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2013/02/28

お題「市場メモ/総裁人事関連で色々と面白いのでクリップしつつ雑談」

色々と鑑賞していると面白いのでそろそろ一回クリップしてみようかと思ったらこれがついノリノリで長くなりすぎたので市場メモを先にメモだけで、スタイン理事講演ネタとか先週のブラード総裁講演ネタとか用意しているのに全然そっちに行きませんでしたすいませんすいませんすいません。

○市場メモ:短国買入レートがまたまた低下キタコレ

めんどくさいので結果だけ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130227.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 22,888 5,000 0.059 0.061 11.8
国債買入(残存期間1年超10年以下) 9,714 2,506 0.001 0.002 12.9
国債買入(変動利付債) 3,827 1,402 -0.120 -0.137 60.6

・・・・・・おーのーという所ですが、足元何だか知らんのですが短国が妙に買い優勢でして、そこに日銀の買いも入る(のは仕方ないのですが)もんですから金利が下がる下がる。つい先々週の末辺りは3か月TBが0.0825%辺りまで上昇していたのですが、ここもとは0.06%だのとかになっておりましてどう見ても市場機能低下です本当にありがとうございましたという所ですが、今日は新発3MTBの入札でもうどういう結果になるのかガクブルですわ。

というメモでした。何か昨日もブルフラットしていたようですがそこはヌルー。



○日銀正副総裁人事関連で色々とニュースやコメントを拾って保存しておきましょう(^^)

・昨日の続きで岩田規久男先生ェ・・・・・・・・

もと切込隊長のやまもといちろうさんがこんなエントリーを投入されておりましたが、良く見ると記事へのリンクが掲載先の「海外投資新聞」じゃなくてウェブ魚拓になっている所に素敵な芸風を感じます(^^)。

http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/02/post-15ba.html
【祝】日銀副総裁候補・岩田規久男・学習院大教授がアブラハム「海外投資新聞」に登場

でまあこちらはこちらで鑑賞して頂くとして、アブラハム・グループさんご提供の海外投資新聞さんの記事は昨日もご紹介しましたがこちら。

http://media.yucasee.jp/offshore-news/posts/index/241?la=0005(直リン自主規制)
学習院大学岩田規久男教授直撃インタビュー
インフレ率2%は来年半ばに達成可能=学習院大学岩田規久男教授
2013.1.30

読めば読むほどクラクラしてくるので不肖このあたくし脳ドックにでも逝った方が良いのではないかと思ってしまう位のツッコミどころ多彩のインタビュー記事でございまして、いやこの認識で日銀副総裁ねえとか思うのですが、総裁と副総裁を入れ替えるべきだとおっしゃる方もおいでのようで世の中どうなってるんでしょうねえと呆れる今日この頃でございます。

ということで以下先ほどの海外投資新聞さんの岩田教授インタビューから引用しつつ少々ツッコミをしようかと存じますが、必ずしも全部のツッコミどころをツッコんでいる訳では無いので念の為申し添えます。

最初のインフレになるメカニズムの話もお前は何を言ってるんだという感じですが、一番素晴らしいのはこの辺りの話。

『――日銀は具体的にどんな政策をとるべきですか? 』

『前回の日銀の政策決定をみると、実際にはほとんどベースマネーは増えない。』

ほうほうそうですか。

『インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70〜80兆円にすべきだ。 今の日銀の当座預金の増やし方のペースをみると、インフレ率が2%になるには早くても3年程度かかる。予想インフレ率と当座預金との関係には時期によって違いがあるので推測には幅があるが、今のペースでは遅ければ5年程度かかるだろう。』

・・・・・・・・・・・どうも良く判らないのですが、今の基金オペの残高が目標通りに積みあがると何処からどう考えましても年末の101兆円目標達成時点で日銀当座預金残高は80兆円は楽勝で到達する筈なのですけれども(佐藤審議委員が先日群馬で講演した時は90兆円〜100兆円に達するかもという話ですし、銀行券と財政要因中立と言う超イイカゲンな前提を置いて計算すると90兆円程度になるような希ガス)、そのペースで3年程度掛かるというのはそもそも前提においている日銀当座預金残高の拡大ペースを盛大に誤解されているとしか思えませんが大丈夫でしょうかきくちゃん先生。

『安倍総理が目指す「できるだけ早期」のインフレ率2%達成は、今のペースでは無理。逆に言えば今の日銀にはやる気がないということだ。日銀の姿勢が変わらなければ、今の株高も円安もしぼんでしまうだろう。』

えーっと、そもそも前提となる当座預金残高拡大ペースを間違えたままでやる気があるだの無いだの言われましてもただの言いがかりにしか見えませんが・・・・・・・・・


次の質疑も読んでいて愚昧かつ経済学士ですらない低能のこの不肖ワタクシにとりましては意味がワカランチ会長ですので就任記者会見の際には是非とも詳しい説明をお願いしたいと斯様に思うのでございますが。

『――国債買い入れオペでは札割れが起きています。当座預金を2倍にできますか?』

『それは今、日銀が1年物など短期の国債しか買っていないからだ。日銀はもっと長期の国債を買うべきだ。』

そもそも国債「買入オペ」では札割れ起きていないので質問者のレベルもアレなのですが、その質問を訂正することなく回答されるというのが大変素敵な訳でして、いやまあこれが黒田さんのようにそもそも財務省時代に金融政策に関連する政策の方面(理財局とか官房とか)を触って居なかったのでそんな細かい話は知らんぞなというのであれば致し方ないのですけれども、この木久扇規久男大先生におかれましては従来より日銀の金融政策に対して色々と批判をしている方でございますので、当然ながらこの辺りの事実関係を誤認したままで批判されますとそもそも議論が成立し得ないのでございまして、大丈夫なんでしょうか本当に。

それに「1年ものなど短期の国債しか買っていない」というのもかなりミスリーディングな言い方でして、基金国債買入は1年〜3年を買っていますし、輪番オペというのもありますので、まあ基金オペが時限的措置という名目で3年までの国債しか買っていないのでもっと長いのを買えと言いたいのは判りますが、この部分も事実関係をミスリードするような言い方をしているのがもう何だかねという所です。

『金融政策というのは、流動性が違う資産を交換するほど効果を発揮する。』

それって財政政策の領域になるような気がしますし、大体からして伝統的金融政策は金利操作でございますがなと思いますが一応突っ込まずに流しておきましょう(って突っ込んでいますが)。

『民間ではリスクのある長期国債は持ちにくい。したがって当座預金の流動性と同じ短期の資産を買ってもあまり意味がない。長期国債を買えば札割れは起こらない。』

????????????????????えーっとすいません意味がワカランチ会長ですし、これでは日銀が短期国債ばかり買っているかのような説明になるのですが・・・・・・・・・

『インフレ期待が生じたときには、民間は長期国債をもっていると価格リスクが大きくなるので持ちたくなくなる。そういう時にこそ、民間が持てなくなる長期国債を買ってあげるのが流動性を供給する中央銀行の役割だ。』

いやもうここのところが凄まじいとしか申し上げようがないのですが、インフレ期待が高進してフィッシャー効果だか何だかで長期金利が上昇している時に、長期国債を中央銀行が更に購入して流動性を突っ込んだら高進したインフレ期待が更に高進して火に油を注いでしまい大変な事になってしまうのですけれども大丈夫でしょうか??????????????

『大手メガバンクはすでに長期国債を減らしているが、地銀はまだかなり長期国債をもっている。インフレになると経営的な問題やシステム不安が起きてくる可能性があるので、その意味でも日銀はもっと長期国債を買うことが必要だ。』

えーっと、短期金利がゼロ制約になった後でより長い期間の金利下がると金融機関はよりリスクを取らないと必要な収益が出せなくなるので更に大変な事になるのですが。つーかインフレになるたって景気回復を伴うインフレだったら銀行経営ってウハウハになって少々の債券ポートのやられは本業とか保有株式とかでお返しできるんですけどねえ。

『さらに、インフレヘッジになる物価連動債をもっと発行すべきだ。』

えーっとそれは財務省に言ってください。ああそれからこの前の国債市場特別参加者会合で「国内投資家の需要が無いので発行再開しても消化が厳しいかも」という見解が大多数をしめていたんですけどねえ。

『長期国債を日銀が買う代わりに、物価連動債を機関投資家や個人などに買ってもらえばいい。こういう時にリスクをとれるのは中央銀行しかいない。』

もはや訳が分からんのでツッコミが出来ない・・・・・・・


しかしまあ一番酷いと思ったのはこのくだりでしょうなあ。

『――日銀は国債の直接引き受けをすべきですか?』

『それはありえない。それは日銀があまりにもかたくなに何もしないから出た議論。むしろ、日銀が財政ファイナンスをするのを避けるためにあるのがインフレターゲットだ。』

1つ上の質疑を見ているとインフレ期待が高まって金利が上昇したらどんどん長期国債買えとかどう見ても財政ファイナンス推奨です本当にありがとうございましたという所ですが、「何もしないから出た議論」とかエライ他人事のように仰せですが先頭切って仰せだったの貴殿だと思うのですが・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK062843420110708
復興国債の財源、日銀引き受けが需要創出に最も効果的=岩田規久男・学習院大学教授
2011年 07月 8日 16:59 JST

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22301220110721
復興債の日銀引き受け、景気浮揚と超インフレで意見対立
2011年 07月 21日 14:26 JST

・・・・・・・・・・えーするってぇと何ですな、岩田大先生様におかれましてはかつて仰っていた「復興国債の日銀引受」は政策提言としては単に為にする議論であって、本当に実行したら「ありえない」政策であったということである、とまあ斯様な話になるのですが、それって政策に携わる者としての姿勢として如何な物なのでしょうか?

つーか「日銀が言う事を聞かないので有り得ない極端な政策を突破口にする」とかそれただの「目的が正しければ何をやっても良い」理論であり、(自主規制)のロジックじゃないですかとゆーか、まあ恐喝みたいなアプローチでありまして、政策論争というのはそのような恐喝的手法を用いて為されるものではない、とまあ斯様に思う訳でございまして、恐喝で事情聴取を受けるのは中田カウス師匠くらいにして頂きたいと存じます次第でございます。

何か他にもツッコミポイントがある気がしますが、あんまりやっていると精神衛生によろしくないのでこの辺まで。

#しかしこちらの海外投資新聞さんの「識者の見方」のメンバーが何ともアレでございますな
http://media.yucasee.jp/offshore-news/columns


・早速ヨイショコメントキタコレという香ばしい世界

いやまあ何ですな、世の中が変わりそうになると早速ジャガーチェンジする方というのはどこの世界にもおいででありまして、そういう手合いがここもと観測されるようになっているのが大変に香ばしいとしか申し上げようがございません。

いやね、従来から岩田規久男先生みたいな主張を展開しておられました方がキタコレと言う事で色々と仰せなのは良かったですねえという感想なので別にツッコミを入れる類のものではありませんが、どこの誰とは申しませんがヨイショキターというのが人間の業をも感じさせて実に心温まる話となりますなあという所。

#あ、そういやかつてbewaadさんから(当時)切込隊長と共に「親リフレ政策な人々」と認定されておりましたので念の為申し上げますと、リフレ政策的なアプローチをあたくし別に全面否定している訳では無いのですが(過去ログみてくらはい)、「それはりくつとしては判るが実際に行ったら問題出るだろ」というのが引っ掛かっていた所でして、まあ要は理屈は判るが政策論としてナイーブにも程がある、という評価だったのですが、その後(概ね前回の日銀総裁人事騒動のちょっと前辺りから)事実を踏まえない批判とか極端すぎる政策提言とか出てきてまあ段々「ドン引き」モードになってきたという所なんですよねあたしゃ

とまあそれはそれとしてヨイショの鑑賞会でも。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIQUTO6KLVR701.html
日銀総裁に黒田氏起用へ、副総裁には岩田規氏と中曽氏−安倍首相 (1)
更新日時: 2013/02/25 19:37 JST

まあどこの誰とは申しませんが記事中のコメントを拝読しますとこんなのが。

『さらに「組織運営経験がないこと、さらに日銀内からの抵抗が強いことなどを背景に総裁候補にならなかった可能性はあるが、副総裁として、今後日銀が大胆な金融緩和を実行する上での理論的支柱として機能していくものと思われる」としている。』(上記URLより、当然ながらこの副総裁は中曽さんへの評では無く岩田さんへの評です)

・・・・・・・・・・り、りろんてきしちゅうですと???????

いやあのつい今しがた拝読いたしました「理論」によりますとその柱がもう何ちゅうか誠にアレとしか申し上げようがございませんで、今後この調子で「理論的支柱」として機能されますと耐震偽装も裸足で逃げ出す(以下自主規制)。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MISRSP6S972M01.html
【クレジット市場】反日銀黒田+和製フリードマン岩田、2%目標遥か
更新日時: 2013/02/26 10:56 JST

>和製フリードマン岩田
>和製フリードマン岩田
>和製フリードマン岩田

・・・・・・・・・・・・このヘッドライン見た時に吹いた俺の紅茶を返せと申し上げたい!!!!!!11


・ムーシャ先生がお壊れになられております

毎度のお告げ更新キタコレ。
http://www.musha.co.jp/4551
2013年2月27日ストラテジーブレティン (93号)
懐疑論を粉砕するQEの威力

・・・・・・・・・まあ正直申し上げてあたくしの腹筋を粉砕させるお告げの威力としか申し上げようがございませんですが、ちょっとここ2回連続で変な葉っぱでもキメて書いたんじゃないか位の勢いで何ぼなんでもちょっとアレにも程がありますがな。

でまあディスクレーマーが五月蝿いので一々引用して突っ込みませんが、というか突っ込んだらまたノリノリになって大変な事になるので割愛しますが、結論部分を見て腹筋粉砕どころか骨盤も粉砕するかと思いましたぞな。

というのはですね、最後の所で黒田さんがこれからやる強力リフレ政策について「三重野時代に行われたバブル潰しの逆を実施する」と総括しておられるのですが、三重野さんのバブル潰し(正直言って三重野さんだけがやった訳では無くそもそもこの時代日銀は財務省に従属していまして、矢面に立ったのが三重野さんでヒーロー扱いされただけだと思いますがそれは兎も角として)って結局やり過ぎてしまいましたねえという事なのですから、「三重野時代の逆をやる」となりますとそれは単に「バブル発生をさせてそれをやり過ぎてしまう」という国民厚生的に誰得の展開になるだけの話で、そらまあバブルでも起きてくれれば金融業従事者としては飯の種が飛躍的に拡大してウハウハなんですけれども、それで本当に良いんですかねえというような考察は無いのですねこの先生と大変に心の温まる文章でございました。


・竹中平蔵先生が変わり身モードに入っておられます

とまあそんな中で竹中平蔵先生のブルームバーグインタビュー記事が異彩を放つのは凄く気になるこのあたくしなのでございます(^^)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIUYH06TTDT301.html
竹中氏:「黒田日銀」は脱デフレ好機、財政再建失敗なら100円超円安
更新日時: 2013/02/27 14:04 JST

『2月27日(ブルームバーグ):慶應義塾大学の竹中平蔵教授は、政府が日本銀行の新総裁候補に黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を提示する見通しとなったことについて、デフレ脱却の絶好の好機として期待を示す一方、その実現には「政府にも責任がある」とした上で、財政再建が進まなければ円が暴落する可能性があるとの見方を示した。』(上記URLより、以下同様)

デフレ脱却には政府にも責任があるとか急に何か変な物でもお召し上がりになられたのかとおもいましたぞな。

『一方、安倍政権の3本の矢に関しては「1本目の大胆な金融緩和の矢は放たれた。2本目の機動的な財政政策は中長期の財政再建シナリオが示されていない。3本目の成長戦略はまだ始まったばかりで、どうなるか全く分からない」と指摘。2%の物価目標を達成する上で「困難があるとすれば、むしろ政府の構造改革が進まないことだ」と語った。』

>2%の物価目標を達成する上で「困難があるとすれば、むしろ政府の構造改革が進まないことだ」
>2%の物価目標を達成する上で「困難があるとすれば、むしろ政府の構造改革が進まないことだ」
>2%の物価目標を達成する上で「困難があるとすれば、むしろ政府の構造改革が進まないことだ」

・・・・・・・・・・まあ今竹中先生そっちの会議をやっているからというのもあるかもしれませんが、「デフレは貨幣的現象」と以前から全力で言っていた平蔵先生急に何という話を。

『為替相場では「当面は1ドル=95円くらいまで戻っても全く不思議はない」としながらも、「3本の矢に失敗しデフレを克服できなければ、また円高に振れるだろう。しかし、逆のリスクもある」と言明。「金融を思い切って緩和し、財政も拡大したが、財政再建ができなかったということになると、今度は行き過ぎた円安に振れる可能性もある。100円を超えて相当の円安になることは十分あり得る」と述べた。』

『竹中氏は「一気にそこまで行ったら、円がフリーフォール(暴落)というイメージになってくる。これは良い円安とは言えないだろう」と指摘。「賃金は遅行指標なので、輸入物価の上昇を通じて物価の上昇が速くなると、賃金との差が開き、国民の実質生活水準を下げる。そうなると安倍内閣に対する政治的な支持を弱めることになる」と語った。』(以上引用は上記URLより)

・・・・・・・・・良く言えば先見性が高く、悪態をつけばヤバイと思った時の逃げ足が凄まじく速く政治的立ち回りがお上手としか申し上げようがない竹中大先生様がこのようなヘッジを打ち出した、という事に対しては、いわゆる「炭鉱のカナリア」動向という事で注意すべきなのではないか、などと思ってしまった昨日のひとときでありました(^^)。


ということで今日は雑談ばっかりでどうもすいませんでした。





2013/02/27

お題「逆さ絵議会証言を寝起きで斜め読み/0.7%割れキタコレ/その他悪態成分入り雑談の冒頭だけ」

英国がマイナス金利がどうのこうのというニュースがありましたが、英国でも量的緩和のフレームワークから別の手法を考えるとかいう発想も出ているのかなあとか思う(量的緩和状態になっている所からマイナス金利導入したらマネタリー的には引き締めにならざるを得ない(金利的には緩和かもしれないけれどもマネタリーが引き締めなので本当に緩和になるのかは怪しいですよね)ですから)のは多分この辺だと思うのだがさすがにこれは寝起きでは読めんので週末の宿題。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/038.aspx
News Release - Current issues in monetary policy - speech by Paul Fisher

○逆さ絵大先生の議会証言

市場の反応的にはこんな感じらしいです。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIU21C6S972T01.html
バーナンキFRB議長:資産購入は効果がリスク上回る
更新日時: 2013/02/27 04:06 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIUCTB6S972801.html
米国債:10年債、1カ月ぶり低利回り−FRB議長がQE擁護
更新日時: 2013/02/27 04:15 JST

でまあ肝心の議会証言はこちら。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20130226a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20130226a.pdf

Chairman Ben S. Bernanke Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, Washington, D.C.
February 26, 2013

全力で斜め読みしてみた。3つのパートがあって経済状況についてと金融政策についてと財政政策に関する見解という内容です。

・経済状況について

『Current Economic Conditions』から。

『Since I last reported to this Committee in mid-2012, economic activity in the United States has continued to expand at a moderate if somewhat uneven pace.』

経済は緩やかに拡大しているが一様な改善では無い(=改善が遅れている所も見受けられる)とまあいつも通りの話。

『In particular, real gross domestic product (GDP) is estimated to have risen at an annual rate of about 3 percent in the third quarter but to have been essentially flat in the fourth quarter. The pause in real GDP growth last quarter does not appear to reflect a stalling-out of the recovery. Rather, economic activity was temporarily restrained by weather-related disruptions and by transitory declines in a few volatile categories of spending, even as demand by U.S. households and businesses continued to expand.』

昨年の3Qの実質GDPは年率3%でしたが、4Qはほぼゼロ近傍でしたが、これは回復の停止を意味するのではなく一時的要因によるものです。

『Available information suggests that economic growth has picked up again this year.』

最近の経済指標をみると今年は経済が再度ピックアップするでしょう、とまあこの辺特段強くも弱くもない話ですな。次のパラグラフは労働市場。

『Consistent with the moderate pace of economic growth, conditions in the labor market have been improving gradually.』

労働市場は徐々に改善しつつあります。

『Since July, nonfarm payroll employment has increased by 175,000 jobs per month on average, and the unemployment rate declined 0.3 percentage point to 7.9 percent over the same period. Cumulatively, private-sector payrolls have now grown by about 6.1 million jobs since their low point in early 2010, and the unemployment rate has fallen a bit more than 2 percentage points since its cyclical peak in late 2009.』

とまあここまでの改善についての話をしておりますが・・・・・・・

『Despite these gains, however, the job market remains generally weak, with the unemployment rate well above its longer-run normal level.』

これらの改善はありますが労働市場は全体的に依然として弱く、失業率はロンガーランの通常レベルを大幅に上回って推移していますと、まあそりゃそうなのですが労働市場の弱さを指摘。

『About 4.7 million of the unemployed have been without a job for six months or more, and millions more would like full-time employment but are able to find only part-time work.』

毎度おなじみの長期失業者の多さとパートタイム労働者の雇用の方が伸びているがフルタイム労働者の方はイマイチという話をしていますな。

『High unemployment has substantial costs, including not only the hardship faced by the unemployed and their families, but also the harm done to the vitality and productive potential of our economy as a whole. Lengthy periods of unemployment and underemployment can erode workers' skills and attachment to the labor force or prevent young people from gaining skills and experience in the first place--developments that could significantly reduce their productivity and earnings in the longer term. The loss of output and earnings associated with high unemployment also reduces government revenues and increases spending, thereby leading to larger deficits and higher levels of debt.』

でまあこの辺が失業率高止まりのコストで、その結果として労働者のスキルが低下することによって社会全体の生産性が低下しますとかまあその手の説明。

次のパラグラフが物価の話ですが、こちらはあっさり味になっていまして(マンデート水準にいるのですから当たり前ですが)、まあこの説明は労働市場の改善の重要性についてのウェイトが高くなっておりまして、ここもと1月のFOMCとかで出ているようなQEが思ったより早く終わるんじゃネーノ的な市場の動きに対してバランスを取りに行ってるなあというのを感じました。

『The recent increase in gasoline prices, which reflects both higher crude oil prices and wider refining margins, is hitting family budgets. However, overall inflation remains low. Over the second half of 2012, the price index for personal consumption expenditures rose at an annual rate of 1-1/2 percent, similar to the rate of increase in the first half of the year. Measures of longer-term inflation expectations have remained in the narrow ranges seen over the past several years. Against this backdrop, the Federal Open Market Committee (FOMC) anticipates that inflation over the medium term likely will run at or below its 2 percent objective.』

でまあ物価の所はご覧のように普通の話をしているのですが、冒頭で直近のガソリン価格が家計を圧迫しているというのを入れておりまして、この辺がまあ芸が細かいなあと思われる所。議会が燃料費上昇で物価ガーとか言うのに先回りしているとかお洒落です。

ということでまあ経済に関しては改善しているという話をしながらも労働市場の話をメインにして慎重な見方っぽい言い方をしているという所ですかねえ。


・金融政策に関して

『Monetary Policy』ですが、そらまあ今から出口政策どうのこうのとか言い出さない罠とは思いましたが、まあバランス取りに行ったらこんなもんじゃないですかねえ、とは思いましたがどうでしょうかね。

最初はこれまでの金融政策の説明なのでまあどうでも良いのですが引用だけしておきます。

『With unemployment well above normal levels and inflation subdued, progress toward the Federal Reserve's mandated objectives of maximum employment and price stability has required a highly accommodative monetary policy. Under normal circumstances, policy accommodation would be provided through reductions in the FOMC's target for the federal funds rate--the interest rate on overnight loans between banks. However, as this rate has been close to zero since December 2008, the Federal Reserve has had to use alternative policy tools.』

でまあそのツールということで最初にフォワードガイダンスの説明をしておりまして、まあ既にそういう政策フレームになっているのは明らか(QE縮小の方が利上げより前に来るので)なのですが、ここの説明でも先にフォワードガイダンスの話をしておりまして、まあどさくさに紛れて米国の非伝統的金融政策に関してはQEで示されるバランスシート政策よりもフォワードガイダンス政策による時間軸効果による金利抑制を重視するというスタンスにしらっと変更されている、というのが判ると思います(が未だに「量ガー」の人が起用されてしまう極東の国があるのは何なんでしょうねえ・・・・・)。

『These alternative tools have fallen into two categories. The first is "forward guidance" regarding the FOMC's anticipated path for the federal funds rate. Since longer-term interest rates reflect market expectations for shorter-term rates over time, our guidance influences longer-term rates and thus supports a stronger recovery. The formulation of this guidance has evolved over time. Between August 2011 and December 2012, the Committee used calendar dates to indicate how long it expected economic conditions to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate. At its December 2012 meeting, the FOMC agreed to shift to providing more explicit guidance on how it expects the policy rate to respond to economic developments. Specifically, the December postmeeting statement indicated that the current exceptionally low range for the federal funds rate "will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored."』

ここまでは現在のフォワードガイダンスを実施するまでの流れの話なのでどうでも良い。

『An advantage of the new formulation, relative to the previous date-based guidance, is that it allows market participants and the public to update their monetary policy expectations more accurately in response to new information about the economic outlook.』

カレンダーベースのガイダンスと比較した利点の話で、市場の経済の見方によって時間軸が自動的に伸縮するというのがメリットと。

『The new guidance also serves to underscore the Committee's intention to maintain accommodation as long as needed to promote a stronger economic recovery with stable prices.』

新しいガイダンス(=失業率と物価の閾値がついた方式)は物価安定の下での経済のより強い回復がもたらされるまで金融緩和を継続するという事を明確化するのに効果があるとも。

そしてその次のパラグラフが皆さん注目のQEの話である。

『The second type of nontraditional policy tool employed by the FOMC is large-scale purchases of longer-term securities, which, like our forward guidance, are intended to support economic growth by putting downward pressure on longer-term interest rates.』

large-scale purchases(LSAP)って言い方この前のプレコンでしてなかったなあと思うので久しぶりに出会った感が(^^)。

『The Federal Reserve has engaged in several rounds of such purchases since late 2008. Last September the FOMC announced that it would purchase agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month, and in December the Committee stated that, in addition, beginning in January it would purchase longer-term Treasury securities at an initial pace of $45 billion per month. These additional purchases of longer-term Treasury securities replace the purchases we were conducting under our now-completed maturity extension program, which lengthened the maturity of our securities portfolio without increasing its size. The FOMC has indicated that it will continue purchases until it observes a substantial improvement in the outlook for the labor market in a context of price stability.』

ということでこのパラグラフは従来行った政策の説明だけでございました。次のパラグラフに続く。

『Highly accommodative monetary policy also has several potential costs and risks, which the Committee is monitoring closely.』

極めて緩和的な金融政策には潜在的なコストやリスクがありますFOMCは注意深くモニターしてますよというのがこのパラグラフのお話。

『For example, if further expansion of the Federal Reserve's balance sheet were to undermine public confidence in our ability to exit smoothly from our accommodative policies at the appropriate time, inflation expectations could rise, putting the FOMC's price-stability objective at risk.』

バランスシートをでかくし過ぎると出口政策が難しくなるとの見方からインフレ高進への懸念が高まるというリスクとな。

『However, the Committee remains confident that it has the tools necessary to tighten monetary policy when the time comes to do so.』

引き続き必要な場合には有効な引き締めツールがあります(キリッ)だそうで。

『As I noted, inflation is currently subdued, and inflation expectations appear well anchored; neither the FOMC nor private forecasters are projecting the development of significant inflation pressures.』

そもそもインフレが抑制されていますしインフレ期待もアンカーされています(キリッ)とな。

んでもって次のパラグラフはあたくし的には「へー」と思ったのですが。

『Another potential cost that the Committee takes very seriously is the possibility that very low interest rates, if maintained for a considerable time, could impair financial stability.』

これって今あたくしが絶賛ネタシリーズにしているスタイン理事講演ネタではないかと思ったらまさにその話が続く。

『For example, portfolio managers dissatisfied with low returns may "reach for yield" by taking on more credit risk, duration risk, or leverage.』

キタコレ!ではありますが、その後にこの説明の火消し(?)モードに入る逆さ絵おじさん。

『On the other hand, some risk-taking--such as when an entrepreneur takes out a loan to start a new business or an existing firm expands capacity--is a necessary element of a healthy economic recovery. Moreover, although accommodative monetary policies may increase certain types of risk-taking, in the present circumstances they also serve in some ways to reduce risk in the system, most importantly by strengthening the overall economy, but also by encouraging firms to rely more on longer-term funding, and by reducing debt service costs for households and businesses.』

と、これでもかとリスクテイクの動きが起こる事のメリットを説明しているのがチャーミングというものです。

『In any case, the Federal Reserve is responding actively to financial stability concerns through substantially expanded monitoring of emerging risks in the financial system, an approach to the supervision of financial firms that takes a more systemic perspective, and the ongoing implementation of reforms to make the financial system more transparent and resilient.』

ただまあこれらの金融不安定化のリスクに関しては今後もモニターしますよという説明もしています。

『Although a long period of low rates could encourage excessive risk-taking, and continued close attention to such developments is certainly warranted, to this point we do not see the potential costs of the increased risk-taking in some financial markets as outweighing the benefits of promoting a stronger economic recovery and more-rapid job creation.』

低金利の長期化は過剰なリスクテイクをもたらすのはその通りでその状況はきちんとモニターはしますが、現状ではそれらのリスクは金融緩和政策のメリットを上回る、とは言っているのですが、何気にここを見ると「the increased risk-taking in some financial markets 」とか言ってるのがこれまたほほーという感じでして、まあスタイン理事の講演での説明って必ずしも極端な少数意見という事では無いのかねえとか思いますと明日以降(既に今日は続きやるの無理と認識中^^)のネタ継続に意欲が湧くというものであります(^^)。

ということで、まあQEを減らすだの終わらせるだのの示唆をするとか当然ながら有り得ない話ではあったと思いますが、何か別に無茶苦茶好感する話でも無いような気がします(見せ方がいつものようにお上手なのですが、これ単にバランス取った説明をしているだけで、何気に緩和長期化のデメリットの話も結構入れているように見えますが・・・・・・・)。

このコーナー最後のパラグラフは「正常化した時のバランスシート毀損」という話でこれは実は1月にペーパーが出ていたりするのですがめんどいのでまだ読んでいないorz

『Another aspect of the Federal Reserve's policies that has been discussed is their implications for the federal budget.』

ほほう。

『The Federal Reserve earns substantial interest on the assets it holds in its portfolio, and, other than the amount needed to fund our cost of operations, all net income is remitted to the Treasury. With the expansion of the Federal Reserve's balance sheet, yearly remittances have roughly tripled in recent years, with payments to the Treasury totaling approximately $290 billion between 2009 and 2012.』

現状はバランスシートでの収入を連邦政府に納付しておりますが・・・・・・

『However, if the economy continues to strengthen, as we anticipate, and policy accommodation is accordingly reduced, these remittances would likely decline in coming years.』

緩和を減らせばバランスシートからの収入が減りますよと。

『Federal Reserve analysis shows that remittances to the Treasury could be quite low for a time in some scenarios, particularly if interest rates were to rise quickly.』

シナリオのリンクは脚注にありますが
http://www.federalreserve.gov/pubs/feds/2013/201301/201301pap.pdf
です。

『However, even in such scenarios, it is highly likely that average annual remittances over the period affected by the Federal Reserve's purchases will remain higher than the pre-crisis norm, perhaps substantially so.』

そうっすか。

『Moreover, to the extent that monetary policy promotes growth and job creation, the resulting reduction in the federal deficit would dwarf any variation in the Federal Reserve's remittances to the Treasury.』

まあそらそうなのですが、金融政策で成長と雇用創出が出来れば税収が上がるんだからFEDからの収入が減っても問題ないでしょまあ細けぇこたあいいんだよ!というのは仰せの通りではありますな。


で、たぶん逆さ絵先生的にその話をしたかった財政の話の引用はこちら的には興味の順位が下がるので引用割愛と言う事で(^^)。

#うむ、思ったより引用が長くなってしまいました


○市場雑談メモ

本当は上記の逆さ絵証言はあっさり終わらせるつもりだったのですが、引用しているうちについこのあたくしノリノリになってしまって気が付いたら時間と量がアレになって参りましたので以下メモだけ。

・10年0.7%割れとな

昨日はイタリアクオリティ炸裂によって10年は0.7%割れでスタートして推移してイールドカーブはブルフラットするわ、何か知らんが短国がアホのように買われて前日0.07%水準に下がってアチャーとか言ってた3か月TBが0.06%まで進むわ、ショートタームの短国(は3か月よりも金利が高かったりする)でも金利が低下するわ、モノナシ芳一になってしまったせいかGCレートは0.09%台に堂々の低下となるわと、まあ見事に全年限に買いが入りしかもブルフラットの図となりました。オソロシス。


・ということで今も書いたが短国

短国が今申し上げたようにこの2日でいきなり金利低下なのですが、まあこちらは日銀の買入が入っている影響かちょっと訳の分からない買いが入るといきなり金利がどどーんと低下して、その買いが止まって日銀がちょっと買入をスキップすると今度は金利がどよよーんと上昇するという感じで見事なスイング状態。その間業者的にはファンディングコストがずーっと逆鞘な上に、商品の特性上ショートセールはさらにコスト高になるので、需給に振り回されるわ在庫はもってりゃコストだわとかもうナムナムとしか申し上げようがございません。

まあ日銀買入が増えてくるとスイングしないで低位張り付きになるのかもしれませんが、しかしまだ買入残高が12.2兆円(2月20日の残高ベース)程度でこの有様となっておりまして、これから買入を更に拡大していくわ、固定金利オペがどうせ未達になるので恐らく10兆円はその分の穴埋めをしないといけないわ(あまり根拠は無いけれども肌感覚的に言えば固定金利オペは15兆円程度はベースのニーズがあると思うので25兆円の目標を10兆短国に振り替えれば良いのかなあとか)と考えますと、ここはヤケクソで10兆円位為替介入して頂いて絶賛FB大発行をして頂きたい物であるとかしょうも無いことを考えてしまいますぞなという所ですな。

以上ただのメモでした^^;


○悪態雑談を書こうと思ったが時間がねえので備忘だけ

いやまあ実を申しますと岩田規久男大先生の「当座預金残高77兆円で2%」云々の記事ってベンダーのヘッドラインにはあったのですが、その内容を探そうとネットを検索しても引っかからず、大体その趣旨の話があると思ったのですが、それは微妙に謎のサイトにインタビュー記事として絶賛掲載されていたのですが、このサイトってどこぞの運用助言会社の関連サイトなのでそこのサイトに誘導するのも如何なものかと思ってスルーしていたのですが、やまもといちろう氏などのスコープに引っ掛かったようで何かご存知の方も増えたようなのでURLつけておきますね(上記の理由によりリンクはしない)。

http://media.yucasee.jp/offshore-news/posts/index/241?la=0005
学習院大学岩田規久男教授直撃インタビュー
インフレ率2%は来年半ばに達成可能=学習院大学岩田規久男教授

1月30日のインタビューのようですが、中々香ばしい内容が続いておりましてアレの風格を漂わせておりますが、日銀の当座預金残高はたぶんこの調子で買入が続いて札割れが起きない限りにおいて、年内に80兆円(こちらでは77兆円じゃなくて70−80兆円という話ですね)にはたぶん楽勝で達するという事ですから、なんと来年半ばにインフレ率2%が達成可能だそうです。いやあ良かったですねえ(棒読み)。何でしたらこの際6月までに前倒しでジャンジャン買っていただけるともっと早く達成できるんじゃないですかねえ(棒読み)。

という話やその他の話でもしようと思ったのですが時間が無いので以下明日以降に^^;








2013/02/26

お題「新正副総裁ノミネート関連雑談/スタイン理事講演続き:米国のクレジット市場に「利回りの追及」の動きがあるとな」

イタリアクオリティ・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPTJE91O00U20130225
イタリア総選挙、中道左派が大きくリード=出口調査
2013年 02月 26日 00:07 JST

http://jp.reuters.com/article/idJPTJE91O01E20130225
伊総選挙、上院はベルルスコーニ氏の中道右派が優勢=テレビ局予想
2013年 02月 26日 01:16 JST

http://jp.reuters.com/article/idJPTJE91O02J20130225
イタリア総選挙、上院で過半数獲得する勢力ないもよう=RAI
2013年 02月 26日 04:36 JST

・・・・・・・・・・・・結局どうなりますねんという感じですが、お蔭でユーロが派手派手に動いてドル円もNYで高安4円近くあったとかワロスワロス。


○とりあえず市場メモ(黒田総裁ノミネート関連)と雑感

黒田総裁に岩田規久男副総裁ノミネートな上にTPP参加もおまけに出た事からとりあえず株高で反応しましたが為替は朝は94円台後半とかまでやっていましたけれどもその後は押して94円台前半で推移。

んでもって債券市場は全年限堅調の巻となりまして、まあ要は国債または短期国債の買入が更にどどーんと実施されるでしょうという順当な予想に基づくものなのと、まあ極端に円安にぶれなかったので(最近株高を受けてもあんまり債券が反応しない)まずは買いで反応という形になりましたな。

とりあえず国債とか短期国債の買入が拡大されるというのは予想されるのですが、それがAPPの買入国債の5年までの延長を伴う買入の拡大とかになるのか、それとも更に短期国債を買うという事になるのか、はたまた輪番拡大でより長い所の買いになるのかというような事を考えた上で、「まあ細けぇこたあいいんだよ!」と言う結論になった(のかどうかは知りませんが^^)風情で5年は0.120%(1毛強)になるわ、3MTBは0.70%になるわ(先週末は0.7%台後半)、10年は0.705%(2毛強)の引けだけど場中は0.700%まで出合うわと堅調で、超長期も引けは1.5毛強とかでございましてまあブルフラットまでは行きませんでしたが超長期も付いて行きましたぞなもしとゆー展開。

まあ何ですな、黒田さんに岩菊さんという事で国債の買入は増えるでしょうなあという話になりますので、ますます財政マネタイズの様相が濃くなる訳ですが、これが武藤さんだと同じ国債買入拡大にしても比較的マイルドに行くのかなあとは思われたのですが、黒田さんの場合どう見ても金融政策および調節の実務的な面を把握しているとは現状では思えませんので、制約条件を無視して突っ込んで行くかのような話をするリスクはありますので、当初反応としては財政マネタイズって債券市場としては買いで反応してイールドカーブはブルフラットという事になるのでしょう。ただまあ問題はその賞味期限でありまして、賞味期限のあるうちに明確な形での景気上向きとか成長戦略の示現とかが無いと、無限に財政マネタイズは出来る訳では無いのでどこかで爆発する訳ですが、その爆発へのパスが速まるリスクはあるでしょうなあと言う事で。


○さらに雑談は続く

ではまあその辺のリスクってどの辺にあるのかねという所ですが、ポイントとしては新任のうちお二方が明らかに金融政策の実務的な問題とか調節の技術上の問題とか短期金融市場とか全然ご理解頂いているとは思えん(大体からして金融市場の人間だって分かっていないで適当な与太をほざいている何とかストが続出している位ですから、黒田さんが判っていないのは仕方ないのですが、金融政策論をぶっている学者先生が理解しているように見えないのが極めて残念なのですが岩菊さんは岩菊さんなので致し方なし)とゆーのがリスクの1番目で、もう一つのリスクは「市場の期待が異様に高い」ということではないかと思うのですよ。


・ということで第一のリスク顕在化は「実務を知る前に下手にハードルを上げること」でしょうなあ

と言う事でしつこく申し上げておりますように、大体からして黒田さんにしても岩菊さんにしても金融政策に関してああだこうだ仰せの話を見ますと金融調節の実務的な話とかフィージビリティーとか全然考えてないだろうという話を平然とするところを見ますとその辺の話って当然のごとくご存知ではない訳ですな。


でまあ黒田さんがその辺ご存知では無いのは(岩菊さんは何とかならんのかと思うが)現時点では致し方ない事なのでまあそれはそれで今後理解して頂ければとは思うのですけれども、問題はその辺を理解する前に実務的にこれは出来る出来ないという話ってえのがある中で、それを丸無視して変に市場の期待に応えようとして無茶振りな事を言い出してハードルを高めてしまい、無理な事をするようになり、それが更に市場の無理無体な期待を呼んで無理を重ねて・・・・・・・という事になりますとマズーな話になる訳でしな。

まあ最初のうちは先程も申し上げたようにゴルディロックスよろしく無事に回るかも知れないのですが、いつまでもあると思うなゴルディロックスでございまして、どこかで爆発した場合には恐らく取り返しのつかない事になってしまうでしょうなあとゆー所で、その辺のハードルを自分で上げてしまって自分の首を絞めるとナローパスが更にナローパスとなってキャットウォーク状態になるんじゃねえのという所ですな。



・大体からして「自分の尾を追う犬(byブラインダー元FRB副議長)」の傾向が既にある訳で・・・・・・・

大体からして安倍ちゃん登場からの流れって、まあ良く言えば市場の期待を盛り上げながら進めているという事ではあるのですが、一歩引いて見ますと市場の反応に一々振り回されている節もある訳でございまして、何かとにかく市場に円安燃料を投下しないと!ってな感じで発言がホイホイと飛び出してしまうという傾向があるように見えるのですよね。まあ最近はG7やG20で五寸釘を思いっきり差されたようでやっと大人しくなりましたが。

でまあその安倍ちゃんご指名となられます所の黒田さんと岩菊先生ですけれども、何かこのお二方も市場の期待とやらに応えながら期待をコントロールして行こうってえ事になった場合に、既に「自分の尾を追う犬」になりつつある状況が更に加速され、その結果として将来において金融の大きな変動要因を作ることになるというのもこれまた懸念される所でございます。

大体からして市場のクレクレというのは一旦はじまると留まる所を知らないですし、大体からして市場がクレクレする事が本当に国民厚生的に望ましい事なのかというと市場はそんなこたあ碌に考えないでクレクレをする訳でありますから、そのクレクレに一々付き合っていたらあらぬ方向に政策を加速させてしまい、気が付いた時には取り返しのつかない事になってしまうリスクというのがこれまたオオアリクイとなる訳で、魔弾の射手の終幕を迎えるとかそんな事にならないように願いたいものです。


・「見せ方」とか「気合の出し方」が上手い組み合わせになって役割分担できると良いですね(棒読み)

まあなんですな、総裁が金融政策実務に関しても金融調節実務に関しても堪能で安定感抜群の武藤さんだったら岩菊先生がやんちゃな発言やら信念(ただし金融調節実務的に無茶振りにも程がある^^)の発言を少々行ってもネタで済みますし、黒田さんとて賢いお方でしょうからちゃんと実務を把握すればその実務と政策のべき論とのバランスを取りながら、岩田さんをある意味で鉄砲玉として使いながら「気合」を見せて行く、という形での政策運営が出来るとは思う(というか思いたい)のであります。

まあ気合とかやる気とかその辺の見せ方がはがゆいはがゆい博多人形(などというネタを知っているのはジジイの証拠)であったというのはその通りでありますので、まあその辺ってキャラの作り込みよう(とか言うとやや言い方が不謹慎ですが)で上手く回せると良いなあとか思うのですが、黒田さんがそういう所をうまい事やってくれるのかどうかは今後に期待したいものの、先ほども申し上げたように市場の期待が下手に高い上にそれを当事者が自覚しているというか意識しているだろうなあとか思うと、そううまい具合に行くのかと言えばカオスになるんじゃネーノという懸念がある(あるからさっきからああだこうだと思いついた順に悪態を書いているのですが)次第ですし、大体からして岩菊先生がその辺の役割を理解してある意味プロレス的に突っ込んで行く、というような芝居の出来るような腹の黒い方では無いと思われる訳でして・・・・・・・・・・



・規久男先生ェ・・・・・・・・・

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324838304578324871862202496.html
2013年 2月 25日 10:07 JST
日銀副総裁への就任要請、謹んでお受けする=岩田規久男氏

『【東京】学習院大学の岩田規久男教授(70)は25日、安倍晋三首相から日銀副総裁への就任を要請されていることを明らかにした。岩田氏は記者団に対し、安倍氏に「謹んでお受けする」と回答したと述べた。先週の安倍氏の訪米前に打診されたという。』(上記URLより)

と言う事でまだ正式提示の前にこんな話をして良いのかなあとか思っていたら早速こんなのが出てワロタ。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE91O01V20130225
日銀総裁人事を週内提示、野党に全力で理解求める=官房長官
2013年 02月 25日 12:44 JST

『黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁に日銀総裁、岩田規久男学習院大学教授に副総裁への就任をそれぞれ打診したとの報道に関しては「まったくその段階ではない」と語った。菅長官は日銀正副総裁人事に関する報道が相次いでいることについて「正式に固まったものではない。(国会に人事案を)提示していないし、白紙だ。先回りのコメントは控える」と述べた。岩田氏が、安倍晋三首相の訪米前に打診があったと発言していることに対しても「正式な打診ではない」とした。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・・規久男先生ったら嬉しいのは判るんで、まあ真っ正直で純粋な方なんだなあとは思うのですけれども、こういうのって仮に話があっても「お作法」としての手続き論がある訳で、この辺のプロトコルを理解しないでいきなり平場で話をおっぱじめてしまうとかっていうのがもう既に大丈夫かこの先生という風情を盛大に醸し出している訳ですな。

まあ今回はご愛嬌で済むでしょうから問題ないとは思いますが、この調子のままで突き進むと、というかこの先生突き進みそうな悪寒が全力でするのが極めてアレなのですが、そうなってしまいますと何かもう盛大にブラックアウト期間中にペラペラしゃべるとか、MPMの内容についてエンバーゴが掛かっているのにペラペラしゃべるとか、大変に素敵なやらかしを始めそうな気がして今からある意味楽しみ(別に楽しくは無いが)でございます。


・MPMは大喜利になるんでしょうか

ということで実務上の件についてワカランチンの方がヒラ審議委員ではなく総裁副総裁という立場で2名も入ってくる上に、総裁ってMPMの議長でもある訳ですが、さてこのワカランチンの2名様、うち黒田さんは今後改善するかもしれませんが、まあ岩菊先生はその辺聞く耳持たないでしょうから、そうなりますと今後のMPMでの議論が大喜利状態になってしまうのではないかというのが懸念というか傍から見てたらある意味面白いのかもしれませんなあという所で。

いやね、大喜利の仕切りをやる司会の歌丸師匠がちゃんと安定感あれば良いのですが、規久男先生と一緒になって司会(総裁)が暴れだしてしまうと収拾がつかなくなる訳ですし、それがMPM内に留まっていればまだしもそのまま平場にホイホイ出てくるとかになると物凄い勢いで不安定要素をまき散らす事になるのでそれはご勘弁賜りたいと思うのですよね。

つまり大喜利のキャラクターは(それなりに皆さんに素質はあるのでしょうが^^)あくまでもお約束のキャラ付けとして進行しているのでありまして、例えば木久扇師匠の与太郎キャラだって師匠がリアル与太郎だったらそもそも大喜利が成立しなくなるとか考えますとMPM大喜利が大喜利じゃなくてただの不毛な論争となるんじゃないかとか思う訳です。どうなることやらガクガクブルブルではございますな、うんうん。


#ということでまあ何の役にも立たない雑談大会で恐縮至極


・おまけ:自分の尾を追う犬あるいは市場に振り回されるという意味ではこのニュースも象徴的

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130226/t10015781511000.html
日銀人事 民主に容認論広がる
2月26日 4時26分

まあ容認するのは当然でしょとか思いますが、その中で気になるのはこの部分。

『そして、「市場との対話や組織の運営の能力など党の基準に合致している」とか「市場が好意的に受け止めているなかで脱官僚に固執し、反対ばかり繰り返せば、国民の理解は得られない」などと容認する意見が広がっています。』(上記URLより)

>市場が好意的に受け止めているなかで
>市場が好意的に受け止めているなかで
>市場が好意的に受け止めているなかで

・・・・・・・・・・・・いやだから市場が好意的に受け止めているから反対しないとか、それってただの市場のクレクレ促進に他ならず、そのクレクレは単なるクレクレでは収まらず、いずれエスカレートすると暴力になるんですけどねえと思うのですけど。

市場丸無視も困りますがここまで市場の反応に見事に影響される政治っつーのもそれはそれで末恐ろしい物を感じるのですけどねえ・・・・・・・・・・



○スタイン理事講演ネタは更に続く(その4):米国のクレジット市場の過熱についての考察

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.pdf

先般のFOMC議事要旨(すいません他の読んでたらこの週末にまだ全部読めてません)でもクレジット市場の過熱云々の話があった(実はその前からFOMCのスタッフ報告の中で金融のインバランスに関する報告が追加されるようになっている)事からこの講演が再度話題になっているようでせっせと読んだ俺様ドヤ顔の巻ですな(と自画自賛)。

つーことで『Recent Developments in Credit Markets』というキタコレの所から。

『With these remarks as a prelude, what I'd like to do next is take you on a brief tour of recent developments in a few selected areas of credit markets.』

でまあこのあたくし読んでて「as a prelude」というのを見て今まで読んだ8ページはナンダッタンダと一瞬椅子からこけそうになりましたが、先日来ネタにしておりますように実は前座部分もかなりオモシロスだった訳ですな。

『This tour draws heavily on work conducted by the Federal Reserve staff as part of our ongoing quantitative surveillance efforts, under the auspices of our Office of Financial Stability Policy and Research.』

だそうです。


・ジャンク債やレバレッジ市場などに「利回り追求」の動きが見られるキタコレ

『The first stop on the tour is the market for leveraged finance, encompassing both the public junk bond market and the syndicated leveraged loan market.』

ということで公募のジャンク債市場やシンジケートレバレッジローン市場に関してが最初です。

『As can be seen in exhibit 2, issuance in both of these markets has been very robust of late, with junk bond issuance setting a new record in 2012. In terms of the variables that could be informative about the extent of market overheating, the picture is mixed. On the one hand, credit spreads, though they have tightened in recent months, remain moderate by historical standards. For example, as exhibit 3 shows, the spread on nonfinancial junk bonds, currently at about 400 basis points, is just above the median of the pre-financial-crisis distribution, which would seem to imply that pricing is not particularly aggressive.』

ということで図2と図3の所になるのですが、ハイイールド社債の発行やシンジケートローンの発行についての図2を見ますと確かに足元で残高は拡大をしておりまして、それもリーマンショック前の水準を遥かに上回っているという素敵な数字。一方でハイイールド債のスプレッドに関してはリーマンショック前の水準までは低下していません(のでそこまで過熱はしていません)、というのが図3であります。


『On the other hand, the high-yield share for 2012 was above its historical average, suggesting--based on the results of Greenwood and Hanson--a somewhat more pessimistic picture of prospective credit returns. This notion is supported by recent trends in the sorts of nonprice terms I discussed earlier (exhibit 4).』

とはいえ、その条件に関する部分で過熱が見られるという話がキタコレでして、これは前座で話をしていた「非価格要因に示される過熱」でありますな。

『The annualized rates of PIK bond issuance and of covenant-lite loan issuance in the fourth quarter of 2012 were comparable to highs from 2007. The past year also saw a new record in the use of loan proceeds for dividend recapitalizations, which represents a case in which bondholders move further to the back of the line while stockholders--often private equity firms--cash out. Finally, leverage in large LBOs rose noticeably, though less dramatically, in the third and fourth quarters of 2012.』

ということであたくしの詳しくない用語がバカスカ出てきますが(汗)、図4にありますように、PIK証券の発行、コベナントライトローンの発行、 「dividend recapitalizations」ローン(最早良く判りませんがどうも株式よりも劣後するローンとかそういう事なのこれ?)とか、LBOとか、その手の条件が借り手に有利なローンや証券の発行がホイホイ増えておりましてその水準はリーマンショック前を上回る水準になったりしてますぞなもしという話がキタコレです。

『Putting it all together, my reading of the evidence is that we are seeing a fairly significant pattern of reaching-for-yield behavior emerging in corporate credit.』

>we are seeing a fairly significant pattern of reaching-for-yield behavior emerging in corporate credit
>we are seeing a fairly significant pattern of reaching-for-yield behavior emerging in corporate credit
>we are seeing a fairly significant pattern of reaching-for-yield behavior emerging in corporate credit

キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!

『However, even if this conjecture is correct, and even if it does not bode well for the expected returns to junk bond and leveraged-loan investors, it need not follow that this risk-taking has ominous systemic implications.』

とは言えこの推計が正しいとした場合でも、現在の状況がシステミックリスクに繋がるとは考えていないというお話。

『That is, even if at some point junk bond investors suffer losses, without spillovers to other parts of the system, these losses may be confined and therefore less of a policy concern.』

それはつまりジャンクボンド市場での損失が発生したとしても、その問題が金融システムの全体的なスピルオーバーにはならないでしょうと言う事です。


・金融システムを巻き込むような事態が起きるリスクは「ファンディング状況」にあり

ということで続き。

『In this regard, one lesson from the crisis is that it is not just bad credit decisions that create systemic problems, but bad credit decisions combined with excessive maturity transformation.』

リーマンショックなどからの教訓は、間違ったクレジット投資判断だけでシステミックな問題が起きる訳では無く、その時に「過剰な期間の変換」が伴うと問題が起こるという事です、つーことで「excessive maturity transformation」とは何ぞやという話ですが・・・・・・・・

『A badly underwritten subprime loan is one thing, and a badly underwritten subprime loan that serves as the collateral for asset-backed commercial paper (ABCP) held by a money market fund is something else--and more dangerous. This observation suggests an idealized measurement construct. In principle, what we'd really like to know, for any given asset class--be it subprime mortgages, junk bonds, or leveraged loans--is this: What fraction of it is ultimately financed by short-term demandable claims held by investors who are likely to pull back quickly when things start to go bad? It is this short-term financing share that creates the potential for systemic spillovers in the form of deleveraging and marketwide fire sales of illiquid assets.』

ということで、サブプライム問題の時に起きたシステミックリスクの話をしておりますが、要するに「長期」で「流動性の低い」運用に対して「短期」で「要求払の性質の高い」調達が見合っている場合にシステミックリスクになりますという話。

しかしこれってそれこそ日本で言えば鈴木商店&台湾銀行のコラボの時にもあったような話で、まあ何と申しますか古典的な話ではあるのですが、そもそも銀行などの商売形態が長短スプレッドを取りに行くような部分があるので、それを全部排除する事もできませんし、まあどの程度をもって過剰と言うのかは難しいなあとは思いますが、じゃあスタイン理事はどの辺を見ているか、という話を引用しだすと時間が無くなりそうなので本日はここで勘弁。



2013/02/25

お題「日銀総裁人事案キタコレ/次の緩和って何するんでしょうかねえ/スタイン理事講演(その3)」

武藤総裁で規久男副総裁ならまああるかと思いましたがこれはちょっと債券市場的にアレな話ではありますが。

○黒田総裁に岩田規久男副総裁とな・・・・・・・・

昨日の夕方時事通信。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013022400093
日銀総裁、黒田氏起用へ=積極緩和派の元財務官−政府(2013/02/24-17:50)

はあそうですかという所ですが、今朝の公共放送と毎日新聞では以下の通り。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130225-00000007-mai-bus_all
<日銀人事>次期総裁に黒田東彦氏固まる 民主内に容認論
毎日新聞 2月25日(月)2時32分配信

『政府は24日、3月19日に退任する日銀の白川方明(まさあき)総裁(63)の後任に、元財務官でアジア開発銀行(ADB)総裁の黒田東彦(はるひこ)氏(68)を起用する方針を固めた。白川総裁と同時に退任する山口広秀(61)、西村清彦(59)両副総裁の後任には、日銀の中曽宏理事(59)と、物価目標論者で学習院大教授の岩田規久男氏(70)を充てる方針。安倍晋三首相は25日の公明党の山口那津男代表との与党党首会談で説明し、週内に国会に提示する。』(上記URLより)

これは中曽さん罰ゲームですなナムナム。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130225/t10015750521000.html
首相 日銀総裁に黒田氏起用の意向
2月25日 4時51分

『安倍総理大臣は、日銀の白川総裁の後任に、アジア開発銀行総裁を務める黒田東彦氏を起用する意向を固め、与党の幹部に伝えました。また、副総裁には学習院大学教授の岩田規久男氏を充てる意向で、25日にも本人から就任の承諾を得て、国会への人事案の提示に向けて、調整を本格化させることにしています。』(上記URLより、以下同様)

とのことですが・・・・・・・

『安倍総理大臣は、日銀の総裁について、大胆な金融緩和を実行するとともに、「国際金融マフィアになり得る能力も重要だ」などと述べ、各国の金融当局のトップなどと渡り合える能力が重要だという考えを示しており、黒田氏が適任と判断したものとみられます。』

だそうですが、先日ネタにしたように黒田さんこんな話をしておりまして、えーっとすいませんこういう発言って基本的に世界の中央銀行におけるメインストリームとだいぶ違うと思うのですけれども本当「各国の金融当局のトップと渡り合える」のでしょうかという懸念ががががが。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE91A01B20130211
ADB総裁の職に満足、日銀人事については答えられない=黒田氏
2013年 02月 11日 17:22 JST

『日銀をめぐっては「グローバルスタンダードである2%の物価目標を掲げたのは非常に画期的で正しい」と評価した。2%達成までに要する期間については「2年ぐらいが適切」との見方を示した。「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論を改めて強調した。なお外債購入は「為替政策であり中央銀行の所管でない」として否定的な見解を述べた。』(上記URLより)

まあ何ですな、岩田規久男先生によれば当座預金残高77兆円だかで期待インフレ率2%が達成できるようですし、黒田さんによれば2年で物価2%達成できるそうですので、まあその叩いた大口を早速履行して頂きたいと存じます(ただしスタグフレーションで達成は却下)が、そんな中で日銀から副総裁になる方は大変です罠と思いますし、大体からして政治との対話とか誰がするのやらとか思うとこりゃまあ前途多難にも程があるわと思うのでした。

#しかしまあ何ですな、モーサテに出ている「債券ディーラー」が黒田さんのことを「バランス感覚」という評をしているのに朝から相当のけぞったんですがorz

岩菊先生はまあずーっとあの調子でしょうけれども、黒田さんの場合はそうは言いましても官僚でいらっしゃいましたので、実際に現実の壁にぶち当たった場合に現実に合わせてどうすべきかという事は考えて無茶苦茶路線に走るという形にはならないんじゃネーノといういうのがまあかすかな期待ではある(岩菊先生は現実がおかしいとか日銀が悪いとか言い出しそうですが^^)のですが、国債管理政策が重要な中で黒田さんのキャリアに理財局がろくすっぽ見当たらないというのも何だかなあ(国際と主税中心)という感じですし、まあ色々と先行きが思いやられる人事呈示ではありますぞな。

景気伴わないで物価だけ輸入インフレで上昇とか、国債管理政策がアチャーになってあばばばばばーとかいうのに成らないようにとか考えると結構なナローパスなのですが、言う事がかなーり極端な方が少なくとも2名執行部に入るという時点で先行き嫌な予感しかしませんですけれども、杞憂である事を心から望みたいと存じますです、はい。


○まあそれは良いが次に何が出来るかと言いましても・・・・・・・という雑感メモ

まあ何ですな、それはそれとして何をしますかという点ですが、これから黒田さんと岩田さんに「現実問題としてこのようになっています」という説明を一からしないといけないとか日銀の中の皆様ご愁傷様でございますとしか申し上げようがございません(しかも岩田さんとか「そのような日銀理論は要らん」とか聞く耳持たなさそうでオソロシス)が、現実問題として何をするんでしょうねえというのを現実問題に落として愚考。

・APPの拡大は「量」を出すなら国債しかないのですが・・・・・・・

まあ量を出せ出せと仰せの岩菊先生などにかかればAPPの拡大という話になると思うのですが、量を出すという話になったらまあ短期国債か長期国債。ただし短期国債は固定金利オペの札割れがあってその分の穴埋めに買入を拡大しないといけない(あたくしの目分量では5兆から10兆程度は固定金利オペの残高が減ると思うのだが)上に、既に金利水準から見るとここから10兆円規模での拡大とかすると短期国債市場自体が壊滅しそうな希ガス。

つーことでまあ長期国債の買入拡大の方がまだマシだと思うのですが、こちらもまた金利水準は中々大変な事になっておりまして、付利下げの思惑があるというのも理由ではあるのですが、2年が0.04%だの基金買入の金利が0.049/0.046だのとこちらもこれまた素敵な状態になっておりまして、こちらはこちらで2年国債市場が壊滅状態。

となりますと物理的に新発のある5年までAPP拡大とかいうのがこの前の1月議事要旨でも出ていましたが、何か5年まで拡大する理由も無理矢理になりそうではありますが、それよりも既に0.13%まで低下している5年を買うんですかそうですかという所な上に、現在の2年国債市場の壊滅状態が5年まで伸びるという事になりますと、つまりは中短期国債市場が壊滅モードになるというお話。

市場が壊滅するとワシらの食い扶持がどうのこうのというおとなのじじょうもありますけれども、まあそれよりも将来的な問題として、市場壊滅によってオファービットが思いっきり開くような市場の流動性壊滅モードになるのがアレな訳でございまして、市場の流動性が落ちると将来の出口政策に無茶苦茶困難が発生する、というか要は出口が出れない=インフレを適正な水準で止めることができないという問題が発生するでしょという話。

かつての量的緩和政策の場合は短期市場は見事に死んでいましたが、そうは言いましても2年だのというような中期国債市場の金利は死んでいなかった(一番潰れている時は瀕死でしたが)上に、まあそもそも物価がゼロからプラスになる段階という時期なのであまり上方に慣性のついていない時点(というのが早かったのではないかという話はさておきまして)での解除だった上に、オペが短期物だったので拡大した流動性を引くのもスムーズだったのですが、今度は足元から今のところは3年、もしAPPを5年まで拡大するとなると5年までイールドカーブが日銀の買入で歪みまくるとゆー状態になるので出口の時に相当ショックを与えないと厳しいでしょうねという希ガス。


・ということで個人的には輪番の方がまだマシとは思っていたのですが・・・・・・

てなわけで、5年までの債券市場を壊滅状態に追い込むよりは、より長い国債の買入である輪番の拡大と銀行券ルールの一時撤廃(条件として物価目標の達成のメドが付くまでというのと、財政健全化への取り組みが継続する事を入れる)と言う方が「より長期の国債を買う」という点と、「銀行券ルールの一時撤廃」という点でインパクト出せるので、少ない量で効果が出るんじゃないでしょうかというのと、5年まで国債市場を壊滅させるのはマズイでしょという事から考えて居た訳ですが、問題は新執行部のうち名前が挙がっている人が債券市場的にあまり常識的とは思えない話をすぐにおっぱじめてしそうな所でして、まあ輪番拡大はこの執行部ですと諸刃の剣どころか村正の妖刀にも程があるので(やるんじゃねーかとは思いますが)少々アレではございますな。


・リスク性資産の購入に関してはどうでしょうかねえ

ETFとかREITとかの買入拡大という話はあるのですが、これは量が稼げないので岩田先生的にどうなんでしょとか思う(つーかそういうのあまり肯定的じゃなかったような気もするんだが)所ではございますが、黒田さんだったらETFの買入拡大とか言い出すかもしれませんな、よー判らんけど。


・まあ問題は付利下げの方ですが

付利を下げますと資産買入の残高を100兆に積み上げるとかゆーのが物理的に困難になりますし、大体からして一旦下げて打ち止めとかそういう訳にも行かない(いったん下げたらゼロになるまで下げの思惑が続く)訳でして、付利の下げというのはまあやったらやったで今度は金融政策の枠組みを全面的に組み替えないといけないのですけれども、まあ問題はその事情についてこれからちゃんと説明してご理解頂けるかという話ですなあという所で。


・オープンエンドの前倒し実施とかですかねえ

他にあるとすればオープンエンド買入の前倒し実施という事くらいしか想像がつかないのですけれども、本当はコミットメントを途中で反故にするのってどうなのかという気はしますが、まあそこは適当にネグってしまうしかないですかねえという所です。ただまあ短国月10兆買入とかやられますと短国市場の金利がどうなるかとか想像したくないのですけれども・・・・・・・

などという所でしょうかね、良く判らんが。


○スタイン理事講演ネタの続き(その3):クレジット市場の過熱は何処に観測されるのか

つーことで続きです。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.pdf

・クレジット市場の過熱をどう判断するのかという話

金曜に引用した部分の続きで『Why the Distinction Matters』という所から。

『To summarize the argument thus far, I have drawn a distinction between two views of risk-taking in credit markets. According to the primitives view, changes over time in effective risk appetite reflect the underlying preferences and beliefs of end investors. According to the institutions view, such changes reflect the imperfectly aligned incentives of the agents in large financial institutions who do the investing on behalf of these end investors. But why should anybody care about this distinction?』

ということで。

『One reason is that your view of the underlying mechanism shapes how you think about measurement. Consider this question: Is the high-yield bond market currently overheated, in the sense that it might be expected to offer disappointing returns to investors? What variables might one look at to shape such a forecast?』

例えばハイイールド市場の金利がやたら投資家にとって低い水準になっている時に、その要因として単純な期待の過熱なのかそれとも投資家の行動様式ドリブンによる過熱なのかというのをどう判断しますかというような設問です。


・単純な期待ビューはクレジットスプレッドの縮小に観測される

『In a primitives-driven world, it would be natural to focus on credit spreads, on the premise that more risk tolerance on the part of households would lead them to bid down credit spreads; these lower spreads would then be the leading indicator of low expected returns.』

期待が過熱している市場ではクレジットスプレッドに注目するのが自然ですよねと。


・投資家の行動による動きは「非価格要素」に観測されるとな

『On the other hand, in an institutions-driven world, where agents are trying to exploit various incentive schemes, it is less obvious that increased risk appetite is as well summarized by reduced credit spreads. Rather, agents may prefer to accept their lowered returns via various subtler nonprice terms and subordination features that allow them to maintain a higher stated yield.』

投資家の行動様式のドリブンによって過熱が起こる市場では、クレジットスプレッドの縮小が顕著に現れるというよりは、むしろイールドを確保する為により条件などが悪化した商品への投資が行われるという行動に表れますとかほほうという所です。

『Again, the use of PIK bonds in LBOs is instructive. A long time ago, Steve Kaplan and I did a study of the capital structure of 1980s-era LBOs. What was most noteworthy about the PIK bonds in those deals was not that they had low credit spreads. Rather, it was that they were subject to an extreme degree of implicit subordination.』

スタイン理事などがかつてLBOブーム時代のPIK債券などの研究をしたそうで、この時期というのは市場が過熱する際にクレジットスプレッドが縮小するのではなく、これらの債券の条件や仕組みがドンドン複雑怪奇になって行くという傾向があったそうで。

『While these bonds were not due to get cash interest for several years, they stood behind bank loans with very fast principal repayment schedules, which in many cases required the newly leveraged firm to sell a large chunk of its assets just to honor these bank loans. Simply put, much of the action--and much of the explanatory power for the eventual sorry returns on the PIK bonds--was in the nonprice terms.』

具体的にはこんな事がありましたという話ですな。

『It is interesting to think about recent work by Robin Greenwood and Sam Hanson through this lens.』

ということで別の研究例の紹介があります。

『They show that if one is interested in forecasting excess returns on corporate bonds (relative to Treasury securities) over the next few years, credit spreads are indeed helpful, but another powerful predictive variable is a nonprice measure: the high-yield share, defined as issuance by speculative-grade firms divided by total bond issuance.』

もう一つの機関投資家の行動ドリブンの過熱を見る「非価格要因」として債券市場における投機的格付け銘柄の発行シェアというのがあるとな。

『When the high-yield share is elevated, future returns on corporate credit tend to be low, holding fixed the credit spread. Exhibit 1 provides an illustration of their finding.』

まあそうですな。でまあPDF版だと巻末に図1というのがありまして、ハイイールド債の発行シェアと超過収益のグラフと言うのがあってオモシロス。

『One possible interpretation is that the high-yield share acts as a summary statistic for a variety of nonprice credit terms and structural features. That is, when agents' risk appetite goes up, they agree to fewer covenants, accept more-implicit subordination, and so forth, and high-yield issuance responds accordingly, hence its predictive power.』

ハイイールド債の発行が増えるというのはリスクアペタイトが拡大して条件なんて細けぇこたあいいんだよ!と言う風になる事の象徴でもあるとな。


・過熱の状況は「氷山の一角」しか観測できないと認識すべき

『A second implication of the institutions view is what one might call the "tip of the iceberg" caveat.』

氷山の一角という警告とな。

『Quantifying risk-taking in credit markets is difficult in real time, precisely because risks are often taken in opaque ways that escape conventional measurement practices.』

クレジット市場でのリスクテイキング状況をリアルタイムで量的に観測するのは困難である。何故ならリスクはしばしば従来の計測から逃れたような不透明な形で取られるからである、とは実に仰る通り。

『So we should be humble about our ability to see the whole picture, and should interpret those clues that we do see accordingly.』

学者先生の場合「このようにすると計測できるんです(キリッ)」とかいう話は良く聞くのですが、「我々は全ての事を見通せる能力があるかという事について謙虚でなければいけない」とか学者というよりはトレーダーっぽくて素敵でございますわ。

『For example, I have mentioned the junk bond market several times, but not because this market is necessarily the most important venue for the sort of risk-taking that is likely to raise systemic concerns. Rather, because it offers a relatively long history on price and nonprice terms, it is arguably a useful barometer.』

価格の動きを見るだけではなく、非価格要因の推移をみるべきとな。

『Thus, overheating in the junk bond market might not be a major systemic concern in and of itself, but it might indicate that similar overheating forces were at play in other parts of credit markets, out of our range of vision.』

ということで、 ジャンクボンド市場が過熱していること自体がシステミックリスクなのでは無く、ジャンクボンド市場が過熱しているという事は「それに似た色々な過熱の動きが、我々の観測できていない他のクレジット市場でおきているのではないか」という事を示唆していて、それが問題になるのである。という事で締めておりまして、これは中々従来のFED高官からしたら異色の方だなあと思うのでありました。

と言う所までが前座の説明部分でして、ここから『Recent Developments in Credit Markets』ということで現在の米国のクレジット市場の過熱状況がどのような所で観測されるか、という大変に素敵な話がおっぱじまりますので続きは後日(^^)。






2013/02/22

お題「新手の電波浴キタコレ/森本審議委員会見も安全運転/スタイン理事の「クレジット市場過熱のメカニズム」講演から」

こ、これは独立した小見出しを付けざるを得ない・・・・・・・

○なんちゅうかえーっともしもし

http://www.musha.co.jp/4529
ストラテジーブレティン (92号) 株高・低金利の併存は、なぜ好材料なのか
〜 日銀新総裁指名から始まる日本株高の第二ステージへ 〜

もうね、あちこち凄まじいのでこれは思いっきりネタにせざるを得ないのですが、日銀総裁人事がどうのこうのというのはまあ兎も角として、量的緩和とかQEとかの話についての説明が間違いだらけでムーシャ先生がお壊れになられてしまったのかとゆー所ではございますが、これはこれで若い衆に間違いさがしのテスト材料として有益ではないかと思われますぞなもしということで。

まあ幾つかあるのですが・・・・・・

・リフレ政策でリスクの高い長期国債の金利がより低下するとな

何かリフレ政策に関してインフレ期待を高めて恐怖からリスク資産からの回避を促すものではない云々という部分があるのですが、そもそもインフレ期待が高まらないとデフレ脱却しないと思うのですけど、その部分で短期国債よりもリスクの高い長期国債の金利が低下しないといけないという話をしておられて頭が強烈にクラクラして参ります。何か斬新過ぎて頭が痛いのですが、所謂「リスク資産」というのと「期間のリスク」という概念がごっちゃまぜになっているものと思料される所でありまして誠に残念でありまする。

つまりですな、国債は(ギリシャみたいな例もあるので完全なリスクフリーではないのはご案内の通りですがそこは措きまして)購入時点で満期保有を前提にした場合に将来の収益力が確定しているリスクフリー資産という扱いで、これに対して株式とか不動産とかは信用リスクがあったり将来の収益力が現時点で必ずしも確定していない資産な訳で、将来の経済成長が予想されると言う事は後者の資産の将来における収益力などが現在よりも高くなることが予想されるということと同値でありますので、より長期のものになるほど満期までの収益力が現時点で確定している国債が相対的に劣後するという話になりますので、長期の国債の方が利回りが高くなるでしょと言うお話だというのがツッコミどころという感じで考えてみましたけどそんな感じでよろしゅおしますかね????


・そもそも事実関係の説明が怪しい個所

さらに大先生QEの事を信用緩和と仰せになっている箇所があるのですが、そもそもQEというのはQuantitative Easingの略でして普通「量的緩和」と申しまして信用緩和とは別ですし、大先生が例に出した米国のQE2というのは長期国債の大量購入であってそれは信用緩和ではないのですけどという所とか、QE2によっておきた市場の変化について、政策発動によって長期金利が低下したという説明になっておりますが、QE2の時は米国10年国債金利はその前に期待で散々低下(ジャクソンホールのコンファランスでQE2が示唆されてそこからヒャッハー相場が始まった)したあと政策発動以降はその前に下がった分以上に金利上昇したというのはチャートを見れば一目瞭然なのですが、もしかして大大先生はチャートの上下をあべこべに見てらっしゃるのではないでしょうかと疑問に感じたのですが、先生のお告げの効力の事を考えると(以下自主規制)。

ホームページで文章を大公開しているのに何故か「本書および本書中の情報は秘密」という謎のディスクレーマーがある不思議極まりないページ(じゃあ公開するなよ・・・・・・)なので該当箇所を引用するのを自主規制しておきましたので、さてどの部分がどの話でちゅかねえというのを探して頂きたく存じますが、本当はもう数か所ツッコミどころがあるのですが書いていて不憫になったので書き上げたものを3割少々くらい削ってしまったことを念の為申し添えます(^^)。


○森本審議委員記者会見も安全運転

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302e.pdf

会見も今回は安全運転モードになっていてネタ的には無風に近いのでこれまたメモ程度に。

・政策オプションについてはノーコメント

『(問) 今の質問にも関連しますが、金融緩和の手段についてお伺いします。昨日発表された1月会合の議事要旨で、基金による国債買入れの年限を5年まで延長してはどうかという複数の委員の方の言及があったのですが、森本審議委員は、追加緩和のオプションとして年限長期化についてどのような見解をお持ちなのか、是非の理由も含めてお聞かせ下さい。』

と言う質問に関して。

『(答) 今、1年から3年という年限で長期国債の買入れを進めているのは、わが国の資金調達構造上、期間3年以下の貸出等の割合が高いことから、金融緩和を目的とした資産買入等の基金においては、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが最も効果的だと考え、実施しているためです。こうした考えのもとで、先程申し上げた基金の積み上げをしっかり達成していこうということですが、こうした大量の国債を買い入れることによって、周辺の金利にも低下圧力がかかり、今の状況になっていると思います。その上で、5年物まで買ってはどうかといった個別の金融政策については、その時々の経済・物価情勢等を入念にチェックしつつ、リスク要因も考慮に入れながら、どういった方策が一番良いのかということで判断しています。いわゆる金融政策方針については、効果とコストをしっかりチェックしながら考えていきたいと思っています。』

と言う答えなのですが、その前の質問でもマイナス金利の買入についてコメントしなかったりということで、別の質問でこんなのがあったのがワロタ。

『(問) 森本審議委員は、金融政策の1つ1つの選択肢についてはコメントされないということだと思いますが、買入対象国債の年限を5年まで延長するとか、あるいは日銀当座預金の超過準備付利金利を引き下げるないし撤廃するなど、金融政策のあらゆる選択肢を排除しないという姿勢なのでしょうか。(後半割愛、強調は引用者による)』

(2月24日追記:何かもうこの辺見ていると記者の方もやる気がねえというかやる気が失せましたという感じですね)


『(答) 私どもは、毎回の金融政策決定会合の中で、@経済物価情勢の現状・先行きの点検、それからAリスク要因の点検という、いわゆる2本柱をしっかり入念に行いながら、その時々に、金融緩和政策が必要かどうかということを議論しています。そうした中で、より長い年限の国債の買入れとか、日銀当座預金の超過準備付利金利を引き下げるないし撤廃するとか、様々な政策があるわけですが、これらについては、当然、効果とコストがあるので、こうしたことを色々と考えながら決めていくということです。(後半割愛)』

・・・・・・・・・何と言うノーコメント。


・リスクはバランスとな

しかし良く見ると森本さんの見解ではないのがオソロシス。

『(問) 午前中の講演の中で、経済の中心的見通しは上下双方向に不確実性があるというお話でした。物価については上振れのリスク、下振れのリスク、両方あると思いますが、今後の政策を考える上でどちらに重きを置いてみていきたいか、ご意見をお願いします。』

『(答) このところの金融政策決定会合においては、経済のリスクは上下双方向の不確実性があるということで、大方の政策委員は、上下ほぼバランスした見方をされているのではないかと思います。物価についても、経済と連動しているので、上下双方向のリスクがあるということで、大方の政策委員は、上下ほぼバランスした見方をされていると思っています。一方、先程も触れましたが、当面の物価情勢については、昨年の耐久消費財の価格調査品目の入れ替えや、エネルギー価格が上昇していたことの反動の問題があり、少し下振れる可能性はあろうかと思います。もっとも、これはリスクというよりも、見通しの問題であって、リスク要因という意味では、上下ほぼバランスしているというのが、政策委員の皆さんの大体の考え方・見通しではないかと思っています。』

ほうほうリスクはバランスですか・・・・・・・・と思って良く読みなおすと森本さん個人の意見を言っている訳では無くて単に政策委員会の大勢はリスクはバランスとおもっていますぞなもしという話になっているのがオソロシス。

てな感じで今回の森本さんの講演と会見は見事なまでに無風モードでした。ネタ的には残念無念(^^)。


○スタイン理事講演ネタやっと続きである(大汗)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.pdf
At the "Restoring Household Financial Stability after the Great Recession: Why Household Balance Sheets Matter" research symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of St. Louis, St. Louis, Missouri
February 7, 2013
Overheating in Credit Markets: Origins, Measurement, and Policy Responses


・市場過熱の2つのメカニズム:単純なユーフォリアと制度的な要因と

上記の小見出しはあたくしがちょっと意訳してみたものですが。

『Two Views of the Overheating Mechanism』という小見出しの冒頭部分から。

『I will start by sketching two views that might be invoked to explain variation in the pricing of credit risk over time: a "primitive preferences and beliefs" view and an "institutions, agency, and incentives" view. While the first view is a natural starting point, I will argue that it must be augmented with the second view if one wants to fully understand the dynamics of overheating episodes in credit markets.』

ということで、クレジット市場の過熱について"primitive preferences and beliefs"という現象によって生じるものと、"institutions, agency, and incentives"というのを指摘しております。

でまあその説明がああだこうだとあるのですが、前者の単純なユーフォリアみたいな形での市場の過熱は家計などのリテール投資家が最も楽観した時に市場がオーバーバリューとなる、という意味で株式市場にみられるのが例として判りやすいってな話をしております。以下の部分でございますが。

『According to the primitives view, changes in the pricing of credit over time reflect fluctuations in the preferences and beliefs of end investors such as households, where these beliefs may or may not be entirely rational. Perhaps credit is cheap when household risk tolerance is high--say, because of a recent run-up in wealth.3 Or maybe credit is cheap when households extrapolate current good times into the future and neglect low-probability risks.』

『The primitives view is helpful for understanding some aspects of the behavior of the aggregate stock market, with the 1990s Internet bubble being one illustration. It seems clear that the sentiment of retail investors played a prominent role in inflating this bubble. More generally, research using survey evidence has shown that when individual investors are most optimistic about future stock market returns, the market tends to be overvalued, in the sense that statistical forecasts of equity returns are abnormally low. This finding is consistent with the importance of primitive investor beliefs. 』

で、2つ目の制度的なインセンティブに基づくもの、というのはクレジット市場の過熱の際に原因になりやすいって話をしていまして、その背景には(株式と違って)クレジット投資を行うのはいわゆる機関投資家であって、機関投資家は家計がバブルでヒャッハーみたいなユーフォリアというような要因だけで動くのではなく、むしろ制度的なインセンティブ、つまりゲームのルール、会計原則、パフォーマンスの測定方法、カバナンスなどなどの要因で動く、というような話をしております。以下の部分。

『By contrast, I am skeptical that one can say much about time variation in the pricing of credit--as opposed to equities--without focusing on the roles of institutions and incentives. The premise here is that since credit decisions are almost always delegated to agents inside banks, mutual funds, insurance companies, pension funds, hedge funds, and so forth, any effort to analyze the pricing of credit has to take into account not only household preferences and beliefs, but also the incentives facing the agents actually making the decisions. And these incentives are in turn shaped by the rules of the game, which include regulations, accounting standards, and a range of performance-measurement, governance, and compensation structures. 』

なるほどという所ですが、したがってこれらの金融機関は言うならば規制のアービトラージ(と言う表現は講演の後の方で出てきてここではそうは言ってませんが)をするインセンティブが働きますよねというような話をしております。

『At an abstract level, one can think of the agents making credit decisions and the rulemakers who shape their incentives as involved in an ongoing evolutionary process, in which each adapts over time in response to changing conditions. At any point, the agents try to maximize their own compensation, given the rules of the game. Sometimes they discover vulnerabilities in these rules, which they then exploit in a way that is not optimal from the perspective of their own organizations or society.』

『If the damage caused is significant enough, the rules themselves adapt, driven either by internal governance or by political and regulatory forces. Still, it is possible that at different times in this process, the rules do a better or worse job of managing the incentives of the agents.』

うむ。


・クレジット投資はプット売りのようなもんである

で、この先にもクレジット投資とはみたいな話が続いていまして、そこで「クレジット投資はPUT売りのようなもんです」とかこの人トレーダー上がりかと思ってしまう(実際は学者上がりです)説明があるのがチャーミングであります。ちとくどいけど引用しときますね。

『To be more specific, a fundamental challenge in delegated investment management is that many quantitative rules are vulnerable to agents who act to boost measured returns by selling insurance against unlikely events--that is, by writing deep out-of-the-money puts. An example is that if you hire an agent to manage your equity portfolio, and compensate the agent based on performance relative to the S&P 500, the agent can beat the benchmark simply by holding the S&P 500 and stealthily writing puts against it, since this put-writing both raises the mean and lowers the measured variance of the portfolio.7 Of course, put-writing also introduces low-probability risks that may make you, as the end investor, worse off, but if your measurement system doesn't capture these risks adequately--which is often difficult to do unless one knows what to look for--then the put-writing strategy will create the appearance of outperformance.』

『Since credit risk by its nature involves an element of put-writing, it is always going to be challenging in an agency context, especially to the extent that the risks associated with the put-writing can be structured to partially evade the relevant measurement scheme.』

ふむ。

『Think of the AAA-rated tranche of a subprime collateralized debt obligation (CDO), where the measurement scheme is the credit risk model used by the rating agency.』

キタコレ。

『To the extent that this model is behind the curve and does not fully recognize the additional structural leverage and correlational complexities embedded in a second-generation securitization like the CDO, as opposed to a first-generation one, it will be particularly vulnerable to the introduction of a second-generation product.』

でまあそのサブプライムCDOの時の実例の話があるのですがそこの引用はスルーしますが、つまりクレジットバブルの発生というのは「リスクテイクのバランスがおかしくなり、更にリスクテイクに対する制度的歯止めがうまくワークしない時」という話をしておりまして纏めの部分から次の小見出しネタに参ります。

『A more interesting set of questions has to do with time-series dynamics: Why is it that sometimes, things get out of balance, and the existing set of rules is less successful in containing risk-taking? In other words, what does the institutions view tell us about why credit markets sometimes overheat?』



・何故クレジットの過熱が起こるのか(その1):金融のイノベーション要因

『Let me suggest three factors that can contribute to overheating.』

3つの要因に整理しています。

『The first is financial innovation.』

ほう。

『While financial innovation has provided important benefits to society, the institutions perspective warns of a dark side, which is that innovation can create new ways for agents to write puts that are not captured by existing rules.』

金融のイノベーションは重要な利益も与えますが、暗黒面に落ちると従来のルールで規制されない「新たなプット売りの機会」を与えますとはキタコレ。

『For this reason, policymakers should be on alert any time there is rapid growth in a new product that is not yet fully understood.』

「したがって内容が完全に把握されている訳では無いような新しいタイプの商品が急速に拡大している時には政策当局者は警戒しないといけない」というのはなるほどなるほどという感じでして、この人セルサイド出身かと思ってしまいますな(^^)(さっきも申しあげたように学者です)。

『Perhaps the best explanation for the existence of second-generation securitizations like subprime CDOs is that they evolved in response to flaws in prevailing models and incentive schemes. Going back further, a similar story can be told about the introduction of payment-in-kind (PIK) interest features in the high-yield bonds used in the leveraged buyouts (LBOs) of the late 1980s. I don't think it was a coincidence that among the buyers of such PIK bonds were savings and loan associations, at a time when many were willing to take risks to boost their accounting incomes.』

ということで、過去のその手の商品の急拡大を例にだしていまして実践的な着眼点ですな。


・何故クレジットの過熱が起こるのか(その2):制度の変更要因

『The second closely related factor on my list is changes in regulation.』

ふむ。

『New regulation will tend to spur further innovation, as market participants attempt to minimize the private costs created by new rules. And it may also open up new loopholes, some of which may be exploited by variants on already existing instruments.』

制度変更による影響を避けるとか、その穴を突くような金融イノベーションというのが制度変更の際には起きやすいというのもまあそうですねという所です。


・何故クレジットの過熱が起こるのか(その3):クレジットリスクを取るインセンティブを与える経済環境の変化

とは何ぞやと申しますとこれがキタコレなのですよ。

『The third factor that can lead to overheating is a change in the economic environment that alters the risk-taking incentives of agents making credit decisions.』

そしてその環境とは何かという所でいきなり出てくる実例がキタコレなのでして・・・・・・・・

『For example, a prolonged period of low interest rates, of the sort we are experiencing today, can create incentives for agents to take on greater duration or credit risks, or to employ additional financial leverage, in an effort to "reach for yield."』(強調は引用者による)

キターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーー!!!!!

『An insurance company that has offered guaranteed minimum rates of return on some of its products might find its solvency threatened by a long stretch of low rates and feel compelled to take on added risk. A similar logic applies to a bank whose net interest margins are under pressure because low rates erode the profitability of its deposit-taking franchise. 』

(;∀;)イイハナシダナー


・でまあそれらの要因はインターアクティブですよと

『Moreover, these three factors may interact with one another. For example, if low interest rates increase the demand by agents to engage in below-the-radar forms of risk-taking, this demand may prompt innovations that facilitate this sort of risk-taking. 』

ということで中々痺れる話が展開されております、というのがご理解いただけたかと存じますが、実はこれで前座の3分の2程度にしかなっていないので、今後も追々ネタにしたいと思います(本人が忘れなければの話ですが)。







2013/02/21

お題「FOMC議事要旨からちょっとだけ/ニュース雑談/森本審議委員講演メモ」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130221/t10015669531000.html
「押し買い」法律による規制始まる
2月21日 5時3分

このニュース最初に見た時に「押し目買い」と空目する位に職業病なこのアタクシですが、ちなみに有価証券の「押し買い」は規制の対象外のようです(6品目が対象外)ので皆さん押し目買いはしても大丈夫ですよ(違)。


○FOMC議事要旨からちょっとだけ

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130130.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130130.pdf

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後3パラグラフ辺りが緩和政策の継続がどうのこうのという議論部分です。


・追加の資産購入のプロコンについて

『The Committee again discussed the possible benefits and costs of additional asset purchases.』

キタコレ。

『Most participants commented that the Committee's asset purchases had been effective in easing financial conditions and helping stimulate economic activity, and many pointed, in particular, to the support that low longer-term interest rates had provided to housing or consumer durable purchases.』

金融環境を改善すると共に、特に指摘されるのが低位の長期金利をサポートして住宅や耐久消費財の購入をサポートする効果があるということですな。

『In addition, the Committee's highly accommodative policy was seen as helping keep inflation over the medium term closer to its longer-run goal of 2 percent than would otherwise have been the case.』

ほほーという所ですが金融政策によって中期的な物価上昇率2%ゴールの達成をサポートしているとな。

『Policy was also aimed at improving the labor market outlook.』

でもって労働市場改善のサポートもしていると。

『In this regard, several participants stressed the economic and social costs of high unemployment, as well as the potential for negative effects on the economy's longer-term path of a prolonged period of underutilization of resources.』

高失業率の社会的コストや資源の活用の低下などの問題点を指摘したってんですからつまりこれは現在の緩和的政策の有効性という話です罠。で、ここまでが緩和政策の良い話で、ここからがキタコレな話。

『However, many participants also expressed some concerns about potential costs and risks arising from further asset purchases.』

キタコレ。

『Several participants discussed the possible complications that additional purchases could cause for the eventual withdrawal of policy accommodation, a few mentioned the prospect of inflationary risks, and some noted that further asset purchases could foster market behavior that could undermine financial stability.』

出口政策の困難さが高まるというのがSeveral、インフレリスク警戒はa few、金融安定に反する市場の行動を促す(ネタにすると言ってまだ続きをやっていないスタイン理事の指摘する「クレジット市場の過熱」というような所も含まれていると思います)というのがsomeとな。

『Several participants noted that a very large portfolio of long-duration assets would, under certain circumstances, expose the Federal Reserve to significant capital losses when these holdings were unwound, but others pointed to offsetting factors and one noted that losses would not impede the effective operation of monetary policy.』

長期債を持ちすぎると出口政策で大損こき太郎になるのは問題というのがSeveral、一方で他の人たちはべつにまあ損こいてもオペレーション自体が困難になる訳では無いから細けえこたあいいんだよという話とな。

『A few also raised concerns about the potential effects of further asset purchases on the functioning of particular financial markets, although a couple of other participants noted that there had been little evidence to date of such effects.』

買い過ぎで金融市場の機能が低下するという問題点(ちなみにハポンの中短期国債市場はどう見ても機能低下です本当にありがとうございましたという風情ですが)がA few、一方で他の2名はそんな兆候は特になかろうよと反論と。

『In light of this discussion, the staff was asked for additional analysis ahead of future meetings to support the Committee's ongoing assessment of the asset purchase program.』

ということで今後のFOMCでスタッフからこの手のアセスメントが報告されるという話です。


・資産買入のペースについての検討

『Several participants emphasized that the Committee should be prepared to vary the pace of asset purchases, either in response to changes in the economic outlook or as its evaluation of the efficacy and costs of such purchases evolved.』

買入のペース変更の準備をすべきというのがSeveralとな。

『For example, one participant argued that purchases should vary incrementally from meeting to meeting in response to incoming information about the economy. A number of participants stated that an ongoing evaluation of the efficacy, costs, and risks of asset purchases might well lead the Committee to taper or end its purchases before it judged that a substantial improvement in the outlook for the labor market had occurred.』

でまあこの部分でほほうというのは2文目でしょうなあという所で、プロコン比較してデメリットが多くなるようであれば「a substantial improvement in the outlook for the labor market」となる前であっても資産買入プログラムのペース減少や停止も必要であろうというのが「A number of」となっています。

つまりですね、まあこの辺りのガイダンスっていうのは(先般ネタにしたカナダ中銀カーニー総裁のガイダンスに関する講演でもありましたように)「ガイダンスは約束では無い」というのが重要なポイントであって、そもそも非伝統的政策で効果とコストが予め判っている訳では無い政策を実施するのであるからして、例えば今回のように「a substantial improvement in the outlook for the labor market」となっても緩和政策を継続する、という話をしていてもそれはあくまでもガイダンスであって、実際に政策やってみてデメリットの方が大きくなったと判断されたらプラクティカルに対応しましょう、というのが(ある意味ご都合主義ではあるが)非伝統的政策の運営における重要なポイントである、というような考え方が実は世界的に非伝統的政策を実施する場合のポイントという認識が段々広まっているんでしょうなあとか思うのであります。

と言う中で何で今さら厳格なターゲッティング政策を求める声が多いんでしょうねえジャポンではとゆー所ではあるのですが、これは日銀の過去のトラックレコードがアレという面もあったりするのでまあ言われる罠というのもあるけれども、少なくとも「海外での中銀などとのコミュニケーションをどうしますか」というような面も考えて次期正副総裁選定するのにこの辺の認識が無い方を選定するというのもどうなのかねと思うのでありました。

と話はそれましたが続き。

『Several others argued that the potential costs of reducing or ending asset purchases too soon were also significant, or that asset purchases should continue until a substantial improvement in the labor market outlook had occurred.』

一方でSeveral othersは資産買入を早めに減額または終わらせる潜在的コストは大きいので、やはり「a substantial improvement in the labor market outlook」となるまでは資産買入を継続すべきではないかという見解ですが、これどう見てもこっちの方が少数派というのがほほうという所ではございます。

『A few participants noted examples of past instances in which policymakers had prematurely removed accommodation, with adverse effects on economic growth, employment, and price stability; they also stressed the importance of communicating the Committee's commitment to maintaining a highly accommodative stance of policy as long as warranted by economic conditions.』

A fewは早すぎる緩和解除が経済などに与える悪影響があった過去の例(って何でしょうねえ^^)を挙げて、コミットメントの通りに緩和を長期化させることは重要であると指摘していまして、まあ後半の人たちの方が「金融政策のコミットメント」という意味では大事なポイントで、あまりガイダンスをプラクィカルに運用しちゃうと最初の時は良いけれども2度目に同じ事を実施しようとした時にガイダンスが信用されなくなるという弊害もあります罠、とまあそういう風にも思いますです。

『In this regard, a number of participants discussed the possibility of providing monetary accommodation by holding securities for a longer period than envisioned in the Committee's exit principles, either as a supplement to, or a replacement for, asset purchases.』

ほうほうという所ですにゃ。

:閾値に関連して

『Participants also discussed the economic thresholds in the Committee's forward guidance on the path of the federal funds rate.』

さいだっか。

『On the whole, participants judged that financial markets had adapted to the shift from date-based communication to guidance based on economic thresholds without difficulty, although a few participants stated that communications challenges remained.』

ほうほうそのチャレンジとは?

『For example, one participant commented that some market participants appeared to have incorrectly interpreted the thresholds as triggers that, when reached, would necessarily lead to an immediate rise in the federal funds rate.』

「incorrectly interpreted the thresholds as triggers」というのは確かにあるある。

『A couple of participants noted that this policy tool would be more effective if the Committee were able to communicate a consensus expectation for the path of the federal funds rate after a threshold was crossed.』

これは微妙であたしゃあまり出さない方が良いとは思うのですが・・・・・・・・・

『One participant also indicated a preference for lowering the threshold for the unemployment rate as a means of providing additional accommodation.』

確かに失業率の閾値下げれば追加緩和になるのですが、それはロンガーランの失業率に対する見方の変更を伴う事になると思うのであまりお勧めしないのですが・・・・・・

ということでまあこっちに関しては無風ですな。

#その他の部分は週末読みますので来週にでも


○ニュース雑談

・何じゃこのニュースは?

昨日話題になって為替市場がぶれたのはご案内の通り読売ニュース。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130220-OYT1T00226.htm
日銀総裁人事大詰め…4氏に絞り込みか
(2013年2月20日06時58分 読売新聞)

でまあこれで武藤さんの名前が無いので円安ヒャッハーとか言っているのですが、そもそも日銀総裁人事で円安ヒャッハーというのをやると為替誘導ガーとか言われる訳であまりこの手のネタで市場に暴れてほしくは無いのですが、まあそれ以前の問題として武藤さんが候補に入っていないというのがもう何かアレの香り。

と思ったら時事通信がそのちょっと前にこのニュース。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130220-00000011-jij-pol
武藤、岩田両氏軸に最終調整=日銀総裁人事で―政府
時事通信 2月20日(水)2時31分配信

まあこっちの記事の方が普通っぽい。つーか読売ってこの前も公取の人事を事前報道してひと悶着起こす切っ掛けになっていたと記憶しているのですが(間違いだったらゴメンナサイ)、どこの放火魔だよという所で。


・この正直者!

このニュースはワロタ。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130220-00000051-biz_reut-nb
外債ファンドを検討する必要性は薄まった=安倍首相
2013/2/20 14:41 ロイター

『外債購入のため官民ファンドを設立するという話だったが、今でもそうかとの質問に安倍首相は「外債ファンドを検討すると決めたのは昨年11月くらいで、大胆な金融緩和を打ち出し始めたところだ」とし、「検討の必要性は薄まっている」と語った。さらに、大胆な金融緩和が軌道に乗っていること、3月に日銀人事が行われることなどもあり、必要性はなくなってきているとも指摘した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・これじゃあ「外債購入ファンドは円安誘導の為に行うんです」って言ってるようなもんでして、いやあのもし実施するんだったら何かもっともらしい言い訳(例えば岩田一政さんがこの前山本幸三さん所の勉強会で説明していた時には「海外で金融危機が起きた場合に危機対応として外債購入をするような機能を設ける」というような話をしていたとの報道でしたよねー)をしないとそもそも外債購入云々自体が出来ませんぞなもしという所でありまして、何でこういう事言っちゃうのかなあと思うのですが、そもそもそういう質問をするからこういうボロが出る訳でして、国益という物を勘案した場合には一々国会で為替の話とかするんじゃねえよ質問する方考えろこのヴォケという所ではございます。



○森本審議員講演は基本的に執行部ペースの説明なのでメモ程度である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130220a.pdf

説明や経済認識に関しては基本的に執行部ペースの説明なのですが、成長力強化の所で労働力人口の拡大についての話をしているのがちょっとオモロイ。

・成長力強化に労働力人口の実質的な強化を

『(成長力強化の重要性)』って所から。

『こうした状況を打破するためには、成長力を強化し、企業や家計の中長期的な成長期待を高め、慢性的な需要不足を解消することが必要となります。少子高齢化の進展を短期間で食い止めることは困難ですので、成長力を強化していくうえでは、その前提となる就業者数の確保と就業者一人一人が生み出す付加価値(付加価値生産性)の向上が必要です。』

キタコレ。

『就業者数の確保という点では、労働市場の柔軟性を高め、異なる産業間での労働力の移動や、女性および高齢者の労働参加を容易にするための取り組みを進めることが重要です。先行き、このまま労働力人口が減少していけば、2010年代の経済成長は年率−0.6%程度下押しされる見通しにあります。』

お、これ1月議事要旨に出てましたな。

『労働力人口の減少は、中国でも2012年から初めて減少に転じるなど、危機意識が生じていますが、これから先進国や新興国の多くの国でも直面する問題です。しかし、わが国において、仮に2030年までに、女性の労働力率がスウェーデン並みに上昇するとともに、60歳以上の高齢者の労働力率も上昇すれば、2010年代の労働力人口は年率+0.2%の増加となるという試算があります。』

ほほう。

『高齢者に関しては、この4月から、年金の支給開始年齢の65歳への引き上げに合わせた雇用延長措置が義務化されます。日本社会が、1980年代にかけて、55歳定年制から60歳定年制に移行することができた実績を踏まえれば、今後、制度改革や働き方の見直し・工夫を通じて、65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません。』

>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません
>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません
>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません

お、おう・・・・・・・・・・・・・

『次に、付加価値生産性を高める観点では、新たなビジネスモデルの展開を含む広い意味でのイノベーションが実現しやすい経済の仕組みを構築していくことが必要だと思います。最近では、社会構造の変化を捉えて、幅広いシニアビジネスや環境・エネルギー分野、情報・通信分野などでの新しい取り組みも拡がりつつあります。』

『これらの取り組みを加速することにより、労働力人口や付加価値生産性の底上げを伴いながら、価格競争から新たな財・サービスを生み出す競争へと企業の中心戦略が変化していけば、実際に経済活動も活発化する中で、企業や家計の中長期的な成長期待が高まっていくと考えられます。』

まあこの辺ははあそうですかという感じですが。


・共同声明に関して

金融政策の説明もまあ公式見解ベースになるのですが、共同声明に関する所でこれまた1月議事要旨で出ていた文章がでておりまして森本さんの見解だったのですかねと思ったのでそこを引用。

『(3)政府と日本銀行の政策連携の強化』という所から。

『成長力強化は、新たなビジネスの創造や拡大に向けた企業や金融機関のチャレンジが積み重なって実現されていくものです。そうした際に、民間部門がチャレンジ精神を発揮しやすい環境を規制・制度改革などを通じて整備することが、政府の重要な役割だと思います。また、日本銀行はこれからも大規模な国債買入れを含め、強力な金融緩和を進めていきます。』

さいですな。

『こうした中、わが国の財政状況は世界の中でも極めて厳しい実態にあり、財政に対する信認が揺らぐことにもなれば、金利が上昇し、財政運営がさらに厳しくなるほか、金融緩和の効果が損なわれる惧れもあります。金融緩和の効果を十分に発揮していくうえでも、財政の健全化に対する市場の信認を確保していくことは重要な課題です。この点、今回の共同声明は、政府と日本銀行が、それぞれお互いの役割を明確に認識したうえで、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて一体となって取り組むことを明らかにしたものであり、その意義は極めて大きいと考えています。』

思いっ切りこの趣旨の話が1月議事要旨にあったので引用してみました(^^)。

ということで後は特段変わった話をしている訳でも無いのでまあ講演はこんな所ですかな。一応物価が上昇する為のメカニズムの説明部分とかも一度目を通しておいても良いかもしれません(まあめんどいので引用割愛しましたが)。会見の方でどんな話をしているのかを見たいと思います。









2013/02/20

お題「ニュース雑談/決定会合議事要旨はカオスとな」

昨日は安倍ちゃんの外債購入発言をマクラにしたのですが今日はまた安倍ちゃんアチャー状態なのでニュース雑談として昇格(^^)。

○安倍ちゃん・・・・・・・・・

外債購入発言はまずいだろと思ったら早速麻生さんと甘利さんが火消しに。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIFWTX6K512Y01.html
外債購入「ない」と麻生財務相、「首相発言は一般論」と甘利再生相も (1)
更新日時: 2013/02/19 12:25 JST

『2月19日(ブルームバーグ):金融緩和の手段として外債購入という考え方もあるという安倍晋三首相の国会答弁について麻生太郎財務相は19日、そうしたことはないと発言、甘利明経済再生担当相も一般論だったとの認識を示した。いずれも閣議後会見で語った。』(上記URLより)

そらまあG7G20であれだけ言われた後なんですからやっぱりマズイですわなと思ったのですがその一方で安倍ちゃんェ・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK061727320130219
外債購入への発言控える、日銀法改正の議論は有意義=安倍首相
2013年 02月 19日 18:26 JST

『[東京 19日 ロイター] 安倍晋三首相は19日午後の参議院予算委員会で、外債購入については発言を控えさせていただきたいと語った。日銀法改正については常に視野に入れているとし、日銀法を時代を経て適したものにするためにどうするかは、専門的な知見を持つ人が議論していくことが有意義だと思うとの考えを示した。』(上記URLより)

いやまあ仰っていることは「法律は常に時代に合ったものにすべき」って文脈ではあるのですが、そもそもここに至るまで「俺様の言う事を聞かないと日銀法改正」という話をしていた流れというものがありまして、国内はともかく海外的に言えば中央銀行の独立性を侵害してるんじゃネーノとか言われたりしていたし、大体からしてその手のかなり乱暴な発言で市場が反応して居た訳ですから、やはり「日銀法改正」という話も為替誘導という文脈で受け止められやすいので、ちょっと発言は慎重にして頂かないと。

つーか、もうG7G20であれだけ釘を刺されたのですから「日本の要人発言を受けて円安」という展開になる事自体が日本の通貨外交的な意味で日本の立場を悪化させる訳で、兎に角為替に関しては「G7やG20でも認識を共有しているように為替レートは市場が決めるものです」という話と「日本はデフレ脱却の為に政府日銀が政策協調をしております」という話だけしておけば良いのであって、為替を目的にして金融政策を緩和的にしましょう言う事聞かないのはイラネとかそういう話は本音の所はどうであれ、それは「お作法」としてゆうてはならん事であるのですが、どうも安倍ちゃんブレーンとやらの皆様のお話をそのままご発言になっておられているようで、まあブレーン様におかれましては安倍ちゃんにちゃんと通貨外交とは何ぞやという話をご教授して頂きたい物だと存じます。とは言いましてもG7を受けた後に「通貨安競争は悪い事では無い」とか堂々と言ってしまう山本幸三先生とか見ていますと通貨外交がどうのこうのというレクチャーを行うのは期待薄ですので、毎度申し上げておりますようにブレーンとやらの換装をお願いしたいと存じます次第。

いやね、んなもん欧米当局だって通貨安でウハウハとかやっているのですし、こちとらその間円高でリスクオフを受けた結果相変わらずのデフレなんですから、お前ら落ち着いたんだったらちょっと返せやというのは当然だと思うのですけれども、まあそういうのって外交のお作法として平場で思いっきり当局者が表立って言う話では無いでしょという事で、そういうお作法まる無視で「通貨安競争は悪い事では無い」みたいな話を思いっ切りしちゃうとかいうセンスって、「それは言ってることは経済的観点から正しいが政治的に問題なのでフィージビリティーの面を考えて下さい」という話だと思うのですけどねえ。

つーか昨日も申し上げましたが、国会で為替の話とか未だに質問する議員様におかれましては国益と言うのが奈辺にあるのか、と言う事をもう少し考えて発言をして頂かないと困る訳でして、そもそも2%の物価上昇を目標にしようというのですからこの程度の円高修正では全然足りない訳でして(どこぞの安倍ちゃんの経済ブレーン先生によると2%でこの辺らしいですが、苦笑)、しらっと円安に持って行かないといけないのですから、通貨外交的に日本ケシカランと言われるような文脈に持って行くようなバカアホ質問をする議員様におかれましては可及的速やかに三途の川寒中水泳大会へのご参加をされてそのまま岸の向こう側に立たれますことを全力でお勧め致したくなってしまいますぞなマッタクモウ。


○市場メモ(本当にただのメモ)

・固定金利オペ札割れ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130219.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 5,000 2013年2月21日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月21日 2013年3月14日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130219.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 26,450 5,003 0.078 0.079 89.3
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月21日スタート分) 5,630 5,630

・・・・・ノーコメントであるがナムナム。


・5年入札の日に議事要旨で余計なものが・・・・・・

という話がありますが次の議事要旨コーナーの最後にその部分はございます^^;



○1月議事要旨がカオスな件について

まあカオスだわなと思いましたが。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130122.pdf

・展望レポート中間見直し

本文9ページから。

『先行きの物価の中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)は、概ね昨年10 月の展望レポートで示した見通しと変わらないとの認識を共有した。委員は、2014 年度にかけて日本経済が潜在成長率を上回る成長経路を辿り、マクロ的な需給バランスが改善するもとで物価上昇率が徐々に高まっていき、その結果として企業や家計の予想インフレ率も緩やかに上昇していくという、見通しの前提となる基本的なメカニズムは、10 月時点から変わっていないとの認識を共有した。』

そもそも見通しの基本的なメカニズムが10月から変わらないのになぜ物価目標を引き上げる事ができるのかが意味がワカランチ会長ですがそれは別の項でカオス議論がありますので後ほど。

『多くの委員は、2014 年度末までの見通し期間の終盤にかけて、消費者物価の前年比は1%に接近していくとの認識を示した。複数の委員は、今後、政府の取り組みなどによって成長力の強化が実現していく中で、消費者物価の前年比は、見通し期間を超えた2015年度以降、1%を超えて高まっていくと想定されると述べた。』

はあそうですか(棒読み)。

『ある委員は、今後、競争力強化の取り組みが具体的に進み、企業の収益力や生産性が高まることで、家計と企業の将来所得に対する期待が改善し、企業の価格支配力の改善と賃金の持続的な引き上げが両立する、望ましい物価上昇につながる可能性があるとの見方を示した。』

はあそうですか(棒読み)。

『別のある委員は、政策委員の見通しの中央値について、成長率の見通しが全体として前回対比上振れる一方で、消費者物価の見通しはほぼ前回見通し並みにとどまっていることは、政策委員の大勢が、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度が低下していることを想定しているようにみえると指摘した。』

確かに(^^)。

『これに対し、複数の委員は、見通し期間以降に物価上昇率が高まっていくことを想定しており、十分な期間をとれば物価の感応度は低下している訳ではないと述べた。一人の委員は、先行きの物価情勢の変化は、10 月の展望レポート時に比べて、物価に関する見通し分布チャートの下振れの可能性が低下し、上振れの可能性が高まるかたちとなっていることに現れていると指摘した。』

ここのやり取り、まあさらっと読むとふーんという話なのですが、つまりはこの「別のある委員」はおまいら前回の物価の予想が高すぎたのか今回の物価の予想が低すぎるのかのどっちか(まあ普通に考えて前者でしょうが)でそもそも物価の見通しで鉛筆舐めてるだろとツッコんだ、というのを議事要旨という形で出す時に事務局が綺麗な表現に丸めたらこうなった、と解釈したのですがどうでしょうかねえ(あくまでも妄想ですが)。

『別の一人の委員は、現在、政府が打ち出している構造改革の取り組みが、経済の改善を通じて物価上昇率に反映されるまでには長いラグがあるため、より長期的な視点を踏まえて議論する必要はこれまで以上に高まっているとの認識を示した。』

いや物価目標ってそんなに長期的な視点でやってて許されるもんなんですか?という気が思いっきりしますがまあそれはそれとして。


・物価目標に関する議論が更にカオス

『V.「『物価の安定』に関する点検」に関する執行部からの報告および委員会の検討の概要』から。

『1.執行部からの報告』というのがありまして、『2012 年12 月19、20 日の金融政策決定会合で議長より指示があった「物価の安定」に関する論点整理について報告する。』とありますが、これはまあ要するに物価安定目標の文書やその後に出た背景説明文書でああだこうだ言ってた話を説明していますので引用割愛して『2.委員会の検討』の方へ参ります。議事要旨本文12ページから。

途中までの概念の話はまあ全員が一致する話、というか物価安定目標の文書に書いてあった論点になりますので割愛しまして2%の部分に関してカオス鑑賞をしましょう。

『次に、持続可能な「物価の安定」の数値的な表現を検討するに当たり、委員は、@バイアス、Aのりしろ、B国民の物価観の3つの観点を踏まえる必要があるとの認識を共有した。そのうえで、委員は、それら3つの観点について、現時点で大きな変化はないとの認識を共有した。』

大きな変化が無いのに何故2%に上がるし??

『複数の委員は、「中長期的な物価安定の目途」を「消費者物価の前年比上昇率で2 % 以下のプラスの領域」としたうえで「当面は1%」と示している点に関して、今回の見通し期間中に当面の「目途」である1%にかなり近づくと見込まれることを踏まえると、その先、具体的にどの程度の物価上昇率を持続可能な「物価の安定」として想定するかについて、このタイミングで示しておく必要があるとの見解を述べた。』

2%にここで無理矢理引き上げる為の屁理屈とは言え、見通し期間中に1%の当面の目途達成が見えてきたとかテラカオスwwwwwwww

『多くの委員は、政府が、競争力と成長力の強化に強力に取り組んでいくという認識を示していることに言及し、今後、そうした取り組みの進展に伴い、現実の物価上昇率さらには国民の物価観が高まっていくと期待できるとの見解を示した。』

どう見てもただの大和魂あれば竹槍でB29撃墜理論です本当にカムサハムニダ。

『複数の委員は、ゼロ金利制約も勘案したのりしろの必要性を踏まえると、中長期的に目指すべき物価上昇率は1%よりも高いと考えられると述べた。別の複数の委員は、他の先進国が目指す物価上昇率である2%に揃えることが、長い目でみた通貨価値のバランスにも資すると述べた。』

この辺はよりロングスパンというか1%の目途を達成した後と言う意味ではまあそうなのですが・・・・・

『こうした議論を経て、大方の委員は、具体的な数値表現として「消費者物価の前年比上昇率2%」が望ましいとの認識を示した。』

・・・・・・・・いやもう事務局スタッフの文章構成能力がチョモランマより高いというのが判る訳ですが、ここでしらっとロングスパンでの話が飛躍して足元での目標数値表現の変更が正当化されるという話になって、これ読んでいる方もぼけーっと読んでいるとつい納得しちゃうのですが、今申し上げたように「より将来の事を考えた場合には1%より高い数値でしょう」というのと「今金融政策の目標数値として掲げる数値が1%より高い数値であることが適切」というのはその間のロジックにギャップがあるのですが、こういう形で流れるように文章にすると一々ツッコミどころを探しながら(またの名をあら探しともいう)読まないと納得しちゃう書き方をするのが日銀スタッフ恐るべしとしか申し上げようがございません。テラオソロシス(^^)。

話が逸れましたが、ちょっと飛んで2%に対する反対意見(佐藤さんと木内さん)の所がオモロイ。

『この間、複数の委員は、「物価安定の目途」に代えて「物価安定の目標」という表現を用いることには同意しつつも、その数値的な表現については、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス、当面は1%」という表現を維持し、その実現に全力を尽くす姿勢を示すことが適当であるとの認識を述べた。』

しかし就任当初ハト派(と言われる)2名だったのに筋を通して来たのがこの2名というのが実に皮肉な話ですな。

『これらの委員は、その理由として、@消費者物価の前年比上昇率2%は、過去20 年の間に実現したことが殆どなく、そうした実績に基づく現在の国民の物価観を踏まえると、2%は現時点における「『持続可能な物価の安定』と整合的と判断される物価上昇率」を大きく上回ると考えられること、Aこのため、現状、中央銀行が2%という物価上昇率を目標として掲げるだけでは、期待形成に働きかける力もさほど強まらない可能性が高く、これをいきなり目指して政策を運営することは無理があること、B2%の目標達成には、成長力強化に向けた幅広い主体の取り組みが進む必要があるが、現に取り組みが進み、その効果が確認できる前の段階で2%の目標値を掲げた場合、その実現にかかる不確実性の高さから、金融政策の信認を毀損したり、市場とのコミュニケーションに支障が生じる惧れがあることを挙げた。』

誠に仰る通り。

『これに対して何人かの委員は、現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ、政府が競争力・成長力の強化に向けた取り組みを強力に推進するもとで、2 % の達成を目指して日本銀行が金融緩和を推進するというかたちで、政策当局者が一体となって取り組む姿勢を明確にすることにより、企業や家計の期待形成に働きかける効果も考えられるため、このタイミングで見直すことには意味があるとの見解を述べた。』

>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ
>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ
>現状を前提に考えると2%の達成には困難が伴うとの認識を共有しつつ

・・・・・・・ワロタとしか申し上げようがございませんが、2名以外にもまあ2%は厳しいけれどもここはおとなのじじょうでと何処のつば九郎だというお方が複数名おいでと。

『このうちの一人の委員は、現時点の国民の物価観に過度に依拠するのではなく、先行きの経済物価情勢も踏まえて望ましい物価上昇率を考える必要があると述べた。もう一人の委員は、過去の低インフレの実績に基づいて多くの国民が現在持っている低いインフレ予想が今後も変わらないと想定するのは適切ではなく、様々な研究結果を見ても、かなりの割合の人々のインフレ予想は、将来の政策やそれによる経済の変化を織り込んで形成されていると考えられるので、これらの人々の予想形成に働きかけることは自然であると付け加えた。』

おまいら今まで1%を目途にしてた時の何故1%という数値を置いたのかという説明と全然違うじゃネーカまた中原三原則がでやがったなという所で。


・共同声明もカオス

順序としてはその前に金融政策方針の決定があって、その後に共同声明の検討があったのですけどさきにこちらを引用します。

『この提案を受け、委員は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携に関する共同声明を公表することについて、議論を行った。』

ということで。

『委員は、政府と日本銀行が、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて、連携を一段と強化することの意義は大きいとの認識で一致した。大方の委員は、現在、日本経済には持ち直しの動きがみられ、緩やかな回復経路に復していくために大事な局面にあること、また、政府が成長力強化に向けた取り組みを強力に推進することを表明していることを踏まえると、そうしたタイミングで政府と日本銀行が連携を強化し、一体となって取り組んでいく姿勢を明確に示すことは、日本経済の回復の動きを後押しするうえで、きわめて重要であるとの見解を示した。』

とまあここまでは良いとして。

『このうちの一人の委員は、政府との共同声明を決めるにあたっては、日本銀行法が定める、中央銀行としての独立性の確保と、政府との意思疎通の重要性とのバランスが重要であり、今回の声明はそうしたものになっているとの見方を示した。』

「共同声明は」そうですね(棒)。

『そのうえで、この委員は、特に、政策連携という言葉が使われていること、具体的な金融政策の運営については日本銀行に任されていることの2点において、政府からも日本銀行の独立性に対する配慮がなされていると理解していると述べた。』

「共同声明」に書かれている意味での「政府から」の配慮はそうですね(棒)。

『何人かの委員は、政府が、財政運営に対する信認をしっかり確保することも、連携を進めていくうえで重要であると述べた。』

まあここは重要なポイントですよね。特にAPPと財政ファイナンスの問題というのがありますので。

『別の複数の委員は、政府との間で、日本経済が直面する課題についての認識の共有が十分に図られているか疑問があり、もう少し時間をかけて望ましい政策連携のあり方を協議すべきと考えられるとの見方を示した。』

キタコレ。

『このうちの一人の委員は、労働力人口が毎年0.6%ずつ減少していく中で、2%の物価上昇率を安定的に実現するためには、きわめて高い生産性の上昇が必要になるという厳しい現実を直視する必要があると述べた。また、もう一人の委員は、政府が消費者物価の前年比上昇率2 % という目標の達成に向けた責任を分かち合うことが明示されなければ、企業や家計の期待形成に働きかける効果は限定的ではないかとの見方を示した。』

このお二方の認識は全くおっしゃる通りでございまして、特に後者に関しては早速安倍ちゃんが金融政策だけで2%やりやがれとか言い出す次第ですからして、後者の点については前者の論点なども踏まえて政府の取り組み姿勢というのをちゃんと出すようにしないといかんという話ですよね。

つまり、この文書自体は2%目標に対して政府と日銀の協力という形になっているのですが、肝心の安倍ちゃんが2%は日銀が実施するもんですよという業務分担的なイメージで共同声明を考えていると、そこに将来とんでもない齟齬が発生する可能性が、というか既に齟齬が発生していますけど・・・・・・・


・ガイダンス文言に関して

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に戻ります。

『金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策とを継続することにより、強力に金融緩和を推進する期間について、多くの委員は、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、それぞれ必要と判断される時点まで、とすることが適当との見解を示した。』

ということでまずはガイダンス文言部分。

『これに対し、複数の委員は、現時点で「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることに反対であるため、その「物価安定の目標」と関係付けるかたちで金融資産の買入れ等の継続期間を設けることにも反対であると述べた。これらの委員は、現時点では当面1%の物価上昇率を目指すことが適当であり、その際、1%に達する前に拙速な金融緩和策の後退を行う政策意図がないことを明確に示すことが望ましいとの見解を示した。』

佐藤さんと木内さんですな。

『一人の委員は、見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで、実質的なゼロ金利政策と期限を定めない資産買入れを継続することを明示することも一案であるとしたうえで、今回の会合では大勢意見に従いたいと述べた。』

「見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで」というのは面白い提案なのですが、それをしだすと展望レポートが益々鉛筆舐めの世界になるリスクが高まるのと、見通しが変わった場合に戻したりするのがややこしくなるのであまり明記しない方が良いと思います。

『別の一人の委員は、将来の短期金利に関する市場の予想に働きかけるオーソドックスな緩和強化策である実質的なゼロ金利政策については、金融資産の買入れとは効果・副作用に関する知識の集積が異なることもあり、消費者物価の前年比上昇率2% が見通せるようになるまで継続して一段と強い意思を示すことが適当との見解を示した。』

FED方式でAPPとゼロ金利を分離しつつゼロ金利の時間軸を強化しましょうという話で宮尾さんの提案ですね。

『これに対し、ある委員は、ゼロ金利政策と金融資産の買入れの効果と副作用の違いを強調することは、かえって現在強力に働いている時間軸の効果を低下させる惧れがあるとの見方を示した。』

うーん、ここは微妙。要は強調しなければ良いだけの話だとは思います。

『別の一人の委員は、先行きの金融政策運営に関するガイダンスは、今後の経済・物価情勢や累積的な金融緩和の効果を巡る不確実性の高さを十分踏まえたものとする必要があると述べた。』

つまりあまりリジットにしない方が良いという話ですな。

『委員は、日本銀行法は金融政策運営の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と定めており、そのもとで、先行きの金融政策運営方針をどのようなかたちで示していくにせよ、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく必要があるとの認識を共有した。』

というのはまあ普通の話です。


・唐突に来た「APP銘柄5年への延長」&付利関連の議論ナッシング攻撃

で、その部分の前にあるのがオープンエンド買入の検討部分になるのですが、

『こうした説明を受けて、委員は、期限を定めない資産買入れ方式の具体的な内容について議論を行った。委員は、本年末の現行方式での買入れ完了後、2014 年初からは、期限を定めず毎月一定額の資産を買入れ続ける方式を導入することが適当であるとの見解で一致した。このうちの一人の委員は、新たな買入れ方式は直ちに導入することも考えられるが、今回会合では、政策委員会として一致した明快なメッセージを出すことを優先したいと述べた。また、委員は、毎月の買入れ額について、消費者物価の前年比上昇率が1%にまで高まっていくと予想される2014 年中に、さらに「目標」である2%を目指し、手綱を緩めることなく、しっかり金融政策を実行していく観点から、基金の残高を10 兆円程度増加させ、その水準を維持できるよう、当分の間、長期国債2兆円、短期国債10 兆円、CP・社債1兆円の計13 兆円程度とすることが適当であるとの認識を共有した。』

とまあこの辺は特段の議論にはなっていない模様。

『複数の委員は、「物価安定の目標」の実現には相応の時間がかかる可能性が高い中、先行きになればなるほど経済・物価情勢や累積的な金融緩和の効果などを巡る不確実性が高くなることなども踏まえ、当分の間というかたちで期間を定めずに毎月の買入れ額を決めて買入れを行っていくことは、日本銀行の金融緩和姿勢を明確に示すものであるとの見解を述べた。』

とまあここまでは良い。

『複数の委員は、短期国債の買入れの強化は、短期ゾーンの金利低下を通じて、為替市場へ働きかける観点からも重要であると指摘した。この間、複数の委員は、例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた。』

>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた
>例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた

・・・・・・・・・もうね、5年新発国債入札の日にこういうのが出ちゃうというのが日銀の間の悪さという奴でございまして、しかもこの5年程度への延長云々に関しての理由に関する背景説明が書いていないので、一体全体どういう状況になるとそれが具体化するのかというのがワカランチ会長となるので、そらまあ5年入札に向けて相場がヒャッハー(という程でも無かったが)になるというものでありまして、これに関しては議事要旨が公開される日がまさに5年新発国債入札の当日朝であることを踏まえますと、もうちょっと丁寧に書いてほしかった部分です。

つまり、これは「金利を下げて為替市場に働きかけたい」から5年に延長するのか、それとも「APPの積み上げが困難になる」から5年に延長するのかが判らないので困る訳でして、どっちの観点(または上記以外の別の観点)で話をしているのかによって5年への延長論議がどういう状況で具体化するのかの判断が付きかねると市場参加者に向けたメッセージとしては非常にあいまいで却ってノイズになりますぞなもしという話になるのですよ。

文章からするとたぶん前者だと思うのですけれども、それだと何かちょっと違うんじゃネーノという感じもする訳で、金利差通じて為替市場に働きかける為に5年まで延長、というのはあまりピンとこない論点に思えるのですが実際にはどういう論点でこれが出たのか判らんと言うのが気持ち悪いです。

ということで、今回の議事要旨最大の謎はこの部分でありましたということで時間切れですorz






2013/02/19

お題「MPM後の定例会見ネタいまさら/FRBスタイン理事のクレジット市場の過熱に関する講演が面白い件について」

えーっと、これ安倍ちゃん何を言ってるのか会議録テキスト見ないと良く判らないのですけれども・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIE7TI6JIJUO01.html
安倍首相:外債購入の考え方も、日銀金融緩和−人事は近々提示へ (1)

『2月18日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は18日、日本銀行が進める金融緩和政策の手段について「国際的に議論になっている外債を買うという考え方もある」との認識を示した。個々の政策への詳細な言及は控えるとしながら、インフレ期待を高めるのが大切だとしている。』(上記URLより)

「国際的に議論になっている外債を買うという考え方もある」という最初の「国際的に議論になっている」が外債に掛かっているのか考え方に掛かっているのかは前後の文脈を読まないとさっぱりワカランチ会長なのですが、「金融緩和政策の手段として外債購入を考えている」という言い方をすると、それはいわゆる危機対応という見方をされないで為替誘導という受け止め方をされる(されるから株が反応したんですけれども)次第で、G20で盛大に「為替誘導ケシカラン」という話をしてきた翌日にプライムミニスター様がそういう話をするとか脇が甘いにも程があるのですけれども。つーか国会も為替の質問するんじゃねえよ変な発言が出たら国益に反するだろうがなどと思うこのあたくし。

まあいずれにせよこの辺の質疑応答を最初から最後まで通して読むと中々面白いものを見ることが出来そうで後日楽しみにしたいと存じます。


○ネタは無いのだが総裁定例記者会見の方

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302c.pdf

まあすっかり北京ダック状態ですので質疑もあまり面白くない、つーか質問者も何かしょうもない質問が多くてネタにするのをどうしようかというレベル。

・相変わらずしょうも無い質問に麿FEDを引き合いに出す

もうこの質問いい加減にしろと思うのですが。

『(問) 先程総裁もおっしゃったように、景気にはやや明るさもみられますが、足許の消費者物価については、2%の物価目標を大きく下回った状態が続いています。政府・日銀の共同声明では、金融緩和を推進し目標をできるだけ早期に実現することになっている中で、なぜ今回緩和を見送ったのでしょうか。』

風呂の水じゃあるまいし毎月毎月何兆円も買入総額拡大とか出来るとでも思っておられるのでしょうかもしかして貴殿の頭の中に入っておられるのはオガクズではないかと疑問を抱かざるを得ませんがご発言されている事の具体的な意味についてお考えになってからご質問される事をお勧め申し上げたいと存じます。

とは麿はお答えにはならない訳で(^^)、何か凄い細かい説明してるんですよね。

『(答) なぜ金融緩和を見送ったのかというご質問ですが、私どもとしては、金融緩和を見送ったという意識は全くなく、手綱を緩めることなく、強力な金融緩和を推進しているというのが、まず結論です。』

で、この後どのような経過で買入を拡大しているのかとか、その間の経済状況の好転の説明とかしているのですが、その説明がまあ丁寧な事。そしてその部分が終わるとこんなのが。

『なお、主要国の中央銀行をみても、目標を立てた上で柔軟に政策運営を行っているという点は、日本銀行と共通しています。例えばFRBは、雇用の最大化という使命に関連して、5.2〜6.0%の失業率を目安として示しているわけですが、現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません。』

>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません
>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません
>現在の失業率が8%近傍であることをもって、毎回のFOMCで追加的な金融緩和を行っているわけではありません

・・・・・・・・・・・(^^)(^^)(^^)

『BOEは、かなり長い期間にわたってインフレ率が目標の2%を上回っていますが、金融引締めを行っているわけではありません。いずれの中央銀行も、金融政策の効果が波及するまでには、相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、最終的な目標である物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現を目指して金融政策を運営しており、この点、日本銀行も同様の考え方です。』

ということで(途中の長い部分を思いっきり割愛しましたが)説明しているのですが、これネタとして引用しながらふと思ったのですが、この質問での説明って最初引用した部分と、先程の「FEDだって失業率が8%だからって毎回のFOMCで追加緩和してないよね」の二言だけの説明にした方がポイントを絞った形になってオガクズ脳の皆さんにも伝わるんじゃないですかと思うのですよ。

だってさ、上記の趣旨の質問ってまあさすがに毎回同じ人間とは思いませんけれども、結構な頻度で総裁定例会見で行われていて、その度にオガクズの皆さんに対して麿が懇切丁寧に説明しているのですが、懇切丁寧過ぎて肝心のポイントが伝わっていないのではと思ってしまうのですよね。

結局の所、一般向けというか普段そんなに金融政策に関心の無いというか知識が怪しげな金利市場以外の皆様がどういう理解をするのか、というような辺りも非伝統的な金融政策を実施するにあたっては(その政策の内容や効果への理解が伝統的政策のように判りやすく無いしそもそも政策効果の評価も固まっていないのですし)、その丁寧な説明の丁寧さの程度というのも使いようで、もっとポイント絞った答え方をする(ポイント絞った結果回答者がミスリードされたら元も子もないのですが)という工夫も必要だったのかなあとかまさに時既にお寿司なのですがそんな事を思ってしまいました。


・どう見ても認識にズレがあります本当にありがとうございました

この質疑はワロタ。

『(問) 2 点お伺いします。先般の衆議院予算委員会で、安倍首相は「デフレは貨幣現象であり、金融政策で解決できる。2%の物価目標は、日銀の責任で達成して欲しい」と発言されました。政府側は、デフレは金融政策で解決できると思っているという点で、総裁の認識と多少ズレがあると思います。この点についてどのようにお考えですか。』(2点目割愛)

『(答) 1 点目のご質問についてですが、ズレがあるとは考えていません。』

ほほう。

『政府、日本銀行の考え方は、先般公表した共同声明に書かれている通りです。繰り返し説明することは省略しますが、日本銀行は、幅広い主体による競争力と成長力の強化に向けた取組みの進展に伴って、持続的な物価安定の目標が2%であるということを発表しました。そうした物価目標を実現していくために、金融緩和を推進していくことを明らかにしました。政府は、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員して経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組みを具体化し、これを強力に推進すると言われています。』

確かに共同声明にはそのように謳っております。

『共同声明は、政府と日本銀行それぞれが果たすべき役割をしっかり認識し、それを強力に展開していくということです。私は、こうした政府と日本銀行のそれぞれの取組みがプラスの相乗作用を生み出していくこと、またそうしたもとで民間の経済主体が様々な取組みを進めていくことで、デフレ脱却が実現していくことを想定していますし、期待しています。』(2点目割愛)

・・・・・・・・・・結局共同声明の話をしているだけでありまして、安倍ちゃんの発言とのズレに関しては話がございませんでしたねあっはっは。


と言う位しかオモシロ質疑も無かったのでこの辺で。


○基金国債買入減額とな(メモだけ)

オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130218.htm
CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2013年2月21日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上3年以下) 3,000 2013年2月20日

今月最初の基金国債買入満を持して(???)登場。

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130218.htm
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上3年以下) 10,736 3,011 0.046 0.049 4.4
CP等買入(資産買入等基金) 7,178 2,730 0.107 0.113 33.4

オペのオファー額を3000億円に絞って変に金利が低下しないように配慮という風情ではありますが、結局このゾーン入れるものが無いという事で0.049/0.046と貫録の0.05%割れの結果になっております。これがまた決算の前の絶賛計数調整中とかいう時期じゃなかったらポートに沈んでいる物が出てきてもよさそうなもんなのですが、ポートに沈んでいる物も出てきませんでしたかそうですかという所ですかの。よー判らんが。


○スタイン理事の「クレジット市場の過熱」というお題の講演が面白い件について(2/7の講演)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130207a.pdf

Governor Jeremy C. Stein
At the "Restoring Household Financial Stability after the Great Recession: Why Household Balance Sheets Matter" research symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of St. Louis, St. Louis, Missouri
February 7, 2013
Overheating in Credit Markets: Origins, Measurement, and Policy Responses

これがまあPDF版見て頂きますと判りますように、講演本文が19ページ分あって図表が8枚あるという大量物。確かこの講演が出た時にクレジットバブル懸念発言キタコレというような反応が一瞬だけあったかとは思うのですが、実際どうなのよと読んでみたら結構面白かったのでネタにでもしようかと。

ちなみに、こちらの講演テキスト読む際ですが、図表に関してはカラーで見た方が読みやすいですぞなもしという所です。


・最初に感想でも

本編ですけれども、クレジット市場における過熱というかまあぶっちゃけバブルの発生に関して、その原因はどのような所にあるのか、そしてその過熱はどのような形で現れるのか、という話をした後、現在の米国におけるクレジット市場などの状況についての分析を行っております。

結論としては何とクレジット市場の過熱を示す指標が随所に観測されるという物でありまして、ただまあその過熱は現在の所システミックリスクを引き起こすようなバブルになっている訳では無いという指摘はしていますが、まあそういう認識を示していますかそうですかというのが読んでてほほーと思ったことの1点目。

んでまあ更におーと思ったのは、信用市場の過熱に対してどういう政策対応すべきかという点についてのスタイン理事の見解でして、一般的には規制や監督で対応すべきというのはその通りであるとしつつも、所謂「利回り追求」の動きによって発生する信用市場の過熱に対しては「金融政策による対応も一つの手段として考えるべき」という話をしているのがFRBの理事らしからぬ(^^)見解で、BISビューキタコレという程では無いにせよ、FEDの人間がこういう話をするというのは中々新鮮でびっくらこきましたですよ。

後で、というか量の関係上と時間が無いので後日送りになりますが、スタイン理事も基本的にはプルーデンス政策に金融政策(ここでいう金融政策は基本的には伝統的な金融政策ですが、話の後半では非伝統的金融政策も含めた話をしている)を割り当てるのは「ぶっきらぼう過ぎるツールである」という事は指摘していますが、特に「利回り追求」によってクレジット市場の過熱が発生している際には、規制や監督でその動きを抑制しようとしても規制監督の網を逃れる形で別の形の過熱が発生するだけであって、それよりもそもそも「利回り追求」の元となるベースラインのレートを変えてしまえばよろし、というのはそれはそれで理に叶っている話ではありますなあとか思ったりします(スタインさん常にそうしろと言っているのではないので念の為)。


・ということでネタにしようと思ったら時間がががががなので挨拶部分から

『Thank you very much. It's a pleasure to be here. The question I'd like to address today is this: What factors lead to overheating episodes in credit markets?』

「どのような要因がクレジット市場における過熱症状をもたらすのか」とかもう最初からキタコレです。

『In other words, why do we periodically observe credit booms, times during which lending standards appear to become lax and which tend to be followed by low returns on credit instruments relative to other asset classes?』

ふむ。

『We have seen how such episodes can sometimes have adverse effects on the financial system and the broader economy, and the hope would be that a better understanding of the causes can be helpful both in identifying emerging problems on a timely basis and in thinking about appropriate policy responses. 』

>identifying emerging problems on a timely basis and in thinking about appropriate policy responses
>identifying emerging problems on a timely basis and in thinking about appropriate policy responses
>identifying emerging problems on a timely basis and in thinking about appropriate policy responses

これはまたキタコレという話でして、この次の小見出しが『Two Views of the Overheating Mechanism』となっておりまして、クレジット市場の過熱がどのようにして起こるのかというメカニズムに対して「シンプルに期待が過熱するケース」と「金融機関などの制度的な要請によるケース」という説明をしておりまして、その次の小見出しが『Why the Distinction Matters』となっていてその辺りをどう判別するのかという話をしております。

でですね、そこまで読むと本文8ページ分になりまして、3分の1ほど読んだぜーと思うとその次の『Recent Developments in Credit Markets』というキタコレな小見出しがありまして、そこの冒頭に、
『With these remarks as a prelude, what I'd like to do next is take you on a brief tour of recent developments in a few selected areas of credit markets.』

とございまして、「these remarks as a prelude」というのを見た瞬間にそこまでヒーヒー言いながら(という程難解では無く文章自体は平易なのでそんなに苦労しないと思いますが)読んだあたしゃー盛大にこけましたので、手抜きして読みたければ『Recent Developments in Credit Markets』から読むのも一つの手段ではございます(ただ結局前の方も読んだ方が話の繋がりが判りやすいと思います)。





2013/02/18

お題「為替ネタメモ/オペ雑談/エバンス総裁CNBCインタビュー」

何かモーサテ見てると為替も株も「調整は一時的」と言ってる人だらけなので却って心配になってきた件。

まあ先週水曜にこんなお告げが出て以来のアレなのでそろそろ日銀総裁人事をネタに一発ダメ出しをして頂きますと誠に有り難いのですけれども・・・・・・・・・
http://www.musha.co.jp/4479

○為替関連ネタメモ

・武藤さんを軸に検討のニュースで円高株安とな

昨日の昼にロイターが次期日銀総裁人事で武藤さんを軸に検討というおまえら事前報道ルールとかの問題があるんだから憶測なんだかリークなんだか紛らわしい記事書いてるんじゃねえよゴルァというのが出ましたが、その後為替は円高に振れるわ株はドカドカ下がるわマッタクモウという展開でしたが、引けに掛けては若干持ち直しておりましたのでホッと一息。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI8H3G6K512T01.html
円一段高、G20警戒や日銀人事めぐる観測で買い圧力
更新日時: 2013/02/15 15:50 JST

『2月15日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では、円が一段高の展開。対ドルでは一時1週間ぶりの高値を付けた。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を間近に控えて、各国の当局者から通貨安競争に対する懸念が示されるとの警戒感を背景に円買い圧力がかかった。ドル・円相場は朝方に1ドル=93円12銭を付けた後、円がじり高となり、午前は92円台後半を中心に推移。午後には、日本銀行の次期総裁人事をめぐって、元財務事務次官の武藤敏郎氏起用の可能性が一部で報じられると、今月8日以来の円高水準となる92円25銭まで円が急伸した。午後3時37分現在は92円65銭付近で取引されている。』(上記URLより)

ということでしたが、金曜の感じですと武藤さんなら円高、岩田一政さんなら円安とかいう話がまことしやかに流布されていたようですけれども、正直言って岩田一政さんの外債購入ファンドとかって、既にG7(とその後のG20)で為替誘導を問題視されている中、為替円安誘導の為に設置するのは実現性に乏しいですし、何とか議連に提出した資料説明にあるような金融危機対策としてのファシリティーとして作るのであれば、金融危機発生時の円高阻止対策にはなるけど追加の円安誘導としては使えないので、岩田一政さんなら円安とかいうのも何も考えていないにも程があるのですが、まあ相場が動いてヒャッハーという人が一定量居るとこういう事になるんでしょうなあと。

寧ろ為替市場的な見方として積極派と見られる人たちがノミネートされて円安ヒャッハーとなった後、政策の実現可能性の壁にぶち当たって化けの皮がはがれた後の方が恐ろしいのでありまして、そーゆー意味では順当に穏当かつ常識的な方がノミネートされた方が日本の為には結構な事でしょうなあと思ってはいるのですが、その一方で直ぐにでも2%インフレ可能みたいな無責任な話を吹いている連中に総裁になって頂いてその無責任な駄法螺が駄法螺に過ぎなかったことを実証して頂いた方が、駄法螺連中が黙ってもう少し金融政策を巡る議論がまともになるのではないかという風に思ってしまうあたくしも居るのでありますが、その前に無茶苦茶な事になりそうなのでやはりお勧めできませんですかそうですか。


・話はそれるがちょっと悪態

武藤さん云々のロイターの記事はちなみにこちら。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE91E01120130215
日銀総裁人事は最終局面、武藤氏を中心に絞り込み進む=関係筋
2013年 02月 15日 13:34 JST

『[東京 15日 ロイター] 複数の関係筋によると、政府は、最終調整している次期日銀総裁人事について、武藤敏郎・大和総研理事長を中心に一段と絞りこみを進めているとみられる。』(上記URLより)

というようなリードで展開されている記事なんですが、事前報道ルールが存在するのに何でこういう記事を書くのかという所で、武藤さんに何か遺恨でもあって嫌がらせでもしたいのかというような勘繰りをしたくなる訳ですが、何と言うかこの手の報道もそうなのですが、市場の後講釈記事とかでも最近はページビュー重視だか何だかのせいで兎に角受ければ勝ちみたいな感じの記事が(別にロイターさんだけではなく)多くのベンダーで目に付く訳でして困るのよね。

ニュースベンダーさんの記事って何の為に読むのかと言えば、ワシらだって全ての市場の出来事について1から100まで把握するのは無理な訳ですから、その辺についての情報を得ようとしているのですが、その中でまあ見る方としては読みながらポジショントークとかも勘案しながら読んで行くという事にはなりますけれども、ベンダーサイドでわざと曲解したような書き方するのは困るというか如何なものかという所です。特に最近の為替市場の動きとか見ていると、日本語のヘッドライン的にそんな話をして居る訳でも無いのに英文ヘッドラインがセンセーショナルでそれを見て急に反応するとかゆーのが目立つ訳でありまして、まあ何だかなあという風に思うので一言付け加えておきますです、はい。


・山本幸三先生ェ・・・・・・・・・・

話戻って為替ネタですが山本幸三先生これは駄目だろ・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI7TSG6TTDTF01.html
自民・山本氏:通貨安競争は問題ない、1ドル=95−100円が適正 (1)
更新日時: 2013/02/15 14:18 JST

『2月15日(ブルームバーグ):自民党の山本幸三元経済産業副大臣は、各国が金融緩和による通貨安競争を展開することは世界経済全体の成長に資するもので、まったく問題ないとの認識を明らかにした。ドル円相場については1ドル=95円から100円程度が適正水準との見方も示した。14日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。』(上記URLより)

ブルームバーグニュースのインタビューが行われたのが14日と言う事は、G7終わった後にこの発言をしていると言う事ですが、えーっと山本幸三先生ってこの前まで安倍さんが会長だか座長だかをしていた日銀法改正とかその手の勉強会の後任の親分やっている訳ですし、与党の要人発言という事になると思われるのにこれは何というセンス。

だいたいからしてこういう発言がポンポン飛び出すからG7やG20で名指しはされていないけれども思いっきり通貨安競争に釘を刺すようなコミュニケが出ちゃう訳でして・・・・・・・


・G20声明

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIBCEA6JIJUQ01.html
G20声明:競争力で為替レート目的とせず−日本名指し回避
更新日時: 2013/02/17 10:19 JST

『2月17日(ブルームバーグ):20カ国・地域(G20)の財務相は16日、各国が為替レートに影響を与えようとしないよう一段と強い姿勢を示し、日本を名指しすることは避けながらも、世界的な通貨戦争の観測の抑制に努めた。G20財務相・中央銀行総裁会議は2日間のモスクワでの協議の後、「競争力のために為替レートを目的としない」ことなどを明記した共同声明を採択して閉幕した。声明は3カ月前の会合で合意した声明よりも強い表現となり、日本の当局者は公の場での円相場に関する発言で圧力を受けた。』(上記URLより)

ということでG20声明。

http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g20/20130216.htm
http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g20/20130216.pdf
20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2013年2月15-16日 於:ロシア・モスクワ)

『5.我々は、世界的な不均衡の持続的な削減を達成するために協力し、国内貯蓄に影響を与え生産性を改善する構造改革を追求するという、我々のコミットメントを再確認する。我々は、根底にあるファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムと為替の柔軟性に一層迅速に移行し、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避け、そしてこの観点から、共に成長できるよう互いにより緊密に協働する、という我々のコミットメントを再確認する。我々は、資金フローの過度の変動及び為替レートの無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えることを再確認する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避する。我々は、競争力のために為替レートを目的とはせず、あらゆる形態の保護主義に対抗し、我々の開かれた市場を維持する。』

うむむ、日本を名指しされなかったから良いとかいうのってそもそも話が違うように思える訳で、こうやって思いっきり話題になる時点でだいぶ負けのように思えますし、大体からして名指しなんぞされたらそれは余りと言えば余りの状態で論外でしょうにとは思いますが、この辺の距離感というか土地勘はそれほど詳しい訳では無いのでまあメモだけ。



○市場雑談というかオペ雑談

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130215.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 10,000 2013年2月19日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月19日 2013年3月13日

ということでとうとう金曜も基金国債買入をスルーの図となりましてほほうという所。一方で基金短国買入は前回の5000億円オファーから1兆円オファーに増やしてみましたとな。

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130215.htm
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 45,880 10,004 0.081 0.081 48.9
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月19日スタート分) 8,720 8,004 91.8

オペ結果は基金短国買入が0.081%の按分となりまして、水曜の3か月TB入札が0.0782/0.0802でございましたので、足切りよりはマシなレートではありますがそもそも足切りの按分が2%弱しかありませんでしたので、ちょっと安くなりましたかそうですかという所です。

でまあそれはそれとしてもう一つアレなのは固定金利オペでして、3週間物をここもと打ち込んでいて札割れを回避していたのですが、金曜はとうとう応札が8720億円まで減少しておりまして、そろそろ札割れの悪寒も漂ってくる状況。既に目標残高割れとなっている固定金利オペですが、この調子ですとやはり固定金利オペ残高の目標未達分を短国買入で埋めないといけませんですかそうですかという話になるんでしょうなあと思うのでありました。



○シカゴ連銀エバンス総裁CNBCインタビュー

音が出るのでご注意
http://video.cnbc.com/gallery/?play=1&video=3000146496
Fed's Evans: 'Monetary Policy Will Continue to Be Accommodative'
Thu 07 Feb 13 | 08:42 AM ET

画面の右の方にtranscriptがございまして、そこのPrintっつーのをクリックすると多分自動生成されているtranscript(なのでヒアリングしているのと微妙に差異があるけど実用上は問題ない)がございます。

ということでそこから少々。

・労働市場の改善は「失業率の低下」「20万人の雇用者増加が半年以上継続」が主要なポイント

冒頭の所から。

『substantial improvement in the labor market. is that clear to you?』と質問されてからのエバンス総裁の説明(以下transcriptのままで引用しています)。

『it's qualitative. i tend to favor quantitative markets. i think that's sufficient. we're out for a run, we're not going to run a marathon. it's about a half marathon. and we're going to see how it feels when we're done. so we're going to keep policy low until the unemployment rate is 6.5%. if we still feel good, you know, with the run, we might go a little bit longer. we'd like to get off to a good start. we're loading with carbs, taking the energy bars we're goingo get this off so the first couple of miles is at a good pace that continues like that.』

ということで、現状の改善についてはあくまでも質的な物であって、実際の経済指標(つまり失業率)としてまだ明確に出てきている訳では無いので、マラソンの途中であるというような表現で道半ばであるとの認識を示していまして、この話出た時のニュースワイヤーの説明ほどにハト成分が欠落したわけではありません。

『so the quantitative easing is to we're going to do that until we're clear that the labor market outlook has improved. might be happier, might be a whole year, could be longer. i'm hospital mystic that momentum is going to pick up this year.』

ということで少なくともQEは労働市場の見通しが明確に改善したと言える時期、今年一杯あるいはそれ以上は継続するでしょうと。

『let's talk about what substantial improvement looks like. the last time we met back in october you talked about job growth of 200,000 per month over a six-month period. is that your metric for substantial improvement?』

これはインタビューアーの質問ですな。

『i think that's a good bench mark.』

ほほう。

『i think that's completely achievable. the last three months have averaged 200,000 on payrolls. we need month after month of 200,000. i'd say, for six months, that would be good. but we also need growth above potential that reinforces that labor market improvement. and we need to really see the unemployment rate turn in its direction. it picked up a little bit to 7.9%. we ought to see it moving down. this is really the key, the unemployment rate. there's different things that are effecting the unemployment rate. you have the participation rate. the percentage of those in the workforce who are actually -- population and part of the workforce, that seems to be going down. part of that is because of aging. part of it -- 』

つーことでNFPの伸びだけでは無く失業率が低下傾向になるのが重要とな。


・失業率のトレンドを持った改善は今年の遅くまたは来年

『how do you think about the unemployment rate? could you imagine 200 or 300,000 jobs a month but increasing unemployment rate and would that cause you to dial back on stimulus? 』

これまたインタビューアーの質問。

『i think the unemployment rate came down a little more quickly in the last year than we had thought. i think once we start getting growth above trend, clearly above trend, quarter after quarter, the unemployment rate is going to move down, people will be coming back into the labor force but they'll be finding jobs and things will be picking up. so once we get momentum, and we achieve escape velocity either later this year or 2014, i think unemployment will move down with momentum.』

どちらかというと昨年の失業率低下が速くて、この先に関してはトレンドを明確に上回る成長となった所で失業率がモメンタム持って下がるでしょうと。


・具体的な見通し

『do you have a time period where you think we get to, say 7% unemployment? 』

という質問がありまして・・・・・・・

『well, i've got an outlook, and you know, that outlook has the unemployment rate in the range that you talk about by the end of 2014. in the 7% vicinity. i kind of currently think that 6.5% unemployment isn't going to be achieved until about the middle of 2015. but if things pick up more quickly, you know, that data will appear sooner. we have to talk about the difference between when the fed starts raising interest rates, and when it stops quantitative easing.』

ということで2014年終わりには7%近辺、6.5%は2015年半ばとの見通しですな。


・エバンス総裁も失業率7%になったらQE終了と

『the st. louis fed president says it's about 7%. do you have a point in your mind when the unemployment rate should trigger the end of quantiive easing? 』

セントルイス連銀のブラード総裁が失業率7%で量的緩和を終了させると言ってますがエバンスさんはどうでしょうか?という質問。

『tre hard questions. that's why we ask them.』
『thank you.』
『and we have chosen to take a qualitative viewpoint on this.』

この辺は実際の音声を聞くともうちょっと錯綜しています(^^)。

『i've said 200,000 on payroll. that's what i'm looking at. i'd love to see 7% unemployment sooner, rather than later. and moving down. to 7%. i tend to think it might be possible to turn off the quantitative easing. we build moment up and then we're just going to keep going. it's self-sustaining. we wouldn't have to continue to carve up along the run and so that's why we might be able to stop before 7%. bu'm open-minded, and i think that these policies have done a lot of good, auto sales are up. housing is turning the quarter. i think our policies are improving things.』

ということで、エバンスさんも7%の失業率でQE終了という話はしていますが、どちらかというと少なくとも7%になるまではQEやりますよと言ってますし、大体からして先ほどの項にありましたように、その7%に行くという見通しが2014年の終わりごろなのですからまあ普通にいつものエバンスクオリティ。

ここの7%云々の所が物凄い勢いでヘッドラインになっていましたけれども、まあそういう所ですわな。


・財政問題はGDPを1%程度押し下げるとな

最後です(結局ほぼ全文引用してしまった・・・・・・)。

『how much -- running out of time. how much fiscal restraint do you expect to see? 』

『go well, that's marked down our forecast. i'm looking for 2.5% growth this year. that's against 1% drag under the current law for fiscal policy, if we had more of a drag this year, that's more of a headwind that might mean that we have to do a little bit more. but i think we've got the appropriate policies in place to respond flexibly to what we're facing. you're going to sit right there.』

ということで。







2013/02/15

お題「決定会合レビュー/その他少々」

ということでまあ今回は特段話題にならない決定会合でしたが。

○声明文から:景気判断は現状判断引上げ、先行きは変化なし

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130214a.pdf

前回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122a.pdf


・海外経済、金融市場の緊張に関して

『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退してきている。』(今回)

『海外経済は、減速した状態が続いている。国際金融資本市場については、今後の展開を引き続き注意していく必要があるが、投資家のリスク回避姿勢は後退してきている。』(前回)

ということで海外経済に関しては「持ち直しに向けた動きもみられている」と入って上方修正。国際金融市場は同じですな。


・現状判断

『わが国の景気は、下げ止まりつつある。』(今回)
『わが国の景気は、弱めに推移している。』(前回)

ということで総括判断を下げ止まりに引き上げ。

『輸出は、海外経済の状況などから、引き続き減少しているものの、そのペースは緩やかになってきている。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も剥落している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりつつある。』(今回)

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の状況などから、減少している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も減衰している。』(前回)

つーことで何気に主要な需要項目を引き上げているのですが、輸出は減少の「ペースが緩やか」となり、鉱工業生産は減少から「下げ止まり」に判断を上げてまして、この大物2項目が判断引き上げとなっており、他は判断維持です。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

金融環境と物価は同じです。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで経済見通しは見事に全文一致。

『消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

物価見通しも全文一致。


・リスク要因

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

ここも全文一致です。


○声明文比較その2:最後の項がゴテゴテしていて見苦しいのですが

今回の声明文を見て真っ先に出る感想は恐らく最後の項に関しての小見出しのような印象でして、サンプル数極少であるあたくしのお友達も皆さん揃いも揃って「この6番は何なんですか」というお話に。

この項なのですが、前回まではここの項を1段落に押し込んでいたのですが、色々な物を盛り込み過ぎてついに1段落に入らなくなったというのが実にチャーミングで、昔の渋谷西武系店舗の絶賛大増殖みたいな風情を感じる(古いか)次第でありまする。

前回はこんな感じ。

『日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものである。こうした認識のもとで、日本銀行は、上述のとおり、強力な金融緩和を推進していく。日本銀行としては、大胆な規制・制度改革など「共同声明」に記載された政府の取り組みがしっかりと実行されること、また、持続可能な財政構造の確立に向けた取り組みが着実に推進されることを期待している。』(前回)


ではまあその6番目の今回版を引用しませう。

『日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』(今回)

まだ続く。

『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としている。』(今回)

さらに続く。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(今回)

まだまだ続く。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する。併せて、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援していく。』(今回)

ということで4段落もあるという長さでして、まあご覧になれば判るように色々な話をここにぶち込んでいるという事でして、前回も大概長いのですが、前回を遥かに超えた長さになっているのがチャーミング。

まあ一応見ましょうということで再掲しつつ段落ごとに。

『日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』(今回)

基本的には前回の会合で出しました『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』から拾ってきているという感じになりまして、最初の段落は『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』の1番と4番の部分をまとめたような格好になっていますが、その中でしらっと「金融システムの安定確保を図る責務を負っている」というのを入れているのがチャーミングでして、これはつまり金融システムの不安定化に繋がるような金融の不均衡に対しては対処しますよ、というのを日銀法の趣旨を持ち出してアピール(ちなみに日銀法第1条の2に『日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。』ってありますので、金融システムの安定確保を図る責務を負っているというのはこれはこれで正しい)しておりますぞなもしというのがチャーミング。


『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としている。』(今回)

これは『金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について』の3番に相当します。または前回の声明文1の『(1)「物価安定の目標」の導入』の中の冒頭の文章に相当しますな。


『日本銀行は、上記の物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』(今回)

ここは前回声明文1の『(2)「期限を定めない資産買入れ方式」の導入』の中の後半の文章に相当します。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する。併せて、金融機関による成長基盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援していく。』(今回)

まあ金融政策ガイダンス文言としての直接的な意味があるのはここだけでして、こちらは前回声明文1の『(2)「期限を定めない資産買入れ方式」の導入』の冒頭の文章に相当します。


ということで何かもうゴテゴテ書いておりまして、まあ一つ一つの段落に関する話はそれぞれ日銀としては説明して理解をして欲しい、というのは判るのですけど、正直言ってこれだけゴテゴテ書かれましても何かポイントがどこにあるのかが却って判りにくくなっておりまして、何を言いたいのかが一見して判りにくいのはやはり悪文の類であろうと思いますし、大体からしてコミュニケーションポリシーとして如何なものかという感は拭えませんので、この項についてはもうちょっと何とかならんのかとは思います。

いやまあ「物価安定の目標」に関する理解がどう見ても一般的に見た場合にアレだと思うので何度でも説明したい、というお気持ちは非常に良く理解できるのですが、それにしてもこの6番目の項建てはちょっとどうかと思いますけどねえ・・・・・・・・


と言う事でまあ決定会合レビューは本日は声明文のみ。会見については特段突拍子もない話も無かったようで誠に結構という所ですが、そもそも市場的には次の正副総裁体制下でさてどうしますねんという事に注目なので麿発言は見事にスルーというのが世の中オソロシスという所ではございます。


○その他各種雑談である

・岩田一政さん・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI6RK56K510701.html
岩田氏:1ドル=90−100円は均衡回帰、リスク資産購入拡大も (1)
更新日時: 2013/02/14 12:48 JST

『2月14日(ブルームバーグ):次期日本銀行総裁候補者の岩田一政前日銀副総裁は14日、1ドル=90円から100円程度までは過大な円高修正の範囲との認識を明らかにした。自民党有志で作る「デフレ・円高解消を確実にする会」(山本幸三会長)の会合で講演した後、記者団に語った。』(上記URLより、以下同様)

いやあの具体的水準とか言うなよとか思ったら・・・・・・

『岩田氏の見解発表を受けて、ドル・円相場は1ドル=93円前半から一時93円64銭まで円売りが進行した。』

と言う風に市場が動いちゃったのがマズーと言う感じなのですが、ちょっと手元に英語ヘッドラインの控えが無いので何なのですが、具体的水準よりも英文ヘッドラインで大々的に出ていたのって以下の部分の最後の「外債購入」の所だったみたいで、そっちに反応した可能性もあるなあと思いますがあたしゃ為替が本職じゃないからワカランチ会長。

『配布資料では日銀の金融政策に2%の物価目標は「マクロ経済政策運営上、整合性のある目標」と指摘。それを実現するための将来の金融拡大策としては「いくつかの方法がある」と強調している。 具体的には超過準備に対する利息(現行0.1%)の引き下げ、買い入れ国債対象の年限延長、各種リスク資産の購入拡大のほか、金融危機対応としての財務省・日銀共同での基金を通じた外債購入を挙げた。』

何かね、今さら「金融危機対応としての」って何ゆうてますねんという感じではあります(いやまあ勿論再発の可能性はあるのですが、政策当局的に言えばテールリスク的な大規模な金融危機発生の可能性は大きく低下した、という認識にワールドワイドになっているのですから、そもそもそういう事を言い出すというのが中銀サークルの中で「お前は何を言ってるんだ」扱いされる話で、結局の所為替介入してマニュピレーションしたいんでしょと叩かれるだけだろと思う訳で・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI7Y756JIJYS01.html
G20、「通貨の競争的な切り下げ回避」再確認へ−声明草稿
更新日時: 2013/02/15 02:48 JST

『2月14日(ブルームバーグ):20カ国・地域(G20)は「通貨の競争的な切り下げ回避」を再確認すると同時に、「金融政策がもたらし得る波及効果」を監視する姿勢を示す。15、16日にモスクワで開催のG20財務相・中央銀行総裁会議後に発表される声明の草稿をブルームバーグ・ニュースが入手した。』(上記URLより)

まあ海外金融当局もが散々すっとぼけて実施しているのでそれはそれで華麗にスルーしていれば良いのですけれども、そうは言いましても何もG20直前のタイミングでわざわざ為替の具体的水準に言及するとか外債購入の話を持ち出すとか燃料を投下せんでも良い訳で、もうちょっと物言い何とかならんのかと思うと共に、こういうタイミングで会合を実施しちゃう「デフレ・円高解消を確実にする会」って単なるナントカな働き者じゃねえのかと思ってしまうのですけれどもねえ。


・2年0.04%に上昇とな(メモ)

昨日の日本相互証券の2年カレントの引けは0.040%に上昇しとりました。

いやまあ先週の2年ヒャッハー相場が凄かったのですが、余りと言えば余りの展開になったせいか日銀の基金買入でこれ以上市場を煽る訳にも行かんと反省したのかどうかは知らんですけれども、ここもと基金買入をスキップしておりまして、まあスキップした分は結局後にツケが回ってくるだけではあるのですが、とりあえずちょっとお前それはという利回りまで低下したものの他に買う人が居なくて、買う人候補の日銀の基金買入が後ズレしているのでそらまあ少しは売る人もいるでしょうという所で。

でまあこの金利上昇を見て今日辺り基金買入が入ってまた金利が低下して最初に戻るという展開になると実に馬鹿馬鹿しい展開で遺憾の極みになるのですが、基金買入が入ってまたオモシロ展開になるに100ドラクマと言うところですな、うんうん。


・追加緩和のオプションについて考えようと思っていたのだが・・・・・・(予告編でも無い備忘メモ)

どうせまあ緩和のおかわりの話が出てくるとは思うのですが、はてさて何をするのでしょうという話を書こうかと思ったのですが、いざ書こうとすると論点が上手くまとまらないので週末考えてみます(^^)。

基本的にはあたしゃAPPの買入銘柄の長期化(3年→5年)よりも物価安定の目標達成が展望できるまで(でも何でも良いのですが)銀行券ルールを一時撤廃して輪番を拡大した方が将来の出口まで考えた場合に実務的観点からするとフィージブルで筋が良いんじゃなかなあとは思うのですけれども、その論点を幾らか考えたもののもうちょっと考えてみますね、という所です。








2013/02/14

お題「今日も雑談でござる」

諸般の事情で今日も雑談である。

○G7声明とかその関連雑談&カーニー総裁ネタ

G7財務大臣・中央銀行総裁の声明(仮訳)(2013年2月12日)
http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2013/g7_250212.htm

『我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、我々が長年にわたりコミットしている、為替レートは市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する。我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している。我々は引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、適切に協力する。』

ということで、まあとりあえず足元で日本の金融緩和に関しては国内事情によるものですというのは話の上ではそうなっているのですが、そうは申しましても「金融緩和しなければ日銀法改正」とかあからさまに日銀に圧力掛けてみたり、「100円位までの円安を」とか色々な人から直ぐに数字が出てくるとか、まあ対外的に見てそれは如何なものかという言動がトマランチ会長ですからそらまあそう言われます罠というのがカナダ中銀カーニー総裁なのである。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI4BKC6TTDX101.html
週末のG20は日本を協議、G7は為替でG20に圧力−加中銀総裁
更新日時: 2013/02/13 03:14 JST

『2月12日(ブルームバーグ):カナダ銀行(中央銀行)のカーニー総裁は、世界の主要国は20カ国・地域(G20)の他のメンバー諸国に対し、為替レートを目標にしないよう圧力をかける方針だと述べた。日本の為替政策については、今週の財務相・中央銀行総裁会合で協議されると付け加えた。主要7カ国(G7)は12日、モスクワで開催されるG20会合に先立って声明を出し、経済成長の追求で自国通貨を安くする行動は取らないと約束した。』(上記URLより)

ということで次期BOE総裁のカーニーさん恐るべしという所なのですが、今度BOE総裁になった場合にはどういう事になるのかというのは先般議会証言のようなものがあったのでそれを読まないといけないのですが、量が多いのでまだ読み切れておりませんでその代わりにこんなのでも。


http://www.bankofcanada.ca/2012/12/press-releases/central-bank-policy-guidance/
Central Bank Policy Guidance May Be Most Useful in Extraordinary Times, Says Bank of Canada Governor Mark Carney

でまあこの本文は
http://www.bankofcanada.ca/2012/12/speeches/guidance/
Guidance

なのですが、今日は手抜きで(しかも昔のネタですが^^)最初のURLの方から参ります。

『Toronto, Ontario - While transparency is critical to well-functioning capital markets and effective monetary policy, forward policy guidance is best used sparingly by central banks in normal times, Bank of Canada Governor Mark Carney said today. In a speech to the Toronto CFA Society, the Governor discussed where policy guidance can be most effective and when it may be warranted.』

ということで政策ガイダンスがどういう時に有効かという話をしているのですが・・・・・

『“Central banks pursue transparency to be accountable in democratic societies,” Governor Carney said. Clear, open communications also enhance the effectiveness of monetary policy. Success in this regard requires transparency around what policy-makers are trying to achieve and how they go about achieving it, he added.』

政策の透明性が重要であるとな。

『Over time, the Bank of Canada has become significantly more transparent in discussing the forces affecting the Canadian economy, in order to help households, firms and financial market participants understand how monetary policy will respond over time. This communication not only promotes the appropriate formation of policy expectations, but allows those expectations to evolve efficiently as new information is received.』

政策の透明性という意味ではカナダ中銀に関しては期限付きの低金利政策というガイダンスを出したのですが、政策効果が出たので良しということでしらっとガイダンス期限前に利上げしているののどこが透明性なのかというツッコミを飛ばしたくなるのですが次の所を読むとなるほどというか何というか。

『The Bank of Canada occasionally provides guidance in normal times to give a sense of the imminence and degree of prospective policy action, and the important economic and financial factors influencing policy, the Governor said. “This guidance is never a promise, however. Actual policy will always respond to the economic and financial outlook as it evolves. Expectations of policy should do the same.”』

>This guidance is never a promise
>This guidance is never a promise
>This guidance is never a promise

・・・・・・・・・・その「約束では無いガイダンス」というのは何ですねんという気がするのですけれども、さすがにカナダの金融市場がどういう認識で要るのかはワカランチ会長でございますので何とも言えませんが、「フォワードガイダンスは約束ではありません、状況が変化したら変化します(キリッ)」とか言われますと、そもそもそのガイダンスは信用に足るものか、という風になるように思えるのですけれども、その辺ってどういう受け止めになっているのでしょうかねえ。

『More explicit policy guidance may be most useful in extraordinary times, Governor Carney noted. For instance, in April 2009, when conventional monetary policy had been exhausted, the Bank of Canada provided additional stimulus by committing to hold the policy rate at its lowest possible level, conditional on the outlook for inflation. “Our conditional commitment worked because it was exceptional, explicit and anchored in a highly credible inflation-targeting framework,” he said.』

はあそうですかという所ですが。

『Central banks needing to go further could also publicly announce precise numerical thresholds for inflation and unemployment. If additional stimulus were required, a framework change, such as adopting a nominal GDP-level target, may be worthy of consideration, Governor Carney said. He cautioned, however, that “the benefits of such a regime change would have to be weighed carefully against the effectiveness of other unconventional monetary policy measures under the proven, flexible inflation-targeting framework.”』

ということで最後に名目GDPターゲットの話が出ていまして、これが出た時に話題になっていたのはご案内の通りですが、どうもカーニー総裁の「ターゲット」というのは単純な目標値なのではなく、ガイダンス政策の一環としてのターゲットであって、(名目GDPなんて後付でしか判らないのですからそれを金融政策の目標としてリジッドに運営するとかそもそも運営的に有り得ない訳ですが)金融政策を運営する際にこういうのを見ながら運営しますよ的な見せ方としての「ターゲット」というフレキシブルターゲットというよりはだいぶ裁量成分の強い「ターゲット」なのではないかと思う次第。

しかしこのおじちゃんは堂々と「金融政策の透明性」とか仰せなのがあたくし的には不思議に見えるのですが、これはあたくしのカナダ中銀およびカーニー総裁の研究が不足している事に起因している可能性もオオアリクイなのでまだ結論は出せない所ではございます。

ただまあ一つ言えるのは、このおじちゃんかなりの強者だなあとは思う訳で、「ガイダンスは約束ではありません、状況の変化で金融政策が変わります」とか言いながら「金融政策の透明性」と言い切ってしまう辺り、良く言えば清濁併せのむという風情でもありますが、気合とハッタリとインチキ成分は相当にありそうで、このおじちゃんが「日本の為替政策ガー」と言い出しているのは今後のG7やG20においてかなりタフな相手になる可能性もあるなあとゆーことで、これはカーニー総裁の発言などの読み込みが必要ではないか(ちなみにバーゼルとかそっちの発言も多かった筈)と思われる次第。


んでまあBOE今の総裁のキングのおじちゃんはと申しますと・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI624P6K50Y501.html
英中銀総裁がポンド安の必要示唆-G7声明説明中に思わぬ発言
更新日時: 2013/02/14 02:01 JST

『2月13日(ブルームバーグ):イングランド銀行(英中央銀行)のキング総裁は13日、英国経済の回復にはポンド安が必要かもしれないとの認識を示した。主要7カ国(G7)は前日、世界的な通貨戦争回避を目指し為替に関する声明を発表したばかり。中銀総裁が市場と対話する上での難しさがあらためて浮き彫りとなった。』(上記URLより)

ワロタという所ですが、昨日ネタにしたBOEの1月MPC議事要旨でもポンド相場に関連してああだこうだゆうとりましたが、要するに英国ポンド下げて景気を何とかしましょうという話だったのねというのは把握したが、しらっとこういうのを前任が言う訳で、カーニーさんどうしますねんという所ですな、あっはっは。


○えーっと、これは黒田さん外れフラグですか???

そういや休み中にこんなんでてましたぞな。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE91A01B20130211
ADB総裁の職に満足、日銀人事については答えられない=黒田氏
2013年 02月 11日 17:22 JST

『[東京 11日 ロイター] アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁は11日、都内でロイターなどの記者団に対して、次期日銀総裁候補に名前が挙がっていることについて「ADB総裁の任期が4年近く残っており、今の職に十分満足している。仮定の話には答えられない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

と言う最初の部分はまあ社交辞令の類だと思うのですけれども・・・・・

『日銀をめぐっては「グローバルスタンダードである2%の物価目標を掲げたのは非常に画期的で正しい」と評価した。2%達成までに要する期間については「2年ぐらいが適切」との見方を示した。「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論を改めて強調した。なお外債購入は「為替政策であり中央銀行の所管でない」として否定的な見解を述べた。』

2%達成が2年とか、買う事が出来る金融資産は何百兆円もあるとか、どうみてもそれ日銀総裁になったら自分で自分の首を絞める発言であって(だいたい何百兆円も買うということは当座預金残高が何百兆円も積みあがるという事なんですがどうみてもフィージビリティー丸無視にも程がある)、普通に日銀総裁就任を意識していたらその辺の話は適当に誤魔化すだろと思いますし、大体からしてそういうフィージビリティー丸無視の話を平気でするような中央銀行総裁が「国際金融マフィアのインナーサークル」とやらに入れるとは思えませんけど(少なくとも中銀サークルでは馬鹿にされるでしょ)どうしちゃったんでしょうかねえ。

とか考えて思ったのですが、これは黒田さん総裁就任の目が無くなったのを自覚したので無責任発言モードになったのではないかという推測をしてみましたが、実際にその予想が正しいかは存じませんので念の為申し添えます(^^)。つーかこれだけ大口叩いて(しかも買入できる資産が何百兆円というのは無理ゲーにも程がある)日銀総裁就任して2年で2%行かなかったので辞任しますとか恥ずかしいにも程があるので、逆にちゃんと考えているのかと不安になるのでございまするが・・・・・・・・


○FEDのあちこちからタカ派ハト派発言が出ている件について(メモ)

本当はちゃんと全部読みたいのですが時間とお家の事情によりましてまだ読めていませんけど(大汗)、最近は地区連銀総裁や連銀理事から特に資産買入に関連してタカ発言やハト発言がここぞとばかりにタカ派ハト派の両陣営(?)から飛び出していて誠に素敵な展開になっております。

低金利政策の閾値に関してはご案内の通りで明確なのですが、資産買入に関しては微妙にファジーな事に加え、どうも出口政策を意識しないといけない、という段階が何となくでも見えて来て初めて「えーっとこんなに長期債券買いまくっていて大丈夫か」という事に気が付いたのではないかと思われる次第でして、まあ今になって出口政策がおそロシアになると気が付いても時既にお寿司にも程があるのですが、突っ込むときに出口政策の設計何も考えてないで突っ込むのがメリケンクオリティなので仕方ないとしましても、そろそろその辺にビビりだした可能性はあるなあとニヤニヤしながら今後の推移を眺めたいと思います。

#そういう意味ではちょっとドル高に振れた方が物価抑制になって良いのかもしれませんね





2013/02/13

お題「虫干し趣味企画でBOE1月会合議事要旨」

ということで趣味企画でおじゃる。

○BOE1月議事要旨から論点を少々

本日も諸般の事情で虫干し企画ということで1月議事要旨。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1301.pdf

・英国ポンドの下落がそんなに輸出に効かなかったとか今更何という残念な話

第19パラグラフから。

『The contribution of net trade to UK economic growth since the large depreciation of sterling in 2007 and 2008 had continued to be disappointing.』

というのを2013年になってレビューされても困るのですが、つーかおまいらちょっと前までポンド安で景気にプラスでヒャッハーとかゆうとったやんけという話ですが、その内容について以下のように記述されています。

『While it had contributed 0.5 percentage points to GDP growth in the third quarter, net trade had made a small negative contribution over the preceding year as a whole. The lack of a more significant improvement in the trade performance of the UK economy could partly be explained by slow growth overseas, although there was little evidence that UK exporters were disproportionately reliant on more slowly growing markets.』

直近の数字とか最近の1年の話ではネット貿易が悪化しており、来年もその調子になりそうという話で、海外の経済の伸びが弱い理由はあるけれども、それだけで英国だけが貿易収支が悪化する理由にはならんでしょと。

『It was also the case that measures of the real exchange rate had appreciated since the end of 2008 as UK costs and prices had risen by more than in other countries and the nominal exchange rate had appreciated somewhat.』

ポンドの下落で英国のコストや物価が上昇したのも要因ではないかとかキタコレですが。

『Receipts of net property income from abroad had weakened and the latest estimates suggested that the current account deficit had been 3.3% of nominal GDP in 2012 Q3.』

海外からの不動産収入のネットも落ちているとな。

『The existence of a significant current account deficit at a time of depressed activity and considerable spare capacity could imply that the sterling real exchange rate was higher than the level compatible with external balance.』

相変わらずBOEの英語はFEDの英語と比べて読みにくくて敵わんのですが、どうも落ち込んだ経済活動に加え大きな経済の余剰生産力のある中での大きな形状赤字は、海外のバランスと比較してポンドの実質レートが高い事を示すのではないかとか書いてあるのですがイマイチワカランチ会長。

ただまあ英国様におかれましては、ポンド安で輸出を伸ばして経済活動拡大というような話をしていたのが、いざそうなったもののどうも期待外れに終わっていて、一方でポンド安による物価上昇によって実質ベースの伸びが足りないという残念な事態になっているという話ではあるようでございます。


・食料品価格が下がらないとな

第21パラグラフから。

『Among the factors that had raised CPI inflation in recent months were higher food prices.』

最近は食品価格がCPIを予想以上に上げているとな。

『Twelve-month food and non-alcoholic beverage inflation had been 3.9% in November, somewhat higher than its long run average, driven largely by higher agricultural commodity prices. There was a concern that recent poor weather was likely to affect future harvests and push up further on food prices. But the effect of higher agricultural commodity prices on food price inflation was likely to be relatively muted so long as the costs of food processing and distribution remained stable. Agricultural commodity prices had fallen a little in recent months, although they remained high and vulnerable to further shocks.』

ということで、農産品に関しては天候不良によって上昇するかもしれないけれども、食料品の加工業者や流通業者のコストが安定しているのでその影響は限られるでしょうという見通しになっているのですけれどもホンマカイナという感じはします。


・雇用者数があまり減らない件&生産性が伸びない件について

第24パラグラフから。

『Employment had continued to grow, rising by 40,000 in the three months to October, compared with the three months to July, despite only a modest increase in underlying activity. There remained a considerable shortfall in productivity relative to the level implied by a continuation of its pre-crisis trend. Understanding the factors behind that shortfall, which had built up to around 15% of the level of productivity since the onset of the crisis, and was outside past experience, remained a key challenge.』

英国は雇用は伸びているのですが、一方で企業活動の方は低調な状況が続いておりまして、結果として生産性が弱いという状態が続いておりまして、この生産性の弱さが物価の高止まりに繋がっているという認識を示しておりまして、何でこういう事になるのかというのが前々からMPCの論点になっております。

『The international evidence suggested that the shortfall was larger in the United Kingdom than most other developed countries. A central policy issue was whether productivity would pick up, and the shortfall get smaller, as aggregate demand expanded. Intelligence concerning the business services sector from the Bank’s Agents had indicated that some of the productivity weakness might indeed dissipate if demand picked up.』

ということで基本的には需要が伸びれば生産性は回復するという認識ではあるのですが。

『Contacts had suggested that one of the reasons that employment had remained buoyant was that companies found winning and delivering work was more resource intensive in an environment of persistently weak demand. Some companies had retained staff in the light of persistent expectations of a return to more normal demand growth. Both of these factors were likely to dampen the amount by which employment would need to increase when demand eventually picked up, suggesting that some of the productivity shortfall was likely to be temporary.』

そもそも雇用が生産活動と比較して堅調な理由は、需要が拡大した時に生産を直ぐに拡大できるように雇用を確保しているという動きがあるという見方がありまして、もしそうであれば現在の生産性の低下は将来の需要拡大時には解消される一時的な物であるという見方が言えるでしょうとな。

『Nevertheless, contacts had identified other factors, such as client expectations of higher service levels and more frequent tendering for work, that were likely to persist, so that not all of the productivity shortfall was expected to be recouped when demand eventually recovered.』

一方、他の要因として、例えば顧客がより高いサービスやより頻度の高い労働の提供を求めるようになっているという可能性があり、この場合は要因が永続的になるので、生産性の落ち込みのすべてが需要の拡大によって回復すると考えない方が良いのでは、という指摘。

・・・・・・まあ何ですな、あたしゃ英国は観光客として3回くらい行っただけですから何となくしか判りませんけれども、住んでいた人の話を聞くと英国のサービス業などのレベルってもう凄まじいダメダメ振りであるという話は聞いておりますので、この部分を読んで「そりゃそうだ」とか思ってしまいましたぞなもし。


・景気の先行きに関しては厳しいようで

と言った辺りがまあほほーと思った所なのですが、では『The immediate policy decision』からで、まずは第28パラグラフから。

『It continued to be difficult to get a sense of the underlying strength of growth in the United Kingdom. Employment growth had remained firm and revisions to official statistics had suggested that growth in manufacturing and services sector output, abstracting from the impact of one-off events, had been relatively stable at around 0.3% per quarter during the first three quarters of 2012. But recent information from both monthly official data and business surveys had been conflicting. Moreover, the unwind from the Olympic Games was expected to depress headline GDP growth significantly in the fourth quarter.』

ということで、雇用は強いのですが英国経済に関しては成長は伸びそうもなく、オリンピック特需分の落ちが2012年4QのGDPは顕著に落ち込むでしょうとか実に残念な見通し。

クレジットコンディションは改善と言う事でFLSの効果についての話も。第29パラグラフ。

『There had been some evidence that credit conditions were easing as lower bank funding costs began to pass through to lower loan rates.』

ほう。

『These developments were broadly in line with expectations of how the Funding for Lending Scheme (FLS) would operate in its early stages.』

キタコレ。

『And the Bank’s Credit Conditions Survey had pointed to expectations of a further easing that could help support lending and demand over the course of the year. There had been evidence of a slight improvement in investment intentions that might herald a more broad-based pickup in business investment.』

ただ一方で景気の先行きには向かい風があるという話が次のパラグラフ。

『Nevertheless, substantial headwinds to recovery remained, including the drag to activity from fiscal consolidation, a further squeeze in household real incomes, and the deterioration in UK competitiveness over the past couple of years. Indeed, the existence of a significant current account deficit at a time of subdued activity and spare capacity suggested that the sterling real exchange rate might be above the level compatible with the necessary rebalancing of the economy.』

さっきのポンド相場の話もしていますな。


・物価の見通しに関して

第31パラグラフから。

『As with activity, there had been little news to cause the Committee to revise its view of the outlook for inflation.』

基本的には変わらずと言う事で。

『Inflation was a little above the 2% target, and was likely to remain so in the near term. Wage growth had remained subdued and, while productivity growth was also weak, the Committee’s central view remained that productivity growth would pick up as the economy expanded.』

というのはいつも通りの見通しなのですが・・・・・

『But there remained a question as to whether this would put sufficient downward pressure on unit labour costs and market price inflation to offset the effect of rising regulated and administered prices. Intelligence concerning the business services sector from the Bank’s Agents had found some grounds for expecting productivity growth to pick up as the economy recovered. But there was a risk that any recovery in productivity would result in higher wage demands, rather than lowering firms’ costs, and so would not deliver the necessary downward pressure on market price inflation.』

ということで、問題点としては公共料金などの継続的な引上げの影響がどうなるか、需要が拡大した場合の生産性の回復(によって物価の上昇圧力が抑えられるというビューなので)が結果として企業のコスト改善ではなく賃金引上げへの圧力に繋がって結局物価上昇圧力に繋がるリスク、と言った点という話。

・・・・・・・・何かBOEの議事要旨って直ぐに出てくるのと一見するとパラグラフ分けをしているので見やすく見える(実際はジョンブル英語なので米国の当局が出す英文と比べて表現が晦渋で判りにくいことこの上無いのですけれども)ので読んでいるのですが、ここもとのBOEの議事要旨を見ますと英国は物価はサガランチ会長だわ企業活動は低調だわポンドが下がっても輸出は対して増えないのに輸入物価は絶賛上昇するわと、中々残念な状態になっていてどこがどう「インフレターゲット政策が成功している国」なのか小一時間問い詰めたいと思うのですが、どうも話題にならないのが不思議ちゃあ不思議です罠。


・追加緩和の効果についての話

第32パラグラフから。

『The Committee discussed how further monetary stimulus could be delivered, should it be warranted, and the effectiveness of additional asset purchases.』

追加の資産買入はどういう波及効果があってどのように正当化されるのかという議論をしたとな。

『While it was too soon to assess the full impact of the FLS in supporting lending and wider economic activity, the early signs within the banking sector were encouraging. There was also considerable further scope for asset purchases to lower long-term yields on government and corporate debt and support other asset prices.』

FLSの効果に対してまだ評価するのは早いものの良い傾向が見られている上に、資産買入が金利を低下させて企業の負債金利を引き下げたり資産価格へのサポートになったりしているという効果があるというのは共有されているようですな。

『But there remained uncertainty about their impact on nominal demand, and they might prove less effective in boosting real output when resources needed to be shifted between sectors and while the banking system was constrained.』

しかしこれらの効果が名目の需要に対する効果について不確実性が残っており、金融システムが束縛され、資源のシフトが必要な中で実質の生産を拡大させるには効果が小さいのではないか、などとまあ難しい言い方をしているのですが、要は銀行セクターおよび金融セクターによる資源の配分が行われないようになっている(活動が抑制されているので)中では金融緩和政策の効果が小さくなるのではないかという話ですな。


・物価が上昇しっぱなしで金融政策のクレディビリティはという話

第33パラグラフから。

『Developments on the month had been modestly positive, increasing the confidence of most members that the outlook was broadly as described in the November Inflation Report. While these developments had not substantially altered the balance of risks associated with maintaining and increasing the size of the monetary stimulus, they had strengthened the belief of some of these members that no further asset purchases were required at the current juncture.』

ということで見通しは大きく変わらず政策は現状維持が適切と多くの委員が認識(1名追加緩和を提案していますがそこは引用割愛します)。

『Inflation remained above target at 2.7% and some of the factors currently contributing to higher inflation, resulting from administered or controlled sources, were likely to persist through the current year and beyond.』

インフレは2.7%ということでターゲットを超えて推移しており、こんごも公共料金などの引き上げで暫く高い状態が続くようです。

『There was a risk that the prospect of continued above-target inflation could result in an erosion of credibility in the monetary policy framework which could affect wage and price setting behaviour.』

金融政策のクレディビリティキタコレ。

『Against that, growth remained subdued and the economy continued to face a number of headwinds that would squeeze real incomes. Moreover, there was likely to be some excess capacity and some members put weight on the possibility that output could be expanded without generating much additional inflationary pressure. On balance, most members judged that it was not necessary at this meeting to change either Bank Rate or the size of the asset purchase programme in order to meet the inflation target in the medium term.』

ということで、一方で経済の先行きリスクだの、経済の余剰生産力だの、実質所得の伸びの弱さだのを考えるとそんなに大きなインフレ圧力が掛かるとも思えないので、金融政策は現状維持が適切、という結論にはなっておりますな、うんうん。

#ということで趣味コーナーでした




2013/02/12

お題「今日は雑談メモだけで勘弁してくんなまし」

本日は週明けおよび諸般の事情につき簡単メモだけで勘弁でありまする。

○市場メモというか何というか

・引き続き2年債メモとか

金曜も中短期ゾーンは強いというか何というかでありまして、ショートカバーモードになっている2年カレントの325回は別格の0.025%が多分ミッド位(他は0.030%〜0.035%)とか何かもう酷いとしか言いようがない状況でして、いやまあショートカバーだから仕方がない面はあるのですが、いくら基金国債買入オペがあるからと言いましても、そもそも基金国債買入オペは絶対金利ベースでの応札で行う(輪番は引け対比)訳ですからそんなに強くなっても日銀に外しにいけないですぞなとか思うのですけど、強くなった後どうなるんでしょうかねえ。

基金国債買入の中で新発2年の所のイールドが一番低いというお洒落な状態になっておりますので、まあ基金国債買入に今月どういう銘柄が入るのかが興味があるのですけれども、どういう銘柄が入るのかというのに加えて買入の金利水準がうっかり低くなるとこれまた基金国債買入の拡大が困難になるんじゃネーノという話を連想して更にアレな思惑にというような流が発生しそうで誠にアレでございまする。


・短国買入オファー額減額とな&固定金利オペ

金曜日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130208.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 5,000 2013年2月13日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月13日 2013年3月6日
国債補完供給(国債売現先)・即日)  405 2013年2月8日 2013年2月12日

と言う事で、先日の基金国庫短期証券買入で買入金利が急低下し、ついでに麿の3月19日退任前倒しが出てしまって中短期ゾーンの金利にも波及してアヒャヒャヒャヒャとなったのはご案内の通りですが、さすがにこれ以上短国買入の金利を下げてヒャッハー状態にする訳にもいきませんぞなもしという所なのか、それともどうせ3か月物しか入らないのでそんなに無理して買わなくても良い(今せっせと購入してもどうせ6月末の短国買入残高に反映しない)という認識にでもなったのかは存じませんが、買入のオファーロットを絞って参りました。

でもって結果は以下の通り
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130208.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 27,585 5,000 0.077 0.077
共通担保資金供給(資産買入等基金) 17,590 8,010 45.5
国債補完供給(国債売現先)・即日 12 12 -0.900 -0.900

ということで0.077%で決着しましたが、この水準は前日に行われた3か月TBの足切り水準になりますので、ロットを減らした効果てきめんという所ではあるのですけれども、そうは言いましてももし普通に短国買入を4−6月と同じ想定ペースで行うとなりますと、結局の所月に6.5兆円程度の購入が必要で、それを4週間で割るとやはり週に1.6兆円とかの買入をしないといけない訳ですから、1回のロットを減らしても買入の回数が増えるから結局同じ事です罠という感じはします。ただまあ買入のロットを減らして買入を均等に実施していった方が瞬間的な需給のゆがみが出にくいかなあとは思いますが、いずれにせよ調節部隊大変です罠という所です。


固定金利オペに関しては今回もまた3週間物という超短いオペを打ち込むことによって札はちゃんと入ったのですが、こちらに関しても基金国債や短国の買入が嵩むことによって超過準備が拡大するとニーズが落ちまして、その分基金残高が足りなくなる分については固定金利オペを基金短国買入に振らないといけなくなるので更に固定オペのニーズが下がる傾向に。とは言っても最終的にニーズがゼロになる事はないでしょうからどこかで止まるとは思いますが、この辺の感覚が正直未踏の地にも程があるので良く判らない、というのが一番困る所であります。

例えば先週の短国買入にしても、それまではまあ普通のレートで入っていたのですけれども、その感覚で普通にオファーしたら普通の応札で1.5兆円が埋まらなくてレートがすっ飛んでしまった訳ですが、徐々に未踏の域に入るにつれ、先週のような事象が時に発生してその度に市場がアチャーとなってという風なのは起きやすそうですな、と思ったのでありまする。


○ニュース雑談

・麻生さん日本語の使い方は慎重に

http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPTK060969720130208
〔外為マーケットアイ〕ドル92円前半に急落、麻生財務相の発言で下げ加速
2013年 02月 8日 17:37 JST

『 <17:16> ドル92.53円に下げ幅拡大、麻生財務相「為替がわれわれの意図せざるぐらいに円安に振れた」ドルが92.53円まで下落。時事通信が、麻生太郎財務相が「為替がわれわれの意図せざるぐらいに円安に振れた」と発言したと報じたことで、円の買い戻しが強まっている。』(上記URLより)

ということで金曜の夕方に急に為替が動いてあれれと思ったらこの件と聞きどひゃーとなったのですが、これは国会での発言のようでして・・・・・・・・


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MHW8XA6K510X01.html
財務相:円安ペース速すぎるとの認識示す−ブルームバーグに対し (1)
更新日時: 2013/02/08 19:05 JST

『 2月8日(ブルームバーグ):麻生太郎財務相は8日夕、円安のペースが速すぎると述べた。同日の衆院予算委員会での円相場に関する自身の発言趣旨について、財務省内でブルームバーグ・ニュースの取材に対し語った。財務相は衆院予算委で、足下の株高・円安について、安倍政権下で大胆な金融政策と財政出動、成長戦略の3つを一緒にやれるという状態になったとした上で、「それが気分に跳ね返ってきて株が2000円上がってみたり、為替が妙にわれわれの意図しないぐらいに78円とか79円だったのが、いきなり90円になってきた」との見方を示した。』(上記URLより)

意図しないのは今の水準では無くて前の水準だったようですが、これ紛らわしいにも程がありまして、麻生さん発言もうちょっと注意してよというか、そもそも細かい話をしだすとベンダーに片言隻句拾われてニュースヘッドラインにされるんだから余計な事は言わないのが吉ですがなという所で。

まあこのブルームバーグの趣旨を見ると、意図しないのは元の水準に加えて円高修正のペースも意図しなかったのかもしれませんけれども、いずれにせよそもそも意図して為替がどうのこうのみたいな話はまたぞろ為替操作ガーとか難癖つけられるのでサービス発言も程ほどにという事で。


・えーっと、それですと麿再任が適切になりますが・・・・・・・

同じく国会ネタですが、国会ネタというのはこういうニュースヘッドラインで見るのではなく、後日公表される会議録を見ながらネタにする方が色々な意味で面白いのですけれども、残念なことに会議録が出るのって結構遅くでして(早くても2週間後くらいだったと思います、遅いと1か月位平気で出てこない)、その時にどういう反応があったのかとかが忘却の彼方に逝っているのが残念な所。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL080LV_Y3A200C1000000/
首相、次期日銀総裁「国際金融での説明能力重要」
2013/2/8 15:15

『安倍晋三首相は8日午後、衆院予算委員会で、次期日銀総裁について「金融は国際金融マフィアというかそのサークルの中のインナーとなり得る能力も重要だろうと思う」と指摘した。理由を「例えば大胆な金融緩和を進めればいわれのない批判も受ける場合があるが、その時にちゃんと説明していただく能力は大変大切だろうと思う」と説明した。みんなの党の江田憲司氏への答弁。』(上記URLより)

ちなみに某ベンダーで「いわれのない批判にちゃんと説明する能力が大切」という部分だけ出た時には思わず爆笑してしまいましたが、どうも文脈は上記のような事だったようですな(^^)。

えーっと、中央銀行業界のインナーと言えばどう見ても麿総裁が最適任にしか見えないのですけれども、安倍ちゃんも何かもうえーっという感じですぞなもしと申しますか、そもそも「金融政策は万能であっという間に効きますよヒャッハー」みたいな話をしている人たちって最近の中央銀行における金融政策の論点から見たら「お前は何を言ってるんだ」状態だと思うのですけれども、安倍ちゃんが誰を想定してるか知りませんが、その辺判ってないまま話をしていそうで誠にアレ。

#ということで本日は雑談をほんのちょっとだけで誠に恐縮至極






2013/02/08

お題「佐藤審議委員の講演続きと会見から:主に金融政策運営に関して」

今日は引用で増量企画になっておりまして誠に恐縮至極。

○市場雑談メモメモ

本当にメモだけですいませんすいません。

・2年金利何なんですかこれ??

昨日の2年カレントの日本相互証券の引値はついに0.030%でして、ベンダーとかにも出ていましたように0.025%の出合いもあったようですな。いやあのショートカバーなのは判るんですが、もう何だか力技の世界になっていて、以下でネタにしているように佐藤審議委員も付利を下げるだの撤廃だのというのについては否定的ですし、その論点として「日銀のバランスシート拡大政策に障害になる」という事なのですから、普通に考えて中々有り得ん話だと思うのですけれどもどうしてこうなった?????

つーか何か5年まで盛り上がっておりましたもう何だかねという所ですが、正直何がどうなってこうなっているのかというと理屈の世界じゃない希ガス。


・固定金利オペ札が入って良かったですね(棒)

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130207.htm
CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2013年2月13日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月12日 2013年3月4日

>2013年2月12日 2013年3月4日
>2013年2月12日 2013年3月4日
>2013年2月12日 2013年3月4日

・・・・・・・・ついに固定金利オペの期間が1か月を切るものオファーとなりまして、そらまあここもと連日固定金利オペが絶賛札割れで連日固定金利オペの残高が減っていくという流れですので、市場のニーズがまだある短いオペを打ったというようで誠に落涙を禁じ得ません。

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130207.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月12日スタート分) 16,865 8,009 47.5
CP等買入(資産買入等基金) 10,138 2,792 0.104 0.106 51.3

ということでさすがに札が入ったのは良いのですが、まあそうは言いましてもここもとの札割れ攻撃でこのオペ実施後ベースで固定金利オペの残高が21.8兆円(あたくしの手元集計ベースですいませんが)と、目標対比下ブレ状態になっておりますので、今後このオペどうするのとう問題は6月の中間目標時期に向けて資産買入が積みあがれば積みあがるほど問題がヤヤコシヤになってくるでしょうな。まあ今すぐバタバタするよりはもうちょっと様子を見てからの方が良いのかもしれない(資産買入残高がもっと増えた状態でどうなるのかも良く判らんので)ですけどね。


・3MTB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20130207.htm

(3)募入最低価格 99円98銭1厘0毛 (募入最高利回り)(0.0770%)
(4)募入最低価格における案分比率 89.3742%
(5)募入平均価格 99円98銭1厘1毛 (募入平均利回り)(0.0766%)

昨日の6M入札がまあご案内の通りだったのでこんなもんで収まりましたかという所ではありますけれども、そうは言っても0.07%台ですもんねえ・・・・・・・・うーむ。



○佐藤審議委員講演続き:金融政策に関連して

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130206a1.pdf

昨日の続きで講演テキストの7ページ(PDFの8ページ)の下の方から参ります。


・デフレ脱却の為の有効と考えられる政策経路は1に為替市場2に資産価格と

『一般論として、名目ゼロ金利制約下でデフレに陥った経済が刺激され、物価の回復に至る経路として有望と考えられるのは、第一に為替市場を通じた経路、第二に資産市場を通じた経路であろう。』

キタコレ(・∀・)

『前者については、昨年12 月の会合で日本銀行は短期国債と中長期国債の買入れ増額を図っているが、これは、現行の付利体系を維持するもとでも金利低下による内外金利差の縮小や逆転を通じて間接的にせよ為替相場への働きかけを強めるものと考えている。また、先の1月会合で導入を決定した期限を設けない買入れ方式は、そうしたスタンスをさらに強めるものと考えている。』

まあこの場合金利への影響をストックビューで見るのかフロービューで見るのか、という話になりまして、まあ基本的にはストックビューの方が理屈としては正しそうなのですけれども、実際に市場でセカンダリーの動きを見ているとフロービューにも一定の説得力がある、と申しますか、目先のプライスアクションという意味ではフローに思いっきり影響されてしまいますので、ここの部分というのは分析するのも中々難しい点があるようにも思えますなあ(たぶん普通に分析をするとストックビューが正しいようになる筈なのですが、じゃあフロービューを丸無視して良いのかというと、市場というのはプライスアクションが一過性のものだけではなく、バンドワゴン効果のような形で自己実現するようなケースもあり、しかも経験的に言えばバンドワゴンの自己実現の方が往々にして大きな相場になって好悪様々な影響を与えるっつーまあテイルリスクじゃないけどそんなのもあるんじゃネーノとは市場現場労務者の端くれであるあたくしの感想)とゆー所で、米国もオープンエンド方式にして「量で勝負」からは足抜きしつつあるものの、そうは言ってもストックビュー的な話をメインに置いていますが、日本の場合は来年のオープンエンド化以降どういうビューに則って動くのかは興味がある所です。ストックビューの観点からすると来年になってからの基金積み上げペースは鈍化してくるという点では「さらに強める」と言い切ってよいのかは微妙な気は致しますです、はい。

と、話が逸れたような気もしますが(汗)。

『後者については、日本銀行は12 月会合で貸出支援基金を正式に立ち上げ、銀行の貸出増加を資金供給面から強力に後押しする政策を取っている。この政策は民間銀行による貸出増加への取り組みが前提であり、日本銀行ができることはそうした民間の取り組みを後押しすることである。足許資金需要が低迷し、民間銀行に資金のアベイラビリティ面でのボトルネックが存在しないなかでは、日本銀行が貸出増加を強力にサポートすることへの限界も指摘される。もっとも、かかる銀行貸出が実体経済や資産市場に向かえば資産価格を通じた物価への波及効果が期待できるかもしれない。』

まあこちらに関しては日銀が金出せばどうなるという話はどうなのかと言うと、かつてこの手の支援策を打ち込んだ時というのは金融機関のアベイラビリティに問題があった時でしたので、佐藤さんの言うようにそのボトルネックを解消するのが資金の流れを良くする為に効果があったという話ですわな。

これまた話がずれるんですけれども、そーゆー意味合いからするとかつての量的緩和政策時代の前半は特に金融機関のアベイラビリティに問題があった訳で、量的緩和政策そのものがアベイラビリティの解消に対する効果が抜群だったのでそーゆー意味で効果があったというのがあると思われまして、量的緩和の量の効果がその分過大に見積もられているんじゃネーノという気はするんですけれども、まあその辺について海外でも同じような感じになって、アベイラビリティが改善した後量を出しても効きが悪くなって来てねえかみたいな話になっているような気もするのですが、こういうの定量的に分析しようとすると結局鉛筆舐め舐めみたいな話になってくるとか言うと思考停止ですかそうですか頭悪くてすいませんという所ですな。

まあこの辺りの説明は執行部ベースの説明っぽいので引用しながらあたくしの雑談のマクラにしただけでして(^^)、その先の所から徐々に佐藤さんペースに。

『もっとも、かかる銀行貸出が実体経済や資産市場に向かえば資産価格を通じた物価への波及効果が期待できるかもしれない。特に経済に対する前向きのモメンタムが実際に働き始めると、この貸出支援の効果は強まると期待している。また、かかる貸出が借り手の円投により企業や銀行の海外での設備投資やM&A に向かうことになれば、為替円安に向けた動きを間接的に促すことにも繋がる。いずれにせよ、金利などへの働きかけを通じて、為替市場や資産市場へ間接的に働きかけていく
観点も重要である。』

ということで、他が「かもしれない」なのですが、前向きのモメンタムが動き出すと貸出支援の効果が強まると「期待している」という説明になっているのがチャーミングで、「かもしれない」と言ってる部分がどちらかというと執行部ペースの説明部分に掛かっているのがさらにチャーミングという所でしょうか(^^)。

恐らく佐藤さんの期待している貸出支援制度のポイントは「4年まで0.10%の固定金利を確約!」って部分だと思うのですよね。つまり足元のように金利水準が低くて資金需要が盛り上がらない(その上今だと各種要因で短期市場金利が0.10%を割り込んでいるのでお得感が全くない)という状況の中ではあまり盛り上がらないこの制度だと思うのですが、いざ本当に景気が上向きになってきて、「さすがにこの調子だとデフレ脱却するんじゃネーノ」というような雰囲気になってきた時にはこの4年まで0.10%で資金出しますよ攻撃に対するニーズが絶賛大殺到するので、前向きのモメンタムを加速する効果があるんじゃネーノというまあそんな所でしょうかねと思うのですがどうっすかね。


・基金オペの積み上げに関連するお話

(実質ゼロ金利下で間接的に為替レートに働きかけるための方策)という小見出しの所から。

『2001 年3月から2006 年3月までの量的緩和期は先進国中で日本のみがゼロ金利であったため、為替円安を通じて緩和効果が発現しやすかった(図表12)。もっとも、リーマン・ショック以降、足許まで先進国中銀が概ねゼロ金利政策を取るなか、金利差の面から円安効果は発現しにくく、日本銀行の緩和努力は報われにくい面がある。』

まあさいですな。

『しかし、かかる状況でも金利を通じたパスはわずかでも働きうる。』

ほう。

『例えば、資産買入等の基金による買入れの結果、付利体系を維持するもとでも、これまで米国よりも金利が高かった短期国債利回り(3か月物)は直近最低値で0.093%と米国と同程度まで接近してきた。折しも、昨年12 月のFOMC(連邦公開市場委員会)において資産買入れの規模の縮小や停止について議論されるなど米国の金融政策に転機の兆しが見え始めたことは日本にとり追い風である。こうしたなか、今後も中長期及び短期国債の買入れを進め、基金を積み上げていくなかで、長短市場金利がどの程度低下するかを我々は注視している。』

ということですが・・・・・・

『一方、先行きの資産買入等の基金の積み上げは、決して容易なオペレーションではない。』

キタコレ(・∀・)

『すなわち、基金積み上げ等が順調に進捗すれば、足許65 兆円台の基金残高は本年末には100 兆円を超える水準に積み上がる(図表13、14)。』

『こうした規模の資金供給は日本銀行にとって未踏の領域であり、仮に民間銀行が財務戦略上の理由から、あるいはコーポレート・ガバナンスの観点といった非経済的要因からバランスシートの肥大化を避け日本銀行当座預金の積み上げスタンスを消極化すれば、基金の積み上げは円滑に進まなくなるリスクがある。』

基金の買入が進むと日銀当座預金残高がそれだけ拡大する訳ですが、基金での買入と言いましても日銀が強制的に民間金融機関の保有証券を召し上げる訳には逝かない訳でして金融機関が応札をしないと話が始まらず、佐藤さんの説明のように金融機関が例えば超過準備を大量に保有した状態で決算を迎えるとワカランチン共に「この銀行は日銀に大量に資金を抱えているのに貸出の伸びが低くてケシカラン」とか言い出されたら困るからちょっとおまいら超過準備額抑えろやとか資金部門に指令が飛ぶとその金融機関は国債買入などに応札しなくなる(応札しなくてもアベイラビリティに困る訳では無いので)ぞなもしという話ですな。

『もっとも、基金積み上げの際、金融機関が日本銀行の資産買入れのオファーに応じるかどうかは金利水準次第という面もあるはずである。』

とはいっても資金部門から「いや今国債買入に応募すると経済的に有利ですから」という話がくればまた別でしょという事ですな。

『今後の基金積み上げの過程では、未踏の領域だけにいろいろと想定外のことが起こる可能性はあるが、そこは臨機応変かつ柔軟に情勢変化に対処していくことで確実な基金の積み上げを図りたい。』

ということで、結論は「基金の積み上げを図る」なのであって、臨機応変かつ柔軟な対応はその為にありますので、そう考えると普通に付利金利いじるという話にはならないでしょというのが結論になる筈ですがその辺は会見の方にも。


・政策オプション:リスク性資産について

以下は他の政策オプションに関する佐藤さんの考察で、論点が整理されているのでお勧め。

(リスク性資産買入れの大幅増額は有望なオプションか?)という小見出しから。

『一方、リスク性資産を大幅に買い増すべきとの意見もある。日本銀行は2010年10月に導入した包括緩和のもと、社債、CP、さらには政府の認可を得てETF、REIT といったリスク性資産を買い入れているが、主要国の中央銀行でこうしたリスク性資産の買入れを自己勘定で行っているのは日本銀行のみである。ただし、日本銀行は資産市場への大規模介入を行うという考え方を取らず、あくまで市場の呼び水となることを念頭に置いている。一方でリスク性資産の買入れを大幅に増やす、すなわち市場に大規模介入すべきとの論調が一部にみられるが、こうした政策は果たして有効なオプションであろうか。』

資産価格ルートの話をしているのですから積極的かと思えばさにあらず。

『私の考えでは、こうしたリスク性資産買入れを一層増やすことについては、日本銀行の自己資本を毀損するリスクがあることから、やや懐疑的である。』

あらそう。

『仮に日本銀行が保有するリスク性資産が値下がりして損失が発生すると、政府への納付金が減少する。自己資本との比較でリスク性資産のボリュームが大きければ、日本銀行が債務超過に陥るリスクも想定される。前者は財政支出増大と同値であるし、そうしたリスクがあるが故に日本銀行は日本銀行法第43 条に基づき政府に認可を申請してETF やREIT の買入れを行っている。後者の場合、日本銀行は債務超過の穴埋めのための増資を政府に仰ぐことにもなるかもしれず、日本銀行や円の信認、あるいは金融政策の独立性に影響し得る大きな問題となり得る。こうした観点から、大幅なリスク性資産買入れ増額の是非は日本銀行のみならず政府全体にも関係する議論である。リスク性資産の買入れが金融政策の独立性に影響することを避けるためには、損失が発生した際の損失負担のあり方について、政府と日本銀行の間で事前にルールを定めておくといった方法もあり得よう。』

うむ、これ前半の話がまるで執行部なのですが、最後の最後に書いてある部分を見ると「事前に損失分担についてきちんと決める(要は穴空いた時に政府が財政資金で埋めるというような形を確定させる)ならやってもヨロシ」とも読める所が微妙でございますがなという所です。

でまあいつも思うのですが、ここの説明をするときに「日本銀行の資本ガー」という論理展開を持ち出すとまたぞろ日銀は自分の庭先だけ綺麗にしようとしているという庭先論の批判が飛んでくるので、まあ理屈としては確かに資本ガーであることはその通りなんですけれども、「損したら回りまわって財政負担になりますんで選挙で選ばれた訳でも無い日銀が財政政策やって良いんですかという議論になるんですよねえ」というロジックで説明した方が一般ピープル的に判りやすいし、庭先論って言われなくて済むと思うのですがどうでしょうかね。


・政策オプション:外債購入に関して

(外債購入は有望なオプションか?)という所ですが。

『私は昨年7月の就任会見で外債購入も一案と発言したが、この実現には様々な留保条件がつく。』

ほう。

『すなわち、現行の日本銀行法では日本銀行は外国為替の売買にあたっては、専ら政府の代理人として事務のみを請け負うと規定されており(日本銀行法第40 条)、日本銀行は円相場の安定を目的とする外国為替の売買に関し主体的に意思決定を行うことはできない(図表15)。では、ETF やREITの買入れと同様、日本銀行が日本銀行法第43 条の規定に基づき政府の認可を得れば、外債を買い入れることができるであろうか。日本銀行法第40 条の規定は、円相場への介入目的とした外国為替の売買を禁じており、第43 条をもってしても日本銀行はこうした目的で外債を買い入れることができないと解するのが自然だろう。』

『それでは、金融市場調節の一環としての定時定額の外債購入はどうだろうか?これもその目的が為替相場の操作と看做されれば、同じく第40 条の規定に抵触する惧れがあるということだろう。』

ってこれまんま麿の説明なのでちょっと???なのですが、過度な円高の長期化がデフレの長期化の要因であるというロジックをもってすれば、そのデフレ長期化の要因を軽減する為に外国為替市場の過度な円高の是正を図る意味で43条認可というロジックって出来ないのかなあと思いますけど。まあ引用した方で切った後半部分にそういうニュアンスが含められているのかも知れんが。

『こうした法律上の制約を踏まえた上で、先の総選挙では自民党が官民共同の外債購入ファンドを立ち上げることを公約の一つとした。政府にせよ日本銀行にせよ、仮に外債を買い入れるのであれば経済効果は同じであるので、私としては買い入れの主体が敢えて日本銀行である必然性はないと考えている。ただし、こうした政策は通貨外交上の問題をはらんでいるので、まずは各国通貨当局と緊密に協議してコンセンサスを得る努力が欠かせないであろう。』

ということで、まあ実際は法律の解釈論がどうのこうのというよりも一番問題になるのはこの通貨外交をどこが実施するのかという話であって、まあ日銀からこの話を持ち出して財務省と揉めるのもどうかという所なんでしょうと思いますが、正面切って通貨外交の権限ガーみたいな話をするのも何なので法律論を持ち出した結果、日銀は法律の解釈論に逃げ込んで消極的でケシカランとか言われるというのも日銀にちょっと同情する所ではあります。

どこが買っても良かろうというのは仰せの通りですな(^^)。


・円安の効果は直接の輸入物価上昇よりも他の効果でという話

(円安だけで物価が上がっても経済厚生は増大しない可能性)という小見出しから。

『私自身は円の対ドルレート10%の変化による消費者物価指数への影響は数年間の累積でも1%を大きく下回るとみており、現状ゼロ近傍にある消費者物価指数を円安だけで2%程度に引き上げるには、大幅な円安が必要であまり現実的とは思えない。』

そういえばどこぞの安倍ちゃん経済ブレーン様によりますと物価上昇率2%の目標が達成できればドル円は98円で日経平均は11300円という計算でしたな。

『そもそも金利政策でかかる大幅な円安を実現できるかは不確実性があるし、仮に政策的に目指すとしても通貨外交面で問題を惹起する可能性がある。』

まあそうですにゃ。

『さらに、円安による輸入物価の上昇や交易条件の悪化は購買力の海外流出をもたらす。物価上昇率が見かけ上高まったとしても、GDI(国内総所得)やGNI(国民総所得)が悪化し、国民は「デフレ脱却」を実感できないであろう(図表16)。』

名目は改善しても実質が悪化するでしょそれって誰得なんですかという話ですねわかります。

『結局、為替レートが物価に及ぼす影響は重要だが、為替レートだけで2%という高い物価安定の目標を達成するという考え方はバランスを欠いている。目指すべきはやはり所得の増加とともに生じる物価上昇である。』

まあそうですな。

『ただし、現在起こっている為替円安による資産市場への刺激効果を過小評価することもまたバランスを欠くであろう。資産市場、とりわけ国内の株式市場は、リーマン・ショック後に名目実効レートで約4割上昇した円の過大評価の影響から海外市場をアンダーパフォームしてきた。しかし、足許は円の過大評価が是正される過程で国内株式市場のバリュエーションに見直しが入り、資産市場は久々に活況を呈している。前述のように、資産価格の回復は、企業や家計のリスク耐性を強め、経済の活動水準を引き上げることを通じて、需給ギャップの改善、ひいては物価の回復に繋がり得るだけに、私としては金融政策を通じた為替レートへの間接的な働きかけというチャネルを引き続き重視したい。』

ということで、後半になるとまたちょっとトーンが変わりますが、要は円安によって輸入物価を上げてデフレ脱却だーというのは誰得無理ゲーではあるものの、円安による資産市場への効果といったルートによる前向きのモメンタムを醸成する事が重要である、という論点でありまして、この辺を重視するのは佐藤さんらしい説明でして、前半は割と普通に執行部的な話をしていますが、後半の部分があるのかどうかが重要なのでありまして、麿様などにおかれましてはこの後半の論点を軽視しているんじゃネーノと思われる節があるのが遺憾とゆー所でありますなっつー所で。


なお、以下経済見通しの部分でいわゆるデットビューのような説明があってこれもまたオモシロスなのですけれどもここまでやっただけで時間と量がちょっとなので割愛します。


○佐藤審議委員会見から

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302b.pdf


・臨機応変がどうのこうのという部分について

『(問) 3 点質問があります。(1点目と3点目を割愛します)2 点目は、挨拶の中にあった、100 兆円規模の資金供給をするにあたって、想定外のことにも臨機応変に対応するという箇所についてですが、具体的にどのようなことを念頭に置かれているのか確認させて下さい。100 兆円積むのが難しいので、前代未聞のオペの奇策も打たざるを得ないということなのか、アベノミクスが失敗した時の対応も日本銀行としては覚悟せざるを得ないということなのか、お聞かせ願います。』

最後のアベノミクス云々の質問が意味不明ですが、2点目だけでも凄まじく答えが長いですけれども、まあ論点は整理されているので段落分けながら引用。

『(答)(1点目と3点目を割愛します)次に、2 点目のご質問で、資金供給について具体的に何を考えているのかということです。午前中に行った金融経済懇談会での挨拶の中でも申し上げましたが、日本銀行は、資産買入等の基金について、昨年末の目標65 兆円を何とか達成し、さらに今年末に向けて、これを101 兆円に拡大することを既にコミットしています。これは約束です。』

ふむ。

『プラスアルファで貸出支援基金等があります。これらを合わせた追加の資金供給規模は、先般、総裁からも説明があったように、プラス50 兆円超になるということです。まずは、年末までに、そうした未曽有の規模の資金供給を行うということをご理解頂きたいと思います。』

つまりどこぞの安倍ちゃんブレーン様が2%の期待物価上昇率達成の為には77兆円の当座預金残高が必要とか言ってる額をも上回るということで、こっちも実際にそうなった時にどうなるのかとか想像が今の所付きにくいですわ。

『その上で、今後何が起こるのかということですが、基金を101 兆円まで積み上げると、その過程では、日銀当座預金残高も並行して増えると考えるのが自然だと思います。日銀当座預金残高は、昨年12 月20 日過ぎだったと思いますが、既往ピークの48 兆円強という水準でしたが、足もとでも40 兆円台で推移していると思います。これが、基金残高101 兆円ということになってくると、おそらく現在の40 兆円台から、90〜100 兆円といった規模に達してくる可能性があるわけです。』

あたくしがざっくり考えた時は80-90兆円かなとか思ったのですがまあいずれにしても巨大であり未踏の規模ではあります。

『ただ、それだけの量の日銀当座預金を、本行の取引先である金融機関の方々に持って頂けるかどうかは、不確実性があると思います。日銀当座預金には、超過準備に対して0.1%の付利をしていますが、0.1%のリターンの預金には、超過準備に対して0.1%の付利をしていますが、0.1%のリターンの資産を何兆円単位で日銀に預け入れておくということが、果たして、金融機関において、コーポレート・ガバナンス上許されるのかという、経済的な要因以外の要因も働いてくる可能性があると思います。仮に金融機関が、日銀当座預金への積み上げのスタンス、あるいは基金による買い入れに対するスタンスを消極化する、すなわち、本行の買い入れオペへの応札スタンスを消極化するということであれば、日本銀行としては、何らかの対応を考えなければならないだろうということです。結局のところ、本行の取引先である金融機関がオペのオファーに応じてくれるかどうかは、金利水準次第という面があると思います。』

どういうことかと言いますと・・・・・・・

『例えば、日本銀行が市場実勢対比低い金利で、すなわち若干有利な条件でオペのオファーをするのであれば、金融機関としては応札するニーズも顕れてくるということです。今後、基金の積み上げの過程で、積み上げが非常に難しくなってくる、オペの未達で難しくなってくる事態も想定されますが、そこは金利で調整されていくことになるのではないかと思います。すなわち金利の低下効果が、基金の積み上げに伴って顕れてくるということです。』

まあ既に現れていますが・・・・・・・・

『何が起こるかは、実際のところ分かりませんが、そういった想定外の事態、あるいは不測の事態に対しては、オペの条件を臨機応変に見直していくことで、確実に基金の積み上げを図っていきたいというスタンスです。』

ということですので、例えば固定金利オペが厳しいなら短国買入に振るとか、固定金利オペの期間も(昨日のオペのように)もっとニーズに則した期間にするとかでしょうかね。


・まあ当然ちゃあ当然なのですが

この質疑応答は政策インプリケーションは無いが味わいがあったので引用。

『(問) 2%の物価安定の目標に反対した理由について、「持続可能な物価の安定と整合的であると判断される物価上昇率を大きく上回る」と講演で述べておられます。佐藤委員は、具体的にどの程度の物価上昇率が整合的な水準とお考えなのか、お教え下さい。』

『(答) 具体的にどの程度の水準かと言うことを、2%という物価安定の目標が決定された後に申し上げることはあまり適切ではないと思いますので、特定の水準を申し上げるのは差し控えたいと思います。』

・・・・・・・(^^)


・付利撤廃に関する質問再び

何かもうこの質問いつも来るんですよねえ。

『(問) 先ほど、オペが未達の場合には、金利水準で調整するという臨機応変な対応が必要だとおっしゃいました。金利水準の調整といっても、現在、0.1%を下回るような非常に低い水準にあるので、先行きの下げ幅といっても限定的だと思います。先行き、超過準備への付利撤廃ということも含めて、「マイナス金利」ということの実現可能性、あるいは「マイナス金利」にすることによるメリット、デメリットについてお聞かせ下さい。(2点目割愛)』

『(答)(2点目の部分割愛します)まず、1 点目の付利の撤廃に関しては、そのプロコン(メリットとデメリット)について、私自身はもう少しよく考えてみる必要があると考えています。』

キタコレ。

『現時点では、現行の付利体系を維持するもとで、資産買入等の基金を着実に積み上げることが、緩和効果を最大限発揮する上で、一番効果的な方法と考えています。』

で、その説明が以下ございます。

『仮に付利を撤廃すると、日本銀行が資産買入れのオペのオファーをしても、金融機関がオペのオファーに応じなくなり、基金の積み上げが難しくなる可能性があります。ただ、先ほど申し上げたように、金融機関がオペのオファーに応じるかどうかは、金利水準次第です。従って、日本銀行が市場実勢対比で有利な条件を提示することで、金融機関がオペに参加するインセンティブを与えることが出来るかもしれません。』

『仮定の話ですが、付利を撤廃したとしても、日本銀行が、例えばマイナス金利で国債を買い入れれば、オペは成立するかもしれません。ただ、先ほどと同じ問題があると思います。金融機関が、リターンを全く生まない日銀当座預金という資産を、果たして数兆円単位のオーダーで置いてくれるのかという疑問があります。利息を生まない資産を寝かせたままにしておけば、コーポレート・ガバナンスの観点から、金融機関の側で問題になってくる可能性があります。』

『また、仮に日本銀行がマイナス金利で国債を買い入れることになれば、金融機関に対して利益供与しているという見方もあり得るわけです。』

『さらに、国債等にマイナス金利が付くような世界になると、例えば、MMF等のような短期の元本保証型の金融商品が、商品として成り立たなくなります。そういう意味では、金融市場に不測の混乱が起こる可能性もあるということです。』

全く仰せの通り。

『こういったことを考えると、付利のない世界では、政策効果の不確実性は高いと思います。従って、付利撤廃は、オプションの一つではありますが、今申し上げたようなプロコンを踏まえる必要があると考えています。』

どこぞのベンダーがこの会見を報道する時に前後を切り取って「付利撤廃は、オプションの一つ」という部分だけヘッドラインにして報道してやがったのですが、まあそういうアホウにおかれましては6文銭プレゼントしてあげるから可及的速やかに三途の川のリバークルーズにご参加される事を願って止まないものでございます。


・先ほどの2%の円安を為替だけでどうのこうのという部分

先程割愛した同じ質疑から。

『(問)(前半割愛、というか先ほど引用した)もう一つは、講演で、限られた金融政策手段の中で、為替や資産価格への間接的な働きかけというチャネルを重視したいということを繰り返しおっしゃっています。現状、為替の水準は93 円になっていますが、それでもなお、このように為替を通じたチャネルを重視したいということを繰り返し主張されているということは、やはり2%という物価上昇を実現させるためには、現状よりももっと円安の方が望ましいとお考えなのでしょうか。具体的な為替水準ということにも関わりますが、より曖昧な聞き方をすれば、円安の方が望ましいということなのかをお聞かせ下さい。』

『(答)(同様に前半部分は先ほど引用済)2 点目の、為替のチャネルを重視するのかというご質問ですが、講演でも触れたとおり、円安だけで無理やり2%の物価上昇にもっていくという考え方を採っているわけではありません。そこは誤解のないように強調しておきたいと思います。むしろ、円安だけで物価を押し上げるという考え方は、非常にバランスを欠いています。』

先程の説明ですな。

『仮に、円安だけで物価が上昇し、所得の上昇と整合的な物価上昇にならない場合は、単に購買力が低下して、経済全体としては却って厚生が低下します。為替チャネルは引き続き重要だと思いますが、「もっと円安にしたい」といったように、為替水準に引っかけて為替チャネルを重視するということではないと思います。』

まあ下手な言い方をすると為替操作って言われますからそこは慎重な物言いになります罠。

『金融政策で出来ることは、先ほど申し上げたたように、資産買入等の基金の積み上げを通じて長短期金利に影響を及ぼしていくということですが、それによって間接的に、例えば、円の逃避通貨としての「買われ易さ」を除去していくことには繋がると思います。そういう意味で、もっと円安が必要といった為替水準の議論ではなく、円の買われ易い状況を是正していこうということです。それがひいては、物価の安定にも繋がり得るということです。』

円高になりにくいようにするのが重要というような言い方で気を使ってはいますが、まあ要はより一層の円安が望ましいということですね、わかります。


他の質疑も興味深いのですが量が既に引用大増量モードなのでこの辺で。




2013/02/07

お題「市場雑談メモメモ/佐藤審議委員講演」

昨日書き忘れたが安倍ちゃんGJ!
http://www.47news.jp/news/2013/02/post_20130205190859.html
首相、産業界に賃上げ要請へ 諮問会議で表明
2013/02/05 21:32 【共同通信】


○市場雑談メモ

・2年国債ェ・・・・・・・・・

昨日の2年国債は相変わらずの状況で日本相互証券の引値は新発の325回債で0.045%(2毛強)という数値。まあ前日の0.065%というのが出来値対比でちょっと弱めだったようにも見えますので前日比の方は兎も角としまして、0.045%とか昨日の無担保コール金利の最低0.065%よりも低いという利回り水準になりまして何がどうなっていますねんという話。

まあこの銘柄に関してはそもそも入札時にいわゆる不明玉だらけでショートスクイーズが掛かっているという要因はある、というかだいたいそれが要因でこの有様という所のようですが、この銘柄は超無茶苦茶需給となっているにしましても、他の周辺銘柄も強くなってしまっていまして需給というか力技的な物を感じる今日この頃。

しかも質が悪い事にファンディングコストよりも下の金利での水準と言う事になっておりますので、これマーケットメーカーとしては商品在庫をロングにしていれば逆鞘で、しかもその逆鞘が5bpとかいうようなこの金利水準下で無理ゲーとしか思えない水準になりますし、ショートすればスクイーズが掛かって買戻しが出来ずレポコストで死ぬ上に、スクイーズした方からすると日銀に放り込んで在庫負担を軽くするという荒業が可能なので大変、とまあそういう状況になるので、これはまあ困ったもんですなあという所ですが、そのうちかつての4年6年国債の一部特定銘柄のように「その銘柄のオファーはありません」「その銘柄のビットは6毛甘(0.10%レベルを想定してクオートしてみました^^)ですが何か?」(まあ当時は30毛甘とか言われてた記憶がありますが)みたいなクオートを全業者がおっぱじめるとかなるとかになりますと(まあここまで来ますとオファーは有りません攻撃にはなっているでしょうけれども)まさに流動性枯渇モードとなって国債流通市場の流動性が低下しますなあと誠に遺憾に存じますという所でありまする。

というメモでした。


・6か月TB入札

前日の短国買入がアヒャヒャヒャヒャになったので致し方ないのですが。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20130206.htm

(3)募入最低価格 99円96銭5厘(募入最高利回り)(0.0717%)
(4)募入最低価格における案分比率 25.3212%
(5)募入平均価格 99円96銭7厘(募入平均利回り)(0.0676%)

まあ無担保コールの最低金利よりも平均利回りが高くて良かったですね(棒読み)という所でございますが、こちらはそもそもショートスクイーズがどうのこうのというのではなく、単に日銀の吸い上げのタイミングが昨日申し上げましたように絶妙だった(わざとやったのか期せずしてそうなったのかは不明ですが、まあオペの本来の意味からすればわざとやるのはどうかという気もしますし、しかしながら基金オペの趣旨かつ最近のMPMの議論に則して言えば金利を下げようって事でわざとやったのかもしれませんがそれはワカランチ会長と申しますか日銀もその辺はよー言わんでしょ)ので需給が締まっておりますがなという代物であります(短国をわざわざショートする人は基本的に居ないのでショートが溜まってスクイーズみたいな現象は起きず、カレントであっても無い時には無いというクオートがきっちり帰ってくるのが昔からの仕様)。

まあこの水準で買うのって当座預金制度の外側にいる人(海外投資家と短期公社債投信など)と担保や決算の都合で国債残高を調整したいなどのニーズとして「モノとしての国債」が必要な人のニーズとなりますし、そもそも担保玉のニーズ言いましても補完当座預金金利よりも3bpも4bpも低い金利の担保が本当にコスト払って持つ必要あるのかという話もあって、それこそ決済用の担保とか資金調達用の担保というのであれば、その担保購入代わり金分超過準備として放り込んでおけばアベイラビリティーという点では同じだろという事を考えますと、まあ日銀の買入効果による需給の引き締めがどの程度効きますかねという話ではあろうかと存じますので、とりあえずは昨日申し上げたような感じになるんじゃネーノとゆー所ですが今日の3か月TB入札はどうなるんでしょうかねえ。まあ強いでしょうなあというのだけは判りますが(−−)。


・いやしかし何を期待しているのやら

まあ皆様ご案内の通りの相場でありましたがせっかくなのでメモを残して置く。
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index.html

日経平均株価 11,463.75 416.83 3.77
TOPIX (東証株価指数) 968.82 29.12 3.10

そういえばどこぞの安倍ちゃん経済ブレーンと称されるお方におかれましては「インフレ率2%が達成できれば、日経平均株価が1万1300円程度、円相場は1ドル=98円程度となると予測される」と仰せだったと昨年12月26日の金融ファクシミリ新聞さんが報道してましたけれども、11300円軽く抜けてますし為替も94円近辺とかになっておりますが、確か先月の全国CPIはマイナスだったように思えますが、実に素敵な計算ですなあとかいうのはこの前も申し上げたので良いと致しまして。

まーしかし何ですな、元々麿総裁が再任予定だったのが退任というのであればそらまあ大ニュースなのですが、昨日も申し上げましたように単に3週間ほど時間がずれるに過ぎない既定路線の踏襲なのにここまで株価がヒャッハーとか上昇するなよと思うのですが、まあ足元は理屈をどうのこうのゆーてもシャーナイナイな訳で、地合いが期待で株価上昇ヒャッハーという風になっている所なので何でもそれらしいネタを捕まえて反応という事で、まあこういう事になるわなという所です。

でまあこういう時に「既定路線が3週間手前に寄った事で何か経済のファンダメンタルズが大きく変化するんですか」などとヒャッハーと言っている人たち相手に問い詰めますとだから金利の人間は理屈ばっかり言ってうるせえと言われますし、売り向かおうもんなら踏まされて死ぬだけですので全くお勧め致しませんが(^^)、まあこう変に盛り上がってしまうと次の日銀総裁へのハードルが無駄に上がってしまって大変ですなあという所で。

更にアレなのは、そもそも為替やら株やらの人たちが期待する「大胆な緩和」というのが何なのかがさっぱり判らないというか、大体からしてその辺の人たちに「で具体的に何をしろと??」と質問すると具体的な答えが返ってこないか、それは既にやっておりますがなという事についての答えが返ってくる、というような状況だったりするので非常にナニでございますなあとゆー所で。

#まあだからこそハッタリと気合と見せ方の工夫をもうちょっとやっておけばという話なのですが


・市場雑談じゃないけどこれはまた

こ、これは・・・・・

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130207/k10015350351000.html
与党 日銀総裁の後任人事で苦慮も
2月7日 4時31分

『日銀の白川総裁の後任人事について、与党側は人事案を国会に正式に示す前に水面下で野党側と調整することも検討していますが、事前に報道された場合は原則として内示を受け付けないとした衆参両院の合意が維持されたことで、対応に苦慮することも予想されます。』(上記URLより)

ということでこのニュース数日前からどうするのよという話が出ておりましたけれども、これはまた混乱の悪寒が漂って参ります次第でありまして、大丈夫かという所でありますが、各新聞が勝手に「誰々に決定する方向で調整」とか飛ばし記事を書くとその人を潰せるという意味不明な展開になりますので、もうアホかと馬鹿かとっつー所ではございますが、これで本当に3月19日の就任間に合うんかいなという疑問もふつふつと。

つーかですな、麿も何か微妙に間が悪い罠と思うのですが、今回の退任公表のタイミングでこんな話にはなるわ、ちょうどその日に基金短国買入オペの利回りが急低下してしまったのでまたまた中短期金利の低下と絡めて退任ネタを使われて金利低下に拍車を掛ける格好になるとか、この手の間の悪さというのは麿総裁の仕様じゃねえのかという位の絶妙さで、最後の最後まで落涙を禁じ得ないあたくしなのでございましたとさ。

まあ麿におかれましては次はカナダ中銀の次期総裁辺りになって頂きたく存じますが。


○佐藤審議委員講演

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130206a1.pdf

図表が豊富で何と42ページもあるのですが、たぶん講演よりも会見の方が更に佐藤さんのカラーが出ているのではないかと思われますので今日出る会見テキストも必見だと思います。

『既に公表されているように、私は「物価安定の目標」を消費者物価前年比上昇率で2%とすることに反対票を投じた。しかし、金融政策決定会合では多数決により政策を決定することとなっており、前述の決定となっている。したがって、以下では、私は日本銀行が今般決定した2%の「物価安定の目標」達成を念頭に置きながら、今後の日本銀行の金融政策運営のあり方について話を進めてまいりたい。』

ということで、まあ今回の日銀決定に則した政策委員会メンバーとしての説明部分があって、佐藤さん本人としての説明部分があるので、そこを読み分けながら読む必要があるという技が必要なのですが、まずは佐藤さんの説明っぽい部分から参りたいと思います。

・2%に反対した理由

『ただし、このように消費者物価の前年比上昇率が2%でアンカーされるためには日本銀行の政策運営に対する信認が確保されていることが非常に重要である。1月会合後の記者会見で総裁が言及したように、私は、@消費者物価の上昇率2%は、現状、持続可能な物価の安定と整合的であると判断される物価上昇率を大きく上回ること、Aまた2%の目標値を掲げる上では、成長力強化に向けた幅広い主体の取組みが進む必要があるが、現に取組みが進む前に2%の目標値を掲げると金融政策の信認を毀損する惧れがあること、から木内委員とともにこの目標の決定に反対した。しかし、冒頭申し述べたとおり、私は日本銀行の決定を履行し、それに責任を負う立場にある。2%の物価安定の目標達成の蓋然性を高め、目標の信認を高めていくことは、先行き私を含めた政策委員に課せられた重要な政策課題である。』

ということで、ハト派委員として投入された筈の佐藤さん、木内さんが共に今回の反対に回った理由と言うのがこちらにありますが、金融政策決定会合議事要旨でもうちょっと突っ込んだ理由が記載されている可能性はありますので(今の建付けだとラッカー怒りの反対みたいなステートメントを出すのってちと微妙で、公表文書に出た部分と総裁(政策委員会議長としての総裁)が会見で言及した以上に突っ込んだ物言いを講演でする、というのは議事要旨が出るまでは難しいように思えます)そちらにも注目ですな。

まー端的に言えば「金融政策単体で出来もしない目標を掲げるのはおかしいだろ」という話だという事(そらまあヘリコプターで無限に金を撒けば貨幣価値が無限に低下するのでインフレが無限大に高まるのですが、それは金融政策では無くて財政政策です)ですが、あたくし勝手に愚考するに、佐藤さんや木内さんは「政策の継続性が何でこのタイミングで飛躍しないといけないのか」という点も問題視してたんじゃねえのと思いますけどにゃ。


・でまあ2%の数値についての話が始まる

出来もしない目標とは何ですねんという話がこの次に始まるのだ。(過去において2%は相当高い物価上昇率であった)という小見出しキタコレですが。

『では、この2%という数字はどういう数字であろうか。日本経済において、石油ショック以降、2%超の消費者物価上昇を実現した時期はわずかであったし、それらは総じて日本経済が厳しい状況に直面していた時期であった(図表6)。』

ふむふむ。

『過去20 年余りの例では、消費税要因を除くと、1980 年代後半の資産バブルの余熱があった1990 年4 月〜92 年12 月とリーマン・ショック直前の2008年7月〜9月がそれに当たる。前者はディマンドプル型インフレではあったが、異常な資産価格高騰後のいわば余熱であり、また相前後して起こった資産価格の崩落は金融危機を誘発し、その後の日本経済の長期低迷の一因となった。後者は典型的なコストプッシュ型インフレで、交易条件悪化による購買力の海外流出を伴い、経済厚生は却って低下した。このように、過去20 年余りの間にほとんど実現しなかった高いインフレ率を物価の安定と整合的な物価上昇率と定義して目指すことは、日本銀行にとり大きな意識変革を迫るものであり、挑戦でもある。』


で、この次に物価目標を数値化しなかった点のレビューが入る。

『そもそも、日本銀行は2000 年代半ばまで物価安定を数値で示してこなかった。』

さよですな。

『例えば、2000 年10 月、ゼロ金利解除の直後に日本銀行は「『物価の安定』についての考え方」という文書を発表したが、その中で日本銀行は「『物価の安定』の定義を数値で表すことは適当でない」と結論付けている。日本銀行が物価の安定についての数値表現に踏み込んだのは、2006 年3月に「中長期的な物価安定の理解」という形で、各政策委員が中長期的にみて物価が安定していると理解するレンジの和集合として「0〜2%」の範囲を示したのが最初である。その後、こうした数値表現を各委員の考えるレンジの和集合でなく、「中長期的な物価安定の目途」という形で、日本銀行として中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を打ち出したのは、そこから更に約6年を経た2012 年2月のことであった。』

さいです。

『その間、日本経済は程度の差こそあれ緩やかなデフレが続いていた訳だが、物価安定の数値表現にこれだけ時間を要したのは、名目ゼロ金利制約のもとでインフレ率引き上げへの決定打を欠いたことが大きい。』

ほほう。

『そもそも諸外国におけるインフレ目標政策は、高すぎるインフレ率を目標内に収束させることを目的としていたが、日本では、インフレ目標政策は低すぎるインフレ率を引き上げるための手段と認識されている。しかし、緩み切った「紐を押す」ことは困難との比喩にもある通り、デフレ下の金融政策運営はインフレ下のそれよりもはるかに困難である。』


・需要創出の必要性

『人口減少や高齢化という経済への逆風が強まるなかで、2%という物価安定の目標は正直申し上げてかなり野心的である。先行き年間1%弱の労働力人口の持続的な減少が見込まれており、何の手も打たなければ、日本経済は毎年1%弱、GDP が減少し続けることが明白な経済である。』

>何の手も打たなければ、日本経済は毎年1%弱、GDP が減少し続けることが明白な経済である
>何の手も打たなければ、日本経済は毎年1%弱、GDP が減少し続けることが明白な経済である
>何の手も打たなければ、日本経済は毎年1%弱、GDP が減少し続けることが明白な経済である

おお・・・・・・・・・・・

『こうした状況下で、2%の物価上昇が見込めるところまで需給ギャップを引き上げるためには、これまで以上に成長力強化の取り組みを進め、需要創出を図っていく必要がある。更に、そうした物価上昇を目指すに当たっては、経済のIT 化やグローバル化に伴う世界的なフィリップス曲線のフラット化の進行、すなわち需給ギャップの改善に対する物価の反応速度の一段の鈍化という現実を踏まえる必要もある(図表7)。すなわち、目標の実現は先行きますます厳しいチャレンジとなってきているのである。』


・賃金が継続的に上昇しないと物価が継続的に上昇しませんがなという話

この論点部分は関連する図表を参考にしながら読むとクリアカットになるので図表を別窓で開きながら読む(紙に出しても良いのですが、白黒印刷をかけるとちょっと見にくい図表が多い(プレゼン資料用の図表なので講演のプロジェクターで出すのに最適化したらまあこうなるのですよね)のでカラー印刷の方が良いがコストががががが)のがお勧め。(必要なのは賃金の回復)という小見出しがキタコレであります。

『それにしても、日本はなぜ10 数年もの間、デフレから抜け出せないのであろうか。1990 年代後半、デフレの初期段階では資産価格の大幅な下落や金融危機による信用収縮、生産性の低い企業の退出が遅れたことによる過剰供給力の温存などが主因であった。』

しらっと過剰供給力の話をしていますが、これは中々ポリティカリーにはアレな論点で、各国の中央銀行、というか特にこの話を最近はBOE(しまったネタにしないうちに2月MPMだわ)がしておりますが、ああ堂々とミニッツに書けるBOE恐るべしとかいうのは話が逸れますな(^^)。

『もっとも、2000 年代半ば以降、金融システム問題を克服した後のデフレは新たなフェーズに入っており、その主因は賃金にあると考えている。』

ふむふむ。

『財やサービスの価格はそれを生産するための費用の影響を受ける。生産費用が人件費と原材料費からなるとすると、多くの原材料費は国際競争のなかで決まるため、その価格の変動は為替相場の動きを別にすれば、ほぼ世界共通に影響を与えるはずで、日本だけがデフレになる理由にはならない。原因は生産費用を決めるもう一つの要素である賃金にあると考えられる。』

なるほど。

『実際、消費者物価と賃金は密接に相関している(図表8)。そもそも消費者物価の構成品目の約半分はサービスで、サービス価格はサービス業の賃金と概ね連動している(前掲図表8)。サービス業は労働集約的で賃金の動向が価格に反映されやすい。』

これは図表を参考にしながら読んで味噌。

『従って、物価安定の目標である2%の消費者物価上昇率を目指すには、とにもかくにも賃金の回復が重要である。』

キタコレ(・∀・)!

『もっとも、年間の名目雇用者報酬はリーマン・ショック後に10 兆円超減少した後もほとんど回復らしい回復を示していない(図表9)。』

この図表9の上段にある名目雇用者報酬の推移のグラフを見ると絶望した!となりますのでお勧めorz

『賃金の回復をみるためには、その原資である企業収益を拡大させると同時に、企業が労働分配率を引き下げないことが肝要である。』

全くで。

『賃金回復のチャンスは2000 年代半ばに実際にあった。新興国の需要が火付け役となり、信用バブルも手伝って世界経済が過熱し、製造業中心に企業収益が過去最高益を更新するなか、企業は雇用者への還元を増やすことが期待された。しかし、この時期、企業は内部留保の積み上げを優先し、労働分配率は低下した(前掲図表9)。主要労組も企業の分配政策に異を唱えなかったため、賃金はほとんど上がらなかった。』

図表9の下段を見ると更に絶望できるのでお勧めorzorz

『足許はいわゆる企業を取り巻く6重苦の逆風のなか、主要製造業の一部で競争力が顕著に低下したこともあり、分配を増やそうにも原資が増えない状況にある。』

ナムナム。


・賃金版フィリップスカーブの話

(米国は雇用者数で調整、日本は賃金で調整)という小見出しの部分に参ります。

『日米におけるこれまでの雇用調整のあり方の違いも、賃金のパフォーマンスに影響しているとみられる。』

この論点が興味深いです。

『米国では、雇用調整を行う際には、賃金ではなく雇用者数を大胆にカットし、不採算部門からの撤退を比較的迅速に行う。結果的に、名目賃金は景気循環にかかわらず2〜4%前後の伸びを保っているし、経済に超過供給力が温存されにくいためデフレになりにくい。』

ということでここで賃金版フィリップスカーブの話が出ます。

『横軸に失業率、縦軸に賃金上昇率をとった賃金版フィリップスカーブをみても同様のことが言える(図表10)。』

これは図表10の「賃金上昇率と失業率」「インフレ率と失業率」の2つのグラフを眺めるとほほうと納得できると思いますので図表を見てちょ。

『こうした景気後退下で厳しいレイオフを行っても賃金を削減しないという米国流の雇用調整は日本ではなかなか理解されにくいであろう。一方、日本では、労働法制の違いもあって、失業率は相対的に安定しているが、失業率の変化に対する賃金の反応スピードは大きい。』

『すなわち、景気後退下でも解雇による雇用調整は相対的に限定的であり、調整される場合には主に賃金の削減によってなされる傾向にある。結果的に、日本では非効率な部門の整理・再編が遅れ、労働分配率が高止まりし、経済の新陳代謝が進まず、過剰供給力が温存されやすい。』

『このように雇用調整のコストを広く薄く負担しあう構造となっていることが緩やかなデフレからなかなか脱することができない一因となっている可能性がある。』

この辺りに関してはhamachan先生の見解をお伺いしたいものであります、と召喚呪文を唱えてみましたが伝わるかな??

『では、日本は景気拡大下で雇用市場が逼迫すれば賃金の伸びも高まりやすいと言えるのであろうか。悲観的かもしれないが、足許では日本企業の競争力が低下し、企業の稼ぐ力そのものが弱っており、必ずしもそうとは言えない可能性がある。』

おーのーと申しますか絶望した!と申しますかな悲しい見通しですが、まあ確かにそうなりそうな悪寒はしますですな、はい。

『先行きの成長見通しが低下した産業や不採算部門を時間をかけて整理していくうちに、企業や産業自体がいつの間にか競争力を失っているかもしれない。企業の価格支配力が弱まり、仕入れ値の上昇を売り値に転嫁できていない状況はこうした競争力の低下を端的に示している可能性が高い(図表11)。』

この図表11にある下の線(カラーだと赤い線)が販売価格判断DIで上の線(カラーだと青い線)が仕入価格判断DIの推移でして、段々この乖離が拡大して、それが恒常化しているというのが示されているのがこの部分の説明の意味です。

『いずれにせよ、2%の物価上昇率を目指すには4%程度の賃金の伸びを生みだす経済の基礎体力をまずつけることが肝要である。様々な経済主体による成長力や競争力強化の取り組みへの期待はそれだけ大きい。』

>2%の物価上昇率を目指すには4%程度の賃金の伸びを生みだす経済の基礎体力をまずつけることが肝要である

キタコレという所で、まあこの部分がキャッチーなのでヘッドラインに使われておりましたが、これは先ほどの図表10にありました賃金版フィリップスカーブから出てくる話でして、賃金版フィリップスカーブの下の表にある「インフレ率と失業率」というのをみますとインフレ率2%に相当する失業率が概ね2%程度となりますが、その2%の失業率を上の表にある「賃金上昇率と失業率」の表で見ますと、失業率2%に相当する賃金上昇率が概ね4%になります、というのがこの部分の説明根拠になっております。


・以下続きは会見ネタと共に明日で勘弁

んでもって金融政策で何をするのかという話ですが、(現実的には何ができるか?)という小見出しになります。

『では、2%の物価安定のため、金融政策面からは、どのような貢献ができるだろうか。』

キタコレ。

『本来的には経済の活動水準が高まり、需給ギャップが縮小することで賃金とともに一般物価水準が上昇していくのがバランスの取れた物価上昇である。かつ、そうした物価上昇は持続的でなければならない。幅広い経済主体が競争力強化と成長力強化に取り組むことでそうした物価安定を実現するにせよ、政府や日本銀行はこれまでも成長力強化に取り組んできた。しかし、これまでの延長線上の政策で2%という数字はなかなか現実感を持って受け止めにくく、これまでとは次元の異なる相互の取り組みが必要とされている。』

キター(・∀・)

『一般論として、名目ゼロ金利制約下でデフレに陥った経済が刺激され、物価の回復に至る経路として有望と考えられるのは、第一に為替市場を通じた経路、第二に資産市場を通じた経路であろう。』

ということで、就任記者会見の時にも佐藤さんが主張していましたが、最近はこのロジックが政策委員会の中でも少なくとも第一の為替経路に関しては他の審議委員も主張するようになってきておりまして、徐々に多数派となってきましたなあと思うのですが、以下の話に関しては時間と量の都合上明日に続くでご勘弁頂きとうございますすいませんすいませんm(__)m




2013/02/06

お題「基金短国買入でアチャー/麿前倒し退任ということは正副総裁後任人事が3月19日に間に合うようですな」

まずは昨日の訂正です(すいません)が、昨日ああだこうだと計算してた資産買入基金の部分ですが、長期国債の今年6月までの償還額面は11495億円が正解です(間違えて前月の時点の数値を書いていました)が、その後の計算に関しては正解の数値をベースに作成しておりますので他の変更箇所はございません(過去ログを訂正履歴付きで直しております)。謹んでお詫びいたしますが賠償は致しません。

○基金短国買入ェ・・・・・・・・

普通に債券の話をするなら10年国債入札の話だろ常識的に考えて、というツッコミはあろうかと存じますが、そこで昨日の基金短国買入の話をするのがこの変わり者のあたくしのクオリティ。

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130205.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 15,000 2013年2月7日
米ドル資金供給(固定金利方式) 2013年2月7日 2013年2月14日 0.630
米ドル資金供給(固定金利方式) 2013年2月7日 2013年5月2日 0.630
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月7日 2013年4月8日

んでもってオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130205.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 29,640 15,001 0.070 0.087 23.8
米ドル資金供給(固定金利方式)(2月14日エンド分) 1 1
米ドル資金供給(固定金利方式)(5月2日エンド分) 0 0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月7日スタート分) 3,440 3,440

>国庫短期証券買入(資産買入等基金) 29,640 15,001 0.070 0.087

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

大体ですな、金曜に1兆5000億円の基金短国買入をやったばっかりでまた今日やるとか何ですねんとは思っておりましたが、足切りレートが0.070%まで低下しやがるという事象が発生しまして、これがどういう事ですねんと申しますと、先週金曜日=1日の国庫短期証券買入は平均0.095%で足切りも0.095%でしたし、前日月曜の市場では大体残存3か月以内の短国のオファーが0.0925%から0.095%の間くらい(銘柄によって業者の持ち具合が違うので微妙に異なるが大体その位の居場所)となっておりました所だったのですが、いきなり足切り0.070%まで入るとかもう何だかなという所で。

まあ何ですな、大体普通のオファーにちょっと毛が生えた位の応札するとすれば0.091とか0.092とか0.093とかその辺で応札するのがごく普通のオファーサイドな札だとは思うのですけれども、木曜に発行総額5.7兆円(第T非価格競争入札も含めて5.74兆円)新発3か月の入札があって、金曜に1.5兆円の吸い上げを実施しているのに昨日も1.5兆円の吸い上げをしようとしたら玉無し芳一になってしまう訳でして、普通のオファー分だけでは1.5兆円の札に届かなかったのでギャグで応札した0.070%とかまで入ってしまったでござるの巻という所でしょう。平均が0.087%ですからまあ基本的な札は0.090%台の水準で入っているんでしょう。

んでもって今週って今日と明日に短国の入札があって、今日が6か月物3.5兆円程度で明日が3か月物5.7兆円程度の入札があるんですから何も入札前日の玉の薄い所でやらんでも木曜か金曜にやって下さいよとゆー風情なのですが、他の買入系オペやら国債入札スケジュールやらを考えたら日程がここしか無かったとかいう所なのかも知れん罠とは思う(というかたぶんそうです)のですけれども、3か月もの1本しかない入札の後に次の入札が来る前に合計3兆円の買入をオファーしたのはさすがにちょっとという感じです。

今回こうやって買入オペの金利が低下しますと、それに連れまして相場の位置が変わりますので、結果として今日明日の短国入札がやたら強い所で決着するという誠に遺憾な展開が容易に想定できるのですが、「入札激強」→「でも冷静に考えて日銀当座預金制度の外側の成行買いと日銀の基金短国買入以外に買い手が無い」→「そうこうしているうちに業者の在庫滞留」→「GCレート上昇」→「ファンディングコスト逆鞘を持っているのがキツイ」→「結局金利上昇して買いがやってくるまで水準訂正」→「水準訂正後のポジションは軽くなっているから買入オペの金利が低下しやすくなる」→「業者のポジション軽くなる」→「基金オペには冷やかしレートだけ放り込んでおくか」→「オペが強くてあばばばばー」→最初に戻る、という無限ループに入っているような気もしますし、大体からして日銀の基金国庫短期証券が市場の玉が薄い時に吸い上げとか、日銀の買入が狙い撃ちしてわざわざ短期市場というか短国の金利を作為的に下げたい、というのならまあ(あまり上品では無いが)良いとしまして、その辺を何も考えていないで実施しているならば、市場を自分から掻き回すようなオペの打ち方ってどうなのよとゆー所ですな。

しかしまあ何ですな、このオペ結果見て何かお調子者がジャンピングしたのか、はたまた店頭で持って行かれた(または既に持って行かれている)業者が泣きながら踏んだのかは知らんですけれども、後場の債券市場で2年新発債が0.055%(前日の引けから0.010%金利低下)が出合ったのにはビックリというよりは苦笑を禁じ得ない展開になってしまいました。

でですね、2年国債の0.055%も何だよと思いましたがもっと何だよというのはどこぞの某ベンダーの報道でありまして、どこのベンダーかは申し上げませんが、「付利下げの思惑復活」とか報道したバカスケがおりまして、幾らなんでも市場のプライスアクションに釣られ過ぎにも程があるわと市場の一部からはアホジャナカロウカこのベンダーという声が上がったのは申し上げるまでもございません。そうやって市場のプライスアクションを一々「市場が何とかかんとかを織り込んでいる」として報道するとバンドワゴン効果を拡大して、それこそ市場の自己実現的な暴走を促進する訳でございまして、まあマクロプルーデンスの観点からこのようなバカスケは市場から排除されるべきである、というのはだいぶ冗談の大袈裟成分ではありますが、そもそもお前何でこのタイミングで付利下げ観測が出てくるんだとか考えてからニュース記事書けよと思います次第。

そらまあベンダーさんもユーザーの頭数は減るわ経費削減でベンダー費用も削減対象だわということで、何でもかんでもオモシロヘッドラインにして商売繁盛を狙いたいということだとは存じますが、そらまあ何も知らん一般ピープルにはそれでもウケて商売になるかも知れませんが、幾らなんでもプロの方々が「ハァ?」というような記事を配信するのは如何なものかと思われますとゆーか、そういう与太記事書いていると経費削減対象に真っ先に挙げられるだけなんですけど大丈夫ですかねえと思いますけどにゃあどこぞのベンダー様。

#うむ最後は市場と関係ない悪態になっとる


○麿の退任時期が副総裁と揃うとな

昨日の夕方(18時20分過ぎ位)に出ましたが皆様既にご案内の通り。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130205/t10015315671000.html
白川総裁 来月19日付けで辞任の意向
2月5日 18時53分

元はと言えばお縄一派が引っ掻き回したせいで前回の総裁就任が1か月近くずれてしまったため、副総裁2名の任期と総裁の任期が不自然にずれてしまった為、このままだと2名の両副総裁だけ先に交代して総裁が1か月弱ぽつねんと残されるという形になりますなという状態でした。

でまあ日銀の政策委員に関してはいわゆる欠格事由に引っかかる(例えば泥棒をして禁固以上の実刑を食らうとか)以外では本人の意思に反して辞めさせる訳には行かないので、従来のように総裁副総裁3人セットで任期を揃えるためには本人が辞任しないといけないので辞任しました。とまあそれだけの事でそれ以上でもそれ以下でも無いぞなもしという所ですな。

#「突然の辞任表明に関係者から戸惑いの声も」とかモーサテは何を言ってるんだ

まー1つ言えるのは昨日は民主党が総裁人事に関する基準みたいなのを公表しておりました(後でちょっとメモしておきますが)ように、正副総裁の後任人事についてかなり進展して来ておりまして、3月19日の就任に手続き上間に合いそうだから総裁の任期を揃える形で退任しても大丈夫だろうという事になったんでしょうねという所ですわな。もしこれがまだまだ何も決まらず揉めまくっていて、下手したら3月19日就任に向けた国会承認が全然間に合いそうもないというのであれば、業務遂行の都合を考えると総裁が残っていた方が良いのですから退任とか先に言わんぞなという所で。

しかしまあわざわざ話題になるようなタイミングじゃなくて、何となく正副総裁の後任が決まってから退任時期を合わせる表明をしてもよさそうな気がしたんですが、もしかして国会承認の手続きの際に任期に関しても承認事項の中身に含まれるのでしたら、先に退任時期を合わせておかないと国会的にややこしい事になるので先に退任表明したんですかねえとか思うのですがおじちゃんそこまでのテクニカルな話がワカランチ会長なのでご存知の方教えてジェネラルなのでありまする。


まあ何ですな、麿総裁におかれましては就任時から最後まで(途中は平和な時代もありましたけれども)政治に振り回されて誠に残念に存じますという所ですが(大体もとは副総裁の筈だったんですし)、今回の騒動見て思いますに、総裁と副総裁2名をセットで入れ替えるという現在のやり方って今回のように「俺の考えに従え」系の人が出てくると政策ロジックのワープのような事になるリスクがあって、政策の継続性という観点からしてちょっとどうなのと思われますので、正副総裁の任期を1年半くらいずらすような形に変えられないもんかねと思うのであります。一応6名の審議委員とは任期がずれているので、変な馬鹿野郎政権が出てきて(ちなみに安倍ちゃんの事を指している訳では無い(本当)ので念のため)馬鹿野郎執行部を指名しても6名の審議委員が反対に回るというヘッジはついておりますが、まあそうは言っても正副総裁総取り替えというのも継続性的にどうなのという気はやはりするのでありましたです、はい。


しかし酷えなと思ったのはこれまたどこぞのベンダー(というか通信社)でして、このニュース見て早速「白川総裁前倒し退任で円が下落」とか報じていたのですけれども、昨日の夜前半(大体東京の夜8時前位)までの日中足を見るとユーロの対ドル相場とドルの対円相場の日中足の形がまるっきり同じで推移しておりまして(つまりユーロが対ドルで上昇するのと全くパラレルな感じでドルが対円で上昇していたという事)、どこからどう見ても昨日の夕方の値動きってユーロ主導だったと思いますぞなもしという話。まあそのユーロの対ドル昇龍拳状態って東京時間の夕方5時位からやっていたのですが、そもそもその昇龍拳が何で起きたのかが良くワカランチ会長で、ユーロ圏PMIのリバイスガーとか一応後付講釈はされていたのですけれども、そんなに目をひん剥くようなリバイスをしている訳でも無く、それよりも同じタイミングでイタスペ国債の金利が低下していたのでそっちの影響じゃネーノとか思ったのですが、じゃあそもそも何でイタスペ国債の金利が低下した(その前はイタスペ国債金利は上昇気味でユーロは対ドルで下がっていた)のかはあたくし存じ上げませんので甚だ遺憾に存じますという所。

NY市場での日中足まで見てないのでもしかしたら報道に釣られて雨人がジャパンの金融緩和ヒャッハーとかやったのかも知れませんが、他の数字見てるとこれ単に米国市場様における金利上昇株高を受けてドルが上昇しているだけのようにしか見えませんし、大体からして退任前倒しって言ったって2年も3年も前倒しになる訳では無くて、単に4月8日の退任が3月19日に前倒しになるだけの話で、その1か月違って何がどう違うのかお前はどういうタイムスパンで物事考えてるんだ日計りディーラーかよという話でございまして、そこまでヒャッハーと反応する事でも無いと思うのですけどねえ。こんなの単に円売り地合いだからでしょと思いますが。

まあ話題としては面白いしキャッチーだから日銀総裁前倒し退任で円安加速とか報道したいのは気持ちとしては判るのですが、一応プロ向けベンダーにニュース流している人たちだったらドル円だけじゃなくてドルユーロ見るとか欧州周縁国国債金利状況見るとか、その辺を見て「待てよ」となって頂きませんと(大体からしてこのニュース出た瞬間に為替動くかと思って目を皿のようにして見てたけどドル円5分間ほど殆ど動いてなかったし、円安キタコレとか思ってドルユーロ見たらユーロが上昇してて脱力したんですけどね)、ズレたニュースであっても活字として残るので、その瞬間その場に居合わせた人たち的には「こいつは何を言ってるんだ」となっても、その場に居合わせなかった人からすると「そうだったのか!」となって嘘から出た真という事案が発生するという、デマ拡大装置としてニュースベンダーが機能するという糞の役にも立たないどころか弊害モードになってしまいますので、もうちょっと市場後講釈について書く事について良く良く物事を考えて頂きたい物だと存じます。

つーかさ、さっきの「付利下げの思惑ガー」もそうですけれども、こんなのちゃんと見て無かったり、そもそもその辺に詳しく無かったりしたら全力で信じてしまいますぞなもしとゆー所でありまして、こうやって悪態をついている不肖このあたくしだって自分の専門外の事になるとメディアに釣られてああだこうだとか考えているんだろうなあと思います次第でありまして、もうちょっとメディアは報道するにあたって勉強して欲しいもんだとか思うのですけれども、面白センセーショナル報道に釣られて嘘から出た真って感じでNY市場が動いたんですかねえという所ではございまする。

いやまあこのようにあたくし申し上げておりますが、もしかしたらユーロの上昇と円安は独立事象で偶々パラレルに発生しているのかもしれませんので、そーゆー意味ではあたくしのこっちの悪態も的が外れている可能性はあるので外れていたらどうもすいませんという所ですけれども、欧州時間のプライスアクション見るとベンダーニュース程反応していたようには見えませんでしたという事で。

#なお、付利下げの思惑復活とかいうさっきの話に関しては全力で「それは間違い」と指摘させて頂きとうぞんじます(^^)


○ということで次期総裁人事関連のどうでも良い雑談

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130206/t10015323741000.html
首相 日銀の新総裁案を訪米後提示も
2月6日 5時37分

『日銀の白川総裁の後任人事を巡って、政府・与党内では、国会の同意を得るために、民主党との調整を進めるべきだという意見の一方、みんなの党や日本維新の会との連携を優先すべきだという指摘も出ています。』(上記URLより)

>みんなの党や日本維新の会との連携を優先すべきだという指摘も出ています

・・・・・・・・・・・???????????????????

まあ誰だこんなの言ってるのはという所ですが、それはそれとして。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130205-00000124-reut-bus_all
民主党、日銀総裁人事の判断基準を正式決定
ロイター 2月5日(火)18時54分配信

『[東京 5日 ロイター] 民主党は、日銀総裁人事にふさわしい人選に関する判断基準をまとめ、党財務金融部門会議で了承し、「次の内閣」会合で正式決定した。判断基準として、1)金融市場への卓越した指揮権、2)市場との十分なコミュニケーション能力や語学力、3)組織管理能力、4)国会や政府への説明能力、5)政府と緊密な連携を行いつつ、金融行政の独立性を堅持する能力、6)大きな観点からバランスよく対応できる能力──をあげている。』(上記URLより)

>金融行政の独立性を堅持する
>金融行政の独立性を堅持する
>金融行政の独立性を堅持する

・・・・・・・・・まあそれはとりあえずお前の党に居る前原とかいうしゃしゃり出てくる物全てに混乱を巻き起こした上にその収拾を何もしないという人間に言えと存じますが。


まあ今となってはどうでも良い人ですが。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130204/k10015290521000.html
小沢代表 日銀総裁は人物本位
2月4日 21時25分

『この中で小沢代表は、日銀の白川総裁の後任人事について、「党内では、かつての民主党のように、官僚だった人は絶対だめだというハードルを設けるような議論はない。人物本位で、政府から提示された人を見て判断することになる」と述べ、経歴にとらわれず、人物本位で賛否を判断したいという考えを示しました。』(上記URLより)

どの口がそれを言うかという所でありまして、お縄先生におかれましては可及的速やかに三途の川で沐浴でもして頂きたいものである、と斯様思うのでありますが、このニュースを見て「お前が言うな」というツッコミをした市場関係者が4ケタ人は居たのではないかと存じます。


○雪の予想の為に遺憾ながら(違)予告編だけ

12月議事要旨を読んだのにネタにしないでいたら1月の議事要旨が出て、それを読んだのにネタにしないでいたらまもなく2月のMPCになるという誠に申し訳ございませんというBOEネタでございますが、まあ元々BOEネタはあたくしの趣味成分が強いのであまり読む人もいないでしょうとかいきなり自虐ですがm(__)m

1月MPC議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1301.pdf

12月MPC議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1212.pdf

英国の場合は何か景気はパッとしないのに物価は一頃よりは下がったとはいえ2%台後半の上昇率で推移しており、企業の生産性がアガランチ会長でしかもユーティリティー価格や大学授業料のような許認可系の価格も上昇を続けるわとなっておりまして誠に遺憾の極みという状況になっておりますぞなもしという状況のようですな。

んでもってその辺のいやあ困りますなあ何かぱっとしませんなあどうにかなりませんかねえ感が議事要旨見てると伝わりまして、特に1月議事要旨の方では「英国ポンド価格の下落が思ったより輸出の拡大に貢献していなかったのではないか」というような話まで飛び出す次第で、ポンド安でヒャッハーとか言ってた勢いまで減衰とか何とも味わいのある議事要旨なのでネタにする所存。



2013/02/05

お題「基金買入関連のちまちました計算をしてみたよ/今さらネタですが1月金融経済月報」

強力なお告げ「これじゃ駄目だ」を打ち消す武者先生ェ・・・・・・・

http://www.musha.co.jp/4459
2013年2月4日 ストラテジーブレティン (90号)
アベノミクスを成功させる米国事情

で、2月4日の米国株式市況(引け近く)
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html
NYダウ 工業株30種 13,903.97 -105.82 -0.76
S&P 500種 1,500.16 -13.01 -0.86
ナスダック 総合指数 3,140.00 -39.10 -1.23
(東京時間5日朝5時半現在)

ちなみに昨日の市場でもお告げの更新が行われたとのヘッドラインが出たりお告げが配信された途端にいきなり株価が頭打ちになって危うく日経がマイ転しそうになってビビったのですが、株価はその後戻ってふーんと思って今日はお笑いネタにする予定だったのですが一晩明けるとオソロシスな米国市場orz

まあこれはこれと致しましても(^^)、最近の市場様におかれましてはいつも以上にこれらのお告げ系なアレが大小含めましてあちこちで炸裂しているように見えるのでありまして、そこはかとなくアレなものを感じるアレな日々なのでございまする。つまり市場が流動性相場ヒャッハーである、後付講釈してみちゃえば話は簡単なのですが、それだけで片付けるのは何だか思考停止のような気がします。だから何なんだと言われると非常に説明がしにくいのですが、曲がりなりにもこの道10ウン年(だったっけ?)のこのあたくしとしてはニャンともかんとも。


○例によって営業毎旬と保有国債残高の確認を

月初第2営業日に出てくる月末分の毎旬報告と保有国債明細ネタが定例ネタと化しておりますが、この定例ネタも2014年からはオープンエンド買入になるので良く良く考えてみるとテンポラリーネタなのである。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130131.htm/
営業毎旬報告(平成25年1月31日現在)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2013/mei1301.pdf
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/release/2013/tmei1301.pdf
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額


・銀行券残高と国債残高

最早誰も話題にしない所がオソロシスなのですが。

発行銀行券 82,639,979,362
(別表1)長期国債 65,436,618,746
(別表2)長期国債 25,886,702,130

ということで別表1が輪番分で別表2が基金オペ分ですが、合計は堂々の銀行券残高超えとなっておられますぞなもしという所で。まあ財政ファイナンスがどうのこうの言われないのであればこれは純粋な調節技術上の問題であって、調節技術上で言えば長期国債の残高があまり多いと短期金融市場の金利誘導を行う際に資金吸収オペ先行で実施しないといけなくなるので調節が窮屈になり、恐らくは(そういう事例が過去に無いと思うので確たることは言えませんけれども体感的に)金利誘導がテクニカルに難しくなるでしょうねとは思います。

が、ジャパンの場合には量的緩和状態だわ物価目標から遠い状態なので当分量的緩和状態は続くどころか拡大するわとなっておりまして、どこぞの先生などによれば当座預金残高77兆円で2%の物価目標達成へとかいう話になっていましたがまあそんな簡単なもんじゃないでしょという位の勢いでありますので、この辺りが問題になるのは出口ガーの米国の方でしょうなあという話でハポンの方はキニシナイという所でしょうな。

なので話が逸れますけど、長い物ばかりバカスカ購入している米国の場合、いざノーマライゼーションという話になった場合に酷い事になり兼ねないので、そういう意味で利上げと資産買入を分離して資産買入の拡大停止などを先にできるような建付けにしているのは、さすがにその辺の先を気にしているという事なんでしょうねえと。


・基金長期国債に関する雑考

ということで長期国債の銘柄別保有状況を見る訳ですが、まあ見ててほほうというのが幾つかあったのでその辺でも。なお、以下の数値は上にあるURLの数値およびその前月分のデータから電卓等であたくしが数字拾ってヘコヘコ計算したもので、一応検算らしきものはしたつもりではあるのですが、正確性は担保致しかねますのでデータは全て日銀のサイトにありますから皆さん自分で計算してちょ。

でまあまずは償還スケジュールなのですが・・・・・・(額面ベースで単位は億円ね)

2013年01-06月:11495
2013年07-12月:50965
2014年01-06月:92860
2014年07-12月:39374
2015年01-06月:51933
2015年07-12月:11032
(2016年償還銘柄の利付国債は一番早い償還が3月20日に来るのでしばらく買入対象外)

ちなみに12月末現在の数値は先月ネタにしましたのでそこから拾ってくるとこうなります。

2013年01-06月:12529
2013年07-12月:50965
2014年01-06月:86056
2014年07-12月:34842
2015年01-06月:46126
2015年07-12月:9153

前月との増減ですけれども・・・・・・・

2013年01-06月:▲1034
2013年07-12月:0
2014年01-06月:+6804
2014年07-12月:+4532
2015年01-06月:+5807
2015年07-12月:+1879

手前のマイナスは1/15償還の2年300回の分ですが、これを見ると買入の銘柄って特に1−3年の中で長い物ばかりが入る訳でも無いのねというのが(細かい銘柄別まではさすがに計算するのがめんどいので計算しなかったけどそれを見るとより判り易そう)ふーんという所ではあります。ちなみに1月発行の2年新発の324回債については4202億円が打ち込まれておりました。

#なお、どうでも良いですが増分合計が19022億円でして、受渡ベースで1月の基金国債買入は3回実施されてそれぞれ6003、6016、7003億円の落札でしたので合計して19022億円で数値一致しておりますな、当たり前の事ですが(^^)

でまあこの償還スケジュールと今後の買入の関係を見ますと、6月末までの買入については1月末の営業毎旬報告での長期国債残高が25.886兆円で、償還が1.2529兆円(訂正:1.1495兆円)、目標残高が34兆円ですので、あと9.2635兆円ほど買わないと残高到達しませんという話になります。これを残り月数の5で割ると1.8527兆円と出てくるので、1回に7000億円の買入を3回実施するとか、6000億円2回と7000億円1回とか、まあ何かそんなペースになるんでしょうな。

でもって12月末ですが、償還が5.0965兆円で基金の積み上げが10兆円ですので、これを6で割ると2.516兆円とかの数字となりますが、これに関しては買入対象から既に外れているのでこの額で確定という所になるでしょう。1回6000億円から7000億円が月に4発オファーされると思うと中々頭がクラクラして参ります。

んでまあへーと思うのは2014年前半でありまして、現状で償還が9.286兆円もありまして、これがまたおそロシアな事に買入銘柄が結構分散されていて残存1年ちょっとの銘柄もしらっと打ち込まれていると言う事を勘案すると2014年前半償還の基金残高ってもうちょっと積みあがると思いますが、月に2兆円の買入で12兆円のおかわりがあるのですが、今の時点では残高自体は3兆円弱の積み上げという形になるんですな、うんうん。

まあ2014年以降に関しては2兆円定額購入になりますのでこの計算をするのは基金残高の推移予想という意味では意味があるのですが、そもそも基金残高が幾らになるという意味での量での勝負というフレームから半分足抜けしつつあるのが足元の推移だと思いますのでその辺は単に興味本位での計算ではありまする。


・基金短期国債に関する雑考

こちらはと言いますと相変わらずのハムスター状態でして、前月対比で額面ベースの基金残高は20970億円増えているのですが、実は1月の買入は4回でそれぞれ10007、10004、10008、15009億円の買入となっておりまして合計で45028億円の買入を実施しております。当然なのですがその差分は償還でして、先月は基金短期国債の償還が24058億円ございましてもう権兵衛が種まきゃカラスがほじくるとはこのことですなという状態。

まあそれは良いのですが償還スケジュール。

2013年01-06月:114743
2013年07-12月:1882

何がお洒落と言いましても1月の買入によって2013年7月以降償還の銘柄の残高が1円も増えていない事でありまして、つまり1月に買入を実施した分は6月末までには全部償還の刑になるので結局残高目標達成に寄与しないという大変に素敵な形ですな。まあ3か月と1年がインバートしているんですから当たり前と言えば当たり前ですが。

つーことで、まあこちらに関しては買入ペースの推計もへったくれもありませんで、6月末の残高目標であります所の19.5兆円を単純計算しても3で割るペースでの買入をしないと追いつかないという話になりますわな。

ちなみに今後の償還額ですが

2月:43237
3月:33958
4月:33944
5月:1984
6月:1620

という形で3か月以内物に思いっきり偏重した買入になっているのが判り易い(買入の殆どは12月終わり以降に発行されたカレント3カ月物が順繰りに入っている格好)訳でして、これは基金短国買入の最終形が月10兆円のオープンエンドですから残高ベースで30兆円程度になるんでしょうなあというのは判りやすい図になるかと思います。

しかしまあ何ですな、固定金利オペの残高目標が行かないという事になりますと、その分が基金短国買入に振り替わってくる可能性があるのですが、5兆増やすと単純計算でその3分の1の買入が月額ベースで拡大するとか何という展開という所ではございまする。


○うっかり忘れていましたが1月金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1301.pdf(1月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1212.pdf(12月)

何を今さらネタで誠に申し訳ございませんm(__)m

しかも例によって概要部分だけですが。

・現状総括判断

『わが国の景気は、弱めに推移している。』(今回)
『わが国の景気は、一段と弱含んでいる。』(前回)

前月に一段と弱含みになったのが弱めに推移なのですから、まあ方向性としての下向きは収まりましたが水準感としては前月とそんなに変わらん、という判断になりますわな。


・現状判断需要項目別

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、底堅さを維持しており、乗用車購入における需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響も減衰している。』(今回)

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している。このため、企業の業況感は、製造業を中心に慎重化している。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。個人消費は、底堅さを維持しているが、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減の影響が残っている。この間、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)

めんどいので一気に引用して並べてみましたが、変更点は以下の通り。

個人消費:底堅さを維持しているが・・・・という表現から、12月時点まで指摘していたエコカー関連の反動減の影響について影響が減衰という言い方をして底堅さを維持、ときっぱり言い切り型になっているので判断改善

企業の業況感:これは短観の月に入る物なので今回抜けているのは特段のインプリケーション無し


・先行き見通し総括判断

『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内となったあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、これは現状判断の総括判断部分の流れと同じですが、方向性として下向きだったものが横向きになるということでまあ改善。国内需要の部分に関しての見通しは結構上げていて、前回入っていた「全体としてみれば」というヘッジクローズに対しまして、今回は「各種経済対策の効果」というのを打ち込んでいますのでこれは改善ですわな、まあ補正予算案が策定されたのですからそれを織り込むのは当然ですけど。


・先行き見通し需要項目別

『輸出は、当面減少幅を縮小したあと、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面製造業を中心に引き続き弱めに推移するものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、乗用車購入の反動減の影響が引き続き減衰する中で、基調的には底堅く推移していくと考えられる。以上のような内外需要を反映して、鉱工業生産は、下げ止まりから持ち直しに転じていくと予想される。』(今回)

『輸出や鉱工業生産は、当面減少幅を縮小したあと、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、公共投資は、伸びを鈍化させつつも当面は増加を続け、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面製造業を中心に引き続き弱めに推移するものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、乗用車購入の反動減の影響が減衰するとみられる中で、基調的には底堅く推移していくと考えられる。』(前回)

全部引用したら長かったですねすいませんすいません。変更点は以下の通り。

国内需要:復興関連需要の記述が抜けて、公共投資部分に各種経済対策の効果というのを加える公共投資:これに伴い公共投資にあった「伸びを鈍化させつつも」というのが抜けて単純に増加見通しに鉱工業生産:12月は輸出の見通しと同様の所に入っていて、当面減少幅を縮小した後に海外需要の持ち直しで持ち直しという表現になっていたのが、今回は下げ止まりから持ち直しという事で、国内需要の改善を材料にして判断を前進させている


・早速円高の影響抜けキタコレ

次の所に微苦笑。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(前回)

「金融・為替市場動向の」云々が抜けておりまして、まあ欧州問題の改善や米国のフィスカルクリフの問題の改善というのは勿論あるのですが、それは金融の方でして為替の方に関しては円高修正の動きに早速反応しているとか何というかもうそういうのだけは反応速いんですよねえマッタクモウという所で、この正直者!としか申し上げようがない香ばしさを感じるのはあたくしだけですかそうですか。


・物価にも為替の影響の記述が

でもって次。

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

というのは前月と同じ現状判断ですがこの先の先行き見通しがががが。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、為替相場の動きを反映して強含んでいくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

国内企業物価の見通しに関して早速為替市場の動きの反映で強含み見通しキタコレという所でございまして、もうこういう所だけは反応がビビットですなあというのはさっき申し上げましたかそうですかという所で(^^)。消費者物価に関しては昨年の頭に品目変更の絡みだか何だか忘れましたが(すいません)謎の挙動を示した薄型テレビとかエアコンとかの特殊上昇要因が剥落するのでマイナス継続という去年の裏側が出る件についての記述が加わっていますな。


でもって金融面は特段の変化は無く(社債の発行残高に関する記述が変更になっているのですが、これは事実関係の話なのでまあスルー)判断の部分に関しての変更はありませんので引用を割愛致します。


・ということで

1月の金融経済月報ですが、まあ先行き見通しに関しては経済対策部分で持ち上がっているのではありますが、展望レポート中間見直しで示されていますように、「その先」に関する見通しが上がっているのかというと微修正程度っぽい感じでして、先般の追加金融緩和(と会見などでは言っているが実際問題としては実弾ベースについてどうかというとこれまた微妙だし、時間軸ベースでも一応長期化のようには見えるけれども確実では無い、という不思議な代物であり、だからこそ声明文の題名が金融緩和の強化となっていなかった)の背景が景気見通しなのか物価目標を強く意識したものなのかというのが微妙ちゃあ微妙です罠という感じです。

そーゆー意味では昨年2月の物価安定の目途導入と追加緩和の方が、景気判断を明確に引き上げながらの目途導入と追加緩和だったので物価安定の目途を重視して追加緩和を実施しましたというのが判り易かったのですけれども、まあ引き続きその辺は有耶無耶というかファジーというかってえな所ではないかと存じますです、はい。

#今さらネタでどうもすいませんでした




2013/02/04

お題「会見がトーンダウンの山口副総裁/その他少々メモ」

そー言えば昨年末に『インフレ率2%が達成できれば、日経平均株価が1万1300円程度、円相場は1ドル=98円程度となると予測される。』とか面白い事を仰せだった方がおいででしたが、あとちょっとで平均株価11300円行きそうな中でCPIは絶賛マイナス推移している訳でして、安倍ちゃんのブレーンとか言われる方々の「積算根拠」があまりにも杜撰過ぎるのが明白でして、まあそんな積算しか出来ないのに「政策提言」とかこいつらどんだけ面の皮が厚いのやら、というか気が付けよ安倍ちゃん・・・・・・・・・

一応参考までにその時の駄文URL
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/zatsudan12-02.html#za121227

○山口副総裁会見は微妙にトーンダウンしているぞな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302a.pdf

・講演は威勢が良かったのですが会見の応答が微妙にアレ

最初の説明が何故か3ページ半もあるのが何でですねんという所ですが、実質最初の質問になるのが4ページ目になりましてその辺から怪しげな雲行き。

『(問) 午前中の懇談会での副総裁の冒頭挨拶の中で、「先行きの基金の運営については、経済・物価情勢を点検しながら、必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」とおっしゃったのですが、それについて、もう少し具体的に教えて下さい。』

そらまあ質問する罠。

『(答) 「必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」というのは、あくまでも一般論として申し上げたものです。』

一般論と言えば麿、麿と言えば一般論として名高い(今勝手に作ったのだが)一般論キタコレという所でございますが。

『私どもは、2%という物価安定の目標を掲げ、それをできるだけ早期に実現するよう、強力に金融緩和を行っていくことを決定したわけです。そういう中で、経済・物価情勢の変化を見つつ、必要と判断すれば追加的な金融緩和を行っていく可能性があるということを一般論として述べたということです。』

この2発の「一般論」を入れなければ普通に「状況の推移を見て必要ならば追加緩和をしますぜウェーハッハッハ」とゆー話になるのですが、この一般論2発突っ込んでいる所で見事な麿テイストとなるのでありました。講演テキストで見られた威勢の良さはどこに逝ったのという所ですが、まー政策委員の皆様の講演に記者会見が付いている時には概ね会見で本音に近いのが出る、と言う事を勘案するといきなりの出オチで誠に遺憾。


『(問) 2 点質問します。先々、「必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」というお話のところで、これまで、日銀が行ってきた追加緩和をみると、景気が後退しているとか、景気の先行きがある程度怪しくなっているとか、そういうときに、ある意味で、下支え的な効果を狙って追加緩和した例が多いかと思います。今回、物価安定目標2%を決め、政府が経済財政諮問会議で定期的にチェックする枠組みができたことで、景気にはそれほど懸念はないが、物価が上がってこないということで、景気と物価を切り離し、物価だけをみて追加緩和をやらなければならない可能性が今後増えてくるのではないかと思われます。今後、追加緩和をやる際に、これまで以上に物価に重点を置いて考えていくのかどうか、という点が一つ目の質問です。(2点目は割愛)』

という事で次の質問が中々良い質問でありました。つーかさ、昨年2月に「中長期的な物価安定の目途」を公表した時の追加金融緩和がまさにこの質問者の指摘するような文脈での追加金融緩和になっていて、その時に市場が思いっきり反応したのはその「ロジックの本格的な転換」に対してだった(国内よりも海外の方が反応したのもそのせいでしょ)訳で、然るにその後何故か元に戻って普通の景気見通し的なロジックに3月会合およびその後の会見で戻ってしまったからこそ足元の正副総裁北京ダック状態になっている訳で。

『(答) 私どもの金融政策は、景気と物価の両方をしっかりとみながら、時々に必要な政策を行っていくのが基本です。従って、2%の物価安定目標を掲げたわけですが、これから先の政策対応についても、景気の状況がどうなのか、物価の動きがどうなのかをバランスよく点検しながら政策対応を図っていくということに尽きます。これが1 点目の質問に対するお答えです。(後半割愛)』

「バランスよく点検」というのはそらまあその通りではあるのですが、この「バランスアプローチ」も逆さ絵のおじさんが発言すると「閾値を機械的に見て判断する訳では無いので必要があれば緩和はもっと継続しますよ」という風に取られるのですが、世の中的に引締めバイアスがあると思われている(実際にはそういう人もいるしそうじゃない人もいるという所でしょと思いますが)組織の人たちが上記のような質疑をしますと、ああ物価重視じゃないんですねとゆー風に思われるので誠に遺憾に存じますという次第。


・時間軸について

こんな質問が。

『(問)(1点目の質問もまあネタにしても良いのだが質疑とも微妙なので割愛)2 点目は、政策の約束と言いますか、「いつまで今のような金融緩和を続けるか」というコミットメントについでです。昨年2 月の「物価安定の目途」導入時には、消費者物価上昇率1%を見通せるまで、強力な金融緩和を推進していく、続けていく、とおっしゃっていました。しかし、今回は、「必要と判断されるまで」と変えられました。この強力な金融緩和継続の約束は、従来の「1%を見通せるまで」という約束に比べ、果たして強いのかどうか、より強化されたのかどうか。もし、より強化されたということであれば、具体的に何を指して強化されたと言うのかについてお伺いします。』

まあ良い質問ですな。ただまあこれあたくしが質問するなら「物価安定の目標を事実上引き上げたのと引き換えに裁量度が上がったようですが、何故今回裁量度が上がったのでしょうか」という風な聞き方で行くかな?とは思いますけど。

『(答)(前半割愛)次に、「政策のコミットメント」についてです。もともとコミットメントの強弱を何で判断するかというのは難しいところがありますが、1 つは、金利のイールドカーブの動向です。』

ほえ??

『私どもが、今回のコミットメントを発表して以降、金利のイールドカーブに大きな変動があったとは思っていません。従って、市場の反応としては、基本的には、これまでのコミットメントの強さと大きく変わるものではないと受け止められたものと思っています。』

そ、そうなのか???

『ただ、私どもとしては、今回、2%という物価安定目標を出来るだけ早期に実現することを目指して強力に金融緩和を推進していく、しかも2014 年については、資産買入れ等の基金の残高を10 兆円増やすように毎月の買入れを行っていき、それ以降は毎月の買入について期限を定めずに継続していく、という形で政策の方向感を約束しているわけです。この約束自体は、これまでの私どもの約束に比べて、やはり強いものだと私は思っています。』

本当に10兆円増えるのかどうかはその時次第(もっと増えるかもしれないし減るかもしれない)のに思いっきり「10兆円増やす」とか言って大丈夫かねと思いますが、まあ強めたという話にはなっているのですがどうも奥歯に物の挟まった言い方ですなあ。


・この質疑応答はワロタ

『(問) 少し嫌な質問かもしれませんが、大きな政策転換があると、よく海外の投資家、あるいはBOJウォッチャーの方々から、「日銀は変わったのか」という質問があります。それに対して、副総裁はどうお答えになりますか。』

『(答) 率直に言って、「変わったのか」と問われても、何の変化を意味しているのかよく分かりませんので、「変わった」とも「変わっていない」ともなかなか答え難いところです。』

ナンジャコラ。

『私どもは、今回、金融緩和について、「思い切った前進を図った」と申し上げています。このことを海外の投資家や日銀ウォッチャーの方々が、どのように評価するかは分りませんし、私自身がそれについてあれこれいう立場でもありません。ともあれ、思い切った前進を図った措置であると受け止めて頂きたいと思います。』

「思い切った前進」とは言うのですが、「チェンジ」とは言わないというのがまあこの正直者という所でありまして、講演では威勢が良かったのですが会見ではトーンダウンという所で、確かにまあ会見のヘッドラインに関しては今引用した「変わったとも変わっていないとも答え難い」というような部分が出たりして「???」という感じでしたな。

まあそれよりも今回の講演及び会見を通じて悲報としか申し上げようが無かったのは、講演と会見のヘッドラインが色々と出ているのに市場が1ミリも反応して居なかったことでございまして、先々週の麿講演(決定会合後の会見では無い)以降これで2回連続2度目という事でございますが、すっかりスルーモードとなっている市場の反応残酷にも程があるぞなもしという所ではありまする。おまいら幾らなんでも無視し過ぎですぞな。


○この前の雑談の補足というか続き

先週国債発行計画絡みで国債整理基金の取り崩しによって日銀の対政府現先が減るからという話をしましたぞな。

『そして国債整理基金の残高が圧縮になりますと・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130120.htm/
営業毎旬報告(平成25年1月20日現在)

たぶんここにある売現先勘定が減る(現在の当該勘定は基本的に対政府勘定)筈なので、日銀のバランスシートガーの人がそのうち面白い事を言い出すに1万ドラクマですが、現先の期間とかが良くワカランチ会長なのでどのようなペースで減るのか存じませんが、目に見えて減ってくる頃にはこの辺の話を覚えて居ない人が多いのでオモシロ発言が期待できそうですな(^^)。』(以上1月30日の駄文より)

という話をしたら読者様からツッコミを頂きまして、政府から見ると対日銀の買現先勘定が減る分は国債償還に回る形になるのだから、その分は民間の当座預金残高の増加要因になるので、日銀のバランスシート的には中立ではないのか???という質問でありましてこれは確かにと言う事でちょっとだけ。

これ書いているあたくしもついうっかり通常の金融調節フレームで物を考えるから反射的にこういう書き方をする訳でして、上記のように瞬間的に言えば国債償還によって民間(インターバンク)の資金余剰要因になりまして、これが通常の金融調節(金利誘導をやっていて特段の量的緩和政策を実施していない時)であれば、これによって発生する資金余剰分だけインターバンク市場での資金を日銀が吸収しないといけない(吸収しないでいると量的緩和状態になり最低でも預金ファシリティー水準まで短期市場金利が低下するから金利誘導政策にならなくなる)ので、それが売りオペであれば日銀のバランスシート規模は同じですが、買いオペのエンドをロールしない形での吸収であればオペが減るのでその分だけ日銀のバランスシートは縮小します。

然るに、現在は量的緩和政策を実施しているので、これによって発生した資金余剰を特段日銀が吸収する必要は無く、したがって日銀のバランスシートは変わらないという結果になるというのが正解になります罠。ただまあその時はそうなるのですが、政府部門における両建てが解消になって民間の資金余剰が拡大すると、まあどこかで資金供給オペが減るような形になってバランスは縮小するのかなあとか漠然とは思うのでありました。ということでツッコミ頂きました読者様にこの場でお礼をm(__)m


○すっかり忘れていましたが生活意識アンケート

超今更なので(何せ1月11日ですので・・・・・)メモだけ。

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1301.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第52回)の結果
―― 2012年12月調査 ――

調査期間が『2012年11月8日(木)〜12月4日(火)』というのもあるのですが、まあこの回は残念な結果になっていまして、興味があるのは次回調査でどの程度改善するかですなという話。

以下『』つけないですけれども、アンケートのQ&A部分は上記URLからです。


・景況感悪化

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった1.6 ( 2.9 )
2 変わらない45.6 ( 50.7 )
3 悪くなった52.2 ( 46.0 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.1 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い1.4 ( 2.0 )
3 どちらとも言えない17.2 ( 20.4 )
4 どちらかと言えば、悪い51.6 ( 53.2 )
5 悪い29.6 ( 24.3 )

と言う事で足元悪化。

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる4.5 ( 4.6 )
2 変わらない57.7 ( 54.3 )
3 悪くなる37.6 ( 40.7 )

辛うじてマシなのは先行き見通しが少しだけマシになっている事、と言いましても「悪くなる」が減るという形での改善なのであまり景気が良い話でも無いのですが、一応調査機関の中盤以降は総選挙で株が為替がになっておりましたので。


・物価の方が更にアレ

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。
平均値(注1):+2.0 ( +2.7 )
中央値(注2):0.0 ( 0.0 )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は + 2 . 1 (前回調査<2012/9月実施>:+ 2 . 8 )。
(注2)回答を数値順に並べた際に中央に位置する値。

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値:+3.0 ( +3.9 )
中央値:+1.0 ( +3.0 )

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
平均値:+3.8 ( +4.4 )
中央値:+2.0 ( +3.0 )


・・・・・・・・・・ということで、どう見てもこっちの方がorzorzorzなのですが、物価の現状認識と先行き見通しが今回下がっております。前回9月調査時点でその前の6月調査時点の数値から軒並み上昇して「おー」と思ったのですが、今回また下がりまして、しかも6月時点からの時系列も説明している6ページから8ページの部分を見ると判るのですが、概ねどの数値も9月に上昇した分以上に低下してやがりまして、ダメダメ感を漂わせているのでございます。

まあこの数字に関しても次回アンケートでどの程度改善するのかを見たいですな。

・・・・・・・というメモだけですが、まあ内容は良くありません罠。





2013/02/01

お題「山口副総裁講演/2年国債入札でヒャッハー」

「FRBの金融政策は雇用を最重視していますので雇用統計に注目」とかモーサテの為替電話コメント人が仰せですが、厳密に言うとFRBは「デュアルマンデートに対するバランスアプローチ」を意識して運営して居る訳でして、その中で足元では物価の方がマンデートを満たして推移しているので雇用の方をマンデートに向かうべくというアプローチをしており、それだからこそ足元で雇用重視に見えているっつー事ですよね。だから本当は「足元での」というのを付けないとミスリードになる(失業率の低下の前に物価が上昇しだすと運営が苦しくなる)と思うぞなとか言ってると「あいつは細かい事にネチネチ五月蝿い奴」と言われますので注意しましょう(−−;)

○山口副総裁講演ネタの前に昨日のFOMC声明文関連追記雑談

でまあFRBついでで昨日のFOMC声明文ネタに追記、というか一応書いたのですが改めて書いておきますと、声明文は冒頭で「一時的要因による足もとの停滞」というのを書いておいて、中の景気判断に関しては足元の需要項目も先行きも引き上げ、という「文学的」アプローチをしていて、日銀文学もビックリの文学モードになっているという話を申し上げました(というか今回の声明文のある意味最大のサプライズはこの「文学」であります)が、この背景を考えた場合、(1)今後の財政の崖に関する不透明感があるので変に楽観するのは時期尚早と考えている、(2)足元の金融市場がリスクオンヒャッハー状態になっているので、「見せ方」としてあまり景気強気のものを出すとヒャッハーに絶好の燃料投下になって長期金利が上にぶち抜けてしまうリスクがあってそれはFRBのシナリオを崩すリスクがあると考えている(=つまりFRBは長期金利が景気に対する強気の行き過ぎで上昇する事は牽制したい)、の2点が考えられる(合わせ技かも知れんが)なあと思うのでありまする。

いずれにせよ今年は、というか今年もと申しますか、年前半に景気回復リスクオンヒャッハー状態になった場合、オープンエンド方式の資産買入によって資産買入に関する期間の思惑が振れやすくなっている関係上、長期債市場はよりヒャッハー度が高まるリスクがあるのでそこをどうマネージする(またはできなくなる)のかというのがムツカシヤとなるんじゃないですかねえ逆さ絵一派の方は。


○色々なキーワードを散りばめてやる気を見せる山口副総裁講演

でまあ昨日はあまり市場が反応していない(ように見える)のが残念だが山口副総裁の講演テキストは色々と練り込んでいておりましたぞな、と言う事でネタは来た順に消化の法則で山口副総裁講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130131a.pdf
デフレ脱却への道と金融緩和の思い切った前進
── 長崎県金融経済懇談会における挨拶 ──

ということで、題名からして配慮の跡が窺える訳ですが(^^)。


・景気の見立ては景気が良い(^^)

しかしまあ物は言いようですなあと思う訳で、こちらの講演に関するベンダーヘッドラインをみておりますと、景気の見立てが景気が良い点についてのヘッドラインよりも題名に見られるような「キーワード」の部分がポンポン飛び出すの巻という動きになっておりますので、景気の方で結構な強気なものを出していても別に「出口ガー」みたいにならないのがチャーミング、というか見せ方と言うのはこういう風にすれば良い訳ですな。どこぞの麿様におかれましては緩和をそんなにバンバン拡大するのは不本意でおじゃるみたいな香りを漂わるので、そういう人が景気の明るい見通しを話すと更に追加緩和する気がねえなという印象になってしまう訳で、まあ物は言いようということでありまする。

『2.海外経済の動向:先行き明るさを増していく海外景気』というのがまずキタコレな訳でございますが、現状と先行きの部分を引用しますぞな。

『まず、海外経済の動きからみていくこととします。昨年の動きを振り返りますと、夏場にかけて欧州の債務問題が深刻化しました。その悪影響は、貿易取引の減少や企業マインドの悪化を通じて世界的に拡がり、夏場以降、多くの国で景気減速の度合いが強まりました。海外経済は、現在もなお減速した状態にありますが、このところ、米国や中国を中心に明るい動きもみられ始めています。』

と言う風に書いていますが、個別地域ごとのパートを見るとここの文章よりももうちょっと明るめになっているのがチャーミング。

地域別の先行き見通しですけれども以下の通りです。

『欧州景気の先行きについては、緊縮的な財政運営が続くこともあって、当面は、緩やかな後退が続くと考えていますが、いずれは輸出の持ち直しを起点として、ドイツなどコア国を中心に後退局面を脱していくとみています。』

『今後については、「財政の崖」がぎりぎりのところで一応回避されたことで、企業マインドは改善し、設備投資も回復が見込まれます。また、個人消費や住宅投資も、緩和的な金融環境にも支えられて、持ち直しを続けていく可能性が高いとみています。こうした結果、米国経済は先行きも緩やかな回復経路を辿り、世界経済の牽引役となっていくことが期待されるところです。』

『長い目でみますと、中国経済は、高度成長から安定成長への移行期にあり、円滑な移行が行われるかどうか、懸念がない訳ではありません。ただ、ここ暫くということで言えば、財政・金融両面からの政策効果に加え、堅調な内需に支えられた在庫調整の進捗、輸出の持ち直しも予想されるため、徐々に回復傾向がはっきりしてくるものとみています。』

『NIEs、ASEAN経済は、現状、欧州向けなどの輸出が停滞していることもあって、持ち直しの動きが緩やかとなっています。しかしながら、先行きについては、米国や中国にリードされるかたちで世界経済が明るさを増していけば、輸出が次第に持ち直し、回復テンポを速めていく可能性が高いとみられます。』

と、地域別の話をすると何気に景気が良いのですが、締めの部分ではこういう記述で。

『以上をまとめますと、先行きの海外経済は、米国と中国を牽引役としながら次第に減速した状態から脱し、緩やかな回復に転じていくとみられます。もちろん、欧州債務問題の帰趨については、なお目が離せません。米国経済も、財政問題を乗り越えながらその回復を継続できるかどうか予断を許しません。中国経済にしても、様々な問題を抱えているだけに、回復経路に円滑に移行していくことができるかどうか、懸念がない訳ではありません。こういった不確実性の存在には引き続き十分な注意が必要だと思っています。』

ということで纏めの所ではリスク警戒みたいな言い方をしていまして、頭と最後の部分ではしっかり締めた言い方をしながら途中では割と威勢の良い話をする、というこの構成は中々よろしゅおすなあと思うのでありました(^^)。

でまあ日本経済に関しても先行きの所は割と威勢が良い。

『先行きのわが国経済については、冒頭述べましたように、当面弱めの推移を続けたあと、国内需要が底堅く推移し、海外経済が次第に明るさを増していくにつれ、年央頃にかけて緩やかな回復経路に復していくと予想しています。弱めの動きが続いたあとの回復であり、しかもそのペースもゆっくりしたものであるため、企業の皆様にとってはなかなか景気回復を実感できないかもしれません。しかし、「あとで振り返ってみれば、本年前半が転換点だった」となっている可能性は十分あるとみています。』

ほほうという所ですが、ここでサービスフレーズも散りばめながら需要項目別の話を。

『先ほど申し上げたとおり、海外経済に明るい兆しがみられており、とりわけ米国経済が回復基調を辿っていることは心強い材料です。加えて、最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います。』

>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います
>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います
>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います

・・・・・・・・サービスフレーズというかまあ当然のフレーズでもあるのですが、こういうのをちゃんと散りばめておく(ちなみにこの部分ベンダーヘッドラインにも使われました)というのが重要な所でありまする。

『内需面においては、公共投資が引き続き増加傾向を辿り、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられます。設備投資は、防災・エネルギー関連の投資もあって、遠からず緩やかな増加基調に復すると見込まれます。個人消費は、エコカー補助金終了後の反動減の影響も和らいできており、基調的には底堅く推移していくものと考えています。』

と、結構威勢の良い話なのでした。


・物価に関しての話が何気にチャーミング

物価情勢の話は展望レポートの内容説明なのですが、その最後の所にチャーミングな記述が。

『私どもが、今回「物価安定の目標」として2%を掲げたのは、2014 年度には、当面の目途としてきた1%達成がこのように視野に入ってくる中で、日本銀行として次の目標を明らかにしていく必要があると判断したからです。この辺りの考え方は、後ほど改めてお話させて頂きます。』

・・・・・・・・・・おいおい大きく出たなという所ですが、まあ2%目標にしたという話をするのにこういう風に言うと随分とこれまた威勢の良いイメージになる訳でございまして、麿様におかれましてもこの位の威勢の良さを出して頂ければもうちょっと展開が違っていたんじゃネーノとか思うのでありますが。


・「思い切った前進」ですかそうですか

次の小見出しが『4.今回の政策決定の内容とその考え方:金融緩和の思い切った前進』ですけれども、そこにありますように、というか題の所にもありましたが、「思い切った前進」というのを何度も出しまして、威勢の良さを見せるという見せ方をしておりますな。

『冒頭申し上げた通り、日本銀行は、先週の金融政策決定会合において、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向け、金融緩和を思い切って前進させることとしました。』



・物価目標2%(日銀表現として正しいのは「物価安定の目標」ですよ)の説明部分が色々とお洒落

んでまあ物価安定の目標導入の説明ですが、デフレの要因に構造的な要因がありまして云々といういつもの話を入れながらも、話の展開として「でも行けるんです!」という風に持って行くのが良い見せ方でございます。

『逆に言えば、こうした構造を転換していくことができれば、デフレから脱却することも可能になるということです。要は、日本経済の柔軟性や適応力を回復させ、その潜在力を引き出し、そのことによって、企業や家計の成長期待を高めることが必要だということです。』

で、この次がベンダーヘッドラインにも使われていた部分であります。

『私は、今がデフレからの脱却に向けての「好機」だと思っています。』

・・・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

『日本経済に大きな影響を与える、米国経済や中国経済が回復経路に復する見通しが出てきました。こうした中で、昨年来低迷を続けてきたわが国経済も先ほど述べたように、本年半ばにかけて緩やかな回復経路に復帰していく可能性が高まってきています。また、私どもの経済・物価見通しでも、2014 年度には消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%に達する可能性が拓けつつあります。』

キタコレ。

『このような変化のもとで、実際に物価上昇率が高まっていけば、人々の予想物価上昇率も上昇していくと考えられます。この「好機」を逃すべきではないと思います。』

まー良く考えると理屈と言うよりは根性論の世界になっているのですけれども、根性論であってもこういう説明でやる気元気井脇モードで見せると受ける印象がどこぞの麿と大違いですの。

『以上のように考えまして、これまで「当面1%を目指す」としてきた私どもの方針を一段と推し進め、「物価安定の目標」として2%とすることとしました。日本銀行は、そのもとで金融緩和を強力に推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指します。』

ということでして、つまりこの前決定会合後に麿が「基本的な考え方は変わりません」とか抜かして市場がズコーとずっこけて円高に振れたあの麿節はナンダッタンダという話になる訳ですが、政策企画課長の翌日の説明でも2%はピンポイントという趣旨の発言があったと報じられていますし、今回も「方針を一段と推し進め」という風に副総裁が言ってますから、あれは麿の個人的見解(というか麿イズムというか)の披瀝でしたんですね判りますという理解で良いんでしょうな。マッタクモウ。

『こうした日本銀行の金融政策運営方針について、いわゆる「インフレ・ターゲット」を採用したということか、といったご質問を頂くこともあります。この点、実際に「インフレ・ターゲット」を採用している英国などの金融政策運営をみると、物価だけでなく、実体経済や資産価格などにも目配りした柔軟な金融政策運営が行われています。今般の日本銀行の「物価安定の目標」も、現在、多くの中央銀行が導入しているものと同様であり、一般的には「柔軟なインフレーション・ターゲティング」と呼ばれています。』

とまあここまでは従来の説明と同じ、というかこれ以外の説明は無いのですが・・・・・・・

『日本銀行は、こうした金融政策の枠組みのもとで、今後とも経済・物価の情勢をしっかり点検しながら、従来にも増して、果断な政策対応を講じていく考えです。』

というフレーズを一発入れるだけで印象が違う訳で、果断な政策対応云々の部分もヘッドラインにしっかり使われていまして、まあこの辺見せ方を工夫していますなという所です。


・オープンエンドの説明部分から少々

まあこちらからは少々。

『今回、期限を定めず毎月一定額の金融資産の買入額を決めて買入れを行うことにしたのは、その方が、新たに導入した「物価安定の目標」の実現を目指して資産買入れを継続的に行っていく、という政策の構えを明確に示すことができると判断したためです。』

はあそうですかという所ですが。

『こうした新しい資産買入れ方式について、「せっかく導入するなら来年初からではなく、なぜ今すぐ始めないのか」といったご質問を頂くことがあります。』

という所の答えをどう用意するのかは興味があったので以下引用。

『この点端的な答えとしては、今年は既に50 兆円を上回る規模の大量の資金供給を行うこととしているからです。』

まあそうやね。以下の部分はご案内の方にはご案内でしょうが一応メモ代わりに引用。

『少し詳しくご説明しますと、「資産買入等の基金」の残高は、現在約65 兆円ですが、既に決定している買入れを行うことによって、本年末までに40 兆円弱増加します。また、日本銀行は、昨年の10 月に、金融機関が貸出を増やせば、その純増額全額をバックファイナンスする枠組みとして、「貸出増加を支援するための資金供給」を導入しました。この制度の趣旨については、後ほど改めてお話させて頂きますが、資金供給額は、最近の貸出実績を前提にしますと、概ね1年間で15 兆円を上回る規模となることが見込まれます。これらを合わせますと、日本銀行は、この1年余りの間に50 兆円超という巨額の資金供給を新たに行うこととなります。』

『来年初からは、これに加えて、さらに毎月13 兆円程度の金融資産の買入れを行うことにしたということです。』

ふーん。

『このように日本銀行は切れ目なく強力に金融緩和を推し進めていくこととしており、こうした大規模な資金供給を来年以降も継続していくことを今の段階から約束することで、緩和的な金融環境を一段と緩和的なものにしていきたいと判断した訳です。』

>来年以降も継続していくことを今の段階から約束する

ほうほうそうですか。

『「金融緩和の思い切った前進」としては、10 兆円程度の基金の増額では不十分ではないか、というご指摘もあります。』

足りないのではという話ですな。

『この点は、今ほど述べたように今年から来年以降も切れ目なく金融緩和を続けていくという日本銀行の強い姿勢との関係で評価して頂きたいと思っています。「物価安定の目標」の早期実現に向けて、来年初以降も、期限を定めることなく資産買入れを行い、2014年中には残高として10 兆円程度の増加を見込み、その後も少なくともその高水準の残高は維持していくという日本銀行の約束は、相当に踏み込んだ政策姿勢であると考えています。』

だけで終わらせると言い訳じみるのですが、最後にこれを付け加えることによってそれを緩和するのがチャーミング。

『もちろん、先行きの基金の運営については、経済・物価情勢を点検しながら、必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得ると考えています。』


・政府との連携の部分でお洒落な記載があってアタクシ歓喜(^^)

『(政府と日本銀行の政策連携の強化)』という所ですが、その最後の所では中央銀行の財政ファイナンス懸念の部分について釘をさしておりますな。

『今回の共同声明において、政府は、財政運営に関して、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」と明確に述べています。このことは、日本銀行が、強力な金融緩和を進めていくうえで、重要なポイントであると考えています。』

でまあそれはそれとしてあたくしが歓喜したのはもちょっと前のこの部分。

『先ほどもご説明したように、日本経済が遠からず緩やかな回復経路に復するとともに、2014 年度中には消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%に達する可能性がみえてきただけに、こうした「好機」を捉えて、政府と日本銀行が連携して、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために気合を揃えて取り組んでいくことの意義はきわめて大きいと考えました。』

>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく

日銀に足りないのは気合とハッタリ(とインチキ成分)という事を先般来申し上げていた、というか別にあたくしだけじゃなくてこれは真面目に金融政策動向見てると普通に誰でも思う事ではあるのですけれども、まあここで「気合」という単語があったのにはアタクシ歓喜でございましたぞな(^^)。


ということで、総じて今回の講演は「見せ方の工夫」が出来ていて「気合」を見せるような形にしつつもまあ景気見通しはちゃっかり強くしてやがる、とまあそういう内容でございました。



○市場メモ雑談

・2年入札でヒャッハー

昨日の2年国債入札の落札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul070.htm

(3)募入最低価格 100円05銭0厘 (募入最高利回り)(0.074%)
(4)募入最低価格における案分比率 21.7671%
(5)募入平均価格 100円05銭8厘 (募入平均利回り)(0.070%)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

前場引けの新発気配が0.075/0.080でして、まあ前々日の基金国債買入オペの買入レートが0.076/0.072なので、0.07%台前半になっても良いのかもしれないのですけれども、平均0.070%と言う事はどう見ても100円06銭で札をどどーんと突っ込んだのがいるだろおいおいとか思う間もなく市場はショートカバーヒャッハー状態になって2年ゾーンの引けは軒並み0.065%になるの巻。

何せ市場推計でいわゆる不明玉が21600億円とかありまして、ほとんどの業者が絶賛空振りショート状態になってしまいまして、こんなのショートをSCレポでキャリーしてても(ちなみに発行日来月15日なので暫くは買い手のファンディングコスト負担も売り手のレポコスト負担も無いのですが)コストばっかり掛かる話な上に、うかうかしていると日銀の基金国債買入に突っ込まれて流動玉自体が減ってしまうという恐れもありますからそらまあカバーします罠という事で。

何がヒャッハーと申しましても、付利下げ思惑ガーとか言ってたMPM前よりも2年カレントの金利水準が低下していることで、いやまあ確かにこれから基金国債買入の積み上げが進むのですけれども、何もあーた買入の積み上げが進みまくった最終形を今からやってどうしますねんという所で、何がどうなっているのやらという所ですがちょっと大量購入した人どういうロジックで買ったのか教えてジェネラルって絶対教えてくれないでしょうが、つーか誰が買うのよ、とゆーおそロシアな入札ではございました。

んでまあ昨日は3MTBの入札もあったのですが。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20130131.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘5毛 (募入最高利回り)(0.0972%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.0816%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘8毛 (募入平均利回り)(0.0960%)

・・・・・・・ということでこちらは前週の3MTBと利回り的には平均足切りともに同じでして、どう見てもインバートです本当にありがとうございましたという流れなのですが、折角2年金利が絶賛低下したというのに別にそれをネタにして為替市場が動いたように見えない訳でして、付利下げで為替に影響云々とゆーのはちょっと話の筋としてどうなのか、とまあそういう所ですな、つーかバカスカ買えば金利はそらまあ下がる罠という所で、付利あっても需給を思いっきり締めれば下がりますという事でありました。


・固定金利オペェ・・・・・・・・・・

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of130131.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2013年2月4日 2013年4月4日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba130131.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月4日スタート分) 6,880 6,880

ということで今週月曜に2か月ものにオペの期間を短くしたら札は入ったのですが、その後の固定金利オペは札割れが継続しております。ただまあ期落ちの方も札割れ物のロールとなっている場合もあって、日によっては札割れオペでもロールでは増額になっているケースもあるにはあるのですが、あたくしの手計算集計ベースによりますとこのオペ後の2月4日時点での固定金利オペ残高は23.5兆円(計算があっていれば235858億円)と、目標の25兆円に少々足りない状態で、年末は26.8兆円あった固定金利オペ残は現象中なのでありますた。

でまあオペ残減ってますけど当座預金残高は相変わらず貫録の40兆円超え(今日は今の所44兆円になる予定)で推移しておりまして、今後国債買入が増えると当座預金残高は更に拡大することが予想されますので、基金固定金利オペへのニーズが減るという流れが想定されます。まあ固定オペが減るとその分当座預金残高が落ちるのでニーズは発生するかもしれませんが、固定オペ自体も目標額設定してやがりますので、これを大きく割るという訳にも行かず、そうなると短国買入が更に増えて・・・・・という事になって更に固定オペのニーズが落ちるというお洒落なスパイラルの悪寒がががが。


○あら時間が無い

時間が無いという恐ろしい事に気が付いたので今日のネタがここで終了しちゃうのですが、宿題備忘用にちょっとだけメモメモ。岩田規久男先生の「当座預金残高77兆円で2%達成」という怪理論なんですけどね。

えーっとですね、何故かネット版のブルームバーグで検索しても記事が出てこないのが困るのですけれども、30日のニュース(最終版の配信時間が16時23分でした)で岩田先生が「物価目標2%達成に77兆円供給を」というような話をしていたというインタビュー記事があったのですな。

ニュースが何せ引っ張ってこれないのでアレなのですが、先生77兆円の当座預金残高だったら年内にたぶん達成するんじゃないかと思うのですけれども。昨年12月末の当座預金残高が47.2兆円でして、その時点から資産買入等の基金が36兆円増えるので77兆円とか行ってもおかしくない計算になると思うのざますが。

つーか(記事にはあるけど)77兆円の積算根拠が何か読んでもワカランチ会長ですし、何なんでしょとか思ったのですがもうちょっと当座預金残高がどうのこうのみたいなのを考えて纏めるかもしれないし纏めないかもしれません。しかし77兆円の当座預金残高に持って行くと何でインフレ(というか説明によるとインフレ期待みたいですが)が2%に上昇するのかのプロセスが頭の悪いこのあたくしにはさぱーりワカランチ会長ですの。

という話以外にも小ネタがあったような気がするのですが時間の都合で勘弁。