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2011/09/30

お題「何か今年も残り4分の1らしいのですが雑談は続くのであった(昨日の雑談の続編である)」

昨日市場関係者に爆笑の発作を起こさせたのはこのお前が言うな大賞でしょうな。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aJfA1VVlyaNg
ユーロ「事実上死んでいる」、銀行危機で崩壊も−ウニクレディト幹部


○東証立会時間変更ネタ雑談の続き

今日は一発目からネタ雑談ですいませんすいません。

http://www.tse.or.jp/news/03/b7gje60000020052-att/20110927_leaflet(TradingHours).pdf
東京証券取引所は、幅広い投資者層の取引機会を拡大する観点から、現物市場及び派生商品市場における取引時間を一部拡大します。

国債先物取引
9:00 - 11:00 ⇒ 8:45 - 11:02
12:30 - 15:00 ⇒ 12:30 - 15:02
15:30 - 18:00 ⇒ 15:30 - 23:30

というのは昨日申し上げましたが、よくよく考えたらこれってちゃんと各方面とちゃんとネゴっているのかねとゆー気が段々してまいりました。

つまりですな、国債先物取引の立会開始が8時45分なのですが、重要とみられる経済統計などの発表時間ってザラ場になるのを回避すべく債券先物や株式市場の寄り前となる8時50分発表にザラ場発表から切り替えたのがあると思うのですけれども(だいぶ前の短観とか、最近では機械受注統計が数年前から8時50分発表になってザラ場に無駄に値段が飛ばなくなった)、内閣府とか日銀とかとのネゴってちゃんとやってるのでしょうか。つーか8時50分に重要指標の公表を控えた時に寄りが8時45分とかだとその日の寄りの取引却って減るんじゃねえのと思う次第で本当に取引の活性化に繋がるのかよと疑問が。

あと、他の派生商品と比較してみたら、立会市場で債券だけ時間が早くなるという不思議ちゃんな流れでして、これやはり投信の設定解約の時限とか適用基準価額のタイミングとかに影響を与えそうですし債券だけブラインドの時間が違ってくるからややこしいことになりそうな気がする(って一部の人しか判らないネタですいません)のですが、これ関連団体との事前調整ちゃんとしてるんでしょうかねえとか思うのでありますが。

で、イブニングの23時半ってのはまあ海外を意識してるんでしょうけれども、その委託の執行するのが東京のブックになるということは東京で基準法上の深夜勤務恒常化になるんじゃが、まあ当然ながら(東京金先みたいに)イブニングは途中で端末の電源切って帰ってもカマワンチ会長という扱いにしてくれるんでしょうねえ(ニヤニヤ)。まあどうでも良いけど、ザラバの時間を長くしたからと言って取引が増えるかどうかって別問題だと思うんですけどね。それよりも無駄に変なシステム変更して端末とか取引そのものとかの使い勝手悪くしないように注意した方が(以下悪態)。

しかし延長の2分の意味がさっぱり分からんあたくしでございます。


○もうやだこの調査委員会(悪態は続くよどこまでも)

昨日は朝の公共放送ニュースに反応していたあたくしだがその後も反応するのである。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110928-OYT1T01422.htm
東電支援へ金利減免や返済猶予…第三者委最終案(2011年9月29日03時04分 読売新聞)

『国の資金支援の前提となる取引金融機関の協力については、「東電の資金繰り状況によっては、さらに一層の協力を求める可能性がある」と明記した。具体的な手法として、「一般論としては金利の減免や返済猶予などがある」ことも掲げた。』

『報告書の原案で、金融機関に対して、融資残高を10年間維持することを求めるとしていた点は、そのまま了承された。』(上記URLより)

・・・・・・・・いやまあね、こういう報道って断片を少しずつ出してくるから出来上がった報道内容見ると支離滅裂な話をしているように見えるという場合が多々あって(だからこそ報道する方はもっと頭使えよおまいら頭いいんだろとか思うのだが)、実際はどういう話をしているのか知らんですけど、これだけ見たら「もしかしたら借りた金をちゃんと返せないかもしれないけれども10年間は借り換えに協力して下さいね」というどこの調所笑左衛門だよという話にしか読めないのでありまして、この委員会の人たちは何考えてるんですかという所ですな。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110929/biz11092901170001-n1.htm
東京電力の公的管理促す 経営責任も明記 第三者委員会最終報告書案(2011.9.29 01:15)

『産経新聞が入手した報告書案は、4兆円規模とみられる損害賠償の支払いについて、東電が機構からの公的援助を前提にしている点を指摘。同社の純資産が約1兆円であることから実質的な債務超過に陥るとして、資本増強が避けられないと判断した。』(上記URLより)

>産経新聞が入手した報告書案は
>産経新聞が入手した報告書案は
>産経新聞が入手した報告書案は

・・・・・・・・あのーすいません、プレスにリリースされているものだったら別に良いと思うのですけれども、そうじゃないものを勝手に入手して勝手に報道するというのは上場企業に対する重要事実の取得云々とかという問題になるんじゃないでしょうかねえ、そらまあこれが重要事実なのかどうかという解釈問題はあるけど現実にこの手の報道が出るたびに株価がジャカジャカ動いているんだし。

ちなみに、金融商品取引業者が上場企業の未公表の重要事実を入手した場合って、当該情報を極めて厳格に管理して内部者取引のような法令違反事案が発生しないように留意しないと大変な話になるというレベルの問題なんですけど、この第三者委員会ってのは何なんですかコンプライアンスとかどうなってるんですかとゆー所であります。

でまあ一事が万事と申しますか、本来既存の法令から考えた場合に普通に採られるべき債務の扱いとかに関して、こーゆー訳の分からん事案がホイホイと出てくると、大体からしてまあ世間的に嫌われ者であります所の金融屋としては、訳の分からない国民感情だの政治判断だので元々の金融契約を後付でひっくり返されるんじゃネーノとかゆー話になってくる訳でして・・・・・・って結局枝野官房長官発言の時と同じ悪態ついてるじゃネーノと存じます次第で、どうしてこうなったと残念な思いでございます。

ですからさっきもありましたけど。

『東電は金融機関からすでに総額約4兆円を借り入れており、一部融資残高の10年間維持も打診している。公的管理で東電の信用力が高まれば、金融機関から債務の借り換えがしやすくなったり、追加融資が得やすくなったりする、との思惑が働いた格好だ。』(上記URLから)

いやあの後付で急に債権の優先劣後関係ひっくり返すような事を平気で言い出すような人たちが仕切る「公的管理」とかされても信用力高まりませんから。そらまあ東電の態度もどうかと思うというのは判るけど、その感情的な問題と契約を履行する話ってのは別次元の話でしょ。

まあ最終的には(既存の法律や契約を履行するという意味での)まともな結論に落ち着いてくれるとは思います(つーか落ち着かなかったら日本では契約とかの概念が通用しない国って扱いになるわ)し、その際には長い目で見た全体の損失が最小化されるような施策に落ち着くとは思うのですけど、そこまで行く紆余曲折が多過ぎで勘弁して頂きたいですわまったくもうという感じでございます。


○やはり固定オペの増額余地はないという雑談

昨日のオペレーション(のうち金利入札方式共通担保オペ)。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110929.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2011年10月3日 2011年10月27日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110929.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(10月3日スタート分) 30,672 10,005 0.100 0.100 32.6

ということで、昨日の金利入札方式のオペは1兆のオファーに対して貫録の3兆円オファーで金利入札方式の資金供給オペに対するニーズの多さを示す格好になりました。

一方で当座預金残高は昨日の速報ベース(まあほぼ速報=確報なのですが)で33兆3700億円と相変わらずの高水準を維持していますので、まあオペのニーズはニーズとしてGCレートは0.100%にほんのちょっと毛が生えたか生えないか程度で安定して推移しているのですが、まあつい暫く前にオペの札割れが連発してすわ固定金利オペ札割れかと言われた時とは大違いの展開で誠にお洒落なのですが、まーこれはある意味当然の展開でもあるので、以下誰得雑談。

現在の資金供給オペのうち、金利入札方式の共通担保オペ残高+固定金利方式の共通担保オペ(いわゆる基金オペ)残高によって、オペに対する札の入り方って違ってくる(あたりまえですが)訳なのですが、あたくしが自前で集計した(ので正確性は担保しかねます)残高の推移ですと、札がお洒落に割れまくっていた8月の前半って45兆円程度の残高があって、そのうち金利入札方式ものが14兆円程度あったのですけれども、昨日の残高を見ますと合計が38兆円で金利入札方式ものが6兆8千億円となっていますので、金利入札方式の残高が半減しとりますがなという所です。

でも当座預金残高自体は水準は33兆円とか似たような状態になっているのでございまして、これはつまり資金需給の関係で、資金余剰期間と資金不足期間があるので、出来上がりの当座預金残高自体に大きな変化が無くても資金供給オペの残高が動くという事ですな。

でですな、固定金利オペの残高が現在31兆2千億円あるのですが、こちらの残高というのは動かせません、というかあと3兆8000億円拡大する予定になっていますので、そうなりますと資金余剰地合いになった場合の調整の皺寄せが思いっきり金利入札オペに寄せられて来ますので、金利入札オペの残高が結構おおきくぶれることになるというか、下手すると殆ど入札方式残高無し状態になるような事態が起きる可能性もありますがなという事になるざますわな。

てな事を考えますと、そもそも35兆でも結構カツカツなので、固定金利オペをあと5兆円拡大するとか無理無理無理というのが結論(その上今の地合いで6か月とかいらねえ)となるなあとか思った次第でございますがどうですかねえという誰も気にしないネタの雑談なのでございました。

ちなみに、話の流れでスルーしちゃいましたが、上記オペ残高のほかに、成長基盤強化貸出と被災地支援貸出が出ていまして、この合計残高が昨日の時点であたくしの人力集計ベースで3兆5000億円ありますので、いわゆるオペ残という言い方ですと41兆5000億円程度という事になるかと思います。


#期末進行のため雑談で勘弁







2011/09/29

お題「期末なので(というのは言い訳)世間話は続く」

最近米国市場の上げ下げの理由が常に欧州なので実にアレである。

○どう見てもフラグです本当にありがとうございました

昨日は3か月TBの入札があった訳ですが・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230928.htm
国庫短期証券(第226回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭2厘0毛
(募入最高利回り) (0.1012%)

(4)募入最低価格に 16.3051%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭2厘3毛
(募入平均利回り ) (0.1001%)


・・・・・・・・・えーっと、確か昨日あたくし久々に短国入札ネタを持ち出して参りまして、「3か月短国がすっかり0.9%台定着しましたねえ」という話をしたような気がするんですが、そんな事を書いたら足切りどころか平均落札まで0.10%乗せになったのですが、この平均落札利回り0.10%台って何とまあ6月15日以来(つまり既存の3カ月TBって発行時に平均落札で買っていると全銘柄ともに持ち値が0.10%割れという大変にアレな状態なんですが)という大変に素敵な結果。

まあ何だ、あたくしを短国市場のムーシャ先生と呼んで頂いて全く問題がなさそうであるが(自爆)、市場推計によりますと落札がやたら偏ってまして、どこぞの大手さんが1社でドカンと落札して、あと不明玉がドカンとあって、それ合わせて3.5兆円以上というオサレな分布でどう見てもあたくしのフラグがまた盛大に立ちました本当にカムサハムニダという風情で実に素敵な秋のひととき。

入札が激強で落札が偏るというのはどっかの投資家が盛大に特攻した結果という事になるんすけど、今回の場合って別に入札が強い訳ではなく、というか何でそんなに弱いですねんという形でしたので、まあ大手一社さん以外がやる気なし子ちゃんだったとしか思えませんな、よー知らんけど。


まあ適当にこじつけると「ツイストオペの影響で米国の2年金利が上昇」というような珍説を唱えることもできるのですが(笑)、そんな理由は全く関係なく、単に期末であんまりリスク取りたくないのと、足元で資金供給オペが少なく(オペは少ないけど20日の国債償還要因があるので日銀当座預金残高の水準は高水準を維持しています)証券ディーラーの在庫ファンディングにおける市場調達必要額の水準が高まっているので在庫ファンディングの観点からもあまり0.09%台の短国在庫をホイホイ増やすのもアレだったとか、前回発行の3か月短国があまり捌けなかったので(世の中0.09%台の短国を恒常的に買うのは日銀当座預金制度の外側にいる生損保年金投信(多くは短期公社債投信だと思うが)と海外投資家であるので0.09%台を維持されると海外投資家の状況次第で販売がスローになる)マンドクセとなったのかというような理由かと存じます。あとまあ為替市場のベーシススワップが足元そこまでワークしてないってのがあったという所のようで。

ではここからドンドン金利が上がるかと申しますと、0.10%に毛が生えた金利水準になるとそこまで鳴りを潜めて日銀当座預金に金を放り込んでいた人たちが大型観光バスを連ねて(ウソ)大量にご到来されることが容易に想像できますので、そーしますと短国の業者のポジションが捌けて、見た目はやたら多い日銀当座預金残高がやっとマーケットに回りだして(つまり足元の日銀当座預金残高水準の高さは単に資金偏在状態を示しているだけで、実体としてはただの死に金状態である、ということだ)業者の在庫ファンディングにおける市場調達が軽くなってとゆー流れになると勝手に想像しておりますので、まー金利ドンドン上昇とかせんじゃろうの。よー知らんけど。

つまりですな、短国の方はこうやって期末要因だか何だかしらんけどまあ何となく上昇(ちなみに増発と年末越えの影響は全く無いと思われますのであしからず)してますけど、一方でCP市場の方はと言いますと相変わらずの日銀買入効果もある上に、発行が期末に向けて微妙に減っている事もあって、市場が玉無し子ちゃん状態になっていて、昨日も1か月程度のCPは最上位格付の投資家が好みそうな発行体さん発行の物で(CPは昨日がスポ末なので発行日はだいたい9月末が多かったと思うのだが)0.11%を普通に割っているのばっかという状態で、しかもここへ来て若干金利低下してるんじゃネーノという状態でございますので、よーするに短期物への運用資金はウジャウジャと存在している状態で、そんな中だったら短国0.10%に乗ったら売れるでしょ、と普通に思うわけですな、うんうん。

まあだいたいそんな感じでマニア雑談でありました。


○この人たちには情報管理という概念はないのでしょうか(東電関連悪態)

昨日は昨日で調査委員会様からはこんなニュースがありましたな。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110928-OYT1T00086.htm
東電7400人削減…第三者委報告書原案(2011年9月28日03時04分 読売新聞)

『2014年3月末までにグループの社員約5万3000人の約14%にあたる7400人を削減する。取引金融機関が融資した資金については東電の財務状況によっては、一部が返済できない可能性があると指摘している。』(上記URLより)

・・・・・・・まあ人員削減の方は兎も角として、融資の返済がどうのこうのという話ってクレジットイベントに関わる問題だから安易に言及されると非常に宜しくないのでございますけどこの委員会って金融市場とか株式市場とかに対してどういう理解をしているのか全くもって意味が分からんですな。

で、昨日「これってサイダー問題じゃねえの」と悪態をついたのが聞こえたのか(んなこたあ無い^^)どうか知りませんが、委員長様がこのようなご発言を。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381949EE0EAE2939C8DE0EAE2EBE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2
東電調査委委員長、報告書「来週の早い時期に公表」
2011/9/28 16:36

『下河辺氏は会合後、記者団に対し、「まとまったが、言葉では言わないということになっている」と述べたうえで報告書について「来週の早い時期に提出して公表する」と語った。』(上記URLより)


しかしその舌の根も乾かぬうちに今朝の公共放送ニュースはこのような報道を。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110929/k10015918551000.html
“東電 年度内値上げ必要なし”9月29日 4時27分

『東京電力の経営や財務状況を調査する国の委員会は、来月、野田総理大臣に提出する報告書の中で、事実上、年度内の電気料金の値上げは必要ないと指摘する内容を盛り込む方向で調整していることが明らかになりました。』(上記URLより、以下同様)

ほほう。

『(途中割愛)関係者によりますと、報告書には、東京電力が今年度末までに支払う賠償金の総額をおよそ3兆6000億円と見積もったうえで、事故の収束が1年遅れるごとに8000億円余りが加算される想定だということです。一方、報告書をまとめる議論では東京電力の電気料金の値上げの必要性が焦点になり、議論の前提として、新潟県にある原子力発電所が、定期検査の終了後に再稼働するか、しないかなど、9つの場合を想定した試算、試みの計算を行いました。』

>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと

『その結果、東京電力にとって最も厳しい経営を強いられることになる原発の再稼働がない場合は、電気料金を値上げしなければ、来年度末、平成24年度末には債務超過に陥ると試算されました。しかし、関係者によりますと、今年度は、原発が再稼働するかどうかに関わらず電気料金は値上げしなくても東京電力は債務超過にはならず、経営が行き詰まることはないことを報告書で指摘する見通しだということです。』

>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと
>関係者によりますと

・・・・・・・・・おいこらこの「関係者」出てこいとしか申し上げようがございませんが、こんな情報管理体制で証券市場で上場が維持されている企業の査定委員会とかふざけるなてめえ関係者サイダーやり放題じゃねえか冗談じゃねえぞ全員牢屋送りだろ常識的に考えてとしか思えませんがねえ。

金融政策に関する話がホイホイと事前に報道されるのも激しく如何なものかと思うのですが、これは昨日も申し上げたように事が上場している個別企業の問題でありまして、あからさまにサイダー問題じゃないかと思うので、東京証券取引所および証券取引等監視委員会に置かれましては適切な処置を行われることを激しく希望して止まないものでございます。



○その他どうでもいい雑談(ここまでもどうでもいい雑談とか言わないでちょ^^)

・東電といえばみんなの党(ナンジャソラ)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920019&sid=au_nTyJSIh9Q
みんなの党・渡辺代表:東電は「ゾンビ企業」になる前に破綻処理を

・・・・・・いやあ渡辺先生におかれましては自分の政党の現状を非常に正しく認識しておられると思ったら東電でしたかこれは失礼いたしました。

で、破綻処理をすると賠償原資が何故か大量に捻出できるそうですが、そらまあ法律的に同順位の債権の片方だけ削減するという無法措置取れば原資は出てくると思いますけど、法的破綻処理というのは法の下で実施しないと法的破綻処理になり得ませんので、どこからどう見ても無理筋とか計算以前の問題(元々の計算も変だと思うが)の話をしているのが立法府の人間としてのハイブロー振りを示しておられますなあと思うのでありました。

みんなの党ネタではwhat_a_dudeさん(毎度勝手にネタにしまして恐縮です)の最新エントリーのツッコミが面白かったので勝手にURLを置いときますね。

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110927
2011-09-27
法律の書ける経済学者様がブレーンの某政党の人々の発言は流石に趣があるなー(棒)と言う感じのリスト


・東証の新システムで立会時間が変更になる件

一昨日の発表で恐縮でありますが。

http://www.tse.or.jp/news/03/110927_a.html
次期Tdex+システム及び第3次ToSTNeTシステムの本番稼働について
2011/09/27 更新

『当取引所は、先物取引及びオプション取引を取り扱う「次期Tdex+システム」並びに株式及びCB等のToSTNeT取引を取り扱う「第3次ToSTNeTシステム」を、平成23年11月21日から本番稼働させることを決定いたしましたのでお知らせいたします。』

ほほう。

『※ 平成23年11月19日の本番移行テスト後に最終稼働判定を行います。※ 本システム稼働に併せて、現物市場及び派生商品市場における昼休みの短縮並びに派生商品市場におけるイブニングセッションの延長等の取引時間の一部見直しについても、平成23年11月21日から実施いたします。詳細につきましては、以下の「取引時間の一部見直し」を参照下さい。』

冬季も節電しないといけないんじゃなかったでしたっけ???というツッコミは兎も角として、「取引時間の一部見直し」のPDFファイルを見たら微妙にアレな記述が。

http://www.tse.or.jp/news/03/b7gje60000020052-att/20110927_leaflet(TradingHours).pdf
東京証券取引所は、幅広い投資者層の取引機会を拡大する観点から、現物市場及び派生商品市場における取引時間を一部拡大します。

で、よく見ると債券先物取引の時間がこうなるのですか。

国債先物取引
9:00 - 11:00 ⇒ 8:45 - 11:02
12:30 - 15:00 ⇒ 12:30 - 15:02
15:30 - 18:00 ⇒ 15:30 - 23:30

イブニング23時半までやって誰得なんだよと思うのですが、先物2分間延長というのがまあ何かの意味があるのでしょうけれども何で2分とか延長したんだか。大体からして東証は商売したいから時間延長したいのは判るが、国債入札とかオペとかの都合もあるんだからあまり昼の時間の立会長くするんじゃねえと思うのですけどねえ。まあどうしても「時間を変更したかった」んでしょうけれども。

あと、これって投信の設定解約の基準時間とかにも影響与える可能性があるような無いようなという感じ(たぶん現物株式の立会時間に変化がないから変化がないという結論になるとは思いますけどよー判らん)ですが、まあ前々からやる気だけは示していたのでその辺の話はついているんでしょう、とは思います。

11月21日からは引けのお時間にはご注意を(^^)。







2011/09/28

お題「期末進行で相場がアレで雑用はナニですので世間話の巻で恐縮至極」

げげげげげ、この強気シリーズが7番まで続くという事は最低でも向こう7週間くらいは経済や株価はダメダメなのかよ・・・・・
http://www.musha.co.jp/3228

#今目の前のテレビで「外銀の日銀当座預金(=ブタ(0.10%だからブタじゃないけど)積み)残高が増えているのは日本円への海外からの投資拡大を意味するから円高要因」という素晴らしい説明をしている人がいたのですが、金融緩和を拡大すると円高が進行しちゃうとは画期的(棒)。


○今日は増発した3か月TB入札ですよ

・・・・・・と一部のマニアしか興味のないネタですが(^^)、まあきょうび年末越えだからどうのこうのというような話は1ミリも無いので年末越えのハンデもつかないで前回並みの入札になってしまうのでしょうかねえという残念感はございますが、相変わらずGCちゃんは0.10%を上回る水準で推移してますし、オペがあまり多くないので固定金利オペは最近すっかり札が入るようになっていますし(というだけではなくて、一時期結構なリスクとして心配されていたIOERの引き下げの具体化が遠くなった感じがするので、金利先安へのリスク認識を下げたという要因もあるでしょう)という状況なのですが、短国は3か月0.09%台がすっかり定着しましたな、うんうん。

単純に言えば補完当座預金制度の中の人が(商品在庫としての必要性以外に)0.10%を割る金融商品を買う必要は無いはずで、補完当座預金の外側の人だけで毎週4.8兆円(今回の入札分から5.1兆円)の発行額は捌けない筈なのですが、まあ結局ロットが捌けて流動性があって使い勝手の良い上に国債と来てますからここにキャッシュ潰しのニーズがやってくるのは致し方ない所かとは思いますし、まあ待機資金みたいなのも相変わらずあるんだろうなあとか考えているのざんすけど、延々と強い短国というのがあって、一方で海外の金利があれだけ暴れても1%近辺で貫録の安定推移する長期国債市場というのを見ると、資金のフローってどうなってますねんと思うのですが(単に待機資金が止まったままのような気もしますが)どうなんでしょうかね。

ということで3カ月入札が流れたりするとオモロイのですが、どっからどう見ても前回並みの入札を淡々とこなすという感じが続きまして、なんちゅうかIOERの先行きがどうのこうのとかいうような話と全然リンクせずにただ単に量的緩和状態の反映が普通に続くという所でしょうな(つまり量的緩和しても別にその金は短期市場でグルグル回るだけといういつか見た光景を今回もやっているだけという残念な事なのでしょうけれども)。

もーちょっと長い話をすると、今回提出となる第3次補正でもまたまた埋蔵金とやらの取り崩しが行われたりすると、益々短国の発行が増えてくるでしょうなあとか思うのですけれども、現状のように事実上量的緩和モードになっているうちは別に1ミリも問題はないでしょうけれども、実際問題として世の中が正常化(しないんじゃネーノというツッコミは却下)したときには結構ヘビーな問題になるだろうなあとか思うのでありまする。


○何気に電力関連雑感

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aMCjlpvCqWXk
東電株が3カ月ぶり安値、公的管理下に置く意向との報道

『午前終値は6.2%安の243円で、東証1部下落率5位・原子力損害賠償支援機構の杉山武彦理事長が26日の会見で、廃炉費用などが巨額になった場合、東電に出資する意向を示した、と27日付の読売新聞朝刊が報じた・また、政府の調査委が賠償総額を4兆円台と試算していると、27日付の東京新聞朝刊が報道』(上記URLより)

ここの所連日のように政府の調査委員会に関する調査結果の事前リークみたいな記事が出て、それも月曜は「電力料金10%上げても資金不足」だの、昨日は上記URLにあるように「公的管理」だの「賠償総額がなんぼになる」だのという極めてクリティカルというか何というかな問題でもありまして、そらまあ記事が出る側から株価がアレになってしまいますので誠に遺憾の極みでございまする。

社債ちゃんに関してはまあよーしらんですけれども、逆に公的管理してくれるのであればまたぞろクレジットイベントになるのかならないのかでややこしいことになりそうですけれども、キャッシュボンドとしては一般担保条項がお助けになるような気もしますし、まあよーワカランチ会長。と申しますか、そもそも国内の普通の社債って投資家の所に多くが嵌っていて、この手のフワフワしたニュース報道状態でホイホイ売ったり買ったりできるような人はとっくの昔に売るなり買うなりしているでしょうから、半期末直前という事もあって特に動意のしようも無しとゆーことですか、よー知らんけどな(外モノとかCDSとかの話は敢えてスルー)。

まあ枝野さんが主管大臣になってしまったのでこういう感じになりますわなあと諦め感が漂う(しかしここまで酷いとは正直思わなかった、海江田さんカムバックプリーズ)のですけれども、とにかくひたすら東電悪いという事で、原子力政策って政府がやってた話じゃないんですかというようなツッコミをするタイミングを与えない見事なポピュリストプレイを継続的に打ち込むのを怠らない枝野大臣はある意味さすがだと思いますが、その度に株価が下がるので大概に勘弁していただきたいと存じます。

つーかイジメも度が過ぎると自棄を起こして刃物持って暴れたりすると思う次第でありまして、金貸しの手先をやってた時にも「債務者が開き直ってしまうとどうしようも無いので、ヤケクソになるかどうかは注意しますようね(はあと)」という心得があったような気がするのですが、どうも弁護士ってのはそういう手加減というのを知らんのかいなとか思うのですけどにゃあ、と話が逸れましたすいませんすいません。

で、更に話は逸れるのですけれども、政府の資産調査委員会の結論っていうのは東京電力の株価に重要な影響を与える事だと思うのですが、こういう話が事前にホイホイとリーク報道されている件ってどうなのよと思うのですけどねえ。ちなみにどうでも良いですが金融政策に関するもんだと所謂サイダー関連とは関係ないのでございますけど、今回の場合ってモロに特定の上場している銘柄に関連する話だと思う次第で、報道する方も報道する方だが、ホイホイと情報漏れをするというのはどういう管理をやっているんだかと思うのですけどねえ。


そういや中部電力株も浜岡原発の停止決議がどうのこうのというのがありまして、昨日テレビ見てたら牧之原市の市長が「100%安全じゃないと永久停止じゃ」と仰せになっているのを拝見して、それならお前さんの所の市には工場も置けませんし、農薬使う農業も出来ませんし、そもそも交通事故で年間にたくさんの人が死傷しているのですから車もつかえませんなあとか思いましたが、まあそこの記事を拝見していると背景に大人の事情もあるみたいですし、お気持ちが分からん訳でもありませんなあと思ったのですけど・・・・・・
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/surprise/20110927-OYT8T00387.htm
【浜岡】永久停止決議、牧之原市議会に市長も同調


その後に出た川勝知事の発言に盛大に噴いたんですよね。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shizuoka/news/20110927-OYT8T01316.htm
「永久停止で思考停止なら知的鎖国」

『「永久停止宣言で思考停止になったら知的な鎖国。そうならないように、科学的に評価し、県民の意見も踏まえて判断する」と述べた。』(上記URLより)


・・・・・えーっとあんさんこの前こんな事言ってましたよね。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/surprise/20110712-OYT8T00715.htm
【浜岡】静岡知事「120%大丈夫なら」

『運転再開の条件としては、「120%大丈夫となった時に、それを拒否する理由はない」と述べた。』

『120%安全の意味に関連し、川勝知事は「私が中部電力の立場から見て、安心して原発を動かせる論理が立てられなければ、反論ができないくらい十分な立論が運転再開についてなされなければ、運転再開はできない」と、学者出身らしく表現し、安全性について一切の疑問が生じない対策が必要だとした。』(上記URLより)

・・・・・・・まあ何ですな、読売新聞って報道のトーンが反原発じゃない方なので、ここの「学者出身らしく」というのは何かの嫌味で入れたのでしょうなあというのは判りますが、そもそもあんさんが120%大丈夫とかそもそも100%だって有り得ないのに120%とか訳わからん事言って「思考停止で知的鎖国」を煽っているという認識が無いとかオソロシスとしか申し上げようがございませんな。

#いかん、ただの悪態になってしまった


○3次補正と増税案やっと決定ですかそうですか

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110928/k10015891701000.html
政府・民主党案決定も不透明
9月28日 4時22分

『政府・民主党は、27日夜、震災復興を柱とした総額12兆円規模の今年度の第3次補正予算案や、復興増税についての具体案を正式に決め、自民・公明両党との政策協議を経て、国会に予算案などを提出したい考えです。これに対し、自民党は、国会提出前の協議には慎重な構えで、すみやかに協議が行われるかどうかは不透明な情勢です。』(上記URLより)

まあ国会で協議すりゃええやんとか思うのですが、国会やるとまた議事が進行しないとかそーゆー不毛な話があって事前のネゴをしたいという事なのでしょうが、それって国対政治って奴じゃないのというツッコミをしてはいけません。

債券市場的には何だ結局増税案普通に民主党内を通るのねという感じで、これだとあまり材料にしないのじゃないかと思うのですけど、よー知らんけど。個人的にはもうちょっと先送り感が満載になって債券市場にてきとーな押し目でも作っていただきますと有りがたく存じます(ただの不謹慎)という所でしたが、復興債の償還が最初のうち5年位でどうのこうのという話がいつの間にやら15年とかになっている(まあ15年でやるのなら5年債出して減額ロールするとかなんですか、良く判りません)辺りに微妙にアレなものを感じますけれども、とりあえず国債発行計画がこれによってどうなるのかを見ないと反応のしようもないと思われます。

つーか12兆円やるのはいいけど肝心の復興計画の策定が地方自治体にマルナゲータになってしまいますと予算は出たけど使途が決まっていないので単に何とか基金で国債購入する資金に化けるとかしょうもない事にならない事を願う次第でございまする。



と、期末らしく(???)ただの雑談で恐縮至極。だって結局どうなるか訳のわかんない欧州債務問題で決まるんですもん(欧州といえばスペインが11月20日投票で総選挙してミスタービーン先生はどっちに転んでも次の首相じゃない(PSOEの首相候補はルバルカバとかいう元内相)みたいですね)。






2011/09/27

お題「PD懇&投資家懇で雑談である」

本当は東電関連でまた株が下がったりしやがって誠に遺憾という話もする筈だったのですけれども、国債投資家懇ネタで見事に増量&時間切れになってしまったのと、そもそも頭の交通整理中につき今日は穏当に雑談で恐縮至極でありまする。

○PD懇&投資家懇であれこれと雑談

今さらですがPD懇&投資家懇である。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/c230916.htm(PD懇)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/b230920.htm(投資家懇)

・流動性供給入札&買入消却@PD懇

まずは流動性供給入札に関するMOFの説明。

『資料1-1のとおり、残存5-15年を対象とする入札は、比較的安定した結果が続いており、残存15-29年を対象とする入札も、4-6月期実施分に比べて無難な結果に収まってきている。また、6月の本会合において、発行対象銘柄を見直す頻度について、入札の都度見直すことが望ましいとの意見が多くみられたところである。

 このような状況を踏まえ、資料1-2のとおり、引き続き残存5-15年ゾーン及び同15-29年ゾーンを対象にそれぞれ毎月3,000億円ずつ発行するとともに、発行対象銘柄をアンケート方式で、入札の都度見直す案を提示している。この点について、参考までに事前に意見を聞いた際には、国債市場特別参加者及び国債投資家懇談会メンバーともに、大多数が本案を支持する結果となった。いずれにせよ、当局としては、本日の意見も勘案し総合的に判断していきたいと考えており、10-12月期の流動性供給入札の実施方式について意見を頂きたい。

 なお、資料1-2下段に記載のとおり、アンケート方式の留意点として、引き続き要望の多かった銘柄から順に選定するとともに、要望先が同数となった場合には、日銀保有分を除いた市中残高の少ない銘柄を優先する方針である。』

ということで、まあ極めて妥当な話で(投資家懇でもそうですが)特段苦情も出なかったのは良い傾向でありますが、そういや以前投資家懇だったと思いますが「流動性供給入札で需給が変化すると困る」みたいな「私はショートスクイーズをしていますよ」と言ってるかの如き発言をしている人が見受けられた(だいぶ前なので忘れたが)ような気もしましたけれども、やはりまあ流動性供給入札で恒常的に流動性の低かったゾーンの需給を緩和するという機能のメリットが浸透したという事で。


でもって買入消却に関して。

『物価連動債については、資料2-1のとおり、BEIは下落基調を辿った後、足元ではやや値を戻しており、9月15日時点で実質利回りは0.938%、BEIは▲0.420%となっている。こうした中、買入消却入札は7-9月期に入ってからも安く決まっている。

 15年変動債については、資料2-2のとおり、無難な入札結果が続いていることもあり、価格は横ばいで推移しており、9月15日時点で実勢αは0.688%となっている。

 資料2-3では、最近4年程の買入消却額の推移を示している。昨年10月の特別会計仕分けの結果を反映し、今年度も国債整理基金の取崩し等を財源とした買入消却を実施してきているところであり、10-12月期についても、従前同様に買入総額は7,500億円を予定している。また、参考までに事前に意見を聞いた際には、国債市場特別参加者からは、市中残高の減少等を背景に物価連動債の買入額を減額すべきとの意見も相応にみられたものの、国債投資家懇談会メンバーも含め総じてみれば、従前と同程度の買入規模、すなわち物価連動債1,500億円・15年変動債6,000億円を維持すべきとの意見が多かったところではあるが、当局としては、本日の意見も勘案し総合的に判断していきたいと考えているので、改めて意見を頂きたい。

 なお、買入消却入札のオファー時刻は現行午前10時40分となっているが、本会合及び国債投資家懇談会において特段異論がなければ、10月実施分より同時刻を午前10時10分に前倒す予定である。』

物価連動国債および15年変動国債に関してはマーケットちゃんの流動性が相変わらず(PD懇および投資家懇でも指摘がありますが)な上に、15年変動についてはそれまでの発行し過ぎの後遺症が相変わらずなのでまあこれはこれで継続ですがなという事なのですけれども、実は地味にヒットなのはここの最後にある「入札のオファー時刻の前倒し」でござる。意見の中にも『なお、オファー時刻の前倒しについては、内外の投資家に対する周知徹底の時間に余裕ができることから非常に有り難い対応である。』ってありましたように、10時40分から11時までの間にどうにかするというのはこれがまた中々面倒でありまして、世の中証券会社のディーラーみたいに即断即決で売買行動ができる訳でもなく、特に投資家サイドでおまけに自己勘定じゃない(他人勘定ね)と来た場合には、売買するのに一々ああでもないこうでもないという手続きが必要な場合もあったりするので、20分というのはタイトですわなあってな感じどすえ。

・・・・とか何とか申し上げてますが、本来買入消却ってプライマリーディーラーが参加するもので他人勘定の投資家の事情がどうのこうのとか関係ないという説もありますが(汗)、まあ現実的対応という事で、これは参加者で文句を言う人はおらんでしょ。10時10分とゆーのも他の入札やオペのオファーと時間をずらしているので、買入消却に注目する投資家としては他の入札やオペのオファー通知のベンダー情報に紛れて見落とす事も無く大変にアリガタヤでありますな、うんうん(受信通知を何度も分けて送るのは手間なのかもしれませんが^^)。


・物価連動国債(とあたくしの愚雑談)

PD懇の参加者からの意見から。

『物価連動債は各月300億円の900億円まで減額し、その分15年変動債を6,600億円に増額することを提案する。また、15年変動債で十分吸収できるので、固定利付債の買入れは不要と考える。』

ほほう。

『物価連動債の足元の市中残高は3.3兆円を若干下回るところまで減少しており、現状のペースで買入れを続けると今年度末には3兆円を下回る。買入消却の副作用として市場機能の低下が生じている中、実勢と引値が乖離するケースが多く、新規取引に対する妙味も薄れている。物価連動債市場をこのまま消滅させるのか、それとも発行再開に向け市場機能を維持していくのかという点を明確化する時期に来ているのではないか。当社は買入消却を減額し、少しでも市場機能の改善を図るべきと考えている。』

物価連動国債の市場機能低下は買入消却無かったらもっとエライコッチャになっているような気もするのですが、まあこのまま残高が減っていくと市場としてどうなのという事になろうかと思います。でまあ物価連動国債ですけれども、よーするに国内投資家にニーズのある形で発行を再開すれば良いというのは話は簡単ですが、じゃあどうするとニーズが出るのかというとこれがまたヤヤコシヤ。

そもそも国債買う機関投資家サイドで物価上昇をヘッジするニーズがあるのかというのがありまして、アセットクラスの一環としてそらまあ有れば有った方が良いのかも知れませんけど、その他諸々のアセットクラスがありますからどうしても買わないといけないというもんでもないという残念な状況が。ただまあコモディティーとか不動産とかって話になると市場規模とか流動性の問題がありますので、そらまあ物価連動国債の市場がある程度の規模になって流動性が高まればこれはこれでニーズが後付で出てくると思われますです。

従いまして、新型発行する時には、国内投資家がシステム対応できるように前広に周知するのもそうなのですが、できるだけ会計、計理上購入するのにネックにならない方法(元本のフロア設定とかも含めて)ような設計にして頂くことを望みます。正直言ってBEIトレードとかどうでも良いので、国内投資家(できれば銀行とかのプロパー勘定よりも年金とかの他人勘定)に嵌り易くする設計を、となりますと、その辺りの(ある意味で言えばしょうもない)制度的な制約条件についてのご配慮を賜りたく存じます次第でありまする。

ま、それから別の発想になりますけど、本来的には物価連動国債って物価上昇のヘッジツールが少ないリテール投資家にフィットするような気もするんですけれども、ヘドニック掛けた後のCPIってえのが生活者的な体感的な物価推移と本当にフィットするのかというとこれがまた疑問な。結局のところ為替とエネルギーと食品価格が効いているような気もする次第で・・・・・・

と、話が激しく逸れましたが、いずれにせよ物価連動国債は現在停止中の商品設計で発行するとニーズもそんなに増えなさそうですので、もうすこし国内機関投資家が購入しやすい形にして発行再開(本質的にニーズが無いわけはない)すると共に、既存のモノにつきましては買入消却を進めてリプレースするという風にすれば、今まで発行したのも「重要な知見が得られた」ってな事で浮かばれるのではないか(勝手に死んだ事にしないように>自分)と思うのでありました。


・流動性供給入札&買入消却@投資家懇

今回はPD懇の議事要旨が妙にあっさり味で投資家懇の方がオモシロス(分量にして倍違う)という内容でしたので、投資家懇に関しまして以下引用してみるだよ。

流動性供給入札に関して。

『流動性供給入札については、ALM上、特に残存15-29年ゾーンにニーズがあることから、現行の発行額を維持してほしい。また、40年債を対象とすることを希望する。』

40年債対象希望とはこれはまた力強いご意見(^^)。

『流動性供給入札については、当局の提案を支持する。ただし、現行方式の下での平均発行銘柄数が、残存5-15年ゾーンで16銘柄、残存15-29年ゾーンで21銘柄であることを考えると、真に需給が逼迫した特定の銘柄を発行するというスタンスを明確にするためにも、オファー銘柄数を現行の60銘柄からもう少し絞るべきではないか。』

まあそれもそうですが需給が逼迫してなくてもレギュラースケジュールで実施するという面もありますので銘柄数をあまり絞りすぎるのもバランスが難しいのでこれは試行錯誤という感じかと。

『また、流動性供給入札において、応募倍率の低下やテールの拡大が恒常化した場合には、通常の新発債入札への悪影響も懸念されることから、国債市場特別参加者に対して一定の応札義務を課すべきではないか。』

・・・・・・うーむ、こう来ますか。これは俄かにコメントしにくいのですが、一定の応札義務って言いましても元々PDだって万遍なく全ての年限に対して1%落札しないといけないというもんでもないですし、応募倍率の低下自体はニーズを測るのに意味もあると思いますし、毎回アンケート実施で銘柄を決めるという流れになればそこまで懸念する必要は無いような気もするんですけどよーわからんので判断保留。


買入消却入札に関して。

『買入消却入札については、現状維持でよい。物価連動債及び15年変動債は、買入消却入札のタイミングでしか流動性が出てこない状況であることから継続した方がよい。また、来年度以降直ちにということではないが、物価連動債については、市中残高が3兆円を下回ってくる中、新しい形の物価連動債ということも含め、発行再開に向けた議論も必要と考えている。』

物価連動に関しては先ほどのしょうもない雑談の通りでありまする。



・まあ今回は何と言っても投資家懇の市場見通しが(^^)

前回のPD懇、投資家懇は6月20日にダブル開催だったのですが、その時はPD懇の参加者の相場見通しがやたらめったら強気のオンパレードの一方で、投資家懇の参加者の相場見通しが揃いも揃って「買いたい弱気」だったのが中々ワロタのですが・・・・・・

で、PD懇の市場見通しはあんまりオモロクナイので投資家懇の市場見通しからでござる。

そちらに関しましては、投資家懇の真ん中あたりに『(2) 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて』ってのがあってそこから始まるのですが、誠に恐縮ですが冒頭から吹いてしまいました。たぶん生保の人。

『金利が低位で推移している現在の状況には困っている。』

・・・・・・・・えーっと、盛大に茶を吹いたのは良いのですが、何かしらないけどあたくしもその後目から汗が出てきて視界がぼやけてきたんですけど何が起きたのでしょうかorzorz

『予定利率を睨みながら運用しており、運用資産全体の利回りが低下すると運用の自由度が無くなってしまうため、今は4月、5月の運用益を少しずつ使い、運用資産を絞りながら対応している。今後については、金利がまた上昇するということであれば今までどおりの運用を継続できるが、現状を見る限り、国内にも海外にも金利上昇の要因があまり見当たらない。当面は今の運用を継続する予定だが、今のような状況が続くようであれば、運用方針を見直す必要があると考えている。』

・・・・・・・うーむ。

『世界的にリスクオフの動きが加速しており、その中でも日本国債は、ドイツ国債、米国債と並んでリスクの回避先になっているという印象を強く受けている。また、日本の金利は相対的に低いため、ドイツや米国に見られるような金利の急低下は起きていないが、為替が円高となっており、運用は世界中に分散投資しているため、かなり厳しい状況となっている。』

・・・・・・・・涙。

『今後の運用について、世界中でリセッションの懸念が高まっている状況ではあるものの、日本の株式市場、為替市場は欧州に引きずられて少し行き過ぎている部分もあるのではないかと思っているので、基本的には、従来のスタンスを変えて、よりリスク回避に動くような投資行動は慎んでいる。一方、財政問題が懸念される場合における金利上昇にも警戒する必要があるため、投資行動としては動きづらい。金利上昇を多少は警戒しながら、リスク回避の動きにも注意しなければならないため、今のところ打つ手がないという状況である。』

>今のところ打つ手がないという状況である
>今のところ打つ手がないという状況である
>今のところ打つ手がないという状況である


『欧州の債務問題が長期化・深刻化しており、また米国をはじめとした景気の先行き不透明感もあって、今後も長期金利の低下が長引くものと考えている。当社の運用としては、期初から金利の予想レンジを外しており、運用が不足しているため、当面は偏った金利観を持たずに淡々と購入していくのが最善ではないかと考えている。復興債の問題等、不透明な要因があるものの、発行当局においては、市場の状況等をよく勘案して対応されるものと期待している。』

「期初から金利の予想レンジを外しており、運用が不足しているため、当面は偏った金利観を持たずに淡々と購入していくのが最善ではないかと考えている」って気持ち良く判りますよ、うんうん。

とまあ相場観の部分って今回は前回の買いたい弱気攻撃から、どうもすいません状態になってますなあというのは把握した。


・国債市場をめぐる構造要因の指摘

更に投資家懇の運用方針などの部分から。

『現状において、銀行の預貸率が以前は70%強程度だったのが、ここ2〜3年で60%程度にまで低下している。その結果、銀行における運用のスタンス・位置付けが、これまでの余資運用から、全体の資金収益や金利リスクをコントロールすることを目的とした運用へと変化してきており、それがデュレーションの長期化などとして現れている。』

ほうほう、でその続きですが。

『過去5年間低金利が続いており、市場のリスク量をVaR値で計ると、国債のVaR値が1.7倍くらい上がってきている状況である。金利が低下する局面やレンジ相場であれば、ほとんど影響はないが、ひとたび金利上昇に向けた何らかのストレスがマーケットにかかった場合、リスク量をある程度削減する動きが一斉に出てくる可能性も考えられる。潜在的に金利リスクのリクイデーションを常に抱えている状況だと思われる。』

で、財政当局においては財政の健全性維持の姿勢をという話の部分は割愛しますが、同じような指摘が色々とあるのが今回の投資家懇の興味深いところ。これは別の人ですが。

『マーケット関係者においてはどこも同じ状況だと思うが、最近の金利低下の状況の中では、かなり苦しい状況となってきている。グローバルな要因により、金利が潰されてしまっている状況の下、リスクオンするとしても、運用する先が見当たらず、国債を買わざるを得ない状況が続いている。国債を買うペースを緩めることや、マチュリティを変えるなどの工夫は考えられるが、金利水準に妙味がない状況が続くと、デュレーションを長期化するか、レバレッジをかけるなどして、収益を嵩上げする方法を考えざるを得なくなり、その分投資リスクを高めてしまうおそれがある。こういった状況の中では、何らかの圧力があると、金利上昇に直結してしまうことも考えられる。』

なるほど。更に別の方はこのような話を。

『当社としては、今後を考えると、会計基準を踏まえた資産と負債の経済価値の評価という大きな動きの中で、資産側のデュレーションを合わせていくというテーマで動いているので、金利水準によって多少購入額を抑えるかもしれないが、購入を控えることはなく、引き続き長期の国債を購入する必要があると考えている。』

また、こういう指摘も。

『金融機関によっては、預金は集まるものの融資が伸びないため、そのギャップが大きくなって証券投資に資金がまわっているのが現状であり、リスクを取らないスタンスから国債への投資が進んでいる。しかし、ここまで金利低下している局面においては、当初は国債への投資の残高を増やす、デュレーションを伸ばすという動きになろうが、融資が伸びず収益が低迷する中で市場運用に対する期待は大きいこともあり、今後は国債以外の選択肢も模索する動きになるのではないかと思っている。当面は、金利水準をよく見ながら、厳しい運用が続くと考えている。』

とまあそんな感じで、国債を始めとして債券投資に掛かる比重は益々高まりますなという流れが継続しそうな悪寒。ただまあ現状の市場に関しては欧米のヒャッハー相場に対して落ち着いている感もあるわけで・・・・・

『また、国内の金利水準については、グローバルな金利低下につられている側面があるとはいえ、10年債1%割れは過去4回程度経験があることから、マーケットも学習しており、喜んでその水準の国債を買っていく投資家はほとんどいないと思っている。金利低下に対して経験があるという意味で、欧州や米国に比べ、日本のイールドカーブは成熟している印象がある。今後においても、投資家は、自制の働くようなイールドカーブの中で、キャリーを取っていくことになると思っている。』

ということなんでしょうなあという所になるかと存じます。


#ということでほとんど国債投資家懇ネタなうえにほとんど引用で増量の企画でありました(汗)








2011/09/26

お題「英国も追加緩和が近いと」

ほほう。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201109260056.html
原発推進派の柏原氏3選 上関町長選、反対派の新人破る

『当日有権者数は3206人。投票率は過去最低の87・55%(前回88・08%)だった。中国電力による原発建設構想が1982年に浮上後、町長選は9回目。全て推進派が勝っている。山戸氏の得票率は33%を切り、反対派としては過去最低だった。』(上記URLより)

#落ちて悔しいのは判りますけど落選候補は有権者を「全国の非常識」呼ばわりするとか何だか随分と偉そうですねえ

どうでもよいが悪態ネタになるからと思って某モーサテの為替解説を聞いてみたのだが、説明がすさまじく表層的で頭がクラクラしたわ(吉崎さんが微妙に違う説明をして為替解説者に暗にダメ出ししてたのにはワロタが)。

・・・・・まあそれは兎も角として、海外的には何か素敵なリスクオフになっておられて新興国の資本市場があばばばばーになっているように思えますが、ツイストオペとは一体なんだったのだなどとゆー事は言わないと致しまして、連休明けであたくしがぼけーっとしているという事もあり先週の積み残しネタであるところのBOE議事要旨ネタを。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2011/mpc1109.pdf

○ああでもないこうでもないという感じから吹っ切れてますな

今回の議事要旨は(インフレーションレポートとかの議論がないのもありますが)量的にも妙にすっきりした感じがしますし、議論内容的には従来のああでもないこうでもないという感じから吹っ切れて「景気ダメダメ」の話になっているというのが第一印象でありまする。

つまりですな、今回の議事要旨って合計で34パラグラフあるのですが、この構成を簡単にまとめると以下のようになります。

1:冒頭のご挨拶
2−18:ひたすら「経済が悪化している」という話をしていますが、この中で結構何度も強調されているのが「金融市場の混乱による金融環境のタイトニング」という所ですな
19−24:CPIは目先上昇するけれども来年になると一気に下がるという事のようでインフレ懸念をしてませんな。一方で相変わらず謎なのが「生産性と経済の余剰生産の存在」に関する部分だそうで
25−28:ダウンサイドリスク拡大の認識になりました
29:どう見ても追加緩和検討です本当にありがとうございました
30−31:追加緩和提案のポーゼンさん以外も「先行きは追加緩和が妥当」とな
32:ただしリスク認識については見解が割れる
33−34:ということで今回の決定

ってな構成になっています。でまあ何となくこの中で気が付いた点に関して引用しながらご紹介ということで。


○金融環境の悪化に関してこれでもかと説明

『Financial markets』という所と、『The international economy』という所なんですけれども、こちらでは先ほど申し上げたように経済が悪化していますって話のオンパレードとなっていまして、その中でふーんというのはこの辺ですかな。

第5パラグラフから。

『For European banks in particular, short-term dollar funding conditions had been increasingly tight with quantities declining and maturities shortening. One consequence of the turbulence had been the virtual closure of corporate bond and bank term funding markets to new issuance. Since May, there had been no senior unsecured term debt issued by banks either in the United Kingdom or elsewhere in Europe. Over the past month there had been some covered bond issuance around the start of September but this had since stopped. While UK banks had already met a significant proportion of their funding needs for the year, if they were unable to access unsecured term funding markets for much longer they might feel pressure to reduce lending.』

ということで、欧州の銀行のファンディング環境が悪化している件に関して、この影響が英国にも波及しており、この状況が長引いた場合には銀行の貸出態度の悪化を招く可能性が高まるという指摘。似たような話はこの後にもあるのですが、要するに欧州債務問題を起点にした金融環境のタイト化が実体経済に悪影響を与えるという金融の悪化が実体経済の悪化に繋がる負の連鎖という点を強調しているっつーことでありますので、金融環境の改善のために追加緩和という結論に向かって布石が着々という所でしょうか。

第10パラグラフから。

『In the euro area, output growth had slowed by more than expected in the second quarter to 0.2% and there were now clear signs of growth slowing, even in the hitherto robust core countries.』

ユーロエリアではこれまでは力強い成長をしていたコア国でも成長が弱まるキタコレ。

『Having weakened in July, the Purchasing Managers’Indices had shown no signs of recovery, with the services activity index broadly unchanged in August and the manufacturing index falling below 50. Other surveys of business and consumer confidence had also weakened. Overall, this suggested negligible euro-area growth in the third quarter.』

これは指標が悪化した話ですな。

『While the German Federal Constitutional Court had rejected the claims that support for the troubled euro-area periphery countries was unconstitutional, considerable challenges remained and it was difficult to see the present uncertainty being resolved quickly. Looking further ahead, additional fiscal consolidation measures announced in some of the larger economies could also be expected to weigh on growth.』

要は欧州の債務問題に関する解決が進むかどうかが重要なのですという当たり前の話ではございますが、世界経済に関してその他の部分では米国、新興国共に減速の傾向がみられるという話をしていまして、まあダメダメ感が漂う内容となっています。

英国経済については『Money, credit, demand and output』の所になるのですが、こちらは2QのGDPは改定されなかったものの、個人消費が弱くて住宅市場がダメ、更に6月の輸出は予想を大きく下回る、そしてサービス業中心に生産や活動のサーベイが大きく悪化したとか残念な話が続いております。

第17パラグラフより。

『Much but not all of the recent slowing in GDP growth appeared connected to external developments, with trade linkages, financial markets and confidence as key transmission channels.』

ということで、それがすべての要因ということではないですけれども金融市場の問題が実体経済に影響している件をここでも指摘していますな。

『The slowdown in global growth was already affecting UK exports and orders. So far, however, world trade had moved broadly in line with global GDP and orders were not falling sharply as they had in the autumn of 2008. In financial markets there had been a generalised fall in prices of risky assets and a deterioration in bank funding conditions. Those developments in global demand and financial markets had probably already affected confidence levels, with both business and consumer confidence measures falling this month.』

2008年の秋(つまりリーマンショック時)ほど急速に世界貿易が悪化しているわけではないが、金融環境の問題は既にコンフィデンスに影響を与えていると見られ、それはリスクアセットの下落や銀行のファンディング環境の悪化などから、企業や家計の信頼感に影響しているとかそんな話が。

『While the domestic headwinds to growth remained, including from fiscal consolidation and the weakness of real household incomes, it was not clear that these had intensified in recent months.』

財政再建の影響や、家計の実質所得の弱さなどを含んだ国内の向かい風要因が拡大したかについてははっきりしませんとな。

第18パラグラフより。

『The recent deterioration in financial conditions could lead to a material tightening in the cost and availability of credit. M4 lending had remained weak and had declined in July, with the weakest monthly flow since April 2010. Twelve-month broad money growth had also stayed low but the threemonth annualised growth rate of broad money had picked up to 3.5% in July. This had included a stronger increase in household deposits in the latest month.』

material tighteningキタコレって所ですな。


○インフレは年末までに5%に上昇した後一気に下がるとな

第20パラグラフから。

『The increase in CPI inflation in July had included some upside news spread across several components with the largest effect being in clothing and footwear. However, the effect of this news had been offset by lower energy prices and so the Committee’s expectation for the near-term path for inflation had changed little. The ONS advance estimate for twelve-month CPI inflation in August was broadly as expected.』

ほほう。相変わらず予想通りの展開とな。

『The Committee’s view remained that the most likely near-term path for inflation was for a temporary rise to a peak of over 5% before the year end, in part reflecting announced utility price changes. Inflation was then expected to fall back sharply in the first part of 2012, with the impact of the change in VAT dropping out of the twelve-month comparison contributing around 1 percentage point to the fall.』

そんなに器用に下がるのかいなという感じですが、その先にいろいろとああでもないこうでもないという話がありまして、引用すると長くなるので何ですが、先行きのインフレ期待と、経済の余剰(生産力の余剰と雇用の余剰)が物価に与える影響に関してがキーですね、という話をしています。第21パラグラフ以降の頭だけを引用しておこう。

『Beyond the near-term hump, the speed at which inflation declined would be influenced by the behaviour of inflation expectations and the degree of downward pressure from spare capacity.』

『The impact of inflation expectations depended on the extent to which they were reflected in wage and price-setting decisions.』

『A key issue was the degree to which the weakening in the demand outlook would feed into employment.』

ということですな。


○相変わらずの論点

この話はどうも毎度読んでいて煙に巻かれてしまうので引用だけ。第24パラグラフから。

『There remained a great deal of uncertainty regarding the amount of spare capacity in the economy and the economy’s underlying rate of productivity growth. The latest reports from the Bank’s Agents had indicated that manufacturing firms were operating with broadly normal levels of spare capacity although there remained some slack in much of the services sector.』

『Even if the pattern of demand were to rebalance quickly it would take time for the economy’s supply potential to do so. It was also possible that weaknesses in the financial system were limiting the speed at which capital could be reallocated between different activities and that this could impair the economy’s underlying growth rate now or in future.』


○インフレのリスクはダウンサイドが大きく拡大

で、『The immediate policy decision』の所ですが、最初は先ほどの物価見通しの話をしていまして、上方リスクと下方リスクの話がそれぞれ第26、27パラグラフにあるのでございますが。

『The key risk to the upside was that the period of elevated inflation would persist for longer than the Committee expected. That could be as a result of expectations of above-target inflation becoming embedded in wage and price-setting behaviour; the margin of spare capacity in the economy being less than previously thought; or further upward external shocks to the price level such as from commodity prices.』

まあいつもの話ですが。

『Recent data on households’ and firms’ inflation expectations had been mixed but measures derived from financial markets had remained stable. Overall, most indicators of longer-term expectations had remained close to their series averages. Given that CPI inflation was expected to rise further, it was likely that near-term inflation expectations would rise too.』

ということで、現在は中長期的なインフレ期待は概ね安定しているが、足元ではインフレが進行するので、短期的なインフレ期待は上昇する可能性が高いでしょうと。

『But medium-term inflation expectations might also depend on the economic outlook, which had weakened. Wage growth had remained subdued and there was little to suggest that higher inflation expectations were feeding through into wage-setting behaviour.』

しかし、中期的なインフレ期待は先行きの経済見通しにも依存し、その見通しは悪化している上に、賃金の伸びは抑制されており、賃金設定行動に大きな変化が見られていない。ということでアップサイドリスクはスルー気味。

一方のダウンサイドは・・・・・

『The key risk to the downside was that demand growth would not be sufficient to absorb the margin of spare capacity in the economy, causing inflation to fall materially below target in the medium term.』

というのもいつものことですが。

『There had been significant downside news on activity over the month, including in the United States and the core euro-area countries, which had pointed to a synchronised slowing in global growth.』

significant downside news on activityキタコレ。

『In the United Kingdom, there had been a marked deterioration in the business surveys, especially for services. Together they pointed to materially weaker growth in the second half of this year than that assumed in the August Inflation Report. Indicators of consumer spending also pointed to continued weakness.』

英国もmaterially weaker growthとな。

『Overall, the risk that growth would be insufficient to reduce the margin of spare capacity had clearly increased and this would add to the downward pressure on inflation in the medium term.』

で、物価が押し下げられるリスクはclearly increasedと来ました。

『It was puzzling, however, that oil prices had not fallen back more in the face of the weaker news on global activity.』

確かにこれはチャーミングですな。

で、金融市場の問題に関しても1パラグラフ使って「金融市場の悪化が継続した場合、欧州の金融機関が貸出の維持を行う為に十分なファンディングができなくなり、英国の銀行にも影響を与える事になる」という話をしているのがこれまた注目される所であって、資産買入の拡大を実施するのは追加緩和としてあるものの、あたくしが勝手に思うのは「信用緩和」的なものを出してくる可能性もあるかなと。


○先行きの金融緩和は資産買入拡大がメインと

第29パラグラフから。

『There remained substantial risks to inflation in the medium term in both directions. While there had been little news on the upside risks to inflation, the downside risks had clearly increased further.』

『In the light of that outlook, Committee members reviewed the range of possible policy actions available to them to loosen monetary conditions were that judged appropriate.』

ということで、先行きの金融緩和方策について検討と。

『One possible action was to restart the asset purchase programme. This programme had been primarily focused on purchases of UK government bonds financed by the issuance of central bank reserves. There was inevitable uncertainty about the precise impact of asset purchases on demand and inflation, but asset purchases were an instrument that would continue to be effective in further loosening monetary conditions in the current context.』

現状では資産買入拡大がメインのようです。

『The Committee also discussed a range of other possible policy options including: changing the maturity of the portfolio of assets held in the Asset Purchase Facility; revisiting the earlier decision not to lower Bank Rate below 0.5%; and providing explicit guidance about the likely future path of Bank Rate beyond the information about the Committee’s judgement of the medium-term outlook for inflation contained in the Inflation Report and the MPC minutes.』

そのほかには「ポートフォリオの長期化」「時間軸(みたいなもの)の設定」などという選択肢があるとかどこのFOMCだよという感じですが(^^)。

『At the current juncture, none of these options appeared to be preferable to a policy of further asset purchases should further policy loosening be required.』

ここがいい感じでジョンブルクオリティだと思うのですが、いろいろあるけどやっぱり買入拡大が一番です(キリッ)となるのがチャーミング。


で、まあ金融政策決定の所では例によってポーゼンさんが資産買入拡大を主張しているのですが、ほかのメンバーからもこんな見解が。第31パラグラフから。

『Other members judged that it was appropriate to maintain the current stance of policy at this meeting. The current weakness of demand growth was likely to persist for longer than suggested by the central case in the August Inflation Report. This meant that the balance of risks to inflation in the medium term was likely to have shifted further to the downside. Most of these members thought that it was increasingly probable that further asset purchases to loosen monetary conditions would become warranted at some point.』

先行きのある時点でさらなる資産買入によって金融環境の緩和をすることが正当化される可能性が高まっているとな。更に第32パラグラフでは数名の委員が「現状の状態が続けば追加の資産買入拡大が正当化されるでしょう」とも。

『For most members, the decision of whether to embark on further monetary easing at this meeting was finely balanced since the weakness and stresses of the past month had significantly strengthened the case for an immediate resumption of asset purchases. For some members, a continuation of the conditions seen over the past month would probably be sufficient to justify an expansion of the asset purchase programme at a subsequent meeting.』

ということで、今回は随分といい感じで吹っ切れたイメージであります。

#完全に趣味のコーナー状態でどうもすいませんすいません





2011/09/22

お題「FOMC即席レビュー/国内関連小ネタメモ」

ということでFOMCであるが、また「市場の事前予想よりもちょっとだけ多めの結果」を出してくるのがバーナンキプットクオリティなのですが反応したのは債券市場で株式市場ェ・・・・・・

#BOEのMinuteについては今日はスルーで勘弁

○その前に国内関連雑談メモ

・しらっと3MTB増発

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct230921.htm
国庫短期証券(第226回)の発行予定額等

4. 発行予定額 額面金額で5.1兆円程度

・・・・・・・久々の3か月TB増発。まあだいぶ前に結構増えた後減っていたので、この玉不足の折買う方的にはアリガタヤなのですが、当然ながらこの背景には国庫資金繰りがありまして、まあ先般の介入とか、今後の埋蔵金活用とかの絡みがあるんでしょうなあと思いますが、国庫の資金繰りに関してはまあこれがまた外の人から見るとワケワカランチ会長なので想像するしかないですなあという感じです。


・法令解釈担当にアンチビジネスさんですかそうですか

これは火曜日のニュースでしたが。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011092000354
法令解釈担当は枝野氏

『野田佳彦首相は20日午前の閣議で、法令解釈事務の担当閣僚に枝野幸男経済産業相を指名した。首相は13日に平岡秀夫法相を法令解釈担当に指名したが、鉢呂吉雄前経産相の辞任に伴い、菅内閣で法令解釈を担当した枝野氏が再入閣したため、継続性を重視して変更した。』(上記URLより)

・・・・・・・ほほう東電関連で金融機関に法的根拠も無く債権の削減を要請するという素敵なアンチビジネスの方が法令解釈をするんですかそうですかorzorzorz


#他にネタがあった気もするがFOMC関連が思いの他文書が大杉勝男なので華麗に忘れた事にして以下FOMC関連

・と思ったが日本ネタではないがこんなのがあった

http://www.kc.frb.org/publicat/newsroom/2011pdf/press.release.09.15.11.pdf
ESTHER GEORGE NAMED PRESIDENT AND CHIEF EXECUTIVE OFFICER OF THE FEDERAL RESERVE BANK OF KANSAS CITY

カンサスシティ連銀のホーニッグ総裁に代わりまして筆頭副総裁のエスター・ジョージ(って読むのか??)さんが総裁に就任だそうですが、まあホーニッグさんの退任は任期満了に伴う退任ですし、筆頭副総裁の昇格ですから既定路線と思われるのでメモだけ。

・・・・・・ということでFOMCですが株式市場のクレクレ相場恐るべしというメモを

・S&Pは下落ですかそうですか。
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=SPX:IND

Last Update: 4:19 PM ET, Sep 21
-2.939% VALUE: 1,166.760 USDS&P 500 Index (SPX:IND)

たまたま画面を見た時間はこうなっているだが、Interactive Chartって所の1Dというの(ようはイントラデイチャート)を見ると14時半(米国東部時間)から下落開始してその後戻ったものの15時15分くらいから華麗に下落しているように見えますが、株式市場は何を期待していたのでせうか・・・・・・


○FOMC声明文:ポートフォリオの長期化とモーゲージ債の償還分のモーゲージ債購入とな

んーっとですね、物凄くどうでも良いのですがFRBのウェブサイト上では従来「FOMC statement」とだけ表記していたのですが、何故か今回「Federal Reserve issues FOMC statement」と表記しているのは何か意味があるの????と不思議に思うのはワーディングの気にしすぎですかそうですか(^^)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110921a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20110809a.htm(前回)

例によって前回との比較も入れながら。

・第1パラグラフ:一部引き上げの部分もあるけど基本的にはキモ部分で下がっている感じですな

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that economic growth remains slow. Recent indicators point to continuing weakness in overall labor market conditions, and the unemployment rate remains elevated. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that economic growth so far this year has been considerably slower than the Committee had expected. Indicators suggest a deterioration in overall labor market conditions in recent months, and the unemployment rate has moved up. 』(前回)

景気の現状については「引き続き拡大が遅い」として労働市場の現状に関しては「失業率は引き続き高い状態」という事で、8月に下げた見通しの踏襲をしています。

『Household spending has been increasing at only a modest pace in recent months despite some recovery in sales of motor vehicles as supply-chain disruptions eased. Investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed. 』(今回)

『Household spending has flattened out, investment in nonresidential structures is still weak, and the housing sector remains depressed. 』(前回)

家計消費については「increasing」に上がっているのですが、その後に「at only a modest pace」以下延々とヘッジクローズのようなものが付いておりまして、(日本の震災による)自動車関連のサプライチェーンの毀損の影響が緩和されたにもかかわらず、極めて緩やかなペースですとかケチが付きまくっていますので、あまりポジティブ感が伝わらないような書き方になっています。住宅および住宅以外の建設関連についてはどちらも前月と同様にダメダメという見方を継続。

『However, business investment in equipment and software continues to expand. 』(今回)

『However, business investment in equipment and software continues to expand. Temporary factors, including the damping effect of higher food and energy prices on consumer purchasing power and spending as well as supply chain disruptions associated with the tragic events in Japan, appear to account for only some of the recent weakness in economic activity. 』(前回)

企業の投資に関する部分は同じです。んでもって(都合上ここで比較しましたが)従来指摘していた「足元の景気の減速は一時的要因なんですよ」という部分ですが、今回見事に消え去りましたので、「一時的なんですよ」→「一時的な要因以外にもあるかも知れませんね」→「この前まで言ってた一時的要因の話は無かったことにしましょう」という大変に素敵な展開になっておられる事に落涙を禁じ得ません。

『Inflation appears to have moderated since earlier in the year as prices of energy and some commodities have declined from their peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable. 』(今回)

『Inflation picked up earlier in the year, mainly reflecting higher prices for some commodities and imported goods, as well as the supply chain disruptions. More recently, inflation has moderated as prices of energy and some commodities have declined from their earlier peaks. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

インフレに関しても上昇の話は遂に抜けて「appears to have moderated」とモデレートになってきた事が明らかになったとこちらも何気にしらっと緩和された感じです。


・第2パラグラフ:下方リスク認識を結構拡大したイメージ&金融市場の緊張を指摘

この点ってね、実は何気に先行きの「信用緩和」を可能にする時に便利な部分なんですよ。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)

というのはいつものお題目なので前回部分の引用は割愛。

『The Committee continues to expect some pickup in the pace of recovery over coming quarters but anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(今回)

『The Committee now expects a somewhat slower pace of recovery over coming quarters than it did at the time of the previous meeting and anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(前回)

先行き見通しのメインシナリオ部分に関しましては前回の「以前の見通しよりもsomewhat slower pace of recovery」というのが「some pickup in the pace of recovery」となっているのでニュアンス的には若干下がったかも知れませんが、そんなに大きく下がったイメージではないと思いましたがどうでしょう。

『Moreover, there are significant downside risks to the economic outlook, including strains in global financial markets. 』(今回)

『Moreover, downside risks to the economic outlook have increased. 』(前回)

下方リスクに関しては「significant」と思いっきり強調した上に、「グローバル金融市場の緊張」というのが入って来たのがこのパラグラフでは新しくて、これは即ち「金融市場の機能不全に伴う中央銀行の介入」という形での信用緩和措置を打ち込むときの言い訳になる話でありまして、ここのリスク認識を高める事によって実は量的緩和ではなくて信用緩和方向での緩和拡大で対処する事も可能になるという素敵なフレーズでもあったりします。

まあ直ぐにどうこうというのは無いでしょうが、いきなり途中をすっ飛ばすよりは布石を打って置くのは空振りになっても別に痛くも痒くもないので無駄玉にはならんでしょ。

インフレに関する認識は前月と同じなので引用だけ。

『The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate as the effects of past energy and other commodity price increases dissipate further. However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.』(今回)


・第3パラグラフ:ということでFED保有資産のデュレーション長期化

まあここから先は基本的に前回と比較してもあまり意味無いので今回部分だけである。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee decided today to extend the average maturity of its holdings of securities. 』(今回)

ということで「保有証券の平均残存期間を長期化します」というのが今回の決定事項その1。

『The Committee intends to purchase, by the end of June 2012, $400 billion of Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years and to sell an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of 3 years or less. 』(今回)

向こう9か月間掛けて4000億ドル分の6年〜30年の国債を買って(詳細に関してはNY連銀のサイトにありますので後ほど)同額の3年以下の国債を売却するだよ。


『This program should put downward pressure on longer-term interest rates and help make broader financial conditions more accommodative. 』(今回)

この措置によって長期金利の押し下げを図り、全体の金融環境をより緩和する事に寄与するでしょうと言っていますが、何せ金融政策が効いたら将来の政策金利の予想パスに変化がおきるので以下同文という事で、この件に関してはまた先に行くと詭弁祭りになるんでしょうなあと今から生温かく見守って参りたいと存じます。

『The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate.』(今回)

これはいつものお約束文言みたいなもんですのでキニシナイ。


・第4パラグラフ:しらっと「償還したモーゲージ債のモーゲージ債再投資」が打ち込まれる

まあさっきの所で金融市場の悪化というのがリスク要因に入っていましたので、そーゆー意味ではこの措置も整合性は取れている話ですけれども、これはロジック的にギリギリ詰める(そのロジック的な部分がすっかりテンコシャンコになっているのがバーナンキクオリティではございますが^^)と「出口政策」の当面の完全封印にも繋がる話ではございます。

『To help support conditions in mortgage markets, the Committee will now reinvest principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities. In addition, the Committee will maintain its existing policy of rolling over maturing Treasury securities at auction. 』(今回)

モーゲージ債市場の環境をサポートする為に、ということでエージェンシー債とモーゲージ債の償還部分に関しての再投資をまたまたエージェンシー債およびモーゲージ債にしますというお話なのですが、従来出口政策がどうのこうのという話をしていたときに、FOMCメンバーは「トレジャリー、しかも短期証券オンリー」というのがFEDのバランスシートの資産サイドのあるべき姿という話をしていまして、今回は長期化という点で出口の反対側の政策をとっていますけれども、それに加えてバランスシートの質に関しても国債オンリーにする方向を止めたという残念無念な流れに。


・第5パラグラフ:ガイダンス文言の時間軸のようなものに関しては従来どおり

『The Committee also decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(今回)

これは前回の変更から同じです。


・第6パラグラフ:ここはお約束の文言なのでまあどうでもよい

『The Committee discussed the range of policy tools available to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. It will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ its tools as appropriate.』(今回)

物価の安定の下でのより力強い経済の回復を実現するために、FOMCは幅広い種類の政策ツールを用意して、引き続き今後の経済状況に応じて適切な措置を取ります(キリッ)というのは単なるお約束文言である。


・第7パラグラフ:今回も3名が反対、「現状での追加緩和は反対」とだけの表現っすな

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(今回)

『Voting against the action were Richard W. Fisher, Narayana Kocherlakota, and Charles I. Plosser, who did not support additional policy accommodation at this time.』(今回)

詳しくは議事要旨を読めですかそうですか(^^)。



○何か説明書が付いています

・・・・・・・で、声明文は終了の筈なのですが、その下にしらっと『Related Information』なるものがあるのにゃ。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/maturityextensionprogram.htm
Maturity Extension Program and Reinvestment Policy

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/maturityextensionprogram-faqs.htm
Frequently Asked Questions

上の方が概要説明で下のほうがFAQだそうなのでちと見てみる。

概要説明(上のほうのURL)から。

『Under the maturity extension program, the Federal Reserve intends to sell $400 billion of shorter-term Treasury securities by the end of June 2012 and use the proceeds to buy longer-term Treasury securities. This will extend the average maturity of the securities in the Federal Reserve’s portfolio.』

そら言われんでもわかっとるがな。

『By reducing the supply of longer-term Treasury securities in the market, this action should put downward pressure on longer-term interest rates, including rates on financial assets that investors consider to be close substitutes for longer-term Treasury securities.』

そんな簡単に話が進むかよという気もしますし、そもそもおまいらQE2の時と、QE2終了の時には「FEDの資産買入の効果は、期間中の資産購入額ではなく、バランスシートの大きさによってもたらされる(のでQE2を終了してもバランスシートの大きさを維持すれば緩和効果は続く)」と言ってたじゃねえかと小一時間問い詰めたい訳ですし、そもそも「長期債のサプライを減らして長期金利を下げる」っていうのだったら米国財務省に頼んで発行年限短期化させた方が話が早いんじゃないですかねえと思いますけどねえ(ニヤニヤ)。

『The reduction in longer-term interest rates, in turn, will contribute to a broad easing in financial market conditions that will provide additional stimulus to support the economic recovery.』

ということはQE何とかを実施した結果として、導入当初は兎も角、その後の景況感の改善で長期金利が上昇したのは金融引き締め効果があったという事になりますけど、この前まで「バランスシートの規模を維持するから金融緩和効果は続く」と言っていたのは何だったんでしょうかねえなどというツッコミをしてはいけません。

・・・・・まあ何ですな、毎度申し上げているからアレですけど、どう見ても「長期金利アプローチ」というのは中央銀行としてはロジックに無理があり過ぎでして、まあロジック崩壊しても平気な顔で前の話を華麗にスルーしてるから誤魔化せますけれども、この調子で色々とやると、景気の回復が遅れた場合にどんどんやる事がなくなって来て後々ろくなことにならんと思うのですがねえ。

#そんな事言ってる場合じゃないくらいの火がボーボー状態なんでしょうけど


で、FAQちゃんから一部引用ですけど。

『How is the program expected to affect short-term Treasury rates?』

『Federal Reserve sales of short-term securities could put some upward pressure on their yields, but the effect is likely to be small. The Committee has stated that it anticipates that economic conditions will warrant the current level of the federal funds rate at least until mid-2013. This expectation should help anchor short-term rates near current levels, suggesting that shorter-term Treasury rates should not be significantly affected by the maturity extension program.』

短期債の金利はこのプログラムで若干上昇するかもしれませんが、時間軸があるからケンチャナヨ、ということですが、インフレが予想通りに低下しなかった場合や、景況感が改善した場合にはそもそもの時間軸のようなものがstate-contingentなものですのでそのときには大変に素敵な事態になりそうですがまあケンチャナヨという事で。


『What is the expected economic effect of lengthening the maturity of the Federal Reserve's portfolio?』

『The maturity extension program will provide additional stimulus to support the economic recovery but the effect is difficult to estimate precisely. The program is intended contribute to a broad easing in financial market conditions that will provide additional stimulus to support the economic recovery. The Federal Open Market Committee (FOMC) will be reviewing the pace of its securities transactions and the overall size of the program regularly in light of incoming economic information.』

ふむふむ、効果について予め想定するのは難しいとな。

『Will lengthening the maturity of the portfolio complicate the Federal Reserve's eventual exit from its accommodative strategy?』

『The Federal Reserve does not anticipate that the maturity extension program will complicate its exit strategy. As noted in the minutes of the June 2011 FOMC meeting, the Committee can use a number of tools including redemptions, changes in the interest paid on excess reserves, reserve draining tools, and asset sales to remove policy accommodation at the appropriate time and normalize the size and composition of the balance sheet.』

・・・・・・・なんと言う楽観的見通し。どう見てもこれ出口政策の時に死ぬと思うのだが。

ちなみに、こちらにありますように、今回の措置は「operation twist」という表現で良いようでございます^^
http://www.federalreserve.gov/faqs/money_15070.htm
What is the Federal Reserve's maturity extension program (referred to by some as "operation twist") and what is its purpose?




○30年とかの買いが若干市場予想よりも多いのかなこれは

さっきのFAQの所にもリンクがありますが、詳細はNY連銀のサイトから。

http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_110921.html
Statement Regarding Maturity Extension Program and Agency Security Reinvestments

『Maturity Extension Program

Purchases of Treasury securities associated with the $400 billion maturity extension program will be distributed across five sectors based on the approximate weights in the following table, although this distribution could be altered if market conditions warrant:

Nominal Coupon Securities by Maturity Range* TIPS**

6 - 8 Years 32%
8 - 10 Years 32%
10 - 20 Years 4%
20 - 30 Years 29%
TIPS 6 - 30 Years 3%

*The on-the-run 10-year note will be considered part of the 8- to 10-year sector.
**TIPS weights are based on unadjusted par amounts.

Sales associated with the $400 billion maturity extension program will take place in Treasury securities with remaining maturities of 3 months to 3 years.

Roughly three quarters of System Open Market Account (SOMA) holdings of Treasury securities in this maturity range will be sold.』

ということで、たぶん市場予想よりも20年〜30年のウェイトが多いっぽい(10年新発は10年超でも10年のほうに入るみたいなので、オフザランしか無い10−20年カテゴリが少ないのかね、よー知らんが)ので、その分だけカーブの長いところが寝た感じなのでしょうかね、よー知らんけど。

まあ少しだけその辺は市場予想よりもマーケットフレンドリーっぽく行なっているのが相変わらずチャーミングでありますな。








2011/09/21

お題「まあ何となくFOMC待ちということで中途半端にやりかけのものの成敗を少々」

ニュースでやってた政府様今般決定の「日本再生重点化措置」を「日本再生重点過疎地」と空耳したあたくしはお疲れのようです(--;

#モーサテの伊藤隆敏先生ツイストオペ効果に思いっきり疑問を示すとか容赦ないですな。

まあ何ですな、昨日って国債償還金部分の買いがご到来しても良いのですが、連休で米債が上昇しやがったので金利低下したところをむざむざ買いに行くのもアホラシスという事で不貞腐れて様子見となったという感じですかそうですか。

○暫く前にURLだけご紹介した昔の日銀ペーパーネタを少々

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2003/data/wp03j04.pdf
長期金利の変動をどう理解するか?
:マクロ経済モデルを利用した期待短期金利成分とリスクプレミアム成分への分解

2003年10月のペーパーなのですが、こちらで分析しているのは1995年以降の日本の長期金利と戦後の米国の長期金利の話で、主に分析しているのは時間軸効果に関する話なのですが、これはまあペーパーの出た時期が2003年10月につきシャーナイナイではございますが、実際問題としては日銀の時間軸というのは第1弾から第3弾まであって徐々に進化しているというのはマニア同士の会話では極めて普通なのですがマニア以外には何がなんの事やらという感じかと存じますので本論から外れますが一応書いてみるお。

・第一次時間軸:最初のゼロ金利政策の時

もともとゼロ金利政策が開始になったのは1999年2月なんですけどね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1999/k990212c.htm/
当面の金融政策運営について(1999年2月12日)

最初のうちは「当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す」という言い方をしていて、「ゼロ金利政策」という言い方をしてて、声明文で「ゼロ金利政策」という言い方をしたのは実は1999年9月からというのが微妙にチャーミングではございますが、たぶん総裁会見か何か(まだ全部探せていないので探したら追記するだよ)でその前に出ていると思うのですが、金融政策に関する公表文書ベースでは1999年の9月に出ています。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1999/k990921a.htm/
当面の金融政策運営に関する考え方(1999年9月21日)

ここの(10)のところに『(10) 日本銀行は、歴史的にも世界的にも類例のない思い切った金融緩和政策を講ずるとともに、この政策を「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで」続けることを明らかにしています。』とあるのが要するに第一次時間軸ですな。


・第二次時間軸:量的緩和導入時

つまり2001年3月である。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2001/k010319a.htm/
金融市場調節方式の変更と一段の金融緩和措置について(2001年3月19日)

の(2)にありますように『(2) 実施期間の目処として消費者物価を採用』として、『新しい金融市場調節方式は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続することとする。』となりましたわな。


・第三次時間軸:2003年9月にコミットメントの強化を実施

これである。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010.htm/
本日の金融政策決定会合における決定について(2003年10月10日)

そこの(3)に『(3)金融政策運営の透明性の強化』ってのがありまして、『金融政策運営の透明性を強化する観点から、量的緩和政策継続のコミットメントをより明確化するとともに、経済・物価情勢に関する日本銀行の判断について説明を充実する(「金融政策の透明性の強化について」参照)。』とあって、その別紙はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010b.htm/

『量的緩和政策継続のコミットメントの明確化』って所に色々と書いてありますが、

『第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。』

とまあここまで細かく手足を縛るのが「強化された時間軸政策」でありまして、「state-contingent」とか言ってるのは時間軸でも何でもないのですが、なにせバーナンキ様におかれましては世間にバーナンキプットと呼ばれる位の方ですので、そーゆー意味から時間軸が強くなる、というのもありますし、そもそも論からして日本の場合は第一次時間軸の際に速水総裁が前科一犯を(結果的には)やらかした事からそもそも時間軸を構成する中央銀行の政策スタンスに対する市場の認識が米国の場合と全然違うというのがあるので、その辺も勘案すると味わいが深いのかもしれませんがそれは兎も角。

ということで、話が思いっきりワープしましたが、元に戻しますとこのペーパーの続き(2003年10月以降の時間軸効果)に関して本当は分析したのってどこかにないのかなあ(探したらあるのかもしれませんが日銀の中の人で知ってる人いたら教えてジェネラルである)とか思いますが、まあそれまでの時間軸に関しての話と、米国のツイストオペレーションの事例を分析した結果は冒頭部分にサマリーがあるので手抜きでそこを引用するざます。以下さっきURL乗っけたWPから引用。

『本稿での分析の主要な結果をあらかじめ紹介すると、次の4 点である。』

『(1) 1995 年以降についてわが国の中長期金利の推移を捉える場合、概ね3つの時期(1995 年〜1997 年、1998 年〜2000 年、2001 年〜2003 年初)に分けて考えることができ、段階的に中長期金利の水準が低下してきている。これは、景気の後退とそれに対応した金融緩和効果などを反映して、期待短期金利成分とリスクプレミアム成分の両者が低下した結果として理解できる。』

『(2) わが国の長期金利(10 年物)の推移を期待短期金利成分とリスクプレミアム成分に分解して観察すると、期待短期金利成分については、概ね前述の3つの時期ごとに段階的に低下してきている。この過程では、金融政策の時間軸効果が同成分の引き下げに寄与した面もある。』

『一方、リスクプレミアム成分は、1998 年以降2001 年末まで趨勢的な変化はなく比較的安定していたが、2002 年入り以降徐々に低下を始め、2003 年第1 四半期までにはかなり低い水準に達した。なお、本年7 月初に長期金利が反騰する局面では、リスクプレミアムは比較的低水準にとどまったが、本年8 月下旬以降に再び長期金利が上昇した局面では、リスクプレミアムが多少拡大する動きが観察される。』(本年というのは2003年です)

ということで、そのリスクプレミアムが拡大したので第三次時間軸の導入に至った(実際問題としてはその前の9月に期間10か月(だか9か月か記憶があやふやだが異例に長い期間)の資金供給オペを連発した上に、福井総裁が会見で量的緩和継続について強調したためにリスクプレミアムは落ち着いたと思います)という事でしょうな。

『(3) わが国の中長期金利を分析した結果、ゼロ金利政策期や量的緩和期には、同政策の継続期間を将来のデフレ脱却と関連付けて判断するという日銀のアナウンスメントが長期金利の形成に対して有意な効果を及ぼしたことが確認された。』

なるほど。

『この時間軸効果は、主として将来の期待短期金利を引き下げることにより、長期金利を低下させる形で機能した。特に2002 年第3 四半期から2003年第1 四半期にかけては、市場参加者は日銀が将来の量的緩和解除の見極めをより慎重に行うと見るように変化してきた、あるいは時間軸のアナウンスメントの意味に対する市場の理解が進んだ可能性が検出された。なお、2003年8 月下旬からの長期金利上昇局面では、市場の予想する量的緩和解除時のCPI下限値が若干低下したが、それでも引き続き、ゼロを有意に上回っている。』

ふーん。

で、一方の米国なのですが・・・・・・

『(4) 米国における1940〜50 年代の国債価格支持政策期と1960 年代前半のツイスト・オペ期について、それぞれ長期金利の推移を分析した。その結果、前者の時期には、期待短期金利成分が上昇してもリスクプレミアム成分の低下がそれを相殺する形で、長期金利の上昇が抑制されたケースが見出された。これは、国債価格支持政策が市場で信認を得ていたことを示唆する。また、当時は、金融政策がシステマティックに運営されるという認識が浸透していなかったことも、リスクプレミアムに政策的な影響を及ぼしやすかった一因と考えられる。』

『なお、国債価格支持政策が放棄されてアコードが締結されたのは、リスクプレミアムがほぼゼロになった時期であった。一方、後者のツイスト・オペ期には、リスクプレミアムに目立った変化が現れておらず、政策効果は検出されなかった。』

『また、将来の短期金利の経路がシステマティックな金融政策運営によって決まるものと認識されると、リスク・プレミアムが小さくなり、その分、直接的な金利ペッグ、国債買入オペ、ないしアナウンスメント等によってリスクプレミアムを操作し得る余地が小さくなると考えられる。』

まあ何ですな、これって第二次時間軸から第三次時間軸の期間に幸いにも債券ディーラーやってて長期債やら中期債やら短期債(短国ではない)やらをいじっていたので体感的に同意なのですけれども、金融政策の期待経路って金融政策自体が「state-contingent」で運営されているとなると、結局のところ外部情勢、というか経済情勢依存になるので、金融政策の緩和効果が強く認識されて経済情勢が若干なりとも好転したら、その時点で金融政策の期待経路が一気に大きく変化してしまいますので、まあ要するにマーライオン相場になる(途中まで真面目に書いているのに最後にマーライオンとか書いちゃうのがドラめもんクオリティなのでケンチャナヨ)とゆー事でございまして、恐らく過去の米国市場と今の米国市場では市場環境が全然違いますので、やはり「長期金利操作」は難しい(別にツイストじゃなくても同じ)と思うのでして、FEDもいい加減に「長期金利操作」的な政策ロジックは放棄すべきだと思うのですけどねえ。

#などと書いていたら時間ががががががが


○時間が無いので(おい)昨日の続きを少々:エバンス総裁のロジックについての続き

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2011/09_07_dual_mandate.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2011/09_07_11_dual_mandate.pdf
The Fed’s Dual Mandate Responsibilities and Challenges Facing U.S. Monetary Policy

昨日の補足。

『Challenge #3: Monetary Policy Held Back by Zero Lower Bound』のところなんですけどね。

昨日ご紹介したように、「失業率ターゲット(ただし物価のキャップはある)を設けろ」という話をしているのですが、その理由部分を引用するだよ。

『Accordingly, these triggers remain quite conservatively tilted in favor of disciplined inflation performance over enhanced growth and employment, and it would not be unreasonable to consider an even lower unemployment threshold that would be enough progress to justify the start of policy tightening.』

これでもインフレ重視なんですよという話についての部分までは間に合わないのでスルーしますけれども、テイラールールとオークン則の合わせ技をベースにして考えると(ってそれが前提として妥当なのかという気もするのだがそこはスルーして)これでも十分にインフレに対して保守的ですよと。

『There are other policies that could give clearer communications of our policy conditionality with respect to observable data. For example, I have previously discussed how state-contingent, price-level targeting would work in this regard. Another possibility might be to target the level of nominal GDP, with the goal of bringing it back to the growth trend that existed before the recession. I think these kinds of policies are worth contemplating-they may provide useful monetary policy guidance during extraordinary circumstances such as we find ourselves in today.』

ということで、より明確なコミュニケーション方法としてプライスレベルターゲットや名目GDP目標などでの緩和的な金融政策継続を提唱するということで、これはまたかなり強力な時間軸に繋がる政策をオプションとして挙げています。

『The trigger policy I noted above and level-targeting policies may result in inflation running at rates that would make us uncomfortable during normal times. But we should not be afraid of such temporarily higher inflation results today.』

通常の経済状況の時の考えで反対するのは間違っていて一時的なインフレを恐れるべきではないキタコレ。

『As I noted earlier, Ken Rogoff (1985) has written that in normal times, we may want conservative central bankers as institutional offsets to what would otherwise be inflationary biases in the monetary policy process. But these are not usual times-we are in the aftermath of a financial crisis with stubborn debt overhangs that are weighing on activity. And as Rogoff himself wrote in a recent piece in the Financial Times, higher inflation could aid the deleveraging process.』

一方でラッカー総裁がRogoffの見解を思いっきりDisっているネタが途中で終わってたわ(汗)。

『To quote him: “Any inflation above 2 per cent may seem anathema to those who still remember the anti-inflation wars of the 1970s and 1980s, but a once-in-75-year crisis calls for outside-the-box measures.”』

ロゴフの言葉を借りてますけど、これはまたラッカー総裁やボルカー元議長辺りが湯気ポッポーになりそうな話ですが、この講演テキストの中の別の部分ではエバンス総裁は「2%のインフレは長期的に見るのであるから、先般1%台に低下したということも考えると短期的に3%近くに上昇したっていいじゃないか」という何となく非対称性に関する考察がアレなような気もする説明をしていましたので、まあ際ハト派という所なんでしょうな。うんうん。


○超オマケだが

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/duke20110901a.htm
Rebalancing the Housing Market

デューク理事の講演でして、足元の金融政策運営とは全然関係ないですが、住宅市場に関する話が中々オモロカッタです。今後はHARP(低利借換えプログラム)の推進と、持ち家市場の物件を効果的に賃貸住宅市場に投入するようにしていく事が施策だという話が中々興味深かったであります。













2011/09/20

お題「FOMCも始まるのでてきとーに地区連銀総裁の直近講演を読んでみた」

連休をまる潰しする程のパワーも無かったのですが(汗)、まあとりあえず読んでみたものの一々詳細を引用するとオワランチ会長になってしまう(別途やっとけというツッコミはしないように)のでとりあえずは概要をうだうだと。

で、今日はサンフランシスコとセントルイスとシカゴが大体ネタになる予定なのですが、現在のFOMC(および来年以降)のメンバー構成はこちらにございますので念の為。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomc.htm


○サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁は物価下落懸念のハト派

9月7日の講演から
http://www.frbsf.org/news/speeches/2011/john-williams-0907.html?utm_source=home
http://www.frbsf.org/news/speeches/2011/john-williams-0907.pdf
The Outlook for the U.S. Economy and Role for Monetary Policy

経済に関する話については割とジャクソンホールでのバーナンキ議長講演の線に近い話をしていまして、主眼を置いているのは「米国の長期的な成長力が低下しないためにはどうするの」的な話と、雇用問題に関する話を強調していまして、更に金融政策に関しての部分で医療行為に例えて「金融政策は怪我人の怪我を直接治す事はできないが、怪我を治療しやすくしたり、2次感染などのような事が起きないようにする環境を作ることが出来る」という事で、米国経済の現状を主に住宅バブル崩壊による怪我をした状態という説明をしていますわな。

という話なのですが、ウィリアムス総裁の講演で一番目立つ場所はインフレに関する部分でありまして・・・・・・・

『Looking ahead, I expect inflation to ease to about a 1-1/2 percent annual pace next year. This is somewhat below the 2 percent level that I see as the appropriate medium-term goal.』(分数部分をANSI文字に改変してます)

ということで、FOMC声明文や議事要旨でも示されていましたが、先行きのインフレに関して「デュアルマンデートで望ましいとする水準より低くなる」と予想している人がいるのは存じていましたが、ウィリアムス総裁がその中の1名(複数なのか単数なのかはわかりませんが)という所のようです。

『My expectation that inflation will fall reflects the fact that the economy is performing so far below its potential. Such economic slack tends to depress inflationary pressures. It means that workers have very limited ability to demand higher wages and businesses can’t push through price increases that will stick.』

その理由は経済が潜在力を下回って推移していることであり、経済におけるリソースのスラックがインフレ圧力を抑制するということのようですな。

『For example, the latest report showed that wages grew around 2 percent over the past year, hardly a prescription for high inflation. In addition, surveys show that expectations for inflation remain stable.』

んでもってちょうど経済についてまとめている部分があるのでそこを引用する。

『To sum up, the economy is improving, but at such a modest pace that it will be years before we see a substantial reduction in unemployment. At the same time, we face heightened risks that could cause growth to fall short of even these modest expectations or, even worse, send us back into negative territory. And inflation, which has been running higher than I’d like, is now moderating and likely to drop below preferred levels.』

ということで、経済に関しては「改善しているもののそのペースが期待していたよりも弱く、先行きのリスクは高まっておりマイナス成長の可能性もある。インフレに関しては今後望ましい水準よりも低下するでしょう」という結論になっていますから、まあ普通にハト派ですし、これだと追加緩和が必要ですよねという結論になりそう。

で、金融政策に関してですが。さっき申し上げた怪我人の例えの後にこういう説明が。

『Like the hospital patient, the economy took a turn for the worse and faces heightened risks. In addition, inflation is expected to drift down. These circumstances called for additional monetary easing.』

キタコレという感じですが、この後にあるのは8月FOMCでのガイダンス文言変更に関する話(ちなみにガイダンス文言変更はコミットメントではないという説明です)をしていまして、ではその後に関してですが。

『Right now, though, the real threat is an economy that is at risk of stalling and the prospect of many years of very high unemployment, with potentially long-run negative consequences for our economy. There are a number of potential steps the Fed could take to ease financial conditions further and move us closer to our mandated goals of maximum employment and price stability.』

で、そこの脚注にあるのは「7月13日のバーナンキ議会証言をご参照」だったりするので、特定の政策についてああだこうだと言及するのは避けている感じです。

『Of course, these “treatments” won’t make our economic problems go away and their costs and benefits must be carefully balanced. But they could offer a measure of protection against further deterioration in the patient’s condition and perhaps help him get back on his feet.』

ということですので、具体的な施策に関しての見解表明は避けていますが、主張の流れからすると追加緩和に賛成する(といっても今年は投票権無いですので念の為)気は満々という感じだと思われます。

#詳しくは後日やるかもしれませんしやらないかもしれません



○セントルイス連銀ブラード総裁は微妙なのですが時間軸政策はお好みではないようです

http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Opening_Remarks_Dialogue_with_the_Fed_12Sep2011_final.pdf
Opening remarks by President James Bullard
Dialogue with the Fed: Beyond Today’s Financial Headlines

どうもこういうシリーズ物があって、今回はその開会挨拶だったようです。
http://stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1123
New Evening Discussion Series Kicks Off Sept. 12 at the St. Louis Fed

景気に関しては「メインの見方としては緩やかな成長だが、その力強さは無く、リセッション入りのリスクは今年の頭の時点よりもやや上昇している」というお話をしていますので手抜きでまる引用。

『One of the primary concerns for the FOMC and for the nation is the subpar performance of the U.S. economy during the first half of 2011.』

今年前半のサブパー成長がFOMCの最大の懸念ですとな。

『The July GDP report indicated that the recent recession was generally deeper than previously estimated and that growth since the recession ended in mid-2009 has been weaker than previously thought. This has raised the specter in the minds of some that the U.S. economy is about to return to recession.』

リセッション入り懸念拡大キタコレ。

『However, I think the most likely path for the economy going forward is one of modest, albeit unspectacular, growth, and that the chances of recession are only modestly higher than they were earlier this year.』

ただまあメインシナリオは一応先行きの緩やかな成長ですな、では金融政策に関してですが。

『And, while disappointing economic performance certainly makes the case for an aggressive monetary policy, the FOMC has in fact provided that aggressive policy. The federal funds rate, the main policy rate of the FOMC, has been near zero since December of 2008. The near-zero rate policy has been supplemented with an additional promise to keep the rate near zero at least through the middle of 2013, almost two more years. In addition, the Fed’s balance sheet has been expanded to an unprecedented size as the Committee has authorized the outright purchase of agency mortgage-backed securities and, more recently, Treasury securities, with newly-created base money. In sum, the stance of monetary policy has been appropriately calibrated to try to meet, as best we can, the unusual macroeconomic circumstances.』

めんどいので1パラグラフまるまる引用しましたが、ここでほほーと思ったのは今回のガイダンス文言変更を「additional promise」と表現している事ですな。

『Now, with further slowing in the economy, some call for further monetary accommodation.』

ということなので、更に経済が減速した場合には追加緩和が必要になるとの事です。

『Let me stress that no decision has been made on this difficult question. However, should such a decision be made, I think it is time for the Committee to discard one-time policy changes with fixed end dates.』

追加緩和を実施する際には、現在の固定したエンドを設定しているガイダンス文言という政策を捨てるべきであるという事で、時間軸政策の否定をしています。ちと途中割愛しますがその先。

『As the federal funds rate was set meeting-by-meeting before December 2008, so any future policy path should be state-contingent and not of premeditated size or duration. In addition, any policy path should be reviewed carefully and seriously at each meeting for possible adjustment given the incoming data. In short, optimal monetary policy is not a one-time action or event, but a rule that takes the state of the economy and maps it into a setting for a policy instrument. To the extent the Committee can return to this principle, monetary policy will come closer to delivering the best outcomes that can be achieved through this channel.』

最近良く出てきますが、金融政策は「state-contingent」(将来のパスを決め打ちするのではなく、あくまでもそのときの経済状況及びに先行き見通しに応じて運用すべきという話かと)であるべきで、時間軸政策のようなものは如何なものか、という話ですが、そもそもブラード総裁は昨年の7月28日に「Seven Faces of "The Peril"」というペーパーを出していまして、その中で「超低金利の長期化と物価の低迷は『望ましくないデフレ均衡』をもたらす」という主張をしていまして、だから時間軸政策の実施よりも資産買入を拡大すべきという話をしておりましたので、まあこの件に関してはブラード総裁が否定的見解をするのはお約束の展開ではございます。

では追加で実施するとしたらどうしますねんという話はこちらには無く(まあ元々そんなに長い講演とかじゃないですし)他のペーパー嫁という事になるのですが、それは次の連休にでも探してみたいと思いますが、見つかった時には追加緩和が終了していて時既にお寿司の悪寒もしますがケンチャナヨということで。



○シカゴ連銀エバンス総裁は景気に弱気で新たなターゲッティングなども必要と

この前ちょろっとネタにしましたがちゃんと全部読んでみた。

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2011/09_07_dual_mandate.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2011/09_07_11_dual_mandate.pdf
The Fed’s Dual Mandate Responsibilities and Challenges Facing U.S. Monetary Policy

この前ネタにしたときは「失業率の9%っていうのはインフレが5%になっているのと同じや!」という部分だけ引っ張ってきましたが、その背景にあるのはテイラールールとオークンの法則をセットにして話をしている部分でありまして、講演の真ん中あたりにあります『What’s a Central Banker to Do? (Warning: Math Ahead)』という所に説明があって、何となく煙に巻かれてふーんと思いながら読みましたが、引用するとクソ長いので今日は割愛。

で、景気に関する前半部分ですけれども、「一時的な要因で減速していると思われてたんだが、それは間違っていたんや!!!」という話をしています。ちょっとだけ引用。

『The news over the past several months has proved this forecast wrong. Gains in employment have slowed markedly, and the unemployment rate has edged back up over 9%. The earlier improvements in labor markets now appear to have reflected the lagged influence of previous output growth and not−as we had hoped--the start of a virtuous circle of hiring and spending. Furthermore, revised data now indicate that real GDP began to decelerate in late 2010 and then barely edged up in the first half of this year. Consumer spending was particularly sluggish. Importantly, the weakness in growth began before the bulk of the effects of higher energy prices hit the economy and before the disaster in Japan. This timing, and the continued softness of most economic indicators into the early summer, indicates that the headwinds facing consumers and businesses are even stronger than we thought.』

でまあ色々と話があるのですが、見通しは大きく悪化したというのが結論(時間が無いので詳しくは後日)です。一方で物価に関しては2%近辺に低下するという見通しになっているのですが、ウィリアムス総裁の予想よりもちょっと高めというか普通にデュアルマンデートの水準に低下するという予想ですな。

『Putting these factors together, my outlook is for overall inflation over the medium term to fall back towards core and remain below the 2% level I see as consistent with the price stability leg of the Fed’s dual mandate.』

当然ながら金融政策に関しては追加緩和の実施を主張しているのですが、メインで考えているのはガイダンス文言の強化、というか本当の意味での時間軸政策の実施になっているというのはこの前もネタにした(CNBCでのインタビュー記事ネタをやりましたな)通りですが、その辺り(『Challenge #3: Monetary Policy Held Back by Zero Lower Bound』)から。

『To date, the Fed’s policy-making committee, the FOMC, has used a number of nontraditional policy tools to impart greater financial accommodation. I have fully supported these policies. Today, however, I simply think we need to do more.』

もっとやれキタコレ。で、その後に先般のガイダンス文言変更に関しては「更なる緩和のステップ」と位置づけているのがチャーミングですがその辺はスルーしましてメインの主張に関しては例の「物価上昇率が3%を超えない限りにおいて、失業率が7.5%(または7.0%)に低下するまでは異例の低金利政策を継続する」という失業率コミットメント+1%の物価ターゲット上振れ容認という政策です。

『One way to provide more accommodation would be to make a simple conditional statement of policy accommodation relative to our dual mandate responsibilities. The goal would be to enhance economic growth and employment while maintaining disciplined inflation performance. This conditionality could be conveyed by stating that we would hold the federal funds rate at extraordinarily low levels until the unemployment rate falls substantially, say from its current level of 9.1% to 7.5% or even 7%, as long as medium-term inflation stayed below 3%.』

で、インフレ上振れ容認のように見えるが、これでも実はインフレ重視なんですよ、という説明をしていまして、そこの所も興味深いというか、これはラッカー総裁やコチャラコタ総裁などと大喧嘩になりそうなという感じなのですが、背景のテイラールールを使った説明部分から読まないと何ですので涙を飲んで今日は割愛。

そしてその他の提案としては「プライスレベルターゲット」「名目GDPターゲット」という事で、これまた随分とハト派というかFRBの執行部の見解とは違う話をしているのですが、まあそこは単に政策としてこんなんありますよという話をしているので引用割愛。

#これまた詳しくは後日やるかも知れませんがどうなるかは保証しません





2011/09/16

お題「宮尾審議委員会見/ほほうドル供給/FOMC来週ですので雑談とか」

毎年のことですが、9月は変に休みが月後半に続くので期末だというのに仕事が押してタマランチ会長ですなあ。

○宮尾審議委員講演では円高のリスクは示すも早急な対応は消極的とな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1109c.pdf

講演が基本的に金融政策に関する話で、かつ論点整理っぽい話が主眼だったせいかあまり突っ込みの入れようも無かったようで、質疑に関しては講演内で経済の先行きリスクに関する話をしていた事からその辺への質問が来ましたという感じで。

円高定着のリスクに関しての質問から。

『円高定着のリスク、それがまた企業マインドのさらなる悪化に繋がっているのか、現状どうみるのかということですが、今進行中の円高の背景としては、懇談の中で申し上げていますが、米欧経済の減速の懸念、先行きに対する不確実性の高まり、あるいは特に欧州債務問題を巡るリスクの拡大といったものが市場のリスク回避姿勢を強める結果になって、相対的にリスクの小さい円が買われ、円高になっているのではないか、ドル安、ユーロ安の裏側として円高になっているのではないかと思っています。』

ふむふむ。

『これが企業マインドに及ぼす影響が気になるところですが、とりあえず今、データとして確認できる企業マインドの指標について申し上げると、懇談会の資料の中で少し触れましたが、今のデータから窺われる範囲では、まだ大きくは崩れていないというのが私自身の理解です。7月、8月の企業マインドの指標では、大企業と中小企業を含め、一部足踏みしているところもありますが、総じて改善していると判断できるのではないかと考えています。』

ほうほうそれでそれで?

『しかし、これは8月半ば、部分的に8月下旬の回答もありますが、今月に入ってそうしたリスクがさらに拡大しているのかどうかという点について、これからより注意してみていかなければならないし、企業の経営者の皆様にマインド面で与える影響を、慎重にみていかなければならないと考えています。』

ということですので、まだ様子見ですかそうですかという感じです。更に円高のメリットデメリットの話が講演にあったので、その点について「現在どちらの方が大きいのか」(当然ながら質問する方は「デメリットが大きい」という答えを期待していたと思いますが)という質問と、スイスの為替対策のようなものなどを含めた政策対応はどうよという質問がありまして・・・・・・

『円高に対して第1点目、良い面と悪い面と、総合してどう考えているのかということですが、懇談会でも述べましたように、プラス面は輸入原材料のコストが低下して、それが企業、家計に幅広くメリットになる。特に今、震災から立ち直る現状において輸入が増えていますので、そうした足許短期的に輸入が必要な状況下においては、このメリットは相対的に大きいだろうと思っています。また、海外企業買収によって成長力を強化する、これはやや長い目でみてもプラスの側面があります。』

『一方で、マイナス面としては、輸出企業の収益、あるいは輸出量の減少、企業マインドの悪化ということが懸念されるわけです。そしてやや長い目でみた懸念として産業空洞化があり、特に基幹工場、あるいは研究開発拠点の海外シフトが本格化すると、悪い産業空洞化という形で日本経済の成長力が損なわれ、長い目でみて大きな懸念材料に繋がりかねないと考えています。』

『今申し上げたところを総合的に判断して、足許の評価、あるいは少し長い目で見た評価、双方ありますので、それをしっかりと点検して今後の政策判断に反映させていきたいと考えています。』

・・・・・・・・・・うーむゼロ回答。

『2点目、日銀の政策対応として、例えばスイス中銀の為替政策などをどうみるかという質問だったかと思います。ボードメンバーである私の立場から他国の金融政策に関して評価することは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で、各国の中央銀行は恐らくその国々の与えられた制度的な枠組みや金融経済情勢の下で最適な政策を追求していると理解しています。そのことは私どもも一緒です。従って、円高に対する構えとしては、先程来申し上げているとおり、そのプラス面、マイナス面、両方を総合的に勘案して、必要と判断される場合には適切な措置を講じていきたいと考えています。』

・・・・・・・・・・・うーむゼロ回答。

ちなみに、この次に「米国が追加緩和を実施して超過準備への付利金利を引き下げた場合に日銀はどうするのですか」という質問がありまして、それに対しても見事なまでにゼロ回答をしているのですが、まあ付利金利の方は兎も角として、為替円高に関する部分でもゼロ回答せんでもよいのではとか思うのですが、なんちゅうか宮尾審議委員ってよく言えば無難で慎重なのですが、悪く言うとこの講演にこの質疑応答だと日銀公表文書の説明腹話術人形みたい(いやまあそれを作っている人たちの1人だからそうなるのですよと言ってしまえばそれまでですが)ですなあという感じです。まあ日銀執行部のロジックの論点整理にはなっています罠という所ではあるのですが、特に新しい話は無いですな。


○ほほうECBドル供給オペとな

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110915.en.html
15 September 2011 - ECB announces additional US dollar liquidity-providing operations over year-end

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has decided, in coordination with the Federal Reserve, the Bank of England, the Bank of Japan and the Swiss National Bank, to conduct three US dollar liquidity-providing operations with a maturity of approximately three months covering the end of the year. These operations will be conducted in addition to the ongoing weekly seven-day operations announced on 10 May 2010. The schedule for these additional operations is as follows:(以下表になるので割愛)』

ということで、引き続きドル資金供給を実施するという話で、各国とも実施と相成りまして、日銀もこんなリリースを。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110915a.pdf
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程の追加について

『○ 本日、欧州中央銀行、イングランド銀行、スイス国民銀行は、年末越えとなる3か月物の米ドル資金供給オペレーションを行うことを決定し、その日程を公表しました。日本銀行では、米ドル資金供給オペレーションについては、従来から、毎週1週間物をオファーするとともに、毎月3か月物のオファーを行っています。先行き1か月程度の日程については、既に公表しているところですが、今般、上記中央銀行の措置に合わせ、米国連邦準備制度とも調整のうえ、以下のとおり、年末越えとなる3か月物の米ドル資金供給オペレーションの日程を追加することとしましたので、お知らせします。』

まあ状況が状況ですから延長措置になるでしょというのは別に不思議でも何でもないのでありますが(念の為申し添えますと日銀のドル供給オペは延々とボウズ状態が続いておりますので日銀の措置はセレモニーみたいなもんです)、まあこれを好感して株式市場が反応とか「ふーん」という感じでして、地合いがそういうことなんでしょうなあという感じっす。だって地合いがクソ悪い時って「そんなに大変なんですか!!」とか言って売り材料にしたりしますからねえ(苦笑)。

いずれにせよ、リーマンショックでその辺の「流動性の蒸発」については良く訓練されているはずですので、今回は先手先手で対応できていると思いますけれども、何せ今回の欧州問題は流動性の問題もさることながら、ソルベンシーの問題も絡んでいるので話がヤヤコシヤという所ではございますな。


しかしまあ何ですな、こういうニュース見るとつい変な想像をしてしまうのはあたくしの気のせいですねそうですね。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110914-OYT1T01211.htm
ギリシャ「移動の自由」危機…EUが資格停止案

『欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は16日に協定の見直し案を決定、欧州議会に提案する見通し。欧州メディアによると、同案は不法移民の流入を慢性的に許した参加国について、その資格を30日から6か月の間、停止するとの内容。』(上記URLより)

預金封鎖通貨切・・・・・・・いやあの何でもないですけど、何もこの時期にこんな話をせんでもと思うのですが、不法入国者が地中海の向こう側方面から絶賛流入して来るのでシェンゲン見直しという話はちょっと前(今年の頭とかあたり)からあったのは存じておりますので、今回は単にその流れがたまたまこのタイミングになっているだけの話なんですが、間が悪いなあ(あるいは良いのか???)とか思ったのは気のせいですかそうですか。


○FOMCが来週ですので雑談

いわゆるツイストオペの実施がコンセンサスになってしまって、煽る人の煽りネタが無くなってきたせいか、何か足元では「超過準備付利金利の引き下げ」というのを新たなネタにしているらしくて、何故か知らんが某モーサテの為替のコメントの人が「ツイストオペよりも超過準備付利金利の引き下げの方が強力な金融緩和」とお前は米国市場でのレポ金利とかT-Billの金利とか2年国債金利の水準とか判って話をしているのかと小一時間問い詰めたい説明をしておりましたが、またまた為替市場の皆様はそのようにお考えなのか〜という事を理解できたという点では役に立つコメントではございました(棒読み)。

たぶん超過準備付利金利下げてもただでなくさえ死んでいる短期金融市場とかMMFとかが更に死ぬだけで、T-Billなどの金利の方は既にIOER金利ってなんでしたっけ状態の水準にあるのでございますから、アナウンスメント効果というか気持ちというかやる気というかを示す以上の効果がありませんという福井俊彦状態ではございますけれども、まあ確かにそうやって本当は実効無いけど市場が勝手に好感して動いてくれるのであれば、「マインド面に働き掛ける」という言い訳はあるなあとか思ったり思わなかったり。

ツイストオペに関してはまあ先般来申し上げているように、本当に政策が効果を発揮したら長期金利は上がる筈ですので、そーゆー意味で自己矛盾状態の政策でありまして、かつてのケネディー政権時代の政策の結果効いたからというのを持ち出して今回実施しましょうというのはさすがに何ぼなんでも市場環境の前提条件が違いすぎて話に無理があるでしょとか思うのですけれども、鰯の頭も信心からというどこの福井俊彦だという作戦もアリだとは思います(ただし乱発しすぎると後任が苦労するのは麿を見れば一目瞭然)ので、まあツイスト実施でしょうなあとか思います。

ちなみに、ツイストオペに関しては先般サンフランシスコ連銀が出していたこちらのペーパーでああでもないこうでもないと書いてありますが、
http://www.frbsf.org/publications/economics/letter/2011/el2011-13.html
Operation Twist and the Effect of Large-Scale Asset Purchases


日銀も2003年に本件(以外もあるのですが)についての考察をしているので読んで味噌。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2003/wp03j04.htm/
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2003/data/wp03j04.pdf
長期金利の変動をどう理解するか?
:マクロ経済モデルを利用した期待短期金利成分とリスクプレミアム成分への分解



でですね、既にツイストまで織り込んでしまっている市場なので、毎度お馴染みバーナンキプット炸裂ということでオマケの景気付けに付利下げというのはあるかもしれませんけれども、それ以前の問題で相変わらずCPIがアレだったりする中で市場が織り込んでいる以上に突っ込むことが出来るのかと疑問があったりするあたくし。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aNaor0qsROFo
米CPI:8月は予想上回る伸び、食品やエネルギーが押し上げ (1)

『BNPパリバのシニア米国担当エコノミスト、ジェレミー・ローソン氏は「多くが予想していた以上に基調的なインフレには勢いが見られる」と指摘。「インフレは米連邦準備制度の政策を制約することはない。当局は実体経済に焦点を絞るだろう。インフレは落ち着きつつあると認識しているはずだ」と述べた。CPIは前年比では3.8%上昇で、前月と同率の伸び。コア指数は2%上昇と、伸び率は前月(1.8%上昇)から加速。市場予想(1.9%上昇)も上回った。』(上記URLより)

・・・・・・・いやあの基調的インフレが上昇するとデュアルマンデートがとか思いますが、物価重視派が明らかに投票する中に3人いて、他にもラッカー総裁みたいなのがいるし、皆さんここへ来て発言しまくりの地区連銀総裁の皆様という風情になっていますので(何か知らんけど今週は週末が3日あるらしいので直近の地区連銀の講演を読んでみるつもりですが)、その中で「市場が織り込んでいる以上に沢山打ち込んでくる」というのが出来るのかねというのも懸念されますし、そもそも(物価という制約があるので)あまり無茶振りの緩和を打ち込む事が出来ないという中で、欧州があの有様ですからして、今回緩和してもその後欧州があばばばばーになった場合にどないすんねんという気もしますので、中々今回のFOMCは難しいんじゃないかなあと思います。


まあ何ですな、普通に考えると今回はツイストオペの実施についてのアナウンスが出るというような感じになるのかねとか思うのですが、ツイストオペの実施をするとQE1やQE2の時と同様に材料出尽くしで債券市場が終わってしまうのではないかという懸念もあったりしますので、そーゆー点を勘案し債券市場を持たせるという観点からしますと、今回は「FOMCの旅はまだ続きます!バーナンキ先生の次回作にご期待下さい!」という事で次回の追加緩和を強く示唆しながら期待を持たせて6週間時間稼ぎをし、その結果11月近くには市場が催促祭りになってしまい、NY連銀がプライマリーディーラーに追加緩和に関する市場のコンセンサスがどこにあるのかについてのアンケートを実施するというお笑い展開になるという素敵な流れになるに100ケチャップという事でお願いいたします(^^)。


何か足元でニポーンでは短国が相変わらず強かったりユーロ円金先が昨日は堅調だったりしてましたが、為替フォワード絡みの円転コストが効いていてオフショアの金利が素敵な事になっている件とかが影響しているのはまあ判るのですが、金先が動いてるのってFOMC前に付利関係の思惑もあるのかいなという所なんでしょうか、よー知らんけど。




2011/09/15

お題「宮尾審議委員講演は経済見通しの話よりも金融政策の話ですな」

ということで昨日は宮尾審議委員の講演があった訳ですが、何か特段こうオモシロな話があるわけではなく淡々としてましたが、金融政策に関する話でのいわゆる非伝統的政策に関するところはちょっと面白かったような感じですな。景気に関する部分は特段の特徴は無かった感じです。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110914a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110914a2.pdf(関連図表)

○経済の先行きリスクに関して

海外経済、国内経済に関する部分はまあ極めて普通っちゅうか日銀の中心的な見解と同じような話を延々と展開しているのでめんどいので引用しませんが、まあ読みたい場合はどうぞという所でして、リスク認識のところから先をネタにしようとゆーことでいきなり本文6ページ目までワープする(^^)。

『先行きは、供給制約が解消したのち、生産・輸出面を起点とした緩やかな回復が続いていくとみています。そう申し上げた上で、先行きの回復シナリオに対しては、以下に述べるような懸念があり、注意が怠れません。』

ということで下振れ警戒のようで。

『懸念の第一は、既に概観したように、欧米先進国の景気回復が鈍化する中で、海外需要が当初想定していたよりも減少する可能性があり、それが景気回復を下振れさせるおそれがあります。』

『懸念の第二は、円高の定着です。米国債格下げや米ゼロ金利の2013年半ばまでの条件付き維持、欧州債務問題の再燃などを受け、ドル安・ユーロ安が長引き円高が定着すると、国内産業空洞化の懸念が強まります。』

話の本筋とは違いますが、FOMCの先般のガイダンス文言の変更を「2013年半ばまでの条件付き」としているのがチャーミングだったりしますが、まあそれはそれとして、下振れ要因の円高に関しては少々詳しく説明がありまして、メリットデメリットの部分は割愛しますけれども・・・・・・

『この際留意すべき点は、アジア新興国や米国といった輸出先の国では様々な財・サービスの価格(物価)がこれまで着実に上昇しているのですが、自動車や電気機械などに限ってみれば、競合メーカーとの競争が激しい、もしくは価格が著しく下落しているという点です。従って、こうした製品・部品を輸出しているわが国の企業にとっては、円高の影響を輸出先の国の物価上昇で緩和することができないために、相当厳しい競争を強いられることになります。』

ほほう。

『輸出の動向は国内生産とリンクしており、わが国の経済に大きな影響を及ぼしますので、円高による下押し効果は強く出ます。また、基幹工場や研究開発拠点の流出といった動きにつながれば、潜在的な成長力に対する影響も懸念されます。』

『こうしたことを考慮すると、政府が、円高に伴う痛みを緩和し、産業空洞化を防ぐべく、製造業の根幹をなす研究開発部門や中小下請け企業への支援を検討しているのは大変意義のあることだと考えております。』

なるほど。


『懸念の第三は、電力コストの上昇です。』

これは^^;

『本年夏場は、企業の工夫・負担や個人の節電努力などにより、生産水準などには特段の影響が出ませんでした。しかし、長期的にみて原子力から代替エネルギーへシフトしていく可能性が高い中にあって、代替エネルギーの輸入など電力コストが上昇していけば、企業収益を持続的に圧迫し、場合によっては海外シフトしていく可能性も否定出来ません。』

仰るとおりですが、今の「性急な脱原発」ブームを軽くdisっているのがお洒落。


『懸念の第四は、デフレ予想の長期化です。』

ほほう。

『本年8月、CPIが2010年基準へ改定されました。その結果、旧基準(2005年基準)に比べ月々のCPI(除く生鮮食品)前年比の下方改定幅が▲0.5%〜▲0.8%ポイントとなり、新基準では、4月▲0.2%→5月▲0.1%→6月▲0.2%→7月+0.1%となりました(図表27)。もともと民間調査機関では、この基準改定により、CPI(除く生鮮食品)前年比がそれまでの+0.6%辺りから0%近傍まで下落するとみておりましたし、私どももそう思っていたため、おおむね予想の範囲内ではありましたが、物価安定の実現までは、なお時間がかかることが確認されました。』

ということで、例によって例の如くの「物価安定の実現には時間が掛かる」であります。

『このように、物価安定の実現までになお時間がかかるもとで、ゼロ金利の継続予想が長期化すれば、人々のデフレ予想が自己実現的に強まってしまうリスクがあります。万が一、デフレ予想が根雪のように固定化してしまうと、委縮しがちな人々の行動に働きかけることが難しくなり、支出が先送りされるなどして成長期待も高まらず、「デフレと低成長のわな」とも言うべき状態からなかなか抜け出せないといったおそれがあります。』

まあ各種サーベイを見ると物価予想は一応プラスはプラスですけれども、現実問題として「物価は上がらん」予想の方が多いんじゃないかと思うので、そーゆー意味では既に「デフレ予想が根雪のように固定化」もへったくれも無いような気もするんだが・・・・・

『現時点では、基準改定後も、需給ギャップが縮小するもとでデフレ脱却の方向に向かっていること自体は変わらないと考えていますが、今後、人々の予想物価上昇率に変化がみられないか、注意深く確認していく必要があります。』

元々実際のCPI上昇率よりも上に振れている予想物価上昇率(普通に一般ピープルが物価上昇がどうのこうのと言う時にヘドニックなんて考慮に入らないでしょうから)がゼロ近傍に落ちたら試合終了のような気がします。


○金融政策に関して:米国の金融政策に関して

まあ日本の金融政策に関する話ははあはあそうですか状態なのですけれども米国に関して。

『米国の非伝統的政策についても、特に、2010年11月から本年6月まで実施された大量の国債購入プログラム(いわゆる量的緩和第2弾)を中心に、政策効果を巡り賛否が議論されています。その効果を評価する賛成意見としては、デフレ懸念を払拭したこと、株価が上昇したこと、消費マインドが改善したこと、ドル安により輸出が促進されたこと、株価上昇で公的資金が早期に回収できたこと等が指摘されています。一方、否定的な意見としては、雇用等の経済指標に顕著な改善が見られていないこと、株のミニバブルを発生させそれを崩壊させたこと、国際商品市況(原油・ガソリン価格)の高騰を招いたこと、資産価格高騰の恩恵を受けにくい低所得層の実質所得を低下させたこと、新興国へインフレを輸出したこと等が指摘されています。』

ほほう。

『おしなべて、プラスの効果を前向きに評価する向きと、効果を疑問視する、あるいは予期せぬ副作用が大きすぎたと批判する向きが交錯している印象を受けます。ここから汲みとれることは、金融政策の効果の大きさやその現れ方を把握し、また事前に予見することが、いかに難しいかということだと思います。』

まあ中央銀行同士で刺し合いしてもしょーが無いという事で、これ以上の論評はしないのが大人の対応なのでしょうけれども、実際問題として宮尾審議委員がこの件に関してどのような見解を持っているのかという点はお伺いしたいものでございます。



○金融政策に関して:非伝統的金融政策に関して

『金融政策の効果およびその波及経路については、伝統的政策と非伝統的政策で、大きな違いがあるのでしょうか。』

ということですが・・・・・・

『伝統的な金融政策においては、金利を通じる経路、(またそれにも付随する)ポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、借入コストや株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行信用量などに働きかけ、それが企業・家計の支出行動に影響を及ぼして、最終的な景気・物価に影響を及ぼす、といった波及のメカニズムが期待されます。』

『これらの伝統的政策の波及メカニズムは、ロジックとしては、非伝統的な政策にも当てはまるものです。長めの金利や各種リスクプレミアムへの働きかけは、上記の金利経路、ならびにポートフォリオ調整・資産価格を通じた経路に他なりません。上記の米国の政策効果をめぐる議論でも、そのほとんどすべてが、伝統的な波及経路で説明できるものです。』

さよですな。

『一方で、定性的なメカニズムは同じでも、非伝統的政策において特に指摘すべき議論も存在します。』

ほほう。

『第一に、金融システム・金融市場安定化効果についてです。これは、金融機関に流動性を大量に供給することで金融システム不安を鎮める効果、もしくはマーケットが過度にリスク回避的となり市場機能が低下してリスクプレミアムが急上昇した時に、中央銀行の介入によって金融市場を安定化させる効果です。金融不安やマーケットの底抜けを防ぐことで、実体経済への悪影響を防ぐことができます。』

いわゆる信用緩和政策ですな。

『第二に、国際スピルオーバー効果です。これは、ゼロ金利の長期化予想に伴い、グローバルな投資家が利回りを追求(キャリートレード・リスクテイクを積極化)し、資本が高金利国・資源国へ流れ、それが海外新興国の景気を拡大させたり株価を押し上げたりする結果、自国からの輸出拡大やグローバル企業の収益改善を通じて、景気・物価へ波及していくという効果です。』

時間軸のようなものによって低金利期待が長期化した場合に、投資家の利回り追求(サーチ・フォー・イールド)行動を通じてスピルオーバーするって話なのですが、別にこれって非伝統的政策じゃなくても、伝統的政策の下でも時間軸のようなものが発生したら同じ事のような気が。それこそ米国の信用バブル発生の前の低金利期待長期化がその典型で、あの時は別に非伝統的政策じゃなかったような気が(まあそもそも時間軸も無かった(声明文文言みたいなのはあったかな)けど)するんですが。

『第三に、予想インフレ率を通じた効果です。これは、需要に働きかける従来の経路に加え、中央銀行のバランスシートが長期にわたり拡大するとの期待を持たせることにより、予想インフレ率を上昇させ、実質金利を低下させることを通じて景気・物価へ波及する効果です。』

これが何故か効かないのが日本クオリティorz


『このような効果波及のメカニズムが考えられる一方で、金融緩和が行き過ぎると副作用も懸念されます。』

で、どうせベンダーのヘッドラインではここを切り取ってネタにするのがいるに1ルーブル。

『第一の効果には、中央銀行が過剰に介入して、リスクプレミアムを過度に抑え込むと、リスクに応じて価格付けがなされるという市場本来の機能までつぶしてしまうことになります。また金融機関の収益も圧迫する可能性があります。』

『第二の効果には、過度なリスクテイクを助長することで、資本流入国の景気過熱や信用バブルをもたらし、その後の深刻な景気後退を招く可能性があります。』

『第三の効果には、行き過ぎたバランスシート拡大を続けると、予期せぬタイミングで予想インフレ率が上昇したり、無規律な貨幣拡大もしくは政府債務の貨幣化と市場に認識されて国債利回りが急騰するといった可能性も考えられます。』

とまあ一般的というか普通の話をしていますが、まー日本に関して言えばバランスシートの拡大継続と財政のダラダラ出血を続けるとどこかでいきなり来るかもしれないし来ないかもしれないでしょうな。3年後なのか100年後なのかは判りませんが・・・・


○非伝統的金融政策についての留意点という部分が中々

『以上のような整理を行ったうえで、強調すべき留意点がいくつかあります。』

という部分が中々チャーミングなので引用するだよ。

『第一に、これらの効果波及の経路は、それぞれ重複したり相互に関わるものであり、個別の経路を区別して識別したり、またその定量的な効果を測定したりすることは、不可能ではないにしても、大変困難であるという点です。』

そらそうですな。

『とりわけ、非伝統的政策の効果や副作用については実際の経験が乏しく、またそれが実施されるような経済状況は、企業や家計が過剰な債務を抱えるなど、金融危機後の深刻かつ長期の景気停滞の渦中である場合が多く、それだけ通常の波及経路が機能しにくい経済環境にあることも予想されます。』

確かに。

『経験が乏しい領域であることに加え、そのような経済状況であることを考慮すると、過去の政策の経験を参考にしつつも、予期せぬ副作用についても十分な目配りを必要とする、総合的かつ慎重な判断が重要だと考えられます。』

ということで、まあ慎重スタンスという話が結論ですな、賛否はありそうですけど。


『第二に、こうした金融政策の効果が、もし仮に好ましい形で波及した後の金融・経済情勢下では、良い意味で金利は上昇しているという点です。』

これは仰るとおりで、それだからこそ外野のあたくしどものようなニポーンの皆様的に言うと米国が実施の検討を行なっていると思われる「ツイストオペで長期金利低下を促す」という政策って本質的に矛盾を孕んでいますよねという雑談をしている訳ですな。

途中の説明を割愛しまして・・・・・

『結局、政策の効果が徐々に現れ、経済が着実に成長していくという経路のもとでは、より長めの金利は、当初低下したのち、やがて上昇に転じていくのが自然ということです。逆に、長めの金利が低水準のままということは、(インフレ期待を一定とすると)低成長のままということを意味します。』

という事になりますわなという事で。

『なお、補足ですが、金利が好ましい形で上昇していく場合の経済への影響には注意が必要です。例えば、財政再建の問題を考えると、前提としていた金利水準が上昇すれば、財政の金利負担が増すということになります。しかし、一方で成長が高まることで税収増も期待できますので、そうした双方の効果を踏まえて財政再建を議論することが肝要となります。』

ふむふむ。


『第三に、金融政策だけでは望ましい成長力強化は図れないということです。』

キタコレ(・∀・)

『そもそも経済の成長力強化は、一義的には民間部門の構造変革努力、そして、それを支援する政府の成長戦略などにより推進されるものと理解されます。しかし、そう申し上げたうえで、金融政策にも、短期的・循環的な景気の振れを抑えるという効果に加えて、中長期的な効果を経済に及ぼす可能性があります。』

まあ基本的に金融政策は経済の循環的な上げ下げを均すのが役割ですからね。

『望ましい形では、金融緩和が良質な設備投資や研究開発投資を促進することを通じて、生産性や成長力強化に寄与する可能性が考えられます。一方で、望ましくない可能性としては、金融緩和が過度のリスクテイクや過剰な設備投資を促すことで、中長期的に景気の振幅を拡大したり、無規律な金融緩和が予期せぬタイミングで通貨に対する信認を喪失させたり金利高騰を招くという懸念が考えられます。このように、金融政策が潜在的に持ちうる効果は、中長期的な成長にとってプラス・マイナス両面ありうると認識しておくことは重要です。』

つまり何でも良いからドンドンやれといわれても困りますがなということですね、わかります。

で、以下成長基盤オペの話とか、日銀は今後の動向も踏まえて適切な対応を引き続き行ないますよというような普通の話をしていますが、以下引用割愛である。





2011/09/14

お題「ま た 枝 野 か ! /市場メモ/ラッカー総裁ネタ続き」

昨日経済産業大臣人事に対してアチャーというのを書こうと思っていたのですが(本当)、話の流れで割愛したらこれですよorz

○まったく反省していない・・・・・・・

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110913-OYT1T00501.htm
東電債権者の負担「当然」…枝野経産相

『枝野経済産業相は13日の閣議後の記者会見で、東京電力による福島第一原子力発電所の損害賠償を政府が支援する枠組みについて、「税金の支援がない場合に生じたはずの負担を(金融機関などの)債権者に当然負ってもらう」と述べた。』

『東電は政府の支援を受け法的整理を回避しながら賠償を進めるが、東電の特別事業計画には、金融機関による債権の一部放棄や返済猶予などが含まれるべきだとの考えを示したものだ。』

『枝野氏は官房長官時代の今年5月にも金融機関による債権放棄が必要だとの考えを表明したが、東電の特別事業計画を認可する経産相としての発言は、今後の計画立案にも大きな影響を与える可能性がある。』(2011年9月13日12時56分 読売新聞)

ということで、おもわず全部引用してしまいまして読売新聞さんすいませんすいませんという所ですが、相変わらず何の反省も無い枝野大臣なのであったというのが判明して誠に遺憾の極み。

事後法で優先劣後の順番をひっくり返す話とかのアホラシさに関しては既にこのアホウが官房長官時代に行なった無法発言に関してああだこうだと悪態を申し上げた通りでございまして、まあ何と申しますか全く経済というか金融というかを理解しておらず、あれだけ散々市場を引っ掻き回した件に関してもどうもこの人的には悪いのは東電だと思っているんでしょうなあマッタクモウ。

優先劣後の件をさておきましても、まあそら国家権力は最終兵器みたいなもんでございますから東電の特別事業計画認可しないで賠償機構を作らないというようなワケワカラン大技を繰り出すと脅せば枝野大臣ご所望の展開になるかもしれませんけれども、当然ながらそんな事をやったら債権放棄させられた東京電力向けも当然の事ながら、一発事故が起きたら大変な事になる原子力発電所のオペレーター(原発は停止している時だって事故が起きるリスクあるわけですし・・・・・)、即ち沖縄電力以外の全ての電力会社に対する融資も引き上げないと危なくてやってられませんがな、という話に普通になっちゃいますし、そうなった場合に日本の産業および国民生活の基盤を担う電力会社の資金繰りとかはどうなるの、というような事に対する想像力に致命的な欠陥があるとしか思えない枝野経済産業大臣なのでありました。

まあ何と申しますか、この超目先の事にしか想像できず、先行きの損得に関する件を全く考えていないというこの枝野経済産業大臣ってえのは、「朝三暮四」の故事成語に登場する狙公の飼ってるエテ公にも劣る(エテ公はトータルの数字が一緒で朝三なのか朝四なのかで文句言ったわけですからねえ・・・・・)ようでございまして、猿にも劣るような目先の利益に飛びつく存在ということですから欲豚なんでしょうなきっと。

確かウォール街の相場格言とかいうのだったと思いますが、「ブル(=強気)は時々儲ける。ベア(=弱気)も時々儲ける。しかしホッグ(=欲張り)は決して儲けない。」ってのがあったと思いますが、目先の賠償金負担を減らすために無理筋の話を持ってきて、その結果将来に大きなコストを払わせる事になるというのに全く気がつかない(その上以前その発言をして大混乱を起こしたことへの反省も無く同じ発言を繰り返しているから救いようが無い・・・・・)この欲豚さんはどうにかならんのですかねえ・・・・・・

まあ、目先「金のあるところから無理矢理御用金を召し上げる」ということだけ考えて、叩くと世間的に受けそうな金融機関を無法措置で痛めつければ良いというようなアンチビジネス的な発想を持つ人間を経済産業大臣という重要な経済閣僚ポストに就けるとか野田首相のセンスがそもそも全く意味不明で、民主党っつーのはまともなのは居ないのかと頭がクラクラするんですけどね。


○気を取り直して市場雑メモ

・1年短国ががががが

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul230913.htm
国庫短期証券(第222回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円89銭7厘
(募入最高利回り) (0.1028%)

(4)募入最低価格に 11.7080%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円89銭9厘
(募入平均利回り )(0.1008%)


足切りは兎も角として平均が99.899円ってアチャーという感じなのでございまして、この足切りと平均の乖離から考えると、普通に99.900円に札を入れている人がいるっちゅう事でございまして、その札って出来上がり0.10%割るんですけど本当にそれで良いのかと。

ま、この銘柄ってショートしても(明日にでも利上げがあるなら別ですが^^)コストばっかり掛かって間尺に合わないですから、基本的にロングにするか持たないかのどっちかという事になりまして、まあ店頭で投資家が買いに来る事を考えたら在庫をちったあ持っておこうという話にもなるのでしょうが、それにしても0.10%割れとかまで札を入れる動きになるとはねえという感じです。

海外(は0.10の補完当座預金とか関係ないから)とかのニーズとか、期末だから例によって例の如くの決算向けに何でも良いから国債もってこいのニーズ(まあその場合普通はロットを一発で捌けてかつ1年物より売買コストが安く付く3か月TBを買うと思いますが、常識的に考えて・・・・)とか諸々のニーズがある上に、日銀の基金オペでどうせ0.10%カツカツの所でお買い上げ頂けるというのがあるのは判るんですがいやはやでございました。


・オペレーションツイストですかそうですか(違)

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2011/resul039.htm
20年利付国債(第130回)の入札結果

(3)募入最低価格 100円65銭
(募入最高利回り)(1.756%)

(4)募入最低価格に
 おける案分比率 9.3466%

(5)募入平均価格 100円75銭
(募入平均利回り)(1.749%)

・・・・・んーっとですな、前場の引けが先物142円63銭(↓2銭)で20年の居所が1毛5糸強と言う時点で踏み入札状態で誠に遺憾の極み(前場の途中から超長期が上を買っていくような流れに)だったのですが、前場引けの130回の1.76/1.765とかの板からきっちりと強い所で入札やって、結局大引けでは先物142円57銭(↓8銭)で新発が1.74/1.745とかこれまた中々豪快な超長期の強さ。

一方で5年とか先物とかはヘロヘロになっていまして、その傾向がこれがまた入札後に更に顕著になったというのが踏み入札に加えて嫌がらせのような展開で、アメリカに倣ってオペレーションツイストでもやっているのでせうか(だいぶ違うと思う^^)という誠にアレな入札で上期の中長期国債入札の大所は締めくくられるのでありましたとさorz

#ただのメモで相場考察は無い


○ラッカー総裁ネタの続き(ちょっとだけ)

先日ネタにしたラッカー総裁のインタビューですけどね

http://frb.ewb.dowjones.com/FRB/Article/default.aspx?an=MARNEW0020110816e78f000b9&FeedTypeID=4&aid=61474
http://frb.ewb.dowjones.com/FRB/Article/default.aspx?an=MARNEW0020110816e78f000ba&FeedTypeID=4&aid=61474

Fed's Lacker: Zero Rates Thru Mid-2013 'Highly Contingent'
Market News International
Mon, 15 Aug 2011 16:55:00 EST
(c) 2011. Market News International, Inc.

パート1の方から少々。

#なお、今回はインタビュー記事からの引用という事もあって、元の文書の掲載順序とはだいぶ違う引用になっているので念の為申し添えます

・FOMCのガイダンス文言について

『 The FOMC's new "forward guidance" is "highly contingent" and subject to change as economic and/or inflation circumstances evolve, Lacker said in an interview with Market News International.』

ということで、ラッカー総裁の解釈はガイダンス文言は「今の時点での見通し」に過ぎず、コミットメントでも何でもないという話でして、その先のほうにこんな部分が。

『Many have read the FOMC statement as virtually guaranteeing that the Fed will hold the funds rate near zero for at least another two years, but Lacker said that is not a valid interpretation.』

間違った解釈キタコレ。

『 "I would note that it's a fairly mild statement in the sense that it's highly contingent," he said. "It's a commitment that could change if economic data indicate."』

まあそういうconditional commitmentはコミットメントとは言わないのですがね。

『Some have suggested that it will be difficult for the FOMC to back out of what is widely perceived as a promise to keep the funds rate near zero through at least the middle of 2013. But Lacker said, "I think that if the economic data come in differently than the Committee expected then I think that will provide the opportunity to alter the terms of that statement."』

ま、あたくしも「物価情勢が正常化を必要とする状況になったら、しらっと2013年半ばという文言が無かった事になるでしょう」というラッカー総裁の見通しに同意するものでありまして、物価見通しに関してそこまで大張りして本当の意味での時間軸政策を実施したというよりは、目くらまし程度の話じゃネーノと思います。まあそうなった場合というのは米国中短期債市場が2003年夏の日本のような盛大なマーライオン祭りとなって、もう出るものもありませんがなとなりながらのた打ち回る人たちが続出するとゆー大変にあばばばばーな光景が確認できるかと今からワクテカなのですが、こんな感じでてきとーにガス抜きされちゃうとそこまでロングは積みあがらないかなあ・・・・

『"That statement isn't so much a commitment as it is a forecast," he added.』

ということで、このステートメントは「コミットメントというよりは予想である」というラッカー総裁の説明はこれはこれで正しいと思いますが、まあその辺のミスリードを微妙に期待しているような雰囲気も感じるので、こういうネタバレイクナイという事なのかもしれませんがね(^^)。


・追加緩和に関しては「インフレ見通し」で反対

『Asked about his stance on the extension of the extended period, Lacker said "it doesn't strike me that more monetary stimulus is what this economy needs." 』

では、何でその追加緩和に反対なのかですけれども。

『 Various objections have been raised to a two-year quasi-commitment to holding the funds rate so low -- that it would benefit large borrowers at the expense of savers, that it could cause a speculative search for yield that might create new asset bubbles and that it could render the interlink money market distinctional.』

今回の擬似コミットメントに対する反対論として色々な副作用が指摘されていますが・・・・・

『Lacker acknowledged those potential costs, but indicated those are not his primary concerns.』

指摘される副作用は主な懸念ではありませんと。

『 Lacker said his main objection to the extended zero rate policy is directed elsewhere: "For me predominantly, it's a matter of money creation and inflation." 』

ということで、追加緩和によるインフレ懸念が反対(ラッカー総裁のFOMC投票権は来年)理由って事ですので、まあ直球ストレートですな。

『 "We operate monetary policy by moving short-term interest rates around over the business cycle," he explained. "We do that because what's required to get the money supply right, to keep inflation low and stable, a lower interest rate is required when the economy is soft, and a higher interest rate is required when the economy is strong." 』

『 "If we get the interest rate wrong we're going to get the money supply wrong, and that's going to get inflation wrong," he continued. "And that's why we vary interest rates with economic conditions the way we do. People confuse that with providing stimulus and working to offset shocks to growth, positive or negative."』

『 "So for me the chief risk is that it creates the ingredients for an acceleration of inflation." 』

というお話でした。パート2ではロゴフの見解を全力でdisっている部分があるのですが、この人とシカゴ連銀のエバンス総裁はFOMCでどんな罵り合いをしているのかと思うと胸が熱くなるというものでございます。






2011/09/13

お題「8月4日会合議事要旨雑談/バーナンキジャクソンホールネタの成敗(長期的な米国経済の課題)」

ほほう。まあ大事ではないらしいですが・・・・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-14883521
France nuclear: Marcoule site explosion kills one

○8月4日の決定会合要旨はあまりネタなし(の割には雑談が多い)

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110804.pdf

・リスク認識部分

3時間弱しかやっていませんのでどうにもこうにもネタが少ないのですが、まあ一応は景気の先行きに関するリスク認識の部分を引用。『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『一方、景気の先行きを巡るリスクについては、委員は、経済見通しを巡る不確実性は高く、このところ、景気の下振れリスクにより留意すべき情勢となっているとの認識を共有した。』

ほうほうそうですか(棒)。

『委員は、米国の財政問題と景気下振れ、欧州のソブリン・リスク問題、新興国・資源国の物価安定と成長の両立といった海外の経済・財政を巡る情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性があるとの見方で一致した。』

ほほう。

『多くの委員は、やや長い目でみて、電力供給を巡る不確実性や、円高の進行などを背景に、企業の海外シフトが加速する可能性にも注意する必要があると指摘した。複数の委員は、特に、震災に伴う供給面の制約を克服しつつあるこの時期に円高が進むことは、企業マインドを大きく悪化させる可能性があると述べ、別の委員は、日本経済の成長期待の低下に繋がる可能性もあると述べた。』

でまあそーゆーのに対応する為に追加緩和を実施しましたという話はまあ良いのですけれども、今月の決定会合での声明文におきまして先行きのリスクに関する部分での電力供給制約の話が抜けているのはなんでですねんという気がするのですけどその辺はどうなんでしょうかね。ちなみに、実はこの電力供給云々に関してはこの回の声明文でもリスク要因の部分から文言が外れていましたが、まあこの回の場合は円高対応のリスク拡大対応で追加緩和を実施したというのもあるので、字数の関係とかもあったのかなあとか思ってたのですけれども、そのまま外れっ放しというのは何でじゃろうのとやや疑問。


・どうでもよい話ですが・・・・・・

読んでて「????」だったのが基金拡大での6Mオペ増額の部分。

『議長の指示を受けて、執行部は以下のとおり説明を行った。

・基金の増額幅を 10 兆円程度とすると、長めの金利低下およびリスクプレミアムの縮小を更に促す観点からは、固定金利オペと資産買入を、それぞれ5兆円程度増額することが考えられる。固定金利オペについては、オペ先からのニーズがある6か月物を増額することが考えられる。』

何かね、別に間違いって話じゃないのですけれども、ちょっと違和感があるのよね。

つまりですね、実際問題としてこの回の結果を受けて以降の固定金利オペの状況って何度かネタにしましたけれども、6か月のオペが札割れ寸前になるような状態が続いてまして、まあ3か月もそんな感じっちゃあそんな感じ(足元では3か月のオペの応札が2倍くらいまで戻っています)ではありましたけれども、6か月固定オペのニーズの無さが目立っていますよね。

ただまあこのオペ増額をする前って6か月の固定オペは按分が3割弱で3か月の固定オペは按分が4割程度でしたので、この時点で言えば「オペ先からのニーズがある6か月物」という説明も別に間違っている訳ではないのですけれども、まあちょっと表面的な見方じゃないですかねえという悪態が出てきたりするのれす。

即ちですな、この時点では3か月のオペが20兆円あって6か月のオペが10兆円という状態でしたので、ターンオーバーの事を考えるとオペのオファー頻度って3か月は6か月の4倍のペースで実施されていた訳でして、6か月と3か月を比較して見ると3か月オペの方が圧倒的に「いつもオファーが来ますよね」状態でして、そーゆー感じで「まあいつでもオファーあるし・・・・」という楽勝カマシ状態になりますと、その分応札する方も余裕ぶっこいて応札するので、札の集まりが悪くなり、その結果按分率が高くなるので応札する方もそれを見越して札入れるという応札が減るスパイラルになるんですな。従って応札割合という表面の数字だけで言えば3か月の方がニーズ無さそうに見えるという結果になると。

で、それを受けて6か月を5兆円増額した訳ですが、そうなりますとまずは固定オペ全体での6か月のウェイトが高まりバランスに変化が生じますし、そもそもの資金供給オペ全体(金利入札も含め)で言えばやはりオペによる平均資金供給期間のバランスが変化するという話になり、その結果として6か月オペの札が一転してハイランチ会長になるという話になる訳でして、つまりまあ端的に言ってしまえば「マーケットインパクトに対する考察が甘いですなあ」というのが上記の「6か月にニーズがある」という話になろうかと思うのですな。言ってみれば「この銘柄は高いですねえ売りたいんだけどレポって普通のレートで出来るの???」と言いながら全力ロットで売ってしまったらその前はSCで普通の銘柄だったのが自分の全力売りでいきなりマーケットショート銘柄にしてしまうようなトンチキプレイみたいな印象を受ける訳でどうにもねと。

大体ですな、固定オペの応札が減ってて、短いオペにニーズがありますよねという話は7月の辺りから既にそーゆー状態になっていて(背景には固定オペが増えてきて債券ディーラーの資金ポジション調整に使いやすい金利入札オペがただでなくさえ減るところに来て全店の金利入札が1か月超とかの長めが多かったから)たのですから、少なくとも債券ディーラーが在庫ファイナンスをするという観点からした場合にはこれ以上の固定オペは勘弁ですし、6か月とか勘弁という感じだと思っていましたので、何だかなあ感が。ヒアリングどうなっていたんでしょうかねえ。

#当然ながらこの時点ではCPIの改定で時間軸が伸びますねとかいうような認識もあって、金利が少なくとも上昇方向では無く、一方で罷り間違って下がる可能性は無いわけでは無いという状態なの長いオペのニーズが相対的に落ちるだけの話で、市場の金利観が引っくり返れば真逆になりますので念の為申し添えます


・・・・・いやまあですね、包括緩和の趣旨からして「長めの短期金利の低下(というかこの時点では既に低下しきっていたので低位安定というのが正しい気もするがそれは兎も角)を促すためには3か月のオペよりも6か月のオペを打った方が、日銀が追加緩和として行うメッセージ性が強いから6か月のオペを増額する」というのであれば別にそれはそれで政策として有りだろうなあと思いますし、市場のニーズが相対的に低くても実施した方が良い政策というのもありますし、大体からして市場のクレクレに一々対応してたらバーナンキプット状態になってしまいますから、まあその辺は別に毅然として「ニーズ的にはあまり長い固定金利オペが必要かどうかは判らないけど(という部分までは当然ながら議事要旨には掲載されないでしょう^^)、政策メッセージとしてより期間の長い固定オペの増額を選択すべきである」という風に増額提案すれば良いと思うのですよね。

然るに、何か本当にその時点で市場のニーズがあったんですかねえというのを理由に持ち出してくるのが何とも市場をダシにしている感が漂ってきて何だかなあと思ったのでありますが、まあどうでも良いっちゃあどうでも良い話ですねすいませんすいません。



○そういやジャクソンホール講演ネタが途中だったので最後まで成敗

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.pdf

前回書いたのが9月5日で1週間の放置プレイ誠にすいません。『Economic Policy and Longer-Term Growth in the United States』の第5パラグラフ以降です。

『The quality of economic policymaking in the United States will heavily influence the nation's longer-term prospects. To allow the economy to grow at its full potential, policymakers must work to promote macroeconomic and financial stability; adopt effective tax, trade, and regulatory policies; foster the development of a skilled workforce; encourage productive investment, both private and public; and provide appropriate support for research and development and for the adoption of new technologies.』

ということで、ここでは(というかその前からそうなのですが)米国の長期的な成長力の確保においては「適切な経済政策」が必要ですよねという話をしていまして、まあ割と政府サイドへの注文が多いような気がします。では金融政策はと言いますと・・・・

『The Federal Reserve has a role in promoting the longer-term performance of the economy.』

ということなのですが・・・・・

『Most importantly, monetary policy that ensures that inflation remains low and stable over time contributes to long-run macroeconomic and financial stability.』

金融政策の役割は物価を安定させる事によって長期的なマクロ経済と金融の安定に寄与することです。

『Low and stable inflation improves the functioning of markets, making them more effective at allocating resources; and it allows households and businesses to plan for the future without having to be unduly concerned with unpredictable movements in the general level of prices.』

物価が低位安定する事によって、資源配分を適切に行う市場機能を改善することができますし、家計や企業は一般物価の先行きの大きな変動に対するリスクを考えることなく将来の消費や投資行動を行う事ができます。

『The Federal Reserve also fosters macroeconomic and financial stability in its role as a financial regulator, a monitor of overall financial stability, and a liquidity provider of last resort.』

FRBはまた、金融市場の規制や、市場のモニタリング、LLRとしての機能などを用いてもマクロ経済や金融の安定を図っています。


で、次のパラグラフの辺りからが中々。

『Normally, monetary or fiscal policies aimed primarily at promoting a faster pace of economic recovery in the near term would not be expected to significantly affect the longer-term performance of the economy.』

短期的に経済の回復速度を早める事を第一義として行われる金融政策や財政政策は、通常は長期的な経済のパフォーマンスに対して大きな影響を与える事は期待されていません。

・・・・・と仰っていまして、つまり「短期的な政策と長期的な政策は必ずしも一致しません」という話をしておる次第でございまして、この理屈を敷衍すると「短期的な刺激策をバンバン打てば長期的な経済成長に寄与するわけではない」→「そんなに短期的な刺激策ばかりをうつ訳じゃねえよコノヤロー」→「短期的な刺激策をクレクレと涎を垂らしながら要求する市場は甘え」という話になるような気がするのは気のせいですかそうですか(^^)。

『However, current circumstances may be an exception to that standard view--the exception to which I alluded earlier. Our economy is suffering today from an extraordinarily high level of long-term unemployment, with nearly half of the unemployed having been out of work for more than six months. Under these unusual circumstances, policies that promote a stronger recovery in the near term may serve longer-term objectives as well.』

ということで話は長期失業者の問題に。

『In the short term, putting people back to work reduces the hardships inflicted by difficult economic times and helps ensure that our economy is producing at its full potential rather than leaving productive resources fallow. In the longer term, minimizing the duration of unemployment supports a healthy economy by avoiding some of the erosion of skills and loss of attachment to the labor force that is often associated with long-term unemployment.』

つまりは失業の問題が経済のリソース活用低下をもたらしており、長期失業状態の多さを改善するのが必要ですよねという話のようで。

で、何でそういう話になっているかと言いますと、その次に「金融政策は経済サイクルの中での作用をするのには適しているが、長期的な経済成長に関する寄与は金融政策の範囲外のことが多いです」という以下の文章に繋がるのです。

『Notwithstanding this observation, which adds urgency to the need to achieve a cyclical recovery in employment, most of the economic policies that support robust economic growth in the long run are outside the province of the central bank. 』

ほほう。

『We have heard a great deal lately about federal fiscal policy in the United States, so I will close with some thoughts on that topic, focusing on the role of fiscal policy in promoting stability and growth.』


んでもってこの先は財政問題に関する政治への注文コーナー。

『To achieve economic and financial stability, U.S. fiscal policy must be placed on a sustainable path that ensures that debt relative to national income is at least stable or, preferably, declining over time.』

さいですな。

『As I have emphasized on previous occasions, without significant policy changes, the finances of the federal government will inevitably spiral out of control, risking severe economic and financial damage. The increasing fiscal burden that will be associated with the aging of the population and the ongoing rise in the costs of health care make prompt and decisive action in this area all the more critical.』

この件に関しては(ネタにしませんでしたが)議会証言で『Fiscal Sustainability』というお題でお話しています、と脚注にございます。

その一方で昨日ネタにしましたが、「財政再建の際には足元の経済の弱さにも注意を払うべき」という話もしているのが逆さ絵おじさんのバランス感覚の非常に良いところ。

『Although the issue of fiscal sustainability must urgently be addressed, fiscal policymakers should not, as a consequence, disregard the fragility of the current economic recovery.』

まあさいですな。

『Fortunately, the two goals of achieving fiscal sustainability--which is the result of responsible policies set in place for the longer term--and avoiding the creation of fiscal headwinds for the current recovery are not incompatible. Acting now to put in place a credible plan for reducing future deficits over the longer term, while being attentive to the implications of fiscal choices for the recovery in the near term, can help serve both objectives.』

では具体的に何をすべきかというと、税制の改正と歳出の改革が必要ですというのがこの次。

『Fiscal policymakers can also promote stronger economic performance through the design of tax policies and spending programs.』

ふむふむ。

『To the fullest extent possible, our nation's tax and spending policies should increase incentives to work and to save, encourage investments in the skills of our workforce, stimulate private capital formation, promote research and development, and provide necessary public infrastructure. We cannot expect our economy to grow its way out of our fiscal imbalances, but a more productive economy will ease the tradeoffs that we face.』

まあそうですなという話ではあります。しかしながら足元では政治的混乱に翻弄されていますがなケシカランですがなという話をしているのですが、これって共和党のテキサス野郎とか茶会オバハンとかがその場で聞いたらファビョーンってなるんじゃネーノ??

『Finally, and perhaps most challenging, the country would be well served by a better process for making fiscal decisions. The negotiations that took place over the summer disrupted financial markets and probably the economy as well, and similar events in the future could, over time, seriously jeopardize the willingness of investors around the world to hold U.S. financial assets or to make direct investments in job-creating U.S. businesses.』

どう見ても政治へ物申すの巻です本当にありがとうございました。

『Although details would have to be negotiated, fiscal policymakers could consider developing a more effective process that sets clear and transparent budget goals, together with budget mechanisms to establish the credibility of those goals. Of course, formal budget goals and mechanisms do not replace the need for fiscal policymakers to make the difficult choices that are needed to put the country's fiscal house in order, which means that public understanding of and support for the goals of fiscal policy are crucial.』

とまあそんな感じです。まあ最後のパラグラフは普通に心構え(大変ですけど頑張りましょうエイエイオー)みたいな話ですので引用割愛します。

#ということで面倒になってついつい全部引用するという手抜きプレイをしてしまってスイマセン









2011/09/12

お題「国内よりも海外の方がオモシロネタが多いのでつい海外ネタ」

海外ネタばかりなのは少々反省している。

○ECBではシュタルク理事が辞任とな

金曜のダウがクソ下げになった大きな原因はこちらだそうで。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110909.en.html
9 September 2011 - Jurgen Stark resigns from his position

『Today, Jurgen Stark, Member of the Executive Board and Governing Council of the European Central Bank (ECB), informed President Jean-Claude Trichet that, for personal reasons, he will resign from his position prior to the end of his term of office on 31 May 2014.』

「個人的な理由」ですかそうですか。

『Mr Stark will stay on in his current position until a successor is appointed, which, according to the appointment procedure, will be by the end of this year. He has been a Member of the Executive Board and Governing Council since 1 June 2006.』

ということで、まあこれでドイツが「ギリシャ救済はんたーい」と言い出す国内政治に対してどう頑張るのかというのが益々大変になってきましたねとゆーことでユーロ危うしという話になるのでしょうが、そもそもユーロという共通通貨でメリット受けてたのドイツなんですけどねえとか思いまするに、その辺をもっと説明しないとマズイんじゃないかなあとか外野だと傍目八目モードになるのですな、うんうん。

しかし何ですな、ECBのトップページ見ますと・・・・・
http://www.ecb.int/home/html/index.en.html

Recently publishedの所を見ますと、今朝の時点では直近のトップニュースが頭から順に、

09/09/2011 - Press release: Jurgen Stark resigns from his position,
08/09/2011 - Press release: Monetary policy decisions,

ってなっていまして、定例会合後の記者会見へのリンクが無くなってやがりまして、日曜にでも読んでみようと思っていたQ&Aが読めねええええとか思って今朝改めて探したら、Recently publishedの横にあるAll ECB newsのリンクをクリックする(ECB News: Last 30 daysってのが出てくる)と、

08/09/2011Press conference Jean-Claude Trichet: Introductory statement to the press conference,

ってなっていて、こっちにはリンクがあるのかあ、でもQ&Aのアップはまだなのかなあとか思って、更にRecently publishedの中にあるPress conferencesってリンクをクリックすると、そこの最近のニュースには・・・・・

08/09/2011Introductory statement to the press conference (with Q&A),

ということで、何かECBのサイトの編集が泡を吹いておられるのではないかと思われるグダグダっぷりになっておりまして、シュタルク理事辞任の衝撃度合いが伝わるというものであります(たぶんそれは違うと思いますが^^)。


○バーナンキ議長の先週の講演ですが

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110908a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110908a1.pdf

September 8, 2011
The U.S. Economic Outlook

ジャクソンホールの講演から新味なしとか言って微妙に市場が反応していたような気がしますが、まあ確かにそう極端に新しい話はありませんですな、勢いで読んでみただけなので見落としあるかもしれませんが。

ジャクソンホールの講演では米国経済の短期的な課題と長期的な課題に関する話を分けてああでもないこうでもないと色々とお話をしていましたが、今回はその辺はあまり細々とやらずに展開しています。で、米国経済などに関する基本的な話の線はジャクソンホールでの講演と同じなのですが、読んでて「ふーん」と思った部分をちょっとだけ引用してみますね。

・「急激な財政再建への試みはイクナイ」というトーンが強まったような気がする

そういや実を言いますとジャクソンホールネタって米国の長期的な課題に関する話の途中で華麗にスルー状態になっていましてすいませんすいませんという話になるのですが(後でやります)、まあそれはそれとして、現在の経済状況において財政再建をあまりに性急に実施することに関してダメ出しをしている部分がありましてですな。

『For example, state and local governments continue to tighten their belts by cutting spending and reducing payrolls in the face of ongoing budgetary pressures, and federal fiscal stimulus is being withdrawn. There is ample room for debate about the appropriate size and role for the government in the longer term, but--in the absence of adequate demand from the private sector--a substantial fiscal consolidation in the shorter term could add to the headwinds facing economic growth and hiring.』

てな話があるのですが、ジャクソンホール講演の時は、米国経済の長期的課題として財政再建が重要という話をしていて、その中で「でも今の景気は壊れやすい状態ですから注意しないといけませんね」というような感じで表現してたので、今回の方がちょっとトーンを上げている感じがするのは気のせいですかね。

『Although the issue of fiscal sustainability must urgently be addressed, fiscal policymakers should not, as a consequence, disregard the fragility of the current economic recovery. 』(これは8月26日のジャクソンホール講演です)


・インフレ見通しのコーナーが拡大

ジャクソンホールではインフレ見通しの話があっさり味でしたが、今回はThe Outlook for Inflationというコーナーが発生しておりますのでその辺から少々。

『However, inflation is expected to moderate in the coming quarters as these transitory influences wane. In particular, the prices of oil and many other commodities have either leveled off or have come down from their highs. Meanwhile, the step-up in automobile production should reduce pressure on car prices.』

ということで一時的要因が弱まればインフレはモデレートになるとの見通し。

『Importantly, we see little indication that the higher rate of inflation experienced so far this year has become ingrained in the economy. Longer-term inflation expectations have remained stable according to the indicators we monitor, such as the measure of households' longer-term expectations from the Thompson Reuters/University of Michigan survey, the 10-year inflation projections of professional forecasters, and the five-year-forward measure of inflation compensation derived from yields of inflation-protected Treasury securities.』

『In addition to the stability of longer-term inflation expectations, the substantial amount of resource slack that exists in U.S. labor and product markets should continue to have a moderating influence on inflationary pressures. Notably, because of ongoing weakness in labor demand over the course of the recovery, nominal wage increases have been roughly offset by productivity gains, leaving the level of unit labor costs close to where it had stood at the onset of the recession. Given the large share of labor costs in the production costs of most firms, subdued unit labor costs should be an important restraining influence on inflation.』

ということで、インフレ期待が安定している上に、米国の労働市場や生産市場における資源のスラックが依然として大きい事から、インフレは抑制されるでしょう、といういつもの説明を今回はちょっと丁寧に行っていまして、まあその辺に関しても今回は配慮してますなあという所でございます。


・金融政策の話はジャクソンホールのときと同じです

同じだがしつこく引用^^;

『Given this outlook, the Committee decided at its August meeting to provide more specific forward guidance about its expectations for the future path of the federal funds rate. In particular, the statement following the meeting indicated that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』

この説明もまたジャクソンホール講演と同じですが。

『That is, in what the Committee judges to be the most likely scenarios for resource utilization and inflation in the medium term, the target for the federal funds rate would be held at its current low level for at least two more years.』

どう見てもコミットメントじゃありません本当にありがとうございました。

でね、今回の講演でも・・・・

『In addition to refining our forward guidance, the Federal Reserve has a range of tools that could be used to provide additional monetary stimulus. We discussed the relative merits and costs of such tools at our August meeting.』

って話しているのですが、先般出てきたFOMCの議事要旨を見るとどう見てもメリットデメリットの議論しているように見えませんので、まあこの調子ですと今月のFOMCで何も出ないで議論を続けましたのでFOMC先生の次回作にご期待下さい状態になる可能性もありますわなとゆー所でしょうか。

とまあそんな感じでありました。


○来年投票権が回ってくるリッチモンド連銀ラッカー総裁はインフレ上方リスクを警戒(ちょっと前のネタ)

リッチモンド連銀のサイトから。
http://www.richmondfed.org/press_room/appearances/2011/mni_beckner_20110825.cfm
August 25, 2011
Lacker Talks with MarketNews International

インタビューは8月15日に収録されたものですから、8月のFOMC決定のちょっと後に収録されたネタとなります。

『During a discussion on the economy and recent monetary policy actions, Lacker noted that it will be important for the Fed to keep an eye on inflation and adjust policy in a timely way to avoid significant increases in inflation. "Our credibility, the credibility that matters, has to do with [our actions regarding] inflation."』

ということで、ラッカー総裁はインフレ重視派ということのようです。

『The August 15 interview part 1, part 2 followed the August meeting of the Federal Open Market Committee. That's when the committee downgraded its economic outlook, citing economic growth as "considerably slower than expected," a "deterioration of overall labor market conditions," and household spending as having "flattened out." One of the more notable changes in the FOMC statement came with the Committee's announcement to keep the federal funds rates low through mid-2013, rather than for "an extended period."』

ということで、まあこのパラグラフは「このインタビューはこの前のFOMCの後に収録されたものですよああそうFOMCではこんな変化がありますね」というだけの話でありんす。インタビューの詳細はそちらにあるパート1、パート2のリンク先にありまして、まあそっちも読んだのですがとりあえずこちらのまとめというか超概要の続きを引用するだよ。

『Beckner asked Lacker about the change in the FOMC's language. "The statement laid out an assessment of the economy that was notably less optimistic than in the spring," said Lacker. But, he said, the stated time period for low funds rates represented "more of a forecast than a commitment." The FOMC meets again on September 20.』

つまり、FOMC声明文で、「経済見通しに関してはこの春見ていたよりも大きく楽観度合いが低下した」という話をするのはまあ良いとして(ちなみに今日は多分時間が無いのでパート1とパート2のネタには行けませんけれども、詳細の中でラッカー総裁は経済見通しに関して『Lacker said he has become less optimistic about the economic outlook than he was a few months ago,(この続きはしらっと割愛)』としているので、まあそういう事だと思います)、FOMCのガイダンス文言変更に関してはコミットメントか予想かという点に関して問題がおきそうですね(超意訳ですいません)という話をしています。

で、まあ一応その辺りを引用しますと、パート1にありますけれども・・・・

『Many have read the FOMC statement as virtually guaranteeing that the Fed will hold the funds rate near zero for at least another two years, but Lacker said that is not a valid interpretation.』

コミットメントだと解釈する人が多いみたいだがそれは間違った解釈であるキタコレ。

『"I would note that it's a fairly mild statement in the sense that it's highly contingent," he said. "It's a commitment that could change if economic data indicate." 』

ということで、ラッカー総裁も「conditional commitment」という解釈でして、まあそういうのは時間軸政策とは言わないんすよね、とゆー所であります。

『All FOMC members participate fully in the Committee’s deliberations, although several members vote on a rotating basis. Jeff has been a voting member twice since becoming president in 2004. He will return as a voting member in January 2012.』

だそうです。

でですな、このインタビュー記事の趣旨としては、どちらかと言うと「インフレの上振れを一時的に容認すべき」というハーバードのRogoff先生の主張に対して物凄い勢いでダメ出しをするのが(少なくとも前半の)メインっぽくて、そーゆー意味ではデュアルマンデートのうち物価を重視すべきという話をしていたミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁のロジックに似ている部分もありますなという感じですが、インタビュー詳細は後日。

http://frb.ewb.dowjones.com/FRB/Article/default.aspx?an=MARNEW0020110816e78f000b9&FeedTypeID=4&aid=61474
http://frb.ewb.dowjones.com/FRB/Article/default.aspx?an=MARNEW0020110816e78f000ba&FeedTypeID=4&aid=61474

Fed's Lacker: Zero Rates Thru Mid-2013 'Highly Contingent'
Market News International
Mon, 15 Aug 2011 16:55:00 EST
(c) 2011. Market News International, Inc.


○一方でシカゴ連銀エバンス総裁は「失業率も重視すべき」という講演を

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2011/09_07_dual_mandate.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2011/09_07_11_dual_mandate.pdf

The Fed's Dual Mandate Responsibilities and Challenges Facing U.S. Monetary Policy

ロンドンでの講演ですが、まあ時間が無いのとあたくしも最初しか読んでないのでそこの辺りだけ。

『The most reasonable interpretation of our maximum employment objective is an unemployment rate near its natural rate, and a fairly conservative estimate of that natural rate is 6%. So, when unemployment stands at 9%, we’re missing on our employment mandate by 3 full percentage points. That’s just as bad as 5% inflation versus a 2% target. So, if 5% inflation would have our hair on fire, so should 9% unemployment.』

自然失業率が6%と推計される中での9%の失業率というのは、我々の雇用のマンデートから丸々3%悪い状態にある、ということであり、それはつまりインフレが目標の2%に対して5%で推移しているのと意味は同じであるからして、容認している場合じゃねえぞコノヤローとゆーお話をしておられますな、うんうん。

で、詳しくは後日(大汗)。






2011/09/09

お題「白川総裁会見/欧州メモ」

バーナンキ議長講演で新しい話が出なくて株安だと・・・・??

○ベンダーヘッドラインよりはマイルドになりましたが・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1109a.pdf

水曜に出てたベンダーのヘッドラインよりはマイルド感がありますが、微妙に麿が湯気出し気味でおじゃるという風情が(^^)。

でですな、今回は景気認識に関しては「基本的な見方は変えないけれどもリスクについては警戒してますよ、ああそれから足元の判断が上がったように見えますがこれは緩やかな回復が続いているという見通し通りだからですよ」という感じなのでありますので、それ以外の話を少々。

・一応その前に「リスクは高まった」という部分だけ。

『まず、世界経済全体の不確実性が、8月4日以降、高まったのかどうかということですが、不確実性というのは、なかなか定量的に評価することは難しいわけです。振り返ってみると、8月はじめの段階でも、相当に不確実性が高まったなと、たぶん、皆さんもそうだと思いますし、私も感じていました。それとの比較で、厳密にどうかというのはなかなか難しいのですが、しかしこの1か月間、少なくとも良い方向の変化があったとは思いません。そういう意味では、幾分高まったという言い方になるかもしれませんが、いずれにせよ、不確実性というのはなかなか数量化できないからこそ、不確実性という言葉で表現しているのだと思います。達観して言えば、不確実性が高い状況が続いているということだと思っています。』

中々「高まった」とは言わないのが麿クオリティですが(言うと「追加緩和は何故しないのですか」という突っ込みに勢いを与える面もありますしねえ)、まあ要するに「リスクは高まった」で良いんでしょ。


・湯気ポッポーのクオリティ

『(問) 新しい内閣の閣僚や産業界からも追加の金融緩和を求める声が上がっていた、強まっていたと思うのですが、今回追加の金融緩和を行わなかった理由について、改めて教えて頂けますでしょうか。』

・・・・・・まあこの質問は酷いとしか思えんが、総裁もムキになって答えなくてもとゆーのがこの先の説明。まあこうやって丁寧に説明するのは総裁に狸成分が足りないというか真面目というかなのですから良い面でもあり悪い面でもあるのですが、もうちょっと狸の総裁だったら「先ほどご説明したとおりで前回の緩和のおかわりをする場面で無いと判断したからですよニヤニヤ」で済ませるような気がする。

『(答) 「改めて」という問いではありますが、先程かなり詳しく説明したつもりです。つまり、前回の決定会合で経済の下振れリスクに留意する必要があるということで、様々な不確定要因を相当程度前広に取り込み、思い切った金融緩和を実行したということです。現在、そのもとでの買入れがまさに始まったばかりです。われわれ自身は今回何かを「決定しなかった」という意識は無く、強力な金融緩和をまさに推進しているという意識です。』

とまあこれだけで終了(この部分だってもっとスルー気味に話せば良いのにとか思いますけど)すればよいのになお説明するのが麿クオリティ。

『今のご質問と多少関連すると思いますが、今、日本銀行の行っている金融緩和政策のもとで、どういう金融の状態が実現しているかということを改めて振り返ってみると、言うまでもなく、短期金利は実質的にゼロ%、長期金利は1.0%前後です。「量」という側面で考えてみると、―― われわれ自身このゼロ金利環境のもとで「量」という形で金融政策の刺激度を測ることが適切とは考えていませんし、このことはFRBも全く同じですが、「量」ということで議論がなされることも多いので、あえて「量」に則して申し上げますと ―― マネタリーベースの対GDP比は、日本は現在24.6%で、FRBの17.9%、ECBの11.5%を上回り、先進国では最大の数字になっています。』

『米国のマネタリーベースの比率が高いということが時折言われますが、現在の米国の比率、先程申し上げた17.9%の水準を日本が達成したのは、2002年です。2002年の水準から比べても日本銀行は更にマネタリーベースを増やしているわけです。つまりFRBの現在の水準を日本は早い時期に実現し、そこから更にまた増えているということです。』

でも日本ってその間物価がアガランチ会長になっているんだからやっぱり足りないんじゃないのというツッコミにどう答えるのかは見てみたいのですがと思ったらまあ似たような質問があってその中で答えていたざんす。

『従って、もし、量的な意味で日本銀行の金融緩和が何か不足しているという観点でのご質問であれば、それは明らかに事実に反しているということです。』

まあお気持ちはわかるし、これ以上増やしてどうすんねん(金利市場的な話だけだと意味があまり無さそうにしか見えませんという事である)というのがあたくし的には思うのですけれども、「でもそれによって物価が上がっている訳ではないのですから日本の量が足りないという事ではないでしょうか」って突っ込まれたらどうすんでしょと思う訳で、そーゆー感じで麿が説明する流れの中でツッコミを入れて欲しいのですが、どうもこの手の質問する方も毎度同じロジックで突っ込んで来るだけで工夫がねえなあと思うのであります。

『いずれにせよ、日本銀行は中央銀行として適切に行動していきたいという思いはもちろん変わっていませんが、こうした事実を十分に理解頂きたいということで申し上げた次第です。』

ということで、まー説明するのが悪いとは申しませんし、これが麿の良い所でもあろうかと存じますが、同じ話を何回もしても通じない相手には通じない次第で、まあ例えてみればブログで粘着コメントして議論にならない人の相手するようなもんですから、もうちょっと「適当にあしらう」という方向に出たほうが宜しいんじゃないのかとゆー気もせんでもない。


・どさくさに紛れて微妙な話をしてねえかこれ^^;

これは最後の方にありましたが、湯気ポッポー質疑応答の所であたくしが突っ込んでみたらと思う部分と重なる論点があって中々。

『(問) 先程、総裁が米国経済のバランスシート調整下での対応の難しさについて説明されましたが、米欧のマスコミでは、これをジャパナイゼーション(日本化)という表現で呼んでいるようです。その結果、米国の潜在成長率は、かなり下がってくるのではという声が強くなり、長期金利が低下するという思惑もあるようです。一方、米国では、インフレの状況が少し日本と異なるのではないかという気もしますが、米国のインフレに関して、日本との違いがどう影響するのか、ご見解をお聞かせ下さい。』

で、その答え。

『(答) 日本の物価上昇率が、なぜ長期にわたって低いのかという理由について、ごく短期的なタイムスパンでの説明は別にして、長期的な理由として、かねてより日本において人々が将来に向けた成長期待を持てないことによるものだと申し上げてきました。つまり、潜在成長率が徐々に低下してきているということが、日本のデフレ問題の根源にあると申し上げてきました。』

ま、そーゆー「潜在成長率が低いからなので成長基盤強化貸出とかをやっているのですよ(キリッ)」とゆー答えが出るのは想定の範囲内なのですが、だとすると潜在成長率が低い分だけ日本は米国より量を出さないといけないのではないでしょうかと突っ込まれた場合に麿がどうお答えするのかは見てみたい気がするのですけどにゃあ(^^)。

『ジャパナイゼーション云々という文脈で考えると、ご質問にありましたように、潜在成長率がどうなっていくのかが大事なポイントだと思います。この点で、バランスシート調整の過程では、現実の成長率が下がってくるので、そのことが人々の予想にも影響して、徐々に成長期待を低下させるという面もあると思います。日本と米国の経済を比較した場合、日本では1990年代半ば以降、生産年齢人口の伸び率がマイナスに転じたわけですが、米国では、最近、ネットでみた移民の数が減ってきているとはいっても、まだ生産年齢人口の伸び率はプラスです。また、経済全体に備わっている柔軟性は、米国の方が日本よりも高いようにもみえます。』

と考えますと、まあ日本の場合はこの手の初回ケースだから上手く対応できなかった面はある程度致し方なかったとしましても、潜在成長率の趨勢的な低下を止められなかった事についてどうすべきなのか(って軽く言ってみたが非常に難しい問題っすな)という問題への考察をお伺い致したく。

『ただし、バブルが崩壊して以降、つまり日本では1990年ぐらい、米国では2007年以降の消費者物価上昇率のパスをみると、必ずしも米国の方が高いというわけではなく、むしろパフォーマンスは良くないという感じもあります。』

これはまあそうなって来てるから米国はQE2を実施してそのパスを何とかしようとしましたってえ話だとゆーことでしょうか。


・・・・・とまあここまでは潜在成長率がどうのこうのの話で、これはこれで重要な論点を含んでいますけれどもまー穏当な話。しかしこの先の説明が微妙に微妙。

『もうひとつ、日本と米国の違いは為替制度にあり、米国の場合、ドルにペッグする国が非常に多いわけです。米国の輸出先の中で、事実上ドルペッグの国をカウントすると、半分以上がそうなっています。』

ふむふむ。

『米国の金融緩和は、バランスシート調整のある国内では刺激効果を十分持たなくても、勢いのある新興国あるいは資源国では刺激効果を持って、それが物価を上げて、それがまた米国にバックしてくるというメカニズムが働く、そこは日本と違うように思います。』

ふむふむ、とか思いながら改めて読み直してみると、この部分ってさらっと「米国の金融緩和が新興国にインフレを輸出しています」と言っているように見える次第で、何かしれっと重い論点について言及してますなうんうん。

『いずれにしても、大変に難しい問いですし、海外の当事者とこういう問題についてよく議論しますが、私自身、確たる答えを持っているわけではありません。今、申し上げたようなことを、いつも考えているということです。』

まあ難しいですなあとは思いますが、その中でドサクサに紛れて先ほどのような論点がしらっと出てくるのが麿会見のオモシロスな所でもあったりします(^^)。


・同じく金融緩和の効果が現れにくい点に関して

別の質問に対する答えを半分ほど引用、っても半分が長いのですが。

『また、2点目の、金融緩和の効果が表れにくいことをどう考えるのかというご質問については、先程詳しくお答えしたことの繰り返しになりますが、現在、日本に限らず先進国における共通の現象です。日本はこの問題を先んじて経験し、欧米は現在遅れて経験しているということです。大変大きなバブルが起き、そのバブル崩壊後のバランスシートの調整が現在進行中である、これが本質的な姿であると思います。時期や国により、バランスシートの調整を要する部門は違います。米国の場合は、当初は家計の、現在は政府も含めた調整が、欧州の場合は、当初は金融機関の、現在は政府も含めた調整が必要な局面となっています。現にバブルが起きてしまったというところからスタートすると、このバランスシート調整の痛みはマクロ経済政策で和らげることは出来ますし、実際に行ってきています。しかし、バランスシートの調整の必要性それ自体がなくなるわけではありません。日本の経験が示すように、そして現在欧米の当局者が遅れて認識しつつあるように、バランスシートの調整には時間がかかります。これがご質問に対する第1の理由です。』

『さらに、現在はマクロ経済政策の発動余地もだんだん乏しくなってきています。財政政策についてみると、最終的に政府の債務返済能力がきっちりあると皆が信頼するからこそ、積極的な財政政策は効果を発揮します。しかし、もしこの信認が崩れてくると、財政と金融システムと実体経済の負の相乗作用が生じてくるということです。金融政策面でも、各国の長短金利は相当低い水準になっていますが、こうした状況でさらに低金利が続くと様々な弊害や副作用が生じてくるということを、だんだん気づき始めているということだと思います。そう考えると、経済を立て直していく上で、バランスシートの調整はもちろん必要ですが、さらに、構造的な問題にしっかり取り組み、潜在的な成長率が下がっていくのをなんとか食い止め、できればそれを上げていくという努力を正面から行うことが必要だと思っています。』

ではそれをどうするのかというとこれがまた明確な答えが無いのが頭イタスという事なのでしょうけれども、じゃあ手をこまねいていて良いのかという訳でもございませんし・・・・・

てな感じで、一部に湯気ポッポークオリティがある(というか何かベンダーヘッドラインを見ていると湯気ポッポー状態が長かったような気がするのですが)のですが、論点としては重い話(ただし目先の政策インプリケーションには直結しない話)が今回は多かったなあというのが総裁会見のテキストを読んだ感想でした。

多分なんですけど、質問に対する答えがやたらめったら長い時って麿が湯気ポッポーで熱くなっている時と、ドヤ顔状態になっている時のどっちかの時っていうのが麿クオリティな気がする。今まで見ている感じだと、で、今回はまあドヤ顔ではないでしょうからやっぱり湯気ポッポーなんじゃないかな???

#まあ政策委員会室だかが湯気ポッポー部分をマイルドにしたんでしょうなあとは思いますが



○ECBはインフレ警戒スタンスから中立スタンスへ

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110908.en.html
8 September 2011 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.50%, 2.25% and 0.75% respectively.』

こちらは「現状維持」の結果。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110908.en.html
Introductory statement to the press conference
Jean-Claude Trichet, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 8 September 2011

とりあえず最初のパラグラフだけ見ておくと吉。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Inflation has remained elevated and is likely to stay above 2% over the months ahead before declining next year.』

インフレは当面2%以上で推移するけど来年になったら低下してくるでしょうと。

ちなみに、この冒頭部分ですけれども前回はこんな話をしていました。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged, following the 25 basis point increase on 7 July 2011. The information that has become available since then confirms our assessment that an adjustment of the accommodative monetary policy stance was warranted in the light of upside risks to price stability.』(8月ECB理事会後のトリシェ総裁会見)

前回は物価に関して「アップサイドリスク」の話がありましたので、先ほどのような見通しが入ったということでこれはこれはという感じっすな。


以下時間が無いので引用だけ。

『At the same time, the underlying pace of monetary expansion continues to be moderate, while monetary liquidity remains ample. As expected, the pace of economic growth in the euro area decelerated in the second quarter, following strong growth in the first quarter. Looking ahead, we expect the euro area economy to grow moderately, subject to particularly high uncertainty and intensified downside risks.』

ユーロ圏経済の先行き下方リスクが高いとな。

『At the same time, short-term interest rates are low. While our monetary policy stance remains accommodative, some financing conditions have tightened. It remains essential for monetary policy to focus on its mandate of maintaining price stability over the medium term, thereby ensuring that recent price developments do not give rise to broad-based inflationary pressures.』

いわゆるインフレの2次的効果も認められませんとな。

『A very thorough analysis of all incoming data and developments over the period ahead is warranted. Inflation expectations in the euro area must remain firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution towards supporting economic growth and job creation in the euro area. We will continue to monitor very closely all developments.』

monitor very closelyの文言は変更無かったですけれども、先ほど引用したようにインフレの部分がトーンダウンしていますので、金融政策の方向性は利上げ方向トーンがかなり落ちたと見ればよさそうな感じがします。


○そういえばBOEは現状維持でおじゃる

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2011/081.htm
News Release
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £200 billion
8 September 2011

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £200 billion.

The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 21 September.』

9月21日のMinuteを待ちたいと思います。







2011/09/08

お題「決定会合レビュー」

えーっと、今回の決定会合に関しては結果そのものよりも何か別の部分で色々とマニア的にはオモシロスな展開でございまして(^^)。

○声明文比較は今回は7月と8月を持ち出して確認:まずは現状判断部分

8月は「先行きのリスク対応」で追加緩和を実施しましたので、その時の声明文は文体が微妙に違っていまして、そーゆー意味では7月のと比較もしないといけないのが今回のややこしいところ。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110907a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110712a.pdf(7月)

・現状判断部分が微妙に上がっていますな

『わが国の経済は、震災による供給面の制約がほぼ解消する中で、着実に持ち直してきている。』(今回)
『わが国経済は、東日本大震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。』(8月)
『わが国の経済は、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。』(7月)

ということで総括判断自体は「着実に持ち直し」なんですが供給制約の部分が「ほぼ解消」と判断を前進させています。

・需要項目別判断は7月と比較

需要項目別の話は8月は割愛されていましたので7月と比較。

『すなわち、生産や輸出は、増加を続けており、概ね震災前の水準に復している。こうしたもとで、国内民間需要についても、持ち直している。』(今回)

『すなわち、震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(7月)

「概ね震災前の水準に復している」キタコレという感じですが、7月と比べて表現がスッキリしているのは「経済のハードデータを見ると震災の影響からの復旧」という中心的な見通しに対して整合的に経済が進展してますよという事を示しているといった風情。

・金融環境、物価環境

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基準改定に伴い下方修正され、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(7月)

物価指数の基準改定を反映させているだけで基本的なところには変化は無いです。


○先行き見通しは7月と8月の表現をブレンド

表現はブレンドしていますが基本的な見方には変化がありません、という事ですな

・経済見通しは基本変化が無いのだがしかし海外需要って大丈夫なの??

『先行きのわが国経済は、堅調な海外需要を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた国内需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについても、生産活動が回復していくにつれ、輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくものとみられる。』(8月)

『先行きのわが国経済は、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(7月)

「堅調な海外需要を背景とする輸出の増加」ってのが何かアレな感じがするのですが・・・・・


・物価見通しは(見通しそのものは同じなのでしょうが)しょんぼり感が強まる

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』(8月)

『消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。
(注2)本年8月の基準改定に伴い、消費者物価指数の前年比は、下方改定される可能性が高い。』(7月)

ということで物価に関しては徐々に表現に寂寥感が漂うのでありました。要するに8月にあるように「何かもう物凄く時間が掛かるけれども方向は一応上に向いているんですよ一つよろしく」というのが見通し(つまり水準は残念なものの基調的に下向きになるという予想ではないとゆーこと)でございますな、うんうん。


○リスク要因はこれまた7月と8月のブレンド風味だが国内要因が減っているような

並べてみる。

『景気のリスク要因をみると、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。』(今回)

『海外経済をみると、米国においては、債務上限問題が決着をみた後も、市場では、財政健全化を巡る懸念は払拭されておらず、最近では景気の先行きに関する見方も慎重化している。欧州周縁国のソブリン・リスク問題は、全体としてみれば、依然として緊張した状態が続いている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある。』(8月)

『景気のリスク要因をみると、サプライチェーンに関する懸念は減じているが、震災の家計マインド等を通じる影響については、なお注意する必要がある。また、やや長い目でみた電力の供給制約については不確実性が幾分増している。海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国については、物価安定と成長の両立に関する不確実性が大きい。』(7月)

7月と比べてみるのが良いのですが、国内要因に関する部分がざっくりと無くなっているのが微妙に微妙な所。まあ7月から9月に向けた変化という意味では当然ながらその間に海外情勢があばばばばーになったというのがあるので、リスク認識的に海外のウェイトが高まったというのがあるのと、声明文のワーディング的に言えば8月にリスク対応で追加緩和をする際にリスクの話をああでもないこうでもないとした分とのバランスを取っている面があると思われますので、今回は声明文ベースでは海外要因の話ばかりになっているという所なのかなあとは考えてますけど、7月までと比較した場合に特に中長期的に見た場合の電力供給制約の話が抜けた点については少々違和感が。

まあ認識から抜けたという事ではなくて、今回は足元で海外経済問題の方がリスク要因としてクローズアップされているからこういう表現になった、という事だとは思うのですが月報を確認したい所です。

・物価のリスク認識は変わっていないとな

『物価面では、国際商品市況の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

これは7月と全く同じ表現であります。ふーん(棒)。


○最後のアピール文書に味わいが・・・・・・・

書き物の構成上7月のを先に引用。最後の決意表明みたいな所です。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。』(7月)

まあ毎度こんな感じ(8月は追加緩和を実施したので微妙に違う)なのですが、今回の決意表明みたいな部分がアピール文書になっているのに泣いた。

『日本銀行は、前回の金融政策決定会合において、先行きの景気について下振れリスクにより留意すべき情勢となっているとの判断に基づき、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、現在は、金融資産の買入れ等を着実に進めている。』(今回)

前回追加緩和やったんですよおおおおおお!!!!とな。さらにアピりは続く(^^)。

『また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。』(今回)

日銀は以前からFRBの時間軸みたいな事はやっているんですよ!!というアピールと共に、先ほどの物価に関する見通しで「当面はゼロ近傍」という事になっていますし、そもそも8月の時点で「物価安定の理解の実現には時間が掛かる」という説明をしていますので、セットで考えれば当然ながら「現在の緩和政策の解除には時間がかかりますなあ」という話になるので、そーゆー意味では「conditional expectation」のFRBと遜色ない話をしているんですよおおおおおお!と言いたいのでしょうな。

#まあベースの物価水準が米国と日本じゃ違いますなあとか言われたらどう答えるのか見てみたい(大体想像が付くんですけどね^^)のですが

『日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(今回)

ということで、こちらのパラグラフでの涙ぐましいアピりっぷりに関しては、ちょうどここにもあります「中長期的な物価安定の理解」の明確化の時の文書でのアピりっぷりを髣髴させる涙ぐましいものを感じるのであります。折角だからその時の文書へのURLを置いておきますのでフォントのでかさや「超低金利!」「0.1%!」というスーパーのチラシのような追加緩和の宣伝文書を改めてご覧になってくんなまし(^^)。

どちらも2009年12月1日の公表文書ですので念の為。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912b.pdf
(参考)金融緩和の強化について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
「中長期的な物価安定の理解」の明確化


・・・・・・・えーっとですな、まあ何と申しますか今回のこの涙ぐましいアピール振りを見ておりましてあたくしが勝手に脳内に湧き起ってきた光景なんですけどね。

学校のクラスで成績優秀でスポーツ万能でイケメンなクラスの人気者が色々と皆から拍手喝采されるのを横目に見ている勉強はするんだけどブサメンでオタで人気が全然無い子が「ボ、ボ、ボクだってイケメン君と同じような事をしてるんだぞオオオオオオオ!!!!!」と必死にアピールするの図みたいなのを想像して何故かナイトメア的なフラッシュバックが発生したような気がして目から汗がorzorzorz

・・・・・まあそうやってアピっても「キモッ」の一言で片付けられてしまうような所がまた更に目から汗ががががががorz

まあ何ですな、バーナンキ君は兎も角として、トリシェ君なんぞどう見ても逆噴射利上げしてふざけんじゃねええええと思うのですけれども、そっちは何故かあまり言われずに国債買入の方を褒められているような気がするのは何なんでしょうねマッタクモウ。


ということで声明文比較の筈が途中から駄ボラになりまして誠に遺憾に存じますm(__)m


○しかしおまいらどういうヘッドライン打ってるんだよ

ニュースのヘッドラインはベンダーで見るのですが、最初に共同のヘッドラインを見て茶を盛大に噴いたのだがその後もこのヘッドラインだらけとか・・・・・・・

http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011090701000486.html
日銀、追加金融緩和は見送り ゼロ金利政策は維持

・・・・・・えーっとですね、金融政策ってのはそう毎月のようにホイホイ変更するようなものではありませんで、普通は「現状維持」がデフォで何か現状維持ではまずいという時に変更が行われるのでありまして、この「追加緩和は見送り」というヘッドラインだとあたかも「追加緩和するのが正常で見送るのは正常ではない」みたいな書き方(つーかそう思っているんでしょ共同通信さん)なのはもうアホか馬鹿かと。

と思ってたら、その後ベンダー見てて同じく「追加緩和見送り」とか産経が出してまして、まあ産経クオリティだからなあとか思ってたら、他紙も共同の転電で報道しているのか「追加緩和見送り」というヘッドライン一色でした。かろうじて「現状維持」というヘッドラインを出していたのが毎日新聞だけ(あたくしが目視したベースなので漏れがあるかもしれません、あと見てるベンダーの都合でクイックと時事は判りませんでしたが、今朝のモーサテも「追加緩和見送り」とか抜かしてやがりましたな)という状態。

ちなみに市場の方はと申しますと、ドル円は瞬間20銭ちょっと位円高に振れましたけれども、その後特段の動きは無し(というか若干円安に戻っていました)ですし、株式市場は(単に当日のアジア株が強いからだけだと思いますが)普通に上昇ということで、別に市場は「ふーん」で終了だった訳でして、メディアというかポジション持たないで外野で無責任に煽っている人たちが騒いでるだけじゃんという結果となっていて誠に残念な展開でございました。

ちなみに、共同通信が昨日配信していた「追加緩和見送りの解説」というのが中々凄まじい電波浴が可能なのでありますが、どうもベンダー向けに出している記事のようなので勝手にネタに出来ず残念無念なところでございまする。何でも欧州の債務問題が金融不安に発展した場合には今回追加緩和を行わなかった日銀が悪いそうですよ。いやもう凄いのですけれども、産経の場合は所詮産経ですから電波ゆんゆんでもそんなに伝播力無いですけど、共同通信の場合は全国に転電されてしまいますのでもうちょっとまともになって頂くか、それとも都心に海から吹く風の邪魔をするとも言われる汐留の電通株上場益御殿と共に以下自主規制という感がするものでございます。

#いかん、悪態かいてたら時間があああああああ


なお、ベンダーのヘッドラインを見ていますと、どうも総裁会見で麿クオリティがまたまた炸裂した感があるようなのですが、詳しくは会見要旨を見て確認したいと思います。



○その他メモメモ

・昨日の短期市場ネタといえばこれ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110907.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2011年9月9日 2011年10月3日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110907.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(9月9日スタート分) 22,038 10,006 0.100 0.100 45.4

・・・・・・まあ応札倍率が2倍超なんて素敵な♪


・スイスネタで更に色々と考えて見たのだが

本当はああだこうだ書きたい話ですが、一つ考えたのは「欧州(というか世界)の金庫」としての金融業というスイスの強みが今回のユーロへの半分ペッグみたいなのでどうなって行くのかなあとか考えると、中長期的に見てスイスに残ったのが「美しい自然と鳩時計」(「第三の男」のハリー・ライムの台詞をだいぶパクっているのは言うまでもありません^^)になりゃあせんかとゆー気もするのは気のせいですかそうですか。

まーユーロが共同体として共同体の構成員が皆で規律を弁えられるのかとか、経済的な方面の影響が政治に影響してスイスがこのまま中立国としてやっていけるのかとか、何か今回のスイスネタは色々と欧州の歴史とかを更に勉強しながら考えていきたいようなネタですなとか思うのでありました。









2011/09/07

お題「スイス中銀の介入というか何と言うか/その他少々雑談」

世に書き物の種は尽きまじというところですかそうですか。

○SNBの無制限介入攻撃リリースとな

3か月TB入札だの30年国債入札だのを通過して今日も今日とて欧州相場が気になりますなあとか言っている東京時間の16時にそのヘッドラインは流れたのでありました。

でまあスイス中銀の公表文書はこの通り。

http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20110906/source/pre_20110906.en.pdf
Swiss National Bank sets minimum exchange rate at CHF 1.20 per euro

『The current massive overvaluation of the Swiss franc poses an acute threat to the Swiss economy and carries the risk of a deflationary development.』

最近の過剰なスイスフランの過剰評価はスイス経済に強い脅威を与え、デフレの進展へのリスクを運んできていますとは毎度のお話。

『The Swiss National Bank (SNB) is therefore aiming for a substantial and sustained weakening of the Swiss franc. With immediate effect, it will no longer tolerate a EUR/CHF exchange rate below the minimum rate of CHF 1.20. The SNB will enforce this minimum rate with the utmost determination and is prepared to buy foreign currency in unlimited quantities.』

ということで、スイス中銀ちゃんと致しましてはまずは1ユーロ=1.20スイスフランを下回るユーロ安スイス高を容認しませんのでその場合には無制限でスイス売り外貨買いの介入を実施しますと。

『Even at a rate of CHF 1.20 per euro, the Swiss franc is still high and should continue to weaken over time. If the economic outlook and deflationary risks so require, the SNB will take further measures.』

で、3つ目のパラグラフが更に泣けるのですが、1ユーロ=1.20スイスフランでもまだスイスは高くて、長期的にはもっと下がって然るべきですので、景気見通しおよびデフレのリスクの進展によっては更に手段をとりますと仰せです。

・・・・・でまあ市場ちゃんの方ですが、リリース直前は(今回はSNBのリリースを尊重してユーロの対スイスベースで表示)EUR/CHFは1.10近辺だったのですが、一旦1.22レベルまでユーロが対スイスでぶちあがりましたが、その後は第一目標ライン(?)の1.20レベル近辺での推移で1.201〜1.203あたりで固まったような状態になっておりました(朝になったら1.205近辺)ので、まあ要するに介入で9%程度動かしたという事で、今のドル円だったら7円くらい円安に誘導したみたいなもんですな、うんうん。

ちなみにですな、ユーロスイスの5年チャートを安直にYahoo!ファイナンスで出してみますとユーロスイスって足元で確かに残念な話でありますわなという所で。

http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=EURCHF=X&ct=z&t=5y&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130&a=
【EURCHF=X】欧州 ユーロ / スイス フラン

まあ大体サブプライム問題が爆裂する前で1.60近辺、欧州債務問題が本格的に爆裂する前で1.50近辺だったのが2010年5月のギリシャのアレ以来ドンドン売られてしまい、1.0にかなーり接近したところで色々と頑張って1.2近くまで戻してみたものの、ギリシャなどの問題が相変わらずのアレということでまたまた1.1近辺になっていた、というのが今までの流れであったかと存じます。


でね、何か起きてみたら総裁の声明のようなものもありましたので置いときますね。

http://www.snb.ch/en/mmr/speeches/id/ref_20110906_pmh/source/ref_20110906_pmh.en.pdf
Short statement by Philipp Hildebrand on 6 September 2011 with regard to the introduction of a minimum Swiss franc exchange rate against the euro

『The Swiss economy has staged a remarkable recovery from the Great Recession. It has benefited from tremendous efforts by thousands of companies, employees, and decisive policy measures by the authorities.』

『International developments, however, have now caused the Swiss franc to appreciate a great deal within a short period of time. This has resulted in a massive overvaluation of our national currency. Switzerland is a small and very open economy. Every second franc is earned abroad. A massive overvaluation carries the risk of a recession as well as deflationary developments.』

まあ何ですな、ここにもありますが、スイスが小国だからこんな荒業が可能という話であって、日本がやったらとか一瞬思うのはまあ兎も角として(^^)、大真面目に同じ事やれとか言うのは政策のフィージビリティーという概念が無いにも程があって政策をテレビゲームか何かと混同していると宣伝するようなものですのでご注意ありたいと思う次第。

『The Swiss National Bank is therefore aiming for a substantial and sustained weakening of the Swiss franc. With immediate effect, it will no longer tolerate a EUR/CHF exchange rate below one Swiss franc twenty. The SNB will enforce this minimum rate with the utmost determination. It is prepared to purchase foreign exchange in unlimited quantities. Even at a rate of one Swiss franc twenty per euro, our currency is still at a high level. It should continue to weaken over time. If the economic outlook and deflationary risks demand it, the SNB will take further measures.』

で、さっきのリリースにもありましたが、ここにもある「更なる手段」ってゆーのは追加介入を更に実施するという話なのか、もはやヤケクソの資本規制とかになるのではとも思いますが、さっきのパラグラフに「Switzerland is a small and very open economy. Every second franc is earned abroad. 」ってありましたので、何か資本規制とか為替制限までには行かないような気もしますが、ここまで非常手段取ってくるとなるとどんな力技をかまして来るのかワクワクテカテカ(不謹慎)という感じですな。


まあそれよりも最後のパラグラフが泣けるのである。

『With today’s decision, the SNB sets foot on a challenging journey. We have to accept the fact that the costs associated with it might be very high.』

本日の決定によりスイス国立銀行はチャレンジング(まあ困難を伴うって事でしょ)な道のりに足を踏み入れました。我々はこの政策によってもたらされるコストも極めて高い可能性がある事を受け入れなければなりません。

『At the same time, doing nothing would almost certainly inflict tremendous long-term damage on our economy. With today’s measure, the Swiss National Bank is acting in the interest of the country as a whole. 』

同時に、このままの状況を放置する事はわが国の経済に多大なる悪影響を与える事はほぼ間違いのないことであります。本日実施した本行の施策によって全体としてわが国への貢献となる行動を取っております。(訳がインチキ臭いのは全てあたくしのインチキ語学力によるものですすいませんすいません)

・・・・・ということで、まあSNBとしては今回の施策がかなりの無茶振り成分が入っていて、政策による副作用も大きいという事をここで表明している訳でして、その副作用よりも足元で急速に進行した対ユーロでのスイスフラン上昇(さっきのチャートをご参照)を止めることが重要という話ではございます。


なお、ECBはこのようなリリースをしています。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2011/html/pr110906.en.html
PRESS RELEASE
6 September 2011 - Statement of the Governing Council of the ECB on the decision of the Swiss National Bank

『The Governing Council of the European Central Bank has been informed by the Swiss National Bank about its decision to “no longer tolerate a EUR/CHF exchange rate below the minimum rate of CHF 1.20.”』

『The Governing Council takes note of this decision, which has been taken by the Swiss National Bank under its responsibility.』

何か勝手にどうぞ感が漂うのですが、まあトリシェ総裁クオリティ的にはスイスなどの小国は勝手にすれば的なイメージなんでしょうな、この前の日本の介入に対する発言と比べると今回は「割とどうでもよい」感が漂うのですが、まあ大人の対応っちゃあ大人の対応。

まあ足元のチャートを見ればさすがにスイスカワイソスという話にはなると思うので、ここで「介入とはケシカラン」とか言ったら鬼だろと思いますけど(^^)。



○素敵な性格のあたくしは突っ込まざるを得ないのでSNBの措置にツッコンで見るのですが

・・・・・・ということでSNBの断固たる措置というのは判ったのですが、一々ツッコミを入れないと気がすまない性格の悪いあたくしとしては色々と思うのでありますよこれがまた。

・確かに自国通貨売りだから理屈の上では無限に実行できますが色々と問題も含むわけで・・・・

まあね、基本的に「自国通貨売りだから無制限に実行できる」というのはその通りなのでございますが、問題は本当に無制限に実行できるのかねという話です罠。てきとーに考えてみるとこんな感じですか。

その1:いつまで続けるのかというとこれがまた長期戦

・・・・・・そもそも一連の対ユーロのスイス高ってゆーのは基本的にユーロを構成する諸国の一部の財政があばばばばーになってユーロシステムそのものが大丈夫かよというのが背景にある訳でして、スイスの貿易収支が真っ黒黒助で巨大な貿易不均衡の結果発生してますとかゆー類のもんじゃない(と思うんだが・・・・・)だけに、結局のところ欧州財政問題がある程度解決しないと対ユーロでのフラン高圧力ってトマランチ会長ですが、欧州といえば先送りをして何とか誤魔化すというのを得意技とするだけに、この介入いつまで続くのやらという感じでございますわな。

その2:ユーロ通貨国との輸出品で競合する場合の問題

まあこれに関しては足元でのスイス高進行の方が早いのであんまり文句出ないでしょうなと思うのと、そもそもスイスが小国なのでスイスの為替操作で輸出品売れなくなったムキーって話もそうは出てこないんでしょうかね、多分大丈夫と見た。

その3:国内の政治的問題

既に以前の介入が大損こき太郎となっているのが政治問題になっていたりする訳ですが、まあ今回についても介入が長期化した場合には(というかせざるを得ないのだが)そんな事やっててエエノンカという話になってみたりするかもねとか思うのです。

あと、そもそも対ユーロでスイスが高くなっているのって「ユーロシステム自体が大丈夫かよ」という話も背景にある訳でして、「そんな通貨相手に介入して良いのか」的なツッコミが飛んでくるとかは無いのかねとか思いますが、まあユーロシステム自体が崩壊とかはしないとは思うというかあまり想像したくは無いですがにゃ。


・だったらユーロに入ればいいじゃんと思うのだが

・・・・・まあ何ですな、ここまでやるんだったら1.4だか1.5だか良くわかんないけど、その辺まで頑張って介入するなり、そうじゃなくても良いけどその辺りの平価でユーロに加盟してしまえば万事楽勝じゃんとか思うのですけど、それはよーやらんのでしょうかね。

当然ながらそんな事したら中立とかゆー国の今までの有り方に対してヤヤコシイ事になるというのもあるでしょうし、それ以前の問題としてギリシャ救済とかに突っ込んでいく事になるのも嫌ですがなという話なんでしょうけれども(^^)、まーその辺の独立がどうのこうのは残しつつやって行くってのは大変でしょうな、うんうん。

#ふと思ったのだが、今回って経済的にはユーロに周囲を見事に囲まれている状態で、第2次大戦中に枢軸国に周囲を見事に囲まれた状態並みの独立維持(をするなら)への厳しい努力が必要という事なのかもしれませんな、スイス的には・・・・・


・もしまかり間違って介入したものが芋の葉っぱになったらどうするんでしょ??

で、話が更に妄想の世界に入って行くのですけれども、今回の介入って基本的にはユーロ買い介入だと思うのですが、そのユーロシステム自体が崩壊したらスイスも連鎖でお父さん状態になるんちゃいますかという妄想を真っ先に考える所があたくしの性格の悪い所でありまする(^^)。

いやまあ勿論通貨介入してユーロの紙幣を金庫に積み上げるアホウはいませんので、当然ながら当該国建ての債券なりデポジットを持つ形になるでしょうから、間違ってユーロが分裂(するような事は無いでしょうが)したら新平価で当該国建ての通貨に化けてしまって買う国によってはその後大変に素敵な事になってあばばばばーとゆー話になるのかと思うとテラオソロシスと言いますか、さっきも申し上げたように、「無限に外貨建て資産買って良いのか」的なツッコミがそのうち飛んできた場合にどうするんでしょというのは思うのでありまする。

そんでもってじゃあドイツとフランス位しか買いませんよという手もあるのでしょうし、まあ規模的に小国ですから、スイスがドイツ国債ばっかり買う事によって対独スプレッドが更にアヒャヒャヒャヒャな事になるとかゆーよーな影響は無いのかもしれませんが、これまた何ともという感じではあります。


・と考えるとユーロは崩壊させられないというお仲間に加入ですなあ

まあ妄想が続くのですがそういう事でしょうなと思います。何かギリシャ人辺りがこの状況を見て更に「寝転び」状態になって欧州財政問題が遅々として進まなくなるような悪寒までしてくるのがあたくしの心配性クオリティでございますが、何か域内で相変わらずこんなことを主張するような絵に描いたような「囚人のジレンマ」を実践する国家なんぞはフィンランド化などと言うのは罵倒文言になりますので良い子の皆さんは使用してはいけません。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aDtNiCEGBS24
EU大統領:フィンランドの担保要求問題で「近く」解決策見いだす

・・・・・・逆にですな、スイスがこうやってユーロにペッグ状態になってくるとなりますと、債務者の方もそうですけど、救済するチームのうち、システム維持に責任感をあまり持たなさそうな小国がごね得とばかりにごねてきそうな気もする次第でありますがそれは気にしすぎですかそうですか。

何かね、ユーロとのペッグとかになった場合に「資産の安全な逃避先」としての魅力がなくなる(まあ足元ではそれが無くならないと対ユーロでのフラン上昇が止まらないのだから仕方ないのですが)となった場合に、そっちの意味での金融業の競争力に影響与えるような気もせんでもないですし、まあ色々と妄想のネタは尽きないなあとか思うのでありました。


何か妄想をうだうだ書いてしまって読み直してみてちょっと恥ずかしいのだが、時間もアレなのでそのまま突っ込まれを待つのでありました(^^)。


○で、日銀決定会合ですが・・・・・・・

まあ何ですな、今回は別に政策の変更とかは無いでしょうけれども、声明文や総裁会見において経済認識あるいは先行きのリスク認識の変更が行われる可能性は普通にあるでしょと思います。恐らく先行きのメインシナリオ自体はいじってこないと思いますけど。

でまあ円高対策でどうのこうのとか言われるのに対してと、復興財源の国債引受に対してどうのこうの言われるのに対して、白川総裁がいつものクオリティで原理原則論を展開しだして広報担当と企画担当の顔が青くなるに1万ドラクマ。

あたくし的には米国がツイストオペと言われるような長期金利に働き掛ける(はっきり言ってそれは無理というか見た目ほど効果が出なくてただの目くらましにしか成らないと思いますけどね)のであれば、日銀はそれに対抗して基金買入の拡大で2年債とETFをドドーンと買いますよって話をして(まあそもそも他のものが物理的に買いにくくなっているのは昨日の社債買い入れの結果をみても明白なのですが)いくのがまあ一番コスト少なめで済みそうな気がするんですけど、こればっかりはよく判らんですな。

なんかさ、毎度毎度のように「追加緩和クレクレ」って話もよー聞くのですけれども、じゃああんさんらその追加緩和ってどういうのをやって、それによってどういう効果があって、その一方で副作用はこういうのがあって(副作用が無い政策なら効果も無い)、その効果と副作用を天秤に掛けたらこうだから実施すべきとかゆー話がついぞ無いで為替市場とか株式市場の何とかストの皆様がイメージだけで好き勝手言ってるのは何だかなあと思うんですけどとかただのお前が言うなですかそうですか。

まあFOMC後の為替市場とか株式市場の動き次第か、そうじゃなかったら第3次補正予算を含めた経済対策を出すタイミングの前後かどっちかで基金オペ拡大(といっても先般から申し上げているように固定金利オペの増額余地は無いし、CPと社債も既に市場規模的に買入の増額は無理があり、短国はレートが下がりきっているのでこれまた同様、REITはそもそも市場規模がアレですからとか考えると、さっき申し上げたように2年国債とETFになると思うのだが)という話になるんですかね、よー知らんけど。

とりあえず、先ほども申し上げたように、今回の総裁会見で白川総裁の「一般的に申し上げますと・・・・・・」攻撃が何発出るのかが個人的には興味のある所でございますが、まあ政治環境とか考えた場合にあの麿クオリティは余計な軋轢を産むだけですので、企画局及び政策委員会室におかれましては、麿の着ぐるみを早期に開発していただきまして、会見の時だけは中の人を別の人(福井の俊ちゃんとか^^)にした方が吉なのではないかと存じます(−−;






2011/09/06

お題「地区連銀総裁のフリーダム発言に関する雑感」

G7で円高是正を要請とはこらまた随分とピンボケな。円高是正をしたかったら外準でイタリアとかスペインの国債でも買ったらどうざましょ(大嘘)

○コチャラコタ総裁講演(長いので簡単に)

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4725
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/nrk08-30-11.pdf

Communication, Credibility and Implementation: Some Thoughts on Past, Current and Future Monetary Policy
National Association of State Treasurers
Bismarck, North Dakota
August 30, 2011

本文が16ページもありますので正直言って斜め読み(というか朗読^^)しただけなのですが、まあ話の趣旨は割と判りやすかった(ような気がするが違っていたらゴメンナサイ)のでメモメモ。

この講演の内容ですが、マクラの部分の最後に説明がありましてですな。

『This perspective-that good policy responds to the current conditions so as to achieve certain well-communicated future goals-will be a key theme for the remainder of my remarks.』

ということで、適切な金融政策の実施とコミュニケーションについてという話のようで。

『They will be divided into three parts. The first part is about the FOMC’s objectives and my thoughts regarding them. In the second part, I discuss the FOMC’s performance relative to those goals in the past three and a half years since the beginning of the Great Recession. Finally, I close with an analysis of recent FOMC decision-making. Here, my discussion is perhaps a little more disengaged than usual, since I dissented from-that is, formally disagreed with-the last FOMC decision.』

FOMCのマンデートに関する考察、リセッション以降の金融政策の評価、先般の金融政策決定-コチャラコタ総裁が反対票を投じた-に関する見解と来ます。

『And here it seems especially a propos to remind you that my remarks here today reflect my thoughts alone, and not necessarily those of others in the Federal Reserve System, including my colleagues on the Federal Open Market Committee.』

そらそうよ。

・物価重視の姿勢を明確に

でまあ『FOMC Objectives』の所ですが、最初の文章を見て「おや?」と思うのはマニアの証拠です(^^)。

『Let me turn first to a discussion of FOMC objectives. Congress has mandated that the Federal Reserve set monetary policy so as to promote price stability and maximum employment. 』

・・・・・・FOMCの声明文とか議事要旨とかでもそうですし、バーナンキ議長等の講演を見ましてもそうなのですが、FRBに課せられたDualMandateを表現する際には『maximum employment and price stability』とするのが一般的。

#ご参考までにFRBのサイトのFAQを見たらこんなのがありました
http://www.federalreserve.gov/faqs/money_12848.htm

『The Congress established two key objectives for monetary policy--maximum employment and stable prices--in the Federal Reserve Act. These objectives are sometimes referred to as the Federal Reserve's dual mandate.』

で、まあこの語順を変えているのは当然ながらコチャラコタ総裁的に意味のある話でして、このコーナーではここから先は延々と「物価の安定が重要であり、物価の安定によって雇用の最大化がもたらされる」という話をしています。

では物価の安定はどのようにして達成されるかという話ですが、「適切なコミュニケーションによって世間一般の長期的な物価への見通しを安定化させること、またFOMCが現在事実上の目標としている2%または若干低い数値近辺という目標設定が確固としている事を確信させるように信頼性を確保すること」が重要という話をしています。

『I’ve been emphasizing the importance of communication-and communication matters greatly. But, ultimately, the public’s beliefs about the FOMC’s inflation objective will also depend on inflationary outcomes. If annual inflation averages less than 1.5 percent for more than three or four years, onlookers will begin to suspect that the FOMC’s true objective for inflation is lower than its declared “two percent or a bit under.” Correspondingly, if inflation is persistently higher than 2 percent, then the public will begin to believe that the FOMC’s true objective for inflation is higher than 2 percent. In either case, inflation expectations could become unmoored, and the FOMC could lose control of inflation itself. Communication can only be effective if the FOMC also retains credibility.』

まあそんな話ですよね。で、今の引用部分をご覧になれば判るように、コチャラコタ総裁の今回の説明ってやたら丁寧でして、そーゆー意味では量が多いので読むのは少々ホネですけれども、特段難しい表現とか使っていないので読むには読めると思いますよ。


・雇用の最大化に関して

これまたクソ丁寧な説明をしていますが・・・・・

『As I mentioned, Congress has also mandated that the FOMC set monetary policy so as to promote maximum employment. In the past, some have seen an intrinsic conflict between the FOMC’s price stability mandate and its maximum employment mandate.』

最近言われるようになった「デュアルマンデートのコンフリクト」というのがありますなと。

『In contrast, my thinking accords with the more modern viewpoint that there is relatively little tension between these two goals. The modern paradigm recognizes that monetary policy should allow the natural supply-and-demand forces in the economy to operate without impediment. For example, if energy costs spike, the basic forces of supply and demand dictate that firms will cut back on production and demand less labor, creating higher unemployment. It is inefficient for any policy-including monetary policy-to attempt to interfere with this natural adjustment process. It follows that the Federal Reserve’s operational definition of “maximum employment” has to vary over time.』

「雇用の最大化」に関しては物価のように特定の数値を持ち出してどうのこうのという政策を取るのではなく、そもそも金融政策は経済の変化に応じて行うもので、その結果として最大雇用という話になるとか、例としてエネルギー価格が上昇した時には経済の生産に悪影響を与えて雇用に悪影響を与えますからそれに対応する政策を実施しますよねというような話をしているような希ガス。でまあ結論らしき所。

『 In this way, the Federal Reserve’s mission of achieving price stability is entirely consistent with its mission of achieving maximum employment.』

また、雇用に関しては金融政策以外のファクターも大きいというどっかで聞いたような話をしていまして、それらの要因があるのに金融政策だけで対応するのは危険という話も。

『Trying to offset these changes in the economy with monetary policy can lead to a dangerous drift in inflationary expectations and ultimately in inflation itself.』

というのがベースにあってその後の話になりまふ。


・金融危機以降のFRBの金融政策に関して(というよりその後)

『Through these actions, the Fed has provided an extraordinary amount of monetary stimulus-and so has been able to meet its price stability mandate.』

まあ当然ですが、金融危機以降の政策に関しては「ディスインフレ圧力を止めた」という評価になっているのですが、先行きに関しては「インフレ圧力の拡大への懸念」を示しているのがチャーミング。

『But what about the future? There are a number of ways to measure inflationary expectations, which all-unfortunately-come with caveats.』

caveatsってのは「警告」って意味みたいっす。で、色々なインフレ期待に関するデータの詳細がまたあるのですがめんどいので割愛してその将来への懸念に関してのまとめ。

『Yet, I am sure it would be even higher without the enormous amount of monetary stimulus that the FOMC has provided. Moreover, I believe that the FOMC could only have systematically lowered the unemployment rate further by generating inflation rates higher than 2 percent over a multiyear period.』

失業率を金融政策だけで押し下げようとすると今後数年間に渡ってインフレを2%超の水準に維持するような金融緩和政策を行わないといけませんねと。

『Such an outcome could well lead the public to lose faith in the credibility of the FOMC’s inflation objective and thereby increase the probability that the FOMC would lose control of inflation. As I stressed earlier, this scenario would require a policy response that would generate substantial losses of employment.』

ということですので、何で先般の決定に反対したかはまあ引用するまでもないかとは思いますが・・・・・


・反対理由は結構タカ派っぽかったりするが物価が低下すればその限りではない

次のコーナーも長いのですが、前半調子に乗って引用しすぎたので時間が無くなったという要因により大幅に割愛しまして、労働市場のスラックに関する見通しと物価の見通しに関する論点の部分だけ引用するだよ。

『Nonetheless, it still seems appropriate to me to view this change in labor market conditions as representing a decline in labor market slack. Intuitively, people who are non-employed, but not actively looking for work, are less likely to apply for any given job opening. Hence, the recent departures from the labor force imply that there is less downward pressure on wages. Almost by definition, from an economic perspective, this means that there is less slack in the labor market.』

ということで、労働市場のスラックは解消に向かって進展しているのではないかという話。

『The rise in core inflation in the first part of the year is consistent with the view that labor market slack has fallen. But some observers argue that core PCE inflation is only temporarily high because of the tragic events in Japan or transitory spikes in commodity prices. If so, the disinflationary pressures of 2010 should soon reappear in the form of a sharp decline in current and expected core PCE inflation rates. In that eventuality, increasing policy accommodation might well be appropriate.』

ということで、現在のPCEコアインフレの上昇は商品価格上昇や日本の大地震によるサプライチェーン問題の影響による一時的なものである、という(コチャラコタ総裁とは違う)ビューが正しいのであれば、まもなく2010年に現れたディスインフレ圧力が再現されるので、その場合は追加緩和が適切となる(つまり先日の追加緩和はそこを確認しないで実施しているので不適切ということ)という話をしています。

で、緩和を拡大しすぎた場合はインフレ圧力を高めてFRBの物価安定に向けた信頼性を損なうと。

『I’ve argued here that the Committee increased the level of accommodation when standard rules seem to call for standing pat or even reducing accommodation. What are the costs of such a move? The standard rules are meant to guide the economy toward the Committee’s medium-term objectives. If monetary policy is consistently overly accommodative relative to these rules, the Committee risks generating inflation higher than 2 percent for several years. As I’ve discussed, such an outcome could have significant consequences for inflation and inflation expectations. Future Committees might have to endure large losses in employment in order to fix these consequences.』


・ということではありますが

最後の部分ですが、今回のガイダンス文言変更に関しては「conditional commitment」として、まあ今後撤回の要求はしません、という話ですが、ここまでで判るようにどう見ても(物価が下がらない限り)追加緩和に反対するなあという感じです。

『As we go forward together on the Committee, I see no reason to revisit the decisions of August 2011. The Committee has included what I regard as a two-year conditional commitment in its statement. I believe that undoing this commitment in the near term would undercut the ability of the Committee to offer similar conditional commitments in the future-and this ability has certainly proved very useful in the past three years. So, I plan to abide by the August 2011 commitment in thinking about my own future decisions. Of course, the case for any additional easing would have to be made on its own merits. And, like the 19th century settlers of the American West, the Committee will have to keep its eye on the future when deciding about the present.』


○シカゴ連銀エバンス総裁はこれまたハト派にも程がある話を(CNBCインタビューより)

シカゴ連銀のページ
http://www.chicagofed.org/webpages/index.cfm

そこにエバンス総裁の写真入りで

Chicago Fed President Interviewed on CNBC
Charles Evans discusses economic topics with CNBC's Steve Liesman.
Part 1(external), Part 2(external)

というのがあると思いますが、パート2の方をクリックするとCNBCのニュース映像サイトが出てきていきなり音声が出ますのでご注意を。

パート1はこちら
http://www.cnbc.com/id/44325337
Fed Needs More Easing Until Economy Grows: Evans
Published: Tuesday, 30 Aug 2011 | 8:33 AM ET

『In his view, QE needs to stay in place until unemployment plunges to 7 percent or if inflation gets past 3 percent. Core inflation, which strips out food and transportation, is about 1.8 percent, though the number is 3.6 percent including the more volatile measures.』

量的緩和政策を「失業率が7%に低下する」か「インフレが3%に上昇する」までは実施し続けるべきであるとな。

『"Strong accommodation needs to be in place for a substantial period of time," he said. "If we could sort of make everybody understand that this is going to be in place for a longer period of time, we could knock out some of that restraint that comes about when people talk about premature tightening."』

どう見てもコチャラコタ総裁の真逆です本当にありがとうございました。

『Critics say the low rates have fomented inflation, but Evans said that is not a concern. The question of easing and the low rates have stirred dissent within the Fed as well, with Philadelphia Fed President Charles Plosser recently telling CNBC that more QE is not needed.』

「インフレは懸念に及ばず」キタコレ。

『"Given the way the economy is growing and inflationary pressures are not nearly as strong as a lot of people think, I think that there's room for accommodation," Evans said. "As long as medium-term inflation stays below 3 percent we could continue to have a low funds rate."』

「インフレ圧力が強くない中なので追加緩和の余地がある」とのようですが、要するにこの辺は物価動向に関するFOMCメンバーの皆様の見方がかなーり分裂している、というのがそもそものベースにあるという事ではないかと思います。


・・・・・・・いやね、こんな状態で今月のFOMC2日とかで話が纏まるもんなのかねという感じです。そらまあ最終的には執行部とNY連銀が押し切ってしまうのでしょうが、今市場で予想されている「FEDの保有債券のサイズを変えずにデュレーション長期化」というオペレーションって折衷案っぽくて何だかなあという感じはするのでございますが、落としどころとしてそーゆー話になるんでしょうな。何か効果があるイメージが湧かないのでありますけどね。


#他の話をしようと思ったが時間が無いので割愛







2011/09/05

お題「新内閣雑談/今更のジャクソンホールネタ続き」

まあしかし組閣名簿見ても市場が反応のしようのない展開ではありましたが・・・・

○新内閣が出たので何となく雑談

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110902-OYT1T00384.htm
閣僚名簿発表…国家公安委長に小沢側近の山岡氏

金利の市場の人たち的には財務大臣の安住氏ってのに「?????」感が爆裂。まあ安住さんというとかの著名なガソリンプール発言位しか印象がなくて、財政政策に関する話とかしていた記憶がほとんど無いのでありますけれどもとおもったらやっぱり経歴的に今まであまり財政とか金融とかに縁の無さそうな人。

・・・・・・・えーっとですな、初入閣で財務大臣とか大蔵大臣って方ってゆーのを戦後からちょっと確認したのですが、普通に大物だらけでして、これだけの軽量級(失礼ながら)となりますと第2次吉田内閣で就任して2か月でクビ(というか議員辞職)に追い込まれた泉山三六大蔵大臣ってのがいますが、この人だって帝銀(三井)行員だったんですけどいやはやどうなんすかねえ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/泉山三六

#そういう意味では財務副大臣だけで財務大臣になった野田さんェ・・・・

まあ何ぼなんでも最初はおとなしくしていると思いますが、そのうち微妙に知識をつけた所で生兵法は怪我の元を絵に描いたようなプレーが炸裂して自爆するに100ガロンでありますが、もしかしたら御馬鹿発言をして日本売りを呼んで円高対策にしようとでもしているのでしょうか(笑)。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aQTUW8z3VGq0
安住財務相:円高対策早期実施を首相指示−景気下振れリスク懸念(1)

まあとりあえず就任記者会見は無難だったみたいです(というか就任会見でやらかしたら洒落にならん)けれども、何か他の大臣もこれですし、何でもかんでも日銀にお願い攻撃またキタという感じですなあ。今更何の金融緩和するねんという感じなのですけれども。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920019&sid=apzH3iX6PJis
古川経財相:円高対応策で日銀の金融緩和に期待感−就任会見


しかしまあ何ですな、今回の閣僚人事って外相とか財務相とかの辺りは身内で固めましたけど、後は見事な派閥人事をしているようにしか見えませんし、政策決定に関しては党政調の権限を拡大するとか、まるで自民党時代に戻ったかのうような状態。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011090300322
政調突出?あつれき懸念も=仙谷氏の代行就任

そうなりますとまあこういう話も出るわけで、これはたまたまネットを漁ったら最初に引っ掛かったのが信濃毎日の社説なんでそいつを引用しますけどね。

http://www.shinmai.co.jp/news/20110904/KT110903ETI090003000.html
民主党政調 先祖返りにならぬよう
09月04日(日)

『民主党の新しい政策決定手続きがまとまりつつある。マニフェストで掲げた「内閣への一元化」原則を撤回し、政策調査会長の了承を原則とすることになりそうだ。党の力は格段に強まる。旧自民党政権では政務調査会で事前審査を受ける仕組みが族議員の温床になり、国会審議を形骸化させた―。民主党が2年前、マニフェストで一元化を打ち出したのはそんな考えからだった。政調の“復権”は政策決定のあり方が先祖返りする危険をはらむ。透明性をどうやって保つか、野田佳彦首相のかじ取りがここでも問われる。』(上記URLより、段落分け部分を改変して以下割愛)

・・・・・・・まあそ〜ゆ〜批判をしたくなるのは判るのですが、逆に考えてみると自民党時代の政策決定プロセスが幅広い関係者の利害調整とかをするのに対して有効にワークしていたという面もあったのではないかとか、内閣に参加しない党の議員も政策決定に参画することによって政策立案能力を高めて政権与党として必要なレベルの確保維持をする事に繋がっていたという点では合理的だったんじゃないですかねえとか思うのですけどね。まあどうでもいいですが。

まーしかし財務大臣に言っちゃあ何だがど素人を嵌め込むとかその真意はどこにあるのやらというのは不思議である。まさか財務省を国会議員の研修施設か何かと勘違いしているのではないかと・・・・・・

#と、柄にも無い床屋政談でございました


○その他雑談

・雇用統計がありましたな

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aD1C.tr5Nees
8月の米雇用者数:増加トレンドに終止符−6、7月も下方修正(1)

まあ何だ、QE2とは一体何だったのかという話で、確かにデフレ入りは阻止できたけれどもデュアルマンデートのもう一方には効きが悪かったですねとゆー話ではございますので、次回の緩和(をするのかどうか知らんが)に関しては資産買入をするにしても単純にQE2と同じ事をすれば良いというもんでも無いのではとゆー事になるんでしょ。

でまあ一般的には次の一手は「ツイストオペ」という事になって、そのツイストオペに打ち込むべくせっせとイールドカーブがフラットニングしているのが大変に素敵なクレクレ相場化していて実に味わいの深いものを感じますが(^^)、まあどうせ今回もツイストやるやると言ってるうちは華麗にフラットニングして実際にオペが始まったらフラット終了になるんでしょうなあ。


・しかし円高対策ねえ

さっき引用してた閣僚発言を見てますと円高対策関連をまたおかわりとかするようなのですけれども、米国の追加緩和がどうしたこうしたという話がこれから出るというタイミングに円高対策とかやっても米国の追加緩和の内容次第でまたそっちに反応する事になるんですからタイミング的に如何なものかという感じがするんですよねえ。

いやまあその辺の段取りの悪さは今に始まったことじゃあないので最早諦めておりますけれども、そういうのをもうちょっと考えて下さいなとしか思えませんな。マッタクモウ。


○ジャクソンホール講演続き:米国経済の長期的な課題について

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.pdf

『Economic Policy and Longer-Term Growth in the United States』というのがまあ今回の講演の真のお題と思われるので今更ですがその辺から。最初のパラグラフは飛ばしましてその次から。

『Notwithstanding the severe difficulties we currently face, I do not expect the long-run growth potential of the U.S. economy to be materially affected by the crisis and the recession if--and I stress if--our country takes the necessary steps to secure that outcome.』

えーっとですね、あたくしこの部分見て「ほほー」と思ったのですが、これって「米国経済の長期の潜在成長力は金融危機やリセッションによってもあまり影響されずに強いです」という風に言ってるけれども、その後にある「if」以下(ちなみに原文では2つ目のifが斜字体)の方が大事で、「長期的に適切な経済政策を実行しないと米国経済は長期の潜在成長力が低下しますよ」と、米国経済の潜在成長力の低下に関して懸念を示したと読む方が適切だと思うのですけどどうでしょ。

『Over the medium term, housing activity will stabilize and begin to grow again, if for no other reason than that ongoing population growth and household formation will ultimately demand it.』

ですので、ここの部分も「中期的には住宅市場は安定して再び成長をするでしょう」というよりは、その後にある「if for no other reason than that」の方が気になるわけで、「人口の増加」と「家計資産の構成」が必要とするならばという部分が欠落するとアカンタレになりますがなっつー話ですよねこれって。

『Good, proactive housing policies could help speed that process. Financial markets and institutions have already made considerable progress toward normalization, and I anticipate that the financial sector will continue to adapt to ongoing reforms while still performing its vital intermediation functions.』

『Households will continue to strengthen their balance sheets, a process that will be sped up considerably if the recovery accelerates but that will move forward in any case.』

ということで、住宅政策やら金融市場の安定、更には家計のバランスシート調整に関する重要性を指摘していまして、ここでも家計のバランスシートキタコレという所でありまして、恐らくバーナンキ議長が現在考える政策課題の中で重要度が高いのは「バランスシート調整をどのように円滑かつ速く進める事ができるか」という所なのではないでしょうか、と思うのでありまする。

『Businesses will continue to invest in new capital, adopt new technologies, and build on the productivity gains of the past several years.』

ほうほう。

『I have confidence that our European colleagues fully appreciate what is at stake in the difficult issues they are now confronting and that, over time, they will take all necessary and appropriate steps to address those issues effectively and comprehensively.』

で、金融市場の安定といえば欧州財政危機問題ですが、そちらに関する期待をここで言及と。

次のパラグラフ。

『This economic healing will take a while, and there may be setbacks along the way.』

回復には時間がかかりその間に逆境が待っているでしょうキタコレ。

『Moreover, we will need to remain alert to risks to the recovery, including financial risks. However, with one possible exception on which I will elaborate in a moment, the healing process should not leave major scars.』

しかもリスクがありますよねとか米国経済は危機によって受けた傷がまだ癒えていないとか。

『Notwithstanding the trauma of the crisis and the recession, the U.S. economy remains the largest in the world, with a highly diverse mix of industries and a degree of international competitiveness that, if anything, has improved in recent years. Our economy retains its traditional advantages of a strong market orientation, a robust entrepreneurial culture, and flexible capital and labor markets. And our country remains a technological leader, with many of the world's leading research universities and the highest spending on research and development of any nation.』

しかしその後に威勢の良い話をするのがメリケンクオリティでございまして、まあこの辺は「でも米国経済はこのように強いんです(キリッ)」という話ざます。そして次のパラグラフ。

『Of course, the United States faces many growth challenges. Our population is aging, like those of many other advanced economies, and our society will have to adapt over time to an older workforce. Our K-12 educational system, despite considerable strengths, poorly serves a substantial portion of our population.』

このK-12 educational systemってのがナンジャラホイなのですが、まあそれは兎も角として人口動態の変化に関する「大きな課題」をしてきしてますわな。

『The costs of health care in the United States are the highest in the world, without fully commensurate results in terms of health outcomes.』

またヘルスケアの費用も拡大してますと。

『But all of these long-term issues were well known before the crisis; efforts to address these problems have been ongoing, and these efforts will continue and, I hope, intensify.』

まあこの件に関しては今に始まったことではないというのは仰せの通りでありまする。

・・・・・という所で時間切れになってしまいましたどうもすいません。この後も色々オモロイです。





2011/09/02

お題「6か月固定オペェ・・・・・・・/ジャクソンホール講演の続き、金融政策部分に関して」

超どうでも良い話なのですが・・・・・・・

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110902/t10015314321000.html
東電の不動産 簿価で1兆円超
9月2日 2時51分

『福島第一原子力発電所の事故の賠償金をねん出するため、東京電力の財務状況などを調査している政府の委員会は、東京電力が保有する不動産が、取得した時点での価格、いわゆる「簿価」で総額およそ1兆1000億円に上ると算定したことが分かりました。』(上記URLより、以下引用割愛)

たぶんですね、このニュースの本来の「ニュースとしての意味合い」ってのは売却可能な不動産は東京電力が申告(簿価ベースで100億円程度)しているよりも多い筈だと経営・財務調査委員会が認定した、というのだと思うのですが、ニュースの題名が上記のようになっていまして何と言うか報道している方々には簿記3級持ちもいないのでしょうかと不思議。

簿価でこれだけある事が「判明しました」ってそれは貸借対照表に明細が載っている(少なくとも税務申告資料には詳細に物件明細がある筈なのですが・・・・)もので「調査する」とかいう以前の問題じゃないのかなあと朝から激しく頭の中に????が飛び交うのでありました。

と、どうでもよい前置きが長くなりましたが、まずは10年入札があったというのにそっちの話は華麗にスルーしてこっちの話を。


○6か月固定オペロール分惜しくも(こら)札割れならず

昨日のオペレーションでございますが。

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of110901.htm

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2011年9月5日 2011年9月26日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2011年9月5日 2012年3月5日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba110901.htm

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(9月5日スタート分) 19,244 10,003 0.100 0.100 52.0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(9月5日スタート分) 8,290 8,002 96.5

3週間物の金利入札オペには19244億円の応札が入り、一方で6か月物の固定金利オペには8290億円の応札ということで、まあ要するに「資金の取るニーズはあるけど6か月の固定金利はちょっと・・・・・・」という市場の皆様の状況が示されましたとゆーことでございます。

でまあ今回のオペはロール分ですので、期落ちに対応する分のニーズがあったと思うのですが、それでも応札がオファー予定額でもあり期落ち額でもある8000億円カツカツという状態になりましたので、今後新規で実行する予定の6か月固定オペの札がちゃんと入るのかねというのは実に懸念されるところでございまする。

でまあ何が困るかって言いまして固定金利オペに関しては「基金オペ」ということで「実行残高」を目標にしているので、札割れが頻発すると金融政策決定会合での目標未達になる恐れが出る、即ちディレクティブ未達になるというのが実に残念な話。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf

・・・・・・ただまあこちらの別紙にありますように、増額に関しては『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』ということでしらっと逃げは打ってありまして、別にまあ足元でオペが札割れになっていてもオファーを続ければそのうち何とかなるからケンチャナヨという事で開き直れば目先で特段問題は無い、ともいえます罠。

つまりですね、現状で6か月の固定金利オペにニーズが無いのっていうのは、そもそも固定6か月が調達のバランス上ニーズが少ない(調達の期間マッチングの観点と、長期に渡ってオペの担保が必要になるという事からの担保繰りの圧迫という観点がございます)という構造的な話はある(のでそもそも6か月のオペ増やした分はやはりバランス上金利オペの足を短くする必要がありますね、という話は前も申し上げた通り)にはあるのですが、それに加えまして足元では、利上げになる可能性が皆無な上に米国の追加金融緩和の内容次第では日銀の補完当座預金付利金利の引き下げの可能性がこちらは皆無とは言えない、という状況がありますので、その結果リスクリターンを考えた場合にどう見ても6か月イラネとなりますという事になる、という一時的(で済むかどうかは知らんが)な要因もありますよね、とゆー事です。

従いまして、足元で6か月固定のオペが札割れしてもそれはそれ、まあど〜せ2012年末までに何とかすれば宜しいがなとゆ〜ケンチャナヨ精神で開き直ってしまえば無問題といえば無問題、と行けるかと申しますとこれが「ディレクティブ未達の懸念」とか言ってまた外野がやいのやいの言う(・・・・・・いまあなた「お前が言うな」って言いましたね!!!!!!!111)ので色々とややこしいでしょうなあと思うに、オペレーション担当部門でオペをどういうオファーするかというのを今やってる担当の皆様飛んだ貧乏くじにも程がありまして、同情の念を禁じ得ないものでございます(半分くらい棒読み)。


まあしかし何ですな、市場部門というのはこういう時に「この正直者!」という感じでして、金利の先行き見通しに伴い固定金利オペの応札が(長いものほど)ビビットに減るという反応を示す一方で、31日に実行された成長基盤オペに関してはご覧の通りで、第5回分が按分になるという素敵な応札を集めるでござるの巻。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110831b.pdf
成長基盤強化を支援するための資金供給(新規第5回等)の実施結果

『1.本則(成長基盤強化を支援するための資金供給)関係
(1)新規貸付
借入希望額(注1) 3,786 億円
貸付日における貸付予定総額(注2) 1,395 億円』

『(注2)貸付総額の上限(3 兆円)との関係で新規に貸付が可能な金額を上回る借入希望があったため、按分処理を実施した。』

まあこの分別に市場調達しても同じじゃん(成長基盤強化の貸出は適格担保を差入なので)と考えますと、何で6ヶ月の固定はイラネとなるのにこっちのオペは希望額超過となるんでしょうか(まあ総額とか頻度は全然違うので単純比較すりゃいいってもんじゃないですけど)とゆー疑問も起きるのですが、それはそれでございまして、こちらの資金供給に関しましては市場部門というよりはまた別の範疇の部門での管轄になっているものと愚考する訳でございまして、まあつまり(極めて激しく自主規制)という点で味わいの深い対照的な結果ともいえるのではないかと思います。(追記:自主規制が過ぎるとの指摘も受けましたので自主規制部分のヒントだけ書きましょう^^:ヒント=企画部門、お犬様)


○バーナンキ議長のジャクソンホール講演ネタの続きを放置していたので続き

どうもすいませんすいません。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20110826a.pdf

景気に関する話で止まっておりましたので、その次の「金融政策」に関する部分でも。

PDFファイルで言いますと本文6ページの後半から。

・FOMC景気見通しの引き下げがどうのこうの

『Monetary policy must be responsive to changes in the economy and, in particular, to the outlook for growth and inflation. As I mentioned earlier, the recent data have indicated that economic growth during the first half of this year was considerably slower than the Federal Open Market Committee had been expecting, and that temporary factors can account for only a portion of the economic weakness that we have observed.』

先ほど申し上げましたように、最近の経済指標は今年前半の景気回復ペースがFOMCの想定していたよりも著しく遅く、更に一時的な要因はこれらの弱さの一部を構成するに過ぎないということが判明しました。と前のほうの繰り返しになりますが「景気の弱さは一時的な要因だけではない」と6月までのFOMC声明文であった見方の撤回(8月の声明文に既に示されていますが)を行っています罠。

『Consequently, although we expect a moderate recovery to continue and indeed to strengthen over time, the Committee has marked down its outlook for the likely pace of growth over coming quarters.』

長期的な回復シナリオは維持するけど、向こう数四半期の成長見通しは引き下げました。


・インフレに関する部分は超あっさり味

『With commodity prices and other import prices moderating and with longer-term inflation expectations remaining stable, we expect inflation to settle, over coming quarters, at levels at or below the rate of 2 percent, or a bit less, that most Committee participants view as being consistent with our dual mandate.』

で、先日もご紹介した通り、インフレに関する部分はこの所だけ、というのが実にあっさり味でございまして、物価に関してはインフレ加速リスクを見ておらず、国際商品市況の落ち着きと引き続き安定推移するインフレ期待によって、今後数四半期の間にインフレ率はデュアルマンデートに整合的あるいはそれよりも若干低い水準に落ち着くでしょう。と超あっさり味でござるの巻。


・ガイダンス文言の変更をしましたよという件

『In light of its current outlook, the Committee recently decided to provide more specific forward guidance about its expectations for the future path of the federal funds rate.』

しつこいですがガイダンス文言で示されるFF金利の将来パスはFOMCの「expectations」であります。

『In particular, in the statement following our meeting earlier this month, we indicated that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』

ほうほうそれでそれで?

『That is, in what the Committee judges to be the most likely scenarios for resource utilization and inflation in the medium term, the target for the federal funds rate would be held at its current low levels for at least two more years.』

つまり、FOMCが現在想定している中期的に最も可能性が高いと考えているシナリオ通りで経済が推移した場合には、現在の政策金利は少なくともあと2年間は継続する事になるでしょう。と逆さ絵のおじさんは仰せなのでありまして、これってはっきり言って日銀の「物価安定の理解」と「展望レポート」の合わせ技とどこがどう違うのかと「強力なコミットメントだ」と言ってる連中に小一時間問い詰めたい所でございます。


・その他の細かい話は無しである

『In addition to refining our forward guidance, the Federal Reserve has a range of tools that could be used to provide additional monetary stimulus. We discussed the relative merits and costs of such tools at our August meeting. We will continue to consider those and other pertinent issues, including of course economic and financial developments, at our meeting in September, which has been scheduled for two days (the 20th and the 21st) instead of one to allow a fuller discussion. The Committee will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ its tools as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』

・・・・・・・と仰せなのですが、8月のミーティングで追加緩和に使われるべき「range of tools」の「relative merits and costs」を討議したという感じがあまりFOMCの議事要旨を見ても受けなかった(まああんまり細かく書く必要が無いので割愛している、という可能性もあるので決め打ち禁物ではあるが)のでございまして、それよりもそもそも論の所から意見が割れている感じを受けましたがどうでしょうかねえ。

つまりですな、次回会合を2日間に延長したというのはFOMCの場で更に討議が必要でございますねという事を意味しているのではないかという悪寒もするのですがどうっすかねえという感じです。とは言えまあ色々と期待だけはさせていますから、9月会合で何らかの追加緩和(のようなもの)を打ち込むとか、それとも11月の会合に持ち越すけれども追加緩和やりまっせ感を前面に打ち出して失望させないか、といううような方向になるでしょとは思っています。既に時間軸のようなものがコミットメントじゃなかったですねという話にもなっているようで、目くらましも時間がたつと化けの皮がはがれる訳でござんすので、適当なところで次の目くらましを入れないとマズー(ジャクソンホールではFOMC2日間実施という玉を打ち込みましたが)でしょうからね。


『Economic Policy and Longer-Term Growth in the United States』が実に味わいのある部分なのですが間に合わなかったので(すいませんすいません)来週で勘弁してくんなまし。







2011/09/01

お題「時間軸が時間軸じゃなさそうな件について(FOMC議事要旨ネタの続き)」

引き続きFOMC議事要旨ネタなのですが、読めば読むほど米国市場が「2013年までのゼロ金利ヒャッハー」「QE3ヒャッハー」とかやっている(らしい)のに対する違和感が高まるのですけれども・・・・・・

#実は今日は一部のマニア超注目の「6か月固定オペのロール」があるのですがFOMC議事要旨ネタかいていたら時間が無くなったので「さて、札がちゃんと入るのでしょうか、ホーッホッホッホ。」(喪黒福造風でお願いします)とだけ申し上げておきます^^;

○ということで8月FOMC議事要旨の「金融政策の決定について」を読む

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20110809.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20110809.pdf

勿論景気認識及び先行き見通しに関する部分も読まないといけないのですが、例によって安直に最後の部分『Committee Policy Action』を読むのである。

#安易に読みたければ基本的にこの部分と昨日ご紹介した『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最終パラグラフ辺りを読むのが吉である

・ほうほうこんな所にも金融政策の限界の話が^^

『In the discussion of monetary policy for the period ahead, most members agreed that the economic outlook had deteriorated by enough to warrant a Committee response at this meeting.』

委員会の景気に関する議論のところ(今日は引用しませんが)の冒頭で思いっきり弱いという話があるのですが、そーゆー議論を踏まえましてほとんど(most)のメンバーは今回の会合で政策対応をすることが正当化されるほど景気見通しが悪化しているとな。

『While all felt that monetary policy could not completely address the various strains on the economy, most members thought that it could contribute importantly to better outcomes in terms of the Committee's dual mandate of maximum employment and price stability.』

これはまた微妙にお洒落というか何と言うか。先般のジャクソンホール講演(ネタが途中ですいませんすいません)でも「金融政策には限界があって何でもかんでも対応できる訳じゃねえぞコノヤロー(超意訳^^)」というのがありましたが、ここでもそんな話があるのがチャーミング。ただまあ「何かやった方が良いですよ」という話になっているので別に金融政策でここからやる事が無いみたいな話をしている訳ではございませんので念の為。


・ということでガイダンス文言の変更が正当化されるという意見になる

『In particular, some members expressed the view that additional accommodation was warranted because they expected the unemployment rate to remain well above, and inflation to be at or below, levels consistent with the Committee's mandate. Those viewing a shift toward more accommodative policy as appropriate generally agreed that a strengthening of the Committee's forward guidance regarding the federal funds rate, by being more explicit about the period over which the Committee expected the federal funds rate to remain exceptionally low, would be a measured response to the deterioration in the outlook over the intermeeting period.』

失業が高水準で留まり、一方で物価に関しては先行き低下してマンデートの目標数値あるいはそれ以下になるという見通しを踏まえると、追加の金融緩和が適切であると複数(some)のメンバーが主張しましたと。んでもってその人たちによりますと、ガイダンス文言の変更が適切という話ですが、「経済見通しの悪化に対応し、FF金利を異例の低い水準に維持すると委員会が「予想する」期間を「より明示的に」する」のが適切という文脈になっております。


・より強力な緩和が必要という人と、逆に反対をする人

『A few members felt that recent economic developments justified a more substantial move at this meeting, but they were willing to accept the stronger forward guidance as a step in the direction of additional accommodation.』

何人か(A few)のメンバーは、最近の経済状況(の悪化)は今回の会合でガイダンス文言変更よりも更に積極的な緩和を実施するべきと感じているが、ガイダンス文言の強化は今後の追加金融緩和に向けてのステップとして賛成です、とより強い追加緩和を主張する人がいますわな。

『Three members dissented because they preferred to retain the forward guidance language employed in the June statement.』

一方で3名はガイダンス文言の変更に反対で、従来の文言維持を主張。


・経済データ紐付けの時間軸という提案もあったようですが・・・・・・

『The Committee agreed to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and to state that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』

ほうほうそれでそれで?

『That anticipated path for the federal funds rate was viewed both as appropriate in light of most members' outlook for the economy and as generally consistent with some prescriptions for monetary policy based on historical and model-based analysis.』

この「予想されるFF金利目標のパス」はほとんど(most)のメンバーの経済見通しおよび、ヒストリカルおよびモデルベースの分析に整合的である。ということで、ここの文言とこの先を見ますと、今回の時間軸のように見せかけたガイダンス文言の変更ですけれども、単に「景気見通しの悪化をガイダンス文言の変更で示しましたお!」というお話に過ぎないのではないかと思われるのですけど何でこれをコミットメントだと思うのかという所でございますが、まあそういうような明示的な時間軸政策も検討してみた跡がございますので、そーゆー意味では気持ち的には時間軸みたいな部分もあるのかも知れませんが・・・・・

『In choosing to phrase the outlook for policy in terms of a time horizon, members also considered conditioning the outlook for the level of the federal funds rate on explicit numerical values for the unemployment rate or the inflation rate.』

つーことでここにありますように、委員会は「政策金利水準の見通しに関して、失業率またはインフレ率に対する明示的な数値に基づく形を検討した」という風にあたくしは読んだ次第でして、要するにここの部分では日本の時間軸みたいに特定の物価水準または失業率水準を政策金利パスに紐付けする方法も議論したんじゃないかと思うのですけどどうですかね。

『Some members argued that doing so would establish greater clarity regarding the Committee's intentions and its likely reaction to future economic developments, while others raised questions about how an appropriate numerical value might be chosen.』

複数(Some)のメンバーはこのような施策が、FOMCの今後の経済状況の変化に対応した政策行動に対する見方に対して透明性を大いに高めるだろうと主張しましたが、一方で他の(others)メンバーは「何故その数値が選択されたかという点での適切性に対する疑問」を投げかけた、との事です。

『No such references were included in the statement for this meeting.』

で、結局その手の「経済指標紐付け攻撃」はスルーとなりました。


・ガイダンス文言の変化によって将来の政策行動が縛られるのかという論点

本来、時間軸政策による効果を出すという話においては、「政策の手を縛ります」という事を自らコミットするという中央銀行的にマゾ的なプレイをする事によって効果を出すのでありまして、「今はこう思うけど経済状況が変わったからこの前の話は無かったことにするお!」というような梯子外しをするのはコミットメントではないですし、市場にコミットメントだと誤解させるような動きをすると「市場との対話」においてミスコミュニケーションが発生してしまい、その後の修復にコストが掛かるのですけどねえ、というようなニポーンの皆様(ただし金利関係のマニアのみ)にとっては先刻ご案内の話についてのツッコミが。

『One member expressed concern that the use of a specific date in the forward guidance would be seen by the public as an unconditional commitment, and it could undermine Committee credibility if a change in timing subsequently became appropriate.』

今申し上げたことまんまでございます。「unconditional commitment」とありますように、「経済状況の変化にも関わらず少なくとも2013年半ばまでFF金利を異例の低水準に維持する」と市場が捉えた場合、その後の経済状況の変化によって早期の政策変更が適切になった場合に、FOMCの信頼性を傷つける結果となるのではないか、という事ですな。ちなみにこの指摘は後のほうでの反対理由を読みますとプロッサー総裁の見解っぽいです。

『Most members, however, agreed that stating a conditional expectation for the level of the federal funds rate through mid-2013 provided useful guidance to the public, with some noting that such an indication did not remove the Committee's flexibility to adjust the policy rate earlier or later if economic conditions do not evolve as the Committee currently expects.』

どう見ても詐欺です本当にありがとうございましたという風情なのですが、ここを読みますとほとんど(Most)の委員はこのガイダンス文言を「conditional expectation」ということで、「経済条件によって変化する政策金利経路の期待」であるとしていまして(先ほど明示的な経済指標への紐付けを避けたのだから当たり前っちゃあ当たり前だが)、この「indication」(commitmentではないのがポイント)は経済状況に変化がおきた時に政策変更をする柔軟性を縛るものではありません(キリッ)。だそうでありまして、この辺を見ても「2013年半ばまでのゼロ金利の約束」とか言ってる輩は(自主規制)としか思えん。


・声明文の表現の検討部分

まあここは声明文にどのような文言を入れるかという話ですので引用だけしておきます。

『In the statement to be released following the meeting, members generally agreed that it was important to acknowledge that the recovery had been considerably slower than the Committee had expected. Although some of the slowdown in the first half of the year reflected transitory factors, most members now judged that only part of that weakness could be attributed to those factors. The Committee decided to note that the declines in energy and commodity prices from their recent peaks had led to a moderation of inflation and that longer-term inflation expectations remained stable. The Committee also characterized the economic outlook in terms of its statutory mandate and indicated that it expected the slower pace of economic expansion to result in an unemployment rate that would decline only gradually toward levels consistent with its dual mandate and that it saw the downside risks to the economic outlook as having increased. Most members also anticipated that inflation would settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee's mandate. The Committee noted that it had discussed the range of policy tools that were available to promote a stronger economic recovery in a context of price stability, and to indicate that those tools, including adjustments to the Committee's securities holdings, would be employed as appropriate.』

1パラグラフ丸々一気に引用しましたけど、まあどういう表現を声明文に盛り込むかという話をしておりまして、この辺は声明文文言にあるとおりです。背景に関しては景気の現状認識及び先行き見通しに関する部分を読むのが吉なので今日はスルーである(単なる手抜きとかいうツッコミをしないように)。

『At the conclusion of the discussion, the Committee voted to authorize and direct the Federal Reserve Bank of New York, until it was instructed otherwise, to execute transactions in the System Account in accordance with the following domestic policy directive:』

ディレクティブと声明文の引用はスルーである。


・反対した理由も様々

『Voting against this action: Richard W. Fisher, Narayana Kocherlakota, and Charles I. Plosser.』

フィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの各地区連銀総裁が反対しました。

『Messrs. Fisher, Kocherlakota, and Plosser dissented because they would have preferred to continue to describe economic conditions as likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate for an "extended period," rather than characterizing that period as "at least through mid-2013." 』

これはさっきのとおり。

『Mr. Fisher discussed the fragility of the U.S. economy but felt that it was chiefly nonmonetary factors, such as uncertainty about fiscal and regulatory initiatives, that were restraining domestic capital expenditures, job creation, and economic growth. He was concerned both that the Committee did not have enough information to be specific on the time interval over which it expected low rates to be maintained, and that, were it to do so, the Committee risked appearing overly responsive to the recent financial market volatility.』

フィッシャー総裁の反対理由ですが、まず「米国経済の現在の脆弱性は財政や規制に対する不透明性の高さと言った金融政策の範疇外に要因が求められる部分が多い」という点を指摘していまして、更に「委員会は低金利政策を維持する特定の期間に対する情報を十分には得ていない」とも指摘。そして最後の部分は「このようなガイダンス文言変更は、最近の金融市場のボラティリティーに対して委員会が過剰に反応するリスクを高める」という話をしていますので、まあ要するに「バーナンキプットは甘え(キリッ)」という事でしょう。

『Mr. Kocherlakota's perspective on the policy decision was shaped by his view that in November 2010, the Committee had chosen a level of accommodation that was well calibrated for the condition of the economy. Since November, inflation had risen and unemployment had fallen, and he did not believe that providing more monetary accommodation was the appropriate response to those changes in the economy. 』

これは先日コチャラコタ総裁が表明してたのと同じですが、経済状況をベースにした反対意見ですな。

『Mr. Plosser felt that the reference to 2013 might well be misinterpreted as suggesting that monetary policy was no longer contingent on how the economic outlook evolved.』

ということで、プロッサー総裁は「今回のガイダンス文言変更は経済状況の変化に関わらず、2013年半ばまでの金融政策変更が無いというコミットメントであると誤解される」事を懸念するとしています。

『Although financial markets had been volatile and incoming information on growth and employment had been weaker than anticipated, he believed the statement conveyed an excessively negative assessment of the economy and that it was premature to undertake, or be perceived to signal, further policy accommodation.』

経済認識に関してはプロッサー総裁もまあ弱いというのは同意しているようですが、このガイダンス文言変更は「過剰にネガティブな経済の評価をもたらす」とこと、「将来の金融緩和の実行に対して早すぎる動き、あるいはそのシグナルを与える事になる」ともしています。

『He also judged that the policy step would do little to improve near-term growth prospects, given the ongoing structural adjustments and external challenges faced by the U.S. economy.』

ここはフィッシャー総裁に似ていますが、米国経済が直面する課題は今後の構造改革であり、ここからの金融緩和は近い将来の成長見通しを改善させる効果は乏しいとも指摘しております。


といったところでございましたです。時間がねえので国内市場ネタは最初の所に書いたとおりでございます。ドーン!!