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2014/03/31

お題「マイナス金利キタコレ(ただし末初GC)/岩田副総裁講演をあまり鑑賞しないが鑑賞」

モーサテで新年度相場展望株式編と来たら予想通り金融緩和クレクレなのだが、追加緩和は判ったがじゃあお前は現実問題として何をどう追加緩和をするとどういう波及効果があって緩和が実施されるのか説明して見ろやゴルァとと申しますか、結局結論が「黒田追加緩和をきっかけに追加政策相場で株価上昇期待」ってそれ浅ましく「俺の所に補助金寄越せ」と言ってるのと五十歩百歩にも程があるんですが。

○マイナス金利キタ!!

東京レポレート
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

こちらから金曜の数字を取りますと、T/N取引つまり31日スタート1日エンドのGCレポレートがTKRR集計開始以来の初のマイナス金利と相成りまして、堂々の▲0.011%ということでマイナス1.1bpという数値が公表数値で思いっきり出てきましたですよアヒャヒャヒャヒャ。

まあ朝からもうちょっと低い(マイナスの大きい)レートでの出合いの話もあったりしてましたからレートマイナス出てきてもシャーナイナイなのではありますが、市場の出合いと言いましてもレポとか現先って店頭取引だからベンダーとかでは出てきますけどこの手の公定みたいなのに出てくるのが中々お洒落とゆー所ですな。

そんな中(時間的にはTKRRの公表の方が後)ですが期末跨ぎで短国買入オファー。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140328.htm
国庫短期証券買入 10,000 2014年4月1日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年4月1日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年4月1日
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年4月1日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 2,000 2014年3月28日 2014年3月31日

短国買入ですが、何も前日に末初レポレートがクソ低下しているの分かっているんだから約定ベースで末を超えるまで待てないのかねとか思ったりするのですが、まあご案内の通り4月はシグナルオペの足がバカスカ来る訳で、このオペを仮に1年でロールしてくれればそこそこ札が入りそうな気はする(先般の貸出増加支援オペでも1年物が結構入っていたようですので1年だったらニーズが一応あるんじゃねえかと)のですが、まあ平常運転で3か月でロールすると残高ガタ落ちしそうというのが4月にはございます。

でまあそういう背景があるのは念頭にあるので、実際問題としては金曜は短国買入を引き続き2兆円突っ込んで来るという予想もあって、1兆円のオファーというのはもう日銀がそもそも市場に配慮とかしてる場合じゃないというような感じでオペレーションの実施のやりくりに追われる中で一応市場に気を使ったという評価が(その界隈では)一般的とゆー所でしょうか。

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140328.htm
国庫短期証券買入 28,734 10,001 0.002 0.005 61.3
国債買入(残存期間1年超3年以下) 12,689 2,500 0.008 0.008
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,702 2,504 -0.003 -0.003 55.0
国債買入(残存期間10年超) 6,461 1,702 -0.006 -0.005 40.2
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 263 263 -0.400 -0.400

一応前日引け対比では甘になって良かったですね(棒)という所ですが、応札が2.8兆円しかなくて、2兆でオファーしてたら(さすがにその辺は市場状況ヒアリングしてるでしょうからまあ無かったと思うが)夢(悪夢)の出来上がりマイナスとかあったでこれという所でしゅかねえっつー事で。いやはや何とも。

なお、日本相互証券さんの引値を見ますと2年カレント近辺から手前に掛けてとか短国とかの水準見ると微妙に引けが金利上昇の巻となっておりまして、受渡ベースで期末の残高確保したからもうイラネという気のだいぶ早い方が早速叩き売ったのではないかと思われる風情はあるのですけれども、引き続き1日〜2日のGCレポとか短国現先レートとかあばばばばーな状況は継続しているようでして、玉無芳一状態が続いております次第な上に日銀が短国を1兆円お吸い上げになっておられますからもうねという所で、短国レートの方がろくすっぽアガランチ会長になっておられる訳で、短国レートが下がったままの状態が継続→有担保コールやら無担保コールの金利に低下圧力が掛かる→他の金利も波及して下がる→短国レートが更に低下圧力、というあばばばばーな循環が継続致しまして、MB積み上げのオペレーションが技術上困難になってきやがりますなあという話にもなろうかと想定しておる所です。

つーかですな、末初の玉が極端に無くなってマイナスレートになるとか、そらまあ金利は下がっているかも知れないけど、世の中には程度という物がございまして、ここまで金利が低下してしまいますと市場取引が極端に低調というかストレスが掛かっている状態(マイナス金利では取引が出来ない人もいます)になりますし、そもそも収益的に厳しい中で更に飯の種が無くなりますと市場参加者が戦線維持できなくて退出して更に市場機能が低下する(今に始まった事では無いだろうという夢も希望も無いツッコミをしないように)とか、最早何の為に金融緩和政策を実施しているのかワケワカランぞなもし(MB積み上げると実質金利が低下して投資や消費が活発化するらしいのですが)という状況ですな、ナムナムナム。


○そういえば金曜のちょっとした訂正である

昨日は日銀企画局の中の人謹製(ただし日銀の公式見解を示すものではありません)という大変に味わいのある家計のインフレ期待に関する分析レポートの鑑賞会(単に合いの手入れながら読んでいただけではないかというツッコミは却下)を行いましたが、その中でちょっと訂正を(過去ログは取消線入れて訂正済みです)。

えーっとですな、金曜に鑑賞をした際にこんな事を申し上げた訳ですけどね。

(以下金曜の駄文再掲、下の『』内は日銀レビューシリーズ「家計のインフレ予想の多様性とその変化」(2014年3月から)

『2013 年9 月調査と12 月調査には、「物価安定の目標」──消費者物価の前年比上昇率で2 %── の認知度に関する問いが設けられている。この設問の回答をもとに認知度別の予想分布を算出したところ、5 年予想の分布は、「物価安定の目標」を認識している家計の方が、2%を中心に鋭く尖った形状となっている(図表8)。一方、同目標を見聞きしたことのない家計は、予想分布の山が低く、その分、両裾が相対的に厚い。』

そういう質問を前に入れたら回答が誘(内務省検閲)。(ここまで金曜の駄文ね)


直近の生活意識アンケートですが
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1401.pdf

こちらの1ページ目の目次にありますように、質問の順序としては

『1-1. 景況感等
1-2. 暮らし向き、消費意識
1-3. 物価に対する実感
1-4. 先行きの地価動向
1-5. 日本経済の成長力
1-6. 日本銀行に関する認知度、信頼度等
1-7. 銀行振込に関する認知度等』

となっておりまして、一応順序としては物価に対する実感という所で5年先のインフレ予想を回答してもらうという建て付けになっているので「そういう質問を前に入れたら」という「前に入れたら」部分は間違いでございますので謹んで取消させて頂きますが回答が内務省検閲な件についてはやはり同じアンケートでそういう質問しててインフレ予想をヒアリングするってのはうーむという感じはするんですけどね。


○遅ればせながらどうでも良いとは言え置物師匠の高座より

すいません先週月曜の講演でしたわw

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140324a1.pdf
「量的・質的金融緩和」とわが国の金融経済情勢
―― 国際東アジア研究センターにおける講演 ――

・まあ端的に言えば「深みがまるでありません罠」としか・・・・・・・・・

講演本文が12ページあって正直申し上げてプレゼン資料の紙芝居が除く表紙で18ページもあるという代物なのですけれども、まあ何というか深みというものがまるで感じられないという物件でありまして、例えば巨大な緩和政策によって問題が発生しませんかという件に関してはこのような話をしています、って大体再掲ですけどね。

インフレ目標政策を説明した中での『(ハイパーインフレの防止)』という所から。

『日本銀行の政策に対する懸念として、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」という懸念の声が聞かれますが、この点についても、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます。』

『なぜなら、インフレ目標政策というのは、将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組みだからです。』

リジットな運営してねえだろとかそういうレベルのツッコミもする気が起きん。

『日本ではデフレからの脱却の手段として議論されることの多いインフレ目標政策ですが、もともとは1980年代のニュージーランドなど、高インフレに悩んでいた国々によって採用された政策です。』

高インフレを抑えるのは引き締めを強烈にすれば良いのですが、問題はデフレ均衡のような場合にどうするのかという話で、紐の押し引き論とかの話じゃねえのと思うのですが。

『仮にこの先、景気が過熱して2%の物価安定目標を大きく上回るような状況が予想される場合には、インフレ目標政策の枠組みに沿った、適切な対応をとるということも、日本銀行はすでにお約束しているとご理解下さい。』

『日本銀行は、日本銀行法で定められた理念に基づき、今後とも、政府との十分な意思疎通を図りつつも、自らの判断と責任において、金融政策運営を行っていくことを強調しておきたいと思います。(図表5)。』


とまあそんな話をしている訳ですが、ここで先日NYのジャパンソサエティで講演をした佐藤審議委員の講演テキストの邦訳版(http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140319d1.pdf)を鑑賞しましょう、ってこれも再掲ですが。

『一方、悲観的にみれば、名目金利水準が不連続に変化することで財政の硬直化が一段と進んだり、金融システムに影響が及ぶ可能性もある。皮肉なことだが、政府債務の大きさ故に、デフレ脱却に成功することが望ましくない波及効果をもたらすかもしれない。』

『とりわけ金融システムに深刻な悪影響が及ぶような極端な場合には、中央銀行がいくら物価安定に強くコミットしていても、金融システムの安定と物価安定のいずれかの選択に追い込まれる可能性がある。このように、財政の持続可能性への懸念等から中央銀行が物価安定に専念できなくなると、「マネタリストのある不快な算術」2として知られる状況に陥るかもしれない。』

『こうした悲観シナリオを顕在化させてはならない。日本銀行としては、金利環境の変化の可能性を念頭に置き、ストレス時の金融システムの頑健性をチェックするとともに、金融機関に対してはリスク管理の強化や収益力向上の取組みを普段から促してきているところである』(この部分は佐藤審議委員の3月19日NYでの講演の邦訳から引用)

一応置物師匠の方が一般ピープル向けの講演会(らしい)で、佐藤さんの講演が白川さんの「偽りの夜明け」講演のような講演会ですので、その点は割り引いて考えたとしましても、一方の説明があまりにも能天気にも程があるとしか申し上げようが無いのは残念というかとにかく「深みの無い底の浅い話」としか申し上げようがございませんという所です。


・予想実質金利の話をするのは良いのだが中身がねえ

でまあ話を終わりにしても良い(正直話がそんな感じで薄っぺらくてツッコミすらする気が起きない)という置物クオリティ抜群の講演なのですが、折角だから『(2)予想実質金利への働きかけ』という所に突っ込みを入れてみようと思う。

『(2)予想実質金利への働きかけ』から。

『こうした二つの柱からなる「量的・質的金融緩和」が実体経済に影響を及ぼしていく波及経路の最初の重要なポイントが、「予想実質金利を引き下げる」という効果です。少しややこしい話になりますが、しばらく我慢してお付き合い下さい(図表7)。』

いや全然ややこしくなくてペラッペラの話ですから大丈夫ですよ!!!

『予想実質金利とは、皆さんが金融市場や銀行の店頭などで実際に目にする名目金利から、皆さんの予想する将来のインフレ率を差し引いた数値にあたります。』

ほうほう。

『名目金利が「見た目の数字」、いわば客観的な金利であるのに対し、予想実質金利は、人々がそれぞれの物価見通しに基づいて主観的に予想する金利ですから、予想する主体によって様々な金利が存在することになります。』

はあそうですか。

『借り手の側に立って考えると、一定の名目金利でお金を借りたときに、「物価の変化を考慮すると、実質的な借入れコストはいくらになるか」ということについての、借り手の主観的な予想ということになります。したがって、ある経済主体の予想実質金利が低ければ低いほど、その経済主体は借入れの実質的なコストを低く予想しているということです。』

えーっとですね、普通借入をすると設備でも在庫でも良いのですが何らかの投資を実施すると思うのですけれども、その場合って「期待される名目収益率」の方が重要だと思いますがねえ。設備にしても在庫にしても陳腐化する訳でして、年間2%上昇するからって1年間置いてて名目で2%上がったよやったねパパ明日はホームランだってんな話あるかよヴォケという所で、そらまあデフレよりはインフレの方が(名目金利が同じなら)金利の実質的な負担が軽減されるけど、何かこの師匠って投資行動に関して金融資産への投資みたいなノリでしか物事考えてないんじゃないのという説明ですなあという所で。


・Q&Aコーナーのようなものがあったんですかね&原稿ではドレッシングが出来ますが・・・・・・・・という雑談

ロイターから
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0ML1BN20140324
UPDATE 2-物価目標2%は2年ぴったりで達成と言ってない、やる気示すのが主眼=岩田日銀副総裁
2014年 03月 24日 17:01 JST

まあ先週の月曜は置物講演に関連するベンダーのニュースで腹筋が崩壊された方が多かったかと存じまして、師匠ネタを期待する声(?)も頂いた訳ですが、まあ上述のようにそもそもツッコミを入れる気力も起きないスッカスカ講演テキストだった訳ですが、頭隠して何とやらという諺にもありますように、どうもQ&Aコーナーでもあったのか色々と講演テキストでは出ないボロがボロボロと出ているようで何より。

もう最初から腹筋が崩壊するのですがね。

『[北九州市(福岡県) 24日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は24日、北九州市内で講演し、日銀が他の中央銀行と異なり物価目標の達成期限を2年と明示しているのは、他中銀と違い目標を達成するとの信頼がないため、やる気を示すのが狙いと強調した。2%の物価目標達成について「2年ぴったりで達成するとは言っていない」と述べた。』(上記URLより、以下断りの無い場合は上記のロイター記事から引用)

『岩田副総裁は、過去20年間の経験で他の中央銀行はほぼ2年間で物価目標を達成してきたと指摘。これに対し日銀は物価目標の達成に関して市場の信頼が低く、「期限を切らずに2%の物価目標を掲げても、2年、5年、それとも15年かけで達成するのかわからない」とし、「2%を目指し、道筋が外れたら対応するというやる気を示している」と説明した。』

との事ですが、ではBOEの直近4年間の実績やECBの今後2年間の見通し数値はどうなっていましたでしょうかという点について小一時間問い詰めたい訳ですが、一方で師匠は以前このような話をしておられます。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL040PR_U3A300C1000000/
岩田規久男氏、2%の物価上昇率「目標達成期間は18〜24カ月」
2013/3/4 18:06 〔日経QUICKニュース(NQN)〕

『日銀副総裁候補の岩田規久男・学習院大学教授は4日午後、資本市場研究会が開いた講演会で、2%の物価上昇率目標について「目標は政府が決めるが、達成のための政策手段は日銀が決める」との考えを示した。そのうえで、目標の達成期間は「18〜24カ月」とし、13年4月からの場合には「2014年9月から遅くとも15年3月までに達成する」と強調。それまではマネタリーベース(資金供給量)を増やすと語った。』(この部分だけ直上の日経QUICKニュース記事より引用)

ということですので、「2年ぴったりで達成と言ってない」というのは「2年よりも前に達成する」という事を意味するようでございまして、間違っても2年を過ぎて達成するという意味ではありませんですよニュースヘッドラインを見て皆さん勘違いしていますよ!!!!!!!(棒)

『物価連動国債と普通国債の利回り差で市場のインフレ予想を示すBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)は5年物が昨年末から上昇一辺倒で直近2.3%である点などを取り上げ、「 予想インフレ率がしっかりしており、日銀は(2%の物価目標を達成する)シナリオに自信を深めている」と強調した。』(再度ロイター記事より、以下同様)

5年物のBEIって市場の流動性が皆無な上に財務省のバイバックと日銀の輪番があってついでに消費税率がこれから5%上昇(3%は確定)するんですけどねえ。

『BEIの動向について、一昨年のアベノミクス開始以来上昇していたが、昨年5月のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長による緩和縮小発言で下落、昨年末に米債務上限問題が解決に向かったことで、「再び予想した経路に戻ってきた」と説明した。』

消費税問題とかGPIFの物価連動国債投資観測とかその他の要因はどこへ????

ということで、どうも何だかなあという感じなのですが、惜しくもネットで見当たらないのが残念なのですけれども、ヘッドラインの方では「日銀に入っていじめられると思ったが、期待外れだった」 「日銀職員は非常に優秀、データ収集分析能力は信頼」などというようなのがあった(ブルームバーグとかクイック辺りで出ていた)のがまた実にこう香ばしいなあと思う訳で、金曜にネタにした微妙に微妙な家計の期待インフレに関する日銀レビューにもありますように、生データなら兎も角としてそのデータの分析という話になると鉛筆を舐め舐めする余地が多分にある訳でして、そんな中で今まで日銀を悪の巣窟のように批判して『日本銀行は信用できるか(講談社現代新書2009年8月)』などというような書物まで出された方が自分でデータ分析しないで日銀スタッフの出してきた分析を「優秀で信頼」とか何ちゅうメデタイ人だとしか申し上げようがないのですが、きっとそんな事は無くて岩田規久男大副総裁様が独自の分析を成されている物と同じような分析が出てくるから信頼しているんでしょうね(棒読み)!!!!!

つーかさ、いじめられるって副総裁には人事権あるんだからそらいじめん罠と思いますし、逆に優秀で信頼とか言ってるくらいだから副総裁様ヘヘー仰る通りですなあとか持ち上げられてすっかりいい気分で舞い上がっておられると存じますが、誠実な日銀の皆さんですからはいはいおじいちゃん5年のBEIが順調に上昇してまちゅよなどというような風情でお仕事をしておられるという事は一切無い物と存じます(棒)。



2014/03/28

お題「期末のあばばばばばーな短期市場メモ/家計の予想インフレに関する日銀レビューキタコレ!」

これはまたハイブローなギャグというかはいはいおじいちゃんお薬の時間ですよ状態にしか見えない、つーかこれが有力野党の代表という日本って何なんでしょ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140326-00000123-jij-pol
尖閣国有化は間違い=維新・石原氏
時事通信 3月26日(水)18時22分配信

『日本維新の会の石原慎太郎共同代表は26日、東京都内の日本外国特派員協会で講演し、2012年の尖閣諸島(沖縄県)の国有化について「民主党政権が人気稼ぎで買ったのは間違いだった。国のマター(問題)にして、相手(中国)を刺激してしまった」と述べ、当時の野田政権の対応を批判した。』(上記URLより)

それでは当時のおじいちゃんの発言を確認してみましょう。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120612/Postseven_116114.html
石原都知事 都が尖閣購入することは筋違いであることを理解
NEWSポストセブン 2012年6月12日 07時00分 (2012年6月12日 07時33分 更新)

『石原:あの辺りは、黒潮のいい魚礁がありますから、いい漁場になります。まず港を造って整備して、それからでしょう。最終的には、人が住めるようにしたいと思っているんです。まあ本当は、こんなこと、国がやらないと駄目なんだよな。』(上記URLより)

#ところで今朝のモーサテはオープニングを見た瞬間に不愉快になったので他局に切り替えてしまったのでゲスト様がどのようなご発言をしたかは知らんですたい


○一応昨日がスポ末なので市場メモ

・末初レートががががが

昨日はスポ末期末の日でございましたが、日銀の買入スチームローラー大作戦のお蔭を持ちまして玉無芳一状態ではあるものの、期末なので債券残高調整ニーズはあるわ資金の運用ニーズはいつもの通りにあるわという事で、GCレートやら現先レートやらが1bpだの何だのという世界になり、最終的には1bp割れとかの世界というおそロシアな状態になっておられたようで誠にアレ。

まあ何ですな、期末なので特殊ニーズという分は勿論あるのですけれども、じゃあ期初になって特殊ニーズが剥落した分でどうなるかというのがこれまた気になる所でして、剥落してもそれはそれでレートは低いままという悪寒は思いっきりする訳でございます。

つーのはですな、これまた期末要因があるとは思うのですけれども、新発CPレートがここの所低下傾向となっているようでして、まあ期末なのでバランスシート抑制の為にCP発行が抑制されるといういつもの仕様によって需給が締まる傾向はあるのですが、こちらも日銀のCP買入はせっせと行われていますし、そもそも短国レートが足元から残存1年まで3bp台で並んでしまっており、上記のようにキャッシュの運用ニーズは強いと来てますので、まあ金利低下の影響が波及しやがりますなという所です。


・固定金利オペェ・・・・・・・・・

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140327.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年3月31日 2014年6月30日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 4,000 2014年3月27日 2014年3月28日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140327.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(3月31日スタート分) 990 990
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 166 166 -0.400 -0.400

つーことでまあ足元で短国のレートが全ゾーン3bpとかやってる上に末初のレートがそんな感じになっているのですから3Mの0.1%なんぞ要らんわという話になるのは当然ではありますけれども、6874億円の期落ち(12/26オファー分)に対して990億円の落札ということで、固定金利オペの残高はこれで14兆円カツカツの水準まで減少という流れでございますな。

ま、3か月の0.1%固定金利オペなんぞに共通担保使う位なら次回貸出増加支援オペの4年0.1%に共通担保使う方が明らかに意味がありますので、そらまあ固定金利オペの札は益々集まらないです罠という所で、4月にバカスカ固定金利オペが落ちてくるのは仕方ないとは思うのですが、そこで4月固定金利オペが落ちてMBが前月比減少した場合にこれがまたちょうど間の悪い事に消費税増税とぶつかるというのが味わいがある話で、さて来月ってその分短国買入に皺寄せるんでしょうかねえという所なんですけど、先ほど申し上げたように末初がまさに末期的状態(って意味が違うか)になっているのでして、そのまま4月になだれ込みますとアチャーな事になると思われましておそロシアでありまする。

まあ昨日間違って短国買入を末渡しで打ち込んだ日には夢の買入出来上がりレートマイナスとか夢の札割れとか(下手したら両方)発生していたと思われますので、短国買入打ちこまなかったのは見てホッとしましたが、オペの方も最近はMB目標の帳尻に向けて短国市場にドンドン皺を寄せてくるわ、輪番オペの方ではデュレーション調整の為に闇討ち超長期減額をしてくるわとか、何ちゅうかこうディレクティブ達成に相当ヒーコラという感じで、市場機能論とか市場との対話ってなんでしたっけという感じがするのも実にこうアレという所ではありまする。


○インフレ予想に関する味わいの深い日銀レビューキタコレ!!

さて本日は本当は師匠の先般のしょうもない講演をネタにする予定でしたが、そのような物件よりも遥かに意義深いかもしれない日銀レビューが投下されましたので鑑賞させて頂きたいと存じます。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/
家計のインフレ予想の多様性とその変化

『要旨』

『インフレ予想を特徴付ける要素のひとつは、その「多様性」もしくは「ばらつき」の大きさであり、家計のインフレ予想の「ばらつき」はとりわけ大きい。インフレ予想が変化する局面では、平均値や中央値といったインフレ予想指標の統計量では把握しきれない「ばらつき」の変化が、予想分布の形状の変化として現れる。本稿は、こうした観点から、家計がもつ中期インフレ予想の分布が時間の経過とともにどのように変化してきたかという点について、『生活意識に関するアンケート調査』を用いて検証を行った。その結果、2013年入り後の物価上昇局面における予想分布には、2008年の物価上昇局面に観察されなかった特徴的な変化がみられた。』

足元で家計のインフレ予想に「今までに無かった特徴的な変化がみられた」という事で、続きはWebでではなくて日銀レビュー本文ででございますよ!!!

本文はこちら(Webですかそうですか)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j01.pdf

『はじめに』から。

『インフレ予想(inflation expectations)とは、各種の経済主体がもつ、「将来の物価動向に対する見方」である。インフレ予想は重要な経済変数のひとつであり、実質金利(名目金利とインフレ予想の差)や価格・賃金設定行動を通じて、経済・物価動向に幅広く影響を及ぼすことが考えられる。』

ということで物価安定目標などに置かれましても重要なインフレ予想に関するペーパーが出たということになりますとこれは正座して読まなければいけないのがマニアの心得というものです(^^)。

『こうしたインフレ予想を表す指標には、インフレ予想を直接尋ねるサーベイから、物価連動国債やインフレスワップなどの市場情報からインフレ予想を抽出するものまで、様々なものがある1。このうちインフレ予想に関するサーベイは、2000年代半ば以降、整備・拡充されてきた(図表1)。近年では、調査対象者が企業や市場関係者に拡充されるだけでなく、予想対象期間の長期化が進められている。2014 年3 月からは、日本銀行の『短観』でも、企業のインフレ予想について調査が開始される。こうした整備・拡充の結果、対象者間のインフレ予想の多様性(disagreement)や、予想対象期間ごとのインフレ予想の多様性を把握することが以前に比べ容易になっている。』

ということで、まずは次の『インフレ予想の多様性』という所に参ります。


・インフレ予想のばらつきという図表に滋味がありますな

『インフレ予想は予想する主体によって様々であり、全ての人が同じ予想を共有している訳ではない。家計、市場、企業を対象としたサーベイの結果をみると、いずれのインフレ予想にもばらつきがあり、特定の水準に収斂していないことが分かる(図表2)2。』

ということで図表2というのは本文の方を見て頂きたいのですが、よーするに家計のインフレ予想の分布が裾が広い形になっているものの、企業と市場のインフレ予想分布は一定の数値に収斂する傾向があって、更に言うと企業よりも市場のインフレ予想の中心値が低いという日銀的に見てケシカラン状態になっている訳ですよ。

『インフレ予想の多様性は、予想を立てる際に参照した情報の違いによって規定される面がある。例えば家計の場合、消費バスケットや収入水準など自身の置かれた環境のもとで、インフレ予想を立てている。このため、参照する情報は家計によって区々となり、インフレ予想のばらつきが大きくなりやすい。』

なるほど。

『一方、市場関係者やエコノミストの場合、予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている。このため、インフレ予想のばらつきは、モデルの予測精度の差などに起因したものとなる傾向が指摘されている3。』

>予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている

ふむふむ。

『市場のインフレ予想の多様性は家計ほど強くなく、今後10 年間のインフレ予想(10 年予想)は、2004 年の調査開始以降、中央値を挟んで上下0.3%pt という極めて狭い範囲に半数の予想が集中している。上場企業間のインフレ予想のばらつきも、市場のそれに近い。特に大企業では、業界の需要予測を立てる際、エコノミストの経済・物価予測を参照したりすることから、結果として、市場と似通ったばらつきが生じやすいと考えられる。』

つまりまあ市場と家計のインフレ予想が思いっ切りベースとなっている物に相違があって、その結果として期待インフレ率として示されている物としてあるのが「市場由来」と「家計由来」で思いっ切り異なってくるという話をしておりますが、何気にこうお洒落なのは先ほどの市場の期待インフレの推計に関する記述でございまして「予測モデルにマクロ経済情報を投入することで」という部分はまあ事実そうなのですけれども、この記述部分を戸田奈津子先生ばりに超訳しますと、市場のインフレ予想は予測モデルでカバーが難しい何らかの不連続な変化が生じた場合には足元のアクチュアルな個別物価変化に敏感に反応しやすい傾向のある家計のインフレ予想の変化に対して遅行する可能性がある、とまあそういう事を暗に説明しているというのが大体この後の展開を見ると読み取れると思ったのですがアタクシの妄想ですかそうですか(^^)。


・家計のインフレ予想の分析が以下続くのだ

つーことでこの後は暫く家計のインフレ予想の計測結果に関する分析があって、これはこれで中々面白いのですが引用してるとオワランチ会長になるので何で多様性が発生するのかという部分の解説を引用しますが、その前の部分図表見ながら読むと面白い(だいたい直観的にそうですねという説明になっています)ので一読をオヌヌメ。

『こうした家計間のインフレ予想の多様性やその変化を規定している要因のひとつとして、インフレ予想を立てる際に家計が参照する情報の違いが挙げられる。『生活意識に関するアンケート調査』で問われている「物価」は、消費者物価指数など特定の物価指標で代表されるものではなく、「回答者が購入する物やサービスの価格全体」である。このため、それぞれの家計がイメージする「物価」は、それぞれの消費バスケットに対応したものとなっている。この点も、家計間のインフレ予想に多様性をもたらす一因となっている。』

ですな。

『そこで、インフレ予想を立てる際に参照する価格情報の違いを定量的に確認するため、時系列モデルを使った分析を試みた。具体的には、@購入頻度の高い品目の価格情報、A購入頻度の低い品目の価格情報、Bインフレ実感、C5 年予想からなる4 変数VAR(ベクトル自己回帰)モデルを用いて、2 種類の価格上昇ショックの発生時における5 年予想の変化幅を、年齢階層別に計測した。』

なお結果の「図表5」は本文をご覧あれ。

『計測結果から、2 つの傾向を読みとることができる(図表5)。第一に、購入頻度の高い品目の価格(食料・エネルギー価格)が上昇した場合、いずれの年齢階層も5 年予想を引き上げている。なかでも、若年層の引き上げ幅が大きく、他の年齢階層に比べ、こうした品目の価格情報を重視する傾向をみてとれる。』

『第二に、購入頻度の低い品目の価格(食料・エネルギー価格を除く、財・サービス価格全般)が上昇した場合、若年層や高年層が5 年予想を据え置く傾向があるのに対し、中年層は5 年予想を引き上げている。中年層は、購入頻度の高い品目のみならず、基調的な価格変動を表す、より幅広い品目の価格情報を重視する傾向がみられる。』

ほほー。

『このように、同じ価格情報に直面していても、参照する価格情報が異なることで、家計間にインフレ予想の多様性が生じていると考えられる。』

で、生活意識アンケートの昨年9月の調査に関する話とかもあるので読んで味噌。


・最近の予想分布に変化が表れているというキタコレな話

というのが序論でして、4ページの『最近の予想分布の特徴』という所からがキタコレであります。

『2013 年入り後、家計の5 年予想の分布に、2 つの特徴的な変化が生じている(前掲図表4)。』

ほほう。

『第一に、物価下落方向の歪みが大きく縮小した(同様の変化は、市場の予想分布からも確認できる。詳細はBOX 参照)。第二に、物価下落方向の左裾だけでなく、物価上昇方向の右裾も薄くなり、2%の予想を中心に尖りが増した。すなわち、デフレを予想する家計だけでなく、高インフレを予想する家計も少なくなり、2%近辺に予想が集中するようになっている。これら2 つの特徴には、どのような要因が影響しているのだろうか。』

>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている

さあ盛り上がって参りました!!!!!!!

『第一の特徴である物価下落方向の歪みには、過去の価格情報が強く影響していると考えられる。』

つまりバックワードルッキングでアダブティブにインフレ期待が上昇するという「まず物価が上がればこっちのもの」論でありまして、そこの説明はすっ飛ばして結論を引用しますとこうなります。

『結果をみると、先に紹介した2013 年入り後の特徴のうち、第一の特徴である物価下落方向の歪みが縮小していく様子は、過去の価格情報で概ね説明されている(図表7)。実績値、予測値とも、予想分布の左裾が薄くなっており、デフレ予想の割合が減少している。』

物価が現実に上昇したのでインフレ予想の中で物価下落方向の予想即ちデフレ予想が弱まっているとのことですよ!!!

『ただし、シミュレーションによる予想分布の予測値は、山がなだらかであり、実績値が2013 年入り後に2 %の予想を中心に尖りを増していった点を再現できていない。また、予想分布の予測値は、時間の経過とともに物価上昇方向の右裾が厚くなる結果、平均値が上昇するのに対し、図表3で示したとおり、現実の平均値は不変であった。このように、過去の価格情報のみでは、第二の特徴である予想分布の尖りを十分に説明することができない。』

さあ益々盛り上がって参りました!!!!!!!


・インフレ目標の周知が効果を出している可能性とな

次の『(予想分布の尖りを形成した要因)』という小見出し部分に参ります。

『以上の結果は、2013 年入り後の予想分布の変化を理解するには、過去の価格情報以外の情報を無視することができない可能性を示唆している。すなわち、2013 年入り後の局面では、過去の価格情報(インフレ実績の上昇)が予想分布を物価上昇方向にシフトさせる圧力として働いているなかで、過去の価格情報以外の何らかの情報が2 %に予想を収斂させている可能性が考えられる』

2013年入り後に発生した「過去の価格情報以外の何らかの情報」ということですと消費税増税に関する議論が妙に盛り上がって結局増税が決定されて近い将来の消費税増税の期待が幅広い経済主体にビルトインされたという情報ですね!!!!(すっとぼけ)

『この予想分布の尖りは、2008 年にかけての物価上昇局面にはみられなかった現象である(前掲図表4 )。当時は、2007 年央から物価下落方向の歪みが縮小するにつれて、予想分布が全体として物価上昇方向にシフトしていった。さらに2008 年には、予想分布の山は尖らずにむしろ低くなり、緩やかなインフレ予想と高インフレ予想からなる2 つの山を形成していた。』

先般の円安コストプッシュインフレとは違いますとな。

『今回の局面で生じた予想分布の尖りは、前回の物価上昇局面で観察されなかっただけでなく、今回の局面における1 年予想の分布からも観察されない(前掲図表4)。この間の1 年予想の分布は、全体として物価上昇方向にシフトしており、特定の水準に予想が集中する様子はみられない。また、5 年予想の分布の尖りは、徐々に形成されたものではなく、2013 年入り後に突如として生じている。』

短期のインフレ予想では無く5年のインフレ予想に影響を与えているとな。

『これら一連の事実は、予想分布の尖りの形成には、5 年予想のみに影響する中期的な要素が2013 年初から新たに作用している可能性を示唆している。』

更に盛り上がって参りました!!!!!!!!!!!!

『以上の分析からは、中期的な要素の中身を特定することはできないが、ひとつの可能性として、金融政策の認知度が考えられる。』

キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!

『2013 年9 月調査と12 月調査には、「物価安定の目標」──消費者物価の前年比上昇率で2 %── の認知度に関する問いが設けられている。この設問の回答をもとに認知度別の予想分布を算出したところ、5 年予想の分布は、「物価安定の目標」を認識している家計の方が、2%を中心に鋭く尖った形状となっている(図表8)。一方、同目標を見聞きしたことのない家計は、予想分布の山が低く、その分、両裾が相対的に厚い。』

そういう質問を前に入れたら回答が誘(内務省検閲)。(追記:一応質問の順序を確認したら先に長期インフレ予想を出させる建付けになっていましたが、そこの回答をしてから前の答えを見直す可能性だってある訳でやはり同じ疑念は残る)

『こうした現象は、金融政策に関する情報発信が、家計の多様なインフレ予想を2 %に収斂させる役割を果たしている可能性を示唆している6。』

(;∀;)イイハナシダナー

日銀が目標を設定したからと言って物価が2%に誘導される訳じゃねえという話を金懇で思いっきりしておられた木内審議委員のご感想を是非お伺いしたい所ではあります(^^)。


・最後に市場の予想分布の話もありますよん

でまああとちょっと記述があるのですがそこはパスして、結論部分の後にある『BOX 市場のインフレ予想の多様性』という所も少々鑑賞。

市場の予想分布のこれまでの傾向の所はまあ本文読んでちょという所ですが、その後の『(2013 年入り後の特徴)』という所から。

『こうした市場のデフレ懸念は、その後、弱まっている。2013 年入り後、物価の下落よりも上昇を意識した予想が多く形成されるようになっており、予想分布の歪みは、物価下落方向から上昇方向に変化している。これは、長期的な物価動向に関する市場のリスク認識が変化するなかで、1%以上の予想が増加していることを表している。予想対象期間が異なるので単純比較はできないが、物価下落方向の歪みが縮小する動きは、本文中でみた家計と同じである。』

ほほう。

『一方、市場では、2%の予想自体はなお少数派であり、10 年予想の平均値は2%の「物価安定の目標」を下回っている。こうした背景として、市場では、デフレやゼロ・インフレがリスクとしてなお意識されており、引き続き、予想分布の左裾がマイナス圏に伸びている。こうした予想が残存していると、市場の平均予想は上昇しにくくなる。』

「残存していると」「上昇しにくくなる」って辺りに誠に味わいの深いワーディングを感じる訳でございまして、以下お察しということで自主規制(^^)。


#ところで何で企画局?と思ったのですが直近でもインフレ予想に関するリサーチペーパーって企画局の中の人が出してるのね、ふーん

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/wp13e11.htm/
ゼロ金利下におけるインフレ予想と家計支出の関係:マイクロデータによる分析
2013年7月12日

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/wp13j11.htm/
購買力平価を利用したわが国のインフレ予想の計測の有用性について
2013年9月20日


なお、最後に念の為申し添えますが、「日銀レビュー」シリーズ(その他のWPも同様)は(本文にもありますように)日銀の公式見解を必ずしも示すものではありませんという建付けになっておりますのでよろしくお願いいたします。


2014/03/27

お題「最早今更ですが先週の総裁講演:海外での講演はややサービスが入っている感じですの(ネタが絶賛渋滞中)」

さて、
http://www.asahi.com/articles/ASG3T6RMKG3TUTIL056.html
「渡辺喜美氏に8億円」DHC会長貸し付け 週刊誌報道
2014年3月26日00時52分

というのはご案内のニュースですが、ここで都知事選挙の時のヨッシー大先生様のお言葉が大変に味わいが深いので鑑賞をオヌヌメしたいと存じます。

http://www.asahi.com/articles/ASG1C63DJG1CUTFK005.html
「猪瀬氏は5千万、細川氏は億単位」渡辺・みんな代表
2014年1月11日20時59分


○黒田総裁の商工会議所での講演から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140320a1.pdf
なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか
──日本商工会議所における講演──

『はじめに』でこんな話をしているので、まあそういう趣旨の講演ではあります。

『日本銀行では、消費者物価の前年比でみて「2%」が、目指すべき「物価安定の目標」であると考えています。この点については、「物価が上がると生活が苦しくなるのではないか」とか、「物価だけが上がって賃金が上がらないのではないか」といった声も聞かれるところです。また、企業にとっては「物価上昇により仕入価格が上昇した分を販売価格に転嫁できないのではないか」という懸念もあるかもしれません。特に、来月から消費税率が引き上げられることもあって、物価の上昇を心配する向きも多いのではないかと思います。そこで、本日は、日本銀行が、なぜ「2%」の物価上昇を目指すのかということを中心に、私の考え方を述べたいと思います。』


・物価の現状認識はいつも通りの話

まあこの講演ですが、その前に最初の『はじめに』の所で物価の現状に関してはこのように説明していまして、先日ネタにした木内さんの認識とは違いますが、まあこちらが日銀の公式見解になっておりますので念の為。

『このように景気回復が続く中で、物価面でも好転の動きが続いています。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年6月にプラスに転じたあと、プラス幅を拡大し、昨年12 月、本年1月と、+1.3%になっています。エネルギー関連の押し上げだけでなく、需給バランスが改善し、予想物価上昇率が高まるなど、基調的な物価上昇圧力が強まるもとで、幅広い品目で改善の動きがみられています。こうした改善の拡がりは、食料・エネルギーを除く消費者物価の前年比が、+0.7%まで上昇していることにも表れています(図表2)。』

『先行きについては、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、今年の夏ごろまでは、基調的な物価上昇圧力が強まる一方、エネルギー価格のプラス寄与が剥落していくことから、1%台前半で推移するとみられます。その後は、需給バランスがさらに改善し、予想物価上昇率が高まるもとで、次第に上昇傾向に復し、2014 年度の終わり頃から2015 年度にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いと考えています。』

ということで、まあ耳にタコという感じですが、もうこの辺はオートリバースカセットテープの如く同じ話をしておりまして、追加緩和という話になるようには思えませんけど何で相変わらずクレクレが多いのかという話は別途出てきます(なおこの講演では無い)のでお楽しみに。


・デフレの弊害の説明がイマイチワカランチ会長な部分がががが

で、『2.デフレの問題点』という所での説明はまあ大体普通の話をしているのですが、この辺の話の繋がりが良く判らんかったので教えてジェネラル。

『また、デフレは企業の投資判断にも影響します。企業にとって、設備投資を決定するに当たって重要なのは、名目ではなく実質金利の動向です。デフレ期待が定着すると、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は高止まりします。』

という話をしていてそらそうなのですが、その説明の最後の所の締めがこうなっているのは何ぞ??

『この15 年間の日本経済の姿をマクロ経済指標でみてみると、名目ベースでのGDPや雇用者所得は、97 年をピークとして長期下落傾向が続いています(図表3)。日本経済は、デフレのもとで、名目でみた経済活動が一貫して縮小してきたということです。』

実質金利が高止まりした結果として経済活動が縮小の悪循環に陥るという説明をした結論が何故名目での話になるのかの話の繋がり方が良くワカランチ会長で、デフレで名目が縮小したなら名目物価以上に実は落ち込んでいるんですって話をしないと話が繋がっていないと思うのだが。

つーかですな、URL先の図表を見ればヨロシなのですが、長期低落の話をしている図表3というのは名目ベースの話をしているのに、最初に図表1というのがあって、最近のGDPが5四半期連続でプラス成長という話をして今は前向き循環メカニズムという話をしている時には実質GDPの話をしているのは何ですねんというか何というか。

『ところで、日本経済においてこのようなデフレが続いていた間に、消費者物価はどの程度下落したかご存知でしょうか。実は、1998 年度から2012 年度の15 年間についてみると、消費者物価の下落率は、平均して年▲0.3%にすぎません(図表4)。この間の消費者物価の変化率は、ほぼゼロ%に近いマイナスだったといってもよいでしょう。この事実は、消費者物価でみて変化率がほぼゼロ%であっても、実際にはデフレであるということを意味しています。』

デフレって物価の継続的な下落の事だと思うのですが、何かこの説明ってデフレと不景気を意図的に混同させて説明してないかという気がするんですがということで、どうもこの辺の説明がロジックとして良くワカランチ会長だった(いやまあ何を主張したいのかはわかるけど)のですけどにゃあという所で、どうもこの辺の説明に怪しい部分があるせいかこの先の所を読んでも何というかな印象がががががが。


・2%の理由についてとか

『3.なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか』って所ですけれどもね。

『日本銀行法に定められているように、日本銀行が行う金融政策の目的は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」です。物価の安定を実現することは、金融政策の目的であるとともに、日本銀行の責務でもあります。日本銀行が目指しているのは、あくまでも、このような意味での「物価の安定」であって、人為的にインフレを起こそうとしているわけではありません。』

円安に振って物価を上げてバックワードルッキングのインフレ期待改善効果も狙うのは人為的にインフレを起こそうとしている訳では無いのですかそうですか。つーかそもそも物価安定させる為には金融政策で物価をコントロールしようという話なのだから人為的以外にどうやってコントロールするんでしょうなどと意地の悪い話はしてはいけません。

『そのうえで、日本銀行としては、「物価の安定」を消費者物価指数の前年比で数値的に定義すると「2%」であると考えています。その理由をあらかじめ申し上げると、次の3つです(図表6)。』

『第一の理由は、消費者物価指数の特性、すなわち、消費者物価指数には、上方バイアス、つまり、指数の上昇率が高めになる傾向があるということです。第二に、景気が大きく悪化した場合にも金融政策の対応力を維持するために、ある程度の物価上昇率を確保しておく方が良いという、「のりしろ」と呼ばれる考え方です。第三に、こうした考え方は、主要国の中央銀行の間では広く共有されており、多くの中央銀行が「2%」の物価上昇率を目標とする政策運営を行っていることです。つまり、「2%」は、「グローバル・スタンダード」になっているということです。』

1番2番はまあ毎度の話ですが、3番目のグローバルスタンダードなんですけれども、最近は欧米でも経済の実力ベースでの物価の均衡水準って実はそんなに高くないんじゃネーノ的な議論も徐々に広がっているとは思うのですけどねえ。

いやまあ経済政策的な見地として、「2%の物価上昇が長期均衡水準となるような経済状態となるべきです」というベースがあって、長期的には2%物価上昇が均衡水準になるべきというようなことでロンガーランの物価安定目標を2%に置きましょうというのであればそれはそれでメイクセンスする話なんですけど、それを短期的にアクチュアルの物価水準を2%に持って行こうという形で達成するのが良いのかというのは別問題のような気がしますがとか言い出すあたしゃ木内さんや佐藤さんに影響されていますかそうですか。

でまあグローバルに2%という説明がその後にあるんですが、そこの最後のECBの例なんですけどね・・・・・・・・

『実際、米国、ユーロ圏、英国、それぞれの消費者物価指数をみると、このところ低下傾向にあります(図表10)。とはいえ、デフレのリスクが最も議論されているユーロ圏でも+0.7%であり、ここ十数年のわが国の物価上昇率に比べれば、まだ十分に高い水準です。それにもかかわらず、ECBの政策理事会後の記者会見では、このところ毎回のようにデフレのリスクについての質問がなされています。ドラギ総裁は、「低インフレ率が長期間続くことはそれ自体がリスクであり、そのリスクを無視するつもりはない」としつつも、ユーロ圏における中長期のインフレ予想が、ECBが物価安定と定義する「2%未満かつ2%近傍」でしっかりとアンカーされていることを強調しています。先行き景気の緩やかな持ち直しが続くと考えられることもあわせてみれば、ユーロ圏がデフレに陥るリスクは低いと考えます。しかしながら、ユーロ圏におけるこうした動きは、2%を目指すことの重要性と、その裏返しとしてデフレに陥ることの危険性が、彼の地において強く意識されていることの表れであるとみることができます。』

説明はその通りなのですが、実際問題としてECBってじゃあ何か緩和措置やっているかと言うと(直近でバイトマン発言があって期待は高まっていますが)まあ普通の金利政策を実施しているだけだったりしまして、つまり2%がグローバルスタンダードの話はしているのですが、その達成期間はより中長期的(実際問題としてECBの見通しでは2年経っても物価見通しは2%より遠い水準だわさ)なので、まあ2年で達成の話とは整合性は特に取れていないのですな。

もちろん日本の場合はそもそもインフレ期待を引き上げてフィリップスカーブを上方シフトしないといけないので、期待の転換が必要という意味で「2年で」というのを突っ込んでいるというのはあるのですが、実際問題としてインフレ期待がそこそこ上方シフトしてくれた場合に物価安定の目標は本当に2年程度の短期間で目指すものなのでしょうかとか思う訳で、2年の部分がそのまま生き続けるとインフレ目標政策の運営面でフレキシブルでは無くてリジッドなインフレ対応政策みたいな話になっちまいやがるリスクって将来的にあるかもね(まあそうならないようにロジックを色々とと駆使してくるとは思いますが)という気はするのでありました。


・ここの説明は何ぼ何でも無理筋

先日引用した部分ですが再掲。

『4.賃金と物価 ─家計からみた物価─』からですけどね。

『しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。商品やサービスの価格の上昇により、企業の売上が伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加します。労働者は、企業の収益の増加に自分たちが貢献した分は、賃金として要求しますので、マクロ的にみれば、名目賃金の上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率との合計になります。そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。』

この一時的というのと長くというのに関しての時間軸を説明していないのが実にこう味わいがあるのですが、英国経済の場合ついこの前まで延々と物価上昇率が2%のインフレ目標を盛大に上振れて上昇していて、その間LFSベースの賃金上昇とか全然物価に追いついていなかった時期が結構長くて、経済にスラックがあって賃金も抑制されているのに何で物価が下がらんのじゃ(幾つかの特殊要因が入れ替わり立ち代わりやってきた点と、生産性が低い状況が延々と続いているからというような整理になっていたと思うが)という議論があったと思うのだが。

『実際、このことは過去のデータからも裏付けられます。時間当たり賃金の上昇率と消費者物価上昇率の推移を比較すると、物価が上昇している局面においては、基本的に、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回って推移していることがわかります。そうならずに、物価上昇率の方が賃金上昇率を上回っているのは、1971 年以降では、1980 年の第二次オイルショックのときと、2007〜2008 年の国際商品市況の高騰のときの2回だけです(図表11)。これは、いずれも、供給ショック、すなわち、国内需要以外の外生的な要因によって、物価上昇率が一時的に大きく高まったときです。』

今も外生的な要因がありませんでしたっけというのは先日も悪態申し上げた通り。

『従って、我々が直面している本当の選択肢は、「賃金も物価も緩やかに上がる世界」を目指すのか、それとも、過去15 年間のように「賃金も物価も下がる世界」を目指すのか、どちらを選ぶのかということです。答えは自明だと思います。』

えーっとですな、世の中にはスタグフレーションというのもあるのですけれどもとゆーのも申し上げましたが、何ちゅうかこういう怪しい2択に持って行くのがどうも胡散臭さ爆発という感じなんですけどねえとは思うのでありまする。


○ロンドンでの総裁講演ですけどね

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140322a.pdf
いかにデフレを克服するか
London School of Economics主催のコンファレンス
(ロンドン)における黒田総裁講演の邦訳

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140322a.pdf
How to Overcome Deflation
Speech at a Conference Held by the London School of Economics and Political Science in London

こちらの講演なのですが、日本語版の章立てで言いますと『1.はじめに』、『2. 日本経済はなぜデフレから抜け出せなかったのか。』、『3. どうやってデフレを克服するのか。』(どうでも良いけど何でこれ小見出しに読点打ってるの?)という辺りは昨年9月のきさらぎ会での総裁講演での説明とまあ同じという感じで、内容的にはこれはこれでクリアカット(木内さんの話とは違いますが)でございまする。

でまあその先の『4. 我々はどこまで到達したのか。』の所で実はサービスフレーズがががががという話。


・追加緩和の期待はこの辺見ていると起きない筈ですが・・・・・・・・・・

『それでは、2%の「物価安定の目標」を実現し、デフレから脱却するという目標に向けて、我々はどこまで到達しているのでしょうか。はじめに結論を申し上げておくと、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどり、道半ばまで来ていると思っています。』

どう見ても強気です本当にカムサハムニダ。

『まず、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムは、当初の設計通りに機能しています。』

そもそもどういう設計でしたっけ最初と話がいつの間にか変わっている部分がありませんでしたっけなどと無粋なツッコミをしてはいけません。

『すなわち、予想インフレ率は、各種のアンケートや市場の指標からみて、全体として上昇していると判断しています。また、長期金利は、日本銀行の巨額の国債買入れによって、低位で安定的に推移しています。実際、米国FRBの資産買入減額を巡って米国金利が2%以下の水準から3%程度まで上昇した中でも、日本の金利は落ち着いており、最近は0.6%程度で推移しています。この結果、実質金利は低下しています。』

はあそうですかという所ですが、市場の皆さんが本当に2%達成待ったなしと思った時に本当にこの水準でいるのかは謎でして、市場の皆さんがそう思っていないからこその金利なんじゃネーノという話はあるんですけどね!!!!!

『また、銀行行動にも変化がみられます。銀行貸出は、次第に前年比プラス幅を拡大し、最近では2%台半ばとなっています。内訳をみても、大企業向けだけでなく、中小企業向けも前年比プラスになるなど、その裾野が拡がっています。こうした貸出の動向等も反映して、マネーストックの前年比伸び率も次第に高まっており、最近では4%程度となっています。』

まあそれ以上に預金が増えてますけどね!!!!!

『これに関連して、日本銀行では、先月、金融機関による貸出増加への取組みを支援するBOEのFunding for Lending Schemeと同様の制度を拡充しました。金融機関の貸出増加額の2倍まで資金供給しますが、その際の条件はECBのLTROのように長期の資金供給で、さらに金利面では4年固定0.1%です。日本銀行の金融政策のメインエンジンは「量的・質的金融緩和」ですが、この制度はそのトランスミッション・メカニズムを強化するものです。我々は、2%の「物価安定の目標」実現のために、出来ることは何でもやるという姿勢で臨んでいます。』

とまあこんな文脈で貸出支援制度の説明をしておりまして、まあ文章の流れからすると別に追加緩和をどうのこうのという話をしている感じでは無かったりしますけれども・・・・・・・・・・・・


・英文を読むとサービスフレーズとな

この部分なんですけどね、英文テキストはこんな感じになっているんですよね。

『III. How Far Have We Come?』って所になるんですけど・・・・・・・・

『So, how far have we come toward the goal of achieving the 2 percent price stability target and overcoming deflation? To state the conclusion first, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected, and we are halfway there.』

ふむふむ。

『The transmission mechanism of the QQE has been functioning as initially intended. According to various surveys and market indicators, we judge that inflation expectations have generally been rising. Due to the Bank's massive purchases of government bonds, long-term interest rates have been hovering in a stable manner at low levels. In fact, in the face of a rise in U.S. long-term interest rates from below 2 percent to about 3 percent in relation to speculation about the Fed's tapering of its asset purchases, Japan's long-term interest rates have been stable and recently at around 0.6 percent. As a result, real interest rates have been declining.』

へえへえそうだっか。

『There are also changes in bank behavior. The year-on-year rate of increase in bank lending has gradually accelerated and has been around 2.5 percent. Lending has increased not only to large firms but also to small firms, for which the year-on-year rate of change has turned positive, suggesting that lending has become widespread to a variety of businesses. Partly reflecting this development in bank lending, the year-on-year rate of increase in the money stock has gradually been accelerating, hovering around 4 percent in recent months.』

はあそうだっか。

『In relation to this, last month, the Bank expanded lending facilities to support financial institutions' initiatives to increase lending that are similar to the Funding for Lending Scheme of the Bank of England. The Bank of Japan will provide funds to financial institutions up to double the amount of their net increase in lending and, like the Long-Term Refinancing Operations of the European Central Bank, provide long-term funds. It will provide funds with a four-year fixed rate of 0.1 percent. While the Bank's main engine of its monetary policy is the QQE, these facilities are designed to reinforce a transmission mechanism of the policy. We have been taking a stance of doing whatever we can to achieve the 2 percent price stability target.』

ということで、どうも追加緩和クレクレの人たち的にはここの最後の「taking a stance of doing whatever we can」という辺りでクレクレの支援キタコレとなっているやに思えます。


まあ何ですな、英文と日本文を比較してみると微妙にニュアンスが違う部分もあって、先ほどの比較引用部分の最初を再掲すると・・・・・・

『はじめに結論を申し上げておくと、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどり、道半ばまで来ていると思っています。』

『To state the conclusion first, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected, and we are halfway there.』

となっていて、日本語だと「順調」というのがありますが、英文だと単なる「as expected」となっていまして、「and we are halfway there」なので、ここの部分と最後の「doing whatever we can」と併せると確かに期待しているけどまだ半分なので必要な事を実施します的な読み方を出来そうな気もするなあとか思うのですが、何せこのアタクシは超ドメドメ人間でございまして、こういうのが実際にどういうニュアンスになるのとかはうーむこのという感じでございますので、どうなんでしょ教えてジェネラル(聞いてばっかだな今日は)という所でしゅ。

ただまあ何ですな、どうもイメージ的には海外にはややサービスちっくな表現にしていて、まあ海外の投資家の皆様が異常なまでにクレクレ喧しい(先日はETFを10兆円単位で購入する追加緩和という電波をどこぞ受信しまして、思わず上場ETFのプレーンな日経225型とTOPIX型のETFの時価総額を足し算しちゃいましたよ!)今日この頃でございますので、追加緩和なんかするかよ等と台無し発言をしないでやるやる詐欺で引っ張るという事ですかなどと考えるのは邪推ですかそうですか。


なお、最後の所(『5. おわりに』)でもこういう説明があるので日本語と英語を並べて鑑賞。

『以上申し上げてきたとおり、これまでのところ、「量的・質的金融緩和」が所期の効果を着実に発揮するもとで、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどっています。勿論、まだ道半ばであり、今後も「量的・質的金融緩和」を着実に進めていく方針です。また、経済には上下双方向のリスク要因があるので、それを点検し、2%の「物価安定の目標」実現のために必要であれば調整を行っていきます。こうした政策をしっかりと続けていくことで、2%の「物価安定の目標」を実現してデフレから脱却できると確信しています。』

『As I have mentioned, so far, with the QQE steadily exerting its intended effects, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected. Of course, we are only halfway there and will steadily pursue the QQE. As the economy is associated with upside and downside risks, we will examine them and make adjustments as appropriate in order to achieve the 2 percent price stability target. By firmly continuing with such policy, I am convinced that we can achieve the 2 percent price stability target and overcome deflation.』

まあ何ですな、こちらも順調にという部分がさっきと同じく「as expected」ですとなっておりまして、英文の方がややサービスっぽい感じではありますが、まあいずれにせよ海外向けに話す時はややサービス精神が入っているというのは把握したという所です。


#しまった師匠の高座ネタががががが!





2014/03/26

お題「木内審議委員の会見を鑑賞するの巻(ネタが渋滞しててすいません)」

法制局長官が規則違反で指摘される(しかも指摘したの与党筆頭理事)とは中々シュールな話ではありますなorzorzorz

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140325-OYT1T00623.htm
小松法制局長官、携帯メール見ながら答弁・撤回
(2014年3月25日22時33分 読売新聞)

公共放送のモミー先生に負けず劣らずの逸材なのかもしれませんねorzorzorz


という余談は兎も角として昨日の続きで木内審議委員の会見ネタから参ります。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1403b.pdf

○現在の日本経済の実力に則った物価水準は1%強程度とな

質疑の実質最初の所でその質問がありまして、まあこの答が割と明快。

『(答) どのぐらいの水準が望ましいかということですが、講演テキストにも書いてあるように、中長期的な物価安定の水準は、潜在成長率や労働生産性上昇率など、主として経済の実力で決定されるものだと思います。金融政策は、基本的には需要サイドに働きかける政策であり、日本経済の実力が十分発揮されるような環境を作り出すことがその役割です。一方で、日本経済の実力を押し上げる、例えば、競争力を高めるとか、潜在成長率を高めるということには、基本的には大きくは貢献できません。そうした点からすると、望ましい物価安定の状況というのは、日本銀行が決めるというよりは、経済で決まるということだと思います。』

講演テキストの通りですな。

『物価というのは、経済の体温だと言われますが、「物価の安定」というのは、いわば基礎体温のようなもので、それぞれの経済の実力によって各国別に水準が決まっていると私自身は思っています。現状で日本がどの水準にあるかということをピタリと言い当てることはできませんが、各種のアンケート調査、あるいは市場に織り込まれている中長期の物価安定、例えば5年、10年のインフレ率の予想値や期待値というものから、目先の消費税の影響等を取り除いてみると、概ね1%か1%強程度だと思います。厳密な答えがあるわけではありませんが、現状で言えば、これぐらいが実力に合った物価安定の状況ではないかと思います。』

となりますと取り敢えず現状の水準がある程度安定的に維持されればQQEでのレジームシフトは成功したというのが木内さんベースでの評価という事になりますな。で、昨日紹介した講演テキストにあるように、木内さんとしてはバランスシートの超越拡大政策はこの状況が維持されれば年末までとして、その後は(フォワードガイダンスみたいなのを導入するかどうかは分かりませんが)ゼロ金利政策を維持することによって緩和効果を出すのが宜しいという話になると思います。

『しかしながら、私が2%の「物価安定の目標」を中長期の目標とすべきだと提案している理由は、物価安定の水準は変わり得るためです。政府の成長戦略がさらに進み、その効果が現れてくることや、企業や家計がそれぞれ努力していくことで経済の効率が高まっていけば、その水準は上がってくると思います。従って、それを見極めたうえで、将来、必要であれば見直すことができるのではないかと思っています。現状では、2%という水準は高いと思っています。』

中長期での2%という旗は降ろさないものの、目先は1%強でヨロシとするというのはまあ微妙ちゃあ微妙な話ですけれども、まあその辺をもうちょっとソフトに言わないと「中長期で目指すと言ってるけど日銀やる気あんのか」という話になりそうなので難しいですなあとは思うのですけどね。

『それから、「物価安定の目標」というのは、インフレ率を2%に誘導することではなく、持続的に2%程度を達成するということです。物価安定というのは、本来は抽象的な概念ですが、それを消費者物価上昇率に置き直せば、2%程度ということです。従って、例えば急激な円安とか、景気の過熱、あるいはエネルギー価格の上昇によって、一時的に消費者物価が2%に達したら「物価安定の目標」の達成かというと、そういうことではありません。経済が比較的安定した状態で2%に達している、2%が維持されるような経済環境が達成できているというのが、2%の「物価安定の目標」を達成している状況だと思っています。』

物価安定の目標に関して佐藤審議委員がフォワードターゲットという話をしていますが、木内さんの説明はフォワードターゲットともちと違うように見えます。フィリップスカーブのY切片が2%という話をしている感じですかねえ。

『消費者物価指数をレンジで示すということは、実際の物価の動きを非常に注視して、それを誘導しようという考え方に基づいていると思いますが、そうした考え方と「物価安定の目標」の達成の考え方とは、やや相容れないような感じがします。』

ほほう。

『私は、「物価安定の目標」はレンジではなく、やはり2%程度ということだと思います。ただし、2%程度ということは、実際のインフレ率を2%に誘導していくということと必ずしも同じではありません。』

なるほど。なお最後の所は質問でCPIの上方バイアスの話をしているのでその答えです。

『最後に、消費者物価指数の上方バイアスについてですが、従来から、望ましい物価安定の水準を検討するときには、そうしたバイアスや、もう一度デフレに陥ってしまうことのリスクを踏まえたのり代などを考慮しており、2012年に決定した「中長期的な物価安定の目途」でも、そうした点を考えたうえで1%とした経緯があります。従って、例えば1%という水準が妥当だとしても、その中にはご指摘のような統計のバイアスやのり代といった考え方が既に入っており、それを踏まえたうえでもっと高い水準でなければならないということではないと思っています。』

そらそうだ。


○QQEでの追加緩和はまあ基本的に否定ですな

下振れリスク意識との事ですが追加緩和についてどう考えるのですかとの質問の答えもまあ分かりやすい。

『(答) 1点目ですが、日本銀行が示す経済・物価見通しのシナリオに対して、上振れ・下振れのリスクが出てきた際に、政策を調整していくというのは、比較的オーソドックスな金融政策のあり方だと思います。しかし、私は、今実施している「量的・質的金融緩和」というのは、そうした伝統的な金融政策のアプローチではない、つまり、戦力の逐次投入はしないとの考えの下、最大限に積極策を実施したということだと思っています。そうした考え方に基づくと、見通しが下振れたので追加緩和をしなくてはならない、ということではないと思います。』

この説明は詳しくは後ほどまた出てくるのですが、要するにQQEは期待の転換などの為に行うものであって、経済の変化に対応した微調整みたいな使い方をするものではないという話で、それは伝統的な金利政策で対応すべきもの、という話になっています。

『そもそも、私は「量的・質的金融緩和」に賛成していますが、それと2%の「物価安定の目標」とを結び付けてはいないため、2年程度で2%の目標を達成するのが難しくなったら追加緩和します、という考え方を私自身はしていません。』

確かに。

『2点目の追加緩和の効果についてですが、どういう政策を採るかにもよりますが、1回目の政策を上回るような効果を期待するのは、やや難しい感じがします。』

そらそうだ。

『例えば、長期国債の買取りの効果を言えば、私どもは基本的にはストックビュー、つまりどれだけの国債を買い取っているのか、これによって政策効果が決まってくるという考え方をしています。それに従いますと、国債を買い続けている限りは、追加の緩和効果が出ているという考えになります。』

うむ。

『ただ、最初に国債買い入れ額を決めた時に、金融市場は、この政策が例えば2年続くということで、それによる効果を価格に織り込んだわけです。私どものストックビューの考え方に従えば、同じように国債を買い続けている限りは追加効果が出てくるわけですが、実際は、政策を実施した最初にかなり大きな効果が出てきたわけです。』

なるほどそういう発想もあるな。なお余談ですが「前年対比のMB伸び率がこれから鈍化するから追加緩和」という分母が拡大している件を無視した電波をこの前受信したような気がします。

『これに対して、どれくらいの規模で実施するかにもよりますが、追加策でこれを上回る効果を上げるのは非常に難しいと思います。』

そらそうよ。

『また、一方で、追加措置には副作用が伴うことが考えられます。例えば、長期国債の買増しであれば、色々な副作用があり得ます。金融市場の機能を損なう、それを通じて金融機関の財務体質を脆弱にさせるということが考えられます。また、財政ファイナンスのリスクを高めてしまうとか、将来、金融政策を正常化する時に大きな問題が起こるかもしれないとか、金融市場を安定化させながら円滑な正常化を図ることがより難しくなってくるといった副作用を考えると、追加緩和に見合った副作用を正当化するようなイベントというのは、余程大きなショックということになると思います。私自身は、追加緩和を正当化するような条件というのは、非常にハードルが高いと感じています。』

プロコン比較キタコレ!!でまあ直後にも同じ質問があるのですがそちらの引用はパスします。


○ファインチューニング云々の件について

同じような質問がまた来まして(後半は別の質問だったので前半部分のみ引用)更に説明が。

『(答) 1点目ですが、「量的・質的金融緩和」というのは、景気の大きくない上振れ・下振れに対して、ファイン・チューニングを行う手段としては適していないと思います。デフレが続く中で、そこから脱却するための大きな手段として「量的・質的金融緩和」を実施したと私は考えています。「量的・質的金融緩和」に私自身が賛成しているのは、3つのきっかけになるとの考えからです。』

この先の説明は講演テキストにもあった話。

『第1に、需要面をサポートして需給を改善させて、デフレ状態を脱するということです。第2に、金融政策では経済の実力になかなか影響を与えられませんが、経済の実力に影響を与える企業・家計の取組みとか、政府の取組みを後押しするきっかけになるということです。第3に、金利政策という伝統的な政策を取り戻すために実施するということです。』

この第3は何ですねんという事ですが。

『「量的・質的金融緩和」が大きなきっかけになって需給ギャップが改善し、物価も2%であるかどうかはともかく基調的にプラスを続けるということになれば、金利をゼロに据え置いていても、金融緩和の効果が出てくるようになります。そういう形で政策の重点を金利政策に移していくことができれば、ご指摘のように、景気が少し下振れたときに金利を下げ、景気が少し上振れたときに金利を上げるというファイン・チューニング的な政策手段をとることができると思いますが、現状ではそういう局面には至っていません。』

その為にはそもそも利上げもしないといけませんけどね。

『「量的・質的金融緩和」は、もっと長い視点で日本経済がデフレから脱するための大きなツールとして実施したということであり、ファイン・チューニング的な政策手段には馴染まないのではないかと思います。』

ということでこれは分かりやすいとしか申し上げようが無いのですが、一つこの木内さんロジックの穴を指摘致しますと、「QQE導入当初からこういう話をしていたら期待の転換が出来なかった可能性が高い」という所でして、最初の時点でこういう話が全面展開されていたら麿路線の転換とは認識されなかった可能性が高く、そーゆー意味ではQQEの効果に薩摩守(って最近使われませんねえ)状態であるというのはあるっちゃあ有ります罠。

まあ木内さんも今回の講演および会見でようやくクリアカットな話をするようになったのは最初からその話をしちゃあおしマイケルというのを意識しているのではないかと勝手に妄想しているのですけれども、つまりは木内さん的にはCPI+1%強の水準が維持されるという見通しが見えて来て、QQEの所期の目的が達成できる目途がついたという認識なので、まあこの時点になったらクリアカットに話をしてもよかろうと判断して今回の妙に吹っ切れた物言いになったのではないかとゆー話で、その前にこれだけクリアカットな話をすると台無しにも程があるので自制していたのかと思ったのですがどうでしょうかね。

『ただ、そうした中でも、追加策が必要になるような局面というのは有り得ると思います。追加策でマクロ経済を刺激するというのは簡単ではないと思いますが、例えば、金融システムに不安が生じるような局面では、我々は今のマネタリーベースの目標に拘らずに、一時的には大量に短期資金を供給して、金融システムの安定を確保するといった緊急策も採る余地はあると思いますし、そういう局面では当然実施すべきだと考えています。(後半割愛)』

つまり追加緩和はシステム不安みたいな時に行う流動性対策としての対処であって、経済物価情勢に対応してどうのこうのというのは中々難しいのではないかという話ですな。


○物価上昇ペースは落ち着いても良しとの話

最後の質疑だけ質問も引用しますね。

『(問) 「量的・質的金融緩和」の副作用についてお伺いします。先程、本日の金融経済懇談会の参加者の方から、円安による原材料価格の高騰について指摘があったと紹介されましたが、これも「量的・質的金融緩和」の副作用として認識しているのでしょうか。また、円相場は最近ボックス圏で動いていますが、110円/ドルまで進むというような意見も根強くあります。円安がさらに進むということについて、どのようにお考えでしょうか。』

なお冒頭の説明では原材料価格高騰の他、労働需給ひっ迫の結果として上昇したコストの転嫁が厳しいとの特に中小企業では収益圧迫要因になっているとの指摘があったとの話をしています。

『(答) 金融政策は、為替市場に間接的な影響は与えると思いますが、私どもは為替市場にターゲットを設けているわけではありませんし、為替の先行きについては、予断を持つことなくみておきたいと思います。』

そらそうよ。

『私は、物価が過去1年、非常に上がってきた理由としては、為替の影響が大きいと思っています。為替円高が修正されたことによって、もちろん日本経済にプラスの影響は相応に与えたと思いますが、その一方で、コストアップとか生活費が上昇するといったマイナス面もあります。円安がさらに進んだ時に副作用の方が大きくなることは可能性としてはあると思いますが、どの水準が分岐点となるのかはよく分かりません。』

さいですな。

『金融政策を考えるうえでは、バランスの良い経済の改善というのが重要であり、それが「物価安定の目標」を達成するための重要な条件だと思います。現状をみると、必ずしもバランスが良いかどうか分からない部分があります。』

キタコレ!!

『賃金の上昇ペースは、物価の上昇ペースを依然として下回っています。もちろん、春闘で賃金の上昇ペースは高まることになるとは思いますが、なかなか物価の上昇ペースには追いつきません。円高修正が進み、それが物価の押し上げに効いてインフレ率が上昇し、生活コストも増加するのに対して、賃金の上昇が追いつかないという面は、やはり少しバランス感を欠いている面があるのではないかと思います。』

(;∀;)イイハナシダナー

『今後、消費のペースがやや落ちれば、インフレ率の上昇ペースも落ちて、賃金とインフレ率のアンバランスが少し緩和される可能性もあり得ますが、これ自体は、経済が全体としてのバランス感を取り戻していく過程であり、むしろ経済は安定感を強めていくのではないかと思います。』

ほほう。

『私自身は、消費者物価指数を短期間で2%に誘導していくことは、「物価安定の目標」を達成することとは違うと思っています。』

少数提案している人の強みキタコレ!

『経済がバランス良く改善しながら、少し時間をかけて、「物価安定の目標」を無理なく達成していくのが望ましいと思っています。この観点からすると、為替の動きに大きく影響を受けたインフレ率の上昇が、やや突出している感じがあります。少しインフレ率の上昇ペースが落ち着いてきて、賃金と物価の上昇率のギャップが縮まる形で経済が安定を取り戻すことは決して悪い話ではないと私は思いますが、今後そうした状況が起こり得るかもしれないと思っています。』

(;∀;)イイハナシダナー

ということで、まあ少数意見だからクリアカットな話が出来るという面はあるのですが、こりゃまあ麿のイタコ芸かというような白日銀話になっておりまして、まー折角黒日銀がQQEで2%と黒田節ヒャッハー踊り(博多の方にはヒャッハー踊りのようなものは無い筈なので念のため)をしている中でこういうのを打ち込まれると黒い方々的にはアチャーという所かもしれませんが(^^)、まあどう考えてもここから半年後位にはこの物価安定の理解に関する考察というのは一旦総括しないといけない時期に来るのではないかと思います。



○その他少々

・行動原則ねえ

http://www.boj.or.jp/about/activities/principle.htm/
日本銀行の行動原則

まあ何ですな、どこぞの国がかつて戦局の悪化に伴いドンドンと精神論に走るというような事例があったとの指摘もありまして、何か困った時には精神論に走るという奴ですかそうですかなどと意地の悪い話をしたくなりますが、中期経営計画が出たのでそれに合わせましたという事なんでしょうね(棒読み)。

『公益の実現

日本銀行法に定められた目的と理念を達成することにより、公益の実現を図る。』

要するに「マンデートがこうなんだからとにかく達成するんだよ」という現在の黒日銀的な説明というか法学部的な説明というか割り切りと言うかを綺麗に書くとこうなるんですね分かります。


・中期経営計画とな

http://www.boj.or.jp/about/activities/strategy/hoshin14.htm/
中期経営計画(平成26〜30 年度)

ここのURLを見て「方針」を別の単語にうっかり空目する位にはアタクシの性格は悪いのですが、もちろんこのURLは毎回同じ表記なので念のため(^^)。

http://www.boj.or.jp/about/activities/strategy/index.htm/
中期経営計画一覧

正直あまりこれを根詰めて読んだ事はあまり無い(ネタにした事もあまりないと思う)のですが、日銀は向こう3年間の中期経営計画というのを毎年更新(というのも味わいがありますなこりゃ)しているのですが、今回は中期経営計画の期間が5年間に伸びておりまして、まあ大体こういう微妙な変化がある時には何か匂いますので、経営計画を過去の分に遡って熟読すると味わいの深い発掘ができるのではないかと思うのですけれども、今日の所は今回の経営計画を斜め読みしただけなので、発掘して何か出土品と思われる物件が出てきたらネタにしようかと思います(^^)。


・会見エンバーゴが無くなるとな

一昨日のリリースですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140324b.htm/
総裁定例記者会見の報道解禁タイミングの変更について
2014年3月24日 日本銀行

『日本銀行は、総裁定例記者会見の報道解禁のタイミングを、これまで「会見終了後」としてきましたが、情報発信を速やかに行う観点から、4月8日(火)の定例記者会見より、会見開始と同時に報道可とする扱いに変更することとしましたのでお知らせします。なお、総裁定例記者会見以外の会見についても、原則として、会見開始と同時に報道可とする方針です。』

ほうほうそうですかという所ですが、会見開始と同時に報道となりますと早めの時間にホイホイとヘッドラインが出てくるので実はボラが上がったりして(^^)。


・年度最後の短国入札

本日は年度最後の3MTB入札ですが、最近は短国入札が行われてから短国買入が行われるまでの間だけGCや現先レートがやや上昇して、短国買入が行われてから次の入札まではGCや現先レートが盛大に低下するというどう見ても官制相場です本当にカムサハムニダという状況になっております。

てなわけでまあ当然のように足元は玉無芳一状態なのですが、期末の残高調整のニーズがどの位残っているのか(発行日は金曜)というのと、年度末越えの短国買入がオファーされるのかどうかが微妙な所なので、もし年度末越えが回避(昨年はQQE前だったからあまり参考にはならないが年度末越えの輪番と短国買入はどちらも無し)されると次の短国買入が4月1日の火曜日になってしまうので、少々間があり年末の需給ひっ迫タイミングにぶつけられないと暫くネガティブキャリーの惧れありかもしれず、一方で物無だしまあ瞬間蒸発するかもしれないし、末初現先ニーズがどうせアホほどあるでしょとも思えますので、そんなこんなでまあ幾らになるのかイマイチワカランチ会長です(とか言ってたら明日短国買入実施したら凄い出来上がりレートの買入になりそうな希ガス)。

しかしこの短国3bp台攻撃いつまで続くんでしょと思いますが来月は固定金利オペが盛大に落ちるから来月も続きますかそうですか。









2014/03/25

お題「木内審議委員の講演はロジックが非常に今回クリアカットになっております/前座に前座の悪態雑談」

えー師匠の高座がございましたので皆様におかれましては高座ネタをご期待されるやも知れませんが木内審議委員の講演会見ネタの方がどう見ても素晴らしいですから、やはり鑑賞する物件は美しいものをみないと心が洗われませんからね!!

○と言いつつ折角なので総裁講演ネタと師匠の高座ネタの前振りだけ入れておきましょう

んーっとですな、総裁講演が三連発あって師匠の高座が昨日はあって、総裁講演はいつもの気合でフィリップスカーブをあげてまずは物価が上昇させましょうという話をしていますし、師匠は師匠で毎度の理論なのですが、まあ読んでて腰が砕けた箇所をちょっとだけ前振りを入れておきますね。

・総裁講演のこの2者択一は酷い

商工会議所での講演ですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140320a1.pdf
なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか──日本商工会議所における講演──

『4.賃金と物価 ─家計からみた物価─』って所の本文9ページ(ファイルの10枚目)なんですけどね。

『従って、我々が直面している本当の選択肢は、「賃金も物価も緩やかに上がる世界」を目指すのか、それとも、過去15 年間のように「賃金も物価も下がる世界」を目指すのか、どちらを選ぶのかということです。答えは自明だと思います。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとですね、物価が上昇するけど賃金が物価ほど上昇しないでスタグフレーションみたいになるとかゆー話が足元で一般的に懸念される話でして、ここでこの2者択一とか言われましても困るんですけど。

なおその前にこんなのがありましてですね。

『しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。商品やサービスの価格の上昇により、企業の売上が伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加します。労働者は、企業の収益の増加に自分たちが貢献した分は、賃金として要求しますので、マクロ的にみれば、名目賃金の上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率との合計になります。そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。』

つ英国経済

『実際、このことは過去のデータからも裏付けられます。時間当たり賃金の上昇率と消費者物価上昇率の推移を比較すると、物価が上昇している局面においては、基本的に、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回って推移していることがわかります。そうならずに、物価上昇率の方が賃金上昇率を上回っているのは、1971 年以降では、1980 年の第二次オイルショックのときと、2007〜2008 年の国際商品市況の高騰のときの2回だけです(図表11)。これは、いずれも、供給ショック、すなわち、国内需要以外の外生的な要因によって、物価上昇率が一時的に大きく高まったときです。』

何で1971年以降なのかが良く判らんですが、要するに外生的要因で物価が上昇した場合に賃金上昇が追いつかないケースがあるとの事ですが、今回に関しても物価の上昇って為替円安とエネルギー価格と間接税要因(はこれからですが)が大きいですし、今後も間接税要因で上がるのですから外生要因じゃないんですかねえ。

まあ詳しくは明日以降にでもやりますが、昨日ネタにした佐藤さんやこれからネタにする木内さんの講演と比較して何ともはやという所ですが、良く考えたらきさらぎ会の講演あたりで黒田節についても気合だ理論についても理解した筈だったのですが、どうもシンデレラの魔法は解ける時が近づいてきたのかもしれませんな。

・置物師匠の高座

師匠の高座
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140324a1.pdf
「量的・質的金融緩和」とわが国の金融経済情勢―― 国際東アジア研究センターにおける講演 ――

色々とアレなのですがこれまた明日以降に詳しくはという感じっすけど、色々と発言がベンダーのヘッドラインで流れていて笑いを取っていたように見えまして、「皆が株が上がると思い株を買えば実際に株は上がる」とかどこかの投資セミナーかよというヘッドラインが出ていて(他にも「外貨資産が有利になる」とか、ちなみにブルームバーグ)期末前の月曜相場で売買低調な市場に一陣の笑いを巻き起こして下さるという木久扇状態になっておられたようですが、まあ講演テキストのここはワロタとしか申し上げようがありません。

『(3)インフレ目標政策の利点』という所の『(ハイパーインフレの防止)』という本文6ページの所なんですけどね。

『日本銀行の政策に対する懸念として、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」という懸念の声が聞かれますが、この点についても、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます。なぜなら、インフレ目標政策というのは、将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組みだからです。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとですね、それって「約束しているから大丈夫なんです」というオメデタイ話にしか読めないのですが、約束するだけでインフレ制御できるなら誰も苦労しない訳でして、どういう手段を使うのかという話をして頂きたい訳で、そのような手段の話が無いと何の説得力も無い訳でございまして、まあゆうてみれば期初の営業会議で威勢よく営業目標出しても期末が近付けばドンドンとトレースが厳しくなってくるのと同じでありまして、即戦力とか言って入ってきて最初の時はまあ言っても信用されるかも知れんけど、その後に営業実績を全然出せなかった人が「この通り達成します」と幾ら言っても信用されないという事態が発生するようなもんでしょうねえ(何か書いてて目から汗がががが)。

大体からですな、当座預金残高が80兆円だと2%物価が達成できると言ってたのに、何故か当座預金残高を200兆円を超える水準まで上昇させて更にまだ積み上げようという政策に賛成して平気でいられるとか、堂々と過去に財政マネタイゼーションしろと言ってた人だったりと、今まで言ってた手段とやってる事が整合性取れていないお方が中央銀行の副総裁やっている中で本当にインフレ達成も制御もできるのかよという話でありまして、ご本人におかれましては幸せ回路がどうワークしてそのような話が出来るのか知らんけど、何をゆうとるんじゃこのジジイはとしか思えんのでございますが、まあネチネチネタにするのは後日という事で。

なおご参考。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK062843420110708
復興国債の財源、日銀引き受けが需要創出に最も効果的=岩田規久男・学習院大学教授
2011年 07月 8日 16:59 JST

あとどうでもいいですが、この講演最後に『4.おわりに』って所で、『最後に、北九州経済についてお話させていただきます(図表18)。』とかあって、国際東アジア研究センターという所での講演なのに金懇の積りかよというかもしかしてこれで金懇やった事にしてカウント稼いでまた会見逃れですかそうですか。


ということで前座の悪態が少々長くなってしまいましたが昨日ネタにした佐藤審議委員の講演もそうでしたけれども、本日もやはり心を洗うのが必要ということで木内審議委員の講演をば。

滋賀での金懇
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140319b1.pdf

会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1403b.pdf

○今回はロジックが非常にクリアカットになりましたね

昨日も申し上げましたが、今回の講演および会見ではロジックが非常にクリアカットになっていまして、講演もそうなのですが特に会見の質疑応答を見ますと講演での説明の行間を埋める話もありまして、まあ時間が無い場合は会見を読んでから講演を斜め読みするのが吉。

でですね、総括いたしますとこんな感じの金融政策ロジックではないかと理解したのですが、当然ながらあたしゃ木内さんじゃないですから間違って理解してるかも知れませんので念の為。

まず経済見通しについては基本的にそんなに弱くは無いけれども、ただしリスクは政策委員会全体の見解として示されているバランスというよりは下振れ意識になっているので、まあ平均的な見方からしたら弱めちゃあ弱めです。

んでもって重要な金融政策ロジックの方ですが、まず大前提として「物価安定目標」の2%の水準についてですけれども、「日本経済の現在の実力からすると物価安定水準は2%より低い位置にある」(会見で1%を少し上回る位というコメントをしています)という認識を示しております。

では2%を目指さないかというとそういう話をしているのではなく(これ重要ですので念の為)、経済状況に安定的な物価水準というのは供給側の要因で決まる部分が大きく、それは金融政策以外の経済政策や構造改革による取り組みが必要で、それが効果を発揮するには中長期の時間がかかるものだから、「2年での達成」という看板は下ろして、その代わりに中長期的に目指すという話をしている訳ですな。

じゃあ何でQQEには賛成しているかと言うと、QQE自体はいわゆる「Shock abd Awe」によってデフレ均衡に陥っていた期待を変化させることに効果(その他の効果も言及していますが)があると想定されまして、それによってデフレ均衡からの脱却には一定の効果があった(ように見える)ので、まずはこれはこれで良しとするものの、先ほどのようにそもそも2%を短期に実施するのは無茶なので、QQEでそこまでは求めないという話。

つまりですな、QQEを2年間の集中対応云々という木内さんのいつもの話なのですが、QQEをデフレ均衡からの脱却への政策として位置付けているのねというのが何となく読めて来まして、そう考えますとデフレ均衡からの脱却にはQQEで、その後日本経済が実力をつけていく中では金利政策で対処しましょうという話をしておりまして、現在の馬鹿緩和に関しては拡大を続ける事自体がメリットデメリット考えた場合にデメリットが大きいからQQEは2年で一旦区切れというお話になっているという事だと思います。

で、これで合っているのかどうかは木内さんじゃないから知らんがなという所ではありますが、まあそういう理解をしてみました。


○経済の下振れリスクは輸出と消費

まずは講演から。最初の2ページ半くらいは日銀の展望レポートベースの説明をしていまして、その次から木内さんのお話が始まります。

『以上のような日本の経済・物価に関する中心的な見通しに対しては、上下双方向のリスクがありますが、私自身は下振れリスクをより意識しています。消費税率引き上げの影響については、経済の振れを一時的に大きくするものの、緩やかな回復を続ける経済の基調に影響を与える可能性は低いと考えています。その一方で、私は経済の下振れリスクとして、輸出動向と消費動向に特に注目しています。また、金融政策決定会合の議事要旨などで明らかにされていますが、私自身は物価見通しについてより慎重な見方をしています。以下では、こうした私自身の見方に基づき、先行きの見通しに関する留意点を幾つか述べたいと思います。』


輸出に関しては構造要因の問題と、そもそも外需に対して強気では無いという話をしています。

『輸出はやや勢いを欠く状況が続いています(図表4)。その背景としては、外需環境とそれ以外の要因の双方が作用していると考えており、私自身は、先行きも輸出は勢いを欠く状況がしばらく続く可能性が高いとみています。』

で、外需に関してなのですが、実は外需のほうでも構造要因の話をしていて、アジアや米国に関してどちらも構造問題の対処などの話をしていて、循環的な話での外需弱気ではない点がほほうという感じなのですが、引用しているとクソ長くなるので割愛して国内の部分から。

『次に、外需環境以外の要因としては、第一に、本邦企業の部品等の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が作用していることが考えられます。直近の内閣府の調査では、先行きも製造業は海外生産比率を高める計画となっていますが、このことは、企業が為替環境の変化よりも、外需と比べた内需の成長率の相対的な低さをより強く意識していることを窺わせます(図表5、6)。』

うむ。

『第二に、本邦企業が外貨建てで契約している輸出価格の引き下げに慎重な姿勢をとっている可能性があります(図表7)。このことは、企業が為替環境の変化を海外市場の拡大につなげるよりも、円建てでの輸出代金の増加による一時的な収益拡大として享受する傾向が現状では強いことを示唆しているように思います。これら外需以外の要因が今後どのように作用していくかも注目しています。』

「一時的な収益拡大として享受する傾向が強い」ってさらっと話をしているがつまり円安メリットが成長力強化に結びついていないって話ですからこれはこれでアチャーな話ではありますな、うんうん。


消費に関しては足元のコンフィデンスの低下、労働市場の改善の質の問題、賃金問題を指摘しています。

コンフィデンスの低下に関して。

『消費は引き続き底堅く推移しており、このところは消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられています(図表8)。しかし、2月の消費者態度指数が2年5ヶ月ぶりの低水準まで下落したこと、2月の景気ウォッチャー調査の先行きDIが家計関連を中心に下落し、2年10月ぶりの低水準となったこと等は、消費者心理の変調の兆しの可能性もあります(図表9)。特に、足もとでみられる実質賃金の低下傾向が今後も継続した場合、いずれ個人消費の勢いが弱まることがないか、注視していく必要があると考えています(図表10)』

労働需給に関して。

『労働需給を示す有効求人倍率は直近1月に1.04倍と1倍を超えていますが、正社員の労働需給はそこまで逼迫していないとみられ、賃金交渉の対象となる正社員の大幅なベースアップは生じにくい環境にあると言えます。』

賃金問題。

『また、ベースアップがある程度は実現しても、賃上げ率の大部分が定期昇給分や一時金となる可能性に加えて、賃金交渉の対象にならない非正規社員の比率が高まる方向にあること、中小企業や公的部門での賃上げ率は相対的に低くなりやすいことを考慮すれば、復興財源捻出のための国家公務員給与の減額措置終了に伴う一時的な影響を含めても、全体の賃金上昇率はなお控えめな水準にとどまる可能性があります。その結果、仮に名目賃金上昇率が消費税率引き上げの影響を除いたベースでみた消費者物価上昇率を下回れば、実質賃金の低下が長引くとの見方が消費者の間で強まる可能性があるため、注視していく必要があります。』


○物価の押し上げは為替であって2%の水準は今の実力では高いという話(その1)

続いて物価見通し。

『これまでのところ、「量的・質的金融緩和」は国内需要を刺激し、経済の前向きの流れを後押しすることで、相応にプラスの経済効果を発揮しています。このことが、需給ギャップの改善を通じて物価上昇にも一定の寄与をしています。』

ほう。

『しかし、私自身は、この間の物価上昇率の押し上げに最も大きな影響を与えたのは為替要因であったと考えており、為替要因を除いた基調的な物価上昇ペースは、より緩やかであるとみています。これに加えて、後述するように中長期の予想物価上昇率の上昇も依然として緩やかであることや、賃金上昇率が当面緩やかなものにとどまる可能性が見込まれることも、私が慎重な見方をしている理由として挙げられます。』

ふむ。

『昨年来、物価上昇率は短期間でかなり高まりましたが、日本銀行が掲げる「物価安定の目標」が目指すところは、経済の好転に伴って賃金と物価がバランス良く上昇していく好循環が作り出され、それが安定的に持続することです。すなわち、日本経済の実力の高まりに見合ったペースで物価が上がっていくことが求められています。この点を踏まえれば、後述する金融政策運営に関する提案とも関連しますが、私自身は、2%の「物価安定の目標」は中長期の目標とした場合にのみ妥当性をもちうると考えています。』

キタコレ。


○QQEは期待形成の影響を通じて効果とな

金融政策運営の話というメインの部分に参ります。最初の政策の説明部分はまあ良いとしてその評価。

『「量的・質的金融緩和」は、その導入から約1年になりますが、これまでのところ金融市場や家計・企業などの期待形成への影響等を通じて、日本経済に好ましい効果を与えてきています。』

なるほど。

『ただ、私自身は、「量的・質的金融緩和」の具体的な緩和策には賛成しつつも、政策委員会の中では少数意見ですが、2%の「物価安定の目標」の達成時期と、「量的・質的金融緩和」の継続期間について、「量的・質的金融緩和」の導入時点から修正議案を出し続けています。以下では、そうした点も含めて、金融政策運営を巡る幾つかの論点について、私自身の考えを申し上げたいと思います。』

ということで・・・・・・・・・


○物価安定の目標に関する論点はこれから盛り上がってくるんでしょうねえと思います

『(1)「物価安定の目標」について』という小見出しである。

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の導入に先立ち、昨年1月の金融政策決定会合において、2%の「物価安定の目標」を導入しました。まず、この機会に「物価安定の目標」の意味するところを改めて確認しておきたいと思います。』

佐藤さんも講演でこの確認を佐藤さん流にしていましたが(^^)、木内さん流の整理を鑑賞しましょう。

といいつつ全部引用していると長くなるのでダイジェストで勘弁ですが(汗)。

『別の言い方をすれば、「物価の安定を図ること」は、「国民経済の健全な発展に資すること」という最終目標を実現するための中間目標、いわば道しるべの役割を果たしていると私は考えています。金融政策運営に際しては、月々の物価指数の動きのみに注目するのではなく、「物価の安定」の実現に向けて、経済全般の動向に幅広く目配りしながら、この最終目標を実現していくことが何より重要だと私自身は思っています。』

『第2に、2%の「物価安定の目標」は、物価上昇率を安定的に2%程度で持続させることを目指すものです。経済の持続的な成長と整合的な「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでならなければならないからです。従って、2%の「物価安定の目標」を達成するためには、実際の物価上昇率が一時的に2%に達するだけでは十分でなく、その水準で安定することが求められ、その実現には、家計や企業や金融市場でも先行きの物価上昇率を2%程度と見込んで行動するようになること、換言すれば中長期の予想物価上昇率も2%程度になることが必要です。』

さいですな。

『これまでは、中長期の予想物価上昇率がトレンドとして概ねプラスの水準で推移してきた一方、実際の物価が長らく下落基調を続けてきたため、「物価の安定」が達成されずに経済環境は望ましくない状況に置かれていました。この点に、「量的・質的金融緩和」の導入が必要となった背景があります。』

ほほうという所ですが、つまりここの説明を敷衍するとQQEはデフレ均衡からの脱却という意味があったという話になるんですな。

『ただ、私自身は、日本の中長期の予想物価上昇率は、日本銀行が掲げる物価目標の水準や財・サービス及び労働市場の需給関係よりも、潜在成長率や労働生産性上昇率などの供給側の要因で決まる部分が大きいと考えており、少なくとも現時点では、2%という水準は日本経済の実力をかなり上回っているとみています。』

キタコレ!!!

『現実の物価上昇率がかなり高まる中でも、足もとの様々な指標をみると、5年、10年といった中長期の予想物価上昇率の上昇はなお緩やかなものにとどまっています(図表13)。従って、2%の「物価安定の目標」の実現には、「量的・質的金融緩和」が作り出した良好な経済・金融環境を活かしながら、幅広い経済主体が成長力強化に向けて息の長い取り組みを行っていく必要があると私自身は考えています。その結果として、中長期の予想物価上昇率が上がってくれば、いずれは2%が妥当な目標水準となる可能性もありうると考えていますが、その場合でも相応の期間を要するとみています。』

つまり緩和的な金融環境は必要だが成長力の強化が必要ですという話をしている訳で、2%は今直ぐの安定的な推移というのは無理でしょという事で、フィリップスカーブを気合で上方シフトという話とは基本的なスタンスに相違があります罠という話ですし、(木内さんは説明してませんが)フィリップスカーブを期待の変化で上方シフトさせるにしても今やろうとしている2%水準がフィリップスカーブのY切片という所に持って行くのは何ぼ何でも無理じゃネーノという話なんでしょうな、うんうん。

『こうしたことから、私は2%の「物価安定の目標」の達成時期を2年程度と限定せず、それを中長期の目標とすることが望ましいと考え、そのような提案をしてきました。また、私としては、今後の成長力の変化や中長期の予想物価上昇率の変化を踏まえて、将来的には2%という「物価安定の目標」の水準を再検討する余地もあると考えています。』

この部分は質疑応答で質問出ておりましたのでまた後ほど。


○QQEのメリットデメリット

『昨年4月に「量的・質的金融緩和」の導入を決定した際に、私自身が「量的・質的金融緩和」の具体的な緩和策に賛成したのは、それが3つの点で大きなきっかけになると考えたためです。』

ほう。

『すなわち、第1は、需要面から、経済を刺激し前向きの循環を作るきっかけとなること、第2は、供給面から、成長力強化に資する政府の成長戦略や財政健全化、企業や家計の前向きな動きを引き出すきっかけとなること、そして第3は、経済・物価の改善を通じてゼロ金利が効果を発揮し、伝統的な金利政策を取り戻すきっかけとなることです。』

第3は何??という感じですが、後ほど説明がありますが要するにテイラールールなどでの適正とされる金利水準をゼロ以上に引き上げることによって、名目ゼロ金利制約からの脱却をするということのようです。

『他方で、「量的・質的金融緩和」は、正常化のプロセスが容易でない、財政ファイナンス観測を高めかねないなどの相応に大きな潜在的リスクを抱えていると思っています。』

キタコレ!

『現在のコミットメントのもとでは、2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとの見方が広がれば、プラス効果よりも副作用のほうが大きいと判断される場合でも、金融市場の期待等の外部要因に影響されて、日本銀行の政策がそうした対応を余議なくされる可能性も否定できません。』

それどころかクレクレ攻撃隊が4月緩和クレクレとか言い出しそうな勢い(昨日の中国PMI予想より下振れで中国の緩和政策期待株高ワロタですが、FEDが期待できなくてECBがやる気なさそうな中で日本と中国にクレクレ攻撃が集中砲火されそうですし、特に日本という事になりそうですなあ)ですけどね!!!!

『この点、私自身は、2%の「物価安定の目標」は中長期でみた場合にのみ、日本経済のファンダメンタルズと整合的になりうると考えていることもあり、仮に現在の大規模な金融緩和策が長期化あるいは追加的措置によって強化されれば、逆にこれらの副作用がプラス効果を上回ってしまい、長い目でみた経済の安定をむしろ損ねてしまうリスクを強く意識しています。』

非常にクリアカットな言い方でして、プロコン考えたらこれ以上の馬鹿緩和をすべきでないと思いっきり仰せになっています。ちなみにこれまた会見の方で言及していたのですが、じゃあ一切追加緩和をしないのかと言いますとそういう訳では無くて、金融不安で流動性危機みたいな話になった場合に短期金融市場の流動性供与などのような政策を実施するのはアリという話をしています。

『このため、私は「物価安定の目標」を中長期の目標としたうえで、「量的・質的金融緩和」を「2年間程度の集中対応措置」と位置付ける提案をしてきました。これは、一定期間経過した後に、「量的・質的金融緩和」の効果と副作用の比較考量をしっかりと実施し、経済・金融情勢次第で柔軟に見直す環境を予め確保しておくことを狙いとしているものです。』

まあ今の説明を見るとどう見ても資産馬鹿買い政策ではなくて低金利政策の継続的な方向で金利中心の政策を実施するという話になると思いますけどね。

で、ちょっと飛ばしまして先の方に『(金利政策の効果も視野に入れた政策運営)』というのがありまして、今の説明部分の補足になっています。

『「量的・質的金融緩和」で実施されている資産買入れ策などの非伝統的な政策は、ゼロ金利制約の下で、経済・物価に上向きのモメンタムを生じさせ、その方向性に影響を与える、例外的でやや時限性の高い手段と位置付けることができると思います。これに対して、伝統的な金利政策は、経済・物価を望ましい水準へと誘導していく局面でのファイン・チューニング的な常用手段として位置付けることができると思います。』

という事で、最初にアタクシが勝手にまとめさせて頂いたのはこの辺の木内さんの説明を参考にしているのですが(^^)、QQE政策は「Shock and Awe」によってモメンタムの変化を起こさせる物であるが、そもそもがバズーカ砲というかバンカーバスターみたいなもんで、これはファインチューニングの政策として使う物ではなく、そういうファインチューニングをするのは金利政策で行う物だという話をしています。

『私自身は、「量的・質的金融緩和」の奏功により経済・物価のモメンタムが十分に高まり、期待収益率などが上がってくれば、ゼロ金利を維持するだけで伝統的な金利政策が累積的に金融緩和の効果を高め、経済への刺激効果が出てくると考えています。』

ということですので、つまりは1%ちょっとの経済の実力に見合った物価水準を安定的に維持できるようになった所で(2%ではなくても)QQEの拡大は止めてゼロ金利維持をしてフォワードガイダンスみたいな感じにする方が良いのではないかという話ですな。

『実際、足もとでは、「量的・質的金融緩和」以降の需給ギャップの改善や物価上昇を映じて、テーラー・ルール1に基づく政策金利水準はマイナスからゼロないしプラスの領域に入りつつあるとの試算も得られます。』

ほう。

『従って、将来、「量的・質的金融緩和」の緩和効果に加えて、ゼロ金利の維持による累積的な緩和効果が更に高まっていけば、この2つの政策ツールの役割や効果と副作用のバランスを勘案しながら、政策運営の重心を資産の買入れからゼロ金利政策の方に徐々に移していくことも考えられるのではないかと個人的には思っています。』

つーことですな。

『非伝統的な政策は歴史の浅い新しい政策手法であるがゆえに、その副作用には概して未知の部分がなお多いと考えられます。特に、将来、金融市場の安定を維持しつつ金融政策の正常化を円滑に実現させるためには、財政健全化と並んでこうした政策運営の重心移行を図っていくことが重要な要件になると私自身は考えています。』

(;∀;)イイハナシダナーとしか申し上げようがない。


○金融政策と構造改革とな

ちょっと戻って『(3)金融政策と構造改革』という所から。

『「量的・質的金融緩和」は、それ自体、強力なものですが、官民による様々な取り組みと相俟ってこそ、最大限の効果を発揮します。』

ほほう。

『一般に、金融政策は、主に経済の需要面に働きかけることを通じて、構造改革を側面支援することはできますが、構造改革自体を代替することはできません。例えば、先ほども述べましたように、潜在成長率や労働生産性上昇率を向上させるためには、成長力強化に向けた供給側での様々な施策が必要となります。』

ですなあ。

『この点とも関連しますが、最近、米国をはじめ主要先進国で潜在成長率の低下や自然失業率の上昇等の可能性がよく議論されていますが、こうした構造変化を的確に認識せずに金融緩和が行き過ぎれば、経済・金融面での不均衡が蓄積されてしまうリスクがあることにも注意する必要があります。』

キタコレ!!というかそれ2%達成までQQE続けるのを盛大にdisっていますな!!!

『また、金融政策に対して過度に期待が高まる場合、あるいは金融政策の本来の対応領域を超えて金融緩和が進められる場合には、必要な構造改革を進める機運が殺がれ、長い目でみた経済の成長にむしろマイナスに働いてしまう惧れがあります。』

(;∀;)イイハナシダナー

『金融緩和の効果を十分に発揮していくうえでは、財政の信認確保も不可欠です。』

キタコレ。

『仮に、日本銀行による巨額の国債購入が続けられる中、そうした政策によって債券市場の安定が保たれるとの期待が過度に強まり、構造改革を通じた財政健全化の動きが弱まる、あるいはそのような観測が市場に広まれば、財政に対する信認が低下して長期金利が上昇し、財政状況を悪化させるとともに、緩和効果を大きく損なう可能性があります。』

まあ安倍ちゃんと愉快な仲間たちが本当に財政健全化やる気あるのか怪しいもんですけどね!!!!

『昨年1月の政府と日本銀行の「共同声明」でも示されたように、財政健全化策の遂行は、「量的・質的金融緩和」が成功するためのいわば重要な前提であり、日本経済がデフレを脱却し持続的な成長を達成する上で不可欠と考えています。』

ということでこの辺をゴリゴリ突っ込んでいるのが昨日ネタにした佐藤さんのNYジャパンソサエティーでの講演なのでした。


○おーのー時間と量の関係で会見ががががが

つーことで記者会見なのですが、ここでの説明が講演内容を補足する感じでクリアカットな話をしていまして、2番目からの質疑応答が全部読み所という中々のスグレモノなのですけれども、案の定(なら前日に準備しておけというツッコミは却下^^)時間と量がアチャーとなりまして本日は勘弁ということですいませんすいません。

#まあ是非ご一読をオヌヌメ致したいです






2014/03/24

お題「佐藤審議委員講演は財政の維持可能性に関する中々刺激的な指摘(引用大会で大増量勘弁)」

○その前に直近の講演大会の簡単な感想をば

木内さんの講演&会見に総裁の講演が三連発で佐藤さんの講演と来ておりましてその間にFOMCとか何でそうネタが全部一緒にやってくるのよという所ですが。

で、まず先に感想を申し上げますと、木内さんの講演と会見ですが、講演の方もクリアカットなのですが、特に会見質疑での説明がクリアカットになっていまして、従来微妙に日銀の公式というか中心的見解に気を使っていた面もあったのかなという感じでしたが、今回は何か綺麗に吹っ切れて説明している感がありまして、これは非常に話の筋が通った話でした。

でもって佐藤さんのNYジャパンソサエティの講演ですが、これはまたエライ気合の入った講演で読むほうも読みごたえありますし、最初日本語をサラサラ読んだ後英文読んだらこれがまたかなりの物でして、しまいに英文と日本文を逐語読解始める有様と相成りましてもうエライコッチャですよ先生という感じです(ちなみに日本語訳だと一文になっているのが英文だと複数文に分かれていて、英文の方が分かりよいですし、使っている言い回しとか微妙に辛辣で英文も読むのがオヌヌメ)。なお内容は正論も正論なのですけれども結構キツい事をゆうてはりますな。

・・・・・・でまあ総裁の講演なのですが、三連発の最後に出ているのをまだ読めていないのが誠に遺憾なのですが、少なくとも商工会議所での講演を拝見いたしますと、木内さんや佐藤さんのロジカルなお話に対しまして、師匠的机上の空論とただの気合だけという内容になっております関係上、まあ誠に恐縮ですがこりゃプアーですなという話になってしまいまして、QQEで気合でヒャッハーというそれはそれで宗教みたいな話をしておりますので、まあ何ちゅうかそういう話の対極のイイハナシダナーを2本立て続けに見せられた後に総裁講演を出されますと甚だ残念感が漂うという結果になるのですが、そもそも論としてQQEで2年で2%という話に無理があるのですから致し方ない所でございまして、そらまあ置物副総裁理論みたいなのしか出てこん罠という話になりますね。

という所がまずは結論なのですが、まあ総裁のは兎も角としまして、木内さんの講演&会見と佐藤さんの講演はどちらも中々入魂の作品だと思われまして、だから連休中に書き物更新しておけとツッコまれそうですが、結局本日フォローできるのは佐藤さんの講演となりますので、すいませんすいません他のネタもうちょっと頑張って明日以降投下しますという事で。


○佐藤審議委員講演(以下引用大会で増量企画勘弁)

ということで佐藤審議委員講演でござる。

英文の方が文章がこなれているのと、単語の使い方や文章の言い回しに微妙に刺激的な部分がある(ように思えるのですが何せアタクシの英単語知識はあくまでも英和辞典読んでのレベルなので違っていたらすいません)ので、まあ英文の方がメインで日本語は後付という感じが漂います。ということで英文と日本文を適当に並べてネタに。

英文
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140319d1.pdf
Quantitative and Qualitative Monetary Easing:
Importance of Fiscal Consolidation
Speech at Japan Society in New York

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140319d1.pdf
量的・質的金融緩和と財政健全化の重要性
(ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳)


○物価安定の目標に関しては佐藤さん提唱の「フレキシブルなターゲット」の話を今回もしているのですが・・・・・

日本語だと『(柔軟な枠組みとしての「物価安定の目標」)』、英語だと『A. Price Stability Target as a Flexible Framework』という所から。

『「物価安定の目標」の枠組みは、他の主要国の中央銀行が採用するインフレーション・ターゲティング同様、柔軟な枠組みである。すなわち、金融政策の効果は、経済活動に波及し、それがさらに物価に波及するまでに、長期かつ可変のタイムラグが存在する。金融政策は、物価安定の下での持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、柔軟に運営していく必要がある。こうした考え方は、各国で広く共有されている。とくに、世界的な金融危機以降、主要国の中央銀行では、金融システムの安定へ配慮することの重要性を対外的に明確にするなど、金融政策運営の柔軟性という視点が強く意識されるようになってきている。』

ということで、この点は従来からの佐藤さんの主張で、ここにフォーキャストターゲットみたいな話が出てきたりするのですが、今回はその話では無く「経済の実力が伴わないで物価が上昇しても意味がないじゃないですか」という方の主張で、これ奇しくも木内さんが滋賀県での金懇で同じ趣旨の話をしているのが味わいが深いというかまあ普通に正論ですよね。

『その点、「物価安定の目標」は、たとえば2%の物価上昇率をピンポイントで実現するといった硬直的かつ表面的な枠組みではなく、柔軟性のある、経済実勢に即した実践的なものである。』

で、ここの部分の英文が何とも味わいがあります。

『From that viewpoint, the price stability target is by no means a rigid and superficial framework which calls for the inflation rate to reach 2 percent with surgical precision. It is a flexible and practical framework that accommodates the needs arising from economic developments.』

先ほど申し上げましたように、日本語だと一文になっているのですが英文だと2文になっていまして、まあ大体こんな感じで文章が展開されているので実は英文の方が読みやすいというのもあるのですけれども、2%物価目標が硬直的かつ表面的枠組みではないという部分なんですが、英文はご覧の通り「rigid and superficial」とありまして、リジッドの方はまあ良いとしまして、スーパーフィシアルとかいうのを手元の英和辞典(デイリーコンサイスね)で拝見したら「表面の、皮相な、浅薄な」と来ていまして、これって時々日銀批判で言われる「2%物価目標設定させる事によって恣意的な政策運営をさせない」とか「自動運転させるようなもの」みたいな人に対する嫌味タラタラなんでしょうなあと思ったのですがこの単語選んだの意図的ですよねえ(^^)。

なおこの続き。

『すなわち、「物価安定の目標」が目指すのは、単に物価だけが上昇するのではなく、全般的な経済情勢の改善とともに賃金が上昇し、それとバランスよく物価が上昇する世界である。私見だが、そうした世界では、2%の目標といえども上下にアローワンスがあると考えるのが自然であろう。また、「物価安定の目標」は、政策委員会が見通しとして示す消費者物価コアに限らず、賃金の動向等を含む幅広い見地からその達成度合いを評価していくべきであろう。』

この辺は最初の部分から含めて佐藤さんの従来の主張ではありますが、そもそもこの物価安定目標の定義の定義みたいな所が曖昧模糊となっている部分がありまして、QQEローンチして2年で2%の物価安定目標達成ガーとか言っている中で時間が残り半分になってくると、まあここに関する政策委員会での論争は中々面白い事になろうかと思われます、というのも従来から申し上げている通りです。


○QQEと長期金利:出口において長期金利を抑制できるのかという話の前振り

次が『(「量的・質的金融緩和」と長期金利)』英文で『B. QQE and Long-Term Interest Rate』という所から。

『以上のような「物価安定の目標」の意味を確認した上で、それが実現する場合の市場への影響について考えたい。』

って先生それ意味が政策委員会で確立されているとも限らないじゃないとか思いましたが英文の方は

『I will now talk about the effects of the price stability target on financial markets.』

となっているのでもうちょっとサラッとしています。

『「量的・質的金融緩和」は、巨額の国債買入れにより名目長期金利を抑制しつつ、マネタリーベースの積み上げを通じて人々の予想物価上昇率に働きかけ、これを引き上げることで実質長期金利の押し下げを図るという、ほとんど前例のない取り組みである。』

『巨額のマネタリーベースの供給が人々の予想物価上昇率に実際に影響を及ぼし得るかどうかについて知見は分かれる。しかし、15年超にわたるデフレの下で、人々の中長期の予想物価上昇率が1%程度と他の主要先進国・地域との比較で低水準にとどまり、かつゼロ金利制約があるなか、予想物価上昇率への働きかけは、残された数少ない政策手段の一つと認識している。』

ちなみに同じ部分の英語の方が読みやすいとは何ぞね。

『Under the QQE, the Bank puts strong downward pressure on nominal long-term interest rates through the massive purchases of JGBs. It also tries to raise people's inflation expectations via the accumulation of the monetary base. The combination of the two will lower real long-term interest rates. That is an unprecedented challenge.』

『There are different views on the extent to which the massive supply of the monetary base can have a real impact on people's inflation expectations. Nevertheless, lifting inflation expectations is one of just a few remaining policy options under these circumstances. After nearly 15 years of deflation, the medium- to long-term inflation expectations have been around 1 percent and stayed low, compared to those in other advanced economies. Moreover, Japan has been faced with a zero boundary of nominal interest rates.』

でまあ佐藤さんは長期金利を名目短期金利の予想とリスクプレミアムという2つの概念に分解して説明していまして、ここの説明はまあ佐藤さん独自というよりは執行部の説明と同じではあるのですけれえども。

『ここで、改めて「量的・質的金融緩和」が名目長期金利に働きかけるメカニズムを確認したい。名目長期金利は、将来にわたる名目短期金利の予想値の平均にプレミアムを加えた値になるというのが一般的な理解である(図表4)。』

『日本銀行は、「物価安定の目標」を安定的に達成するまで、粘り強く金融緩和を続けていくことをフォワード・ガイダンスとして述べており、これは「将来にわたる名目短期金利の予想値の平均」を押し下げる方向に作用する。一方、満期の長い国債を大量に購入することによって「プレミアム」の押し下げにも貢献している。このようにフォワード・ガイダンスと資産購入により名目長期金利を低位安定させるというメカニズムを期待することは、米国連邦準備制度理事会、イングランド銀行といった非伝統的金融政策を導入している他の中央銀行と異ならない。』

という部分は(日銀の全体的な説明もそうなのですが)どうも引っ掛かる所はありまして、そもそも今の「2年で2%目指して達成するまで続ける」というのはフォワードガイダンスちゃあまあ先行きQQEを続けるとは言っているんですからガイダンスはガイダンスなのですけれども、本来ここの部分に関しては「2年で」の部分が「2%」と同様に重要であるという意味では、QQE政策の継続期間に対しては、もし日銀の示す政策が達成できると信じるのであれば、ガイダンスと言う程の期間になるのかというのは甚だ疑問。特にQQEローンチ当初なら兎も角、現在は既にこの政策の達成期間の半分まで到達しているのですから。

従って、国債購入でタームプレミアムの縮小は出来ていると思うのですが、コンディショナルコミットメントに関してはそのコミットメント達成への期待が大きいほど将来の短期金利パスを引き上げる方向に働くというのが「2年で達成」という件に関する含意であることからして、実際問題として長期金利の押下げに効いているのはガイダンス文言ではなくて「どうせ行かないでしょ」という市場の見方が背景にある気もしますが、ただまあ今でも2015年のバランスシート見通し出してみたいな話をする人が結構いるので、そういう点からするとフォワードガイダンスなのかも知れませんね。

で、その続き。

『ただし、こうした非伝統的金融政策では、政策効果が実際に発現すれば経済・物価情勢の改善を先取りする形で名目金利に上昇圧力がかかるのが自然である。先ほどの整理でいえば、市場は出口が近付いてきたと判断すれば、名目短期金利の予測値を引き上げるからである。名目金利への上昇圧力がかかる下で実質金利を抑え続けることができるかという点で、この政策はナローパスであり、チャレンジングであるが、何としてもやり遂げなければならない。』

『後で述べるように、中央銀行が名目長期金利水準をコントロールすることには限界があるので、政府による財政健全化の取り組みは極めて重要である。とりわけデフレ脱却の前後では、決定的に重要となってくる。』

このナローパスに関しては後ほど説明があります。


○財政再建の重要性キタコレ

次の見出しが『4.財政健全化の重要性』、英文は『III. Importance of Fiscal Consolidation』である。でもって『(デフレ脱却と財政を取り巻く環境変化)』『A. Overcoming Deflation and Change in Environment Surrounding Fiscal Policy』の項ということで、デフレ脱却

ちなみにこのデフレ脱却と財政再建への影響という点では財務省の過去の審議会でこんなのがありまして、冒頭の池尾先生の説明が今でも状況的に同じというか更に悪化しているんじゃねえのというのもご参考までに。

http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1022127/www.mof.go.jp/singikai/vision/top.htm
日本経済の将来ビジョンを語る懇談会(第十回)
平成16年6月1日(火)

でまあ説明はその通りとしか申し上げようがないので引用します。まあ読んで味噌。

『では、デフレ脱却との関係で、何故政府の財政健全化の取り組みが重要なのであろうか。楽観論に立てば、デフレ脱却実現により中長期的な成長期待が高まるならば、名目長期金利が上昇しても財政構造は依然として頑健である。なぜなら、名目成長率が高まれば税収の自然増を期待できるからである。税収弾性値は、一般に、名目成長率上昇の初期段階で高く、とりわけ法人税収が寄与する可能性が高い。』

『これに対し、政府の利払い費の増加ペースは、国債管理政策面で政府が負債の長期化を進めていること(たとえば、直近2014年度発行国債の平均償還年限は8年5ヵ月)により、当分の間は限られる。政府はデフレ下での民間資金需要が低迷している状況を活用して金利上昇に頑健な財務体質を構築しつつあり、「量的・質的金融緩和」による政策効果と相まって、平均調達コストは足許1%近傍で安定的に推移している。調達の長期化を着実に進めたことで、政府は調達面では時間を買うことに成功している(図表5)。』

この政府の利払いに関する話は後ほどのドーマー条件に関する話でも出てきます。でまあこれはこれでその通りなのですが、一方でQQEによって日銀のポートが恐ろしく長期化していまして、統合政府として見た場合においては利払い費用って金利正常化した時にどうなるのよという話がありまして(日銀が長期国債を購入するのは統合政府で言えば長期金利の払いをO/Nにスワップしているようなもん)、現状では新規国債発行よりも日銀の買入が少ないのでまあ一応負債の長期化は進んでいるには進んでいるのですけれども。と考えるとどこぞの大先生が年間100兆円長期国債の購入も可能とか言ってるのはやはり空論ですなという話なんすけどねえ。

てな話は兎も角。

『ただ、こうした楽観シナリオにはリスクがある。』

キタコレ。

『高齢化の進展により社会保障給付等の増大を通じて財政には歳出拡大圧力がかかり続ける。高齢化は、労働供給の制約要因になるほか、需要構造にも変化をもたらすため、需要構造の変化に対応した供給面の対応がなされない場合、成長の制約要因となる。』

ちなみにここの英文ですけど英文の方がよりニュアンスが厳しくなっていますな。

『Such an optimistic view may entail a risk. The aging population will continue to put pressure on additional fiscal expenditure, such as increasing social security benefits. The aging will constrain the labor supply on the supply side, and change the demand structure of the economy as a whole. Unless the economy responds to a change in the demand structure, it will reduce the potential to grow.』

確かに「成長の制約要因」ですけれども、英語の方だと成長するためのポテンシャルを減らすという言い方なので、よりこう英文の方が(まあ先ほども申し上げましたが随所に)より直截的な表現になっているのが味わいがあります。

『高齢化等により成長期待が十分に高まらない場合、財政構造は依然脆弱であり、人口動態を考えると、デフレ脱却が実現しても財政問題は残り続けると保守的にみておくべきであろう。』

後ほど市場金利との関係の話が出ます。


○国際収支動向ではしらっとオソロシスな指摘もありますよん

『(最近の国際収支動向)』『B. Recent Developments in Balance of Payments』から。

『ところで、最近の日本の対外バランスをみると、昨年の経常黒字は3.3兆円と比較可能な1985年以降最小であった(図表6)。これは電気機器の貿易黒字がほぼ消滅しつつあることに加え、原発の稼働停止等に伴いエネルギー輸入が大幅に拡大したこと等に因る。四半期では、昨年10-12月期の経常収支は初めて赤字化し、足許1-3月期も赤字の可能性がある。』

ふむ。

『ただし、四半期ベースの経常赤字は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響もあって、堅調な内需の下で輸入も堅調なことが影響しており、税率引き上げ後も赤字が恒常的に続くとはみていない。足許の経常赤字は、こうしたやや特殊な状況の下で起こっていることと認識している。』

とまあここまでは明るい話ですけど。

『一方、「国際収支の発展段階説」1によれば、人口動態等により、黒字国の経常収支は長期的には赤字に転じるとされ、最近のエネルギー類の名目輸入額の増加は、そうしたプロセスを速めているようにも見える。』

しらっとここの脚注1がお洒落。

『1 一国の国際収支構造の長期的なパターン変化を説明する仮説として、クローサーの「国際収支発展段階説」がある。この仮説は、一国経済における国内投資と国内貯蓄のバランス(ISバランス)が、経済の発展(一人あたり国民所得の向上など)に応じて、債務国から債権国へ、最終的には、債権取り崩し国へと発展していく、と説明するもの。』

債権取り崩し国に発展されますと最後はアチャーなんですけど、そのプロセスが速まるかもってしらっとオソロシスな指摘していますなあ。

『貿易黒字・赤字や経常黒字・赤字という状態自体は、人々の合理的な経済行動の集積の結果であり、経済厚生に直接影響するものではないので、黒字が善で赤字が悪といった見方は妥当でない。』

ですな。

『しかし、経常赤字が定着、すなわち国内の貯蓄投資バランスが不足超に転じる場合、以下に述べるように、潤沢な国内民間部門の貯蓄余剰が低利の財政ファイナンスを可能にしてきた状況が長い目で見て変化する可能性がある点には留意すべきであろう。』


○デフレ均衡脱却における貯蓄投資バランス変化とな

『(デフレ脱却と貯蓄投資バランスの変化の可能性)』『C. Overcoming Deflation, and Saving and Investment Balance』の辺りから更に話が面白くなります。

『デフレ脱却と貯蓄投資バランスは、どのような関係にあるのだろうか。デフレ下の国内民間貯蓄投資バランスは、家計部門の貯蓄余剰が趨勢的に縮小するなかでも企業部門の貯蓄余剰が拡大することで民間部門全体として貯蓄余剰が維持される構図であった(図表7)。』

『Let me now elaborate on the nexus between the saving and investment balance and the overcoming of deflation. I will start with the saving and investment balance under deflation. In Japan, excess savings have been decreasing in the household sector, whereas they have been increasing in the corporate sector (Chart 7).』

まあ図表7を見てちょという所ですが、ここあたりでも英文の方が読みやすかったりするのは何でしょ(^^)。

『これは、デフレ予想の下で、企業が負債の返済によるバランスシート圧縮を経営上の優先課題としてきたことが主因である。いわば、デフレが民間貯蓄投資差額の余剰創出に貢献し、これが政府の国内における低利でのファイナンス維持を可能にする「デフレ均衡」を成立させていた。こうした「デフレ均衡」は、「量的・質的金融緩和」が成功し、日本経済がデフレ脱却に成功した暁には変化する可能性がある。』

ちなみにデフレ均衡の部分は英文で『Behind that, companies have made it a priority to downsize their balance sheets by repaying debts in light of harmful deflationary expectations.』ってあってharmfulってのがあるのがチャーミングですが、それはそれとして「デフレ均衡が変化」はキタコレという感じですが・・・・・・

『デフレ脱却の前後での民間貯蓄投資バランスの変化を先読みすることは難しいが、一般論としては、消費・投資需要の喚起により輸入性向が高まるため、所得の海外への漏出が生じる結果、国内民間部門の貯蓄投資余剰は、不足超に転じるかどうかはともかく、縮小に向かうと保守的にみておくべきであろう。』

どういうことかと言いますと・・・・・・・

『これを企業・家計部門別にみると、まず企業部門の貯蓄余剰は明確に縮小に向かうであろう。デフレ脱却なら企業は財務戦略を180度転換して外部負債を増やしつつ投資を増やすことが合理的となるからである。また、家計部門では、政府や企業部門からの移転等の要素があり一概に言えないが、標準的な経済理論によれば、高齢化によって家計貯蓄率は下押しされる(図表8)。』

まあ現実問題として家計部門はここまでの流れで貯蓄率さがっていますし、企業はまあ余剰資金を持たなくなります罠という事で図表8を見てちょ。

『「量的・質的金融緩和」が成功し、デフレ均衡を脱出する際には、こうした国内民間貯蓄投資余剰縮小の可能性に留意する必要がある。国内民間貯蓄投資余剰が縮小するなかで、仮に財政赤字が不変であれば、経常収支は赤字に転化し政府債務の調達が国内だけでは完結しなくなる。海外投資家は日本の財政状況に鑑みて国内投資家より高めの「プレミアム」を要求し、政府の調達コストは相応の影響を受ける可能性があろう。』

キタコレ!

『そうならないためには、あるいはそうしたショックを和らげるためには、国内民間貯蓄投資余剰が縮小しても問題が表面化しないよう健全な財政運営とすること、あるいは、そうした場合に財政の持続可能性について市場に疑念を持たれないよう、少なくとも財政健全化へのコミットメントを市場に示し、実行し続ける必要があろう。』

ここ英文の方がニュアンス出てましてですね。

『To avoid being trapped in such a situation, or to mitigate the shock associated with that situation, it is vital that the government will continue with its sound fiscal management. That is important in terms of preventing the problem associated with shrinking excess savings from surfacing. Put differently, the government needs to show its firm commitment to fiscal consolidation. Moreover, the government needs to implement its path toward such consolidation in order to avoid leaving an impression with the market that it is not serious about the issue.』

という事ですが、まーしかし肝心の財政再建に関しては安倍ちゃんと愉快な仲間たちの皆様におかれましてはあまりご興味無さそうに見えてしまうんですけど、何気に政府に対して結構厳しい事言ってますなあという所です。

『先に述べたように、デフレ脱却なら名目成長率の上昇による税収増という追い風も期待できるので先行きは悲観論一色ではない。』

『The scenario that I have laid out contains a number of assumptions. In practice, the end of deflation will generate higher tax revenue as the nominal growth rate rises. That is obviously good for fiscal consolidation. Thus, I repeat that it is best to avoid getting trapped by pessimism.』

こんな感じで英文の方がちょっと丁寧なので、実はこの講演英文の方が若干長めになっていて徐々に差が開いて行くので並べて読むとオモロイですよ。


○ドーマー条件に関して

調子に乗って引用していたら途中から全文引用になりつつあるのに反省して『(ドーマーの定理)』『D. Domar's Theorem』の所を端折って引用。

『ところで、財政が持続可能であるとは、一般に、「将来の政府債務残高のGDP比率が発散しない」ことであり、理論的にはその条件は「現在の政府債務残高のGDP比率が現在及び将来のプライマリー・バランスのGDP比率の割引現在価値合計に等しい」ことと整理できる。もっとも、ここから財政が持続可能でなくなる政府債務残高のGDP比率の水準といった閾値は先験的に見出すことができず、財政が持続可能であるかどうかは、結局のところ将来のプライマリー・バランス、あるいはそれに対する幅広い経済主体の期待次第という面がある。』

ということで、ここでも「将来のプライマリーバランス」と来まして、政府がちゃんと財政再建やる気出せという話をしていまして、まあ政府というよりは安倍ちゃんと愉快な仲間たちさんの方に向けた話をしてますなあという所で。でまあドーマーの定理の話の所を端折りまして・・・・・・

『私見だが、それでも「ドーマーの定理」は財政の持続可能性の判定に一定の示唆があるように思われる。その際、成長率と比較すべき金利は長期金利ではなく政府の平均調達コストであろう。それであれば成長率を上回ることも下回ることもあり得る。』

ほほう。

『実際、政府の調達コストは90年代初頭以降の長期金利低下トレンドの下でほぼ一貫して低下を続け1%近傍となっており、足許では名目成長率を下回る(前掲図表1)。こうしたなか、政府はこれまで金利ボーナスを享受してきた。』

『悲観的にみれば、先行きデフレを脱却すれば、調達コスト上昇により金利オーナスが発生しよう。しかし、前述のように政府の平均調達年限長期化により金利オーナスが発生するまでには相応の時間的猶予があり、その間に健全化努力を押し進めることができる。』


○デフレ脱却時に長期金利がコントロールできるのかという話や出口政策に関して

ということで最後のお題2つになるのですが、ここはもうイイハナシダナーとしか申し上げようがない。

『(デフレ脱却と日本銀行の対応)』『E. Overcoming Deflation and the Bank's Response』から。

『では、実際にデフレ脱却で長期金利に影響が及ぶ場合、日本銀行はどのような対応をとるであろうか。』

さてどうでしょ。

『「量的・質的金融緩和」が成功すれば、人々の中長期的な予想物価上昇率は2%近傍でアンカーされ、日本銀行は恐らく出口に向かっているであろうし、市場は実体経済や金融政策の変化の兆しを感じ取り、実際の政策変更よりかなり前の段階で名目長期金利に水準訂正が生じるのが自然な姿であろう。』

キタコレなのですが、ではどのような水準訂正になるかという話。

『純粋にマクロ経済的見地からは、名目金利水準の変化は人々の予想物価上昇率の変化の結果であり、仮に実質金利が不変であれば問題ないとも言える。また、楽観的にみれば、先に述べたように、デフレ脱却で税収増を通じた財政好転も見込める。』

という話なのですが、ここで佐藤さんしれっとスルーしているのですが、実際問題としてQQEにおいては国債の買入によってリスクプレミアムが圧縮されているのでして、QQEの出口という事になるとそのプレミアム圧縮部分が剥落してプレミアムが拡大するでしょうし、これは佐藤さんじゃなくて木内さんの講演(ネタにする時間がねえというかこの時点で量が多くて厳しいですのう)で木内さんが指摘しているのですが、資産買入に関してはストックビューだけではなく、将来の買入に関しても市場が織り込んでリスクプレミアムを圧縮したのではないかという見方を示していまして、まあそれがある程度適合すると考えますと、出口政策キタコレとなりますと長期国債のリスクプレミアムがストックを維持したとしても盛大に上昇する可能性がありますわな。

『一方、悲観的にみれば、名目金利水準が不連続に変化することで財政の硬直化が一段と進んだり、金融システムに影響が及ぶ可能性もある。皮肉なことだが、政府債務の大きさ故に、デフレ脱却に成功することが望ましくない波及効果をもたらすかもしれない。』

政府債務の大きさ故に云々というのは先ほどURL付けた池尾先生の指摘を見てちょという所ですな。

『とりわけ金融システムに深刻な悪影響が及ぶような極端な場合には、中央銀行がいくら物価安定に強くコミットしていても、金融システムの安定と物価安定のいずれかの選択に追い込まれる可能性がある。このように、財政の持続可能性への懸念等から中央銀行が物価安定に専念できなくなると、「マネタリストのある不快な算術」2として知られる状況に陥るかもしれない。』

キタコレ!でございますな。

『こうした悲観シナリオを顕在化させてはならない。日本銀行としては、金利環境の変化の可能性を念頭に置き、ストレス時の金融システムの頑健性をチェックするとともに、金融機関に対してはリスク管理の強化や収益力向上の取り組みを普段から促してきているところである。』

ということで、その中に4年オペも実は効果を発揮する可能性がある訳ですが、とは言いましても何でも日銀が受けていると結局の所政府に戻ってくる話になるので中々その加減は難しい。

で、ここからが白眉。

『一方、政府との関係では、日本銀行の金融政策は、将来における出口のプロセスを含め、あくまでも2%の「物価安定の目標」を実現する観点から実施していくのであって、財政への配慮が金融政策を左右することはあってはならない。』

キタコレですが英文の方がニュアンスが良く分かりやすいっすよ。

『In terms of its relationship with the government, the Bank pursues monetary policy to achieve the 2 percent price stability target. That includes the process through which it will eventually exit from the current easing policy. We simply cannot accept a situation in which a monetary policy decision is affected by the consideration of fiscal policy. There is no question about it.』

>That includes the process through which it will eventually exit from the current easing policy.
>That includes the process through which it will eventually exit from the current easing policy.
>That includes the process through which it will eventually exit from the current easing policy.

(;∀;)イイハナシダナー

『金利環境が変化すれば、政府と中央銀行の関係に改めて焦点が当たりやすく、中央銀行による国債価格コントロールへの期待も高まりやすい。しかし、自由な資本移動の下で中央銀行は万能ではない。』

『Once the financial environment changes, it is possible that people will pay attention to the relationship between the government and the central bank. Expectations for the central bank's operation to support bond prices might rise. However, under free capital mobility, the central bank's involvement will not solve the problem.』

英語の方だと「万能では無い」というよりは「国債価格コントロールなんぞ出来るかヴォケ」という所で誠に味わいがあります(^^)。

『たとえば、先ほどの名目長期金利の決定メカニズムに即して言えば、仮に、中央銀行が政府の調達コスト抑制のために国債市場への介入を増やしても、中央銀行による国債購入の増加が財政規律を弱めると市場に判断されれば、かえって「プレミアム」部分が上昇する可能性がある。また、中央銀行のバランスシート拡大が望ましいペース以上のインフレを惹起すると市場が判断すれば「将来の短期金利の予想値」が高まるかもしれない。』

ですなあ。

『重要なことは、中央銀行が何を意図するかではなく、市場がどう判断するかである。』
『In short,it is the market judgment that matters rather than the central bank's intention.』

(;∀;)イイハナシダナー

『高齢化に伴う社会保障関連支出の増大が見込まれるなかで、今のところ他国対比で日本の国民負担がとりわけ重いとはいえないものの、財政規律について市場にいささかの疑念も持たれないよう、政府による財政再建のための普段からの取り組みが重要である(図表9)。』

『Down the road, social security spending is expected to rise due to the aging. That spending in Japan is not significantly high relative to that in other economies at this moment. However, it is vital that the government makes seamless and tireless efforts to make sure that fiscal discipline remains firmly intact and there is no doubt in the market concerning the government's intention toward fiscal discipline (Chart 9).』

「普段からの取り組み」ってありますが、英語だと「seamless and tireless efforts」でよりニュアンスが強めになっていまして、まあこんな感じで全般英文の方は最後の所に向けてニュアンス強いんですよね。


○いわゆる金融抑圧に関して

『(financial repressionの妥当性)』『F. Plausibility of Financial Repression』の所では最初の部分から何とも味わいのある英文。つまり日本語ですけどね。

『これに対し、中央銀行は財政に配慮して政策運営すべきとの論調も最近見受けられる。』

『Despite the government's determination to achieve fiscal consolidation, it appears that there is still a view stating that the central bank should conduct monetary policy in consideration of the fiscal situation.』

「there is still a view」って・・・・・・・・(^^)

『こうした論者は、中央銀行が物価の安定だけを追求すればよいという考え方に立つと、出口の前後で長期金利上昇を招き、財政の持続可能性が問題となり得るので、そうした問題を回避するには中央銀行は大量の国債を買い続けなければならないと主張する。』

『Those who are obsessed with such a view claim that the central bank should continue its massive bond purchase operations in order to avoid the problem of fiscal concern. They insist that the central bank should be involved in such operations when long-term rates start to pick up around the time of an exit.』

「obsess」ってデイリーコンサイス英和辞典で見るといきなり(悪魔、妄想などが)取りつく、つきまとうとか出てくるんですけど何ですかこの単語の選択は(^^)。

『こうした考え方は、財政の持続性を確保するため中銀が国債を大量に買入れ、名目長期金利水準の抑制を目指すという点で国債価格支持(financial repression)と呼ばれる。』

ふむ。

『また、財政と物価の関係では、拡張的な財政政策が物価の安定に有効であるとする「物価水準の財政理論(Financial Theory of Price Level, 以下 FTPL)」3がしばしば注目されるが、FTPLは拡張的な財政政策とそれを可能にする中央銀行によるfinancial repressionが暗黙の前提となっている。これは、政府支出が拡大して名目政府債務が増大しても国債価格がある程度維持されるという想定があるためである。さもなくば国債を保有した民間主体は負の資産効果によって需要を削減し、政府支出の拡大をキャンセル・アウトしてしまいかねない。こうなると需給ギャップは改善せず、物価は上昇しないであろう。』

しかし・・・・・・・・

『しかし、先に述べたように中央銀行が国債価格をコントロール可能かどうかは、中央銀行の意図よりも市場の判断によるところが大きい。こうしたfinancial repressionに対する期待を生まないためにも財政健全化は重要である。』

ということでそもそもがデフレ脱却で国債価格支持政策とか規制金利時代の残滓じゃないし出来るかヴォケという発想に立ちますと、当然ながら佐藤さんの説明のようになるのはその通りという所で、最後の纏めの所になります。


○最後に(というか全編そうだが^^)財政健全化の重要性で締める

『5.おわりに』『Concluding Remarks』の所ですが、小見出しが『(政府の財政健全化へのコミットメント)』、『(財政健全化努力の上に成り立つ「量的・質的金融緩和」)』という所ですが、ここは日本語読むよりも実際の講演テキストの英語の方が強めのメッセージになっていますので英文を引用します。

しかしまあ何ですな、安倍ちゃんと愉快な仲間たちの皆様におかれましてはデフレ脱却してから財政再建を追々考えればヨロシみたいな話をしてたりして、何かこう何でも金融政策にツケ回ししようとしていますけれども、それで良いのでしょうかという話ではありますな。つーことで最後の所は英文を引用。

『Concluding Remarks』

『A. Government's Commitment for Fiscal Consolidation

Now, let me sum up. In my speech today, I have repeatedly emphasized the importance of fiscal consolidation. Indeed, the Japanese government has already said that it will halve the deficit in the primary balance relative to GDP by fiscal 2015 from the level registered in fiscal 2010. Furthermore, it is committed to turning the primary balance from a deficit to a surplus by fiscal 2020.』

さいですな。

『Those moves constitute an important part of the government's commitment to fiscal consolidation and are now widely accepted by the international community.』

キタコレ!

『Accordingly, the government decided to raise the consumption tax from 5 to 8 percent in April; moreover, the tax rate is scheduled to be raised to 10 percent in October 2015. Down the road, we may hear more discussion concerning whether the consumption tax of 10 percent is enough to make the fiscal structure sustainable. Whatever the discussion might be, it is important to acknowledge that the government will take a crucial first step toward fiscal consolidation, given mounting social security spending. There is no question about that, and financial markets understand the government's intention on that.』

イイハナシダナー。

『B. QQE Based on Fiscal Consolidation

Recent long-term rates have been stable in light of signs of overcoming deflation. That is not just due to the effects of the Bank's JGB purchases. It also hinges on the fact that market participants and businesspeople have full confidence in the government's strong commitment to fiscal consolidation. That enables the Bank to conduct massive JGB purchases without being trapped in fiscal dominance.』

『The Bank offers full support to the government's commitment. The commitment for fiscal consolidation by the government is imperative so that the QQE -- which is designed to overcome deflation -- should not be perceived as the means for "financial repression."』

イイハナシダナーとしか申し上げようがない。

『At the same time, a problem will arise if the government creates a fiscal cliff, as epitomized by the enforcement of the Fiscal Structure Reform Act in the mid-1990s. In practice, a balanced approach may be required between a medium- to long-term commitment for fiscal consolidation and the short-term flexibility in policy.』

一応短期的にガチガチの財政再建じゃないよという話をしていますが、最後の締めはやっぱり・・・・・

『Even so, the government should ensure that it will not lose sight of the importance of fiscal consolidation and that it will reinforce its medium- to long-term commitment on that front. Thank you.』

ということで、中長期的な財政再建姿勢がコケた状態になると大変な事になりますよというのが佐藤さんのお話で、何気に刺激的な話が散りばめられて面白かったのでつい大量引用になってしまい月曜の朝から誠に申し訳ございませんでした。







2014/03/20

お題「色々とネタが投下されていましてエライコッチャですがFOMC声明文で勘弁してちょ」

昨日投下されたネタが大量過ぎますぞなorzorz

○FOMC声明文比較

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140319a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140129a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気認識に関して現状が微妙に下がっている気がするんだが

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January indicates that growth in economic activity slowed during the winter months, in part reflecting adverse weather conditions.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December indicates that growth in economic activity picked up in recent quarters. 』(前回)

足元の経済に関しては冬の季節にslowでしたとのことで悪天候の落ちこみの要因を一部反映しているとの認識。

『Labor market indicators were mixed but on balance showed further improvement. The unemployment rate, however, remains elevated.』(今回)
『Labor market indicators were mixed but on balance showed further improvement. The unemployment rate declined but remains elevated.』(前回)

失業率に関しては直近で上昇したので「declined」が抜けた表現になっていますが大きな意味はなさそうに見えます。

『Household spending and business fixed investment continued to advance, while the recovery in the housing sector remained slow.』(今回)
『Household spending and business fixed investment advanced more quickly in recent months, while the recovery in the housing sector slowed somewhat.』(前回)

家計消費や企業の投資などの拡大ペースに関する表現がやや弱くなっている(つーてもまあ「continued to advance」ですから強めですが)のと、住宅セクターに関して改善の度合いがスローになったという言い方になっていてここの判断ちと下がってますな。

『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

財政政策に関する影響と、インフレおよびインフレ期待に関する表現は前回と同じです。


・第2パラグラフ:先行き見通しはリスクバランスを改善&失業率ではなく労働市場環境への言及へ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will continue to improve gradually, moving toward those the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace and the unemployment rate will gradually decline toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

最初の所はいつも同じですが、次の所に関しては従来「失業率がマンデートに整合的と判断される水準に」という言い方になっていたのが「労働市場の改善がマンデートに整合的と判断される水準に」という言い方に代わりまして、これはつまりデュアルマンデートの「最大雇用」の判断は失業率単体ではなく、労働市場環境という言い方になって、まあつまり「総合判断」化したという事ですな(米国のように日銀も失業率目標をとか言ってた人たち息してますかねえ)。

『The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor market as nearly balanced.』(今回)
『The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor market as having become more nearly balanced.』(前回)

リスクバランスの表現は言い切り方になったのでより「バランス」に近くなりましたな。

『The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(今回)

『The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(前回)

2%を下回るインフレが長期化するのがリスクという表現は前回同様です。ということでここのパラグラフの特色はリスクバランスの部分と失業率を外した部分という事で。


・第3パラグラフ:資産買入に関してだが

この辺から前回との構成に変化があるざます。

『The Committee currently judges that there is sufficient underlying strength in the broader economy to support ongoing improvement in labor market conditions.』(今回)

『Taking into account the extent of federal fiscal retrenchment since the inception of its current asset purchase program, the Committee continues to see the improvement in economic activity and labor market conditions over that period as consistent with growing underlying strength in the broader economy.』(前回)

1パラで若干現状判断を下げている(先行きはリスクバランス的に微妙に上がっているが)のですが、ここの表現を見ると(解釈にやや悩む面も無きにしも非ずだが)前回対比で今回の方が表現がすっきりとした形で「基調的な経済の強さは今後の労働市場の改善に十分である」という言い方になっているように見えまして、トーン的には強めになっているような気がします。

『In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement in the outlook for labor market conditions since the inception of the current asset purchase program, the Committee decided to make a further measured reduction in the pace of its asset purchases.』(今回)

『In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement in the outlook for labor market conditions, the Committee decided to make a further measured reduction in the pace of its asset purchases.』(前回)

継続的な改善がどうのこうのという方に「資産買入プログラムの導入以降の状況の改善」という文言を入れていますが、まあこういう書き方の方がすっきりしている感じがします(抜けているのは財政問題がどうのこうのの部分っすな)。

『Beginning in April, the Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities at a pace of $25 billion per month rather than $30 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of $30 billion per month rather than $35 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(今回)

『Beginning in February, the Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities at a pace of $30 billion per month rather than $35 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of $35 billion per month rather than $40 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(前回)

要するにTaperingのおかわり(減らすのだからおかわりではないか^^)の説明。

『The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with the Committee's dual mandate.』(今回)

『The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with the Committee's dual mandate.』(前回)

買入は継続しているしバランスシートは拡大しているから緩和は追加されていますという毎度の説明も毎度同じように今回も同じですな。


・第4パラグラフ:今後の資産買入に関しては前回同様

このパラグラフなのですが印刷すると改行位置が前回と違うので何で違うのか悩んでいたのですが、テキストにコピペして気が付いたのですけど、1か所空白(単語の間のスペース)が1文字多くなっていて、そのせいで改行の位置がずれているというしょうもな落ちがありました。なお引用の際には空白ズレを補正しております(^^)。

全文一致で今後も状況を見ながらTaperしまっせウッシッシという話は従来通りなので次回も100億ドル減額ですな。

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months and will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. If incoming information broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective, the Committee will likely reduce the pace of asset purchases in further measured steps at future meetings. However, asset purchases are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on the Committee's outlook for the labor market and inflation as well as its assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months and will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. If incoming information broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective, the Committee will likely reduce the pace of asset purchases in further measured steps at future meetings. However, asset purchases are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on the Committee's outlook for the labor market and inflation as well as its assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(前回)


・第5〜7パラグラフ:フォワードガイダンスは大きく変化しましたよん

前回は第5パラにまとまっていた奴ですが、今回は3つに分けております。

まずは第5パラ。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy remains appropriate.』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens.』(前回)

緩和的金融政策の継続期間に関する前回まであった「for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens」というのがご覧のように無くなっていてピャーと思ったのですが、一応これは第7パラグラフに継承文言があります。ただし後で申し上げますが、ここの継承文言の表現が前回よりも弱くなっているように見えるのですけど・・・・・・・・・・

『In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments.』(今回)

『The Committee also reaffirmed its expectation that the current exceptionally low target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored. In determining how long to maintain a highly accommodative stance of monetary policy, the Committee will also consider other information, including additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments.』(前回)

ここが失業率スレッショルドを外した箇所ですが、どさくさに紛れて物価のスレッショルドも外してやがっていまして、つまり経済指標に紐付けしたガイダンスは無くなりまして、どこからどうみてもただの総合判断になってしまいましたよねというお話ですし、総合判断する際の具体的な経済指標の言及は(物価目標の2%以外は)特になく、あくまでも定性的判断(意地の悪い言い方をすればFOMCの恣意的判断)に委ねられますなという話ですぞなもし。

で2%目標の表現がこれまた微妙な言い方になっていて「the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation.」というのは実際の数値などが行っているのか、そうじゃなくて定性判断としての現状と見込み数値が行っているのかというのがなんちゅうかこれどうとでも取れる表現になっているのが微妙。

『The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored.』(今回)

『The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate well past the time that the unemployment rate declines below 6-1/2 percent, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal.』(前回)

前回は失業率スレッショルドに到達しても現在の政策金利水準が「well past the time」続くという物言いになっていたのが、今回はスレッショルド外したので単に資産買入が終わっても現在の政策金利水準が「for a considerable time」続くとなりまして、これはスレッショルド入れる前の表現に戻った感じなので、まあスレッショルドの制約外れたから表現が弱めになるのは順当なのかもしれませんが、ただまあ印象としてはゼロ金利政策継続期間に関する表現が若干弱くなった印象を与えるのではないかと取られるかもねとは思いますです、はい。


続いて今回の第6パラグラフ部分。

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. 』(今回)
『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』(前回)

まあここはヨロシとしまして、この先は今回新たに入った部分というか何というか。

『The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

「マンデートに整合的な水準に経済が近づいたとしても、政策金利は長期的な中立金利水準よりも低いレベルにあるでしょう」とは何ですねんという話ですが、これはSEPの方との連携というかになって居ると思うのですが、SEPでは2016年の経済物価見通しがほぼロンガーランの水準になっておりまして、その一方で政策金利見通しに関してはロンガーランが3.5%〜4.25%でメディアンは4%(昨日はちょっと間違えていました後で直しておきます)になっているのですが、2016年末の政策金利水準見通しは一部のタカな人と思われる人を除いて2%台とかの水準になっていまして、この点についてわざわざ言及したのですね(ちなみに昨日申し上げました「ロンガーランの政策金利水準」の分布は前回と今回に変化は全くありませんでした)とは思ったのですがどうなんでしょうかね。

つまり、これは利上げするにしてもペースはゆっくりですよ、という話をして、SEPの経済物価見通しが強い事に対するヘッジみたいな話をしているのですが、まあコミュニケーションとしてはヤヤコシヤという感じではありますね。元々SEPの経済見通しと金融政策見通しが整合的じゃなかった(これでも今回政策金利見通しが若干上がっているのですから)ので、ここをコミュニケーションツールにするのは色々と弊害が起きそうな気がする(というか今回既に起きている説ががががが)のですがどうでしょうかねえ。


第7パラグラフは言い訳シリーズ。

『With the unemployment rate nearing 6-1/2 percent, the Committee has updated its forward guidance. The change in the Committee's guidance does not indicate any change in the Committee's policy intentions as set forth in its recent statements.』(今回)

はあそうですか。


・コチャラコタ総裁反対とな

第8パラグラフ

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Richard W. Fisher; Sandra Pianalto; Charles I. Plosser; Jerome H. Powell; Jeremy C. Stein; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Sandra Pianalto; Charles I. Plosser; Jerome H. Powell; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(前回)


そして今回コチャラコタおじちゃんの反対ががががが。

『Voting against the action was Narayana Kocherlakota, who supported the sixth paragraph, but believed the fifth paragraph weakens the credibility of the Committee's commitment to return inflation to the 2 percent target from below and fosters policy uncertainty that hinders economic activity.』(今回)

6パラ(中立金利に引き上げるまでは時間がかかるという話)には賛成するけど5パラ(今回のガイダンス変更と先行き金利政策の見通し文言)には反対とはナンジャソラという感じですが、まあ確かに5パラの部分は低金利政策の継続に関する表現が弱くなったとも読める感じはしないでもないので、そういう意味で反対したちゅう事でしょうが、じゃあ他にどういう言い方があるのかについて小一時間問い詰めたい所です。


○SEPだが時間がねえええええ

時間が無いので小まとめだけ

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140319.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20131218.pdf(前回12月)

ご案内の通り、金融政策引き締めのタイミングに関する「年」ベースの票についてはあまり変化が無い(というかタカ派が1名後ろに倒したので年内利上げ派は1名になってしまった)のですが、年末の金利水準という所では前回1%以下が12名で、今回1%以下が11名となっていまして、こちらは少し金利水準が上昇している上に、1%以下チームの皆さんの置いている金利が、前回は0.25%から順に3、3、4、2だったのに、今回は2、2、2、5ということで、明らかに水準が上昇しているので、全体的に見た場合に利上げのタイミングが前に倒れていますなという話。

で、経済見通しに関しては物価は貫録のカワランチ会長、GDPが気持ち下がって失業率は改善しているという何か相変わらず整合性として何なのよという感じで、だったらロンガーランの中立政策金利が下がっているのかと思うとこれまた貫録のカワランチ会長と、相変わらず全体の整合性が良く判らん内容で、正直この細かいドット出すの止めた方が良いと思う今日この頃ではありますが、まあそういうことで市場ちゃんは政策金利見通しに反応しましたねという事で。


なお、会見とかSEPの詳細とかに関しては後日投下します。


○つーか他にもネタが多いのに時間が当然ながら無い

昨日は色々とネタがありましてですな・・・・・・・・・

・3MTB入札

→ショートカバーで踏まされた分があるとは言え、入札前のWIで4bpまでやって入札が3.8bpで落札結果発表後に3→2→1.5とか利回りが2倍じゃなかった2分の1(以下)になったり何が何やら分かりません><

・木内さんの講演

→今回も中々面白かったですな

・黒田さんの講演

→講演前に追加緩和示唆を期待したかのような動きがあったとのコメントも出ていましたが、貫録の平常運転でどう見ても追加緩和期待に水掛けるお話だったように見えるが

・佐藤さんの講演

→NYジャパンソサエティでの講演といえばかつて麿先生が「偽りの夜明け」という名言をおっしゃった場所でもありますが、講演テキスト出たの多分夜遅くとかだと思うのでこれから読む


・BOE議事要旨

→昨日2月のミニッツネタにしたら3月ミニッツが出たよあばばばばー

ということで、さてどうしましょという所ですが連休中に更新できるかどうかは正直知らんが努力はしようかと思わんでも無い。






2014/03/19

お題「市場メモ/FOMCプレビュー雑談で頭を整理してみた/虫干しBOEネタ」

クリミアの併合を宣言した上にウクライナの更なる分割を考えていないっていつぞやにチェコスロバキア併合した時のどこかのちょび髭の誰かさんの言いぐさにしか思えませんが好感する米国株式市場ってチェンバレンもビックリですな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N2NEYY6JTSF101.html
米国株:続伸、住宅建設許可件数が増加−露大統領発言も好感
更新日時: 2014/03/19 05:32 JST

でプーチン先生と仲のよろしい我らが安倍ちゃんはどうなのかという件は最近すっかり政権太鼓持ち放送と化している某放送局のこのニュースの最後の辺りの微妙な書き方を見ながらふーんという感じ。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140319/t10013077901000.html
政府 ロシアに追加制裁を検討の方針
3月19日 4時32分

『ただ政府内には、「ロシアには数多くの日本企業が進出しており、仮に経済制裁などを行えば、日本のほうが経済的な損失を被ることになる」という懸念も出ており、政府は、アメリカやEU=ヨーロッパ連合の対応などを見極めながら、追加の制裁措置の検討を慎重に進めるものとみられます。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・何かその損得勘定は論点として違うような気がするんだが。


○一応市場メモ

・短国入札関連

1年TB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140318.htm

(1)応募額 15兆3,326億円
(2)募入決定額 2兆3,136億円
(3)募入最低価格 99円96銭2厘 (募入最高利回り)(0.0380%)
(4)募入最低価格における案分比率 95.0789%
(5)募入平均価格 99円96銭5厘 (募入平均利回り)(0.0350%)

ということでまあ3Mとか玉無芳一状態ではありましたが、一応1年ということで敬意を表して(かどうか知らんが)入札前から3bp台半ばから後半ですかねという感じでしたのでこんなもんちゃあこんなもんですし、応札15兆というのは直近2回の入札と比較してやや多め程度という感じっすな。テールが3厘あるのはそうは言ってもプライマリーのニーズがある分対応で入れないといけない分の札はきちんと強い所に入っていますねという所ですにゃ。

でまあここもとの3MTBよりも甘いレートでの入札になっておりますので、これは次の短国買入(今週は今日明日も短国入札があるので短国買入は月曜になる見込み)で1年TBの応札が予想されまして、日銀ニッコリで普通に2兆円オファーしてくるでしょうなあと思われます。1年買っておけば年末の残高が確保できますからねえ。

つーことで本日は3Mの入札があって明日は2Mの入札がありまして、その間に20日の国債償還要因がありますなあという所ですが、GCレートは木曜のスポネしか高くならない(しかも高いと言っても暫く前の水準からしたら低い)ですし、さすがにGCだの現先だののレートが低い所で張り付いているせいか他の利付債(利付国債とか社債とか)のレートも低下気味ですしCP新発レートも下がり気味ですし、短国レートの低下が短期市場全般のレートに波及している感じでして、益々日銀バキューム効果オソロシスという展開になっておりましてもう何だかねという所ではございます。

まあ短い所は玉無芳一の上に今申し上げたようにレートが全般的に下がり気味になっておりますので、そういう所からしますと3Mの入札も堅調ですねまあ仕方ないですねということで。


○FOMCプレビュー雑談メモ

まあ今回のFOMCは衆目の一致する所「ガイダンス文言をどう変更するのか」という話になるかと思います。直近の雇用統計でとりあえず6.5%到達が若干先に延びて来ましたので今回実施するかどうかは兎も角として、いずれガイダンス文言を変更しないといけません罠という事になっておりますのでまあ実施するんでしょ。

でまあこの前ネタにしました(2月25日謹製の駄文)けれども、1月FOMC議事要旨ではガイダンス文言に関する議論の部分はこのようになっておりました。改めて確認。

『Participants agreed that, with the unemployment rate approaching 6-1/2 percent, it would soon be appropriate for the Committee to change its forward guidance in order to provide information about its decisions regarding the federal funds rate after that threshold was crossed.』

ということですから変更するのはダンディールではありまして、

『A range of views was expressed about the form that such forward guidance might take. Some participants favored quantitative guidance along the lines of the existing thresholds, while others preferred a qualitative approach that would provide additional information regarding the factors that would guide the Committee's policy decisions.』

『Several participants suggested that risks to financial stability should appear more explicitly in the list of factors that would guide decisions about the federal funds rate once the unemployment rate threshold is crossed, and several participants argued that the forward guidance should give greater emphasis to the Committee's willingness to keep rates low if inflation were to remain persistently below the Committee's 2 percent longer-run objective.』

『Additional proposals included relying to a greater extent on the Summary of Economic Projections as a communications device and including in the guidance an indication of the Committee's willingness to adjust policy to lean against undesired changes in financial conditions.』(以上1月FOMC議事要旨より)

まあ英国もそうなのですが、米国の場合でもフォワードガイダンス文言の変更が「現行の政策を長期化したいのだが読み間違いでガイダンスに到達したのでさてどうしましょ」という形で起きているので、そういう意味で言えば「ガイダンス文言の変更は金融政策スタンスの変更を意味しない」という話でありまして、事前に決めたガイダンスの前にいきなり反故にするという方式では無いので、まあやりやすいちゃあやりやすい話ではあるのですよね。

これが前の話を反故にして早速金融政策を変更しますよという話になりますと、政策のコミットメントのクレディビリティーを大いに毀損する話になるのですが、まあ今回のケースは同じ反故にするにしても金融政策を継続する方向なのでそれほどクレディビリティーの問題は生じないのではないかと思います。

でまあ問題になる方向としては「緩和的な金融政策を長期化した場合の弊害」の方面でありまして、つまりは結局の所緩和的な政策が何だかんだ言って続けられるじゃないかという風に、「金融緩和政策が想定よりも長期化するじゃん」の方向でコミットメントのクレディビリティーが低下するという話になった場合(というか米国の場合は既になっているような気がしますが)に、金融不均衡の問題が拡大するリスクが大いに高まりますねという事で、上記議事要旨でも一部の委員が「ファイナンシャルスタビリティーに関する観点をより強調すべき」という話をしているのはそういう背景があります罠。

まあ労働市場の判断に関してはより「総合判断」的なものになり、基本的には物価目標の方により傾斜した金融政策運営になるようなフォワードガイダンスになると思うので、失業率水準がどうのこうのとかパーティシペーションがどうのこうのみたいな数字を色々と出してくるような形はやらないんじゃないかなとは思います。

でまあ「質的判断」という名の「総合判断」で労働市場の判断をしながら、物価に関して中長期的な見通しベース&期待インフレのアンカーで2%のターゲットを満たして居る限りにおいては緩和的な金融政策スタンスを続けるけれどもテーパリングは継続しますよ今後は金利政策ですよという話になると思いますけれども(というかほぼそれがコンセンサスだと思う)、変に色々な労働市場の指標を出してきてああだこうだと言い出すとコミュニケーションの盛大な障害が発生しそうなので、それはそれで面白い(面白くないが)かもしれません。


でまあフォワードガイダンスとは違いますが、今回出る予定のSEPであたくしが他に注目しているのはロンガーランのFFレート水準の見方でして、高い水準だった人が徐々に下げ傾向にはあるのですが、そうは言いましても主に4%から4.25%辺りに集中しておりまして、さてこの水準って本当に中立水準なんですかねえというツッコミは金利正常化という話になった時に問題になってくる話ですので、中立金利水準に関する見方が今後どうなるのか(変わらないのも含め)注目しておる所です。


○BOEネタの続きである

引き続き2月議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1402.pdf

今回は『The February 2014 GDP growth and inflation projections』があるので、経済物価情勢に関する話は大体ここに集約されています。まあ前の方を読まないでこれだけ読むとツッコミが足りない気もするのですが第25パラグラフ以降を鑑賞。

『25 In the Committee’s central view, on the assumption that Bank Rate followed a path implied by market rates and the stock of purchased assets stayed at £375 billion, four-quarter GDP growth was expected to ease a little in the near term as the initial fillip from the release of pent-up demand faded.』

4Qはやや減速するみたいですが、(前の方でもう少し詳しく書いてあるのですが)足元ではこれまでの落ちこみの復活みたいな動きがあって、ペントアップ需要だったり家計では貯蓄の取り崩しが起きたりという形で、コンフィデンスの回復に伴って危機モードから平常モードに経済主体の動きが移行しているみたいな説明になっています。

『Thereafter, the recovery was projected to move to a firmer footing: a gradual revival in productivity underpinning a gentle pickup in pay growth and households’ real incomes, while stronger demand and improved corporate sentiment drove a rebound in business investment. The strengthening of activity in the advanced economies meant that the risks around the global outlook were judged to be more balanced than of late.』

ということで、一旦減速するけど今後も回復は続く上に、ここは(というかこれまた前の方でも書いてあるのですが)ほほうという感じですが、先進国の経済に関しては「先行き見通しのリスクバランスはよりバランスしてきている」という説明になっていますな。

『However, tensions in some emerging economies had resurfaced, and the need for further adjustment within the euro area continued to pose a risk to UK growth.』

海外リスクは一部新興国とユーロ圏の構造調整の影響とな。

『At home, the main risks to the durability of the recovery were either that sustained weakness in productivity prevented a pickup in household incomes or that companies were slow to increase their capital expenditure in response to rising demand. But the possibility of a virtuous cycle in sentiment, spending and incomes meant there could be even greater near-term momentum in growth.』

英国経済においては、生産性が相変わらず低い状態になっているので、これが家計か企業の所得の拡大を妨げる(ちなみに家計に関しては足元ではコンフィデンス改善による貯蓄取り崩しが消費に好影響を与えているが、持続的な消費の強さには所得の伸びが必要という認識をしめしています)ので、消費や投資が伸びないですよねという話をしていますな。まあ足元の動きは改善傾向を示しているみたいですが。


でまあ生産性の話がこの後に出てきます。前の方でも生産性がどうのこうのの話は結構長く論じられています。

『26 A gradual revival in productivity growth, together with a slight easing in the pace of expansion, was expected to lead to a marked slowing in the rate at which spare capacity was used up. As a consequence, unemployment was expected to fall less rapidly than in the recent past, with some spare capacity likely to remain even at the forecast horizon.』

ということで生産性の向上が遅いので経済の余剰生産力(労働力も含め)が中々減らず、雇用の改善などもペースはスローという見通しで、英国の場合足元の状況は(前の方にあるのですが)基本的に「予想よりも良い」のオンパレードなのですが、それに対して先行きは結構慎重だなというトーンが続いております。

『The future path of unemployment was, however, highly uncertain. In particular, for a given growth profile, slack would be absorbed more quickly if the impediments to productivity growth were more deeply rooted and took longer to rectify. Alternatively, unemployment might fall more slowly if companies had greater capacity than the Committee judged to expand output without increasing employment or if there was a period of catch-up in productivity as companies adopted a backlog of innovations and technical advances.』

ということで雇用改善の先行きに関しては余剰生産力の縮小が無いと中々厳しいわなという所で、生産性向上を阻害する要因が構造的な部分によるものだと厳しいですよねというような話をしておりまして、どうも見通しに関する定性的な評価としては結構慎重だなという感じになっています。


で物価。

『27 In the Committee’s central view, on the assumption that Bank Rate followed a path implied by market rates and the stock of purchased assets stayed at £375 billion, the near-term outlook for CPI inflation was lower than in November, reflecting unexpectedly weak inflation outturns, rises in utility price increases smaller than the Committee had assumed, and the impact of sterling’s recent appreciation.』

物価に関しては(一時的な要因が結構効いているという見立てになっていてその説明も例によって前の方で詳しく書いてあるが引用割愛)見通しよりも弱めに推移しているというのが英国の現状でして、英国の場合は何せ(これまた前の方にあってワロタのですが)4年ぶりに2%の水準に戻ったという謎のインフレ体質国家ですので、まあここの部分で余裕をぶっかましているために景気見通しも安心して(?)定性的に弱気の話が出来ますなという感じはします。

『Inflation was expected to remain at, or slightly below, the target over the forecast period, as the waning impetus from past increases in import prices and from administered and regulated prices was offset by a diminishing drag from spare capacity.』

ほほう。

『The probability of CPI inflation being at or above the 2.5% knockout 18 to 24 months ahead remained around one third.』

ここなんかワロタ(正確に言いますと前の所での物価に関する論議の所で同じ表現があったので前に同じ文言あるんですけど)という所で、なんだこの確率表示はという所です。

『The inflation outlook was sensitive to several factors. The path of inflation would depend on the pace at which slack was absorbed and the impact that slack had on wages and prices.』

まあこれは普通の話。

『It was possible that the recent unexpectedly sharp falls in inflation reflected underlying cost and price pressures that were weaker than currently judged.』

直近のインフレ低下は基調的なコストや価格のプレッシャーが実は想定よりも弱いのではないか
というのはほほうという感じです。

『Inflation would also be sensitive to developments in commodity prices and the exchange rate, both of which could move sharply.』

為替レートキタコレというのが最後に出てきますが、まあここに関しては英国の場合は基本的に望ましい方向に行っているので、経済の方が弱くなると恐らくポンド高ガーとか言い出しますが、足元ではそういう流れでは無いのであまり言ってませんなという感じになっています。

#ということで趣味のコーナー恐縮至極





2014/03/18

お題「市場雑談/欧州英国虫干しネタですいませんすいません」

ムーシャ先生またもお告げ更新とな。
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/117
2014年03月17日 ストラテジーブレティン 第117号
日銀はQQE2の準備を〜日銀に呼応してリスクテイクに参戦した長期投資家を失望させるな〜

その長期投資家というのは貴殿の事ではないでしょうかなどと思いますが、14000円台のレンジワークしているようにしか見えない中で異常な売られ方ですかそうですかという感じで色々とツッコミどころがががががが。

・・・・・ただ今回アレなのは従来下がると中国ガーとか下げの後付講釈および先行き下がる話をしていたのに今回はメインがクレクレになっている所。

ところで話は違うが(雑談ばっかですな)このニュースはワロタ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140316/stt14031621550002-n1.htm
「隗より始めよ、なのに…」自民はベア見送り 職員恨み節 2014.3.17 05:00

ま、経営厳しくて下げた分は昨年既に戻しているようですが、それにしても経済産業省からなんらかの対応があるんでしょうかああ収益挙げている企業じゃないから関係ないですか(棒)。


○市場関連雑談

・業態別当座預金残高

例によってZIP形式のご提供なのですが、PDFで出さなくなったのは何でですねんと思うのですが何か理由はあるのでせうか。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/
業態別の日銀当座預金残高(2月)

でまあこちらから数字を確認しますと、今月は万遍なく各業態の超過準備が拡大しておりまして、特段の特徴がありませんという内容になっていまして、まあ特徴が無いのが特徴なのかもしれませんなあという位しか感想が無い。2月積み期間(2/16〜3/15)と言いますと短国買入が盛大に実施されたというか絶賛継続した月なのですけれども、その間にどこかの超過準備が劇的に増えたという感じではなくて、まあ万遍なく増えたという事は短期市場における短国物無芳一状態によって短期資金が運用難になっているという状態が市場全体の状況になっており、この間に短国をどこかの業態が盛大にガメたというかというと(局地的にどこかの人がガメてはいると思いますが業態レベルまで見た場合にはそこまでのインパクトは無いという意味)そういう訳でも無かったのかねという所ですかねえ、よーわからんけど。


・そういえば先週の3MTB

先週の3MTBと言えば平均は2bp台ですけれども足切りはそこそこ流れて3bp台に乗ったという入札でしたが、メモで一つ忘れていたのがありましたので俺様備忘の為に再掲。

先週の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140313.htm
(1)応募額 22兆5,498億円

先々週の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140306.htm
(1)応募額 33兆3,155億円

発行額のうち価格競争入札部分は大体5.2〜5.3兆円なのですが、これに対しての応札額というのは最近は大体30兆円台前半というか33兆円前後で推移しているのですが、先週の3MTB入札では応札が22.5兆円しかありませんで、そらまあ落札も流れます罠という話になるのですが、さすがに有担保コールレートを意識するような3bp割れという水準になりますと「今のところは」ニーズががたっと落ちます罠というのが判明したという所でしょう。

でまあ先週金曜にありましたように貸出増加支援が3.5兆円出ましたけれども、まあそうは言いましても日銀様の短国買入バキューム攻撃は継続しますので、今後の短国需給もど〜せ強いんでしょというのと、短国のレートがゼロ近傍まで下がるという事になりますと、まあ既に流動性がだいぶ落ちて市場機能って何それおいしいのという状態ではありますが、日銀のMB拡大で市場にストレスを過剰に掛けてしまうという最早何のために緩和政策しているのか判らんぞな状態になりますので、そーゆー点でオペレーションの技術的限界がどうのこうのという話になり、短国を変えないなら長国を買えば良いじゃないという話が展開されるかもしれませんよね、とまあそういう話にはなりますので「レートが下がった時の短国の応札状況」というのも見ておくと話のネタにはなるかも知れませんよ(^^)。

しかMBが220兆円程度の所でこの有様という状況で本当に270兆円の積み上げ大丈夫なのかというのは非常に気になる所で、債券市場に関しても先般の輪番100億減額で交通事故みたいな相場に見られるように板がスカスカという事でMB積み上げの弊害が盛大に発生している訳でして、さすがにこれは異次元緩和をどう穏便に収拾するかという事を考えないと、政策の継続可能性もそうですけれども、それ以上に正常化過程が死ぬほど困難になってそっちでの弊害が大きくなるんじゃないのと思うのでした。


○虫干しネタでECBドラギ総裁会見ネタの補足

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140306.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 March 2014

・良く良く考えたら酷い質疑応答(再掲)

これはこの前もネタにしましたが、SMPの不胎化を停止しないのかという質問に対して。

『Question: I usually cover the Bank of Japan. I have two questions: First, there were market expectations that the ECB might decide today to stop sterilising the Securities Markets Programme (SMP). Is there any reason why this was not decided today? (後半割愛)』

『Draghi: In answer to your first question, the suspension of the sterilisation of the SMP is one of the instruments on our list. However, we have not seen any developments in the money markets that would lead to an unwanted tightening of the monetary conditions that would justify the use of this instrument. Furthermore, the benefits of sterilisation are relatively limited, given, for example, the short maturity of the bonds currently in the SMP portfolio. The net injection of the liquidity may really only last for a relatively short time, less than a year. Nevertheless, we will continue to monitor the situation and look at this, as well as other instruments, in our catalogue.(後半割愛)』

SMPの不胎化停止は効果が小さいので準備はしていますが今の所実施予定はありませんという説明になっていまして、SMPで購入した債券に関しては当たり前ですけれども時間の経過と共に更に短期化するのですからして、これはつまち不胎化停止やる気無しの助という事ですねという話は先般したのですが、良く良く考えてみるとドラギのおっちゃん「the benefits of sterilisation are relatively limited, given, for example, the short maturity of the bonds currently in the SMP portfolio. The net injection of the liquidity may really only last for a relatively short time, less than a year.」って言ってますが、今やっている資金供給って昔の長いLTROの残高のこっている分を除けば3か月のLTROと積み期間対応のMROだけじゃねえかそりゃまさしく全部「a relatively short time, less than a year」じゃねえかおいこらどういう事やという話。

つーことでですな、そもそもお前は何を言っているんだという所ではあるのですが、まあこの辺りの説明を見ますとECBが新たに追加を打たないといけない、という中で「資金供給をどどーんと出してどうのこうの」という形での施策というのは考えにくいんじゃないの(つまりやるなら金利方向)という話になるんでしょうなと思うのでした。


・経済の未利用のキャパシティーに関しての質問で何故かどこの日銀かという答えが登場

イントロデューストリーステートメントで唐突に出てきた経済の使われていないキャパシティーがどうのこうのに関する質問が当然の如くありましたのでそれを引用しようと思ってたのよ。

『Question: Mr Draghi, in the statement you underscored a high degree of unutilised capacity; this is the first time I have seen this. Is this a signal that it is a primary concern of the ECB that unutilised capacity has reached this level in the euro area? And if it is not a signal, then companies will invest in new capacities. And if they do not invest, then they will not require credit: so no credit, no creation of money and then no inflation. Do you follow my line of thinking? (後半割愛)』

経済の未使用のキャパシティーがどうのこうのという言及が初めて入りまして、今後ECBとしては経済のスラックに関して何らかのフォーカスを充てた政策をするんでしょうかというアタクシも気になる質問。

『Draghi: On your first question, to say that the monetary policy stance that keeps interest rates at the present or lower level will stay in place even after improvements are seen in the economy means the following.』

経済が少々良くなっても緩和を継続すると申しておりますというのは知ってる。

『It means that monetary policy, even if we do not do anything in the presence of an improvement in the economy, will become more and more accommodative because real interest rates will go down.』

この話って昔よく俊ちゃんがしていましたが、「同じ金融緩和を行っていても、経済が強くなればなるほどその金融緩和の効果が高まる」というまあそら確かに理屈のうえではそうなのだが市場という意味ではどうなんでしょうかねというどこの俊ちゃんだという話をしているのが味わいがあります。

『That is the message that this consensus produces. And in this sense it links with what you said before. One of the reasons, perhaps the most important reason, for credit flows being low is the lack of demand. And a lack of demand also means a lack of investment. So, the present monetary policy stance, which is producing lower real rates, should help in this sense to increase demand for investment and therefore demand for credit.』

ということで、結局経済の余剰生産力(未使用のキャパシティー)がどうのこうのというステートメントに出ていた件についての答えになっていないのがナンジャソラという感じでございますが、現在の状況は需要が不足しているのでそもそもクレジットなどが拡大しないんですよという話をしていて、その次にはECBが金融政策で実質金利を低位に抑えておけば需要が高まるのでクレジット需要が高まるんですよ、とこちらはどこの置物師匠だという話をしておりまして、何だかドラギ総裁の質疑応答の説明が段々屁理屈を駆使してとりあえず煙に巻くという感じになっているのが気になりますなという事で。


○久々にBOE議事要旨ネタ

どうもすいません久しぶりで途中を飛ばしているので途中の部分はどこかのタイミングでまとめて投下というかサイトの方にこっそりアップした方が良いかとは思いますが途中をちゃんと読みこめていませんので少々お待ちくらはい(大汗)。

ということで今出ている直近の議事要旨は2月MPC議事要旨です。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1402.pdf

とりあえずは『The immediate policy decision』の所を見ます。

『28 The Committee set monetary policy to meet the 2% inflation target in the medium term, but in a way that helped to sustain the recovery. In pursuit of that objective, the Committee had, at the time of its August 2013 Inflation Report, provided guidance regarding the path of monetary policy. That guidance stated that the Committee did not intend to raise Bank Rate from its current level of 0.5% or to reduce its stock of purchased assets, at least until the LFS headline unemployment rate had fallen to a threshold of 7%, subject to three ‘knockout’ conditions, relating to: the judged likelihood that inflation would not exceed 2.5% 18 to 24 months ahead; whether measures of medium-term inflation expectations remained sufficiently well anchored; and the impact of the stance of monetary policy on financial stability, as judged by the Bank’s Financial Policy Committee (FPC).』

ここは失業率7%のスレッショルドと3つのノックアウト条件(1.5〜2年先の物価見通しが2.5%を超える、インフレ期待がアンカーされていないと判断される、ファイナンシャルスタビリティー上の問題が認められる)がどうのこうのの説明な。

『29 The news on the month had tended to strengthen the sense of the momentum of the domestic recovery. The first estimate of GDP for the fourth quarter of 2013 had shown growth broadly in line with the Committee’s expectation immediately prior to the release, and the business surveys and employment data suggested that the momentum would carry forward into the next couple of quarters.』

『The Bank staff’s estimates were for growth of a little under 1% per quarter in the first two quarters of 2014. Reduced uncertainty, easier credit conditions and the stimulative stance of monetary policy should support continued firm economic growth, with the expansion becoming more entrenched and broadly based. Abroad, there had been modest upside news about the euro-area economy and some amelioration of risks relating to the euro-area periphery. Against that, there had been heightened concerns about the risks relating to some emerging economies.』

つーことでMPCの認識もここもとの状況は国内の回復モメンタムが強まっているという話ですし、スタッフの見立てでも先行きの回復は国内要因も強めですし、海外も割と強めの話をしていまして、最後に新興国の話を申し訳程度に付いている感じになっています。

でまあここまで前座でこの次。

『30 Robust growth had not so far been accompanied by a pickup in productivity.』

てなわけでこの生産性のピックアップに関する話がここであるのですが、今回飛ばしているその前の議論部分でも延々とこの生産性の話と経済の余剰生産力の話が出ているのですよね。もしかしてECBもBOE(というかカーニーさん)に影響されて経済の余剰生産力の話やらスラックの話をするようになったんかいねという気もする(^^)。

『Employment gains had been exceptionally strong and unemployment had fallen more rapidly than expected. The unemployment rate had fallen to 7.1% in the three months to November, and data to be released in the next few months were likely to show it reaching the Committee’s 7% threshold.』

今後数か月の間にスレショルド到達待ったなしとの事です。

『Even so, the Committee judged that a degree of spare capacity remained, concentrated in the labour market. A strong short-term bounce in productivity growth as labour hoarding and externalities related to thin markets unwound now seemed less likely, and the Committee had revised down its judgement of the likely strength of the response of productivity to higher demand.』

てなわけで、経済のスラックは主に労働市場に多く残っており、足元での生産性の戻りも継続的かどうかは微妙で先行きの生産性改善のペースは遅くなることを予想する(のでスレッショルドに達しても金利の引き上げをしない方が良い)とな。

『But that did not rule out a revival through other mechanisms, such as enhanced capital allocation as the banking system normalised and the flow of credit increased. Moreover, the technological frontier was still advancing globally and there was scope for the United Kingdom to take advantage of that as a source of higher productivity.』

こちらはそうは言ってもいやまあ他のメカニズムで生産性向上はしますよという言い訳というか景気づけの話ですな。

つーことで、その後はノックアウトの検討でして、その辺を飛ばしまして実質最終パラグラフ。

『36 Looking beyond the immediate decision, the Committee discussed how to set policy to achieve the 2% inflation target, while supporting the recovery, once the 7% unemployment threshold had been reached.』

ということでスレッショルド到達後どうしますかという話ですな。

『Despite the sharp fall in unemployment, the Committee judged that there remained scope to absorb spare capacity further before raising Bank Rate. When Bank Rate did begin to rise, it expected that the appropriate path, so as to eliminate slack over the next two or three years and keep inflation close to target, would be gradual.』

7%のスレッショルド到達してもなお余剰生産力(というか労働力)が継続するので金融緩和は継続して利上げはしませんよという事ですな。

『The actual path of Bank Rate over the next few years would, however, depend on economic developments. Even when the economy had returned to normal levels of capacity, and inflation was close to target, the appropriate level of Bank Rate was likely to be materially below the 5% level set on average by the Committee prior to the financial crisis.』

でまあここはほほうと思いましたが、経済が仮にノーマルになっても政策金利の中立水準は危機前のレベルである5%レベルよりは遥かに低くなるでしょうという話をしておりまして、ここはまあ相変わらずFOMCメンバーの考える中立的な政策金利水準(ロンガーランのFFレート)が(最近微妙に低下傾向にあるとはいえ)4%台と示されていて多分これは危機前と同じような認識でいる筈なのとは違いますなという所です。

『The Committee intended to maintain the stock of purchased assets, including reinvesting the cash flows associated with maturing gilts, at least until the first rise in Bank Rate. Monetary policy might have a role to play in mitigating risks to financial stability, but only as a last line of defence if those risks could not be contained by the substantial range of policy actions available to the FPC and other regulatory authorities.』

資産買入の残高に関してもファイナンシャルスタビリティーの観点では問題が生じておらず、残高は継続しますよという話をしております。


なお、本日はこういうのがあるみたいですね。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/speeches/2014/715.aspx
Mark Carney: Mais lecture at Cass Business School, City University, London.




2014/03/17

お題「オペ雑談/2月決定会合議事要旨から少々/素敵なインタビュー記事ががががが」

住民投票で帰属を変更ってどこの東プロイセンだよということでいつの時代の話だよという所ですが、この作戦で北方領土も返還して即座に住民投票実施ですねわかります。

○オペ関連雑談

・短国買入は貫録の2兆円継続

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140314.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年3月18日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140314.htm
国庫短期証券買入 45,483 20,005 0.002 0.004 90.9

ということで短国買入は普通に2兆円の継続となりまして、足切りは前日比甘となっていますが、木曜日の入札で玉が出た分はちゃっかり吸収(同じ銘柄かどうかは別だが)という運びになりましてGCレートとかは低下したみたいでもう需給的に玉がまともに出てくるタイミングが3M入札のタイミングしかございませんなあっはっはという所ですね。

ま、この前の輪番超長期減額と言い貫録の短国買入と言い、一々市場に配慮してられるか知らんがなという状態にオペの運営の方が進んでいますなあというのは把握しました。


・貸出増加支援オペ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140314a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施結果
(2014 年3 月実施分)

『付日における貸付予定総額34,653 億円
貸付先数 54 先』

3.5兆円ということは対象になる残高分ほぼほぼカバーした感じの貸出が出たんじゃないですかね。で、内訳は以下の通り。

『2.貸付(予定)総額および貸付先数の内訳
大手行 4 先 23,604 億円
地域金融機関等 50 先11,049 億円
合計 54 先 34,653 億円』

『3.貸付期間別の貸付(予定)額
1年 15,760 億円
2年 100 億円
3年 18,793 億円
合計 34,653 億円』

ということで、内訳見ててほーと思ったのは今回は1年と3年の借入が綺麗に割れている結果になっている事で、従来から2年はほぼ残高ゼロ近辺なのはまあ中途半端な年限だからという所なのでしょうけれども、1年の所の残高が多いのは何でなんじゃろと思って見るのでありました。

まあロールの時の金利が1年後だったらどう見ても0.10%だけれども2年や3年だと怪しいからという可能性を考えているのか、それとも担保繰りを柔軟に運営するとかとか思うのですが、もしかして昨年の1年固定金利オペのロール(落ちは4月からですが)の積りで入れているのかとか思いますと、今回の貸出増加支援の残高入って良かったねとは思いましたが、1年オペの方はきっちりと残高が落ちそうでして、日銀のMB積み上げ大作戦は今後もヒーコラという所で、それに煽られて短国市場もヒーコラの巻という事ですな。


○2月決定会合議事要旨ネタ

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140218.pdf

まずは『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済は強めのトーン

『海外経済について、委員は、新興国の一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。』

というのは良いとしまして、

『多くの委員は、新興国・資源国の動向等には引き続き注意する必要があるが、海外経済全体としてみれば、ひと頃に比べ下振れリスクは低下した状態にあるとの見方は変わらないと付け加えた。』

ということで、海外経済に関して「下振れリスクは低下」という認識を2月には示していて、まあ月報の表現や総裁会見での話っぷりを見ると3月会合でも見方は変えて無さそうですな、うんうん。

ちなみに米国経済に関しては、

『先行きについて、委員は、政府債務の上限問題が決着し、財政面の下押し圧力が弱まると見込まれることから、景気の回復ペースは徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

とのことで、更に一人の委員の意見ですが、

『ある委員は、米国経済は寒波の影響から1〜3月は弱めとなる一方、4〜6月はその反動から成長モメンタムが強まる可能性があり、その場合、日本経済の消費税率引き上げに伴う落ち込みを相殺する方向に作用すると述べた。』

というような記述もありまして、海外経済の討議部分はまあトーンとしては楽観的に見えましたがどうでしょうかねと思います。


・国内もまあ強めですなあ&輸出に関して

で、国内景気ですけれどもね。

『わが国の景気について、委員は、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働く中で、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。』

ふむ。

『昨年10〜12 月の実質GDPについて、何人かの委員は、輸入の高めの伸びを主因に純輸出が成長率を押し下げる方向に作用したと述べた。ただし、これらの委員は、国内需要の堅調さを背景に潜在成長率を上回る成長が続いていると指摘した。』

今回の月報などでもそういう話になっていますが、10-12のGDP1次速報が出たこの時点でも、GDPの評価はこういう形になっているようで、決定会合後の会見で黒田総裁がやたら強い話をして口が滑ってGDPの見通し数字達成という話までしてしまったのはこの辺りに背景があったのかも知れませんなという所です。

『景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』

ふむ。

『複数の委員は、輸出と設備投資の増加が、消費税率引き上げ後の個人消費の反動減を補っていけるかどうかが、今後の景気展開の鍵を握るとの見方を示した。このうち一人の委員は、家計や企業のマインドが悪化した場合に、消費・投資行動の委縮を通じて、自己実現的に景気の悪化を招くことがないか注視していく必要があると付け加えた。』

うむ一応警戒している人もいるのね。

で、輸出なのですけど。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残り、引き続き勢いを欠いているが、海外経済が先進国を中心に回復しつつあるもとで、振れを伴いつつも、持ち直し傾向にあるとの認識を共有した。先行きについて、委員は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『何人かの委員は、既往の円安にもかかわらず、輸出が勢いに欠けている背景には、わが国製造業の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が作用している可能性があると述べた。このうち一人の委員は、わが国製造業が海外での収益力を高めることは、所得収支の改善を通じて、国民全体の貯蓄や純資産を増加させるなどプラスに働く面もあると付け加えた。』

いやまあそうかも知らんがそもそも円高是正して輸出中心に国内景気を回復させようって話をしていたのですからして、そっちのレビューはスルーしてプラスに働く面もあるというのも何だかねえ。

『何人かの委員は、一部の分野において、堅調な国内需要を受けて国内向け出荷を優先する一方で、輸出向け出荷を抑制する動きがみられており、消費税率引き上げ後の内需の反動減が見込まれる4〜6月には、輸出の増勢が強まる可能性もあると指摘した。』

ホンマカイナという感じもしますが、何かこの話3月の総裁会見やら月報では一部の分野の話から全体の話っぽい言い方になっていませんですか何かこう大本営発表モードになっていませんかとちと心配。


・個人消費には先行き警戒のコメントがさすがに見られる

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境が改善する中で、引き続き底堅く推移しており、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの認識を共有した。』

というのは良いとして。

『委員は、自動車や家電などの耐久消費財の動きには、冬季賞与の増額など雇用・所得環境の改善とともに、消費税率引き上げ前の駆け込みも相応に影響している可能性が高いとの見方で一致した。』

ほほう。

『先行きの個人消費について、委員は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

ふむ。

『何人かの委員は、消費者コンフィデンスが昨年10 月以降弱めの動きとなっていると指摘したうえで、その背景には消費税率引き上げが意識されている可能性があり、今後の動きを注視していく必要があると述べた。この点に関し、ある委員は、消費者態度指数の内訳をみると、「収入の増え方」や「暮らし向き」の判断が最近悪化しているため、雇用・所得環境の改善ペースの鈍化を消費の下振れリスクとして意識しておく必要があるとの見方を示した。』

まあそうですな。

『これに対し、一人の委員は、消費者態度指数のうち「雇用環境」は改善傾向を維持している点を指摘したうえで、雇用不安の後退は予備的貯蓄の抑制を通じて、消費・非製造業主導の自律回復メカニズムを支えているとの見解を示した。』

ほー強気の人もいるのね。


・物価に関して

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。多くの委員は、昨年12 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.7%まで上昇するなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

んでもって、

『多くの委員は、個人消費の底堅さとマクロ的な需給バランスの改善を背景に、企業がコストを販売価格へ転嫁しやすい状況が続いていると指摘した。この点に関し、ある委員は、最近の物価上昇率の高まりについて、円安によるコストプッシュ型と指摘される場合があるが、実際には、コストプッシュ型の物価上昇の際にみられるような生産の縮小は生じていないと付け加えた。』

つ「駆け込み需要」

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べ大きくなっている可能性があると指摘した。』

価格転嫁しやすくなっているからという事でしょうか、端折り過ぎて良くわかりません。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

まあ物価は全体的に強気のトーンで纏められてますな。


・貸出支援拡充は追加緩和ではありませんとは言っていますが・・・・・・・・・

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、多くの委員は、金融機関の貸出増加や成長力強化に向けた取り組みはデフレ脱却のため極めて重要であるとの認識のもと、ともに受付期限を1年間延長してはどうかとの意見を表明した。』

まあこの辺の言い訳は良いとしまして。

『そのうえで、多くの委員は、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を強力に促し、日本銀行としての「強い意志」を示す観点から、資金供給の規模と期間の面で、思い切った拡充を行ってはどうか、と述べた。』

何でしょうねえ、この後に「追加緩和じゃない」という話をしているのですが、だったらもっと淡々と実施した方が宜しかった訳で、「強い意志を示す」とか変なこと言わない方が吉だと思うのですが、強い意志を示すと政治方面へのアピール以下自主規制。

『具体的には、貸出増加支援資金供給の貸付限度額について、何人かの委員は、大手行中心に積極的に利用されている現状を踏まえると、金融機関の貸出増加額の2倍まで引き上げることにより、金融機関のインセンティブを強めることが考えられると述べた。成長基盤強化支援資金供給の規模について、何人かの委員は、金融機関が成長力強化に向けた取り組みを行っていくうえで、十分余裕のある金額とするのが適当であると述べた。』

まあこの辺は敢えてツッコミを入れない。

『貸付期間について、複数の委員は、0.1%の固定金利での資金供給期間を現在の1〜3年から4年に延長することにより、金融機関の金利リスクテイク能力が高まる効果を期待できるとの見方を示した。このうち一人の委員は、貸付期間を4年へ延長すると同時に、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認めることにより、金融機関はバランスシート規模を柔軟に調整することができるのではないかと述べた。』

ま、ここの4年固定に関しては金融機関のALMマッチング的にリスクを軽くしてあげるというのが思いっきりありますよね。


でもって追加緩和じゃないという話の部分。

『貸出増加支援資金供給等の制度見直しの意義について、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」により供給している大量のマネタリーベースが、金融機関の貸出増加や成長力強化の取り組みに利用されることは極めて重要であり、今回の見直しは、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムを強化するものであると指摘した。』

別にMBを大量供給しなくても金融機関がホイホイ貸出する事は可能なんですけど何か引っ掛かる言い方。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」に関して、従来から経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしているが、わが国経済は2%の「物価安定の目標」に向けた道筋を順調に辿っており、今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた。』

>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた
>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた
>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた

あっそう。

『一人の委員は、貸出増加支援資金供給等の受付期限の1年延長や4年間の固定金利での資金供給が、「量的・質的金融緩和」の継続期間と何らかの関係があるとの思惑を生じさせないよう、対外的な情報発信には注意する必要があると述べた。』

でまあ対外的な情報発信がどう見てもノリノリだったので見事に追加緩和期待が高まりましたな。

『さらに、この委員は、貸出競争を助長する可能性など将来の金融機関の財務体質に及ぼし得る影響にも注意する必要があると付け加えた。この間、ある委員は、貸出増加支援資金供給について、地域金融機関の利用が大手行対比で少なめとなっている現状を踏まえると、今回の見直しを契機に、同資金供給のメリットに関する対外的な発信を一段と強化してはどうかと述べた。』

ふーん。

ということで、貸出支援関係の強化は「追加緩和ではなく調整でも無い」という話をしているのですけれども、その前に「強い意志」とかそういうスケベな考えもある訳で、その辺りが情報発信によって追加緩和期待が浮上してという事になりました罠という所ではございまする。


○浜田先生ェ・・・・・・・・・・

金曜の夕方に金利市場関係者総出でのけぞるインタビューキタコレ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N2EUA06JIJVL01.html
浜田教授:日銀の長期国債買い入れ倍増は「可能」−追加緩和5月にも
更新日時: 2014/03/14 17:39 JST

この記事は日高さんのクレジット入っているので、インタビューしたのも日高さんだと思われますが、テープ回しながらニッコリで、記事を書きながら会心の笑みを浮かべながら書いておられたのではないかと思料する次第。

『3月14日(ブルームバーグ):安倍首相のブレーンである浜田宏一・米エール大名誉教授は、日本銀行は消費税率引き上げの影響が深刻だと判断すれば、5月中にも追加緩和を実施すべきだと述べた。具体的な手段としては、長期国債の買い入れペースを倍増し、新規に発行された長期国債を全て買い入れることも可能との見方を示した。』(上記URLより、以下同様)

まあどう見てもそれは買入そのものは「物理的に可能」であっても、債券市場がぶっ壊れてしまうので、この緩和政策を正常化しようとした時に大きな障害が発生してしまう、つまり政策を突っ込むのは出来ますけれども収拾が出来なくなるという手段ですので、当然ながら追加緩和するだけではなくて出口というものも考えた場合に物理的に無理だと思われます。

ただまあそういう話に関しては残念ながら市場の状況が実際どうなのよというような話を先生がご存知とも思えず、まあそもそも論としてそういう市場の状況を把握していない人が政策提言をするというのが机上の空論だろというツッコミはありますが、それよりも以下の所が色々と素敵なのでついこの件もかすむというものです。


もうね、小見出しの『インフレを回避せよ』って日高さん面白がってつけてるでしょという所ですが、そこの小見出し以降に降参致しました。

『一方、日銀が2%の物価上昇を目指していることについては「物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない。1.5%だっていい。2%までなら何の問題もないが、4、5%になれば人々への大衆課税になる」と指摘。』

>物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない
>物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない
>物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない

ほほう。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MEJ7MB6JTSFI01.html
安倍総裁ブレーン・浜田氏:日銀新総裁は数カ月以内のデフレ脱却可能
更新日時: 2012/12/05 09:08 JST

『浜田氏は日銀が2、3%のインフレ目標を設定すべきだとし、目標達成まで金融緩和の手綱を緩めるべきではないと主張。さらに、16日の衆院選で自民党が勝利し、より金融緩和に積極的な人物が日銀総裁に選ばれた場合、同目標の達成は困難ではないと述べた。』(上記2012年12月5日ブルームバーグニュース記事より)

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE8BQ04C20121227
インタビュー:日銀は無制限緩和を、物価目標2─3%が適切=浜田宏一教授
2012年 12月 28日 08:47 JST

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(-_-メ)

さて記事に戻りまして。

『「雇用と生産、GDPが回復すればいいわけなので、2%にならないからアベノミクスは目的を達成できなかったと言われる筋合いはない」と語った。』(最初のブルームバーグ記事URLから)

まあ何ですな、100無量大数歩ほど譲って解釈すると「目標は兎も角として、実際に目標に行かなかったら即ダメであるという考え方はおかしい」という事を言いたかったのだと好意的には解釈できるのですが、そもそもコミットメントというのは「行かせる」という意思を示すことによってそのコミットメントの達成に対する期待が醸成されてインフレ目標ならインフレ目標達成のための期待ですからこの場合は中長期の期待インフレがアンカーされるという話になりますので、目標達成しているなら兎も角達成の前からこんな話をしちゃダメですよねという話だと思うのですけれども、浜田先生どうしちゃったんでございましょうかねえ。

『さらに、「人の気持ちは簡単に変わる。これから心配しなければならないのは、デフレを脱却できるかどうかではなく、どうしたら国民経済にインフレ体質が舞い戻ってこないようにできるかだ」と言明。「毒を持って毒を制するということで、インフレ的にしていろいろな良いこともあるが、行き過ぎないように止めることは重要だ。日銀はインフレファイターであることを忘れてもらっては困る」と述べた。』

>日銀はインフレファイターであることを忘れてもらっては困る
>日銀はインフレファイターであることを忘れてもらっては困る
>日銀はインフレファイターであることを忘れてもらっては困る

・・・・・・・・・・・・・・(^□^)

つーかその前の「毒を持って毒を制する」というのも何かこう実にアレなのですが、まあ金曜の夕方にこの記事を見た債券市場や短期金融市場の皆様の反応がどうであったかなどと思いつつ、あの感動をもう一度という事で謹んでネタにさせて頂きましたm(__)m


2014/03/14

お題「超長期輪番減額と先物ヒャッハーに関連してオペ雑談(あるいは悪態)/その他少々」

武者先生お告げ投下のタイミングが凄すぎます・・・・・・・・・
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/116
2014年03月12日 ストラテジーブレティン 第116号
岩盤円安の先に起きる事

ということでメジャーSQの朝ですがおはぎゃあございますorzorzorz


○輪番であじゃぱー

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N2B8VC6TTDSC01.html
債券は下落、日銀買いオペ「10年超」減額を警戒−先物は一時急落も
更新日時: 2014/03/13 16:26 JST

『3月13日(ブルームバーグ):債券相場は下落。日本銀行がきょう実施した長期国債買い入れオペで、残存「10年超」を減額したことで需給悪化に対する警戒感から売りが優勢となった。現物債市場では超長期ゾーン中心に安くなり、先物は急落する場面があった。』(上記URLより)

ということで輪番オペの超長期が突如100億円減額オファー攻撃が来まして、ちょっとさがりましたねえああ仕方ないですねえとか思っていたらいきなり先物盛大に下落して1円安まで落ちたものの、すかさずホイホイ戻りましたけど、結局20銭程度安の水準までしかモドランチ会長となっておりまして、その後はその辺での推移。一旦戻ったりもしてましたが後場もう一発下がって結局18銭安で終了の巻となりました。


『日本取引所の高橋直也広報課長は、午前の取引で国債先物が急落した後にすぐに戻したことについて、「特にシステム面や取引面では問題はないようだ。通常の取引。誤発注という報告は来ていない」と説明した』(上記URLより)

まあこういう質問に対応しないといけない東証お疲れ様という所ですが、まあ下がって戻ったにしても全戻しじゃないですからそれなりに実弾もあったんでしょうな偶々誰かのストップロスに引っ掛かったとかのような気もするがそこはまあ詮索してもシャーナイナイなのでパス。

まあそれよりもアレなのはここもと「先生!債券先物ちゃんが息をしていないの!」状態になっておりまして、しかも現物債市場では入札と輪番が相場の材料というそれは材料というのかという状況になって、板がスカスカになっている中で交通事故みたいな動きで突如の急落という事案になっている事でして、まあどう見ても異次元緩和の副作用です本当にカムサハムニダという話ではなかろうかと申しますか、どうせMB270兆円までは無理してでも拡大するんでしょうけれども、その後政府や日銀の思惑通りに正常化が出来る環境になった際に余程注意しないと債券市場が何らかのアクシデンタルな動きであってもリアル北斗の拳状態になるリスクを見せてくれましたなといいだすのは大袈裟ですかそうですか。

ということで勢いでMB270兆円とか突っ込んでみたものの、短期市場はご案内の通りだわ債券市場までこの調子(そらまあ以前の量的緩和政策の債券市場バージョンやってるんですからそうなる訳ですが)だわという事で、いやまあ大規模買入継続しているうちは金融抑圧でも何でもやってますけれども、正常化という「帰るまでが遠足」の肝心のステージはどうやって収拾するのか非常に難しい所ではございますなという話で。


ということで一応輪番オファーはこちら。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140313.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年3月20日
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年3月20日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年3月17日 2014年6月9日


まあ超長期の輪番を減額したのは「買入国債の平均年限を7年程度とする」というディレクティブに関して忠実に運営した結果として、おそらく今月の超長期輪番の札の入り方から勘案すると平均残存年限が8年台に乗ってしまうのが確実なので、デュレーション調整の為に100億円減額したという単純に技術的な問題だとは思うのですよね。

まあ前回もそんな形で超長期輪番を200億円減額した訳ですが、前回減額した時はその前の月の買入平均年限が8年を超えていたというのが公表された保有残高の一覧から逆算すると明らかで、市場の中の人たちもそういう事実があるというのが分かっていましたので、減額そのものはサプライズでしたけれども、「まあそんなものか」という事でナンジャソラとなりながらも一応話としては判ったという所だったのですよね。

然るに今回に関してですが、直近公表された先月末の国債保有残高一覧から見ますと、先月の買入平均残存は7.92年位になっておりまして、平均残存期間が短くなりましたね輪番減額して良かったですねという認識になっていた所でして、月中の買入銘柄がどうなっているのかに関して当然ながら市場の方は判らないのですから、今回の減額は市場的に見たら闇討ちというか不意打ちにも程がある訳でございまして、突如闇討ちされたらそら相場が不安定になります罠という話で、まあ輪番減額⇒誰かが実弾売り⇒実弾来たから先物ヘッジ⇒何か交通事故みたいな流れでヒャッハーとかそういう話になったんじゃネーノとは思いますが、いずれにせよ輪番の闇討ち減額なかりせばこういう話にもならんと思う次第。


まあ何ですな、輪番に関しては以前出した買入予定額の紙がありますが、こういう感じで不意打ちで逸脱しかも減額とかされますと市場に無用のボラを与えるだけの話になりまして、只でなくさえ大規模買入で市場の流動性を枯渇させている中ですからボラ与えた途端に交通事故でピャーとか勘弁して欲しい所であります。

つーかですな、そもそも論として輪番の月額購入予定表って昨年基準の目標残高をベースにして作っていまして、あの時は2013年3月末の国債買入残高が輪番と基金で91兆円だった所に対して12月末に140兆円にしようというペースで、今年の場合は年末で142兆円(141.6兆な)の所を12月末で190兆円にするというペースだからして、そもそも論として表を作り変えて改めて計算しなおした方が良いんじゃないですかという感じはする所でして、今回のような調子でダマテンで買入フローを減額する方向で調整を行うというのが市場にとっては一番「予見可能性を下げる」方向でして、何せ市場の動くネタが入札と輪番しか無いという状況の元では、今回のようなダマテン減額調整攻撃をするのが一番市場が困るパターンとなると思うので、今後はもうちょっとこうその辺考慮した運営を願いたい物だと存じます。

まあ輪番100億減額だけでこの有様で、ってまあ輪番100億で債券先物1円下がるという訳では無くて複合事故みたいなもんでしょうが、年寄りはこういうのを見ると運用部買入の月1000億円ぽっちの停止で先物が最終的に10円以上下がるというお洒落な事案があった件をつい思い出してしまう次第(ちなみにあの時もその前に東証が債券先物のシステム変更して値付けがおかしくなって先物の流動性が極端に無くなって現物の流動性が無くなったという背景があったのだが)でして、流動性の無くなった市場というのはほんのちょっとしたことで大雪崩になるリスクがあるという片鱗を見せたんですかねえとか言うのは杞憂だと良いのですけど、まあ将来の出口政策と言いますか、異次元緩和の大風呂敷の畳み方に関して政策ロジックだけではなくオペレーション的な課題も見せてくれたのではないでしょうかねえ。

#4月から超長期先物始まって先物の板が分散した場合どうなるのかはあまり考えないことにします。

何せ日銀におかれましてはシャチョーが「ストックビュー」での説明をしているだけに、ストックを中心に考えるとどうしてもフローがグシャグシャになりやすいのですが、まあその「量的緩和」というロジックからしたらそらまあ「量」の方が重要ですし、中長期的に量が定量的に効果があるんちゃいますかという方が普通に理屈として通っているとは思う(なお置物理論によりますと今頃この量が効果を発揮して以下同文)のですが、まあ売買している身にとってみましてはやはり流通市場でのフローの方が短期的には全力で影響がある話ですので、もうちょっとこの辺のバランス何とかならんのかねという気はする所なのでありました。まあ難しい話ですけど。



○3か月短国入札

ヒャッハー
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140313.htm

(3)募入最低価格 99円99銭1厘5毛 (募入最高利回り) (0.0340%)
(4)募入最低価格における案分比率 87.5541%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘8毛 (募入平均利回り) (0.0288%)

・・・・・・・・と思ったらやはり3bp割れのニーズは限定的だったようで、足切りは流れたぜヒャッハーと思ったのですが、良く良く考えてみるとこの足切り3.4bpというのは先週のヒャッハー入札の足切りと同じ水準で、これでも大概に金利が低いという事実は厳然としてあるのでした。

でまあ新発が出ると発行日のGCとかも上昇してくれるのですが、新発が出た翌日には毎度お馴染みの日銀攻撃がダイソン掃除機の如く登場し、市場の中を高速回転しながら盛大に短国を吸引してしまいますので、ど〜せ需給が締まる上に来週には国債大量償還デーが待っておりますのでアヒャヒャヒャヒャという所ですな。

ま、足切りが3に乗ったのは今の所3bp割れのニーズはさすがに限定的というのが見えたという話で、そういう意味でのインプリケーションはあったという所ですにゃ。


○貸出支援オペ関連

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140311a.pdf

27ページ組で読むのもエライコッチャでございますが、基本的には前回のMPMで公表された基本的な考え方をそのまま要綱に落とした感じです。一瞬読むとほえ?と思うかもしれない所だけ少々引用。

PDFのページのベースで何ページという形で書きますね。なお本当は改定前の部分に取消線が引いてあって改定後の部分に下線が引いてあるのですが、引用の都合上改定後の部分だけ引用して、取消線部分の引用を割愛している点を最初にお断りします。

4ページ

別紙1(『「貸出支援基金運営基本要領」中一部改正』)の『6.貸付利率および利息の徴収』から。

『(1) 貸付利率は、次のイ、およびロ、に定める利率とする。
イ、 年0.1%とする。
ロ、 7.(2)に定める借り換えにかかる貸付利率については、イ、の規定にかかわらず、当初貸付けの実行日における貸付利率の定めによって決定される利率とする。ただし、当分の間は年0.1%とする。』

・・・・・・・これですけれども、貸出増加支援や成長基盤の本則が4年固定になったので、今回の措置で小口特則とかABL特則に関しては借り換えの際の金利を当初金利でFIXするという形になったという意味です。

なお、従来に関しては成長基盤の本則は1年更改で借り換えの度に金利リセット、貸出増加支援に関しては当初3年で借入すれば3年までは固定でしたが次の借り換えは金利リセットでしたので、4年固定を確実な形にする為の要綱変更となりますな。従来の貸出分に関しては当初の通りの金利リセット方式が継続します(そらまあ変更したら”貸出条件変更先”だわな^^)。


22ページおよび24ページ

別紙7(『「貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領」中一部改正)』)から。

既往部分の借り換えの残高に関する部分が22ページ。

『(5)貸付限度額

貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、次のイ、からロ、を控除した金額と借り換えの対象となる貸付けの金額とを比較して、いずれか小さい方の金額相当額とする。

イ、当該貸付先による平成24年10月から12月までの四半期における貸出(政府に対する貸出、地方自治体に対する貸出ならびに金融機関等および預金保険機構その他の別に定める公的法人に対する貸出を除く。以下同じ。)の月末残高平均額(四半期に属する各月末における残高の平均額をいう。以下同じ。)に対する、貸付毎に別に定める四半期における貸出の月末残高平均額の増加額

ロ、当該貸付先に対するこの基本要領に基づく貸付け(6.に定める貸付けを除く。)の残高』

要するに既往部分に関しては「残高が減らなければ同額までのロールが可能」という事です。

今後の部分に関する貸付限度額に関する部分が24ページ。

『(5)貸付限度額

貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、次のイ、からロ、を控除した金額の2倍の金額相当額とする。

イ、 当該貸付先による貸付毎に別に定める四半期における貸出の月末残高平均額ロ、 平成24年10月から12月までの四半期から、イ、において別に定める四半期の直前の四半期までの各四半期における、当該貸付先による貸出の月末残高平均額のうち、最大の額』

すげえややこしい書き方になっていますが、2012年10〜12以降の末残平均値の既往ピーク残高から直近の四半期の末残平均値の増加分を計算して、その分の2倍まで貸出をしますよという話で、これはつまり増加した分をどうせ4年固定で借りれるなら後に繰り越した方がお得なので引っ張ろうという作戦をさせないための手段という事で、まあ当初アナウンスされていた話ではあるのですが、なるほど文章に落とすとこうなるのかと感心してしまいましたとさ。


○どうでも良い余談

昨日の(確か)午後以降に日銀のサイトを見た円金利市場関係者におかれましては更新情報のうえから2番目(なお時間の経過と共に下に逝きますので念の為)にあるお題を見て「全ての円金利関係者に喧嘩売っとるのかこの題名は」と思ったた事でしょう、ってそんな人はアタクシだけですかそうですか。

http://www.boj.or.jp/

『2014年 3月13日 (論文)技術進歩を上回る高学歴化 』

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14e05.htm/
技術進歩を上回る高学歴化

全文掲載は、英語のみとなっております。

>全文掲載は、英語のみとなっております。
>全文掲載は、英語のみとなっております。
>全文掲載は、英語のみとなっております。

・・・・・・・・・・・ええすいませんねえドメドメマーケットだから英語読めませんよすいませんねえとか思ってしまったのはただの僻み根性ですどうもすいません。



2014/03/13

お題「金融経済月報&総裁会見から」

暫くなかったから大ニュース扱いになるのも判るのだが、これから消費税上がって物価も上がっているんだからベア出たで喜ぶのではなく、そもそもそれで物価上昇に追いついているかの話は無いのかねとか言い出すアタクシは協調性が無いですかそうですか。

○金融経済月報から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1403.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1402.pdf(前回)

まずは概要部分の確認。

・現状判断部分は声明文と同じです

まあ当然なのですが備忘メモでもあるので引用。

『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

とまあここまでは声明文で示されている部分なので声明文同様で輸出が下げで設備投資と生産を上げとなっています。


・先行き見通しでは案の定需要項目見ても変化なし

でまあ需要項目別の話が書いてある先行き見通しを比較。

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

という総括判断は声明文どおりに変化なしですけれども、需要項目別の話は月報の概要部分に出てきますのでそちらを確認、特に輸出に注目してみますが・・・・・・・

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・はあそうですかという所ですが、貫録の先行き見通し文言不変の巻です。

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで国内需要の先行き見通しも同じということで、なんとまあと言うか案の定というかですけれども、見通し文言は需要項目別のブレイクダウンでも変化はありませんでしたという事で、貫録の見通し不変攻撃でどう見てもクレクレ攻撃無回答です本当にカムサハムニダという所ですな。


・リスク要因、物価も前回同様なのですが・・・・・・・・

この辺も声明文で示されている通りです。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

前回と全文一致なのは良いのですけれども。消費者物価の先行き見通しなのですが、ここで示されている「暫くの間」というのは「半年程度」という話だったと思うのですが、「暫くの間」という文言が採用されてから既に3か月が経過しておりまして、まあ程度の部分は幅を持って見るとしましても、次回は4か月目になりますからそろそろ文言どうなるのか楽しみですな(棒読み)。


・金融環境では社債の発行環境の判断を引き上げ

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回、前回も同じです)

から始まる金融環境の所ですけれども、社債の所がこういうお話。

『CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。』(今回)

『CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。』(前回)

今回引上げとなという感じですけれども、まあ散々発行スプレッドが縮小しまくった所でやっと判断引き上げというのが変なフラグ立てにならないように願いたい物です。


・でまあ本文の輸出の辺りを鑑賞してみる

でまあ普段は斜め読みするこの先の本文ですが、輸出の現状判断をより子細に書いている本文を鑑賞してみませう。本文3ページ(PDFファイルの5枚目)です。

『実質輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている(図表6(1)、7)。実質輸出は、昨年4〜6月に伸びを高めたあと、7〜9月は減少したが、10〜12 月は再び増加した。その後、1月の10〜12 月対比は大きめの減少となった。』

というのは現象の話。

『もっとも、1月については、中国をはじめとした東アジア向け輸出が大幅に減少している点からみて、春節(中国等の旧正月)の影響を受けて振れている可能性がある。』

ふーん。

『また、一部の財では、消費税率引き上げ前の駆け込み需要などに伴う供給制約が、輸出の抑制につながっている可能性もある。』

これは(この先にネタにする予定の)総裁会見でも同じ説明をしていた(当たり前だが)のですけれども、ホンマカイナという気がだいぶするんですがそうなの???

『地域別に輸出動向をみると(図表7(1))、米国向けは、4〜6月に大幅増となったあと、7〜9月、10〜12 月と小幅の減少となったが、1月の10〜12 月対比は小幅ながら再び増加した。米国向け輸出は、寒波による現地の自動車販売の減少など、このところ一時的な動きの影響を受けているが、基調的にみれば、同国の景気が裾野を広げつつ緩やかに回復するもとで、為替相場動向の影響もあって、自動車関連を中心に増加傾向にある。』

『EU向けは、4〜6月にかけて下げ止まったあと、7〜9月以降は自動車関連や資本財・部品を中心に増加を続けており、全体として持ち直している。』

『中国向けは、現地販売の改善を背景に自動車関連が緩やかに回復しているほか、半導体製造装置など資本財の一部に改善の動きが引き続きみられており、全体として持ち直している。足もと、1月の10〜12 月対比は大きく減少しているが、これは、上述した春節の影響を受けている可能性がある。』

『一方、NIEs向けについては、一進一退となっている。ASEAN向けについても、振れを伴いつつも、均してみれば弱めの動きが続いている。この間、その他地域向けについては、為替相場動向の影響が下支えとなるもとで、昨年前半には緩やかに増加していたが、昨年央以降は弱めとなっている。』

ということで主に落ち込みは一時的要因という話になっておりますな。しかし為替相場動向の影響が下支えになって云々とあるのですが、下支えになってこの結果ですかそうですかという気がだいぶするのは気のせいですね!!

『財別にみると(図表7(2))、自動車関連は、一部の新興国における需要の弱さが続いているなかで、足もとでは、米国の寒波の影響、中国などの春節の影響、さらには国内販売の大幅増に伴う供給制約などが、一時的な下押し要因となっているため、全体として減少している。もっとも、基調的にみれば、米国景気の緩やかな回復や為替相場動向の影響などから、増加傾向をたどっていると考えられる。』

どうも先ほどの供給制約云々は自動車輸出の事を示しているらしいです。

『資本財・部品についても、足もとは落ち込んでいるが、基調的には、東アジア向けの半導体製造装置などを中心に、緩やかに持ち直している。情報関連(含む映像機器、音響機器)も、足もとでは落ち込んでいるが、基調的には、スマートフォン向けの部品の動きなどを反映して、下げ止まっている。この間、中間財については、国内需要増加による供給制約が影響している可能性もあって、NIEs、ASEAN向けを中心に弱めとなっている。』

ということで、これ読んでいると全体的にそういう説明になっているから仕方ない面はあるのですが、「足もとは落ち込んでいるが基調的には上昇」という説明の連発になっていて、何度も同じ文言が登場するのでちょっとワロタという感じです(^^)。


輸出の先行き見通しを説明しているのが本文6ページ(PDFファイルの8枚目)になるのですが、ちょっとだけ引用しておきます。

『輸出を取り巻く環境をみると、海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある(図表8(2))。主要地域別にみると、米国経済は、寒波の影響から幾分弱めの指標も散見されているが、景気は緩やかな回復を続けており、その裾野に徐々に広がりがみられてきている。欧州の景気は、持ち直している。中国経済については、一頃に比べて幾分低めで、安定した成長が続いている。この間、中国以外の新興国・資源国経済の一部は、弱めの動きを続けている。』

へえへえそうだっか。

『円相場については、対ドル、対ユーロとも、振れを伴いつつも下落しており、実質実効為替レートでみると、2007 年頃の水準を幾分上回る円安となっている(図表8(1))。』

さいですな。

『先行きの海外経済は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとみられる。また、上記のような為替相場の動きも、引き続き輸出の押し上げに作用していくと予想される。』

ということで、えーっと為替が行ってるのに輸出が思ったほど伸びないという話では無いのかというのがひじょーに気になる所ではあります。ちなみにこの先は地域別見通しを全体的な話に加え、財の項目まで含めて説明していますが引用しているとキリが無いのでパスという事で。

あと、消費税の影響に関する説明が今回の月報19ページ(PDFファイルの21枚目)に本文終了後の囲みコラムとして『(BOX)物価指数における消費税率引き上げの直接的な影響』という形で掲載されていますのでご鑑賞あれ。


○総裁会見から:サービスフレーズが碌すっぽ無いという追加緩和期待に盛大に水を掛ける会見ですね!!

つーことで昨日先取りしましたが本チャンの要旨が出ましたのでこちらから。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1403a.pdf

・2013年度実質GDP+2.7%が難しそうな件に関して

まあ昨日先取りしましたが実際はこういう質疑になっています。

『(問) 昨日発表された昨年10〜12月期のGDPの2次速報は、さらに下方修正となりました。日銀の今年度の経済成長率見通しである2.7%の達成の見通しについて、現時点でどうお考えかご所見をお願いします。』

『(答) ご指摘のように、昨日発表された昨年10〜12月期の実質GDPの2次速報値は、1次速報値から若干の下方修正となり、前期比年率+0.7%の成長率となりました。その内容をみると、国内需要では、設備投資は、法人企業統計を反映して1次速報値から若干の下方修正となったものの、先程申し上げたように、企業収益の改善を背景に、小幅ながらも3四半期連続で増加する姿となっています。』

下方修正だったものの3四半期連続で増加しています(キリッ)とかドラギ先生の会見みたいですね!

『また、個人消費も、雇用者所得が緩やかに持ち直すもとで、底堅い伸びを続けています。一方、外需面では、輸出が新興国向けを中心に弱めの動きとなっている中で、輸入が駆け込みの影響も含め堅調な国内需要を反映して伸びを高めており、純輸出が成長率を押し下げる方向に働いているということだと思います。』

輸入が堅調な国内需要を反映して伸びを高めているので純輸出がGDPの押し下げ方向に働いたとはこれはこれは。

『このように、GDPの2次速報値は、外需が弱めとなった一方で、国内需要が堅調に推移していることを確認する内容であり、全体として、景気の前向きの循環メカニズムは引き続き働いているとみています。』

何という虫の良い解釈などと良い子の皆さんはツッコんではいけません。

『従って、先行きについても、こうした前向きの循環は途切れず、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていくという見通しには変わりがありません。』

基調的に潜在成長を上回るは良いのですがそれで2年で2%物価上昇するほどの勢い付くのでしょうかなどと思うのですがそれはそれですかそうですか。

『なお、ご指摘の2013年度の成長見通しについては、その先の年度と併せて、4月の展望レポートで改めて公表する予定です。』

どう見ても忍法先送りの術です本当にありがとうございました。


・GDP未達の場合の対応&下振れリスクに関しての認識はどうなのか

まあ今の時点で+2.7%行かなくても全体的な状況と先行き見通しが変化無いので追加緩和とか知らんわヴォケという話をしているのが明白ですが、こういう質疑がございましたぞな。

『(問) 総裁はかねて下振れリスクが顕在化した場合は、躊躇なく調整を行うとおっしゃっていますが、先程のお話にもありましたように、2013年度の成長率の見通しが下振れる可能性がかなり高まっています。また、日銀が今回判断を引き下げた輸出も、やや想定を下回っている、ウクライナ情勢等の地政学的なリスクもあるという中で、政策の調整が必要になるような下振れリスクが高まっている可能性はあるのでしょうか。1月の会見では、下振れリスクはかなり後退しているのではないかとの趣旨のご発言があったかと思うのですが、成長率見通しの引き下げ等も含め、どう考えているかお聞かせ下さい。』

で、この答えがどう見てもゼロ回答です本当にカムサハムニダという内容なのが味わい深い。

『(答) 昨年来の状況からみると、全体として世界経済の下振れリスクは低下しているという状況に変わりはないと思います。』

下振れリスクは低下してるんですってよ奥様!!!

『ただ、1月末から一部の新興国の通貨等が選別的に下落する、最近のウクライナ情勢を反映してウクライナの通貨が下落する、あるいはロシアの通貨が下落するということが起こりましたが、いずれも、現時点では限定的な影響にとどまっており、世界経済全体として下振れリスクが大きくなったということはないと思います。』

現象の話をしながらもリスク低下とはこれまた盛大に強気(というか黒日銀平常運転モード)ですなあ。

『そうしたもとで、日本経済の動向については、先程申し上げたように、生産・所得・支出という好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います。』

>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います
>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います
>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います

はあそうですか。

『金融政策の運営は、当然のことながら冒頭で申し上げた通り、常に上下双方向のリスク要因を点検して、必要に応じて政策の調整を行うという点は全く変わりません。経済・物価動向を毎回点検していく中で、2%の「物価安定の目標」の達成が困難になった、またはそこへの道筋が順調に進んでないとして調整の必要が出れば、当然、躊躇することなく調整します。しかし、先程来申し上げている通り、内需を中心とした経済の好循環が続いていますし、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減で成長率は上下しますが、0%台半ばとみられる潜在成長率を上回るテンポで、来年度、再来年度と成長していくとみていますので、現時点で、金融政策を調整する必要があるとは思っていません。』

『ただ、何度も申し上げますが、常に上下双方向のリスク要因を点検し、必要があれば躊躇なく調整するという方針です。』

こういう説明をしているのに「困難になったら躊躇なく調整」もきっちりヘッドラインになっている(まあさすがに「調整する必要が無い」が最終的にはニュースヘッドラインになっていましたがとか何じゃそらという感じで、ここの文章通してみれば盛大にゼロ回答をしているのが明白でございますわな。


・輸出に関して

『(問) 2点伺います。(前半の質問割愛)もう1点は、繰り返しで恐縮ですが、輸出についてです。先程のご説明でも外需の一時的な下振れということですが、日本の構造問題といいますか、なかなか輸出が増え難い状態になっているのではないか、円安なのに輸出が増えないという状態に陥っているのではないか、という指摘がかなり出ていると思います。この点について、総裁は輸出の伸びが出てこないのは想定外とみていらっしゃるのか、改めてもう少し詳しくご説明をお願いします。』

『(答)(前半割愛)2点目の輸出については、先程申し上げた通り、確かに企業が海外の需要地に近いところで、あるいは賃金その他の点でより有利なところで生産することで、海外展開は進んでいると思います。これ自体は特にマイナスではないと思います。』

いやそうかも知れんがそもそも置物副総裁理論によると為替レートを調整して輸出がどどーんと伸びるという話じゃなかったでしたっけ。

『そうしたことを踏まえた上で、私どもが昨年「量的・質的金融緩和」を導入した時点で思っていたよりも、最近輸出がやや弱め、内需がやや強めとなっている背景には、ASEANその他新興国の経済がややもたついているということがあります。ご承知のように、日本の輸出の半分以上はアジアの新興国向けであり、そうしたことが影響を与えてきたと思います。その上、一時的な現象だと思いますが、米国における寒波、東アジアにおける春節──春節が例年より少し早く始まったわけです──、そして消費税率引き上げ前の駆け込みの中で一部の企業が国内需要を優先して輸出をやや後回しにしていること、といった3つの要因もあります。』

先ほど引用した金融経済月報でそういう話がございましたね。

『しかし、そういった一時的な要因はいずれ剥げ落ちます。』

一時的要因とな!

『そうなると残るのは、従来からある程度続いていた構造的な海外展開です。これは特に最近テンポが速まったということはなくて、むしろ行き過ぎた円高が是正される中で海外展開のテンポはやや減速しているかもしれません。ただ、いずれにせよ、これは趨勢的にずっと続いている話です。』

ではその点に関してですがどのようにお考えでしょうかという所なのですが、しらっと話が別の方向に進むのが想定問答クオリティというものであります(^^)。

『そうした中で、注目すべきは循環的な要因としてのアジアの新興国の景気回復のもたつきです。ただ、米国を中心とする先進国の経済が成長率を加速させていく──IMFでもOECDでもそういう見通しですが──、そういうもとで、アジア新興国の成長率も緩やかに伸びていくことになると思いますので、循環的な要因の中で、日本の輸出がやや弱いところは是正されて緩やかに伸びていくだろうと思っています。』

ということで、構造要因は特段大きな問題ではなく循環的要因が好転すれば好転するという話になっておりましてホンマカイナというテイストが盛大に漂う説明になっているのでした。


・物価に関しては賃金が上がっていくメカニズムが強まっている&バックワードの予想インフレ上昇とのこと

こんな質問がありまして。

『(問)(前半割愛)もう1点は、4月1日から消費増税が実現しますが、消費増税後の物価の押上げの動向について、変化があるのかどうか、総裁からコメントがありましたらお願いします。』

『(答)(前半割愛)2点目の物価の動向についてですが、冒頭申し上げた通り、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていると思います。その背景として、初めは円安の影響が大きかったと思いますが、内需中心の経済成長が次第に定着していく中で、ご承知のように、労働市場がどんどんタイトになってきました。いわゆる構造失業率は3%台半ばといわれていますので、現在の失業率3.7%は、完全雇用に極めて近い状況になってきています。そうしたことから、賃金あるいは物価などへの影響も出てきています。』

キタコレ。

『すなわち、潜在成長率を上回る成長、特に今回の内需中心で非製造業がリードする形の景気回復のもとで、労働市場は極めてタイトになり、賃金の押上げ、そして物価の押上げの効果が出てきており、今後もさらに強くなっていくだろうと思っています。』

ひょえー。

『もう1つは、長らく低位にあった予想物価上昇率が、昨年来、全体として少しずつ上昇してきているということです。これも今後、物価を2%の目標に近づけていく要素になるだろうと思っています。』

ほほー。

『従って、従来から申し上げている通り、物価は、ここ半年くらいは1%台前半で推移し、その後1%台半ばから後半、そして2%への道筋を辿っていくと思っています。消費税率引き上げによる直接的な物価押上げ効果は、ご承知のように3%の税率引き上げに対し2%程度と見込まれますが、私どもがみているのは、それを除いた、あくまでもトレンドとしての物価上昇率です。それは、今申し上げたように、今年の前半くらいは1%台前半で推移し、その後徐々に上昇、加速していくだろうと思っており、その見通しに全く変化はありません。』

ということで全く変化ないどころか説明がますます自信満々になっていますよ!!!!!

『それから、今申し上げた、消費税率引き上げによる直接的な物価押上げ効果についてのテクニカルな話で、ご承知かもしれませんが、公共料金については、料金算定期間に3月分を含む場合は、4月の物価指数上は旧税率の5%で計算するということを総務省が発表しています。これを考慮すると、4月1日に税率が5%から8%に引き上がりますが、その物価への影響というのは、4月はいきなり2%分ではなく、それより少し小さい1.7%分くらいであり、5月からフルに2%分ということになります。従って、私どもの物価の判断については、4月分の数値からは1.7%、5月以降は2%引いたところでトレンドをみていくことになると思います。そのトレンドについては、先程申し上げたような考え方で変わりありません。』

別にこれわざわざ説明せんでもと思うのですが、先ほどご紹介した(だけで引用していない)金融経済月報本文直後にあるBOXの中で説明している件に触れているという所のようですな。なおそのBOXの中で紹介されていますが、総務省統計局のサイトの方でも説明があります。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm
消費者物価指数(CPI)

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#I1
平成26年1月31日 消費者物価指数に関するQ&A(「消費税の取り扱いについて」)を更新しました。


・この質問は如何なものかと

『(問) 3点伺います。1点目は、CPIはコアが1.3%まで上昇していますが、GDPデフレーターはいまだに若干マイナスになっています。コアCPIとデフレーターとのギャップがある背景をどうお考えになっているかお聞かせ下さい。また、今後、2%の「物価安定の目標」を目指すにあたって、デフレーターとのギャップの縮小を実現するためにはさらに政策をパワーアップする必要もあるのではないかと思いますが、その辺りのご所見をお願いします。(以下割愛)』

背景をどうお考えになっているかってあーた統計の質問してどうしますねんという所で、先ほどの総務省統計局のCPIに関するQ&Aというのがあってですな、

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4.htm
消費者物価指数に関するQ&A

そちらの質問「G−8」に思いっきり説明があるんですけど・・・・・・・・

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#G8
G-8 消費者物価指数とGDPデフレーター(内閣府)が乖離していると聞きますが、それはなぜですか。

でもって総裁の回答も当然ながらこちらのQ&Aに沿った説明をしていますわ。まあ折角なので忘れないように引用しておきますか。

『(答) CPIの動きとGDPデフレーターの動きには、長く遡ってみても常にギャップがあります。それには2つの要因があると思います。第1に、消費者物価指数はあくまでも消費バスケットの中に含まれている消費財の価格がどう動いているかを表すものですが、GDPデフレーターは消費財だけでなく投資財やその他の価格の動きも含むことです。消費財と投資財を比べると、趨勢的に投資財の相対価格がずっと低下してきており――これはどこの国にもある現象ですが――、その結果、GDPデフレーターの上昇率に比して消費者物価上昇率の方が少し高い、逆に言えばGDPデフレーターの伸び率の方が低くなる方向に働きます。消費財と投資財の相対価格の変化があるために、そういったことが起こっているのです。』

『その理由は、消費のバスケットの中では半分以上がサービスですので、機械化その他で効率が良くなる部分があるとしても、資本財のようにどんどん機械化によって安く提供される状況とは異なるからです。消費財の大半がいわば労働コストに応じて変動しますので、消費者物価指数の方がGDPデフレーターよりも上がりやすくなるのです。』

『第2に、GDPデフレーターは、作り方からして当然ですが、輸入財価格が上がると、マイナスに効きます。輸入財価格の上昇分は、一部は消費財の価格上昇に、一部は投資財の価格上昇に転嫁されていきます。長い目でみると、その動きの差はかなりの程度打ち消されるとは思いますが、それでもしばしばGDPデフレーターが大きくマイナスになるのは、基本的には、輸入財価格が上がり、それが部分的にせよ、まだ消費財の価格に完全に反映されていない時点ではギャップが大きくなるからです。完全に反映された後でも、消費財だけでなく投資財の部分もあるので、まったくニュートラルになるとも限りません。』

『この2つの理由でこういう状況になっていますので、別に異常なことではなく普通のことだと思いますし、いずれGDPデフレーターもプラスになっていくと思っています。ただ、数値が同じにならなくてはいけないということはないし、諸外国をみても、日本の何十年間の歴史をみても、消費者物価指数の上昇率の方がGDPデフレーターの上昇率よりも高くなることは幅広く観察されると思います。(以下別の質問の回答部分割愛)』

・・・・・・・まあ何ですな、質問するなら「経済活動全般という意味ではデフレーターも見るべきではないかと思うのですが如何ですか」みたいに聞くもんじゃないですかねえとしか申し上げようがないですな、うんうん。


という所で最後のはおまけですが今回は前回ちょっとサービス過剰(恐らく日銀的にはそこまでサービスする積りは無くて、市場が大反応したのが誤算だったのかも知れないと思う)だったのを元通りの「退かぬ、媚びぬ」攻撃に戻して自信満々の説明を強調したという感じですね!!!!!!


2014/03/12

お題「決定会合レビュー:体勢を立て直して元に戻しましたな!!」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015882751000.html
甘利大臣 思い切った賃上げを
3月11日 12時14分

そうそう賃上げ進まないと消費に悪影響ですよね、と思ったら・・・・・・・・

『そのうえで、甘利大臣は「政府は賃上げの環境整備のため、法人税の減税を前倒しして原資を渡している。利益が上がっているにもかかわらず、なんの対応もしない企業は、経済の好循環に非協力的だということで、経済産業省からなんらかの対応があると思う」と述べ、経済界に対し、春闘でベースアップに応じるなど思い切った賃上げに踏み出すよう改めて求める考えを示しました』(上記URLより)

>経済産業省からなんらかの対応があると思う
>経済産業省からなんらかの対応があると思う
>経済産業省からなんらかの対応があると思う
>経済産業省からなんらかの対応があると思う
>経済産業省からなんらかの対応があると思う

・・・・・・・・・・・・orz

どこの賃金統制令あるいは国家総動員体制だよというところで、お気持ちは判るけど何ぼ何でももう少し物の言い様というものがあるんじゃないですかという話ですし、大体からしてそこまで言うなら法人税減税するんじゃなくて最初から個人所得税で特別減税でもすれば良かったんじゃないですかねえと思いましたが、法人税減税しないと株価(銃声)。

てな話は兎も角として。


今回の決定会合は皆様予想していた通りに会見の方が注目となりましたが、会見テキストは本日出ますのでテキスト読みながらのネタは明日にも続くとゆー所で宜しくオナシャス。


○決定会合声明文:堂々の先行き見通しリスク認識不変の巻

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140311.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140218a.pdf(前回)

・現状判断:輸出を下げて設備投資と生産を上げ

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

ということで総括判断は毎度おなじみの緩やかな回復ね。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

輸出の現状認識を下げてきましたが、海外経済の認識は変わっていないのですな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

ということで設備投資の現状判断に持ち直しが「明確」と来ましたので判断引き上げ、生産に関しても「伸びが幾分高まっている」という表現でこれも判断引き上げでして、他の需要項目の表現は前回と同じですね。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

金融環境と物価の表現は同じです。


・先行き見通し:貫録の全文一致

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

どう見ても全文一致です本当にカムサハムニダという所ですが、つまりそれは金融政策に関して特段の調整は必要ないっすなあウッシッシという事を意味しております。


・リスク要因もカワランチ会長で白井さんの意味不明提案も同様

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、5.の記述に反対した。』(今回)
『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、7.の記述に反対した。』(前回)

ということでリスク要因の文言は全然変更なしという所ですが、正直欧州債務問題よりも他の要因の方が重要じゃねえかという気もするんだが、直近での動向を踏まえた表現の変更とかが特段無いというのは、まあ要するに最近の動向でリスクガーとか言う程の事も無いですぞなもしという話で、これまた強気の見方を反映しています。

で、白井さんの反対(項番が前回と今回で違うのは貸出支援措置の延長強化に関する記述が前回あった関係です)も相変わらず謎というかセンスねえなあと思うのですが、「リスク要因」が何でその「雇用所得環境の改善ペース」という事になるのかと小一時間問い詰めたい訳で、普通そういうのはリスク要因じゃなくてメインの見通しの中に含めるものじゃないですかという話でございますよ。もしリスク要因入れるなら新興国の金融市場とかじゃないですかねえ。

#ちなみに狂乱物価と言わた時代にはベアが想定外の大幅上昇で物価上昇に加速が掛かったなどという記述をどこかで見たことがあったような気がしますけどね

まあ何ですな、この雇用所得環境云々ってえのはさっきニュースネタにしたあまりんの謎発言にありますように、政権注目のネタでもありますので、白井さんったらもう自己アピールに熱心で一人目立ちたがるんですからもう困りますわねえ奥様という所でございまして、そういや昨日はOECDがECBと日銀はもっと緩和が必要な場合もとか市場が喜びそうな発表をしていたようですけれども、緩和が必要なのはいいけど手段が無いんだよクソボケという所で、無責任にも程があるわこの国際機関とか思いましたが白井さんも国際機関(OECDじゃなくてIMF)のエコノミストとかやってらっしゃいましたっけとか禿しくどうでもいい事を思い出しましたわ。


・最後の文言も相変わらず同じで木内さんの提案も同じなので今回分引用だけ

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

実際問題としては安定的にCPIが1%以上という見通しになっているのですから、デフレからの「脱却に導く」って表現さすがに変えた方が良いんじゃないかと思いまして、物価安定の目標に向けて進むとかそういう表現にしたらどうなのよとも思うのですけれども、まあ変に文言いじってああだこうだと外野から言われるのも(お前が言うなと思わないように)マンドクサという話だと思うので変化させてないんでしょうな。

木内さんの提案もいつも通りです。

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

中長期的に目指す件に関しては木内さんの提案は毎度反対されていますが、先般来の審議委員(ただし学者2名を除く)の情報発信を見ますと、経済の成長を伴わないで物価だけ上昇するのは政策当局として如何なものかと考えるみたいな話は多く出ていますし、この集中対応措置云々というのがもうちょっと何とかならんのかとは思いますが、いずれ物価安定目標の定義というか考え方の部分で「とにかくマンデートなんだから物価上昇に持って行けば良いんだよ」と開き直ってしまっている(ように見える)執行部と、いやそのりくつはおかしいという審議委員との間でのギャップが表面化して大変に面白い展開になる事を希望致したく存じます。



○つーことで明日の会見ネタの先取りで:今回は前回見られたサービス成分(のようなもの)を排除ですな

会見ネタは本日の会見要旨を見てからまた投下しますがとりあえずブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N29L506JTSET01.html
黒田日銀総裁:現時点で何か金融政策を調整する必要あるとは思わない
更新日時: 2014/03/11 18:03 JST

『黒田総裁は一方で、輸出については「勢いに欠けている」と指摘。「昨年、量的・質的金融緩和を導入した時点で思っていたよりも、輸出が弱め」となっていると述べた。 その背景としては、東南アジア諸国連合(ASEAN)など新興国経済のもたつきに加え、「米国の寒波や東アジアの春節の影響、それから駆け込み需要への対応で国内向け出荷を優先する一部企業の動きなど一時的要因も作用しているのではないか」と指摘。先行きについては「これら一時的要因がはく落するもとで、先進国の成長率が高まっていることから、中国やNIESなどアジアを経由した間接的な影響も含めて、輸出は緩やかに増加していく」と述べた。』(上記URLより)

どうも構造的な問題(輸出品の現地生産)も言及したようなのですが、それよりも一時的な要因の方を強調しておりまして、現状判断で輸出の判断を下げたのはあくまでも現実がそうだから下げただけで先行きの見通しは変わらんぞなもしという強気の姿勢です。


『黒田総裁はGDPについて「外需が弱めとなった一方で、国内需要が堅調に推移していることを確認する内容であり、全体として景気の前向きな循環メカニズムは引き続き働いている」と言明。先行きについても「こうした前向きの循環は途切れずに、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていくという見通しには変わりがない」と述べた。』(上記URLより)

直近のGDP2次速報が弱かった訳ですが、このような説明をしているという事はつまり物価は順調に推移しているし先行きのメカニズムは変わっていないし見通しも変わってませんよ平気平気という話ですが、成長率が見通しよりも弱くて物価は堅調に推移ってそれただ単にコストプッシュとかそういう話じゃないですか国民厚生的にどうなんですかと小一時間。


『黒田総裁は11日の定例会見であらためて13年度の成長率見通しについて問われ、「その先の年度と併せて、4月の展望リポートであらためて公表する」と述べるにとどめた。』(上記URLより)

で、注目の前回定例会見での「+2.7%は行きます」発言の再ツッコミでございますが、先ほどの部分にありましたように「そのような数字よりも前向きの循環メカニズムが継続していることが重要なのです(キリッ)」という攻撃に出ておりまして、更に数字の話については忍法先送りの術ということで4月の展望レポートで攻撃に出ましたな。

でまあ展望レポートで攻撃というのは単なる忍法先送りの術なだけではなく、足元の数値が見通しに行かなかったらそれが直接的に政策判断に自動直結するのではなく、あくまでも展望レポートという先行き見通しの中で示しますということですから、先行きの見通しが重要でありますよという話でもありまして、つまりは+2.7%行かなかったから自動的に追加緩和というのはあり得ん(まあGDPターゲットにしている訳じゃ無いから当然ですが)というメッセージも含めていると思われますので、その点でも体勢を立て直したという感じだと思います。

つーかですな、今回の発言内容(正式版は本日出ますが)を見ますと、2月会見での「+2.7%達成が困難とは思っていない」発言が黒田さんにしては珍しいレベルの失言というかやっちまった発言だったという事になりまして、あの時点で「GDPに関して言えば数値がどうなるというだけではなく、前向きの循環メカニズムが途切れることなく続いていることが重要なのです(キリッ)」とか何とか言って具体的な数値の話を回避しておけば良かった(具体的数値が重要なのはディレクティブの量的数値とマンデートの2%物価上昇目標ですから)訳でして、ただまあ今回の発言が出るまでは「これはGDP+2.7%行かないのを何かの言い訳に使う布石なのではないか」とも想像(妄想寄り)される状況でしたので、今回このような説明をしているのは前回ちょっとやっちまったという所なのでしょうなあと思われますがどうでしょうかね。


まあ詳しくは会見要旨と共に投下しますが、出ているものを見て回った感じですと、今回の総裁会見は色々な意味で「体勢を立て直した」という感じでして、前回の貸出支援関連施策の延長強化において妙にフレームアップして、それこそ2倍とかまたガイジンとか他市場の金融政策シロートが喜びそうなフレーズを出してアピールしちゃった結果として、金融政策運営に関して「退かぬ、媚びぬ」という体勢への疑問が思いっきり浮上して、追加緩和観測が思いっきり前倒しとか浮上とかいう感じになっていた訳ですが、今回はそのようなサービス成分は皆無という展開になっておりまして、まあ元に戻ったという印象を強くしたという所だと思います。

まあ日銀としても前回の措置についてそこまで市場ウケする積りで考えていなかったのかもという所はあるのかと思いますが、ドラギのおっちゃんの先般の会見(もう少し書き残しネタもあるので後日)に関しても、もしかしたら市場のクレクレ観測が強いことに関して必要以上に火消しをしていたという感じで体勢の立て直しをしたのかなとも思えるのですな。まあクレクレ市場に対してはちょっとしたサービスでも過剰サービスになる可能性があり、コミュニケーションというのは難しいという事じゃないかという所で、この場合先入観というのも重要で、サービスにしろ火消しにしろ、言う人が違う(例えば麿だったらと想像しましょう^^)と市場の反応も全然違ったりするので、まあ難しい話だ罠と。


ちなみに公共放送でもこういうヘッドラインですので、追加緩和無いですよのニュアンスは伝わっているんでしょうな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015894111000.html
日銀総裁 金融政策の調整必要ない
3月11日 16時54分

#貸出支援の要綱に関しては時間の都合で本日はパスで勘弁してつかあさい、なお内容は想定通りです



2014/03/11

お題「決定会合プレビュー雑談/ECBドラギ会見鑑賞の続き」

モーサテでゲスト解説しているどこぞの誰かさんが日銀と民間と解説者所属会社のこれまでと先行きの物価予想のパスのグラフを示していますが、ここまでの物価推移パスの所は実績値を使って表示していまして、これまで民間予想が日銀予想対比で負けまくっていた件を示さずに民間も日銀も同じような予想をしていたかのように見せるのはインチキにも程があると思うのですけれどもねえ。

○決定会合プレビュー雑談

つーことで今日の決定会合ですが、今回は前回決定した貸出支援関連施策の延長と強化に関する具体的な実施要綱が出る以外にはまあ普通に考えると特段の案件は出てこないと思われます、というのはまあ衆目の一致する所。

でまあ会見に注目となっていますが、アタクシ的に一番気になっているのは前回会見で堂々と言っていたこの件の落とし前なのですよね。

『(答) 最初に申し上げた通り、毎回、金融政策決定会合で色々な議論が行われるわけですし、経済・物価情勢を点検して、上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということであり、その点には全く変わりありません。従って、ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行うことになります。もっとも、今のところわが国経済は順調に推移し、日本銀行の経済見通しに沿って動いていると思っており、今の時点で+2.7%の経済成長が達成できないとは考えていません。』(2月金融政策決定会合後の総裁会見から)

でまあ昨日GDP2次速報が出た訳ですが、予想通りというか予想以上に1次速報から下振れしている訳で、これだけ自信満々に(キリッ)と発言していたので何か謎の隠し玉でもあるのかとまで思ってしまいましたが、案の定2013年度の+2.7%成長は無理としか申し上げようがない状態になっておりまして、さてこれの落とし前をどうつけるのかというのが非常に気になるというか会見で誰かが質問すると思うのでどういう想定問答が用意されているのかが気になります。

いやね、まあ超恥ずかしいからそういう話になるとは思えないし、大体からして最近の審議委員講演を見ても別に追加緩和を慌てて実施しないといけないというニュアンスの情報発信は無い(白井さんだけは意味不明の供述を繰り返しているので適用除外)訳でございますので、そーゆー辺りからも特段の金融緩和あるいはそのようなものというのが出るとは思えない、となるのが普通です。

ただですね、あの時点でも行くのかどうか判らんという+2.7%の達成が自信満々みたいな言い方をしたのは行かなかった場合に何らかの措置を取る為の布石じゃねえのと取られる可能性がある話でして、もしかしてそういうのを意図しているんだったら展望レポートの所で「見通しよりも下振れて推移してきているので」と言って緩和を強化するみたいな措置を入れる可能性がありますよねという風に思ってしまうので、まあ今回の会見で何らかの落とし前をつけて頂きますとこの想像(かなり妄想寄り)の方向性がもうちょっと見えてくるかも知れませんな。

ただまあ消費税織り込んで十分な施策を実施しているという話ですし、先月打ち込んだ施策に関しても妙にフレームアップしちゃって悪目立ちさせちゃいましたけれども、実際問題としては期限の来る施策の延長という意味では政策の枠組みに大きな影響を与える話では無かった次第ですから、異次元緩和政策の枠組み(つまりMB年間60〜70兆円拡大と長期国債買入残高50兆円拡大およびその他諸々のコンビネーション)に手を付けている話では無くて、実はそんなに重い話でも無かった(しつこく申し上げますが悪ノリして妙にフレームアップしたのが話をややこしくしている原因)ので、今のディレクティブの変更に繋がる話というのは本来は相当ハードルが高い筈なので、そう簡単に枠組みの変更をするもんじゃない、というのが中央銀行的というか行政官的なロジックになる筈で、実際は外野が思っているほど簡単な話ではないとは思われます。


あと可能性があるとすれば足元の短国市場の推移の影響でして、つまりは「その他」の部分でのMB積み上げがテクニカルに困難という認識になった場合(短国利回りがマイナスだろうと何だろうと気にしないで購入すれば購入はできるが、それは短期金融市場その他の大きな機能毀損のリスクが高いので現実問題としては選択しずらいのだが、昨日軽く悪態申し上げたように短期市場自体が特殊市場というと語弊がありますけど、まあ債券市場の人でも良く判っていない人がいるという状況ですので、そらまあ政策当局の中の人だって分かってない人も多いでしょと思うので安心はできない)、MB拡大のテクニカル的な困難さがあるのでその他(主に短期でのMB拡大部分)を中期以下の国債購入に振るというテクニカルな対応というのはあり得るかも知れないなとは思っています。

ただまあこれに関しては延長強化された貸出支援関連措置による4年オペの残高が伸びるとその他部分の残高が稼げますので、オペ残高の伸び方を見ないうちに長い方の国債に振るというのもちと考えずらいので、まあ普通に考えると直ぐにどうのこうのという話にはならないとは思います。

とまあ常識的に考えてみるとそうなるのですが、意表をついてやるならまあ展望レポートの所じゃないですかねえそうじゃなかったら7−9ですかねえとか思うのですけど、何せMB70兆円の拡大とか長期国債の買入拡大とかどこからどう見ても限界で2倍とか無理ですからETF2倍というのでも展望レポートの所で打ってお茶でも濁しますかねと(^^)。


○ドラギ総裁質疑応答ネタの続き

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140306.en.html

・SMPの非不胎化停止不胎化停止(3/12訂正)に関する質問

『Question: I usually cover the Bank of Japan. I have two questions:』

ということで2つ目の質問も面白いのですがまず1番目の質問が上記の件。

『First, there were market expectations that the ECB might decide today to stop sterilising the Securities Markets Programme (SMP). Is there any reason why this was not decided today?』

2つ目の質問を引用する前にこの部分の答えをば。

『Draghi: In answer to your first question, the suspension of the sterilisation of the SMP is one of the instruments on our list. However, we have not seen any developments in the money markets that would lead to an unwanted tightening of the monetary conditions that would justify the use of this instrument.』

追加緩和に関する質問の所でも似たような事を行っていましたが、金融市場の望まないタイト化が発生していないので別に非不胎化要らんでしょというロジックで説明しています。政策としてのリストには載っていますよとは言ってますけど。

『Furthermore, the benefits of sterilisation are relatively limited, given, for example, the short maturity of the bonds currently in the SMP portfolio. The net injection of the liquidity may really only last for a relatively short time, less than a year.』

『Nevertheless, we will continue to monitor the situation and look at this, as well as other instruments, in our catalogue.』

でまあこれはありゃーな説明ですが、SMPで購入している債券の残存期間が短くなっているので、SMPで供給した資金の不胎化を止めたとしても、それは事実上期間の短い資金供給なのでメリットは相対的に小さいとの話で、そうこうしている内に購入債券の足が来る訳で、この理屈からしたら非不胎化するのは目くらましのパフォーマンス以外の意味は無いと言っているのに等しくて、何がオンリストなのかと小一時間問い詰めたい所ですな。


・日本との比較とな

でまあさっきの質問の続き。

『Second, I have been covering the Bank of Japan for 15 years and so I saw Japan slipping into deflation, staying there and suffering from it. I know it is not good to draw a direct link between Japan and the euro area, which is very different for the reasons you set out at your press conference last month, but what are the key lessons you think the euro area could learn from Japan’s experience?』

『I am asking because you say that long-term inflation expectations are well anchored. However, inflation expectations are very hard to measure, and even in Japan, long-term inflation expectations have been very stable, even when the country was suffering from deflation. Furthermore, the Bank of Japan introduced zero interest rates and flooded markets with liquidity to beat deflation, but this did not really push up prices.』

昨日は辛辣質問シリーズにリストアップしなかったですが、まあこの質問も中々厳しいですなと思う訳で、日本型にはなりません(キリッ)とかゆうとるけど日本の場合もうだうだしているうちにデフレ化しましたよねインフレ期待がアンカーされてるとか正確に判らない話なので気が付いたら時既にお寿司なんじゃないですかねとか中々良いツッコミ。

『Therefore, I am wondering why cutting rates or introducing any stimulus measures in the euro area would prevent it from slipping into deflation. I would just like to know how the transmission mechanism is different from that in Japan.』

利下げしないで大丈夫とかゆうとるが日本とトランスミッションメカニズムはどう違うんじゃオラオラオラという質問で、割とこの答は長いのでオモロイ。

『With regard to comparisons with Japan, I have discussed this before. The situation in the euro area is different because inflation expectations are firmly anchored, whereas they were not in Japan. They de-anchored at some point. You are right, medium to long-term inflation expectations are hard to measure, but this is the measure that the ECB used when inflation was high and is using now that it is low. On both occasions, there have been discussions about the validity of these expectations. They could de-anchor themselves both upwards and downwards, but by and large, they have helped us to deliver, since the establishment of the ECB, our objective of an inflation rate that is below, but close to, 2%. Therefore, the definition of these inflation expectations that we have been using has contributed to our credibility in delivering the inflation target.』

なんちゅうかこれまで実績があるのですから大丈夫です(キリッ)とかまあ何というかそういうしかない面はあるのは判るがこれじゃ答えになってないですな。

『There are also other reasons why the situation in the euro area is different to that in Japan.』

ほう。

『First, we have taken early decisive action on the monetary policy front for several years now and are, in fact, still doing so. It has been for several years now that we have continued to take action. You come here every time expecting us to take action and are slightly disappointed when we don’t. However, we are anything but inactive.』

いやだから質問者はその今のアクションが遅いのではと言ってるのですが、いままできちんと実施していますよお前らのクレクレが大杉なんじゃと言われましても・・・・・・・

『Second, the condition of the balance sheets of both companies and banks in the euro area today is not what it was in Japan at the end of the 1990s and in the early 2000s. We also monitor other statistical measures, for example, the percentage of commodities or services, of which the prices are falling, i.e. of which price inflation is negative or less than 1%. And the percentages that we are watching are much lower than they were in Japan when the country was suffering from deflation.』

やっと若干説得力のある話が出て来まして、バランスシート調整のステージが違うという話はまあ分からんでも無い罠とは思う所で、あとは物価の広範囲な下落が起きている訳では無いという現象面もまあそうですかねという所ではあります。

『All in all, we believe that the situation in the euro area is different and that there are other reasons that explain our low level of inflation. I hinted before that global factors are at play, for example low energy prices. The average historical contribution to inflation from energy prices is 0.5 percentage points. More specifically, in early 2012 this contribution was 1 percentage point, while in February 2014, it was -0.3 percentage point. This means that of the 1.9 percentage point fall in annual HICP inflation since the first quarter of 2012, two-thirds can be attributed to lower energy prices. I also mentioned the exchange rate as having an effect. In the case of Japan global factors played much less of a role.』

エネルギー価格の下落要因や、為替要因などの外部要因も定量的な押し下げ効果が大きくて、日本のケースはそれよりも国内の広範囲の物価下落が起きたという点での違いがあるという指摘で、欧州の話はそうですけど日本の場合ホンマカイナという気はする。

『There is also another dimension, namely that part of this low inflation is due to relative price adjustments in the stressed countries, which, prior to the crisis, were experiencing serious imbalances that needed to be corrected.』

これはちょっと前の所でバランスシート調整のステージ云々の話があった件に重なる気がしますが、ストレスの掛かっている国、つまりバランスシート調整がより大きく、深刻なインバランスが発生している国では相対価格の調整がより必要という話ですので、つまりこれって経済全体の深いバランスシート調整が起きるとデフレ圧力が高まる、という話になる訳でたぶんそれは正しいと思われますな。

ということはですな、どこぞの米国のように資産バブルの傷を別の資産バブルで癒して行きますと、その度にバランスシートの大規模調整が発生しますので、経済全体としてドンドンとデフレ圧力が高まって来るという話になりまして、つまりは経済全体がディスインフレの体質になってくるという話で、米国でまさにそんな感じになっているのかも知れませんねとか何とか思いながら鑑賞するのでありました。


・為替と物価に関して

『Question: I want to come back to two particular questions.』

ということで為替とウクライナ情勢の質問なのですが為替の質疑を引用します。

『First, coming back to the foreign exchange argument, it is not your mandate and you have made that absolutely clear, but you have gone to the extent of working out the impact of the 2012 trough in the euro on inflation, and inflation is your mandate. Should we, therefore, in some way be viewing the exchange rate as part of the reaction function? I want to know exactly how we should be looking at the exchange rate.(後半割愛)』

てな感じで何度か質問されていますけどね。

『Draghi: In answer to the first question, I can only reiterate that the exchange rate is not a policy target, but certainly I have here another number.』

ほうほうその別の数字とは?

『The cumulative appreciation of the exchange rate between the euro and the dollar since the trough of 2012 has been around 9%. In effective terms the euro has strengthened by 8% since then. Now, as a rule of thumb, each 10% permanent effective exchange rate appreciation lowers inflation by around 40 to 50 basis points.』

ほほーという所ですが、為替以上の10%の永続的な増価はインフレを0.4〜0.5%程度押し下げる要因になりますとのお話。

『So we can say that between 2012 and today about 0.4 or 0.5 percentage points of inflation was taken out of current inflation because of the exchange rate appreciation. Having said that, we have to be cautious, because there was a previous depreciation of the euro.』

うーんこのという感じですが、最近のユーロ高云々に関してはその前にユーロの下落があった事を考慮に入れる必要がありますって事だがいやまあそれはそうなんだが、それはつまり過去の欧州ヒャッハー状態の時に自国の物価下落圧力をユーロ安によって他国に転嫁していたというツケが今になって回ってきているという事を意味するので、やはり金融政策運営に関してその分の調整が必要、つまりより緩和的な政策をすべきという結論にならんかねとも思うのでありました。

『That is why it is hard to take the exchange rate as a policy target and even harder to take it as a policy instrument. But it is certainly a factor that is affecting in a significant way - together with the price of energy and of food for that matter - our low rate of inflation.』

ということで注意するという話はしているものの、どうもドラギ総裁の基本的説明トーンは「物価はちゃんとマンデートに向けて上昇するから」という話を強調している感じですね。


とまあそんな感じで鑑賞したのですが、もうちょっと観賞場所もあるのですが明日からはMPMネタになりますし、まあ一番個人的にオモロイと思った所は大体引用した積り(抜けがあるかもですが、汗)ですので、まず勝手に中締めしてみますと、今回の会見ってまあ見事に追加緩和期待を打ち砕いているのと、ついでに言うと記者の質問口調が字面を見ると詰問調にしか見えない(実際の状況は知らん)ので、従来のドラギマジック「びりーぶみー」攻撃も徐々に鳩ポッポ先生化しないかと心配であります(棒読み)。

・・・・・・・とかやっていてドラギ先生の事ですから「死んだふりしていきなり緩和実施」という形での作戦もあるかな(一旦期待値を下げておかないとクレクレ対応と思われてクレクレが止まらないから)とは思って居たりもしますけどね!!!!!!




2014/03/10

お題「短国金利更に低下とな/ドラギ総裁記者会見ネタであるが段々質問が辛辣化しているようで」

武者先生の所のサイトデザインが大幅にリニューアルされていますな。
http://www.musha.co.jp/
(トップページのお知らせを見ると28日にリニューアルされていたみたいですね)

○何とかの一つ覚えのように短国ェ・・・・・・・・・

金曜の短国買入は減額するのではとの予想も一部にありましたが誠に遺憾なことに2兆円の買入を継続の巻。

オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140307.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年3月11日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年3月11日
国債買入(残存期間10年超) 1,800 2014年3月11日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140307.htm
国庫短期証券買入 40,940 20,003 -0.007 -0.004 42.9
国債買入(残存期間1年以下) 2,396 1,102 -0.002 0.000 60.9
国債買入(残存期間10年超) 4,487 1,804 0.013 0.017 27.8

ということで落札結果は平均4糸強の足切り7糸強まで入ってまして、これは結構強めの所まで入りましたなという所でして、新発3Mもこれは強い所まで入りましたぞなという所ですけれども、流れっぷりから見ると新発3Mの応札が少なめだったのかも知れませんなあという感じはしますが実際に札を見れる訳では無いのでよーわからんけどな。

でまあ金曜は新発3Mが何と2.3bpとかで出合っていたようで、中長期の方がこう日々カーブのケツだけはちょっと動くけど先物とか先生先物ちゃんが息をしていないの状態になっていてウゴカンチ会長な中では短国のこの調子は異彩を放っているせいかベンダーでもニュースっちゅうか話題になっていたりしてますな、うんうん。

まー今月の場合は日銀の短国買入が先月末のオファー2兆円というのを見せられて、3月の需給逼迫が全力で危惧されて来ましたので、そーゆー意味では期末の残高確保の動きが前倒しになっている可能性はあるのですけれども、まあ現実問題としてそれ以外に日銀の買入残高が拡大しているというのもありますからして(フローも増えてますが)、まあこれはアチャーですわという所ですな。

期末の残高確保の動きで嵩上げされているのでしたら期初になると需給はやや緩んでくれるかも知れませんが、まあそれよりも貸出支援関連オペの残高をバカスカ伸ばして頂きませんと短国買入に掛かる負担というのは本質的には変わらないという事になりまして、MBを積み上げる中で低金利恒常化とかもアレですし、マイナスとか間違って付いてしまうとまあ特定銘柄が瞬間芸で付くのなら局地的な話で済みますが、ある程度全体的に恒常的な感じで推移しますと、それはそれで色々と不具合が生じるのですけれども、短国金利の低下がベンダーとかで話題になる中でのコメント見たらセルサイドの人たちのコメント的にマイナス金利無問題とかゆーのがありましたが、商品有価証券的な見方ではそらまあそうかも知れんが、世の中それだけではございませんのでやはりまあ不具合というものが生じると思われますので、とりあえず三途の川で沐浴をされて心を洗って来られる事を推奨させて頂きたいと存じます。

しかしまあ短国レートが馬鹿低下する状況まで短国買入拡大して市場にストレス掛けてまでMB増やしてそれは何の意味があるんでちゅかねえという気はするのですが、短期市場に掛けるストレスを軽減するという事を考えると貸出増加支援もこの際2倍とか言わないで10倍くらいオッケーにするとか、海外中銀の日銀デポに付利して短国買入圧力を軽減するとかして、よーは物理的な短国成行買い圧力を減らせば需給はちったあ改善するとは思いますが、まあ貸出支援関連の拡大ならともかく、海外中銀のデポに付利とか量的拡大をやりやすくはなるものの、それは金利的には上昇要因(そらまあ短国需給を緩和しようという観点で考えるからそうなるのは当然だが)になるので、益々何のためにMB拡大しますねんという話になりますな(大汗)。


○ECB定例理事会後のドラギ総裁会見ネタが今回はかなり面白い件について

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140306.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 March 2014

でまずはIntroductory statementの説明部分から少々。

・経済判断および今回のECBスタッフGDP見通し

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Real GDP in the euro area rose by 0.3%, quarter on quarter, in the last quarter of 2013, thereby increasing for three consecutive quarters.』

3四半期連続で拡大しています(キリッ)との事ですが。

『Developments in survey-based confidence indicators up to February are consistent with continued moderate growth also in the first quarter of this year. Looking ahead, the ongoing recovery is expected to proceed, albeit at a slow pace. In particular, some further improvement in domestic demand should materialise, supported by the accommodative monetary policy stance, improving financing conditions and the progress made in fiscal consolidation and structural reform. In addition, real incomes are supported by lower energy prices. Economic activity is also expected to benefit from a gradual strengthening of demand for euro area exports. At the same time, although unemployment in the euro area is stabilising, it remains high, and the necessary balance sheet adjustments in the public and private sectors will continue to weigh on the pace of the economic recovery.』

つーことで経済に関しては基本的にダイジョーブという見方を示しておりまして、「some further improvement in domestic demand should materialise」だのマジかよという気もしますがそういう見方のようですよ。

『This assessment is also broadly reflected in the March 2014 ECB staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual real GDP increasing by 1.2% in 2014, 1.5% in 2015 and 1.8% in 2016. Compared with the December 2013 Eurosystem staff macroeconomic projections, the projection for real GDP growth for 2014 has been revised slightly upwards.』

ECBスタッフの見通し(今回2016年まで見通し期間が延長されたので重要)2014年の実質GDP見通しは若干上方修正されたとの事ですが、見通しが2014年から順に1.2、1.5、1.8ってどこの直線番長だよという鉛筆舐め舐めテイストがするように見えるのは気のせいですかそうですか。

『The risks surrounding the economic outlook for the euro area continue to be on the downside. Developments in global financial markets and in emerging market economies, as well as geopolitical risks, may have the potential to affect economic conditions negatively. Other downside risks include weaker than expected domestic demand and export growth and insufficient implementation of structural reforms in euro area countries.』

リスクの中に「世界の金融市場と新興国経済」「地政学的リスク」というのを入れているのがキタコレという所で、ステートメントの冒頭部分ではスルー気味でしたが、こちらの説明部分で触れていますな。なお後半のリスク要因はいつもの話です。


・物価に関して同様に確認

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.8% in February 2014, unchanged from the (upwardly revised) outcome for January. While energy prices fell more strongly in February than in the previous month, increases in industrial goods and services prices were higher than in January. On the basis of current information and prevailing futures prices for energy, annual HICP inflation rates are expected to remain at around current levels in the coming months. Thereafter, inflation rates should gradually increase and reach levels closer to 2%, in line with inflation expectations for the euro area over the medium to long term.』

国内需要に関しての説明でエネルギー価格の低下で実質所得がサポートとか抜かしていましたが、物価に関しても要因としてエネルギー価格のお話をしております。でまあ当面数か月は現状で推移してその後に上昇するそうな。

『This assessment is also broadly reflected in the March 2014 ECB staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 1.0% in 2014, 1.3% in 2015 and 1.5% in 2016. In the last quarter of 2016, annual HICP inflation is projected to be 1.7%.』

2016年も年平均では1.5%という見通しで、2015年は何と1.3%の見通しになっております訳でして、えーっと確かどこかの国の中央銀行は「2年で達成するのが世界的な意味でも標準的な期間(キリッ)」と仰せになっていますが、ECBはどこからどう見ても2年間でマンデートを大きく下回るレベルの物価水準見通しを出して平然としておられますが本件に関して異次元緩和の理論的支柱であらされます所の岩田規久男副総裁様におかれましてはECBに対してジャンクとか仰せにならないと今までの師匠の理論および日銀批判との整合性が取れないと思いますが如何でございましょうか。

話がつい横に逸れましたが(^^)、それはそれとして2016年でも年平均の見通しが1.5%ってお前それ2%に近い2%以下という目標に対して3年近く行かないのかよという話になるからだとは思うのですけれども、何故か2016年の第4四半期の話を持ち出して、「2016年第4四半期は1.7%(というマンデート達成と言える水準)になります」(キリッ)とか説明しているのが味わい深いというかいかがわしいというかでありまして、質疑でこの件に関しては嫌味質問が飛んできております。

『In comparison with the December 2013 Eurosystem staff macroeconomic projections, the projection for inflation for 2014 has been revised slightly downwards. In view of the first publication of a three-year projection horizon in the March 2014 ECB staff macroeconomic projections, it should be stressed that the projections are conditional on a number of technical assumptions, including unchanged exchange rates and declining oil prices, and that the uncertainty surrounding the projections increases with the length of the projection horizon.』

物価の見通しは前回対比で2014年見通しが若干下がっているという事で、GDP引き上げて物価を下げとは何ぞやという感じですが、前提に原油価格の下落と為替市場の横ばいを置いているとなという事で、これまた質疑の時に為替市場に関しての質問が何発も飛んでおります。

『Regarding the Governing Council’s risk assessment, both upside and downside risks to the outlook for price developments are seen as limited and are considered to be broadly balanced over the medium term.』

物価の見通しは上下バランスです。


・質疑応答ですがこれがまた今回は面白い:質問がやたら辛辣な件について

質疑応答の内容をネタにする前に今回の会見見てて思ったのは「質疑応答の質問サイドがやたら辛辣な言い方になってきているなあ」という所です。まあ今回に関しては何となく前回のステートメントで次回は新たな見通しが出ますのでそこで判断というような追加やってもおかしくなさそうな言い方をして、盛大に空振りですから質問が厳しくなるというのもあるのでしょうが、それにしても質問のトーンがキツイのが幾つかございまして、さすがにドラギ先生のドラギマジックも段々と神通力が落ちてきているという事でしょうなあと思うのであります。

ということでまずはツッコミというか言い方が辛辣気味な質問の数々を鑑賞してみましょう。

最初の質問からいきなりキタコレなのですよね。

『Question: You placed a lot of emphasis on this meeting. You said you’d have the information that you needed on a variety of factors affecting your reaction function today, and you’ve done nothing. You’ve said that you stand ready to take decisive action if needed, but presumably all central banks are willing to take decisive action if needed. Isn’t it reasonable, given that you’ve done nothing today, for investors and the public to assume that you’re just done, barring some big outside shock?(後半は為替市場に関する質問でここでは割愛)』

あれだけ次回に期待させておいてやらないとはどういう事や、必要だったら行動するってそんなもんどこの中央銀行でも言うとるやろとな。


こんなのもあります。

『Question: (前半は声明文冒頭で言及されていた余剰生産力に関する質問でここでは割愛) My second question is why do you mention specifically the fourth quarter of 2016 as regards inflation? You gave a rate of 1.7%, which is above the 1.5% forecasted for 2016. Is this just to say, “hey guys, 1.7%, we are right on the finish line: below, but close to, 2% - goal achieved”? And maybe could you tell us if there are some extreme values in these forecasts for inflation and GDP. I mean values which are below 1.5% or above 1.8%.』

さっき申し上げた2016年第4四半期1.8%の数字をわざわざ出したのはどういう事やとの話ですねわかります。


でまあ追加の行動をしなかった件に関しての質問が他にもあるが言い方がどう見ても嫌味なのがこれ。

『Question: In justifying your decision not to act today, a lot of emphasis seems to be placed on recent data points, but if we look at the economics text book, it teaches us that monetary policy acts with a lag. Now, if we look at the lag with which it is supposed to act - two years - we see inflation still below target then. We have also heard you say that there is a significant degree of slack. Both pieces of evidence point to taking action today.』

中々いい感じで畳みかけております。

『Now, cynics might say that the decision not to act owes more to the political economy of the institution, rather than the economics of the euro area. How would you respond to such criticisms?』

ワロタ。

『As a second point, you noted in your last answer that this is based on the idea that monetary policy will become more and more accommodative as time goes on. Now, you have also mentioned that where credit conditions are working better - not just in bank lending, but also in capital markets - it is the core, so there is not any evidence that you are really seeing much of an improvement in credit conditions in the periphery, so is it not a little bit complacent to assume that credit conditions are just going to become more accommodative and think that this warrants not taking more action today?』

この人の質問までの質疑応答で色々とクレジットコンディションの話をしていたのですが、クレジットコンディションに関してもおめーの説明は資本市場とか大企業の借り入れの話であって、実際にはまだクレジットコンディションは弱いだろ何かしないのかヴォケという口調になっております。

ちなみにこの質問に関する答えですが、最初の所だけ引用するとこうなります。

『Draghi: On this last point, I did say that credit conditions remain weak. (以下ここでは割愛)』

まあ何ですな、この質疑は後半の方なのでここで「I did say」って出たのを見ると何かドラギ先生ツッコミ食らって若干アレという感じかねとか思いながら読んでしまいましてワロタです。


・で、動かなかった理由について&為替市場に関して

この2つの件については手を変え品を変え質問されていまして、その度にああでもないこうでも無いと説明しているのですけれども、最初の質問と応答を引用しましょう。

『Qestion: You placed a lot of emphasis on this meeting. You said you’d have the information that you needed on a variety of factors affecting your reaction function today, and you’ve done nothing. You’ve said that you stand ready to take decisive action if needed, but presumably all central banks are willing to take decisive action if needed. Isn’t it reasonable, given that you’ve done nothing today, for investors and the public to assume that you’re just done, barring some big outside shock?』

ここまで再掲です。

『And my second question is on the euro. You mentioned that your inflation forecast assumes an unchanged euro. To what extent is the strength of the euro affecting your inflation outlook, and are you surprised at its strength given the comparative weakness of the Eurozone recovery and the fact that you’ve got this easing bias and you’ve got this forward guidance?』

物価の先行き見通しでユーロを横に置いているようですがさて・・・・・・・

『Draghi: The reasons for today’s Governing Council decisions are the following.』

ほう。

『First of all, we saw our baseline scenario by and large confirmed. There is a continuation of a modest recovery. In the last quarter of last year we had an increase in GDP of 0.3%, after two consecutive quarters of positive growth. The news that has come out since the last monetary policy meeting is also, I would say, by and large on the positive side.』

ベースラインシナリオがコンファームされているそうな。

『Just let me give you a few data, not all of them. The composite PMI data that have just come out are the strongest in two and a half years. The PMI for services also was quite good. That’s quite important because job creation takes place mostly in the services sector.』

経済指標も堅調な物が出ていますよほーれほれ見やがれコノヤローと。

『When we look at consumer confidence, we see that the gap between Germany and the stressed countries, especially Spain and Italy, is actually narrowing. And so is the data on economic sentiment produced by the European Commission.』

ドイツとイタスペのコンフィデンスに差はああるがそれはコンバージョンの傾向とな。

『It is true unemployment is still high, but it’s stabilised. It’s now been a few months since unemployment stopped going up. We actually have some data - local data, like the fall of 2 percentage points in unemployment in Portugal - which are quite striking. We also saw that the employment data are timidly going up.』

とまあそういうことで指標の話がああだこうだと出るのでした。

『Having said that, the risks are on the downside. But basically, when we looked at all the amount of information we had in front of us since the last monetary policy meeting, we thought that our monetary policy stance would remain accommodative. Our forward guidance is confirmed in saying that interest rates will stay at the present or lower level for an extended period of time.』

いやだから現在の金融政策が緩和的です(キリッ)と言われましても答えになっていないような気がするんだが。

『And we asked ourselves whether the contingencies I hinted at last time that would actually elicit monetary policy decisions, had taken place. You may remember one of these contingencies was an unwanted tightening of monetary policy on the short-term end of the market. In fact, if anything, we had a further normalisation of conditions on that front.』

金融市場の「望まないタイトニング」が生じていませんので追加の必要はないとの事のようですよ。

『The other was a consistent and significant worsening of the medium-term outlook for price stability - for our inflation outlook - and that, too, isn’t there.』

中期的な物価見通しの悪化もございませんが何か?とのことですな。

『So, all in all, I think that, based on the current set of data, the Governing Council decided not to act today.』

ということですが、この理屈だとそら追加緩和期待が大幅に後退するわなという所で、前回のチラリズムは一体全体なんだったのかという話になりますなという所です。


で、為替について。

『Now, on the second question, let me start first with the standard statement. The exchange rate is not a policy target for us. But the exchange rate is very important for growth and price stability. If we look back to the trough in the exchange rate in 2012 and then we look at the exchange rate today and we ask ourselves how much this has counted for the low inflation that we see today, we come up with a figure which is roughly 0.4 percentage points. I think I will come back to this if I have questions on inflation, but that’s a significant statement on how the exchange rate might influence our price stability objective.』

2012年と比較してのユーロ高で物価に0.4%低下圧力がありましたので足元の物価が低いのですけれども、(そらまあ為替市場を横で見ているのだから当然ですが)見通しとしては先行きに大きな悪影響を与える話では無いという事のようですな。そらまああるという話なら追加マダーという話になりますが。

#以下続きは明日やるかもしれません





2014/03/07

お題「3MTBが3bp割れとな/ECBのIntroductory statementを前回と比較するという企画/テイラールールとな」

ほほうドル円103円台ですかそうですか。

○短国ェ・・・・・・・・・・・

昨日は30年国債入札で超長期ゾーンは動いたけど先物は瞬間10銭位動いておーと思ったらやたら底堅くて結局昨日も引値は10銭以内の巻とかなっておられましたが、一方で着実にヒャッハーとなっているのが短国ちゃん。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140306.htm

(3)募入最低価格 99円99銭1厘5毛(募入最高利回り)(0.0340%)
(4)募入最低価格における案分比率 60.0541%
(5)募入平均価格 99円99銭1厘8毛(募入平均利回り)(0.0328%)

前場引けが3.3bpの出合いでオファーとなっていた訳ですが、一応0.0340%の所まで入って按分60%ですかそうですかという結果だったものの、いわゆる不明玉がやたら多くて(3.4兆円とか)うーむこれはとか思ってたら2.7bpの出合いとかになって引けは3bpとかおそロシアな展開になっております。

どこの有担保コールだというレートになっているのは去年の3月にもそんな事がありましたけれども、去年の3月の場合は異次元緩和実施待ったなし状態の中で、実際に何が起こるのかワカランチ会長という状態でして、間違って異次元とか言って超過準備付利下げたり撤廃されたりしたらテラヤバスという思惑もあったのでターム物となります短国の金利が低下するのはまあ有りだったのですが、今年の場合さすがにここから付利金利の引き下げとかやる可能性皆無(やったら間違いなくMB拡大政策が崩壊します)なので、そういう意味で金融政策の先行き見通しベースなどでの金利低下なのでは無く、単に日銀がMB拡大の為に馬鹿買いをしているから金利が無理矢理下がっているという話なのがアレという事ですな。

でまあ2.7bpとかやってて引けが3bpとかなのですが、どこからどこまでがマジ買いなのか煽りんちょの買いなのかがワカランチ会長ではございますけれども、まあ今日の短国買入も3Mの新発が(不明玉の人たちがそのままガメ無い限り)打ち込まれて結局3Mカレントは物無芳一となるんですなあという所で、今月は引き続きヒャッハーな短国市場となるのですなナムナムという結果で。

なおGCレートは発行要因でちと上昇してまして、現物の利回りだけこの調子だと中々大変ですなあと思うのでありました。



○ECB据え置きキタコレで新企画(という程でも無いが)を投入

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140306.en.html

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.25%, 0.75% and 0.00% respectively.』

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ということで据え置きで、Introductory statementの方はと言いますと・・・・・・・

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140306.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

#ちなみに東京時間の朝6時過ぎにQ&Aが追加されていましたよ^^;

冒頭部分なのですが、今回は物は試しに前回のIntroductory statementとの比較というのをしてみようかと思いますが、ECBのIntroductory statementって書き方が(FEDや日銀と比較して)必ずしも安定していないので上手くいくかどうかは知らん。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment.』(今回)

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment.』(前回)

決定の所が同じなのは当たり前として、経済に関しては前回同様に我々の見通しをコンファームするというお話で。

『At the same time, the latest ECB staff macroeconomic projections, now covering the period up to the end of 2016, support earlier expectations of a prolonged period of low inflation, to be followed by a gradual upward movement in HICP inflation rates towards levels closer to 2%. In keeping with this picture, monetary and credit dynamics remain subdued. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)

『At the same time, underlying price pressures in the euro area remain weak and monetary and credit dynamics are subdued. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%. As stated previously, we are now experiencing a prolonged period of low inflation, which will be followed by a gradual upward movement towards inflation rates below, but close to, 2% later on.』(前回)

ちなみに今回はここの部分までで1パラグラフになっていて、前回はこの先2パラグラフ文まで含めて一つのパラグラフになっている、という形でして、どうもこのECBに関してはこの辺を安定して章わけして表現するという風習が無いみたいなのですよね。コマッタモンダ。

という話は兎も角として、今回は前回予告されていました(この次にありますが「Regarding the medium-term outlook for prices and growth, further information and analysis will become available in early March.」とありました)ように2016年までのスタッフ見通しが出ていまして、まあ政策変更しないのだから当たり前なのですが2016年に向けて徐々に物価(HICPインフレ指数)は2%に近づいて行きますという見通しとの由。で、インフレ期待に関してはアンカーされてとかその辺の話も同じであると見えますな。

次が先行き見通し。

『Regarding the medium-term outlook for prices and growth, the information and analysis now available fully confirm our decision to maintain an accommodative monetary policy stance for as long as necessary. This will assist the gradual economic recovery in the euro area. 』(今回)

『Regarding the medium-term outlook for prices and growth, further information and analysis will become available in early March. Recent evidence fully confirms our decision to maintain an accommodative stance of monetary policy for as long as necessary, which will assist the gradual economic recovery in the euro area.』(前回)

「the information and analysis now available fully confirm」ってのが「our decision to maintain an accommodative monetary policy stance for as long as necessary」というのに掛かっているので、別に利下げしないとは言っていないのですが、政策据え置きを行っておいて「fully confirm」って言われると何か追加期待は下がりますわなそりゃという所で、詳しくはQ&Aのパートをみないといけませんが、何せこのQ&A出たのは東京の朝の6時回っているのでご勘弁(週末読みます^^)。

『We firmly reiterate our forward guidance. We continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity and subdued money and credit creation.』(今回)

『We firmly reiterate our forward guidance. We continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy and subdued monetary dynamics.』(前回)

今回ちょっと変化があったのは、フォワードガイダンス(とドラギのオッサンは言っているがこれはフォワードガイダンスでも何でも無いただの決意表明にしかなっていないですよねという話は前にしましたと思います)を正当化する為に示された状況の説明の中で、「the high degree of unutilised capacity」ということで未利用のキャパシティーがあるというBOEが良く言うspare capacityみたいな概念キタコレ(しかしいつも思うのだがこの辺の英文表現って各中銀で常に微妙に違うんですよね)というのが入っているのと「subdued money and credit creation」ということで「credit creation」というのが入っていまして、何かこう今後の政策という意味ではもしかしたらこの方面、すなわち貸出関連とかのクレジットアベイラビリティー拡大の何らかの施策を検討する布石なのかもしれないなあと思うのは考えすぎのような気もしますが、一応気にしておこうかと存じます。

『We are monitoring developments on money markets closely and are ready to consider all instruments available to us. Overall, we remain firmly determined to maintain the high degree of monetary accommodation and to take further decisive action if required.』(今回)

『With regard to recent money market volatility and its potential impact on our monetary policy stance, we are monitoring developments closely and are ready to consider all available instruments. Overall, we remain firmly determined to maintain the high degree of monetary accommodation and to take further decisive action if required.』(前回)

ちょっと見ててほーと思ったのはここでして、前回示されていた「recent money market volatility and its potential impact on our monetary policy stance」の表現が「We are monitoring developments on money markets closely」となっている所でして、マーケットボラティリティという表現が抜けたので新興国ヒャッハー相場に関する言及が抜けているという感じで、割とインパクトがある「market volatility」という表現から、普通に「developments on money markets」という説明になっていて、まあ勿論市場動向をモニターしますというのは同じなのですが、表現のインパクトがちょっと違うなあという所でして、割とその辺楽観している可能性がありますねという所です。

まあこの辺に関しては他の中銀でも同じで、そんなに金融市場がアチャーになるという懸念を示していないというのは日銀にしろFRBにしろ同じでございます。

という事でIntroductory statementの最初の部分を物は試しに比較するという企画をやってみましたが、折角企画したものの今回は政策変更なしだからそんなに変わっていないですな、というか追加緩和期待とかそれなりにあった中なので、今回のIntroductory statement冒頭部分はスタッフ見通しの期間が長くなるというという新しいネタが出るのでお待ちくださいと先月言われたにしては全然変更が無いという意味での「変化」はある訳でして(^^)、そらまあ市場がガックリしてユーロ高になる罠と思うのでありました。

なお、この先はeconomic analysis、monetary analysisと続いて最後にfiscal policiesのコメントで締めるのですが全部やっていると大変な事になるのでパス。


○置物師匠が国会答弁と思ったがつまらん

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0M31E320140306
UPDATE 1-何らかのリスクで見通しに変化生じれば、適切に政策調整=岩田日銀副総裁
2014年 03月 6日 13:49 JST

そもそも質問しているのが所謂リフレ派属性の議員先生だから特段面白くない訳で、参議院というからにはやはり財政金融委員会で大門先生が登場して「副総裁の直線理論はどうなりました」と追及して頂かないと面白くもなんともないのですがががが。

そもそもこの先生方におかれましては、従来の日銀は何でも海外要因だの何だののせいにして全然成果が上がっていないという話をしていた訳でして、置物師匠におかれましてはリスクで見通しに変化生じれば政策調整するんじゃなくて辞任するんじゃ無かったでしたっけと存じますが、まあ2年まではあと1年あるから生温かく見守っておきましょう。

つーかですな、昨日の国会答弁記事でネットに出ているのがこれしかないから困るのですが、金融政策の質疑の中で置物先生が「テイラールールは参考にはするがそれに沿って政策運営をしている訳では無い」という答弁をしたとブルームバーグのヘッドラインで見たので、まあ金子先生が質問してそういう流れになったのかと思うのですが、そもそもテイラールールって適切な「政策金利水準」を示すものであって、現状行っている木久扇直線番長理論によるマネタリーベース拡大でドン!というのは量の話じゃないですかそれもし質問するならマッカラムルールとかそっちの方で話をするもんじゃないですかという所でして、まあ全体の質疑応答の文脈がワカランチ会長だからあまり悪態付くのも不適切かも知れませんが、何で今の金融政策の話をするときにマッカラムルールとかの話じゃなくてテイラールールとか言い出すのかがさっぱり判らんかったのでメモだけしておいて、会議録出たら読むかもしれませんということで備忘。







2014/03/06

お題「市場雑談とか追加の手段あるんかいなとか白井さん講演ツッコミとか」

だいたい雑談ですいませんすいません。

○市場メモと関連して追加緩和する手段の雑考

・6MTB入札ェ・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140305.htm

(3)募入最低価格 99円98銭2厘 (募入最高利回り)(0.0357%)
(4)募入最低価格における案分比率 7.8707%
(5)募入平均価格 99円98銭3厘 (募入平均利回り)(0.0337%)

ということでまあ短国物無芳一なのでシャーナイナイなのですけれども、平均は3.5bpを切るレートとかになりやがりまして、足切りで3.5bpに乗っていますが按分7.9%と薄い按分でございまして、実質的には3.37bpの札がメインという事ですねわかりますという結果でまあ流れもしないしセカンダリーも確り(カバーニーズみたいな感じですけど)という結果になりましたな。

でもって本日は3Mの入札があるのですが、まあこの調子で物無し状態となっているとあまり流れるとも思えずで3bp台の半ばあたりからご相談という話でしょうし、流れると言っても4bpとかそういう話になるのでもう何だかねという所でございまして、今月頑張ってMB積み上げの短国買入攻撃が来るとまあろくすっぽレート上がらないどころか下がるリスクがががががという話ですなナムナム。

ちなみに今月償還物に関しては日銀の保有なんぼですねんと思ってみますと、昨日の6Mと今日の3Mの折り返し元の銘柄に相当する6Mの394回債が13,270億円、3Mの414回債が14,332億円となっていまして、この分に関しては(日銀に嵌っているのですから)償還ロールのニーズが無い筈なのですが、まあ3.5兆円のうち1.3兆円が日銀に沈んでいて普通に市中にあるのが2.2兆円しか無い筈なのにこの堅調入札というのが昨日の結果でございましたので、5.7兆円の入札であります所の3M入札もどう見ても堅調です本当にカムサハムニダという所ですな、うんうん。

なお、日銀保有の3月償還物の残高は先月末の数値によりますと89515億円となっていますので、まあ確かに日銀保有分の残高維持でも9兆購入とかそういう話になるからそこそこ買いが来る罠とか思いつつ見ている訳ですが、まだここから270兆円に向けて残高拡大しないと行けない訳でして、うち長期国債で50兆円だから残り20兆円積まないと行けなくて、長期国債買入以外の積み上げが本当に20兆円出来るのかねという気がだいぶしてくる今日この頃なのでありました。

とは言いましても長期国債の買入明細の方を見ましても結局流動性のあるカレントしか入ってこないという状況で、長期国債買入攻撃によって市場の流動性が極端に低下してきているのは顕著な訳でして、長期国債の買入をこれ以上増やすとかゆーのも中々難しい話で、1−5年の所はもう少し買入余地がありそうですが、特に長期ゾーンとかこれ以上拡大するとマジで流動性が皆無になりそうですから10兆とか増やすのかなり難しいですよねとか思いますとそもそもの270兆円という大風呂敷が大風呂敷過ぎましたねどうしましょという所ですな、うんうん。


・債券先物ェ・・・・・・・・・・

昨日の債券先物は前日比10銭安で引けておりまして、10年カレントの引けが1毛5糸甘とかなっていて前日比動いたじゃんとか思ってしまうのが悲しいのですが、良く良く見たら債券先物の引けが前日比10銭動いたのが2月20日の16銭高以来という残念な話。

では昨日は動いたのかというと日中の高安が6銭しか無くて、日中のティックチャートとか見ていると泣きそうになってしまう訳で、これまた日銀買入効果でマーケットのボラを下げていると言えば聞こえが良いのですが、どう見ても無茶振り状態になってきてますよねという所でして、まあこの手の市場動向を見ると追加緩和でMBを拡大するとか相当無理な話で、国債の買入もそんなに増やせないでしょとか考えると、実は量的な意味での追加緩和ってまあ技術的にも市場に与えるストレス的にも難しいですよねという話になります罠。


・つーことで追加緩和と言いましてもという話になるのだが

とまあつらつらと最近のアチャーな市場を見てて思うのですが、いやマジでこんな調子で市場にストレス掛けながら量的拡大で金融緩和でございとやっておりますと、いずれ実施しないといけない筈の金融正常化という話になった場合にどんだけおそロシアになるのかと思う訳で、これ以上何の追加しますねんというのが債券および短期市場の技術的な観点からのイメージだと思うのですけれども、追加緩和がどうのこうの言ってる人たちって実際に何を実施するという事になるんでしょうかねえという所です。

ま、どどーんと増やせるのETF位しか無いですよねとかそういう話になると思う(MB増やさないで長期と短期を若干振替するのは出来そうですが、1−5年の買入を増やして年間に直して数兆円のオーダーですよねえ)ので、もうこうなったら成長基盤オペを無理矢理何かにこじつけて金融機関に「押し貸し」でもしないといけませんねというか、そもそも量で勝負方式の追加緩和は難しいっすよねえとゆー所ですな、うんうん。

ただまあ従来の説明が「MB増やして長期国債買って異次元緩和で期待の転換を図って期待インフレを上げて実質金利を下げて」という理屈で勝負していただけに、いずれ追加緩和のようなものを出すとなった場合にはどう見ても従来のロジックでは説明できない方法を取らざるを得なくなりますし、そもそも「2年で目標達成」という話をしている以上、時間軸の長期化という政策は取れないですし、大体からしてMB270兆円達成にも相当のストレスが掛かっているのにこれに70兆円おかわりとかどこからどう考えてもミッションインポッシブルなので時間軸の長期化自体が物理的に無理という感じになって参りましたよね、とまあ考えるとどこぞの逆さ絵先生張りに「前のロジックを有耶無耶のうちに無かったことにする」攻撃をせざるを得ない訳です。でまあその中で最近執行部以外の審議委員の方々が異次元緩和の量で勝負ロジックだけではなく、成長基盤強化だのそもそも物価が単に上昇すれば良いもんじゃないですよねとか、(本来はそれが筋だと思うのですが)異次元じゃない白麿ロジックを出してきているのはその露払いですかそうですか、と考えると中々味わいが深い訳ですな。


○ところで白井審議委員の謎講演の続き

さて、他の審議委員の皆様がそういうお話をしている中で一人謎の講演を繰り広げる白井さんの講演ですが、まあ正直言ってクオリティがどうなのというのはありますがツッコミネタとしてはまあそこそこ使えるのでネタの続きである。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf(日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf(英語版)

・FRBとの比較というお話ですが・・・・・・・・・・・・

まあそもそも日本の異次元緩和でしめされている「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」というのはフォワードガイダンスじゃなくてコミットメントという話なのですが、まあそこは先日も申し上げましたのでスルーしまして白井さんの説明を鑑賞。『米国連邦準備制度理事会(FRB)のフォーワードガイダンスとの違い』という所から。

『この日本銀行のフォーワードガイダンスは、FRBが採用するものとは内容が異なっています(図表4)。第一に、FRBは、フォーワードガイダンスを金融政策の操作目標である「政策金利」に適用し、将来にわたって同金利を低水準に維持することを市場・国民に伝えています。つまり、FRBは「短期政策金利の将来にわたる低水準の維持」に関して市場・国民の予想(期待)に働きかけることで、長期金利の押し下げ圧力をかけていると言えます。また、資産買入れについては別の金融緩和手段とみなし、金利政策とフォーワードガイダンスを補完する手段と位置づけているようです。』

まあQE3を実施した後にフォワードガイダンスのスレッショルドを作ったりしてまして、後付でQE3のオープンエンドという風呂敷をどう畳むかという事を考えて「金利政策が本来の政策なのでこれがメイン」という話をしたというのもありますが、まあ資産買入は別というのはそういう話ではございます。ただし資産買入に関しても当初から長期金利(やモーゲージ金利)の押し下げ圧力という話をしていた(Taperingで金利が上がると困るから最近その話をしていないだけ)のですけどね。

『一方、日本銀行のフォーワードガイダンスはQQE全体に適用されています。金融政策の操作目標であるマネタリーベースの増加ペースが決まれば、おおよそ国債の買入れペースも決まるので、これらはある種の「不可分」の関係として扱われています(図表3)。その上で、フォーワードガイダンスによって、将来にわたってマネタリーベースの拡大と国債を中心とする資産の買入れを維持するとのメッセージを市場・国民に発信しています。つまり、日本銀行では「将来にわたるイールドカーブ全体への下押し圧力の維持」に関して市場・国民の予想に働きかけることで、長期金利の下押し圧力に影響を及ぼしていると言えます。』

うーんわけわからん。長期金利の下押し圧力に関しては物理的な買入効果の話をしていて、日銀のロジックはMBを異次元に増加させるという政策と、2年で2%達成というコミットメントを示すことによって「インフレ期待」の方を高めて「実質金利」を低下させるという話をしているのではなかったでしたっけねえ。

『第二に、日本銀行は、マネタリーベース・ターゲットを達成するための資産買入れ手段として国債の他に国庫短期証券等も買入れており、3か月物(1年物まで可能)を中心に短期の固定金利オペも実施しています6。従って、これらのオペによって短期金利にも直接的に下押し圧力が働いています。これに対して、FRBは、資産買入れは残存期間が4年以上から30年物の長期国債やエージェンシー住宅ローン担保証券(MBS)が中心で、短期金利への働きかけは政策金利のフォーワードガイダンスで実施しています。』

えーっとすいません量的緩和実施して超過準備が無茶苦茶増えたら短期の市場金利って下がるのですけれども。短期下げたくなかったら量を回収して不胎化しないとマズーなのですが。なお超過準備などに付利をする預金ファシリティーがあればある程度までの超過準備は不胎化可能なのですが、そもそも準備預金などの外側にいる人がいますので、やはり膨大に超過準備出すと短期金利は下がりますので、買入がどうのこうのあまり関係ないと思いますがねえ。

ちなみにここに6とあるのが脚注でして・・・・・・・

『6 この他、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)、コマーシャルペーパー、社債等も買入れています。また、2008 年10 月から当座預金残高の超過準備に対して0.1%の金利を適用しています。同金利は銀行間市場における取引金利のフロアーとして概ね機能しています。』

「フロアーとして概ね機能」はしてねえだろ(無かったら今頃ゼロかマイナスだから機能していない訳では無いけど)。


『第三に、長期の予想インフレ率に関する「想定」が、日本銀行とFRBでは異なっています。FRBのフォーワードガイダンスでは、長期の予想インフレ率は既に2%程度にアンカーされているとの認識が前提となっています。しかし、予想インフレ率が不安定化する懸念は皆無ではないので、金融政策運営上の関心は長期の予想インフレ率をアンカーし続けることに十分注意を払いながら、金融緩和を継続して景気の改善を図ることにあります。それに対して、日本銀行ではまだ長期の予想インフレ率を2%にアンカーさせる状態に達していません。そのため、まずはあらゆる経済主体によるデフレ志向が克服されることを促し、その上で予想インフレ率を2%に向けて安定的に高めていく手順を踏む必要があるのです。このため、フォーワードガイダンスの閾値は「2%」「安定的に2%を維持」という物価関連指標に集中しているわけです。』

うーんこのという感じですが、だからそれはフォワードガイダンスじゃなくてコミットメントであって、しかもこれを「2年程度を念頭に置いて出来るだけ早期に達成する」というのが重要なコンポーネントになっている筈で、その背景には粘着性の強い低いインフレ期待および実際の低インフレ状態というのを脱却する必要があるという話であって、「2年(早期)で」達成するというのがQQEの重要なコミットメントになっているのですけどねえ。


『第四に、FRBのフォーワードガイダンスには失業率の閾値が含まれています。FRBの場合には、法令上、物価安定と最大雇用の実現という2つが責務とされているからです。他方、日本銀行の主たる目的は物価安定の実現にあるほか、失業率自体は諸外国と比べて低水準となっています。既に2013年12月には3.7%まで低下しており、世界金融危機前に記録した近年最低水準である2007年7月時点の3.6%に近づいています。従って、閾値として雇用関連情報を示す必要性は低いと考えられます。正規社員と非正規社員の間での賃金・その他処遇の格差問題やより柔軟な労働規制を求める企業の要望が聞かれるのも事実ですが、これらは構造的な性質を持ち、金融政策の領域を超えています。』

まあこれはどうでも良いですけれども、何だかねというのはじゃあBOEとかどうでしたっけという話でして、結局の所米国や英国のフォワードガイダンスというのは「中長期的なインフレ期待がアンカーされている」+「足元の物価は少々ぶれている場合もあるけれども中期的には物価は目標に戻る見込み」というセットの中で、金融緩和政策を継続する為にどういう理屈を繰り出して来るかというのが先にあるようにも見えますけどねえとは思われます。実際問題としてFRBのロジックも最近徐々に事実上のフレキシブルインフレーションターゲッティングっぽくなって来ています罠と思うのですけどね。

つーかですな、そもそも物価がマンデート達成できているという状態、という認識の下で緩和的な金融政策を継続するという話の中で導入しているのですから最初の説明にあった米国はLSAPとフォワードガイダンスを区別しているけれども日本はQQEがパッケージっての当たり前という結論にならんかというのがありますし、大体からしてフォワードガイダンス云々じゃなくて日本の緩和政策は「量で勝負」なのであって、本来的な相違というのは「量で勝負」の日銀と「量で勝負を止めつつある」米国や欧州という話ではないかと思うのですが、どうも日本の金融政策を謎のフォワードガイダンスで説明しようとしておりますな。


ということで、どうも白井さんの説明は全般的にそもそもQQEでのメインの説明から外れた部分が多々見受けられる訳でして、そんな中でこの後コミュニケーションがどうのこうのという意味不明の話が続くのですが、『3.日本銀行のコミュニケーション政策面でのチャレンジ』という部分を読んでツッコミをしようかと思うのですがこれがまた中々の苦行でありまして、何を言いたいのかがそもそも良く判らんという日本語になっておりまして、実は(この前ちょっとネタにしましたように)英文の方が書き振りがマシな部分もあるのですが、正直良く判らんのでありまして、残念ながらネタにするのも厳しいという感じでありまする。

#ということでやはりネタとしては腹下しをする類ですなあorz



2014/03/05

お題「月初恒例の計数が出たので計数雑談/ニュース雑談悪態」

とりあえず落とし所をという流れで株高なのだがプーチン先生の会見って結局の所実効支配しているからこっちのもんだもんねという話のような気がせんでもないが良く判らん>ウクライナ

記事が無いので良く判らんが、SF連銀のウィリアムス総裁が数値ベースのスレッショルドが足かせになっているので定性的なスレッショルドにするという話をした件について解説の人(北野さんね)が「そもそもフォワードガイダンスというのは中銀の行動に手枷足枷を掛けるものなのだが」と的確なツッコミを入れておりまして誠にご尤もという所です。

それは兎も角本日は月初恒例の計数なので計数ネタという事ですが、白井審議委員の謎講演が色々謎な件に関しては悪い意味での当たり案件なのだが面白半分に更に明日にでも地雷を踏み抜きに逝こうかと(^^)。

#しかし計数ネタは書く前に確認とかするのでどうも書くのに時間がかかりますな(汗)


○市場関連計数ネタ

・日銀当座預金増減要因見込み計数

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1403.htm/
日銀当座預金増減要因(2014年3月見込み)

3月の資金過不足は国債償還要因とオペ要因を含めて1兆円程度の不足ということで、先月とは様変わりの筈なのですが、ここから今月は長期国債買入がたぶん6兆円台の後半位入って、貸出増加支援オペも入る一方で短国買入も2兆円ペースを維持するとなった場合には3月は順当に行けば4回入りますという事で、3月は相当の積み上げになりそうです。

なお、固定金利オペの期落ちが3月中に5本計2.8兆円程度ありまして、うち1回目の分は若干の増額ロールとなる3310億円のロールになりましたので、間違って全部落ちて2.5兆円減額になります。

あと、貸出増加支援オペがどれだけ出るのかはさっぱりワカランチ会長ではあるのですけれども・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo81.htm/
貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領

『9. 貸付限度額

貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、次の(1)から(2)を控除した金額相当額とする。ただし、貸付先が借り換えを希望する場合には、次の(1)から(2)を控除した金額相当額と借り換えの対象となる貸付けの金額とを比較して、いずれか小さい方の金額の範囲内でこれに応じる。

(1) 当該貸付先による平成24年10月から12月までの各月末における貸出(政府に対する貸出、地方自治体に対する貸出ならびに金融機関等および預金保険機構その他の別に定める公的法人に対する貸出を除く。以下同じ。)の残高の平均額に対する、貸付毎に別に定める四半期の各月末における貸出の残高の平均額の増加額

(2) 当該貸付先に対する、この基本要領に基づく貸付残高』

ということですけれども、

http://www.boj.or.jp/statistics/dl/depo/kashi/index.htm/
貸出・預金動向

ここの辺りの数値とか、この計数に関する時系列データを拾ったりして計算しますと(2012年の分は時系列データサイトの方を見に行かないといけないので)2012年10月〜12月の貸出金平残の銀行計というのを平均すると460兆9427億円で、2013年10月〜12月(今回のオファー時点での基準となる残高)の同数値が470兆9259億円になると思いますので、そこの数値を拾うと約10兆円という数字になりますな。

#なお拾っている数字が平残で、実際は末残ベースですし、そもそもこのオペ先自体が全金融機関対象ではなくて銀行、信用金庫など92先となっていますし、上記貸出計数に関してはそもそも貸出増加支援オペ対象にならない貸出も含まれていますので念の為

んでまあ営業毎旬報告を見ますと
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac140228.htm/

(別表2)の『「貸出支援基金」の内訳』を見ますと、貸出増加支援オペの残高が5兆843億円になっていますので、貸出増加支援オペ自体は全部出て5兆円までは行かないけれども、3兆から4兆位は出るのかもしれませんなよー知らんが(これ貸出先別計数とかどこかで公表されていると思うのでその辺を拾って回るともう少しちゃんと出せるのですが安直コースで勘弁)という所ですかねえ。

となりますと、恐らく貸出増加支援オペと固定金利オペのネットアウトもプラスとなりそうでして、そうなりますと今月はまたMBが盛大に拡大するという話になるんですかねえ。いやまあ確かに4月に固定金利オペがバカスカ落ちるので3月に積んでも4月に落ちが来るというのもあるのですけれども、いやー何と申しますかという所ではございます。


・国債の銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/

例によってここからZIPで落として表計算ソフトに出してヘコヘコと計算するのですが、最近は輪番is需給イベントという事になっておりますので、何とかストだけではなく皆さんヘコヘコと計算しておられると思いますので今さらあたくしが申し上げても何ですが俺様メモという事で。

えーっとですな、前月との比較をして見たら最早笑ってしまうしかないのですが、差分を取ると買入年限のケツのカレント銘柄ばかり入っていまして、10年332回が20875億円、5年116回が10632億円、40年6回が532億円となっていましてナンジャソラという所ですが、20年カレントとか輪番の年限の切り方的には両端じゃないのですけれども、入札のタイミングとその時の状況的に入りやすかったと思われる20年147回が5810億円とそこそこ。ちなみにで30年41回は138億円となっていますという事で、まあ結局の所輪番が新発銘柄の大打ち込み大会になっているという状況となっております。

でもって平均残存年限なのですが、めんどいから償還日と2月28日の差分を365で割って年限を出すというアバウト方式で差分の加重平均を取ったら、アタクシの計算(およびタイピングと数字コピペ)が間違って居なければ(寝る前にヘコヘコ計算したので内容無保証)70096億円の買入分の平均残存が7.928年という数字になりましたがどうでしょうかね。

ということで、まあ先月の謎の超長期買入200億円減額攻撃が見事に効を奏しまして買入銘柄の平均残存は当月月末基準で見た場合には6年〜8年のレンジ内に綺麗に収まってとても良かったですね(棒読み)という所ではございます。

なお、来年の金融政策という意味ではMB拡大だったらそんなに悩まなくても良いのですが、そうじゃ無い場合には償還スケジュールとの兼ね合いでMBがどの位維持できるのかとか、国債買入残高を維持するペースは何ぼですねんという計算をヒマな時に行う所存。


・短期国債残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

これまた表計算ソフトに落として差分を取ったり残高計算してみますと、先月発行の1年TBでありますところの432回が9800億円入っていまして、1年物が買えてよかったですね(棒読み)という所でございますが、残高ベースで見ますと年末残高に跳ねる1年TB2銘柄の残高合計が24940億円となっておりまして、残高積み上げはそうは簡単に進みませんなあという所ですな。

で、4月の償還分って結構少ないのですが、これは12月に買入を絞った分の影響なのですけれども、MB200兆円の着地が見えたから減らしたというのもあるんでしょうが、良く考えたら4月には固定金利オペ1年物の落ちがバカスカ来るからその分を勘案して償還を減らそうとしていたんですか今頃気が付きましたすいませんすいません。

ま、その辺も勘案すると将来の償還デコボコを作らないようにという事で、短国買入のペースは遺憾ながらそう簡単に落とせないんでしょうなあ。で、短国市場が期末にヒャッハーということですかオラシラネ。


・MBは無事に拡大だがまだ足りぬということか

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1402.pdf

2月は平残、末残共にMB拡大していまして、末残ベースで204兆7525億円となっておりまして、まあ順調に拡大していますねという所ですが、年間70兆円という目標からしますと2か月経っているのですから6分の1、つまり10兆円以上は稼いでいないと数字上宜しくないという事になりますな。

んでもって3月に70兆円の4分の1稼ぐという話でしたら、17.5兆円を稼ぐという話になるので、ここから13兆稼ぐからやっぱり短国買入はそんなに減らせませんねとかそういう話ですかいなという気もするが、この辺は何をどう計画しているのやら良くワカランチ会長でしゅ。



○ニュース雑談というか悪態

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N1VX6G6JTSF701.html
伊藤教授:GPIF改革は受給者のため、国内債52%まで落とせる (2)
更新日時: 2014/03/04 15:05 JST

色々とツッコミどころがあるのですが・・・・・・・・

『最近のGPIFの国内債比率の低下は相場環境の変化が主因で、同法人自身による積極的な動きではないと見る伊藤教授は、「52%で終わりではない。海外主要ファンドは内外債券で35−40%、どうしてここまでいかないのか」とし、基本ポートフォリオの改定では、「ラディカルな変更を行ってほしい」と述べた。』(上記URLより)

えーっとすいません多分比較している「海外主要ファンド」というのは日本で言うと年金のいわゆる2階建て部分以上の所に相当する話で、海外と言いましても基礎年金部分にあたる運用ってそこまでリスク取ってましたっけという、そもそもの比較の対象が大丈夫かという話もありますし、ラディカルな変更なんぞしたらマーケットインパクトどんだけありますねんという話もありますし、今後のキャッシュフローが基本的に支払超のステージに入る中でリスク性の高い資産にラディカルに特攻したり、流動性の低い資産に突っ込むみたいな話が出るというのは何なんでしょという所で、単に物事のほんの一部分だけを見て全体の話をしているんじゃないかと思うのですがこれがそこらの居酒屋でクダ巻いているオッサンではなくて東大教授なんですよねえ。

『伊藤教授は午後にも都内で講演し、国内債の保有比率の引き下げに関連して、「日銀が大量の国債を買っている今がチャンス」との見解を表明した。国内株については、「株価はまだバブルでない」と指摘し、GPIFが買い増す好機だと語った。また、不動産やインフラ投資など新たな資産に運用を拡大すべきだとの考えも示した。』(上記URLより)

もう何を仰っているのか良くわかりませんが、そんなに株式を買い増す好機なのでしたら伊藤先生がまず率先して預貯金全部突っ込んだ上に全財産担保に突っ込んで株式市場に信用2階建て位で特攻されたら如何でございましょうか何でしたら一族郎党皆さんで実施されたら如何でしょうかと存じますが、人の金だからってまあ随分な無責任発言と思いますなあという所で。

そこまで言うならお前運用したらと言われるとどうせこの先生実際の売買は専門家にやってもらうとかいう話をするでしょうし、何というか無茶な作戦計画を立てて無茶作戦が崩壊していく中で師団長が悪いとか言ってドンドン師団長の首は飛ばすが本人は状況を改善する努力はろくすっぽ行わなかったと言われる第15軍司令官牟田口廉也中将かと言いたくなる訳ですが、牟田口中将だって一応予備役編入みたいな責任取らされた訳ですが、何せこの先生の場合はGPIFの運用に対して直接的には何の責任も権限も無いのでして、より一層タチが悪い訳でして、東京大学はグローバルスタンダードで秋入学の検討とかしている暇があったらこのオッサンの口を何とかする方が先決なんじゃないですかねえとか思うのでありました。







2014/03/04

お題「ヒマでは無いがヒマネタで白井さんの講演にツッコミでも」

ウクライナ情勢に関しては色々な説明があるのでシロートのアタクシには中々こう難しいでございます罠。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140304/t10015691811000.html
ロシア軍 クリミアの完全掌握目指すか
3月4日 5時07分

○白井審議委員講演ネタを少々

白井さんの講演ですが昨日申し上げましたようにまあ何だかねえという感じなのですけれども、マニアとしてはツッコミをするのも責務かと思いまして、というのはウソで単なるヒマ(ではないが)ネタの積りで日銀の政策に関する説明を読んでみますとツッコミながら読めばそれはそれで材料になるので材料にしてみる。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf
非伝統的な金融政策環境の下でのコミュニケーションとフォーワードガイダンス:日本銀行の事例
2014年米国金融政策フォーラムでの講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月28日)

28日の講演の方をツッコミのネタにするのですけどね。

・QQEの説明が色々と微妙な件について

『2.QQE の特徴とフォーワードガイダンス』という小見出し(QQEはフォワードガイダンスじゃねえだろというのは昨日も申し上げましたが)から。

『それでは、QQEの全体像について、それ以前の包括的金融緩和(CME)との違いにも触れながらお話しし、QQEのフォーワードガイダンスについてご紹介します(図表1)。』

はあそうですか。

『QQEの最大の特徴は、金融政策の操作目標として金融緩和の「量」を示す指標であるマネタリーベースを採用したことにあります。』

そうですな。

『当座預金残高と銀行券発行残高等から構成されるマネタリーベースの拡大はインフレを連想しやすい通貨の大量供給を意味しますので、国民にも直感的に分かりやすいと考えました。』

さて実際問題としてどうなんですかというのと、そもそも超過準備が積み上がっている状況が実際のインフレにどのように影響するのかという問題がある訳でして、そこの所のきちんとした定量的な説明って結局無かったですし、あったにしても洋一先生一派の直線番長理論でして、置物副総裁理論によればとっくの昔にインフレが盛大に高進していると思われますし、そういう意味ではQQE導入当初に「これはやり過ぎ」と言った中原伸之元審議委員の方がよっぽど誠実、と思っていたら中原さん最近は追加緩和の余地があるとか言い出してはいはいおじいちゃん去年はやり過ぎって言ってたでしょという香ばしい風情を醸し出しているのですがそれは兎も角として。

そもそも経済活動が活発になって貸出などが拡大すると預金が拡大するし銀行券需要も拡大するので、結果としてMBが拡大するとか、赤字財政ファイナンスでマネープリンティングした結果としてMB拡大するとか、まあそういうのがベースにあればインフレとMBってまあ繋がる話だと思うのですが、結局の所MBって結果の話なんじゃネーノというお話にみえるのですが。

『マネタリーベースは、市場参加者が金融取引に際して、各国中央銀行の金融緩和の度合いを判断する材料として、一般的にも用いられています。』

これは酷いというか何というかでして、そもそも単純にMBを比較して金融緩和度合いがどうのこうのって言われましても金融市場にストレスが掛かっていて予備的な流動性需要が高い時とそうじゃない時ではじゃあどちらの金融市場が緩和的ですかとかそういう説明を日銀だけではなくてどこの中銀も行っている筈でして、こんな事象は市場参加者が盛大に誤解、というと言いすぎかも知れませんが、要は市場参加者が事象を単純化しすぎて価格形成のネタにしているに過ぎない話であって、本来中央銀行のコミュニケーションという意味では「そういう単純化イクナイ」という事できちんと説明をするのがあるべきコミュニケーションであって、「市場がこういう単純化をしているからそれに乗りました」とか中銀の政策委員として話をするのは恥ずかしいと思うのですがねえ。

いやまあ勿論MB直線理論の単純貨幣数量説での説明を一貫して頂けるのでありましたら別にそれはそれで話の筋は通っているので、ここまで言うならこの後の説明もMB一本槍で行っているのかと思えばご案内のようにこの後ははコミュニケーションポリシーだのという話をしているのですけれども何なんでしょうかね。

『また、日本銀行がマネタリーベース・ターゲットを採用する際には、幾つかの学術研究がその理論的根拠として勘案されました3。』

で、この3番の脚注ですが・・・・・・・

『3 日本銀行の金融政策について分析した研究も含め、P. Krugman "It's Baaack: Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap," Brookings Papers on Economic Activity, 1998 (2); 137-205; A. Meltzer, "The Transmission Process," paper presented to the Deutsche Bundesbank Conference on the Monetary Transmission Process: Recent Developments and Lessons for Europe, 1999; B.. Bernanke "Japanese Monetary Policy: A Case of Self-Induced Paralysis?" in Adam Posen and Ryoichi Mikitani, eds., Japan's Financial Crisis and Its Parallels to U.S. Experience, Special Report 13, Institute for International Economics, Washington, D.C., 149-166; and B. McCallum, "Alternative Monetary Policy Rules: A Comparison with Historical Settings for the United States, the United Kingdom, and Japan," Economic Quarterly, Federal Reserve Bank of Richmond, 49-79, 2000 等を参照。』

ということだそうな。

『そして、何よりも金融調節の操作目標が金利から通貨量へ切り替われれば、新しい枠組みに転換したというメッセージを強く発信することになり、「コミュニケーション政策」としても有効と判断されました。』

まあ最近白井さん以外の審議委員の皆さんが白日銀な説明を交えてシマウマ化してますけどね!

『なお、マネタリーベース・ターゲット達成のための主な手段として国債買入れを位置づけ、買入れ対象年限を残存期間1年以下から最長40 年債を含む全年限を対象としました。』

年限を2倍にした話はスルーですかそうですか。


・予想インフレ率が上昇すればめでたし理論とな

『予想インフレ率への働きかけ』という小見出しから。

『QQEでは、デフレ脱却を目指してマイナスの長期実質金利を実現するために、他の中央銀行よりも長期の予想インフレ率への働きかけを重視しています。予想インフレ率の上昇によって実質金利がマイナスとなれば、投資や消費が活性化され、インフレ率が更に上昇すると見込まれればそうした活動がより一層促進されます。また、そうした予想により、現在の販売価格や賃金等に影響を及ぼし、需要もある程度喚起される効果があります。』

まあこれが従来の黒日銀説明な訳ですが。

『そこで、日本銀行としては、我が国に浸透しているデフレマインドを払拭し、インフレ予想を高めるために、日本銀行として実施可能なあらゆる手段を採用することにし、その観点からも「量」を重視するアプローチが適切と判断しました。QQEは、予想インフレ率の引き上げや金融緩和措置の示し方をこれまで以上に重視しているという点で、従来の金融融緩和政策とは異なっています。』

ということでコミュニケーションポリシーというか謎のフォワードガイダンス理論になるのですが、結局「MBを拡大するとそのMBが定量的にどのように作用した結果として予想インフレ率が上昇して、予想インフレ率が上昇すると経済活動が何故活発になるのか」という話がワケワカランままでして、そんなに予想インフレ率が上昇したら経済活動が活発になるなら何でもっと高インフレを目指す中銀がいないのですかとか申し上げたいのですが、その辺の説明が雑すぎるんですよね。


・2年で2%はフォワードガイダンスですと???

『QQE で採用しているフォーワードガイダンス』って所が白井さんの謎説明の白眉。

『フォーワードガイダンスは、QQEでも重要な柱となっています。』

そりは初耳(というか白井さんこの話大好きみたいで何度もしているので実は白井さんの講演的には初耳では無いが)。

『これに関して、日本銀行は2013 年4 月にQQE の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する二つの表現を含む対外公表文を発表しています。第一の表現は、「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という内容です。第二の表現は、「量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という内容です(図表2)。』

それはしっとる。

『この第一の表現については、市場・国民に対して、日本銀行が、2%目標を2年程度(インフレ・ターゲッティングを採用する多くの中央銀行が通常想定している期間に相当)で達成するという決意を示すためのものです。』

本当に2年が通常想定してる期間なのかというと最近のフレキシブルインフレーションターゲッティングの考え方からするともっと柔軟な物であり、状況に応じて伸縮し得るという話なのがそもそも主要国の金融政策運営の標準的な考え方になっているとしか思えませんがまあそれは兎も角。

『この目的のために金融政策の操作目標をマネタリーベースに変更し、それを2年間(暦年2013−14 年)で2 倍に拡大するように年間約60〜70 兆円に相当するペースで増加させています。そしてそのターゲットを達成するために、長期国債の保有残高も2年間で2倍に拡大するように年間約50兆円(残高)ペースで買入れています(図表3)。』

さてそれでですな、

『市場・国民の中には、この表現が「期間を限定したコミットメント」と捉えた方も多いようです。この背景として、2013年4月に日本銀行がQQEを打ち出した際に、分かり易く伝えるコミュニケーション上の工夫として多用した「2」というキーワード――2%の物価安定の目標、2 年程度の期間を念頭において、マネタリーベースおよび国債の保有額を2年間で2 倍に拡大、国債買入れの平均残存期間を2 倍以上に延長――による強い印象があるようです。』

いや期間を限定したコミットメント以外の何なんでしょうかと思うのですが・・・・・・・・・・・

『すなわち、こうした工夫は新しい枠組みに関する明確なメッセージの打ち出しに成功した一方で、その分、後述する第二の表現への印象を薄め、期限付きの強いコミットメントとの認識を一部に与えたのではないかと思います。』

えーっと、黒田総裁のその後の説明(昨年9月のきさらぎ会での説明が分かりやすい)でも「2年」と「2%」はどちらも重要という話をしていまして、2%という物価安定目標の水準も重要だがそれを2年で達成するというコミットメントが重要ということになっていたと思うのですがががが。

『個人的には、この第一の表現は、2年程度という「期間ベース」と2%という「閾値ベース」の二つの特徴を兼ね備えたフォーワードガイダンスと解釈されうると考えています。ただし、その場合は、2年程度という期間については、幅を持って解釈されるものだと認識しています。』

ぽかーん。

2%って「物価安定目標」の数値であって、スレッショルドじゃないでしょと存じますっつーか、そもそも数値のスレッショルドを(辛うじて今の所は)置いているFRBにしたって設置しているスレッショルドは失業率に関して言えばロンガーランの中立水準としている数値よりも手前の数値にしていまして(物価に関しては今の所目標を達成できている事になっているので、そこから大きくずれなければ良しという閾値設定になっている)、ロンガーランのゴールが閾値ってナンジャソラという感じなのですが。


『第二の表現は、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して金融緩和の継続に関して必要な調整を行うとしていますので、「条件付きのコミットメント」と言えます。』

ぽかーん。

えーっとですな、これって要するに将来の金融政策を完全にコミットして行うというような硬直的な運営を行うのではなく、情勢の変化に応じてState-Contingentに金融政策を行いますよという話と、(あまり日銀は前面に出しませんがFRBが時に説明するように)ファイナンシャルスタビリティーに関する論点とかも含めたState-Contingentという話をしているんでしょと思いますけどねえ。


『これは「閾値ベース」(2%を安定的に持続)のガイダンスで、QQEの継続に関連付けています。』

????????

『また、第一の表現よりも、長期の予想インフレ率を2%程度に安定化させ、長期金利の低位安定にもつながると考えられます。』

????????

『また、第一の表現が2%の達成自体に、第二の表現が2%の安定的な維持に、それぞれ言及するものと解釈すれば、第一の表現は第二の表現の「必要条件」と捉えることができます。』

いやあの物価安定目標にはそもそも「2%の安定的な維持」(ただしこの安定的な維持という点について実際の数値なのか見通し数値なのかインフレ期待がアンカーされているという状況であると解釈できれば良いのかという点は現状曖昧なままなのは昨日申し上げました通りです)を含むのでありまして、第一の表現とやらがそもそも2%の安定的な維持を達成することにコミットしたものなのですが白井さんの説明ってどう見ても黒田総裁以下日銀の皆様の説明している事と話が違うのですけれども。つーか政策委員会で誰かツッコンで差し上げなさいと思うのですが時間が長くなるからツッコミたくないんですかそうですか。MPMでやられると市場も迷惑するので通常政策委員会でツッコミを入れて差し上げて頂けませんでしょうか(平伏)。

『これら二つの表現の時間軸は重複しうるものの、第二の表現の方がより長い時間軸を示唆しています。』

はて?

『つまり、資産買入れは2年間に限定されず、閾値ベース(2%を安定的に維持)のガイダンスが達成されるまでは出口に向かわないことを示しています。』

「2%を安定的に維持」っていうのはState of Economyを示すのですからそれはThresholdとは普通言わんと思うのですが、どうも無理矢理米国などのフォワードガイダンス政策と話を結び付けようとして説明が複雑骨折になっている悪寒。

『この観点から、QQEは、2013年4月の対外公表文では先行き2年間についてのマネタリーベースの増額規模を示している一方で、「オープンエンド型」とみなしても良いと思います。従って、二つの表現はお互いに矛盾するものではないと考えています。』

うーんこのという感じですが・・・・・・・・


・英文の方が本チャンなので仕方なく読んで何となく把握した事

という所まで書いてまあ英文も確認すんべ(手抜きですいません)と思ったのですが、これまた英文で見ると何かまた日本語と表現が違ってニュアンス違くねえかという所ですが・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf

さっきの2つのフォワードガイダンスがどうのこうのという部分が大体PDFの4枚目の『The Bank's Communication Strategy and Two Descriptions in Its Forward Guidance』という所になるのですけれども。

『QQE entails forward guidance as one of its most important elements (Chart 2). The Bank released a public statement in April 2013 that introduced QQE, and contained two descriptions of the time span of monetary accommodation. The first description was a statement of the Bank's intention to achieve the 2 percent price stability target at the earliest possible time, with a time horizon of about two years. The second description was a statement of its intention to continue with QQE as long as it was necessary for maintaining the 2 percent target in a stable manner. This description also added a condition that both upside and downside risks to economic activity and prices would be examined, and that adjustments would be made as appropriate.』

何故か英語の方がクリアカットに書いてあるというのが不思議なのですが、どうもこちらを見ますと白井さんの説明で根本的に妙というか他の政策委員の皆さんとの説明が違っている部分は「2%の達成」という白井さんの言う第一の表現において「物価安定目標としての2%」という概念を含めていない点にあるようでして、日本語の訳の方をみても何となくそうなのかなというのは判るのですが、あまりクリアカットに書いていなかったので???でしたが、英文で見るとはあなるほどという所です。

それから第2の表現の説明部分ですけどね。

『The second description is related to a conditional commitment, because the continuation of QQE is subject to the examination of upside and downside risk factors. It is also state-contingent guidance (to maintain the 2 percent target in a stable manner), linked to the continuation of QQE, and it plays a greater role than the first description in stabilizing long-term inflation expectations at around 2 percent. This helps to reduce long-term interest rate volatility and prevent its overshooting.』

日本語の方を再掲しますけど。

『第二の表現は、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して金融緩和の継続に関して必要な調整を行うとしていますので、「条件付きのコミットメント」と言えます。これは「閾値ベース」(2%を安定的に持続)のガイダンスで、QQEの継続に関連付けています。また、第一の表現よりも、長期の予想インフレ率を2%程度に安定化させ、長期金利の低位安定にもつながると考えられます。』

state-contingent guidanceというのと「閾値ベース」のガイダンスって何か随分と日本語と英語で表現のニュアンス違うのだがこれはどうなっているのですかという疑問ががががが。

ということで、英文を読むと別の意味で謎が深まるのですが、日本語の方に入っている「閾値」の話はどこにあるの(ちなみに検索掛けたがFRBとの比較の部分でThresholdという単語は出てきたのだがこのパートには無かったりする)という感じではあります。

ということで実はFRBとの比較という話が後半にあるのですが、英文読んでいるうちに何となく何でこの先生の話が変なのかが理解できた積りなのと時間が無くなってしまったので今日はこの辺でという中途半端な終わり方ですいませんすいません。

#やはりネタにすると当たる(悪い方の意味で)事案だったか・・・・・・・・・・









2014/03/03

お題「佐藤審議委員講演ネタの続きとその他少々」

安倍ちゃんが熱心に訪問していた国がトルコにインドにロシアだった訳ですが、ことごとく政治的にアレで通貨が下落している現象について何か命名(銃声)。

○短国買入ェ・・・・・・・・

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140228.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年3月4日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年3月4日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年3月4日
国債買入(変動利付債) 1,400 2014年3月4日

ということで3月渡し一発目の短国買入は堂々の2兆円オファーとなりまして、3月の想定される資金需給からするとそんなペースでオペを打たなくてもMBの積み上げは可能な筈なのですが、どんだけMB積み上げる気なんじゃというオファー額。

なおオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140228.htm
国庫短期証券買入 52,111 20,003 -0.004 -0.002 42.6
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,913 2,503 0.001 0.002 28.2
国債買入(残存期間3年超5年以下) 12,113 2,506 0.000 0.001 33.3
国債買入(変動利付債) 5,219 1,401 -0.060 -0.082 80.3

2糸強平均の足切り4糸強ということでまあ順当に堅調な結果になっておりますが、何せ金曜は前場から3Mの短国が3.5bpレベルで出合っていたりしてまして、ただでなくさえ短国市場強い状況になっている訳ですが、特段市場の状況には気にせずに2兆円の買入を突っ込んでくるというのはどうしたんじゃという所なのですが、今3か月をせっせと買っても12月末の残高に跳ねる訳では無くて、それどころか償還が3か月後に来るのですからその分を買入しないといけなくなって、フローベースの買入が更に増えてしまうというケージの中でクルクル回る短国買入ハムスター状態になってしまう悪寒なのですが、資金需給的にそこまで買わなくてもMB残高の2月末対比の積み上げが可能なはずの所でどどーんと買入を入れてくるというのはちょっとふーんという感じではあります。

まあ3月は期末月で、期末独特の残高調整ニーズでの短国買い(とか買現先とか)のニーズがあるというのは調節の中の人も十分ご承知だと思いますが、そんな中で2兆円の買入を堂々打ち込んで来た(まあ資金需給見通しが出てから変わるかもしれないけど)訳でして、仮にこのペースで買入を実施すると3月の短国市場はかなりヒャッハーなことになってしまうと懸念されるのですが、そこまでして短国を買いに行くのはどうしてなのという所です。まあ市場の金利形成とか需給とか知らんがなそれよりもMBを兎に角積みたいという事かも知れませんが、買入大攻撃によって短国の利回りが盛大に低下してくると「短国買入の限界が出てきた」という話になって、今度はマリーアントワネット張りに「短国が買えないなら長国を買えばいいじゃない」という話になって、輪番拡大の思惑という話になるんじゃネーノという話になる次第。

つーかですな、水曜の輪番で超長期を謎の200億円買入縮小とか微妙にクソ細かい(たぶん)デュレーション調整をしている側から短国買入の方は市場動向知らんがなとばかりに盛大に2兆円の買入を行うというこのざっくり振りの落差があまりにも禿しいのは何なんですねんという所ではございますな、うんうん。

なおデュレーションが気になるのであれば、超長期の買入を減らすよりも中短期部分の買入を増やせば短期のオペに掛かる負担も減る(1〜3年買っておけばその分そのまま年末のMB残高に跳ねるのだから短国オペへの負担が減るし、そうは言っても短いですから将来的なバランスシート負担も小さいでしょ)と思うのですがどうでしょうかね。


○佐藤審議委員講演ネタの続き:

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf

金曜は国債決済関連の話の方を注目しましょうという事でスルーした(というと尤もらしいですが実は単なる時間切れです)佐藤審議委員講演の最後のパートの所です。金融政策に関する話の部分だけニュースベンダーのヘッドラインが並んでいたのですが、講演テキストを見れば判るようにどう見ても今回の講演は国債決済に関する話がメインだと思うのですが肝心のメインの話はニュースにしないというのも何だかねえという気はせんでもない。

という話は兎も角として、『6.最近の金融政策運営』のパートから。

『最後に最近の金融政策運営について申し上げる。昨年4 月の「量的・質的金融緩和」の導入から間もなく1 年が経つ。その間の国内経済・物価動向は展望レポートとその中間評価で示した政策委員会の中心的なシナリオに沿い概ね順調に推移しており、政策委員会では現在の資産買入れ方針のもとで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと推進していくことが適当と考えている。』

『一方、市場関係者の間では政策委員会の中心的な見通し、とりわけ物価見通しが達成困難、あるいは時間がかかるとの見方から「量的・質的金融緩和」の継続期間や追加緩和等についてさまざまな見方があることは承知している。市場の観測に政策当局者がコメントすることに逡巡はあるが、市場との対話は重要であるので、ここでは「量的・質的金融緩和」の継続期間に絞ってお話したい。』

ということで2年で2%という話がありますがそこはご案内の話なので割愛しましてその次。

『ここで「量的・質的金融緩和」の継続期間について、私なりに整理すると、そのポイントは以下の3 点である。』

ということで・・・・・・・

・フォーキャストターゲットキタコレ

『第一に、「量的・質的金融緩和」の継続期間は2 年という期間で厳密に区切っている訳ではない。ただし、そのことによって「2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」というコミットメントをいささかも後退させることがあってはならないと考える。』

とまあこれは良いとしまして・・・・・・・

『第二に、「2%の物価安定目標を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」継続する」との方針は上記のコミットメントと矛盾するものではない。すなわち、「安定的に持続するために必要な時点まで」の部分は私の理解ではフォーキャスト・ターゲティングである。したがって、例えば、実際の物価上昇率が2%に届いていなくても、諸情勢を勘案して先行き2%を安定的に持続できると判断できれば、政策効果の波及ラグを考慮して2%に達する前に出口に向かうことはあり得るし、逆に、仮に2%を超えても持続性がないと判断すれば政策を継続しているかもしれない。「必要な時点まで」という文言はそうした先行きの不確実性に対応した幅のある概念であり、先に述べた強いコミットメントを補完するものである。』

フォーキャストターゲッティングキタコレということでありまして、2%の物価安定目標に関して「実際の数値」なのか「見通しの数値」なのかという問題がありますし、ついでに言えばインフレ期待がどの水準でアンカーされているとかそういう計測が難しい(が故にお手盛りモードが可能な)概念があったりしまして、物価安定目標を2年を念頭に出来るだけ早期に達成という話をして残り1年になった所で徐々にこの物価安定目標の定義とは何ぞやという話が盛り上がってくるというか、かなーりのカオスになってくる可能性がありますなという事で。

なお、フォーキャストターゲッティングの概念は佐藤審議委員は以前からお話をしていましたので、この話自体は以前からあるのですが、ここもと審議委員の講演で次々と黒日銀の話に白日銀の話が混じってくるというシマウマ日銀コースの話が出ている中でありますので、この流れキタコレという感じではございます。


・柔軟な枠組みキタコレ

『第三に、2%の「物価安定の目標」自体も他の主要国の中央銀行が採用する枠組み同様、柔軟なものである。すなわち、金融政策の効果は、経済活動に波及し、それがさらに物価に波及するまでに、長期かつ可変のタイムラグが存在する。』

さいですな。

『金融政策は、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、柔軟に運営していく必要がある。こうした考え方は、各国で広く共有されており、とくに、世界的な金融危機以降、海外主要国では、金融システムの安定へ配慮することの重要性を対外的に明確にするなど、金融政策運営の柔軟性という視点が強く意識されるようになってきている。』

うんうん。

『その点、「物価安定の目標」はたとえば2%の物価上昇率を一時的に実現すればよいといった硬直的かつ表面的な枠組みではなく、柔軟性のある、経済実勢に即した実質的なものである。私は、昨年10月末の金融政策決定会合議事要旨等に示されているように、政策委員会の中心的な見通し対比、物価の先行きを幾分慎重に見ているが、これは私が「量的・質的金融緩和」の効果に懐疑的であったり、期待の転換を促すという政策委員会の描くメカニズムを否定しているからではない。「物価安定の目標」は、もとより2%をピンポイントで目指す硬直的な枠組みではなく、上下双方向にアローワンスを持つ柔軟な枠組みであると私は理解しており、そうした理解のもと、その達成のハードルを柔軟に考えているのである。』

達成のハードルを柔軟に考えているというのはつまり・・・・・・・

『この点、そもそも、「物価安定の目標」が目指すのは、物価だけが上昇するのではなく、全般的な経済情勢の改善とともに賃金が上昇し、それとバランスよく物価が上昇する世界である。4 月からの消費税率引き上げで人々はますます物価動向に敏感になるであろう。そうしたなかで日本銀行が単に物価上昇だけを追求していくといった誤解は避けなければならない。そういう意味でも2%の「物価安定の目標」は柔軟な枠組みであることを改めて強調したい。』

(;∀;)イイハナシダナーという所ですが、どう見ても黒日銀の話って「とにかくインフレ期待を引き上げて実質金利を下げる」という話で、実質金利を下げると資産価格は上昇するわリスク投資は増えるわ消費は活発になるわ設備投資は拡大するわ所得は増えるわ爺さんのリューマチは治るわ(それは言ってない)といいことずくめですので実質金利引き下げの為に物価が上昇するのが良い事なのですという話を展開して、しまいには「バックワードルッキングで期待インフレが高まる」というルートに期待するという、何でも良いからまずは物価が上昇すればインフレ期待も上昇しますよという豪直球な話も展開するという大変に楽しい展開になっておられる訳でして、まあ佐藤さんは元よりそういう何でもいいから物価上理論は批判していたサイドですのでこの説明自体は新しい話では無いのですが、黒い日銀におかれましては「日本銀行が単に物価上昇だけを追求していく」というのは残念ながら「誤解」ではないようにしか見えませんぞなという所ではございます。

でまあ直近では企業経営者出身の審議委員(森本さん、石田さん)も本来的な「そもそも物価安定目標は国民の厚生の為にあるんですよね」という論点をより強く見せるような講演を行っておりましたけれども、佐藤さんは従来からこの話をしておりますように、現実問題として考えた場合に黒日銀一本槍というのはどうなのよという話になり、気合と根性が不足しているという点が大問題だった訳ですけれどもそもそも論からしてどう見ても正論な白日銀の「成長力を強化して経済の実力を上げてそれに見合った物価上昇を達成していくのがヨロシ」という白日銀話がこうやって出てきますと何とも味わいが深いと申しますか、置物副総裁先生の置物金融政策理論に関してのご見解をお伺いしたい所です。


○この人の場合は出張経費の無駄遣いにしか見えないのですが・・・・・・・・・・

何かまた白井審議委員が海外に出張しているようですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140228a1.pdf
日本銀行の金融緩和とコミュニケーション政策〜サーベイ調査に基づくレビュー〜
コロンビア大学における講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月27日)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf
非伝統的な金融政策環境の下でのコミュニケーションとフォーワードガイダンス:日本銀行の事例
2014年米国金融政策フォーラムでの講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月28日)

ということで講演をしているのですが、フォワードガイダンスがどうのこうのという説明をメインにしているのは良いとしまして、そのフォワードガイダンスが肝心の米国で定量的なのから定性的なものに書き換えようとしているとか、英国のフォワードガイダンスのようなものに関しても(そういや最近BOEネタをあまりやっておりませんすいませんすいません)位置づけをどうしようかというように、そもそも論としてこの手のガイダンス政策というのは運営が意外に難しいという話でもしていれば読みものとして面白いのですが、単に事実関係を記述しているだけの話で何ともとしか申し上げようが無い訳でして、出張してまで話す内容かよと思うのであります。

なお、日銀のフォワードガイダンスに関して、講演で(どちらの講演でも「図表2」になります)「第一のフォワードガイダンス、第二のフォワードガイダンス」という謎概念を示しておりまして、はっきり言って意味不明にも程があるのですが、例えば27日の方の講演(どっちを引用しても同じですが)を引用しますとこうなります。テキスト5ページ。

『フォーワードガイダンスは、QQE でも重要な柱を形成しています。これに関して、日本銀行は2013 年4 月にQQE の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する二つの表現を含む対外公表文を発表しています。第一の表現は、「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という内容です。第二の表現は、「量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という内容です(図表2)。』

そもそもフォワードガイダンスというのは金利政策運営における名目金利制約の中で、金融政策の効果を出す為に金融政策運営の先行きのガイダンスを出すという話であって、日銀の場合は単なる「コミットメント」の話であり、そのコミットメントを具体的に示したものが必要な時点まで継続するという話でして、いわゆるガイダンス政策とは違うぞなもしという話だと思うのですけれども、この謎理論を海外で盛大に吹聴して回っている白井さんが「金融政策のコミュニケーションがどうのこうので日銀の政策への理解を」とか話をしているのがもう何だかねという所で、どうもご本人が一番金融政策コミュニケーション上のノイズになっておられるというご認識に欠けているようで誠に遺憾の極みとしか申し上げようがございません。

つーかこんなに海外出張する審議委員って(総裁は別として)あまり見ない訳でして、しかも話の内容たるや(罵倒文言の可能性があるので自粛)な訳でして、なんちゅうかその出張経費の無駄遣いにしか見えないのでマジ勘弁して欲しいというか誰だよこの委員選んだのはと。


○どうでも良い雑談

池尾先生の所で気が付いたのですが。
http://agora-web.jp/archives/1583767.html
見せかけの回帰(かなり技術的)
2014年02月25日22:22

上記URL先のツッコミも中々興味深いのですが、池尾先生がツッコミを入れていたウォッチマン高橋先生の記事の方も見たらですな・・・・・・・・・

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140223/dms1402230722001-n1.htm
「成長鈍化」の判断は早計 尾を引くデフレ、円高の後遺症
2014.02.23

ああだこうだと話をしているのですが、最後の方にこんな話が。

『筆者は、今年度2・7%を達成できるかどうかは、いい方便だと思っている。金融政策には効果ラグがあり、政策を行ってから2年程度のラグで本格的な効果が発揮できる。もちろん、2年より前でも効果はあるが本格的ではない。そうした意味で、金融政策には明日にでも効果が出るという即効性はない。この点が、多くの政治家が金融政策に理解を示さない原因であろう。さらにいうと、政策の当事者は日銀なので、政治家が「自分がやった」と言えないことも不人気の原因かもしれない。』(上記ZAKZAK記事の方のURLより)

・・・・・・・・・ということですので、つまり昨年からの物価上昇やら資産価格の上昇は洋一先生様やらその一派の皆様が口を極めて罵っておられた白川日銀時代の政策効果ということになりますし、黒田総裁が「2年で物価目標を達成する」と言っていた金融緩和ですけれども、実際に緩和による具体的な資産買入などのアクションは1秒で実施される訳ではありませんので、金融政策が2年程度のラグで効果があるのでしたら、そもそもの目標設定がおかしいという話になりますし、大体からしてこの一派の先生方は金融政策を適切に実施したら数か月でデフレ脱却が可能だの当座預金残高80兆円で2%物価目標達成だのという話をしていたのですが、都合が悪くなると従来の話とは別の理屈を繰り出してきて説明するとか何なんでしょうねマッタクモウという事でちょっとネタにしておきました。