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2012/06/29

お題「またオペ雑談/第2期RTGSに関するペーパーより/バーナンキ議長会見をまたまた引っ張る」

ありゃま、もう月末なんですかorzorz

○またもオペ雑談

ただの粘着ですかそうですか(^^)。

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120628.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年7月2日 2012年9月27日

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120628.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月2日スタート分) 15,033 8,009 53.3

ということで3か月固定オペをまたまた新規で入れてきたのですが、もともと今月は20日以降月末に掛けてのオペの期落ちが少なかったうえに、3か月のロールを6か月で実施するという荒業プレイによってロールの札が減ったのもあって、まあ3か月のニーズはあったということでめでたく応札が1.5兆円入って良かったですね(棒読み)という所ではございます。

まあ何と申しますかオペ残高確保の為になりふり構わずという風情でありまして、そらまあ5月の決定会合議事要旨見たら政策委員会から「まあお前ら頑張れ」とか実務上のフィージビリティー的に限界のある状態までオペ拡大して後は現場にマルナゲータとか現場からしたらナメトンノカヴォケという所ではございましょうけれども(−−)、まあそんな中でも頑張る所がジャパンのクオリティーっぽくて実に素敵ではございます。

・・・・・・・ただですな、3か月のオペのロールが6か月になるとか、そんでもって減った3か月の分を今度は新規で入れるとか(それこそ今回のオペのエンドでのロールが6か月になったら「創刊号は200円」の某ディアゴスティーニ商法かという所ですが^^)、あまりオペの打ち方が猫の目状態になってしまうと、そもそも現在は量的緩和状態を実施している中で、そういう環境下において別に固定金利の3か月とか6か月とかそんな長い資金ってニーズが多い訳では無いのでして、資金のアベイラビリティーに問題があるという状態だと固定金利にニーズがあるのは欧州見れば判りますけど、日本の市場環境的には、資金のアベイラビリティーよりも担保足りなくなる方がリスクというまあある意味贅沢な悩みではありますが、そーゆー状況にある訳でございます。

そして、固定金利オペにニーズの出るもう一つのルートとしては長短金利差での鞘抜きニーズという話になるのですが、基金国債買入をホイホイ拡大した結果として、1年どころか3年まで金利が0.10%に張り付いてしまいますと、そもそも6か月の資金を固定しても鞘抜けるものが無い(たとえば1年金利が0.15%だったら6か月を0.10%で固定したら後半6か月が0.20%でブレークイーブンとかそういう話ね)のでございまして、益々ニーズございませんなというお話。

つまりですよ、そういう次第でそもそもニーズが無い中でまあそれはそれで一定の札が入るのはどうしてかと考えた場合に、「安定したファンディング」というニーズが有る訳でして、国債ディーラーからするとまあ当然ながら国債売買における在庫ファイナンスのニーズがありまして、売買で結構その必要額はぶれますけれども、そうは言いましても根っこの部分でのファンディングのニーズがありますので、そこに関しては3か月の固定オペをロールしながら対応しまひょかという話になりますがなという事ですな。然るに3か月のオペのエンドが6か月になるとか、急に新規がホイホイ入ってくる(まあ総額減った分の補填したいのは判るけど)とか、あまり猫の目をやられますと入れる方的に「安定したファンディング」のニーズを満たさなくなりますがなとゆー事になって、却って札が入らなくなる可能性がありますので、まあ残高確保に色々と工夫したいのは良く判りますし、工夫大変ですねえとか思うのですけれども、市場的にはそんな事情もあると思われますので、工夫も程々にというのが吉なのではないかと愚考する次第だったりしますです、はい。


○これは中々

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j11.htm/
次世代RTGS第2期対応実施後の決済動向

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j11.pdf

『日本銀行は、2011 年11 月に次世代RTGS 第2 期対応(1 件1 億円以上の大口内為取引のRTGS 化)を実施し、決済の安全性が一段と向上した。日本銀行当座預金における決済量は想定通り大きく増加したが、大口内為取引の件数・金額がピークとなる3 月末も含め、決済は円滑に行われている。1 件1 億円未満の小口内為取引についても、時点ネット決済の決済金額の大幅な減少によって決済リスクが大きく削減された。第2 期対応の実施により、わが国は、大口資金決済に関する国際的な安全性基準をより高いレベルで達成していると言える。』

ということで、昨年11月に大口内為のRTGS化が実施されたあと、特段のトラブルもなく粛々と運営されているというのがさすがの日本クオリティなのであります。内為取引に関しては大口が金額ベースで物凄く多くて、件数ベースでは小口が物凄く多いという事になっています(主に証券決済要因で大口の金額がやたら多くなるとかそういう話だったような)。

本文の図表1という所にその辺があるのですが、2012年3月の1営業日平均で大口内為の件数が1.1万件で金額が9.5兆円、小口内為の件数が550万件で3.0兆円という風になっておりますな。3月末日だと大口が5.1万件の42.5兆円で小口が1956万件(!)の14.1兆円という規模だそうです。


んでもって今回の第2期対応でどうなったかという話ですが、本文2ページのBOX1の所に色々と書いてますけれども、まあこういう風になりましたと。

『次世代RTGS第2期対応は、全国銀行データ通信システム(全銀システム)に構築されたインターフェースを経由し、流動性節約機能を備えた日銀ネットを通じて大口内為取引をRTGS処理するものである。 ここでは、第2期対応後の処理フローを図解する。仕向銀行から全銀システムに送信された内為取引のうち、大口内為取引について銀行間の資金決済に必要な情報が抽出され、これが全銀システムから日銀ネットに送信されてRTGS方式で決済される。日銀ネットでRTGS処理された結果は、全銀システムに送信され、それを受けて全銀システムが被仕向銀行に為替通知を送信する。なお、1件1億円未満の小口内為取引については、従来どおり時点ネット決済で処理される。』

つーことでその状況ですけれども、まあ興味の無い人はスルーする話だがあたくしはこういうの読むのが好きなので延々と引用する。

『@加盟銀行から全銀システムへの送信状況』から少々。

『3月末の大口内為取引について、加盟銀行から全銀システムへの送信状況を第2期対応前後で比較すると(図表3)、第2 期対応後では送信が大幅に早期化していることが分かる。』

という事でその要因ですが、

『大口内為取引の送信タイミングが早期化した要因としては、大口内為取引が、時点ネット決済の下で内為制度のリスク管理策として設けられている仕向超過限度(支払金額と受取金額の差の上限)による送信制約を受けなくなったことが一因と考えられる。』

決済実務している人には当たり前の話だと思うのですが、普段こういうのあまり馴染みのないあたくし的にはへーへーへーの連続でして。

『すなわち、第2 期対応前では、一部の加盟銀行が、仕向超過限度に抵触することがないよう午前中の大口分の送信を抑制していたほか、仕向超過限度額を日中臨時に引き上げる制度を利用する場合には、それが反映されるまで電文の送信を待つことがあった。第2期対応後は、大口内為取引が仕向超過額管理の対象外となり、早期に送信できるようになったものと考えられる。』

『このほか、加盟銀行間において、第2 期対応の実施後における内為取引の円滑な決済を図る観点から、月末日の大口内為取引の送信・決済に関して、内為取引の専用時間帯(8 時半〜9 時。概要は後述)を活用し決済を早期に行うことを申合わせたことも、送信タイミングの早期化に影響したものと考えられる。』


ところでRTGSになる前の内国為替決済って本支店間取引じゃない場合であっても全銀為決前に引出が可能(と書くと何が何やらですが、つまりどこかの銀行からATM使って他行振込をした場合、被仕向銀行側、つまり受けた側での入金ってほぼ即時に入っていて、受けた側で預金引き出しがサクサク出来るのですが、実は銀行同士の資金決済は全銀内為決済時限にならないと実施されませんでしたよねという話)でしたけど大口RTGSにしたらどうなるんでしょとか素人ですいませんが第2次RTGSの話を見ている時に思っていたのですが、その辺の話がその次に。『A全銀システムから日銀ネットへの送信状況』から。

『(月末日朝の事務量への対応)』という小見出しを見ると「おお!」と思う訳ですが。

『全銀システムは、加盟銀行からの内為取引の送信を、先日付分については決済日の5 営業日前から、決済日当日分については月末日では7 時半、通常日では8 時半から受け付けている。こうした取引の受取人口座への入金は、従来、決済日において銀行間の資金決済(時点ネット決済)を待たずに行われていた。他方、第2 期対応の実施後は、大口分の受取人口座への入金は、日銀ネットを通じた銀行間のRTGS 決済の完了後に行われることとなる(前掲BOX1)。』

なるほど。まあこれで内為のヘルシュタットリスク(みたいなもの)が相当削減できましたという話になります罠。

『こうしたスキームの下、日銀ネットの開局時刻は9 時であったため、従来9時前に行われていた受取人口座への入金については9 時以降に後ずれすることになる。取引が集中する月末日では、顧客への入金が大幅に遅れる惧れがあり、これへの対応が課題となった。』

月末は顧客口座からの総合振込とか支手決済(なんて最近は減ったのかね)とか約定弁済とかのセンター処理が色々あって、これが残高不足でセンター処理不能明細として上がってくると法人担当者はヒーコラ言う訳でございまして(−−)

『このため、日本銀行は全銀ネットと協議し、月末日については、日銀ネットの開局時刻を30分前倒しし、内為専用時間帯(8 時半〜9 時)を設定することとした。』

なるほど。

『また、全銀ネットでは、円滑な決済を確保する観点から、全銀システムから日銀ネットへの送信開始時刻を日銀ネット開局から5 分後(月末日8 時35 分、通常日9 時5 分)とし、加盟銀行が流動性を予め投入できる時間を確保した。』

ということで、まああたくしが最初に短期市場関連を触っていた時には資金決済と言えば即時決済以外だと時点決済でございました(歳がばれますが)ので、この10ウン年で隔世の感があるなあとか思うのでありました。まあその間に通信技術も発達しましたしコンピューターの処理能力も向上したというのもあるでしょうけれども。

でまあ『A全銀システムから日銀ネットへの送信状況』、『B日銀ネット上の決済状況』という部分も興味深いのですが、引用しているとキリが無いので『B日銀ネット上の決済状況』の後半あたりから。

『(流動性投入の状況)』という所からですが。

『こうした決済の円滑性は、各金融機関が当座勘定(同時決済口)に投入する流動性の多寡に大きく影響される。以下では、各金融機関が決済のために投入した流動性の日中推移を確認する。』

ということで計数については引用割愛しますが。

『こうした状況は、各金融機関が、各取引の市場慣行等を意識しながら、取引の集中する時間帯に決済に必要な流動性を潤沢に投入していることを示すものと考えられる。午前中に潤沢に投入された流動性が、終日大きく減少することなく高い水準が続く姿は第2 期対応の実施前と変わらない。』

ふむ。

『回転率(決済金額/投入流動性)をみると(図表9)、第2期対応の実施以降、低下しており、流動性はこれまでにも増して潤沢に投入されていることが分かる。』

ふむふむ。

『これは、金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で、大口内為取引に関する申合せの遵守に加え、大口内為取引は、@主に顧客(企業・個人)の振込に利用されるため、顧客サービスの低下を防ぐために加盟銀行が取引の早期の決済を志向している、A顧客間の当日・即時の取引が多く含まれるため、資金部署が取引を予め正確に把握しておくことが困難である、B先日付取引などにより、日銀ネット開局直後における全銀システムからの送信が集中する、といった理由などから、加盟銀行が日銀ネットの開局と同時に、従来よりも厚めに流動性を投入しているためと考えられる。』

>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で
>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で
>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で

ということで、現在は量的緩和状態になっておりますので、当座勘定同時決済口に流動性を集めに投入する事に対する機会費用が特段掛かる訳では無い、という状況でして、RTGS第2期を導入を円滑に実施という点からすると量的緩和状態(&金融不安とか無い状態)で良かったですねというような話になるのですが、これはつまりインターバンクにおける限界的に必要な流動性についての構造変化が恐らくは生じているという話でもありまして、現在の包括緩和を解除する時に流動性をあまり急激に引けませんなあという話にもなるかなとか思いましたです。

まあ前回の量的緩和解除の時も、それ以前の長期化した量的緩和によってインターバンクが限界的に必要とする流動性の量が良く判らんがなという事で、オペの期落ちを利用して資金を実質的に引いていくという形を取った(4月から徐々に引いて行ったら5月大型連休の所でコツンと来ましたねあの時は)のですが、まあ出口政策というのはこういう所での資金需要を変に逼迫させないようにというような事も考えないといけない話で、特にジャパンの場合は決済とかがやたら精密に出来ていて、しかも世の中もそれが普通だと思って動いているという面があるので、その辺アバウトでもシャーナイナイとかで済ませられる欧米諸国とは違う難しさがあるなあと(いつになるか知らんけど)量的緩和状態からの正常化という話の時になったら悩むのかなあとか思うのでありました。

ということで話がずれましたが纏めの所を引用。

『また、第2期対応の実施によって、6年に及ぶ次世代RTGSプロジェクトが完了するとともに、わが国における全ての大口資金決済のRTGS化が達成したことになる。このことは、わが国において、大口資金決済に関する国際的な安全性基準の中で、特に望ましいとされている「日中の即時決済の実現」が達成されたことを意味する。日本銀行では、今後も、わが国決済システム全体の安全性と効率性の確保に向けて努力していきたい。』

実に素晴らしいことであります。


○またまたバーナンキ議長会見ネタ

引き続き引っ張りますが。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf

・財政再建に関して

9ページ目のFox BusinessのPETER BARNES記者の質問から。

『PETER BARNES. Peter Barnes, Fox Business. Sir, you had talked about trying to get maybe a little help from some of the other branches of government, so that leads to the questions about the “fiscal cliff.” Have you seen any evidence that the lack of progress on resolving the fiscal-cliff issue is having an impact on the economy right now? Is it slowing economic growth right now, job creation as we saw last year during this very same debate? And if you’re not seeing it, and if you haven’t seen it yet, when could we-might we start to see it hit the economy and hurt the economy?』

フィスカルクリフに向けた進展が遅いですがその悪影響ってすでに出てますかってな話ですが。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, I think it’s still a bit early, but as we move forward in the year, we do anticipate that the uncertainty associated with the so-called fiscal cliff will have some economic effects.』

つーことで今は影響は殆ど無いが年末が近づけばフィスカルクリフの悪影響に対する不確実性が高まってくるでしょうというお話。

『We heard anecdotes today in the meeting about firms that might be government contractors that were, you know, not sure about whether the contracts would still be in place come January and making employment decisions based on that.』

建築業者などには既に影響が出ているとな。

『More generally, financial markets don’t like uncertainty and, particularly, uncertainty of this magnitude, and that, I think, will be a negative. So that uncertainty is there, that’s going to be an issue.』

不確実性は良くないですし、その影響はネガティブでしょうということで、懸念している感ありありですな。

『I think most importantly, though, is that Congress get the policy right. I’ve talked about three elements for fiscal policy. The first is to do no harm as far as the recovery is concerned, to try to avoid a fiscal cliff that would significantly damage the recovery. But second, to maintain the effort to achieve a sustainable fiscal path over the longer term. And third, to use fiscal policy effectively-to have a better tax code, to make good use of government spending programs and make them efficient and effective, and so on. So I think if Congress does all those things, the ultimate benefits would be substantial.』

ということで今後必要なこととして3つの要素を挙げていますが、フィスカルクリフが経済に顕著な悪影響を与えないようにすること、その一方で財政のサステイナビリティーを確保する事、そして財政の構造改革を行い、有効な形での歳入歳出のデザインをすること、というのを挙げていますな。


・逆さ絵おじさんさすがに前回のはマズーだったと反省したのでしょうか

日経新聞の矢沢(勝手に漢字当ててすいません)記者からの質問が20ページに。

『TOSHIKI YAZAWA. Thank you, Chairman. I’m Toshiki Yazawa from Nikkei. I hear a lot of conversations on liquidity trap in U.S. That was a familiar concept in Japan after a bubble burst in the lost decades. Is U.S. economy in liquidity trap? And if that happens, how could economy escape from here? Thank you.』

米国でも日本のような流動性の罠状態になっているという指摘が多くなってきたが、米国経済についてどう認識しますか?そしてもしそれが起きた場合にどのようにすべきか?という質問でして、後半部分については質問者の意図が普通に素で聞いたのか、それとも日銀に対する政策提案でも貰おうと思ったのかはよく判らないのですが、逆さ絵おじさんの答えがこれまた意外な展開に(^^)。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the U.S. economy is in a situation where short-term interest rates are close to zero. And so what that means is the Federal Reserve cannot add monetary accommodation by cutting short-term interest rates, the usual approach.』

ゼロ金利制約にあるという話はしていますが、流動性トラップに入っているという話はこの先でもスルーしているのでまあ普通に否定してるのでしょう。というか「金融政策でやる事はある(キリッ)」という主張ですので流動性トラップ説は普通に否定でしょうが。

『It’s been one of the themes of my own work for a long time, including some of the work I did on the Bank of Japan, that central banks are not out of tools once the short-term interest rate hits zero.』

ふむふむ。

『There are additional steps that can be taken. And we have demonstrated through both communications techniques-guidance about future policy, which is something the Japanese have done as well, by the way-and through asset purchases, also something the Bank of Japan has done, that central banks do have some ability to provide financial accommodation to support their recovery even when short-term interest rates are close to zero.』

ゼロ金利制約になっても「日銀がやったように」フォワードガイダンスというコミュニケーションポリシーを用いたり、「日銀がやったように」資産買入などの手段を取ると言った形で、色々な手段を取る事が出来ます(ので現在は流動性トラップではない)という事ですけれども、前回の会見の時にクルーグマン批判に対して若干キレ気味になって「我々は日本のような状況になるのを避けた(キリッ)」とか言ったのはさすがに日銀に悪い事したと思ったのではないかと勝手に愚考するのでありますがどうでしょうかね?質問者が日本のメディアですし^^;

『That being said, as I mentioned to Mr. Ip, these nonstandard policies are less well understood, and they do have some costs and risks. But I do think that, at the same time, that they can be effective in helping the economy.』

Mr. Ipってのは昨日引用した質疑でして、逆さ絵おじさんに麿が憑依した記念すべき(??)質疑応答での話でして、つまりここでも麿モードになっているのが中々アレです。

そういえば昨日この辺の麿モードの話でBINYAMIN APPELBAUM記者からの質疑応答の部分で、実をいうと書いている途中で頭が飛んで次の話になってしまうという残念な攻撃になっておりましたので、その部分を再掲します。

(昨日書き漏れた部分の再掲ざんす)

いやね、まあ非伝統的政策を実施する際には当然ながらこの手の事を考えながら行うのは中央銀行的には当たり前の話なのですが、FEDの場合に関しては(ここで文章切ってしまっておりましたが続きはこうなっていまして・・・・・→)元々こういう出口だの副作用だのの話をスルーして、「とりあえず大きな問題もなさそうだったら効くか効かないか判らないし出口政策どうするのか判らんけど突っ込んじゃえ♪」的な雰囲気が昔からあったので麿モードになって普通の中央銀行が言うような話を逆さ絵先生がおっぱじめたのには意外感があります。


とまあそういう所で、もうちょっとだけネタは有るのですが例によって時間がががががorz





2012/06/28

お題「ちょっとしたネタだがECBの預金ファシリティ金利がどうのこうのの話/バーナンキ会見ネタ続き」

さきほどのモーサテでの為替の電話コメンテーターが「欧州債務問題の対応策の一環でECB利下げ」という話だがいやそれはロジックが変だろと思いつつ最近のその辺の言説について一応あたくし的ツッコミを入れてみようかと。

#為替系コメンテーターって金融政策絡みで碌な事言わねえとか思っていたのですが、先日某所で当座預金残高更新に関する論点をきっちりと整理したレターを見たのですが、本ちゃんのレポートではないので惜しくもネタにするのは控えます。まあ皆さん探して味噌。ヒントは当座預金残高がどうのこうのというお題の某外資系証券の為替関連レターだよん♪


○ECBの利下げ期待はまあ良いとして関連論点がおかしい件について

まあ実は市場のお仲間さんと話しながら色々と考えたので折角だからメモにしておくとかそういう話だったりするのですが、まあECBの利下げ云々に絡む話で何か変じゃねというのがどうも目に付くのよ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5O5TU6JTSE801.html
ECB、利下げに伴う中銀預金金利ゼロを問題視せず−当局者

『協議が非公式だとして匿名で語った同当局者によると、利下げ実施となれば下限政策金利である中銀預金金利を現行の0.25%から引き下げることを伴うが、政策委員会の大半のメンバーは問題視していない。ただ、この関係者は利下げは確実ではないとも語った。ECB報道官はコメントを控えた。』(上記URLより)

・・・・・・・?????としか申し上げようがないのですけれども、どうも欧米市場発のレポートとか見てるとこの手の話が多くて(逆に「預金ファシリティー金利をゼロに下げられないからECBは利下げができない」という意見もあったりする)、趣味の中銀ヲチャー(中銀ウォッチャーというのはおこがましいのでヲチャーを自称^^)をしておりますあたくし的に思いまするに、そもそも何でMRO金利下げるのと同時に預金ファシリティー金利を下げなきゃいかんのかと小一時間問い詰めたい訳でございます。

そもそも常設ファシリティ―作るのは金利回廊を形成することによって市場金利の上限と下限をまあ大体形成する(正確に言えば貸出ファシリティ―は担保が無いと利用できないので無担保の金利は貸出ファシリティー金利を上回る可能性はある)為に作る物ですが、そのコリドアの幅を幾らに設定するのかは別に勝手に決める世界でありますし、そもそも量的緩和政策のような形でインターバンクに所要準備を遥かに超える資金供給を実施した場合には理念的には市場取引金利は預金ファシリティー金利まで低下した所で張り付く形になるので、量的緩和政策の実施と共に日本や米国の場合は預金ファシリティー金利を政策金利と同水準(その後どちらの中銀も政策金利をバンドにしてそのバンドの上限が預金ファシリティー金利になっていますがな)にしている訳で、利下げするのに同時に預金ファシリティー金利を下げないといけない義理は無いのですけど、まあ未体験ゾーンだからどうも実感として湧かないのでしょうかね。


更にこんな話とか。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M695YN6TTDS001.html
ドラギ総裁、未知の空間に足を踏み入れるか-FRB議長は敬遠

『6月27日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、米連邦準備制度理事会(FRB)が敬遠しているトワイライトゾーン(未知の空間)に金利を設定することを真剣に考えている。ECBの利下げは信頼感改善や貸し出し促進、成長拡大につながるもようだが、下限政策金利である中銀預金金利がゼロ以下に下がることにもなるかもしれない。0.25%からの中銀預金金利引き下げは、てこ入れを図ろうとしている短期金融市場に悪影響を与えかねないことが政策当局者にとって障害となっていたが、もはやタブーではないと、ユーロ圏の中銀当局者2人が15日に語っている。』(上記URLより)

まあさっきのニュースの関連記事ではございますが・・・・・・・

『フランクフルト・トラストの資産配分責任者クリストフ・キント氏は、「金利引き下げは現在の状況では心理的に重要な効果をもたらすだろう」と分析。「マイナス金利は不合理な概念ではない。ただ、ECBが望むような効果が実現するかどうかは分からない」とくぎを刺した。中銀預金金利がゼロ以下になれば、銀行は過剰流動性をECBに預けることを控え、代わりにその資金を融資に回すことが考えられる。ECBへの預金は1日当たり約8000億ユーロ(約79兆円)に上る。』(上記URLより)

・・・・・・・・えーっとですね、現在欧州が直面している問題というのは金融市場の短期的な問題としてはリスクオフという名前の信用収縮でございまして、信用収縮している時に上記のような「中銀預金金利がゼロ以下になれば、銀行は過剰流動性をECBに預けることを控え、代わりにその資金を融資に回すことが考えられる」という効果が起きるのでしょうかという設問に関しては2001年に実施した日本の量的緩和政策およびそれに付随するゼロ金利政策を見れば答えは出ている筈でして、信用収縮だったりバランスシート制約があってそもそも金融機関がリスクテイクできないという状況下では、そもそも金利が高いから貸出をするとかそういう状況にはなり得ない訳でございまして、市場取引がそれによって活性化する訳ねえだろと存じます次第。

いわゆるポートフォリオリバランス効果が働く為には、そもそものバランスシート制約が無い(または極めて少ない)状況であることが前提として必要であり、銀行間取引にしろ融資にしろ、そもそも信用収縮があったりバランスシート制約があったりする時にはそのそもそも論となる問題が解消されない限りにおいてどんな餌を吊るしてもポートフォリオリバランスは期待されるような効果を発揮できないでしょという話でして、日本の例もそうですし、大体からしてサブプライム問題発生以降の米国金融市場だってそんな感じだった訳で、今さらECBは何を言ってるんだという感じですが、まあ報道がそもそも正しいのかどうかがワカランチ会長なのであまり罵詈雑言を放つのは避けますね(^^)。


それにですな、そもそも金融市場が信用収縮モードになっている時というのは短期金融市場における市場機能が低下している訳でして、金融機関のファンディングを円滑に回すためには中央銀行が短期金融市場のカウンターパーティーとなって取引を回さないと行けないのでありまして、それこそFEDも日銀もそういう形での短期金融市場への関与を行っている訳ですが、当座預金金利ゼロだのマイナスだのにして流動性を中央銀行に持たせない政策を実施したら、中銀が短期金融市場のカウンターパーティーとして取引を回すのが却って困難になり、危機下における短期金融市場というか金融機関のファンディングが更に機能低下する訳で、却って危機を拡大するリスクを抱えますがなという事になりますわな。

大体からして信用収縮しててバランスシート制約のある中で中銀の当座預金に所要準備以上置くなというような話に成ったら、金融機関は何をするかと言ったら国債買うか安全な海外の国債(まあ今だったら米国債とか英国債とか日本国債とかでしょ)しかしない訳で、単に安全国と見なされる国の国債金利が低下してそれこそこっちが大迷惑というだけの話でありまして、まあアホな事は勘弁して欲しいものだと思うのですけれども、さすがにこの程度の話ECBは普通に判っていると思うので、単なるポジショントーク含めた煽りを受けて記事にしてるという感じだとは存じますがねえという所で。

あと、利下げは景気判断に基づく話で金融危機対策とは実は別問題だと何度いったら判るのやらという感じではございますけどね(金融危機が実体経済に悪影響を与えるから利下げというのはまあ有るけど)。

#ということでまあ短期市場の皆様におかれましては何を今さら話のメモで誠に恐縮至極


○今日も今日とてバーナンキ議長会見ネタ

まあ四半期末ですので勘弁ということで(謎)。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf
今朝見たらFINAL版になっているのでページに関してはFINAL版のページで参ります。

#前回の経験からして初稿とFINALの違いは改行処理が違うのと、フォントの大きさが違うのとであって、文面は同じだと思いますのであまり問題は無いと思います

・緩和が足りないぞゴルァという質問は結構多くて・・・・・

昨日引用したちょっと後になりまして、質疑の8ページ(ちなみに初稿版だと9ページになります。初稿だと26ページ組で最終稿は22ページ組と若干ページの総量が減るのだ)からになります。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binya Appelbaum, New York Times. I’m looking at the projections you all released today that show that unemployment will be between 8 and 8.2 percent at the end of the year. You told Congress earlier this month that the defining factor in your decision about whether to do more would be whether unemployment was coming down. That’s barely a decrease. And I guess I’m struggling to understand why, in that context, you are not doing more now, particularly when you say that you can do more and that you would do more if it wasn’t happening.』

SEPでの見通しによれば今年末の失業率は8-8.2%となってますが、おっちゃん議会証言でも失業率が低下するかどうかってのが今後の追加緩和を検討するファクターとか言っている訳で、いまこの状況こそがその追加緩和検討時期じゃねえのかやる気あんのかゴルァ、とは言ってませんがまあ非難チック。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, first of all, again, we are-we did take a substantive step today by extending the maturity extension program to the end of the year. Again, I think that’s a meaningful additional step.』

いやいやツイストの延長は重要なステップですよとさっきも言ったじゃないですか、と言っても当然許してくれるわけもなく。

『BINYAMIN APPELBAUM. The projections included that step, right?』

予想にこのツイスト延長を織り込んでこの見通しだったらやっぱり足りないじゃねえかというような意味での質問でございますな。

『CHAIRMAN BERNANKE. It depends on-each individual has their own path of optimal policy, so we’ll provide more information about that in the minutes. But-and again, we’re prepared to do more. We have to get, I think, further information about the state of the economy, about where things are going, about what’s happening in Europe.』

まあそれについては各個人の考えですのでと逃げを打ちつつ、いや今後の準備はしていますし、欧州情勢見ながらそこは検討しています、という話をした訳ですが、この後逆さ絵おじさんに急に麿が憑依されたようで、白川モードキタコレの巻がこの次。

『I guess I would add to that, though, that, you know, each of these nonstandard programs does have various costs and risks associated with it with respect to market functioning, with respect to financial stability, with respect to the exit process, and so I don’t think they should be launched lightly.』

非伝統的政策にはリスクとコストがありますだの、市場機能の問題だの金融の不均衡問題だの、出口政策の問題だの、だから慎重に導入するんですだのどう見ても白川方明です本当にありがとうございましたという麿憑依キタコレという発言にワロタ。

いやね、まあ非伝統的政策を実施する際には当然ながらこの手の事を考えながら行うのは中央銀行的には当たり前の話なのですが、FEDの場合に関しては(以下書き漏れ分追記:)元々こういう出口だの副作用だのの話をスルーして、「とりあえず大きな問題もなさそうだったら効くか効かないか判らないし出口政策どうするのか判らんけど突っ込んじゃえ♪」的な雰囲気が昔からあったので麿モードになって普通の中央銀行が言うような話を逆さ絵先生がおっぱじめたのには意外感があります。

『I think there should be some conviction that they’re needed, but if we do come to that conviction, then we’ll take those additional steps.』

ということで、まあ追加緩和に関しては「より確信が必要」というお話でありました。


・企業金融オペみたいなのの検討とな

ちょっと飛んで18ページから。

『GREG ROBB. Thank you, Mr. Chairman. Greg Robb, MarketWatch. I just wanted to get back to lending and credit. The U.K. has started a program where the Bank of England is going to make lending to banks only if they lend to households and companies. Is that something the Fed has under consideration? Would that be something you’d start here?』

そういやネタにしてませんが(大汗)、BOEが昔々の日銀がやった企業金融支援貸出制度のような貸出制度を実施して企業金融や家計への信用供与しましょうよ策を導入した件についてね。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, we’re very interested in it, and we’re certainly going to follow it. The details are not yet available. And I think it should be noted that it’s not just a Bank of England program, but it’s joint with the British Treasury. So the question-one question might be, how much of a fiscal component is there? Is there some kind of fiscal subsidy being included there?』

ということで、単体では出来ない話なのですがネタとしては考えておりますがなという話。

『But we are looking for-as you know, throughout the crisis, we’ve looked for new programs, new ways to help the economy. And this will be a type of thing that will be on the list of programs that we look at.』

んな訳で、まあFEDもそんなのやるのかよ日銀状態じゃなと胸熱の展開。


・またまた麿モード

どうも「追加やらねえのかコノヤロー」という質問の度が過ぎると急に麿の生霊が憑依するような仕様が逆さ絵おじさんに追加されたようで誠に香ばしい事でございます(^^)。

『GREG IP. Hi. Greg Ip of the Economist. You have an inflation target of 2 percent, but your projections show inflation centered below 2 percent over the medium term. I was wondering if you could explain why. And secondly, you said that the Fed is prepared to do more if necessary. Could you briefly comment on what sort of form additional action might take? And, specifically, what are the relative costs and benefits of doing more QE versus more maturity extension?』

そもそも物価見通しだって中期的に中心が2%切ってるじゃねえかとか中々いい感じで突っ込んでいるのですが、追加の具体例コメントしろだのMEPとQE3のプロコン比較しろだの中々アレですな。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the-in terms of the inflation forecasts, again, I think it should be said, as a preliminary point, that economic projections have a lot of uncertainty about them. We talk about that uncertainty in the survey of economic projections. So we shouldn’t take a false sense of precision from those numbers.』

物価についてはまあ不確実性なども考えつつこの数字ですが。

『That being said, there is an issue about whether or not there’s sufficient stimulus in the economy. As I mentioned earlier, one problem is that we are now at the zero bound, and that the types of unconventional programs that are available are-we know less about them, they have various costs and risks, and, for that reason, you may get a different amount of financial accommodation in this kind of regime than you would in one where short-term interest rates can be varied freely. So I think that’s really a critical issue.』

非伝統的政策ってあまり試した事が無いのだから色々とコストとかリスクについて慎重に考えて政策を突っ込まないといけないとかどこの麿だと。

『Now, in terms of the costs, I would list, briefly, large asset purchases increase the size of our balance sheet and therefore ultimately will make exit a more extended process.』

バランス拡大しすぎると出口政策に時間が掛かるキタコレ。

『Large asset purchases-which means that the Fed owns a larger share of a particular type of asset-may have implications for market functioning, which in turn might affect the ability of the Fed to have stimulative effects on the economy.』

『There are some financial stability issues that we are monitoring and that have to be taken into account. So any kind of assessment of appropriate policy must look both at the outlook for the economy and for-and at the costs and risks associated with new measures, new steps that might be taken.』

第二の柱までキタコレという感じで、どう見ても白川方明アゲインです本当にありがとうございました。

『That being said, again, I think at this point, we still do have considerable scope to do more, and we are prepared to do more. We’ll continue to monitor the economy and see how things evolve. And if-again, we’re looking primarily at the labor market in this respect-if we’re not seeing a sustained improvement in the labor market, that would require additional action.』

で、必要ならば実施しますよ発言というのがここに来るのだ。

『In terms of balance sheet actions, we are unlikely to do more maturity extension for a while because we have taken that about as far as we can. So we would have to take other types of steps in order to add to the amount of stimulus in the economy.』

あと、MEPについては弾切れの為今後はしばらくできませんよというはなしを付け加えています。

#と言ったところで本日は勘弁




2012/06/27

お題「バーナンキ議長記者会見ネタとオペ雑談」

消費税法案通ってまた金融政策に期待とか言われるんだろうなあと思う今日この頃。

○オペ雑談メモ

毎日工夫をこらしたオペを打っているのは判りますが・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120626.htm

米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年6月28日 2012年7月6日 0.670
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年6月28日 2012年9月20日 0.680
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月28日 2013年1月21日


http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120626.htm

米ドル資金供給(固定金利方式)(7月6日エンド分) 0 0
米ドル資金供給(固定金利方式)(9月20日エンド分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月28日スタート分) 3,985 3,985

ドルオペの方はまあ良いとしまして、昨日は固定金利オペのオファーがあったのですけれども、何故か3か月物のオペのロールを6か月で打つという「創刊号は300円」のディアゴスティーニ商法もビックリのオファーを実施。まあ普通にやっていると6か月物のオペって中々札が入らない(しかも20日越えて当座預金残高が空前の状態になっているという中ですし)のでこういう戦法を取って札集めようというお気持ちは判るのですが、この前はまあ3か月オペを新規で入れたからその分の振替で3か月のロールを6か月で打ってもまあそうですねえとは思いましたが、さすがに2発目となるとややアレな雰囲気が。

いやですね、基本的に固定金利オペってロール前提でオファーしているという風に市場の方も思って段取りを組んでいる筈でして、3か月のオペの落ちが6か月になるとかいうのを乱発されますとやはりそれは「事前の段取りが狂う」という話になると思いますので、その方が札が入るかもしれないから打ちたくなるのは判るのですけれども、さすがに段取り組んでたのがいきなり変更とかになりますと、今度は「ロールが必ずしも同じように入らないかもしれない」というのを前提に置いた応札をする(つまり安心して応札できないという話)事になると思いますので、目先はともかく、将来的な継続的な見方をした場合に却って応札が減ることになりゃせんかという気は何となくするんですがどうでしょうかね。つーか8000億円(細かい事言うと8004億円)のロールに対して応札が3985億円しか無かったというのは(ちなみに前回の攻撃時は8011億円のロールに6899億円が応札)単に資金ニーズがという話だとは思いますが、こじつけてしまえば固定金利オペの運営に関して不確実性が出てきたのでオペの応札が減ったとも言えない事はございませんと存じますです、はい。

まーそんな事言ってる場合じゃないという位の技術的な固定金利オペの限界に至っておりますがなといってしまえばそれまでの話ではあるのですが


○バーナンキ議長会見ネタである

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf
現状で見れるのはPRELIMINARY版ですので、ページとかはFINAL版(しばらくするとリンク先のファイルがFINAL版に差し替えになります)と違うのは勘弁。


・緩和が足りない系の質問が早速飛んでくる

実質2番目の質疑はロイターのMark Felsenthal記者の質問から。5ページ目からになります。

『Mark Felsenthal: Mark Felsenthal with Reuters. Mr. Chairman, many analysts have characterized today's step as somewhat modest. Your own outlook has a much lower GDP projection. The unemployment rate in your outlook is--shows possibly no improvement at all in the unemployment rate through the end of this year. The program itself is smaller and of shorter duration than the original Operation Twist. Given this weaker outlook, why such a modest program? And when you say you are prepared to take further action, which is a stronger characterization than in your last meeting, does that mean you are prepared to do a full-on new asset purchase program?』

ということで、景気見通しをあんだけ下げているのに今回の措置がしょぼい件について何でですねんという早速のクレクレキタコレという感じで甚だお洒落。しかし今回のオペレーションツイストの規模が元々の規模より小さいのはどういう事じゃと言われても弾が無いものはシャーナイじゃないのよと思いますけどねえ。

逆さ絵おじさんのお答え。

『Chairman Bernanke: Well, there has been a great deal of economic news since our last meeting. The incoming data were somewhat disappointing, but not entirely clear how to read them. We had issues with weather and seasonal adjustments and other factors. Meanwhile, Europe has had additional problems. We've seen some of those effects in financial markets. So, I think, there is some case to be made for making some additional judgments about where the economy is going.』

最近のデータは失望的ですが、一時的要因や特殊要因の精査が必要というのはこの前の議会証言でも発言していたことですので、まあそう来る罠とは思います。んでもって欧州問題に関してもまだ少し様子見とか、まあ今はQE3実施という文脈で言えば様子見モードというお話のようで。

『That being said, the step we took, the extension of the Maturity Extension Program, I think is a substantive step and it will provide some additional support. And yes, additional asset purchases would be among the things that we would certainly consider if we need to take additional measures to strengthen the economy.』

で、今回のMEP(って名前なのか)は十分なステップで、今後必要ならばやりますおという答えで済ませておりますな、うんうん。


・金融政策にはもう限界来てませんか系の質問

次の質疑。

『Jon Hilsenrath: Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Mr.Chairman, I'd like to ask you to respond to a different set of criticisms. This criticism which you hear from Capitol Hill and Wall Street and different places is that the Fed has already pushed interest rates to an extraordinarily low level, a historically low level and that there isn't anything more that the Fed can do to help the recovery.』

キタコレ。

『That criticism is that the Fed at this point should stand down and let Congress or the White House attend to the economy's ailments or let market forces attend to the economy's ailments. What do you think of those arguments and how would you respond to them?』

でまあその質問に対してですが。

『Chairman Bernanke: Well, as I've said many times, monetary policy is not a panacea.』

金融政策は万能薬じゃない発言キタコレ。

『Monetary policy by itself is not going to solve our economic problems. We welcome help and support from any other part of the government, from other economic policy makers.』

まあそうですな。

『So, collaboration is--would be great.』

まあ逆さ絵おじさんが言うとおっしゃる通りとなるのですが、麿が言うと微妙に責任逃れチックに受け止められるというのは残念ながらまあそういう所でしょうなあとか思いますが関係ないですかそうですか。

『I wouldn't accept the proposition, though, that the Fed has no more ammunition. I do think that our tools, while they are nonstandard, still can create more accommodative financial conditions, can still provide support for the economy, can still help us return to a more normal economic situation.』

FEDが弾切れという指摘には全力で否定する所が逆さ絵クオリティ。

『That being said again, any other support that is forthcoming, any other economic policies that are undertaken that are helpful in terms of making our economy stronger are welcome. But I do think that monetary policy still does have some capacity to strengthen the economy by easing financial conditions.』

まあやってますよ感を見せながらこういうと何となく説得力があるので、どこぞの麿様におかれましても見せ方を工夫するという事が大事ではないかと思ったりもしますが、恐らくハッタリ成分が不足しておられるので中々難しい面もあろうかと思います。

・・・・とまあそれだけで片付けるのもアレでございまして、今回冒頭からの質問をここまで見てて思ったのは、段々質問のトーンが辛辣になってきているなというのがございまして、QEだツイストだとやっているけれども労働市場の回復は遅いですよねという状況が続く中で、段々質問する方と申しますか、世間様が逆さ絵おじさんに対してイラっとさんなって来ているんじゃネーノというものを感じるあたくしでした。

つまりですな、確かにまあ白川麿の見せ方もうちょっとハッタリ効かせたらとは思いますけれども、そもそも金融緩和やら信用緩和チックな施策まで含めた包括緩和政策を散々っぱら実施して限界的に金融政策の効きが悪くなってきているので、中々言うても説得力ががががという面があり、米国に関しても徐々にその追加金融緩和政策の効きが悪くなってきて、その結果として記者会見の質問が段々キツめになってきているんじゃないかなという気がするんですよね。まあ気のせいかもしれないけど。


・資産価格ルートへの言及

次の質問はロムニー氏の「QE2の効果は相対的に小さかった」批判に関連して。

『Zach Goldfarb: Thank you. Mitt Romney recently said that QE2 had a relatively little impact on the economy. He said that was in part because of the President's policies, and he said that QE3 was unwarranted and could have negative effects. Do you agree that QE2 had little effect on the economy? Do you think the President's policies has had an effect on the effectiveness of monetary policy? And do you think it's appropriate for a presidential candidate to comment on the future path of monetary policy?』

最後の質問とかどう見ても地雷です本当にありがとうございましたという感じですが。

『Chairman Bernanke: Well, I just say first that we think that both of the asset purchase programs, so-called QE1 and QE2, did have significant effects on asset prices and financial conditions and although there were certain problems in transmission for example, the housing market has not been as responsive as it's been in some times in the past.』

ということで、この話はいつも逆さ絵おじさんが行っていますが、かならず言及してくるのが資産価格ルート。どうもどこぞの麿様におかれましてはこの資産価格ルートを言及するのがお好みではなさそうな感じをひしひしと発言等を見ると受けるのでありますが、非伝統的政策を実施するという文脈で言えば、既に「猫の手も借りたい」状態であるわけでございまして、その面で言えば伝統的政策で考えた場合に猫の手であるかもしれない資産価格ルートについても重要ではないかと思える次第。

もちろん、あまり資産価格資産価格言ってると第二の柱的問題もさることながら、出口政策時に資産価格のバックラッシュが起きるリスクを高めるという意味で、まあ逆さ絵おじさんって出口政策あまり真面目に考えてないだろ(実はこの後にその手の話が出てくるので必ずしもそうではないと思いますが、今日はネタにする時間なし)とか思うので、今は逆さ絵おじさんの方が見栄え良いけど将来は分からんがなとは思いますけどね。

『We do think that they were both effective in providing support for the economy and in particular, so-called QE2 ended what looked to be an incipient deflation problem when we first introduced it. So, I do think those have been effective and as I said to Mr. Hilsenrath, we think that these kinds of programs can still provide additional support. 』

またQE2はデフレーション入りのリスクを回避しましたというのはまあそうでしたねという所で。

『With respect to the rest of your questions, I just want to reiterate that the Federal Reserve is nonpartisan, we are very serious about taking our decisions based on purely economic grounds without political considerations, and we'll continue to do that.』

>we are very serious about taking our decisions based on purely economic grounds without political considerations

はあそうですかという感じもしますが、まあこれはこう答えるしかないですね。


・ポートフォリオリバランス効果への言及

とか何とか引用しているうちに8ページ目に突入しますが。

『Jim Puzzanghera: Thanks. Jim Puzzanghera with the LA Times. Long-term interest rates, mortgage rates are already at historic lows. How much more help can an extension of Operation Twist do and--to lower interest rates?』

既に長期金利もモーゲージ金利も歴史的な低金利水準になっているのに、オペレーションツイストで金利を下げて何の効果がありますねんという身も蓋もない質問ですが、身も蓋も無い質問なだけに答えの方が結構長かったりする。

『Chairman Bernanke: Well, the interest rates are quite low and they're being pushed down more by safe-haven flows and other factors.』

足元での金利低下には安全資産への逃避の動きや他のファクターもありますねと仰せ。

『That being said, I think we can lower interest rates more.』

逆さ絵おじさん「That being said」ってのが良く出てくるのですが、この会見読んでて1つ勉強になりました(→英語力がアレなのがばれますかそうですか)。

『But beyond that, Operation Twist and asset purchases work also through other channels.』

ほほう。で、その別の経路とは・・・・・

『In particular, by acquiring securities in the market and bringing them on to the Fed's balance sheet. We essentially induce investors to move into substantive securities. So for example, an investor who sells a Treasury security to the Fed may end up buying a corporate bond instead and so the effect will be to lower corporate bond rates and corporate spreads or a bank may, having sold its Treasury securities, may decide to make a loan instead. So, it's not just the effect on the long-term interest rate, but there's a broader set of effects that feed through other asset prices, other interest rates, other spreads, and provide a broader ease in financial conditions which is supportive to the economy.』

という事で、いわゆるポートフォリオリバランス効果について説明しているのですけれども、日本の場合このポートフォリオリバランス効果って本当に出たのかはかなり怪しげな部分がありまして、現在の米国でもバランスシート調整の途上な上に、ボルカールールだとか言って金融業のレバレッジ規制が強化され、流動性規制やら資本賦課の引き上げやらというような流れになって、まあ要するに金融業全般にデレバレッジ圧力が掛かりやすい中でのポートフォリオリバランス効果って本当にワークするのですかという風に直感的には思うのですよね。

たぶんね、日本でもいわゆるポートフォリオリバランス効果が云々ってのが体感的にそうかなと思うようになったのって、金融機関の資本問題とかが一応の目途がついて、金融機関がそれなりにバランスシート使ってリスク取って云々みたいな動きができるような状態になってからじゃないかと思うので、そーゆー意味からしてこのポートフォリオリバランス効果というのは(まあ言うのはタダですから言う事は否定しませんが)どうなのよという気がしますがな。

もし緩和的な金融環境によるポートフォリオリバランス効果を出して〜という話であれば、足元で進行しているプルーデンスウィングの規制強化じゃオリャーというのを一旦停止するとかしないと規制によるデレバレッジの方がやはり効くようになると思うのですけどね。

という所でまあ時間と量の関係で本日はここまで。ちなみに全文26ページ中の8ページまで来ましたが、この先はオモシロ質問とどうでも良い質問が混在しているので、どうでも良いのはスルーしつつオモシロ質問をネタにしたいと思います、はい。




2012/06/26

お題「諸般の事情につき雑談ネタとバーナンキ会見のほんの一部だけ」

諸般の事情ってただの寝坊なんですが(汗)民主党の反対がどうのこうのとか言うのってこれ本当に反対の結果で法案が否決されるとなったらここまでの騒ぎになってねえだろ民主党の造反組とか思うのでありまして、反対するけど離党しないとか茶番にも程があるわと思ったら「選挙対策で反対するのか」みたいな民放テレビのコメントが多かったですな。

それはそれとして昨日ヘッドラインを見て胸が熱かったのはこれ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120625-00001636-yom-bus_all
リクルート、上場検討…10月に持ち株会社設立
読売新聞 6月26日(火)3時1分配信

「リクルート」「上場」と聞くとリクルート事件とかリクルートコスモス株とか今でも反射的に思い出すあたくしは昭和脳ですかそうですかどうもすいません。

#平成生まれの若い衆の産まれる前ですもんねえ


○何となく雑談ネタみたいなものを少々

・当座預金残高が絶賛拡大している訳ですが

昨日の当座預金残高速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx120625.htm
当座預金残高 425,500

本日の当座預金残高予想
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp120626.htm
当座預金増減 +9,600

ということでございますので、本日は日銀当座預金残高が43兆円台に乗る予想となっている訳ですが、今年の3月とか4月に前年の震災対応流動性供給の影響で前年比のマネーが減って日銀は金融引き締めしているから円高になってケシカランとか言っていた人たち、特にどこぞの何とかスト様におかれましては当然ながら足元の状況を捕まえて日銀の金融緩和が進んで大変に素晴らしいとか褒めるんでしょうねえと存じまして、目を皿のようにして某証券や某証券からのレポート配信を楽しみにしておったのですが、あたくしが見た所その手のレポートらしきものは全く拝読できないという甚だ残念な状態。

まあ何ですな、つまりおまいら日銀の引き締めガーとか抜かしていたのは単にその場で日銀にいちゃもんをつけただけだったんちゃうのかと小一時間問い詰めたい訳でありまして、世の中色々な言説を拝見しておりますと、まあメディア系電波発信装置系の人々は良くやる手段ではありますが、統計とかデータを自分の都合の良い時だけ引用してああだこうだという手段がありまして、本職の何とかストとかが大真面目にこの手の手法を用いるというのも昨今では(まあ一部とはいえ)目に付く所でありますので、よーく監視する必要があるかなあと個人的には思っていますが、一々それを並べて晒しあげとかするほどマメではありませんので気が向くと監視するだけという所ですな、うんうん。


・これは凄い!!!

日銀HPの新着情報にこんなのが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120625a.htm/
調査月報(1945〜1955年)の掲載について

『日本銀行では、過去に公表した資料のうち、日本銀行の政策運営や調査・研究活動などを振り返るうえで資料的な価値の高いものを、ホームページに随時掲載しています。今般、1945年(昭和20年)から1955年(昭和30年)までの「調査月報」(注)に該当する資料を「日本金融史資料昭和続編(第1巻〜第6巻)」から抜粋のうえ掲載しましたので、ご利用ください。なお、1956年(昭和31年)から2006年(平成18年)までの「調査月報・季報」につきましては、既に掲載していますので、併せてご利用ください。』

ということでワクテカしながらリンク先を見るとその中にはこんなページへのリンクが(^^)。

http://www.boj.or.jp/research/past_release/mh02.htm/
調査月報:国内経済調査(1945年8月〜1946年12月、1950年4月〜1954年6月)
日本金融史資料(昭和続編):第2巻より

国内経済調査(昭和20年8月〜11月)
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/mh02_001.pdf[PDF 11,238KB]

ということでクソ重いので踏む際にはご注意ありたいのですが、題名は「経済情勢調査」なのですけれども、内容的には経済情勢だけではなく、その中に「要録」とかあって『蘇聯対日宣戦布告』とか『戦争終結の大詔渙発』とか『ポツダム宣言全文』とか(ちなみに9ページから11ページにあります)あったり、まあ色々な資料があってこれは凄いという感じです。

んでまあ冒頭に『国内経済調査(上)』の『昭和二十年八月―十一月』というのがありますので物は試しに引用(ちなみにスキャンしたもののPDF化なのでテキスト打ちはあたくしの手によりますので落丁乱丁勘弁)。当然ながら原文は縦書きです。

『財界概況

マリアナ喪失以来聯合軍の進攻は頓にその度を加へ、我本土に対する空襲の激化と海上輸送力の低下により軍需生産は急速に減退を来たし長期の抗戦継続は春頃より殆んど絶望的状況に陥りたるが、八月に入るや六日史上未曾有の惨虐なる原子爆弾広島に投下せられ、更に翌々八日に至りては突如ソ聯の宣戦布告あり、我国は一億玉砕か終戦かの重大岐路に立ちたるも、十四日畏くもポツダム宣言受諾の大詔渙発せられ、茲に四年に亘る大東亜戦争は遂にその目的を達することなく終結するの止むなきに到れり。而して鈴木内閣総辞職の跡を受け十七日成立せる東久邇宮内閣はポツダム宣言降伏条項の趣旨に沿ひ、陸海軍の復員を首め戦争継続を前提とする諸般の体制を廃止し民主々義化の第一歩を進めたるも二ケ月に満たずして退陣、十月九日新たに幣原内閣の成立を見憲法改正其他各般の民主々義的施策の実現に努むることとなりたり。』

ってまあ延々と話が続くのですが・・・・・戦後インフレの状況とかの説明などありまして、真面目な話これってPDFで公開とかじゃなくて復刻印刷して書籍にして頂ければ(スキャンしたものの書籍化でも構わないのですが)とりあえずあたしゃ喜んで購入するんですが無理ですかねえ。一目均衡表の本を5万円払って買うような方も世の中にはいる(あたくしはそこまでは思いきれませんでしたが、酒田罫線法だのアストロなんちゃら本だのをせっせと買っていた時代もありましたなあと遠い目^^)のですからこれはもっと行けると思うのですけど(^^)。


○バーナンキ議長のFOMC後の会見である

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf

まあ色々とネタはあるのですが、今回の質疑見てると「最初はハトな話をしていたけれども途中からはやや麿成分のような物も入る」という内容になっていたのがへーという感じなのですが、そもそも質問のトーンが全体的に「何でQE3をやらないのか」という非難成分が強かったりしておりまして、その一方で今回のFOMC声明文やSEPをみますと明らかに経済情勢の現状認識や先行き見通し、金融政策の先行き見通しに関して前回からハト派寄りになっているという面がありますので、そういう事を考えますと声明文などとのバランスを取って、かつ市場の過剰なクレクレ要求に適当に水をぶっ掛ける事によって、先行きのFRBの金融政策運営に対するフリーハンドを確保するというのがあるんでしょうなあと思うのでありました、って昨日も書いたけど。

前回の会見ではどちらかと言うと経済見通しその他はややタカ化している面があり、特にSEPでの政策金利見通しとか見てるとガイダンス文言との整合性が全然とれていないじゃないのというようなツッコミが会見で来るような状態でしたけれども、それに対してハト的な発言をすることによってバランスを取る(逆に言えばあの会見が無かったらFRBが楽観に傾いたという事で時間軸が急速に短くなる可能性があった)という事をしていたと言う話になるんだろうなあ、とまあ今回の会見でのトーンを見ながら前回FOMCに関するインプリケーションを改めて整理する中で思うのでございます。つまりバーナンキ議長は基本的には先行きの金融政策に関して、基本的にはバランスシート調整途上だから景気が中々力強く上向かないというのをベースラインに置いた上で、先行きの金融政策に関しては極力フリーハンドを確保するようにという配慮をもって会見を運営し、市場が先行き金融政策に決め打ちをすることによって「自分の尾を追う犬」になるのを避けようとしているなあとか思ったのですけれども、どうでしょうかね???

という事で寝坊に付き時間が無いので最初の質疑におけるハト全開モードを引用します。質疑冒頭になりますCNBCのSteve Liesman記者の質問(上記URLで今現在閲覧できる初稿では4ページ目になります、FINALになると若干ページが詰まるので少し変わるかもしれません)から。

『Steve Liesman: Steve Liesman, CNBC. Mr. Chairman, looking back on the last four years of Fed policy, I think it's probably fair to say it has been bold and yet at the same time halting. You did QE1 and then you stopped and you did QE2. You did Operation Twist and you told us it was going to end in June. Now you've extended it. How would you respond if several years from now, a young MIT Graduate student came forward and said, "You know what the problem with that policy was during this period is it was too incremental and that the reason why the economy underperformed was because of that incrementalism." And what do you think the dangers are right now that today's action is also being too incremental?』

まあ要するに「今回はツイストの延長をしましたが、よくよく考えますと金融危機以来のあんさんの金融政策って出したり引っ込めたりの連続でちぐはぐですよねえw」という質問でございますかいな。

『Chairman Bernanke: Well, of course, you know, we cut the federal funds rate in a continuous fashion until December of 2008. And since then, we've been operating with nonstandard monetary tools including asset purchases and extension of maturities. By their nature, these tend to be lumpy. We haven't done them in a continuous way.』

金利を下げ切った後は非伝統的政策を色々と実施してまして、まあ仰せのように不格好な運営にも見えますわなと。

『But our view of the effects of these programs on the economy is that the total stock of outstanding securities in our portfolio is what determines the level of accommodation that the economy is receiving. So in that respect, it wouldn't be really a start and stop rather, whenever we have stopped purchasing the level of accommodation that was already in the system remains there until conditions warrant further action.』

で、ここで資産買入のストックビューに立脚した説明をしていまして、ストックとしての買入残高はそれ自体が金融緩和効果を生むので、緩和を追加したり止めたりしているようにみえるが残高を維持しているという文脈では金融緩和を継続しており、追加の措置を行うのはその時の情勢判断によって必要であるという時に行っているのですと。

『Now,underlying all this, of course, is the fact that the outlook has changed. 』

キターーーーーーーーーー(・∀・)!!!!

『Like many other forecasters, the Federal Reserve was too optimistic early in the recovery about the pace of recovery.』

我々は回復のペースについて楽観的過ぎたキタコレという感じですが、一方で米国が堅調で新興国が減速気味だけどダイジョーブとか言ってたどこぞの中央銀行涙目の展開。

『And we've had to add additional accommodation going forward as we have seen in fact that the headwinds have kept the recovery from being as strong as we would like. But again, by the nature of these unconventional tools, they are--tend to be more discreet in their size but they continue to have accommodative effects even after the pattern of purchases has ended.』

でまあ同じ人が質問しているのでそこまで引用して置くだよ。

『Steve Liesman: Don't you worry about incrementalism now?』

『Chairman Bernanke: Well, we've taken a step today which is a substantive step which will provide additional accommodation for the economy. And moreover, we have stated that we're prepared to take further steps if necessary to promote sustainable growth and recovery in the labor market. So, we are prepared to do what is necessary. We are prepared to provide support for the economy.』

ということで、声明文に今回加えられた「必要ならば更に適切な行動をとる」を更に強いトーンで主張するという形でハト風味を出した訳でございますな。

んでもって実はここから先の質疑はこのハト風味アピールに対して逆に「んな事言ってるけどおまいら出し渋りしてんじゃネーノ」という言ってることだけ威勢がいいじゃねえか的な質疑が続いておりまして、中々味わいが深いのですがそれは後日という事で。




2012/06/25

お題「オペ雑談/石田審議委員会見/5月会合議事要旨/その他少々」

珍しい事だがネタの方が溜まってしまって鮮度の落ちるまでに料理するのが大変である。

#土日に更新したらとかいうツッコミはしないように

○日々是オペ雑談

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120622.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 7,000 2012年6月26日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 3,000 2012年6月26日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月26日 2013年1月17日


結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120622.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 11,063 7,013 0.000 0.000 59.8
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 8,342 3,000 0.002 0.002 60.0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月26日スタート分) 6,899 6,899

ということでオペのオファーが毎度の如く必死なのですが(^^)、金曜につきましては基金国債買入の配分が8000/2000→7000/3000と変わりましたがトータルは同じ。応札の状況見ると割り振り的にはこんなもんという感じでしょうか。

そして金曜日に更にアレでしたのは固定金利オペの方でして、こちらに関してはロールの実施なのですが「3か月物のロールを6か月物で実施」という荒業にも程がある攻撃。まあこの前新規で3か月物を入れましたのでその分を6か月に振るという手は確かに有りなのですが、何というかその発想は無かったわという所でございまして、6899億円も応札があって良かったですね(棒)という所でございますが、とにかく残高達成の為にご苦労なこったという所で実に涙ぐましいものを感じるのでメモだけしておくのであります。


○石田審議委員会見から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1206b.pdf

・執行部ベースの説明をしつつもちょっと違う面も

『(問) 本日の挨拶では、やはり欧州の問題が引き続き最大のリスクだということになっており、これがもし、例えば、4月の展望レポート時より、もう少し深刻になっていて、外需の復元が遅れ、年度前半での景気回復というメインシナリオに影響がどれぐらいあるのか、ご所見を伺います。』

という中盤での質問に関しては・・・・・・

『(答) ご案内の通り、日本銀行が、展望レポート自体の見方を正式にもう一度見直すのは7月になります。その時には、また足許とは違う色々な資料が出ていることが考えられますが、今の段階で言えば――本日の挨拶要旨にも書いてありますが――、外需の出足が思っていたより弱い一方、内需の方は思っていたより若干強いと、それをオール・イン・オールで言えば、当初思っていたラインとは、それほど大きく変わっていないということであり、今の段階で言えば、取りあえずオンラインにきているということです。』

ということで展望レポートの回復軌道にオンラインですという話をしていますが、最後の質疑ではこんな話を。

『(問) 経済の方は、日本銀行のみているように、だいたい見通しの通り、オンラインできているということですが、7月に、更なる何らかの行動、金融緩和をする必要性について、どうご覧になっていますか。』

『(答) 最初に、どういう意味でオンラインかを申し上げます。私どもが認識する経済指標にはタイムラグがあり、今は4、5月の数字をみているということです。7月になってみることができる数字は、修正値等も含めると、随分変わってくることはあり得ます。従って、今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います。もともと、中央銀行は、世界中で、それぞれの国が置かれた経済金融情勢を綿密に点検し、必要であれば金融政策はやると、果断に実施してきているものです。これは日本銀行でもそうです。やはり、ぎりぎりのところまで情報を集め、やるべきものはやる。もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません。7月になって、全く予断なく各種の情報を集めてみて、議論の上、金融政策を考えていきたいと思います。』

>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います
>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います
>今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います

>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません
>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません
>もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません

・・・・・・・・うむ、これは良い質疑応答である(^^)。まあ何だかんだと言いましても、歴代の銀行出身の審議委員の皆さんって(新法以降は武富さん、中原(伸)さん、野田さん)そらまあ大手銀行の上級役員にまでなられる方だから当たり前っちゃあ当たり前ですが、大体揃いも揃ってカミソリで銀行員だけに日銀のロジックとかにも直ぐに詳しくなり、かつそれに必ずしも全部が全部同意しないような感じの話をするという所でして、いやまあ世間様的に言うと「銀行だの事業会社だのの出身が審議委員って何なのよ」とか言われやすいのですけれども、やはり金融実務だの実業だのに立脚している人がボードに居るというのは良い傾向だと思うのですけどにゃあ。


・これは質問する方がヘタクソ

『(問) 先程の審議委員人事に関連してですが、お二人とも、先月の時点では、日本銀行の持っている物価見通しよりも低い予想をされていました。来月、中間評価がありますが、午前中の挨拶の中でも、1%を目指して強力に緩和を進めていくとされていますが、石田審議委員は、もし、中間評価において、2013年度の物価見通しが、+0.7%から下がるようであれば、緩和すべきとお考えですか。』


『(答) +0.7%というものは、ある意味で中心的な数値です。各委員の持っている予想値というのは――展望レポートにも出ていますが――、一定の幅の中に散らばっていたわけです。私の見通しがどこにあるかは言えませんが、必ずしも+0.7%かどうかは確かではないということであり、1つには、+0.7%が変わるかどうかによって、私の意見が直ちに変わるわけではないということです。』

そらまあそうや。

『もう1つは、インフレ率についてみていく場合、例えば、原油あるいは他のモノで、今年は価格が上がり来年は下がる、あるいは今年価格が下がって来年は上がるようなことがあったとすると、やはり均してみていった場合にどうなのか、ということになると思います。来年の+0.7%が下がったとしても、その次の年にどう跳ねるのかがまた議論になるわけです。 +0.7%は、+1%と関係はしていますが、リンクしているかといえば、直接のリンクはしていないというものだと私は理解しています。』

そらそうですな。

『少し説明が分かり難いかもしれません。要するに、+0.7%の後、翌年はどこへ行くのか、+0.7%が下がった時に、物価のモメンタムが下を向いていたら評価は変わってくると思いますが、数値は少し下がっても、引き続きモメンタムは上を向いている、力強いところがあるということならば、評価は変わらないかもしれないという意味で、+0.7%という数値自体が変わるかどうかということと、その評価は、直接はリンクしないと思います。その評価は、その後の見通しがどういうものになるか、ということになると思います。』

で、惜しい事にここで追加の質問が無いのですが、つまり本来的に質問すべき事は、展望レポートで示された「遠からず1%に達する」という方に関しての見通しが変わった場合にどうなりますかという質問であるという事でして、日銀的ロジックを理解しておきますと、確かにまあ展望レポートの数字が重要なのは間違いないのですが、そこは前回の展望レポートで日銀がまあ言ってしまえば姑息なプレーに出ておりまして、「展望レポートの見通し期間中は兎も角として中長期的には」1%の物価安定の目途を達成する可能性が高いという見通しを掲げている方がポイントっぽい見せ方になっているのがオソロシスな所ではあります。

つーか回答者にフォローされてどうするんじゃという感じですな。まあさっき引用した最後の質疑の部分を見ますと、石田審議委員は基本的に執行部の見解の説明をしながらもちょっと違ったニュアンスで
話をしてりしているなあと思いましたです、はい。



○5月決定会合議事要旨からこれまた少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120523.pdf
特段まあこれというのは無いのですがちょっとだけ。

・欧州金融市場のリスク認識だけやたら警戒という不思議ちゃん

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の冒頭が『1.経済情勢』でして。

『国際金融資本市場について、委員は、欧州債務問題を巡る懸念等から、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要があるとの認識で一致した。多くの委員は、ギリシャの政治情勢やスペインの銀行の不良債権を巡る懸念などを背景に、再び、欧州周縁国の国債利回りが上昇し、欧州系金融機関の金融債の信用スプレッドやCDSプレミアムが拡大していると指摘した。また、多くの委員は、欧州債務問題を起点に、世界経済の先行きに対する不透明感も幾分高まる中で、投資家のリスク回避姿勢が強まっており、各国の株価は大幅に下落し、国際商品市況も原油価格を中心に軟調となっていると述べた。』

『複数の委員は、新興国・資源国の株価や通貨が大きく下落しているが、これにはリスク回避姿勢の強まりや国際商品市況の下落が影響しているとコメントした。一方、大方の委員は、安全資産選好から、日米独の長期金利は一段と低下し、為替市場では円やドルが増価していると指摘した。このうちの何人かの委員は、長期金利低下の背景について、先行きの経済・物価情勢に対する慎重な見方や、各国中央銀行による国債買入れなどの強力な金融緩和の影響も小さくないと述べた。』

『この間、何人かの委員は、金融システムの安定確保の観点からは、銀行間の資金調達市場の安定が重要であると指摘した。そのうえで、資金市場は、欧州中央銀行による大量の資金供給の効果などから、現在のところ、総じて安定しているものの、長めのベーシス・スワップのドル調達プレミアムが上昇傾向にあることや、ギリシャの銀行からの預金流出の動きが続いていることなど、注意すべき事象も起こっていると述べた。』

『こうしたもとで、委員は、大量の資金供給等の措置は、あくまでも「時間を買う」政策であることを十分に認識したうえで、各国政府や関係当局が財政・経済構造の改革を進める必要があるとの見方を共有した。何人かの委員は、こうした改革は政治的にも難しく、その道のりは平たんではないと指摘した。』

とまあ国際金融資本市場に関する部分をまるまる引用しましたが、こうなったあといきなり次が・・・・

『海外経済について、委員は、全体としてなお減速した状態から脱していないものの、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくと見込まれるとの認識を共有した。』

と、いきなり別の会議の議事要旨かとツッコミを入れたくなるような温度差にワロタとしか申し上げようがないのですが、まあご案内の通り景気判断は強めになっているというのが5月会合でもございましたので、それはまあ中身を読んでちょという感じですが、海外経済に関する部分で中国経済に関する部分がやたら長い記述になっていまして、まあ公式見解は兎も角として意見はあったんじゃねえのかねという感じはせんでもない内容ではございました。めんどいので中国経済が云々の部分はスルーするが。


・物価に関する部分が中々オモロイ

『何人かの委員は、物価情勢における最近の変化として、業界再編等を背景に、企業の価格決定力に回復の兆しが窺われることや、高齢化に伴う需要構造の変化に対応して、コンビニエンスストア等で高付加価値化の動きがみられることを指摘した。1〜3月の内需デフレーターの前期比がプラスに転じた点について、複数の委員は、消費や設備投資など幅広い需要項目で着実に改善している点に注目していると述べた。』

ほう。

『複数の委員は、こうした足もとの物価情勢における前向きな動きなどについて丁寧な情報発信を行っていくことは、デフレ予想を強めない観点からも、重要であると述べた。』

うむ、これはまあ色々と意見は分かれそうですが、7割ほど同意という所でしょうかあたしゃ(^^)。そして物価見通しが弱い佐藤さんが審議委員入りする事によって物価に関する議論がどうなるかに期待するあたくしである。


・『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』はまあ色々と小ネタが多い

『複数の委員は、仮に欧州債務問題を起点として大きなリスクが顕現化した場合、わが国経済に悪影響が及ぶ可能性があるため、様々な選択肢をあらかじめ排除することなく、適切に対応出来るよう備えておく必要もあるとコメントした。』

ふむ。しかしその一方で・・・・・・・・

『一人の委員は、日本のデフレには構造的な要因が作用しているほか、金融政策の効果波及には長いラグも存在しており、これらを無視して、足もとの物価動向だけに機械的に対応して金融緩和を進めると、金融市場の不測の事態等を通じて、中長期的な経済や物価の安定が損なわれるリスクがあると述べた。』

・・・・・・・・・・・・今第2の柱ですかそうですか何なんですかそらという感じではございますが、これって麿先生ですかねえ(ニヤニヤ)。

『委員は、わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することは、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要であるとの認識を共有した。』

まあ政治方面へは伝わらないようですがね。

『何人かの委員は、長期金利が一段と低下しており、何かのきっかけで金利が非連続的に反転上昇するリスクに注意が必要であると述べた。このうちの一人の委員は、長めの金利上昇が金融機関の財務に影響するようなことがあれば、金融緩和効果が発揮されなくなってしまうと述べた。』

まあ復興国債200兆円発行して日銀引き受けさせるだのいうようなアホウが出てくると話は違いますのでこういう指摘は指摘で重要なのですけれども、ただまあ一方で現実問題としてはとりあえず買わないとねえという状況は資金バランス的には続きやすいので、あまり指摘をしてばかりいると狼少年モードとなってしまうので、電波浴先生のような電波反論が出てくるという面もあって中々難しいですな。


・この時出席している(と思われる)金融市場局長はどのような表情だったのでしょうか(^^)

『資産買入等の基金について、委員は、現時点においては、4月末に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果を確認していくことが適当との見解で一致した。一人の委員は、市場やマスメディアにおいては、基金の枠を増額するかどうかという点ばかりが注目されるが、現在の基金の枠内であっても、買入れを進めることで金融緩和を強化することになるという事実を、より丁寧に説明していくことも大切であると述べた。』

ということで現状維持になった(4月27日に拡大したばかりですから当たり前ですが)訳で、周りが喧しい件についてもまあそらそうですなという感じですけれども、この先の札割れ云々の部分が金融市場局的に中々同情を禁じ得ない記述なのですが、これ議事要旨の原稿書いた人狙ってるでしょ正直に白状しなさい(^^)。

『長期国債買入れで札割れが発生したことについて、委員は、札割れは強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れであるとの認識を共有した。』

というのは前からこの説明になっています。

『複数の委員は、多額の資産買入れを進め、大量の資金供給を行っていけば、札割れが発生しやすくなるのは予想されたことであり、そのことを意識して、前回会合では、買入れ対象とする長期国債や社債の残存期間を、従来の「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長するとともに、固定金利オペの減額を行ったと付け加えた。』

ふむふむ。

『これらの委員も含め、多くの委員は、基金による買入れを実現すべく、金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した。』

>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した

まあ調節部署的には「おめーらがホイホイ拡大するから大変な事になっとるんじゃヴォケがあああああ」という所ではないかと存じます次第で、執行部からの報告者として出席者のお名前に入っておられる青木金融市場局長様におかれましてはどのような表情で目の前で展開される議論を聞いておられたのか誠に同情の念を禁じ得ない(同情するなら札入れろですかそうですか^^)所ではございますが、恐らくは置物スキルを最大限に発揮されて置物と化しておられたのではないかと勝手に妄想。


○その他ネタは山のようにあるのですが例によって時間がアレでございまして

まあ何だ、キング総裁講演はどこに行ったとか言われそうですが、それ以外にも当然ながらネタがアホのようにありますのでリストを作っておきます。今週中に全部成敗しないと鮮度が落ちてネタにしても意味なし攻撃になるだよ。

・FOMC関連

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf
PRELIMINARY Released: 6/22/2012 11:30 a.m.
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference
June 20, 2012

ということでバーナンキ議長の会見ですけれども、日本時間的に言うと土曜の朝起きたら取得できました的なタイミング(まあ正確には金曜の夜中だがあたくしは勤勉では無いので)でして、こいつはとりあえず読んでみたのですが、色々とオモシロスな会見ではございました。

トータルで言えば「市場のクレクレを適当にあしらいつつも、先行きの金融政策に関してはフリーハンドを確保した」という感じですが、まあ市場のクレクレがちょっと激しくなっている(QE3をやらないとはどういうことじゃヴォケという趣旨の質問が結構多い)ので、その分だけ「非伝統的政策の副作用」とかどこの白川麿だというような発言が有ったり、この前のクルーグマン批判の時に「我々は日本のようにならなかった(キリッ)」とか言ったら日銀叩かれネタに使われてしまったのに配慮したというか反省したというかお詫びの印というか何だかよー判らんですが(^^)、「フォワードガイダンスは非伝統的政策として日銀も似たような事を実施していました」「資産買入は非伝統的政策として(以下同文)」とか中々オモロスな部分もございましたですな。詳しくは近いうちに。

http://www.richmondfed.org/press_room/press_releases/about_us/2012/fomc_dissenting_vote_20120622.cfm
June 22, 2012
Richmond Fed President Lacker Comments on FOMC Dissent
Richmond, Va.

毎度おなじみのラッカークオリティです。ここからの追加緩和が労働市場の改善に寄与する為には物価が望ましくない上昇を示す事になってしまうのでオペレーションツイスト反対とな。


・ECB関連

適格担保の範囲を拡大しています。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120622.en.html
22 June 2012 - ECB takes further measures to increase collateral availability for counterparties

まあ大体こんな感じ。

『On 20 June 2012 the Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided on additional measures to improve the access of the banking sector to Eurosystem operations in order to further support the provision of credit to households and non-financial corporations.

The Governing Council has reduced the rating threshold and amended the eligibility requirements for certain asset-backed securities (ABSs). It has thus broadened the scope of the measures to increase collateral availability which were introduced on 8 December 2011 and which remain applicable.』

『1.Auto loan, leasing and consumer finance ABSs and ABSs backed by commercial mortgages (CMBSs) which have a second-best rating of at least “single A” in the Eurosystem’s harmonised credit scale, at issuance and at all times subsequently. These ABSs will be subject to a valuation haircut of 16%.

2.Residential mortgage-backed securities (RMBSs), securities backed by loans to small and medium-sized enterprises (SMEs), auto loan, leasing and consumer finance ABSs and CMBSs which have a second-best rating of at least “triple B” in the Eurosystem’s harmonised credit scale, at issuance and at all times subsequently. RMBSs, securities backed by loans to SMEs, and auto loan, leasing and consumer finance ABSs would be subject to a valuation haircut of 26%, while CMBSs would be subject to a valuation haircut of 32%.』

でまあ状況的には確かに信用緩和の方が適切ですなあという所でこれはこれでほほうという感じなのですが、同時に今回以外に既に実施した事などをリストにして「こんなにやってますお!」という主張をしているのが少々上げ底風味である。
http://www.ecb.int/press/govcdec/otherdec/2012/html/gc120622.en.html
Decisions taken by the Governing Council of the ECB (in addition to decisions setting interest rates)
June 2012



・これは大変に(あたくしてきには)面白いレポートでした(日銀レビューシリーズ)

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j11.htm/
次世代RTGS第2期対応実施後の決済動向

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j11.pdf

個人的にはこういうの非常に興味あるのですが、まあ面白いかどうかはかなり趣味の世界になるので万人にはお勧めできない。






2012/06/22

お題「石田審議委員講演から少々/色々とネタシリーズ」

米国の経済指標が悪くてFTQでドル買いとか最早何が何だかよく判らない理屈が展開されているのですが、実際は何かそういう話じゃないのではとゆー希ガス。

#と思ったら公共放送ニュースではダウだうーんの説明を「米国の中央銀行にあたる連邦公開市場委員会で追加の金融緩和が行われなかったことから株が下落しました」という説明になっておりますがな


○石田審議委員講演はまあ普通でした

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120621a1.pdf

・金融経済情勢に関しては月報などの基本線通りの説明

『2.わが国の経済・物価動向』から少々引用。

『次に、海外経済について申し上げますと(図表3)、まず米国経済については、堅調な企業収益などを背景に設備投資が増加基調を維持しているほか、個人消費も緩やかに増加しております。雇用面について、記録的な暖冬によって生じた雇用増加分の剥落の影響ともみられる動きがみられますが、これまでのところは、全体としてみれば、緩やかな回復を続けているとみています。』

『一方、欧州経済については、輸出に持ち直しの動きがみられるものの、周縁国の厳しい金融環境などを背景とする内需の低迷が足かせとなって停滞しています。また、この間、各国間の景況の格差が拡がっています。例えば、失業率については、ドイツでは4月は5.4%と東西統合後の最低水準を記録したのに対して、スペインでは全体では2割を超え、25歳以下に限ってみれば5割超に達しています。』

『新興国・資源国については、全体として高めの成長を続けていますが、成長ペースは幾分鈍化しています。中国経済は、なお高めの成長を続けていますが、輸出に欧州経済停滞の影響がみられるほか、これまでの不動産取引抑制策や金融引き締めの影響もあって、耐久財消費や民間不動産投資を中心に成長ペースが幾分鈍化しています。一方、NIEs・ASEAN経済については、個人消費や設備投資が底堅く推移する下で、タイの洪水からの復旧もあって、持ち直しつつあります。』

『このように、世界経済は、全体としてはなお減速した状態から脱していませんが、米国や新興国の一部では緩やかながら改善の動きもみられている状況にあります。』

とまあそういう説明でして、新興国が「高めの成長を続けていますが」とか、「米国や新興国の一部では緩やかながら改善の動きもみられている状況」とか、海外の中央銀行の皆様との温度差がすげええええと存じます、つーかその米国の方がFOMC声明文で弱気モードになっているというのにその自信満々モードはどこから来るのか日本銀行。


先行き見通しですけれども。

『わが国の景気について現時点でみますと、4月展望レポート時に比べて、海外経済の足取りが思っていたよりも弱い一方で、内需は想定よりやや強めとなっており、これまでのところ、全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております。』

>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております
>4月展望レポート時に比べて(略)全体としては当初見通しに近い処できているものと見ております

・・・・・・・・・・・・orz

まあこの辺の話は既に総裁会見の方でも出されていたのでこういう話になるのは予想される所ではございますけれども、そもそも4月の展望レポートって「欧州問題の顕在化が抑えられ、新興国・資源国が海外経済の成長を牽引し、日本経済のドライバーになる」って話だった筈で、主要国の皆様が経済見通しを下げる中で日銀そんなに強いのかという所っすわな。

つーかね、展望レポートの見通しがオントラックという話だと、展望レポート中間レビューでの下方修正が無くて、経済見通しだけで言えば追加緩和が無いですよとかそういう話になるんですけど大丈夫かねと。まあ4月の追加緩和だってそういう意味では経済見通し的には追加緩和の理屈が変だったのですが、その4月よりも更に経済の現状が強くなっていますよいう事ですからねえ。


・不確実性について

『(3)先行き見通しについての不確実性』の所から。

『以上申し上げた見通しは、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しです。4月の展望レポートでは、この見通しに対するリスク要因として、まず第一に欧州債務問題を中心とした海外経済の動向を挙げ、それに続いて復興関連需要を巡る不確実性、生産拠点の海外シフトや電力需給を巡る問題に伴う企業や家計の中長期的な成長期待が変化する可能性、さらには、財政の持続可能性を巡る問題などを、留意を要する事項として挙げております』

ということでまあ展望レポート通りの説明になっていますが、基本的に一番の懸念はこちらにあるように欧州問題という話をしているのですけど、その辺の話はスルーして。

『わが国経済に関するメインシナリオのポイントは、内需が景気を下支えしているうちに外需が強まり、復興需要が減衰に転じるまでに、生産・所得・消費という成長サイクルが働き出していくということにあります。』

・・・・・・・・・・・・・はあそうですか。

『米国が緩やかながらも成長を続け、新興国・資源国の中心である中国について、各種抑制策の微調整が行われ景気減速にブレーキがかかり回復方向に向かうとみておりますので、欧州が悪いなりにも底割れしなければ、方向感としてはメインシナリオに沿った推移になる可能性が高いと思っております。』

という見通しになっていると中間レビューで見通しが下振れないなあ(ただし後述のように審議委員が2名加わるのでそこの要因が加わる)というイメージなんですけどにゃ。

『しかしながら、欧州経済、米国経済が不安定化すれば、新興国・資源国経済にも大きな下押し要因になり、日本に与える負の影響は大変大きくなりますので、今後も欧米諸国の動向には十分な注意が必要であると考えています。』

とのことです。


・成長戦略云々からちょっとヒマネタでも^^

んでまあその後は金融政策運営の説明になりますがそこは華麗に全部スルーしまして、成長戦略に関連する話の所から少々。

『わが国の就業者 1 人当たりの実質GDP成長率をみると諸外国対比でかなり良い処にあるのですが、高齢化の進展とともに人口に対する就業者の割合が落ちてくることから、現状を放置すれば、国民1人当たりの実質GDP成長率が落ちてくることになります。国民1人当たりの実質GDPは言わば豊かさの指標ですから、我々が営々と築いてきた現在の生活水準・豊かさを我々の子供たち、孫たちに引き継げなくなるおそれがあります。この様な事態はなんとしても避けなければなりません。そのためには、就業者 1 人当たりの労働生産性を上げていくことと、人口減少の下でも就業者の減少を食い止めることが必要です。』

『労働生産性を引上げるという点については、新技術・新商品・新サービスなどの開発、ITの高度利用や生産性の低い分野・企業からより生産性の高い分野・企業への資源の再配分、産業の新陳代謝の促進等を実行・実現していくことが必要と言われております。しかしこれはこれで大変大きな話ですので、本日は省きまして、もう 1 つのポイント、就業者の減少を食い止めていくことについてお話しをさせていただきます。』

ということで、成長戦略の中で石田審議委員は今回労働市場に関連する部分にフォーカスした話をしておりまして、まあこれ自体は金融政策に対して特段のインプリケーションがある話では無いですけれども少々引用。

『人口が減少していく下で(これは当面の間厳然たる事実であって避けられないものであります)、就業者の減少を防ぐためには、兼ねてから言われていることですが、女性の労働参加を高めることと高齢者の就労機会の増大がポイントとなります。』

でまあオサーンのあたくしは後半のネタに思わず食いつく(^^)。

『高齢者については、65歳を超えると就業を望む人の割合が急速に低下します。2011年の平均の労働力率は(前掲図表11)、50〜59歳が78%であるのに対して、60〜64歳が60%、65〜69歳は38%、70〜74歳は23%まで落ち込みます。これは60歳から厚生年金が給付されてきたことに加え、65歳以上は高齢者として定義され、社会的にも、高齢者は働かないもの、或いは働かなくても良いものといった意識があるからなのかもしれません。』

でまあ途中割愛して。

『直ちに出来ることではありませんが、高齢者に対する認識や定義を見直す必要があるのではないでしょうか。例えば、仮に69歳までを生産年齢人口と捉え直すと、足もとの生産年齢人口は8百万人弱増加します。また、現在の64歳までの生産年齢人口は82百万人で今後減少していきますが、69歳まで拡げて考えれば生産年齢人口がこの水準にもう一度減少していくまで約10年の余裕ができることとなります(図表15)。』

おお!何か物凄い別の意味で「生涯現役」時代になるのかorzorzorz

『こうした考え方が定着するためには、社会の諸制度・システムを大きく変えていかなければなりません。少子高齢化社会へ急速に転換しているわが国にとって、高齢になっても働きたい人々が喜んで働ける、また働いてもらうような世の中の仕組み、システムを作り上げていくことがこれから避けられないことだと思います。』

あ、あたくしの年金ジジイ生活は何処へ行くのでしょうか????????

・・・・・と、まあどうでも良いヒマネタではございましたがそんなのに食いついたあたくしでした(−−;


○詳しくは後日だがBOE貫録のクオリティ

キング総裁講演ネタがそのままスルーになっていて誠に面目ない(これは論点が色々あるので是非ネタにしたいのだが)のですが、その間にこのような素敵な物件が。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1206.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING
6 AND 7 JUNE 2012

今月頭のMPCの議事要旨が出たのですが、まあ今回は何と言っても『The immediate policy decision』の最後の方が白眉中の白眉。

『31 Finally, the Committee discussed further asset purchases. The Committee agreed that asset purchases remained an effective tool for lowering a range of market interest rates, supporting asset prices and so nominal demand. Nevertheless, a significant current impediment to the economic recovery in the United Kingdom lay in the interaction between the financial threats emanating from the euro area, their implications for bank funding costs, and consequently for lending to businesses and households.』

欧州問題による金融市場の緊張が金融機関のファンディングに悪影響を与え、それが結果として企業や家計に対するクレジットアベイラビリティへの悪影響となる、というロジックで、これはネタにする予定の(すいません)キング総裁講演で示された「企業向け金融推進の為の新たなオペレーション」の必要性という話にもなるのだ。

『This might have contributed to the rise in interest rate spreads on mortgages and loans to small and medium-sized businesses in recent months, despite the extension of the asset purchase programme in February. Other complementary policy measures that the authorities might take could be better suited to mitigating these problems than asset purchases on their own, and some members expressed a wish for the MPC to consider additional policy tools.』

『In this context, the Governor informed the Committee that initial discussions were underway with the Treasury on possible measures to ease banks’ funding costs and enhance their ability to lend.』

つーことでして月曜にはキング総裁講演ネタを投下しないといけませんね。

『32 While acknowledging that further stimulus was likely to become warranted at some point, most members noted that there were several key events occurring over the coming weeks that could have a material bearing on the situation in the euro area and that there was merit in waiting to see how matters evolved there before the MPC reached a conclusion on whether to add any further monetary stimulus.』

このMPCは7月6、7日に行われたものですので、ギリシャ総選挙やら何やらの結果が出る前で、とりあえずはwait and seeの方がメリットあるじゃろという見解が出ている訳ですな。

『That would also allow time for an assessment of any policy recommendations made by the FPC and for the possibility of other policy tools, designed to ease bank funding costs, to be explored.』

『In any event, the reduction in market interest rates that had occurred over the month had already provided some additional monetary stimulus. And some of these members remained concerned about the possible persistence of inflation at above-target rates.』

とは言え物価が高止まりという問題も指摘されているとかいろいろと大変でございます。

『33 Some other members judged that there was already a sufficiently compelling case for providing a further monetary stimulus in the form of some additional asset purchases immediately.』

という事で資産買入の拡大を提案する人も居た訳ですが・・・・・・・・

『34 The Governor invited the Committee to vote on the propositions that:

Bank Rate should be maintained at 0.5%;

The Bank of England should maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £325 billion.

Regarding Bank Rate, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.』

採決は「現状維持」についてで、まあ政策金利0.5%は良いとしまして・・・・・・・

『Regarding the stock of asset purchases, five members of the Committee (Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale and Martin Weale) voted in favour of the proposition. Four members of the Committee voted against the proposition. The Governor, David Miles and Adam Posen preferred to increase the size of the asset purchase programme by £50 billion to a total of £375 billion. Paul Fisher preferred to increase the size of the asset purchase programme by £25 billion to a total of £350 billion.』

資産買入に関しては買入拡大派が4名で現状維持派が5名という大変に素敵な結果になっているのですが、何がお洒落って「voted against the proposition」の次に燦然と輝く「The Governor」の文字でありまして、総裁の見解も貫録の否決(しかも総裁と副総裁2名(=マネタリーポリシーウィングの副総裁がCharles Beanで、プルーデンスウィングの副総裁がPaul Tucker)の見解が違う・・・)と言うのが英国クオリティで実に素晴らしいと思う次第で、先般のマンションハウスでのキング総裁の講演が全力で景気に弱気で追加金融緩和をやるべしという全力の講演に繋がったのですねとまああたくしだけ一人合点しておりますが、キング総裁講演については月曜にでも(週末はバーナンキの記者会見ネタも追加されるものと思われる(あたくしは英語力がアレなのでテキスト起こしした物が無いとあばばばばーなのです)ので気が向いたら土日に更新するかもしれないが期待しないでちょ)投入したいと存じます。


○審議委員空白解消へ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5X53H6JIJUO01.html
野村・木内、モルガン・佐藤氏が日銀審議委員就任へ−衆院も人事に同意

『6月21日(ブルームバーグ): 野田佳彦政権が提示した日本銀行審議委員に野村証券の木内登英氏、モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕氏を起用する人事が21日午後の衆院本会議で民主、自民、公明などの賛成多数で可決した。参院も20日の本会議で可決しており、両氏の人事は国会で承認された。これにより、2人の審議委員の空席が解消される。』(上記URLより)

ということで何はともあれめでたい事でございますが、お二方におかれましては早速次回の展望レポート中間レビューから金融政策論議の活性化にご尽力いただきたい物である、と斯様思う次第でございまして、ボードメンバーが置物になって執行部が独走モードになるというのが一番ケシカラン流れですからね。

まあ今回は展望レポートの中間レビューというタイミングで、1名じゃなくて2名同時に就任になるので、早速執行部ペースの香りのする昨今の流れに棹を差して頂くような方向での期待を勝手にしておりますあたくしですけど、まあ一つそんな感じで(^^)。



○週末電波浴シリーズ

先週高橋洋一先生のツイッターから発生していた電波についてネタにした訳ですが、まあ夕刊フジなので電波発生装置になるのは致し方ないのかもしれませんが、まさかタブロイドとは言え活字メディアに例の怪電波が掲載されるとは。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120620/plt1206200732004-n1.htm
“3年財政破綻説”のインチキぶり喝破!
2012.06.20

まあ怪電波の話も相変わらずなのですが、一番ワロタのはツイッターの方では国会の公聴会(つーかツイッターで言ってた「公聴会」って衆議院だったとこの記事見て気が付いた次第で、国会でそんな話してたのかよと呆然とする次第だが)「CDSで1000兆円のプロテクション買ったら財政再建」という「背理法」をドヤ顔で話をしていたということになっていたのに、その超越非現実な話を削除していまして、まああちこちでその超越非現実与太話部分が全力で突っ込まれていたから話をスルーするってのが何ともまあこの先生らしいアレな所でがございますな。

『この背理法発言は“3年財政破綻説”を妄信していたマスコミや御用学者にとって衝撃的だったようだ。ツイッターではCDSのデータを紹介した筆者への人格攻撃も多かったが、お門違いで、批判するなら「マーケットが間違っている」と言うべきだ。』(上記URLより)

いやあの人格攻撃とか何でそういう話になるんだか。単に「日本国債市場や、日本ソブリンを対象にするCDS市場などで示される価格は、”現在の所は”市場は3年で日本財政が破綻するというような前提の価格形成になっていない」というのが現実であって、それ以上のものでもそれ以下のものでも無い話を何でまた背理法がどうのこうのとか財政は危機的では無いとかいう話になるのかとゆーことで、論理の飛躍にも程があるわ。

だいたいからして市場で「現在」その値段がついている事は、「現在の市場参加者の見方を反映したもの」ではあっても、それが「将来の事象について確定的に言える」という話でも何でも無い訳であって、そんな事言いだしたら現在株価が大変に高い企業は未来永劫高成長企業になるとか、まあそんな感じの電波プロパガンダをどんどん捻りだす事が可能でございますがなという話は先日も申し上げた通り。つーかそもそもこの説明背理法でも何でもないと思うのですけれどもねえ。

#話は全然関係ないが「背理法」と聞くと丸大ハンバーグを思い出すとかいうネタってオッサン御用達なのかな



更に覆面の方(まあ大体誰が書いているかは想像できるのですが)のネタで先日読者様からタレコミを頂いた強力電波浴コラム。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32787
2012年06月17日(日)ドクターZは知っている
事務ミスでわかった日銀のウソ

最初の10行くらいはまあ普通の話というか事実関係の話なのですが、その後から強力な電波が感知されています。

『今回の再入札では募入最低価格と募入平均価格がぴたり厘の桁まで100円00銭0厘で一致、つまり、民間金融機関はみんな同じ札を入れたのだ。たしかに今安全資産を求めて国債の人気はすごい。わずか0.1%でも2年国債は飛ぶように売れている。しかし、数十社の民間金融機関が談合でもしない限り同じ価格で入札するはずがない。』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・・とりあえず財務省ホームページに過去の国債の入札結果があるのでそれを見てから話をされた方が宜しいかと存じます。入札カレンダーというのでもダウンロードでも良いですから。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/index.htm

『再入札という緊急事態で、当局が談合を要請したこともありえるが、背景には同じ29日に行われた日銀による、金融機関の保有する国債買い入れ入札7100億円の影響があると思われる。』

『同じ日に、財務省が2兆4000億円の売り出しを行い、日銀が7100億円の買い入れを行ったのだ。再入札は時間外だったので、日銀の買い入れ価格をそのまま国債入札価格としたわけだ。』


・・・・・・・・さて問題です、事実関係の間違いが幾つあるでしょう????

という位の凄さなのですが、まあ談合を要請とかそのような(明らかにそのような事は有り得ませんけれども)妄想は兎も角として、凄いのは事実関係が間違えまくっていることでございますわな。

>同じ29日に行われた日銀による、金融機関の保有する国債買い入れ入札7100億円の影響があると思われる

とりあえず
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menuold_o.htm
を見ると判りますように、2012年5月29日にはそもそも日銀のオペレーションはございません。まあ7100億円云々というのは25日にオファーされた基金国債買入7000億円の事かと存じますが、入札は29日に行われていません罠。

従いまして・・・・・・

>同じ日に、財務省が2兆4000億円の売り出しを行い、日銀が7100億円の買い入れを行ったのだ

オファー日ベースで見ても違いますし、そもそもこの2年国債の発行日は6月15日なのでキャッシュフローベースで見ても違いますな。


>再入札は時間外だったので

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/re02.htm
『本日の2年債入札については、再入札を実施します。オファー時刻は14時00分、申込締切時刻は14時30分、結果発表時刻は15時15分とします。』

残念、入札は債券先物の日中取引立会時間中に行われています。

・・・・・・・・・でまあ最後の結論がまた無茶苦茶で、通常の資金供給オペと財政マネタイズ目的の国債引受を強引に一緒の扱いにしている所が相変わらずのこの覆面子クオリティなのですけれども、まあそれ以前に事実関係が誤認だらけで、金融商品取引業者の勧誘資料だったら誤認勧誘扱いで楽勝で外務員資格停止を食らうレベルとなっておりまして、『「週刊現代」2012年6月23日号より』との事でございますが、しょうもない週刊誌ではございますが、編集部門はせめてコラムに書かれている内容の事実関係の確認くらいはした方が良いのではないでしょうか。つーか財務省と日銀は抗議文だしたらどうでしょうかね(まあ相手にするだけ時間の無駄とか馬鹿馬鹿しいという話なのかもしれませんが、こういうのにコロッと引っ掛かる善男善女も一定量いると思いますので)。


#本当はもう一本電波とまでは言わないけれどもアレなネタもあったのですが時間が無いので割愛


まあ今回の電波浴は夕刊フジだの週刊現代だのだからそういう資質を求めなくてもという事はあるかも知れんけど、金取って発行しているメディアの存在意義ってゴミ情報のフィルタリングをするってえ所にあるんじゃネーノと思うのですよね。いやまあエンタメで面白おかしくというのがあってもそれはそれで良いのですけれども、特に週刊現代のこのWebとか見てると一応真面目に経済だの政治だのの話をしようって感じになっていると思うのですが、そのような志があるなら、もうちょっと編集部門がフィルタリングの機能をしてくれよとか思うのでございます。

だってこれだけネットで情報が氾濫するようになったらゴミ情報の垂れ流しならインターネットに接続すればホイホイと無料取得できるのであって、その中で金取って活字媒体で流すというのであれば、やはり編集によって質の確保をして頂きたいと左様思うのでございました。






2012/06/21

お題「FOMCである」

毎度おなじみ寝起きシリーズ(−−;

○声明文は景気判断と先行き見通しを微妙に下げ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120620a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120425a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気の現状認識

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economy has been expanding moderately this year. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that the economy has been expanding moderately. 』(前回)

と、現状認識の基調判断は同じですが・・・・・・

『However, growth in employment has slowed in recent months, and the unemployment rate remains elevated.』(今回)
『Labor market conditions have improved in recent months; the unemployment rate has declined but remains elevated.』(前回)

労働市場の認識に関して今回は改善がスローであるとしております。

『Business fixed investment has continued to advance. Household spending appears to be rising at a somewhat slower pace than earlier in the year.』(今回)

『Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(前回)

企業の固定資産投資は引き続き拡大として判断を据え置いていますが、家計支出に関して拡大しているとしたものの年初よりは若干遅いペースとこれまた引き下げています。

『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(今回)
『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(前回)

住宅セクターに関する判断は同一文言。

『Inflation has declined, mainly reflecting lower prices of crude oil and gasoline, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has picked up somewhat, mainly reflecting higher prices of crude oil and gasoline. However, longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

インフレに関してですが、今回は低下しているのですけれども、その要因に関しては前回と同様に原油価格とガソリン価格の影響によるものという事で、まあこの辺に関しては足元の振れは一時的要因ってえ感じにはなっています(がSEP見ると微妙に違うのですがそれは後で)。


・第2パラグラフ:先行き見通し

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very gradually.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up gradually.』(前回)

最初の一文はいつも同じなので良いとしまして、経済の先行き見通しの基調判断について経済は向こう数四半期間モデレートに拡大し、その後徐々に「大変」緩やかにピックアップしていくと「very」っつーのが入って強調しているのですが、「gradually」を強調するという事はこれって先行き回復ペースの見通しを下げているという事です、というのはその次を見れば判ります。

『Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline only slowly toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)

失業の改善について、「will decline gradually」だったのが「will decline only slowly」となっていて見通しが下がるという残念な結果ですが、これまたSEPにその辺反映されていますです、はい。

『Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(今回)
『Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(前回)

世界の金融市場の緊張は経済の見通しに対して顕著なダウンサイドリスクをもたらすって話は同じですが、「Furthermore」というのを入れて強調しているんですかねこれ。


『The Committee anticipates that inflation over the medium term will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(今回)

『The increase in oil and gasoline prices earlier this year is expected to affect inflation only temporarily, and the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(前回)

これはまあ前回の見通しが見事に結果として当たりましたと言う事ですが、原油やガソリン価格の上昇による影響は一時的ですので云々という文言を削除しましたな。基本見通しはカワランチ会長。


・第3パラグラフ:金利政策およびガイダンス文言

ガイダンス文言の中でバランスシートに関する話をするとか大穴予想をしてみましたが、大穴だけにやはり外れましたな(^^)。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy. In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

このパラグラフは前回と完全一致です。


・第4パラグラフ:バランスシート政策など

『The Committee also decided to continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of securities. Specifically, the Committee intends to purchase Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years at the current pace and to sell or redeem an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of approximately 3 years or less.』(今回)

『The Committee also decided to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September.』(今回)

まあここの辺りは前回と比較すりゃ良いってもんでも無いですが(^^)、まあ要するにいわゆるオペレーションツイストの半年延長なのですが、最初この文言見てて「sell or redeem」の償還ってナンジャラホイと思ったのですが、これは(これまた詳しくはこの後に書きますが)オペの概要みたら判るのですけど、FEDの現在の手持ちの中で年内に償還が来る債券があるのでそれの再投資もオペレーションツイストに含めるという話のようですが・・・・・

『This continuation of the maturity extension program should put downward pressure on longer-term interest rates and help to make broader financial conditions more accommodative.』(今回)

毎度おなじみの事ですけれども、この政策の目的として「長期金利に低下圧力を掛ける事によって全体的な金融環境をより緩和的にする」という話をしていますが、この理屈っていつもながらロジック的にはかなり怪しいなあとは思いますけどね。

大体からしてこの理屈からしたら売りを入れている短い所は同じ理屈で金利が上昇して、イールドカーブ足元の金利が上がるんですがという気もしますし、ついでに言えばこういう派手な事を中央銀行するのって国債発行部門が行っている国債管理政策に全力で介入しているんじゃネーノという論点もあると思うのですがその話はいずれ後日にでも。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(前回)

ということで、引き続きエージェンシー債の償還再投資は継続しますという話をしているのですけれども、前回はここに「国債の償還再投資」の文言が入っていて、それが今回抜けているのは何ですねんという事ですが、それは先ほどあたくしが「・・・・・」と申し上げましたように、国債の償還再投資という従来から実施している事に関してどさくさに紛れてオペレーションツイストに入れるという上げ底プレイをしらっと行っているのがお洒落な所でありまして、FEDの狸成分も更に強まっていますなあとか思うのはあたくしの性格が悪いからですかそうですか。

『The Committee is prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』(今回)

『The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(前回)

今後に関する文言については「is prepared to take further action」という表現にして、まあサービス成分を高めましたねという所ですな、うんうん。


・第5パラグラフ:票決

ラッカー総裁貫録の反対票ですがこれは毎度のラッカークオリティ。まあ前回と比較するような話では無いので前回分の引用はしませんけど。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart; Sandra Pianalto; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who opposed continuation of the maturity extension program.』(今回)

前回の反対理由はガイダンス文言に反対でしたが、今回はオペレーションツイスト延長に反対と。



○オペレーションツイスト延長の概要についてはこちら

最初にFRBのトップを見たらここの「Maturity Extension Program and Reinvestment Policy」の日付が6月20日になっていたのでステートメントを見る前に「ああ延長来たわ」と思ったのはあたくしでございます(^^)。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/maturityextensionprogram.htm

『Under the maturity extension program, the Federal Reserve intends to sell or redeem a total of $667 billion of shorter-term Treasury securities by the end of 2012 and use the proceeds to buy longer-term Treasury securities.』

先ほど申し上げたように、実はこの中には従来から行っている償還再投資分が含まれているというセコいプレイが混じっているのですな。つーか最初見た時に「redeem」だったら資金供給じゃねえかとか勘違いしそうになったのはここだけの話(苦笑)。

『This will extend the average maturity of the securities in the Federal Reserve’s portfolio.』

まあそうですな。

『By reducing the supply of longer-term Treasury securities in the market, this action should put downward pressure on longer-term interest rates, including rates on financial assets that investors consider to be close substitutes for longer-term Treasury securities. The reduction in longer-term interest rates, in turn, will contribute to a broad easing in financial market conditions that will provide additional stimulus to support the economic recovery. 』

というのが政策効果の狙いということですが、この説明が微妙にどうなのよという話は先ほど申し上げた通りだったりしますがその件はまた後日にでも(^^)。

FAQはスルーしましてFederal Reserve Bank of New York operating statementってのを。

http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_120620.html
Statement Regarding Continuation of the Maturity Extension Program
June 20, 2012

どの年限にどの配分をするのかという話とかございます。

『Purchases of Treasury securities for the maturity extension program will be distributed across five sectors using the same approximate weights that have been used in the purchases to date:』

『Nominal Coupon Securities by Remaining Maturity*
*The on-the-run 10-year note will be considered part of the 8-to 10-year sector.
6-8 Years :32%
8-10 Years :32%
10-20 Years :4%
20-30 Years :29%

TIPS**
**TIPS weights are based on unadjusted par amounts.
6-30 Years :3%』(ここは本当は表形式ですがテキストに落とす都合上これで勘弁)

とのこと。

『A combination of sales and redemptions of Treasury securities will be conducted to match the amount of purchases over the program. Sales of Treasury securities will take place in securities maturing between January 2013 and January 2016.』

売却するのは2013年1月償還物から2016年1月償還物。

『Securities maturing in the second half of 2012 will be redeemed-that is, allowed to mature without reinvestment-since redeeming maturing Treasury securities has a nearly identical effect on the portfolio as selling securities that are approaching maturity.』

今年中に償還が来るものに関しては売却しないで再投資プログラムに加えるという話です(ツイストを今年中まで行うから)けれども、よくよく考えますとそれは従来の償還再投資プログラムの看板付け替えではございませんかという気がしますけど、「同じような効果があります(キリッ)」と言って微妙に理屈捏ね太郎と化しているのが狸クオリティ。

『Once the maturity extension program is completed, the Federal Reserve will hold almost no securities maturing through January 2016.』

ということで、今回のプログラムが終了する年末には2016年1月償還(つまり今年の末時点で残存3年1か月物)までの国債保有はなくなりますがなというお話ですので、年末時点ではどう見てもツイストの弾切れです本当にありがとうございましたという事ですな、うんうん。



○SEPは見通しを下げておりますな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120620.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120425.pdf(前回)

ファンチャートとかは引用するスキルがございませんのでまあ見てちょという所ですが。

・1ページ目

ここは数字の羅列なので引用しようと思えばできる部分っすけどめんどいので勘弁(テキストに落とすと見える形に加工するのがめんどい)。

Central tendencyの所を見ますとこんな感じかと。

Change in real GDP:2012年、2013年の見通しが前回対比で下がっていて2014年は割と変わらない
Unemployment rate:全体的にやや上がっている(ので良くない方向)
PCE inflation:全体的にやや下がっていて、Central tendencyの下限とRangeの下限が同じになっている

・2ページ目

1ページ目のグラフ版ファンチャートですけれども、上記の話がよりビジュアルになっていて、GDPに関しては足元は下がっているけれども2014年の所になるとそんなに下がっていないということで「成長ペースの鈍化」という話にはなっているものの、長期的見通しが極端に下がった訳では無いという結論。失業に関しては全体のレンジが凄い上がった訳でも無いのですけれども、中心レンジが上がっているという感じ。インフレに関してはCentral tendencyが下方に幅広になりましたね、という所でしょうな。


・3ページ目

『Overview of FOMC participants’ assessments of appropriate monetary policy, June 2012』ということで政策金利の適正水準の予想ですな。

『Appropriate timing of policy firming』に関しては2015年が2票増えているのですが、そもそも頭数が2名増えていまして、増えた2名が2015年なのか、中の人が転んだのかはまあ判らんですわな。

『Target federal funds rate at year-end』の方ですが、

2012年:現状維持が14名→16名、年内利上げは3名のままですので、新任理事2名はまあ現状維持でしょ。さすがに年末1%を超える予想はいなくなりました。

2013年:現状維持が11名→13名、利上げは6名のまま。水準を1%以上においている人が6名→4名となっているので、まあ政策金利見通しのタカ成分は後退ですね。

2014年:現状維持が4名→6名、1%以下の水準VS1%超の水準の分布は9vs10だったのが11vs8になったのでガイダンス文言との整合性が取れるようになって良かったですねという話ですが、1番高い金利が2.75%から3.00%になっているのもお洒落。

Longer Run:概ね4%〜4.5%のレンジに納まっている(4%未満の人は前回は2名で3.50%と3.75%、今回は3名で3.00%と3.50%と3.75%)のですけれども、4.50%が7名→5名、4.25%が2名→5名(4.00%が6名で同じ)となっていて、その0.25%の変化は何ですねんというのが不思議ちゃんですなあと思いましたです、はい。

#4ページ目以降はチャートそのものの説明文

ということで、まあSEPに関しては見通し下がりましたねという感じになっているのと、政策金利見通しに関しては利上げ時期そのものはあまり変わっていないのですが、おそらく金利引き上げタイミングに関しても暦年ベースは同じでもその中のタイミングが後ずれしている結果として、タカ派のタカ成分が下がったチャートになっており、ややビジュアル的にハト成分が高まったように見えるなあという所ですな。

#というのでさすがに手一杯でBOEネタとかの投下は無理でしたorz






2012/06/20

お題「明日はFOMCなのでせっせとネタ消化」

米国のクレクレ相場はどこまで期待してるんすかねえ。

○今日もオペ雑談

こう毎日オペでネタが投下されるとか中々胸の熱い展開ではありまふ。

火曜日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120619.htm

米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年6月21日 2012年6月28日 0.650
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月21日 2013年1月15日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120619.htm

米ドル資金供給(固定金利方式)(6月21日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月21日スタート分) 3,207 3,207

ドルオペ坊主は兎も角としまして、昨日は月曜に続いて固定金利オペを新規でオファーするというプレーに出てまいりました金融市場局。まあ丁寧な言い方をしますと「さまざまな方法を使って積極的に資金供給オペを実施」とか何とかいうのですが、まあ短期市場関係者的に申し上げますと「ヤケクソのオペ乱打」ってな感じがするんですが口が悪いですかそうですか。

6か月オペの新規とかこらまたよー打ちますなという所ではあるのですが、やはり6か月オペだけに前日の3か月とは違い普通に(まあ予想通りです)札割れとなったのですがとりあえず年末残高を3200億円積み増せてよかったですね(棒読み)という所で。

まあ何ですな、昨日も申し上げましたようにこのオペ乱打状態は新たな政策インプリケーションを与えるものでは無く(あったらMPMで何かアナウンスする)、従来MPMで決定している金融調節方針の踏襲という事ではあるのでござんすが、固定金利オペを新規に打つにしても一応明らかに資金余剰日になる所を避けてみたり、足元での固定金利オペの期落ちが妙になかった(28日まで期落ちが無い)りするとか、6月20日の大幅余剰(財政要因で7.3兆円の資金余剰見込み)を意識したのかねとか、まあ一応資金需給もみながら淡々とオペを打っていたというのが従来の姿。

然るに、何でこのタイミングでというのはよーワカランチ会長ではございますけれども、直近はその淡々とした打ち方から一転して髪振り乱しての追い込みとゆー感じでありまして、大体からして20日は資金大余剰日なのは端から明らかで、何もなくても当座預金残高が40兆円近辺という状態なのに、その日スタートで新規の資金供給オペ打つ(ちなみに基金国債買入も20日スタートで1兆円オファーしていた訳で、合計で1.8兆円の新規資金供給である)とか中々画期的というかヤケクソというかっつー風情ではございまする。


先ほど申し上げたように政策インプリケーション云々という話よりは、これは市場金利の絶賛低下によって資産買入等基金の残高目標の達成がしんどくなりそうという事で、まあそもそも包括緩和では「長めの市場金利の低下」と「リスクプレミアムの縮小」を企図しているのでそれはそれで札割れ上等とか言いたいのでしょうけれども、MPMのアナウンスとして65兆円(来年6月末では70兆円)というのをぶち上げております関係上、札割れ上等未達やむなしとか開き直る訳にも行かず(まあ経済物価情勢が順調に目途達成寸前とかなら兎も角ね^^)、まあ髪振り乱してオペ頑張るしかないですが、面白いからこの際資金需給とかあまり気にしないで毎日固定金利オペ打ってくださいとかまた調節部隊の方々が色々と頭を捻っている(と思われる)中で無責任な野次馬発言ですかそうですか。



○金融経済月報がこれまた何か強いように見える件について

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1206.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1205.pdf(前回)

例によって手抜きですいませんが『概要』部分の比較で勘弁。

・総括判断で国内を引き上げとな

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

従来の新興国が牽引する云々という見通しに対して、ここで国内の判断を引き上げたのを総括判断に入れる事によって、新興国が牽引云々が怪しくなったものの国内需要とかが強いんですよとアピールする狙いがあるとしか思えない次第で、何で主要国中銀が揃って下振れ警戒を強める中でそう強気に出てくるのかが謎ではあります。


・現状判断を需要項目別に

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。』(今回)
『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。』(前回)

とまあ海外が下がっているのですが・・・・・・

『こうしたもとで、輸出には持ち直しの動きがみられている。』(今回)
『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(前回)

どうしてこれが強くなる・・・・・・・

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(今回)

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

設備投資の部分で「企業収益の改善」に言及しているのと、個人消費は「緩やかな増加を続ける」とまあ改善傾向が続くという表現。生産に関しては横ばい圏内から「緩やかに持ち直しつつある」とこれまた上方修正と、国内需要は上方修正というのは声明文比較の通りであります。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、まあ声明文と同じですけれども牽引役の顔触れが微妙に変わりながら従来の判断を維持というのが声明文よりもやや読みやすい(この辺の表現自体は声明文と同じです、為念)という感じでしょうか。

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が次第に改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

これがまたややこしいのですが、輸出の部分は海外経済の成長率云々の表現がどう見ても下がっている(方向性は拡大で不変ですが、発射台の水準が違いますがな)のに輸出の見通しは更に強くなっているという不思議バージョン。国内需要に関しては企業収益が「次第に改善」から「改善」と言い切り調にして表現を強め、個人消費に関しては雇用環境の部分で「雇用環境が徐々に改善に向かう」から「雇用環境が改善傾向をたどる」とこれまた雇用の部分を表現を強めているという見通しの需要項目にも判断前進傾向がみられます。


・一応申し訳のように入る文言

この2行が申し訳のように入っておりますが、これまでの文章を見るとどう見ても判断が強まるという麿大勝負モードとしか見えない中で入れられても何とも申し訳程度にしか見えないという印象になるのはあたくしの気のせいですかそうですか。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)


・物価は現状を反映して表現の変化はあるが基本的に変わらん

よってここは引用だけ。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、上昇テンポが鈍化している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の上昇などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)



『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、上昇テンポが鈍化するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)


・金融環境部分に衝撃の変化があったりする

まあそれを衝撃と言うのかどうかは微妙ですけれども、金融面の部分をスルーして金融環境の説明部分。なお金融環境の総括判断は『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』なのですが、金融環境の現状認識部分を比較するとあれ?という変化が。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。』(前回)

・・・・・・・・・・・ということで、はて何ですねんという所ですが、従来まで入っていた「実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある」という表現を何と今回堂々の削除。つまり実体経済活動や物価の状態が改善されているので金融緩和効果がより高まって来るという例の理屈が炸裂という事ですが、何もあーたギリシャ総選挙の前日に勝負せんでもええじゃろと思うのでして、wait and seeで何の問題がありますねんという感じです。

ちなみに昨日ネタにしなかった部分になるのですが、総裁記者会見でもこんな質疑がありまして・・・・

『(問) 金融緩和の効果は、一般論として、景気がよくなっていく時に、より効果が高まるとみられると思いますが、今回、景気判断を若干上方修正されたことで、これまで累次打ち出してきた政策の効果がより大きくなるという考え方はできるのでしょうか。』

『(答) 日本銀行が行っている強力な金融緩和が、どのようなルートを通じて景気の刺激効果を持つのかとのお尋ねが、これまでも何回かありました。その時、私はいつも、第3番目の効果として「時間軸効果」を挙げていました。つまり、例えば同じゼロ金利であっても、あるいは同じ1%の金利であっても、景気がよくなり企業の収益率が高まってくると、同じ金利の持つ景気刺激力がより高まってくるわけです。そういう意味で、景気がよくなる程度に応じて、緩和力も刺激力も強まってくるということになります。(以下延々と麿のドヤ顔説明が続くのですが長いので割愛)』(以上15日の総裁記者会見より引用)

どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございましたという所ですが、別に政策当局者は相場師じゃないのですからここで勝負する必要は無いでしょうし、大体からして勝負しないと第2の柱的な弊害でもあるというのなら兎も角、日本に関してはどう見てもそんなの見られないでしょという中でどうしてこうなったという感じではあります。

ということで、誠に不思議な金融経済月報でありましたが、勝負が大当たりすると良いですね(棒読み)。



○英国雑感

本当はこっちが先なのですが、詳しく読んでいる時間がががががorzorz

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2012/speech587.pdf
Speech given by Sir Mervyn King, Governor of the Bank of England

とりあえず次のMPCは7月5日なのでそれまでに、というか何とか金曜には投入したいと存じますが、全部で正味6ページのスピーチなのですが、インプリケーションが大杉でこれはこれで時間を掛けたい所ですので今日は勘弁ですすいませんすいません。

基本的には大警戒モードという感じでして、見通しが下がったですよとか追加緩和が必要ですよとか随分と踏み込んだ内容になっていて、まあこれが出たのは先週木曜日なのですが、このスピーチを受けてなのかどうかはよくわかりませんが、木曜の欧州時間から「各国中銀が流動性供給策を出す」みたいな観測報道が出たりした背景になるかと思います。

で、その流動性供給策として昨年12月に枠組みだけ作ってある「Extended Collateral Term Repo Facility」が本日発動予定。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/060.aspx
News Release - Auctions to be held under the Extended Collateral Term Repo Facility

『In his Mansion House speech last night, Sir Mervyn King, the Governor of the Bank of England, announced that in the current turbulent period, the Bank of England will be commencing operations under the Extended Collateral Term Repo (ECTR) Facility. Activation of this Facility, introduced in December 2011, is intended to mitigate prospective risks to financial stability arising from a market-wide shortage of sterling liquidity by lending to the banking system against the widest range of collateral.』

ということで幅広いレンジの担保に対してこのECTRで資金供給しますという話で、その目的は金融システムにおけるポンド資金の不足によっておこり得る金融の不安定を軽減するという事ですな。

『The Bank intends to hold an ECTR auction at least monthly until further notice. The first auction under the ECTR Facility will be held on 20 June 2012. In its ECTR auctions, the Bank will offer sterling liquidity with a term of 6 months against collateral pre-positioned for use in the Bank’s Discount Window Facility (DWF). The minimum bid rate in these auctions will be a spread to Bank Rate of 25 basis points. All firms registered for access to the Bank’s DWF are eligible for ECTR auctions. The size of ECTR auctions will be announced the day prior to each operation and will be subject to a minimum of £5 billion.』

少なくとも今後は毎月最低50億ポンドの単位でオペレーションを実施し、担保はディスカウントウィンドウの担保(まあ据置担保みたいなもんですか)を使えます。期間は6か月で、最低応札利回りは政策金利+25bpなので0.75%になります。

『The ECTR Facility is part of the Bank’s permanent framework of operations, the Sterling Monetary Framework, and as such is incorporated in the “Red Book”. In conjunction with the Indexed Long-Term Repo (ILTR) operations, and the permanent availability of the Discount Window Facility (DWF) for bilateral transactions, the ECTR Facility enables the Bank to ensure that the banking sector has sufficient access to sterling liquidity to mitigate risks arising from unexpected shocks.』

ということで、今後もこのオペは制度化という話ですかな。

『Further operational details are available in the accompanying Market Notice. 』

詳しい事務手順はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/markets/Documents/marketnotice120615.pdf
Market Notice 15 June 2012
Sterling Monetary Framework: Extended Collateral Term Repo Facility

ちなみに既にある常設ファシリティであるところのOperational Standing Facilities (OSFs)ですけれども、現在のBOEのファシリティはこちらに一覧がありまして。
http://www.bankofengland.co.uk/markets/Documents/sterlingoperations/summaryops120615.pdf

これを見ますと、貸出ファシリティの現在の適用レートは0.75%(ちなみにBOEは預金ファシリティの金利は0%にしています)なので、ECTRと金利同じ(というか最低応札レートだから貸出ファシリティよりも高いケースも)なのですけれども、これはまあ恐らくはStigma問題とかあって常設ファシリティの利用がしにくいとか毎度のお話があるんでしょうなあと思うのでありました。


でですな、これはキング総裁の講演でも金融市場の安定やクレジットアベイラビリティーの確保が重要なのでECTRを実施しますという話があったのですが、そもそもの話をすると英国の場合、物価が中々サガランチ会長であるという状況の説明の中で、「金融環境が必ずしも良くない事によって、企業がキャッシュ確保の為にマージンを確保するように価格設定を行い、その結果として物価が高止まりする一因になっている」というのがここの所ずーっとなされておりまして、まあキング総裁の講演ではそこまでの説明は無いのですけれども、MPCのMinuteでの議論説明を敷衍いたしますと、このECTR発動は金融環境の改善により企業の価格設定行動における過度のマージン確保傾向を抑えるという効果もありますよね、と何か無理矢理の香りもしますがそんな理屈も感じられますな。

あと、
http://www.bankofengland.co.uk/Pages/home.aspx
の右側に各種数値が載っておりますが、昨日はCPIの発表がございまして・・・・・・・

Current Inflation 2.8%
Next due:17 Jul 2012

市場予想が確か3%(前回数値が3%)だったのですが、ついに3%割れと相成りまして、ポンド相場も反応、というかポンド相場自体はこの指標が出る前の欧州オープニング時間からポンド売りになっていましたけど、まあ物価がようやくターゲットに近づいてきたので、追加緩和もやりやすいですなあという所です。



○ああ時間切れですが6月6日のロックハート講演メモ

ということで、FOMC前に成敗したかったアトランタ連銀ロックハート総裁の講演ネタは細かく説明できません(つーかキング総裁のスピーチもまだですが)ですが、一応この講演に関してはサマリーが冒頭にあるのでそこの引用で勘弁。

http://www.frbatlanta.org/news/speeches/120606_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/120606_lockhart.pdf

Headwinds, Risks, and Monetary Policy
Dennis P. Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

『Key points

・Federal Reserve Bank of Atlanta President Dennis Lockhart said the U.S. economy remains in recovery, which he expects to continue. As recent disappointing employment numbers illustrate, however, the economy is working against some strong headwinds.

・Lockhart said these headwinds include continued deleveraging by the household and financial sectors, a weak housing market, a contracting government sector, and an "uncertainty drag" on confidence and economic activity.

・In addition to headwinds, Lockhart described four risks in his outlook: the behavior of home prices, effect of pending sharp federal fiscal adjustment, financial instability along with recession in Europe, and slowdown in emerging market economies.

・Lockhart views today's highly accommodative stance of monetary policy as being appropriate for the outlook he envisions.

・His views about further policy measures consider two possibilities. First, if his baseline scenario of continued, though modest, growth becomes unrealistic, further monetary actions to support the recovery will need to be considered. Second, he believes the FOMC must maintain a state of readiness to respond to financial or economic instability.』

ということで、経済は緩やかに回復とは言っているものの、思いっきりリスク認識が高くて、最後の所にありますように「ベースラインシナリオの維持が非現実的となった場合には、追加的な金融緩和政策の実施が検討されるべきである」という話をしておりまして、さらに「リスク顕在化によって金融あるいは経済が不安定化した場合には、迅速に対応すべきである」と、まあこちらは流動性対策なども含めた危機対応の重要性を指摘というのが結論になっていまして、とりあえず直ぐの追加緩和という話ではないものの、下振れリスク警戒のトーンを強めた内容になっておりますので、まあ追加緩和という話になった時には賛成サイドに回るという感じじゃないですかね、という所であります。

でまあこちらでは「欧州に関しては前回のFOMCよりも現状はリスクが高まっている」と思いっきり説明していて、これは6日の話なのでギリシャ選挙の結果などは反映していませんけれども、まあ選挙結果見て急に認識が強まるという程でも無いでしょうというのは、講演本文の中で『First, the euro area as a whole is in or near recession, as I mentioned earlier. 』とか思いっきり言及してますのでまあそう変わらんでしょうな。

それから住宅市場とか、フィスカルクリフとかの言及もしていますし、「slowdown in emerging market economies」と思いっきり言及していて、これまた講演本文では『Another connected global risk is the apparent slowdown occurring in a number of large emerging economies−notably in the economies of China, India, and Brazil. 』と国名も挙げて指摘しているという所で、下振れ警戒感を強く印象付ける講演になっております。


#うむ、無理矢理メモにはなったかな








2012/06/19

お題「総裁会見/またもオペ雑談」

FOMC前に成敗しないといけないネタがあるというのに足元ネタ成敗で今日は時間切れとな。

#いつもの事ですがネタが異様に重なる時と全然ない時というのが必ずありますのう


○オペ雑談というか備忘録である

昨日は色々とオペで不思議現象があったので。

月曜のオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120618.htm

CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2012年6月21日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 8,000 2012年6月20日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年6月20日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月20日 2012年9月21日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120618.htm

CP等買入(資産買入等基金) 4,730 2,956 0.006 0.008 19.9
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 11,731 8,018 0.000 0.000 68.3
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 7,368 2,008 0.001 0.001 59.6
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月20日スタート分) 18,500 8,008 43.3

(上記URL先ではオファーバック順に表記されているのですが、オファー順に順序を改変しています)

まず最初にあれと思ったのは基金国債買入でして、今回は1〜2年と2〜3年の各買入予定額が8000億円と2000億円と相成りまして、ここもとの買入オファーはオファー日ベースで直近から順にさかのぼると18日:8000/2000、7日:6000/2000、5月25日:3500/3500、5月16日:6000/1000(でこの16日の買入のうち1〜2年が札割れして話題になったのだが)とまあ毎回変更するわ今回は額が増えるわと中々お洒落。

何で増えましたですねんという話は正直ワカランチ会長ではございますが、落札結果を見るとまあ札は普通に入っているので、その辺は札が入るという読み筋(ヒアリングなどはしている筈)でオファー額を決定しているのでしょうけれども、(1)買入を前倒し実施しているようなアピールをしてみた、(2)今後も買入が増えて来ると段々札割れの可能性が高まってくるので、そんなら買える内に残高を確保しておく、というまあ概ね2種類の読み筋(あるいは合わせ技)があるかと思われます。


でまあ後場にこれまたありゃーと思ったのは3か月固定金利オペのオファーでありまして、既に3か月物オペに関しては(この前1回札割れしましたけど)残高目標行っておりまして、何で新規で打つのか正直謎展開。上記の結果の通りで18500億円の応札があったのですけれども、先日ちょっとネタにしたように固定金利オペの期落ちが暫く無い中でGCレートが微妙に高いという状態だったので札は入る展開ではあったと思うのですが、何でこのタイミングで新規を入れたのでしょうかねという感じ。

20日になると国債償還で財政資金が7兆円とかの払い超になりまして、まあその7兆に関しては即座に市場に出るかどうかというとこれまた微妙なので20日直後って資金が偏在しやすい状況にはなるのでそれに対応したという説は無い訳でも無いのですが、んな資金偏在なんぞ暫くしたら解消しまして金が余りまくって来る話ですし、大体からして20日の資金偏在を気にするならもっと前にオファーしないといかん話。

とまあ考えますと、これまた将来の札割れ対策で先に残高積んで置けば償還ロール時に需要が完全になくなってオペが坊主になるという事も避けられる(資金需要的にニーズの無い時に新規を入れても坊主になるだけだが、オペの落ちがあると少なくともその分だけは資金需要が発生する計算になるので)ので、札割れ対策で糊代作ったとかそういう話になるんですかね。

まあ何ですな、とりあえず残高に目標数値を置いているだけに、札割れ対策も考えてオペを色々と(オペ部隊の裁量範囲内で)いじっているという所に涙ぐましい努力の跡を感じる次第でございます。基金国債買入に関してはケツの残高目標だけ決まっているので、途中のオファーをどうするかは市場局の裁量になりますが、固定金利オペに関しては毎回8000億円のオファーという風にしていたというのがありまして(この辺→http://www.boj.or.jp/announcements/release_2010/un1003d.pdf)この後オペ残高拡大していく中で前述の頻度とかは形骸化しているのですけれども、毎回8000億円というのが微妙に生きているような感じですよね。MPMで議決しないといけないのかはよく判らん所ではあるのですが、8000億円というアナウンスを1回やっているので有耶無耶のうちに変えるのも変という事でしょうかね。


つーことで、まあ特段の政策アナウンスメントを意識している訳でも無い(逆にアナウンスメントを強調したいのであればMPMで鉦や太鼓を打ち鳴らして宣伝するもんですから)とは思いますが、ちょっと面白かったので小ネタでありました。


○総裁会見ですが海外経済の先行きに関する往生際はまだ悪いようで何より(棒読み)

ということで調べ調べ書いていたら時間が怪しくなり総裁会見ネタは打ち込めるがFOMC前にキング総裁の(結構衝撃の)講演に手が回らないという不覚であるorzが気を取り直して麿会見。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1206a.pdf

・最初の説明の時点で往生際の悪さが

とか何とか悪態ついておりますが、いやまあ確かにハードデータはコケそうでコケないと申しますか、新興国がどう見てもコケ気味の中米国が意外に底堅いとかは仰る通りの部分もありまして、麿様の見通しの方が正確でしたどうもすいませんという可能性は勿論あるのですけどね。

冒頭の説明から。

『わが国の景気の現状については、「復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある」と判断しています。先月の決定会合では、わが国の景気について、「なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」と判断していましたが、今月は判断を一歩前進させています。』

>今月は判断を一歩前進させています
>今月は判断を一歩前進させています
>今月は判断を一歩前進させています
>今月は判断を一歩前進させています
>今月は判断を一歩前進させています

いやあの何と申しますか、そらまあ直近までのデータはそうかもしれませんけど、何も週明けにテールリスク地雷のある中(まあそのテールリスク地雷は回避されましたが)わざわざ「判断を一歩前進させています(キリッ)」とか勝負する所じゃないと思うのですけど。展望レポートの見通しに引き続きトラックしているというのを強調したいからこういう話になったというのは判るのですけれども、リスクバランスを考えて政策の自由度を確保するという観点からしたら、テールリスクの状況が不明な中でわざわざ判断前進とか自分で自分を追い込んでいるだけのような気がするのですが麿様におかれましてはそういうプレイがお好きなのでしょうか。

更に冒頭の説明は続く。

『この間、海外経済をみると、欧州経済は停滞し、中国経済は減速した状態がやや長引いているなど、全体としてなお減速した状態から脱していませんが、米国経済が緩やかな回復を続け、 NIEs、ASEAN経済も内需を中心に持ち直しつつあるなど、緩やかながら改善の動きもみられています。こうしたもとで、輸出には持ち直しの動きがみられています。』

はあそうですか(棒)という所ですが、中国やらインドやらがコケる(ちなみに昨日も申し上げましたがアトランタ連銀総裁は中国、インド、ブラジルを名指ししてコケ気味の新興国として説明したのが6月6日)という中で米国が意外に底堅いという話になっているようですが・・・・・・・


従って先行き見通しの話は麿的にはあまり変わっていない。

『このように、輸出・生産については、判断を引き上げたと言っても、海外経済がなお減速した状態から脱していない中で、ようやく持ち直しの動きがみられ始めた段階ですが、先程述べたように、内需はしっかりしていますので、全体としては、「緩やかに持ち直しつつある」と判断しました。』

『わが国経済の先行きについては、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられます。』

物価はまあ兎も角、こういう字面を見るとどうも麿的にはあまり変わっていないようですな。引き続き冒頭説明部分を見ますと、不確実性の部分に関しまして・・・・・・

『新興国・資源国についても、物価安定と成長を両立するかたちで経済がソフトランディングできるかどうか、なお不透明感が高い状況が続いています。中国経済は、成長ペースの鈍化した状態がやや長引いていますが、先行き、物価上昇率の低下や金融緩和の効果などから、減速局面を脱していくかどうか、そのタイミングも含め、注意してみていく必要があります。』

・・・・・・・・うーむ、あまり下がっていないですなあ。


んでもって新興国云々の文言が抜けた事に関する質疑がありましてですね。


『(問) 先行きの景気認識について伺います。今回の声明で、今までずっとおっしゃっていた「新興国・資源国に牽引される」という表現がなくなりました。これは、中国の減速等を念頭においているかと思いますが、景気の回復経路について、これまで想定されていたパスと少し違う想定になっているのかどうか教えて下さい。また、ずっと「年度前半の回復」とおっしゃっていましたが、その想定についても、多少下振れというか、さらに遅れてしまう懸念はないのか、お伺いします。』

とまあ良い質問がありまして。

『(答) 従来、「新興国・資源国に牽引される」という言葉を使っていましたが、今回発表文からはその表現を落としています。その理由は、牽引する主体である国の構成が少し変わってきたという感じがしているためです。』

な、なんだってー!

『従来は、新興国・資源国が牽引するということでしたが、この数か月間の動きをみると、ご指摘のように、中国の減速が少し長引いている一方、米国については――もちろん、色々な評価がありますが――、緩やかに回復しているとみています。米国という大きな経済が2%を超えるペースで成長しているということも、やはり意識する必要があると思います。』

ほほう。

『そういう意味で、新興国・資源国だけを取り出して語るより、世界経済全体で語った方がよいと思った次第です。それから、新興国についても、中国については先程申し上げましたが、NIEs、ASEAN諸国は内需を中心に持ち直しつつあることがデータで確認できています。そういう意味で、今回、言葉を変えました。』

ということで、声明文では降参モードになりつつあるのかとも思いましたが、この質疑も合わせてみますとどうもまだ往生はしていないようで、しぶとく「海外が成長のドライバーとして機能」という話は程度を下げつつ(今回は国内の判断を引き上げており、この先の話という意味では海外のドライバー機能が落ちる分は国内がカバーするというロジックになっているようです、これから引用する答えの先の部分になります)も維持しているという中々の往生際の悪さを示しております。


いやね、欧米の中銀の皆様におかれましては(物価重視派の米国地区連銀総裁の話は別として)どちらかと言いますと下振れリスクと新興国の減速をやたら強調する傾向にありまして、それと比較してこの辺りの話を見ておりますと物凄い勢いで違和感を感じる所でございます。ただまあ欧米の場合はそもそも物価がターゲット水準から上の方で推移していて、今後の金融緩和を行う際に物価上昇放置ケシカランと言われやすい為、金融緩和余地を作る為に殊更に弱い話を強調しているという面があるとは思われますので、そういう意味では欧米の中銀のポジショントークに全部お付き合いする必要も無いと言えば言えるのですが、じゃあ日本が主要国の動きとデカップリングしてまで経済成長しますかというとそーゆー訳でも無いと思われる中で、何もこんなに頑張らなくても良いのにとは思うんですけどねえ。


という事で、上記質問の後半部分の答えですな。

『それから、見通しの達成可能性、あるいはその時期についてのお尋ねですが、もちろん経済は生き物ですから、毎回入念に点検していきますが、少なくとも本日の会合で、その蓋然性が下がった、あるいは時期が後ずれしたということではありませんでした。』

はあそうですか。

『これは、先程申し上げた通り、外需は想定比幾分弱いという感じがありますが、内需は想定比幾分強い感じで、現在のところその両者が相殺しあっている感じです。ただ、経済の先行きについては、何よりも欧州債務問題が最大のリスク要因ですから、これについては、純粋に経済のロジックで予想ができるというよりも、かなり政治的な要素もありますので、ある特定のシナリオだけを持つことなく、丹念に状況をみていくことになると思っています。』



・横ばい圏内を外したのは直近までの指標ですとな

『(問) 2つ質問があります。1つは、現状の景気判断を前進させ、前回まであった「横ばい圏内」という表現がなくなりました。総裁は、なぜ、この「横ばい圏内」という表現をなくして判断を前進させたのか、最も大きな要因をお聞かせ下さい。また、政策効果の息切れが指摘されている中で、今後も内需は力強く回復していくのかどうか、総裁の見解をお伺いします。2点目は、先程も出たギリシャの話です。今週末の選挙もあり、週明け以降のマーケットについて懸念する声が非常に高まっています。もしかすると、リーマンショック並みの事態になるとの危機感もあります。総裁はどのようにみておられるのか、国際的に協調して行動する必要性はあるのかお伺いします。』

で、ギリシャの質疑は同じようなのが幾つもあって明らかに質疑応答が重複しているので、まあギリシャの分はこの質問に対するお答え部分で済ませましょう^^;

『(答) 日本の景気、経済活動を総合的に測る統計としては、実質GDPがあります。実質GDPは、昨年の第4四半期が年率+0.1%、今年の第1四半期が年率+4.7%でした。この数字だけみると、既に1〜3月についても、「横ばい圏内」というよりも少しよい数字でした。それにもかかわらず、私どもが「横ばい圏内」という言葉を使っていたのは、いくつかの理由があります。』

いやその前からそもそも横ばい圏内から脱却していたのですよキタコレ。

『1つは、足許のデータで、輸出や生産が横ばいからプラスになっていく姿を確認したいということでした。』

ほほう。

『この点、輸出については、少し出来過ぎの感じもありますが、4月はプラスということが確認されました。生産については、リーマンショック後の変動を季節調整上どう扱うかにより、表面の数字では実勢判断が難しくなっていますが、私ども独自の季節調整で判断すると、足許、緩やかではありますが増加に転じていることが確認できました。輸出・生産ではなくて、支出面からのデータをみると、以前から比較的強い数字が出ていました。個人消費は予想外に健闘しているという感じがありますし、設備投資も、機械受注、あるいは資本財出荷、各種の設備投資アンケート調査等からみて増加しています。』

ほうほう。

『その上で、私どもが、この動きをどう評価するかというと、今直面している状況は、外需については当初の想定よりも幾分弱い、内需は当初の想定よりも幾分強いということです。しかし、これだけ経済がグローバル化しているので、欧州債務問題が色々な形で内需に影響してくる可能性も意識せざるを得ません。そういう意味で、私どもは、判断を慎重に少しずつ進めているということです。今回についても、先々を考えていく上で、最大のリスク要因は欧州であると申し上げたのは、まさにそういう趣旨です。』

判断を進めるのも結構ですが下振れリスク要因は拡大しているのでそんなに判断をホイホイと進めなくても良いと思うのですけれどもねえ。結局それは金融政策の自由度を下げるだけのような気がするとはさっき申し上げた通りです。


でもってギリシャですが。

『2つ目のご質問ですが、欧州債務問題について、どういう言葉で表現するのが最も適切なのか、少し注意して選ばなくてはなりませんが、現在の状況について、細心の注意を持って国際金融資本市場の動きをみているということです。これは、各国中央銀行とも同じだと思います。詳細については申し上げられませんが、先般のG7の電話会議もそうですし、一対一でも他の中央銀行総裁と話していますが、各国はそうした意識でこの状況をみているということだと思います。いずれにせよ、中央銀行は最後の貸し手なので、金融システムの安定をしっかり守っていくことが大事だということは、先程来申し上げている通りです。』

ということで、まあこれに対応するのは流動性供給というのは当然ちゃあ当然の答えですわな。



・強力緩和云々はさらっとかわしておりますな&買入の残高が実は進行している件

『(問) 今回の声明に、先月は抜けていた「強力な金融緩和」という文言がまた入りました。その趣旨についてご説明下さい。もう1つ、強力な金融緩和を推進している中で、資産買入れプログラムのETFとJ−REITがリミットに近付いてきています。リミットが近付いてきている中で、ETF、 J−REITを買い続けていくべきとお考えなのかどうか。と言うのも、4月27日の決定会合で、スタッフメンバー(執行部)から、価格変動リスクが大きいという指摘がありました。そういう中で、総裁は、どういうご見解をお持ちかお聞かせ下さい。』

前半の方の前に後半の話ですが、直近の営業毎旬報告を見ますと・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120610.htm/
営業毎旬報告(平成24年6月10日現在)

(別表2)のところにある「資産買入等の基金」の内訳を見るとヨロシアル。

(単位:千円)
指数連動型上場投資信託:1,162,668,437
不動産投資信託:91,444,466

ということで、現在の目標額がこちらの別紙にありますように、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120427a.pdf

ETFが1.6兆円の目標に対して1.16兆円の買入累計、J-REITが1200億円の目標に対して914億円の買入累計と来ていまして、実はしらっと足元で買入が加速している結果残高がいい感じで積みあがっているのです(しかもETFとかREITの場合は債券やCPと違って償還しないから残高減らないし^^)。

いやね、あたくしも不覚にしてこの質疑見て改めて残高を確認した次第という位で、自分の不勉強を棚に上げて申し上げますと(恥)、まあ買入の中でも特にリスク資産という感じの建付けになっているこれら商品の買入の進捗を日銀もあまりアピールして無いですよねというのもあるんじゃネーノとは思います。まああまりアピールしたくないのかもしれませんけれども、どうせ買っているという結果は変わらないのですから、どうせならもっとアピールして「他の主要国の中銀でもやっていない緩和を日本はやっているんですよ!!」と宣伝した方が良いのではとか思うのですけどね。

つまりですよ、オペレーションツイストに正直何の意味があるのかと(効果が無いとは言わないけど)思うようなものしかやっていないFRBに対しましては金融緩和が積極的で云々と言われ、一方でETFやらREITまで買っている日銀は出し渋り批判を受けるとか言うのって、これやはり見せ方というかアピールをもうちょっと考えないと「勿体ない」と思うのですよね、って毎度申し上げておりますけど。


てな事を書いて長くなってしまいましたが、質問に対するお答え部分を引用。

『(答) まず、「強力な金融緩和」という言葉についてのご質問です。この席でもご説明した通り、私どもの基本スタンス、基本哲学をしっかり説明しようと思うと長い文章になります。そういう意味で、私どもの基本スタンスについては、2月、4月の会合後に公表した声明文で詳しく述べているので、前回は、最終的には「適切な政策運営」と括ったわけです。』

はあそうですか(棒)

『今回は、欧州の債務問題が前回に比べより緊張感を高めている中で、最後に「金融システムの安定」というスタンスを明確に示す必要があるということで、改めて日本銀行の政策スタンスの全体像を体系的に説明した方がいいと判断した結果、その言葉を含めたということです。』

いちいちその度に出したり引っ込めたりするのは如何なものかと思います。

『ただ、見比べて頂ければ分かる通り、2月の発表文と比べると、今回の方がコンパクトになっています。その点については、皆様に十分な知識があるということで、エッセンスだけを書いたわけです。』

いや、英文だと判りやすいけど従来の「未来形」から「現在完了形」に代わってるだろ。

『いずれにしても、今回は、欧州債務問題を踏まえて、私どもの政策全体の体系を説明した方がいいと思った次第です。』

だから一々その度に(以下同文)。



で、ETF関連の方はまあアピールもしないし台無し発言もしないという無難な物です。

『ETFとJ−REITですが、年末までに発表している買入れを着実に進めていくということです。買入基金について、どのような運営が望ましいのかは、基金創設の目的に照らして、また、ご質問された方もおっしゃった日本銀行の運営上考えるべきいくつかの要素に照らして、適切な判断をしていきたいと思っています。』

これで「目標達成したらさらに買入拡大をするというのは議論としておかしい」とか言い出したらダイナシーにも程があるのですがそこは思いとどまって頂いたようで誠に結構。


#という所で時間切れでごわす




2012/06/18

お題「決定会合レビュー:声明文がヲチャー的に滋味があるので細々見てたら時間切れとな(汗)」

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012061800021
緊縮支持2党で過半数か=ギリシャ再選挙出口調査(2012/06/18-02:52)

まあとりあえずアジャパーのオッペケペーには成らずに済んだようで何よりでございますが、「過半数を超える」とか書き物でメディアが馬から落ちて落馬するのは如何なものかと思いますけれども(−−)

○声明文は上げたり下げたりと不思議な攻撃

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120615a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120523a.pdf(前回)

・海外情勢に関する現状認識を引き下げているような希ガス

まず冒頭の海外情勢に関する話。

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(今回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要がある。』(前回)

これが微妙にヤヤコシイのですけれども、まず改善云々の所は「緩やかながら」というのが入ってきたので下げたように見えるのと、米国の改善の話が抜けているのが微妙で、この部分が金融経済月報での表現でどういう扱いになっているのかを確認ですな。

んでもって国際金融市場に関しては「十分注意」ということでさすがに注意レベルが引きあがっています。そらまあそうよという感じですけれども。


・国内景気の現状認識は何と引き上げ

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

はあそうですか(棒読み)という感じで、そらまあ経済指標自体は比較的堅調に推移してますけれども、何もこの段階で現状判断引き上げなくてもと思うのは気のせいですかそうですかはいはい。

『公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(今回)

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。生産は、なお横ばい圏内にあるが、以上の内外需要を反映して、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

需要項目別の部分は語順も変わっているのでまとめて引用するという手抜きプレイに出ましたが(汗)、設備投資に関する部分でその背景を「業況感の改善」から「収益の改善」に引き上げているのがこらまた威勢の良い話ですなあというのと、輸出に関して「横ばい圏内」から「持ち直しの動きがみられている」に引き上げですとな。

んでもって生産に関しても「横ばい圏内にあるが持ち直しの動きが」という表現から「緩やかに持ち直しつつある」に引き上げです(他の需要項目は変わらず)ということで、需要項目のうち企業部門に関して強くなっているという威勢の良い話。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということで金融環境と物価面の現状判断は変わらず。


・先行き見通しがこれまた微妙

上記のように国内経済の現状判断を引き上げながら海外経済の現状判断を下げているのですが、先行き見通しに関してはこれまたややこしくなっていて、国内部分に関しては微妙に強くなったようにも見えるという状態で、海外に関してはどう見ても下げているという器用な攻撃に出ているのが今回の決定会合声明文のお洒落というか訳判らん所であります。

ただまあこの比較を見て一発で最初に気が付く部分があるかと思いまして、まあ「やっとその前提を取り下げたか遅えよ」とは思うのでございますが、その部分を勘案するとこの見通しって結論の文言は同じですがまあ引き下げになっていると見た方が妥当な気がします。

『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

震災復興云々の部分は現状判断の方に移動しているのでチャラと見なしますが、ここに関しては上記の国内での企業部門の現状判断改善を受けていますので「国内需要」とスッキリとした形にしたのはまあ微妙に判断を上げているような感じが。

それはそれとして今回の声明文の中であたくしが一発目に気が付いた部分はこの中の海外部分でございまして、「減速した状態」という文言が入っているのは恐らくは現状判断の部分(元々「減速した状態」という表現自体はあるのですが)において何となく判断を下げたような感じになっている事を反映しているのですが、それはそれとして更に注目というか重要ポイントになるのは「新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり」という部分が削除されていることでございます。

これって展望レポートにおける日本経済の先行き見通しのうち、海外部門の前提条件になっている部分でございますので、まあこれをいつ取り下げるのやらとは思っておりましたけれども、ここへ来てやっと下げたか遅えよ全く往生際が悪いわとか言う悪態は兎も角と致しまして、現状判断を少々上げてもこの部分で結構チャラになるの巻という所だとは存じますが、これまた今日出る金融経済月報の方でどういう評価になっているのかは確認したいと思います(意地汚く月報の方では判断が残っているかも知れんし^^)。

しかしまあ何ですな、海外経済に関しての現状判断が微妙に下がって先行き見通しも下がっているのに国内経済の現状判断における輸出部分は上がっているとか中々訳がワカランチ会長になっている次第で、正直今回の声明文は何というかなテイストを醸し出しております。

ちなみに、新興国経済云々ですけれども、今日ネタにしている時間があるかどうか分からないのですけれども、(不覚にも自称BOEヲチャーのあたくしが出てすぐにネタにせずに週末越えをしてしまったのですが)BOEではキング総裁が講演(14日ですから木曜なのですが、ロンドン市長公邸でのスピーチで20日初回実施予定の流動性対策オペの発動やら追加金融緩和の重要性を示唆した物凄い勢いで重要厳戒態勢モード講演をしているのだ)して、その中で新興国経済の減速についても言及してますし、これまた今日ネタにする暇はどう見ても無いのですが、先般来続いておりますFED高官スピーチの中でアトランタ連銀のロックハート総裁がこれまた中国インドブラジルをご指名で「最近明らかに減速している」と言及してたり(これは6日の講演なのでちと古いざんす)という事で、まあ普通に海外の中銀の皆様が新興国に関して最近の減速について揃って懸念を表明しておりますので、何ぼなんでも「新興国・資源国に牽引される形で」云々という見通しを下げざるを得ませんなあという話だとは思いますが、しつこく申し上げますようにやっと取り下げるとか往生際が悪いにも程があるわと存じます次第でございます。


消費者物価の見通しに関しては変化なし。

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)


・リスク要因に関しては前回と文言一致

透かし読みをしても全く同じ(^^)によって手抜きで今回だけ引用。

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)


・ああだこうだと書いてある最後の部分には「強力な金融緩和」が復活&「金融市場の安定」云々が入るのですが・・・・・

これに関しては報道ベースを見ますと会見で質疑応答が(当然ながら)あったようで、そこでの言い訳が中々香ばしいテイストを醸し出しておられるようでございますが、まあそれに関しては今日出ると思われる会見要旨を見ながら楽しむと致しまして、ここの文言鑑賞に関しては4月27日会合だと声明文の章立てが違っていて書きっぷりがだいぶ違うので、比較するならその前の4月10日会合の声明文を持ち出す事になりますので、それも参考に鑑賞である。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(前回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方を通じて実現されていくものである。』(4月10日の声明文)

前半部分ですが、今回は「幅広い経済主体による」というのを打ち込んでおりまして、成長力強化の努力について日銀以外、つーかまあ政治向けだと思いますが、声明文で一応アピールしているつもりのようですが、どうせ政治方面にはその声は届かないと思いますけどね。

でもって後半部分。

『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく。』(今回)

『日本銀行としては、引き続き適切な政策運営に努めていく。』(前回)

『こうした認識のもと、日本銀行としては、強力に金融緩和を推進していくとともに、成長基盤強化を支援するための資金供給を通じて、日本経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関による取り組みを支援していく。(成長基盤強化のドル特則詳細決定部分割愛)』(4月10日の声明文)

ということで、国際金融市場云々の話をしていまして、まあ先ほども申し上げましたようにBOEのキング総裁がものすごい勢いで警戒モードになって金融市場安定の為のタームレポファシリティの発動を決定しているという背景もありますので、そらまあここはその辺の文言入れないと、いくら日本の金融市場が相対的には安定感が非常に高いと申しましても、それはそれでリーマンショックみたいな事が起きたら無傷では済まないのはリーマンショックで経験済みという事でもありますので、警戒感を出さないというのは太平楽にも程があると言われたでしょうから警戒モードを入れたのはまあ結構なお話。

で、強力な金融緩和云々の文言が復活したのですが、ここの表現が微妙に微妙な気がするので、念のためと思いまして英文声明文を見るとそこにはお洒落な事態が。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120615a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120523a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120410a.pdf(4月10日)

英文声明文の該当箇所、ちょっと長く引用して読みにくくてスイマセンが一応この部分全部引用してみます。

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. This challenge will be met through efforts by a wide range of economic agents to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing. The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(今回)

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. This challenge will be met through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. The Bank continues to conduct policy in an appropriate manner.』(前回)

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. The goal of overcoming deflation will be achieved both through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. With this in mind, the Bank will pursue powerful monetary easing, and will support private financial institutions in their efforts to strengthen the foundations for Japan's economic growth via the fund-provisioning measure to support strengthening the foundations for economic growth. At today's meeting, as shown in the Attachment, the Bank established detailed rules for a new U.S. dollar lending arrangement equivalent to 1 trillion yen, of which a preliminary outline was released at the previous meeting in March.』(4月10日)

長くてスイマセンが、「powerful monetary easing」云々の箇所を見ると微妙な往生際の悪さというか微妙な日銀文学クオリティが垣間見られます。

即ちですな、4月10日には「the Bank will pursue powerful monetary easing」と「今後も強力な緩和をpurse(追及とか遂行とか)するお」と仰せなのですが、今回は「the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing」と現在完了形になっていて、先行きの所が前回の表現と同じく「The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner」となっておりまして、「これまでは強力な緩和を実行しておりましたが、先行きに関しては先月申し上げましたように適切に行いますとしか申し上げようがございませんなあ」という風になっておられるのが何ともアレ。

基本的に声明文に関しては日本語が正本で英文はサービスで付けているという建付けになっている筈でございますので(で良いんですよね?>中の人)英文はあくまでもおまけではあるのですが、ここの表現を見ますと声明文を見た海外のクレクレの皆様におかれましては「表現が変わっていない」という風に思うような気がするのですが、まあこれはどこからどう見てもそういう意図があって「in an appropriate manner」を残しているのでしょうからして、つまりは海外のクレクレに向けては「クレクレうるせえんじゃヴォケ」とまあそういう意思表示である、と斯様思うのでございました。


とまあそういう事で、今回の声明文は何かあちこち上げたり下げたり、止めには英文の表現にまで味わいのあるという事で、ヲチャー的にはかなりの滋味がある内容でございました(^^)。



○案の定時間が無くなったので予告メモリスト(俺様備忘録)

ただの俺様備忘録なのですが。

・BOEの厳戒態勢とタームレポファシリティ発動

本当は金曜のネタにすべき物なのですけれども、キング総裁の14日のロンドン市長公邸でのスピーチがありまして、タームレポファシリティ発動がというのが15日にリリースされていたので。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2012/speech587.pdf
Speech given by Sir Mervyn King, Governor of the Bank of England

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/060.aspx
News Release - Auctions to be held under the Extended Collateral Term Repo Facility


・電波浴シリーズ

さっき読者様から電波浴のご案内があったのですが時間が無いので今日はパス(^^)。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32787

それからまあ電波と言っちゃあさすがにカワイソスではあるが、しかしながら金曜に話題というか笑いを巻き起こしていたのはこれ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5LQ0R0D9L3501.html



・アトランタ連銀ロックハート総裁講演

さっき言ってた件ね。
http://www.frbatlanta.org/news/speeches/120606_lockhart.cfm
Headwinds, Risks, and Monetary Policy
Dennis P. Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

The Broward Workshop
Fort Lauderdale, Fla.
June 6, 2012







2012/06/15

お題「今日も市場雑談/FOMC前に労働市場がどうのこうのの話をまたネタに/素敵に電波浴」

気が付けば今月も半分が経過となorz

○いつもの市場雑談

いつものオペ雑談である(^^)。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120614.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月18日 2012年9月20日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120614.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月18日スタート分) 22,770 8,008 35.2

昨日の3か月固定金利オペはこれまた応札2兆超えとエライ多い額になった訳でございますが、13日と15日に共通担保金利入札オペの期落ちが各1兆円あった(今月の頭と先月のケツに実施したオペ)為にオペ的にニーズがあった事と、固定金利オペの足が来るのが次は6月26日でして、暫く買入以外の資金供給オペが無い(資金需給的には余剰モードに突入するのでどこからどう考えても金利入札オペが追加で入るとは思えない)とゆーよーな一時的な需給要因でしょうなあと思われる次第ではございます。

ただまあ傾向としては昨日の3か月TB入札に見られますように・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240614.htm

5.価格競争入札について

(1)応募額 112兆2,786億円
(2)募入決定額 5兆3,144億8,000万円
(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛 (募入最高利回り)(0.1011%)
(4)募入最低価格における案分比率 0.8955%
(5)募入平均価格 99円97銭4厘9毛 (募入平均利回り)(0.0996%)

・・・・・・ということで、辛うじて0.10%乗せの所の足切りで決着(一つ上の札の99.9750円はレート換算で0.9921%となる筈)したのですが、按分は何と1%割れとなりますので、按分狙いで満額(5.7兆円)応札しても510億円しか入らないという誠に残念な状態で、そらまあメインの札は0.9921%の所に入ったのでしょうなあ(じゃなかったら平均が99.9749にならん)とゆー所でございまする。少しでもコスト下げようという事で応札限度の残り分を皆さん揃って足切りの所に突っ込んだ結果応募額は貫録の2打席連続100兆超えと相成りましたという事でございますな、うんうん。


でですな、つまり入札参加した皆様におかれましては直近の3か月TBのコストがどう見ても0.10%割れとなっておられる訳でございまして、まあそーゆー状態ですと基金短国買入にこの銘柄を打ち込むインセンティブは中々沸かないでしょうなあとか思われる次第で、先日はオファー額を減額するという大技で札割れを回避した基金短期国債買入ですが、この調子ですとどう見ても札が集まりません本当にありがとうございましたという所でしょう。

んでもって3MTBにこれだけ需要があるという事はすなわち短期市場で潰さないといけないキャッシュは相変わらずアホのように存在するということでもありまして、最近は1年以内とかの金利って国債は当然のように0.10%割れた所じゃないと買わせてくれませんし、一般債とかもモノナシになってインデックス落ちの売りが出ると右から左へ瞬時に捌けてしまい業者の皆様在庫スッカラカン(ただし一部のアレな銘柄を除く)という大変にビューテホーな状況でもございます。

ということはですな、まあ引き続き固定金利オペに関しては今回のオペこそ絶賛大応札になりましたけれども、今後の展開を考えた場合にはやはり3か月などという長い期間は要らんがな、ましてや6か月なんぞ、とまあそういう話は続き、金融市場局の頭痛は続くという所でございましょうな、うんうん。


○米国労働市場の問題が構造的か循環的かという件についてのネタ(この前の続き)

先日金融政策スタンスに関する部分を引用したクリーブランド連銀ピアナルト総裁の講演@5月31日より
http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2012/Pianalto_20120531.cfm
Monetary Policy, Economics and the Recovery

『Economic Impacts of the Recession: Structural or Cyclical』の所をちょっと引用。

『Many of you are trained economists and are very familiar with the concept of dividing economic activity into structural and cyclical components. Broadly defined, cyclical impacts of a recession will be recovered as the economy works through the business cycle and as economic conditions improve. Such impacts rise and fall, but they do not persist. In contrast, impacts that persist even after the economy has been expanding for years are considered structural.』

構造要因と循環要因に分けるという話は良く行われおりまっせと。

『This distinction is often applied to unemployment rates, but it can also be applied to spending on plants and equipment. The underlying question in either case is, How much of the reduced demand for labor and capital will persist even when the U.S. economy has fully recovered from the recession?』

ということでお話が始まりますが、構造要因という説明を検討してみましょうとなりまして、考察が始まります。

『The U.S. construction sector was at the bull's-eye of the recession. The impact on construction workers was immense and the thinking was that, even after the economy recovered, we would need far fewer construction workers than before the steep downturn. Unemployed construction workers are often cited as examples of structural unemployment because of a belief that many of the pre-recession construction jobs were never coming back. Given that construction workers typically have relatively low levels of formal education and relatively high levels of specialized skills that they acquire on the job, some believed their prospects for employment in other sectors were limited.』

よく引き合いに出されるのが建設セクターでして、セクターの需要がそもそも戻らんだろとか、一旦失業して期間がたつと労働者のスキルが失われますがなというような論点で構造的要因の背景が説明されますよねという事ですかな。

『The statistics tell a different story.』

ほう。

『The recession increased the number of unemployed workers in the construction sector by 1.1 million, raising the unemployment rate of construction workers to a peak of roughly 20 percent. Nonetheless, recent employment statistics indicate that the number of unemployed construction workers is now just 300,000 higher than it was in 2007, even as the construction sector has continued to shrink since the end of the recession. Indeed, the number of unemployed workers from construction has declined more rapidly than the total number of unemployed workers in the United States.』

でも労働統計を見るとそうではなくて、建設関連の労働者ってリセッションの影響で大きく落ちたけれども戻りも早いですよねとか何とか。

『Another sector of the economy often cited for evidence of structural unemployment is manufacturing.』

ほほう。

『Today, manufacturing requires more specialized skills than ever, and some manufacturing activities have moved to other parts of the world. The recession increased the numbers of unemployed workers in the manufacturing sector by 1.2 million people. Here again, unemployment figures in manufacturing have declined more rapidly than economy-wide numbers. The number of unemployed manufacturing workers is now just 300,000 higher than it was in 2007.』

まあ建設セクターと同じような話ですな。

『The employment data for these two large sectors of the economy in part reflects the flexibility of U.S. workers to move out of one sector into another and demonstrates that there has been less structural unemployment than many had thought.』

ということで、これらのセクターにおける労働統計を見ると、米国の労働市場のフレキシビリティーは構造論者のいう程には悪化していないですよねと仰せ。

『A major part of the ongoing unemployment problem today is the elevated numbers of young unemployed people.』

若年層の失業が高い件について。

『The number of unemployed people in the early-career ages of 20 to 34 rose by 2.6 million in the recession. The recovery has been less effective at shrinking this pool of unemployed workers, with 1.8 million young and recently trained workers still looking for work. While it is hard to categorically rule out structural unemployment, people in this age group are typically very flexible about which sector or region they work. In addition, this generation is more educated than prior generations, and that education should be more relevant to current employment opportunities. The employment weakness in this age group points more to a broad-based lack of demand for labor - that is, a cyclical shortfall in employment.』

何かややインチキくさいのですが、若年労働者の方が社会的に言えばフレキシビリティーが高い筈で、その若年労働者の失業が多いという事は、つまり労働市場の問題は構造問題ではなく、循環的に雇用の需要が低い事を示している、という説明でまあホンマカイナという気はする。


でまあその辺の諸々を踏まえて労働市場の問題が循環要因に主に起因するのか構造要因に主に起因するのかという話はこうなります。

『What is extraordinary about today's economy is the number of unemployed people compared to the number of job openings. Before the recession, there was a little over one job seeker for every open position. Today, despite progress, there are about three people looking for work for every job opening. The only long-run solution to the unemployment problem is to increase the number of job openings through more growth in overall economic activity.』

『Together, these facts make a lot of today's unemployment look more cyclical than structural to me, although persistent cyclical unemployment runs the risk of translating into structural unemployment through the loss of skills. I encourage you to read our latest Annual Report, just published, for a thorough discussion of the employment side of the Federal Reserve’s dual mandate.』

ということで、労働市場の問題は主に循環要因に起因し、足元でやや改善している新規求人などがより一層拡大するためには、経済活動のより一層の活発化が必要である、という結論に達していまして、さらに循環的な労働市場の落ち込みを放置していると将来的にそれが硬直化して構造的要因になる(=長期化する)リスクもあるという話ですので、まあ基本的には「経済のより一層の活発化の為に追加的な金融緩和政策が必要です」という話になるんでしょうなあピアナルト総裁も、とまあそういう読み筋になるかと思います。

ただし11日の駄文で申し上げたように、ピアナルト総裁の見通しとしては5年程度で望ましい失業率水準に低下します的なお話をしておりますので、あまり強力緩和推奨ということでもないかもしれない(ボストン連銀のローゼングレン総裁は見通しがそもそも低いし、シカゴ連銀のエバンス総裁は物価上振れ上等の人というのは先日ご紹介したとおり)とは思われます。まあ執行部が緩和提案したらそのまま普通に賛成すると思いますけど。



○これはまた久々の電波浴

人様の所で話題になっていたのでつい見たらあまりの電波浴にポカーン。

http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/212902549282504706
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/213201310240096256

(IEのバージョンなどの関係で見れない場合は携帯バージョンだといけると思う)
http://mobile.twitter.com/YoichiTakahashi/status/212902549282504706
http://mobile.twitter.com/YoichiTakahashi/status/213201310240096256

『高橋洋一(嘉悦大)
@YoichiTakahashi 6月13日
今日の公聴会で話した背理法。もし3年以内に財政破綻するとする。今のCDSは1%なので日本の財務残高1000兆円で、破綻保険料は年間10兆円。3年払っても30兆円。これで破綻するなら、今30兆円はらって債務がなくなり財政再建完了。これはおかしい。ということは3年以内の破綻が誤り。終』(以上上の方のURLから)

・・・・・・・・・・・・・・・・ちなみに下の方のURLで何か謎の33倍投資とか仰せなのですが、最早何を言っているのかさっぱり分からずあまり朝から強烈な電波を浴びるのもどうかと思われますので引用は割愛。

まあ何ですな、こういうのってまあある意味丁度良い小僧向けの間違い探しテストでもあるのですが、それにしてもツイッターの140字だか何だかでここまでツッコミどころが発生するというのも甜菜ちゃあ甜菜なのかも知れませんね!!!


つーことで思いつくツッコミを並べてみると、節子、それ財政再建やのうてただのデフォルトや!というのが最初に出てくるかと。最初から破綻する積りでプロテクション買うとか発想がどこの計画倒産取り込み詐欺だよという所でありまして、それは一回仮に大成功して大勝利しても信用がゼロになるので二度と金融市場で相手にされず、ゴーイングコンサーンという前提で行動する筈の国家がそんな略奪作戦みたいなことしてどうすんだと小一時間でして、そんなご発想の方が特別顧問をやっておられるという大阪市って・・・・・いやまあいいです。

まあね、大体からしてCDSの信用力参照体が自分のCDS取引するとかそれ誰が受けるんだよという話(カウンターパーティーの立場からしたら当該プロテクションを買っても相手が参照体そのものだったらクレジットイベントが起きた時に発生する収益が回収不能だし、プロテクション売ったらこのオッサンのように作為的にクレジットイベント起こされるリスクがある、つーかそういうのって今申し上げたような理由で否認対象じゃねえのかという気もするがあまり詳しくないのでスルー)ですがなという所で、定義としてそれは財政再建じゃない上に大体からして取引自体が成立しないだろという時点で説明の前提が終わっていますわな。

んでまあそれはそれとしまして、想定元本1000兆円分のプロテクション買いなんぞ市場で行ったらCDSスプレッドがどこまで拡大するんだよという話ですし、まあ上記のツイッターでもツッコミのRTが入っていますように、市場の現在の価格が示しているのは「当該市場参加者の需給を反映した現在の均衡価格」であり、そらまあ日本の現在のCDSでも国債金利でも良いですけど、それ自体からは市場参加者のうち3年以内に日本財政が破綻すると真剣に思って身銭切って大勝負するような人がまずいません罠という事は示されますが、それと3年以内に破綻しない、というのはまた別問題で、その3年以内に一夜にして政権が変わって突如国債5000兆円発行して全額日銀に引き受けさせてその5000兆円を先着5000名様に1兆円づつ配りますおとか言い出したら財政は楽勝で破綻する訳で、「市場価格で示されていること」と「将来現実として起こること」は別問題だろとか思う次第。

まあこの手の市場データを持ち出して将来について断定的な話をするというのは、往々にして自分の都合の良い結論を引き出すために都合の良いデータを引っ張り出して来るという手段が使われるので、金融関係というか市場関係のお仕事をしている人と致しましては、この手の物を見てツッコミの練習をするというのは頭の訓練にはなりますなという所でございます。

#昔はこんなじゃなかったと思うのですが高橋先生どうしてこうなった????





2012/06/14

お題「決定会合プレビュー雑談/その他少々/コチャラコタ総裁のロジックを観察」

朝からモーサテの電話コメント(当然債券ではない)で追加緩和期待というのが連呼されて禿しく萎えるのだが。


○決定会合プレビュー雑談

一応予想に関しては昨日のFOMCプレビューで申し上げた通りでありまして、今回はまあ無くて、審議委員2名が上手くすれば加わるであろう(まあどちらの会社も承認されたら可及的速やかに就任へ向けて動くでしょ)次回の会合が展望レポートの中間レビューなのでさてそこで考えましょうという話になるんでござんしょうなというのが予想。

あとは麿先生の会合後会見が注目されているらしいのですが、ここもとのトーンから致しまして麿先生におかれましては退任までの残り時間は麿スイッチが入った状態になっておられるものと思料されますので、残念ながら緩和クレクレの皆様が喜ぶようなサービス発言連発という訳には行かないのではないかと懸念というのもこれまたあたくしの予想でございまする。

まー何ですな、あたくしのべき論なんぞここで申し上げてもハナクソにも満たないのですけれども折角だがら申し上げますと、現在の日銀の場合FRBのエバンス先生やローゼングレン先生などのように鉄砲玉として緩和主張する人がいる訳では無しとゆー状態でございますので、本来は麿様におかれましてはもうちょっと物の言い様というものを工夫して頂きまして、緩和政策をちゃんとやっているしこれからも継続するでおじゃるというのをアピールした方が良いと思うのですよね。

だって日銀の場合はETF買ったり社債買ったりと、ETFは兎も角として社債とか債券市場の投資家的には民業圧迫にも程がある力技をかましてクレジットスプレッドを盛大に潰すというような他の中銀もやらない豪快なプレーをしている部分もある訳でござーまして、せっかく包括緩和の中で色々とやっている側から麿が第二の柱がどうのこうのとか金融の不均衡がどうのこうのとか、いやまあそれはそれで正論は正論だけど、そんな事言いだしたら金融緩和のアピールにならないだろというような台無し発言をしてどんだけ勿体ない事になっているのか、とまあ市場的見方として思う訳で、結局の所そうやって発言が台無しでやってることはそこそこ踏み込んだ(まあ国債買入が足りないとか言う説もありますが、まあ結果としての債券市場金利は碌でも無い事になっていますわな)というセットですと、何の事は無い「コストばっかり掛けて何やってるの」状態になってしまうと思うのですよ。

つーことでべき論その1としては麿様におかれましてはそのご主張はご主張で結構でございますし、中央銀行総裁という政策に携わる人間として発言したいというのもあるとは存じますし、まあそのお気持ちも理解できないでは無いのですけれども、そーゆー発言は任期切れまでは封印して頂きたいと思うのでありますが、まあ無理でしょうなあと思いまする。

でまあ後は包括緩和の枠組み的な雑談になりますが、先般来粘着質のように申し上げておりますように、そもそも65兆円がどうのこうののうち、固定金利オペの残高維持が困難になってきているという素敵な現象で、資金需給状況によっては買入系のオペでも短い所を中心に残高大丈夫かねというケースもホイホイ出てくるという状況下ですので、まあここの部分、特に固定金利オペをどうするのかを考えた方が良いかと思います。

それから、昨今の総裁会見などで主張していた「金利が重要」というロジックを援用致しますと、当然ながら現在の包括緩和の枠組みにおいて重要になるのは「リスク性資産におけるリスクプレミアムの軽減」という話になりまして、その理屈からしたらまあ色々と指標を持ち出すと割安水準にあるということになっている株価指数についてのお助けという文脈でETFの買入をもうちょっと派手に拡大して頂きまして、将来日銀様の心配される「金融市場の不均衡拡大」の際には強力な火消しツールとして使える道具を今からコレクションしておくろいうのは如何かなと存じますです、はい。

なお念の為付言しますと「リスクプレミアムの軽減」というのは「味噌でも糞でもリスクプレミアムを圧縮します」という事では無く、「市場の価格発見機能が何らかの状況で阻害されている状況を是正する」という話でして、それこそクレクレが嵩じて「BBBのアレな銘柄も買え」みたいな話をするのは筋違いなので、まあ今の株式市場の価格形成が別に問題ないとかいう話になってしまうと上記の屁理屈も中々苦しくなるのですけどね(大汗)。


○まあさすがに今回は通るでしょうけれども

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5JCEA6K50XS01.html
日銀人事:自民・影の財務相は前向き検討、緩和派の一部には慎重論

はあそうですかという感じですが、これはアホかと思ったわ。

『自民党の西村氏は「経済界、経済の実態が分かる人というのもこれまで入っていたので、そのあたりどういう考えかをただしてみたい」とも述べ、政府側に説明を求めたい考えも示している。』(上記URLより)

・・・・・・・お前らが日銀人事を与野党対決のツールにして言いがかりにも程がある理由(河野さんは別に金融緩和に否定的じゃねえだろと)でこの前の人事を反対して候補者晒し者にしておいて経済界の人間がノミネート受けるとか思っているのが意味が分からないのですけれども。前回の総裁人事で民主党の動きも散々批判された訳ですが、自民党の場合その劣化バージョンで反対してる訳で、「経済界、経済の実態が分かる人」がノミネート受けないのは政府がどうのこうのの前にお前のせいだお前のと存じますが、自民党の劣化極まれりという事で甚だ遺憾の極みに存じます。

つーかさ、まあさすがに西村さんは前向き検討みたいですけれども、この人選で反対とか言い出したら、選ばれるのはネタ芸人アナリストで金融政策実務の理解が全然ない空論言い出す人とか、嘘成分の高い説明を繰り広げる人とか、未だにマネーガーしか言えない人とか、まあそんなネタ芸人しか残らないと思うのですが、どうも自民党の財金の暴走振りが止まらないのは如何なものかとしか申し上げようがございませんです事よ。


○コチャラコタ総裁ネタが途中だったので続きを

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4886
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_monetary_policy_060712.pdf
Monetary Policy Transparency: Changes and Challenges

途中の論理展開もほほうと思うのですが、その辺は華麗にスルーして最後の部分になります『Policy implications』から少々。

『Over the past ten minutes or so, I have talked about the recent adverse changes in U.S. labor market performance. I have discussed two sharply different possible ways to view those changes: first, that they are largely reversible under appropriate monetary policy and, second, that they are likely to be highly persistent. These two possibilities suggest that the FOMC is confronted with an unusually high degree of uncertainty about the level of “maximum employment” it can achieve.』

ということで、労働市場の問題(失業率の高止まり)に関して、循環的な要因が大きいのか構造的な要因が大きいのかという話をここまでしていまして、まあ結論は構造的な要因という話になっているのですがそこの部分は今日はめんどいのでスルーの方向で(汗)。

『This uncertainty translates directly into a corresponding uncertainty about the appropriate approach to policy. In particular, policymakers who see the deterioration in labor market performance as reversible using monetary policy will typically favor more accommodative policy than those who view the deterioration as more protracted.』

んでもって循環要因によるものという見立ての人は、労働市場の悪化に対してプロアクティブに対応して金融緩和を拡大すべきという主張をしますよね、とまあそういう話。

『Fortunately, we can use other sources of information to reduce the level of uncertainty about the maximum level of employment achievable through monetary policy.』

我々は「金融政策によって到達できる”最大雇用”のレベル」の不確実性を軽減できる他の情報ソースがあります(キリッ)。

『“Maximum employment” for monetary policy is widely interpreted as the level of employment that is sustainable through monetary policy actions without an acceleration in inflation.』

ほほーという所ではございますが、つまり「金融政策行動がインフレを加速させることが無い状況下におけるサステイナブルな状況が「金融政策によって到達する事のできる最大雇用レベル」という話でありまして・・・・・・

『 While we cannot directly observe “maximum employment,” we do observe inflation, and its behavior is a useful signal of how close we are to the maximum level of employment achievable by the FOMC.』

どう見てもインフレ重視派です本当にありがとうございました。

『So, what has been happening with inflation? Inflation was distinctly higher in 2011 than in 2010. Even core measures of inflation, which strip out energy goods and services, and food, went up notably.』

と、インフレが昨年上昇して今年は下がったけどそんなにサガランチ会長であると仰せ。

『I see these changes as a signal that our country’s current labor market performance is closer to “maximum employment,” given the tools available to the FOMC, than the post-World War II U.S. data alone would suggest.』

キタコレという所ですが、つまりは過去のデータから推計されているNAIRUの水準が実は上昇しているので、見た所失業率が高止まりしていても物価がサガランチ会長になっているのでございますという話で、現在の米国の労働市場のパフォーマンスは金融政策で到達すべき「最大雇用」の水準に近いとか中々強烈な説明。

んじゃあそんなにNAIRUの水準がドカンと変わるものなのかという論点なのですが、これは今日は長くなるのでスルーしますが、上記の講演の中盤に『The Swedish experience』というのがありまして90年代初頭の通貨危機だの金融システム不安を通過したスウェーデンの失業率が危機前の水準から大きく上昇し、水準そのものが変化している(けど同国の経済は最近まで良いパフォーマンスを示していた)というような話をしているのでそれを読んでくらはい(手抜き)。

『As I’ve argued in the past, appropriate monetary policy should be responsive to such signals.』

ということですので、どう見ても金融緩和のお代わりは不要という結論。

『It is worth reiterating a point that I made earlier. “Maximum employment” for monetary policy is not the same as “maximum employment” for all policymakers.』

でまあ今が最大雇用とかいうその敗戦思想は人民裁判で吊るされるレベルとか言われるのを防ぐために説明しているのですが、この最大雇用というのは経済政策的な意味での最大雇用というのとは別問題でありますという話でして・・・・・・

『Congress and the president can choose to provide direct subsidies to employers for hiring. Such subsidies will increase the federal deficit, but they do have the power to increase “maximum employment” for the FOMC.』

NAIRUの水準を引き下げるのは政府の仕事であって中央銀行の仕事では無く、政府はNAIRUの水準を引き下げるような政策をおこなってくらはい、とまあそういう話をしております罠。


・・・・・・・・つーことはつまりですな、最近はタカ派分類になっているコチャラコタ総裁なのですけれども、おそらくは物価が落ちだすと今度は思いっきり追加緩和の必要性を唱えるのはほぼ間違いないとみられる、と斯様になりますので、本来はタカだのハトだの言うのではなく「物価重視派」というのが正しい表現になると思います。まあその場その場でのタカハト分類は便利なので分類はするんですけれども、そのタカだのハトだののレッテルが「緩和派」みたいな風になってくると金融政策議論として話がおかしくなってくるのでご注意ありたいと思うのですけれども、どう見てもさっき出した記事に出てくる政治家の皆様におかれましては(以下自粛)。




2012/06/13

お題「金融政策プレビュー雑談/色々と悪態/オペ雑談」

お題の順序と違いまして悪態雑談からスタートである(^^)。

○経済クオリティーペーパーがこれというのはねえ

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC1100W_R10C12A6EE8000/
日銀審議委員、緩和積極派に白羽の矢 政府人事案
2012/6/11 22:50 情報元 日本経済新聞 電子版

・・・・・・・・もうこの「積極緩和派」という表現が既に党派的な決めつけにも程があると思うのでして、まず経済物価の先行き見通しに対する見立てがあって、金融政策のフレームワークとしてどういう考えなのかというのがあった結果として現在の状況下で金融政策をどうするかって話になると思うのですが、いきなりこんなレッテル張ってまた緩和煽り報道とか何考えてるんだと。

いやね、確かにタカとかハトとかいう分類はありますけれども、FEDウォッチの真似事を公表文書(というか各地区連銀の講演など)を読みながらやってて思うのですけれども、そのタカだのハトだのという立ち位置だって状況に応じて変化しうるのですよね。

毎度ネタにしているセントルイス連銀のブラード総裁が一番わかりやすいですけれども、QE2実施の時には「長期国債の大幅な買入増額がデフレ均衡入りのリスクを引き下げる」という話を真っ先にしていたのでハト派分類でしたけれども、足元では「経済のギャップが大きいという議論において、そもそも平常時として見ているリセッション前という考えはおかしい。何故ならリセッション前の水準というのは信用バブルで嵩上げされた分があるから」というような話をしていて、失業率を下げる為にこれ以上の緩和のおかわりをするのに反対している訳でタカ派分類になりますがな。

ではブラード総裁が急にドテンしたのかというとそうでは無くて(まあ議論のフロントランナーに立ちたがるという傾向は有りそうですけど)、主張そのものは色々と出ていますが話の筋は基本的に通っている(元々「長期国債の買入には賛成だが、低金利の長期化政策には反対」という主張とQE2実施前からしていた)のでありまして、物価重視の姿勢と、経済のギャップに対する認識の結果として今のような流れになっているとゆーことですな。

QE2前後でハト風からタカ風に変わったのってミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁もそうかなと思うのですが、(この前ネタにしかかっている奴ですけど)コチャラコタ総裁の場合は現在の失業率について自然失業率が実は結構高くなっているのではないかという考察(もし現在の雇用情勢がNAIRUより大きくギャップがあるのなら物価はもっと下がっていないといけないのではないかという説明をされるとそれはそれでほほーと思ってしまう^^)をしていて、失業率を下げるのは自然失業率を引き下げるための財政経済政策で行うべきで、これ以上の緩和拡大は物価の上昇を招くと言って追加に反対姿勢。

ついでに申し上げればFEDのハト派と言ったって、ボストン連銀のローゼングレン総裁のようにそもそも景気物価の見通しがFOMCメンバーの中心的な見方よりも弱いという直球ストレートの人もいますし、シカゴ連銀のエバンス総裁の場合はある意味デュアルマンデート忠実ということで、失業率の高止まりに関してもディスインフレ懸念時と同様に対策をすべきであって、その時は一時的に物価の上振れをすることを容認しても良いというような人もいます罠。イエレン副議長の場合はハトだけども物価の上振れ容認というのは良くないと以前は説明していました(最近はその話はスルーしているが、バーナンキ議長の先日の記者会見を見ると「失業を1%下げる為に物価を引き上げてインフレ期待を不安定にさせるのは害にしかならない」というような話をクルーグマン批判の文脈による質問の時に話をしていましたので、まあ執行部は物価上振れ容認は却下でしょうな)し、同じハト派分類でも依って立つロジックが少しずつ違うのですよね。

#昨夜の米国はエバンスが追加緩和主張したから緩和期待高まるとか報道されているのですが、エバンスが追加緩和主張するのは当たり前で、それを好感するとか意味がわかんねえのだが、要するにクレクレ相場なんだというのは把握した

#そういう観点からすると日銀の場合は各政策委員が地方回りして行う金融経済懇談会の説明が基本的に決定事項に対する説明になっているので、どのようなロジックで考えているのかというのが見えてこないので困るちゃあ困る訳ですな

などとドヤ顔風味でお送りいたしましたが(自爆)、まーよーするにタカだのハトだのというのはその時々の経済物価情勢と、経済物価における構造的な部分の見方、そして金融政策運営におけるロジックなどがまずあって、その結果として足元の金融政策運営的にどうよという結果が出るのであって、いきなりタカだのハトというのを超えて「緩和派」とかレッテルを張って言うのはナンセンスとは言わないがミスリード(大体からしてご本人方もいい迷惑でしょ)だし、「経済クオリティペーパー」を自称するのであれば、「日銀の見方よりも景気に慎重な人たちがノミネートされた」という文脈で説明すべきであって、政治部記者が風雲永田町みたいな調子で書くような記事見出しで読者を釣るというのは如何なものかと思うのでございますがどうでしょうかねえ。


しかしまあ何ですな、それよりもずっこけたのは同じく日経様のお出しになられている所の日経ヴェリタス様の今週号の1面見出しでありまして、曰く「金利消滅という戦慄 中央銀行の国債丸抱えが生む歪み」っておまいらこれまで散々金融緩和煽り報道をやっておいて何を言ってるんだそういうのマッチポンプって言うんだとか思わざるを得ない題名でして(いやまあ詳しい記事読んでないというか題名見た瞬間に読む気を失うのですが)、まあ中身ちゃんと読んでないから、そんな煽り見出しを書いて人間として恥ずかしく無いのかとかは申しませんけれども、日本経済新聞社様におかれましてはそこらのイエローペーパーや電波浴向け新聞じゃないんだから、もうちょっと落ち着いた論調で冷静な紙面を展開して頂きますと有り難い、とまあ斯様に思うのでございますが、まさか本紙のデザインが電波浴新聞に似たリニューアルをしたのは御社の電波宣言だったとかそういう事では無いですよね。

いやまあちゃんと冷静な紙面を展開して煽りでは無い冷静な経済報道をして頂ける可能性があるのは経済クオリティペーパーであられる所の日本経済新聞社様だけだと期待しているので悪態も出るというものでございます(あたしゃ購読して無いけど^^)。



○今日もオペ雑談

毎日オペの結果で雑談とかどこまで粘着なのかというツッコミは謹んで却下。

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120612.htm

社債等買入(資産買入等基金) 2,000 2012年6月18日
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 2,000 2012年6月14日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年6月14日 2012年6月21日 0.660
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月14日 2012年9月13日


結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120612.htm

社債等買入(資産買入等基金) 5,794 1,987 0.100 0.125 13.9
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 3,312 2,004 0.000 0.000 60.5
米ドル資金供給(固定金利方式)(6月14日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月14日スタート分) 10,294 8,007 77.8

(※オファーバックの順に記載されるので表示順序をオファーと同じに改変しています)

午前の基金短国買入ですけれども、今回は2000億円にオファーを減額(前回の実施は5月15日のオファーで3000億円)しているのがほほうという感じ。いやまあ市場状況をヒアリングした結果3000億円だと札割れしそうだから減らしてみましたという話だと思いますけど、その努力が功を奏して札割れは回避されまして良かったですね(棒読み)という所でありまする。

まあ金融政策決定会合を前にまた札割れになるとどこぞの経済クオリティーペーパー様を始めとしてメディアが鬼の首を取ったように報道して(お前が言うなと言われそうですが^^)ちょっとまあ都合悪い罠とかゆーのもあるでしょうから札割れ回避の為にオファーを減らしたって話だと思うのですけれども、まあこーゆー苦労をする位ならば昨日も雑談風味で申し上げたように、この際札割れ上等のスタンスでただしもう市場が食えないと言ってもオペを突っ込むわんこそばスキームで「ほら積極的に資金供給や資産買入してるでしょ」とやるというのもどうなのかなという気は若干せんでもないっすな。ただまあそれは包括緩和における基金オペのフレームワークというか説明をマイナーチェンジしないといけないので今オペ部隊が勝手にそうする訳にもいかないでしょうけれども。

んでもって午後の3か月オペは無事に札が入って良かったですね(棒読み)という所ですが、まあこの前打った共通担保本店オペの金利入札物の1兆円の落ちもありましたので、そらまあロールの札入りますなという所ですかそうですか。今月は後半以降年金定時払いと国債償還要因で物凄い勢いで資金余剰になる筈ですので、今後のオペの札の入り具合としてはどうなのかねという気はします。


でですな、以下あたくしの与太話(その前も与太話ではないかという論考は行わないのがお約束)となりますけれども、そもそもこの前の折角工夫してオファーした年末越え6か月固定オペの残念な結果を見れば判りますように、長いオペにニーズが無いのでありますからして、この際3か月オペも期間短くしまして1か月物にして6か月物オペも無しにして、札割れ上等で資金需給とか丸無視して毎営業日2兆円オファーし続けると、全部入れば残高40兆円になるし、入らなくて残高行かなくても「いや我々は40兆円まで出しますと言ってるんですが市場が〜」と開き直れるとか最早与太レベルになっておりますが、その位の事をやったらお互い面倒じゃないような気がするんですが(毎日入るとなると市場も楽だし1か月物なら担保繰り的にも窮屈さが少なくなる)この際ヤケクソで如何でしょうか(^^)。

というような与太話が出る位に固定金利オペとかを始め、包括緩和の枠組みがオペレーション技術的に少々窮屈になっているという状況でもございます。でまあその包括緩和における基金残高達成の為により長い期間の国債買うとか、よりしょうもない技とかもあるとは思いますけれども、それで残高を無理矢理達成させることによって何の効果があって、その一方でそれって誰得なのでしょうかねえという観点もある訳でして、まあ何と申しますか・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5HJ8W6JTSE801.html
IMF:円は中期的観点から幾分過大評価−声明

『日本銀行の金融政策に関しては、日銀による最近の金融緩和が景気回復を支えデフレ脱却に寄与するとし、日銀が掲げる物価目標達成へ向け、資産買い入れ拡大含めた一段の緩和を実施し得ると述べた。』(上記URLより)

昨日はこんなのがありましたが、いやその資産買入拡大を含めた一段の緩和を技術的にどう捌いて行くのかというような話はIMF様的にはどうなのとか思うのでありまして、政策論は政策論で結構なのですが、実務的観点が欠如した政策論をなんぼ打ち込まれましてもノイズにしかならん訳でして何だかねえとか思うのでありました。


○FOMCプレビューというか当たらない予想

ということでそろそろ当たらない見立てをしておくのだ(^^)。

えーっとですな、まあ正直そんな自信満々のドヤ顔で決め打ちできるような感じでも無いのですが、地区連銀総裁の中でも追加緩和策に反対するお方もそれなりにいる中ですし、バーナンキのこの前の議会証言でもあまり前のめりな話をしない、まあ前のめりな話をすると市場のクレクレに拍車を掛けてLSAP拡大をしないと市場が許さん状態になるのを避けるというのもあったでしょうが、話の内容的に「モーゲージ金利は既に歴史的水準に低下している」とか「足元の雇用指標の悪化は構造的なものか一時的なものかはまだ見て行かないと判断しずらい」とかいうように、追加のLSAPお変わりでバランスシート拡大というような派手派手政策をするような論拠を潰すような説明をしていたとゆーのを文字通りに解釈すると、やはり今回は追加緩和のようなものはやるのでしょうが、バランスシート拡大方向のLSAP単純拡大は無いと見ましたが自信は全くありません^^;

つーことでまあ不胎化QEだかツイストオペ延長だか知りませんが、その手の「バランスシート拡大は伴わないけれども長期資産の買入拡大継続」というのを実施するというのが本命で、ただしそれだとちと弱いので、声明文におけるフォワードガイダンスにおいて「異例の低金利が〜」というのに加えて「現在のバランスシート規模が〜」というようなのを加え、ガイダンス文言の中に金利だけでは無くバランスシートの量に関する記述を加えるという風な事をあたしゃ考えております。まあ全然自信ないですけど(しつこい)。

んでもって会見では逆さ絵のおじさんが引き続き「欧州債務問題に伴う金融混乱などが起きた際に必要ならば行動する用意はある(キリッ)」とおでこを光らせて発言すれば無問題というか市場のクレクレ的にはその程度で大丈夫のような気がするんですけど、そもそも米国市場のクレクレってどの位クレクレなんでしょうかね。よーわからん。


でまあついでに日銀ですけれども、まあ今回は何もなしでしょう。国会議決後になりますけれども、21日に承認の段取りとなりますと、木内さんと佐藤さんの現在所属する組織の段取りにもよりますけれども、7月の決定会合は展望レポートの中間レビューも伴いますので、7月会合から間に合うでしょうとゆー事も考えますと、まあ今回何か決定しちゃうのもねえという丁度良い大義名分が立つというものでございます(^^)。

つーかですな、まあこれはあたくしの勝手読みベースですけれども、FOMCが大規模LSAP拡大を行うのでなければ、まあそうそう為替がドル安に振れる事も無いでしょうとは思います(ただし最近は緩和期待→リスクオン→米債売り→ドル円でドル高みたいなオモシロな流れになっているので、緩和が足りないと逆に米債買いになって米金利低下でドル売りとかに成りかねないのがヤヤコシヤではある)ので、それなら日銀もとりあえず今月は様子見して(そもそも包括緩和の枠組みを何とかしないと実務的観点から打つ玉が少なくなっているので玉の無駄打ちはしたくないでしょうし)次回の会合をお楽しみに!という事になるんでしょうな、とまあ勝手に妄想するのでありました。

なお、以上の予想はあたくしのただの妄想でありまして、自信があるかと言われますと知らんがなとお答えせざるを得ませんので念のため申し添えますm(__)m


とまあそんなこんなで最初から最後まで雑談でどうもすいませんでした。



2012/06/12

お題「審議委員人事ノミネート/今日もオペ雑談その他」

ということで世に雑談のネタは尽きまじという事です(^^)。

○これはまあ良さげな人事ということで感想と雑談

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5GB5H0YHQ0X01.html
政府:日銀委員にエコノミスト2氏を提示−21日ごろに採決見込み

『6月12日(ブルームバーグ):政府は議院運営委員会両院合同代表者会議で、空席となっている日本銀行の審議委員に野村証券の木内登英チーフエコノミスト(48)とモルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト(50)を起用する国会同意人事を提示した。衆参両院の議院運営委員会での配布資料で11日明らかになった。』(上記URLより)

昨日の夕方に「17:20に提示される」というニュースが出てワクワクテカテカしつつもどこの芸人何とかストが出てくるのやらと微妙にげんなりして待っておりましたが、ブルームバーグ見てたらヘッドラインに佐藤健裕さんと木内登英さんの名前が出てきて「ほほう」と思うと共にちゃんとした人がノミネートされて個人的に少々びびっていた一部の「マネーガー」みたいな変なのが出てこなくて誠に結構と思いましたです、はい。

債券市場的には木内さんはあまり馴染みは深くない(野村で債券系と言えばまず最初に出てくるのが松沢さんのイメージが)のですが、基本的にはマクロエコノミストだったと記憶しておりまして、あまり金融政策に関して積極的にああだこうだという話をするという印象も無いのですが、まー普通にちゃんとした話を展開する人で、変な何とか派みたいな感じの人では無かったかと。

で、あたくし的に今回ヒットと思ったのは佐藤さんのノミネートでして、佐藤さんって債券市場的にはまあ知られていると思うのですが、ご本人そんなにメディアとかに出たがるお方ではない筈で、この前ノミネートされた河野さんや、今回の木内さんと比べると失礼ながら世間一般的な知名度としては低いと思うのですが、佐藤さんもマーケット云々というよりはエコノミスト系の方でして、経済の見立てという点では物価動向に関して早い時期から10%刈込平均の重要性を指摘していたりとか(だいぶ昔に思いっきり佐藤さんのお名前出してネタにさせて頂いた事があるもんで)、安定感があってレポートもよく拝読してたりするもんで、これはほほうという感じでございます。

木内さんの金融政策に関する見解って不覚にもあまり詳しく存じ上げないので何ですが、佐藤さんについては基本的にかねてより緩和バイアスの主張となっていまして、まあそのように報道されていますが、そもそもそれは党派的な緩和云々というのと話が違うとあたくし理解しておりまして、佐藤さんは経済見通し、特に物価見通しに関して厳しい見立てをしていて、その結果として金融政策見通しが「追加緩和」という予想になるという事であって、別に緩和が先にありきという話ではないと思うのですが、どうも報道を見ると「緩和派」的な言い方されているのも何だかなあという気もせんでもないがまあいっか。


木内さんの方は不覚にもあまり詳しくないですけれども、まあお二方とも基本的には経済の見立てに関してフラットな方だというイメージがありまして、それはすなわち巷の何とかストでも良くあるパターンのであります所の「変なポジション的なバイアスを掛けて結論先にありきで材料を拾ってくる」というような傾向(そらまあ人間だからある程度主張にバイアスが掛かるのは仕方ないのですが程度問題という意味で)はあまり無いお方であるという風なイメージですけどどうでしょうかね。

まあお二方ともマーケット系とは言いましてもエコノミスト系でして、マーケットの視点でという意味ではマーケット系なのですが、足元で非伝統的な政策を推進する中で実は重要でもある調節実務の細かい話に関してはそれほどお詳しくもない(つーか調節実務の細かい話をマニアに詰めているとそれだけで労力が掛かるがな^^)と存じますので、そーゆー点から日銀事務方ペースに巻き込まれないようにご留意頂きたいと存じます、はい。


しかし昨日ニュースヘッドライン見ててずっこけたのはこのお方の発言。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5G49L6KLVR401.html
自民・鶴保氏:金融緩和に消極的な人には否定的−日銀審議委員人事

ベンダーのニュースヘッドラインで最初にこんな感じで出てきたのですがね。
17:56JBN:*鶴保氏:日銀審議委員候補者については個人的には付き合いない

まあ上記記事を見ると自分からこの発言しているのが微妙なので良く判らんのですけれども、まず人事案が出てきて最初に出た発言が「個人的に知っているか」というのは政治に携わる人間として如何なものかと思うのでありまして、自民党は政権に復帰したら知っているか知らないかが先にありきの人事をしますと宣言している、あるいはそういう意識が常にあるから上記のような発言が出るんじゃネーノとか禿しく懸念して「また自民党の劣化か」という悪印象を与えるのに中々効果があったと思うのはあたくしの性格がおかしいからですかそうですかorz

いやまあ「ご存知ですか」と普通に質問されて普通に素で答えただけだと思うと言うか思いたいのですが、それにしてはベンダーのヘッドラインで最初に出たのがこれって何かヘッドラインの打ち方がアレなのか鶴保さんが素でまず最初に「知ってるかどうか」という話をする人なのかは元記事見ても判らんので判断は保留しますけどね。

とまあそんなどうでも良い悪態は兎も角として『その上で、金融緩和に消極的な人物を評価するかとの質問に対しては、否定的見解を示した。』(上記URLより)って相変わらず何を言ってるんだこの人はという感じでして、そもそも河野さんだって今の時点で金融政策の正常化しろとか主張している訳では無いですし、大体からして金融政策を今後どうするのかという件については、経済物価情勢とその先行きの見立てに依存するのであって、中央銀行が無限にジャンジャンマネタイズして政府のお財布になってジンバブエだヒャッハーとか無茶苦茶言うのなら兎も角、普通に何の条件も無く未来永劫緩和しろとか言う話は無いでしょと思うのでございまして、緩和派じゃないとダメ的な言い方って相変わらず何なんでしょうねと思うのでございますがどうなんでしょ。

まあ何時からか、と言われると良く判らん(何となく橋下旋風以降かなという気はしますが)のですが、自民党の主張が妙にエキセントリックに暴走気味になっていて、おまいら政権に復帰する気はないのかよという劣化具合が目立ちまして、あたくし的には甚だ遺憾というか、先般の審議委員騒動に日銀法改正の話ですっかり呆れ果てている次第ではございます。


しかしまあ何ですな、水野さんが退任した後マーケット系の方が審議委員に居なかったのですが、今度はいきなり2名就任(ただし国会承認されればの話ですが)というのも何ですなあと思うのでありまして、元々今回の空席って財界のお方(中村審議委員と亀崎審議委員)の後任だった筈で、前回ノミネートされた1名は伊藤忠商事の方だった訳でして、まあ前回の審議委員騒動で「こんな与野党対立の政治的なおもちゃにされた挙句にあの(=もともと財界で名を成している方から見たら罰ゲームみたいな)待遇でやってられますかとゆー事で誰も受けてくれなかったとゆーのが背景にあるんでしょうなあとしか思えない訳でして、そっちの観点からしますと、まー財界人誰も受けないだろうなあというのは予想されていましたが、それにしてもさびしい話ではあるなあと思うのでした。

なんつーかね、財界人のような金融政策の非専門家が審議委員になるのはどうのこのという主張もそらまあ話としては分かるのですが、あたくしが最近思うのは、たとえば麿に対して普通に対等に物言いできるという意味では日本を代表するような大企業で副社長だの上級役員だのの経験がある方というのは執行部の止め役として重要だと思いますし、例えばFOMCでは各地区連銀が地域差を反映した感じで経済見通しなどの違いを金融政策の主張に反映させる(シカゴは万年ハト派でダラスは万年タカ派みたいな傾向とか)ような機能がありますが、日銀の場合はそれをある意味実業界出身の方が担っているんじゃネーノとも思うのでございまして、東京で金融市場や経済データを見ている人たち(まあミーも含めましてですな)とはまた違った視点で意見の多様性を担保する、という意味で実業界出身の方が審議委員になるというのも重要ではないかと思うのでございまして、今回はちょっと無理でしたが、やはり将来的には実業界出身の審議委員も居た方が良い(今は東電出身の森本さんだけね)と思うのですけどどーっすかね。


さらに今回思いましたが、まあ現在は国会が消費税関連法案に向けて与野党で話をまとめましょうモードだからそんなに問題にならないと思うのですが、前回は国会が対決モードだったからとか、河野さんは運が悪かったですねえとしか申し上げようが無いですな、ナムナム。


#と、しょうも無い雑談を思いつくままに書いたら長くなってしまいましたorz


○固定金利オペ札割れ祭りは続く

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120611.htm

国債買入(残存期間1年超10年以下) 2,500 2012年6月13日
国債買入(残存期間10年超30年以下) 1,000 2012年6月13日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月13日 2013年1月10日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120611.htm

国債買入(残存期間1年超10年以下) 8,333 2,508 0.015 0.017 58.0
国債買入(残存期間10年超30年以下) 5,167 1,005 0.017 0.018 39.0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月13日スタート分) 1,740 1,740

債券市場的には輪番がどっちもちょっと甘かったような気がする方がアレですが、にちぎんかんさつにっきの著者であります所のヲチャードラめもんから致しますと6か月オペの方が色々とアレなインプリケーションの山でありまする。

まずですな、最初にオファーされて「????」だったのはこのオペの期間でありまして、いやまあ短期市場の市場慣行的に「6か月物」というのは期間が「6か月応当日以上7か月応当日未満」のものを差すので、6/13〜1/10も6か月物ちゃあ6か月物(普通は6か月ロングとか言うけど、ここまで長いと一般的かどうかしらんが7か月ショートと言った方が・・・・・)なのですが、普通に年末越えは7月スタートからオファーされると思ったのでかなーり意外感。

もしかしたらオペ打つ側として、ここもと6か月物のオペが絶賛札割れ状態で未達が連発して6か月の固定オペ残が12兆7000億円近傍まで落ちているので、年末越えにしたらもうちょっと札集まるとかトラタヌ皮算用をしたのかとも思うのですけれども、現状は期間の長いオペにそもそもニーズが無いのでありまして、年末越えガーとか言ってもそもそも年末だから流動性枯渇してとかいう懸念は足元である訳でも無く、それよりも年末越えの担保繰りを今からFixする方が保有債券在庫繰り上の観点からリスクあるだろという状況でもある訳ですから、そもそも期間を延ばして札が集まるとかあまり考えない方が良いと思われる次第で、誠に残念な結果でございましたなあ(棒読み)という感じ。

今回のオペの札割れですが、折り返し前の元のオペは普通に8000億円だったので、これでまた残高が落ちまして、あたくしの手計算ベースですと明日の時点で6か月のオペ残高は121,270億円まで落ちるという大変に素敵な状態になる予定であります。金融市場局(または企画局)涙目の展開。



○ということで65兆円の枠組みをどうするかという問題が引き続きテクニカルに絶賛発生中

つまりは市場のキャパ的というかオペレーション技術的というか、まあそういう意味で現在の包括緩和の枠組みで打つオペの限界が出ているという素敵な状態になっているのが昨今の動きではございまして、今週もMPMありますけれども、折角2名の審議委員が次回から(国会承認されればの話ですが)加わるという事もございますので、7月の展望レポート中間レビューに合わせましてこの辺りも議論して頂きたく存じますが、その際に技術論で執行部のペースに(以下同文)。

まあそれはそれとして、とりあえず固定金利オペの6か月というのがどう見てもイラネという状況下で、「オペ残高65兆円!」とかぶち上げております手前、中々この数字を引っ込めるのも難しく、しかしながらそもそも固定金利オペが札割れする(とか短い期間の買入オペもそうですが)のって包括緩和による金融緩和によって金利水準が下がった事と、買入の拡大も含めた潤沢な資金供給によって起きたテクニカルな自然現象でして、この自然現象を65兆円の為に是正しようとするとそれはそれで変な事になりますがなという話。

でですな、あたくしが最近その手の雑談しながら思うのは「この際札割れ未達に関してはシャーナイナイと割り切る代わりに、オペに関してはジャンジャンオファーしまくる事によって「麿は積極的に資金供給や買入を提供しているのですが市場が要らないと言っているので仕方がないでおじゃる。食い過ぎでおなかパンパンの人に無理矢理食わせる訳にもいかないでおじゃるよ。」とゆー感じで開き直れないかなとゆー事。

つまりですな、まあ65兆は目標として置きまして、買入などのペースに関しては現在の均等割ではなくて、もっと早期に残高を達成する勢いでオファーを行い、残高がそれで一杯になればなったで拡大余地が出来る訳ですし、札割れが続いて中々残高行かなくても「ほれこの通り、残高目標は年末どころかもっと早くに行くように物凄い勢いでオファーしているんですからシャーナイナイじゃないのよ」と市場のせいにする攻撃というのはできんもんかなと。

均等割りでやって行って札割れ未達とかになるよりは、いやもう物凄い勢いで実施してますよってやっておけば、まあその時点で印象が違うと思う(まあそういうの為替市場とか見てくれない可能性があるのでそれはそれで「買入ペースをもっと加速させます。固定金利オペのオファーももっと増やします」って宣言するとかしてアピるのは重要)ので、ど〜せ未達になるなら最初からもっとバシバシオペ打って置けばいいじゃんと逆転の発想で逝くのはどうっすかねえ。とか妄想してみました。



○白井審議委員講演ェ・・・・・・・・・

白井審議委員講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120611a1.pdf
欧州金融経済情勢とわが国の金融政策
── 第77回証券経済学会全国大会における講演要旨 ──

何と全36ページもありやがりまして、本文がうち18ページで、そのうちお題の「欧州金融経済情勢」の部分が14ページという事で、「白井先生の欧州問題解説」という風情の講演ではございます。

んでもって欧州金融情勢の説明に関してはさすが元IMFという事で白井先生の独擅場という感じですが、日本の金融政策に関しては基本的に日銀の執行部見解をそのままカーボンコピーしたようなお話なので、まあ前半に関してネタにするかもしれませんが、今日は時間が無いですし、今週は内外金融政策雑談でネタが潰れそうな悪寒がする(本当は今日はBOJとFEDのアクションに関して当たらない予想というか妄想をするつもりだったのですが時間が無い)ので、そのうちまあ暇な時にネタにするかもしれませんしこのままかも知れません。





2012/06/11

お題「FRB関連講演からメモメモ」

国会事故調キタコレですな。こら日本もお隣の国並みに「元首相タイーホ」来るかね。
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012060900266
「全員撤退」意図せずと認定=官邸の過剰介入批判−福島原発事故・国会事故調

先週末に「週末の宿題」と大口を叩いた手前地区連銀総裁の金融政策に対する講演をチェックして回ろうかとゆーことで全部を全部読むのはアレでしたが少々メモを(詳しくやっていると時間が無くなるので追々)。

○イエレン副議長講演@6月6日

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.pdf(図表付で1M以上ある)
Perspectives on Monetary Policy

まあこちらの講演に関しては既に話題になっていたように、追加緩和については普通にやる気ありという感じです。ただまあ次にネタにするボストン連銀のローゼングレン総裁の講演のように全力で追加緩和を支持という程でも無いとゆー感じでございます(一応「メリットとデメリットを検討」とか言ってる)。

でまあ最近の米国での金融政策論議の最大のポイントは「現在の労働市場の問題の主因は循環的な要因によるものか構造的な要因によるものか」という話でして、物価がとりあえず安定しているという話はまあハト派もタカ派も一致しているのですが、デュアルマンデートのもう一方である「最大雇用」に関しまして金融政策がどこまで対処すべきかという点への認識が重要となります。

んでもってイエレン姐さんの講演はPDFで本文19ページとかとんでもなく長く、まあ話は詳しいには詳しいので全部読むと論点のまとめには良いかもしれませんけど、詳しすぎて説明がくどい感じもします(今さらそこの説明は要らんがなというのが多め)。

んでまあ安直に読む順序としてお勧めなのは本文17ページの『Looking Ahead』から『Conclusion』までを読むのが吉です。あと、前半は経済に関する話で、当然ながら労働市場に関する話もあるのですが、労働市場に関しては「現在の悪い状況は循環的なものである」という認識になっております。また中盤は非伝統的金融政策の効果についての話が合って、フォワードガイダンスの効果の話をしている部分がかなーり我田引水成分が強いのが中々香ばしいのですが、その辺までああだこうだ引用するとオワランチ会長になるのでそれは気が向いたら(というか次回FOMCまでにネタが無いのであれば)後日ネタに。

『Looking Ahead』の部分を引用します。

『Recent labor market reports and financial developments serve as a reminder that the economy remains vulnerable to setbacks.』

足元の労働市場の統計や金融市場の状況は経済が傷つきやすい状況であることを再認識させます、とのっけから来る時点でまあ追加緩和措置に関してはやる気ありです罠。

『Indeed, the simulations I described above did not take into account this new information. In our policy deliberations at the upcoming FOMC meeting we will assess the effects of these developments on the economic forecast. If the Committee were to judge that the recovery is unlikely to proceed at a satisfactory pace (for example, that the forecast entails little or no improvement in the labor market over the next few years), or that the downside risks to the outlook had become sufficiently great, or that inflation appeared to be in danger of declining notably below its 2 percent objective, I am convinced that scope remains for the FOMC to provide further policy accommodation either through its forward guidance or through additional balance-sheet actions.』

ということで、新しい情報も加えて次回FOMCでは政策判断という事ですが、「経済の回復が、たとえば今後数年間に渡って殆ど改善が見込めないというような不十分なペースとなると想定される場合」、「先行きのダウンサイドリスクが大きく顕在化した場合」、「物価上昇率が2%を大きく下回って推移する可能性が高まった場合」には「追加緩和を実施」という話で、この場合フォワードガイダンスの文言を使うか、追加のバランスシート政策(必ずしも拡大だけでは無いのは要注意)を実施しますとな。

『In taking these decisions, however, we would need to balance two considerations. 』

ほう。

『On the one hand, our unconventional tools have some limitations and costs.』

プロコンを検討とな。、

『For example, the effects of forward guidance are likely to be weaker the longer the horizon of the guidance, implying that it may be difficult to provide much more stimulus through this channel.』

フォワードガイダンスの効果は、ガイダンスの期間を長くすると効果が弱くなるという話で、まあ中盤の方で何となく話はあるのですが、要はフォワードガイダンス文言がコミットメントじゃないからあまり長くすると景気見通しによってガイダンス文言がその通りと思われないリスクがあるって事ですかね。ここの論点は中々オモシロスではございます。

『As for our balance sheet operations, although we have now acquired some experience with this tool, there is still considerable uncertainty about its likely economic effects. Moreover, some have expressed concern that a substantial further expansion of the balance sheet could interfere with the Fed's ability to execute a smooth exit from its accommodative policies at the appropriate time. I disagree with this view: The FOMC has tested a variety of tools to ensure that we will be able to raise short-term interest rates when needed while gradually returning the portfolio to a more normal size and composition.』

バランスシート政策では、あまりに長期債を買い過ぎると出口政策が困難になるのではないかという意見はありますが、イエレンさん個人としては(というかFRBの執行部としては)まあ大丈夫という見解ではあるものの・・・・・

『But even if unjustified, such concerns could in theory reduce confidence in the Federal Reserve and so lead to an undesired increase in inflation expectations.』

我々の見立てが間違っていた場合にはFRBの信認が低下してインフレ期待を無駄に引き上げるリスクがある。とこのへんはメリットデメリットがどうのこうのという話をしておりますの。

『On the other hand, risk management considerations arising from today's unusual circumstances strengthen the case for additional accommodation beyond that called for by simple policy rules and optimal control under the modal outlook.』

この話題は本文の中盤の方にあるのですが、単純なテイラールールを適用すると金利をもうちょっと上げろという話になるのですが、それよりもバランスを考慮したアプローチをすべきというようなフォワードガイダンス文言を正当化する話になりますがその辺は割愛。

『In particular, as I have noted, there are a number of significant downside risks to the economic outlook, and hence it may well be appropriate to insure against adverse shocks that could push the economy into territory where a self-reinforcing downward spiral of economic weakness would be difficult to arrest.』

ということで、ダウンサイドリスクもあるので、経済の下方ショックに対して保険を掛けて置くのが適切でしょうとか思いっきり追加緩和策に関しては前のめりでございましたとさ。


○ボストン連銀ローゼングレン総裁は追加緩和を思いっきり支持@5月30日

http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/053012/index.htm
http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/053012/053012.pdf(図表付き)
“The Economic Outlook and Its Policy Implications”

講演の中盤にそのものずばりの『Labor Markets』というのがあるのですが、こちらでローゼングレン総裁は米国労働市場の問題については「循環的な要因が構造的な要因よりも大きい」という事で、色々と図表を出して説明していまして中々説得的な展開をしています。

んでもって経済見通しに関しては、欧州問題と米国の所謂FiscalCliff問題についての見通しを厳しく見ておりまして、その結果として『Recent Economic Data』のケツの部分でこんな話をしています。

『At the Fed, we are now producing and publicly disclosing the estimates of real GDP growth, unemployment, and PCE[4] inflation rates produced by the FOMC participants in a Summary of Economic Projections. The central tendency of the FOMC participants’ estimated forecasts, and my own current forecast, are provided in Figure 5.』

何かどさくさに紛れてしらっと「私の見通しはこうです」とか出しているのがお洒落なのですけれども、その図表5を見ると判るのですが・・・・・・・

『You can see that my own forecasts are a little more pessimistic than the central tendency of the participants at the April FOMC meeting. I am expecting growth of only 2.3 percent for the full year, I’m sorry to say; and unfortunately no improvement in the current U.S. unemployment rate of 8.1 percent. As you can see, I also expect both total PCE inflation and core PCE inflation to be below 2 percent for 2012. My forecast of relative weakness in the economy reflects concern that the uncertainty about both Europe and the U.S. federal “fiscal cliff” will restrain spending by households and businesses - but it also assumes that Europe and our own fiscal situation achieve a “muddling through.”』

ということで、見通しがそもそも弱いのがローゼングレン総裁の仕様になっていますので、結論としてはどう見ても追加緩和という話になります罠。

『I would, however, highlight the uncertainty and downside risks to my forecast. One downside risk is that European problems could become a much greater restraint on growth this year. Another downside risk is that Middle East problems could cause an oil supply shock that negatively affects economic growth. And another is that much greater fiscal austerity could result from a potential failure to reach budget agreements.』

その上ダウンサイドリスクに欧州とフィスカルクリフと原油価格の上昇リスクを挙げると。

『Given my expectations of only modest growth, no improvement in the unemployment rate, an inflation forecast below 2 percent, and significant downside risks to the forecast, I believe monetary policy should remain accommodative at this time and indeed that we should be looking for ways that monetary policy can foster more rapid growth, to bring down the unemployment rate more quickly. I believe further monetary policy accommodation is both appropriate and necessary.』

そらまあ追加緩和が必要となるって話です罠。

『The U.S., like many other countries, needs to facilitate a more rapid recovery, and monetary policy is one important tool with the potential still for encouraging faster growth.』


○クリーブランド連銀ピアナルト総裁は微妙@5月31日

http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2012/Pianalto_20120531.cfm
Monetary Policy, Economics and the Recovery

ピアナルト総裁のこの講演でも労働市場に関する考察があります。『Economic Impacts of the Recession: Structural or Cyclical』って所なのですが、これまた上記2名と同様に労働市場の問題は主に循環的要因によるものが強いという認識になっていまして、量的にこの講演が一番短くて説明がシンプルなので、とりあえず立論の背景を確認するという意味ではこちらの講演がお勧めであります。

一方で追加緩和に関してどうなのよという話になると、ピアナルト総裁の経済見通し&金融政策の見立てが『U.S. Monetary Policy: Responsive and Measured』という所で説明されているのですが・・・・・・

『Currently, I am projecting the economy to grow at a moderate rate, slightly above 2-1/2 percent this year and around 3 percent in 2013 and 2014. At this pace of growth, I expect that it could take as long as four to five years for the unemployment rate to fall to the 6 percent rate I judge to be consistent with maximum employment. I also project inflation to run very close to the Federal Reserve's longer-run objective of 2 percent as measured by the PCE price index through 2014.』

『My inflation outlook, although it is close to the 2 percent objective, is based on an economy that is working through a significant amount of cyclical weakness over the projection horizon. My outlook for both economic activity and inflation relies on monetary policy remaining accommodative. Therefore, I have voted in favor of the FOMC's policy statements and actions, including the statement that economic conditions "are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014."』

ということで、まあタカでは無くてガイダンス文言の2014年末までというのにも賛成であるとゆー話をしているのですが、見通し的に言うと向こう4−5年で失業は望ましい水準に改善し、インフレはその間安定というのですから、さっきのローゼングレン総裁よりも明らかに見通しが強く(前提に緩和的環境の継続というのはありますが)、これだと追加措置に関しては特段急がないという話になりますな。まあ執行部が主導したらそれには賛成しそうですけど。

『Nonetheless, my current assessment is that the real economy continues to show considerable cyclical weakness. This assessment, along with my outlook for moderate growth and subdued inflation, calls for today's highly accommodative monetary policy.』

というのが講演の最後の最後になるのですが、「現在の極めて緩和的な緩和が必要」とは言ってますが、追加の緩和が〜という話は無いですな、うんうん。


○ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁は真逆の見解@6月7日

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4886
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_monetary_policy_060712.pdf
Monetary Policy Transparency: Changes and Challenges

これまた前3名様の引用をしているうちに時間が無くなるという毎度おなじみの展開になっておりまして、細かくネタにするの後日なのですが、コチャラコタ総裁の説明はこの辺りの人たちとは真逆です。

どのように真逆かと言うと、労働市場の問題に関して「主に構造的である」という話をしておりまして、その例として『The Swedish experience』としてスウェーデンの例を挙げております。

同国では90年代前半に通貨危機と不良債権問題と金融システム不安が起きて、まあその後現在のように回復しているのですが、この間同国の労働市場はどうなったかと言うと、危機以前に4%を超える事がなく、概ね2%程度で推移していた失業率がピークで10%水準に上昇し、その後の経済回復でも6%をほぼ割ることが無く推移しています。

ってな話を例に出したりして、現在の米国の失業率水準は「中央銀行が達成できるという意味での完全雇用状態」であり、今の水準から完全雇用の状態の失業率を引き下げるのは金融政策ではなく、それ以外の政策によって行うべきである、という話をしていて、循環的要因に注目しすぎて失業率を引き下げようとして追加金融緩和を行うのはインフレが上昇するリスクを高めるので望ましくないという話をしています。

まあ大体ブラード総裁もそんな話をしていますが、コチャラコタ総裁の説明もこれはこれで説得的だったりしまして中々味わいがありますな、うんうん。

つーことで後日ぼちぼちこの4本をネタにするかもしれません。








2012/06/08

お題「バーナンキ議会証言から少々/市場雑談/週末読むものリスト」

昨日世間話をしてて気が付いたのですが(汗)、良く考えたらこの問題で主務大臣であるところの枝野さんは何やっているのでしょうか、つーかあまりにも空気になり過ぎていてその事すら忘れてたです(大汗)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120608/t10015688091000.html
“運転再開の必要性” 首相会見へ
6月8日 4時9分


○バーナンキ議会証言は追加緩和の示唆が特段無いとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M59IOO6S972A01.html
米国債:もみ合い、FRB議長はリスクに言及も具体策挙げず

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M598NU6S972A01.html
FRB議長:追加緩和は景気浮揚も、効果は弱い可能性も

ということでございまして、寝起きで何となく斜め読みをしたのですが
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120607a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120607a.pdf

てきとーに飛ばしながら多分この辺がポイントだと勝手に思う部分の引用とあたくし的超要約を。

・労働市場について(第3パラグラフ)

『Labor market conditions improved in the latter part of 2011 and earlier this year. The unemployment rate has fallen about 1 percentage point since last August; and payroll employment increased 225,000 per month, on average, during the first three months of this year, up from about 150,000 jobs added per month in 2011. In April and May, however, the reported pace of job gains slowed to an average of 75,000 per month, and the unemployment rate ticked up to 8.2 percent.』

と、ここまでが足元の失業率悪化まで含めた現状の話ですな。

『This apparent slowing in the labor market may have been exaggerated by issues related to seasonal adjustment and the unusually warm weather this past winter. But it may also be the case that the larger gains seen late last year and early this year were associated with some catch-up in hiring on the part of employers who had pared their workforces aggressively during and just after the recession. If so, the deceleration in employment in recent months may indicate that this catch-up has largely been completed, and, consequently, that more-rapid gains in economic activity will be required to achieve significant further improvement in labor market conditions.』

ということで、足元での失業率悪化とかNFPの伸び鈍化に関する評価があるのですが、「1Qの季節要因がうまく行っていないのと、暖冬の影響による伸びの剥落による一時的なものである」という可能性もあるし、その一方で「1Qまでの強めの雇用拡大の要因はリセッションによって企業が削減した雇用を取り戻すための需要で、その特需分が終了してしまった事を足元の雇用鈍化が示している」という可能性もあるという指摘をしておりまして、「仮に後者であれば、今後の雇用改善にはより強い経済成長が必要になる」という認識をしめしています。

・・・・・・・・・つまりですな、この説明だと「直近の雇用統計が低調だから追加緩和ですお」というロジックで追加緩和を突っ込むというのはちと無理がある(一時的な要因の可能性があると言ってるんだから)ように思えますけどどうでしょうかね。


・経済の現状について(第4パラグラフ)

『Economic growth appears poised to continue at a moderate pace over coming quarters, supported in part by accommodative monetary policy. In particular, increases in household spending have been relatively well sustained. Income growth has remained quite modest, but the recent declines in energy prices should provide some offsetting lift to real purchasing power. While the most recent readings have been mixed, consumer sentiment is nonetheless up noticeably from its levels late last year. And, despite economic difficulties in Europe, the demand for U.S. exports has held up well. The U.S. business sector is profitable and has become more competitive in international markets.』

住宅問題は相変わらずなのですが、その他の項目については割と明るめの話をしているなあという風に思うのですがどうでしょ。家計所得の伸びは依然として極めて緩慢だけど、足元のエネルギー価格の下落がその分を打ち消しているとかほほうという感じ。リスクとしては当たり前ですが欧州債務問題の影響なのですが、米国の企業セクターの収益力向上と国際競争力の向上にも触れていますな。


・経済の先行き阻害要因について(第5〜6パラグラフ)

『However, some of the factors that have restrained the recovery persist. Notably, households and businesses still appear quite cautious about the economy. For example, according to surveys, households continue to rate their income prospects as relatively poor and do not expect economic conditions to improve significantly. Similarly, concerns about developments in Europe, U.S. fiscal policy, and the strength and sustainability of the recovery have left some firms hesitant to expand capacity.』

家計や企業は経済の先行きに警戒的であること、欧州問題、米国の財政問題、回復の持続性やその期間に関する懸念も阻害要因と。

『The depressed housing market has also been an important drag on the recovery. Despite historically low mortgage rates and high levels of affordability, many prospective homebuyers cannot obtain mortgages, as lending standards have tightened and the creditworthiness of many potential borrowers has been impaired. At the same time, a large stock of vacant houses continues to limit incentives for the construction of new homes, and a substantial backlog of foreclosures will likely add further to the supply of vacant homes. However, a few encouraging signs in housing have appeared recently, including some pickup in sales and construction, improvements in homebuilder sentiment, and the apparent stabilization of home prices in some areas.』

住宅市場に関する話をしているのですが、あたくし的にほほうと思ったのはその住宅市場の現状について「Despite historically low mortgage rates and high levels of affordability, many prospective homebuyers cannot obtain mortgages, as lending standards have tightened and the creditworthiness of many potential borrowers has been impaired.」ということで、「モーゲージ金利が歴史的に低い水準にあり、高いレベルの入手しやすさがあるにも関わらず、多くの住宅購入予定者は、貸出基準の厳しさや、借入の為の信用力が傷ついている為に、モーゲージを取得することが出来ない」とか何とか仰せになっている部分でありまする。

つまりですな、このロジックで行くと「住宅市場のテコ入れの為に追加緩和をしますお」と言った場合に実際に何を中央銀行で出来るかという事を考えますと、まあ金融政策(非伝統も含めて)で対応できる話じゃないですよねという事になりますので、これまた追加金融緩和に関しての後押しロジックになっていない話ではないかと斯様思うのでございまする。


・銀行の健全性について(第7パラグラフ)

まあこの話になるとドヤ顔モードになるのだが、そもそも信用バブルを発生させた上にそれを証券化とか言って世界にばらまくだけばらまいてリーマン突然死させて金融市場を散々混乱させて、自分らの庭先だけさっさと掃除したと思ったら今度は俺様の国債はリスクフリー扱いだが他国の国債はリスク資産というような所に典型的に表れている俺様金融ルールにも程があるボルカールールを提唱とか勝手な事ばっかりしやがって雨公ふざけんなとか思うのですが、って全然関係ないですねすいませんすいません。

『Banking and financial conditions in the United States have improved significantly since the depths of the crisis. Notably, recent stress tests conducted by the Federal Reserve of the balance sheets of the 19 largest U.S. bank holding companies showed that those firms have added about $300 billion to their capital since 2009; the tests also showed that, even in an extremely adverse hypothetical economic scenario, most of those firms would remain able to provide credit to U.S. households and businesses. Lending terms and standards have generally become less restrictive in recent quarters, although some borrowers, such as small businesses and (as already noted) potential homebuyers with less-than-perfect credit, still report difficulties in obtaining loans.』

まあ要するに米国の金融システムは健全でちょっとやそっとの悪いシナリオが発生しても無問題(キリッ)ってな話です罠。


・そして欧州問題がどうのこうのと追加措置がどうのこうのという話(第8パラグラフ)

『Concerns about sovereign debt and the health of banks in a number of euro-area countries continue to create strains in global financial markets. The crisis in Europe has affected the U.S. economy by acting as a drag on our exports, weighing on business and consumer confidence, and pressuring U.S. financial markets and institutions.』

ということで欧州問題によるグローバル金融市場の問題がこれまた米国経済に輸出ルートやらコンフィデンスルートやら金融市場へのプレッシャーやらというようなルートで悪影響と。

『European policymakers have taken a number of actions to address the crisis, but more will likely be needed to stabilize euro-area banks, calm market fears about sovereign finances, achieve a workable fiscal framework for the euro area, and lay the foundations for long-term economic growth.』

欧州政策当局は今後もさらに状況の改善に向けた施策が必要ですよという普通の話ですな。

『U.S. banks have greatly improved their financial strength in recent years, as I noted earlier. Nevertheless, the situation in Europe poses significant risks to the U.S. financial system and economy and must be monitored closely.』

さっきのドヤ顔モードと繋がります(だから引用したのですが)けど、米国の金融機関はここ数年の間に体力を大きく改善してますが、欧州問題の進展によっては、米国の金融システムや米国経済に対して大きなリスクをもたらすものであり、その状況を注意深く見守る必要がありますって仰せですな。

『As always, the Federal Reserve remains prepared to take action as needed to protect the U.S. financial system and economy in the event that financial stresses escalate.』

ということで、追加措置がどうのこうのという部分になるのですが、「金融ストレスがよりエスカレートした場合に、FRBは米国の金融システムや経済を守るために行動する用意があります」って言い方になっているのですが、ここまでの流れも含めましてこの一文を読むと、どこからどう見ても次回FOMCでの追加金融緩和措置の示唆とかにはなっていませんわなあという所でしょう。


・金融政策について(第13パラグラフ)

『With unemployment still quite high and the outlook for inflation subdued, and in the presence of significant downside risks to the outlook posed by strains in global financial markets, the FOMC has continued to maintain a highly accommodative stance of monetary policy. The target range for the federal funds rate remains at 0 to 1/4 percent, and the Committee has indicated in its recent statements that it anticipates that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate at least through late 2014.』

この辺はガイダンス文言に関する説明。

『In addition, the Federal Reserve has been conducting a program, announced last September, to lengthen the average maturity of its securities holdings by purchasing $400 billion of longer-term Treasury securities and selling an equal amount of shorter-term Treasury securities. The Committee also continues to reinvest principal received from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities (MBS) in agency MBS and to roll over its maturing Treasury holdings at auction.』

ここはバランスシートポリシーに関する説明。

『These policies have supported the economic recovery by putting downward pressure on longer-term interest rates, including mortgage rates, and by making broader financial conditions more accommodative.』

これらの金融政策の効果についての説明ですが、長期金利およびモーゲージ金利を引き下げ、金融環境を幅広く緩和的にしているとの仰せ。

『The Committee reviews the size and composition of its securities holdings regularly and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. 』

声明文にあるのと同じですが、この部分はまあ便利な表現でタカにもハトにも使えるのですが、単純に声明文どおりという説明で話されますと、特段次回に何かする的な話になりませんなあという所です。


・その他

あと、議会証言だけに財政問題の話を色々としているのが目立ちます。インフレに関しては従来通りの説明で、長期的インフレ期待が抑制される中で、インフレは安定して推移するでしょうという話になっています。



○オペとか短国入札とかの雑談である

まずはオペ。

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120607.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 6,000 2012年6月11日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年6月11日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月11日 2012年9月11日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 448 2012年6月7日 2012年6月8日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120607.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 10,196 6,025 0.000 0.000 58.7
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 5,892 2,003 0.001 0.001 99.4
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月11日スタート分) 7,765 7,765
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 63 63 -0.900 -0.900


・基金国債買入の割り振りにまたまた変化

前回の基金国債買入は3500/3500という割り振りでしたが、今回は6000/2000の割り振りになりました。前々回は1-2年が札割れとなってしまったので割り振りを変えたら1-2年にそこそこ札も入りましたし、まあこの割り振りに関しては市場の需給動向とかをモニターして決めているんでしょうなあという感じでございますが、今回は再び1-2年のウェイトを上げたのはそういう背景でしょ。

まーよーするに「札が入りやすいように打つ」というのが主眼で、その割り振りをいじるのは単に市場の需給によって変化するという事になると思いますので、そういうことから致しまして特段この割り振り変更には政策的インプリケーションはありませんと解釈をするのが妥当かと存じます。

あと、オファー額が増えていますが、これは前々回の札割れによって未達になった為に残高目標達成の為にその分の穴埋めをしましょという事だと思われますので、これまた特段の政策インプリケーションは無いでしょという所ではないかと思われます。


・3か月固定金利オペ2日連続札割れキタコレ

今回は7765億円の応札となりましてまあ前日よりはマシになりましたが、こんな事なら金利入札入れなくても良かったですねえ(棒読み)という所で金融市場局涙目の展開で誠に残念に存じます。ナムナム。


あと3M短国入札雑談ですけどね。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240607.htm
国庫短期証券(第286回)の入札結果

5. 価格競争入札について

(1)応募額 114兆6,953億円
(2)募入決定額 5兆2,982億7,000万円
(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛 (募入最高利回り)(0.1002%)
(4)募入最低価格における案分比率 2.1529%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘3毛 (募入平均利回り )(0.0990%)

・・・・・・・・・・・・1社当たり応札限度額が5.7兆円なのですが、そんな中で応募額114兆円とはこれまたキタコレという感じですな、うんうん。まあ按分が薄めになるという事で上に必要最低限の札を入れて按分の所に応札限度一杯まで入れるという人が増えてきたということでしょうな。

ちなみに、アベレージは今回も順調に上昇しておりまして誠にあれでございます。


○週末の読み物リスト

・イエレン姐さんの講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.pdf
Perspectives on Monetary Policy

まあ昨日ちょっとだけ斜め読みしたのですが、こちらの講演は割と追加緩和にフレンドリーな話を展開という感じです。図表付のPDFの方が読むのに良いかも知れん。


・ボストン連銀ローゼングレン総裁の講演

http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/060712/index.htm
http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/060712/060712.pdf
Remarks for a Panel Discussion of the Global Outlook and Risks

・・・・・・・・うむ、宿題が大杉勝男であるorz









2012/06/07

お題「クレクレ相場とな/ECB当日に質疑応答テキストまで出してます/その他少々」

折角株価が反発しだす所に水をさすなこのジジイと思う次第である。ムーシャ様におかれましては世界経済終了宣言をして(自主規制)。
http://www.musha.co.jp/4009

○世界的クレクレモードとな

昨日は東京時間の夕方以降から欧州株が上昇してて経済指標も別に良い訳でも無いのでどうしたのという所でしたが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M57PW46S972M01.html
米国株:今年最大の上げ−欧米の景気刺激策の導入観測で

『6月6日(ブルームバーグ):米株式相場は続伸。主な株価指数は今年最大の上げを演じた。欧米の当局者が景気刺激策を講じるとの思惑から買いが膨らんだ。』

『投資会社ホランド(ニューヨーク)のマイケル・ホランド会長は「市場は中央銀行が世界経済の弱さをかなり認識し、対処方法を模索しているとみている」と指摘。「大規模な売りがあっただけにバリュエーション(株価評価)は低く、それは今日のような日に相場を押し上げる一助となる」と述べた。』(上記URLより)

まあ実体経済に関しての話だとこんなんだったりしますけど、これのどこが「世界経済の弱さをかなり認識」なのかはよくわからん。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M57JP86S972801.html
米地区連銀報告:経済「緩やかなペース」で拡大−雇用横ばい


・・・・・・・・まあ金融緩和催促でリスク資産の下げ相場をやるのもアレですけれども、金融緩和期待でリスク資産が上昇して事前に盛り上がるというのもある意味でオソロシスな話で、さてそうなりますと実際に中銀がどういう行動をすると市場がどういう反応をするのか、という話になる訳でして、下手な見せ方をすると市場が却って要らん方向に暴れだすリスクがあるので中央銀行のプレゼン(というかハッタリ)能力が問われる局面となっているような気がする訳でして、こういう局面では麿の麿節というのは(いやまあ麿の仰っている事はそれはそれで1つの正論である事はその通りなのですが)お願いだから封印して置いて下さいなとか思うのですが、どう見ても任期間近なので麿節全開モードになっているのが足元での市場との対話の齟齬に繋がりそうな悪寒が致しますな。とまたも悪態。

しかし今日のモーサテのニュース字幕「ECB利下げ見送り」とかクレクレにも程がありますなあとか思う次第で、全く最近のメディアは売らんかな精神でキャッチーなヘッドラインを出すのが仕事と勘違いしてるだろうと小一時間問い詰めたいのですが、日本だけの傾向じゃないようにも見えまして、これらの煽りモードが市場のボラを無駄に高めているようにも見えます罠。

あと思うのですけれども、まあ欧州圏の場合実体経済的に利下げというのは話としては選択肢なのかもしれないけれども、それは欧州債務問題の火消しとは別問題であって、欧州債務問題はリクイディティーじゃなくてソルベンシーの問題になっているのでECBが利下げしたからリスクオンとか発想が短絡的にも程があるだろとか思いますが、市場が祭りモードになっているのでそういう論考で動く訳では無いんでしょうけどね(−−;



○寝起きでECB

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120606.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 June 2012

寝起きでこんな長いの読めるほどの語学力はございませんので冒頭の部分だけという事になりますが・・・・・・・・・・・

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. While inflation rates are likely to stay above 2% for the remainder of 2012, over the policy-relevant horizon we expect price developments to remain in line with price stability.』

政策金利の変更はありません。インフレは今年の残りの期間に渡って2%以上の水準で推移するものと見られますが、政策見通しにおける期間においての物価推移はECBの政策目的である物価の安定に合致した水準となるでしょう。

『Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

基調的なマネタリーの拡大ペースが抑制されている事はこの見通しと整合的です。ユーロ圏のインフレ期待は確りとアンカーされており、ECBの目標である中期的に2%より若干低い水準に沿っています。

『At the same time, economic growth in the euro area remains weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment, giving rise to increased downside risks to the economic outlook. 』

同時に、ユーロエリアの経済成長は弱い状態が続いています。そしてコンフィデンスとセンチメントの面で不確実性が高まっており、それらが見通しにダウンサイドリスクを高めています。

『In previous months we have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has supported the transmission of our monetary policy.』

過去数か月間においてECBは伝統的な政策および非伝統的な政策を実行しています。これらの政策は我々の金融政策のトランスミッションメカニズムをサポートしています。

『Today, we have decided to continue conducting our main refinancing operations (MROs) as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the 12th maintenance period of 2012 on 15 January 2013. This procedure will also remain in use for the Eurosystem’s special-term refinancing operations with a maturity of one maintenance period, which will continue to be conducted for as long as needed. The fixed rate in these special-term refinancing operations will be the same as the MRO rate prevailing at the time.』

本日、理事会は固定金利・フルアロットメント方式のMROを少なくとも今年の準備預金積み期間(2013/01/15期日)までの期間延長することを決定しました。また、積み期間内に実施するスペシャルタームの資金供給オペも同様に延長致します。この金利はMRO金利と同じとなります。

『Furthermore, the Governing Council has decided to conduct the three-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted until the end of 2012 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs over the life of the respective LTRO.』

理事会は3か月物LTROについても2012年末のオファーまで固定金利・フルアロットメントで実施します。この金利は期間中のMRO金利の平均金利となります。

『Keeping in mind that all our non-standard monetary policy measures are temporary in nature, we will monitor further developments closely and ensure medium-term price stability for the euro area by acting in a firm and timely manner.』

これらの非伝統的政策は毎度申し上げておりますように本来一時的な政策であります。我々は今後の経済の状況をモニターし、ユーロ圏の中期的な物価安定の達成に向けて必要な措置をタイムリーかつ確実に実施する所存です。


・・・・・・・うむ、ついヘタクソ日本語訳をしてしまいましたが、今回の決定事項は資金供給オペのフルアロットメントでの実施を年末のオファー分までは継続するという話ですが、3年LTROに関する話はこの部分では触れられていないので、まあやるかどうかはまだ決め打ちしていないということですかそうですか。


ちなみに、この冒頭説明部分の前回分はこんな感じです。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Inflation rates are likely to stay above 2% in 2012. However, over the policy-relevant horizon, we expect price developments to remain in line with price stability. Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Available indicators for the first quarter remain consistent with a stabilisation in economic activity at a low level. Latest survey indicators for the euro area highlight prevailing uncertainty. Looking ahead, economic activity is expected to recover gradually over the course of the year. At the same time, as we said previously, the economic outlook continues to be subject to downside risks.』

『Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Over the last few months we have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has helped both the financial environment and the transmission of our monetary policy. Further developments will be closely monitored, keeping in mind that all our non-standard monetary policy measures are temporary in nature and that we maintain our full capacity to ensure medium-term price stability by acting in a firm and timely manner.』(以上5月3日の定例理事会後のドラギ総裁会見から)

まず前半部分ですが、景気見通しに関して前回は「Looking ahead, economic activity is expected to recover gradually over the course of the year.」としていたのですが、今回は「economic growth in the euro area remains weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment, giving rise to increased downside risks to the economic outlook.」ということで、見通しの話にあった「今後も緩やかに回復」という文言を外して先行きの下振れリスクの話を強調する形になっておりますので、まあここは明らかに現状認識や見通しを下げているという事になるでしょうな。

んでもって金融政策に関する部分は前回は「we maintain our full capacity to ensure medium-term price stability by acting in a firm and timely manner.」となっていたのが「we will monitor further developments closely and ensure medium-term price stability for the euro area by acting in a firm and timely manner.」となっていまして、その「a firm and timely manner」というのは変わっていないのですが、今回は「先行きの経済状況を確りモニターして」というような言い方になっており、これと見通しにおける下振れリスクの強調と合わせ技で考えると、先行きの金融緩和の可能性を言及したとも言えますが、まあ別に前任のトリシェのオッサンのように次回会合でやりますよ宣言という程のもんでも無いような気もせんでも無い。勿論方向性が緩和となっているというのはそうなんですけどね。

で、この先も本当は延々と確認すべきなのでしょうが、ドメドメ人間で中学校に上がるまで「ディスイズアペン」位しか英語を知らなかったこのあたくしにこんな長いのを寝起きで読んで愚講釈を垂れる脳味噌はありません(キリッ)ので、まあここで力尽きるのである。


・・・・・・・ただですね、ヲチャー的に今回「おおおおお!!!」と思った事が一つございまして、ECBの定例理事会後の記者会見のテキストって「当日に総裁の説明(Introductory statement)が出てきて、翌日の遅めの時間(日本時間だと夜中以降だと思う)にQ&Aが出る」という段取りになっているのですが、今回は当日夜に「Introductory statement to the press conference (with Q&A)」という事で、質疑応答付のテキストが出ていることで、これはECBの気合を感じたのですけどどうでしょうかね(^^)。

とは申しましても実を言いますと前回のECBのプレコンテキストにつきましてはジャパンの黄金週間中でございましたので、あたしゃ翌朝じゃなくてのうのうと6日の朝とかに確認しておりましたので、実はこの気合のECBの動きは今回からではなくて前回からだったらごめんなさいごめんなさいという事でありますので、一応そこの所はよろしくお願いいたします(汗)。



○固定金利3か月オペも札割れキタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120606.htm

国債買入(残存期間1年以下) 3,100 2012年6月8日
国債買入(残存期間1年超10年以下) 2,500 2012年6月8日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月8日 2012年9月7日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120606.htm

国債買入(残存期間1年以下) 3,930 3,123 0.000 0.004 72.6
国債買入(残存期間1年超10年以下) 11,631 2,500 0.007 0.007
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月8日スタート分) 4,305 4,305

輪番オペの1年以内が札割れしなかったのは良かったですねえ(棒読み)という感じですが、その一方で3か月の固定金利オペが初の札割れとなってしまいました。

まあ何ですな、月末にGCが上昇してコールが上昇したもんで共通担保の金利入札1兆円というのを打ち込んでいたのですが、先週打ったのは兎も角としてどう見ても今週の1兆円は朝から金が出てきてGC下がってきましたねという中での追い打ちオペだったこともあって(応札1.2兆円でしたし)資金ニーズが全力で充足されてしまい固定金利オペのニーズが低下しちゃいましたなという残念な結果に。

つーことでまあ6か月オペに関してはご案内の通りロールする度に札割れとなりまして、現状での残高が(あたくしがエクセルで手計算しているベースなので正確性は担保致しかねますが)12兆円そこそこまで落ちてきておりまして、この調子だと10兆円の残高目標達成がテラヤバスという状態になっているのですけど、3か月が札割れ(しかもいきなりオファーの5割ちょいとな)とかうーむですわなあと存じます次第。

まーちょっと金利入札オペ出し過ぎだったですねえという所だとは思うのですが、札割れがある程度恒常化してくると自己実現的に札の入り方が悪くなってくるので、はてさて今後どうなるんでしょうと申しますか、調節課の皆様におかれましては誠にご愁傷様でございますと申しますかという所でございます。ナムナム。


○受ける人いるんですかねえ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M56QD76KLVRA01.html
藤村氏:空席の日銀審議委員人事、国会会期中に提示したい (1)

『6月6日(ブルームバーグ):藤村修官房長官は6日午後の会見で、2名が空席となっている日銀審議委員候補について21日が会期末となっている今国会に他の同意人事と一括で提示したい考えを明らかにした。具体的な提示の日時については国会側と調整中という。』(上記URLより)

はあそうですかという感じですが、債券市場的に申し上げますと日経ヴェリタスのアナリストランキングでエコノミスト部門1位だったお方が何か凄い理由によって国会で否決された後でございますので、どこのイロモノアナリストが出てくるのでしょうかとドッチラケモードではないかと思うのですが気のせいですかそうですか。

経済界の方にご就任頂くのが結構なお話だとは思うのですが、審議の過程であの騒動になった後でそもそもノミネートされる時点で罰ゲーム(難癖つけられて落とされたらキャリア的に傷が付いちゃいますし)にも程があるとしか思えませんが、さてどのような方が出てくるんでしょうかとまあ生温かく待つとしましょうかね。

日銀政策委員人事が明らかに政治のおもちゃになっているというのは困ったもんにも程がある訳で、まあ例の騒動以来自民党には呆れ果てて支持する気はすっかりなくなったのですが、どうも最近は選挙のために目立てば勝ちみたいな暴走議員様があちこちで散見されて甚だ遺憾にも程があると存じます(一昨日出てた民主党の117人の署名も呆れましたが)。



○俺様用備忘のためにクリップだけしておく

FOMCが近いので週末には頑張って読む、というか頑張らないと読めないのがあたくしの貧弱な語学力で何とかしたいのですけれどもねorzorzorz

5日のシカゴ連銀エバンス総裁(ぶっちぎりのハト派)講演

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2012/06_05_12_new_york_university.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2012/06_05_12_new_york_university_print.pdf
Monetary Policy: Recurring Themes

お隣のセントルイス連銀のブラードのおっちゃんと真逆で「巨大なGDPギャップ」の話をしたり「雇用改善の為には一時的なインフレ上振れ容認上等」な話をするという方でございますが、さて今回はどうだったんでしょ。まあいつものエバンスクオリティだとは思いますが。


6日のサンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁の講演

http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0606.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0606.pdf
The Economic Outlook: Global and Domestic Challenges to Growth

サンフランシスコ連銀は前任の総裁がイエレンおばちゃんでして、リサーチペーパーとかで金融政策の効果がどうのこうのみたいなのが出てくる時には基本的にFRBの金融政策運営の効果などに関してはFRBの公式見解に近いような物が出てくる傾向(時に論理展開的にお前それは強引だろというような大本営報道部翼賛ペーパーが出るのですが)にあって、このおっちゃんも基本的には執行部寄りの話をすることが多め。

足元では妙に物価の話をしてたりしてあららという感じでしたが、さて今回は何の話をしたんでしょと思いますが、そもそも読んでる時間も無いので、最後から4パラグラフだけ引用しておく(超手抜き)。

『In sum, I see the Fed falling short on both our maximum employment and inflation mandates for some time. And the turmoil in Europe and government fiscal retrenchment in the United States raise the danger that the economy could perform worse than I expect. For these reasons, it’s crucial that we maintain our current highly stimulatory monetary policy stance. As part of this, we’ve stated our intention to keep our benchmark short-term interest rate at exceptionally low levels at least through late 2014.』

『We must also stand ready to do even more if needed to best achieve our statutory goals of maximum employment and price stability. The April FOMC statement indicated that the “Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.”』

『If the outlook for growth worsens to the point that we no longer expect to make sustained progress on bringing the unemployment rate down to levels consistent with our dual mandate, or if the medium-term outlook for inflation falls significantly below our 2 percent target, then additional monetary accommodation would be warranted. In such circumstances, an effective tool would be further purchases of longer-maturity securities, potentially including agency mortgage-backed securities. Past purchases have succeeded in lowering borrowing costs and improving financial conditions, thereby supporting economic recovery.』

『As I’ve tried to make clear, these are highly uncertain times, and our crystal balls are much cloudier than usual. At the Fed, we must be vigilant, and ready to adjust monetary policy as circumstances warrant. Thank you very much.』

先行き見通しの不透明性の話と、マンデート達成に時間が掛かるという話をして、必要な場合には追加緩和も実施しますよという話をしていますな。で、見通しが更に悪化したり、物価の上昇率が低下したら追加緩和で資産の購入拡大も含まれますよ元からそういう声明文出してますね。という所までは理解した。







2012/06/06

お題「セントルイス連銀総裁は追加緩和より様子見が得策と主張」

まあここまで酷いワイドショー政治になってくるとまでは予想はできませんでしたが、昔からあたくしの駄文をご覧の方はご存知のように小泉首相の郵政解散に悪態たらたらついていたあたくしと致しましては誠に残念以外の感想がありませんで、結局の所小泉さんがぶっ潰したのは自民党だけじゃなくて日本なんじゃないのかねとか思うのですけどねえ。

http://mainichi.jp/select/news/20120604k0000m010093000c.html
毎日世論調査:「維新に投票」28% 次期衆院選比例
毎日新聞 2012年06月03日 22時27分(最終更新 06月04日 00時00分)


○ブラード総裁は追加緩和に消極的

毎度おなじみブラード総裁である

財政再建に対するブラード総裁のコメントをネタにしようと思ってセントルイス連銀のサイトを見に行ったら直近のスピーチがありましたですお。

ブラード総裁のメッセージとかを並べているページはこちら。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/index.html

んでまあ直近のスピーチはこちらでした。
http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1425
St. Louis Fed’s Bullard Discusses U.S. Monetary Policy, Housing Bubble
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardBipartisanPolicyCenter5June2012Final.pdf(スライドショー)

寝起きに読んだので上記URL(スライドショーじゃない方)からちょっとだけで勘弁。

『ST. LOUIS - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “The Aftermath of the Housing Bubble” on Tuesday during an event jointly hosted by the Bipartisan Policy Center’s Housing Commission and the Jack Kemp Foundation.』

ということで・・・・・・

『During his presentation, Bullard discussed current monetary policy in the U.S. and the economic outlook. He also discussed the collapse of the U.S. housing bubble and its implications for the economy. “Recovery from this event is ongoing and will ultimately take many years,” he said, noting that households are saddled with far too much mortgage debt compared with historical norms. 』

米国の住宅バブル崩壊からの回復に関しては「現在は回復の途上にあるが、それには多くの時間が必要である」という事で、モーゲージによる負債が積みあがりまくっているのでシャーナイナイとのお告げ。

『“Monetary policy has been ultra-easy during this period, but cannot reasonably encourage additional borrowing by households with too much debt,” he added.』

金融政策は極めて緩和的ですが、家計の負債が非常に高水準の為に家計が追加の借入を行うことへの助けには緩和的な金融政策があまり寄与しませんとな。

つーことで金融政策について。『Current U.S. Monetary Policy』って小見出しから。

『Many analysts of the U.S. economy are pointing to a “global slowdown,” Bullard said. For example, the Euro-area unemployment rate has increased over the past year, and Chinese economic data has indicated slower growth than anticipated so far this year.』

米国経済についてはグローバルな減速を多くのアナリストが指摘していますが・・・・・・・

『While the U.S. data has been mixed in recent weeks, Bullard noted that “the outlook for 2012 has not changed significantly so far,” with many expecting a stronger second quarter than first quarter in terms of real GDP growth and a stronger second half of 2012 than first half.』

ブラード総裁の米国先行き見通しについては直近の経済指標がまちまちとなっているものの、今年の経済見通しは今の所そんな大きな変化はないということで、2Q以降今年の後半に掛けては米国経済はより強いでしょうという見立てです。

『Regarding labor market conditions, Bullard said, “The recent nonfarm payrolls report was disappointing, but not enough to substantially alter the contours of the U.S. outlook.” He added that seasonal adjustment factors may be disturbing the normal interpretation of the data; when looking at non-seasonally adjusted data, employment growth from one year earlier is better in 2012 than in either 2010 or 2011.』

労働市場に関しても直近のNFPはdisappointingだが、米国経済の見通しの輪郭を変える程の悪い内容ではなく、季節要因による歪みが影響しているとのお話ですな。

『Bullard noted that the situation in Europe has driven U.S. interest rates lower. “Both nominal and real interest rates have fallen substantially over the last year in the U.S.,” he said.』

欧州ドリブンによる米国金利低下によって名目も実質も金利が大きく低下したとのことで、まあここまでが米国経済に関してでしたが、この流れでまあ金融政策に関してどういう話になるかというのはほぼ判ると思いますが・・・・・・・

『“One possible FOMC strategy is to simply pocket the lower yields and continue to wait-and-see on the U.S. economic outlook,” he said, adding that “current policy is already very easy, as the policy rate remains near zero and the balance sheet remains large.”』

現在の緩和的な環境を維持して状況を見守るのが宜しいとな。

『Furthermore, while the global problems are being driven by the continued turmoil in Europe, “a change in U.S. monetary policy at this juncture will not alter the situation in Europe,” Bullard stated.』

「今ここで米国の金融政策の変更を行っても欧州の状況が改善する訳でも無いですし」と言われますとぐうの音も出ませんが(^^)、まあ米国の見通しに大きな変化が無いというのであれば、元々物価重視の姿勢であり、更に「リセッション前の水準というのはそもそもが信用バブルで下駄を履いていた状態であるからして、経済データを評価する時にリセッション前の水準に対してどうのこうのというのはそもそもおかしい」と折に触れて主張しているブラード総裁でございますので、まあこういう感じになるかなあとは思いますが、追加緩和に関しては引き続き不要論という事でございました。


んでもって後半の『U.S. Housing Markets』の所は斜め読みしかしていないのでスルーと致しますが最初と最後だけ引用します。

『In discussing the collapsed U.S. housing bubble, Bullard noted that most components of U.S. GDP - except for the components of investment related to real estate - have recovered to or past their levels of the fourth quarter of 2007. “It is therefore not reasonable to claim that the ‘output gap’ is exceptionally large,” he said.』

ということで、これまた以前よりブラード総裁が主張している話で「リセッション以降の生産ギャップが大きい」というビューは必ずしも妥当では無く、そもそもリセッション以前の基準で考えるのがおかしいでしょというような話(理由はさっきと同じ)をしていると見た。

あとは住宅市場特有の問題とかにも触れているようですが、まあこっちに関しては最後にありますように・・・・・・・・

『“We should expect and plan for slow adjustment in housing markets,” Bullard said.』

ということで、住宅市場の回復には相当の時間が掛かる事を前提にすべきであるという結論のようでございます。


○ということで米国金融政策に関する雑感

まあ何ですな、ブラード総裁は今年のFOMC投票権が無いので票決行動的には関係ないちゃあ関係ないのですが、このおっちゃんはQE2の時に先頭切って大規模な国債買入が必要(かつ低金利政策の長期化は経済のデフレ均衡を起こす可能性があるので避けるべき)というお話をしまして(さっきのセントルイス連銀のブラード総裁のコーナーにある『Key Policy Papers』って所にある『"Seven Faces of 'The Peril'" 』をご参照あれ)、まあ金融政策に関するその手の理屈を先導して出してくるお方(個人的には逆さ絵のおじさん以外にはブラード総裁とコチャラコタ総裁の話とサンフランシスコ時代のイエレン総裁の話って論点が中々興味深い(今のSFウィリアムス総裁も比較的オモロイ)ですな)なので、ここでブラード総裁が米国の追加緩和が必要とか言い出したら米国金融市場はQE3祭りになったのでしょうが惜しかったですな。

つーことでまあ物価重視派の地区連銀総裁の皆様が追加緩和に関してあまり積極的では無く、足元の経済指標でそれほどの経済見通しの引き下げを行っていない、という所からしますと、普通に考えるとLSAPの再拡大的な施策を打ち込むにはFOMC内部のコンセンサスが取れるのかどうかはかなーり怪しい所ではございますなあとは思うのですよ。まあ理事の頭数増えましたし、執行部の意向を多数決で通すという意味ではある程度強引に押し切るというのも出来るとは思うので、票決権の無い物価重視派地区連銀総裁の見解が変わらなくてもまあ追加措置を突っ込めるには突っ込めるとは思います。

ただ、SEP見た時にも思いましたが、「インプット」ではあっても地区連銀総裁の見解がやや景気強気方向になり、その見通しが大きく下がる訳でも無いという状況では中々派手な緩和でござる的なものを突撃するのは難しいんじゃネーノという気はしますので、この前引用したバーナンキ議長会見にありましたような「ガイダンス文言にバランスシートのサイズに関する記述を加える」というような話とかをするとかになるのかなあとか今の所勝手に妄想しております。あとは「不胎化QE」と言われるもの(不胎化したら量は拡大しないのですからQEというのはおかしいけど)っつーのは有るとは思いますが、足元で米国長期金利が絶賛低下している中で更に金利下げてどうすんねんという気もするのでございます。以前は景気見通しが強まった事を背景にして「ツイストオペ終了後に長期金利が上昇したらマズーではないか」というのがそもそもツイストの延長とか不胎化QEとかの思惑のベースにありましたが、何せ足元では米国長期金利が急低下しやがったので、今さら長期金利上昇対策で長期債購入ってのも如何なものか(というか景気見通しが強くなった時の弾に取っておきたいでしょ)という気もする訳でして、はてさてどういう目くらましをしてくるのよという所でしょうか。

しかしまあ何ですな、米国の場合ツイストオペ終了をやっぱり延長するというだけでも何故か追加緩和と呼ばれ、一方のジャパンはご覧の有様というのは、毎度思いますけれども、プレゼンテーションというかまあハッタリ成分つーかインチキ成分の不足と、麿節の出し過ぎという所で、何か折角色々と出している物が対外プレゼン的に残念というのが残念だなあと思う次第なのでございまする。



○ということで本当はネタにするつもりだったブラード総裁の話はこちら(予告編)

セントルイス連銀のアニュアルレポートにブラード総裁のメッセージがあったのよ。
http://www.stlouisfed.org/publications/ar/2011/pdf/AR-2011-Bullard.pdf
European Sovereign Debt Crisis: A Wake-up Call for the U.S.

まあ題名見たらその時点で内容は予想できると思いますが、まあその通りの内容でございまして(^^)、財政健全化に向けた取り組みを米国は進めるべきであるという話をしているのですが、まあジャパンの政治家の皆様は100回位読んだ方が良いと思うのが最後の方にもあったりする(1ページなのでまあさらっと読めます)ので(^^)。

本当は今日のネタはこっちの筈だったのですが、先ほど申し上げましたようにセントルイス連銀のサイトに行ったら直近の講演をうっかり読んでしまったので(^^)ネタが変更になってしまいましたとさ。


○その他雑談ネタを少々

・クレクレが妙に外野で盛り上がるのですが

つーかまあ先月の決定会合前もクレクレの話があったりしましたけど、金利市場的に言えば既に3年までの金利が0.10%だわ、CPや社債のスプレッドはアホのように縮小しているわで、ディーラーなら兎も角として投資家サイドからしたら日銀が金利とスプレッド潰して収益機会を奪って行くという大変に素敵な民業圧迫状態ですからして、今さら追加緩和とか言われてもしんどいですなあという感じでしょうか。まあそれで株が上がったり為替が円安に振れてくれれば投資家としては助かるので追加やってそっちに効いてくれれば良いやという所だと思いますが(−−)。

ということで、来週のMPMを前に株式市場と為替市場の何とかストの皆様におかれましてはクレクレ祭りがそろそろ始まったようで、朝の某テレビを見ればクレクレですし、為替方面とかからのクレクレレポートがやってきたりとかまたまた香ばしい展開に。

・・・・・・・とか思っていたらこの人がまた登場していましたな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M54ZRS6KLVR501.html
民主・前原氏:円高対策を早急提言したい、必要なら日銀にも要求 (1)

まあどうせ碌な事提言しないのですけれども、どうもこの前ナントカさんにおかれましては経済政策系の話をするとピントがずれた発言が(経済政策以外でもという気もしますが)多くて何と申しますかアレではございますなあとか思うのでありました。

#更にどうでも良いのですが、どこぞのレポートで日銀の追加金融政策の考察みたいなのがあったのですが、一つ一つの説明は判るのですが、フィージビリティー的にねえだろという話やら、予想する背景説明が前後で矛盾してたりして中々笑ってしまったのですが武士の情けでネタにするのは控えます(^^)


・そういえば3か月短国が減額になっておりました

・・・・・・物凄く不覚な事に入札終わってしばらくしてから気が付いたのですが(恥)、今月発行分となる先週の3か月TB入札から発行額が6兆円→5.7兆円に減額になっておりますな。まあ国庫資金繰りの関係で減額になったとかそういう事でしょうが、もともと投資するものが無いとゆーのに更に追い打ちですかそうですかという感じでありまする(涙)。

ということでですね、先週の入札をネタにした時に完全に失念していたのですが、そもそも足元GCレートが上昇している中で前週対比入札が強かった要因の一つに減額発行というのを考慮に入れていませんでしたというお詫びと追記でございましたm(__)m





2012/06/05

お題「麿講演から簡単にと思ったら引用大会で増量になってしまいましたすいません」

まあ介入は黙って市場に警戒させておけばタダで(下げを止めるだけだけど)効きますですからよろしいんじゃないですかね(^^)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M53A5O0UQVI901.html
中尾財務官:為替含め国際金融市場について日銀理事と緊密に意見交換
更新日時: 2012/06/04 20:08 JST


ということで今日はこれまた市場的には華麗にスルーしていた麿講演から少々(と言いつつ引用大会)

残存1年切ってすっかりスイッチの入った感のある講演は今日も行く。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120604a1.pdf

○引用がクソ長くなってしまったので先にまとめ

引用してたら今回もまたクソ長くなってしまいましたので先にあたくし的まとめを(汗)。

えーっとですな、経済物価情勢に関する前半のパートでは基本的に展望レポートと5月の金融経済月報をベースにした話をしていまして、その中で欧州警戒とか円高警戒のパートも入ってはいるのですが、どうも欧州警戒に関しては警戒はしているものの、LTROによる金融市場の安定化による「時間を買う」状態への評価がちと強いような感じがします。

つまり、警戒フレーズは入れているものの、印象的にはそうは言っても何とかなるでしょ的な感じですかねえという風に読める次第で、実際にそういう認識なら日銀の見通しが甘いですなあとは思いますがまあシャーナイナイのですけれども、もっと警戒感をメッセージとして出したいのであれば構成的にどうだったのかなとは思います。

後半は金融政策の説明と、論点整理とかのパートになるのですが、まあこっちは麿節モードとなっておりまして、いやまあ仰ることは判るのですけれども、前半の印象と合わせますと、何と申しますか足元の欧州火がボーボー&米国や中国もあばばばばー的な話が持ち上がる中で相変わらずその辺華麗にスルーですかそうですか的な印象を与える麿モードだなあと思うのでありました。

ということで以下引用大会でクソ長いのですが、凄く新しい話があるかとか、追加金融緩和にやる気のありそうな話があるかいうとそんな感じでは無いので、べたべたと長々引用して正直反省しているorzorz




○経済物価情勢に関しては欧州警戒や為替警戒の話は入ってるけど・・・・・・・

・経済物価情勢に関しては最初は展望レポートの説明である

『2.経済・物価の現状と先行き』に関しては思いっきり展望レポートベースのお話になっております。

『それでは、経済・物価の現状から始めます。日本経済の動向を左右する最も大きな要因は言うまでもなく海外経済です。海外経済については、なお減速した状態から脱したとは言えませんが、米国経済が大きな流れとしては緩やかな回復過程にあるなど、改善の動きもみられています。』

まあ何ですな、展望レポートもそうですが、金融経済月報での現状認識も強めだったりするのですが、その辺のペースでのお話が続くわけですけどとりあえず引用はしておくだよ。

『一方、内需については、公共投資などの復興関連需要は明確に増加に転じています。企業部門でも、収益見通しの好転を受けて業況感が改善しており、設備投資は緩やかな増加基調にあります。家計部門においても、マインドが改善傾向にあり、個人消費は緩やかに増加しています。このため、先ほども述べたように、景気は全体として持ち直しに向かう動きが明確になりつつあると判断しています。』

んでもって物価に関して。

『このような景気動向を反映して、物価情勢にも徐々に変化がみられています(図表1)。デフレという言葉は日本経済を語る時にしばしば用いられますが、消費者物価指数(総合除く生鮮食品)の前年比を振り返りますと、2009年8月の前年比−2.4%をボトムに下落幅は着実に縮小しており、2011 年度は前年比0%となりました。統計の判明している過去2か月はいずれも+0.2%となっています。』

ほほう。

『品目別に見ると、パソコンやテレビなど、購入頻度が低く、また、技術革新で価格が大きく下落している品目はマイナスですが、購入頻度が月に1回程度以上の品目については前年比+1.9%となっています。このように、食料品など生活に密着した品目に限ってみれば、もう少しはっきりとした前年比プラスの領域に入っています。』

ということで物価に関しても現状認識についての話が微妙に強かったりする訳ですが、この辺は4月の展望レポートと先月の金融政策決定会合で示されている現状認識の強さと整合的な話ではございます。


・見通しの前提について説明しているのはまあ良いとしまして

でもって見通しですけれども。

『次に、先行きの見通しについてお話しします。日本銀行は、4月末の金融政策決定会合において、2013 年度までの経済・物価情勢の見通しを公表しました。言うまでもなく、経済の先行きには様々な不確実性が存在し、見通しは前提の置き方にも依存します。』

ほいな。

『今回の見通しにおいて最も重要な前提は、欧州債務問題の極端な悪化が引き金となり、国際金融資本市場の動揺を通じて世界経済が大きく落ち込むといったことはないという前提です。』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うむ。

『そのことを申し上げたうえで、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについては、「やや長い目でみれば、日本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく」としています。』

つーことでこの後も展望レポートベースの話が続きますので割愛なのですが、一応今回の講演では上記のように見通しの前提に「欧州債務問題による世界経済のリセッション入りが無いとした場合」とはなっているので「警戒してますよ」というメッセージは出しているものの、どちらかとゆーと有りそうなのはリセッションよりも世界経済が減速してうだうだと踊り場入りに入って行くような状況のような気もせんでもないが、この説明をそのまま取ると「いやその程度では大丈夫っすよ」的な感じに見えまして何というかちと楽観じゃネーノという気はする。というか市場の方が悲観に傾いているというのはその通りなので市場の悲観がやり過ぎなのかも知れないですけれども、そのヒーコラ言ってる市場ちゃんからすると温度差を感じてしまう次第で。


・見通しのリスク要因の説明はさすがに海外の説明を細かくアップデートしてますが

リスク要因の説明の所ではさすがに海外の説明が丁寧になっています。

『第1の不確実性は、国際金融資本市場を含めた海外情勢です(図表2)。とくに欧州債務問題は、最も強く意識しておくべきリスク要因です。』

ふむ。

『昨年夏から年末にかけて、欧州債務問題の影響により、国際金融資本市場の緊張が高まりました。その後、欧州中央銀行の流動性供給などから市場は一旦落ち着きを取り戻しましたが、最近は再び、神経質な動きが続いています。』

まーLTROで効く段階じゃなくなっているような感じですからねえ。

『ギリシャでは、財政緊縮政策に対する国民の反発から、5月の総選挙後は連立政権の樹立ができず、6月半ばに再選挙が行われることになりました。スペインでも、財政再建の遅れとともに、金融機関の不良債権問題に対する懸念が強まっています。こうした状況を反映して、グローバル投資家は全般にリスク回避の姿勢を強めています。ギリシャやスペインの国債利回りが上昇する一方、米国、ドイツ、英国の国債利回りは歴史上の最低水準を更新したり、それに近い水準になっています。』

と、ここまでが状況の説明。

『2008 年秋のリーマン・ショックが示すように、リスクが極端な形で顕在化し、経済が大きく落ち込むかどうかは、銀行間の資金調達市場が安定を維持できるかどうかに大きく依存します。この点、現在までのところ、欧州中央銀行による大量の資金供給などにより、資金調達市場は総じて安定しています。これは、昨年末頃とは大きく異なっている点です。もっとも、中央銀行による流動性の供給という対応は言わば「時間を買う」措置であり、その限られた時間を使って、各国政府や関係当局が、欧州経済の持続的な成長と安定へ向けて着実に対応を進めていくことが不可欠です。』

現状の認識についてこのようにお話をしているという所なのですが、問題は金融市場取引におけるシュリンクによるリーマンショック初期にあった金融市場における流動性の蒸発によるリクイディティー欠如ドリブンの実体経済波及だけではなく、スペインの不動産を中心とした金融機関の不良債権処理問題によるソルベンシー問題にも拡大しているように思える次第でして、日本の話で言えば三洋証券、拓銀、山一證券が破綻して市場の流動性がシュリンクした時から、長銀や日債銀の破綻(国有化)の時のような感じで、市場でのファンディングなどのセーフティーネットは張られているものの、不良債権問題ガーという状態になっている時のようなテイストを醸し出している風に思えるのでございまして、そうなると流動性供給をしているからとりあえず危機回避できますとゆーのはちょっとどうなんでしょとか思うのはあたくしの個人的な印象論ではござんすが、どうなんでしょうかねえという気がするざます。

つまりですな、現状の中央銀行による流動性供給について麿先生におかれましては「時間を買う」という話をしているのですが、本当に現在の欧州問題において時間が買えているんですかという話でございまして(そらまあ流動性供給が無かったらもっと悲惨な話になっているので流動性供給は重要なのですが)、現状認識が「時間が買えている」という事になっているのかどうかはこの文脈だけでは定かではありませんが、認識としてどうなっているのかは気になる次第。


・その他海外経済は普通の説明

『欧州以外にも、世界経済には不確実性が存在します。米国については、設備投資や個人消費が底堅く推移していますが、住宅バブル崩壊の影響も根強く残っており、このところ雇用の増加ペースも鈍化しています。世界経済の牽引役として期待される新興国・資源国についても、インフレ率が一頃に比べて低下してきたとはいえ、インフレ再燃を招くことなく経済成長をどの程度高められるか、不透明感の強い状態が続いています。』

まあ従来通り。


・円高への警戒も言及

ここはまあサービスですな(^^)。

『不確実性という点では、最近の円高傾向にも注意しています。昨年夏以降の為替市場の動きは、欧州債務問題を背景とするグローバル投資家のリスク回避の姿勢の変化と密接に関連しています。すなわち、2月から3月前半にかけての円高修正は、何よりも欧州債務問題の改善に伴うリスク回避の姿勢の後退を反映したものでしたし、その後の再度の円高の動きは、逆方向への変化を反映したものです。いずれにせよ、円高が日本経済に与える影響については、企業マインドを通じる影響を含め、日本銀行としては注意深くみています。』

とまあサービス発言もありまして、欧州警戒の話とかも入れておりまして、一応その辺は配慮しているっぽいのですけれども、これ文章構成的にもうちょっと何とかならんのかという気がするのでありまして、最初の説明が思いっきり展望レポートベースの話から始まると、まず文章を読みだした第一印象が「また強気見通しの話か!!」となってしまい、そっちの印象が強くなるという感じなんですよね。

いやまあ欧州問題は足元一時的に悲観に振れ過ぎていて、その結果として円高傾向も一時的ですよってな見立てでいるので、そんなに警戒の話ばっかりして暗くなることもありませんがなでも世間の悲観連中もうるせえから警戒の話でもサービスで入れておくか、とか言う認識でいて、そのままストレートに反映させたらこういう文章構成になりますという事なんですかね。

まーいずれにせよ、最近日銀(というか麿方面)から出てくるメッセージは割とその辺の下振れリスクを強く意識しています的な話が強調されないよねとは思う所でございまして、どうなんでしょうかねという気はします。


・財政のサステイナビリティー確保の話キタコレ

『第2の不確実性は、国内における復興関連需要です。』というのと『第3の不確実性は、日本経済の中長期的な成長見通しに関して、企業や家計が抱いている予想、あるいは自信の程度です。』というのは華麗にスルーしまして第4の不確実性について。

『第4の不確実性は、わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題です。』

キタコレ(^^)。

『財政状況は悪いとはいえ、国内には潤沢な資金があり、国債購入に関する海外投資家への依存度が低いため、問題はないという議論もありますが、いかなる国であれ、政府は無限に借金を拡大することはできません。』

そらそうよ。

『現在、わが国の国債の利回りが低位で安定しているのは、市場参加者が、最終的には財政再建への取り組みがしっかりなされていく、という信頼を保持しているためだと考えられます。あとから述べるように、財政の持続可能性への信認は物価の安定と金融システムの安定を支える最も基礎的な前提条件であるだけに、万が一、そうした信認が損なわれると、経済に悪影響を及ぼします。逆に、財政の先行きに対する不安が家計や企業の支出意欲を低下させている可能性があることを考えると、財政再建の道筋が明らかになることは、やや長い目で見ればむしろ経済成長を高める可能性もあります。』

まあ金融システム云々の話はさすがに今日の明日というか目先数か月とかで出てくるとは思えませんので、あまりその話を強調すると狼おじさんになってしまうような気もしますが、財政の不確実性が将来への支出意欲云々というのはそれこそ米国でも同じ話をしている事もありますし、後者の話をもうちょっとメインにした方が目先は無難なような気もします(^^)。


○金融政策の論点という所が麿モードである(^^)

んでまあ現在行っている金融政策の説明パートに入りますがそこはめんどいのでスルーしまして・・・・

『以上、日本銀行による強力な金融緩和政策の内容と、その効果について述べてきました。私どもの政策運営に対しては、「もっと大胆な政策が必要」という批判がある一方で、「ここまで踏み込んでは危ないのではないか」という批判があることは承知しています。私どもとしては様々なご意見を謙虚に受け止めて、そのうえで、最適と判断する金融政策運営を行っています。そこで、私どもの金融政策についてご理解を頂くための一助として、先ほどお話した日本銀行の金融政策運営上の決定に至る思考プロセスをご説明します。』

というのがメインイベントである。


・「中長期的な物価安定の目途」の水準

目途が1%なのは如何なものかという件に関してですな。

『第1は、目指すべき物価上昇率の水準です。物価に関する意識は人々の行動に深く組み込まれているだけに、何十年という過去の経験から一挙に飛び離れた状態は考えにくいように思います(図表5)。』

つーことで1980年代以降低いんですよという説明がありますが長いので割愛。

『それにもかかわらず、「今後は2%の物価上昇率を目指す」といきなり宣言しても、それだけで2%の物価上昇率が実現できる訳ではありませんし、何よりも、企業や家計に対して無用の不確実性を与えることになりかねません。』

というのはまあ良いとして(そもそもレジームシフトをするのだからそういう数字を出した方が良いという論点もあると思いますがそこは措く)・・・・・・・

『また、仮に宣言が文字通り信用され予想インフレ率がその分上がるとすれば、最も早く反応するのは金融市場です。その結果、実際の物価や賃金が上がる前に、長期金利のみが先行して上昇し、その場合には、金融機関が抱える多額の国債が値下がりし、貸出行動にも悪影響を与えるリスクもあります。』

まあこれは正直どうなのかという話で、予想インフレ率が上昇して企業行動に影響が出れば、当然ながら貸出が活発化する訳でそっちで金融機関ウハウハになりますし、大体からして1%宣言しても予想インフレ率が上がっているとも思えない(物価連動国債のBEIは日本の場合特殊要因によるものが多過ぎでまるっきりあてにならないので単純に長期金利の推移をみればヨロシアル)のに2%を宣言して直ぐに国債暴落するとも思えませんし、金融機関どうのこうのという話よりも「金利だけ先行して上昇すると困る人もいますよね」程度の話にしておいた方が良いような気がします。つーかどう見てもこれ銀行がダシに使われているだけのような。

本来国債暴落で〜って話で問題にしなければ行けないのは国債の信認低下による「実体経済と関係ない金利上昇」でありまして、このデメリットって下手に強調すると「日銀はデフレ脱却をすると金融機関が国債下落で損するので良くないと主張している」という風に捉えられかねない(というかそういう批判する向きもありますわな)メッセージの出し方と思えますので、あまりここで金融機関をダシにするのもどうかと思いますけど。

『これらの問題を踏まえれば、わが国として目指すべき消費者物価上昇率は当面1%とすることが妥当であり、この数字を目途に、努力をしていくことが大切だと判断しました。そのうえで、日本銀行としてはあとから申し上げる成長力強化の進み度合いや人々の物価観の変化などを分析しながら、原則としてほぼ1年ごとに、「中長期的な物価安定の目途」を点検していくことにしました。』

まあこれはこれではあそうですかという話ですが、金融機関がどうのこうのという話をするよりも「あーた急に2%なんて無茶言う前にとりあえず1%目指して頑張りましょう」って話で良いと思うのですけどねえ・・・・・(^^)


・「物価安定の目途」の達成時期と金融政策運営の関係

『第2の論点は、物価安定の目途の達成時期と金融政策運営の関係です。』

ということで、この達成時期における「中長期的な」とは何ぞやという話にも絡んでくる論点。

『4月末に展望レポートでお示しした見通しでは、見通し最終年度である2013年度について、消費者物価上昇率の見通しは政策委員の中央値で+0.7%でした。この時の金融緩和強化の決定は、2013 年度の物価上昇率見通しが1%に達していないという機械的な理由によるものではありません。』

この前もこの説明していたが、何回読んでも蒟蒻問答にしか見えませんけど今日も引用。

『消費者物価上昇率は、2013 年度よりもあと、遠からず1%に達する可能性が高く、やや長い目で見れば、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性が高いと判断したうえで、そうした展望をより確かなものにする観点から、金融緩和を強化したものです。』

蓋然性が高いのなら金融緩和を強化する必要って「より確かなものにする観点」とかではないような気がするんですが・・・・・・・

『中央銀行が目指す物価の安定は中長期的な物価の安定であり、固定的な期限を設けて予め決めた物価上昇率を無理矢理にも達成しようとする、という機械的な運営は、現在どの国でも採られていません。』

まあそれはそうなのですが、この先の説明が益々前の話と繋がっていない・・・・・・・

『もちろん、私どもとしても、「中長期的な物価安定の目途」で示した消費者物価前年比1%という姿ができるだけ早く実現されることを願っています。しかし、わが国のデフレには根強い構造的な要因も働いていることや、金融政策の波及効果には長いラグがあることも念頭に置く必要があります。』

だから追加緩和したのかというのだとそもそも「遠からず1%に達する可能性が高く」というのは何ですねんという話になるのですが、これに続く説明を読むと蒟蒻問答成分が更に高まる。

『そのような状況の中で、例えば、長期国債の月間買入額は、現状でも大変に大きな金額ですが、そういう中で、最適なスピードを超えてアグレッシブな買入れを行っていくと、一時的に長期金利は下がったとしても、国債市場が中央銀行に過度に依存した市場になる結果、今度は何らかのきっかけで反転上昇することも起こり得ます(図表6)。そうなると、金融機関経営にも大きな影響を与えることになり、結果的には、金融システムの安定、ひいては経済の安定自体を損なってしまうことになります。』

まあ野放図に買入を拡大しない理由の方は判るのですけれども、結局ここの説明を読んでも、「より確かなものにする観点」という意味がさっぱりワカランチ会長であることに何の変化も発生しない訳でして、この説明だとやはりここでの論点である所の『「物価安定の目途」の達成時期と金融政策運営の関係』に則した上での4月の追加緩和措置の説明になっていないと思うのですけどねえ。

でまあここの部分が引き続きロジック的に判りにくい(いやまあ状況読んで追加緩和したんだからその辺のロジックは勘弁してくれというのも判らんでは無いですが^^)というのは、今後の物価安定の目途における金融政策の枠組みが読みにくいという話にもなるので、もうちょっと何とかならんのかとは思います。

#まあここのロジックをギリギリ詰める人も今の所あまり世の中には多くなさそうですからスルーしている感もあるのですけど


・多額の国債買入れと通貨の信認との関係

『第3の論点は、日本銀行による国債の多額の買入れと通貨の信認維持との関係です。』

キタコレとしか言いようがない話で、現状の説明をした上で財政ファイナンスはしません(キリッ)と言っている部分は長くなるので引用割愛して(^^)その先を。

『通貨と国債の関係を考える場合、基本に立ち返ることが大事です。そもそも、日本銀行が国債を買えるのは、究極的には、国債の見返りに発行された銀行券を国民が保有してくれるからであり、さらにそれは国民が銀行券の価値を信用してくれているからです。しかし、その銀行券の裏付けは国債です。言い換えれば、「国債には信認がないが、銀行券には信認がある」という事態は想定しにくいといえます。』

バランスシート的な説明だと「国債です」となるのでしょうが、そこは「国家に対する信用です」とした方が一般向けには判りやすいような気がしますが。大体からして国債以外だって日銀のバランスにあるんですし。

『国債に対する信認が崩れると、銀行券に対する信認も崩れます。結局、国民が持ちたいと思っている銀行券の量の限界を超えて中央銀行が国債を購入すると、インフレが起こるか、あるいは、そうした事態を予想して長期金利が先行的に上昇し、景気にも金融システムにも悪影響が及ぶことになります。その意味で、中央銀行の国債の買入金額は「信認」によって上限を画されています。日本銀行は多額の国債を買入れていますが、その際、信認が維持されるよう、微妙なバランスをとって買入れを進めています。それと同時に、日本銀行の国債買入れが財政ファイナンスであるといった誤解を招かないようにするためには、何よりも財政健全化への取り組みが行われることが重要です。』

まあ仰ることはそうですなという所ですけどね。


・金融緩和の果たす役割

『第4の論点は、金融緩和の果たす役割と他の政策や取り組みとの関係です。』

ということで金融緩和の実体経済への波及の2段階論の話が今回も出るのでした。

『金融緩和の効果波及メカニズムは、中央銀行の行動が金融環境に与える第1段階と、その金融環境が企業や家計の支出増加をもたらす第2段階に分けられます。前者の金融環境について言えば、現在、銀行貸出金利にしても、社債の発行金利にしても、また、名目ベースでみても、予想インフレ率を調整した実質ベースでみても、日本は米国と同等か、それよりも低い金利水準になっています(図表8)。』

まあ足元急速に接近しているし、そもそもスライドの方では短期金利の話をしていないのが(短期金利は名目ゼロ制約があるから仕方ないのだが^^)説明的にどうよっつー気がするけど。

『それにもかかわらず、金融緩和が足りないという見方があるのは、中央銀行の供給する通貨の量のもつ意味に関する誤解があるのかもしれません。ゼロ金利のもとでは、銀行券や中央銀行の当座預金を保有する場合のコストがかからなくなるので、中央銀行が資金をいくら供給しても、それがそのまま中央銀行の当座預金等として積み上がる状態になっています。量に関しては、言わば、「暖簾に腕押し」の状態になっています。実際、バーナンキ議長も、量では金融緩和の度合いは測れないことを述べています。』

まあ現場的にはその通りだと思うのですが、この説明をすると「じゃあ何で資産買入基金での残高目標とか作ってそれを増やすと追加金融緩和と言ってるんだ」という風に一般的には「????」的な話になると思いますので、その辺りをもうちょっと丁寧に切り分けて話をした方が変な誤解を招かないような気がしますがどうでしょうかね。

『いずれにせよ、その量でみても日本は最も量が多くなっています。多分、欧米諸国がリーマン・ショック後に量を急激に増やすずっと以前から、日本は量を増やしていたので、そうした状態に人々の感覚が慣れてしまい、目立ちにくいのかもしれません。極めて緩和的な金融環境を活かして、成長力強化に向けた様々な取り組みを進めることが重要というのが私どもの強い思いです。』

ということで、最終パートは成長力強化が重要という益々麿節全開部分になるのですが、そちらは割愛でおじゃる(−−;



2012/06/04

お題「月曜なので雑談系で勘弁」

ほほう。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4YGEL6K50XS01.html
米国株:ダウ平均、年初来の上げを消す−雇用統計などを嫌気

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4XWHH6K50XS01.html
米国債(1日):30年債利回りが過去最低、雇用の伸びが減速

米国やらドイツやらの債券市場が2003年の日本みたいになってきたようにも思えますが、まあマーライオン相場になるには欧州の不良債権の出しが足りているのかどうかがよく判らん。


○市場雑談

・まあ円債も高値更新しているのですが

金曜もまあ高値更新してましたけど。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPTK081869220120601
〔金利マーケットアイ〕国債先物が夜間で144円台に上昇 欧州時間でもリスクオフ不変
2012年 06月 1日 17:49 JST

金曜はザラバベースだと確か10年が0.805%とまたまた5糸高値更新して5年が0.195%などと0.2%を割りやがるというような動きで10年とかどこのセルゲイ・ブブカかよというような5糸高値更新攻撃が続いておりますが今日はどうなるんでしょうかねえ。

んでまあそれはそれで良いのですが、ど〜も米国やらドイツやらと話が違いますなあとか思うのはここもと超長期の伸びがイマイチさんな所でございまして、5月14日の週では金融ファクシミリ新聞の付利金利ネタで中短期ゾーンが強くなった時に長い所がブルフラットしやがったのですが、足元海外の長い方の金利が威勢よく下がる中では今一ブルフラットしないというのが不思議っちゃあ不思議(まあ色々とこじつける事は可能ですけれども)でございまして、ジャパンの皆様におかれましては米欧債券市場のようなあばばばばーな展開になっておられないという事を示しておられるという状況でございまして、つまりマーライオン相場になるために必須であります所の全員参加の酔っ払い症状も食い過ぎ症状も無いという冷静な宴席モードとなっているようで誠に結構というかオモロクナイ(不謹慎)というか。


・GCレートは高いけれども6M固定はいりませんですかそうですか

金曜日の東京レポレート
http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/trp/trp120601.htm/

翌日物
T+0 0.104
T+1 0.111

ということでまあ金曜も足元だけカネナシの影響でGCレートはやや高め(高めって言ったって0.11%とかなのですが、それは先生3年の金利が0.10%な訳ですし)に推移しておりました。木曜には15日エンドという財政払いの日にエンドをぶつけた金利入札の本店オペを1兆打ったら2兆7000億円も応札があった訳ですけど・・・・・・・・

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120601.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年6月5日 2012年12月3日

毎度おなじみの6か月オペに対しまして・・・・・・・・

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120601.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(6月5日スタート分) 2,545 2,545

またまた札割れとなったのですが、その応札の減り方が中々残念でございまして、オファー日ベースで5月18日が2698億円、5月8日が3260億円、4月25日が5715億円とゆーことで4月27日の決定会合での6か月オペの減額決定前から既に割れていたのはいたのですが、オペ減額を決定して未達上等という風になってからとゆーものの応札の半分も入らないという大変に素敵な展開が継続しておりまして、この調子でやっておりますと15兆円の6か月オペの5兆円減額どころか10兆円位落ちてしまうんじゃネーノというような風情になっておられます。

ちなみに、「札割れ」というのは「応札が目標額行かなかったという現象」の話で、オペという意味で言えば応札が行かない結果として目標額に届かなかったので「未達」と言った方がオペレーション実施側の言い方としては正確、札割れしても目標額に行く場合がある(応募未達になった場合の残額をシ団引受するような昔の10年国債入札のようなケース)ので札割れと未達は意味が微妙に違いますけど、まあこっちは市場で応札する側なので札割れと言ってしまいます。

しかしまあ足元でGCがやや上昇しているわ2週間のオペを打てば応札が2兆7千億円入るわという状況だというのに、6か月の固定オペの応札が減るとか何という残念なお話ではないかと思うのでございます。つまりですな、5月18日のオペの時って例の金融ファクシミリ新聞の付利金利引き下げネタで、まあ短期市場の人間的にはそれはお前普通に与太ネタだろ(そもそも論旨に与太成分が高かったのは先日申し上げた通り)という状況ではあっても、まあ足元そんなに資金がひっ迫して居た訳でも無いですし、万万が一付利下げになったら固定金利で調達する6か月が盛大に大ヤラレになってしまいますので、札が入らないでしょというのは判るのですが、金曜もこの有様とはという感じ。

まー要するに金曜の結果で分かったのは「現状の金利体系からすると6か月の固定金利オペにはそもそもメリットが無いのでニーズが無い」という(まあ今に始まった事では無くて前から指摘はされていましたけど)ことが明白になったという所なのでしょうな。逆にこれまで良く札が入っていましたわという感じなのですが、それはそれでまあ以下自主規制という感じですかそうですか(^^)。

でまあ今申し上げましたように、このペースで残高が減っていくと10兆円の維持も危ないような気がする(6か月オペは7月実行分から年末越えになる)のですけれども、「未達が続いて行きませんでした」となった場合にどうするんでしょうかねえ。


○オペ未達関連雑談というか悪態というか屁理屈というか

この前ちょっとだけネタにした件なのですけどね。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE84N05W20120524
緩和効果は「量」で測れないと日銀総裁が強調、「金利」が大事
2012年 05月 24日 19:56 JST

まあこのヘッドラインの打ち方にはロイターの悪意を感じる次第で、本来の総裁の発言意図は「緩和効果は『量だけ』では測れない」と強調したとすべきであります。つまりそもそもの質問が毎度のマネタリーベースガーの質問なんですから、「マネタリーベースの数値だけ見て測るのは正確では無い」という話をしている筈(国会の会議録を見ないと確定はしませんが、従来の総裁の説明を持ち出せばそうなるので、上記URL記事にある『日銀の白川方明総裁が金融緩和の効果を測るのは「量でなく金利」だと発信し始めた』(上記URLより)というのは明らかに悪意を持った記事でありまして、財務省を見習って日本銀行も今後は公開質問状をこういうベンダーには送り付けるべきではないかと思いますけど如何でしょうか。

大体からして「金利を下げる為に量を出している」って前から日銀は説明している(声明文でも何でも見れば判る)訳で「発信し始めた」とか急に意見を変えたようなニュース記事にどう見ても何もない所にわざわざ波風を立ててニュースにしようという愉快犯的放火魔のようなテイストを感じてしまう次第(なので本来的に言えばこうやってURL張るとアクセス数が増えてベンダーの馬鹿記者や馬鹿営業や馬鹿経営者が「ほらヒット数が高いでしょ」とドヤ顔になるのであまりURL張りたくは無いのですが引用する手前やむなしorz)。

・・・・・・・・・いやまあすいません話が逸れてしまいましたが、まあこの件に関してはもう一つの側面があって、上記のように固定金利オペが市場金利の下限張り付きによって(ちなみに金曜は久々に2年カレントが0.10%オファーになっていたようでございます、これまでは0.10%ビットでしたのでこれは画期的(違)ですな)応札がハイランチ会長となる中、そうは言っても固定金利オペの残高目標もあるので短いオペを入れにくいという状態で、結果として昨年対比ベースの当座預金残高が(昨年に関しては震災向け供給の余波がありますが)増えませんし、うっかりすると固定金利オペ6か月の残高目標が未達になりそうな勢いになってきたというのもあって、そーゆー先行きへの布石というのもあるんでしょうなあとは思います。

でですな、それはまあそれで良いのですけれども、包括緩和政策によって金利という面では確かに金利が3年まで0.10%張り付きになって全力で緩和効果が成果として現れておりますし、社債やCPに関してもスプレッドが潰れて投資するサイドとしては大概な民業圧迫状態になっておられるという状況でこれまた緩和効果の成果が出ているのですけれども、その一方で包括緩和で買っておられます所のETFに関しましては欧州債務問題やらを受けて絶賛下落しております訳で、こちらは包括緩和の効果が現れておりませんがさて如何致しましょうかと存じますが・・・・・・・

とか言われたらどうする積りなのでしょうかねと思うのですけど(^^)。2000億円とかしょぼい事言わんともっと買ってくんなましとゆー気はするんですけどにゃあ。外債を買って海外に金を流すよりも国内株式市場に直接金が行くETFの方が良いと思うのはポジショントークの屁理屈ですかそうですか(^^)。


○今さらなのですが4月FOMC後のバーナンキ会見から

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf

時間が無くなってしまったので今さらの虫干しネタから。

・QE3実施の条件について&「量的なガイダンス文言」

QE3の条件って何ですねんという質問がありまして(本文5ページです)ロイターのPEDRO DA COSTA記者の質問から。

『PEDRO DA COSTA. How much more weakness would you need to see for QE3 to be in place? Would you need to see an actual recession take place?』

『CHAIRMAN BERNANKE. The question is, you know, “How much more weakness do we need?” The Committee has to make those assessments, and we’ve been working to try to provide more-explicit guidance, quantitative guidance about our policy reaction function, but so far, you know, we haven’t really done that.』

ここでしらっと出ているのですが、「more-explicit guidance」として「quantitative guidance about our policy reaction function」というのが検討されているという発言がございまして、もしかすると今月のFOMCでは追加緩和のようなものとして「量的なガイダンス文言」という益々何が何だかワカランチ会長な目くらましを打ってくる可能性もありますなあと思います。

まー量的なガイダンスとしては「現在の経済状況および先行き見通しによれば、FEDのバランスシート規模をどのような時期まで維持する事が正当化される」とか言い出すのかなあとか思いますけれども、それでは面白くないので一ひねりする必要もあるかも。

『And I can only say qualitatively that the Committee will continue to look at the evolution of the outlook, try to assess whether unemployment is making sufficient progress towards our objectives, and, in particular, whether the recovery is still continuing. And we remain prepared to use balance sheet tools to support the recovery and to help make sure that unemployment continues its downward path towards longer-run normal levels.』

ということで、「必要ならばやりますよ、バランスシートツールもありますよ」という発言はしながらも、4月25日時点では「失業率が我々の目的に向けて改善しているかどうか、経済は回復に向かっているかどうかを点検しながら」検討します。という話をしておりまして(そらまあ当たり前ですが)特段の決め打ちモードでも無い、というよりは声明文やSEPのトーンは強かったですよね(その強いトーンを会見で火消ししている感じでしたが)という所ですな。


・ガイダンス文言とSEPの矛盾について

これは以前別の質疑を引用しましたが、こちらの方が話が長い。CNBCのSTEVE LIESMAN記者の質疑から(本文6ページより)。

『STEVE LIESMAN. Mr. Chairman, according to the latest forecast, 10 members of the FOMC see a 1 percent or higher fed funds rate in 2014; 7 of them see a 2 percent or higher fed funds rate.』

さいですな。

『Under that-those conditions, how can the guidance in the statement, that you remain exceptionally low through late 2014, be justified? And is there a point at which the dissonance between the individual forecasts and the guidance get to a point where one or the other is no longer tenable?』

SEPの政策金利見通しの引き上げとガイダンス文言の齟齬はどうなってますねんと。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, there’s certainly a range of views, as you’ve noted, but these projections are inputs into a Committee process.』

開き直っているというか何というかなのですが、「このSEPによる各メンバーの見通しはFOMCの議論のプロセスにおけるinputである(キリッ)」というのは何ですねんという感じではございます。

『And it’s in the Committee meeting that we had yesterday and today where we debate not only the possible outcomes, but also the risks, the uncertainties, all the things that inform our collective judgment. And as I said, the Committee had no difficulty coming to a consensus that the guidance that we gave is still appropriate. Again, if there’s a substantial change in the economic outlook in either direction, then the guidance would change appropriately. But for now, I think the Committee is comfortable with the consensus statement that we put out.』

comfortableっていうのは前の質疑でも出た(以前ネタにしました)のですが、このSEPでの各委員の見通しはインプットの一つであって、それを基に議論をして、リスクなども勘案した結果としてあのガイダンス文言になったんじゃ文句あるかコノヤロー(とは言ってませんが^^)とのお告げです。

・・・・・という説明で記者さんが引き下がるわけでも無く、いやいやそれはという質問が続く。

『STEVE LIESMAN. Do you worry about creating confusion in the market between the guidance and the individual forecasts?』

で、逆さ絵おじさんのお答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, again, the individual projections are inputs to the Committee decision, so the Committee decision is the critical element in that respect. We are continuing to work to become more transparent, and we have a variety of things that we’re looking at, so you’ll have to stay tuned for that. But again, the Committee was quite comfortable with the consensus that we have reported today.』

なんかもう開き直っている感が強いのですが、そんならそもそもSEPでの個別金利見通しのプロットとかするなよなとは思う次第で、まーFRBの執行部としても内心ではアチャーと思っているのではないかという気もしますけどどうなんでしょうかね。

という今さら小ネタでございました。




2012/06/01

お題「地雷をわざわざ踏みに逝かんでも・・・・・・/市場メモなど」

USTがいい感じで連日のアヒャヒャヒャヒャヒャ相場になっておりますな。

○市場的にはスルーしてた麿講演ではありますが・・・・・・

まあ市場的にスルーでもあったので斜め読みだけして昨日ネタにしませんでしたけれども、どさくさに紛れてまた地雷を盛大に踏みに逝っておられる麿クオリティな講演だったようなので少々ネタに(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120530a1.pdf
人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス―日本の経験から―
(日本銀行金融研究所主催2012年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳)

まあ何ですな、ネタ的には別に今の市場動向云々に関する話とか金融政策運営に関わる話とかをしている訳でも無いので市場的にどうという話でも無いのですが、麿の得意技の「一般的に申し上げますと」攻撃によってまた例によって例の如く変な地雷踏んでおられるのではないかと思う講演なのではございます。

・人口動態の変化に関する考察が重要という話ですが・・・・・・

『1.はじめに』から。

『今年のコンファランスのテーマは、「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス」です。このテーマを議論する上で、日本ほど格好の事例を提供している国はないと思います。日本の総人口は2007 年をピークに、生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じています。老齢人口比率、すなわち、総人口に対する65 歳以上の人口の比率は1990 年の12%から2010 年には23%と急速に上昇しています(図表1)。過去20 年間、日本経済の成長率は徐々に低下してきました。この期間の前半の低迷は主としてバブル崩壊の影響でしたが、後半期の低成長には、急速な高齢化進行という人口動態の変化が様々なルートで影響を与えています。』

という話でございまして、日本の低成長が長続きしている要因としての人口動態の変化っつーテーマは、これまでの世界においてあまり例が無いのでこの考察が重要であるし、将来的には他の主要国でも同じ問題に直面する可能性がありますよね、というまあ仰せご尤もな話をしているんですよね。

『生産年齢人口、すなわち、15 歳から64 歳までの人口一人当たりGDP 成長率をみると――これは短期的には人口動態の変化にあまり左右されない指標ですが――、日本はG7諸国の中では最高です。しかし、高齢化に伴う生産年齢人口比率の低下の影響を受ける、総人口一人当たりの実質GDP 成長率はG7諸国の平均並み、そして、総人口の減少の影響を受ける実質GDP 成長率は下位グループに位置しています(図表2)。』

ふむふむ。

『新古典派成長理論では通常、人口と生産年齢人口の区別はなされませんが、この違いを明示的に考慮することなしには、日本が現在直面しているような問題は分析できません。』

ここでしらっと新古典派をdisっているのですが、去年の同じ国際コンファランスでも

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110601a.pdf
バブル、人口動態、自然災害
―― 日本銀行金融研究所主催2011年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳 ――

『次に第2の研究課題として人口動態の問題を取り上げます。ケインズは、1937年に行った「人口減少の経済的帰結」という講演の中で「人口減少期には、総需要が期待を下回り、過剰供給の状態が継続しやすい。従って、悲観的な雰囲気が続く可能性がある」と指摘しています。ケインズは、伝統的なマルサス流の人口増加懸念論とは対照的な視点を提供しました。新古典派成長理論では、経済変数は、一人当たりGDP、一人当たり資本ストックというように、「一人当たり」で議論されることが多く、これでは日本が現在直面しているような問題を扱えません。』(上記URL先にある昨年の金融研究所コンファランスでの講演より)

『日本は急速な高齢化と生産年齢人口の減少といった人口動態の変化期を迎えています。日本経済の現在と将来を考えるために、人口の規模や構造の変化を分析しようとしたケインズの視点が、より重要になってくるのではないでしょうか。この点、先進諸国はもちろんのこと、今後は、エマージング諸国も同様の課題に直面することが、高い確度で見込まれていることに言及したいと思います(図表8)。』(上記URL先にある昨年の金融研究所コンファランスでの講演より)

ってな話をしていまして、まあ新古典派的な見地からの日銀批判も多い中でこういうネタを打ち込んでくるという事ですが、だいたいロジックとして「いやおまいらの批判なんだがそもそもの立論の前提が日本の現実と合っているのか」という反論が日銀的な反論となっていたと記憶しておりますので(細かいツッコミは頭の悪いあたくしは対応できませんのでご勘弁)また新古典派disかと思ってしまいましたですが。

ちなみに、上記の去年の講演ですがネタにしたのは遅くて去年の6月28日でした(汗)
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenshirakawa11-01.html#shirakawa110628


『過去10 年以上にわたって、海外におけるマクロ経済政策の論議に当たっても、日本の経験は頻繁に引用され、様々な政策提案もなされていますが、人口動態の違いを考慮することなく一般的な結論を引き出すと、時として、ミスリーディングなものとなる危険もあります。』

『人口動態の変化に伴う問題は、日本だけでなく、諸外国にとっても今後、重要性を増していくと考えられます。例えば、中国の生産年齢人口の増加率は1990年から減少傾向をたどり、2020 年にマイナスになると予想されています(図表3)。他のアジア諸国にとっても、高齢化はやがて到来する現実です。欧州をみると、ユーロ圏周縁国では、2007 年までは移民流入が人口増加に大きく寄与してきましたが、金融危機後に債務問題が深刻化する中で、移民の流入テンポが鈍化、ないし流出が進み、足もとでは人口成長率の鈍化や減少から潜在成長率の低下に直面している国もみられます。』


・でまあ何が地雷の第一弾かと申しますと・・・・・・・

『人口動態の変化とマクロ経済のパフォーマンスというテーマの下で議論すべき点は数多くあり、私の短い挨拶ですべてをカバーすることはできませんが、以下では、いわば「人口問題先進国」として、日本の経験の幾つかをお話しします。最初に、日本の人口動態の変化に関する事実を簡単に説明し、次にそのマクロ経済のパフォーマンスへの影響を取り上げます。最後に、人口動態の変化に伴う課題について触れてみたいと思います。』

で、最後のまとめの『5.おわりに』では、

『以上、人口動態の変化が日本経済に様々な影響を与えていることを説明してきました。振り返ってみると、世界的な信用バブル崩壊が起こるまで、バブル崩壊のもつ深刻な意味は学界でも政策当局者の間でも十分な理解がなく、日本の経験は日本に固有の出来事と片付けられる傾向がありました。同様に、急速な高齢化や少子化のもつ意味についても、この問題のもつ重要性と比較すると、必ずしも十分な理解があるようには思えません。しかし、ウィリアム・ぺティの「政治算術」やマルサスの「人口の原理」を持ち出すまでもなく、経済学はもともと人口問題を研究対象としていました。経済政策の立案にあたっては、人口動態の変化とその政策含意に関する基礎研究が欠かせません。今回の会議が、そうした基礎研究の蓄積に貢献することを期待して、開会の挨拶に変えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。』

という事で、今回のコンファランスって金融政策がどうのこうのという話とはあんまり関係なく、さらには現下の金融政策運営に関するインプリケーションは1ミリも無い話でありまして(だから市場が1ミリも反応しなかったのですけれども)、人口動態の変化が現在一般的とされる経済理論による考察の中でカバーできないような影響を与える可能性があるので、人口動態の変化に関する考察を経済理論の中に取り込んでいく事が大事ですね、というまあ一般的な話をしておられるのですよね。

・・・・・・でですな、その一般的な話は話で結構だと思うのですが、日本の足元で問題と言われて毎度毎度ああだこうだ言われているのってデフレがという話でありまして、デフレに関する言及もこの挨拶中にあるのですが、ここでは人口動態の話をメインにしている事もあって金融政策要因の話って華麗にスルーしているので、悪意を持って読まれると「金融政策要因の話をしないで長期デフレの要因を人口動態に求めるとか日銀は相変わらず責任逃れの理論構築に熱心である」という批判が飛んでくるの大楽勝という所ではございますがなという所ですがな。

まあ責任逃れの理論構築とまではあたしゃ思いませんけど、それにしても日銀総裁という金融政策の元締めの立場で、デフレ脱却しようという話をしている筈の中で、人口動態という短期的にどうしようもない問題を成長の鈍化やデフレ、財政赤字拡大の要因ですね(中でそういう話がある)というような説明をするというのは、やはり「何をのんびりした話をしているんですか」という印象を対外的に与え易いと思うのでございまして、学者としての白川さんが話をするなら別に結構ですけれども、日銀総裁というお立場を踏まえますと、あまりこの手の「学術的な」話を連発するというのもどうかと思うのですよね。そういうのは副総裁とか金融研究所の所長とかにでもやってもらうのが宜しいんじゃないでしょうか。

#と思うとやはり武藤総裁、伊藤&白川副総裁の組み合わせだったよなあとか思いますが

後でニュースクリップしておきますが、足元で消費税法案問題に関して何か進展しそうな流れになる中で、またぞろ次のネタという事で日銀法改正ネタが飛び出してくるというタイミングの中でありまして、まあ何と申しますか間が悪いという所でございまして、この辺の政治的なセンスの方も少しは何とかして欲しいものだと思うのでございますけれどもねえと存じます次第。どうせその辺の配慮とかしているとは思えませんですからねえ。

いやまあその辺のリアクションも覚悟の上でネタ投下しているのであればそれはそれで結構なのですが、2月以降の麿節一般論講演が現実に行っている金融政策との話の整合性という観点からして少々アレではございませんかという風になっておりまして、それは結局の所金融政策運営の元締めが出すメッセージとしてはコミュニケーションの混乱を招くという弊害に繋がるように思えるのでございまして、頼むからあと1年「一般的に申し上げますと」というのを我慢して頂きたいものであります。

#と言っても任期切れが近くなると政策委員の皆様がフリーダム発言をするというのが毎度の仕様になっているので麿の場合も益々「一般的に申し上げますと」攻撃が激しくなるのではないかと思われるので今から頭が痛いのですけれども・・・・・・


・悪態ばかりでは何なので本論を読んでみましょう

『3.人口動態の変化が日本の経済に与えた影響』という所ですが。

『次に、人口動態が日本のマクロ経済のパフォーマンスに与えた影響という観点から、経済成長率、物価上昇率、経常収支の3点について、整理したいと思います。』


ということですが、まあここは興味深い話ではあります。

『経済成長率』

『まず、人口動態の変化が日本経済に与えた影響のうち、最も重要な経済成長率に与えた影響を取り上げます。ソローの成長理論モデルでは、全人口が労働力だと仮定されています。この場合、労働節約的な技術進歩のある場合の長期均衡状態では、一人当たり成長率は技術進歩率によって決まり、マクロの成長率は人口成長率と技術進歩率、すなわち労働生産性増加率の和になります。日本のように高齢化から生産年齢人口が減少し始めた経済では、仮に労働力率を一定とすると、労働力人口も減少し労働供給が制約されるため、労働節約的な技術進歩がない限り資本収益率が低下し、マクロの成長率には下押し圧力がかかります。』

『過去10 年間の日本の現実の状況に当てはめて言うと、労働力人口は年率0.3%の減少、労働生産性は0.8%の増加、成長率は0.6%ということになります(図表8)。ただし、このような分析は高齢化や人口減少の影響を考える上での第一次近似としては有用ですが、政策を考える上では、以下で述べるように、他の要因を取り込んだもう少し現実的なアプローチが必要です。』

ほう。

『第1は、労働力率が長期的に変化する可能性です。例えば、日本の女性の労働力率は国際的にみて低く、特に30 歳代の労働参加率が一旦低くなるという「M字カーブ」の傾向が顕著であり、現在でもそうですが、近年、そうした傾向は徐々に変化しています(図表9)。』

『第2は、総人口一人当たりの成長率と労働力人口一人当たりの成長率の違いです。ソローの成長モデルでは、全人口が生産年齢期にあり労働力人口に一致すると仮定されていますが、高齢化が進むにしたがって両者の乖離は大きくなります。』

なるほろ。

『非労働力化した高齢層のウェイトが高まっていく過程では、総人口一人当たりの成長率は、労働力人口一人当たりの成長率よりも低くなります。生産要素の供給力という観点では、労働力人口一人当たりの成長率が重要ですが、財やサービスの需要を支える消費者の平均所得という観点では、総人口一人当たりの成長率の方が重要です。前者の成長率が高くとも、後者の成長率が低下すれば、需要削減圧力が加わり、経済成長率を押し下げると予想されます。』

『第3は、いわゆる「スペンディング・ウェーブ」の影響です(図表10)。日本の1980 年代後半の資産バブル発生のひとつの要因は、この時期にベビーブーム世代が住宅購入を最も活発に行う年齢層となり、住宅購入を活発化したことです。同様に、1990 年代後半以降の自動車等の国内販売の減少には人口動態の変化も大きく影響しています。一方で、高齢化の進展は医療や介護といったサービスへの需要増加を意味します。現在、日本の消費のうち、約40%は60 歳以上の年齢層によるものであり、今後、その比率はさらに上昇すると予測されています。そうした潜在需要の増加に応じて供給体制が変化すれば、潜在成長率の低下は緩和される筈です。』

ふーん。

『第4は、財政バランスの変化を通じる影響です(図表11)。急速な高齢化は財政赤字の拡大をもたらす大きな要因となりました。言うまでもなく、高齢化の進展は、成長率の低下に伴う税収の伸び率低下や、医療、介護、年金等の社会保障関係費の増大を通じて、財政赤字の拡大要因となります。また、将来の財政バランスに関する不確実性が高まれば、現役世代の消費抑制要因となり、成長を下押しする可能性があります。』

ふむふむふむ。

『さらに、政治プロセスを通じる影響も考えられます。』

ほう。

『高齢化は当然のことながら選挙民の平均年齢の上昇を意味しますが、高齢者の投票率が高く、また、高齢者が社会保障制度の維持の選好を有するとすれば、その程度に応じて、財政赤字が増大する傾向が生じます。』

>高齢者が社会保障制度の維持の選好を有するとすれば、その程度に応じて、財政赤字が増大する傾向が生じます
>高齢者が社会保障制度の維持の選好を有するとすれば、その程度に応じて、財政赤字が増大する傾向が生じます
>高齢者が社会保障制度の維持の選好を有するとすれば、その程度に応じて、財政赤字が増大する傾向が生じます

・・・・・・・・・・いやまたこれはこれは(^^)。

麿様におかれましてはピュアに現象面の話をしているだけだと思うのですが、これはつまり「財政再建の為に年寄りは早く三途の川手漕ぎクルーズ船ツアーに出掛けろやヴォケ」という話の裏返しみたいな事なのですけれども、何もあーたそんな話を中央銀行総裁のお立場の方が言わんでもという盛大な地雷発言がこんな所にもあるのが麿の一般的に申し上げますとプレイのオソロシスな所でありまするorz


『第5は、金融資産選択を通じる影響です(図表12)。特に、経済成長に欠かせないリスク・マネーの供給という観点からは、高齢者の増加が家計の金融資産の選択を通じて、どのような影響を与えるか検討する必要があります。しかし、家計の金融資産選択は、年齢だけでなく、労働所得の動向や、住宅の選択などと同時に決定される問題です。日本については、高齢者になれば他の条件を一定として株式保有が増えるのか、あるいは株式を売却し、国債などの安全資産選好を強めるのか、といった点について、マイクロ・データを用いた分析結果が十分には蓄積されていません。今後の研究が期待される分野です。』

てなまあそんな話をしております。んで物価上昇率と経常収支の所まで引用していると全文引用状態になって何やってんだという事になりますので(^^)、まあ物価上昇率の所だけちょっと引用してみます。

『人口動態とマクロ経済のパフォーマンスとの関係で、次に取り上げる論点はデフレとの関係です。人口動態とデフレと言うと、一瞬、その論理的な関係が理解しにくいかもしれませんが、先進国のデータを横断的にみると、興味深いことが分かります。すなわち、2000 年代の10 年間について先進24 ヶ国の人口増加率とインフレ率を比較すると、両者の間に正の相関が観察されるようになっています(図表14)。この事実は、マネーの増加率とインフレ率の相関が先進国で近年弱まってきていることと対照的です(図表15)。この関係をどのように解釈すべきでしょうか。』

という事で、まあそれはそれでさいだっかとは思いますが、そもそも図表15の部分って「マネーの伸び率とインフレ率」って名前ですけれども、比較しているのが「マネーの伸び率−実質成長率(%ポイント)」と「インフレ率(%)」で、人口動態の変化によって実質成長率が変わっていますがなという話をしている後に実質成長率控除後のマネーの伸び率を引いてインフレ率と比較するのって何か妙な気がするんですけど、あたしゃ頭が悪いので良くワカランチ会長でございます。

つーのもありますが、そもそもこう言いだすと当たり前ですが「日銀はデフレ脱却に金融政策が効かないと言っている」というようなメッセージを与えかねない話でございまして、何かもうちょっと物の言いようっつーのは無いのかねとか思うのですけどどうなんでしょ。

『人口変動とインフレ率の相関に関しては、両者が景気循環を起点として共変動している側面を反映している部分があります。例えば、欧米では、景気の変動が需給ギャップを変動させてインフレ率を変動させると同時に、移民の流出入によって人口の増加率が変化するよう作用した側面があります。しかし、日本のように、移民の流出入が人口変動に及ぼす影響は無視できる国では、景気変動が人口変動をもたらした度合いは小さいと考えられます。その日本についてみると、1990 年代以降、インフレ率と人口変動率の間に正の相関関係が観察されるようになっています(図表16)。これには、高齢化に伴う経済の所得形成力の低下も影響してきたと考えられます。』

という話で、まあそれ自体はファクターの一つとしてあると思いますが、金融政策要因に関する説明が無いとちょっと立論に無理矢理感が出てくるので、まあ正直言って最初の成長の話に止めておいた方が「中央銀行総裁の講演という意味では」吉だったんじゃネーノという風に思いますがどうなんでしょうかねえ。

・・・・・といった所でまあ中身自体は足元の金融政策的に何かインプリケーションがあるかと言うとまるでございませんが、図表が多くてふーんと思いながら読めるのでお暇な方はどうぞという所でありまする。


○あわせてお勧め

とか書くとどこぞのあたくしの嫌いな密林みたいでアレですが(^^)。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2012/wp12j06.htm/
長期金利の変動要因:主要国のパネル分析と日米の要因分解

『要旨

本稿は、日米を含む先進10か国のフォワードレートに関するパネル分析を通して、長期金利の変動要因について検証したものである。インフレ予想や自然利子率を左右する労働生産性の上昇率に加え、財政状況や対外ファイナンス、人口動態も長期金利に有意な影響を及ぼすことが確認された。』

>人口動態も長期金利に有意な影響を及ぼすことが確認された。
>人口動態も長期金利に有意な影響を及ぼすことが確認された。
>人口動態も長期金利に有意な影響を及ぼすことが確認された。

キタコレ。

『主たる分析結果は、以下の通りである。第1に、財政指標としては、フロー変数(プライマリーバランス)よりもストック変数の説明力が高く、また、ストック変数としては、グロス政府債務よりもネット政府債務の方がフォワードレートに対する説明力が高い。第2に、対外ファイナンス指標としては、フロー変数の経常収支よりも、ストック変数のネット対外債務の説明力が高い。政府債務の増加のすべてを海外からの借り入れでファイナンスした場合には、国内からの借り入れに比べ、フォワードレートの上昇が約2倍となる。第3に、高齢化の進行は、金利の上昇要因ではなく下落要因として作用している。高齢層の金融資産需要、特に安全資産に対する需要の強さなどを反映しているとみられる。』

>高齢化の進行は、金利の上昇要因ではなく下落要因として作用している
>高齢化の進行は、金利の上昇要因ではなく下落要因として作用している
>高齢化の進行は、金利の上昇要因ではなく下落要因として作用している

ほほう。

『また、パネル分析で推計されたパラメータを用い、日米のフォワードレート変動の寄与度分解も行ったところ、日本では、政府債務の増加が金利上昇圧力として作用する一方、団塊世代の引退に伴う急速な高齢化の予想や、ネット対外債権の増加が金利低下を促してきた。米国では、2000年代入り後、ベビーブーマーの引退に伴う将来の高齢化が織り込まれ始めたことが、金利低下圧力となっている。』

ということで、本文はこちらですがまだ斜め読みしかしていないのでネタにするかどうかは不明。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2012/data/wp12j06.pdf
長期金利の変動要因:主要国のパネル分析と日米の要因分解



○コールやGC上昇して金利入札オペ炸裂するも3か月TB入札は前週比堅調とな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120531.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2012年6月1日 2012年6月15日

久々に金利入札オペの実施。

昨日は朝からコールが0.10%で出合ってみたり、GCレポが0.11%水準とかになってみたりと当座預金残高自体はあるのですが資金が一部無い人がいて市場的に金無芳一状態になってしまいましたという所で。

ちょっと足元で財政資金が下振れするのが続いていて、一方でどうせ6月15日になると年金定時払いがどどーんとあるので資金が出てくるというのが明白という状態なので、手前だけ瞬間的に資金が無いという事ですが、まあそれはそれとして市場機能が低下しておりますので資金偏在が起きやすくなっているというのもあるのでしょうなあとか思いつつオペ入札を眺めるのでした。

結果はこちら
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120531.htm
共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(6月1日スタート分) 27,035 10,005 0.100 0.100 37.0

応札27000億円ですかそうですかという事で、まあGCは引き続き高めに推移していましたが、同日実施された3か月TB入札の結果はと言いますと・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240531.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛
(募入最高利回り)(0.1002%)

(4)募入最低価格に 5.0778%
 おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭5厘1毛
(募入平均利回り )(0.0998%)

ということですが、前週の3か月TBの入札は(償還までの日数が同じなのでプライスで比較して無問題)平均が99.9750円で、足切りの按分が6.6633%でしたので、足元のGCレートが上昇しても前週よりも入札結果は強くなっているという大変に素敵な結果でございまして、無いのは超足元資金だけで3か月とかの金になると確りとニーズがアリアリという状態で有る事が確認できて誠にアレでございましたですよ、あっはっは。



○ニュースクリップである

時間がねえええのでURLだけ張っておく

・日銀法改正ネタがまた来ましたのう

http://mainichi.jp/select/news/20120601k0000m020046000c.html
日銀法:民主党有志議員が改正私案 政治関与強める内容
毎日新聞 2012年05月31日 20時15分(最終更新 05月31日 20時46分)

いやもうね、財政問題で欧州問題がアレとか言ってる中でこういう「中銀に対する政治の影響力を強める法案」を「プライマリーバランスが真っ赤っ赤」の国の「政権与党議員」が出して、しかも「財政マネタイズ」を主張しているとか、何とも素晴らしいセンスで頭がくらくらしますが。

http://www.asahi.com/politics/update/0531/TKY201205310171.html
自民「尖閣の国有化」「日銀法改正」 衆院選公約第2弾

・・・・・・・・自民党っていつからネタ政党になったんですか????????


・ブラード総裁は平常運転

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4VSG66JTSE801.html
セントルイス連銀総裁:資産購入がインフレ目標達成を可能に

『5月31日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は31日、日本銀行による資産買い取りが日銀の中期的なインフレ目標達成を可能にするとの認識を示した。来日中の同総裁は東京都内での記者説明会で、日銀の資産買い取りについて、日本がデフレ状況から抜け出すことに寄与すると指摘し、「最終的に成功するだろう」と述べた。』(上記URLより)

資産買入政策を重視するブラード総裁らしい発言ですな。で、米国の金融政策に関してはいつもの物価重視姿勢。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4VIVY6JTSEE01.html
セントルイス連銀総裁:追加緩和の適切な時期ではない

『5月31日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は31日、米国が追加緩和を実施するのに適切な時期ではないとの見解を示した。同総裁は都内で記者団に対し、ギリシャがユーロ圏から離脱する場合は、適切に実行されることが必要だと語り、欧州通貨同盟への大きな打撃を伴わない形での離脱は可能だとした。ブラード総裁はまた、日銀は資産買い取りを通じて、当面1%としている物価安定のめどを達成できるだろうと述べ、資産購入の政策については白川方明総裁と全く意見が同じだとした。』(上記URLより)

とまあそんな所で^^;

#日曜の証券アナリスト2次試験を受験される皆様におかれましては、最後まで答案を何でもいいから埋めるよう粘って下さいませ♪