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2012/04/27

お題「決定会合である」

しかしまあ外野の盛り上がりっぷりを冷ややかに眺める債券市場の中の人っていう図も珍しいちゃあ珍しいですな。

しかしダウ上昇を受けて「FRBの自信ですね」とかいうモーサテの某コメンテーターに聞きたいのだが、じゃあ何でバーナンキはあんなにハト派発言してガイダンス文言は変えてないのでちゅか???

しかもそも次の為替コメントする電話の人が「米国の経済指標でFRBの追加緩和期待が」とか言っててもうお前ら金融政策を自分たちのセールストークに適当に使ってるだけかよと朝からトサカである。

さて、決定会合プレビュー雑談の前に雑談である

○お縄ショック来ねえええええええええええ

お縄先生お縄ならず
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100806-849918/news/20120426-OYT1T00244.htm
陸山会事件、小沢氏に無罪…元秘書との共謀否定

昨日の債券市場ですが、NHKが無罪を報じたのがベンダーに出たのが10時直後だったと記憶しておりますが、その瞬間に債券先物が5銭ほど下がったんですけど後続全くなくて、それどころか現物債が堅調推移していたせいもあってその後は前日比プラスになって上をトライしにいく有様。

小沢無罪→消費税関連法案がマズー→財政懸念で小沢ショック再来ネタはあっさり味で粉砕されてしまいました。つーか1審判決前から小沢ショック再び来るかもねみたいな話をみんなでしていたらそらまあショックは起きんわなという事で、不意打ち食らうからショックが起きるという論点からすれば、昨日の場合はお縄先生がリアルお縄になった場合に債券先物買い攻撃とかが見られたのかもしれませんな。

とは言え、財政再建への不透明感が高まって、その一方で日銀に政治家がゆすりたかりをするという状況が強まると、財政マネタイズとかそっちの連想をだんだんしやすくなってくる訳で、とりあえず昨日の反応は昨日の反応としてまた今後はどうなのよという話でしょうな。


○これバーターにならないと思うのだが

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M30N8F1A1I4H01.html
自民・西村財金部会長:日銀法改正、消費増税と併せ今国会で議論を

まあ個人的には自民党の財金部会は債券市場的観点からすると暴走し過ぎにも程があるので誰かもうちょっと抑えろよと思うのですが、まあひところの河野太郎とかもそうですけど、声が大きくて過激な話をするというのが議論をリードするようになると、そらまあ素人ウケするかもしれないですけれども、リアルビジネスや金融市場などからの評判がどんどん悪化して政権担当能力大丈夫か的な話になるので自民党の事務局もっと頑張れやと思うのですがそれは兎も角。

えーっと、まあなんとなくこの手の話は聞こえていない訳でも無かったのですけれども、消費増税と日銀法改正バーターとかイミワカンネ。つーかどうせ消費増税法案は骨抜きになりそうなのだが、消費増税で増収になってもその一方で日銀法改正してデフレ何とか議連の皆様の仰るような大規模財政マネタイズみたいな事になったら国債管理政策の方が大崩壊してしまうので財務省的にどう見てもマイナスだと思いますけどねえという所でございます。

つーか1年でコロコロ変わる政府と物価変動率に関わるアコードをその度に締結するとか、金融政策の波及に関するタイムラグとか、そもそも中長期的な物価の安定と足元の物価をトラックさせるのは別の部分もあるとか、そういう観点はどうなってますねんという感じではあります。

大体からしてインフレターゲットの本家(?)の英国の場合は、政権が基本的に4年間は続くような制度設計になっていますし、そもそも英国の場合は現実問題として足元の物価数値をターゲットに近づけるようにホイホイと金融政策をいじっている訳では無いですよね(もし厳格なインフレ目標なんだったら総裁の首は何回飛んでいるのかと)という話なんですが、どういう法案になるのか知らんですけど、英国とかで色々とやった挙句にフレキシブルインフレーションターゲットの枠組みに収斂され、まあ日本でもそっちの方になってきましたよねって状況で何でまた時間の針を逆に戻すような話をするのやらという所でございます。

ただまあ毎度のように申し上げたいのは日銀に2%やれやれ言っている皆さんはいざ物価が上昇した時に選挙民の皆さんに「これが正しい姿なのでお前ら文句言うなヴォケ」ときちんとお話しなかったら人間として如何なものかという所ですわな。たぶん今の計測方法のCPIで2%インフレとかになったらメディアが先頭にたってインフレフォビア煽りまくり大会になると思うのですけどね。


○読売新聞なのでバイアスに注意して読む必要はありますが

昨日と今朝のヘッドラインにワロタ

原発再稼働問題に関しては読売新聞は再稼働支持のスタンスな上に、橋下大阪市長に対する報道ヘッドラインの打ち方が基本的に批判スタンスっぽいので、その分は割り引いて読む必要があるというのは注意しましょう。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866922/news/20120426-OYT1T00545.htm
節電に住民支持ない場合は再稼働容認…橋下市長
(2012年4月26日12時35分 読売新聞)

『関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に反対している大阪市の橋下市長は26日、市役所で報道陣に、「原発を再稼働させなくても(今夏の電力需要を)乗り切れるかどうかは関西府県民の努力次第。相当厳しいライフスタイルの変更をお願いすることになる。その負担が受け入れられないなら、再稼働は仕方がない」と述べ、節電策に住民の支持が得られない場合、再稼働を容認する意向を示した。』(上記URLより)

大阪市長の分際で何で「関西府県民」の生活についてああだこうだと言うのか良く判りませんが、良く言えば現実を見据えた発言とも言えますし、悪く言えばお得意の切所で人に責任おっかぶせて逃げる攻撃とも言えますが、ナンジャソラという所でございます。つーか何とか顧問とかの優秀なブレーン(笑)を集めて何の入れ知恵を受けているのやらと。

と思ったらこのニュースクリップしようとして開けたヨミウリオンラインみて更に吹いた。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120427-OYT1T00015.htm
橋下市長「大飯原発の再稼働認なければ増税も」
(2012年4月27日07時13分 読売新聞)

『大阪市の橋下徹市長は26日、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働が認められない場合、代替エネルギー促進などにかかる行政コストの確保のため、「増税も検討しなければいけない」と述べた。橋下氏は関西広域連合の7府県2政令市の首長による委員会で発言し、「もし再稼働を認めなければ(府県民に)応分の負担がある」とし、新たに発生する住民負担分を明示することを提案した。』(上記URLより)

んなもん最初から分かっているから「安全性の確認をしながら再稼働しないと経済が持たないでしょ」という話が出ていたと思うのですが、ギリギリになってこういう話になるというのが橋下クオリティ、というか最近の日本政治というかテレビ政治のクオリティなのではないかとorzになる朝のひとときでございましたとさ。



○はいはい後追い後追い

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M33UUE6KLVR401.html
米S&P:スペイン格付け「BBB+」に下げ−見通しネガティブ

ノーコメントである(−−)


と、雑談大会になってしまいましたが決定会合プレビュー雑談でも。


○正直予想をするのは無駄というか空しいのですが一応

期待が高いのは債券市場以外なんですけどねえと思いながら5兆だ10兆だでそれが多いだの少ないだのお前らバナナの叩き売りかよと他市場の野次馬が言ってるのを見ると大変に遺憾の極みなのですが、まあフィージビリティーというものを考えながら予想らしきものを。

もともとあたしゃ買入期間を半年延長して基金の国債買入残高を10兆増やせばとか申しておりました(展望レポートで再点検したらまだ物価の目途に到達するのに時間が掛かりそうなので買入期間を延長する、という理屈)が、まあ何か事前に色々な話が出てしまってあんまり面白くないので他にどういうのがあるかを考えてみるという話ではございます。

ちょうど25日付で野村證券さんが「為替市場参加者のサーベイ」という何というタイムリーなとサーベイレポートというのを出していて、まあ中身は野村さんにお問い合わせ下さいという所ですが、為替市場などは(ある意味当然だが)年限がどうのこうの的なテクニカルな話には興味が少なくて、特に海外の為替投資家としては買入額と、コミュニケーションポリシーについて興味があるというのは、そらまあFRBがそうやっているからその辺りから考えたくなるからなんだろうなあとか思いましたが、まー拝見するにFRBとの比較みたいなのが意識されやすいんだろうなあというのは把握しました。

正直債券市場的にFRBの比較とか言われても、そもそも市場の構成が違いますし、財政状況にしろ物価状況にしろ違うのですからナンジャソラという(全く意味が無いとは言わないが)所なのですけど、まー何せ非伝統的な政策をある意味非伝統的に効かせる(市場などの期待に働きかける、という意味ではいわゆる金融市場環境からどうのこうのという伝統的波及経路以外のパスを考えないといけないのではないでしょうか、とも思う訳です)という事ですから、正直アホラシイのですけれども、「見せ方」も麿流よりは俊ちゃん流でどうよという感じかなと思いまする。

と、前置きが長くなりましたが、まあとりあえず「基金国債10兆円増額+買入期間半年延長」を本命にはしておくが本命になり過ぎたので逆に無いような気もしている今朝のあたくしなので、まあ何かねえかと妄想する。

・ETFの買入拡大

いやね、あたくし思いまするに、最近の政治方面からの財政マネタイズ圧力(緩和とか言ってるけど日銀法改正を声高に唱えている人って「復興国債を日銀に引き受けさせて復興財源に」とか平気で言う人たちですから、まあ普通に考えてそっちに話がエスカレートするでしょ)を考えると、実はここからは国債買入拡大する方が却ってリスク(財政マネタイズによるインフレは「信認の喪失」によって起きるのだから起きるときは不可逆的な非線形で起きるでしょ、というのは(債券)市場屋さんとしての感覚で、その時は信認の喪失が伴うので必然的にインフレターゲットも信認を失っており、制御には強烈なコストが伴うでしょという話っすな)になるんじゃネーノとか思わんでも無い。まあここで10兆程度ならまだ大丈夫でしょうけど、さすがに無制限無期限っぽくなってくるとマズーなんじゃ無いですかね。

ということでETFなら5000億円でも買入拡大すれば株式市場には良い下支えになりますし、正直この水準から金利ルートに働きかける位だったら上昇余地の大きい(と思うのですがダメかな?)株式市場に開き直って働き掛けた方が買う額少なくても効果は大きいような気がするんですけどね。ついでに言えば「下がったら買う」みたいなしょぼいことしないで完全日割りにするとか、サイコロでも振って買う日を決めるとかした方がより良いような(^^)。

そもそも「包括緩和」は金利ルートと資産市場のリスクプレミアムルートというのがある訳で、最近はすっかりその「金利」というよりは「量」ばっかりがクローズアップされてしまうといういつのまに「量的緩和」になってるんだよという話ですけれども、包括緩和の趣旨を考えますと金利は低位安定している訳ですし
ここからの限界的な金利低下余地を考えると、ETFに突っ込むのも良いのではないかと思う次第。

ただまあETFだけですと、先ほど申し上げております為替屋さんとかの「量がすべて」みたいな観点に合わないので、今回に限定して言えば国債の買入拡大もセットにしておかないといかんのでしょうが。


・その他のリスク資産はどうよ

まずCPについては金利低下が限定的にも程があります(なんせCP金利は0.110%を平気で割るような水準の物がゴロゴロだし、普通でも0.120%までよーアガランチ会長)し、そもそも増やすにも玉がありません。

社債については買う玉が市場にございませんのでこれまた無理、大体からして社債スプレッドだって今さら縮小させてどうするという所。

REITは正直よー判らんのですが、流動性とかからしてどうなんですかねとか思うのですが、おまけにちょろっと買うとかその程度の話になるのでしょうなあ。どうもREITは個人的にはちょっとなあと思う所があるのですが、まあ本論と関係ないから割愛(^^)。

つーことでまあ普通にETFが良いんじゃないですかというか、買うものそれしか無さそうな感じかと思います。あとね、この前お友達と雑談してた時に中々お洒落な論点を出していたお友達がいるんですけど、ETFだったらそれこそ資産バブルが発生した時の出口政策というか引締め策を実施する時にすばらしく強力な玉になるんじゃネーノとかいう話も(まあ真のバブルだと売りを1兆ぶつけても吸収されるかもしれませんが)ってのはまあネタ的でもありますが。


・買入期間は今回延長しないとすると幾ら国債を買えるのか

バナナのたたき売りみたいな話でアレですが(−−)。

買入期間の延長をすると10兆拡大とか見栄えの良い数字が出せるので元々あたくしはその説を出していたのですが、それだと買入ペース自体はそんなに早まらないというのがありますので、じゃあ買入期間を今年の末にしたままで買入ペースをどの程度拡大できるかという話。

現在の基金国債買入が大体年末までに月1.5兆円の買入ペースですが、買入期間をそのままにして買入拡大となると、拡大分がモロに買入ペースに乗って来る形になります。で、切りのいい数字で5兆か10兆かという話になると思うのですが、年末まであと8か月ありますので、5兆円の買入拡大なら5兆円を8で割ると6250億円ですから、まあ大体月に2.1兆円ペースになりますわな。

つまり10兆円の買入拡大となりますと、何と買入ペースが月に2.7兆円とかになってしまいまして、新発2年国債の毎月の発行量まるまる買うというそれはまたアレな図になってしまいます。

でもって買入の玉はあるんかいなという話なのですが・・・・・・

一昨日のオペレーションより

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120425.htm

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120425.htm

という感じで、足元で短国はニーズが多いようで(今週の3MTB入札もまあ普通に確りだし現先のニーズとか強くてレートは低いだよ)しらっと短国の買入は札割れする中でも国債買入の方は貫録の1.8兆円応札となっています。

2年カレントまで0.105%だの0.11%割れだのとかやるような中(新発は発行日が先で日銀に当分打ち込めないので除外してちょ)ですと、最早この辺はカレント近辺を打ち込んでもより短い所を打ち込んでも同じや状態になっていて、それよりもどこかの投資家から売りが出たから受けた玉を日銀に入れるか状態になってますし、金利の絶対水準的に日銀超過準備付利金利水準に低下していれば、ブタ積みに抵抗さえなければ0.105%の2年債をホールドするのと日銀当座預金に入れておくのの差がそれほどないという話になりますので、そういう意味では玉も出易かったりするような。

とか何とか考えますと、まあ5兆円だったら買入期間延長しないでもいけると思いますけどどうでしょうかね。


・購入銘柄の期間をより長くする

まあこれされると債券投資家的には瞬間的には儲かるかも知れないけれども、カーブが潰れて収益機会が無くなる民業圧迫状態で、それでより長い所を買えば金融システムレポートで悪態をつかれるという大変に遺憾な状態でございますので(ニヤニヤ)ご勘弁というのもありますけれども、それ以前の問題として今しがた申し上げましたように、買入期間を延ばさなくても買入拡大は可能である、という話ですし、そもそも3年に延長という声も多いのですけど新発債の出ていないゾーンを買入対象の一番ケツにすると債券市場の需給がそこで歪み易くなるし、買入対象玉がそんなに増える訳でも無いからどうなのかなあとは思います。

5年にするのは理屈的にどうなのよという感じですしねえ。


○で、結局どうよという話だが・・・・・・

まあ何にせよ今回の緩和おかわり(しなかったらそれはそれで凄いが)については「景気判断によるもの」ではなくて「物価安定の目途に向けての決意表明」的なものでございますので、やるやらないという所まではまあ理屈で行けるかもしれませんけど、その先の内容がどうのこうのに関しては正直言ってロジカルに考えてもシャーナイナイという所です。

つまりですな、この前の2月の政策決定とか、もっと昔の話をすれば2009年3月の輪番拡大が市場予想(というか意味不明に事前報道されていた)の月2000億円ではなくて4000億円になった時とか、もっともっと昔の当座預金残高35兆円攻撃とか、まあその手の時のパターンになるのか、それともまあ普通のパターンになるのかというのは結局の所気合の話になって来てしまいますので、こればっかりは麿の頭の中をスコープでのぞかないと判りませんなという所です。








2012/04/26

お題「FOMCである」

お縄先生の判決ですなあワクワクテカテカ。

というのもありますが、寝起きで眠い目をこすりながらFOMCの声明文および経済予想を読んでみる。というか他のネタ悪態を書こうかと思っていたのに甚だ遺憾ながら時間切れでFOMCネタで終了してしまいました(涙)。

#どうでも良いが今朝のニュースで話題になっている新装オープンの商業施設の「渋谷ヒカリエ」が何度聞いても「渋谷ひかり園」に空耳してしまい老人ホームでも開園したのかと思ってしまうのだがorz


○FOMC声明文は景気認識が色々と引き上げられる

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120425a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120313a.htm(前回3月)

・第1パラグラフ

全体認識は変わらずです。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that the economy has been expanding moderately.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that the economy has been expanding moderately.』(前回)

全く同じですな、うんうん。


労働市場、消費支出、企業投資に関しては実質的に差は無いと思われます。

『Labor market conditions have improved in recent months; the unemployment rate has declined but remains elevated. Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(今回)

『Labor market conditions have improved further; the unemployment rate has declined notably in recent months but remains elevated. Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(前回)

微妙に表現が変わっていまして、前回はここまでの回復ペースが速くなっているという事を指摘する表現があったのが、今回はその辺の表現がマイルドになっているので、まあそういう意味では勢いが落ちているといも言えますが、別にペースが遅くなったとかいうような表現も無くて引き続きの改善という話ですので実質的には差が無いとみる方が妥当ではないかと。


住宅セクターに関しては「改善のサイン」を指摘。

『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(今回)
『The housing sector remains depressed.』(前回)

結論は同じですがご覧の通り。


インフレに関しては認識を引き上げキタコレ。

『Inflation has picked up somewhat, mainly reflecting higher prices of crude oil and gasoline. However, longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has been subdued in recent months, although prices of crude oil and gasoline have increased lately. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

長期的なインフレ期待が安定というのは同じ(というかこれがぶれたらエライコッチャ)ですけれども、インフレに関しては要因としてのガソリン価格上昇云々によって「インフレが幾分引き上げられている」という話に。


・第2パラグラフ

最初の文言は当たり前のように同じ。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(前回)

まあこれは良いとして次ですけれども、経済の先行き見通しに関して変化があります。

『The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up gradually. Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate. 』(今回)

『The Committee expects moderate economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)

経済の改善によって失業率は徐々にマンデートに整合的な水準に低下していくと委員会は予想していますというのは同じなのですが、その経路に関して前回よりも今回の表現が強くなっていますな。


国際金融市場に関しては前回の「緊張がやや緩和」が外れています。

『Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. 』(今回)
『Strains in global financial markets have eased, though they continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(前回)

まあこれは前回ギリシャがいったん火消しモードになった一方で今回はスペインに着火モードになっているから違和感ないですな(この前の日銀の認識の方が妙ですな)。


でもってインフレに関して。

『The increase in oil and gasoline prices earlier this year is expected to affect inflation only temporarily, and the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(今回)

『The recent increase in oil and gasoline prices will push up inflation temporarily, but the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(前回)

最終的な結論はこれまた同じなのですが、前段の方でインフレの上昇の話をしたバランスだと思うのですけれども、今回は原油やガソリン価格などの上昇による影響に関して「これらの影響は一時的なものに過ぎない」というのを強調していまして、足元のインフレ上昇に関して「一時的」というアピールをすることによって中長期的なインフレの安定を強調する、という感じになっていますな、うんうん。


・第3パラグラフ以降は見事に同一文言

なので今回分を引用だけしておく(俺様メモなので後日の確認用に引用するだけです)。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy. In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

ガイダンス文言も同じなのですが、この次にネタにするSEPとどう見ても整合性が取れないんですけど・・・・・・・・

『The Committee also decided to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(今回)

で、ワロタのは最終パラグラフまで同一文言で、それはつまり票決内容と反対者の反対理由も前回と同じということですな(^^)。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart; Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who does not anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate through late 2014.』 (今回)


○SEPの政策金利見通しが声明文と整合性が取れていない件について

ということでSEPの表紙部分公表である。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120425.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120125.pdf(前回1月)

Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, April 2012


・景気見通し&ファンチャート

失業率が改善して物価が微妙に引き上げ、一方で実質GDPがやや引き下げという所でしょうか。

まずは1ページ目&2ページ目ですが。

GDPに関しては1月予想対比で今回は手前が若干上がって先行きが若干下がっていますが、これはまあファンチャートの方を前回と比較する(印刷したのを重ねて透かして比較という大変にアナログな原始的手法をとっておりますが^^)と、全体レンジは変化無いのですが、見通しの中心部分が若干下方に寄ったという感じになっています。

失業に関してはこれは手前の予想が明確に改善していて、先行きに関してはそれほどの改善になっていませんが、ファンチャートの方を見ますと、全体レンジも手前の部分の改善が顕著なのと、全体のレンジに関してやや下方に寄っている(ので改善傾向)という所ですな。

物価に関してはそもそもスタートの数字が若干上方シフトしているので比較しにくいのですけれども(ファンチャートベース)、まあファンチャートを見て一番目につくのは予想のレンジが全体的に狭くなっている事です。見通しがだいぶ寄ってきたという話だと思うのですけれどもふーんという感じです。ちなみに中心レンジに関してみると、やや下の広がりが無くなっているという感じかと思います。


・政策金利見通しがどう見てもガイダンス文言と整合性が取れない件について

3ページ目の政策金利見通しですが・・・・・・・

・金融引き締め開始の適切な時期予想

2012年:3名(前回3名)
2013年:3名(前回3名)
2014年:7名(前回5名)
2015年:4名(前回4名)
2016年:0名(前回3名)

2015年以降の引き締め開始の人たちの見通しが手前に寄っておりますがな。


・各年末の適正なFF金利水準

2012年:0.25%が14人というのには変化なし。1%の人が1名1.25%になっている
2013年:0.25%が11人というのには変化なし。引き上げの人たちのレンジがやや上がっている
2014年:0.25%の予想が6名から4名に減っており、1%以下の予想は11名から9名に減っている

ということで、そもそも0.25%の予想をしているのが17人中4人とかどマイナーになっている上に、「1%以下」という水準で分けてみても、1%以下の予想が前回は11対6ですから1%以下という意味で言えば「2014年末の低い金利水準」派の大勝利となっているのですけれども、今回は1%の以下の予想が9対8と僅差にも程がある状態になっておりまして、何がどうなるとガイダンス文言の維持になるのか全くもって意味判らんですなという状態。

ちなみに、ロンガーランの適正なFF金利の水準で3.5%という札が一つ入っているのがナンジャコリャという感じですが、中立金利水準に対する考えに変化があった人もいそうな感じでございますの。


ということで、後はまあ会見の方でも読もうかという所で、おそらく会見のtranscriptの速報版は今週末までには出ると思いますので、それを鑑賞するのがこれまたオモシロスという感じかと思います。おそらく福井俊彦先生の生霊が乗り移って言語明瞭ロジックその場しのぎという逆さ絵オヤジクオリティの炸裂が鑑賞できるのではないかと期待しておりまする(^^)。

会見でSEPとガイダンス文言の整合性の質問はさすがに出たと思うのですが、どういう答えをしたんでしょうかにゃあ(ニヤニヤ)。


#声明文だけならそうでもない(ただし朝の脳味噌起動速度は安定しないのでブレがあります^^)のですが、今日はSEPもあったのでこれで時間一杯でございます、どうもすいません





2012/04/25

お題「BOEの悩み/虫干しネタの消化で」

今月は月中実稼働日が20日なのに期初とかどうみても罰ゲームです本当にありがとうございましたという感じですな。あー忙し。

○BOEのインフレ懸念

ポーゼン大先生が従来より延々と行っていた「追加資産購入提案」を取り下げていたことが判明したという意味でネタ間違いないと思って読んだ4月MPCの議事要旨はこちら。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1204.pdf

・物価の現状に関して

第18パラグラフから始まる『Supply, costs and prices』の辺りから。

『Twelve-month CPI inflation had fallen to 3.4% in February, down from 3.6% in January and its recent peak of 5.2% in September. If anything, the decline in February had been marginally less than the Committee had expected, and seasonally adjusted annualised monthly inflation rates had been somewhat higher than the inflation target.』

『There was a risk that inflation would fall less rapidly in the near term than the Committee had anticipated in its February Inflation Report central projection.』

ということで、物価上昇率の方は上昇が落ち着いてきているには来ているのですけれども、MPCの想定するペースよりもやや遅いという状態になってますな。要因についてはこの辺の話とかっすか。

『UK wholesale gas prices had risen by around 5% since then. This, together with the rise in oil prices since the start of the year, would put upward pressure on retail energy and petrol prices. And the additional increase in duties announced in the Budget would add around 0.1 percentage points to annual inflation from April.』

で、この先も落ち着くペースが遅くなりそうという話が次のパラグラフ。

『Some statistical projections were pointing to a path for CPI inflation in the coming months higher than would be consistent with the Committee’s central path from the February Inflation Report projections.』

ほう。

『But, as with all forecasts, there was a large margin of error around them, and they did not capture all of the forces acting on prices. In practice, the speed and extent of any further fall in inflation would depend on the rate at which external price pressures eased, and how rapidly domestically generated inflation would fall in response to weaker cost and price pressures from a recovery in productivity growth and the margin of spare capacity.』

そして第20パラグラフでは価格転嫁の動きについて触れています。

『Beyond recent rises in oil prices, the impact of external price pressures was difficult to gauge. The contribution of goods prices to twelve-month CPI inflation had fallen back only marginally in February.』

『This was consistent with a greater degree of pass-through into consumer prices from past increases in import prices, or upward pressure on margins from other sources. But it was also consistent with quicker pass-through, which would imply less upward pressure on consumer prices to come from this source further out.』

ほうほう。

でまあその先にもこの物価に関する話が続いていますが、価格転嫁に関しては第23パラグラフで指摘されていますのでそこへ飛んでみます。

『It was also possible that firms would seek to increase their mark-up over labour costs in setting their prices.』

キタコレ。

『The share of profits of private non-financial non-oil companies in GDP was lower than at any time in the previous 25 years. To the extent that demand continued to be slow to recover, firms might seek to restore profit margins only gradually. 』

『Set against that, many firms had either less access to credit or access on more unfavourable terms than was the case before the crisis. This might lead them to be less willing to invest in gaining market share by keeping prices low, as they would have less recourse to external sources of funds should they run into cash-flow difficulties.』

今回長くなるので引用しませんでしたが、この前段の金融環境に関する議論の部分では「銀行の貸出態度に関しては厳しい部分もある」というような指摘がありまして、さてここではどういう話にそれが繋がっているかと言うと「Set against that」以下の所にある指摘でして、クレジットへのアクセスが厳しいので、企業は価格設定行動において価格を下げてシェア拡大を図るインセンティブが下がる(増加運転資金需要が発生するから)事から、それよりも収益マージンを確保してキャッシュフローを確保する行動に向かい、その結果企業の価格転嫁が進むという何か屁理屈のような気もしますが、まあそういう指摘をしていてほほーという感じです。

でね、日本だとそうではなくこういう時に直ぐに値下げ祭りになるのとの違いはどこにあるのかという論点はこのコーナーではスルーされているのですけれども、次の金融政策決定に関する部分において指摘がありますが、まあ要するにインフレ率の数値自体が高止まりの状態が続いているので消費者も価格転嫁を受け入れてしまうという話で、どう見てもホームメードインフレ懸念です本当にありがとうございましたという流れなのは注目すべきことではないかと思います。


・ということで政策決定論議の中が重い

『The immediate policy decision』から。

ちなみに見通しに関してはGDPの見通しを下げて物価の見通しを上げています。第24パラグラフから。

『The current challenges facing the Committee as it sought to set monetary policy in order to meet the inflation target in the medium term had been thrown into sharp relief by the downside news on the near-term path of GDP likely to be published by the ONS and by the upside news on the near-term path for inflation.』

まさにアチャーという感じですが、この先もBOEの苦悩という雰囲気の議論が続きます。第25パラグラフ以降になります。第25パラグラフでは経済見通しに関する話で、まあこら困ったなという感じのようですが引用だけ。

『There had been unexpected falls in the ONS’s measures of output in manufacturing and, in particular, construction. The sharp falls in construction output in December and January were perplexing, and the Committee was minded not to place much weight on them, particularly given that other indicators of construction activity had suggested far more modest declines.』

『The mechanical impact of the drop in construction output, together with the likely subsequent loss of activity around the Jubilee bank holiday, could lead the ONS to report further falls in GDP in both the first and second quarters of this year. But a wide range of survey indicators pointed to a moderate rate of growth in activity in the first half of the year and this was supported by official data on services output. Underlying aggregate activity growth was likely, if anything, to have picked up since the second half of 2011.』

で、物価に関する話が第26パラグラフですが、足元で物価の上昇鈍化が遅れていることそのものは大きな懸念ではないが、またぞろ物価を押し上げる要因が出ている点については足元の物価を強くする話ですなあと。

『Twelve-month CPI inflation had fallen for five successive months, to 3.4% in February from a recent peak of 5.2% in September. This fall had been welcome but had been slightly less than the Committee had expected. That in itself was not a significant cause for concern but, alongside the recent rise in oil and gas prices, as well as the duty changes announced in the Budget, it meant that the path for inflation in the short run was likely to be higher than indicated in the most recent Inflation Report central projections. The speed at which inflation would return towards target could not be judged with any precision and there were risks on both sides.』

で、物価アップサイドリスクに関する第27パラグラフの論点がこれまでの話と一転してかなり重い論点になっているのですよこれが。

『To the upside, the risk was that elevated inflation might be more persistent than the Committee expected and that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question.』

>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 
>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 
>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 

途中の「物価上昇が継続して」云々を割愛してインフレターゲットが云々の文意を取るとこうなる筈ですな。

つまり従来は足元の物価上昇の長期化がインフレ期待を押し上げるリスクというような文脈で足元の物価上昇継続が中長期的な物価に対するアップサイドのリスクとしていたのですが、BOEのインフレーションターゲッティング政策のコミットメントに対する疑問が生じるリスクというマッコウクジラな論点になってきたのが重いということですな。

『This risk arose from both external and domestic sources.』

ホームメイドインフレのリスクもあるとな。

『Further shocks to oil and other commodity prices remained a possibility, and there could be greater external price pressures from other sources, or greater pass-through of these pressures to consumer prices.』

海外要因は商品や原油価格の上昇の価格転嫁によるものということで。

『Domestically, companies could seek to rebuild margins more aggressively than anticipated, perhaps with a view to achieving a target for cash flow in an environment of uncertain credit supply or because the prolonged period of above-target inflation had enabled them to raise their prices more easily.』

この辺がホームメイドインフレのリスクの話ですが、企業が先行きの不透明感やクレジット環境の厳しさを受けてキャッシュフロー確保のためにマージンの引き上げに走り、ホームメイドインフレになるリスクがあるという事ですが、その背景にはインフレターゲットの水準を上回る状態の物価上昇が長期に渡って継続している事から、価格引き上げ行動がしやすくなっているというのがある、とまあそんな話をしております。

『Against that backdrop, it was notable that seasonally adjusted annualised monthly inflation rates were somewhat higher than the inflation target. The large margin of slack in the labour market was restraining the rate of growth of earnings. But given the continuing weakness in productivity growth, it was possible that nominal wages were nonetheless still increasing rapidly enough that unit labour cost growth was consistent with the inflation target.』

労働市場の大きなスラックは賃金上昇を抑制すると思われるのですが、生産性の伸びが弱い中で、ユニットレーバーコストの伸びがインフレーションターゲットと整合的だと名目賃金の上昇に繋がる可能性がある、とまあ判ったような判らんような言い方ですが、あたくしめが解釈するに、要は長期間に渡るやや高めの水準でのインフレが続く中では、経済にスラックがあってもそのスラックは維持されたままで価格設定の上昇と名目賃金の上昇が起きる可能性があるという話で、それってどう見てもホームメイドインフレやんという感じですわな。

つーかそうなった場合って名目賃金が上昇するご身分の方は良いとして、そうじゃない場合には大変な事になりそうですし、そもそも企業だってマージン確保で価格設定行動をしていくのでしょうから、名目の賃金上昇が追いつかない可能性もありますなあとか、まあ色々と思うのですけれども。

まあこれって日本でも物価が継続的に上昇するのが定着した時に起こりそうな論点で、日本でインフレ目標2%がどうのこうのという話をする人たちが実際にCPIが1%位になったら「物価上昇を看過する日銀はケシカラン」とか言い出したらそいつら全員三途の川の中州でバーベキューでもして来やがれと思うのですけどどうでしょうかね(^^)。

#そういう意味では日銀に2%やれいうならもう政治家の責任を明確化する為にも日銀法改正してお前らの責任というのをはっきりさせろと思いますけどね

と、話がそれましたがアップサイドリスクだけ引用するのもの何ですからダウンサイドリスクも。

『To the downside, the risk was that demand would not be strong enough to absorb the considerable margin of spare capacity in the economy. In the near term, it was possible that the ONS would report further contractions in output in the first and second quarters.』

まあこの話は前から出ていて、直近ではややこっちの話の方が優勢っぽかったのですが、今回のMPCMinuteではこの力関係が逆転していますなという印象を与える作り込みになっているかと思います。

『That might further damage household and business confidence, even if the underlying pace of economic expansion were stronger. It was also possible that underlying growth was not as strong as suggested by the business surveys. Further out, it was not easy to assess the speed at which domestic demand growth would return to more normal rates.』

『Although on current plans the pace of the fiscal consolidation was likely to slow, it would still act as a drag on growth for several years. The latest upward pressure on prices was liable to delay the point when real household income would begin to rise again. And, although any desire by households, firms and banks to build up a buffer of savings or to reduce leverage was unlikely to have a permanent effect on the growth rate of activity, it could have a persistent effect whose duration was very difficult to judge.』

ということで、まあ議論が分かれたという話がありまして、最後の票決でポーゼン委員が資産買入拡大提案から降りたというのが示されています。どうでもいいですがせっかくなので第33パラグラフから。

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Adam Posen and Martin Weale) voted in favour of the proposition. One member of the Committee (David Miles) voted against, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £350 billion.』

ということで趣味の引用大会でしたが、BOEはどうも正念場に差し掛かっているようで、あたくし的にはとりあえず他人事モードではありますが(おいおい)生温かく見守って行きたいと思うのでありました。


○げげ時間が無い

ということで、最初のお題でノリノリになって時間が無くなるのが最近の仕様なのですが、明日はFOMCのStatementを起き抜けに読むというアレなイベントが待っておりますので、できるだけ今日片づけておきたいと思っていたネタ少々メモだけ。

・麿講演等

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120419a.pdf
社会、経済、中央銀行

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120420a1.pdf
日米の経済関係:互いに何を学ぶことができるか

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120422a1.pdf
財政の持続可能性

最初のは前半だけネタにして、最後のは上記URLの寄稿文ではなくてダイジェスト版の講演というかスピーチの方をこれまた前半だけネタにしました。

で、この3部作はどれもさすがは麿という内容でございまして、まあこれ自体は大変に読み応えのある話なのですが、一方で足元で行っている金融政策に関しては麿節とは乖離した泥レス状態金融政策という大変に素敵な状態になっているのがこれまたアレなお話ではございます。

まあ何ですな、実にいい話なのですが来年になったらどう見ても麿ご退任でございますので(とか勝手に言ってますけどまあ順当に見たら再任は厳しいでしょうなあ)これらの話はご退任後にして頂いた方がアホアホニュースベンダーによるミスリードヘッドラインを呼び込むことも無いので、もうちょっと自制して頂きたいものだとは思うのですけどねえ。

ただまあ自制しろとか申し上げておりますが、あたくしが外野から勝手に妄想を逞しく致しますと、麿様におかれましては、おそらく国内の事情がアレなので海外でこのような「とりあえず正論」講演をすることによって息抜きをしているんじゃないかとあたくしは勝手に邪推する次第でございまして、まあきっとこういう「まあそれはそれで正論だが今やっている事と話が全然別次元だろ」な話をしないと麿が壊れてしまうんですよきっと。


・西村副総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1204b.pdf

ネタにするの忘れていた訳では無いのですが、この会見は最後のリスク認識に関する部分程度しか読みどころが無いです。ちなみに欧州債務問題の話でして、「基本的な部分ではリスクに変化が無い」という話をしているのがほほうという感じでした。

あとは誰だか知りませんが、やたらめったらクレクレ質問をしている見苦しいのがあったのは見世物としては面白いですけれども、内容的にはしょうもないという感じでした。

ということでFOMCとMPMを前にとりあえずメモ書きだけしました。折角の大型連休(とは言っても金融屋的にはただの3連休と4連休が2週連続で入るだけだが)があるので、気が向いたら追記するかもしれません。というか本当はFOMC前にもうちょっとFED高官の講演などを沢山読みこんで起きたかったのですが(今回のFOMCで何か政策を打ち込まれるとその手前の講演を読んでも時既にお寿司になるリスクがあるので^^)という所ではございまする。

ではまあんなところで♪




2012/04/24

お題「色々な講演とかもありましたのでその辺から少々と関連雑談」

金融政策に関するお告げを毎週のように投入するのは勘弁して頂きたいと思うのですが、まあ今回のブレティンは最初の2行で爆笑してしまったわ。
http://www.musha.co.jp/3833

○何となく雑談

・相場後付雑談等

昨日は債券先物が143円ついてみたり(引けは142円95銭)10年カレントが0.910%ついてみたりとやっておりましたが、後付で言われていた「日銀の追加緩和見通し」にしたってフランス大統領選挙でサルコジ大統領が危なさそうという話にしたって月曜に急に出てきた話でもないのに何でじゃろとゆー感は拭えないのですけれども、まあ相場後付コメントとか見てても妙に強気な話が多かったりしますし、何なんでしょうねえと。

ま〜どちらかと言えば債券市場が1%割れるか割れないかという水準という手の出しにくい所で延々と膠着する間に何となくショートみたいな状態(債券の場合は投資家的に言えば何もしないでいると時間の経過と共に自動的にポジションがショート目になってくるので)になる投資家が増えているとかの状態があって、段々買わないでいるのご勘弁モードになってきて、どこかで買いにいかないといけませんなという雰囲気で我慢できなくなったのでとりあえず言い訳探しということなのでしょうか、わかりません><;

それから昨日から国債決済のT+2化が開始しまして、特段何か起きたというような感じではなさそうですけれども、実際問題としてはその決済が回る明日になったら判りますがなという所でしょう。

ちなみに3か月短国の入札に関しては今月中はまだT+3で行う(つーか短国の入札はスケジュール上T+4の時とかもあるので、そもそもその辺は柔軟にやっているのですけど、特に3か月物以外の場合)ようで、連休の合間に発行償還が来るのを避ける(のと営業日ベースでの償還日程が立て込むのを避けるため)に本日は3か月TBの入札が行われる(発行日は金曜日、当然ながら償還が同様に金曜にある)のですが、こちらは(最近短国入札ネタをすっかりスルーしてますが)何せGCから1年TBまでの金利差がろくすっぽ無いという素敵な市場になっていることもございまして、「0.10%だとニーズがアホほどあり、0.10%を割ると買う人が急に減る」という毎度おなじみの展開が続き、その市況に沿った落札結果になるでしょうなという事で。

これが海外の買いがどかどか来るとかとゆー話になるとまた話が変わってくるのですけれども、現状ではそこまでの話でもなさそうなので、まあ安定推移とゆーかウゴカンチ会長とゆーかという感じでしょうなあ。


・そういや月曜に悪態書かなかったので一応メモ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M2R3NP6KLVR401.html
古川元久経済財政相:日銀は資産購入計画を見直すべきだ−WSJ紙

『4月20日(ブルームバーグ):古川元久経済財政相は日銀が資産購入プログラムを見直すべきだとの見解を明らかにした。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで語った。同相は日銀がデフレとの闘いをより効果的にすべきだと指摘した。WSJによると、同相は日銀がより償還期間の長い国債を購入することが可能だと主張。同相は日銀がその手法や規模を含めて、資産購入プログラムをさまざまな方向で検討すべきだと語った。』(上記URLより)

・・・・・・・・いやあの閣僚が具体的手段について要望するとか何なんでしょうね。で、より長いのを買えは良いんですけど、どうもこの辺の議論でスルーされているのは「出口政策で国債売れるの?」という話なんですよね。まあ米国がそのうち身を切って実行してくれると思うのですけれども、出口政策で長期国債をバカスカ売りますよという話って日本の場合は特に「運用部ショック」というトラウマがあったりしまして、そもそも欧米の百万倍くらい気を遣いながら丁寧にやっている国債発行計画のお蔭もあって順調に国債消化できているんですけど、出口政策で国債売る話になった時にかつてのボルカーショックもビックリとかになった場合、特に日本の場合国債発行計画とか大丈夫かいな的な面がある。とゆー論点がやはり債券市場の人的は気になるんですけどどうなんでしょ。

つーかまあ現役閣僚が具体的手段についてああだこうだ言うとか何だかねえという感じで、夏に向けて電力需給逼迫の問題も出てきて電力会社叩きをしている訳にも行かなくなって来たので次は日銀叩きですかそうですかとか言ってはいけません。


○総裁講演(というかスピーチ)なのですがヘッドライン詐欺のミスリードは如何なものかと

こんなスピーチがありまして
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120422b.htm/
財政の持続可能性の重要性 ― 金融システムと物価の安定の前提条件 ―
フランス銀行「Financial Stability Review」公表イベント(米国ワシントンDC)における白川総裁講演(4月21日)の邦訳

その邦訳の内容がこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120422b.pdf
財政の持続可能性の重要性
―― 金融システムと物価の安定の前提条件 ――

実際は講演だけではなくて寄稿文もあって、そっちの方が非常に読みごたえがあるのですけれども、とりあえずスピーチの方から。

『財政の持続可能性と中央銀行の関係:一般的な整理

中央銀行の使命は通貨の安定を通じて経済の持続的成長に貢献することですが、この目的は物価の安定と金融システムの安定というふたつの側面に分けられます。財政の持続可能性はこのふたつの安定性に根源的に影響する重要な要素です。』

ふむ。

『一般に、財政の持続可能性への信認が喪失し、その回復努力がなされなければ、最終的には、インフレか国債のデフォルトかのどちらかでしか、帳尻が合わなくなります。このため、中央銀行は、物価の安定と金融システムの安定のトレードオフに直面することになると言われます。しかし、両方とも、持続的な経済成長に不可欠な基礎的環境ですので、「トレードオフの中でどちらを選ぶべきか」という問題設定自体、そもそも意味があると思えません。そうしたトレードオフに直面するような事態を初めから回避することが決定的に重要であり、財政の持続可能性は中央銀行が正常に機能するための必要条件だと言えます。以下、この点について少し詳しく述べます。』

現在の日本の政治状況で日銀にせっせと圧力掛けておられる方々が一方で日銀に国債引受を財源にしたいとか言い出したりしている点について盛大にdisっておられます。

『通常、金融市場では、国債は安全資産であるという性格を反映して、大量に取引されると共に、担保としても活用されています。また、金融機関は国債を流動性バッファーや投資ポートフォリオの一部として、保有しています。したがって、国債のデフォルトリスクが増大した場合は、流動性リスクの増大やキャピタル・ロスの増大を通じて、金融システムが不安定化する可能性が高くなります。』

というのは昨日ネタにした金融システムレポートのストレスチェックでも出ている論点となりますけれども、何故かニュースヘッドラインに掛かるとこの意味での金利上昇と景気回復による金利上昇の話がごっちゃになってしまい、その結果として「日銀は景気回復すると金融システムが不安定化するなどと詭弁を弄している」という批判をする人(ちょっと検索を掛けるとそういう言説がホイホイ見つかるのがorzなのですが)が出てくるという件について悪態をついたのは昨日でしたな。

『その際に中央銀行が金融市場や金融システムの安定維持の観点から、「最後の貸し手」として流動性を供給すれば、短期的には有効性を発揮する場合も少なくないと思います。実際、欧州の金融市場では、ECB のLTRO(Longer-Term Refinancing Operations)によって、小康を得ました。このことの意義は大きいと思いますが、同時に、これはあくまでも「時間を買う」政策に過ぎないことも冷静に認識する必要があります。』

この講演ではこの点についての話をさらっと流していますが、寄稿文の方ではもう少し詳しい話をしております。ただECBのケースっていうのはもう一つ重要な論点があって、「最後の貸し手として機能する中央銀行の信用力が、当該政府の信用力と分離されている」という面が効いていたんじゃネーノとか市場の中の人的感覚としては思うのですよ。

つまりですな、一般的に中央銀行が政府に対して最後の貸し手としての機能を果たすって言っても、そもそも政府が飛びそうという状態の時に中央銀行の信用力がそれに対して独立であるとは思えない訳で、最後の貸し手機能というのはやはり効かないんじゃないですかという話です。ちなみに寄稿文の方ではそのような論点について場合分けをしていまして、「政府が実際にはソルベントの場合」には時間を買うことによって市場が安定すれば本来のソルベントな政府を前提にした国債市場価格形成に戻る事ができるが、「そもそも政府がソルベンシーを喪失している場合」には時間を買う事すら出来ない可能性があるし、時間を買っている間にソルベンシーを回復する努力をしないとエライコッチャですがなというような話をこれまたしているのであります。

てな話はスピーチの方ではこうなっています。先ほどの引用部分の続き。

『「時間を買う」ことの意義は、金融市場が不安定化する中で、財政の持続可能性回復に向けた国民の合意形成に必要な時間や財政健全化措置が投資家の信認を得るまでの時間を確保することにあります。』

まあ今あたくしがああだこうだ申し上げた論点ですわな。

『しかし、財政改革へ向けての意志が弱かったり、決定された措置が実効性を欠くものであった場合は、時間を買うことの副作用も大きくなります。すなわち、金融市場の小康が保たれ国債金利が安定することで、事態の深刻さへの危機意識が薄れ、改革へのモメンタムが低下する可能性もあります。』

キタコレ。

『その結果として財政赤字の拡大が続き、金融システム不安が再燃すれば、中央銀行は国債担保の流動性供給、あるいは国債買い入れを通じて、最終的に際限のない流動性供給に追い込まれる可能性があります。それによる膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えにしたがえば制御不能なインフレです。』

『投資家や国民はそうした歴史を知っているために、どこかの時点で、言わば「レジーム」の変化を予想し、国債や通貨への信認が非連続的に変化すると、制御不能なインフレのプロセスが始まります。』

という事で、財政インフレ発生のメカニズムの話をしている訳ですな。


・・・・・・・・さてまあこのスピーチの下になっている寄稿文が更に読むと中々の話ではあるのですけれども、まあこういう話もベンダーのヘッドライン詐欺バイアスに掛かるとこうなる。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83L00O20120422
際限ない国債買い入れ、制御不能なインフレ招く=日銀総裁
2012年 04月 22日 13:05 JST

いやね、記事の方では確かに・・・・・・

『[ワシントン/東京 21日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は21日、訪問中のワシントンでフランス銀行主催のパネルディスカッションの参加し、国債への信認が低下することによる金融システム不安を抑えるため中央銀行が際限のない国債買い入れなどを行えば「制御不能なインフレを招く」と警告、中銀の流動性供給で時間を買える間に財政改革を進める重要性を強調した。』(上記URLより)

という事で、財政インフレの発生に関する話をしているというのが読むと一応理解できるようにはなっていますが、当たり前のように世の中には一定量(というか世の中の多くは)ヘッドラインでの第一印象を受けて反応する人がいる訳でして、そのニュースヘッドラインはどう見ても「現在日銀が行っている国債買入についての話をしている」という風にしか見えませんわな。

で、あたくしも忙中閑ありでネットをこれまた探してみると、この記事のヘッドラインだけ見て「白川総裁は追加緩和に否定的でケシカラン」と噴き上がっている方はウジャウジャいるわけで、まあネットの言説だけじゃなくて市場の人とかでもヘッドラインだけ見て何かコメントするような人もいたりいなかったりというような雰囲気もございますし、そらまあロイターとしてはヘッドラインで読者を大量に釣り上げて記事のヒット件数を稼げば営業上ウマーかもしれませんが、ミスリードなヘッドラインとか、殊更にセンセーショナルなヘッドラインとかを出して営業重視とかベンダーとしての自殺行為じゃねえかと思うのですけどねえ。つーか今すぐそこの窓から飛び降りやがれと思いますけど。

何つーかね、貧すりゃ鈍すとはよく言ったものでして、最近はプロ向けの情報ベンダーが営業重視でヘッドラインをわざとセンセーショナルにしたりミスリードを誘うように発言の前半とか後半とかだけ切ってヘッドラインと打ってみたりというような事をやる傾向が酷くなっているように見えるのですよ。どうも経費削減とかの折でユーザーが情報ベンダー代削減するから売上が減るので売上重視のために営業重視のヘッドラインを打つみたいな流れになっているような話なのですけれども、ヘッドライン詐欺の姿勢はいい加減何とかして欲しい所ではあります。と言ってもネットしてニュースヒット件数とかの数字が出るようになっているので更にその辺に拍車が掛かっているような気がする。


○などと悪態を書いていたら時間が無くなったのですがその他少々メモなど

本当は色々な講演ネタとかもあるのですが時間がねえええええ。


・主要銀行貸出動向アンケート調査

http://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/loos/release/loos1204.pdf

うーむ、貸出態度は緩和傾向にあって、貸出スタンスも積極化している一方で資金需要動向の方は弱まっているとな。これはややアレですなあ。


・山口副総裁講演(メモ)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120419b1.pdf
日本経済の課題と中小企業の挑戦
── 日本商工会議所における講演 ──

時間があったら改めてネタにしますが、時間があれなのでメモだけ。

(1)不確実性に関しては下振れ方向を強調&円高の問題を強調

経済の不確実性の話の部分の締めはこんな感じ。

『このように、経済の先行きに対する不確実性は、現時点の企業の経済活動に多少なりともブレーキをかけることになります。その意味で、中長期的な経済の動向やそれに対する企業の見方は、足もとの景気に投影されます。』

でまあ下振れなのですが、この中では円高の事を強調しているのが目立ちますな。

『先ほど述べた第1の不確実性、すなわち海外経済の動向に関連して、為替市場の動きにも触れておきたいと思います。本年2月以降、相場は幾分円安方向で推移していますが、それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています。これには、リーマン・ショックやその後の欧州債務問題の深刻化などから、グローバルな投資家がリスク回避姿勢を強め、相対的に安全とみられる円などを買い進めてきたことが影響しています。』

>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています
>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています
>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています


『日本銀行では、海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい現在の局面においては、円高が、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じて、日本経済にマイナスの影響を及ぼす可能性に、特に注意が必要であると考えています。』

キタコレ。

『円高には、輸入コストの抑制など、様々なメリットもあります。しかし、円高メリットを期待できるはずの内需関連企業でも、将来の成長の姿がなかなか描けない現状にあっては、そのメリットを活かした前向きなビジネスに踏み出しにくい状態にあるように思います。』

(2)成長の中期的な分析に関しては図表の2がほほーという感じ

図表なので引用できませんが、まあこの図表はなるほどいう感じです。


#ということで、後別件の麿講演とか西村副総裁会見とかあるのと、昨日も申し上げましたが先日のBOEの議事要旨での物価に関する話が中々重い論点な件があるのですが、あたくしもネタ整理が下手くそで毎度積み残しになってどうもすいません





2012/04/23

お題「金融システムレポート関連の雑談をば」

というか、講演やら会見やらと日銀から色々とネタが出ていたのですが金融システムレポート関連でいっぱいになってしまったorzというのが正解です(汗)。

○日銀ネタの前にツッコミどころの多そうなインタビュー記事から

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M2QACL0D9L3501.html
日銀は変化球やめ国債購入の直球投げよ−竹中氏

『4月20日(ブルームバーグ):慶應義塾大学の竹中平蔵教授は、日本銀行はデフレ脱却のため、成長基盤強化の資金供給のようなその場しのぎの「変化球」ではなく、マネー供給の手段である国債の購入という「直球」に徹するべきだとの認識を示した。また、金融の専門家が少ないことなど、政策委員の資質にも問題があると指摘した。19日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。』(上記URLより、以下同様)

とのニュースではあそうですかという感じですが、読んでてツッコミどころが幾つかあったのでまあ突っ込んでみる。成長基盤強化は一応日銀の理屈としては長期的な話なんですが、それがその場しのぎの変化球という批判はまあ考え方の話だからそれはそれでアリだとは思うのですが・・・・・・

まずね、これなんだけど・・・・・・

『2月の決定の2週間前、2003年7−12月の決定会合の議事録が公表された。竹中氏は当時、経済財政政策担当相として会合に出席した。「私はインフレ目標を真剣に考えてほしいと主張したが、支持したのは中原伸之審議委員(当時)だけで、非常に強く反対された。10年前に拒否したものを今やることにどういう正当性があるのか、きちんと説明してもらいたい。それが説明責任だ」と語る。』

えーっと、そもそも10年前にお話をしていたインフレ目標と今世界の中央銀行が標準的に実施している「フレキシブルインフレーションターゲット」は看板こそ「インフレ目標」ですけれどもその政策運営の枠組みって全然違うのですが、それを丸無視してドヤ顔で「インフレ目標を10年前に〜」とか言うのって竹中先生ほどの方ならば判っていない訳が無いと思いますので、どう見ても自分の宣伝でのミスリードです本当にありがとうございましたという感じですがな。

大体からして英国を見れば判るように(ちなみに今日はネタにしている暇が無いと思うのですが、BOEの前回MPCの議事要旨を見ると景気に関してはともかく、インフレに関してはかなり先行きが怪しげになってきているという感じで、BOEの悩みが深くなっているなあという感じなんですけどね)10年前に議論になっていたような厳格な意味でのインフレ目標の設定って意味あるんですかという話ですよね。当時だとインフレ目標をエアコンの自動温度設定みたいな例えで説明するのが良く見られた話(たとえば本石町日記さんの昔のエントリーでこの辺のコメント欄とか→http://hongokucho.exblog.jp/7198751/)でしたが、そう単純なものでは無いというのは今になったら見えてきたと思うのですけどね。

まあそれはそれとしてこの話はどう見てもトートロジーです本当にありがとうございましたというのがありまして・・・・・・

『国債の大量購入、その結果として、日銀のバランスシート拡大がもたらすデメリットについて、竹中氏は「唯一考えられるのは、どこかでデフレからインフレに変わり、ハイパーインフレが起こらないかという、漠然とした不安だ」と指摘。「実はそのために、インフレ目標がある。インフレ目標には上限があるので、インフレが高くなりすぎたら抑えればよい」という。』

この理屈は百万回くらい拝読しているのですが、通常の景気拡大におけるディマンドプルで起きるようなインフレだったらそれはそれで正しいのですが、市場の片隅におります所のワタクシのような者が思いまするに、問題なのは「財政マネタイズ+財政発散による財政インフレ懸念」の方でありますがなと思うのです。特に最近のように財政健全化の取り組みの方はと言えばどこぞに飛んでいきそうな勢いの話が飛び交う(さすがに政府サイドの閣僚レベルでその話が飛び出して居ないのが救いなのですが)中で日銀への緩和圧力は露骨に掛かる(審議委員人事に対して「追加緩和に消極的だからケシカラン」と言って反対するとかそれを金融政策に対する政治圧力と言わずして何を政治圧力というのでしょうかねえ)という状況の中ではその不安が起きる訳ですよ。

でですな、財政マネタイズ+財政発散というような状態で財政インフレ発生という事になった時っていうのは、そもそもが財政や中央銀行に対するコンフィデンスが失われるという事態になっている訳でして、そういう時に「インフレ目標がある(キリッ)」とか言われましても意味の無い話ではないかと思うのですよ。だってそもそもインフレ目標が信用されない事態になった時に何やったら効くんですかという話で、インフレ目標があるからどんどん国債買っても大丈夫とか随分とそらまたトートロジーな話だわと思うのでございますけどね。

『その上で「察するに、日銀は政府を全く信用していないということだ。政府が何をするか分からないので、自分たちのバランスシートを守ろうとしている」と言明。「もし日銀の政策委員が政府を信用できないというのであれば、要請された段階で、私はあなたを信用できないからやらないと、そこで拒否すべきだ」としている。』

まあ何ですな、全く信用していないかどうかは兎も角、中央銀行の独立性云々っていうのは政府が選挙ウケする為に無制限財政マネタイズみたいなのをさせたくなるような事態を排除する為に設定している話なので、この理屈も大概にどうかと思いますけれどもねえ。ただまあ現状の政府自体はそこまで無茶な話をしている訳では無くて、まあ懸念されるのは自民党が政権取ったりした時の話っすけどね。

というような雑談でありましたとさ。まあ審議委員人事に関して言えば、学者先生だけにしてしまうと現在のような非伝統的政策を行うに当たってはオペレーション技術に関する問題というのが色々と重要な論点になりますので、逆に執行部ペースになってしまうのではないかと思いますし、議論の多様性という意味では実業界の人がいた方が執行部ペースにならないのではないか、という風に思うのですけれどもねえ。米国の各地区連銀総裁だって先日ネタにしたNY連銀ダドリー総裁の地域行脚の様子とか見れば判りますようにメインストリートの状況把握とかをする為に時間と手間を掛けているのですからして、別に実業界出身でも良いと思うのですけどねえ。

まあそもそも逆さ絵オヤジが学者出身とは思えない政策ロジックの一貫性無視状態のどこの福井の俊ちゃんだよという状態になっているのですが^^;



○FSRですかそうですか

金融システムレポートキタコレ

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr120419a.htm/(紹介ページ)

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr120419a1.pdf(全文)←重い(4M)ので注意
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr120419a2.pdf(要旨)←これも1Mです

つーことでまあ出ているのですが、これを子細に読んで子細にネタにすると大変なことになりますのでまあ要旨の方を見ながら雑談をば。

要旨の最初のページ(というか最初のページは表紙なので2ページ目ですが)にまずはまとめがあるのですけれども、今回のレポートの本来のポイントは最初の『わが国金融システムの安定性評価』というのに大体尽きますなという感じです。

『・ わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。』

まあそらそうや。

『・ 金融的な不均衡という観点から金融システムの状況を点検すると、期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する指標は観察されない。金融機関が抱えるリスク量は、全体として自己資本対比でみて引き続き減少している。もっとも、わが国の政府債務残高が顕著に累増しているもとで、金融機関が多額の国債を保有していることには留意しておく必要がある。』

「期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する指標は観察されない」というのがまあ当たり前ちゃあ当たり前ですが本来のポイントで、これは金融政策運営における第二の柱の点検に対する日銀執行部のお答えでもある、という話ですわな。


『・ マクロ・ストレス・テストとして一時的な景気後退や国内金利が一律に1%上昇するケースを想定しても、銀行の自己資本基盤が全体として大きく損なわれる事態は回避されると試算される。さらに、より厳しい前提でのストレス・テストの結果を踏まえると、金融システムの安定性を長期的に確保し、円滑な金融仲介活動を維持していくためには、次の点に留意する必要がある。』

という話で、結論としては「とんでもないストレスでも無ければ無問題」という話の筈なのですが、何故かこれが報道ベースになるとこうなります。大体どこのメディアも同じようなトーンなのですが、たとえば日経の記事だとこんな感じ。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819591E3EBE2E3E18DE3EBE2E6E0E2E3E09797E0E2E2E2
金利1%上昇なら銀行6.4兆円損失 日銀が試算
2012/4/19 19:36

でまあこの記事でもそうなのですが、まあ中身を見れば上記のような書き振りもあるのですけれども、「金利が上がると銀行が大損すると日銀が計算している」というようなヘッドラインになってしまうのがメディアクオリティ。

いやね、メディアとしてはヘッドラインがセンセーショナルで記事に注目が集まる方が商売として正しい、というのは判るのですけれども、こうやって数字のインパクトのある所を記事にすることによって今回の金融システムレポートの本来の趣旨と微妙にずれた話の方がクローズアップされるというのも如何なものかという感はせんでもない。

つーのも、まあこの記事のヘッドラインを見て「日銀は金利が上昇すると大変なことになると言っている」⇒「日銀はデフレ脱却すると金融危機になると言っている」というように悪意の脊髄反射をする人たちというのが一定量いる(まあちょっと検索掛けるとホイホイ見つかるのが頭痛いのですが)次第でありまして、それこそデフレ何とか議連の方々とかが本気になってそういうねじ込み方をして来そうなのが最近のクオリティ。

まあそれだけじゃなくて、最近の金融政策動向に関する市場の反応って、それこそ普段金融政策とか真面目に見ている訳でも無さそうな人のが多いのではないかと思われる(というと怒られるかもしれませんけど)株式市場とか為替市場の方々がワッセワッセと動いており、まあそちらの方がインパクトあるというある意味残念な状態になっておりまして、そーゆー方々ってたとえば金曜にネタにした麿講演だって別にいつもの麿クオリティなのですが、ニュースヘッドラインを意識したと思われる今の金融政策運営に関する部分の報道をみて為替市場が反応するとかいうような感じで、まあ「中身見ないでベンダーヘッドラインに反応」という風になっている一方で、ベンダーはベンダーで記事が注目されれば勝ちとばかりに何かキャッチーなヘッドラインを書こうとしているという状態ですので、この手の「見せ方」にも一段の工夫が必要になるのではないかと思われる次第ではございますなとか思うのでした。


・・・・・・と話が逸れましたがさっきの続き。

『・ 銀行の貸出債権の質に目立った改善はみられない。経済が長期間にわたって停滞する場合、銀行の期間収益を上回る信用コストの発生が続く可能性がある。

・ 株価の下落と金利の上昇が同時に発生するなど、内外の金融資本市場に大きなショックが生じると、銀行の有価証券関係損益が大きく悪化する可能性がある。その影響は金融と実体経済の相乗作用の中で増幅され得る。

・ 銀行は概ね十分な量の外貨流動性を保有しているが、複数の外貨調達手段が同時に活用できなくなるような状況では、追加的な資金繰り対応が必要となる可能性もある。』

だそうなのですが、まあ要旨の方から適当に感想および悪態をば。

要旨本文10ページと11ページ(PDFだと11枚目と12枚目です、以下同様)。

『2.わが国の金融システムにおけるリスク(2)信用リスクB:企業向け貸出の採算』

『・ 銀行の貸出金利は低下を続けている。

・ これには、金融緩和のもとで、銀行の資金調達コストが低下していることや、CP・社債市場で良好な発行環境が続いていることが影響している。また、業態を超えた貸出競争が激化していることも、貸出金利低下の一因となっている。

・ 貸出金利の低下は、銀行の貸出採算を一段と悪化させる可能性がある。

・ 2010年度の中小企業向け貸出金利は、低格付先を除くと、採算を確保できる水準に設定されている。ただし、こうした貸出採算の確保は、最近の各種政策措置により信用コストが減少し、採算水準が通常以上に低下している面が大きい。

・ 仮に信用コストが2006年度以降の平均水準まで上昇する場合、貸出金利が変わらなければ、全体で貸出採算の黒字幅が3割程度縮小する計算となる。』


『2.わが国の金融システムにおけるリスク(2)信用リスクC:住宅ローンの採算』

『・ 銀行の住宅ローンの採算も悪化している。

・ 住宅ローン残高の動向をみると、住宅金融支援機構の減少幅が縮小しているほか、インターネット専業銀行が伸びを高めている。

・ 業態を超えた金利競争の激化は、家計の利払い負担の軽減に寄与する一方、銀行の住宅ローンの採算を悪化させている。

・ 先行き、家計の所得環境が一段と悪化する場合には、貸出債権の質が低下し、信用コストの増加につながり得る点に注意を要する。』

ということですが、いやまあ金融システムレポート的には仰る通りではあるのですが、そもそもあんさんらの金融政策ウィングの方が中小企業支援オペ(はもう終了しましたが)やったり、成長基盤強化と称して低利融資をしろと言わんばかりの施策を打ち込んでみたりしてる訳でございますし、最近ではその成長基盤強化も小口向けとかまで作るという念の入れようでございまして、何つーかまあ仰ることは判るのですが、日本銀行全体として見た場合に「で??」という印象を受けるのはまあ毎度のお話でございます。てか金融緩和長期化してるんだから仕方ないじゃん。


でもって要旨本文15ページ。

『2.わが国の金融システムにおけるリスク(3)市場リスクB:銀行の金利リスク』

『・ 銀行の金利リスク量は増加している。

・ 銀行では、預金の流入が続く中、債券投資が増加しており、預証率が上昇している。
・ 大手行は、短中期ゾーン中心の運用を続けており、平均残存年限は2年半ば程度に抑えられている。
・ 地域銀行では、長期ゾーンへの投資額が引き続き大きく、足もとの平均残存年限は4年程度に達している。』

ということでキタコレという感じですが、この辺の背景に関してはFSRの本文の50ページ以降に色々と書いているので読んで味噌という所ではございます。

ただまあそんな事仰いましてもそもそも政府が国債絶賛大発行しておりまして、一方で民間資金需要の方は相変わらずで資金需要のあるのは政府ですがなというような状態になっているのですからそう言われましても困りますがなという話ではあると思うのですけどね。


そしてストレステスト云々の所は要旨本文の17ページ以降にあります。18ページから。

『3.わが国金融システムのリスク耐性(2)金融資本市場の変化に対するリスク耐性@:国内金利の上昇』

はーい。

『・ ストレス・シナリオとして国内金利が一律に1%上昇するケース(パラレルシフト)を想定しても、銀行の自己資本基盤が大きく損なわれる事態は回避される。

・ パラレルシフトの場合、債券時価損失額は、大手行で3.4兆円、地域銀行で3.0兆円となる(2011年12月末時点、期間収益などを勘案しない場合)。

・ また、自己資本比率(Tier I比率)の押し下げ幅は、期間収益や有価証券全体の含み損益なども勘案したベースでみて、大手行で0.3%pt程度、地域銀行で0.4%pt程度となる。もっとも、地域銀行のうち3割以上の銀行でTierI比率の押し下げ幅が1%ptを超える。』

とまあそういう話でして、実際にはこの金利上昇シナリオってどういう置きになっているのという話は(要旨の図を見ると何となくわかりますけど)詳しくはFSR本文の74ページ以降に詳しく書いてあるのでこれまた読んで味噌という感じです。

ちなみにFSR本文75ページ目にはこのような説明があります。

『また、銀行の資金利益も金利上昇に伴い変化する。大手行では変動金利型貸出や満期が短い貸出が多く、金利の上昇が速やかに貸出金利に反映されることから、金利上昇に伴い資金利益は増加しやすい71。一方、地域銀行では満期の長い固定金利型貸出が多く、金利が上昇してもただちに貸出金利の上昇には結びつかない。このため、地域銀行では金利上昇による調達コストの増加に比べて運用収入の増加は小さく、資金利益は減少する。』

ちなみに71というのは脚注でして。

『71 たとえば、パラレルシフトの場合、金利上昇後1 年間の資金利益の増加額はTier I 資本との対比でみて大手行で0.3%となる。一方、地域銀行の資金利益はTier I 資本との対比でみて0.9%の減少となる。』

とのこと。

『金利上昇により資金利益が増加する場合でも、金利上昇後1 年程度では、資金利益の増加額は債券時価損失額と比べて小さい。このため、短期的には金利上昇は銀行のTier I 比率を押し下げる方向に作用する。パラレルシフトの場合、Tier I 比率の押し下げ幅(期間収益勘案後)は、2012 年度上期末時点で、大手行で0.3%pt 程度、地域銀行で0.4%pt 程度となる72。もっとも、地域銀行のうち3割以上の銀行でTier I 比率の押し下げ幅が1%pt を超える(図表V-2-3)。地域銀行は自己資本対比で金利リスク量が大きい分、金利上昇の影響を引き続き受けやすい状況にある。』

『以上のストレス・シナリオでは、金利が1 年かけて上昇することを想定している。もっとも、過去の相場変動をみると、1998 年末の運用部ショック時や2003年夏のVaR ショック時には、国債利回りが突発的に上昇した(図表V-2-4)。また、最近の欧州でみられたように、財政に対する信認が低下すると国債利回りは短期間のうちに大きく上昇する。このように、市場金利は非連続的に大きく上昇する可能性がある点には十分に注意する必要がある。』(以上ここまでFSR本文75ページから76ページより引用)

という事で、まあ実際問題として財政インフレ懸念みたいな話になったら実はその程度では済まないですがなという指摘もあったりするのがチャーミングではございます。


でですな、銀行の株式保有がどうのこうのというのは毎度毎度FSRが出るたびに耳タコのように出てくるネタなのですが、要旨22ページにはこんなのが。

『4.金融機関の経営課題(1)リスク管理の実効性向上』

つーことで。

『・ 金融機関には、引き続き、信用リスクや市場リスクなどに対するリスク管理の実効性を向上させることが求められる。この際、海外経済の動向や国際金融資本市場から波及するリスクや、各種リスクの連関も考慮しながら、統合的にリスク管理を行うことが重要である。

@信用リスク

・ 業況が悪化した企業に対して経営改善支援のための取り組みを強化し、企業再生の実効性を向上させることが必要。
・ 再生可能性の評価に応じ債務者区分や引当の見直しなど、信用リスク管理面の対応を適切に講じることも重要。
・ 海外貸出についても審査体制の整備・強化やモニタリングの向上が求められる。』

というのがあるのですが、詳しくはFSR本文だと82ページ以降にああだこうだと有るのですけれども、そこを見ますとFSR本文の83ページには・・・・・

『まず、国内貸出にかかる信用リスクについては、中小企業は厳しい財務状況に直面しており、銀行の貸出債権の質に大きな改善はみられていない。金融機関は、業況が悪化した企業に対して経営改善支援のための取り組みを強化し、企業再生の実効性を向上させることが必要である。同時に、再生可能性の評価に応じ債務者区分や引当の見直しなど、信用リスク管理面の対応を適切に講じることも重要である。国内貸出の採算が悪化する方向にあることを踏まえると、信用リスクと貸出金利設定のバランスを点検することも重要である。』

とか何とかありまして、そらまあ金融システムレポートとしては正論なのですけれども、「信用リスクと貸出金利設定のバランスを点検することも重要」と言ってる同じ組織の人たちが中小企業貸出支援だの成長基盤強化の小口版を作るとかしている訳でして(以下同文^^)。

ちなみに、話の流れ上スルーしましたが、株式保有云々の話に関してはその部分を切り取って概説している日銀レビューが同時に出ていまして・・・・・・・

わが国銀行の株式保有と貸出・債券との連関リスク
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j06.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j06.pdf(本文)

要旨から引用しますと・・・・・

『わが国銀行の株式保有は、収益を不安定化させる要因となっている。加えて、銀行は特定の取引先に対し、株式保有とともに多額の融資も実行しており、仮にこうした取引先が倒産すると、銀行は貸出と株式の双方から損失を蒙る。さらに、民間部門の資金需要が低迷する中、銀行では国債を中心とした債券保有が増加している。株価と金利は同じ方向に動くことが多いが、株式と債券のヘッジ効果を勘案しても、銀行の株式保有は大きい。また、金融市場におけるショックなどを契機にこうした関係が崩れると、銀行は株式と債券の双方から大きな損失を蒙るおそれがある。したがって、銀行は企業取引上の相対的なメリットを吟味したうえで、計画に沿って着実に株式リスクの削減を進めていくことが重要である。』(上記要旨より)

まあ中身は本文見てちょという感じで、これはこれでFSRの趣旨を踏まえた話としては正しいのですけれども、そういう話を打ち込む側から成長基盤強化の施策の中でこんなのを出しているのは何ですねんという気はする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110614b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における出資等に関する特則」の制定について

まあ日銀の理屈を勝手に想像すると、「成長基盤強化の出資等は良い出資だが、それが過ぎるとリスクの集中化に繋がるから程々にしましょう」という話になるとは思うのですけれども、何かまあ株式保有を減らせと言う話をする別の片手では成長基盤強化で出資等をしましょうというのも何だかなあという風には思うのであります。

ま、FSR書いている人たちが一番そのあたりの悪態を意識しているとは思うのですけれども、政策の整合性ってどうなってますねんという風にFSRが出るたびに書くあたくしもあたくしという所で。

#という辺りで時間が無くなってしまったので他の講演会見ネタは華麗にスルー








2012/04/20

お題「いきなりネタが大量投下されております(−−)が毎度の麿講演を鑑賞」

まあ物理的に何やりますねんと思うのですけれども、為替市場と株式市場が何か良く判ってない中で大騒ぎになるの図で、まあ日銀はこの(金利市場以外の)クレクレをどうコントロールするのかが難しいですなあ。身から出た錆とは言え・・・・・・

最近の債券市場の動きを見てると日米とも金融緩和がどうしたこうしたのネタがプライスアクションにあまり反映されていないように見える次第で、日本は兎も角米国も追加緩和ガーのネタに対して肝心の金利市場が反応しにくくなってきているというのは緩和政策の効きが段々落ちてきているという話なのかなとか思う今日この頃。まあ他の資産市場が反応すれば良いのかね(・・?)

・・・・・何かネタがどかどか投下されておりますので適宜料理しようと思ったのですが、麿講演の鑑賞だけで量も時間も一杯になってしまいましたので、本日は麿講演鑑賞会で勘弁してくんなまし。本当は山口副総裁の講演とか西村副総裁の会見とか、金融システムレポートとかそれに関連した日銀レビューとか、ネタは満載なのでございます。


○ニュースヘッドライン的には台無し講演では無かったですけれどもやっぱり麿節ではないかと

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120419a.pdf
社会、経済、中央銀行
── Foreign Policy Associationにおける講演(ニューヨーク)の邦訳 ──

ニュースヘッドライン的には金融政策に関する話のほんの一部分がネタになって「白川総裁も金融緩和の継続を強調」という風になっておりましたけど、この講演を読みますと話の筋そのものは麿節全開だと思うのです。

ただまあ今回に関して言えば、BISビューちっくな話をあまり強調しなかったこともあってニュースヘッドライン的には隙を出さなかったという所でしょ。

・金融緩和がどうのこうのの部分

ということでその金融緩和云々の部分ですが、折角なのでその前の部分から引用してみます。

『構造政策の必要性に迫られているのは、どの国も同様である。人口一人当たりの実質GDP成長率について、過去10 年間の平均をみると、日本は他の先進国とほぼ同程度、そして、生産年齢人口一人当たりの実質GDP成長率については、日本が最も高い。それににもかかわらず、日本の実質GDP成長率は1990年代以降低下し、過去10 年平均では他の主要国に比べ見劣りする。』

ほう。

『これらの数字が示すように、現在、日本が直面している最も大きな挑戦の1つは、先進国では過去に例を見なかったような人口動態の急激な変化への対応である。日本の場合、成長率の低下にしても財政悪化にしても、相当程度は人口動態の急激な変化への不適合から生じている。そして、これによる潜在成長率の緩やかな低下は将来所得の予想を引き下げ、支出を減少させることを通じて、緩やかなデフレの大きな原因となっている。』

ということで人口動態がどうのこうのの話をしている所なんぞはいつもの麿クオリティである。

『金融政策の効果波及メカニズムは、中央銀行の行動が金融環境に影響する第1段階と、その金融環境が企業や家計の支出行動に影響を与える第2段階とに分けられるが、金融環境という点では、日本は先進国の中で最も緩和的である。それにもかかわらず、日本経済が緩やかなデフレから脱却しない最大の理由は、成長力が徐々に低下していることである。』

最近はこの金融政策の波及効果の2段階論というのが日銀の主な説明の柱になっています。

『日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復帰するためには、成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が不可欠である。このような認識の下、日本銀行は当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく方針である。』

でまあヘッドラインになったのはこの辺ね。


・でもまあそれ以外の話って中々麿節であったりする

まあ麿節麿節とか申してますが、話そのものはまあ正論ちゃあ正論だけどまたそんなに物議を醸すような事を言わんでもという気もするといういつもの話です。で、その話自体は中々のイイハナシダナーではあって鑑賞用としては大変に面白い。

『1. はじめに』から。

『輸送・通信技術の著しい進歩や、その結果生じている国民と経済の相互交流の増加により、世界は実質的に小さくなってきているが、残念ながら、外交政策は、日常生活の忙しさ故に、しばしば後回しにされてしまうテーマである。正に、Foreign Policy Association(FPA)の活動がきわめて有益となる所以である。1918年の創立以来、ほぼ1世紀にわたって、FPAは、グローバルな問題に対する意識を高め、理解を促し、そして学識ある見解を提供するという、触媒としての役割を果たしてきた。それゆえ、心より尊敬する多くの方々が含まれているメダル受賞者の仲間に、今晩私が加えて頂けることは、光栄である。』

ほほう。でまあ今回はグローバル金融危機の話をしますよ云々の部分は引用割愛して。

『繁栄がかなり脆弱であるという点を連想させる一節を、ケインズ卿の「平和の経済的帰結」の中に、見出すことができる。FPAは、ヴェルサイユ条約締結時の米国代表団を率いたウィルソン大統領が提唱した「正しい平和(Just Peace)」を促進するために創設された組織であること、そしてケインズ卿が前述の著作を執筆した背景には、国際社会が全体として、ヴェルサイユ条約の目的の達成に失敗したことがあること、を踏まえると、このケインズ卿の著作を引用することは、今日の場に相応しいように思う。』

『ケインズ卿は、第1次世界大戦前の世界を、ロンドン市民の中流階級が、容易に「電話で、全世界の様々な産物を注文することができ」、「自分の富を世界の好きな場所に投資することができ」、「どの国にも安価で快適な輸送手段を確保できる」という「経済的黄金郷(Economic Eldorado)」ないし「経済的理想郷(Economic Utopia)」と描写している。さらには、このような状況は、「正常で、確実な、一層の改善という方向以外には変化しないもの」と見なされていた。私は、この一節を読む度に、経済的繁栄をもたらすグローバル化の力が大きなものであったこと、また、2度の世界大戦を踏まえると、そうした繁栄の達成は束の間であったこと、そして第1次世界大戦前の状況と今回の世界的な金融危機に至る我々の経験には類似性があることに、いつも驚かされる。』

とまあ中々格調の高そうなお話。


・中央銀行のマクロ経済の安定に対する機能を果たすには独立性が重要という話キタコレ

・・・・ということでお話が始まるのですが、次の小見出しが『2. 中央銀行を巡る過去50年間の経済・社会情勢の変化』でここがもういきなり国内情勢を勘案すると実にこうイイハナシダナーの話ではあるのですが、これを金融政策スタンスが気に食わないから審議委員人事潰すというような事を平気で行うどこぞの政党の財金部会で話をしたら凄い怒号が飛んできそうですなあというような話でございます。ということで引用(^^)。

『現在、中央銀行がマクロ経済の安定に重要な役割を果たす存在であることを疑う人はいないと思う。しかし、第2次世界大戦後の歴史を振り返れば分かるように、中央銀行がそのような存在として認識されるようになったのはそんなに昔のことではない。中央銀行の役割が高まることを可能にした条件として、私は少なくとも次の3つの変化が重要であったと思う。』

『第1は、いささか自明に過ぎると思われるかもしれないが、金融政策が財政政策と明確に分離されたことである。第2次世界大戦中は米国や日本を含め、多くの国で、そもそも自律的な金融政策は存在せず、金融政策は財政政策の僕(しもべ)として、国債発行への協力を強いられていた。戦争終了後も、金融政策は直ちには自由度を回復しなかった。米国において、FRBが長期国債の金利を財務省の定めた上限金利以下に維持するという制約から解放されたのは、財務省とFRBの間でアコードが締結された1951年のことであった。』

つまり財政政策の下僕にしようとしているどこぞの政治家連中をdisってるんですね、わかります。

『第2は、マクロ経済の安定に果たす金融政策の重要性が正しく理解されるようになったことである。1960年代から70年代前半にかけては、今から考えると誤った理解であったが、インフレは成長や雇用を確保するための必要悪のコストと見なされることが多かった。このような理解を背景に、景気の後退や回復に対応して金融緩和や引き締めが裁量的に行われ、実際のインフレ率は、人々の予想インフレ率の上昇とともに徐々に上昇していった。』

ほほう。

『このため、インフレ率の上昇は、景気回復をもたらさないばかりでなく、経済主体の貯蓄投資に関する意志決定を歪めたり、市場の資源配分機能の低下を通じて、経済の低成長をもたらした。いわゆるスタグフレーションである。1960年代から70年代前半にかけての苦い経験を通じて先進国が学んだことは、経済の持続的成長には物価安定が必要であり、金融政策は物価安定を目的に運営されるべきであるということであった。』

まあここは「インフレを否定する白川総裁の考える物価安定ってデフレですね」とか言われそうな文脈だなあと思ってしまいますが、まあ毎度の麿節である。

『第3は、上述の理解に基づき、中央銀行に法的な独立性が与えられるようになったことである。中央銀行が物価安定を追求するためには、短期的な利害から解放され、中長期的な観点から金融政策を運営することが必要となる。これを法律的に担保するのが、中央銀行の独立性である。1980年代には法的な独立性を与えられた中央銀行は限られていたが、1990年代に入り、日本を含め多くの国で中央銀行法が改正され、中央銀行に金融政策運営の独立性が与えられるようになった。』

で、その独立性に逆行する日銀法改正の動きをdisるということですかそうですか。


・インフレターゲット

んでその続き。

『以上述べた3つの変化を背景に、1980年代後半から90年代にかけて、中央銀行の政策運営に関して、新たな制度的枠組みが徐々に確立していった。その柱は、金融政策を遂行する中央銀行に独立性を付与し、物価安定というマンデートの達成を追求するというものである。そして、中央銀行には独立性が付与される代わりに、物価安定というマンデート達成に関するアカウンタビリティーが強く求められることになった。これを最も端的に象徴するのが1980年代後半に始まり90年代以降、採用が広がったインフレーション・ターゲティングの枠組みである。』

ほう。

『ただし、このような新たな枠組みが生まれる中で、中央銀行が伝統的に担うことの多かった金融の規制・監督の体制についても、微妙な変化が生じた。物価の安定と金融システムの安定が別個の目的であると理解されたことや、中央銀行に対する権限の集中を避けるといった理由から、イングランド銀行をはじめ、幾つかの国では、規制監督機能が中央銀行から別の機関に移行され、中央銀行は金融政策に「純化」することになった。』

ふむふむ。

『1990年代以降徐々に確立していった新たな枠組みとその下で、多くの先進国において、高い成長率と物価安定が実現した。「大いなる安定」(Great Moderation)という言葉は当時の良好な経済パフォーマンスを表す言葉として、しばしば用いられた。そして、良好な経済パフォーマンスを実現した立役者の一人として、中央銀行の役割が高く評価された。1990年代から2000年代半ばの金融危機にかけては、多くの中央銀行にとっては、「中央銀行の時代(heyday)」とでも呼ぶべき時期であった。』


・資産バブルの崩壊に関して

でその続き。

『ただし、そのような状況の中にあって、日本は例外であった。正確に言うと、日本はバブル崩壊に伴う経済パフォーマンスの変化を他の先進国に先駆けて経験した。日本は他の先進国同様、第一次石油ショック時には激しいスタグフレーションを経験したが、その後は労使の協力による抑制的な賃金設定や適切な金融政策運営の効果もあって、他の先進国に比べると、経済のパフォーマンスは格段に良好であった。そうした良好なパフォーマンスが最高潮に達したのが1980年代後半のバブル期であった。そして、日本は1990年代以降、このバブルが崩壊し、その後遺症に苦しめられることになる。』

『現在、日本で1990年代以降起きたのと同様の変化が欧米でも生じている。米国で住宅価格の下落が始まったのは2006年のことであるが、それ以降、2007年夏のパリバ・ショック、2008年3月のベア・スターンズ破綻、同年9月のリーマン破綻という形で金融危機が世界的に拡大した。その後、政府・中央銀行の積極的な政策措置の結果、経済は安定を取り戻したが、2010年春頃から、今度は欧州債務問題が波状的に深刻化していった。この結果、現在でも、先進国のGDPの水準は2006年対比で104%の水準であり、2007 年以降の年平均成長率は0.8%に止まっている。』

なるほど。

『一体何が悪かったのであろうか。中央銀行はバブルや危機の再発を防止するために何をすべきだろうか。この点については、危機や危機に至る前の時期の金融政策や金融規制・監督の在り方を巡って、反省が行われている。このテーマについては別の機会に詳細に論じたので、本日は先程述べた中央銀行の政策哲学との関係で、1点だけ指摘することに止めたい3。』

ということで脚注にあるのがこの前のロンドンでの講演とかNYでの講演とかが入っていまして、まあ要するに今回の講演もそういう意味では麿節全開なのですよ。ただまあ講演テキストの方で今回はああだこうだと話をしている訳では無いので、ベンダーヘッドライン的にネタにならないというだけの話なんですな。

まあそういう意味では麿節言いたいことを言って、その一方で台無し講演にならないように講演テキスト自体は工夫した形跡がみられるという事でして、ちったあ学習効果が出たかねという所ではございます。つーかこの講演思いっきり麿節全開なんですが、ニュースベンダーのヘッドラインってまあ正直言って講演の本旨からしたらおまけもおまけな部分でして、そのヘッドラインだけ見て市場が反応とかまあ市場っちゅうのもそんなもんという所ではあるのですよね。

そらまあこの手のテキスト全部読めるかって言ったらあたくしだって全部を完璧に読みこなして居る訳では無いですし、ましてや他国のドキュメント全部とかとても無理無理なので、そらまあベンダーヘッドラインで反応するのもシャーナイナイな部分なんですけどね(^^)。

さてその続き。

『それは、物価安定と金融システム安定は密接に関連しているということである。物価安定の下で低金利の持続予想が強まると、時として、資産価格の上昇やレバレッジの拡大という金融的不均衡が蓄積していく。不均衡はある閾値を超えて拡大すると、金融システムを不安定化させ、ひいては実体経済や物価を不安定にすることになる。その意味で、物価動向と並んで、金融的不均衡にも注意が必要であるし、金融政策運営に当たっては、従来考えられていたよりも長いタイム・ホライズンでの判断が必要となる。それと同時に、中央銀行を金融政策遂行の組織として「純化」することは適当ではなく、規制・監督の分野に関与することの必要性も明らかになった。』

ということで、明らかにいつもの麿節なのですが、まあ今回は「過度な緩和政策の長期化が金融不均衡の拡大を招く」的な言い方をしていなかったので台無し講演にならなかっただけの話で、お話自体はご覧の通りのいつもの麿だったりするのが誠にアレでございます。

まあね、これはこれで正論なのですけれども、それでしたら「今から話をする件は一般論として話をするものであって、現在の日銀の金融政策の枠組みに関連する話をしている訳ではありません」と思いっきり断ってから話をした方が台無し講演にならなくて済むのではないかと思うのですが(断っても台無しになるかも知れんが)どうでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

『そうした将来の政策運営にとっての課題とは別に、もう1つの課題は、現在の政策運営の課題である。中央銀行はこの難しい局面において、どのような政策対応をすべきだろうか。もちろん、具体的な政策措置は国によって異なるが、共通する要素を取り上げながら、この問題を考えてみたい。』

・・・・・・・とか何とか引用しているのですが、気が付けば講演全文引用しそうな勢いになっておりまして誠に遺憾なのですけれども、まあ読むとオモロイと思いますけどね。



・中央銀行役割期待の変化というお題

次の小見出しが『3. 中央銀行を巡る現在の経済・社会情勢』でしてその途中から。

『このような状況の下で、中央銀行が今後の政策を考える上で、以下の3つの社会的潮流を事実として認識する必要がある。』

『第1は、多くの先進国で、中央銀行に対する期待が高まっていることである。このことを最も端的に象徴しているのが、欧州債務問題発生後のECBの政策を巡る議論である。中央銀行の重要かつ伝統的な役割は金融機関に対する「最後の貸し手」であるが、昨年夏以降は、政府に対する「最後の貸し手」という、それまで聞いたこともなかった新たな概念を使って、中央銀行の資金供給の拡大を求める声が強まった。』

クレクレは甘えキタコレ。

『このように中央銀行への期待が高まるに至った最大の理由は、低成長や高失業が長く続いていることである。これに加えて、先進国の財政状況が大きく悪化し、財政政策を発動する余地が限られてきていることが挙げられる。因みに、G7諸国の国債残高の対GDP比率は第2次世界大戦直後の水準に匹敵するまで上昇している。さらに、中央銀行の場合は、機動的に政策決定が出来ることも理由として挙げられるかもしれない。これは、金融市場の求めるスピードと、民主主義プロセスの中で決定される財政政策や構造政策のスピードが大きく違っていることの反映でもある。』

まあ米国金融危機でもこの論点はありましたな。

『現在起きている現象をどのように解釈するにせよ、中央銀行に対する期待が高まる一方で、その期待に見合う成果が実現しないと、最終的には中央銀行に対する国民の信頼は低下することになりかねない。そして、後述するように、そのことは中央銀行の政策運営に対しても影響を与えることになる。』

まあオマエガナーという感じですが。

『中央銀行に関連して現在起きている第2の重要な変化は、金融政策と財政政策の境界線が不明確化しつつあることである。』

というのは良く言われる話ですが、この後の論の進め方を見るとまあ麿はやっぱり麿という話になっているのが麿クオリティなので鑑賞しませう。

『前述のように、現在、中央銀行は非伝統的政策の一環として、長期国債の買入れを大量に増やしたり、リスク資産の買入れを行っている。これらの政策は将来、キャピタル・ロスが発生し、最終的に国庫納付金の減少という形で納税者の負担になる可能性があり、また、ミクロの資源配分に介入しているという点で、準財政政策の領域に近づいている。』

『民主主義社会において、独立した中央銀行が強制通用力のある通貨を無制限に発行できる権限を与えられているのは、中央銀行は財政政策の領域には踏み込まないという理解が共有されていたからである。それにもかかわらず、中央銀行が準財政政策の領域には踏み込むことになると、中央銀行に独立性を付与する正統性が失われ、最終的に中央銀行への信頼は低下することになりかねない。』

準財政政策への領域に踏む込むのは遺憾とな。包括緩和の話はどうしたという感じですが、これが麿の一般論攻撃クオリティである。しかしまあこういう小難しい表現にしているからスルーされているけど、真面目に突っ込むと「じゃあお前が今やっている包括緩和政策とこの話の整合性はどうなっているんだ」という話になる訳で、何かもうちょっと物の言い方を考えた方が良いような気がする、いやまあ言っている事自体は正論も正論ではあるのですけど・・・・・・・・・・

『第3の変化は、上述の2つの変化の系とも言えるが、中央銀行がこれまで採用したことのない異例の政策を展開していることを反映して、中央銀行の望ましい政策のあり方を巡って、意見が大きく分かれるようになっていることである。』

キタコレ。

『前述のECBを巡る政策はその代表例であるが、米国でもインフレへの警戒からFRBの金融緩和に対する強力な反対論が存在する一方、幾分改善したとはいえ、なお高い失業率が続いていることを反映して、エコノミストの間では、さらなる金融緩和を求める意見も聞かれる。日本でも金融緩和政策や財政健全化の進め方について、意見が分かれている。』

日本の説明部分で審議委員人事の話でもすりゃ中々面白いのですがそこは言わない所が微妙に惜しまれる所ではございます(ニヤニヤ)。

ということで一大引用大会になってしまいました。もうちょっとあるのですが時間も量も多過ぎになったのでここで勘弁。






2012/04/19

お題「西村副総裁講演/ちょっとだけ別のメモ」

今月は期初というのもあるけどカレンダーの設定のマジックもあって妙に忙しいですな、うんうん。

○西村副総裁講演である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120418a.pdf
わが国経済のデフレ脱却に向けて

・景気見通しに関して

冒頭は景気見通しとリスク要因の話である。

『まず、海外に目を向けますと、国際金融資本市場では、このところ為替相場や株価が神経質な動きをみせていますが、欧州中央銀行による大量の資金供給やギリシャ支援に一定の進捗がみられたことなどを背景に、金融機関の資金調達環境は落ち着いています。』

えーっと欧州債務問題再引火は・・・・・・・

『しかし、海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していません。米国では、このところ消費や雇用の面で改善の動きがみられていましたが、直近の雇用統計が事前の予想を下回るなど、改善の動きがどんどん強まっていくということにはなっていません。そうしたもとで、わが国の輸出や生産も、これまでのところ横ばい圏内を脱していません。このため、景気全体としてみても、なお横ばい圏内にとどまっています。』

ほう。

『しかし、国内需要では、このところ持ち直しに向かう動きがみられています。設備投資を中心に、東日本大震災からの復旧・復興に向けた動きが出てきているほか、エコカー補助金の再導入や人気新型車の発売など、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、個人消費の底堅さが増しています。生産面でも持ち直しに向かう動きがみられています。先行きは、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、国内でも震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。』

まあ海外頼みという結論は変わらんですな。んでもってリスク要因。

『このような見通しが実現されていくかどうか、点検していく際のチェック・ポイントとなるのが、見通しにおけるリスク要因です。現時点でリスク要因として最も強く意識していることを一言で言えば、世界経済を巡る不確実性です。欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国で物価安定のもとで成長が続くかなど、様々な不確実性がありますが、私は、現在回復が注目を浴びている米国経済について、経済指標の改善の動きが続くのかどうか、注視していく必要があると考えています。』

ということで、欧州債務問題の話よりも米国経済に注目というのがほほうという感じではございますが、この辺の見通しの話は特段弱いという話では無くてまあ普通に金融経済月報やら声明文やらで示されている割と強めっぽいお話と同じような印象を受けましたけれどもどうっすかね。

でまあ米国に関する話についてこんな指摘。

『その背景として、ここでは2点指摘したいと思います。第一に、現在の米国では、「雇用に安心があるグループ」と「雇用に不安があるグループ」との二極化が進んでおり、このところの底堅い指標は、前者が住宅ローン金利低下や株価上昇の恩恵を受けて消費を回復させた面があるという点です。』

『これに対し今回の景気循環における特徴は、後者の「雇用に不安があるグループ」が大きく増加したことであり、回復局面でもそれが目立って減少していません。このことが今後の米国経済の回復の足取りを重くさせる可能性があります。』

『第二に、リーマン・ショックの影響で米国の主要な統計の季節調整方法に歪みが生じていて、冬場から初春にかけての計数が過大評価される一方、夏場にかけての計数が過小評価される可能性があります。これが当てはまる場合、これまでは実態以上に良い指標が出ていたのが、今後は、実態以上に悪い指標が出てくることになり、これが企業・家計そして市場の回復期待を冷やす可能性には注意が必要です。』

まあそんなに変わった話をしている訳では無いが、先行きに関して楽観している訳でもありません、という事のようですな。

『視野を他の国にも広げ、より長い目でみますと、高齢化の進展の下で不況が長引くと、業種間・地域間の人の移動が不活発になるなど、経済の柔軟性が低下することが考えられます。そのため、需要構造の変化に対する供給サイドの円滑な対応が困難になり、結果として成長力が低下してしまう懸念もあります。日本以外でも米国や欧州の先進国で、高齢化に伴って、こうした経済の柔軟性低下が深刻な問題となりつつあります。アジアなどの新興国においても、今後十年以内に高齢化がかなり進むことから、こうした問題にいずれ直面することになりますが、その影響の兆しが足許に現れる可能性も否定できません。』

ほほう。

『このように、わが国経済の先行きには、様々なリスク要因があることを念頭に、経済・物価見通しについて改めて入念な点検を行い、そのうえで、半年に一度公表しています展望レポートとして、今月末にお示ししたいと考えています。』

ということで展望レポートをお楽しみにという話をしてサービスサービス。


・デフレへの対応

『次に、デフレからの脱却について、お話したいと思います。わが国経済がデフレからの脱却に向けてしっかりと歩を進めていくためには、以下の両面での対応が必要であると考えています。』

『第一に、足もとの景気回復に向けての動きを着実に後押しし、経済の活動レベルを引き上げていくことです。国内外に端を発する前向きな動きをしっかりと後押しすることを通じて、需給ギャップの着実な改善を図っていくことが重要です。』

『第二に、わが国経済が直面する長期的・構造的な問題である趨勢的な成長力の低下に関して、取り組みを進めていくことが必要です。高齢化に伴って働き手の数が減少傾向をたどる中で成長力を高めることは、並大抵のことではありません。新たな需要を取り込んでわが国経済の成長力を高めていくために、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して、思い切った取り組みを進めていかなければなりません。』

つーことで、まあ成長力強化の話に力点を置いて結果的に言い訳じみて聞こえてしまうどこぞの麿総裁よりは見せ方工夫してますなという感じがするところは宜しいのではないかと。

ただまあこの先は成長力強化ガーの話になっていまして、まー日銀的には「いやまあ緩和政策はするんですけどそれが中々実体経済に効かないのが困るんですよねえ」という話だとは思いますし、更に勝手にあたくしが脳内補完しますと「いや何でも良いから物価上げろというのであればプリンティングマネーでも財政マネタイズでもすりゃ物価は上がるでしょうけれども、それって国民経済における厚生の向上になるんですか???」という所だとは思うのですがね。



・でまあ今回の講演の見どころは後半ですな

しかしまあ何ですな、この辺の話って2月に出た日銀の政策ロジックを丁寧に読むと自明としか申し上げようがないのですが、その自明の話を捕まえて為替市場が絶賛反応(債券市場はまあ反応したのかしないのか判らない程度の動き)したかのような動きをしているのが実にこうアレでございます。

つまりね、市場との対話という意味で言えば、日銀の政策ロジックを丁寧に解説するにはどういう解説をしたらよいのか、という論点とか、この前の米国での麿のそれは正論だがぶち壊しになるから言うなよというような発言を控えた方が良いんじゃないですかという論点(低金利長期化でバブルがどうのこうのという話では無くて、財政マネタイズするとやばいですよ的な話ならドンドンしても良いと思いますけどね)とか、まあ日銀見物を普段からやっている金利市場には伝わるけれども、一般向けに伝わるのですか、というような部分をもうちょっと日銀も考えないといかんですなあとは昔から言われ続けていますけど、やっぱそうだよねと昨日の市場の反応を見てて思うのでした。

昨日も申し上げましたが、非伝統的金融政策を実施している上に、緩和的な金融環境が実体経済に波及する経路が弱まっている、という認識であったら、緩和的な金融環境を作るだけで良しとはしないで更に工夫しないとねって事でしょうな。

と、しょうもないあたくしの雑感が先に来ましたが、『5.日本銀行は変わったのか?』という小見出しの所から。

『こうした日本銀行による一連の政策対応、とりわけ、2月に行った、政策姿勢の明確化と金融緩和の一段の強化に向けた決定は、事前に予想する向きがみられなかったこともあって、市場参加者に強いインパクトをもって受け止められました。その後の株価の上昇や為替相場の円安方向への動きについては、もちろん、欧州債務問題を巡るリスクの低下や米国経済の改善の動きなど、世界的にやや明るい材料がみられ始めたことが大きく影響していますが、そのことに加えて、日本銀行による政策姿勢の明確化がポジティブ・サプライズとして捉えられたことも、相応に影響していると考えています。』

政策姿勢の「転換」ではなくて「明確化」となという所ですが、西村副総裁がこの先で説明しているので引用するのだ。

『こうした2月の決定を受け、「日本銀行の政策目標、政策運営ロジック、政策スタンスは変わったのか?」と問われる機会が増えています。以下では、幾つかの切り口から、我々の政策運営に関して変わった点と変わっていない点を、私なりに整理してみたいと思います。』

ほうほう。でまずは中長期的な物価安定の目途に関して。

『まず、2月に導入した「中長期的な物価安定の目途」については、日本銀行は、いわゆるインフレーション・ターゲティングの枠組みを遂に導入した、と解説する向きも数多くみられます。この点に関連して、日本銀行が金融政策運営において目指すものは変わったのか、という切り口から整理を試みることとします。』

ちなみに結論は「従来の内容を明確化したんです」という話になりますが(^^)。

『中央銀行として目指すべき「物価の安定」についての日本銀行の基本的な考え方は、以下の三点です。第一に、家計や企業等が物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況が「物価が安定している状態」である。第二に、「物価の安定」は足許の短期の動きで判断されるものではなく、中長期的にみて実現されるよう努めるべきものである。そして第三に、国民の実感に即し、家計が消費する財やサービスを対象とした指標を用いて、具体的な数値で「物価の安定」は表現されるべきである。こうした基本的考え方は、「中長期的な物価安定の目途」の導入以前から対外的にも明らかにしていたものであり、「目途」の導入によって変わった訳ではありません。』

目途導入時の文書にあった話ですにゃ。

『こうした「物価の安定」についての基本的な考え方に基づき、具体的に日本銀行の目指す方向性を示す上で、「目途」の導入以前にお示ししていた「中長期的な物価安定の理解」に替えて今回「目途」を導入した意義は大きいと考えています。』

ほう。

『各政策委員がそれぞれ金融政策を考える際には、拠り所とする日本銀行が目指すべき「物価の安定」についてのそれぞれの考え方があります。従来の「理解」では、各政策委員が中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率を数値で示し、それらを束ねたものを範囲として示していました。物価上昇率が、その範囲から外れていれば、どの政策委員からみても「物価の安定」が実現していないということが明らかになる、というので紛れはないのですが、これでは日本銀行が組織として何を拠り所にしているか分かり難いとの声がありました。また、「理解」という言葉の語感について、日本銀行が「物価の安定」の実現を目指して能動的に行動している感じが伝わり難いといった問題もありました。そうした点を踏まえて、今回、日本銀行が目指すべき「物価の安定」とは何かを組織として決定することにした訳です。名称についても、日本銀行の政策姿勢を明確に伝えるものとして「目途」、英語では「Goal」を選びました。』

『また、「目途」への移行に合わせて、当面の「目途」とより長い目でみた「目途」とを切り分けたことは、重要なポイントであると考えています。』

ほほう。

『このもとで、経済構造の変化など先行きの不確実性が大きい中でも、日本銀行が現時点で目指している物価上昇率を、当面の「目途」としてピンポイントで示しました。他方で、より長い目でみた場合に、成長力強化への取り組みの成果が挙がり、持続的な実質成長率が十分高まっていくなら、持続可能な物価上昇率、ひいては名目成長率も次第に高まっていくと考えられます。そうした長い目でみた可能性を念頭に置き、「中長期的な物価安定の目途」は「2%以下」と幅を持たせ、原則としてほぼ1年ごとにこれを点検していくこととしています。』

判ったような判らんような言い方ですが、要するに「経済が成長軌道に乗ってきたら1%の目途を引き上げます」と受け取って下さいという事ですの。

『以上のような「中長期的な物価安定の目途」の背後にある考え方が正しく共有されていれば、もはや名称を巡る議論は本質的ではなく、また、これを弾力的なインフレ目標と呼んでも、私には違和感はありません。』

つーかフレキシブルターゲットでしょこれ。


2月政策変更のロジックについて。

『次に、2月の金融緩和強化を事前に予想することが難しかったという点についてです。日本銀行では、2006 年3月から、金融政策の運営方針を決定するに際し、2つの「柱」により経済物価情勢を点検してきています。これは、@先行きの経済・物価に関するメイン・シナリオが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているか、新たな枠組みに基づいて言い換えれば、「目途」の達成に向かっているか、という第1の「柱」と、Aそうしたメイン・シナリオに対して、どのようなリスク要因があるか、という第2の「柱」の両面からの点検を踏まえて政策運営を行うという枠組みです。2月の政策変更について、この2つの「柱」に基づく政策運営の枠組みから逸脱しているため予想が難しかった、という解説も見受けられますので、この点をご説明したいと思います。』

ほほう逸脱しないとな。つーことで言い訳コーナーが始まります(^^)。

『2月の決定会合の時点を振り返りますと、国際金融資本市場の緊張の和らぎ、米国経済に関する改善の動き、復興関連需要等による内需の底堅さなど、国内外で前向きの動きがみられていたものの、経済活動の水準から見れば海外経済の減速や円高等もあって日本経済はリーマン・ショックの後の大きな落ち込みからなかなか回復できない厳しい局面が続いていました。同時に、1月会合の議事要旨で明らかにされているように、長引くデフレを巡る議論を進める中で、日本銀行の金融政策運営に関する情報発信が不十分で、その意図が十分に企業・消費者・市場に伝わっていないのではないか、そのために強力な金融緩和の効果が大きく減殺されているのではないか、という認識が政策委員会内で次第に広がっていました。』

はあそうですか(棒読み)。

『更に1月25 日に米国FRBが物価上昇率2%を「longer-run goal(長期的な目標)」としたことで、市場、メディア等の間で中央銀行の物価の安定を目指す姿勢について、改めて関心が高まっていました。』

え、これでしょ??

『つまり「目途」の達成という観点からみて、先行きの経済・物価に関するメイン・シナリオの実現に必要な緩和効果が減殺されているリスクを考えざるを得ない状況になったのです。』

これはこれで理屈は通っているのですが、そうなると「今回の目途導入で緩和的な金融環境が実体経済に波及する経路が強まる」というような話になってしまい、それはそれで日銀のロジック的に微妙な気がするんですけどね。

『そうした状況も踏まえ、「目途」の達成に向けて、経済・物価に関するメイン・シナリオの実現をより確かなものとする観点から、日本銀行の政策意図を一層はっきりと伝える必要性が意識され、また、そのような対応を取らない場合に「目途」の達成の遅れにもつながりかねないことが懸念され、それが2月会合の政策決定につながりました。』

ふーん(棒)

『そして意図を明確にするために、資産買入等の基金の思い切った増額も行いました。これは、この時期見られた前向きの動きを金融面から強力に後押しする形になると考えられ、目に見える金融緩和の効果が期待できると考えたわけです。』

ふーん(棒)

『従って、「理解」から「目途」に替わったことで、2つの「柱」による政策運営まで変更された訳ではありません。今まで日本銀行の政策意図に関する情報発信が不十分であったため、日本銀行の政策意図が十分に伝わっていなかったことが、結果的にサプライズに繋がった一因であるように思われます。「目途」の導入は、まさにこの情報発信の問題を是正しようとすることが目的であった訳です。この点、十分な情報発信を目指して、今後とも工夫を続けていきたいと考えています。』

結局第一の柱なのか第二の柱なのかが良く判らんままの説明であったりしますが、第一の柱という事か??どうも丸め込んでいる感がありますな。


・追加緩和の可能性とかいう小見出しは中々

『当面の政策運営において、追加緩和の可能性は高まったのか?』というお洒落な小見出しが(^^)。

『次に、結局のところ、日本銀行の緩和姿勢は強まったのか、今後の追加緩和の可能性は高まったのか、という難しい問いに対して、なるべく分かりやすくお答えしたいと思います。』

キタコレ。

『既に述べましたように、「目途」と2つの「柱」に基づく我々の政策運営に変化はありません。繰り返しをお許し頂いてもう一度申し上げれば、現在の金融政策の運営方針は、「消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」というものです。この表現は、2月の金融政策決定会合の議事要旨にも記述されているとおり、「日本銀行として、今後も必要に応じて追加的な手段を講じていく姿勢にあること」を表しています。』

まあ正直この声明文とかを見ればこの話って自明としか言いようがないのですけれども、麿の台無し講演とか(そういやまた米国出張するようですが、海外に行くと急に発言が麿節全開になる麿の口に誰か鍵を掛けておいた方が良いのではないでしょうか)で対話がややこしくなっている(金利系の人たちは「ああまた麿か」というような反応だったと思うのですが、やはり普段から金融政策見てる訳では無くて、急に金融政策ネタをメインテーマにした他市場的にはややこしくなる、という事でしょうな)のでこの説明はまあ時宜得てるんじゃないですか。

『こうした我々自身のデフレ脱却に向けた断固たる姿勢の明確化が、これまでよりもしっかりと金融市場に浸透してきており、それが一部では日本銀行は変わったとの印象を持たれているのではないかと考えています。』

でまあ金融政策オタクでも無い限りベンダーヘッドラインがこの部分までをネタにして打ち込まれてそこしか見ないので、まあそーゆー点では今回の講演は狙い通りという感じですかね。実際はこの後にこんなのが続く。

『実際の政策判断は、あくまでも「目途」に照らして経済物価見通しやリスク要因を点検した結果に依存し、政策効果についての判断も重要です。金融政策の効果がいつ出るかには不確実性が大きく、しばしば(時には長い)可変なラグがあると言われますが、この性質は最近のような非伝統的な金融政策でも変わりません。』

『この点、先ほども申し上げたとおり日本経済の現状は、前向きの動きがみえてきたとは言え、世界経済を中心に不確実性は依然として大きいと考えています。また、2月と3月の政策変更が、経済・物価に関する人々の中長期的な期待にどのような影響が及ぶのかについても、無視できない不確実性があります。今後、こうしたリスク要因を十分に考慮に入れながら、しっかりと先行きの経済物価動向を点検し、適切な政策運営に努めて参りたいと思います。』

ということで。


○時間が無くなったのでその他世間話

・英国の追加資産購入拡大をポーゼンさんが取り下げたとな

Minutes of the Monetary Policy Committee Meeting held on 4 & 5 April 2012
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2012/mpc1204.aspx(結論だけ)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1204.pdf(議事要旨本文)

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Adam Posen and Martin Weale) voted in favour of the proposition. One member of the Committee (David Miles) voted against, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £350 billion.』

・・・・・・・・・・追加資産購入拡大を提案し続けていたアダム・ポーゼン委員じゃなくて今回の追加資産購入拡大提案はマイルズ委員だったとはほほうという感じですが、議事要旨はこれから読む。


・三重野元総裁ご逝去

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120418a.htm/
三重野 康 元日本銀行総裁の逝去について

まあ平成の鬼平と言われてバブル退治に活躍したらバブル退治どころか日本経済も退治してしまいましたねえというような話で、実にタイミングが悪い時に鬼平タイプが就任しましたねえとか言うような感想で片付けてしまうのはちょっとアレ。

金貸しの手先をちょっとだけやっていた実感からすると、金利少々引き上げた位でそう簡単に投機熱って収まらないのでございまして、要はそこに対してホイホイとファンディングが付くような状態であれば投機資金って絶賛投入されるという風に思う次第で、もちろん利上げも効いているとは思いますが、それよりも総量規制とか3業種への貸出枠規制とかの方が「こうかはばつぐんだ」状態だったような気もします。その辺の規制関連は大蔵省と日銀の両方がやっていた話ですし、利上げどうのこうのよりもプルーデンス政策のウィングが効いていたって気もするのですが、別に根拠のある話では無いのでそう自信満々にいうことでもありません(汗)。

大体からして当時は「バブル退治は正義」という風潮だった訳でして、その辺りの反省とかそもそも何でバブルになりましたねんというような反省とか、まあそっちの方の話をしないで日銀ガーの一方でFRBは偉大とかいう話をしてもしょーもないですなとか思うのでありました。

じゃあお前は何をどう分析するのかと言われますと能無しなのでどうもすいませんとしか言いようが無いのが残念な所ですが(自爆)。





2012/04/18

お題「本職の説明でこれは無いわ/『金融市場インフラのための原則』の公表についてのメモ」

どうも最近悪態成分が高まって遺憾でございますな。

○本職がこれはマズイだろと思うインフレ目標解説

こんなのがありましてですな。

http://mainichi.jp/feature/news/20120413org00m020018000c.html
エコ・ピックアップ:日銀と円安 似て非なる「インフレ目標政策」
2012年04月16日

『◇金融政策の力を信じるFRBと及び腰で被害者意識強い日銀
 ◇安達誠司(あだち・せいじ=ドイツ証券シニアエコノミスト)』
(以下上記URLおよび4ページ組になっているのでその先の記事から引用となります)

・まあ単純化し過ぎのレッテル貼りというのはスルーしますが

日銀はFRBやECBと違って株式ETFは買うわREITは買うわ社債は買うわCPは買うわとゆーよーに信用緩和という面で言えば随分と積極的な面もあるので、「及び腰」というのは必ずしも当てはまらないとは思いますけれども、まあこれは日銀の「見せ方」というか麿が海外に出掛けちゃあ一々台無し講演をしてみたり「一般的に申し上げれば」攻撃で台無し発言をしたりするというのがあるから、まあ及び腰と批判されても半分以上は文句言えない面があるでしょうなと思います。本当はその辺に関しての解説をするのが本職の何とかストのお仕事とは思いますけどね。

んでもって金融政策の力を云々というのは、日銀の説明的に言えば「日本の場合は成長期待がすっかり弱まっている為、緩和的な金融環境を作っても中々実体経済に向かってくれない(だから成長基盤強化策を同時に行っている)」という話であって、別に金融政策が全く効かないと言っている訳ではなく、金融緩和によって作り出す緩和的な金融環境が実体経済に波及する経路が弱いのが問題(米国はまだそんなことにはなっていない)というお話で、その辺をもっと丁寧に解説するのがおまいらの仕事(なお一応付け加えるとその説明は3ページの部分でしているのだが、「日銀の被害者意識」という話になっています)で、単純にレッテル貼りするならアジビラというか産経電波浴レベルだろうとこれまた思うのですけれども、まあ日銀的説明も言い訳に聞こえると言ってしまえばそうでしょうなあと言う事でこの辺りはスルーである(してないけど^^)。


・FRBが目標達成の時間的経路を明示化とな????

『◇「目途」が持つ意味

 FRBと日銀が採用するインフレ目標政策(インフレターゲティング)はその運営、政策哲学という観点からみて「似て非なるもの」であると考える。そもそも、インフレ目標政策とは、中央銀行が誘導すべき最適なインフレ率の水準を、「目標値(objective)」として明示するだけではなく、その目標値の実現に「コミット(約束)」する必要がある。』

まあ最近のフレキシブルターゲットの流れではコミットメントという話は無いですけどねえと思うのですがさて・・・・・・

次のページになりますが(一応URL付けとくわ)・・・・・・
http://mainichi.jp/feature/news/20120413org00m020018000c2.html

『FRBのバーナンキ議長はインフレ目標政策の発表に際し、インフレ率2%という数字がFRBが金融政策の遂行によって特定することが可能な「長期的な目標値」であることを明確にアナウンスし、その目標に到達するまでの時間的な経路をも明示化した。』

えーっと、確かに物価に関しては長期的に決められますという話をしていましたが、時間的な経路の明示化ってしてましたっけ?????

『「異常な低金利局面が14年終盤まで正当化される可能性が高い」「資産売却(という出口戦略)は15年からになりそうだ」などの発言がそれだ。』

????????????

・・・・・えーっと、それは「目標に達するまでの時間的経路」じゃなくて単に異例の(「異常な」とは言ってないと思いますが・・・・・・)低金利政策という超緩和的金融政策を継続する期間に対するガイダンス文言であって、別にデュアルマンデートの達成時期について明示しているものではございませんが。というかバーナンキ議長に「late 2014になったらマンデートは達成できるというコミットメントですか?」と質問したらどういう答えになるんでしょうかねえ。

大体からしてその文言だってその前は「mid 2013」って言ってたのが先般「late 2014」に変わったのですけど、そうやってホイホイ変更して良いもののどこがどう「目標に到達するまでの時間的な経路をも明示化」となるのかと小一時間問い詰めたいのですけどねえ。

更にツッコミますと、このガイダンス文言は「金融政策を継続するコミットメントではなく、現状の経済状況および先行き見通しを踏まえたガイダンス(だからご案内みたいなもん)文言であって、経済状況が変われば金融政策継続の時期も変わる」という説明をFRBは何度もしてますがな。バーナンキの会見でもそうですしFOMCの議事要旨でも何回も出ていますけれども、それを「政策目標達成のコミットメント」と言うのは嘘八百にも程がありますがな。

大体からしてFOMCが示すSEPではデュアルマンデートに関わる数値の先行き見通しが示されていますが、前回のSEPで失業率に関して「longer-run」で示された望ましい数値は見通し期間中には到達しないという先行き見通しを示していますがな。

つーかね、そもそもFRBが実際問題として目指しているのは単純に足元の数字なのでは無くて「中長期的な数値」なので見通し期間中に「中長期的に見た場合の失業率がデュアルマンデートに則した範囲内になるという見込みとなる」という達成が出来るかもしれないという面があるので、まあ見通し期間中に中長期的な目標が達成できているのかどうかというのは現時点での見通しだけでは判らんというのもあるんですけどね。

まあいずれにしてもFRBがデュアルマンデートの「目標達成に向けた期間と経路を明らかにした」というのは虚偽表示にも程がある訳で、FRBと日銀を比較して日銀を批判したいというのは判りますし、まあそれはそれで一つの手法ではありますが、自分の論拠に使う事実関係を自分の説明に都合の良いように誇張するとか、これが産経新聞の某みたいな電波だったら電波浴扱いしておけば(どうせ産経ですし)良いのですけれども、本職がそれをやるのはダメなんじゃないかと思いますけどねえ。つーか投資勧誘資料でそういう事やったら誤認勧誘で金商法違反と言われても文句が言えない話なんですけれども、本職のアナリストがそういう姿勢でいる(まさか無知でこういう説明しているとは思えないのでわざとでしょ)のは職業倫理を疑うレベルですがな、と思いますが如何でしょうかねえ。


・日銀の目途がどうのこうのですかそうですか

『一方、日銀の白川方明総裁は、あくまでも追求すべき「目標(objectiveもしくはtarget)」ではなく、「(中央銀行の総意としての)目途」であるとして、達成義務のある「目標」であることに否定的な見解を示した。つまり、今回の「物価安定の目途」は、政策審議委員各自が「物価が安定している」と考えるインフレ率の単なる集計値である従来の「物価安定の理解」から、中央銀行の「総意」になると定義を変えただけで、政策的な達成義務はないと言明したのである。』

だそうです。まあ政策的な達成義務はないと言明とか随分とこちらは悪意で解釈してますなあ(達成に向けて努力するという話をしていて、単にその達成時期に関して明言できないという説明だとしか思えないのですが、まあ極端に悪意で解釈すれば時期を明言しない努力目標に意味があるのかという言い方は出来ると思うので、そこはツッコマないが)という感じですな。

つーかね、これは書いている人のテクニックの問題ですけれども、FRBの示した『principles regarding its longer-run goals and monetary policy strategy』にはobjectiveとかtargetという言葉は使っていなくて、日銀の英文版(ただし正本は日本語版なので英文版はあくまでもご参考ではありますが)でもgoalという単語を使っているのですが、この書き方だと(この部分は先ほどのFRBガーの所の続きね)如何にもFRBが示しているのはobjectiveとかtargetであるかのような印象を与えるような操作をしている所とか(FRBがobjectiveとかtargetとかいう言い方をしている、とは一言も言っていないので別にその点で嘘八百を書いている訳では無いが)、最早アジビラのテクニックといった風格を漂わせるホンモノの香りを感じます。

ご参考→http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125c.htm

んでもって、フォワードガイダンスに相当する文言だって日銀は出している訳で、それが「中長期的な物価安定の理解」であり、金融政策決定会合での声明文で出たりもする話ですが、「当面は中長期的にCPI前年比+1%を目途として強力に金融緩和を推進する」という説明をしていまして、展望レポートでの経済見通しとセットになると金融緩和って続きますよね、という話をしている訳ですから、FRBのフォワードガイダンスと実際問題としてそんなに変わった話をしている訳では無いっつー話になる筈なんですけれども、日銀に関する説明が随分とこらまた過小評価ですなあ。

ご参考→http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/

そもそも本職なんだからその辺を解説するのが仕事だと思うのですけれども、その辺の説明を日銀批判につなげるような形で公平性を失する比較を行ってひたすらFRBのやっている事を賛美して日銀のやっている事を貶めるとか、アナリストとしての職業倫理はどうなっているのかと小一時間問い詰めたい所でございます。

当面の目途の1%数値に関しての話とか続いて、まあツッコミどころがない訳では無いが、そこは色々な意見があるところだと思うのでスルー。


・以下雑談になるわけだが(雑談その1)

まあね、日銀の「見せ方」が金融市場、というか短期金融市場などのような普段から日銀の動きを見ているので日銀文学的な説明が通じる人には判るけれども、そうじゃない人にとって判りにくい、というか折角やっている事を一々しょぼく見せてしまう一方で、俊ちゃんの生霊が乗り移っているかのような逆さ絵おじさんの説明(はっきり言ってここまでやっている事に関しての逆さ絵おじさんの説明って論理的整合性もへったくれも無いし、長期債これだけ買って出口政策の時に長期債売れるのかよとか思いますけど・・・・・)との比較、という意味からしますと、日銀の説明には工夫の余地が相当あるとは思います。

大体からして日銀だって「金融政策によって金融市場の緩和的環境は作れるがその先の波及経路が成長期待の低下で弱まっている」という話をしながら非伝統的な金融政策を実施しているのですからして、本来的には「金融市場(というか金利市場)」だけを相手にする説明ではなくて、もうちょっとその外側に対して説明をするにはどうしたら良いのかという所を意識して(いやまあ意識していない訳では無いのでしょうが・・・・・)説明するという事が必要ではないかとは思います。

ただまあそれをやり過ぎると今度は「自分の尾を追う犬」になってみたり、政策が大きくビハインドしてしまう結果としてまたぞろ資産バブル発生させるという同じチョンボを繰り返す(どう見ても米国はそうだろ)という事になるので匙加減が難しいのですけれども、ただまあ非伝統的政策を実施するという事は、説明に関しても非伝統的な部分がないといけないのかなあなどと思うのでありました。


・雑談その2はまた悪態

とまあそういう事でどこぞのエコノミスト様(って署名入り解説記事の名前まで引用しておいてどこぞのもクソも無いですが^^)の針小棒大解説をネタにしてみた訳ですが、まあこちらの先生におかれましても、当然ながらFRBと日銀の公表文書とか読んでいる訳ですから分かっていて書いているのだと思います(無知だったら救いようが無いが)。

日銀の姿勢が消極的に見えるので良くないとか、まあそういう文脈で日銀を批判するというのであれば別にまあそういう批判はありだと思うのですけれども、先ほど来盛大に突っ込んでみましたように、こちらの先生の説明は事実関係について自分の意見に都合の良いように捻じ曲げて説明している訳でございまして、(これで3度目になりますが重要なのでまた申し上げますと)本職のアナリストとしての職業倫理を疑わざるを得ない解説を一般紙で行うとか、ちょっといくらなんでも酷過ぎ。

陰謀論みたいになるから書きたくはないですけれども、お前はそこまでして日銀審議委員の空席でも狙っているのかとか小一時間問い詰めたい次第でございまして、何つーか戦前の昭和日本で相手党の政権を攻撃するに際して統帥権干犯問題とか持ち出した結果、政党政治を終わらせてしまう原因を作った上に国まで焦土にしてしまう流れを作った政党政治家の姿みたいなのが被ってしまう・・・・・というのは大袈裟ですかそうですか。

まあ何だ、とりあえずこの先生はこれでも百回読んどけと思いますけどね。
http://www.saa.or.jp/ethics/standard.html


○悪態書いてたら時間が無くなったのですが金融市場インフラに関するリリース

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120416a.htm/
BIS支払・決済システム委員会と証券監督者国際機構専門委員会による報告書「金融市場インフラのための原則」の公表および付属文書の市中協議の実施について

つーのが出ていましたがこれは中々。

金融庁および日銀による仮訳がついているものを読むだけでもしておくのが吉のような気がする訳でして・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120416a2.pdf
最終報告書および2つの市中協議文書のカバーノート

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120416a3.pdf
『金融市場インフラのための原則』
共同議長サマリーノート

でまあサマリーノートの冒頭はこうなっています。

『・ 本報告書は、システミックに重要な資金決済システム、証券集中振替機関、証券決済システム、清算機関、取引情報蓄積機関を含む金融市場インフラ(FMI)のための新たな国際基準を主な内容としている。本報告書は、これらFMIのための既存の基準に置き換わるものである。

・ 新たな基準は、従来の3つの基準と比較して、内容の更新・調和・強化が図られている。これらの強化された基準は、金融危機、特に参加者破綻に対してFMIがより頑健になるよう設計された。

・ 本報告書は、FMIの規制・監督・オーバーサイトを行う関係当局の責務を更新したものも含んでいる。

・ CPSSとIOSCOのメンバーは2012年末までに新たな基準を採用し、可能な限り早期にその適用を開始するよう努める。FMIは可能な限り早期に新たな基準を遵守することが期待される。』

つーことで、資金決済やら証券決済の集中機関に対する国際基準についての話になりまして、まあ一見すると市場に関係なさそうにも見えますが、この辺りの利用に関してどういう規制が行われるのかとか、担保や証拠金の扱いがどうなるのかとか、意外に価格形成に影響を与える面もあろうかと。

あとはまあその手のビジネスにも影響でるような話なのですが、ざっと見た所ではこの辺りのインフラに関して求められる賦課とかの議論からすると、いわゆる集中決済機関のようなものとか取引所のようなものをより公的関与の強いものにした方が良いんじゃネーノとか思った次第で、一方で取引所が世界的に見て上場企業になっているという辺りから何とかした方が良いんじゃネーノという風にも思うのですけどね。

まあ事務やる部分と決済の部分を分離するという方向でやっていくのかも知れませんけれども、FMIのインフラとしての頑健性とか健全性というのを求めるという方向性と、上場企業としての行動というのは整合性がとりにくいんじゃないかとゆー気がするんですけどどうでしょうかねえ・・・・・・・

と雑感だけで恐縮至極。










2012/04/17

お題「ダドリー総裁の先週の講演ネタである」

こうして見るとアンダルシアとアストゥリアス(特に前者)の州議会選挙結果が効いていやがりますなあという所ですなあ>スペイン

モーサテのゲストコメンテーターがこの前のロイターの記事をネタにして(つーか為替市場とかこれに反応していたのでまあ為替の人だからネタにするわなあと思ったが)いたのですが、次回会合で追加緩和を検討するでしょう追加緩和を実施するでしょうって金利市場関係者だったらまあ少なく見積もっても半分くらいの人はコメントする話ですがな。

つーかこれって「日銀筋」でも「政府筋」でもない「関係者」でして、それこそあたくし辺りがロイターに話をしても「関係者」扱いになるんですけど、正直このニュースで為替市場反応したのを見た時には呆れると同時にロイターのヘッドラインの打ち方のあざとさというか営業優先姿勢(このレベルの話なら決定会合当日にも同じ話いくらでもあったのですけど、わざとタイミングをずらして目立つようにした、というのが見え見え)に対して可及的速やかに企業としての天寿を全うすべきであると心底思いましたけどね。といいつつ一応記事のURL貼っとくわw
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9E8EL01B20120411
日銀は次回決定会合で追加緩和を検討へ、物価目標の達成難しく=関係者 
2012年 04月 11日 13:47 JST

・・・・・・・また朝から悪態をついてしまったorz

で、今日は先週のダドリー講演である。

まあ先週は色々な人の講演があって、本当はラスキンおばちゃんとかイエレンおばちゃんの講演をネタにすべきところではあるのですが、どっちも量が多くて正直読み切れていないので一番短いダドリー先生のでとりあえず勘弁(−−)

で、先週12日の講演の時には追加緩和がどうのこうので米国株式市場が反応したりしてたような気がするんですが・・・・・・
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2012/dud120413.html

A4の紙に印刷して5ページ、というか事実上4ページ分位にしかならないのでサラサラ読めてしまうのでありまして、それをネタにするあたくしは安直にも程がありますかそうですか。


○講演見ても別に普通にしか読めないのだが

まあその時の記事を読みますと質疑応答の中で2014年末までの低金利政策が適切とかいう話をしていた、という事でしたけれども、冷静に考えてFOMCの声明文で「FOMCは現在の経済状況を勘案すると少なくとも2014年末までの異例の低金利政策の継続が正当化されると判断する」という話をしているのですから、その舌の根が乾かないうちに少なくとも執行部サイドと思われるダドリー(つーかまあ執行部系ハト派扱いですけど)さんがそれを否定するとか有り得ないのでございまして、まあ米国市場としては「QE3期待!」ってのに乗りたいという市場の雰囲気があって、とにかく何が出てもそっちの方向に反応したいとゆー事なのでしょうなあとは思いましたです、はい。

でもってまあまとめは最後に『Conclusion』があるのでそちらから。

『To sum up, the incoming data on the U.S. economy has been a bit more upbeat of late, suggesting that the recovery may be getting better established. But, while these developments are certainly encouraging, it is far too soon to conclude that we are out of the woods in terms of generating a strong, sustainable recovery.』

まずは景気に関してですが、「足元の経済指標はやや強くなっており、景気回復傾向が確りとしてきた事を示唆する」と基本的な見方を強めているというのがそもそもの前提にあるのですが、その次に「しかしながら我々は森を抜けて力強く持続的な回復に向かっているというにはまだ程遠い状態にある」という話をしています。

でですな、まあこの後で引用しますが、景気に関しての話の冒頭部分って上記と同じ表現になっていて、その後にああだこうだと懸念材料を並べているので、まあ印象としてはタカには当然の如く見えませんけれども、じゃあ思いっきりハトなのかと言いますとそもそも論として景気が強まっているという話をしているので、別に思いっきりハトな訳でも無かったりするんじゃネーノという気もする。

『On the inflation front, the year-over-year rate of consumer price inflation has slowed in recent months, and despite the recent rise of gasoline prices, we expect inflation to moderate further in 2012.』

まあインフレに関してはそんなに変な話は無いのですが、これはまあFOMCメンバーの中でも意見がおおむね一致している所(ただし追加緩和の影響についてとか、先行きの緩和政策継続の影響についてではインフレ加速懸念を示す人はいます)です。

まとめ部分はこの先もあるのですが、後は地域経済(今回の講演はシラキュースで実施)の話になりますので引用割愛。


○景気認識に関して

景気に関する話は『National Economic Conditions』と『Regional Economic Conditions』というのがあるのですけれども、後半の方はまあ国内景気に対してNY連銀管内というか地元経済に関する全国平均との違いについての話で、まあネタとしては興味深いのですけれども、金融政策へのインプリケーション的にはスルーで良いので華麗にスルーして前半の米国経済に関する部分から。

『The incoming data on the U.S. economy generally has been a bit more upbeat over the past few months, suggesting that the recovery may be finally establishing a somewhat firmer footing.』

という事で「somewhat firmer footing」キタコレという所。具体的な数値の話が続く。

『Real GDP expanded at a 3.0 percent annual rate in the fourth quarter of 2011, the fastest growth since the first half of 2010. The average monthly job gain was 212,000 in the first quarter of 2012, up from 164,000 in the fourth quarter. Sales of light-weight motor vehicles were about 14-1/2 million at an annual rate in the first quarter, the best quarter for vehicle sales in four years. Survey measures of business activity have rebounded from their dips in the middle of last year, and are now at levels that typically indicate solid overall growth. Even housing starts have firmed somewhat in the last few months, although they remain at depressed levels.』

全体的に景気の良い話ですが・・・・・・

『While these developments are certainly encouraging, it is still too soon to conclude that we are out of the woods. To begin with, the economic data looked brighter at this point in 2010 and again in 2011, only to fade later in those years.』

ということで、さっきのまとめと同じ展開である(つーかまとめの部分と同じ展開なのは当たり前だが^^)。

『Moreover, the United States experienced unusually mild weather over the first quarter, with the number of heating degree days more than 20 percent below the average of the preceding five years, which may have pulled forward some economic activity and hiring.』

『In this regard, the somewhat softer March labor market report that was released last Friday may reflect the earlier positive influence of the mild weather on job creation in January and February, although other less sanguine interpretations are also plausible. We thus will need to see more data to determine the extent to which the March data represent a transitory weather-related setback.』

でまあこの部分がほほーという感じなのですが、暖冬が雇用を押し上げた可能性についての判断が必要という論点でして、1月2月が妙に押し上げられていて実は雇用拡大のトレンドが思ったより強くない可能性というのと、3月が単に反動で伸びが良くなかっただけでトレンドとしての雇用拡大が続いているのかという点を今後の雇用統計を見ていく中で確認していく必要があるという話を出されますと、このロジックを持ち出すという事は少なくとも3月雇用統計一発で追加緩和を打ち込むというのは話としてはややおかしいですよね、という事になるのではないかと思うのですがどうでしょうか。勿論6月の追加緩和(というか長期金利お助け施策?)を排除する話でも何でもないですけれども、少なくとも「この前出た3月雇用統計が悪かったので追加緩和」というロジックには無理があるという話じゃネーノと思う。

『Regardless of the importance of the mild winter in distorting the economic data, real economic activity has yet to be strong enough on a sustained basis to make a big dent in the overall amount of slack in the U.S. economy. While growth was stronger in the fourth quarter, most of it was due to inventory accumulation. Growth of final sales remained quite weak. Historically, quarters in which inventory investment makes significant growth contributions are typically followed by quarters in which that growth contribution is modest or even negative. That appears to be what is shaping up for the first quarter of this year. 』

つーことで、実質的な経済活動については米国経済のスラックを大きく埋めるほどの持続的な強さはありませんがなという話になってきまして、徐々にハトトーンになってくるのだ。

『Based on available data, our current expectations are that real GDP will expand at around a 2-1/4 percent annual rate during the first quarter of 2012.』

2012年の1Qの実質GDP伸び率は年率換算で2.25%程度との予想ですがこの数字は後で出て来るので重要。

『Even with the robust increase of light vehicle sales, overall consumer spending in the first quarter appears to be rising at a similar moderate rate. At the same time, real disposable income has been flat over the past three months, and the large increase of gasoline prices is likely further sapping consumers’ real purchasing power. And growth of business investment spending, which softened in the fourth quarter of 2011, may have been even a little softer in the first quarter of this year.』

とまあそんな感じでイマイチ感が漂う話ですな。

『To put the recent pace of growth into perspective, we believe that the economy’s long-run sustainable growth rate-what economists call the potential growth rate-is around a 2-1/4 percent annual rate.』

ということで実質2.25%というのが潜在成長率と推測される数値とな。

『We need sustained growth above that rate to absorb the still substantial amount of unused productive capacity. Thus, our recent growth rates are barely keeping up with our potential.』

つーことで、経済のスラックを埋める成長を目先では見込んでいない、という話でもありますので、そういう意味あいからは緩和政策の継続という結論になるんでしょうなあという事で、もちろんこちらの講演はタカでも無い、というのが結論になろうかと思います。


雇用に関して。

『Even though the unemployment rate has declined sharply from 9 percent last September to 8.2 percent in March, it is still unacceptably high. In addition, many other measures of the labor market remain weak. The labor force participation rate, the percentage of people employed, and the total number of hours worked in the economy all dropped sharply during the recession and remain well below their pre-recession levels, even taking into account the impact of demographic shifts. Also, it appears that productivity growth has slumped recently. Although that means that a given amount of growth translates into bigger employment gains, it certainly is not an unmitigated positive development.』

ああだこうだと話をしていますが、まあ失業率は低下傾向だけど労働市場を巡る環境は依然として宜しくなく、雇用環境の改善に繋がる経済成長までには至っていないので今後も厳しいですよという話をしていますので、まあさっきと同じくで少なくともタカにはなり得ませんがなという事ですな。

そして「経済には顕著な向かい風がある事を忘れてはならない」キタコレというのが次に。

『Also, we cannot lose sight of the fact that the economy still faces significant headwinds and that there are some meaningful downside risks. In the headwinds department, I would include the run-up in gasoline prices mentioned earlier because that will sap purchasing power, the continued impediments to a strong recovery from ongoing weakness in the housing sector, and fiscal drag at the federal and state and local levels. In terms of downside risks, these include the risk that growth abroad disappoints and the risk of further disruptions to the supply of oil and higher oil prices.』

従来の住宅セクターや財政削減に加えて石油関連価格の上昇による購買力の低下も経済に対するダウンサイドリスクに加わったという話ですな。

んでもってインフレは落ち着いてきて今後も抑制されるでしょうという普通の話。

『While the underlying core inflation rate, that strips out volatile food and energy prices, has been somewhat higher than expected a few months back, it appears that the annual rate of core inflation1 has peaked and we expect it to begin to decline later this year. Finally, inflation expectations, which play an important role in the inflation process, remain well anchored. By this I mean that people expect that the rate of inflation will continue to be relatively low for some time to come.』

ちなみに、金融政策で何をどうするみたいな話は今回は行っておりませんので、経済見通しのみという所です。


○イイハナシダナー(;∀;)

こちらのダドリー講演は経済見通しに関する所がまあ普通に金融政策のインプリケーションという部分なのですが、お話として読んでて面白いのは実は前半分のような気も。

『What the New York Fed Does』という所で、NY連銀が地区の景気状況を把握するためにどのような事をやっているのかという話をこれでもかと説明しているのですが、この説明を見ておりますと(そらまあ国土の広さの差があるけど)日銀の支店(大きな支店は別にして)だとそれこそ支店長と調査にあたる人が1名とか2名とかいうような陣容で地域経済の調査をしているのとはだいぶ違ってまあ日銀としてはウラヤマシスという感じなのではないかと思いますけどどうなんでしょうかねえ。

今回のダドリー総裁の日程(?)はこのようになっているそうな。

『To help me gather more information about the region, yesterday, I had breakfast in Syracuse with business and community leaders at the Center for Economic Development. Then I met with the staff of PathStone, a community development organization, met faculty and students at the Maxwell School of Syracuse University and had lunch with university officials who manage the tech transfer process. In the afternoon, we drove to Skaneateles Falls to tour Welch Allyn, a manufacturer of medical diagnostic instruments. Dr. Julie Shimer is the president and CEO. Dr. Shimer was also recently appointed chair of the Empire State Development Corporation, and we talked about challenges and opportunities for economic development in New York State.』

『After this morning’s gathering, I will speak with staff of the Empire Justice Center, meet with Lt. Governor Bob Duffy, convene a meeting of our Upstate Advisory Board, whose members are major leaders in the upstate economy, and visit the Roswell Park Cancer Institute to learn about their role in economic development in western New York and in the broader world arena.』

中々充実した日程ですな。んでもって連銀スタッフのお仕事はこんな感じ。

『My colleagues and I at the New York Fed continually track conditions in our District, and we have created a number of tools for that purpose. For example, my staff produces monthly indexes of economic activity for New York City, the state of New York and New Jersey. These indexes are essentially measures of local output-similar to gross domestic product, or GDP, at the national level. These measures provide a more complete gauge of activity than the employment report, which is another important metric at the state level. We have also constructed a consumer credit panel to track local household credit conditions at the county and even the zip code level, including the amount and type of personal debt and whether payments are being made in a timely way.』

『In addition, we conduct a periodic poll about the credit needs of small businesses, which are an important source of new jobs. We are just launching our latest poll that also includes questions about the skill needs of small businesses and whether the right kinds of skilled labor are available. Almost 900 regional businesses responded to our last poll, some of which were from this region. If you, as a representative of a small business, would like to participate in our current poll, please pass your card to my colleagues, who are in the audience, or see me after the speech and we will be glad to add you as a respondent.』

だそうで、何とも充実してますなあと思うのでありました。


さてさて、それはそれとして最初の所でダドリー総裁が中々良い話をしているのですな、という感じで今日は講演を後ろから読んでいる格好になっています(^^)。

『I have the great fortune to serve as vice chair of the FOMC that meets eight times a year in Washington to set interest rates and make other decisions about monetary policy. The members of this committee all strive to set policy to advance the mandate given to us by Congress to promote the maximum level of employment consistent with price stability.』

とまあここまでは良いとして・・・・・・

『Sometimes we have different views on the specific policy choice at hand, and you should view this as completely appropriate: these are hard questions-particularly during difficult economic circumstances such as we face today. In fact, I think we make better decisions as a committee because we don't all think alike.』

色々なビューがあって議論があるのが重要という話をしている訳で、まあ当たり前の話だと思うのですが、一方でどこぞの国では「政策に対する考え方がケシカラン、こういう政策の考え方を持つ人間じゃないとダメ」と言って政策委員人事に臨む政治がある訳ですな。

『But we are united in our commitment to our dual mandate and in our belief that Fed independence is essential to the public interest. That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.』

>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.
>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.
>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.

ま、米国の場合は逆方向の「short-term political pressures」のような気もしますが、追加緩和したら株が上がって為替が円安に振れたけどその勢いがなくなったから緩和の効果が落ちているとかどう見ても短期的視点です本当にカムサハムニダな論点で政治的圧力をせっせとお掛けになられる政治家の皆様たちにおかれましてはちったあ落ち着けやと思うのでありますけどねえなどと存じます。






2012/04/16

お題「3月決定会合議事要旨ネタと言いつつあたくし的雑感を混ぜています」

ふむ、東京時間はあまり反応してなかったように見えた中国GDPネタだが海外時間になってスペインとの合わせ技一本になったのですか、よー知らんが。

で、3月会合議事要旨である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120313.pdf

まずは金融政策決定に関する議論の辺りから

○成長基盤強化関連

まずは『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から少々。

『成長支援資金供給について、委員は、執行部提案のとおり、成長支援資金供給の拡充を図ることが適当との認識で一致した。』

ほうほうそれでそれで?

『大方の委員は、デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくという認識に照らすと、前回会合において、政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化したことと、今回の成長支援資金供給の拡充は一つの政策パッケージと位置付けるべきものとの認識を共有した。』

パッケージという事でその前のどう見ても米国FOMC見て実施しました金融政策に対して成長基盤強化を突っ込む事によって何とか体裁を整えましたとか意地の悪い事を言ってはいけません(−−)。

『そのうえで、ある委員は、今回の施策を打ち出すとともに、わが国経済のデフレの背景についてしっかりと説明していくことが重要であると付言した。』

まあそれもそうなんですが、どちらかというと「金融緩和をしても中々実体経済に対する効きが良くならない件について」っていうお題で説明した方がプレゼン的には良いんじゃねえのかと思うあたくし。と申しますのは、「デフレの原因は成長期待の弱さ」というのはどうも責任転嫁チックに映るお題でありまして、そういう説明をするよりも「金融緩和が実体経済に対しての効きが悪い」という話をした方が、同じ説明するにしても「確かに金融緩和しても企業の資金需要って盛り上がらないですよねえ〜」的な説明となりますし、あまり言い訳というか責任転嫁チックにも聞こえないので宜しいんじゃないかという気がするのですが気のせいですかねえ。

しかしこの成長基盤強化に関してはどこからどこまでが本当の呼び水でどこからどこまでが金融機関の「ご協力」なのかがイマイチワカランチ会長な話ではございましてですな。

『これまでの成長支援資金供給の効果について、複数の委員は、一定の呼び水効果を発揮しているとの認識を示した。また、何人かの委員は、金融機関が引き続き成長基盤強化に取り組むための態勢整備を進めていることを踏まえ、日本銀行として、こうした金融機関の取り組みをしっかり支援していくことが適当であるほか、今般、執行部から示された一連の措置は、かねて金融機関から寄せられていたニーズと整合的であり、適切な対応と考えられるとの意見を述べた。』

どこまでが本当の呼び水でどこまでがヨイショなのかは良く判らんのですが、たぶん最後の辺りにあるのは金融機関のご協力的なヨイショの香りもするんですけど。


○基金オペ関連についてと追加緩和関連雑談

『資産買入等の基金について、委員は、前回会合以降、中短期ゾーンの国債利回りが一段と低下しており、累次にわたり実施した資産買入等の基金の増額は、金融市場に対して一定の効果を発揮しているとの認識で一致した。』

ということで、中短期ゾーンの利回りの低下というのが基金オペの効果、という話になっているのですが、ここのロジックも中々難しい所でございまして、基金オペ自体は65兆円でござるという量で勝負的な見せ方も一方で行っている(特に最近はそういう流れになっている)のですが、そもそも基金オペのスタートの時点では「長めの金利(長期金利では無い点に注意!)およびリスクプレミアムの縮小を促す」という話をしていた(いやまあ今でも上記のようにしているのですが)ので、金利が低下するとか社債やCPのスプレッドが縮小したというのは政策効果が出ましたよという話になるのですけれども、一方で量がどうのこうの的な話をして、65兆円必達体制という事にもなっているので話がヤヤコシヤという感じになっております。

包括緩和ってQEとCEのハイブリッドと言ってしまえばまあ格好は付くのですが、徐々にQEチックな見せ方になっていますし、まあ市場もQE的な意識の方が(もともとそれはあったけど最近は更に)強いという所をもうちょっと整理しないとオペの運営が益々難しくなるんじゃないのかなあとか思うのでございまする。

『さらに、多くの委員は、最近の株価や為替の動きは、欧州債務問題を巡る緊張感の緩和や米国経済の回復を示す経済指標を受けて、グローバル投資家のリスク回避姿勢が後退していることを反映したものと考えられるが、前回会合の決定はそうした動きの後押しにもつながっている可能性があるとの認識を示した。』

さいですな。まあ2月の決定は市場の反応が効きすぎで却ってクレクレに拍車を掛けているという皮肉な結果も招いているのですが。

『一人の委員は、円高修正や株価の持ち直しがみられる状況下において、前回会合で明確化された政策姿勢への理解を市場に一段と浸透させることを通じて、企業の設備投資需要等を顕在化させることが望ましく、そうした観点から、前回会合に続き、長期国債を対象として、資産買入等の基金を増額することが適当との見解を述べた。』

これは宮尾審議委員の追加緩和提案の話(1対8で否決されましたが)ですが、「前回会合で明確化された政策姿勢への理解を市場に一段と浸透させることを通じて、企業の設備投資需要等を顕在化させることが望ましく」っていうのも何かえーという理屈ではあるのですけれども、その辺の金融市場の動きが企業の設備投資云々に繋がらないのが問題のような気もするんですが、まあそれは兎も角として、このロジックで追加緩和提案をしたのであれば、何で今月の会合で追加緩和提案をしなかったのかが良く判らん。

『こうした見解に対し、大方の委員は、現時点における経済・物価の情勢を踏まえると、2月に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当との考えを示した。』

まあこれはこれでそうなのですが、展望レポートの時に点検を行ってまだ時間が掛かるので緩和のおかわりをする、という話をするのかそれともとりあえず放置プレイになるのかは微妙は微妙なのでしょうが、ただまあ資産買入等基金の期間が今年末までになっていることですから展望レポートで基金の期間を半年くらい延長して、買入ペースを維持して長期国債で10兆円おかわりとかいうのはロジック的に成り立つかなと。

本当はFRB的な作戦で「買入の残高を維持する事によって緩和が継続される」という理屈を使えば「買入の債券等の償還再投資で緩和継続」とか勿体ぶった方が一粒で二度オイシイのですけれども、最初の所で書いたように、日銀の包括緩和って元々の理屈が量で勝負という形になっていないので、そこは理屈というか屁理屈の再構築作業が必要になろうかと。

でまあその「量で勝負」的な話というか「バランスシート政策」的なロジック(追記:というよりはこれはFRB流のインチキ時間軸という方が正しいですかそうですか)を使うとしますとですな、たとえばの話「資産買入等基金の残高65兆円は今年末までに達成し、その残高を2014年末までは維持する(ただし第二の柱に伴う点検作業付というのを入れておけば宜しいがな)」とか何とか言って絶賛時間軸延長もどきのような話をするというのも有りかなあとか思いますけどどうなんでしょ。

実際問題としては中長期的な物価安定の理解による強力な金融緩和政策の推進という枠組みには「中長期的に+1%のCPI上昇が安定的に見込めるまでは資産買入等基金は維持される」というのが自動的に含まれていて、さすがに2014年末だと微妙だけど2013年末位まではどうせ大楽勝で維持する事になりますし、そもそも論としておそらく日本のインフレフォビア(とゆーよりは「負担は嫌だけど果実は欲しい病」という感じという指摘の方が正しいような気がします・・・・・・)からしてCPI+1%が見えるような頃になったらデフレ脱却を喜ぶのでは無くて「インフレケシカラン」的な話が増えてきてアホ政治家たちが急に態度を帰るに100万ジンバブエドルなので気にせんでええんちゃいますかとも思いますけど。

ただしこの方式の最大の問題点は、展望レポートの見通し期間が2013年度までなので、暦年ベースで2014年3月末で切れている所でございまして、展望レポートで見通しを出してもいない期間の所まで金融政策の時間軸を置くのは(経済データ直接紐付けの時間軸では無い限りにおいて)さすがに理屈に無茶が有りすぎます(まあ大体からして「中長期的な物価水準」という意味では2014年時点での「中長期的な物価水準」がどうなのかという話になるのですからそもそも論として無茶なのですがそこは敢えてスルーしないといかん話ではありますけれども、それが出来なさそうなのが麿クオリティ(というかまあ中銀としてはそっちが普通で逆さ絵オジサンの方がインチキなんですけど、米国様がそれで来ている以上仕方ないと割り切った方が良さそうな・・・・)のですが、だからと言って2013年度末とかにするとFRBと比較されてダメじゃん扱いになって全くの無駄玉になりますので、この際ヤケクソでどうせ鉛筆舐め舐めなんですから(おいおい)2014年度までの見通しを出すようにしたらどうっすかと思ったんですけど(^^)。


○財政ファイナンスの部分を引用しつつ単にそれはマクラであたくしの雑感

途中からあたくしの雑感というか妄想金融緩和ネタになってしまいましたので一旦小見出しを変えてみて上記の続きを。

『累次の資産買入等の基金の増額によって国債買入規模が拡大している点について、何人かの委員は、日本銀行が財政ファイナンスを行っているという疑念を生じさせることを通じて市場の不安定化につながることのないよう、こうした国債買入れの目的を引き続きしっかりと説明し続けていくことが重要と述べた。』

まあ日銀的にはこういう話をするのが大人の対応とも言えますが、そもそも財政ファイナンスへの疑念がどーしたこーしたというのは中央銀行サイドの方が買入なり資金供給無制限攻撃なりを止めるとか縮小するというのであれば別ですけれども(そんなのは今の状況下ではできませんがな)、そーでは無いという状況においては、一義的に政府サイドあるいは政治サイドの方に玉がある訳で、米国にしろ英国にしろ欧州にしろ(ええまあ欧州の場合は一部怪しげな国があってそれが問題になっていますけれども、欧州は財政政策と金融政策の主体が必ずしも一体ではないので別のケースちゃあ別のケース)財政に関しては締め方向で推進を行っており、その流れの中で財政締めているんだから金融政策は緩和的にしてサポートしないとマズーですがなという流れになっている訳ですよね。

然るに、まあ政府サイドは一応財政健全化っぽい話をしてはいます(・・・・ただまあ消費税の話をクローズアップというのも何か違和感があって、本来は社会保障と税の一体改革、というか社会保障の方をどうするのかのデザインが大事な話だとは思うのですけれどもそれは兎も角)けれども、党の方では与党でも野党でも金融緩和しやがれの圧力は掛けるけど財政健全化に関する話はどこへやらという感じなので、そーゆー意味ではまあ玉は日銀には無いので、ここの所って「日銀がしっかり説明云々」というよりも「中長期的な財政の維持可能性についての取り組み姿勢がきちんと示される事が重要」くらいは言ってやれば良いんじゃないのとか思うのですけどどうでしょうかねえ。


○固定金利オペに関して

『何人かの委員は、このところ、固定金利オペについて、6か月物について札割れが生じているほか、3か月物についても応札倍率が低下していることに言及し、札割れは強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れであるが、本年末の期限に向けて買入れが実現できるよう、一段と努力する必要があると述べた。』

まあこの論点は先ほども申し上げた通りで、包括緩和の枠組みにおける基金オペの位置づけが微妙にファジーになっているので、残高必達なので札割れ上等とも言えないのですけれども、その一方で政策効果が効いて(というかまあ当初よりもより長いものの買入が増えた結果という面もあるけど)より長い金利(1年とか2年とか)が低下した結果として固定金利オペの札が入らなくなっているという面があって、各種政策が効いて効果が出てくると固定金利オペなどの札割れが起きやすくなって残高が達成できなくなるという何というお洒落な展開という感じですわな。うんうん。



○景気見通しに関連して

という所が大体今回のお題なのですが、景気認識に関する部分で先行き見通しに関する所から少々。

『景気の先行きについて、委員は、1月の中間評価時の見通しに沿って、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

こらまあ声明文やら金融経済月報にもあるように相変わらずの海外頼み。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国における物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が大きいとの見解で一致した。欧州債務問題について、委員は、リーマン・ショックのようなテール・リスクが顕在化する可能性はひとまず低下したとみられるものの、欧州債務問題に対する市場の見方が急変する可能性には引き続き注意が必要であるとの認識を共有した。そのうえで、委員はこの問題が世界経済に対する重石となる構図は大きく変わらないとの見方で一致した。』

・・・・・と3月には認識していて4月の決定会合前にスペインがまた引火モードとなっておられるというのに何でこの前の決定会合ではああいう話になる????

『そのうちの一人の委員は、何らかの問題が顕在化すると一気に金融市場に不安が拡がる一方、「防火壁」が不十分で対応に時間を要するとすれば、今後も金融市場の不安定化は繰り返される蓋然性が高いと付け加えた。』

どう見ても顕在化です本当にありがとうございました。


んでもって消費者物価指数に関して。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』

というのは兎も角として・・・・・・

『一人の委員は、消費者物価(除く食料およびエネルギー)の前年比マイナス幅が引き続き大きめとなっている点が気がかりであると述べた。これに対し、別の一人の委員は、現行の2010年基準の消費者物価指数では、エコポイント制度の影響から価格下落率の大きいデジタル家電のウエイトが大きくなっており、これが消費者物価の前年比を押し下げていることを割り引いてみる必要があると述べた。複数の委員は、消費者物価について、前年比が上昇した品目の比率から下落した品目の比率を差し引いた計数や刈込平均値が上昇基調にある点などに言及しつつ、緩やかながら基調的に物価が上昇に向かっているとの認識を示した。複数の委員は、最近の原油価格の上昇が今後どのように物価指標の動きに反映されていくのか注意してみていく必要があると述べた。』

ふーんという感じですが、コアコアが低い系の景気の悪い話よりも威勢の良い話の方が多そうな雰囲気。ただまあ金融面の所で・・・・・

『ある委員は、短期的なインフレ予想が引き続き低い水準であることに言及したうえで、こうした動きはインフレ率が中長期的にみて安定的な水準(アンカー)に収束していくペースを遅くする方向に作用するので、十分な注意が必要であるとの見方を示した。』

という話をしている人もいる(何となくさっきのコアコアの話をした人と同一人物の香りがするが)なあという所です。


#アップが遅くなりまして恐縮至極






2012/04/13

お題「金融経済月報は微妙にアレな部分があったりする/オペ技術論的雑談」

ううむ、景気見通しが悪化したら追加金融緩和というのは当たり前の話の筈なんだが、それでQE3期待がどうのこうのというのは市場がそっちに行きたがっているのと、FEDも長期金利上げたくないからその辺を口先介入しているというのの阿吽の呼吸状態なんだろうなあ。と発言の中身を見ないで言ってみるけど、内容は週末に読む。

○金融経済月報である

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1204.pdf(4月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1203.pdf(3月)

・現状判断総括判断

『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(4月)
『わが国の経済をみると、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(3月)

ということで、こちらは声明文と同じで語順を変えて判断引き上げキタコレ。

・現状判断の需要項目別

基本的には声明文と同じであります。

海外経済

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。』(4月)
『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していない。』(3月)

とまあ海外経済の判断を上げている訳ですが、そのタイミングでスペインがアレになったり雇用統計がアレになったりするのが日銀クオリティ。

国内需要項目ですが・・・・・・

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(4月)

『輸出や生産は、こうした海外経済の動向や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資は下げ止まっている。この間、生産や公共投資などにも、先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。』(3月)

一度に引用しちゃいましたが、表現が変わっているのが公共投資と生産で、公共投資、生産ともに上方修正になっています。

・・・・・・ということなのですが、今回更にアレなのは引用している部分の冒頭部分にあります所でして、「円高の影響」という部分がしらっと外れているのが何だかなあという感じです。いやまあ確かにちったあ円高是正されましたし流れは止まったような所ではあるのですが、水準的には80円とかですから鉦や太鼓で介入して仙谷さんが防衛ラインがどうのこうのとか言ってた時よりも円高水準なのでありまして、こんな所でいきなり「円高の影響」という文言が外れるのも何だかなあという感じです。

そらまあ短観の想定為替レートが円高になったよねと言いたいのでしょうけれども、ここで文言抜くとか何ちゅうか危機感足りないとか思いっきり言われると思う訳で、もうちょっと考慮という物は無いのかとか思ってしまいますわ。つーかね、麿のこの前の講演とかもそうなのですが、こういうような所でポロポロやっているとそのうち金利市場も日銀の立場とか知らんがな状態になってくるでマッタクモウと思うんすけどねえ。

#一つの文言だけでこれだけ粘着する方もする方とか突っ込まないように(^^)


短観の評価

こちらは今月のみとなります。

『こうしたもとで、企業の業況感をみると、輸出関連業種に慎重さが残っているものの、内需関連業種が改善を続けており、全体として概ね横ばいとなっている。』(4月)

うーむ。


・先行き見通し総括判断に変化なし

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(4月)

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(3月)

「次第に横ばい圏内の動きを脱し」という文言が外れていますが、これは冒頭の語順変更と平仄を合わせておりますな。


・先行き見通し需要項目別

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が次第に改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(4月)

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。設備投資は、当面、海外経済減速などの影響は残るものの、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要のもとで、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(3月)

またまた一気に引用しちゃいましたが、設備投資の見通しが「基調的には緩やかな増加を続ける」とあったのが、今回は「緩やかな増加基調を続ける」とありまして、これが上方修正かと言われると甚だ微妙なのですが、大体従来の日銀作文からすると「基調的には」というのを頭につけているのは「うーん、たぶんそうなると思うんですけどまあ何ですなあ〜」的なニュアンスである、という事を示しますので、そーゆー意味では上方修正。

公共投資と住宅投資が「徐々に増加」から公共投資が「増加」になって住宅投資が「持ち直し傾向」となっているのが謎でして、公共投資は伸びるけれども住宅投資はそこまで伸びないという事なのかとは思いますが、じゃあ何で今回から声明文などに公共投資と住宅投資を入れましたねんという気はする。

しかしまあ何ですな、「企業収益が次第に改善するもとで」という文言が今回入っているのですが、こういう月報の出る所で電器関連のあばばばばーな決算が出てくるとゆーのが相変わらずの日銀クオリティ炸裂という所で、何かトーンとして明るめの(声明文もそうでしたが)金融経済月報が出る側から逆の事案が出るというのが間の悪さを感じさせまして誠に香ばしい様式美を感じます次第。


・物価に関しては変化なし

まあカワランチ会長という事で。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(4月)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(3月)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(4月)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(3月)

変化が無いとゆー事はつまり展望レポートと同時に・・・・(^^)


・金融面もほぼ変化なし

引用すると長くなるので割愛しますが、基本的に変わらずで、CPと社債の発行残高が前年比減少した話がある程度で特段のインプリケーションはございません。


○オペ雑談

引用大会で意外に時間を使ったのでさくらレポートネタは明日以降に持ち越しで勘弁でありまして、ちょっとだけ雑談ネタ。

まあ次回の会合で追加緩和(のようなもの)がどうのこうのという話は相変わらずでございまして、その内容に関してもああだこうだという話が出ているのですが、オペレーション技術的な観点からしますと、基金オペの内容に関して組み換えというか見直しが必要じゃないかと思うのですよ。

つまりですな、現在オペ技術的に一番ネックになっているのが「固定金利オペ」でございまして、6か月オペが何度か札割れになりましたというネタはあたくしが数回駄文で申し上げました通りかと思うのですが、足元では金利入札オペの残高がゼロになっていまして、固定金利オペだけで回している格好になっています。でも・・・・・

12日の資金需給速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx120412.htm
当座預金残高 359,200

13日の資金需給見込み
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp120413.htm
当座預金増減 +27,900

とまあこんな状態でありまして、今日には当座預金残高が38兆円ペースに乗るという状態になっておりまして、まあ要するに資金需給ってそれだけぶれるんだから単月の当座預金残高がどうのこうのとか一々言うかねとも思いますが、このように当座預金座残高が積みあがって余剰資金溜まって来ますと(特に6か月の)固定金利オペに応札するインセンティブが下がってくるという問題がある訳です。つまりですな、資金需給的に余剰資金が溜まる時期になる(あるいは近づく)と固定金利オペ残高の目標を達成する為に金利入札オペを抑制的にしないといけないとかアホウな問題が発生するのでございまして、何が何やら状態になるのですな。

今後は買入系のオペの残高が増えてくるのも当然ながら資金需給には効いてきますので、そうなりますと固定金利オペの残高維持が益々窮屈になり、固定金利オペ残高維持の為に資金供給オペの実施がやりにくくなるとかどう見ても本末転倒です本当にありがとうございましたという展開が見え見えな訳でございまする。つーかもう見えているけど。

つまり何が言いたいのかと申しますと、元々は固定金利オペからスタートしているから仕方ない部分はあるのですが、買入系のオペが拡大されて行く中で固定金利オペの存在理由も存在するメリットも低下している、つーか足元では邪魔化している訳でございまして、この固定金利オペに関しては純粋にオペ技術論として考えた場合に見直すというか、実施額の大幅削減をするのが必要じゃないですかねえと思うのですよ。まあ極端に言えば固定金利オペ全廃して金利入札オペに戻して、その一方で買入系に回せばとか思いますけれども、さすがに35兆は中々しんどいでしょうなあとか思うと、固定金利オペの増やし過ぎはどう見ても失敗だったなあという感じになって参りました。

つーても、この状態って後になるほどしんどくなってきそうですから、4月会合とは言いませんけれども、どこかのタイミングで基金オペの内訳見直しとかをした方が良いのではないかと思いますです、はい。

という何が何だか判らない雑談で恐縮至極。





2012/04/12

お題「総裁会見(引用増量企画)/その他メモ」

武者先生、株で曲げるからって債券方向のお告げを出すのはお願いだから止めてくださいませ。というかこのお告げはあまりにもオソロシスなのですけど・・・・・・((((;゚Д゚))))
http://www.musha.co.jp/3780

まあ財政懸念で国債暴落したらトリプル安だろ常識的に考えて・・・・

○色々と質問がありますがやはりこれかという総裁会見

つーことで総裁会見である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1204a.pdf

まあそんなに台無し発言が無かったようなのは誠に結構ですが、質疑を見ておりますと、まあ予想通りと申しますか「物価安定の目途の1%達成のタイムホライズンがどうのこうの」という質問が何回か出ている訳でございます。

で、その点に関して言えば日銀の今回の声明文でもありますように、金融緩和をするだけじゃなくて成長力を戻さないと中々物価が安定的に上昇しない(ディマンドプル型にならないという事でしょうな)のだから政府の施策も頼みまっせと玉をせっせと投げてはおりまして、その玉投げを今回の声明文でも打ち出してみた(というのは昨日ご紹介したとおり)のですが、まあ残念ながらというかお約束の通りに政治サイドではクレクレ大合唱というか、最早クレクレどころか恫喝大会になっているだけで、ボールがやってきている事すら気が付いていないという極めて残念な状態が続いている訳でございます。

でまあタイムフレームどうこうという話で言えば、米国の場合だってSEPで示している失業率見通しの2014年がロンガーランの数字に至って居なかったりするのにそちらではタイムフレーム云々の質問が飛んでこないとゆーのはま麿の見せ方の悪さというのもありますし、そもそも物価が延々とゼロ近傍という過去のトラックレコードの問題もあるなあとは思いますが、日銀の立場からすると「インフレ目標って言い方するとタイムフレームとかの話になって、本来のフレキシブルターゲットじゃない議論になるから嫌なんですよ」という所でしょうな。

と、あたくしのしょうもない話が先になりましたが、その手の質疑応答が多いので引用をば。


・物価安定の目途とか展望レポートと次回の緩和がどうのこうのという話

『(問) 今月、追加の金融緩和を見送られたわけですが、このままいくと2月に設定された物価上昇率1%という目途、事実上のインフレ目標は達成できるとお考えなのかを伺います。また、以前から、デフレ脱却に真剣であると繰り返しおっしゃっていると思いますが、改めてこの気持ちは変わっていないかを教えて下さい。』

『(答) 日本銀行の金融政策の基本スタンス、つまり、デフレから脱却し物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要であるという政策の基本スタンスは、一貫して変わっていません。金融政策を運営していく上で、先行きの経済・物価の見通し、これが一番基本となる要因です。この点について、本日の決定会合でも入念な点検を行いましたが、次回の決定会合は展望レポートの会合ということで、特に念入りに点検し、そうした経済・物価の見通しに基づいて適切な金融政策を行っていきたいと考えています。』

ということで、まあこちらではタイムホライズンの話は避けて、その代わりに次回の金融政策決定会合での念入りな点検云々とまあサービス発言。

『(問) 1%の達成は可能とお考えですか。』

『(答) 1月の中間見通しでは、2012年度についてはプラス0.1%、2013年度についてはプラス0.5%という見通しを公表しました。この見通しがどういう計数になるかということについては、次回展望レポートの作成作業の中で検討し発表していきたいと思っています。大事なことは、物価がどういう方向に向かっているかということだと思います。日本の経済が緩やかなデフレ状態になって、長い期間になっているわけですが、そうした長いプロセスを経て現在の姿があるわけです。従って、この先の経済・物価がどういう方向に向かっているのかということが大事なわけですが、物価情勢をみると、2009年の夏から秋、この時期が一番悪かったと思います。これは、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比、刈込平均の物価指数の前年比、あるいは消費者物価指数の中で上昇・下落の品目数の差など、様々な数字からみると、今申し上げたようなことが言えると思います。そうした状況と現在を比較してみると、確実に物価情勢が改善していく方向になっています。先行きの見通しについては、こうした物価の動きがどのように改善していくのか、しっかり点検していきたいと思っています。』

ということで確実に改善方向になっているそうですが、まあ随分と時間が掛かりそうな話ではありますなあ(棒読み)という気はしますがね。んでもって更にそのちょっと後にこんなツッコミが。


『(問) 今月下旬に展望レポートが出ると思いますが、このレポートで示す物価上昇率の見通しに関して伺います。現時点で、2013年度の物価上昇率の見通しは0.5%ですが、今月下旬のレポートで「物価安定の目途」としている1%に届かない見通ししか出ない場合には、デフレ脱却の姿勢を明確に示すために、追加金融緩和を含めてきちんとした姿勢を示さないといけないなど、具体的な手段を含めて、こうしなければいけないというお考えをお持ちかどうか、お聞かせ下さい。』

ニヤニヤ。

『(答) 決定会合における金融政策の議論は、毎回その時点での経済・物価・金融のデータに即して判断するものです。現時点で、次回会合での決定について予断を持つということは、慎まなければいけないと思っています。大事なことは、経済・物価の軌道が望ましい方向に向かっているかということです。私どもとしては、この1%の実現を目指して、金融政策の面から強力な金融緩和を行っていくという方針を既に明らかにしています。このような物価の望ましい姿を実現していくためには、成長力の強化と金融面からの下支え、この両方が不可欠です。』

とまあここら辺までが次回の金融緩和拡大の有無に関する発言。

『それから、物価上昇率と金融政策の関係ということでは、おそらく、ご質問の方の問題意識には、いわゆるインフレーションターゲットの導入国における金融政策の運営があると考えます。例えば、英国について考えてみると、目標が2%で、その上下1%を超えて物価が変動している場合には財務大臣に対して公開書簡を出すというシステムになっていますが、現在、英国では、3%を超えた状態が長く続いています。しかし、2%の達成に向けて短期間に急激な金融引締めを行うことは避けています。』

ふむ。

『日本銀行としては、英国とは方向は逆ですが、望ましい姿を実現していくこと、「どういう方向に向かっているのか」ということ、それが非常に大事なポイントだと思っています。』

ふーん(棒)。

『いずれにせよ、今申し上げたことは、次回の会合での政策決定の具体的なあり方についてコメントしたわけではなく、基本的な考え方として、成長力の強化も大事であるということ、それから、短期間に一気に実現するということでは必ずしもないとすれば、「どういう方向に向かっているのか」が大事だということを、申し上げた次第です。』


・目途達成のタイムフレームがどうのこうのに関する質疑

まあさっきの部分でもその手の話がございますが、より具体的な質問がその後に。

『(問) 次回の展望レポートについて、少し整理させて頂きたいと思います。展望レポートは、経済成長や物価の見通しを示すものだと理解していますが、その一方で、最近、2月に示した「目途」について、具体的にどのようなステップを経て1%を達成していくのかということを日本銀行に示して欲しい、という声もあると思います。そうした中で、今月下旬に展望レポートを公表するということですので、具体的な「道筋」を示して欲しいという声が出ていることに対して、展望レポートの作業の中でそういう声に答えることを考えていく必要があるのかについて、総裁自身はどのように整理していらっしゃるかを教えて下さい。』

まあそんなのを示されたら苦労せんわという所でしょうけれども。

『(答) 「道筋」というものが多少文学的なので、どのようにお答えしていいか分かりませんが・・・。従来もお示ししていますが、2012年度と2013年度にどのような物価上昇率の経路を辿っていくのか、あるいはその見通しを巡って委員の間の見通しがどのように散らばっているのかということを、数値あるいはグラフでお示しすると同時に、なぜそのような違いがあるのかについての分析または見方についても、従来から行っているように丁寧にしっかりと説明をしていきたいと思っています。』

要するに「それが示されるようならこんなに苦労してませんわ」という事ですねわかります。

『物価の動きを規定するもう1つのファクター、すなわち、成長力の強化という取組みがどうなっていくのかについては、これは日本銀行自身が直接操作できる変数ではありませんので、ここについては、日本銀行としての独自の見通しを置くのはなかなか難しいわけですが、定性的にはそうしたことも物価のパスには影響していくということは、再々申し上げている通りです。』

という部分がよーするに政府とか政治方面に対してボールを投げている話で、実はこの前の部分でもうちょっと切々と(かどうか知らんが^^)主張している部分があるのですがそれは後で引用致します。

更にこういう質問も。

『(問) 2点お伺いします。1点目は、先程の質問にあった1%の目途の件ですが、どういうタイムホライズンか、一体いつまでにできるのか、ということです。中長期ということについて、先程、遠い先のことではなく、持続的に1%の物価上昇を見込める状態をつくりたいというお話でしたが、どういった道筋で、いつできるのかという疑問が、非常に多いと思います。そうしたきちんとした具体的な目途というか、時期的なものを、今後出していくお考えがあるのかどうかについてお伺いします。(2点目は割愛)』

『(答) 1点目の時期的な目途については、先程、別のご質問で答えたつもりです。どの中央銀行にとっても、望ましい状況を実現していく、そのタイムホライズンの長さは、非常に大事な要素です。先程、英国の例を申し上げましたが、FRBの場合について考えてみると、FRBはデュアルマンデートで、物価の安定と雇用の最大化が目標です。FRBの現状見通しでは、先々3年経っても望ましい状況に到達しないという姿です。そうであるからといって、機械的に政策を運営しているわけではなく、どの程度のスピードで望ましい状況を実現していくかということ自体を、中央銀行が判断しているということです。必ずしも機械的に行っているわけではないということです。日本銀行の行っている政策についても、できるだけ誠実に、望ましい姿へのパスを示していきたいと思っています。』

と、今度は(あたくしもさっきネタにしましたが)FEDのSEPをネタに出してそんなタイムホライズンを具体的に示せるなら苦労せん罠という説明をしているのですが、はてさてこういう話って「道筋ガー」とか言ってる人に通じているのかねという疑問はある。正直各国中銀のこの手の文書とか声明文とか講演とかを散々趣味のように(というかほぼ趣味の世界の物好き状態だが^^)読んでいるあたくしだからこの説明受けてもその通りですなあとか思うのですけれども、そもそも「インフレ目標ガー」とか言ってる人たちってその辺の海外との比較とかになると日銀にいちゃもんつける為に都合の悪い部分は知っててやってるのか知らないでやってるのか知らないけれども華麗にネグってしまうのがアレですし、大体からして金利市場以外の人たちは相変わらず(今日のモーサテでもやってましたが)ピントの外れた金融政策論議をして更に議論をややこしくしている次第で、まあ困ったもんですなあとか思いますです、はい。

#ま、しょうがないから「株式向け」とか「為替向け」のアナリスト説明会でもやったらどうでしょうかとか思いますけどねえ

でもってその後に玉投げ部分の発言がある訳ですが。

『しかし、先程申し上げた通り、金融緩和からの下支えと、様々な成長力強化の取組み、この2つがあって初めて実現するものです。従って、日本銀行だけでいついつに完成します、と明確に示せるというものではなく、私どもとしては、ある程度の姿を示していくということです。そして、できるだけ早く実現していきたいという思いは、もちろん再々申し上げている通りです。』

まあ玉を一生懸命投げても誰も受け取ってくれないのはカワイソスですけどにゃ。


・ということで誰も受け取ってくれないボール投げ発言

『(問) 政府との関係についてお伺いします。消費税増税の法案には、成長率を努力目標で入れている。一方で、国家戦略室がデフレ関係の閣僚会議を開いて、総裁もオブザーバーとして参加されるというように、色々協力が求められるようになっています。あるいは、圧力という言い方もあるのかもしれません。その「政府との協力」について、どのようにやっていかれるのかについて、お考えをお聞かせ下さい。』

『(答) ご質問の中にあった国家戦略会議で、デフレ脱却等に関する新たな会議の開催が決まったこととの関係でお答えした方が良いと思います。もちろん、ご質問の趣旨は理解しましたが、かなり抽象的な問題意識も沢山おありと思いますので。』

『日本銀行として、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することは、極めて重要な課題であると認識しています。そうした認識を持って、私どもとしては、現在、強力な金融緩和政策を展開しています。同時に、わが国経済は現在、急速な高齢化のもとにあり、この状況に対する社会全体としての対応が遅れている結果、趨勢的な成長率が低下しているという、長期的・構造的な課題に直面しています。このことが、日本のデフレの問題の根源にあると思っています。そういう意味で、繰り返しになって恐縮ですが、成長力の強化と、金融面からの下支え、この両方が不可欠であり、関係する当事者、つまり、企業、金融機関、政府、日本銀行が、それぞれの役割や持ち場に則して、全力を尽くしていくことが大事だと思っています。』

ということで、まあここで「繰り返しになって恐縮ですが」とあるように何度も成長力強化の話をしている訳ですが、これがまた残念な事にボールを投げてもそもそもそこの趣旨が報道ネタにもならないという所が日銀カワイソスではありますけどにゃ。

『国家戦略会議には、昨日も出席しました。新たに開催される会合では、デフレを生みやすい日本経済の構造に関する検討が行われると聞いています。日本銀行としては、日本銀行としての職責をしっかり果たすと同時に、こうしたデフレを生みやすい日本経済の構造に関する検討が行われ、しっかりとした取組みが政府からなされることを、強く期待しています。成長力の強化について、今般、日本銀行は更なる措置を講じ、その結果、大口・小口、外貨・円貨、それからABLと、色々な道具を揃えました。こうした成長力の強化という面でも、中央銀行の立場から、出来ることはしっかりやっていきたいと思っています。』

とりあえずまあ言いたいことは判るのですが、たぶんメッセージは全然伝わっていないと思われるのがテラ残念。


・金融政策の効果がどうのこうのとかアラン・ブラインダー的な「自分の尾を追う犬」的な論点とか

『(問) 金融緩和の効果に関してお伺いします。もちろん、金融政策の効果に関しては、時間がかかることは分かっていますが、2月の直後、総裁をはじめ審議委員の方々がそれ相応の効果があったことを認めておられるように、米国経済の明るさと欧州の金融市場の安定によって為替市場でも円高が修正され、株価も上昇し、マインドも改善するような動きがしばらくあったかと思います。これが、先程言及された先週の雇用統計を受け、米国での追加的な金融緩和期待、金利差の縮小、それによって円高修正の動きが再び円高方向に振れたり、株価も一頃は1万円を超えていたのが、ここへきて下がっています。先日の短観をみても、やはり円高の修正や株価の上昇がすぐには経営者のマインドには影響していないと思いますが、その辺を含め、2月の金融緩和の効果が減衰しているのかどうか、お伺いします。』

まあ比較的丁寧な質問ではありますが。

『(答) 金融政策の効果について、金融市場での価格の変化に力点を置いたご質問かと思います。金融市場における為替あるいは株価の動きは、経済に影響を与える1つの要因です。しかし、この金融市場における価格形成については、日本銀行の金融政策だけでなく、様々な要因で変動するものです。従って、金融市場の変化と金融政策のスタンスを、いわば1対1で対応付けて考えることは、必ずしも適切ではないと思います。』

まあそらそうなのだが、為替市場とか株式市場とかのクレクレは残念ながら1対1対応状態なのが残念である。しかもまあついこの前まで「2年金利ガー」とか言ってたのに急に最近になってマネタリーがどうのこうのとか言い出す連中ですしねえ。で、更にこの続き。

『前回の記者会見で、2月以降の為替あるいは株価の動きについて、基本的には、世界的なリスクオンの流れの中で生じているということを申し上げました。振り返ってみると、世界経済を考えていく上で最大のリスク要因は欧州の債務問題でしたが、これが最も深刻であったのは、昨年11月から12月でした。その後、欧州のリスクは少しずつ緩和され、現在は、大きくみればテイル・リスクが後退しています。そうした中で、従来、安全資産として買われていた円から、それ以外の資産へのシフトが生じたことがまず基本的な流れであり、そうした大きなリスクオンの流れの中で、日本銀行の金融緩和政策の効果もあったと思います。』

ほうほう。

『この数週間の変化でみると、このリスクオンの流れが、スペインの問題、イタリアの問題、あるいは米国の雇用統計の解釈を巡って、また少しリスクオフの流れ、モードになってきていると思います。』

ちょっと待て、おまいら決定会合声明文では「国際金融資本市場も、総じて落ち着いている」って3月から判断引き上げとるじゃろと思うのでありまして、あっちの判断とこの説明の整合性ってどうなのよと思うのですけれども・・・・・・・・・・いやまあ細かいツッコミなのだが気になるわさ。

『私どもの金融政策は、ベースとして金利に働き掛け、これが経済全体に影響を及ぼしていくと考えています。現在、私どもが行っている政策について、よく「非伝統的金融政策」と言われます。確かに、非伝統的な金融政策を行っていますが、効果波及のメカニズム自体は、非伝統的というわけではなく、伝統的なメカニズムです。』

で、その効果波及の伝統的なメカニズムが成長力が失われている結果として弱くなっているのが問題です(だから成長力強化が必要なのです政府もよろしくお願いします)って説明をもっとした方が良いのではないかという感じはするのですけど、まあこの質疑の流れとは関係ないけど・・・・・・

『つまり、短期金利が既にゼロになっているため、長期金利、あるいはリスクプレミアムに働き掛けていくという、金利を通じて影響を行使しているわけです。この面でみると、私どもが基金の買入れを行っているゾーンの金利は低下していますし、それがベースとなって為替あるいは株価へも影響を与えていると思います。(以下割愛)』


というような話をした後に、アラン・ブラインダー氏の言う「市場の尾を追う犬」の論点の話がございまして、別の質問の後半部分から。

『(問)(前半割愛)2点目は、2月の決定会合における物価上昇の目途と追加緩和の効果について、その後、非常に円安なり株高が進んで、効果が出ていると、マーケットなり政治家なり、国民の中では受け止められていると思います。それにより、もっと日銀が緩和すればいいではないか、効果があるからもっとやれ、という声が非常に強まっていると思います。それに応じて、逆にやらないことが失望感を強めかねない状況に陥っているように思います。そうした現状について、どのように受け止めておられるのかお伺いします。』

『(答)2点目については、先程、2月の政策変更による金融緩和強化以降の金融市場の動きについてご説明しました。この間、金融市場に影響した一番大きな要因は、何といっても欧州債務問題が改善し、リスクオンのモードに切り替わっていたということだと思います。一昨年秋に包括緩和を始めて、基金を設けて以来、4回に亘り基金を増額しました。全部で5回の措置の後のマーケットの反応をみると、非常にはっきりしていますが、例えば円安・株高の方向に向かっている時もあれば、そうでない時もあって、全体として必ずしもそこに1対1の関係があるわけではありません。』

そらそうや。

『ただ、為替なり株価の当面の反応は別として、私どもが金利に働き掛けることにより、そのことが経済全体に対して影響を及ぼしているものと判断しています。マーケットの短期的な反応だけをみて金融政策を運営すると、長い目で見た経済の安定ということにむしろ背馳することも多いと考えています。あくまでも軸足は、物価と景気の姿をみて政策運営を行っていくということです。』

自分の尾を追う犬という論点です罠。

#他にも色々ある(今回の会見要旨18ページもある)のですが、まあこんな所で量もアホのように多くなったので勘弁


○時間が無くなったのでメモだけ

・輪番オペが既に3回目とな

昨日は輪番オペがあった訳ですが、月に4回実施する輪番が何と今月は前半のうちに3発実施。

・・・・・・でまあ何でですねんという話ですが、こらまああたくしの想像の世界ではありますが、恐らく単純にカレンダーの関係と国債決済期間のT+2化移行が絡んでいると思います。

つまり、そもそも論として受渡しが月末跨ぎになる買入系のオペは避けられる傾向にある(連休絡むと更にそうなる)のでそもそも今月の場合最終週にオペ入れるにしても前半にしか入れられないというのがあり、更に23日約定から国債決済期間のT+2化が開始になるので、その移行に絡んでフェイルが増えたりするような事が無いとも言えないので、とりあえず今月は23日以降の約定を避けてみましたという事(23日約定と決済日が同一になるから20日の約定も避けるような気がする)で、その結果としてまあ日程上3週間で4回輪番やらないといけませんなという事になったのではないかと愚考致します。

というメモでした、いやお友達と話しててそんな結論になってみたんですが、実際の所どうなのか誰か知ってたら教えてつかーせ。





2012/04/11

お題「決定会合レビューおよび関連雑談」

公共放送ニュースによりますと、お縄先生は「政権交代の味を民主党は国民にまだ十分に与え切っていない」と仰せだった、と石井一さんが仰っておられますが、これ以上味わうのは勘弁なんですけどねえとは思うものの、最近は貧すりゃ鈍すを地で行くように自民党が野党時代の民主党以上に劣化しているのでまあねえ・・・・・

という訳で(どういう訳だ)決定会合レビューである

#公共放送ニュースネタ追記だが、7時台の公共放送ニュースで景気ウォッチャー調査の話題をして景気の良い話をしているしているのにちょっとビックリ


○声明文比較でござるの巻

まずはお約束の声明文比較。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120410a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120313a.pdf(前回)

・景気認識は微妙に引き上げています

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済では緩やかな改善の動きが続いているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も、総じて落ち着いている。』(今回)

『海外経済をみると、全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済にこのところ改善の動きがみられているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も幾分落ち着きを取り戻してきている。』(前回)

ということで、まず海外に関しては米国経済の改善について「動きが続いている」と上方修正していて、国際金融資本市場に関しても「総じて落ち着いている」とこれまた判断を引き上げています。


んでもって日本景気の判断に関して。

『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(今回)
『わが国の経済は、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(前回)

まるで国語のテストのようですが(^^)、語順を変えるとニュアンスが変わる典型ですなこれ(^^)。

次が需要項目別。

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている』(今回)

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている』(前回)

語順が変わったり微妙に新しいのが入っていたりで比較するのがめんどいですが、今回分の語順に則して読みますと、設備投資と個人消費は前回と同じ、生産に関しては「横ばい圏内→持ち直しに向かう動きがみられる」となっていまして判断若干の引き上げです。

また、住宅投資に関しては声明文で従来特段触れていない期間が長かったのですが、こちらは金融経済月報の方では毎回記述がありまして、3月の月報では「持ち直し傾向にあり」となっているので判断据え置き(ちなみに月報では昨年11月から同じ表現です)でして、公共投資に関しては3月声明文の何故か先行き見通し部分で『実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。』となっているので現状判断上方修正です。なお、今の引用部分にありますように、生産に関しても公共投資と同様に前月の段階で先行きの持ち直しに関する言及があり、その見通しに沿った動きが出ている、という話でもございます。


金融環境と物価。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということでこちらは同じです。


・先行き見通しは変わらずですが・・・・

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

基本的に見通しは同じなのですが、「次第に横ばい圏内の動きを脱し」というのが抜けている、ということは、ここの字面比較だけで言えば、今回は日銀をして現状認識が横ばい圏内の動きを脱しているという話でもあったりするのですが、まあ最初の所では「なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている」としているので、そこまでの判断上げではないのでしょうけれども、まあこの辺トーンが強くなりました罠という事で。


・リスク要因

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などに、注視する必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(前回)

ここは読点と改行位置しか変わっていません(改行部分は反映させていません)が、変化したのはおそらく出来上がり時のレイアウトの関係だと思われます。


・決意表明みたいな部分

ここの表現変化も味わいが深い。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方を通じて実現されていくものである。こうした認識のもと、日本銀行としては、強力に金融緩和を推進していくとともに、成長基盤強化を支援するための資金供給を通じて、日本経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関による取り組みを支援していく。本日の会合では、前回3月の会合において骨子素案を決定した日本銀行が保有する米ドル資金を用いた新たな1兆円の資金供給枠(米ドル特則)について、別紙のとおり詳細を決定し、実施することとした。』(今回)

『日本銀行は、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断している。そのうえで、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とする。併せて、本日拡充を決定した成長支援資金供給を通じて、わが国経済の成長支援にも取り組んでいく。』(前回)

今回は「中長期的な物価安定の目途」に関する話から「デフレ脱却が重要」「でもデフレの脱却は金融政策だけじゃなくて成長力の強化が必要ですよ」という話をしているのが注目される所でございます。

まあどう解釈するのかが何とも難しいのですけれども、あたくしめは「デフレ脱却の重要性を強調してやる気を見せた」+「政府に対するメッセージというか玉投げ」であると解釈してみましたがどうでしょうか。

・・・・・・・・とはいえ、まあ当然の如く残念な話ですが、決定会合に関する報道を見てもここら辺の話ってあんまりない(さすがに本職の皆様のレポートにはこの点を指摘する人はいますので、まあおまいらそういう人のレポートを読んでおけと思うのですが^^)わけで、まあ政府、というか政治サイドが自分たちの所に玉が飛んでいるという認識はねえわなと思うのでありまする。まあいつものクオリティなので驚きませんが。


○ドル特則の詳細決定

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120410a.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の制定等について

『4.貸付利率

貸付利率は、基本要領6.(1)の規定にかかわらず、貸付実行後、当初6か月間は、貸付の通知日における米ドルの6か月物LIBOR(英国銀行協会が公表するLondon InterBank Offered Rateをいう。以下同じ。)を適用し、それ以降返済期日までの間は、6か月経過時における米ドルの6か月物LIBORを適用する。

5.貸付金額
貸付金額は、貸付先の希望する額とする。ただし、その金額は、基本要領8.の規定にかかわらず、6.に定める貸付限度額および当該貸付先が差入れている共通担保の担保余裕額相当額を超えることはできない。

6.貸付限度額等
(1)貸付総額の上限は、基本要領9.(1)に定める貸付総額の上限とは別に、120億米ドルとする。

(2)貸付先毎の貸付額の上限は、基本要領9.(2)に定める貸付先毎の貸付額の上限とは別に、10億米ドルとする。

7.貸付受付期限

6.(4)に定める貸付限度額算出の根拠となる時点は、借り換えにかかるものを除き、平成26年3月31日以前に限る。

(附則)
本措置は、本日から実施し、平成30年6月30日をもって廃止する。』


てな感じで一部拾って引用しましたが、まあ要するに6か月LIBORで最長4年程度の貸出をしますよという話で、対象が外貨建ての投融資に関わるものという、大体3月会合で示された骨子にあるような内容。全体で120億ドルまでということで、現在の為替換算で概ね1兆円程度という話でございますな。

まあ以前政府の出した総合円高対策の日銀バージョンみたいなもんですが、日銀の場合はJBIC経由での貸出とかではなくて、金融機関相手の貸出になるので日銀的には金融期間相手のリスクを取っているという話ですし、そもそも共通担保を担保として取るので、まあ円建て担保でドル貸しますよ系の話ではありますわな。

特段どうという話でも無いようなあるようなという所ですが、一つ言えるのはこれで日銀が昔から持っているドル資産が財務省に移管とかしにくくなりましたねという所ですわな。


○何故か今回は宮尾審議委員が追加緩和提案見送り

声明文ですけど。

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。』

脚注ではこうですな。

『(注)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員。
反対:なし。』

・・・・・・・・宮尾審議委員は何で今回追加の資産購入提案をしなかったのか理解に苦しむ。



○総裁会見についてはテキスト出てから詳しく書きますが簡単に

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M296I26JTSEM01.html
日銀総裁:特に念入りに点検へ−次回の政策決定会合
更新日時: 2012/04/10 18:19 JST

『4月10日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は10日午後、定例記者会見で、27日の次回金融政策決定会合について、経済・物価の見通しを「特に念入りに点検し、そうした見通しに基づいて適切な金融政策を行っていきたい」と述べた。』(上記URLより)

ということで、今回の総裁会見のベンダーヘッドラインを見ておりますと、概ね「次回に〜」「次回に〜」の連発でありまして、まあ次回の政策決定会合に向けて点検しますよとか展望レポートは大事とか、普通に読むと次回の会合で何かそれらしいことをしましょうかねえというのを示唆する内容って感じですわな。

例えばブルームバーグ(プロフェッショナル版)の日銀関連のヘッドラインを一部だけ引用するとこんな感じである。ちなみに決定会合後の定例記者会見のエンバーゴが外れるのは16時30分でございます。

16:31 JBN *日銀総裁:次回会合では特に念入りに点検し適切に政策運営
16:32 JBN *日銀総裁:物価上昇1%めどに強力に金融政策を推進する
16:34 JBN *日銀総裁:次回会合の判断を予め予断持つのは慎む
16:34 JBN *日銀総裁:展望リポートは非常に大事

というような感じで、これを見てまあ債券先物は7銭位上がった(まあ誤差とも言えますけどね^^)のですが、英語のヘッドラインを見ますと(まあ正しくはロイターととか時事とかのヘッドラインも見ないといけない訳ですが)こんな感じ。

16:32 BN *SHIRAKAWA SAYS WILL TAKE APPROPRIATE POLICIES
16:32 BN *SHIRAKAWA : WILL CAREFULLY EXAMINE PRICE OUTLOOK AT NEXT MEETING
16:33 BN *SHIRAKAWA SAYS NO CHANGE TO EASING TO END DEFLATION

とかなんとかいう感じでして、日本語のヘッドラインで出てくるニュアンスだともう「次回が〜」の連呼なのですが、英語だとあんまりそういうニュアンスがヘッドラインでツタワランチ会長だったせいもありまして、ドル円市場を(債券先物もそうですよ)16時半前から目を皿のようにして見ておった訳ですが、会見公表前の水準が大体81円10銭近辺で、その後81円00銭近くまで下がったものの、結局はあまり動かずでおそらくニュース詳細が出た辺りでは81円20銭とかその辺りまで反応している、という感じでして、まあこれまた誤差ともいえる数字ではございますけれども、今回の総裁会見は特段台無し発言も無かったようで誠に結構。


○ということで市場の反応らしきものメモ

えーっとまあ昨日の市場ですけれども、決定会合の結果は12時09分に出た訳ですけれども、その前に何故か81円70銭とかにイントラデイで円安になっていたのですけれども、その後20銭程度円高に振れましてまあそうだろうなあとか思っておりましたら14時過ぎ位だったような気もしますが、まあ欧州勢がもさもさと起動する時間帯と思われる頃には81円30銭とか20銭とかになっておりましたなあという所でしたわな。

んでもって総裁会見に対する反応は上記の通りで、一瞬円高になりかけたものの、会見内容が伝わるとまあ誤差の範囲内で円安気味という感じではございましたという所ではないかと思います。

株価は思いっきり為替連動みたいな感じに見えました。まあ引け後にソニーだのシャープだのがお洒落な決算を出しやがりまして、おまけに欧州債務問題ガーのネタ復活で今日はあばばばばーの悪寒がしますけど、まあそれは本当は金融政策決定会合と関係ないのですが、ど〜せ鬼の首を取ったように言い出す人がいるんでしょうなあ〜というのに百万ドラクマ。

債券市場が一番ワケワカランチ会長だったのですが、上記のように昼休み中に結果が出た訳ですけれども、後場の寄り前にいきなり業者間スクリーンのビットがポコポコ叩かれて先物は前場から10銭位下で寄る有様。実はお友達から「何でこんなに売られてるんだよ〜」と電話を受けて最初債券じゃなくて為替の事だと思っていた位に寝ぼけたあたくしなのでございましたが、そもそもここから先の追加緩和って量的緩和とかの世界なんですから追加緩和が即長期金利低下につながるのかどうかって怪しいだろとか思う(瞬間芸では金利低下で反応するでしょうけれども中期的に見た場合に、って話ね)のでありまして、わけわかんねーとか思ってたらその後は引けに掛けて絶賛上昇ブルフラットとなって、まあ良く判らん反応ではございましたことですよ。


○ということで何か違う気がするのだが

先週末の米国雇用統計の流れに加えて欧州債務問題ガーとか言ってNYダウ様が今朝も絶賛下落という事で、NYではドル円が80円台で戻った訳ですが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M298Z56JTSE801.html
NY外為:円が5日続伸−FRB議長の景気認識受け−80円台

ちなみに9日の講演で示されたFRB議長の景気認識受けとか言ってますが、バーナンキ講演のテキストは昨日の東京時間の昼間には出ていましたので、それは単に後付の言い訳に過ぎないと思います(ちなみにバーナンキ講演を読んだらいきなり出落ちのようなお前が言うながあって吹いたのだがそのネタは今日は間に合いそうもないので割愛、内容的には金融監督に関わる話で、Financial Stability関連のもので、金融政策に関する話はスルーでした)けれども、まあ日銀会合と総裁会見の前後の動きを見たらこういう話になると思うのですが・・・・・


共同通信から。
http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012041001002626.html
NY円、80円台へ上伸 1カ月ぶり高値
2012/04/11 01:07 【共同通信】

『【ニューヨーク共同】10日のニューヨーク外国為替市場は日銀の追加緩和見送りを受けて円買いドル売りが先行し、円は一時、1ドル=80円85銭をつけて3月上旬以来、約1カ月ぶりの円高水準となった。円は対ユーロでも一時、105円台をつけ、約1カ月ぶりの高値となった』(上記URLより)

ロイターから。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83906U20120410
円上昇、日銀追加緩和見送りなどで=NY市場
2012年 04月 11日 06:22 JST

ということで、何かロイターと共同はこういう話をしているのですが、さすがのモーサテも今日は追加緩和見送りガーとかいう話してません(そもそも先ほどの総裁会見にあるように次回会合での追加緩和のようなものについて、それなりにサービス発言が出ている訳でございますし・・・・・・)次第で、たぶん決定会合前後および総裁会見前後の動きを見ますとそれ以外の要因で動いたんじゃネーノと思うのですけどねえ。

どうもロイターと共同は追加緩和煽り報道をする傾向にあるようで、まあ正直ロイターはベンダー代が高いのでブルームバーグとの2択を迫られたら当然のようにカットするから普段見ない(ので精神衛生には良いが悪態ネタに困る^^)のですけれども、共同はブルームバーグとかからヘッドラインが流れてくるので(-_-メ)。

http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012041001002264.html
日銀総裁、過度の緩和期待けん制 「物価情勢は確実に改善」
2012/04/10 19:02 【共同通信】

というか会見では「市場の細かい動きに一々対応するのは如何なものか」という事で、かつてアラン・ブラインダーFRB副議長が指摘していた「市場との対話は大切だが、市場との対話を重視しすぎると『自分の尾を追う犬』となってしまうリスクがある」(だいぶ意訳)というような話をしているのですが、このニュース最初共同がベンダーに流していたヘッドラインには「過度の」が抜けていまして、「日銀総裁、緩和期待をけん制」とかどう見てもお前それは違うだろうというヘッドラインを流していて盛大に画面に向かって突っ込んでしまったのはあたくしでございます。

あのですな、その追加緩和煽りと日銀は追加緩和に消極的という方向にバイアス掛ける報道って何考えてやっているのか知らんですけれども(というかだいたいわかるが)、アジビラ作成業じゃないんだからもっと淡々と報道して頂きたいと思うのですよね。

その反動であの筋の悪い日銀審議委員反対騒動とか日銀法改正のネタとかが飛び出してくるという環境つくりにも手を貸しているという点で言えば共同通信様におかれましては(以下猛烈に悪口雑言になるので自主規制)。


○これは予想通りのクオリティですが相変わらずヒドス

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M291QD0UQVI901.html
民主・デフレ脱却議連の宮崎氏:日銀の追加緩和見送りは「遺憾」

『4月10日(ブルームバーグ):民主党の宮崎岳志衆院議員は10日、日本銀行が同日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送ったことについて「誤った判断だ」との認識を示した。見送りが満場一致だったことに関しても「政策委員会の構成が不適切であることが裏付けられた」と指摘した。』(上記URLより、以下同様)

『追加緩和見送りについて  「大変、遺憾だ。誤った判断だと思っている。2月に行った緩和効果がはげ落ちようとしているわけだから、インフレのめどを設定した以上は、それを達成するためにここは緩和すべき場面だ。市場の期待を裏切るし、マーケットとの対話に完全に失敗している」』

・・・・・・まあ予想通りの反応なのでこんなもんでしょうとは思いますが、2月に行った緩和効果がはげ落ちようとしているとか、金融緩和の効果を株式市場と為替市場の短期的な値動きだけで判断されても困るのですけどねえ。大体からして株にしたって為替にしたって一義的に金融政策で動く訳では無くて、他にも色々なファクターで動くもので、足元では欧州債務問題のスペインへの再点火とか、年初来あまりにも調子が良すぎた米国経済指標の反動とかがあると思うのですが、それを捕まえて「金融緩和効果がはげおちようとしている」とか何なんでしょうかね。


そらまああたくしらは市場で飯食ってますから市場の動きで一々ああだこうだ言いますけれども、本来金融政策の効果というのは資産市場とかじゃなくて実体経済に対して波及させるものであって、しかもその効果っていうのは半年とか1年とか良く判らないけど時間的ラグをもって波及するもので、株価の動きを見て「緩和効果がはげおちる」とかムキーッとなるとかどんだけ近視眼なんだよというかどこの株屋の回し者だよと思う次第。大体からして最近出た経済指標だとCPIも上がったし景気ウォッチャー調査も上がっているんですけどその辺はスルーで株価と為替だけ見て効果ガーですかそうですか。

つーか、「市場の期待を裏切るし、マーケットとの対話に完全に失敗している」とか昨日の市場の反応のどこをどう見るとそういう結論になるのかさっぱり判らんのですけれども、勝手に市場を持ち出さないでくれよとか思いますわ。

為替が1円動いたとかで一々大騒ぎして追加金融緩和しろとか決定会合の度に言ってたらキリが無いにも程があるだろアホウとか思うのでございまして、まあ結局の所その辺のクレクレというよりは最早その筋の方のベンツに車ぶつけたかのような反応をするゆすりたかり的なのに一々対応してたらゆすりたかりが更にエスカレートするがなと思いますので、まあ淡々と次回に追加緩和のような物をするというので宜しいんじゃないですかねえと存じます次第でございます。

何か他にも悪態いう積りだったのですが忘れたので(アホです)今日はこんな感じで(^^)。






2012/04/10

お題「大体雑談で恐縮ですが」

金利の市場が今回の決定会合を全然ネタにしていないのにモーサテの為替と金利のコメントの人が注目ポイントを「日銀金融政策決定会合」としてるのは何ですねん。つーかお前ら勝手に注目するのは良いけどちったあ勉強しろよとか思うのですけどねえ。ま、さすがに散々悪態ついたのが聞こえたのかどうか知らんが、「今日何も無かったら円高株安で大変です」コメントが無かったのは少々進歩したわと思いましたがwww

そして公共放送の世論調査の内容を見てまた血圧ががががが。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120409/k10014322301000.html
↑こちらには書かれていませんが、維新の国政進出に「大いに期待20%」と「ある程度期待38%」で過半数とかいう数字が何ともはや・・・・

あ、あと貫録のクオリティにワロタ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120409/k10014327641000.html
鳩山氏“イランの発表はねつ造”
4月9日 23時35分



○オペ関連雑談

オペ関連のネタが色々とあったのにスルーしまくっていましたのでまとめてメモをしておきます。

・社債買入オペ貫録の札割れ

先週金曜の資産買入等基金による社債買入ですが・・・・・・

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120406.htm
社債等買入(資産買入等基金) 2,000 2012年4月12日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120406.htm
社債等買入(資産買入等基金) 772 772 0.000 0.003

ということで貫録の大幅札割れとなったのですが、前回の3月9日は2165億円の応札があったのでいきなりずいぶん減りましたなという感じでございますが、単に応札可能玉の問題か期初のせいなのかは良く判りませんが、それにしても前回対比で結構応札減りましたの。

でまあしつこく申し上げておりますように、このオペレーションに関しても残高は基本的に目標額としておいております関係上、札割れが続くとマズーな話でございまして、これが恒常的になるようですと、オペのオファー頻度を上げるしかありませんけど、それでも足りない場合は何等かの振替措置を取ることになるかどうかという話になろうかと思います。

まあそれで国債買入増やしたら喜ぶ人いるからそれはそれで目くらましに宜しいんじゃないですかねとか思いますけどにゃ。


・共通担保金利入札貫録の残高ゼロとか基金共通担保オペとか

先日ネタにした金利入札方式の共通担保オペですけれども、順調に(?)期落ちをロールしなかったのでめでたく先週水曜日に金利入札方式の残高ゼロと相成りましたけれども、足元では2月21日の国債償還要因に加え、年度末から年度初にかけての財政払い(交付税とか諸々の財政執行による)によって資金需給が余剰に振れて、3月前半に11兆円あった共通担保金利入札方式のオペ残がゼロになっても(その間に6か月物の固定金利オペが1.6兆円打たれているので実質的には足元ではオペ残が前月対比で大体10兆弱減ったイメージ)当座預金残高自体は3月前半よりも10兆円位増えておりますな。

つーことで、足元ではGCレートも多分0.10%をちょっと割る位が実力のようですし、昨日の2か月TBもほぼ0.10%水準(まあまともにロットを買いに行ったら0.10は買わせてくれないでしょ)という感じで、足元は資金余剰感ありありという流れ。

んでもって今後の基金による国債と短期国債買入の拡大が待っておりますので、今月はそのまま余剰で推移するので共通担保オペの金利入札は(もしかしたら国債決済期間短縮対応で新しくメニューに加えた本店オペ先日付方式の午前中オファーというのを事務周りの練習を兼ねて実施するかもしれませんけど)入れにくい状態が続くでしょうな。

つーかですな、資金の余剰感が強いので、共通担保の固定金利方式の方も中々こうあっぷあっぷでして、3月29日には6か月物のオペが8760億円応札とか素敵な事になっていましたが、先週金曜の3か月物オペも応札が9445億円とかになっていまして、これまたオペ残確保大丈夫ですかという感じですわな。

まあこちらに関しては金利入札方式オペの残高を絞ったりして(というかゼロにしてますが^^)何とか固定金利オペに誘導するようにしていますけれども、現実問題として資金余剰が溜まってくるとオペ残確保は中々大変ではないかと思います。まあ端的に言ってしまえばメガバンクさんとかに超過準備額を拡大して貰うしかやりようが無いと存じますが、それをやるとゆー事は基金オペに「ご協力」の札をという事に繋がりますが、基金オペの金利というのは最初の作り込みの時点で「固定金利」になっているので、間違って利下げのような事をすると「ご協力の札に対する背信行為」になるのがお洒落というものです(^^)。


・どうでも良い豆知識の整理(誰得豆知識ですが)

ちなみにどうでも良い豆知識ですけれども、ECBのLTROの場合は適用金利は実を言うと固定金利ではなくて「期中のMRO金利の平均」となっていまして、つまり期中に政策金利が変更になった場合、フルスライドでLTROの適用金利って変更になります。また、日銀の実施した施策の中で前回実施した企業金融支援特別オペについてはこれまた期中のコール誘導水準金利の平均となっていましたが、この固定金利オペは何故か期中固定金利に設定されています。

まあ固定金利にしておいた方が、いざ利上げ近しという話になった時に応札がわんさかやって来るという効果がありますし、逆に変動方式にしちゃいますと応札が全然来なくなって(特に長いもの)絶賛大札割れになるというのがあるのと、そもそも途中でコールの誘導目標をレンジにしているので元々の金利水準の設定が出来ませんがなという話でもある(補完当座預金金利にするという手はあるが、通常時は金利コリドアを作る関係上補完当座預金金利での貸出にしたらサービスレートにも程がある)という事で、まあ利下げの可能性を考えないで設定したんでしょうなあという所で。



更にどうでも良いですが、これ書くときに念の為調べた訳ですが。

2009年12月の固定金利オペ導入時にはこう決めたのですけれども・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0912a.pdf
の別紙

『ロ.固定金利方式
貸付日における誘導目標金利(本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準をいう。)を貸付利率とする方式。』

2010年10月5日の決定会合で包括緩和を実施してコールの誘導目標をレンジにした時にこのような特則を出しております。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2010/un1010a.pdf

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、当分の間、下記1.ないし3.の利率については、それぞれの規定にかかわらず、年0.1%とすることを決定しましたので、お知らせします。』

となっておりますので、まあ最初に決めていた時には想定外の事態になっていたんですねえというのが判るかと思われます(^^)。


・ということでまあ続いて雑談だが

しかしまあ何ですな、先ほど上の方でさらっと流した訳ですが、資金供給オペの残高(除く買入)が10兆円減っても日銀当座預金残高が10兆円増える、という位に資金需給ってぶれるものですし、大体からして財政の出入りって予算審議だの執行だのの関係でぶれる事もこれまたあったりしますし、更に昨年は震災関連での予備的資金需要によって超過準備が積みあがるという格好だった訳で、それに対して単月の当座預金残高のブレで日銀の供給姿勢ガーとか言ってる人たちちょっと来なさいという話ですわな。

いやまあ素人さんがその辺判りにくいというのはシャーナイナイでして、何せ先日の生活意識アンケートにありますように、「日銀のホームページを利用した事が無い」人が貫録の93.6%な訳ですからして(という事は1日何回も日銀のサイトを見ている、というかそもそもあたくしのPCではブラウザーのホームを日銀ページにしているので当たり前なのですが、そういうあたくしは変態中の変態ですかそうですか^^)、まあ別にそれはそれで良いのですが、そーゆー人たちにきちんとした話をしないといけない何とかスト(誰とは言わないけれども金融政策の話になると突如話の内容が無茶苦茶になる人のことですがね)の方が「金融引き締めをしたような収縮」とかいうのが有罪とゆー感じですわな。

大体からして昨年同時期の短期市場金利とか短期物の社債レートとか良く見ろやドアホウとか思う訳で(以下この前と同じ悪態になるので割愛)。


いずれにせよ国債の買入系はまあ何とでもなるでしょうし、短期国債に関してもそう常に0.10%割れ恒常化という事にもならないでしょう(とはいえ0.100%張り付きでしょうけれども)から何とかなるにせよ、足元の余剰感が高まると固定金利オペに関してはしんどいですし、社債とCPについては玉の関係でという面もあるので中々大変だろうなあとは思いまする。

以上誰得マニア雑談でした。


○その他ニュース等雑談

・ああ自民党

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120406/stt12040601150000-n1.htm
生活保護削減、防災に200兆円集中投資 自民次期衆院選マニフェスト概要判明
2012.4.6 01:14

えーっと、防災に200兆円集中投資って財源はどこにあるんでしょうか?????
もしかして日銀引き受けでプリンティングマネーでもするってんでしょうか?????

あのね、プリンティングマネーなんて一回やったら歯止め効かなくなるでしょという話で、プリンティングマネーを止めるなんて不人気な施策を民主主義国家で選挙に負けたくない政治家がやりたがるわけがないから、仮に法律で縛ったって次の政権党がひっくり返したらそれまでの話でしょと思うのですけれども、どうやってプリンティングマネーの歯止めをかけるつもりなんでちゅかねえ????????

いやね、民主党のウソツキ財源マニフェストも大概に酷かったですけれども、あれは一応無駄削減だの何だの言ってるだけ脳味噌の内容としては疑いがあるけれども、財政を考えるという意味での意識はありましたわなあ(現状認識は無茶苦茶でしたけれども)という事で、河野さんの日銀審議委員反対の時と同様に野党民主党がやっていた事の劣化コピー、というのも民主党に悪い位に筋が極端に悪化している自民党って何なんでしょと思う訳よ。

しかし何だか良く判りませんが、公共放送では自民党のマニフェストに関してこの200兆円の話が出ていないのが(テレビでも同様)何なんでしょという感じです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120409/k10014319831000.html
自民 政権公約の骨子を発表
4月9日 17時43分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120410/n64281210000.html
自民 消費税率10%政権公約
4月10日 6時7分

まあいずれにせよ、ちょっと自民党の財金関連の議員様たちが暴走し過ぎじゃないですかねえと思う次第で、日銀審議委員人事の一件で金融(というかまあ基本は金利系になるとは思いますが)市場関係者の支持を相当暴落させたと思われますが、更にこの200兆円云々は何ぼなんでもちょっとねえと思いますが大丈夫か自由民主党。


・人のふんどしシリーズ

hamachan先生の所から

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-5697.html
各論なき総論哲学者の末路

で、まあ確かにと思いながら読んだのですが一部引用しますと。

『いうまでもなく、圧倒的に多くのことについては横町のご隠居程度の見識しかない大衆食堂の皆さんにも、程度の差はあれ、これはという専門分野はある。』

『ほかのことについては軽薄なマスコミの掻き立てることにコロリと逝っちゃう一般大衆でも、この問題については新聞のいうことは間違ってるぞ、とひとしきり人に説教できるような分野がある。』

『きょろきょろするなよ、大学のセンセたち、そういう専門を持ってる大衆って、あんたらのことでもあるんだよ。そしてまた、世間で実務やってる人々のことでもあるし、趣味の世界の場合もある。要はみんな、なにがしか(というより相当程度に)大衆なんだが、なにがしか(どんなに少なくとも)専門家であり、その面においてはポピュリズムに逝かれる(周りの)大衆たちを哀れみのまなざしで見る局面てものもあるのだ。』

『誰にもこだわりの「各論」てのがある。「総論」に巻き取られると不愉快になる「各論」が。』

『大事なのは、そういう「おおむね大衆ときどき専門家」な人々の「民意」をどこでもってつかまえるべきなのか、ってこと。』

『レベルの低い「民意」をすくい取られた大衆が、しかし自分の専門分野について「とはいえ、こいつはおかしいんじゃないか」と感じるその違和感をきちんと言語化するのが、言葉を商売道具にして生計を立てている連中の最低限の義務だろうに。』

『ポピュリズムの反対はエリート主義ではない。大衆の中の「各論」を語れる専門家的部分をうまく組織して、俗情溢れる低劣な「総論」を抑えるようにすることこそが、今日の高度大衆社会に唯一可能な道筋のはずだ。』


・・・・・まあ全文読んでちょという感じですが、あたくしも「各論無き総論哲学者」(まあ学者という知能が無いのでその時点でアレですが^^)にならないようにしたいと思いますですが、こと金融に関してもまあ本当にテキトーな言説が横行したりする次第で、あたくしもそのテキトーな言説の一人にならないように自戒したいと(別にこれ商売でやってる訳では無いですし、趣味のコーナーではありますが、そうは言ってもネット上に載せるというのは世間に向けて公言する事ですから)思いますです、はい。








2012/04/09

お題「3月FOMC議事要旨雑談とその他の雑談」

金曜日は書くもの書いて満足してFTP回すの忘れておりました(しかもあとは「送信」すれば終わりという状態にまでしている所がアホス)。お越しになられた皆様どうもすいません(金曜の文はこちらの文章の下の方にございまする)。

トラストミーワロタ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120408/k10014291261000.html

『これに対してサレヒ外相は、「そもそもイランには核兵器の開発を行なう意図はない。信頼してほしい」と述べ、改めて核兵器開発の疑惑を否定しました。』(上記URLより)

しかし外野は何か日銀の金融政策ガーとか言うのは結構ですが、何でもいいから緩和拡大しろというのが市場との対話とか言われると何ですかねという感じですけどねえ。つーか外国人投資家外国人投資家と何でそう媚びるねんとか思うのは円金利の世界がドメドメローカルマーケットの井の中の蛙だからですかそうですか。

○決定会合プレビューとか審議委員人事雑談の続き

金曜に書いたので大体まあそんな感じなのですが、今回の決定会合で何らかの追加緩和みたいなのをするとさすがにアホウ政治家の皆様が「日銀に政治的圧力掛けたら大勝利」と更に調子に乗るのが明らかにも程がありますので、まあ普通に考えて今回は何もなしというか下手に追加緩和すると信認問題になりますので現状維持。まあドル特則の内容決定だけでしょう。

で、これまた金曜にも申し上げましたが、4月27日の展望レポートで緩和のおかわりのような感じで基金国債買入残高目標を10兆円増やしつつ買入の期間を半年延長するのかねとか思ったのですけれども、あのアホウ政治家の大騒ぎで逆に日銀やりにくくなってしまったという感じはする(同じ理屈で政治家が調子に乗るから)のでして、それでしたら10月の展望レポートで見通し期間が1年延びる所で・・・・・という話ですが、まあそこまで待つのもねえという感じです。

まー雇用統計がこれまた測ったようにうんこな結果が出て追加緩和期待がまた米国に出てきそうという流れでございますので、その辺の空気読みながら4月27日に「展望レポートで点検した結果物価安定の理解実現の為には時間がやや掛かるようなので買入期間を半年延長し、その結果として残高は来年の6月末には国債10兆増えますよ」とかまあそんな話で。

でまあ審議委員人事に関してはかんべえさんがこんな話を。
http://tameike.net/comments.htm(<4月4日>(水)の所をご覧ください)

勝手に引用させて頂きまして恐縮ですが、以下引用致します。

○河野さんは非常にまともなエコノミストで、業界内の評判もいい。私から見れば、リフレ論に対しても充分に理解がある人だと思う。ところが自民党がダメ出しをしてしまった。これでは2008年の民主党のやり方と変わらない。というか、政策の中身に口を出している分だけ劣化コピーといえる。日銀の審議委員というのは、本質的に楽しい仕事ではないのだから、こんなことを続けていると、まともな人は誰も引き受けなくなってしまうのではないか。既に少なからぬ経済学者が、「こんなことに巻き込まれるのは御免被る」というモードである。

○で、もう一人の伊藤忠相談役、渡辺康平氏がさらにお気の毒なのである。3月23日に、日経がこの人事を「抜いた」(ちなみにネット上では、この記事はもう消されている)。で、2008年にゴタゴタがあった際に、「事前に漏れた人事はダメ」という合意が与野党間にできたのだそうだ。つまり「日経に抜かれたからつぶされた」人事なのである。そんな記事、載せるなよ。とりあえず、しばらく日経さんは伊藤忠商事にはお出入り禁止でしょう。こんな話、日経にはきっと出ないと思うぞ。

(『かんべえの不規則発言』2012年4月4日より一部引用)

あたくしが連日湯気ポッポ―で悪態書いて金曜の更新忘れで血圧上昇で倒れたのではないかと言う勢いでもあったりするのと違いまして、冷静かつきっちりとポイントを押さえるかんべえさんさすがです。参りました。

ちなみに、これは多分ネットとかで不特定多数向けアップされるような物では無いリサーチレポートなので引用はしませんが、河野龍太郎さんご自身が審議委員否決を受けましてレポートを書いておられます(金曜の午後に配信されていると思います)ので必読。しかし河野さんも書いておられますが(文章の意味が取りにくいと思うので追記しました。でそこをフォントを小さくしています)河野さんて別に「インフレ目標に反対」している訳では無くて、あくまでもリジッドなインフレ目標に反対であり、フレキシブルインフレターゲットは大賛成しているのでして、その河野さんの主張を思いっきり曲解して「インフレ目標に反対」だから審議委員に不適切とか言い出した山本幸三先生って、「前提となる根拠がおかしい状態で問題追及をした人」という意味では永田偽メール事件とやってることが大差ない、というよりも人事一本潰しているだけに永田偽メールよりも酷いわと存じます次第で山本先生におかれましては(以下罵詈雑言と受け止められる可能性がある表現を含むかもしれませんので謹んで割愛)。


どうもね、血圧下げるためには悪態が無いといかんですわorz


○気を取り直して冷静に(?)FOMC議事要旨から少々

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120313.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120313.pdf

・読むには読むがネタにしない『Staff Review of the Financial Situation』の所から少々

『Staff Review of the Financial Situation』の部分というのは基本的に読むには読むのですけれども、基本的にはややトーンが強めになった(経済指標がそうなのですからまあ当然ですが)という所ですが、そこまで激しく強い話でも無かったりします。

で、その中でほほーと思ったのは「家計資産」に関するこんな所。

『Households' real disposable income increased, on balance, in December and January as labor earnings rose solidly. Moreover, households' net worth grew in the fourth quarter of last year and likely was boosted further by gains in equity values thus far this year. 』

という事で、労働市場の改善で家計の実質所得が改善しているという話に加えて、「更に」と来て株価の上昇が家計のネット資産が拡大している事を指摘するのが米国の家計資産構造を良く示しているなあと毎度思うのであります。

基本的には比較的明るめの話が多いという所でしょうか。まあ手放しで喜んでいるという雰囲気ではないですが、全般的に今回のミニュット読んでいてこの連銀スタッフによる景気状況に関する話の所は割と明るめのトーンというのが印象的でした。


・ついでに『Staff Economic Outlook』から少々

その前の『Staff Review of the Financial Situation』も色々とありますが、まあこちらは引用するまでも無く大体内容は皆さんの想像の範囲内の話だと思いますので引用割愛して連銀スタッフの経済見通しから。

『In the economic projection prepared for the March FOMC meeting, the staff revised up its near-term forecast for real GDP growth a little.』

手前のGDP見通しを若干引き上げたとのことでその次がその背景。

『Although the recent data on aggregate spending were, on balance, about in line with the staff's expectations at the time of the previous forecast, indicators of labor market conditions and production improved somewhat more than the staff had anticipated. In addition, the decline in the unemployment rate over the past year was larger than what seemed consistent with the modest reported rate of real GDP growth.』

例によってGDPの成長の緩やかさに対して失業の改善がやや良いという、オークン則に関する論点がありますなあとか思いつつ。

『Against this backdrop, the staff reduced its estimate of the level of potential output, yielding a measure of the current output gap that was a little narrower and better aligned with the staff's estimate of labor market slack.』

ということで経済のスラックが従来の予想よりもやや小さいという可能性をかんがみ、潜在的な生産に関しての推計を引き下げた(つまり生産ギャップの推計を小さくしたという事ですね)との事でこれはほほーという感じです。

つまり、かねてより「経済のスラックが中長期的な物価上昇を抑制し、労働市場の改善を遅らせる」というのがFRBの基本的なビューであった訳でして、その中でこのような見直しが行われる、というのはまあその基本的なビューに関わる部分でもあるのでして、そういう意味では重要は重要。ただしこのパラグラフの最後の部分で「そうは言っても生産市場と労働市場大きなスラックが云々」という話をしておりますので、今回の変化はまあ小さな変化ではあるという感じなのでしょうけれども・・・・・・

『In its March forecast, the staff's projection for real GDP growth over the medium term was somewhat higher than the one presented in January, mostly reflecting an improved outlook for economic activity abroad, a lower foreign exchange value for the dollar, and a higher projected path of equity prices.』

中期的な実質GDP成長見通しも若干引き上げていまして、その背景には海外経済活動がより強くなっている事や、ドル価格が下がっていること(って対ユーロの話ですかね)と、株価のパスがより高くなっていることと来ましたか。

『Nevertheless, the staff continued to forecast that real GDP growth would pick up only gradually in 2012 and 2013, supported by accommodative monetary policy, easing credit conditions, and improvements in consumer and business sentiment.』

とはいえ2012年と2013年の成長に関しては緩やかなものに留まる見通しと。

『The wide margin of slack in product and labor markets was expected to decrease gradually over the projection period, but the unemployment rate was expected to remain elevated at the end of 2013.』

つーことで、さっきの所で生産ギャップの推計の話をしていますが、まあ基本的な話は引き続き「生産市場と労働市場の大きなスラックは見通し期間において徐々に縮小すると期待されるものの、2013年終わりまで失業率は高い状態が続くものと見込まれる」という部分はまあ相変わらずでございます。

インフレに関してはその次。

『The staff also revised up its forecast for inflation a bit compared with the projection prepared for the January FOMC meeting, reflecting recent data indicating higher paths for the prices of oil, other commodities, and imports, along with a somewhat narrower margin of economic slack in the March forecast.』

若干のインフレ見通し引き上げには石油および商品価格と輸入価格、それに加えて先ほどの中にもあったように「経済のスラックに関する推計を若干引き下げた事によって」というのがあるようで。

『However, with energy prices expected to level out in the second half of this year, substantial resource slack persisting over the forecast period, and stable long-run inflation expectations, the staff continued to project that inflation would be subdued in 2012 and 2013.』

とはいえ、その引き下げたスラックの推計と言いましても、引き続きこのように「かなりの資源のスラックが見通し期間中には依然として残り」という話ですので、まあインフレ見通しに関しては若干引きあがったとは言え「2012年と2013年は抑制された状態が続くと予想する」となっていますにゃ。


・失業の見通しに関する変化キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー

今回のFOMC議事要旨の一番の見どころは『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の失業に関する表現です。ちなみにこの部分の話は基本的に連銀スタッフの現状認識と見通しからあまり変わった話は無いのですが、失業に関する表現が前回と大きくニュアンスが異なっているのがキタコレという所です。

『With respect to the economic outlook, participants generally saw the intermeeting news as suggesting that economic growth over coming quarters would continue to be moderate and that the unemployment rate would decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』

というのが今回の表現ですが、1月はどうなっていたかと言いますと・・・・・・

『With respect to the economic outlook, participants generally anticipated that economic growth over coming quarters would be modest and, consequently, expected that the unemployment rate would decline only gradually. 』(1月FOMC議事要旨より)

となっていまして、(まあこれFOMC声明文でも実は微妙に表現が違っていたのでそういう意味では後追い確認でもあるのですが・・・・・)1月時点では「失業率は極めて緩やかにしか低下しないと予想する」という表現になっていますが、今回は「失業率は徐々に低下して、デュアルマンデートに整合的な水準に向かっていくでしょう」という表現になっていまして、思いっきりこの部分が上方修正されていますというのがキタコレなのですよ。

ここの所は声明文での表現はこうなっていました。

『The Committee expects moderate economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(3月声明文)

『The Committee expects economic growth over coming quarters to be modest and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(1月声明文)

まあこの声明文比較でも判りますっちゃあ判りますのですけれども、議事要旨での表現の方が判りやすいという感じでありまして、まあキタコレと言った所でございましょう。

ということで簡単ではございましたがこんな所で。




2012/04/06

お題「日銀生活意識アンケート/決定会合プレビュー雑談」

まあ再三注意されている喫煙やらかして鉄道運行止める助役はトンデモネエバカタレのクソだが(最低でも降格+停職相当に思えるけど大阪市の服務規程知らないから良く判らん)、この助役懲戒免職するなら永田メール事件レベルの事をやらかして濡れ衣追及をした議員は当然議員辞職ですよねえ。

・・・・つーか「法的に問題が有るかも知れないが」ってどう見ても解雇権の濫用です本当にありがとうございましたですし、自治体首長が法秩序の破壊を前提に話をするとか紅衛兵というよりは中世暗黒時代並みですな。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120405-OYT1T00503.htm


○生活意識アンケート

一昨日出ていたのですが(汗)
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1204.pdf

『』つけるとうっとうしいので引用しますが以下『』をつけません。ちなみに表抜きのQ&Aは16ページ以降にございます。

・先行きの景況感が若干改善とな

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い0.1 ( 0.2 )
2 どちらかと言えば、良い1.2 ( 1.3 )
3 どちらとも言えない17.0 ( 14.9 )
4 どちらかと言えば、悪い52.5 ( 52.8 )
5 悪い29.0 ( 30.4 )

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる6.7 ( 5.2 )
2 変わらない55.9 ( 53.3 )
3 悪くなる37.1 ( 41.1 )

()が前回調査の数字ですが、現状認識に関してやや改善・・・・と言っても「悪い」系が「どちらとも言えない」に昇格しただけなので大した改善とは言い難いものがありますし、先行きに関しても単に「悪くなる」が減った程度というのが残念な所ですが、まあ悪くなるよりはマシ。


・まあこのアンケートの見どころは物価に関する部分である

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった6.6 ( 5.8 )
2 少し上がった41.4 ( 40.9 )
3 ほとんど変わらない39.0 ( 39.2 )
4 少し下がった11.8 ( 12.1 )
5 かなり下がった0.7 ( 1.2 )

Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ2.0 ( 1.2 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ84.1 ( 85.3 )
3 どちらとも言えない13.1 ( 13.2 )

Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ28.8 ( 35.3 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ29.9 ( 27.3 )
3 どちらとも言えない39.9 ( 36.7 )

ということで、まあこれは既に本職の方も指摘していましたが、物価が下がったと答えた人の中で「物価が下がったことが好ましいことだ」と答えた割合が6.5ポイント低下しているのはまあこら良い傾向でもありますなあと思われる次第で、これだけデフレ脱却がどうのこうのという話がそこらに広がっている中で、やっとデフレケシカランというのが一般ピープルの人口に膾炙してきたというのは結構な事ではございますなあと存じます訳で、この辺りはリフレ政策どうのこうの言ってる方々の宣伝も効果を表しているんじゃないかと思いますけどね(^^)。

とは言いましても、物価が上がった方の「困った事だ」の方は相も変わらずの有様でございまして、そらまあ自分の生活での話とマクロ的に好ましい話は違いますからというのはありますけれども、インフレフォビアの方が相変わらずの中でさて現在のヘドニック効きまくりのCPIが1%だの2%だの上昇した時に国民の皆様は何を言い出すのやらというのがテラオソロシスではございます。


・更に物価のアンケートより

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値:+3.4 ( +3.2 )
中央値:+0.5 ( +0.5 )


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.0 ( +3.6 )
中央値:+2.0 ( +2.0 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.3 ( +4.0 )
中央値:+2.5 ( +2.0 )

一応先行きの物価の上昇予想については引き上げになっていますが、まあよくよく考えてみますと足元までの物価上昇の認識が平均値で+3.4なのですから先行きの+4.3ったって足元の部分をほぼゼロに補正すると先行きが+1.0程度で、基本的にこれが高めに出てくるという傾向を勘案するとまあそんなに高くないですね、という話になるんでしょうな、残念無念。


・日銀のホームページに関する回答とかに泣いた

20ページにこんなのがありました(^^)。

以降のQ21〜23は日本銀行の広報活動に関する質問です。

(注)今回特別に調査。なお、3月および9月調査ではその時々の情勢を踏まえながら個別のテーマに関する調査項目を設定しています。

Q21.日本銀行では、日本銀行の政策や業務などについて多くの方々に知っていただくために、様々な広報・PR活動を行っています。日本銀行が行っている情報発信や広報・PR活動のうち、ご存知のものはありますか。【複数回答】

1日本銀行ホームページによる情報発信 9.5
2日本銀行の政策・業務などに関する新聞・TV・インターネットなどを通じた報道 26.9
3総裁・副総裁・審議委員による記者会見・講演 21.8
4各種統計の公表 15.8
5各種調査レポートの公表 6.7
6日本銀行本支店における店内見学 3.8
7季刊広報誌「にちぎん」の発行 4.7
8広報パンフレットの作成・配布 2.2
9貨幣博物館(日本銀行本店)や金融資料館(日本銀行旧小樽支店)における展示 7.6
10日本銀行本支店における様々なイベント(親子見学会、特別展示、日銀グランプリなど) 2.1
11政策や業務に対する幅広い意見の聴き取り 2.4
12いずれも知らない 44.7
13その他 1.2

>いずれも知らない 44.7
>いずれも知らない 44.7
>いずれも知らない 44.7

。・゚・(ノД`)

Q22.日本銀行では、インターネットのホームページを通じて金融や経済に関する様々な情報を日々発信しています。これまで日本銀行のホームページをご利用いただいたことがありますか。

1よく利用する(平均月1回以上) 0.0
2利用したことがある 5.2
3利用したことはない 93.6

>利用したことはない 93.6
>利用したことはない 93.6
>利用したことはない 93.6

(;∀;)イイハナシダナー

Q22-d.(Q22で3「利用したことはない」と答えた方へ)これまで日本銀行のホームページをご利用にならなかった理由は次のうちどれですか。【複数回答】

1日本銀行や金融・お金のことについて関心がないから 20.7
2ホームページでどのような情報が得られるのかを知らないから 33.5
3新聞・TV・インターネットなどの報道から得られる情報で十分だから 31.4
4その他 4.3
5インターネットを利用しないから 25.2

>インターネットを利用しないから 25.2
>インターネットを利用しないから 25.2
>インターネットを利用しないから 25.2

ちょwwwwwどういうサンプルなんですかとかつい思ってしまうのですが、世の中的にはこんなもんなんですか、あたくしも趣味で金融政策ストーカーとかかなり浮世離れしている人間ですので良く判らんのだが、まあこの調査のサンプルが金融に関心のなさそうな人になっているというのは把握した。

まあいずれにせよ広報担当涙目のアンケート結果ではございますわな。


つーことで、最後のコーナーは余談ですけど、まあ今回のアンケートでは「デフレはケシカラン」というのがようやっと定着しつつある兆候が見えますなあというのが収穫ですが、一方でインフレフォビアは相変わらずだし、先行きの物価見通しに関してもそんなに大きな変化は見受けられず、やや上昇はしたものの、中長期的に望ましい水準にCPIベースの出来上がりで成る為にはちょっと厳しいんじゃないですかねえというようなお話なんですかね、よー知らんが。


○審議委員が欠員ですなあ&決定会合プレビュー

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120405a.htm/
審議委員の退任について

『中村清次政策委員会審議委員および亀崎英敏政策委員会審議委員は、4月4日任期満了により退任しました。』

ということで退任した後任はまだ決まっていないというのはご案内の通りでございまして、まあ連日悪態ついておりました通りでございますが、これでまあ当分7名体制になるという事ですな。どう見たってあんな言い方で否決されたら後任人事の人選そのものが大変になってくるわなと思われます。

んでもってそういや悪態の限りを尽くした(という程でも無くてもっと悪態を書こうと思えば書けない事も無いけれどもインターネットは公共の場所なんでまあそこは節度を持ってですなあとかお前が言うなですかそうですかあっはっは)訳ですが、よくよく考えたら来週の月曜火曜は4月決定会合第一弾だったのでプレビューでも。


んーっとですね、今回については前回検討を指示したドル特則貸出1兆円枠に関する具体的な施策が決定される、というのがは普通に予測可能でございますが、それ以外に何かあるかというとこれはまあ難しい罠と思います。

大体からしてですな、ここまで直球ストレートに政策委員人事を盾にして「金融緩和しろ」プレッシャーを国会の方がしてくる、しかも野党から、というような事をやった直後に追加金融緩和とかしたらそれは中央銀行が議会野党(ただし片方の院で過半数確保中)からの政治的圧力に負けて金融緩和したというストーリーがあからさまになり過ぎじゃろと思う次第でありまして、逆に追加緩和しにくくなったじゃねえかヴォケと思うのでございます。

って話を書くの忘れたなあとか昨日思っていたら、ブルームバーグで「Political Pressure on BOJ May Backfire, Capital Economics Says」って記事があって(ちなみに昨日の9:05の配信記事です)おお先に言われてしまったわとか思ったのですが、ネット版には記事が無かったのが残念無念で引用できませんでしたが、「政治的な圧力は早期の追加緩和に対して裏目に出るだろうとCapital Economics社は指摘している」と記事が結んであって、いやまあそう考えるだろ海外だってと思うのでございました。

ちなみにですな、2月の金融政策枠組みをそのままロジカルに考えると、4月27日の日銀展望レポート公表の時に先行きの経済物価見通しを点検した結果、「中長期的な物価安定の目途」の達成までの時間が依然として掛かるという判断に至った結果として、今年の末まで実施することにしている資産買入等基金の買入等期間の延長を行うのが適切という風になって、基金の買入期間を半年延長して2013年6月までにして、その間に国債買入の現状のペースを維持すると6か月で9兆円(1.5兆円×6カ月)積み上げられるのですから、そこに1兆円おまけをして国債買入を10兆円拡大する、というのがまあとりあえず普通の流れかなあとか思っていたのですけれども、こうまで露骨に追加金融緩和しろ圧力を掛けて議決にまで反映させる(だからこそ前回の民主党の反対以上に今回の自民・公明(みんなの党はそもそも評価対象外なのでどうでも良い)両党の反対は問題が多いというか政権担当能力に疑問を抱かざるを得ない行動という話なんですけどね)とかされた直後に追加緩和するのも何だかなあという感じはせんでもない。

なお、ロジカルにとか申し上げましたが、景気判断的に言えば追加金融緩和を4月にする必然性は1ミリも無いという点については念の為申し上げておきます。


○時間が無いのでメモ、というか後で読む

BOEは現状維持
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/040.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £325 billion

一昨日ですがECBも現状維持、出口政策は時期尚早という話も

http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120404.en.html

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.00%, 1.75% and 0.25% respectively.』


http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120404.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 April 2012

Q&A付もとっとと出てくれたので週末読みます。





2012/04/05

お題「世に悪態の種は尽きまじとな/一応相場俺様備忘メモ」

初音ミク風に言うと「自民党が止まらない」って所ですなorz

○いまどきリジッドなインフレ目標に中銀総裁の解任権セットとかorz

昨日の10時半にブルームバーグニュース(ネット版ではなくてプロ向けの方ね)でこの件のヘッドラインが出たのとほぼ同時に株価指数先物が一気に1万円割れとなったのは何ぼなんでもただの偶然だと思いますけど、為替も債券も何もなかった中で株価指数先物(と株価指数)だけがスココーンと下げたのは何だったのか(・・?)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1XM2F6TTDS001.html
自民党:政府が物価変動率目標定め日銀に指示−日銀法改正案原案
更新日時: 2012/04/04 10:42 JST

『4月4日(ブルームバーグ):自民党は4日午前の財務金融部会で、日銀法改正案原案を公表した。原案は、政府が物価変動率目標を定めて、日銀に指示し、物価変動が目標と著しく異なった場合には内閣に対し正副総裁の解任権を与えることなどを盛り込んだ。部会は報道陣に公開された。』(上記URLより)

・・・・・・・orz

まあ報道ベースの話だけで悪態つくのも何ですが、まあ大体この辺の人たちの従来からの発言から内容は想像出来る次第なのですが、この「物価変動が目標と著しく異なった場合は」という辺りにリジッドなインフレ目標の香りを感じる訳でして(だいたいこの人たちは「裁量的な金融政策はケシカラン」という話が多いので想像はつく)、それでしかも「正副総裁解任権」とかこらまた随分とリジッドなインフレ目標ですねという所で。

でまあ皆様ご案内のように、BOEは2年以上に渡ってインフレ目標を逸脱した状態が続き、FRBだってデュアルマンデートの片方の失業率はこれまた2年どころではなく高止まりしており、FRBの失業率見通しも2014年とかその先というようなタイムホライズンでやっとマンデートに近い水準が見通せるかどうか、というような物を出しておられる、というような世界の状況の中でありまして、世界的にインフレ目標政策と言われるものが、「物価を目標に向けて短期的に合わせに行く」というよりは「金融政策運営の説明として使い、実際問題としては経済の諸条件を勘案して政策を運営する」というような流れになっている中で、ガチガチのインフレ目標を設定するわ正副総裁の解任権を与えるわで、しかもそのインフレ目標がその時々の政権の都合でホイホイ変わる可能性があるとか、こらまた随分斜め上というか時代錯誤というか何だかなという話ですなあ。

ま、その政府がどのような手続きで物価変動率目標を定めるのかとか、その逸脱をどう認定するのかとか、どういう場合に解任権が発動されるのかとか、この記事だけだと良く判らんですけれども、まあ世界的に主要先進国の金融政策の枠組みが「中長期的にインフレを目標値に合わせるようにするという政策運営という形での金融政策の説明」という流れになる中で、今さら時計の針を戻すようなリジッドなインフレ目標設定な上に、どこのハンガリーだよというような解任権セットとか、LDPが金融政策に対してそういう認識ですよとか海外に報道されたりして益々政権取る気が無いのでしょうか(あるいは政権取ったら日本はG7じゃなくなってアジアのエマージング国家になりますよ宣言というか)っつー所ですな。

#ご参考→http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/news/2012/120307d.html

LDPが政権取ったらいつマネープリンティング始めるか判らんですよ宣言を海外にも行うというよな流れになって良いのかねと存じますけどオラシラネ。


そういえばモーサテ見てたら自民党の茂木政調会長も河野さんに対して「日銀の審議委員として全般的な資質に問題がある」というコメントをしているという画像を拝見いたしましたが、つまりLDP様におかれましては債券市場で高評価を受けている債券エコノミストの方は「政策運営の一環を担うことに全般的な資質として問題がある」とお話になられた、という風に理解する次第でございまして、そんなに債券市場がケシカランならケシカランでもそらまあそういうお考えという事のようでございますが、あんたらが政策実行するのに必要な国債消化するのに債券市場が必要なんじゃないですかと思うんですけど、自民党様におかれましては政権の座に就かれるにおきましては国債消化なんぞ気にしないで政策を実行して頂けると斯様仰せな訳ですね、まあ頑張って下さいな。それとも国債全部中央銀行に引き受けさせて爆発的なプリンティングマネーを実施して財政大インフレを起こして国家債務問題をチャラにしようという深慮遠謀ですかさすが自民党の皆様は考えることが深いですなあ(棒読み)という所でしょうかねえ。

ま、メディアは面白がって政治圧力がどうのこうのといういつもの報道しかしていないようですが、ここもとの一連の流れって前回の民主党による馬鹿騒動からレベルが1枚も2枚も斜め上の問題を孕んでいると少なくとも金利市場の人間としては認識するのが多分一般的な感覚じゃないかと思う次第でございまして、こらまあ金利関係の人たちによる自民党の支持率は大暴落でござるの巻だと存じますけどね、つーかこの状態の自民党だと金融財政問題に関して危険過ぎ(失敗したら取り返しのつかない事になるというリスクが高いという意味です)だわなと存じますけどねえ、金利市場従事者的な感覚からすると。

・・・・・などと悪態を並べておりますが、上記URL先だとあっさり味の記事になっていますが、ブルームバーグのプロ向けの記事の方だと同じ自民党でも甘利さんが「正副総裁解任権はやり過ぎじゃないか」みたいな話をしているというようなことが伝わって来ておりまして、まあ自民党自体がこれで一枚岩という話でも無いのでしょうが、そもそもこの財政金融部会長の西村さんがネクスト財務大臣とやらになっておられますし、政調会長もさっきのような有様という状態で、政権から離れて期間が長くなって地位が人を作るじゃないですけれども、河野太郎先生のようなアレとか、まあ声の大きいアレな方が目立つようになってすっかり野党が板についてこられましたな。もうこのまま万年野党になってろと。


○あら日経もこの記事っすか

http://www.nikkei.com/access/article/g=96959996889DE6E2E3E7E0E4E0E2E2E6E2E6E0E2E3E09797E0E2E2E2
追加緩和後にマネー急減 「不十分?」外国人が注目 日銀「震災後の反動」
2012/4/4付 情報元 日本経済新聞 朝刊

『マネーの量は市中に出回るお金(紙幣と硬貨)と金融機関が日銀に預ける当座預金残高の合計であるマネタリーベースで見る。3月中の平均残高は前年同月比0.2%減った。これは量的緩和解除の影響で最後にマイナスを記録した2008年8月以来(以下は有料会員記事なので割愛)』(上記URLより)

マネタリーベースは確かにこうなっておりますが・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1203.pdf

そもそも昨年の3月は東日本大震災とその後の停電だのどこぞのメガバンクのシステム障害だのというような色々な件の合わせ技によって予備的資金需要が物凄い勢いで拡大し、それに対応するために日銀もバンバン資金供給オペを打ち込んだので、その前の震災発生までは当座預金残高が18兆円前後で推移していたものが、14日に25.6兆円、17日に31.4兆円、22日には国債償還要因もあって41.6兆円と拡大した訳でして、それが減ったから引き締めとか何じゃそらアホかという感じですし、じゃあその間に円安が爆発的に進行したんですかとご質問申し上げたい次第。

現在は予備的資金需要も無くて金融市場の緊張も国内には無いという中で今日の見込みで当座預金残高が35兆円に到達するという事で、短期金融市場の資金余剰感は全然違う(昨日の3か月TB入札は平均で預金ファシリティを下回る0.10%割れですけれども、昨年の同時期の3か月TBは0.105%レベルです。2年国債の金利は昨年同時期の0.205%レベルに対して足元では0.115%ですがな)のですけれども、おまいら日米2年金利差がどうのこうのとかついこの前まで言って置きながら急に3月になって前年比の当座預金残高がどうのこうのとかお前は何を言ってるだ(アスキーアート割愛^^)という所でございます。

つーかマイナスになったら円高になるならその前延々とプラスの時に円高傾向になって居なかったのかよオラオラオラという感じでございまして、まあ上記URL先だとコメントしている何とかストの方のお名前とか出てこないのですが、記事全文を読むとまあお名前出てくるんですが、そういうその場その場で適当に面白そうな事を整合性無くレポートするからお前は日経ヴェリタスのアナリストランキング(ちなみに債券エコノミスト部門)が前年対比で急落するんだよボケナスなどというような事は大人のあたくしは申し上げたりは致しませんが、全く何なんでしょうね。

ちなみに今月は当座預金残高かなり増えるのですが、昨年4月は何せ月の頭が40兆円で、前半の積み期間は震災対応供給の余波があって30兆円台後半で推移していたので、今月は前年対比でちょっとプラス程度になるんでしょうが、それでまた日銀の資金供給姿勢がどうのこうのとか、何というかその昔のトン調節の時代と全然違うのに何を昔の基準で話をしているのやらと存じますがねえ。

#いかんどうも悪態が止まらないですな

しかし今良い事に気が付いたのですが、上記記事でボケナスエコノミストが仰せになっておられるように、本当の本当に海外投資家が日銀の当座預金残高推移を見て為替のポジションを動かして相場が動く、というのであれば、メガバンクの皆様におかれましてはブタ積みの積み上げをいじれば当座預金残高の総量も動かせますから為替が思いの通りに動いてポジション大儲けですよ!!!!!!!

・・・・・なお、ブタ積み(0.10%付利だからブタではないが)をいじっても為替が思い通りに動かなかった場合はあたくしではなくボケナスエコノミスト様の方に文句を言って下さい(^^)。


○バランスを取ると称してまた悪態

バランス取る為に麿にも悪態なんですけどね。金融政策に関する議論が全然冷静な話にならないで(毎日湯気ポッポーのお前が言うなですかそうですかorz)言いがかりみたいな話が横行するのって、麿も言わずもがなの余計な燃料投下をするから何ですよね。

それはまあ1月のロンドンのこれとか
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120111a.htm/

3月の米国でのこれとか
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120326a.htm/

まあ話としてはこれはこれで正論なんですけれども、1月のあの話をした直後の2月14日にどう見てもFOMCの後追いの気合で追加緩和です本当にありがとうございましたというようなのを実施して、その後またまた3月に米国に行って「頼もう!」とかやる訳で、そらまあ海外の現状に対してはこれら一連の講演がたぶん正鵠を射た話だとは思う(1月は不良債権問題の話も多かったですわな)のですけれども、まあこの前はキャバクラで嬢に「こんな所で働いてちゃいかんよ」と説教垂れるクソジジイという例えを出したような気がしますが、日本の状況からしたら日本向けにはこんな話をしている場合では無いわけで、というのは当然麿もご存じだとは思いますけど、こういう話をしたら日本の現状をこう認識していると受け止められるリスクがある(実際問題1月のはそうでも無かったけど3月のは話題になりましたわな)んだからもうちょっと物事配慮しろよと思う次第。

そういうような、長期間にわたる緩和政策をコミットする弊害がどうのこうの言う話をしたかったらその前にまず自分の足元で物価安定の目標達成の道筋が見えるような話に持って行ってくれという訳ですからして、海外出るとこういう話をいきなりして回るから妙な事になる訳ですがな。

いやね、麿のこれらの考え方はそらまあ正論は正論だと思いますし、その信念も判るのですけれども、日本における冷静な金融政策論議の発展と麿の信念とどっちが大事なんだよと思う次第でございまして、最近のバーナンキ議長に俊ちゃんの生霊が乗り移っているとすれば最近は麿に速(シャレにならないので自粛)。

もうね、海外の麿講演は日本語訳載せない方が良いんじゃないですかねえ(-_-メ)


○気を取り直して市場俺様メモ

・短国入札平均落札価格貫録の0.10%割れ

期初一発目の短国入札でした
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240404.htm
国庫短期証券(第270回)の入札結果

(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛
(募入最高利回り) (0.1002%)

(4)募入最低価格に 5.2187%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭5厘2毛
(募入平均利回り )(0.0994%)

ということで、まあ0.1002%に皆さん鬼のように応札するので額を取りたければその上の0.10%割れにも札を入れないといけませんねという話だということで貫録の0.10%割れの平均になりましたが、もうちょっと平均が上に行ってもおかしくは無いかなと思ったので、まあそうは言っても0.10%割れをどんどん特攻して買わないといけない人がそんなにたくさんいる訳では無い(基本的に0.10%割れでも買うのは日銀の補完当座預金制度の枠外にいる人で、それ以外の人が買うのは何らかのお家の事情(商品在庫の確保とか、担保玉の確保とか、超過準備を積み過ぎないようにする為とか、国債保有残高のお化粧とか)によるものです)ので、この程度で済んだという事ですかそうですかっつー所です。

とは申しましても、3か月TBがこの有様になりますとまたぞろ固定金利オペの札割れとか短国買入の札割れとかが懸念されてくる次第でございまして(というのはまだ話は早いが)、またぞろ調節部隊は頭の痛い所でしょうなあという所で。


・期初の買いキタコレ・・・・・なのか???

いや昨日の債券市場なのですけどね。

米国がご案内のアレでQE3期待が更に絶賛大逃走中というのをネタにして米国様の債券市場様がアレになられて債券先物下落スタートで10年1.05%に上昇キタコレ!

・・・・・・とか思ってたらいきなり超長期強くて前場は先物20銭下がっているのに超長期引けビットとか何やってますねん債券市場という感じですが、例によって例の如くで、買いたいけどちょっと手を引いているという人たちが水準来た所で買いに来ると俺も俺もとなるのかつよつよになるというのはオソロシス。

まあ後場になるとカーブ調整されました(引値はインチキくさいのですがどうなんですか)けれども、いや昨日の前場の超長期はびっくらこいたわ、という市場俺様メモでした。





2012/04/04

お題「ああ自民党/FOMC議事要旨から少々」

ということでまずは悪態。

○自民党もすっかり「昔の民主党」状態になってしまいましたねえ(吐息)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1W6SY6K50XS01.html
BNPパリバ・河野氏の日銀委員人事案、自民も反対−同意は困難に
更新日時: 2012/04/03 18:17 JST

『4月3日(ブルームバーグ):野田佳彦政権が国会に提示した、日本銀行の審議委員にBNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏を充てる人事案は、野党が多数派を占める参院で同意を得るのが厳しい情勢となっている。すでに不同意を表明している公明、みんな両党に続いて最大野党の自民党も3日開いた「国会同意人事に関するプロジェクトチーム」の会合で反対する方針を決定した。』(上記URLより、以下同様)

ということで、本当に河野龍太郎さんの審議委員人事がお流れになるような感じになって参りましたが・・・・・・

『自民党の岸田文雄国会対策委員長は記者会見で、河野氏について「不同意という方針で自民党は臨みたい」と明言。その理由に関しては「本人の考え方、政策的な問題、さまざまな見地を総合的に勘案して、と聞いている」と指摘した。』

との事でございますが、こちらの記事中にもございますように、つい先日日経ヴェリタスが発表致しました「債券アナリスト・エコノミストランキング」でエコノミストの第1位(昨年は第2位)に選出されたんですよね、ちなみにこのランキング集計したのってだいぶ前(2月中)ですので、次期審議委員人事とか全然関係なく(そもそもマーケットから誰かが選ばれるとは誰も想定していなかったと思う)選出されましたねというのと、今回のランキング見てまして個人的には違和感もそんなに無いランキングで、妥当な感じだと覆ったんですけどまあそれはそれとして。

『河野氏はエコノミストとしてキャリアを重ね、1日付「日経ヴェリタス」が報じた「債券アナリスト・エコノミスト人気調査」では、エコノミスト部門で昨年の2位から首位になった。』

つーことで、まあ債券市場という金利のマーケット参加者であります所の機関投資家(これは機関投資家の会社単位で答える)のランキングな訳でして、まあ一部何だかそれ会社のネームでランキング入りしてるんじゃないかなあというような人も居ない訳でも無い(まあ近年は割と違和感ないランキングになってきたけど)とゆー気もするけど(-_-メ)、当然ながらランキング入りする方というのはそれなりに市場で飯を食っている人たちが「認める」存在であると思うのですよ。そらまあ1から10まで全部が全部を信奉しているというような人はいないでしょうけれども、まあ主張があまりにも無茶苦茶だとランキングの上位には入れませんわなと思う次第。


つまりですな、まあ自民党様におかれましては『「本人の考え方、政策的な問題、さまざまな見地を総合的に勘案して、と聞いている」』とまあ随分とアレな理由でして、アグレマンに対するペルソナ・ノン・グラータじゃねえんだから、もうちょっと説明しろやボケナスとか思いますけれども、まあそれは兎も角として、自由民主党様は「債券市場の機関投資家が高く評価するエコノミストは日本銀行の政策委員として不適切である」とまあ斯様仰せとの事のようでございまして、誠に恐れ入った事でありまする。少なくとも金融市場を知っている人から見たらこの言いぐさってただのインネン付けにしか聞こえないんですけどねえ。

まあ自民党様がそのように債券市場をご認識であらされる、という事は今回の行動によってよーく分かった訳でございまして、その調子で政権なんぞ取られますと、いずれ債券市場などというような物はケシカランとか言い出すとかまあそういう事でございますかそうですかいやあ困ったもんですなあ債券市場の片隅で飯を辛うじて食わせて貰っている身と致しましてはと、誠に遺憾の意に堪えない所でございます。


更にですな、

『反対の急先ぽうである自民党の山本幸三衆院議員は「インフレ目標政策に反対しており、日銀寄りの発言しかしていない」と指摘。みんなの党の渡辺喜美代表も、河野氏について国会内で一部記者団に「あまりにも役所寄りのスタンスが激しいので反対する」と語っている。』

とのことでございまして、まあみんなの党は所詮は(伏字)なのでどうでも良いのですが、自民党の山本幸三先生におかれましては「日銀寄りの発言しかしていないのでダメ」との事でございますので、これはつまり日銀ケシカラン死んで良しと仰っておられるという事でありますが、まあ山本先生が以前よりそのような話をしているのは別にまあ一つの見解としてそれはそれで別に全否定するような話でも無いですし(ただし最近の山本先生は以前と違って批判してくる筋が無理筋というか言いがかりレベルになっているのが気になります。たとえば輪番の償還乗換と新規発行国債の財政マネタイズを意図的に混同して「日銀は直接引き受け(償還乗換の事)やっているのだから復興債も引き受けろ」みたいな事を言い出すとかね)、批判が全くないのも不健全な話ではございます。

しかしですよ、その山本先生の見解に自民党が機関決定して乗りました、ってえ事はすなわち、自民党が政権与党になったら政治サイドから金融政策に干渉しまくりますよ日銀とは対決しますよと高らかに宣言したようなもんですわな。それが長い目で見てどういう弊害があるのかは歴史が示す通りじゃないかと思いますけどねえ。

#インフレ目標政策に反対云々がゴロツキの言いがかりレベルだろという話は先日書いたので割愛

いやね、日銀法改正でも何でもやりたきゃやればとは思いますけれども、どうせあんさんら日銀にあれやれこれやれとクレクレは言っても、結局その結果責任を取る気はサラサラなくて、上手くいかなかったら「日銀が下手くそだから悪い」とか言うんでしょとしか思えないですけどねえ。


つーことでまあ何ですな、前回の民主党による正副総裁人事でのゴタゴタも大概に酷くて、武藤さんは「財金分離」とか言い出して反対するわ、伊藤先生に至っては「郵政民営化に賛成だからどうのこうの」とかどこの与太者のインネンだよという感じではありましたけれども、政策スタンスがどうのこうのというような反対では無かったですけれども、今回の自民党、公明党の反対って「日銀寄りなのでケシカラン」とかいう話で、しかもその対象が「債券市場では高く評価されているエコノミスト」を捕まえて「政策スタンスに問題がある」だの「日銀寄り」だの言っているとゆーのが前回よりもある意味深刻なお話。

つまりまあ自民党や公明党は市場がどうのこうのとかどうでも良いし、政権取ったら中央銀行にバリバリ政治介入しますよ大喧嘩しますよという話をしているという点で問題がより深刻、っつーかお前ら政権取る気あるのかよ今からそんな宣言してと思うのですけどねえ。

いやね、これがまだ「証券業界などのような利害関係の強い所の出身者は不適切」とかなら理屈として判らんでもない(もちろん世界的にみたら「んなアホな」ですけれども)のですけれども、反対の理由があまりにも豪快過ぎてちょっと何だかな状態ではございます。

確かにそもそもはこの前の正副総裁人事でお縄一派が訳の分からない理屈にもならない理屈で人事に反対して政局にしようとしたという政局優先の態度を取った事が原因で、今回はその仕返しを受けているという図でもあるのですが、この事を別の角度から考察致しますと、選挙に勝つためには屁理屈で日銀総裁人事に反対してみたりというような目的の為にどんな筋悪の事でも行う、という行為に出て、更にはウソツキマニフェストで選挙に臨み、最終的に全てが破綻して政権担当能力の著しい欠如を垣間見せると共に国益を著しく損なうという誠に残念な政党と同レベルになってしまわれた、という事でもございます。まあ野党生活が長くなった結果として文字通り「貧すりゃ鈍す」を地で行く存在になられたという事でもありまして、こらまあ次の選挙で自民党に投票したらかつての民主党政権交代時の二の舞になるのが見え見えではございますなあ、と申し上げたくなる次第という事です。

正直、自民党には期待していたので、こんな所で政権取る気ありません宣言を見ることが出来るとは思いませんでしたよ本当にがっかりだわ。

#とまあそういう悪態ではございましたとさ。

しかしこの調子で産業界からの審議委員就任とか誰も受けないわなとか思うのでありまして、東電会長人事並みの罰ゲーム化とかオソロシス。まあ素人がなるのがケシカラン的な意見もありますが、逆に産業界の声を直接反映させるという発想があっても別にそれはそれで有りだと思うのですけどね。むしろ金融業界出身で、オペレーションとか短期市場とか債券市場とかの実務っつーかまあ実情の理解が中途半端に生半可の状態だと日銀ペースに乗せられてしまう恐れもありますが、産業界出身という一本の柱を確り持っていると、それはそれで日銀ペースと違う柱になって良いのかなとも思います。

まあこの調子だと2名欠員がしばらく続きそうですわな。大体からして「債券市場の評価が大変に高いエコノミストはダメ」とかなった日にはこら暫く市場からの審議委員ノミネートとか無理だろ(逆に次にまた市場関連の人をノミネートしたら、どういう反応をするのかね)と思いますし、実業界から出るとも思えませんとかなる訳で、さてどうなるんでしょうねえ。つーか審議委員決まらないと7名中3名が執行部になってしまいますから、ボードがより「日銀寄り」になっちゃうんですけどねえ(ニヤニヤ)。

#ああ悪態ばかりでこんなに書いてしまったorzorz


○気を取り直してFOMC議事要旨

だからTranscriptは後日出るのだからこれは議事録じゃなくて議事要旨だと何度言えば(しつこい)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120313.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120313.pdf

画面から読む分にはHTMLの方が便利だが、印刷して読みながらメモを入れるのにはPDF版(ページレイアウトを圧縮しないでそのままで印刷)が吉だと思います。

つーことでまあ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』以下の部分をざざーっと流して読んでみましたけど多分経済の見立てと見通しに関しての部分はスルーしますお。

と言いつつ先に『Committee Policy Action』の部分から。

・早期の追加緩和が必要と言っているのは2名とな

エバンスとあと一人だれですかね(^^)。

『A couple of members indicated that the initiation of additional stimulus could become necessary if the economy lost momentum or if inflation seemed likely to remain below its mandate-consistent rate of 2 percent over the medium run.』

これは上記コーナーのケツの方(分量で言えばdirectiveと公表文があるので真ん中辺りになる)にありますが、「景気の回復モメンタムが失われ、あるいはインフレが中期的に2%割れが続くと見込まれる場合には、追加緩和が必要になるでしょう」という指摘をしているのが2名となっています。

ちなみに、前回1月のMinuteではこんなのがありましてですな、

『A few members observed that, in their judgment, current and prospective economic conditions--including elevated unemployment and inflation at or below the Committee's objective--could warrant the initiation of additional securities purchases before long.』(これは1月FOMC議事要旨です)

ということで、少数名のメンバーから2名のメンバーに減少しているというのがにゃんとも味わいのある所ですし、前回は追加緩和に関して「追加の証券購入」という表現でしたが、今回は「追加緩和」という表現になっているのも味わいがあるかと存じます。


・今後のコミュニケーションポリシー

決定事項議決後の部分がほほうという感じ。『Monetary Policy Communications』という小見出しの所です。

『As it noted in its statement of principles regarding longer-run goals and monetary policy strategy released in January, the Committee seeks to explain its monetary policy decisions to the public as clearly as possible. With that goal in mind, participants discussed a range of additional steps that the Committee might take to help the public better understand the linkages between the evolving economic outlook and the Federal Reserve's monetary policy decisions, and thus the conditionality in the Committee's forward guidance.』

ということでフォワードガイダンスを始めとしたコミュニケーションポリシーの改善についての議論を相変わらず行っているようです。

『The purpose of the discussion was to explore potentially promising approaches for further enhancing FOMC communications; no decisions on this topic were planned for this meeting and none were taken.』

つーことなのですが、まああまり細々とやりだすと今度はその判断を変化させることがアカウンタビリティ問題になってくるリスクがあるので要注意のように思えますけどね。

『Participants discussed ways in which the Committee might include, in its postmeeting statements, additional qualitative or quantitative information that could convey a sense of how the Committee might adjust policy in response to changes in the economic outlook.』

声明文において経済の見通しに対応して金融政策において何らかの追加の量的または質的な情報を追加すべきではないかというのがその議論に含まれるっちゅうんですから、こらまあフォワードガイダンスの改善っぽい気がする。

あとで引用しますが、今回の議事要旨の中で「フォワードガイダンスの期限は経済見通しの顕著な変化に対応して変化しうることでメンバー全員が同意した」という下りがありまして、まあ特定の期間を示すフォワードガイダンスの扱いが意外に難しいという話になってきてるんじゃネーノという風に思ったのですがどうでしょうかね。

『Participants also discussed whether modifications to the SEP that the Committee releases four times per year could be helpful in clarifying the linkages between the economic outlook and the Committee's monetary policy decisions. In addition, several participants suggested that it could be helpful to discuss at a future meeting some alternative economic scenarios and the monetary policy responses that might be seen as appropriate under each one, in order to clarify the Committee's likely behavior in different contingencies.』

SEPの改善だの、複数景気見通しシナリオの提示だのという話もあるんですかそうですか。

『Finally, participants observed that the Committee introduced several important enhancements to its policy communications over the past year or so; these included the Chairman's postmeeting press conferences as well as changes to the FOMC statement and the SEP.』

ほうほう。

『Against this backdrop, some participants noted that additional experience with the changes implemented to date could be helpful in evaluating potential further enhancements.』

つーことで、まあ特段今回何かを決定したという話ではないですが、まあ色々とコミュニケーションポリシーの改善と称してやってきそうな感じですな。


・基本的には「現状維持が適切」ですけど・・・・・・・

『Committee Policy Action』の所に再び。

基本的な線は最初の方にあります。

『Members viewed the information on U.S. economic activity received over the intermeeting period as suggesting that the economy had been expanding moderately and generally agreed that the economic outlook, while a bit stronger overall, was broadly similar to that at the time of their January meeting.』

1月会合よりも若干経済が強くなっていると。

『Labor market conditions had continued to improve and unemployment had declined in recent months, but almost all members saw the unemployment rate as still elevated relative to levels that they viewed as consistent with the Committee's mandate over the longer run.』

労働市場は改善しているけれども失業率は依然として高水準とな。

『With the economy facing continuing headwinds, members generally expected a moderate pace of economic growth over coming quarters, with gradual further declines in the unemployment rate. Strains in global financial markets, while having eased since January, continued to pose significant downside risks to economic activity.』

つーことで、回復は強まっても当面は失業率の低下は極めて緩やかで、しかも国際金融市場の緊張という経済下振れリスクは緩和したものの依然として大きいと。

『Recent monthly readings on inflation had been subdued, and longer-term inflation expectations remained stable. Against that backdrop, members generally anticipated that the recent increase in oil and gasoline prices would push up inflation temporarily, but that subsequently inflation would run at or below the rate that the Committee judges most consistent with its mandate.』

インフレに関しては抑制され、長期的なインフレ期待も安定している。原油やガソリン価格の上昇は一時的にインフレの押し上げ圧力となるが、その後はインフレはマンデート水準またはそれ以下に低下する見通しだと。


・でまあ政策に関してとかには大きな変化の必要なしと

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members agreed that it would be appropriate to maintain the existing highly accommodative stance of monetary policy. In particular, they agreed to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent, to continue the program of extending the average maturity of the Federal Reserve's holdings of securities as announced in September, and to retain the existing policies regarding the reinvestment of principal payments from Federal Reserve holdings of securities.』

従って現状の政策維持が適切という話っすな。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only relatively small modifications to the first two paragraphs were needed to reflect the incoming economic data, the improvement in financial conditions, and the modest changes to the economic outlook.』

従って声明文における経済の現状見通し(第1パラグラフ)および先行き見通し(第2パラグラフ)に関しては表現を大きく変更する必要は無いとな。

『With the economic outlook over the medium term not greatly changed, almost all members again agreed to indicate that the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』

従ってほとんど全員(除くラッカー総裁)のメンバーはフォワードガイダンスの文言も継続が適切と判断したと。

『Several members continued to anticipate, as in January, that the unemployment rate would still be well above their estimates of its longer-term normal level, and inflation would be at or below the Committee's longer-run objective, in late 2014.』

複数名のメンバーは引き続きlate2014になっても失業がマンデートとして望ましい長期的な通常のレベルよりも遥かに高いレベルを維持し、インフレはマンデートで望ましい長期的な水準またはそれよりも低い(つまりより長い期間の異例の低金利政策が必要となる可能性の示唆ですな)可能性があると予想しました。


・フォワードガイダンス文言はconditionalキタコレ

という部分の次にこの話が。

『It was noted that the Committee's forward guidance is conditional on economic developments, and members concurred that the date given in the statement would be subject to revision in response to significant changes in the economic outlook.』

キタコレという感じですが、つまりフォワードガイダンスは経済の先行き見通しに顕著な変化があったらそれに対応して変化するコンディショナルなものですと皆が同意したとか思いっきり言ってアチャーなのですけれども、ただまあ直前に上記の文章があるのが救い、というか文章構成としてそれはちゃんと考えて作っているのでしょうけれども、これはすなわちハト派とタカ派では同じ「コンディショナルコミットメント」のケツの期間の「見直し」について逆の結論になり得る論点でもございますが、さっきの部分が無くていきなりここだけ出てくると、今の米国市場の雰囲気だと「late2014が前倒しされる可能性がー!」とか言い出す可能性があるので、まあその辺を良く配慮した文章構成だと思いますお(^^)。


・偽りの夜明け第3弾のリスクキタコレ

しかもこの次にもハト的な文章を散りばめておりまして、フォワードガイダンスがコンディショナルという結構地雷な話を入れるに際して前後にハト的な文章を入れることによって、市場が更に「利上げ時期前倒しキタコレ」モードになるのを防ぐという芸の細かさに全米が泣いた(^^)。

『While recent employment data had been encouraging, a number of members perceived a nonnegligible risk that improvements in employment could diminish as the year progressed, as had occurred in 2010 and 2011, and saw this risk as reinforcing the case for leaving the forward guidance unchanged at this meeting.』

偽りの夜明け第3弾のリスクは無視できず、このリスクを勘案すればフォワードガイダンスを今回変更する必要性はないという見方を補強する事になるでしょうと。


・経済見通しに関して

という所で案の定時間が無くなって参りましたので、せっかく読んだ(と言っても所詮は斜め読みですけど)『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の部分がスルーになってしまいましたが(涙)、まあ基本的には見通しは改善しているけれども下振れリスクはありますねという妥当な話で、各需要項目の話とかも何となく面白そう。トーンとしては全般的に明るめだけどまだ慎重って感じじゃないですかね。

インフレに関する部分だけ引用しておきます。最後のパラグラフっすけど。

『While the recent readings on consumer price inflation had been subdued, participants agreed that inflation in the near term would be pushed up by rising oil and gasoline prices.』

『A few participants noted that the crude oil price increases in the latter half of 2010 and the early part of 2011 had been part of a broad-based rise in commodity prices; in contrast, non-energy commodity prices had been more stable of late, which suggested that the recent upward pressure on oil prices was principally due to geopolitical concerns rather than global economic growth.』

ふむふむ、今回の原油価格上昇はディマンドプルの色彩は薄いとな。

『A couple of participants noted that recent readings on unit labor costs had shown a larger increase than earlier, but other participants pointed to other measures of labor compensation that continued to show modest increases.』

この論点も面白そうです罠。

『With longer-run inflation expectations still well anchored, most participants anticipated that after the temporary effect of the rise in oil and gasoline prices had run its course, inflation would be at or below the 2 percent rate that they judge most consistent with the Committee's dual mandate.』

基本はこれです。

『Indeed, a few participants were concerned that, with the persistence of considerable resource slack, inflation might be below the mandate-consistent rate for some time. Other participants, however, were worried that inflation pressures could increase as the expansion continued; these participants argued that, particularly in light of the recent rise in oil and gasoline prices, maintaining the current highly accommodative stance of monetary policy over the medium run could erode the stability of inflation expectations and risk higher inflation.』

で、最後のこの部分がへーという感じですが、スラックによってインフレがマンデートよりも低くなるリスクを指摘する人がいる一方で、原油やガソリン価格の上昇と現在の極めて緩和的な金融政策スタンスが、インフレ期待の安定を損なうリスクってのを指摘している他のメンバーがいた(複数形だから一人では無い)というのがへーという感じでした。

てな所でございまする。






2012/04/03

お題「短観とか総裁入行式挨拶とかあれこれと雑談」

銀座に謎の店が出来たと思っていたらユニクロの分身だったのかという位にファストファッションに疎いあたくしが通りますが、あの店名を見ると大神源太アニキを思い出してしまうのはあたくしだけですかそうですか。

○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1203.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1112.pdf(前回)

製造業大企業の現状判断DIが前回対比横ばい、ということでまず一発目の印象は「もっと良いと思ったのに拍子抜け」という所ではございましたが・・・・・・・・


・前回の先行き予測DIの達成状況

           (12月時点)     (3月時点)
           現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   ▲4→▲5       ▲4→▲3 
製造業中堅企業  ▲3→▲10      ▲7→▲8        
製造業中小企業  ▲8→▲17     ▲10→▲15

非製造業大企業   +4→+0      +5→+5
非製造業中堅企業  ▲4→▲8      ▲1→▲5
非製造業中小企業 ▲14→▲21    ▲11→▲16

前回はこの辺見ながらこんなまとめをしていました。

でまあ製造業大企業はプラスから更に改善予想だったのがドテンマイナスになって先行きベクトルも下向きですね、というのは確かにそうなのですが、こよくよく見ると非製造業の方は前回の先行き予測DIよりも良い数字が今回の現状判断DIに出ていまして、非製造業大企業に至ってはプラス4ですよ奥様凄いですわね〜という感じでして、製造業大企業のヘッドライン数値はアレでございましたが、非製造業は概ね前回の予想よりも景況感が良くなっており、製造業に関しても大企業以外に関しては9月短観における先行き予測DIをほぼ達成またはより改善しておりまして、製造業大企業のヘッドラインが前回から悪化するわ先行きのベクトルも下ですけど、他の所はそこまで悪くないという感じですな。

とはいえ、製造業大企業の悪化がラグを伴ってこれから効いてきますよね、という話でもありますよね。(前回12月16日の駄文より)

で、今回はまーよーするに12月に悪化した分をどのくらい取り戻せたかという話になるのですが、現状判断DIの推移をみると製造業が全般悪化気味、非製造業が引き続き好転傾向という流れが今回も変わらずというのが何だか妙っちゃあ妙な展開ではございますな。で、先行きDIの達成状況という面で言えば12月に予想されていた悪化ほどの悪化を示していない、という点ではこれはまあ良い傾向っちゃあ良い傾向ではありますが、まあ製造業の現状判断DIが傾向として沈み気味なのがやや遺憾であります。

まあ何ですな、非製造業が妙に堅調なうちに製造業が戻ってくるのが先か、製造業のヘロヘロに引っ張られて非製造業もコケるのが先かという話になるんでしょうか、良く判りませんけど。


・雇用判断DI

           (12月時点)      (3月時点)
           現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   +6→+7       +8→+8
製造業中堅企業  +9→+8       +4→+9
製造業中小企業  +7→+8       +8→+9

非製造業大企業   +1→▲1      ▲2→▲2
非製造業中堅企業  ▲2→▲3      ▲3→▲4
非製造業中小企業  ▲2→▲1      ▲4→▲4

こちらも前々回、前回と同様の傾向が続き、引き続き非製造業のDIの方が強めになっており、現状判断DIでマイナス(というのは人手不足ということ)という状態になっているのが非製造業、ということでして、これまた現状判断DIで見られる非製造業の方が強めな上に、製造業の雇用人員判断は大企業とかを見ると悪化(全体集計すると前回の+8から今回+8で変わらない)している一方で非製造業の雇用人員判断DIが改善続くとゆー傾向がこれで半年くらい続いておりまして、この分裂気味の流れってサステイナブルなのかどうかが気になる次第ではございます。

まあ雇用吸収力という意味では非製造業の雇用判断DIが改善(つーか現状でも先行き予想でも人手不足!)なのは良い話ではあるのですが。


・想定為替レート

前回に続き今回も反応。折角だから前回の分も見ながらここ9か月の流れをいれてみませう。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)     2011年度全体 (上期) (下期)   2012年度全体 (上期) (下期)

2011年6月調査       82.59   82.59   82.59         −    −    −
2011年9月調査       81.15   81.26   81.06         −    −    −
2011年12月調査      79.02   80.26   77.90          −    −    −
2012年3月調査       78.93   80.20   77.69        78.14   78.04  78.24

意外に為替レートが保守的になっているのがほうほうという感じですが、まあ皆様が指摘しておられるように、この想定レートだと為替が80円台推移とかになると企業収益は全体としてはウハウハになるという話ですな。


・相変わらずの金融商品取引業クオリティ

毎度申し上げておりますように、本来は「証券会社」だけをカテゴリーにして集計して頂きますと非常にオモシロ集計になる(「投資業等」が入った分だけ動きがマイルドになってしまって誠に残念無念^^)ので、個人的には証券業っつーかセルサイドを別カテゴリーにして頂くのキボンヌ(^^)。

            (12月時点)    (3月時点)
           現状→3月予測   現状→12月予測
金融商品取引業  ▲30→▲20     ▲10→+16

前回は「前回予測がドンピシャで当たっている」という怪奇現象(?)が起きた訳ですが、今回はまあ普通に見通しよりもよろしゅおすえという結果。で、調子に乗って先行き見通しが堂々のプラスになっているのですが、これはどう見ても死亡フラグに見えてしまうのは悲観脳ですかそうですかどうもすいません。


・で市場は華麗にスルーというのが最早短観の様式美&景気判断的にどうよ

もうね、短観と言えばかつては一大イベント扱いだったのですが、もうここのところ延々とそうなんすけど短観でも債券市場が全然反応しないどころか、昨日は期初の売り攻撃だか何だか知りませんが、短観弱めに出ているのに債券市場下がるでござるの巻となる位に経済指標の扱いがアレですな。

で、日銀の景気判断どうなるのという話ですけれども、まあ基本的には「先行きは緩やかな回復基調」という見通しに整合的な流れですし、大体からして(いつも申し上げておりますように)回復局面において先行き判断DIは控えめに出る傾向がありますので、引き続き非製造業の改善が続くということでそこまで悪くも無いっちゅうことっすかね。よー知らんけど。

まああまり良い数字が出ちゃうと追加緩和という話をするときに益々政策の整合性がアレになるので適当に弱めの数値も出ていて「景気回復傾向がまだ強くないのでそれを後押しするんですぅ」とか何とか言って追加緩和するのには良い言い訳になったのではないでせうか(^^)。

ちなみに、時間軸政策およ中長期的な物価安定の理解というフレームから整合的な追加緩和(まあ買入拡大というよりは買入期間の延長と、国債買入の拡大をセット販売する(=買入ペースを維持して半年くらい伸ばすと基金買入の国債残高は自動的に増えるので、ただしこの手はあと1年くらいしか使えないのが残念)とかそんな話でしょ)をするのは展望レポートでの見通し公表という所で、米国様のように半年以上時間軸を放置プレイをしていても大丈夫な国だと楽なのですが、日本の場合はクレクレ連中が五月蝿いので半年位でやっとかないといかんでしょという話っすよねえ。残念な話ですが。


といういつもの話でした。


○総裁の入行式挨拶

平成24年度入行式における挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/nyukou12.htm/(HTML版)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/nyukou12.pdf(PDF版)

ということで挨拶なのですが、これを前回と比較するとかあたくしの性格もたいがいに如何なものかという気はする(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/nyukou12.htm/(今年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/nyukou11.htm/(昨年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2010/nyukou10.htm/(一昨年)

今年の挨拶から。

『いま一つは中央銀行としての「実務」を遂行していく力を不断に高めていくことです。日本銀行の政策は、全て「銀行」としての業務、言い換えれば、金融取引の執行を通じて実現されます。実務の裏付けがない限り、そもそも政策を実践できません。また、実務に従事することによって得られる経済や金融の動きに関する情報は、他では得られない貴重なものです。日本銀行の職員は、それぞれの現場で、実務をいかに確実に、効率的に遂行していくかに日々知恵を絞っています。』

つまり実務を無視した政策提言をする連中はケシカランという事ですね、と思ったらまあその後東日本大震災の話をしてマイルドにしていますな。

『実務の大切さは、東日本大震災が発生した後の日本銀行の対応をみてもわかります。我々は、金融市場の不安を取り除くため、震災の直後から大量の資金を供給しました。また、被災地で暮らす人が必要とする現金が不足しないよう、平日・休日を問わず、現金の輸送を行ったり、地震や津波で損傷した大量の銀行券や貨幣の引き換えを行ったりしました。また、こうした災害時であるからこそ、財政資金の受払いが確実に行われるよう、被災地金融機関との連携を強め、必要な先には事務支援も行いました。震災後のこうした活動は経済や社会の安定を根底で支えるものであり、我々はそうした実務をしっかりと遂行することに誇りをもっています。』

ふむ。

『皆さんは本日から日本銀行でのキャリアがスタートします。皆さんには職種やコースに応じて、今、私が申し上げた二つの力を身につけて頂きたいと思っていますが、そのために三つのことを意識してください。』

というのは昨年は東日本大震災モードで構成上その部分がありませんでしたが、一昨年のバージョンと比較してみましょう。

『第一は、配属された部署、与えられた仕事の一つ一つに、全力で取り組んで欲しいということです。(内容部分割愛)』

『第二は、関心領域を広く持って欲しいということです。(内容部分割愛)』

『第三は、日本銀行外部の人々との接点、ネットワークを大切にして欲しいということです。(内容部分割愛)』

ということですが、一昨年の挨拶はこうなっていました(^^)。

『第一にお願いしたいことは、責任感をもって仕事に取り組んで欲しいということです。(内容部分割愛)』

『第二にお願いしたいことは、常に新しいことにチャレンジし、仕事の幅を広げていく情熱を持ち続けて欲しいということです。(内容部分割愛)』

『第三にお願いしたいことは、チームワークを大切にして欲しいということです。(内容部分割愛)』

ということで、まあ内容部分を読んで頂ければ判るのですが、第一と第二は同じ話をしている中で第三に変化があるのが味わいがあるというものでございまして、一昨年は「チームワーク」とまあ仕事をする中における協調性の重要性を説いていたのが、今回は珍しくも「外の世界に目を向けて」という話になっていてあたしゃおお!と思いましたよ。

まあ何ですな、最近は通常業務に支障を来すのではないかという位に連日のように(しかし議員もまあ飽きもせず毎日毎日日銀執行部呼んで委員会で同じような吊し上げをして生産性ねえ話だなあ(1回2回なら兎も角何回呼んでるんだと)と思うのでございますが、お前らの仕事やってるアピールの為にどんだけリソースを費やしているんだと小一時間問い詰めたいわ)国会に呼ばれているせいか、さすがの麿先生(麿先生はタイプ的には軟体動物系の俊ちゃんというよりは速水総裁のような強情さがあると思われますが・・・・)も「一般にアピールしていかないと行けない」という危機感を持たれたのかと勝手に邪推するあたくしでございました(^^)。

つーかまー別にそれって日銀だけの話じゃなくて一般的に大企業みたいな所だとそういう話になるかと思います次第で、いわゆる大企業病というか内向き論理でタコツボ化してしまうとゆーのは別に日銀に始まった話では無いと思いますざますけどね。まあしかし麿がこんな話をするとはとゆーことで、読んでてちょっと「ほう」と思いましたという所であります。

ええまあ裏読みのし過ぎですが何か??


○そういやオペのオファー時刻変更関連

昨日メモにするの忘れてた。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120330a.pdf
国債の決済期間の短縮化後における金融調節取引のオファー時刻等について

『日本銀行では、国債の決済期間の短縮化に伴い、現在のオペタイムテーブルを別紙のとおり変更しましたので、お知らせします。主な変更点は、次のとおりです。

(1) 午前中(10時10分)にオファーする先日付での共通担保資金供給オペ (本店貸付・金利入札方式)を追加

(2) 先日付オペのうち、国債現先オペ、国庫短期証券売買オペおよび国債買入オペにかかるオファー日からスタート日までの日数を短縮

なお、(1)については、4月2日以降の適宜のタイミングからオファーを行うこととするほか、(2)については、4月23日以降のオファー分から適用することとします。』

「本店オペのみ」で先日付オペがスタートという事ですが、基金オペの固定金利方式の場合は
http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo57.htm/

『3. 貸付店
本店(業務局)または支店とする。』

ってあるので全店オペ扱いになると思う(ついでに言うとオファーバックが14時回っているから)ので、オファー時刻は変わらないんでしょうか、よくわかりません(><;

多分あたくしの認識で合っているとは思いますが、しかしそうなると当分金利入札オペの実施がなさそうという昨今でもございますので、せっかく新設したものが実行できないというのも何ですから、物は試しに早いうちに練習してロジの実践をした方が良いのではないでしょうか、と好き勝手な提案(^^)。

ということで小ネタでした。





2012/04/02

お題「非理法権天/コチャラコタ総裁の「金融政策の限界」講演から少々」

そういや金曜に紹介した「赤いダイヤ」ですが、「赤いダイヤ」って何の事かという肝心の事を申し忘れましたが、赤いダイヤっていうのは小豆(商品相場用語的には「あずき」じゃなくて「しょうず」という方が一般的だと理解しているけどそれで良いのかな)の事でございます。

○何でこうなるのやらという感じですが(審議委員人事)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OAFF6S972A01.html

『3月30日(ブルームバーグ):野田佳彦政権が国会に提示した、日本銀行の審議委員にBNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏を充てる人事案に黄色信号がともっている。公明、みんな両党が反対を表明、最大野党の自民党も反対の方向で調整している。』(上記URLより)

ということで、まあみんなの党はどうでも良いのですが、公明とか自民が反対するというのがワケワカラン。


で、公明党ですが・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OH696KLVR401.html
公明:河野氏起用反対を正式決定、考え方に異論−日銀審議委人事

『3月30日(ブルームバーグ):公明党は29日、政府が国会に提示したBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏を日本銀行審議委員に充てるとする国会同意人事への反対を正式に決めた。河野氏の金融政策の考え方に党内に異論あるため。遠藤乙彦衆院議員が30日、国会内でブルームバーグ・ニュースに明らかにした。』(上記URLより)

・・・・・・・・「考え方に異論」って何じゃそらというか、ペルソナノングラータじゃねえんだからもうちょっと理由を説明してくれやという所ではございますが、いずれにせよ「金融政策にタカ派だから反対」みたいな話だとすればそれもまた不見識っつーか何つーかな話で、つまりハト的な金融政策を行って仮に副作用が出た場合は公明党さんは政治責任取ってくれるんですかと借問致したい訳でございます。

つーかさ、そもそも公明党さんの最大支持母体さんって今の計測方法でのCPIが+1%とか実際になった日には「物価上昇で庶民の暮らしが大変」というような話を真っ先にしそうなイメージがあるのですけれども、そういう意味ではいい度胸してんじゃんという気もするんですけど、まあ何にせよ他の党なら兎も角公明党がハト派じゃないから反対みたいな話をするとは意外、つーかその辺のコンフリクト判って話してるんでしょうねえとか思うのでございますけどにゃあ。つーかそもそも河野さんってタカとかハトとかあまり色が無い人なんですけどねえ(緩和的政策を野放図に長期化するのは弊害がって話を捕まえてタカ派とか言うのは言いがかりレベルだと思うのだが・・・・・・)。

あとですね、そもそも合議制でやっている委員会の人選なのですから、タカ派もハト派も居て多様な意見を揃えた方がよりチェック機能が働くと思う次第でして、「考え方が違う」と言って反対するという事は、それ即ち「日銀政策委員は全員同じ考えであるべき」という主張をしているようなもんで、どこの民主集中制あるいはファッショだよと思ってしまいます。つーか普通政府の委員とか諮問会議とかでも色々な意見の人を集めると思うのですけどねえ。まあそこまで言うなら公明党は金融政策に政治責取れるんかいというさっきの話に成る訳ですけど。

財政のサステイナビリティ確保への努力とか何もしないで垂れ流しを続けて金融緩和も続けろという話を延々として財政インフレとかになったらあんさんらが議員辞職してお詫びとか切腹してお詫びとかでは済まない位の大変なことになるんですけどねえ。


で、自民党に関してはさっきの最初の方の記事に戻りますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1OAFF6S972A01.html
BNPパリバ河野氏の日銀人事案、同意に黄信号−自民も反対で調整へ

『河野氏起用に反対している自民党の山本幸三衆院議員は河野氏について「インフレ目標政策に反対しており、日銀寄りの発言しかしていない」と指摘。同党内では「否決すべきだと思って働きかけを強力にやっており、成功すると思う」と反対での意見集約に自信を見せた。すでに政務調査会や国会対策委員会幹部にも働きかけているという。』(上記URLより)

えーっと、そもそも「インフレ目標政策に反対しており」とは何のことだか意味が判らないのですけれども。河野さんのレポートとか全部を熟読して覚えている訳ではないですけれども、特段インフレ目標政策に明確に反対とかしていないと思いますし、大体からしていわゆる「フレキシブルインフレーションターゲット」っていう金融政策の枠組みってえのは主要国の金融政策の常識というか、政策の枠組みがそこに収斂されて来ているという状態であって、今さら「インフレ目標政策に反対」とかいう人居ないと思いますが。

そらまあ暫く前まで良く言われていた「裁量を排した金融政策運営」という意味でのインフレ目標だったら反対する人が多い、というか既にそんな運営で上手くいかないというのは英国を見れば一目瞭然(英国はもう2年くらいインフレ目標上回って物価が推移しているけれども、「見通しとしては今後低下する」というのを建前にして、実際には財政再建やら金融市場の安定化をサポートする為にも必要という認識でやっているのでしょうが、まあ金融緩和を継続しているけれども、これが裁量を排して運営しているとは普通思えませんわなあ)で、そんな政策を信奉していないとダメとかいうのであればそれはお前の方がおかしいわと存じますが、まさか山本先生は未だにそのようなカビの生えた政策フレームワークを信奉していないから反対とか仰っているのではないですよね。

大体からして、「インフレ目標政策に反対」だと、今の日銀の金融政策の枠組みが「インフレターゲットと呼んで頂いてもそんなに変わりはない(ただしフレキシブルインフレーションターゲットという話だよ、というころざんすわな)」という事なのですから、「日銀寄り」にならないと思うのですけどねえ、あっはっは。

つーことで、山本先生の反対運動の理由がどう見ても言いがかりというか、河野さんの主張のどこをどう理解すると「インフレ目標に反対」になるのかさっぱり分からない次第で、ゴロツキの言いがかりかよっつーレベルにしか思えない訳でございまして、まあ何というか「非理法権天」とかいう言葉がございますが、非は理に勝てず、理は法に勝てず、法は権に勝てず、権は天に勝てずと言いまして、まあ無理矢理の話であっても権によってああだこうだと出来るでしょうが、天道恐るべしとか思うのですけれどもねえ。

いやあのですな、公明党の場合は政策への考えがどうのこうのとかいう話ですが、山本先生の場合はどう見ても言いがかり(あるいは曲解)というのが凄いとしか思えない次第で、そんなんで良いのか自由民主党。

まあ何ですな、そこまで言うなら山本先生におかれましては是非とも日銀の審議委員になって頂きたく存じます次第。いやマジでそういう方が1名入ればそれはそれで(ちゃんと議論が成立すればの話ですけれども)面白い議論が見れて宜しいんじゃないでしょうか。

・・・・・・・しかしまあそもそもの話を考えると日銀正副総裁人事においてお縄一派がかつて政局にしようとして、財金分離とか難癖つけたのが事の発端(しかも自分たちがあれだけ財金分離とか言ってた癖にいざ与党になったらお縄一派の皆さんが金融政策にクレクレ言いまくるという見苦しさよ)で、その仕返しを受けているとも言えるのですけれども、野党生活が長くなって公明党や自民党までが同じような話を始めるようになるとは誠に残念至極でございまして、次の選挙で投票する先が益々無くなって参りましたとしか言いようがない(共産党は狂信的反原発なのでアンチビジネスにも程があるのでアタクシ的にはオミット)次第でございますなあという事でorzorz

まあしかしこの騒ぎで財界人とか審議委員の引き受け手が益々無くなりそうですなあ。

#ああ期初から悪態になってしまいました


○コチャラコタ総裁の「金融政策の限界」は別にタカでは無かったりする(^^)

さきほどからモーサテが「コチャラコタ総裁が来年のインフレ率を2.3%と予想すると発言し、早期の利上げの必要性を示唆」とか凄まじい話をしているのですが、どう見ても2.3%なら早期利上げ不要ですがな番組スタッフは頭沸いとるんかいと思ったら普通にブルームバーグ見たらこうなっていたので一安心、つーか大丈夫かテレビ東京。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1S1UD6K50XS01.html
ミネアポリス連銀総裁:今年のインフレ率を2%前後と予想

『3月31日(ブルームバーグ):米ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁は31日、景気刺激を目的とした連邦準備制度理事会(FRB)の国債購入について、「米経済にいかなるインフレ圧力も創出していない」と指摘、FRBにはバランスシートに伴うリスクを緩和する多くの手段があると述べた。イリノイ州での講演後に聴衆からの質問に答えた。』(上記URLより)


さてさて、31日にも講演があったのですが、あたくしがプリントアウトしたのが20日のセントルイスでの講演だったのでそっちのURLを付けますが、さっき(モーサテが変な事を言うから気になって^^)31日の資料もざっと斜め読みしましたが、内容は同じようでございますのでコチャラコタ総裁の講演から少々。

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4839
On the Limits to Monetary Policy - Executive Summary
Narayana Kocherlakota - President
Federal Reserve Bank of Minneapolis

2nd Annual Hyman P. Minsky Lecture
Washington University, St. Louis, Missouri
March 20, 2012

エグゼクティブサマリーのPDF版はこちら
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/nrk03-20-12.pdf

プレゼンテーション資料(たぶんパワーポイントベース)のPDF版はこちら(56枚組)
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_minsky_speech_032012.pdf

で、まあサマリーの方から。

『Since the start of the Great Recession, employment has fallen considerably, while average inflation has been near the Federal Reserve’s target of 2 percent. Given the Federal Reserve’s dual mandate to promote price stability and maximum employment, an obvious question is “Why does the Federal Reserve appear to be doing so much better on one mandate than the other?”』

ということで、さてどうするかという話なのですが、コチャラコタ総裁は「労働需要ショック」と「生産物需要ショック」(勝手に訳してみたが良い訳は無いかね)という面からの考察を行っていますです、はい。

・労働需要ショックと生産物需要ショックとな

『In this speech, I present a simple model that suggests an answer to this question. A key feature of the model is that there are two distinct types of demand shocks: labor demand shocks and product demand shocks.』

需要に対するショックとして「労働需要に対するショック」と「生産物への需要に対するショック」に分けて考えるとな。

『The labor demand shocks reflect factors such as adverse credit conditions and increased uncertainty that lead firms to demand fewer workers at a given real wage. The product demand shocks reflect factors such as a loss of wealth and a higher risk of job loss that lead households to demand fewer goods at a given real interest rate.』

労働需要ショックはクレジット環境の悪化や、不確実性の拡大によって、企業が現状水準での実質賃金による労働者への需要を減らす事を反映したもの。生産物需要ショックは、家計のバランスシートの悪化や、失業に対するリスクの高まりなどがによって、家計が現状水準での実質金利による物品購入意欲を減らす事を反映したもの。だそうな。

『Each of these shocks leads to a fall in employment, with the decline in employment magnified by slow adjustments in the real wage.』

いずれの場合でも実質賃金の調整が遅れる事によって、雇用の減退拡大に繋がるようで。


・金融政策と非金融政策の使い分け

『When considering these shocks, it is important to distinguish how monetary and non-monetary policies influence the level of output and employment. In the model I employ, the Federal Reserve controls the real interest rate; lowering the real interest rate increases the demand for goods and services, and thereby influences national output and employment.』

で、金融政策と非金融政策の生産や雇用に与える影響を分ける事が重要ですという話でございまして、このコチャラコタ総裁の提唱するモデルだと、「金融政策は実質金利のコントロールが出来る」ので「実質金利の引き下げによって財やサービスに対する需要を拡大することが出来て、その結果として国全体の生産や雇用に影響を与える事が出来る」との由。

『The first implication of the model is that monetary policy can offset the impact of the product demand shocks on employment, but it cannot offset the employment loss due to the fall in labor demand and any associated slow real wage adjustment. As a result, the level of “maximum employment” achievable through monetary policy is less than the “full employment” of labor resources. 』

こちらのURL先ではcanとcannnotが斜字体になっているのですけれども、金融政策は「生産物需要ショックのインパクトを軽減する事は出来る」が、「労働需要ショックを軽減することはできない」と言う事で、それが題名の「金融政策の一つの限界」という話になります。その結果として、労働需要ショックによって起きた雇用の落ち込みに対しては、金融政策によって到達することの出来る「雇用の最大化」レベルは必然的に労働リソースの「完全雇用」には届かない、という話です。

つーことで、この辺に関する概念的な話はコチャラコタ総裁は以前から指摘しているのですけれども、こういう切り口で話をしたのは最近の事(今回が初めてのような気もする)ですなあという所です。


・雇用に対する非金融政策を有効にするのは緩和的な金融環境

ではコチャラコタ総裁は金融政策で完全雇用の達成は難しいのだからFRBはもっと物価重視的になって金融緩和の出口政策を早めるべきであるというような話をしているのかと言えばさにあらずでございまして、この次にこのような話があります。

『A second implication is that non-monetary policies specifically designed to stimulate the demand for workers (such as government subsidies for hiring) can offset some of the employment loss due to the labor demand shocks, but only if accompanied by monetary easing.』

ちなみに「but only if accompanied by monetary easing」がこれまた斜字体になっておりまして、雇用に対する需要を高めるための非金融政策(たとえばという事で、雇用に対する政府関連機関による政策というのを挙げていますが)は「労働需要ショックによって起こされるインパクトを軽減することが出来る」としていますが、その後に「しかしそれには緩和的な金融政策という環境が必要である」という風にしておりまして、つまり「金融政策で完全雇用の達成は難しく、非金融政策による施策が必要である、ただしその非金融政策を有効にするのは緩和的な金融環境です」という話が今回のスピーチのキモのようですな。

『That is, monetary and non-monetary policy must work in concert to reduce the impact of a decline in labor demand; neither can do it alone.』

まあ今申し上げたように「金融政策と非金融政策の双方が必要です」という話っすな。


・FRBの金融政策はインフレをターゲット近辺に落ち着かせることに成功している

『Returning to the question posed at the beginning, this model suggests that the Federal Reserve is performing about as well as it can on both mandates. The Federal Reserve’s accommodative policy has offset much of the impact of product demand shocks and so has kept inflation near target.』

プレゼンテーションの方にもある(めんどいので引用しない)のですが、FRBの緩和的な金融政策によって「product demand shocks」を軽減した結果として物価水準がマンデートの近辺にあるという話ですわな。

『However, this policy has been unable to offset the large adverse shocks to labor demand. The model implies that, in terms of employment, there are limits to what monetary policy can achieve on its own.』

しかし、金融政策だけでは現在の大きな労働需要に対する負のショックをオフセットする事はできませんので、つまり金融政策単体での完全需要達成は無理なので、非金融政策による労働市場への働きかけが必要、という話が結論です。

つーことで、まあ結局サマリー全文引用攻撃になってしまいましたが(^^)、非金融政策による働き掛けの際には緩和的な金融環境が必要という話をしている訳ですから、そーゆー意味では今回の講演はタカ派でも何でもないと思うのですが、何をどう読むとモーサテのように「早期利上げの必要性を示唆」となるのかさっぱり理解致しかねる次第でございまする。

足元でタカ派の地区連銀総裁がタカ派な話をして、その一方で執行部とかハト派の人が対抗するかのようにハト派な話をするというオモシロ展開が続いている(外野で見ている方としてはオモシロ展開なのですが、コミュニケーションポリシーとして如何なものかと思わん事も無い)ので、コチャラコタ総裁がタカ派気味(まあ物価重視的な話がここまで多かった)なので講演をしたら当然タカ派の発言をするだろうという思い込みから講演テキストも見ないで報道したんじゃないか疑惑が出てしまいますなあテレ東さんあるいは日経さん。

#いかん、また悪態がorzorzorz