が掛かり、英国の輸入価格に上昇圧力が掛かるでしょう。

ということで、世界経済に関する部分ではディマンドプルの国際商品価格上昇に関するインフレ圧力について結構しつこく言及していまして、まあさよですなという感じですが、この辺りを読んでいても「インフレ圧力」連呼っぽくてホーキッシュなイメージを受けるのでありましたです、はい。

ちなみに、世界経済に関しては(1)米国の景気回復はかなり確りしている、(2)ユーロ圏は全体としては緩やかな回復だが国によって差が有り、ドイツは強いが周縁国では財政再建に伴う需要の低迷が数年続き、更に債務問題への懸念が金融市場や経済に混乱を与えるりすくも、とこちらは弱めです。ちなみに日本への言及はございませんのが残念です(まあしょっちゅうです)がシャーナイナイ。


ということで、経済認識部分だけで時間切れになったのはちょっと失敗なのですが(寝坊したため)、この先もインフレの話がうじゃうじゃ出てくるのと、昨日申し上げた「経済の余剰生産力が物価押し下げ圧力になる」という基本的な認識部分に対して見方を変える必要があるかも的な話など、本質的な部分を見ると足元のGDP如きではそう簡単にハトにはなれなさそうな記述が続くという内容なので明日以降に続くということでよろしくです。

#後半は完全にあたくしの趣味のコーナーでどうもすいませんすいませんすいませんすいません









2011/02/02

お題「12月決定会合議事要旨続きとかマニア的に注目のBOEネタとか」

そう言えば「日米長期金利差でドル円市場が動く」という話をドヤ顔でしていた人が沢山いたと思うのですが、米金利上昇しているのにドルが下落しているのですけれどもどうなっているんでちゅかねえ。

ってまあそういうのを一々反省して解説するような誠実な人はそこら辺にドヤ顔で出張ったりはしない訳で(以下悪態の為自主規制^^)。

という悪態は兎も角として世間話から参ります。

○オペが引き続き豪快に札割れしている件について

ほったらかしだと昨日は当座預金残高16兆円台コースでしたが、それにも関わらず昨日はトムスタートのオペが実施されませんでしたな。ということで、世の中的にあばばばばーな事でも無い限り当面はスポットスタートでオペを打っていくという事なんでしょうなあ。

昨日のオペオファーと結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110201.htm
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110201.htm

3日スタートの金利入札方式の共通担保オペがオファー10000億円に対して応札が818億円と盛大に札割れしたでござるの巻。これで今日の当座預金残高が164300億円の予定で明日がオペが無いとすると上田八木短資さんの予想ベースでは177100億円ということですが、まあこの数字もあまり気にされない(足元でオペが札割れ大会なのですから当たり前ですが)のはまあ結構な事ではございますな。

でですな、それはそれとして昨日は6か月物の共通担保オペが実施されたのですけれども、こちらの按分率が27.0%となりまして、前回(1月13日オファー)の23.7%、前々回(12月24日オファー)の23.1%という水準から上昇してきておりまして、この調子で金利入札オペの札割れ合戦が続くと固定尾オペの札割れも視野に入るのかねという感じ(そもそも基金関連での買入が増えるとこれはこれで資金供給要因ですし)ですけれども、まあ15日の年金での財政払い超で金利入札のオペ残高が落ちたらその時点でもうちょっとオペのニーズが高まるとは思いますけど、買入がつみあがって来るとそもそもオペ残が少なくても市場の資金ニーズが充足できるようになってくる気がします。

当座預金残高自体は目標無いですからオペが札割れ大会してれば残高が落ちてもモウマンタイだと思いますけど、固定オペの方は何せ基金オペとして残高を幾ら実施します(キリッ)という事で目標化しているので、固定オペが札割れすると中々由々しき事態になっちゃいますから今後の推移をニヤニヤしながら眺めたいと存じます。

ま、足元ではGCも安定してますし、今日の3か月も0.11%乗るか乗らないか位で無難に推移するんでしょうな。


○決定会合議事要旨ネタの続き:短期市場の動向の話がどう見てもイカサマです本当に(ry

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf

昨日は前のめり感も無く慎重な見方で結構ですなあと申し上げました『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分でありますが、『2.金融面の動向』部分に関しては誠に遺憾な部分がございますな。

『短期金融市場について、複数の委員は、一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの、総じて金利は低水準であると指摘した。』

>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの
>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの
>一部のターム物金利が長期金利につれて強含んだものの

一部じゃなくて全部のターム物金利が上昇しましたし、長期金利に引っ張られた部分よりも市場機能重視ちっくな中立型っぽいオペレーションをしてGCレートが低位安定しなくなってタームプレミアムが全体的に付いたという要因も思いっきりあったと存じますが。

『ある委員は、包括緩和の中で時間軸を明確にしているにもかかわらず、一部のターム物金利が強含んだのは、短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性があると述べた。』

>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある
>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある
>短期金融市場の裁定機能が損なわれつつあることを反映している可能性がある

この期に及んで市場機能論とか意味判んないんですけど。大体からしてタームのリスクプレミアムは時間軸あっても付きますし、そもそも論から言って「ターム物金利の引き下げ」というのと「市場機能の重視」というのは両立しない概念なんですけどねえ。

えーっとですな、現状では本来の「包括緩和政策」と整合的なオペレーションが淡々と実施されていますので、あまり悪態を蒸し返したくは無いのですけれども、まあ何か市場の認識と違う認識を政策委員の方々が持たれてしまいますと、今のように平和なときは良いですけれども、何かあったときに打つ手が遅れたり斜め上になったりするという懸念がある訳でして、何でこういう事になったのよという分析に関しては、別にまあそれを表に出さなくても良いと思いますけれども、フラットな見方で分析して頂きたいものだと存じます。

でね、まあそうは申しましても、12月の会合以降オペレーションが包括緩和政策の趣旨に沿った打ち方になった(当初は買入オペを連発して金利を抑えに来ましたし)ということで、それなりにやってるのかなあと思わせる部分もありまして、『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所から。

『続いて、委員は、包括的な金融緩和政策の効果について、議論を行った。大方の委員は、長めの金利の低下を促す効果について、基金導入後の金利低下が示したとおり、基金を通じた多様な金融資産の買入れと長めの資金供給は、金利を押し下げる方向で作用しているとの認識を共有した。』

は??

『もっとも、現時点では、海外の長期金利上昇につれた長期金利の上昇などの影響もあって、その効果がみえにくくなっているとの指摘を多くの委員が行った。』

は??????ということでここまでは悪態ですけれども・・・・

『この点と関連し、何人かの委員は、包括緩和における時間軸の明確化などが、短期ゾーンの市場金利を低位安定させる作用を持っている点を改めてしっかり示していくことが大事であると述べた。』

という事で、しっかり示した結果として「短国などの基金買入オペを前倒しで実施」「札割れするまでオペを続ける」という積極的なオペレーション姿勢っつー事なんですかにゃと存じます次第ですが、それは勝手に妄想しているだけのお話ですので念の為申し添えます。


○また時間配分を間違えたので本日は予告編(BOEネタ)

時間配分を間違えたっつーか単に最近寝起きが悪いので頭が動き出すのに時間が掛かってキーボードのタイピング速度が遅い(基本的にキーボードのタイピング速度ってその時の頭の回転速度に依存しますよね^^)のでありますがorz

いやね、先週BOEの1月MPCの議事要旨が出ていたんですよね。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1101.pdf

でまあこれを読んだのですけれども、ここの議事要旨の文言だけ見ていると来月のMPCでインフレーションレポートの改定と共に利上げするんじゃないか位の勢いで鷹が狂喜乱舞するの巻という内容でありまして、これは早い所ネタにしないと乗り遅れるがな!!!!

とか思ったのですけれども、月曜に改めてOISの気配(業者がベンダーに出してる気配とかですが)やらLIBORの推移やらを見たのですけれども、そんなに急に利上げモードになっていないから「ふーん」と思ってまあECB理事会(BOEの次の政策決定は10日ですがECBも暴れそうなので)までにネタにすりゃ良いやと楽勝気分のあたくしだったのですけど、昨日のニュースを見てあっちゃー状態。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aqDS8rsOIAmY
英中銀:年内3回利上げ、インフレ阻止で1.25%まで−NIESR予測

『2月1日(ブルームバーグ):イングランド銀行(英中央銀行)は消費者物価の大幅な上昇が定着するのを防ぐため、年内3回の利上げを実施する可能性がある。英国立経済社会研究所(NIESR)が見通しを明らかにした。』

おーのーとか思ってたら案の定昨日の英国債券市場は・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aCoqTE3VZiUQ
英国債:下落、利上げ観測が強まる−NIESRの予測修正に反応

・・・・どうもですな、1月MPCの後に出た衝撃のGDPの結果を受けて、経済が怪しいのに早期利上げなんぞあるかヴォケという感じで市場様が推移していたと思われる次第なのですけれども、明日以降ネタにしますけど、上記議事要旨を見ますと、利上げの検討を正式に行っているわ、物価に関するリスク認識は明らかに上方修正されているわ、更に重要だなと思ったのは、従来BOEが「先行きの物価はターゲット範囲内に戻るでしょう」という根拠になっておりました所の、

『the margin of spare capacity had exerted downward pressure on inflation』(第29パラグラフより)

に関してなのですが、この「経済の余剰」に関する部分が、「労働市場のデータを見るとMPCが想定するよりもmargin of spare capacityの程度が小さい可能性もある(第23パラグラフ)」というように、結構本質的な部分で「おや?」と思う部分もありまして、更にインフレに関してはまあ全編これインフレに関する話(そらまあインフレーションターゲットを実施しているのに肝心のインフレ率が3.7%とターゲット数値の2.0%を豪快に上回っているのですから当たり前ですけれども)という感じでして、足元の景気の落ち込みでどうこうという話では無いと思うんですけどね。

ただし財政健全化政策の影響はまだ個人消費などに出ていないというような議論もあるので、さすがに2月のインフレーションレポートを出して何らかの示唆をするのかしないのか存じませんけど、その辺の認識を示してから話が始まるのでしょうけれどもねえ、とは勝手に思います。

ということで、折角ですので(?)「利上げを検討した」という第28パラグラフを引用しましょう。

『The Committee considered the case for an increase in Bank Rate at this meeting.』

キタキタキタキターーーーー

『The domestic and global recovery had proceeded at least as well as expected. And the most likely prospect was for continued growth, despite the downside risks that remained. For most members, the balance of risks to medium-term inflation relative to the target had moved upwards over the past few months, reflecting the recent and prospective buoyancy of import prices and the possible impact of higher near-term inflation on public inflation expectations.』

経済は回復しており、今後もダウンサイドリスクはあるものの回復を続けると見込まれ、更に殆どの委員によれば中期的なインフレ期待の上昇リスクが高まっているとな。

『That would suggest that a lower level of demand might be consistent with hitting the inflation target in the medium term, and so might argue for a withdrawal of some of the current monetary stimulus.』

キタコレ。

『Moreover, an increase in Bank Rate at the current juncture might lessen the risk that a larger increase became necessary at a later stage if inflation persisted above the target. Members noted that a small increase in Bank Rate at this meeting would still leave monetary policy highly accommodative, and would not preclude the Committee from increasing the policy stimulus in future if that became necessary.』

現時点での利上げを行っても、金融政策は十分に緩和的であるとか中々お洒落ですわな。


と、利上げ議論の所だけ出しましたが、ご案内のように政策は現状維持でありまして、上記の説明に対して現状維持をするメリットについての論点も中々興味深いのですが、引用してるとキリが無いので明日にでも。その中で意識されているダウンサイドリスクは、(1)財政健全化政策が今後の消費に与えるマイナスインパクト、(2)ユーロ圏のソブリン問題が英国の輸出先であるEU諸国の需要を大きく減らすリスクや、ソブリン問題が金融システム問題に発展するリスク、というのを挙げておりますです。お暇な方は議事要旨の第29パラグラフを読んで味噌。

ということで続きは明日(お前は下手な民放番組かというツッコミは承認します^^)。










2011/02/01

お題「12月決定会合議事要旨より:1月にどの程度議論内容が進んだかを見たいですな」

お題が長いですかそうですか。

○それはそれとして日銀のサイトがリニューアルされた件について

http://www.boj.or.jp/index.html/

今度のページは右の方に色々と普段使いそうなトピックへのリンクが張ってありまして使い勝手は多分よくなっているように思えますが、案の定過去のリンクが殆ど死んでいまして、会見とか金融経済月報とかPDFの類は全部死んでいますので(市場情報のインデックスページ(marketというのがある奴)は生きているようなのですが)、あたくしのようにあちゃこちゃにページへのリンクを張っている人は涙目の展開になりやがりました(-_-メ)。

ということで、1月以前のページのリンクがあちこちで死んでいますので、あたくしのページから参考資料に当たる際には誠に申し訳ございませんが、ご不便ご寛恕の程をお願いいたしたく。まあ時間があればリンク切れをちょこちょこ直していきますけど、根がものぐさ太郎でございますので、とりあえず現在使っているページ(=今期分)のあたりは何とか努力しようと思ってますが期待しないで下さい(−−。

ま、慣れるまでは何なのですが(階層が多いのが前のページの難点でしたけれども、まあ慣れれば別に苦にはならない)、恐らく多くのアクセスのあるページと、日銀的に説明したい所を中心にトップのページにリンク張っているので、まあ使いやすいんじゃないですかねえ。

しかしリニューアルでリンクが切れるのは(まあ事情もあるし放置するとどんどんサイトの量が増えるのも判るんですが)何とかならんのですかなあ。


○更にその前に市場雑談

市場雑談と申しましても10年入札ではなくてオペの話。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_o.htm
オペレーション(日次公表分)

このページはリニューアル前とアドレスが同じでして、ついでに今回からトップページにリンクがあるのでかなり便利になったと思う。

31日のオペオファーと結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110131.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110131.htm(結果)

2日スタートのオペオファーが14000億円に対して応札が1695億円で、4日スタートのオペオファーが10000億円に対して応札が3865億円。

ということで、これまた毎度お馴染みの上田八木短資さんの資金需給予想を見ますと、明日2日の絶賛税揚げ日の当座預金残高予想は現状で164300億円となるとの事で。
http://www.ueda-net.co.jp/uedayagi/02-market/02_1.html

これはまた豪快に当座預金残高減りますなと思いますが、何せ2日スタートのオペは既に打ち込んで絶賛札割れという事ですので、今日もオペオファーするんでしょうけれども応札が少ないということになるなら「札割れしている位供給していますが当座預金残高は減少しています」という素敵な流れになるのですな、うんうん。

とは言いましても、そもそもオペの応札が少ないという位ですからGCのレートが上がるわけでもなく落ち着いて推移している訳でして、まあ一応当座預金残高はそれはそれで重要なメルクマールではあるのですが、その時の資金需給によってオペ残が変わってくるという事もありまして、当座預金残高自体は明日このままだと17兆割れとかになるのですけれども、オペ残(金利入札方式の共通担保オペ+基金共通担保オペで計算しています)はあたくしの計算が間違ってなければ今日が41兆少々で明日が42兆少々となるので、そーゆー意味ではオペによる調達とのトレードオフになりやすいGC市場的には資金供給が確り行われているという形になっていると思うのですな。

てな訳で、明日か明後日辺りに短期市場ネタで当座預金残高が減ってどうのこうのという記事が出たときに金利村でも勘違いする人がいる可能性がある(短期の人で勘違いする人はいない^^)気がしたので念の為メモメモであります、などと書いたが間違える奴が市場にお布施してくれた方がメシの種になるのでしたなorz。


ということで12月会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2010/g101221.pdf
↑見た瞬間に思いっきりアドレスが変わっているのが良く判りますがな

○基本的には割と警戒的なスタンスになっています

まず読んだあたくしの勝手なまとめですけどね。

えーっとですな、まあ短観出た直後ですし、米国の年末商戦ヒャッハーの前でございますが、この時点で米国市場はそれなりに景気回復祭り相場の様相を呈していた(米国金利の上昇にはマーライオン要因もあったかもしれませんけれども^^)割には結構警戒スタンスっぽい内容です。

つまりですね、1月会合議事要旨を見るときのポイントは、この12月のスタンスがどの程度変化した/していないのかという所でありまして、さくらレポートやら決定会合声明文や白川総裁の会見やらを見ますと、基本的には「展望レポートで示された見通しにトラックして推移」という感じで、足元急に前のめりになったという感じは無いように見せている(内心は知らんが^^)というイメージなのですが、さてその辺りはどうなのというのが1月議事要旨(が出る頃には2月の会合が終わっているのだが)を見る際に注意したいなあと思います。

特に、景気のところでの討議で「ほほー」と思ったのは米国の景況感に関してでして、悲観と楽観の間でスイングするという雨公クオリティーについて指摘していて、悲観に振れた場合の円高に警戒してまして、まあ結局円高は要注意なのね、というのは把握した。


○結構景気に関しては警戒的

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・米国経済

『多くの委員は、11 月以降、大方の経済指標が事前の予想を上回っており、米国経済は減速局面を脱し、再び緩やかな回復軌道に復しつつあるとの見方を示した。』

『この間、米国で長期金利が大幅に上昇した背景として、多くの委員は、良好な経済指標などを受けて米国経済の先行きを巡る悲観論が修正されたことや、追加金融緩和への期待が後退したこと、財政面からの景気刺激策が合意されたことなどを指摘した。』

でもって・・・・

『米国経済の先行きについて、委員は、新興国の高めの成長と緩和的な金融環境などを背景に、回復基調が続くという認識で一致した。』

ということになっているのですが、

『ただし、多くの委員は、家計がバランスシート問題を抱え、雇用・所得を巡る環境が引き続き厳しい中で、国内民需の回復ペースは緩やかなものにとどまり、リスクの面でも、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くとの見方を示した。』

と、多くの委員が下方リスクに言及している訳でございまして、結構警戒的なのですわな。で、更に金融市場に関する部分でさっき申し上げたお洒落な指摘があったりするのですよ。

『ある委員は、米国経済を巡る市場の景況感が、本年春の楽観論から夏場の悲観論、そして足もとの楽観論へと大きく振れており、そうした状況においては、金融政策上のコミュニケーションが難しくなると指摘した。』

とまあこれは金融政策の話ですけれども、為替に関しても同様に指摘がありまして、先行きのリスクに関する部分でこんな指摘が。

『更に、一人の委員は、米国で市場の景況感が振れやすいことを踏まえると、米国経済の先行きを巡る楽観論がいずれ後退し、長期金利が低下する可能性があり、その場合には、為替市場で円高が進み、日本経済にとっての下押しリスクとなりうると述べた。』

(;∀;)イイハナシダナー


・先進国の金融緩和の効果がどうしたこうした

こんな議論が。

『何人かの委員は、先進国の積極的な金融緩和策について、先進国と新興国の景気回復スピードに顕著な違いがある中で、為替レート、商品市況や資本移動といったルートを通じて、世界経済の持続的成長にどのような影響をもたらすかという点が、重要な論点のひとつとなっているとの認識を示した。』

ほほう。

『この点について、ある委員は、新興国の中には、固定相場的な為替政策を採っている国もあり、その場合、資本流入が国内の景気拡大に直結する点には注意が必要であると述べた。また、別のある委員は、国際商品市況は、新興国が高めの成長を続けている中で、先進国の金融緩和を睨んだ投機的な動きも加わり、全体として高水準で推移しており、今後の推移に注意が必要であると指摘した。』

ということで、本件に関してはまあ計ったように12月22日(会合は20と21ね)にこんなのが出てまして、ネタにはしなかった(海外中銀ネタとオペレーションネタで多忙だったもんで)のですが、まあ読んで味噌。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2010/rev10j22.htm/
新興国への資本流入と米国への還流について

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2010/data/rev10j22.pdf


・先行きリスクに関して

新興国の上振れと先進国の下振れという話なのですが、この部分に関しては1月の声明文ではリスクバランスが微妙に変わった気がします。まあ元々白川総裁は「リスクはバランス」と発言していましたが、他の委員とかでは「リスクは下方」という人もいましたし、その点で言えば、今後の各委員の講演等でリスク認識に変化があったかどうか、というのと1月の討議内容を見たいと思います。

ちなみに、『先行きのリスクについて』から始まる部分ですが、今回は上振れの部分が6行分(実質的に5行分)、下振れの部分が14行分(実質13行分)ありまして、この行数とかどうなるかなとか思うわけで(^^)。ま、当然ですが行数が多いからウェイトが高い訳ではないのですからそれはちゃんと中身を読まないといけませんけどね(^^)。

この時点では下方リスクの話の中で、米国のリスクが軽減されたという話もありますので、まあそーゆー意味では12月会合でもリスク認識は改善されてはいるのですけどね、ということで先進国の方だけ引用。

『委員は、バランスシート調整の重石を抱える先進国経済では、依然として下振れリスクが大きいとの見方で一致した。ただし、複数の委員は、先進国のうち米国では、良好な経済指標や景気刺激策などを受けて先行きの下振れ懸念が後退した一方で、欧州では、ソブリン・リスク問題の再燃に伴う長期金利の高止まりや緊縮的な財政運営などが、景気の足かせとなるリスクが高まっていると指摘した。』

まあ話が逸れますけど、昨日引用したコチャラコタ総裁の講演でもバランスシート調整圧力の問題の深さを指摘していますけれども、この辺りの議論は日本市場でヒーヒー言ってたクチとしては極めて親和的ですなあとか思うのでありまする。

『この間、ある委員は、情報関連財の世界的な在庫調整が長引く可能性を下振れリスクとして挙げた。また、別のある委員は、国際商品市況の上昇が日本経済にとっては交易条件の悪化につながるとの懸念を示した。』

交易条件の悪化キタコレですな。


・個別項目に関して少々

国内経済の個別項目に関してはまあ声明文および金融経済月報の通りなのですが、読んでてほほーと思ったところだけ引用。

雇用所得に関して:
『最近の厳しい就職環境との関連で、ある委員は、若年層の就業機会が失われることは、次世代の生産性低下につながり、将来の日本の潜在成長率を押し下げる方向で作用しかねないと懸念を示した。』

さいざんすな。

住宅投資に関して:
『住宅投資について、ある委員は、住宅取得促進税制が相応に効果を発揮する中、下げ止まっているが、雇用・所得環境の厳しさが残ることなどから、回復の明確化にはなお時間がかかる可能性が高いと指摘した。』

住宅投資の現状認識は1月に変わっているのですが、この辺りの委員の認識はどう変化したのか(してないかも知れませんが)。

消費者物価に関して:
『ある委員は、価格下落品目数から上昇品目数を引いた値が減少しており、価格下落の拡がりに歯止めがかかっていると述べた。』

ほほう。


○で、金融市場に関してと包括緩和に関する所ですが・・・・

例によって例の如く、時間配分を間違えた為に明日送りになってしまいましたが、金融面の動向に関する部分では何と申しますかこう禿しくアレな表現がございまして、明日は微妙に悪態成分が入る予定になりますので何卒よろしくお願いします(何を?)。