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2011/05/31

お題「東電とか政局とか/昨日の続きでFOMC議事要旨ネタ」

五輪招致に使う金があったら他の事に使った方が良いようにしか思えませんけど帝王趣味も程々にして頂きたく存じますがねえ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011052802000028.html

○S&Pが東電格下げとか

こちらはニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=axAZifqKovqM
東京電力の会社格付けを5段階引き下げ、ジャンク級に−S&P (1)

『5月30日(ブルームバーグ):格付け会社スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は30日、東京電力の格付けをジャンク級(投機的格付け)に引き下げた。銀行借り入れについて何らかの債務再編がなされる可能性が高まっているとの見解を示した。

発表によると、長期会社格付けば「B+(シングルBプラス)」に5段階引き下げた。長期優先債券格付けは2段階引き下げ「BB+(ダブルBプラス)」とした。いずれも従来は「BBB(トリプルB)」。短期会社格付けも「B」に2段階引き下げた。すべての格付けは方向性不確定の「クレジット・ウォッチ」を継続する。』(上記URLより)


んでもってS&Pのリリース(登録しないでも見れる奴)。
http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.article/1,0,0,0,1204866766588.html
東京電力の債券格付けを「BB+」に、CP格付けを「B」に引き下げ
会社格付けは「B+/B」に引き下げ、すべて方向性不確定の「クレジット・ウォッチ」を継続

ということで、長期優先債務と長期会社格付けが思いっきりスプリットになったのですけれども、どっちも格下げ攻撃となったんすよね。銀行融資が債務再編に掛かった場合には他の債権者的にはオイチイ話のような気もするのですけれども、まあ(Q&Aみたいなのがリリースされてるようなのでそれを見れば書いていると思うけど)新規でのファイナンスと言う観点からしたら銀行融資を債務再編しようかという企業が一般担保付とは言え社債発行したらそれってどうなのよとか言われるとまあそーゆー事なんですかねえ、よー知らんが。

で、上記S&Pのリリースにもありますけど、今回の決定理由の中に『1)政府による損害賠償支援の内容や正式決定の時期などが依然として不透明である』というのがございまして、まあ要するに「政府は早く東電の賠償支払いスキームの具体化と法案整備をしやがれコノヤロー」だというのだけは把握しました。

この前政府案出た時に格下げしたばっかりで、何か随分とタイミング早くねえかという感じではございます(まあ銀行決算発表後なのだけは気を使ったのかもしれませんが^^)けれども、まあ政府案のようなものが関係閣僚会議で公表された後絶賛たなざらし状態になっているので格付け会社がイラっとさんになりましたという事だと存じますが、そもそもどこぞの馬鹿官房長官が馬鹿な前提条件を恫喝的に言い出したのが本件具体化に向けての話をややこしくした原因でありまして、馬鹿官房長官におかれましてはミニ水力発電の研究の為に三途の川を視察に逝かれる事を心からお勧めして止まないものであります。

何かまあ短期的にはこの前の2兆円融資が効いて資金繰りダイジョーブ的な余裕ぶっかましモードになっているから政府案の具体化が全然進まないという事があるのかもしれませんが、まあたなざらしが長くなりすぎると色々と騒ぐ動きも出てきますがなっちゅう事ですので、実効性があって、変に債務再編とかしない賠償支払いスキーム(長期に渡って東電がタコ部屋送りになるようなスキームが今の政府案と理解してますが)の具体化を望む訳でございまする。


○でもまあ政治の方は政局モードで

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110531k0000m010084000c.html
民主党:不信任案めぐり攻防 小沢氏は党内の風探る

お縄先生お得意の壊し屋稼業キタコレ(・∀・)

・・・・・・まあ何か足元で電力供給能力の低下とかが懸念される中で「発送電の分離」とか「自然エネルギー」とかそれはそれで長期的な課題としては取り組む話ではあると思うのですけど、隣家で火事ボーボーとなっているのに「そもそも防火とは何ぞや」みたいな話をしているかのようなテイストを醸し出している馬鹿内閣におかれましては早々にご退場頂きたいものではありますが、そうは言ってもこの内閣コケたあと更に碌な事言い出さない河野某とか渡辺某とかが出てきて電力自由化とか東電解体(一般担保債権者が数兆円分あるのにそう簡単に解体とか言われましても債権者が許さんのだが)とか更に法的前提をまる無視して無茶振りをしてくるリスクもあるのですけどにゃあorz


そんな中で社会保障と税の一体改革(明後日出るんすか)の話も出てきたようで。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110531/t10013216751000.html
一体改革 原案の全容明らかに
5月31日 5時14分

『2015年度には、社会保障の充実化で4兆円かかり、抑制策の実施で、1兆3000億円程度を減額しても、社会保障の追加の費用として2兆7000億円程度が必要になると試算しています。これに加え、基礎年金の国庫負担の割合を2分の1に維持するための財源や、高齢化に伴う社会保障費の自然増などの費用の確保が必要だとして、2015年度までに消費税率を段階的に10%まで引き上げるとしており、法制上の措置を今年度中に講じるとしています。』(上記URLより)

あたしゃよく判らんのだが、何で出す方を先に決めて足りないから増税という話になるのやらという所なのですし、大体経済復興しないといけないのに今から消費税率上げとかナンデスカソラという感じなのですけれども、まあこれはあたくしよー判らんのでとりあえずスルーします。確か海外格付け会社がこの改革案の内容次第では日本ソブリンの格付けを見直す気満々だったような記憶がある(記憶違いだったらゴメンナサイ)ので、まあ原案が正式に出てからwktkしたいと思いますけど、明後日は内閣不信任案が出てそうな気も(^^)。

#年金支給開始70歳とかおめえ70まで働かせるのかよ勘弁じゃろ・・・・・

とまあそんな感じでどうも政治がスタックしてて困ったもんです。

で、4月FOMC議事要旨ネタの続き。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110427.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110427.pdf

○連銀スタッフによる金融市場の現状とか経済の見通しとか

『Staff Review of the Financial Situation』のところは華麗にスルーしますが、まあ全般的に金融環境は改善傾向ですね、という話をしています。

でもってその後が『Staff Economic Outlook』ですが、基本的には「目先の見通しを下げている」という感じでしょうなこれ。

『With the recent data on spending somewhat weaker, on balance, than the staff had expected at the time of the March FOMC meeting, the staff revised down its projection for the rate of increase in real gross domestic product (GDP) over the first half of 2011. The effects from the disaster in Japan were also anticipated to temporarily hold down real GDP growth in the near term.』

今年の前半の実質GDP成長率の予想を引き下げましたとな。

『Over the medium term, the staff's outlook for the pace of economic growth was broadly similar to its previous forecast: As in the March projection, the staff expected real GDP to increase at a moderate rate through 2012, with the ongoing recovery in activity receiving continued support from accommodative monetary policy, increasing credit availability, and further improvements in household and business confidence. The average pace of GDP growth was expected to be sufficient to gradually reduce the unemployment rate over the projection period, though the jobless rate was anticipated to remain elevated at the end of 2012. 』

ということで、先行きの見通しに関してはそんなに変わらず、景気拡大によって失業率も徐々に改善するという見通しになっています。んでもって物価に関してですけれども、こっちは目先の見通しを引き上げています。

『Recent increases in consumer food and energy prices, together with the small uptick in core consumer price inflation, led the staff to raise its near-term projection for consumer price inflation.』

ただし、先行きに関しての見方は大きく変化していません。

『However, inflation was expected to recede over the medium term, as food and energy prices were anticipated to decelerate. As in previous forecasts, the staff expected core consumer price inflation to remain subdued over the projection period, reflecting stable longer-term inflation expectations and persistent slack in labor and product markets.』

ということで、引き続き「長期的なインフレ期待の安定」「労働市場や生産市場における持続的なスラック」を反映して、予想期間においてコア物価指数は抑制された状態となるという前回FOMCでの予想を継続する、という話になっておりまして、今回は「足元で景気見通しを下げて物価見通しを上げたものの、中長期的な見通しに変化なし」というのが結論になっています。

ま、それが当るのか、それともBOE状態になってどんどんお洒落な状態になるのかは神の味噌汁。


○FOMCメンバーの見方

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』ですな。

この部分の第2パラグラフから。

『In discussing intermeeting developments and their implications for the economic outlook, participants agreed that the information received since their previous meeting was broadly consistent with continuation of a moderate economic recovery, despite an unexpected slowing in the pace of economic growth in the first quarter.』

1Qのスローダウンはあるけど経済は見通しのインラインという事で。

『While construction activity remained anemic, measures of consumer spending and business investment continued to expand and labor market conditions continued to improve gradually.』

ほほう。

『Participants viewed the weakness in first-quarter economic growth as likely to be largely transitory, influenced by unusually severe weather, increases in energy and other commodity prices, and lower-than-expected defense spending. 『As a result, they saw economic growth picking up later this year. 』

1Qのスローダウンは各種一時的要因(悪天候、エネルギー等の価格上昇、防衛支出が期待より低かった件)によるものということで年後半には成長はまた高まるという見通しですな。

で、第3パラグラフはもうちょっと先の見込みについて。

『Participants' forecasts for economic growth for 2012 and 2013 were largely unchanged from their January projections and continued to indicate expectations that the recovery will strengthen somewhat over time.』

ということで中長期的な見方は変化無しと。

『Nonetheless, the pickup in the pace of the economic expansion was expected to be limited, reflecting the effects of high energy prices, modest changes in housing wealth, subdued real income gains, and fiscal contraction at the federal, state, and local levels.』

景気回復ペースを抑制するものとしては、高水準のエネルギー価格、家計のバランスシート改善が緩やかにしか進まないこと、実質所得の伸びが抑制されていること、連邦政府や地方政府の財政健全化に向けた動きですとな。

『Participants continued to project the unemployment rate to decline gradually over the forecast period but to remain elevated compared with their assessments of its longer-run level.』

失業率の改善は続くが長い期間に渡って高水準が続くと予想。

『Participants revised up their projections for total inflation in 2011, reflecting recent increases in energy and other commodity prices, but they generally anticipated that the recent increase in inflation would be transitory as commodity prices stabilize and inflation expectations remain anchored. However, they all agreed on the importance of closely monitoring developments regarding inflation and inflation expectations. 』

インフレに関しては今年の予想を引き上げていますが、足元の要因は一時的であり、中長期的な予想に変化は無いとしていますが、今後もインフレ状況とインフレ期待の動向に「closely monitoring」が必要との話をしていて一応警戒ちっくになっていまふ。


第4パラグラフ。

『Participants' judgment that the recovery was continuing at a moderate pace reflected both the incoming economic indicators and information received from business contacts. Growth in consumer spending remained moderate despite the effects of higher gasoline and food prices, which appeared to have largely offset the increase in disposable income from the payroll tax cut. Participants noted that these higher prices had weighed on consumer sentiment about near-term economic conditions but that underlying fundamentals for continued moderate growth in spending remained in place. These underlying factors included continued improvement in household balance sheets, easing credit conditions, and strengthening labor markets. 』

つーことで、消費支出の話をしてますが、減税効果による可処分所得上昇をガソリンおよび食品価格の上昇が相殺してますとゆーことですが、物価上昇による消費者センチメントへの悪影響はあるけれども、基調的な経済のファンダメンタルは消費者センチメントを引き上げる方向にありますよね、という話ですな。

と、ここで時間が無くなったので今日はここで勘弁orz










2011/05/30

お題「よく見ると色々とネタがある4月FOMC議事要旨なのでまだ引っ張る」

まあ何だ、次のFOMCまであと3週間あるのでとりあえずもさもさと。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110427.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110427.pdf

○25日にうだうだ書いた部分の補足:資産売却ペースを所与とするか

補足と申しますとアレですが、まあ要するに読者の皆様にご教示賜ったのでその成果を還元するのですが(汗)。

連銀スタッフによる説明の中での重要な論点に関してですが。

『A second key issue was the extent to which the Committee might choose to vary the pace of any asset sales it undertakes in response to economic and financial conditions. If it chose to make the pace of sales quite responsive to conditions, the FOMC would be able to actively use two policy instruments--asset sales and the federal funds rate target--to pursue its economic objectives, which could increase the scope and flexibility for adjusting financial conditions.』

『In contrast, sales at a pace that varied less with changes in economic and financial conditions and was preannounced and largely predetermined would leave the federal funds rate target as the Committee's primary active policy instrument, which could result in policy that is more straightforward for the Committee to calibrate and to communicate.』

25日に引用してよく判らんとかエエカゲンな事を書いたのですが(汗)、この部分に関しては「資産売却を行う場合にどういう方法を取るか」という論点について、2つの方式を比較して話をしているという事のようですな。

つまり、前半部分に書いてあるのは経済金融情勢の変化に対応し売却ペースを弾力的に変更するようなやり方で、金融政策のツールとして金利の誘導と売却ペースの変更という二つのツールを使える形になり、状況への対応がより柔軟に行えるメリットがある。また後半部分に書いてあるのは売却ペースを事前にアナウンスして一定のペースで実施し、金融政策のツールとしてはFFレートの誘導のみとなるので、前者の方法と比較して政策の目線を示しやすく、コミュニケーションがやりやすくなるメリットがあるという事ですな。


んでもって、これまた25日に引用した部分でワケワカンネと書いたところですけれども、この部分もまた再掲。

『Participants expressed a range of views on some aspects of a normalization strategy. Most participants indicated that once asset sales became appropriate, such sales should be put on a largely predetermined and preannounced path; however, many of those participants noted that the pace of sales could nonetheless be adjusted in response to material changes in the economic outlook. Several other participants preferred instead that the pace of sales be a key policy tool and be varied actively in response to changes in the outlook. 』

出口政策における資産売却とFF金利誘導のツール選択に関しては、多くのFOMCメンバーは資産売却ペースを事前にアナウンスして(さっきでいう後者方式)ペースを決めて行う(当然ながらその間に景気見通しの顕著な変化があった場合にはペースの変更もあるが)という方法を支持し、一部のFOMCメンバーは前者方式でFFレートと資産売却のペースの両方をツールにすべきである、という話をしています。

つまり、出口政策においてFFレート引き上げや資産売却を行う、という事になった場合ですが、基本的に現状のFOMCにおける大勢見解は「資産売却のペースを予めアナウンスして行っていく」という事になるようですな、うんうん。


んでまあその続き(遅くなってすいません)です。

○FFレートの効果的な誘導について

とは言いましてもFFレートの誘導が重要なのでありまして、そちらがそもそもワークしないとだめですよねという話になる訳で、その辺についての論点が先日引用した部分の続きになります。『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』の第7パラグラフ以降。

『Most participants saw changes in the target for the federal funds rate as the preferred active tool for tightening monetary policy when appropriate.』

ということで、まあ正常化という事ですから金利誘導という「伝統的政策」に戻る訳ですからFFレートの誘導がメインになるんでしょうが。

『A number of participants noted that it would be advisable to begin using the temporary reserves-draining tools in advance of an increase in the Committee's federal funds rate target, in part because doing so would put the Federal Reserve in a better position to assess the effectiveness of the draining tools and judge the size of draining operations that might be required to support changes in the interest on excess reserves (IOER) rate in implementing a desired increase in short-term rates.』

とりあえず資産売却ではなくて、バランスシートの一部を不胎化するツール(要するにリバースレポとターム預金ファシリティですが、そういやGSEのリバースレポ参加というのは実効FFレートのコントロールには良いお話ではございますな)を使って、どの位の吸収が必要かを確認するのが重要と。

『A number of participants also noted that they would be prepared to sell securities sooner if the temporary reserves-draining operations and the end of the reinvestment of principal payments were not sufficient to support a fairly tight link between increases in the IOER rate and increases in short-term market interest rates.』

で、もしこのツールでFFレートのコントロールが難しいのであれば、早期の資産売却の準備をすべきという事ですので、FFレートの引き上げ時に実効FF金利のコントロールが難しい場合には早期の資産売却もありうべしという話になりますわな。


○コリドアシステムの導入とかインフレターゲットとか

次のパラグラフから。

『In the discussion of normalization, some participants also noted their preferences about the longer-run framework for monetary policy implementation.』

『Most of these participants indicated that they preferred that monetary policy eventually operate through a corridor-type system in which the federal funds rate trades in the middle of a range, with the IOER rate as the floor and the discount rate as the ceiling of the range, as opposed to a floor-type system in which a relatively high level of reserve balances keeps the federal funds rate near the IOER rate.』

要するに実効FF金利のコントロールを有効にする為にコリドアシステムを導入するのはどうでしょうという話、つーかどうも今後はコリドア方式になるっぽいようでございますな、うんうん。

『A couple of participants noted that any normalization strategy would likely involve an elevated balance sheet with the federal funds rate target near the IOER rate--as in floor-type systems--for some time, and therefore the Committee would accumulate experience during the process of normalizing policy that would allow it to make a more informed choice regarding the longer-term framework at a later date.』

2名の主張する「a more informed choice regarding the longer-term framework」ってナンジャラホイという話ですが、あたくしが勝手に想像するのは「明示的な物価ターゲットの導入」というインフレーションターゲットの件でしょうなあとか思うのですけどどうでしょ。


○連銀スタッフの経済認識

『Staff Review of the Economic Situation』のところですが、まあこれを引用するとキリが無いのでスルーしますけど、基本的にはそんなに弱くは無いです。

・労働市場:堅調推移も長期失業者などの問題は多い
・鉱工業生産:力強いペース、自動車には日本の震災の影響
・個人消費:やや減速、センチメントは3月に大きく低下
・住宅市場:弱い
・企業設備投資:力強いペース
・在庫投資:拡大
・政府支出:低下
・貿易収支:貿易赤字がやや縮小

とまあそんな感じで話が続きまして、消費者物価に関してはこんな話です。

『Overall U.S. consumer price inflation moved up further in February and March, as increases in the prices of energy and food commodities continued to be passed through to the retail level.』

川上の物価上昇の価格転嫁の動きとな。

『More recently, survey data through the middle of April pointed to additional increases in retail gasoline prices, while increases in the prices of food commodities appeared to have moderated somewhat.』

ということですが、コア価格は安定しているというお話が続く。

『Excluding food and energy, core consumer price inflation remained relatively subdued. Although core consumer price inflation over the first three months of the year stepped up somewhat, the 12-month change in the core consumer price index through March was essentially the same as it was a year earlier.』

若干上昇したものの抑制された状態が続いていると。

『Near-term inflation expectations from the Thomson Reuters/University of Michigan Surveys of Consumers remained elevated in early April. But longer-term inflation expectations moved down in early April--reversing their uptick in March--and stayed within the range that has prevailed over the past several years.』

ということで、足元のインフレ期待は上昇しているが、長期的なインフレ期待は安定していて一部では下がっているものも、とな。

で、そのインフレに影響を与える労働者賃金ですけれども、こちらは相変わらずの「労働市場の大きな余剰」によって抑制されていますというお話。

『Available measures of labor compensation suggested that wage increases continued to be restrained by the presence of a large margin of slack in the labor market. Average hourly earnings for all employees were flat in March, and their average rate of increase over the preceding 12 months remained low.』

で、最後の最後に世界経済の話になるのがメリケンクオリティ(ちなみにご存知の通り日銀の金融政策決定会合やら金融経済月報などでは海外経済情勢が先に来る^^)なのですが、まあそんなに変わった話をしている訳ではないがその部分を引用。

『The pace of recovery abroad appeared to have strengthened earlier this year, but the disaster in Japan raised uncertainties about foreign activity in the near term.』

ほう。

『In the euro area, production expanded at a solid pace, though indicators of consumer spending weakened. While measures of economic activity in Germany posted strong gains, economic conditions in Greece and Portugal deteriorated further.』

ユーロエリアはドイツが牽引して堅調とな。

『The damage caused by the earthquake and tsunami in Japan appeared to be sharply curtailing Japanese economic activity and posed concerns about disruptions to supply chains and production in other economies.』

日本は震災の影響。

『Emerging market economies (EMEs) continued to expand rapidly.』

新興国は引き続き急速な拡大を続けていると。

『Rising prices of oil and other commodities boosted inflation in foreign economies. However, core inflation remained subdued in most of the advanced foreign economies, and inflation in the EMEs seemed to have declined as food price inflation slowed.』

最後にインフレの話が出ているのがチャーミング。

ということで、時間と量の関係で本日はこの辺で、なんぼFOMC議事要旨で引っ張りますねんというツッコミはしないように(^^)。






2011/05/27

お題「総裁講演とか」

台風2号機ちと強すぎなんでこっち来んな(−_−メ)

○野田審議委員の後任候補にSMBCからSMBC元専務取締役の石田さん

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a6eIFmH5b.yU
政府:三井住友ファイナンス&リース石田社長提示−日銀委員(2)

『5月26日(ブルームバーグ):政府は26日午後、議院運営委員会両院合同代表者会議で、6月中旬に任期切れとなる日本銀行の野田忠男審議委員の後任として、三井住友ファイナンス&リース社長の石田浩二氏(63)を起用する国会同意人事を提示した。衆院議院運営委員会で配布された資料で明らかになった。国会で同意を得られれば、同社社長を辞職する6月下旬に任命の予定。任期は5年。』(上記URLより)

ということで今回は住友銀行昭和45年入行の石田さんがノミネートされましたです。でまあどのようなお方かというのは住友銀行の中の人に聞いてみないとワカランチ会長ですのでとりあえず誰か教えて下さいとゆー所ですが、昭和45年入行ですと昭和最後とか平成の頭に入行した人が新人の頃に既に支店長クラスとかのような気が。

でまあ野田審議委員の場合は企画とか営業とかのお方で特に市場系の方では無かったようですけれども、金融政策に関しては「筋を通す」方という感じで、また米国の不良債権問題が景気に与える悪影響に関しては早いうちから懸念を表明していたなど特徴のある見解を示してくれましたので、石田さんにも期待という事で。

ちなみに、かなりどうでもいいですが今回「へ〜」と思ったのはSMBCの住友の方から審議委員候補が出た事でして(^^)、上記ブルームバーグ記事にありますように、新法になってからは武富さん(興銀)→中原さん(東銀)→野田さん(第一勧銀)と旧特殊銀行の流れで来て(野田さんは第一入行なので特銀(は勧銀)ではないが)まして、商銀系から来るのか(まあSMBCから出すとなると商銀系しかないけど)というのと、もうちょっと遡って過去の総裁を見ると民間銀行からの総裁就任って三菱の宇佐美総裁で、戦前に遡ると第一(渋沢敬三)と三井(池田成彬)と微妙だが安田(結城豊太郎)と関東系財閥から着てまして、関西系初ですなあとかいうかなりどうでも良い事に「ほほー」と思うのはアホですかそうですか。

歴代総裁はこちら(^^)→http://www.boj.or.jp/about/outline/history/pre_gov/index.htm/

#なお、戦後のスリーピングボード時代の政策委員についてはさすがに知らんので、その間に関西系から政策委員が出ていた可能性はありますけど・・・・

不良債権処理問題に関する経験値の高い人が来るというのは野田審議委員を見てまして悪くは無かったかなあとは思いますが、個人的にはオペレーションとかの細かい話が得意な人が入ってくれると、執行部ペースになりがちなオペ技術の問題とかの議論が深まって実際にフィットしやすくなると思う訳でございます。まあ金利が何せこの有様ですと、オペレーションの細かい所が結構重要になっております次第ですので、そーゆー意味では武富さんみたいなマニアが候補になると良いのですけど(^^)。


○総裁講演は力の入ったものだったようで

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110525a.pdf
大震災後の日本経済:復旧、復興、成長
── 内外情勢調査会における講演 ──

でまあ結構長いのですが、途中をホイホイ拾って参ります。


・先行き見通しは下振れ警戒を強調

『2.日本経済の現状と先行き』の『先行きの見通しを巡る不確実性』から。

先に海外経済の不確実性についての話をしていますがそこは華麗にスルーでござる。

『そのうえで、やはり不確実性が大きいのは、今回の震災が日本経済に及ぼす影響です。中でも、震災に伴う各種の供給制約が、いつ頃解消していくかということが重要なポイントです。』

では何でしょという話ですが。

『電力については、冷房需要がピークを迎える夏場に需給の逼迫が予想されますが、電力会社の供給能力増強、自家発電の活用、企業・家計における節電や需要平準化の工夫など、様々な対策も講じられつつあります。また、サプライ・チェーンについては、一頃に比べて事態は改善の方向に向かっています。しかし、現時点で、電力の供給不足やサプライ・チェーン問題の帰趨について、正確に見通すのが難しいことも事実です。』

ほほう。

『夏場の電力需要は気温に大きく左右されますし、浜岡原発の問題を含め、各地の原子力発電所の稼働状況によっては、本年夏以降も長期的な電力の供給に不安が残る可能性があります。』

原発全部停止リスクキタコレ。

『また、サプライ・チェーンがどの程度速やかに再構築されていくかは、業種や製品によって様々です。原発事故を巡る情勢や、雇用・所得環境などによっては、消費マインドの本格的な回復に、時間を要する可能性もあります。』

雇用所得環境の悪化リスクキタコレ。

『逆に言うと、供給制約を巡る問題が想定よりも早く解決の方向に向かうと、景気は見通しよりも上振れることを意味しています。』

ほほー。

『このように、供給制約の解消時期については不確実性が高いと言わざるを得ませんが、日本銀行としては、政策運営に当たり、当面は、震災の影響を中心に下振れリスクの方を意識することが適切であると考えています。』

下振れリスク注意としっかり言い切っておられまして誠に結構な話ですな、うんうん。

『確かなことは、出来るだけ早く供給制約を取り除くことが、下振れリスクを払拭していくための最重要課題であるということです。』

じゃあその供給制約解消に向けて日銀がやることって何よと言いますとまああんまり無いのですけど、途中を端折りましてその結論はこんな感じ。

『勿論、供給制約が解消するまでの間に、追加的な需要の減少を招かないよう、マインドの悪化やリスク回避姿勢の高まりを防ぐことが重要です。こうした観点から、日本銀行は震災発生直後から様々な措置を迅速に講じていますが、この点については、後ほどご説明します。』


・成長基盤強化オペの拡充をしたいようですな

で、この後物価見通しの話があるのですが、そこをスルーすると次のお題が『3.日本経済の中長期的な課題への取り組み』となります。んでもってそこの小見出しの最初が『(1)成長力強化に向けた取り組み』でして、その中の話が結構盛りだくさんで、まあ総裁としてはここに気合を入れているんだろうなあと思われます。で、その話は素敵に長いので割愛なのでございますが、冒頭の所でこんな話を。

『本日、私が強調したいことは、震災への対応に全力を注いでいく中にあっても、従来から認識されていた中長期的な課題への対応を、後退させてはならないということです。むしろ、被災地の復興を始め、震災後の状況への対応を、成長力強化に向けた新たな出発点として位置付けていく構えが必要だと思います。』

んでまあ先に最終章の引用をしますと、金融政策に関する話のところでもこのような話をしています。

『このほか、日本銀行では、昨年6月に「成長基盤強化を支援するための資金供給」を開始し、既に3回の貸付を実施しています。先ほどお話ししたように、震災からの復興という課題は、成長力の強化という日本経済の積年の課題と重なる面があります。先行き、復興への取り組みが本格化していく中で、中央銀行に期待される役割は、金融機関の活動を間接的に支援していくことです。今後は、復興資金需要の出方に加え、それに対する民間金融機関の取り組みや政府等による支援の状況なども踏まえつつ、中央銀行としてどのような対応が有効か、検討していきたいと考えています。』

・・・・・・・どうもこの辺を見ていますと、総裁の思いとしては基金買入拡大とかよりも成長基盤強化オペを拡充したいっぽい感じを受けるんですけどどうでござんしょうかね。この調子だと被災地金融機関向けのオペレーションに関してもエンドが来た後に成長基盤強化に乗換とかになりそうな勢いでございますけれども、こらまた事務が煩雑そうなオペの拡充の香りではございます上に、金融市場の片隅の人的にはあまり市場オリエンテッドじゃない話ので成長基盤強化オペの拡充ってちとうーむという所ではございますけどにゃあ。


・国債引受論への反発キタコレ

さっきのところに戻って、『日本経済の中長期的な課題への取り組み』の2番目とは何ぞやという話ではございますが、それは『(2)財政バランスの確保に向けた取り組み』なのでございました(^^)。

『以上申し上げたように、中長期的な成長力の引き上げは、日本経済が取り組むべき重要な課題ですが、これと切り離して考えることのできないもう一つの課題が、財政バランスの確保に向けた取り組みです。(途中割愛)このように、成長力強化と財政再建という2つの課題は別々の課題ではなく、表裏一体のものです。どちらかを優先するということではなく、同時に推進していくべきものです。』

キタコレ。

『日本の財政は、1990年代以降、累次の景気対策や社会保障費の増加を背景に大幅な赤字が続いており、その立て直しは震災前から待ったなしの状況にありました。そこへ震災が起こり、まだ正確な見積もりはできませんが、被災地の復旧・復興に必要な財政資金が増加していくことは明らかです。当面の財政バランスがさらに悪化すると予想される今だからこそ、中長期的な財政再建の道筋を、これまで以上にはっきりと示すことが必要になってきています。』

ほほー。

『幸い、現在の日本の長期国債金利は、世界的にみても低位で安定的に推移しています。また、国債の発行市場をみても、震災以降、国債は順調に消化されています。このように国債市場が安定を維持していることを説明しようとすると、2つの理由が挙げられます。』

『第1の理由はマクロの貯蓄・投資バランスに関わるものですが、家計および企業部門の貯蓄超過状態が続いており、また、金融機関の資本基盤もしっかりしているため、差し当たり国債を買うお金の原資には困らない、ということです。』

『第2の理由は、将来の政策運営に対する信認に関わるものです。財政政策について言うと、財政バランスは非常に悪化しているにもかかわらず、最終的にはその改善に向けた取り組みが行われるはずであるという予想です。金融政策について言うと、物価安定のもとでの持続的な成長の実現という目的達成のために運営されていることについて、信認が置かれていることです。』

信認キタキタキタ。

『財政状況の深刻さにもかかわらず、ただ今申し上げた信認こそが、国債市場の安定を支えていると言えます。人間は長く続いた傾向が今後も続くと漠然と思いがちですが、国債市場の安定に対する信認はこれを維持しようとする意思の力で支えられています。それだけに、国債市場の安定が保たれている間に、成長力の強化と財政の立て直しに向けた動きを進めていくことが不可欠です。また、そうした努力によって市場の安定をより盤石なものとすることは、震災からの復旧・復興を支える環境を整えることにも資すると考えられます。』

力が入ってまいりました!!!!

『なお、日本の財政赤字が既に大きいため、新規財政支出の財源が検討される際には、日本銀行が国債を引き受ければよい、という議論がなされることがあります。しかし、無から有を生み出す「打ち出の小槌」のような便利な道具は、そもそも存在しません。』

キターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!

『中央銀行による国債引き受けにせよ、民間金融機関による国債の市中消化にせよ、最終的には、企業や家計の貯蓄を原資として国債が発行されるという大きな構図は全く同じです。むしろ、中央銀行による国債引き受けには、財政規律の低下を招きやすいという深刻な副作用があります。投資対象のリスクを評価するという市場のチェック機能を活用せずに、国が、中央銀行による国債引き受けに頼るようになれば、いつの間にか、将来の納税者の負担能力を超える水準まで国の債務が膨らんでしまう可能性があります。』

さ あ 盛 り 上 が っ て 参 り ま し た !!!!!!

『震災後、関心が持たれることが多くなった高橋財政期の日銀引き受けも、最初は「一時的」との位置付けで始まりましたが、やがて引き受け額の増額と通貨の膨張に歯止めが効かなくなり、最終的には激しいインフレをもたらした歴史を思い返す必要があると考えています。』

「一時の便法」って奴ですな。

『以上のような議論に対し、引き受けが不適当ということであれば日銀が市場から国債を買い入れれば良いという議論が聞かれることもあります。日本銀行は現在、国債を大量に買い入れていますが、その目的は、成長に伴う銀行券需要の増加に対応した市場に対する安定的な資金供給です。そうした目的を超えて、中央銀行の国債買い入れが財政ファイナンスを目的に行われているとみられるようになると、引き受けと同じ問題が生じます。』

と、まあいい感じで白川総裁の話が展開されたのでありました。

まあ国債買入に関しても市場が財政マネタイズと見なせば直接引受と同じ結果になりますが、まあ一応野放図に拡大しないというイメージがあるのと、そもそも国債出た分のおアシが国内でグルグル回っているので国債消化しているとか、まーそれなりに何だかよく判らんけどバランス取れているので回っているっちゃあ回っているのかも知れません。

まーこの手の話って、定量的にどうのこうのという話が一番フィットしないネタでありまして、端的に申し上げると財政マネタイズやってそれがどう見ても歯止め効かないだろと思われた瞬間に試合終了になりますよねってえ話なので「何兆円買ったら信認崩壊」というその「何兆円」という話をしろと言われてもこれがまた全くワカランチ会長としか申し上げようが無いっすけど、まあ無限に赤字国債発行する側から無限に国債買入が拡大するのは不可能(さすがに「無限に」やったら円がジンバブエドル状態になるでしょ)ですわなという話ですからねえ。

で、現政権の無茶振りと何でもかんでもばら撒きたがる性癖を見ていると、こいつらにうっかり財政マネタイズあるいは財政マネタイズもどきなどという最終兵器を与えると日本経済に巨神兵が暴れまわって火の海になってしまうだろうなあという恐怖感があたくしにはあるんですけれどもどうでしょうかね。

とまあ最後はあたくしのどうでも良い雑感で恐縮至極でございました。







2011/05/26

お題「決定会合議事要旨(4月28日)から/その他メモ」

本当は総裁講演が中々のイイハナシダナーなのですが、そちらに行く前に余計な悪態メモを書いたせいで時間が無くなったのは誠に残念(汗)

ということで今日も悪態が来るのだが。

○てめえふざけるなああああああああああああ!!!!!

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ax1hBHBJim_Y
枝野氏:「私は求めていない」、東電向け銀行債権放棄−国会答弁(1)

『5月25日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償スキームをめぐり銀行が東電向け債権を放棄する必要性があるかどうかの問題について、枝野幸男官房長官は25日の国会答弁で、記者会見での質問に対し見解を示しただけで、自ら債権放棄を求めたものではないと強調した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・(゚Д゚#)ゴルァァアアアァァァ!!

えーっと、どうもこの官房長官様は無法者の上に自分の発言の意味が判っておられないようで、まあきっとお気楽野党の評論家気分で権力を振り回しておられるということなんでしょうかねえ。

『また、同氏は25日の答弁で、原発事故の収束に向けた関連企業の業務継続、原発事故賠償、東電管内の電力供給安定の3点を確保するため「会社更生等の法的手続きは残念ながら取れないと考えている」と述べた。』(上記URLより)

>残念ながら
>残念ながら
>残念ながら

・・・・・・・・??????????

何でこう意味不明に強硬なのかと考えますと、そもそも原子力政策を推進していた政府がありまして、原子力保安院とか作って管理監督を責任取って実施していた筈なのですが、その論点を一連の無法発言でスルーさせようという事なんですかね、とでも考えないとイミワカンネ。

大体ですな、物権に関する法の前提を平気でひっくり返して融資の放棄だのを要請するような発言を内閣官房長官が平然と行うっつー時点で、「この国は後付で法的枠組みがひっくり返される国」(事後法でいきなり逮捕されたりいきなり財産没収されるようなアホな事の起きない国)という認識になる訳でございまして、従来はアジアの中でその手のリスクの無い国として日本は扱われていた筈でありましたが、枝野官房長官の債権放棄要請発言ってそれを突き崩すという意味で激しく国益を損ねるリスクのある発言なんですよね。

然るに、「そんな話をした訳ではない」と「勝手に解釈するお前らが悪い」と言わんばかりの発言とはこれまた酷い開き直りでして、発言を撤回して謝罪しないとそもそも話が始まらないと思うのですけど、何と申しますかこの官房長官様におかれましては可及的速やかに天寿を全うして頂きたいものでございますとしか申し上げようがございませんな。

ということで、金融市場に(゚Д゚#)ゴルァの反響を巻き起こした官房長官のご発言に関してメモメモ悪態なのでございました。

ちなみに、政策投資銀行も債権放棄に関してはこのように仰せのようで(^^)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a2m.Rw8eR_f0
政投銀の荒木副社長:債権放棄に慎重「まず政府と東電間で協議を」

『5月25日(ブルームバーグ):日本政策投資銀行の荒木幹夫副社長は25日の決算会見で、東京電力の原発事故補償の枠組みは金融機関の債権放棄が前提になるとの枝野幸男官房長官に発言について、「まずは東電と政府で考え方を整理し、金融機関を含む関係者とそれを共有させてもらわないと、われわれ自身も判断できない」と慎重姿勢を示した。

同副社長は一般論として「債権放棄は金融支援としては不快だ。当然事業者もその後の調達に支障が生じる。最後の手段ということだと思う。その辺を含め考え方をきちっと理解したい」と言及。ただ「電力は国、産業、生活にとって重要なインフラで具体的要請なり枠組みが見えてきた段階ではお手伝いできることは力を尽くしたい」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー


では気を取り直して本来のネタ。

○4月28日決定会合議事要旨から

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110428.pdf

展望レポートの回ですが、良く考えたら(良く考えなくてもそうですが)浜岡原発のストップ話が無かったのですが、では景気の先行き見通しがどうなっているのとか西村さんの提案とかどうだったのというような話を少々。


・海外経済に関しては強めですが

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、海外の金融経済情勢について議論し、海外経済は、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで、回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。』

ということで、米国、ユーロエリア、新興国と話が続くのですが、ここのトーンは基本的に強めの見通し。

『米国経済について、委員は、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石として作用しているものの、回復を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、FRBが大規模な国債買入れを6月に終了することを決定したものの、買入れた資産の残高削減や利上げなどの金融引き締めには慎重であるため、緩和的な金融環境が維持され、景気回復が下支えされていくとの見方を示した。この間、多くの委員は、最近のエネルギー価格の上昇が個人消費や物価に与える影響に、注意が必要であると指摘した。』

『ユーロエリア経済について、委員は、ドイツなどの一部の国が牽引することで、国ごとにばらつきを伴いつつも、全体としては緩やかに回復しているとの認識を共有した。ただし、何人かの委員は、ギリシャの債務再編観測の台頭などを背景に、周縁国の国債利回りの対ドイツ国債スプレッドが再び拡大していることなどから、金融市場のリスクが再び高まっているとの見方を示した。』

『新興国・資源国経済について、委員は、旺盛な内需や海外からの資本流入が続くもとで、高成長が続いているとの認識で一致した。多くの委員は、景気過熱に、国際商品市況高も重なって、インフレ圧力が高まっており、金融引き締めの動きが続いているものの、景気過熱感やインフレ懸念は十分沈静化されていないとの認識を示した。』

新興国の過熱懸念はありますな。


・国内経済は下振れ懸念の指摘が多めですかね

まず現状認識に関して。

『複数の委員は、企業や家計のアンケート調査は、マインドも大きく落ち込んでいることを示していると指摘した。個人消費の動きについて、複数の委員は、原子力発電所の事故などに伴うマインドの悪化や風評被害、自粛ムードなどにより、外食や旅行などのサービス消費を中心に抑制傾向が顕著となっていると述べた。ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえると、企業と家計のマインドが相乗的に悪化し、それに伴って需要が減退するリスクを感じると述べた。』

その一方で・・・・

『これに対し、何人かの委員は、生産や支出の落ち込みは、前回決定会合でも想定していたものであると指摘した。ある委員は、海外経済が回復を続けていることに加え、企業による生産再開に関するミクロ情報が増えていることを踏まえると、3月がボトムとなる可能性が高まっているとの見方を示したうえで、世界的に需要が蒸発し、生産や輸出が数か月にわたって大きく落ち込んだリーマン・ショック後とは状況が異なると指摘した。別のある委員は、自粛ムードは修正されつつあるほか、計画停電の解消に伴い百貨店等の営業時間が平常どおりに戻る中、客足が戻ってきたといった声も聞かれ始めるなど、マインドの悪化が加速している様子はないと述べた。』

まあ実際問題としてはマインドの悪化は歯止め掛かった感がございますな。


で、先行き見通し(というか展望レポート)ですが。

『2011年度前半の経済情勢について、何人かの委員は、供給制約に加えて、原子力発電所の事故に伴うマインド悪化などを受けた需要減退も、景気を下押しするとの見方を示した。』

『電力について、複数の委員は、電力会社による供給力の積み増しが進み、夏季の電力供給の制約が当初懸念されたよりも緩和される可能性が高まっていると述べた。ある委員は、サプライチェーンの再構築については、当初の予定よりも早まるといった情報も増えてきていると述べた。』

『一方、一人の委員は、一部の企業から、代替性の低い部品の供給制約が残るため、年末頃まで工場の本格稼働は難しいとの声も聞かれると指摘した。』

ということで、その後サプライチェーンの回復は比較的順調ですが、電力に関しては浜岡原発の停止というのが入りましたので今後が懸念されますな。

『2011年度後半にかけての経済情勢について、委員は、供給制約が和らいでいけば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながっていくとの認識を共有した。2012 年度入り後について、複数の委員は、輸出・生産から所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとの見方を示した。』

というのは展望レポートでも示されている通り。その中ですけれども・・・

『多くの委員は、資本ストックの復元に向けた需要の増加が続くとの意見を述べた。この間、複数の委員は、資源価格の高騰に伴う交易条件の悪化が、経済を下押しする要因となると指摘した。これらの委員のうち一人の委員は、供給制約が相応の期間継続する結果、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力が生じることもあって、景気は全体として、震災前に想定していた回復経路よりも下方にシフトした経路を辿るとの見方を示した。別のある委員は、1月の中間評価と比べれば、2011年度は大幅な下振れで、回復が後ずれする見通しとなっており、更なる下振れのリスクも大きいと述べた。』

ということで、まあ下振れリスクの話の方が多いっちゅう感じですな。


・上振れ、下振れ要因

『まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、@ 今回の震災のわが国経済に対する影響、A 震災を契機とする企業や家計の中長期的な成長期待の変化、B 海外経済の動向、C 国際商品市況が一段と上昇した場合の影響、の4点を挙げた。』(機種依存文字入り勘弁)

というのは展望レポートどおりですが、この中身の検討部分が以下続く。

『震災の影響について、委員は、供給面の制約が解消する時期に関する不確実性が大きいとの認識を共有した。』

『何人かの委員は、原子力発電所の事故の帰趨などがマインドを通じて及ぼす影響にも留意する必要があると述べた。複数の委員は、原子力発電所の事故がここまで深刻かつ持続的な問題に発展するとは想定しておらず、不確実性は大きくなっていると述べた。』

『これに対し、多くの委員は、サプライチェーンの修復の見通しが徐々に明らかになっていることや、夏場の電力不足に対しても需給両面から対応が進んでいること、金融市場が著しく緊張する可能性が薄らいできていることなどから、不確実性は依然として大きいものの、縮小方向に向かっているとの見方を示した。』

ということで、多くの委員はこの時点では「不確実性は縮小」だったのですけれども、その後はご案内のように浜岡原発停止の問題があり、更に東電賠償スキーム策定における枝野官房長官の馬鹿発言があったことによって東電の信用リスクスプレッドが大幅に拡大したという要因もございまして、はてさてこの辺りのリスク認識はどうなったのかなというのは気になるところです。

『長期的な観点からみた震災の影響について、ある委員は、原子力発電に対する不安が、先行きのエネルギー政策を通じて、経済全体のコストを著しく変化させる可能性があると指摘した。』

これはその後に浜岡原発の停止が決定しましたから確かにご指摘の通りですわな。

『何人かの委員は、サプライチェーンの障害などへの対応が大幅に遅れたり、日本製品の安定供給に対する信頼低下などが生じた場合、生産拠点の海外への移管が加速したり、国内部品メーカーが海外企業に顧客を奪われたりする可能性があると述べた。他方、ある委員は、震災後の様々な懸念材料が早期に解消方向に向かえば、景気の見通しが上振れる可能性もあると指摘した。別のある委員は、震災の経験を踏まえた生産拠点の地域分散化や省エネルギー化が新たな設備投資などにつながる可能性もあると述べた。』


・物価安定の理解に関して中々お洒落な話が

『W.「中長期的な物価安定の理解」の点検』から。

『委員は、まず、「中長期的な物価安定の理解」を検討するうえでの論点について議論を行った。』

『わが国の消費者物価指数のバイアスについて、何人かの委員は、引き続き大きくないと述べた。なお、複数の委員は、バイアスが基準年から離れるに従い大きくなる性質があることを踏まえ、そうした性質がみられにくい「ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数」を補完的に利用するなどの工夫をしていく必要があるとの認識を示した。』

ほほう。

『また、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」について、多くの委員が、これを勘案する必要があると指摘した。ある委員は、わが国の潜在成長率が低いことや、中長期的には財政政策の発動余地が限られることから、ある程度の「のりしろ」を確保しておくことが重要であるとの見解を示した。』

『別の委員は、のりしろは必要だが、多少大きなのりしろがあっても、金融危機などの大きな問題に事後的に対応することは困難であり、事前に金融面での不均衡の蓄積を抑制するよう努めることが重要であると指摘した。』

マクロプルーデンスキタコレ(・∀・)

『人々が安定していると考える物価上昇率について、ある委員は、わが国は物価上昇率が低位で安定する状態が長く続いているため、諸外国と比べて低いと考えられると述べた。この委員は、2008年夏に消費者物価指数の前年比が2%を越えた際、それ以上の上昇が容認され難い様子であったことも付け加えた。』

そうでしたっけ???あまりイメージ無いのですが????

『複数の委員は、物価が安定していると理解される物価上昇率を中央銀行が示すことは、国民の将来の政策金利に関する期待形成に働きかけるうえで有用であるが、数値が過度に注目され、政策発動の制約となると、かえって物価の振幅を大きくすることを指摘し、幅を持って示す現状の「中長期的な物価安定の理解」に基づいた金融政策運営の枠組みは、適切であるとの認識を示した。』

これまたキタコレでありますな(^^)。


・西村副総裁の提案に対して

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『この間、一人の委員が、資産買入等の基金の増額を行うことが適当であるとの意見を述べた。この委員は、原子力発電所の事故が長期化し、津波の被害や電力供給能力の不足とともに複合的な問題となっていることから、企業や家計のマインドが更に悪化し、実体経済への悪影響が強まるリスクが高まっているため、資産買入等の基金を5兆円程度増額することが適当との意見を述べた。』

というのが西村副総裁の提案ですな。

『別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は高まっているとの認識を示したうえで、現在は、以下の点を更に点検しながら、具体的な措置やタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。』

ほほう「追加緩和の必要性は高まる」とな。

『すなわち、この委員は、検討の視点として、市場規模の制約等を踏まえたリスク性資産の買入余地、全体として効果を発揮している包括緩和における各措置の効果とその波及経路、非伝統的手段の持つ副作用、効果発現ラグを踏まえた効果的な政策実施時期などを指摘した。』

・・・・・・・はて、こらまた随分と細かい点を指摘していますが、はてさて「この委員」って誰ざんしょと思うのですが、この指摘の細かさからして少なくとも最近審議委員になった人たちでは無さそうな感じっすな(^^)。

で、4月28日はこういう話をしているのですが、これが前回になって何で取り下げになったのかが微妙でございますな。というのは西村さんが4月28日に指摘した話ってその後改善されてましたっけ???と思うとこれまた微妙でして、電力供給問題に関しては状況が悪化していますが、その一方で足元の景気ウォッチャー調査とか鉱工業生産の先行き見通しなどにみられるようにマインドは好転している感がありますので、4月28日から比較して提案を引っ込めるほどの状況だったかしらねえ??という風に思われます。

ということで、本件に関しては次回の議事要旨も確認したい所(でも提案して無いからそもそも記述が無いかも)であります。





2011/05/25

お題「FOMC議事要旨ネタの続きを遅ればせながら」

どうでも良いがLCCの名前が桃って何なんですか。ライアンエアーとかイージージェットとか普通の名前の方が良いと思うのですけど。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110427.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110427.pdf

と申しましても冒頭の「金融政策の正常化」の所だけですが(汗)

『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』の第3パラグラフ以降になります。

○連銀スタッフによる論点整理

まず連銀スタッフの説明がありましたとな。

『The staff next gave a presentation on strategies for normalizing the stance and conduct of monetary policy over time as the economy strengthens.』

『Normalizing the stance of policy would entail the withdrawal of the current extraordinary degree of accommodation at the appropriate time, while normalizing the conduct of policy would involve draining the large volume of reserve balances in the banking system and shrinking the overall size of the balance sheet, as well as returning the SOMA to its historical composition of essentially only Treasury securities.』

つーことで、金融政策の正常化には現状のFEDのバランスシートを縮小すると共に、資産内容を米国債(の短期債)のみにするという作業を伴う訳ですな。

『The presentation noted a few key issues that the Committee would need to address in deciding on its approach to normalization.』

ほほう。

『The first key issue was the extent to which the Committee would want to tighten policy, at the appropriate time, by increasing short-term interest rates, by decreasing its holdings of longer-term securities, or both. Because the two policies would restrain economic activity by tightening financial conditions, they could be combined in various ways to achieve similar outcomes.』

経済の状況によって利上げと長期債保有削減の使い方を調整していく必要があるでしょうとはそらそうですなということで。

『For example, in principle, the Committee could accomplish essentially the same degree of monetary tightening by selling assets sooner and faster but raising the target for the federal funds rate later and more slowly, or by selling assets later and more slowly but increasing the federal funds rate target sooner and faster. The SOMA portfolio could be reduced by selling securities outright, by ceasing the reinvestment of principal payments on its securities holdings, or both.』

FF金利の引き上げの前にB/S縮小に入るのかFF引き上げの後にやるのかとか、長期債保有削減についても素直に売却するのか、償還再投資を止める形で落としていくのかというのはやり方ありますなあ。

『A second key issue was the extent to which the Committee might choose to vary the pace of any asset sales it undertakes in response to economic and financial conditions. If it chose to make the pace of sales quite responsive to conditions, the FOMC would be able to actively use two policy instruments--asset sales and the federal funds rate target--to pursue its economic objectives, which could increase the scope and flexibility for adjusting financial conditions. In contrast, sales at a pace that varied less with changes in economic and financial conditions and was preannounced and largely predetermined would leave the federal funds rate target as the Committee's primary active policy instrument, which could result in policy that is more straightforward for the Committee to calibrate and to communicate.』

何かこの辺の話も何言ってるのかイマイチあたくし頭が悪くてわからんのですが、要するに資産縮小において資産構成の変更をどういう風に行うのか、と言う論点があるという話っすかね。あと、ペースなどの調整をするときには事前に地ならしをしておく必要があるという指摘をしているような希ガス。

『Finally, the staff presentation noted that the Committee would need to decide if and when to use the tools that it has developed to temporarily reduce reserve balances--reverse repurchase agreements and term deposits--in order to tighten the correspondence between any changes in the interest rate the Federal Reserve pays on excess reserves and the changes in the federal funds rate.』

リバースレポとかタームデポジットファシリティーのような一時的にバランスシートの一部を不胎化する政策についても、どの程度不胎化すると実効FFレートがどうなるのかという辺りを確認しておくという指摘のようですな。と思ったが読み間違いだったらゴメンナサイ。


○FOMCメンバーの議論部分

・正常化政策の原則について

ここは先日引用しましたが再掲。

『Meeting participants agreed on several principles that would guide the Committee's strategy for normalizing monetary policy.』

『First, with regard to the normalization of the stance of monetary policy, the pace and sequencing of the policy steps would be driven by the Committee's monetary policy objectives for maximum employment and price stability. Participants noted that the Committee's decision to discuss the appropriate strategy for normalizing the stance of policy at the current meeting did not mean that the move toward such normalization would necessarily begin soon.』

正常化のペースは経済情勢に依存し、また今回このように議論している事は正常化を早期に実施するというシグナルではない、という事を強調すべきである、という事なのですが、何かFOMC議事要旨出た日だけは「正常化検討キタコレ」と反応してましたな、まあその後の動きを見ると上記の強調が上手く伝わっていると思いますが(^^)。

『Second, to normalize the conduct of monetary policy, it was agreed that the size of the SOMA's securities portfolio would be reduced over the intermediate term to a level consistent with the implementation of monetary policy through the management of the federal funds rate rather than through variation in the size or composition of the Federal Reserve's balance sheet.』

『Third, over the intermediate term, the exit strategy would involve returning the SOMA to holding essentially only Treasury securities in order to minimize the extent to which the Federal Reserve portfolio might affect the allocation of credit across sectors of the economy. Such a shift was seen as requiring sales of agency securities at some point.』

この辺はさっきの連銀スタッフの指摘と同じ意味の話ですな。

『And fourth, asset sales would be implemented within a framework that had been communicated to the public in advance, and at a pace that potentially could be adjusted in response to changes in economic or financial conditions.』

まあこれも当たり前と。


・正常化のステップについて

で、その次のパラグラフ(第5パラグラフ)が正常化のステップに関する話。

『In addition, nearly all participants indicated that the first step toward normalization should be ceasing to reinvest payments of principal on agency securities and, simultaneously or soon after, ceasing to reinvest principal payments on Treasury securities. Most participants viewed halting reinvestments as a way to begin to gradually reduce the size of the balance sheet.』

まあ常識的な結論ですが、正常化の第1ステップはエージェンシー債と長期国債の償還再投資を停止する事と。で、それがまあ緩やかなバランスシート縮小開始の方法ですねとこれはほぼ同意が取れているようで。

『It was noted, however, that ending reinvestments would constitute a modest step toward policy tightening, implying that that decision should be made in the context of the economic outlook and the Committee's policy objectives. In addition, changes in the statement language regarding forward policy guidance would need to accompany the normalization process. 』

また、ステートメントにおけるガイダンス文言(for an extended period)の変更も正常化プロセスの中に含まれるという事で、この辺りも変更になりまっせという事で。


・金利の正常化が先か、バランスシートの正常化が先か

『Participants expressed a range of views on some aspects of a normalization strategy.』

ということで。

『Most participants indicated that once asset sales became appropriate, such sales should be put on a largely predetermined and preannounced path; however, many of those participants noted that the pace of sales could nonetheless be adjusted in response to material changes in the economic outlook.』

資産売却が必要な状況になった場合にも事前に幅広くアナウンスする必要があり、この売却についても経済状況の変化に応じて調整する必要があるでしょうというのは殆どのメンバーが同意しているようで。

『Several other participants preferred instead that the pace of sales be a key policy tool and be varied actively in response to changes in the outlook.』

すまんここの意味が判らんのだが、ペースの変化は機動的に行う方が良いので、あま
事前告知に拘らなくても良いという話を数名の他のメンバーがしていると読んだのだがそれで合ってるニカ?

『A majority of participants preferred that sales of agency securities come after the first increase in the FOMC's target for short-term interest rates, and many of those participants also expressed a preference that the sales proceed relatively gradually, returning the SOMA's composition to all Treasury securities over perhaps five years.』

多数意見によりますと、エージェンシー債の売却はFFレートの引き上げ後に行うべきであり、売却のペースも徐々に行うことによって、トレジャリーオンリーのB/Sにするまで多分5年間位掛けるのが宜しい、との事であります。

『Participants noted that, for any given degree of policy tightening, more-gradual sales that commenced later in the normalization process would allow for an earlier increase of the federal funds rate target from its effective lower bound than would be the case if asset sales commenced earlier and at a more rapid pace.』

より強い引き締めが必要であってもそれFFレートの引き上げで対応し、性急な資産売却には慎重であるべきと読みましたが理解それで大丈夫かな(汗)。

『As a result, the Committee would later have the option of easing policy with an interest rate cut if economic conditions then warranted. An earlier increase in the federal funds rate was also mentioned as helpful to limit the potential for the very low level of that rate to encourage financial imbalances.』

金利の引き上げを先にやっておいた方が仮にその後の景気悪化が起きた時に金利の引き下げ余地が出来るという糊代論やら、早めのFFレート上げで低金利政策によって起きる金融のインバランス(要は資産バブル)の拡大を防ぐ事も出来るとか中々チャーミングな指摘も。

『A few participants expressed a preference that sales begin before any increase in the federal funds rate target, and a few other participants indicated that sales and increases in the federal funds rate target should commence at the same time.』

「a few」と「その他のa few」なメンバーは資産売却をFFレートの引き上げ以前または同時に行う事を推奨しています。

『The participants who favored earlier sales also generally indicated a preference for relatively rapid sales, with some suggesting that agency securities in the SOMA be reduced to zero over as little as one or two years.』

この人たち的にはFEDのB/S正常化に1年から2年程度を見ているようですな。

『Such an approach was viewed as allowing for a faster return to a normal policy environment, potentially reducing any upside risks to inflation stemming from outsized reserve balances, and more quickly eliminating any effects of SOMA holdings of agency securities on the allocation of credit.』

バランスシートの縮小を早めにすることによって、巨大な超過準備の存在によるインフレ(一般のインフレ期待が高まるというパスによるインフレかと思われますが)のアップサイドリスクを抑制し、FEDの保有するリスク性資産の縮小によって民間のリスクアロケーションの正常化(いわゆるストックビューによるポートフォリオリバランス効果ですな)が期待できる、という論点ですな。


#続きがあるのですが時間と量の関係で明日に続く









2011/05/24

お題「金融経済月報と総裁会見」

事前予想通りではありますがスペイン統一地方選挙での与党(PSOE)の豪快な負けっぷり(下のページだと前回と比較可能)テラヒドス。
http://resultados.elpais.com/elecciones/2011/(ただしスペイン語)

#つーても誰が政権取ってもやるべき事はカワランチ会長なのですが

と言う話とは関係なく決定会合レビューの続き。

#話が違うがモーサテにメリルの上田アナリストが出てますな(東電関連ネタです)。実にまあ冷静沈着にきっちりと指摘してます。確かにまあ地味で面白い話じゃないですけど、こういう解説を淡々としてくれる解説者を呼べと思う訳で

○金融経済月報はちと微妙

概要の部分から。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1105.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1104.pdf(前回:4月8日)

・現状判断(総括)

『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。』(今回)

というのは前回と同じなのですが。

『震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。』(今回)

『震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。』(前回)

生産活動の低下に関して「一部の」という文言が抜けて、前回の「相応の影響」という部分の内容が詳しくなったのと、表現が厳しくなったという感じですな。

・先行き判断(総括)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

海外経済の〜とか資本ストックの〜とかいうのが抜けているのですが、これがまたこの部分だけだと解釈に苦労するところでして、海外経済の改善や資本ストックの復元というのが現状でどちらも怪しげになっているというのが背景にあってその辺の部分を削ったようにも見えるのですが、その後の文章とか、月報の本文を読みますと、必ずしもそうではなくて、単純に回復に対する自信度が上がったので余計な説明を削除した、と考えるのが妥当に見えます。

というのはあたくしがそう思っているだけなのでよー知らんがの。

・需要個別項目

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。設備投資、住宅投資、公共投資も、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。設備投資、住宅投資、公共投資も、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、持ち直していくとみられる。』(前回)

ということで、さっき書いたような背景としては、ここの個別需給項目に関する説明部分がものの見事に変化が無い(家計のマインドの部分だけ違うが)という所でございまして、展望レポートでは下振れリスクに関して強調する形でしたが、月報の標準的な見通しに関しては4月からそんなに変わっていないという中々微妙な内容となっています。


・物価

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。

物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。

物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(前回)

現状、先行き共に今回目立つのは「マクロ的な需給バランス」の話が抜けた事。以前声明文から「マクロ的な需給バランス」の話が抜けたという話をして、これは今後の金融政策正常化において需給バランスに過度にフォーカスしないようにという話でしょうなあという話を致しましたが、今回ついに月報からも「マクロ的な需給バランス」の文言が削除されましたな。

物価に関する表現につきましては、基本的に現状、先行き共に上方修正になっています。


・金融に関しては今回は割愛

特に政策インプリケーションも無いと思いますのでめんどいから割愛。


・本文に関しては「現状判断を下げて先行きを変えない」

一々引用すると長くなるので割愛します(ので皆さん見てちょ)が、本文ではもうちょっと詳しく各項目の話をしていまして、そこを見ますと雇用・所得以外の項目に関しては4月の月報から先行き見通しが変わっていないです。

現状判断に関しては生産、個人消費に関しても判断が下がっているのですが、これらの項目に関しては先行き見通しを特に下げるでもなく、4月月報時点の見通しを継続しています。


と言う感じで、まじまじと月報を比較して読むと「存外強気じゃネーノ」という感じもしてくるというのがこれがまたややこしい感じではございます。


○総裁会見から:先行き見通しは比較的強気を継続のようで

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1105a.pdf

・サプライチェーン、電力供給に関して

『(問) 現在のサプライチェーンの動向や、浜岡原発の停止を含む原発問題を踏まえて、前回会合以降、供給制約の見通しがどのように変化したのかお伺いします。』

基本の質問ですな。

『(答) このところ、自動車メーカーなどから、一頃の予想に比べて生産の増加が前倒しで実行できる、との見通しが出されています。また、夏場の電力供給についても、一時心配されていたほどの深刻な事態にはならない、という見方が強まってきているように思います。これらは、大変心強い変化であると受け止めています。 もっとも、日本銀行の展望レポートにおいては、当初から、そうした関係者の努力や工夫をある程度織り込みながら、見通しを立てていました。従って、現時点においても、供給制約の解消に向けた動きは、概ね私どもの展望レポートの見方に沿って進んでいるとみており、秋口以降、供給面の制約が全体として和らいでいくと考えています。』

ほう。で、途中を飛ばして。

『ただし、電力の需給については、この夏場は今申し上げた通りですが、やや長い目でみると、楽観できる状況ではないと思っています。浜岡原発を巡る情勢等を踏まえると、各地の原子力発電所の、定期点検後の運転再開などを巡っては、不確実性がむしろ幾分増しているようにも感じられます。こうしたことが先行きの経済活動に与える影響については、日本銀行として、予断を持たずにみていく必要があると考えています。』

という話なのですが、まあ前半は(飛ばした部分も含めて)明るめのトーンですな。で、後半部分に関する認識に関して更に質問がありまして(引用割愛)、それに対する答えはこうなっています。

『(答) 先程申し上げた通り、私どもが当初一番懸念していた夏場の電力不足については、全体として一頃懸念した程ではなくなりつつあります。これはポジティブなニュースです。一方、少し長い目でみた場合に、ご質問の、他の原発への影響をどう考えるかが1つの大きな論点です。この点については、先程、不確実性が従来に比べると増しているように感じられる、と申し上げました。ただ、これが今後どういう展開を辿っていくかについては、日本銀行は専門家ではありませんし、色々な要素に依存すると思いますので、日本銀行としてはこれを1つの不確実性、リスク要因として認識しながら、経済の状況を点検していくということだと思います。』

微妙に禅問答ですが、要するに電力供給のネックがどの程度大きいかによって景気への影響も考えないといけませんなあという話をしているかと存じます。


・西村副総裁の見解について

当然ながら質問がありましてその答え

『(答) 西村副総裁の詳しいご意見の内容については議事要旨を見て頂きたいと思います。今回の会合で決定した経済・物価の見通しとリスク評価は先程ご説明した通りです。西村副総裁もこうした見通しとリスク評価を共有されています。そうした情勢判断を踏まえて、今回、基金増額の議案を提出されなかったと認識しています。』

ということで、これを字面通りに解釈しますと「西村副総裁の景気認識あるいはリスク認識が好転したので提案を見送った」という話になります。

でね、そうした場合に6月なり7月なりに基金拡大が決定されましたというような話になった時に、西村副総裁はどっちに票を入れるのかがこれまたオモローになる訳で、もし賛成するのであれば、あんさんの経済認識上下にフラフラ振れ過ぎですがなという話になりますし、反対するとなると今度は景気認識のほかの人とのズレっぷりがこれまた目立ちますなあという話になる訳ですが、前回提案したのだったら今回も継続提案じゃろと思う(大体からして営業日ベースで2週間しないのにそんなにホイホイと景気認識が変わるというのがよく判らん)のでありますけどねえ。

ま、7月くらいでしたらその間に指標も出るでしょうし、短観も出ますから「最新の経済指標を見た結果リスク認識が高まりました」という言い訳(?)は出来るでしょうけどね。


・QE2は単純なマネー供給ではないというお話

QE2終了後の話についての質問に対する解答でオモロイ部分があったので引用。

『(答) まず、6月末でQE2が終わることに伴う影響についてのご質問です。ご質問では「マネー」という言葉で表現されましたが、今回のQE2の効果は、かならずしもマネーサプライに対するものではなかったと思っています。FRB自身、QE2で中央銀行のバランスシート、マネタリーベース、あるいはマネーサプライが量的に拡大すること自体が金融緩和の効果を生むものではない、と繰り返し強調しています。従って、「マネー」というターム(用語)でこの問題を議論することが良いのかどうか私自身も少し疑問を持っています。』

以下説明は続きますが、これはこれはと言うことでここだけ引用しました(^^)。


・東京電力関連

あまり露骨な言い方はしていませんが、微妙に現状をdisっていますわな。

『今般、政府の関係閣僚会合において決定された賠償支援の枠組みは、公表文にもある通り、被害者への迅速かつ適切な賠償の支払いと電力の安定供給の確保を図りつつ、金融市場の安定を確保しようとするものであると理解しています。』

金融市場の安定を確保しようという発想があったら「ステークホルダーの協力」と称して官房長官があんなこと言いませんわな(昨日の国会答弁で債権放棄要請は事実上撤回したようですが当たり前じゃヴォケおまえはさっさと三途の川で競艇でもやってろという感じ(「三途競艇」の元ネタを知ってるアナタはロクデナシ認定^^)ではありますが)とおもいますけどね。

『私は、原発問題の専門家ではもちろんありませんので、あくまでも中央銀行総裁として金融市場の安定という観点から申し上げると、東京電力の社債の発行残高は約5兆円と大きく、また、社債市場におけるプライシングのベンチマーク機能を果たしてきているという面もあります。また、多くの金融機関が東京電力に対して貸付けを行っているほか、東京電力の株式や社債は幅広く保有されています。』

さよですな。

『こうした状況を踏まえると、賠償支援の枠組みの如何が金融市場に与える影響は非常に大きいと考えています。この点、今回公表された賠償支援の枠組みによって、株式や社債の扱いを含め、基本的な方向性が示されたことは意義のある前進であったと受け止めています。』

そうですか(棒読み)

『もちろん、今般発表された内容は、あくまでも骨格の段階であり、今後、具体的な肉付けがなされていくものと承知しています。その際、先程の3つの目的の1つである金融市場の安定確保は、最終的に、被害者への迅速かつ適切な損害賠償の支払いや電力の安定供給の確保という目的を達成していく上でも重要であり、この点も十分念頭に置いて具体化されていくことを希望しています。』

この部分を「金融市場に悪影響を与えている枝野官房長官の言動はいかがなものか」と言う風に読んでしまうのはあたくしの希望的観測ですかそうですか(^^)。


『次のご質問ですが、私は、官房長官のご発言をその場で聞いているわけではありませんので、官房長官の発言自体についてコメントすることは差し控えたいと思います。債権放棄についてどう考えるのかということですが、今般決定された賠償支援の枠組みでは、東京電力が全てのステークホルダーに協力を求めることが前提とされています。ただし、金融機関の具体的な対応については、金融機関と東京電力との間で決まってくるものと理解しており、私の立場から具体的なコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。』

まあそう来るのですが。

『その上で一般論として申し上げると、』

麿の得意技「その上で一般論として申し上げると」キターーーー(・∀・)ーーーーっと。

『先程の話とも重なりますが、この賠償支援の枠組みでは、被害者への迅速かつ適切な損害賠償の支払いや電力の安定供給の確保がその目的として掲げられています。それを実現するためにも、金融市場の安定を図りつつ、直接の当事者である金融機関と東京電力の話し合いを通じて、安定的な資金供給が維持されるということは重要だと思っています。今後、こうした点を意識しながら、関係者間で適切な対応が採られていくことを期待しています。』

つまりもっと適切な対応が出来るように何とかならんかという話ですかそうですか、っていうのはあたくしの拡大解釈のような気がするのですが、どうもトーンとしては微妙に現状のカオス状態何とかならんかという感じなんでしょうな。







2011/05/23

お題「決定会合レビューで引用大会と雑談」

ちなみに悪態シリーズは大体論点が一巡した気がします。モーサテにメガトン級の大馬鹿(財政支出削減で30兆円位の財源が出るらしい)が出ているような気がするが途中で聞くに耐えなくなったので良く判らん。

○声明文は基本的に展望レポートから横ばいかな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110520a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110407a.pdf(4月7日声明文)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(4月28日展望レポート)

直接比較するのが難しいのですが、ニュアンスで勘弁。

・現状判断

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。この間、金融環境をみると、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。震災後の金融動向をみると、金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている。金融市場は、全体として安定している。この間、金融環境は、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に、一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』(4月7日)

4月7日と比較するとたぶんサプライチェーンと電力供給の確保(その後の浜岡の影響があるような気がするんだが・・・・)に関する点が改善したのでその辺りの書きっぷりがあっさり味になっているような気もするが、まあ基本的には展望レポートでも震災の影響に関してサプライチェーンが云々の話があるので、まあこの辺は金融経済月報も含めて確認する必要があるかなという感じですわな。

なお、展望レポート(基本的見解)では本文5ページ以降からの部分になるのですけれども、引用しにくい(上に引用すると量が無茶苦茶膨大になる)のでスルーである。


・先行き判断

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる。』(4月7日)

4月7日との比較をしますと、物価に関しては「当面」の文言が抜けていまして、こちらが上方修正、先行きの回復パスに関しては「2011年度後半以降」というのが入ってこちらは下方修正になっていますが、最後に「以上を踏まえると、日本経済は〜」というのが申し訳のように入っていまして、しかもそこに「やや長い目でみれば」と入っています。この部分をどう解釈するのが微妙(これまた金融経済月報を確認という感じです)なのですが、回復の確信度が上がったと見るのか(わざわざ入れているから)、回復パスの時間がやや伸び気味(「やや長い目で見れば」云々があるので)と見るのかがちと判らんです。

で、展望レポートとの比較ですが。

『以上のような動きを背景に、わが国経済は、2011 年度前半は、下押し圧力が強い状態が続いた後、年度後半にかけては、輸出や生産がはっきりとした増加に転じるもとで、年度前半からの反動もあって、景気回復テンポが高まる可能性が高い。2012 年度入り後は、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとともに、資本ストックの復元に向けた需要の増加も続くため、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(4月28日展望レポート)

ということで、年度後半からの回復という話は展望レポートと同様になっているのですが、この辺りの表現が横ばいなのか若干弱め(今回の声明文の方が上記の展望レポートよりもトーンが強くないけれども、これは展望レポートと声明文の違いに起因する可能性がある)なのは少々気にならんでもない。


・リスク要因

まず声明文比較で4月7日との比較。

『リスク要因をみると、景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。海外経済については、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けて、新興国・資源国の経済が上振れる可能性がある一方、米欧経済は、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、国際金融市場の動向や、一頃に比べて低下しているとはいえ、米欧経済の先行きを巡る不確実性がある。さらに、震災がわが国経済に及ぼす影響については、不確実性が大きい。』(4月7日)

まあこの部分に関しては下がったなあという感じでして、上振れ要因の海外経済に関する部分が「上振れる『可能性がある』」と下がっていますし、欧州ソブリン問題についての言及や米国経済のバランスシート調整に関する言及が入っていまして、海外経済に関する見方が下がっていますわな。

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。とくに、当面は、震災の影響を中心に、下振れリスクを意識する必要がある。(物価に関しては変化が無いので引用割愛)』(今回)

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。』(4月7日)

ということで、まあ4月7日から比較して下がっているのは当然ちゃあ当然(何で展望レポートまで引っ張ったんだかという気はするが)。で、展望レポートですけれども9ページ以降になりますが、海外経済の動向に関してはリスクの3番目になっています。

『第3に、海外経済の動向である。先進国経済の動向をみると、米国経済については、先行きの不透明感が昨年秋以降後退しているが、他方で、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となって作用している。欧州については、周縁国のソブリン問題を巡る懸念が、金融市場の動揺を通じて、実体経済活動をも下押しし、それらが相乗的に悪影響を及ぼし合うこととならないか、注意が必要である。』(4月28日展望レポート)

『一方、多くの新興国・資源国では、金融引き締めの動きが続いているが、景気の過熱感やインフレ懸念が十分に沈静化されている状況ではない。このため、景気の振幅が拡大し、より長い目で見れば、持続的成長を損なう可能性もある点には留意が必要である。』(4月28日展望レポート)

ということで、海外経済に関しては基本的に展望レポートの線になっています。これは字数の関係だと思いますが、展望レポートでは上下両方の話をしているのですが、声明文では先進国経済に関しては下振れ部分の話、新興国経済に関しては上振れ部分の話しかしてませんが、多分そこに他意はないと思います。



○ところで西村副総裁はどうしたんですか????

前回貫禄の「基金拡大」提案を行って全力で否決された西村副総裁ですが・・・・・・

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注1))。』

『(注1)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員。
反対:なし』

・・・・・・・あらら、今回は西村さん基金拡大の提案して無いの????

ということで、こらまた不可解な話なのですが、素直に捉えると「前回提案時よりも景気の先行き見通し(またはリスク認識)が上方修正された」という話になるのですが、はてそんなに凄く経済見通し良くなったでしたっけ???という感じはしますがな。

いやまあ確かに浜岡の話は措いとくと、サプライチェーンの回復が割と順調なのと、電力供給に関しても夏場のピークが何とか回りそうな雰囲気も漂ってきている(どう見ても浜岡で状況は全国的な問題になったような気がするのだが・・・・)というのはありましたけれども、提案引っ込める程か????って感は致します。

まあ本人じゃないと判らない話ですが、今回の行動は正直意味不明(前回もまあイミフではありましたが、まあ前回の方が言いたいことはわかったので)でございまして、はてさてこれは何とした事ぞという所でございまする。今回引っ込める位なら前回出さない方が良かった訳で、今は東電絡みで政治様からスルー気味の日銀ですが、また矛先が回って来た時に「日銀は前回の緩和拡大提案が出なくなるとか、経済に関する認識が極めて甘く危機感が無くてケシカラン」と言われる格好の燃料投下になっていると思うのでございますけどどうなんでしょうかねえ。

#ま、こうなったのに何故か6月会合でしらっと全員一致で基金拡大とかやっても不思議じゃないのが日銀クオリティではあるのですけどね(^^)






2011/05/20

お題「何でこう悪態のネタが出るのやら/FOMC議事要旨ネタ続き」

いやね、悪態ばっか書いてもシャーナイナイなのですけどついついネタが出るとそんな餌に俺様がクマーになってしまうあたくしorz


○益々意地になっておられる人がおいでのようで

市場に乾いた笑いと頭痛を巻き起こしたのは昨日もこの人でありました。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ah_7Q16_e3G8
枝野氏:東電は「普通の民間とは違う」−債権放棄発言への批判に(1)

はあはあそうですか、で、何と仰せなのでしょう。以下の『』内は上記URLの記事からね。

『5月19日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は19日午前の記者会見で、東京電力について「公的な目的のために国として一定の支援を行う限りにおいては普通の民間企業とは違う」と述べ、福島第一原子力発電所事故賠償への政府支援は震災前債権の放棄など金融機関による協力が前提になるとした自らの発言への理解を求めた。』

いやまあ普通の民間企業とは違うかもしれませんけど、あんさん先週金曜日には「民民の関係」とか何とか仰っておられませんでしたっけ????いやですから政府がちゃんと関与するというのであれば、法的枠組みに則って賠償の支払いと電力の安定供給(と原発事故の収束)が継続できるようなやり方を取って頂ければヨロシイ訳でして、震災前債権の放棄を「自主的に行う」のを「協力要請」するという”法に則らない行動”をしろというから銀行どころか経済界が反発するのですけどねえ。

『枝野氏は金融機関や東電の株主に対し、「当事者である東電が貸し手に限らず株主も含めてさまざまなステークホルダーの皆さんに、政府からの支援がない場合の財務状況を前提にして、さまざまなご協力をお願いしていく。そのことについて国民の理解が得られなければ国としてのスキームが前に進むことはない」と述べ、あらためて賠償への協力を求めた。』

あーもしもし???アナタ今「普通の民間企業とは違う」って仰ったのに、何で「協力」する時の前提が「政府からの支援が無い場合」になるんでしょうか???大体法的枠組み考えたらこうなりますというスキーム作って、その説明をするのがあんさんらの仕事であって、「国民感情」とやらに阿って法律無視の横車通すのが政府の仕事ってどこのファッショだよという感じっすけどねえ。

つーことで、最初の話にある「民間企業とは違う」発言とこの段落の部分って論理矛盾してるようにしか見えないのですが、いやこんな弁護士に弁護頼んだら瞬時に敗訴確定ですなああっはっはとしか申し上げようがございませんねえ。

まあ何ですな、枝野センセイにおかれましては「政府様が関与するのだからお前ら言うこと聞きやがれ」ってゆー話をしているように見えますが、そもそも民間企業の活動に対して法に則らない行為を恫喝交じりに強要しようとしているのに対して反発が起きているのに、この人その点全く把握してないでしょっつー所で残念ですなあ。

『一方、東電債権を放棄すれば金融機関自身が株主代表訴訟を提起される可能性があるとの指摘が出ているとの質問に対しては、「金融機関がどういうロジックを持っているか直接コメントする立場にはない」と述べるにとどめた。』

・・・・・・・いやあのそれは金融機関のロジック云々じゃなくて普通に商法だの会社法だのを普通に解釈するとそうなりますがなという世界であって、別に金融機関が勝手に問題点をでっち上げている訳でも何でも無いのですけれども、もしかして枝野大先生におかれましては「俺様がルールブック」という古代暴君伝説もビックリの法律運用を当然であるとでも思っているのでしょうかねえ。


とまあそういう事で、何せ官房長官がネックという素敵な状態になっている上に、益々無茶振りの発言をエスカレートするという状態ですので、まあこの人の発言を何とかして「無かった事」にするという方向、そして例の6項目目の「協力」に関しては「期限がこれからやってくる貸出金のリファイナンスへの協力」というような方向で解釈して、枝野発言に関しては菅さんが撤回なり訂正する(本来なら今回の無法発言は「政府高官が法の支配の原則を逸脱した」という意味からすると罷免して議員辞職勧告モノだと思いますけど、まあさすがにそれは難しいでしょうからね)ことによって、まずは賠償支払スキームが実際にワークして、東電のリファイナンスを回すようにしないと賠償支払い以前に原発事故収束も電力の安定供給も回らないと思うのですけどねえマッタクモウ。


昨日のMoody'sの発表のニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=akMWl3pgOeCo
ムーディーズ:東電、銀行が金利減免なら、デフォルトへ格下げ検討(2)

3月末に格下げした時は、先行きの方向性とか全然見えていない段階でいきなり格下げしたので格下げテロ呼ばわりした覚えがございますが(^^)、まあ今回の動きに関しても何だかなあとは思いますけど、そらまあ言うわなと3月末のような怒りよりも乾いた笑いのような感情が起こるわけで、というか怒りの方はどこぞの無法官房長官に向かいますがね。



○2次補正→賠償スキーム→エネルギー政策見直しとな

ふむふむ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auwg.LBU1UwY
電力株下落率1位、首相発言で電力行政警戒−地域独占や発送電分離

いやね、これ株が下がるのも厳しいですけど、発送電分離とか軽々しく言われましてもじゃあ既存の貸出や社債はどうなるのという話になった時にこの政府何も考えないで後から変な「協力」でも求めてきやがるんじゃないかとかまで心配したくもなる(常識的にはそういうアホな事は有りえないのだが、枝野発言によってこの政府はそういう契約履行などに関する常識が通用しないリスクがあるというステージになっているからねえ)訳ですし、まあそれ以前の問題として直近で債権放棄を求められる状態の中で、他の電力で似たような事態が起きたらどうすんのというような話になったらそらまあ電力会社への融資のレートは少なくとも上げてくれないと困りますがな(従来の御用金調達レートでは厳しいですなあ)という話になりゃーしまへんかねというのが気になるざますわよ奥様。

つまりですな、ただでなくさえ原発見直しの方向が続いて発電コストが上がり、その上電力供給能力に対する不安もありますねという中で、電力会社の資金調達に悪影響を与えるような事を国が推進してどないすんねんと思うのでありまして、昨日も申し上げましたように、今まさに緊急の課題は電力の安定供給(東電はそれに原発関連が加わりますが)の確保なのに、自由化論議とかこのタイミングで行ってどうするんじゃいとあたしゃ思うのですけどねえ。


まあ何ですな、2次補正の話をしてたら財源論で大騒ぎになったから収拾が付かなくなって先送り、賠償スキームの話をしたら債権放棄云々で大騒ぎになったから収拾が付かなくなってこれまた先送り、となりまして、何か支持率アップと政権延命のネタは無いかという事で今度はエネルギー政策どうのこうのとなって発送電分離というのに飛びついてみたという事だとは思うのですが、やることが一々証券市場や金融市場の迷惑でございまして、内閣の皆様におかれましては可及的速やかに西方浄土へのご訪問をお勧めしたく存じます。

#ちなみにどうでも良いが、発送電分離してあちこちで小規模発電とかいう話って見た目は美しいですけど、現在の技術水準でそれやると「土法高炉」状態にならんかねと懸念しとるんじゃが素人なのでよー知らん



○悪態ばっかになってしまったのでお口直しにFOMC議事要旨

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110427.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110427.htm

話題になってたのは最初の所でした。

冒頭の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』の途中から。

『Meeting participants agreed on several principles that would guide the Committee's strategy for normalizing monetary policy.』

正常化の議論に関する部分キタコレ。

『First, with regard to the normalization of the stance of monetary policy, the pace and sequencing of the policy steps would be driven by the Committee's monetary policy objectives for maximum employment and price stability.』

というのはまあ当たり前ですな。

『Participants noted that the Committee's decision to discuss the appropriate strategy for normalizing the stance of policy at the current meeting did not mean that the move toward such normalization would necessarily begin soon.』

んでもって別に議論するからと言っても直ぐに正常化するわけではないですがな、というこの文章あったけど昨日の米債は正常化議論キタコレ相場になっていたような気もせんでもないのはチャーミング。

『Second, to normalize the conduct of monetary policy, it was agreed that the size of the SOMA's securities portfolio would be reduced over the intermediate term to a level consistent with the implementation of monetary policy through the management of the federal funds rate rather than through variation in the size or composition of the Federal Reserve's balance sheet.』

バランスシート縮小の時にその構成に関しても留意する、というのは読み方によっては微妙にアレな話でございまして、つまりMBS売りながらT−Bill買いますとか、T−NoteやT−Bondと売りながらT−Bill買いますとかいうようなバリエーションも排除して無いという話になりますわな。と思ったらその話が次に。

『Third, over the intermediate term, the exit strategy would involve returning the SOMA to holding essentially only Treasury securities in order to minimize the extent to which the Federal Reserve portfolio might affect the allocation of credit across sectors of the economy. Such a shift was seen as requiring sales of agency securities at some point.』

まあそれって本当に出来るのかねという気はするが、もしスムーズに実行できるのであれば、日銀の長期国債買入に関してももうちょっと柔軟に増やしたり減らしたりする事ができるという話になるのかもしれないので今後の展開にはワクワクテカテカであります。

『And fourth, asset sales would be implemented within a framework that had been communicated to the public in advance, and at a pace that potentially could be adjusted in response to changes in economic or financial conditions.』

まあこれは当たり前の話。

ということで、この先も続くのですが、時間がなくなったので以下来週に続く。

#今週は特別更新をしなくても良い金曜になりますようにナムナム










2011/05/19

お題「だいぶ平常運転モードに戻りまして(^^)BOEとかFOMCとかのネタ」

いやもう毎日悪態ばっかでどうもすいませんでしたm(__)m

○論点が色々と拡大してきているBOEの5月議事要旨

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1105.pdf

とりあえず斜め読みをしただけなので詳しくはまた精読してからでございますが、読んでみただけでもかなーり色々と論点があって英国なかなか大変ですなあという感じではございまする。

・足元の需要や生産統計が弱い件について

『Money, credit, demand and output』の第13パラグラフから。

『A key question was how long the current weakness in demand and output was likely to persist.』

ということですが・・・・

『Some indicators were consistent with the economy having entered a period of sustained weakness. The GDP data for the first quarter had been weaker than the Committee had expected at the time of the February Inflation Report. And a greater proportion of demand growth during 2010 had come from stockbuilding than previous vintages of the data had suggested. Lending to companies and individuals had remained weak, notwithstanding some signs of a slight easing in credit conditions. And, against the backdrop of a broadly flat level of household spending over the previous year, the GfK measure of consumer confidence had fallen further, to its lowest level since March 2009.』

『Any additional increases in energy prices would further reduce real personal disposable incomes. Moreover, the Bank’s Agents had reported anecdotal evidence of pressures on consumers: an increasing concentration of retail sales around pay days; shoppers making smaller, more frequent purchases; and a shift away from spending on discretionary items.』

とまあ色々な指標によって足元の需要や生産の弱さが示されていて、この先に関してもこれらが継続する可能性を示唆するようなネタが転がっているというお話がござんして、まあこの辺だけ見てると残念感がございます。


・一方で労働市場サーベイやビジネスサーベイなどは強いとな

第14パラグラフから。

『Other indicators had pointed to stronger growth. The Labour Force Survey showed that employment had picked up and this was supported by business surveys of employment and recruitment intentions. And, although the CIPS/Markit business activity surveys of manufacturing and services had fallen in April, they remained in line with the pace of growth seen during the middle of 2010.』

『It was possible that real household spending growth had been temporarily held back at the turn of the year given the rise in the standard rate of VAT, and retail sales volumes had risen slightly in March. Surveys of investment intentions suggested that a period of above-average spending growth on capital goods might be in prospect. And surveys of export orders in manufacturing remained solid and in services continued to pick up, consistent with the improvement in the trade balance seen in the official data for January and February.』

ということで、外需やら足元での一時的な家計の可処分所得増加などが引っ張っているのかビジネスサーベーイが強くて雇用も引き上げられているということのようでございますな。


・インフレーションレポートの部分を華麗にスルーしていきなり政策決定の部分

で、インフレに関する議論のところも面白かったのですが、そっちはスルーしまして『The immediate policy decision』のところに行くのでありますが、この冒頭の所でいきなり論点が出ているのであった。第29パラグラフから。

『The Committee set monetary policy in order to meet the inflation target in the medium term. As had been the case for the previous few months, the Committee was confronted with two key questions in reaching a view on the outlook for inflation: how prolonged the current weakness in demand would be; and how persistent the impact on inflation of increases in VAT, energy and import prices would be, either directly or via second-round effects.』

ちなみに上記引用部分の第一文にあります「MPCはインフレを中期的にターゲットの範囲内に収めるように金融政策を実施しています(キリッ)」というフレーズは直近の物価上昇期におきましては前回(4月)のMPC議事要旨から挿入されたのですが、今回は「金融政策決定に関する部分」の冒頭にこの(キリッ)が入ったという事でございまして、まあ何と申しますか色々と悩める所なんでしょうなあと思うのでありました。

で、今回はついに「second-round effects」の論点まで前面で議論されるようになってきましたなあという感じでありまするが、まあ結論から申し上げますとその手の2次的効果はまだ観測されていませんというのが結論になっていまふ。

第30パラグラフから。

『On the first of these questions, there was a risk that demand would not grow sufficiently strongly to eliminate the current margin of spare capacity, leading to inflation falling below the target in the medium term.』

毎度の話で、需要が足元における経済の余剰(margin of spare capacity)を打ち消すほどの伸びを示さないことによってインフレが中期的にターゲット以下まで下がるリスクでありますが。

『The probability of that risk crystallising was hard to evaluate, in part because there were mixed signals from indicators of business and consumer confidence, the interpretation of which was further complicated by the impact of the snow in December and erratic movements in construction output. The level of household spending had been stagnant over the previous year. And, against the backdrop of the continuing fiscal consolidation and the likely intensification of the squeeze on real disposable incomes from the current high level of energy prices, consumption growth was likely to remain weak for some time. 』

『But, set against that, activity balances from business surveys were consistent with continuing modest underlying growth in the bulk of the economy in the near term and firms were indicating that they intended to recruit and invest at around long-run average rates.』

家計に関してはマインドは弱いですし、先行きも家計には悪材料がありますが、企業のマインドが強くて雇用が存外悪くないのがまあサポートになっているようで。

で、その分析は実は第31、32パラグラフに続くのですが、引用すると長くなるのでその辺はまた後日でありんす。つーかBOEの話とか完全に趣味の世界でどうもすいませんという感じですが、分析部分もなるほどという感じでした。

でもって2番目のリスクに関してですが、第33パラグラフから。

『On the second question, there was a risk that the period of elevated inflation could persist for longer than the Committee expected.』

まあこれまたいつもの話でインフレの数値が高い状態が継続した場合にインフレ期待が上昇して実際の賃金設定や企業の価格行動などに影響して、高インフレが定着してしまうリスクに関してですな。

『Although they had been broadly flat over the month, oil prices had risen substantially since the February Inflation Report and the near-term outlook for inflation was higher. Continued robust growth in emerging economies, or an intensification of political instability in key oil-producing regions, might put further upward pressure on the prices of energy and other commodities.』

原油と商品価格に関しては高止まりを予想しています。

『The sustained period of above-target inflation might cause expectations of inflation to drift upwards. To the extent that people placed weight on past outturns in forming their expectations, it might then take time for inflation expectations to decline again, even as inflation itself fell back.』

で、一旦インフレ期待が上昇しちゃうとそれを戻すのが大変ですよねと。

『Moreover, the further squeeze in households’ purchasing power might result in some upward pressure on nominal wages to the extent that workers sought to maintain real living standards.』

なるほど。物価が上昇してる国だとそうなるのね。日本だとそうならないですけど。

『Thus far, however, there had been few material signs of the period of high inflation having fed into elevated medium-term inflation expectations or higher wage demands.』

ということで、この部分の具体的な話は実は前の方でああでもないこうでもないと議論されているのですけれども、まあ現状では英国全体での平均の通常賃金上昇率が直近3か月で2.2%となっているようで、そこまでの流れにはなっていませんし、まあサーベイベースはやや怪しいものの、市場のインフレ期待などはまだ安定しているという話になっています。

まあこの辺りが今回のインフレ4.5%再加速を受けてどうなりますやらという感じでしょう。


・票決は前回と同様

第38パラグラフから。

『Regarding Bank Rate, six members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Paul Fisher, David Miles and Adam Posen) voted in favour of the proposition.

Three members of the Committee voted against the proposition.

Andrew Sentance preferred to increase Bank Rate by 50 basis points.
Spencer Dale and Martin Weale preferred to increase Bank Rate by 25 basis points.』

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Spencer Dale, Paul Fisher, David Miles, Andrew Sentance and Martin Weale) voted in favour of the proposition.

Adam Posen voted against the proposition, preferring to increase the size of the asset purchase programme by £50 billion to a total of £250 billion.』

ということで前回と同様に5対3対1(3が利上げで1が国債買入拡大)でした。


・ロイヤルウェディングの経済効果(おまけ)

第15パラグラフから。

『In particular, the royal wedding and supply chain disruptions following the earthquake in Japan were likely to dampen GDP growth in the second quarter and boost it in the third.』

そういや当初は「ロイヤルウェディングの経済効果」みたいな話があったと思ったのですけれども、直近では「ロイヤルウェディングで連休になってマイナスではないか」という話もでてましたが、思いっきり「経済効果マイナス」とか中々不敬なMPCですね(棒読み)。

その理由は第23パラグラフにありますが、やはり休日が増えた効果でした。

『But temporary factors, such as the effects of the additional bank holiday associated with the royal wedding and supply chain disruption from the Japanese earthquake and tsunami, were likely to add some volatility to quarterly GDP over the coming quarters.』

中々奥が深いですな。



○FOMC議事要旨(メモ)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110427.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110427.htm

さすがにこれを朝起きてから斜め読みするのは無理なので後日ですが、慌てて読みたければ後半の『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』以降、またはその最終パラグラフから読むのが吉。

んでもってそこ最終パラですが。

『In their discussion of monetary policy, some participants expressed the view that in the context of increased inflation risks and roughly balanced risks to economic growth, the Committee would need to be prepared to begin taking steps toward less-accommodative policy. A few of these participants thought that economic conditions might warrant action to raise the federal funds rate target or to sell assets in the SOMA portfolio later this year, but noted that even with such steps, monetary policy would remain accommodative for some time to come. However, some participants indicated that underlying inflation remained subdued; that longer-term inflation expectations were likely to remain anchored, partly because modest changes in labor costs would constrain inflation trends; and that given the downside risks to economic growth, an early exit could unnecessarily damp the ongoing economic recovery. 』

文章を途中できりにくかったので1パラ全部引用しましたが、何か「some」ばっかり並んでいて要するに今後の金融政策に関して何かこう色々と議論が割れているんじゃネーノというのは把握した。


『Committee Policy Action』から。

まあ色々な点の議論が有るのだが引用しだすとキリが無いのでインフレ期待の所あたりから引用開始。

『Recent movements in measures of longer-term inflation expectations were discussed. While some measures of longer-term inflation expectations had risen, others were little changed or down, on net, since March, and members agreed that longer-term inflation expectations had remained stable. 』

となりますと金融政策は現状維持となりますわな。

『Given this economic outlook, the Committee agreed to continue to expand its holdings of longer-term Treasury securities as announced in November in order to promote a stronger pace of economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the Committee's mandate. Specifically, the Committee maintained its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings and affirmed that it will complete purchases of $600 billion of longer-term Treasury securities by the end of the current quarter.』

そして、「資産買入の効果が不明ですなあ」という人は今回も「A few」おいでです。

『A few members remained uncertain about the benefits of the asset purchase program but, with the program nearly completed, judged that making changes to the program at this time was not appropriate. 』

まあ上記のようにその人たちも「まあ別に現状維持でエエンチャウノ」という事で。

『The Committee continued to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, were likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period. That said, a few members viewed the increase in inflation risks as suggesting that economic conditions might well evolve in a way that would warrant the Committee taking steps toward less-accommodative policy sooner than currently anticipated. 』

ということで、今後の政策に関してはやはり正常化路線を早めるべきという意見があるようで、まあ次回FOMCまでにまとまるのでしょうかねえという感じです。


○ちょっとだけ悪態的雑談

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110518-00000038-maip-pol
福島第1原発 菅首相、発・送電の分離検討
毎日新聞 5月18日(水)21時3分配信

・・・・・・いやあのですね、発送電分離の話とか(表題には無いけど)エネルギー政策の見直しとかの話をする前に今やるべきことは福島第一原発事故の安定化と、経済復興の為にも重要な電力供給の安定化であって、しかもそれは待ったなしの話だと思うのですけどねえ。

その為にも東電の賠償支払いスキームを実効性のあるもの(無法発言によって債権放棄を強要するとか論外にも程があるのですわ)として、東電の今後のリファイナンスを確実なものにすると共に、他の電力会社に対しても無駄に変な負担を掛けたり先行きのリスクを高めたりすることによって資金調達に負荷を掛けるような事をしない事が最重要であって、クリーンエネルギーとか発送電分離とかいうのはその辺りが落ち着いてから追々やれば良い話ではないかと思うのですけれども、誰に変な話吹き込まれたのか知りませんが、喫緊の課題を先送りにするのは熱心なようで非常に困ったもんだとしか申し上げようがございませんわな。

などと血圧を上げていると健康に宜しくないのでまあちょっと毒出ししてみただけね。








2011/05/18

お題「結局また東電関連雑談になってしまったorz」

まあ大概にと言いつつも実に何ともなネタなので東電関連クリップは続く。

○結局のところ「枠組み」の「6項目目」が明らかにクソな訳ですな

昨日の閣議後の会見を報じたブルームバーグから。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auI22n.A.9oE
野田財務相:東電と金融機関が対応協議を−債権放棄問題(1)

『5月17日(ブルームバーグ):野田佳彦財務相は17日午前の閣議後会見で、東京電力の賠償スキームに絡んで枝野幸男官房長官が金融機関の債権放棄が前提との認識を示したことを受け、「具体的に政府で協議したことはない」としながらも、「全てのステークホルダーの協力を得ていくのが基本的な姿勢。その中で国民負担の最小化を図るという原則がある。それに基づいた対応を東電と金融機関が民民の関係で協議いただくことが基本姿勢だ」との認識を示した。』(上記URLより)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=airlH_5CmTtw
自見金融相:債権放棄「民間当事者同士で話し合うべき」−東電賠償

『5月17日(ブルームバーグ):自見庄三郎金融担当相は17日午前の閣議後会見で、東京電力原発電所事故の賠償の枠組みに関連して、「東電支援は国民の理解を得ることが重要。民間当事者間同士で話し合うべき事柄だ」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・まあ野田財務大臣も言うように、「政府が公式な機関決定として民間金融機関に債権の放棄などを強要している訳ではない」(したらどこの暗黒中世国家だという話ですけど)という事なのでしょうが、まあ既に枝野官房長官が金融機関の債権放棄などを事実上の政府による支援条件とする発言をした後に、自見さんのように『東電支援は国民の理解を得ることが重要。』という発言をしちゃいますと、「財務省も金融庁も金融機関による債権放棄などを要求している」と取られちゃうリスクが高い訳でございまして、益々ヘッドラインリスクを高めるというものでございまする。つーかこれって「東電支援」じゃなくて「賠償支払い支援」でしょ自見さん・・・・・

まあ要するに例の6項目の最後の項目が明らかに余計、というかそれを「条件」にした時点で「政府による金融機関への法的根拠無き強要」になっているというのが問題にも程があるのである訳ですよね。

まあ毎日書いてるから耳タコですいませんが、お金のやりとりにおける契約関係に関して、後から国家権力が法律の枠組みを壊すような形で「世間的に反発されにくい取りやすい所から取立てますか」というようなスキームを炸裂させちゃいますと、そらあーた金融なんてやってられまへんがなという事ですし、大体からして世間受けの悪い「金持ち」とかが「この国に金を置いておくと何かあった時に大事なお金を法律の枠組みを超えて国家に収奪されちゃうリスクがある」と認識するんじゃないですかという話なのですが、まあ金融だの金持ちだのというのは(あたくしは金融屋だが金には縁が・・・orz)世間的に嫌われますので、迫害の対象になる事に関してはナーバスなんじゃネーノと思いますけどねえ。


ま、電力事業の主務大臣様であらされる経済産業大臣がこれだから困るのだが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aFCRivCI0gB4
海江田氏:金融機関もいろんな協力してくれると思う−東電賠償(1)

『5月17日(ブルームバーグ):(冒頭部分割愛)海江田氏は金融機関の協力の在り方について「基本的には民と民の関係であり、私どもがああしろ、こうしろということを今の段階で直接口を挟むということではなしに、金融機関の方もいろんな協力をしてくれるだろうと思っている」と述べた。』(上記URLより)

えーっと、思いっきり圧力掛けてますが海江田さん永易さんの会見内容を見てないんですかねえ。更に話がこじれるだけじゃねえのこれじゃあ話が百年経っても進まねえよ・・・・・しかも主務大臣が「事業分割」の話をしているのだが、この会社って公募社債での資金調達が多いのだから、そんなに簡単に事業分割を口にされますと困るんですけどねえ(社債の元利金返済のきちんとした承継スキームがあるなら別だが)。



というのが、共同通信ニュースになるとこうなります。

http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051701000296.html
東電と金融機関で協議を 債権放棄めぐり野田財務相

まあシャーナイわなという感じですが、こんな感じでヘッドラインリスクがホイホイ出てくるというのは全く持って何なんですかという所ではございまする。


まあこの辺とか見てると微妙に無法路線の修正をしようとしているのかなあという気もするのでその辺に期待したいですが
http://www.asahi.com/politics/update/0517/TKY201105170560.html
原発被災者「国策の被害者」と明記 政権の取り組み方針

おせえよという感じではありますが、まあちったあ前進ですかねえ。




○官房長官は益々意地になっておられるようですなあ

公共放送ニュースより
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110516/t10015922781000.html
官房長官 支援法案は合理化策後に 5月16日 19時43分

『東京電力の清水社長は、16日の衆議院予算委員会で、福島第一原発の事故を受けた賠償金の支払いを支援する枠組みに必要な法案について、今国会での成立を要請しました。これについて、枝野官房長官は記者会見で、「支援の大前提として、東京電力による資産の売却や、安全に関わらない経費の徹底的な節減、それに関係者の協力が得られることが求められる」と述べ、東京電力に対し、早急に経営の合理化策を示すよう求めました。そのうえで、枝野長官は「『早く法案の成立を』と言う前に、情報公開と内部努力を進めることが、前に早く進む何よりの要因だ。東京電力が事業主体として責任を果たしているという国民的な理解が得られなければ前に進まない」と述べ、法案の提出時期は、東京電力が経営の合理化策を示したあとになるという認識を示しました。』(上記URLより)

ということで、どうも「債権放棄」に関して直接言及するのは避けているようにも見えますが、相変わらず『関係者の協力』とか言ってるし、『支援の前提として資産の売却』などの『合理化が先』という話になっているようで、益々意固地になっておられるように見えるのですがどうなんすかねえ。

つーかさ、合理化策は良いんですけど、役員報酬削減だったら別にホイホイと決められますけど、退職者年金の削減とか給与削減って交渉相手がいることですし、資産売却だって今日売ると言って明日ホイホイ売れるものでもない上に、尾瀬の土地みたいに横槍入ったりもするでしょうし、まあそれ以前の問題として一般担保付の社債という長期負債が山ほどある会社において「重要な資産の処分」をホイホイ行うのは一般担保の社債権者との権利関係の問題もある訳で、そらまあ鉛筆舐め舐めのお絵かき策だったら簡単に出せるかもしれないけど、まともに実効性のある話をしろといわれた場合に今日の明日とかに合理化策を出すのも大変でしょ。その間に時間は経過していくんですけどねえ・・・・


ま、こんな調子でそこらじゅうから批判されて更に意地になっていると見た。

http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210518001.html
【原発】枝野長官の債権放棄に経済界から批判(05/18 05:50)

「あの」テレビ朝日でもこの調子ですからにゃあ。


○しらっと書いてあったが何だかなという話

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aH0h7UrjcFwI
東電賠償スキーム、銀行債権放棄、政府見解でなし−支援に不透明感(1)

最後の部分が盛大な釣り針で・・・・・・

『東電広報担当の松本直之氏は、金融機関に債権放棄を「要請するかは現在コメントできない」とし、「これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい」と述べた。「政府に支援してもらいながら被害者への公正かつ迅速な補償に向け準備を進めている」という。』(上記URLより)

>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい
>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい
>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい

・・・・・・・・・・いやあのどういう文脈で仰ったのか良く判らないですからあんまり悪態はつきたくないのですが、社長が資金が回らなくて政府に支援要請とか言ってる会社で、しかも政府から金融機関に公然圧力モードになっていて今後の融資どうすんのというような話になっている状態なのに『低コスト』の融資寄越せとか金融機関の首脳がこれ見たらカチンと来るんじゃネーノと思うのですが。

まあまさか素でそういう話をしたとも思えず、文脈の中で切り取られただけだとは思う(というか思いたい)のですが、こういう風に報道されるリスクのあるような物の言い方を避けないと「東電の態度は何なんだ」という感情的反発を呼んでまとまるものもまとまらなくなってくる訳でございまして、だから不良債権処理時代の銀行からちったあ勉強した方が良いんじゃないのとか思うのでありまする。

報道機関ってこういう時にできるだけオモシロヘッドラインを作ろうとするのでありまして、まあ例えば清水社長の企業年金削減に関する話とかだって法的な筋論としては別に間違った話をしている訳では無さそうなのですが、兎に角こういう時にはヘッドラインとして「東電ケシカラン」という結論になるような報道のされ方をするものですからもうちょっと何とかした方が良いと思いますけどって先日も書いたけど多分時既にお寿司ではあるのですけどね。


○更に脱線雑談:こんな国で財政マネタイズ道具与えちゃいかんでしょ

最近ちょっと下火になった、というか単に2次補正が先送りになったので、予算が先送りになれば財源論も先送りになるというだけの事だと思われる「日銀が財政マネタイズ(=財源としての国債引受)をしろ論」なのでございますがね。

まあ小見出しの通りでございましてですな、財政マネタイズに反対するクチと致しましては、主な論点として「一旦財政マネタイズを認めると足元は兎も角、将来に渡って安易に財政マネタイズを乱発する結果、財政インフレという誰も得しない展開になりませんか」というのがあって、そーゆーのに対して「財政規律を法律で縛れば」「日銀がインフレターゲットをすれば」という話が出てくるのでありますわな。

でもね、今般の東電賠償スキーム策定において内閣官房長官という政府高官が堂々の無法発言をするような国において、「国債の市中消化」という原則を崩したら打ち出の小槌を物凄い勢いで振りまくってそんな財政規律法律だのスルーしちゃうんじゃ無いのという懸念が思いっきりあると存じますし、そうなったらインフレターゲットも糞も無いと思うのですけど、その辺に関してはどうお考えなのでしょうかと思うのですよ。

「いやそんな事したら選挙で落とされるから政治家がやらない」というのかも知れませんが、一旦財政インフレ的な動きになったら次の選挙で血祭りになったとしてもその時には国民生活は破壊されている訳ですから、んなもん歯止めになるかいなという風に思うのでありまして、やはり国債の市中消化という原則をそう簡単に崩す必要は無いと思うのですけどねえ。


○そういえば英国のインフレがまた拡大してますが

毎日悪態ばかりで市場の話とかスルーでございますのでたまにはちゃんと。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=adgrn51GoRF8
4月の英インフレ率4.5%に上昇−中銀総裁に物価抑制の説明義務(1)

3月に一旦4.0%に下がったので、2010年4QのGDP落ち込みと合わせてキタコレとか思っていたら4月にあっさりインフレ再加速とな。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/046.htm
News Release
Letter from the Governor to the Chancellor (10.30am)

ということで、上記URL先に「はいはいインフレターゲット超えですよサーセンサーセン」書簡があるのですが斜め読みしただけなので後で真面目に読みます(汗)。

#で、時間切れのため本日も悪態つきつつメモがメインなのでした(あほ)









2011/05/17

お題「まあ東電ネタは大概にしたいのだが雑談メモメモ」

市場の話はすっかりスルーでどうもすいませんすいません。

○政権の無茶振りにさすがの銀行もお怒りのようです

ブルームバーグニュースから
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aOZHcYQHF1G0
大手銀5G決算:与信費用減で6割増益1兆7631億円−今期予想は慎重

『5月16日(ブルームバーグ):(途中割愛ね)三菱UFJの永易克典社長は、政府部内で銀行の債権放棄が前提との見解がある東電賠償の枠組みについて「債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ。非常な違和感がある」と強調。再生の可能性がなければ株主代表訴訟になるなどと指摘した。東電からまだ話はきていないという。』(上記URLより)

>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ
>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ
>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ


読売新聞から
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110516-OYT1T00953.htm
三菱UFJ社長、債権放棄は「かなり難しい」

『三菱UFJフィナンシャル・グループの永易克典社長は16日の決算記者会見で、枝野官房長官が東京電力への融資について債権放棄を求めていることに、「唐突で、違和感のある発言だった。民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか」と不快感を示した。』(上記URLより)

>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか
>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか
>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか

『また、永易社長は「金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある」と指摘した。永易氏は「東電が抜本的な再建計画を作る中で、どういう金融協力ができるかを考える」と述べたが、その前提として「(東電の)大リストラが前提になる」と強調した。(2011年5月16日21時02分 読売新聞)』(上記URLより)

>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある
>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある
>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある

どう見ても騙し討ちを食らった銀行がお怒りのようです・・・・・って当たり前としか申し上げようがございませんが、こーゆー風になるの当たり前にも程がありまして、まあ何と申しますか本当はただのおまいらの説明放棄であり利害関係者の調整努力を1ミリもしないで全く使い物にならない「案」とやらとドヤ顔で作って勝手な「国民感情」を持ち出して圧力掛けるだけしか能の無い政権の仕打ちにいつまでも甘い顔してたら銀行にどんだけ無理無体が飛んでくるか判りませんがなという所でございましょう。

しかしブルームバーグの方にありましたが、「東電からまだ話はきていない」っていうのが実際問題としてどのような段階(打診段階なのか本当に何も来ていないのか)なのかは判らんですけど、交渉以前の問題である、というのであればそもそも政府は何を考えてあんな無茶振りの前提条件付きの構想を出したのか全く理解に苦しみますが、どうせ支持率アップの為に何か出そうとか、決算発表までに何か出そうとか、そういうのが先に有って、本当に重要な「実際にワークする施策を作るために利害関係者間の調整を粘り強く行う」という地味な事はやらないでパフォーマンスだけ政治やってるからこういう話になるんでしょとゆー所ですわなあっはっはorz

しかしまあ東電も何か相変わらず危機感あるのか無いのか判らん(少なくとも「話がきてない」と言われるレベルの動きしかしてないと言うことでしょ)ですし、まあ元々が借入にしろ社債発行にしろ(激しく自主規制)であらされた流れをまだ引きずっているんでしょうかねえ。

まあしかし本件に関しては(少なくとも表面的には)結構こじれてしまったなあと言う感じでありますし、少なくともあの一連の無法発言ですっかり信頼関係が壊れてしまった感があります次第で、そもそもこの手の交渉するのに信頼関係もへったくれも無いという状況から開始するとなるとまあ話が中々進まんわなという所であります。唯一の救いは菅さんが収拾に乗り出すコースかなあ(恫喝的発言に対して菅さんが撤回するという感じ、まあよーやらんでしょうが)とは思いますけどねえ。



○しかし相変わらずの調子なのがこのお方

またまたブルームバーグニュースから。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aF571yB_qf5g
枝野氏:東電の資産売却、経費削減が大前提、政府の賠償支援−会見

『5月16日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は16日午後の会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐる賠償問題について、政府の支援は同社が資産売却、経費削減を徹底的にするのが大前提だと述べた。また、ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要があるとも指摘した。』(上記URLより)

>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある
>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある
>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある

おいこらまだ言ってるのかお前自分の発言の意味判ってるのかてめえ一般担保の債権者で自主的な「協力」とかする奴いると思ってるのかという所でありまして、枝野様におかれましては金融関連の法的な問題に関してはどうもあまりお得意ではなく、却って話をこじらせる方向に作用される事でもございますので、それよりも脱原発のクリーンエネルギー開発研究方面に貢献して頂きたいと存じます次第でございまして、例えばブルジュ・ハリーファの最上階からイカロスの翼の稼動実験の実演を行っていただくなどというような貢献を是非ともお願いしたい所でございます。


より詳しいニュースはこっちでしたな(汗)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=al7SN1PfjYK4
枝野氏:発送電分離など東電事業形態見直しも選択肢−記者会見(1)

『5月16日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は16日午前の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた今後の同社の在り方に関し、発電・送電部門の分離を含めた事業形態見直しも選択肢としてあり得るとの認識を示した。 』(上記URLより)

・・・・・まあそれやってエンロンリターンズとかニューヨーク大停電リターンズとかになられても困る訳で、今回の震災で固定回線も携帯回線も役立たず振りを発揮したどこぞの禿のようなのが電力事業に参入されても何だかなという感じなのでございますけれども、まあそれはとりあえず措くとしませう。

でね、それはまあ措くとしましても、発送電分離とかいう話になると社債的に申し上げますとそれは「重要な資産の売却」という事になると存じます次第でございまして、そういう場合は同社の負債をどういう形で継承するのかという点についてキチンとした形で詰めないと社債の失期事由に引っ掛かった社債権者が売却差し止め請求とかを飛ばすことになる(つーか社債管理会社が社債権者の権利保全に動かないと今度は社管がエライコトになる)とかいうような素敵な話になってしまうのでございますが、ど〜せそんな事この人たち何も考えて無いでしょ。

つーかさ、これ昨日も書いたけど、将来的に事業形態見直しされるというような話が見えていて、かつ一連の閣僚発言で「この政権に掛かると何を言い出すか判らない」という状態になっているのに誰がそんな企業に追加融資するのよという話になって、問題が益々ややこしくなるのでありまして、事業形態の見直しがどうのこうのというのであれば、検討の際には必ず同社の債務をその時点でどういう形にするのかという所を明示しないとダメだろという所でありまする。これが自民党政権時代だったらその辺あまりきっちり書いてなくても当然の如くその辺りを勘案した動きをするという安心感がございました(まあ金融行政に関して言えば竹中プラン時代に随分やってくれましたのでやはり微妙にアレな所があると思いますけどね)けれども、現政権は全くその辺の安心感が無いですからねえ。


○そして法案提出先送りだとおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

共同通信(47NEWS)から
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051601000929.html
東電の賠償支援法案も先送り 政府民主、臨時国会へ

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

原発事故の避難者や農業漁業などの被害者に対して迅速な措置を取り、かつ賠償の支払いを東京電力に確実に履行させる為に急いで今回の仕組みを作ろうとしたんじゃないんでしょうか???????????????

『菅直人首相は今国会を6月22日の会期末で閉じたい意向で、40日を切った残り会期中に処理する法案を絞り込みたい思惑もある。本格復興のための2011年度第2次補正予算に加え、賠償支援法案の処理も先送りとなれば、野党が反発するのは必至だ。』(上記URLより)

えーっと、2次補正先送りに加えて賠償支払いスキームも先送りとか要するに震災復興も原発事故被害者支援も先送りして政権延命をしたいということでしょうか?

『これに関し枝野幸男官房長官は16日の記者会見で、東電の清水正孝社長が賠償支援法案の今国会成立を求めたことに対し「まず東電が経費節減の努力を示し、責任を果たしているとの理解が得られなければ前に進めない」と不快感を表明。岡田氏も会見で「政府の準備状況がはっきりしない」として、早期提出の状況にないとの認識を示した。』(上記URLより)

東京電力の経営陣の対応の仕方が如何にもマズいのはそうなのですが、本当の問題は元々出たプランの前提条件にある「ステークホルダーの協力」という法的根拠無く一部の利害関係者に損失を押し付けるような部分やら、もっとそもそも論を言えば現在のプランがあまりにもフワフワで最終案の体を為していないというのもありまして、まあ結局のところ本案を作成するにあたって政府が何か調整の努力をする訳でもなく、「金融機関の協力」問題に関しては内閣官房長官御自らが「民民の問題」と言いつつ「協力が無いと国民の理解が得られない」などと恫喝的な言辞を弄するだけという現政権の何もしない攻撃が問題なのですけど、こらまた明らかに東電(と金融機関)に話が進まない責任をおっかぶせる気が満々とか意味判りませんなあ。

・・・・まあそんなこんなで昨日も血圧の上昇する一日であったことよ、という所でございますな、いやはや全く精神衛生によろしくありませんですなあorz

#結局今日も悪態になってしまい、債券市場の話も短期市場の話も無かったのは誠に遺憾の極みでありまする、つーか今週木曜金曜が決定会合じゃねえか・・・・





2011/05/16

お題「引き続き東電関連の雑感が続くあたくし(−−;」

基本的に営業日にもさもさ更新するのがあたくしの仕様ですが、土曜日は珍しくトサカパワーで書いたのでこの下の方に載っけております(^^)。

○これはこれは

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110515-00000037-jij-pol
東電存続、前提とせず=「発送電部門分離も」―玄葉戦略相
時事通信 5月15日(日)14時38分配信

『賠償支払いの枠組みに関し、玄葉氏は政府案の前提となった東電のリストラ策について「不十分だ」と述べ、さらなる合理化の必要性を強調。枝野幸男官房長官が金融機関の債権放棄の必要性に言及したことについては「言い過ぎた感じがする。東電が自主的に協力を求めていくことが一番適切だ」と苦言を呈した。』(上記URLより)

いやまあ東電のやりかたがトンマなのは金融危機以降の金融機関へのあの風当たりっぷりをお前ら見てなかったのかという感じですが、金融機関の場合はいくつかあってホイホイと血祭りに上げる事ができたので途中で金融機関も気がついてだいぶ平身低頭モードになったのですが、まあ繰延税金資産問題で梯子を外す攻撃に出た後は色々とアレでございましたわな。

でね、玄葉さん的には枝野海江田発言の火消しをした積りなのでしょうけれども、既に「ステークホルダー、特に金融機関の協力を求める」というのが「条件」となっているペーパー出しておいて「東電が自主的に協力を求めていくことが一番適切」とか茶番以外の何物でもない訳で、まあ残念ですなあ玄葉さんという感じです。

つーか「東電存続前提とせず」とか言ったら東電への融資や社債のリファイナンスをどうするんだよという感じでありまして、更に話がヤヤコシイ事になるじゃろとしか思えんのですけどねえ。


○権力が暴走する件に関して

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110515-00000023-maip-pol
毎日世論調査 浜岡原発停止「評価する」66% 
毎日新聞 5月15日(日)21時15分配信

まあどうせそんなもんになるんだろうなあと思うのですが、毎日とか朝日とか基本的に左翼系のメディアが一連の流れをやたら褒めていますからそらまあ毎日新聞が世論調査してもそうなるんでしょ。

でまあ浜岡原発が止まった時に申し上げた事の蒸し返しになっちゃいますけど、国家権力(だけじゃなくて権力一般というのものも含まれると思いますが)というのはまあ強制力であってある意味暴力装置のようなもんでありまして、その強制力を恣意的に濫用されたらその権力の下にいる構成員にとっては暗黒社会の到来に他ならないっすよね。で、その権力の濫用を防ぐのが法の支配という概念だという風にあたくしは理解している(ちなみにあたくし法律専攻じゃないから間違ってたら教えてちょ)訳でございます。

明治時代の最初の新聞は「藩閥政府の専制を指弾する」のが存在意義だったと思うのですけれども、今では権力の暴走を賞賛するとか新聞としてどうなのかと思いますが、まあ良く考えたら先の大戦の時だって新聞が先頭切って戦争を煽っていたのですからそんなもんなのでしょう。ゴミですなゴミ。


まあこちとら金融などという古今東西世間受けしない業務を生業としておりますと、こんな調子で権力が法の支配をいとも簡単に乗り越えた「国民感情」を基にした施策を打って来ますと、今度はこの権力は何を言い出すんでしょと心配になる訳でございまして、しまいには「財政赤字削減に協力する為に自主的協力を」とか言い出して以下自主規制という事でもあったらどうしようとかいうようなブラックスワンが気になってくる週末なのでありました。いやこれ富裕層が逃げ出し(本人は兎も角お金ね)てもおかしくない世界なんですけどねえ。


○まあしかしある意味今回の枝野さんの一件は良いリトマス試験紙になる訳で

と思って各社の社説を(新聞買い揃えるのはめんどいので手抜きでネットで)見たのですが、この件に関する社説であたくしが見つけたのは朝日と日経でございまして、他の新聞社はナニシトンネンと思いましたが、読売が割と批判的な解説をしていてホッと一息。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110514-OYT1T00240.htm
東電融資に政府が異例介入…金融界、一斉反発

記事の後半を引用するだよ。(段落分けのみ改変しています)

『枝野長官が言及したのは、震災後に大手行が行った約2兆円の緊急融資を除いた約2兆円についてだ。東電が優良企業だったこともあり、大半は担保を取っていない無担保融資だ。このため、東電が債権放棄などの金融支援を要請した場合、取引金融機関は貸し倒れに備えた引当金を大幅に積み増し、最大数千億円の損失計上を迫られる。新たな融資をすればするほど損失を計上する必要があり、取引行は「新規融資には応じられなくなる」(幹部)と反発している。

 金融機関に負担を求めるのは当然という感情論だけでは、枠組みの前提となる金融機関の協力が得られなくなる可能性が高い。

 東電の信用力も低下するのは確実で、13日の東京株式市場で東電株は大幅続落した。企業が破綻するリスクを取引する金融派生商品(クレジット・デフォルト・スワップ)のうち、東電のスプレッド(保証料率)も急拡大した。「破綻確率が高まった」と受け止めた投資家が増えたためだ。

 社債などの発行は一段と困難になる可能性が高く、東電が市場からも資金調達ができなくなり、東電を破綻させずに損害賠償を進めていく政府の枠組みが機能しなくなる危うさをはらんでいる。

 銀行が債権放棄に応じるためには、東電が実質的な債務超過に陥っていることが前提となる。しかし、現時点では被災者への損害賠償や、福島第一原発の廃炉に必要な費用も見積もれない段階で、債務超過の認定ができるのか、疑問視する声が多い。(是枝智、越前谷知子)(2011年5月14日10時04分 読売新聞)』(上記URLより)

という事で、この解説記事は論点がほぼ過不足無く織り込まれておりまして、何でこれをベースに社説書かないのよと思うのですけれども、特に「リファイナンスを回さないとワークしない」という論点と「現時点で銀行が債権放棄をするのは法的に無理がある」という論点をきっちり押さえていて、まあこの程度書いていただかないと新聞として困るっちゃあ困りますが、宜しい感じですな。


日経新聞14日社説。
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE0EAE7E0E3EAE4E2E3E6E2E7E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
原発賠償への一歩を踏み出す東電と国
2011/5/14付

『枝野幸男官房長官は13日の記者会見で、東電支援の枠組みに関連して、銀行に債権放棄を求めていると取れる発言をした。債権放棄は通常、借り手の深刻な経営難が前提だ。補償総額が不明ななか、国が東電を助ける枠組みが決まった直後の発言は極めて軽率で、真意を測りかねる。』(上記URLより)

という辺りはまあ一応指摘してて良いのですが・・・・・

『しかし、銀行などの債権者や株主、そして何よりも国の責任の取り方について、まだ合意ができたとはいえない。国が金融機関以外の企業を破綻前に救済することには、賛否両論がある。』(上記URLより)

この「責任」という部分ですが、債権者や株主の「責任」と国の「責任」というのは責任の次元が違う筈だと思うのですが、何でそれを一緒くたにして「責任」として表現するのか日経新聞の社説子の意図が理解できません。即ち、債権者や株主の責任負担というのは当該企業の経営状況が悪化することによって結果的に負担することになる経済的な責任ですが、国の責任は原子力政策における許認可、監督者としての責任であって、つまりは「原発事故の責任」であるという意味で話の次元が全然違う訳ですが、日経新聞社説におけるこの表現はその辺りを混同するようにミスリードするそれこそ軽率な表現であろうかと存じます。

あと、2文目の「救済」というのもこれまたどうかと思うわけで、現行の法的な枠組みなどから考えて将来の長い期間に渡って東京電力に事故賠償金を支払わせる事を担保するためのスキーム(ただ前提に「金融機関の協力」がある時点で現行の法的な枠組みを飛び出しているのでダメダメなのですがそれは措く)として作っているつもりの物であって、「東電救済」とかメディアが言うから話が更にややこしくなって、「じゃあ金融機関にお願いしよう」とかいう無茶苦茶な流れになったんでしょとか思いますけどねえ。

ということで、日経社説は読売のさっきの記事に遠く及びませんな。


朝日新聞14日社説。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110514.html#Edit2
原発事故賠償―株主や貸手も責任を

『これでは、とうてい納得できない。東京電力福島第一原発の事故を受けて、菅政権が13日に決めた賠償策のことだ。電力10社の出資で「機構」をつくり、東電の資金繰りを支援する。政府も公的資金を投じるが、最終的には東電と他の電力各社が弁済するため「国民負担は生じない」という。

 だが、賠償金の支払いや電力の安定供給を名目に、生かさず殺さずで東電を存続させる今回の案は、責任の所在をあいまいにしたまま、電力業界を守り続ける枠組みになりかねない。

 まず、株主や金融機関に負担を求めないのはなぜなのか。

 確かに、株価下落や無配転落で株主は一定の損を被る。金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。

 だが、実質的に経営破綻(はたん)の企業を公的に救済する以上、必要な減資や債権放棄は枠組みの中できちんと位置づけるべきだ。』(上記URLから)

>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。
>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。
>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。

・・・・・・・無法措置をこれだけ賞賛する新聞社も珍しいですが、このような無法を主張するような新聞社に対する融資を行うのは金融機関としての社会的責任という意味からして如何なものかと思われますので、融資のロールオーバーとか応じない方が宜しいのではないでしょうかねえマッタクモウ。

ということで、朝日新聞は唯一ネ申によって地獄の火の中に投げ込まれるべきものであるというのが良く理解できました。


まあ以下おまけですけど。

ロイター
http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20110513-00000852-reu-bus_all
東電賠償スキーム、事実上株主・社債権者などを免責
5月13日(金)12時38分配信 ロイター

『[東京 13日 ロイター] 政府が13日発表した福島第1原子力発電所事故による東京電力の損害賠償支援スキームは、株主や社債権者などの各ステークホルダーを事実上、免責するものとなった。巨額の損害賠償が発生し、債務超過に陥れば優先・劣後関係の中で損失を負担していくのが金融市場の原則だが、”too big to fail”(大きすぎて潰せない)との主張の前に、最初にき損されるべき株主も守られるスキームだ。「リスク・リターンの原則もないがしろ。究極のモラルハザード案」(外資系証券幹部)との指摘も出ている。』(上記URLより)

ということで、書いてあることは会社法上の優先劣後の関係について述べているのですが、題名の所で株主と社債権者を同列にしている時点でマイナス100万点としか申し上げようがありません。記者会見などでニュースの見出しがミスリードというのはロイターの得意技なのでサプライズは無いですがこの記事見出しの時点で論外。

あと、記事の後半の方もなんか変な事書いてある気がするけど、読む気が起きないのでツッコミはしない。いやあロイターさんって市場関係者向けベンダーの販売を頑張っている筈なんですけど随分楽しい記事書きますねえ。


更におまけ

abz2010さんのブログから
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20110515/1305449669
あまりに「アウトロー」な民主党政府の原発事故賠償スキームについて

特に最後の部分が冷静で、あたくしのような湯気ポッポーの悪態しか書けないあたくしとしては頭が下がりますので勝手に引用。

『枝野官房長官や仙石官房副長官は弁護士出身であり、法律については当然詳しいと考えられるが、弁護士としての法律への接し方と政府としての法律への接し方は本来違うはずである。

弁護士としてはとにかく依頼者の利益を守るべく法律を最大限都合よく解釈して(時には明らかな拡大解釈と見えるようなものまで駆使して)勝訴を目指すのが本来の職務なのかもしれないが、法律の専門家がそのような法律への接し方をしても法律に対する信頼感が(大きくは)毀損しないのは、最終的に裁判官が法律に則って判断するからである。

ところが、同じような法律への接し方を政府が行い、かつその解釈を政府と民意の圧力で押し付けるようなことが起こったなら、法律への信頼感は急速に毀損するだろう。

そうなれば、「いざとなれば法律も信用できない」という前提で国民は行動しなければならなくなり、個々に準備・対応すべきリスクは格段に大きくなる。 又、「原子力損害賠償法」で原子力発電を国策として推進したような対策も従来のようには効果を発揮しなくなるだろう。市場原理主義を信奉する人間にとってはそれこそが本来の姿ということかもしれないが、少なくとも国としての手持ちのカードを一つ捨てるということであり、そうでなくても手持ちのカードの少ない日本にとって良い事は殆ど無いはずである。』(上記エントリーの最後の部分)

全く同感です。


一方でこんな人もいるようですが、金融の専門家でメシ食ってる人の発言とは思えん。
http://twitter.com/#!/yamagen_jp/status/69324778250571776

引用するのも忌々しいので引用はしませんがまあ読んでちょ。








2011/05/14(特別更新)

お題「現政権は日本の金融の仕組みそのものを破壊したいのでしょうか」

という訳で昨日は13日の金曜日らしく斜め上の要人発言が相次いだので、トサカに来たあたくしは久しぶりに土曜の朝(つーか昼だが)に湯気ポッポーパワーで書き物をするのだ。

○東電の賠償金支払スキームの案のようなものが出ていましたので一応メモ

経済産業省のページから
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/taiou_honbu/index.html
原子力発電所事故に関する賠償などについて

http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/songaibaisho_110513_01.pdf
東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて

「関係閣僚会合決定」で閣議決定とかじゃないようですな。

で、そちらにも政府の出した例の6条件がありますが。

『第一に、賠償総額に事前の上限を設けることなく、迅速かつ適切な賠償を確実に実施すること、第二に、東京電力福島原子力発電所の状態の安定化に全力を尽くすとともに、従事する者の安全・生活環境を改善し、経済面にも十分配慮すること、第三に、電力の安定供給、設備等の安全性を確保するために必要な経費を確保すること、第四に、上記を除き、最大限の経営合理化と経費削減を行うこと、第五に、厳正な資産評価、徹底した経費の見直し等を行うため、政府が設ける第三者委員会の経営財務の実態の調査に応じること、第六に、全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと、について東京電力に確認を求めたところ、これらを実施することが確認された。』

>第六に、全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと

んでまあ昨日は「金融機関への恫喝キター」などと書いていた訳ですが、さすがの金融市場連中も想像できないような発言が昨日の昼休み直前の枝野官房長官会見で行われ、それが報道されたのを見た金融市場はあまりの斜め上ぶりにビックリするのでありました。


○枝野官房長官の無法発言キタコレ

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=afFpAbxcloyw
枝野氏:政府の東電支援、債権放棄など金融機関の協力前提−会見(4)

いやまあ前日から「金融機関の協力が無いと政府は支援しません」みたいな無茶苦茶な話をしてて、責任と判断を金融機関に押し付けた挙句に法的根拠の無い「協力」を「要請」されるとか言う意味不明にも程がある発言を枝野さんはしてました(から金融機関への恫喝キターとか書いたのですが)けれども、その「協力」の内容が金利減免とかリスケ程度ならともかく(15日追記:金利減免とかリスケでも「協力を要請」するのは如何なものかという感じですが)「債権放棄」って何だよそれ。

すいませんあの上場維持を今後も維持する会社の債権放棄とかってその行為の経済的な合理性が極めて高いとか、何らかの法的根拠があるとかなら兎も角、単なる「協力のご依頼」如きで実施したら株主や預金者に対する背任行為で牢屋行きになっても不思議じゃないレベルの話なのですけど、弁護士ご出身と聞きましたが枝野先生民法とかご存知ないのでございましょうか????

『枝野氏は金融機関が3月11日の東日本大震災前に東電に対して行っていた融資の債権放棄が一切なされなくても公的資金の活用に国民の理解が得られるかとの質問に対し、「現時点では『民民』の関係なので発言に注意したいと思うが、国民の理解得られるかといったら、それは到底、得られることはないだろうと思っている」と語った。』(上記URLより)

これだけ露骨に会見とかやって圧力掛けて、更に「政府支援の条件は金融機関などの協力」という公表文書まで出しておいて「民民の関係」とか聞いて呆れる発言でございますが、ここまで国家権力者が露骨に法的手続きを経ない恫喝的圧力を掛けるとかどこのマグナカルタ以前の中世国家だよとしか申し上げようがありません。

国有化して下位権利者の株式について消滅させて、その後公的資金を入れるからその為に応分の負担をして下さいつきましては債権の一部(か全部か知らんが)をカットしますとか言うのであれば話の筋は通りますが、どこの世界に「株式の上場を維持したまま進めたいから株式よりも上位権利者であるローン債権保有者の権利を消滅させたい」とか国家権力が先頭切って言い出す国があるんだよという事でもありまして、これは国家が法的に定められている物権の関係を政治的な都合あるいは権力者の一存で勝手に事後的に変更できるという事に繋がる重大な問題であり、日本ソブリンが投資不適格扱いになるレベル(厭債害債さんが既に渾身のエントリーを2本(http://ensaigaisai.at.webry.info/201105/article_2.htmlhttp://ensaigaisai.at.webry.info/201105/article_3.htmlです)上げておられます^^)でもあるという厭債害債さんのご指摘に深く同意せざるを得ません。

大体からして「国民の理解」がどうのこうのとか言ってるけど、金融機関に対して預金者や株主に対する背任的な無法行為を取らせて国民の理解を得るとか意味が全く判らないというか、政府サイドの義務放棄にも程がある話でありまして、法的な手続きを踏んだ結果これが現在の最善の策であるというのを説明して国民の理解を得るのはお前らの仕事だろとしか申し上げようが無い訳でして、枝野発言のこの部分は金融面から見た場合には国家の信用を危殆に陥れる可能性を大きく孕んだ発言であると同時に、民主主義国家における代議員としての役割放棄発言でもある訳ですな。



ついでに言えば「貸し手責任」という概念に対する枝野さんの話も無茶苦茶でして。

『枝野氏は閣議後の会見で、震災前の東電への融資に関して「原発事故のリスクというものも広い意味では、当然のことながら考慮に入れて融資がなされるというのがマーケットの基本だ」と指摘。その上で、「この事故によって生じた財務内容を前提にした中で金融機関についても当然、協力をいただけるものと思っている」と述べた。』(上記URLより)

いやね、原発事故のリスク云々はそうかも知れないけど、だからと言って金融機関の融資が一方的に大損になるという債権の優先劣後の関係を完全に無視した「協力」をする必然性は全く無いのではないでしょうか。それとも何ですか枝野サン的には原発事故の責任は融資した金融機関にあるから債権放棄しろとでも仰るのでございましょうか???そういう話だったらそのうち銀行って住宅ローンで金貸した相手の日々の素行調査までしないと何の責任を負わされるか判ったもんじゃないから大変なことになりますねえwwwww

つーかさ、貸し手責任の言葉で法的に応じる根拠の無い債権放棄を応諾するように国家権力が圧力掛けるような国で金融業が成り立つのかよという根源的な問題になってくると思うのですけどねえ。

そういやさっきの経済産業省のページにあったPDFの方の3ページにある『(具体的な支援の枠組み)』の3番に『原子力事業者を債務超過にさせない。』と書いてあるのですけれども、金融機関に債権放棄を先にさせておいてドヤ顔で「原子力事業者を債務超過にさせない(キリッ)」とか言われてもギャグで書いているのなら兎も角、真面目に考えているとしたら文章の作成者の頭の中に詰まっているのはゲロかうんこなのではないかと思ってしまいますなあ。


まあ枝野官房長官様におかれましては、弁護士であらされた事もあるとお聞きいたしましたが、遵法精神の欠片もなさそうな大変に素晴らしい認識をお持ちのようであり、国家権力の中におられますと極めて遺憾でありますので、可及的速やかに1号機あたりに特攻して頂きたく心から願う次第でございます。なお、1号機と申しましても特定の設備を指しているわけではございませんで、偶々一般名詞として「1号機」という単語がふと頭に浮かんだだけであり、それ以上の意味は全く存在しないという事を念の為付け加えさせていただきますw



○更に海江田経済産業大臣が張り合って妄言とな

参議院のホームページとか、ユーチューブ辺りに音声付の画像があるようなのですけれども、何故かネットではこの発言のニュースが拾えなかったので、日経QUICKニュースから。

<NQN>◇経産相、東電賠償への協力「株主も社債保有者も当然入る」

確か昨日の16時50分前後(メモしたのですが時間書き忘れたわ)のニュースになりますが、記事によりますと『「全てのステークホルダーに協力を求める」との表現について「当然のことながら株主も社債保有者も入る」』(上記日経QUICKニュース記事より)との事だそうです。

えーっとですな、「協力」って何ですか「協力」って???株主が保有株式を任意で寄贈でもしろというのでしょうか?????一般担保付の先取特権がある公募社債保有者に対して任意で元利金の受け取りを放棄しろとでも言うのでしょうか????

まあ株式の話は置いといて債券市場の片隅におります者として社債の話をしますと、この手の公募社債を保有しているのはお昼のワイドショーで貯蓄アドバイザーが出てきてドヤ顔で「中期国債ファンドとスーパーMMC、どっちがお得でしょう」とか説明しているようなコーナーを見ながらてめえのヘソクリを使って購入しているような方だけではなくて、というよりそういう人は少数派でありまして、一般的には銀行や保険会社などの運用や、年金基金や投資信託の運用の一環として保有している人たちでありまして、これらの人たちに取ってみたら、例えば銀行であれば所謂プロパー勘定ではあってもその運用資金の原資は一般預金者などの資金でありますし、年金基金や投資信託のような他人勘定であれば、運用者は受益者に対して運用における忠実義務を負っている訳でありまして、一般の個人が義援金ホイホイ出すようなノリで「協力」とか出来ませんがな。

まあそれ以前の問題として、上位一般担保付債権者に「協力」しろとか言い出すという時点でこの国は投資した資金が権力者の都合で以下同文という所でありまして、うっかり債券投資も出来ないカントリーリスクの塊ですなあという話になると思うのでありますよ、マッタクモウ。

まあきっと海江田経済産業大臣さまにおかれましては、枝野官房長官の発言によって銀行株が下落(http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011051300683)したり東電のCDSが急拡大(http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a5hs1IzC_n58)したのを見て対抗意識を燃やして更なる妄言をしようと試みたのではないかと存じますが、最初のブルームバーグニュースにあるんですけど、昼間はこのような発言をしていた筈で、どうも海江田サンにおかれましては、重度の健忘症にでもなられておられるのではないかと大変に心配でございますw

『一方、海江田万里経済産業相は同日の閣議後会見で、東電の社債と株式上場の扱いについて言及した。社債については「同じ債権の中でも優先権があるので法律に基づいた優先権が維持されるということになろうかと思う」と指摘。上場に関しては「上場企業として東電が引き続きしっかりとした電力の供給を行ってもらいたいというのが私どもの要請なので、そういうことになろうかと思う」と述べ、維持されるとの認識を示した。』(一番上にあるブルームバーグニュース記事と同じ記事より)

まあ何ですな、お茶の間貯蓄アドバイザーレベルの方であればその程度の認識でも仕方ないのかもしれない(まあ正直それでは貯蓄アドバイザーとしても失格でしょうが)ですけれども、経済産業大臣としてこれはどうなのかという感じが非常に強く感じますですなあ。なお、先ほどから申し上げておりますお茶の間貯蓄アドバイザー云々というのは特定の個人を想定しての話ではなく、あくまでも一般的にありそうな光景として想像しただけである事を念の為申し添えたいと存じますwww



○さらにこのスキームの案らしきものについての雑感

大体ですな、東京電力が電力供給のオペレーターとして事業を回すためには、資金繰りを回さないといけない訳でして、通常のオペレーションに関しては電力料金が見合いで入ってくる話しですからそらまあ回りますけれども、社債や借入金の元利払い、賠償金の支払い、福島第1原発の事故処理費用や今後の火力・タービン発電施設の整備など、その他に必要な資金は色々とある筈でございますが、そのリファイナンスどう回すのかの観点はどうなっているのよと心配でございます。

まあこのスキームだと東電は借金返済マシーン状態になる訳ですから、基本的には社債発行での資金調達は無理でしょ(そらまあBBB格ギリギリ並のスプレッドでもつければ調達できるかもしれないが、そんな社債が年間数千億から兆円単位で発行するとか無理だし、そんな事したら東電のオペレーションコストが上がって電力料金に跳ねるがな)という話ですからそもそも市場調達は厳しい話になるでしょう。

では銀行融資で、という話になるかとは思うのですが、その前に国有化なり法的破綻なりしてその更正企業としての事業体への融資ならまだ判りますが、一旦「協力」によって(仮に一部であっても)債権放棄をしたという時点で債務者としては破綻懸念先とかそういう類の債務者区分になる訳で、そんな所にそう簡単に追い貸しできませんなあという事になると思いますがどうなんでしょうかねえ。

まあそれに対して「政府保証をつける」という話になって、それなら金融機関も融資しますがな、という事になるのかも知れませんけど、今回の調子で「協力」を求める政府がいる中で原子炉の廃棄費用が想定異常に嵩んだとか、原子炉の停止に向けた期間が長引いて賠償額が拡大したとか言って東電の損失が拡大した場合に、同じノリで「協力要請」とかしてきて政府保証を反故にするのではないかとまで最悪のケースだったら容易に想定できてしまう訳でして、政府保証をつけるのであればかなり明示的というか法的というか、何か担保するものをつけてくれないと「政府保証だから安心」とも言い切れませんがな、という話になっても不思議ではないというのが枝野官房長官発言および今回の賠償支払スキームにおける6条件お恐ろしい所でございますわな。


・・・・・それにさ、これって問題は他の電力にも掛かる話で、何か大きな事故があった場合に株式よりも優先する筈の無担保ローン債権に対して「事故のリスクも考えて融資をしたというのが常識」とかドヤ顔で政府要人が発言しながら「債権放棄の協力」への恫喝が飛んでくる、という事になりますと、他の電力会社への融資に関しても継続してて良いのですかというような話になりかねない訳ですし、まあ少なくとも資金調達コストが上昇して各電力会社の費用負担が大きくなり、結果的に電力料金の上昇として国民生活における費用の上昇ならびに日本企業のコスト上昇に繋がり、家計消費への悪影響や日本企業の国際競争力の低下あるいは企業の国外移転を促すという事にもつながる話であって、このスキームは一見四方八方丸く収まるような書かれ方をしていますが、肝心の資金繰り(リファイナンス)に対する配慮がいささか欠けているのではないかという所が懸念される所でございます。


○まあいずれにせよ「法的根拠の無い恫喝」が幅を利かせる国家に成り果てたのかと

先般の浜岡原発ですっかり「法的根拠の無い恫喝」に味を占められたようで(まあよくよく確認するとそれ以前からも色々と無法措置が横行しているようで、詳しくはBOAメリルの上田アナリストが13日付けで出しているレポートが秀逸ですのでBOAメリルまでどうぞ^^)、今回は金融という大変にデリケートな部分のある問題に対してあちこちに法的根拠の無い恫喝的な「協力」を求める始末。

こんな国で果たして金融の仕事やってて良いのかとか真剣に悩んでしまう13日の金曜日なのでございましたが、折角ですから最後は有名なマルティン・ニーメラー牧師の「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」でもWikipediaから引用させて頂いて悪態の締めとしたいと存じます。

ナチ党が共産主義を攻撃したとき、私は自分が多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。

ついでナチ党は社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者ではなかったから何もしなかった。

ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。

ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した ―しかし、それは遅すぎた。

― 『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』


(Wikipedia日本語版より引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%BC%E3%82%89%E3%81%8C%E6%9C%80%E5%88%9D%E5%85%B1%E7%94%A3%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E8%80%85%E3%82%92%E6%94%BB%E6%92%83%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%8D




2011/05/13

お題「またまた東電雑感/ブラードさんの「ヘッドラインインフレが重要」講演」

んでまあ今日決定するようですが、さて・・・・・

○何か金融機関に浜岡原発作戦方式を発動しようとしてねえかこれ???

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a6SOnIeqd1aM
枝野氏:東電賠償枠組み、今夕にも決定−電力値上げによらず(2)

ちょwwwおまwwwww「電力値上げによらず」ってそもそも原発止めるとかしたらそれだけでも燃料費上昇するのに電力料金上げないでどうやって賠償金の支払いがオンされた収益払いますねんとヘッドライン見て腰を抜かしたのですが・・・・・

『枝野氏は電力料金の値上げもスキームに含まれるかどうかについて、「賠償額全体が残念ながら見通しすら十分に立てられない状況なので確定的なことは言えないが、基本的に電力料金の値上げによらずに賠償の資金を出す、そのためのスキームを作ったつもりだ」と強調した。』(上記URLより)

つまり燃料費の上昇とかによる値上げは別問題ですよという話のようですけれども、こんな言い方したらどう見ても当分「燃料費上昇および火力比率の引き上げによるコスト上昇に伴う電力料金の引き上げ」も出来ない状態に陥るんじゃネーノ(「電力料金引き上げせず」が当然の如くヘッドラインとして広がりますからねえ)と思うのですが、何かこの内閣あちこちのご機嫌取ろうとしてるように見えるわけで、普天間基地移転問題とかいやーな記憶がいやまあいいですけど。

んでもって現実問題として損害が出ているのですからどこかが負担しないといけない筈なのですが、どうもその辺りに関しての話がザルな気がしますなあとか思ったら同じ記事を見ますとこんな素敵な発言があったとの報道。

『同氏は関係金融機関ついては「スキームは自動的に政府が支援を続けるというものではない。金融機関等の協力の在り方について着実に進まなければ、それはそれで支援をどうするかということは途中の段階でもいろいろ判断する」と述べ、賠償資金確保への十分な協力が必要との認識を示した。』(上記URLより)

>金融機関等の協力の在り方について着実に進まなければ、それはそれで支援をどうするかということは途中の段階でもいろいろ判断する

金融機関への恫喝キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーー!

いやあ浜岡原発停止スキームで発動した「自主的判断」を今度は金融機関に適用ですかそうですかという所でございますが、結局個別に押し付ける先は銀行でございますかああ日本の銀行って大変ですなあとか思うのですけれども、「金融機関の自主的判断でどうにかしないと政府支援しないよ」ということですので、金融機関が「えー何で個別攻撃でウチに負担来るのですかねえ」などと文句を言おうものなら金融機関が「賠償金支払いの妨害をする悪者」になるという素敵なスキームとなる訳ですが、まあ昨日も申し上げましたが、それで既存貸出は金利減免なりリスケなりする事ができてもリファイナンスどうするんでしょうかねえ。いやまあ金利減免だのリスケしたローンとか今後のリファイナンスに政府保証でも付けて回るようにするとは思いますけど。

んでまあ結局今日決まるようですが、夕方はこのニュースでずっこけましたわ。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auvdFKZN8x54
政府:東電原発事故賠償スキーム、13日に再度議論する−菅首相

まあ決まる方向のようなので結構な話ですけどね(棒読み)。

だいたいからして原子力政策は国策で昔からやってた話だし、原子力発電所の安全基準とか監督とか国が思いっきり関与していたのに何か国(というか民主党政権)は兎に角東京電力がケシカランので向こう十数年に渡って賠償の支払いでケツの毛まで抜きますがなという話ばかりで、政府の責任問題はどこに逝っておられるのやらとも思いますが、そーゆー辺りの責任転嫁能力だけは超一流なのが民主党政権クオリティですから困ったもんだと思うのですが、今回は賠償支払いスキーム(これを東電救済とか言ってるメディアもどうかと思いますけどねえ、延々と賠償支払するし公的資金は最終的に全部返済する話だと思いますが・・・・)の決定は宜しいのですけれども、肝心な所で「金融機関への協力のお願い」とか出ちゃう所が民主党クオリティだと感心することしきりなのでございました。

ということでまあ他に悪態だの見通しだの書こうかなとも思ったが段々めんどくさくなってきたのでまあ後はスキーム案決定してその後の国会審議の状況を遺憾の念を持ちつつ注意深く見守りたいwと存じます次第だすにゃ。

・・・・しかしまあ早速こんなニュースが出てポカーンでありますにゃ。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110512mog00m040004000c.html
尾瀬:東電保有地の売却、群馬県が懸念 知事「絶対阻止」
◇東電は否定 法規制で困難も

・・・・・?????



○んでもってブラード総裁の講演の直近じゃない方から少々

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=984
APRIL 18
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Economic Outlook and Recent Monetary Policy Developments

上記URLが講演の概要でして、講演でのプレゼンテーション資料(パワーポイントみたいな奴)は上記URL先の中にありますが、まあ概要の方を読んでいただければ大体ヨロシカバイという感じだと思います。一応PDFのURLを置いときます(長い)。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_KY_Day_with_the_Commissioner_18_April_2011_Final.pdf

つーことで、ブラードさんのこの回の講演なのですが、今回の新しいネタは「ヘッドラインのインフレをコントロールするのが中央銀行の金融政策のキモ」という部分でございまして、まあ要するに物価目標へのフォーカスを強めましょうという話なんでしょうなあという所でおじゃる。

プレゼンの方に『Controlling headline inflation as the key policy goal.』と思いっきり書いてあるのがチャーミングですが、それに該当する部分は、上記URLの講演概要の方になりますが、『Recent Developments in U.S. Monetary Policy』という小見出しの部分の後半となります。

『In light of higher inflation and inflation expectations recently, Bullard discussed headline and core inflation measures (which refer to overall price index measures and measures without the food and energy components). 』

足元の経済に関する話の引用をスルーしている(前回の講演とその辺には大きな変化が無いのでスルーしました)のでアレですが、足元でヘッドラインのインフレとインフレ期待が上昇している件に関して、「ヘッドラインのインフレとコアインフレに関して」というお題で話をしましたよと。

『He said core inflation is often smoother than headline inflation, but “the ‘core’ concept has little theoretical backing” and is “very arbitrary.”』

コアインフレはヘッドラインインフレに対してよりスムーズに動くけど、そもそも「コア」というコンセプトには理論的な背景が乏しいし、「極めて恣意的である」と仰せでありまして、コアインフレだコアコアインフレだという話をしている人たちが聞いたら発狂しそうな(大げさ)お言葉キタコレ。


『“Headline inflation is the ultimate objective of monetary policy with respect to prices,” Bullard said, noting that these are the prices households actually pay.』

家計が実際に支払う「物価」はヘッドラインのインフレ率に対応するのであるからして、ヘッドラインインフレの制御が金融政策の最終的な目標である。と仰せのようであります。これは中々。

『“Core inflation is not an objective in itself,” he added. “The only reason to look at core is as an indicator for headline.”』

コアインフレに着目するのはコアインフレがヘッドラインのインフレの指標として機能しているからである。ということで、コアインフレがどうのとかコアコアインフレがどうのなので云々という話をしている人の見解をお伺いしたいものでございます(棒)。

『However, Bullard said that core inflation was consistently below headline inflation from 2003-2006. Thus, “core was not a good indicator of headline during this period.” He noted that core inflation averaged about 2 percent while headline inflation averaged about 2.9 percent for the Consumer Price Index (CPI) and about 2.6 percent for the Personal Consumption Expenditures (PCE) price index. This difference between headline and core is “substantial over a period of four years,” he said. He attributed the difference during those years to rising energy prices and the expanding economy. 』

しかしながら、2003年〜2006年ではコアインフレがCPIで見た場合でもPCEで見た場合でもヘッドラインインフレを恒常的に下回っていて、その差が「この4年間渡ってかなりあった」という事を指摘していて、結論として「この期間はコアインフレがヘッドラインのインフレの指標としてあまり機能していなかった」と仰せでして、つまりまあ「あまりコアインフレばかり注目するな」という話をしています。

ということで、QE2実施の前には資産買入が大事ですという話をしていた方の見事なまでの豹変あるいはジャガーチェンジなのでありますが、ブラードさんはこの「物価」に対する注目が高い、というか恐らくはデュアルマンデートよりも物価重視スタンスを取るべきという主張なのだと思うのですけど、物価動向に対しての感応度が高いお人なので、結論としてこのようになるんでしょうなあと思います。

で、これは前回の講演でもありましたので紹介したのと同じ話になるのですけれども、『Commodity Standards and Inflation Targeting』という小見出しの部分で今後の金融政策のフレームワークについて説明していまして、その中でインフレーションターゲットの導入をすべし、という話をしていますが、前回ブラードさんの講演紹介した時にその辺りはネタにしたので引用は割愛致します。今回の講演で前回対比での新しいネタは上記の部分でした(^^)。














2011/05/12

お題「何か今日も雑談でスイマセン」

メドレーレポートがモーサテの話題になるとは思わなかったですが、あれって少なくとも日本の金融政策に関する見通しでは見事なまでに逆指標としてしか作用していないイメージしかないのですけれどもねえ


○今日もまた東電雑談(だがあまり深くは突っ込みません)

まあこの案件は極めて政治的なテイストを醸し出している事もありまして、昨日は(あたくしの見落としでしたらスイマセンが)東電賠償支払いスキームに関する解説レポートとか無かったですなあとも思いますが、まー微妙にふにゃふにゃしながら書きますわ(^^)。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110511-OYT1T00618.htm
東電、賠償策支援条件6項目を受け入れ

『東京電力は11日、東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償策で、政府が支援の前提として示した6項目の「確認事項」を受け入れると海江田経済産業相に回答した。これにより、6月をメドに創設する「原発賠償機構(仮称)」を柱とする賠償策の枠組みが、一両日中にも決まる見通しとなった。』(上記URLより)

ということで、6項目の確認事項って何でしたっけと思いながら見てたのですが、よくよく見ますと何か微妙に意味わかんない項目がありまして、昨日はこちらの駄文で「落とし所はこの辺なのですかねえ」とか申しておりましたが、よくよく見ると何だかなあ感が漂って参りますけどねえ。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-21015920110510?sp=true
東京電力の賠償額に上限設けず、6項目の措置提示=海江田経産相

『1)賠償総額に事前の上限を設けることなく、じん速かつ適切な賠償を確実に実施すること。

 2)東京電力福島原子力発電所の状態の安定化に全力を尽くすとともに、従事する者の安全・生活環境を改善し、経済面にも十分配慮すること。

 3)電力の安定供給、設備などの安全性を確保するために必要な経費を確保すること。

 4)上記を除いて、最大限の経営合理化と経費削減を行うこと。

 5)厳正な資産評価、徹底した経費の見直しなどを行うため、政府が設ける第三者委員会の経営財務の実態の調査に応じること。

 6)全てのステークホルダーに協力を求め、とりわけ、金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと。』(上記URLより)

・・・・・でまあよく見るとこの6番目が何ですねんという項目でありまして、これを翻訳すると「銀行は融資の金利減免やリスケをしやがれ」という話にしか読めないのですが、3月末にメガバンク・信託銀行や信金中金などが総額2兆円弱の緊急融資を無担保で頑張って実行した訳ですが、その銀行に対しての仕打ちがこれですかねというのはさすがにちょっと何か銀行カワイソスとしか申し上げようが無いのですし、大体からしてそんなの銀行として株主にどうやって申し開きするんですかいなという所ではないかと思いますが、どうするんでしょうかねえこの部分・・・・・・

つーかさ、「全てのステークホルダーに協力を求め」って言ってるけど公募社債に「協力を求め」とかいうの法的なスジ論として有り得ないわけで、そういうの国内政治的には話が通っても金融市場としての国際的な常識から見たら有り得ないと思う(法的にコカすなら協力もへったくれも無くて社債権者がロスるのもあり得るが法的にコカす時点で賠償が確定債務になっていないとそもそもコカす意味が無く、1項目目にあるように賠償が将来に渡ってまだ全額が確定しないという状態だったらそもそも法的にコカす意味が無いです罠)のですけどどうなんでしょ。

まあ物理的な話からしても、公募した債券のホルダーに対して「協力を求め」というのは不可能だし同意取れないでしょうから、実際問題としてはこの項目で公募社債に関しては想定していないものと思われますし、何ぼ民主党政権が非常識でもそこまでの斜め上の話が出るとは想定してませんが(^^)。

しかし緊急融資協力した挙句に「協力を求め」られる銀行さんですけど、まあそれを拒否しても銀行が政治的に叩かれて味方してくれる人が殆どいないというどこの浜岡原発だよという話になるんでしょうから最終的には何らかの「ご協力」はする事になるんでしょうけれども、そういう仕打ちをした場合に既存の融資分のご協力はともかくとしてその先どうするのかとかちゃんと考えたスキームを出して頂きたく存じます次第ではございます。


でもまあ世間的にはこうなるんだよなあと思うのが今朝の朝日新聞の記事。

http://www.asahi.com/business/update/0511/TKY201105110556.html
原発事故、賠償枠組み決定へ 東電特損1兆円計上

『政権は、5月下旬にも機構設立のための法案の閣議決定を目指す。ただ、この枠組みは東電の存続が前提で、金融機関や社債権者の負担がなく、最終的に電気料金の値上げにつながるため、国会審議が難航する可能性もある。』(上記URLより)

いやあの金融機関には「協力を求め」て「その状況を報告する」とあるんですから相当の負担が掛かると思いますけし、社債権者は先取特権がありますので社債権者の元利金受取に関する負担を掛けたらその時点でそれよりも劣後する債権者である賠償金債務は飛ぶんですけど何言ってるんですかこの新聞は????(つーかスプレッド拡大してるから今市場で売りに行ったら負担掛かるんすけど)

まあ昨日の社説の時点でナンジャソラという感じなんですがね。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110511.html#Edit1
原発事故賠償―東電温存にこだわるな

いやもう突っ込む気力がおきませんが、この調子で批判が飛ぶ中で浜岡原発の件ですっかり民意受けを狙って強権発動する味をしめた首相様が政府案に関してどういう反応するのやらと気になる所ではございますな。

そういや原発問題で積極的に扇動されておられる議員様のブログではこんな感じ。
http://www.taro.org/2011/05/post-1002.php(直リン自主規制)
政府与党案をぶっつぶせ

『政府与党は、国民負担を増やして東電を救済しようとしている。』(上記URLより)

法的な枠組みから言いましてこういう風にしないと賠償金の支払いに支障を来たす訳であって、このスキーム自体は東電救済じゃなくて賠償金の支払いを最終的に担保する為のものの筈なんですが、どうも「東電救済」みたいな話ばっかりわあわあと出ている訳で、これがまた話をややこしくしているのですが、こういう話をするのが自民党の影の行政改革担当相という所に激しい絶望感を受けるのはあたくしだけでございましょうかね。

『次の問題は、東電の資産が保全されていないことだ。被災者への賠償金も東電が銀行から借りたお金も同じような債務だ。もし、今、東電が銀行からの借金をせっせと返していたら、被災者への賠償金の支払い能力は減っていく。銀行は無傷でお金を返してもらったのに、賠償金は支払えないから国民が負担しますということになっていいはずがない。』(上記URLより)

いやあの借入金は元利払いの期限が来たら返済するのが筋なんですけど・・・・・・

『だからまず、東電が勝手に債務を選択的に返済しないように、政府は東電の資産を保全させなければならない。そうなると、東電の取引先は、東電に対して現金での支払いを要求するようになる。そうなると、東電は一時的にキャッシュが不足しかねない。だから政府が東電の支払いを保証してやる必要がある。そうすれば、東電の資金繰りは回っていくので、当面、問題はない。JALと違って、東電は地域独占だからお客は逃げていかれない。毎月数千億円の収入がある。ゆっくりと電力業界の改革を考えながら、賠償金を確定させればよい。』(上記URLより)

・・・・・・・全く意味が判らんのですが、政府が支払い保証するんだったら政府案よりもよっぽど債権者寄りの対策(ここまで出た政府案に関する報道のどこをどう見ても今後の東電のリファイナンスに関する政府保証があるとは読めない)になるのですけれども、その辺この人判ってるのかなあ。

しかしもっと判らんのはこれ以降の説明。

『東電の資産を保全し、キャッシュフローを保証したら、再生機構なりが管財人として乗り込んで、まずコストカットをやる。広告宣伝費に何百億円を使っているぐらいだから、いくらでもコストカットはできるだろう。相当利益を増やせるはずだ。そうしているうちに、賠償金額が確定するだろう。もちろん東電の資産では払いきれない。債務を支払えないということは、その企業は破綻するということになる。』(上記URLより)

・・・・・・・えーっと貴方さっき「政府が東電の支払いを保証してやる必要がある」と言ってた筈ですけれども、結局コカすとかイミワカンネ。つーかそうなるのが見えてる会社に対してどこの誰がリファイナンスに応じるのか全く意味が判らないのですけれども、賠償額の確定をする前にリファイナンス回らなくなったらどうする積りなんですかねえ。

などなど、突っ込んでいくとツッコミ所が大杉で泣きたくなる話ですが、こういうのが自民党の影の行政改革大臣とかやってて大丈夫か自民党という感じが致しますなあ。


#などと悪態かいてたら時間がなくなってしまったorz


○その他書こうと思ってた雑談

・短国入札の件

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230511.htm
国庫短期証券(第192回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り) (0.1023%)

(4)募入最低価格に 13.8239%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭4厘9毛
(募入平均利回り ) (0.1007%)

・・・・・ちょwwww平均99円97銭4厘9毛ということは、応札のメインの札は5厘の所に入っていたという事になるのですが、その札の利回りって0.1003%で補完当座預金金利と殆どかわらないんですけど(ちなみにその1毛上は0.9990%)。

ということで何か短国激強モードオソロシスという事でしたが、何がどうなってそうなっているのかが良く判らん(訳でもないがイマイチクリアカットになってない)のでとりあえずビックリしたことだけメモメモ。


・セントルイス連銀のブラード総裁がフリーダムな件について

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=984
APRIL 18
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Economic Outlook and Recent Monetary Policy Developments

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1009
MAY 06
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Monetary Policy and Commodity Prices

えーっとですな、この前上のほうのプレゼンを読んだと思ったらあっという間に次のネタが投下されると言う状況ですが、票決権が今年は無いせいなのかブラード総裁のフリーダム発言はこれまた目立つ訳ですよ。

で、ブラードさんはお馴染みの通りQE2実施の前に「時間軸政策よりも量的緩和が重要」とかいう説明をした人ですが、まあ最近も金融政策の枠組みに関するフリーダム発言が目立つのでフォローはしとかないとなあって感じなのでURLだけ張ってみたというそれだけの話です。ネタがあったら後日ネタにしまふ。







2011/05/11

お題「東京電力のスキームですかそうですか、などの雑談を少々」

昨日が27度で今日が14度とかナンジャソラ状態なのだが、足元でベイスが阪神3タテして更に昨日は巨人にも勝っていると聞き、まあ世の中色々あると納得するあたくしはぷろやきゅう豚ですかそうですか。

#しかし昨日は暑くて参りましたが夏が思いやられますなあ

○引き続き電力関連雑談

昨日のニュースから。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110510-OYT1T00695.htm
東電社長、政府に支援要請…追加燃料費1兆円

『東京電力の清水正孝社長は10日午前、首相官邸を訪れ、福島第一原子力発電所事故の被害者への損害賠償策について、政府に支援を要請した。(途中割愛)要請書では、今年度、火力発電への依存度が高まって燃料費が追加で1兆円近くかかるうえ、社債や借入金の償還・返済でも約7500億円が必要となることなどを説明。「資金面で早晩立ちゆかなくなり、補償に影響を与える恐れがあるばかりでなく、電気の安定供給に支障を来す恐れがある」として、政府に対し、支援の枠組みを早急に策定してもらうよう求めた。(2011年5月10日14時31分 読売新聞)』(上記URLより)

ということで東京電力が支援要請ですが、まあお芝居のお約束みたいなもんだとは思いますが『資金面で早晩立ちゆかなくなり』とか出ましてマッタクモウという感じではございますが、結論はこういう感じのようで。

今朝のニュースから。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110510-OYT1T00996.htm?from=top
東電賠償額に上限設けず…希望退職・年金削減も

『東京電力福島第一原子力発電所の事故の賠償策を巡り、政府は10日、東電による賠償を支援する前提となる6項目の「確認事項」をまとめた。 東電の賠償総額に上限を設けないとしたほか、政府が設置する第三者委員会が東電の財務実態を調査し、東電を事実上、公的管理することなどを盛り込んだ。東電は11日に確認事項受け入れを表明する方針で、「原発賠償機構(仮称)」の新設を柱とする賠償策の枠組みが一両日中に決定する。(以下割愛)(2011年5月11日03時05分 読売新聞)』(上記URLより)

スキームは多分最初の方に出た奴と同じような感じだと思うので、「東電の社債をコカすけれども賠償は払う」みたいな事後法で債権の優先劣後順位がひっくり返されるような(金融屋としての常識を激しく覆して世界中に日本のリーガルリスクを宣伝するような困った)事態が生じることは避けられるのかなあとゆー事で、その点はまあ一安心なのですが(とは言っても最終的に決定するまで安心できないのが民主党政権クオリティなのですけど、さすがに金融問題が絡むから馬鹿な方向に暴走しないとは思いますけどね)、結局東京電力は生かされるのは生かされるけれども延々と低収益会社になるようなスキームに落ち着きそうですわな。それに他の電力会社にも負担が来そうな話ですしまあ何だかなあとは思いますけど、この辺が落とし所になるのかねという感じではございまする。よー知らんけどな。


まあ詳しくは本職の方が色々レポート出すからそれでも見ることにしますが、このスキーム作って東電に延々と返済させながらその内「電力自由化」とか言い出したら東電にあまりにも酷な話だとは思います。けどあの東電ちゅうのも態度が悪いにも程がある訳で、公的資金導入になるまでの銀行の叩かれっぷりとリストラ大会再編大会を10年くらい見てて何も勉強しなかったのかという訳でして、リストラ策が上(役員)に甘すぎだろお前らというのは金融屋としては思うのでありますが・・・・・ま、余計なことっちゃあ余計な事ではありますが、事態は極めて政治的な話になっているので、東電におかれましては不良債権処理問題における各行の対外的対応(というか態度)を少しは研究した方が宜しいかと思いますが時既にお寿司ですかそうですか。


ところで、電力関連と言えば昨日吹いたのはこのニュース。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110510-OYT1T00531.htm
国家戦略相「事前に相談がなかった。遺憾だ」

『玄葉国家戦略相(民主党政策調査会長)は10日の閣議後記者会見で、菅首相による浜岡原子力発電所の全面停止要請について、「私や(民主党)政調会に事前に相談がなかった。遺憾だ」と不快感を示した。
 その上で、「時としてそういう首相のリーダーシップがあってもよい。決断は適切だった」と決定には理解を示した。(2011年5月10日11時43分 読売新聞)』(上記URLより)

・・・・・・短いニュースなのにどこからどう突っ込んで良いのか困るとは中々お洒落な話ですが(^^)、原子力行政に関わる国家戦略のような案件であっても国家戦略担当大臣に相談も無いとは恐れ入った国家戦略でございますし、脱官僚・政治主導というのは確か政権与党が政策立案段階からより強く関与するという話だと聞かされておりましたが、実は官邸の一部の人間が勝手にコソコソと主導する事だったのですねえとか感心するやらと、この短いニュースの中にツッコミどころ大杉で泣きたくなりますな。

更に何だかなあと思うのは後半部分で、「手続きは遺憾だが決定は正しい」とか言うこの人の頭を疑いたくなる訳ですよね。「結果が良ければ途中の手続きはどうでもよい」とか民主主義国家の運営として有り得ない理屈であって、何らかの行政執行をする際に手続きを踏まえる過程が民主主義における法治国家としての意義ではないかと思いますがね。

結果が良ければプロセスがどうでも良いとか、この人民主主義国家における政策決定および国家運営を何かのゲームと勘違いしてねえかと思いますし、まあその理屈って造反有理とか愛国無罪みたいなもんじゃんとゆー事で、それこそこーゆー決定過程に対して築地新聞さま辺りが「ぐんぐつの音が聞こえる」とか批判しないのかと思うのですが、ネットで社説をさらっと見たらそんな感じが1ミリもしていないのがブンヤクオリティなのであります。

と、何時の間にかブンヤ批判になっていますが、それ以前の問題として結果が良いかどうかだって本件判らんのがチャーミングなんですけどねえ・・・・・

#ま、その前に適切だと思うなら遺憾とか言うなよそれは引かれ者の小唄っつーんだというのもありますが・・・・


○気がつけば短国がまたまた堅調な件について

いやまあ気がつかなくてもそうなのですが。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230510.htm

昨日の短国入札は6か月ものでありましたが・・・・・

(3)募入最低価格 99円94銭5厘
(募入最高利回り)
(0.1109%)

(5)募入平均価格 99円94銭5厘
(募入平均利回り )
(0.1109%)

はいはい堅調堅調・・・・・・って6か月で0.11%カツカツかよ!!という所でございますけれども、まあ足元で日銀の絶賛資金供給で金はありますし準備預金は進捗しまくってますし、海外要因とかもあるんでしたっけという事で、何かここもと短い所(と言っても1年以内の世界ですかね)は堅調でござるの巻(ただしイケメン国債に限る)。

今日は3か月の入札がある訳ですが、まあこいつの方はと申しますと相変わらず0.11%を割った状態が延々と続いてまして、というか平均落札水準は0.105%割っていたりするような素敵な水準で大体0.105%ビットとかやっておられる次第でありますが、ああ6か月まで波及しちゃったのねシャーナイなあという所であります。

つまりですな、復興国債がどうのこうのとか言って別建てで出すとか日銀引受しろとか外野の皆様(国会議員の人たちを捕まえて外野というのも酷いが^^)におかれましては色々とお騒ぎになっておられますが、現状だけの話で言えば10兆円短国の発行額が増えても短期市場は屁とも思わないのではないかというか、玉が無いので干天の慈雨状態なのではないか位の話でありまして、まあ適当に短期債混ぜながら中期ゾーン辺りまでで普通に増発すれば復興財源手当て出来るでしょと思うのでございますけれどもねえといういつもの雑談になるのでありました(^^)。


○その他少々

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110510a.htm/
日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請について
2011年5月10日

『日本銀行は、第126回事業年度(平成22年度)決算において、財務の健全性確保の観点から、当期剰余金の5%相当額(注)を超える15%相当額を法定準備金として積み立てる方針を決定し、本日、財務大臣に対して日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請を行いましたので、お知らせします。』

ということで自己資本増強するそうな。まあ日銀の自己資本比率がどうのこうのとか本来的に言えばどうでも良い話だとは思う訳ですが、色々とリスク性資産買っている中で真面目に引当しないといけない事態になった時に債務超過とかになって、それが大々的に報道とかされても何ですから程度の話ではございますわな。


あと、昨日の決定会合議事要旨ネタの補足でありますが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110407.pdf

財務省の出席者からこんな話があったのね。

『復興財源を日本銀行の国債引受けにより調達するとの報道等があるが、政府としてそのような検討は全く行っていない。財政法第5条において、歴史的な反省から、公債の市中消化の原則を定めていること等を踏まえれば、国債の直接引受けについては慎重に考えるべきであると考えている。』

ちなみに、財務省から今回の決定会合に出席したお方はこの2名ですので発言者はこのお二方のどちらかですな。

『4.政府からの出席者:

財務省 木下康司 大臣官房総括審議官(6日)
櫻井 充 財務副大臣(7日)』

>政府としてそのような検討は全く行っていない
>政府としてそのような検討は全く行っていない
>政府としてそのような検討は全く行っていない

・・・・・なんつーかね、あの日経新聞ネット版3月31日の「政府案の内容が判明」(既にネット上では記事が削除されていますので念の為)というのは何だったのかという話でありますが、こういうのは風雪のルルに該当しないのか(法令諸規則に照らし合わせると該当しないのですが)と毎度の事ながら思うのでありまふ。


#前半の悪態で時間を浪費したので本日は(も)雑談大会で勘弁








2011/05/10

お題「決定会合議事要旨とか」

何か今日の東京地方の最高気温予想が摂氏28度とか言ってるのですがorz

○4月第1回目の決定会合議事要旨から少々

4月の第1回の決定会合議事要旨が出てたのでまずはその辺から少々。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110407.pdf

・震災の生産に与える影響に関する執行部レビュー部分をメモメモ

『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』の部分についてはFRBやBOEの議事要旨に比べて基本的にあっさり味の風味となっているのが仕様になっていますが、次回以降の推移を見るという意味で今回はここの中にある震災の影響に関する記述をメモしておきます。つまりこの会合以降に実施された支店長会議や、その後のフォロー状況を受けて4月末の決定会合でこの辺りの記述がどうなっているのかというのを確認したいと思います。ということで今日はメモね。

『4.海外金融経済情勢』から。

『なお、日本の震災の影響については、短期的には、自動車や電機関連におけるサプライチェーンの障害が、アジア諸国を中心に、生産活動を下押しする可能性がある。今後、生産ラインの復旧や製品代替が進むことで、震災の影響は長期化せず限定的なものにとどまるとの指摘もあるが、この点に関する不確実性は高い。』

なるほろ。

『5.国内金融経済情勢』から。

『生産は、震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の業種や地域で大幅に減少している。企業からの聞き取り調査などによると、震災により直接被害を受けた工場の生産停止に加え、被災地以外の工場においても、自動車を中心に、被災地工場からの部品供給の停止や停電の影響などから、大幅な減産を余儀なくされた先が多い。先行きの生産については、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。』


・では委員会の議論に関してですが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、今回の震災の影響を中心に、わが国の経済情勢について議論を行った。わが国経済の現状について、委員は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にあるとの認識で一致した。』

そらそうや。

『多くの委員は、震災の直接的な影響として、東北地方を中心に生産設備が大きく毀損されていると述べた。また、委員は、被災地の工場で生産されていた部品や素材の供給に大きな制約が生じたため、被災地のみならず、広い範囲にわたって生産活動が低下しているとの認識を共有した。何人かの委員は、こうしたサプライチェーンの障害による生産活動の停止や縮小の動きは、自動車を始め、一般機械、電子部品、化学など、幅広い業種で生じていると指摘した。更に、発電設備の毀損に伴う電力供給の制約が、関東・東北地方を中心に、生産活動の下押し要因となっているという点でも、委員の認識は一致した。そのうえで、委員は、現時点で全貌を把握することは難しいものの、ミクロ情報などを踏まえれば、3月の生産は大幅に減少した可能性が高いとの認識で一致した。』

まあそういう経済統計が最近になって出て参りましたな。

『委員は、こうした生産活動の低下が、輸出や国内民間需要に相応の影響を及ぼしているとの認識を共有した。このうち、個人消費の動きについて、多くの委員は、3月の新車登録台数が前月比3 割近く落ち込んだことや、家電販売や百貨店売上高、外食、旅行サービスの売上などが震災後に大きく減少していることを指摘した。複数の委員は、停電や商品不足の影響に加え、自粛ムードの拡大や、原発問題などに伴うマインドの悪化が消費の減少につながる需要ショックの様相が一部に表われてきているとの認識を示した。』

さいですな。

『わが国経済の先行きについて、委員は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続くものの、その後は、供給面の制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくとの認識を共有した。何人かの委員は、リーマン・ショック時のように需要が蒸発している訳ではないため、今後、供給面の制約が解消していけば、基本的には、需要に見合うかたちで経済が回復していくとの見方を示した。』

まあ問題はその供給面の制約がいつ解消するのかというのと、解消するまでの間に生産の落ち込みが雇用・所得などから需要へと効いて来るマイナスのスパイラルになるかどうかちゅうことですが、その辺に関する議論も当然ながらございましたのでその続きを引用。

『供給面の制約解消に向けた動きとして、複数の委員は、既に多くの企業が、被害の小さい生産施設の再稼働、西日本の生産設備の活用、代替調達先の確保など、様々な取り組みを進めていることを指摘した。何人かの委員は、サプライチェーンの復旧に向けた努力の結果、夏前には、多くの企業で生産体制を再構築できる可能性があるとの見方を示した。もっとも、多くの委員は、今後、サプライチェーンの復旧が順調に進んだとしても、夏場にかけて、電力のピーク時需要予想に対する供給能力の不足が問題となり得るため、現時点では、供給制約が全体として解消する時期を見極めることは難しいと述べた。』

でまあその後も続くのですがちと端折りまして、こういう指摘をしている委員もいましたということで。

『この間、何人かの委員は、先行きの設備投資や個人消費については、供給制約の解消時期や原発問題の帰趨に影響される面もあると述べた。ある委員は、こうした問題が長引けば、マインド面への影響や、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力を通じて、景気は全体として、震災前に想定していた回復経路よりも下方にシフトした経路を辿る可能性が相応にあると指摘した。』

ということで、まあこの辺りの部分に関して「何人かの委員」も指摘しているのでござんして、そーゆー意味では展望レポートのメインシナリオで出てきた数字に関してだけ言いますとちょっと強いんじゃネーノという結果になっていましたけれども、まあ展望レポートの基本的見解にある下振れリスク満載感の説明文章やら総裁会見における先行きリスク警戒強調トーンというようなテイストが基本線なのではないかとゆー感じもせんでもないですなあと言うことで。

『以上の議論を経て、委員は、震災がわが国経済に及ぼす影響については、不確実性が非常に大きく、今後とも、供給制約の解消に向けたプロセスや、内外の需要動向など、様々な視点から丹念に点検していく必要があるとの認識を共有した。』


それから『日本の震災が海外経済に及ぼす影響』に関する部分もあります。

『委員は、日本の震災が海外経済に及ぼす影響についても議論を行った。ある委員は、日本からの素材や部品の調達が困難化するなど、サプライチェーンを通じた影響は国際的にも及んでおり、米国やアジアの新興国などでは、自動車など一部業種において、生産計画の下方修正を余儀なくされていると述べた。』

『もっとも、別のある委員は、アジア新興国については、生活必需品などの日本向け輸出が増加するとの指摘もあり、現時点では、プラスとマイナスのどちらの影響が勝るかを見極めることは難しいと述べた。このほか、複数の委員は、震災直後に不安定化した米欧の長期金利や株価が、その後、落ち着きを取り戻し、概ね震災前の水準に戻ったことを踏まえると、グローバル投資家は、日本の震災が世界経済に与える影響は限定的との見方を強めているのではないか、との見解を示した。』

ということですが、まあこの辺りに関してもその後状況は変化していると思いますので、この後の流れでどういうレビューや見通しになっているのかというのがこれまた今後の議事要旨での議論の推移を見たいと思います。


・供給制約の問題は金融政策では解消できませんという話がしらっとありまして(^^)

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、前回会合で決定した「資産買入等の基金」の増額の効果についても議論を行った。』

ということで、まあ要するに一定の効果が出ましたなという話をしているのですが、その続きに微妙にお洒落な指摘が(^^)。

『そのうえで、何人かの委員は、現時点では、こうした金融市場の動きが実体経済に及ぼす影響を含め、基金増額の効果を見極めていくことが大事であるとの認識を示した。複数の委員は、供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、日本銀行としては、供給制約に起因するマインドの悪化や企業収益、家計所得の減少が、経済に対して持続的な下押し圧力を及ぼしたり、それが顕在化する可能性が高まったりすることがないか、今後ともしっかりと点検していく必要があると述べた。』

>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、
>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、
>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、

・・・・・・そらまあ資金供給オペ何ぼやっても電力供給ぽぽぽぽーんとかサプライチェーンがぽぽぽぽーんとか言う訳には行きませんからねえ(−−;

『このほか、多くの委員から、今回の震災の影響の大きさや被災地の金融情勢を踏まえ、日本銀行として、金融面から更なる貢献を行うことを検討すべきとの問題意識が示された。何人かの委員は、中央銀行が有する機能を踏まえると、被災地における金融機関の活動を流動性の面から支援し、金融機能の円滑な発揮を支えることが考えられると述べた』

>中央銀行が有する機能を踏まえると、
>中央銀行が有する機能を踏まえると、
>中央銀行が有する機能を踏まえると、

・・・・・・つまり中央銀行としては資金の目詰まりだけは起こさせ無いようにしますが、それ以上の話は政府や民間などが実際に行う復興事業に依存しますわなという極めて当然の話でありますが、どうみても政府がアレなのでございまして、日銀としても中々頭が痛いのではないかと拝察する所ではございます。


・ということで検討指示が出た件の基本理念ですが

その続きの部分から少々。

『これらの点を踏まえ、委員は、現在の市場への潤沢な資金供給に加え、被災地金融機関に対して長めの資金供給を行うことにより、今後予想される復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を資金面から支援していくことが適当であるとの認識で一致した。何人かの委員は、こうした目的に照らせば、資金供給を極力早期に実施することが必要であり、それにより、被災地金融機関の安心感を高めることにも資すると付け加えた。』

『貸付総額について、多くの委員は、被災地金融機関の安心感を高める観点から、十分な規模を確保することが適当であるとの認識を示した。』

『このほか、何人かの委員は、金融機関の安心感を醸成するような、貸付条件面での一定の配慮が必要との認識を示した。』

というような感じで出てきた具体策が先日の会合で出てきましたという所ですわな。


・国債引受問題について

最後にこれまたしらっとこんな話が(^^)。

『また、ある委員は、最近、復興財源を捻出するため、日本銀行が国債を引受けるべきとの主張が一部に聞かれるが、そうした取り扱いは、初めはうまくいったようにみえても、早晩、激しいインフレを招き、国民生活に大きな打撃を与えたというのが歴史の教訓であり、この点について、広く理解を得る努力を続ける必要があるとの認識を示した。』

ほほう。

『これに関し、複数の委員は、中央銀行による国債引受けが行われ、通貨への信認が毀損すると、長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招き、現在、円滑に行われている国債発行が困難になる惧れもあるとの認識を示した。』

通貨への信認というよりは、市場での国債発行というモニタリング機能を喪失する事によって、財政赤字が野放図に拡大して、その結果財政維持可能性に対する懸念が極めて大きくなるという事の方が問題だと思いますけどね。

『このうち一人の委員は、通貨への信認は、わが国の金融・経済にとっての重要なインフラの一角をなすものであり、国民生活の安定のためにも、そうしたインフラをしっかりと維持することがきわめて重要であると付け加えた。』

まあ本当のところ委員会の人たち(というか金利市場の人たちもそうなのですが)が懸念しているのは「通貨への信認」よりも上で書いたような「放漫財政による財政インフレ懸念」だと思うのですが、決定会合の議事要旨でそういう書き方もしにくい(中央銀行が財政運営に向けた政治の取り組みについて思いっきり懸念を示しているという読まれ方になって、ただでなくさえ揉める所に更に揉め事の燃料投下をする結果になる可能性があるから)のかなあとは思うのですけど、あまり「通貨の信認」を前面に出すと「庭先論」と言われる可能性がある(というかどうせ批判する人はそう言うでしょ)のでこれまた匙加減もうちょっと考えた方が良いのではないかとも思いますけどどうなんでしょうかね。

ということで、4月7日の決定会合議事要旨から少々なのでありました(少々にしては引用が多かったですかそうですか)。


○おまけだがまあ相変わらず電力関連の雑談とか何とか

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110509-00000047-maip-bus_all
浜岡原発 原子炉停止…電力不足ドミノの恐れは?

ということで中部電力浜岡原発が停止になった(防潮堤できたら再開みたいですけど数年掛かるんですよね)ようですが、まあ技術的な問題はあたしゃーよー知らんので止める必要があったのかどうかは知らんのですけど(暫く前に静岡県東部震源のでかい地震ありましたな)、そもそもこの話が菅首相の先週金曜の緊急記者会見だか何だかで急に飛び出して、しかもそれが「首相からのお願いベース」というのがどうも何だかねという感じでありまする。

いやあのちゃんとプロセス踏んで色々と検討して法的にちゃんとしたルートで実施してるのでしたら別にどうという話でも無いのですけれども、突如何でこのタイミングでこんな話が出たのやらという所でございまして、これって例の東電の補償問題にも通じるのですけれども、「日本の政治プロセスに掛かると従来の法的な枠組みと全然違う話が飛び出しますね」という認識になるのが金融屋としての理解になると思われます次第でございまして、そうなりますと「日本は法的枠組みが後付でひっくり返されてしまうリーガルリスクが高く投資には不適切ですなあ」という話になると思うのですよね。

まあそんなこんなで(前も書きましたが)従来は「安定的なユーテリティー銘柄」であった筈の電力各社に対する認識が「地震国における巨大偶発リスクを抱える銘柄」という風になりつつある流れ(現実問題として運用難の最中だというのに電力銘柄の社債スプレッドは渦中の東京電力が当然ながら壮大に拡大しましたが、他の電力会社に関しても華麗に拡大していますし買い手も減ります罠という事であります)が一連の原発問題への対応で更に加速するんじゃネーノと思うのであります。

そうなりますと、装置産業であります電力会社のコストとして思いっきり効いて来る資金コスト(借入金利とかですな)が拡大して電力料金に跳ねますなあという話はこれまた先日書いたので今更繰り返しません。

ただまあこの調子で原発止める話が続く(定期点検で止めたら再開しにくいとかね)と供給制約の解消に時間が掛かりますというか、それ以前の問題として電力供給問題が更に全国的に拡大ですなあ(関電とか九電とか原発比率高いんでしたっけ)という話になるんでしょうなあという悪寒はする次第にてごじゃります。今のところ止める「ご依頼」は浜岡だけみたいで拡大しないようなのでまだ悪寒は杞憂の世界ですけれども・・・・・・

ということで後は人のふんどしで。

abz2010さんの所
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20110509/1304943563
東電が免責されないとどうなるか、

別の視点ですが非国民通信さんの所
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/859e8433d2e1d22ec23f2d171cd34c10
菅にとっては簡単な決断なんだろうけれど

『こうなるともう、製造業は外国に出て行くしかない、とりわけ電力不安の影響を受けやすいハイテク産業ほど日本からの脱出を考えざるを得ない状況になることでしょう。必然的に雇用機会も減り、社会的に弱い人ほどしわ寄せを受けるものです。総合的に見てバランスのとれた判断を下すべきなのか、それとも国民が過敏になっているものを脇に追いやることを優先し、その弊害は無視するのが正しいのか、その辺は考えて欲しいところです。』(上記エントリーより)

・・・・・・・確かにさいですな。










2011/05/09

お題「連休も終了しましたので金融市場調節レポートから雑談を少々」

雑談と連休終了には因果関係はありませんかそうですかw

○後半は非常に良いのだが前半部分の市場レビュー部分がだなあ・・・・・

毎年お馴染みの金融市場調節の日銀レポートがこの前出てましたが。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2011/data/ron110425a.pdf

今回のレポートなのですが、後半と言うか最後のところに「参考」ということで、本文45ページ(PDFで46ページ)以降に色々と解説がありまして、そのまま最近の金融調節制度に関するテキストに使えるという大変にアリガタヤなものになっています。

ちなみにリーマンショックとかQEとかCEとかの前の時代になりますけれども、基本的な部分はこちらのテキストあたりですかね。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2006/data/ron0606c.pdf
主要国の中央銀行における金融調節の枠組み(2006年6月)


んでまあそれはそれで良いのですが、本文2ページ目の『1.概観』の所を見て既にいやーな予感のするあたくし。

『年度を通して、無担保コールレート(オーバーナイト物)は金融市場調節方針に沿って推移し、日銀当座預金残高は増加傾向を辿った。10月5日に導入された「包括的な金融緩和政策」(包括緩和政策)により、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準が「0.1%前後」から「0〜0.1%程度」に変更されたことを受けて、同残高の増加ペースは速まった。』

・・・・・・?????

で、その当座預金残高の推移でございますが、本文21ページに図表37というのがありまして(図表なので引用できませんから実際に見てちょ)、そこの説明及びグラフを見ていただきたい訳ですが。

本文20ページのケツから始まる『(2)日銀当座預金残高の動向』の説明になるんですけどね。

『各種の政策により、日本銀行のバランスシートの資産サイドが拡大するもとで、負債サイドでは、日銀当座預金残高が増加傾向を辿った。9月末時点の日銀当座預金残高は20.2 兆円と、前年同期と比べて2.6 兆円増加した。その後、包括緩和政策を導入し、年度末にかけては東日本大震災を受けて極めて潤沢な資金供給を行ったことから、日銀当座預金残高は3月22日から3日連続で過去最高水準を更新した(ピークは3月24日の42.6兆円。なお、従来のピークは2004年3月31日の36.4兆円)。2011年3月末の日銀当座預金残高は40.8兆円と、前年同期と比べて17.3兆円増加した(図表37)。』

・・・・・・・はて、包括緩和政策を導入したのにその間オペ残ろくすっぽ増やさないでGCレートが強含みになるの放置プレイして短国のレート上昇して2年とかのレートも上昇して声明文詐欺とか言われた(などと言ったのはあたくしだけですけれども^^)訳ですし、図表の方もまさにそういう感じで包括緩和実施後当初は当座預金残高を別に拡大しないで緩和的じゃなくて中立的な調節をしてましたというのが判る流れだと思うのですけどね。

あの時は2年金利が0.2%台に上昇した所で基金買入オペのオファーが少し早めになってきたのですが、12月14日の1年TB入札が大流れ(平均0.1763%の足切り0.1893%)した直後の資金供給オペからこれでもかとオペの打ち込みが始まりまして、年末に向けてやっと金利が低下してくれた訳(まあそうしたら今度は打ち込み大会でクソ低下しましたが^^)でして、12月15日に何か知らんですけれども声明文詐欺だの何だの悪態書きまくった覚えがある訳ですよね。

然るに、市場概況に関する説明の『2.金融市場動向と金融市場調節運営』の『(2)2010年10月から2011年3月10日まで』の説明の部分になりますが、本文の7ページ辺りを見ますとですな、

『GCレポレート(S/N物)をみると、11月上旬から中旬にかけては、都市銀行による国債の売却とそれに伴う一部証券会社の在庫負担の高まり等により、日によっては0.130%前後まで強含んだ。11月下旬以降は、資金調達サイドがオペ等によるターム物での調達にシフトする中で、レート上昇圧力は徐々に減衰し、12月以降は、概ね0.100〜0.110%での推移となった。』

えーっと、包括緩和政策を実施して『第3に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』(10月5日の包括緩和実施時の声明文から(追記:リンク間違ってたので直しました))という事で「長めの市場金利の低下を促す」としたのですから、長めの市場金利のベース金利となるGCレポレートが上昇したら包括緩和政策における声明文にある「長めの市場金利の低下を促す」になっていない訳で、従いましてこんなにしらっと「都市銀行が国債売却したからGCレートが強含みました」とかしらっとレビューされても困る訳でありまして、

『国庫短期証券利回りは、長期金利の動きが波及するかたちで、期間の長いものを中心に、強含んだ(図表13)。』

とまあこちらもしらっと流していますが、11月にGCレートが跳ねたのを放置した結果として「包括緩和政策で長めの市場金利の低下を促すと言ってたけど別に調節はそうなっていないよね」という日銀のスタンスに対する疑念が生じたから12月になってGCレートが下がってきても中々市場が信用しなくなった(結局包括緩和のスタンスを再確認したのは12月14日以降にバンバン行った資金供給と基金買入と通常のオペを使って短国買入を連発しまくった所だわな)ので、短国レートが中々サガランチ会長になって最後に1年TB入札がマーライオン状態になったわけでございますが、と現場労務者としては記憶しているのですが、これはまた随分なレビュー。


いやね、そらまあ自分らが包括緩和声明文詐欺してましたとか言えないでしょうし、まあディレクティブとの関係だけで言えばこの間のオペレーション自体はディレクティブに沿ったもの(これまた以前にも書きましたが、そもそも誘導金利水準がレンジになっている上に、ディレクティブで誘導することになっているのは無担保コールレートであって、それに対して包括緩和の声明文には基金買入の趣旨として「長めの市場金利の低下を促す」というのがあり、じゃあその「長めの市場金利の低下」に必要なのは何かというとそっちのベースレートはGCレポレートであるという時点で曖昧さがあるので、金融調節部署だけの問題というよりはこれはその辺りを明確にしていなかった政策委員会の問題でもある(オペレーション動向見てると昨年12月の決定会合以降は少なくともGCレポレートを無駄に跳ねさせないような調節を行っているのですが、1月議事要旨を見ると調節スタンスが変わったと見られた点について複数の審議委員が文句垂れているのでその辺が明確になっていたのかどうかがよく判らないままでございます)とは思いますが。

ただまあ何ですな、こういう表に出るレビューでそういうややこしい話はしにくいというか出来ない面があるのは判らんでもないですが、年月が下るに連れてそういう当時の事情というのが関係者の記憶から飛んで行ってしまいますし、そもそも担当が入れ替わるに連れてその辺りの話も忘却されて行きますので、こういうレビューがそのまま「当時有った事」となってしまうのが如何なものかと申しますか、教訓が生かされないですよねという風に思う訳ですよ。

表に出す必要はないとは思いますが、少なくとも中ではこの当時の「包括緩和声明文と調節の間のコンフリクト(あえて詐欺とは申しません^^)」に関してレビューをして頂きまして、まあ似たようなターム物金利誘導的な施策をやる破目になった際に同じようなこと(中立的調節を継続してターム物金利誘導が出来ないみたいな)が起きないようにして頂きたいと思います。

それから、当時の調節で言えば、金利が跳ねた分を戻すために通常以上に資金供給だの短国買入をバンバン実施しないと中々金利が落ち着きませんでしたが、いわゆる緩和的政策を実施しようという時には、一旦金利が跳ねてしまうとそれを元に戻すのに余計なオペを沢山打たないと沈静化しなくなってしまう、というのも教訓として導き出されたかと存じますが、これってリーマンショック以降のターム物やオープン金利の上昇時にも似たようなケースがあって、結局企業金融特別オペにCPと社債の買入という超強力オペを実施して逆に今度はCP金利が国債金利と一部で逆転というような事までやる事になったというのが近い教訓としてあったと思いますのですが、あたくしが微妙に懸念するのはその辺りのレビューを今回も少なくとも内部的にはちゃんとやっていただかないと、次に似たようなケース(が起きない方が良いに決まってますが、起きるときには起きますので)が起きた場合にまたまた「早期の市場の動揺を市場機能と思ってスルーしてたら火がついてしまい火消しのコストが余計に掛かってしまった」的な状況にならないようにして頂きたい物です、と切に思う次第なのでございます。


・・・・・ああでもないこうでもないと書いていたら時間がなくなりましたので本日はただの悪態で終了しちゃいましたが、毎年出るこのレポートに関しては色々な説明の部分(今回だと本文16ページから始まる『3.金融市場調節運営と日本銀行のバランスシート』およびその関連図表あたり)がチャーミングだったりしますので、まあ中々でありますので一読推奨ですが、オペがアレで金利が跳ねた的な事はどうも死んでも書かないのが最近の仕様みたいなのでそこだけはご留意ありたし。

#そういうのは連休前に紹介しろというツッコミはしないように(汗)






2011/05/06

お題「総裁会見とかその他雑談とかクリップとか」

トリシェはいきなり追加利上げ示唆しない攻撃をするし、イニシャルクレームはうんこですし雇用統計に向けて盛り上がってまいりました!!

#生肉恐るべしですが、おせちに続いてまた「若手経営者」ですかそうですか

○展望レポートネタで抜けてた件の補足

月曜にネタにした展望レポートネタですけど慌てて書いたので抜けがございましたので(汗)補足をば。

・メインではネガティブフィードバックの話は無いです

そらまあメインでそこまで置く訳には行かないというのはあると思いますけれども・・・・・

『今後の経済の見通しは、電力を始めとする様々な供給面の制約が、いつ、どの程度のペースで解消していくかに大きく依存する。そのうえで、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる。』

『すなわち、企業は、被災設備の復旧、代替施設での生産、代替調達先の確保などを進めつつあるが、サプライチェーンの再構築にはある程度の時間を要するとみられる。さらに、電力の供給不足の問題は、電力需要がピークを迎える夏場には経済活動に対して相応の制約となる可能性がある。しかし、秋口以降は、サプライチェーンの再構築も一段と進むとみられることから、電力の需給逼迫が改善に向かうもとで、供給面の制約は和らいでいくと見込まれる。』

『そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、わが国経済の回復を支える原動力として、再びはっきりと作用してくる。さらに、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた動きも、次第にわが国経済を押し上げる方向で寄与してくるものと考えられる。』

というのがメインの見通しになっています。まあ昨日引用したようにヘッジクローズてんこ盛りですし、下振れ要因の中にネガティブフィードバックに関わる部分も(あまり強烈には書いてないけど)指摘しているのでバランスは取っていますけれども、メインだけ見てると妙に明るいですなあという感じでございます。


・物価安定の理解について

『「中長期的な物価安定の理解」については、今回の会合において点検を行った結果、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」となった。』

という事ですが、前回の展望レポートではどうなっていたかと言いますと・・・・・

『 現在、「中長期的な物価安定の理解」については、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」としている。』(前回の展望レポートでは脚注扱いです)

ということで、今回「中心が1%」をより明確化したという結果になっていますが、これはまあ物価に関してタカ派な須田さんが退任した事が思いっきり影響しているのではないかと思いますけれども、これはこれで一応「1%」という数値の明確化になったと言うことにしておいて良いかと思います。

ただまあ物価安定の理解に関しても「数年間の中長期的な水準」に関する話でありますので、実際問題として物価指数が上昇基調になった時には足元が1%手前であっても別に金融政策を中立に持っていくために包括緩和解除とか平気でできるというのが「物価安定の理解」+「2つの柱」でありますので、だから時間軸が伸びたとか伸びないとか議論するのもちと微妙な気がする。

ということで、肝心のメインの話と物価安定の理解に関する部分が抜けていたので補足させていただきましたどうもすいませんすいません。


○総裁会見は警戒スタンスを表に出していますな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1104e.pdf

ちなみにいつも長い冒頭の説明ですが、今回は展望レポートの説明があるので更に長く、冒頭から3ページ半が総裁の説明でございまする。でまあそこの説明でも比較的警戒スタンスを見せていますが、長いのでスルーしまして(^^)その他の質疑から。

・西村副総裁の提案と他の否決理由

今回は中々良い質問が多いですな(^^)。

『(問) 西村委員から基金増額の提案があったということですが、総裁は、今回示された実質成長率の見通しなどを踏まえて、追加緩和の必要性についてどのようにお考えかご説明下さい。』

『(答) 西村委員の意見については、詳しくは、今度公表される議事要旨で説明したいと思います。ご質問の趣旨は、本日の議論で残り8 名が、今回の展望レポートで示された成長率見通しやリスク判断を前提に、追加緩和の必要があると判断しなかった理由は何なのかということだと思います。』

質問が良いので良い答えの方向になります(^^)。

『改めて、震災発生以降、日本銀行が採ってきた対応を整理すると、経済活動の基盤となる決済・金融機能の維持に万全を期しているほか、市場の需要を十分満たす潤沢な資金供給を行い、金融市場の安定確保に努めています。こうした大きな震災の後の危機というべき状況においては、これは非常に大事なことです。また、震災直後の3月14日には、リスク性資産を中心とする資産買入等の基金の増額を決定し、金融緩和を一段と強化しました。これは、既にその時点において、実体経済が1月の中間評価より下振れる可能性、あるいは不確実性が高まっていることを十分意識し、そうした可能性に早めに対応する観点から講じた措置です。』

さいですな。

『金額も、今申し上げた趣旨から、いわゆるtoo little (少なすぎ)となることを避けるために、リスク性資産を中心に5兆円という思い切った増額を行いました。現在は、そうした考え方のもとで増額した資産買入れを着実に進めながら、その効果波及を見守っていく段階にあると考えています。』

まあ確かにそらそうですな。

『こうした措置に加えて、先程申し上げた通り、被災地金融機関に対する資金供給オペレーションも本日決定し、5 月中に実行したいと考えています。』

で、更に説明は続く。

『繰り返しになりますが、今回の展望レポートの冒頭で強調している通り、先行きについては不確実性が非常に大きいということを、私どもは十分に認識しています。従って、私どもとしては、経済・金融情勢を丹念に点検し、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていくという一般的な構えである、ということは、いつも申し上げている通りです。ただ先程申し上げたように、3月に思い切った金融緩和を行い、その買入れについてはまだ始まったばかりです。そうした効果を見極めて行くことが、今は適切だと判断しています。』

という事で、まあさっき引用したように展望レポートのメインとなる見通しに関してはそれを単体で取り出すと妙に強気に見えるというのもありますので、先行きの下振れリスクへの警戒を強くしているとゆー部分を強調しておかないとバランス的に良くないとゆー配慮が今回は相当出ていたのではないか、と思われる質疑応答がこの後も続くのですけれども、実質最初の質疑応答でこのように丁寧にリスク警戒の話をして、かつ追加緩和の可能性も排除しない言い方をしているのは中々。

まあ補正予算前のタイミングで良い所を狙って基金買入拡大を実施(ちなみに足元の市場状況だけを見ますと短国の買入をこれ以上増やすと当預残拡大攻撃もありますので、短国市場が本格的にモノナシ状態になってしまい短期市場が本格的に壊滅する恐れがありますので短国買入拡大も程々にということでお願いします^^)するというのに100ポルドガルエスクードなのでありますが。


・サプライチェーンの回復に関して

これまた良い論点。

『(問) 2点伺います。まず、秋口に供給制約が和らぐ時のイメージですが、その際、需要面はどうなっているとみればよいでしょうか。需給ギャップは改善するのか、あるいは、むしろ悪化する可能性の方が高いとみているのか、教えて下さい。

2点目は、供給制約が和らいだその先の話ですが、生産全体としては、震災前の水準に戻っていくとみるべきなのか、回復は続くが震災前の絶対水準に戻ることは当面望むべくもないとみているのか、教えて下さい。』

『(答) 供給制約が解消した後の経済のイメージについてですが、震災前まで日本経済の回復を支えていた最も大きな条件は、新興国経済の成長に牽引された世界経済の高い成長率でした。この基本的な条件自体は、現在のところ大きく変わっているわけではないと思いますので、その意味では、潜在的な需要はあると考えています。加えて、今後の復旧・復興の過程で、毀損した資本ストックの修復に向けた需要も出てくるわけです。供給制約が和らいでいく秋口以降、そうした潜在的な需要や復興需要が出てくるというイメージです。ただ、いつ、どの程度、供給制約が解消していくのかについては、これは不確実性がありますので、この点は丹念にみていきたいと考えています。』

『また、需給ギャップについてですが、生産能力が毀損している一方で、震災後のマインドの低下によって需要も減少しているので、供給も需要もともに落ちているという状況です。ただ、先行き供給制約が解消したその後を考えると、経済回復の基本的な条件自体が変わっていないという前提のもとでは、緩やかに需給ギャップのマイナス幅も小さくなっていく、改善方向に向かっていくというイメージを持っています。』

とまあこの辺は割と普通の話。

『それから、供給制約が解消した後の生産水準についてですが、供給の制約が完全に解消した後は、定義によりこれは需要に見合った水準になっていくわけです。』

さいですな。

『先日、経済産業省が、企業に対して行なった供給制約の解消に関する調査結果を公表しました。同調査によれば、確か7月までに9割の企業がサプライチェーンの障害から立ち上がり、部品・部材の調達については10月までに8割弱の企業が十分な調達ができるという回答結果であったと思います。逆に言えば、残りの企業については十分な調達ができないという回答です。』

ほう。

『このような企業の回答結果を踏まえると、10月の段階ではまだ十分に戻るということではないのかもしれません。』

ほほーーーーーー(^^)。

『いずれにしても、これは供給制約の解消テンポについての現時点での情報に基づくものであり、今後、予断を持つことなく点検していきたいと考えています。』

ということで、前回決定会合後の定例会見で示したイメージよりも日銀の考えるサプライチェーンの回復時期の見通しが後ズレしている可能性が高そうな感じで、この辺りも展望レポートでの先行き警戒祭りに反映されているのではないかと思ったのですけれどもどうでしょうかねえ。


・担保要件緩和に関する話

これまた良い質問ではあったのですが・・・・・・

『(問)2点お伺いします。今回、担保要件の緩和の中で、金融機関の自己査定に委ねる部分が盛り込まれていますが、この意味と狙いについてご説明下さい。(2点目割愛)』

『(答) 自己査定の方ですが、今回は、被災地金融機関の資金調達余力を確保するという観点から、担保基準を緩和しました。その中で、例えば大きな企業では社債を発行することもありますが、今回の被災地域を考えてみると、資金調達を行う企業の中には小さな企業もたくさんあります。そうした企業を想定し、取りうる担保を考えた場合に、企業を債務者とする手形、証書貸付債権には格付けが無いわけです。一方で、中央銀行として銀行券を発行していますから、財務の健全性に配慮しなければいけないという要請もあります。その2つの要請を満たす解決策の1つとして、金融機関の自己査定結果が正常先の企業について、日本銀行が担保として受入れ、ただし、信用リスクの大きさや流動性の低さを勘案した担保の掛け目を設定するということです。(2点目割愛)』

・・・・・・・どう見ても禅問答です本当にありがとうございました。

ま、こうやって禅問答で返しているという場合に良くあるケースとして経験的にあたくしが想像するのは(1)本件に関して内部的に少々ややこしかった(2)あまり突っ込まれたく無い論点なので禅問答でスルーした、というような場合かなあと思いますが、今回の「与信審査において与信先の自己申告丸呑み」というのは所謂バジョット・ルールの観点からしたら中央銀行的には割と踏み込んだものでありますからして、あまり突っ込まれたくないのかも知れませんね(^^)。

#そういうのを突っ込むのがあたくしの趣味なのですが(←性格に問題あり)


・物価安定の理解の表現変更について

今回の質疑応答は良い感じで論点が揃っていて大変結構。

『(問)「中長期的な物価安定の理解」の表現がやや変更されました。透明性の観点、あるいは一般国民や市場関係者に伝えるという観点から、もう少し詳しくご説明をお願いします。』

『(答) 詳しい議論の中味については、議事要旨をご覧頂きたいと思いますが、日本銀行は、金融政策を運営する上で意識している中長期的な物価安定がどのようなものかについて数値で表現しています。9名の委員それぞれが様々な見解を持っており、年1回、4月の展望レポートの時期に点検を行っています。今回は、昨年と比べて委員の何人かに交替がありました。改めて議論を行い、各委員の考える「物価安定の理解」を合わせてみると、冒頭申し上げたように「2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である」となったということです。』

つまり須田さんが抜けたせいですね、わかります。

『この「物価安定の理解」について考えていく上では、物価指数のバイアスの問題──若干の上方バイアスがあると言われています ──、それから、ゼロ金利あるいはデフレということに陥る可能性を意識した場合に、金利引き下げの余地を持っておいた方がいいという観点から若干の糊代を持った方がいいという議論、また、長い期間、ある国の経済・社会において実現している物価上昇率から大きくかけ離れた物価安定はないだろうという国民の物価観、これら3つの観点から点検を行っています。そうした点検を行った結果、先程申し上げた数字となったということです。』

ということで、計測バイアスの話に加えてゼロ金利回避の為の糊代論に言及しているのもほほうという感じでありますな、うんうん。


・マインド面について

これまた良い論点。

『(問) 先程、海外の潜在需要と復興需要の話をされましたが、今、足元で企業や家計のマインドは確かに悪化していると思います。マインド面は、これから供給制約などが変わっていった場合に、どう変化していくとみているのですか。』

『(答) 現在のマインドの悪化の原因を辿っていった場合に、1 つは供給制約それ自体からきていると思います。2 つ目は、原因がそうであれ、経済活動が停滞すると、そのことが出発点になってまたマインドの低下に繋がっていくということだと思います。そういう意味で、供給制約が解消していくことがマインドの改善に必要なことですが、それがどれ位のスピードで改善していくのかが、やはり大きなポイントだろうと思います。出発点が供給制約であっても、それが長く続くと、やはり独立的なマインドの悪化要因になりうると思います。』

ということで、回復が遅れた場合にはマインドの悪化を通じた2次的な悪化もあり得ますというお話でして、まあそんな感じで今回の総裁会見は展望レポートのメインシナリオのやや強めに見える見通しとのバランスを思いっきり取ったような感じになっておりましたです、はい。


○BOEとかECBとか

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ayrXW8B3qdlk
イングランド銀:政策金利を過去最低に維持−景気回復支援を重視(1)

5月のインフレーションレポートのタイミングで利上げという話もありましたが、先般引用した4月のMPC議事要旨では「先行きの景気に関して足元の指標を確認する必要があるので現状では待つことにメリットあり」という意見が多数派となっていましたけれども、4月議事要旨の金融政策決定に関する部分とか物凄い勢いで意見割れまくりでしたし、まあこの調子ですと8月のインフレーションレポートまで様子見大会になるのかも知れませんな。


http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aO32FFfsM70Q
ECB総裁、「強い警戒」発言せず−追加利上げ6月は見送り示唆 (2)

まあ何ですな、利上げした途端にギリシャが火を噴くとか思いっきり様式美の世界となっているECBクオリティな訳ですが、最早芸風と化しているようにしか見えないのは気のせいですかそうですか。

あと一応イニシャルクレーム。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aibqrh9cpPjw
米失業保険申請:47万件に急増、震災に伴う工場閉鎖も影響(1)

ほほう、日本の震災の影響とな。


○東電関連雑談

先週のニュースなので最近どうなっているのか知らん(何せ休み中は微妙にネットとか新聞とかスルーしている事が多いしテレビは元々見ないしということで浦島太郎状態になるのがあたくしの仕様)ですけど、海江田さんのこの発言はナンジャソラという感じであります。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110429-OYT1T00774.htm
原発賠償負担、電力各社リストラで…海江田氏

『東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償策を巡って、海江田経済産業相は読売新聞のインタビューで、東電だけでなく、原発を保有する他の電力会社にも資産売却などのリストラを求める考えを表明した。』(上記URLより)

えーっと、だから他の電力会社に波及するという話になるとそもそも電力会社の株とか債券とかが従来考えられていた「安定したユーティリティ銘柄」じゃなくて「地震国において巨大偶発リスクを抱える銘柄」になってしまいますので、電力会社の資金調達コストに跳ねて、それは電力料金という形で国民負担になりますし、更に言えば産業などにおけるコストの増大から国際競争力への影響とかそういう話になるんですけど。

大体からして原発推進ってそもそも電力コストの引き下げとエネルギー調達の分散という国策に則って実施しているとあたしゃ理解している訳で、電力会社的に言えば別に火力発電バンバン作っても結局総額原価方式(とか言うんでしたっけ?)で電力料金に跳ねればヨロシという話だと思うのですけどねえ。

というように思っていたらこれまた先週のネタですが、著名な人らしい人のブログでこんなのがあったので晒してみる。

http://www.tachibana-akira.com/2011/04/2481
東京電力は日本政府を訴えるべき

題名が???ですけれども、最初のところを見て激しく腰が砕けました。

『3.それでも賠償資金が足りない場合は、株式会社のルールに則って、株主が損失を負担する。すなわち会社更生法か民事再生法を申請して、株主責任を明確にする。

4.そのうえで、債権者に損失の負担を求める。東京電力の負債は約5兆円の社債と約2兆円の銀行融資だが、後者は原発事故発生後の緊急融資で、当時の状況を考えればなんらかの保証は必要だろう。だが5兆円の社債についてはこうした事情を斟酌する余地はなく、損害賠償額によっては全額デフォルトすべきだ。』

『一般企業が債務不履行に陥れば事業の継続は難しくなるが、東京電力は地域独占で安定した利益を約束されているのだから、社債をデフォルトしても本業にはなんの影響もない。社債の利払いや償還に必要な資金を損害賠償にあてればいいのだから、原発事故による資金問題は本来であれば存在しない。』(上記URLより)

いやあ何かこのお方って「海外投資の勧め」みたいな著書とかをはじめとする投資関連の著書が多数あってで有名らしい(あたくしは一冊も読んだことは無い、名前は聞いたことあるけど)のですが、投資をお勧めするにしては随分と法令とかの理解が無いようで、それでよくもまあ(リーガルリスクに注意すべきな)投資のお勧めとかが出来るもんだと大変に素晴らしいものを感じる訳であります。

まずですな、そもそもの時点で電力会社の社債は一般担保ですので先取特権があって損害賠償債権よりも優先してしまいますので、所謂法的整理をしちゃいますと損害賠償債権が社債権者よりも劣後しちゃいますから社債がデフォルトあるいはヘアカットとなるときには損害賠償債権は全額取りっぱぐれになります罠。

でまあその後に損害賠償を政府が改めて払う、というのは技術的には可能であるとは思いますが、そもそもがその損害賠償負担で法的整理という話になっているのに、損害賠償を事後的に政府が負担すると言うことは、社債権者との関係で言えば債権の優先劣後関係が事後法によって逆転するということになりますし、ローンを出している銀行との関係で言えば同順位債権者の法の下の平等関係が事後法によって逆転することになるのでこれまたおかしいです罠。

しかももっとどうかと思うはこのセンセイ、『東京電力の負債は約5兆円の社債と約2兆円の銀行融資だが』と仰せなのですが、東京電力の決算短信は同社のHPで見ることが出来ましてですね、

http://www.tepco.co.jp/ir/tool/kessan/index-j.html

第3四半期の決算短信
http://www.tepco.co.jp/ir/tool/kessan/pdf/1103q3tanshin-j.pdf

そこの11ページ(PDFファイルだと14ページ目)に昨年12月末基準の貸借対照表の負債の部が思いっきり書いてあるのですが、ご覧の通り以前から同社は銀行借入がありますので、借入金は先般の2兆円(文脈見れば判るように2兆円の銀行融資は3月末から4月頭に掛けて実施した大手銀行の融資を意味しているようですからね)だけでは無いのですけど、もしかしてこちらのセンセイは投資を行う際に開示資料も見ないで投資をされているのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

しかもイミフなのは銀行融資に関して『後者は原発事故発生後の緊急融資で、当時の状況を考えればなんらかの保証は必要だろう。』と仰せなのですが、常識的に言って事故発生後の融資をしている方がリスクの発生を把握した後に実施しているのですから、リスクを承知で融資したという話になると思うのですけど、何でその融資を後付で『なんらかの保証は必要だろう』という話になるのかさっぱり意味が判り兼ねますけれども、何かネットでの反響見てると「正論」とか言う人がうじゃうじゃいるのがオソロシス。

ま、政治家まで利権陰謀論に走っているようですから困ったもんですなあとも思いますけれども、ご参考までに「dongfang99の日記」さんの最新エントリー。

http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20110429
2011-04-29 全く信用できない

エントリーの趣旨に同意でありまする。







2011/05/02

お題「決定会合レビュー」

大型連休だがネタがてんこ盛りで追い付かない追い付かない(汗)。

○西村副総裁の緩和提案とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110428a.pdf

決定内容は兎も角、脚注がアレ。

『(注1)本日の金融政策決定会合では、西村委員より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、45兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:西村委員、反対:白川委員、山口委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員)。』

・・・・・・・・ほほう。

先日横浜で行った講演および会見でサプライチェーンの回復に関して白川総裁が先月7日の会見で行った発言に対して微妙に気を使いながらダメ出しをしていたのを先般ネタにしてみましたが、まさか今回の緩和提案に繋がる話だったとは思っておりませんでして、ネタにしておいて良かったと思うのでありました(^^)。

票決の際に反対票を入れる、というのであれば岩田一政さんが副総裁の時にもそのようなケースはありましたが、副総裁御自らが独自提案をして思いっきり否決されるというケースは初めて見たと思います。

まあ色々と勝手に深読みする事は可能ではございますが、須田審議委員が退任したことから鉄砲玉(?)役をやる人がいなくなったので突如乃公出ずんば状態になって暴れん坊将軍スイッチが入ったのか、それとも追加緩和実施に向けた先駆けの動きでもしているのか、更には7日の会見での白川総裁の発言の翌週に実施された全国支店長会議後に行われた支店長の会見で、名古屋支店長の前田純一さん(当時)が自動車製造に関するサプライチェーンの回復時期について白川総裁の発言よりも厳しい見方(まあ要するに微妙にダメ出しですが)を示していたように、支店やら個別企業ヒアリングで上がって来るミクロ情報からすると経済状況はかなり厳しいんではないかという行内の見方があって、まあそのあたりの空気を読んで「ここは提案しないと!」と急に頑張ったのか、はたまた今回は誰も追加緩和ネタを予想していなかったし、圧力も無かったということで、今回こそは追い込まれる前に自ら突っ込んでやるとゆー事で西村さんが急にスイッチ入った/西村さんを鉄砲玉にした、などなど(長いね)色々と妄想は膨らむのであります。

まあ執行部の1名がわざわざ違う提案をして否決されるってゆーのは、今までの日銀からすると結構変わった状態というか異様な状態でありまして、いやまあ別にそれがイカンという事ではなく、色々な意見が出てきて結構だと思いますが、執行部が割れている観をわざわざ出すと言うのが中々斬新でありました。これが全体の意思の中で出ているのか、単に西村副総裁に急にスイッチが入って突っ込んだ(あるいは須田さんの生霊が急に乗り移った^^)のかによってもイメージ違いますけど、まああんまり決め打ちはしなくて良いかなと思います。


で、提案内容が良く判りませんが、まあ普通に考えると国債とTBなどの買入拡大の提案をしたんでしょ(ETFとかもあるかもしれませんが)とゆー風に思いますです。あたくしも何度か申し上げたような気がしますが、2次補正以降の国債増発が確実視される中で、日銀も何か経済下支えに協力という話になった場合に、輪番オペ増やすとこれがまた後から減らすの大変です(FRBの出口政策においてMBSやら長期債の売却が市場に混乱を与えずに進行した場合、日本でも輪番で買ったものを買いすぎたから売却攻撃が可能という話になり、ホイホイと輪番を増やしたり減らしたりできますなあという話もこの前書いたですけど、まあ現状では輪番の買入額を減らすと言っただけで大騒ぎになりそうですので輪番は結構硬直的になってしまいますわな)ので、そーゆー意味では基金オペの長期国債買入であれば、残存も2年ですし、包括緩和政策を解除するときには大手を振って買入停止できますし、まあ日銀的ロジックからしても拡大しやすいとゆーことでござんす。

つーことで、まあ(勿論景気次第ではありますが)5月か6月位に基金買入の拡大(今回は国債中心になるでしょ)というのが具体化するかもしれませんわなあという感じです。


○展望レポートはヘッジクローズ満載

29日に展望レポートの全文(基本的見解を含む)が公表されていますが。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104b.pdf(全文)

めんどいので基本的見解をネタに少々。

今回の展望レポートですが、出来上がりの数字は「実質GDP見通しは11年度を下げているけれども12年度は11年度の逆ゲタも乗っけているので水準的に1月時点の想定からそんなに下げていない」けれども「物価の見通しは11年度を上げて12年度も上げている」という事でございまして、「出来上がりの数字だけは妙に強め」という結果になっています。

つーことで結果の数字だけ見るとKYちっくに見えるのがどうなのよと思うのでありますけれども、展望レポートの構成は物凄い勢いで下振れ警戒全開態勢になっておりますので、金融市場的には展望レポートの本文を見た瞬間に(冒頭からいきなり下振れの話になりますので)「ああ警戒的なのね」という話にはなるかと思いますが、報道ベースですと出来上がりの最後の数字の所だけが走る可能性があるのでちとどうなんすかねえというのは先日もプレビューで書いた通りであります。

ま、今回に関しては「日銀が強気の見通し」みたいな報道のされ方ではなかったような気がします(けど違ってたらゴメンナサイ)ので、ちゃんとレクの時に丁寧に説明したのか、西村副総裁の追加緩和提案がインパクト与えた(と考えると西村さんの提案は展望レポートの最終の見通し数字が強いのでバランス取ったとも言えるが、そんなので一々追加緩和提案はしないでしょうから)のかも知れませんが、まあそーゆー点からしますと今回の展望レポートはちゃんと下振れ警戒が伝わったのかなあとは思ってますがどうですかね。


・冒頭からヘッジクローズ祭り

ということで冒頭の『1.はじめに』のヘッジクローズ祭りを引用。

『わが国経済は、本年入り後、景気の改善テンポが鈍化した状態から脱しつつあったが、3月11 日に発生した東日本大震災により、状況は大きく変化した。震災により、当面、わが国経済に対して大きな下押し圧力がかかり続けることは避けられない。今回の展望レポート(「経済・物価情勢の展望(2011 年4月)」)で示す2012 年度までの日本経済の見通しを点検するに当たっては、以下のような視点を持っておくことが重要である。』

下押し圧力キタコレ。

『第1に、震災による経済への下押し圧力は、基本的には資本設備の毀損等による供給面のショックとして現われており、海外経済の高成長など、震災前まで日本経済の回復を支えていた基本的な条件に大きな変化はない。この点、金融ショックによって世界的に需要が急減したリーマン・ショック時とは異なる。』

ということで、ここでは供給ショックの話をしているのですが、供給ショックから生産が落ちてそれが雇用や所得に悪影響を与えて需要に影響するというようなネガティブフィードバックに対する指摘は基本的見解の部分を探したけど本文見通し中では特に言及は無かったという感じなのが少々あたくし的には楽観的じゃないのかねと思うところですけれども、下振れ要因の所でその辺の記述はあるからまあ良いっちゃあ良いのですけどね(後で引用する)。

『第2に、震災の影響は、時間の経過とともに変化していくことに留意する必要がある。短期的には供給面の制約に伴う影響が大きく出るが、その後は、供給面の制約が和らいでいくうえ、毀損した資本ストックを復元していく動きが顕現化してくる。さらにより長期的には、震災が、わが国経済の趨勢的な成長力にどのような影響を与えていくかという点も重要である。』

とうまく行くと良いのですけどね。まあ成長力云々は仰る通りですが。

『第3に、これらの震災の影響の現われ方については、その時期や規模を含め様々な点で不確実性が大きい。このため、先行きの経済・物価動向を見通すに当たっては、中心的な見通しだけではなく、従来以上にリスク要因を注意深く点検していくことが重要である。』

どう見ても下方修正の予防線です本当にありがとうございました。

『以下では、上記の留意点を念頭に置いたうえで、まず、わが国経済の基調的な動きを左右する海外経済や国際金融資本市場の動向を記述し、その後、わが国の金融環境を評価する。そのうえで、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(「中心的な見通し」)を記述した後、中心的な見通しに対する上振れ要因・下振れ要因を検討する。最後に、金融政策運営の基本的な考え方を整理する。』

ということで、以下話が続くのですが、海外経済などの基本的な部分に大きな変更は無い(従って外需が日本経済に寄与しますという話)ですけど、さすがに国内経済に関しては震災の影響に関するヘッジクローズがてんこ盛りという風情でありまして、まあ今回の展望レポートは思いっきり下振れ警戒モードです罠という所です。


・当然ながら下振れ意識

とりあえず『5.上振れ要因・下振れ要因』のところをネタにしますとですな。

『(1)経済情勢』コーナーは今回はこうなっています。

『第1に、今回の震災がわが国経済に与える影響については、不確実性が大きい。』
『第2に、中心的な見通しでは、企業や家計の中長期的な成長期待は維持されることを
想定しているが、震災を契機とした企業や家計の成長期待の変化にも注意を要する。』
『第3に、海外経済の動向である。』
『第4に、国際商品市況が一段と上昇した場合の影響についても注意が必要である。』

ということで、前回(昨年10月)は第1と第2が世界経済で、第3がマインド、第4が中長期的な成長期待という構成でしたので、今回の方が思いっきりリスクは下に寄っています(中心的な見通しがあたくし的にはやや強く見えますからそらまあ下に寄らないとおかしいですけど)わなということで。

んでもって今回「ふ〜ん」と思ったのはまあ幾つかあるのですが。

第1の部分から。

『一方、マインドを通じた影響については、原子力発電所の事故の帰趨が及ぼす影響に加え、企業収益や雇用者所得見通しの不確実性等について留意する必要がある。』

つーことで、さっきあたくしが申し上げたネガティブフィードバックの指摘が一応この辺りにあることはあるのですが、そんなに全面的に出ているという感じでも無いです。
第3の部分から。

『この点、わが国を含め、多くの先進国では、公的債務残高が大きく増加している。こうしたもとで、財政再建に向けた取り組みが急務となっており、仮にこうした取り組みが市場によって不十分と評価された場合には、長期金利の上昇やコンフィデンスの低下などを通じて、実体経済にマイナスの影響が及ぶ可能性が高い。』

ほうほうそうですか(棒)。日本の話はどうなのかねと思いますが。

第4の部分から。

『また、世界的な金融緩和継続などを背景とする金融面の動きが、国際商品市況の動きを加速させている面もある。』

どさくさに紛れてしらっとこんな文言が・・・・・


で、物価に関してですが、こちらに関しては前回とそんなに違いませんが、ここでもネガティブフィードバックの話があって、これまた物価も下押しリスクを見ています。

『この間、電力不足などにより、経済全体の供給能力が長期間にわたって制約されることになれば、物価に対しては、マクロ的な需給バランスの引き締まりが、上振れ要因として作用する可能性も高い。ただし、供給制約による景気悪化が長期化し、企業収益や雇用者所得に持続的な下押し圧力がかかり続ければ、需給バランスの悪化につながり、物価に対して下振れ要因となる可能性もあることに注意が必要である。』

ということで、まあこの辺りにもそんな指摘がありまして、見通しは上に振れましたけれども、そんなに中身を見ると強い話でもなさそう、という感じでしょうか。

#かなり駆け足でネタにしたので補足を後でやるかもしれません


○この適格担保要件緩和は斬新ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110428b.pdf
被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和の概要

緩和内容の(1)が斬新です。

『3.緩和内容

(1)被災地に事業所等を有する企業

@被災地金融機関の直近の自己査定で正常先に区分されている企業の手形および証書貸付債権については、信用力に問題ないものとして取り扱う

A外部格付を有する企業の社債および証書貸付債権は、格付要件を緩和する(A格相当以上→BBB格相当以上)』(機種依存文字は原文ママ)

・・・・・ということで、今回何と「直近の自己査定で正常先なのはOK」という事で、銀行の自己査定結果をそのまま認めるというのが極めて斬新だと思ったのですけれどもあたくしの勘違いだったらゴメンナサイ。

従来の担保適格要件ですけれどもね。

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo18.htm/
適格担保取扱基本要領

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo19.htm/
企業の信用判定基本要領

にありますように(長くなるので引用割愛)、基本的に適格判断に関しては日銀が行う事になっておりまして、金融機関の申し出をそのままOKというのはしていなかったと認識しておりますので、これは中々という感じだと思うのですがどうでしょうか。

ただ、まあ当然ちゃあ当然ですが、今回新しく導入された「自己査定丸呑み担保」の担保掛目が従来基準とは違いますのでそこでヘッジはしているという感じですな。

詳しい掛け目はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110428c.pdf
の7ページ以降に『被災地企業等債務にかかる担保の適格性判定等に関する特則』というのがあります。具体的には、

『4.担保価格

2.(2)に掲げる担保の担保価格は、当該担保が「適格担保取扱基本要領」別表2に掲げる基準を満たす場合を除き、(1)から(3)までに規定するとおりとする。』

『手形 手形金額の81%

証書貸付債権

イ.正常先証書貸付債権
(イ)残存期間1年以内のもの 残存元本額の81%
(ロ)残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の65%
(ハ)残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の50%
(ニ)残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の40%
(ホ)残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の25%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)

ロ.イ.以外のもの
(イ)残存期間1年以内のもの 残存元本額の93%
(ロ)残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の82%
(ハ)残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の70%
(ニ)残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の60%
(ホ)残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の50%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)』

イが自己査定丸呑み、ロがBBB格ですな。

ちなみに、従来の場合ですが、さっきの『適格担保取扱基本要領』によるとこうなります。

『15. 企業が振出す手形 手形金額の96%

18. 企業に対する証書貸付債権
(1) 残存期間1年以内のもの 残存元本額の96%
(2) 残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の91%
(3) 残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の85%
(4) 残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の75%
(5) 残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の70%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)』

ということで、まあだいぶ違いますし、特に自己査定丸呑み分については更に違いますなあという感じではありますが、まあ「自己査定丸呑み」というのは日銀的には結構踏み込んだ緩和だという風に思いますが、マニアしかウケないネタでもあったりするのですorz


#本当は東電ネタとか総裁会見とか(祝日にアップとは^^)も書きたかったのですけれども、MPMネタだけでお腹一杯なのでこれで勘弁ナリ