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2014/02/28

お題「3MTBがまた4bp割れ/石田審議委員講演ネタ続きと会見/佐藤審議委員講演」

みなさまの受信料で運営される公共放送の会長職が堂々のハラスメント直球勝負をするのを放置というのはさすがに如何なものかと思うが本人の覚悟がワロエル。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140227-00000855-fnn-bus_all
NHK・籾井会長、辞表要求は「それくらいの覚悟でとの思い」
フジテレビ系(FNN) 2月27日(木)14時50分配信

『また、「会長も覚悟を示すために、経営委員長に日付のない辞表を出してはどうか」との質問に対して、籾井会長は「引き続き、会長としての責務を全うしたい」と述べるにとどめた。』(上記URLより)

#ま、公共放送様におかれましては色々な効果で最近すっかり報道のトーンが大本(銃声)

ちなみに久々にhamachan先生の所ですが、イタリアではこういう事案があったとのこと。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-68de.html
イタリアの退職願付き採用に規制(再録)

○市場メモ

・3MTBェ・・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140227.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘0毛 (募入最高利回り) (0.0401%)
(4)募入最低価格における案分比率 25.8790%
(5)募入平均価格 99円99銭0厘3毛 (募入平均利回り) (0.0389%)

ということで平均落札堂々の4bp割れとなりまして、もう何だかねという感じでございますけれども、何せ需給がやたらと良いので致し方なしという所っすけど、この調子で逝って貸出支援オペが伸びなかった場合に恐怖の短国レートマイナスという話がまたぞろ出てくるわなとか、そもそもそういう状況でMB残高を積み上げる意味は何なんでしょとか、短国がマイナスに突っ込む位なら長期国債の買入を増やせばいいんじゃネーノ的な思惑とか、まあ色々とオモシロ事案が発生する流れも想定される訳で。

まー3月は国債償還要因もあるので資金需給的には短国買入をバカスカ実施しなくても良い筈なのですが、一方で期末要因の買いニーズがどの位あるのかというバランスになるのですかよく分かりませんという所で。

なお2年国債入札も堅調の巻で引値は7bpになっておりましたな。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2013/resul083.htm
(3)募入最低価格 100円05銭0厘 (募入最高利回り)(0.074%)
(4)募入最低価格における案分比率 49.7513%
(5)募入平均価格 100円05銭2厘 (募入平均利回り)(0.073%)

というメモ。

#なお超長期は輪番200億円減額の影響かどうか知らんが後ろの方が弱かったみたいですな


○石田審議委員講演ネタと会見ネタである

まずは講演ネタの続きですけど。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140226a1.pdf

昨日は前半の金融政策に関するシマウマ説明部分に気を取られてしまい、改めて石田審議委員の講演を見たら最後の物価に関する説明部分が色々な意味でインプリケーションがあるという事に改めて気が付いた(鈍くてスイマセン)のでその辺りから。

・物価安定の定義に関して今後大きな論点になりそうという話

最後の『2.「物価安定の目標」と物価指数』の所ですが、ここでの説明が講演の最初の所にあった「白日銀時代の共同文書」にある本来の考え方に則した話になっているのですよね。

『日本銀行では、この「物価安定の目標」に対応する物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーした指標が基本と考えており、消費者物価指数の総合指数が重要であると考えています。ただし、消費者物価の総合指数は、一部品目の一時的な変動の影響を受けることから、変動の激しい生鮮食品を除いた総合指数を用いて、基調的な動きを把握するようにしています。』

まあ総合が重要なのはこれ世界的にみて普通の話でございます。ちなみにFRBのロンガーランゴールの2%というのもPCE総合物価上昇率ですからね。

『また、消費者物価の基調的な動きを把握するため、「除く食料・エネルギー」指数や「ラスパイレス連鎖指数(除く生鮮食品)」、「10%刈込平均値」なども参考指標として点検しています。その他の物価指数としては、家計の消費支出に関する統計などにおいて、名目値を実質化する際に「除く持家の帰属家賃」指数が使われていますが、これは持家の家賃支払いは実際に発生しないことを踏まえ、現実の家計の消費支出に最も対応する物価指数として、採用されていると考えられます。』

という物価統計の話をしていまして・・・・・・・・・・

『それぞれの物価指数は、やや長い目でみれば総合指数と同じ動きになると考えられますが、その時々では一時的な変動要因により異なった動きとなることがあります。例えば、昨年12 月の前年比伸び率をみると、「除く生鮮食品」指数と「除く食料・エネルギー」指数は、先ほど述べたようにそれぞれ+1.3%、+0.7%ですが、「総合指数」は+1.6%、「ラスパイレス連鎖指数(除く生鮮食品)」は+1.2%、「10%刈込平均値」は+0.8%、「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています(図表18)。』

>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています
>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています
>「除く持家の帰属家賃」指数は+2.0%となっています

で、その「除く持家の帰属家賃」は先ほどの所にありましたように「現実の家計の消費支出に最も対応する物価指数」という話をしておりますので、つまり現実の家計の消費支出として見た場合の物価上昇率は既に2%に達していますという話をしている訳でして、しらっと結構重要な指摘をしていますなという話をうっかりスルーしておりましたすいませんすいません。

つまりですね、これって物価目標の建付けに関する論点に関わる話で、そもそも物価目標の達成は達成すりゃ良いってもんじゃなくて、国民厚生の向上の為のツールとしての物価安定目標であって、何でもいいからとにかく2%にすりゃ良いもんじゃねえだろという話に繋がる説明でありまして、まあそら正論なのですが黒日銀というか置物理論ではその辺りを軽視しているような感じ(まあ重視したら従来の白日銀のままで異次元じゃないから期待の転換できませんからねえ)でしたので、この辺りからも風呂敷畳みモードというのが垣間見えてくるという所ですな。

まあこの辺の説明って今までの日銀の説明では突っ込んでいなかった話なので、石田さんの主張という所なのかも知れませんが、これは中々重要な論点キタコレという話なのでネタにした次第です。

でまあここの部分の最後は昨日引用したようにこうなっています。

『私どもとしては、これら様々な物価指標を幅広く点検していくことを通じて、物価情勢について総合的に判断していく必要があると考えています。そうして「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、これを安定的に持続させていくことにより、日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という理念を果たしていきたいと考えています。』

というのだけ引用して黒日銀の色落ち現象が見られますなあとか申し上げたような気もしますが、実は前段の方も併せて読むとそもそもの物価上昇に関する論点を呈示している重要な所でございましたです。


・会見では割と穏当な話をしつつも・・・・・・・・

講演で論点を示しながら会見では割と穏当に説明するというのは中々斬新なパターンかも。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402e.pdf

この質疑応答が一番典型的だと思うの。

『(問) 石田委員は、昨年、ボードとしての決定事項に関しては尊重するべきだが、一人の審議委員として自らの考えを主張すべきだと話されていましたが、本日の講演の中でも、先行きの景気に関し、消費税率の引き上げ、海外経済・輸出動向、雇用・所得動向の3つを懸念材料として挙げられていました。現状として、景気・物価の上振れリスクと下振れリスクをみた場合、バランスしているのか、それとも下振れリスクの方が大きいのか、また下振れリスクが顕在化するような場合の政策対応について教えて下さい。』

『(答) 私どもがリスクとして挙げているものは、どちらかというと下振れリスクが多いわけですが、リスクは顕現化しないと全く何にもならないものです。要するに、若干心配している程度の場合と、本当にリスクとして真剣に考えなければならない場合とがあります。今の段階で、私どもが展望レポートで示している経路について、真剣に下振れを心配しているかというと、私はそうでないと思います。ただ、考えられるリスクを挙げたうえで、それについては慎重に着実に注意を怠りなくみていこうという意味です。』

『本日の懇談会でも3つ留意点を挙げましたが、必ずしも心配しているということではなく、場合によっては足を引っ張る可能性があるため、注意してみていくとのニュアンスで申し上げたつもりです。』

うーむこの微妙な表現という所ですが、会見での説明は割と日銀の中心的な見解に沿った話をするというのもほほーという感じではあります。


でまあ輸出の件については色々とお話をしているので引用。

『(答) 懇談会でも申し上げましたが、輸出については、足許やや勢いを欠いた状況であるのは確かだと思います。これについては、循環的・構造的に色々と議論があるところですが、基本的には海外経済が回復するにつれて伸びていくとの展望レポートのシナリオは崩れていないとみています。そのうえで個人的には色々な要因があると考えています。』

ということで説明。

『一つには、今回の海外経済の回復過程で設備投資が非常に弱く──設備投資がなぜ出てこないのかということは欧米でよく言われていますが──、お金が貯まっている割には資本投資をしないということです。それが、ある意味で日本のお家芸である資本財・その他部品の輸出が伸びない理由かもしれません。もう一つは、世界経済が回復しつつあるとは言え、日本の主要マーケットであるASEAN等の景気が今一つであることも、輸出が今一つ伸びない理由かもしれません。そのほかにも、国内需要が強いことから、一部業種で国内向けを優先している動き、すなわち本来は輸出しているものについて国内に回しているということがあるのかもしれません。』

『さらには輸出物価です。数量が伸びないと言われていますが、輸出物価の変動幅は円相場の変動幅に比べかなり小さいのではないかとみています。例えば、ブンデスバンクの論文にも紹介されていましたが、米国の対日輸入価格の変化をみると、為替相場が大きく円安に振れた割には、日本からの輸入価格はあまり下がっていません。一部の企業では、マージン確保を第一にして、数量確保を第二にしている場合があるのではないかとも思います。すなわち、円相場要因をドルベースの価格引き下げに利用していないのではないかということだと思います。そうした傾向があることから、所謂Jカーブ効果がなかなか出にくい環境にあるのではないかという気がしています。』

これ確か前回の円安局面でもそういう傾向があって、ただその時は海外経済が事後的に見たら信用バブルでヒャッハーだったのでそっちの効果で輸出数量が伸びたという話でしたよね。

『そうであれば、循環要因として、海外の景気が良くなり、それに均霑してASEANも回復してくること、あるいは海外の設備投資も盛り上がってくること、が求められます。』

ですな。

『また、日本国内は駆け込みの動きもあって内需が強いわけですが、この強さが弱くなったときに、輸出ドライブがかかってくることも考えられます。それらを勘案すると、特に1月の指標については、内外ともに季節要因もありますので、それをもって基調変化とみるのは難しいと思っております。ただ、弱いのは事実だと認識しています。』

という所ですが、金融政策運営の論点という意味ではシマウマ化の兆候はこんな所にもございます。

『(問) 物価についてですが、今後半年程度は1%台前半で推移を続けて、その後再び上昇するという見方をしていると思われるのですが、物価が再び上昇に向かうもとで、先程3点今後の留意点を挙げられていましたが、最も重要なことは何だと考えられていますか。この半年以内に、1%台前半を下回るような物価情勢になった場合、日銀のシナリオも下振れたということになってくるのでしょうか。』

『(答) 先行きの留意点として3点申し上げましたが、何れにせよ、一番重要なのは景気全般の勢いが失われないことであり、そのために注目する要因として3つあるということです。』

期待の転換でインフレ期待が上昇してフィリップスカーブを上方シフトさせて目標達成!!!という話を前面に押し出している黒日銀的な話からすると(こっちの方が王道だと思うが)一番重要なのは持続的な景気回復という話を最初に持って行く辺りが白い訳ですよ。

『物価については、円安方向での為替要因がなくなれば、その分物価の上昇圧力が弱まるというのはその通りだと思います。もっとも、このところそれ以外の分野でも販売価格の引き上げが少しずつ受け入れられてきているようです。これから需給ギャップがさらに縮小していけば、さらに物価の底上げに作用してくると思っています。』

『短観をみると、仕入価格判断DIと販売価格判断DIの差が非常に大きく、仕入価格が上がっても販売価格が上がらない姿となっています。この点は、逆に言えば、今後販売価格が上がっていく方向への圧力が大きいというようにも考えられます。仕入価格が上がる中で、企業が様々な努力によって販売価格を上げていかなければ自らの収益が出ません。そういう企業行動がこれから続いていくと思っています。また、それによって予想物価上昇率も何がしか上がってくると思います。そうしたことがまた現実の価格設定行動や消費者の購買行動を変えていきます。こういうことでプラスの回転が効いてくるとみています。』

『1%を切った場合にどうするのか、という話ですが、先程申し上げた通り、私どもとしては絶えず情勢を判断して、上下両方向のリスクを判断して、必要とあれば調整するということですので、予め何らかの仮定に基づいて、こうなったらどうするということを議論もしておりませんし、考えてもいないということです。』

まあ後段では割といつもの黒い話をしているのですが、ただまあバックワードルッキングでのインフレ上昇期待みたいな話を持ち出さないあたりは白い話も微妙に混在という事で。



○佐藤審議委員講演:金融政策の話よりも国債決済の話を読むべし

めんどいので日本語訳の方で勘弁。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140227a1.pdf
グローバルな日本国債の有効活用に向けて ―国債の決済インフラ改善に向けた最近の取り組み―
国際銀行協会における講演の邦訳

英文みたけりゃこちらへ
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140227a1.pdf


・政策委員が国債決済に関する話をこれだけ延々とするのは中々無かったですな

ベンダーのニュースヘッドラインとかでは最後の方におまけのように入っている部分の金融政策に関する話をニュースとして打っていましたが、この講演どう見ても重要なのはお題の方の部分でございまして、これは詳しい話なのでおまいら読むべしという所だと思います。


で、最初が決済の進歩に関する話(日銀ネットでの決済という話から時点決済からのRTGS化とか5、10日決済(なお大昔は10日毎決済)からローリング決済とかの話も含めて)『3.国債決済の安全性の向上に向けた取り組み』の所から。

『もっとも、この金融危機の経験を通じて、より強固な決済システムを構築する観点からの課題も少なからず確認されており、国債決済の安全性強化に向けた努力は現在も続いている。そのうち大きな取り組み例を2つ挙げると、1つは、国債取引の約定から実際の決済までの期間(国債決済期間)の短縮化であり、もう1つは清算機関の利用促進とその前提としての清算機関の機能強化である。』

ということで国債決済期間の短縮化とクリアリングの話をしていますので少々。


・国債決済期間の短縮化に関してはT+1に拘る意味は正直良く判らん

『(国債取引の決済期間の短縮化)』という所から。

『まず、国債決済期間についてお話したい(図表2)。国債決済期間の短縮化は1990 年代後半以降、証券決済制度改革の主要課題のひとつとされてきた。取引の約定後、実際に証券決済が行われるまでの期間が長いと、未決済残高が積み上がり、決済リスクが増大する。実際、2008 年の危機発生時には、多額のフェイルが発生し、破綻金融機関を相手方とする取引の解消と再構築に時間を要する、といった事態が生じた。これを契機に、市場関係者の間では、決済期間を短縮する重要性があらためて認識され、日本証券業協会の下に設けられたワーキング・グループにおいて、決済期間を短縮する上での課題が整理・検討され、その結果、2012 年4 月には、国債の決済期間の短縮化(T+2 化)が実現したところである。』

さいです。

『現在は、決済期間のさらなる短縮化(T+1 化)を2017 年以降速やかに実現することを目標として市場関係者による検討が進められている。これを実現するために必要となる取引慣行の見直しや、担保管理のための市場インフラの整備などが当面のテーマとなっている。決済期間の短縮化には、決済リスクの削減効果に加え、金融資産の換金処分をよりしやすくすることで市場の流動性が高まる効果等も期待され、日本銀行としてもこうした取り組みを支援している。』

ということなのですが、そもそも決済リスクの削減という意味では後で出てくるクリアリングの利用促進によってもリスクは削減できますし、大体からしてレバレッジ規制とか流動性規制とかその他のミクロプルーデンスの部分でも規制が強化されるという方向になっている中で、それらが無くてかなりのレッセフェール状態だった金融市場の時代に見られた問題意識をそのまま持ち込んで改善しないといけないというのもどうなんでしょうかねと思います。

と申しますのは、アウトライトT+2決済とT+1決済の間には事務処理という面での大きな壁があって、アウトライトT+1なら資金繰りと証券在庫繰りがT+0になる訳で、リアルタイムでの在庫や資金繰り管理が必要となった場合にそれなりに投資が必要になりますがなという話だったり、資金繰りバッファーがより必要になる(と思うのだが)ので資金負担高まりますわなという話なのですが、資金負担の方は今のご時世ゼロコストみたいなもんとしましても、ご案内のようにこのスーパー低金利で必要な設備投資をする金はどこにも無い訳で、決済リスクの削減が主な理由であるとは思うのですが、そのリスク削減と業界全体として掛かる投資負担とか事務負担的に間尺にあうものなのかという気がします。

それと、只でなくさえ現物債の流動性ガーという話をしている昨今の状況下で、レポをT+0にする事によって更にSCレポ取引にストレスを掛けると現物国債の流動性の更なる低下に繋がるリスクもあると思いますので、それって日銀の出口政策や国債管理政策上もどうなのかねとは思う次第で、まあ佐藤さんも後の方で「効率性と安全性のバランス」という話をしていますが、もしその手の話をするならせめて金利の正常化が一段落してからの方が良いんじゃネーノと思うのですよね。システム投資する原資の問題もありますし、どうせ金利正常化のプロセスのどこかで国債市場にストレスが掛かるのですから、そこでストレスを更に強めるリスクを高めるのもどうかという気がするんですが。

#などと書くと保守反動と言われる訳ですが(−−;

まあ欧州は相変わらず決済までのお時間ありますし、別に米国の決済時間が短いから合わせようとせんでもええんちゃうのバランス的にはこの位が丁度良いと思うのだが、とは思うのですけどね。


・クリアリング機関に関して

『(国債取引における清算機関の利用促進、機能強化)』という所から。

『続いて、国債市場改革の2つ目の例として、国債取引における清算機関の利用促進とその機能強化についてお話したい(図表3)。国債店頭取引の清算機関である日本国債清算機関(JGBCC<現JSCC>)は、国債店頭取引の売り手と買い手の間に入り、取引にかかる債権・債務を引き受け、決済の履行を保証する仕組みを備えている。リーマン・ブラザーズ破綻後の国債市場においては、こうした清算の仕組みも寄与し、わが国では、決済面での混乱が金融システムに波及する事態は回避することができた。金融危機においてJGBCC がリスク拡大を防止する上で果たした役割を踏まえ、国債取引における清算機関の利用促進に向けた取り組みが進められており、2014 年前半を目途に、国債レポ市場における主要な資金の出し手である信託銀行が運用有価証券信託(いわゆるレポ信託)でのJSCC への参加を予定している。』

ほほうという所ですが、他人勘定の場合顧客ごとに取引が分別されていないといざフェイルだのバイインだのという事になった時に色々と面倒な気がするんだが、オブリゲーションネッティングされた後の取引がフェイルした場合ってどういう扱いになるのかは不勉強につきそのうち勉強したいとは思いますがどうするんでしょ。

『このようにJSCC の利用拡大が図られるのと合わせて、JSCC では、金融危機を通じて明らかとなった課題も踏まえつつ、取引規模に見合う損失補填財源や流動性調達体制の確保、参加者破綻時の対応力の強化などに向けた各種の取り組みを行っている。こうした取り組みは、国債決済のインフラを高度化するものである。日本銀行は、日々のオーバーサイトを通じて、こうしたJSCC の取り組みを後押ししている。』

まあリーマン破綻の場合はJGBCC経由の決済まで当初混乱してエライコッチャでしたが、あれは破綻法制の建付けの方の問題の方が大きくて、リーマンの未決済取引の扱いとかリーマンが媒介した取引の扱いとかをどうするのかで数日混乱していたのが問題でしたからねえと思うのですが記憶が既に怪しい(汗)。


・クロスボーダー決済に関する話も面白いですよ

『4.国債決済の効率性の向上に向けた取り組み』という所なのですが、主にクロスボーダーの話をしていまして、講演のお題に関する話になっています。

『(クロスボーダー決済の改善)』からですがまあここは鑑賞するだけです(汗)。

『決済システムの効率性を改善する際の一つのポイントは、国境を跨ぐ取引の決済、即ちクロスボーダー決済の改善にある。例えば、アジアを中心に日本の企業の海外進出が継続する中で、そうした企業によるクロスボーダーの資金決済ニーズが増大を続けている(図表4、5)。こうした動きと併せて、本邦金融機関の海外向け貸出が増加しており、国内の豊富な円建て資産も有効活用するなどして、安定的に外貨を調達するニーズが増大している。また、非居住者による日本国債の投資が増加する中で、日本国債を対象としたカストディ・サービスを海外顧客に展開する余地が拡大している。さらに、店頭デリバティブ取引等に対する国際的な規制が導入される中で、市場関係者の間では、日本国債を含め、優良な担保資産を機動的に移動可能とする市場インフラの重要性がより意識されている。』

ふむふむ。

『このような外部環境の大きな流れに適応可能なわが国決済インフラの将来の姿を要約すれば、「海外を含めいつでもどこでも日本国債や日本円を相手方にデリバリーできる環境を用意すること(日本円と日本国債のユビキタス化)」だと考えられる。』

ほう。

『優良な金融資産である日本国債の使い勝手の良さが向上することは、わが国の金融機関に止まらず、国際金融市場に広くメリットをもたらす。現状、日本国債の発行残高は米国債に迫る規模となっているにもかかわらず、国際金融市場では、米国債が担保資産として遥かに幅広く利用されている。この点をポジティブに捉えるならば、グローバルに日本国債が有効活用される余地が大きく残されていると言える。』

なるほど。

『広く目を転じると、こうした決済システムの効率性や利便性の向上、そうした中でのクロスボーダー決済の改善に向けた動きは既に始まっている。例えば、ASEAN+3 では、市場関係者および当局・中央銀行により、域内のクロスボーダー証券決済を改善し、域内証券投資を促進するための取り組みが進んでいる。また、欧州においても、様々な通貨建ての証券を取り扱う国際的な証券決済システムが、担保資産となる証券を世界中で動かすための担保管理サービスを強化しようとしている。わが国では、先ほどもふれたとおり、国債の決済期間の短縮化の実現に向けて、担保管理のための市場インフラの整備が検討されているが、これが実現すれば将来的に日本国債のクロスボーダー決済の改善に活用されていくものと考えている。』

先ほどの所で証券決済のT+1に悪態つきましたが、要はクリアリング機関だけではなく、いわゆるカストディ機関がより多くの取引を集約することによって、決済機関に直接ぶら下がっている参加者が膨大という日本の決済システムの状況が変化することによって証券決済に関しても期間短縮した時のストレスは軽減されると思うのですが、何せこのスーパーゼロ金利の中でカストディーフィーがそもそも捻出できない状況でもありまして、カストディアン専業(カストディが投資銀行もやってたらそらちょっとカストディし難い罠ということで専業がいる方が良かろうと思うのだが)というのがビジネスとして成立する金利環境になって頂かないと中々こうインフラ整備も大変ですなあと思うのですけど、とちと違う話をしましたねすいませんすいません。

『日本銀行の決済システムの改善策は、こうした内外の努力と結びついて、グローバル市場のインフラをより安全で効率的なものにして、日本さらには世界経済の発展に貢献していくことにつながると思う。』

ということで。


・新日銀ネットキタコレ

『5.新日銀ネットとその稼動時間拡大』からこれまた鑑賞。

『新日銀ネットでは、夜間・早朝における決済ニーズにも応えられるよう、稼動時間の大幅な拡大が可能なシステム基盤を構築している。日銀ネットの稼動時間拡大は、日銀ネットと海外決済システムがオーバーラップする時間帯の拡張を通じて、上述した将来のクロスボーダー決済の改善のための基礎となるものである。』

クロスボーダーの時の問題点として日本の場合時差の関係でヘルシュタットリスクを一方的に抱える立場になっちゃいますからね。

『また、新日銀ネットでは、最新の情報処理技術を採用することによって、利用者の利便性を向上させることとしている。例えば、新たな技術の採用により、異なる電文形式等の取扱いを容易とするほか、国際基準のISO20022 の採用等を通じて、内外の決済システムや金融機関との接続性の改善を図っている。こうした機能が活用されていけば、新日銀ネットは、一層のSTP(Straight-Through Processing)を目指す金融機関を支援し、将来のクロスボーダー決済の増大への対応力を高めると期待される。』

STPに関しては更に推進されていくことを願いたい物です。

『新日銀ネットの開発作業は、新システムへの移行を円滑に進める観点から、2段階に分けて進めている(図表8)。本年1 月には、第1段階開発分にあたる、金融調節(オペ)や国債の入札関連事務等について、国際銀行協会の会員金融機関を含む関係者のご協力により、予定どおり稼動を開始し、順調に稼動を続けている。皆様のご協力にあらためて感謝申し上げる。全面稼動となる第2段階では、日銀当座預金や国債の振替えなど主要な業務の移行を予定しており、2015 年秋から2016 年初までの間を目途に稼動を開始する予定である。』

ということであります。


・なお金融政策に関しては週明けにでも

ちなみに金融政策に関しては「フォワードターゲット」の話をしているのと、まあ佐藤さん従来からそういう話をしていますが、物価を無理繰り上げれば良いのではなくて問題は経済の実力を付けることだろうという石田さんの先ほどの講演や会見と通じる話をしておりまして、そういう意味では今後QQEの大風呂敷をどうするという話になった時には政策委員会の中で素敵な議論になりそうな悪寒。






2014/02/27

お題「オペ減額とな/石田審議委員講演から少々」

色々とおかしい方としか申し上げようがないですが、この方が以前副社長やら社長やらをお勤めになっていられた会社さんのレピュテーションに響かないかと懸念されますなあ(棒読み)。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20140226-00000014-jnn-bus_all
NHK会長、国会で「辞表で理事は萎縮しない」
TBS系(JNN) 2月26日(水)12時4分配信

言い訳で言ってるんじゃなくて心底思ってるとしますと、「本人は善意の積りで盛大にハラスメントをやってしまう」という研修ビデオで毎度拝見するパターンのお方なのかも知れませんな。しかし『籾井会長はこのように述べた上で日付を空欄にした辞表を提出させることは、「一般社会ではよくあることだと私は理解している」と反論しています。』(上記URLより)との事ですからこれは労働基準監督局の出番ですよ!!

#しかしまあ何でこんなのを選んでこれるのかが不思議というか何というかですわ。


○市場雑談である

・超長期の輪番を200億円減額だと??

昨日の債券市場に謎の衝撃が走った事案について。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140226.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年2月28日
国債買入(残存期間10年超) 1,800 2014年2月28日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 532 2014年2月26日 2014年2月27日

>国債買入(残存期間10年超) 1,800 2014年2月28日
>国債買入(残存期間10年超) 1,800 2014年2月28日
>国債買入(残存期間10年超) 1,800 2014年2月28日

・・・・・・・・・・・ということで従来2000億円でオファーされていた超長期の輪番ですが、突如今回のオファーで1800億円という謎の減額を行いまして、債券市場びっくりして超長期が弱くなるわ先物が下がるわ(つーてもまあ10銭少々だが)という展開となりました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130530b.pdf
2013年5月30日 日本銀行金融市場局
当面の長期国債買入れの運営について

こちらにありますように(新しいのが出ていない以上これが生きているという建付け)長期国債買入の運営については紙が出ていまして、これに対しまして以前もダマテンで「程度」のレンジを割る買入オファー運営にしてそのまま継続しているという事案(5年〜10年のオファーが4000億円になっている部分ね)がありましたが、今回もまたこの事案炸裂という事で、まあ今回だけの一発措置なら200億円一発だけという話になりますが、過去の例からすると今後のオファー額が1800億円で継続という事になると思われますので、そうしますと月額1000億円の買入減額になりますかそうですかという話になりますのでまあ一応そら反応する罠という所です。

まあ「程度」なのだからずれますよというのは判るのですが、そもそも買入大攻撃で需給が良くなっている長期ゾーンと違いまして、超長期の場合は発行も増える方向になっていて必ずしも常に需給が良いという状況でも無いので、うーんこのという所ではありまして、何でまた超長期減額するかなという所ですし、減らすなら減らすで事前にアナウンスしてから500億円位の刻みで実施するなら判るのですが、「ダマテンで200億円」というのが微調整っぽくて何でそこでそういう細かいことをするのかねと思ってしまいます次第。

とりあえず1月の買入実績的に買入銘柄の平均残存年限が8年を超えていたし、まだこっちサイドでは確認できないけれどもどうせ2月も似たようなペースで推移しているという事なんでしょうから、まあそういう背景で買入平均残存を調整したくて、そうは言っても全体の買入を思いっきり下げる訳にも行かないし、5-10年は既に「当面の長期国債買入れの運営について」の数字を500億円割っているし、紙も何も出さないで調整するなら超長期をちょっと減額するしか無いというのは判るのですが、それにしてもこれで2度目ですし、大体からしてストック重視の話を政策委員の方々がしている事でもありますので、昨年5月30日の紙について練り直した方が良いんじゃないでしょうかねえと思うのですよ。

しかしまあ何ですな、買入年限が短い方にぶれるとQQEの異次元国債買入における緩和が足りないという話になるのでイクナイですけれども、年限長い方にぶれる分には別に文句を言う人も居ないと思うのですけれども、そこでわざわざ超長期の買入を微調整して年限を合わせに行こうとする所が何というか残念感を漂わせてしまう所でして、まあ実行部隊からしたらそういう文句言われてもこっちは7年程度と言われているんだから8年超の状況を放置するわけにも行かんずらとゆー所ではあると思いますが、板挟みでナムナムという所でございますな、うんうん。


・短国入札でございますが

本日は3MTBの入札ですが、先週はMPMを受けて一旦金利が上昇した短国ちゃんは誠に惜しいことにまたまた需給が逼迫しやがりまして、4bpカツカツという所まで金利が低下しているようで入札がどうみてもヒャッハーになりそうな展開。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140226-00000541-san-bus_all
主要大手銀行、成長支援融資を拡充へ 日銀の「貸出支援基金」拡充に対応
産経新聞 2月26日(水)16時22分配信

ということで、貸出支援基金拡充対応が大手行さんで行われておりまして、この貸出が伸びて頂きまして貸出支援基金の残高が相応に伸びて頂きますと、短期のオペに掛かる負担が軽くなるのですが、冷静に考えると貸出支援基金の残高が伸びる前に固定金利オペの3か月とかのニーズが更に無くなる(大体からして貸出支援基金の方で枠を使えるのであれば固定金利オペの3か月とかもしかして1年とか実施されても共通担保の無駄遣いになる(貸出支援オペは共通担保が無いと枠があっても使えませんから)のでニーズが更に下がるでしょと思われる)と思われますので、3月期末要因と合わせてヒャッハー相場になるのではというガクブル展開も想定の上さてどうなるでしょという所ですなorzorzorz

なお、この成長支援融資の基金が既存貸出からの振替で終わってしまうというような残念な事にならないように願いたいのですが実際どうなるのやら。


○石田審議委員講演:風呂敷畳みモードへの流れに見えてしまうのは深読みのし過ぎですかそうですか

埼玉での金懇。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140226a1.pdf

・金融政策手段の説明部分の章立てに反応するアタクシ

『本日は、まず私の方から、日本銀行の金融政策と経済・物価情勢についてお話させていただき、その後、皆様から当地の実情に即したお話やご意見などを拝聴させていただきたいと思っております。』

ということで講演が始まるのですが、『U.日本銀行の金融政策』の章立てを見て反応してしまうこのアタクシでありまして・・・・・・・・・

『U.日本銀行の金融政策』なのですが、章立てがこうなっております。

『1.「物価安定の目標」の導入と政府・日本銀行の共同声明
2.量的・質的金融緩和
3.貸出支援基金
4.金融環境・金融市場の状況』

ということで、一番「おー」と思ったのは最初に「共同声明」の話が思いっきり出ている事でございまして、これはご案内の通り麿時代の最後に突っ込んだ物でして、共同声明では政府が成長戦略を実行して中長期的な財政健全化を目指すという話が思いっきり書いてあるという代物でありますが、そーゆー意味で「政府の取り組みはどうなっとるんじゃ」というメッセージを送りたいというのが伝わってくる次第でして、そっちの取り組みの方は財政をホイホイ出す話ばかりで成長戦略の方は遅々として進まないのに消費税増税の影響ガーとか言ってクレクレだけ言いやがってコノヤローというのを言外に示しているんでしょうなというのは把握しました。

でまあそういう意識はあるんでしょというのは判るのですが、それはそれとして注目したというかえーと思ったのはこの説明部分の分量でして、分量を見ますと、ざっくりと見て共同声明が2分の1ページ分程度、貸出支援基金が3分の2ページ分程度、QQEが1ページ分程度という分量になっていまして、従来金融政策の説明という中では「異次元QQEで異次元の政策をして皆さんの期待を転換してインフレ目標達成」というのを思いっ切りフレームアップしてアピールする、というのが通常のパターンでございましたので、この「3本建て構成に見える」というのはちょっと新鮮な感じがしますです。

つまりですな、黒日銀モードで従来とは異次元にQQEですよ!という話をしていた筈なのですが、共同声明の方ですと日銀の部分ってこういう文章になっているんですよね。

『2. 日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。

日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。

日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』

まあその後QQEで「2年で2%」という話にはなったのですが、元々この共同文書は麿時代(の最後)に作られたもので、この時の書きっぷりは「成長力強化によって持続可能な物価安定水準が高まっていく」という麿時代の包括緩和と成長基盤強化施策のセット販売時代の色合いを踏襲した物でありまして、「期待を転換して物価安定目標を達成」という建付けの話にはなっていない訳でして、そういう意味でこの章立てっていうのは1番と3番が白日銀時代の成長力強化で実力ベースの中立物価水準を引き上げようという話を踏襲し、2番が黒日銀での気合で期待の転換で物価水準を引き上げよういう話を踏襲しているという事で、あたかもシマウマ日銀状態になっているという章立てになっている訳ですよね。


でまあ今回は石田審議委員の講演(挨拶)ですので、石田審議委員の個人的見解を強く反映させている部分と、金懇ということで日銀政策委員会が全体として決定した事項を総意として説明させている部分というのが混在している可能性がありまして、どこからどこまでが石田審議委員の意向を強く反映しているのかがワカランチ会長なのが非常に残念なのですが、石田審議委員個人の意向として政策ロジックのシマウマ化を意識しているとしても、まあ流れとしてそういうのがあるのかもねとか思ってしまった次第でございますし、これが政策委員会の総意に近くて全般的にロジックが期待の転換で物価目標達成一本槍からの脱却への布石ならなおの事という所でしょうなと思うのです。

つまり、異次元金融緩和と言っておっぴろげて見た大風呂敷なのですが、実際問題として事態が進行する中でそろそろ風呂敷を微妙に畳んで行ってもう少し調整しようというような話なんじゃネーノと
まあ思うのでありました。

#内容は基本的にあっさり味なので長くなるのを避ける為に(実はただの手抜き)引用割愛します


・景気認識に関して

というのだけで終わりにしてしまうと章立てだけで講演ネタ終了となって余りと言えば余りですが、経済物価情勢に関する所の方が説明が多めなので(前半はあっさり味でした)そちらから少々。


新興国関連

『このように、先進国には改善の動きがみられる一方で、新興国・資源国はバラつきがみられます。まず、中国については、昨年10〜12 月の成長率は前年比7%台後半を維持しており、一頃に比べ低めではありますが安定した成長を続けています(図表11)。製造業PMIは足もとやや弱めの動きとなっていますが、基本的には政府によるコントロールの下で現状程度の安定した成長が続くものとみられます。その他の新興国・資源国については、NIEsは先進国の景気回復が波及するかたちで輸出を中心に上向きとなっている一方、ASEANはそれらを取り込む力が相対的に弱いことなどから、成長の勢いが鈍化した状態が続いています。とくに一部の国では政治情勢が不安定になっており、わが国との貿易面などへの影響が心配されます。これら新興国・資源国については、米国FRBによる資産買入れの減額が進むなかで、経常収支赤字などの構造面での脆弱性を抱える一部の国において神経質な動きがみられた局面も一時期ありましたが、このところそうした動きは落ち着いてきています(図表12)。』

ということで、まあいわゆるフラジャイルファイブとかその辺に関連する話は今の所リスクとして強く意識するほどのもんでもねえと言うお話のようですな。


駆け込み需要が予想以上なのに対して輸出がががが

『先週公表された昨年10〜12 月の実質GDPは前期比+0.3%と、4四半期連続のプラス成長となりました(図表13)。内訳をみると、個人消費や設備投資など民間需要の伸び率が7〜9月と比べて加速しています。個人消費については、冬のボーナスが増加するなど雇用・所得環境が改善するもとで、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあって耐久財などが増加しています。』

『設備投資も、これまで企業の年度計画や収益の改善傾向と比べて勢いを欠く状態が続いてきましたが、10〜12 月にようやくはっきりと増加しました。』

と、ここまではキタコレですが・・・・・・・・・

『これに対し、輸出については、先進国を中心とした海外経済の回復傾向や為替相場の動向にもかかわらず、これまでのところ勢いを欠く状態が続いています。輸入が大幅に増加したことから、純輸出としては7〜9月に引き続き大幅なマイナス寄与となりました』

で、直近に関してもこういう指摘が。

『本年入り後の動きを示す経済指標は多くありませんが、消費関連では、1月の新車登録台数が季調済前月比+6.9%とかなり強めの動きとなっており、駆け込み需要が強まっている可能性があります(図表14)。一方、1月の実質輸出は、中国向けが減少したとみられることなどから、全体で同▲2.3%の減少となりました。これら内外需要の動きを受けた1月の鉱工業生産は明後日に公表される予定ですが、先月の製造工業生産予測調査における1月の予測値は、内需向けの生産に牽引され比較的強めの伸びとなっています。』


先行き見通し

『このように、今後のわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみていますが、当面は次のような点に注目しています。』

ということで並んでいるのが、

『@消費税率引き上げの影響』、『A海外経済に関するリスクと輸出動向』、『B雇用・所得動向』となっていまして、雇用所得の話はまあ普通、消費税に関しては基本的には大きく懸念していないという話ですが、慎重に見る必要があるという話をしているのと共に、先ほどの部分にありますように足元の駆け込みが想定以上に大きい可能性を指摘しているので、その分の落ちこみの可能性という話になる訳ですから微妙に慎重ですよねという感じです。

で、海外経済と輸出に関しては、

『輸出については、4月以降の消費税率引き上げによる一時的な落ち込みをカバーし、伝統的な景気循環の起点としての役割を果たすようになることが期待されますが、足もとやや勢いを欠いた状態にあります。この原因については、海外経済の回復テンポや製造業の海外生産シフトなど循環・構造的な問題の両面で様々な論点があります。輸出については、設備投資への波及も大きいことから、期待どおり来年度以降の景気の牽引役となれるか、注目するところです。』

と割と慎重でして、全体的には中心的な見方よりやや慎重ではないかと思われます。


・まあ最後おまけに

最後の所でも物価目標達成に関してこういう話を

『私どもとしては、これら様々な物価指標を幅広く点検していくことを通じて、物価情勢について総合的に判断していく必要があると考えています。そうして「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、これを安定的に持続させていくことにより、日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という理念を果たしていきたいと考えています。』

>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」
>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」
>日銀法が定める「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」

・・・・・・・・従来はとにかくまずは期待の転換みたいな話をして、期待が転換するのに(コストプッシュでも良いから、とまでは明言しませんが)バックワードルッキングのルートもあるでよという話を盛大にしていたのにまとめにこういうのが出てくるのもちょっとトーンの変化というのを感じる所ではございますという感じっすな。

#ま、アタクシが気にし過ぎなのかもしれませんけどね








2014/02/26

お題「FOMC議事要旨ネタの続きで」

ビットコインと円天の差が未だにワカランチ会長なアタクシ・・・・・・

○FOMCネタの続きである

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140129.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140129.pdf

・今回は『Committee Policy Action』の所がちと興味深いというか何というか

『Committee Policy Action』の所なのですが、今回の特徴としてほーと思ったのは政策決定に関する何らかの論点に対する議論が行われてどうのこうのという話になっていない所でして、最初から3パラグラフ文まるまるが「声明文で示された内容に関して合意しました」というような感じの超淡々とした内容になっていまして、何かこうシャンシャン会議だったように見えてしまう所です。

最初が経済物価情勢、次が資産買入(つーかTapering)、次が金利政策(つーかフォワードガイダンス)に関する部分なのですが、例えばフォワードガイダンスに関するパラグラフを引用するとこうなります。

『In considering forward guidance about the target federal funds rate, all members agreed to retain the thresholds-based language employed in recent statements. In addition, the Committee decided to repeat the qualitative guidance, introduced in December, clarifying that a range of labor market indicators would be used when assessing the appropriate stance of policy once the unemployment rate threshold had been crossed. Members also agreed to reiterate language indicating the Committee's anticipation, based on its current assessment of additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments, that it would be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate well past the time that the unemployment rate declines below 6-1/2 percent, especially if projected inflation continues to run below the Committee's longer-run objective.』

まあ他のパラグラフもこんな感じで、文章自体は長いのですが良く見ると声明文で説明していることをそのまま書いているだけの話に関して「合意した」という話だけ書いてありまして、FOMC投票メンバーの間ではあまりこの辺に関して他にどうこうすべきだ的な話が出ないんですなあとゆー所です。

冷静に考えたら全員一致なんて超久しぶりで、毎回のように大体タカ派、偶にハト派が暴れて反対票を投下するというのが延々と続いていましたので、これまでは必ず政策アクションに関する部分で別の意見が出て「こういう見解が出ています」的な話が書かれているのがこれまでの仕様だった訳で、全員一致だとこんなもんなのかも知れませんが、与える印象がだいぶ違いますなあという感じです。

で、実質最後のパラグラフ。

『Members also discussed other elements of the policy statement to be issued following the meeting. Members agreed on updating the description of the state of the economy to reflect the recent strength of household and business spending and to note that, although the labor market showed further improvement on balance, the recent indicators were mixed. Members did not see an appreciable change in the balance of risks and so left the statement's description of risks unchanged.』

ということで声明文での景気に関する表現についての論点がどうのこうのという話が今回も出ているのですが、景気に関してもリスクバランスに関しても大きな表現変更の必要はないですねという話で合意した結果として声明文になりましたという話ですな。


・Taperingの金融市場への影響に関して&新興国リスクに関して

ちょいと戻って『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の5番目のパラグラフに金融市場に関するFOMCメンバーの議論がございます。

『In discussing financial developments over the intermeeting period, several participants noted that the Committee's December decision to make a modest reduction in the monthly pace of asset purchases had not resulted in an adverse market reaction. Several participants observed that current market expectations for asset purchases and the future course of the federal funds rate were reasonably well aligned with participants' own expectations of the path for policy.』

Taperingで特段の悪影響も無くて市場の金利見通しパスもそんなに変化ないですよとの指摘。

『However, one participant expressed concern that longer-term interest rates could rise sharply if market participants' expectations of future monetary policy came to deviate from those of policymakers, as appeared to have happened last summer, while a couple of others argued that the current highly accommodative stance of monetary policy could lead investors to take on excessive risk and so undermine longer-term financial stability.』

いやいや去年の夏みたいな事になったらまた金利上がるリスク有るじゃろという人が1名に対して、別の2名は低金利の必要以上の継続はファイナンシャルスタビリティー上問題じゃろという話をしているのですが、昨日も申し上げましたようにスタッフ報告の中では金融不均衡に関する報告が記載されていませんでしたのでそこはふーんと思ったのですが、一方で引き続きこの指摘があるのですねという所でありまして、まあ昨日引用した早期利上げ論の部分も含めましてタカな人がそこそこいるのねという感じですな。

で、この次に新興国の部分キタコレでありますが・・・・・・・・・

『Recent volatility in emerging markets appeared to have had only a limited effect to date on U.S. financial markets.』

いきなりの一刀両断ワロタ。

『Nevertheless, participants agreed that a number of developments in financial markets needed to be watched carefully, including the financing situation of the Puerto Rican government and particularly the unfolding events in emerging markets.』

とは言え丸無視するわけでもありませんよという所でモニターケアフリーという話が出ているのですが、そこの例として出ているのがプエルトリコ政府の金融状況というのが最初に出てくるのが味わいがあるというものでして、つまり米国の庭先が着火しない限り知らんがなというのを米国にとっては庭だけど世界的に見た場合に別に注目度高くなさそうだし影響も小さそうなプエルトリコの話を出す(ちなみにスタッフ報告の中でもプエルトリコの話はありますので念の為)ことによって示しているんじゃねえかとまで思ってしまいましたがどうでしょうかね^^;

ちなみに金融市場に関してはこのパラグラフで話がおしマイケルになっておりまして、その後の話は特にございませんのでまああっさり味にも程があるというものです。


・物価に関して

同じくFOMC参加者の議論部分における物価に関する部分。さっきの2つ先のパラグラフです。

『Inflation remained below the Committee's longer-run objective over the intermeeting period. Participants still anticipated that, with longer-run inflation expectations stable, transitory factors that had been damping inflation likely to recede, and economic activity picking up, inflation would move back toward the Committee's 2 percent objective over the medium run.』

まあここは「一時的要因」と言い続けないと追加緩和が必要という話になりますからね。

『However, several factors that cast doubt on this outcome were also mentioned, including slow growth in labor costs, the lack of pricing power reported by business contacts in various parts of the country, the low level of inflation in other advanced economies, and the danger that inflation expectations at short and medium horizons might not be as well anchored as longer-run inflation expectations. Participants noted that inflation persistently below the Committee's objective would pose risks to economic performance and that inflation developments would need to be monitored carefully.』

後半の方は声明文にも盛り込まれていますが、ここの前半にあるように、一時的ですそのうち戻りますという見通しに対して、レーバーコストが上昇しないこと、企業の価格決定力が落ちている可能性があること、世界的な低インフレ傾向や、インフレ期待が低下するリスクという辺りがリスクですなというお話でございますので、まあそんなに楽観しているという話でもなさそうには見えますな。だからこそ失業率スレッショルド到達後も低金利という話になるのですが、その一方でだから資産買入のペースをどうのこうのという話にはならないのがまあお洒落というか想定範囲内というかという所でしょう。


・スタッフ報告部分でも面白い指摘が少々ありまして:海外経済および新興国市場に関して

『Staff Review of the Economic Situation』の最後の所から。

『Foreign economic activity continued to improve, with economic growth in the third quarter of 2013 higher than in the first half of the year and more recent indicators suggesting further gains. The pickup was widespread, as the euro area registered a second consecutive quarter of positive economic growth, the Mexican economy bounced back from a second-quarter contraction, and stronger external demand boosted growth in emerging market economies more generally. 』

とまあここまでは景気の良い話。

『At the same time, inflation continued to run below central bank targets in several advanced economies, and monetary policy remained expansionary in these economies.』

先進国での物価上昇率の低迷に関する言及があるのもまあ当然ではあるがほほーという感じです。

『Inflation in emerging market economies remained moderate on average, although Brazil, India, and Turkey again tightened monetary policy during the intermeeting period in response to concerns about inflation and currency depreciation. The policy tightening in Turkey was particularly sharp and followed several days of heightened financial market pressures toward the end of the intermeeting period. Similar pressures were evident in some other emerging market economies as well.』

ということで通貨があばばばばばーの国の金融政策対応の話はありますが、超あっさり味の紹介になっております。つまり『Staff Review of the Financial Situation』の所でどういう説明になっているかと言いますと・・・・・・・・

『Financial market conditions in the advanced foreign economies over the intermeeting period generally became more supportive of growth. Long-term government bond yields declined and headline equity indexes increased, on net, in most of these countries, with bank stock prices in the euro area rising more than broader indexes. In addition, debt issuance by both governments and banks in the European periphery picked up, and sovereign yield spreads in those countries were flat to down, on balance, over the period.』

とまず先進国の金融市場が米国経済にサポーティブに作用していますぞなという話がございまして・・・・

『In contrast, amid a ratcheting-up of financial market strains in some emerging market economies, headline stock price indexes in most emerging market economies declined, outflows from emerging market mutual funds continued, and yield spreads on dollar-denominated emerging market bonds increased. Local-currency yields rose in some emerging market economies, such as Brazil, South Africa, and Turkey, and short-term interbank rates in China were volatile and trended higher over the period.』

フラジャイル何とかとか中国の短期金利市場の話がやっとキタコレなのですが、

『The foreign exchange value of the dollar appreciated against most other currencies over the period, with particularly large increases against the Argentine peso and the Turkish lira.』

ということで話はこれで終了していて米国金融市場に影響どうのこうのという話では無いですな。でもってスタッフの先行き見通しとなる『Staff Economic Outlook』にはこんな話に。

『In considering recent events in emerging market economies, the staff judged that the effects of recent financial market volatility had not been large enough to have a material effect on the overall outlook for those economies and, similarly, that the spillover effects on the United States of developments to date were likely to be modest. Because conditions were in flux, however, these markets would require careful monitoring.』

最後に一応ケアフルモニターが必要という話はしていますが、そもそも論として最初にありますように、足元での新興国経済に関する金融市場のボラ上昇については経済見通しにも特段の影響を与えず、米国へのスピルオーバーの効果も緩やかでしょうという話になっておりまして、まあ超あっさり味になっているというのが判るかと思います。


・スタッフ報告部分でも面白い指摘が少々ありまして(その2):物価に関する話ですが

先ほどのように「先進国のインフレが低迷している件について」の説明がございますが、一方で物価に関するスタッフ報告ではこんな話がありまする。

『Total U.S. consumer price inflation, as measured by the PCE price index, was a little under 1 percent over the 12 months ending in November, well below the Committee's 2 percent longer-term objective. Over that period, consumer energy prices declined, consumer food prices rose modestly, and core PCE prices--which exclude consumer food and energy prices--increased slightly more than 1 percent. In December, the consumer price index (CPI) rose somewhat faster than in recent months, primarily reflecting an upturn in consumer energy prices; core CPI inflation remained low. Both near-term and longer-term inflation expectations from the Michigan survey were little changed, on net, in December and early January. Over the 12 months ending in December, nominal average hourly earnings for all employees increased slightly faster than consumer price inflation.』

まあ物価に関する現象の話をしているのですけれども、このパラグラフの最後の最後の部分で「全労働者ベースでの名目時間当たり賃金の上昇について昨年は物価上昇よりも高かった」という話があるのが何気にお洒落でございまして、労働市場の方でこの話が出ている分にはあまり注目しないのですが、物価に関する説明の最後の部分でこの話というのが味わいがあるというものです。

つまりですな、賃金の上昇傾向に関して労働市場の説明の中で出てくるのと違いまして、これですと物価上昇力が弱かったことに関してのポジティブ要因みたいな言い方になっている訳でして、まあこれが即物価上昇力が弱くても良いじゃないかという話になる訳では無いのは勿論なのですが、ただまあわざわざこちらでこういう話になっている辺りっていうのは物価水準目標に関して現象としての物価水準2%というのを厳守するというよりは、インフレ期待がアンカーされる中でディスインフレ状況にならないような物価水準で推移する方が実は良いんじゃネーノ的な話(ただし2%の旗を降ろすと為替市場攻撃で死にますので誰も降ろせないのですが)はFOMCの問題意識としてあるのかもしれないなあと想像したのは妄想にも程がありますかそうですかという所です。


#とまあFOMCネタはこんな感じですが遅くなりまして誠に申し訳ございません







2014/02/25

お題「市場雑談等/追加緩和圧力が高まる罠そりゃ/FOMCミニッツネタを少々」

また置物先生の高座があるようですが、Q&Aコーナーとか無さそうな悪寒。
http://www.icsead.or.jp/saasiteminfoths/listview?nn=ICSEAD&sg=238&pn=1#1198
第2回ICSEAD成長戦略フォーラム 「『量的・質的金融緩和』とわが国の金融経済情勢」開催のご案内

#なお寝坊気味なので今日は本当はやるつもりだったFOMCミニッツネタがとりあえず超要点だけになりますた

○すっかりサボっていたのですが市場メモなどの雑談

・金曜の話ですけど短国買入

金曜の短国買入。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140221.htm
国庫短期証券買入 25,000 2014年2月25日

先週は確かにMPMを受けて木曜の3M入札では5bp台の落札になったものの、実際問題としてはその前にもっと弱めだった所に対して強い入札でその後5bp割れ水準に金利低下とかしていまして、まあ短国市場は相変わらずの好需給ですねという状況だというのに何故か短国買入が増額になるの巻。

つーことで何でですねんという話なのですが、先月MBが末残ベースで増えなかったのを気にして念の為バッファを取りに行っているのか、それとも先週は月曜に1年TBの入札があって落札が結構偏っていて市場状況から勘案したら業者の持ちになっているっぽいから、その業者から1年TBを買い入れて今年の年末残高を稼ぎたいというのがあるのか知らんが、というか普通に考えてその2つの理由しか思い浮かばないのですが、いずれにせよMB目標達成の調整玉だからシャーナイナイですし、MB目標達成がまず第一の行動原則だから仕方ないのではありますが、市場の需給動向とか知らんがなという豪気な動きには誠に遺憾とゆー所ではございますな。

3月の貸出増加支援オペでどの位の札が入るか次第で短国買入に掛かる負担が変わってくるとは思うのですが、何せ3月は通常ベースの買いニーズの他に決算要因での短国ニーズというオソロシスな物が発生すやすい傾向にありますので、ここから3末に向けては緊張というか絶望感の強い展開になるんですかねえ、よー知らんけど。


・超どうでも良いがムーシャ先生

ムーシャ先生がまたお告げとな。

http://www.musha.co.jp/5255
2014年2月24日
ストラテジーブレティン (115号)
年初のテクニカル調整は終わったか

先般の東京株式市場の下げはテクニカルな物に過ぎないとの事ですが、えーっとすいません先生ついこの前こんな御託宣を出されていた筈ですが。

http://www.musha.co.jp/5214
2014年2月4日
ストラテジーブレティン (113号)
市場の懸念は米中の需要不足

年初からのドテンがこれで2回目になりますが、何ぼ何でもこのサイクルで来ますと、どこぞの溜池山王証券様(仮称)におかれましては引導を渡して差し上げた方が宜しいのではないかと存じますが、その前に先生に思いっきり弱気レポートを出していただかないと困りますな。


○追加緩和圧力早速キタコレ&まさかのなし崩しの白復活コースですか

ふむ。

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0LT1G420140224
UPDATE 1-海外リスクには機動的対応必要、日銀総裁もそういう状況出れば対応=安倍首相2014年 02月 24日 14:21 JST

『[東京 24日 ロイター] - 安倍晋三首相は24日午後の衆議院予算委員会で経済政策運営に関連して「海外の状況は確かにリスクがある」と指摘。「リスクには機動的に対応していかなければならない。日銀の黒田東彦総裁もそういう状況が出てくればちゅうちょなく対応していくということだ」と述べた。』(上記URLより)

ということでリスクが出たら対応しろ攻撃が来ておりまして、一方で黒田さんは成長戦略をちゃんと実施してくれという話をいつものようにしておりまして、微妙に話が噛み合ってないなあと思いますし、大体からして消費税前にあれだけ財政吹かして置いて更にリスクに対応して補正予算とか言っているようですが、そんな調子で財政吹かしてサステイナブルなのかよという気は大分しますが、まあいずれにせよ2月の政策対応によって「日銀は追加緩和をやってくるかも」という期待値が高まっているというのは現象として起きていると思います。

で、本田内閣参与が消費税増税の影響を見て5月に追加緩和判断が必要みたいな話をしていたというニュースも見たのですが、惜しくもネット媒体で記事が無いので割愛しますが、まあそんな感じで追加緩和に向けたクレクレが盛り上がって来ましたという事で、まー当然ながら日銀の作戦参謀の皆様におかれましてもこういう展開を想定して先般のノリノリプレゼンテーションを企画したと思いますので、こうやっていつの間にかなし崩し的に市場を喜ばせようと逐次ネタを投下するという作戦が復活するんじゃネーノという話になります罠という所です。

なお、本田先生は以前追加緩和手段にMBS購入という話をしてそこら中から「フィージビリティーも効果も分かってないでしょ」とツッコミを食らった事を反省したのかどうか知らんけど、今回は追加緩和手段に「財投機関債の購入」という話をしていると報道で拝読しましたが、財投って今それなりのロットで出しているのって道路と都市再生機構と学生支援機構くらいじゃネーノという所でして、何でそう斜め上の提言が出るのか謎なお方ではございます。

でもって浜田先生。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA1N06420140224
訂正:インタビュー:雇用足踏みなら消費税10%に反対=浜田内閣官房参与
2014年 02月 24日 19:06 JST

『[東京 24日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は24日、ロイターのインタビューに応じ、4月に迫った消費税率引き上げが日本経済に与える影響は不確実とし、日銀は夏場に公表される指標などを見極めた上で追加金融緩和の是非を迅速に判断すべきと語った。』(上記URLより)

ということで浜田先生もとっとと追加緩和しろやという話ですが、まあ株価と為替が落ち着いている分には追加緩和ネタでヒャッハーというのにもやや無理がありますが、株価や為替があばばばばーとなってくると追加緩和に関して盛大に追い込みが入ってくるのではないかと思われる所です。

でまあどうせ逐次投入のなんちゃって追加緩和(MBは同じだけどその構成をいじるみたいな感じ)をするんだったら2013年度のGDPがちょっと弱いみたいですねという話をしながら展望レポートの所で「見通しは変わらないけれどもタイヤを強化」ってやった方が市場が喜ぶんじゃないですかね(ホジホジ)と思うのでありまして、消費税増税の影響がどうのこうのだったら7月辺りの判断になりそうな感じがするんですけどどうでしょうかね。

しかしこれは・・・・・・・・・・・

『もっとも、日銀が掲げる2%の物価安定目標に関連し、「雇用と生産が回復しているかが重要。私はそれほど物価をみているわけではない」と成長と雇用を重視している姿勢をあらためて強調した。』(同じく直上のURL先より)

>私はそれほど物価をみているわけではない
>私はそれほど物価をみているわけではない
>私はそれほど物価をみているわけではない

・・・・・・・・・・・・・・えーっとそれじゃあ浜田先生がかつて口を極めて罵っておられた白川総裁の話と同じになってしまうんですがもしもしあのそのすいませんという所でございまして、まあ浜田先生今までも似たような話をしてはいましたが「それほど物価をみているわけではない」とはこれまた大きく出ましたなあという所で、白川さんのご感想をぜひとっくりとお伺いしたい物だとは思いますけれども、まあ白川さんの事ですから別に悪態も毒舌も出てこないでしょうなあと存じますな。

昨日も申し上げましたように、円安進行で輸出回復して経済回復がどうのこうのという話が何気にこんな筈じゃなかった的な話になっている昨今ですが、物価に関しては2%目標に向けて上昇する中で物価は順調に推移するものの景気の方がパッとしないという実にこう残念な展開になる方が可能性としてあるんじゃネーノという気もする昨今の値上げ攻勢でございまして、これまた2%物価目標とはナンダッタンダという話になる前に大風呂敷を畳みに来て、なし崩し的に黒日銀が漂白されてくるという図も浮かぶというものでありまする。

#しかし雇用足踏みとか言われましても既にほとんど数字だけで言えば完全雇用に近くねえかという気がするんだが


○FOMC議事要旨ネタである

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140129.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140129.pdf

・フォワードガイダンスの質的表現への変化について

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツの所にございますが、既に皆様ご案内ですかそうですか。このコーナーの最後から2つ目のパラグラフです。

『Participants agreed that, with the unemployment rate approaching 6-1/2 percent, it would soon be appropriate for the Committee to change its forward guidance in order to provide information about its decisions regarding the federal funds rate after that threshold was crossed. A range of views was expressed about the form that such forward guidance might take.』

スレッショルド達成しそうになっているのでさてどうしましょという話ですな。

『Some participants favored quantitative guidance along the lines of the existing thresholds, while others preferred a qualitative approach that would provide additional information regarding the factors that would guide the Committee's policy decisions. Several participants suggested that risks to financial stability should appear more explicitly in the list of factors that would guide decisions about the federal funds rate once the unemployment rate threshold is crossed, and several participants argued that the forward guidance should give greater emphasis to the Committee's willingness to keep rates low if inflation were to remain persistently below the Committee's 2 percent longer-run objective.』

でまあ一部の方(Some)は数値的な指標を追加した方が良いのではという見解もありますが、他の人は基本的には数値的なスレッショルドではなくて定性的なスレッショルドにした方が良いという見解になっています。

でまあその定性的な部分ですが、労働市場の改善は総合判断するというのは多分合意出来ている事だと思われますが、その中でも数名(Several)は「金融不均衡に留意する観点をより明確化すべき」というタカキタコレの指摘をしている一方で別の数名(several)は2%物価目標の達成の為に金利を維持する事をより強調すべきであるというまあハト系の話をしてみたりと、ここの定性的ガイダンスに関して加えるフレーバーをどう調合するのかは結構議論が分かれている感じですね。

『Additional proposals included relying to a greater extent on the Summary of Economic Projections as a communications device and including in the guidance an indication of the Committee's willingness to adjust policy to lean against undesired changes in financial conditions.』

SEPを使って金利政策見通しを示す方法を強化するのも一案とな。まあ話がややこしくなるからあまり色々とゴテゴテさせない方が良いとは思いますが。


・資産買入縮小のパスに関して

その前のパラグラフ。

『In their discussion of the path for monetary policy, most participants judged that the incoming information about the economy was broadly in line with their expectations and that a further modest step down in the pace of purchases was appropriate.』

買入縮小継続が適切とな。

『A couple of participants observed that continued low readings on inflation and considerable slack in the labor market raised questions about the desirability of reducing the pace of purchases; these participants judged, however, that a pause in the reduction of purchases was not justified at this stage, especially in light of the strength of the economy in the second half of 2013.』

2名の参加者は物価の低迷はTapering継続の必要性に疑問を投げかけるが、現在の所は昨年下期の成長が強いのでまあ継続してもよかろうという判断でTapering停止提案予備軍ですな。

『Several participants argued that, in the absence of an appreciable change in the economic outlook, there should be a clear presumption in favor of continuing to reduce the pace of purchases by a total of $10 billion at each FOMC meeting. That said, a number of participants noted that if the economy deviated substantially from its expected path, the Committee should be prepared to respond with an appropriate adjustment to the trajectory of its purchases.』

数名(Several)は逆に経済見通しの大きな変化が無い限り毎回の減額ペースを明確化した方が良いのではという見解ですが、見通しや経済のパスが大きく下振れた場合には買入のペースを調整するのは適切という認識は共有されているようです。

でまあこの部分ですがこんな感じで割とあっさり味になっていまして、まあTaperingに関しては経済が思いっ切り下振れしない限り淡々と継続しそうな感じではありますな。


・利上げペースに関する部分とな

このコーナーの最終パラグラフ。

『A few participants raised the possibility that it might be appropriate to increase the federal funds rate relatively soon.』

早期の利上げが適切という数名(A fewですがこの後の文章を読むとどうも3名っぽい)の見解キタコレ。

『One participant cited evidence that the equilibrium real interest rate had moved higher, and a couple of them noted that some standard policy rules tended to suggest that the federal funds rate should be raised above its effective lower bound before the middle of this year.』

実質均衡金利の話をしている人と、標準的な政策ルール(ってんですからテイラールールか何かでしょ)の話をしている人がいるようですな。

『Other participants, however, suggested that prescriptions from standard policy rules were not appropriate in current circumstances, either because the target federal funds rate had been constrained by the lower bound for some time or because the equilibrium real rate of interest was likely still being held down by various factors, including the lingering effects of the financial crisis, and was significantly below the value of the longer-run rate built into standard policy rules.』

でまあ他の人はいやいや違うだろという反論をしているのですが、しかしスレッショルドが定量的なものから定性的なものになるとか、この辺の話とかを見ますと、そもそもルールベースの金融政策で中銀の恣意性を排除した方が良いと言う話をして日銀を批判しておられた方々のご感想をお伺いしたいものだと思うのでした。


・書いていないことについて

ちなみに今回のミニッツ読んでいて「ほえ?」と思ったのは、スタッフの金融市場に関する報告の中で金融不均衡に関する報告らしき部分が無かった(ような気がするのだが見落としていたらすいません)ことでして、これはTaperingが始まったので金融不均衡に関するリスクが低下したので一々報告をミニッツに上げる必要が無いという事になったのでしょうかよくわかりません。

#なお明日に続く(と思う)


○後で読む物をクリップ(日銀のワーキングペーパーシリーズ)

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j02.htm/
賃金版ニューケインジアン・フィリップス曲線に関する実証分析:日米比較

全文はこちら(PDF注意)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j02.pdf



http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j03.htm/
高スキル労働者の転職行動

全文はこちら(PDF注意)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j03.pdf

何か面白そうなので時間が有ったら読む。




2014/02/24

お題「森本審議委員会見は景気は強気も政策の質疑は少々微妙な部分も/1月会合議事要旨から」

こうやって生きていければ人生楽だろうなあという例が公共放送にあるとは。

http://www.47news.jp/FN/201402/FN2014022101003013.html
NHK会長が理事に辞表預けるよう要求 
2014/02/22 01:04 【共同通信】

・・・・普通に人事権濫用だろというか不当労働行為と言われそうな話っすなあ。

http://www.asahi.com/articles/ASG2Q75F7G2QUCVL00J.html
籾井氏「失言したのでしょうか」 NHK経営委で発言
2014年2月23日09時43分

『それに対し、美馬氏が「発言がどうだったかではなく、今後組織としてどう対応していくのかを聞いている」と再質問。籾井氏は「放送で信頼を回復していくことが長い目で見た方向。営業の収入減は、営業でカバーするのが一番の方法。対策をどうするかは、正直よくわかりません」と発言した。』(上記URLより)

偉い人のケツは下々が拭けとの事ですが、何が凄いってこの方のこれまでの経歴の方が何ともまあという所で、出身母体のレピュテーションに響かないか懸念されますな。まあ実際の全文記事はそれ以外も色々と面白発言連発らしいですけど。


○森本審議委員会見から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402c.pdf

・これ以上の円安はという話がががが

冒頭の質疑から。

『(問) 2点質問させて頂きます。まず、今回の金融経済懇談会の印象を教えて下さい。また、和歌山県の景気の先行きについてどういった捉え方をされているのか教えて下さい。』

『(答) 1点目の本日の金融経済懇談会の印象ですが、本日の懇談会では、和歌山県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話や、本行の金融政策運営に関する率直なご意見・要望を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で頂いたご意見・ご要望は多岐にわたりますので、特に印象付けられたことを整理して申し上げたいと思います。(途中割愛)第2に、為替円安等に伴う原燃料価格の高騰や、労働需給の逼迫による人件費増加などのコストアップが、収益を圧迫しているとのお話もありました。私どもとしては、当地においても景気は堅調さを増しており、これらの懸念を乗り越えていくモメンタムは強まっているとみていますが、今後も引き続き、景気の情勢を注意深くみていきたいと考えています。(以下割愛)』

ということで為替円安でコストアップとなという話が出ている辺りがうーんこのという所でありまして、いやそれは物価目標達成の為にシャーナイナイなのではないかという話では無かったでしたっけねえという気もするのだが。


・リスク認識に関して

『(問) 講演で、上下双方向のリスクを点検されるとおっしゃっていますが、森本委員からみられて、現状、上下双方向のリスクのバランスがどうなっているか、お伺いします。(途中割愛)このように、輸出と消費の面からみると、下振れの方が大きいのではないかと思いますが、見解をお伺いします。』

『(答) かねて申し上げている通り、我が国の経済は、緩やかに回復を続けており、生産・所得・支出の好循環が維持される下で、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていると思っています。その上で、上下双方向のリスク要因ということですが、まず内需については、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費は堅調に推移しています。設備投資についても、これは10〜12月のGDP速報で確認されたように、プラスの伸びを示しています。機械受注の動き等、心配な面はありますが、これは月々の振れが大きい指標ですし、均してみれば3四半期連続で伸びてきています。更新需要は相当積み上がっていますので、先行きに関する色々な調査によっても、堅調な計画が立てられており、設備投資は、企業収益が改善する下で、堅調な動きをするのではないかと思っています。このほか、住宅投資もご承知の通り増加傾向ですし、公共投資も、色々な経済対策によって、高水準の動きになっています。このように、内需は、足許、堅調な動きとなっています。』

何という強気。

『一方、外需の方は、以前から「内需はやや強め、外需はやや弱め」と申し上げていました。10〜12月の輸出は1.1%とプラスになってはいましたが、製造拠点の海外移転の問題や、生産が、このところ堅調な内需に振り向けられている面があったり、また、基本的には、日本との関係が深いASEAN等で少し弱い動きがみられるということで、ご指摘の通り、輸出については勢いを欠く状況が続いています。ただ、これについても、先進国を中心に先行き緩やかな回復が期待できますので、つれてこういった新興国も徐々に回復テンポを強めていくのではないかと思っています。従って、外需はやや弱めではありますが、そうした状況の中で、トータルとしては、私どもが色々と申し上げているようなリスク要因が顕在化してきている状況ではないと判断しています。』

外需も強気でリスク要因顕在化とは何の話ですかという世界ですが、もしかして直近の金融政策決定会合での施策フレームアップのし過ぎで金融政策の予見可能性が著しく低下した件に対して気にしている結果としてこういう感じで強い話をしようという事になったんですかね。


・新興国に関して更にツッコミ

『(問) リーマンショック以降、世界経済は新興国を中心に成長してきましたが、今年以降は先進国が中心となって引っ張っていくことが見込まれています。こうしたバトンタッチはうまくいくのか、また、それはいつ頃とお考えでしょうか。その際に、新興国を最大のリスク要因として捉えていらっしゃるか、お聞かせ下さい。』

で、ツッコミの結果このようなお答えなのですがやたら長い。

『(答) リーマンショック以降、中国の4兆元の投資が大きな牽引力となり、世界経済を引っ張ってきた面があります。その後、米国においても色々な対策がとられ、緩やかな回復傾向になっていますし、ユーロ圏についても、色々マイナス要因はありましたが、このところ3四半期連続でプラスの伸びになっており、家計や企業のマインド指標も改善されてきています。一方、牽引してきた中国についても、一時の高い伸びはありませんが、中国当局は、構造調整と成長を両立させることを絶えず発信しています。何より、堅調な内需に支えられていますし、また、輸出についてもこのところ回復傾向がみられるため、中国は、7%台半ばの安定した成長を続けており、今後もそのように見込まれると思います。』

『そうした中で、米国の、いわゆるテーパリングが意識される下で、経常収支赤字や財政収支赤字、インフレ等、構造的な問題を抱えたいわゆる「脆弱な」新興国において、米中の一部弱めの指標に反応して、通貨や株で色々変化がありました。確かに、新興国のリスクが指摘されていますが、2014年のIMFの先進国の成長見通しが上方修正されているように、米国は、財政の下押し要因が剥げてくるほか、緩和的な金融環境が継続される状況の中で、堅調な民需を背景に、これからも堅調な回復が続くという見通しが、大体コンセンサスを得た見方と考えています。また、ユーロ圏についても、2014年は一定の回復が見込まれる数字になっています。新興国の中でも、中国は、依然安定した成長を示すだろうと考えています。』

『これまで新興国が世界経済を牽引してきた流れが、先進国にうまくバトンタッチされるかというご質問に対しては、牽引役の中国が力を失っていないという状況の下で、構造的な脆弱性を抱えた一部の新興国も、リスク要因が指摘されているものの、先進国の立ち直りとともに徐々に回復していくとみているため、うまくバトンタッチできていくと考えています。』

とまあああだこうだとやたら長いのですが、要するに強気の話を連発しているという感じで、やはりこう金融政策の先行き不透明性低下みたいなイメージに対して牽制しようとしているのかなあとは思いましたです。


・追加緩和に関して

『(問) 講演の中で、今後の金融政策を判断していく上では、消費税率の引き上げの駆け込みとその反動を均した上で、前年比+2%の物価安定の実現に向けた道筋を辿っていくかがポイントになる、と指摘しておられましたが、影響を均してみる必要があるということは、今後の金融政策を判断する上で、4〜6月が中心となるであろう反動減を見極めた上で、今後の政策判断を行うということになるのでしょうか。逆に言うと、増税を見据えた予防的な対応は必要ないという意味合いでよろしいのでしょうか。』

まあ答えはこうなりますよね、という質問ですな。

『(答) 講演の中でそうしたことを発言させて頂きました。申し上げるまでもなく、1997年の増税時には駆込みと反動減があのような形で発生した訳であり、今回も、足許では、既に自動車や一部家電等の耐久消費財への駆込みがみられており、1〜3月は更に耐久消費財以外の衣料等を含めて駆込みが想定されます。1997年の例でみても、1〜3月、4〜6月の駆込みと反動について考えていかなければならない訳ですが、我々の展望レポートと中間評価の想定にあたっても、この辺の状況や見通しを頭に入れて、判断や見通しを作成しています。』

まあそういう事になっています。

『そういう意味で、基調判断をする上で、均してみるということですが、実績を見てから判断するのかという点については、私どもとしてはそのように考えている訳ではありません。「量的・質的金融緩和」を着実に進めるに当たって、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して、必要な調整を行うと申し上げているのは、何らかのリスク要因の顕現化によって、見通しに変化が生じて必要ならば調整を行う、ということです。』

実績を見て何か判断する訳では無いという話ですが、ではこの前の総裁定例会見での「今年度実質GDP+2.7%行きます」攻撃はナンダッタンダという話になりますが、立て直しに向けての発言という事なのか、今回の森本審議委員の講演や会見は両建ての一貫で従来の話をしているのかはワカランチ会長であるという事です。

『この「見通しに変化が生じて」という点は、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかというところを確りと見極めてから、私どもの対応方針を決めていこうということです。これは実績を確り見てからということに限っている訳ではなく、毎月の決定会合、展望レポート、中間評価の段階で経済・物価情勢を確りと点検して議論して、足許と先行きの状況を見通して、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかという点を毎回見極めていきながら、方針を決定していくという考え方です。』

ふむふむ。とは言っても「実績を確り見てからということに限っている訳ではなく」って言い方ですと、逆にGDPの結果を待たずとも展望レポ―トの見通しに対してGDPが下振れたそうなのが確実になった場合には・・・・・なのでしょうかという質問をしたくなる訳でして。


『(問) 今のお話の中でも、上下双方向のリスクについてみていかなければならないということで、市場では日銀の追加緩和に対する期待というのがまだ根強い訳ですが、委員自身はどういったときに追加緩和が必要だと思うかということを教えて下さい。』

直球質問過ぎるわw

『(答) 追加緩和が必要な時期について、今一概に申し上げることは非常に難しいと思います。今申し上げたように、上下双方向のリスク要因をしっかりチェックして必要な調整を行うということですが、それは、毎回の決定会合等で、その時々の色々な経済・物価情勢をしっかり点検し、議論するということです。先程も申し上げたように、今のところ経済・物価情勢は、私どもが考えているような順調なパスを辿っていますので、今どういう条件でどういう時にと申し上げるようなタイミングではないということでして、その時々の経済・物価情勢をしっかりチェックして、議論をして、その中で決めていくということが一番大事なことではないかと思っています。』

ということで直球質問過ぎたので避けられてしまいましたが(^^)、森本審議委員の今回の会見ですけれども、まあ景気見通しの所とかリスク認識の所とかで強気ポーズは継続しているものの、どうも金融政策運営に関する部分でツッコミを食らうと微妙な答えが返ってくるという感じでして、やはりこう2月決定会合で見られたあれれ感を払拭する感じでも無かったりしますなとゆー事で。



○1月展望レポート中間評価の決定会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140122.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済に関して

『国際金融資本市場について、委員は、FRBによる資産買入れ縮小開始の決定後も総じて落ち着いた動きとなっているとの認識を共有した。新興国市場について、何人かの委員は、政治情勢が不安定な国や経常収支赤字など構造的に問題を抱えている国では、やや神経質な動きとなっていると述べた。このような議論を経て、委員は、新興国市場を含め、国際金融資本市場について、引き続き注意してみていく必要があるとの見方で一致した。』

ということで、これは1月会合の議事要旨ですが、一応この時点でも新興国市場に関するリスク認識を示しているという形になっていまして、2月議事要旨でこの辺の認識がどうなっているのかを確認したいと思います。

『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについて、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。一人の委員は、今月公表されたIMFの世界経済見通しが、昨年10月時点に比べて、米国を中心に上方修正されたことを指摘したうえで、米国経済が海外経済を牽引していくと見込まれると述べた。』

先進国中心ですかそうですかという所ですが、海外経済の所では二つほどオモロイ指摘が。

『(米国について)この間、ある委員は、FRBによる積極的な金融緩和は、景気回復を下支えする一方、資産価格の形成が歪められるリスクもあると述べた。』

何というお前が言うなですが(−−;

『(欧州について)もっとも、複数の委員は、緩和的な労働需給環境のもとで賃金調整圧力が続き、ディスインフレ傾向が長期化する可能性には注意が必要であると指摘した。』

先進国ディスインフレって(今日時間が無いのでネタにしませんが)FRBの方でもこの前のミニッツで他の先進国がディスインフレという話をしていまして、何か味わいがありますなという所です。


・国内経済に関して

国内経済に関して。

『わが国の景気について、委員は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。委員は、家計部門では、雇用・所得環境が改善する中で、個人消費や住宅投資は堅調に推移しており、企業部門でも、企業収益が改善する中で設備投資が持ち直しているなど、引き続き、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働いているとの認識で一致した。』

というのはいつも通りの話なのですが、前向きの循環メカニズムねえという気は相変わらずします。

で、輸出ですけど。

『輸出について、委員は、引き続き勢いの弱さは懸念材料だが、海外経済が先進国を中心に回復しつつあるもとで、振れを伴いつつも、持ち直し傾向にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、既往の円安にもかかわらず、輸出が勢いに欠けている背景として、海外各国における設備投資が弱めに推移していることなど、海外経済の動向が影響しているとの見方を示した。この点、ある委員は、海外経済の設備投資について、先行指標である機械受注の外需が、このところ振れを伴いつつも持ち直しを続けていると指摘し、回復の兆しがみられると述べた。一人の委員は、一部の分野では、国内需要の強さから輸出余力が乏しくなっているという側面もあると指摘した。』

そらまあ構造要因で輸出が円安でも伸びにくくなっているという話をおっぱじめる訳には行かないというのも分かりますが、いやそうなんですかねえという気がする説明になっております。

個人消費に関連して。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は緩やかながらも着実な改善を続けており、雇用者所得にも持ち直しの動きがみられているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復がはっきりするにつれて、持ち直しが次第に明確になっていくとの見方で一致した。』

というのは良いとしまして、

『これに対して、一人の委員は、先行きの賃金上昇率について、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみた物価上昇率を下回る可能性もありうると指摘した。』

という指摘もありますが、まあそれ以前に消費税率上昇の影響まで考えたら物価上昇率並みの賃金上昇って見込めないですよね、という状況なのですが・・・・・・・・・

『先行きの個人消費について、委員は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

『複数の委員は、先行き、雇用者数が増加し、雇用者所得の持ち直しは明確になっていくことを踏まえれば、個人消費は底堅く推移するとの見方を示した。一人の委員は、消費者コンフィデンスが昨年10 月以降弱めの動きとなっていると指摘したうえで、その背景として消費税率引き上げを意識している可能性があり、今後の動きを注視していく必要があると述べた。』

つーて良く良く考えますと消費税増税ほどは雇用者所得が伸びるとも思えませんので、この一人の委員が指摘する件ってもっと注意しないといけないような気がしますな。


・なお物価は強気ですな

いや真面目な話「物価は行ったけど個人消費は冷え込んで、2%の物価目標達成が見えてきたのは良いけれどもそこにあった景色は別に好景気でも何でも無かった」というお洒落な状態になってしまうんじゃネーノという懸念があるのだが。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとみられるとの見方を共有した。多くの委員は、昨年11 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.6%まで上昇しているなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

ふむ。

『このうちの複数の委員は、底堅い個人消費を背景に、企業がコストを販売価格へ転嫁しやすい状況になっており、先行きもこうした動きは続いていくとみられると付け加えた。先行きの消費者物価の前年比について、多くの委員は、エネルギー関連の押し上げ寄与は縮小するものの、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりといった基調的な物価上昇圧力は次第に強まっていくことから、暫くの間、+1%台前半で推移すると述べた。』

この辺の「物価上昇要因が徐々に円安エネルギーから需給ギャップと期待インフレの上昇に変わっていく」という話は展望レポートで示された通りです。

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べ大きくなっている可能性があると指摘したうえで、今後、円安傾向が反転した場合には、消費者物価の前年比の上昇ペースが想定以上に鈍化する可能性があると述べた。』

ほほー。

『予想物価上昇率について、委員は、各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。複数の委員は、中長期的な予想物価上昇率について、横ばいを示す指標が増えていたが、最近は再び上昇を示す指標もみられており、上昇傾向は維持されているとの見方を示した。』

はあそうですかという感じですが、確かに消費税前で微妙に値上げ気分が多くなっていて、消費者コンフィデンスが落ちている事の裏表で、一般の物価上昇期待が上がっているかもしれませんなと思いまして、景気は伸びないのに物価だけは順調に行くという素敵な未来が起きないようにして欲しいものだと思います。


・展望レポート中間評価

中間評価で物価の見通しが低い人の見解はいつも通り。

『一方、複数の委員は、昨年10 月の展望レポート時と同様に、予想物価上昇率の変化が現実の物価上昇率の高まりに繋がる点について不確実性が高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは中心的な見通しに比べて慎重であるとの見方を示した。』

実際問題として物価上昇期待が消費者コンフィデンスの低下につながった場合って最初は物価が上昇するかも知れんが持続性としてどうなのよという論点はあるでしょうな。

『先行きのリスク要因について、委員は、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられるとの認識を共有した。新興国・資源国経済の動向について、多くの委員は、一部の国は経常収支赤字など構造的な課題を抱えており、国際金融資本市場の動向と併せて、引き続き注視していく必要があると述べた。』

「国際金融資本市場の動向と併せて」ってありますからEMのあばばばばーな件に関しては注視という話なのですけれども、それなら2月会合でその経過を見て何らかの話が出ないのかねという気はしますけど。


・2年で2%とオープンエンドに関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですけどね。

『対外的な情報発信について、多くの委員は、日本銀行は、@「2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と約束するとともに、A「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する」との方針を明確にしているが、両者はともに重要なコミットメントであり、相互に補完的の認識を示した。』

相互補完的という説明はいつも聞くのですが、これまあやっぱり普通に分かりにくいですよね。それよりも「2年」と「2%」が並立する目標という説明をした方が良いと思うのですけど・・・・・・・・

『「量的・質的金融緩和」の継続期間について、多くの委員は、2年という期間で厳密に区切っているという訳ではないということを、誤解のないように明確に説明していく必要があるとの認識を示した。』

ただまあ2年で達成するんですからねえ。

『同時に、何人かの委員は、そのことによって「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」というコミットメントを弱めることがないように十分留意しなければならないと述べた。』

という所に説明の無理があると思う訳で、やはりこれ見て何を言いたいのか判らんという質問はやって来るというのも現実だったりするのですけどね(個人的事例ですが)。


・フォワードターゲットに関して

これは重要な論点。

『一人の委員は、上記の方針における「必要な時点まで」という文言は、先行きの見通しに基づいて判断するものであるとの認識を高めていく必要性を指摘した。』

これはフォワードターゲットのイメージの話をしているのかなという気がします。

『これに関連して、ある委員は、金融政策の効果が実体経済や物価に波及していくには、ある程度のタイムラグがあることを考慮する必要があると付け加えた。』

これだけ書かれると何が何だかワカランチ会長ですが、つまり金融政策のタイムラグを考えるとアクチュアルな足元の物価数値云々にこだわり過ぎることなく、フォワードターゲット的な見方で物価目標を考えるべきという話をしているんですな。


・消費税増税は織り込み済みという話

『何人かの委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要によって2014 年1〜3月に成長率が高まり、その反動によって4〜6月に成長率が一旦落ち込むことは、委員の見通しの標準シナリオに織り込まれていることを、対外的により明確に説明する必要があると指摘した。』

まあここでも出ていますが、先ほどの森本審議委員講演でもありましたように、基本はこの筈なのですけれども、2月のフレームアップ決定によりまして「あれれ???」となってしまっているんですよねえという所です。


ということで、議事要旨そのものには(1月の物ですし)それほど新しい話があった訳でも無いですけれども、ちょこちょこ面白い話が有ったという感じです。




2014/02/21

お題「金融経済月報は見事な全文一致/森本審議委員講演を見ても貸出に関する説明に混乱がありますな」

連日楽しい「個人的見解」が出ますが本田先生何でまた経済政策と関係ない話で地雷を踏むのかねと思いますが、まあ「個人的見解」のご披瀝ですから仕方ないですね(棒読み)。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304445404579391953576198282.html
2014年 2月 19日 13:15 JST
ナショナリスト本田悦朗氏がアベノミクスで目指す目標

#本人は言っていないとご抗議のようですが、たぶんイノセント先生のイスラムは喧嘩ばかり発言と同じような展開になるだけだと思いますけどねえ


○金融経済月報(概要)は経済物価部分見事に全文一致

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1402.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1401.pdf

えーっとですな、今回ですが経済物価情勢と金融環境の総括部分が見事に全文一致となっています。以上終了というとアレですので今回分だけ引用しておきます。

・現状判断部分

『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』

この辺は声明文でも示されています。


・先行き見通し部分

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』

ということでこちらは前回と全文一致(なのでめんどいから前回分との比較をしていませんけれども念の為ご確認ください)となっていますが、輸出の所に見られるように海外経済は回復して緩やかに上昇するそうですよ先生。


・リスク要因

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』

これも声明文と同様で、新興国経済の動向というのはありますが、新興国市場がどうのこうのという話に関しては言及していないのは、まあメジャーなリスクじゃないですよね今の所という所ですな。


・物価に関して

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』

この「暫くの間」ってのですが前回の声明文や月報でこういう表現になりまして、約半年前後という話になっていましたので、これあと2か月ほどした時にどういう表現になるのかが楽しみですなあ(棒読み)。


・金融環境に関して

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』

これもいつも通りです。あとコンポーネントの部分に関しては数字的な部分基本的に起きた現象の説明となっていますので、前月比較で計数が動いたものはその通りに表現されていますが、認識として示されている部分は前月と同じです。めんどいので引用割愛。


ということで、ものの見事に金融経済月報も同じということで、今回は貸出支援関連措置の延長と強化を実施して「ほーれほれ」とプレゼンする一方で、ここら辺の文言を全く変えなかったというのは「追加緩和ではない」「逐次投入では無い」「見通しは不変」というのを強調したいという面もあろうかと思うのですが、先日来申し上げておりますように、これによって逆に「経済物価情勢に変化が無くても何らかのサービス政策が打ち込まれる可能性がある」という認識が持たれるようになったんじゃないですかねえという気はするのでありました。

ということでほーれほれ作戦というのは2倍のプレゼンの辺りとかも含めてちょっと悪ノリだったんじゃないかなあとは思いますが、実は今回の麿イズム強調攻撃というのが必殺技「なし崩しで黒日銀を(ちょっと)漂白して大風呂敷撤退大作戦」への布石という意図があるならそれはそれでアリかも知れませんね、ヲチャー的には困ったもんだ(というかそういうロジックの有耶無耶転換って恥ずかしくないのかねとも)とは思いますが。


○森本審議委員講演:やはりメカニズムの説明に若干の混乱が


http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140220a.pdf

・経済物価情勢の所は簡単に引用しておきます

『先行きの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調的には0%台半ばとみられる潜在成長率を上回る成長を続けていくと予想しています。先進国を中心に海外経済が緩やかに回復していくもとで、輸出も緩やかに増加していくと考えられます。この間、設備投資は企業収益の改善につれて緩やかな増加基調をたどるとみられます。個人消費や住宅投資については、雇用者所得の改善が次第にはっきりとしていくとみられることから、振れを伴いつつも、基調的には底堅く推移するとみています。公共投資は、当面、2013年度補正予算の効果等にも支えられて増加傾向で推移したのち、高水準で推移するとみられます。日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値では、2013年度の成長率は2.7%、2014年度は1.4%、2015年度は1.5%とみています。』

ということで展望レポートの話をしていますが、まあどう見ても2013年度2.7%は無理だろと思うのですけれども、この前の会見で総裁が大見得を切った件に関連する質問は飛んでいたっぽいので今日出る会見要旨を確認したいと思います。


『先行きは、石油製品価格等の押し上げ効果が剥落するため、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。その後は、景気回復に伴うマクロ的な需給バランスの改善や、期待の転換による中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇し、2015年度までの見通し期間の後半に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。具体的な数値で申し上げれば、日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値では、2013年度の消費者物価(除く生鮮食品、2014・2015年度は消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の上昇率は0.7%、2014年度は1.3%、2015年度は1.9%とみています。』

つーことで数字は兎も角としまして、メカニズムとしては需給ギャップの改善などの要因による押し上げとエネルギーや円安などの押し上げ要因の前年対比の剥落効果による押し下げが相殺して1%台で推移する間に、物価が現実に1%(名目ベースは消費税もあるからもっと上)という状況を受けてインフレ期待に変化が起きるのでその後はインフレ期待による物価上昇効果もありますよという毎度のお話で、この辺に関する説明には当然ながら変化はありません。

ちなみに、海外経済に関する説明部分では新興国経済に関連する中で最近何かあちこちで山猫ストのように個別国通貨が盛大に下落したりしていますが、その件に関する言及は1行もございませんで、まあ森本審議委員の金懇での説明は基本的に執行部見解をベースにしていると思われますので、そーゆー意味では執行部見解的にこの辺りの部分について特段懸念するに当たらずというFEDのペースに似ていますなという所です。


・メカニズムの話が微妙に混乱

まずは『「量的・質的金融緩和」の効果』という所。

『この金融緩和策の実体経済への波及経路としては、主に名目の長期金利への低下圧力と予想物価上昇率の引き上げを通じた実質金利の引き下げと、ポートフォリオ・リバランス効果を念頭に置いて取り組んでいます。』

はあそうですか。

『実質金利の引き下げに際しては、まず巨額の国債買入れにより需給を引き締めることで、名目の長期金利に強力な低下圧力を加えています。そして、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏付ける大規模な資産の買入れを継続することで、経済活動が活発化するとの人々の期待を高め、予想物価上昇率の引き上げを図ります。この結果、予想物価上昇率の上昇に比べて、名目金利の上昇を小幅にとどめることができれば、その分、実質金利を低下させることができます。』

実質金利キタコレ。

『企業や家計の支出行動は実質金利に影響されますので、実質金利が低下すれば、企業・家計の投資・消費活動の活性化につながると考えています。』

まあ従来の説明ですな。

『足もとの実質金利は、名目の長期金利が低位安定して推移する中、予想物価上昇率は全体として上昇しており、低下傾向にあるとみられます。先行きも、実際の物価上昇率の高まりと相俟って予想物価上昇率が高まっていくもとで、日本銀行による大規模な国債買入れが名目の長期金利に強力な低下圧力を加えることから、実質金利の低下傾向が続くと考えています。』

というのはまあ毎度の説明なのですが、では今般の貸出支援基金強化に関する話は何ですねんという部分ですけれども、『(2)「貸出支援基金」について』での説明はですな。

『これからも経済の好循環を持続させていくためには、企業や家計が緩和的な金融環境を実際に活用して資金を調達し、これが投資や支出の増加を通じて、マクロ的な需給バランスの改善につながり、そのうえで成長力も高まっていくことが大事です。』

えーっとですな、今しがた(と言っても4ページ程前)説明していたのは「企業や家計の支出行動は実質金利に影響される」という話なので、「緩和的な金融環境を実際に活用して〜投資や支出の増加を通じて〜」云々というのは実質金利の引き下げによって達成されるものであって、そもそも(昨日引用した総裁会見でのツッコミと同じになりますが)金融環境は緩和した状態にあるという認識をだいぶ前から日銀は示している訳で、その中で実質金利を下げたら自動的に企業や個人の資金需要が高まるんじゃないんですかねえ(棒読み)という所でありまする。

『今回の両制度の延長・見直しは、そうした動きを加速させるものと考えています。』

何で加速するのかが判らんですなあ(棒)、実質金利低下で銀行から見たらインバウンドで貸出が増えますよと言う話になる筈なのに、銀行に対してインセンティブを与えてアウトバウンドで貸出を伸ばさせるという話をここで引っ張り出すというのはやはりロジックの混乱(というか麿時代への回帰)と思いますけどねえ。

『企業部門では、投資をキャッシュ・フローの範囲内にとどめる動きが長らく続くもとで230兆円もの現預金を積み上げてきましたが、このところは外部からの資金調達で新たな投資に果敢にチャレンジする動きも増えてきています。日本銀行としても、これらの措置を通じて、企業の挑戦をしっかりとサポートして参りたいと考えています。』

えーっとだから実質金利が低下すると自動的にそういう事になるんじゃなかったでしたっけ。

『このような取り組みが、政府の競争力の強化に向けた「日本再興戦略」の具体的展開と相俟って、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待しています。』

ま、この施策を宣伝するメリットの一つとして「政治対策」というのもあるんでしょうなあと意地悪く思ってしまうのはこの部分を見てという所で、まーそういう意味ではかつてハチャメチャなロジックで当座預金残高を拡大して、積極性のアピールと政治へのアピールを強くして政治資源を確保した(何せ前任が速水の優ちゃんでしたから)福井の俊ちゃん化となりますと、まあ出口戦略着手前の俊ちゃんがまさにそうでしたが、何を理屈に「次の一手」を捻りだして来るかさっぱりワカランチ会長(ちなみに俊ちゃんはSARSをネタに当座預金目標を拡大するという最早何が何だかワカランチなプレイを炸裂させたりしてましたからねえ)となるでしょうし、過去との整合性をしらっとスルーするようになるという事は昨年4月4日に広げた大風呂敷もいつまでもあると思わない方が良いかもしれませんな、とまあそういう事になると思います。


○市場雑談というか短期関連雑談メモ

今般の施策ですけれども、貸出増加支援部分に関して現在未使用になっている枠が3月オファー分までしか使えないという事になりますので、3月にそこそこ貸出増加支援の利用が拡大しますと、その分短国買入とか固定金利オペとかの運営が楽になる可能性があります。

つーのはまあ短期の人は施策の内容見たら3分以内には判る筈ですので(^^)、とりあえず月曜の1年TB入札0.04%割れに見られたような「短国マイナス金利突入の恐怖」はやや(かだいぶかは知らん)緩和されたと思われまして、施策公表後からは短国レートやら2年の金利やらが上昇していた(2年の金利が上昇するには玉が出た出た玉が出た♪が必要なのでその結果GCレートも上昇していましたけれども)ので、昨日の3M入札は6bp行くか位の話まで逝ったようですが・・・・・・・・・


http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140220.htm

(3)募入最低価格 99円98銭5厘5毛 (募入最高利回り)(0.0581%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.8996%
(5)募入平均価格 99円98銭6厘5毛 (募入平均利回り)(0.0541%)

ということで結局強めの決着になって、しかも空振りの人が居たようでその後セカンダリーでは5bp割れの巻となっていたようで、そらまあ先々では短期のオペが楽になるかも知れませんが、現実問題としての足元での需給には影響ないですもんねという残念な事案が発生しましたので、本日の短国買入の結果がこれまたおそロシアという所ではございます。ナムナム。

3月の資金需給予測とか短資さんが出していると思いますので、またオペ予想とかを皆様しておられると存じますが、あたくしもそれに乗って計算しないといけませんね!




2014/02/20

お題「総裁会見ネタでMPMレビュー:政策(とオペ)の予見可能性が著しく低下した感があります」

ブルームバーグに社説ってあったのかよ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N15DW36S974001.html
更新日時: 2014/02/19 07:31 JST

でまあそれは兎も角として今日は他のネタもあるような気がしますが総裁会見と雑談で終わってしまいそうなので総裁会見ネタのみという事で。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402b.pdf

○このフレームアップは金融政策の予見可能性を低下させたと思います

『(問) 本日の決定内容について、とりわけ貸出増加支援制度の延長・拡充の狙い、それからこのタイミングでそれを決められた理由についてご説明下さい。』

つーことで最初の質問に対する答えですが、貸出支援に関する部分が最初にありましてですな、

『(答) 本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約60〜70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J−REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。』

というのは兎も角としまして、

『また、本日は、近く期限が到来する貸出増加支援資金供給、成長基盤強化支援資金供給、被災地金融機関支援資金供給について、それぞれ1年間延長することを決定しました。その上で、貸出増加支援資金供給については、金融機関が貸出を増加させた額の2 倍まで、日本銀行から資金供給を受けられることとします。また、成長基盤強化支援資金供給については、本則の総枠を3兆5 千億円から7 兆円に倍増します。さらに、この両方の資金供給について、固定金利0.1%で4 年間の資金供給を受けられることとします。』

ほうほうそれでそれで?

『「量的・質的金融緩和」により供給している大量のマネタリーベースが、金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みに利用されることは極めて重要であり、今回の見直しは、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムを強化するものです。喩えていえば、「量的・質的金融緩和」の導入でエンジンの馬力を大幅に上げたので、その性能を十分に活かすためにタイヤを強化したと言っても良いと思います。』

ということで、明らかにこれは「ほーれほれ」と見せびらかしている状態になっている訳ですが、エンジンの馬力上げてもトランスミッションメカニズムがちゃんとワークしないとタイヤをどうこうしても知らんがなという気はしますが問題はそこだけではないのです。

つまりですな、今回の決定って確かに日銀的に言えば景気判断も先行きもリスク認識も全ての文言に関して現状維持しているので、追加緩和ではないという建付けになっているものの、この説明ですと「景気判断に関わらず現在のMB60-70兆円/年拡大という現状維持の中でも『タイヤを強化する』可能性がある」という話になっている訳ですよね。

ということはどういう事かと申しますと、景気判断とかに変化がない中でも「タイヤを強化」というような言い方を使って例えば次にニバーイニバーイをやりやすそうなものと言えばリスク性資産即ち主にETFとかになると思いますし、大体からしてMB総体から見れば誤差の数字になる部分なのでこれってやっぱり「タイヤ強化」で「2倍」をやりやすいよね、という発想が出てくる訳でして、そうなりますとまあ(債券というよりは他市場になりますが)市場のクレクレ催促が来る、という形になるでしょうなあと思います。

実際問題としては、今回の措置というのは「終了予定措置の延長にちょっと手直しを加えた」という案件なので当初決めたQQEの枠組み変更には当たらないですから、そういう意味ではハードル低いのですけれども、ETFの買入拡大とかそういう話になるとこれは当初決めたQQEの枠組みの手直しという事になるので、それこそ逐次投入モードになってしまうので、今回施策を打ち込んだからじゃあ今後は資産買入の構成変更を「タイヤの強化」という比喩でホイホイ打ち込んでくるのかというと政策決定的なハードルは高くなるのですよね。

でも当たり前ですが、そんな理屈を把握しているのは余程のマニアが重症化して医師の診察を勧められそうな人だけと思われる訳でして、別に日銀の金融政策のその辺の細かい仕切りを理解しようとする気のなさそうな特に海外投資家の皆様なんぞにおかれましては、「今回プリエンティブに対応したから今後も追加の措置があるべし」となって近い将来より一層のクレクレを行ってくるのが見え見えですし、まあ当然ながら市場の方がそうやって煽って追い立てる展開というのが出やすくなると先ほどのロジックを理解している(と思われる)円金利の人たちだって振らされる可能性は出てくる罠という話になるでしょうし、追加緩和ガーと言ってた人たちもそれ見たことかという話になるでしょうなあと。

つーことでですな、本来は淡々と「貸出支援関連措置が期限が来るので延長したのですが、皆様のニーズもあるようですのでこの機会に内容をちょっと充実させましたよ」という感じで軽く説明しておけば良いだけの話だったと思いますし、更に言えば2倍2倍に関してもまあ実際問題としては残高を拡大させたいから2倍という理由があったと思われますが、変に2倍の所がクローズアップされてしまうような見せ方をした(単に「3.5兆円を7.0兆円にしました」だけで良かったんじゃないですか)ので盛大に「2倍」が目立ってしまう結果になるという形。

てな訳で、今回何か妙に悪目立ちさせるような出し方をする事によって、特に最近目立っていた海外投資家の失望気味モードを解消させる事は出来ましたし、まあ株価もその日は盛大に上昇しましたし、クレクレタコラの皆さん大満足だったのでその場は凌げたと思いますが、まあどう見ましてもこれによって「何だ黒田日銀も市場が恫喝すればお土産が出てくるじゃないか」という話が出やすくなりますなあと思う訳で、融通無碍モードになったのかは実際の所良く判らんのですけれども、まあ傍から見る分には明らかに従来の姿勢が変化したと見られるリスクを盛大に高めるという動きをするとはどうしてこうなったという感じではあります。


○ロジックの整合性に混乱があるのも政策予見可能性を下げる訳だが

『(問)(前半割愛)2 点目は、今回の貸出支援関係の拡充です。去年の4 月にやれることは全てやるということで緩和を行ったわけですが、今回の措置は、いわゆる追加的な緩和策とみているのか、総裁の中でどういう位置付けで考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。』

そらまあ聞く罠。

『(答)(前半割愛)2 点目のご質問ですが、貸出支援等の3 つの制度について、それぞれ1年延長し、特に貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の2 つについては、大幅な拡充を図りました。この趣旨は、最初に申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」の実体経済への波及効果を強化するということです。金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みを促すということでかなり思い切った拡充をしたわけであり、そういった意味では、「量的・質的金融緩和」の効果をより強くし、より確実なものとするものであると思っています。』

「かなり思い切った拡充」とか言わなきゃ良いのにという感じですが、「「量的・質的金融緩和」の実体経済への波及効果を強化する」ってまんま麿時代の「量だけではだめで成長基盤強化が車の両輪」という話じゃないっすかねえ。


でまあ次にこんな質問が。

『(問) 貸出増加支援制度に関してですが、ステートメントにもあるように、金融環境は既に緩和状況にあって、銀行貸出も増えています。今回の制度見直しでどれだけ貸出が増えるのか、資金需要という面ではまだまだと思いますが、資金需要についてどのようにみていらっしゃるのか、ご所見をお願い致します。』

『(答) 最初に申し上げた通り、貸出は着実に伸びを高めていますが、こうした制度を拡充することを通じて、さらに貸出が増加していくことを期待しています。今回の公表文の別紙として「貸出増加支援資金供給等の制度見直しの骨子」が付いていますが、貸出増加支援資金供給について、金融機関の貸出増加額の2 倍相当額の貸付を行えるようにすることによって、今の制度の利用率と同程度という仮定で、最終的な貸付残高は30 兆円程度になると見込まれます。これは金融機関による貸出をかなり押し上げる効果を持つのではないかと思っています。』

うーんこのという感じでして、そもそもMBを拡大して異次元に長期国債を買ったら期待インフレが上昇して実質金利が低下して、実質金利の低下それ自体が資金需要を呼び起こすというロジックをQQE始まってから盛大に展開されていた訳ですが、この措置で貸出が伸びるんだったらそもそも国債の買入は異次元じゃなくても良かったんじゃないですかという話になりゃせんですかねえという気もする訳で、従来の話と違うだろヴォケちょっと副総裁室にいる置物出て説明してみろやオラオラオラという感じは非常にするのであります。

・・・・・・・・・てな話を某所の識者と話していたら、「そもそもそのような政策ロジックの整合性を気にする事自体が白い日銀に毒されている証拠である(キリッ)」って話ですなきっと(−_−メというようなネタで盛り上がってしまいましたが、確かにロジックの整合性も気にしないでその時々で説明に都合の良い話を展開するという逆さ絵おじさん(または前半の俊ちゃん)張りの展開だと思ってしまえばそういうものなのかも知れません(−−)。

ただまあ先ほどの話と被りますが、今回の施策のこのフレームアップおよび説明ロジックの混乱というか整合性の低下というのは、当然ながら今後の金融政策運営における予見可能性を低下させることに繋がりますので、まあ物理的に買入が一定量確定している長期国債市場は別かも知れませんが、予見可能性の低下即ちマーケットのボラティリティーを高める方向になると思いますので注意が必要ではないかと思います。


○2倍2倍に関して&0.1%4年の意味合い

昨日駄文でも申し上げましたが。

『(問) 2 点お伺いします。まず、貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の規模は2 倍、それからそれぞれ1 年間延長するということです。規模を2 倍にした根拠について、かなりアナウンスメント効果を狙っていらっしゃるという印象があるのですが、改めてお聞かせ下さい。(後半割愛)』

「かなりアナウンスメント効果を狙っていらっしゃるという印象があるのですが」ってそりゃ言われますがなという所で、まあ確信犯的にロジックの整合性から逃れて軟着陸モードを目指して融通無碍モードにするという狙いがあって今回の措置をフレームアップしたのであればそれはそれで作戦の一環だと思いますが、そうじゃなくて今回のフレームアップを実施したのであればちょっとやり過ぎにも程があるんじゃネーノという所ではあります。

『(答) まず1 点目の、貸出増加支援資金供給あるいは成長基盤強化支援資金供給について、前者は、貸出増加額まで貸付を受けられるというものから、貸出増加額の倍まで貸付が受けられるものにしました。また、後者は、総枠を3兆5 千億円から7 兆円と倍にしました。』

はいな。

『理由は、それぞれにあります。貸出増加支援資金供給の方は、先程申し上げたような形で大手銀行は相当活用している一方、地域銀行はまだそこまで活用していません。そういう中で、これを1 年延長し、その際にいわばインセンティブを一層強化するという意味で、貸出増加額の2 倍まで日本銀行からの貸付を受けられることにしました。また、0.1%の固定金利で4 年間借りられることで、金融機関としては金利リスクに対する耐性を強化できます。これによって貸出増加を相当程度支援しますので、この利用が進むだろうと思っています。』

ここの「0.1%の固定金利で4 年間借りられることで、金融機関としては金利リスクに対する耐性を強化できます」というのはまあしらっと説明していますが一番分かりやすい効果ではありますな(ただしALM上のリスクが落ちてもロスカットに抵触すればどうせ金利上昇局面での売り攻撃が出るのですけれども)という所です。

ただ、「これによって貸出増加を相当程度支援しますので、この利用が進むだろうと思っています」ってのは違うだろおいと思いますけどね。

『一方、成長基盤強化支援資金供給は、3 兆5 千億円という総枠が決まっていました。先程申し上げたように、貸出増加支援資金供給の方は総枠がないので、貸出を増やしていけば、いくらでも日本銀行から借りられますが、こちらの方はそもそも総枠が3 兆5 千億円となっており、現状それに近いところまで残高が来ています。そして、一部の銀行では1 行あたりのリミットまで残高が来ているということで、これを拡大する必要があります。倍に拡大すれば、おそらく十分なだけの拡大になるだろうと、こちらの方は総枠を2 倍にしました。』

まあこっちは何となくわかるが、1兆円にしたのは何だかなあ感はあって大手行優遇の香りがプンプン。

『従って、それぞれに2 倍にした理由があり、これらはいずれも貸出増加あるいは成長基盤強化に向けた日本銀行としての強い支援の姿勢、メッセージを含んでいるものとして決定したのです。』

えーっとあまりそれ強調しない方がとは思いますが、まあそういう政策の整合性とかそれは白麿だろとかそういう話を抜きにしますとアピール度は抜群だという事ですかそうですか。


○なお景気認識は妙に強い訳ですが

『(問) 2 点お伺いさせて下さい。1 点は、新興国経済の不安が再燃していますが、週末開かれるG20でどのような分析がなされ、あるいはどのような政策・対策が議論されるのか、見通しを教えて下さい。それからもう1 点は、国内経済についてです。消費税の増税まで1 か月強になりましたが、駆け込み需要とその反動に関し、これまで再三シナリオについてご説明頂いております。そのシナリオに狂いがないかどうか、改めてお聞かせ下さい。』

ふむ。

『(答) まず、1 点目について、国際金融資本市場では、現状、経常収支の赤字などの構造面での脆弱性を抱える一部の国において、神経質な動きがみられています。これら新興国では、当面、成長に勢いを欠き、不確実性も高い状態が続くとみられます。もっとも、米国をはじめとした世界経済の回復テンポが今後、増していく中で、やや長い目でみて、その好影響はこういった新興国経済および市場にも及んでいくと考えられます。』

うーむ結局大丈夫ということか。

『G20では、通常通り、世界経済の現状と先行きや、国際金融情勢について、活発な議論が行われると思います。その中では、新興国市場の動向についても、取り上げられることになると思います。そのほか、議長国のオーストラリアは本年のG20の目標として、成長と雇用を促進すること、経済の頑健性を高めることを掲げています。今回のG20では、こうした構造問題に対しても、11 月のサミットに向けて、どのように議論をしていくかについても、意見の交換が行われると思います。』

何か短期的な混乱の話が無いですな。

『2 点目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動については、先程申し上げた通り、駆け込み需要は、既に家計支出の一部で顕在化していると思います。例えば、住宅投資については、昨年秋までに契約ベースで発生した注文住宅の駆け込みが、若干のラグを伴って着工に移されてきています。また、乗用車や家電など耐久財の消費についても、このところ駆け込みの影響が強まってきているのではないかと思います。さらに、衣料品や雑貨などの耐久財以外の消費についても、今後、3 月にかけて駆け込みが発生すると予想されます。』

と来ましたが・・・・・・・・

『ただ、住宅投資の増加あるいは個人消費の底堅さの基本的な背景には、冬のボーナスの増額など雇用・所得環境の改善があり、先行きも、雇用・所得環境の改善が続く中で、住宅投資や個人消費は、こうした駆け込みとその反動という振れを伴いつつも、基調的には、底堅く推移するとみています。』

うーん堅調な話ですなあ。


○今年度実質GDP+2.7%(キリッ)って大丈夫なのか?????

『(問) 先程、GDPにつきまして、堅調な内需を背景に伸びが続いているとおっしゃられていましたが、今年度については、日銀の見通しである+2.7%を下振れるのではないかという声が多く聞かれます。その場合は、需給ギャップの改善が遅れる可能性もあります。このような見通しの下振れと、その際の政策対応について、繰り返しになるかもしれませんが、改めてお聞かせ下さい。』

さてこの質問ですが・・・・・・・・・

『(答) 最初に申し上げた通り、毎回、金融政策決定会合で色々な議論が行われるわけですし、経済・物価情勢を点検して、上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということであり、その点には全く変わりありません。従って、ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行うことになります。もっとも、今のところわが国経済は順調に推移し、日本銀行の経済見通しに沿って動いていると思っており、今の時点で+2.7%の経済成長が達成できないとは考えていません。』

えーそうなんですかねえという所ですが、これ意地の悪い見方をすれば、+2.7%の実質GDPが達成できないと見通し変更に繋がるので調整が行われる、とまあそういう見方をする事も可能ですので、こらまあ今後の定例会見でも同じような質問を繰り返して意地悪く詰めて行くように記者の皆様にはぜひお願い致したいものでありまする(^^)。

『先程申し上げたように、1〜3 月期は若干の駆け込みもあると思いますし、10〜12 月期の成長率でも潜在成長率を上回っていますので、GDPギャップはさらに縮んでいると思います。今後もGDPギャップは縮小していき、最終的にはプラスになり、物価上昇率あるいは予想物価上昇率を押し上げていくと思います。』

ほうほうそうですかそうですか。


○しつこく聞かれてやっと一部あばばばばーな新興国に関する話が

『(問) 2 点伺います。まず、前回の決定会合のステートメントのリスク要因のところで日本経済を取り巻くリスクについて多少上向きの判断をされた後に、米国の金融緩和縮小をきっかけにして、かなりマーケットが荒れました。』

ワロタ。

『今日の総裁のご説明でも中国なり米国なりASEAN等については前向きになっているという話がありましたが、最近問題になっているフラジャイル・ファイブと言われる国々については、米国の金融緩和縮小の影響が相当出るのではないかという懸念が拡がっていると思います。その点について、ある程度長引くとお考えなのか、それとも一時的なものですぐに戻ると思われているのでしょうか。(2点目割愛)』

でそのお答え。

『(答) 1 点目について、まず、米国の資産買入れプログラムが少しずつ縮小していくことの影響がどのように及ぶかですが、何が原因で、何が原因でないか、というのはなかなか言い難いと思います。前回の決定会合以降の状況でみると、一部の新興国・資源国の通貨や株がかなり売られたことは事実です。その後、そうした通貨や株も一部戻っているところもありますし、また、アジアの多くの新興国はそもそもそうした影響をほとんど受けていないので、一概には何とも言い難いということがあります。』

まあこれはこうしか言いようがない罠。

『それから、影響を受けた一部の新興国・資源国も、それぞれの経常赤字や財政赤字、インフレ状況などに対応して金融政策やその他の対応策を打ってきており、それらを含めると今後もまた同じようなことが起こるとも言えないと思います。他方でこういうことが起こったということは、そういうリスクはあり得るということを示したわけですので、十分によくみていく必要があると思います。特に、構造的な問題を抱えた新興国・資源国については、その市場の変動というリスクを考えていく必要があると思っています。ただ、全体として、前回の決定会合でみた海外経済の動向についての基本シナリオが変わったということはないと思います。』

うーんこれですと確かに懸念を示してはいるのですが、何かそんなにリスク認識という感じでは無いですなという所で、まー米国も日本も自分の庭先に火が点かない限り新興国のフラジャイル何とかが火を噴いても知らんがな状態であるというのは把握しました。


とまあそういう所で、金融経済月報(ただし経済物価部分全文一致)とFOMCミニッツ(まだ肝心と思われる所の斜め読みしただけ)ネタは本日はパスという所ですが、再度申し上げますと、今回このタイミングで打ち込んだ施策に関しては、日銀にその意図があったのか無かったのかは今一歩分かりかねるので、議事要旨でその辺に関する話がどう盛り込まれているかを見たいというかちゃんとその辺についての議論してるんでしょうね頼みますよという所です。なおこういう時に困るのはミニッツが出て来るのが遅い事なのだがこればかりは日銀法の建付け上次回決定会合(通常政策委員会ではない)での承認事項になっているのでどうしようも無いのですよね。

いずれにせよ、現象として出てきた事象を外野的に見た場合、黒田日銀の従来の姿勢の変化とか、政策ロジックの整合性低下というような解釈をする事が大いに可能な話でありますので、その点コミュニケーションポリシー的にどうなのかという風には思います。まあ確信犯的にやっているなら軟着陸に向けた融通無碍大作戦なのかもしれませんけどね!!





2014/02/19

お題「政策的な論点が拡散してしまった今回のMPMレビュー」

副題をつけるとすれば「この決定に関して置物副総裁の説明を求めたい」であります。

○景気判断は兎も角リスク認識も変わっていないのはどういう事でしょうか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140218a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140122a.pdf(前回)

景気判断に関わる部分のうち現状判断部分。

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)


景気判断に関わる部分のうち先行き見通し部分。

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)


リスク認識に関わる部分。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

注1というのは白井さんの謎反対でして、声明文のワーディングで反対するのだったら木内さんみたいに議案出してくれないと何の為に反対しているんだか意味不明にも程があるので議案を出せと思うのですが。


・・・・・・・・・・とまあこういう感じで今回の決定会合ですが見事なまでに景気判断、見通し、リスク認識共に全文一致となっていまして、ECBが先般の定例理事会で新興国市場の混乱が金融市場に与える影響について下方リスク認識を示したのと比較対照してみますと何とも認識がのほほんとしていますなあという所です。

で、この件については最初に決定内容見てから景気の部分を見て「何じゃこの全文一致は」という感想を持った人が(少なくともアタクシの知り合いには)多かった次第でして、せめて新興国市場関連のリスク認識について言及した方が良いんじゃネーノと思うのですけれども(見通し下方修正しろとはさすがに申し上げませんが)、今回は謎の目くらまし政策を打ちこんで何かやりました的なアピールをしながら景気判断も見通しもリスク認識も変化なしという「政策的に分かりにくい」決定になっておりますという所です。

まあ後で再度申し上げますが、こういう訳のわからん出し方って「白日銀」みたいなデジャビュ感が漂ってくる訳でありまして、まあそもそも今回出てきた施策が麿日銀時代の(当初は何かヤケクソで出した感もありましたが途中からは)麿ご自慢(かどうか知らんが)の包括緩和政策の両輪的な物件を大々的にだして来るという時点でどうなのよとも思います。

それは兎も角、注1の方を見たら白井審議委員は相変わらず『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、6.の記述に反対した。』と仰せのようですが、今回は普通に考えて一部の新興国などにおける金融市場の混乱などの今後の影響に関しての言及を入れるだろセンスねえなあと思うのでありました。

なお報道ベースによりますと、新興国市場に関するリスク認識を会見で総裁が言及したとのことでして、まあこれは会見テキスト出てからまたネタにしますが、声明文には示さないけれども会見で言及というのも何ともバランスの悪い話ですなあとは思う(日銀的理屈で言えばメジャーなリスクとしては認識していないので掲載していません、という事になる筈)のですけれどもねえ。

ちなみに英文の声明文でも当該部分は全文一致である事を申し添えます(引用すると長くなるので今回はパス)。


○さて今回の政策ですが色々とツッコミ所はある訳で

・またニバーイニバーイかよ!!!

なお丸八真綿さんのCMで高見山大五郎さんがという話をしても若い衆はポカーンとして自分の歳がばれてしまいますので注意しましょう(^^)。

『3.近く期限の到来する「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、規模を2倍としたうえで、1年間延長することを決定した(全員一致)1。』

『すなわち、「貸出増加を支援するための資金供給」については、金融機関が貸出を増加させた額の2倍まで、日本銀行から資金供給を受けられることとする。「成長基盤強化を支援するための資金供給」については、本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。また、両資金供給について、固定金利0.1%で4年間(現在は1〜3年間)の資金供給を受けられることとする。』

『日本銀行としては、こうした見直しが、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待している。』

まあ色々とツッコミ所はあるのですが、成長基盤強化貸出の残高内訳を見ると・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131129c.pdf
成長基盤強化を支援するための資金供給の実施結果

こちらにありますように、本則32,393.4 億円、ABL等特則1,035.9 億円、小口特則74.77 億円、米ドル特則7,368.9 百万米ドルとなっていまして、本則の方が枠をかなり使っている状態なのでそれを2倍にするというのは判るのですが、貸出増加支援供給に関して「貸出増加させた額の2倍」にする合理的な理由が全くもって意味不明としか申し上げようがなく、これは何なんでしょうという所です。

まあとにかく「2」を連呼してニバーイニバーイが昨年4月4日のキャッチフレーズだから2倍にしたかったんでしょうという話ではあるのですが、しかしどこをどう捻ってもこの貸出増加の2倍というのは銀行への飴玉以外の意味が判らん話ではありますがその辺のネタは後ほど。


・4年固定というのには意味がありますが

これ最初出た時に4年のLTROみたいな勘違いを誘発するような書き方になっているのが「見せ方が上手」と言ってしまえば上手なのですが、こういうのは誤認勧誘いやまあどうでもいいです。

声明文別紙の『貸出増加支援資金供給等の制度見直しの骨子(注1)』ですけどね(注1というのは「要綱に関しては次回のMPMで決定します」という事です)。

『1.貸出増加を支援するための資金供給
@ 受付期限を1年間延長する(注2)。
A 貸付限度額は金融機関の貸出増加額の2倍相当額とする(注3)。
B 貸付金利は4年固定0.1%とする。ただし、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認める。

2.成長基盤強化を支援するための資金供給
@ 受付期限を1年間延長する(本則、ABL 特則、小口特則、ドル特則)(注4)。
A 本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。対象金融機関毎の上限を1,500 億円から1兆円に引き上げる。
B 本則、ABL 特則、小口特則について、貸付金利は4年固定0.1%とする。ただし、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認める。』

従来は貸出増加支援については1年、2年、3年のどれかを金融機関が選択して、その時の適用金利は0.1%、エンドが来た時にトータルで4年になる所まではロールが可能(ただしこの時に貸出が減っている場合はダメ)で、その時の適用金利はその時の誘導目標金利(なお元々この制度できた時(基本要綱制定2012年12月20日)に誘導金利はバンドでしたので「現在は0.1%」としていまして金利誘導止めている現在もそれが生きている格好です)。従って0.1%確約の期間が1年延びた格好になっているのと、今回は貸出増加額の2倍という謎施策になっているという事です。

成長基盤強化に関してはABL等特則だけ2年で、本則、小口特則、ドル特則は1年となっていまして、最終的には同様に4年まではロール可能となっていましたが、適用レートはドル特則以外は先ほどと同様(つーかそもそも貸出増加支援の方が後から出来ています。こちら最初に出来たのが2010年6月15日)となっています(ドル特則は6か月リセットのLIBORベース変動金利)ので、今回こちらも0.1%確約の期間が長くなったのと、「1行あたりの限度額を大きく拡大」したことが目玉ですな。

つーことでですな、まあこれが4年に伸びたことと、「2倍借りれる(貸出増加支援)」だの「1行あたりの限度額拡大(成長基盤強化)」だのというのは大手銀行さんを中心とする人たちにとってはウハウハになる話ですな、ただし当該貸出が伸びれば、という前提が付きますが。


・4年とか5年とかの金利が下がるという話もありますがさて・・・・・・・

でまあ今申し上げましたように、これって大手中心に銀行さん(しつこく申し上げますが貸出が伸びれば)ウハウハとなり得る施策なのですが、これによってのメリットってファンディングが4年0.1%でフィックスできるという部分で、ALM的な意味で調達のデュレーションが伸びるのがポイントじゃねえかと思うのでありまして、まあ綺麗な言い方をすると将来の金融正常化の時に銀行の調達デュレーションを少しでも長くすることによって長期ゾーンの国債売却を抑制する効果がありますねという所ですが、意地の悪い言い方をすればこれって2年で2%達成の暁には将来的に金融正常化局面になる筈で、本当に来年の今頃に目標達成という事になっていればどう遅く見積もっても2年後くらいにはゼロ金利政策じゃなくなっているでしょうからその時にはこの4年固定借入がもうウハウハ状態になっていまして銀行に対する掴み金状態になってますなあという所でありまする。

なお、話が少々脱線しますが、そのような銀行ウハウハ施策を制定するに当たりまして、従来学者様でいらっしゃった際に「日銀は天下り先の銀行や短資などを優遇するインセンティブがあって金融政策がゆがめられている」などと大変に品のよろしいご批判というかただの言いがかりをしておられた方が最近は副総裁という名前の置物になっておられると聞いておりますが、その置物師匠におかれましてはこのような銀行優遇貸出制度に対して何故反対なさらないのか全く持って理解致しかねますので明快なご説明を願いたい物であります。

それは兎も角。

でまあ直接にこれで0.10%越えの金利の中期国債を買う、というよりは多分先ほどと同じ理屈で「ALM的に調達デュレーションが伸びる」という事になりますので、別に中期では無くてもこの分は国債を買いやすくなりますわな、という所なのでまあ(しつこく申し上げますが貸出が伸びれば)金利にもそこそこ効果が出るのかもしれませんし出ないかも知れません。


・貸出増加支援に関しての仕掛けについて

『(注2) 現行制度に基づく貸付は3月実行分を最後とし、6月実行分から新制度(1.A、B)に移行する。現行制度のもとでの貸付限度額の未利用枠は引き継がれない。新制度では、四半期毎の貸付限度額の未利用枠は次回以降に引き継がれない。』

ということですが、そらまあこれ固定4年で借りれるなら枠は温存して正常化が近くなる所まで引っ張る事になるでしょう(大体からして今は無担保コールで調達した方が安いから)となりますから、まあ次回に引き継げないというのは「オラオラお前らさっさと利用しやがれコノヤロー」という事でして、これによって金融機関が未使用の枠をドンドン使ってくれるといいですね(棒読み)という所です。


・成長基盤強化の1行あたりの限度額設定がどうなのかという点について

『A 本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。対象金融機関毎の上限を1,500 億円から1兆円に引き上げる。』

とありますが、現状の本則の利用状況は先ほど引用した
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131129c.pdf
の3ページを見ると

          貸付残高     貸付先数
大手行       11,563.6 億円  10 先
地域金融機関等 20,829.8 億円  109 先
合計         32,393.4 億円  119 先

となっていまして、地域金融機関等の方が利用額が大きくて貸付先も分散されているので、本来の趣旨に叶っていると思うのですが、上限をここで引き上げると大手金融機関が枠を使ってしまう結果になりゃせんかねという気がして、それって本来の趣旨的にどうなのかねという気がするんですが。

まあそうなったらなったで枠を増やせば良いという事なのかもしれませんが、何か制度の趣旨よりも残高を拡大したいという意向の方が前面に出ているように見えて個人的には釈然としない面もあるぞなという所です。どちらかというと地域金融機関による成長基盤強化融資に繋がるような施策になった方が良いような気がするんですがね。


・ところで貸出増加支援の30兆円の積算根拠は???

『(注3) 金融機関の貸出増加率と本制度の利用率が現状程度となるとの仮定で試算すると、本制度による最終的な貸付残高は30 兆円程度となると見込まれる。』

こちらは正直判らん。まあなんとなく「枠はその時じゃないと使えない」攻撃によって残高の拡大ペースは早まる(しつこいですが貸出が増えればの話ですけどね)かも知れませんけど。




○政策ロジックの混線に関して

・追加緩和では無いのですよね&今さら麿施策復活ですかそうですか

そもそも論として今回は最初に申し上げましたように景気判断も見通しもリスク認識も変えていないのですから、その中で金融政策に関して変更をするというのはあり得ない話でございまして、そういう意味では今回の施策は金融政策のフレームワーク的には緩和では無いという建付け。

しかしながら(詳しくは会見要旨が出てからまた悪態を申し上げると思いますが)今回は白川麿総裁時代の目玉施策を箪笥の底から引っ張り出してきてちょっと刺繍を施して「ほらこんな綺麗なおべべがありますよ」と仰々しくだして来るというのをして、まあ追加緩和と勘違いしてくれればそれで良しみたいな見せ方になっておりまして、何だかなあという感じであります。

いやね、貸出が伸びないと意味がないのはその通りなのですけれども、それって元々麿総裁時代のロジックでして、そういう麿理論をケチョンケチョンにしていた筈の置物副総裁におかれましては今回の施策に関してご説明を頂きたいと思うのですよねえ。


なお、MBの目標は変わっていませんので、「仮に日銀の目論見通りに」成長基盤と貸出増加支援が伸びて来ると、その分短期のオペが減る、というか運営が楽になるので、月曜に1年新発4bp割れとかいうエクストリーム金利になっていた短国金利がゼロだのマイナスだのに突っ込むリスクが少しは下がるかもしれませんねとは思いますが、まあそもそも貸出が伸びなければ意味ないですけどね。


・フレームアップの仕方が麿状態になっている点の落とし前をつけてほしい件

まあそもそも今回の施策は6月末に期限が来る施策を延長するのに際してちょっと色を付けてみました程度の話でもあるのです(ただしこれ本当に出口が直ぐに見えてくるようになったら金融機関に対してウハウハ効果を発揮します)が、さてそれをどういう見せ方をするかという話なのですが・・・・・・・・・

『日本銀行としては、こうした見直しが、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待している。』

と声明文にはあるのですが、はてさてどうなんでしょという所でありまして、会見を報道ベースで見た感じでは、結構「どうだ凄いだろう!!」という感じで見せていたように思われます。

・・・・・・・・えーっとですな、それはそれで本来はそういう話だと思うのですが、そもそも異次元緩和政策というのはMBを拡大すると期待インフレが高まって実質金利が下がることから資金需要が発生する、という理屈を展開していた筈でありまして、MBの目標を変えないのに貸出支援関連のオペを手直しすると「企業・家計の前向きな資金需要の増加」が起きるというのはどういう事でしょうか。

貸出に直接働きかけるような政策を打ってそもそも効果があるのか(日本の場合は別に金融機関サイドに貸出が伸びないボトルネックがある訳では無い)という話もありますが、それはそれとしましても、当初は「MBを異次元に拡大すると実質金利が下がって色々と上手くいく」という木久扇師匠の超越理論をベースにして説明していた筈で、今回の施策をフレームアップし過ぎると今までの話はナンダッタンダという事になる訳でして、それは政策ロジック的に如何なものかという感じはします。

#なお念のために申し上げますが、あたしゃMB増やせばすべてうまくいくとかいう理論を信じている訳では無くて、麿理論の方がまあ本来の話で、ただ麿の問題点は気合とハッタリが足りなかったという所だと思うのですので、方向性として今回の方がまあオーソドックスでしょと思いますが、これまでとの整合性を問うている次第

#特に置物副総裁におかれましては「MB増やして長期国債買って期待を転換してインフレ期待を高めれば実質金利が下がるので資金需要が発生する」という話を展開していましたし、それまでの麿日銀をケチョンケチョンに言っていた訳でして、その辺の落とし前というのをちゃんとつけて頂かないと心情的に全くもって釈然としない所ではあります

まあいずれにせよ、この施策をフレームアップし過ぎると「逐次投入」的な印象を与えることにもなりますし、さてどうなんでしょうかねえという気はしますけどどうなんでしょ。


○他にも突っ込みネタがあるような気がするが時間がががが

ということで続きは明日なのですが、本来淡々と延長すれば良いだけのネタをわざわざ着飾って「ほーれほれ」と見せつけて市場にアピールする、というのが何ともこうインチキというか狸的な所でありまして、黒日銀は「退かぬ、媚びぬ、振れぬ」という感じだったのがちょっと腰が砕け気味になってきたなあという印象を与えるのでありました。こりゃ市場が恫喝すると何か出るという期待は高まるだろうなあとは思うのでありました。

続きは会見要旨と共に明日。




2014/02/18

お題「虫干しネタ引用大増量企画とただの雑談ですいません」

どもども、お久しぶりです^^;

○超今さらですがECBドラギ会見:ドラギ総裁の歯切れの悪い大演説とな

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140206.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 February 2014

えーっとまあこちらですけどね。Introductory statementの方ではちょっとサービスっぽい言い方(新興国市場からの金融市場への影響懸念とか3月になるとデータが揃うとか)をしているのですが、ネタにしてなかったドラギ総裁のコメントの方は歯切れが悪い悪いというのを今さらですがメモにしておきます。二つ目の質疑応答から。

『Question: I noticed you said that the January inflation numbers came in lower than expected. So, I am wondering, if next month’s inflation number comes in at the same level as for January, and is again lower than expected, would that be reason enough for the ECB to act and cut interest rates? And a second question on ending the sterilisation of bond purchases under the SMP: was that discussed and under what circumstances would you end sterilising?』

1月の物価は予想より低かったという話ですが、来月もダメなら金利下げる理由になりますよね?というのと、債券購入プログラムの非不胎化は選択肢にならんのかという質問。

『Draghi: I will answer the second question first. It is one of the many instruments that we are looking at. It is not being discussed. We had a broad discussion about all the instruments. But let me say that the relevant committees of the ECB have been studying all these measures, so that by the time, and if, we decide to activate the measures, we are ready to go. What instruments we decide to activate will depend on the contingencies we have to face. And the two contingencies that I mentioned are really an unwanted tightening of the monetary policy that comes from the short-term markets and gets propagated to the long term and/or a worsening of the medium-term outlook for inflation. 』

でまあ非不胎化の方は選択肢としてはございますが、特定の選択肢として検討した訳ではなく、多くのツールについて検討したという事のようですが、重要な注目ポイントとして説明しているのは二つで「適切では無い金融市場のタイト化が起きて市場金利が不適切に上昇しないように」という話と、「中期的なインフレ見通しが悪化しないように」という話のようで、まあこれが話のマクラみたいになっています。

『On your first point, the question is what does a worsening of the medium-term outlook for inflation mean.』

で、利下げ云々の質問で前振りの説明キタコレ。

『Well, we have to ask ourselves what are the reasons for such an event. By the way, incidentally, we have acted in November already. We took action and now we are witnessing some of the responses of both financial markets and the real economy to that action. Of course, it is going to take a relatively long time for interest rates to propagate their action to the economy.』

どうもここでいきなり歯切れが悪くなるのですが、11月に利下げしたので今はその効果を見たいという言い方で、物価がどうのとか3月にデータが揃うとか言ってた最初のステートメントから見ると随分とトーンダウンですな。

『Let us ask ourselves what are the causes of such behaviour of inflation. First of all, we have to dispense once more with the question: is there deflation? And the answer is no. There is certainly going to be subdued inflation, low inflation for an extended, protracted period of time, but no deflation.』

物価上昇率は低水準にとどまっているがデフレでは無いとな。

『The inflationary expectations continue to remain firmly anchored and we do not see much of a similarity with the situation in Japan in the 1990s and early 2000s. If we look at the definition of deflation, that is a broad-based fall in prices, self-feeding onto itself and happening in a variety of countries. We do not see that. Just to give you another piece of information: during the period of deflation in Japan, over 60% of all commodities experienced a decline in prices; the percentages for the euro area average are much lower.』

日本を例に出すとなという感じですが、インフレ期待がアンカーされている点と、広範な物価低下が起きていないという点が日本のデフレーションとは違いますという話だが、それって一旦起きると粘着性が高いのでおしマイケルなのですけれども「今起きてないから大丈夫」という理論はそれただのおためごかしじゃねえのかと。

『We should also put these figures into perspective. First, if we look at low inflation rates in the euro area now, they are not much lower than those in the United States, with a recovery there, which is way more advanced than that in the euro area. Second, if we look back, we see that inflation following the previous two financial crises, the Asian crisis at the end of the 1990s and the 2009 Lehman Brothers crisis, was about the same. So, this gives some perspective.』

現状は米国よりも物価上昇は高いし、経済は回復しているし、その一方で以前の金融危機後も物価は堅調でしたから大丈夫というのも何というかもう屁理屈にしか読めんが。

『I am not saying this to ignore the risk of having low inflation for a protracted period of time. It is quite clear that, first, adjustment with low inflation is more difficult, and second, the very fact of having low inflation for a protracted period of time is a risk in itself. So, it warrants close attention by the ECB.』

こんだけ屁理屈こねておいてリスクを無視している訳では無い(キリッ)というのも何だか。

『If we look, however, at the causes of this low inflation, we see that, primarily, it is driven by food and energy prices. The second cause might be weak demand and high unemployment.』

ほほう。

『Now, as we have seen over the last few months, there is a modest recovery that shows more encouraging signs. We see that the demand side is getting stronger, not weaker. As I have said many times, we have to be extremely cautious with this recovery, because it is still fragile, it is still uneven and it is really starting from low levels of activity. But, so far, it is proceeding.』

脆弱ですがとか言いながらも経済は回復していますという方向の説明が目立ちますな。

『We also ask ourselves whether there is any evidence of people postponing expenditure plans, which is something you would watch in a deflationary environment. And we do not have any evidence of this at this point in time. We see that consumer confidence is actually rising and that savings rates have been stable, at least until the third quarter of 2013, which is the latest data we have.』

『But, it is a complex picture because, on the other side of the scale, we see that the increases in value added tax rates have not been passed through in Italy or, so far, in France. And we have seen that the figures for retail sales over Christmas were not encouraging. So, this shows that, even though we have gradual signs of recovery, the pricing power of firms is still weak. Then, when we look at supply, we observe that much of the adjustment, much of the decline in core inflation, actually comes from the four programme countries: Spain, Ireland, Portugal and Greece. All in all, this would signal more of a relative price adjustment than of a deflation phenomenon.』

ああだこうだと説明は続く。

『So, I have tried to give you a sense of the complexity of the picture, which would explain why, before taking any decision today, we would wait.』

とまあそういう事で、結局の所色々な状況を見ながら総合的に判断するのに対してまだ状況は複雑なので今回は待つことにしましたという話なのですが、その前の説明が上記のようにクソ長いという時点で、まあ大体こう色々と決まっていないというか意見がバラバラなのか利下げしてもその次のタマが無いので躊躇しているのか、まーそんな感じなのでしょうなあというのは判るのですが、次の質問がワロタ。


『Question: Back to inflation, even after your lengthy explanation. You mentioned taking more time, you mentioned in the introductory statement further information and analysis being available in early March. Is that an indication that maybe you’re postponing action, that you are postponing additional stimulus, rather than just deciding not to do it today? And what kinds of things should people who follow the ECB be looking at to see if your medium-term outlook on inflation is changing?』

ワロタ。

『And my second question is on quantitative easing and some of the comments that you made in Davos. You mentioned the prohibition against monetary financing and that the ECB does not have bond purchase plans like the Fed, the Bank of Japan and Bank of England. Why is buying government bonds for monetary policy purposes monetary financing?』

量的緩和はしないのかという質問も。

『Draghi: The reason for today’s decision not to act s really to do with the complexity of the situation that I have just described, and the need to acquire more information. In this sense, today’s instance is different from what we had in November. Now, in what sense is it different? The macroeconomic projections by our staff, which will be coming out at the time of our monetary policy meeting in March, will contain, for the first time, forecasts for 2016, and that is a very significant change in our analysis, a significant change in the information set that we use for our analysis.』

つーことで3月にスタッフの見通しが出るのは「very significant change in our analysis」であり、「significant change in the information」らしいのだがそれって何か理屈的に変な気がする(別にそれ待たないでも委員が決めれば良いじゃんと思う訳で)。

『The second factor that led us to reflect is that when we look at monetary and credit developments by year end, which look subdued - although they are stabilising, especially the credit flows - we believe that, and we think we have evidence that, these figures are affected by banks’ behaviour in view of the asset quality review (AQR) performed by the ECB in the course of 2014, because the data upon which the AQR is going to be performed are data for year-end 2013. So, one would not rule out a certain behaviour by the banks that would like to present their best data by the end of 2013, which means that this is going to affect credit flows, which means that we may have different figures in the coming weeks about that.』

マネタリーとクレジットのフローが改善してきているとな。

『The third reason is what we briefly touched upon before, which are the developments in the emerging market economies, and there the need is to look through this recent high volatility in these economies, in all parameters of these economies, and see whether this is a temporary phenomenon or something that is going to stay with us for some time. Clearly the consequences for world growth and world development are different. And also, the breadth of this weakness in emerging market economies is not clear yet. So we will need further analysis.』

新興国市場の影響を確認したいとな。

『Finally, there is another piece of information which we don’t have yet and which is going to come out probably next week, and that’s the GDP figure for the last quarter of 2013.』

GDPが来週出ますってうーんという感じですな。

『But, having said that, as I have said several times we are willing to act and we stand ready to act. We confirmed our forward guidance, so interest rates will stay at the present or lower levels for an extended period of time.』

フォワードガイダンスを確認しました(キリッ)という事で、はあそうですかという感じですな。

『We should also say a few words on the effect of the AQR on lending. It is pretty clear, also in view of what I have just said, that banks, in view of the AQR, had carried out some deleveraging, also in some cases significant deleveraging. And so the short-term consequences of the AQR are that banks have to clean up their balance sheets; they know that we will shed light on what is in their balance sheets, so they want to be presenting balance sheets that are clean, and this has a negative effect on credit. But, in the medium to long term, which is now, because the data are from 2013, the AQR will be positive for lending, because it will increase the confidence in the banking system, it will reopen capital markets for banks, as we are already seeing, and it will cause what supervisors call “prompt corrective action”, namely raising capital standards, provisioning and so on. And we are already seeing this by the way, and we are welcoming this action that takes place even ahead of our AQR. All this means that in the not too distant future we will have a more resilient banking sector capable of lending more than it would if the AQR had not been there. We tend to forget that basically concealing the evidence of the banks’ balance sheets, preserving their opaqueness, doesn’t help lending - it in fact hurts lending, so that is the other factor.』

AQRということで、聞かれもしないのにアセットクオティーレビューつまり銀行の資産査定に関しての説明までおっぱじめていまして、何と申しますかああだこうだ話を拡散させて何が何だか判らない感じにしちゃっていまして、ドラギ総裁忍法煙巻きの術という感じでありまする。

なお、量的緩和に関する説明はこうなっていまして・・・・・・・・

『And finally, what I said, what I hinted at in Davos: asset-backed securities (ABS). We think that a revitalisation of a certain type of ABS, a so-called plain vanilla ABS, capable of packaging together loans, bank loans, capable of being rated, priced and traded, would be a very important instrument for revitalising credit flows and for our own monetary policy.』

ということで、ABSの中でもプレーンバニラの物件に関しての買入は検討みたいな話ではあるのですが、これはどちらかと言えばBOEのFLSちっくな貸出市場の活性化話なので、あまりこう「量で勝負」という話にはならないと思われます。まだマイナス金利の方が可能性ありそうですが、実際にやると量的収縮になりそうなのでまあそういうオッペケペーな自爆はしないで欲しいと思いますけどね。

『Incidentally, our own monetary policy is also going to benefit from the AQR because, if the bank lending channel works, we will see interest rates translating themselves into lower lending rates.』

とありますように、AQRの説明が先ほどあったのはAQRで銀行の貸出チャネルがワークするのに助けになるというような話をしておりまして、それにより貸出金利が下がるのに期待みたいな話をしているのも、まあ金利で勝負という話の流れになると思います。

なお、その次の質問ですが・・・・・・・・

『Question: Let me try and rephrase that question. Do you have any concerns at all about the legality of quantitative easing via government bonds in the euro area? And my second question is on the ABS. You have repeatedly spoken of this, and it was not the first time you mentioned this in Davos. I just wonder what time frame are you speaking about? How quickly can we create such a market? Is this something that could happen during the course of this year or would it take five years? And a question about your debate again: were any of the Governing Council members pushing for a rate cut this month?』

また質問が同じなのですが、量的緩和に国債購入の可能性は無いのかという話と、ABS買入の話って前から出ていた筈だがフレームも何も出ていないのはどういう事やというのと、利下げの検討しなかったのという再質問。

『Draghi: On the last question, there was a broad discussion where all instruments of monetary policy were talked about. But most, if not all, of the discussion was focused on examining the additional need for information and the uncertainty. That is the key substance of the discussion the Governing Council had.』

利下げ検討云々に関する説明はまあ歯切れ悪いですな。

『On your first question, I have said repeatedly and I continue to say, that in our pursuit of our mandate of maintaining price stability, all the instruments that are allowed by the Treaty are eligible. There is no issue of legality. And at the same time the Treaty forbids monetary financing. So we know what is eligible and what is not eligible. I focused on ABS, on private sector assets, because we have to focus on the bank lending channel. But this does not mean that other assets are not eligible, provided this does not violate the monetary financing provisions: if I am not mistaken, it is Article 123 of the Treaty - it is not hard to remember. Again, the key thing is that it is in order to pursue our mandate of maintaining price stability, and I think we have to keep this in mind.』

でまあ他の質問に関してですが、国債買入自体は可能だけれども財政ファイナンスはしませんよという辺りに量的緩和のやる気なさを受けますな。ABSに関しては貸出にフォーカスした部分なのでって話みたいですな、うんうん。

ということで延々と引用しましたが、良く良く見るとまあ何というかABSの辺りとか量的緩和の辺りに関しての説明は割とかっちりとしているのですが、物価に関する説明が大演説の割には結局何を言いたいのかが微妙という内容で、こら中々ムツカシヤだなという感じです。



○その他雑談

・1年TBが何か強いようですが

昨日の1年TB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140217.htm

(3)募入最低価格 99円96銭1厘 (募入最高利回り) (0.0390%)
(4)募入最低価格における案分比率 82.1480%
(5)募入平均価格 99円96銭1厘 (募入平均利回り) (0.0390%)

・・・・・・・・・えーっと何ですかこの4bp割れというのは。

先週の3MTB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140213.htm

(3)募入最低価格 99円98銭9厘5毛 (募入最高利回り)(0.0421%)
(4)募入最低価格における案分比率 64.3961%
(5)募入平均価格 99円98銭9厘7毛 (募入平均利回り)(0.0413%)

まあ先週も5bp割れですし、金曜の短国買入も引き続き2兆円攻撃ではありましたからというのはありますが、何ちゅうか休みだったので良く判らんが日銀買入攻撃とその他の買い要因でアホのように強いというのは把握した。

・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

ここからデータを落として来ると、都市銀行、外国銀行、信託銀行、その他当座預金取引先(準備預金非適用先)の超過準備が拡大ということで、1月積み期間は自然体での資金は自然体で減って居る中で日銀買入攻撃の影響での当座預金残高拡大がという感じだったように見えますな。よーわからんけど。


・決定会合プレビューというか何というか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N14UVF6S972U01.html
ロンドン外為:円が下落、日本の成長が予想以下−ポンド高い
更新日時: 2014/02/17 18:26 JST

『2月17日(ブルームバーグ):ロンドン時間17日午前の外国為替市場で、円は下落。日本の国内総生産(GDP)成長率が市場予想を下回ったことで、日本銀行が緩和策を強化するとの観測が強まった。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・えーっとですな、多分この程度で追加緩和をする位ならもっと前に実施してますってという風にしか思えませんので今日の黒田総裁会見に注目とかコメントも某モーサテでもあったのですが、んなアホなという感じなのですが休みだったので良く判らんのでパス。

しかしまあ何ですな、休み前に申し上げたように師匠が金融政策の理論と解説という点で屁の突っ張りにもなっていないという所で、まあ内部管理とか海外中銀との連携とかそういうのが出来るタマでは無いのは端から明らかとしか申し上げようがない中で、あの金懇はもう何なんでしょうか(と書いたつもりが悪態成分足りないとのご感想も頂戴しまして^^)という状況なので、黒田総裁が説明に関してはオンパレードで、まああの感じですからど〜見ても今の気合だ気合だ攻撃が続くだけだと思います。

#ということで虫干しネタと雑談でどうもすいません




2014/02/10

お題「市場メモ/ECBネタの続き/師匠の会見を鑑賞する訳だが色々とアレ/事務連絡です」

都知事選1秒で当選確実キタコレは順当にも程がありましたが、さて禿先生におかれましては新党改革の政党助(以下自粛)。

で、2位以下っつーかウツケンさんとタモさんの票の入り方にも味わいがありますな。
http://www.asahi.com/articles/ASG294JLLG29UZPS001.html
舛添氏、高齢層から圧倒的な支持 都知事選出口調査分析
2014年2月9日20時42分

○市場メモをば

・短国買入は2兆円とな&2年が0.075%とな

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140207.htm

国庫短期証券買入 20,000 2014年2月12日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年2月12日
国債買入(残存期間10年超) 2,000 2014年2月12日

短国買入2兆円で来やがりましたか・・・・・・・・・で結果。

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140207.htm

国庫短期証券買入 44,862 20,009 -0.004 -0.002 13.2
国債買入(残存期間1年以下) 4,953 1,105 0.000 0.000 89.2
国債買入(残存期間10年超) 5,656 2,003 0.023 0.029 26.6

GCレートが低い状態になっている中でしたので、オペ結果は順当に強い結果という話になりまして、2糸強の平均で足切りは4糸強という結果でまあ強い罠・・・・・と思っておりましたら金曜日は2年とかのゾーンが軒並み強くなりやがりまして、0.075%が引値になっていますが多分普通にビットサイドという感じで、何か知らんが投資家買いキタコレという様相で、まあ短期の所ですから銀行さんじゃネーノと思うのですけれども、政策的な思惑云々では無くて物理的に短国の買入が市場のキャパ的にあじゃぱーになっている中で玉無し芳一という素敵な展開になっているという所でしょうなあ。

つーことで何か短い所が盛り上がって(というか別に金融政策に対して何かポジションテイクしている訳では無く、単なる需給逼迫だから盛り上がるというよりは盛り上がる感じですが)参りましたという所ですな、ナムナム。



○ECBネタの続きであるが会見ネタはパス

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140206.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 February 2014

つーことで「Introductory statement」の第3パラグラフ(なお第1はご挨拶なので実質第2パラグラフです)から参ります。

・景気に関する話は割と普通というかカワランチ会長

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Following two quarters of positive real GDP growth, developments in recent data and surveys overall suggest that the moderate recovery continued in the last quarter of 2013. Looking ahead, our previous assessment of economic growth has been confirmed.』

つーことで景気の見通しはコンファームされているそうな。

『Output in the euro area is expected to recover at a slow pace. In particular, some improvement in domestic demand should materialise, supported by the accommodative monetary policy stance, improving financing conditions and the progress made in fiscal consolidation and structural reforms. In addition, real incomes are supported by lower energy price inflation. Economic activity is also expected to benefit from a gradual strengthening of demand for euro area exports. At the same time, although unemployment in the euro area is stabilising, it remains high, and the necessary balance sheet adjustments in the public and the private sector will continue to weigh on the pace of the economic recovery.』

この辺の話はまあ毎度同じという感じになっています。


・リスク認識に新興国の金融市場の影響を挙げる

『The risks surrounding the economic outlook for the euro area continue to be on the downside.』

でまあリスクはダウンサイドというのも同じですけど。

『Developments in global money and financial market conditions and related uncertainties, notably in emerging market economies, may have the potential to negatively affect economic conditions.』

つーことでリスクの筆頭に新興国市場の話でして、金曜にご紹介した実質最初のパラグラフに金融市場の不確実性がどうのこうのとあったのはやはり新興国市場絡みでしたぞなもし。

『Other downside risks include weaker than expected domestic demand and export growth and slow or insufficient implementation of structural reforms in euro area countries.』

これは毎回言ってる話なのでまあさいですなという感じ。


・物価に関しては「今の低迷はエネルギー要因でそのうち戻る」ですけど・・・・・・・

まあそう言っておかないと直ぐに追加緩和という話になりますからねえ。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.7% in January 2014, after 0.8% in December. This decline was mainly due to energy price developments. At the same time, the inflation rate in January 2014 was lower than generally expected . On the basis of current information and prevailing futures prices for energy, annual HICP inflation rates are expected to remain at around current levels in the coming months. Over the medium term, underlying price pressures in the euro area are expected to remain subdued. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』

ということで基本的にはインフレ期待はアンカーで足元の弱さはいずれ戻るという話ではあるものの、 足元で見通しよりも弱い推移という話をしてますな。

『Both upside and downside risks to the outlook for price developments remain limited, and they continue to be broadly balanced over the medium term.』

物価のリスクは相変わらずバランスなんですよね。でまあマネタリーの所ではローンの伸びが弱い話をしておりまして、ユーロエリアのフラグメンテーションの是正が重要という話をしていますが割愛します。

まあ総じてあまり大きな変化が無いのですが、足元の物価推移の弱さと新興国市場の懸念について言及している点、今日は引用しませんでしたが冒頭の所にある「3月の頭になると色々とデータが揃うので見通しを整理する」という辺りに何となく追加政策の雰囲気も漂わせるという感じは見せているのですが、ただまあ基本的な部分って同じなのでどうとでも取れるステートメントで、ではその後のドラギ先生のベシャリーヌはどうなっているのかというのがございますが師匠の会見の方が面白い(ただし政策インプリケーションという意味では無く落語鑑賞として面白いだけですが)のでパスという事で。

#誰ですかまだ全部読んでないからネタにしないんだろというツッコミをするのは!




○師匠の会見であるが政策インプリケーションは皆無だが落語としては中々秀逸

さあ満を持して師匠の会見ですよ!と言いたい所ですが・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402a.pdf

・まあそもそも講演が想定問答集棒読みみたいなもんでしたから

でまあ会見なのですが、表題の所がこうなっておりましてですね。

『岩田副総裁記者会見要旨
―― 2014年2月6日(木)
午後2時から約30分
於 宮崎市』

>約30分
>約30分
>約30分

・・・・・・・・・・・でまあテキストの方も9ページに過ぎない訳でございまして、もっとこう会見で鬼のようなツッコミが来てタジタジとなる師匠という図にでもなるのかと思ったのですが、まあ講演の方が金曜に申し上げましたように、何ともまあ想定問答集を編集して棒読みしたかのような代物で、師匠のオリジナリティーが感じられない(10月の中央大学での講演の方が遥かに師匠謹製っぽいテイストを醸し出していた)という所で、今回はそのテキストから醸し出される棒読み感が効いてしまっておりましたなあという所ですかそうですか。

ま、確かに当座預金残高の定量的なお話とかそういうのが講演テキストにあればまあ質問のしようもあるのですが、何もない中で質問しても「いや今回その説明は行っておりませんので特段お答えしませんよ」で終了されそうな所でもありますもんね!!!!


・ハト派追加緩和的な答えを引き出そうと思って質問しているものの・・・・・・・

『(問) 市場では、消費増税後の追加緩和観測が広がっているようです。副総裁は増税後の追加緩和が必要になる可能性についてどのように考えられているのでしょうか。』

師匠一派の皆様が揃いも揃って消費税増税に反対して、増税しろと黒田総裁が言うのだから責任もってプリエンティブに追加緩和をしろ位の勢いでお話が出ていた(本田先生とか浜田先生とか)訳ですからまあこういう質問でジャブを打ちたくなりますな。

『(答) 講演でも申し上げましたが、日本銀行は、2 年程度を目途にして出来るだけ早期に2%の物価安定目標を達成すると申し上げており、そのシナリオは順調に現在まで続いていると思いますので今の政策を続けていくのが基本です。ただ、経済では将来色々なことが起こり得ますので、上下双方のリスクに対しては適切な政策をとっていく姿勢に変わりがないということです。』

どう見ても想定問答集棒読みです本当にありがとうございました。

『(問) 新興国経済の不透明感に端を発して市場が動揺していますが、足もとのマーケット動向をどう受け止めていますか。また、日銀が描く景気回復シナリオに影響はありますか。』

この答えは長いのですが、これまた想定問答の話をしている感が満載で、師匠ならではの見方を示して何か話をするのかと思えば全然ない所が泣ける訳でして、1年日銀におられてすっかり以下不穏当文言の為自主規制。

『(答) 先月末頃から金融資本市場が少し動揺しているということですが、その原因はもう少し分析してみないとはっきりはわかりません。私は基本的には、米国の経済指標が予想よりも少し悪いということ、あるいは、中国でもちょっと弱い指標が出てきたこと等が投資家のリスクテイク姿勢に影響して、少しリスクオフになり、そのことが、金融資本市場の動揺を生んでいると思っています。』

せめて新興国で通貨があばばばばーになっている国の話をして欲しいのですが。

『米国の量的緩和縮小の影響に関しては、量的緩和縮小は、昨年12 月にFOMCで決まっていますので、市場が動揺するのであれば、そのときから動揺しているはずです。』

なるほど実際の量は関係ないと。

『先月末から金融市場が動揺しているのは、むしろ米国や中国の経済指標が悪いので「大丈夫かな」と投資家が少し不安になっているということだと思いますが、米国の経済指標が少し弱い部分は、寒波が大きい要素だと思います。米国の実体経済が急に何か悪くなることはやはりあり得ないので、何か突発的な他の要因があったと考えるのが普通だと思います。』

うーん言いたい事は分からんでも無いが何をテーマに話をしているのか不明瞭ですなあ。

『米国経済は、順調に回復してくると思います。米国経済では、消費と住宅投資が非常に重要な要素です。これが上向いている原因、あるいは長期的にも堅調に行くだろうという原因は、家計の過剰債務が解決しつつあることだと私は見ています。米国の消費や住宅投資は堅調であり、米国経済はそれほど心配ないと思います。日本の経済政策、金融政策に関しては、今の立場を堅持していけばいいと思います。』

ということで、質問としては新興国市場の動揺に関しての話だったのに米国経済の話を延々としておられるという中々豪気な質疑応答でございまして、恐らくは上の方にあるECBのステートメントのような話を聞きたかったと思うのですが、全力で質問のポイントと違う話をするという時点でもう何だかねという感じで、想定問答集読むのは結構なのですが読む箇所が違いやしませんかねなどとは全く思っておりません(棒読み)。


・物国BEIの話をするのは恥ずかしいので止めた方が良いと思います

債券市場関係者の腰が盛大に砕けたヘッドラインが出ていた部分。

『(問) 2 点ございます。(1点目割愛)それから、期待インフレ率を示すBEIについては、16 回債と17 回債でちょっと動きが変わっており、16 回債は、今年に入って突然上がり出して、17 回債はここ数日急落しております。これをどう解釈されているかお聞かせください。』

ちなみに17回債というのが今年度に発行復活して10月1月と発行されたブツで、16回というのはその前のブツで、リーマンショックやら何やらで発行停止する前の最後のブツで2018年6月10日償還ですから残存はもう4年4か月位しか無いやつね。

で、このBEIに関する答えがクソ長いのですが色々と香ばしいので観賞しませう。

『(答)(前半割愛)それからBEIに関するご質問は、5 年物と10 年物との違いということだと思います。10 年というのは少し長く、そんなに長い予想というのはちょっと無理なところがあって、5 年くらいのスパン、あるいはもっと短いところから5 年くらいの指標の方を、私自身は重視しています。』

えーっとすいません、新発発行しながら既発のバイバックをドンドン進めているのでそもそも16回債から手前の銘柄に関しては指標性という意味は凄まじく薄れていると思いますし、もっと短いところとなりますと確か1回債(今年の3月10日償還)のBEIとか900bpを軽く超えるのですけれどもまさかそんなのを重視しておられるのでしょうか。

つーかですな、そもそも順当にいけば2018年6月までの間に消費税がトータルで5%は上昇する筈で、これがCPIに3分の2効いてくると仮定してそれを4.25年で割ると78bp位になるという計算になりますけど。

『最近、これが非常に順調に実は上がっています。いつ頃から順調になっているかというと、これは昨年12月中頃からです。2%くらいまで上がってきていますが、昨年5 月下旬にだいたい1.8%くらいであった。』

2%くらいまで上がってきています(キリッ)との事ですがうち80bp位は消費税増税要因になりますし、昨年5月下旬から見て上昇したと言われましても、消費税増税転嫁相当分が単純に残存が0.75年ほど短くなった分だけでも12bp位効いてくると思うのですけど。

『ご指摘のあった10 年物、17 回債のように短いデータでは、何が要因でこうなっているかというのは経済的に分析するのは難しいです。』

新発債の場合は経済的に分析が難しいとはこれまた画期的。他に何もないのなら分析できないけど既発があって今回新発が出ているのですからカレントが変わったとも言えますし、期間構造の問題を加味すれば良いだけの話じゃないですかねえ。

『5 年物は、2009 年6 月頃から最近まで長いデータを得られます。このデータを用いて、予想インフレ率がどのように変化しているのかについて、最近、分析しました。就任前から申し上げているように、マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定してあることが確認できました。』

>マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定してあることが確認できました
>マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定してあることが確認できました
>マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定してあることが確認できました

すいませんどの辺の数値を使って分析をするとどのような計算式で安定的な関係を示しておられるのでしょうか????

『ただ、予想というものは、色々なことに影響されます。例えば、日本銀行がインフレ目標にどれだけコミットしているかを市場がどう判断しているか、というようなことが影響します。』

ほほう。

『例えば、昨年の1月末の政府と日本銀行の共同声明において、日本銀行は2%インフレ目標にコミットしています。そういうものが予想インフレ率を引き上げるということに影響する、あるいは、米国の量的金融緩和の縮小に対して、市場が動揺してしまって、先行きがよく分からなくなると、それは予想インフレ率に影響します。』

FRBは中長期的なインフレ期待は安定的に推移していると毎回のFOMC声明文で高らかに宣言しておられると存じますが師匠はFRBに喧嘩を売っているということですねわかります。

『あるいは、ユーロの金融が安定すれば、リスクを取りやすくなり、安全資産である日本円に誰もが逃げ込むというようなことはなくなり、リスクオンになります。その結果、日本経済に対する刺激も大きくなるであろうということで予想インフレ率が上がります。そうした色々な要因で予想インフレ率は上にいったり、下にいったりしています。』

ふーんそうなんですかあ。

『12 月中頃からの動きの背景としては、米国の量的金融緩和縮小の効果を市場が消化してきたことが大きい要素だと思います。予想インフレ率は、アベノミクスから始まり、昨年4 月4 日の「量的・質的金融緩和」の決定を経て、昨年5月22 日まで非常にスムーズに上がった後、上がったり下がったりしましたが、その変動がおさまってきて、5 月22 日前ぐらいのトラックに入ってきています。』

さきほど師匠「マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定」と仰せでしたが、昨年5月22日から現在までどんだけマネタリーベースを拡大させたかご存知ですよねえ。

『金融市場がだんだん安定しているという効果があると私は思っています。いずれにしても、予想インフレ率というのは色々なイベントにどうしても左右されて上下します。』

なんか良く判らんけど中長期的なインフレ期待をアンカーさせるのがインフレ目標政策だと思うのですけれども、それではインフレ目標政策とは何ぞやという話になるような気がしますが何なんでしょ。

『人々の予想ですから、安定はしないですが、マネタリーベースを日本銀行が増やしているという政策は、予想インフレ率に働きかけるという意味で、基調的にきちんと働いています。この関係をやはり維持していきたいと思っています。』

もはや何が何だか分かりませんが、とりあえず本来流動性が相対的に高く、指標性がより高い筈の新発債を使わないで自分の都合の良いデータが出ている流動性がスッカラカンの既発バイバック方向になっている債券の数字を使いたいというのだけは分かりました。

でまあここでは師匠のオモシロ説明を肴にしましたが、実際問題として金融経済月報とかで堂々と「予想物価上昇率は総じて上昇していると見られる」とか言及して平気な顔で物価連動国債のBEI推移のグラフを添付しているのは、はあそうですかと思っておりましたけどこうやってオモシロ説明見せられるとやっぱり見苦しいから引っ込めた方が良いんじゃないかと斯様思う訳でございます。



・賃金の上昇が物価目標達成に必要ではないかという質問の答えが色々と残念な件について

『(問) 賃金の先行きの動向についてお尋ねします。先程のご挨拶の中でも、2年程度で2%の物価目標を達成するために、生産・所得・支出の好循環が必要であるとおっしゃっていました。今春闘が行われていますが、組合側はベアを要求していますが、経営側は、多様な賃金のあげ方を提案しています。副総裁の立場で、物価目標を達成するために必要な賃上げのあり方は、ベアなのか、それともベアでなくてもよいのか、が1 つ目の質問です。また、消費増税の分も加えた物価上昇率に満たない賃金の上昇であった場合、日銀の経済・物価見通しのシナリオに何か修正がありうるのか、影響があるのか、について教えてください。』

とまあこんな質問がありましてですな。

『(答) 1 点目ですが、基本的に需要が増加していて、物価が上がっているのだと思います。円安効果で上がっているだけだとおっしゃる人もいますが、円安効果というコストプッシュだけであれば、実体経済で何が起こるのかというと、物価が上がると需要が減って、生産が減少します。』

コストプッシュの円安だけではなく需要がついているということですが・・・・・・・・・・

『今起きていることはそうではなく、円安になっていることはありますが、物価が上がりつつ、生産も増えており、それは需要が増えていることを意味しています。ということは、需給ギャップが縮まっていることがベースにあるということです。』

えーっとすいません消費税増税前の駆け込み需要というのはどちらにという感じですし、大体からして物価が上がったら即座に需要が減るかというとそこにはラグがある可能性だってある訳で、駆け込み云々を除外してもそう簡単に割り切れるものなんでしょうかという話ですし、大体からして円安(とエネルギー関連)で説明できる部分が相当ある筈で、この前の展望レポ―ト中間レビューでの総裁会見などでの説明も足元は円安とかエネルギーで上昇している部分が大きくて、需給ギャップ縮小による物価上昇寄与が今後効いてくるという話だったようなのですが。

『そういうことが続くと、雇用は逼迫して、賃金に上昇圧力がかかってきます。この上昇圧力の受け方は、企業の規模によっても違うので、色々な賃金の上がり方があると思います。もちろんそれはベアでも、ボーナスでもいいです。もっと需要が出てくると、残業しなければいけないことにもなります。非正規雇用も増えて、その賃金も上がってくると思われます。このように、賃金が上がる要素は色々ありますが、いずれにしても賃金が上がるので、十分効果があります。』

なんか色々と説明がイミフというか「とにかくこうなるんです」という話で理屈としてどうなのよという感じがしまして、これなら気合と根性でフィリップスカーブを上方シフトという話をしている方がまだ説得力があると思うのですけどにゃあ。

『全体として需給ギャップがオントラックで縮小するにつれて、賃金上昇が予想されるようになります。例えば、デフレの中では、賞与を期待できる状況ではなかったのが、賞与もある程度安定して期待できることになります。』

賃金上昇が物価安定目標達成のために必要ではないかというテーマで質問をしているのに、「デフレを脱却したら賞与が安定して期待できることになる」ってトートロジーにも程がありますが。

『そのように色々な意味で、所定内給与、所定外給与に関わらず、全体としては賃金が上がっていくという期待が出てきますが、それが実際にも実現される経済とは、2%の物価安定目標を達成した経済ではないかと考えています。2%の物価安定目標というのは、今申し上げた状況を達成可能にするような経済的な基礎を創るという政策です。』

わけわからん。だから賃金が上昇しないと物価安定目標が達成できないのではという質問なのに何でそういう説明になるんじゃ。

『ご指摘のように、物価の上昇が少し先行して賃金が上がるのが遅れる場合があるので、そのときには実質賃金は下がりますが、需給ギャップがどんどん縮まってくる場合には、生産性が上がってきます。そのために、賃金の上昇が追いついてきます。』

実質所得が低下するのに需給ギャップがドンドン縮小するとはこれ如何に???

『それが行き過ぎると、今度は生産性の上昇を伴わずに、賃金の方が先に上昇してしまう状況が出てきます。そういう生産性の上昇を伴わない賃金と物価のスパイラル的な上昇局面に入っていくときには、金融は緩和しすぎたというシグナルになります。そういう意味で、もう少し見ていただければ、実質賃金が上がってくるというフェーズに入っていくと思っています。』

どうやって行き過ぎるんだそれ???


・2年で2%達成しなかった場合に関するお話

『(問) 何点かお聞きします。(途中盛大に割愛)3 問目は、、1 年近く前に、岩田副総裁は、就任される前後に、2 年で2%を実現できなければお辞めになる、それくらいの覚悟がおありだとおっしゃいました。』

ですなあ。

『伝え聞くところによると、既にトーンダウンされているのではないかということです。』

(;∀;)イイシテキダナー

『例えば、リーマンショックのようなショックがあれば、その実現は難しいということかもしれませんが、白川前総裁などに対して「リーマンショック後の対応が足りない」、「金融緩和が十分ではない」と、岩田先生も含めて、かなりきつく批判されていました。』

(;∀;)イイシテキダナー(;∀;)イイシテキダナー(;∀;)イイシテキダナー

『そういう意味では、何が何でも2年で2%実現する、出来なければおやめになると宣言される方が期待への働きかけという意味で言うと、より効果があると思いますが、如何でしょうか。』

さて師匠のお答えですが・・・・・・・・・・

『(答)(前半部分盛大に割愛)それから、2%の物価安定目標を達成しない場合についてですが、副総裁としては、物価安定目標の実現に向けて全力を尽くすということです。現在、順調に目標実現に向けた道筋を辿っているので、実現できない場合の責任の取り方を今ここで語るということは、必ずしも適当ではないと思います。今のところ、できるだけ早く2 年をめどに2%の物価安定目標の達成に全力を尽くしているという段階です。』

白川前総裁に対してはデフレ脱却できなければリアル切腹しろ位の勢いで散々仰せになっておられた師匠様におかれましては人に厳しく自分に甘いんですね分かります。というかこれは「今ここで語るのは適当ではない」との事ですので、適当になる時期が来るんですかそうですか。

まあしかしこの会見の感じだと一次関数直線番長理論へのツッコミとかしても無駄無駄無駄という感じを確かに受けてしまいそうで、会見が30分でドッチラケの中(かどうか知らんが)終了してしまうというのは判らんでも無いのですが、これは想定問答集作成部部局の巧妙な作戦勝ちなのでしょうか^^;


○ちょっと(つーても1週間だが)お休みのお知らせ

さてさて、日々あたくしのしょうもない駄文をご覧になっておられます皆様に業務連絡でございますが、あたくしの個人的都合によりまして1週間というか水曜から月曜までの更新をパスさせて頂きたく存じますので何卒よろしくお願い申し上げます。寝ぼけてなければ来週火曜日にまたお会い致しましょう。過去の駄文でもご覧いただくのもヨロシカと思いますが、自分で過去のを見ながら芸風の変化を見ると少々アレだったりもしますな(大汗)。

それでは来週火曜日までお休み恐縮至極。まあ来週の火曜水曜は日本のMPMですがどうせ何もないでしょ♪




2014/02/07

お題「ECBとかBOEとか/師匠の講演が残念な件について」

ムーシャ先生のドテン弱気レポート効果おそロシア・・・・・・・・・・・・

○そのまえに市場(といっても短期)メモ雑談

・短国入札が堅調

おみゃあは債券市場ネタなのに30年国債入札はスルーするのかというツッコミはしないようにお願いします(^^;

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140206.htm

(3)募入最低価格 99円98銭7厘5毛 (募入最高利回り)(0.0501%)
(4)募入最低価格における案分比率 35.3326%
(5)募入平均価格 99円98銭7厘7毛(募入平均利回り)(0.0493%)

まあ順当ちゃあ順当ですが、また5bp割れの平均と相成りまして、GCレートも低いという状態ですので、普通に短国が物無し芳一状態になっておられるという状況で、しかしまあ短国買入今月は一応前月の2.5兆円連発攻撃から買入フローは落ちているものの、まあ2兆円の買入を継続されるとそれはそれで多いですねという感じになっておりますな。

んでもってまあ今月の場合は2Mの発行が無い分だけ2兆5000億円ほど通常よりも国債発行要因による資金不足が少なく、そのぶんだけ短国買入の帳尻が楽になっている筈なのですが、そういう状況下でも短国需給がこの有様という状況になっておりますと、これ固定金利オペがバカスカ落ちだして来ると短国買入での帳尻攻撃が物理的にかなり困難になるかもね(ただし短国のニーズは何気に銀行勢のお家の事情的買入の有無と海外ニーズで平気でぶれます。投信のニーズはかなり安定的なベースがありますすが上積み部分の残高自体は最近はそれなりにぶれていると思います)という所で。

まあ何ですな、先日資金需給見込みが出ましたので、それを受けて今日の短国買入は額をそのまま2兆でやってくるのか1.5兆円でやってくるのかで若干違うかとは思いますけれどもさてどうなんでしょ。


○BOEは据え置き

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2014/002.aspx

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of purchased assets financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.

The Committee reached its decisions in the context of the monetary policy guidance announced alongside the publication of the August 2013 Inflation Report.

The Committee’s latest economic projections will appear in the forthcoming Inflation Report to be published at 10.30 a.m. on Wednesday 12 February.

The minutes of the meeting will be published at 9.30 a.m. on Wednesday 19 February.』

ということで普通に予想通りの据え置きですが、BOEに関してはここの所政策は変わっていないけれどもマニア的には興味深いという感じですけれども、ミニッツ読みなども滞っておりますのでこの辺は可及的速やかにキャッチアップしたいと存じます。


○ECBも据え置きとな

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140206.en.html
PRESS RELEASE
6 February 2014 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.25%, 0.75% and 0.00% respectively.』

据え置きでしたね。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ドラギ先生の落語はこちら。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140206.en.html

Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 February 2014

この時間(日本時間の金曜朝)はまだQ&Aがアップされていませんので最初のステートメント部分だけになっております。

ちなみに1月のステートメントとQ&Aはこちらです
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140109.en.html(前回)

でまあステートメントの最初の所だけサクサク鑑賞してみる。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment. At the same time, underlying price pressures in the euro area remain weak and monetary and credit dynamics are subdued. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information and analysis have continued to confirm our previous assessment. Underlying price pressures in the euro area are expected to remain subdued over the medium term. In keeping with this picture, monetary and credit dynamics remain subdued. At the same time, inflation expectations for the euro area over the medium to long term are firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(前回)

基調的な物価上昇圧力に関して前回の「subdued」が「weak」になっているのだが、これがまたその前に「remain」になっているので判断が下がっているのか据え置きなのかが良く判らんという感じですが、ECBってこの辺のワーディングに関してそこまでゴリゴリやっていない可能性があるのでニャンとも。

『As stated previously, we are now experiencing a prolonged period of low inflation, which will be followed by a gradual upward movement towards inflation rates below, but close to, 2% later on. Regarding the medium-term outlook for prices and growth, further information and analysis will become available in early March. Recent evidence fully confirms our decision to maintain an accommodative stance of monetary policy for as long as necessary, which will assist the gradual economic recovery in the euro area.』(今回)

『Such a constellation continues to suggest that we may experience a prolonged period of low inflation, to be followed by a gradual upward movement towards inflation rates below, but close to, 2% later on. Against this background, the Governing Council strongly emphasises that it will maintain an accommodative stance of monetary policy for as long as necessary, which will assist the gradual economic recovery in the euro area.』(前回)

つーことで、前回と同様に先行きは上がるものの「we may experience a prolonged period of low inflation」という見通しは同じなのですが、今回は「further information and analysis will become available in early March」となっておりまして、「ここから3月頭に向けて物価や成長に関するデータが揃ってより分析が可能になります」という言い方をする事によって、次回のECB会合に何かしますよというやるやる攻撃というか示唆というかという所ですかねえ。

『We firmly reiterate our forward guidance. We continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy and subdued monetary dynamics.』(今回)

『Accordingly, we firmly reiterate our forward guidance that we continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. As previously stated, this expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy and subdued monetary dynamics.』(前回)

フォワードガイダンスをもう全力で強調しますよとかそういう部分はまあ大体同じ。

『With regard to recent money market volatility and its potential impact on our monetary policy stance, we are monitoring developments closely and are ready to consider all available instruments. Overall, we remain firmly determined to maintain the high degree of monetary accommodation and to take further decisive action if required. 』(今回)

『With regard to money market conditions and their potential impact on our monetary policy stance, we are monitoring developments closely and are ready to consider all available instruments. Overall, we remain determined to maintain the high degree of monetary accommodation and to take further decisive action if required.』(前回)

ここは追加で入っているのが「recent money market volatility」でありまして、まあ新興国とはここでは名指ししていませんが、これは普通に読めば新興国市場の混乱を受けてのリスク認識追加という風に読めるようになっていますな。

・・・・・・・・ということで以下続くのですが寝起きでこのステートメント全部成敗するの無理なので以下後日というかその後のQ&Aもあります罠。


○師匠の講演が全然独自の理論展開になっていない件について&見所は会見のようです

さあマニアの皆様お待ちかねタンホイザの師匠の高座ですよ!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140206a.pdf

昨年の10月には中央大学で素晴らしい講演を実施して思わず不肖このアタクシが珍しく土曜日に駄文書きを行う(なおその前に土曜日駄文書きを実施したのは枝野官房長官(当時)の無法発言ネタ)という事で、この時は本文実質12ページでプレゼン資料図表が確か表紙を含めて24枚という豪華絢爛な高座だったのですが・・・・・・・・・・

もうね、上記URL先に行ってみたらPFFの枚数が「15」とある時点で何かこうワクワク感が無くなる話じゃのうと思いながら期待しないで読んだらまさしく期待しなかった通りの構成でオラガッカリだべという所でおじゃる。

・「いよいよこれから」が2発とな

冒頭の所でこんな説明が。

『実体経済や金融市場の状況をみると、日本経済はデフレ脱却への道筋を着実に辿っていると考えられます。もっとも、私の考えでは、金融政策が本格的な効果を発揮するのはいよいよこれからであり、所期の効果が十分に発揮されるためには、政策のねらいや私たちのコミットメントについて、国民の皆さまに十分理解して頂いているということがとても重要です。』

はあそうですかという感じですが、昨年の今頃は師匠は「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70〜80兆円にすべきだ。」と仰せで、それによりますとそうなると「来年の半ばには達成可能」との事でしたが、現状ではそれよりも遥かに大きい日銀当座預金残高が達成されている訳で、いよいよこれからとか店屋物の出前(死語ですかそうですか)じゃないんですけどもう大概達成が見えているもんじゃないんですかねえ。高度な理論を元に散々白日銀を罵倒していた分の約束手形の期日にはきちんと落とし前付けて頂かないと困りますな。
(ご参考→http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugeniwakiku.html#iwakiku130228

もうちょっと先にも中々来ない店屋物の出前発言がございますが。

『内需面のポイントの最後として、設備投資についても触れておきたいと思います。現在、企業収益は改善しており、そのもとで、設備投資は持ち直しています。出遅れていた製造業についても、このところ機械受注が明確に持ち直しているなど、改善傾向がはっきりしてきています。先行きについては、企業収益の改善が続くもとで、予想実質金利の低下などを通じた金融緩和の効果がいよいよこれから本格的に発揮されるようになることから、設備投資は増加基調を辿ると予想しています。製造業の設備投資についても、次にお話しするように、海外経済の持ち直しが進み、輸出が緩やかに増加していくと見込まれるもとで、今後は勢いが増していくと予想しています。』

「金融緩和の効果がいよいよこれから本格的に発揮されるようになる」ってあのその確か先生一派の皆さんって適切な金融緩和をすると効果てきめんみたいな話してませんでしたっけという所ではございますが、そんな調子で2年で物価安定目標達成できるんですかあと1年2か月しか残ってませんよ。


・金融政策運営の説明に理論的な話が碌すっぽ見えない件について

『3. 金融政策運営の考え方』ということで説明しているのですが、実質金利に働きかける云々の説明はまあ良いとして、ではその実質金利がどうなると下がるのかという説明が『(2)「予想に働きかける」ということ』って小見出し(本文8ページ)にありましてですね。

『このように、現在、日本銀行が実施している「量的・質的金融緩和」は、将来のインフレについての皆さんの予想に働きかけることによって、その効果を発揮することを一つの眼目としています。』

『「人々の予想に働きかける金融政策」というと、どことなく曖昧で、頼りない印象を受ける方がいらっしゃるかもしれません。しかし、金融政策に限らず、どんな経済政策も人々の予想形成に影響しないものはありません。それは、人間は将来を予想しながら、現在の行動を決めるからです。したがって、人々の予想を考慮に入れながら政策を運営するということは、とても大切なことです。』

それは判ったがMBを幾ら増やすとインフレがこれだけ動くだのインフレ期待がこれだけ動くだのという一次関数直線番長な高級理論があった筈だがその辺の定量的な説明はどこにあるのでしょうか。

『また、経済現象に関係する予想については、「予想が結果として自己実現する」という面も重要です。例えば、多くの人が「この会社の株式の価格は上がる」と予想してその株式を購入すれば、実際にその会社の株価が上昇するといったように、「予想の自己実現化」は現実の世界に大きな影響を及ぼすのです。これまで長い間、多くの人が「今後もデフレ(物価の下落)が続く」と予想して、消費や投資行動を決めた結果、実際にデフレが助長されたという面は否定できません。つまり、物価についても、デフレ予想がデフレをもたらす、という自己実現的な現象が起きてきたのです。』

本当はここ段落が分かれているのだが段落分けしている意味がないので続けて引用。

『したがって、デフレから脱却して、安定的な物価上昇を実現するためには、まず、皆さんの予想を「デフレ予想」から「インフレ予想」に変える必要があり、そのための強力な手段として、「量的・質的金融緩和」を進めているわけです。』

で、その定量的な効果は???

『人々の予想に働きかけることを前面に出した金融政策というのは、過去にあまり例のない試みであるのは確かです。したがって、日本銀行としては、金融政策の新たなフロンティアを切り拓くという気持ちを持って、この政策の遂行にあたっています。』

すいませんこの前の中央大学での説明だと「このように日銀当座預金が減ったら物価連動国債のBEIが縮小しました」みたいなオモシロ事例を使ったあまり定量的とは言い難いけれどもそれでも何か量を出すとこのように効果があるみたいな話をしていたのですが、これではただの気合理論でして、エビデンスもへったくれもあったものではない訳で、金融政策の理論的バックボーンとなる事を期待されて日銀副総裁になられた筈の師匠はどこに行ってしまわれたのでしょうかという所でございます。

つーかですな、このような気合理論を振り回すのでしたらば別に黒田総裁が貫録の気合理論攻撃をしておけば良いのでありまして、本来師匠におかれましてはその気合がただの気合ではなく実は高度な理論を背景にしていて、まあ確かにチャレンジングではあるがこのような背景がありますのでチャレンジしているみたいな話をして欲しい訳でして、これでしたら所謂複数均衡の話を背景にして望ましくないデフレ均衡から本来あるべき安定的なインフレ均衡に持って行くために、均衡からの遷移を図りたいみたいな説明をしている黒田総裁のきさらぎ会講演(やその後の講演)の方がよっぽどクリアカットなロジック(かなりヤケクソなロジックだが、異次元政策を実施した意味合いの説明にはなっているでしょ)でして、誠に遺憾ながらその比較で見ても師匠のご説明は棒読み風味満点のテキストで何ですかこれはどこぞの局の作文棒読みですかという所ではありますな。


・物価安定の定義は将来の論点でしょうな

2%物価目標がどうのこうのという話をしている中で興味深い部分が。

『こうした表現が、一般の方々にはなかなか判りづらい面があったかもしれませんが、ここでのポイントは「安定的に持続するために必要な時点まで」という部分です。つまり、消費者物価の前年比上昇率が2%に達したとしても、その水準が先々も安定的に2%近辺にとどまるという見通しが立たない限り、急に金融緩和をやめてしまうということにはならないということを約束しているわけです。』

・・・・・・・・・・うーんこのという感じでして、「安定的に2%」の物価目標に関して、アクチュアルな物価指数水準の話をするのか、フォワードターゲットとしての物価目標水準の話をするのか、はたまた「期待インフレ率が2%でアンカーされている」というような話をするのか、それともフィリップスカーブのY切片が2%的な話をするのかとか、どうもこの辺に関する定義づけは微妙に曖昧だなと思うのですよ。

どうも師匠におかれましてはアクチュアルな物価水準が平均的に2%近辺で安定するような図をイメージしているような説明に近い感じになっていまして、まあインフレーションターゲットという意味では最もプリミティブな図ではあるのですが、金融政策運営の柔軟性という意味ではフレキシブルインフレーションターゲットというのが主要国の潮流という中ではあそうですか(棒)という所ではございまする。

実際問題として、ここの「安定的に2%」の定義って微妙に曖昧にしたまま放置プレイになっている訳でございますが、それはどう見ても日銀の作戦でしょという所でございますので注意が必要かと思われます。


・師匠の会見が面白いようですよ!!!

でまあ宮崎まで会見でツッコミをしにお出掛けになられる記者の皆様お疲れ様ですという所でございますが、会見ではBEIに関して大変に素敵な発言をされてベンダーヘッドラインを見た債券市場関係者の腹筋を崩壊させる事案が発生したり、2年で目標達成しなかった場合の責任についての話が何故かフェードアウトされたりなど、微妙にオモシロ事案があるようですので、テキスト出るの今日なので気が向いたら週末に更新するかもしれませんが期待しないで下さい。

なお、経済物価情勢や消費税に関する話などは思いっきり展望レポート通り(そらそうだという感じですけど)ですのでその辺からも何ちゅうかその棒読み感が漂ってくるんですけど執行部だから仕方ないですよね(棒)。




2014/02/06

お題「よくよく見ると地区連銀総裁でマクロプルーデンスの見解披露とな/その他雑談を少々」

ということで雑談ばかりですいません。

○市場メモ

・短国入札が強いとな

昨日の6M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140205.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘(募入最高利回り)(0.0501%)
(4)募入最低価格における案分比率 83.7656%
(5)募入平均価格 99円97銭5厘 (募入平均利回り)(0.0501%)

先週の3M入札が平均5bp割れまで突っ込んだものの、その後5bp割れは買いが続かず結局5台に戻ったという実績があった訳ですが、それにもめげずというか何というかで、6M入札は5bp割れ寸前の所で決着という結果ですが、発行予定額3.5兆円のうちいわゆる不明玉が2.8兆円位あって、空振りになった業者のカバーが入って強い出合いもという展開でして、先週の3Mのセカンダリーイマイチモードとの差は何ですねんという感じです。

まあ何ですな、6Mの場合は時々ニーズがあったり無かったりで妙な挙動をする事もありまして、残高確保的に3Mより長いのが欲しいとか、オペ玉や担保玉として使いやすいとか、その手のニーズがあったのかも知れませんけれども、GC(というかTKRR)が低かったりするので単に需給が強いだけなのかも知れません。

でもって今日は3Mの入札があって、昨日の6M入札の強さがど〜ゆ〜バックグラウンドになっていたのかというのは少しは見えてくるかも知れませんな、うんうん。


○またも米国地区連銀総裁関連ですが「ファイナンシャルスタビリティー」ネタが浮上中なのかね

・プロッサー総裁の直近講演ですが

地区連銀タカ派2大巨頭のプロッサー先生(あたくしの認定ではもう一人はジョージおばちゃん)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N0JB116VDKI301.html
今年は3%成長へ、緩和縮小の加速を正当化−プロッサー総裁
更新日時: 2014/02/06 03:16 JST

Taperingを加速するのが正当化されますよ年の半ばにはTapering完了しましょうというようなお話をしているのはプロッサー総裁の平常運転ではあるのですが・・・・・・・・・・

講演はこちら
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2014/02-05-14-simon-annual-economic-seminar.cfm
http://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/plosser/2014/02-05-14-simon-annual-economic-seminar.pdf

Monetary Policy and a Brightening Economy

Presented by Charles I. Plosser, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of Philadelphia
35th Annual Economic Seminar, sponsored by the Simon Business School with JP Morgan Chase & Co., Rochester Business Alliance, and the CFA Society of Rochester, February 5, 2014, Rochester, NY

もう題名からしてプロッサー節炸裂なのですが、例によって最初にサマリーがあるから引用してみるの巻。

『・President Charles Plosser provides his economic outlook for 2014 and reports that the decision of the Federal Open Market Committee (FOMC) to reduce the pace of asset purchases was a step in the right direction. 』

毎度のプロッサー節なので一々反応不要^^;

『・President Plosser expects growth of about 3 percent in 2014. He also expects the unemployment rate to continue its steady decline and to reach about 6.2 percent by the end of 2014. Inflation expectations will be relatively stable, and inflation will move up toward the FOMC target of 2 percent over the next year.』

この前ネタにしたリッチモンド連銀のラッカー総裁の場合は今年の成長率見通しが2%アラウンドなのにTaperingは普通に進行させてヨロシという話をしていましたが、プロッサー総裁の場合はそもそもの経済見通しが強いのですな。

『・Based on the economic progress that has been made and his economic outlook, President Plosser believes it is appropriate to end asset purchases, and he supported the FOMC's decision in January to continue to reduce the pace of purchases.』

そらそうよ。

『・A case can be made for ending the current asset purchase program sooner to reflect the improvement in the economic outlook and to lessen some of the communications problems the FOMC will face with its forward guidance.』

でまあ経済が強いからTaperのペースを上げてヨロシというのは判るのですが、はてこの「some of the communications problems the FOMC will face with its forward guidance」とは何ですねんという話は講演後半の小見出し『Monetary Policy』のケツの方にあるのがそれですかねと思うのでございまして、もうちょっと前の方から引用するとこうなります。

『Indeed, before the decision to taper in December, I had proposed that we set a total amount of additional securities we planned to buy and then stop the asset purchases once that amount was reached. In my view, this would have reduced policy uncertainty, thereby benefiting the economy. In December, the FOMC announced a reduction in the purchase pace, indicating that purchases were not on a preset course. The Committee continued on this path in January, and while this wasn't my preferred path, I supported the action as a step in the right direction. I reasoned that by following through with another measured step to reduce purchases, the Committee was strengthening the signal that the process would continue and thus it was reducing policy uncertainty. While I may have preferred a more aggressive scale-back, I was pleased that the FOMC has taken the first two steps on the path toward ending the program.』

プロッサー総裁は(FOMCのミニッツにもそういやそんな意見が出てましたが)Taperingに関して基本的にはスケールバックのペースなどを予め決めた形で実行した方が良いんじゃないのという意見を出していて、そういう意味では現在の「Taperingをするけど予め決めたコースではないよ」というのはイマイチだけどTaperingしてるからまあ方向性はヨロシという見解です罠。

『That said, I believe a good case can be made for speeding up the pace of our taper if the economic outlook plays out as I expect. As I noted earlier, the unemployment rate fell 1.2 percentage points last year, to 6.7 percent in December. This was a much sharper decline than anticipated when we started the purchase program in September 2012. In fact, back then, the central tendency of the Committee's economic projections for unemployment in the fourth quarter of 2013 was 7.6 to 7.9 percent compared to the 7 percent fourth-quarter average that the economy actually achieved. If the unemployment rate continues to drop at that pace, we will soon be at the 6.5 percent threshold in our forward guidance for interest rates.』

もっとTaperingを加速した方が宜しいのではとのプロッサー節。

『Although the FOMC has indicated that it doesn't anticipate raising rates when the economy crosses that threshold, I do believe that we will have complicated our communications if we are still purchasing assets at that point. What is the argument for continuing to increase monetary policy accommodation when labor market conditions are improving rapidly, inflation has stabilized, and the outlook is for it to move back to goal?』

でまあ「フォワードガイダンスの直面するであろうコミュニケーションの問題」というのが出て参りました。

『The longer we continue purchases in such an environment, the more likely we will fall behind the curve in reducing the extraordinary degree of monetary policy accommodation. With the economy awash in reserves, the costs of such a misfire could be considerably higher than usual, fomenting higher inflation and perhaps financial instability.』

キタコレという所ですが、経済がスレッショルドの水準に達しても今のFOMCでは利上げしないという話をしていますが、そういう事をしているとビハインドザカーブになってしまい、そもそもが超金融緩和をしているのだからインフレの拡大とファイナンシャルインスタビリティーのリスクが高まるというお話で、まあこの部分がさっきの「コミュニケーション問題」という事になろうかと思います。

『My preference is to scale back our purchase program at a faster pace to reflect the strengthening economy. I would like to see purchases concluded before the unemployment rate reaches the threshold, which is likely during the first half of the year.』

従ってプロッサー総裁は失業率がスレッショルドの水準に達する前にTaperingを終了させないといけないという認識で、つまり年前半にはTaperingを完了しろというお話ですが、どうも背景には強い経済見通しに加えて「金融不均衡拡大」リスクの話があるようですな。


・エバンス総裁の直近の講演では「金融不均衡に関する論点」が加わる(ちなみにハト派的アプローチです)

で、まあ何でその辺気にしたのかと申しますと・・・・・・・・・・・・・・

例によってシカゴ連銀のサイトはURLが長すぎ。
http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2014/02_04_14_detroit_economic_club_monetary_policy_macroprudential_safeguards.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/02_04_14_detroit_economic_club_print.pdf
Accommodative Monetary Policy and Macroprudential Safeguards

直近のエバンス総裁の講演(4日)なのですが、題名に「マクロプルーデンス」の文言があるのがほえーという所でございます。

まあ金融政策運営に関する所はこの前の講演とそんなに変わらなくて、Taperingは淡々と実施して金融政策は金利操作をメインに、でもってゼロ金利制約があるのですからフォワードガイダンスを上手に活用していきましょうというお話なのですが、今回の講演では最後の部分にこのマクロプルーデンスの話があるのがほほーという感じなのですよ。思いっ切り小見出しに『Financial Stability and Monetary Policy』てえのがありましてですな。

『It is easy and most natural for a Fed policymaker to talk about inflation. Price stability is one of the explicit goals of monetary policy as mandated by Congress. Financial stability risks are more complicated. How does financial stability dovetail with the Fed’s dual mandate?』

どうなんでしょ?

『There is clearly an interdependent relationship between them. A strong and robust economy with low inflation provides a key stabilizing force for beneficial credit intermediation and robust financial markets. At the same time, stable and well-functioning financial markets are essential for achieving maximum employment and price stability. Our global experience since 2008 reinforces this critical interplay between monetary and financial conditions.』

適切な金融政策を行い、金融市場の仲介機能の安定化を図るのが重要とはそらそうですな。

『However, beyond these basic principles, what is the appropriate monetary policy stance for achieving both financial stability and the dual mandate?』

キタコレ、ではありますが、以下にあるようにエバンス総裁は「マクロプルーデンシャルな観点での金利政策運営は不適切」という説明をしています。でまあそれはそれで一つの考え方なのですが、先ほどのプロッサー総裁の講演でのTaper加速すべしの趣旨に金融不均衡拡大のリスクを強調する論点があったり、スタイン理事のようにデビュー戦から思いっきりマクロプルーデンシャルな観点を金融政策に含めるべきというBISの回し者かというような意見を出す人もありというのがあり、ミニッツを見ても毎回必ずFRBスタッフから「金融不均衡の観点からの報告」というのが入るようになった(のは確かここ半年少々)という風に、緩和的な金融政策の長期化でまた別のバブル発生させたら同じ事になるんじゃネーノという話もそら出ます罠という所で。

つまりですな、この話って前面に押し出してしまうと確かにフォワードガイダンスの効果を減殺してしまう話なので使い勝手は難しい面はあるのですけれども、FOMC内部では外部に出てくる文書などよりももうちょっと突っ込んでマクロプルーデンスの観点からの金融政策に関する議論があるのかもしれないなあと思ったのですけどどうなんでしょうかね。

『With inflation running well below our 2 percent long-run target and the unemployment rate still well above its long-term normal level, appropriate monetary policy dictates that low real interest rates should prevail until the economy is further along a sustainable path to its potential level. This assertion is made from a mainstream macroeconomic perspective.』

This assertion is made from a mainstream macroeconomic perspectiveと来ましたか。

『Nonetheless, it is common to hear the argument that these highly accommodative monetary policies might sow the seeds of financial instability.』

一方で金融緩和の長期化が金融不安定化の種を撒くという論点がありますよね。と言ってますが、その次でエバンス総裁は「それは現在気にする必要なし」という見通しを示しています。

『The fear is that excessive and persistently low interest rates would lead to excessive risk-taking by some investors. For instance, some firms, such as life insurance companies and pension funds, are under pressure to meet a stream of fixed liabilities incurred when interest rates were higher. (And perhaps these liabilities were offered at somewhat generous terms to begin with.) To meet commitments like these in the current low interest rate environment, the incentive exists to reach for yield by investing in excessively risky assets. Furthermore, with the costs of borrowing at historically low levels, other investors might simply decide that this is a good time to cheaply amplify the risk and return in their portfolios by taking on more leverage.』

というような指摘がございまして・・・・・・・・・

『So, one could reach the conclusion that historically low and stable interest rates pose a threat to financial stability.』

ふむ。

『This creates a seeming paradox for policymakers.』

ほうほうそれでそれで?

『The existing large shortfalls in aggregate demand call for highly accommodative monetary policies and historically low interest rates. Yet, such policies have the potential to raise the likelihood of financial instability in the future.』

ということで、現在の経済状況は高度な金融政策を実施するのを正当化するのであって、マクロプルーデンシャルにどうのこうのだから緩和を縮小というのはプロコン考えても変でしょと。

『So, the questions that I’m often asked regarding these matters are as follows: Do the regulators and the Fed have adequate safeguards in place to mitigate this potential financial risk? If not, should the FOMC step away from what we thought was the best monetary policy with respect to our dual mandate? Should we discard our nonconventional tools and raise the fed funds rate in order to reduce the possibility of undesirable financial imbalances in the future?』

『I don’t believe that such monetary policy adjustment is the right approach.』

キタコレ。

『I think the inference that persistently low interest rates pose a danger to financial stability is based on a narrow view of the economy and is unlikely to survive a broader analysis that takes into account all the interactions between financial markets and real economic activity. If more restrictive monetary policies were pursued to generate higher interest rates, they would likely result in higher unemployment and a sharp decline in asset prices, choking the moderate recovery. Such an adverse economic outcome is unlikely to set a favorable foundation for financial stability.』

『Moreover, our short-term interest rate tools are too blunt to have a significant effect on those pockets of the financial system prone to inappropriate risk-taking without, at the same time, significantly damaging other markets, as well as the growth prospects for the economy as a whole.』

『Therefore, stepping away from otherwise appropriate monetary policy to address potential financial stability risks would degrade progress toward maximum employment and price stability. This approach would be a particularly poor choice when other tools are available, at lower social costs, to address financial stability risks.』

つーことで誠に普通の話をしておりますが、よーするに金融不安定化をもたらすから緩和政策の長期化イクナイみたいな話には与しない、というお話になっていて、まあどう考えてもこっちの方がFOMCの主流的な考えだとは思いますけれども、まあこういう話をわざわざするような状況にあるという事の方がちょっと注目かなとは思ったもので比較して並べてみたのです。

いずれにせよ、正常化が近くなってくるとこの「マクロプルーデンシャルな論点」の扱いが難しくなってくるだろうなあとは思います。


○いかん時間ががががが(予告編メモ)

最近すっかり国会ネタが無いのですが(汗)、まあそもそも白い麿先生と違いまして責め立てられるネタが今のところない(つーかまあ麿先生の場合は責められ過ぎだったわと思いますが)ので・・・・・・・

例えばこの前の臨時国会だとこんな辺りに総裁が登場していますけど・・・・・・・・

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009518520131129006.htm
第185回国会 財務金融委員会 第6号 平成25年11月29日(金曜日)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009518520131122005.htm
第185回国会 財務金融委員会 第5号 平成25年11月22日(金曜日)

11月29日は最初の方だけ出ているのですが、見事なまでにヨイショされていますし、11月22日はどうかと言いますと途中の質疑ではやはり盛大にヨイショということで、まあ国会に随行する日銀の中の人も胃腸の健康に宜しいのではないかと存じます次第(^^)。

という中で、上記の11月22日の方ですが、冒頭に民主党の前原誠司さんが登場して話をしている部分が微妙にオモロイのと、終盤の方で日本共産党の佐々木憲昭さんが物価上昇に関するツッコミをしている部分が割とオモロイなあと思ってネタにする気満々だったのですが時間ががががなので、お暇な方は上記URL先を見てちょということで。

いやなに明日は師匠の高座ネタとECBネタが待っているので明日はお蔵入りで、蔵に入っているうちに186回国会のネタが投下されると忘れそうな悪寒がするので備忘でURLを貼った次第です。





2014/02/05

お題「材料待ちで各種雑談ですいませんすいません」

普段全然見ないのだがたまたま昨晩報ステ見たら株価下落のニュースをしていたのだが、説明がハチャメチャでキャスターのコメントも無茶苦茶でワロタというかワロエナイ訳ですが、どうしてここまで低レベルの放送が罷り通ってしまうんでしょうかねえ。


○昨日は株式市場が盛大にアレだったのでどうでも良い雑談

・さてこれは底打ちの香りだと良いのですが

元日のムーシャ先生
http://www.musha.co.jp/5168
2014年1月1日ストラテジーブレティン (111号)
「桐一葉」から歴史的転換点を考える

でまあ見出しを見ると『(2) 見え始めた世界資本主義の新たな繁栄』とかあったりしまして景気のよいお話なのですが、そもそも「桐一葉」云々というのは独眼流さんが株式市場の下落方向での転換を予測した時の名言(その後スターリン暴落)であって、世界資本主義の繁栄というお題で桐一葉はねえだろとは思うのですけど・・・・・・・

昨日のムーシャ先生
http://www.musha.co.jp/5214
2014年2月4日ストラテジーブレティン (113号)
市場の懸念は米中の需要不足

・・・・・・・・・・歴史的転換点で世界資本主義の新たな繁栄だったのに株価指数で1割ちょっと持って行かれただけでいきなりこういう話になるとは恐るべきことですが、まあ今朝のモーサテでもここもと謎の強気の話をしていた方が妙に弱気の話をして新興国がまだダメでどうのこうのでそもそも昔から新興国市場がどうのこうのとか説明しておりまして、まあこれは実に良い感じで底打ちのサインが出てきましたという所ではないかと愚考する所ではありますので、ムーシャ先生におかれましてはこの弱気レポートを最後に隠居して頂きますと株式市場の為に大変に結構なのではないかなどとは全く思っておりませんので今後も素晴らしいレポートを期待したいものでございます(棒読み)。


・しかし金融政策のクレクレがまた起きそうですなあ

残念ながらネット版の記事が無いのでURL貼って晒しネタにできないのが惜しいのですけれども、昨日はどこぞの何とかストが確かブルームバーグでコメントしていたのですが、「日経平均14000円維持に向けて日銀はETFの買い増しを決定すべき」とか言ってる方がいて、金融政策はお前のポジションの為にあるんじゃねえよと小一時間問い詰めたくなる事案があった訳ですが、モーサテに出てた某氏もFRBの金融政策が新興国の下落をどうのこうのとかコメントしていてこらまあ今後金融政策クレクレの展開になるだろうなあと思った朝のひととき。

一方で主要国の金融政策ってFRBはご案内の通りでタカ派もハト派も揃ってTaperingは予定通り実施という流れですし、おまけに次回のFOMCは3月なので今月は(議会証言とかはあるけど)特段のイベント無し。日銀に関しては出てくる経済指標は強くて、物価はこの前出た指標も堅調だし雇用に至ってはこれ普通にほぼ完全雇用じゃねえのというような数字が出てくるし、その他指標も堅調という有様で、逐次投入しない日銀が追加の措置を逐次投入する雰囲気無しだし次の決定会合まで2週間ありますな。

まーFOMCなりMPMが近くても結局の所この2中銀は方向性を明確に出してしまっていますので新興国が少々どうなったからと言っていきなり方向転換という訳にもいかないと思いますが、しかしFRBにしても(最近の)日銀にしても資産価格が上がってプラスでしたぜウェーハッハッハという話をこれまで盛大にしていた訳でして、都合の良い時だけ成果として持ち出している資産価格が下がってだんまりとか中々インチキな部分はある訳でございますので、そらまあ株式市場とかがクレクレ言うのも一理あると思います。がしかしどうせ何もしないですし知らん顔モードになるんでしょうけどね。

てな訳で今週のECBに期待が集まりますが、ECBの場合利下げの弾は一発分あるのですけれども、ECB最大の問題はどう見ても利下げ一発実施したら次の弾が無い事でして、そもそも資産買入コースなのか長期LTROみたいなのを入れるコース(問題が流動性ではないので長期LTRO入れてもプラシーボ効果だが)なのか、マイナス金利コース(マイナス金利を入れると量的緩和が出来なくなるのだが良いのかね)なのかさっぱり見えてこないところであります。

つまりですね、次に0.25→0.10の利下げを実施するのはまあ結構なのですが、次の一手が手詰まりというのが見え見えの中で最後の弾を打ってしまうと、その後狙い撃ち攻撃を市場から食らうリスクが結構高いですし、大体からしてサプライズバズーカみたいなのでもやらないとインパクトで無さそうな気がするので、まーやるかどうかはかなり微妙な線だと思います。できれば「やるやる詐欺」で引っ張って行きたいというのがドラギ総裁の作戦だと思いますけどね。


・そういえば明日は師匠の高座もとい岩田副総裁の金融経済懇談会ですよ!!!

まあ今日は株価戻ってしまうと思われるので何ですが、先週金曜にCPI見た時にはCPIまた上昇幅拡大して日銀某局某課の中で奉祝大提灯行列(これが昔の某証券だったら若手のハッスル隊が練り歩く展開ですかそうですか)でもやっていたのではないかと存じます次第というタイミングで、いやこれは金融経済懇談会のタイミング設定ドンピシャでしたなあという感じでしたが・・・・・・・・・・・・・・

さて明日の金懇ですが、その後の会見で当然の如くMBと物価のリニアなご関係に関する質問が出たりするのは想定されていましたが、足元の状況を反映して資産価格に関してああだこうだと問い詰められたりするようなお洒落な展開が想定される次第でして、いやあ実にこれは良いタイミングでしたなあ(ニヤニヤ)という所でございまして、明日の金懇およびその後の会見が実に楽しみになって参りました(棒読み)。


○月初なので日銀から幾つか計数が公表されておりますな

ということで計数シリーズ。

・当座預金増減見込み

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1402.htm/
日銀当座預金増減要因(2014年2月見込み)

先週金曜にああだこうだ(一部適当に置きを入れて)計算した時にはオペ実施前の時点で資金需給が9兆円程度の不足でこれを埋めるのに国債買入が6.4兆円の短国買入がさて幾らでしょうとか計算しましたが、財政要因による資金不足(には日銀保有国債&短国の償還要因も含まれる)は9.85兆円の不足という数字が出ていますな。

その中で長国買入が6.4兆円程度となりますので、残りは3.5兆円程度という計算になりますけれども、固定金利オペの落ちが2.6兆円程度ありまして、うち2000億円の落ちが確定していますが、残り2兆円弱に関してこの落ちをどの位で見積もるのかが良くワカランチ会長ですけど、昨日は3割で見ましたが、良く良く考えたらもうちょっと多目に見て固定金利オペが2月全体で半減の1.3兆円の落ちで見ると結局足りないのが4.8兆円になりますな。

今月の短国買入は受渡日ベースで4回実施となる筈なので、2兆円4回だと8兆円で楽勝過ぎる数字になりそうですし、のこり3回1.5兆円だと6.5兆円なので足りているには足りていますがちと微妙に少ない気もしますし、まあこの辺は匙加減が入る所になるのでしょうけれども、あまり手前で買い過ぎても後で償還の山が出来るだけの事なのでどうなんでしょうかねえという所で。


・長期国債銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(1月末)

ここにZIPのリンクがあるので落としてちょという所ですが、同じように12月末の数値も

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/

↑こちらから落とせますので、この差分を取って見ることによって「前月対比どの銘柄が入ったのか」という点と、「さて各銘柄の残高が発行残高対比でどの程度まで進んでいるのか」というのを確認するというのが基本的な鑑賞態度。

さらに比較的どうでも良いですが、新規買入を行った銘柄の平均残存(ちなみに日銀の言う「7年」は単純にリーガルマチュリティーベースでの平均残存になりますが、時価(というか日銀の購入価格)ベースなのか額面ベースなのかは知らんです)を計算すると味わいがあるかもしれませんがまあ知らんがな。

なお、この鑑賞手法は既に人口に膾炙しておりますので、だいたいセルサイドのフローセールスは自分でヘコヘコ手を動かして自分で計算してほれほれご覧くださいとすると思われますが、まあバイサイドの皆様におかれましてもこの程度の計算は自力で実施するように心がけた方が宜しいんじゃないでしょうかねと余計なお世話。

ちなみに相変わらずカレントばかり入っていて、現象面としては財政ファイナンスとどこが違うのかという状況(ま、財政ファイナンスだと皆が思わなければ財政ファイナンスじゃない、という蒟蒻問答というか何というかな世界なのですが)はいつもの話なのと、50%超の銘柄も買入対象になっているがな益々流動性無くなるわ(そらまあ買入残高年間50兆円純増なんですからドンドン買入していかないと回らんからね)という辺りですか鑑賞ポイントは。



・短期国債銘柄別残高と関連雑談

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額(1月末)

ここからまたまた例によってZIPで表計算ソフトに落としてヘコヘコ計算する訳ですが、ヘコヘコ計算すると1月の絶賛短国買入拡大によって3月償還の落ちが多くなっておりまして、2月は買入の落ちが43,081億円だったのに対して3月は買入の落ちが89,515億円という数値になりますな。

まあ3月の場合は国債償還要因で資金が浮くので買入の落ちによる日銀当座預金減少要因をカバーしますので良いのですが・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130129c.htm/
年度の本行保有国債の乗換え引受けおよび平成24・25年度の国債買入消却への対応

『(1) 償還期限到来国債(ただし、資産買入等の基金における買入残高分を除く。以下同じ。)のうち、利付国債額面総額11兆7,000億円については、割引短期国債をもって、借換引受けを行うこと。』

とありまして、中長期国債の償還分の償還引受の枠がさて幾ら残っているのでしょうという点に関して良く考えたら計算していなくて、年度末でこの枠一杯だと償還乗換じゃなくて現金償還になってしまうのでしょうか良くわかりません教えてジェネラル><;

なお、中長期国債の買入分の3月落ちは額面ベースで42,401億円の落ちでして、銘柄別の残高をざっくり見ると結構買っている感がありまして、この分に関して現金償還が入るとその分は日銀当座預金減少要因になってしまいますので、計算するのがめんどいじゃねえかというのに今気がつくトンチキなあたくし。

それ以外の国債発行償還要因に関しては各銘柄の償還額(中長期国債の場合途中で買入消却と流動性供給入札で増減しているので補正が必要)を拾ってきて計算して、発行額に関しては国債発行計画および入札カレンダーで計算して、その他一般財政要因に関しては別途何らかの方法で類推する(素人だとワカランチ会長なので基本前年並みで置くことになりそうだが)というような話になろうかと思われます。そのうち計算したいと思いますが。


・営業毎旬報告

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac140131.htm/

全体の数字はこちらを見ればヨロシアルなのですが、この前質問があったので豆ということで申し上げますと、別表1の所にある「長期国債」残高に関しては、これは日銀の買入価額ベースになりますので、さっきの銘柄別残高とは微妙に異なる筈です。

それから別表1の所にある「国庫短期証券」ですが、これは償還乗換に伴う国債買入部分が含まれているので銘柄別残高と大幅に乖離が生じます(前もネタにしたけど質問がありましたので再掲)ので念のため。


・一応MBですが末残は減りましたが

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1401.pdf

上記URL先の図表の一番下の所に1月と12月の実績数値(他の所は対前年比伸び率)が示されておりまして、まあ1月は末残ベースでMB増えなかったですけれども、良く良く見れば平残ベースでは増えていますし、そらまあ12月末ですから特殊要因ありますぞなもしという話ではあるのでございますが、しかしながら末残が微減となった月というタイミングで新興国市場があじゃぱーとか全く日銀と関係ない要因での動きなのは言うまでもありませんが、実にこう芸術的な間の悪さを示しておりますが、それを逝ったらTaperingしているFEDの方がよっぽど間が悪く、しかも3月までFOMC無しとかお洒落にも程がありまして、まあ間が悪いのは今年の金融政策のお題になるのかもしれませんね。











2014/02/04

お題「ネタ待ちにつき雑談系である(市場ネタとか米国ネタとか)」

イエレン議長就任記念でおはぎゃあございますorzorz

○市場雑談メモである

・MBの雑談続き

確報キタコレ。

日銀当座預金増減要因と金融調節
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd140131.htm(1月末)
マネタリーベース 2,008,800

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd131230.htm(12月末)
マネタリーベース 2,018,500

ということで1月末は惜しくも12月末対比でMBは9700億円ほど減少してしまいましたが、昨日申し上げた話に関してちょうど読者様からの問い合わせもありましたので(正直読み直して自分の書き方が宜しくなかったと思う)確報見ながら追記とゆーことですが、お返事の方が後になりまして誠に恐縮でございまするm(__)m

日銀公表のマネタリーベースの解説
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exbase.htm/
マネタリーベースの解説

『1. 統計内容

マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことです。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値です。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」』

ということでございまして、つまり銀行券残高+貨幣(コイン)残高(日銀保有分を除く)+日銀当座預金残高という数値になる(と思うのですが間違っていたら絶賛訂正しますので詳しい人教えてちょ)訳ですな。

んでもって昨日ネタにした『日銀当座預金増減要因と金融調節(1月実績)』ですけれども、昨日は速報値ではなくて実績値が出てきましたのでそちらから。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqf/juqf.htm/
日銀当座預金増減要因と金融調節(1月実績)

例によって例の如くこちらからZIPで落とすと、先月の日銀当座預金残高が幾ら動いたかというのは表計算ソフトに出てくる数値のうち「当座預金」って所を見ると吉なのですが、

『当座預金:34,095』

というのが出て参りますので、3.4兆円の当座預金拡大という形になります。で、これだけ見るとマネタリーベースって前月比3.4兆円拡大しているように見えるのですが、残りの項目である日本銀行券発行高と貨幣流通高に関してはどうかと言いますと、表計算ソフトで出てくる数値の中で最初の所に、

『銀行券要因:43,618』

というのがあると思います。

で、「当座預金増減要因としての銀行券要因」とは何ぞやという話になるのですが、これは市中に流通している銀行券が金融機関を通じて増えたり減ったりする要因という事になるのでございまして、1月ですと季節性で市中の銀行券が金融機関に戻ってきて、それを受けた金融機関が日銀に預け入れることによって当該金融機関の当座預金残高が増える、とまあそういう結果になっていて、その総額が4.3兆円あったという事になります罠。

従って、1月の当座預金の増分のうち、4.3兆円に関しては銀行券の市中残高が減少している分とツーペーとなっておりますので、日銀当座預金は増えているけれどもマネタリーベースという意味では銀行券残高減少と相殺されてマイナスになるので、ネットではマイナスになりますよとゆーお話なのでありましたという事です。

ちなみに上記の差分は9523億円で、最初に引用した日銀公表月末対比の数値の差分9700億円に届かないのですが、残りは四捨五入とかの関係に加えて貨幣(コイン)流通残高の減少(つまり還流みたいなもん)の要因でしょうかね、よー判らんけど。

なお、先ほどのマネタリーベースの解説部分ですが、「2. 利用上の留意事項」というのも引用してみませう。

『2. 利用上の留意事項

(1) マネタリーベースの流通現金は、マネーストック統計の現金通貨と異なり、金融機関の保有分が含まれます。これは、マネーストックが「(中央銀行を含む)金融部門全体から経済に対して供給される通貨」であるのに対し、マネタリーベースは「中央銀行が供給する通貨」であるためです。

(2) 1981年3月以前のマネタリーベースは以下の定義であり、それ以降の計数とは不連続です。マネタリーベース(1981/3月以前)=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「準備預金額」

(注) 「日本銀行が供給する通貨」という観点では、準備預金非適用先(短資会社、証券会社等)の日銀当座預金も含む「日銀当座預金」の方が「準備預金額」より適当と考えられることから、2000年5月に現在の定義に変更し、1981年4月に遡って新しいベースのデータを公表しました。』(先ほどのマネタリーベースの解説部分のURLより)

(1)に関しては先ほどああだこうだ申し上げた通りでして、日銀が公表するマネタリーベースの計算では日銀から外側に出た分を流通現金として認識しますので、先ほどの説明のような計算になる(筈です)のですが、マネーストック統計の場合ですと金融機関保有分の流通現金は統計に含まれないので、銀行券要因による日銀当座預金の増減のうち、元々が金融機関保有分だった場合には日銀当座預金の増減分はマネーストック統計上の流通現金の増減に跳ねないので金融機関の手元現金の増減に応じて前月対比の差分にズレが生じると思われます。

(2)に関しては次の(注)も含めて味わいがある話ですけれども、2000年5月に定義変更したのはどう見ても量的緩和金融政策導入の影響です本当にカムサハムニダという所でございまして、まあ正直申し上げてその豚積み部分というのは実際の経済活動に伴うマネーという意味で意味があるのかという事を勘案すると経済活動の実力ベースという意味では準備預金の方が適切なのかも知れませんけれどもね(=実態の経済活動が活発化して、金融機関の信用創造が増えれば預金金融機関の預金残高が増える筈なので、その結果として所要準備額が(所要準備預金率を一定とした場合)拡大するので)。

とまあそんな感じで自分の頭の整理も含めて補足してみました。


・固定金利オペとな

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140203.htm

国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年2月5日
国債買入(残存期間10年超) 2,000 2014年2月5日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年2月5日 2014年5月7日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140203.htm

国債買入(残存期間1年以下) 5,687 1,108 0.001 0.001 35.5
国債買入(残存期間10年超) 5,990 2,004 -0.024 -0.020 62.8
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(2月5日スタート分) 1,280 1,280

ということで、固定金利オペは堂々の1280億円で盛大に札割れとか思われますが、そもそも2月5日にエンドの来る固定金利オペってえのが2本(10/3と10/31にオファーされた分)あって1240億円になっておりまして、割と穏当に同じような額がロールされておりましたな。

ちなみに昨日は1/30にオファーされた固定金利オペの3190億円のスタートがあったのですが、こちらは落ちが2本(10/1と10/30にオファーされた分)で5140億円ありまして、こちらは2000億円ほどの落ちという形になっております。

で、今月の固定金利オペのエンドがあと19500億円ほどありまして、これがどの位の歩留まりになるのかという話だと思うのですが、3割くらい落ちるとすると6000億円分くらい短国買入に化けないと計算が合わないという話になりますし、まあ何だかんだと言ってもMBが増えているというのを見せないと緩和がドンドン拡大しています(キリッ)と言いにくいでしょうから、1月に1兆円弱とは言えMB落ちた分の穴埋めもあるでしょうし、とまあそんなこんなを考えますと先週金曜日の短国買入が2兆円だったのはまあ妥当だったのかなという所ですね。


○米国関連ネタを少々

・イエレン先生正式就任

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20140203a.htm

『Janet L. Yellen on Monday took the oath of office as Chair of the Board of Governors of the Federal Reserve System. The oath was administered by Governor Daniel K. Tarullo in the Board Room.

President Obama announced his intention to nominate Dr. Yellen to be the Chair of the Board of Governors on October 9, 2013, and the Senate confirmed her on January 6, 2014. Prior to her appointment as Chair, Dr. Yellen served as Vice Chair of the Board of Governors.

Dr. Yellen’s term as Chair ends February 3, 2018, and her term as a member of the Board ends January 31, 2024.』

ということで正式就任したのは良いのですが、就任早々金融市場の手荒い祝福キタコレという展開になっており、しかも次のFOMCが3月という所が実にこう味わいが深い所がありますな。


・ラッカー総裁とロックハート総裁の先日の講演から少々

ラッカー総裁とロックハート総裁は来年の投票メンバーになりますけど。

ラッカー総裁講演
http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2014/lacker_speech_20140117.cfm
http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2014/pdf/lacker_speech_20140117.pdf
Economic Outlook, January 2014
January 17, 2014
Jeffrey M. Lacker
President Federal Reserve Bank of Richmond

Risk Management Association, Richmond Chapter
Richmond, Va.


ラッカー総裁と言えばQEの時にラッカー怒りの反対とかやってたお方ですけれども、こちらの講演は最初に『Highlights』ってのがある(ちなみにプロッサー総裁のフィラデルフィア連銀もこれがあるのですけれども、「Highlights」って言葉まで同じなのはタカ派連銀の仕様なのでしょうか^^)。

『・Although recent data releases have some forecasters predicting GDP growth of around 3 percent later this year, my own projection is more modest, around 2 percent. 』

今年の成長見通しは2%とな。

『・One reason for this projection is greater caution on the part of both lenders and consumers. In addition, policy uncertainty has led some businesses to postpone possible investments. Although residential investment has increased significantly, it makes up only a small portion of GDP.』

アタクシの記憶が間違って居なければなのですが、ラッカー総裁って毎度景気に関してはそんなに強くない話をするのですが、一方で金融政策に関しては盛大なQEに対して常に批判的というコンボになっているのですが、これまた見通しそんなに強くないのね。

『・A long-run increase in overall output requires a substantial increase in labor productivity growth or in employment growth. Both productivity and employment growth are likely to remain close to the current trend of about 1 percent. 』

で、長期的な生産の拡大には労働生産性の引上げと雇用の成長の双方が必要だが、生産性の引き上げと雇用の成長は共に1%程度の低いトレンドで推移するでしょうと。

『・Conditions in the labor market have improved recently, which is consistent with the FOMC's recent decision to reduce the pace of asset purchases. 』

労働市場環境の最近の改善はTaperingを正当化するですと???

『・Despite factors that may contribute to slower economic growth, there is still reason to be fundamentally optimistic about economic prospects. 』

ということで、数字的にそんなに強い見通しを出している訳でも無いと思うのですが、その割には先行きの経済見通しには基本的に楽観となという感じで、この人の話も微妙にムツカシヤであります。まあ中身を子細に読むと何となく判らんでも無いのだが、本日は時間がないので超簡単に(大汗)。

・・・・・・つまりですな、この講演ですけど金融政策に関しては本文の最後の方にこんな話がありまして。

『Before I wrap things up, I’d like to share some brief observations on inflation and monetary policy. First, it’s important to recognize that inflation has been well-behaved over the last 20 years. Since 1993, inflation has averaged 1.9 percent, which is remarkably close to the Federal Open Market Committee’s goal of 2 percent. Second, we’ve seen some fluctuations in inflation over that time period, but they have all proven to be transitory.』

『For example, inflation averaged 2.8 percent over the three years ending in December 2007. I mention this because many people have noticed that over the last 12 months inflation has only averaged 0.9 percent. My sense is that inflation will move back toward 2 percent over the next year or two, in part because measures of expected inflation remain well contained. This is not a certainty, however, and I believe the FOMC will want to watch this closely.』

ということで、ラッカー総裁の見通しは(従来から割とそうなのだが)物価下落のリスクをあまり見ていないという所に特徴がありそうです。

『And that brings us to monetary policy, which has been particularly interesting of late. As you may recall, the Fed reduced its target for the federal funds rate to essentially zero at the end of 2008. Given the state of the economy, that was the appropriate monetary policy response. Since then, the Fed has purchased a significant quantity of assets, which increases the supply of monetary assets to the banking system and in some circumstances can have a stimulative effect. The size of our balance sheet has gone from under $1 trillion before the recession to around $4.0 trillion, and it has been increasing by about $85 billion per month.』

これはここまでの話。

『When the FOMC met in December, it decided to reduce the pace of asset purchases from $85 billion per month to $75 billion per month. I supported this decision because it was consistent with the linkage the Committee established between the asset purchase program and the outlook for labor market conditions. Since the program began in late 2012, we’ve seen a substantial improvement in a variety of indicators of labor market conditions, including the unemployment rate and the level of employment. So it made sense to initiate the process of bringing the program to a close. I expect further reductions in the pace of purchases to be under consideration at upcoming meetings.』

ということでTaperingは淡々と実施というのを支持という事ですが、「further reductions in the pace of purchases」ってのはもしかして買入ペースの引き下げをもっとやれという事ですかね?


・でもってロックハート総裁の最近の講演

http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140113_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/140113_speech_lockhart.pdf
The Economic Outlook for 2014
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Rotary Club of Atlanta
January 13, 2014

これまた『Key points』ってのがあるので手抜きでそこだけ引用するのだ。

『Key points』

『・Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in a January 13 speech at the Rotary Club of Atlanta, reviews current economic conditions, the economic outlook for the year ahead, and the Fed's winding down of quantitative easing (QE). 』

へいへい。

『・Lockhart says we are entering this year on a more solid economic footing than we did last year. His view is that real GDP will expand between 2.5 and 3 percent in 2014.』

2014年の実質GDPは2.5〜3.0%ってのですからラッカー総裁よりも強い見通し。

『・Lockhart: Although the country has made a lot of economic progress, there's a fair distance yet to go before we should be satisfied. Both the employment picture and the inflation state of affairs have worrisome aspects. About 4 million more people than before the recession are unemployed today, and continued disinflation could pose risks to economic performance. 』

雇用情勢は改善しているが満足するには程遠いとな。

『・Lockhart believes that the overall accommodative posture of monetary policy is appropriate. The FOMC has stated that it intends to keep the short-term policy rate unchanged "well past" the achievement of a 6 1/2 percent unemployment rate. 』

ほうほうそれでそれで?

『・Lockhart does not expect the change in leadership at the Federal Reserve to bring a change of basic policy direction. But if all goes as expected, there is a policy transition underway from a QE world to a post-QE world. 』

>there is a policy transition underway from a QE world to a post-QE world.
>there is a policy transition underway from a QE world to a post-QE world.
>there is a policy transition underway from a QE world to a post-QE world.

・・・・・・・どう見てもTaperingは所与で金利政策シフトです本当にありがとうございました。

『・Lockhart concludes that economy seems poised to transition to better conditions.』

ということで本文の方は時間の都合でスルーしますが(おいおい)、こんな感じで普通に多くの地区連銀総裁が思いっきり「LSAPから金利政策(フォワードガイダンスの活用)へ」という話をしている現状からしますと、これで次回の3月FOMCでそのまま普通に10ビリオンのTaperをおかわりしたら年内FOMCで毎回10ビリオンの減額はダンディールという感じでしょうなあ。というか米国債券市場もさすがにこのまま減額でダンディールだと思っていると思いますが、早速市場が手荒い祝福をしておはぎゃあとなっているのがさてどう影響するのでしょうか・・・・・・・・???

#昨日申し上げたように庭先が盛大に炎上するまでキニシナイと思いますがね。日本もそうでしょうけど




2014/02/03

お題「1月MB末残は惜しくも前月末対比減少とな/ハト派エバンス総裁もLSAPからガイダンス政策の流れを推奨」

ほうほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140203/t10014963511000.html
大阪 橋下市長 きょう辞職表明へ
2月3日 4時18分

『これに対しほかの政党からは、「市長選挙を行っても市議会の会派の構成は今のままで、『都構想』を巡る状況が変わるわけではないので対立候補を擁立する必要はない」という指摘が出ている一方で、「選挙を通じて『都構想』への反対を明確にすべきだ」という意見も出ています。』(上記URLより)

まあ参議院で法案否決されたのに衆議院を解散した首相が昔いましたけどねえ。ちなみに大昔から駄文をご覧の方はご存知かと思いますが郵政解散の時あたしゃブーブー文句垂れていましたけどね。

#あの時はまさかの3分の2を衆議院で確保したので参議院の議決をひっくり返せましたけど

○市場メモ雑談である

・短国買入は2兆円とな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140131.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年2月4日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年2月4日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年2月4日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年2月4日

ということで短国買入は2兆円でのオファーとなりました。まあ1.5兆円×4だとちょっと少ないかなという所ですので、とりあえず2兆円で実施という流れですかそうですかという所でございまする。

なお結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140131.htm
国庫短期証券買入 50,545 20,008 0.000 0.001 39.2
国債買入(残存期間1年超3年以下) 8,580 2,506 -0.002 -0.002 38.7
国債買入(残存期間3年超5年以下) 10,565 2,502 0.004 0.006 33.0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,416 4,005 0.008 0.009 32.1

木曜の3M入札が平均5bp割れまで突っ込んでその後5bp乗せ水準になっていましたので、そういう意味では新発が少し持ちになっていたと思われますので平均が引けというのはまあこんなもんでしょうかね。2兆5千億円攻撃よりはマシですけれども、そうは言いましても2兆円を4週間打ち込んだ上に2Mが今月は発行されないので需給は良い状態が続くんでしょうかねえ。


・1月末MBは12月対比惜しくも減りますな

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqx/juqx.htm/
日銀当座預金増減要因と金融調節(1月実績速報)

こちらからファイルを落として確認しますと、1月の当座預金増減要因は銀行券が43620億円の還流超過、一般財政要因が28535億円の揚げ超になっていて、国債発行償還とその他要因を含めて当座預金増減要因が146805億円の不足。これに対してオペ(と補完貸付)で180905億円の資金供給が行われて当座預金残高は34100億円の増加になりましたという結果。

でもって当座預金残高は34100億円増えているので当座預金残高だけ見ると前月末残高対比で3兆円少々増えている形になるのですが、銀行券が還流している分はMBの減少要因になりますので、銀行券43260億円の還流分がMB減少要因となって結局の所MBは前月末対比で9520億円の減少という結果になりますな。

つーことで途中から短国買入を2.5兆円に拡大した効果もあって当座預金残高は増えましたけどMB減少してしまってこれがまた(全くもって関係は無いのですが)どうせ確報が本日出た所でマネタリーベースの月末残高が前月比減少しているというのが明確になる(まあ日銀当座預金残高と金融調節に関しては日々更新分もあって、30日のMBが出ていてそこから31日の増減速報を見ればMBの額は分かりますけど)訳ですが、何とも間が悪いことに足元で新興国市場があじゃぱーとなっている訳でして、Taperingに加えて(なおTaperingとは言いますがLSAP自体は拡大が続いているのですけどねえ)日銀のMB拡大が止まっている(単に季節的変動の問題であってトレンドとして買入は続いているのですけどねえ)という事で、日米の消極的な金融政策スタンスが新興国市場の金融市場をおかしくしていて日銀ケシカランとか言い出すスットコドッコイが登場するに1万ドラクマ。



○シカゴ連銀エバンス総裁の(ちょっと前の^^)講演だがやはりTaperingは普通に続きそうですな

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2014/01_15_14_themes_new_year.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/01_15_14_themes_new_year_print.pdf
Recurring Themes for the New Year

先日ちょっとだけネタにしましたが、もうちょっと読んでみた所やはりどう見てもTaperingはほぼFOMCの総意に近いのかねという感じがするのでまあ鑑賞してみましょう。何せスレッショルドが「エバンスルール」とも巷間呼ばれていたりしている訳でして。


・景気に関してはインフレの弱さを重視

最初が経済見通しですけど。

『The recent data on economic activity generally have been encouraging. Importantly, the labor market has improved. True, the December jobs report was disappointing. But, taking a broader perspective, payroll employment growth averaged more than 200,000 jobs per month between August and November and the unemployment rate has fallen to 6.7 percent. According to surveys of consumer sentiment, household confidence is recovering from the drop that occurred during last fall’s fiscal policy debates.』

労働市場と家計のセンチメントの改善は全体として心強いものがあるとの仰せです。

『These improvements in the job market and sentiment are helping to boost consumer spending, which has increased at a very solid 4-1/2 percent annualized rate over the past three months. The latest data also suggest that housing markets may be picking up again; as you know, the housing market stalled somewhat after the run-up in mortgage rates last spring and summer. 』

で、それらの改善が消費を拡大しており、更に住宅市場も足元再び改善の動きが出ていると。

『News from the fiscal policy front has also been positive. Although the budget deal in Washington does not address long-term structural issues, the new budget agreement is a welcome development. Fiscal policy will be slightly less restrictive over the next couple of years, and the agreement has also reduced some of the uncertainty that has been weighing on the economy.』

財政に関しては中長期的な合意はまだですが進展はしており経済の阻害要因になる度合いはやや低下しました。

とまあここまでは景気が良いのですが、この先はパッとしない話。

『Now, as an economist, I am well aware that economics is often referred to as the dismal science. In this context, I won’t paint too bright of a picture.』

dismalというのは暗いとか陰気なとか言う意味。

『At 6.7 percent, the unemployment rate is still well above the 5-1/4 percent rate I think is consistent with its normal longer-run level. Furthermore, much of the decline in the unemployment rate in 2013 reflected people dropping out of the labor force as opposed to finding new jobs. In addition, the level of activity in many sectors of the economy, while improving, still has some way to go before returning to what we would consider normal. Construction - both for housing and nonresidential buildings - comes to mind. And, as I will discuss in more detail shortly, growth still faces some important headwinds, meaning that it could be some time before we close the so-called resource gaps in the economy.』

つーことで雇用の指標は改善しているけれども中身はあまり良くなく、多くのセクター、特に建設などの活動水準は弱く、経済のリソースギャップは依然大きいです。

『Moreover, the recent news on inflation has not been good. Inflation is too low and is running well below the FOMC’s 2 percent target. This target is measured in terms of the price index for total personal consumption expenditures - or PCE - and this has increased less than 1 percent over the past year. Core PCE inflation - which excludes the volatile food and energy categories and hence is a better predictor of where overall prices are headed - rose just 1.1 percent over the past 12 months and has been stuck at this low rate since last spring. Other inflation measures, like the well-known Consumer Price Index (CPI), are also well below their related benchmark levels.[1] I know it sounds strange to many, but persistently too-low inflation is a problem that monetary policy needs to address. I will also return to this issue later.』

ということでインフレはtoo lowでして、コアPCEデフレーターは1.1%近辺で昨年春から止まったままであり、長期的なtoo lowなインフレーションは問題なので金融政策による対処が必要キタコレ!!なのです。


・でも金融政策は金利で行うようですよ!!

でまあ金融政策に関する話の部分に飛びますが。

『When the Committee met this past December, with the unemployment rate at 7 percent and other labor market indicators showing improvement, we decided that the cumulative improvement to that point met the criteria for first scaling back purchases.』

労働市場が顕著に改善した事から買入拡大のペースを下げるポイントに達したと判断しましたとなという事ですが、何せエバンス総裁は去年の投票権メンバーでしたのでそらまあこの辺の説明はこうなる罠と思われるのでした。

『This decision does not, however, mean we thought the economy needed less overall policy accommodation. Rather, the Committee agreed it was time to rebalance the mix of monetary policy.』

この決定は全体的な緩和を減らすのではなく、金融緩和政策の構成要素をリバランスするものであるとな。

『Large-scale asset purchases have been effective in stimulating activity, and their effects have shown more through to top-line gross domestic product (GDP) growth now that the most restrictive fiscal influences in the first half of 2013 have waned some. Nevertheless, QE3 is a nontraditional policy instrument. If in fact monetary policy and the recovery are now gaining better traction, it makes sense to rely more on our traditional short-term interest rate policy tool, the federal funds rate.』

ということでこの理屈キタコレなのですが、LSAPの効果は強調していますが、一方でLSAPよりも金利政策の方が効果についてこれまでの知見があるという事で、知見のより多い(つまり確実な、ということでしょう)政策である金利政策をメインにすることによって金融政策を運営していきますよという話。

『We have a much better understanding of how changes in the funds rate affect the economy than we do of the benefits and potential costs associated with large-scale asset purchases, largely because we simply have more experience with the former policy tool.』

つーことですので、つまりはインフレに関する部分での説明で「too lowなインフレーションを長期間に渡って継続しないように金融政策での対応が必要」とご説明になっておられるハト派分類になる筈のエバンス総裁であっても「LSAPよりフォワードガイダンス」という話をしているのが味わい深いですな。

でまあフォワードガイダンス強化した説明がありまして、その後にエバンス総裁の見解が続くのでその辺へ。

『When evaluating the situation at our meeting this past December, we reasoned that conditions had evolved in a way that meant we could - and should - provide more specificity on what might happen with the federal funds rate when the economy reached this threshold.』

ほうほうそれでそれで?

『Importantly, in my mind, the low readings for inflation by themselves now suggest that it likely will be appropriate to keep the funds rate at its current level for quite some time.』

つーことで「低インフレはそれ自身がFF金利を現在のレベルに長期間に渡って維持する事が適切である事を示唆する」という話ですので、そういう意味ではエバンス総裁は低金利政策を相当長期間に渡って維持すべきだという話をしておりますな。

『So I supported our change in language to say that the federal funds rate likely will remain in its current range “well past the time that the unemployment rate declines below 6-1/2 percent, especially if projected inflation continues to run below the Committee’s 2 percent longer-run goal.”[2]』

ふむ。

『This elaboration of our forward guidance should more strongly communicate that we are in no hurry to raise rates: We will not prematurely reduce accommodation in an economy with elevated unemployment and very low inflation pressures.』

つまり早まった金利引き上げは行わないし、利上げペースも急がない事を強調した物ですキリッという所ですな。

『This relationship between economic conditions and the policy rate shows up pretty clearly when you look at the forecasts made by FOMC participants, which are published in our Summary of Economic Projections - what we refer to as the SEPs.』

でまあそれは12月FOMCで公表されたSEPにも示されていますということで、以下SEPの数値説明。

『Last month, 15 of the 17 participants thought that it would be appropriate that the first increase in the funds rate would occur in 2015 or later, and all 17 thought the unemployment rate would be at or below 6.2 percent in the fourth quarter of 2015. Indeed, two-thirds thought it would be below 6 percent. So the “well past the time that the unemployment rate declines below 6-1/2 percent” is in our forecasts. Contrast this to when we first adopted the 6-1/2 percent unemployment threshold in December 2012. Back then, 14 out of 19 participants thought the first increase in the funds rate would occur in 2015 or later, but only six thought the unemployment rate would be below 6.2 percent at the end of 2015.』

ですな。

『To understand these changes, we also have to consider the inflation side of the ledger. In December 2013, 12 out of 17 participants thought inflation in 2015 would only be between 1.3 and 1.8 percent; back in December 2012, more than half thought inflation in 2015 would be 1.9 percent or higher. This lower current outlook for inflation certainly justifies maintaining policy accommodation, even though the unemployment picture looks brighter than it did a year ago.』

このようなSEPの政策金利見通しは物価に対する見方によって正当化されますということで、またまた物価見通し重視となっていまして、コチャラコタ総裁の講演(しかしあの話をしておいて何でTaperおかわり賛成なんだか)でも申し上げましたが、まあFOMC全体としてより「フレキシブルインフレーションターゲット」という姿勢が明確になってきたという感じですな。

『A great number of factors influence growth, inflation and the execution of monetary policy. I’d now like to turn to five broad issues that have been and continue to be important in shaping my thinking about the economy and monetary policy. These five themes are reasons why I support our current policy approach and believe it will be necessary to maintain a highly accommodative policy for some time to come.』

でまあ経済の5つのポイントに関しては時間がないのでパスですが、今後の米国経済に関してのポイントの中でも「インフレが2%の目標を下回って推移している期間が長い」というお題があったりしまして、金融政策は今後も十分に緩和的に運営されるべきという話をしているのですが、ご覧のとおりでエバンス総裁もLSAPではなくてフォワードガイダンス強化で実施すべしという話になっておりまして、まあこれを見る感じですとFEDのTaperingは海外金融市場が盛大にコケる(まあ新興国コケると言ってもメヒコとかが盛大にコケるような感じで庭に火が点かないと慌てないでしょ)とか、そもそも米国経済がコケてリセッション待ったなしとかになるとか、まあそういうような盛大な下振れが明確にならない限りは淡々と継続するんでしょうなあというのが見える講演なのでありましたです、はい。

#そういうのは1月FOMC前にネタにしろと言われるとぐうの音も出ないのですがががが