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2011/08/31

お題「とりあえずFOMC議事要旨から、追加緩和は長期金利アプローチみたいですが、さて・・・・・」

輿石幹事長にしたらお縄先生の党の金庫への影響力復活になるような気がするんですがいいんですかねえ。反お縄で決戦投票の札が入ったと思うのですが・・・・・・政調が前原さんってのは判るが。

マネーサプライはQE2終了しても急増とかまた御馬鹿コメントをうっかり見てしまう訳だが、どうせ伸びた要因は欧州金融危機だろと思うのに「FRBは何らかの形で資金供給を行っている可能性があります」とかドヤ顔で説明するコメンテーターに脱力である。

#見る予定じゃなかったのについうっかり見てしまった

ということでとりあえず8月FOMC議事要旨のほんの一部だけの寝起きシリーズ。


○追加緩和は長期金利アプローチで来るようだがそもそもの緩和にも異論があるようです

minuteを訳すと「議事録」なのですが議事録のフルテキストはだいぶ後日になって公表だった筈ですので、内容的には「議事要旨」というべきなのですけれども、これを「議事録」というか「議事要旨」というかによってその人の中銀オタク度の判別になります。まあオタクだから良い訳ではないが(爆)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110809.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110809.pdf

こんなんさすがに寝起きで読むのは無理ぽなので、とりあえずヤケクソで金融政策のツールがどうしたこうしたという部分が目に付いたのでそこを。『Committee Policy Action』の直前の部分になりますだよ。

『Participants discussed the range of policy tools available to promote a stronger economic recovery should the Committee judge that providing additional monetary accommodation was warranted.』

追加緩和政策が必要となった場合に使われるべきツールについての議論をしましたと。

・ガイダンス文言の変更に関して

『Reinforcing the Committee's forward guidance about the likely path of monetary policy was seen as a possible way to reduce interest rates and provide greater support to the economic expansion; a few participants emphasized that guidance focusing solely on the state of the economy would be preferable to guidance that named specific spans of time or calendar dates.』

先行きの可能性の高い金融政策のパスに対するガイダンス文言の強化は、金利の引き下げを促して景気拡大に寄与する可能性のある方法です。という事で、時間軸政策みたいな話をしているのですが、まあ微妙だなと思うのはガイダンスで示すのが「likely path」であって、コミットメントの伴った「path」じゃないという所でして、実際に時間軸政策の元での市場というのを体験してきた身と致しましては、景況感の変化が発生した時に一気に時間軸が短期化した場合に金利の水準が一気に上がるだけで、先行きのボラティリティーを高めるコストを払ってその分のコストを先食いするような設定に見えますけどね。

で、一方で何人か(a few)の委員は「ガイダンス文言は特定の期間や特定の期限などを明示するのではなく、あくまでも経済の条件に対してのみフォーカスすべきである」という反論をしていますが、この部分が単に景況感の違いで反論しているのか、それとも「時期の特定を行う事に対するリスク」の話をしているのかは良く判らんですな。何となく前者っぽいですが、もしかしたら「経済状況にのみフォーカス」というのは、経済状況の変化が起きた場合の時間軸の揺らぎについての認識もFOMCメンバーの中で持ってる人がいるのではないかという気も。


・追加資産購入または短期債→長期債のいわゆるツイストオペみたいなもんが次の本命なのか???

『Some participants noted that additional asset purchases could be used to provide more accommodation by lowering longer-term interest rates. Others suggested that increasing the average maturity of the System's portfolio--perhaps by selling securities with relatively short remaining maturities and purchasing securities with relatively long remaining maturities--could have a similar effect on longer-term interest rates. Such an approach would not boost the size of the Federal Reserve's balance sheet and the quantity of reserve balances.』

複数(Some)の委員は追加の資産購入は「長期金利を引き下げる事によって」より緩和的な金融環境をもたらす。

他の(Others)は「FEDの保有する平均残存期間の長期化」−恐らくは短期ゾーンの債券を売却してより長期の債券を購入する事−によって長期金利に対して同様の効果をもたらすと示唆しました。このアプローチはFEDのバランスシートの拡大や準備預金の拡大を伴わずに行う事ができるでしょう。

・・・・・・ということで、まあ最初に来ているのがこれで、しかもSomeとOthersが話をしているので、「もし追加緩和をやるとすれば」(実際にやるのかという議論があるわけですから)、この辺りが本命という事になるんでしょう。


まあそれはそれで「ふーん」という感じなのですが、そもそもQE1にしろQE2にしろ、「長期金利の引き下げ」というアプローチの話をしながら実行しましたが、実際問題として長期金利が下がったのってQE1(のうち国債大量購入シリーズ)の場合は実施をアナウンスした直後(サプライズだったので)の一瞬で、その後買入が進むと共に長期金利は上昇しましたし、QE2に関してもジャクソンホールでの講演とかその前の償還再投資決定あたりから金利が低下しましたけど、実際に買い入れを行ったあとは長期金利上昇しまして、どちらのケースも「行って来い」になっただけだと思うのですよね。

つまりですな、本来追加緩和の実施が経済に効果が高いと思われた場合、長期金利ってえのはその政策効果による将来の景気好転を見込んで上昇してもなんらおかしくない、というかそうなって然るべきものでして、時間軸政策だって本当にそれが強力なコミットメントだと思ったら、手前の金融政策パスの部分では確かに金利がFixされますけど、その先に関しては(低金利政策を必要以上に実施するのだから)景気を吹かす効果が出るんだからより早期の金融引き締めまたは正常化が必要になる筈です。などと小理屈を並べていますが、つまり「長期金利を下げて金融緩和をする」というのはそもそも政策に矛盾があるのよ。だって先行きの景気が良いと思ったら長期金利上がるでしょ、今言った様に。

これが信用緩和を実施している時のように、市場機能がおかしくなってその結果として変なリスクプレミアムがベースの金利またはクレジット等のスプレッドに乗っかっているというのであれば、そこのプレミアムをつぶす事によって効果がでる(信用緩和政策はそういうアプローチ)のですが、市場が正常に機能している中で「長期金利アプローチ」の話をするのは政策ロジック的に無理がありますがなと思います。

例えばですよ、そーゆー政策を実施するんですから何らかのターゲットを想定したとすると、景況感が良くなったら長期金利は上昇するのですから、景況感改善→長期金利上昇→中央銀行によるより多くの長期債購入→金融緩和拡大→最初に戻る、の自己拡大的なサイクルに入って大変にマズーな話になると思うのですよね。

まあFOMCもその辺微妙にインチキでして、経済指標で良いのが出てくるとそれまで言ってた「長期金利アプローチ」の話を華麗にスルーするというのが今までの仕様なので、実際に長期金利が下がらなかったりしても適当な小理屈つけて正当化してくるんでしょうけれども。


・超過準備の付利引き下げについて

『A few participants noted that a reduction in the interest rate paid on excess reserve balances could also be helpful in easing financial conditions.』

まあ説明もなくてあっさり味な何人か(A few)の委員の話でありますが、まあこちらが一応対抗みたいなもんだと思います。ただ、ここまでの部分に見られますように、基本的にどうもFOMC的には「長期金利アプローチ」的なロジックで向かっていくようですので、まあロジック的に短期金利を下げる方向というのは違う感じかなと思われます。


・・・・・とここまで読むと追加緩和は決定で何をするのかが問題のように見えますが、この次の部分がキタコレという感じですよん。


・追加緩和に対して否定的なsome participantsキタコレ

『In contrast, some participants judged that none of the tools available to the Committee would likely do much to promote a faster economic recovery, either because the headwinds that the economy faced would unwind only gradually and that process could not be accelerated with monetary policy or because recent events had significantly lowered the path of potential output.』

これわwwwwwwwww「none of the tools available」ってこらまたキツイお話を。

・・・・・・その理由の中に「金融政策だけでは即効性のある改善は見込めないのでは」とか「そもそも潜在的な生産のパスが顕著に下がっているのではないか」というのは、要は構造問題に対して金融政策が直接どうこうというのは無理があり、金融政策はどこぞの麿のように粘り強く緩和的な環境を継続するというような事しかできないんじゃないでしょうか、といった所なのかなと。これはこれで確かに見識。

『Consequently, these participants thought that providing additional stimulus at this time would risk boosting inflation without providing a significant gain in output or employment.』

追加緩和は生産や雇用の拡大を伴わないインフレの拡大をもたらすリスクがあるキタコレ。


・いわゆる「pros and cons」をもっと検討しないといけませんねという話

『Participants noted that devoting additional time to discussion of the possible costs and benefits of various potential tools would be useful, and they agreed that the September meeting should be extended to two days in order to provide more time.』

ということで、実は次回FOMCを2日間日程で実施するのは前回のFOMCで決まっていたのですが、その話をこのときには実施しないでジャクソンホールの講演で出すという小出し攻撃というのはこれまたお洒落な(まあそもそもFOMC日程をいきなり議長が勝手に変更するとか無いはずだから何か決定はあったんだろうなあとは薄々感じてはいましたけど)とゆー所ですが、恐らく前回のFOMCでは話が全然纏まらなくて、次回に向けてもっと話をしないといけないですよね、という事になった中で、先に「2日間日程」を公表しちゃうとジャクソンホールで出すネタがなくなる(=次以降のFOMCで追加緩和するのがほぼコンセンサスならメニューを出すというネタがあるので)という感じだったんでしょうかね、と思わせるのでありました。


ということで、1パラグラフ(HTML版だと22行ぽっち)で1日分のネタにする水増し企画でございましたどうもすいませんすいません。








2011/08/30

お題「民主党代表選挙雑談/固定金利オペもうすぐ札割れwktk/ジャクソンホール関連」

後半クソ長いわ更新遅れるわでどうもすいません。

○ということで民主党代表選挙雑談

まあ皆様ご案内の投票結果ですが俺様備忘録として。

1回目投票

海江田143
野田102
前原74
鹿野52
馬淵24

ということで、この結果を見て「野田さん随分と取ってるじゃん」ということで、先週の頭に前原さんが立候補して「野田さん危うし」という事もあって(まあ米債がその前の週末高値から木曜までの間に30毛甘くなったというのもありますが)その前の週末金曜の10年0.985%から先週末は1.040%にと金利が上昇しておりましたし、昨日も1.04とか1.045とかをやっていた債券市場ちゃんは先物買戻しモード^^;

債券先物は142円30銭近辺から20銭少々上昇して142円50銭〜60銭あたりに上昇しまして、まあ先物が強いですねという展開になりました。んでもって同時に株式市場の方では先物とか下落してTOPIXは一時マイナスに。

どんだけ株式市場に人気無いんだとか思ったのですが、しかし海江田さんになった場合って「3党合意見直し」とか思いっきり言ってた人なのですから、国会がまた空転して第3次補正予算どころの話じゃなくなってしまうと容易に想像できるのですから、海江田さんだったら株は上昇という訳でもないと思いますし、どちらかと言えば野田さんの方が国会は正常化しやすそうですから予算関連とかの話は通り易くなるので、野田さんだからって株を売る事もないだろうにとか思いながら見てましたです、はい。

2回目投票

野田215
海江田177

結果が出た時の債券市場の反応が実に香ばしいというか何だかという感じだったのですが、結果が出て債券先物は全然動かず(というか出た瞬間2銭位下がっていました)という事で、まあ一応ネタにしてみたものの、よくよく考えると海江田さんでも野田さんでもそう極端に違う事ができる訳も無い(野田さんだって民主党代表選挙の期間中に増税話を「いや別に直ぐに増税する訳じゃないですし」とトーンダウンしてましたし、逆に海江田さんになっても国会が空転する事を考えたらそうドラスティックに「マニフェスト遵守」ってなわけにはいかないでしょ)という事なのか、単に1回目投票の結果を見て決戦で逆転確実で全部織り込んでしまったのかは知りませんが、最終結果が出たのにウゴカンチ会長とか中々ワロタです。

・・・・・・というのが市場ちゃんの直接的な反応でございましたが、まあ自爆したり適当にやらかして後は放置プレーとかを得意技とする前原さんにならなくて個人的にはホッとしたと申しますか、「野田じゃあ反小沢で勝てないから本家の俺様が登場してやる」とばかりにドヤ顔で立候補した前原プギャーという所でございまして、実に良いもん見せて貰いましたという所であります。

まあ野田さんだと妙な無茶はしなさそうですけれども、同じことですが「おお!」というような変化も無さそう、という感じではございます。ただまあ領土問題とか安保問題に関してはかなりの強硬派ですから、対中外交ではどこかでひと悶着起きるんでしょうなあとゆー感じ(まあ中国の方がアレという議論は思いっきりあるのでその辺は却って支持率アップになるのかも知れませんけどね)ってところ位ですかね。

結果に関して申し上げれば、先日の菅下ろし不発に続いて連発で失敗となったお縄先生はどうせ党の金庫は握りそこなうでしょうから、お縄一派がこれからどうなるんですかねえ(棒読み)とか、前原さんが世論調査で圧倒的な人気(あたくしはあの自爆属性は精々偽メール問題で党を自爆させる位に留めて欲しいのであって、宰相になって日本を自爆させるのは勘弁とか思っていますから1ミリも支持できないんですけど)ですけど人望が無いんですねえとか、色々と楽しい内容で昨日はいいもん見せて貰いましたです(^^)。

いずれにせよ党人事と閣僚人事を見てまた市場が反応する(変な事にならなければ反応しないでしょうけど)という形になるのでしょうが、官房長官に変な人気取り政治家を連れてくるとかいうようなアフォーな事をしないようにしていただければと存じます次第。あと財務大臣誰になるんですかねえ、そうそう、菅直人なんてどうでしょう(大嘘)。


○3か月固定金利オペも按分80%とな

昨日のオペレーション。

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110829.htm

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110829.htm

共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月31日スタート分) 9,960 8,003 80.4

・・・・・・まあ昨日は31日に3か月固定の期落ちがあるからロールが入るのは確定事項でござんして、さて幾らの札が入るのかと思っておりました。先日ネタにしましたように、前回実施した6か月の固定オペが按分93.4%と大変にお洒落な結果となりましたが、あれはまあ6か月ですから応札意欲さがるわなあというのもありまして、やはり本命は3か月の固定がどうなりますねんという所でしたが、今回も堂々の按分率上昇(=応札の低下)となりました。

3か月固定オペに関しては、(あたくしの手元メモベースでスイマセンが)8月19日にオファーしたのが按分32.9%だったのですが、23日には66.8%に上昇して昨日は80.4%という事になりまして徐々に固定オペの札割れという包括緩和の資産買入基金の設立とゆー枠組み的にマズーな展開が見えてまいりまして、まあこれはオペレーションが上手い下手の問題ではないのがオペ担当キングカワイソスと言ったところでございますが、これどうするんでしょうねえとゆー所でありまする。


○今晩は注目のFOMC議事要旨が出るのでその前にジャクソンホールネタ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.pdf

今晩は注目の議事要旨が出るので、その前にある程度成敗するでおじゃる(^^)。


・冒頭部分は最初に景気の良い話をしているのですが・・・・・・

冒頭のご挨拶の所では威勢の良い話をしながら(というかこれはバーナンキ議長の講演の特徴でもあるのですが、よほどの状況で無い限りバーナンキは威勢の良い話をして人々のマインドをencourageするのが仕様なので、景気に関して強い話をしている場合でも本当に楽観の場合とそうじゃない場合は行間を読むしかない)「景気回復に時間が掛かる」「その間に政策担当者には大きな課題がある」というのを付け加えているのよね。

最初のご挨拶パラグラフは飛ばしてその次から。

『I can certainly appreciate these concerns and am fully aware of the challenges that we face in restoring economic and financial conditions conducive to healthy growth, some of which I will comment on today.』

ということで、講演のお題どおりに「長期的な課題に関してお話をする」とのことで。

『With respect to longer-run prospects, however, my own view is more optimistic.』

ほほう。

『As I will discuss, although important problems certainly exist, the growth fundamentals of the United States do not appear to have been permanently altered by the shocks of the past four years.』

「問題は確かにあるが、米国の経済成長の基盤は過去4年間のショックによって永遠に失われたとは考えていない」とまあここまで読むと景気の良い話をしているのですが。

『It may take some time, but we can reasonably expect to see a return to growth rates and employment levels consistent with those underlying fundamentals. In the interim, however, the challenges for U.S. economic policymakers are twofold: first, to help our economy further recover from the crisis and the ensuing recession, and second, to do so in a way that will allow the economy to realize its longer-term growth potential. Economic policies should be evaluated in light of both of those objectives.』

「時間はかかるかもしれない」となった上に、今後の政策課題があるという話をしていまして、まあ今回の講演はこの話をする訳ですが、逆に言えば「これから説明する中長期的な課題を克服しないと米国の経済成長の基盤が失われるリスクがある」とも仰せな訳ですよねこれって。

『This morning I will offer some thoughts on why the pace of recovery in the United States has, for the most part, proved disappointing thus far, and I will discuss the Federal Reserve's policy response. I will then turn briefly to the longer-term prospects of our economy and the need for our country's economic policies to be effective from both a shorter-term and longer-term perspective.』

ここでは「最近の景気回復ペースがdisappointingであると判明」と指摘して、「短期的および長期的な見通しに対して有効となる必要な経済政策について話をします」とゆうとるのですが、昨日申し上げたように、講演の後の方で「短期的な経済に対する政策が必ずしも長期的に適切な結果をもたらすとは限らない」という「バーナンキプットは甘え」的な部分があるのがこれまたチャーミングではございます。


・米国経済のオーバービュー

ということで最初の小見出しは『Near-Term Prospects for the Economy and Policy』であります。

でまあ最初は2008-2009年のショックで色々と大変でしたねという話をしているのですが、そこは割愛しまして。

『We meet here today almost exactly three years since the beginning of the most intense phase of the financial crisis and a bit more than two years since the National Bureau of Economic Research's date for the start of the economic recovery. Where do we stand?』

さてどこでしょう。

『There have been some positive developments over the past few years, particularly when considered in the light of economic prospects as viewed at the depth of the crisis. Overall, the global economy has seen significant growth, led by the emerging-market economies.』

ということで、世界経済回復の牽引役は新興国経済だそうな。では米国に関して。

『In the United States, a cyclical recovery, though a modest one by historical standards, is in its ninth quarter. In the financial sphere, the U.S. banking system is generally much healthier now, with banks holding substantially more capital. Credit availability from banks has improved, though it remains tight in categories--such as small business lending--in which the balance sheets of potential borrowers remain impaired. Companies with access to the public bond markets have had no difficulty obtaining credit on favorable terms. Importantly, structural reform is moving forward in the financial sector, with ambitious domestic and international efforts underway to enhance the capital and liquidity of banks, especially the most systemically important banks; to improve risk management and transparency; to strengthen market infrastructure; and to introduce a more systemic, or macroprudential, approach to financial regulation and supervision.』

とこの辺りがオーバービューなのですが、循環的回復の話よりも金融面における改善についてああでもないこうでもないという話をしていて、その中でも金融規制とかマクロプルーデンスというのがあるのがふーんという感じではございますが、まあとにもかくにも、「金融システムの頑健性」が無いと金融による経済に対するトランスミッションメカニズムが働かないという点を重要視して、この辺りについてうだうだと話をしているのだと思います。まあこの辺りは信用緩和の効果の世界も一部入っています罠。


・輸出が牽引役、とはつまり・・・・・・

『In the broader economy, manufacturing production in the United States has risen nearly 15 percent since its trough, driven substantially by growth in exports. Indeed, the U.S. trade deficit has been notably lower recently than it was before the crisis, reflecting in part the improved competitiveness of U.S. goods and services.』

米国の製造業生産の上昇のドライバーは輸出、ということでして、じゃあその輸出のドライバーは何かと言えばさっきあったように新興国経済の成長という事ですので、よーするに米国経済の回復に輸出が効いていた、という話をしていまして、更に「米国の貿易赤字が金融危機前から顕著に縮小していますが、この一部は米国の財やサービスの競争力の改善によるものです」という話をしてます。まあここも思いっきり行間を読む、というか読みすぎかもしれませんけれども、一方で昨日申し上げましたように、今回の講演では物価に関する話は思いっきりスルー状態であった事を勘案しますと、バーナンキ議長的にはドル安上等と思っているのではないかという感じが漂ってくるのですが行間読みすぎですかねえ。

『Business investment in equipment and software has continued to expand, and productivity gains in some industries have been impressive, though new data have reduced estimates of overall productivity improvement in recent years.』

企業の設備投資は拡大し、一部の産業での生産性向上は印象的であるが全体的な生産性の改善は減じているとな。


・家計のバランスシート調整問題キタコレ

『Households also have made some progress in repairing their balance sheets--saving more, borrowing less, and reducing their burdens of interest payments and debt.』

で、この後延々とこのバランスシートの話が続くのである。


・商品価格のピークオフで実質購買力の改善が期待できるとな

『Commodity prices have come off their highs, which will reduce the cost pressures facing businesses and help increase household purchasing power.』

商品価格はピークから離れたので、企業のコスト増大圧力の軽減や家計の実質購買力の増加に繋がるとか仰せなのですが、その前に上昇した分のレビューはどないなってますねんと突っ込みたくなるのがニポーンクオリティなのかもしれず、まあこれをポジティブに話すのがアンクルサムクオリティなのかもしれませんな。よー知らんが。


・景気の良い話の次に景気の悪い話が来るのがバーナンキクオリティ

と、ここでもそうなのですが、景気の良い話の次が景気の悪い話。

『Notwithstanding these more positive developments, however, it is clear that the recovery from the crisis has been much less robust than we had hoped.』

という景気の良い状況があるにも関わらず、危機からの回復に関しては我々が希望する力強さからは程遠い状況であることは明白であるとな。


・いやですからうちの麿が「偽りの夜明け」って話をしたと思うのですけど

次のところは「何を当たり前の話を」と思うのはバランスシート不況慣れしている日本人ならではでございまする。

『From the latest comprehensive revisions to the national accounts as well as the most recent estimates of growth in the first half of this year, we have learned that the recession was even deeper and the recovery even weaker than we had thought; indeed, aggregate output in the United States still has not returned to the level that it attained before the crisis.』

「我々は想定していたよりもリセッションが深く、回復力が弱かったということを最近の経済データを見る事によって学んだ(キリッ)」とかドヤ顔で仰られておりますが、ニポーンの皆様と致しましては「何をいまさら「学んだ」とかゆうとるんじゃとりあえず髭剃って頭に付けろや」などと思う人もいたりいなかったりすると存じますが、ここの部分はいい感じで椅子からコケそうになった部分でもあります。


・米国経済の足元の落ち込みや雇用の改善の遅れには「より持続的な問題がある」と指摘

『Importantly, economic growth has for the most part been at rates insufficient to achieve sustained reductions in unemployment, which has recently been fluctuating a bit above 9 percent. Temporary factors, including the effects of the run-up in commodity prices on consumer and business budgets and the effect of the Japanese disaster on global supply chains and production, were part of the reason for the weak performance of the economy in the first half of 2011; accordingly, growth in the second half looks likely to improve as their influence recedes. However, the incoming data suggest that other, more persistent factors also have been at work.』

persistent factorsということでstructuralと言ってないのがチャーミングですが、まあこれは先般の声明文で「あれ?」と思った部分をより詳しく話してまして、要するに米国経済の基礎的な成長力の低下のリスクに関して指摘している、という中々重いフレーズであると思います。


・で、その要因は何ですねんという話

『Why has the recovery from the crisis been so slow and erratic?』

何ででしょうかねえ。

『Historically, recessions have typically sowed the seeds of their own recoveries as reduced spending on investment, housing, and consumer durables generates pent-up demand.』

歴史的にはリセッションが起こるとそれはそれで反動の戻りというものの種を巻く(リセッションでやり過ぎになるから、ということでしょうな)とゆーことだそうな。一般的にはこーゆー風に行き過ぎになった部分からの反発が起きて回復するんですよという話が続く。

『As the business cycle bottoms out and confidence returns, this pent-up demand, often augmented by the effects of stimulative monetary and fiscal policies, is met through increased production and hiring. Increased production in turn boosts business revenues and household incomes and provides further impetus to business and household spending. 』

『Improving income prospects and balance sheets also make households and businesses more creditworthy, and financial institutions become more willing to lend. Normally, these developments create a virtuous circle of rising incomes and profits, more supportive financial and credit conditions, and lower uncertainty, allowing the process of recovery to develop momentum. 』

まあどこぞでの受け売りになってしまうのですが、恐らくポイントとなるのはここで延々とああでもないこうでもないと話をしている中で段落わけした冒頭の「Improving income prospects and balance sheets」つまり「家計や企業における将来収入増加の期待およびバランスシートの状況が改善することと」という部分にある訳でして、この先での「何故足元の景気回復力が弱いのか」という話はこの論点を中心に展開されています。


・リセッションからの回復を遅らせる原因となった2つの「落ち込み」、特に住宅市場に関して

『These restorative forces are at work today, and they will continue to promote recovery over time. Unfortunately, the recession, besides being extraordinarily severe as well as global in scope, was also unusual in being associated with both a very deep slump in the housing market and a historic financial crisis. These two features of the downturn, individually and in combination, have acted to slow the natural recovery process.』

いわゆるリバウンドのサイクルはワークしているけれども、リセッションが異例なほど厳しかった事から、住宅市場の大きな落ち込みと、歴史的な金融危機を招き、この2つが原因となって自然な回復過程を遅らせています。

『Notably, the housing sector has been a significant driver of recovery from most recessions in the United States since World War II, but this time--with an overhang of distressed and foreclosed properties, tight credit conditions for builders and potential homebuyers, and ongoing concerns by both potential borrowers and lenders about continued house price declines--the rate of new home construction has remained at less than one-third of its pre-crisis level.』

従来(第2次大戦以降)の米国経済におけるリセッションからの回復過程においては、住宅セクターが顕著な牽引役となって回復を主導したという事実があるが、今回はご案内のようにディトレストや競売の不動産がうじゃうじゃあり、住宅関連に向けた信用供与はタイトであり、住宅価格の下落および先行きの下落懸念は続いていて、住宅建設はおちこんだままと。

『The low level of construction has implications not only for builders but for providers of a wide range of goods and services related to housing and homebuilding. Moreover, even as tight credit for some borrowers has been one of the factors restraining housing recovery, the weakness of the housing sector has in turn had adverse effects on financial markets and on the flow of credit. For example, the sharp declines in house prices in some areas have left many homeowners "underwater" on their mortgages, creating financial hardship for households and, through their effects on rates of mortgage delinquency and default, stress for financial institutions as well. Financial pressures on financial institutions and households have contributed, in turn, to greater caution in the extension of credit and to slower growth in consumer spending.』

ああでもないこうでもないとございますが、要は「住宅建設が落ち込むと関連需要も冷えますよ」という話と、「住宅市場の回復が遅れるとクレジット関連環境も改善しませんね、例えば住宅ローンのネガティブエクイティ問題とか、そして個人消費にも悪影響ですよね」という話ですな。


・欧州および米国の財政問題への懸念も悪影響である

金融政策の話の前のところで終了(長くなりまくってスイマセン)の所存ですが、この部分の最後は財政問題の話キタコレであります。

『I have already noted the central role of the financial crisis of 2008 and 2009 in sparking the recession. As I also noted, a great deal has been done and is being done to address the causes and effects of the crisis, including a substantial program of financial reform, and conditions in the U.S. banking system and financial markets have improved significantly overall. Nevertheless, financial stress has been and continues to be a significant drag on the recovery, both here and abroad. 』

2008-2009年に起きた金融危機に対しては政策当局は適切な対応を行って金融システムの安定性を確保したものの、足元では米国及び海外でまたまた金融ストレスキタコレである、ということで政治への悪態第一弾キター!

『Bouts of sharp volatility and risk aversion in markets have recently re-emerged in reaction to concerns about both European sovereign debts and developments related to the U.S. fiscal situation, including the recent downgrade of the U.S. long-term credit rating by one of the major rating agencies and the controversy concerning the raising of the U.S. federal debt ceiling. It is difficult to judge by how much these developments have affected economic activity thus far, but there seems little doubt that they have hurt household and business confidence and that they pose ongoing risks to growth.』

米国に関しては債務上限問題に関するああだこうだのせいで市場のセンチメントが悪化しやがったじゃねえか。そんでもってどの程度かはよく判んねえけど、ほぼ疑いなく家計や企業の信頼感への悪影響があったじゃねえかコノヤロー!というので短期的な経済に関する見方、課題について締めておられます(欧州の話もあるけど)。

『The Federal Reserve continues to monitor developments in financial markets and institutions closely and is in frequent contact with policymakers in Europe and elsewhere.』

以下金融政策の話になりますが、時間も量も膨大になったので後日。







2011/08/29

お題「バーナンキ講演ネタですが今日は総括編なので引用とかが無いです」

某モーサテの為替コメント(電話)してる奴がスイスの超強引な為替対策を捕まえて「日本にも為替対策の金融政策が期待されます」とか言ってるのだが、じゃあ具体的に日銀が何をするのかとかお前ちょっと説明してみろやと小一時間。

と、モーサテLoveなあたくしですが本日はお約束のようにバーナンキ講演のお話である。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.pdf

○まずは総括というかまとめというか何と言うか

今回の講演もそうなのですが、バーナンキ議長の講演というのは表現が平易で難しい(と言うか気取った)言い回しとかが無いので、かなり読みやすいというのが一つと、そうは言いながらも表面の文言だけではなくて行間を微妙に読まないといけない部分がある(と思われる)のがあるっちゅう所でしょうか。

などとあたくしドヤ顔で申し上げましたが(^^)、じゃあ今回はどうだったのかという話に関しては多分講演テキストを引きながらああでもないこうでもないとやるのですけれども、一日分の分量を超えてしまうと思いますので先に(講演テキストの引用しないで)あたくしが読んだポイントとか感想とかをうだうだと並べてみたいと思います(重要度順不同、つーか重要度の判断が難しい)。

・現在の景気減速は「一部は一時的な要因だがより持続的な要因」

先般のFOMC声明文でも出ていた「最近の経済回復ペースの減速における一時的な要因(日本の震災によるグローバルサプライチェーンの毀損や商品価格上昇による家計や企業の購買力低下)はその理由の一部である」という話に関して、「より持続的な要因があると見られる」という指摘をしています。また、この「持続的な要因が云々」が2回言及しているのは「大事なことなので2回言いました」的で中々味わいがあるというものです。

つまりですな、と次の小見出しに続くのだ。


・米国の潜在成長力の低下の可能性、というか懸念を(行間を読むと)指摘

でまあその回復の速度が遅いのは何ですかとゆー話をしているのですが、そこで延々と指摘されているのが「住宅バブル崩壊の影響の深さ」ですな。それに加えてこれは講演後半の「長期的な米国の政策課題」という部分に繋がるのですが、財政のサステイナビリティについての問題も指摘しています。

まあ何ですな、ニポーンの皆様からするとそのバランスシート問題って「何を今更」感のある部分で、壮大な資産バブルをやってそれが崩壊しましたというバランスシート調整をやっている中では、そもそもレバレッジ縮小の動きが続くから景気の回復サイクルが弱くなる、というのは散々見ていますので「バブルの崩壊の影響は我々の想定以上に大きかった(キリッ)」とかドヤ顔で言われましても何だかなあではござます。

あと、失業の問題にも触れているのですが、そこでは失業率が高いこともさることながら、長期失業者が多くて労働者のスキルが低下する、という話の方を強調していまして、労働者のスキル低下に伴う生産性の低下の話をしているのがこれまた注目という感じではないかと思います。

ちなみに、ここの小見出しで(行間を読むと)と書いているのは何でですねんという話なのですが、実際に講演テキストをサラサラと読んでいますと、「米国の成長力は高い」というような威勢の良い話をしておりますが、よくよく見ると「適切な政策を遂行することによって」米国は強い経済力を維持するみたいな言い方をしていまして、これはつまり直接の言及は控えていますが、「このままのんべんだらりんとして適切な政策を打たないと米国経済の基礎的な成長力が低下する」と仰せである、という事でもありまして、(勿論そんな事は言及してませんが)無策でいると日本的なデフレ均衡というか長期衰退モードというかに陥るっつー事も言いたいんでしょうなあとか行間を読んでいると思うのでありました。


・ということで上でも書きましたが米国経済の現状の問題はバランスシート調整と労働市場

ではインフレはどうなったかと言いますと、インフレに関する言及はPDF版の本文6ページの最後の所にあるのですが、この講演(本文13ページ)のうちわずか4行分しか無いという極めてあっさり味にも程がある状態でして、「商品や他の輸入価格が落ち着いてきて、長期的なインフレ期待が安定する中で、我々は今後数四半期の期間においてインフレがデュアルマンデートで目標とする2%あるいはそれ以下に落ち着いてくると見込んでいます」というほぼ一言で終了でござるの巻。

一方で足元の課題及び中長期的な課題の中でああでもないこうでもないという話をしているのは「バランスシート調整」と「労働市場のスキル低下などによる基礎的な成長力の低下」という部分でして、バランスシートという文言なんてもう何度となく出てくるのでお腹一杯ですがなという感じではございまする。


・政治に対する注文が出まくっているのがチャーミング

足元および長期的な課題ということで政治方面に対する注文が結構出ているのもこれまたチャーミングなのでありますが、まず最初に注文つけているのが「デットシーリング問題に関する政治の混乱によってマインドの悪化が起きている」という部分でありまして、まあそれはそうですなという感じですが、最後の方の長期的な課題の部分が結構強烈。

6月14日に『Fiscal Sustainability』というお題で議会証言をした時の話を繰り返して「以前も申し上げたように、顕著な財政政策の変化を行わなければ、連邦政府の財政ファイナンスは制御不能となり、経済と金融に深刻なダメージをもたらすリスクを招く」と思いっきり言ってますし、その後では「この夏に起きた(債務上限問題に関する)交渉は、金融市場に対して悪影響を与え、恐らくは米国経済にも悪影響を与えている。そして将来において同じような事が起きた場合、米国資産に対する投資への意欲に対して極めて大きな悪影響を与え、それによって米国企業の雇用創出力に直接的な悪影響を与えるでしょう」という茶会あたりが発狂しそうな話をしているのですな。


・で、金融政策に関しては

既に報道などでご案内の通りですが、今回は今後の金融政策に関しての具体的などうのこうのという話が無くて、そもそもが金融政策に関する直接的な部分が1ページ分弱(18行)しかなかったという状態でございました。

でですな、そこにある話が幾つかございますけれども・・・・・

(1)ガイダンス文言は「コミットメント」ではなくて「予想」である
(2)追加緩和に関する具体策は議事要旨をお楽しみに
(3)次回FOMC日程を2日間にする事によって期待を持たせる

という所でしょうか。(1)の部分って結局それって日銀の「中長期的な物価安定の理解」と包括緩和のセットと同じ話じゃネーノという感じがするのがこれまたチャーミングではありますがその辺の話はまた後日。

次回FOMC日程が2日になる、ということでまあ株式市場の失望を呼ばないというのは、この前決定会合を一日縮小した日銀と比較して中々味わいがありますが(^^)、まあこの件と「詳しい議論に関しては議事要旨をお楽しみに」をセットにして考えると、実は具体的な追加緩和をどうするかという話が全然コンセンサス取れていない状態(理事+NY連銀VS地区連銀の状態)になっているのかも知れず、その辺は火曜に出てくる議事要旨を待ちたいなあとか思うのです。

あと、これは今回の講演の特徴ですけれども、「短期的な話」と「長期的な話」を分けて色々と政策だの経済だのの話をしているのですよ。でね、その中でこれまたチャーミングな部分があったのは本文10ページの真ん中あたりにあるのですが、「一般的に短期的な効果を狙った金融政策や財政政策が、必ずしも長期的な経済の良好なパフォーマンスに繋がるとは限らない」というのがありまして、これはまあつまり「短期的なクレクレ相場に一々反応して金融緩和をするのが必ずしも長期的に正しい訳ではない、つまりお前らのクレクレ相場は甘え(キリッ)」という話をしているのではないかとこれまた行間を読んでいるのでありますが(^^)思うところでありまして、さすがに「バーナンキプット」だの何だの言われているのがアレなんですかねえという感じです。


・中央銀行の限界を示しつつ・・・・・

で、この講演での説明部分では先ほど申し上げましたように、「バランスシート調整、特に住宅問題」と「労働市場、特に長期的な失業などの生産性に関わる問題」を米国経済の課題として指摘しているのですが、「長期的な経済成長に関わる問題(つまり労働市場の構造的な問題)に関しての多くは中央銀行の範囲外」という事も言及していまして、まあそらそうだという感じですな。

つまり、まあ無理矢理追加緩和の内容に関するインプリケーションを引き出しますと、以下ややこじつけ気味になりますが、金融政策でのサポートという意味では住宅市場のサポートをしたいという事になろうかと思います。ただし、その住宅関連に関しては既にやることやってしまった後でして、今更MBS買ってもスプレッドが縮小するのよという感じではありまして、何をするのかは正直難しい。

量の拡大が出来れば話は早いのでしょう(インフレの話を微妙にスルーして「インフレにもデフレにもなりません」的な話をしているのはそのせいかなとも思います)けれども、それが難しいとなりますと、本来ならば資産価格支持政策という話になるのでしょうが、仕方が無いので長期金利を下げる方向の政策を打つ、という話になるのかと思います。

ちなみに、インフレ懸念していない上に(話の流れ上書き損ないましたが)輸出を米国経済回復のドライブという話をしていましたので、ドル安に関してはスルーという話になっていますので、今後の金融政策の結果ドル安になってもまあケンチャナヨとゆー感じかと思われます。あたくし的にはそれをやると英国コースになる懸念があるので結構危険な選択肢のようにも思えるんですけどね・・・・・・


・・・・・・・ということで、本日は米国ネタなのに文章引用が全然無いというふざけた内容になりまして誠に申し訳ありません。明日以降詳細につきまして見て参ります。








2011/08/26

お題「昨日の訂正/ジャクソンホールプレビュー雑談/商品価格に関するセントルイス連銀の小記事」

毎日米国はえらい勢いでスイングしますのう。

○昨日の訂正を少々(すいません)

昨日の駄文の中で相場雑談をああでもないこうでも無いと書きましたが、その中で固定金利オペに関する部分があったと思うのですけれども、6か月物の固定金利オペは一昨日にオファーされたものの1つ前は8月9日ではなくて8月11日にオファーされたロール分の8/25-2/25というのがありました。で、そちらですけどロール分で按分率が60.5%だったのですが、その前後での3か月固定金利オペは10日オファーの80.5%という素敵な按分もございまして、まあよーするに固定金利オペが大変に素敵な事になっているのには変わりは無いんですけど、事実関係の説明に漏れがありましたので謹んでお詫びして訂正させていただきとう存じますです、はい。


○ジャクソンホールプレビュー雑談

まあ市場的にはその通りなのですが見出しにちょっとウケた

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=adTE8tGypzjY
米国債:反発、7年債入札は順調−FRB議長会見控え緩和期待が後退

・・・・・・・金融緩和期待が後退したのに国債入札が順調で米国債は価格上昇とかまー債券市場の人には良く判る流れですが、一般ピープル的には「????」では無いかと思いますが(^^)。どうでもいいけどさ。

まー何ですな、どうもQE3に向けた強力な示唆は出ないというのがコンセンサスになってきたようですが、実際にどういう発言をすると市場がどう反応するかについて雨人の反応が良く判らん(こーゆー時にはCNBCでも毎日見ておく方が吉なのでしょうが、そんなもんあたくしは見れないもんで残念無念)ので決め打ちはしにくいですにゃ。

ですが、まあお祭り前なのであたらない予想をして盛大にフラグを立てておきますけれども(^^)、バーナンキ先生の前回のジャクソンホールでは資産買入(QE1ですが)に関する効果がどうのこうのという話を延々としていたのは記憶に新しいけれどもだいぶ忘却の彼方かと存じます。去年は何か5回に分けてこの講演のネタをああでもないこうでも無いと書いた(ここに駄文インデックスありますhttp://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakuforeigntop.html)のですが、QE1関連政策の効果としてどのような話をしていたかと言いますと・・・・

・FF金利の下げとガイダンス文言(擬似時間軸)による金利引下げ
・資産買入による市場機能改善(これはQE1の信用緩和的な部分ですな)
・資産買入による長期金利低下(実際には下がってませんけどねえ・・・・・)
・資産買入によるポートフォリオリバランス効果(そうかなあ・・・・)

で、その資産買入の与える金融緩和の「度合い」に関しては「その期間中に買い入れを実施したフローの額ではなくて、買い入れを行った後の資産、即ちFEDのバランスシートの資産サイドの「ストック量」と「構成内容」というストックである」という説明になっています。

・・・・・・つーことはですな、今回もし「量」を増やしにくい、という話になった場合、追加でやることとしては「資産構成内容の変化」という事になる(ガイダンス文言の強化は実施したから)のですと考えるのが自然。ただしガイダンス文言が微妙に弱いんじゃネーノというのに関してはあたくし、というよりは本ちゃんの日銀政策ストーカーじゃなかったヲチャーのお歴々の方がご指摘してますけど、恐らくバーナンキ先生のことだからその辺は把握していると思いますんで、日銀的な明示的な経済指標などにリンクしたコミットメントの強化を可能性として示唆するなんてえのもあるかねえという所でしょうか。

まー比較的穏当な予想になって申し訳ないのですが(^^)、普通に考えるとどうもそんな感じになっちゃいます罠。

大穴としては実際問題として考えた場合に、米国の経済に効かせるルートは当面は(バランスシート調整途上なので)資産価格ルート、なかんずく株価ルートだと思いますので、株価に直接関与する荒業炸裂というのがあるとかなりオモロー(実はドル安になるとインフレ加速のリスクの方が大きいのではないかというのが、ディスインフレ懸念のあったQE2実施時と話が大いに違う点)なのでございますが、共和党のテキサス野郎からドラム缶で行くメキシコ湾海底ツアーへのご招待とか、茶会のアラスカオバハンからドラム缶で行くオイルシェール探査ツアーへのご招待とかが来そうな話でもありますので中々難しいかなという感じですかねえって所ですか。#鰻は合法(謎)

で、その時に日銀どうすんの???というのは「まあそれでドル安が絶賛進行したら何かしないといけませんね」という国際金融政策のトリレンマ・・・・いやまあいいです。

#あたくし的にはここはどどーんとETFを買うのを推奨なんですけどね


○商品価格上昇に関するセントルイス連銀の「The Regional Economist」記事

http://stlouisfed.org/publications/re/articles/?id=2122
Commodity Price Gains: Speculation vs. Fundamentals
By Brett W. Fawley and Luciana Juvenal

PDF版(出版物版かな?)はこちら
http://stlouisfed.org/publications/pub_assets/pdf/re/2011/c/commodities.pdf

最初に「最近の商品価格の動きがボラタイルになっていますよね」というような話をしている訳ですが、その背景について簡単にレビューするのが上記記事の中身でございますが、論点を簡単に整理しているのでまあ読んで味噌という感じでございまする。

『This synchronization of price movements across a range of commodities has fostered, in part, the assertion that the commodity price boom is a bubble, driven primarily by near-zero interest rates and excessive speculation in commodity futures markets.』

『The counter argument is that market fundamentals-supply and demand for the commodities themselves-can fully explain the price gains. Ultimately, understanding the sources of the price gains is essential for determining the proper policy response, if any.』

ということで、まずは商品市場のファンダメンタルズに関する説明が。

・商品価格上昇の背景について

『In the absence of "irrational exuberance," the price of any good or asset should be driven by supply and demand. On both the supply and demand side of commodities, there is no shortage of shocks to explain, at least in part, recent price gains.』

ということでお話があるのですが、引用していると長くなるので簡単に。

・農産品に関してはネガティブサプライショックに反応しやすくなっている

FAOの統計によると、1990年台中盤から平均年率3.4%のペースで在庫水準が低下している(在庫水準低下の理由は、在庫水準のリスク管理の高度化とか、物流の改善とか、輸出可能国の拡大とか色々とある)のだが、在庫水準が低下すると価格に対するショックが発生した場合に価格上昇のバッファー機能となる部分なので、この低下によって異常気象などに価格が反応しやすい。例えば2010年に小麦価格が47%上昇した時にはロシア、中国の旱魃とカナダ、豪州の洪水が大きく寄与しているといった具合。また、農産品に関しては特定の農産品価格が上昇すると生産者がその農産品への転作を試みようとしたりするので価格のスピルオーバーがおきやすい(本当かそれ?とは思うのだが)そうな。


・需要の拡大

まあこちらは新興国の経済成長とかそういう話になるのですが、需要の拡大は農産品でも非農産品でも同じように影響していますという話ですな。で、そこで興味深い指摘としてバイオマス燃料に関する部分がある訳でして、CO2排出削減がどうのこうのの要因とかでバイオエタノールなどの生産が行われているのですが、これによってバイオエタノール(トウモロコシ)やバイオディーゼル(大豆)の原料価格の動向が原油価格動向と相関するようになってきている、という相関のグラフとかがあって中々オモロイです。また、バイオマス燃料に必要な生産の為にはかなりの量の生産地を必要とするので、この生産によって農産品として消費される分の供給を食っているのも農産品価格に影響を与えているとな。


・ということで大体需給関連に関する結論

『Overall, there is no doubt that fundamental shocks to supply and demand in commodities, both transitory and persistent, can account for significant price pressures in these markets. Some, however, remain unconvinced that these fundamental shocks are enough to explain the entirety of price increases. Instead, they place some blame on a bubble in commodity prices.』

ということで、バブルに関する議論キタコレということですな。

・バブルかどうかについてですかそうですか

『An asset bubble is characterized by prices detached from fundamentals, instead driven by the anticipation of profiting from higher prices tomorrow.』

まあさよでござんす。

『Commodity markets, however, do not meet the usual theoretical criteria for a bubble.』

ほう。

『Arguments for a speculative bubble focus primarily on one market-place for commodities: the futures market.』

なるほど。

『Commodity futures markets are where both commercial and noncommercial traders can buy and sell standardized contracts for delivery of a specified quantity of goods at a specified date in the future. These contracts are short-term instruments that have few constraints on short-selling (betting on price decreases) and that are easy to arbitrage (profit risk-free from mispricing).』

主に先物市場に対する投機筋のご参入がバブルの要因になりやすいですかそうですか。

『In contrast, theory holds that bubbles are limited to markets such as real estate, where the good in question has a long lifespan, is hard to sell before you own, and buying and selling is costly in terms of time and money.』

ほほう、そうなんですかねえ。何かそんなもんで片付けてよいのかねという気もするんだが。


・米国の金融政策の影響に関する考察キタコレ

さっきの続きから

『Still, some believe that a bubble is forming in commodities due to either expansionary U.S. monetary policy and/or record flows of investment funds into commodity futures. These possibilities warrant careful consideration.』

キタコレ、ということでこの先の小見出しが『The Role of Expansionary U.S. Monetary Policy』でございます。

まあ大体地区連銀の雑誌ですので結論は見えていると思いますが(^^)、1行で書いてしまうと「緩和的な金融環境が利回り追及の動きを後押しする面はあるが需給要因の方が大きいよ」という感じでしょうか。それだけだと何ですのであたくしが何となく読んだのを簡単に。

米国の拡張的な金融政策の影響としてよく指摘されるのは(1)緩和的な金融環境による在庫の保有に関するコストの低下、(2)ドル安、というのがありますが、前の部分にあったように在庫水準事態は趨勢的に低下しているので(1)の指摘は当てはまらず、(2)の指摘に関してもドル相場と国際商品市況の相関は乏しく、これらの指摘は当てはまらない。で、最近の論点としては(3)米国の低金利政策によって商品ファンドなどの利回り追求の動きが商品価格を上昇させているのではないか、というのがありますが、これに関してはさすがに一部認めているようですな。

『The impact of increased speculation in commodity futures markets, perhaps exacerbated by low traditional investment returns, has been an area of intense research in recent years, however.』

というのがこの小見出し部分の最後のパラグラフでございました。


ということで、この辺までが背景説明(雑誌掲載のPDF形式だとここまでで全5ページ中4ページ分を消費します)となっていまして、以下の部分がこの商品市場に関する政策インプリケーションに関する部分となります。

・過剰な投機の潜在的コストに関して

という小見出しの部分ですが、投機の影響に関して考察したOECDのレポートに関して説明していまして、

『Logical inconsistencies include a tenuous link between speculative inflows and demand for the underlying commodity and doubt over the extent that index fund investors could artificially increase futures and cash prices while only participating in the futures market and not the spot market, where commodities are sold for immediate delivery.』

『Factual inconsistencies are numerous. For example, inventories should have risen between 2006 and 2008 according to the bubble theory, but they actually fell.』

『Other reasons for discounting this theory include:

・arbitraging index-fund buying is fairly easy due to its predictable nature,
・commodity prices rose in markets with and without index funds,
・speculation was not excessive after accounting for hedging demand, and
・price impacts across markets were not consistent for the same level of index fund activity.』

ではその辺はどうなのかということですが。

『In addition to their own analysis, the authors of the OECD report reviewed four studies supporting a pre-recession commodity bubble and five studies discounting a bubble. The authors concluded that "the weight of the evidence at this point in time clearly tilts in favor of the argument that index funds did not cause a bubble in commodity futures prices." 』

これらのエビデンスは「インデックスファンドが商品先物市場のバブルを引き起こしてはいない」という指摘を支持する方向に傾いています(キリッ)。

『Of the studies supporting a bubble, they write, "These studies are subject to a number of important criticisms that limit the degree of confidence one can place in their results." Still, the OECD report contains an important caveat regarding the markets most often linked to a speculative bubble: "The evidence is weaker in the two energy markets studied because of considerable uncertainty about the degree to which the available data actually reflect index trader positions in these markets." Sorting out the bubble arguments has extremely important policy implications going forward.』

つーことで、まあ結論としては「でも商品市場ってこの手のデータがまだ整備されていないから今後の更なる研究が必要ですよね」という話になるのでありますた。


・で、政策対応ですが

『Are Policy Responses Required in Commodity Markets?』って所ですが。

論点としてはこんな感じだそうな。

『・Is strong regulation in futures markets needed?
 ・Are large subsidies on biofuels good policy?
 ・Should U.S. monetary policy take into consideration global economic conditions?』

で1番目に関してですが、市場の規制についてはあまり必要ないですし、インデックスファンドプレーヤーは市場に流動性を供給するという役割がありますという話。2番目はああでもないこうでもないと言ってますが「バランスを考えましょう」みたいな結論の無い結論。

で、3番目ですけれども、「米国の金融政策がグローバルに悪影響を与えて米国経済にフィードバックするのであれば対応すべきだし、その関係が乏しいのなら普通に米国経済に対応して金融政策を実施すべき」という当たり前の結論になっています。

『The final question regarding the consideration of global economic conditions in U.S. monetary policy debate will require much more convincing evidence before a firm conclusion can be reached.』

『If expansionary U.S. monetary policy is transmitted globally to economies in danger of overheating, which in turn bids up commodity prices and, hence, increases price levels back at home, then U.S. monetary policy should care about output gaps around the world. At the same time, the mere correlation of commodity price increases with loose U.S. monetary policy, without any convincing empirical evidence or theoretical mechanisms for this avenue, is not enough to determine that U.S. policy decisions should factor in economic conditions from Latin America to Europe, from Asia to Africa.』

ということでございました。


#まあ完全に趣味のコーナーですいませんすいません







2011/08/25

お題「今日も今日とて概ね市場雑談である」

何か米国10年債2%割れとか(瞬間風速ですが)やったの確か先週の金曜だった気がするんですが今見たら2.3%近くになってるってこらまた大概な債券市場でございますなあ。

○円高対応緊急パッケージとな

http://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/press_release/230824.htm
円高対応緊急パッケージについて

つーことで2本立ての対策が出ていますが、何か長期的な話と足元的な話があるなあという感じです。まーよく見ると1番目の対策(円高対策ファシリティ)の問い合わせ先が国際局開発政策課で2番目の対策(ポジション報告)の問い合わせ先が国際局為替市場課ですので同じ国際局マターでも微妙に性質の違う話を今回一緒に出してきたっつー所でしょうか。

『1. 円高対応緊急ファシリティ(1,000億ドル)の創設

【目的】
・急激な円高の進行に対応し、民間円資金の外貨への転換(いわゆる円投)の促進による、為替相場の安定化
・長期的な国富の増大

【基本枠組】
・外為特会のドル資金を、国際協力銀行を経由して活用
・公的部門によるリスクマネーの供給や政策融資により、@日本企業による海外企業の買収や、A資源・エネルギーの確保などを促進し、これを民間部門の円投の呼び水とする』

ということで、そもそも論として外為特別会計のドル資金の有効活用という論点があって、それに対してどういう方策がありますかとゆー施策を今回円高対応緊急パッケージにぶつけてきたという感じが致しますが、外為特会のドル資金を単にJBIC経由で民間融資するだけですと別にそれで直接為替市場に影響する訳ではない(というか単に普通に邦銀の融資が肩代わりされたりしたら逆に円転要因になっちゃいますわな)ので、これは直接的な為替市場介入という話ではなくて、目的とか枠組みのところにありますように「JBICでこのような制度融資(のようなもの)を実施しますから皆さん円投して海外投資しましょう」というのがこちらの趣旨なんでしょうな。

と考えると『【期間】・1年間の時限措置』ってのも何か勿体無い気もするんですけれども。話としては割と遠大な物だと思うので常設化しても良さそうですが、まあ実際に作ってみてワークするかとかを見ながら上手く行くようなら常設化とゆーのもアリじゃないかなあとか思いますけどどうなんでしょうかね。


『2. 外国為替及び外国貿易法第55条の8に基づく外国為替の持高報告

【目的】
・為替相場の安定を図るための為替市場へのモニタリングの強化

【基本枠組】
・主要金融機関に対して、外国為替及び外国貿易法第55条の8に基づき、為替トレーダーが保有する外国為替の持高(自己ポジション)について報告を求める。

【期間】
・当面9月末までの期間、報告を求めることとする。』

おおおおお!持ち高報告ナツカシス・・・・・・ってまあ別に資本規制おっぱじめるとかいう積りでは無いと思いますし、大体からして市場モニタリング自体は財務省も日銀も普段から行っています(筈です)ので、こちらはまあ姿勢を見せる系のお話だとは思います。期間も9月末までの間と短い期間で切っていますので、これで急にどうこうというのは無いでしょうけれども、ただまあ通貨当局として「あんまり調子に乗ってると痛い目に会いますよウッシッシ」とゆーメッセージを出しましたちゅー事でしょうな、うんうん。


・・・・・ということで、まあそもそも昨日「11時半から会見」と出て「円高対応に関する話」という報道が出たときに何が出るのかよーわからんかった所に加えて内容がそんなに今日明日市場に手を突っ込んでぐしゃぐしゃという話でもなかったということで、ドル円の方は公表前後で20銭程度円高に振れた程度の反応でございましたな。


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110824a.htm/
本日公表された政府の措置について

『2011年8月24日
日本銀行

日本銀行は、本日財務大臣より公表された措置が、為替市場の安定に寄与することを期待している。
日本銀行としては、為替市場の動きが先行きの経済・物価動向に与える影響について、引き続き注意深くみていく。』

ということで、「呼び水効果」に言及する財務省に対して「注意深く見る」のが日銀ということで・・・・・・・いやまあどうでもいいです(^^)。


○その他市場雑談

・貫禄の日本国債格下げ無反応(^^)

http://www.asahi.com/business/update/0824/TKY201108240104.html
ムーディーズ、日本国債を1段階格下げ 「Aa3」に

何か昨日の朝8時過ぎに出てましたが、「格下げになったけど見通しが「安定的」となったので好材料です!!!」とまで言われる有様で、財政状況(赤字の数値とかPBとか)は先進国の中でぶっちぎりに悪い筈なのにその国の格付けが下がっても反応しないどころか前日の米債下落を受けて下がって始まった債券市場はその後買いが入って(株安もあったのでしょうけど)前日比プラスになるとか貫禄の無反応振りにワロタ。

まあ何ですな、元々S&PとFitchがAA-のネガティブとかになっているのでAa3の安定的だとそれよりも良いというのもあるでしょうが、格下げを受けて「見通しが安定的になったので却って好材料」とかさすがにそれは(言いたい事は判るが)如何なものか(せめて悪材料出尽くし位にしとけと)というコメントまでベンダー見たら散見された(どっかにあったと思うのだがスルー^^)のは笑いました。

ということで、今後はR&I様がどういうアクションをしてくるのかがお楽しみ♪


・3か月TB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230824.htm
国庫短期証券(第218回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭6厘0毛
(募入最高利回り) (0.0962%)

(5)募入平均価格 99円97銭6厘2毛
(募入平均利回り ) (0.0954%)

・・・・・・・先週の3MTB入札は0.0982%/0.1002%でしたのでこらまた利回り低下でございますかそうですかという所ですが、市場推計で不明玉が2兆4000億円とかありやがりまして(発行総額は4.8兆円)何か知らんけどニーズがあったのねという感じでございます。平均落札レベル水準とかでセカンダリーになっていたらしいので、ちょっと玉が足りませんって感じなんですかそうですか。


・6か月固定金利オペ札割れ寸前キタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110824.htm

共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2011年8月26日 2012年2月23日

オペ落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110824.htm

共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月26日スタート分) 8,570 8,003 93.4

・・・・・・ということで6か月の固定金利オペ(基金オペ)の応札が8570億円に急減少。

ちなみにこのオペは新規で入った奴ではなくて既存のオペのロール分になりますので、つまり対応する期落ち分はあったのですけれどもこれは素敵な結果。なお、前回(追記:これは前々回でした、詳しくは翌日に訂正入れました)の6か月基金オペは新規で入った(=先日の追加緩和に伴うおかわり分)分で、9日にオファーされて11日スタートだったのですが、こちらの応札が12725億円で按分は62.9%という結果だった訳ですが、今回はロールで入ったにも関わらず札割れ寸前になるとか実にセクシーとしか申し上げようが無い展開(^^)。

そらまあ間違ってFEDが超過準備付利引き下げ/撤廃とかやらかしようもんなら日銀の補完当座預金金利が下がる鴨とかいう懸念があって、下がった途端に下がった分だけまるやられになる資金調達を6か月とかやるかヴォケというのは判らんでも無いわけですが(^^)、これはまた中々素敵過ぎる展開でオペレーション担当部署も大変ですなあ(棒読み)という所でございまする(固定オペの実行残高は包括緩和の目標数値の一環ですからねえ)。

ま、米国は金利下げ方向の話をしても株式市場が許してくれなさそうで、やはりバランスシートを何らかの形でいじる方向での政策を求めているっぽいですから、そーゆー流れからすると超過準備付利金利をいじる選択肢の優先度は相当低いんジャネーノとは思いますけど、こればっかりは逆さ絵おじさんの頭の中みないと判らない話ですので、期中にGCレートが跳ねたりファンディングのアベイラビリティーがあばばばばーになるリスク対比で長い資金調達をどの位のバランスにすべきか、というような話になってくるかと思いますですよ、はい。


○そういえばスイス中銀メモ

マニアの皆様注目のスイス中銀ヲチを暫くサボっていたのでメモ。

http://www.snb.ch/en/mmr/reference/claims_res/source/claims_res.en.pdf
Money market debt register claims of the Swiss Confederation: Results

直近の数字はこの通り

Series :6.7928
Auction date:23.08.2011
Payment : 25.08.2011
Date ofredemption:23.02.2012
Total bids (CHF m):8'829.00
Unpriced bids :904.45
Allotment :599.80
Unit price :100.508
Yield:-1.000

えーっと、つまり8/25-2/23の大体6か月の短期債発行(ですよね)の落札金利が-1.000%とかいう大変素敵なレートになっておられます。ナンジャコリャという感じですが、どうもスポット市場でのスイスフラン売り介入だけではなく、フォワード市場でスイスフランを売ってディスカウント幅を拡大させる事によって金利平価を利用してターム物金利をマイナスにするという無理無理の力技をかましておられるようでございまして(実際にそうなのかの確認はできていなくてあくまでも聞いた話をあたくしの脳内で統合した話なので念の為)、それによってスイスフラン安を誘導しましょうという荒業にも程があるプレイをしているようですな。

しかしこれってスワップのライン使い切ったら(相手側は兎も角、中銀サイドで無限にカウンターパーティーリスクとるとかさすがに有り得ねえだろと思うのですけど・・・・・)それ以上打てないんじゃネーノとか思うのだが、まあどうなんでしょうかねえ。

ちなみに奮戦の結果はこのようになっておられますが、何せスイスの場合は最も重要なのが対ユーロというなんかあると直ぐゲロゲロマーライオンになる素敵な通貨が対象ですから大変です罠と思いますが、どうせならスイス中銀がイタリアとかスペインとかの国債買えばいいんじゃネーノと思うのですけどどうですかね(棒読み)
http://www.snb.ch/en/iabout/stat/statpub/zidea/id/current_interest_exchange_rates/3


#昨日のセントルイス連銀のネタの続きはどうしたというツッコミはしないように(汗)







2011/08/24

お題「物理的&脳味噌的に寝坊したので雑感雑談と虫干しネタでマジ勘弁」

おじちゃんさっぱりわからんのだが、「長期性の資金の買いも入っています」って説明で「年金資金のリバランス買いがあったようです」って仰せでござんしたけど、年金資金そのものは長期性資金かもしれないけど、リバランスで買いが入ったんだったら株価上昇したらあっさり資金が出るんじゃないのですかねえ>モーサテのコメントの人

#とか何とか言うあたくしもどんだけモーサテLoveなんだか(^^)。

と思ったら今度は「米国2年債と日本の2年債の差が無くなったらもう材料にならない」とか随分とご都合主義にも程がある説明をしている別のコメンテーターが現れておじちゃん脳溢血になりそうです(><;

更にその後ETNの話をしているのだが、「ETNとETFの主な違い」の説明をしているフリップの説明の最後に紙を外して当商品一番肝心のリスク「発行体の信用リスク」の有無を説明するとか、番組のこのコーナーの途中までしか見て無かったら完璧に間違える、っつーか金融商品業者これやったら誤認勧誘扱いされてもおかしくないと思うのであって、リスクの話を説明の途中まで隠すとかありえねええええええええええええええ>モーサテ

#やっぱモーサテLoveですかそうですか^^;


○市場雑談をしたいのだが何が何だかワカランチ会長

昨日「短い所の金利が下がりますた」と書いたのが何かのフラグになったのか存じませんが、昨日は月曜に妙に堅調だった金先が微妙に失速していたのが何でなのかサパーリ判らんざます。まあ月曜に強かったのがイミフだったのでございますけどね。

その一方で昨日は既発の1年TBが業者間で0.10%の出合いがあっただの、3か月の固定オペの応札が前週金曜から大きく減っただのございましたが、何ぼなんでもあーた1年TB0.10%ってなんですかそれという感じでございますけれども、短国買入(基金も含めて)はがっつり入るし、海外要因とかもあるみたいで短国の買いニーズはある中で1年TBって発行がそんなに多くない事もあってちゃっかり強くなっておられるようで誠にアレでございます。

また、固定オペに関してはそもそも月曜に金利入札方式のオペをそこそこ打って(打ったの自体は予想通りのようですが)当座預金残高は30兆円ペースを維持とゆーのも再確認できましたとゆーのもあったりしますので、どこからどこまでが通常の動きの範囲内なのかという評価もこれまた微妙と申しますか、皆さんの資金ポジション状況を見ないと判らんとゆーのもあって、まあ適当に後講釈でこじつけるのは簡単なのですが判断は保留。

・・・・・まあつまりワカランチ会長だということです(結論がねえ)。

長いところでも昨日は昨日で前場は下がりながら超長期確り目だと思ったら後場になると急に超長期がへにゃっとなって引けてみたら先物以降何となくスティープ気味になったりと、まあ後付講釈するのに何がなにやらという素敵な展開が続いている訳ですが、とりあえず「ジャクソンホール待ちで様子見しているのでちょっとしたフローで動いてしまうんですよ」という判ったような判らんような話で済ませるしかございませんなあっはっは。

どんだけバーナンキ講演注目されてますねんという所ですにゃ。


○でまあそのジャクソンホールについて予想にならない雑感

結局何が出る(または出ない)のかは相変わらずさっぱり判らんのですけれども、どうも株式市場とか為替市場とかは「金利をどうする」という話よりも「資産の買入」系の話を求めているっぽいなあというのは何となく取材(?)をしていて把握しました。まあ正直言って過去のアレを散々見ております日本の金利系の人のイメージだと(雨人の金利系の人がどういうイメージ持っているのかは知らんが)今更国債買って量をどうのこうのとかそれって効くのかいなという感じなのですけれども(正直言って30年国債買ったから金利下がるのかよと思うし、後で苦労するだけじゃんと思う)、どうも量の方が判り易いっぽいですな。

ただ意外にQE3が露骨に発動という予想は「物価がこの状況だと厳しいでしょ」とゆー見方みたいなので、コンセンサスとしては「FEDのバランスシートの長期化」なのか「時間軸のコミットメント」あたりのどちらかがメニューの先頭に入って暫くは追加緩和「期待」で引っ張るとかいうみたい(まあ早期にメニューの先頭のモノが実施されるんでしょうけど)ですな。

ただまあ何ですな、為替がドル安に振れた場合って米国の場合足元でヘッドラインの物価が微妙に高めなのと、米国の信認がどうのこうのみたいなネタもあるとかゆーのを考えた場合に、ドル安を手放しで喜んでいられるのかがあたくし的には疑問だったりするんですけどどうでしょ。恐らく現在の米国で景気を下支えさせる為には、バランスシート問題があるから金利ルートでどうこうするよりも、資産価格ルートを使った方が効きが良さそうに思える次第でござんして、株価が変に下がらないようにしながらドルの暴落みたいなのを避ける(米国の場合ドル安だから株買うとかいう話ってあまり無い気がしますし)という感じに持って行きたいのではないかなあとか雑考するのでございました。結局これも結論は無いのだがorz


○超雑談だが

http://www.dic.go.jp/kanzai/sekinin1.html
日本振興銀行の旧役員に対する責任追及訴訟の提起について
平成23年8月23日
預金保険機構

『3.同銀行は、平成19年12月以降、株式会社SFCG(現在破産手続中)から合計17回にわたり総額1705億円に及ぶ大量の貸付債権を額面で買い取りました。これは、SFCGに対する実質的な信用供与であり、同銀行破綻の大きな原因の一つでした。調査の結果、この買取りのうち、平成20年10月及び同年11月の2回にわたる合計460億円の貸付債権の買取りについては、買取対象となる貸付債権自体の価値に大きな問題があったこと、連帯保証人であるSFCGの資金繰りが悪化し、その支払能力が極めて低くなっていたこと、それにもかかわらず大幅な担保不足が生じていたこと、これらの事実が旧役員にも明らかとなっていた中で、旧役員全員が取締役会において賛成して承認決議をし、その結果、買取りが実行され、その後、現に買取債権を回収できずに損害が生じていることなどが判明しました。当機構は、整理回収機構の代理人弁護士とも協議を重ね、この買取りの承認は旧役員の取締役としての善管注意義務に違反する行為であり、これによって生じた損害については、当時の取締役7名に対し、会社法423条1項に基づく賠償責任を問えると判断しました。』

ほほう。

『4.また、木村剛が、同銀行の役員を辞任した昨年5月以降、その近親者らに対し、強制執行の引当てになるはずの自己の責任財産を散逸させていたことも判明しました。当機構は、この点についても整理回収機構の代理人弁護士と協議し、この行為は民法424条に定められた詐害行為に該当し、取消しの対象となるから、近親者らの手に渡った財産を木村剛のもとへ取り戻し、強制執行の引当てにできると判断しました。』

詐害行為取消請求権キタコレ。金貸しの手先をやってた時にはよくこの言葉を使っていましたなあ(遠い目)。

まあ何ですな、こちらの銀行さんは設立当初から「1000万円までは預金保険でカバーされるのがポイントです」(木村氏のブログは惜しくも閉鎖されているので当時の素敵な言葉はどっかのキャシュでも拾ってこないと無い)とか預金保険機構制度にフリーライドする気満々という素晴らしい設立理念をお持ちでございましたので、まあそーゆー意味では悪質性が高いっしょと思うわけでして、どんどんこういう提訴をしていただきたく整理回収機構様および預金保険機構様におかれましては頑張って頂きたいものだと存じます。


○たまたまこんなのを見つけたのだが(セントルイス連銀の「The Regional Economist」より)

http://stlouisfed.org/publications/re/articles/?id=2122
Commodity Price Gains: Speculation vs. Fundamentals
By Brett W. Fawley and Luciana Juvenal

PDF版(出版物版かな?)はこちら
http://stlouisfed.org/publications/pub_assets/pdf/re/2011/c/commodities.pdf

カラー印刷すると見易いのでお勧め。

コモディティー価格上昇に関する一般的な論点について簡潔に整理しているので中々面白かったのですが、何かネタにするタイミングを微妙に逸してしまったので虫干しで引っ張り出してみるのですが、寝坊の為(汗)話は明日に続くのですが、結論の部分からちょっと引用するだよ。

『Are Policy Responses Required in Commodity Markets?』って所から。

『The most important thing to remember with respect to commodity markets is that they are volatile. The traditional decision of central banks to focus on core inflation, which excludes food and energy, is easy to understand in the context of recent movement in rubber markets.』

商品市場は値動きが激しいので、従来は金融政策は「コアインフレ」を注視すべきであるという設定でしたな、ということで、この後2010年にランコルゲしたゴム市場の市況説明があるのですがそこはスルー。

『To try to design policy around commodity prices would require abrupt about-faces and would detract from a central bank's goal of bringing stability to markets.』

ほほう。

『More pertinent questions with respect to commodity markets are:

・Is strong regulation in futures markets needed?
・Are large subsidies on biofuels good policy?
・Should U.S. monetary policy take into consideration global economic conditions?』

ということで、この3点についての話があるのですが、バイオ燃料がどうのこうのとかいきなり言われてもポカーンだと思いますので、その辺は前半を見て味噌と申しますか前半部分の説明を明日簡単に行いますので勘弁という事ですが、上記3点の論点に関して明確な結論が思いっきりあるのは多分最初の1点目でして、これに関してはよく言われますけれども「市場の規制を過度に強化すると却って価格形成の安定化を阻害する事になる」という結論になっていますのでとりあえず今日はそこを引用。

『Some countries, like India, have already begun to regulate commodity futures markets; other countries, including the United States, have debated the issue.』

ということで、投機筋に対する規制の強化という論点はありますねと。

『Both those who believe in a speculative commodity bubble and those who do not can agree that properly functioning commodity futures markets are integral to the real economy because they allow those who do not wish to hold the risk of future price movements to sell that risk to willing parties. The OECD report provides a reminder that index fund investors are an important source of liquidity and of risk absorption for these markets. Pushing such investors out of the market could result in huge costs, which must be weighed against the evidence that their activity is hindering, and not enhancing, the proper functioning of these markets.』

ということで、OECDのレポートを引いて「商品市場でインデックス投資を行う投資家は市場に対して流動性を供給する重要な主体となっている」という点を指摘しまして、「これらの投資家を規制強化によって排除する事は、商品市場の機能を阻害するリスクの方が大きい」という結論になっています。

・・・・・・ってここまで書いて思ったのですが、やっぱり前半部分の説明をしないとこれってなんですかみたいな話になるなあと反省していますので明日は前半部分を引用しようかと(汗)。

まあ本文は5ページ分位でして、そんなに難しい話をしている訳でもございませんので一読推奨でござりまする。基本的には金融政策と商品価格に関する部分では「緩和的な金融政策は商品価格を支持する方向に働く」という話をしてますが、それだけが直接の原因ではないですよね(スペキュレーション的な動きに対して金融緩和が効果を出すのは認めている)という話をしているように読めました。








2011/08/23

お題「市場雑感およびその他雑談/NY連銀ダドリー総裁講演とか」

月曜から「ジャクソンホール待ち」って何か凄い期待だけ盛り上がりそうですな。

○中短期金利が更にフラットというか何と言うか

先週は1年TB入札が0.11%割りやがりましたなあorzとか申し上げておりましたけれども、先週後半からせっせと堅調になる短いゾーンは昨日は更に堅調の図とおなりになったようで、昨日は2年カレントが0.125%に低下してみるわ、1年TBも0.105%よりも低い水準とかになりやがるわと、ますます足元との金利の乖離が無くなるでござるの巻。まあ基金拡大をした時点から1年とかは堅調推移が始まっていましたが、それが先週あたりから2年とか3年とかにも明確に波及して、5年カレントも昨日の引けは0.290%とか0.295%とか貫禄の0.3%割れ。

まあ何ですな、元々向こう1年くらいに出口政策とか到底無理でしょというのは誰が見てもそんな感じですから1年の金利が0.10%に接近しやがるのも仕方ないと言えば仕方ないのですが、一応ターム物としてのリスクプレミアム(金利観とは別にしてもファンディングが続くかとかそういうレベルのリスクプレミアム)がついてもおかしくは無いのですが、そのリスクプレミアムも潰す格好。

バーナンキ議長のジャクソンホールでの講演で示唆されるであろう追加金融緩和のオプションとして超過準備付利の引き下げなどがあってもおかしくないですし、単純な国債買入拡大アゲインで量的緩和レボリューションズというのも情勢的にムツカシヤという事も勘案すると、可能性として超過準備付利に手をつけてくる可能性もある→そうなると日銀が対抗上(ってナンダソリャですが)補完当座預金金利の引き下げをせざるを得ない→ベースが下がるリスクを考えたら1年とか2年とかはヘッジで買うべ買うべ、という風情も感じられて誠に遺憾の極みに存じます次第でございまする(−−;

まー米国様の事はイマイチよーわからんですけど、色々と聞いて回っていると超過準備の金利に手をつけてもクレクレ市場となっている市場様が許さんような感じみたい(あくまでもあたくしが聞いている範囲内の話ですので念の為)でございますし、短期市場があばばばばーになるコストとか考えたらわざわざ市場が許してくれない政策を打ち込むリスクを負う必要もないなとか思いますから優先順位低そうですけど、まあ選択肢限られる中ですからリスクシナリオとして考えておかないといけませんな。

・・・・・・ところで、昨日は金利入札方式のオペを珍しく16000億円もオファーしてきて札割れとなりましたが、応札は12633億円もございまして(エンドは9/12)、ほうほうなるほどとか思ったのですけれども、固定金利オペに関して札がどの位集まるのかを微妙に観察したいもんだと思っております。特に新規で入れてくる6か月ものとかどうなんでしょうかね(ニヤニヤ)。先週金曜の3か月固定とかは足元でややオペが少なめで推移している事もありましたので、応札はそこそこ多くなって按分率低下していましたけれども、オペ参加者がマジベースで補完当座預金金利をいじってくるとか懸念すると応札が極端に減る可能性がある(足元のGCが高いと言うなら別ですが、大体0.1025-0.1050程度で推移しているので、そっちでファンディングを回しても(ただし全部O/N調達とかしてたら今度は金利じゃなくて流動性リスクの問題が生じるのでそこはあまり無茶はできませんが)そんなに食らう訳ではないですから・・・・)のですが、はてさてどうなるのやらという感じです。

ところで「ドル円相場は日米の2年債金利差との相関が」とかドヤ顔で説明する人たちが沢山おいでなのですが、FOMCの声明文が出て米国2年国債利回りは0.20%をちょっと割った水準に低下してそのままずーっと同水準で推移する(0.18%から0.19%近辺で推移中)中で、先週後半以降の日本の2年国債金利は0.145%から0.125%へと低下したのですが、ドル円は別に先週の水準と変わらん、というか金曜とかは円高になっていたのですが、この落とし前はどうつけてくれるのでちゅかねえ〜(^^)。


○ダドリー総裁の講演から少々なのですが

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2011/dud110818.html
The National and Regional Economic Outlook
August 18, 2011
Remarks at the New Jersey Performing Arts Center, Newark, New Jersey

・・・・と思ったら19日にも同じお題で別の場所で講演しているのですが、とりあえず読んだのこっちだったのでこっちから。

前半は全部スルーしまして中盤の『Macro Conditions』からなのですが・・・・・・


・声明文どおりの話をしているのでイマイチオモロクナイ

・・・・・ってオモロクナイなどと申し上げているのは、地区連銀総裁のフリーダム講演で日々楽しんでしまっているからなのですが、「時間軸政策」を真面目に効かせようとした場合には、本来的には連銀各メンバーはこういう感じで声明文どおりの話をするのが基本線で、個人的見解はおまけにつけるというのがあるべき姿という事になろうかと存じますけど、声明文どおりの説明に終始されるとイマイチ面白くないとか思ってしまうのは私だけですかそうですか。

『The statement issued by the Federal Open Market Committee earlier last week presents a sober assessment of the state of the U.S. economy. Economic growth so far in 2011 has been quite a bit slower than we expected earlier in the year. While jobs growth picked up early in the year, in the last few months conditions in the labor market have deteriorated again and the unemployment rate has edged up. Household spending has flattened out, and the housing sector is depressed. Business investment in equipment and software is expanding, but investment in corporate offices and other commercial buildings is weak.』

もうね、最初の一文だけは「先週のFOMCで米国経済のsober assessment(ってのがイマイチわからんのですが、デイリーコンサイスちゃんで引いたら「酔いが覚める」というのと「穏当な」っていうのがあったんですけど。まあ文脈からしてあまり強くないって事だと思いますが)を表明した」ってのがありますが、その後は思いっきり声明文の話してやがりますな。

『Some of the weakness in economic activity in the first half of the year was due to temporary factors such as the hit to household income from higher food and energy prices, and supply chain disruptions following the tragic earthquake in Japan. These restraining forces have abated and thus, we should see stronger growth in the second half. But it is clear that not all of the weakness was due to these one-time factors - and in light of this, I have revised down my expectations for the pace of recovery going forward.』

ということで、声明文ではしらっとだけ書いてありましたが、ここでは最後の一文でダドリー総裁の見解としてより明確に「足元の経済の弱さは一時的要因だけではない事が明らかになったので、私は景気回復ペースの先行き見通しを引き下げた」としていますな。

『On the inflation front, the committee noted that inflation has moderated recently as energy and commodity prices have declined from their peaks-having picked up earlier in the year, mainly reflecting higher prices for commodities and imported goods, as well as the supply disruptions from Japan. Longer term inflation expectations remain stable, and the committee now expects inflation to settle over the coming quarters at levels at or below those consistent with our mandate to promote full employment and price stability. 』

インフレに関しては何か殆ど声明文の話。

『In light of the current outlook, the FOMC in its statement noted that we now anticipate that we are likely to keep short-term interest rates exceptionally low at least through mid-2013.』

で、ガイダンス文言に関しては、ダドリー総裁は「we now anticipate」と説明(声明文では「The Committee currently anticipates」となっています)していまして、「今はこう予想しています」という説明になっていまして、昨日ご紹介したフィッシャー総裁やその前にご紹介したコチャラコタ総裁などは今回のガイダンス文言変更をコミットメントとして捉えているのと対照的であります。

つーか解釈が違う(まあ執行部はその辺を微妙に曖昧にして市場の誤解を放置して緩和効果が出ればラッキー出なければ緩和強化という事なのかも知れませんが・・・・)ってFOMCの時にどんな議論してやがるんだという感じなのですが、それは議事要旨に出ているのかも微妙な希ガス。

『We also discussed the range of policy tools available to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. Further details on the discussion at the meeting will be available when the minutes are published later this month. I will not comment on monetary policy any further today.』

まあさいですな。

『Following the release of the FOMC’s statement, market interest rates generally moved lower, which should help provide some additional support for economic activity and jobs. I would note, however, that conditions remain unsettled and the equity market in particular has been quite volatile recently.』

さっき書いた「市場の誤解を放置して緩和効果」ってのはまあここ見てて思ったんですけどね(^^)。

以下の話もスルーで、まあダドリー総裁は普通に声明文ベースの説明なのでした、というのが結論。


○その他少々雑談というかメモ

・what_a_dudeさんの洋一愛に感動した!

まあ読んで味噌(^^)。
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110822/p1
ただのメモゆえお気になさらず

・これはwwwww

http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201108220092.html
海外から電力輸入を=小沢元環境相
2011年8月22日20時6分

・・・・・えーっと、海外から電力輸入って言いましても電力輸入できると思われる(途中の送電ロスとか大丈夫なのかね、とは思うのだが)隣国全てと領土問題で係争中の日本と地続きで全部友好国の大陸欧州とは話が違うような気がするんだが。

しかし『国と国の間に海底ケーブルを1本引けば全て解決する』(上記記事より)って何か「日銀が復興国債を引き受ければ全て解決する」みたいな物言いと被って見えて実にこう何と申しますか。国家経営はシムシティーじゃないんですけどねえ。

・充実したペーパーが揃っているように見えます

http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps11.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2011年収録分

いつも充実しているのですが、今年はまた題名見ると読みたくなるものが多いのですけれども、いずれ読む所存。









2011/08/22

お題「フィッシャー総裁の追加緩和否定ロジック」

ということで金曜の続きだが金曜の朝読んだのがざっくりにも程があると言う事が判って大汗であるorz

http://www.dallasfed.org/news/speeches/fisher/2011/fs110817.cfm
Connecting the Dots: Texas Employment Growth; a Dissenting Vote; and the Ugly Truth (With Reference to P.G. Wodehouse)
Remarks at the Midland Community Forum
Midland, Texas
August 17, 2011

で、お題はこちらにあるように「テキサス州の雇用に関して」「何故FOMCの決定に反対票を投じたか」という話でありまして、その中身を2行くらいで無理矢理まとめますと、金曜に引用した最後の部分に繋がるのですけれども、「現在は十分な金融緩和を行っており流動性は有り余っている。これを動かすには債務上限を巡る議会の混乱など政治がもたらす不透明性を排除する事が必要」ってな感じであります。

ちなみに「雇用に関して中央銀行の貢献できる余地は限られている」という話は今年の1月にも同じような講演(http://www.dallasfed.org/news/speeches/fisher/2011/fs110112.cfm)をしていまして、この時のお題も『The Limits of Monetary Policy: ‘Monetary Policy Responsibility Cannot Substitute for Government Irresponsibility’』という大概なお題の講演でございまして(以前ネタにしました)、まあ雇用に関してはそのときと似たような話をしています。


○テキサスの雇用に関しては状況説明

前半は雇用に関する話なのですが、例によって例の如く1990年以降の各州の非農業部門における雇用の拡大状況やら業種別の雇用の拡大状況などの話をして、「金融政策が一緒でもこのように状況が違うんです(キリッ)」というのが結論となるのですが、例によってダラス(テキサス)、サンフランシスコ(カリフォルニア)、ニューヨーク(ニューヨーク)の各連銀での雇用データ(うち括弧内の州が大きい)を比較してああでもないこうでも無いという話をしています。講演を印刷するならカラーで出すのが吉かと。

・90年を100とした場合、ダラスは150、サンフランシスコは125、ニューヨークは103と思いっきり差がついている
・テキサスで雇用が拡大しているセクターは、教育およびヘルスケア、企業向けサービス、鉱業となっており、これらは平均賃金も比較的高い
・一方で若年層は平均給与の低いレジャー関連の職についている
・パートタイム労働者のうち最低賃金またはそれ以下で働いている労働者の割合は全米平均よりも高く、多くは移民が多く教育程度の低い国境地域で農業に従事する人たち

てな話をしています。


○で、FOMCに反対した理由に関して

まあ大体さっき申し上げたのが基本的な線になります。

・今回の文言変更は「2年間は利上げを行わないというコミット」との解釈

『Now to the second matter I wish to discuss with you today: my decision to dissent from the commitment of the majority of my colleagues on the FOMC in their decision to hold the base interest rate for interbank lending―the fed funds rate, the anchor of the yield curve―at its current level well into 2013.』

たぶん今日間に合わないのですが(汗)一方でNY連銀のダドリー総裁の講演(というか多分朝食会でのご挨拶みたいな感じ)ではこの辺りについてあくまでも声明文ベースでの話をしていて、「2013年半ばまで低金利を継続する」とは言っていない(現在の状況であれば2013年半ばまで継続すると今は予想する、としか言わない)のでして、そーゆー意味ではコチャラコタ総裁にしてもフィッシャー総裁にしても、今回の文言変更を「コミットメント」として捉えているのがほほーという感じです。

あと、順序がずれますがちょっと後の方でもこういう話をしています。

『I voted against that commitment-cum-signal. In the press’ reporting of my dissenting vote and those of the other two members of the FOMC who voted against that commitment―Mr. Kocherlakota, my counterpart from the Minneapolis Fed, and Mr. Plosser, my counterpart from Philadelphia―there was substantial speculation as to the reasons for our dissent. I will let my other two colleagues speak for themselves; I can only speak for myself. Let me make clear why I was opposed to freezing the fed funds rate for two years. 』

ということで、思いっきり「コミットメント」としての解釈になっていますわな。


・流動性は既に十分に供給されているというのが一つの理由

さっき引用した奴の前半の方の続きになります。

『I have posited both within the FOMC and publicly for some time that there is abundant liquidity available to finance economic expansion and job creation in America. The banking system is awash with liquidity. It is a rare day when the discount windows―the lending facilities of the 12 Federal Reserve banks―experience significant activity. Domestic banks are flush; they have on deposit at the 12 Federal Reserve banks some $1.6 trillion in excess reserves, earning a mere 25 basis points―a quarter of 1 percent per annum―rather than earning significantly higher interest rates from making loans to operating businesses. These excess bank reserves are waiting on the sidelines to be lent to businesses. Nondepository financial firms-private equity funds and the like―have substantial amounts of investable cash at their disposal. U.S. corporations are sitting on an abundance of cash―some estimate excess working capital on publicly traded corporations’ books exceeds $1 trillion―well above their working capital needs. Nonpublicly held businesses that are creditworthy have increasing access to bank credit at historically low nominal rates.』

まあうじゃらうじゃらと書いてありますが、要するに「既に流動性はたんまりあります。何せ最近はディスカウントウィンドウの利用も少ない位です。銀行は貸出をしないで0.25%ぽっちの超過準備に資金を積み上げている状態で、資金は動かないまま眠っています」というような話をしております。

『I have said many times that through the initiatives we took to counter the crisis of 2008-09, and the dramatic extension of the balance sheet that ensued, the Fed has refilled the tanks needed to fuel economic expansion and domestic job creation. Though I questioned the efficacy of the expansion of our balance sheet through the purchase of Treasury securities known as “QE2,” I have come to expect that the Federal Open Market Committee would continue to anchor the base lending rate at current levels and also maintain our abnormally large balance sheet, now with footings of almost $2.9 trillion, for “an extended period.”』

2008年の危機以降色々とやったという話をしつつ、しらっと「QE2の効果については未だに疑問がある」というのが入っているのがチャーミング。で、さっき引用した「コミットメントがどうのこうの」という部分になります。


・近い時期でのインフレは懸念していない

というのは金曜に引用しましたが、「よく私はインフレタカ派と言われますけれども、特に現状ではインフレを懸念していません」という話をしている部分では、金曜にちょっと誤訳してた部分がありまして、川上の価格転嫁の問題に関しては「価格転嫁が進んでも弱い需要が結局物価の上昇を抑えるでしょう」と想定しています。引用割愛。


・懸念は現在眠っている流動性のトランスミッションメカニズムとな

『My concern is with the transmission mechanism for activating the use of the liquidity we have created, which remains on the sidelines of the economy. I posit that nonmonetary factors, not monetary policy, are retarding the willingness and ability of job creators to put to work the liquidity that we have provided.』

現在大量に流動性が眠っているのは金融政策の為ではなく、金融政策以外のファクターによるものであるという話なので、よーするに「流動性を沢山出していて効いていないのは金融政策のせいではありません」という話ですから、これって「金融政策で出来る事は限界があります」という話をしているのと同じですわな。


・以下政治に対する悪態が続きます

非常に簡単にまとめてしまいますと、「債務上限問題など、将来の財政政策や規制などに関して政治が無駄に揉めまくっている事から、民間が先行きに対する不安を持つようになり、その結果として投資意欲を削ぎ、中央銀行の潤沢に供給している流動性が使われる事無く眠っているんですよ政治は何をやってるんですか」という事なのですが、折角ですので引用だけします。

『I have spoken to this many times in public. Those with the capacity to hire American workers―small businesses as well as large, publicly traded or private―are immobilized. Not because they lack entrepreneurial zeal or do not wish to grow; not because they can’t access cheap and available credit. Rather, they simply cannot budget or manage for the uncertainty of fiscal and regulatory policy. In an environment where they are already uncertain of potential growth in demand for their goods and services and have yet to see a significant pickup in top-line revenue, there is palpable angst surrounding the cost of doing business. According to my business contacts, the opera buffa of the debt ceiling negotiations compounded this uncertainty, leaving business decisionmakers frozen in their tracks.』

ただでなくさえ景気回復の力強さに関して確信が持てず、企業のマージン確保のためにはコスト引き下げや稼働率上昇で対応しているという中で、政治が混乱して先行きの財政政策などへの不安がある中で企業が積極的な行動に出る訳ないですがな、とか何とか言ってます。

で、更に悪態が続くのですが引用すると長くなるので、その悪態の結論。

『Moreover, you might now say to yourself, “I understand from the Federal Reserve that I don’t have to worry about the cost of borrowing for another two years. Given that I don’t know how I am going to be hit by whatever new initiatives the Congress will come up with, but I do know that credit will remain cheap through the next election, what incentive do I have to invest and expand now? Why shouldn’t I wait until the sky is clear?”』

何かやや極端な気もするのだが、まあこーゆー感じです(^^)。


・中央銀行が財政のお助けをするようになるという認識への懸念

で、悪態で話が終わりかと思いますと、最後の方にお洒落な論点が2つ。

『No amount of monetary accommodation can substitute for that needed clarity. In fact, it can only make it worse if business comes to suspect that the central bank is laying the groundwork for eventually inflating our way out of our fiscal predicament rather than staying above the political fray-thus creating another tranche of uncertainty.』

金融緩和の量を拡大しても現在必要とされている不確実性の解消には繋がらない。そして、もし中央銀行が財政の危機に際して常に通貨を拡大させるという認識を企業などにもたれるようになった場合、別の意味での不確実性が生じるとか何とか仰せのようで。


・バーナンキプットという認識を持たれてはいけない

この部分の最後の締めが「バーナンキプットは甘え」というベンダーにも出ていた部分で、金曜にこの部分スルーしたのはつうこんのいちげきでありました(汗)。

『In the interest of full disclosure, I should add that I was also concerned that just by tweaking the language the way the committee did, our action might be interpreted as encouraging the view that there is an FOMC so-called “Bernanke put” that would be too easily activated in response to a reversal in the financial markets.』

FOMCが金融市場のクレクレ攻撃に対して簡単に緩和を行うという風に見られるのはイクナイ。

『For those of you unfamiliar with the expression “Bernanke put,” or more generally, a “central bank put,” this term refers to the concept that a central bank will allow the stock market to rise significantly without tightening monetary policy, but will ease monetary policy whenever there is a stock market “correction.”』

キタコレ。わざわざバーナンキプットの解説までしてくれていますが(^^)、株式市場が下がった場合には中銀が緩和政策を行い、上昇しても中銀の引き締めが無い、という認識が所謂「中央銀行のプットオプション」というものですとご丁寧な解説。

『Given the extent of the drop in the stock market leading up to and following Standard & Poor’s downgrade of U.S. debt, combined with the FOMC’s commitment to hold short-term rates near zero until mid-year 2013, some cynical observers might interpret such a policy action as a “Bernanke put.”』

ここでは「some cynical observers」と一応控えめに言ってますけど、どう見てもフィッシャーさんは「多くの人がそう思うようになるのはケシカラン」と言いたそう(^^)。

『My long-standing belief is that the Federal Reserve should never enact such asymmetric policies to protect stock market traders and investors. I believe my FOMC colleagues share this view. 』

FRBは株式市場のトレーダーや投資家を救済する為にパーナンキプットといわれるような政策を実施すべきではないとかもうキタコレって感じです。


○あとはまあ大体スルー

『Connecting the Dots』ってのが次のお題で、『Now, how do you connect the dots between Texas’ record of economic growth and my dissenting vote?』という話なのですが華麗にスルー。

まあ端的に言ってしまうと、全米の中でも大きな3つの州を抱える連銀の雇用におけるデータを見て判りますように、金融政策だけではなく財政政策や規制緩和などが経済にとって重要であり、現在の財政上限問題を巡る政治の対立に示されている不確実性を除去するのが大事ですよってな話をしてますわな。で、そうなるべきだという話をした最後の部分だけ引用。

『The sooner they get on it, the better. Uncertainty is corrosive; it is hurting job creation and capital expansion when we need it most. As Margaret Thatcher would say: “Don’t dawdle. And don’t go wobbly on us, Congress.” Monetary policy cannot substitute for what you must get on with doing. Get on with your job.』

で、最後に「醜い真実」というお題のところですが、金曜に引用しましたけど再掲。

『I think I have made it pretty clear today that I believe what is restraining our economy is not monetary policy but fiscal misfeasance in Washington. We elect our national leaders to safeguard our country. An integral part of that consists of safeguarding the nation’s fiscal probity. Pointing fingers at the Fed only diminishes credibility―the ugly truth is that the problem lies not with monetary policy but in the need to construct a modern, appropriate set of fiscal and regulatory levers and pulleys to better incentivize the private sector to channel money into productive use in expanding our economy and enriching our people. Only Congress, working together with the president, has the power to write the rules and provide the incentives to correct the course of the great ship we know and love as America. I hope you, as the voters who put them in office, will demand no less of them.』

というころで、ここからの金融緩和政策には限界がありますというのが「醜い真実」のようです。










2011/08/19

お題「まあ今日も雑談シリーズである」

モーサテの兄ちゃん、NY連銀総裁に突撃ぶら下がり取材敢行してたみたいだけどそれって米国の連銀に対する取材ルール的に大丈夫なの????という話は本石町日記さんに聞けばよいのでせうか(^^)。


○何か知らんが盛り上がってまいりました!

昨日は日本の10年国債が引けで遂に1%割れとなりやがりまして、いやまあ一昨日辺りから米債とか華麗にフラットニングしだしたのと、盆休み明けで投資家の動意でも出たのか(それはこじつけ^^)、それとも利食い売りの玉が尽きたのか(とも思えんが)まあついこの前まで重いですねえとか言ってた1%を割りましたなあ・・・・・

という話でも今朝は話の頭にしようかと思ってたのですが、夕方になったら欧州で株が激下げして債券が強くなってきてありゃりゃとか思っていましたら朝になってみたらこの有様ですわよ奥様。

http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

NYダウ 工業株30種 10,990.58 -419.63
S&P 500種 1,140.65 -53.24
ナスダック 総合指数 2,380.43 -131.05

米国10年国債 2.073 -0.092
米国30年国債 3.432 -0.131

(今朝6時前の数字ですが上記URLの数字は随時更新されますので念の為)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=atwnIpe0uulo
米国債:大幅上昇、利回り過去最低更新−世界的な成長懸念で安全逃避

『ニューヨーク時間午後2時24分現在、ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによると、10年債利回りは7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げて2.10%。同年債(表面利率2.125%、償還期限2021年8月)価格は19/32上昇して100 7/32。利回りは一時、過去最低の1.9735%を記録した。2%を下回ったのは初めてだった。』(上記URLより)

ということで、人が寝苦しい夜を過ごしているうちにあばばばばーな相場になっておられてようで誠に遺憾極まりないのですが、そのご0.1%戻った方の理由も気になる所(CPIのせい??)ではございますがまあそういうのは詳しい人に教えてもらわないとワカランチ会長(ベンダーの後講釈は正直当てにならん)なのでございますので判断保留。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aR36eJebnim8
米国株:急落、ダウ平均419ドル安−経済や欧州銀の資金繰りを懸念

『8月18日(ブルームバーグ):米株式相場は急落。ダウ工業株30種平均は今月に入って4度目となる400ドルを超える値下がり。世界経済が減速しているとの懸念や欧州の銀行が十分な資本を確保していないとの不安が強まった。』(上記URLより)

まあ後講釈する方も大変なんだろうなあという相場展開なんだろうなあという感じだと思われますが、まあ困ったときのリスクオフってことで後講釈するしかないのかしらねえという所で。


んでまあ一方で
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a0C1ybbAjus8
米消費者物価指数:7月は前月比0.5%上昇、4カ月ぶり高い伸び(1)

とか中々お洒落な展開にもなっておりまして、そらまあこうなってくると市場がクレクレ言ってもQE2第2弾(変なの^^)のようなQE3をやるというのが難しいのではないかとゆー認識はさすがの雨公でも感じているのかねとゆー所でござんして、ブルームバーグやロイターの相場後講釈にはその話無いけどモーサテはんの相場後講釈によるとQE3の実施が難しいとの見方で株式市場が失望売りみたいな話をしてます(米債もイントラデイでピークから金利上昇してるし何となくそういうのもあるのかね、よー知らんが)けど、はてさてどういう事になるんでしょうかねという所で。


○フィッシャー総裁の講演をほんの一部だけ拾って読んでみる(詳しくは来週)

昨日引用した地区連銀総裁発言関連ニュースのまとめニュースが。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ajTiqbkyUoSc
フィラデルフィア、ダラス連銀総裁:金融政策は株価浮揚を目指さない

題名にワロタ。まあクレクレ相場に一々対応していますと、アラン・ブラインダーFRB元副議長が指摘した「自分の尾を追う犬」状態になってしまい、プリエンティブに対応している積りの金融政策が単に経済のボラティリティーを高めるだけだという残念な事になる、というのもまあ判るんですけど、そうは言いましてもCPIが微妙に堅調な中では株式市場チャネルを使って緩和効果を出すのが一番安全っぽいイメージがあるんですけどどうなんでしょうね。

でまあプロッサー総裁の発言は惜しくもフィラデルフィア連銀のサイトを見ても掲載されていないのが遺憾でございますが、フィッシャー総裁の講演はダラス連銀のサイトに絶賛掲載中。

http://www.dallasfed.org/news/speeches/fisher/2011/fs110817.cfm
Connecting the Dots: Texas Employment Growth; a Dissenting Vote;
and the Ugly Truth (With Reference to P.G. Wodehouse)

Remarks at the Midland Community Forum
Midland, Texas
August 17, 2011

まあ詳しくは例によって週末に読む所存ではございますが、FOMCに反対票を投じました(キリッ)という辺りから少々。講演テキストの真ん中辺りにある小見出し『FOMC Decision』から先を読めばヨロシアル。その途中辺りから。

『I do not believe it wise to commit to more than that, or to signal further accommodation, when the cheap and abundant liquidity we have made available is presently lying fallow, and when the velocity of money remains so subdued as to be practically comatose. At the FOMC meeting, the committee announced that it “currently anticipates that economic conditions … are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.” In monetary parlance, that is language designed to signal that we are on hold until then. 』

『I voted against that commitment-cum-signal. In the press’ reporting of my dissenting vote and those of the other two members of the FOMC who voted against that commitment―Mr. Kocherlakota, my counterpart from the Minneapolis Fed, and Mr. Plosser, my counterpart from Philadelphia―there was substantial speculation as to the reasons for our dissent. I will let my other two colleagues speak for themselves; I can only speak for myself. Let me make clear why I was opposed to freezing the fed funds rate for two years.』

ということで、以下今回の反対理由の説明が。

『First, in reporting my views to the committee, I noted my concern for the fragility of the U.S. economy and weak job creation. It might be noted by the press here today that although I am constantly preoccupied with price stability―in the aviary of central bankers, I am known as a “hawk” on inflation―I did not voice concern for the prospect of inflationary pressures in the foreseeable future. Indeed, the Dallas Fed’s trimmed mean analysis of the inflationary developments in June indicated that the trimmed mean PCE turned in its softest reading of the year. The trimmed mean analysis we do at the Dallas Fed focuses on the price movements of personal consumption expenditures. It is an analysis that tracks the price movements of 178 items that people actually buy, such as beer, haircuts, shoe repair, food and energy prices. In June, the trimmed mean came in at an annualized rate of 1.3 percent, versus 2.1 percent for the first five months of the year. The 12-month rate was 1.5 percent.』

おまいら俺様の事を「インフレタカ派」とか抜かしやがるが、俺様は別にそんなに直ぐにインフレが来るとか懸念してる訳じゃねえよダラス連銀の出してる物価統計見やがれコノヤロー、と仰せのようです。

『My concern is not with immediate inflationary pressures. Core producer prices are still increasing at a higher than desirable rate. But I have suggested to my colleagues that while many companies have begun and will likely continue to raise prices to counter rising costs that derive from a range of factors-including the run-up of commodity prices in 2010 and increases in the costs of production in China-weak demand is beginning to temper the ability of providers of goods and services to significantly raise prices to consumers. 』

ただ、直ぐに来るインフレへの懸念というのは無いものの、企業の川上物価上昇の価格転嫁の動きが見られだしており、その持続性に関しては懸念しているようで。

『My concern is with the transmission mechanism for activating the use of the liquidity we have created, which remains on the sidelines of the economy. I posit that nonmonetary factors, not monetary policy, are retarding the willingness and ability of job creators to put to work the liquidity that we have provided.』

つーことで、それよりもそもそもの金融政策、というかFEDが供給している流動性についてどのように効いているのか(特に雇用について)についての懸念があるというような話になっているような気がするんだが、何かそれってまたちゃぶ台ひっくりかえしみたいな話ではございますな。

あ、それからさっき引用した最初の所でスルーしちゃいましたが、たぶんフィッシャーさんは「既に現在十分な緩和をおこなっているので追加での緩和や流動性供給の示唆や実施は必要ない」というスタンスのようですな。

で、この後その「雇用の創出に関して」みたいな話を延々としているのですが、読んでる時間が無いので最後の『The Ugly Truth』という小見出しの所から。

『I think I have made it pretty clear today that I believe what is restraining our economy is not monetary policy but fiscal misfeasance in Washington.』

ちょwwwwwテラフリーダムwwwwww

『We elect our national leaders to safeguard our country. An integral part of that consists of safeguarding the nation’s fiscal probity. Pointing fingers at the Fed only diminishes credibility―the ugly truth is that the problem lies not with monetary policy but in the need to construct a modern, appropriate set of fiscal and regulatory levers and pulleys to better incentivize the private sector to channel money into productive use in expanding our economy and enriching our people.』

いやまあそれはそうなんですが一応デュアルマンデートというのもある訳ですが先生。

『Only Congress, working together with the president, has the power to write the rules and provide the incentives to correct the course of the great ship we know and love as America. I hope you, as the voters who put them in office, will demand no less of them.』

まあ正論なのだが日銀が同じような事言ったら政治家が憤死しそうな話を地区連銀総裁が堂々とできるというのは米国の良いところですなあ。

つーことで、フィッシャー総裁はデュアルマンデートのうち物価重視派である、というのは前からそうですなという認識はございましたが、更にその確認が出来ましたという感じです。


一方、ダドリー先生が講演をしていましたが、これは1行も読んでいないのでURLだけ貼り付けて週末読む(宿題が大杉勝男なんですけど)。

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2011/dud110818.html
The National and Regional Economic Outlook

August 18, 2011
William C. Dudley, President and Chief Executive
Remarks at the New Jersey Performing Arts Center, Newark, New Jersey


○とか何とかやってたら時間が無くなったのですが関連雑談

・QE3って本当に難しいか????

・・・・・いやまあ確かに難しいには難しいと思います。何せ評判悪いし、今現在の足元で起きていることだけで結論をつけたら(その行為は勿論正しくないのだが政治的にどうよという話になるとどうしてもそうならざるを得ませんからねえ)「物価は上昇したけれども景気は良くならなくて結局何の為にやったのかイミワカンネ」という風に言われそうな状態で、そんな中でQE2のおかわりというのはムツカシカロ。

しかしですな、ここでQE1再来という技も残っているのでありまして、つまり金融市場に何らかのストレスが掛かってクレジットスプレッドやリスクプレミアムに変調が生じて経済に悪影響を与える、というような展開になった場合には、「金融市場の混乱を回避する」という大義名分が出来るのでQE1というか信用緩和というかな資産買入は出来るかなとは思うのでありまして、まあそっちの可能性はあるなと。

もちろん金利コースというのもあるのでしょうが、超過準備(でしたっけ)の付利金利を下げると米国の場合MMFが壊滅するという問題がありますが、まあこれってその壊滅した瞬間さえ耐えれば別の秩序が発生するから大丈夫とも言えるので、選択肢としては有るとは思いますが、そもそもそれだけのコスト(短期市場が壊滅するコストと壊滅する間に起きるコンフリクトの可能性というリスク)を掛けて実施してなんぼ経済に効きますねんというのがありますわなというのがある。

更にツイストオペで長期金利下げてどうのこうのというのもありますが、そもそも論として金融緩和政策が経済に効くのであれば、長期金利は自然に上昇する(短期金利に引き下げ余地が殆ど無い状態では特に)筈でして、そーゆー観点からすると「長期金利を力技で下げる」という行動はそもそもその行動自体に矛盾が生じているがなという所ですな。

いやまあ金融市場に何らかのストレスが掛かってリスクオフモードになっている結果として長期金利に無駄にリスクプレミアムが乗りまくっているとかいう時は意味があるかもしれない(ストレスの原因が財政懸念だと長期債買入は財政マネタイズと言われて更に火をつける可能性がありますが^^)けど、まあこれは結局政策をどういう風にやるのかも難しい(単にツイストなら簡単だが、どの位やるのかとか政策効果をどう計測するのかとか出口をどこで判断するのかとかは難しいでしょ)と思いますし、目くらまし以上の効果は中々期待できないような希ガス。

・・・・・・と考えると、そもそも来週のジャクソンホール(最初この「ジャクソンホール」をジャクソン5のコンサートホールか何かだと思っていましたすいませんすいません)の講演で何の話をするのかもこれがまた読みにくいですなあと思うわけで、まあ本命は来週金曜(の日本時間では夜なので結局真面目に読むのは土曜日になるが)というところでございますな。


・オペ雑談メモ

時間が無いので単にメモ。

昨日の金利入札オペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110818.htm

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110818.htm

9月20日足なんて微妙に長い上に、このオペのロールは無いのが確定(国債償還要因で財政の大幅払い超が確定している日なので)しているのに14000億円のオファーに対して15762億円の応札とはテラ応札大須ういろうでございますな、うんうん。

その意味についての後講釈をする時間は無いですし内容も別にマニアネタなので以下割愛。







2011/08/18

お題「国内ネタが無いのでせっせと海外ネタ拾いに出稼ぎシリーズ」

まあ何ですな、米債10年の5毛程度の動きは最近は誤差状態なので無理して後付解説をせんでも良さそうな気がしますな、と暑さですっかり頭が沸いているあたくしorz

○経済のダウンサイドリスクを強調でついに利上げ主張者0名へ(BOEネタ)

7月の議事要旨ネタをやったばかりでございますが、昨日は8月の英国中銀MPC議事要旨が出たので今回は早速ネタにしますが、当然ながら慌てて見ただけでして、そういう時のお約束であたくし昨日も申し上げたように『The immediate policy decision』を斜め読みしただけだわさ。

第31パラグラフ。

『The Committee set monetary policy in order to meet the inflation target in the medium term. Inflation had been well above the 2% target as a result of the temporary impact of higher energy and other commodity prices, the increase in the standard rate of VAT and the past depreciation of sterling.』

この辺の認識は毎月同じなのである。

『CPI inflation had fallen in June, but it was judged likely to rise again temporarily, to reach 5% in the coming months, boosted by further increases in utility prices.』

英国の場合は今年に入ってから電力などの公共料金が軒並み上昇したんでしたっけ。

『The Committee’s central view remained that inflation was likely to fall back in the medium term, as the impact of the factors raising inflation diminished and some downward pressure from a degree of slack in the labour market persisted. There were risks to that view, to the upside and the downside.』

とまあここの認識に関しては前月(って昨日引用しましたが、汗)と同じような書きっぷりではあるのですが。

第32パラグラフ。

『The key upside risk continued to be that inflation would be elevated for longer than the Committee expected. That could be as a result of expectations of above-target inflation becoming embedded in wage and price-setting behaviour; the margin of spare capacity in the economy being less than currently thought; or of further shocks to the price level.』

7月の議事要旨では物価のダウンサイドリスクの方が先に書いてあったのですが、今回はアップサイドリスクが先に書いてあります。

じゃあアップサイド警戒になったのかと申しますと、今回に関してはこの後物価のダウンサイドリスクというよりは経済に関するダウンサイドリスクの話が延々と続くという構成になっていますので、まあ構成上こうなっただけのような気がします。

『Wage growth remained subdued, which suggested that employees had not so far been able to secure higher pay increases in response to the recent squeeze on real incomes. Some measures of the longer-term inflation expectations of households had risen over the past year. But longer-term expectations of professional forecasters and financial market participants had been broadly stable. Overall, most indicators remained close to their series averages.』

物価上昇による実質賃金の低下に対応した名目賃金引き上げの動きは今の所あまり見られず、一部のサーベイによると家計の長期的なインフレ期待が上昇しているものの、その他のデータから見ると長期的なインフレ期待は概ね安定しているとのことで。

『Nevertheless, CPI inflation was expected to reach 5% in the coming months, and it was unclear how medium-term inflation expectations would react. Margin levels in consumer-facing sectors probably remained below their pre-recession levels, and any attempt by those firms to rebuild their margins could put upward pressure on inflation.』

消費者向けのセクターにおける企業の設定するマージン率がリセッション前の水準から見ると低いが、このマージンレベルを回復させようとする動きが起きた場合にはインフレへの引き上げ圧力になり得る、という話ですが、恐らく本論の方ではその辺りに関する話が指摘されていると見た(って読めよお前というツッコミはしないように)。

『The indications that the pace of global growth was moderating suggested that energy and other commodity prices were less likely to continue rising. Import price pass-through from sterling’s past depreciation appeared to be more or less complete, although the possibility of further pass-through could not be excluded.』

一方で世界経済の成長鈍化によって(英国物価上昇の一翼を担っている)エネルギーおよびその他国際商品価格の上昇の持続性は失われる可能性が高く、というのは判るのですが、相変わらずジョンブル野郎の英語はよく判らんのは次の文章でして、まあ物価認識に関する本論を読めばたぶんこの点について書いてあるからそこ読めば意味が判ると思う(のでまあ後で読むが)のですが、輸入物価のポンド安による影響(価格転嫁)については結局どっちを言いたいのかワカランチ会長でありましたすいませんすいません。何か「どの位影響してくるかは微妙」と言ってるような気がするが(涙)。

てな訳で、今回はまたまた物価のアップサイドリスクの話が妙に記述が長くなっているでござるの巻(前回12行、今回15行^^)。


・・・・・ではあるのですが、この後のダウンサイドリスクの話が「経済のダウンサイド」の話が入ってパラグラフが3つも入るというおそロシアな展開に(^^)。つーことで第33パラグラフ。

『The key risk to the downside remained that demand growth would not be sufficiently strong to absorb the pool of spare capacity in the economy, causing inflation to fall materially below target in the medium term. News over the month had generally reinforced the weak tone of indicators of global activity growth over the past few months, which had been particularly notable in data releases for the advanced economies. While some of the slowing would have reflected the impact of continuing disruption to global supply chains, and the effects of the elevated price of oil, the Committee judged it increasingly likely that the global slowdown would prove to be more prolonged than previously assumed.』

ということで、物価のダウンサイドの方でも「世界的な景気減速が従来想定していたよりも継続しそうである」という話をしているのですが、この先が今回新たに出ている「経済のダウンサイドリスク」ということで第34パラグラフ。

『In the United Kingdom, it was likely that underlying growth in the second quarter had been stronger than suggested by the headline number for GDP, but indicators of the evolution of activity in the near term had been subdued, especially for consumption and in the manufacturing sector.』

先行きの経済活動が抑制されそうキタコレ。

『Much of the moderation in UK manufacturing output appeared to be related to the slowdown in world activity, and the consequent implications for export orders. Business confidence had fallen, and appeared to be weighing on investment intentions, and perhaps also on employment growth.』

ここぞとばかりに残念な見通しが。

『The lower path for Bank Rate now implied by market interest rates would serve partly to offset this weaker outlook. Evidence of slowing activity, and more particularly concerns about fiscal policy in the United States and the substantial challenges faced by the euro area, had resulted in stressed conditions in financial markets which were reflected in a wide range of asset classes. This had further elevated the funding costs faced by banks. If stress in financial markets persisted, it also had the potential to constrain banks’ ability to raise as much term funding as they desired. In consequence, the price and availability of credit to many households and businesses could be adversely affected.』

何か景気に良い話ってBOEの政策金利引き上げ見通しが遠のいたことによる景気の刺激の話だけで、米国の財政政策に関する懸念による経済活動の低下とか、ユーロ圏の金融市場におけるストレスの問題とか、それによって発生する英国の金融環境の悪化とか、ろくでもない見通しが並ぶ並ぶ。で、次の第35パラグラフ。

『The greatest risk to the downside stemmed from the euro area.』

”The greatest risk”キタコレ。

『Concerns about the euro area were likely already to be affecting the economic outlook through their impact on asset prices, bank funding costs and the level of household and business confidence. Reflecting that, the Committee’s projections were conditioned on relatively slow growth in the euro area. There were, however, additional risks relating to a significant further intensification of concerns.』

つーことでユーロ圏の問題が最大のリスクなのですが。

『These could affect the United Kingdom through a number of channels, including: the impact a further slowing in euro-area activity would have on UK exports; financial and banking sector interlinkages; and possibly, and perhaps most significantly, through a disruption to the functioning of the international financial system more generally - hitting global asset prices, wholesale funding markets, and business and household confidence.』

ということで、英国経済に色々なチャネルで悪影響を与えるという話ですが、特に懸念しているのが国際的な金融市場の機能低下によって発生するであろう世界的な資産価格の下落やら短期金融市場でのファンディングへの悪影響や、コンフィデンスの悪化などを懸念と、まあ思いっきり懸念していますわな。

『Those additional risks were almost impossible to calibrate in terms of their probability or impact. Members of the Committee held differing views about the extent to which those risks should influence the Committee’s immediate policy decision. On balance, most members saw little merit in seeking to react to the possibility of these risks crystallising by adjusting monetary policy in advance.』

ただまあ現状ではこれらのリスクの顕在化に先駆けて追加的な措置を行うメリットは多くの委員はまだ見ていないということではございます。

つーことで第36パラグラフ。

『There remained substantial risks to inflation in the medium term in both directions. But overall the news on the month had increased the downside risks. Committee members considered the cases for different policy actions.』

ということで、今回ダウンサイドリスクが拡大したという話になっていますが、しかしこれって物価のダウンサイドというよりは経済のダウンサイドじゃネーノ(物価のアップサイドの話もそれなりに充実してやがるし)という気もせんでもない。

てな流れになりまして、今回は「利上げ提案」の2名は提案を引っ込めるでござるの巻となった、という事でございますが、長くなってきたのでとりあえず後は議事要旨読んでちょとゆーことで(手抜き)。


○スイスにも出稼ぎでござる

更にリザーブターゲットを拡大するSNB
http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20110817/source/pre_20110817.en.pdf
Swiss National Bank intensifies measures against strong Swiss franc

『The measures taken thus far by the Swiss National Bank (SNB) against the strength of the Swiss franc are having an impact. Nevertheless, the Swiss franc remains massively overvalued. The SNB has therefore decided to expand again significantly the supply of liquidity to the Swiss franc money market.』

いやあの追加でどんどんおかわりをしているというのは「インパクトがあった」という話なのかというツッコミをしたくなるがまあ大人の対応で黙っておこう。

『In so doing, it is increasing the downward pressure on money market interest rates with a view to further weakening the Swiss franc exchange rate. With immediate effect, it aims to expand banks’ sight deposits at the SNB further, from CHF 120 billion to CHF 200 billion. In order to achieve this new target level as quickly as possible, it will continue to repurchase outstanding SNB Bills and to employ foreign exchange swaps. Furthermore, the SNB reiterates that it will, if necessary, take further
measures against the strength of the Swiss franc.』

まあ頑張ってくださいという感じですが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=akAUdTVs3J5M
NY外為:フラン反発、中銀のペッグ導入観測は肩すかし−ドルは下落

まあペッグ導入するったって口で言うのと実際にそれを実務に落とし込むのとの間にはかなり越え難い壁があると思うのでござんして、それを求めてクレクレ市場になる為替市場もテラヒドスという感じではあります。


○米国では地区連銀総裁がフリーダム発言を早速開始しております!!!!

先日コチャラコタ総裁の異例というか型破りというか横車な「ボクが決定に反対した理由を勝手に発言するお」攻撃があったばかりですが、ちょっとベンダーを見ると素敵な展開になっておられるようで、実に胸の熱くなる展開でございます。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=amtWbEla3mY4
ブラード総裁:低金利継続は新たな国債購入のシグナルではない(1)

『8月16日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は米連邦準備制度理事会(FRB)が少なくとも2013年半ばまで低金利を維持すると約束したことは、新たな国債購入のシグナルとみなされるべきではないとの見解を明らかにした。』(上記URLより)


http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aum7HoDnzbLY
ダラス連銀総裁:FRBに株トレーダーを損失から保護する必要はない

『8月17日(ブルームバーグ):ダラス連銀のフィッシャー総裁は、米株式相場が大幅に下落したからといってそのたびに金融政策を緩和するべきではないと述べ、こうした行動がトレーダーの目には「バーナンキ・プット」と映る可能性があると警告した。』(上記URLより)


http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aj.ytLAGWoJo
フィラデルフィア連銀総裁:13年半ばより前に利上げ必要となる公算

『8月17日(ブルームバーグ):米フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は、米連邦公開市場委員会(FOMC)は恐らく2013年半ばより前に利上げを実施する必要があるとの見解を示した。また政策当局者は過去最低水準の政策金利を2年間維持するとの方針を明示する前に、経済情勢を見守るべきだったと指摘した。』(上記URLより)


・・・・・さあ盛り上がって参りました!!!!!

フィッシャーさんとプロッサーさんはコチャラコタ総裁と同様に反対票突っ込んだ3人なのでございますので、まあこういう話をするのは当たり前ちゃあ当たり前なのですし、ブラード総裁は昨年QE2(というか国債買入というか)実施の必要性を唱えた自身のペーパーで「物価がディスインフレ状態になった時に低金利政策を長期間にわたって継続する事は経済をデフレ均衡の状態に遷移させるリスクがある」と主張していたひとで、あまり低金利コミットメント的な政策に与しなさそうな人ではあるのですが、まあこういう感じで反対の人がフリーダム発言をすると、コミットメントを伴わない「時間軸もどき」政策は、景気あるいは物価情勢がちょっと好転しただけでその時間軸もどきが崩壊して中短期債市場が盛大なゲロゲロマーライン相場になるリスクを更に高めるという感じだというのはニポーンの皆様は2003年で経験済みでございますのでメイクセンスすると思いますが、雨人たちは初のケースですので「2年間ゼロ金利ヒャッハー」とやった後に全員でマーライオンとかやりそうで今から楽しみに待っております(^^)。


○人のふんどしシリーズ

what_a_dudeさんとこの最新エントリーを(毎度毎度ネタにさせて頂き恐縮です)見ながら雑感。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110817
2011-08-17
壊れたレコードのようにマネタリーベースの話を続ける俺

『要はマネタリーベースを増加させていくと、市中に資金が流れだすわけですが、資金需要を食ってしまった時点でいくら増やしてもほとんど効果がない、ということだと思うのですよ。』(上記エントリーより)

・・・・・直感的にしか判らん(数学とか統計とか苦手なあたくしは共通一次試験でも数学で確率の問題で失点しましたorz)ですが、あたくしもそんな感じがするなあとは思うのでして、そうなりますと「どうやって実体経済に資金を流せるか」というのを金融政策として考える、というのがゼロ金利制約があって資金需要を食った所での工夫、という事になるのかとふと思ったざんす。

まあ日銀もそんなことは百もご承知で「成長基盤強化オペ」とかを実施していると思うのですけれども、そーゆー文脈からするとETF買入って邪道は邪道かもしれないですけれども、かなーり直接的な効果がありそうな気がするんですよね。いやまあETF売った人がそのままラッキーと言って銀行預金に金突っ込んだら意味無いのかもしれないけど・・・・・・。

正直、短国買入はご案内のレートでターム物金利は下がりきっていますし、大体からして金利下げたから資金需要が出るのかって言ったら今更関係ねえという感じでして、やはり資産価格に直接働き掛けるようなルートが行けそうな気が。もちろん弊害もある(というかだいぶありそう)ので確かにエイヤーでやることなのかという慎重な判断は必要だとは思うのですが、もし経済情勢があまりそんなのんびりした事言ってられないというのであれば、資産買入基金を使ってETFとかもっと買うのも一法なんじゃないのかな、などと毎度申し上げていることに関してふと思いを馳せてみたのでwhat_a_dudeさんのエントリーを枕に雑談を書いてみただけですどうもすいません。

おそらく米国の「次の一手」についても似たような悩みがあるような希ガス。米国の場合はそうはいってもベースのインフレが日本と比べては高いのでルートは日本よりもありそうですが・・・・・・











2011/08/17

お題「1年TB入札ェ・・・・・/またも虫干しネタで今更のBOE関連」

まあ何ですな、暑さに関しては別に帳尻合わせしなくても良いので太平洋高気圧ちょっと自粛しろやゴルァ。

○1年TB入札キタコレ

昨日の1年TB落札結果はこちら。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230816.htm

(3)募入最低価格 99円89銭2厘
(募入最高利回り) (0.1084%)

(5)募入平均価格 99円89銭5厘
(募入平均利回り )(0.1053%)

・・・・・・・まあ先週金曜の基金短国買入のレートが出来上がりで0.101/0.100なのですから、そらまあ0.11%は楽勝で割りますがなという所なのでしょうが、これで足元から1年まで0.10%にへばりつくでござるの巻というレートになってしまって、見事なまでのターム物金利抑制効果。

一方で昨日の資金供給オペなんですけどね。

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110816.htm

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110816.htm

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(8月18日スタート分) 12,775 8,006 0.100 0.100 62.7

ということで、こちらのオペは8月18日〜9月7日の期間でしたが、応札が今回もまた多くて、先週金曜のオペ(8月16日〜9月7日の1兆円)に引き続き応札超過と相成りました。しかも按分率が低下(オファー額が減っていますので絶対額としての応札は昨日の方が少ないですが)となっておりまして、まあこのくらいの所に足のある使い勝手の良いオペへのニーズが高まるという感じですな。

まあ足元に関しては固定オペの多さの結果としてややファンディングがショート気味になっており、その一方で1年のTBはレートが華麗に低下とゆーこの動きが何となく味わいがあったのでメモしてみただけの話ではございます。そのほかこじつけると色々と無理矢理政策インプリケーションを作れそうなのですが、まあそれは妄想の世界になりますのでそれは割愛。


○もう8月議事要旨が出るというのに今更の7月BOE議事要旨ネタ

えーっと、本日BOEは8月MPCの議事要旨を出すので、ネタとしてすっかり萎びてしまいましたが今更ながら7月議事要旨を(もはや今更ネタなので)簡単に少々(出たのは先月20日ですすいませんすいません)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1107.pdf

簡単に見るのでしたらまずは『The immediate policy decision』から見るのが吉。

・物価に関するリスクが「上下に顕著に拡大」という中々の悩ましさ

第22パラグラフ。

『Inflation had been well above the 2% target as a result of the temporary boost from higher energy and other commodity prices, the increase in the standard rate of VAT and the past depreciation of sterling. Despite the fall in CPI inflation in June, it was likely that inflation would rise further, to over 5%, in the coming months.』

まあ相変わらずなんですが「物価は一時的要因で2%超で推移しています、ああ目先は5%位に上昇しますよね」という話は相変わらず。

『In the light of recent developments in utility and food prices, the peak in inflation was likely to be a little higher and come sooner than the Committee had previously expected.』

あちゃー。

『The Committee’s central view remained that a margin of spare capacity in the economy was likely to push down inflation and bring it back towards the target in the medium term, as the impact of the factors temporarily boosting inflation subsided.』

この部分も毎回同じように言ってまして、まあお経状態ですわなという所っすが。

『But there were material risks to that view, both to the upside and to the downside. The Committee discussed how those risks had evolved since its previous meeting.』

ということで、この先にダウンサイドとアップサイドの話があって、これがまたやたらめったら従来対比長くなっているのですが、色々とああでもないこうでもないという論点が並んでいるので見てみましょ。


・物価のリスクに関して「ダウンサイドリスク」を先に出すのがチャーミング

第23パラグラフ。

『The key risk to the downside was that demand growth would not be sufficiently strong to soak up the pool of spare capacity in the economy, leading inflation to fall materially below the target in the medium term.』

というのはまあいつもと同じですが、今回は前回までと違ってダウンサイドリスクが先に来ている(6月議事要旨では先にアップサイドリスクの話をしている)のが味わいの深いところであります。

『The latest indicators suggested that the pace of global activity had slowed, although it was not clear how persistent this would prove to be. Some of the slowing in global activity reflected the temporary impact of the continuing disruption to supply chains caused by the Japanese earthquake and tsunami in March, and the effects of the elevated price of oil.』

でまあ本当はバーナンキの議会証言(7月13日)と比較してこのネタを出すとオモローだったのですけれども、7月6〜7日の時点でBOEの政策委員会は「世界経済が減速している事についての持続性はよく判らないところがありますが、一部は一時的要因によるものでしょう」というような話をしていまして、一方でバーナンキ議長は議会証言で失業の低下に関して「一時的な要因です(キリッ)」と言ってた訳で(8月FOMC声明文で「やっぱ一時的要因だけじゃないかもね、テヘッ」としらーっと変更しましたが)、この辺が中々味わいがあるなあとかいう話を書こうと思っているうちにFOMCが終わってしまいあたくし的には時既にお寿司と化したのは残念無念(−−)。

『The risks posed by an intensification of the sovereign debt and banking problems within the euro area to the prospects for economic activity and the financial system at home had remained substantial. The funding costs faced by the major UK banks remained elevated, in part reflecting those risks emanating from within the euro area, and were likely to continue to affect the price and availability of credit to many households and businesses adversely.』

ここのところが論点としてほほうと思ったのですが、欧州債務問題の欧州経済に対する影響のほかに、英国の銀行のファンディングコストの上昇による民間のクレジットアベイラビリティの低下を問題にしているのが味わいがあります。ちなみにこの英国の銀行の貸出態度がどうのこうのというネタは第15パラグラフで詳しい話がありますのでお暇な方はどうぞ。

『Indicators had pointed towards continued modest underlying UK GDP growth in the second quarter and, more tentatively, to some softening in the outlook for the third quarter. But the implications of weaker activity for inflation would depend on the factors that had caused it. Partly in response to the more downbeat news on the outlook for economic activity, investors had put back their central estimate of when official interest rates would begin to rise and the sterling effective exchange rate had fallen modestly. This was likely, in time, to provide some countervailing stimulus to economic activity.』

この部分も後ろの方がほほうと思ったんですが、先行きの経済見通しがやや弱いという見通しがインフレに与える影響はどのファクターが効くかによって異なってくるという一見???な話をしているように読めましたが、可能性としてあげているのが景気の見通し悪化→利上げ期待遠のく→英国ポンド安→経済への緩和的効果というルートもありますよねというのがお洒落っすな。


・後回しになったアップサイドリスクですが論点については細かくなっています

一方でアップサイドリスクなんですけどこれが第24パラグラフ。

『The key risk to the upside was that the period of elevated inflation would persist for longer than the Committee expected. Expectations of above-target inflation could become entrenched in price and wage-setting behaviour; employees might press harder for wage increases in response to recent declines in living standards; or there might be further upward pressure on prices arising from energy and other internationally traded goods prices.』

これまた毎度同じ話をしているのですが、ただまあ今回は従来よりも長期的な物価の高止まりが与える具体的な人々の行動に関する影響について詳しく説明しているのが味わいがあります。

『According to one survey-based measure, households’expectations of inflation in the medium term had increased markedly, to a little above their previous peak in 2008. But measures of inflation expectations derived from financial markets had been stable.』

金融市場からのインフレ期待は安定しているものの、家計のインフレ期待に関するサーベイデータは上昇傾向にあるというのはややアチャーな話。

『There was no clear evidence that higher inflation expectations had begun to feed through into wage-setting behaviour. Earnings growth had remained subdued. But earnings growth was affected by a range of factors, making it hard to infer clearly what impact inflation expectations might have had. It remained unclear how much comfort to draw from recent labour market developments, given the puzzling behaviour of productivity over the recent past.』

ということで、現状では物価の高止まりから賃金上昇というスパイラルの兆候は特段見られないようですが、この賃金動向については十分確認する必要があるという話ですな、あとリーマンショックで落ち込んだ生産性の問題というのは6月の議事要旨でもああでもないこうでもないとありましたが、今回もまた謎ということになっていますな。


・で結局「最近の動きは利上げの必要性を減じました」という話

第26パラグラフから。

『Most members judged that it was appropriate to maintain the current stance of monetary policy at this meeting.』

現状維持ですかそうですか。

『It was likely that the current weakness in activity would persist for longer than previously thought, although the reduction over the month in the exchange rate and in market interest rates would provide some countervailing stimulus to the economy.』

ポンド安と金利低下が経済への刺激効果を出しているものの、足もとの経済の弱さは従来MPCが予想しているよりも継続すると見られると、まあこの時点でBOEの政策委員会はやや経済に弱気気味になってるという感じですかね。

『That weakness, together with the continued subdued behaviour of earnings, reinforced the case that inflation was likely to fall back once the temporary impact of the factors pushing up on it had waned.』

でまあその弱さがありますし、更には賃金の上昇が引き続き抑制されていることからインフレは一時的な物価上昇要因の剥落と共にターゲット近辺に低下するでしょうと。

『But there also remained upside risks associated with the sustained period of above-target inflation.』

ただまあインフレに関してはアップサイドリスクもあります。

『There was a range of views on the balance of these downside and upside risks. Overall, however, recent developments had reduced the likelihood that a tightening in policy would be warranted in the near term.』

というようなああでもないこうでもない話をして、最終的には「足元の経済状況は近い時期の金融引き締めが正当化される可能性を減じている」というのが大方の委員の判断、という事になっています。

つーことで、引き続き物価にアップサイドリスク、経済にダウンサイドリスク、という状況が続いている英国中銀の8月議事要旨は今日出ますので(まあさすがにこれは一晩で読むヒマは無いので週末までスルー)お楽しみにという所です。


・実は経済情勢に関する論点もオモロイが時間が有ればネタにします

まあ何ですな、この手のモノって近い将来の政策インプリケーションを得てポジション取るという意味ではちゃっちゃと読まないと話になりませんが、こうやって改めて時間が経過した後に経済情勢に関する議論とかの部分を読むとそれはそれで味わいがあるなあとか思うのでありますが、そっちに関してはまた時間が有れば。

一応お勧め部分を申し上げますと、第6、7パラグラフの世界経済と米国経済に関する部分、先ほど申し上げた英国の銀行に関する第15パラグラフ、CPIに関する第17〜20パラグラフに関する部分を読むと吉かと存じますのでよろしゅうに。







2011/08/16

お題「相場が動かない隙にここぞとばかりに虫干しネタ」

とりあえず某モーサテでドヤ顔でソロスチャートの解説をするコメンテーターは以前引用させて頂きましたwhat_a_dudeさんのこちらを熟読すべきであると思いますので親切なあたくしは再掲するのであった(^^)。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110801/p1
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110802/p1

まあそんな話は兎も角として。

○今更の金融経済月報(古いネタですいません)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1108.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1107.pdf(前回)

めんどいので概要部分の比較だけですが。

・総括判断

『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。』(今回)
『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している』(前回)

ということでこれは声明文にもあったように、「着実に」という強調文言が入りましてさすがですなという所でありまする。

・各需要項目

『震災後に大きく落ち込んだ生産や輸出は、供給面の制約が和らぐ中で、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は、被災した設備の修復もあって、総じて持ち直しており、個人消費は、一部で弱い動きが続いているが、全体としては持ち直しつつある。』(今回)

『震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(前回)

生産については、持ち直しの明確化→増加となり、設備投資の持ち直しが入り、個人消費に関しても持ち直しという話を入れていますが、一方でマインド改善の話がしらっと抜けているのはまあシャーナイナイですけれども(円高ですから)、その他の需要項目の現状判断は総じて引き上げになっているのが大変にチャーミング。しかも今回は従来と違って需要項目別に細々と話をしている訳でございまして、そういう意味では足元の回復に関して判断を強めているという素敵な感じなのです。


・先行き見通し

『先行きについては、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで敢えて並べてみましたがご覧の通り判断に変更無し。


・需要項目別

『生産は、供給面の制約がさらに和らぐにつれ、持ち直しを続けると考えられる。そうしたもとで、輸出も、海外経済の改善を背景に、引き続き増加するとみられる。また、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。個人消費も、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)

えーっと、めんどいのでこちらは前回を載せていませんが、物の見事に前回と文言が一致しています。


・物価、金融

・・・・・・えーっとですな、こちらなんですが、判断とか関係ない事実関係の部分(ドル円レートとか長期金利とかの水準)の文言に変化があっただけで、現状認識に関する話や先行きの話は全部同じでありまする。


・コチャラコタ総裁が日銀審議委員だったらどうなるかと(^^)

・・・・・てな訳でございまして、まあ金融経済月報を見ますと景気の先行き見通しに関しては何の変化もなく、更に現状判断については改善している、という状況のもとで追加緩和政策(という名目の基金拡大)を実施したのが日銀クオリティと言う事になる訳ですが、昨日ご紹介したミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁がもしこの場で「で、追加緩和どうよ」と言われた時ってど〜ゆ〜反応を示すのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

まあ何ですな、日銀の今回の決定は「経済の下振れリスク対応」という理由でありましたが、そもそも金融政策運営における「第1の柱」「第2の柱」というのがあって、本来的に言えば金融政策運営って「第1の柱」をメインにして運営する筈で、どちらかというと「第2の柱」って予防的措置みたいなときに敢えて持ち出す理屈なのですけれども、何かすっかり第2の柱がよく使われるようになった気がするのは気のせいですかそうですか(^^)。


○7月の決定会合議事要旨は経済の先行きに関する議論部分に注目してみたいですな

これまた先週火曜日に出てたネタで今更すいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110712.pdf

まあ8月の決定会合でご案内のように追加緩和措置が実施されたので、7月の議事要旨を見る際には「8月の追加緩和措置に繋がる論点はどの辺にあるかいな」という辺りを読むのが吉だと思います。

でまあ今回見て「ほほー」と思ったのは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分だったりします。

冒頭が海外情勢になる(ちなみにこの手の議事要旨はFOMCとBOEと日銀のを読むのが趣味なのですが、経済の概観についての話の際に最初に「海外経済」が出るのは日本と英国で、米国は延々と自国の話をして最後に海外経済がでるのは味わいがあります^^)のですが。

『委員は、海外の金融経済情勢について議論を行い、海外経済は、減速しつつも、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで、緩やかな回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。ただし、何人かの委員は、海外経済の先行きを巡り、景気については下振れリスク、物価については、新興国を中心に上振れリスクが幾分高まっているとの認識を示した。』

・米国、欧州

ということで下振れリスク拡大キタコレだったのですな。で、米国経済に関しては結論は先行き緩やかな景気回復という話なのですが、家計のバランスシート調整がまだ続くという論点を「多くの委員」が指摘しており、更には米国の潜在成長力が低下しているのではないかという指摘もありますな。

『多くの委員は、雇用や住宅市場の回復の遅れを指摘したうえで、バランスシート問題が引き続き重石として作用しており、景気回復に弾みがつきにくい状況はしばらく続くとの認識を示した。ある委員は、金融危機後、家計所得の期待成長率が大幅に低下し、現在も低迷したままであることを踏まえると、経済の潜在的な成長力自体が下振れている可能性もあると指摘した。』

家計所得の期待成長率が大幅に低下すると債務負担感が高まるのでバランスシート調整圧力が更に高まるとかどこの日本ですかという話なのですが、まあ最近のテーマは「世界(というか先進国)の日本化」ですからにゃあ。

で、ユーロエリアに関しては「全体としては緩やかに回復」という風になっているものの、先行きに関してはリスク要因を物凄い勢いで指摘。

『先行きについて、何人かの委員は、各国の財政再建の動きが重石となることもあって、回復テンポは、引き続き緩やかなものにとどまる可能性が高いと述べた。』

さいですな。

『ギリシャのソブリンリスク問題について、何人かの委員は、同国に対する当面の流動性支援策が固まり、危機はひとまず回避されたが、政府債務の削減という本質的な課題が解決された訳ではなく、他の周縁国に問題が伝播する可能性も否定できないと指摘した。』

『ある委員は、国内の反対から財政再建や構造改革が進まず、予定されていた金融支援が滞ったり、対ギリシャ民間債権者の負担のあり方を巡り、将来の追加金融支援に関する議論が難航する可能性もあると付け加えた。』

『多くの委員は、周縁国のソブリンリスク問題については、今後とも、様々なイベントをきっかけに国際金融市場を不安定化させるリスクがあると述べ、欧州金融機関に対するストレステストの結果を含め、細心の注意を払ってみていく必要があると述べた。』

どう見てもこれらのリスク全部顕在化です本当にありがとうございました。

『なお、ある委員は、欧州中央銀行による利上げの動きは、ドイツなど経済が好調な国にとっては必要であるが、周縁国にとっては状況の厳しさに追い討ちをかけるものであり、その影響についても、しっかり点検していくことが必要と指摘した。』

確かに・・・・・・


・中国経済

まあ新興国に関してはインフレ警戒の話がメインという感じですが、中国に関する部分だけとりあえず引用。

『物価面について、多くの委員は、金融引き締めや景気の減速にもかかわらず、6月の消費者物価指数が前年比6.4%と高い伸びを示すなど、インフレ圧力の強い状況が続いていると指摘した。ある委員は、最近の大幅な賃金引き上げの動きを踏まえると、可能性は小さいものの、賃金と物価がスパイラル的に上昇するリスクもあるとの認識を示した。』

ほほう。

『何人かの委員は、金融引き締めの動きは必要かつ望ましい調整といえるが、それが不十分であれば、インフレの深刻化とその先の景気急落、それが行き過ぎれば、世界経済の過度の停滞を招くという点で、政策当局は難しい舵取りを迫られていると指摘した。』

『複数の委員は、中国経済が持続的成長を実現するためには、銀行部門が抱える期間や流動性のミスマッチ、不動産やインフラ向け貸出に関する信用コストの状況などにも目を配り、プルーデンス政策面からも、適切な対応を講じていくことが望まれると付け加えた。』

という話なのですが、これがちゃんとコントロールできるんですかねというのは甚だアレな気がするんですけどねえ・・・・・・


ということで海外経済に関する部分を引用しましたが、国内経済に関する部分も少々。


・国内物価に関して

景気に関する話は微妙に興味深い点を指摘している人がいるというのはあるんですが、まあめんどいのでスルーしまして(おい)物価に関する部分をば。

『続いて、わが国の物価に関する議論が行われた。何人かの委員は、このところ国際商品市況が横ばい圏内の動きとなっていることを背景に、わが国の国内企業物価の上昇ペースは、足もと鈍化していると指摘した。消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比について、委員は、マクロ的な需給バランスが基調的に改善していく中で、足もと、先行きとも、小幅のプラスで推移するとの見方を共有した。』

ということでマクロ的な需給バランスの話は声明文などではあまり強調されないようになって来ましたけれども、まあ当然ながら議論の方ではこういう話になってまして、マクロ的な需給バランス改善キタコレという所ですかそうですか。

『ある委員は、食料品・エネルギーを除いた消費者物価指数が、5月に前年比+0.1% と、2008年10月以来のプラスに転じたことや、物価上昇品目数から下落品目数を差し引いた値のマイナス幅が着実に縮小していることについても、マクロ的な需給バランスの改善が影響していると指摘した。』

『ある委員は、地方を含め、既往の国際商品市況の上昇に伴うコスト増加分を、企業が製品価格に転嫁する動きがみられると述べた。』

需給バランス改善だの川上の価格転嫁だの威勢の良い話キタコレ。

『一方、ある委員は、先行きの需要全般を慎重に捉える自らの見通しを前提とすれば、国際商品市況の上昇が、エネルギーや食料品の価格を通じて消費者物価に波及する度合いは、限定的なものにとどまるとの認識を示した。』

一方でこういうコメントもあるという感じですが、総じて言えば・・・・・・


・展望レポートの中間評価部分

『大方の委員は、2011 年度の成長率は、4月の展望レポートの見通しに比べて幾分下振れるとの認識を示した。』

『物価面では、多くの委員が、国内企業物価、消費者物価( 除く生鮮食品) ともに、概ね4月の見通しに沿って推移するとの見方を示した。』

ということなのですが・・・・・

『この間、複数の委員は、自らの経済・物価見通しについて、展望レポートの見通しの範囲内ではあるが、その下限近くであると述べ、このうち一人の委員は、先行きの成長率と物価の見通しは、4月時点に比べて幾分下振れているとの認識を示した。』

てな感じで、まあやはり先行き見通しを下げている人が多かったのね、という所でして、景気に関してはまあ元々弱めですけれども、物価に関しては一部威勢の良い面もあるものの、総じて言えばこれまたやや弱めになっているという感じで見た方が良いという感じかと思うのですけれども、あまり7月会合結果出たところでそこまでのニュアンス出てましたっけというのは少々アレですな。


ということで相場が動かない隙に虫干しネタで恐縮でございますた。






2011/08/15

お題「オペ雑談/コチャラコタ総裁の斬新な動き」

しかし未だに良く判らんのは「この法案成立が辞任の条件」って話で、何と言うかそれって憲政の基本的な部分で何かおかしくねえかと・・・・

#ところでスイスフランのペッグって具体的にどうすれば出来るの??

○基金短国買入ェ・・・・・・

金曜のオペレーションオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110812.htm

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110812.htm

基金買入の短国買入は今回から2000億円にオファーロットが増えたようで(従来は1500億円)、応札 4,411億円の落札2,004億円は良いのですが、落札利回りが出来上がりベースで何と平均0.101%で足切りは0.100%(按分30.1%)という泣きそうな結果に。

まあ基金買入のレートは0.100%からは下がりようが無い(利回り較差マイナスって出来ないんですよね??)のですが、ついにそのレートまで下がりやがったかという感じでございまして、これはつまり残存1年までの短国は0.100%カツカツまで金利低下余地があるというかもう下がっていると言ってしまえば身も蓋も無いのですが、まあこの調子で今後も基金短国買入が続きますと少なくとも短国に関しては1年まで0.10%カツカツという素敵な展開が待っていそうな悪寒。

まあ3か月の所の需給が緩んで0.10%台に乗ってくれますと(3か月超のゾーン対比で発行額が全然違うので)また話は別になるとは思いますが、何せ現状では3か月TBは入札段階で概ね0.10%割れという素敵な状態になっていますので、まあそのレートで買って日銀に0.10%で売るというのも中々無いでしょうから、そーゆー状況になっている中では基金短国買入の影響は1年TBまで拡大という事になるでしょうなあナムナム。

TBと利付国債の同残存のレート形成って元々微妙に歪んでいる(買う人の差とか、流通額の差とかが微妙に影響する)のですが、基金短国買入は文字通り短国しか買入をしてくれませんので1年TBが0.10%でも2年債などの残存1年は0.10%にはならなかったりするのがチャーミングではございますけれども、まあどっちでも良い話ちゃあ良い話ですな。


金曜もうひとつほほーと思ったのは金利入札方式のオペ結果。

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(8月16日スタート分) 13,480 10,008 0.100 0.100 74.2

ということで、金利入札方式のスポットスタートの本店オペが実施されたのですけれども、久々にオファー額の1兆円に対して応札が13,480億円ということでこちらはニーズがありますがなという結果ですが、こちらのオペは8月16日〜9月6日ということで比較的期間の短いオペだった事からニーズが集まったんジャマイカという感じ。金曜に誰得雑談しましたけど、やはり固定の長期間(短期市場的に)のオペが多くなってくるのに対するバランスとしては1週間とか2週間程度(このオペは3週間ですが)とかの方が良いような気が。

まあ今回に関して言えば、15日の財政払い超に対応したオペの期落ちが多めだったのと、16日で積み期間が変わるという要因もあったんでニーズがそれなりに集まった(16日はオペのエンドは無い)というところだと思いますけれども、足元でオペ調達のバランス調整もあってショートファンディング気味にしている人が多いっつー所だと思います。金曜のオペの実施によって「次の積み期間もオペは多めに入れていきますよ」というのが確認できたとも言えるので、そのうちまた余剰感は更に高まるんでしょうけどね。

あとさ、誰得雑談のオマケなんですけど、金利入札方式のオペって足を1週間程度に設定してオファーすると期落ちが増えるのでその分だけ見た目のオファー頻度が高まるので、いかにも「供給しています感」が出るのでアピールによろしいんじゃないですかね。まあそれを極端にされても忙しいだけになりますが(^^)。


○毎度お馴染みミネアポリス連銀コチャラコタ総裁の斬新な企画について

こんなのは初めて見たんですが。
http://www.minneapolisfed.org/publications_papers/pub_display.cfm?id=4715
Messages
Statement by Narayana Kocherlakota on Dissenting Vote at August 9, 2011, Meeting of the Federal Open Market Committee
Narayana Kocherlakota - President
Published August 12, 2011

・・・・・・ということで、金曜日にコチャラコタ総裁がこんなのを出しました。何故かコメントを読むコチャラコタ総裁の動画まであるというサービスっぷりですが、動画に関してはその下にある文章と同じものです(あたくしが確認済み^^)ので、まあ動いているコチャラコタ総裁と声を見たければどうぞという感じ(^^)。

短いので全部みてみる(増量企画というツッコミは却下)。

『One of my jobs as president of the Federal Reserve Bank of Minneapolis is to serve on the Federal Open Market Committee. At its last meeting on August 9, the Committee took what I viewed as a significant policy step. I dissented from its decision. I believe that transparency is an essential part of effective policy formation, and so I’m offering this brief explanation of my decision. These views are not necessarily those of others on the Federal Open Market Committee, including presidents Richard Fisher and Charles Plosser.』

ということで、先日のFOMCで自身が反対票を投じた件について、その背景説明および理由を説明するという企画なのですが、「今回のFOMCの決定はコチャラコタ総裁が見るに顕著な政策ステップである」という認識だそうで、「透明性は金融政策形成における本質的な部分であると認識しているので、自分の反対行動に関して説明をすることにしました」ということだそうです。当然ながらこの反対理由はフィッシャー総裁とプロッサー総裁の反対理由とは関係ないですよと。

・・・・・まあ何ですな、これって確かにコチャラコタ総裁の言い分も判るのですけれども、現状の建て付けとしてはFOMCの後3週間程度した所で議事要旨(Minute)が出るという風になっていて、そこでは議案への賛否と否定の場合はその理由について簡単に説明される、という事でして、こうやって議事要旨が出る前に説明が入るっつーのも何だかなあという感じはせんでもない。

特にですね、先日来壊れたレコード状態(歳がばれますかそうですか)となって申し上げておりますように、時間軸政策を実施しましょうというのであれば、この手のフリーダム発言って市場の期待を却って不安定化させるリスクがありますがなという事を考えますと、通常の金融政策やっているときにはまあコチャラコタ総裁のこの動きって言うのは「判りやすくて宜しい」という事なのでしょうが、時間軸政策の効果を利かせに行こうとしている(のであれば、の話ですが)状況においては透明性が必ずしも全能ではないという事もあろうかと存じます、はい。

『Entering the meeting, the FOMC was following an unprecedentedly accommodative monetary policy. There were three elements to this policy.』

ということで、コチャラコタ総裁が整理するFOMCの「異例の緩和政策」は3つのポイントがあるようです。

『First, the Federal Reserve owned over $2.5 trillion of long-term government and government-backed securities. The purchase of the final $600 billion of these assets was announced in November 2010 and completed by the end of June 2011.』

『Second, as it had since December 2008, the Committee was maintaining the fed funds rate at between 0 and 25 basis points.』

『Third, as it had since March 2009, the Committee statement included the forward guidance that it anticipated keeping the fed funds rate at this low level for “an extended period.” The “extended period” is generally interpreted as being between three and six months. 』

つーことで(1)長期資産の買入、(2)誘導金利目標0-0.25%、(3)ガイダンス文言“an extended period.”というのがポイントで、今回変更になったのはご案内のようにこの(3)ですな。で、一般的にはこの“an extended period”が3か月から6か月程度の期間を意味すると解釈されています、とコチャラコタ総裁は認識。

『The Committee adopted this three-part policy stance in November 2010. I agreed with this decision and supported it publicly at that time and throughout this year.』

2010年11月(QE2実施)から現在のセット(額なども含めて)になっていますと。

『In its August 9 meeting, the Committee changed this “extended period” language to say instead that it “currently anticipates economic conditions … are likely to warrant extraordinarily low levels of the federal funds rate through mid-2013.”』

さよですな。

『This statement is designed to let the public know that the fed funds rate is likely to stay between 0 and 25 basis points over the next two years, not just over the next three to six months. Hence, the new language is intended to provide more monetary accommodation than before.』

ということで、コチャラコタ総裁の解釈としては、まあある意味極めて素直なのですが、「FOMC声明文でのガイダンス文言は、現在の政策金利が0-0.25%に留まる期間に関して示しており、今回のガイダンス文言変更によってその期間が『3〜6か月』から『2年』に拡大されるので、文言変更は追加的な緩和効果を与える」という解釈になっています。

でですな、まあ確かに期間が延びたのですからそれはそれで緩和効果っちゃあ緩和効果なのですけれども、あくまでもそれは「現時点での見通し」であって、別に確約ではないという点に注意が必要なのと、ケツが将来の1時点になっているので時間の経過と共にここのガイダンス文言どうするのかというのがややこしい事になってくるように思えますけど、まあその辺に関する雑談は散々申し上げたので(^^)。

『I dissented from this change in language because the evolution of macroeconomic data did not reflect a need to make monetary policy more accommodative than in November 2010. In particular, personal consumption expenditure (PCE) inflation rose notably in the first half of 2011, whether or not one includes food and energy. At the same time, while unemployment does remain disturbingly high, it has fallen since November.』

ということで、ここで反対理由についての説明となりますが、コチャラコタ総裁の反対理由は直球ストレートで経済認識に基づくものであって、ガイダンス文言のコミュニケーション上の問題(例えば明示的なインフレターゲットを入れろとか、時間軸のコミットメントの方法に問題があるのではというのではない、という意味)とかいう話ではなく、あくまでも今回のガイダンス文言変更を「追加的な緩和効果を出すもの」として捉えて反対しています。

つまり、そこにありますように、昨年のQE2実施時点と比較した場合に、経済状況は改善しており、追加的な金融緩和政策が必要な時期ではないという意見であります。で、デュアルマンデートに対する論点で言えば、物価に関して言えば本年前半にはPCE物価指数がヘッドラインもコアも顕著に上昇しており、失業率の高止まりは気がかりではあるが、これまた2011年11月の時点からは改善している、と説明していますわな。

『I can summarize my reasoning as follows. I believe that in November, the Committee judiciously chose a level of accommodation that was well calibrated for the prevailing economic conditions. Since November, inflation has risen and unemployment has fallen. I do not believe that providing more accommodation-easing monetary policy-is the appropriate response to these changes in the economy. 』

というのを纏めていますが、さっきとまあ同じでして、昨年11月の追加緩和政策実施によって、経済状況は好転し、インフレは上昇して失業は低下しており、現在の経済状況での追加緩和政策の実施は適切ではないというのが結論ですな。

『Going forward, my votes on monetary policy will continue to be based on the evolution of the data on PCE inflation and its components, medium-term PCE inflation expectations, and unemployment. 』

まあ最後のところは一般的なというか何と言うか普通の「これからも頑張ります」的な発言ではあるのですが、今後の金融政策に関する票決行動に関して何をベースにするか、というところを見ますと、「PCE物価指数およびその構成する内容」「中期的なPCE物価指数へのインフレ期待」「失業」とありますが、前半のPCE物価指数に関する部分が妙に長くて失業のところは一言で片付けていまして、インフレ重視的な印象を受けたのは読む方のあたくしにバイアスが掛かっていますかそうですか。

以上、増量企画でございましたが、これはまあ色々と微妙な動きだなとか思うのでありまして、こんな感じで反対の人たちがフリーダム発言連発すると時間軸政策としてのガイダンス文言変更はあれだけだと弱いような気がするんざますがどうでしょうかね。

#ということで、何か日銀ネタが後回しモードになっているorz







2011/08/12

お題「今日も雑談とか虫干しネタの小さいのだけ」

うーむ、相変わらず「FRBは2013年までゼロ金利政策を継続する」という講釈をする人が沢山いるのは何だかなあというかまあ別にそーゆー理解が蔓延しているのは商売のタネになるから良いんですけどね(^^)。

○昨日の訂正であります(すいませんすいません)

時間軸がどうのこうのというお話をうだうだと先日来実施していますが、その中で2003年のゲロゲロマーライオン相場についてお話をして、日銀の「量的緩和政策の時間軸の明確化」の時期に関してドヤ顔で「2003年9月」と申し上げていましたが、実は2003年10月の決定会合でコミットメントの明確化をしていた事を読者様からご指摘を頂きまして間違いに気がついた次第(赤面)。

2003年10月10日
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010.htm/

そこにありますコミットメントの明確化について。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010b.htm/
金融政策の透明性の強化について
2003年10月10日
日本銀行

『2.量的緩和政策継続のコミットメントの明確化

 日本銀行は、金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を継続することを約束している。日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。

・第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

・第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。

・こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。』(上記URLより)

いやもう何か懐かしいですなあという感じですが、このコミットメント出る前に量的緩和政策の継続に関して総裁会見(定例会見じゃなくてどこかでの講演での会見だったと思う)の時に福井総裁が強調して火消ししたんでしたな(大汗)。


ちなみに、そもそも量的緩和政策を導入したときの2001年3月19日の決定会合での公表文書はこちらの通り。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2001/k010319a.htm/

『(2)実施期間の目処として消費者物価を採用

 新しい金融市場調節方式(=量的緩和政策の事です、引用者追記)は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続することとする。』(上記URLより)

となっていまして、まあこういうのが本来的な意味で言う時間軸なのですが、2001年時点での時間軸に関しても2003年の時点で「来年以降のどこかでCPIがゼロ以上になったらその瞬間に量的緩和政策が解除されるのではないか」という思惑が盛り上がって中短期債がゲロゲロマーライオンになってその結果上記のような「3条件」を設定して時間軸コミットメントの強化を実施した、という事になったんですな。

まあこの辺りの事例を米国の今回の謎時間軸に対する市場の反応と重ね合わせて考えますと色々とアレなインプリケーションが得られるのではないかと存じますがにゃ(^^)。


○更に雑談を少々

・スイス様がかなりヤケクソな大作戦を示唆したようです

http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnJT896776220110811
NY外為市場・午前中盤=スイスフランが大幅安、SNB副総裁のペッグ制示唆などで
2011年 08月 11日 23:30 JST

『[ニューヨーク 11日 ロイター] 11日午前中盤のニューヨーク外国為替市場でドルとユーロが対スイスフランで5%超上昇している。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のジョルダン副総裁が為替介入に踏み切ることなく金融政策のさらなる緩和が可能との考えを示したほか、スイスフラン高の抑制のため、スイスフランをユーロにペッグさせる可能性を示唆したことが背景。』(上記URLより)

・・・・・・・リザーブターゲット拡大するお!と言っても数時間しか効かないという状況になってしまいましたので、ついに「自由な為替の放棄も辞さず」というヤケクソ大作戦の発動を示唆という事ですが、最終兵器にも程があるスイス中銀様の明日はどっちでしょ?


・(;∀;)イイハナシダナー

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22667020110811
米議会が格付け会社を調査、S&Pの格下げ前に取引急増
2011年 08月 11日 15:19 JST

『民主党のウォーターズ下院議員は10日、S&Pによる格下げがもつ意味合いについて、下院金融委員会で公聴会を開催するよう求めた。証券取引委員会(SEC)に対しては、S&Pが米国債格下げに関する情報を公表前に一部の金融機関に提供したのか、書簡で調査を要請している。同議員は、銀行幹部が格下げ前の8月4日と5日にS&Pと会っていたとの報道について懸念を表明。5日の格下げ発表前に取引が膨らみ、大量の売りが出されたことに注目している。』(上記URLより)

格付け関連に関しては散々っぱら好き放題やられた本邦の無力市場参加者のあたくしと致しましては、絶賛泥レスショーを海の向こうで開催して皆様泥まみれになって頂く事を切に期待するものでございます。


○今更ですがトリシェにこの質問をしたのは誰だあ(ガラッ)←海原雄山流で

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110804.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

質疑応答の最後の方に唐突にこんな質問が。

『Question: I would like to ask about the intervention in the forex market of Japan. Are you in support of that, and is it also the same recognition as the consolidated intervention in March? Is it critical or not? Is it some kind of critical movement or decision? How do you evaluate this decision?』

・・・・・・・orz

なんかさ、フランス人なのにブンデスバンカーみたいなトリシェ総裁にこんな質問の仕方したら答え明白じゃん。何で余計な質問するのよ。

『Trichet: I will only say that we have a very clear position in the Governing Council of the ECB. We consider that such interventions have to be made on the basis of a multilateral consensus and a multilateral decision. That is our position. It’s a clear-cut position that we have always had. To my knowledge what has been done is not part of a multilateral decision.』

大体からしてさ、野田財務大臣が介入実施した時点で(それも余計なことだと思うのだが)「単独介入です(キリッ)」って思いっきり言ってたのはこの質疑の数時間前から合点承知の助だと思うのでありまして、単独介入だと言うのがバレバレの状態で上記のような質問をするとか何の答えを期待していたのか質問者の頭の構造を疑う訳でございますよ。

まあ普通の発想ですと、この質問はトリシェの否定コメントを貰うための質問なんでしょうから、先般も悪態をつきましたように日本の国益を損ねるのがお好きな人なんでしょうから入国禁止リスト入りで良いでしょと思うのですが。

次の質問の冒頭ですが、

『Question: One question again about the EFSF.(以下割愛)』

「日本のことなんぞどうでも良いから欧州債務問題の質問を続けますよ」というようなニュアンスを感じたのはあたくしの気のせいですかそうですか。




○固定金利オペが増えた分のバランスは短めの金利入札オペが良いのではという誰得雑談

まあこの前もこの話したような気がするのだが相変わらずな状態なので(^^)。

おとといのオペオファー(買入系のオペは引用してません)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110810.htm

(左からオペ種類、オファー額、スタート日、エンド日)
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2011年8月12日 2011年11月9日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 14,000 2011年8月15日 2011年9月20日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110810.htm

固定金利オペの方は応札額9,940億で按分比率が80.5%まで上昇。
金利入札オペの方は応札額9,430億でいつものように札割れ。

・・・・・ということで、まあ固定オペの按分が上昇しましたねという話はおとといや昨日に話題にもなっていましたが、足元GCの資金調達自体がなくなっている訳でも無くて、それなりにオペの応札ニーズはあるはずなのですが、金利入札方式のオペにはそんなに札が入っていない感じでして、こらまた何でですねんという話を考えた場合、どう見てもおとといの場合は金利入札方式のオペの足が長いですがなという点にポイントがあるような希ガス。

先般の追加緩和策のようなものが出た時に、固定金利オペ6か月物がまたまた5兆円増額されたのはご案内の通りですが、最終的には固定金利オペの残高が3か月で20兆円、6か月で15兆円という中々素敵な額になってしまいまして、単純に平均すると固定オペでの調達期間が4.3か月位になる訳でございますが、それってまあ普通に考えて調達期間が長い、ってか短期金融市場的にはかなり長いイメージになりますよね、という話になるかと思いますです、はい。

短期市場での商品って短国だとメインは3か月、CPだと2週間程度から2か月程度までがメインでざっくりイメージ的には1か月前後とかだと思うのですが、オペの固定金利部分が拡大すると調達サイドの方が長くなる訳で、(まあそんな人はいませんけれども)極端な例を考えて「全部固定金利オペで調達」とやってしまうと調達の期間が短期市場でのメインの商品(なので在庫を持ってたりする)の運用期間よりも長くなるという怪奇現象が生じてしまう訳ですわな。

0.10%で取れるんだからいいじゃないかという説も無いわけでは無いですが、そもそも短国のレートが同じように低水準になっていて入札の平均が中々0.10%に乗らない(水曜の2か月がやっと10乗せてましたがセカンダリーでは10割れでしたな)ので逆鞘ですし、極端なケースとして考えた場合の調達のデュレーション>運用のデュレーションってな感じになってしまうとショートポジションを取っているのと同じ事になっていまいますから、足元の金融政策で金利が上昇する方向というのはどう見ても有り得ず、一方で金利が低下する方向の可能性はオオアリクイという状況を鑑みるとポジションとしてどう見ても不利(なのでそんなポジションにする奴はいないが)。従いまして足元で長い固定金利オペが拡大してくると、どうしても調達のバランスを取る為にはその一方で短い調達が必要になる、という事になるわけで砂。

もう一つ重要な理由としては、証券業者の資金ポジションが投資家の売買や国債入札によって頻繁にぶれる(だいたい大きいのは短国要因)ことでありまして、オペでの共通担保は当然ながら差し替え可能ですけれども、ベースで調達を増やしすぎると売買動向によっては調達のやりすぎ状態になるリスクが出てきます(当然そうなった場合はカバーしないといけないからやられる可能性が)ので、それを調整するためには調達をあまり長くしすぎない方が良い(調整しやすいから)というのもある訳でございまして、おとといのオペのような1か月半近い金利入札のオペとかあまりニーズが無いですわなっちゅー結論にあるかと思います。


・・・・・と、いう話はこの前もしたと思いますが、今回の追加緩和のようなものが実施された時も「超過準備付利金利が下がったら調達やられてエライコッチャですがな」という従来あまり強く意識しないで良かったネタも発生しているという点を鑑みますと、資金供給オペの全体としての平均期間があまり長期化しないように運営して頂きますと市場がスムーズに動くんじゃないかと思うのでありました。

以上誰得雑談でした。













2011/08/11

お題「何か欧米があばばばばーになっているみたいなので雑談」

SNB涙目の展開とか書こうと思ったらモーサテのコメンテーターが円とスイスフラン相場の話をしていて先を越された感が(^^)。

#まあアレだ、米国株安はバーナンキのせいじゃなくて欧州のせいと言う事のようだからバーナンキさん不幸中の幸いということで(違)

○SNBが実に残念な事になっている件についての雑談

昨日はSNBがこんなリリースを。

http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20110810/source/pre_20110810.en.pdf
Swiss National Bank expands measures against strong Swiss franc

『The substantial rise in risk aversion on the international financial markets has further intensified the overvaluation of the Swiss franc in the last few days. In the light of these developments, the Swiss National Bank (SNB) is taking additional measures against the strength of the Swiss franc. It will again significantly increase the supply of liquidity to the Swiss franc money market. The SNB aims to rapidly expand banks’ sight deposits at the SNB from currently CHF 80 billion to CHF 120 billion.』

と言う訳でこの前利下げして当座預金っつーかリザーブの拡大を行ったのですけれども、火曜辺りには介入とか実施してたっぽい動きもあり、水曜日には更にリザーブ拡大のおかわりを実施するのでありました。

『To accelerate the increase in Swiss franc liquidity, the SNB will additionally conduct foreign exchange swap transactions. The foreign exchange swap is a monetary policy instrument which the SNB uses to create Swiss franc liquidity. It was last employed in autumn 2008.』

ふむふむ。

『The massive overvaluation of the Swiss franc poses a threat to the development of the economy in Switzerland and has further increased the downside risks to price stability. The SNB is keeping a close watch on developments on the foreign exchange market and on financial markets. If necessary, it will take further measures against the strength of the Swiss franc.』

と、スイスフラン高対策やる気満々ですよという声明が出た昨日の東京夕方4時頃には対ユーロで0.975近くだったスイスフランは一気に0.955割れ水準に急落したのですが、その分って2時間ちょっとでお返ししまして、現在はこんな感じ(今日はブルームバーグではなくてスイス中銀から^^)。

http://www.snb.ch/en/iabout/stat/statpub/zidea/id/current_interest_exchange_rates/3

ブルームバーグ(インターネット版)のクロスレートでスイスユーロを見ると0.9700とかで、まあリザーブ拡大効果が半日持たないという残念すぎる結果になっていまして、(さっきモーサテのコメンテーターも言ってたけど)対円で見た場合でもスイスって絶賛最強通貨状態になってきていまして、SNB涙目と申しますか、マネーを出せば円高回避できるという話をしていたどこぞの誰かさんにねえねえどんな気持ちどんな気持ち(AA略)と聞いてみたいものでございますな。


○コミットメントの伴わない時間軸とはそもそも何ぞやという雑談

FOMC関連の昨日の続き。

『The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(昨日のFOMC声明文の例の部分をしつこく再掲)

まあ相変わらず報道見てると「FRBは向こう2年間の実質ゼロ金利政策継続を表明した」という話が多いですし、米国市場さまを見ていますとゼロ金利2年間継続マンセー相場になっていました(今朝は欧州要因が入っているので最早何が何だかワカランチ会長だが)ですな。んでもって昨日はいろんな人がいろんなレポートだしていましたけれども、やはりこの表現に関して「強力な時間軸」派と「時間軸のようだが厳密に言うと違うのでは」派がいまして中々興味深いと思った次第。

でね、あたしゃ昨日も申し上げましたがこれには一応時間軸という言い方しましたけど、「時間軸(でも実はコミットメントが伴わない)」と括弧付きで申し上げた次第なので、当然ながら後者の見解を取るのでございまする。その理由は大体昨日書いたから重複になるので割愛しますが、要は「The Committee currently anticipates」という所を素直に読んだらそうなりますよね、という話でしたが昨日の駄文(そういや昨日のFOMC声明文読みで途中でパラグラフ番号を1つ飛ばしてましたねすいません)を詳しくはご参照ありたしざます。


時間軸政策ってゆーのは本来「金融市場における政策金利予想将来パスを先の期間まで事実上固定化させる事によって、市場における金利形成のアンカー機能を果たす」とゆーのが政策のキモなのでございまして、その点からすると今回の声明文での表現は、FOMCの「俺様が現在の経済状況を総合判断した結果こういう予想になった」というものを示したものに過ぎないので、その「俺様の総合判断」が変化した場合にこの期間はあっさり変化する可能性がある(昨日も申し上げたように、アカウンタビリティの観点からしていきなり次回反故とかは無いでしょうけれども)ものでしかないと思うのですよ。

つまりですな、時間軸政策を実施する場合には、「総合判断」ではなくて、外的な何らかのデータ(まあ普通はCPIだと思いますが)に紐をつけて現在の金融政策を継続する、という事を明確にコミットする、という中央銀行としては極めて自由度の低い態度を取る、という事を示さないとそもそもの時間軸にならないという事なのでございます。そもそもCPI時間軸にしておけば「政策金利のパスを予想する為にはCPIを見ておけばよい」という話になるので、政策に関する他の発言とかは出る余地が無いという事になるのでありまして、それこそが「時間軸による政策金利パスの安定化」という話になると思うのですよね。

昨日との重複を承知で申し上げますと、日本の場合は量的緩和政策実施の時に時間軸を入れましたけれども、2003年の株価回復市場の時にまだCPIがマイナス圏内だというのに市場の考える時間軸が急に短期化した結果、足元ゼロ金利でCPIがマイナスだと言うのに2年国債金利が0.25%以上まで上昇するというワンダホーな事がありまして、最終的には9月に時間軸コミットメントの強化をせざるを得なくなったという事案もございましたので、米国のこの「今の俺様の総合判断」というのに関しては当時の日本の時間軸よりもどうとでもなるモノでありますので、このままで押していった場合に将来のゲロゲロマーライオン相場が目に浮かぶようでございます。

だいたいからして「総合判断」だとその判断するのはFRBの理事連中だけじゃなくて地区連銀総裁の皆様もいる訳でございまして、現状で既に反対票が3票ある上に、セントルイスのブラード総裁(は低金利長期化コミットメントは「日本型のデフレ均衡に陥る可能性がある」としている)とかカンサスシティのホーニッグ総裁(ご存じタカ派の大先生)とかも低金利政策の長期化に対して反対しそうな訳でございますので、そーゆー意味あいからすると今後は地区連銀総裁の皆様の講演とかが盛大に撹乱要因になりやすいと思うのですよね。

まあ今は経済情勢がアレで欧州が火事ボーボーのあばばばばー状態になっているので特にその辺が急に強気が来たのでみたいにはならんとは思いますけど、これ2年間の利上げが無いというコミットメントだと思っているとちょっと外的要因が落ち着いた時に中短期債が盛大なマーライオン相場になる恐れがあるに1万ドラクマという感じっす。


まあ何ですな、今回の「今の経済状況を総合的に勘案した場合俺様が予想するに2年間くらい現在の金融政策が継続されるでしょうなあっはっは」というのって、冷静に考えますと「中長期的な物価安定の理解」+「展望レポートによる物価見通し数値の公表」のあわせ技よりも更に脆弱な時間軸(それを時間軸というのが適切かどうかという論点もある)ではないかと思うのでありまして、今回の場合は声明文における経済認識および見通しの下方修正とセットになっているので、脆弱な表現ですが何となく市場を煙に巻く効果があったというお前はどこの福井の俊ちゃんだという事でしょ。というのが今回の「コミットメント無し時間軸もどき」(なので実は時間軸と言うのも少々無理がある)のポイントでは無かったかと思います。

ちなみに、昨日はまあお友達とああでもないこうでもないと本件に関して議論というかただの雑談を繰り広げておりましたが(^^)、一番ツボった指摘をしていたお友達のご指摘ですが、曰く、「これ2年間にしたのって単にFF先物で1年以上先まで政策金利変更無しを織り込んでいるからそれより長くしただけでしょ」、「大体からして2か月前とまるっきり反対の話をしている人たちが何で2年先の政策金利まで総合判断できるんだか」・・・・・・(^^)マッタクオッシャルトオリ



○これ追加緩和のようなものを出すとかいう話になるんでしょうかねえという雑談

まあ何ですな、2か月前と全然話が違うじゃねえのかというのもそうですけれども、更に今回あたくしビックリしたのは、昨日も申し上げましたが、前回の議会証言の時に「足元の失業率上昇は一時的な要因によるものです(キリッ)」と言っていた筈なのに、今回の景気認識で「最近の景気減速に関しては各種の一時的要因の寄与はその一部である(=景気減速は一時的要因だけではないです)」と言い出した事でございまして、前回の議会証言って7月13日だったんですけど3週間でそこまで変化するとかおまえ議会証言偽証だったんじゃねえか位言われそうな勢いの豹変ぶり。

同じこと日銀がやったらそもそも時間軸もどきの時点で「総合判断などと言う曖昧なのはケシカラン」といわれ、景気見通し変更で「3週間でコロッと変えるとはその前の判断が間違っていたという事なのでケシカラン」と言われて火達磨になっているであろうと想像するに、まあ人間(人間じゃないけど)それまでの実績の見せ方というのが大事なのですねえと思うと共に我が身に置き換えて以下悲しくなったので割愛。

と言う雑談は兎も角ですな、まあこれだけ豪快に景気判断下げましたし、たぶんFOMCの内部的には意思統一ができてなさそう(物価重視派とタカ派理事を抑えていないでしょ)という状況下でコミットメント抜きの時間軸もどきが出た状態というのは、先ほど申し上げた理由で今後のコミュニケーションが難しくなっていると思われるんですよ。

だから、という訳でも必ずしも無いですが、たぶんこの時間軸もどきの投入だけですと微妙に途中から話がややこしくなる(大体からして米国2年債なんて今は0.2%割れてますけどついこの前は0.7%台とか平気でありましたよね)と思われますので、どこかで何らかの緩和強化を出すような感じになるんじゃないですかってえことで毎年恒例のジャクソンホールでの落語が注目される次第となるのですな。

でまあそれは良いのですが、はて何をやるのやら???と考えるとこれまた難しくて・・・・・・

・超過準備付利金利の引き下げ
→そもそも実効FFレート高いわけじゃないですし、これ以上短期市場を潰してしまうと米国の場合MMFの資金が盛大に抜けてしまいまして、結果としてCP市場などが崩壊して企業とかが困る

・FEDの保有証券の長期化(短期売って長期買う)
→それやってそもそも本当に長期金利が下がるのかが怪しい(一時的な需給要因としては当然ながらイールドカーブにフラット化圧力が掛かるが、長期金利はそう簡単に振り回せないっすよ)し、カーブをフラット化させたから投資が増えるとかリスク資産に買いが来るのかというのは微妙


・国債買入拡大の復活
→QE2が効いたかどうか怪しい上に政治的に評判が悪く、CPI上昇率が明確に下向きになってきてデフレ懸念が出ないと厳しい

・モーゲージとかの買入復活
→恐らく現在の米国金融市場でいわゆる「市場機能の喪失」が起きている所はなさそうな感じなので突っ込む大義名分に乏しい


前者の2つが金利の話で後者の2つが量の話ですが、どうもイマイチ決め手に欠けるのですが、ジャクソンホールの講演や、今回FOMCで議論したと言われる内容を議事要旨で確認するしかないですな、正直何が投入されるのかのイメージが掴みにくいです。


#ということで金融経済月報やBOEの6月議事要旨やらトリシェ会見やらが全部積み残し状態になっているのは気のせいですorz








2011/08/10

お題「FOMC声明文から」

ということで寝起きでFOMC声明文を読んでみた。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110809a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110622a.htm(前回)


○第1パラグラフ:どう見ても景気の現状認識をそこら中で引き下げです本当にありがとうございました

・まずは冒頭の全体感

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that economic growth so far this year has been considerably slower than the Committee had expected. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April indicates that the economic recovery is continuing at a moderate pace, though somewhat more slowly than the Committee had expected. 』(前回)

ということで、「これまでのところの景気回復のペースは、FOMCが予想していたよりも著しく遅い」という中々残念な一文からスタートするのであります。


・各種需要項目に関して

『Indicators suggest a deterioration in overall labor market conditions in recent months, and the unemployment rate has moved up. Household spending has flattened out, investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed. However, business investment in equipment and software continues to expand. 』(今回)

『Also, recent labor market indicators have been weaker than anticipated. The slower pace of the recovery reflects in part factors that are likely to be temporary, including the damping effect of higher food and energy prices on consumer purchasing power and spending as well as supply chain disruptions associated with the tragic events in Japan. Household spending and business investment in equipment and software continue to expand. However, investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector continues to be depressed. 』(前回)

ということで、今回は書きっぷりが変わっているので細かく並べて比較するのがめんどいのでずらーっと引用しちゃいましたけど、あたくしのインチキ語学力でインチキに読んだ結果としては・・・・・・

(1)労働市場の環境については「weaker than anticipated」(予想より弱い)から「a deterioration」(悪化)と思いっきり引き下げ、失業率が上昇している件についてはまあこれは数字が示している話で事実を述べただけですな。

(2)家計支出に関しては「expanding」(拡大)だったのが「flattened out」(これをまともにあたくしのデイリーコンサイスで見ると「飛行姿勢に直る」なのですが、「水平になっている」という風に読むものではないかと)になっています。


・「足元の減速は必ずしも一時的なファクターではない」

この前議会証言で逆さ絵おじさんは足元における失業率の悪化に対して「これは一時的な悪化です(キリッ)」と言い切ってQE2は雇用拡大に効果があったとか思いっきり言っておりましたが、この前の議会証言での発言を状況に応じて変化するのに躊躇無しとは大変に柔軟な対応ですなあ(棒読み)。

『Temporary factors, including the damping effect of higher food and energy prices on consumer purchasing power and spending as well as supply chain disruptions associated with the tragic events in Japan, appear to account for only some of the recent weakness in economic activity. 』(今回)

『The slower pace of the recovery reflects in part factors that are likely to be temporary, including the damping effect of higher food and energy prices on consumer purchasing power and spending as well as supply chain disruptions associated with the tragic events in Japan. 』(前回(先ほど引用したものの一部再掲))


・物価に関しても微妙に弱い話に(次のパラグラフで見通しが下げられる)

『Inflation picked up earlier in the year, mainly reflecting higher prices for some commodities and imported goods, as well as the supply chain disruptions. More recently, inflation has moderated as prices of energy and some commodities have declined from their earlier peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has picked up in recent months, mainly reflecting higher prices for some commodities and imported goods, as well as the recent supply chain disruptions. However, longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

今回は現状認識部分の中で一文が追加されまして「特に最近は、エネルギーや商品価格が既往のピークを付けた後下落に転じていることもあって、インフレはモデレートになってきています」というのが入っていますが、この次のパラグラフ(第2パラグラフが先行き見通し)で物価の見通し文言をいじっていて、たぶんこれは文章の流れからして下方修正してるじゃろという所につながる認識部分かと思われます。


○第2パラグラフ:先行きの見通しがこれまた下がる下がる

先に結論を申し上げますと、(1)全体の景気回復が遅れるでしょう、(2)失業の改善が従来の想定よりも遅れるでしょう、(3)ダウンサイドリスクが拡大している、(4)インフレは今後数四半期で落ち着くでしょう、となっていまして、中々これまた残念な流れに。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)

これはいつもの文言ですのでまあスルー(前回と同じです)

・景気回復ペースおよび失業率改善の見通しについて

『The Committee now expects a somewhat slower pace of recovery over coming quarters than it did at the time of the previous meeting and anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(今回)

『The unemployment rate remains elevated; however, the Committee expects the pace of recovery to pick up over coming quarters and the unemployment rate to resume its gradual decline toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(前回)

今後数四半期における景気回復ペースについて今回は「a somewhat slower pace of recovery」「than it did at the time of the previous meeting」と景気回復のペースについて「前回のFOMCで委員会が予想したよりも幾分か弱いペースになるでしょう」という表現に変更し、更に失業率に関しては「the unemployment rate will decline only gradually」となりまして、前回の「the unemployment rate to resume its gradual decline」という表現との差は微妙ではありますが、おそらく「only」っつーのが強調表現だと思う(のだが違ってたら教えてジェネラル)ので、先行きの失業率改善に対しても回復ペースが弱まるとの見立てになっているのでしょう。


・「ダウンサイドリスクが拡大」

『Moreover, downside risks to the economic outlook have increased. 』(今回)

今回はこの一文が新たに追加されています。


・物価に関して

『The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity price increases dissipate further.』(今回)

『Inflation has moved up recently, but the Committee anticipates that inflation will subside to levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity price increases dissipate.』(前回)

まずは現状認識として「最近インフレが拡大しているけれども」という部分がすっぱり抜けとなりまして、前回は「過去のエネルギー及び商品価格上昇による効果が剥落した後にはインフレはマンデートで示された水準またはそれ以下に抑制されるでしょう」という表現でしたが、今回は「過去のエネルギー及び商品価格上昇による効果が剥落し、向こう数四半期の間にインフレはマンデートで示された水準またはそれ以下に落ち着くでしょう」という表現になっていまして、この動詞変化による(settleとsubside)によるニュアンスの差とか言われましても純ドメのあたくしワカランチ会長でございますが、今回はまず「エネ商品価格要因が剥落してきている」という認識を示している点と、先行きの物価が落ち着くと言う件について「向こう数四半期の間に」という時間を加えて物価の落ち着き(またはマンデートよりも低下するリスク)についての確信度を引き上げているのが特徴的であると思われます。


『However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations. 』(今回)

というのはこれまたいつもの表現(前回もあります)のでスルー。


○第3パラグラフ:時間軸(でも実はコミットメントが伴わない)の導入キタコレ

『To promote the ongoing economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent.』(今回)

FF誘導金利水準を0%-0.25%にするという話は前回と同じなのでスルー。

『The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(今回)

『The Committee continues to anticipate that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period.』(前回)

ということで時間軸キタコレということでございますが、小見出しにつけた「コミットメントがありませんなあ」という論点については後で申し上げます。

でですな、今回は「FOMCは経済の状況---資源の活用が低水準であること、中期的なインフレ見込みが抑制されていること---が、異例の低水準であるFF金利を少なくとも2013年半ばまでは正当化するでしょうと現在は予想します」(日本語訳がヘタクソでどうもすいませんすいません)という表現になっておりまして、従来お馴染みだった「for an extended period」という表現から時期を明示したという形になりました。

まあ時間軸ちゃあ時間軸なのですが、これに関するツッコミは後で。

『The Committee also will maintain its existing policy of reinvesting principal payments from its securities holdings. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate.』(今回)

「現在FEDが実施している保有証券の償還再投資は引き続き維持します。また、委員会はFEDが保有する証券の額やその構成について、必要があればその調整を行います。」というのは前回と同じ表現になっています。


第5(第4)パラグラフ:これについてはMinutesを見たいですが、必要なツールの検討をしたとな

『The Committee discussed the range of policy tools available to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. It will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ these tools as appropriate.』(今回)

『The Committee will monitor the economic outlook and financial developments and will act as needed to best foster maximum employment and price stability.』(前回)

前回の声明文における第5(第4)パラグラフの表現はまあどうでも良い一般的な話でございましたけれども、今回に関しては「物価安定の元でのより強い景気回復を導く為に必要な各種政策ツールについての検討を行いました。私達は今後得られるデータに基づき経済の先行きを引き続き点検し、必要な場合にはこれら検討を行った政策ツールを使用するでしょう」ということで、まあどちらとも取れる表現ではありますが(つまり「物価安定」という表現を用いていますと、物価上昇の恐れがあった場合に関しては、必要な政策ツールは「追加緩和」ではなく「出口政策」になるとも解釈できるわけですよね)、足元で景気と物価の現状認識及び先行き見通しを引き下げていますので、ここをすんなり読むと、「追加的な刺激策のツールを検討して必要であればそれを適用する」という話になると思います。

が、この先にありますが、票決で3名が「低金利政策継続に関する表現」に対して反対票を投じていることから判りますように、必ずしも追加緩和一辺倒でもなさそうですし、先ほど申し上げましたように「物価安定の元での」より力強い景気回復という文言はある意味トリックみたいなもんで、逆に物価の上昇とかいう話になるとここの文章が出口政策の政策ツール検討という風に読めるという便利な表現になっているのはFEDクオリティでございます。


第6、第7(第5、第6)パラグラフ:票決では3名が反対

前回は全会一致でしたので第6(第5)パラグラフしかありませんでした。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.

Voting against the action were: Richard W. Fisher, Narayana Kocherlakota, and Charles I. Plosser, who would have preferred to continue to describe economic conditions as likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an extended period.』(今回)

ということで、今回は「for an extended period」の文言変更に関してフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの各地区連銀総裁が反対票を突っ込んで参りまして、さあ盛り上がってまいりましたというところですが、実はここもと地区連銀総裁とかが景気や金融政策に関する講演とかが色々出てたので、もっと読んでおかないといけない所なのですが、何せ色々と微妙にネタがアルモンテなので中々追いつかないでござるの巻でありまする。


○ということで時間軸なんですけどコミットメントが無いのは微妙

てな訳で以下はあたくしの私見(つーかその前もあたくしの私見だが^^)っすけどね。

『The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(今回の時間軸部分再掲)

えーっとですな、今回の時間軸っぽいのって「経済状況は異例の低金利を2013年半ばまで継続する事を正当化すると委員会は現在予想する」という表現をしてまして、早速「FOMCは2013年半ばまでの実質ゼロ金利政策の継続を約束した」とか時間軸ヒャッハー状態になっておりまして、いやまあ足元では見通しの下げとかやっているからヒャッハーになるのはそらそうよとは思います。

でもね、冷静になってよくよく見ますと、ここでの表現は「現在の経済状況に鑑みますとこういう予想ができます」という風にしか言っておりませんでして、それ即ちどーゆー事かと申しますと、別に特定の指標(まあ米国の場合だったらCPIかコアPCEデフレーターか失業率かという事になるんでしょ)に紐をつけて明示的にコミットメントを行った訳では無いのでござんして、つまりは都合が悪くなったらここの時期がさっくり変わる可能性があるという中々お洒落なものなんですよね。

いやまあ足元の経済状況からしたら直ぐにこれが変更されるとか無いでしょう(よほど突如インフレ期待が上昇して物価がスパークでもしない限り)とは思いますし、大体からしてこういう文言入れて次のFOMCミーティングでいきなり文言変更したらコミュニケーションポリシー上如何なものかという話になりますので、まあ直ぐにはどうこうと言うのは無いとは存じます。

ただし、経済物価情勢が変化した場合には、市場の方が勝手に「この表現が変化する可能性って実はあるよね」という話を始めてまたまたヒャッハーとなるリスクがある訳でして、かつて日本では量的緩和導入時にCPIに紐つけて量的緩和の継続をコミットしたものの、2003年の株価回復ヒャッハー相場の時に最後は中期金利とかまであばばばばー状態になるという素敵な展開がございまして、最終的に市場安定化の為に時間軸のコミットメント強化をする破目になったというのがありますように、市場ちゃんの方が経済情勢(つーかたぶん株価とか商品価格またはCPI)を見てヒャッハーというかあばばばばーというかマーライオンというかの楽しい状態になる可能性は否定できませんなあと思います。

大体からしてケツを決めてしまうと実は時間軸が徐々に短くなってくるので、何かの指標などに紐付けしないで「全体感」でケツを決めてしまうと、じゃあ3か月後のFOMCではこの2013年半ばが2013年後半になるのかねとか、半年後のFOMCでは2013年末になるのかねとか一々楽しい事になりそうな悪寒もするんで、コミュニケーションポリシーとしてはちと微妙な感じがします。というかミスコミュニケーションになりそうな希ガス。

というようなリスクも考えて3名が反対したのか、純粋に物価見通しなどで反対したのかとかはMinuteを楽しみに待ちたいと思います。


#ということで今日は俺様書類読みにお付き合い頂きまして恐縮至極でございまする










2011/08/09

お題「ネタがうじゃうじゃ出てきて熟考が追いつかないアルよ><;」

○NY株式が下落ですかそうですかという起き抜けメモ

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aKTPaDpkJNL0
世界株安の様相、米国債は上昇−米格下げに伴う投資家懸念を反映

・・・・・・・米国格下げに伴う懸念があるんだったら何で米債の利回りが前日比15毛も低下(今見たら25毛強ですかそうですか)するんですかと。

つーか「世界的な株安がNYに押し寄せました」とか言ってるけど欧州でECBの国債買いがどうしたこうしたという話をしている時(昨日の東京の夕方)ってスペインとかイタリアは株も債券も爆騰(株より債券の爆騰ぶりがワロタのだが)しとったんだが(今見たら上昇していたスペインとかもマイナスですかそうですか)。ちなみにドイツとかの債券はその時点では下落しておられましたが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=axMVysfdFx7A
欧州債:イタリアとスペイン債急伸、利回りがユーロ導入来で最も低下

↑これは日本語が微妙に紛らわしくて、「利回り低下幅」が最大という事でして、「利回り水準」の方は相変わらずのあばばばばーであるのはご案内の通りでございます。ご参考まで。

まあそもそもの問題は欧州のような気がしますけど何がどうなっているのやら。アジア株が妙に威勢良く下がったのと含めて考えると、いわゆるひとつの「リスクオフ」という後付講釈とモメンタム説明に便利だけど実態が無いのであまり使わない方が良い便利なマジックワードを米国投資家の動きとして使うしかねえのかなと思うのでありましたorz

というかモーサテのコメンテーターはん「格下げを受けてダウ下落」「米国債担保価値低下で借り入れ可能額減少」とかゆーとるがお前さん米国長期債が威勢良く金利低下している話との整合性が全く取れないだろ。


○米国よりも格付けが低い国なのに安全資産&SNB涙目

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920014&sid=aSQwzPrRBWgk
NY外為:円とフランが上昇−米格下げと欧州債務危機で逃避需要

ということで主要クロスレート
http://www.bloomberg.co.jp/markets/currencies/fxc.html

今(東京の朝6時ごろ)のレートでドル円が77.7125だそうですが、
スイスフランのレートが泣けるざます。
CHF-EUR:0.9342

・・・・・・えーっと、これって直近高値を更新してスイス高になっていると思うのでございますが、利下げして量的緩和もどきのようなこと(量的緩和というよりは当座預金ターゲット政策という方が表現として適正かと)を実施したのですけれどもこりゃまた残念なことですなあ(棒読み)という感じですが、以前介入した結果損師となってしまった件で結構ボコボコに不評となっているSNBさんでいらっしゃいますが、これはヤケを起こして介入をするのでしょうかとwktkの展開ではございます。

というのが朝起きての雑談であるが、本来のネタを投入しナイト。


○1日の資金需給の数字だけ見て非不胎化介入とかまだ言ってるのは困ったもんで

どれを晒し上げにしても良いのだが検索に引っかかったのが朝日新聞なので朝日をネタに。
http://www.asahi.com/business/update/0808/TKY201108080139.html
円資金、4.8兆円供給 日銀、円高防ぐ狙い

『日本銀行は8日、金融市場に事実上約4.8兆円にのぼる円資金を供給する。市場に出回る資金を大量に増やすことで市場の不安を和らげるとともに、金利の低下を促して円が売られやすい環境をつくり、円高ドル安を防ぐ狙いだ。』

『政府・日銀は4日、円を売ってドルを買う為替介入に踏み切り、規模は4兆円を超えた。この時に売った円資金が決済されて8日の市場に出回った。日銀は、資金量を一定に保つため、手持ちの債券を売るなどして円資金を吸収することもあるが、今回は市場に放置したままにする「非不胎化」を選んだ。』(両方とも上記URLより)

何か微妙に判ったような判らんような書き方をしていますが、そもそも資金供給しているのは「外国為替特別会計」という財政要因で日銀が供給している訳ではない(何となく2段目の書き方はそういう書き方になっているが)ですし、そもそも「市場の不安を和らげる」とか関係ないですから。

で、まあ最大の問題点は相変わらず「非不胎化」の話をしていることでして、もうこの話は去年9月の介入の時に悪態書いた通りで、その日一日の資金需給の結果を見て非不胎化だの何だのという話をするのは無意味でありまして、恒常的に超過準備がある状態を放置すると短期市場金利は預金ファシリティー金利まで勝手に低下するのですから、過去の枠組みですと介入で放出された資金分は通常の資金需給も含めて調節されますし、現在の枠組みですと誘導目標金利が0〜0.10%であって預金ファシリティー金利が0.10%なのですから別にその分の資金需給は放置して良しという話ですわな。

その後介入分を為券発行するとか(外為特別会計の円貨預け金とかもあるので、特に為券が増発されないかもしれないけど)の事後的な話で非不胎化どうのこうのというならまだ話は判る(が基本的には為券が増発された場合には当然ながら財政要因による資金吸収要因になりますから、その分っていうのは他の条件が中立だとした場合には資金供給として出ないとインターバンク市場的に言えば資金需給が狂ってしまいますので、事後的には介入資金分の財政揚げ分ってのは資金供給される筈なんですけど、数十兆円単位で介入でもしないとそれ以外の資金需給要因の方が大きいのでその中に紛れてしまいますんでよく判らんという結果になると思いますんであまり意味のある話では無いと思うんですけど)のですが、1日の資金需給で非不胎化だの何だのとか言うのって何なんだかと思います。

・・・・・・・でね、朝日をたまたま槍玉に挙げましたが、そもそもあたくしがベンダーで見てたまげたのは共同通信が大々的に「非不胎化」とかいうヘッドラインと記事を配信していることでして、まあ共同がそういう記事を打ったら他の全国紙や地方紙は追随するわなと思う次第でありまして、とりあえず共同通信勘弁してよという所でございます(さすがにあたくしの見た限り時事とブルームバーグは非不胎化の話はしていませんでした)。

ちなみに、ブルームバーグニュースは逆に「市場の動揺を避けるために即日資金供給の可能性を指摘する人も」みたいな記事を出していました(探すのめんどいのでURLはスルー)のですが、まだその方が話としては筋が通っていますが、そもそも今回のネタは欧州と米国が震源で、かつ別にどこかの金融機関が飛んだとかデフォルトしたというような話ではないですし、盛大に円高に振れている位ですから円資金に関して言えば市場にストレスは掛かっていないですので、どっからどう見ても即日資金供給のニーズ無し。

というか、昨日の場合は介入で出てきた円資金が余ってT+0やT+1でGCを買いたい(=資金運用したい)ニーズの方があるという素敵な状態でありましたので、変に即日資金供給して事情を知らない人たちが「円資金市場でもストレスが掛かっているとは大変だあ」みたいな変な誤解を招かないようにという観点からすると、即日資金供給というのもこれまた変な話(だいたいからして実施しても札が100億位しか入らんのとちゃうかと)ですので、まあオペはあんなもんでしょという事でございます。

ま、非不胎化云々に関しては日銀もその辺の誤解を利用しようとしているというか、変に余計な事言われないようにというのは考えていたようで、介入の翌日になります金曜にはわざわざT+1スタートの本店オペを2兆円オファーして(入ったのは1.2兆円)8日のオペレーション要因での資金需給をプラス方向に振らせておいて、8日にオペレーションで要因で回収していないような見た目に出来るようにしたというのは芸の細かい所でございます。まあその1日の資金需給を捕まえて非不胎化がどうのこうのとか言う人たちが居なくなればこういうしょうも無い努力もせんで良いのですけどねえ・・・・・・・


とか余談だけで時間がドンドン経過していく段取りのわるいあたくしorz


○総裁会見続き

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1108a.pdf

・景気見通しについて

これに関しては(とっくに出ていますがまだネタにするのに追いついていない)8月の金融経済月報を見ると判るのですけれども、7月対比での月報比較をすると、足元の景気に関しては需要項目別にああでもないこうでもないと書くのが復活しているのでございますけれども、現状判断は若干引き上げになったような感じがします(今日間に合わないっすorz)。で、先行き見通しは特に変化が無いので、こういう質疑応答になる訳で砂。

『(問) 今後の景気見通しについて伺います。本日の発表文では「緩やかな回復経路に復していく」という文言は残っていますが、今まであった「今年度後半以降」という時期についての文言は抜けています。これは、回復が後ずれする可能性があるという意味なのか、それとも書いてはいないが今年度後半以降という基本的な回復のシナリオは変わっていないのか、ご認識と理由を教えてください。』

『(答) 日本銀行は4月に展望レポートを公表し、7月に中間評価を行いました。これまでのところ、足許の経済の歩みは展望レポートの想定通りですし、先行きの中心的な見通しについても、今回修正したということではありません。今回、全てを書き込むと発表文が長くなりますから書き込んではいませんが、現状判断、それから先行き判断の中心的なシナリオを変えたということではありません。ただ、先程強調してご説明した通り、従来から意識しているリスク要因について、その後の展開を踏まえると、より下振れリスクを意識した方が良いと判断し、今回の政策措置を採ったということです。』

つまり下振れリスク対応ですということで、シナリオが変わったわけではないというのが中々チャーミングな所です。


・決定会合を引き伸ばして掛け金がレイズされるリスクについて

これはなるほどと。

『(問) 為替介入が行われたその同じ日に、決定会合の日程を1日に短縮して決めた追加緩和策ということですが、為替介入と足並みを揃えて、同時に追加緩和を行うことの意味について、総裁はどのようにお感じになっていますか。』

『(答) 本日、午前中から為替介入が行われたわけですが、たまたま、金融政策決定会合が本日と明日に予定されていました。もちろん、本日と明日の2日間をかけて議論した上で明日の午後に発表するという選択肢はあり得ます。しかし、その間にマーケットで様々な思惑が生じるわけで、そうした思惑が出ることに伴う副作用と、一方でこれを1日繰り上げ、不確実性を消して、マーケットに対して私どもの強い姿勢を示していくことのプラス面を考えた場合、答えはおのずから明らかだと思いました。』

たまたまはねえだろと思いますが(^^)、まあそれは兎も角として会合を下手に引っ張ると期待がどんどん高まってしまうリスクがあるというのは確かにそうですな。まあそもそも今回の流れは(やたら円高問題を強調した山口副総裁講演および亀崎審議委員講演の辺りから妙な感じが無かったわけでは無いのですが)急に緩和が来たのでという感じでございますので、まあこういう感じになったんでしょうかね、うんうん。


・2年金利と為替に関して

ヘッドラインを見たときには「えー」と思ったのだが内容は穏当ですた。

『(問) 今回の措置の効果の波及経路についてお伺いします。円高によるマインドの下振れを防ぐことが今のご説明で分かったのですが、長めの金利に働きかけて為替に影響を与える意図があるか否かという点をお聞かせ下さい。』

『(答) 為替相場は、もちろん金利差だけで決まるわけではありませんが、金利差という面からのご質問だと理解しました。例えば、日米で考えた場合、どの期間の金利差が最も為替相場に影響するかについては、なかなか先験的には言えないと思います。ただ、マーケットのアナリストのコメントをみていると、2年物の日米の金利差に着目した分析が多いように思います。なぜそういう分析が多いのかという点について、以前、期間別に内外金利差と円・ドル相場の関係を分析したことがあります。結果的には、2年程度の内外金利差の説明力が相対的に高いという結論になりました。』

ほほう。

『だから2年だということではありませんが、現在私どもが基金で行っている方法論は、金利面を通じてそうした影響もあり得ると思っています。』

あり得ると思っていますとかこれまた微妙な表現でニヤニヤ。


・でも2年金利って低いですよねと言うツッコミ

これは良いツッコミ。

『(問) 2点お伺いします。1点目は金利の低下について、基金の買入対象期間の2年物近辺の金利をみると、2年ぐらいまでの金利はすでに政策金利にきわめて近い0.1%台前半になっています。そうした中で、基金の枠を10兆円増やすことによって、どういう経路で経済に波及していくのか、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。(2点目は為替の水準感の話なので割愛)』

『(答)(2点目の回答部分割愛)1点目の質問については、これだけ日本銀行が徹底した金融緩和を行っているわけですから、金利水準は相当程度低下しています。こうした中で、私どもに課せられた課題は、中央銀行の金融政策という手段を使って、どのようにして緩和効果を生み出していくかということです。』

ほほう。

『確かに、金利水準は既に低い水準にありますが、金利の低下あるいはリスク・プレミアムの縮小に向けて残された金利の余地を最大限活用していくことが適切だと思います。 その効果については、1つは国債に代表されるリスクフリー金利の低下、あるいはリスク・プレミアムが上乗せされて形成される民間の金利を引き下げていくことが1つの効果です。結果として、株式市場や為替市場にも相応の影響が出ていく、もちろん金利の低下幅が5%ある経済とそれがずっと小さい経済では違いますが、その中で中央銀行としてどういう政策を追求していくのかということが第1のルートです。』

ということで(長くなるので割愛しちゃいましたが)他の質疑で基金の今後の拡大余地について質問された所で「いやそれに関しては決めうちできる話ではないです」みたいな答えがありましたが、まあ効果のルートとして「金利の低下」「リスクプレミアムの引き下げ」という話になった場合、社債などのクレジットスプレッドは既に多くのものが震災前水準に縮小(債券インデックス的には東電債およびその他電力債のスプレッド拡大の要因があるので別ですが)してますから、そうなると金利の低下ルートという話になると思いますけど、さてどうするんでしょうかね今後は・・・・・・・

『第2のルートは、日本銀行が現在の経済・金融の状況について、先程申し上げたような認識を持っていて、状況に対応して行動をとっていることを明確な形で示すことを通じて、企業のマインドにもそれなりの好影響を与えていくことを期待しているということです。』

まあこっちは気合の世界になりますけど、では気合を示すためにはどういう方策になるのでしょうかねえというのも考えると、こっちのルートだと「意味は無いけど買い入れ拡大」という素敵なルートが想定されて中々アレなものを感じるのでございまするorz


○明日にはFOMCの結果が出やがるのでその前にECBネタのメモだけ

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110804.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

Jean-Claude Trichet, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 August 2011


http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110807.en.html
PRESS RELEASE
7 August 2011 - Statement by the President of the ECB

Q&A付きの奴は土曜(日本時間の土曜の朝ではない)になってやっと出たので、まあそちらをへこへこ読んだのですが、何か月曜の朝になってみると急にプレスリリースが来たので状態になっているのが実にこうアレでございます。

でですね、最初のほうを見ていると、6MのLTROの復活の話はしているのですけれども、景気認識に関してはやたらめったら強気で景気のリスク認識は上下共に「バランスしている」とかどこのアナザワールドだよという説明をしている上に、インフレリスクは堂々のアップサイドというお花畑な説明及び会見質疑なのですよね。

まあ国債買入に関しては「いや別にこのプログラム休止した訳じゃないですし」とゆーよーな話はしているのですが、読んでいると国債買入に関してやる気満々という感じでも無さそうで、お助けオペ発動するのかしないのかイマイチよく判らんと読んだのはあたくしの勝手な解釈なんですけど、いずれにせよよー判らんという感じ。

・・・・・・と思ったらいきなり7日に豹変して国債買いまっせイタリアやスペインの財政再建姿勢は素晴らしいでっせとかいう声明が出るとか、これがトリシェクオリティと言ってしまえばそれまでですが、そもそも世界経済の変調のきっかけはお前の逆噴射利上げじゃねえのかと思いますと何だかなあという感じでございます。

詳しくは明日以降に何とか(汗)。










2011/08/08

お題「だいたい決定会合レビューの続き」

決定会合レビューの前に米国格下げ雑談でござる。しかし中国って何を偉そうにアメリカに文句垂れてんだか。

○その前に米国格下げネタ

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=as3Wc8sT2ph8
米国を「AA+」に格下げ、赤字めぐる政策決定を批判−S&P(3)

『8月5日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、米国の長期格付けを「AAA」から「AA+」に1段階引き下げたと発表した。米長期格付けの引き下げはこれが初めて。S&Pは米国の政治プロセスを批判するとともに、議会で合意された歳出削減策では過去最大の財政赤字の削減に不十分との認識を示した。』(上記URLより)

ということで、オバマ大統領の誕生日(8月4日)に結構なプレゼントという感じですが、まあこれはこれで財政赤字削減に関する協議が進むという点で何か政治的なアレなものを感じますけれども、別にだから何なのとか思ってしまうのは日本国債の格下げ食らってその後格上げを食らったものの、結局それがネタになったのって最初の格下げの頃だけで、その後はただのギャグ状態になったという先行事例を身を切ってやっているせいですかそうですか。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aZmKthwRrutA
外為:ドルは下落、S&Pによる米「AAA」格下げを嫌気−77円70銭

ほほう。まあ何か一応反応するようですが、ソルベンシーに問題が無い国で格付けがどうのこうのという話をしてもそれはあまり意味のある話ではなく、正直どうでも良いというのはニポーンで散々やっていると思うのですけれども、何で世界に波紋が広がるとか日本のメディアは大騒ぎするんだか。

どちらかと言うと「そんな事言ったら格付けが同じS&P社でAA−のネガティブになっている日本円が市場で何で買われるんですか」という論点で報道して貰いたいのですけどねえ、まあどうでもいいけど。


ということで本件は雑感だけ。以下介入と追加緩和関連ネタである。


○介入額が4兆5000億円くらいあったようですな

日銀による本日の資金需給予想
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp110808.htm

『財政等要因(受超=マイナス) 44,600』

ということで、本日の財政は払い超が4兆4600億円の見込みになっていますけれども、もともと8日は財政の出入りはネットで0〜▲2000億円程度の予想(短国発行と償還要因がありますが単純にロールされるのでチャラ)となっていましたので、つまり大体上記の額が為替介入による財政払い要因とゆー事になりますんでその額が為替介入額と思われますな、という話。

えーっと、何か木曜の時点では介入額が1兆とか2兆とかそんな感じの話があったような無かったような気がしますが、思いの他介入額が多かったですねその割には80円にワンタッチ(スリータッチ位してたかね)程度で戻ってしまいましたねという風情でありまする。

いやね、木曜の時点ではまあ頑張って持って行ったねえとか思っていたのですけれども、4兆5000億円も打ち込んでいたのかよと思いますと何かまた別の印象も受けるわけでして、米国格下げ要因はさておいても金曜の時点でドル円は78円台だったりしたと記憶しておりますが、まあ何と言うかその程度の効果しかなかったですね残念ですねという感が。

何を申し上げたいかと言いますと、よーするに今回の介入+緩和のセットなんでございますが、事前に変な報道をしないでそれこそサプライズで入れておけばもっと少ないコストで効果を出すことが出来たと思われる次第でありまして、誰が何考えて今回の作戦を作ったのか知りませんが、ヘタクソにも程があるとしか申し上げようがございません罠という所であります。つーか片棒担ぎの日経新聞はとっとと廃刊しやがれとか思いますけどね、為替介入のコストをわざわざ引き上げる報道の翌日には企業提携をおじゃんにする誤報ヘッドラインを打ち込むし、何か日本経済破壊新聞とかに名前変えた方が良いんじゃないの。

・・・・・と、話があらぬ方向に逸れましたが(^^)、4兆5000億円も打っていたというのを後付で知って恐らく「作戦が下手糞すぎ」という印象を受けたのはあたくしだけではありますまいて。


○そういえばスイスフラン動向ですが

http://www.bloomberg.co.jp/markets/currencies/fxc.html

先ほど(東京8日朝6時位)に更新したらこんな数値。
CHF-EUR(先日は書き方逆でしたすいません):0.9144

ちなみに昨日の夕方(18時半)に見た時はCHF-EUR:0.9204という感じでしたので若干スイス安になっていますが、SNBの利下げアナウンスが出る前が大体0.92近辺で利上げ後に0.91割れとかまで行ってたので、利下げによるスイス高抑制効果は1日にして終了という中々お洒落な結果に。

まあ対ユーロという点で言えばECBの政策決定およびその後の会見(これがまた何ともアレな会見で何をどうするとそんなにタカ派のコメントが出来るんだという感じなのですが今日はどう見ても時間が無いので後日)で色々とカーニボーになったという面がございますので、そーゆー点ではちょっと間が悪かったですねというのもございますが、利下げして(と言っても先日申し上げたように元々CHFの3MLiborは誘導中心水準の0.25%の半値位の数値で推移していたので下げ余地がそんなに大きい訳でもなかったりする)当座預金ターゲットもどきの政策を実施しても、まあ今回に関しては問題がユーロの方にあるので、中々簡単には効きませんなあというお話でございました。

・・・・・・とか思ってたらさっきブルームバーグの関連ニュース見て目がテンに。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920009&sid=aMMMNqF.Y.90
介入で円高圧力の集中砲火を回避−追加策は金融緩和が中心との見方も

えーっと、まあコメントしている人に悪態つこうかと思って記事を真面目に読んだら、コメント自体は日本の介入実施前&SNBの利下げ後のコメントで、どうも記者の勝手な思いが記事に反映しているだけのように見えますが、上記のようにスイスの利下げが為替にたいして効いていないと(というか昨日の夕方の数字見たら利下げ前の水準に戻っているんですけど)いう大変に素敵な状態になっているのでありまして、今更日本が追加緩和してどうこうという話ではないと思うのですが、何をどうするとそういう理屈になるのかワケワカラン。

単に日銀が追加緩和すると記事になるしネタとして書きやすいからという事ではないかと禿しく邪推したくなるのでありますが、スイスが既に身を切って実例をしめしているのに何が何だかと思うのでして、メディアもちったあモノ考えて書けやとか思う朝のひとときでございました。

#そんなに円高が困るなら特例公債法案問題でもっと大騒ぎした上で不成立にすればいいじゃん


○日銀は資産買入を前倒しで実施した方が良いのではないかという件について

金曜にああでも無いこうでもないと書いた中で、資産買入等の基金に関して

>でもって、下のほうに『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』とございますので、従来の「2012 年6月末を目途に増額を完了する。」(3月14日の決定会合声明文より)となっていたのに対して足が半年伸びましたねという所です(金曜の当駄文です)

という風にさらっと書きまして、足が伸びた事でまあ時間軸強化みたいなイメージを書いたのですけれども、よくよく改めて考えてみるとこの期間延長は別にしてもしなくても良い話でして(たぶん物理的に増額完了するかどうかが微妙というのがあるのでしょうけれども、特にETFとJ-REIT)、どうせ実施するならばもっと威勢良くリスク性資産の買入を実施すべきではないかと思うのであります。

つまりですな、これは金曜も申し上げましたが、どうせ買うなら国債買うよりはETFとか買った方がマネーが実体経済に回ってくれると思いますし、使う資金自体は少ないですしと思うのでございます。まあ国債買う方が数字上は嵩を稼ぐ事はできますけど、実際の効果という話になった場合、短期金融市場(と債券市場)でその金がグルグル回っているだけの話であって、実体経済に染み出して動くマネーにならないんじゃ無いですかと思うのよね。

いやまあETFを沢山買って良いのかよという論点はあるかもしれないけど、どうせ日本経済が終了したら日銀だって終了なんですし、あまりその辺を気にしてもシャーナイという感じじゃねえのかなあと。バブルになるんだったらその時に今度は売れば良いのですからとは思いますが、その「売る」のが抵抗大きいのが見えているから買入の拡大に二の足を踏んでいるというのは判りますけどね。

ただまあとりあえずはETFの買入拡大は決まった訳ですから、できるだけその買い入れを前倒しして株式市場に安心感というかそういうのを起こすようにした方が良いと思いますけどね。為替市場に兵力突っ込むよりはETF買ってる方がマシな気がする・・・・・


○社債やCPの一社辺り買入限度を拡大しろと真面目に言ってる人は金融政策の趣旨を勉強すべきである

総裁会見の中でもあったんですけどね。

『2つ目の質問についてですが、CPあるいは社債の買入れについて、1発行体当りの限度額を緩和すべきではないかというご意見が、マーケットの声としてあることは、もちろん承知しています。マーケットの中で、こういう買入れによって直接的にプラスの影響がおよぶ投資家からみると、買入れはできるだけ多い方が良いという声になることはもちろんありますが、ただ私どもとしては、金融政策の一環として行っているものなので、最終的に、金融政策の目的に照らして有効かどうかが、常に判断軸となるわけです。』(これは4日の総裁会見から)

>こういう買入れによって直接的にプラスの影響がおよぶ投資家からみると、買入れはできるだけ多い方が良いという声になることはもちろんありますが

いやまあそれはギャグで「この際どこぞの社債をもっとヤケクソで買ってくれると嬉しいなあ」というような話はありますけれども、日銀の金融政策は別に個別企業のお助けオペを実施する事ではございませんので、まあそんなに露骨に対象期間に入る企業の社債を全部お買い上げみたいなオペはよーしませんわなというのは良く判ります。

・・・・なんですけど、本職の何とかストの方で限度額緩和というのを本当に大真面目に論じている人もいるようで、何と言うかまあポジショントークするなとまでは言いませんけど、あまりにも恥ずかしいのでちょっと自制しろよと思うのはあたくしだけですかそうですか。


・・・・・・・・・・・などと決定会合レビューと言うかただの雑談状態になっている雑談が長くなってしましまして、肝心の金融経済月報と総裁会見ネタの時間が僅少になってまいりましたのは事前準備しないとマズイなと思いながら事前準備しなかったあたくしの段取り不足ですどうもすいませんすいません。


○でも一応総裁会見を

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1108a.pdf

まあ今回は思いっきり円高対策なのですが、その円高の弊害として「円高→海外シフト」への懸念というのを前面に出しているのが特徴ですかね。

・円高の影響に関して

『(問) 決定文の中に、「為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある」とありますが、このマイナスの影響について、もう少し具体的にご説明をお願いします。また、本日の決定には、為替の水準自体がやはり看過できないという判断に至ったものかどうか、ご説明頂けますでしょうか。』

『(答) 後の質問からお答えしたいと思いますが、日本銀行として、特定の為替相場水準を念頭に置いて政策運営を行っていくということではなく、為替相場の変動も含めて、わが国の景気・物価情勢の先行きにどのような影響を与えていくかという観点から、政策判断を行っています。』

まあこれはこう答えるしか無いので仕方ない。

『次に、円高のマイナスの影響についてですが、現在の円高がどういう局面で生じているのかということを考えてみる必要があると思います。海外経済を巡る不確実性が大きい中で、グローバルな投資家がリスクを取りにくいという状況にあり、リスクが非常に大きいとみられる通貨から、とりあえずリスクが小さいとみられる通貨に、買いが集まるという現象が生じています。その出発点として、海外経済を巡る不確実性が大きいことがあり、その中で、円高が生じているわけです。』

ほほう。まあ冷静に考えたら日本のほうがよっぽど不確実性が大きいですけど(^^)。

『それから、先々の電力供給の制約問題をはじめとして、日本経済が課題を抱えている中で円高が生じることは、企業マインドという面でも、また、日本企業の生産シフトを促進、加速してしまうというリスクの面でもコストがあると判断しています。』

という事で、まあ以下円高に関する質疑が幾つかありますが、ここの部分が白川総裁としての論点を網羅した感じになっています。要するに一番の懸念は円高による企業のマインド悪化と生産の海外シフト促進である、という話でして、そうなりますと日銀だけではなく政府も規制緩和や税制改革などしやがれコノヤローとは白川総裁は紳士につきこういう場では発言しませんが、まあそういうことですねわかります。


・今回は中短期金利の低位安定を促す措置ですな大体

『(問) 今回の基金の増額ですが、増額の規模と内容について、どうしてこのように決めたのか、また、その狙いについてご説明下さい。』

『(答) まず、増額の規模について申し上げます。先程申し上げたように、景気の下振れリスクについて、より留意すべき局面にあります。そうした事態に対して、日本銀行として政策措置を採るという姿勢を明確に示すためには、それに対応した規模が有効と判断し、今回は5兆円の刻みではなく、10兆円としました。』

今回は「下振れリスク対応」ということですな。

『次に、増額の内訳についての考え方です。昨年10月の基金導入時や本年3月の震災後の増額時と同様、これから申し上げる3つの原則を踏まえて、配分額を決めています。第1に、長めの市場金利の低下やリスク・プレミアムの縮小を促すという政策目的に照らして効果の高い配分にするという基準です。第2に、各資産の市場規模面での制約や市場特性に応じて適切な配分にすることです。第3に、リスク性の資産を買い入れるということは、最終的に納税者の負担となる可能性もありますから、中央銀行として、財務の健全性に配慮する必要があるということです。この3つの基準、観点で考えました。』

ではその内訳。

『第1の観点からは、まず、やや長め、すなわち、一般にターム物と呼ばれる1年未満の資金を一層潤沢に供給するために、6か月物の固定金利オペを5兆円程度増額することとしました。また、残存期間6か月超のものを中心とする短期国債の買入を1.5兆円程度増額することとしました。さらに、1年未満の金利のこれまでの低下状況を踏まえ、長期国債の買入額の割合をこれまでよりも高め、2兆円程度の増額としました。また、幅広くリスク・プレミアムに働きかけるため、社債、ETFなどのリスク性資産を1.5兆円程度増額することとしました。』

2年近辺の金利を下げる(というか既に下がっているので低位安定を促すというのが正しいような気がするが)のがメインで、前回の震災直後の「リスクプレミアムの跳ね上がりを押さえる」というのとは意図が違いますよという話ですな。

『第2の観点からは、J−REITやCP等は、個別発行体の経営への関与や信用リスクの過度の集中を回避するため、1発行体当りの買入限度を設定しています。市場規模とともに、こうした1発行体当りの買入限度からみて、既に買入余地が大きくないJ―REITやCPについては、少額の増額に止めました。』

まあJ-REITに関してはこれ以上買うと日銀が大株主銘柄状態になるもの続出になるでしょうし、CPに関しては既に市場レートが見事なまでに潰れているのでこれ以上の買入をするとただでなくさえ民業圧迫状態なのに拍車が掛かるというかCP市場そのものが最終投資家の離散によって発行体とブローカーと日銀だけ状態になり兼ねませんからそれはそれでマズーですわな。

『第3の観点からは、ETFおよびJ−REITについては、これを大量に保有すると、市況の変動如何によっては、最終的に大きな損失が発生し、納税者負担につながる可能性があります。その点を踏まえ、日本銀行の財務の健全性に対する国民の信認を確保していく観点から、合計0.5兆円程度の増額としました。』

REITに関しては個別企業への資源配分という観点から拡大するのはどうかと思いますけれども、ETFに関しては個別企業への資源配分に直接繋がるわけではない(ETF構成銘柄の発行体企業への恩恵という意味あいはあるのはそうですが)ので、先ほど上であたくしが書いたように、あたくし的にはETFについてはもっと拡大するのはアリだと思うのですけどね。


・以下は明日に続く

どうもすいませんすいません。後は今回のタイミングに関して日銀の独立性がどうのこうのの質問が当たり前のように多く、総裁がムッとしながら答えていたと思われるのが多かったですなあというのと、経済見通しに関する話が少々という感じなのですけれども、時間がなくなったので明日で勘弁。

#積み残しのネタが溜まる、というかネタというのは出るときに一度にでるもんですな










2011/08/05

お題「NYで株がクソ下げしてますが昨日の介入&決定会合レビュー」

まあ何か急にMPMが1日になったのでもしかしたらとかゆー話もあったのですがECBもアチャーとなりまして益々「緩和のシンクロ」っぽい雰囲気が出てまいりましたなあ。

というのはありますが、まあその辺の話もしないとと思いつつもまだそこまで頭の整理ができていないので昨日のレビューから。

○介入実施と決定会合の前倒し実施のアナウンス

昨日はご案内のように朝の10時くらいに為替が飛び出しまして、その後介入実施の報が。その後頑張って介入して昨日の時点で80円まで持って行ってたから良いようなモンですが、介入しましたとかいう時点で野田財務大臣が「単独介入」とかわざわざ発言する辺りが相変わらずのバカスケ振りで市場の皆様の憤激を買っていた事だけはメモしておきましょう。

で、その直後に日銀からこんなアナウンスが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/danwa/dan1108a.htm/
総裁談話および金融政策決定会合の日程について
2011年8月4日
日本銀行

『1. 総裁談話
日本銀行は、為替市場における財務省の行動が、為替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している。

2. 金融政策決定会合の日程
政策委員会議長は、本日および明日開催することとなっている政策委員会・金融政策決定会合について、本日午前11時15分に開催し、本日中に終了する予定とした。』

・・・・・というアナウンスがありまして、まあちょうどお友達さんと話をしてたのですけど、介入の報道があった時に「これで明日に向けてバンバン介入するんでしょうなあ」とか話をしていたらこのリリースで「なるほどこれはアリ」とゆー話で意見が一致したものの(^^)、これだとロジ的に考えて決定会合は東証引けには間に合わないかなあとかいう話をしていました。

で、まあこのアナウンスで反応したのが債券市場でして、ちょうどこの総裁談話の出ている辺りで先ほど申し上げた野田財務大臣の「単独介入」発言が出て為替の方は止まっておりまして、「日銀のアナウンスで吹き上がったのはドルではなくて債券先物」という中々残念感溢れる展開になりましたわな。


この日は前日の米国債券市場様が相変わらず30年とかのフラットニングが目立つ展開だったせいか、朝から国内債券市場も超長期が素敵にブルフラットしていたのですけれども、決定会合前倒しの発表後は先物とか中短期の方が吹き上がる展開になり(当たり前ですが)徐々に超長期が出遅れだす展開。そしてこの日は6か月TBの入札が予定されていましたが、入札のほうは普通に実施となりました。

んでもってですね、まあ翌日の決定会合でやっても同じなのに何で今日やるねんという事で(まあECBがやらかす予定だったのでその先に日本がやった、という事だったのかもしれませんが、今にして思えば)、もしかしたら当初予想以上のネタが出たらあばばばばーですなあという事もありまして、中短期ゾーンは更に強くなるわ先物から10年は吹き上がるわで高値では10年0.995%堂々の出合いとかになっておられまして、さあ盛り上がって参りましたという風情。で、6か月TB入札ちゃんでございますが、そもそも何も無くても0.10%カツカツ程度の入札でしょうとか言ってた事もありまして、落札結果は貫禄の0.0972%/0.0992%となりました。

ただまあ事前にはもっと無茶な結果になったらどうしましょという懸念もあったようで、この結果の出来上がりは強いには強いですけれども、まあ間違って超過準備付利金利が下がった場合にエライコッチャになるリスクに対するオプションと思えば割と穏当な値で決着したとゆーのが結果のイメージではございました。

とか何とかいっているうちに徐々に債券市場は戻り売りのようなものが出てきたり、よくよく考えたら追加緩和に介入のセットだと中短期ゾーンは兎も角長期以降って本当に買ってよいのか(マジで効いたら円安株高になるでしょという意味)という観点もあったんでしょうなあという所で、特に長めの所がヘロヘロ感漂う風情(7年〜10年はまだ確りしてたものの超長期が朝の激強から一転して遅れ気味になるという感じ)になってきてました。東京市場昼の時間帯に介入第2弾らしきものがあったと思われまして、一発目で78円30銭近辺に持って行ってたドル円がお昼に79円近辺のレベルに持って行ったというのも影響していたと思われます。


○決定会合結果:今回は時間軸の強化と中短期金利の低位安定を促す内容ですな

決定会合はまさかの場中終了で14時に結果発表となりましたが、3時間弱でどういう議論してたのよというのは10年後の議事録を是非拝読したいものだと存じますが(^^)、何だやればできるじゃんというMPMの結果はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、資産買入等の基金を40 兆円程度から50 兆円程度に10 兆円程度増額し(注1)、金融緩和を強化することを決定した(全員一致(注2))。』

ということで、その内訳ですが、3ページ目の「別紙」にあるとおりです。

(買入系)
・国債:2兆円→4兆円
・短期国債:3兆円→4.5兆円
・CP:2兆円→2.1兆円
・社債:2兆円→2.9兆円
・ETF:0.9兆円→1.4兆円
・REIT:1000億円→1100億円

(固定金利オペ)
・6か月物の固定金利オペを5兆円追加実施

でもって、下のほうに『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』とございますので、従来の「2012 年6月末を目途に増額を完了する。」(3月14日の決定会合声明文より)となっていたのに対して足が半年伸びましたねという所です。


まあご覧になれば判りますが、今回の増額は主に残存1年以上2年以内の部分に関わる買入の増額にウェイトが掛かっていまして、短期国債はまあ兎も角として、どう見ても民業圧迫です本当にありがとうございましたと(まあ真面目にヒアリングと市場状況調査をすればCP市場が以前の企業特別オペ実施時代並のあばばばばー状態になっているのは直ぐに判りますわな)いうCP買入の増額が1000億円に留まったのはまあ短期市場をこれ以上殺すのには抑制的ですおというのが伝わったです(^^)。

まーあたくし的には昨日も申し上げていましたが、どちらかというと社債の増額分とETFの増額分が逆の方が良かったような気もしますが、もしかしたら今回はETFの増額を温存している(更に株安になった場合に繰り出す)のかねとか思ったりしつつという感じです。


また、声明文の景気に関する部分ですけど、今回目に付いたのはこの文言ですわな。

『この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』

>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる
>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる
>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる

・・・・・・先ほどの買入期間の延長と共に、この文言が出まして、更に今回は1年から2年ゾーンの買入を拡大という結果になっているというこれらのセットを並べられますと、まあ誰がどう見ても今回の決定会合は「時間軸の強化」を促すという決定内容になっていると解釈が可能かと思われます。


まーつまり今回の決定会合では為替市場に対して影響を与えるルートとして、中短期金利の低位安定(会見で2年債がどうのこうのみたいな話を総裁がしていたようで、何かまあ怪しげな日米2年金利がどうしたこうしたのネタを繰り出していたのには苦笑を禁じ得ませんでしたが詳しくは会見要旨を見てから判断するだよ)による円相場の円低下を促すというのを選択しました、というのが(正面切っては為替対策とは言わないでしょうが)政策決定会合結果のインプリケーションという所でしょうかね。


○一応声明文の景気に関する部分を簡単に

まあ比較するにも書きっぷりが大きく変わっているので、それらしい部分をずらーっと並べて比較してみるだよ。

・メインシナリオの部分

『3.わが国経済は、東日本大震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。先行きについても、生産活動が回復していくにつれ、輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくものとみられる。』(今回)

『2.わが国の経済は、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。すなわち、震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している』(前回)

『3.先行きのわが国経済は、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(前回)

今回はメインシナリオに関しては実は特に下げておらず、現状認識に関しても「着実に持ち直している」とわざわざ「着実に」と威勢の良い文言を入れているとゆー所であります。まあ確かに日本国内に関しては経済関連の指標は比較的悪くないものが並んでおりますし、確かにまあこんな感じでしょうという所です。

しかしながら、さっき物価安定の理解の実現がどうのこうのという部分を引用しましたように、今回の景気に関するメインシナリオの先行き見通しの中に従来あった「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という文言が抜けたのがポイント(まあさっきの部分とセットなので話は同じですが)となっていますわな。


・リスク認識の部分

つまりですな、前回の展望レポート中間レビューの時に読者の方からご指摘頂きましたように「メインシナリオはどう見ても回復と書くしかないのだが、先にテールリスク地雷がうじゃうじゃ」という大変に素敵な状態なのが現状の日本経済を取り巻く環境ですよね、という話だと思います(すっかりこの「テールリスク地雷」ってのが気に入ってしまって毎度使わせていただきまして誠にありがたく存じます>某読者様^^)が、そのテールリスク地雷のうち円高地雷がやや火を吹きましたってえ所なんでしょうかね。

『4.しかしながら、こうした見通しを巡る不確実性は高く、このところ、景気の下振れリスクにより留意すべき情勢となっている。海外経済をみると、米国においては、債務上限問題が決着をみた後も、市場では、財政健全化を巡る懸念は払拭されておらず、最近では景気の先行きに関する見方も慎重化している。欧州周縁国のソブリン・リスク問題は、全体としてみれば、依然として緊張した状態が続いている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある。この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』(今回)

『5.景気のリスク要因をみると、サプライチェーンに関する懸念は減じているが、震災の家計マインド等を通じる影響については、なお注意する必要がある。また、やや長い目でみた電力の供給制約については不確実性が幾分増している。海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国については、物価安定と成長の両立に関する不確実性が大きい。物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)

ということで、ずらーっと並べるとアレでございますが、まあリスク認識のうち拡大となったのは米欧の景気先行き懸念と金融市場の混乱リスクで、現象面としては金融市場と為替市場って事になってますけど要するに為替市場。それに物価に関してCPIの改定による下振れの大きさ、という所になるんでしょうな。


・従って今回は下振れリスク対応ですな

『5.日本銀行は、上記の景気・物価情勢を検討したうえで、金融緩和を一段と強化し、これを通じて、震災からの立ち直り局面から物価安定のもとでの持続的成長経路への移行を、より確かなものとすることが必要と判断した。』(今回)

ただまあ何ですな、ここでは「物価安定のもとでの持続的成長経路への移行を、より確かなものとする」という物言いをしていますので、最初の部分では文言を削っては居ますが、一応「物価安定のもとでの成長(または回復)」の旗は下ろしていないっちゃあいないのかなあとも思いますけど、この辺りは次回の会合でまたいつものパターンの文言に戻った時にどうなるかwktkしながら見たいと思いまする。


○その後まあ80円に頑張って乗せましたねということで

さてまあこんな結果が出まして、もっと上乗せがあるかと戦々恐々としていた人たちとしてはまあ順当な結果でしたなという感じになりましたところで、為替市場の方は15時過ぎにもせっせと介入して79円50銭の所をぶち抜いて17時30分ごろには80円ちょうどにドル上昇。

いやあ公共放送の夜7時のニュースに「80円」の絵を出すことが出来て(出したかどうかは公共放送ニュース見て無いから知らんが)良かったですねえ(棒)という感じでございましたが、何か朝になってみると米国株安とかもあったから仕方ないなあとは思いましたが79円台。

・・・・・とか何とか思っていたら、今朝の公共放送ニュースによるとトリシェ総裁の会見で日本の為替介入に関するコメントを求めたバカチンがいたのかよorz

http://mainichi.jp/select/biz/news/20110805ddm008020060000c.html
為替介入:政府・日銀、円売り単独 欧州中銀総裁が批判

『【ロンドン共同】欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は4日の記者会見で、日本政府が同日実施した円売り・ドル買い介入について「介入は多国間の決定に基づいてなされなければならない」と述べ、単独介入に批判的な見方を示した。』

・・・・・おいこら質問したのどこの馬鹿だよ。質問した記者は日本の安寧を損なう行動を取る可能性のある人間と認定せざるを得ませんので、ここは法務省様におかれましては是非この馬鹿を入国拒否リストに加えることをお勧め致したく存じます(−−;

まあECBといえばなんか今回は流動性供給を拡大したようですが、この会見の説明文を見てると・・・・・

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110804.en.html

何か相変わらずこんなこと言ってるのね。事実上の第1パラグラフ(最初は挨拶なので)となる全体感の説明部分の最後の所はこうなっていますな。もう諦めて旗下ろせよと思うのだが。

『Thus, our monetary policy stance remains accommodative. We will continue to monitor very closely all developments with respect to upside risks to price stability. 』

まあそこまで手が回らないので今日はこの辺であまり纏まらない状態で勘弁。











2011/08/04

お題「スイス中銀が為替対策で利下げ実施とな、という雑談」

ネタはあるもののツッコミ不足の場合は雑談という名になりますorz

○スイス中銀の相変わらず清々しい金融政策決定

スイス中銀のウェブサイト
http://www.snb.ch/
03.08.2011 Press release
Swiss National Bank takes measures against strong Swiss franc

ということで、リリースはこちら。

http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20110803/source/pre_20110803.en.pdf

『Swiss National Bank takes measures against strong Swiss franc』

まあこの中央銀行は以前もスイスフラン高(基本的には対ユーロだった筈)を阻止するために為替介入を思いっきりやったものの、結局介入したのが損師になってしまってあばばばばーなのですが、まあそういう細けぇこたあキニシナイ。

『The Swiss National Bank (SNB) considers the Swiss franc to be massively overvalued at present. This current strength of the Swiss franc is threatening the development of the economy and increasing the downside risks to price stability in Switzerland. The SNB will not tolerate a continual tightening of monetary conditions and is therefore taking measures against the strong Swiss franc.』

もうここまで来ると清々しいまでの為替一点張り金融政策。サイトのトップに書いてある『The Swiss National Bank condacts Switzerland's monetary policy as an independent central bank.』という文言が(金融政策のトリレンマ的に)ニヤニヤという感じもしますが細けぇこたあいいんだよってなもんで。いやまあ一応「オーバーバリューとなっているスイスフランは経済に引き締め効果を与える」とありますけれどもね。

『Effective immediately, the SNB is aiming for a three-month Libor as close to zero as possible, narrowing the target range for the three-month Libor from 0.00-0.75% to 0.00-0.25%.』

こちらの中銀は政策金利に関して「3か月Liborをこのくらいになるように持って行く」という割と不思議なポリシーでやっているのですが、今回はバンドを下げたのと、その中心値を「ゼロに近づける」という利下げをしましたという話ですわな。

ちなみに、前回6月のリリースを引用しておくと(冒頭部分だけ)こんな感じだす。

『The Swiss National Bank (SNB) is maintaining its expansionary monetary policy. The target range for the three-month Libor remains at 0.0-0.75%, and the SNB intends to keep the Libor within the lower part of the target range at around 0.25%.』(これは6月のリリースです、お間違えの無い様に)

ただまあスイスフランの3か月Liborって元々この中心目標よりも低い0.175%とかで推移(ちなみに6月24日以来0.17500%で来ている)していまして、バンドが下がったことに意味があるのか良く判らんですけど(まあどう見ても中心値下げた方が意味ありだが、元々0.25の半分位の金利になっているのですな^^)、そこは「0.75%を0.25%に下げました!!!!!」とすると気分的にインパクトがあるちゅう話でしょ。

『At the same time, it will very significantly increase the supply of liquidity to the Swiss franc money market over the next few days. It intends to expand banks’ sight deposits at the SNB from currently around CHF 30 billion to CHF 80 billion.』

『Consequently, with immediate effect, the SNB will no longer renew repos and SNB Bills that fall due and will repurchase outstanding SNB Bills, until the desired level of sight deposits has been reached.』

ということで、まあどちらかというとイメージは俊ちゃん時代の当座預金残高拡大みたいな事を実施しながら政策金利の更なる低下を促すというものでしょ。

『Since the SNB’s last quarterly monetary policy assessment, the global economic outlook has worsened. At the same time the appreciation of the Swiss franc has accelerated sharply during the last few weeks. Consequently, the outlook for the Swiss economy has deteriorated substantially.』

まあ為替一点張りリリースしてますけど、ちゃんと「経済見通しが一段と悪化している」という話をしていますので念の為(^^)。

『The SNB is keeping a close watch on developments on the foreign exchange market and will take further measures against the strength of the Swiss franc if necessary.』

必要があれば追加策実施とゆうとりますが、何かやれと言われましてもあーた為替介入くらいしか無いと思うのですけど。

・・・・・ちなみに、この結果ですけれども。

http://www.snb.ch/en/iabout/stat/statpub/zidea/id/current_interest_exchange_rates/2

3-month LIBOR CHF
0.14 03.08.2011
SNB target range: 0.00 - 0.25

ということですので、前日から0.035%低下してます、ってまあ普通これは下がる罠。

http://www.bloomberg.co.jp/markets/currencies/fxc.html
主要クロスレート

EUR-CHF(CHF-EURが正しい表現でした)が0.9071とかですが、昨日のリリースが出る前が大体0.92近辺でしたのでまあ一応メインの対ユーロでもスイス高抑制とゆー感じです。

まあスイス中銀のこの「為替対応一点張り」という政策に関しては中銀としてどうなのよという議論はありますけれども、周囲がグルリとユーロ圏に取り囲まれている国という状況もあるので、この辺に関しては単純に他の先進国と比較するのもどうなのかという所もあるのでしょうな、よー知らんけど。


○為替介入効果やろうちゅうのに事前にアナウンスする馬鹿もいるようですが・・・・

NY外為市場のレビューをロイターより。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnJT896741320110803
NY外為市場=スイスフランが過去最高値から下落、ドル/円は横ばい
2011年 08月 4日 05:57 JST

『[ニューヨーク 3日 ロイター] 3日のニューヨーク外国為替市場では、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が予想外に政策金利の目標レンジを切り下げたことを受け、スイスフランが過去最高値から下落した。』

>予想外に
>予想外に
>予想外に

・・・・・・ということで、本気で通貨高阻止の介入したいのであれば、事前に介入実施するとか金融緩和するとか事前に鉦や太鼓を打ち鳴らすのは頭の構造に何か重大な欠陥があるのか、それともマーケットのことを一ミリもご理解されていないのか、はたまた「ボクたちはちゃんと対策しているんだもんね」という経済界辺りに向けた保身の為の言い訳あるいはアリバイ工作をしたいだけで政策が効くか効かないかよりも保身の方が重要だというのかまあさっぱり理解致しかねますが、何故かアジア太平洋方面のニポーンとかいう国では自国通貨高の阻止をする為の措置に関してわざわざその効果を減殺させる為の方策を絶賛大実施しているという風に聞いておりますがどこの国の話でしょうかねえorz


まあ別に介入とか追加緩和とかしなくて良いとかいう話じゃなくて、タイミングとして中途半端にも程がある所で実施する(しないかも知れないけど)とかはっきり言ってバカジャネーノってのが市場の中の人たちのイメージじゃないかと勝手に思っているのですが、そんなに外していないですよねあたくしのイメージ。

つまりですな、今回なんて別に2日の日経の記事が出るまでは何かあるとか思っている人はほぼ居なかった筈で、そういう点で言えばまあ黙っていきなり今回実施したらもしかしたらサプライズになったかもしれませんから、黙っていきなり不意打ちというのはあったのかも知れませんが、これだけ事前に告知したら最早市場は少々のことでは反応しなくなる、という意味でわざわざ政策のコストを引き上げてしまう事前告知でございまして、何つーか作戦の組み方おかしいわ。

例えばメディア使うなら、今週黙っていきなり介入と金融緩和をセットで実施して、その後に財務官とかが「何ぼでも介入して押し上げしまっせウェーハッハッハ」とか出てくるとかやったほうが使う玉が少なくて済んだ筈でして、何ともやり方が下手糞としか申し上げようがありません。


更に申し上げれば、これは昨日申し上げた事と重複になるけど、週末に雇用統計があって来週火曜にFOMCがあるんですから、その前に実施しても逆さ絵おじさんが追加緩和示唆一発かましたらそれであばばばばーになる訳でございますので、タイミングとしてもお間抜け感がひしひしと漂うのでございますよね(スイスの場合は対ドル相場よりも対ユーロ相場が重要なのと、そもそも政策決定のサイクルが2か月とか3か月とかの長めなのでやっとくなら今回という形だったんでしょうな)。まあ逆にスイスがやってくれたから何となく今週やっても格好がついて良かったですね(棒読み)というのはありますけど、どうせ実施するなら9月か10月だろうになんちゅう無駄玉打つんだとゆー感じです。

つまりね、予想屋(でもなんでもないがあたしゃ)としては「まあ何かやるでしょたぶん国債買入拡大を中心にした基金買入の拡大、5兆か10兆。10兆なら固定金利供給の5兆円上乗せあるかもね、迷惑だけど」というのが大体の本線(というか普通に予想するとそうなるので、別にウリのウリジナル成分はない)だと思うのですが、本来的に言えば今回は事前に告知しちまったのを敢えて外す事によって、瞬間的にドル売り円買いあたっくチャーンスでカーニボーとかになるかもしれないけど、ドルのウリ党の皆さんの兵站を拡大させるだけさせておいてから絶賛大反撃をした方が為替動かす事だけ考えるなら効くんじゃネーノと思うのですけど、というのがあたくしのMPM前のイメージでございまする。


○とか書いてたらまた時間がなくなったのでメモメモ

・3MTB入札貫禄の0.10%割れ

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230803.htm
・・・・・・GCも10割れとかしないし、足元では当座預金残高水準が適正水準(何をもって適正と言うのかは突っ込まないように^^)っぽい動きで、潜在的に海外の短国ニーズはありそうですが、リアルマネーがそこまで余っていない筈なんですよね。

ということで、この入札で突っ込んだのは誰だあ!!!と海原雄山状態になってプライマリーディーラーの所に行きたい今日この頃のあたくしでございますが、結局セカンダリーで0.10%になったとかベンダーに出ていまして、海原雄山が出るまでもありませんでしたあっはっは。

・原子力賠償機構法案成立

いやあ長かったですなあ。色々と関連で香ばしい言説も見られるのですが、そのツッコミは供する積りだったのですが時間の都合でパスと言うことで(^^)。






2011/08/03

お題「なんか昨日は妙な報道があってカーニボーになったので雑談雑感」

昨日お友達に指摘されましたが、日経新聞1面記事に関する件は素で何も知らず(つまりモーサテは最初の3分しか見なかった)通勤電車でそこら辺の人が読んでる日経見て「はぁ?」と思った訳ですな。つーことで完全に1日出遅れで関連雑談をば。

元ネタは皆様ご案内の日経新聞の昨日朝刊でございますわな。

ちょっとこの記事URL長すぎなので(検索の仕方が悪いのかもしれませんが)URLは敢えて(以下割愛)にします。どうも日経の電子版は記事URLが長くてかなわん。(リンクはちゃんと入れてます)
http://www.nikkei.com/access/article/g=(以下割愛)
円急騰、緊急対応へ 政府が介入を準備
日銀は追加緩和検討 米も介入容認姿勢
最高値目前76円29銭 2011/8/2付 情報元 日本経済新聞 朝刊

○今の政府の「スケジュール感の無さ」を象徴する話ではございます

という事でまあ為替介入に金融緩和するならするで別にどうでも良いのですけれども、今回は正直別にノーケアーっつーか、そもそもドル円が80円の所で延々とうだうだやってたのが2円ちょっと動いた(今日はもうちょっと動いたようですが)という辺りで「急騰」とか言われてもなあとゆー感じで、まあ何と申しますか、少なくとも金利市場関連の人たち的には「まあ今回は特に何も無く・・・・」という感じだったと思うのですよね。

従って昨日は記事見て「はぁ?」という感じだったのですが、背景としては(これはだいぶあたくしの主観が入ってますけど)株価が何だかんだ言って値持ちしているのと、そもそも80円近辺にすっかり目が慣れてしまったので、「ドル円がまたドル下がりましたなあ〜」とは思っても日経の記事のような「ドル急落!」というイメージじゃなかった(別に昨日時点で急に5円とか10円とか円高になった訳じゃないでしょ)ので、そんなに切迫感のある印象を受けないとゆーのが正直な所で、金利市場ちゃん的には少なくとも現物いじってる人たち的には何とも違和感のある記事(何とかストの皆様におかれましては「夏祭りカーニボー到来!!!」とゆーことでここぞとばかりにレポートがうじゃうじゃ出てきたのにはウケましたけど)ではございました。


まあ何ですな、別に追加緩和に介入セットで為替対策やるならやるでも良いと思いますけど、今回ってMPMが木曜金曜で実施されて、その日の夜には米国市場で雇用統計という大ネタが待っていて、更には来週火曜日にFOMCがある訳でして、今週にその手のカードを切っても雇用統計要因とFOMC要因であっさり帳消しになってしまうリスクがあります罠。しかも今回の円高って日本の要因というよりは米国とか欧州とかの財政がどうしたこうしたを最初のネタにして動いている訳ですし、更に言えば米国は実体経済の悪化がどうのこうのという話になっているのですから、それこそFOMCの結果次第では更に米国追加緩和カーニボーになる可能性だってある訳ですよね。

と考えますと、こんなタイミングでカード切るとかタイミングが間抜けにも程がある訳でございまして、そもそも為替介入だってそうホイホイと無限に打てるものでもないでしょうし、金融緩和余地だって中々厳しいものがあるという状態になっており、カードは有効な時に切らないといかん筈なのですが、どう見ても兵力逐次投入です本当にありがとうございましたというのが今回のタイミングとしか申し上げようが無く、もうちょっと政府はスケジュール感というのものを考えるべきではないかと切に思うのであります。

これで今週末に対策実施したものの、週末の雇用統計と来週のFOMCで円売り介入分帳消しとかになりますと、乏しい予備兵力を何も考えずにバンザイ突撃させて敵機関銃の十字砲火の餌にする頭の悪い軍指揮官みたいなプレイになりますわなあとか思います。


大体ですな、タイミングと言えば今回もまた日経新聞ってブラックアウトの初日にリークだか書かせだか何だか知らんですけど為替対策向け記事を打ち込んだのですが、確か前回もそうだったのですが、中長期国債の入札日の朝にこういう記事打ち込んで誰得なんだよとゆー事でもありまして、まあ別に債券市場なんて日経新聞様にしてみればどうでも宜しいかと存じますが、毎回この調子ですとまあ債券市場の中の人的には日経ふざけんなという声が増えておりますわな(−−;)出すなら入札終わった今日出せと(苦笑)。


○つーかこういうの事前に出たら効果が落ちるだろうよ

産経にしては良い記事があったのでMSN産経から。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110802/fnc11080218370018-n2.htm
為替介入効果は一時的か 政府・日銀、慎重に時期探る
2011.8.2 18:35 (2/2ページ)

『政府・日銀は「水面下」(政府筋)で介入の準備を進めており、打ち出すタイミングを慎重に見極める考えだ。』(上記URLより)

えーっとですな、こんな大々的に記事になった時点で水面下もへったくれも無いと思うのですけれども、そういう意味ではこの記事いい感じで皮肉が利いてるなあとゆー感じ(狙ってるでしょ産経さん^^)でございます。

あのですね、この手のネタって事前告知したら市場が先に織り込みに行っちゃう話だし、(記事の1ページ目の方にもありますけど)介入とか一発芸の世界だし緩和ゆうても持ち玉僅少の状態となっております状況下ですから、為替市場に影響与えて動かそうというのであれば、不意打ちの奇襲攻撃をした方がどう見ても効果が高いというのに、わざわざ事前に鉦や太鼓を鳴らして告知するとか頭が悪いにも程がありますわな。

まあ何らかの書かせみたいなのがあって(毎度ブラックアウト期間入りした途端に確定報の如き記事が出るんですからねえ、あ、そういえば今日は公共放送も「介入と追加緩和検討」って言ってましたな)事前告知が出るのでしょうけれども、為替介入に関しては(利上げのような話と違って)事前に地均しするというのは有り得ないと思うのでございまして、毎回毎回為替対策絡みで事前報道とか日経新聞はわざわざ政策の効果を下げるような事をやって何が楽しいんだかと思うのですが、政策効果が高くなることよりもてめえの媒体の売上の方が大事という事ですかそうですかっつー感じではございます。

まー日経新聞さんにおかれましてもこのような記事が出るときには色々とオトナの事情があるのでしょうけれども、為替市場への働き掛けをどうするという観点からしますと、事前告知とか無駄にも程があるという事も関係要路の皆様におかれましてはご認識頂きたく存じます。


・・・・・いやね、これだけ事前報道して盛り上げておいて今週は何もしないで雇用統計とFOMCで円高にならなければそれで良し、円高ヒャッハーになった場合は円買いが溜まった辺りとなるでしょう来週の金曜辺りにいきなり臨時会合と為替介入で奇襲攻撃してドル売り方炙り出した上に殲滅大作戦とかするなら面白いですけれども、今の政府にそんな発想が1ミリもあるわけが無く、どうせドル円が80円切ったので急に慌てて目の前のハエを追っ払おうとしてスケジュール感も何も無く目先対応をしようとしてるって事としか思えないのが残念にも程がある所でございますわな。


○で、具体的にどうすんでしょ

つーか日銀に追加緩和やらせておいて介入無しとかだったら財務大臣は肥溜めに頭から突っ込んで即身仏となるべきだと思いますが、去年の場合は日銀が追加緩和アナウンスしてから随分と経過してから為替介入とかしてまして、何ともトンチキにも程がある展開でしたけれども、今回は更にカードの在庫が僅少となっているわけですから、効果を出すためには介入と緩和はセットで実施しないと意味無い(というか多分どちらか単独だと全然効かないと思う)と思います。

まあ金曜に緩和アナウンスして直後に介入打ち込むとか、どうせなら今日でも明日でも良いですがMPMの前から介入を打ち込み続ける(去年みたいに1日やって単発で終了とか無駄玉にも程がある)とか、まあ目立った事やらないと(それが良いか悪いかという話はさておき)為替市場に効かないでしょ事前にこれだけ告知したんだし、とは思いますけどどうでしょ。


さて、じゃあ日銀の追加緩和って何しますねんという話ですが、まあ普通に考えると今回のようなケースだと「一時的な円高進行」に対応となるのですから、「基金の拡大」という話になると思います。まあ基金も一時的対応という奴ですからね。

その中で固定金利オペをもう10兆増やすのはやろうと思えば出来ない事は無いと思いますが、固定オペの拡大をこれ以上すると通常の金利入札方式、つまりショートタームの資金供給オペの実施余地が乏しくなります(固定オペは期間が長い)ので、微妙に調節がやりにくくなるし、うっかりしたら固定オペ札割れの悪寒も。

社債やCPの買い入れ拡大に関しては、既にこれらの買い入れによって(特にCPなんかは)クレジットスプレッドが潰れまくって民業圧迫状態になっておりまして、ポーズとして実施するなら実施してもよろしおすですけど、更に市場機能とやらが壊れますけどよろしゅおすかという感じですわな。

・・・・と考えますと、普通に基金での国債買入拡大に短国買入拡大というのが本命になるんでしょうなと思いますけど、あたくし的に好き勝手申し上げますと、どうせ為替介入したって買うのは米債で、その米債購入の(結果としては)バックファイナンス状態になる国債などの買入拡大する位だったら、ETFでもどどーんと買えばとか思うんですけどね、最早金融政策じゃないような気もしますが(苦笑)。

だってさ、米国債買ったってその金って事実上固定みたいなモンで、使うのは(結果としては)米国財務省様になるとか考えたら、ETFをどどーんと買って株価は上昇するわETF買った金は国内株式市場で回るわとなりましていい感じで皆さんウハウハでしょ、ほらマネー供給するならちゃんと「動く」所に供給しないといけないでしょってなもんですし。などと怪しげな理屈を考えて見たのですが、これは最早金融政策では無いとも言えますし、大体からして政府部門にETFが残るとかどんな素敵な事態だよという所でもありますが、何かもう考えているうちに段々ヤケクソになってきました(笑)。

まあ普通に考えて今回は固定オペの拡大よりは「買入の拡大」の方が為替市場的にウケが良いでしょうから、基金買入の拡大で対処するんじゃないの、とは思います。数字の上げ底を狙って5兆円くらい固定オペ増やすとかやるのかね???


○などとうだうだ書いているうちに時間が無くなったがその他余談

・しかしまあ製造業さんもアレですなあ

今日の公共放送ニュースでは「円高で企業業績の悪化が懸念」とか「産業界からの声が」みたいな報道してて、企業経営者などの発言が報道されていたんですけど、おまえら円高対策で為替介入しろとか言うならその口で「電力料金が上昇すると製造拠点を海外に移転しないと」とか言うんじゃねえ(円安になったら燃料費上昇するだろ)と思いましたけど、いやちょっと思っただけの余談ですけどね。


・昨日ネタにした高橋洋一さんの記事関連

what_a_dudeさんの所でちゃんとしたツッコミがありましたのでご紹介。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110801/p1
2011-08-01
ダメ解析、ダメ議論の見本

・・・・と思ったら追加エントリーがありました(^^)。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110802/p1
2011-08-02
昨日の続き:主張を弱くしてみたみたいだけど・・・・


・何でもかんでも賠償させようとかするんじゃねえよ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110802-00000343-yom-soci
安愚楽牧場、賠償の可能性ある…細野原発相
読売新聞 8月2日(火)11時39分配信

・・・・・あのさあ、こういうのって経営が震災以前から悪化してたとか、震災以前から既にチャリンコ状態になっていたとかいうケースの可能性だってある訳で、そういうのをちゃんと精査する為にナントカ委員会とか作っているのに、前後の事情を正確に把握しているわけでも無い大臣がこういう事をしゃしゃり出て言うとかふざけるなと。

便乗して偽装倒産とかが続出したらどうする気なのかとか考える頭が全く無く、どうせ「賠償」とか言ってれば打ち出の小槌の如く金が出てくるから人気取りにどんどん賠償とやらをしようってえ事くらいしか頭の中にないと思われますが、本来関係ないものにまで賠償が出てしまうと、それは最終的には税金として国民負担になるのか、東京電力の費用拡大要因となって東京電力の利用者の電力料金に跳ねるかは兎も角、結局一般ピープルに大盤振る舞いのツケが回ってくるのですから、本来救済すべき人たちには迅速かつ十分な救済が必要ですが、そうでは無いものに関して大ザルの大盤振る舞いとかされましてもツケ回される方が困るんですけどねえ。

そらまああんさんの選挙区は東電管轄じゃないから(東電が払うなら)選挙民の皆様にも関係ないかもしれませんけど、全く持ってそういう後先のこと考えずに軽々しく発言するとか勘弁して頂きたい訳でございまして、おまえは夜の裏道にでもすっこんで三流芸能人と路チューでもしてりゃ良いんで表に出てくんなと申し上げたい所ではございます。


#うーむ、ただのしょうもない悪口大会になってしまいましたどうもすいません







2011/08/02

お題「昨日の続きとかBOEネタとか世間話とか」

さすがに米債の金利低下が続くので相場後講釈がやっと景気ネタになりましたかそうですかという事ですけれども、足元これだけ米国景気減速懸念のデータが飛び出すとQE2って何の意味があったのですかというツッコミが次に飛んできそうでひとごとなのでどういう話になってくるのかwktk(不謹慎)。

まずは昨日の趣味のコーナー(ポーゼンさんの物価に関する講演ネタ)の続きなのである。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2011/presentation110627.pdf

○生産性のトレンドがどうしたこうした

スライドの28ページ『Productivity trend largely undiminished (yet!)』から(最初のところ再掲ね)。

『The other big 1970s mistake was trying to keep growth up at an unsustainable level - arguably because a productivity growth slowdown went unrecognized (Orphanides (1994) and others)

When there is an economic downturn, how much is a shock to trend?
・ Lots of talk about output gap, but trend both matters more and is more measurable (Kuttner and Posen (2001, 2004))

An apparent puzzle in the UK right now:
・ The numbers on UK productivity of late are pretty bad looking
・ Firms are hiring workers and in surveys citing capacity constraints
・ Should this lead us to revise down our estimate of trend growth?』

ショックによる落ち込みの後のトレンドがどうなるかが重要という話なのですが、これ6月のBOE議事要旨で議論になっていた「ショックによって落ち込んだ生産性が中々回復しないのは何でやねん」(7月5日にネタにしたざますが、英国では経済の余剰生産力が縮小(生産力の活用状況が改善しているのですから)しており、雇用も予想以上に拡大している中で生産の伸びが強くないため、計算上の結果として「生産性」が弱いままで推移している事になっているのが不思議でありますなとゆーお話ですな)という論点もありましたが、ここでも現状の英国経済における「不思議な状況」を指摘しています。

つまり、企業は生産力の活用状況が改善している事を背景としたような動き(雇用を拡大したり、サーベイデータによると生産力の制約に対する指摘を行っている)を行っている中で、生産性の改善は見られないという状況で、問題となるのはこの生産性の伸びに関して見通しを引き下げるべきなのかどうかという話をしているのですが、次のスライドにその答えが。

『NO, we should continue to treat UK trend growth as largely unchanged There are good reasons to doubt the observed productivity data:

・ Companies with low margins are hiring labour and increasing hours- counted data that we can believe in, and that cannot be easily reconciled with belief in declining labour productivity

・ The UK economy has shown great adaptability and limited evidence of sectoral or labour market mismatch to date

・ Direct measures of the way that supply shocks are usually felt - corporate liquidations, investment shortfall, long-term unemployment - have not yet accumulated to very much impact

・ There is no comparable international ‘technology shock’

・ GDP data tends to get revised up after recessions (particularly in UK) and there is an obvious candidate in Net Export measures

・ If there remain overemployed sectors, then productivity will rise』

まあ要するに結論は生産性に関してはこれから伸びるでしょうという話になっているのですが、逆に言えばポーゼン委員の主張する「70年代のような状況にはならない」という根拠のもう一つのポイント(一つ目のポイントは昨日引用した最初の方にある「金融政策によってインフレ期待がアンカーされている」という話ね)となるのですけれども、さてこちらはどうなるか(と言っても生産性という概念は各種データから間接的に計測されるものですから後付で判る話なのでわかった頃には時既にお寿司のような気もするがまあキニシナイ)という感じですにゃ。

で、その後に図表があるのですが。英国の労働生産性はショックからの落ち込みは極めて大きかったものの、そこからはリバウンドしています(キリッ)という説明になっていますが、どう見ても足元いい感じで頭打ちでこの直近は落ち込んでいます本当にカムサハムニダという感じなのですけどまあそれは図表を見てちょ。それから英国の企業収益率の図表が次にあるのですが、金融システムが大丈夫であれば、企業収益の堅調さによって企業投資をサポートするでしょうという微妙にそうなんですかねえという説明があって、この辺りの部分は(その前の部分と違って)やや説得力が怪しい感じがするのは気のせいですかそうですか。


○最後にいい感じでポーゼン委員がはっちゃけているのが味わいが深い

つーことで実質最後のスライド(最後はまとめ)となります27枚目のスライドちゃんになりますが、こちらのお題は『Avoiding historical mistakes (so far)』というものでございまして、最初の所からいきなり吹いたのですが、曰く。

『Independent central banks have a tendency to err on the preemptive deterrent side, not to be too soft』

「独立した中央銀行」はその行動様式して「緩和しすぎ」ではなく「プリエンティブな引き締め」に偏りやすい傾向があります(キリッ)。

・・・とあたくしの脳内で日本語変換してみましたけどどうでしょ(^^)。

『BIS just said all central banks should raise rates, and pointed to the UK’s above target past inflation - NONSENSE』

全ての中銀は利上げすべきであり、英国はインフレが高進してるじゃねえかなどと言うBISに対しててめえ大きなお世話だ肥溜めに頭突っ込んで反省しやがれコノヤローとは仰せではありませんが(^^)、思いっきり大文字で「NONSENSE」と仰せですが、まあそれは確かに7割くらい同意せんでも無い(^^)。

『Some central banks, particularly in EMs pegged to the US dollar, should raise rates as their conditions demand

In the UK and the west more broadly, there is little or no credit growth, little wage growth beyond productivity, little evidence of rising inflation expectations, and oil prices are not (yet) a one way bet

Every MPC meeting, I sit opposite the huge portrait of Montagu Norman, and ask myself “What Would Montagu Do?” and do the opposite. So should other central bankers.』

つーことで(最後のスライドにもあるのですが)ポーゼン委員は1930年代の恐慌に入るリスクも意識しているようで、少なくとも現状での出口政策は論外という立場に立っている(毎回追加緩和提案しているのですから当たり前ですが)ようで。あと、ここで出ているMontagu Norman氏というのはかつてのBOEの名総裁のようですがあたくしも不勉強で詳しくは存じません(そういやバジョットの「ロンバード街」を半分くらい読んで積読状態だわorz)のでwikipediaでも付けておきましょう。

Montagu Norman
http://en.wikipedia.org/wiki/Montagu_Norman,_1st_Baron_Norman


○つーことでまとめですが、結論は「70年代のようなスタグフレーションは起きないでしょう」です

『We are in an economic situation in the UK today where:

・ Monetary policy anchors inflation expectations
・ Workers have limited bargaining power over wages
・ Oil prices are not obviously accelerating one way
・ Trend productivity growth is largely undiminished

Therefore little risk of inflation let alone stagflation

・ But we still risk echoing that 30’s show writ small』

最初の部分はそもそも冒頭で話していたことですが、最後にまあ30年代型の恐慌リスクが無いわけではないという事の方も気にしておきましょうという指摘をしているように読んだのでして、まあ「物価は上がらないんです(キリッ)」というのが結論なのは当たり前なのですが、逆に言えばこれらの前提条件がコケた場合にどうなるか、という話が気になるのと共に、そもそも足元の状況がどうして起きたかという話は今回スルー(まあ分析するの大変でしょうとは思いますけど)気味なのですが、英国の場合はこの「どうしてそうなった」というのがより突っ込んで検討されるべきかと思っているあたくし。

#つまりね、米国がQEナントカとか言って暗黙のドル安政策を実施した場合に、英国タイプの誰得モードになってしまうリスクがあって、米国の金融当局もさすがに最近その点気にしているんじゃネーノと思っているのですがどうでしょうかね、という話に繋がるわけなんですけどにゃ


というわけで、趣味の誰得コーナーが延々と続いて恐縮至極でございました。


○BOE議事要旨ネタをやりだすと時間切れになりそうなのですがとりあえず

これまた20日にリリースされていた7月6〜7日の議事要旨でネタが虫干しにも程があるのですが。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1107.pdf

・とりあえず金融政策の直接的インプリケーション部分だけ

『The immediate policy decision』の第26パラグラフから。

『26 Most members judged that it was appropriate to maintain the current stance of monetary policy at this meeting.』

金融政策は現状維持。

『It was likely that the current weakness in activity would persist for longer than previously thought, although the reduction over the month in the exchange rate and in market interest rates would provide some countervailing stimulus to the economy.』

足元の経済活動の鈍化はMPCが事前に想定していたよりも弱いが、前月来のポンド下落や市場での金利低下が経済への刺激となるでしょう。

『That weakness, together with the continued subdued behaviour of earnings, reinforced the case that inflation was likely to fall back once the temporary impact of the factors pushing up on it had waned.』

でまあこの弱さも一時的な要因が緩和されたらインフレがターゲットに戻る要因になるでしょという話のようですな。

『But there also remained upside risks associated with the sustained period of above-target inflation. There was a range of views on the balance of these downside and upside risks. Overall, however, recent developments had reduced the likelihood that a tightening in policy would be warranted in the near term.』

ということで、最後の所に「最近の経済状況は近い時期の金融引き締めの必要性を引き下げている」という話がありましてキタコレという所ですな。


それから順番逆ですいませんが、第25パラグラフの頭にはこんな事も。

『25 Overall, the balance between the upside and the downside risks to inflation in the medium term had not changed sufficiently over the month for Committee members to change their views of the appropriate setting for monetary policy. The risks to inflation in the medium term remained substantial in both directions.』

ということで、「リスクは上下とも拡大している」という中々お洒落な展開になっているのが英国クオリティなのですけれども、これって超意地悪な見方をすると、英国の(もしかしたら先進国の世界的な、なのかも知れませんが)量的緩和政策(あるいは緩和的な金融政策)によって経済のボラティリティーが引き上げられてしまったという事になるとかいう解釈になるのかも知れませんなあとかふと思ったのですけど・・・・・・って何かまるでBISビューですかそうですかorz


○どうでもいい雑談(だいたい電波浴)

まあ最近は産経だけではなくても電波浴ができるので肩凝りにはよい筈なのですが、電波浴をすると更に肩が凝ったり頭が痛くなるのは何故でしょう(^^)。

・だから外為特会の原資は国庫短期証券という国債なんですって

本人のサイトにリンクするのも何なのでBLOGOSにリンクしておくか
http://news.livedoor.com/article/detail/5750503/
シリーズ/復興財源、100兆円の外貨準備を活用せよ・・・・・・復興増税10兆円!
2011年08月01日09時59分

みんなの党のお方のご主張のようですが、未だにこのような主張を大真面目に行っておられるとは頭が痛いを通り越して何だかなあという感じです。

『さて、今回の提案は、この復興債を、日銀引受の他に、100兆円にものぼる外貨準備の活用で、外為特会が引き受けるというものだ。政府がドル建て復興債を発行しても良いし、復興に携わる政府系金融機関等がドル建ての財投機関債を発行しても良い。それを満期になり外為特会に償還されてくる米国債の米ドル資金(毎年15兆円程度)で引き受ける。』(上記URLより)

何か以下次回に続くらしいのですが、これって暫く前(6月7日)に超絶電波浴としてネタにした富士通総研の根津なにがし(毎日新聞社の出しているほうの雑誌「エコノミスト」で『第1特集:米国債を売れ! ◇復興財源に外貨準備を活用せよ』とか凄い事を言っていた人ね)の受け売りなのではなかろうかと思われるのですが、最近の政治家先生ってどうしてそう「これで問題は一発解決ですよウェーハッハッハ」みたいなインチキ提言にホイホイと乗ってしまうのよと実にこう残念感に堪えない所でありまして、立法府の連中がこの手の「オイシイ話」にホイホイ乗る連中の集まりになりますと国家として大丈夫なのかと思うのですが杞憂だと良いですね(棒)。


・これはまた凄い「簡単にわかるドル円相場」

まあこの手の話をネタにするのも宣伝になるからあまりネタにするのも何ですが。

高橋洋一「ニュースの深層」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14190?page=2
史上最高値をうかがう円高は「人災」。
復興増税を狙う財務省と日銀の日本的官僚制度が犯人だ
欧州危機や米国債問題は本質ではない

まあ米国債問題は確かに本質じゃないですけど、欧州危機も円高の本質ではないとは中々素敵でございますが、そこの『複雑な動きをするとされる為替レートがこれほど単純に説明できるのはかなり衝撃的だ。』というのについ釣られてみる。

・・・・えーっとですな、これ計測期間が2007年1月からってたったそれだけの期間ですかそうですかという感じで、そこで回帰分析したから因果関係があるかのような説明ってそもそも話が飛躍(回帰分析では相関関係は出るけど、その相関と因果関係は別問題でしょ)してますし、大体からしてその程度の計測期間で回帰分析して相関が出たからと言って、その後相関するかどうかの保証は無いですし、そもそも分析するなら日本が量的緩和政策実施していた時期とか、その前の円高期間とかの時期も持ち出さないとフェアじゃないでしょと思うのですが。

いやまあモーサテとかで為替のインチキコメンテーターが「ドル円市場とナントカの相関」みたいなネタ振りを、それこそ上記URLでの期間よりも更に短い期間の表を出して(うっかりすると「お前それ相関してねえだろ」というのも出てくる^^)説明してますけど、あれって正直言って超短期的な目先の話で相場のネタ、というよりはセールストークやらポジショントークのネタにするものであって、あんなの真に受けてポジション取ったら碌な事にならないのはお約束のようなもんなのですが、何と申しますか(釣りで言ってるんでしょうけど)『複雑な動きをするとされる為替レートがこれほど単純に説明できるのはかなり衝撃的だ。』とか言われますとおいおい大丈夫かとしか申し上げようが・・・・・

まあ何と申しますか、さっきの江田さんのアレもそうですけれども「ほらこんなに簡単な答えがあるんですよ」的なのを求める動きの一環みたいなもんなのかもしれませんけれども、そう世の中簡単なもんじゃないと思うのですけどねえ・・・・・

#他にも電波浴があったのですが時間がなくなったのでいずれまた









2011/08/01

お題「英国の物価はどこへ行く(ポーゼンMPC委員の講演より)という月曜ネタ」

まあ何ですな、デットシーリングで大騒ぎしてドルが下がった金が上がったとか言ってますが、本家本元の米国国債様は素敵に金利が低下しておられるというのがテラワロスというか円債にどっぷり漬かっている人からすると素敵な流れなんですけどね。

んでもって今日は2001年の決定会合議事録ネタと言いたい所ですが、鑑賞の後テキスト打ち込みをしないといけないのでそちらは追々やるとゆーことでご勘弁賜りたく存じます。

つーことで今週はBOEのMPCがありますけれども、まあ結果の方はどうせ現状維持ではありますが、問題の英国物価に関する論点という事で7月MPC議事要旨のネタもあるのですが、その前に(これまた前のネタで恐縮ですが)毎度追加緩和(国債買入の拡大提案)を単独提案しているポーゼン委員の講演が6月27日に行われていましたので今更ネタで恐縮ですが月曜ですのでそんなので勘弁。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/speeches/2011/presentation110627.pdf

○お題は「70年代のようなスタグフレーションは起きないでしょう」ということで

英国の場合は何せインフレはターゲット(2%程度)を上回る水準で推移していまして、その一方で景気はイマイチ回復しないので金融緩和は緩和で継続しないといけないという中で、景気回復を緩和的な金融政策によってサポートってえのとインフレが落ち着かないとどうなるのよというバランスの取り方が難しいですよね、という論点になっていて、大体まあここもとのMPCでもその話をしているってえ感じです。

まーあたくしの読み物不足のせいだったらスイマセンなのですが、足元の英国に関してはその物価高止まり状況がそもそも何で発生しているのかという点について中々結論が出ていない(出てりゃその原因に作用するような形で政策を行えば物価の安定化と金融緩和を楽々両立できますよねという話になるでしょうし)のですが、どうもポンド安が効いてしまっているのではないかという風に言われていると思います。

てな事ですので、別に英国経済がどうこうと言いましてもあまり日本経済的には対岸のひとごと状態ではあるのですが(すいませんすいません)、通貨安が景気浮揚に効くので(事実上の)通貨安政策を実施(基本的に先進国と言われる国の金融政策で露骨に為替ターゲットみたいな言い方をするのはレアケースですが事実上それを企図しているのはよくある話)しますよというのはあちこちで見られる光景ではあるのですけど、通貨安政策実施した挙句に肝心の景気浮揚効果よりも物価上昇の方が来てしまい残念な状態になっている、というケースがまさに実演されているという意味で現状の英国経済は中々興味深い所かと存じます。

前フリが長くなってしまいましたが(汗)、ドル安がどうのこうのとかゆー流れになった場合に米国の場合はどうなるのか(勿論英国と米国では産業構造が違いますから単純比較はできませんが)とかゆーのも気になってくる(QE3がどうしたという話になった場合)という事もある次第ですので、ポーゼンさんの論点を見てみましょという事ですわな。


スライドショーの3ページがまあ構成になっていましてですな。

『Not That‘70’s Show Why Stagflation is Unlikely』

というのがお題でありまして、その構成ですが。

『1. What kind of world are we in today?
2. Monetary policy that anchors inflation expectations
3. Labor markets with limited bargaining power for workers over wages
4. Oil price trends not obviously accelerating upwards (yet?)
5. Productivity trend largely undiminished (yet!)
6. Avoiding historical mistakes (so far)』

ということで、現状認識の話の後、ではこれからインフレは高進しませんし、スタグフレーションにもなりませんですよ(という見通しだからポーゼンさんはMPCで量的緩和拡大の単独提案を毎回行っているのですが)っつー背景について説明をしています。で、その論点をあたくしのヘタクソ訳(だいぶ意訳)をすると、

2.金融政策によってインフレ期待がアンカーされています
3.労働市場においては賃金の大きな上昇が起きるような状態になっていない
4.原油価格の上昇トレンドはそれほど継続しないでしょう
5.生産性のトレンドが低下している訳ではない
6.過去の失敗は今の所踏んでいない

という事でありますが、最初の現状認識のところで過去の状態との比較をしているので、まあその辺りから少々。


○現状について:1970年代のスタグフレーションとの比較

スライドの4ページと5ページに箇条書き(スライドショーだから箇条書きなのですが)でこんな事を。

『・ For foreign policy , the question facing an intervention decision is whether this is Munich (deter) or Vietnam (accommodate)?

・ For monetary policy, the question is similar but reversed: is this the 1930s (accommodate) or 1970s (deter)?

・ The underlying dynamic today is parallel to the 1930s, but we have avoided repeating that for several reasons:

- Structural changes (automatic stabilizers, flexible x/r, deposit insurance)
- A smaller share of the world in synchronized contraction
- Aggressive coordinated macroeconomic stimulus 2008‐2010

・ Is there a risk to go from such a state to one of overheating and inflation - or inflation and contraction (aka stagflation)? 』

ということで、ポーゼン委員の見立てとしては現状は70年代のインフレというよりは30年代の恐慌との比較で見ているようで、ただまあ30年代の恐慌のような状態になっていないのは各種の理由(構造改革だの金融緩和だのとか書いてますな)によるものですよ、という話をしています。つまり次のページになりますが。

『・ Let’s assess what it took for stagflation to occur in the 1970s

・ This is a serious question, not a straw man
- Stagflation is unusual historically, especially following a recession
- The historical and theoretical imagery of ‘pre‐emptive monetary policy’stems completely from the 1970s experience

・ What would be involved in repeating the wage‐price spirals?
- Unanchored inflation expectations
- Transmission of expectations into real wage resistance
- Economically significant energy supply shock(s)
- An unrecognized decline in trend productivity growth

・ Only the third of these (oil) seems to possibly be at work
- Bruno and Sachs (1985), Blanchard and Gali (2007) show that all of them have to interact to (re)produce the 1970s』

ということで、1970年台に起きたスタグフレーションのような形での経済状況にはなりにくいでしょう、という事でその根拠として70年代との比較をしている訳ですけれども、最初の所で「これは重要な論点であって藁人形論法ではありません」と70年代との比較の重要性を指摘していますが、70年代に起きたスタグフレーション時に何が起きたかというと、それは「賃金と物価のスパイラルが起きた」という事でございますわなとゆーことで。

で、賃金と物価のスパイラル的な上昇が起きた時の背景および状況としては、「インフレ期待がアンカーされていなかった」「インフレ期待の高さによって名目賃金の上昇が実質賃金上昇に結びつかなかった」「エネルギーの供給ショックが発生した」「生産性の低下トレンドが観測された」(2番目の訳が正直怪しいのは勘弁)というような話をしていまして、現在の経済状況で70年代に当てはまるのはエネルギー価格の問題の部分だけですよ、という話をしていまして、その結果として現在の経済状況で1970年代のようなスタグフレーションを懸念する必要は無い、という事がポーゼン委員の議論のキモになっているようです。


○金融政策によってインフレ期待がアンカーされている、というのが最初のキモ部分っすな

スライドの6枚目が『Monetary policy that anchors inflation expectations』というお題。

『・ The theoretical literature on central banking (and some press) treats monetary policymaking as under constant suspicion

・ The empirical evidence has not supported this view (Blinder,McCallum, Posen on CBI; Kuttner and Posen on CB governors)

・ Right now in global markets, there is understanding of explanations
- Recent Inflation Report and my February speech on financial expectations

・ Several factors contribute to this real‐world anchoring:
- Central bank independence from fiscal authorities
- Better knowledge of how some (not all) of the economy works
- Inflation targeting and transparent disclosure by central banks

・ A reasonable discourse and accountability, not a ‘trigger‐strategy’game of needing to pre‐empt (fighting the last war?)』

という話なのですが、まあ何かはいはいそうですかという感じですけれども、まあ現在の金融政策の枠組みおよびその透明性によって、インフレ期待が安定化しているというのと、(後のほうに微妙にはっちゃけた感じのスライドがあるのですが)所謂「プリエンティブな金融政策」の実施によって金融政策がインフレ抑制的になり、それによってもインフレ期待がアンカーされていますというお話になっています。

・・・・・というのはまあ判るのですけれども、では英国の場合現状で毎度MPCの議事要旨にありまして論点になっている「ターゲットを上回ったインフレが続いた場合に、インフレ期待が高まるリスクは無いのか」という点に関しては華麗にスルーしているように見えますが、はてさてそのあたりどうなのよという感じはしますけど、英国の賃金改定動向とか見ていますと確かに「賃金と物価のスパイラル的上昇」に繋がるリスクは現状では乏しいと思われますので、その辺は足元ではそうですね、と思われます。

で、その後インフレや市場のインフレ期待(と言っても昔はTIPSとか無いから10年のGiltのレート推移で代用しているけど)とかの70年代との比較をこれでもかと色々と出していて、中々説得力があります(当たり前だが)のですがグラフはまあURL先を見てちょということで華麗にスルー。


○労働市場の構造変化が賃金の上昇を抑制するという論点

どどーんと飛んでスライドの18枚目は『Labor markets with limited bargaining power for workers over wages』というお題。

『Everyone in the UK should remember (or know) about the 1970s, the Winter
of Discontent, Britain Against Itself (Beer (1982))…
- That was in part the result of 30 years of rising union power

・ But that was then, this is now
・ Today, we are seeing the result of 30 years of declining union power

Labour market structures have changed in the UK and globally
- Liberalization and other policies from Thatcher and Blair
- Pressures from globalization of production and global labour force
- Changes in the technology and specialization of work

I am NOT saying one state is better or worse normatively
I am saying that as a policymaker, one has to recognize reality』

つーことで、労組の組織率の低下による労働組合の発言力の低下、および労働市場の規制緩和やグローバル化や技術革新、などによって賃金が無駄に上昇しにくくなったという話でまあそうですな、という感じですが、さすがに政治的にどうなのという観点から最後に2行ヘッジクロースが入っているのがチャーミングという事です。

でまあその後これまた図表があるのですが、単位労働コストが今回は上昇傾向が見られないどころか足元では低下傾向にある、という辺りなど、賃金に関する部分は思いっきり1970年代と違うところでして、なるほどなあと思うのでございます。


○原油価格はまあそんなに上がらないでしょという話

この部分に関しては基本的にはまあそうですなという部分ではあります。結論としては「現状の価格上昇はトレンドとしての持続性の可能性は低く、グローバルな景気減速によって需要も減るのでは」というような話になっています。スライドの21枚目から(本当は次のページもある)。

『Oil price trends not obviously accelerating upwards (yet?)』というお題。

『Oil matters for modern economies, but less than it did 30 years ago
・ Is there a major supply shock, or an exaggerated response to one given high demand?
・ What is the elasticity of demand by consumers and businesses?
・ How fast would/could there be a supply response to demand?

Deciding the importance of the trend in energy prices depends on:
・ The size of the trend and the good’s importance in the basket・ The size of the underlying trend versus the fluctuations around trend

IF the trend is big enough and reversals short‐enough, we will respond to keep inflation in line with the target (Bean (2011))

But, a majority of the MPC (and I agree) says not yet there』


○以下の部分スイマセン時間が無いので明日ちょっとだけ積み残し

どうも時間配分間違えたようで(大汗)時間がなくなってしまいましたので、残りの部分を明日(明日はBOEの議事要旨ネタもしますが)やりますけれども、生産性の低下が起きるとマズーという話がありまして、この部分が70年代の「賃金と物価のスパイラルが発生しながら景気は悪化しやがった」という部分のキモになっているようでありまして、現状の英国にはその兆候は見られませんという話をしています。70年代の間違いとしてこのような事を指摘しています。

『The other big 1970s mistake was trying to keep growth up at an unsustainable level - arguably because a productivity growth slowdown went unrecognized (Orphanides (1994) and others)』

70年代においては経済の生産性の低下トレンドの発生に対する認識や理解が欠けており、結果として経済成長をサステイナブルではないレベルに維持しようという政策を実施していた、という事のようですが、続きは明日で勘弁。


#ということで完全に俺様趣味の世界の誰得ネタでどうもすいませんが明日も続きます