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2012/02/29

お題「市場雑談その他の雑談系で勘弁」

久しぶりの2月29日でございますが関東積雪の恐れとな。

○基金オペがああたらこうたら雑談

月曜の基金オペに関連して昨日ああだこうだと書きましたが、他に補足すべき事もあったっぽいので更に雑談メモである。

・対象銘柄の拡大に関連して

月曜の基金国債買入の対象銘柄は以下の通りでした。

2年302〜313回
5年70〜80回
10年247〜257回
20年22、23回

つーことで、今回は残存1年超2年以内の全銘柄が対象になるという結果になりました。そらまあ前回(2月15日)の基金国債買入の応札が(対象銘柄を増やしたのに)1兆円程度しか無くてあちゃーな感じでしたから、それなら普通に1年超2年以内に拡大しましょうという話になるのは当然ちゃあ当然ですわな。

つーかこれまで何で輪番みたいに1年超2年以内の全銘柄対象とかになってなかったのかという方がアレっちゃあアレなのですが、基金国債買入(というか基金による資産買入等のオペレーション)は「買入を実施する」というフローの話ではなくストックの残高を積み上げるのが目的という建付けになっております。もちろん残高積むためには買入のフローを行わないといけませんがけど・・・・

FRBやBOEの資産買入のロジックによりますと、「買入を実施するフローの効果」よりは「買入の残高のストックの効果」を重視するという風になっていまして、買入の残高そのものに意味がありますよ的な話をしていますが、まあ日銀はその辺の話については微妙にスルーしている節がありまして(輪番に関しては実際問題としては「期間の長い資金供給オペ」的な性格の方が強そうな気もするのですが、結局の所この辺をギリギリ詰めてもロジックの思考実験としては面白いけれどもじゃあ市場の実際の価格形成に何のファクターが効いてるのよという話って正直どうでも良いという気がするのであまり突っ込む人もいないんでしょうな)一応例の銀行券見合いの輪番オペの話と、資産買入基金に関してはまあそれはそれ的なお話になっています。

と、話がずれましたが、まあそういう事で従来(今般の買入拡大前)は基金買入の対象銘柄を残存2年近辺の直近2銘柄だか何だか忘れましたがまあ要するに2年近辺の銘柄を購入するようにしていたのですが、その心は「あまり短いのを買ってしまうと償還が来たらその分を残高維持の為に買わないといけなくなるからメンドクセ」(単にメンドクセなだけではなくて、打ち込まれた銘柄の状況によって買入のオファーのペースがずれてくるので市場に妙な不確実性要因を与えるのも嫌だというのもある)という話かと存じます。

然るに、今回買入の拡大を行って、ペース的にこれから10日毎に5000億円とかいうような豪快なペースの買入を実施しないと行けなくなってしまい、実際に最初に5000億円の買入オファーをしたらいきなり応札が1兆しか無くてテラヤバスとなったのでまあ今回は1年超2年以内(まあ正確には2年未満ですかね)全部の銘柄を対象にしましたよという実に単純な話ではあるかと思います。

あとですな、従来「暗黙の30%ルール(でしたっけ?)」とかいう話で基金買入の際に日銀保有残高が発行額の30%になると対象から外す(市場の流動性を日銀が枯渇させることによって市場をアヒャヒャヒャヒャにしないようにという配慮っちゃあ配慮)ような運用をしていたようですが、それに関しても今回華麗にスルー(ただまあ輪番でそうなっていますが、発行額の50%を日銀が購入するととりあえず対象から外れるんでしょうな、超長期21回が対象になっていない所からすると)となったのですが、まあこれも単純に「オペレーションの技術的問題」であろうかと思います。


まあ何ですな、これって普通に「基金オペの残高を積み上げて行こうという姿勢の表れ」であって、札割れ上等みたいはスタンスではないですよって事だと普通に理解したので昨日は特にその辺何も書かなかったのですけれども、どうも色々なレポート類やらコメントやらを拝読しておりますと、対象が増えた件について微妙に変な解釈をしている向きもあるみたいなので、ナンジャソラと思ったついでに雑談ネタにした次第。

まあどうでもいい話ですが、(武士の情けで名前は伏せますが)どこぞのレポート見たら「日銀は買入対象銘柄を拡大することによって札割れを回避し、札割れによって起こる「買入銘柄の年限を伸ばせ」的な圧力を回避しようとしていて消極的だ」みたいな見解があって椅子から落ちそうになりましたがな。あんさん買入オペの札割れを回避するように努力するののどこが消極的な姿勢という結果になるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そこまで悪意で日銀の行動を解釈できる位なら大嫌いな日銀の発行している券なんかお持ちにならない方が良いと思いますので全部私に下さいなというところで(^^)。

あとですな、1年以内を対象にしなかったのは基金短国買入とゾーンがバッティングする結果短国ゾーンの現物需給を無駄にタイトにして短国買入の方に影響与える可能性があるというのと、そもそも長めの金利(と言っても長期金利ではないので念の為)を下げるという政策目的なので短いのを買うのも何か行為に矛盾が生じますよねという事になろうかと思います。勿論短いのを買うとすぐ償還するというのもありますにゃ。


○2年国債入札がどうしたこうした

昨日の2年国債入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2011/resul077.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘
(募入最高利回り)(0.112%)

(4)募入最低価格における案分比率 51.8739%

(5)募入平均価格 99円97銭7厘
(募入平均利回り)(0.111%)

とゆーことで、昨日の駄文で「2年の0.11%なんて何ぼでも買いが来るでしょ」とか言ったあたくし涙目の展開。

第U非価格はボウズでした
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2011/resul077a.htm

本日の2年利付国債(第314回)の第U非価格競争入札に対する応募はありませんでした。

第U非価格が貫録のボウズということはつまりセカンダリーもろくなもんではなかったという事でございまして、実際問題として市場推計の落札分布見ても不明が7000億円程度とそんなに多くなく、しかも落札した先を見てもどこかがドカンと落札したという事では無くて2000億円台の落札業者が多めに分布という事で、これはつまり誰かの所で強いニーズがあったというような入札ではありませんでしたねという話ではございますわな。

まー何ですな、足元ではGCレポがやや重いのもあって(金利入札オペがここもと何本か入ったので少し軽くなったようですが、そもそもの当座預金残高水準が21日の償還による財政大幅払い超を前に抑制気味なのでタイト目なのはタイト目)0.11%とは言えども2年債イラネという事なのかも知れませんが、買入が進んで行きますと普通に2年以下の現物債需給は締まってくると思いますし、当座預金残高に関しても金利入札オペを全く入れない状態でも大きく上振れしていくのは時間の問題ですから、別に2年買って持ってりゃいいじゃんとか思うのですけれども、まあその2年買うならもっと利回りの良い後ろを買った方が良くてこんなのバランスシートの無駄遣いというような考えもあろうかと思いますし、まあ現状はそんな所なのかもしれませんね。

前日の基金国債買入で出来上がり0.107%に確信犯で突っ込んでいた人がいて、市場的に地合いが妙に悪くなってしまったのですが、当然この人は2年で突っ込みに行くのかと思っていた人も多く(つーかあたくしも当然そうだと思っていますたorz)ちょっと意表の展開かつ落札分布&セカンダリー低調でございました。

やはり足元のGCがやや重めで推移し続けているのが影響しているのかというところでございますが、今日の3か月TB入札では前回同様に0.104%レベルの足切りになるのでしょうけれども、按分率がどうなるのか(常識的に考えると按分がやや厚めになる可能性が高まったという話だと思いますけど)とかは超マニアで正直皆様的にはどうでもヨロシかと存じますがそういう事で。


○コアと総合について(金融政策での物価目途の数値に関して)雑談

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf
「中長期的な物価安定の目途」について

『この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。』

えーっとですな、こちらで出ております「中長期的な物価安定」として見る消費者物価指数なのですが、あたくし当初から「この数字は総合ね」という話をしているのですけれども、相変わらず世の中のレポートを見ておりますとコア(=除く生鮮食品)だとかゆー話があちこちで散見されまして、それが結構自信満々に出ているので、あたくしも思わず調べなおしたり、リアル知り合いからもお問い合わせが来たりという事ですのでちょっとだけ。


えーっとですな、そもそも「中長期的な」という話の場合は当然ながら総合の数値を使うのでありまして、足元の短期的な推移をみるときにコアを使ってみたり刈込平均を使ってみたり、他の物価指数を見てみたりというようなのを組み合わせて基調を判断するという話でありますので、「中長期的にコア物価指数を目標」というのは基本的に有り得ない話なんですよね。

大体ですな、何でコアを見てどうのこうのという話をするかと言えば、総合に含まれる要素の中で一時的な価格要因(天候とか市場での一時的な騰落とか)によって振らされる項目を除外して基調的な物を見るという為に生鮮食品を除外してみたり、エネルギーも除いた指数(いわゆるコアコア、米国の場合コアは食品エネルギー除外)を出してみたりという話なのですが、じゃあ常にその要因を排除していて良いのかというとこれまた別の話で、たとえば世界的な需要の拡大によって食料品の価格が基調として上昇していますよとか、原油の価格が基調として上昇していますよとなった場合は当然ながらそれは「基調的な物価の変化」に繋がる物ですから金融政策として考慮した扱いをしなければいけないわけですわな。

んでまあその辺に関しては2006年(なので最近の変化分は皆様読みながら補完して頂きたく)にこのようなペーパーが。

金融政策の説明に使われている物価指数
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/rev06j02.htm/

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/data/rev06j02.pdf

まあこれを読むのが吉という所でございます。

でまあ何ですな、総合を含めるから原油価格が一時的に上昇した時の物価上昇で中長期的な物価の安定の目途が達成できたと判断するのかとかいうような質問を日銀にぶつけるのは、上記ペーパーを見れば愚問であることには気が付くとは存じますし、目途に関しても短期的な話では無くてあくまでも中長期の話ですからして、物価の上昇における背景によっては直ぐに正常化政策を行わない可能性もあるし、現在の欧米のように足元の物価指数が目標値を上回っていても緩和的な金融政策の拡大を行う事もありますよ、という話でございます罠、というのがあたくしの頭の整理でございましたですことよ。

なお、上記のURLだけだと日銀理論ケシカランアルヨという方もおられると存じますので、そういう方には今般のFRBの金融政策をインフレ―ションターゲッティング導入ですよウェーハッハッハとお話をしたセントルイス連銀のブラード総裁が昨年4月に行った講演のURLでも(ちなみにあたくしも昨年5月に駄文のネタに致しました)。

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=984
APRIL 18(2011年です)
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Economic Outlook and Recent Monetary Policy Developments

上記URLが講演の概要でして、講演でのプレゼンテーション資料(パワーポイントみたいな奴)は上記URL先の中にありますが、まあ概要の方を読んでいただければ大体ヨロシカバイという感じだと思います。一応PDFのURLを置いときます(長い)。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_KY_Day_with_the_Commissioner_18_April_2011_Final.pdf

ということで今日は雑談大会でした。







2012/02/28

お題「だいたい小ネタ雑談で勘弁ということで」

「日銀は国債の買入枠を拡大したが購入ペースが拡大したわけではない(キリッ)」とか某モーサテの為替電話コメントをしている人がいたような気がするのですが、既に基金国債買入を半月で1兆円も実施(昨日の買入は受渡ベースではまだですので約定ベースですけど)しているのをご覧になっていないのでせうか???


○いきなりどうでもいい雑談でお告げコンボキタコレ

昨日はそろそろ出るかと思っておりました大先生のお告げキター
http://www.musha.co.jp/3624
ストラテジーブレティン (64号) 日銀の「変節」は円高デフレを終焉させる
〜年末13,000円、90円/ドルが視野に〜

何かドル円の数値と日経平均の数値に整合性がなさそうな気がしますけれども(大体からして「円高デフレを終焉」というのに何でここから10か月で10円ぽっちしか動かないのよと思うのですが)まあお告げキタコレという所ですが、武者先生のドテンは1月26日号「何故日本はダメなのか」の次に「この米株ラリーは本物」ってのも出していましたし、まあ政策の差がどうのこうのとか話していたので一応話の流れとしてはそんなにドテンでも無いような気もせんでもない(^^)。

しかしもう一つの強力なお告げが兜町の撃墜王から。

27日の北ハンマー大先生のボログ
http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51890691.html

『以上から今日も騰勢変わらずであり、東京市場に春風が吹き続ける。こういえます。』(上記北ハンマー大先生のお告げより)

ちなみに23日の北ハンマー大先生はこのように
http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51889939.html

『しかし私の現状に対する見方は、やはり信号は赤に近いオレンジ色なのです。だからガンガンいきましょう、などとはいえず、押しを待ちましょう。こう言っているのですが、「押し目待ちに押し目なしってことばもあるんじゃないですか。ほんとに押し目があるんですか」こう突っ込まれると、うーん・・・とならざるを得ません。』(上記北ハンマー大先生のお告げより)

まあ細かく見ておりますと北ハンマー先生の曲げパワーが憑依する可能性がありますのでお勧め致しませんが(^^)、23日にはちょっとあれ?という感じになっていて、24日には警戒でも買いでも無いような感じになっておられましたと思ったら昨日はこれ。

ということでお告げダブル効果で後場から平均株価が失速したのは言うまでもありませんが、引け後にエルピーダメモリーあぼんぬのニュースがががががが。


○市場雑談メモ

・エルピーダェ・・・・・

ご案内の通りですが・・・・・・・

帝国データバンクさんのページから。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3574.html
倒産・動向記事

2012/02/27(月) 東証1部上場のDRAM専業の半導体メーカー
製造業で過去最大の倒産
エルピーダメモリ株式会社
会社更生法の適用を申請
負債4480億3300万円

TDB企業コード:987907697
「東京」 エルピーダメモリ(株)(資本金2361億4313万1742円、中央区八重洲2-2-1、代表坂本幸雄氏、従業員3190名)は、2月27日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。 (以上上記URLより)

3月22日償還の社債があったのでお持ちの方に置かれましてはあと一息で力尽きてしまわれて誠に遺憾ではございますが、まあ近年は株券印刷大会もしておられたり、あちこちに支援要請がどうのこうのとかしていまして、おそらく金融的に言えば広く浅くあちこちに負担を掛けましたねえ(つまりこれでいきなり致命傷という人は金融屋には居ないと思われるという意味)という感じですな。

まあ社債投資家的には風前の灯的なイメージは前々からあったと思われますので、それなりに償却もしているでしょうからいきなり大騒ぎというよりは、「さて更生手続きで幾ら戻ってくるのでしょう」という話になるでしょうから、そーゆー意味では会社がお亡くなりになった後の回収率がどうのこうのというのをより精緻に分析して的な話(大丈夫か飛ぶかの2択ではなく)を生きているうちから考えながらの投資というような流れになってくるのかもしれませんね、よー知らんけど。


・基金国債買入2回目は応札が増えたでござるの巻

昨日のオペレーション

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120227.htm

国債買入(資産買入等基金) 5,000 2012年3月1日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年2月29日 2012年3月26日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120227.htm

国債買入(資産買入等基金) 26,456 5,006 0.007 0.007 87.6
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(2月29日スタート分) 21,270 10,008 0.100 0.100 47.1

つーことで、金利入札オペが(資金需給の関係上入るのはほぼ予想の範囲内ですが)昨日も打たれて、按分がだいぶ増えてきましたねという話は別にあるのですけれどもまあその件は本日はスルー致しまして(汗)、基金国債買入なのですが・・・・・

前回の基金国債買入はご案内のように2月15日という事で基金増額のアナウンスをした直後でございました。

オファーはスルーして落札結果を。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120215.htm

国債買入(資産買入等基金) 10,677 5,003 0.002 0.005 57.7

ということで、決定会合翌日に行われた国債買入よりも応札が倍以上に増えるという中々オサレな状態になっておりまして、当然ながら購入レートの方も上昇しまして、最初は出来上がりベースで0.105/0.102だったのが今回は0.107/0.107で一本値とゆーことはまあこれは入れる気満々で突っ込みましたねという感じです。

まあ何ですな、だからどうと言われると中々困る所ではありますが、毎度のパターンで決定会合直後は0.105%ビットサイドとかになった2年以内の国債ではございますが、その後足元のGCが重かったりする状況で当初の勢いがやや失速(つーても2年で0.11%になったらアホほど買いが来るでしょうが・・・・GCだってビットサイドの0.105%からよー上がらんですし)したのか、0.107%の出来上がりレートで突っ込む向きがあったとの由。

ど〜せ時間の経過とともに買入効果が効いてきて物がスッカラカンになっていくのですけれども、5月中旬まで待てないのか、それともまあこんな金利水準で持っている意味をあんまり感じないのか存じませんが、投資家の打ち込みでもあったんでしょうかねえ(業者がここまで売りに行くイメージが無かったのですが、まあ業者の外しだったらあたくしの妄想間違えですのですいませんすいません)とか思ったりもしたのですが、実際の所は存じ上げ兼ねますのでにゃんとも。

ただまあちょっとGCが重いのが影響したというパターンって包括緩和実施した時のアレの再来的なイメージを起こさせる(現実問題としては買入&固定オペのコンボがあって金自体はどう見ても余りますので、そーゆー意味では包括緩和実施後のマーライオン再来とかどう見ても有り得んのですけど)とかあるのかなあとかふと感じた昨日のひとときでございました。

#とここまで書いてあまりにもマニアな話だったことに気が付くあたくしorz


○BOE議事要旨から小ネタを

BOE2月議事要旨。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2012/mpc1202.pdf

まあ大体政策インプリケーション的には昨日引用した辺りで終了でして、結局の所おかわりすると言った手前おかわりをしている、という感じで、その背景には英国のお得意様であります所の欧州経済の先行き見通しがうんこであるというのがありますからシャーナイナイという感じなんでしょうな。

でまあそれはそれとして本日は小ネタを少々。

・良く考えたらこの概念は変だとかセントルイス連銀ブラード総裁が言いそうですな

賃金に関する部分の第21パラグラフの所を例にしてみますけど。

『The available indicators suggested that pay growth had remained subdued. According to the average weekly earnings measure, total pay growth had remained well below its pre-recession average, and had fallen back further since the middle of 2011. There had been early indications that pay settlements had picked up a little in January, but at 2.7% they remained well below pre-recession norms. Survey evidence in January from the Bank’s Agents had suggested that businesses expected settlements in 2012 to be broadly similar to those in 2011.』

ここを見ますと2回「remained well below pre-recession norms」というのが出てくると思いますが、まあこんな感じでBOEの議論の中では「リセッション前の平常水準との比較」というのが出てくる訳ですが、先日インフレターゲットマンセー講演をしたセントルイス連銀総裁のブラードさんに言わせるとこうなりそうですにゃ。

『Most analysts seem to agree that the middle part of the 2000s was characterized by a “bubble” in the housing sector. Housing prices were high and rising fast compared to nominal GDP. It is not prudent to extrapolate a bubble into the indefinite future and claim that such a calculation provides a good benchmark. Yet, that is what we are doing when we extrapolate fourth quarter 2007 real GDP. Furthermore, we normally have the good sense not to do this in other economic situations.』(これは先日ネタにした2月6日のセントルイス連銀ブラード総裁講演

まあ物価がサガランチ会長の中で緩和継続という中ではリセッション前の状態に戻って比較して〜みたいな話になるのかもしれませんけれども、よくよく考えたらこれって物価コントロールの概念的にどうなのよと思うのでありました。


・労働者のスキルのミスマッチがどうしたこうした

同じく雇用関連とかの話をしている第20パラグラフから。

『The whole economy employment rate had been broadly flat in the three months to November. While there had been some signs of stronger labour market activity in the monthly CIPS/Markit and REC surveys in January, business surveys of employment more generally had continued to point to weakness in the near term. According to the LFS, the unemployment rate had risen to 8.4% in the three months to November.』

まあここまでは現状の話ですが、ここでチャーミングなのはCIPS/Markitのサーベイの数値が妙に強い事に関してこの前の部分でも議論になっていた事ですが、たぶん時間の都合で最後に無理矢理引用だけしておきまふ。

『The extent of downward pressure that those seeking jobs would place on wages would depend on a number of factors, including how transferable their skills were.』

ほれきた。

『There was some tentative evidence that companies had been finding it harder to find suitable employees, and in the second half of 2011 the number of vacancies had been broadly stable while unemployment had increased. This could suggest that the unemployed were less able to fill those vacancies.』

ということで、米国でもこの話ありますが、労働者のスキルのミスマッチがどうしたこうしたで雇用が伸びません生産性が向上しません的な話が英国でも同様に出ているというのが何と申しますかチャーミングというか由々しき事態というか。まーこの辺りの話って労働政策の問題になりますから中央銀行の世界ではなくなる(米国の場合はデュアルマンデートだから何か口出す権利もありそうですけど・・・・・・・)ので大変ですなあと思いました。


・CIPS/Markitサーベイがやたら強めに出ている件について

第12、13パラグラフでそんな話が。

『There had been a sharp rise in the CIPS/Markit manufacturing and services surveys in January. Both had risen above their series averages, and stood at their highest levels since March 2011. The forward-looking balances in both surveys had also increased sharply, which suggested that the strength of output was expected to persist into the second quarter.』

ほう。

『The strength in the CIPS/Markit surveys had not been matched by other survey evidence, however: the CBI and the British Chamber of Commerce survey expectations had both suggested a further contraction in GDP in the first quarter.』

ということで他のサーベイと全然違う結果じゃという話。

『It was possible that the CIPS/Markit surveys were giving a misleading signal, although past statistical relationships had suggested that they were the most informative individual survey indicators of output growth. Moreover, the UK CIPS/Markit surveys had risen in common with those in many other countries around the world.』

何か凄い理屈だが(^^)、この後を読むとそうなのかなと思ってしまいます。本当はどうなのかはこれからの経済状況が答えを出してくれるでしょう(^^)。

『As for the global PMIs, it was possible that the CIPS/Markit surveys might have reflected an improvement in business conditions following the ECB’s LTRO, although it seemed unlikely that it could have led to a sharp pickup in output in such a short space of time. Another possibility, suggested by the Bank’s Agents, was that the CIPS/Markit surveys might have reflected an increase in activity as firms now decided to proceed with previously postponed investment or other spending, even though the uncertainty connected with the euro area remained.』

さてどうなるのやらという感じでございます。というようなしょうもない小ネタ俺様メモで恐縮至極でございました。









2012/02/27

お題「雑談とかBOEネタとか」

円安キターということで、何かちょうどユーロ問題が何となく解決に向けて進展した(ような気がするだけかもしれないがケンチャナヨ)こととか、米国のQE3がやるやる詐欺コースになりそうなとかいうタイミングで日本の前向き緩和姿勢への転換が思いっきり効いたとゆーことで誠に結構な話ですな、うんうん。

○早速大騒ぎキタコレ

ヤフーニュースのヘッドライン一覧を見るだけでゲップが出そうですが。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/aij/news_list/
AIJ投資顧問の企業年金資金消失問題
ニュース 45件中1〜45件を表示

まあ何ですな、厭債害債さんがエントリーを上げておられますのであたくしがああだこうだ申し上げる必要も無さそうですのでとりあえず厭債害債さんのエントリーを張るだす。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201202/article_2.html

纏めの所の・・・・

『やはり気になるのは規制当局との関係です。今回はまた慌てて投資顧問に一斉に調査が入っているみたいですが、所詮当局がどんなに頑張っても普通の世界で詐欺犯を完全に排除するのは無理だと思います。むしろ、こういう事件をきっかけに妙な規制ばかり増えてくるのが怖いのですね。もうリスク管理の世界では実際に起こっている話ではありますが。』(上記厭債害債さんのURLより)

というのが全くもって同意でありまして、早速このような動きが。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20120224k0000e040165000c.html
投資一任業者:全263社を調査へ…金融担当相
毎日新聞 2012年2月24日 11時57分

http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2012022401043
来週にも一斉調査=投資顧問対象、AIJ問題受け−金融庁
(2012/02/25-00:37)

ということで早速ヒアリングがどうのこうのとか言う話が金曜日の時点で出た次第でございますが、はっきり申し上げて今回の事案って特殊事案のような気がするんですけど、まあこういう特殊事案で急に大騒ぎされますと普通に法令諸規則を遵守して運用やってる運用会社さんには飛んだとばっちりにも程がある訳で、早速あちこちの新聞では運用会社全てが無茶苦茶かのようなミスリード記事が乱発されているのがアレでございます(まあ毎日と産経という金融経済記事に関してはアレの2大巨頭みたいな所ですが)。つーか普通に考えてこの事案が特殊とか思わないのかね最近のメディアの皆さんは。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120224-00000089-mai-bus_all
<企業年金>揺らぐ信頼 投資顧問会社調査へ
毎日新聞 2月24日(金)21時41分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120225-00000119-san-bus_all
企業年金 揺らぐ土台 ずさん運用、高まるリスク
産経新聞 2月25日(土)7時55分配信

・・・・・・・えーっとね、そもそもこの会社の内容とか見ればアレ感爆発で普通の事案じゃないとかゆー感覚にならんのかねと思うのですが、最近のメディアは一々大げさに騒ぐのを仕事と勘違いしているんじゃないですかねえ。こんな特殊なインチキくさい会社の事案捕まえて「企業年金揺らぐ土台」とか、イカサマ未公開株投資詐欺があるから株式取引が全部胡散臭いとか言うのと同じくらい極端な話だろとか思うんですけどねえ。

で、尻馬に乗るのが得意な言うだけ番長(とか言うと出禁になるんでしたっけ)の前ナントカさんがこのように仰せのようで。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120226-00000050-jij-pol
年金消失で政府に提言=民主・前原氏
時事通信 2月26日(日)16時14分配信

・・・・・・・・ああまたかという感じでございます。

しかしまあ何ですな、許可制にすると官僚のナントカがどうとかとか言って登録制にして事後的に厳罰主義というような流れにしたらまあ言っちゃあ何ですがこのような事案というのが起きる可能性はそらまあ高くなるでしょと思うのでありまして、いざ問題事案発生して大騒ぎして今度はまたいきなり規制とかゆー事になりますと、許可制で官僚の権限ガー天下りガーとか喚いていたオメーら政治家およびメディア連中は従来の主張との整合性を良く考えなさいませと存じます次第ではございます。

まあこの事案に関しては、最初から詐欺のチャリンコ経営だったのか、入口は単にヘタクソなだけでそのヘタクソを誤魔化すためにチャリンコになったのか(いずれにせよ途中からはチャリンコ経営でインチキしないと全額飛ばすとか無理だと思うのだが)判りませんが、厭債害債さんのおっしゃるように、『ニュースを見ればすでに一部では過去に「第二のマドフ」とささやかれていたらしいのですがそれでも評価が高かったという声があったようですし、そういうところに対してもほとんど監督が働いていなかったという点を考えると、暗澹たる気持ちになります。日本でも悪意を持ってだまそうとしたら、これほどまで簡単に引っかかってしまうということで、もうこれは監督の限界を感じざるを得ないのではないかと思います。』(先ほどの厭債害債の所のエントリーより)というのに同意なのでありまする。

まあ何はともあれ調査する方もされる方もお疲れ様でございます。外国投信でFOFとかになってるのとかの調査がどうのこうのとか大変そうですよね。

#国内資産の場合は普通に牽制効いているとは思いますが、運用成績の報告をした結果「どうやると毎年ベンチマークに負けるんでしょうか御社って随分ヘタクソですね」とか言われたらそれはそれでorzですなあ(違)


○BOEネタから少々

資産買入を拡大した(というかおかわりした、というのが正しい)BOE2月議事要旨。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2012/mpc1202.pdf

何か12月とか1月の議事要旨コーナーをやっていない(つーかECBとかFEDとかの方が忙しい結果として趣味コーナーの域を出ないBOEネタを読んでる暇が無くて読まないでいるうちにあっという間に2月になってしまった訳ですがorz)のですが、とりあえず1月議事要旨もちょっと参考にするかもしれませんがしないかもしれません。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2012/mpc1201.pdf(こちらは1月議事要旨)


資産買入をおかわりした理由が2月議事要旨だけ見ると唐突にも程があるというのが2月議事要旨を見た印象でございまして、結局は1月議事要旨を読まないと話がワカランチ会長なので読む破目になるという流れになる(ので継続して読むという行為が大事なんです(ドヤッ)ということで)のですが、まあそれはそれとして何でまあ唐突なのよと言う話をちょっとだけ。

景気認識の第14パラグラフ(以下基本的にお断りの無い限りは2月MPCMinuteから引用)から。

『Taking all these factors together, it seemed likely that growth in the first quarter of 2012 would be somewhat stronger than the Committee had expected at its previous meeting. There had, however, as yet been little evidence from the expenditure indicators to corroborate that. Although they had risen on the month, both the GfK and Mori measures of consumer confidence remained depressed, and suggested weak household spending in the first quarter. Export data for the fourth quarter of 2011 had been strong, but recent surveys had been weaker. Survey measures of investment intentions had been largely flat in the fourth quarter.』

ということで、微妙に留保条件を付けていますけれども、1Qの経済成長は1月MPCでの想定よりも若干強くなっているという話なんですよね。


んで物価に関しては第17パラグラフ。

『Twelve-month CPI inflation had fallen to 4.2% in December. In line with the usual pre-release arrangements, an advance estimate for twelve-month CPI inflation of 3.6% for January had been provided to the Governor ahead of publication. The fall in CPI inflation since its peak in September had largely matched the Committee’s expectations. CPI inflation was expected to fall further over the next few months, as the contributions from past petrol and utility price increases, and any remaining effects of the previous year’s rise in the standard rate of VAT, dropped out of the twelve-month calculation. Wholesale gas spot prices had risen sharply recently as a consequence of cold weather in the United Kingdom and elsewhere in Europe. Futures prices, which were more important for the setting of utility prices, had risen by far less.』

まあ先行きに関しては過去CPIを押し上げたVAT要因および原油や公共料金の引き上げ要因が弱まるので先行きのCPIは低下するでしょうという話ですが、足元のガスの価格上昇に関しては天候要因による一時的なもので先物価格が大きく上がっていないからケンチャナヨとか微妙に見通しがアレな気もします。まあ詳しい話はその先にああだこうだとあるのですが今日は割愛。

インフレレポートの検討部分のまとめが第31パラグラフにあるのですが。

『On balance, the Committee judged that - on the assumption that Bank Rate moved in line with market interest rates and the stock of purchased assets was held constant at £325 billion - inflation was somewhat more likely to be below target than above it for a good part of the forecast period. By the end of the period, however, those risks were judged to be broadly balanced. The inflation projection was somewhat higher than in November, partly reflecting the larger stock of assets on which the forecast was conditioned, but also reflecting a higher path for oil and other commodity prices.』

ということで、11月のインフレレポートの予想よりも今回のインフレ見通しは若干強くなりましたが、これは原油やその他の商品価格のパスの引き上げおよび、資産買入の拡大を反映したものです、ということですが、前半にありますように、資産買入の拡大を行なって中長期的なインフレが2%を若干下回る水準になるとゆー話でございまして、だったらもっと前から買入拡大しとけよとか思うのですけれどもまあいっか。

で、結論はこうなる。金融政策決定の第36パラグラフから。

『Against this background, and that of its most recent projections to be published in the February Inflation Report, the Committee judged that the weak near-term outlook for growth and the associated downward pressure from slack in the economy meant that, without further monetary stimulus, it was more likely than not that inflation would undershoot the 2% target in the medium term.』

はあそうですか。

『The Committee recognised that there were substantial risks to inflation in the medium term in both directions, and that it would be some time before the uncertainties around these risks were resolved. There was a range of views among Committee members over the evolution of these risks. For some members, the probability of inflation exceeding the target was slightly higher than shown in the projection to be published in the February Inflation Report, and a case could be made for maintaining the stance of policy at this meeting. For others, the case for further easing was more clear-cut.』

まあ(ちょっと今日は時間が無いので割愛しますが)1月MPCの議事要旨出た時点でまあ2月の追加買入(というよりは2月に買入が終了するので正確に言えばおかわりまたは買入の継続という事になるのですけれども)を市場に織り込ませに行ってた感じでしたので、買入やらないとマズーというのもあるでしょうが、何か見通しを上げながらも買入は継続というのに政策のロジック整合性どうのこうの言ってられない感の漂うBOEなのでありました。

第37パラグラフから。

『The Committee had announced a programme of £75 billion of asset purchases at its October meeting, and this had recently been completed. While the Committee continued to monitor the impact of its asset purchases, it saw no compelling reason to think that their impact on nominal demand would be materially different than had been anticipated in October. It would keep this under review in judging the policy actions needed to support the recovery and meet the inflation target.』

10月以降の資産買入が経済の需要に与えた効果については検証中だが、10月時点で想定していたのと違ったと考える理由は無いとな。ふーんそうですかあ(棒読み)。

『In terms of the immediate decision, the Committee considered the arguments for increasing the stock of asset purchases by £50 billion or £75 billion, either of which would be sufficient to put inflation broadly on track to meet the target in the medium term on its central projection. Committee members placed different weights on these arguments.』

で、買入拡大は実際は50bilになったのですが、75bilが適正であるという見解で票決が割れましたとか、BOEヤケクソ気味ですなあとか思うのですけれども、見通しによれば(今日は引用してませんが)今年は物価が低下して2013年の頭ごろには2%以下の水準になるとのこと(第29パラグラフにあります)ですが、ちゃんと物価下がるのかに関してはワクワクテカテカしながら眺めたいと存じます。

#以上趣味のコーナーでした、小ネタをスルーしたのでそのうち









2012/02/24

お題「やりかけで放置していたネタ整理とか雑談とかで勘弁でござる」

FOMCとECBとBOJとネタが出る中BOEのMinuteも出て逆にネタ調べの方がてーへんなんですけどorz

#2月って日数少ないから本業が忙しいんですよね〜

○ニュース雑談大会

・またこれか

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120223/t10013247201000.html
提言“日銀は物価目標2%超に”
2月23日 23時47分

『民主党の小沢元環境大臣や馬淵元国土交通大臣らは、日銀が、今後、目指していく物価上昇率を1%としていることについて、「他国より低い水準を掲げることは、円高容認のシグナルと受け止められかねない」として、2%を超える数値に引き上げることなどを求める提言をまとめました。』(上記URLより)

・・・・・・・まあ最初「中長期的な物価安定の目途」を見た時には1%だとどうなのかねえとかあたくしも思ったのでこーゆー話を言い出すのも判らんでも無いのですけれども、実際には(この前ネタにしたように)日本記者クラブでの総裁講演で「とりあえず今の経済状況で行けそうな数字という事で1%を出すけれども、経済が持続的な成長を続けるようなれば、つまり基礎的な成長力が高まれば、この1%という数字は見直す」という話をしていますわな。

で、今の状況でいきなり2%目指すっていうのは先が遠すぎる上に成長力の弱い中で2%ってのもどうよという事で1%に置きましたんですけど、という事ではないかとゆー風にその後の諸々の説明を受けて理解しましたし、まあ市場も徐々にそういう認識になってきて為替市場も反応しているとゆー感じなのではないでしょうか。

つーことでですな、「円高容認のシグナルと受け止められかねない」とか言うのは「私たちは日銀の説明を全然聞いておりません」と言ってるのと同じです罠という感じでございまして、逆にあんさんらがそういうことによって日銀の政策意図の邪魔してるだろとか思う次第で何とも残念という所ですが、まあこの人たちに取っては自分たちの経済無策のケツを日銀に回す為には日銀ケシカランを言い続けた方がお得なので、日銀の政策姿勢の変化に対しても反応しないでこういう話をしておられるのでしょうね、とあたくしも陰謀論で纏めてみた(^^)。

つーかさ、円高対策だけで「他国よりも高い物価上昇水準を容認」とか政策としての優先度のバランス意識おかしいんじゃねえのと思うのですが。おそらく今のヘドニック掛かりまくりの物価統計の中でCPIの2%上昇って生活者的な物価上昇がかなりしんどくて、低所得者とか相当苦しくなると思うのですけど、そういう事理解して「2%超」とかFRBもECBもBOEもそこまでの数字出していない水準だすかねとか思いますが。

大体お前ら「ガソリン値下げ隊」とか「消費税上げケシカラン」とか「公務員の給与削減」とか「電力料金引き上げケシカラン」とか物価が上がらないような政策の話ばっかりしてるのに日銀には物価上昇率2%超目指せとかお前は何を言ってるんだという所なんですけどねえ。


・なんぞこれ


日経新聞のニュースより、(URLがクソ長いので記事へのリンクはニュースヘッドラインに貼ります)
http://www.nikkei.com/(←こちらはトップページです)
受託年金2000億円、大半が消失 AIJ投資顧問
「高収益」と虚偽 金融庁、きょう業務停止命令
2012/2/24 2:01 情報元 日本経済新聞 電子版

『国内独立系の投資顧問会社、AIJ投資顧問(東京・中央、浅川和彦社長)が企業年金から運用受託していた約2000億円の大部分が消失していることが23日、証券取引等監視委員会の検査でわかった。長期にわたって高い運用収益を上げているとの虚偽の情報を顧客に伝え、実態を隠していた疑いがあるとして、金融庁は24日、AIJに業務停止命令を出す。年金運用会社のずさんな実態が判明したことは、企業年金の運営に深刻な影』(上記URLより、以下有料記事なので引用不能^^)

年金運用会社のずさんな実態が判明したことは、企業年金の運営に深刻な影(強調は引用者ね^^)

・・・・・・・・?????????????????

さて、この記事だと肝心の文末が判りませんが、基本的にこの文脈だと語尾が「深刻な影響を与えそうだ」となっていると決めつけて以下悪態を書きますけれども、間違っていたら深く陳謝して当該悪態部分に訂正線を入れさせて頂きたく存じますので教えてちょ。

えーっと、これって単に個別企業の問題でしょ。何で『「年金運用会社」のずさんな実体が「企業年金」の運営に深刻な影響』って普通名詞の扱いになるの????日経新聞さんは年金運用会社に何か恨みでもあるんすか???

つーかこれ何をどうすると虚偽の情報を顧客に伝えるように出来るのかがさっぱり判らんのですが、ちゃんと牽制機能がワークしていれば虚偽の情報を長期に渡って報告とか出来ない筈ですよね。

と思ったら公共放送ニュースはこのように
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120224/k10013250411000.html
AIJ投資顧問 業務停止命令へ
2月24日 6時12分

『金融庁では、証券取引等監視委員会とともに、運用の実態や年金資金の損失の状況などを詳しく調べることにしていますが、顧客の企業年金などへの影響が懸念されます。』(上記URLより)

うん、普通の報道である。これはあくまでも個別企業の事案であって、被害が起きているのもこの会社に委託していた個別の顧客企業の話でありますからして、こういう話であれば穏当であります。

つーことで、この手の報道する時はもうちょっと用語の使い方を丁寧にして頂きたいと思うのでありまして、これじゃあ知らない人が見たら「年金運用会社」というものはずさんであるという印象操作に与する事になりかねませんわな、と思うのでございます。まあ一事が万事でこの手の丁寧さに欠ける報道によって起きるミスリード(金融機関の休眠預金問題で金融機関が批判されるとかもあれは報道の仕方がミスリードにも程があるからそうなる)によって「世論」とやらが変な風に沸騰してしまう事は国民経済的にも益に繋がらないのではないかと思うのでございます。

でまあ何ですな、さっきの民主党の皆様の話にもつながるのですが、説明する方は(自分を省みても思うのですが)普段の話をするときって共通の前提認識があるからその前提認識部分をすっ飛ばして話をしがちなのの延長を対外説明時に行ってしまうという事になりがちだと思いますので、自戒も含めて対外説明時には良くその辺を注意しながら説明したいものだなどとふと思うのでありました。

#長期不活動口座の問題にしたって「私たちは時効の援用をせずに、いつまでもお客様の預金であると認識してお預かりしているのですが、税務当局から利益扱いするようにと指導されているのでやむなく(というとどうせ税務当局が怒るので「やむなく」が使えないのが困るのだが・・・・・・・)利益扱いします。口座が復活したら損失扱いして通常の預金口座と同じ形に戻りますので、お客様の預金を勝手に懐に入れている訳ではありません」とか丁寧に説明してちゃんとそういう風に報道されているか確認する、って所になるんでしょうかね。よーわからんけどさ。


○放置ネタシリーズ:ECBドラギ総裁記者会見(引用有り)

14日にドラギ総裁会見ネタを書きましたが、その後まさかの日銀渾身の追加緩和が出てしまいましてその後が宙に浮いておりましたので今さらながら引用を。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120209.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 February 2012

・担保政策に関連して:各国中銀がリスクを取るとな

質疑の一部を切りますが。

『And, as a follow-up to a previous question, on the collateral you say you will manage the risk. Why will the Eurosystem not share the risk? Why does it have to stay with the national central banks?』

で、答えも対応する所のみにします。

『Concerning the collateral, on top of all the risk management measures and on top of all the strong over-collateralisation - which, once you apply these haircuts, reduces the amount of acceptable collateral by almost two-thirds - to assess the creditworthiness of a credit claim it is essential to know the economy where this credit claim originated. In other words, knowledge of the domestic economy is essential for understanding the creditworthiness of a bank credit claim. The assessment by the national central banks is very important, even though it is conducted on the basis of a common guideline.』

『Therefore, we want to keep the risk related to these assessments with national central banks so they bear the full risk of their choices. In a sense, it is a further mitigating measure for the risk we are assuming. The Banca d’Italia, for example, would carry out the assessment and then it would present the assessment to the Governing Council on the basis of a common guideline and on the basis of common haircuts. So, with a credit claim of about 9, strong over-collateralisation would yield around four - or three, probably - as acceptable collateral. Of this three, the risks must be assessed according to the common guideline and presented to the Governing Council. 』

ということで、各国中銀はその各国の金融市場(というか与信市場というか)の実情に基づいてECBの定めるガイドラインに基づき独自の担保基準を設定してくんなましという話で、これはこれで理に叶っているように見えるのですけれども、ただ担保政策というのも金融政策の中では重要でありますので、その部分を(一定のガイドラインの下で行いECBが審査するとは言え)各国中銀に下してしまうというのは金融政策の共通化という話からするとちょっと微妙な気がするのですが、単なるあたくしの気のせいかもしれません。

今申し上げた「ECBが審査する」云々はその後の質疑にございますので念の為引用。

『I have just a follow-up on collaterals: you told us that the national central banks will present their risk assessment to the Governing Council, but what exactly will happen if some members of the Council aren’t satisfied with what is presented?』

『On the first question, it would be like any other discussion in the Governing Council. We will look -- obviously together with the risk management officers and other very competent staff, -- at the assessments, we will have a discussion and if the Governing Council is not satisfied it will not be accepted. It’s like any other discussion.』


・やってることって裏口財政マネタイズですよねという質疑

まあLTROの担保がアレですからねえ。

『Mr. Draghi, you warned two months ago about legal tricks that circumvent the spirit of the Treaty and that the ECB’s credibility depends on the spirit of the Treaty. All of this talk about what the ECB is going to do with its bond holdings centres around getting money to Greece. There is a hole of 50 billion euro or so, a hole in the funding, and the governments and the banks seem to want the ECB’s money. Is it still your position that the ECB needs to avoid legal tricks? And are these options legal tricks?』

『Absolutely, you can rest assured that this is still my position. So, all the talk about the ECB sharing the losses is unfounded. But I cannot say what we can do about this until tonight, probably after the Eurogroup meeting. We will have to see. Let me add one thing, because perhaps I am not being completely clear. The idea that the ECB could actually give money to the programme would violate the prohibition of monetary financing.』

はあそうですか(棒読み)という感じですが、実際問題としてどう見ても尻抜けです本当にありがとうございましたという所ではあるのですけれどもねえ。

で、裏口財政マネタイズですよねという質問は最後の質問です。

『Secondly, you are certainly aware that, despite all the success of the LTRO, that in this country some people at least argue that this is a sort of hidden government financing. What is your position on these critical remarks?』

まんまですな(^^)。

『As regards your second questions, the 3-year facilities are there to be used. There is no stigma whatsoever attached to these facilities. This has to be understood by everybody. I would describe some of the statements made as “statements of virility”. Namely, that it would be undignified for a serious bank to access these facilities.』

ほほう、どう使うかは各銀行の経営判断とな。

『Now let me say that the very same banks that made these statements actually already access different kinds of facilities such as the euro dollar credit swap facility. Another bank, which according to a newspaper report made an indignant statement that there would be a stigma, actually accessed the LTRO. So, some of these “virility” or “manhood” statements are often incorrect. I think it’s a business decision. Some banks thought that it is far better for banks to fully access these facilities, unlike those that made these statements. So they saw no stigma. It’s a business decision that should be presented as such. I should add that the crisis, which the banking system and the funding system is currently facing, originates from a sovereign crisis. So the banks that happen to be located in countries that do not have any fiscal crisis, that have always undertaken the appropriate reforms, should give more credit to their governments for having been virtuous all along.』

ああだこうだ言ってますが、結局これは質問に対する答えを「いや銀行の流動性支援を実施する中で銀行がこのファシリティーをどう使うかというのは色々とありまして・・・・・・・」ってな感じで誤魔化しているのがチャーミング。

そういやここにありますが、LTROを使うのにStigmaが無いという話をしている件に関して確かCSとかINGとかの経営が「いやこれ使うのStigmaあるだろ」的な話をしていたとかいうのを先々週の末辺りにブルームバーグニュースか何かで見た記憶があるのですが、今さらサルベージするのめんどいので割愛(^^)。


・担保拡大は全会一致ではないと

まあそういう可能性もあるかなとは思いましたが、ここで反対が出ているのも空気読まないなあと反対者の原理主義者振りにある意味感心するのですが。

『And secondly, could you give us a flavour, please, on how the discussion went on extension of the collateral framework and the changes in the quality standards? Was it unanimous, was there a wide agreement, were there lively discussions, as you called it last time when the interest rates were lowered?』

『As regards your second point, the discussion was not unanimous, but it was not particularly contentious. There was wide agreement, although there was no unanimity.』

意見は分かれたが大きな問題になるほどではないという事ですが、全員一致ではなさそうですな。


・リスク管理ちゃんと出来てるのかという質問が色々

・・・・・・で、これがまた結構アレなのですが、気がついたら時間が無くなってしまうというorzな状態ですので以下ネタが切れたら出すかもしれませんが、次回のECB会合が出たら証文の出し遅れになるのでたぶん出しません。

ということで関連質疑を少々だけ引用。一連の質疑応答という流れです。

『And a second question, a personal one: you have already shown us that you are a good risk manager, but what about your stance as a central banker, and what is your personal conclusion after your first 100 days in office?』

『Now, the second question was about my first 100 days. Well, it’s hard to respond but if you read a few newspapers that are also represented here you will get a full documentation of what they think.』

『But what about your principles as a central banker then? You’ve shown us that you are a good risk manager, but it is hard to get any statement about you or your stance.』

『Well, I think the proof is in the eye of the beholder. I have respected the mandate of the ECB, which is to maintain price stability in the medium term. Inflationary expectations have remained firmly anchored - both before I became president, in the years of my predecessor, and in the first 100 days. But admittedly, it is a very short time to judge someone, it could get much worse.』

『I was a bit confused by your initial statement when you said: “Yes, we take on more risks, but we manage them well.” Could you perhaps just clarify on balance: is the Eurosystem more at risk or less at risk, or is it equal, as a result of
your decision?』

『We, the Governing Council, thought that the amount of risk that was taken on board was perfectly acceptable and very well managed. We take risks with everything: we take risks with normal monetary policy operations, with LTROs, with the SMP. The important thing is that once we take these risks, firstly we don’t judge them to be excessive and secondly, and most importantly, we manage them well. We have full confidence in our staff that these risks can be well managed.』

時間が無いので訳等は割愛であるが、ECBの担保拡大に関しては「リスク管理大丈夫なのか」的な質問も結構な勢いで飛んでいるというのが興味深いっつーか質疑応答のレベルがやはり高い(日本政府の介入がどうのこうのとか質問する馬鹿野郎もいるのですが)なあと思うのでございましたです、はい。


#あら、放置ネタもっと成敗するつもりだったのに結局ECBネタしか成敗していないわorz









2012/02/23

お題「いまさらですが1月決定会合議事要旨とか」

○その前に市場雑談

・3か月TB入札の足切り利回り上昇

昨日の3MTB入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240222.htm

(3)募入最低価格 99円97銭4厘0毛
(募入最高利回り) (0.1043%)

(4)募入最低価格に 9.2099%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭4厘2毛
(募入平均利回り ) (0.1035%)

ということで、久々に3MTB入札の足切りが0.1043%レベルに上昇しまして、まあこれは足元の金利入札オペが不足気味の為に(でも6か月オペは札割れなのですけれども^^)在庫ファンディングが重く、海外の買いもそんなに多くないという状況でしたので、足切りが0.1043%レベルに届いたという事ですが、按分率9.2%というのは事前予想よりも強めの結果だったようで、もうちょっと流れたらセカンダリーで買いがわさわさとなったかもしれませんが、まあそれほど盛り上がらんとな。

まあ何ですな、足元は短国の在庫がやや重めかもしれませんが、どうせ基金買入が積みあがる中で当座預金残高が積みあがってくればそのうち資金潰しで短国も買われていくでしょうから、そー考えますとこの位の期間の物は買うのはいいけど再投資リスクはある罠(=もっと長い方が良い)ということなのですが、再投資を考えた場合にウマーかもしれない2年とかの年限に関してはロクなレートが出ませんので(2年カレントって引けは0.105ですけど1000億とか買いに行ったら0.100になるんでしょどうせ)まあ長いのを買おうにもねえという感じですな。


・交付税特会借入入札は金利低下とな

昨日の交付税特別会計入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result120222.htm

(3)募入最高利率 0.111%
(4)募入最高利率における案分比率 51.5170%
(5)募入平均利率 0.108%

先週の交付税特別会計入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result120215.htm

(3)募入最高利率 0.117%
(4)募入最高利率における案分比率 22.5000%
(5)募入平均利率 0.111%

ということでこちらの金利は順調に低下。まあ交付税特別会計入札は短国入札と違ってディーラーの在庫状況云々関係ない(転売目的で買う物ではないから)のと、そもそも6か月固定金利オペが絶賛大札割れになりますように、6か月の固定金利の調達がイラネという状況であればその裏で6か月の運用に関してはニーズがありますがなという事でしょうな。しかしアベレージで0.11割るとは中々オサレな展開。



○ということで1月決定会合議事要旨ですが、公表方法何とかならないのでしょうか・・・・・・

先週出ていたネタで恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120124.pdf

まあ2月の会合で大ネタが炸裂したので1月会合自体は地味ですなという事になるのかもしれませんけれども、まあ示唆されるものもあったりしてということでサラサラと。

・期待インフレの低下を指摘

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

本文9ページ(PDFファイルでは11ページになります。以下同様で2ページ分ファイル上ではずれます)から。

『何人かの委員は、欧州ソブリン問題の長期化や各国の金融緩和等を背景に、対ユーロを中心に円高圧力が根強く、これがわが国の株価や企業マインド、ひいては景気の下押し圧力につながらないかどうか、注視していく必要があると述べた。』

という所から始まる部分でございますが、この先がインフレ期待の話になっています。

『複数の委員は、家計や企業の短期的なインフレ予想がこのところ幾分低下していることに言及した。』

キタコレ。

『このうちの一人の委員は、こうした動きは、生鮮食品やその他購入頻度の高い品目の物価上昇率の動向に影響されていると考えられると述べた。別の一人の委員は、短期的なインフレ予想の低下により、インフレ率が長期のアンカーに収束していく速度が遅くなる可能性があると付け加えた。』

ほほ〜、ということで本文11ページ(展望レポートの中間評価)から。

『物価面のリスク要因として、委員は、国際商品市況の先行きに関する不確実性が大きいとの見方で一致した。原油価格については、イラン情勢を巡る地政学リスクが意識され、このところやや強含んで推移しているが、仮にイラン情勢が緊迫化した場合、原油価格の大幅上昇等を通じて、わが国を含め、世界経済に大きな影響を与え得るだけに、今後の展開を注意深く見ていく必要があるとの認識を共有した。』

原油上昇→物価上昇ではなく、原油上昇→景気下押しを懸念しているのですね、わかります。

『複数の委員は、消費者物価がプラス圏で定着するようになるには時間がかかると予想されることを踏まえると、家計や企業が物価は中長期的にも上昇しにくいという予想を強めていくことにより実際の物価が下振れる可能性に、注意する必要があるとの見方を示した。』

期待インフレ率低下の議論キタコレ。


・FRBのコミュニケーション戦略に対応しましょうかねえという検討

念の為ですが、この決定会合は前回のFOMC決定前(直前)に行われておりますざます。

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の本文12ページより。

『政策金利を巡る時間軸について、委員は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとの方針を、これまで以上に粘り強く対外的に説明していくことがきわめて重要との認識を共有した。』

ほほう。

『何人かの委員は、こうした時間軸の示し方は、現下の日本経済の情勢等を踏まえると、金融政策の透明性や有効性の観点から適切であるが、米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり、情報発信のあり方については不断に点検を続けていくことが重要であると付け加えた。』

>米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり

・・・・・・ということで、FOMCでの時間軸強化によって日米金利差がどうのこうので為替がああだこうだとなると困りますので日本の時間軸が長いんですよと宣伝しようという話があったりしますし、「情報発信の見直し」という話もあったりしますわな。

『このうちの一人の委員は、情報発信に当たっては、時間軸を通じた景気刺激効果は、景気回復が進むにつれて徐々に強まっていく性格のものであることを、しっかりと説明していく必要があると述べた。』

これはまた懐かしい理屈。俊ちゃんの話によくあったわ。


・ということで議事要旨発表のタイミング何とかならんのかといういつもの話

つーことでですね、この議事要旨が2月の決定会合の前に出ていると、「期待インフレ率の低下を意識している」という部分と「情報発信に関してFRBの見直し結果を意識している」という部分の合わせ技で、別に政治家がやいのやいの言い出す前から今般の色々な政策打ち出しへの布石は打たれていましたよね、という話になるような気がするのよ。

となりますと、政治に押し込まれた(そらまあ政治がやかましいのは検討を加速する材料にはなったとは思いますが)という印象、というかそのような報道(ロイターとかの「日銀は政治に押し込まれて云々」強調報道とか国益を何だと思ってるんだと存じますけれども所詮ロイターですからねえ)が目立つのですけれども、まあFRBが見直しをした際には市場の反応見ながら何か出しましょうかね位の準備はしていたのですなあ(準備してないと今回のような割と考えているかなあと思われる施策、つーか政策の方向性見直し(下振れ対応→俊ちゃんスキームへの転換)は出てこないでしょ)と思われるのですな。

然るに、この議事要旨が出るのが次回の決定会合終わった後になりますので、前回の決定会合でどのような議論が行われて、それが次回の会合にどう影響していきそうなのかというような検討がイマイチできないというのは何か勿体ないですなあと思うのでございますよ。それに次回の決定会合前に議事要旨出るようになったら、議事要旨に対する注目度も上がる(ので毎度飽きもせず読んでいるあたくし歓喜の展開でもあるというポジションではないがポジショントークも含め^^)という気がするんですけどどうでしょうかねえ。

ちなみに議事要旨見ますと、本文15ページにこのようなのがありますわな。

『Z.議事要旨の承認

議事要旨(2011年12月20、21日開催分)が全員一致で承認され、1月27日に公表することとされた。』

ということで、議事要旨って決定会合の議決事項になっているのですけれども、日銀法を見ると・・・・・・

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html
日本銀行法(平成九年六月十八日法律第八十九号)

(議事録等の公表)
第二十条  議長は、金融調節事項を議事とする会議の終了後、速やかに、委員会の定めるところにより、当該会議の議事の概要を記載した書類を作成し、当該書類について金融調節事項を議事とする会議において委員会の承認を得て、これを公表しなければならない。

2  議長は、委員会の定めるところにより、金融調節事項を議事とする会議の議事録を作成し、委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に、これを公表しなければならない。

(上記URLより引用)

ということで、1が議事要旨の公表、2が議事録の公表に関する話なのですが、ここにありますように議事要旨の承認が『当該書類について金融調節事項を議事とする会議において委員会の承認を得て』とあるのが極めて遺憾でございまして、この部分って何とかならんのかと思うのですよね。議事要旨承認の為の政策委員会って何とか法解釈駆使して出来ませんかねえとか思うのですけれども難しいですかねえ。


・その他議事要旨ネタ:札割れの解釈が・・・・・・・

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の本文12ページから。

『資産買入等の基金について、委員は、金融資産の買入れ等を着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当との認識を共有した。何人かの委員は、このところ、社債等買入れや国庫短期証券買入れにおいて札割れが生じ、6か月物の固定金利オペの応札倍率が低下していることは、強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れであるとの見方を示した。』

・・・・・・・・・・・・???????

『このうちの一人の委員は、金融市場の状況次第では、引き続き札割れが生じ得るとの見方を示したうえで、今後もオファーを地道に継続し、市場の安心感を維持していくことが重要と指摘した。別の一人の委員は、金融緩和を強化するために、基金を導入した以上、基金の積み上げの期限が本年末であることを念頭に置いて、買入れが実現できるよう一段と努力する必要があると述べた。』

・・・・・・・えーっとですな、この部分なのですけど、最後の一人の委員さんが言う「基金を導入した以上、基金の積み上げの期限が本年末であることを念頭に置いて、買入れが実現できるよう一段と努力する必要がある」という話が自然な話のような気がするのですが、特に前半の「強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れである」という部分がアレでございまして、このニュアンスだと札割れしていても無問題的なイメージを与えるのでございますよ。

となりますと、基金残高の積み上げってコミットメントですよねと言う風に市場は基本的に認識していると思われる(それを前提に2年とかの金利が下限に張り付いて来ているのですから・・・・・・)のですが、札割れの結果として残高積みあがらないなら別に結構ですよというスタンスだと話が違いますがなという理解になり兼ねませんわなという所と存じます。

まあその後の17日の白川総裁講演で前のめりな緩和積極姿勢が伝わったので一旦はこの辺りへの疑念も後退しているようには思えるのですが、今回の基金買入に関しては前回実施した社債・CP買入とは違い、市場安定化なのではなく金利引き下げ促進という施策であって、残高をコミットしているというのが話が出てきた時のスタンスの筈ですので、あまり「強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れ」というようなのんびりした解釈をするのは市場に「という事は買入基金積み上げなくても良いと思っているのか」という疑念を与える事に繋がりかねないので、前回の買入の時と同じような評価をするのはマズーではないかと思うのであります。

つまり何だ、前回の社債・CP買入は市場安定化策であって、市場が安定化したら札割れになるようにそもそも設計していたので札割れ上等で政策効果の浸透の結果ですというロジックは正しかったが今回札割れ上等的な物言いをするのはあまり宜しくないよねっつー事である。

ということで時間も無くなったので本日はこんなところで勘弁でございまする。








2012/02/22

お題「今日は概ね雑談で勘弁である」

ギリシャのニュースはどうもあたくし何が何やら相変わらずワケワカランチンでございますのでフォロー不能状態ですが、北禿先生のボログが段々楽観的になってきているように見えるのが気になります。

○ロールの6か月基金共通担保オペも札割れ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120221.htm

共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年2月23日 2012年3月22日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年2月23日 2012年8月29日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120221.htm

共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(2月23日スタート分) 35,810 10,010 0.100 0.100 28.0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月23日スタート分) 6,255 6,255

・・・・・・ということで今回の6か月基金共担オペも札割れなのですが、今回のオペはロール分でして、つまりそもそも23日に8000億円の固定金利オペ6か月物の期落ちがある筈なのですが、そのロール分のニーズすら未達という大変に素晴らしい状態となっている訳でして、前回新規で実行した時はまあ新規だからニーズ無いものは無いわなという話でしたが、当然の如くロールのニーズも低下というお洒落な状態(しかも前回よりも札割れ規模が大きくなっている)となっておりまして、これはもう6か月物固定金利オペの残高が目標達成への積み上げどころか残高維持にも黄信号となっておられる訳で誠に遺憾に存じます。

一方で同日に実施された金利入札方式の1か月物の共通担保全店オペは1兆円のオファーに対して3.5兆円の応札があったという事で、こちらはニーズがあるという状態ですので、つまり6か月のオペに札が入らないのは金が要らない訳では無くて、「6か月という期間の資金供給というものにニーズが無いだけです」という事でありまして、まあ長いオペのやり過ぎでバランスがおかしくなっているという事ですな。

んでまあ現状ではこんな感じで短い金利入札オペに札が入っていますが、今後更に買入等の残高が拡大すると当座預金残高自体も(国債大増発でもしない限り)拡大していくようですので(詳しくは2月17日に東短リサーチの飯田上席研究員がレポートにしておられますのでお問い合わせは東短リサーチまで^^)、そうなりますと「期間的にニーズ無し」に加えて「そもそも金イラネ」状態になるという事になりますので固定金利オペの残高コミットどうするんでしょうかねえとしか申し上げようがありません。

ということで益々テクニカルな限界に近づきつつある包括緩和の基金オペはこれからどうするんでしょうかねえというテクニカルな雑談でございました。


○復興債の金貨がどうのこうの

ただのメモである。

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p240221.pdf
個人向け復興応援国債の発行条件等


http://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/earthquake_reconstruction/kk240221a.html
東日本大震災復興事業記念貨幣(第一次発行分)の形式等(イメージ)

『平成27年度に発行する記念貨幣(プレミアム型)のうち、第一次発行分の形式等については、以下のとおりとする予定です。』

まあふーんという感じではございますが、金貨目当てと「復興」というのにホイホイ釣られてどの位の買いが入るのやらという感じであります。まあ今は銀行金余りですから預金を少々吸収されても屁でも無いでしょうけれども、遠い(かどうか知らんが)将来に「愛国国債」みたいなノリでどんどん出てくるとクラウディングアウトだの民業圧迫だのという話になるんですかねえ、よー知らんが。

ただまあこの前の復興国債の売れ行きも好調だったようですし、個人向け国債の定着という意味では今の所はあるべき流れのような気もするし、かと言ってバカ売れされて他の金融商品が売れなくなるとやはり勘弁的なイメージもあって金融業界の中の人としては中々ムツカシヤです(^^)。

http://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/earthquake_reconstruction/kk240221.html
東日本大震災復興事業記念貨幣の発行決定及びデザインの公募を開始します

『3.第二次発行分から第四次発行分の図柄につきまして、財務省及び独立行政法人造幣局は、別紙2の要領で記念貨幣のデザインを募集します。なお、デザイン募集の詳細な要領については、官報及び造幣局ホームページに掲載することとします。』

だそうです。まあ絵心の無いあたくしなのでイメージそのものが湧かないのが残念でございます。まあ震災復興だから後藤新平でもデザインに使ったらどうですか(違)。


○これはホンモノの風格を感じます

代議士さんなので直リンは自主規制しますが、民主党の木内孝胤さんのサイトにこんなのが。

ttp://takatane.com/blog/2012/02/15_1945/
デフレ脱却に向け、日銀はインフレ目標を導入しましたが・・・・・・

まあ何ですな、物価目標が1%じゃなくてもっと上にしろという意見はそれはそれで1つの見解(ただまあこの後に行われた白川総裁の日本記者クラブでの講演ですと1%というのはとりあえず達成可能性のある数字を出してみたという感じで、日本経済が持続的に成長するならば1%の数値を引き上げるような話をしていて、別に1%になったら満足という物ではなさそうにも見える(もちろんそれはリップサービスなのかもしれないけど)のですけれどもね)ですのでまあ良いとしまして、ホンモノの風格はその後にあります。

『めどが1%であるために、結果として追加緩和の額が10兆円少なく、本来であればを目標2%として緩和を40兆円規模とする必要があります。あるいは3%の目標で60兆円程度緩和するべきです。』(上記木内代議士サイトより、以下同様です、なお原文ママ)

まあタイポはご愛嬌ですけれども、それはそれとして追加緩和20兆毎に1%の物価上昇となるというその積算根拠が物凄い勢いで良く判りません。つーか本当に20兆追加緩和して何の副作用も無く間違いなく1%物価上昇するなら日銀だってあっさり20兆円追加緩和しますがな・・・・・つーか今までの拡大部分に対してこれから20兆円拡大すると1%物価上昇するとかいう斬新な理論との整合性とかをとっくりとお聞かせ頂きたく存じます。

『何故日経が毎回日銀を評価するような記事を書くのか。日経の記者から聞いた話では、日経では日銀キャップとならないと出世できないとの事。即ち、日銀の提灯記事を書かないと日銀キャップになれないからです。更には、各御用学者も提灯記事を書かないと重要情報から遮断されるからです。』(木内代議士サイトより)

出たな陰謀論。つーかそんなに日銀に力があるなら日経の社説や記事であんなにケチョンケチョンに言われないと思うのですけれどもと思いますし、日銀キャップになるならないは日経新聞の人事の問題じゃないのかね。つーか「出世するような人が日銀キャップになる」っつー事じゃないのですかねえ。で、もっと訳判んねえのは御用学者云々の話で、重要情報から遮断って学者で日銀から「重要情報」とやらが必要になる場面があるとは思えませんし、大体からして各種データはすべて日銀のサイトで公表されているし、公表できない物は公表できないし、そもそも「公表できない重要情報」とやらがあるとして、研究論文でそんなの使ったらお縄コースじゃん。意味判んねえ。

『日銀が追加緩和に消極的な理由は、追加緩和をしてもデフレは脱却できないと説明しているためであり、デフレ脱却してしまうと困るからであると推察しています。』(木内代議士サイトより)

何か意味が良く判らない「推察」が飛び出しておりますけれども、デフレ脱却して金利の上げ下げで金融政策をやるような正常化できた方が日銀的には良いに決まっていますし、大体からしてそうなれば日銀総裁がああも年がら年中国会に呼び出されて馬鹿だアホだ言われなくて済むので日銀としてはどう見てもデフレ脱却した方がお得だと思いますが。

つーか、「追加緩和してもデフレは脱却できないと説明」ってどこでそんな話をしているのやら。だったら追加緩和してないと思うのですけどねえ・・・・ってまあ「金融政策単体での脱却は困難」という話を受けている事だと思いますが、どうも文脈を雑に解釈した結果「追加緩和でデフレ脱却すると日銀が困る」という不思議な結論に達しておられるものだと「推察」させていただきましょう(^^)。

『4月3日に任期をむかえる日銀の審議委員もリフレ派を選ぶべく努力して参ります。』(木内代議士サイトより)

だそうでありまして、いやまあリフレーション政策提唱の方が審議委員になられるのは論議の活発化という意味でも結構な話だとは思うのですけれども、上記のような粗雑にも程がある(別に1から10まで精密にやれっていう話ではないですし、そもそもやってみないと判らないというのが非伝統的金融政策ではありますが、上記の話はあまりと言えばあまりに雑な議論でしょうよ・・・・・・)ような政策提唱をされたり、わけのわかんない陰謀論を展開されるような方ですとただのノイジーキャラクターにしかならないんですけどねえ。

まあこういう威勢の良い話をする政治家先生に限って実際に物価が上昇基調になると「インフレはケシカラン物価対策しろ日銀は何やってるんだ」とか言い出すんじゃネーノというのに1万ドラクマ。

・・・・・・・・でですな、何でこんなネタを出したかと申しますと、こちらの代議士先生のプロフィールを拝読して愕然とした次第であります。いやあこれでコレド日本橋牛印証券(仮名)のIBでMDだったんですかそうですか。はあ・・・・・・

何と申しますか、「金融業界出身」の議員先生(石原さんとこの三男坊みたいな世襲系じゃないお方ね)って最近増えた気がするのですが、あたくしが金融政策方面から気が向いた時に限りその方々の言動を眺めておりますと、あくまでもあたくしの個人的印象で大変に恐縮でございますが、甚だアレなお方が多うございますという感じでして、これって正直金融業界のレピュテーションにも関わる話ではないかなどと懸念したくなってくる今日この頃でございまして、極めて遺憾に存じますです、はい。


○などと雑談書いてたら時間がアレですがFOMC議事要旨の続きを少々

まあ最後の部分ですけれども、これは既に指摘されている話なので正直俺様メモ。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120125.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120125.pdf

『Committee Policy Action』の所から。

『Members viewed the information on U.S. economic activity received over the intermeeting period as suggesting that the economy had been expanding moderately and generally agreed that the economic outlook had not changed greatly since they met in December.』

ということで、見通しはあまり変わっていませんという話をしてこの後ああでもないこうでもないという話が続きますがそこは割愛して先行きの金融政策に関しての追加緩和をするのしないの関する部分ですので後の方のパラグラフになります。

『A few members observed that, in their judgment, current and prospective economic conditions--including elevated unemployment and inflation at or below the Committee's objective--could warrant the initiation of additional securities purchases before long. Other members indicated that such policy action could become necessary if the economy lost momentum or if inflation seemed likely to remain below its mandate-consistent rate of 2 percent over the medium run.』

つーことで、現状の調子だと追加緩和が必要というのが「A few」で、今後景気のモメンタムが悪化したり、物価の下落傾向が顕著になって2%を大きく割れる事が展望できるなら追加緩和が必要というのが「Other members」ですな。

『In contrast, one member judged that maintaining the current degree of policy accommodation beyond the near term would likely be inappropriate; that member anticipated that a preemptive tightening of monetary policy would be necessary before the end of 2014 to keep inflation close to 2 percent.』

どう見てもラッカー総裁です本当にありがとうございました。


んでもって12月のFOMC議事要旨ではこの辺がこうなっておりました。同じような辺りにございます。

『A number of members indicated that current and prospective economic conditions could well warrant additional policy accommodation, but they believed that any additional actions would be more effective if accompanied by enhanced communication about the Committee's longer-run economic goals and policy framework.』

『A few others continued to judge that maintaining the current degree of policy accommodation beyond the near term would likely be inappropriate given their outlook for economic activity and inflation, or questioned the efficacy of additional monetary policy actions in light of the nonmonetary headwinds restraining the recovery. 』

まあメンバーの顔触れが変わっているので正常化必要だよ派が減っている(12月時点での正常化派はコチャラコタとかプロッサーとかフィッシャーとかいましたから)のは良いとしまして、追加緩和必要だよ派が「A number of」だったのがいきなり減っていまして、今回の追加緩和のようなもの(単にフォワードガイダンスを長期化しただけですが)で満腹になってしまったのですかねえ???というのが微妙に????ではあります。まあ足元の米経済の指標が堅調なのと、物価が案外サガランチ会長なのが影響しているのかもしれませんけれども、この間の変化がちと気になる所ではありますな。

#という話は既に本職の方々のレポートで見飽きたと存じますが、これは俺様備忘録ということで俺様向けに置いておくのでありますた








2012/02/21

お題「FOMC議事要旨ネタですがフォワードガイダンスの議論が盛り上がっている件について」

1月議事要旨ネタである。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120125.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120125.pdf

今回はSEPのコーナーはあるわ、年次改定項目の決定事項はあるわで全部で31ページもありやがるのですが、手抜きのあたくしは通常の論議をしている本文部分(7ページから17ページ)しか読んでいないので3分の1しか目を通しておりませんが何か?

○再掲だが金融政策の長期的なゴールに関するステートメントに関して

冒頭にございます件、この前ちょっとだけ引用しましたが再掲。

『Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy』から。

『Following the Committee's disposition of organizational matters, participants considered a revised draft of a statement of principles regarding the FOMC's longer-run goals and monetary policy strategy. The revisions reflected discussion of an earlier draft during the Committee's December meeting as well as comments received over the intermeeting period.』

ということで12月のFOMCでドラフトがあってそれをリバイスしたみたいですな。

『The Chairman noted that the proposed statement did not represent a change in the Committee's policy approach. Instead, the statement was intended to help enhance the transparency, accountability, and effectiveness of monetary policy.』

これまたFOMCの時にも強調されていましたが、「これによって政策アプローチを変更した訳では無く、透明性や説明、金融政策の有効性を高めるための物である」とバーナンキ議長が強調している訳でございまして、つまり今回のこれを持って「FRBがインフレ目標を導入した」というのであれば日銀の先般の施策もインフレ目標を導入したという話でしょと思う次第で、中日新聞様辺りがFRBはインフレ目標を導入しているのに日銀は導入していない的な批判を相変わらずしているみたいなのですが、そら随分と議論に偏りがありゃせんですかと思うのですよ、そらまあバーナンキさんは神様で日銀はダメで白川さんはしょうがねえとかいう先入観があるんでしょうけれども、先入観で報道とか社説とか展開されたらたまらんわ。まあしつこくなるからこれ以上細々書かないけど。

『In presenting the draft statement on behalf of the subcommittee on communications, Governor Yellen pointed out several key elements.』

この施策に関する小委員会の仕切りをやってたイエレン副議長が今回の文案の説明に際してキーとなる要素を指摘しました。

『First, the statement expresses the FOMC's commitment to explain its policy decisions as clearly as possible.』

コミットメントというのがこことその後に出てくるのですが、どうもこれはデュアルマンデートの達成に対するコミット的な話で、数値に関しては当たり前ですがフレキシブルターゲットですし、そもそもコミットっつーてもそれをどのくらいの期間で達成して達成しない場合にどうなりますとかいうような話がある訳ではござーませんわな、まあ現在の金融政策の枠組みの潮流を考えた場合当たり前ちゃあ当たり前ですけど。

『Second, the statement specifies a numerical inflation goal in a context that firmly underscores the Federal Reserve's commitment to fostering both parts of its dual mandate.』

FRBのデュアルマンデートの双方を達成するためのコミットメントを強調するという文脈において、数値的なインフレのゴールを特定しますとな。

『Third, the statement is intended to serve as an overarching set of principles that would be reaffirmed during the Committee's organizational meeting each year, and the bar for amending the statement would be high.』

まあこれも当たり前っちゃあ当たり前ですが、年次でこのステートメントの見直しを行いますが、その変更へのバーは高くなるべきであるって事ですな。まあこの辺に関しては公表文書にもございましたのですが改めて。

で、議論がどうのこうのという話は無くていきなり結論になってしまうのがちょっと残念ではございますけれども。

『All participants but one supported adopting the revised statement of principles regarding longer-run goals and monetary policy strategy, which is reproduced below.』

公表文書部分は割愛します(公表文書そのまんまです)。

『All FOMC members voted to adopt this statement except Mr. Tarullo, who abstained because he questioned the ultimate usefulness of the statement in promoting better communication of the Committee's policy strategy.』

この前引用しましたが、タルーロ理事はこのステートメントがFOMCのコミュニケーションポリシーの改善に対する有用性に対して疑問があるという理由で反対したのですけれども、具体的にどのようなケースを想定して反対したのかを聞くチャンスが欲しいなあとは思うのであります。


○インフレの見通しに関する見解が思いっきりスプリット

んでまあ途中の連銀スタッフのレビュー部分とか全部スルーしまして(一応読んだのでネタが無かったらネタに使うかも^^)『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の思い切りケツの方から(つまりインスタント手抜き法での読みと結果的にネタとして使っているのが同じという残念な状態に)参ります。

インフレに関するパラグラフの後半から。

『Looking farther ahead, participants generally judged that the modest expansion in economic activity that they were projecting would be consistent with a gradual reduction in the current wide margins of slack in labor and product markets and with subdued inflation going forward.』

大勢の見方自体は引き続き同じで、経済見通しに関して緩やかな改善を想定している事から、現在の労働市場および生産市場の大きなスラックの改善も緩やかにとどまり、先行きのインフレも抑制されるでしょうという話ではあるのですが・・・・・・・

『Some remained concerned that, with the persistence of considerable resource slack, inflation might continue to drift down and run below mandate-consistent levels for some time. However, a couple of participants were concerned that inflation could rise as the recovery continued and argued that providing additional monetary accommodation, or even maintaining the current highly accommodative stance of monetary policy over the medium run, would erode the stability of inflation expectations and risk higher inflation.』

ということで、数名(some)のメンバーはスラックの大きさによってインフレがマンデートでの望ましい水準を下回って推移する可能性を指摘し、一方で2名(a couple of)のメンバーは経済が回復過程にある中において追加緩和の実施を行うような場合もさることながら、そのような時に現在の緩和的な金融政策を維持した場合であっても、インフレ期待の上昇やより高いインフレの招来のリスクがある、と指摘していまして、少数意見がスプリットでござるの巻という所であります。


○フォワードガイダンス文言はこれ早晩また変わるかもね

その次のパラグラフがどう見てもカオスです本当にありがとうございましたという風情。

『Committee participants discussed possible changes to the forward guidance that has been included in the Committee's recent post-meeting statements. Many participants thought it important to explore means for better communicating policymakers' thinking about future monetary policy and its relationship to evolving economic conditions.』

つーことでフォワードガイダンスの議論が行われたのですが、多くの委員は各委員の考える先行きの経済予想に紐付けて各委員が考える先行きの金融政策パスを示すより良い手段を考える事は重要ですと考えている(で訳合ってますかな??)とかいう話になるのですが、この先の意見羅列を見ると色々と議論があった事が予想されます。

・フォワードガイダンスが金融政策の約束とミスリードされているよ

『A couple of participants expressed concern that some press reports had misinterpreted the Committee's use of a date in its forward guidance as a commitment about its future policy decisions.』

2名の方がこのように懸念しておられます。


・期間ではなく「失業率とインフレ率に紐付けたガイダンスにすべき」という見解が出るの巻

この話が出てから議論が盛り上がって参りましたという感じになるのですが、

『Several participants thought it would be helpful to provide more information about the economic conditions that would be likely to warrant maintaining the current target range for the federal funds rate, perhaps by providing numerical thresholds for the unemployment and inflation rates.』

まあこれは先般シカゴ連銀のエバンス総裁が(結構ハト派的に見える)閾値を持ち出して「失業率ターゲット、ただしインフレ高進の場合はその限りではない」という時間軸政策の導入を講演で提言してましたが、その数値の置きは兎も角として、複数名(Several)の委員がこの点を提言しているのね、うんうん。

『Different opinions were expressed regarding the appropriate values of such thresholds, reflecting different assessments of the path for the federal funds rate that would likely be appropriate to foster the Committee's longer-run goals.』

んでまあそれに対して色々な意見が出ているのがいい感じでカオスである。


・紐付け時間軸は金融政策のフォワードルッキングアプローチを損なうのでは派

まあそらそうなんですけどね。

『However, some participants worried that such thresholds would not accurately or effectively convey the Committee's forward-looking approach to monetary policy and thus would pose difficult communications issues, or that movements in the unemployment rate, by themselves, would be an unreliable measure of progress toward maximum employment.』

で、小見出しがアホウのように長くなるので割愛しましたが、後半にあります意見はもっとそもそも論で、雇用に関して「最大雇用」を示す数値自体がそもそもピンポイントでの置きができない(経済状況によってNAIRUが変わり得るから)のにそんな数値おいて良いのかという意見ですわな。


・今後はSEPで金利パスの見通しを出すからフォワードガイダンスはもっと単純化しろ派

『Several participants proposed either dropping or greatly simplifying the forward guidance in the Committee's statement, arguing that information about participants' assessments of the appropriate future level of the federal funds rate, which would henceforth be contained in the Summary of Economic Projections (SEP), made it unnecessary to include forward guidance in the post-meeting statement.』

それもまあ一理以上ありそうな感じですが、更にそれに反論が。


・SEPの見通しは投票権の有無に関するウェイトを無視しているからダメだろ派

『However, several other participants emphasized that the information regarding the federal funds rate in the SEP could not substitute for a formal decision of the members of the FOMC.』

これはまあFOMCの後にああでもないこうでもないと書きましたが、SEPでの見通しはFOMCの投票権の有無のウェイトが無いので実際のFOMCでの投票行動と一致しないでしょという反論でこれはこれでご尤も。

つまりですな、そもそもSEPの方式自体もちょっと改善の余地があるのかもしれませんよねというか、まあそれ以前の問題として政策パスの数値予想を出すのはやはり話として無茶ではネーノという話になるんでしょうな。


・ということで、フォワードガイダンスそのものが変わる可能性もありそうですな

『Participants agreed to continue exploring approaches for providing the public with greater clarity about the linkages between the economic outlook and the Committee's monetary policy decisions.』

というのが結論でして、この調子だとおそらくは出口政策を意識しないといけなくなるような前にはこの辺のガイダンスとかのあり方がしらっと変更になるでしょう、という感じがしますわな、と思います。

#ということで肝心の「追加緩和の云々」に関する部分をスルーして趣味の世界に走りどうもすいません


2012/02/20

お題「これは重要な講演です(2月17日白川総裁講演より)」

当日はあまりネタにはなっていなかったような感じですが、改めて読んでみたら重要な講演に見えるので本日はこちらのネタで。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120217a1.pdf
デフレ脱却へ向けた日本銀行の取り組み
── 日本記者クラブにおける講演 ──

○さきにまとめを

『本日は、まず前半では、今回の決定の狙いや考え方をご説明します。後半では、こうした政策の目的であるデフレからの脱却という政策課題に焦点を当て、デフレの原因や、デフレ克服のために必要な対応の考え方などを申し述べることとします。わが国を含め主要国の短期金利が実質的にゼロ金利になってからは、金融政策の運営手法が、伝統的な「金利の上げ下げ」から、様々な金融資産の買入れなど「非伝統的政策」といわれる領域に拡大しているため、話がどうしてもやや専門的、技術的になる部分があるかもしれませんが、この点はご容赦頂ければと存じます。』

こちらの講演なのですが、先日の追加金融緩和に関する説明が前半で後半は日本経済の課題がどうしたこうしたの話で、まあ後半の方はいつもの話なのですけれども、前半の追加金融緩和に関する話については金融政策決定会合後の総裁記者会見での説明をよりクリアにして日銀の今回の緩和に関するスタンスを示しています。

でですね、そのスタンスなのですが、決定会合翌日のレビューで「俊ちゃんスキーム」などというお題で駄文を書きましたが、声明文、会見を見るとまあそんな感じ(従来の「下振れ対応、リスク対応」ではなく「景気判断を引き上げながらの景気後押し」という積極的な緩和という事)ですなあとか思ったのですが、今回の講演ではその辺りの説明をより踏み込んで判りやすく行っているという印象です。

つーことで、まあ日本記者クラブ相手という事ですから後半の方も白川総裁的にはメッセージなのでしょうが、金融市場的には後半の話は散々聞いておりますし、特段テーマに変化がある訳でもございませんので、ほぼ前半部分をネタにするでござるの巻です。


○物価安定の目途に関する部分から:時間軸の強化とな

『まず初めに、「中長期的な物価安定の目途」からご説明します。これは、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断できる状態を物価上昇率の数字で示したものです。具体的には、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とする」こととしました。』

さいですな。

『日本銀行の行う金融政策運営の目的は、日本銀行法上、「通貨及び金融の調節の理念」として明確に定められています。それは「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というものです。その際の「物価の安定」とは、後ほど詳しく説明しますが、中長期的に持続可能なものでなければなりません。』

ふむふむ。

『それでは、この「物価の安定」とはどのような状態を指すのでしょうか。概念的には、「家計や企業などが物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」ということができますが、金融政策運営に当たっては、これを数字で表現することが必要になります。各国の中央銀行は、名称は異なりますが、物価安定の数値表現を有しています。例えば、イングランド銀行は「目標(target)」、欧州中央銀行やスイス国民銀行は「定義(definition)」、米国FRBの場合は、これまで採用していた「物価の長期的な見通し(longer-run projection)」、あるいは先般新たに導入した「長期的な目標(longer-run goal)」が、物価安定の数値表現に該当します。』

で、その次が「じゃあ何で目途にしたのか」という話ね。

『日本銀行も、今から6年前の2006年3月に、「中長期的な物価安定の理解」という名称で、物価安定の数値表現を導入しました。その後、何回かの表現の変遷を経て、最近では「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」というものとなっていました。』

ですな。

『この「理解」という表現を選択したことには、明確な理由がありました。』

ほほう。

『当時は、2001年以降5年間続いた量的緩和政策を終了するという段階にあり、新しい局面における物価安定の考え方については、政策委員の見解にかなりばらつきがありました。それでも、政策委員会としておよその数値的イメージを伝える必要性は全員認識していました。この結果、物価が安定していると各委員が理解している物価上昇率を個別に提示してもらったうえで、それらを包含する範囲で数値表現を行い、これを「理解」と命名し公表するという方法をとることにしました。』

ふむふむ。

『しかし、各委員の見解の集合体という位置づけであったため、日本銀行としての判断がわかりにくいという声が、時が経過するにつれ、多くなってきました。また、「理解」という言葉の語感からは、物価安定の実現、現在の状況に照らしていえばデフレ脱却に向けての日本銀行の政策姿勢が読み取りにくい、といった意見も出ていました。』

上記引用部分から先が今回の変更ポイントです。

『今回、そうした様々な意見も踏まえ、新たに導入した「中長期的な物価安定の目途」について、これまでの「理解」との違いを整理しますと、』

キタコレ。

『第1に、今回の「目途」は「各政策委員の見解」ではなく、「日本銀行としての判断」であるということです。』

『第2に、物価安定の領域として「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス」としたうえで、「当面は1%を目途とする」ことを明確にしました(図表2)。』

つまり「当面は1%を目途とする」は「日銀の機関決定である」ということです。

『第3に、後で詳しく申し上げますが、実質的なゼロ金利政策などの強力な金融緩和政策の継続期間に関する約束、いわゆる時間軸政策との結びつきを強めました。』

>時間軸政策との結びつきを強めました
>時間軸政策との結びつきを強めました
>時間軸政策との結びつきを強めました

・・・・・・・・!!!!で、この部分は後で出てきますが、今回の声明文とか決定会合後の定例会見よりも踏み込んだ言い方に見えます(いやまあ決定事項の話をしているのですから本当はそこら辺にも含まれているのですけれども、汗)が、それは後ほど。


○物価安定の目途に関する部分から:目途はもしかしたら通過点なのかと思わせる表現も

んでその続き。

『さて、ここまでご説明すると、なぜ「目標」あるいは「ターゲット」という表現を使わなかったのかというご疑問が生じるかもしれません。今回の「目途」は、中央銀行の使命と整合的な物価上昇率を数値的に示し、それを中長期的に目指していくという点では、「ターゲット」という表現を使っている国の中央銀行と、考え方そのものに大きな違いはありません。』

まあ最近のターゲットって中長期的に云々であって、金融政策の自動運転装置では無いですからね。

『しかし、わが国では、「インフレ目標」という言葉が、一定の物価上昇率と関係づけて機械的に金融政策を運営することと同義に使われることも未だ多いように思われます。』

まあこれはそうだというのはこの前晒しあげした中日新聞2月15日社説を見れば一目瞭然ですな。

『実際には、後ほど詳しく述べるように、インフレーション・ターゲティングの採用国を含め、金融政策運営は、そうした機械的な運営ではなく、中長期的にみた物価や経済の安定を重視して行われるようになっています。私どもとしては、そうした金融政策運営の実態にもっとも相応しい日本語の言葉は、「中長期的な物価安定の目途」であると判断しました。』

・・・・・とまあここまでは先日の総裁会見と一緒なのですが、この先の部分がこれまた踏み込んでいるというような感じですよ。

『また、日本の場合、これまで、長期間にわたって低い物価上昇率が続いてきている一方、将来は成長力強化への取り組みの成果が挙がっていけば、持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります2。』

>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります

・・・・・・・・・・!!!!!!!!!

で、その2というのは脚注なのですが。

『2 政府が今年1月に公表した「経済財政の中長期試算」においては、消費者物価上昇率の試算結果について、@内外の経済環境について慎重な前提を置いた場合は「1%近傍(2020年度までの平均1.1%)」、A堅調な内外経済環境の下で、「日本再生の基本戦略」において示された施策が着実に実施され、2020年度までの平均的な成長率が2%程度まで引き上げられる場合は「2%近傍(2020年度までの平均1.7%)」という計数が示されている。』

となりますと、この次の説明−この文言自体は金融政策決定会合で示された「この数値は1年ごとに見直します」という話を説明しているのですが−に関しても、ちょっと踏み込んだ説明をしている事からニュアンスが違って見えるものであります。

『こうした構造変化の可能性や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことを踏まえますと、中長期的に目指すべき物価上昇率について、固定的なイメージの強い「目標」という表現を使わずに、「目途」と位置づけて、原則として1年ごとに見直していくことが適当と考えました。』


という風にありまして、つまり「今回、中長期的な物価安定の目途で示した1%の数値はまず実現に向けてあまりにも遠くならない物を示しましたが、将来的に日本経済が持続的な成長軌道に乗った場合には物価安定のこの数値を2%近傍に引き上げる事も検討課題となるでしょう」という事をこの部分では示唆しているという風に読めます罠。

勿論この辺りの話は単なるリップサービスなのかも知れませんけれども、「世界的に先進国の金融政策の手法が収斂していく」的な話をしている白川総裁なのでこの部分は結構マジで話しているのではないかと思うのですけれども。つーかですね、どこぞの俊ちゃんや逆さ絵のおじさんのようにハッタリを効かすのがとてもとても得意とは思えない麿先生がこういう事を言い出すとは却ってそのやる気っぷりに何か変なもんでも食ったのかとか思ってしまいますけれども、麿の方向性としては望ましい流れになっているような気がする。

ということで、まずこの部分では「物価上昇率を引き上げたい」という麿先生のマジ振りが示されているという所でして、何をどう開き直ったのか知りません(つーかまあ従来からデフレ脱却に熱心だったのでしょうけれども、少なくとも従来こういう言い方をして積極性をアピールしているとは言い難いものがあった)が、まあ頑張った発言をしているように見えます。


○時間軸政策の強化とな

『次に、2番目の措置として、先ほど少し触れた時間軸政策の強化についてご説明します。』

ふむふむ。

『時間軸政策と呼ばれる政策は、将来の金融政策運営方針を何らかの条件に結びつけて約束する手法です。短期金利がほぼゼロ%まで低下し、それ以上の引き下げ余地がなくなると、伝統的な短期金利操作に代わる方法を使って、長めの金利を含むイールドカーブ全体に働きかけることが必要になります。』

さいですな。

『一般に、長期金利は、市場参加者による将来の短期金利の予想にリスク・プレミアムを乗せて形成されると考えられます。したがって、中央銀行が金融緩和政策を長期間にわたって継続すると約束し、政策金利である短期金利の低い状態が長く続くという約束が市場参加者に信頼されれば、それによって、長期金利を引き下げる力が働くことになります。』

まあリスクプレミアムが上昇して長期金利が上がる事もあるけどな。

『日本銀行は、1999年以降のゼロ金利政策時代や2001年以降の量的緩和政策時代にも、時間軸政策を活用していました。最近では、先ほどご説明した「中長期的な物価安定の理解」に基づき、「物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく」という方針を明らかにしていました。この方針も長期金利の安定的な形成を図るうえで一定の役割を果たしてきましたが、今回、日本銀行のデフレ脱却に向けた政策姿勢をより明確にするという観点から、2つの点で見直しを図りました。』

まあ良く考えてみたら時間軸に対して各政策委員の見解の集合体に過ぎない「理解」というのに基づいているというのも変な話っちゃあ変な話でしたわな。

『第1に、時間軸の条件として、「中長期的な物価安定の目途」で示した当面の目途である1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました。』

>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました
>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました
>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました

ほほう。

・・・・いやまあ前から結びついてはいましたが、従来は「中心は1%」というだけでしたので、別に1%じゃなくてもそれこそ安定的に0.5%でも「中長期的な物価安定の理解」の範囲内でございましたからねえ。

まあこの物価上昇率が「中長期的な物価上昇率」なのが論点的に微妙な面がありますけれども、何はともあれ「経済指標の一定の数値に紐付け」というのを明確に示したという事で、これはFRBのガイダンス文言よりも実は強い表現(そういや米国市場もさすがに気が付いたのか、ガイダンス文言出た直後に金利低下したFF先物とか2年国債とかの金利は足元で低下した分全部吐き出して上昇してますよね)となっているんですよね。

『第2に、具体的な政策運営指針については、実質的なゼロ金利の継続だけでなく、それ以外にも実際に行ってきた政策措置を踏まえて、より能動的な表現とすることが適当と判断しました。』

>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現

「能動的」キタコレという所でして、これがハッタリ全開の俊ちゃんがいうのではなく、ハッタリの効かない(と思われている)麿大先生が仰せなのですからその気合の入り方が違うのではないかと期待される所ではございます。いやまあもしかしたら麿の精巧な着ぐるみの開発に成功して中に俊ちゃんを押し込んでいるとか、麿がこっそり修行して逆さ絵おじさんの生霊でも召喚しているとかだとただのハッタリなのかも知れませんが、そんな感じでもなさそうですのでね(^^)。


『この結果、新しい時間軸政策として、次のような方針を採用しました。すなわち、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」というものです。』

まあ第2の柱自体は残っているのですけれどもね。

『ただし、わが国のバブルの発生と崩壊や、近年の世界的なバブルや金融危機などの経験を踏まえ(前出図表2)、物価が安定している場合であっても、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とすることとしました3。』

んでまあここの脚注3には・・・・・

『3 バブル期の日本の消費者物価上昇率(除く生鮮食品、消費税調整済み)をみると、1987年度は0.4%、1988 年度は0.6%、1989年度は1.6%であった。』

などとしらっと書いてあるのは従来の麿クオリティーの残っている所ではございますし(^^)、まあそもそも字面的にそんなに従来のと大きく変わったという訳でもなく、そもそも論で言えば金融政策の枠組み自体に大して変化はないのですが、同時に実施された追加緩和のスタンスとか、定例記者会見でのスタンスとかに変化があり、かつ今回のこの講演での説明、ということでして、字面云々ではなくその中のスタンスの変化というのが市場的には重要ですよね、という話ですわな。


○インフレターゲットとお呼びになりたければどうぞどうぞ

んでもってその次は結論の所がポイントなのでその途中はサラサラ流す。

『それでは、以上のような「中長期的な物価安定の目途」と「消費者物価上昇率に結びつけた強固な時間軸政策」の組み合わせは、いわゆるインフレーション・ターゲティングとの関係でどう位置づければよいでしょうか。』

『まず指摘したい点は、各国とも、日本のバブルや近年の世界的な金融危機の経験を含め、そこから得られる教訓をお互いに学び合いながら、金融政策運営の枠組みの改良に努めてきているということです。その結果、各国中央銀行の金融政策運営の枠組みは以下の3つの点でかなり収斂してきています。』

『第1に、自らの責務と整合的と考えられる物価上昇率を数値で示すことです。先ほど述べたように、イングランド銀行の「ターゲット」、欧州中央銀行やスイス国民銀行の「定義」、FRBの「ゴール」、日本銀行の「目途」など、言葉は異なりますが、いずれも同様です。』

『第2に、より重要な点として、今申し上げた物価安定の数値表現を政策運営において活用する際に、短期的な物価動向ではなく、中長期的にみた物価や経済・金融の安定を重視する度合いを強めてきていることです。』

まあそうですな。

『多くの場合、バブルは物価の安定を謳歌している時期に発生し、結局、バブル崩壊後には経済活動や物価の大きな変動をもたらします。また、原油価格の変動といったサプライ・ショックを短期的にコントロールしようとすると経済活動に大きな負荷がかかり、結局、長期的な物価安定が実現できません。これらの近年の経験は、すべて、持続可能な物価安定を中長期的な視野で達成することの重要性を裏打ちするものです。英国のように、金融政策の枠組みをインフレーション・ターゲティングと称している国であっても、実際の運営については、物価目標を短期間で無理に実現するのではなく、経済や金融の安定を図ることを意識して物価目標を中長期的に達成していく、という色彩が強まってきています。』

バブル云々の部分は毎度のアレですけど(^^)。

『第3に、それとの関連で、主要中央銀行が公表する経済・物価見通しは、従来よりも幾分長い期間を視野に入れたものになってきています。ただし、見通しは遠い将来になるほどその信頼性は低下しますので、見通しの数値そのものを過度に強調するのではなく、見通しの背後にあるメカニズムについての考え方やリスクの評価において、中長期的な観点をより重視するようになってきています。』

で、小見出し相当部分がこちら。

『このように、主要中央銀行の間で金融政策運営の枠組みが収斂してきていることを踏まえますと、それぞれがインフレーション・ターゲティングに当たるかどうかという分類学は、本質的な論点ではなくなってきています。実際、FRBが今回採用した「ゴール」についても、バーナンキ議長自身は、インフレーション・ターゲティングではないと言っている一方で、論者によっては、これをインフレーション・ターゲティングと呼んでいます。そのうえで申し述べれば、もし、今回のFRBの金融政策運営の枠組みをインフレーション・ターゲティングと呼ぶのであれば、日本銀行の方法もそれに近いと言えると思います。』

つーかFRBの枠組み自体が日銀の枠組みをベースにして作られたとしか思えん(政策金利の予想パスとかちょっと斬新というかやり過ぎな追加トッピングもありますけど)ですが、まあそういうことでインフレターゲットと呼びたければどうぞという話ですな。


○資産買入と低金利政策の継続に関してはそんなに凄く新しい話をしている訳でも無い

のでまあ引用は各小見出し部分の最後だけにしておきます。途中では「諸外国と比較しても日本の金融環境は緩和的」という話をしていますが、その辺は毎度の話なのでスルーという事で。

『国債買入れの10 兆円増額』の最後の所から。

『これほどの大規模の国債買入れですから、それに伴って一段と留意しなければならない点もあります。すなわち、中央銀行による国債の買入れが、金融政策運営上の必要性から離れて、財政ファイナンスを目的として行われていると受け止められると、かえって長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招きかねないということです。日本銀行としてこれまでも繰り返し申し上げてきていることですが、財政ファイナンスを目的とした国債買入れは行いません。』

まあそうは言ってますがどう見てもここまで買入が来ると「期間限定、中短期国債限定」の財政ファイナンスって感じですけどね(ニヤニヤ)。

『緩和的な金融環境の確保』の最後の所から。

『さらに、今回の国債買入れの思い切った増額により、長めの金利を含むイールドカーブ全体ヘの影響を通じて、金融緩和効果は一段と強まるものと見込んでいます。』


○最後の部分ね

で、ワープしてまとめの部分ですが。

『振り返ってみると、消費者物価(除く生鮮食品)の下落率は、最近では、2009年半ばに、−2.4%と近年でもっとも大きな下落を記録しました。その後、緩やかではありますが景気が回復基調をたどり、需給ギャップが縮小する中で、物価の下落率も小さくなっており、ようやく、前年比でゼロ%近傍まで到達しました。その意味では、デフレ脱却に向けての歩みは進んでいるのですが、「中長期的な物価安定の目途」で示した当面の目途である1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離があると言わざるをえません。』

>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある
>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある
>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある

『さらに、日本経済を取り巻く環境には様々な不確実性が存在します。欧州債務問題の今後の展開によっては国際金融資本市場の緊張を通じて日本に影響が及ぶ可能性は排除できません。国内要因をみても、電力需給や円高の影響に加え、復興関連需要の増加ペースなど、多くの不確実性が存在します。』

というのは今までと同じですが。

『しかし、同時に、このところ内外経済に明るい兆しが出始めていることも見逃せません。欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいます。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ雇用情勢などに改善の動きがみられています。国内に目を転じても、公共事業と民間需要の両面で震災復興関連の需要が動き出していますし、昨年の震災後の支出抑制の反動もあって、このところ個人消費が底堅さをみせています。』

で、今回の追加緩和は「明るいものが出ている中での押し上げ介入だよ」というのをこちらの講演でも改めて示しています。

『今回の私どもの金融緩和強化策も、こうした前向きの動きを金融面から後押しするという狙いを込めて実施したものです。』

ということで、従来は「下支え」というニュアンスが強かった緩和強化が今回「後押し」になったのはまあスタンスの変化ですよね、というのはここもと申し上げた通りかと存じます。

#以上引用大会でありました(大汗)



2012/02/17

お題「ネタが色々と出るので調理に困りますな(^^)」

各国長期金利の平均とクロス円指数とかもはや何が何だか判らないグラフが某モーサテで出てきましたが、分析期間が過去1年しかないものを使って分析とか見てる方が恥ずかしいわ。

えーっとですな、ネタが色々とあってアレなのですが先に頭出しだけするコーナーと、本日ああだこうだと書くネタはやはり市場雑談およびオペ雑談ですな。

○積み残しちうのネタ

・FOMC議事要旨

1月FOMCの議事要旨(SEPの詳細も含む)が出ました。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120125.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20120125.pdf

まあこの回はデュアルマンデートの理解が出てみたり政策金利見通しが出てみたりガイダンス文言が延長になったりと中々面白い回でありましたので、当然の如く熟読しないと行けない回(ただし年初要因で色々と事務的な議決要因もある(それだけで6ページ半消費する)のに加えSEPがあるので何と今回はPDFで31ページ組になりまふorz)でございます。

つーことで週末に読むのですが(とまた自分に宿題を)、とりあえず最初と最後だけ読もうと思って「これわwww」と思った箇所があるのでそれだけクリップします。詳しくは来週にでも。

冒頭(と言ってもPDFファイルベースで7ページ目になります)の『Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy』に関連してでして、そこでの議論らしきものがスルー気味なのがツマランチ会長なのですけれども、まあイエレンが説明しているポイントもふーんと思いましたがもうちょっと解釈を考えたいので一旦スルー。

でですね、それはそれとしてこのデュアルマンデートの理解なのですけれども、よくよく見ると何とタルーロ理事が反対してるんですよ。

『All FOMC members voted to adopt this statement except Mr. Tarullo, who abstained because he questioned the ultimate usefulness of the statement in promoting better communication of the Committee's policy strategy.』

執行部身内の理事が反対とはほっほーという感じでして、これはタルーロ理事の講演もこれから注目してみておこうと思うのでありました(いやまあ従来から見ているのですが、あまり金融政策そのものずばりの話をする頻度が高くないのです)。まあこれは将来的にも何かポイントになる可能性はあるかなと。


・ヘビーなのでアレだがBOEのインフレーションレポートとか

マニア向けネタとして興味の尽きない英国中銀。
http://www.bankofengland.co.uk/

トップページの右下の方にございますように・・・・・・

Current Inflation 3.6%
Next due: 20 March 2012

ということで、先般発表された1月CPIは貫録の3.6%で下がったには下がったけどあらこの程度なのという気もせんでも無い数値となっていまして、もはや何の為に出しているのかワケワカラン状態になっているBOEの詫び状が13日に出ています。

http://www.bankofengland.co.uk/monetarypolicy/pdf/cpiletter120214.pdf
Letter from the Governor to the Chancellor
13 February 2012

で、インフレーションレポートは15日に。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/inflationreport/irlatest.htm
Inflation Report, February 2012

実際のレポートは上記URLにリンクがありますが、まあこの辺を読む暇があったら読んでみたいとは存じます。まあ正直言って英国のインフレがどうのこうのとなったからと言って日本の金融政策に何かインプリケーションがあるのかねと言われますと直接は無いので趣味の世界になりますが(つーか元々日銀ストーカーもほぼ趣味だし^^)、インフレ目標がああだこうだと外野が喧しい中、実際にインフレ目標を設置したもののどう見てもインフレ制御が怪しくなっている英国様の様子を眺めるのも味わいがあるという物です。


ということで上記ネタと金融経済月報とかその他米国地区連銀講演(ウィリアムス総裁の先日の講演とかその他少々)が積み残し状態になっているので宿題ね。


○5年国債入札キタコレ

昨日も昨日とて相場ネタがあってここまですっかりウゴカンチ会長になっていた市場の中の人たちとしては色々と動きがあって何より(なのか??)でありまふ。

えーっとですな、一昨日の日銀基金国債買入さっそく5000億円打ち込み攻撃によりまして中短期ゾーンの気配がまあ強くなっておった訳でございますが、昨日は5年国債入札を前に海外市場の債券高もあって前場からきっちり堅調推移したでござるというアヒャヒャヒャヒャの展開。

で、前場引けで142円82銭(+17銭)で5年カレント(新発はリオープン)は2毛強/1毛5糸強の0.300/0.305の板で、絶対水準的にどうよという説もあるものの、やはりニーズありありという事で落札結果は100.02/100.01で按分88%となりやがりまして、100円届かずですかそうですかという結果。

市場推計だと不明札少なくて業者主体の落札っぽかったですけれども、別にその後売られるでもなく堅調推移しやがりまして、その後何か知らんが引けにかけてカーブの後ろの方が強くなった影響もあったのか、やや先物が持って行かれる感じで引けは0.295%でしたが先物が6銭持っていかれてましたので前場引けのバランスからは同じですが入札レベル的には微妙に先物上に持っていかれという感じですが、落札結果発表後は0.295/0.300の気配のまんま推移という感じじゃなかったかなと思われます(が子細に見ている訳では無いので間違ってたら教えてくんなまし)。

ちょうどですな、この次に申し上げます「固定金利基金共通担保オペレーション札割れ事件」というのが14時10分に発生しやがりまして、これを見て中短期ゾーンの現物がさらに強くなり、2年以内のJGBの気配が揃いも揃って0.105%ビットとか大変に素敵な事にもなってしまいまして、3年とかのゾーンとかも当然のように強いでございますわよとなりまして、日本相互証券さんの引けベースで残存3年ゾーンの5年88回(2015年3月償還)とかで前日比1毛5糸強の0.165%とか大変に素敵なレートになっておられまして、そこから見ると5年の0.30%が普通に見えてしまうというおそロシアな状態になります罠という事ですな。

まあ何ですな、そらまあ銀行業態さんがALMマッチングとか言って2年だの3年だのとかを買うと言いましても、このレートではコスト賄えないですわなという話になって、まあつまり金利難民の皆様が大量にイールドカーブの後ろの方になだれ込んでいる訳で、避難民の皆様が只今絶賛到来中という風情なのでしょうなあ。


○基金オペの6か月資金供給絶賛札割れキタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120216.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年2月20日 2012年8月22日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120216.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月20日スタート分) 7,010 7,010

はーい、6か月固定金利資金供給オペ札割れ来ましたね〜♪アヒャヒャヒャヒャ♪

・・・・・・・えーっと、今回のオペは新規で行った分(つまり基金オペの6か月オペ分の積み残し分の消化)なのでそもそも札が入りにくいものだったのですが、ついに札割れしやがりましたかという所で、何がマズーかと言いますと基金オペって基本的に残高にコミットしている所にある訳で、札割れするとなると目標未達という事になるのでどう落とし前つけるんでしょうねえ(ニヤニヤ)という事になるのでございますな、うんうん。

でね、まずオペの札が割れる要因を考察するとこれがまた色々と面白いというかマニア的には興味の尽きない話ですが、正直言って短期の一部市場の技術的な問題がかなーり多くなるのでまあ興味のあるかただけ読んでちょ。

暫く前からあたくし「6か月オペイラネ」と申していましたが、そら何ですねんと申しますと、これはもう資金供給全体のバランスと、現在の短期市場というかレポ市場における資金の調達運用構造によっての話ですよね、という事になります。

つまりですな、レポ市場で資金の調達サイドに回るのって基本的に債券ディーラー(銀行がオーバーローンの時代じゃないから)になるのですが、債券ディーラーの資金ポジションというのは当然ながら債券の売買で動くものですし、更に現在のように短期国債がアホのように発行されていると、その資金ポジションのぶれも相当のものになる(新発の落札とか見れば判るように兆円単位でぶれるディーラーだっている訳ですから)のでして、その在庫ファンディングを全部オーバーナイトで実施すると流動性リスクがあるのである程度の長期ファンディングも必要になりますけれども、物には限度というものがありまして、逆に長期ファンディングをやり過ぎちゃうと在庫状況によっては資金調達過多になってしまい、今度は自分がいりもしない資金調達の担保不足になってGCレポの買い手(資金供給)に回らないといけなくなるリスクが生じます罠。

で、まあ往々にしてそうなのですが、ディーラーが資金調達過多状態になっている時というのは普通は「マーケットに玉が無い」という状態ですので、そういう時にGCを買いに行くととんでもない低い金利水準で資金出さないと行けなくなるというのが一般的で、そんなアホウな事態を避けるために普通の神経している債券ディーラーというかレポ担当は長めの調達と短めの調達のバランスを取る訳ですよ。

つーことで、資金取引的にはクソ長い期間であります所の6か月なんぞ要るかヴォケという事になる訳でございまして、債券ディーラーの札は入らん罠という事になる次第。まあ新規でこれから打ってもニーズが無いものにはニーズがありませんですし、これってGCのスポネが0.105%だから6か月の0.10%を取るというようなトレードオフにはそう簡単にはならない(資金調達のマッチングの問題だから。そらまあスポネが0.20だったら話は違うかもしれないけどそんな事したら今度はコールが上昇するから誘導目標のディレクティブ違反になりますし、そもそも緩和政策やってる意味がないわな^^)のでありまして、大変にアレな話でございます。


で、調達サイドの観点じゃなくて運用先にありきの観点から考えた場合、6か月の固定金利オペに応札するメリットとしては、「それよりも後ろのカーブが立っている事によって長短スプレッドを享受する」というのがありますよね。例えば1年金利が0.13%で6か月固定が0.10%で取れるのであれば、1年の0.13%を買って半年分は固定の0.10%でコストを確定させれば後半の調達が0.16%でブレークイーブンって奴であります。

しかしですな、まあ足元で基金買入の短期国債を増やし、もう増やせなくなったから今度は2年までの国債の買入も増やすという形で、2年までの金利が0.10%カツカツまでカーブ潰してしまっているので、6か月などという中途半端な期間の調達に対するメリットが運用サイドの観点からしても無くなっている訳でありまして、そらまあニーズが無くなる罠と思うのでありまして、この前6か月固定の拡大を行った時にレポ市場関係の皆様からは「これは余計」という指摘が多かったたに記憶しておりますが、まあその通りの展開になっておりますにゃ。


つまりですね、導入した時点では6か月の固定資金供給にはそれなりにメリットがあったのですが、より長い期間の資金供給(国債買入も一種の資金供給ですわな)が拡大して運用サイドから見ると短すぎてメリット無しとなり、一方で3か月、6か月の資金供給が多くなりすぎてショートファンディングとのバランスが崩れたという要因によって、調達サイドから見ると長すぎてメリット無しとなったという事です。


で、調達サイドからするとショートタームの資金供給は欲しいのに基金オペ優先になるからオペが打たれずとなると、ショートファンディングはGC1日物でというような話になりますから、GCは0.105%になってしまい2年カレントとどう見てもインバートです本当にありがとうございました状態になってしまう訳ですが、これって「長期債の買入をやり過ぎた場合のオペレーション上の技術的な問題」を具現化しているような感じでもありまして、米国様が正常化局面になった場合にはもっと素敵な短期のインバートが起こるのかなあとか考えると胸が熱くなってまいります。


・・・・つーことはつまりこれ打開策は正直言ってないと思うのでありまして、技術的にオペの限界に達しているという話ですが、じゃあどうしたら良いのよと考えますと、明らかに6か月のオペが要らなくて、一方で短いオペはニーズがあるのですから、固定の6か月のオペを少なくとも5兆は落としてショートタームのオペに振る(本当は10兆落とした方が良いと思う)とオペレーションがやりやすくなると思いますが、それだけだと基金残高が減ってしまいますので、これはもうヤケを起こして「長めの短期市場金利の低下という目的は現状でも達成できているので、より長い期間の金利に働きかけるべき」とか何とか言って6か月固定オペを減らした分を全部国債買入拡大に回すという話ですが、先般申し上げたように既に2年までの買入では今の残高が限界ですので・・・・・・・ニヤニヤ。

ということで、まあ何と申しますか、基金の拡大と期間長期化で日銀としてはオペレーション技術上の問題に引っ掛かって自分の首を絞めてどんどんやる事をエスカレートさせないと回らなくなる、という何ともかんとも香ばしい事態になっておられまして、オペレーション部隊および企画部隊の皆様におかれましては誠に同情の念にたえないと存じます次第であります(棒読み^^)。

まあ残高維持だけで良かったら基金共通担保固定オペの期間を例えば2週間物と1か月物というような調達サイドのニーズにマッチしたような形にすればまだニーズ集まるんじゃないですかねえと思いますが、そもそも固定オペが大杉勝男なのが行かんですからねえ。

ということで、ひたすら技術的なネタで大変恐縮至極。





2012/02/16

お題「決定会合レビューシリーズと雑談少々」

急に話題になった休眠口座の件、もと金貸しの手先としては書きだすと止まらなくなりそうなので敢えてマクラで簡単にという感じにしますが、銀行の雑益勘定に入るのを捕まえて銀行を盗人呼ばわりしている識者(笑)とかちゃんと勉強しやがれ(実際はご案内の通り何年経っても銀行は時効の援用しないで払い戻しに応じています)とか思いますし、「本人じゃない場合に確認作業が非常に煩雑でケシカラン」とか言う人には「じゃあ正当な権利者かどうか判らない人にホイホイ払い出して良いのか」と反問したいですわな。

まあ「海外がこうだから」とか言ってるみたいですが、日本のリテール金融というか決済って世界標準(笑)から見たら凄まじいまでのオーバースペックで運営されているのですけれども、そっちは世界標準になるのはケシカランとか言って都合のいい所だけ世界標準持ち出すなやと思いますけどね。つーかそれ以前の問題として私有財産を平気で接収しようという発想そのものがどこのスターリンだよという所ですわ。

枝野官房長官(当時)の無法発言の時に懸念して引用したマルティン・ニーメラー師による詩のようなことが波及してますなあという感じです。http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/illegalDPJ.html

と、無駄に朝から血圧を上げつつ決定会合レビューおよび雑談。

なお、本当はこっちも注目のFOMC議事要旨に関しては日銀ネタの方で手一杯につき今日は勘弁ということで(すいません)。


○基金国債買入オペ5000億円オファーキタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120215.htm

国債買入(資産買入等基金) 5,000 2012年2月20日

キタ-------------(・∀・)------------------!

ということで、昨日はきっちりとやる気元気井脇な基金国債買入が5000億円打ち込まれまして、このオペ見て2年ゾーンとかは(元々堅調でしたが)0.105%出合いキタコレなどとやっておりまして、まあ昨日はこのオペを見て「何だ日銀やればできる子じゃないの」という感じでしたな、うんうん。

ちなみに今回から買入対象銘柄が拡大して、従来は残存1年9か月位の所から2年の所が対象だったのが、1年6か月位の所から2年の所まで拡大(本当はあまり短い所を買うとちゃっちゃと償還が来てしまうので基金国債買入によって残高を積むというのにやや都合が悪いのですが、そんな事言ってると札が集まらない可能性がありますから)したでござるの巻。

落札結果はこの通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120215.htm

国債買入(資産買入等基金) 10,677 5,003 0.002 0.005 57.7

とりあえず応札が倍入って良かったですねという感じですが、出来上がりの買入レートは平均が0.105%ですけど0.102%まで入っているという結果になりまして、いやまあこの調子で買っていくと2年カレントが新しく入った時は兎も角として、徐々に玉が薄くなってくると0.100に近い所まで入るような流れになるんでしょうなあとか思うのでありまして、やはり流れとしては2年カレントが1年短国並みになるというイメージになるんでしょうなあという感じです。

まあいずれにせよ、(後の総裁会見にあるように)今回の追加緩和については従来の「下振れリスク対応」だけではない「押し上げ介入」的なニュアンスがある(物価目標がどうのこうのよりも市場的にはそっちの方が重要なポイントでしょ常識的に考えて)のですが、昨日早速基金国債買入を実施(するでしょうとは恐らく全員が予想していたとは思いますが)したのは「姿勢を見せる」という意味では期待通りの動きでしたね、という所かと存じます。

しかし昨日は3MTBの入札が0.1028%の按分率上昇してまして、やはり海外勢の買いが止まる(ネタにしてませんでしたが今週の1週間物ドルオペは久々の応札ゼロでした)と毎週6兆円はさすがに重いようで、この調子で行くとうっかりすると2年と3MTBが瞬間インバートとか楽しい事になってくれるかもしれませんな。

#まあ2年の金利潰して銀行業態憤死ですから3Mに妙味が出ればそっちに買いがわんさかやってくるでしょうからそう極端な話にはならないでしょうが


○その他雑談

・まさかのお告げ

兜町のユリ・ゲラーとして名高い某北ハンマー先生が日銀の追加緩和にまさかの評価をされておられましたので大先生のボログより。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888374.html
2012年02月14日
日銀の物価上昇率のメドとは何か

『市場はそれを歓迎日経平均株価は52・89円高したのですが、私にいわせると疑問ありです。』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・ほほう。

で、昨日もこのように仰せ。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888474.html
2012年02月15日
東京株式市場、今日は次のようになりそうだ[2月15日朝刊 ]

『昨日の日銀発表を受けて、日経平均は続伸が見込めるものの、水準が9100円に乗るようなことがあれば、当然戻り売りが出やすくなります。上げても高値掴みになりやすく、警戒する投資家も増える。こう見ています。このところ自動車、海運などが強く、今日もそんな流れに変化はないでしょうが、やはり目先上げ過ぎは気になるところです。』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・ほうほう。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888511.html
2012年02月15日
焦りは禁物

『今日のように急騰すると、買い遅れた感じがして焦ってしまうことも。これはもちろん危ないので、焦りは禁物ですよ。株だけじゃありませんけどね(笑)』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・・・ほっほー。

えーっと、ただ単にあたくしは「このような見解があります」とご紹介しただけですからね!!


・これはケシカランですな(半分以上ギャグ成分ですので念の為)

これは実にけしからんニュースである(^^)。
http://www.asahi.com/business/update/0215/TKY201202150162.html
主要労組、ベア見送り 自動車各社、春闘の要求書提出

『自動車各社の労働組合が15日午前、経営側に今春闘の要求書の提出を始めた。産業別労組の自動車総連は今春闘でベースアップ(ベア)などの統一的な賃金改善を要求しないことを決めており、主要労組は軒並みベア要求を見送る。相場の牽引(けんいん)役を期待される自動車や電機の交渉は厳しいものになりそうだ。』(上記URLより)

・・・・・・・・今般の日銀の声明文にも『デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』とありますように、物価上昇率1%を目指すというのであれば当然ながらベア1%要求をして頂きたい訳でありまして、政府・日銀がデフレ脱却に向けて取り組もうという中でベア見送りなどと言う自動車労連の皆様に置かれましては国策を理解しておられないと存じます(念の為再度申し上げますがギャグで書いてますのでよろしく^^)。

つーか労使交渉の場で「日銀が物価上昇1%を目指すと言っているのにベアゼロとはケシカラン」と言ったらどういう話になるんでしょうかねえ特に経済団体の偉い人がいる会社ではwwww

#まあ「寝言は寝て言え」で終了でしょうし、「日銀の来年度の物価上昇率予想は+0.1%だから今年のベアはゼロだろ常識的に考えて」と言われるとぐうの音も出ないといってしまえばそれまでですがorzorzorz


まあ上記のはギャグですけれども、金融政策として2年金利にブルドーザーを導入して絶賛イールドカーブ潰し攻撃をして、銀行がALMマッチングで買いをするとただのやられんジャーという状態を作っておいて、金融機構局様がノコノコやってきて「ところで御行は金利上昇リスクにどのように対応しておられますか」とか質問するとか冗談でも行わないようにして頂きたいと存じます次第であります、つーかそんな質問したらうんこぶつけられても文句言えないレベルだろオメーという話ではございまして、政策として国債買って中期のカーブ潰していく中で銀行に金利ギャップがどうのこうのとか言ったらそれこそおまいら政策の整合性とれねえだろとか思う今日この頃でございました。

#しかしどうでも良いがせっかくの機会なので80円台まで介入しやがれやとか思うのですけどねえ。「おまいらが物価目標よりも高い物価なのに緩和続けるからこっちは迷惑しとるんじゃハゲ」位言ってyou介入しちゃいなよ!


・節子、それはバブルや

えーっとまあ例によってレポートをてきとーに見てたのですが、昨日見てて吹いたのはどこぞの株式レポートでして、セクター分析みたいな話で不動産業界の怪推奨ネタだったのですが、題名が『CPIが1%上昇すれば、六大都市の地価は10%上昇』とかいう物で、中身を読んだら2001年からのCPIと不動産価格指数のプロットして題名のような結果になりますよとかいう代物。

いやあの分析期間とか大丈夫かというのもありますが、それ以前の問題としてCPIが1%上昇して仮に実質GDPが2.5%成長(ってかなり高い置きだ)としたって、六大都市の不動産価格がその間に10%上昇したらどう見てもバブルです第2の柱発動です本当にありがとうございましたという話になりますがなと思い、こんなんで務まる何とかストって素敵だなあとか思う昨日のひとときでございました。お蔭で紅茶一杯無駄にしちゃいましたよ(−−)。


などと余談が長くなりましたが決定会合レビュー編の続き(国債買入打ち込みの話はレビューですな^^)。


○総裁会見もまあ色々とありますがポイント(と勝手にあたくしが思った部分)だけ少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf


・今回の追加緩和は従来とスタンスが違いますなという件

4ページから。

『(問) 今回資産買入れ等の基金を増額した背景について、もう少し詳しくお聞かせ下さい。』

『(答) 先程の説明と多少重複するかもしれませんが、足許のわが国の経済情勢は、海外経済の減速や円高の影響などから横ばい圏内の動きとなっています。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は概ねゼロ%です。先行きを展望した場合には、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きいわけです。ただ、前回会合以降の変化という意味では、これから申し上げるような前向きな動きもみられています。(途中割愛)本日の会合では、先程申し上げた、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、こうした最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものにすることが必要であると判断しました。』

ということで声明文でもそんな感じでしたが、ここでも「明るい材料のある中で追加緩和を実施した」と言っていますな。


質疑応答の13ページの所からですがこれは良い質問。

『(問) これまで日本銀行は、景気見通しが下振れた時に追加緩和を実施することが多かったと思います。今回、「中長期的な物価安定の目途」により日本銀行の意思を明確化したということは、極端な例ですが、非常にファンダメンタルズが良くても物価が上がらないというような時でも、緩和する時には緩和する、という意味合いがあるのかご説明下さい。』

例によって麿の答えがクソ長いのですが。

『(答) 私どもの経済の見通しは、足許、横ばい圏内の動きですが、この先は、新興国・資源国の景気回復あるいは復興需要に支えられ、緩やかな回復経路に復していくというのが基本的な見通しです。この見通しは不確実性が大きいということはかねがね申し上げている通りです。そうした状況の中で、今、内外で少し明るい動きが出てきていることを考えると、この明るい動きを何とか確かなものにしていくことを考えることは、先程申し上げた標準シナリオの実現可能性を高めていくものだと思います。そうした考え方で、今回の措置を採りました。』

ということで、今回はやはり「押し上げ緩和」ですな、うんうん。

『過去の金融政策について振り返ってみた場合、今申し上げたような考え方の意味合いを込めながら金融緩和を行ったことも、何回かあったように思います。もちろん、一般的には景気が悪くなっていく時に金融緩和を強化するというのがオーソドックスですが、今申し上げたような形で、より確かなものにするという思想でやったことも無いわけではありません。』

つまり俊ちゃんスキーム発動と。

『それから、今回、「中長期的な物価安定の目途」を出すという形で私どもの姿勢を示す時に、言葉だけでも目的を達成できるのではないかという議論もありますが、言葉と併せて政策的な行動を採った方が、言葉にもより重みが出てきて、金融緩和の効果も高まってくると判断したわけです。』

まあだいぶこの辺は頑張ってサービス発言してるなあという感じで、つまりは物価がアガランチ会長となれば基金買入の期間を延長して買入を続けますというニュアンスを込めていますな、うんうん。



・台無し発言は無かったようで何より

まあ台無しのレベルは論者によって違うと思いますが、一般的に市場ががっくり来るような発言はございませんでしたなという話です。質疑の最後の方で17ページ以降。

『(問) 先程、政策委員会としての意思を示すという話がありました。安住財務相も「事実上のインフレ目標」というように発言していますが、これが達成できなかった時、中央銀行の信認が低下したり、政府の関与が強まったりという副作用については、どのようにお考えでしょうか。』

『(答) インフレーション・ターゲティングを採用している各国の運営をみても随分変わってきています。例えば、ニュージーランドは、目標インフレ率が達成されなかった場合の規定が入っていますが、多くの国では、物価上昇率が目標等から乖離した場合に、なぜそれが乖離しているのかを、しっかり国民に対して説明していくとともに、政策の決定過程を明らかにしていくことを通じて、責任を果たしていくというのが今の主流になっています。日本銀行もそうした努力をこれからもしっかり続けていきたいと思っています。』

『(問) 英語の表記では、物価安定の目途は「goal」としていますが、先程、各国の表現を「definition」とか「goal」とか、それに日銀は「目途」とおっしゃっていました。英語では「goal」となると、FRBと同じになると思うのですが、この「goal」の方が「目途」よりも若干言い方が強いような気がするのですが、その辺りはどのような考えで「goal」になったのでしょうか。』

『(答) 各国の言葉に、完全に対応している言葉がないわけです。私どもからすると、一番、私どもの思いに近い言葉は「目途」です。「目途」に対応する英語、100%それに対応する英語がない以上、それに一番近い言葉は何だろうかと考えた場合に、「goal」という言葉が近いと判断しました。もっと良い言葉があれば、その言葉をもちろん採用します。』

・・・・・まあ何ですな、要は「目標」というと、従来「インフレ目標導入しろ」と言っていた論者の皆様が良く言っておられた「金融政策を裁量で実施するのはケシカラン」的な話とか、「インフレターゲットによる金融政策はサーモスタット付けた空調みたいなもん」とか例えをしていた(最近さすがにそういう人は減ってるようですが)時のイメージがどうも残っていて、現在のフレキシブルターゲットのイメージがちゃんと伝わるかという懸念があった、というのはまあ判らんでも無いので、目標という言葉を避けるのはまあシャーナイかなという気はする。

ただまあこちらの質疑にあるように「まあインフレーションターゲットと言いたければどうぞ」的なニュアンスで話をするようになっているのは改善ちゃあ改善かなあとは思うのでございまして、今回そういう意味で市場が「あちゃー」となるような発言は特段無かったのは結構結構。

#まあこれでCPIが1%になったころになってこれまでデフレデフレ言ってた「インフレだケシカラン」とかメディアや政治家が言い出したらそいつら全員ラーゲリ送りな


・ということで目標という言葉に関してを見たらちょっと「おお!」という論点が

3ページ目にまあその話があるんですけどね。

『(問) 今回、物価安定の「目途」という言葉にされましたが、これは、これまでの「理解」と何が違うのか、また、金融政策はどう変わっていくのかについてお聞かせ下さい。また、「目標」という言葉を使わなかった理由についてもお聞かせ下さい。』

『(答) まず、「中長期的な物価安定の理解」と、今回の「目途」との違いですが、物価安定の理解については、各政策委員が、それぞれ中長期的にみて物価が安定していると理解している数字、これを政策委員会に提出し、その数字を集める形で範囲を示していました。その数字は2%以下のプラスで中心は1%程度でした。しかし、この数字は、個々の委員の数字を集めているもので、必ずしも、日本銀行という組織、日本銀行政策委員会としての意思、判断を表すものになっていないのではないかという批判がありました。これに対し、今回の「目途」という数字は、日本銀行政策委員会としての判断を示したものであり、そこが大きな違いです。』

・・・・・・・これは見落としていましたが重要な論点。つまりここはFRBのデュアルマンデートにおけるLonger Runにおける望ましい物価水準の置きと同じでして(ちなみに蛇足ながら申し上げると、失業率の中長期的な望ましい水準は従来通りSEPによって示されるFRB理事と各地区連銀総裁の集計によって示されるcentral tendencyの数値であって、FOMCとしての機関決定として示した意志ではありません)、今回は「機関決定した」というのがもう一つの重要な論点でしたな。

とまあ考えますと、やはりこれはFRBの方式と同じ(1%と2%という数字の置きの問題はひとまずスルーしてくらはい)という話になりますなあという所ではございます。うっかりしておりましたです、つーか無意識のうちに機関決定なのかどうかをスルーしてたわ(大汗)。


『それから、「目標」との違いについてのご質問ですが、金融政策の「目標」は、日本銀行法に則して言うと、物価の安定を通じて国民経済の発展に資することです。海外の中央銀行における金融政策の目的も、表現は多少違いますが、要すれば、物価の安定であり、持続的な経済の成長に貢献していくということです。物価安定と整合的な物価上昇率をどのような言葉で呼ぶかは、それぞれの中央銀行の置かれた状況によって異なると思います。FRBは、今回、「longer-run goal(長期的な目標)」という言葉を導入しました。ECBあるいはスイス国民銀行は「definition(定義)」という言葉を使っています。BOEは「ターゲット」という言葉を使っています。日本銀行は「目途」という言葉を使っています。』

ほうほうそれでそれで?

『わが国では、「インフレ目標」という言葉が、目標物価上昇率との関係で金融政策を機械的に運用することと同義に使われることが――もちろんそれだけではありませんが――多いように思います。しかし、実際の金融政策運営は、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国を含めて、物価の変動と目標との関係で機械的に金融政策を運営するのではなく、今は、中長期的にみた物価や経済の安定を重視した政策運営をするようになっています。日本銀行は、そうした金融政策の運営の仕方を表すのに最も相応しい言葉は何かを考え、「中長期的な物価安定の目途」という言葉を今回使いました。』

まあ何ですな、確かに天下の中日新聞様がインフレ目標について下記のように仰せでございますので、白川総裁が上記のように言うのもシャーナイナイと言う所ではないでしょうかねえww

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012012702000014.html
インフレ目標 日本も導入に決断を 2012年1月27日

『いまのように物価が継続的に下落するデフレ状況なら金融緩和を徹底し、逆に物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める。』(上記URLより)

いやいやいやいや、各国中銀(日本以外ね)それなら今頃引締め合戦ですよwwwwwなどと悪態ついていたら時間が無くなったorzorzorz


○一応メモ

総裁会見に関してはあとは「政治圧力」の話とかが中々こう味わいというか悲しみのある質疑応答で大変アレでございましたなというのがありまして、それからそれから金融経済月報なんですが、2月の基本的見解は1月とほとんど変わらずという素敵な状態になっていまして、決定会合声明文では今回細かい個別需要項目別の現状認識や先行き見通しに関する話がスルーされていましたが、やはりまあ予想通りで今回は「景気認識を下げない(どころか若干上げている)中での追加緩和」というこれまでとは違う追加緩和でしたなという事で、上記の総裁会見で示されたような事と整合性が取れますよねという話がございますが時間が無くなったので明日にでも(大汗)。




2012/02/15

お題「俊ちゃんスキーム発動のようですな(金融政策決定会合レビュー)」

今回の追加緩和措置および物価安定の理解の文言変更に関しましてまあああだこうだと考えてみたのですが、結論としてお題を表題のようにしてみましたがどうでしょうかね。

#あと、今日は引用やたら行ったのでアホほど長いですのでご留意ください(テキストファイルにすると概ね通常の3倍である)


○その前に昨日の訂正(ああ恥ずかしい)

昨日の書き出しの所で、橋下大阪市長のインタビュー関連雑感をマクラにしたと存じますが、その中で「改革」フォビアと社会主義的手法が云々とか申し上げましたが、「フォビア」は「〜嫌い」の意味でございますので、原文だと意味が逆になってしまいます(赤恥)。

ということで書き物の方は修正させて頂きましたが、まあ何と申しますか、聞きかじりの英語を格好付けてドヤ顔で使ったら思い切り間違えて滑ってしまうとか典型的な赤恥モードでありまして、いやもう読者様にご指摘賜りまして誠に感謝でございますが、マジで顔から火が出るわという所で汗顔も汗顔、大汗顔にも程があるという事でございまして汗顔阿骨打(字が違いますがな)級の大汗でございましたですことよ。

まあ何だ、舶来の言葉(だけじゃなくてもそうですが)を使う時はやっちまった攻撃の無いようにしないといけま千円でございますことです、はい。


○その前にロイターさんすいませんすいません

先週「追加緩和も」とロイターが報道した時に「何をアホな」という勢いで書き物でdisりましたが、何とビックリ追加緩和実施というのが今回の落ちでございまして、謎記事とか悪態ついて大変恐縮至極でございまして今回に関しては素直にお見それ致しましたm(__)mと

・・・・・・・とひとくさり赤恥大会を致しましたが、まあそれはそれと致しまして今回の決定会合は色々とネタを大量投下して頂きましたので、大量投下されたネタを料理するでござるの巻という事であります。


○それに関連してリーク報道合戦をするメディアは如何に国益を損ねているかが判ったの巻

今朝の公共放送ニュース(5時半)の「今朝の主なニュース」の2番目がこれ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120215/t10013023911000.html
NY市場 3か月半ぶり円安水準 2月15日 5時22分

『14日のニューヨーク外国為替市場は、日銀が一段の金融緩和に踏み切ったことを受け、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は1ドル=78円台半ばと、3か月半ぶりの水準まで値下がりしました。』(上記URLより)

このWeb版だと題名は上記のようになっていますが、公共放送の本チャンの見出しは「日銀の金融緩和で円安に」(6時半では「日銀緩和で円安進む」でした)となっていましたが、今回は上述のように事前のリーク報道みたいなのが全然出なかった(情報管理がちゃんとできて良かったですねという所ですがそもそもそれが当たり前ではある)結果市場がサプライズで動いてくれた訳でして、つまり事前リークをするアホウは腹を切って死ぬべきであり、唯一ネ申又吉イエスによって地獄の火の中に投げ込まれるべき存在である、という件が今回の市場の反応を見て明らかになるのでありました。

ということで、不毛な上に国益を損ねる事前リーク報道合戦は厳に慎んで頂きたい訳でして、報道機関と銘打っているのに自社の営業>>>>>国益とかいうなら報道機関の看板を下ろして「当社はアジビラを印刷して販売しております」ときちんと説明して頂きたいと存じます次第であります(まあ事実認識がどう見ても間違っている記事や社説を堂々出すアジビラ新聞が既に散見されるという説もありますが・・・・・・・)。


とまあそんな前置きは兎も角として・・・・・・


声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

「中長期的な物価安定の目途」について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf


ではまずは「中長期的な物価安定の目途」の方から参りますね(^^)。


○時間軸とか金融政策の枠組みとかには何ら変更はないのですけどね・・・・・・・(物価安定の目途関連)

改めて今回の公表文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』


では従来の中長期的な物価安定の理解はどうだったでしょうか。こちらに過去の推移がございますのでこれをポチポチと見ればよろしある。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/transparency/index.htm/
金融政策の透明性

元々はこちらにある
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/mpo0603a.htm/
「物価の安定」についての考え方(背景説明含む)

とかこの時に公表されている
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060309b.htm/
新たな金融政策運営の枠組みの導入について

の所にああだこうだと書いてある訳で、こちらにある『「物価の安定」についての考え方』が元々あったものなのですな。

つまり・・・・・・

『2.「物価の安定」についての考え方

「物価の安定」とは、家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

「物価の安定」は持続的な経済成長を実現するための不可欠の前提条件であり、日本銀行は適切な金融政策の運営を通じて「物価の安定」を達成することに責任を有している。その際、金融政策の効果が波及するには長い期間がかかること、また、様々なショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収しようとすると経済の変動がかえって大きくなることから、十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めている。

物価情勢を点検していく際、物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となる。中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。

「物価の安定」とは、概念的には、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態である。現状、わが国の消費者物価指数のバイアスは大きくないとみられる。物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても、金融政策運営において「物価の安定」と理解する範囲内にあると考えられる。

わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。

本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。「中長期的な物価安定の理解」は、経済構造の変化等に応じて徐々に変化し得る性格のものであるため、今後原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』(以上、2006年3月9日公表の『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』より)


で、その後2009年12月18日の金融政策決定会合でこの「中長期的な物価安定の理解」の明確化ということでこのリリースが行われた訳ですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
「中長期的な物価安定の理解」の明確化

『(明確化のポイント)
・ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない
・中心は1%程度
消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている』
(以上、2009年12月18日公表の『「中長期的な物価安定の理解」の明確化』より)


・・・・・・・でですね、改めて今回の公表文書を読みますと(再掲します)、

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』(今回公表された『「中長期的な物価安定の目途」について』より、以下同様)

で、この続きにこれでもかとうだうだと説明が続きまして・・・・・・

『4. 「中長期的な物価安定の目途」の背後にある「物価の安定」についての基本的な考え方については、以下のとおり、これまでと同様であることを確認した。

@概念的定義:「物価の安定」とは、家計や企業等が物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

A時間的視野:十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めるべきものである。

B中心的指標:物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となり、中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。』

この部分は2006年3月に公表された『「物価の安定」についての考え方』の説明文の冒頭から4パラグラフまでの内容と合致していますわな。

『5.「中長期的な物価安定の目途」を具体的な数値として示すに当たっては、これまでの点検と同様、@物価指数の計測誤差(バイアス)、A物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ)、B家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観)、の3つの観点を踏まえて検討した。その際、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことに留意する必要がある。このため、「中長期的な物価安定の目途」について、現時点では、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にある」とある程度幅を持って示すこととした。そのうえで、「当面は1%を目途」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

6. 「中長期的な物価安定の目途」は、今後も原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』

この部分は先ほどと同様の『「物価の安定」についての考え方』の説明文の5パラグラフから最後までの内容に相当する部分ですわな。

で、今回ちょっと違うのは「のりしろ」について明確に記述している事(物価安定の明確化の時ものりしろについては明言しておらず、2006年の段階では『物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても』という分かったような分からんような言い方しかしていない)が違うのと、『金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。』と言う表現をして、その水準が1%という事なのですが・・・・・・・・



えーっとですな、そもそも論で申し上げれば、以前の『「物価の安定」についての考え方』の記載してある『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』(2006年3月公表)の冒頭に『日本銀行法は、金融政策の理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定めている。日本銀行はこの理念に基づいて適切な金融政策運営に努めている。』とあって、その物価の安定を図るという「物価の安定」って何ぞやという事で、それを「中長期的な物価安定の理解」という形で明示していた訳ですよね。

つまりですよ、今回「金融政策において目指す物価上昇率を明確にした」とドヤ顔(かどうかしらんが)で書いてある文章って、そもそも従来の話と同じであって、しいて言えば従来は「中心が1%」だったのが「当面は1%を目途」に表現が変わっただけの事であって、金融政策のフレームとしては全然変わっていない訳ですよ。

即ちですな、従来の枠組みにおいては、「中長期的な物価安定の理解が達成できるまで、現在の超緩和的な金融政策を継続する」と言ってまして、その中長期的な物価安定の理解で示す物価水準が「中心1%で2%以下のプラスの領域」ってなっていたのが「1%を目途」となっただけの話で、結局の所「中長期的にCPIが1%となる事が展望できるまでは現在の金融政策を継続しますよ」というのは何ら変化が無い訳ですよ。

よってこれを単体で捕まえて時間軸が伸びた縮んだというのはナンセンスにも程がある話ですし、まあ日銀的には今回の「明確化」を持って「インフレ目標導入」とか言われましても「いやあの以前からフレキシブルターゲットとしてのインフレ目標のようなものは出していまして、今回は単に従来出していたものを素人の皆様にも判りやすくくどくど説明したものなんですけど」というような所なのでしょうが、まあそれはそれで政治家の皆様やメディアの皆様、株式市場や為替市場の皆様が喜んでくれればよろしかばいという感じなんでしょうかね。


しかしまあ何ですな、こんなの出せるならとっとと出せばよという感じでして、今回は「検討指示」となるかと思ったのですが、まあ今回出すことによって政治的な圧力云々の問題は思いっきりありますし、そういう意味では結構アヒャヒャな所もありますが、出している物自体は単に縦書きの看板を横書きにした程度のものでありまして、実質的に何の変化もしていない、という意味で実は確保しているちゅうのが日銀的な結論になろうかと存じます。

#まあこの結果見て内閣の皆さん大喜びなのですからチョロイもんですなという感じですが、さすがに「何で2%じゃないんだ」とご指摘の方もいるのはまあ当然ちゃあ当然ですわなと存じます

こちらに関するその他のネタはまた後で。続いて追加緩和の方につきまして。


○追加緩和の方はちょっとビックリである

改めてURLを
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

『金融緩和の強化について

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の決定を行った。

(1)中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として、「中長期的な物価安定の目途」を示すこととする(注1)。日本銀行としては、「中長期的な物価安定の目途」は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とする。

(注1) 「『中長期的な物価安定の目途』について」を参照。

(2)当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とする。

(3)資産買入等の基金を55兆円程度から65兆円程度に10兆円程度増額する。買入れの対象は長期国債とする(注2)。現在、資産買入等の基金の残高は43兆円程度であるため、今回の増額分と併せ、本年末までに残高は22兆円程度増加することになる(注3)。

(注2) 基金の内容等については別紙参照。
(注3) 日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』

という所までがまあ今回の追加緩和の話ですが、1.については先ほどああでもないこうでもないと書いた通りでして、要するに別段実体ベースで言えば変化がある話ではなく、日銀の時間軸(これは展望レポートでの物価見通しとのセットですね)にも変化のある話ではございませんな。

で、2.につきましては・・・・・・・・

『当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。』(再掲)

とあるので、何となくインフレ目標っぽく見えますが、そもそも先ほどから申し上げている通り、従来の金融政策の枠組みにおいても、金融政策は「中長期的な物価安定の理解」を達成することを目指して運営していたのでありまして、それは「中長期的に消費者物価の前年比+1%が中心」という事でありますので、そこには実質的な変化はありません。

ただまあこの表現は割とペテン的な所があって、1%という数字が足元の数字なのか中長期的な数字なのかが敢えて曖昧になっているので、インフレターゲットっぽく見せていますけれども、そもそも現在の先進国の金融政策運営において「足元の物価指数」のみを見ながら運営するようなリジッドなターゲットで運営している中銀なんぞございません(あったらFRBもBOEもECBも現在はターゲット水準を上回っているのだから金融緩和政策を終了しないといけませんがな)で、普通に「中長期的な水準」としての数字を示している、と考えるのが本来は妥当なのでございます。大体からしてここでも「それが見通せるようになるまで」と書いてある訳で、つまり足元1%という話じゃないよね、という事でありますが、まあそれ自体は普通の話ですな。

んでもって、後半にある「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」っていうのはまあ何と言いますか景気づけに言ってるようなものでございまして、そもそも「強力な金融緩和の推進」というのは別に今回初めて言い出した訳でも何でも無いというのに注意すべきかと存じます。すなわちですな・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

『概要

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けている。』(上記URLより)

ということで、そもそも従来やっている政策自体が「強力な金融緩和の推進」(ここにただし自称、などと付けてはいけません^^)でありますという建付けになっておりますので、そういう意味では今回の声明文における「追加緩和をしましたお!」といううちの最初の2つの部分に関しては「はいはいそうですかそうですか(棒読み)」と読むのが本来の正しいお作法なのですが、まあ福井の俊ちゃん時代にはその点に関して散々悪態を付きましたが、麿の場合は今回そういう意味ではやっとこさ福井の俊ちゃんスキームを導入したともいえますなあという感じで、まあ何か努力の跡がみられる(何という上から目線>自分)ので、棒読みとかはいはいワロスワロスなどとは言わないのが大人としての正しいあり方ではないかと思うのであります(散々棒読みしてますかそうですか^^)。


つーことで、問題は「基金買入10兆円増額」でございまして・・・・・・


○これから毎月1.5兆円の購入キタコレ

先ほどの声明文の別紙にありますように、今回長期国債(2年以内ですが)を10兆円購入拡大という話で、しかも別紙にありますように『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』というのに変化なし、ということですので、これはすなわち今年末に基金国債買入の残高を19兆円にするのですけど・・・・・・

ちょうど昨日は営業毎旬報告の日だったのでその数字を。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120210.htm/
営業毎旬報告(平成24年2月10日現在)

別表2の所に『「資産買入等の基金」の内訳』というのがありますので、それを見ると宜しいのですが、基金国債買入の残高って直近時点で3.8兆円しかないのですよね。

つまり、今年の12月までですからざっくり言って10か月の間に、今3.8兆円の国債買入残高を19兆円にしないといけませんという話ですから、15.2兆円を10か月で買うという話になるので単純に計算して月に1.5兆円とかの基金国債購入をする訳ですから、週3000億円ペースで買ってやっとカツカツとかいう素敵な話ではございまして、どう見ても2年債が1年TB状態になります本当にカムサハムニダという風情でございまする。

つーかですな、2年ゾーンを月に1.5兆円購入するという事はですよ、現在の2年新発国債の毎回の発行予定額が2.7兆円(第U非価格競争入札の状況によって発行総額はぶれる)という状態ですので、2年ゾーンの新発債の発行額の半分以上を買うような勢い(実際には2年以内の複数銘柄を買う事になるのでそういう単純な話ではないですけど)というおそロシアな展開になりますので、そらまあ現在1年TBがだいたい0.1025オファーの0.1038(月曜の入札のアベレージ)ビットとかだと思うのですけれども、 それこそ2年ゾーンがそんな感じになってしまうんでしょうなあという所でございます。

まあ元々2年ゾーンは月曜の引けベースでも0.120%の引けとか(引けはオファーサイドでした)でしたので、それが0.105/0.110になってSo What?という意見もあろうかとは存じますが、ただまあこの調子の買いが少なくとも年末まで続くのですし、その時点でまだ物価安定の理解達成の目途が立っていなければ少なくとも残高維持の為に買いは続くという事になるでしょうからとか何とか考えますと、すなわち2年カレント近辺の金利がその程度である事あと10か月継続という事ですからして、3年とか4年とか5年とかの金利ってそれにどのくらい影響されるかなという所ではございます。まあいずれにせよ月1.5兆円というのはいい感じでヤケクソの香りも漂う勢いの良さでございまして、1年どころの金利がぐっちゃり潰れているのが2年まで全部波及という事で、全くのウゴカンチ会長状態で瀕死状態の短期市場の皆様から致しますと、まほうの緩和で楽しい仲間がぽぽぽぽ〜ん♪という所でございますなという所でもございます。

今の所イマイチイメージつかみにくいですけれども、2年の金利が1年の金利位になるとしますと、そのゾーンをその金利で買ってどないしますねん誰が買いますねん(って日銀が買うのですが)という事で後ろに波及となるんでしょうなあというのが昨日の引値だったかなあ(それにしては2年とか5年とかをオファーサイドで引値付けないあたりに往生際の悪さを感じますが)という所でしょうか。


というのがまあ今回の新規イベント(^^)に関するあたくしなりの後講釈という所でございますが、以下その他諸々の周辺論点とか

○声明文比較

声明文比較ってのは周辺論点ではないですけれどもね(^^)。

今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf
前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf

まあ今回は「金融緩和の強化について」というお題になっているようにそもそもが書き方違っているので比較しにくいのですが・・・・・・

・現状認識は少なくても下がってはいなさそう

『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

ということで、個別項目に関しては割愛攻撃になっているので、本日の金融経済月報(そういや1月の月報比較してないので12月以降の推移を含めて比較しますね)を見ないといけませんな。

『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。(途中割愛)この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということで現状判断は少なくとも下がってはいない見るのが妥当っぽい。


・先行き見通しは不確実性を強調するも・・・・・

『わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいる。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ改善の動きがみられている。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っている。』(今回)

「不確実性が大きい」というのを強調したのは判断下げではありますが、その後を見ると欧州債務問題、米国経済についての状況判断が上がっており、復興関連の需要云々の部分でも「底堅い展開」という表現になっていて、そういう意味では現状判断の方が実際問題としては上がっている可能性もあるなあとは思われます。まあ復興需要云々に関しては従来の先行き見通しにある「復興関連の需要が徐々に顕在化」という見方の反映でもあるかと思いますが。

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)


・じゃあ何で追加緩和したの???

ということで次の所になるのですが。

『日本銀行は、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとすることが必要と判断した。』(今回)

今回は不確実性対応でもあるけれども、「押し上げ介入」っぽい物言いになっているのが従来の追加緩和と違う所でありまして、俊ちゃんスキーム発動と試しに書いてみたのはその辺りでもあったりしますが後ほど。

『このため、今回、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定した。日本銀行としては、引き続き強力な金融緩和を推進していく。併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から取り組んでいく。この間、欧州債務問題がわが国の金融市場ひいては金融システムの安定を脅かすことのないよう、万全を期していく。』(今回)

成長基盤強化とか金融システムの安定(先ほど出しましたURLの中に『物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営』というのがあったと思いますが、そちらにあります話でもあります)といういつもの話をしています。

この辺り従来はこう書いてありました。

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。また、日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたって大幅に増額することにより金融緩和を強化してきており、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回)

ということで、まあこの辺はいつもと同じような所ですが・・・・・


・展望レポートの最終パラグラフ相当部分を敢えて今回入れたのは・・・・・・

最後のパラグラフに日銀の意地みたいなのを見た。

『わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。この課題への取り組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていくうえで不可欠である。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』(今回)

展望レポートでもこの話をしていまして、昨年10月の展望レポートの「基本的見解」の最後の部分にこのような記述がございます。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf

『日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。』(昨年10月公表の展望レポートより)

ということで、このパラグラフは「ワシらは押し上げ介入ちっくに追加緩和したんですから特に政府はうだうだしてないでちゃんとして下さいね」という風に政府に球を投げかけているという部分でもあると解釈致しましたがどうでしょうかねえ。


○俊ちゃんスキームと呼んだ訳

今回の決定に関してですが、先ほど申し上げたように「押し上げ介入」ちっくでもあり、「姿勢を見せる」というような決定という意味では福井総裁時代の当座預金残高拡大の最後の局面に似ているのではないか、というような話を識者の方々(^^)としておりました次第でございまする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/(2004年1月の当座預金残高目標拡大)

で、まあここにありますように、この時は経済見通しに関しては景気回復についての見通しは強めとなっている中(ただし物価の見通しは弱め)「政策スタンスを明確に示す」という最早何が何だか判らない「姿勢を見せる」追加緩和という俊ちゃん節爆裂の措置でございましたわな。

『わが国の景気は緩やかに回復しており、先行きについてもその持続が見込まれる。ただ、回復のテンポは、過剰債務など構造的な要因が根強いもとで、なお緩やかなものに止まると考えられる。消費者物価は、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況の中、引き続き小幅の下落基調を辿るものと予想される。この間、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。日本銀行は、以上のような情勢を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』(上記URLより)


また、今回の基金買入の「10兆円拡大」に関しては2009年3月に実施された輪番オペ予想外の拡大にも似ている所があるなあとも思うのです(この時の総裁は麿なので俊ちゃんスキームではないが俊ちゃんっぽい香りがしました)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/k090318.pdf(2009年3月の輪番拡大)

まあこの時は輪番の拡大はあるかもねという話ではありましたが、従来輪番の増額を行う際には月2000億円の拡大を行うというのがパターン化されていましたけれども、この時は従来の刻みをいきなり増やして4000億拡大で市場が「おお!」と反応したのですよね。

『金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。

これまで年16.8兆円(月1.4兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8兆円増額し、年21.6兆円(月1.8兆円)ペースで実施する(当月より実施)。』(上記URLより)

この時はまあ経済見通し自体はそんなに強くは無かったですが、どうせ2000億円やるなら折角だから4000億円どどーんとやってサプライズにしましょうや、的な動きになって居た訳ですが、今回に関してもそんな雰囲気は濃厚に漂う所ではございます。何せ10兆円拡大しましたので、買入実施時期のエンドを延長しない限りここからの残高拡大はさすがに物理的に厳しい事になる(新発を殆ど吸収するような状況になったら2年ゾーンあたりの中短期ゾーンの投資をそれなりに行っている銀行業態憤死してしまいますがな)と思われますので、そーゆー意味では今回は刻まないでどどーんと10兆円増額したのは結構思い切っている感じではあります(物理的制約という意味で)。

今後は増額するなら買入を実施する期間の延長をする(例えば月1.5兆円の買入をその先半年継続すれば償還来る分の落ちもある可能性が出てくるが、とりあえず単純計算では9兆円近く増額が出来る)か買入対象銘柄の足を長くする(ただし残存3年に延ばしても3年新発債というのは無いので極端に買入対象銘柄が増える訳では無い、ただ中短期の金利はどどーんと下がるので次にやらなければいけなくなった時のタマですな)という感じで、いずれにせよ物理的にはこの辺りがほぼ今の形では限界っぽいので、限界まで一気に打ってきましたよんというのも以前の輪番サプライズ拡大を彷彿させる感じですなあという所であります。


○まあ為替と株価に効いたからよかったんではないですか

昨日の反応としては、最初は為替も株も債券もあまり動かず、債券はちょっと上昇しましたが、その後謎の買いで1円高まで上昇して(何故サーキットブレーカーが発動しなかったのかが意味不明、どういうシステムになってるんだ)下落しましたけれども大体20銭高位に上昇してカーブはブルスティープ(中期の引値が全部スーパービットサイドでついているような気がするのですが・・・・・)となりました。

んでもって為替は最初反応してなかったのですが、その後円安進行してて、その流れの中に謎の買いもあったので、まあこの手のネタが好きな海外さんが反応したのではないかという風情。円安進行を見て平均株価も上昇と中々素敵な展開ではございました。

まあ何ですな、株価と為替に効いたからとりあえず日銀的にはしてやったりという感じでございましたが、その時間にまあ仲間内で話していたのは「これで麿が会見でダイナジーな発言をしたらテラアホスなのでもう今日は会見しなくていいよ」とか「精巧な麿の着ぐるみを福井の俊ちゃんに着せて・・・・」などというような碌でもないネタでございましたが、どうもその後のヘッドラインを見ておりますとさすがの麿もぶち壊し発言は殆ど無かったようで(イブニングセッションでは債券先物は上昇していました)誠に結構と申しますか、失礼な事を仲間内で話していて麿様どうもすいませんという所でございます。


○米国がインフレターゲット導入というなら日本のこれもインフレターゲット導入ですわな(水準の問題はあるが)

まあ何ですな、今回決定した物価安定の目途云々に関してですけれども、まあどう見ても従来の延長線上であまり大きな変化があるとは見えないのですが、それは米国が先般のFOMCで示したデュアルマンデートの理解(とあたくしが勝手に命名しているもの)に関しても従来の延長線上で大きな変化があった訳では無い(最早大杉勝男なので引用しませんが以前バーナンキ議長の会見を引用した時にその部分ありましたよね)のでございまして、米国の措置を「インフレターゲット導入」というのであれば、今回の日銀の措置に関しても「インフレターゲット導入」というべきであり、これを「米国はインフレターゲットだが日本のはターゲットではない」とかいうのは何ぼなんでも議論としておかしい。

いやね、当然ながら水準の1%の方に対する批判というのはあると思いますが、枠組みそのものに関して米国は褒めるが日本はdisるとかいう人がいたらそれはちょっとバイアス掛かりまくりだと思いますよ。

ちなみに、あたくしはそもそも米国の先般の措置がリジットなインフレターゲット導入じゃない(フレキシブルターゲットと言えばフレキシブルターゲット)と思っていますので(デュアルマンデートなのだから当然だし、大体からしてLonger runの2%にコミットしている訳でも無いフレキシブルターゲットでしょこれって)、日銀の決定に関しても従来から行っているフレキシブルターゲットの中で1%を強調しただけでしょとしか認識しておりませんでありますが、まあ数字の問題という大問題はありますが(^^)、枠組み自体は(展望レポートでの経済見通しの数値化なども含め)日本と米国の建付けが更に似てきてますなあというのはございます。


ま、日本と米国の違いはそもそもの物価水準がアレというのに加え、政治圧力として掛かっているのが日本の場合は「緩和ヤレヤレ」の一方で米国の場合は「物価が上昇しているのに緩和継続とはケシカラン、銀行や証券会社優遇か」というような話でございまして、米国の場合の明確化は政治的に「中長期的に2%を目指しているんですよ」というアピールも必要という意味では日本と逆方向なのがチャーミング。そらまあ物価水準が違いますから当たり前っちゃあ当たり前ですけどね。


○政治家の反応メモ

とりあえずいいからお前は喋るなと。

http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPTYE81K3IO20120214
日銀のCPI1%メド、実質的インフレターゲット決定と認識=財務相
2012年 02月 14日 15:15 JST

・・・・・・・・いやだから以前からそういう意味では実質的インフレターゲットは実施しているのでありまして、財務大臣がいきなりこういう話をすると残念無念という感じではございます。従来の枠組みを理解してませんでしたと言ってるのと同じじゃわ。

『物価政策でも消費者物価の前年比上昇率1%を目指すと明確な表現に変更したことについて「実質的にインフレターゲットを決定したものと受け止めている」と述べ、「10兆円の長期国債の買入増を表明したことは1%の物価上昇実現に向けた日銀の具体的な強い意志の表れだ」と語った。』(上記URLより)

ただまあ後半にある「日銀の意志の表れ」というのがレクの跡を感じさせる所でございますので、まあ日銀的にも今回「実質的インフレターゲット」という話をされる件に関しては敢えて無駄に突っ込まないという方針を取っているなあという雰囲気は感じました。


えーっとね、球はそっちに行ってるんですけど・・・・・

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPTK073213420120214
UPDATE1: 日銀の追加緩和「大事なのは結果」、株・為替・物価への効果を注視=前原民主政調会長
2012年 02月 14日 18:41 JST

いやあの「大事なのは結果」というのは正論なのですが、経済に関しては与党の皆さんも重大な責務を負っておられるのですが、何ですかその他人事のようなコメントは・・・・・

ちなみに、インフレ目標導入と報じていたのはあたくしの記憶によると朝日、共同とかで、インフレ目標導入とは書いていなかったのは読売(読売は追加緩和をヘッドラインにしていた)だったかなあとか思いますが、ちょっとURLとか集めるの面倒だったのでとりあえずメモだけね。

あとですな、そういや昨日は色々なレポートを斜め読みしましたが、インフレ目標インフレ目標連呼でいやはやという感じでございました。いやまあ米国のアレがインフレ目標なら以下同文という感じですけど・・・・そういや武士の情けで名は伏せますがどこぞのレポートで米国の物価安定の理解の2%の数値に関して「コアPCEデフレーター」とか思いっきり間違えてレポート書いている人がいてあまりの残念さに泣きそうになった(足元の参照なら兎も角、中長期的な目標にコアを使うのは理屈からしておかしい。コアを使うのは足元のブレを排除してトレンドを見るための便宜的な扱いであって、中央銀行が本来目指す物価は当然総合物価指数である)ことだけ付け加えさせて頂きたく存じます(^-^)。


○その他論点は気が付いたら書きます

ということで(さすがに今日は下準備してますので^^)延々と書いて誠に申し訳ありませんでしたが、英文公表分の比較とか、いろいろとまだまだネタがあるっちゃあありますけれども、まあとりあえず会見とかも続きますので続きは明日ということで(^^)。






2012/02/14

お題「物国発行再開WGとかオペ雑談とかECBネタとかの雑談」

選挙が白紙委任ってそれ「プロレタリア独裁」と発想が同じです罠。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201202110424.html
〈橋下徹・大阪市長に聞く〉選挙、ある種の白紙委任
2012年2月12日03時00分

で、本人は国政に出ないで国を党を使って改革って党書記長が最高権力者で首相が事務執行機関になっていたソビエト連邦ですかそうですかという感じですが、何かこの手の「改革」フォビア病と社会主義的手法って相性良いんでしょうかねえ・・・・(2月14日夜追記:「フォビア」じゃあ「嫌い」という意味なので意味が逆になってしまいます。ご指摘いただきまして誠にありがとうございます。汗顔至極でございます)

などと柄にもなく政治思想的な事を申し上げましたがまあそんなことで。


○物価連動国債WG第一回会合

まんまの審議会名ですが。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/index.htm
物価連動債の発行再開に関するワーキング・グループ

金曜の会議の議事要旨等が昨日の夕方遅くに出ていましたです。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/120213.html

議事要旨はこちら
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/outline/20120213.html

配布資料はこちら
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/outline/120213siryou.pdf

でまあ議事要旨の方を見てもこんな質問がありました系の話だけで、肝心のお答えについては書いていないのか持ち帰りになっているのか判らんが(まあ常識的に考えると持ち帰りになっていると思われる)、まあこんなのが(以下上記議事要旨より引用しますが画面デザインを鑑み引用部分に『』はつけません)。

(引用開始)
○事務局より、物価連動債の商品性や発行方法等に関し、資料に基づき説明を行いました。出席者から出された主な意見は以下のとおりです。

・現状、利子源泉徴収対象者(個人及び事業法人等)に対して譲渡制限が付されているが、個人にも潜在的なインフレヘッジニーズはあると思われることから、これを見直すことは検討しないのか。

・元本保証の付与の方法について、期中を含め連動係数が1を下回らない商品設計とすることは考えていないのか。

・国債市場特別参加者の落札義務の対象となるのか。この場合、当該落札義務はどの年限に含まれるのか。

・既発債の流動性にも十分に配慮した対応をお願いしたい。

・新しい物価連動債について、発行後どれぐらいで買入消却の対象とするのか。

・新しい物価連動債がベンチマークとして採用されれば、年金等投資家の需要があると思われる。

・新しい物価連動債の入札と買入消却の組み合わせではなく、スイッチオークションそのものの導入は検討しないのか。フロアプレミアムについてマーケットのコンセンサスができれば、同一年限の新しい物価連動債と既発債を交換することも考えられるのではないか。

・発行再開にあたっては、流動性が十分に担保される商品性・発行方法とすることが重要である。
(引用部分終了)

ということですが、まあ何ですな、譲渡制限の問題に関しては税制上の問題があって、現在の方式だと元本が変動するのでその分の所得認識の問題があって、利子源泉徴収と別件管理という話になってヤヤコシヤなので無理という話だったかとあたしゃ認識している訳ですが、元本変動しないで単純に利子がフローターという方式にしないと利子所得源泉徴収と別建てになるという時点で事務的にしんどいんじゃないかなと思いますんな。

あと、スイッチ方式のオークションに関連する雑感なのですが、配布資料にあった同日オークション方式の新発債発行と既発債の買入消却って業者的な発想だと普通に問題なく出来る話なのですが、投資家の場合通常「受け渡しベースどころか約定ベースで金が無いのに先行して買いを入れる」という行為は普通できない(現物の買いの話で、先物買うというように支配残ベースでキャッシュショートにならない買いは別問題)ので、入札で応札する分のキャッシュが無い場合(フルインベストしてなくて金があれば無問題だが)そもそも入札の方の応札をしにくいという残念な問題があるので、技術的には検討の余地がありそうな気がします。そういう意味ではスイッチオークション形式で売りと買いのチケットが同時に切れる形になった方が既発債を持っていている投資家のニーズに対応しやすいと思います(が事務が回るのかは正直知らん)。

とか何とかまあ微妙にこの先の議論には興味が尽きませんが、何はともあれ物価連動国債そのものにニーズが全然ない訳では無い筈ですので、今後の展開が期待されるというものです。


○基金買入オペェ・・・・・・

金曜の基金短国買入
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120210.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120210.htm(結果)

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 6,397 2,005 0.000 0.001 4.6

昨日の基金CP買入
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120213.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120213.htm(結果)

CP等買入(資産買入等基金) 7,698 2,912 0.013 0.015 49.1

ということで、直近の国債以外の買入系のオペは一応無事(?)に応札が集まるでござるの巻となっておりますが、まあ基金短国に関しては1年入札の前だというのにオファーするとはいつもとパターン違うじゃんという所でもありまして、基金買入系のオペに関して「札の入りそうな市場動向を見て打ってくる」という感じになってきたのかなあとか勝手に妄想を逞しくするあたくし。

いやまあ何ですな、足元でGCレートが0.100%を上回る(と言っても0.105%までしか上がらんのですが)状況で推移しているというのもあって、直近の短国の入札が基本的に0.10%オーバーで推移していますから、とりあえず0.100%で日銀に打ち込んでもいいかな状態になっているというのが背景としてある訳ですが、海外でのドルファンディングやらベーシススワップやらの要因に加え、日銀当座預金残高がしらっと減っているのもGCレートが0.10%を割って下に突っ込んでいかない原因でもありますので、そーゆー意味では以下自主規制。

ただまあ当座預金残高自体は12月20日の国債大量償還によって資金偏在が生じていた分に対応して大目に出していた分(足元と比較して目の子で5兆から6兆程度の偏在があったと思われます)で年末とかは下駄をはいていた分がありまして、まあ当座預金残高を単純に比較して全部が全部絞っているとか考えるとこれまたミスリードになるのですが、まあそんな事まで気を付けないで比較しだす人がそのうち出てくるに1万ドラクマ(マニアすぎてそんな話誰もしないか)。

CPに関しては最近体感的には発行がやや復活傾向という感じ(ただしショートタームがやたら多い気も)ではありますので、札は入るんでしょうが、こちらはどうせクソ短いものばかり入るので買入した側から償還が来るというハツカネズミもビックリのオペ無限輪廻状態になっているかと存じまして、買入額目標を作ったのは誰だ(ガラッ)と金融政策決定会合に怒鳴り込みたい心境の方はおいでではないかと存じます次第で、誠に同情の念に堪えません(なぜか棒読み)という所で(^^)。


○とか書いてたらまた時間がががががが(ECB会見ネタ)

まあアレです。春眠暁を覚えずと言うではありませんか。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120209.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 February 2012

今回の会見Q&Aはかなり真面目に読んでみましたが、気になる論点が幾つかございましたのでとりあえず箇条書きで。

・担保政策に関する所で気になる所が

今回の適格担保の拡大に関してですが、各国の中銀がその適格担保拡大要件についての決定を行うという建付けになっていて、ただしその決定の際にはECBが各国中銀の出した案を審査して、ケシカラン場合は差し戻しをするという事になっています。

でね、そういう意味では「共通のガイドライン、共通の基準」(「」内は大体会見Q&Aで出ていたドラギ総裁の発言の趣旨を踏まえた部分とご理解下さい、以下同様)に則っての担保政策は続くという事なのですが、あたくし思いまするに担保政策っていうのは金融政策の中でも重要な問題であって、ある意味金利の上げ下げよりもクリティカルな話でありますので、「各国の実情を踏まえて各国の中銀がまず決定」という建付けってそれはECBと各国中銀の金融政策における役割分担に重大な変化をもたらす可能性があるんじゃないのですかねえとかいう気がしますし、そもそも同一通貨で同一の金融政策という理念との乖離が生じるような気がするのはあたくしの気のせいですかね。

で、質疑の中で何で各国中銀が担保のリスクを取るのですかユーロシステム(ECB)で取らないのは何故ですかというのがあって(これは例のECBのオペレーション要綱を真面目に読まないと制度的な事がややこしいので要確認ですが)ほほうと思ったのですけれども、「新しく緩和する担保については極めて掛け目を厳しくして運用するので問題ありません」という風に質問の趣旨を逸らして逃げていましたが、でも担保政策に関する権限を各国中銀に下すような動きって金融政策としてどうなのよという気がするのでありますが良くワカランチ会長であるのであたくしの要研究課題でありまする。

担保政策に関する質問、およびその担保政策の緩和に伴うリスクマネジメントはちゃんと出来ているのかという質問が何度も飛んでいまして、色々と手を変え品を変え言い訳しているという風情でありました。


・事実上の政府へのファンディングという指摘について

いやまあこれは当然ながらドラギ総裁答えが苦しいという感じで、話を必死に誤魔化しているという風情ではございましたが、質問する方は容赦なくてイタリアの銀行はLTROで調達した資金でイタリア国債買ってますよねとか打ち込んでくるのが中々味わいがありました。本件の質疑は2か所あるので必読。


というのが論点でして、あと気が付いた雑ネタとしては・・・・・


・ドラギ総裁質問に答えないで再質問を食らうでござるの巻

今回の会見見てて一番ワロタのはこの点でありまして、質疑応答の際に大体質問する人が2つか3つ位の質問をするのですが、そのうち答えにくいと思われる質問に対する答えを華麗にスルーして即座に記者からさっきの質問に答えをもらってませんがという切り返しを食らう事が何と3回もあったというのが中々チャーミング。


・・・・・というような所ですかな。あとLTROの効果に関してとか、伝統的政策と非伝統的政策の問題とか、EFSFに対するファイナンスするの(「EFSFは政府のようなものなのでファイナンスはしません」と言ってました、為念)とか、質疑応答が中々良い感じで推移しておりましたが、昨日ご紹介した日本の介入がどうのこうのとか言う馬鹿質問があったのが会見のペーパーに水を差すという感じでございまして、誠に遺憾の極みでございます。

ということで引用はまた後日。






2012/02/13

お題「本当はECB会見ネタをするつもりが月曜なので雑談大会になってしまいましたorzorz」

公共放送では金融政策決定会合の議論の焦点が物価水準目標をどうのこうのという話をしているようですな。

○ということで世間話ですが

・物価水準目標の明確化ねえ

でまあ物価安定の理解が分かりにくいから分かりやすくしろという話が今回検討されますとか何とか公共放送が仰せですが、肝心の公共放送のサイトにそのニュースがまだうぷされてないのでブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZ9XFD07SXKX01.html
古川経財相:日銀は物価目標の「わかりやすい伝え方の検討を」

『2月12日(ブルームバーグ):古川元久経済財政兼国家戦略担当相は12日午前、NHK番組「日曜討論」に出演し、物価目標について日本銀行は国民に対し「分かりやすい伝え方はないか検討してほしい」と述べた。日銀は「中長期的な物価安定の理解」として、CPIの前年比で「2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」という数値を示している。』(上記URLから)

という事で、今回は「物価安定の理解が分かりにくいので改善しろ」的なお話になると思われますが、まあ今回の会合で変わるとかになったらそれはまあお笑なんですけど、せいぜい検討指示して表現を変えるとかいう話になるかもしれませんけど、現状の物価安定の理解をより明確化すると1%が数値化されてしまうんですけど良いんですかねえ。

まあそれを入れたからと言って何か変わるのかというと実際問題としては日銀の出している「中長期的な物価安定の理解」と「展望レポートにおける経済物価見通し」のセットからすると米国よりも日本の方がどう見ても低金利長期化です本当にありがとうございましたという形には成るのですが、まあ日銀も「市場との対話」をする相手として短期金融市場だけという訳にもいかんでしょうし、ワカランチンの為替市場とかメディアとか政治家とかを相手にするという事を考えた場合にプレゼンが不十分ってのはまあそうです罠という事でありますので、ここは一発俊ちゃん状態でてきとーに目くらましでもしておけばよろしかばいという感じではないでしょうかにゃあ。

今の物価安定の理解をそのまま平行移動した場合って数値が1%になりますし、じゃあ2%というのを出せるかっていうとそれはそれでメディアとか政治家とかが「そんなインフレはとんでもない」とか言い出さず、実際に2%位の上昇になっても誰も文句言わない、というのであれば日銀だってホイホイ2%の数字を出してくると思いますけれども、本当にそうなのかというのは何か非常に疑問なんですけどね。べき論云々の問題よりも、その2%という状況が全然起きていないという状態が変化した場合に本当に世間様が適応できるのでしょうかねえという方がちょっと。


まあ何ですな、しかし直近はどこぞの何とかストランキング投票期間中なせいか、足元では何とかストの皆様が妙に「日銀の物価安定の理解は分かりにくい」というレポートをここぞと出して目立とうとしておられるように見受けられますが、そもそも物価安定の理解が出たのは福井総裁の時ですし、その後の2009年12月に明確化というのをしたのでありまして、何とかストとして本職でやっておられる皆様におかれましては、世間様に向けてこの物価安定の理解と展望レポートでの経済物価見通しのセットによって将来の金利パスに対する市場への働きかけを行っているというような説明をもっと従来より行っておけば、現状のように「ワカラン」という大合唱になる事がある程度防げたのではないかと思う次第でございまして、何を今さらメディアや政治のケツに引っ付いて「ワカラン大合唱」に加わるのでしょうかねえそれでもあんさんら本職の何とかストなんですかねえとか思いますなどと書いてまた読者を減らすような行為に出るあたくしなのでありました(-_-メ)。

とは言いましても、金融政策の第一の柱、第二の柱とかも正直あたくしも当初思いっきり誤解していたりしてまして(だからその後ドヤ顔であたくしのサイトに『金融政策の「第1の柱」「第2の柱」を正しく理解するために』というコーナーを作ったのですが^^)、まあ何と申しますか日銀様におかれましてはもうちょっと相手方の理解力というのを忖度して作文をされるという点に配慮をされたいと思うのであります、とお前が言うなですかそうですか(汗)。



・状況が良く判らないのでまあ何ですがあずみんネタ

http://mainichi.jp/select/biz/news/20120211k0000m020062000c.html
安住財務相:介入水準発言 火消しに躍起、市場騒然

『安住淳財務相が10日の衆院予算委員会で、円売り・ドル買いの為替介入の際の相場水準に言及したことが、波紋を広げている。相場に大きな影響を与えるため、当局は具体的な介入水準を明らかにしないのが通例だからだ。安住財務相や財務省幹部は同日夕「介入水準は一切言っていない」「質問者が用意したパネルの数字を読み上げただけ」と火消しに走ったが、野党は「介入効果を損ないかねず、国際的な信用を失う懸念もある」(公明党)と批判。今後は日本の単独介入を快く思わない欧米当局の批判も予想される。』(上記URLより)

市場騒然とか言ってますが、10日にその発言出て別に為替市場反応してないですし、債券市場とかは「ああまたやっちゃいましたねえプゲラッチョ」程度の感想しかないと思いますのでどう見ても過剰報道です本当にありがとうございましたという所ではございますな。

まあ何ですな、これ状況が判らないので何とも判断し難いですけれども、報道にありますように質問者の方が介入した日の為替市場のチャート出してきてどういう介入をしたのですかみたいな趣旨の質問してるのであれば、答える方も答える方だが、質問する方もどうかと思いますよ。

いやね、相手の失言答弁を引き出そうとして誘導質問したのかも知れませんけれども、結果として国益に反する馬鹿発言をさせるような質問をするというのは国会戦術としてもあまり行儀が良いとも思えない訳で、質問に答えたのに批判するとか何ぼなんでもマッチポンプにも程がある(質問した党と批判している党はこの記事だと違うけど)と思いますので、あずみんが大臣として駄目過ぎ(こんなの「個別の介入取引に関してはお答えできません」と言えば終了じゃん、というか事務方は何をレクしてますねん)ですけれども、質問者にも何だかなあとか思ったので駄文を書いてみるの巻でした。


・東洋経済で電波浴とな

行動ファイナンス学者・小幡績の視点
http://www.toyokeizai.net/money/investment/detail_column2/AC/b52c0897bff917f3b12d4310acefb903/
FRBはペテン師か無責任?――論理矛盾が明らかなインフレターゲットの議論(1) - 12/02/10 | 00:04

いや別に論理矛盾とかしてないんですけどねえとか思いながら拝読しようと思ったらのっけから何だかなあなアレ。

『まず、事実関係だが、報道でインフレターゲットと呼ばれているものは、声明文と同時に公表されたFOMC各メンバーのFF金利予測。そこでは、長期的に妥当なインフレ率の水準についてのFOMCのメンバーの意見分布が示され、そこが最終的なゴールにはなるとは言っている。しかし、これがインフレターゲットとはいっていない。』(上記URLより)

・・・・・・・・SEPでのプロジェクションマテリアルの中で「ロンガーラン」のPCE物価指数の望ましい水準が公表されていてそれが2%だというのは半分あっているのですが、その説明としては別に説明文が出ていて、そっちの方が今回の眼目じゃなかったっけ??

まあその後もああだこうだと物価連動国債がどうのとかいう話をしているのですが、何が強力電波と申しまして上記URLから辿れる最終ページにある辺りが電波である。

『しかし、それは無理な話である。なぜなら、これまで金融政策が有効であったのは、金融政策を動かしても、短期的には期待インフレ率は動かないことが前提にあったからだ。』(上記URLのリンク先にある上記文書の4ページ目)

・・・・・・・??????じゃあ金融政策は何のために実施してるのよとブラード総裁辺りに言われそうですなあ。

『にもかかわらず、ゼロ金利下という金融緩和政策が決定的に限られてしまっている中で、突然、サーカスのように、あるいは魔法のように、期待インフレ率を変えることができる、いや、そうしろ、と議論したり、要求したりすることは、明らかな論理矛盾であり、現実に起こりえないことなのだ。』(上記URLのリンク先にある上記文書の4ページ目)

・・・・・・・・??????いや別に突然変えろとは言ってないと思いますが、QE2の実施って足元のインフレの低下が望ましくないデフレ均衡に陥るのを防ぐために導入したという経緯があった筈なのですが、何をどう解釈するとこういう話になるんだか・・・・・・


いやあのですな、東洋経済にしてこれですかという感じなのでありますが、電波浴とかするのはネタとしては楽しい(血圧が上昇する場合もある)ですけれども、そもそも論としてメディアとかに金払って(ってネット版をタダで見ている人間が言うのも何ですが)報道されている物を読むっていうのは先日も申し上げましたように、世の中の言説のフィルタリングをして貰うのに金を払っているようなもんだと思っているあたくしと致しましては、やはり東洋経済ともなりますとネット版でもそれなりにまともな物を拝読したいと思うのでありまして、編集は何やってますねんとか思うのでありました。



・武者先生キタコレ

節分天井とはよく言ったものですorzorz

http://www.musha.co.jp/3560(←どうも今朝からページリニューアルのようで、下のURLの方がよさそうです)
http://www.musha.co.jp/report/bulletin_j_20120209.pdf
2012年2月9日ストラテジーブレティン (63号)
この米株ラリーは本物、6%の株式利回り(配当+バイバック)は無視できない

>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物

・・・・・・誠に残念ですが米国株式市場終了のようです。で、小見出しを拝読いたしますと。

・株式市場ルールが変わった、リスクオン・オフから長期価値投資へ
・説得力失う超金融緩和批判
・好業績=株式投資に思い至らぬグロス氏
・株高を正当化するシュワブ氏の楽観経済観測
・日本の失われた20年とは全く異なる

と、ビルグロス先生を盛大にdisるという事で、これは太平洋を隔てた竜虎対決という風情を示しておられて誠に風雲急を告げる訳ですが、米国株式市場をこれだけ盛大に怪推奨キタコレという事で、米国市場逃げて〜という所ですな、うんうん。

・・・・・・と思ったら最後の小見出しがこれ

・悲観から急改善する日本投資環境

・・・・・・・????????

えーっと、『2012年01月26日 (62号) 何故日本はダメなのか 〜 株価格差の背後にある政策格差 〜』というのがストラテジーブレティンの前回号のお題だったのですけれども、いくらブレティンだからってブレ過ぎなんですけど。


○などと馬鹿話をしていたら時間が無くなってしまったのでドラギ総裁の会見から一つだけ

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120209.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 February 2012


・この質問をしたのは誰だあ!!(またまた海原雄山状態で)

この質問してる人間はマジで日本入国禁止処分もんだろ。質疑応答の最後の方になりまして、紙に打ち出すと9ページ中8ページ目とかになると思います。

『Question: My first question is: so far the LTRO seems to be working very well, like a magic stick, or something like that, and people may think that the ECB might prefer this further LTRO to a rate cut. What is your comment on that?

My second question is: this week, the Japanese Government announced that it has been intervening in the foreign exchange market for several days, from the end of October of last year, and without announcement. Your predecessor, Mr Trichet, said last August that such interventions need to be done on the basis of multilateral agreement and that that was not the case with the actions of Japan. The US Treasury has also made a similar critique. What do you think about that?』

LTROの変わりに利下げは考えてますかという質問もお前その前の質問を聞けよ(その前に質問があって「追加の金融政策についてはノーコメント」という話をしていますし、別の質問で「伝統的金融政策と非伝統的金融政策の違いについてトリシェ総裁はコメントしていましたが、まだドラギ総裁のコメントは聞いていないので話してください」というのがあって、「伝統的政策と非伝統的政策を区別して使う点や、その論点については前任と同じ考えです」というコメントしているので質問にはある意味回答済み)という感じですけれども、質疑応答の流れおよびECBの金融政策の流れと全然関係ない第2の質問とか何考えてますねん、つーかこの質問する記者はとりあえず日本とスイスには永久入国禁止な。

『Draghi: In answer to the first question, there is no trade-off between the two measures. The LTRO addresses the quantitative shortages and liquidity constraints of certain parts of the euro area financial and banking system. The interest rate changes address pricing conditions, assuming that the euro area banking and financial conditions are working well, that the circumstances are normal. In that case you change the price of assets; you change the price of short-term rates, and so on. So they are two different things in the sense that they address different situations, different problems.

Regarding the Japanese interventions, I can confirm what my predecessor said on that occasion: the interventions, if they are needed, should be done in a multilateral framework - they should not be unilateral.』

まあ前半の方は(その前の質疑と)同じ話を繰り返しておりますし、2番目の質問だって質問されたらこう答えてくる罠という話で、日本を貶めようという質問にしか思えんわこりゃという所でございますな。


#ということで、真面目なネタは明日以降である(汗)












2012/02/10

お題「BOEとかECBとかも色々と動く訳で」

ギリシャのニュースは何回見ても何がどうなっているのやらという感じでございまするな。

○BOEは国債買入拡大とな

そういえば前回のMPCミニュットネタをまだやっていなかったというのに次回のMPCになってしまいましたorzorz

#これだから1月〜2月というのは困るのですが、来週決定会合があるというのに良く考えたらこの前の金融経済月報の成敗をしていない事に気が付くあたくしの積み残しっぷりに更にorz

http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2012/008.htm
News Release
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and increases size of Asset Purchase Programme by £50 billion to £325 billion

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to increase the size of its asset purchase programme, financed by the issuance of central bank reserves, by £50 billion to a total of £325 billion.』

ということで買入拡大キタコレですが・・・・

『In the United Kingdom, the underlying pace of recovery slowed during 2011, with activity falling slightly during the final quarter. Some recent business surveys have painted a more positive picture and asset prices have risen. But the pace of expansion in the United Kingdom’s main export markets has also slowed and concerns remain about the indebtedness and competitiveness of some euro-area countries.』

欧州問題の波及懸念とな。

『A gradual strengthening of output growth later this year should be supported by a gentle recovery in household real incomes as inflation falls, together with the continued stimulus from monetary policy. But the drag from tight credit conditions and the fiscal consolidation together present a headwind.』

『The correspondingly weak outlook for near-term output growth means that a significant margin of economic slack is likely to persist.』

金融緩和と物価上昇が緩和されているのが緩やかな生産の拡大の強化をサポートするでしょうとか言ってますが、まあそのCPIは直近でも4.2%なんですけど、そのインフレに関しては次に。

『CPI inflation has fallen back from its September peak, declining to 4.2% in December. Inflation should continue to fall sharply in the near term, as the increase in VAT in January 2011 drops out of the twelve-month comparison.』

はあはあそうですか(棒読み)。

『Inflation is then likely to decline further as the contribution of energy and import prices diminishes, while downward pressure from unemployment and spare capacity continues to restrain domestically generated inflation.』

ということで、エネルギーや輸入物価の上昇寄与が剥落し、失業と経済の余剰生産力が国内要因によるインフレ拡大を引き続き抑制するでしょう。という毎度のお話なのですけれども、まあこれで今後物価上昇がきっちり落ち込んでくれないとBOEは更にめんどい事になるのでしょうかねえ。ま、英国は財政再建とかやっているのでそれをやってる間は金融を緩和気味にしておくっきゃねえわなとは思いますが、確か「インフレ目標を導入せよ」とか言ってた方々におかれましては目標設定によって金融政策の恣意性を下げるとかいう話だったような気がするんだが、どう見てもフレキシブルターゲットの名の下に恣意的運用になっているようにしか思えませんけどねえ(ニヤニヤ)。

『In the light of its most recent economic projections, the Committee judged that the weak near-term growth outlook and associated downward pressure from economic slack meant that, without further monetary stimulus, it was more likely than not that inflation would undershoot the 2% target in the medium term.』

ということで、近い先行きの経済見通しが弱くて、経済のスラックによる物価に対する下落圧力が高まった為に、追加金融緩和を実施しないと中期的に物価は2%のターゲットから下抜けする可能性がより高まったので今回の追加緩和を実施しました。という話で、はあそうですかという感じではございますが、まあ今の所追加緩和方向継続は妥当なんでしょうね。

『The Committee therefore voted to increase the size of its programme of asset purchases, financed by the issuance of central bank reserves, by £50 billion to a total of £325 billion. The Committee also voted to maintain Bank Rate at 0.5%.』

ということで資産買入拡大と。

『The Committee expects the announced programme of asset purchases to take three months to complete. The scale of the programme will be kept under review.』

3か月の期間を掛けて残高を拡大するようです。

ということで、どういう議論があったのかという話に関しては(実はスルーしている1月MPCMinuteも含めて)Minute読みつつ鑑賞したいと存じます次第。


○ECBは適格担保拡大とな

決定事項について
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120209.en.html
9 February 2012 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.00%, 1.75% and 0.25% respectively. The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ということで金利は据え置きですが・・・・・・・・

ドラギ総裁会見
http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120209.en.html
Introductory statement to the press conference

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 February 2012
(Q&Aは今日の日本時間の夜以降に追加でアップされる筈)

寝起きでこんな長いの全部読める訳もない英語力がアレのあたくしでございますので(汗)、とりあえず第1パラグラフと第2パラグラフを鑑賞(お時間のある場合は最後のパラグラフでもう一度まとめているのでそれを読むのが手抜き解読法である)。

第1パラグラフ

まずは景気の現状認識について。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. The information that has become available since mid-January broadly confirms our previous assessment. Inflation is likely to stay above 2% for several months to come, before declining to below 2%. Available survey indicators confirm some tentative signs of a stabilisation in economic activity at a low level around the turn of the year, but the economic outlook remains subject to high uncertainty and downside risks. The underlying pace of monetary expansion remains subdued.』

最近出ている経済指標は我々の従来の経済見通しを裏付けるものです。インフレに関しては今後数か月の間2%を上回る水準で推移した後に2%以下の水準に低下するでしょう。最近のサーベイによると新年以降には経済活動がやや安定してきているという兆候が見受けられますが、経済見通しは大きな不確実性およびダウンサイドリスクがあります。マネタリーの伸びは引き続き抑制されています。

『Looking ahead, it is essential for monetary policy to maintain price stability for the euro area as a whole. This ensures a firm anchoring of inflation expectations in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution to supporting economic growth and job creation in the euro area. A very thorough analysis of all incoming data and developments over the period ahead is warranted.』

インフレ期待の安定化がどうのこうのという話はいつも同じ事を言っているので華麗にスルー。

・・・・ということで若干新年以降の明るい兆しがという話をしているのがほほうという感じ。

第2パラグラフ

『Through our non-standard monetary policy measures we will continue to support the functioning of the euro area financial sector, and thus the financing of the real economy.』

ユーロ圏の金融セクターの機能の安定化、与信提供機能の安定化の為に非伝統的政策をECBは実施していますし引き続き継続していますとな。

『Since the first three-year longer-term refinancing operation (LTRO) was conducted in December 2011 we have approved specific national eligibility criteria and risk control measures for the temporary acceptance in a number of countries of additional credit claims as collateral in Eurosystem credit operations, which should lead to an increase in available collateral. Further details will be provided in a press release to be published today at 3.30 p.m.』

適格担保拡大キタコレ。

『At the start of the current reserve maintenance period on 18 January 2012 the reserve ratio was reduced, freeing up additional collateral. As stated on previous occasions, all our non-standard measures are temporary in nature.』

これは実施した件ですが、所要準備率を1月の積み期間から引き下げる事によって、金融機関の担保余力を拡大しましたよという話でございますが、最後に「かねてより毎度のように申し上げておりますように、これら全ての非伝統的手段は本質的に一時的な手段でございます」とか言ってるのが段々空しくなる適格担保拡大についてはこの先に。

#まあ空しいというよりは普通に開き直って信用緩和絶賛拡大という事なのでしょうが


つーことで引き続きのECB信用緩和攻撃はこちら
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120209_2.en.html
PRESS RELEASE
9 February 2012 - ECB’s Governing Council approves eligibility criteria for additional credit claims

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has approved, for the seven national central banks (NCBs) that have put forward relevant proposals, specific national eligibility criteria and risk control measures for the temporary acceptance of additional credit claims as collateral in Eurosystem credit operations. Details of these specific national measures will be made available on the websites of the respective NCBs: Central Bank of Ireland, Banco de Espana, Banque de France, Banca d’Italia, Central Bank of Cyprus, Oesterreichische Nationalbank and Banco de Portugal.』

各国中銀のサイトまで見に行く暇がないので引用だけで勘弁。

『These developments follow up on the decision of the Governing Council of 8 December 2011 to increase collateral availability by allowing Eurosystem NCBs, as a temporary solution, to accept additional performing credit claims as collateral. 』

またtemporary solutionとか仰せですな・・・・・とか書いているうちにそういえば新春ネタでECBのオペレーション手順書をネタにしたのにその後をどスルーしている事にも気が付き更にorzになるあたくしなのでありました。

『Eurosystem NCBs continue to work on developing specific national eligibility criteria for additional credit claims. Any further Governing Council decisions in this respect will be communicated through the monthly publication “Decisions taken by the Governing Council of the ECB (in addition to decisions setting interest rates)” and announcements made by the respective NCBs. Eurosystem counterparties are invited to contact their respective NCBs to obtain further details on the specific national eligibility criteria for additional credit claims. The general Eurosystem eligibility criteria for credit claims, as stipulated in the publication “The implementation of monetary policy in the euro area: General documentation on Eurosystem monetary policy instruments and procedures” remain unchanged.』

何かまあああだこうだ言ってますけれども、「担保範囲拡大をしているけれどもECBは別に信用緩和でズブズブ状態になるんじゃ無いんだからね!」と仰せになっておられるかと存じますが、はあそうですか頑張ってくださいね(棒読み)という風情も漂うのでありました。

まあいずれにせよ、欧州はしばらくは金利政策云々よりも担保政策(信用緩和政策)の方が注目という事ですので、以前ネタにしましたが再掲しておくと・・・・・・

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html
Open market operations

の辺りに色々とドキュメントが転がっているので、まあそれを読みましょという感じですけれども、これがまあアホのように色々なものがあって見るだけでお腹いっぱいです。

『For a chronological listing of the measures see the Annex "Chronology of monetary policy measures of the Eurosystem" in the November 2011 Monthly Bulletin [3.15 MB] and for details on the ECB's non-standard measures, including a comparison with the Fed and the Bank of Japan, see "IV. The ECB’s response to the financial crisis" of the President's speech "The ECB’s enhanced credit support" (13 July 2009). 』

November 2011 Monthly Bulletin
http://www.ecb.int/pub/pdf/mobu/mb201111en.pdf(アホのように重いので注意、ちなみに206ページ)

あたりの研究をするのが吉ではないかと思いますが量がアレ過ぎてちょっとアレであります。


○でまあ日銀ちゃん決定会合プレビュー雑談ですけど

昨日ネタにしたロイターさんの謎ニュースは結局誰も追随報道が無くどう見ても飛ばしです本当にカムサハムニダという残念な風情を漂わせておりますが、そうは言ってもこの週末にギリシャ問題が爆発した結果ユーロ暴落円急上昇とかにでもなった日には雰囲気はまた変わるでしょという所なので何ともはやという所ではございます。

でですな、まあ各国追加緩和祭りですので日銀も追加緩和どこかでやらないといけない事になるでしょうなあとかいう話になりますが、何せ社債・CPはこれ以上どう買いますねんという状況ですし、短国に関しても先般ネタにしたように下手するとテラヤバスという状態。何せ先日の6か月TBも0.10カツカツという状況ですから札入らんがなという所でございます。

・・・・・・と考えますと、まあ何かやれという話になったらETF買うか(REITはどこをどう見ても買ってもどうしようもない)国債買うかという話になるとは思いますが、気合の押し上げ介入でもする気があるならETFというのも有りかもしれませんが、まあケロローンと買うのであれば為替市場とかに対するウケ的にどうなのよと思われる所でもありますし、大体からして各国中銀が時間軸だの量だので勝負しているので、(ECBは信用緩和だけど「3年」オペというのでアピール中ですもんね)ETFを買うとか言ってもイマイチ為替市場とか向けのインパクトが足りんように見える。

つーことで、フィージビリティーと目立ち方を考えますと、やはり基金の国債買入拡大に加えて買入対象期間を1年延ばすとかそのような話になるんでしょうな。まあそうやって中短期のイールドカーブ潰されると(その瞬間だけは儲かるけど)憤死する投資家続出という感じなので債券市場的にはあまりウマーな話でも無いような気がしますが、どーせならこの際「短期国債の買入は金利の低下で初期の目的を達成しましたので、短期国債の買入残高は現状で維持して、元々の目標部分への残りに関しては基金国債買入の方に回します」ということで、インチキツイストもどきみたいな話をするのってどうですかね???

などと雑談位しかプレビューと言っても出てこないのが残念な所でございまする(−−;






2012/02/09

お題「ブラード総裁ネタの続きとか市場雑談その他とか」

皆様既にご案内の事かと存じますが、昨日の民主党渾身のギャグにつきましてはあたくしも椅子から落ちそうになりましたですわ。もう頼むからお前ら全員「詐欺で当選したんだから議員辞職します」ってやってくれよマジで。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120208/stt12020811090001-n1.htm

○何となく雑談

・短国入札

火曜の6M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240207.htm

(3)募入最低価格 99円94銭9厘
(募入最高利回り) (0.1023%)

(4)募入最低価格に 6.1939%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円95銭0厘
(募入平均利回り ) (0.1003%)


水曜の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240208.htm

(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り) (0.1023%)

(4)募入最低価格に 5.2609%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭4厘7毛
(募入平均利回り ) (0.1015%)

ということで、0.10%乗せなのは0.10%乗せなのですが、セカンダリーになると結局0.10%オファーとかまで強くなるという毎度のパターンになるのですが、最近は足元のGCが0.10%をちょっと超えた所で微妙に推移しているので、アベレージ辺りで保有しているとGCでファイナンスつけてると微妙に逆ザヤになったりしそうな勢いではございます。まあGC自体がじゃあ0.11%とかに上昇するかと言われるとどう見ても上昇しないので良いっちゃあ良いのでしょう、というか最近はどうもGCレートがどうせ上がっても大したことないというのも効いているのかどうか知らんが、普通にGC対比逆ザヤ状態であっても短国レートはケンチャナヨ状態になっているなあとか思うのでありました。


・ロイターの謎ニュース

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE81700920120208
日銀が次回決定会合で追加緩和検討へ、ギリシャ情勢緊迫で
2012年 02月 8日 22:18 JST

『[東京 8日 ロイター] 日銀は13、14日に開く金融政策決定会合で、追加緩和を検討する。国内景気には底堅さがみられるものの、ギリシャ情勢の緊迫化など世界経済の先行きに不透明感が広がっていることに加え、米連邦準備理事会(FRB)が1月末に打ち出した金融政策運営に関する情報発信強化を受けて円高圧力の再燃懸念も高まりつつある。』(上記URLより)

・・・・・・・???????

何か超足元の市場の動きと上記の説明が微妙に違うのですが、他のメディアがスルーしている(ように見えるが違ってたらごめん)のでただの飛ばし記事か誰かの書かせ記事のような気もしますが、どっちかというと直近の相場ってリスクオンっぽい気がするんですが何でこうなる??????????


・武者先生ェ・・・・・・・・

まあ何ですな、足元の国内株価堅調の背景に関してはどう見てもこの要因が大きいかと存じます次第でありまする、って嘘ですよ嘘。

http://www.musha.co.jp/3526
2012年1月26日ストラテジーブレティン (62号) 何故日本はダメなのか
〜 株価格差の背後にある政策格差 〜

>2012年1月26日 何故日本はダメなのか
>2012年1月26日 何故日本はダメなのか
>2012年1月26日 何故日本はダメなのか

・・・・・・・いやもうさすがとしか言いようがないですな、って前からこのレポート見てちょっとwktkしてたのですがFOMCネタとかで多忙で今さら書いてどうもすいませんすいません。


ということでブラード総裁ネタの続きだが引用大会の所存ですすいませんすいません。

○ブラード総裁の色々とかっ飛んだ講演である

http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_Inflation_Targeting_in_the_USA_06Feb2012_final.pdf
Inflation Targeting in the USA
Union League Club of Chicago, Breakfast@65West
Chicago, Ill.
Feb. 6, 2012

ということで昨日はインフレーションターゲットがどうのこうのという話の部分を引用しましたが、バーナンキ議長が(まあ端的に言えばFOMC内部が全然まとまっていない中でエイッとばかりに出したからなのでしょうが)今回出した枠組みに関して「いやこれは従来の延長ですから」とか話をしているというのに「新しい重要なステップを歩んだ」とか言うのもチャーミングですけれども、もっとアレなのはデュアルマンデートを真っ向否定としか思えない論旨な点で、さすがブラード総裁そこに痺れる憧れるぅという感じではありますな、ってのが昨日の部分でありました。

んでもってその続き。

『Output Gaps: The Wrong Idea』

ほほう。

『The recent recession has given rise to the idea that there is a very large “output gap” in the U.S. The story is that this large output gap is “keeping inflation at bay” and is fodder for keeping nominal interest rates near zero into an indefinite future. If we continue using this interpretation of events, it may be very difficult for the U.S. to ever move off of the zero lower bound on nominal interest rates. This could be a looming disaster for the United States.』

一般的に米国の経済の現状について「巨大な生産ギャップがある為に物価はアガランチ会長だわ失業率はサガランチ会長だわということですよ」という見立てが多いと思いますけれども、その考えに則るとゼロ金利状態から中々脱却できませんという困った話になりますよね。ということですが、以前も申し上げましたが、ブラード総裁はQE2の提唱をした時に「ゼロ金利政策の長期化は望ましくないデフレ均衡をもたらす」として低金利政策の長期化を反対するというそもそもが時間軸効果を否定する人である、っつー点にご留意ありますとこの先の話も読みやすくなるかと存じます。

『I want to now turn to argue that the large output gap view may be conceptually inappropriate in the current situation. We may do better to replace it with the notion of a permanent, one-time shock to wealth.』

相変わらず「conceptually inappropriate」とか大きく出るのがブラードクオリティ。まあ要するに「現在の米国経済の問題は巨大な生産ギャップではなくて資産価格の一過性のショックの後遺症である」という考えに基づくべきであるという話のようです。

んでもってまず最初に生産ギャップという考え方をdisるの巻。

『The key to the large output gap story is the use of the fourth quarter of 2007 as a benchmark for where we expect the economy to be today. The idea is to take that level of real output, assume the real GDP growth rate that prevailed in the years prior to 2007, and project out where the “potential” output of the U.S. should be. By that type of calculation, we are indeed stunningly far below where we should be, perhaps 5.5 percent below, using data through the fourth quarter of 2011. What is more, we have made little progress in closing the gap defined in this way, because real GDP has only grown at modest rates since the recession ended in the summer of 2009. And furthermore, using current GDP forecasts from, say, the Blue Chip consensus, we have little prospect for closing the gap any time soon.』

生産ギャップが大きいので云々という考えに則ると、現在の米国の生産ギャップは5.5%ほどありまして、これが中々戻ってこないという現状もある中では今後も生産ギャップの改善は中々進みませんよね、という事のようですが、ブラード総裁はいやそのりくつはおかしいという話をするのであります。

『Is this really the right way to think about where the U.S. economy should be? I do not think it is a defensible point of view. Let me give you some of my perspectives.』

ほほう。

『Most analysts seem to agree that the middle part of the 2000s was characterized by a “bubble” in the housing sector. Housing prices were high and rising fast compared to nominal GDP. It is not prudent to extrapolate a bubble into the indefinite future and claim that such a calculation provides a good benchmark. Yet, that is what we are doing when we extrapolate fourth quarter 2007 real GDP. Furthermore, we normally have the good sense not to do this in other economic situations.』

2000年代中盤は住宅バブル経済であって、その数字を含んだものを前提として米国経済の生産ギャップを測定するというのは変じゃネーノ(つまりそこまで生産ギャップが大きい訳では無いのではという話ですわな)というお話ですわな。

『Think about the tech bubble of the late 1990s and early 2000s. The NASDAQ index peaked at about 4800 on a monthly average basis in March 2000. In the month just passed, January 2012, it averaged about 2744, which is 57 percent of its peak value. In fact, with the type of calculation usually done for real GDP, which extrapolates growth rates, the NASDAQ would be miles below its “potential.” Of course, most observers and market participants do not say that the NASDAQ is far below its potential value today. Instead, most say that there was clearly a bubble in the NASDAQ during the late 1990s and early 2000s, and that today’s valuations are more sensible than the ones that were in vogue during the bubble period.』

バブル時代を含んだ経済の状態を前提にして現在の生産ギャップがどうのこうのというのがナンセンスである、という理由として上記のようにかつての米国のITバブル時の株価(ナスダック指数)と現在の指数を比べて「ポテンシャルよりも低い」というアホはいませんよねというような例を引いているのが中々チャーミングであります。

『When I put the case this starkly, I think many would agree that establishing a benchmark by extrapolating from the previous peak of a variable, when that variable was clearly influenced by a bubble, is a mistake. It gives a distorted view of the situation.』

同じように、現在の米国の生産ギャップが巨大なので云々という論点ってそもそも測定のベンチマークとして使っているのが住宅バブル経済という異常ファクターを含んでいるのだからミステークですよね、というやや強引の香りもする結論でありました。


でもって、米国の実質GDPの伸びが弱いのは「ショックの大きさによる後遺症」との認識を持つのがヨロシアルというのがブラード総裁の主張である。

『A Level Shock』っつー所ね。

『A better interpretation of the behavior of U.S. real GDP over the last five years may be that the economy was disrupted by a permanent, one-time shock to wealth.4』

ちなみにここの脚注4は、

『4 Macroeconomists like me often use the word “permanent”, even though nothing is really permanent. Think of permanent as “exceptionally persistent.”』

とのこと。

『In particular, the perceived value of U.S. real estate fell substantially with the 30 percent decline in housing prices after 2006. This shaved trillions of dollars off of the wealth of the nation. Since housing prices are not expected to rebound to the previous peak anytime soon, that wealth is simply gone for now. This has lowered consumption and output, and lower levels of production have caused a significant disruption in U.S. labor markets.』

住宅価格の暴落によって資産毀損が生じ、それがどう見てもすぐに戻らないという所から、消費や生産を押し下げて労働市場に顕著な悪影響を与えますっちゅう話ですが・・・・・・

『So what’s the point, you ask? Well, to me, the important difference is what happens after the shock.』

ほうほうそれでそれで?

『For those who take the “large output gap” view, the expectation is for real GDP to grow rapidly after the recession comes to an end, as the economy catches up to its potential. It is like a rubber band, there is supposed to be a bounce back period of rapid growth. In fact, most analysts have been looking for exactly this effect since the summer of 2009. It has not happened. This has led to a lot of analysis concerning special factors and headwinds that might be inhibiting the “bounce back” effect.』

生産ギャップが大きいというビューを取る人たちにとっては、リセッションが終わると本来は“bounce back”が起きて戻る筈という見解になるのですが、実際問題としては色々な要因があって中々そういう事になっていません、という見立てになるとの事ですが・・・・

『The wealth shock view puts a different expectation in play. The negative wealth shock lowers consumption and output. But after the recession ends, the economy simply grows from that point at an ordinary rate, neither faster nor slower than in ordinary times. It is more like an earthquake which has left one part of the land higher than another part. There is no expectation of a “bounce back” to a higher level of output after the recession ends. This is closer to what has actually happened since mid-2009. Output has grown at a moderate rate, but not a rapid rate, since the recession ended.』

資産ショックの見方を取るブラード総裁によりますと、そのような“bounce back”は起きないものの、経済に関してはリセッションが終了したら平常運転で戻ってくる、と見立てるという事でして、したがってこの見立ては米国経済の現状でありますところの「生産の“bounce back”は起きていないけれども、生産そのものは速く無いけれどもモデレートなペースで拡大している」という状況とも整合的ですよねとか何とか仰せです。

で、決めのお言葉。

『In the wealth shock view, there is no “large output gap” rationale for keeping interest rates near zero. There is only an economy growing at normal rates following a large shock to wealth.』

ブラード総裁の取るビューによれば、政策金利をゼロ近傍に維持する事を正当化する「巨大な生産ギャップ」なるものは存在しません。現在は資産価格の大きなショックの後で通常運転のペースで拡大する経済という状況に過ぎません。だそうですな。

『I mentioned that a wealth shock significantly upsets labor market relationships. This is because output declines, so less labor is required. It takes a long time for those displaced by the shock to find new working relationships. I would expect to see high unemployment and only slow improvement in labor markets following the wealth shock.』

んでもってまたアレなのは、「失業の改善に関しては資産ショックの後からの回復過程につき時間が掛かるのはシャーナイナイ」と仰せな所でありまして、これすなわちデュアルマンデートのマッコウクジラ否定キタコレという所で、まあ逆さ絵おじさんも大変ですなあという所ではございますが、逆に言えば傘下にこういう過激分子がいるので、逆さ絵のおじさんもメッセージを強めに出さないと市場の期待安定化が出来ないわな、という事になるんでしょうなあ。


とか何とか引用しているうちに気が付けば全文引用モードになっていますが(^^)、この際ですので更に引用が続くが次のパラグラフは華麗に流す。住宅価格のオーバーバリューを前提にした計測を用いて経済のギャップが大きい云々いうのは変ですよね的な話が続いてます。

『One might say that the peak in U.S. housing prices represented an overvaluation, and in my view, that would be right. Valuing the physical capital stock of the nation is always a tricky proposition. The entire stock, on the order of three times GDP, or $45 trillion, cannot meaningfully be marketed all at once. Still, we do observe bits and pieces of the physical capital stock being bought and sold at any point in time, and those prices can help us notionally value the entire portfolio. Those prices of bits and pieces could be driven by beliefs alone-such as the belief that housing prices only go up-and become temporarily detached from fundamental supply and demand factors. This may make it appear that real estate is worth more than it really is, and lead many to make what in retrospect are poor economic decisions, such as taking on too much debt and consuming too much.』

『Many prices in the economy may at times seem to be far away from anything that could be rationalized purely by supply and demand. But housing prices are special in that they represent valuations on a significant fraction of the wealth of the nation, defined as the value of the physical capital stock. To have those prices fall hard and stay down without much prospect for rapid recovery is a one-time, permanent wealth shock. This is a different type of shock than the ones that have caused previous postwar U.S. recessions.』

ということで、今回の米国経済のリセッションは「一過性だけど長い期間に渡って影響する資産価格ショックの影響によるもの」という見立てで、これまで米国が第2次大戦後に経験したリセッションとは性格が違う、と結論付けています。


・・・・・でですな、まあ確かにそーゆー見方もありなのかなというのは、PCE総合物価指数とかがサクサク戻っている所に示されている、と言われるとまあそうですかねという事にもなりそうなならなさそうな。あまりゼロ金利政策続けると物価だけホイホイ上昇してしまいますよってな話なのでしょうが、この次の『The Costs of Near-Zero Rates』がまた斬新。


○あまりにも斬新なので思わず小見出しを入れてしまうブラード総裁の「The Costs of Near-Zero Rates」理論

ということで小見出しを入れてみましたが(^^)、さっきの続き。

『I have argued that the large output gap view may be keeping us all prisoner-tethering our expectations for output, in effect, to the collapsed bubble in housing. It is setting a very high bar for the U.S. economy, one that may not be appropriate given the nature of the shock that the economy has suffered. Importantly, it may influence the FOMC’s near-zero rate policy far into the future, since output is continually viewed as falling short of the high-bar benchmark.』

ということで、生産ギャップが大きいからどうのこうのという見方は、米国経済の成長に必要な生産の拡大を見積もる際にあまりにも高いバーを設定し過ぎになってしまうので、その結果として米国経済の見通しを過度に悲観的にして、その結果として先般のFOMCでの決定の「長期間にわたってゼロ金利政策を継続する」という考えなどにも影響をあたえていますとな。

『But the near-zero rate policy has its own costs. If we were proposing to remain near-zero for a few quarters, or even a year or two, one might argue that such a policy matches up well with the short-term business cycle dynamics of the U.S. economy. But a near-zero rate policy stretching over many years can begin to distort fundamental decision-making in the economy in ways that may be destructive to longer-run economic growth.』

ゼロ金利政策の長期化にはコストがありますがなという話で、ビジネスサイクルを大きく上回るような長期間のゼロ金利政策は経済における基礎的な行動決定をゆがめ、経済の長期的な成長に悪影響を与える、とかまあそんな話ですかそうですか。

で、この先が中々斬新。

『In particular, the lengthy near-zero rate policy punishes savers in the economy.』

どこの篠塚英子先生ですか。

『Because of life cycle effects, most of the asset holding in the economy is done by older Americans. Recent readings from the TIPS market suggest a 10-year real rate of return of minus 30 basis points or so, and a five-year real rate of return of about minus 120 basis points. These are extraordinarily low-substantially negative-real rates of return over very long time scales, and they are driven in part by FOMC policy.』

ふむふむ。

『These low rates of return mean that some of the consumption that would otherwise be enjoyed by the older, asset-holding households has been pared back. In principle, the low real interest rates should encourage younger generations to borrow against their future income prospects and consume more today. However, this demographic group faces high unemployment rates and tighter borrowing constraints, which may limit its ability and willingness to leverage up to finance consumption. Consequently, the consumption of the older generations may be damaged by the low real interest rates without any countervailing increase in consumption by other households in the economy. In this sense, the policy could be counterproductive.』

何というか斬新な話ですが、米国全体の家計という事をトータルで考えた場合、金利が低い事による資産保有者の収入の低下→消費の減退というデメリットの方が、若者などが借金しやすくなる→消費の拡大というメリットを上回るというような話をしているようですな。で、その前提として資産価格ショックによるレバレッジ拡大抑制とかタイトな信用環境というのがあるからそういう事になるんではないか、という話で、何か斬新にも程がある説明。

『Again, these broader effects of a low real interest rate policy might not be so critical in an environment where the low yields last for a few quarters, but they may be significantly more important as the length of time is stretched out over many years.』

実質金利が低いという事による経済のメリットは勿論幅広く存在しますが、それよりもよる重要なのは低金利政策の長期化によるデメリットですとか何とか仰せのようです。


ということで引用増量祭りで恐縮でしたがそんな所で(最後のまとめの部分は割愛)。






2012/02/08

お題「インフレ―ションターゲットがどうのこうののネタで少々」

少々と言いつつネタ自体は色々とありますのでちゃんと全部書けるかどうかがアレ。つーかここもとネタが色々と出てちゃんと考えをまとめたり書いたりするのが追いつかないのですがorz


○インフレ目標ねえ・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPTK072539820120207
UPDATE1: 日本経済は厳しいと認識、デフレ脱却に「最大の努力」=白川日銀総裁
2012年 02月 7日 10:21 JST

『白川総裁は、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ目標として2%という数値を設定したことに関連し、日銀も「中長期的な物価安定の理解」において、2%以下のプラスで中心を1%程度としていると紹介。こうした数値は、1)物価指数の誤差、2)物価の下落と景気悪化の悪循環が生じないような「のりしろ」の確保、3)家計や企業の物価観──を踏まえたものと説明した。その上で、物価安定の水準に日米で開きがあることについて、日本の物価観はバブル期を含めて「一貫して(米国よりも)日本の方が低い」とし、「長く続いた国民の物価観から大きく離れて物価上昇率を設定するのは難しい」との見解を示した。』(上記URLより)

記事によりますと公明党の魚住委員からの質問に対してのようで、まあ最終的には会議録見ないと話の流れは判らないのですが、米国の出しているデュアルマンデートに関する理解と日銀の物価安定の理解の違いがどうのこうのとかの話をしても正直どうでも良い話で、米国の今回の2%だって「中長期的なゴール」としての数値だし、その間に例えば今のように物価水準がゴールを上回っていても総合的な判断によって緩和政策継続とかしているのですから、そーゆー意味では米国の今回の2%という数値の明示によって金融政策運営に恣意性(というと表現が悪いが敢えて使います)が無くなったかと言えば別にそういう話でも無し。BOEだってそうですからねえ。

つーことでですな、質問全体の流れは良く判らんですが、魚住委員の質問はおそらく「米国が2%なのに日本が1%なのはどういうことですか」という点に話が行っておられると思う訳でして、まあ話をするならこっちだろと思う次第でありまして、魚住委員の着眼点は中々結構ですなあとか思いますです、はい。


でですね、

『物価安定の水準に日米で開きがあることについて、日本の物価観はバブル期を含めて「一貫して(米国よりも)日本の方が低い」とし、「長く続いた国民の物価観から大きく離れて物価上昇率を設定するのは難しい」との見解を示した。』(再掲)

って話なのですが、「それではデフレ長期化の後付容認ではないか」という論点が思いっきりあります罠という所ではあるのですが、まあ確かに生活意識アンケートとかを見ると相変わらず「物価上昇するのはイクナイ」というような結果がアホほど多い訳ですし、そもそもついこの前原油価格上昇した時に大新聞やテレビ局の皆さんが物凄い勢いで「原油価格上昇で大変ですよ」の大合唱という風景を見たりしますと、実際に日銀が「中長期的には消費者物価が前年比2%の上昇で推移することが望ましい」と言い出した時にそれが大新聞やらテレビ局的にどうなのというような所を考えるとややこしい話になるんでしょうなあという想像もできる次第。

つまりですな、2%の物価安定の理解でも中長期的な目標でもゴールでもまあ良いのですけれども、その2%という数字を突っ込みたければ、「デフレはケシカラン」と言いながらちょっと特定の物価が上昇すると鉦や太鼓を鳴らして大騒ぎする現在のメディアなどの現状を何とかする、つーか国会で日銀法改正でも何でもやれば良いと思うのですけれどもね。

ちなみに、2%の物価安定の理解とかを国会で突っ込むとなりますと、実は予算とか社会保障の設計とかの設計書にも影響してくる話でありましてですな、たとえば最初に思いついたのがこれなので財務省のサイトへお出かけしますけど。

http://www.mof.go.jp/budget/topics/outlook/sy2401a.htm
平成24年度予算の後年度歳出・歳入の影響試算

真ん中より下の方にありますけれども、ここの名目消費者物価指数の推移とかも当然変化していく話ですし、消費者物価が中長期的に1%なのと2%なのでは特に社会保障費に関する部分とかではもっと影響出て来るでしょとか、まあ日銀はそういう事を忖度する必要は無いんじゃネーノというのは理念的にはそうでしょうけれども、ただまあ世の中そう単純なもんではないような気がするんですけどね。


ちなみに、米国で2%の物価目標がどうのこうのという件に関してこんな論点からの質問もありまして、バーナンキ議長の先般のFOMC後会見から引用しますと・・・・
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf

31ページ目から。

『Scott Spoerry: Scott Spoerry, sir, from CNN. My head is full of questions, but I'm going to try and limit it to two related questions.(何でPCEを使うのかという質問部分を割愛します) Because criticism of the Federal Reserve, criticism of you, but the institution itself has been so intense this year because it's a political year. There are people out there who are going to say the Federal Reserve have finally just admitted it. Their policy is to destroy 2 percent of the value of my dollars every year. How are you going to respond to those people and also could you answer the question about the CPI and the PCE. Thank you.』

まあこの会見を見てて思うのは、バーナンキ議長に良い説明をさせようとしてうまく質問を記者の人たちが選んでいるなあという事でありまして、このCNNの記者も真面目に「2%のインフレ目標は我々の持つドルから2%の価値を盗んでいく」というような事を思っているとは想定しにくいですが、まあ一般的にこういう質問が来るという話になるんでしょう。

バーナンキ議長の答えですが、該当箇所の所を引用します。メインは33ページ目になります。

『Chairman Bernanke: (前半部分割愛)On the 2 percent, again, that's where the United States has been for many years. That's where most Central Banks are around the world. There's a very good reason for it which is to avoid deflation which is very negative.』

2%は世界のほとんどの中央銀行がおいている数値ですとか麿涙目、というのは兎も角として。

『I think the argument that, you know, the value of your dollar, the declines at 2 percent a year is not really a very good one unless you're one of those people who does their lifetime saving in the mattress. Most people invest in various kinds of instruments receiving rate of interest. And now it's true as been pointed out that for the moment that interest rates are pretty low they're still positive but over a longer period of time if you--even if you have money in a CD or some other investment vehicle, the interest rate will compensate you for the--for inflation. I mean the two will be tied together. And so, they really shouldn't be, you know, levels of inflation this low, interest rates should pretty much fully compensate for the losses to savers. But I would reiterate that we are not unaware of the problems that low interest rates cause for savers, cause for pension fund contributions, insurance companies, and other parts of the economy and we do try to take that into account as we think about other ramifications of our policy.』

ということで、2%の物価上昇でそらまあ銀行預金だけ持っている人は毎年2%保有資産の価値が下がるという話になりますけど、資産価格が上昇したり経済が良くなったりという事でより広くの恩恵があるでしょ、ってな説明をしていまして、まあそれはご尤もではございますな。

ま、米国でもインフレに関連しては色々と議論というか批判があるなあとここの質疑応答を見て思うのでありまして、PCE物価指数が足元中々下がらないという事になって来た場合に、先行きデュアルマンデートをどうバランス取っていくのかというのはムツカシヤという話になるんじゃないかなあ(特に物価指数が3%越えてきたりすると)と思うのでありました。



○インフレターゲット慶祝とかスピーチをするブラード総裁の過激派クオリティは平常運転とな

セントルイス連銀のブラード総裁と言えばQE2の前に「国債買入をするのは良いが、低金利政策の長期化をすると経済が望ましくないデフレ均衡に陥るリスクを高める」という話をしてみたり、昨年は「コアインフレではなく総合インフレを重視すべき、つーかコアを重視するのはおかしい」という話をしてみたり、最近では"Death of a Theory"とかいうお題のペーパーを出してみたり(まだちゃんと読めていないorz)とか、大体過激派と申しますか先端を行く人と申しますか、まあヲチャー的には大変においしい方ではございますのでセントルイス連銀のページチェックは必須(^^)。

つーことで、ロイターもこんなニュースを報じていますが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT808974920120206
UPDATE2: 年内に利上げ開始を、超低金利の長期化は成長見通し損なう=セントルイス連銀総裁
2012年 02月 7日 07:30 JST

『[シカゴ 6日 ロイター] 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は6日、米連邦準備理事会(FRB)は2013年に利上げを開始する必要があるとの見解を示した。事実上のゼロ金利政策を長年継続しても、米経済がリセッション(景気後退)以前の水準に戻る公算は小さく、むしろ長期的な成長見通しを損なう恐れがあるとの考えを示した。総裁は記者団に対し「緩和策の解除に乗り出すことが重要だ」と指摘。フェデラルファンド(FF)金利の水準について「1%、もしくは1.5%まで引き上げても、依然として金融政策は緩和的だ」とし「適切な時期に金利を正常化するということだ。すべてが見通し通りになるまで待つことが望まれているとは思わない」と述べた。』(上記URLより)

そらまあ中立金利が4%近辺だったらFF金利が1.5%でも緩和的だという話になりますなあとかどこの日銀だよという感じの話に見えますが、(記事にもありますが)ブラード総裁の理屈の背景についてはスピーチが出ているのだ。


http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_Inflation_Targeting_in_the_USA_06Feb2012_final.pdf
Inflation Targeting in the USA 1
Union League Club of Chicago, Breakfast@65West
Chicago, Ill.
Feb. 6, 2012

何でここに1という数字が不自然に引用されているかと申しますと、ここに脚注があるというのがかなりのチャーミングというかハハッワロスという感じであります。まあ当然ながら脚注はこれなんですけどね。

『1 Any opinions expressed here are my own and do not necessarily reflect those of others on the Federal Open Market Committee. I thank my staff for helpful comments, including Riccardo DiCecio, Cletus Coughlin, Karen Branding, Chris Waller, Dan Thornton and Marcela Williams.』

そらまあバーナンキ議長自らが会見で

『Following careful deliberations, Committee participants have reached broad agreement on a statement that sets forth our longer-run goals and policy strategy. This statement should not be interpreted as indicating any change in how the Federal Reserve conducts monetary policy. Rather, its purpose is to increase the transparency and predictability of policy.』(先ほどのバーナンキ議長会見の1ページ目から)

『So I don't think there's really any central bank or a very few at least that focus only on inflation. But again, in terms of terminology, I guess, I would reject that term for the Federal Reserve because we are going to be evenhanded and creating--treating the price stability and maximum employment parts of our mandate on level footing.』
(先ほどのバーナンキ議長会見の27ページ目から)

って言っているのに、ブラード総裁ったらのっけから

『The FOMC Sets an Inflation Target

At the January meeting, the Federal Open Market Committee (FOMC) took an important step forward by naming an explicit, numerical inflation target for the U.S. of 2 percent, as measured by the personal consumption expenditures (PCE) price index. In taking this action, the Federal Reserve has joined many central banks around the world that have set explicit inflation targets over the past two decades. This step has been a goal of Chairman Bernanke’s since he joined the Fed nearly a decade ago. I want to congratulate the Chairman on this accomplishment, which I believe will serve the nation well for years to come.』

とかもうお洒落なんですから全く。

・・・・・まあ何ですな、バーナンキ議長としては従来からデュアルマンデートの実施に当たって物価の長期的なゴールに関する数値を明確化しつつも、デュアルマンデートのバランスを考えながら政策運営していくみたいなフレームワークを考えていたと思われますので、そーゆー意味ではブラード総裁の祝辞(?)もまあむべなるかなという感じではあります。

ちなみに、セントルイス連銀の場合はインフレーションターゲッティングという点についてはこれまたいい感じで入れ込んでいまして、こんなコーナーもあります(^^)。
http://www.stlouisfed.org/inflation-targeting/


話が逸れましたが講演の続き。

『In a targeting context, inflation means headline inflation. It does not make sense to ignore some inconveniently volatile prices, like those for gas or food, when discussing the inflation rate actually faced by U.S. households.2』

ここでブラード総裁も強調している(つーかSEP見りゃ判りますが)長期的なゴールとしての数値はヘッドライン(総合)のインフレ指数でありますが、「コアよりも総合が大事、つーかコア重視は間違い」とか言う講演はそこの脚注にもありますが、

『2 For more on this theme, see James Bullard, “Measuring Inflation: The Core is Rotten,” Federal Reserve Bank of St. Louis Review, July/August 2011, 93(4), pp. 223-233.』

という所で主張されていてあたくしもネタにした覚えが(^^)。もうブラード総裁のドヤ顔が目に浮かぶわけですが・・・・・・

『Inflation targeting emphasizes control over inflation as the key long-term goal of monetary policy. This makes sense because the central bank can only influence inflation and not any real macroeconomic variable in the long run.』

中銀は中長期的なインフレ率に「のみ」影響を与える事ができて、他の実体経済に対する中長期的な影響力はございませんとはこれまた大きく出ましたな、というかデュアルマンデートをマッコウクジラで否定するようなブラード総裁のインフレターゲッティングLOVEの発言は中々痺れますな(^^)。

『As is well known, the actions of the FOMC can also temporarily influence the direction of the economy in the short run, but only temporarily. This influence can be used to help mitigate short-run gyrations in economic activity, thus smoothing out an otherwise bumpy ride for U.S. households and businesses. This is often described as monetary stabilization policy. The amount of smoothing that can actually be accomplished through this channel is meaningful, but not particularly large, a fact which is often lost in contemporary discussions.』

何か更に大きく出ていますが、そらまあ金融政策によって経済の上げ下げのスムージングはできますけれどもそれは一時的な話であって、中長期的には(´・ω・`)知らんがなとは中々清々しいお話ですがどう見てもデュアルマンデート(の失業の方を)disです本当にありがとうございましたという所ですな。

『Putting an explicit inflation target together with a sensible stabilization policy is often called flexible inflation targeting.』

まあそういうことで、デュアルマンデートよりもフレキシブルターゲット(インフレターゲットにスムージング政策をセットにする、ということですから、まあガチガチのターゲット政策ではなく、そこはそこで経済状況とのバランス取りましょという話ではあるのですが、失業の方は目標ではなくあくまでも数多くの経済ファクターの一つとして扱いますよ、という事ですな)が良いというのがブラード総裁の主張だというのは把握した(ような気がする)。

『This is the policy that has been adopted by the FOMC and that follows the practice of many other central banks around the world during the last twenty years.』

ふむふむ。で、フレキシブルターゲットの話はさらに続く。

『Flexible inflation targeting enables central banks to conduct a stabilization program and make it as effective as it can be made without departing from the longer-run goal of keeping inflation low and stable. This reflects a conventional wisdom borne of the 1970s, namely, that allowing inflation to rise and accelerate not only is not helpful for the macroeconomy, but is actually very damaging. During the 1970s, U.S. inflation eventually rose to double-digit levels, and this was accompanied by especially poor macroeconomic performance on the real side of the economy. The lesson for U.S. policymakers and many others around the world has been that high inflation just causes problems and does nothing to help address fundamental macroeconomic issues.』

ということで、1970年代の経験って話をしてて、更に最後の所で「望ましくない高インフレは経済に対して問題を引き起こし、経済のファンダメンタルズの問題解決に対して何の解決ももたらさない」とこらまた大きく出まして、シカゴ連銀エバンス総裁(は失業率改善の為には一時的にインフレ目標対比の少々の上振れは容認(2%の上方乖離まで容認)すべきで失業率改善まで異例の低金利政策を継続すべきという話をしてましたな)の真逆のような話をしているのがとってもチャーミングであります。


では、何でそのような話になるかと言いますと、米国経済の見立てにあたっての話の前提が現状のFOMCの中心的な(というか執行部のというか)考え方と微妙というか結構違っているのですよ。

つまり、生産ギャップ(Output Gap)が大きい状態が続いている事から、物価は上昇しにくく、一方で失業は中々改善しませんよという考えは間違っていて、これは「資産価格の一過性のショックの影響」と考えるべきである、という話がここから始まるのですが、当初あたくしが想定していた通りに時間が無くなったので以下明日にでも(大汗)。

#講演原稿自体はそんなに長くないのでまあその気になればちゃっちゃと読めると思います



2012/02/07

お題「先入先出で山口副総裁講演ネタ/その他雑談」

決定会合関連ネタが途中でスルーになっていますがケンチャナヨ精神でお願いいます。

○山口副総裁の講演会見は下振れ警戒全開で

先週木曜にあった講演ネタで出遅れにも程がありますが・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120202a.pdf
欧州債務問題、日本経済、金融政策運営
── 香川県金融経済懇談会における挨拶 ──

まあ何ですな、一言で纏めてしまえば「下振れ警戒ですね」で終了なのでございますが少々引用しつつあっさり味で。

・最初は雑談ネタで(^^)

『香川県は、私自身にとって思い出深い土地です。私は1996 年5月から約2年間、支店長として高松支店に勤務いたしました。』

高松支店の歴代支店長はこちら(日銀高松支店のサイトです)。
http://www3.boj.or.jp/takamatsu/sum/list.htm
歴代支店長一覧

『日本銀行高松支店の歴代支店長は、第24代日本銀行総裁の前川春雄氏(故人)、第29代日本銀行総裁の福井俊彦氏などが歴任し、現在の 清水 季子(しみず ときこ)支店長は第35代目の支店長となります。』

この歴代支店長リストは中々豪華ですな、うんうん。


・欧州債務問題に関しては先行きを懸念

『2.海外経済の動向と欧州債務問題の現状』の所から少々。

『その後、イタリア、スペインとも、それぞれ新政権のもとで財政再建策が打ち出されたこともあって、最近は国債利回りが幾分低下しています。しかし、そうした財政再建策が確実に実行されるかどうかはまだ不透明ですし、この春にかけては過去に発行した国債が大量に満期を迎え、その借り換えが順調に行われるかどうかも注目されています。また、ポルトガルについては、国債の格付けが大きく引き下げられたことなどから、財政を巡る懸念がこのところむしろ強まっており、国債利回りは15%を超える高い水準で推移しています。』

先行きのキャッシュ繰りへの懸念ですかそうですか。

『こうした状況のもと、欧州中央銀行は昨年12月に、貸付期間3年という中央銀行としては異例に長期の資金を、金融市場に大量に供給しました。その間、日米欧の主要6中央銀行も結束して、ドル資金の供給体制を強化するなど、国際金融市場の安定に努めてきました。その結果、本年入り後は、ドル資金を取引する際の金利が低下するなど、市場の緊張は幾分和らいでいます。しかし、これはあくまでも、当面の資金繰り不安が後退したということであって、欧州の金融機関は依然として大きな損失を抱え、それとの関係で自己資本が十分ではないとみられています。』

で、以下が資金繰りの方ではなくアセットサイドの話。

『これらの金融機関は、本年6月末までに自己資本比率を引き上げることを金融当局から求められていますが、資本そのものを十分に確保できなければ、計算上の分母である資産を減らして自己資本比率を引き上げることにならざるを得ません。そうした資産の圧縮、いわゆるデレバレッジングと言われる動きは既に生じ始めていますが、今後、企業など資金の借り手にさらなる悪影響を与えないかどうか、また、欧州系金融機関からの借入れが多い新興国経済に影響が及ぶことがないかどうか、注意が必要だと思います。』

新興国経済への影響警戒キタコレ。

『要すれば、財政に端を発した問題が金融面にも波及し、それが実体経済に及ぶという悪循環が、グローバルにも拡がらないかどうか、注意が怠れないということです。』

何せ新興国経済が回復が日本経済回復のカギという扱いになっていますからね。

で、以下『3.欧州債務問題の基本的な性格』ということで欧州問題に関する単一通貨と複数経済の問題についての話があるのですけれども、まあこれは普通にきっちりと纏めている話でありますので、これは今回は引用スルーということで。


・新興国に関しても懸念が

そもそもの経済シナリオはですな。

『新興国・資源国経済は、全体として高めの成長率を維持しています。しかしながら、最近は成長ペースが鈍化してきており、しかも成長の減速やインフレ率低下の度合いに、国ごとのばらつきが見られるようになっています。例えば、インドやブラジルでは、経済の減速が目立ってきているにもかかわらず、インフレ率はなお高止まっています。一方、中国では、成長の減速とインフレ圧力の低下がともに緩やかに進行しており、なお不確実性はありますが、うまく軟着陸に向かう兆しが出てきています。』

まあ中国がセーフならセーフという感じでしょうかね。

『なお、先月下旬に公表されたIMF(国際通貨基金)の最新の世界経済見通しによれば、2012年の世界経済の成長率は+3.3%との予想が示されています。昨年9月時点の見通し+4.0%に比べれば、欧州債務問題を主因に下方修正されていますが、新興国・資源国を中心に世界経済が次第に回復していくという見方は、大筋において維持されています。』

「大筋において」キタコレという感じですな。んでもって新興国に関してですが、先行きの不透明要因の中にこのような記述が。

『4.日本経済の展望と中長期的な課題』の中で『しかし欧州債務問題の影響を始め不確実性は大きい』とある所にこんな話が。

『ただし、以上の見通しには様々な不確実性が存在します。最大のリスクは、既に述べた欧州債務問題ですが、それ以外にも意識しておくべき不確実性があります。』

ほう。

『先ほどの日本経済の回復シナリオでは、新興国・資源国が、インフレ圧力の低下を受けて成長率を再び高め、世界経済を牽引していく姿を想定しています。しかし、そうした基本的な想定についても、その通り実現するかどうかについては、予断を持たずに見ていく必要があります。』

キタコレ。

『また、イランを巡る地政学リスクも懸念されます。今後、仮に情勢が緊迫化して原油価格が大幅に上昇すれば、物価には上振れ圧力となる一方、企業収益の悪化などを通じて景気には下振れ要因となります。原油価格の高騰は新興国経済の減速にもつながり得るだけに、今後の展開には十分な注意が必要です。』

決定会合の声明文とかを見ていると原油価格の高騰は物価の上振れリスクとしか書いていないように見えるのですが、山口副総裁のこの講演テキストによれば原油価格高騰が新興国経済の減速要因という話になりまして、声明文で受けるイメージとはニュアンスが違って景気警戒ムード高まるという感じではないでしょうか。


・財政の持続性に関して

これはブルームバーグやロイターがややこしい報道をした部分ですな。

『4.日本経済の展望と中長期的な課題』の最後にある『市場の信認が失われないうちに財政の持続性をしっかり確保すべき』という所から。

『こうした成長力の強化と並んで、財政の持続性確保に向けた取り組みも着実に進めていく必要があります。わが国の政府債務残高は対名目GDP比で200%を超えており、先進国の中で最も高い水準となっています。それにもかかわらず、国債金利が低水準で安定している最も基本的な理由は、わが国には財政健全化に向けて取り組む強い意志があり、したがって日本国債は安全な資産であり続けると、市場が信頼しているためだと考えています。』

まあギリシャみたいなヒャッハー状態だと思われたら売られるでしょうが、じゃあ今買われている理由が上記のようなものかというとそれは微妙ですけどにゃ。

『そうは言っても、国の借金がなお増え続けている現状では、何らかのきっかけで国債市場の信認が一気に崩れるリスクは排除できません。仮にこれが現実のものとなった場合、金融システムや実体経済に大きな影響が及ぶことは、欧州の実例が証明しているとおりです。一段と高齢化が進む中で、社会保障費の増加圧力がかかり続けることなどを踏まえますと、成長力の強化だけで財政健全化の道筋を確保することは困難です。市場からの信認が失われる前に、歳出・歳入の両面で財政の構造改革を進めていく必要があります。』

しかし今は何故か知らんが増税の話ばかりが先行するのが詐欺フェストミンスクオリティ。

というのはどうでも良いですが、まあここでは普通の話をしているだけで、特段日本の長期金利がどうのこうの言ってるようには見えませんけどねえ。つーかこれだけ慎重な物言いをしている山口副総裁がそんな不用意発言(報道のヘッドラインにあった「長期金利の低位安定はやや不可思議」って奴)するのかねという感じはせんでも無い。


・政策対応に関してもハト派というか慎重な姿勢を強調

『5.日本銀行の金融政策運営』の『金融政策運営の不断の点検と万が一の場合に備えた体制整備』という所から。

『日本銀行は、デフレからの脱却、そして中長期的な成長力の強化に向けて、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けるとともに、海外経済の減速や円高の影響など、当面の情勢には不確実性が大きいことを十分認識し、引き続き適切な政策対応に努めてまいります。金融政策の運営に当たっては、市場とのコミュニケーションのあり方を含め、客観的かつ冷静な目で不断に点検していくことが重要だと思っています。』

「海外経済の減速や円高の影響など、当面の情勢には不確実性が大きいことを十分認識し」キタコレという感じでございまするが。

『このほか、欧州債務問題については、その確率が低いとは言え、金融市場が大きく混乱するようなまさかの事態にも備えておかなければならないと申し上げました。この点、日本銀行は、金融システムや決済システム、金融機関経営の状況をしっかりと把握し、政府や各国中央銀行とも緊密に連携をとりつつ、万が一の場合にも金融市場の安定を確保するよう、万全の体制を整えておきたいと考えています。』

ということで、日銀は慎重姿勢ですよというアピールですな、うんうん。


○会見もまあ似たようなトーンです

金曜に会見要旨も出ているのでそっちの話も少々。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202a.pdf

・円高に関して

講演では日本経済に対する円高の悪影響の話がありましたがめんどいのでスルーした訳ですが、そちらの質疑ですな。

『(問) 為替相場、対ドル相場で、76円台ぎりぎりまで円高が進んでいます。本日の副総裁の挨拶でも、円高の定着や電力コストの上昇等が今後の成長期待を下押しする可能性があるというお話がありました。足許のこの円高が日本経済の回復に与える影響について、どのようにみておられますか。』

『(答) このところ、米国経済についてやや慎重な見方が出てきていることを背景に、円高の動きが少し進んでいる状況だと思います。今、日本経済は海外経済の状況に非常に影響を受けやすい状況にあります。そういうもとでの円高進行は、これから先の輸出の動向、企業収益の状況などに影響を与えます。さらには、企業のマインド面にも悪影響を及ぼす可能性があります。こうした点を踏まえ、昨今の円高がどのような形で日本経済に影響を与えてくるのか、注意深くみていく必要があると思っています。』

ということで、まあ普通ちゃあ普通の答えなのですが、先日麿の定例記者会見をネタにした時に雉も鳴かずば撃たれまいとか何とか申し上げたような気がしますが、確かに個人消費に関連して円高のプラス効果が出ている、という面があるかもしれませんが、足元の金融政策運営では基本的に下振れ警戒の方を注意し、かつ現状特段の金融不均衡の拡大的なものがあるようにも見えない(まあ本当はあるのかもしれないけど普通に見てて現状そういう流れじゃないっしょ)という中で、何も好き好んで「円高のメリット」の話をせんでもよかばいという気がしましたけれども、山口副総裁はそのへんの地雷を踏まないようにするのが得意ですな、うんうん。

『(問) 前の方の質問と重複する部分もあるかと思いますが、FRBの新しい発表があって以降、米国の長期金利が下がって、日米金利差が縮小するなかで、今回の円高が進んでいるのではないかという指摘もあります。そういう意味で経済にとって必ずしもプラスではない円高を是正するために、日銀として一段と長めの金利を引き下げるような何らかの取り組みが必要ではないかという意見もあるようですが、こうした意見に対する考え方を教えてください。』

『(答) 確かにこのところ、以前に比べれば、円高方向に推移していることは事実ですが、為替相場というのは、御承知の通り非常に振れやすいものです。したがって、その基調的な動きを判断するには、それなりの時間をかけながら慎重にみていく必要があると考えています。円高の背景としてマーケットで言われていることは様々あるわけですが、1つには、米国経済に対する見方が少し慎重味を増していることも、円高の大きな要素となっていると言われています。こうした見方の妥当性を見極める意味でも、もう少し様子をみていく必要があると思っています。それと合わせて、昨今の円高が仮に続いていく場合に、日本経済の景気面、物価面にどのような影響を与えるのか、真剣に見極めつつ政策対応を考えていくということです。このところの円高をみて直ちに政策対応が必要だと思っているわけではありません。』

まあ何ですな、微妙な言い方をしていますけれども、冷静に考えた場合に米国の追加金融緩和(のようなものであってただのインチキ時間軸なので本当に効果があるのかはあたくし的には微妙だと思いますが)の効果が出ると市場が認識した場合、必ずしも長期金利の低下になるかどうかというのはQEシリーズ実施後の長期金利推移をみれば明白ではありますので、そーゆー意味では一々反応しないで様子をちょっと見つつという話になるのはまあそうかなとは思います。

ただまあ円高がまた高値更新とかしやがるとあちこちからピーピーピーと携帯電話の電池切れの如くヤヤコシヤな状況になってくるとは存じますがね。


・米国金融政策に関連して

『(問) 2点お伺いします。まず、対ドルで円高が進んでいる理由についてお伺いします。先日FRBが新しい金融政策の方針を公表しましたが、米国に比べて日本の方が緩和の方針が弱いといいますか、逆にいうと米国の方が金融緩和の方針が強いのではないかという見方から、ドルが売られて円が買われるという、ある意味多少投機的な動きが増えてくるのではないかという見方も出てきているようです。本日の挨拶でも、米国でも2%という方針を出しているが、日銀も同じような明確な方針を出している、というお話がありました。FRBが出している方針と、日銀が既に出している物価安定の理解がどう違うのか、改めて確認させて頂きたいと思います。

もう1点は、金融緩和の時間軸について、米国の方は2014年末としていますが、この点について、日銀はそれと比べて長いのか短いのか、マーケット参加者がどのようにみているのかということがあると思いますが、この点についてどのようにご覧になっていますか。』

ちなみに時間軸に関しては雨人がどう思っているかはともかくとして、2年金利でも5年金利でも見れば日本が認識している時間軸の方が明らかに長いというのは明白のような気もしますが。

『(答) 先般、FRBが公表したコミュニケーションの方法についての見直し、特に物価についての彼らの考え方と、私どもが示している中長期的な物価安定の理解、この違い如何というご質問かと思います。私どもは、消費者物価でいえば前年比で2%以下のプラスの領域、中心値としては1%程度になることが中長期的にみての物価の安定である──物価が安定した状態である──という理解をしています。米国は、ロングランのゴールとして、すなわち長い目でみた目標として2%という数値を出しているので、相違点の1つは、当然、この数値上の違いです。』

ふむふむ。まあその1%と2%の差がどうなのよという話は思いっきりあるのだが。

『一方で、類似点も実は結構あります。1つは、彼らは、物価の目標だけを掲げて政策運営を行うのではなく、いわゆるデュアルマンデートのもとで、雇用にも目配りしながら物価の安定も図っていくという立場であることを、バーナンキ議長自身が明確に語っています。私どもも、中長期的にみて物価が安定している状態について明確に表現すると同時に、金融的な不均衡その他のリスク要因を抱え込むことがないかどうかをチェックしながら、物価の安定を図っていくという考え方を示しています。』

チェックする方向が日米逆のような気がしますが、まあ米国の場合は物価の長期的なゴールの数値よりも足元の物価が高いのですから当然緩和方向でのチェック項目が入り、日本の場合は物価の長期的なゴールよりも足元の物価が低いのですからチェック項目にタカの香りがする、という話なのでしょうが、これだったら別に日本の方でのチェック云々の話をするよりも「経済情勢を見ながら総合的に判断」とか何とかお茶を濁せば良いのにとか思ってしまうあたくしでした。

『こうしたことを踏まえると、FRBが今回導入したコミュニケーションの方法と、私どもが「中長期的な物価の安定の理解」を示しながら政策の構えを示す方法は、考え方において基本的に変わりはないと思っています。』

つーか、FRBのアレって日銀の物価安定の理解をベースにしているような香りがプンプンする訳でして、いわゆるインフレーションターゲットという言葉で想像されるターゲット政策では無い「中長期的なゴール」という形での政策目標提示、という意味では日銀の物価安定の理解と建付け自体は極めて類似している、と申しますか、普通に現在の主要国の中銀で行われる方向性ってこうなるんでしょという話になるのでは(BOEなんか延々とCPIがターゲット比上振れしているけれども「中長期的には2%に落ち着く」の一言で済ませていますからねえ)と思いまする。

まあ他にもネタがあるような気がしますがとりあえずこんなところで。


○その他雑談:人のふんどしシリーズから少々思う事を

厭債害債さんの所から
http://ensaigaisai.at.webry.info/201202/article_1.html
誤解もここまでくれば・・・

まあ厭債さんが荒木又右衛門よろしくばっさばっさと斬っておられますが(^^)、どうもCDSスプレッドに関しては変な理解が人口に膾炙しているようで誠にアレでございます。

と申しますのはですな、先般東京新聞で「社会保障と税の一体改革に関する論説特集」というのがあって(本紙にはあるけどネット版の方ではあたくしの探し方が下手だったせいで見つからなかったっす)、そこでも何かそういう話があったんですよ。

東京新聞2月2日木曜日10面特集面の「成長こそ財政再建の道」という論説(長谷川幸洋さんという方が書いておられます)から一部引用。

日本の財政再建で本当に増税が必要なのか、という話をしていまして、その前の部分ではギリシャよりも日本の政府債務対GDP比が大きいので大変だという見方もあるが、それは違うでしょ、という話が以下にあるのですが・・・・・・・

『だが日本は本当に危ないかといえば、別の指標もある。国債の安全度を測るCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートだ。日本国債のCDSは1.4%。意味するところは「70年で1回債務不履行になる可能性がある」。ギリシャは60%なので20か月に1回不履行だ(1月下旬時点)。つまり、金融市場は「ギリシャに比べて日本はずっと安全」と評価している。』(東京新聞2012年2月2日朝刊12版10面論説記事より一部引用)

・・・・・・・・うーむ、何かこうギリシャと日本を直接比較とか何というかという感じですが、それは兎も角としてCDSスプレッドを何かそういうもんだと理解されて話をするメディアが続出するとCDSで仕掛ける方の思う壺にも程がある訳で、それって日本国債売り仕掛けで誰得展開とかを招く元にも繋がる話になるのですけどねえ・・・・・

あのですな、新聞なり何なりのメディアに金払ってそれを読むという行為って何なんですか、というか新聞なりのメディアの役割って何ですねんという話をつらつら考えますに、ネットがこれだけ普及して色々な言説なり資料なりのアクセスが容易になる中で、メディアの存在意義って「玉石、というよりも石だらけの情報洪水の中から玉を拾って提供する」というのが重要じゃないかなあとか思うのでありますよ。

然るに、そのメディアが微妙にアレなものを(某新聞社の電波浴シリーズとか泣けてくる訳ですが)出してくるとなりますと、何でメディアに銭払って石を見なきゃいかんのよという話になる訳でございまして、もうちょっとその辺への認識を持ってほしいなあと思うのですよ。

いやね、主張は主張で別に良いんですけど、その主張を展開するにあたってあまり適当な事ばかり書かれますと、それはやはりミスリードに繋がる訳で、昨今の政治の混迷というか行き当たりばったりというかにも、メディアとかのミスリードが影響しているんじゃないかな、とか思うのでありますが。


と、柄にもなくとりとめのない雑談になっていまいましたです。




2012/02/06

お題「月曜につき米国ネタ雑談とか」

月曜につきまあ雑談チックである(汗)。

○ラッカー総裁のFOMC反対理由

まあFOMC直後に出ていました(URL貼りました罠)のですけどね。

http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2012/fomc_dissenting_vote_20120127.cfm
January 27, 2012
Richmond Fed President Lacker Comments on FOMC Dissent
Richmond, Va.

ということでリッチモンド連銀ラッカー総裁のFOMCでの反対の理由に関するコメントというか声明のようなものでございます。

『"The Federal Open Market Committee has recently taken a number of steps to enhance its transparency about monetary policy and improve its communication with the public. The economic projections we submit four times a year now include Committee participants' forecasts for the likely path of the federal funds rate under appropriate monetary policy. That is, each participant, given his or her views on how economic fundamentals are most likely to evolve, states how he or she believes monetary policy will need to respond in order to best fulfill our goals. After the meetings, when our projections are submitted, the Chairman's press conference provides further perspective on the Committee's thinking and its deliberations.』

ここまでは今回のFOMCでこんな事やりましたよ的な話ですな。

『"The Committee has also provided forward guidance -- its expectations for likely future interest rates -- in the policy statements issued at the conclusion of the FOMC meetings. At the recent meeting that concluded on January 25, this guidance stated that the Committee currently anticipates that 'economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014."』

this guidanceちゅう所に先般のFOMCステートメントへのリンクがありますが、まあ要するにフォワードガイダンスで「現在の経済情勢にを鑑みると、FOMCは異例の低金利政策を少なくとも2014年遅くまで継続する事が正当化されるであろうと想定する」という件を表明しましたという話ですな、という事でここまではマクラ。

『"I dissented because I do not believe economic conditions are likely to warrant an exceptionally low federal funds rate for so long. I expect that as economic expansion continues, even if only at a moderate pace, the federal funds rate will need to rise in order to prevent the emergence of inflationary pressures. This increase in interest rates is likely to be necessary before late 2014.』

で、反対の理由なのですが、まあ直球ストレートの話でして、「経済の改善が極めて緩やかなペースであったとしても、経済の改善が継続すると予想される中においては、インフレ圧力の高まりを抑える為に2014年の遅くになる前に利上げの開始が必要になると考えて反対しました」という事であります。

つーことで、これはまあ他の地区連銀の人の発言とか見ててもそうなのですが、所謂「タカ派」分類される人たちと言いましても基本的に経済見通しに対してそんなにタカ派な訳では無く(SEPの実質GDP分布見たら判ります罠)、経済に関しては基本的な見方は特段楽観しておらず、じゃあ何でタカ派になるかと言えばインフレリスクに関する見方が違っていて、それに対する金融政策対応をどうするかという点がそれこそシカゴのエバンス総裁辺りと真逆になっているという話になりますわな。

つまりですな、いわゆるタカ派とかハト派とかいう分類というよりは、インフレリスク警戒派なのかどうかという点とかが分類としては本当は正しいように思えますし、セントルイスのブラード総裁のように「低金利政策を継続すると望ましくないデフレ均衡に陥るリスクを高める」というような方もいたりするので、そーゆー意味では経済の見立て云々というよりも金融政策の基本的な設計部分に関わる話になるので、今回の雇用統計のようなマンデートに関わる実データの推移の方が注目されるのかなあとか思うのであります。

『"In addition, the Summary of Economic Projections (SEP) now contains detailed information on the forecasts of Federal Reserve governors and Reserve Bank presidents for the evolution of economic conditions and the federal funds rate under appropriate policy. My dissent also reflected the view that statements about the future path of interest rates are inherently forecasts and are therefore better addressed in the SEP than in the Committee's policy statement.』

まあ先ほどの見通しに基づく反対の方は兎も角として、こちらの段落の方が結構まあ何というかな論点でございまして、SEPでの見通しを見ると「2014年遅くまでの異例の低金利継続予想」というのってオカシクネという話をしていまして、これに関しては当然ながらバーナンキ会見の中でもツッコミが来ていましたが、まあコミュニケーションポリシーの建付けという面ではこちらの論点が重要、というか何か将来に禍根を残しそうなフォワードガイダンスですよね、という話でしょう。

ただまあ何ですな、あの状況でSEPの「政策金利予想」だけ出したらコミュニケーションポリシーの改善と称して実施した今回の追加緩和もどき施策が却って市場の政策金利予想パスを前倒しさせてしまうという藪蛇な結果になりかねなかったので、中々ムツカシヤという所ではあるのですが。

『"My views on the economy and monetary policy were also discussed in a January 13, 2012, speech."』

ということで、1月13日の講演に関しては先月24日に頭出しだけしてその後何もしていないのでありましてどうもすいませんすいません。一応再掲すると、景気に対してそんなに強気な訳では無く、住宅市場の問題に関してはかなり懸念しているイメージで、景気に別にタカ派な訳では無いものの、現状に関して「1970年台のスタグフレーション再来のリスクを懸念」という認識を示しており(ちなみにシカゴのエバンス総裁は1930年台の大恐慌再来のリスクを懸念しておりスタグフレーションのリスクは大きくないと認識)その点から利上げのやや早めの着手の必要性を主張という話です。


○んでもって週末の雇用統計

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LYTKD20D9L3501.html
米雇用者数が1月に24万人増、労働力率は1983年来の最低 (2)

『2月3日(ブルームバーグ):1月の米雇用統計は予想を上回る増加となり、失業率は低下した。一方で、職探しをあきらめて労働市場から退出する人々が急増している。米労働省が3日に発表した1月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比24万3000人増。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミストの予想中央値は14万人増だった。前月は20万3000人増(速報値は20万人増)に修正された。家計調査に基づく失業率は8.3%に低下。オバマ大統領が就任した翌月の2009年2月と同水準に戻った。同大統領が就任した09年1月の失業率は7.8%だった。』(上記URLより)

パーティシパントが悪いのがアレだがまあとりあえず良い内容という事のようでございますが、PCE物価指数は市場予想よりもやや落ちが鈍く、一方で失業率は絶賛改善という話になりますと、こらまあフォワードガイダンス作った途端にこれとは何というオモシロパターンという感じではありますが、まあこういうパターンになるのであれば、FRBとしても別段痛い話ではないかと存じます。債券市場は梯子外されて涙目になるのかも知れませんが、経済が望ましい方向に進んでいるというのであればケンチャナヨという話。

まあ問題になるのはこれが毎度おなじみの偽りの夜明けだったりして金利上昇が先に経済の足を引っ張るというパターンなんでしょうけれどもね。


○コチャラコタ総裁のインタビューが中々面白い件について

大体年明けは地区連銀の皆さんの講演その他が多過ぎでありまして、今更見たら面白かったのでミネアポリス連銀コチャラコタ総裁のインタビュー記事(記事と言っても連銀のサイトに載っているのですが)をネタに。

http://www.minneapolisfed.org/publications_papers/pub_display.cfm?id=4803
Kocherlakota Discusses FOMC Experiences in an Interview for an Employee Newsletter
Narayana Kocherlakota - President
Published January 11, 2012

インタビューは12月に行われたそうです。

『For the last year, President Kocherlakota has served as a voting member of the Federal Open Market Committee (FOMC). The committee consists of seven governors of the Federal Reserve Board, president of the Federal Reserve Bank of New York, and a group of four other Reserve Bank presidents who serve one-year terms on a rotating basis. Until 2014 when he is once again a voting member, Narayana will continue to attend and have input into FOMC deliberations, but will not cast his vote on monetary policy decisions.』

『As hectic as his schedule was in December, Narayana willingly accepted an invitation to share his FOMC experiences with employees in this interview with RiverBank Currents (RBC).』

A4の紙に出すと多分4枚分になるのですが、これは中々面白かったのでとりあえず本日は一番オモシロスと思った「FOMCってどういう感じで実際の運営が行なわれているの」という部分を。

ということで質疑の途中から(RBCというのが質問者RiverBank CurrentsでNKというのがコチャラコタ総裁ですな)。

・FOMCミーティングには1名の随行者がいるとな

『RBC: Does anyone accompany you to the meetings?』

『NK: Each president is allowed to have one additional person attend. Usually Kei-Mu Yi, our Research director, joins me. However, others may go in his place as long as they have clearance. During my tenure, Ron Feldman, Jonathan Heathcote, and Warren Weber have all gone to FOMC meetings. 』

ほほうという感じですが、で、その随行者のお仕事ですが・・・・・・

『RBC: What is their role?』

『NK: It is fairly limited. Primarily, they monitor and take notes about what is happening at the meeting. During breaks, I may consult with whoever is with me to determine whether to amend what I am going to say given what has been shared so far. First Vice Presidents also rotate their attendance, so Jim Lyon has been to some meetings as well.』

随行者のお仕事は議事の内容を記録する事と、休憩時間中に総裁の発言に関して何らかの補足訂正事項があるかどうかの確認をする事だそうですが、その他に地区連銀の筆頭副総裁もローテーションで出席、という事になっております。

いやまあこの辺の事ってよくよくFOMCの議事要旨見たら最初の所に延々とミーティングに出席している人の名前が連なっていまして、それを見れば判るじゃん(判ります^^)というツッコミはあろうかと存じますが(超大汗)、何せあたくしFEDウォッチャーの本職ではありませんもので(つーか日銀ストーカーも本職ではなくてただの趣味だが^^)この話を読んで改めてFOMCの議事要旨を読み直してみた次第ですすいませんすいません。


・意見表明の時間は各人2回ありますとな

『RBC: Is the preparation phase affected by whether you are a voting member?』

『NK: No. The same amount of work is involved because all Bank presidents speak at the meeting about the state of the economy as well as monetary policy, regardless of whether they will vote.』

で、この「準備のフェーズ」の話はインタビューの冒頭部分にあったりしますのでまあ読んで味噌。ここからが面白い。

『RBC: What is the structure of the FOMC meetings?』

『NK: The meetings have a structure that has been in place for many years. There are two opportunities for each member to speak uninterrupted. We call these “go-rounds.” The first one is the economics go-round where we provide perspectives on the current state of the economy and how we see it evolving. The presidents speak about information related to their respective Districts, but because we’re making policy for the nation, we are also discussing national economic conditions. The second go-round is when we offer our perspectives on monetary policy. There are many connections between the two in determining our actions or inactions.』

FOMCミーティングでは「go-rounds」と言われる機会が各人に2回用意されていて、その間は他の参加者が発言途中で意見を挟むというような事はできない仕切りになっているとの事ですな。で、1回目は経済に関連する見解表明で2回目は金融政策に関する見解表明と。


・会議の進行について

『RBC: How would you describe the environment of the meetings?』

『NK: In many ways, it’s similar to other committee meetings. However, the structure that I described alleviates the possibility of one person dominating the discussion because everyone is allowed a turn to speak without interruption. This approach can diminish the ability to engage in real-time debate, though, because you must wait for your turn. Many members speak from prepared remarks, so there is relatively little give-and-take that occurs during the meeting. Instead, there is a time delay. For instance, if a member said something at the April meeting, I may head back to Minneapolis and do some more analysis of my own and then perhaps share a differing perspective at the June meeting. What can help our dialogue is when presidents or governors circulate memos ahead of the meeting; that way, everyone has a chance to incorporate thoughts on the material into their remarks.』

この辺へーへーへーという感じでありますが(^^)、このgo-roundがあることによって、議論が丁々発止とはなりにくいという面があるものの、会議を独裁的に仕切る人が出るという弊害を避けるために各人が自分の意見を表明する機会が担保されているという事のようですな。で、まあ各人の意見に対しての見解というのを持ち帰って次回のミーティングで話す、というような面があるのが「so there is relatively little give-and-take that occurs during the meeting. Instead, there is a time delay.」という所のようで。

ただし、ミーティングの前に「私としてはこのように考えるという論点があるんですが」というのを事前に皆さんに配布するという事もできるようで、その場合は必要があると思ったらその件についても意見をgo-roundの所で表明するんですな、うんうん。

『RBC: If you share a different perspective, is there a dialogue or are you just sharing your thoughts without response from others?』

『NK: Both. It is a complicated time, and we all view it as a collaborative process to get to the best point possible. On the way, we may well have different views of how that should work. We share our thoughts, but it is more than simply recording who thinks what. We strive to raise questions, suggest answers, and resolve issues. I do want to mention that I have really enjoyed interacting with the other presidents. It has helped build bridges between Minneapolis and other Feds and it has been a very enjoyable part of my job. Although we may disagree, the presidents all view themselves as part of one team, and we should all be thinking that way when working with other Feds. Operationally there may be some friendly competition, of course, but it is a team effort.』

意見の対立があった場合にその場で反論する事もあればそうでない事もありますが、「Operationally there may be some friendly competition, of course, but it is a team effort.」との事で。


・FRB委員欠員の影響は特にない

とは言ってますが、まあ欠員の結果地区連銀の意見がより注目されるというのはあるかなとはあたくし的には思うのでありますがね。

『RBC: Is the FOMC’s decision-making process affected by the vacancies on the Board of Governors?』

『NK: No, the vacancies don’t affect the process. That said, the more people we have with varied ranges of experience, the better the dialogue will be.』


・バーナンキ議長について

これはへーへーへーへーへーという感じでありました。

『RBC: What is the chairman’s level of participation throughout the meeting?』

『NK: Chairman Bernanke is highly effective at leading the meetings from the back. That is to say, in general, he will speak last in the economics and policy go-rounds. This approach allows him to hear all the ideas around the table that may inform his own perspectives. During the go-rounds he may ask clarifying questions after people are done speaking; and, we are allowed to ask questions of him when he is done. Additionally, if the situation we are facing is quite complicated, he may offer guidance regarding things we should keep in mind as we discuss policy. The Chairman is remarkable at distilling what people have said - he can take nearly two hours of talk about the economy and effectively summarize the essence of that discussion.』

議長はgo-roundsで各人が意見表明をした後に、見解の内容を確認する為の質問をする事ができて、更にFOMCミーティング前に各参加者に対して答えを用意して欲しい重要な論点について示すこともできるとな。で、バーナンキ議長はgo-roundsの最後に意見を言う(合計で2時間ほどだそうで)のですけれども、その際には各人の見解をまとめたりすることもあって、その能力が極めて高く、会議での議論のエッセンスをまとめる事に極めて秀でているそうな。

・・・・・・つーことでFOMCミーティングに関する部分だけネタにしましたが、他の部分もまあオモシロスではございましたです、はい。



2012/02/03

お題「今日はただの雑談で勘弁である」

今朝もいきなりモーサテが「日本国債暴落の可能性について」とかいうお題でゲスト解説者にお話をさせようとの事ですかそうですか。

#モーサテの兄さん曰く、「マーケットでは欧州の次は日本だと思っている人が多いようですが」ってどこのマーケットだよと思うのですが・・・・・・・

ということで何か最近の報道が変ですねという雑談で昨日の新聞だのベンダーだのの記事から2つほどクリップしながら世間話で勘弁の一日でございまする。


○朝日新聞の「国債暴落」ネタのイミフ記事

昨日の朝最初に話題になっていたのが朝日新聞の記事。

http://www.asahi.com/business/update/0202/TKY201202010846.html
数年後の国債急落を想定 三菱UFJ銀が危機シナリオ

『銀行最大手の三菱東京UFJ銀行が日本国債の価格急落に備えた「危機管理計画」を初めて作ったことがわかった。数年後に価格が急落(金利が急騰)して金利が数%にはね上がり、損を少なくするために短期間に数兆円の国債を売らざるを得なくなることもある、としている。国債の有力な買い手がいよいよ「急落シナリオ」を想定し始めた。』(上記URLより、以下同様)

ふーん。

『計画は昨年末にまとまった。日本の経済成長率や経常収支、為替など30指標をチェックし、国債急落につながる変化があれば損失を軽くするために売却などの対応をとる。』

ということなのですが、詳しいのは昨日の朝日新聞本紙にあるみたいですが、それを受けたニュースベンダーの報道とか見てますと、2016年度で3.5%に金利が上昇したらどうのこうのという話らしいですな。

・・・・・・・・・・・えーっと、基本的に金融政策が正常化できるような状況になっていて、政策金利が1.5%だの2%だのというような水準になっていたらごくごく普通にその位の金利になっていると思いますので、これって「危機管理計画」でも何でもなくて、大きな企業様におかれましては何とか企画部門とかの仕事づくりの為に良く作成される鉛筆なめなめ「中期経営計画」の中での普通の「景気楽観シナリオ」じゃねえかと思うのでありまして、これって朝日新聞がBTMUのリリースに何か俺様フィルター掛けて解釈しただけの話なんじゃネーカと。

大体ですな、景気楽観シナリオで金利が上昇する時ってそもそも民間部門の資金需要が拡大している訳で、銀行としてはバンキング部門で貸出が伸びてウハウハですし、そもそも投資に金が回る訳ですから銀行の資金の調達運用構造が今のままの訳ではなく、そうなる段階において減らしたくなくても銀行の証券投資が勝手に減るでしょとか思うのでありますし、一万歩譲ってギリシャ状態になって金利が急上昇するとしたら3.5%とかで止まるかよヴォケという感じではございますな、うんうん。


しかしまあ何ですな、昨日はちょうど10年国債入札の日だったのですが、この記事見て最初にあたくしが思ったのは「10年入札で安く買いたいんですかそうですか」という所でございますが、どうも人の話を聞いて回ったら同じような印象を受けた方が多く、おまけに昨日の10年国債入札は事前予想よりも堅調な結果になって後場債券市場上昇ときたもんで失笑を禁じ得なかったという所ではございますが、ダシにされたBTMUさんもいい迷惑でしょうな、うんうん。

まあ朝日新聞の場合は以前より何か変なもんでも食ったんではないかと言うような勢いで増税キャンペーンをやっているようで(稀に読むと何かもう増税しないと大変ですよ日本オワタですよという論調が凄いです。消費税増税の閣議決定の前後とかの記事見ててビックリしたわ)、その一環なのかなあとか思うのですけれども、わざわざ10年入札の日の朝刊に(別にいつ記事にしてもよさそうな)この記事を入れることによって「朝日新聞さんって債券市場を動かしたいんですね何て下品なんでしょ」と金利市場様の評価がガタ落ちしたという事はまあ否めませんなあという所で。


○ブルームバーグのヘッドラインが意味不明だった件

でまあその10年入札の応札タイムであります11時過ぎには山口副総裁が高松で講演をしておりまして、その講演に関連したヘッドラインが11時20分過ぎに流れたのですけれどもね。

・・・・・・つーかさ、とりあえず日銀は国債入札の日、というと制限が多くなりすぎますからせめて10年入札で良いと思いますけれども、国債入札日に政策委員の講演を打ち込むのはヤメレと思うんですけどねえ。10年国債入札の日にどうのこうのと言えば10年国債入札の前場引け直後に「臨時政策決定会合の実施」をアナウンスして国債ディーラーの憤激を買ったという事案も以前にございましたが、「市場との対話(キリッ)」とか言うならせめてその程度の最低限のロジを考えろやと思うのでありまして、国債入札の日程よりも先に金融経済懇談会の日程が決まるのかもしれませんけれども、大体月初は10年国債入札があるとか普段のスケジュール見てたらアホでも予想ができる話なんですから「市場との対話」とか抜かすなら考えろと思いますけどにゃあ。

財務省はちゃんと金融政策決定会合のアナウンス日と国債入札日が重ならないようにスケジューリングしている訳でして、そういうロジの感覚に微妙に残念な所が見受けられるのが日銀(まあ財務省の場合この手の話で関連するのが理財局という専門部署であって、日銀の場合金融市場局以外の部局がありますからねえというのはありますけれどもね)の微妙な麿クオリティという所かとか思うのでありました。


しまった。思わず話が横に逸れて何時の間にかあたくしの手が勝手にキーを叩いて悪態をついているような気がしますがそれは兎も角として本題に戻ります。


山口副総裁の講演はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120202a.pdf

で、この講演に関してブルームバーグニュースが速報ヘッドラインを出していたのですけどね(関連ヘッドラインのみ抜粋)。

JBN 11:22 *山口副総裁:長期金利の低位安定はやや不可思議
JBN 11:22 *日銀の山口副総裁は高松市内の講演で語った
JBN 11:23 *山口副総裁:万一の場合も市場安定化期す
JBN 11:23 *山口副総裁:何らかのきっかけで財政の信認一気に崩れる可能性も

・・・・・・・10年国債入札の応札タイムに何じゃそらという感じなのですが、肝心の講演(正確には挨拶なんですがまあそれは兎も角)テキストにはこの最初の「長期金利の低位安定はやや不可思議」というような話はどこにもないのですよ。

基本的にここに出てくるテキストって講演の原稿でして、アドリブがホイホイ出てくる人って速水総裁か福井総裁くらいで、山口副総裁がそういうアドリブ的不規則発言をするタイプじゃないので本当にそんな事言ったのか(この時間帯は挨拶だけの筈だから挨拶の中でアドリブ言わない限り講演テキストと違う物が出てくるのは不自然)とゆーのもアレですけれども、まあ仮に山口副総裁がそういう発言したとしてもですなあ・・・・・

この次に出てくるヘッドラインを見るとどう見ても日本の話をしているようにしか見えず、債券ディーラー的には「何で入札の日にこんな話がでるんだ?」とまあ怒り心頭滅却されておられる方もいれば、そもそもスルーされていた方もいたかと存じますが(^^)、いずれにせよ仮に発言しているとしたら10年入札の日になんちゅう不用意な・・・・・・・・と思って講演テキスト見たらこうなっておりました。


JBN 11:22 *山口副総裁:長期金利の低位安定はやや不可思議

日本の長期金利どうのこうのの話をしているのはテキスト12ページ(PDFファイルの13ページ目)の部分しか見当たらないのでそこを引用するのですが。

『こうした成長力の強化と並んで、財政の持続性確保に向けた取り組みも着実に進めていく必要があります。わが国の政府債務残高は対名目GDP比で200%を超えており、先進国の中で最も高い水準となっています。それにもかかわらず、国債金利が低水準で安定している最も基本的な理由は、わが国には財政健全化に向けて取り組む強い意志があり、したがって日本国債は安全な資産であり続けると、市場が信頼しているためだと考えています。』

・・・・・・うーむ、まあ不規則発言している可能性はあるけどこの文脈で「不可思議」とかなるのかなあ????


JBN 11:23 *山口副総裁:万一の場合も市場安定化期す

テキスト14ページ(PDFファイルの15ページ目)より。

『このほか、欧州債務問題については、その確率が低いとは言え、金融市場が大きく混乱するようなまさかの事態にも備えておかなければならないと申し上げました。この点、日本銀行は、金融システムや決済システム、金融機関経営の状況をしっかりと把握し、政府や各国中央銀行とも緊密に連携をとりつつ、万が一の場合にも金融市場の安定を確保するよう、万全の体制を整えておきたいと考えています。』

どう見ても欧州問題関連です本当にありがとうございました。



JBN 11:23 *山口副総裁:何らかのきっかけで財政の信認一気に崩れる可能性も

テキスト12ページ(PDFファイルの13ページ目)より。

『そうは言っても、国の借金がなお増え続けている現状では、何らかのきっかけで国債市場の信認が一気に崩れるリスクは排除できません。仮にこれが現実のものとなった場合、金融システムや実体経済に大きな影響が及ぶことは、欧州の実例が証明しているとおりです。』

これはまあ一般論的ですわな。


・・・・・・・という事で、まあ最初の「不可思議」が謎なのですが、それはそれとしてヘッドラインで出てくる印象だとまるで日本の長期金利が財政問題で急上昇した場合の市場安定化をきちんと考えていますと山口副総裁が発言したかのようなヘッドラインになっているのは何ですねんという所でございまして、狙ってやってるのかただ単に配慮不足なのか知らんですが、あさいちの朝日新聞記事とも相まって、何かメディア使って国債暴落キャンペーンでも画策してポジションウマーとか言う人でもいるんじゃないかとか邪推したくなる展開ではございました。

ちなみに、これがまたアレな事に英語のヘッドラインだと・・・・・

BN 11:22*BOJ'S YAMAGUCHI SAYS EUROPIAN DEBT CRISIS BIGGEST RISK FOR JAPAN
BN 11:22*YAMAGUCHI:BOJ READY TO TACLE EMERGENCY WITH OTHER CEN BANKS
BN 11:23*YAMAGUCHI CAN'T RULE OUT JAPAN LOSING TRUST OVER DEBT
BN 11:23*BOJ DEPUTY GOVERNOR YAMAGUCHI SPOKE IN TAKAMATSU, WESTERN JAPAN
BN 11:23*YAMAGUCHI SAYS LOST CONFIDENCE WOULD HAVE BIG IMPACT ON JAPAN

という風になっていて、この流れだと普通に欧州債務危機の悪化懸念と、日本の財政健全化の重要性を話しているというように読めるのでありまして、さっきの日本語ヘッドラインと印象が違うのでありまする。

まあ何だ、今朝のモーサテもそうだが、ここへ来て急に「国債暴落ヒャッハー」の煽りネタが出てくるのって何ですねんという所でありますな。まあオモシロ見出しを出して売れれば勝ち的などうでも良い週刊誌などは勝手にしろという感じですけれども、朝日新聞まで煽りだすとかどうなってるんでしょうかねえ。何だかなあという所でありまする。


などと今日はしょうもない雑談ネタになってしまいましたが、何か一生懸命日本国債暴落ネタを煽ろうというような動きがあるのか、単にこの話が最近キャッチ―だからと言ってメディアの皆さん何も考えずにその動きに乗っているだけなのか存じませんけれども、大体からして国債暴落煽って誰得ですねんとか思う(財政健全化の主張をするならまあそれはそれで良いのですが)次第でありまして、もうちょっと後先を考えた報道をして頂きたいとは存じますが、そもそも後先を考えた報道をしていたら詐欺フェストを掲げた政党による政権交代とか(以下悪態なので割愛)。

ということで肝心の山口副総裁講演とか市場雑談とかすっかりスルーして申し訳ないですが時間と量の関係上勘弁。






2012/02/02

お題「積み残しのネタを消化である」

米国PCE物価指数に続き直近のユーロ圏CPIも2%越えでしたが、中日新聞様におかれましては「FRBやECBは躊躇なく金融引き締めを行うべきである」って主張しないんですかぁ??????

○12月会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111221.pdf

・海外経済に対してここでも懸念

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

まずは欧州問題。

『先行きについて、委員は、欧州ソブリン問題を解決するうえで即効薬はなく、市場の緊張状態が長期間続く可能性が高いとの認識を共有した。多くの委員は、年明け後、財政懸念国の国債や欧州金融機関の社債のリファイナンスが本格化することに言及した。また、複数の委員は、来年6月末までに9%の自己資本比率の達成が求められている中で、欧州系金融機関によるドル建て資産を中心とした資産の圧縮の動きが既にみられており、今後、こうした動きが加速し得ることに懸念を示した。』

『この点に関連し、別の複数の委員は、現状は、欧州系金融機関による資産圧縮のペースが緩やかであるため、他の金融機関が何らかのかたちで埋めていくことが可能となっている面があると指摘した。何人かの委員は、新興国では欧州系金融機関のプレゼンスが小さくないだけに、それらの資産圧縮のペースが加速した場合の新興国経済への影響などについては、不確実な面が大きく、注意してみていく必要があると述べた。』

どう見ても悪化懸念ですな。そして海外全体に関して。

『海外の金融経済情勢について、委員は、欧州ソブリン問題を背景とした国際金融資本市場の動揺やそれに伴うコンフィデンスの低下、新興国における既往の金融引き締めの影響などから、減速しているとの認識で一致した。』

『先行きについて、委員は、当面は、欧米を中心に減速が続くものの、その後は、新興国に牽引される形で、成長率は徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

ほほう新興国(棒読み)

『ある委員は、インフレ率が高めの水準で推移しており、今後の政策運営の難度を高める可能性があるという点は、新興国・資源国だけでなく、欧米でも同様であり、留意が必要と指摘した。』

ほほう。で、その先がま〜ああだこうだと続くのですが、欧州に警戒していますという話が続きますのでそこはスルーしまして問題の新興国。

『新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力低下や金融引き締めに加え、欧州経済の減速に伴う輸出減少の影響などから、幾分減速しているとの見方で一致した。欧州ソブリン問題の波及について、複数の委員は、一部の国では、貿易面を通じた影響だけでなく、欧州系金融機関による資産圧縮の動きの影響もみられていると指摘した。』

ということで、これで先行きが回復するんかいなという感じですが・・・・

『そのうえで、委員は、金融・財政面での政策対応余地が小さくないことから、先行き景気の大幅な減速は避けられるとみられるが、物価安定と成長を両立することができるかどうか、引き続き不透明感が高いとの認識を共有した。』

ということで、不透明感が高いのに先行きの世界経済の見通しは「新興国に牽引される形で成長率は徐々に高まっていく」んですね(棒読み)というところでございますが、まあそういう所ですな。


・国内景気の先行きリスク

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、海外金融経済情勢を巡る不確実性がわが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要があるとの見方で一致した。とりわけ、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れ要因となる可能性があるとの認識を共有した。また、来年の早い時期に予定されている財政懸念国の国債や欧州金融機関の社債のリファイナンス本格化や、欧州国債全般を巡る格下げ方向の動きが、国際金融資本市場の緊張感を一段と高める可能性があるとの見方で一致した。』

ふむふむ。

『何人かの委員は、海外経済が一段と下振れた場合には、為替円高と相俟って輸出が基調として減少に転じるとともに、株価の下落やマインドの悪化などから、国内設備投資等の内需も下振れる蓋然性が高まると述べた。国内固有のリスク要因として、何人かの委員は、電力供給の不確実性や復興関連予算の執行の遅れなどを指摘した。』

ということで為替円高キタコレという所でございまするが、リスク認識もこんな感じで先行き見通しが楽観に過ぎないかねという感じはせんでもない。


・基金社債買入札割れの件

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所でおやっと思ったのはこの辺り。

『基金による社債等買入オペレーションにおいて札割れが続いていることについて、複数の委員は、金融緩和が浸透していることの表れであり、引き続き、買入れを続けていくことが、投資家の安心感を通じて、社債の発行環境を良好に保つことにつながるのではないかと指摘した。』

・・・・・・・・・うーむ。

えーっとですな、この理屈って前回の社債やCP買入の時に札割れが起きた時の理屈に似ているのですが、前回のリスク資産買入はリスク性資産の価格が市場の緊張の結果おかしくなっていたので、その正常化をする為に行う(ので市場が正常化すると買入の応札がゼロになるような水準に買入のレートを設定している)という信用緩和の措置だったのでこの理屈で良いと思うのですが、今回の基金買入って「買入額の目途」というのがあった筈ですので、そういう意味からすると「買入残高が積みあがらないのはケシカラン」という話にならないといけないような気も。

ただまあ何ですな、現実問題として社債の買入に関しては札が集まるのかという事もありまして、ここから無理繰り残高増やそうと思ったら買入対象の拡大(銘柄ごとの買入上限を拡大するか対象となる銘柄の信用判定を緩和するか)という話になるという事で、まあそれはプルーデンス的に日銀として受け入れ難いという話だということなんでしょう。その結果として上記のような理屈が繰り出されるという話になるとあたくしは想像(妄想)しましたがどうでしょうかね??

まあもともと包括緩和政策というのは量的緩和と信用緩和のハイブリッド的な部分がありますので、信用緩和政策としての社債買入に関しては金利が低下した事によって目的は達成されており、今後は札割れとかになって残高目途が達成できなくても買入そのものを継続することによって信用緩和政策としての金利低下が具現化できていれば無問題、という理屈であってもまあそれはそれで話の筋は通ります(が、基金買入の残高の進捗状況ガーとかいう人もあちこちにいると思いますので、その対策を考えないとまたペテン呼ばわりされるだけではないかと思います)から、今回こういう理屈を繰り出して来たんでしょう。

ということで、ここの1文のインプリケーションとしては、まだこの指摘が総意という訳では無いものの、社債買入の札割れを受けて対象の緩和が行われるという可能性は惜しくもあまり高くないでしょうな、という事になるんでしょう、と思います。


○バーナンキ記者会見より:次の追加策はバランスシート政策なんでしょうが・・・・・

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf

今日は時間の都合上(単に寝とばしただけ)バーナンキ会見ネタの続きが一発ネタになりやして恐縮ですが。

28ページにこんな質問がありまして。

『Zachary Goldfarb: Thank you, Zachary Goldfarb from the Washington Post, two questions. First, can you clarify whether if actual economic conditions match their projections, that's an acceptable future course or that would require additional easing? And secondly, in the past a number of times you said that even when interest rates are at the zero bound, the Fed can still have a significant impact on influencing economic growth. Do you still believe that the Fed has the capacity to deploy tools that would have a significant impact on bringing down unemployment at a faster pace than we see in these projections if it chose to do so?』

どのような状況になったら追加緩和するのかという話と、追加緩和するにしてもゼロ金利制約があるなかでツールってあるんですかという話を質問していまして、まあこの会見見てて思うのですが、バーナンキ議長が説明したいと思っている事について質問をしていくという感じで中々いい感じなんですよね。

『Chairman Bernanke: On the first question, I--I--you know, this--as was pointed out by Steve, for example, we've had some good data recently. I think there's some uncertainty about where the economy is going and we want to continue to observe how the economy is developing. But I would say that, as I've said on several--in several answers, that if recovery continues to be modest and progress on unemployment very slow and if inflation appears to be likely to be below target for a number of years out so the configuration we're talking about in the projections then I think there would be a very strong case based on our framework for finding different additional tools for expansion--for expansionary policies or to support the economy. So we'll continue to look at the different options and try to decide what might be most effective.』

まあここにもありますように、何回か同じ説明している部分があるのですが、バーナンキ議長はこの時の会見で「物価上昇率の低下傾向が顕著になって、一方で失業率が下がらない状態となった場合には追加緩和も辞さず」という話を強調していまして、まあその辺が今回のFOMC後の「QE3期待」になっていると思われます。

『We are in a difficult situation in terms of effectiveness of policy tools.』

ふむふむ。

『My own view thinking about the effects, for example, of additional purchases, additional securities purchases, I'm--I've been pretty satisfied in the sense that, in the following sense, that purchases do seem to have the desired effects on financial conditions. They tend to ease financial conditions, they tend to lower interest rates, they tend to strengthen asset prices and those are exactly the kinds of things that monetary policy normally does in order to try to provide stableness to the economy.』

資産買入の効果に関しての話をしていますが、ここで「My own view」とか出ていまして、まあ他の所でも散々バーナンキ「委員」の意見をいってるんじゃねえのとか思う節が多々あるバーナンキ先生独演会なのではございますが、追加資産買入の効果の件についての効果の話をするときにわざわざ「私個人の見解」とか言っている辺り、資産買入に関してはどうもコンセンサスがちゃんと出来ていないんじゃないかと思われるのではないかと思ったのですがあたくしの読み過ぎですかね。

『What has been a bit more uncertain is the effectiveness of the transmission mechanism. And we have seen some developments in the economy that have probably weakened the effectiveness of policy including notably the housing sector where one would expect with mortgage rates below 4 percent, one would expect to see more activity than we've been seeing and the problems in housing finance and so on are part of the reason that that--that this expansionary stimulus is not feeding through as much as we would like to the real economy.』

ただまあその一方でモーゲージレートも低下してたり、住宅借入に関する動きはやや活発化しているものの、住宅市場に関しては金融緩和の効果の効きが悪いですなどと仰せのようですので、まあ次の金融緩和はこの辺りかなという風に考えるのが妥当なのですが、先ほどありますように、この部分についての頭に「My own view」とわざわざ断っているのが曲者だと思う(まあ「My own view」が文章のどこまで掛かっているのかという解釈論もあると思いますけれども、あたくしはこの辺までもかかっているんじゃないのと思ってます)のですよね。

つまり、追加緩和でMBS買入なり何なりの住宅お助け策とかが出るのかなという風には思うのですけれども、そのコンセンサス(何をするかという点とか、そもそも実施するのかという点とか)は取れていないのかなという風に感じましたです、はい。

#そもそも今回声明文で「時間軸効果(のようなもの)」を前面に出す形でパラグラフの入替を実施しましたので、そういう意味ではQE3と言っても量を前面に押し出すような買入では無くて信用緩和(=住宅市場お助け)的なものになると思うのですけれども

『I would not say though that our policies are--that we're out of ammunition. No, I think we still have tools but we need to further analyze and study those tools and try to make comparisons in terms of effectiveness, risks, and the likes, so I think we still have a process to figure out what is the most effective approach. Does that--Yeah, okay.』

最後の部分は「私たちは追加緩和のツールを色々と持っている(キリッ)」という話で、「それらのツールの有効性とか副作用とか諸々について現在点検している状況であります(キリッ)」というのが結論ですので、まあ次回に何かの追加策が出るのかという件については中々微妙な所があると思います。

ただまあ(これはまたネタにするときにしますが)バーナンキ議長は引き続きバランスシート政策に関して「バランスシートの量や、内容の構成を変化させることによって緩和的な効果を与える事ができる」というアプローチを引き続き取っていると説明していますので、まあ次回の追加策はバランスシートを何かいじってくる話になる(policy duration effectは今回実施しましたので)という事になるのかなあとは思います。




2012/02/01

お題「FOMCネタはさておきまして日本ネタで」

いやー皆さんもう2月ですよ今年も12分の1終了しちゃいましたよorzorz

○先日の決定会合後の総裁会見は先行きの見方が慎重ですな

次にネタにする12月決定会合議事要旨もそうなのですが、まあ今回も景気の先行き見通しが慎重だなという感じです。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1201a.pdf

・欧州ソブリン問題が最大のリスク要因

まあそらそうだという感じですが、最初の質問が思いっきり「欧州経済のダウンサイドリスクの評価」でありますのでそこに対する答えから。

『欧州ソブリン問題について、最近の情勢をみると、ECBによる大量の資金供給や6か国の中銀によるドル資金供給オペにより、資金市場の緊張は幾分緩和する動きもみられていますが、全体としては不透明感が強い状況が続いています。』

ふむふむ。

『これには、市場の混乱を封じ込めるための資金基盤――最近はよくファイヤーウォール(防火壁)という言葉が使われていますが――の拡充について、具体的な成案が得られていないことが背景となっています。また、各国は財政健全化策を発表しており、ユーロ圏各国の財政規律を強化していく方向性も打ち出されていますが、その具体化にはなお時間を要することもあって、財政の持続可能性について、市場の懸念が払拭されていないことも影響しているとみられます。』

つまり問題は長続きすると。

『こうした欧州ソブリン問題は、既に欧州経済の下押し要因となっていますが、今後の展開次第では欧州経済のさらなる下振れ要因となることも考えられます。』

更なる下振れキタコレ。

『すなわち、各国が、さらなる緊縮財政に迫られ、家計・企業の支出スタンスの慎重化などを通じて景気を下振れさせるリスクがあります。欧州各国の国債を多く保有する欧州の金融機関では、資金調達面での不安などから、資産圧縮――いわゆるデレバレッジング――の動きが強まり、金融面からの下押し圧力が高まるリスクもあります。また、こうした欧州の金融機関のデレバレッジングの影響は、グローバルに波及する可能性もあります。現状、このデレバレッジングは、新興国経済への大きな下押し要因となっているわけではありませんが、特に欧州勢が高いシェアを持つ中東欧向けに加え、アジアなど他の地域向けでも、同じくプレゼンスの大きい貿易金融などの分野において、今後、デレバレッジングによるマイナス面が生じないかどうか、注意してみていく必要があると考えています。』

ということで財政緊縮による景気悪化リスク、金融機関のデレバレッジの影響、およびそのデレバレッジのアジア新興国への波及という話ですな。

『同時に、こうした下振れリスクは、わが国の景気の先行きを見通す上でも、最大のリスク要因となっていることは、かねて申し上げている通りです。わが国経済への波及ルートですが、まず、貿易面を通じた影響があります。わが国の輸出に占めるEU向けの割合は、1割程度とそれ自体としては大きくはありませんが、昨年秋頃からEU向け輸出は減少しています。こうした直接の波及に加えて、EUあるいはユーロ圏との結びつきが強い東アジアに対する日本の輸出も減少しています。』

ほうほう。

『また、為替や株価といった資産価格面を通じた影響もあります。最近では、ユーロが――ごく足許では若干違っていますが――売られやすい中で、為替が円高方向の動きとなっています。現在のように海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい局面においては、円高が日本経済に対してマイナスの影響を及ぼす可能性に十分注意する必要があると考えています。』

円高のマイナス影響キタコレ。

『さらに、金融面を通じた影響にも注意が必要と考えられます。』

日本に??

『もっとも、先程申し上げた通り、わが国では、日本銀行が強力な金融緩和を推進していることや、金融機関のバランスシートの健全性が保たれていることなどを背景に、短期金融市場は極めて安定しています。国債金利に対する社債金利の上乗せ幅――いわゆる信用スプレッド――も低水準で推移しています。このように、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境については緩和の動きが続いています。』

だったら別にその点指摘せんでも良いと思うのですが・・・・・という辺りに関しては次にネタにしますけど、FOMC後のバーナンキ議長の言いたい放題っぽい記者会見での福井俊彦状態のプレゼンと比較して、何かまあ白川総裁って慎重に話をしているように見えてどこかちょっとアレなんですよねえ。

『いずれにせよ、日本銀行としては、今後とも、今申し上げた点を踏まえながら、欧州の動向をしっかり把握しつつ、わが国経済への影響について注意深く点検していきたいと思っています。』

ということで、この引用部分妙に長いと思われますが、何せほぼ2ページ近く分の回答となっておりまして、まあこの部分での答えの長さというのが、白川総裁が強調したい所ですがな、とゆー所なのではないかと思います。


・欧州リスクが拡大したのかどうか

『(問) ヨーロッパの問題が最大のリスクであるということは、前回も今回もそうだと思いますが、そのリスクは、小さくなっていると感じられるか、大きくなっていると感じられるか、ご説明下さい。』

『(答) 金融市場の中で資金市場に限ってみると、前回の記者会見の時と比べて幾分緊張が緩和していることは、先程申し上げた通りです。ただ、そうした望ましい方向への変化が若干はありますが、欧州ソブリン問題の基本的な構図はまだ変わっておらず、不確実性は高い状態が続いていると思っています。昨日もそうでしたが、本日も欧州の財務大臣の会合がありますし、1月末にかけて他にも重要な会議があります。こうした会議も含めて、ユーロ圏において、しっかりとした取組みがなされていくことを強く期待しています。』

結局どっちなのかはスルーしていますが、要するに「不確実性は高い状態が続いている」という話ですから、そーゆー意味では欧州周縁国債券市場の値動きが昨年末の一番アレなリスクオフ状態からはマシになっているというのと比べてはやや警戒的ですよねという所でしょうかな。


・展望レポート中間評価

展望レポート中間評価に絡めて白川さんの見方として景気回復時期が後寄せになったかどうかという質問がありましてその答え。

『まず、最初の回復時期についてですが、私も、また政策委員会のどの委員もそうですが、回復の時期が多少後ずれしたとみています。発表文で書いている通り、今回の中間評価では、回復の時期について2012年度の前半と書いており、そういう意味では若干後ずれしたとみています。ただ、いずれにしても経済の見通しについては、欧州のソブリンリスク問題が典型ですが、不確実性が非常に高いということを意識しながら、注意してみていきたいと思います。』

まあそんな感じで景気の見方については慎重になっていますなあという事ですな。


・米国は偽りの夜明けか?

これは良い質問。

『(問) 米国経済について、本日の公表資料をみると、若干昨今の良い指標を反映した見方になっていると思いますが、先行きについても回復が持続すると期待できるものなのか、偽りの回復なのかも知れないがとりあえず期待しましょうということなのか、先行きについての見方を教えて下さい。(後半部分割愛)』

『(答) まず米国経済ですが、最近、良好な企業収益を背景に設備投資が増加を続けているほか、個人消費についても、自動車販売が増加し、クリスマス商戦が堅調に推移するなど、明るい面もみられています。さらに、雇用環境が緩やかながらも改善していることが後押しして、マインド面をみても、消費者コンフィデンスは昨年夏前の水準を回復するなど、一頃の悲観的な見方は後退しているようです。先行きについては、プラス材料として、緩和的な金融環境が、引き続き景気の回復を後押しすることを挙げることができます。さらに、雇用が緩やかながらも増加を続けていること、インフレ率が低下しつつあることも、所得面から経済を下支えするとみられます。』

ほうほう。

『一方、マイナス材料としては、住宅市場の低迷は続いており、家計のバランスシート調整にはなお時間を要する点が気がかりです。このような状況のもとで、家計の支出スタンスは慎重で、経済の成長ペースは緩やかなものにとどまる可能性があると思います。これまで繰り返し申し上げている通り、米国経済は、リーマンショック後の回復過程で、何回かの楽観と何回かの悲観を繰り返しています。日本のバブル崩壊以降と同じようなことを繰り返してきています。』

キタコレ。

『その背後にはやはり、バランスシート調整の重石が大きいと基本的には思っています。』

どう見ても偽りの夜明けです本当にカムサハムニダ。

『ただ、このところ米国の株価は大きな流れでみると確実に上昇してきており、その背後には企業収益の改善があるわけです。家計におけるバランスシート調整と、企業の相対的な好調をどのように理解するのかということが、大事な点だと思っています。(以下割愛)』

ということで、何か欧州の長々とした説明もそうなのですが、米国に関する話でもここまでああでもないこうでもないと話さなくても良さそうなもんなのですが、大体質問に対する答えが長い時って概ね白川総裁の持論がここぞとばかりドヤ顔(かどうかは知らんが)で展開されるケースというのが多かったりするように思えますので、そーゆー点からすると米国経済にしろ欧州経済にしろ、バランスシート調整にある経済の中で回復には時間が掛かるし、回復しても回復力は強くないでしょと言う話をしたいんでしょうなあというのは把握しました。


・ボルカールールに関して

まあこれはメモ。

『ボルカー・ルールは、米国で活動する銀行グループに対する、短期の自己勘定取引の禁止や、PE(プライベート・エクイティ)ファンド、ヘッジファンドへの投資の禁止、およびこれらに関する法令遵守体制の整備などを求めるものです。本年7月の施行に向けて、現在、米国において市中協議が行われており――この市中協議のコメントは世界中だれでも出せます――、日本銀行は金融庁と連名でコメントを提出したところです。』

『日本銀行として主に懸念している点は、第1に、米国債以外の国債市場の流動性が低下する懸念があることです。ボルカー・ルールでは、米国債などの主要米国債券は規制の対象外とされていますが、これは、まさに、米国当局が、これらの債券にかかるマーケット・メイキングや円滑な市場取引の確保が重要と認識していることが背景にあると思います。』

さいだすな。

『この点、米国債以外の国債取引においても、円滑な市場取引の確保、流動性の確保は重要ですが、日本国債や欧州国債などは規制の対象から除外されていません。わが国においては、国債の取引高の2割程度を米国系金融機関が占める状況であるだけに、このルールが厳格に適用されると、日本国債の市場流動性に相応の影響を及ぼす可能性があると考えています。』

つーか米国に子会社だったり営業拠点のある金融機関もボルカールール適用だったように読んだのですけれども、そうなったら2割程度どころの騒ぎではないような気も。

『第2に、このボルカー・ルールでは、短期の為替スワップ取引が規制の対象になっているため、こうした取引を通じたドル資金の供給が減少し、金融機関のドル資金繰りに影響が及ぶ可能性があります。』

さいですな。

『金融庁と連名で出したレターについてはホームページにも公表していますが、私自身も国際会議の場で問題提起することなどを通じて、米国当局等にこうした懸念を表明しているところです。』

まあ一応メモ代わりに引用しておきました。


・雉も鳴かずば撃たれまい

金融政策的にはインプリケーションとか言う話ではないのですが、今回の会見を見てて思うのは、ちょうどバーナンキ節全開の会見が同時期に出て鑑賞しているせいもありますが)、白川総裁の会見って微妙に自分から地雷を踏みに行っているような気がするのよね。

つまりですな、さっき引用した中であった冒頭の欧州ソブリン問題の波及に関する話でも、特段話をしなくても良さそうな日本の金融への影響というのを発言して否定するというのってどうなのよ(まあ「日本が安定している」と言いたいのでしょうけれども、それなら最初から「日本の金融市場の直接的な影響は軽微と予想され市場は安定しています」だけ話をすれば良いのであって、「注意が必要」とか(白川総裁的には第2の柱アプローチのつもりなのかも知れませんけれども)言わなくてもよさそうな気がしますし、発言の趣旨を踏まえないヘッドラインを打たれるリスクを高めるような気がするんですよね。


とか何とか書きましたが、今回見てて「あちゃー」と思ったのはそこではなくて、最初の決定会合結果説明部分にあります。

『以上の状況は、先般の支店長会議でも確認されたところです。地域によって差はありますが、欧州ソブリン問題の影響などが輸出や生産に及んでいるという声があった一方、個人消費を中心に景気の腰が意外にしっかりしているという見方も少なくありませんでした。この背景としては、震災以降、いったん抑制されていた消費需要がここにきて顕在化しているとか、円高のプラス面が、内需に対して薄く広く及んできている可能性があるとの指摘が聞かれたところです。』

>円高のプラス面が内需に対して薄く広く及んできている可能性
>円高のプラス面が内需に対して薄く広く及んできている可能性
>円高のプラス面が内需に対して薄く広く及んできている可能性

・・・・・・・うーむ、いやまあそういうのは当然ながらあると思うのですけれども、足元で円高の景気に与える悪影響について(さっきの所でもあるように)懸念しているという状況の下でわざわざ言わなくても良い話だと思うのですよね。案の定質疑応答でこういう質問が来るわけで。

『(問) 先程、支店長会議での声を引用される形で、円高差益が薄く広く及んでいる可能性があるという指摘が聞かれたとおっしゃいました。この点について白川総裁ご自身はどのようにお考えなのかをお聞かせ下さい。もうひとつ、ユーロ安・円高が日本経済にマイナスの影響を及ぼす可能性があるので十分注視するとおっしゃいましたが、足許のユーロ安・円高によるマイナスの影響と、支店長会議などで指摘された円高によるメリットのどちらが大きいかも含めてお考えをお聞かせ下さい。』

ってな質問が当然来るわけですし、そらまあ正確を期して全ての話をするという姿勢もそれはそれで大事ですし、本来ならそうであった方が良いとは理念的にはあたくしも賛同する所ではあるのですが、現実問題として考えた場合に、円高の日本経済へのマイナスの影響を懸念していますって話をする中で、わざわざ「円高のメリットがあります」という事を言い出すと、たとえそれが正確な話であっても(というか物事必ずメリットデメリットがありますし、それを一方的に見るのではなくバランスを評価するのが重要というのも判りますけれども)、記者会見のような場所でのプレゼンとして適切なのかどうか(特にバーナンキ記者会見と比較してみると記者のレベルの低さに泣きそうになる(いやまあ日本だって数名ちゃんとした人が居るのは把握していますが)というようなレベルでの場所ですし)という事をもうちょっと考慮に入れた方が良いのではないかと思うのですよね。

つまりですな、バーナンキ議長の記者会見とか見てて(明日以降またネタ出しの所存ですが)まあ何っちゅうか結構インチキ節炸裂してるなあとか思ったりもしますが、少なくとも市場の期待に対して恐らくはバーナンキ議長がこっちに行ってほしいと想定している方向に示唆を与えていて、そーゆー動きを市場にしているという意味では、先になった場合にこの前のFOMCの決定って禍根を残しまくりそうな論点があるものの、少なくとも今は成功している訳でして、まあ逆さ絵おじさんまたはどこぞの俊ちゃんみたいになれとは申しませんけれども、もうちょっとその辺何とかならんもんかなと思うのですよね。

だってさ、この質問とか(するのは当然ですし、ツッコムべき話だと思いますけれども)、明らかに冒頭での説明で藪蛇をかました結果飛んでいる質問な訳でして、んなもんは決定会合議事要旨あたり(つまり直後に記者会見とかないような時に^^)でしらっと言及しておく程度に留めておけば良いのよねえとか思うのですけどねえ。まあ支店長会議ですからさくらレポートの中でしらっと軽く言及しておけばよい(というか確か言及あったでしたっけ)話でしょう。

まあ白川総裁の事ですから、おそらくは単に全ての状況について丁寧に説明しようとした結果として円高のプラス面という所についても言及したという所で、そういう意味では白川総裁が丁寧かつ誠実に対応しているという事なのでしょうけれども、声明文や展望レポートなどで「円高の景気に対する悪影響」って話をする側からわざわざ円高のプラス面とか言われると、白川総裁って実は円高容認なんですかとか思われたり批判されてしまうリスクをわざわざ自分で地雷を盛大に踏みに行っているだけじゃねえのとか思うのですよね。

#まあ蛇足ですが、今回の会見でも「一般論として申し上げると」というのが2か所あったのですが、よほど思い入れでもあるなら仕方ないのかもしれませんが、その手の話も雉も鳴かずば撃たれまいの図になるリスクとなるような気がします


・・・・と、あたくしの悪態が長くなりましたが、一応答えを引用しますね。

『(答) 足許の消費あるいは内需といってもいいと思いますが、支店長会議では、意外に底堅い、という報告があったことを先程紹介しました。これをどのように解釈したらよいかということで色々議論をしているわけですが、なかなか明快な解釈があるわけではありません。先程、円高の影響について申し上げましたが、私は、消費あるいは内需の底堅さの仮説として、3つくらいの理由を想定しています。』

ふーん。

『1つ目は、震災後の広い意味での復旧・復興に伴う需要が顕在化してきているということです。公共投資だけではなく、消費あるいは設備投資の面でもこうした広い意味での復旧・復興関連での支出が増えてきている、これが1つ目の仮説です。』

『2つ目として、理屈の上では、先程申し上げた円高によるメリットが薄く広く拡がっているのではないかということが考えられます。しかし、これはなかなか定量的に証明することは難しいわけです。』

『3つ目は、高齢者層の拡大に伴う販売サイドの色々なビジネス戦略が功を奏して、これが売上げの増加につながっているということです。一応この3つくらいの仮説が考えられると思います。』

ほうほう。

『ユーロ安も含めて円高が経済に対してマイナスの影響を及ぼすのは、これまでも申し上げている通り、収益または企業マインド、あるいは国内から海外への過度な生産拠点の移転等を通じてであり、この点はかねてより意識しているわけです。円高については、時間の経過とともに影響の出方も違ってきますし、従って短期と長期でもその影響は異なってくるわけですが、日本銀行の判断としては、現在の局面では、円高によるマイナスの影響をより注意してみていく必要があると考えていることは従来と変わっていません。』

・・・・・・・・という結論で、別に円高メリットの話にそこまで思い入れがあるようでも無いのでしたらば最初にその話せんでも良かろうとやはり思うのですけれどもねえという気がしますけれどもにゃあ。


○その他日本ネタ積み残し・・・・・決定会合議事要旨とか議事録ネタががががが

時間が無いのでメモだけ置いときます。

・12月決定会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111221.pdf

こちらですけれども、まあ12月会合の議事要旨でも下振れ警戒という話がメインなのですが、社債買入オペの札割れに関する評価の部分にあれ?という感じを受けたのでまあそれをネタにする予定。


・決定会合議事録

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2001/gjrk.htm/
2012年1月31日 日本銀行

本日、以下の資料を公表しました。
金融政策決定会合議事録等(2001年7月〜12月開催分)

ということで、この議事録はネタにするときに一々議事録をタイプ打ちしないといけないという代物(ワードだか何だかで作った議事録そのものズバリの紙ベースの物をスキャンしてPDF化したものです)でして、しかも本物の議事録(って変な表現ですいません)ですので、まあ読むのも読みごたえがあってエネルギー使うのですが、駄文のネタにする時には更にエネルギーが掛かるという代物でありまして、中々アレでございます。つーか前回の量的緩和導入関連とかネタにしてませんもんね(タイプ打ちしんどくてすぐめげる)。

ただまあどこかでネタにしようとは思っていますので一つ宜しゅうに。

関連ニュースとしてはブルームバーグのこの記事がほうほうという所ですな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LYMY7N07SXKX01.html
日銀が外債購入の可能性を模索、財務省と激論に−2001年下期議事録

『1月31日(ブルームバーグ):日本銀行は31日午前、2001年7−12月に開いた金融政策決定会合の模様を記録した議事録を公開した。IT(情報技術)バブル崩壊や不良債権問題、米同時多発テロ事件などさまざま問題が降りかかる中、日銀は量的緩和政策の拡大を余儀なくされたが、その効果に対する懐疑の声が強まると同時に、外債購入案が新たな一手に浮上。難色を示す財務省と激論が交わされた。』(上記URLより)

・・・・・・・・ほほうこれはこれは(^^)。