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2012/07/31

お題「大体雑談でございまするが」

公共放送ニュースが五輪ばかりで一般ニュースが全然放映されないので只でなくさえニュース見ないあたくし益々世の中ワカランチ会長となり甚だ遺憾の極みでございます。

ところで武者先生が連続で中国経済disるのはまあ良いお話なのですが、返す刀で米国経済を賛美するのは誠に残念な事であります。
http://www.musha.co.jp/4078

○色々忙しくてスルーしていたのでオペ短期雑談をまとめて

・だから長い固定オペはあきらメロンと

オペに関してはこちらのページから見るのが吉です。今回の雑談はここ1週間少々のオペレビュー雑談をするので一々URLを付けませんっす。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_o.htm

先週来オペが色々と工夫を凝らして、というと綺麗な言い方になりますが、まあ何か日々七転八倒しているようで調節担当部署におかれましては誠にご愁傷様に存じますという次第でござります(−−)

先日ネタにしましたように20日金曜には固定金利オペの柔軟化決定前に大変に不評の高かった「3か月のオペを6か月でロール」というのをやらかした訳ですが、当座預金残高自体は高水準なるも超過準備があまり動かないという事もあって1兆円の札が入った訳ですよ。

でまあ24日火曜は6か月のオペのロールを6か月で実施したら応札が9075億円(元の折り返しは8000億入っていた)で、まあこの辺りはGCレートがサガランチ会長というか0.105%よりも高かったような感じで推移してたのでまあそうかなという所でした。更に25日には3か月のオペを新規で入れたのですが、3か月オペは最近(今月のMPM前は6か月オペばかり打っていて、3か月オペオファーってのは17日以降という感じになっていました)は応札が4倍超あって按分比率が20%少々という推移でしたが、6か月オペとは大違いで37465億円の応札と短いオペなら要るけど長いのは要らんがなというのが鮮明に。

・・・・・・・・という状態だったのですが、新規オペ入れても札がどどーんと入るという事で、物は試しにやってみたのかも知れませんが、26日には再び3か月オペを6か月でロールするというニーズの無いプレイを実施したら物の見事に応札4475億円(前日の3か月オペの10分の1程度の応札とな)となってニーズの無さというか市場の態度がきっちりし過ぎじゃと苦笑を禁じ得ない次第でありました。

でもって昨日は3か月のオペのロールで今度は2か月物(2か月ロングですけれども)を打つというオモシロプレイが登場(^^)。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120730.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月1日 2012年10月26日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120730.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月1日スタート分) 38,015 8,010 21.1

まあ当然のようにニーズ有りまくりで今回も按分20%近辺という結果でございまして、まあ確かに年末に向けて買入が拡大すると段々固定金利オペのニーズが落ちる可能性があるから残高入れておきたいという気持ちも判るのでございますが、まあ買入拡大しても超過準備を普通に積んで行く形になって(というかもっと正確な言い方をすると超過準備を積んで行く形にならないと買入拡大が段々困難になってくるのですけど)、市場のファンディングニーズから目の子というか勘で考えますと(^^)、25兆円の固定金利オペはそのまま平常運転でニーズがあると思いますので、そんなに慌てて長いの打たなくても良いような気がするんですが、つーか折角「機動的に対応」という事になっているのですから今後は徐々に短いオペを入れて頂きたく存じますけどどうでしょうかねえ。

#短いオペにすると残高確保のためにターンオーバーが増えるので毎日資金供給を沢山やっているように見えるという副次的効果(????)がありますな(^^)


・買入系雑談

基金短国買入ですけれども、MPMで買入応札下限金利の撤廃が行われてさてどうなりましたかと申しますと、17日は3000億円のオファーに対して30194億円の応札で0.098/0.098となったのですが、27日は応札を堂々6000億円に倍増したのですが、一方で(この次に書きますが)短国入札がMPM翌週の謎不明玉祭りから徐々に普通の入札に戻って来た(超過準備付利の投資家の短国買いレベルの目線が変わらなかったのが原因ですけれども)という事で、やや在庫の持ちも増えたのか、27日は堂々の47872億円の応札で落札レートも0.099/0.099と前回対比でレート上昇。

まあ先々週19日の3か月TB入札で不明玉と言われるのが2.5兆円もあったので、超過準備付利の投資家が買いの目線を変えてきた(0.10%割れも普通に買うようになった)のかと思ってあたしゃかなーりびっくらこいた(想定外)というか焦ったのでありますが、翌週の2か月TBと3か月TBに関しては足切りは超極薄按分ですけれども0.10%レベルに届くわ、所謂不明玉も通常レベル(2か月は不明やや少なめの2000億程度で3か月は大体通常運転レベルの11000億程度)でして、19日の3か月短国入札は何だったんだという感じ(まあ担保玉か何かで偶々ニーズがあったんでしょと思いますがタイミング的に人騒がせにも程があるので、買えなくなったら困る系の意識もあったのかもね)でありますが、0.10%は超岩盤の強力ビットサイド状態というのはカワランチ会長の中、今のところは短国買入をホイホイ入れても普通にジャンジャン買入が可能という所なんでしょうな、うんうん。

ただまあ今ホイホイ短国買入入れても買えるのって殆ど3か月新発近辺になると思いますので、3か月ごとに買入ロールしないといけないので中々オイソガシヤと申しますか、まあ徐々に買入のインパクトが市場に効いてくるでしょうなあとゆーところですがそれがどのくらいになるのかは正直ワカランチ会長。


CP買入に関してはMPM後の7月13日(なおこの時はまだ応札下限金利撤廃は適用されていませんでした、というのに落札結果見た時にあたくし最初気が付かなかったという末代までの不覚事案があったのは内緒です)は出来上がりの買入金利が0.111/0.110だったのですが、これまた足元でGCレートが微妙に高めに推移しているせいか25日の買入レートは0.112/0.111と一つ上昇しておりまして、こちらは下限撤廃の影響今のところなしという感じです。まあ買入の玉さえあればさすがに10は割らんでしょという感じ。


あと、基金国債買入とか輪番とかですけれども、20日の輪番1年以内の落札が出来上がりで多分0.100%と思われる結果(基準利回りとの較差入札なので出来上がりの数字は基準利回りを見ないと正確にはワカランチ会長なのですけれども、たぶん較差0.000/0.000の落札という事は出来あがり0.100%でしょ)となったのは何ぞなもしとか、24日は基金国債買入の1-2年の所とりあえず6000億円もオファーして何とか応札入ってましたけど、さて今日は2年国債の入札がある訳ですが、こちらの金利が0.10%割れとかに沈んでしまうと今後札入るのかねという大変に香ばしいアレを感じるものでして、まあ2年国債の入札結果次第では今後はやはり2-3年を買うしかありませんなあ→2-3年の需給が更に逼迫してカツカツになる→中期金利がアガランチ会長になる→さてどうすんでしょ的な流れになり兼ねませんので、まあニヤニヤしながら眺めたいと存じます。


○ECB理事会プレビュー雑談

ユンケル先生のお告げがあったのですな
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE86S00T20120729
ユーロ圏首脳とECB、通貨安定に向け協力=ユーログループ議長
2012年 07月 30日 07:48 JST

『[ベルリン/パリ 29日 ロイター] ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長は、ユーロ圏が決定的な局面にあり、ユーロ圏首脳は通貨ユーロ安定への決意を示すため、欧州中央銀行(ECB)と協力していくと述べた。29日の南ドイツ新聞、仏フィガロ紙とのインタビューで明らかにした。』(上記URLより、以下同様)

ほう。

『同議長は、スペインの国債利回り上昇に対応するため、今後数日以内にユーロ圏首脳が対応策を決定すると表明。「時間の無駄は許されない」と述べた。』

>スペインの国債利回り上昇に対応するため
>スペインの国債利回り上昇に対応するため
>スペインの国債利回り上昇に対応するため

・・・・・・・・・・・いやね、マジな話ECBの利下げ&預金ファシリティ金利ゼロ化によって欧州コア国というか安全国の2年とかの国債に買いが入って利回りマイナスとかになった訳でして、その流れが域内国債の利回りのダイバージェンスに繋がって来たともいえる訳でして、今さらドヤ顔で(この前のドラギ講演もそうですが)そういう話をされても何つーか政策当局のマッチポンプに見えてしまうのは手厳しいですかそうですか。

米国の場合はリーマンショックからAIG問題までの間で短期金融市場的に色々と肝が冷える状況があったせいか、「リアルゼロ金利は市場の流動性を却って枯渇させる」という教訓を得たように見えるのですが、どうも欧州金融政策当局者におかれましてはその辺の感覚が無いんじゃネーノと思う所で、こいつらまたアホウな施策を打って変な事になるんじゃないかという懸念が抜けないあたくしは心配性ですかそうですかという所なのですが、どうも気になる所ではございます。

つーかさ、相変わらず短期金融市場への理解の無い方々がそこらで「ECBが預金ファシリティ金利をマイナスにするような施策も期待」とか抜かしている訳ですが、そもそもデンマークのマイナス金利って一義的に「超過準備を大量に保有する事のペナルティー」であるのですが、金融不安の中では「超過準備をゲップが出るまで保有させる」というのが危機伝播を防ぐために決定的に重要でしょというのは毎日のように場末のサイトであたくし申し上げております次第なのですが、ECBはどうも調節実務的に実はかなりアレな方々なのではないかという気もしますので、何が飛び出すやらという感じっすな。

しかしまあ何ですな、結局SMP再開するんだったら別に利下げせんでも良かったじゃないか(利下げカードがあと1回程度しか切れない訳ですし)と思うのでして、ECBの対応の悪さとしかあたしゃ思えないのですけどね。やる事の順序を間違えなければ(前回の定例理事会で「非伝統的政策の議論は行わなかった」とか発言するとか全くもってECB何考えてるんだと思ったのですが)別に火がボーボーとならなかったかも知れないのに、何か手順間違えて火がボーボーしている中でドラギ総裁が「びりーぶみー(キリッ)」とか言ってるのを見て「ECBは良くやってる」とか言うのはマッチポンプに騙されているにも程があるとか思うのですけどねえ。

#などと日本語で悪態をなんぼ垂れてもフランクフルトには伝わりませんが(−−;

ということで、プレビュー雑談の積りがただの悪態にorzorz


○FOMCプレビュー雑談を書こうかと思ったが時間が無い

まあ何ですな、FRBに関しては6月FOMC議事要旨での議論を見ますと、明らかに金融政策のタマに対して手詰まり感が出ている感じでございまして、まあ今後は期待を持たせながら弾切れではないように見せつつも弾を出し惜しみして、それを出し惜しみに見えないようにプレゼンするという狸能力の極めて高い福井俊彦じゃなかったバーナンキ議長の手腕がまさしく示されるという難しい局面ですなあとか思うのでございます。

でもって茲許言われているのが「フォワードガイダンス文言の半年延長」ではございますが、よくよく考えてみると元々のフォワードガイダンスがあって、それが延長された時っていうのは1年程度引っ張った挙句に1年半程度のガイダンス文言延長となったのですが、ガイダンス文言の延長を1年待たずに半年でやらなければいけないという時点で弾が切れ気味なのの証明でもあったりするのでございまして、FRBも中々大変ですのーと思う次第でございまする。

ただまあ今回って基本的にSEPとかバーナンキ会見とか無いというスケジューリングになっているので、米国市場のケツに火が点いているのなら兎も角、火が点いているのは欧州でございますし、そんなに派手に何かするってのもどうかなという気はする。

ジャクソンホールが8月末にあって9月FOMCはSEPも逆さ絵おじさんの会見もありますし、まあ大統領選挙がどうのこうのというのも有りますが、それを無視すればタイミング的にはその辺りで何か出すなら出すというのが美しいかなという所っすかねえ。もしくは選挙終わってフィスカルクリフ前の12月(10月は今回と同様で会見とSEPは無い)かもしれないけどよく判らん。まあうだうだ状態だと何かやらんとね。

SEPの改善というのはここもと議事要旨での話題でもありますので、それは9月のSEPに反映されるかもしれないけど、議事要旨見ると何かあまり出さない方が良いような気がします(色々な情報を出し過ぎで却って複雑骨折状態になり、ミスコミュニケーションの元になりそうな希ガス)けどねえ。

なお、しばらく前のネタなのですが、イエレン姐さんのいらっしゃったSF連銀と言えばFRBの政策正当化ペーパーを出すのが仕様だったりするのですが、ウィリアムス総裁の講演を一部アレンジしたバージョンでこんなのが出ているのを不覚にも最近気が付き読んでおりますのでネタにするかもしれないししないかもしれませんがまあ読むのは吉かと。

http://www.frbsf.org/publications/economics/letter/2012/el2012-21.html
http://www.frbsf.org/publications/economics/letter/2012/el2012-21.pdf
Monetary Policy, Money, and Inflation
By John C. Williams

サマリーだけ引用しておく。

『Textbook monetary theory holds that increasing the money supply leads to higher inflation. However, the Federal Reserve has tripled the monetary base since 2008 without inflation surging. With interest rates at historically low levels and the economy still struggling, the normal money multiplier process has broken down and inflation pressures remain subdued. The following is adapted from a presentation by the president and CEO of the Federal Reserve Bank of San Francisco to the Western Economic Association International on July 2, 2012.』



2012/07/30

お題「山口副総裁講演&会見のコピペ大会で恐縮です:山口さん麿の麿節をフォローして回るの図」

またモーサテの為替コメント(電話の人)が「市場はECBが中央銀行に預ける金利をマイナスにすることも期待」とかゆうとるのだが、超過準備を持たせないような政策を実施したら市場の流動性がカツカツになる「量的引き締め」になり、信用不安状態の中で行うべき政策の逆になるんですけれどもそういうの判ってて「期待する」とか言ってるのでちゅかねえ。

#まあ判ってないから「期待する」んでしょうけど

しかし話はワープしますがあの候補が18万も票を集めるとか相変わらず民主党政権でも懲りてないというか青い鳥症候群というかですわなあ。→http://www.nhk.or.jp/yamaguchi2/senkyo/

○山口副総裁講演&会見はハト成分を強めに入れております

まずは講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120725a.pdf

小見出しを並べるとこうなります。

1.はじめに
2.海外経済の動向:大きなリスクと背中合わせの先行きの回復
3.欧州債務問題:なお険しい解決への道のり
4.財政問題と長期金利:財政再建に向けた取り組みの重要性
5.日本経済の当面の見通し:緩やかな回復とそれを巡る不確実性
6.日本経済の中長期的な課題:見られ始めた成長の芽
7.日本銀行の金融政策運営:金融緩和の推進と成長力強化の支援
8.おわりに

・・・・・・ということで4番と6番に麿風味を感じますが(^^)、その他の小見出しはハト風味を醸し出すような物となっているのが山口副総裁クオリティという所でございまして、麿の麿節のフォローに回る山口副総裁ってい風情なのが中々泣ける所でございます。


・海外経済に関して

ということで海外経済に関して。

『それでは、海外経済の動向から話を始めます。海外経済は、2008年秋のリーマン・ショックの後、2009年半ば頃から回復を続けてきましたが、昨年後半以降、成長ペースが幾分鈍化しており、現在もなお、減速した状態から脱していません。』

つーことですが、地域別の先行き見通しはと言いますと。

『春先以降、雇用者数の伸びが鈍化していることもあって、市場では、米国経済の先行きに対する慎重な見方も窺われますが、個人消費は緩やかな増加を続け、長らく低迷していた住宅販売にも持ち直しの兆しがみられます。これは、リーマン・ショック以降、経済の重石となっていた家計部門の債務負担が次第に和らぎつつあることを示唆しています。また、春先以降のガソリン価格の下落が家計の実質購買力を押し上げ、個人消費の増加を下支えしていくことも期待されます。こうしたことから、米国経済については、先行き、成長ペースが目立って加速することはないにせよ、基本的には、緩やかな回復が途切れることなく続いていくと考えています。』

ほう。

『欧州経済は、後ほどお話しする欧州債務問題の影響などから、全体として停滞しており、この先も、当面、厳しい状況が続くと考えられます。』

これは順当。

『インフレ率の低下は、家計の実質購買力を高め、支出活動を促します。また、中国当局は、物価や資産価格の落ち着きを受けて、6月と7月に2か月連続で利下げを行ったほか、省エネ家電等の消費促進に向けた財政支援を決定するなど、金融・財政の両面から、本格的な景気刺激策を講じ始めています。輸出全体の約2割を占める欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが、中国経済は、そう遠くない将来、内需を中心に緩やかな回復経路に復していくとみています。』

>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが
>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが
>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが

うむ。

『以上のように考えますと、先行きについては、米国経済の緩やかな回復と中国経済の持ち直しを推進力としながら、海外経済は次第に減速局面を脱し、成長率は徐々に高まってくると考えています。ただし、米国や中国を含めて海外経済の先行きには、引き続き、高い不確実性があります。いわば、中心的な経済の回復シナリオとリスクシナリオが背中合わせとなっている状況が続いています。とりわけ、次にお話しする欧州債務問題の展開は最も注意すべきリスク要因です。』

「米国経済の緩やかな回復と中国経済の持ち直しを推進力」ってえ事ですからまあその推進力がかなり怪しげというのは「いわば、中心的な経済の回復シナリオとリスクシナリオが背中合わせとなっている状況が続いています」ってな話をしていますし、そもそも先ほどの中国の回復が欧州向け輸出の弱さについて指摘しているので、まあそういう意味では山口副総裁の説明ってベースは日銀公式見解なのですけれども、その中でのリスクを強調する事によってハト風味を出すという感じっすな。


・欧州問題の解決には時間が掛かる

んでまあ欧州問題ですけれども。

『欧州では、周縁国を中心に、こうした財政、金融、実体経済の間で負の相乗作用が働いていることが大きな問題となっています。』

ということで負の相乗作用についての説明の部分はめんどいので端折りましたが状況はこういう話でして、では今後の話ですけれども。

『したがって、差し当たって必要なことは、こうした負の相乗作用を断ち切ることです。現在は、多額の不良債権を抱えるスペインの金融機関の立て直しが議論の焦点となっており、先月、ユーロ加盟国は、最大1,000億ユーロに上る金融支援を決定しました。欧州中央銀行も、昨年12月以降、金融市場に対し、貸付期間3年という中央銀行としては異例に長期の資金供給を実施しています。こうした当局の姿勢を受けて、金融機関同士が資金をやり取りする短期の金融市場は、危機感が強かった昨年末頃に比べて、随分と落ち着きを取り戻しています。』

まあそうではありますが。

『これらの対応は、負の相乗作用を食い止める応急措置という意味で必須ではありますが、欧州債務問題の根本的な解決にはなりません。』

キタコレ。

『先ほどお話しした周縁国の問題の原因に遡れば、これらの国で抜本的な財政再建や中長期的な成長力強化に向けた経済構造改革が行われることが必要不可欠です。また、欧州全体としても、「ユーロ」という単一通貨を使いながら、各国の財政や銀行監督がばらばらのままで、経済や金融システムの安定を図れるのか、という課題を突きつけられています。』

ということで、財政同盟が必要とか銀行同盟が必要とか極めてその通りの話なのですが、当然ながらそれは時間が掛かりますがなという話で。

『ただし、この問題は、欧州の政治・経済・社会の統合の将来像をどう描いていくかという極めて本質的な課題です。問題の大きさと複雑さ、各国の政治的意思決定の難しさを考えれば、ある程度の時間がかかることは覚悟しなければなりません。』

という話をしておりますが、その後は「市場が追い込んでくるので危機バネが働く」という話。

『一方で、市場は性急に結論を求めます。待ってはくれません。この時間軸の違いが、市場の神経質な反応に繋がっているのですが、同時にこのことが、欧州債務問題の解決を早める力になる可能性もあります。』

ということで、結論は・・・・

『そして何よりも、これまでの議論を通じ、欧州全体に、ユーロを瓦解させないという共通の認識が醸成されてきています。こうした状況を踏まえると、その道のりはなお険しいものの、そう遠くない将来、欧州債務問題の解決に向けた進展がみられるのではないかと期待しているところです。』

ということで。


・財政再建と長期金利キタコレ

まあここは毎度の話なのですが、いつもの事ですが読んでいて正直「ちょっと違うんじゃないか」というのはここの部分。

『それでは、なぜ、日本国債の円滑な発行が実現しているのでしょうか。私は、わが国の将来の政策運営に対する信認が存在しているからだと考えています。つまり、財政バランスの悪化にもかかわらず、市場参加者は、「日本は、最終的には財政再建にしっかり取り組む意思と能力を有している」と信頼しているのだと思います。』

まあそれ以外の答えをするのも政策当局者としてアレというのは判りますが、市場の中の人って政策運営に対する信認じゃなくて単にISバランス見て「とりあえず当面はサステイナブル」なのだからそら資金需給的に国債買うしかなかんべという風な割り切りモードなんじゃネーノとか思うのですけれどもね。

だから恐らく少々の馬鹿発言が出ても国債市場ってコケないのですけれども、その「当面はサステイナブル」の当面がどの程度なのかというのが変わるとそれはそれでアレな事になるような希ガス。


・日本経済について

『先行きについては、当面、内需の堅調が、日本経済の緩やかな回復を支える姿を想定しています。ただ、今後は、エコカー補助金がこの夏にも予算切れとなる可能性があるほか、ペントアップ需要も次第に減衰していくと考えられます。そうした中にあって、経済全体の前向きな動きを確かなものとしていくためには、内需が景気を支えている間に、輸出がしっかりと立ち上がってくることが必要です。』

結局の所輸出が立ち上がるかという話で、それはそれでリスク有りという話ですがな。で、物価に関してですけれども。

『私どもが、当面の目途として目指している1%には、2014年度以降、遠からず達すると考えています。』

とはゆうとるものの・・・・・・

『このように、やや長い目で見れば、日本経済は物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくとみています。ただ、こうした見通しを巡っては、様々な不確実性が存在しています。特に、欧州債務問題の動向や為替相場の変動が日本経済に及ぼす影響については、引き続き、十分な注意を払っていく必要があります。』

為替相場の変動キタコレ。

『また、仮に経済・物価情勢が見通しどおりに展開したとしても、消費者物価の前年比が1%に達するのは再来年度以降であり、デフレ脱却に向けては、なお時間を要する状況にあると考えています。』

「見通し通りだったとしてもデフレ脱却に時間を要する」キタコレという事で、この辺りのニュアンスも麿風味とはだいぶ違ってハト風味。まあ先ほども申し上げましたが、麿が麿節を飛ばしてアレなのを山口副総裁がフォローして回っているの図という感じでしょうな。


・金融政策に関してもサービス発言多い

金融政策に関して。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識しています。そうした認識のもとで、本年2月には、デフレ脱却に向けた私どもの政策姿勢をより明確化しました。具体的には、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、強力に金融緩和を推進していくことを明らかにしたところです。』

現在完了形じゃなくて「今後も協力に金融緩和を推進する」の2月会合文言が出るとはこれはお洒落(^^)。

『振り返ってみると、リーマン・ショック以降、日本銀行の金融政策の構えは、わが国経済の状況に応じて変化してきました。当初はリーマン・ショックやその後の震災を含め、度重なる景気下押し圧力を緩和し、経済を下支えしていくという性格のものでした。その後、日本経済は、こうしたショックから徐々に抜け出し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復するという見通しが示せるような状況になってきました。それでも2月と4月に金融緩和の強化を実施したのは、それまでの金融緩和の累積的な効果と併せて、こうした見通しをさらに確実なものとするためです。』

ほう。

『現在は、拡充された枠のもとで日々資産の買入れを進めながら、金融緩和の効果や、経済・物価の見通しとリスクを丹念に点検しているところです。もちろん、例えば何らかのショックによって見通しが下振れたり、見通しを巡るリスクが大きく高まるような場合には、追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めてまいります。』

>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません
>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません
>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません

・・・・・・・・・・・というかこーゆーのって副総裁に言わせるんじゃなくて麿が言うべきじゃネーノと思うのでございますけどにゃあ。


でまあ記者会見に参りますが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1207c.pdf

講演もまあその傾向があるのですが、実際にあたくしが「麿の麿節をフォローして回る山口副総裁の図」というのを感じたのは会見の方でございますがなという所です。

・リスク認識は高いんです(キリッ)

海外経済に対する警戒感が市場で高まっているでしょという質問に対しての答え。

『(答) 本日の挨拶の中でも、海外経済については、一言で言えば「大きなリスクと背中合わせの先行きの回復」と申し上げました。従って、大きなリスクが存在していることについては、私自身十分認識しているつもりです。そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません。』

>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません
>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません
>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません

・・・・・・・・まあ何だ、この部分って山口副総裁の発言というよりも「日本銀行の見通しが楽観的にも程がある」という悪態に対して述べたんだろうなあと思ったのですけれども(^^)(^^)(^^)。

『一番大きなリスクとしては何を認識しているのかということですが、それは、欧州債務問題を最大のリスクファクターと考えています。そのことについても本日お話ししたところです。その解決に向けては、色々な努力が関係者の間で加えられていますが、道のりは依然として険しいと申し上げたところです。このリスクは相当強く意識しなければなりませんし、欧州債務問題において、仮にリスクが表面化することになれば、それは米国経済にも、新興国経済にも影響が及ぶでしょうし、もちろん日本経済にも影響が及ぶという形でリスクを認識しているということです。』

ということでリスク意識全開ではございます。


・円高と追加緩和

会場が広島ということで円高に関して日銀は何しますねんというお約束の質問に対して。

『(答) 最初に円高ということですが、ご指摘の通り、本日の懇談会の場でも、何人かの方から円高の企業経営に及ぼす影響は非常に厳しいというお話がありました。確かに、輸出産業――自動車あるいは電機――を抱える当地にとっては、円高がダイレクトに輸出そのものにも影響を与えるでしょうし、企業収益にも影響を与えるでしょう。更には先々を踏まえての企業マインドにも影響を与えると思っています。従って、そうした影響の大きさは、きちっと念頭に置いて、私どもも経済情勢の分析をしなければいけませんし、それを踏まえて何らかの政策対応が必要であれば、それをやっていくことになるだろうと思います。』

で、その次にサービスキタコレ。

『仮に、私どもとして、円高が日本経済のこれからの回復のパスに大きな下振れ要素として働いてくるという判断、あるいは、そのリスクがかなり高いという判断に立つとすれば、追加の緩和を行っていくことになるのだろうと思います。』

キタコレ(・∀・)

『しかし、この辺りについては、情勢をきちっと分析し、見極めた上で考えていくべきことだろうと思っています。今、あれこれ判断すべきことではないと認識しています。』

ふむふむ。


・やはり輸出が重要

輸出に関する質問に対しての答えから。

『次に、仮に、輸出が回復しなければ緩やかな回復は実現できないのかというもう1つのご質問です。内需が堅調であることは事実です。その堅調さについても、それなりに持続可能性のある部分が目につくようになっていることも事実なので、その堅調さはしっかり評価しておく必要があると思います。しかし、日本経済全体として、自律的な回復力をしっかりと発揮していくということになると、やはり、輸出も回復し、それが企業収益に影響を及ぼし、そしてそれが雇用や所得に影響を及ぼしていくルートが作動することが、必要ではないかと思っています。従って、内需に加えて輸出の回復、それが相俟って、わが国経済の緩やかな回復が実現していくと思っています。』

ということで輸出の回復が必須とな。


・追加緩和の手段に関して

これは面白い質問。

『(問)(前半も面白いのですが割愛)加えて、もう1点、現在、基金で長期国債を購入されているわけですが、購入対象のところはもちろん、購入対象ではない5年物でも、相当程度金利が低下してきています。更に買入れを行って金利を低めに誘導して、一体どれだけの効果があるのかなというところもあり、今後も買い増しという緩和策を継続するような追加緩和で良いのかどうか、お考えがあればお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)次に、一般論として、追加緩和をするとすれば、もはや基金の増額をやってもあまり意味がないのではないかという趣旨のご質問と考えてお答えします。私どもとしては、少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っていますし、これから来年6月末までに基金の残高を70兆円まで増やすことにしています。基金の残高は、現在、53兆円程度ですから、これから17兆円を買い増していくプロセスでもあります。従って、緩和効果が追加され続ける状況ですし、そういうものに期待しながら、更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています。』

>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています
>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています
>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています

・・・・・・・・・麿はこの手の話をどうもあまりしたがらないように見えると申しますか、まあある意味麿の麿な所で真面目というか誠実な所なのですが、「いやこんなのやってもそんなに効果があるんかね」というようなトーンになってしまうのが麿クオリティでして、これに対して山口副総裁の方が狸成分が入っていると申しますか、俊ちゃんテイストが入っている(俊ちゃんの大狸には敵いませんが)という感じでしょうか。

>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています
>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています
>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています

ということのようで。


つーことで、まあ引用大会で手抜き勘弁でございますが、山口副総裁の講演と会見に関してはハト成分が高めに入っておりまして、麿が麿節を出して「日銀ってちょっと楽観的すぎないか」と言われる状況に対してフォローするの図となっている所で、副総裁っちゅうか官房長官っぽい風情を示しておりますなという所でございましたな(^^)。


#他のネタは時間が切れたのでスルーで勘弁(大汗)




2012/07/27

お題「ドラギ総裁発言メモ・・・・のつもりでしたが結構真面目に読んでみたでござるの巻(で他のネタが無いorz)」

祝日絡みの話はどうしてこうアレな話しか出ないんでしょうなあ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120726-00000146-jij-pol
小中学校に秋の5連休を=休暇改革で中間報告案―民主PT
時事通信 7月26日(木)19時50分配信

『PTは報告案で、小中学校の春、夏、冬休みを計3日間減らす代わりに、10月中旬に土日と絡めた5連休の新設を提示。全国を4ブロックに分けて連休の日にちをずらし、経済効果を高める。小中学生の子どもがいる従業員に対し、子どもの秋の連休に合わせた有給休暇を与えるよう企業に義務付ける制度創設も示した。』(上記URLより)

部署が小中学生の子供持ちだらけとかだったら大変な事が起こるので人事配置まで検討しないといけないですなあ(呆)。つーか休みを増やして本当にネットの経済効果あるのかよ(それなら永久に休みにしたら経済効果があるのかというとどう見ても無いでしょ^^)という希ガス。


・・・・しかし欧州情勢は毎日色々と出てきて追いつくのが大変ですの。

○ということでドラギ総裁発言がどうのこうのメモ(のつもりが真面目に読んだ)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7RJN16S972L01.html
ドラギ総裁:ECBはユーロ存続のためいかなる措置も辞さず

『7月26日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は26日、欧州単一通貨ユーロを守るために必要なあらゆる措置を取ると表明。スペインとイタリアの国債利回り上昇がユーロの存続を脅かす中で、債券市場への介入も辞さない姿勢を示唆した。』(上記URLより)

ならこの前のECB理事会で信用緩和やれやヴォケとか思うのですけれども、前回理事会後の会見では「うちは伝統的政策ということで利下げしたからやることやってるもんね〜非伝統的政策なんて議論してないもんね〜あとはEUの皆様頑張ってね〜♪♪♪」とか言ってたのにいきなりこの有様でブレブレにも程がありますな。

で、元ネタとなる講演テキストはこちらにありました。
http://www.ecb.int/press/key/date/2012/html/sp120726.en.html
Verbatim of the remarks made by Mario Draghi

Speech by Mario Draghi, President of the European Central Bank
at the Global Investment Conference in London
26 July 2012

冒頭をまずは引用。

『I asked myself what sort of message I want to give to you; I wouldn’t use the word “sell”, but actually I think the best thing I could do, is to give you a candid assessment of how we view the euro situation from Frankfurt. And the first thing that came to mind was something that people said many years ago and then stopped saying it: The euro is like a bumblebee. This is a mystery of nature because it shouldn’t fly but instead it does. So the euro was a bumblebee that flew very well for several years. And now - and I think people ask “how come?” - probably there was something in the atmosphere, in the air, that made the bumblebee fly. Now something must have changed in the air, and we know what after the financial crisis. The bumblebee would have to graduate to a real bee. And that’s what it’s doing.』

ロンドンでのスピーチのせいか妙に持って回った言い方で何が何やらという感じですが、ユーロという通貨がそこらをホイホイ飛び回る蜂のようなもんだと言われて久しいですがみたいな事言ってるんですかよくわかりません(><;

で、まあこういうのをうんうん唸ってもシャーナイので次へ。

『The first message I would like to send, is that the euro is much, much stronger, the euro area is much, much stronger than people acknowledge today. Not only if you look over the last 10 years but also if you look at it now, you see that as far as inflation, employment, productivity, the euro area has done either like or better than US or Japan.』

はあそうですか(棒)という所ですが、中の話をスルーしてもさもさと次のメッセージへ。

『The second point, the second message I would like to send today, is that progress has been extraordinary in the last six months. If you compare today the euro area member states with six months ago, you will see that the world is entirely different today, and for the better.』

この半年の間我々は異例なまでの進展を示しております(キリッ)とな。で、まあこんな事やったあんなことやった凄い頑張っていますってな話をしておりまして次のメッセージへ。

『But the third point I want to make is in a sense more political.』

ほう。

『When people talk about the fragility of the euro and the increasing fragility of the euro, and perhaps the crisis of the euro, very often non-euro area member states or leaders, underestimate the amount of political capital that is being invested in the euro.』

ユーロに対して我々は政治資源を投入して頑張っています(キリッ)と。

『And so we view this, and I do not think we are unbiased observers, we think the euro is irreversible. And it’s not an empty word now, because I preceded saying exactly what actions have been made, are being made to make it irreversible.』

そしてその次にニュースヘッドラインの部分が。

『But there is another message I want to tell you.』

『Within our mandate, the ECB is ready to do whatever it takes to preserve the euro. And believe me, it will be enough.』

どこぞの馬鹿鳩のとらすとみーとは違うでしょうから(^^)、まあここはまた急に気合の入ったご発言で、この前のECB理事会後の会見での「非伝統的政策は議論しませんでしたが何か?」という発言との落差禿し過ぎですがな。

『There are some short-term challenges, to say the least. The short-term challenges in our view relate mostly to the financial fragmentation that has taken place in the euro area. Investors retreated within their national boundaries. The interbank market is not functioning. It is only functioning very little within each country by the way, but it is certainly not functioning across countries.』

インターバンク市場の機能低下させたのお前の利下げのせいじゃヴォケとツッコミを入れたいのは日銀とニューヨーク連銀ではないかと思いますが、まあそれは兎も角として「financial fragmentation that has taken place in the euro area」って言ってて(このfragmentな話に関しては前回のECB理事会でも指摘がありましたけど)、金融市場がユーロエリアの国によって分断された状態になっている事を指摘してるんですが、それに対処するなら非伝統的政策だろと思うのでございまして、何か知らんが相変わらずなのですけれども、ケツに火が付いてボーボー燃え出すと急に豹変して非伝統的政策を打ち込むというECBの一貫性の無さは何なんですかねという風に思うのでございまする。

『And I think the key strategy point here is that if we want to get out of this crisis, we have to repair this financial fragmentation.』

で、それをどうやって行うのやら・・・・・・

『The second point is in a sense a collective action problem: because national supervisors, looking at the crisis, have asked their banks, the banks under their supervision, to withdraw their activities within national boundaries. And they ring fenced liquidity positions so liquidity can’t flow, even across the same holding group because the financial sector supervisors are saying “no”.』

『So even though each one of them may be right, collectively they have been wrong. And this situation will have to be overcome of course.』

域内の金融監督が各国ごとに動いた場合にfinancial fragmentationが解消しないというような事が(合成の誤謬的な結果として)起こるとかそんな事ゆうとるのか??

『And then there is a risk aversion factor. Risk aversion has to do with counterparty risk. Now to the extent that I think my counterparty is going to default, I am not going to lend to this counterparty. But it can be because it is short of funding. And I think we took care of that with the two big LTROs where we injected half a trillion of net liquidity into the euro area banks. We took care of that.』

カウンターパーティーリスク意識の高まりからファンディングが厳しくなる点についてワシらはLTROをぶち込みましたとか言ってるんですが・・・・・・・

『Then you have the counterparty recess related to the perception that my counterparty can fail because of lack of capital. We can do little about that.』

カウンターパーティーの資本不足に対するリスク意識の拡大についてはワシらは手は打てませんがなというのはまあそれはその通りなのですが一々言わんでも宜しいと思うのでして、やはりブンデスクオリティをこういう所に垣間見てしまうのでありますけどねえ。

この辺りの話を見ているとリーマンショック後に日本の短期オープン市場金利(レポとか現先とかCPとか)の金利が上昇して、その間にあたくしなんぞは「とっとと信用緩和(という言葉は無かったのでして、当時は思いっきりCP買入などとか言ってました)」とゆー中で利下げは行われたものの、オープン市場の金詰りは全然解消しないでロンバート金利に張り付き(結局その年の12月に信用緩和と利下げをセットにしたら解消に向かった)というのがありましたが、一回肝が冷える事が起きないと信用緩和へGo!という風には行かない(まあ中央銀行の成り立ち的にというかカルチャー的に信用緩和政策はやりたくないというのは判る)のでしょうなあとか思うのでありますが、資本不足のケースは知らんがな的な事をわざわざ言う辺りに、先ほどの「びりーぶみー」の辺りで見た果敢な姿勢ではなくブンデスクオリティーを見るのでありますがorz

『Then there’s another dimension to this that has to do with the premia that are being charged on sovereign states borrowings. These premia have to, as I said, with default, with liquidity, but they also have to do more and more with convertibility, with the risk of convertibility. Now to the extent that these premia do not have to do with factors inherent to my counterparty - they come into our mandate. They come within our remit.』

ということで金融機関個別の資本不足については知らんがな発言をしましたが、ソブリン問題に関してはどうも「ソルベントな国の国債が何らかの要因でプレミアム拡大状態になった場合についてはワシらのマンデートです」というような話をしているように見えますので、これはつまり「本当は大丈夫なのですが市場がアジャパーになって売り込まれている国の国債金利上昇をお助けするのはECBの仕事です(キリッ)」ってお話だと思われます。

つーことは、まあ「一時的に問題が生じているけれども中長期的にサステイナブルな財政再建パスのある国の国債は買いますぞなもし」という事ですので、これはまあいわゆるSMP再開でスペイン辺りのようにちゃんと頑張っている国債へのお助けを出しますという示唆に繋がりますな。

『To the extent that the size of these sovereign premia hampers the functioning of the monetary policy transmission channel, they come within our mandate. So we have to cope with this financial fragmentation addressing these issues.』

これらのソブリンプレミアムは金融政策のトランスミッションメカニズムを阻害するものであるからして、このプレミアムへの対処は我々のマンデートであり、それによってfinancial fragmentationにも対処する、という話ですな。


つーことで、総合すると「資本不足の金融機関問題に関しては知らんがな」「流動性不足の金融機関にはジャンジャン資金出しまっせ」「市場が暴れてプレミアムが拡大したソブリンに関してはお助け措置を出しまっせウェーハッハッハ」というのが結論のようですが、この文脈からするとスペインやイタリアの国債にはお助け措置が来るのでしょうが、ギリシャに関しては微妙な香りがする(どうもあの国はそもそもの仕振りが悪いという扱いになっているっぽいように見えるのはあたくしの気のせい??)のですがどうでしょうかね。


○他のネタは割愛ですいませんすいません

山口副総裁講演ネタとか、珍しくも足切りが0.10%台に届いた3か月TB入札とか、調子に乗ってやっていたけど遂に6か月固定オペ札割れで調節部署残念無念という話とか、ネタはございますのですが、まあ土曜か日曜か月曜のネタということで勘弁でありまする。

ドラギ講演に関しては「びりーぶみー」の所だけで終了する積りだったのですが、その先を読んでみるとポイントらしいものがあったので、ついつい解読してたら時間と量がいっぱいいっぱいになるという計画性の欠如でございまするすいませんすいません。

以下ネタのポイント箇条書き。

・山口副総裁講演と会見

まあ大体ハト風味ですな。

・3か月TB入札

珍しくも足切り0.10%乗せましたが、足元ファンディングレートが微妙に高かったのとか先般の買入下限金利撤廃の影響でそこまでレートが沈まずに、買い手の目線もサガランチ会長だったというのが確認できたというのもあるんでしょうな。

ちなみにそれはそれとして2年の金利の方がうっかりすると低かったりするような状態になっているのがこれまたアレではございます。

・6か月オペ無念の札割れ

えーまあ何ですな。つまり6か月オペは本質的に市場のニーズが無いのであきらメロンという事で。




2012/07/26

お題「両審議委員の就任会見:ベンダーヘッドラインとは違って佐藤委員の方が積極派ではないかと」

やはりベンダーのニュースを見ただけでどうこういうのはイクナイとゆーのが良く判りましたとさ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1207b.pdf
しかし全部で15ページとか長いですの。

#以下引用大会でやたら増量していますのでよろしゅうに

○今の金融政策で緩和が十分ですかというような話

質問はこちら。

『(問) 日銀は、物価上昇率1%を「中長期的な物価安定の目途」として掲げ、その上で、早ければ2014年度にもその1%に到達可能であるという見解を示しています。日銀が示している物価のパス、またデフレ脱却のパスを満たすにあたって、日銀の現状の金融政策が十分であるとみていらっしゃるかどうか、この点をお伺いします。』

・佐藤委員:基金買入の政策効果のパスを検証する必要があるのでは

『(佐藤委員) 現状の金融政策については、周知の通り、強力な金融緩和を進めているということで、資産買入れ基金の増額を順次進めてきていると理解しています。ただ、問題は、資産買入れ基金の増額あるいはそれに伴うマネーの供給増が、実際の物価の安定あるいは物価の回復に結び付くパスが、必ずしも明確ではないということだと思います。そういう点では、資産買入れ等の金融緩和が、如何にして物価の回復に結び付くのかというパスを、もう少しクリアにしていけるような、そういった政策運営が必要なのではないかと個人的には考えています。』

という事ですが、後の質疑を見ておりますと「単純に国債買うだけで効くんでしょうかねえ」ってな趣旨の話をしていまして、まあ要するにマネーがどうのこうのというよりも、政策パスとして(これまた後で話していますが)実質金利パスと資産価格パスを考えているという所のようで。


・木内委員:新たな形の金融緩和とな&物価のスタンダードねえ・・・・

『(木内委員) 現状の経済のもと、デフレ圧力は緩和の方向に向かっていることは確かだと思います。日本銀行の基本的な考え方としては、需給ギャップが縮小に向かう中でデフレ圧力が緩和の方向に向かうというもので、こうした考え方は基本的に正しいのではないかと思っています。しかし、現在想定している成長率で、果たして、例えば2014年度にかけて1%に達するということが、非常に確実性が高いかというと、不確実性も依然として大きいのではないかと思っています。』

物価が上昇するには成長が足りないというのはまあ直球ですな。

『特に足許の物価は、原油価格の上昇によって押し上げられている部分もあります。食料・エネルギーを除くという国際的なスタンダードで見た消費者物価は、前年比では依然として比較的大きなマイナスであるということから、先行きの物価については、不確実性は比較的高いのではないかと思っています。』

まあエネルギー価格云々の話はそうなのですが、基調的な物価を見る際にコアコアを見るという話に関しては「国際的なスタンダード」というのをこの後でも何回か木内さん言ってますけれども、金融政策で目標にすべき物価水準は「中長期的に見た総合物価指数」というのが国際的なスタンダードでもあります(FRBでロンガーランの物価目標として示しているのはPCE物価指数総合ですがな)んで、なんつーかこの説明部分を拝読すると若干の???感を受けるのですけれども。

いやまあ「基調として見る物価」の話と「金融政策として目標にすべき中長期的な物価」の話は違いますってのは当たり前の話だからそこはスルーして説明しているのかも知れませんけれども、そうでは無いような希ガス。

FEDの中心的なビューではありませんが、毎度引用しておりますセントルイス連銀総裁のブラードさんの所では『Key Policy Papers』の所で『"Measuring Inflation: The Core is Rotten" 』などというお洒落なペーパーを出しておられまして(ちなみに初出は2011年5月8日)、「コアインフレで基調の物価を見ると本来目標にすべき総合物価指数よりもバイアスがあるので金融政策運営上問題が有る」とゆーよーなお話しているのでありまして、必ずしも「国際的なスタンダード」なのかというとこれまた議論が起きているというフェーズのような気がするんですけどにゃあ。

http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/index.html
http://research.stlouisfed.org/publications/review/11/07/bullard.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten


話が逸れましたが(汗)木内委員の話の続き。

『従って、必要であれば、追加の緩和策は検討すべきであると思っています。さらに、資産の買入れを軸とした金融緩和策については、実施から既に2年弱が経過していますので、その効果については、そろそろ検討あるいは総括すべきタイミングにきているのではないかと思っています。その結果として、今の政策の延長線上で1%の目標を達成できる可能性があまり高くないということであれば、ここから新たな形の金融緩和を柔軟に考えていくということは、当然ですが必要になっていくのではないかと考えています。』

新たな形とな(^^)。


○デフレの原因、脱却に向けたルートについて

質問を引用である。

『(問) お二人にお伺いしたいのですが、日本経済がデフレから脱却できない理由はどこにあるのかということをお尋ねします。合わせて、デフレ経済に突入して以降、日銀がデフレ脱却のために行ってきた金融政策への評価も、お伺いしたいと思います。』


・佐藤委員:上昇しない賃金が問題という話&為替ルートと資産効果

『(佐藤委員) バブル崩壊から既に20年余り経ち、未だにデフレ脱却ができていないということですが、私は、デフレには2つのフェーズがあった、あるいは、あると理解しています。』

ほほう。

『1つ目のフェーズは、資産価格の急低下、いわゆるバブル崩壊から起こった逆資産効果、そして、その逆資産効果の結果として、企業や家計のリスクテイク余力が大きく削がれ、それが結局、需要の減少、需給ギャップの悪化、そして一般物価の下落を招く──いわゆるネガティブ・フィナンシャル・アクセラレータ──、そういった作用が働いたということかと思います。これが第1のフェーズです。ただ、こういった第1のフェーズに関しては、2000年代初頭に不良債権処理が概ね峠を越える中で、一旦は終息したかと考えています。』

ふむ。

『ただ、2000年代のどちらかというと後半から、新しい第2のフェーズに入って来ているかと思います。第2のフェーズにおけるデフレですが、要因は色々あると思います。日本銀行の公式見解では、デフレの要因とは、1つには成長力の低下、その背景としては人口の高齢化に伴う労働力人口の減少あるいは生産性の低下が挙げられていると思います。それと並び、私は、賃金の低迷、これが非常に長期的に続いていることを挙げておきたいと思います。』

ほうほう。

『労働需給は段々改善してきている、有効求人倍率も非常にゆっくりとではありますが、徐々に「1」に近付いてきているという状況ですが、完全失業率が4%台半ばという中で、これだけ労働需給が緩いという状況のもとでは、持続的な賃金の回復、名目賃金の回復が図れないということかと思います。過去に実際に物価が1%前後にあった時期の完全失業率は──例えば90年代初頭、バブル崩壊後で、実際には物価が低下していた局面なので、ちょっと今とはフェーズが違うかもしれませんが──、3%程度に低下しており、ほぼ完全雇用の状態にあったということだと思います。足許は、改善しつつあるとはいえ、雇用情勢にまだ厳しさが残っている、そういう中で、名目賃金の回復が非常に微々たるものに止まっているということであり、そういう中では、なかなか需給ギャップの改善というだけでデフレ脱却を図ることは難しいかと考えています。』

『まとめると、1つは経済情勢全般の改善による需要の回復、それによる需給ギャップの改善ということですが、もう1つは賃金の回復がデフレ脱却の鍵になるかと考えています。』

雇用情勢が厳しくて名目賃金が中々改善しないと需給ギャップの改善だけではデフレ脱却が難しい、というビューでして、まあこれは物価に関して弱気ですよねという話ですが、こーゆーロジックで来られますとなるほどと思いますな。で、後半。

『2点目の、デフレ脱却に向けたこれまでの日本銀行の取組み、金融政策についてですが、2010年10月にようやく重い腰を上げて、資産買入れ基金を立ち上げ、株式、具体的にはETFやJ−REIT等のリスク資産の買入れも含めた先進的な政策を打ってきていると思います。ただ、先程も申し上げたように、そうした先進的な政策を打ってはいますが、それが実体経済にどのようにフィードバックしていくかというところのパスが今一つはっきりしない面があるかと思います。』

まあこれに関してはこの先の部分で米国のQEが段々効かなくなっている指摘をしているので日本だけの話では無いという所のようですが。

『金融緩和の効果は、こういったゼロ金利制約のもとでは2つあると思います。1つは実質金利を下げ、為替レートに影響を及ぼそうとすることです。もう1つは資産効果かと思います。すなわち、市場に流動性を供給していく中で、いわゆるポートフォリオ・リバランス効果、資産市場への浸み出し効果を図っていくということかと思います。』

ということで、ゼロ金利制約の下での効果について、実質金利ルート、というか為替ルートと資産価格ルートの話をしていますね。

『前者の為替に関しては、国内要因だけで決まるものではありません。ご案内の通り、欧州情勢等、日本以外の要因で円高になっている部分もありますし、また、他国の金融政策にも大きく影響されるということで、日銀が努力はしていますが、なかなか努力の割に報われないというところは、そういった海外要因も影響しているかと思います。』

ふむ。

『それから資産効果についてですが、これは、2001年から2006年まで量的緩和を行っていく中で、当初そういった効果もあるのではないかということも期待されたわけですが、これも思いのほか大きくなかったと総括できるのではないかと思います。米国においても、QE1、QE2と段階を経るに従い、その株式市場への波及効果も段々薄れてきているということです。これまで様々な政策を打ってきたわけですが、それがデフレ脱却まで今一つ結びつかなかったのは、そういったことが裏にあるかと思います。』

なるほど。


・木内委員:期待の低下が問題&インフレ期待の引き上げと為替ルート

『(木内委員) それでは、私の方からですが、デフレのきっかけとなった要因として、一番重要だったのは、企業部門での過剰債務問題、バランスシート調整ではなかったかと思います。過剰債務の削減のために必要な設備投資も抑える中で需要が弱くなったという面もありますし、必要な設備投資が抑えられたために資本ストックの蓄積が滞った、あるいは設備が古くなる形で競争力が低下していったということで、需要面だけではなく、供給面からも日本経済の活力が削がれていった、これがスタート時点ではなかったかと思います。』

『しかし、これは、2000年代に入ってほぼ解消されてきた。その中でも、低成長とデフレが続いてきたというのは、やはり色々な期待が下がってしまったということではないかと思います。需給バランスが悪化し、成長期待が下がる中で、成長率への期待、所得への期待、物価への期待が、企業や家計の中で一旦下がってしまうと、なかなかそれを浮上させるのは難しいということだと思います。』

当初はバランスシート調整で、その後は期待の低下によるネガティブフィードバックと。

『ただ、色々な期待の中で、インフレ率の期待については、金融政策である程度上げることが可能ではないかと思います。引き続き、インフレ期待の引き上げというのは、日本銀行がデフレ脱却に向けた強い姿勢を示すことで、ある程度可能な分野ではないかと思っています。』

ほほう。

『それから、もう1つ気になるのは、為替の動きです。デフレになった後というのは、デフレと円高が相乗的に進む、スパイラル的に円高からデフレ、デフレから円高というのが進行してきたと思います。』

そうなんすかねえ。物価が沈んでいる中で円安進行してた時期もあったような気もするんですけど。

『つまり、円高の主な要因がデフレであり、さらに円高によってデフレ圧力が高まる、というスパイラルからなかなか抜け出せていない。これは簡単に抜け出せるものではありませんが、それに対する政策は、日本銀行だけではなく、政府も含めて今後も考えていくということが、デフレ脱却にとっては1つの重要な施策ではないかと思います。』

まあそれはそれとして「政府と協力して為替対策」という趣旨は把握しました。


○今後の金融政策について

質問は実は2つあるのですが、纏めるとアホのように長くなるので分割。

『(問) 2点ほど伺いたいのですが、お二方から、これまでの日銀の政策に対する評価についてのご発言がありましたが、既に、ゼロ金利の制約下、打てる手段が相当限られているかと思います。これ以上金利は下げられない、あるいは基金の額を積み増すにしても国債の額をどんどん増やすわけにもいかないと思いますが、逆にどういった政策を打つべきなのか、さらにリスク資産を買うべきなのか、色々な考え方――以前から、お二方がアナリストの立場で示されていると思いますが――、改めて委員就任にあたってお考えになっている新たな政策手段について――先程木内委員からも今までの政策を総括して新しい方法を考えるべきだというお話がありましたが――、伺いたいのが1つです。(2点目は次に)』


・佐藤委員:実質金利ルートということで為替への働きかけ

『(佐藤委員) まず、ゼロ金利制約下の金融緩和手段ということですが、確かにおっしゃる通り、採れる手段は極めて限られているかと思います。そういう中で、私なりに政策効果という観点から採り得る手段を整理してみると、ゼロ金利制約ということで、名目金利はゼロ未満には下がらないわけですから、実質金利を引き下げていく政策が必要かと考えています。それは、先程木内委員からもご指摘がありましたように、期待インフレ率に訴えかけていく、期待インフレ率を引き上げていく、それによって実質金利の引き下げを図っていくということかと思います。』

とここまでは先ほどの話と同じ。

『では、どのようにしたら期待インフレ率を上げることができるのかということですが、これはなかなか難しい問題です。』

さいですな。

『例えば、今やっているように、国債をひたすら買いまくっていけば期待インフレ率が上がるのかということですが、現状では、例えば残存期間が2年あるいは3年の国債を大量に買い入れたところで、市場の期待インフレ率に働きかけるどころか、むしろ5年までのカーブがどんどんフラット化しているという状況ですから、現状では、今のところ効果としては逆に出てきていると思います。』

これは確かにそういう面がありまして、それこそさっき引き合いに出したセントルイス連銀ブラード総裁のペーパー類の中にある『Seven Faces of "The Peril"』ではQE2実施の必要性を主張すると同時に、政策金利を低位水準で長期化するとデフレ均衡に陥る可能性が高まるので望ましくないという主張をしておりまして、低金利によりデフレ期待定着という問題も確かに指摘される所ではあろうかと。
http://research.stlouisfed.org/publications/review/10/09/Bullard.pdf
Seven Faces of "The Peril"

とまあ例によって話が逸れまして恐縮ですが続き。

『そういう中では、採り得る手段としては、例えば、資産買入れを多様化していくということで、これまでも各方面から提案が出ていますが、例えば、岩田前副総裁が提唱しているような外債買入れということも一案かと思います。』

キターーーーーーー(・∀・)

『これは、財務省とのすみ分けというところで、フィージビリティの面で色々と問題があることは十分理解していますが、為替操作を目的とした外債買入れということではなく、資金供給を増やすための外債買入れと位置づければ、そのあたりの問題というのはクリアできるのではないかと考えています。ただ、このあたりは法律論あるいは手続き論、それから諸外国の財政当局との関係ということも絡んできて、色々とクリアすべき関門は非常に多いと思います。これから勉強して、どういったところがフィージビリティの点で問題になり得るのか、見て参りたいと思います。』

法律論もさることながら、おそらく米国財務省を了承させるのが一番のネックではないかと思われるのですがどうっすかねえ。

『あとは、一段のリスク資産の買入れということです。既に ETFあるいはJ−REITの買入れを進めているわけですが、例えば、よりリスク性の高いものにシフトしていくことも一案かと考えています。』

「よりリスク性の高いもの」とな(^^)。


・木内委員:具体的な話は避けましたが基本的にはやはり為替みたいですね

『(木内委員) 今後の政策についてですが、こういった新しい政策をすべきだというのをこの場で申し上げるのは控えるべきかと思っています。先程申し上げましたが、今の資産買入れなどを中心とする包括的な緩和の評価ができていないということです。それが十分な効果を上げているということであれば、その延長線上で、国債やリスク資産――特にこれはETFが中心になると思いますが――の買入れを進めていくことが妥当だという判断になるでしょう。あるいは、今の包括緩和は十分な効果を上げていないということであれば、また新たな政策を考えなくてはいけないということです。現状では、その判断がまだできていませんので、今後考えを深めていきたいと思っています。』

とは言いましてもその総括間に合うんかいなという気はするのですが・・・・・と思いますとその続きがございまして、木内委員も基本は為替ルートですなあという話です。

『ただ、漠然と考えているのは、為替の安定というのはやはり重要で、これは日本銀行だけの業務ではもちろんないということです。政府、財務省と協力して為替の安定に従来以上に関与していくというのが、ある意味新たな政策のフロンティアではないかと、非常に漠然と今は思っています。』

でまあ先ほども申し上げましたが、この件については米国の財務省様を如何にして納得させるかというのが極めて重要という所ではなかろうかってな話ですなあと思うのでした。


○市場との対話について

先ほどの質問の後半部分。

『もう1点は、マーケットとのコミュニケーションですが、2月の物価安定の目途の導入以降、マーケットの緩和期待と日銀の姿勢とに多少ギャップが出て色々な批判も出ていましたが、その点について、お二方がどのようにお考えで、どうあるべきだと考えていらっしゃるのか、お聞かせ下さい。』

・佐藤委員:2月の「目途」発表以降のコミュニケーションのギクシャクを指摘

まあその点は次の木内委員も同様でございますが、佐藤委員の場合は声明文文言の点まで突っ込む所がイイハナシダナーという感じです(^^)。

『2番目の質問で、マーケットとの対話でギャップがあるのではないかということですが、これは、昨日まで民間エコノミストとして私もマーケットの一員でしたので、そういう中で、若干感じているところです。』

キタコレ。

『2月14日のインフレ目標の設定ということですが、その後、果たして日銀は本気なのかどうかというところが、投資家の最大の関心事であったと思います。ただ、3月に次の一手が出てこなかった――4月は出てきましたが――、そういった中でマーケットあるいは投資家の期待もだんだん萎んでいったということかと思います。』

まあそうは言っても毎月追加緩和というのもどうかという気はしますが、佐藤委員の言いたいのはこの先にある説明を勘案しますと「2月の情報発信はあたかも毎月緩和を継続するかのようなメッセージとして市場が受け止めたので話がややこしくなっとるんじゃヴォケ」という事と存じます。

『また、強力に金融緩和を推進するという2月のステートメントですが、これは5月には一旦剥落してしまったということで、そのあたりの情報発信のやり方をみて、マーケットとしては、日銀の情報発信の一貫性、あるいはスタンスの一貫性というところに若干疑問を持っているかと思います。強力な金融緩和を推進するという文言、これは形を変えて6月には復活したわけですが、ただ、詳細にみると、現在完了形のような形になっています。すなわち、強力に金融緩和を推進してきた、これからは適切な金融政策運営に注力するといったようなことが書かれているわけですが、これだと、やはりマーケットとしては、強力な金融緩和はもう終わってしまったのかと受け止める可能性もあるかと思います。』

細かいですな(^^)。

『そういう点で、情報発信の一貫性というところは、今後大きな課題になってくると思いますし、私も、実際に中に入りましたら、マーケット参加者は果たしてこういうステートメントを出せばどういう反応をするのか ――日銀流に言うと、おそらく政策反応関数ということになるかと思いますが――、そういったところを、市場参加者の目線でボードの方々に提言していくことができるのではないかと思います。』

よろしくお願いいたしますm(__)m


・木内委員:佐藤委員と基本は同じで「情報発信の一貫性」の必要性を強調

『それから2番目のマーケットとのコミュニケーションという点ですが、やはり、多少2月以降の状況をみると、日本銀行とマーケットの受け止め方の間に乖離があったり、混乱があったりということも、もしかしたらあったかと思います。』

この先の部分を見ますと佐藤委員よりは日銀の情報発信については同情的というか何というかというニュアンスを受けますな、うんうん。

『これは佐藤委員も指摘されていましたが、一貫性というところで、1つは2月の物価安定の目途についてみると、内外の市場の受け止め方には、かなり乖離があったと思います。「Goal」という言葉と「目途」という日本語から受けるニュアンスにかなり乖離があって、海外では非常に強い積極緩和期待が急激に強まってしまい、内外でダブルスタンダード的になってしまったのではないかという見方が市場にあったことは確かであり、ある種の混乱が起こったのかと思います。』

さよですな。

『それからもう1つの一貫性というのは、やはり時間軸でみた一貫性であり、非常に強い1%の物価安定の目途達成に向けた強い姿勢がみえたと思ったら、少しトーンダウンしたような印象を市場に与えたということです。実際はそういうことを意図して情報発信したわけではないと思いますので、市場が一貫した姿勢を日銀から感じ、受け取ることが重要だと思いますし、もし、そこにやや誤解があるのであれば、情報発信の仕方というのを工夫できたらと感じています。』

「実際はそういうことを意図して情報発信したわけではないと思いますので」という辺りにまあ優しさというか配慮というのを感じますな、うんうん。


○財政マネタイゼーションとか国債引き受けとかに関して

まあ当たり前ですがお二方ともまあ普通の話をしているのですが、質問がワロタので引用。

『(問) お二方に伺います。日銀の現在の国債の買入れ規模とペースですが、年間で43兆円くらいに達しているということで、日銀は、5月以降、マネタイゼーション懸念ということを割と頻繁に発信するようになっていますが、例えば先程、佐藤委員がおっしゃった岩田先生など、マネタイゼーションの「マ」の字もあまり心配されていない方もいらっしゃると思います。その国債の買入れについて、今後、ある種の天井があるというか、マネタイゼーション懸念をお感じになるのか、ご見解をお願いします。』

多分質問者は岩田一政前副総裁と岩田規久男学習院大学教授を混同しておられると思うのですけれども、「マ」の字も心配されていないというのはオモシロス。

・佐藤委員:市場で買う分にはマネタイゼーションではありませんと

『(佐藤委員) マネタイゼーションという言葉の定義をもう少し明確化する必要があるかと思います。日銀は現在、マーケットから間接的に国債を買い入れているということですが、これがマネタイゼーションなのかどうかというと、私は、量の多寡に拘らず、これはマネタイゼーションではないと思います。』

ほう。

『マネタイゼーションとは、狭義の意味では、やはり国債の直接引受けということかと思います。直接的に政府から買い入れる、それから間接的にマーケットから買い入れる、これらは、似たように見えて、その経済効果としては大きな開きがあるということです。政府から直接買い入れるというのは、要は、政府預金口座に日銀がクレジットすることになり、これは文字通りプリンティング・マネーということかと思います。マーケットから間接的に買い入れるということ、これはマーケットのカウンターパート、主に銀行になると思いますが、その銀行の日銀当座預金にクレジットしていくということであり、これはマーケットというフィルターを通しているという点で、狭義のマネタイゼーションとは大きな開きがあるものだと思います。』

ほうほう。

『そういう点で、現在の政策がマネタイゼーションに近付いてきていると私は特に考えていません。それから、敢えて付け加えておくと、やはり国債の直接引受け、これは、財政規律の観点から厳に避けるべきだと考えています。』

なるほど。


・木内委員:国債の買入拡大が財政規律に影響する事は避けるべきと

『(木内委員) 現状では大きな問題になっているとは思ってはいませんが、国債の買入れが財政の規律を緩めることにならないかどうか、そういうリスクを常に意識して政策を運営しなければならないのではないかと思っています。』

ほほう。

『つまり、日本銀行が大量に日本国債を買うことによって、政府がそれに甘んじて財政規律が緩み、安易に財政環境を悪化させてしまうことにつながってしまった場合には、財政環境は一段と悪化しますし、場合によっては金利が上がるという形で日本経済や金融システムの安定に悪影響を及ぼす、こういったリスクは、今後も常に考えなくてはいけないのではないかと思っています。』

ほうほうほう。

『ただ、足許では、財政再建の動きが、まだ分かりませんが、比較的強まる方向になっていると思っています。消費税の引き上げ、あるいは社会保障制度の一体的な改革の中で、もし中期的に財政改善の方向がしっかりと強まっていくということである場合には、財政リスクを高めずに国債を買う余地が追加的に生まれるのではないか、とも思っています。従って、やや中期的に金融政策運営を考える上では、やはり、政府の財政再建という政策がしっかりと進んでいくかどうかにより、政策のオプションが変わってくるということが、非常に重要なテーマになっていくのではないかと思っています。』

なるほど。


○つーことで総括すると佐藤審議委員の方が(緩和方面に)積極派というニュアンスを感じますな

つーことで延々と引用した結果昨日の山口副総裁講演(割とハト的サービスフレーズが多い)のネタをする時間も量も無くなったでござるの巻となりましたが、会見の前半の所で木内委員が「新たな形の金融緩和を柔軟に考えていくということは、当然ですが必要になっていくのではないかと考えています」って発言したのに見事に釣られて昨日引用したブルームバーグニュースのヘッドラインでは「木内委員がこう言った」というのを題名にしていましたけれども、質疑の後半の方を見ますと、引用した最後の部分の国債買入に対する財政規律との関係に関して(佐藤委員は「市場で買う分には何ぼ買っても無問題」というのに対して木内委員は「買入拡大で財政規律に影響を与えないように」と言ってます罠)とか、その前のコミュニケーションの部分(佐藤委員の方が手厳しい罠)とか、今後の金融政策の枠組みに対する見解(佐藤委員の方が色々とネタ出ししてます罠)とか、あたしゃーどう見ても佐藤審議委員の方が積極派という風に読んだのですけれどもどうっすかねえ。

まあ今後のお手並みに期待したい所ではございまする。山口副総裁講演に関しては明日で勘弁m(__)m




2012/07/25

お題「まあ今日も雑談/今さらですがBOEのFLSスキームを確認」

すっかりだんまりだったムーシャ先生が久々にお告げを。
http://www.musha.co.jp/4051

・・・・・・・珍しくも中国経済に対する悲観論を述べておられますので、このままだんまりを続けて頂けると幸甚であります♪♪♪


○市場メモ系雑談

・欧州とか米金利とかを俺様メモである

何が何やらという感じですが
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7O1SC6S973H01.html
スペインのカタルーニャ、中央政府基金に支援要請へ−パイス

El Paisが報道してるんでしたらまあそうっすかと思ったら当該記事は
こちらと思われます(ただしスペイン語)。
http://ccaa.elpais.com/ccaa/2012/07/24/catalunya/1343131267_938560.html

ということで、米国10年債は貫録の1.4%割れですかそうですか。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

米国10年国債 1.387 -0.039 103.312
米国30年国債 2.454 -0.045 111.500

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7OKKQ6VDKI001.html
米国債:利回りが連日過去最低を更新、欧州危機で不安増幅

・・・・・・・・・・・でまあ追加緩和がどうのこのという報道がWSJに出たとかいう話をモーサテがしていましたが、しかしまあ金融市場に混乱が生じていない中で追加という話ですと相当の下振れリスクという話にならないと難しいような気もしますし、はてどうなんでしょと思うのでございますけどね。


・オペ関連雑談

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120724.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 6,000 2012年7月26日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 1,000 2012年7月26日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年7月26日 2012年8月2日 0.630
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年7月26日 2012年10月18日 0.640
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年7月26日 2013年2月12日

オペ結果(順序は上のに揃える形で直しています)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120724.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 6,001 6,000 0.000 0.000 100.0
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 1,576 1,002 0.000 0.000 63.6
米ドル資金供給(固定金利方式)(8月2日エンド分) 0 0
米ドル資金供給(固定金利方式)(10月18日エンド分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月26日スタート分) 9,075 8,008 88.2

・・・・・・・・何かまた6か月オペを打っておられますが、まー足元でGCレートが高い(高いって言っても0.105〜0.110の間ですけど)状況にありますように、若干足元のGCが重いので6か月オペを入れても札が入るのでしょうけれども、どちらかと言いますと安定的に3か月オペを入れるとかの方がオペのニーズという意味では扱いやすいと思うのですけれどもにゃあ。何となく買入進んで年末に向けて当座預金残高が増えて札が入りにくくなる前に打ってしまえというようなお気持ちが伝わって来るのですが(^^)、いやまあお気持ちは判るのですけれども折角市場のニーズに合わせてオペしますという話になった事ですし、もうちょっと短いオペの方が国債の在庫ファンディング的にはアリガタヤという気はする(まあ銀行の場合どうなのという議論はありますが)んですけどね。毎日1兆円のオペを25本打つ(よって期間は25営業日物)とかもう機械的にやるというのも^^

#この前資金余剰日(6月20日)スタートのオペも実施したわけですし

あと、基金国債買入の方ですが、これまたECBのどう見ても何も考えていないはた迷惑利下げによってドイツだのデンマークだのオランダだのの2年金利がマイナスだのゼロだのという素敵な水準になり(スイスはペッグの影響で以前よりマイナスでしたが)まして、デンマークとか-0.40%近くだったと思いますので、ファシリティーのマイナス金利よりも安全資産プレミアムが20bp近く乗っているという素敵な状態になっているとかになりやがりまして、その影響かどうかは知らんですけれども、日本の2年国債も0.10%ではとてもとても買わせてくれません状態になっとる次第。

つーことで、まあ昨日のオペでは6000/1000という割り振りで無茶しやがってという感じではあったのですが、とりあえずカツカツで札が入って良かったですね(棒読み)という風情ではあるものの、まあ2年金利とか中々アガランチ会長になっている中でこちらの方の基金オペ買入いつまで続くのでしょうかねえという感じではありまする。まあ札の入りがしんどいようなら2年〜3年の買入を厚くするという事になるのでしょうが、そうなりますと(まあ既に十分沈んでいますが)益々0.10%岩盤状態の年限が伸びて行くのでしょうという誠にアヒャヒャヒャヒャな事になりますなあ。

まあ残高達成の為にという話になると、この辺の市場金利がアガランチ会長どころか低下となりますと、将来的に買入下限金利を撤廃するとかやっぱり買入の年限を延長するとか、その手の素敵な思惑は出易くなり、それがまた自己実現的に相場に反映されるとか考えますと中短期金利は中々アレな事態が続くという事ですかそうですかorzorzorz


○審議委員2名着任である

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120724a.htm/
審議委員の発令について

任期は5年でございます。

佐藤審議委員
http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_sato.htm/

木内審議委員
http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_kiuchi.htm/

ということで就任記者会見があったのですが、会見の方は今日日銀のページにアップされるのでそちらを見てからとは思いますがとりあえずニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7NMEN6K50XZ01.html
日銀審議委員の木内氏:政策効果を総括し、新たな緩和策検討も (1)

『木内氏は日銀が掲げる物価上昇率1%目標の達成について「不確実性も依然として大きい」とした上で、「必要あれば追加の緩和策は検討すべきだ」と強調。2010年10月に策定した包括緩和策の効果を検討し、目標達成の可能性が低いと判断されれば、「新たな形の金融緩和を柔軟に考えることが必要になる」と語った。』(上記URLより)

『一方で、佐藤氏は「期待インフレ率を引き上げることで実質金利を引き下げる必要がある」とし、具体的には「資産買い入れを多様化していくことだ。外債買い入れも一案だ。財務省とのすみ分けの問題もあるが、為替操作ではなく資金供給を増やすためと位置付ければよい。クリアすべき関門は多いが勉強したい」と述べた。』(上記URLより)

という事でまあ色々と新しい施策をご提案されるべくという事のようですが、まあお手並み拝見という所でありまする。会見の要旨を見ないとこの辺の「新しい施策」について実際にどの程度の事を考えているのかが良く判らん所(メディア報道だとどうしてもキャッチーな発言をクローズアップするので前後の文脈読まないとミスリードされる可能性がががが)であります。



○今さらですがBOEのFLSについて

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/067.aspx
News Release - Bank of England and HM Treasury announce launch of Funding for Lending Scheme

詳しいスキームとか説明とかは上記URL先に色々と資料があるのですが、そこまで細々見ても何ですので上記のリリースから少々。

『The Bank of England and HM Treasury are today announcing the launch of the Funding for Lending Scheme (FLS). The FLS is designed to boost lending to the real economy. Banks and building societies that increase lending to UK households and businesses will be able to borrow more in the FLS, and do so at lower cost than those that scale back lending.』

つーことで目的は「実体経済の貸し出しを増やす」ということで、それに対して銀行やビルディングソサエティーが家計や企業への貸し出しを増やしたらお助け金利でファンディングを付けてあげますよというお話。

『The introduction of the FLS occurs against the backdrop of a euro-area debt crisis which has revealed severe vulnerabilities in the European banking system and has led to a marked deterioration in the outlook for the UK economy over the past twelve months. In spite of the policy actions of the authorities, the flow of credit through the banking system - which households and many businesses necessarily rely on - has remained impaired. The FLS is designed to tackle this problem by reducing the price at which banks and building societies are able to fund themselves.』

この辺が導入の背景ですが、欧州金融問題の絡みでファンディングコストが高止まっているのでその辺を何とかしまっせと。

『In the publication of an exchange of letters between the Governor and the Chancellor, accompanied by a background Explanatory Note and a Market Notice, the Bank and HM Treasury have today outlined the design and operation of the FLS. From today, eligible banks and building societies are encouraged to ensure they build up sufficient eligible collateral pre-positioned with the Bank to support their future use of the scheme. The FLS will open for drawings on 1 August. For 18 months thereafter, banks and building societies will be able to borrow UK Treasury Bills from the Bank for a period of up to 4 years against DWF-eligible collateral, for a fee.』

で、このファンディングスキームですが、BOEが貸し付けをするのはUK建てのTBというのが中々お洒落で、しかもそれにはフィーはチャージされるというスキーム。(もちろん有担保貸出で、従来のディスカウントウィンドウの適格担保ですな)

『Participating banks and building societies will be able to borrow up to 5% of their stock of existing lending to the real economy, plus any net expansion of lending during a reference period (from end-June 2012 to end-December 2013). In other words, for every pound of additional real economy lending an institution advances, an additional pound of access to the scheme will be permitted for that institution.』

従来の貸出の5%と、2012年6月末から2013年12月末までの民間向け貸し出しのネット増加額に対してこのTB借入が可能ですとな。

『There is no upper limit on the size of either individual or aggregate borrowing under the scheme. By way of illustration, 5% of the stock of existing loans is equivalent to roughly £80bn across all potentially eligible banks and building societies.』

大体現在の時点で「従来の貸し出しの5%」というのが800億ポンドですとな。

『The price of each institution’s borrowing in the FLS will depend on its volume of lending to the real economy during the reference period. For banks or building societies maintaining or expanding their lending over that period, the fee will be 0.25% pa on the amount borrowed. After accounting for the cost of using the T-bills to borrow money, the total cost of funding for an institution using the FLS will be lower than current term funding rates, even for the strongest institutions. So as banks increase lending, their overall funding costs will fall. For banks or building societies whose lending declines, the fee will increase linearly, up to a maximum of 1.5% pa where lending decreases by 5% or more.』

ここが中々チャーミングな所でありまして、残高を維持または増加させた銀行等にはこのTB貸出の貸出料が0.25%になりますが、貸出を減らした銀行に対しては貸出料金が段階的に上昇しまして、貸出を5%以上減らした場合は最大チャージの1.5%を徴収いたしますというお助けスキームなのに罰ゲームまで用意してあるのがお洒落であります(ちなみに今の市場環境からすると0.25%で品借りしたTB担保でレポ市場でファンディングしたら通常の無担保ファンディングよりも安いですよねという事のようだ)。

『The FLS is designed to encourage broad participation so that as many institutions as possible have incentives to lend more to the UK real economy through, for example, business loans and residential mortgages, than they otherwise would have. Access to the scheme will be for those banks and building societies who sign up for the Bank’s Discount Window Facility. Institutions will be permitted additional access to the scheme, pound-for-pound with any increase in lending, provided they have sufficient DWF-eligible collateral. The amount borrowed from the Bank of England, and the amount lent to households and firms, by each participating institution will be made public by the Bank of England on a quarterly basis.』

『Although the Bank will not be indemnified for the operation of the FLS, the exchange of letters published today shows that the Bank has sought and received an assurance from the Government that the objectives of the Scheme lie within its remit. In addition, the FLS will be overseen by a joint Bank / HMT Oversight Board, which will meet on a quarterly basis.』

でまあこれによって貸出が増えるでしょうという話なのですが、貸出が伸びるとその都度ホイホイとこのスキームにアクセスしてTBを取れますという話のようですにゃ。しかし罰ゲームレートもあるというスキームに手を挙げない銀行いるんじゃないかと思ったら、貸出の実績に関しては4半期毎に公表されるとかトレース体制もあるのですね、オソロシス。

『Commenting on the launch of the Scheme, the Governor of the Bank of England said: “This joint action by the Bank and the Treasury creates strong incentives for banks to expand their lending to the real economy. The more banks expand lending, the more they can use the Scheme. That will encourage banks to make loans to families and businesses both cheaper and more easily available". The Chancellor of the Exchequer said: “Today’s announcements aim to make mortgages and loans cheaper and more easily available, providing welcome support to businesses that want to expand and families aspiring to own their own home. The Treasury and the Bank of England are taking coordinated action to inject new confidence into our financial system and support the flow of credit to where it is needed in the real economy - showing that we are not powerless to act in the face of the eurozone debt storm.”』

最後の所はこのスキームを導入するにあたっての英国財務省とBOEのエライ人のコメントでございます。

ということでですな、まあ日本でもこんなのがかつてありましたが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1998/mok9811b.htm/
企業金融支援のための臨時貸出制度の創設について
1998年11月27日
日本銀行

『日本銀行は、本日開催された政策委員会・金融政策決定会合において、企業金融支援のための臨時貸出制度を創設することとし、その基本要領を別紙のとおり定めることを決定いたしました。これは、平成10年11月13日の政策委員会・金融政策決定会合において決定のうえ公表された「最近の企業金融を踏まえたオペ・貸出面の措置について」に示された方針を踏まえた措置です。』

ということでテラナツカシスという所ではありますが、お助け金利だけではなく懲罰金利が設定されるとかいうのが中々のジョンブルクオリティーでして、日本だとそういう発想は起きないなあとか思うのでありました。しかし何だかんだ言ってジャパンの皆様が危機対応のフロントランナーであることは益々示されまして麿のドヤ顔が目に浮かぶというものです(^^)。




2012/07/24

お題「FOMCネタの続きとか雑談とか」

オスプレイの安全性がどうのこうのという報道をするのにヘリ飛ばしている方が安全性に問題があると思うのですけれど、何がどうしてこんな戦術核ミサイル持ち込みでもするかのような騒動になっているの???

いやまあそもそも基地がケシカランというのがベースにあるのは判るが、あんまり理由にならない理由で反対するのは却ってマズーな気がするんですけどねえ・・・・・・

#つーじゃ本当に欠陥機だったらあちこちで運用されて無いだろうに・・・・・


○FOMCネタの続きである

6月FOMC議事要旨の続きである。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120620.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120620.pdf

・ツイストオペで短い金利が上昇という話

『Staff Review of the Financial Situation』の所で面白い部分があったので引用。

『There was limited evidence of increased strains in unsecured, short-term dollar funding markets over the intermeeting period despite heightened concerns about the situation in Europe.』

欧州問題の米国の無担保短期ドルファンディング市場への影響は今の所それほど大きくないとゆー状況のお話でございますが、オモシロ話はその次の担保付ファンディング市場の話です。

『In secured funding markets, the overnight general collateral Treasury repo rate edged higher. Market participants attributed some portion of the firming in short-term rates over the past several months to a temporary increase in short-dated Treasury securities held by dealers as a result of cumulative net Treasury issuance of such securities and sales of these securities by the Federal Reserve under its maturity extension program.』

まあご覧の通りなのですが、ツイストオペで短期債をFEDが売っている為に市場の需給が悪くなってレポ金利などが若干ですけれども上昇しているという話がありまして、まあ当然ちゃあ当然なのですがちょっとふーんと思ったので。


・連銀スタッフの景気見通しは足元を下げて先行きの方は若干下げ

『Staff Economic Outlook』を引用である。

『In the economic projection prepared by the staff for the June FOMC meeting, the forecast for real gross domestic product (GDP) growth in the near term was revised down. The revision reflected data indicating a slower pace of private-sector job gains, more-subdued retail sales, a lower trajectory for personal income, greater restraint in government purchases, and weaker net exports than the staff anticipated at the time of the previous projection.』

ということで民間部門の雇用の伸びが弱まっている事や、小売売上の一層の抑制、個人所得の伸びが弱い事、政府部門の支出のより一層の束縛、より弱いネット輸出など、前回予想時点よりも悪化した事を反映して足元の実質GDP見通しを下方修正しましたよと。

『Moreover, recent adverse developments in Europe and tighter domestic financial conditions led the staff to revise down somewhat the medium-term forecast for real GDP growth. 』

でまあ更に欧州問題とそれに伴う米国の金融環境の引き締めが中期的に若干の下方修正と。

『With the drag from fiscal policy anticipated to increase next year, the staff projected that the growth rate of real GDP would not materially exceed that of potential output until 2014 when economic activity was expected to accelerate gradually, supported by accommodative monetary policy, further improvements in credit availability, and rising consumer and business sentiment.』

金融緩和やクレジットアベイラビリティの好転やセンチメントの好転で今後よくなるけれども、フィスカルクリフの問題で2014年中は経済活動は潜在的な生産力を大きくは上回れないでしょうというようなお話で。

『Increases in economic activity were anticipated to narrow the wide margin of slack in labor and product markets only slowly over the projection period, and the unemployment rate was expected to still be elevated at the end of 2014.』

更に景気の回復によって労働市場や生産市場のスラックは徐々に縮小するものの、その縮小の程度は2014年末までの間に失業率が依然として高い状態にとどまる程度の効果にしかならないというようなお話なので要するに失業は高止まりと。

『The staff's near-term projection for inflation was revised down from the forecast prepared for the April FOMC meeting, reflecting a greater-than-expected drop in consumer energy prices. However, the staff's projection for inflation over the medium term was essentially unchanged. With the upward pressure from the earlier run-up in crude oil prices on consumer energy prices unwinding and oil prices expected to decline further, long-run inflation expectations anticipated to remain stable, and substantial resource slack persisting over the forecast period, the staff continued to project that inflation would be subdued through 2014.』

物価の見通しに関してはエネルギー価格の下落で足元の見通しを下げたものの、先行き見通しには大きな変化が無いという事になっています。


・FOMCメンバーの見通しもまあ概ね下げと

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から少々。

『In their discussion of the economic situation and outlook, participants agreed that the information received since the Committee's previous meeting suggested that the economy had continued to expand moderately, though many noted that a variety of indicators showed smaller gains than had been anticipated. 』

現状認識はこんな感じ、以下需要項目別の部分はめんどいので割愛。

『Participants generally interpreted the information that became available during the intermeeting period as suggesting that economic growth would most likely remain moderate over coming quarters and then pick up very gradually. Most participants saw the incoming information as indicating somewhat slower growth in total demand, output, and employment over coming quarters than they had projected in April, and most carried forward some of that downward revision to their projections of medium-term growth.』

ということで、殆どのメンバーは中期的な成長見通しを下方修正と。

『However, some participants judged that the recent weakness in a variety of economic indicators was more likely to prove transitory, and thought that the outlook beyond this year was essentially unchanged.』

一方で数名は足元の弱さは一時的な要因が強く、今年の見通しは本質的には変化ないと。

『Reflecting the projected moderate pace of growth in production and employment, most participants anticipated that the unemployment rate would decline only slowly.』

失業率がサガランチ会長というのはほぼ同意という感じでしょうか。

『A number of factors continued to be seen as likely to limit the economic expansion to a moderate pace in the near term; these included slow growth or even contraction in some major foreign economies, ongoing and prospective fiscal tightening in the United States, modest growth in household income, and--despite some recent signs of improvement--continued weakness in the housing sector. As in April, participants expected that most of the factors restraining economic expansion would ease over time, and so anticipated that the recovery eventually would gain strength.』

とまあこの辺が成長を阻害するものの話。一応最後には前回予想と同様にこれらの問題はいずれ緩和されるので成長も次第に強さを持ってくるでしょうと締めています。

『However, strains in global financial markets, which stemmed primarily from fiscal and banking concerns in Europe, had become more pronounced over the intermeeting period and continued to pose significant downside risks to the economic outlook; the possibility of a sharper-than-anticipated fiscal tightening in the United States also posed a downside risk.』

でまあこれはFOMC声明文でもそうですし、先般のバーナンキ議長の議会証言でも同じですけれども、先行きの顕著なダウンサイドリスクとして欧州問題とフィスカルクリフを上げていて、これらのリスクは以前よりも高まっているとお話のようで。

『Looking beyond the temporary effects on inflation of this year's fluctuations in oil and other commodity prices, almost all participants continued to anticipate that inflation over the medium-term would run at or below the 2 percent rate that the Committee judges to be most consistent with its statutory mandate.』

物価見通しはスタッフ見通しと同じですな。

『In one participant's judgment, appropriate monetary policy would lead to inflation modestly greater than 2 percent for a time in order to bring unemployment down somewhat faster.』

どう見てもエバンス総裁です本当にありがとうございました。

『Some participants indicated that they saw persistent slack in resource utilization as posing downside risks to the outlook for inflation; a few participants judged that the highly accommodative stance of monetary policy posed upside risks to the medium-term inflation outlook.』

ということで、リソースの稼働が持続的に悪いので物価のダウンサイドリスクがあるという人がSomeいて、一方でa fewな人は極めて緩和的な金融政策スタンスは中期的なインフレ見通しにアップサイドリスクですぞなもしという事で、まあ金融政策と物価という話に関してはこれまた昨日ご紹介した失業と物価に関する部分と共に意見が割れまくりで、こんな状態でバランスシートを本格的に拡大する方向での金融緩和政策おかわりってのはまあ普通に打ちにくい(物価が下がりだせば別だが)んじゃないですか、と考えるのが妥当というかロジカルだと思うのですけれども何で米国株式市場って以下同文。


・更に詳しく物価見通し、つーか物価に関する思想の違いを見物する

『Measures of consumer price inflation declined over the intermeeting period, mainly reflecting reductions in oil and gasoline prices since earlier in the year.』

スタッフ見通しと同じですな。

『Several participants noted that they saw little if any evidence of price pressures, commenting that increases in labor costs continued to be subdued and that non-energy commodity prices had declined of late.』

労働コストが抑制されていて、コモディティ価格が足元下がっているので価格上昇圧力は殆ど観察されませんとな。

『With longer-run inflation expectations well anchored and the unemployment rate elevated, almost all participants anticipated that inflation in coming quarters and over the medium run would be at or below the 2 percent rate that the Committee judges to be most consistent with its mandate; several had revised down their inflation forecasts.』

数名のメンバーは物価見通しを下方修正したそうで、ってまあSEPに反映されてましたが。

『Most participants viewed the risks to their inflation outlook as being roughly balanced.』

というのはまあいつもの話ですが。

『Some participants, however, saw persistent slack in resource utilization as weighting the risks to the outlook for inflation to the downside. In contrast, a few saw inflation risks as tilted to the upside; they generally were skeptical of models that rely on economic slack to forecast inflation and were concerned that maintaining the current highly accommodative stance of monetary policy over the medium run risked eroding the stability of inflation expectations, with a couple noting that large long-run fiscal imbalances also posed a risk.』

ということで、今さっき引用した部分と、昨日ネタにした物価と失業の関係に関する部分の議論に繋がりますが、物価に関する見通しは大体揃っているのですけれども、リスクに関しては見ている方向性が真逆なのが数名ずつ存在していまして、この方向性って金融緩和に関するスタンスに直結する(経済状況が大きく変われば話は別ですが)ので、まあ結論としては外部環境が変わらない中では何となく期待だけ持たせて延々と逆さ絵節で引っ張り続ける、というのが逆さ絵クオリティーになりそうですなという事で。

#まあ元々今月末のFOMCはSEPも会見も無いですしねえ


○各種雑考とか雑談とかである

・2か月TB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240723.htm
国庫短期証券(第297回)の入札結果

(1)応募額 46兆53億1,000万円
(2)募入決定額 2兆3,276億5,000万円
(3)募入最低価格 99円98銭3厘0毛 (募入最高利回り)(0.1000%)
(4)募入最低価格における案分比率 0.7166%
(5)募入平均価格 99円98銭3厘5毛 (募入平均利回り)(0.0971%)

ということで、落札結果は毎度のように0.10%割れ・・・・と思ったら物凄い薄い按分ですけれども足切りが0.10%に乗るとかほほうな結果。まあ平均が上の刻みなんで足切りで入った札は本当の本当にカスみたいなロットなんでしょうけれども。

・・・・・でまあそれはそれとしてへーと思ったのは不明玉ちゃんでして、2.5兆円の入札(価格競争分は2.3兆円ね)に対して所謂不明玉が2000億円ちょいしかございませんでして、先週の3カ月入札でげげげのげと思った不明玉2.5兆円攻撃から一転して超普通の入札になりましたです。

まあ何ですな、2か月と3か月ですと「モノ」としての使い勝手が違う(3か月の方がモノとしては使い勝手が良いという面があったりする)ので、物としてのニーズがはてさてどうなんでしょとか考えた場合には結局の所今週の入札を見ないと何とも言えなかったりするのですが、まードンドン金利が下がってオッペケペーという事でも無いのかなあとは思う入札結果でありました。


・マイナス金利雑考

まだ頭が纏まっていないのでとりあえず思考のメモだけしておく。

・・・・・・えーっとですな、このネタもうちょっと考えて頭で纏めてから書こうと思っているのですが、今日の某モーサテで「ECBの預金ファシリティー金利をマイナスにして銀行間金利がマイナス」とか何とかいう解説をしている方がいたので脊髄反射でちょっとだけメモ。

そもそもECBの預金ファシリティーってのは日米のようなリザーブ付利と話が別で、これは超過準備部分を準備預金制度参加銀行が自主的にファシリティーに預けるという仕組みになっておりまして、一方でECBは超過準備に付利をしていない中で超過準備の保有限度は特段設けられていない(筈です、色々と探したのだがなかなか見つからないのですが関係者に聞いて回った所たぶんそうだと思われます)ので、預金ファシリティー金利をマイナスにしても意味が全くないだけの話ですわな。

そらまあ超過準備にチャージをするとか、(デンマーク方式で)超過準備に限度額を設けてそれを超えると自動的にペナルティー金利というのであれば話は分かりますが、そうなった場合って銀行間市場金利がマイナスになるよりも、単純に超過準備が減らせるだ減らされるという行動になりますので、つまり「量的な意味では引き締めになる」という事でございまして、そらあーた金融不安のある中でインターバンクの資金量を締めるとか頭が相当いかれていないと実施できない政策だと思うのですけどねえ。

ただまあECBは今回の利下げでどう見ても何も考えてないだろうという預金ファシリティーゼロ攻撃によって却って市場の安全資産選好を強めて安全国の国債金利のマイナスを深くしたという無茶(短期市場関係者的な視点だと、どう見ても今回の利下げは逆効果で何の為に実施したのか意味判んねえという風に思えるのですが)振りをしているのがアレでございますけれども。

まあそもそも銀行間市場でのマイナス金利発生とかいうのは基本的に調達がマイナスでは無い以上シングルカレンシーの状態では有り得ない(為替スワップが絡むと有る)のでして、リアルマイナス金利資金供給でも無い限りは銀行間には行かずにモノとしてのニーズのある国債の方に逝くでしょとかいう話をしようかと思っているのですが、まだ頭の中で全然纏まらない中でついモーサテにツッコミを入れる為に脊髄反射で書いてしまったので続きは後日(^^)、というか本石町日記先生の方が詳しそうな希ガス(大汗)。




2012/07/23

お題「FOMC議事要旨から(続き)/その他雑談」

週末は大して雨も降らなかったので結局更新しませんでしたな(汗)

○その前に各種雑感

・またユーロですかそうですか

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7G5546KLVSD01.html
NY外為(20日):ユーロが対円で2000年以来の安値に下落

『7月20日(ブルームバーグ):20日のニューヨーク外国為替市場ではユーロが対円で2000年11月以来の安値に下落。対ドルでは2年ぶり安値をつけた。欧州政策当局者による域内金融危機への解決努力が十分ではないとの懸念が背景だ。』(上記URLより)

という事でECBの先般の利下げは金融政策対応として方向が斜め上だった(利下げするよりは信用緩和だったんじゃネーノという意味)という感じではございますが、展望レポートを出すとその途端に欧州があばばばばーになるとか4月の展望レポートに続いて7月の中間評価でも同じプレイが炸裂とか、もうお祓いを受けた方が良いのではないかというレベルのような気がします(−−)。

まあ円高になるとまた色々と喧しくなるのですが、展望レポートをドヤ顔で出した途端というタイミングが如何にもマズーでしょうなあ。


・調子に乗って6か月オペの実施なのですが&謎の輪番結果

金曜日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120720.htm

国債買入(残存期間1年以下) 3,100 2012年7月24日
国債買入(残存期間1年超10年以下) 2,500 2012年7月24日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年7月24日 2013年2月7日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120720.htm

国債買入(残存期間1年以下) 8,527 3,101 0.000 0.000 98.9
国債買入(残存期間1年超10年以下) 7,324 2,504 0.006 0.007 78.3
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月24日スタート分) 10,430 8,005 76.7

という事で金曜のオペは色々と謎だった訳ですが、まずどうなのかと思うのは6か月オペのオファーでして、木曜は普通に3か月固定オペのロールを3か月で実施したのですが、まあ札が集まるもんだから調子に乗ってオファーしたんだろうなあというのは判るのですが、金曜はまたまた「3か月固定オペのロールを6か月オペで実施」というパターン。

いやね、足元でGCが重めだからこれはこれで札は集まるかもねとか思って見ておりましたら応札1兆入ったのですけれども、足元の需給的に入りそうだからという事でそうホイホイと3か月オペのロールを6か月で打つというような事をされますと、固定金利オペを使った在庫ファンディングする債券業者としては担保繰りの計画が立て難くなって運用的に困るんでそういうの勘弁して欲しいんですけどねえ。固定金利オペの総額25兆円ですと(買入の拡大によってブレはあると思いますが)目の子で恐らく市場の資金需要的に言って残高目標は行くでしょと思われる水準でして、そう慌てて年末越えのオペを入れなくてもと思うのですよね。

つーか「市場のニーズに対応しやすくする」という事でオペの期間を6か月以内というのにした筈でして、3か月オペなら3か月オペで普通に25兆円を8000で割った分だけ回してくれれば良いと思う(まあ3か月よりも1か月とかにした方がニーズが高いと思うけど)次第でありますし、6か月オペを残したいのであれば6か月のロールを6か月でやれば宜しいがなと存じます次第。

つまりですな、現状の国内における業者の在庫ファイナンスとか銀行の金繰りという市場(市場というか対日銀取引だが^^)における参加者のリスクは、「資金がショートする」リスクよりも「担保繰りがショートする」リスクの方がテラヤバスであって、担保繰りがショートすると飛んでも無い低い金利の短国を買うのかGCを買うのかという事になります(担保さえあれば日銀からも取れますし、GC市場でほんのちょっとレート上げれば資金のアベイラビリティーは潤沢に確保できている)という事でそもそも6か月オペのニーズが消滅している(1年とかの金利が6か月よりも立っていれば運用サイドのニーズがあるけれどもその金利は基金国債買入拡大の影響で超フラット状態)という事なのですからして、まあ無茶振りオペへの対応で苦労している調節担当セクション的に年末越えのオペを打っても札が入りそうなら打ちたいというお気持ちはひじょーーーによく判るのですけれども、やはりその市場のニーズに機動的に対応という話と整合的ですかねというのは思うのでありました。


#うむ、3行コメントの積りが妙な長さに

あとまあ輪番も謎なのですが、1年以内の輪番の足切りが利回り較差0.000%になっておりまして、それって出来上がり0.100%じゃネーノという気がするのですが、今普通に短い所の国債買いに逝っても0.09%台で何とか(モノによっては物無しの為もっと悲惨な事になるような希ガス)という感じだと思うのですが、どうしてこうなったのかが正直ミーには謎ざますが何なんでしょこれ??

#単なる何かの勘違いだったらどうもすいません


・LIBORがどうのこうの

モーサテでロイターが報道しておりましたがどうのこうのとゆうとったニュース。
http://www.reuters.com/article/2012/07/22/us-banking-libor-criminal-idUSBRE86L0CC20120722
Exclusive: Prosecutors, regulators close to making Libor arrests

いやあのそもそも無担保銀行間取引の3か月とか6か月とかの市場取引実態が無い状況下において呈示金利が正しいも正しくないもねえだろとか言うのは何度も申し上げている通りですが、どうも「銀行叩き」とか「(米国の場合は)自国の短期市場指標金利がロンドンで決められているのはケシカラン」というような経済的では無い動機が話をややこしくしているようで、甚だ遺憾な展開だとは存じます次第。

BOEのページ(何かレイアウトが変な気がするのですがワシのPCのせいかな)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/070.aspx
News Release - Further information and correspondence in relation to the BBA Libor Review in 2008

下のKey Resourcesって所に

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/other/treasurycommittee/financialstability/emailchain.pdf
Further information and correspondence in relation to the BBA Libor Review in 2008
(メールのコピーをPDFにしているのでアホのように重いので注意)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/other/treasurycommittee/financialstability/timeline.pdf
Timeline of Bank/Federal Reserve/BBA communications about BBA Libor Review in 2008

とかございますが、まあこの辺の関連情報一通り読むほどの暇が中々無いのですが(汗)その前の米国当局と英国当局の話はこちらの方にあるみたいです。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/068.aspx
Bank of New York and British Bankers’ Association in relation to Libor

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/news/2012/nr068.pdf
Correspondence between the Bank of England, the Federal Reserve Bank of New York and the British Bankers' Association

まあ経緯とか真面目に読まないと何とも言えませんな、うんうん。


○ということでFOMC議事要旨から少々

6月FOMC議事要旨である。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120620.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120620.pdf

・SEPの更なる見せ方変更の絶賛検討中とな

最初に『Discussion of Communications regarding Economic Projections』というのがございまして、こちらでは要するにSEPでの見せ方を更に充実させますお!というのが論議されております。

『Meeting participants discussed several possibilities for enhancing the clarity and transparency of the Committee's economic projections and their role in policy decisions and policy communications.』

ということでコミュニケーションポリシーの改善キタコレです。

『In particular, participants noted that while the Summary of Economic Projections (SEP) provides information about their individual projections of key macroeconomic variables and about the path of monetary policy that each sees as appropriate and consistent with his or her projections, the SEP does not provide guidance about how those diverse views come together in the Committee's collective judgment about the outlook and appropriate policy as expressed in its postmeeting statement.』

SEPではメンバーの異なったビューをまとめるにあたって、その各人のビューのベースとなる適切な政策パスについてのガイダンスを与えない、とか何とか仰せだと読んだのですがどうすかね。

『Many participants indicated that if it were possible to construct a quantitative economic projection and associated path of appropriate policy that reflected the collective judgment of the Committee, such a projection could potentially be helpful in clarifying how the outlook and policy decisions are related.』

仮定法構文とかFOMC議事要旨で中々お目に掛かる事が無い(普通のif文の方が圧倒的に多いと思ったのだが^^)ような気がしますが、「もしFOMCにおける纏められたビューにおいて、その量的な経済の見通しと、それに関連した適切な金融政策パスを示す事ができたら、それは経済見通しと金融政策決定がどのようにリンクしているかをより適切に示す事になるかもしれない」とか何とか言ってるように思った次第。

つまり何ですな、SEPは各人のビューの集計だけれども、その集計をした時に「FOMC全体としては、こういう経済物価失業見通しの下で、このような適切な政策金利パスを取るという見通しを示します」というようなシナリオを示すというようなそんな話ですかね。

と考えると、時間軸政策の強化のような事を考えているのかなあとか思うのですけれども、現状の時間軸をこれ以上強化するとなると「コンディショナル」じゃなくてちゃんとした「コミットメント」にしないと意味が無いような気がする。

『Participants discussed examples of the economic and policy projections published by a number of foreign central banks. Participants generally indicated a willingness to explore adjustments to the SEP, while highlighting the importance of communicating not only the Committee's collective judgment but also the diversity of their views regarding the economic outlook and monetary policy. Many participants noted that developing a quantitative forecast that reflects the Committee's collective judgment could be challenging, given the range of their views about the economy's structure and dynamics.』

つーことで他国の研究とかしているようですが、全体のビューを示すだけでは無く、その中の各メンバーの差を示すのも重要、という話もしていて実際問題としてどういう風に出すのやらと考えるとイマイチ想像が付かないざんすわな。

『Several participants judged that the incremental gains in transparency that would result from developing and presenting such a consensus projection would be modest, given the breadth of information already provided in the Committee's policy statements, the minutes of Federal Open Market Committee (FOMC) meetings, and the Chairman's press briefings.』

Severalメンバーは既にこれだけ色々とやっている中で新しく出すメリットって小さいんじゃないですかねというまあそうですねというお話を。

『Participants agreed to continue to explore ways to increase clarity and transparency in the Committee's policy communications; many noted that the Committee had introduced a number of changes in its communications over the past year or so, and emphasized that further changes should be considered carefully. At the end of the discussion, the Chairman asked the subcommittee on communications to explore the feasibility and workability of potential approaches to developing an FOMC consensus forecast.』

ということでまあ次はこの手のコミュニケーションポリシーで目くらましをしてくるんでしょうなあってイメージでございまする。


・インフレと失業に関連して:経済のスラックをどう推計するかという話

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の中で面白い議論があったのでその辺から。

『Meeting participants again discussed the extent of slack in labor markets.』

という事でございますが。

『Some participants judged that the unemployment rate was being substantially boosted by structural factors such as mismatches between the skills of unemployed workers and those required for available jobs, a view that would imply less slack in labor markets than suggested by a simple comparison of the current unemployment rate to participants' estimates of its longer-run normal level.』

つーことで失業率の高止まりの要因として循環的なファクターと構造的なファクターのどちらがより効いているのかというような話がここから始まるのでありますが、Someメンバーは構造的な要因をより重視という事で、1名がコチャラコタなのはまあ判るが他にも複数いますな。

『A couple of participants said they would have expected inflation to slow noticeably if there were substantial and persistent slack.』

で、そのうち2名は労働市場のスラックが相当に大きいのであれば、そもそももっと物価が下がっていないとおかしいのではないか(だから推計よりもスラックは大きくないので、スラックが大きいという前提で追加緩和をホイホイ打つのは如何なものかという話だわな)とかそんな話。

『One implication of the view that there is relatively little slack is that providing more monetary stimulus would be likely to raise inflation above the Committee's objective.』

つまりそういう事でして、追加緩和をホイホイ打ったらインフレ高進に繋がるがなという話で、まあ量が拡大という話になると思いっきり反対に回りそうな人ですの。

『Some other participants acknowledged that structural factors were contributing to unemployment, but said that, in their view, slack remained high and weak aggregate demand was the major reason that the unemployment rate was still elevated. These participants cited a range of evidence to support their judgment: the still-high fraction of workers who report working part-time jobs because they cannot find full-time work; research showing that job-finding rates among the long-term unemployed were somewhat higher in the recent past than a year earlier; anecdotal evidence to the effect that employers do not see long spells of unemployment as making applicants less attractive for most jobs; and reports that employers were receiving large numbers of applications for each opening and were being especially discriminating when filling vacant positions.』

Some otherメンバーは構造要因はあるものの、色々な指標を見るにスラックは大きいのではないかという話をしていますので、この人たちは追加緩和にそこまで反対しないタイプ。

『Another participant pointed to research showing that, in many countries, inflation is less responsive to downward pressure from labor market slack when inflation is already low than when inflation is elevated, and to evidence that firms in the United States have been reluctant to cut nominal wages in recent years, as indications that sizable slack might not cause inflation to decline from its already low level. These arguments imply that slack in labor markets remains considerable and therefore that a reduction in the unemployment rate toward its longer-run normal level would not have much effect on inflation. 』

これは単数形ですので、上記の人たちとはまた別の人が指摘したのでしょうなとか思うのですが、物価上昇率が高い時期(=過去)と比較した場合、現状のように物価上昇率水準が既に低い状況においては、労働市場のスラックの大きさが物価に与える影響がより小さいのではないかというビューを示していまして、まあこの人なんかは追加緩和に対して結局どっちなのかは微妙な気はしますけど「労働市場のスラックに対応」という形での追加金融緩和は物価にあまり悪影響を与えないでしょうというビューになります(後半にあるように)ので、まあそんなに緩和不可的ではないかなと。


という事で、前半の前振り雑談がつい長くなってしまいまして、FOMC議事要旨ネタをもう少しやる積りが途中で終了になってしまいましたすいませんすいません。





2012/07/20

お題「雑談で恐縮ですが3か月TB入札/雑談で恐縮ですが金曜電波浴」

何で急にまた気温が下がるぞなもし。

○3か月TB入札ががががが

昨日の3か月TB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240719.htm

5. 価格競争入札について
(1)応募額 92兆1,827億円
(2)募入決定額 5兆2,959億9,000万円
(3)募入最低価格 99円97銭5厘5毛 (募入最高利回り)(0.0982%)
(4)募入最低価格における案分比率 30.0322%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘5毛 (募入平均利回り )(0.0982%)

ということで今回もまた順当に足切り0.10%割れの所で切れましたが、先日の基金国庫短期証券買入の足切りレートが0.098%でして、今回の入札は刻みの関係で0.09629%→0.09829%→0.10030%の応札レートになりますので、まあこれはこれで妥当な結果。

・・・・・・ではあるのですが、市場的にあれれという話になったのは落札分布でございまして、市場推計(つーか金融ファクシミリ新聞さんの集計ですが)の落札分布によりますと所謂不明札が2.5兆円も入ってやがったのが???なお話。

まあ不明なので実際の所は落札したご本人と発行体しかよく判らないので妄想するしか無いのですが、これがまあ大手銀行さんあたりが0.10%割れの短国を本格的に購入しだしましたとかだとそれはそれで結構アレな話でして、短国金利の目線が本格的に変わるとなるとそらまあ全体的にもいずれ影響してくる可能性があるという話でこれは割と大きな話。ただまあ銀行業態で0.10%割れの短国を本当に本格的な購入する必要があるのかとなると、そらまあ当事者様のご判断ですから良く判りませんけど、経済合理性的にどうよと思うのでありまして、そういう取引を何のニーズがあってやるのよとか不思議な所ではございますので、今回が単なる一発芸なのかもしれませんので来週以降の動向に注目ということで。

超過準備保有自体は恐らく引当とか積む必要無い筈ですし、流動性という意味では最高の流動性を誇る訳ですし、超過準備付利金利よりも安い金利の物を買うのってどういうニーズなのかが限界的な部分以外では理解に苦しむっつーか自分が株主だったらふざけんなとか言いたくなるレベルの話ではあるのですが(−−)、まあそもそも不明札のバックが銀行さんじゃないかも知れないので、ここまでの妄想が全部ただの勇み足の可能性もあり、まー来週以降の入札動向に注意でありまする。

あ、ちなみに証券会社も付利の恩恵はあるのですが、証券会社が落札するのは商品有価証券在庫として必要だから落札するので、そちらの落札についてはまあ普通でしょと思うのでありまする。しかしGCレートの方は0.10%から中々下がってくれない(昨日の3か月オペの応札も多かったですし)という状況でありますので、ネガティブキャリー状態というのも大変ですなあとか思うのでございます。以前短国レートが0.10%割れで延々と沈んでいた時がありましたが、あの時は米国の商業銀行とかがお家の事情(FDICの預金保険料率の絡みで兎に角何か国債買いたい状態)で買いまくりだった時で、その時はGCも0.10割れ水準で推移していたのでまあそんなもんかなあという感じでしたが、今回はまあ日銀の買いはありますけれども不明2.5兆円はちょっと違和感がございました事です。

#ま、こんなに妄想してますが落札した人のみは事情を把握しているんですよね^^


○総裁定例記者会見でアレな質問をしている人がいる件について

まあ電波浴の類ではある。

7月定例会見より
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1207a.pdf

『(問) 昨日で、震災から1年4か月が経ちました。前回の記者会見で、マネタリーベースの伸び率に関しては、昨年は震災があったから上がり、今年は下げているという説明がありました。まず、震災復興に関して、今後、日銀が中央銀行としてできることは、何があるのでしょうか。次に、マネタリーベースの平均残高が、昨年12月に115.5兆円、今年6月に119.9兆円と、4.5兆円しか上がっていないので、それ程金融緩和を強力にしているとはみられないのですが、どう解釈したら良いのでしょうか。』

ということですが、ここにありますように「前回の記者会見で」ってのがありますが、前回はどのような質問をしていたのかというと、これがまた6月会見に質問があるのでございますよ。まあネタにするほどのものでも無いと思ったら性懲りもなく第2波がやってきたという所である。

てなわけで多分同じ人によるものと思われる質問を6月会見より引用。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1206a.pdf

『(問) 日本銀行は強力な金融緩和を行っているとのことですが、例えば、3.11以降のマネタリーベースのグラフをみると、3〜2%くらい前年に比べて下がっています。これはどう解釈すればよいのでしょうか。』

・・・・・・まあ何ですな、確かに本職の何とかストでもこの手のレポート書いてドヤ顔してるのがいて、誠に如何な物かと思う次第で、しかもこの手の何とかストレポートを拝読しますと、「海外の為替市場関係者が注目しているから」とか言い出していたりするんですが、おまいらの仕事はそういう為替市場関係者に向けて「マネタリーベースの動きで危機対応などの流動性対策で増えたり減ったりする部分を捕まえて緩和拡大とか縮小とかいうのは間違いにも程があるわヴォケ」とレポートを出す事であって、間違いを前提にポジション作っている馬鹿の為に金融政策動かせとかいうのじゃねえわそんなアホウ何とかストはさっさとマリアナ海溝ドラム缶クルーズツアーにでも逝って来やがれと思う次第ではございますけれども、そういうお方に影響されて質問するのは質問をするなとは申しませんけど、ちゃんと説明受けてるのに2か月連続で同じ質問してんじゃねえよとか思うのであります。

ちなみに6月会見の時のお答えは見るまでもないでしょうが引用。

『(答) ご質問の数値は、前年比の数字だと思いますが、今おっしゃったように、前年3月は、東日本大震災の後、非常に市場が不安定になる惧れがあった時に、日本銀行が大量に資金を供給した時期です。その前年同期との比較でみて、マネタリーベースの伸び率が下がったということですが、マネタリーベースの水準自体は非常に高い状態にあります。また、月々のマネタリーベースは、様々な要因で変動します。私どもは、内部的にマネタリーベースの予測をしていますが、その中の当座預金は、この先また増えていく局面に入ってくるという予測になっています。そういう意味で、マネタリーベースの水準は、趨勢として高まっていくと考えています。』


さらにどうでも良いのですが、さっきの最初の質問に対する答えがまた懇切丁寧で麿も(というか日銀も)こんなの丁寧に対応しなきゃいいのにとか思いますけどね。

『(答) まず、日本銀行が震災復興に対してどういう形で貢献できるかということです。昨年4月、震災復興支援のための資金供給オペレーション(被災地金融機関を支援するための資金供給オペ)を始めました。これは、現在も行っています。現在、被災地の金融機関に、様々な資金が流入し、資金繰りは非常に好転していますが、日本銀行として資金面で金融機関の不安を取り除く趣旨から、このオペレーションを行っています。それから、日本銀行からの資金調達をし易いようにとの狙いで、被災地金融機関に関して担保要件も緩和しています。』

まあここまでの話は良いとして。

『マネタリーベースは、銀行券と、日本銀行に預けられている当座預金ですが、両方とも、季節性が高いものです。例えば、銀行券については、年間で12月が一番多く発行される月です。先程おっしゃったのは、12月と6月の水準比較ですが、マネタリーベースの伸びをみる上では、一般的には、季節性を均す意味で「前年対比」が使われます。あるいは「名目GDP対比」でみると思います。マネタリーベースの伸びは、この3月、4月は前年の震災時の資金供給の裏で、一旦、低下しましたが、先般発表した6月のマネタリーベースの前年比は、+6%弱(+5.9%)であったと思います。名目GDPとの比較でみたマネタリーベースは――いつもこの席で申し上げていますが――、先進国の中央銀行の中では最も高い水準です。』

いやーしかしこうやって前月の質問と一緒に並べると面白いのですが、前月の質問の時には「震災対応で拡大した前年同月比対比」で少ないとかいちゃもんをつけ、今月の質問の時には「年末要因で拡大した半年前対比」で伸びが少ないとかいちゃもんを付けるとか、仮に同じ人が質問していたらという前提ですけれども、人間として恥ずかしくないのかね批判の根拠をコロコロ変えてとか思うのですけれども、まあその手の話って電波浴シリーズでお馴染みのどこぞのウォッチマン先生とかがお得意とする手法でもあったりするのですよね〜。いやはや。

『それから何よりも、金融緩和の度合いは、最終的にどういう金利で資金調達ができるのかということで測られるわけです。この面でみると、短期の金利にしても、あるいは長期の貸出金利にしても、日本は非常に低く、例えば、米国の住宅ローン、モーゲージ・ローンの借入金利と、日本の同じような借入金利を比べても、日本の方がインフレ率の格差を調整してもなお低いという形で、現に、非常に緩和的な状況を実現していると思います。その上で、日本銀行としては、今般の措置を含め、金融緩和をさらに着実に進めていく方針です。』

まあ最後の話はいやそれだけじゃなくてマネーの量も大事だろとかいう論点もあると思います(動かないマネーに意味あるのかねとかその辺の話ももちろんあるが)のではあそうですかとだけ申し上げておきますね。


さて、折角電波浴ネタを出したので、これまた古いのですが前回の総裁定例会見でもっと電波成分の高い質問をしているのが実は存在していたのですよ。ということで、政策決定会合関連ネタの時にはスルーしておりましたが電波浴ネタで晒しあげ。

『(問) 少し古い話になりますが、98年から日本の自殺者数というのは3万人を超えております。その98年から、例えば、日銀の金融引締めが始まっていたり、消費税が3%から・・・』

『(答) 「98年から金融引締め」とは・・・』

『(問) 引締めというか、前年比でも比率が下がりつつある。下がり続けているのですが、例えば日銀の金融引締めが、日本の自殺者数に何か影響があると関連付けられる可能性はあるのでしょうか。』

・・・・・・・・・・・強力な電波を感知致しました!!!!!!!!!!

えーっとですな、1998年と申しますと三洋、北拓、山一の破綻で大騒ぎとなった1997年の翌年でございますが、この間の日銀の金融政策はと申しますと・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_1998/index.htm/
9月に政策金利の引き下げを行ったのですがそれ以外は政策据え置きですな。

その間の市場金利がどこにあるかと探したら微妙な所で見つけましたけど・・・・・・
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/proceedings/material/zaitoa171207/zaitoa171207b.pdf
こちらのファイルの9ページ目に『(参考) 我が国の長期金利の推移(1976年〜2005年)』というのがあると思いますが、長期金利は概ね低下傾向だったとしか読めませんなあ。

特に98年9月の政策金利引き下げ以降の98年は、いわゆるクレジットスプレッドも全体的には縮小方向だったという記憶があるのですが、これはデータとかが手元にある訳では無いので自信は無い。

(この部分、当初引用していたネタがあったが、よく見たら97年の話をしているもの(まあ97年は金融危機だったからある意味引締めっぽくなったのは判らんでも無い)だったので当該部分全部削除しました)


なお、先ほどの怪電波質問に対する白川総裁のお答えは以下の通りです。

『(答) 私自身は、自殺ということについて、十分な社会学的な分析をしているわけではありません。私も、今ご指摘の点を含めて、色々な論評は読んでいます。もちろん、広い意味で経済の状況が関係しているとは思いますが、お尋ねの金融政策との関係では、金融政策として経済の安定をしっかり維持していくことが、国民生活全体の安定につながっていくと認識しています。分析の話については、コメントを差し控えますが、そのように思っています。』

・・・・・・・この「色々な論評は読んでいます」というのが麿の場合本当に読んでいてしかもその質および量が半端ないと思われるのがお洒落なのですが(^^)。



なお、話は100メートルほど飛びますが、電波浴と言えば昨日(だったか一昨日だったか忘れたが)はどこぞの証券会社の何とかストの方が「LIBOR騒動で無担保コール金利の信頼性が低下してどうのこうの」とかいう意味不明の怪電波レポートを出しておられまして、欧米の銀行間取引が金融危機前まで無担保主体だったとかアレな(実際はレポ主体で無担保取引は資金繰りの限界的な部分だけ。無担保で大きいのはCP発行とかによるオープン市場であってLIBOR的なイメージの銀行間取引では無い)話をしていたりして、電波浴晒しあげネタとしてはかなりの逸品だったのですが、まあネットとかで公開されているものでも無いので惜しくもネタにするのは断念させていただきましたとさ。興味のある方は探して間違いさがしの勉強でもすると短期市場の勉強になるんじゃないかと(^^)。

#ということで何か今日はしょうもない雑談シリーズになって積み残しネタの消化をしないまま1週間過ぎたのでマジで積み残したネタは週末に雨が降ったら放出する気がだいぶ出て参りました!



2012/07/19

お題「日英議事要旨ネタ/その他」

○6月会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120615.pdf

・やはり海外経済に関しての部分がアレ

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を見る訳だが。

『国際金融資本市場について、委員は、スペインの銀行の不良債権やギリシャの政治情勢などへの懸念を背景に、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要があるとの認識で一致した。』

ということで、冒頭は国際金融市場情勢に関する話でして、この話が延々と1ページの3分の2位のスペースを使って展開されておりましてこの最後は、

『そのうえで、何人かの委員は、何らかのきっかけで、資金調達市場を含めて、市場が急速に不安定化するリスクには、十分注意する必要があると述べた。』

という風に締めているのですが、まあこの部分に関しては「今の所落ち着いて来たけれどもまだまだ警戒は必要だし解決には時間が掛かる」という警戒モードになっているのですけれども、ここでそういう警戒モードなのにどうして決定会合の出来上がりベースではこの警戒モードが前面に出てこないのでしょうかと相変わらず疑問ではあります。

でまあその国際金融情勢よりもアレなのが米国。

『海外経済について、委員は、回復が遅れ気味であり、全体としてなお減速した状態から脱していないものの、緩やかながら改善の動きもみられているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。』

というのは声明文にも出ていた話。アレなのはこの次。

『何人かの委員は、海外経済の先行きについては、新興国・資源国が牽引役を一手に引き受けるのではなく、新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性もあるとの見解を示した。』

>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性
>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性
>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほほう

『米国経済について、委員は、緩やかな回復を続けており、先行きも、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。複数の委員は、6月のベージュブックにおける各地域の景気判断は全体として明るめであり、米国経済の緩やかな回復が続いていることを示唆していると述べた。』

『非農業部門雇用者数の伸びが鈍化し、失業率の低下が足踏みしている点について、多くの委員は、過去半年程度の数字を均す、ないしは他の雇用関連指標と併せてみれば、雇用情勢は引き続き緩やかな改善方向にあると判断されるとの見解を示した。このうちの複数の委員は、当面の個人消費は、雇用環境の緩やかな改善に加えて、ガソリン価格の下落に伴う実質所得の増加により、底堅く推移するとの見方を示した。』

『そのうえで、多くの委員は、バランスシート調整圧力がなお残る中、欧州債務問題の影響に加え、来年初に財政支出削減や増税が一斉に実施される、いわゆる「財政の崖」を巡る動きやその影響については、注視する必要があると指摘した。』

とまあそういう事でして、どうも6月会合での議論では米国経済の先行きに関してやや強めに見ていたのではないかと思われる節がある次第でございますが、はてさて本家の米国様がトーンダウンさせる(トーンダウンしたのだからツイストのおかわりをしたのですし)中でこの辺の見立てを今月の展望レポート中間評価でどういう話をしていたのかは気になりますなとゆーよりも意地悪く確認したい所。


・国内景気に関して

まあ基本的には声明文や総裁会見で示されたようなお話ですが確認の為。

『景気の現状について、委員は、海外需要の回復は幾分遅れ気味であるものの、復興関連需要などから国内需要が予想以上に堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつあるとの見方で一致した。』

『景気の先行きについて、委員は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。多くの委員は、外需の回復が明確化するまでの間、内需の堅調が持続するかどうかがポイントであるとの認識を示した。』

ということですが、その内容に関してはこんな感じ。

『この点、何人かの委員は、企業収益が改善していけば、設備投資の増加が見込まれるほか、雇用・所得環境の改善を通じて消費を下支えすることも期待できるとの見方を示した。もっとも、複数の委員は、エコカー補助金の予算切れが近づいているほか、公務員給与引き下げの影響や、今夏の賞与は弱めとなる見通しにあることなどが、個人消費を下振れさせることはないか注意する必要があると述べた。』

『このうちの一人の委員は、このところ有効求人倍率が改善している一方で失業者数が高止まりしていることは、一部の産業で雇用のミスマッチが拡大している可能性があることを示唆しており、このことが雇用者所得や個人消費の改善を後ずれさせないか注視していると付け加えた。』

『この間、設備投資について、ある委員は、法人企業景気予測調査において、今年度の設備投資計画が製造業、非製造業ともにしっかりとしていると指摘した。そのうえで、今後、短観においてもこうした前向きな投資スタンスがみられるか、また、実際に計画が実行に移されていくか、注視していきたいと述べた。』

とまあそんな感じでして、両論併記っぽいのですがこの後に出た短観で企業部門と雇用がやや強めに出ているという事で、7月の展望レポート中間評価でろくすっぽ見通しが下がらなかったのはそうなりますわなという所でしょうな、上記のように企業部門の所と雇用に関する話を注目しているというのが出ている訳ですからして。

ただまあ何ですな、この辺の議事要旨の書き方は短観見てから企業部門と雇用の所に関する議論の部分を特に強調しましょうかという可能性はありますけど(^^)、いずれにせよこのようなトーンでの議論→短観と来るとそらまあカワランチ会長ですなあとなるのでしょ。


・リスク要因

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きいとの見解で一致した。』

>米国経済の回復力
>米国経済の回復力
>米国経済の回復力

・・・・・・ほう。

『このうち、欧州債務問題について、委員は、その深刻化に伴う国際金融資本市場の不安定化や海外経済の下振れが、最も強く意識しておくべきリスク要因であるとの認識を共有した。何人かの委員は、欧州債務問題を巡る懸念が常態化していること、また、その影響で円高・株安に振れやすくなっていることが、企業や家計のマインド等を通じて、わが国の設備投資や個人消費を下押しする惧れもあると述べた。』

とまあそういう事ですが、まあこのトーンで短観迎えて7月中間レビューだから前回会合の結果は順当、とまあそういう話になりますなという事で。


○BOEも政策金利の引き下げは優先度がまだまだ低そうですな

7月MPC議事要旨から少々。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1207.pdf

つーても最後の所の『The immediate policy decision』の所を斜め読みしただけですが(汗)。

・追加の「刺激策」は必要だが資産購入は必要ないとの見解が2名

最初に「票決が7対2で資産買入拡大」というのを確認してこの部分を読んだ時に一瞬「????」と思った訳ですが(汗)。第28パラグラフから。

『In light of the change in the risks to the outlook for inflation since the time of the May Inflation Report, all members of the Committee judged that further economic stimulus was required in order to meet the inflation target in the medium term.』

という事で全員が「追加の経済刺激策が必要」という話をしておりますが。

『A potentially significant, but hard to calibrate, additional stimulus would come from the FLS, the prospective relaxation of regulatory liquidity requirements, and the activation of the Bank’s ECTR facility. These policies could affect the level of aggregate demand, as well as the economy’s supply capacity. The key question for the Committee was whether an additional stimulus was required over and above these initiatives.』

ということで、FLS(Funding for Lending Scheme:この前導入になった「貸出支援スキーム」で、ネタにしていないのはあたくしの怠慢ですすいませんすいません) や、流動性賦課の緩和、ECTR(Extended Collateral Term Repo Facility:担保緩和+タームレポファシリティ)の実施によっても経済に対する刺激効果がある(けどそれがどのくらいなのかはよく判らん所である、という話をしていますが)のですが、それに追加緩和を乗っけるべきか、という点を議論した結果として、第30パラグラフにある結論に。

『All members expected the recently announced policy initiatives to boost the supply of credit and provide a fillip to economic activity. Most members felt that the case for adding to this by undertaking further purchases of gilts, financed by the issuance of central bank reserves, at this meeting was nevertheless compelling and stronger than at the previous meeting.』

ということで買入拡大と。

『For them, while there were risks to medium-term inflation in both directions, developments since the previous meeting meant that the upside risks had declined and the possible cost of erring on the side of providing a greater stimulus was less than that of providing too little.』

この辺がその背景ね。

『Those members discussed the case for undertaking additional asset purchases, of either £50 billion or £75 billion. On balance, and in light of the potential stimulus provided by the other recent and prospective policy initiatives, these members judged that an additional £50 billion of asset purchases was appropriate at this meeting in order to balance the risks to inflation around the 2% target in the medium term.』

まあその50bilなのか75bilなのかという話は気合の問題のような気がしますにゃ。で、反対理由については「現在のインフレ低下は一時的な物である可能性がある」という話でございますわな。第31パラグラフから。

『In the judgement of other members, the balance of risks around the outlook for inflation in the medium term had shifted less since the time of the May Inflation Report. While inflation had fallen, and was expected to fall further, this was very largely a consequence of temporary price-level effects resulting from the reduction in oil prices. Moreover, they expected the policy initiatives announced during the month to have a sufficiently large impact on the supply of credit and on economic activity that no further stimulus was warranted at this meeting. The extent of that economic support could be assessed over the coming months.』

ただまあ足元ではインフレは順調に低下していますが。


・利下げの検討結果について

第29パラグラフより。

『At the previous month’s meeting, the Committee had considered the case for a reduction in Bank Rate below 0.5%, and had judged that such a policy continued to have drawbacks that made it less attractive than an extension of the asset purchase programme.』

利下げの可能性を検討したが、利下げには欠点があり、資産買入の拡大の方が政策としてメリットがあります。

『The arguments for and against a cut in Bank Rate at this meeting were the same as before.』

ということで、利下げに関するメリットデメリットの検討結果は以前と同じキタコレ。

『But the impact of the FLS and other policy initiatives might, in time, alter the Committee’s assessment of the effectiveness of such a rate reduction. The Committee could review this option again when the impact of the FLS and other policy initiatives was more readily apparent; that was unlikely to be for several months.』

ただ、先ほどの話に出ていた各種施策の金融緩和効果が明らかになって来た時点で金利引き下げのメリットデメリットの評価が変わる可能性もあるので、利下げのメリットデメリットの検討はその時にまた行うという話をしていますな。

まあそれでそんなに状況変わるかねとは思うのですけれども。


○輪番オペ1年以下の応札金利がどうのこうの

こんなんありました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7BZ9Q0YHQ0X01.html
日銀、輪番オペ1年以下の下限金利撤廃−マイナス金利容認も(1)

『7月18日(ブルームバーグ):日本銀行は長期国債買い入れ(輪番オペ)の残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃し、マイナス金利での買い入れも容認する。同オペでの応札額が予定額に届かない「札割れ」を回避する対応策。広報担当の中村毅史氏によると、17日に証券会社など取引業者に通知した。具体的には正の金利を入力することになっていたものを、短期国債や1年以下について、「正、負、ゼロのいずれかの値」を入力することに変更。日銀がマイナス金利でも購入することは初めて。同オペではこれまで日銀が買い入れる際に利回りが0.1%を下回る場合は対象外としていた。中村氏は「下限金利がなくなるので、札割れは起きにくくなるだろう」との見方を示した。』(上記URLより)

でまあこういうのが出ますと早速「基金長期国債の買入に関しても買入下限金利撤廃の可能性高まる」という連想が出るのですけれども(というかそんなコメント見ましたが)、これはやはり「買入残高の確保をする為に1年以下の所でバンバンやりまっせ〜」という話でありまして、理屈としては基金短国買入の下限金利撤廃と同じです罠。

ただまあ何ですな、こういうの出すと当然ながら変な思惑を呼ぶのでどうなのよという気もするんですけど、恐らくは日銀的には足元で別にレートが馬鹿下がりしている訳でもなく、マイナス落札何ぞ夢のまた夢という状態の今だから変に思惑を呼ばないと判断したんだろうなあとは思いますし、まあ大体それで問題ないとは思うのですが、やはり足元ではちょっとその手のコメントも出るわなあとか思いました(が先ほども申し上げましたように、この施策を見て「これで基金長期国債買入下限金利の撤廃が見えてきた」とか言うのは発想のひねりが足りませんのでもう少し頭を捻りましょうという所で(^^)。





2012/07/18

お題「MPMネタの続きとかバーナンキ議会証言超斜め読みとか各種雑談とか」

芥川賞作品の題名を「メイド巡り」と脳内変換してしまい、「ついに芥川賞までネタ小説が受賞するのか」と全力で勘違いしてニュース画面を見た瞬間に朝から大汗を書いたキモオタ脳はあたくしだけですかそうですかorz
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120717/k10013652511000.html
芥川賞と直木賞 受賞作決まる
7月17日 22時0分

あと話は違いますが、あたくしも先日来のニュースにナンジャソラと思っていたのですが、hamachan先生の所と厭債害債さんの所でこんなエントリーがございましたのでURLを貼って賛意を表明しておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-e993.html
2012年7月16日 (月)
利害関係者の発言を圧殺したがる思想

http://ensaigaisai.at.webry.info/201207/article_1.html
言論の自由
作成日時 : 2012/07/18 00:17

#不思議な事に(不思議じゃないのかもしれないけど)本件に関しては公共放送が妙に熱心に報道してたんですよね、週末から昨日に掛けて。



○議会証言自体は特段変わった話では無いですが

こちらが議会証言テキスト。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120717a.htm

しかしまあ何ですな、モーサテ見たら「QE3実施の有無を明言せず」とか何とかそんな感じのリードになっていましたが何というクレクレと思ったのは意地悪ですかそうですか。

・金融政策について

『Monetary Policy』の所をまず読む。

『In view of the weaker economic outlook, subdued projected path for inflation, and significant downside risks to economic growth, the FOMC decided to ease monetary policy at its June meeting by continuing its maturity extension program (or MEP) through the end of this year.』

景気見通しを下げて物価のパスを下げたので(と言ってるけどFOMCの議事要旨のSEP詳細版を見ると実質GDP予想に関して手前は下がっているけど先の方はそんなに下がっていない希ガス)ツイストオペの延長をしましたぞなもし。

『The MEP combines sales of short-term Treasury securities with an equivalent amount of purchases of longer-term Treasury securities. As a result, it decreases the supply of longer-term Treasury securities available to the public, putting upward pressure on the prices of those securities and downward pressure on their yields, without affecting the overall size of the Federal Reserve's balance sheet. By removing additional longer-term Treasury securities from the market, the Fed's asset purchases also induce private investors to acquire other longer-term assets, such as corporate bonds and mortgage backed-securities, helping to raise their prices and lower their yields and thereby making broader financial conditions more accommodative.』

ここはMEPの効果説明ですが、後でヘッドライン引用しますけど「QE3期待で金利上昇」とか市場はやらかす訳で、「長期金利を抑えて金融緩和効果」というロジックをギリギリ詰めると実にこう話がややこしくなるのですよね。いやまあFEDの場合はその時には長期金利ガーの話は華麗にスルーして「資産価格の上昇」って効果を持ち出してトボケルという伝統芸があるので問題は無いのですが。

#と考えますと、まあMEPよりも日銀方式でイールドカーブの手前部分の鯔を徹底的に駆除する方が「長期金利を低位安定させる」効果は高いのですよね

『Economic growth is also being supported by the exceptionally low level of the target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent and the Committee's forward guidance regarding the anticipated path of the funds rate. As I reported in my February testimony, the FOMC extended its forward guidance at its January meeting, noting that it expects that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014. The Committee has maintained this conditional forward guidance at its subsequent meetings.』

異例の低金利政策によっても経済はサポートされており、フォワードガイダンスも強化していますよ(ドヤッ)って所ですな。まあここでオモロイのはフォワードガイダンスに「conditional」ってわざわざ付けている所がふーんという感じです。まあ議会対策としては「conditional」って付けておかないと緩和批判の方もあるのでうるさ型対策という感じなんでしょうかね。

『Reflecting its concerns about the slow pace of progress in reducing unemployment and the downside risks to the economic outlook, the Committee made clear at its June meeting that it is prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』

6月のFOMCステートメントでも申しておりますように、という事で今後の追加緩和についての話もしているものの、特段踏み込んだ話をしている訳でもありませんですな。


・その他

章立てとしては『The Economic Outlook』→『Risks to the Outlook』とありまして、まあ後半の『Risks to the Outlook』をやや真面目に読んでみましたが、リスクに関しては2点指摘しています。

『Participants at the June FOMC meeting indicated that they see a higher degree of uncertainty about their forecasts than normal and that the risks to economic growth have increased. I would like to highlight two main sources of risk: The first is the euro-area fiscal and banking crisis; the second is the U.S. fiscal situation.』

ということで「通常よりも高いレベルでの不確実性がある」というお話をしておりまして、その2つは欧州問題とフィスカルクリフということで、まあこの辺に関しては特段の変化はありませんな。


・質疑応答も読むべしなのか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7BKR86S972A01.html
米国債:利回りが上昇、FRB議長が刺激策の選択肢を説明

『7月17日(ブルームバーグ):米国債市場では利回りが過去最低付近から上昇。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の議会証言を受け、金融当局が追加刺激策を実施するとの観測があらためて広がった。バーナンキ議長は冒頭の証言段階では、追加行動を取る用意があるとした一方で具体策には触れなかったことから、利回りの方向性が定まらない状態が続いた。ただその後の質疑応答で、議長は追加的な緩和手段について発言。住宅ローン担保証券(MBS)を含む追加の資産購入や超過準備の付利引き下げ、今後の政策をめぐるコミュニケーション方法の変更を挙げた。』(上記URLより)

ということですので、質疑応答を読まないといけないのですが、そちらは先ほどのFRBのページの方にありますように『Hearing transcripts are posted to this website as they become available.』となっていますので、それが出てから読むという感じで。



○LIBORがどうのこうの

でまあ議会証言の質疑応答でLIBORの話が出ていたようですが、その件に関しては公共放送ニュースもネタにしておりましたぞなもし。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120718/k10013659461000.html
LIBOR問題 FRB議長“構造的欠陥”
7月18日 5時28分

『LIBOR(ライボー)と呼ばれる短期金利の国際的な指標が銀行の不正な報告でゆがめられていた問題で、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、「構造的な欠陥がある」と述べ、改善が必要だという認識を示しました。バーナンキ議長は、17日、アメリカ議会上院で証言し、住宅ローンの金利などにも反映されるLIBORが銀行の不正な報告でゆがめられていた問題について、「重要な指標の信頼性が銀行によって損なわれた。報告の仕組みに構造的な欠陥がある」と述べ、抜本的な改善が必要という認識を示しました。』(上記URLより)

そらまあ雨人的に言えばドルの短期指標金利がジョンブル野郎の所で決まっている時点でどう見ても構造的欠陥だろうとか直ぐに意地悪な事を考えてしまうのがあたくしの仕様でございますが(^^)、まあこの関連につきましては既に色々と向こうでああだこうだとやっているようですのでもうちょっと勉強してみます。まあ中々フォローする時間も無かったりするのですが(大汗)。

ところで日本でもアレな働き者な方がここぞとばかりにこんな事を。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7AMSR6KLVRF01.html
民主:TIBORの現状把握で全銀協から19日にヒアリング−大久保氏

『7月17日(ブルームバーグ):民主党がTIBOR(東京銀行間取引金利)の実態について全国銀行協会の担当者を19日の財務金融部門会議に呼んで聴取する。同党の大久保勉政調副会長が17日、ブルームバーグ・ニュースの取材に明らかにした。』(上記URLより、以下同様)

また民主党財金かorz

『国際金利の指標であるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作が発覚したことを受け、日本のTIBORの現状について把握するのが目的。大久保氏は「TIBORに関してまず理解しようという話だ。具体的に何か問題があるからヒアリングをするのではなくて、TIBORマーケットにおける公正性を確認するためだ」と指摘した。』

・・・・・・・・・・「まず理解しよう」だったら一々メディアに宣伝してヒアリングせんでも良かろうにと思う訳でございまして、何ぼ暇なのか存じませんが、要は金融通ですって世間にアピールしたいからわざわざこういう事をメディアに宣伝して行うって事でしょと思う次第。

いやね、民主党財金と言えば先日もこんなのをやってて、そんなことは監督機関に任せて置く事で政治家は復興支援とか税と社会保障の一体改革とかエネルギー問題とか、そういう課題に力を注いで欲しいんですけどと心の底から思った次第で、まあ「金融関連でメディアの話題になりそうな事に首を突っ込んでアピールしましょう」というアピール的な香りがプンプンするのが甚だ遺憾極まりない(別にそんなのメディアを呼んで宣伝せんでもよろしかろという意味でもあります)のでありますがね。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6O3AD6JIJV001.html
インサイダー問題で全日空など16銘柄の新たな調査求める

『7月5日(ブルームバーグ):民主党は企業の公募増資に絡んだインサイダー情報漏えい問題で、これまでに摘発された4銘柄に加え、全日本空輸をはじめ16銘柄の取引を新たに調査するべきだとの考えを示した。同党の大久保勉政調副会長がブルームバーグ・ニュースの取材に答えた。』(上記URLより)


○決定会合関連続きである(金融経済月報)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1207.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1206.pdf(前回)

でまあ本文も読んでみたのですがネタにするにはちょっと微妙なので(量が多い上に非常に細かい)いつものように『【概要】』部分だけで勘弁。

・現状判断総括

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

どう見ても判断不変です本当にありがとうございました。

・現状判断需要項目別

めんどいので一気に引用。

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。わが国の国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。』(今回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。こうしたもとで、輸出には持ち直しの動きがみられている。国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

海外経済に関しては語順を変えておりまして従前の結論が「改善の動きもみられている」だったのが今回の結論では「減速した状態から脱していない」になっていまして、ここの判断は微妙に下げております。

で、その下げの影響がどこに来るかと言いますと、次のセンテンスになるのですが、前回は「改善の動きもみられている」ので「輸出には持ち直しの動きがみられている」という風に文章が続くのですけれども、今回はそう書くと文章として繋がらなくなるという点を考慮したのか、「輸出にも持ち直しの動き」云々の文言は文章の後ろの方に入るという芸の細かさ。

ちなみに、月報全文の輸出に関わる部分でどういう話をしているのか興味があったので、その部分を子細に確認しましたが、主要な所では米国経済の状況について『基調としては』という毎度おなじみのヘッジクローズが入ってみたり、『このところ、欧州以外の地域を含めグローバルに企業マインドがやや慎重化している点にも注意が必要である。』などと微妙なヘッジクローズが入っていまして、さすがに全くカワランチ会長という事でも無いという感じですな。


で、国内需要に関しては公共投資、設備投資、個人投資、住宅投資に関しては前月の判断を踏襲していまして、輸出の部分が概要での表現に変化は無いものの、5月の鉱工業生産が悪かったことだと思われる(というか全文にそう書いてある)ことでしょうが、生産に関しては「振れを伴いながら」というヘッジクロースが入っています。業況感云々は短観を反映しています。


・先行き見通し総括

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

どう見ても(以下同文^^)。


・先行き見通し需要項目別

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・・・・先行き見通しに関しては全然変わっていない(企業収益に関する部分で「改善する」が「改善を続ける」に代わっただけ)という事で、まあ何もカワランチ会長でございました事よ。そら展望レポートの見通しも基本的に変わらんわなという事で。


・リスク要因

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(前回)

どう見ても(またも以下同文^^^^)。


・物価、金融環境

こちらに関してはまあ現象面に関する部分以外で特段の変化はありませんので物価の所の今回分だけ引用しておきます。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、上昇テンポが鈍化している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)


○その他少々

・基金短国買入実施である&3か月固定オペ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120717.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 3,000 2012年7月19日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2012年7月19日 2012年7月26日 0.680
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年7月19日 2012年10月11日


http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120717.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 30,194 3,008 0.098 0.098 39.3
米ドル資金供給(固定金利方式)(7月19日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月19日スタート分) 34,900 8,008 22.9


基金短国買入についてですが、買入レート0.098%だとここの所の短国入札が大体0.099%台での決着ですからほぼ妥当なオファーサイドレベルですなという感じで、まあ暫くは買入に困る事は無いでしょうなあというのは把握した。

固定オペに関しては減額方向という事で、最終的に25兆円とかになりますと固定オペだけでは残高足りないと思いますので、まあ暫くはこちらのオペも札入るんでしょうなあという感じです。

でですな、固定オペに関しては声明文の方に『固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』とありましたので、その「柔軟に対応」という事でもうちょっと短い期間のオペでもやるのかなとやや期待したりもしましたが、どうもこの調子だと基本は3か月とかになるんですかね、よく判らんですけど・・・・・・・


・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf
業態別の日銀当座預金残高(2012年6月)

まあ何だ、月平見ても末残(ちなみに平残は積み期間ベース、末残は月末値)見ても「その他準備預金制度適用先」が豪快に増えているのは国債大量償還月の仕様ですな(^^)。







2012/07/17

お題「総裁会見引用大会で勘弁である(汗)」

まあ何だ、LIBORネタの話をする場合はまず元々の定義を熟知すべしという事で。
http://www.bbalibor.com/bbalibor-explained/the-basics

#しかしバークレイズはBOEのせいにする攻撃キタコレなんすか

・・・で、何ぞこれ

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/068.aspx
Bank of England correspondence with the Federal Reserve Bank of New York and British Bankers’ Association in relation to Libor

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/news/2012/nr068.pdf


○総裁会見はポイントが幾つか

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1207a.pdf

今回の質疑はまあ当たり前なのですが景気見通しについて(特に海外)と今回の追加緩和なんだか追加緩和じゃないのかよく判らない措置(まあ「追加緩和じゃないけれども緩和政策の円滑化を図る施策なので実質的な意味では緩和の強化をしています」というのが日銀的な説明になるんでしょう)についての話が殆どだったのですが、景気見通しに関する部分と今回の施策に関する部分から少々引用しますです、はい。

・見通しは変えず

声明文の方でもございましたように今回は展望レポートの中間見通しの中で手前の見通しは下げたものの、先行きの見通しについては下げていないというのが誠に味わいがあるちゅうか往生際が悪いちゅうか。

冒頭の説明から(途中引用割愛しまくっていますので念の為)。

『まず、海外経済をみると、NIEsやASEAN経済では、国内需要が堅調に推移しているほか、米国経済も、雇用者数の伸びがこの数か月間鈍化しているとはいえ、ガソリン価格の下落などを背景に個人消費が底堅い動きをみせ、住宅市場にも持ち直しの兆しがみられます。このように海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられていますが、他方で欧州経済は停滞し、中国経済も減速した状態がやや長引くもとで、グローバルに企業マインドがやや慎重化しているなど、全体としてなお減速した状態から脱していません。』

ほう。

『ただ、こうした中にあっても、わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移していることから、「緩やかに持ち直しつつある」と判断しています。』

はあそうですか(棒)、でまあ展望レポート中間評価としては・・・・・

『4月の展望レポートで示した見通しと比較すると、内需はやや強め、外需はやや弱めと内外需のバランスは若干変化していますが、実質GDP成長率、消費者物価ともに概ね見通しに沿って推移すると見込んでいます。すなわち、潜在成長率を上回る成長が続くもとで、消費者物価の前年比は、見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、1%に遠からず達する可能性が高い、とみています。』

>その後、1%に遠からず達する可能性が高い
>その後、1%に遠からず達する可能性が高い
>その後、1%に遠からず達する可能性が高い

ほほう(棒)。


・でまあ総合的にはこんな話

『(問) 3つ伺います。1つ目は内需です。復興需要とエコカー補助金があったと思いますが、復興需要に関しては、予算の執行が遅れているという問題もありますし、エコカー補助金ももうすぐ終わるということで、今後、内需がどうなっていくとみているのか伺います。2つ目は、海外です。欧州問題や新興国経済の低迷が思ったより長引いているという見方をされているのか伺います。また、1つ目と2つ目に関わりますが、これらが今後、回復シナリオにどういう影響を及ぼしていくのか、伺います。』

当然ながら3つもあるので答えがクソ長いのですが。

『(答) 先程申し上げた通り、4月の展望レポートとの比較でみると、内需はやや強め、外需はやや弱めということで、全体としては、構成は変わっていますが、概ね4月の見通し通りです。その意味で、今後の見通しを考えていく上では、内需の底堅さが今後とも維持されるのか、内需の堅調が維持されている間に、海外経済の減速が止まり外需が回復していくのかどうか、その辺がポイントになってくることは、ご指摘の通りです。』

とまあここまではヨロシ。

『まず、内需ですが、足許の内需が強いことは、6月短観でも示されていると考えられます。こうした堅調さの背景として、5つほど考えられます。第1に、エコカー補助金などの政策効果です。第2に、被災地における生活再建消費や、被災した設備の修復・建替え、耐震・事業継続体制の強化、メガソーラーなど新たな発電設備増強の動きなどを含めた広い意味での震災関連需要です。第3に、企業収益の改善を背景とした企業マインドの改善と、それを受けた賃金・所得の下げ止まりです。第4に、高齢化消費を中心とした潜在需要の掘り起こしが進捗していることです。第5に、円高メリットです。これら 5つの要因を考えてみた場合、今後は、エコカー補助金の反動などを念頭に置いておく必要はあると考えていますが、広い意味での震災関連需要や、企業収益・雇用者所得の改善基調、高齢者消費などは、ある程度、持続性を持ち得ると考えています。』

内需に関しては足元の強さがしばらく維持されるという話なのはまあ兎も角として、確かにそらまあ内需には円高メリットだけど何もそれを要因に一々挙げなくても良いのではないかという気がするんですが。内需という意味では正しいのは判るんですけどね。いやまあこれがベンダーのヘッドラインとかに出てこなくてよかったですねえ(棒読み)という感じであります。

『次に海外経済や外需ですが、現在、減速が長引いていることをどう理解するかが出発点になると思います。色々な原因があると思いますが、一番大きい原因は、欧州債務問題が欧州経済の停滞をもたらし、そのことが、日本の輸出減少――欧州に対する直接の輸出もありますが、特に中国等を通じた間接的な輸出の減少――の影響が想定より大きかったということだと思います。加えて、この欧州債務問題に伴うテールリスク、不確実性を意識した企業が、世界的なレベルで様々な投資を当面見合わせることもあったのだろうと思います。そういう意味で、今後の世界経済を考えていく上では、やはり欧州債務問題がどのように展開していくのかが大きなファクターだと思います。』

で、その欧州債務問題は即効薬のような解決策は無いという話では無かったのではございませんかと思うのですけれども。

『一方、先程、海外経済については、持ち直しや改善に向けた動きもみられると申し上げましたが、例えば、米国では住宅バブルの崩壊から5年以上が経過する中で、住宅市場には、さすがに持ち直しの兆しがみられています。自動車販売を始め、個人消費も緩やかに増加しています。その背景を考えると、ガソリン価格が下落し、長期金利もかなり低下してきたことが挙げられるように思います。』

とまあそういう話をしているのですが、米国経済に関する質疑は別の所で味わいがある部分がございますのでそちらを後ほど(^^)。

『NIEs、ASEAN経済では、原油価格の下落等から物価上昇率が低下するもとで、金融緩和などの政策対応や実質購買力の回復等を背景に、個人消費や設備投資が堅調に推移しています。今申し上げた、先行きの内需を巡る要因、それから、外需をみていく上での点検ポイントについて、これからも注意深くみていきたいと考えています。』

という事でまあ先行きは持ち直すでしょうという見通しなのは把握した。


・海外見通しが甘いのでないかという質問に対して

これはまあ当然ながらやってくる質問ですが。

『(問) 2点伺います。まず、海外経済の見通しですが、本日の展望レポートを点検した内容でも、今のご説明でも、内需は強くて外需は弱いが、外需はじきに回復してくるだろうという話だと思います。一方、海外の中央銀行、政策当局の対応をみると、どんどん緩和してきており、おそらく予想よりも経済状況が悪いということで、そのような対応を採っているものと思います。その中で、日本銀行の海外経済の見通しは、比較的強気にみえますが、海外経済は、いつ頃に弱い状況を脱してくるとお考えですか。(2点目は物価見通しの話ですが割愛)』

まあ来ますわな。

『(答) まず、1点目の海外経済に関する見方については、日本銀行が他の中央銀行に比べて楽観的であるというご指摘と理解しましたが、日本銀行の方が楽観的であるということは全くありません。』

ほほう(棒読み)。

『日本銀行の見方という意味では、米国経済を例にとるのが最もふさわしいと思います。米国経済の見方は、 FOMCの議事要旨、あるいはFOMCメンバーの経済見通しをみても、確かに下振れてきています。しかし、この間、日本銀行は、一貫して米国経済について慎重な見通しを立てていました。従って、米国当局あるいはエコノミストの見通しの方がやや振れており、逆に、私どもの見方に割合い近づいてきたというのが率直な印象です。』

確かついこの前までは米国の改善についてここぞとばかりに強調していたように見えますが・・・・・

『米国経済を考えていく上で、私どものこれまでの判断が結果的に正しかったように思っていますが、それは、何と言っても、バブル崩壊後の日本の経験が私どもの判断に活きているためと思っています。』

まさにドヤ顔である。

『バブル崩壊後の経験としては様々なものがありますが、今の経済見通しとの関係では、2点あると思います。第1点目は、大きなバブルが崩壊した後の経済の調整には時間がかかり、その間、成長率は低いものになり易いということです。第2点目は、経済活動が大きく落ち込むかどうかは、金融システムの安定が維持されるかどうかにかかっているということです。』

まあいつもの話であるが、それなら先ほどの米国経済見通しは何ですねんという感じなのですが。

『そのような観点からみた場合、日本銀行では、米国経済について、経済活動が大きく落ち込むことはないだろうが、成長率が大きく高まることもないだろうという一貫した見方をしています――「上に弾みにくく、下に振れ易い」という言葉で表現していました――。その意味では、米国当局あるいはエコノミストの見方が、日本銀行の見方に割合い近づいてきたというのが、率直な印象です。』

他に中国経済に関する質疑もあったのですが長くなるので割愛。


・今回の措置は技術的対応になるのかという話

これは良い質問。

『(問) 確認に近くなるのですが、今回の措置、資産買入等基金の色々な組換えについてですが、金融緩和の強化ではなく、残高を積んでいくための技術的な措置と捉えて良いのかお伺いします。2つ目は、短期国債とCPの入札下限金利0.1%の撤廃についてですが、これは、市場の実勢レートを受け入れるということだと思いますが、実際に今、市場ではどういう形になっていて、今回撤廃することによって、どのような効果が望めるのかをお聞かせ下さい。』

『(答) まず、今回の措置の意味合いです。日本銀行は、資産買入等の基金の残高について、本年末には65兆円程度、来年6月末には70兆円程度を達成すると申し上げています。この買入れを毎月行っていくことは、毎月毎月、金融緩和を強化しているということです。』

これ別の所でも話をしていまして、麿はこの説明をドヤ顔風味で仰せなのかと勝手に愚考しますが、さすがに「〜月まで資産買入を行います」というアナウンスする時に「その間毎月強化してます」と言い出す中銀はあまり居ないと思いますので如何なものかという感じではございますし、それよりも問題なのはこの理屈を繰り出すと輪番オペに関しても「残高ベースの推移はどうなっている」という話に発展してくる(輪番で買ったものが短国に化けてそれが償還すると引締めという話になりますがな)ので、正直自分で自分の首を絞める理屈だと思うんですけど。

『今回の措置は、そうした金融緩和の強化を予定通り着実に推進していくことを担保していく措置です。今、「技術的な措置」とおっしゃいましたが――「技術的」という言葉の定義にもよりますが――、そうした間断なく強化している金融緩和を着実に行っていくための措置ということです。』

などと言ってますが、まあ要は残高達成のための措置ですわな。

『次に、短期国債とCPの入札下限金利撤廃の効果です。短期国債の取引をみると、現在、0.1%を下回る金利水準で発行されているのがマーケットの状況です。そうしたもとで、日本銀行が0.1%の入札下限金利を設定していると、短期国債の買入れが十分に行えないということが起こるわけです。そういう意味で、今回、この下限金利撤廃によって、短期国債の買入れをより確実に遂行できると思っています。』

つーかまあ短国の残高を積み上げやすくしたというのが実情でしょうな。


・固定金利オペを短国に振り替えた理由

『(問) 先程の質問と少し重なりますが、今回、固定金利オペの札割れが多いので減額したのは分かり易いのですが、一方で、短期国債を増やすところが少し分かり難いです。むしろ、4月からは年限を延ばして長めの金利に働き掛けることを中心的にやっているかと思います。今回は短期国債の増額としたことについて、もう少し説明して頂けますか。』

ふむ。

『(答) まず、資産買入等の基金の目的として、長めの金利あるいはリスクプレミアムに働きかけるというのはご指摘の通りですが、これは、本年4月からではなく、一昨年10月に始めた時から、そういう目的で運営しています。そうした目的のもとで、固定金利オペ、短期の国債、長期の国債、ETF、REIT等を買うという思想自体は変わっていません。現在、札割れが最も頻繁に発生しているのは固定金利オペです。つまり、札割れが短期の固定金利オペで最も頻繁に発生しているということですから、同じ短期のオペという意味で、短期の国債に振替えるのが最も自然な対応と考えました。』

判ったような判らんような言い方をしていますが、要するに「技術的対応だから短期国債にしました」という事でございますわな。


・付利下げないよ発言

『(問) ECBが先日の決定会合で利下げを行い、それに伴って預金ファシリティー金利をゼロまで引き下げました。これを受けて、日本の市場でも、一部、日銀の付利金利引き下げを織り込んで金利が下がっていくような動きがありますが、その点について総裁はどうお考えですか。これまで、短期市場の機能低下ということで、それについては否定的にみていらっしゃったと思いますが、そのお考えに変化がないかどうか教えて下さい。』

『(答) まず結論から申し上げると、その考えは全く変わりません。この席でも繰り返し申し上げたことですが、日本銀行としては、政策金利の引き下げによって得られる効果と副作用の双方を勘案した結果、「0.1%の超過準備への付利金利と、0〜0.1%程度の金利誘導目標」という組合せのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されると考えており、付利金利の引下げは考えていません。誘導目標と切り離して付利金利の引下げという議論になるわけでありません。』

ふむ。

『この点、わが国の無担保コールレート・オーバーナイト物は、足許は0.07%から0.08%の水準で推移していますが、これを完全なゼロ金利とすることについては、市場機能や金融機関行動に与える副作用について、十分意識する必要があると考えています。短期金融市場の金利が極限的にゼロに近づくと、市場の流動性が著しく低下し、市場参加者が必要な時に市場から資金調達ができるという安心感を損なう惧れがあります。従って、短期金利が極限的にゼロに近づくことで、確かに、何がしか金利水準が下がる効果があるとは思いますが、それ以上に、今申し上げたマイナスの効果が大きいということであり、ご質問の点について、考えは全く変わっていません。』

ということで、まあこれはこれでいつもの話ではあるのですが、まあ今後は折に触れて付利下げの思惑が出てくるでしょうから毎回この話はしないといかんでしょうなあという所で。


・LIBORに関する質疑では微妙な発言が

『(問) 2点伺います。1点目は、今、英国バークレイズによるLIBORの不正操作が問題になっており、英国中銀の関与も疑われるような状況になっていますが、日銀の総裁として、この状況をどのようにご覧になっているか、率直な感想を伺います。LIBOR、日本のTIBORもそうですが、銀行の申告をベースに算出しているという仕組みですが、再発、不正ができないような仕組みに改めるべきなのかどうか、もしお考えがあればお伺いします。(2点目は割愛)』

『(答) まず、LIBORに関するご質問です。英国のバークレイズ銀行が、実勢と異なるレートを報告することによって、ドルLIBORと EURIBORを不正に操作したとされ、今般、英米当局から処分を受けたことは承知しています。ただし、本件については、関係当局による調査が続けられている段階にあると理解しており、私の立場からコメントするのは適当ではないと思います。(以下割愛)』

いやね、この「実勢」という言葉って超曲者でして、そもそも「実勢とは何ぞや」という話から始めないといかんと思うのですよね。でまあその話をしだすとオワランチ会長になるから割愛します(というかこの前もちょっと話をしたような気がしますが)けれども、現実に取引が活発に行われている訳でも無い物に対してどのような数値を持って「実勢」というのかというのは非常に微妙かつ難しい問題であって、正直言って中銀とか規制当局とかがこの「実勢」という数字をあまり定義しないで使うのはどうかと思いますけどねえ。

まあ何ですな、これ今の感じの流れだと「じゃあ変に何か言われるの嫌だからウチはもう出さないですよ」とか皆が言いだしたらどうするんじゃいと思うのでありまして、まあなんとなく麿の言いたい「実勢」のイメージは分からんでは無いですけれども、その辺の概念はきっちりと整理してからお話をして頂きたいですわな。


○とか何とかやってたら時間が(汗)

まあ週明けは毎度こんな感じなので予告編。

・金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1207.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1206.pdf(前回)

こちらに関してですが、まあ『概要』部分を比較してみたのですけれども、細かい所の出入りは少々あるのですが、先行き見通しの部分は物の見事に変わっていないというお洒落なものになっております。

でもって本文の方も比較しようと思って読んでみたものの、これまた細かい出入りはあるけれども大きな部分での変化は無いというのが結論でしたので、本文比較はしましたけれどもそちらはスルーの方向で。


・こんなんでました

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/ron120713a.htm/
2011年度銀行決算の概要

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120713a.pdf

要旨の所にもありますように、『コア業務純益の減少傾向が続く一方で、信用コストの低下余地は徐々に限定的となっている。このため、貸出先企業の経営改善に向けた取り組み強化や、再生可能性の評価に応じた適切な信用リスク管理が一段と重要になっている。』との事になっておりますが、一方で強力な金融緩和でコア業務純益を稼ぐ有価証券利鞘を減らす方向に進んでいる金融政策って以下自主規制。


・BOEの貸出支援策

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/067.aspx
Bank of England and HM Treasury announce launch of Funding for Lending Scheme

かつての日銀の貸出支援スキームを彷彿させる内容なのですが、中々味わいのある部分もございまして、まあ何ともでございます。後日書きますです、はい。





2012/07/13

お題「中々不思議な決定会合でございました」

決定会合の時はヘッドラインだけで反応してはいけませんなorz

○ヘッドラインでバタバタ

声明文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf

・・・・・・・・・でまあニュースヘッドラインですけれども、あたくしが見ておりましたブルームバーグニュースだと最初に「45兆円」という基金のうち買入系の残高拡大のヘッドラインが出て「おお緩和!」と思ったらその後に「固定金利オペ5兆円減額」というのが出て「ありゃ?」となり、その後「短期国債買入の下限金利撤廃」を見て「げげげ!」となった次第でありまする。

市場ちゃんの反応は最初「45兆円」で追加緩和キタコレと思って債券先物も上昇したのですけれども、株高&円安に反応したのを見て債券先物下落したものの、「短国買入の下限金利撤廃」でまた先物が上昇したものの冷静に考えるとそれだけで反応するもんかとかいう感じ(かどうか知らんが)で下がってみたものの、「よく見たら基金残高が変わらないじゃないか」という事でぬか喜びした分の反動で株は下がるわ円安は反転するわとなったのを見て債券市場再びワッショイモードと相成りました。

ということで、まあ不肖このあたくしも展望レポートの中間評価で今回は見通しが特段の変更が無いのであるからして、当然ながら何も無いとか油断してたらややこしい内容の物が出てきて最初ヘッドラインの方を見ながら「???」となっていたのですが、これは声明文を子細に読まないと何が何やらワカランチ会長であると思って読んだ次第ですけれども(大汗)、まあヘッドラインで反応すると間違えますなという代物でありまして、どうも決定会合関連はヘッドラインだけで反応しない方が良いようですの(−−)。


○追加緩和ではないが必ずしも据え置きではないというような不思議な内容

声明文再掲
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf

「追加緩和ではない」というのは何処を見ると判るかと申しますと、声明文の題名を見ると判るのでございます。

『当面の金融政策運営について』(今回)

基本的に最近の追加金融の際には、たとえば4月27日会合声明文にありますように、『金融緩和の強化について』と出ますので、上記の表題という事はつまり追加緩和ではないのですが、後で申し上げますように「展望レポートの見通しが基本的に変わらず、リスク認識も特に変わっていない」という事に成っていますので、その部分と整合性が取ると追加金融緩和は行いませんよ、とまあこうなります。

コミュニケーションポリシーという意味では日銀の経済物価見通しが甘いんじゃねえのかという極めて重要な話はさておきますと、これはこれで日銀から示される経済物価見通しに整合的な金融政策行動という事で、まあ為替市場とか株式市場の方々からするとナンジャソラという所でしょうが、従来からの日銀行動パターンからすると読みやすくなりましたな(重ねて申しますがその決定が妥当かどうかという話はさておきますので念の為)という事で。


でまあ声明文の景気認識の所をスルーして先に今回のオペ関連決定事項を引用しますと以下の通り。

『8.なお、このところ、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション等において応札額が未達となるケースがみられている。日本銀行は、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて前述の金融緩和を間断なく進めていく観点から、本日の会合で以下の措置を決定した。

(1)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを5兆円程度減額し、短期国債買入れを5兆円程度増額する。

(2)短期国債の買入れをより確実に行うため、当該買入れにおける入札下限金利(現在、年0.1%)を撤廃する。CPの買入れについても同様とする。

(3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』

ここにありますように、固定金利オペから短国買入への振替ですので、まあ資金供給的には期間が若干長くなっているという意味では緩和を強化していない訳でも無い、というのがありますし、「資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて前述の金融緩和を間断なく進めていく観点」という事ですので、つまり「基金の積み上げをより円滑に行う」という施策でもありまして、その意味からしますとやはりこれは全くの現状維持かというとそうでは無くて「緩和効果を実質的に高める」という話でありますので、「追加緩和じゃないけど現状維持でも無い」という中々不思議な決定となります。

何せこうやって書いているあたくしも「これどう読むと良いのやら」と10分くらいは悩んで、人様とああだこうだ意見交換した結果、まあこういう事でしょうと言う風に解釈が落とせたという所でございますので、こらまあ為替市場や株式市場が「何が何だか判らない」と反応するのもさすがに今回はシャーナイナイと思うのでございました。



○短国市場の反応が一番的確でしたな(短国買入下限金利撤廃関連)

でまあ短国(CPは短国と整合性を取るためのおまけみたいなもん)買入の下限金利撤廃なのですが、これ最初見た時にはあたくしも「げげげ、短国金利が下がるのかよ」とか思ったのですが、よくよく考えますと超過準備付利の0.10%は変わっていませんので、ゆうてみれば短国保有している銀行さんが手持ちの短国を0.10%割れで日銀に打ち込んで0.10%でブタ積みするか、0.10%で買える短期国債があったら買い戻す(とりあえずブタ積みしておいて市場動向見ながら0.10%になるとすかさず短期国債買うとかね)という事にはなるものの、日銀への売却を見込んで0.10%割れの短国をバンバン買い進むかというとそうは普通に考えてならん罠という話。

とまあ冷静に考えたのか、短国市場では最初0.10%割れというリリースを見た時に、それまでの気配であります所の0.095%オファー/0.100%ビットという気配からオファーが全部引いてしまったのですが、その後普通に0.095%オファーが残り、何事も無かったかのような展開に。

もうちょっと判りやすく申しますと、0.10%を割った短国を買う人っていうのは基本的には(1)準備預金制度の外側に居るひと(海外投資家とか投資信託とか)、(2)お家の事情で買わないといけないひと(決算対策などで国債残高を積み上げる必要がある場合とか、担保繰りがショートして買わないといけない場合とか)、の2種類でして、今般の決定で日銀がこれに加わった、という意味ではそらまあ短期国債の需給的に言えば需給が締まるので金利が上昇しにくくなったというのはほぼ間違いないと思われるのですが、今回新規参入して来ました日本銀行ちゃんは総額9.5兆円(5ページ目の別紙にある通りね)の買い主体とゆー事でして、まあ短国市場の現在の発行量からしますと、短国の流通市場のレートを0.09%だ0.08%だという所まで下げるほどのインパクトは無いですな、という話。


んでまあこれが出たので「付利引下げへの思惑」という見解も聞かれるのですが、これに関しては総裁が会見でも全力で否定していたように、実際にはこの施策は「付利金利の引き下げを遠くする」ものであります。何でですねんと申しますと、今回の措置は短国買入の残高を積みやすくする為の措置であり、付利を維持しながら買入のレートの方は下げて買入を進めたいという事でありますからして、付利下げちゃう(特にゼロにしちゃった場合)と折角進むようになった買入がまた進まなくなる恐れがあるという話でございますので、この買入下限金利撤廃の解釈で付利下げへの第一歩とか言うのは残念ながら外れですのでご注意ありたし。


あとですね、短期国債の買入がこれで積みやすくなったので、基金の買入拡大が実はやりやすくなったというのもありまして、まあ短国市場の規模から考えるとただのヤマ勘で言えばもう10兆くらい積んでも何とかなるような気がするのですがどうでしょうかね(あまり買い過ぎると当然ながら短期市場での短国不足モードになるのでレートが沈みだしてアヒャヒャヒャヒャとなるので調子に乗って基金拡大を短国でホイホイやられても市場的には勘弁)。まあ市場金利がここまで来た状態で短国買入拡大してどういう効果がありますねんというツッコミはさておきましてですけれどもね(^^)。


ただまあ債券市場的には中短期の金利どころか10年まで買われやがっていて、5年以下の所に関しては「今回オペの札割れ対策で0.10%の下限撤廃したんだからいずれ買入が厳しくなってきたら基金国債買入に関しても0.10%撤廃来るかも」とか「いずれは買入の年限が拡大されるかも」というような思惑が出やすくなるのはまあシャーナイナイと思いますし、付利下げに関してもこらまあ思惑は相変わらず出てくるのもシャーナイナイと思いますのですが、ちと威勢よく反応し過ぎのような気もせんでもない(が米国がアレだとまだ強いでしょうな)。



○固定金利オペの扱いがどうなるのかも注目

さっきの再掲。

『(3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』

という事でございまして、足元では殆ど意地になっているのかというような雰囲気で固定金利オペを3か月物のロールを6か月で打ち続けてオペ残が30兆ちょいまで減ってくるというお洒落な事態になっておりましたが、「金融機関の資金需要に柔軟に対応するため」という事になりましたので、まあさすがに市場が皆さん揃ってイラネと言ってる6か月物オペはフェードアウトするんでしょう。

でまあ市場の需要という意味では1週間物とか3週間物とか、まあその程度のオペでも打って頂きますと幸甚に存じますという事で、固定金利オペが「期間6か月以下」という形になったのでありますから、この際昔のフツーのオペに戻して頂いて、単にそのレートが入札方式ではなく指値方式(今の市場金利水準だったら入札でも指値でも同じようなもんですから)となるだけとなってくれると随分とオペの窮屈さも解消されると思います。

ただまあそこまでやってしまうと余りにも極端な変化ですので、いきなりそこまで行くかはこらまあオペの打ち方を見て行かないとワカラン話ではございますなという所です。

いずれにせよ、固定金利オペが総額で25兆円まで残高が落ちますと、単純に資金供給を固定金利オペだけで実施すると恐らく金が足りなくなるのではないかという気が。最近は買入系の残高が基金オペの影響で拡大しているので単純比較できないのですけれども、ここ3年くらいのスパン(3年というのは単にあたくしが手元で集計している数字がその期間しかないのでというしょうも無い理由)において短期オペの残高って一番少ない時で27兆円位(2010年の7月頭頃)でして、金の回りが悪くなっていることと買入拡大をしている事を勘案するとどうなのかは微妙ですけれども、まあ多分固定金利オペだけだと市場の資金需要を充足できないタイミングがあるだろうなあと思うのです。

つーことで、まあいずれタイミング次第では通常の金利入札オペの実施とかも入るのかなあとか思いますと、まあこの固定金利オペに関しては(より長い所の買入が拡大された結果として)役割はかなり終了モードとなってきたのではないかとゆー感じでして、正直今回固定金利オペに関しては「6か月以下」という変更をするだけでも良かったような気がしますが、まあ基金の総額増やさないという形にしたかったのと、固定金利オペの比重を下げたかったという事なんでしょうなあと思うのでありました。


○などと書いていたら時間がががががが

いつもの仕様ですかそうですか、ええまあ3連休らしいので連休中に気が向いたら続きをアップしますです、と言い訳をしておきますが(^^)、その他ポイント。

・展望レポートの中間見通しは変わっていない

まあ中間評価に関しては後日申し上げますが、細かく変化はあるものの、声明文の中にありますように、

『5.4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価について、2012年度の国内企業物価は、見通しに比べてやや下振れるものの、2013年度は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。消費者物価(除く生鮮食品)は、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』

ということで、2013年度に関する見通しには変化が無い(から今回追加緩和していない)のがポイントですわな。で月報見れば判明しそうですし、会見でも総裁がコメントしていましたけれども、物価の「遠からず1%に達する」の旗も下ろしてはいませんですな。


・経済認識もまあ横ばい

声明文の経済認識もまあ横ばいです。詳しくは後日。


・まあおちつけ(小ネタ)

声明文は今見ますとちゃんとしたのが出ているのですが、最初は公表文書の文書そのものをスキャンしたものをPDFにした状態で日銀のサイトにアップされるのですが、最後の別紙(=資産買入等基金の内訳表)のスキャンが豪快に斜めになっておりまして、まあ落ち着けと思った市場参加者は恐らく数百人では効かなく居たと思われます。忙しいのは判りますがあまりにもネタとして面白すぎるのでご注意されるのが吉かと(^^)。


ということで基金の内訳変更関連の後講釈だけで終了しまして甚だ申し訳ございませんでしたm(__)m







2012/07/12

お題「寝起きでFOMC議事要旨(の一部)」

お縄新党の名前があまりにもアレ・・・・・

○まあこんなもんじゃないかと思うのですが失望とな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M70JGM6K50ZQ01.html
米国株:5日続落、議事録が追加緩和を期待ほど示唆せず

ツイストオペのおかわりが決定された6月FOMC議事要旨が出た訳ですけれども、ざっとポイント部分を斜め読みした感じではこんなもんじゃねえのかと思ったのですけどねえ。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120620.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120620.pdf

・委員の経済見通しに関して

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』は最初に概論が来て、その後個別需要項目、労働市場、インフレの順に話が来て、最後にまたまとめが来る、という文章構成になっておりますので、最初と最後を読んで、さらに途中にあるちょっと長めのパラグラフの所を見ると大体そこが議論のポイントになっているので、まあそういう読み方をするとそんなに大外ししないと思います。

『In their discussion of the economic situation and outlook, participants agreed that the information received since the Committee's previous meeting suggested that the economy had continued to expand moderately, though many noted that a variety of indicators showed smaller gains than had been anticipated.』

ということで、この先もずーっとそうなのですが、あくまでもステータスとしては「景気の拡大ペースが更に弱まっている」であって、景気が落ち込み方向になっているという話では無いですわな。ですからそう簡単にQE3の話がホイホイと出てくるとか期待する方がどうかと思うのですよね。まあそれは兎も角。

『Growth in employment, in particular, appeared to have slowed in recent months, and the unemployment rate remained elevated. Business fixed investment had continued to advance, and household spending appeared to be rising at a somewhat slower pace than earlier in the year. There were further signs of improvement in the housing sector, but the level of activity remained very low. Volatility in financial markets increased over the intermeeting period, and investors' appetite for riskier assets declined, likely in response to heightened fiscal and financial strains in Europe as well as some weaker-than-expected incoming data about the U.S. economy and foreign economies. Inflation had slowed somewhat, mainly reflecting the decline in the prices of crude oil and gasoline in recent months, and longer-term inflation expectations remained stable.』

まあ大体この辺の話は声明文にあったのと同じような事ですな。

『Participants generally interpreted the information that became available during the intermeeting period as suggesting that economic growth would most likely remain moderate over coming quarters and then pick up very gradually. Most participants saw the incoming information as indicating somewhat slower growth in total demand, output, and employment over coming quarters than they had projected in April, and most carried forward some of that downward revision to their projections of medium-term growth.』

まあ4月時点の想定よりも良くないという話はしておりますな。追加緩和のような物をやっているのだから当たり前ですが。

『However, some participants judged that the recent weakness in a variety of economic indicators was more likely to prove transitory, and thought that the outlook beyond this year was essentially unchanged.』

数名(some)のメンバーは足元の経済指標の弱さは一時的で見通しを変える必要は無いとみていると。

『Reflecting the projected moderate pace of growth in production and employment, most participants anticipated that the unemployment rate would decline only slowly.』

失業の改善は極めて緩やかにしか起きませんでしょうというのが殆ど(most)の委員の見解。

『A number of factors continued to be seen as likely to limit the economic expansion to a moderate pace in the near term; these included slow growth or even contraction in some major foreign economies, ongoing and prospective fiscal tightening in the United States, modest growth in household income, and--despite some recent signs of improvement--continued weakness in the housing sector.』

経済の力強い拡大を抑制する要因は海外経済とか米国の財政問題とか家計の実質所得の伸びの弱さとか住宅市場の弱さとか。

『As in April, participants expected that most of the factors restraining economic expansion would ease over time, and so anticipated that the recovery eventually would gain strength.』

なるほど。

『However, strains in global financial markets, which stemmed primarily from fiscal and banking concerns in Europe, had become more pronounced over the intermeeting period and continued to pose significant downside risks to the economic outlook; the possibility of a sharper-than-anticipated fiscal tightening in the United States also posed a downside risk.』

ダウンサイドリスクもさっきと同じような話ですな。

『Looking beyond the temporary effects on inflation of this year's fluctuations in oil and other commodity prices, almost all participants continued to anticipate that inflation over the medium-term would run at or below the 2 percent rate that the Committee judges to be most consistent with its statutory mandate.』

インフレに関しては足元の石油や商品価格の下落でまあ懸念される話でも無いですわな。

『In one participant's judgment, appropriate monetary policy would lead to inflation modestly greater than 2 percent for a time in order to bring unemployment down somewhat faster.』

この「one participant」というのはシカゴ連銀のエバンス総裁ではないかと思うのですけれども、2%よりも高い物価水準を容認して失業率のより速い低下を促すべきではないかという話をしていますな。講演などではこの話していましたけれども、議事要旨で堂々出てきたのは今回が初めてのような気がしますが全部ちゃんと精読して記憶に入っている訳ではないですのであまり自信はありません。

『Some participants indicated that they saw persistent slack in resource utilization as posing downside risks to the outlook for inflation; a few participants judged that the highly accommodative stance of monetary policy posed upside risks to the medium-term inflation outlook.』

スラックの大きさがインフレのダウンサイドリスクという人もいますし、一方で緩和的な金融政策の長期化が中期的なインフレ見通しにアップサイドリスクを与えるという人もいると。



・経済見通しおよび金融政策という点とかその他総合

先ほどのコーナーの最終パラグラフはこうなっています。

『Many FOMC participants judged that overall financial conditions had become somewhat less supportive of growth in demand for goods and services.』

とまあさっきと同じ話。

『Investors' concerns about the sovereign debt and banking situation in the euro area reportedly intensified during the intermeeting period, leading to higher risk spreads and lower prices for riskier assets including equities and to broad-based appreciation of the U.S. dollar on foreign exchange markets. In contrast, a few participants observed that the marked drop in yields on longer-term U.S. Treasury securities could provide some impetus to growth.』

ふーんと思ったのはここの最後にある「長期金利の低下は経済に対して幾分かの刺激を与える」って指摘ですかね。

『Focusing more narrowly on the banking sector in the United States, it was noted that measures of credit quality for bank loans generally had continued to improve, that bank capital levels were quite high, and that banks had ample liquidity. Consumer and business loans were increasing, although credit standards remained tight and commercial and residential real estate lending were relatively weak.』

米国の金融セクターの話が出ているのが不思議ちゃんだが、これは議事要旨全体を読むと何か論点があるのかもしれませんな。

『A few participants indicated that they were seeing signs that very low interest rates might be inducing some investors to take on imprudent risks in the search for higher nominal returns.』

ほほう。サーチフォーイールドの動きがという話はこらまた第二の柱っぽいお話(^^)。

『Participants discussed the risk that strains in global financial markets and pressures on European financial institutions could worsen and spill over to parts of the domestic financial sector, and some noted the importance of undertaking adequate preparations to address such spillovers if they were to occur; it also was recognized that investor sentiment could improve and strains in global markets might ease.』

欧州問題がどうのこうのという話ですな。

『Several participants commented that it would be desirable to explore the possibility of developing new tools to promote more-accommodative financial conditions and thereby support a stronger economic recovery.』

「more-accommodative financial conditions」をもたらす新しいツールがという話でして、これは追加金融緩和というよりは、ここまでの話の流れを考えるとBOEの先般の銀行貸し出し支援策のようなものをイメージしているのでしょうかね。


・金融政策に関してですが細かい所で興味深い論点も

『Committee Policy Action』から。最初の現状認識部分はパスしてその次から。

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members agreed that it would be appropriate to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent in order to support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the 2 percent rate that the Committee judges most consistent with its mandate. In addition, all members but one agreed that it would be appropriate to continue through the end of this year the Committee's program to extend the average maturity of the Federal Reserve's holdings of securities; specifically, they agreed to continue purchasing Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years at the current pace of about $44 billion per month while selling or redeeming an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of approximately 3 years or less. These steps would increase the Federal Reserve's holdings of longer-term Treasury securities by about $267 billion while reducing its holdings of shorter-term Treasury securities by the same amount. Members also agreed to maintain the Committee's existing policy regarding the reinvestment of principal payments from Federal Reserve holdings of agency securities into agency MBS. 』

と、ここまでがこの時の決定した事項に関してと、MBSの償還再投資継続の話。

『Members generally judged that continuing the maturity extension program would put some downward pressure on longer-term interest rates and help make broader financial conditions more accommodative.』

ツイストオペの効果についてはまあ何時もの話の通り。

『Some members noted the risk that continued purchases of longer-term Treasury securities could, at some point, lead to deterioration in the functioning of the Treasury securities market that could undermine the intended effects of the policy.』

この部分が「ほっほー」と思ったのですが、数名(Some)の委員がツイストオペの継続によって、「何れかの段階でこの長期債購入が米国債券市場の機能を低下させることに繋がり、政策の期待する効果の経路を損ねる懸念がある」という話をしていまして、まあそもそも弾切れだからツイストオペが出来ませんぞなもしという話はあるのですが、このような市場機能論の観点が出てきているという事は、単純なQE3の実施という議論においても、長期債をバカスカ買うのはどうかという反論が出てくるなあとか思った次第。さきほどあたくし「だいたいこんなもんでしょ」とは申し上げましたが、従来長期債の購入に関してはインフレ期待を無駄に高めるといような弊害論はあったのですけれども、このような論点での話がFOMC議事要旨に出ることは無かったので、まあこの部分は正直意外感がございましたです、はい。

『However, members generally agreed that such risks seemed low at present, and were outweighed by the expected benefits of the action.』

まあそうでしょうなあという事ですが、ただ「members generally agreed」という事ですから、この論点の議論が行われたという事ですな、うんうん。

『Several members noted that the downward pressure on longer-term rates from continuing the Committee's maturity extension program was likely to be modest.』

それはまあそうなのですが身も蓋もない・・・・・・

『One member anticipated little if any effect on economic growth and unemployment and did not agree that the outlook for economic activity and inflation called for further policy accommodation.』

ほう。


・声明文内容に関して

次のパラグラフ。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only relatively small modifications to the first two paragraphs were needed to reflect the incoming economic data and the changes to the economic outlook.』

へーという感じですが、この前の声明文の文言変更は「only relatively small modifications」だそうですの。

『In light of their assessment of the economic situation, almost all members again agreed to indicate that the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』

これは声明文のガイダンス文言の話。

『Some Committee members indicated that their policy judgment reflected in part their perception of significant downside risks to growth, especially since the Committee's ability to respond to weaker-than-expected economic conditions would be somewhat limited by the constraint imposed on monetary policy when the policy rate is at or near its effective lower bound. Members again noted that the forward guidance is conditional on economic developments and that the date given in the statement would be subject to revision should there be a significant change in the economic outlook.』

ほほう。


・更なる追加緩和がどうのこうの

次のパラグラフである。

『A few members expressed the view that further policy stimulus likely would be necessary to promote satisfactory growth in employment and to ensure that the inflation rate would be at the Committee's goal. Several others noted that additional policy action could be warranted if the economic recovery were to lose momentum, if the downside risks to the forecast became sufficiently pronounced, or if inflation seemed likely to run persistently below the Committee's longer-run objective.』

まあこの辺が市場が失望したとかいう所だと思うのですが、確かにこの感じだと直ぐに追加緩和のおかわりがという感じはしませんですなという所(さっきは長期債の買い過ぎの弊害についての議論もあったし)でして、割と早めの追加緩和の話を主張しているのが「A few members」しかいなくて、経済の回復がモメンタムを失ったりインフレが持続的に低下しそうになったら追加緩和が正当化されるという話をしているのが「Several others」ですかそうですかと。

『The Committee agreed that it was prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』

まあこれはサービスフレーズというか何というか。

『A few members observed that it would be helpful to have a better understanding of how large the Federal Reserve's asset purchases would have to be to cause a meaningful deterioration in securities market functioning, and of the potential costs of such deterioration for the economy as a whole.』

ということで、さっきの長期債の買い過ぎに関する弊害の話について、こちらでも記載されておりまして、QE拡大に関しては抵抗が高まっています罠という所でしょう。


・ラッカー総裁の反対理由

まあお約束。

『Voting against this action: Jeffrey M. Lacker.

Mr. Lacker dissented because he opposed continuation of the maturity extension program. He did not believe that further monetary stimulus at this time would make a substantial difference for economic growth and employment without also increasing inflation by more than would be desirable. In Mr. Lacker's view, the outlook for economic growth had clearly weakened of late, but he questioned whether the maturity extension program would have much effect in current circumstances. Should inflation fall substantially and persistently below the Committee's 2 percent goal, however, he felt that monetary stimulus might then be appropriate to ensure the return of inflation toward target.』

反対のポイントが幾つかありますけれども、足元の景気拡大は明らかに弱まっているものの、先行きの見通しを変えるほどではないというのと、ツイスト延長の効果が現状の改善にあるのかどうか疑問があるというのと、そもそも物価が2%を明確に大きく下回って推移する見通しになるというのでなければ追加緩和は要らんがなという物価重視姿勢というお話ですな。

#以上寝起きシリーズの引用祭りでどうもすいません




2012/07/11

お題「デンマークとか英国とかの趣味の小ネタ系で恐縮/何か直ぐに溜まるので悪態ネタを一挙放出(^^)」

ネットで話題になっていたのであたくしも知ったのですけどね。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-08/2012070815_01_1.html
大飯フル稼働 火力8基停止 関電に怒り “電力不足ウソか”

・・・・・・・・・そもそも電力需要のピークが来るのはもうちょっと先ですし、これまでフル稼働させていた火力を一旦休ませなかったら却って危ないだろうと思うのですけれども、反原発で凝り固まってすっかりアレになってしまいましたなあ日共もと言う所でございまして誠に残念な事です。


○デンマークのマイナス金利関連(まあ小ネタではあるが)

デンマーク中銀のサイト(の英語版)
http://www.nationalbanken.dk/dnuk/specialdocuments.nsf

先日のECBの利下げに伴いマイナス金利が発生というのがちょっと話題になっていましたが
http://www.nationalbanken.dk/DNUK/PressRoom.nsf/side/PressDNN201216563/$file/DNN201216563.pdf
Interest rate reduction

『Effective from 6 July 2012, Danmarks Nationalbank's lending rate, interest rate on certificates of deposit and discount rate are reduced by 0.25 percentage point. The current account rate is unchanged. The interest rate reduction is a consequence of the reduction by the European Central Bank of its monetary policy rates by 0.25 percentage point.』

ということで、ECBの利下げに対応して利下げを行った結果がこの通り。

『Effective from the above date, Danmarks Nationalbank's interest rates are:

Lending rate: 0.20 per cent
Certificates of deposit: -0.20 per cent
Current account: 0.0 per cent
Discount rate: 0.0 per cent』

CD金利が▲0.20%になりましたという話。

『In connection with the introduction of negative interest rate on certificates of deposit the current account limits will be revised upward. The new current account limits can be found at Danmarks Nationalbank's homepage: www.nationalbanken.dk under "Rules - Monetary and foreign-exchange policy".』

で、そのCD金利マイナス化に伴い「current account limits」を引き上げましたとか書いてありますが、はてそれは何ですねんという話はこの先でします。

んでまあマイナス金利キターとかゆー話になるのですが、このマイナス金利ってのはいわゆる一般的に考えられるマイナス金利とはちと話が違うんじゃネーノというのが以下のお話(というかあたくしがデンマーク中銀のサイトを見に行って何となく把握した話)でございまする。

先ず、デンマーク中銀の金融政策の目的とは何ぞねという事なのですが・・・・・・

http://www.nationalbanken.dk/DNUK/MonetaryPolicy.nsf/side/Denmarks_monetary_policy!OpenDocument
Monetary policy

『Danmarks Nationalbank is responsible for monetary policy in Denmark. The objective of monetary policy is to keep the krone stable vis-a-vis the euro. Danmarks Nationalbank conducts monetary policy by setting the monetary policy interest rates, i.e. the discount rate, the current-account rate, the lending rate and the rate of interest on certificates of deposit. The interest rates are determined by the Board of Governors of Danmarks Nationalbank, and can be changed as required at any time.』

ということで「The objective of monetary policy is to keep the krone stable vis-a-vis the euro.」ってございますように、金融政策の目的がそもそも対ユーロの為替ペッグとなっていまして、為替ペッグの為に過度な資本移動を抑制しないといけませんので、金利に関しては投機的な資本移動制限の為に豪快な事をしないといけない(マイナス金利とか1000%とか)という話で、そーゆー意味ではスイスも現在為替ペッグの結果としてマイナス金利とかになっているつー話です罠。

つまり、デンマークのマイナス金利を見て「日本でもマイナス金利」とか言い出すのは彼我の違いをまるで見ていない議論という話にはなりますわな。


んでもって先ほどの各種レートなのですが、こちらに大体の説明がございます。

http://www.nationalbanken.dk/DNUK/MonetaryPolicy.nsf/side/Instruments!OpenDocument
Monetary-policy instruments

『The monetary policy counterparties have access to the monetary policy instruments, i.e. they can place liquidity with Danmarks Nationalbank as overnight deposits (current-account deposits) and participate in Danmarks Nationalbank's weekly and monthly market operations. In the weekly market operations, counterparties can obtain 7-day loans against collateral, or deposit liquidity for 7 days by purchasing certificates of deposit. In the monthly market operations the counterparties can obtain 6-month loans against collateral. The interest rate on 6-month loans is variable, set at Danmarks Nationalbank's 7-day lending rate. The monetary policy counterparties are free to determine the volume of loans at the weekly and monthly operations.』

通常のオペに関しては毎週と毎月実施されているものがありまして、毎週行われているのは7日間の資金供給オペ(担保付)と7日間の資金吸収オペで、その吸収の方が中銀CDの購入という形になるようで、どちらもフルアロットメントで行うという事のようですね。で、毎月行われる方は6か月物で、適用金利は期中の7日オペ金利になりますという事で、こちらもフルアロットメントとの事。

『The collateral basis, which is applied to obtain loans in Danmarks Nationalbank, consists of securities, mainly government and covered bonds, and banks' own credit claims of good quality.』

担保に関しては国債にカバードボンドに優良貸出債権などだそうでこれはまあ普通の話。

『The net positions of the monetary policy counterparties are their portfolios of certificates of deposit and current-account deposits, less their loans from Danmarks Nationalbank. The net positions are primarily affected by fluctuations in government payments and Danmarks Nationalbank's purchase and sale of foreign exchange. In the weekly market operations, the monetary policy counterparties normally structure their net positions so that the total current-account deposit covers the expected liquidity requirement for the next week. When major liquidity fluctuations are expected, Danmarks Nationalbank may announce in advance that it will buy back or sell certificates of deposit outside the fixed market operations. Danmarks Nationalbank may also buy back or sell certificates of deposit without prior announcement. Danmarks Nationalbank can also when and to the extent it is needed perform liquidity-adjusting deposit and lending operations in kroner. The rate of interest and maturity of the operations will reflect market conditions. 』

あーだこーだと書いてありますが、だいたいこんな感じ。まず各銀行は自分の所の資金繰りを予想しながら毎週のオペで必要な資金調達を行い、余った部分は一義的にはリザーブの内の「current-account deposits」という勘定に入るという事ですな。んで大きな資金の出入りが予想される時は別途オペが行われることもあると。

『Limits have been set for the size of the monetary policy counterparties' current-account deposits. The purpose of these limits is to prevent the build-up of large current-account deposits that may be used for speculation in interest-rate and/or exchange-rate changes. If the total limit for the counterparties is exceeded, current-account deposits in excess of the individual limits will be converted into certificates of deposit.』

で、ここで中銀CDとcurrent-account depositsの関係が判るのですが、金利見通しや為替レートの見通しに伴ってスペキュレーションが起きないようにする為に、一定以上のcurrent-account depositsを持たせないようにするという、ポジション規制のようなものが各行ごとに設定(設定するのは中銀)されていて、その限度を超えて保有される流動性に関しては自動的に中銀CDになるという設定になっておりまして、そのためにこの金利はペナルティー金利となるっつーことのようですな。

『Technically , it is possible to obtain negative interest rates with the existing monetary-policy instruments. In exceptional circumstances it may be necessary for Danmarks Nationalbank to lower the rate of interest on certificate of deposit so that it becomes negative. Such a scenario would imply that the current-account rate will be higher than the rate of interest on certificate deposit and the current-account limits will be revised upward. If the total current-account deposits exceed the overall limit, Danmarks Nationalbank will convert the current-account deposits into certificates of deposit.』

というのがさっきありました「current account limits」の引き上げという話です。このリミット引き上げた場合、従来基準で中銀CDになっていた部分でリミット範囲内になる部分に関してはcurrent-account depositsに戻してくれるようですな。


とまあそういう事で、デンマークがマイナス金利導入というのはそらまあ間違いでは無いのですけれども、こちらをざっくりと見ただけで大体判るように一般的にイメージされるマイナス金利とは全然違いまして、金融調節上のテクニックとして行われているペナルティー金利という部分であり、政策としてマイナス金利を導入して経済に対して働きかける云々というのとは大違いですがなとまあそういう話になるようですな。

ちなみに豆ついでにこちらを。
http://www.nationalbanken.dk/DNUK/Rules.nsf/side/Monetary_policy_rules!OpenDocument
Monetary and foreign-exchange policy

最初の2つの部分は先ほど引用したところの内容の重複になりますので割愛しまして、『Counterparties in foreign-exchange transactions in Danish kroner』って所から。

『The Nationalbank's counterparties in foreign-exchange transactions in Danish kroner are determined in accordance with the market conditions. Requirements regarding a significant market activity subject to the given foreign-exchange conditions and capacity to handle payments via the international financial network SWIFT form the basis for the Nationalbank's choice of counterparties in the foreign-exchange market for Danish kroner. If the Danish exchange rate reaches the upper or lower limit within ERM II, the number of counterparties may be extended. Potential new counterparties will be obliged to settle their foreign-exchange transactions with the Nationalbank via a payment-after-payment procedure.』

ということで、為替に関しては実質的にはペッグ制(上限と下限があってその中でのフロートはある)で、介入に関しては中銀が実施するようですね。


○こんなんありましたというメモというか半分予告編(BOEのFPCミーティング議事要旨)

まあ先週に出てたんですけどね(汗)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/Records/fpc/2012/record1207.aspx
Record of FPC Meeting held on 22 June 2012

本文はこちら
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/records/fpc/pdf/2012/record1207.pdf

でまあ本文は斜め読みしかしておりませんので、まとめの部分(というか冒頭部分)だけですけど。

『In June 2010, the Chancellor of the Exchequer set out a plan for fundamental changes to the system of UK financial regulation. In July 2010 and February 2011, the Government published consultation documents on the proposed changes, and in January 2012 introduced the Financial Services Bill to Parliament. The legislation will establish a Financial Policy Committee (FPC) charged with a primary objective of identifying, monitoring and taking action to remove or reduce systemic risks with a view to protecting and enhancing the resilience of the UK financial system. In June 2012, the Chancellor announced that the Government would amend the Bill to give the FPC a secondary objective to support the economic policy of the Government.』

ほほう。

『The Government intends the FPC to be a Committee of the Bank of England’s Court of Directors, and in February 2011 the Court created an interim FPC to undertake, as far as possible, the future statutory FPC’s macroprudential role. Although lacking the proposed statutory powers of Direction and Recommendation of the statutory FPC, the interim FPC contributes to maintaining financial stability by identifying, monitoring and publicising risks to the stability of the financial system and advising action to reduce and mitigate them. It also carries out preparatory work and analysis in advance of the creation of the permanent FPC.』

ということで、基本的にはマクロプルーデンスな話をするとかそういう事のようで。

『The Committee meets at least four times a year and a record of each meeting is published within six weeks. The next meeting of the FPC will be on 14 September and the record of that meeting will be published on 27 September.』

ということで、その次のページに『RECORD OF FINANCIAL POLICY COMMITTEE MEETING HELD ON 22 JUNE 2012』ってのがございまして・・・・・・・

『The interim Financial Policy Committee unanimously agreed the following policy recommendations:』

ということで1〜5までのリコメンデーションがあるのですけれども、何か一つ一つは仰る通りご尤もという感じなのですが、これ全体を通してみた場合に整合性がどうよ??という気がするのですが、議事内容の方をあまり詳細に読んでいないのでその辺はまた後ほど。まあご興味のあるかたは読んで味噌という事で。



○電波浴というよりは悪態シリーズでございますが

いやまあ色々と悪態ネタがございますが思いっきり順不同で片付けましょう^^;

・これは斬新すぎる・・・・・・

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120710/stt12071016190009-n1.htm
公明党 10年で100兆円投入「防災・減災ニューディール」
2012.7.10 16:19

暫く前に自民党が10年で200兆突っ込んで防災対策です財源は日銀に赤字国債引受させますという無茶振り(国土のインフラ整備に金を掛けるなとかいう話では無くて財源論議が無茶振りという意味です、為念)をしてたのに悪態をついた訳でございますが、公明党さんの10年で100兆円投入に関してどのような財源の話が出るのかと思ったらこれがまたあまりにも斬新orz

『財源は建設国債や地方債・復興債でまかない、償還財源として防災・減災対策に使途を限定した「ニューディール債」(仮称)の新設を検討。』(上記URLより)

#公明党さんのサイトを見に行って探してみたのですが、5月21日に県代表懇談会の席上でこの防災・減災で日本再建という話を山口代表がしているというのは見つかったのですが、具体的な内容とかは(アタクシが見た時点では)同党のサイトには無かったのでまあ産経新聞の報道が正しいとしましょう

・・・・・・・・・えーっとですな、財源が要するに公債で借金ですよねというのはまあ把握したのですが、その償還財源が「ニューディール債」(仮称)と仰せですが、借金返済の財源が借金というのはそらあーたカードローンの返済に別のカードローンで借りた金を充てるのとどこがどう違うのかと小一時間。つーかそもそも「防災・減災対策に使途を限定した」債券を建設国債等の償還という既存債券の借換に使ったら目的外流用じゃないですか日本語として文章が破綻してますがなと存じますがこれはどうした事でしょう。

いやね、これが「ニューディール税」(仮称)ならまあ話は分かるので、何ぼなんでもこれは産経新聞の記者が税というべき所を債券と勘違いでもされて記事をお書きになったのではないかと妄想したい所ではあるのですが、もし大真面目に「この借金の償還財源は別に借金をしてくるからちゃんと財源の宛てがあるんです(キリッ)」とか言ってるんでしたらあのその公明党様までどうしちゃったんですかという話でございますし、産経が間違っているのであれば「借金の償還財源が別の借金」という話として破綻している事をチェックできてないという話です(これ記事載せるときに「借金の償還財源が別の借金ってちょっと待て」とならなかったのでしょうか・・・・・)のでこれまたアレですなあと。

まあいずれにせよ、詐欺フェストでも何でも選挙に勝てば良しみたいな無茶振りが横行するとか大仰に言えば代表制民主政治の危機のような気がするんですけどねえ(だからあたくし何度も申し上げてますが、小泉首相の郵政解散に関して当時から延々と批判的でございましたがまあ珍獣扱いされてましたな、たぶん今でもそうでしょ)。



・共同通信の報道っぷりに脱力

これは東京新聞の記事ですが元ネタは共同通信でして、ベンダーに配信されていた共同の記事もこんな感じでした。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012071001001987.html
日銀に追加緩和、為替介入も デフレ脱却へ閣僚会議報告
2012年7月10日 19時06分

『政府は10日、デフレ脱却に向けた経済活性化策を検討する関係閣僚会議を開き、2012、13の両年度に規制改革や予算、税制などの政策を総動員するとした報告書をまとめた。日銀にデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続するよう期待するとし、追加緩和を要請した。補正予算の編成や円高を阻止する為替介入も示唆した。欧州債務危機に伴う海外経済の下振れなどが景気のリスク要因だとして、経済動向を踏まえ「柔軟かつ機動的な政策対応を図ることが重要」と指摘。為替介入を念頭に「緊張感を持って市場の動向を注視し、必要なときは断固たる措置を取る」と強調した。(共同)』(以上上記URL記事より)

・・・・・・で、実際の所どういうのが出ているのでしょうと思って内閣府のページを見に行ったら早速報告がリリースされていました。

http://www5.cao.go.jp/keizai1/deflation/index.html
デフレ脱却に向けて(デフレ脱却等経済状況検討会議)

で、このページの中に「第一次報告(平成24年7月10日)(PDF形式:295KB)」ってのがございまして、第一次報告へのリンクがございます。

http://www5.cao.go.jp/keizai1/deflation/2012/0710_1st_report.pdf
デフレ脱却等経済状況検討会議第一次報告

13ページのファイルですが、うち本文は9ページあります。でまあ細かい話をするとクソ長くなりますからアレですが、最初の『第1節 デフレ脱却と経済活性化に向けた政策の基本方向と重視すべき政策分野』という所にはこんな話が。

『政府と日本銀行は、デフレ脱却が極めて重要な課題であるとの認識で一致している。デフレからの脱却を早期に実現するためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠である。』

『政府としては、特に今後2年間(平成24年度、25年度)を念頭に、経済の局面変化等を踏まえつつ、2.に掲げるようなデフレ脱却と経済活性化のために重視すべき分野に、規制・制度改革、予算・財政投融資、税制など最適な政策手段を動員し、平成25年度予算編成プロセス等において具体化する。特に、規制・制度改革は、市場における競争を促し、我が国の経済構造を変革し、経済活性化につながる必要不可欠な取組であることから、より一層強力に推進する。「モノ」、「人」、「お金」をダイナミックに動かすための政策を強力に推進することにより、生産、分配、支出にわたる経済の好循環、所得の増加を伴う成長を実現し、早期のデフレ脱却につなげていく。民間部門においても、デフレに結びつきやすい構造を見直し、付加価値を高めていく取組が期待される。』

『日本銀行は、当面、消費者物価上昇率1%を目指して、強力に金融緩和を推進することとしている。政府は、日本銀行に対して、デフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続するよう期待する。』

ということで、この先は政府の取り組みとして、上記部分にある「モノ」「人」「お金」を動かすにはどうしたらいいかという話が続いている訳ですよ。でまあ9ページ程度なのでサラサラと読める話なのですが、この話ってどう見てもいわゆる「成長戦略が重要」というような話でありまして、最初に引用した東京新聞ですが事実上共同通信の見出しであります所の「デフレ脱却の為に追加金融緩和と為替介入」というのがメインとは到底見えない話(為替の話は本文中にありますけれども、まあ内容読めば判ると思いますが、話の中ではメインは為替操作とかではないのは明白だと思いますよ)。

正直、記事の題名を見た時には政府が何もしないで日銀に対してクレクレ言ってるのかと思ったのですが、内閣府のサイトに行って内容を見たら、どちらかと言えば日銀の言ってる成長基盤強化と同じような話をしておりますし、大体からして政府が日銀に対して言ってるのは「デフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続するよう期待する」であって追加緩和の要求なんぞして無いですがなという所ではございますな。

ちなみにこのニュースですが、情報ベンダーに共同が流した最初の速報テロップでは「追加緩和」とは書いてなくて、元々の内閣府の報告にあるのと同じく「金融緩和の継続を求めた」という風になっておりまして、その後文章入りの記事になった時に「追加緩和を要求」と出てきたので「これはちょっと変じゃないか」と思って内閣府の報告書が上がるのを待って確認したらこういう事でしたという次第。


・・・・・・・・・えーっとですな、まあ共同通信さんは以前から市場が追加緩和を織り込みに行っていない時にも「追加緩和見送り」というようなテロップを打つという事であたくしが悪態を何回か書きましたように、どうも会社の意見だかデスクの意見だか知りませんが、追加緩和クレクレの方向で記事を出す傾向にあるというのは存じておりましたが、てめえがそうあって欲しいという願望を元に針小棒大記事どころか実際には存在しない「追加緩和を要請」とか書きだすとか報道機関として何を考えておられるのか甚だ疑問に思う次第でございます。


つーかさ、このニュースって今日のテレビ報道を見るとどこでも「成長戦略」の話をしておりまして、「日銀に追加緩和を要請」というような話は普通しておりませんでして、如何に共同通信様が偏向されておられるかという所だと思うのですけれども、通信社様が偏向とかマジで勘弁して欲しいのですけれどもここの金融経済ニュース部門の中はどういう事になっているのでしょうかねえと不思議に思うのでありました。


・素敵な藁人形論法

藁人形論法というのがあるそうで。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3
ストローマン

『ストローマン(英語:straw man)は、議論において対抗する者の意見を正しく引用しなかったり、歪められた内容に基づいて反論するという誤った論法、あるいはその歪められた架空の意見そのものを指す。藁人形論法ともいう。語源は仕立て上げられた架空の存在を藁人形に見立てたことからである。』(上記URLより)

で、またゲンダイか!という感じでリンク貼ってアクセス向上に寄与するのも忌々しいですけれども、現代ビジネスWebちゃんから電波浴のネタ拾いをしに逝ったら藁人形論法をサルベージと。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32907
デフレ脱却こそ景気回復の大前提。量的緩和による金利上昇リスクばかりを強調する日銀に異議あり
2012年07月02日(月) 馬淵澄夫レポート

記事内容は一応電波浴とは言え読んだ次第でございますが、そもそもこの先生の場合題名を見た時点でどう見ても藁人形論法です本当にありがとうございましたという話で、記事を引用するまでもございませんが、日銀は別に「量的緩和による金利上昇リスクを強調する」とかしておりませんし、そもそも現在行っている包括緩和は金利を下げようとして実施しているとか日銀の公式文書ちょっと日銀のページに逝ってみれば判るじゃねえのかと思いますし、大体からして国会で日銀が説明しているのは「財政の維持可能性に対する懸念が生じてしまって長期金利が非連続的に上昇する場合のリスク」でございますがなこのオッサンは人の話を聞く能力が欠如してるんじゃねえのかという感じですな。

ということで、馬淵センセイは上記URLの中でデフレ脱却して景気が良くなって金利上昇しても銀行経営困らないでしょと延々と説明して日銀を論破したつもりになっておられるようですが、デフレ脱却して景気が良くなって長期金利が自然に上昇する事に対して日銀は別に懸念なんぞしておりませんし、むしろそうなって欲しいという話でございまして、藁人形相手の論立て誠にお疲れ様でございます(棒読み)という所でしょうか。


しかしまあ何ですな、こちらの現代ビジネスWebちゃんのページですが、「ニュースの深層 」とか「企業・経済」とかテーマの並んでいる辺りにカーソルを持って行きますと、豪華絢爛な執筆陣のメンバーが並んでいるのでございますが、これがまた見事なまでにアレな方を取り揃えてございまして、記事を読む前から電波が感知できそうな素敵なのをよくもまあここまで集めたもんだと感心してしまうのです。



・なんかもうちょっと下調べしてから書いた方が良いのではと思うのですが・・・・・・

とか書くと自分にブーメランの悪寒もしますが(^^)、毎度おなじみ洋一先生より。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120708/plt1207080715000-n1.htm
国債利回りが預金金利より高いのは変!
2012.07.08

『個人向け国債の場合には、中途換金で額面割れや額面以上が出ないようにしている。いってみれば、個人向け国債の購入者に中途換金での価格変動リスクを負わせないが、その対価として金利が0・03%低くなるという考えだ。他方、中途換金の相手方(最終的には国)は価格変動リスクを負う代わりに、その対価として0・03%低い金利を享受できる。』(上記URLより、以下同様)

『このような個人向け国債の商品設計自体の問題もあるが、金融機関の預金金利にも問題がある。最近は、ネット銀行などで国債金利を上回る預金金利を持つ定期預金が出てきたが、依然として大手銀行などでは預金金利が低い。例えば、大手都市銀行の3年物定期預金金利は0・04%だ。』

『ただし、よく考えてみれば、信用力で国より劣る銀行預金の金利が国債金利より低いのはおかしい話だ。』

などとご説明。まあ一部正しいのですが一部間違っているなあという感じでして、確かに個人向け国債については中途換金をした場合にも元本割れにならないよう工夫はされております。

財務省HPより
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/qa/more/answer_qd.html#qa-29
Q29.個人向け国債は、満期まで中途換金できないのですか

『全ての個人向け国債(「変動10年」、「固定5年」、「固定3年」及び「復興応援国債」)は第2期利子支払日(発行から1年経過)以降、原則としていつでも、口座を開設している取扱機関で、一部又は全部を中途換金することができます。また、原則中途換金ができない期間中であっても、中途換金の特例として例外的に中途換金が可能な場合もあります。』

ということで洋一先生仰せの3年物ですと、実は発行から1年間は中途換金が出来ない(相続や大きな自然災害の場合は出来る)のでして、その時点で銀行の定期預金と商品性が異なるのでした、残念!

ついでに申し上げると、
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/qa/more/answer_qd.html#qa-35
Q35.中途換金するときの換金金額はどのように計算されるのですか。

という所にありますように、中途換金の際は直近1年分の利息に関してペナルティが掛かりますので、その事も勘案してレートを比較しないと意味が無いのですな(まあ銀行の定期預金でもペナルティーは掛かりますのでそれはある意味おあいこですが)、残念!!

まあ銀行の定期預金はいざとなったら預金担保で借入出来る(総合口座の定期とかにしておけば借越できますよね)とか、商品性違いますがなというのも他にございますが、それは兎も角として、銀行定期預金に対して個人向け国債の商品性が優れているというのであれば、それは国が国債の個人向け消化に対して積極的なので銀行預金よりも魅力度を高めておかないといけない、という政策意図に基づいたものであって、別に銀行がボッタクリとかいう話じゃないでしょとか思うのですけれどもねえ。比喩として適切かどうか分からんけど、町の電器屋さんの店頭に逝って「お前の店で付けている値段は大型量販店の値段より高いのでボッタクリだ」と言ってるような雰囲気を醸し出すのであります。


まあそこだけで終わらないのが高橋先生の記事を読む際の読みどころでして、他にもツッコミどころが多彩というのが素敵な所です。引き続き先ほどのURL先の高橋先生の記事より。

『中途換金するかしないかは購入者に依存するわけで、中途換金する場合、価格変動リスクを負ってもいい人や中途換金しようと思わない人には0・1%、中途換金する場合、価格変動リスクを負いたくない人には0・07%という個人向け国債を二本立てにする商品設計も可能だ。そのほうが購入者を一律に扱う現行の方法よりまともだろう。』

またまた財務省HPより
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/
個人向け国債 トップページ

こちらにございますように、実は個人向け国債は2本立てになっておりまして、「個人向け国債」と「新窓販国債」というのがございます。詳しくはまあ上記URL先をじっくりとお読みいただければと思いますが、「新窓販国債」の商品性はこちらをご覧いただくのが吉。
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/shinmadohan/outline/

という事で既に2本立てなんですよねえ(個人向け国債の方で出ている固定3年は新窓販国債では扱いが無いという事で、そこだけ見れば2本立てじゃないとも言えるけどさ)という事で、何ぼ原稿を沢山書かなければならぬと言いましても、下調べを明らかにしてないだろうというのは如何なものかと存じますけどにゃあ。

ついでにですな、

『例えば、大手都市銀行の3年物定期預金金利は0・04%だ。となると銀行としては、個人向け国債を販売するインセンティブは出てこない。3年物の国債であれば、0・1%の運用ができるので、0・06%の利ざやになるからだ。リスクの少ない国債に投資して利益が出るのだから銀行としておいしい。』(再び最初の高橋先生の記事URLより)

・・・・・・・・えーっと先生、元財務官僚様なんですから預金保険料って制度ご存知ですよね。
http://www.dic.go.jp/shikumi/hoken/suii.html

現在の定期性預金の預金保険料率が0.082%ですので0.04%で調達した3年定期預金の預金保険料込みのコストは0.122%となりまして、残念ながら単体で赤字(実際はこれに各種事務コストが載りますぞなもし)でございますがなという所ですなあっはっは。

ということで悪態シリーズが長くなってしまいましたな。もうちょっとあると言えばあるのですけれどもまあこの程度にしておきましょう。




2012/07/10

お題「ECB総裁会見ネタ続き/国内短期市場メモ」

何か「次の政権は政界再編で」という世論調査結果の報道を見ると、民主党の詐欺フェストに引っ掛かったのに今度はまた性懲りもなくトリックスター政党に騙されに逝くのかよこの国はと絶望感を受けるのは悲観のし過ぎだと良いのですが・・・・・

○ECB総裁会見の続きを少々

やはり論点としてこれは確認すべきというのが色々とあるので昨日の続きから。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120705.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 July 2012

・銀行の貸出行動をECBがどうにかできるのかという件

昨日も引用しましたが、他の質疑でもやはりこのネタがでておりましたので。

『Question: You quite rightly pointed out that we have got a divergence in the euro zone in terms of bank lending. Is there anything you can do to prevent the credit crunch that seems to be emerging in places like Italy and Spain?』

『And the second question is also on the EFSF and the ESM fund. We know that if it does come to a situation where Spain does need extra aid, it will probably cover it, but what will happen if Italy also needs aid?』

あとで引用しますがEFSFなどの基金に関する質問についてはノーコメントでして、問題は最初の質問なのですが、イタリアやスペインのように銀行貸し出しがクレジットクランチになるのを防ぐ方法如何?って話ですな。


『Draghi: What happens if everybody needs it? It is a big question.』

『On the first question, generally speaking, the idea that the ECB could channel funds via the bank lending channel to a specific category of firms or households is as wrong as the idea that the ECB should make sure banks don’t buy government bonds as otherwise it is monetary financing. “Wrong” is probably too strong, but certainly both ideas are very, very hard to implement, requiring us to make sure that the banks do certain things or don’t do certain things.』

ECBが銀行が貸し出しをするように導くことができるというのは「誤った」考え方です。まあ誤ったというと言い方がきついかも知れませんが、要は中銀が供給した流動性を貸出に回すのか国債などの購入に回すのかという事は強制できませんがな、という話っすな。

『We have to remember that their decisions are basically business decisions. What we could do and what we have done with respect to this is broaden the eligibility rules of collateral so as to attract the greatest number of banks, including those banks of a small/medium size which we believe are closest to the SMEs. But we have also done another thing, recently, at the last Governing Council meeting. We broadened the collateral eligibility so that banks can actually use the assets they create in lending to the real economy as collateral in borrowing from the ECB.』

それは各銀行のビジネスとしての判断であり、中央銀行が出来るのは例えば中小企業向けのローンに関しての担保範囲を拡大するというような施策ですとか何とかそういう話ですが、あたくしの知能の問題でButの前と後との話の意味の違いがイマイチ判らんかった。

『So they are not only using government bonds, they are now also using credit claims and asset-backed securities of a lower rating, which means that for the banks in a sense it is now very useful to lend to the real economy because that way they also generate collateral that they can use for funding themselves. And we want to do this to keep the risk for the ECB balance sheet - and I have said this many times - very, very low.』

適格担保の拡大を行い、国債だけではなくより低い格付けのローン債権や資産担保証券などを担保として認めれば銀行の貸出意欲が高まるかもしれません的な話をして、最後にその手の担保範囲緩和による中央銀行のリスクはとてもとても低いのですと念を押しております。

『As regards your second question, I do not have an answer on the ESM.』

ということで2番目の質問はノーコメント。

・・・・・・でですな、こういう風に銀行の貸出チャネルの効きが悪いというのが論点になるという事であれば、今回ECBが実施すべき政策っていうのは金利下げじゃなくて銀行のアベイラビリティ拡大、という意味では信用緩和とか資産買入とかだったんじゃねえかという気がするのですが、その一方で・・・・・・


・非伝統的政策は「議論していない」ですかそうですか

後の方の質疑でこんなのが。

『Question: I have two questions. Apart from the interest rate decision, were there any other options that you discussed, such as other non-conventional measures, like a new LTRO?』

これ実は2番目の質問も小ネタ的にオモロイのですがそれはまあ皆さん見てちょという事で。

『Draghi: On the first question, we did not discuss any other non-standard measures.』

いきなりこう来るのですが、実際どうなのかというのがECBの場合Minuteが公開されないのでワカランチ会長でありまして、従いましてここでの質疑応答での説明がある意味公式見解的にならざるを得ない(各委員がフリーダム発言を連発するFEDとは違うので)のでして、こうなりますと非伝統的政策(つまり国債買入など)の追加について消極的(まあブンデスバンクの血が騒ぐとやりたくないというのは理解はするが納得はし難い)でございます的なメッセージしか受け取れませんがなという所です。

『And fairly unusually for me, I will also tell you why we did not discuss that - because we have to have non-standard measures which are effective, and they have to be effective in an area which is fragmented. So, that is why it is not obvious that there are measures that can be effective in a highly fragmented area.』

いやだったら金利政策のような包括的な政策じゃなくてもっと個別的な政策を実施すべきじゃないのかねとか思うのですが。

『Even though, as I have said, market sentiment seems to be improving slightly. For example, one of the remaining benefits of the LTROs is, I think, that we have not seen signs of outflows from the euro area. And this is actually quite important. I think one of the reasons why the euro summit was such a success is that leaders showed that this is a monetary union that is meant to last. They showed their commitment to making it a success. They started identifying an end point - a goal. They started, through the Van Rompuy report, drafting a pact in order to achieve this goal and started identifying conditions that had to be satisfied in order to undertake this journey together. I think this is why the euro summit was viewed so positively by markets and by everybody.』

と最後は先般のEUサミットの結果についても触れまして、市場のセンチメントは改善している(キリッ)とかゆうとるのですが、いやそうじゃなくて個別国どうするののほうがやる話じゃないのかねえとか思いますけど。

まあ何ですな、ECBの言い分としては、その個別国どうのこうのに関してはECBは知らんがな政治の問題ですがなという所ではあるのでしょうし、だからこそウチとしてやる事としては伝統的政策ですから金利操作ですよという話になるんでしょうけれども、それは何か今行わないとマズーな話からピントがずれているようにも思えるのでございます。


・金融監督は金融政策と分離するとな

これもまあマクロプルーデンスという観点からどうなのよという気がするんだが。

『Question: We’ve just had a question about EU banking supervision. First, do you see a pan-European banking union as a system only for the largest systemically important financial institutions or for all banks? And second, would the ECB do the supervising itself or would it outsource it to a separate body?』

ということでEU銀行同盟による共同金融監督の適用範囲と、その監督をする機関をどういう形にするのかという質問ですが。

『Draghi: I would say that it is far too early to respond to these questions, as the European Council meeting only took place a few days ago. However, let me give you a few messages of a general, albeit very important, nature.』

いわゆる「一般的に申し上げますと」ですな(^^)。

『First, with its decision to introduce a unified supervision of banks in the euro area, the European Council has made a very important step towards creating a “financial markets union” rather than a banking union. Furthermore, the leaders have committed substantial political capital to this decision. We expect that the proposal of the European Commission - after all, it is the competence of the Commission - in consultation with the European Parliament and the ECB, will be as strong as the commitment that the leaders have made in taking this decision. And we are confident that this will be the case.』

金融市場の統合もしないといけませんなというような話をしているようで。他の質疑でもこの「financial markets union」という文言が出ています。

『Second, whatever the proposal may be, it should be such that the ECB can carry out any tasks assigned to it in an effective, rigorous and independent way, without risk to its reputation.』

まあこれは当たり前の話。

『Third, any new tasks in terms of supervision should be strictly separate from monetary policy tasks. There should be no contamination between the two areas and we will certainly find ways to make it sure that this is the case.』

ということで、監督と金融政策は厳密に分離しろという話。まあ従来よりECBの場合はいわゆるプルーデンスウィングというのを各国中銀に委ねている筈ですので、こういう話になるのかなあという感じなのですけれども、マクロプルーデンスの観点も含めまして、どちらかと言うと金融政策単体だけではなくプルーデンスの問題に関しても金融政策との関係を重視しないといけませんねとゆーのが流れになっているようにも見える昨今の中ではここまで言い切るのもちょっと驚き。

『Fourth, the ECB should remain independent in carrying out these tasks.』

はあそうですか。

『Fifth, it is essential that we work together with the national supervisors. I myself was a supervisor for six years when I was Governor of the Banca d’Italia, where supervision is one of the bank’s areas of competence. Therefore, I know only too well that the knowledge, the skills, the competence, the history and the traditions are at the national level, and we plan to make full use of this fortunate situation.』

各国の監督機関との連携が必要というのはまあそうですねと思いますが、仕切りをどうするのかとか難しそうですな。

『Finally, there is an issue that is, in a sense, broader: new tasks will entail a higher level of democratic accountability. The Governing Council started to discuss this today, and we basically all agree on all the principles that I have just mentioned, especially the last one. We stand ready to meet higher standards of democratic accountability, as they will be asked of us by the citizens of Europe and especially those of the euro area.』

どうも3番目の所にある答えの理由はここにあるようですが、新しい任務は高いレベルでの民主的な説明責任を伴いますとか仰せのようで、だから金融政策とは分離しろという話なんでしょうな。


・市場はそんなに待ってくれないと思うのですが・・・・・・

こんな質問がありまして。

『Question: I wonder if you have a timeline in mind for when the ECB would be ready to assume this unified banking supervision, considering that there has been talk of the Commission’s proposal coming by the end of the year, but also given that fact that it is quite essential for this to be done quickly, as direct lending from the ESM to banks depends on it. I wonder if you have a date in mind when this would be fully operational?(2番目の質問は割愛)』

まあ当然気になる所なのですが・・・・・・

『Draghi: On the first point, we do not have a date, because, as I have said, the final proposal is a Commission proposal drawn up in consultation with the ECB and the European Parliament.』

まあそういうしかないのはその通りですが。

『I am sure that this will be done as speedily as possible. I would not dramatise too much the need for doing things fast. It is better to do things well. It has been said that this supervisory proposal and the eventual agreement should come very soon because this would enable the ESM to recapitalise banks directly. So, the two things have been linked with each other. But what happens if the proposal is not ready? Well, the public debt of an individual country will increase temporarily, because they will borrow from the EFSF.』

さいですな。

『But we all know that this will occur with the expectation of a decrease later on, once the supervision mechanism is in place. So it is a temporary blip in public debt which can be easily absorbed by markets. We all want to have everything “well done” and “now”. But if I had to choose, I would rather focus on it being “well done”, because, if it is well done, we can then cope with whatever else occurs and we know that a delay of two or three months will not cause a drama.』

ということで、まあ確かに出てくる内容が早くてもダメダメだったらマズーなのは仰る通りではございますが、だからといってきっちり出来たものを出すのに対して「a delay of two or three months will not cause a drama」というのもどうかなという気が全力でするのだが。2、3か月も宙ぶらりんだったら市場が許さんと思うのだが・・・・・・・・


とまあそんな感じで、どうも今回のECBは全体的にピントがずれていて、やっていることも何だかなあという所で、見れば見るほどやっちまった感が強いのではないかと思うのですが、どうでしょうかねえ。


で、今日はこんなニュースもあったのね。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6WGJJ6KLVR801.html
ドラギECB総裁、追加利下げの検討を示唆−データ悪化なら

こういうのって一般論で言ってるのか(常に政策手段はありますとかいう話をするので)実際に検討しているのかというのは文脈を見ないと判らないのですが、しかしまあこういう報道のされ方をする時点でドタバタ感を醸し出す訳で何だかなあという感じが致します。だったら最初から50bp下げておけとか思うのですけどねえ。


まあ欧州市場はこの有様ですし。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPJT818508920120709
ECB利下げの銀行間融資促進効果は薄い公算、MMF・レポ市場には悪影響か
2012年 07月 10日 03:30 JST

いやね、こんなの日本もそうですけれども、米国の場合はMMFが金融機関のファンディングヴィークルとして機能しているからなお一層の事切実な問題ということで、必要以上に短期市場金利を無くさないようにしないとってゆー意識を強く持っていますし、そういう趣旨の発言が連銀高官からも出ている筈なんですよね。

然るにECBは今回預金ファシリティーゼロにして早速こういう流れになっているということでして、まーECBって金融政策でございという方面ではドヤ顔でああだこうだ言いますけれども、市場の動きの細かい話が各国中銀の方に降りている関係もあるのか、この手の非伝統的政策というか、伝統的政策の中でもリアルゼロ金利みたいな従来の理論が通じない世界になると、実務の細かい部分への理解と配慮が非常に重要になる(結局の所実務が回らなければどんなに見た目が良くても意味が無い)訳なのですが、金融市場の細かい部分が各国中銀で行っているという事で、どうもこのリアルゼロ金利に対する感覚が不足していて、その結果としてオッペケペー状態になるという所なのでしょうな。

まあ早い所弊害に気が付いて預金ファシリティー金利を引き上げた方が良いと思うのですけれども、そこまでの根性があるかどうか。


○金先とか2年債とかオペ雑談とか

またまたロイターから。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPTK084585620120709
東京マーケット・サマリー・最終(9日)
2012年 07月 9日 18:03 JST

『ユーロ円3カ月金利先物市場は堅調。日銀が11─12日の金融政策決定会合で何らかの追加緩和を打ち出すとの観測から短期筋や実需筋から買いが先行した。中心限月の2013年3月限は一時前週末清算値比3.5ティック高の99.740と2011年3月以来の高値を付けた』(上記URLより)

昨日は「債券市場は追加無しがコンセンサスになってきてるんじゃネーノ」と申しましたらお友達さんから盛大にツッコミを頂戴いたしましたが(汗)、ユーロ円金先は金曜と月曜で大体0.06〜0.07%程度の金利低下と最近ではまれにみる大上げ。

金曜から金利低下という事で、まあどう見てもECBの利下げが点火材料になっているのでございますが、預金ファシリティーゼロの影響で欧州でもドイツ国債の2年がマイナスとかやっていますが、オランダの2年も0.05%とかに低下してたと思いますし、預金ファシリティー金利がゼロになって安全国の国債買いますか攻撃が入って、それが為替オープンで来るのか為替ヘッジ付になるのか知らんですけど、仮にヘッジ付でも調整ベースで金利がプラスなら買うかとか無茶振りされますとこらまたアレな展開という事です罠。

2年カレントに関しても朝方は0.095/0.100とかだったと思うのですが、後場になって0.095%が業者間で盛大に(というのはちょっとオーバーですが)出合って、超過準備付利金利割れかよ2年で〜とか思ってみてたら5年とかもまあ金曜同様に0.20%割れ(引けは5糸強の0.190%)ですし、全くECBは何を考えてるんだという所ではございます。

だからと言って日本が当座預金付利下げるかちゅうたらまあ先ほどの事案のように、金利を必要以上に下げ過ぎると弊害の方が大きいという事なので普通に考えると下げないとは思いますけど、そらまあ2年の金利が0.10%割れ定着(所詮限界的な部分の買いではあると思いますので長続きはしないと思いますが、ただまあ預金ファシリティゼロの影響という事ですから従来の動きより若干継続する恐れは無いとは言えないかなあと)とかしますと、やはりその手の思惑は仕掛けやすくなるだろうなあと思われます。


で、オペ雑談ですが。

ここ3日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120705.htm(5日)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120706.htm(6日)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120709.htm(9日)

でまあその結果ですけれども、3Mと6Mの固定金利オペの結果を並べてみましょう。

5日は3か月オペのロールを6か月で実施
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120705.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月9日スタート分) 3,220 3,220

6日は3か月オペを新規で実施
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120706.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月10日スタート分) 26,650 8,009 30.1

9日は3か月オペのロールを6か月で実施
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120709.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(7月11日スタート分) 1,790 1,790

・・・・・・・・・いやね、3か月のロールで打ってきてる6か月オペの応札がドンドン減る一方で、3か月を新規で入れると応札が3倍超とか、オペを打つ方も応札する方も意地になっているように見えて(まあ入れる方は意地でも何でもなく単に経済合理的に行動しているだけでしょうが^^)実に香ばしい展開でごいますな。などと野次馬モードですいませんすいません。


○ああ時間ががががが

他にネタとしてはデンマークのマイナス金利っぽいのを見てみた話とか、毎度の電波浴シリーズ(今回のネタは電波というよりは「そもそも事実関係が違うのが堂々と夕刊フジとは言え第三種郵便扱いの活字メディアに出るんですねえ」という話と、藁人形論法のお勉強シリーズだったりしますが^^)とか、BOEネタとかございますのですが、これがまたちゃんと整理すると意外に手間が掛かるので今日は勘弁。週後半は決定会合があるからその前にでも♪





2012/07/09

お題「リアルゼロ金利への問題意識が無いECBのようですな」

何かモーサテ見てたら決定会合に注目という為替市場と株式市場の方のコメントがあったのですが、株式市場の人だったっかなと思いますが、ECBの利下げと雇用統計で円高が進行していてどうのこうのとか言ってクレクレしてましたけど、このところ円って対ドルで79円台でずーっと推移しているような気がするんですが・・・・・

#つーか債券市場って既に追加無しがコンセンサスのような気がするんだが

まあクレクレは判るが話のベースで変な事を言い出すと電波浴になってしまいますので注意が必要ではないかと(-_-メ)

○ECB総裁会見を読んだのですが・・・・・・・・・

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120705.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 July 2012

今回はまあ市場関係者(ただし一部)が注目の預金ファシリティー金利のゼロへの引き下げに関して、日本や米国では既に認識されている短期金融市場の取引壊滅問題に関してどのような見解を示しているのかを見たかったのですけれども・・・・・・・・

まず先に結論を申し上げますと、政策決定の説明に関する部分ではその話は全く無く、質疑応答でも市場機能論からの質問は無かったという極めて残念な状況になっておりまして、こらECB何も考えてないなというおそロシヤな悪寒がする次第。

まあ好意的(?)に解釈しますと、今回の質疑応答で何回か出ているのがユーロ圏の状況を示す言葉として『in a highly fragmented economy』というのがございまして、まあユーロ圏内の状況が主要国と周縁国でダイバージェンスし続ける中でどうせECBが間に立ってその間の資金偏在を解消しないといけない状況で、そもそも市場が機能しようと機能しなかろうと同じですから〜と開き直っているので、預金ファシリティーをゼロに下げても無問題と考えている可能性はあるのですが、ただまあ質疑を見ているとあまり考えてないでしょとゆー気はします。

・ということで預金ファシリティー金利に関する質疑応答部分を引用

最初の質問で早速預金ファシリティー金利をゼロに下げた件について質問なのですが・・・・・・

『Question: Mr Draghi, two questions, first of all about the deposit rate: you cut the deposit rate to zero. How exasperated are you with the fact that banks still do not use the money you are pumping into the market sufficiently either to lend it to each other or indeed to lend it to the economy, because clearly in some countries we are still in kind of credit crunch territory?(後半割愛)』

質問の趣旨が「銀行が実体経済に資金を出さない事に対してどの程度イライラしておられますか」という風になっている時点でアレなのですが。

『Draghi: (前半割愛)On the first question, we have dealt with this now several times. The answer is we need time to see this. The size and the complexity of these two LTROs are such that we cannot expect to see immediate action, and especially as far as the transmission of the LTROs into higher credit flows goes. But certainly now a few months have passed and we see that credit flows are actually weak and remain weak. 』

LTROを実施しておりますがクレジットのフローは依然弱いとな。

『Several observations: one is that, as I have said many times, there are at least three sets of reasons why banks may not lend. One is risk aversion, another is a lack of capital, and the third is a lack of funding. We have removed only the third, not the other two.』

銀行が金を貸さない理由はリスク回避と資本不足とファンディングの困難さで、最後の理由はECBで除去できますが他はできませんがなと。

『The second reason is that this lack of transmission between the LTROs and a further enhancement of credit flows is not the same in all countries. You have countries like France, where credit flows actually continue to be moderately sustained, and you have other countries where credit flows are actually decreasing, which leads us to think that the transmission mechanism is also linked to national factors. They have to do with the way banks lend, special contracts, the contractual arrangements of different countries.』

んでまあこの話は他の所でも何回か出ていまして(さっきの「in a highly fragmented economy」という件ですね)LTROの効果が国によって違っているという話をしていて、個別国の状態によって金融政策のトランスミッションメカニズムに違いがありますがなというような話でございます。

『But there is a third consideration, and that is that credit is now led predominantly by demand, and if demand is weak, you would not expect strong credit growth.』

でまあ3つ目の論点はそれを言ったら話が終了するがなという話ですが、そもそも需要がががががという話っすな。

ということで、この2番目の論点を持ち出したという事は、本来的にはECBが行うべきなのは域内全部に影響を与える金利操作ではなくて、より個別色の強い担保政策などのような信用緩和政策の実施とかではないかという気が思いっきりするのですけれども、欧州の現状についてhighly fragmentedという認識を示しながら(後の質疑であったのですが)非伝統的政策に関しては今回は議論しませんでした(キリッ)という話になるのが正直今回のECBがやってることの意味が分かりませんがなという感じです。


・イマイチ良く判らんかったのですが引用

とかこらまた酷いとかツッコミしないでちょ(汗)

『Question: Mr Draghi, last month you told us that price signals were not particularly effective in the current environment. Can you tell us a bit about what has changed and about the debate in the Governing Council about this?(後半割愛)』

先月のQ&Aをあまり真面目にネタにしてませんでしたなorz

『Draghi: On the first question: in a highly fragmented economy, as the euro area is, certainly price changes have a more limited effect than selective quantity changes.』

ほう。

『However, in this case, the lowering of the short-term rate and the contemporaneous lowering of the rate on the deposit facility has several effects.』

政策金利と預金ファシリティ金利の引き下げに関してはいくつかの効果があると。

『One is the immediate effect on the pricing of the 1ユーロ trillion already allotted in LTROs. The second one is a lowering in the pricing of emergency liquidity assistance.』(ユーロがUnicode依存なので改変しましたすいませんすいません)

LTROの金利は期間中のMRO金利の平均値なので、既にLTROの金利が下がるというのと、貸出ファシリティの金利も下げたのでその金利も下がりましたとか何とか。

『The third effect has more to do with the expectations generated by having brought the rate on the deposit facility to zero.』

預金ファシリティをゼロに下げることによってもたらされる期待に関係していますとな。

『Expectations of a further easing of monetary policy in the event that price stability considerations were to warrant it by themselves have a positive effect, a stimulus effect.』

なんぞこの理屈????

『But there is a fourth reason, and that is that when we were discussing it a month ago, we could not say that we had the same picture for the whole of the euro area as we do today. We now see a weakening of growth essentially in the whole of the euro area, including countries that were not experiencing that before. So, in a sense, we can now say that this measure is addressed to the whole of the euro area, it is not addressed to specific countries. These are the main reasons, and the reason why this price signal has a more powerful effect than was previously deemed to be the case is obviously that it has been accompanied by a reduction in the rate on the deposit facility. 』

で、どうも最後の理屈は「前回よりも経済の見通しを悪化させており、個別国要因だけではなくユーロ圏全体の経済に対する見通しが悪化したという事で、だから金利を下げたというのは判るのですが、それは預金ファシリティをゼロに下げる理由にはなっていない(別に据え置きで良かったんじゃないのという意味)ように思えます。


・利下げで銀行の貸出行動は変わるかという質疑も改めて

『Question: What do you expect the impact of the rate cut to be? I mean, will banks lend more to the economy or will they lend at a lower price? Or is it just that they have a higher margin? (2番目の質問割愛)』

で、質疑応答なのですが2番目の質問の回答があってその後再質問があって、2番目の質問(銀行が担保不足かどうかという話)の説明が長いのですが、その次の回答の該当部分を引用します。


『Draghi:(前半割愛)On the first question, one could ask this question every time we change interest rates: what is the situation? It is clear that when demand is weak, the transmission of these price signals to the aggregate economy is muted. If you had strong demand, you have immediately passed through from the policy rate to bank lending rates. But if the credit demand is low, then we will look at it. But it certainly is a signal, it is encouraging, it should make entrepreneurs think that their investment decisions, trade-offs, are now better. So this is ceteris paribus. Of course, if the risk premium is high, then this will be less effective. If it is low, it will be more effective. But I think that this is a question that actually one should ask every time interest rates are changed. And unfortunately the answer is that this very much depends on demand for credit.』

とまあそういう事で、銀行の貸出行動がどうなるかという話は色々としているのですが、どうも短期金融市場の機能ががががががという話は華麗にスルーの模様。


・質問する方も質問する方なのでまあ欧州はそもそも認識ないんだろうなあと

預金ファシリティーに関する質問はあと一つありましてね。

『Question: I have two questions. You have cut the deposit rate to 0.00%. Could you talk us through the risks that you discussed on that? How do you make sure that you are not sowing the seeds for the next bubble?』

金利下げ過ぎでバブルが起きませんかという質問でして、まあこの質疑全体を見て思ったのは最初から最後まで短期金融市場の機能論に関する観点が無いなあと思った(こういう時こそ日本や米国のメディアがその論点で質問しやがれと思うのだが)次第で、こらまあECBは何も考えてないだろうという気が全力でする次第。一応答えを引用。

『Draghi: On the question of bubbles, one of the reasons for taking the decision that we have taken today is that we do not really see any risks for inflation expectations, on either side, certainly not on the upside in the short or medium term. And that has a lot to do with the weakening of the general economy, but also with the behaviour of oil prices, as we have to bear in mind, of course, that they could go either way. So, we had to take that into account. But the rest of the economy does not seem to be inclined to generate upward pressure on inflation.』

ということで、経済物価に関しては短期的および中期的に上方リスクは大きなものとは見ていないという話をしておりまして、バブル発生懸念云々に関しては無問題という話ですな。

なお、質疑応答ではまあ他のネタも少々あったのですが、それに関してはネタに困った時に小ネタで登場するかもしれませんししないかもしれません(汗)。


・一方で早速このような弊害が発生している訳で

金曜には早速このような動きが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6QT9H6S972801.html
欧州MMF、米3社が新規資金受け入れ停止−ECB利下げで

『7月6日(ブルームバーグ):米銀JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス・グループ、ブラックロックの3社は、欧州のマネー・マーケット・ファンド(MMF)で新規投資の受け入れを停止した。欧州中央銀行(ECB)が前日に中銀預金金利をゼロに引き下げたことを受けた措置。JPモルガンは顧客向けの通知で、5本のユーロ建てMMFへの新規資金を受け付けない方針を示した。利下げにより、投資家に損失が発生する可能性があることを理由に挙げている。ゴールドマンは「GSユーロ・ガバメント・リキッド・リザーブス・ファンド」で新規資金を受け入れず、ブラックロックは欧州ファンド2本への預金を制限している。(途中割愛) 同3社は新規資金の制限は一時的なものだとした上で、市場の状況を見守る方針を示しており、顧客の資金償還には制限がないとしている。』(上記URLより)

という事で、まあ早速ユーロ建てMMFの資金受け入れが止まるとかゆー話になっておりまして、金利を下げ過ぎると却って資金が回らなくなってくる、というのを全力で絵に描いたような展開になっておりまして、ECBやっちまったなと思う所ではございます。

つーかさ、2011年のどう見てもお前それ逆噴射利上げだろという行動と言い、ECBって実は金利操作ヘタクソなんじゃねえかという疑惑もあるのですが。担保政策もその傾向があるのですが、逆噴射みたいな事をしてみたり、かと思えばヤケクソなのか滅茶苦茶斜め上のやり過ぎモードになってみたりとか、どうもやる事が極端っつーか何つーかな感じがするのですけどねえ。

#月曜なので他のネタもあったのですが時間がなくこんな所で、英国ネタとかデンマークネタとかオペ雑談とか軽く電波浴シリーズとかがあったような気がするのですが月曜なので頭の起動が遅くてすいませんすいません





2012/07/06

お題「さくらレポート全地域上方修正キタコレ/BOEは資産買入拡大/ECB何と預金ファシリティゼロ」

ネタが例によって色々とございますが(汗)

○さくらレポート関連

今日は海外の方がメインなのでこちらは簡単に。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer120705.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer120705.pdf(全文)

概要の方から。

『I. 地域からみた景気情勢

各地の景気情勢を前回(12年4月)と比較すると、全地域から改善方向の報告があった。各地域の判断をみると、多くの地域が「緩やかに回復している」、「持ち直している」などとしている一方、いくつかの地域では「持ち直しの動きもみられるが、なお足踏み状態にある」などとしている。』

ということでその次にありますように、ものの見事に全地域で判断引き上げと来たもんで、こりゃ益々来週の決定会合は現状維持で従来の基金買入を引き続き進めて行って様子を見ますよコースの香りが高まって参りましたなあ。うんうん。

でまあ主要需要項目に関して。

・設備投資

『設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、維持・更新投資や新製品対応投資、震災後の復旧関連投資などを中心に、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「持ち直し」や「増加している」等との報告があったほか、四国からは「底堅い動き」との報告があった。』

企業収益が改善しつつあるっての今回も出てますのう。


・個人消費

『個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果や被災地での震災関連需要などを背景に、7地域(東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加を続けている」や「持ち直し」、「堅調に推移している」との報告があったほか、北陸からも、「底堅い動きとなっている」との報告があった。一方、北海道からは、「横ばい圏内で推移している」との報告があった。

大型小売店販売額は、消費マインドが改善傾向にあるもとで高額品などが堅調なことから、多くの地域から「持ち直し」や「底堅く推移している」との報告があった。ただし、東海や近畿からは、「スーパーは弱めの動き」との報告があった。


乗用車販売は、全ての地域から、需要刺激策の効果などを背景に、「高水準が続いている」や「増加を続けている」等の報告があった。

家電販売は、薄型テレビなどの駆け込み需要の反動により、東北を除く全ての地域から、「低調に推移している」や「減少している」との報告があった。一方、東北からは、「震災に伴う買い替え需要が引き続きみられることもあって堅調に推移している」との報告があった。

旅行関連需要は、ほとんどの地域から「持ち直し」との報告があった。』

こらまた威勢が良い話。


・生産

『生産は、国内需要の持ち直し等を背景に、東北と東海から、「増加している」、4地域(北海道、北陸、関東甲信越、四国)から、「持ち直し」等の報告があったほか、近畿や中国からは、「一部に持ち直しの動きがみられる」との報告があった。一方、九州・沖縄からは、「全体としては横ばい圏内の動き」との報告があった。

業種別の主な動きをみると、輸送機械は4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)から、「増加している」、中国から、「操業度を幾分引き上げている」、2地域(四国、九州・沖縄)から、「高水準の生産を維持している」との報告があった。一般機械、鉄鋼でも、多くの地域から、「高水準の生産を続けている」、「緩やかに増加している」等の報告があった。こうした中、電子部品・デバイスについては、東北、関東甲信越からは、「減少している」、「弱い動き」、中国、九州・沖縄からは、「横ばい圏内の動き」となっている一方、北海道、北陸、東海は、「持ち直している」、「持ち直しの動きがみられる」と区々の動きとなっている。』

電子部品デバイスが弱いけど他は堅調とな。


・雇用・所得

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「引き続き厳しい状況にあるが、改善の動きがみられる」との報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「回復している」や「改善の動きがみられる」等の報告があった。また、雇用者所得は、多くの地域から「下げ止まっている」等との報告があった。』

ということで雇用関連に関してもまあ状況は厳しいとしつつも内容的には「でも改善してきていますよ」てなトーン。


まあそんなわけで、主要需要項目を見ても書きっぷりのトーンが明るめになっているのが、概要説明部分の特徴でして、こらまた次に出てくる欧州や英国のどよよーんとした話とは思いっきりトーンが違いますなあという所で、昨日は中国も利下げしたりしてましたが、そんな中全力で独自路線って何かここで勝負する所なのかよという疑問はあるのですが、ジャパンの方はこんな結果になっております。



○BOEは資産買入拡大と貸出支援策の近日中の実施を決定

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/066.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and increases size of Asset Purchase Programme by £50 billion to £375 billion

ということでこちらは大方の予想通りの展開になりました。政策変更の有った時には説明がついているので読んでみましょう。

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to increase the size of its asset purchase programme, financed by the issuance of central bank reserves, by £50 billion to a total of £375 billion.』

ということで資産買入拡大です。それからこの前BOEネタで「預金ファシリティー金利がゼロ」という話をしましたが、常設預金ファシリティ―の金利はゼロですが、所要準備に関しては0.5%の付利があります(だから「商業銀行のリザーブに与えられる金利」という言い方をしているのよ)ので先日の説明だと舌足らずでしたすいません。昔と違っていなければ「リザーブ全体に付利したあと、超過準備分に関しては同じ金利でペナルティーが課せられる」という制度になっているのですがどうでしたっけ(大汗)。


で、政策変更の際には以下のように背景説明が。

『UK output has barely grown for a year and a half and is estimated to have fallen in both of the past two quarters. The pace of expansion in most of the United Kingdom’s main export markets also appears to have slowed. Business indicators point to a continuation of that weakness in the near term, both at home and abroad. In spite of the progress made at the latest European Council, concerns remain about the indebtedness and competitiveness of several euro-area economies, and that is weighing on confidence here. The correspondingly weaker outlook for UK output growth means that the margin of economic slack is likely to be greater and more persistent.』

つーことで、英国の輸出先の経済の減速、近い先行きの国内外における企業の先行き見通しに関する指標が悪化を示していること、欧州債務問題がEUによる最近の努力はありますが、まあ引き続き欧州周縁国の問題への懸念やコンフィデンスへの悪影響がありますよ。んでもって相応に弱い英国の生産上昇見込みというのは、経済のスラックの度合いが想定よりもより大きく、またより持続的であることを意味するでしょうと。

『CPI inflation fell to 2.8% in May and is likely to edge down further in the near term. Commodity prices have fallen, which should help to moderate external price pressures. And pay growth remains subdued. Given the continuing drag from economic slack, that should ensure inflation continues to ease into the medium term.』

CPIインフレは5月は2.8%で近いタームでは更に低下するでしょう。商品価格が下落しており、これは外的要因による物価上昇圧力をモデレートなものにするでしょう。そして給与の伸びは抑制されており、継続する経済のスラックによってもたらされる経済抑制要因は、中期的なインフレを引き続き緩和する方向に働くでしょう。

『At its meeting today, the Committee agreed that the Funding for Lending Scheme, which would be launched shortly, was a welcome initiative. It also noted recent and prospective actions to ease liquidity constraints within the banking system. Taken together with reduced pressure on household real incomes, on the back of lower commodity prices, and the continued stimulus from past monetary policy actions, that should sustain a gradual strengthening of output growth.』

本日の決定会合において、委員会はFunding for Lending Schemeについて合意しました。このスキームは遠からず実施される予定ですが、これは歓迎すべき開始です。従来よりの政策とこの予定されている政策は、金融システムにおける流動性制約を緩和する事に寄与します。最近の商品価格下落の物価上昇圧力抑制による家計の実質所得への下押し圧力の緩和と相まって、これまでの金融政策と含めまして、この新たな施策は生産の緩やかな伸びを支持するでしょう。

とヘタクソにも程がある日本語訳ですが、昨日ネタにしたキング総裁講演やらBOE6月議事要旨やらで示されていたロジックが前面に出てきましたなという事で。

『But against the background of continuing tight credit conditions and fiscal consolidation, the increased drag from the heightened tensions within the euro area meant that, without additional monetary stimulus, it was more likely than not that inflation would undershoot the target in the medium term.』

しかしながら、タイトな信用供与環境や財政の再建に向けた動きによる影響、更には欧州問題における緊張の高まりによる経済への悪影響などを勘案しますと、追加の金融緩和を実施しない場合、インフレが中期的にターゲットを大きく下に逸脱する可能性がより高まって来たと判断されます。

『The Committee therefore voted to increase the size of its programme of asset purchases, financed by the issuance of central bank reserves, by £50 billion to a total of £375 billion. The Committee also voted to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee expects the announced programme of asset purchases to take four months to complete. The scale of the programme will be kept under review.』

従いまして、委員会は資産買入プログラムの総額を50億ポンド拡大し、トータルで3750億ポンドにすることを票決しました。政策金利は0.5%のまま据え置きます。追加分の買入プログラムは、4か月を掛けて実施されます。このプログラムの規模は随時見直します。

『The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 18 July.』

議事要旨は7月18日英国時間9時30分に公表します。

つーことで、まあこちらは基本的には前回のMPC議事要旨で色々と示唆されていた事がそのまま実行されましたという感じでございます。


○ECBは預金ファシリティ金利をゼロにしやがったのですが・・・・・・

まあ前の利上げと言い、どうもECBの金融政策については斜め上ポリシーが炸裂することが多いなあと思うのですけど。

http://www.ecb.int/home/html/index.en.html

Key figures at a glance

Marginal lending facility 1.50 %
Main refinancing operations (fixed rate) 0.75 %
Deposit facility 0.00 %

Effective from 11 July 2012

ということでMRO金利を25bp下げたのはへえへえさいだっかという感じですが、預金ファシリティーをゼロに下げやがったのがサプライズ。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2012/html/pr120705.en.html
5 July 2012 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following monetary policy decisions:

1.The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 25 basis points to 0.75%, starting from the operation to be settled on 11 July 2012.

2.The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 25 basis points to 1.50%, with effect from 11 July 2012.

3.The interest rate on the deposit facility will be decreased by 25 basis points to 0.00%, with effect from 11 July 2012.

The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

でまあ会見の方は寝起きで全部精読してません(つーか出来ないorz)が。


http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120705.en.html
Introductory statement to the press conference

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 July 2012

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to cut the key ECB interest rates by 25 basis points. Inflationary pressure over the policy-relevant horizon has been dampened further as some of the previously identified downside risks to the euro area growth outlook have materialised. Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. At the same time, economic growth in the euro area continues to remain weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment.』

金融政策で見込まれる期間におけるインフレ圧力はより悪化しており、その要因としてはこれまで懸念されていたユーロエリアの経済見通しの下振れリスクの幾つかが顕在化したことによります。その見立てと整合的なように基調的なマネタリーの拡大ペースは依然として抑制されています。ユーロ圏のインフレ期待は引き続きターゲット水準近辺で強力にアンカーされています。同時に、ユーロ圏の経済成長は引き続き弱く、不確実性の高さはコンフィデンスやセンチメントに対する重石となっています。

『We have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has supported the transmission of our monetary policy. All our non-standard monetary policy measures are temporary in nature and we maintain our full capacity to ensure medium-term price stability by acting in a firm and timely manner. Let me also remind you of the decision taken by the Governing Council on 22 June 2012 concerning further measures to increase collateral availability for counterparties.』

ECBは従来より伝統的政策および非伝統的政策を実施しています。この組み合わせは私たちの金融政策の効果の波及をサポートしています。ECBの非伝統的政策は全て本質的に一時的なものであり、私たちは中期的な物価安定の為にあらゆる政策を適時適切に実施します。また、6月22日に適格担保範囲の拡大を決定した事をここで改めてお伝え致します。


つーことでここから先が経済・マネタリーに関する分析の話になっていますが、そこらへんは全部スルーして最後の所。

『Let me now make a few remarks relating to other policies. We welcome the European Council conclusions of 29 June 2012 to take action to address financial market tensions, restore confidence and revive growth. We agree that Economic and Monetary Union needs to be put on a more solid basis for the future and that sustainable growth, sound public finances and structural reforms to boost competitiveness remain key economic priorities. We welcome the decision to develop a specific and time-bound road map for the achievement of a genuine Economic and Monetary Union. We also welcome the euro area summit initiative towards a single supervisory mechanism, the possibility - with appropriate conditionality - to recapitalise banks directly, and the use of existing EFSF/ESM instruments in a flexible and efficient manner in order to stabilise markets. Finally, the ECB is ready to serve as an agent to the EFSF/ESM in conducting market operations.』

ああだこうだと書いてますけれども、まあ要するに先週末のEUサミットでの決定に関して歓迎してますという話をしていて、EFSFやESMによって行われる銀行に対する資本注入などに関してはECBがエージェントとして行動する準備がありますという事で、EUサミットとの連携を強調しているのがまあ当然ちゃあ当然ですが、アピールしてみましたちゅう事でしょう。


・・・・・・・・でですな、まあ途中の部分に関しても全力で斜め読みをしたのですが、短期金融市場関係者的に甚だ気になる預金ファシリティー金利の引き下げに関する話は特段言及が無いとゆーのが非常にアレでございまして、もしかして何も考えてないのか大丈夫かECBと思う所であります。まあ質疑応答の方でその質問は有ると思うので、そこでどう答えているのかは気になります。


昨日のニュース見ててあーあーあーと思ったのはこの辺ですかな。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE86402020120705
「期待値」上がるECB理事会、0.25%利下げだけなら失望も
2012年 07月 5日 13:29 JST

時間を見れば判るようにこれは理事会前の記事ですが、クレクレがすっかり強くなっているので、まあ足元ではEUサミットの決定は有るとは言え、ここでクレクレに答えないと市場がまた変な動きをしやがるリスクがあるのを嫌ったんじゃねえのかとか、まあそんな事も考えてみたり、さっきの引用した部分にあるようにEU首脳会談との提携を強調というのをアピールする為に市場から失望と言われないようにという事で打ち込んだのかねという風に思える次第。

しかしまあ何ですな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6OUW40UQVI901.html
ECB総裁:下振れリスク顕在化−過去最低に利下げ

『ソシエテ・ジェネラルの欧州担当チーフエコノミスト、ジェームズ・ニクソン氏は「主要政策金利は現時点で本当のところ意味はないが、中銀預金金利のゼロへの引き下げでECBは未踏の領域に踏み込んだ」として、「短期金融市場を生き返らせることができれば、市中銀行が直面している調達難を幾分解消することができ、実体経済への融資拡大につながる可能性がある」と話している。』(上記URLより)

・・・・・・・・・この記事を見てかなり残念に思った訳ですが、既に日本の実例を見れば明らかなように、金利水準が下がり過ぎると却って資金市場での取引が回らなくなって、結果として短期金融市場(というかインターバンク市場というか)での資金が偏在しっぱなしになるのですけれども、まあ確かにそれってこーやってあたくしが説明しても普通は理解して貰えない話だと思います(マイナス金利で金を回すとかいうような言説は日本の短期金融市場関係者で言うアホウはさすがに見たことないですが、短期金融市場の実務をやった事が無いと思われる人からその手の話が日本でも出てきますもんね)次第で、まあ正直言ってこれは実際にやってみないと判らないでしょうなあと思う所。

米国の場合は実際にそれに近い状態になった瞬間があって、まあその教訓で短期市場の金利をリアルでゼロにしちゃうと色々と弊害があるというのを当局が学習しているっぽいのですが、ECBは今回の預金ファシリティーの下げってちゃんと判ってやっているのだろうかというのが上記のブルームバーグの記事を見てて不安に思う所でございます。何せ名の知れた証券会社のチーフ何とかスト様が「預金ファシリティ金利をゼロに下げて短期金融市場を行き返らせる」とか明らかにそれは逆ですがなという話を堂々している訳ですからして、恐らくユーロ圏市場の皆様におかれましては、弊害についての理解が無いままで今回の措置になってしまったのではないかという悪寒。

金利が無くなりすぎると却って資金が回らないという事に成る訳ですが、そうなった場合って要するに域内のインターバンク市場における資金偏在は治らず、その仲介をするのが欧州の場合各国中銀という形になると思うのですが、そーなりますと所謂TARGET2問題が延々と続くどころか下手したら拡大するんじゃネーノという、まあこれは欧州独自の問題ですけれども、そっちの方にも波及するように思える訳でございます。つまり、TARGET2問題って本来は市場での資金取引が活性化することによって解消する(要は資金偏在の問題だから)という流れになるのですが、インターバンク市場における金利を無くしてしまうことによって短期金融市場の取引を更に動かなくしてしまったらダメじゃんと思うのですけれども、ま〜今回の決定のツケはコストが掛かりそうだなあと思う次第。ちゃんとECBがケツを拭くでしょうけど。

ということで、預金ファシリティ金利ゼロはさすがに無いでしょう(キリッ)とか申しておりましたので、大外しした件に関しては謹んで謝罪致しますが賠償は致しませんので念のため(^^)。何か今回は追加緩和のようなものを打つのは良いと思うのですが、利下げの上に預金ファシリティーゼロというのは方向性としてちょっと変じゃないのかなあと思う(外したからシャクで言っているのでは多分無い)あたくしでございました。

会見は週末に読む所存♪



2012/07/05

お題「MPCの前に駆け込みネタ/世に電波浴の種は尽きまじとな」

ということでとりあえず駆け込みである。

○ECB理事会プレビューメモ

昨日も書いた気がするが一応書く。

何かまあ為替と株はECB理事会クレクレ状態になっているのでございまして、どうも0.25%利下げという話なのですが、そもそも論として現状の欧州の金利市場を見た場合においてベースレートの下げをする必要があるのかという論点がクレクレの皆様におかれましてはすっかり欠落している(まあ為替と株の人にそんなのを求めてもシャーナイという話はあるが)のが毎度のクオリティ。

つまりですな、短期金利にしろ長期金利にしろ、ここで利下げをすることによって何かの望ましい効果でるんですかという話になると、短期はとっくの昔に下がっていますし、長期に関しては政策金利どうのこうのではなくて、ソルベンシー問題をネタにして動いているのであって、それって政策金利の上げ下げとは別の話でしょ、とか考えますと、まあ残りせいぜい50bpしか下げ余地のないECBがここで弾を打つんですかという話ですな。欧州債務問題って何だかんだと言っても解決はするでしょうけれどもその間に時間が掛かる話でジグザグするでしょうから、弾をそう簡単に出し尽くさない方が良いように思えますし、時間が掛かる間に期間収益で金融機関の体力回復させないといけないのに金利をあまりフラットニングさせ過ぎない方が良いような気がするんですけどねえ。

信用緩和ネタ投入かなあとは思いますが、それはそれで既にEUサミット前のお土産として適格担保の拡大措置を打ち込んでいるので、そういう意味では「やる事はやっている」ともいえるのですが、まあ為替と株の人には担保範囲の拡大がどうのこうのと言われてもお分かりにならないようで誠に残念な所ではございます。まあ歴史を辿れば「震災手形」なんて具合で、担保政策っていうのは実は金利の上げ下げよりも使い方によってはとんでもなく強力な政策ツールになり得るのですが、何せ一般ピープル的に判りにくいのでねえという所ですな。

つーことで、本来的に言えば今回スルーして「でも必要だったらやるもんね♪」というやるやる詐欺で引っ張るのが政策の出し方としては普通のようには思えますけれども、あとは欧州市場が何もしないと許さんモードになっているのかどうか次第ではないかと思います。

とか何とか書きましたが、まあ普通に経済見通し下げて利下げしてくるかもしれませんけど、FEDまではだいぶ見るようになりましたが、どうもECBは考えている事が必ずしも出てこない(定例理事会の議事要旨が公表されないのが何せ痛い)ので、政策ロジックの作り方がイマイチ判りにくいんですよね。


○BOE関連ネタでございまする

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/065.aspx
News Release - Paul Tucker requests Treasury Select Committee hearing

何かポールタッカーまで巻き込まれているようでLIBOR話は甚だアレでございますけれども、まあその件に関しては色々と考えているもののちゃんと纏まらないので纏めたらそのうち。何か市場で実際に取引をやった事は無いけど微妙に知識のある人たちが寄ってたかって机上の空論を元に変な仕組みを作られるのが一番アチャーなのでそれは避けてほしいですの。

ということで、まあそれはそれとして本日はMPCなのでその前に駆け込みでネタ投入。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2012/speech587.pdf
Speech given by Sir Mervyn King, Governor of the Bank of England
At the Lord Mayor’s Banquet for Bankers and Merchants of the City of London at the Mansion House
14 June 2012

ポイントは実はたくさんあるのですが、駆け込みにつきあたくしが考える大事な論点を駆け足で参ります(汗)が、内容はかなりのもので、本文自体は6ページ程度とそんなに長くないのでまあ一読絶賛推奨。

・現状認識に関して

2ページ目から。

『Cast your mind back two years - to the first weekend of May 2010. The world economy was recovering from a deep recession. Financial markets were focussed on the fiscal strategy of an incoming government in Britain, and on the decisions taken at the first of what turned out to be frequent crisis meetings in Brussels to deal with the problems of Greece. At that point, the euro area was confident that its problems would be contained to Greece.』

『Here in the United Kingdom, the big picture was, and remains, the need to generate a recovery while rebalancing our economy, supported by a loose monetary policy and a large depreciation of sterling, on the one hand, and a gradual but steady reduction in the structural budget deficit, on the other. Two years ago, a gradual recovery was in prospect, with business investment and net trade expanding to offset lower spending by households and government.』

ということで、過去2年間の回復過程におけるサポート要因として金融緩和とポンド安をあげるといういつもの話をしておりまして、またポンド安ネタかという所ですが。

『Since then, events have taken a different course. Instead of a gradual recovery, output has been broadly flat. That reflects unexpected increases in world energy and commodity prices, leading to an unprecedentedly long and severe squeeze on real take-home pay and so weak consumer spending. But it also reflects events in the euro area where the crisis has grown to cast a long shadow over our own recovery, holding back both exports and investment.』

生産が横ばい推移の理由として、予想外のコモディティ価格上昇により家計の実質購買力が低下した事と、ユーロ危機が輸出と投資に悪影響を与えたという話で、まあ何かこう読みますと景気弱気な話になっちょりますな。

『The euro-area crisis has had more dramatic moments, in which the ultimate resolution seems to be at hand only to be confounded by subsequent events, than there are episodes in The Killing. And the Danes aren’t even members of the euro area. Perhaps the sequel will be the provision by the ECB of liquidity as The Bridge to the other side of the crisis. No central bank has done more in recent months to flood the system with liquidity than the ECB - one trillion euros injected through two long-term refinancing operations. Those two operations demonstrated that liquidity is not the issue because after a few months we are back to where we were. The problem is one of solvency.』

ということで、ECBの流動性供給策について高い評価を与えている(さすがにこのNo central bank has done more云々は英国流の皮肉ではないと思いますので)のですが、締めが「問題はソルベンシー」キタコレという感じですな。で、欧州問題に関してですが。

『Where there are debtors who cannot afford to repay, there are creditors who will not be repaid. Until losses are recognised, and reflected in balance sheets, the current problems will drag on. An honest recognition of those losses would require a major recapitalisation of the European banking system.』

『Hope in markets will fade if the wrong diagnosis is made. Fundamentally, a cumulative loss of competitiveness in periphery economies, leading to continuing external deficits and large external debt, is at the root of the euro-area crisis. Until competitiveness can be restored, some way must be found to finance those external deficits.』

まあ仰る通りなのですが、最後の「Until competitiveness can be restored, some way must be found to finance those external deficits」とかまあ身も蓋もないという感じで、こらまあ要するに「欧州債務問題の本質的解決にはとんでもなく時間が掛かるでしょう」という話に他ならないという所ですな。で、この先にユーロエリア問題の英国への影響とかの話があるのですがそこはスルーします。


・世界経済の先行き見通しも弱いですがな

『The world economy is a much less welcoming environment in which to rebalance the UK economy than two years ago. Not only have the euro-area problems escalated to the point where exit for Greece and other periphery countries is the subject of widespread speculation, but signs of a slowing in China, India, and other previously buoyant emerging economies, such as Brazil, are appearing daily.』

ユーロエリアだけでは無く新興国がコケてきましたキタコレ。

『That slowing does have a silver lining. Energy and other commodity prices have fallen, reinforcing the welcome decline in inflation from 5.2% last September to 3.0%. And as inflation at home falls back, families will see an ease to the squeeze on real take-home pay.』

まあ一応物価には結構な話という事は指摘しますが・・・・・・

『Our recovery and rebalancing may have become more difficult, but they are no less important. Meanwhile the imbalances in the world economy still await resolution. It is an ugly picture. Leaders of the G20 will next week confront formidable challenges. In the United Kingdom, we can and will get through this. But it would be naive to pretend that any of us can know when the storms from overseas will have passed over our shores and the economic skies begin to brighten.』

ということで、まあキング総裁の今回のスピーチは各パラグラフのケツが大体残念な結びになっているというのが景気弱気感を強めるものでございまして、海外経済の暴風が去って景気の空が明るくなりだすと考えるのはナイーブでしょうとか残念無念。


・でまあ追加緩和宣言ですが

先般議決の部分だけ引用しましたが、前回のMPCでキング総裁は追加の資産買入を提案していましたのでまあこういう話になるのは当然だな、と後から出たMinuteを見て思ったのですけれども、この時点ではその事が判っていませんでしたので更に「おお!」という所だったかと思いまする。

『Since our Inflation Report only four weeks ago, conditions have deteriorated with weakening business surveys, a downward revision to measured output, and further slowing in economies overseas.』

と、5月インフレレポートよりも状況が悪化している事を指摘しまして。

『How then should the Bank of England respond to this weaker outlook, with the black cloud of uncertainty and higher bank funding costs brought about by the euro-area crisis? The paralysing effect of uncertainty, with consumers and businesses holding back from commitments to spending, raises the question of whether any conventional macroeconomic measure could do much to stimulate private sector spending. And that has led some to question whether further monetary easing would prove effective and to advocate instead more targeted measures to revive the economy and, in particular, bank lending. But further monetary easing and attempts to lower bank funding costs are not alternatives. We can do both.』

ということで、銀行貸し出しを積極化させる施策と、追加の金融緩和が必要ですよと。


・追加金融緩和に関して

『Let me start with monetary easing, before turning to the banking sector. The view that further monetary stimulus is, in present conditions, simply “pushing on a string” is, in my view, too pessimistic. The creation of money by the Bank of England has helped offset what would otherwise have been an extremely damaging contraction of the money supply. In the Great Depression, the money supply in the United States fell by around one-third. In Greece, broad money has fallen by over 25% since the end of 2009. The consequences are self-evident. Here at home, thanks to asset purchases by the Bank, broad money has continued to expand, albeit slowly.』

現状での追加金融緩和に効果があるのかという疑問に対してこの辺ではそうじゃないっすという話をしていますがな。マネーの供給によって効果がこのようにありました云々とかいう話ね。

『There is a widespread misunderstanding that the impact of an expansion of the broad money supply is limited to the first round effects of gilt purchases. But the private sector which sells gilts to us then uses the money thereby created to purchase other assets, including private sector paper. And it is the private sector which decides which assets to purchase in the second, third and all subsequent rounds as the additional money percolates through the economy.』

とまあこんな感じでマネー増えても国債金利が下がっただけで効果が無いでしょというような批判に対して半頓しております。でまあこの先もそんな感じで追加緩和の必要性の話をしているのですが引用すると長くなるのと時間配分の問題でスルーしまして次の論点に(汗)。


・銀行貸し出しの円滑化という件

『Measures to ease conditions in the banking sector can complement any further easing in monetary policy. Before the crisis, banks attracted funding at only modest margins over Bank Rate despite high levels of leverage. Some got by on faith and the hope that nothing would go wrong. When it did go wrong, they relied on the charity of taxpayers to survive. It is no longer acceptable for banks to rely on faith, hope and charity. In present circumstances banks face acute challenges of liquidity, funding and capital - and the greatest of these is capital. Difficulties in liquidity and funding are often a reflection of insufficient capital.』

ということで、銀行貸し出しが積極的でないという点に問題意識を提起しております。

『The black cloud overhead means that today only very large amounts of capital will attract funding at rates close to those in the past. Banks are at risk of future losses from a further downturn in the economy and exposures to the euro area. That is why the Financial Policy Committee has encouraged banks to find additional capital in order to increase their resilience to such losses, so reducing funding costs and increasing their ability to lend to the real economy.』

でまあそういう弊害を回避するために銀行の資本増強をさせていますと。

『But today’s exceptional circumstances create a case for a temporary bank funding scheme to bridge to calmer times. Such a scheme could prevent an aggregate deleveraging of the banking system that might hold back recovery. Prior to the crisis, risk premia and bank funding costs were unsustainably low. Today, the black cloud of uncertainty has created extreme private sector risk aversion. Should the public sector, therefore, take upon itself some of those risks? Or put another way, should we collectively take on risks in return for lower compensation than we would demand as individuals? In present circumstances, when private sector spending is depressed by extreme uncertainty,』

『What I can say tonight is that the Bank and the Treasury are working together on a “funding for lending”scheme that would provide funding to banks for an extended period of several years, at rates below current market rates and linked to the performance of banks in sustaining or expanding their lending to the UK non-financial sector during the present period of heightened uncertainty.』

ということで、ここで出てきたのですが、銀行の非金融部門への貸し出しを促進するような新たな貸出制度を導入しましょうという話キタコレでございます。

『The Bank would lend, as in its existing facilities, against a much greater value of collateral comprising loans to the real economy to protect taxpayers. But the long term nature of the lending and its pricing mean that the Bank could conduct such an operation only with the approval of the Government, as offered by the Chancellor earlier. So such a scheme would be a joint effort between Bank and Treasury. It would complement the Government’s existing schemes, and tackle the high level of funding costs directly. It could, I hope, be in place within a few weeks.』

ということで、今後数週間の間に財務省とBOEの共同プランとして導入されるようです。

話はもう少し続きまして、市場における流動性に関する話になるのですが、それに関しては基本的に現在のスキームが十分に機能しているというような話をしておりまして、その後はレギュレーションの話とかになるのですが、これまた長くなるので割愛します。


・最後の所だけ何かこう英国人っぽいので引用

まあどうでも良いのですがね(^^)。

『Five years ago, I posed this audience the question "are we really so much cleverer than the financiers of the past?" We now know the answer to that question. Faith in a market economy, and especially the financial sector, has been dented by the crisis. Many millions of people around the world, including the United Kingdom, have lost their jobs, their businesses and their economic livelihoods. They have justifiable grievances. Let us all work together to show that in a market economy our financial sector can get us out of this mess, that we can navigate our way through the storms threatening our economy, and that we will eventually reach calmer waters.』

『Lord Mayor, your commitment to the promotion of education and sport for the underprivileged has enhanced the reputation of the City. You chose as the theme of your Appeal, “Fit for the Future”. What better theme in an Olympic year. And on behalf of the Bank, can I say how grateful we are to all those who have organised such a splendid ceremony in the Olympic Park on the 27th of July to celebrate the 318th birthday of the Bank of England.』

どうも何か気取った感じがしますなあ(^^)。


○BOEネタの続きで6月MPC議事要旨からちょっとだけ

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1206.pdf

・さっきの銀行貸し出し支援策の背景である

まあ景気の現状認識と見通しがやたらめったら弱いのはこちらも同じで、分量が違うから当たり前ですけどキング総裁スピーチよりもこれでもかとばかりに詳しく記述されておりますがその辺はスルーしまして第17パラグラフまでワープします。

『It was possible that the impaired UK banking system, coupled with a heightened perception of risk stemming from the euro area, had been a larger impediment to the recovery of both demand and potential supply capacity than previously thought likely: the weakness of lending, housing market transactions, business investment and productivity growth were all possible symptoms of that.』

ということで、まあ確かにこれは日本の経験を考えてもそうですなという感じですけれども、金融緩和しても銀行セクターの方が痛んでいて貸出ルートからの政策波及が進んでくれないと宜しくない訳ですな。

『Total lending to households had been growing at an annual rate of at, or under, 1% since the end of 2010. Abstracting from the volatility induced by the temporary Stamp Duty exemption for first-time homebuyers, mortgage approvals had been broadly flat for the six months to April. The Bank’s Agents had highlighted the constraints on buyers’ access to credit as a material factor affecting housing demand. Mortgage spreads over risk-free rates had increased further on the month, primarily reflecting higher bank funding costs. Moreover, the most recent increases in bank funding costs in the month leading up to the meeting indicated that mortgage rates were likely to increase a little further over the coming months. Bank lending to businesses had continued to fall, with market intelligence suggesting that higher funding costs had led to an increase in the lending rates facing smaller businesses. The proportion of service sector firms surveyed by the CBI citing the ability to raise funds as a factor likely to limit output over the coming year had increased sharply in May.』

ということで、銀行の貸出能力の低下は資本問題だけではなく、ファンディング市場の緊張とかによる物もある訳ですが、それはそれとしまして非金融セクターのクレジットアベイラビリティの低下が続くことが需要の低迷などにも繋がる、という事で、この辺の問題認識がキング総裁講演で示された銀行の貸出支援策の導入に向けた動きというのに繋がっているかと存じます。


・追加の金融政策について

でまあ更にワープして『The immediate policy decision』の所を見ますと、時間と量のの都合上引用は割愛しますが、先行き見通しやリスク認識に関して明らかにした寄りになっていまして、先ほどの第17パラグラフの答えおよびその他の追加策についての話があります。

第28パラグラフは銀行貸出支援策です。

『The Committee noted that the Financial Policy Committee (FPC) was due to meet towards the end of the month and would be discussing a range of issues relevant to the state of the banking system and its ability to extend credit. It was possible that some of the policy options available to the FPC, if exercised, would affect monetary conditions. Some members suggested further consideration of whether bank liquidity requirements might in effect be operating to increase the demand for reserves, offsetting to some extent the impact on the economy of the Bank’s increased supply of reserves as a result of the MPC’s asset purchase programme.』

で、その後半に面白い論点として、流動性規制(規制というよりは流動性保有義務という方が正しいが)の強化によって金融緩和によってもたらされた流動性がオフセットされるんじゃネーノという指摘を数人の委員が行っているというのがお洒落な論点ではございますな。

第29パラグラフは利下げに関して。クソ長いですが時間の関係で一気に引用だけしておくので読んでちょ。金利でおまんまを食っている人的にはイイハナシダナーな論点が多くて泣ける。

『The Committee first considered the merits of a reduction in Bank Rate. In March 2009, the Committee had judged that a reduction in Bank Rate below 0.5% could have counterproductive consequences, in particular constraining some banks’ and building societies’ ability to lend. Lenders were, in practice, unable to reduce deposit rates below zero. But they had assets - primarily mortgages - with interest payments contractually linked to Bank Rate. Consequently, a reduction of Bank Rate below 0.5% might squeeze some lenders’ interest margins to such an extent that they became even less able to extend new credit. 』

『On the one hand, there was some evidence that the proportion of outstanding mortgages contractually linked to Bank Rate had increased since early 2009, as a number of borrowers’ fixed rate deals had expired and they had moved to paying pre-set rates linked to Bank Rate. On the other hand, since early 2009, retail deposit rates had increased somewhat. So it was possible that lenders had greater scope than before to absorb a reduction in Bank Rate by cutting deposit rates without adverse cash-flow consequences. The extent to which this would be possible would depend on whether other funding costs also fell in line with Bank Rate. 』

『In addition to this, it was possible that, were interest rates to fall further, the functioning of the money markets would become impaired. 』

『Overall, the Committee judged that, at the present time, a further reduction in Bank Rate would not have any advantages over an expansion of the asset purchase programme, though it would keep the position under review.』

第30パラグラフは一瞬読んで何の事か判らんかったが、どうも預金ファシリティの金利付与みたいな話にみえるのは気のせい??(英国は預金ファシリティーはゼロ金利なので無いのと同じ)

『The Committee also discussed the possibility of changing the remuneration structure on banks’ reserves at the Bank of England by paying Bank Rate on only a proportion of those reserves. There were drawbacks with such a policy. There would be a large degree of arbitrariness involved in setting meaningful reserve requirements for individual institutions in an environment where their reserves were substantially in excess of the stable norms that had prevailed before the financial crisis. To do so would also change the nature of what was commonly perceived to be meant by Bank Rate, and its relationship with short-term market interest rates.』

で、第31パラグラフの結論、資産買入拡大が適切という話になって、そのおまけとして貸出支援策も入れましょう、という話をしていて、ご案内の通り資産買入拡大は5対4で現状維持となったという事ですから、まあBOEに関しては今回のMPCで一連の施策が出てくるという事になるんでしょう。

『Finally, the Committee discussed further asset purchases. The Committee agreed that asset purchases remained an effective tool for lowering a range of market interest rates, supporting asset prices and so nominal demand.』

効果はこれが一番ヨロシと。

『Nevertheless, a significant current impediment to the economic recovery in the United Kingdom lay in the interaction between the financial threats emanating from the euro area, their implications for bank funding costs, and consequently for lending to businesses and households. This might have contributed to the rise in interest rate spreads on mortgages and loans to small and medium-sized businesses in recent months, despite the extension of the asset purchase programme in February.』

ほう。

『Other complementary policy measures that the authorities might take could be better suited to mitigating these problems than asset purchases on their own, and some members expressed a wish for the MPC to consider additional policy tools. In this context, the Governor informed the Committee that initial discussions were underway with the Treasury on possible measures to ease banks’ funding costs and enhance their ability to lend.』

ということで、この辺が例の貸出支援策ですな。

#引用ばっかりでヘタクソ訳もつけないという手抜き駆け込みスキームでどうもすいませんでした


○電波浴雑談

ということで引用大会で長い中でここまでお付き合いいただきましたお礼に(違)簡単な電波浴を。

・毎度の洋一先生

毎度の産経(というか夕刊フジ)電波浴である。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120704/plt1207040740002-n1.htm
日銀の説明たれ流す報道はアテにならず
2012.07.04

ほほう。

『日銀に関する経済記事は各紙とも似通っている。というのは、金融の話は経済部記者にとっても難解なので、日銀からのレクチャーに依存しているからだ。レクを受けるのは当然であるが、問題はうのみにしていることだ。外部の有識者から話を聞くとしても、その有識者が日銀の“御用”であるので、まったくチェックの働かない「日銀の広報」のような記事ばかりになっている。』(上記URLより、以下同様)

ほほう。

『そのいい例が、日銀当座預金(銀行が日銀に預けるお金)の残高が6月26日、43兆4900億円(速報値)に達し、過去最高を更新したことに関する報道だ。各紙はあまり大きな扱いではないが、「日銀が金融緩和で供給した資金の多くが、金融機関の手元に残っている」「金融緩和の効果が十分に波及していない実態が浮き彫りとなった」といったトーンだ。』

いやあのそれよりもあんさんがた当座預金残高ガーとか言って文句言ってたのはどこに行ったんでしょうか?????

『まず、会計学の立場からみて、日銀当座預金残高だけが重要な数字ではない。日銀券(紙幣)残高を加えたマネタリーベース、さらに、売り現先(将来買い戻すことを条件に債券を売って資金調達する取引)など、日銀から金融機関への資金ルートもあるので、日銀のバランスシート(貸借対照表)全体の残高も重要だ。』

ほほう。

『6月20日現在で東日本大震災前との比較でいえば、当座預金はたしかに24・2兆円増えている。しかし、日銀券は1・5兆円増加にすぎず、売り現先は18・3兆円減少しているので、バランスシート全体では8兆円の増加にとどまっている。』

は???

『このように、当座預金の数字の数字だけをみても、金融の緩和度はわからない。当座預金というと金融機関内でおカネが滞留しているイメージを持つが、売り現先に伴う口座振替で、かなりの部分は説明できる。』

>売り現先に伴う口座振替
>売り現先に伴う口座振替
>売り現先に伴う口座振替

・・・・・・・・・・・は??????????

まあ何ですな、日銀のバランスシートの中身は営業毎旬報告を見ればすぐに判りますので数字の比較は簡単ですが、つまり売現先の残高が減ったので金融緩和度合が減っているというお話だと仰せのようでこれは中々斬新。

えーっとですな、現在(震災直後の時もそうですが)の日銀の売現先勘定に計上されているのは「対政府売現先取引」の数値でして、それって政府が持っている余剰資金を政府が現先取引によって一時的に短期運用している事を反映した数字なのですが、その額が増えると金融緩和度合いが高まるという事は、つまり政府が民間から鬼のように資金を吸い上げてクラウンディングアウトした挙句にその資金を抱え込んで日銀相手に短期資金運用をすると金融緩和の度合いが高まるというこらまた画期的な理論。

まあ対政府じゃない場合の売現先となると金融調節としての売現先取引の残高としての現先勘定が計上されるという話になりますが、この場合って資金吸収オペとして実施している取引になりますので、資金吸収オペをバンバン打てば金融緩和の度合いが高まるとはこれまた恐れ入る電波浴を朝から堪能という所ですな。

『一方、マネタリーベースやバランスシート規模が拡大すると、比較的早くインフレ予想が高まる。その結果、実質金利(名目金利−インフレ予想率)が低くなって、為替は円安に振れ、設備投資が徐々に高まってくる。つまり、金融緩和の効果はインフレ予想値の高まりで見なければいけないのに、銀行貸し出しという遅効指標(遅れて出てくる数字)でみるという間違いをマスコミは犯している。』

何かこの後半部分の話が時間軸的な意味で論理が怪しげな気がしますが、まあそれはそれとしてバランスシート規模が拡大すると比較的早くインフレ予想が高まるとのことですので、バンバン両建てオペを打って資金供給と資金吸収を行えばインフレ予想が高まるそうですよ。基金拡大で苦労しなくても簡単に物価安定の目途が達成できますね!(棒読み)

『会計学も経済学も不勉強なマスコミの報道は、日銀の説明の垂れ流しでまったくあてにならない。』

それはそれは大変に恐れ入りました(棒読み)。


・エンゲル係数が高まってきているので食料品価格を目標から外せという珍理論

えーっとですな、まあ先日ちょっと調べものするのに過去のブルームバーグ記事をせっせとサルベージしていたのですが、6月14日の朝8:17配信のヘッドラインに『インフレ目標の見直し必要、エンゲル係数上昇』というのがあってほほうと思ったのよ。

でまあそこの趣旨が記事にこんな感じであったんですけどね。

『エンゲル係数が2000年代後半から上昇、新興国台頭による食料品価格上昇と所得減少、家計の節約しのぐ食料品価格上昇が背景』(6月14日8時17分配信ブルームバーグ記事より)

でまあタイプするのが面倒なので端折りますと、要は食料、エネルギー価格が家計に与える影響が高まっており、今後も食料エネ価格は新興国要因で上昇すると思われるが、それは「悪い物価上昇」だからこれで物価が1%になったからといって喜んでもいかんでしょ。とまあそこまでの趣旨は誠に結構。

そして結論が極めて意味不明。

『輸入食料品価格の上昇で消費者物価の前年比1%プラスでも。「良い物価上昇」の好循環は描けず。米国のように「食料・エネルギー除く総合(コアコアCPI)のインフレ率を目標にするべき』(6月14日8時17分配信ブルームバーグ記事より)

・・・・・・・・・・ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwww

えーっとですな、まあお前はまずセントルイス連銀のブラード総裁の講演でも読めという感じですが、そんなもんを読まなくても「家計の中で食料品価格のウェイトが高まっている」って趣旨だったら当然ながら国民厚生という観点から言ったら物価を見るときに食料品を含めた総合物価にも注目すべきって話になるのが論理的に導かれる結論としか思えないのですが、お前は最後のコアコアにしろという結論とその前の論理の整合性を考えているのかと小一時間問い詰めたい訳ですな。

でまあ記事だけでいちゃもんつけるのも何なんで実は当該レポートも探し出して読んでみたのですが、やはり結論は『米国のように「食料・エネルギー除く総合(コアコアCPI)のインフレ率を目標にするべき』という話でありました。

でまあその論理の整合性が変というのもありますが、それ以前の問題としてFOMCの公表文書にあるSEPを見れば判りますように、FOMCがロンガーランの望ましい水準として示している2%という数値はコアではなく総合のPCEインフレーションでございます(めんどいので一々URLつけないよ)ので、そもそも「米国のように」とか言っている時点で事実誤認にも程がある所が実に素敵でして、これで何とかストが務まるとは随分と結構なお話ですなあとは思いますが武士の情けでどこの誰かは申しませんので興味のある方は探してくんなまし(^^)。

(追記:これ書いた時には敢えて名指ししませんでしたが、実はこのレポートはhttp://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/naga/pdf/n_1206a.pdfということで、第一生命経済研究所の永濱主席エコノミストのレポートネタでした。明らかに結論先にありきで書いていますなあというのが良く判る内容でございます)

ということでおまけの電波浴のつもりが長くなってしまいましたすいませんすいません。



2012/07/04

お題「各種雑談ネタでどうもすいません」

あまりまとまっていなくてどうもすいませんですが何となく小ネタ雑談系で。

○LIBORがどうしたこうした

暫く前から延々とこの話が出ていましたがだいぶややこしい話になっておられるようで。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120703-00000091-reut-bus_all
英バークレイズCEOが辞任、LIBOR問題で批判受け
ロイター 7月3日(火)16時2分配信

へえへえそうだっかという感じですが、まあ元々はLIBORってイメージとしてトレーダブルレートに近いものがあったように思えるのですが、そらまあ金融市場の構造変化が起きてそもそも銀行間の無担保取引市場自体がシュリンクしてしまったらトレーダブルもへったくれも無い訳でして、とは言いましても色々な物の指標金利になってしまった手前簡単に無くす訳にも行かないということで使われるから色々と無理な話が生じるというもの。

いやね、英国の事はよー知らんけど、日本だって金融危機以前は短期金融市場は無担保取引だらけでして、それは構造的に大手銀行がオーバーローンで資金不足になっていて資金調達需要が恒常的に発生していたことや、国債発行額がそもそも少なくて担保付取引のアベイラビリティーが小さい(長期国債もそうですし、短期国債に至っては90年代後半は3か月物と6か月物が月に1本ずつ各1兆円ちょっとの発行とかだった)というようなのがあって、当時だとLIBORとかまあそれに代わるものとしてTIBORとかの他行の提示レートがケシカランとか行って大手都銀間で打ち合いとかやっていて、まあトレーダブルっぽい感じだった訳ですよな。

それが金融危機とかになって無担保取引がシュリンクしちゃったりすると、そもそも3か月物の無担保取引ってやって良いのですか位の話になってしまいますし、そんなこんなしているうちに国債大量発行モードとかになると担保付取引の方が優勢になりますがなという事で、まあたとえば日本の短期金融市場で3か月物の指標金利と言えばそらまあ昔々(90年代中盤から後半)は大手都銀の発行する譲渡性預金(CD)金利でしたが、今はだれがどう見ても新発3か月物国庫短期証券の利回りでしょという風に、まあ世の中変わる次第。

英国の事はイマイチワカランチ会長ではありますが、サブプライム問題以降はそらまあ銀行間の3か月とかの無担保取引とか普通にシュリンクする罠と思う訳でございまして、そうなると当初の建付けが市場のリファレンス金利というイメージで、何となくトレーダブルっぽい(実際はこれリファレンスであってトレーダブルでは無い)金利という風になっていた物が、それとは別の性格になる(貸出基準金利とか)になるのはシャーナイナイと思うのでして、その辺の構造変化も踏まえた上であり方を検討するなら検討するという風な話にしないと、単なる不正ケシカラン的な血祭り大会で終了して何の生産性も無く、無駄にしょうもない規制強化になってしまうだけという残念な展開になり兼ねませんので今後の展開は生温く注視という所で。

まあこの手の話で一番のダメ規制は「レートだすならトレーダブルレート出せ」というような話になる事で、出したレートでのマーケットメイク強制とかアホウな事を言い出す輩が必ず出てくるのですが、そんなことやったらリファレンス出す業者が死にますがなという所です。大体からして金利市場って先物は別として一般的に個別要因の強い取引でございまして、同じ商品だから同じレートかというと取引のサイズや、取引の緊急性などでもレートが変わるというような大変に微妙な物でございますのでして、そーゆーのを取引所取引のノリで透明性みたいな事を言い出すと碌でも無い結果を招くだけになりますが、どうも市場の売買実務をやっていないで、頭で考える系の人とか直ぐにその手の話をしだす傾向にあるように思えますのでひじょーに懸念される所です。まあ極端な話ですが公社債売買参考統計値の各社報告値を全部トレーダブルにしろとか言われたら業者全員間違いなく報告辞退しますがなとかそういう話ね。

つーことで、規制ウィングの人たちが変に暴れだして角を矯めて牛を殺すの図にならないように願いたい物でございます。


○朝日新聞から追加見送りの観測記事が

http://www.asahi.com/business/update/0703/TKY201207020674.html
日銀、追加緩和見送る公算大 国内景気の底堅さなど背景

『日本銀行が11〜12日に開く金融政策決定会合で、追加の金融緩和を見送る公算が大きくなった。欧州の金融不安がいくぶん和らぎ、6月短観でも国内景気の底堅さが確認された。景気が急に悪くなる心配が後退しつつあるため、日銀はいまの金融緩和策を維持し、効果を見極める構えだ。今週末公表の米国の6月の雇用統計や、欧州の金融市場の動向などを決定会合ぎりぎりまでみて、最終判断する。』(上記URLより)

大体断定調とか如何にもサイダー風味な書き方をするメディアが多くてうんざりする中で、どこかの経済クオリティーペーパー様の観測記事の書きっぷりと比較したしますと抑制気味の書き方で大変に宜しいんじゃないかと思う書きっぷりで、朝日新聞やるじゃんとか思ったのですけれども。

まあ「追加緩和見送る公算大」という話をしながら「今の金融緩和策を維持」という言い方をしたり、まあ何ちゅうか書き方が無駄にクレクレ的扇情的な感じじゃないのでございますが、それはそれとして緩和見送り観測記事としては大手メディアの中では最初に出てきたという気もする(つーかまあそれ以前の問題としてそもそも日経新聞を購読しないで早10年という大変にアレなあたくしでございましてちゃんとメディアの報道振りをチェックしているかと言われると困りますが)のですな。

今週のECB次第の面はありそうですが、昨日も申し上げましたように、まあ経済物価見通しは下がるでしょうからその文脈での利下げはあるかもしれませんが、ECBとて利下げの弾がそう多く残っている訳では無いですし、大体からして足元の問題ってそもそもソルベンシーの話でありますので、それはEUだのESMだのがどうにかしていくという事をやっている中でして、じゃあ利下げしたら効くのかという話になった時に微妙は微妙な気がする。とは言いましても市場はどうも利下げを織り込んでいて、0.75%になるのか0.50%になるのかみたいな話になっているっぽいので、まあそんな中で手ぶらも不味いだろ理論(??)からしますと何かの流動性供給策とか信用緩和策みたいなのって話かもしれませんが、これまた信用緩和という意味では先日担保の緩和やったばっかりで、EUサミット前にお土産は出していると考えるとどうなんでしょうかねという所で。


○オペ雑談

まあ基金オペは相変わらずの展開が続いておりますが、月曜も固定金利3か月物を6か月物でロールするというしょうもない攻撃が続き、当然の如く札割れになるという素敵な展開が続いております。

つーことでまあちょっと物は試しにオペ残高計算してみたのですが(と言っても単にあたくしが手元でエクセル集計している物なので正確性は担保致しかねます。本人は正しいと思って出しておりますが)昨日のオペの結果を受けた時点(=5日時点)での残高は3か月物が18.8兆円、6か月物が13.3兆円でして、そのうち6か月物年末越えが21576億円という数値になっておりますです。

まあオペ残高維持の為にというのも判るのですが、こうホイホイと3か月オペを6か月オペでロールされますと担保繰りの方が色々と面倒になるのでオペ入れる方としてはちょっと勘弁という所はあると思うのですよね。いやまあ投資家サイドで担保繰りがそんなにガチガチに厳しく管理しなくて良いという人も居ると思いますが、特に債券ディーラーサイドは国債持っているのって基本的に商品有価証券であって在庫は常に変動しうるものですので、在庫ファイナンスも重要ですが、商品在庫の回転サイクルから考えた場合に物凄い長期間になる資金供給オペがこれだけ多くなる、というか資金供給オペの足が全て物凄い長期間という状態になっていると、なんぼサブスティテューションありと言われましても、全体の在庫水準の絡みを考えながらの担保繰り管理の方も重要になってくるという話ですがなという話でございます。

んなことは調節部隊の皆様がどうせヒアリング先から文句言われているでしょうから先刻ご承知な所に追い打ちを掛けるようで誠に恐縮ですが、基金オペの残高達成の為に資金供給オペを工夫した結果として本来の円滑な市場への資金供給という観点が少々アレになるとか何という皮肉とゆー所でございまして、まあ結論としてはより長い資金供給となる基金国債買入とかの拡大をしている以上、本来は固定金利オペの枠組みに関しても再考が必要でしょうなといういつもの結論になるのでした。


○もうちょっとどうでも良い雑談

・急に思い出したのですが

先日ネタにしたドクター窃ttじゃなかったドクターZさんの電波浴フォローアップ。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul021.htm
2年利付国債(第318回)の入札結果

6. 価格競争入札について
(1)応募額 20兆4,709億円
(2)募入決定額 2兆4,912億円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘
(募入最高利回り) (0.100%)
(4)募入最低価格における案分比率 28.7253%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘
(募入平均利回り) (0.100%)

先月ドクターZ様はこのように仰せでした。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32787
2012年06月17日(日)ドクターZは知っている
事務ミスでわかった日銀のウソ

『今回の再入札では募入最低価格と募入平均価格がぴたり厘の桁まで100円00銭0厘で一致、つまり、民間金融機関はみんな同じ札を入れたのだ。たしかに今安全資産を求めて国債の人気はすごい。わずか0.1%でも2年国債は飛ぶように売れている。しかし、数十社の民間金融機関が談合でもしない限り同じ価格で入札するはずがない。』(上記URLより)

前回電波浴の時にうっかりしましたが、そもそも前回の入札では応募額が24兆2,699億円で募入決定額が2兆4,780億円で、募入最低価格における案分比率は52.4544%なので、そもそも「みんな同じ札を入れた」というのが間違い(みんなが100円丁度に札を入れてたら按分率は10%位になりますよね)だったのですが(爆笑)、まあ『数十社の民間金融機関が談合でもしない限り同じ価格で入札するはずがない』と全力で断言した翌月の2年国債入札でも同じ結果になった件について週刊現代で是非ご説明していただきたいものであると存じます次第。


・インサイダー規制強化はまあ流れとして当然でしょうなあと思いますが・・・・・・

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120703-00000141-jij-pol
インサイダー規制強化へ=4日から金融審―金融庁
時事通信 7月3日(火)19時57分配信

『金融庁は3日、上場企業の大型公募増資をめぐる増資インサイダー問題を受け、課徴金制度の拡充など規制を強化する方針を固めた。野村証券など主幹事証券会社による未公開情報の漏えいが相次いだことから、情報提供側も罰則対象に加えることが柱となる。』(上記URLより)

ということで昨日は大手証券にヒアリングが入ったとか言うようなニュースもありまして、まあ市場が市場として機能する為にはインチキが横行しないようにというのは当然の話ではあると存じますが・・・・・・・・

昨日の公共放送ニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120703/k10013291461000.html
全日空 大型増資へ7月3日 12時4分

『関係者によりますと、「全日空」はこうした動きに対抗するため、大型の増資に踏み切る方針を固めました。増資の規模は今後の株価の動向によって変わりますが、1千数百億円から2000億円規模を目指すということです。「全日空」は、調達した資金で最新鋭の旅客機の導入を進めるなど経営基盤を強化することにしており、こうした方針を近く発表する予定です。』

>関係者によりますと
>こうした方針を近く発表する予定です

・・・・・・・・・・・・・・・・えーっとすいません。これって「未公開の法人関係情報」そのものではないかと思うのですけれども何なんでしょうかねえ。インサイダー取引ケシカラン云々報道する報道機関がその口で未公開の法人関係情報をホイホイ報道するとか、怪しげな提携記事書いて会社サイドから全力で否定されるとか、事前に報道されたらダメと言われている日銀審議委員人事を報道して話をぶち壊すとかそういうのって何なんでちゅかねえと小一時間問い詰めたい所ではございまする。

#2012年3月期から増配(2円が4円)したと思ったらいきなり大希薄化増資というのも中々アレですな


○その他予告編

・またBOEネタが華麗にスルーですいません

とか何とか雑談を書いておりましたら5日のMPC前にECBとかBOEのネタをする時間ががががが。すっかりネタの鮮度が下がって誠に申し訳ございませんが・・・・・・

・ブラード総裁毎度のクオリティ

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1460
JUNE 29
St. Louis Fed’s Bullard: Current U.S. Monetary Policy Still Appropriately Calibrated

ということで、いつものブラード総裁クオリティなのですが、これを読みますとおっちゃん論点拡大させ過ぎじゃという感じですが、「現在の金融政策は適切だが、緩和政策の拡大をし過ぎてインフレを拡大すると大変な事になる」とまたまた例によって例の如くのインフレ重視の姿勢の話をしています。まあ上記のまとめの方でも十分ですが、プレゼンテーションのPDFはこちら。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardDialogueWithTheFedLittleRockJune29-2012Final.pdf


・そしてセントルイス連銀がオークン則の考察をするとな

セントルイス連銀のトップページを見るとこんなお題が。
『Is Okun's Law a Meaningful Guide for Monetary Policy?』

・・・・・こらまたキタコレという感じでございまして、オークン則によれば失業率の改善の為にはより力強いGDPの伸びが必要だから更に緩和が必要というような論拠がFEDの高官から出てくる中で、セントルイス連銀ではブラード総裁もその理屈を盛大にdisっていますが、ペーパーまで出てくるとはこらまた恐れ入った念の入れようという所ですが、まだ中身を詳しく読んでいないのでこれまた後日読んだらネタにするかもしれません。

http://research.stlouisfed.org/publications/es/article/9295
Okun’s Law: A Meaningful Guide for Monetary Policy?
by Yi Wen and Mingyu Chen
in Federal Reserve Bank of St. Louis Economic Synopses, 2012-06-08 2012, No. 15

まあ冒頭に

『Okun’s law can be a useful guide for monetary policy, but only if the natural rate of unemployment is properly measured.』

って1行まとめがございますので、大体の論理展開は想像できるのですけど、というか文章量から想像するに従来よりブラード総裁が講演でお話をしていた事と同じような感じかなあとは思います。

とまあそんな所でいろいろ中途半端でどうもすいません。



2012/07/03

お題「6月短観が市場予想よりも良かった件の雑談/ちょっとした雑談である」

http://www.musha.co.jp/4028
2012年7月2日ストラテジーブレティン (73号)
グローバルリスクテイク、先ず日本株から

・・・・・・・・・で昨日の株式市場の結果をブルームバーグから拾うとこの有様。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index.html

日経平均株価 9,003.48 -3.30 -0.04
TOPIX (東証株価指数) 769.34 -0.74 -0.10

FTSE100指数 5,640.64 69.49 1.25
ドイツ DAX指数 6,496.08 79.80 1.24

NYダウ 工業株30種 12,871.39 -8.70 -0.07
S&P 500種 1,365.51 3.35 0.25
ナスダック 総合指数 2,951.23 16.18 0.55

どう見ても先ず日本株から上昇が止まっているとかクオリティが高杉ですとか段々笑えなくなっているんですけどマジで。EU首脳会談結果出て早速ドヤ顔で更新(見れば判るのだが6月6日に強気なお題の更新してからだんまりだった)するとか絵に描いたようなアレ過ぎて可及的速やかに以下暴言に付き自主規制。

・・・・・・・・と前置きが長くなってしまいましたが(^^)。

○短観雑談である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1206.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1203.pdf(前回)

前回の短観雑談は4月3日に書いたのですが、早くもそれから3か月ですかそうですか。

・前回の先行き予測DIの達成状況

            (3月時点)     (6月時点)
          現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   ▲4→▲3       ▲1→+1 
製造業中堅企業  ▲7→▲8       ▲6→▲7 
製造業中小企業 ▲10→▲15     ▲12→▲15

非製造業大企業   +5→+5      +8→+6
非製造業中堅企業  ▲1→▲5      +3→▲3
非製造業中小企業 ▲11→▲16     ▲9→▲15

でまあ前回書いたことを再掲しますとこうなるのだ。

(ここから4月3日の駄文です)
で、今回はまーよーするに12月に悪化した分をどのくらい取り戻せたかという話になるのですが、現状判断DIの推移をみると製造業が全般悪化気味、非製造業が引き続き好転傾向という流れが今回も変わらずというのが何だか妙っちゃあ妙な展開ではございますな。で、先行きDIの達成状況という面で言えば12月に予想されていた悪化ほどの悪化を示していない、という点ではこれはまあ良い傾向っちゃあ良い傾向ではありますが、まあ製造業の現状判断DIが傾向として沈み気味なのがやや遺憾であります。

まあ何ですな、非製造業が妙に堅調なうちに製造業が戻ってくるのが先か、製造業のヘロヘロに引っ張られて非製造業もコケるのが先かという話になるんでしょうか、良く判りませんけど。(以上あたくしの4月3日の駄文)

・・・・・・・でまあ今回ですけれども、「何か数字良いじゃねえの」というお話でございまして、しかも短観の回答期間6月中(概ねこれ6月中旬辺りになるとかでしたっけ)ですので欧州債務問題はあばばばばーという中でございますけれども、まあそれはさておきまして的な結果になっておられて金融市場でアヒャアヒャ言ってるのが少々汗顔な気分になりますな(違うか)。

まあ今回は全てのカテゴリーについて3月時点での予測指数よりも高い数値が出ております。ただまあ回復傾向にある中での予測指数って大体固めに出てくる傾向がありますので、達成度合いもそうですけれども前回対比でみた場合に製造業中小企業以外の全てのカテゴリーが前回対比でDI好転(ちなみに3月短観で前回対比のDIが悪化したのは製造業の中堅と中小)となっております。

とまあ考えると製造業の改善傾向は引き続きアレで、しかも中小企業に関して景気回復の恩恵が回ってませんがなという話ではあるのでその辺は遺憾の極みでございますが、まあこの数字総体として見た場合には悪くはありませんがなという話になるでしょうな(市場予想よりも良いですし)。


・雇用判断DI

             (3月時点)      (6月時点)
           現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +8→+8       +8→+6
製造業中堅企業  +4→+9       +8→+8
製造業中小企業  +8→+9      +10→+8

非製造業大企業   ▲2→▲2      ▲3→▲3
非製造業中堅企業  ▲3→▲4      ▲4→▲6
非製造業中小企業  ▲4→▲4      ▲3→▲5

これまた前回と傾向が同じで、製造業の余剰に対して非製造業の不足となっていて、前回対比でみた場合に非製造業が好転傾向(全規模合計で見た場合は▲3→▲3で変わらないです、為念)となっていて製造業は悪化傾向(全規模合計で見た場合は+8→+9で若干の悪化になっています)という内容。製造業の雇用判断DIがじりじり悪化傾向になっている中で非製造業の雇用判断は不足傾向強まるということで、まあこういうの見せられると日銀の「足元の経済は内需が堅調で回復傾向」という図に思いっきり整合的となっているという内容。まあそんなに悪い数字でも無いような希ガス。


・想定為替レート

今回はあまりこちらが話題になっていなかった気もするのですが、折角数字を拾っておりますので過去1年分の推移を並べてみましょう。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体 (上期) (下期) 2012年度全体 (上期) (下期)

2011年6月調査   82.59   82.59   82.59    −         −    −
2011年9月調査   81.15   81.26   81.06    −         −    −
2011年12月調査  79.02   80.26   77.90    −          −   −
2012年3月調査   78.93  80.20   77.69    78.14       78.04   78.24
2012年6月調査   79.27   80.18   78.35    78.95      78.98   78.93

2011年度に関してはまあ兎も角として、2012年度の想定レートに関しては3月時点の数値からあまり変わっておりませんで、引き続き80円割れですかそうですかという感じですな。だからこそあまりネタになってないと思うのですが。


・金融商品取引業クオリティを今回も鑑賞

毎度毎度毎度申し上げておりますように、本来は「証券会社」だけをカテゴリーにして集計して頂きますと非常にオモシロ集計になるのですが(「投資業等」が入った分だけ動きがマイルドに)、どうも投資業等の皆様におかれましても段々クオリティーがアレになってきたようで誠に遺憾に存じます(^^)。

        (3月時点)       (6月時点)
        現状→6月予測      現状→9月予測
金融商品取引業 ▲10→+16   ▲38→▲11

で、前回3月短観について4月3日に書いた駄文を見ますと・・・・・・

(4月3日の駄文より)
前回は「前回予測がドンピシャで当たっている」という怪奇現象(?)が起きた訳ですが、今回はまあ普通に見通しよりもよろしゅおすえという結果。で、調子に乗って先行き見通しが堂々のプラスになっているのですが、これはどう見ても死亡フラグに見えてしまうのは悲観脳ですかそうですかどうもすいません。 (以上4月3日の駄文から)

・・・・・・・・・・・・やはり死亡フラグでしたかorzorzorz

というか3か月前の予測指数対比で業況判断DIが54ポイントも悪化するとか金融商品取引業の皆様におかれましてはどんだけ目先の事しか見てないんですかと小一時間問い詰めたい所ですが全力で自主規制。


#なお6月短観と言えば設備投資計画のような気がしますが、そういうのは本職の方々が分析されているのでそちらをどうぞ、と思ったら朝の公共放送ニュースで短観の設備投資計画の上方修正をニュースにしてますわ


・で市場の反応とか景気判断とか

まあ正直市場が反応したのか反応したのかよくワカランチ会長という感じでしたが、何となく先物が数銭下がったような気もせんでもないという所ですかねえ。つーても昨日の場合は何か知らんが先週の金曜に大変にアレな引値になっていたように思えた超長期様がいきなり堅調という素敵な展開になっていて短観もへったくれも無い結果となっておりましたかね。つーかお縄先生離党しかも頭数が微妙というニュースの方が先物が(これまた数銭程度のような気がしますが)反応していた(買い方向ね)ように思えます。

まあそれはそれとしまして。

まー何ですな、この短観の数字ですとそれ単体で見た場合で言えば何でこの数字で追加緩和のおかわりをする必要があるのでしょうかというような内容でございまして、これだと「只今絶賛拡大中の追加金融緩和を粛々と進めていきます」と言えばそれはそれで理屈は通るというオソロシスな結果。

まあ後は物価安定の目途を出して強力な金融緩和を推進云々の話との整合性ってどうなのよという話なのですが、実は声明文に関して言えば「強力な金融緩和」云々の文言は戻って来たものの、前回の声明文の英文比較(正本は日本語で英文はあくまでも参考扱いではありますが、英文だと言語的に日本語を駆使して微妙なニュアンスを微妙なままにしておくという日銀文学が通用しないケースもある訳で)をした時に見られますように、「今後の金融政策に関して更に強力な緩和を追及する」的な表現は外しているという素敵な事もあります(前回決定会合後の駄文をご参照くらはい)ので、こらまた微妙な感じになってきましたバイという所でしょうか。

MPMは来週でして、まあ今週はBOE(はあまり関係ないと思いますが)やらECBやらがあって、普通に考えるとBOEの場合は国債買入拡大方向、ECBの場合は金利操作はあるかも知れんがより重要なのは信用緩和なのでそっちの方向(利下げは金融市場が落ち着いてから実施した方が良いんじゃないかと、下手に利下げすると金融市場の機能低下のデメリットの方が先行しそうな悪寒)とかでございまして、まあその結果を受けて金融市場がまたクレクレ言いだして追加緩和しないと許さん的な展開になるでしょうかねえ〜なんてえ事を気にはしておったりします。

もちろん展望レポートの中間レビューで経済物価見通しが下がれば普通に追加緩和のおかわり(基金国債買入で多分あと5兆程度、ただし来年上半期分ならば拡大は物理的にたぶん可能でしょ、目の子ですけど。ちなみに個人的にはETFの方が良いんじゃネーノとは思うのですが日銀の嗜好的に合わなさそう)とかになるんでしょうかねえとは思いますが、少なくともこの短観で経済見通しが下げるのもちょっとややこしくなりましたがなという所でしょう。物価に関しては足元で原油価格の下落とかあるから若干アレですが、経済見通しが下がらない中で中長期的な物価見通しが下がるというのも少々アレですし、はてさてどうなるのでしょうかという所ですわな。

10月の展望レポートの書き換え(この時には予測期間が1年延びる)の時に資産買入等基金の買入期間延長(半年延長)と若干の枠拡大で済ませるものならその方が運営的に窮屈では無い、とか何とか考えそうな悪寒がするのですが、さてクレクレ市場がそれで許すのでしょうかというとねえ・・・・・・という所かと(−−;


○まあ通常の文言なのですが市場環境的にご無体な文言となるという雑談

と書いて何の事やらという事だと存じますが(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120702d.htm/
金融市場調節取引の2012年度対象先公募等について

ということで、まあどれを見ても良いのですが最初の『国債売買オペの2012年度対象先公募について』をチェックチェック。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120702e.htm/
国債売買オペの2012年度対象先公募について

『1.はじめに
日本銀行では、次のスケジュールで、国債売買オペの対象先を公募し、現在の対象先を見直すこととしました。

公募スケジュール公募開始日 2012年7月2日
公募締切日 2012年9月5日午後3時
選定結果の公表 2012年10月中旬以降の予定
選定先との取引 選定結果の公表後所要の準備が整い次第開始

2.対象先の選定
対象先は、「国債売買オペの対象先選定基準・手続」(別紙)に基づき選定します。ただし、現段階では予見できない事情のために、別紙記載の基準等を適用することが不適当と判断される場合には、当該予見できない事情をも勘案して選定を行うこと、または選定された対象先の見直し等を行うことが極く例外的にあります。』

というこの辺のスケジューリング等の文言は大体共通でて、要綱に関しては例えば国債売買オペに関してはこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120702e.pdf
国債売買オペの2012年度対象先公募について

まあああだこうだと色々と書いてあって都合22ページにもなるのですが、選定基準を書いてあります別紙(2ページ目から)の冒頭の文言をよく見るとこんなのが(−−)。

『2.対象先としての役割

○ 金融調節を機動的・効率的に遂行する観点から、対象先には以下の役割を遵守することを求めます。
(1)国債売買オペに積極的に応札すること
(2)正確かつ迅速に事務を処理すること
(3)金融政策遂行に有益な市場情報または分析を提供すること』

>(1)国債売買オペに積極的に応札すること
>(1)国債売買オペに積極的に応札すること
>(1)国債売買オペに積極的に応札すること

まあ通常ベースでは極々普通の文言なのですけれども、昨今の金融市場情勢では国債売買オペと申しましてもあーた市場金利が0.10%切ったら応札しない方が市場参加者の経済合理性という意味で正しい姿となっていますがなという所でございまして、まあ金融市場局的なお立場としてこれはこれで入れる文言ではございますが、しかしながら市場環境がそもそもこうなってしまっている中で落札シェアがどうのこうの(別紙4ページ目、ファイルの5ページ目になりますがそちらで色々と書いてある)とか仰られましても何だかなあ的な部分が無い訳では無い。

#まあ揚げ足取りというツッコミは有ると思いますが以下思いついた揚げ足雑談が続く

まあ国債売買オペに関しては長期国債の長いのとかもあるから別にまあそっちで積極的に応札すればという話もあるかもしれませんけど、基金国債買入とか、輪番の1年以内とかに関して市場金利よりも不利な所でオペ実績の為に応札するというのはそれはそれで金融政策の有り方としてどうよという風に思う所もございます次第でして、まあ金融市場局的にはただの板挟みモードなのでそんな事あたくしのようなチンピラゴロツキに言われても知らんがなという所ではあると存じましてその辺は大いに同情の余地はあるのですが、昨年の今頃はこの文言を見ても特段の違和感が無かったであろうと思いますと、いやまあ基金国債買入を市場のフィージビリティー以上に増やしちゃいましたなってな話ではございますが、誠にアレなものを感じるところでございます。

ちなみに、国債補完供給に関しましては当たり前ですが積極的に応札云々の文言はございませんが(そもそも受動的に実施するオペだから)、共通担保全店オペとか今ではそれは基金オペ(固定金利オペ)形式の実施ばっかりじゃネーノ札割れ続出でんがなというのにも普通に従来通りの文言が入っておりまして、誠にオサレなものを感じる次第ではございます。

まあ何だ、『ただし、現段階では予見できない事情のために、別紙記載の基準等を適用することが不適当と判断される場合には、当該予見できない事情をも勘案して選定を行うこと、または選定された対象先の見直し等を行うことが極く例外的にあります。』ってヘッジクローズが入っておりますので、札割れオペに関してはまた別の考え方というのも有って然るべき(じゃないと結果的にご無体オペになってしまう場合が有り得る)じゃネーノとかふとそんな事を思うひとときなのでございました。・・・・・・・とは言ってもシェア計算に札割れ分除外とかするとそれはそれで今度はオペの札割れ続出に拍車を掛ける可能性もありそうですし、まあ運用的に難しいなあと思いますけどね。つーかこんな所で変なツッコミを入れる輩が出るような状況というのが金融市場局カワイソスという話ではあるのですが(−−;

#まあマニア向け雑談な上にただの揚げ足取りで甚だ恐縮



2012/07/02

お題「大体欧州ネタだが今日はコピペ大会だったりしますすいませんすいません」

月曜なので電源が入るのに時間が掛かるのはあたくしの仕様ですorz

お縄先生曰く、
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012070100187
『増税だけを強行しようとしていることは、国民の皆さんに対する背信行為であり、民主党はうそつきだと言われても仕方がない。』(上記URLより)とのことですが、元々根拠もないうそつき財源を元に詐欺フェスト作って選挙に打って出たのどこのどなたさんでございまちゅかねえ。

#そういや短観でしたっけ(^^)


○EUのサイトを見に行ってみました

単に慣れの問題だとは思うのですが、EUのサイトってゴテゴテしてて見にくいんすけど・・・・・・・

つーことでまあ金曜の日本時間の昼間に出た奴をと思いましたが、まあ重複になりますので最終で出た奴で。

http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_Data/docs/pressdata/en/ec/131390.pdf
Remarks by President Herman Van Rompuy following the European Council

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=SPEECH/12/512
Jose Manuel Durao Barroso President of the European Commission Statement by President Barroso at the press conference following the European Council of the 28-29 June 2012 Joint press conference/Brussels 29 June 2012

ということで2本出ていますが、まずは上の方から。(段落分けは一部改変して引用します)
http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_Data/docs/pressdata/en/ec/131390.pdf

『This European Council was about combining short term action to stimulate growth and to stabilise the markets, together with a longer-term vision on the way forward to strengthen our Economic and Monetary Union. A key short-term challenge across Europe is to revive growth. Building on yesterday's discussion, we decided today on a "Compact for Growth and Jobs". It will mobilise 120 billion euro for immediate investment, which will boost the financing of the economy and help create jobs.』

と、最初の所でまずは120Bilユーロの成長および雇用の基金突っ込みますという話が来るのがまあ成長戦略がどうのこうの的な部分ですな、うんうん。

『In the current situation, establishing a longer-term perspective for the euro area is a pressing priority. Indeed, as has been pointed out: if we want investors to buy ten-year bonds, understandably they would like to know where the Eurozone stands in ten years time.』

ほう。

『Yesterday we discussed the report on the future of the Economic and Monetary Union that I presented earlier this week at the request of the Heads of State or Government, prepared in close cooperation with the Presidents of the European Commission, the Eurogroup and the European Central Bank. As you know, this report outlines an architecture based on integrated frameworks for the financial sector, the fiscal matters and the economic policy. Steps forwards in these three areas must be accompanied by increased democratic legitimacy and accountability. These were and these are the four building blocks.』

でまあこの「report on the future of the Economic and Monetary Union」というのがゴシック表記されておりまして、

『Let me start with the financial sector: here, beyond general agreement on the longer term view, we already achieved a hugely important first result. Last night, we agreed that, under certain circumstances and under certain conditions, the ESM could recapitalise banks directly.』

ということで一つ目のポイントが一定の環境および条件の下でESMが域内の銀行に直接資本注入する事が出来るようにする。ということで、従来スペイン国債がブタ売られしていた要因(銀行への資本注入の為にEUからお助け資金を融通されるのが政府なので更に重債務になるがなという話)が緩和されますがなという話。

『The biggest and most important condition is setting up a single supervisory mechanism for banks.』

つーことでその環境に必要なのは銀行監督に関する単一のメカニズムを作る事ですとのこと。

『The Eurozone leaders have asked the Council to work in a very speedy way so that we can have results by the end of the year. This is a major breakthrough. It is a first step also to break the vicious circle between banks and sovereigns and it is already a first result of our common report. I said last week that the building block of banking integration is the most important one, in the sense that we can achieve results in a short timeframe. A few days after we presented our report, the idea of a European supervisory system for banks is accepted.』

ドヤ顔風味になっておりますが、まあこれによって銀行の不良債権問題とソブリン問題の悪循環を断ち切ることが出来ますという事なのですが、このメカニズムを作る云々に関しては最終的には年末までに結果がでるという話のようですな。でもってたたき台というか原案のようなものは「A few days after we presented our report, the idea of a European supervisory system for banks is accepted.」との事ですから近いうちに出る(つーかまあ既にあるんでしょうが)ということのようですが、またどうせ「直ぐに決まるのかどうか分からない」とか市場ちゃんがいちゃもん付けるに100ドラクマ。

『On the second and third building blocks of the report: fiscal matters and economic policies, we all share the same analysis. The Economic and Monetary Union can only function if each and every country's budgetary and economic policies are sustainable: this is the founding contract between countries sharing a common currency.』

経済と金融の同盟は各国の経済財政政策がサステイナブルである時のみ機能しますとそらそうですなという話で。

『We also took another important decision yesterday night during our Eurozone discussion. We agreed to open the possibilities for countries which are complying with common rules, recommendations and timetables, to make use of the existing EFSF/ESM instruments to reassure and stabilise the markets. Financial assistance to Spain will be provided without seniority status for the financing provided by the EFSF/ESM.』

ということで、最後の所にありますように、EFSF/ESMが行うスペインへの金融支援に関しては優先債務扱いにしないというのもまあこれまた金曜の東京時間の日中(向こうの未明とか)に出ていましたですな。

以下は特許の話とかシリアへの非難とかイラン核開発の件とかモンテネグロの加盟の件とかになりますので割愛。


http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=SPEECH/12/512

まあこっちは上記の話をもうちょっとドヤ顔で述べているという感じですが、途中から引用。

『I know that many people were sceptical about the prospects for this summit. And I hope that they were pleasantly surprised when they heard the news this morning. Because this European Council and Euro area summit have delivered what our citizens, our international partners and investors have been asking for. It has delivered a robust set of answers which should significantly strengthen confidence in Europe's financial stability.』

>I hope that they were pleasantly surprised when they heard the news this morning
>I hope that they were pleasantly surprised when they heard the news this morning
>I hope that they were pleasantly surprised when they heard the news this morning

どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございました。

『We have agreed short term measures to support countries under market pressure. Following the presentation of the EMU report, we have now a clear commitment to a single banking supervisory mechanism for the euro area. We have a clear commitment that when this supervisory mechanism for the Euro area is established, it will allow for the direct recapitalisation of banks by the ESM under very strict conditions. And we have an agreement to waive the seniority of future loans for Spain's financial sector recapitalisation under the ESM. So once again, we have taken decisions that were unthinkable just some months ago. The Commission has worked intensively on these solutions and will work intensively on implementing them over the coming weeks and months.』

ということで、さっきのと同じ趣旨の話ですが(同じ件について話をしているのだから当たり前だが)こちらではお助けスキームに関する話の方が先行しております。んでその後に成長戦略に関するお話があって、最後に銀行同盟に対する「クリアーなコミットメントに達した」という話があるのでございますが、めんどいので引用だけ。

『We have now also the endorsement by the European Council of the Country-Specific Recommendations. We have agreement on a compact for growth and jobs that turns words into concrete action and into financing commitments, and it sets out the levers for mobilising funds. I was making the case for many of these ideas when it was still unfashionable to do so - boosting the lending capacity of the European Investment Bank; launching the first phase of project bonds; and redirecting some structural funds. We now have full agreement on this. We have also recognition among Heads of State and Government that we cannot separate the debate on growth from the debate on the EU budget. The progress achieved under the Danish Presidency was recognised as the basis and the orientation for further work. A lot of negotiations are still ahead of us, but we are making progress.』

『We have agreed a convincing vision for a strengthened economic and monetary union, and this is a point I would like to highlight particularly, following the report presented to the European Council on the genuine EMU. In fact, just after this report was presented, we have already now a clear commitment to a banking union that the Commission has been calling for. This banking union will be designed in a way that fully respects the integrity of the single market. At the same time, we recognise that there are member states that will not want to participate in some areas that are predominantly linked to membership of the euro, now or in the future. Everyone here has agreed that a stable euro is in the interest of the whole European Union. Over the summer, the Commission will put together the legislative proposals to make this a reality. And we need to go further, building a fiscal union and taking steps towards a political union. This is the logical consequence of the need for deeper integration to match our growing interdependence and need for financial stability.』

ただまあこちらにちょこちょこありますように、じゃあ実際にどういう施策になりますねんというのは(当然ながらとっくの昔にたたき台はあるのでしょうが)ある程度まともなテーブルに載ってからまた各国に持ち帰って議論だ何だという話になるでしょうから大変ですねとかイチャモンが付く話ですなあというのは先ほども申し上げた通りです。

まあ何ですな、どうもEUのサイトは慣れてないせいか(ECBにも多分にその傾向があるのですが)探し物をするのにイマイチですなあとか思うので精々精進して慣れたいと思いまする。


○ECBについてですがね

でですな、まあ欧州の問題に関しては利下げ云々よりも信用緩和をする話でしょという所ですがなとゆー話をしたような気もするししなかったような気もしますが、危機対応に関する方向性としてはまーこんな感じの方向性でしょうなあという所ではあるかと思います。んでもってECBが利下げするんでしょうかという件については正直良く判らん所で、本来的には利下げよりも信用緩和をした方が良い(のでこの前も適格担保の拡大をして、ついでに「金利操作以外のECBの施策はこんなにやってますよ(ドヤ)」ってのを出していました罠次第)ですが、28日にもしらっとこんなのが。

http://www.ecb.int/ecb/legal/pdf/en_ecb_2012_11_f_sign.pdf
DECISION OF THE EUROPEAN CENTRAL BANK of 28 June 2012
amending Decision ECB/2011/25 on additional temporary measures relating to Eurosystem refinancing operations and eligibility of collateral(ECB/2012/11)

んでまあ2ページ目に色々とある。

『Article 3 of Decision ECB/2011/25 is replaced by the following:‘Article 3 Admission of certain additional asset-backed securities』

まあ詳細は嫁という所ですが、この前ネタにしたのは6月22日の担保拡大でして、この前拡大したと思ったらまた拡大ですかそうですか。(追記:というのは勘違いで、22日の担保拡大と28日はリンクしているらしいです)
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2012/html/pr120622.en.html
22 June 2012 - ECB takes further measures to increase collateral availability for counterparties

ちなみに「こんなにやってますお」というのはこちらね(これまたこの前ネタにした)
http://www.ecb.europa.eu/press/govcdec/otherdec/2012/html/gc120622.en.html
Decisions taken by the Governing Council of the ECB (in addition to decisions setting interest rates)

まあ早めに整理してみるですお。


○やっとBOEネタであると思ったが時間が無いのでイントロだけ

7月MPCは5日でございますので、つまりもう時間がががががorzorz
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1206.pdf

経済見通しに関してはまあ残念という感じの内容になっておりまして、リスクに関して言えば一応両論併記ではあるものの、物価、経済ともにアップサイドリスクは減ってダウンサイドリスクは拡大しているという認識になっております。

で、まあ6月MPCの議事要旨の見所といたしましては、その後のマンションハウスでのキング総裁のスピーチ(も先々週に読んだというのにまだネタにしていないorzorzorz)にありましたように、銀行に対するリテール向け融資の推進策導入の布石になっているであろう「金融機関によるクレジットアベイラビリティに問題があって経済に悪影響」という議論の部分と、今後の追加金融緩和に関するオプションについての検討部分になるかと思いますので、そちらに関して明日にでもネタに(しないと5日のMPCがやって来てしまうので)という所でございまする。