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2014/04/30

お題「短国買入2.5兆円とな/展望レポートプレビュー雑談の続き/FSRに関するメモ」

さあ展望レポートですよFOMCですよ!と言ってもあまり盛り上がらない訳ですな。

ところで何かさっきどこかの局のニュースでIE6以降使うなと米国政府が警告とかいうのが出てたのですがそんな事言われましてもちょおまwwwなのですが。

○市場メモ

・短国買入増額とな

月曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140428.htm

国庫短期証券買入 25,000 2014年5月1日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年5月1日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年5月1日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年5月1日

ということで月跨ぎのオペは短国買入2.5兆円のオファーとなりました。芸の細かい話をすると輪番もロットが多めになる中期+長期で打ってきているんですな。

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140428.htm

国庫短期証券買入 49,530 25,004 0.001 0.002 94.0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,408 2,508 0.001 0.002 33.5
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,962 2,507 0.002 0.003 17.7
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,151 4,006 -0.005 -0.004 75.4

長い方はまあこんなもんだと思う(一応後付講釈ではここもとずっと重かった中期の応札が少し減ったのがネタにされていたらしいというのもあるけど)ところで、短国に関しても2.5兆規模に拡大したのが効いて前回のような4糸甘だの5糸甘だのという水準にはならずに1糸甘とか2糸甘とかまで入りましたし、短国3Mの気配も若干低下という流れになってGCもやや軟調とか早速需給改善という形になっておりまして、もう完全にオペ次第で需給のぶれる、というか水準の変わる短国市場状態になっておりまして、何を今さら市場との対話だヴォケというような風情も漂う今日この頃という所でございますな。



○決定会合プレビュー雑談をしつこく少々

そういや今回は展望レポートの予測期間が延びるのですけれども、それに関連してアタクシ的には全然気にしていなかったのですが、2014年末以降のバランスシートに関する発表マダーという話ってそこそこあるらしいと聞きましてほほーという感じではあります。

まあ確かに目標達成が難しいということであれば、現時点で決まっている事をベースにすれば「今の枠組みを継続しますよ」という話になりますので、「年間MB60〜70兆円拡大、うち国債を年間50兆円残高拡大、平均残存7年程度、ETFを年間1兆円残高拡大、J−REITを年間300億円残高拡大」というのがそのままリニアに継続されるという話になりますので、例えば2015年のバランスシートを出せという話になるとそのような数値が出る訳ですな。

しかしながら、そもそも論としてQQEは「物価安定目標を達成するまで」実施となっていまして、その目標が達成されたという話になった場合には今の枠組みが見直しされるという話になる訳でございますからして、昨年時点で「2年を目処に早期に達成」という話をしており、かつ現時点での執行部の説明(会見などでの黒田総裁の発言)では14年度末の辺り(つまり来年の4月近辺)では目標が達成できているでしょうという見通しになっている訳でして、そういう中で2015年末のバランスシートの見通しのようなものを出すというのはそもそも論として矛盾した話ですし、日銀の見通しが正しければ本来2015年末のバランスシートというのは別途ご検討という話になる筈ですので、まあ出すのは簡単なのですが、それによって市場の期待をミスリードした場合に出口政策の困難さが高まるという朝三暮四もビックリの展開になってしまいますので、まあ今の見通しに対して真面目に行くと思っているのであれば、2015年末とかのバランスシートをそのまま今のリニアで出して来るというのは普通に真面目な態度とは思えません。

ということでそういうのは当分出てこない(もちろん物価安定の目標の達成に対する考察が金融政策決定会合で出てくる、つまりQQEの落とし前が出てくるのであれば、その際に何らかのモノが出る可能性はありますけど)と考える方が普通でして、間違ってその手の物が出てくるようでしたらそもそも日銀が真面目に自分たちの見通しが行くと思っていないのか、それとも俊ちゃんスキームでインチキロジック満載攻撃に舵を切ったかのどちらかというのが正しい読み解き方になる次第ですが、前者はまあ普通に考えにくく、後者の可能性は無いでも無いのでしょうが、就任以降の黒田総裁の金融政策運営の基本的部分に関する話については、QQE導入当初は(どうせドタバタで導入した上に置物副総裁の置物理論がpoorにも程があって使い物にならなかったからだと思いますが)微妙に何をどうしたいのかの話が混乱していましたが、暫くして「期待に働きかけてデフレ均衡から脱却してインフレ均衡に持って行く」というコンセプトが固まった(最初の時点でも期待に働きかけるという話はあったが中身は微妙に変化していた)以降に関しては清々しいまでに同じ話を繰り返していまして、某福井の俊ちゃんみたいにイカサマロジック(というか最早ロジックですらない)を振り回すの巻とはならないように思えます。


あと、今回は見通し期間が延びるのですけれども、直近で出ていました昨年10月の展望レポートによりますと、2015年度って中心値ベースで実質GDPが+1.5%でコアCPIが+1.9%(除く消費税要因)という数値になっているのですが、これ2016年度に伸ばした時にどういう数値になるんでしょというのもマニア的には注目しております。

つまりですね、そもそも潜在成長率の推計って日銀の説明だと足元が0%台後半で見通し期間の終わりごろに掛けて徐々に上昇するかもしれませんね的な建付けになっているのですが、まあそれにしても2015年度の実質GDPって潜在成長率を比較的幅を持って上回った水準で推移するという推計な訳ですよ。

でもって2016年度ってどうなるのよという話でして、例えば2016年度の実質GDP見通しが2014、2015年度と同じで+1.5%程度の水準ですよ、という話を出したとしますと、物価見通しの方が2%超で出さないとそもそも論としての説明がおかしくなる訳ですよね。つまり日銀の場合、物価上昇メカニズムについて2014年度後半以降に関しては需給ギャップが解消されて上昇するというのをメインに置いている訳ですし、日本においては企業や家計のバランスシート調整は基本的に終了している(調整しないといけないのは財政)上に、雇用のスラックという意味でも失業率がNAIRUに近い水準に既に低下しているという状態になっている訳ですから、スラックの無い中で潜在成長率を上回る成長を3年も続けた日には物価の上昇圧力が高まってどちらかと言うとインフレ期待の上振れを心配しないといけない位の話になりますよね、とまあそういう風になる筈ですが、どうせそういう数値的整合性を出してこないだろうなあとは思いますが、さてどうやって話の帳尻を合わせに行くんでしょうかねえとニヤニヤ。

でまあ延びる方は兎も角として、もう一つのネタは2013年度の見通しのGDP数値(+2.7%)がどう見ても未達です本当にカムサハムニダという点についてどういう落とし前をつけてくるかという点なのですが、2月決定会合後の会見で黒田総裁何か変な物でも食ったのか+2.7%達成とか言ってしまった手前、この点についても落とし前をつけて頂きたいのですけれども、まあその分に関してはその後の会見などで強気発言を連発しているので、その時点でだいぶ有耶無耶になってきている感じはするのですが、まあ当然ながらこの部分についての質問も飛んでくるでしょうなあとは思います。

ただし、物価に関しては見通しを変えてはこないと思われまして、それはもうアクチュアルの物価水準が見通しを基本的に上振れて推移しているからという話になりますので、その部分の整合性をどう説明して来るかと言いますと「期待の変化に伴ってフィリップス曲線の形状が変化している可能性があります(キリッ)」という日銀の思う壺の説明が待っているという辺りが誠に憎たらしい所でございまして(−−)、その説明が会見で流れるとまたぞろアチャーという感じになるんでしょうね、よー知らんけど。

ま、そんな訳でして、アタクシ的には手前の方の数値に関する話よりも2016年度の見通しの前提として先行きの潜在成長率とNAIRUをどのような前提で置いているのか、経済のスラックをどの程度の所で置いているのか、というのを知りたい訳ですが、これまた憎たらしい事に「これは各政策委員の判断をアグリゲートしたものなので、各委員によって前提の数値が異なると思われますので特定の数値についてお示しする事は物理的に不可能ですが何か?(すっとぼけ)」という想定問答が返ってくるのが明らかな所が実にこうケシカラン所でして、どうせ質問してもそのような答えしか出てこないのですが、だったら各政策委員の皆様におかれましては個別で良いので展望レポートの前提となる潜在成長率やNAIRUに関する数値について講演などで示して欲しいもんだという気もしますが、まあ出し過ぎると今度はFEDのSEPみたいに何が何だかワカランチ会長な物が出てくる結果になるという悪事例もアリエールなのが誠に遺憾の極みという所ではございます。


○金融システムレポート関連雑談メモ(とりあえずメモのみ)

FSR雑談を書こうかと思ったのですが本文を引っ張り出してああだこうだという話をおっぱじめようとしますと結構ヘビーだったりするので本日はメモだけ書いておきます。先日概要部分をネタにしたのですがその追加みたいな感じです。

本文16ページで金融機関の貸出と有価証券投資に関する話がああだこうだとあるのですが、この辺りをみておりますと「貸出は伸びている」という話をしておりまして、企業向け貸出に関しては幅広い業種や、従来の大企業中心から中小企業にも貸出が伸びていますよという話もしていてほほーという感じではあるのですが、不動産関連貸出に関して本文21ページに微妙な記述がありまして、本文21ページで言及されているのですが、不動産向け貸出の伸びが地域銀行や地方圏での伸びが高くなっているという指摘をさらっとしておりまして、ほほうという感じでありまする。

で、本文54ページ以降で「地域銀行の収益性について」というコーナーがありまして、まあ地域銀行の収益性に関する話は毎度言及されていて今回はその辺の記述が露骨になったなあというのは概要部分の紹介をした時に申し上げたと思いますが、この部分に関する記述がこれでもかと本文の方でも続いているのが印象的な所ではあります。

つまり、「地域銀行の域外貸出増加の影響」(56p、域外貸出をするとロットは増えるし多様性も増すけれども導入段階でサービスレートを入れないといけないので収益性が手前で悪化する上に進出先の金融機関が貸出競争に巻き込まれる)とか、概要の方でもあった「BOX1 人口動態の変化と家計預金」(59p、今後の人口動態の変化は金融機関の預金吸収力の低下をもたらすがその影響は地域金融機関の方が先に出てきて大きいでしょう)などの話をしておりまして、まあうーむという感じではあります。

一方でマクロストレステストの方では国内基準行に関してはTier1に金利上昇時の国債含み損発生部分を気にせんでよいというのを使っている(もちろん売却すると損が出るので影響するという話はしているけれども)ので、そこまで厳しい話をしていないのは、まあマクロストレステストの部分って報道で使われる可能性の高い部分だから、こちらではセンセーショナルな書き方をしないのが吉というのは(今に始まった事では無く前回もそういう計算してます、為念)継続しておりまして、地域金融機関に対するやや厳し目のトーンはあるのですが、報道ベースなどで悪目立ちしないようにという配慮をしている辺りが味わいがあるっちゅうか却ってアレな所でもあるなあ、という話をもうちょっと詳しくやろうかと思ったのですが、うまく考えが纏まらなかったのでメモで勘弁させて頂きましたです、はい。




2014/04/28

お題「市場雑談等/ローゼングレン総裁講演から少々」

まあ順当ですな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014072681000.html
日銀 消費者物価上昇率2%前後示す見通し
4月28日 4時09分

#鹿児島2区よりも沖縄市(年寄りなのでコザ市の方が慣れてるのだが)市長選の解説が聞きたいですな

○市場メモ等の雑談である

・短国買入は本日のようですな

金曜のオペレーション
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140425.htm
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年4月30日
国債買入(変動利付債) 1,400 2014年4月30日

ということで毎週(短国入札がなければ)金曜日に実施される短国買入ですが先週金曜はパスとなりまして恐らく今日のオファーになるんでしょう。既に市場予想通りの展開なので特段の反応は無かったようですが、今月は思いの他(かどうか知らんが、まあ市場的には思いのほかでしょう)固定金利オペのロールが進捗しましたので、短国買入に関しては月内の残高稼ぐよりも月末越えをして5月の残高を稼いでおきたいという形になる訳ですなという所。

まあいずれにせよ短国買入に関して最近は市場の需給に配慮してどうのこうのとかやっている余裕は特段無さそう、というかもしかして単にMB目標と月々の進捗から単純に逆算しているだけではなかろうかというオペレーションが良く言えば淡々と、悪く言えばフローのブレで短期市場における唯一最大の市場攪乱要因になっているという状態がこれからも続くという事ですねわかります。


・CPIが出た訳ですが

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N4K6V86K50Y701.html
東京都区部は2.7%上昇、消費者物価4月分−消費税率引き上げで (2)
更新日時: 2014/04/25 10:46 JST

ということで市場予想平均が都区部のコアで2.8%だったので市場事前予想よりも微妙に下ブレという一番反応しにくい結果となりまして、どうせなら上下に盛大にブレて頂きますと面白相場や面白解説などの鑑賞が出来たと思われますので惜しい所ですな(違)。

でまあ何だか知らんのですが金曜は急に先物がドカンと下がるという謎展開が発生したりしてまして、CPIがどちらかにブレているなら兎も角、微妙なブレしかも弱い方という結果なのにドカンと売りが出るとは何ぞこれとしか申し上げようがありませんが、下がると買いもあるようで結局そんなにサガランチ会長にはなりましたな。しかし引値見ると10年が売られたのかも知れませんが、いずれにしてもCPIだけだと別にそこまで売らんでエエジャロという数字だったので謎ですなあというメモ。


・決定会合プレビュー雑談

ほほう。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N4KKEW6SETEP01.html
「日銀追加緩和なし」じわり増加、日銀サーベイ−時期は7月が依然最多
更新日時: 2014/04/25 13:28 JST

『4月25日(ブルームバーグ):日本銀行の追加緩和はない、との見方がエコノミストの間でじわりと増えている。経済・物価情勢が日本銀行の見通しに沿って推移している上、黒田東彦総裁が2%の物価目標実現に向けて強気な姿勢を打ち出しているのが背景だ。』(上記URLより、以下同様)

ほほう。

『ブルームバーグ・ニュースがエコノミスト35人を対象に行った調査で、追加緩和予想時期は7月が15人(43%)と最も多く、前回(44%)に引き続き最多となった。同時に追加緩和なしとの回答が6人(17%)と、前回の4月1回目の会合前(11%)、前々回の3月会合前(9%)に比べて回を重ねるごとに増えつつある。』

ということで、相変わらず何とかスト様の経済予想VS日銀の経済予想という感じになっているのですけれども、先日来申し上げておりますように7月に追加緩和というのは日銀の従来からの説明をベースにしますと一番「あり得ない」時期でございまして、7月に追加緩和という位でしたら相当の落ちこみが7月会合時点でデータとして確認されている必要があるのですが、そんな経済予想なのかと小一時間問い詰めたい訳でございます。まあ7月予想してるのは日銀の行動様式を無視しててめえの経済予想が大きく落ち込むというのに張っている場合のみに可能な予想だと思われます。

あと、良く言われるのが「次の消費税率引き上げ決定のタイミング」があるから追加緩和という話なのですけれども、これまた政策ロジック的にはセンスが無い話でして、あーた良く考えてみたら追加的な金融緩和政策を実施しないといけないような経済状況の中で増税しますよとか決定する訳無いじゃんと思う訳です。消費税増税の前後で消費などに短期的なデコボコが発生するという面で財政政策での手当がというのはまだ話が分かるのですが、あくまでもその話は短期的なものであって、短期的な経済変動に対して金融政策が一々対応するのかというとそうじゃないでしょ(流動性対策みたいな場合は別だけど)というロジックからしますと、まあ消費税増税決定と絡めて追加金融緩和がどうのこうのとか言い出すのはナンセンスにも程がありますな。

・・・・・・・・とまあここまで書いていて気が付く(というか前々からそうは思っている)のですが、どうもあたくしの予想ってまず政策当局の行動変数を考えるという所から入る傾向にあって、でまあ最近は何か知らんけど日銀の経済物価見通しがズバズバ当たるという風になっているので、何とかストの皆様全員枕を並べて討ち死にという展開になっているんですなあとか思われる次第。もとより日銀って経済物価見通しの少なくとも短期的な部分は(あれだけスタッフ張っているから当たり前だが)恐らく日本で一番正確な予測が出来ている筈でして、ただまあ中長期の話になると願望レポート状態になってしまうという残念な展開となり今に至るという所だったのですが、何がどうなっているのか知らんけどとりあえず今のところは日銀大勝利状態なのですからもうちょっと日銀の理屈(または屁理屈)も考慮して予想した方が良いんじゃネーノなどと傍観者的に思うのでした。

まあそれはそれで良いとして、毎度の事だがこのサーベイ35人とか膨大な人数に調査しているのだが、どう見ても日銀ウォッチャーを名乗るにはニワカとかシロウトみたいなのがだいぶ混在している(なお誰に聞いているのかはブルームバーグのプロ向けの方だと書いてあると思う。誰がニワカでシロウトなのかは自粛するけど)ので、そもそもこのサーベイ自体がスットコドッコイな数字を出してくるという点には留意が必要だと思われます。


○ボストン連銀ローゼングレン総裁の講演から少々

http://www.bostonfed.org/news/speeches/rosengren/2014/041514/index.htm(サマリー)
http://www.bostonfed.org/news/speeches/rosengren/2014/041514/041514text.pdf(講演本文)
“Monetary Policy and Forward Guidance”
April 15, 2014

ローゼングレン総裁はこの前まで投票権がありまして、今年と来年は投票権が無い(来年は補欠)ので、そういう意味では今後の重要な局面では惜しくも投票できないんですけど、ハト寄りの人としてどういう話をしていたか(短かったりもするので)簡単にご紹介しますが、まあ先に結果だけ申し上げると「ほぼ想定通りにハト気味」という内容でした。

・労働市場に関してはハト、成長についてはまあ普通に確り

最初に労働市場の話をしていますけど・・・・・・・・

『Actually, the widely reported unemployment rate understates the severity of the problem. The broader labor-market indicators that include workers who are “part time for economic reasons” and workers who have looked for a job in the past year but not in the past four weeks - “marginally attached” workers - remain unusually elevated by historical standards. These indicators quantify what many Americans all too readily observe around them - that significant problems in labor markets persist even at this stage of the recovery.』

ということで「幅広くレポートされているように失業率の改善は労働市場の状況を過少に評価させている」とのっけからぶちかましておりまして、労働市場に関しては思いっきりハトです。従って・・・・・・・

『All this means we have a U.S. economy that still requires an unusually accommodative stance of monetary policy.』

となる訳です。一方で成長率に関してはこうなっています。

『At the same time, the economy has indeed been gradually improving. The most recent labor market report indicated that the U.S. economy produced 192,000 jobs in March, and there were some positive revisions for the data in previous months. So, after some weaker data in the winter months, these labor market data suggest that there will hopefully be broader improvement in an array of economic indicators this spring. In fact, most economists expect growth around 3 percent over the rest of this year - a forecast that is quite consistent with my own.』

成長見通しは向こう2年間で3%成長が続くという見通しなのでこれはそんなに弱くない。


・今後のガイダンス文言や利上げに関して

この後LSAPとかフォワードガイダンスとかをこのように運営してきましたという話がありますが、利上げに関してはこんな話を。

『Admittedly, this rather qualitative forward guidance is somewhat less specific than the previous forward guidance involving the 6.5 percent threshold. My personal view is that, ideally, forward guidance should, for the time being, remain qualitative but increasingly be linked to progress in achieving our dual mandate based on incoming economic data.』

今はガイダンス文言が定性的になっているが今後再び定量的なリンクが必要というのがほほうという感じ。

『In particular, I believe the FOMC’s forward guidance should be consistent with keeping interest rates at their very low level until we are within one year of reaching full employment and our 2 percent inflation target - and the guidance could explicitly state that intention.』

完全雇用(ちなみに別の所で出てくるがローゼングレン総裁は5.25%で見ている)と2%の物価水準達成まで1年以内に到達するという見通しになるまでは現在の金利政策を継続すべきというのがローゼングレン総裁の主張のようです。

『Parenthetically, I would note that on a quarterly basis the Federal Reserve publishes a summary of the economic projections (SEP) made by Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents. The SEP does give information on the expectations of the Committee regarding when the economy would be reaching the dual mandate goals.』

ちなみにここはSEPについての話で、SEPの意味についてはその細かい金利見通しの動きでは無くて、デュアルマンデートのゴールに到達した際に中立FF金利にまだ引き上げていないというのを見るべきとかそういう事を言いたいんでしょうなこの辺りは。

『Today I plan to discuss why, as we gradually do approach achieving our dual mandate goals of maximum sustainable employment and price stability, the Fed’s forward guidance should be increasingly focused on how quickly we expect to make progress on inflation that is well below our target, and on the significant underutilization of labor resources that persists well after the official end of the recession.』


・カレンダーデートのガイダンスは却下という件

『Recent Developments』という所で今纏められていた部分の話をもうちょっと詳しくしているのですけれども、フォワードガイダンスに掛かる部分だけ引用。

『Figure 1 provides the path of the unemployment rate relative to the Federal Reserve’s earlier stated threshold of 6.5 percent. The figure provides visual support for the fact that the forward guidance needed to change. Once we reached a point where we could be below the threshold with one or two favorable employment reports, the guidance was no longer providing much information about our potential actions beyond one or two FOMC meetings.』

『Keep in mind that one purpose of forward guidance is to restrain longer-term market interest rates to support the struggling economy by promising to keep the short-term interest rates the Fed can control at very low levels. As such, there was not much to be gained by maintaining our threshold language.』

失業率スレッショルドを変更したのは6.5に付きそうになったからであり、フォワードガイダンスは短期名目ゼロ金利制約の中で中長期金利を抑える為に行うのであるからして、ガイダンス文言を変更するのは当然と。

で、どう変更したのかの話の後にこのような説明を。

『Clearly, such guidance would be highly dependent on the incoming data, and what the data suggest about how quickly the economy will reach full employment and 2 percent inflation.』

ふむふむ。

『Given the uncertainty about the future course of the economy, and about the estimate of what constitutes full employment, such guidance could not be precise. Nor would it provide the calendar certainty that many financial participants would prefer. However, these drawbacks are preferable to providing forward guidance that is overly specific, and that does not take into account the uncertainties - because such guidance would risk the possibility of essentially “locking in” mis-timed policy moves.』

従ってカレンダーベースのフォワードガイダンスは経済状況の変化に対して対応できない(というか経済状況が変化した時にカレンダーと実際のギャップが発生するのでよろしくない)ので却下という話をしています。

で、以下もうちょっと詳しい説明がありますがパスしますけど、この部分の最後の所では物価に関して2%に戻るのは相当時間がかかるという説明もしています(背景には労働市場のスラックが大きいというのと、その後に出てくる不確実性が大きいという点がある)ので、まあ最初の労働市場の話から話は綺麗に繋がっているという感じです。


・不確実性の話では「金融危機の影響による構造の変化の可能性」を指摘

『Uncertainty』という所がほほうという感じ。

『While some uncertainty around forecasts is a given, currently the uncertainty is compounded by the unusual behavior of some key economic relationships since the financial crisis.』

ほほう。でちょっと飛びましてその具体例として「household formation」を挙げています。

『Figure 5 shows one of the challenges in predicting housing starts. While the U.S. population has grown at quite a consistent, smooth rate - with no visible impact from the financial crisis and Great Recession - the same is not true for the activity we call “household formation.”』

ほほう。

『Consider the example, often cited, of recent college graduates returning to their parents’ home after graduation rather than getting their own apartment. In part, the slowing in the household formation trend line ? you see it flattening, compared to population, beginning around 2007 - reflects many individuals not creating new households because of economic difficulties stemming from the financial crisis and recession. Parenthetically, the chart also shows a pickup in the household formation rate during the housing boom that preceded the crisis. But after the crisis, the rate of increase is clearly slowing relative to population.』

ということで、金融危機の影響で大学出てもニート(かどうかは知らんが)で実家に寄宿する人が増えてハウスホールドフォーメーションが増えなくなったという例ですな。

で、そういう例が他にもありますよという話でして・・・・・・・・

『Household formation is not the only economic indicator to show anomalous changes, and I will share a few of them in a moment. But to address the general issue of uncertainty, I would suggest the uncertainty is heightened just now in part due to the very real possibility that typical economic patterns have been altered by the financial crisis and Great Recession, their lead-up, and their aftermath.』

つーことで・・・・・・・

『In short, a variety of economic data have behaved differently since the recession. These pattern shifts may reflect changes in how households and firms will react as the economy improves. It is possible that previous patterns will be re-established as the economy normalizes. Alternatively, “scarring” from the recession may have longer-lasting impacts if households, firms, and labor markets persist in behaving in ways that differ from historical patterns. This uncertainty makes it particularly difficult to predict exactly what “normal” will look like - and why specific forward guidance in monetary policy becomes difficult as the economy gradually improves.』

と最後にフォワードガイダンスについてカレンダーデートは良くないという話をしていますが、ローゼングレン総裁の説明としては「経済のパターンが金融危機の影響で変わっている可能性があるので、通常の予測の通りに経済が動くのかは不確実」なので「金融緩和は長期的になるべき」というハト派な結論になるようです。

なお、これがブラード総裁辺りに掛かりますと、逆に経済のパターンを金融危機前の住宅や信用バブルで下駄を履いた分で考えると現在の回復を過小評価する、そもそも完全雇用の水準とかが変わっているかもしれない、とまあそんな感じの主張になったりもするので、実はこの構造問題でのアプローチっていうのは両方の使い方が出来てしまうので中々こう奥が深い話でも合ったりすると思います。

あとまあ時間が無いので引用は割愛しますが、今後の先行きの不確実性としてローゼングレン総裁は3点あげていて、一つは企業や家計の貯蓄行動に関してで、これは金融危機の影響ネタの続きの話になりますが、貯蓄率が下がらないままだと消費や投資の伸びがスローなままでしょという話、二つ目は労働市場でパートタイムの人が相変わらず多い件、3つ目は海外経済、という感じですがめんどいので引用は割愛します。

ということで、まあ投票権は無いのですが、ハト派よりの人の説明を鑑賞という所で。



2014/04/25

お題「固定金利オペが順調ロール/FSRは地域金融機関の課題の話が多いのかね/謎のニュースヘッドライン」

さあ今日はCPIですよ!!!ってか何か事前に妙に盛り上がって参りましたな。

○市場雑談メモ

・固定金利オペのロールが超順調となりましたな(驚)

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140424.htm
CP等買入 4,500 2014年4月30日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年4月28日 2014年7月28日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140424.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月28日スタート分) 6,010 6,010
CP等買入 8,105 4,190 0.087 0.089 25.9

ということで今回のオペは3か月物のロールだったのですが、折り返し元が1月30日にオファーされた3か月物でして、2/3〜4/28で3190億円だったものなので、ほぼ倍額のロールというお洒落な展開になっております。

つーことで今月は固定金利オペが9兆円(シグナルが7兆円位で3か月が2兆円位)程度ありまして、まあ歩留まりがいいところ半分も行けば御の字とか思っていたのですが、結局今月は8兆円近くの固定金利オペの実施となりましたという事で正直超意外な展開で逆に固定金利が全然ロールされないで短国買入に皺寄せが来て更に金利低下待ったなしとか懸念していたのの真逆とかどういう事ですねんという感じではあります(大汗)。

まあサイクルとしてはシグナルオペが思ったよりロールされる→短国買入オペを抑制→短国需給緩和→GCレート上昇→固定金利オペと市場金利の乖離が縮小する→固定金利オペのニーズが復活→固定金利オペのロールが増える、というような流れになっておりまして、3月までの動きの逆回転という事になっているのが何とも不思議ではありますな。

しかしまあ結局の所短国買入オペの動向次第でこれがまた逆転する可能性もある(ただし大物のロールをしているのでとりあえず7月までは残高がそれなりに維持されるのは確定)という所でして、これもまた官製相場という風情でございまして、長期債の市場もまあ官製相場にも程があるのですが、日銀買入攻撃で市場の価格発見機能が喪失していますなあ(まあ短期市場の場合はそもそもコールを誘導(今は建付け上していないが)するから半官製相場になるという面はあるのだが)という所ではござります。


・3Mも6bpとな

昨日の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140424.htm

(3)募入最低価格 99円98銭3厘5毛(募入最高利回り) (0.0661%)
(4)募入最低価格における案分比率 28.9038%
(5)募入平均価格 99円98銭4厘1毛(募入平均利回り) (0.0637%)

ということで先週の入札では6bp待ったなしとか言ってたら結局6の手前で切れてショートカバー入ったりした3Mですけれども、先週の新発が短国買入で捌けていなかったと思われる上にGCが足元で妙に高止まっていますので入札に向けて6bp台のオファー水準になっていたのですが、今回はそのまま順当に推移して足切りは6台後半に上昇(さすがにビットサイドのようですが)という流れ。

ま、こちらも固定金利オペのロールが妙に進んだ影響という所ですが、まあ逆から考えますと、短国買入に関して2月3月のペースで買入を進めてしまうと短国等の市場金利が馬鹿低下するという状況であり、まあ今月程度のペースならそこそこの水準で市場金利が推移するという話ですねという事ですので、そう考えますとやはりマネタリーベースの拡大においていわゆる「その他」の部分については現状程度の所に留めておかないと短期金融市場が盛大に壊れてしまうリスクがある、というオペレーショナルな限界が見えてきたという事でしょうな。



○金融システムレポート(概要)を斜め読み:地域金融機関に関する指摘が増えている希ガス

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(前回)

前回と今回を比較すると今回やたら量が多くなっているのがほほうという感じですな。

・8ページ増えているのですが内訳

前回と今回を比較して今回って8ページ量が多くなっているのですが、どこのページが増えているのかと見ますと・・・・・・・

『U.外部環境の点検』:変わらず
『V.金融仲介活動の点検』:そもそも小見出しがちょっと変わったのだが(今回の方があっさり味)2ページ増えています
『W.金融資本市場から観察されるリスク』:1ページ増えています
『X.金融仲介機関に内在するリスク』:1ページ増えています
『Y.金融システムのマクロ的なリスク評価』:2ページ増えています

ということで、基本的に万遍なく増えていまして、まあ内容が充実しましたなという話ではあるのかもしれませんが、増えた部分とかをチラチラ見ると味わいがあったりなかったりする。


・住宅ローンの項が登場とな

『V.金融仲介活動の点検』の辺りを見ますと、幾つか味わいがあるのですけれども、不動産関連の貸出に関連して今回住宅ローンの項目が概要に出てきたのがほほーという感じ。

『住宅ローン

・ 金融機関の住宅ローンは、増加傾向が続いている。

・ 消費税引き上げ前の駆け込み需要などを背景として住宅投資が拡大していることに加え、貸出金利の低下など金融機関の融資姿勢が積極化していることによるもの。

・ こうしたもとで、住宅ローンの採算性は趨勢的に低下している。』(今回分、以下断りの無い限り今回分から引用)

まあこの辺りに関しては従来のFSRでも指摘されていた事ではあるのですが、今回概要部分に堂々のご登場というのはほほうという所ですな。


・国債投資に関しては物は言い様とはまさにこのこと

『有価証券投資』の所では国債の部分でこんな記述が。

『・ 金融機関の有価証券投資は、全体としてみると、円金利リスクの一段の積み増しに慎重な先が増加するもとで、円債以外の有価証券への投資を徐々に増加させていく動きが広がってきている。

・ 円債投資は、昨年秋頃にかけて、大手行が投資残高を大幅に削減、地域銀行と信用金庫でも残高は小幅な減少に転じた。もっとも、その後は、債券利息収入を確保するために残高を復元する動きと、引き続き残高を削減する動きが混在。

・ 外国証券や投資信託への投資残高(円換算ベース)は、昨年末にかけて、大手行・地域銀行を中心に増加。本年入り後、投資姿勢は幾分慎重化しているが、これら資産での運用を増やそうとする先は、昨年前半までに比べると広がっている。』

とまあしらっと書いてあるのですが、「円金利リスクの一段の積み増しに慎重な先が増加するもとで」円債が減っているのではなくて、単に日銀が盛大に購入するのに金融機関が協力しているから国債の残高が減っているだけの話ではないでしょうかと存じますが何というポートフォリオリバランス進展自画自賛モードの大本営発表モード。

有価証券投資、というカテゴリーにおいて国債残高が落ちている分に関しては、日銀当座預金の拡大もある意味投資ではあるとは思うのでそれも考慮したらどうでしょうとは思いますが、恐らくFSRの趣旨から言って日銀当座預金についてはオーバーナイト運用の無限ロールになっていることから金利上昇リスクという意味では皆無に等しい、という認識になるからスルーしているという事だとは思いまする。

ただまあポートの金利リスクという意味ではそれはそうなのですけれども、ポートフォリオリバランスが進展しています(キリッ)的な話をするのってどうなんでしょという気はせんでもない。つーか御行の金利リスクはどうよと思いますけど。


・円滑化法案関連

『X.金融仲介機関に内在するリスク』の『中小企業金融円滑化法の下での企業の財務状況』というコーナーは今回入ったのですがここはほほうという所。

『・金融機関の資産内容の改善や信用コストの低下には、景気回復のほか、中小企業金融円滑化法のもとで業績不振企業に対する金融機関支援が実施されてきたことも、寄与しているとみられる。

・ 円滑化法の適用を受けたとみられる企業では、それ以外の中小企業に比べて、信用評点が「改善」した企業の割合だけでなく、「悪化」した企業の割合も高くなっている。

・信用評点が「悪化」した企業では、リーマン・ショック前の時点で評点がもともと相対的に低位で、かつ緩やかな低下傾向にあったが、円滑化法の適用を受けても、低下傾向に歯止めがかからなかった。

・ 今後、これらの企業についても経済・物価情勢の好転の影響が及んでいくのかどうか、また、金融機関の支援のもとで財務や事業の再構築を進め、企業価値の向上を図っていくことができるかどうかが注目される。』

ということで、ここは円滑化法案のメリットだけではなく、円滑化法案で問題の先送り攻撃をしている面のデメリットを指摘している辺りが中々イイハナシダナーという感じですな、うんうん。


・地域金融機関の収益性とな

『X.金融仲介機関に内在するリスク』で今回は思いっきり『地域銀行の収益性について』というのが出て参りました。まあ従来よりFSRでは地域金融機関の収益性に関して趨勢的な低下とか、有価証券投資(しかも債券)一本足打法は如何なものかとか、コスト下げるのに経営上の工夫(まあ露骨に言えば再編)をしたら如何でしょうかみたいなニュアンスのネタが毎度ホイホイと出てくるのですが、今回は収益性について出てきましたな。

『地域銀行の収益性について@

・ 2012年度におけるコア業務純益ROAの上位10%(高収益グループ)の先と下位10%(低収益グループ)の先について、コア業務純益ROAの推移を比べると、両者の差は1997年頃から拡大傾向が続いている。

・ 収益性の差が拡大していることについて、その要因を分解すると、2000年代前半以降、貸出利鞘、有価証券関連収益、非資金利益などの違いが寄与してきたが、2007年頃からは、貸出利鞘の相違が特に目立ってきている。』

貸出利鞘の足りない金融機関は取れということですかそうですか。


『地域銀行の収益性についてA

・低収益グループでは、高収益グループに比べて、中小企業向け貸出が伸びておらず、2000年代半ば以降は個人向けの伸びが抑制されている一方、地方公共団体向け貸出の伸びが大きい。

・ 高収益グループの自己資本比率は、低収益グループよりも高く、その差は近年になるにつれて拡大している。地域銀行の中でも、充実した財務基盤のもとで、適切にリスクを管理しつつ、貸出を増加させている先が、高めの収益性を維持している姿が窺われる。』

貸出増やせ言いましても地公体くらいしか優良な資金需要がある先が無かったりするケースもあるように思えるのですがががががが。


で、地域銀行云々ですが、次のコーナーでも何かこう地域金融機関の経営環境に関するアレな指摘が。

『人口動態の変化と家計預金

・人口動態の変化の影響は、これまでのところ、全体として家計預金の押し上げに寄与している。

・先行きについて一定の仮定のもとで試算すると、人口動態の変化の影響は、2020年代後半には全体として家計預金を押し下げるとの結果になる。

・人口動態の影響は、地域間で相応に異なり、大都市圏では当分の間押し下げ圧力として働かない一方、地方圏では徐々に押し下げ圧力として働いていくと見込まれる。』

うーむという感じですが、これ以外でも基礎的な収益力が弱い金融機関が国債投資に依存しているだのその手の指摘があちこちにちらほらという感じでして、総じて地域金融機関の課題みたいな話をしているように思えたのですがまだ斜め読みの段階(本文精読はまだ途中も途中なので)ですのでまた補足すると思います。


○何じゃこのニュースは???

昨日の夕方出て先物が10銭位下がっていた案件。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N4J24Y6JIJVG01.html
日銀は長期金利急騰を懸念、動かぬ債券相場が心配の種−物価反映せず
更新日時: 2014/04/25 00:00 JST

何かこうやってネット版の記事になったらトーンが下がった感じはするのですが、最初出た時はBOJのオフィシャルが債券市場をconcernとかそんな感じのヘッドラインが飛んでいてナンジャコリャという感じでした。

『4月25日(ブルームバーグ):経済・物価情勢が日本銀行の見通しに沿って推移する中でも長期金利は低水準にとどまっており、今後の長期金利の急騰リスクに日銀が懸念を強めている。関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより、以下同様)

ナンジャソラ。

『黒田東彦総裁はことあるごとに、日銀の長期国債買い入れが長期金利に対して強い下方圧力を加えていると述べている。しかし、関係者によると、日銀は長期国債を特定の水準に抑えることを目的としているわけではなく、経済・物価情勢が日銀の見通し通りに推移するならば、長期金利もそれを反映して緩やかに上昇することを望んでいる。』

という事ですが、そもそも市場のキャパを考えない馬鹿買いをして官製相場を作っているのはあんさんらでして、市場が反映しないのはケシカランとか言われてもお前が言うなとしか申し上げようが無い訳で。

『経済・物価情勢の改善にもかかわらず、長期金利が現状の0.6%前後の水準で推移する場合、債券市場が先行き大幅な変動に見舞われるリスクは高まる、と関係者は口を揃える。』

まー今の状況というのは日銀が2%物価安定目標の2年での達成待ったなし(キリッ)と言っている中で市場の方は物価がそんなに上がるかよ大体今の上昇持続的に行ける訳ねえじゃんヴォケとゆうとる状態な訳でございまして、お互いに「将来見通しが外れて泣くのはおめーだろ」となっているからこの有様という事ですよね。

ただまあここまでの所物価の推移においては日銀の見通しが大当たりしているだけに日銀が鼻息荒くフンガーとしておりますとこういう話になりますよね、という所だと思うのと、何かこれ最初に(プロ向けベンダーに)出ていたヘッドラインだともっと強いトーンのまるで地均しでも始めたかのようなヘッドラインだったのですが、記事全文に直してみると随分トーンが下がった感じで、ブルームバーグのヘッドライン詐欺攻撃キタコレという所だったのかも知れませんな。

とは申しましても、日銀様の経済物価見通しがリアルに大当たりした場合というのは当然ながらQQE政策も継続される訳ではございませんので、そらまあ潜在成長率プラス物価上昇率とか考えた時に債券市場の水準がががががというのは仰せの通りでございまして、まあ日銀様からしてみますと経済物価情勢が日銀の思うつぼに展開した場合にも債券市場がウゴカンチ会長になっていると、いざQQE政策見直しという事になった時に日銀ショック的な金利上昇されると困るってえのはあるでしょう。

でまあ中央銀行としてはこれは日銀だけじゃなくてどこでもそうだと思いますが、緩和政策から転換するというのは人気の起きない政策だったりしますから、その際にショックがどうのこうのとかなるのはあまり上手く無いですし、そこで悪影響が出ても困りますから、本来的には市場が徐々に織り込んで行って実際に出口の際には市場追認みたいな形で出口に出れる方が美しいしストレスも無い、とまあそういう風には思うでしょうから、そういう意味で「ワシらの見通しが当たっているなら徐々に市場が織り込んでくれた方が先行きの運営が楽ですよね」位の事は言うかもしれませんし、まあブルームバーグニュースのヘッドラインがそれをセンセーショナルな書き方にしましたよね、という所なんじゃないですかねえ、ただの妄想だけど。

まーそうは言いましても今の強烈な買入によって市場の価格発見機能ってだいぶ喪失しているような気がする訳で、日銀の思惑通りに物価情勢が推移するかどうかもアレですが、仮にその通りに推移したとしても市場がマイルドに織り込みに行く、というのはちょっと虫のよすぎる話なんじゃネーノとは思いまする。




2014/04/24

お題「中曽副総裁講演は読みようによっては味わいが/FSRが出ましたな(ただし頭出しのみ)」

ホワイトカラーエグゼンプションは「残業代ゼロ」が問題なのでは無くて過剰勤務(から健康被害とか)に繋がる問題であるというhamachan先生のご指摘ご尤も。しかし早速昨日からの報道は残業代の話一辺倒ですねorzorz

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-e622.html
残業代ゼロ糾弾路線の復活?
2014年4月22日 (火)

それはそれとしてモーサテに出てきた曲学阿世大先生が運用委員会に有識者会議のメンバーが入って「我々の考えが反映」とかゆうとるけどそもそもお前の発言って有識者会議の結論を盛大に逸脱してるだろうとモーサテを見ながら思うわけだが、相変わらず海外の基礎年金部分の話をしていない一知半解大先生(以下内務省検閲)。


○中曽副総裁講演から

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140423a1.pdf
「失われた20年」が示す将来への指針
2014年IADI・APRC国際コンファレンスにおける講演の邦訳

本チャンの英文はこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140423a1.pdf
What the Lost Decades Left for the Future
Keynote Speech at the 2014 International Conference Held by the International Association of Deposit Insurers, Asia-Pacific Regional Committee

で、英文の方をネタにするのが本来の在り方ですがめんどいので手抜きで日本語講演の方から。

『1990年代初頭のバブル崩壊後の日本経済の経験は、当初、日本特有なものであり他の諸国へのインプリケーションは乏しいとされておりました。しかし、それ以降の世界の経済金融の展開は、日本の経験が決して特有のものではなかったことを示しております。「失われた20年」の間に、日本銀行が金融システムの安定とデフレ克服を実現するために直面した数々の課題は、幾つかの貴重な教訓を残しました。こうした教訓の中には、未来への道しるべとなるものもあります。今日は、この間に得た知見のうち、特に今日的な意義を有し、かつ本コンファレンスの参加者の皆様方にも関係すると思われる問題を3つ取り上げたいと思います。具体的には、デフレ克服という使命、金融危機の拡大を封じ込める仕組み、そして、中央銀行の「最後の貸し手」としての役割です。』

ということでお話が始まるのですが、まずはデフレ脱却の所で少々興味深い論点が。


・デフレ均衡について思いっきり言及していますな

デフレ均衡に関しては昨年の総裁講演(きさらぎ会とか)でも「デフレは長期化すると脱却するのが難しくなる」とか「小幅だが粘着性のあるデフレ」というような説明をしていまして、まあ実質的には「デフレ均衡からの脱却の為に大規模な金融緩和政策が必要」という話をしていたのですけれども、今回の中曽副総裁の講演では「デフレ均衡」「(望ましい水準の)インフレ均衡」という複数均衡の説明をしたセントルイス連銀ブラード総裁のペーパー(この時はQE2実施前で、ブラード総裁は「デフレ均衡になると脱出しにくいからQE政策を使ってデフレ均衡への遷移を防がないといけない」という話をしていた)を引用しているのが興味深いです。

『1990年代の金融危機以降、日本経済は物価がじわじわと下落を続ける「デフレ均衡」に陥ったとされています。本日は、デフレ克服の使命との関係で、まずこのデフレ均衡についてお話しさせていただければと思います。』

『物価下落が続いたのは、第一義的には、日本経済に金融危機という大きなショックが加わり、需給ギャップが拡大したためです。今日では、金融危機が、経済の最も大切な基盤のひとつである金融仲介機能を毀損させ、実体経済に如何に大きなダメージを与えるかの説明は不要かと思いますが、当時はこのメカニズムは過小評価されていたと思います。2000年代に入り、労働人口減少という新たなショックが加わり、日本経済を下押し続けました。』

『しかし、こうした大きなショックに対して、中央銀行が十分に金利を引き下げることができれば、デフレが続くなどということはなかったはずです。この点、名目金利をゼロ以下に引き下げることができないことが決定的に重要です。図表1は、このことを大胆にデフォルメした形で説明したイメージ図で、出典はセントルイス連銀のBullard総裁の論文です1。』

ということで脚注1は
『1 Bullard, J. (2010): “Seven Faces of -The Peril-,” Federal Reserve Bank of St. Louis Review, September/October, pp.339-352.』

ということでこれは何度かこちらでもネタにしましたが説明が基本的には概念的な話(というのを大胆にデフォルメと中曽さんの講演の日本語バージョンではなっていますが)になっておりますので、まあそんなにヘビーでは無いと思うので原文一読推奨。

『この図では、名目金利、実質金利、インフレ率の関係を表わしたフィッシャー式と中央銀行の政策反応関数の交点として、均衡状態の名目金利とインフレ率が求まります。中央銀行は、インフレ率が低下すると金利を引き下げますので、政策反応関数は右上がりの線になりますが、名目金利をゼロより下げることができないため、図のように名目金利がゼロのところで水平になります。こうなると、2つの線が交わる点は2つ生じ、右側が「インフレ均衡」、左側が「デフレ均衡」となります。』

『当初インフレ均衡にあった経済に大きな下押し圧力が加わると、インフレ均衡からデフレ均衡に陥りかねません。図表2で実際に日米欧のデータをプロットしてみますと、日本経済がデフレ均衡の周辺で推移していたことがわかります。』

これはPDFファイルの図表を見てくらはい。またはブラード総裁のペーパー見るとか。

『こうした名目ゼロ金利制約やデフレ均衡の話は、当初、日本の特殊事例として、一部の経済学者の知的好奇心の対象でしかありませんでした。しかし、リーマン・ショック以降、先進主要国の中央銀行が同じような問題に直面するに至り、各国政策担当者にとって大きな教訓となっています。』

ということで、デフレ均衡からどう脱却するのかという話と、その現状についての説明が続くのですけれども、デフレ均衡みたいな話はまあ以前からしていましたので新しい話では無いのですけれども、ここまで正面切って直球ストレートでデフレ均衡の話をしたのって初見のような気がするんだが気のせいだったらスイマセン。


で、その対策と現状認識については簡単に端折って引用しますがこちらも微妙に味わいがある部分が。

『もうひとつの教訓は、経済がひとたびデフレ均衡に陥ると、そこから脱出することが如何に難しいかということです。デフレ均衡から抜け出すためには経済に十分な初速を与えなければなりません。その際、極めて重要なことは、持てる力を総動員することです。金融政策については、昨年4月に「量的・質的金融緩和」という思い切った措置を導入しました。と同時に、財政政策についても、長期の財政維持可能性に配意しながらですが、補正予算等で拡張的な施策が導入されました。』

ふむ。

『デフレ均衡からの脱出にあたっては、インフレ均衡にあっては独立的に運営される金融・財政政策を異なるアプローチで運営する必要があると思います。』

ほほう。

『昨年1月に導入しました日銀・政府の共同宣言は、こうした金融・財政政策の協業を可能にするコーディネーション・ディバイスとして重要な役割を果たしていると思います。』

ということで、ここの部分の味わいというのは二つあって、「インフレ均衡にあっては独立的に運営される金融・財政政策」ということでして、これはつまり現在デフレ均衡からの脱却過程にある(ということになっている)日本経済ですが、物価安定目標が達成あるいは達成一定の目途がついた時点では現在の異次元緩和政策ではなくなる上に、金融財政政策が一体運営みたいな形で進む訳では無いですよ、つーかまあ端的に言えば財政ファイナンスもどきの国債買入とか続く訳ないですよねーという事を指摘しているなあという所でして、もう一つは「量的質的金融緩和」ではなくて「1月の共同宣言」の方を「コーディネーション・ディバイス」としておりまして、これはご案内のように白日銀イズムがそれなりに残った形の文章になっていたりします罠という話。

まあこの後の話でちょっと顔を出すマクロプルーデンスの話もそうですし、昨日の国会での黒田総裁の答弁では財政再建路線の堅持というのがあったように、どうも日銀の向いている目は物価目標達成への自信に加え、(本当に達成した場合の)その後について、金融政策が財政抑圧方向にならない形でより通常の運営をすべきみたいな方向を見てるんじゃネーノというようなのを感じるのですけれどもちょっと変な読みのし過ぎですかねえ。


なお現状認識。

『これらの措置が奏功し、図表2で直近の実績をみると、わが国経済がデフレ均衡から着実に脱出しつつあるようにみえます。』

『脱出しつつあるとはいっても、2%のインフレ均衡に到達するにはなお道半ばのところにあります。こうした観点からは、この4月からの消費税率引上げの影響が注目されているところです。自動車のように、1997年の税率引上げ時よりも大きな駆け込みが起こっているようにみえる財も一部にみられますが、個人消費全体としてどうかとなると、なおデータの蓄積を待ちたいところです(図表3)。』

ということですので、まあ今回の展望レポートでは強い見通しが示されるでしょうけれども、さすがに勝利宣言という訳には逝かないですな、当たり前だけど。

『私自身は、日本経済は全体として消費税率引上げの影響を吸収していく頑健性を備えていると判断しています。その要因としては、雇用・所得環境が改善を続けていることに加え、前回1997年の税率引上げ時に存在していた問題が今回はないことが大きいとみています。特に、当時は金融危機により、経済を支える金融仲介機能が壊れていたのに対し、今回は金融システムの健全性が維持されていることが決定的に異なると思っています。これは見方を変えると、その当時の過剰債務、過剰設備、過剰雇用といった問題が、その後の企業努力もあって、解消に至っていることと対応しています(図表4)。』

まあこれは確かにそのような気がします。つーか97年の落ちこみを全部消費税のせいにする風潮の方が変だろと当時も何故か金融市場を生業にしておりました身としては思うのですけどね。


・金融危機の拡大を防ぐ仕組みという説明の中にしらっとマクロプルーンデンスの話ががががが

『3.金融危機の拡大を防ぐ仕組み』というパートですが。

『一国の経済が、物価安定のもとでの持続的成長を達成するには、安定した金融システムのもとで円滑な金融仲介機能が発揮されることが前提です。金融システムの安定は、金融政策の有効性を確保するためにも必要です。これは、金融政策が公開市場操作など金融機関を相手方とする手段によって実施される点で、金融システムが政策効果の主要な伝搬チャネルとなっているためです。』

ふむ。

『日本銀行法では、金融システムの安定に貢献することは、物価の安定と並ぶ日本銀行の目的と定められています。こうしたもとで、日本銀行は、考査やモニタリングを通じ、金融機関の経営実態の把握に努めています。加えて、その過程で得られた個別金融機関の情報も活かしつつ、マクロ・プルーデンスの視点から、信用量やレバレッジの過度の増大、資産価格の過度の上昇といった金融不均衡が広範に蓄積されていないか、金融システム全体の情勢も点検しています2。金融不均衡の点検は、現在のわが国の金融政策の枠組みのもとで、重要なポイントのひとつとなっています。』

で、この脚注2ですが、

『2 例えば、日本銀行は、わが国金融システムの安定性について包括的な分析・評価を示し、金融システムの安定性確保に向けて関係者とのコミュニケーションを深めることを目的に「金融システムレポート」を年2回作成・公表している。』

ということですが、金融システムレポートがちょうど昨日公表されたんですよね。後ほどちょっとだけ。


でまあ日本の経験を振り返って、という話があるのですが、この中では日本の話だけではなくて海外の事例(つまり最近の事例)の話もしておりましてまあ面白いのですが長くなるので思いっ切り端折りますけど。

『このため、危機が現実化した場合に備え、被害の拡大を可能な限り食い止める、実効性ある仕組みが不可欠です。この点に関し、1990年代以降の日本の経験は示唆に富みます。不幸にして不良債権問題が、約180の預金取扱金融機関の破綻を伴う大規模な金融危機へと拡大することを回避できなかった事例だからです。後知恵となってしまう点は否めませんが、当時、迅速な対応を妨げた主な要因は、次の3点だと思います。これらは、今後、各国が金融危機の発生・拡大を抑える仕組みを構築していく上で、有益な視座を提供するものと考えています。』

ということで3点ですけれども、

『@金融当局による事態の認識の遅れ』
『Aシステミック・リスクの本質に関する認識不足』
『B有効なセーフティー・ネットの未整備』

ということで、これは特に米国での事例も同じです罠という所ではありますが、中曽さんの講演でもその辺りはチクチク言及しているのでありますが、その辺はスルーします。


・LLRに関して、LLRだけではなくて「最後のマーケットメーカー」というのはジャパンの現状的には・・・・・・

3つ目のポイントはLLRでして、最初はバジョットルールの概念を交えながら日本銀行の特融に関する説明からら始まりまして、LLRに関する説明があるのですがまあそこはパスします。

その次の小見出しが『(LLRの新たな側面)』となっていまして、まあ仰る話はその通りなのですが、今のジャパンの債券市場ちゃんを見ておりますと思わず吹いてしまったのはここ。

『@最後のマーケット・メーカー:Market Marker of Last Resort』

ニヤニヤ。

『中央銀行の「最後の貸し手」機能は、新たな局面を迎えていると思います。すなわち、先般のグローバルな金融危機では、金融資本市場の深化を背景に、システミック・リスクが資金流動性と市場流動性の相乗的収縮によって拡大することが明らかとなりました。2007年夏の金融市場の混乱以降、市場参加者の間でカウンターパーティ・リスクへの懸念が高まり、これを背景に市場機能が低下しました。これへの対応として、中央銀行は、公開市場操作により市場全体に資金を供給することで、機能回復に乗り出しました。特に、2008年9月のリーマンブラザーズ社の破綻後において、FRBはCP の発行体やABS 保有者への資金の貸出を行いました。』

ですなあ。

『日本銀行も危機の直撃を受けた大企業の資金調達手段であるCP や社債の市場流動性の急激な低下に対処するためにCP やABCP、社債の買入れを行うなど、踏み込んだ措置を講じました。』

まあ当時はアタクシも散々悪態ついたと思うのですが、正直日銀の当時の動きは利下げをすれば何とかなるという感じで、買入の実施に至るまでの時間が少々掛かり過ぎだったと思いますけどね。その結果として買入の効果を強いものにしたら今度は買入効果が強烈に効きすぎて今に至るんですけど。

『近年では、欧州債務問題を背景にユーロエリアにおいて深刻化した金融市場の分断に対し、ECBは市場機能の修復を企図して3年物 LTROs (Longer-term Refinancing Operations)による無制限の資金供給を実施しました。これらは、市場の仲介機能を代替するものであるため、中央銀行の「最後の貸し手」機能は、「最後のマーケット・メーカー:Market Marker of Last Resort」の機能を包摂する姿に発展していったと言えます。』

ということで、まあこれはこれでその通りなのですけれども、一方で現在日銀が国債市場という金利市場の根幹の市場においてまさに「最初のマーケットメーカー」となってしまって債券市場の値動きが盛大に抑えつけられて市場の価格発見機能はどうなったんでしょうかねえという状況になっている件を思いますと思わず茶も吹いてしまうというものであります。


・最後にしらっとまた「マクロプルーデンス」に言及

麿先生もニッコリな最後のまとめ。

『日本の経験は、金融システムの安定が一旦損なわれると、実体経済との間で負の相乗作用が作動を始めること、そしてそれがゆえに、金融危機の予防および金融危機の管理のための手段を予め整備しておく必要がある、という教訓を残しました。』

ですな。

『本日、私は主として金融危機の管理についてお話ししましたが、金融規制やマクロ・プルーデンス政策といった金融危機の予防のための手段も同様に重要であるということも強調しておきたいと思います。』

キタコレ。

『また、近年の金融危機への対応を通じて、私たちは、中央銀行の「最後の貸し手」機能が、グローバル化に潜む種々の課題に対応していくため、常に洗練し続けなければならない重要なツールであることも認識しました。』

ということで、最後の所でまた「マクロプルーデンス」というのが出たりして中々こう味わいが深い訳です。

・・・・・・・ということでFSR関連ネタに続くというこのタイミングでこの講演というのがまた味わいがあるということで、目先の政策インプリケーション云々とは違う意味で色々とこう味わいを感じる内容の講演だったりしましたが深読みのし過ぎですかそうですか。


○FSRネタは時間が無いのでまた後に続くのだが少々

FSRである
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr140423.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr140423b.pdf(概要)

でまあこれをネタにするとかなりのヘビー振りになるので時間と量の関係上今朝はパスなのですが。


日銀の新着を見るとしらっとこのFSRと同時にこんなのがあります。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j07.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j07.pdf(全文)
『金融活動指標』の見直しについて

要旨の方のURL先から引用しますとこうなります。

『本稿では、『金融活動指標』の見直しを行う。指標の選定にあたっては、まず、候補となる指標を14のカテゴリーに分類した。次に、これらのカテゴリーごとに、分類された指標の有用性を以下の2つの観点から検討した。第一に、わが国の経済・金融活動に大きな影響をもたらした平成バブルの過熱を察知できたかという観点である。第二に、各種の統計的な過誤を小さくできるかという観点である。その際、指標のトレンドの算出方法や、トレンドからの乖離がどの程度であれば過熱と判断するかの基準(閾値)についても、複数の選択肢を考慮した。各カテゴリーから最も有用性の高い指標を1つずつ選んだ結果、従来の金融活動指標の10指標のうち、2指標を廃止する一方、1指標については継続使用、3指標についてはトレンド算出方法を変更、4指標については利用データの加工方法を変更することとなった。これら8指標に、新たに採用する6つの指標を加えた14指標が、新しい金融活動指標である。』

ということで、この金融活動指標自体は2012年4月の金融システムレポートから公表されているのですが、中々こう味わいのある指標でして、まあ今までの所この指標が何らかのアラームを出しているという事案は無いのですけれども、マクロプルーデンスという観点からはこの金融活動指標ってそこそこ重要な話になるのではないかと思われるので、内容とかも注意したい物です。

でもってじゃあ内容どうなってますねんという話はこれまた論文まだろくすっぽ読めてませんのですが、まー要旨と最初の数ページ見る限りではそこに何らかの政策意図が入ってどうのこうのという事ではないようには見えます(と言いつつ全部読んだらまた話が変わるかも知れん)けど、マクロプルーデンス的に重要そうなので読むのが吉のように思えます。

なお、この金融活動指標ですけれども、FSRの概要(PDFファイルの小さい方)ですとスライドショーの本文29ページと30ページ(PDFの30枚目と31枚目)に説明がありまして・・・・・・・・

『Y.金融システムのマクロ的なリスク評価』

『金融面の各種リスク指標を点検すると、金融資本市場や金融機関行動において、マクロ的に留意すべき不均衡や過熱方向の動きは示されていない。
・ 総与信・GDP比率は、長期的な趨勢の近傍で、横ばい圏内で推移。
・ 金融活動指標をみると、ほとんどの指標で過熱方向の動きは示されていない。』(FSR概要の本文29ページから)

という評価になっていますので、まあマクロプルーデンス発動という話でも何でも無いのですが、日銀の目線がまあ目標達成の方にある中ですからして、まあ出口政策の話は時期尚早とは総裁はゆうてますけど衣の下から鎧がチラリズムというのは杞憂の深読みですかそうですかという所で。

#まあ本当に目標達成すると思ってるなら出口の後の事を考えない訳無いと思いますがねえ





2014/04/23

お題「相場もアレなのでスタイン理事講演ネタの続きなど雑談系である」

ムーシャ先生お告げ第2弾キタコレ。
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/119
日本株が反発に転ずる理由 A
〜消費税増税の吸収順調、デフレ脱却の公算大〜

途中までそれらしい説明をしているのですが『(3)悲観要因は変わり得る』という小見出しから先の説明が盛大に希望的観測になっててワロタというか何というかなのですが、それよりもムーシャ先生先週は日銀に追加緩和クレクレ言ってたと思うのだが増税の影響が軽微でデフレ脱却するなら追加緩和要らないような気が。


○ニュース雑談と申しますか

・GPIFの運用委員がどうのこうのというメモ

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0ND1RT20140421
政府、GPIFの運用委員に米沢氏ら7人任命
2014年 04月 22日 00:00 JST

『田村憲久厚労相が同日付で任命する。新たに加わる運用委員の任期は2年。米沢氏のほか、佐藤節也・東洋大教授、清水順子・学習院大教授、菅家功・連合総合生活開発研究所専務理事、武田洋子・三菱総研主席研究員、堀江貞之・野村総研上席研究員の6人を選出。大野弘道・味の素常務執行役員は再任する。』(上記URLより)

やはりあの言いたい放題ジジイは運用委員という責任ある立場には就かずに安全地帯から勝手放題言うというポジションを確保されておられるようで、まさしく人間の(以下自粛)。

でまあ何がどうなるのかというのはこれからでしょうけれども、きちんとした財政検証ときちんとしたリスク分析をした結果としてきちんとした資産配分を考えていただけるものと期待しております(棒読み)という所でございまして、国民の年金を意味不明な費消をするようになった場合はとりあえずここのお名前の方々は永遠に語り継がれる位の覚悟をして頂きたい物だと存じます。まあそのプロモーターのジジイは逃げてるんですけどね。


・2%の定義とかどの程度まで拘ってくるのかという雑談

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3771?page=2
アベノミクスを支える浜田宏一に聞く 「成熟した債権国」化する日本 今後の針路
2014年04月21日(Mon)  WEDGE編集部

『─日銀が「2年で2%の物価上昇」を目標として掲げています。

無理に2%までもっていく必要性が分からない。日銀としては、経済政策をやるにはコンシステンシー(一貫性)が必要であり、おそらく失業率を改善させて完全雇用にするのに2%くらいは必要と見込んで目標に設定し、それを信頼してみんなが行動するといういわゆる合理的期待形成を目指したものであろう。研究上でも有益な考え方であるが、現実には予想は外れることが多い。』(上記URLより)

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE8BQ04C20121227
インタビュー:日銀は無制限緩和を、物価目標2─3%が適切=浜田宏一教授
2012年 12月 28日 08:47 JST

『「(物価安定の目途で示している)1%のインフレ率は、他の国が2%という中で、1%ずつ円高が進む政策。景気振興策としても非常に弱い。デフレだったから目指す物価上昇率が低くていい、という考えはまったく逆で、現在のようにデフレ予想が定着している中では、むしろショックを与えないといけない。(物価目標は)2%ないし3%がふさわしい」』(上記URLより)

とまあ毎度お馴染みのえーっと前何の話をしてましたっけ先生というのはさて置きまして、デフレ脱却に関しては引き続きああだこうだという話は飛んできますけれども、最近はすっかり安倍ちゃんのお取り巻きな方々から「2%」だの「3%」だのという声が出なくなっていて、別にこれ浜田先生だけの話じゃなかったりするような気がするんですよね。

でまあそうなりますと、木内さん方式じゃないですけれども「2%は中長期的に目指す目標」として看板は掲げるにしてもアプローチを変えた方が良いのでは的な話とか、まーその手の「2%の物価安定目標」の示す実際の内容はどうあるべきなのかという話がもう暫くすると(恐らく消費税増税で目先の物価指数がグダグダになるのでその影響がどの位かが見えてくる段階以降)議論になってくるでしょうなあという事になるでしょうし、その際に安倍ちゃんサイドが本当に実際の数値としての2%物価上昇に拘って来るのかという点は影響が無いとは言えないでしょうなあとか何となく思うのでございました。


○引き続きスタイン理事のマクロプルーデンスバリバリの講演ネタである

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140321a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140321a.pdf
Governor Jeremy C. Stein
At the International Research Forum on Monetary Policy, Washington, D.C.

Incorporating Financial Stability Considerations into a Monetary Policy Framework

・Taperingの背景となる理屈だったのねという件

昨日引用した中で脚注が付いている部分がありまして、この部分も含めないといかんのであったので再掲しますすいませんすいません。

『As an illustration, consider the period in the spring of 2013 when the 10-year Treasury yield was in the neighborhood of 1.60 percent and estimates of the term premium were around negative 80 basis points.3 Applied to this period, my approach would suggest a lesser willingness to use large-scale asset purchases to push yields down even further, as compared with a scenario in which term premiums were not so low.4』

ということで昨年のTapering前後の動きの話ですけれども、まずは脚注3

『3. The 10-year nominal rate hit 1.63 percent on May 2, 2013. An estimate of the term premium based on the oft-cited methodology of Kim and Wright (2005) was negative 0.78 percent on this day.』

つーことですからまさにTapering前はタームリスクプレミアムが低いという話でして、脚注4

『4. Again, I stress that this statement is directional, not quantitative--I am not claiming that the magnitude of the adjustment one would want to make is large, or that the policy we had in place at the time was miscalibrated in any absolute sense. Rather, my point is just that the financial stability costs of asset purchases are likely to loom larger when term premiums are more negative, and that this consideration belongs in the discussion.』

ということで、スタイン理事が最初の部分で「このコンセプトを実際にどう運用するのかは難しい問題」と説明しているように、タームプレミアムがマイナスだから常に問題という話では無くて、資産買入政策のファイナンシャルスタビリティーに対するコストはタームプレミアムのマイナスがより大きい時に問題になるでしょうという概念的な説明という事ですな。

ただまあこれは昨日も申し上げましたが、図表1(PDFの方を見てちょ)にありますように、Taperingトークの後の金利水準が10年USTのタームプレミアムがほぼゼロ近辺になっているという説明になっていますので、つまり昨年のTapering開始決定に向けた動きに対する理論的背景の中に(まあどの程度あったのかは微妙ですけれども)単なる「労働市場の見通しが改善したから」というだけではなくて、労働市場や経済の改善に伴い本来上昇すべき長期金利が資産買入によって抑えられてタームプレミアムのマイナスが無駄に拡大しており、資産買入政策の弊害が高まっている、というような話があったんでしょうなあというのが示されていたのでご紹介という所でした。


・金融安定化の概念を金融政策運営にどう組み込むかという概念的なお話

『Do Financial Stability Considerations Belong in a Monetary Policy Framework?』というモロにマクロプルーデンスなお題の本論に参ります。

『However, let me start with the conceptual question of whether financial stability considerations belong at all in a monetary policy framework.』

ということで概念的な話としてマクロプルーデンス的な「金融安定化」を金融政策のフレームワークに加えるか否かという話から入るのでした。

『As I said earlier, I think the clear in-principle answer here is "yes." The generic argument rests on three assumptions.』

最初でも言ってたように原則的にはYesとな。

『First, suppose that the Federal Reserve focuses only on its traditional dual mandate of maximum employment and price stability. To keep things simple, suppose further that these two goals are not in conflict with one another--say, because aggregate demand is weak, depressing both employment and inflation--so that we can boil things down to one objective: keeping unemployment close to target.』

ここはほほうと思いましたが、デュアルマンデートで物価と失業のコンフリクトが起きない場合、即ち需要が弱くてインフレも雇用も弱い時は失業率を重視して金融政策を行うべきとのこと。

『With the usual quadratic loss objective function, this assumption would say that the Federal Reserve cares about minimizing the expected value of (U - U*)2. A little bit of algebra shows that this objective function can in turn be decomposed into two pieces: (1) an "expected shortfall" term, given by the squared deviation of expected unemployment from the target level of U*; and (2) a "risk" term, given by the variance of realized unemployment, U.5』

で、これ最初の計算式の所にある2は2乗の意味で、最後の5は脚注の意味でして、脚注の方ではこんなのがあるがしまったまだこれ読んでないorzorz

『5. Kocherlakota (2014) emphasizes the same decomposition of the Federal Reserve's loss function. Note that, in focusing only on mean and variance, this functional form sets aside what may be another important aspect of vulnerabilities: tail risks that are not well captured in variance as opposed to higher moments.』

まあ何か急に難しそうな言い方になっているのだが、まず単純にデュアルマンデートのコンフリクトが起きて居ない状態、というか需要が弱くて金融緩和しましょうというような場合には金融政策運営による先行き失業率見通し数値の乖離と、政策による実際の失業率の推移の変化(つまり実際に起きたボラティティーってことかいな)の差分(の二乗)を極小化する方向で運営するのがよろし、とか何とか言ってるような気がするが難しくて良く判らんので誰か教えてジェネラル。

『Second, the argument assumes that there is some variable summarizing financial market vulnerability--I will be abstract for the moment and just call it FMV--which is influenced by monetary policy.』

FMVって名前が付いている(financial market vulnerabilityということでしょうな)のですが、金融政策によって起こされる金融市場の脆弱性がある場合の考察とな。

『That is, easier monetary policy leads to increased vulnerability as measured by FMV.』

キタコレ。

『Moreover, when FMV is elevated, there is a greater probability of an adverse event--some kind of financial market shock--that, if it were to occur, would push up the unemployment rate, all else being equal.6 』

で脚注6ですが

『6. If I had introduced an explicit time dimension, it might be more natural to assume that easier monetary policy today raises the probability of an adverse event at some medium-run future date, even while reducing the probability in the short run. In this case, there might be an interesting set of intertemporal tradeoffs to be considered, particularly if the economy were in a very vulnerable position today. In any event, these are just assumptions at this point, meant to illustrate the logic of the argument.』

ということでこれまた脚注キタコレですが、緩和的な金融政策は短期的には金融市場の脆弱性を弱める事ができるものの、中長期的には金融市場の脆弱性を高めてショックに弱くなるという時間的な不整合性があるとかもう思いっきりBISビューバリバリでして、しかも先般引用しました3月FOMC議事要旨にもありましたように、何気にファイナンシャルスタビリティーの議論があったりするという事ですから、スタイン理事のこの辺りのコンセプトは(丸々反映されているとは思えませんが)FOMCでの議論に一定の影響があったと申し上げるしかないなあとゆー所でありまして、ただまあ従来の緩和的な系統の人もいますし、はたまたインフレターゲット寄りの人も割と多い(先ほどの引用部分を見ると判るようにスタインさんはインフレーションターゲットバリバリとは言い難い気がする)という事ですから、金融政策の正常化ステージに向かう中でFEDの情報発信は混乱するだろうなあというのもこの辺を読んでいて思うのでありました。

まあそれは兎も角として。

『The third and final assumption is that the risks associated with an elevated value of FMV cannot be fully offset at zero cost with other nonmonetary tools, such as financial regulation. To be clear, this assumption does not imply that regulation is not helpful in reducing financial vulnerabilities--it only says that regulation is not a perfect instrument.』

『These imperfections could stem from regulatory arbitrage; political-economy constraints; or the fact that too much regulation can also impede economic growth, just like overly restrictive monetary policy.7』

ここがまたイエレン議長辺りのコンセプトとスタイン理事のコンセプトの違いでして、イエレンさんも勿論ケースによっては金融政策によって金融安定化を図る必要がある場合というのは認めている(所謂FEDビューだと「バブルがこけてから金融政策で対処」でしたがさすがに今それを言う人は居ない)のですが、スタインさんがここで言うようなコンセプトにはなっていませんなという所。

でもって金融政策が過度に抑制的なのと同様の効果が過剰な規制でも起こるという指摘もありまして、この辺の問題を金融政策で対処するのか規制で対処するのかというウェイト付けの匙加減によって、金融政策は緩和的だけど規制が無駄に五月蝿くなるという変化技も考えられまして(というか切れ切れにしか読めていないが米国の流動性規制とかレポ規制とか無駄に厳しい気がするんだがこれも大型連休中の学習課題な)、加減がどういう風に傾くかというのは色々と影響が起きそうな気がします。スタイン理事は規制ガチガチするよりもマクロプルーデンスで何とかならんかというコンセプトのように見えます。

『In this setting, even with inflation concerns entirely set aside, monetary policy faces a tradeoff.』

インフレの問題が無い場合でも金融政策のトレードオフがあるとな。

『Consider a situation in which unemployment is above target. A more accommodative policy has the usual benefit of lowering expected unemployment and thus reducing the expected shortfall term in the objective function.If, however, it also raises the conditional variance of the unemployment rate via an elevated-FMV channel--thereby increasing the risk term in the objective function--then there is a cost to be weighed alongside the benefit.』

失業が高い時に緩和的な金融政策をしたら失業低下には寄与するがFMVが高まると。

『And importantly, this is true even when financial stability is not a separate objective in and of itself; as I have framed it, financial stability matters only insofar as it affects the degree of risk around the employment leg of the Federal Reserve's mandate.8』

脚注8ではタルーロ理事の講演を読めとかまだ読んでねええええorzorzorz

『8. See Tarullo (2014) for a similar observation.』

『To be sure, absent a concrete measure of FMV, as well as some sense of the responsiveness of FMV to monetary policy, this discussion is all pretty theoretical and non-operational. So I will turn to measurement in a moment. But it is worth noting one useful qualitative observation that emerges just from the logic and from the nature of a quadratic loss function.』

でまあここまでの話はオペレーショナルな話ではなくてあくまでもコンセプチュアルな話ですなというのはスタインさんが仰せで。

『In making the tradeoff I just described, the marginal benefit of using easier policy to reduce the expected unemployment gap is greater when the gap itself is large--that is, when unemployment is far above target. In this case, even a quite high level of financial vulnerability may not imply a much different stance of monetary policy than would fall out of a more traditional analysis. However, as the unemployment gap shrinks, financial stability risks loom larger in relative terms, so an analysis that takes them on board may lead to more of an adjustment in the stance of policy.』

これもまたTaperingの背景的な話になりますなという所で、実際の失業率や見通しベースの失業率とのギャップが大きい時には緩和的な金融政策によって金融市場の脆弱性が拡大するというトレードオフ問題はさほど問題にはならないけれども、このギャップが縮小していく過程において緩和的な金融政策によるファイナンシャルスタビリティーへのリスクが拡大するという認識を示していまして、まさしく「失業率の低下に伴いTapering」という話のバックグラウンドの概念に使われていたんじゃネーノという所ではあるなあと思いましたです、はい。


・実際に重要なのは「金利市場におけるリスクプレミアムの動向」のようです

『Okay, But How Do You Measure Financial Market Vulnerability?』

というお題が次にありまして(そらそうだ)、その中の小見出しが二つあるのですな。曰く、

『Financial Sector Leverage』
『Risk Premiums in the Bond Market』

ということですが、最初の金融セクターのレバレッジというのはちょっとだけでして、その後の「債券市場のリスクプレミアム」というのが驚異的にクソ長い記述になっているのですが、これに手を付けるとオワランチ会長になってしまいますので続きはやるかもしれませんしやらないかも知れません。まあうまくまとめたいとは思うのですけど、要するに債券市場やローンなどの金利市場におけるリスクプレミアムが過剰に縮小した結果マイナスとかになった場合には、金融市場の脆弱性が高まっているという認識になりますよってな話であって、それに対してlean against the windな金融政策を実施というのがスタインさんのコンセプトになるんでしょうなあと思うのでありました。

でまあ何ですな、スタイン理事はもうすぐ退任(5月末ちょっと前)しちゃうのですが、この辺のコンセプトがどのように金融政策運営に反映するのでしょ、というのは気になる所でして、同じくファイナンシャルスタビリティー関連ではバリバリらしいフィッシャー副総裁とかどういう出方になるんでしょというのも気になる次第。

と、まるで来週のFOMCに関係ないネタをひたすら展開しておりますが、スタイン理事は最初に出てきた講演から異彩を放っていて(最初の頃からファイナンシャルスタビリティーの話をしていて、エージェンシーREITだのシンジケートローンだのの市場数値を思いっきり出したりした説明の講演とかもすげえ面白かった訳ですが)理事退任はヲチャー的に惜しいなあと思う所です。





2014/04/22

お題「須田さんインタビューとかスタイン理事講演とか微妙に変化球ネタである(汗)」

何でしょうこの大きなお世話あるいは統制経済なアレは。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140421/k10013887711000.html
企業の収益力向上の方策 取りまとめへ
4月21日 4時18分

特振法ちっくな話が経産省から良く出てくる訳ですがいつの昭和30年代だよと小一時間問い詰めたい次第ですの。

で、別件ですが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0ND1DD20140421
UPDATE 1-政府高官がTPP報道に不快感示す、日米協議「壊れた」
2014年 04月 21日 17:02 JST

・・・・・・・・・・・いやーそれってお漏らしする人がいるからでしょと思うのですが、こう毎度ポロポロ出ていて交渉に影響無いのかねと思ってたが影響します罠という所でありまする。

#渡辺先生がモーサテ出ているのですが、例の物価指数に関しては参考にはなるとは思うのだがカバレッジ的に考えた場合にそこまで連日大注目すべきものじゃないような気もするんだが、というか「日経に出たら終了」の法則にならない事を祈りますが

さて、昨日は入札もオペも無かった事もありまして市場雑談ネタも碌に無かったりする次第で、GPIF関連の怪しげなヘッドラインはまた出ていましたけど、もう少しネタが溜まったら反応しようかねえ(しかし話は違うが民主党はミスター年金とか元お茶の間貯蓄アドバイザーとかがいるのにGPIF関連の動きで「国民の年金ガー」とかやらないんですかねえセンスねえなあと思いますけど)という所で、今日は講演とかインタビューネタに走るのでありました。


○須田さんのインタビュー

この方も何ちゅうか良くも悪くも変わったお方でしたな。
http://jp.reuters.com/article/idJPTJEA3K00220140421?sp=true
インタビュー:追加緩和はコスト大きい=須田元日銀審議委員
2014年 04月 21日 21:01 JST

色々と味わいがあるので観賞(^^)。

『──異次元緩和政策の評価は。』

『「安倍晋三政権が推進する経済政策の『3本の矢』の1つであり、金融政策だけを評価することは難しい。もっとも、それまでの決められない政治からの転換や、循環的にも景気が上向きになるという、いいタイミングで打ち出したことは効果があった。金融政策を結果論で評価するなら、これまでのところはうまくいっている」』(上記URLより、以下同様)

「結果論で評価するなら」で吹いたペパーミント茶を返せと(^^)。

『「黒田総裁が効果があると言い続けるなど、それまでとは違ったコミュニケーションが期待に何がしかの効果を及ぼしている可能性はある。しかし、マネタリーベースの拡大が期待に働きかける効果は引き続き明確ではないし、働いているとは思えない。高まった市場の期待も足元で剥がれてきており、期待に働きかける政策の難しさをあらわしている」』

つまり置物先生のマネタリーベース直線理論ではなく気合理論が効果を出しているかもしれないと。


『──出口戦略につい黒田総裁は時期尚早と繰り返している。』

『「あれだけ確信を持って目標が実現できると言うのであれば、当然、出口も考えなくてはいけない。誰も出口が見えない時にこそ出口の話をする方が市場に余計な影響を与えないで済む。出口の話をきちんとやってくれた方が財政ファイナンスに対する懸念も軽減されるし、市場が本気で国債運用のリスクについて考える必要が出てくる。金融不均衡の蓄積を回避するには、リスクに対して鈍感になってはならない」』

まあこの辺は難しい所で、結局の所気合理論での金融政策運営である、と割り切ってしまうとなると、出口の話をするのはやはり時期尚早のような気がするんでどうなんでしょうね。本来的に言えば景況感と物価観の改善に伴って長期金利やらフォワードの金利やらが自然に上昇してくれるのが一番日銀としてはウマーなのですけどはてさてどうなるやら。


『──白川体制以前の日銀とデフレに対する認識の違いは。』

『「今をデフレ均衡と捉えるかどうかだと思う。私が日銀にいたときには、しつこいデフレ期待があることでデフレになっているとは評価していなかった。しかし、黒田総裁はデフレ均衡と発言しており、そう思う限りは、そこから脱出するために人々がびっくりするような政策で期待に働きかけるしかなかったのだろう」』

うーむ、デフレ均衡に関する見解はどうなんでしょ。当時もそれらしい話をしていた人もいたとは思いますけど。

『「一方、白川総裁以前は、不確実性が高く実体経済の把握も十分ではない中で、大きく間違うことがないように、多くの人が納得する範囲で政策効果を考えながら、グラジュアリズム(漸進的)で政策を行っていた。会合ごとに私としては常に最適な政策をとっていたつもりだ。不確実性は依然として高いが、しかし経済物価が上振れしつつある状況で、そのグラジュアリズムを捨てると聞いた時は、デフレの考え方も含めてスタンスが大きく違うと感じた」』

つまり今の政策は気合でやっているので副作用も大きいと言いたいようなのですが、その割には2%物価目標が行かないという見通しになっているのはちと話として微妙に変じゃネーノという気もする。


『──2年で2%の物価目標達成は実現できると思うか。』

『「2年で2%の物価安定目標の達成は、このままでは実現できないと思う。デフレから脱却するには期待成長率を高めていくしかないが、そのためには『第3の矢』である成長戦略の実行が最も重要だ。成長戦略の中心は政府ではない。企業や個人など民間の努力が不可欠だ。個人的には、少子高齢化が進む中、生産性をこれまで以上に高められるのか、財政は大丈夫なのか、という危機感を非常に感じている」』

『「2%のインフレはなかなか達成が難しいと思っているが、日本売りが起きたり、財政の問題が深刻化し、日銀が財政ファイナンスにのりだせば別。特に財政の問題を起点に日本売りになる場合には、円安になる可能性は否定できない」』

ということなのだが、では副作用として金融不均衡の蓄積がどうのこうのという話をしているのですが、それが結果としてどういう形で問題になるのかがイマイチワカランチ会長。まあインタビューの記事なので全部をカバーしている訳でも無いと思うので実際にはもう少し詳しい認識を聞きたい所です。

#どちらかと言うと今の政策のリスクはスタグフレーションだと思うのですけどねえあたしゃ


『──現在のボードの議論をどのように評価するか。』

『「外から見ていると、黒田総裁が上に立っていて、黒田総裁が政策を決めていると見えてしまう。黒田総裁がすべて決めるのだから、となると他のボードの人たちが何を言おうと『どうぞご勝手に』と見えてしまう。皆で作り上げるよりは多数決でいい、多数決なので少数意見は尊重しない、という風にみえる。少数意見をどう重視してどう取り込んでいくか、という部分がなかなか見えない」』

まあ木内さんとか佐藤さんの講演見ていると必ずしもそうでは無さそうにも見えます、というか気合の政策なので「どうぞご勝手に」ではなく「とりあえずお手並み拝見」という状態になっているだけのようには思えるのですが、一方でどこぞのコウモリ先生のように学者としての見識を期待されながらも何か話の筋はどちらに逝かれてるのでしょうという方も居ますな。

と言ってる須田さんも政策委員やっている間は結構な不思議モードになっていたりしてた時も(全期間ではない)あったのですけどね。何ちゅうかここまで言わんでもとは思いますが、学者モードの審議委員2名に集中的に向けたものと考えますとなるほどという感じもするのです。

まあいずれにせよ今後「物価安定目標とはそもそも何ぞや」というような部分、つまり何でもいいからヤケクソで物価が上がれば良いというもんじゃないでしょう的な話とか、そもそも論として物価安定と言ったって実際の物価水準を2%にするのか、見通しベースの物価水準及びインフレ期待がアンカーされれば良いのかとか、その手の話になる事が期待されまして、その辺りに関して佐藤さんと木内さんは旗幟鮮明(なお佐藤さんと木内さんの主張は微妙に異なる)ですけれども、石田さんは先般の講演でこれまた単に物価が上がれば良いというもんじゃないだろうという話をしていましたので、あと森本さんがどういう話をするのかが楽しみという所ですな。宮尾さんと白井さんは何だかねえという感じで。

『──今後の政策運営に支障が生じる懸念はないか。』

『「今は政府とうまくいっているからいいが、2%の物価上昇を実現できたら国債買い入れをやめないといけない。となると信頼に足る財政再建計画が策定されていない限り、政府との間で軋轢が生まれる。』

ちなみに皆さん忘れているかも知れませんが銀行券ルールは「一時的に停止している」状態であって別に撤廃された訳ではありませんので、QQE終了時に銀行券ルールの一時的停止は基本的には解除される(実際はいきなりは無理なので経過措置が入るでしょうけど)のですよ(2013年4月4日の声明文をご覧くださいませ)。

『黒田総裁が政策を(単独で)決めていると政府が思ったら、対個人で彼を説得すればいい。ボード全員で決めている、ということであれば、(政府の圧力から)一歩逃げられる。この点からもボードで決めるということの重要性をもう少し大事にしてほしいし、ボードメンバーも、いかに自分たちが政策決定するうえで大事な存在かを意識してほしい」』

何かエライ言われようで、そこまで後ろから銃撃せんでもええじゃろとは思いますけど・・・・・・・・・

という鑑賞会でした(^^)。なおニュースヘッドラインになっている部分の質疑応答が無いように見えますが、そこはネタとしてはまあ普通過ぎておもろないのでネタにしていないだけですので念の為。


○スタイン理事が退任するので講演を鑑賞する訳ですが(少々前の物です)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140321a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140321a.pdf
Governor Jeremy C. Stein
At the International Research Forum on Monetary Policy, Washington, D.C.

ご覧のとおり3月21日の講演で今更サーセンという感じですけど、スタイン理事ってマクロプルーデンスでBISビューバリバリでファイナンシャルスタビリティーがどうのこうのという人で、今般退任するとは言え昨日ネタにした3月FOMC議事要旨の中でもファイナンシャルスタビリティーがどうのこうのという議論が出てくるくらいのお方だったりするので、まあ退任するお方ではあるのですが鑑賞はしておくのが吉ということにしておきましょう。

『Governor Stein presented identical remarks at the International Monetary Fund 2014 Spring Meetings on April 13, 2014, and at the 2014 Financial Markets Conference on April 16, 2014.』

だそうです。

・ファイナンシャルスタビリティーへの対応の為に金融政策を実施する可能性は「理論的にはある」が「運用は難しい」

まず最初から。

『I would like to talk today about how one might explicitly incorporate financial stability considerations into a monetary policy framework.』

もうのっけから「金融安定化に関する考察を金融政策のフレームワークに明示的に加えるべきか」という話をするという時点でどう見てもキタコレです本当にありがとうございましたという所です。

『Doing so involves tackling two questions--one that is relatively easy and one that is much harder.』

難しい質問と簡単な質問があるとな。

『The easier question is, should financial stability concerns, in principle, influence monetary policy decisions? To be specific, are there cases in which one might tolerate a larger forecast shortfall of the path of the unemployment rate from its full-employment level than one would otherwise, because of a concern that a more accommodative policy might entail a heightened risk of some sort of adverse financial market outcome? This question is about theory, not empirical magnitudes, and, in my view, the theoretical answer is a clear "yes." I will say a bit more about why shortly, but let me stress that I am not breaking any new conceptual ground here; the basic argument has been laid out by a number of others, including Woodford and Kocherlakota.2』

コチャラコタ総裁も何かそれらに関する講演してるのか最近ちょっとFED高官の講演大杉で全部フォローしている暇がないわ (つーかBOEとかECBとかもいろいろ出るしマジでオーバーフローで大型連休が待ち遠しいアタクシ)という所ですがそれは兎も角として、「金融政策運営において金融安定化の為に失業率がノーマルよりも遠い状態が長期化するような運営をする必要が出る可能性があるかという質問には「Yes」と答える」というこれまたキタコレだったりします。これが簡単な方。

難しい方は・・・・・・

『The second question is, how does one operationalize the theory? What sorts of data should one look to, and what sorts of empirical methods should one use, to calibrate by how much the stance of monetary policy should be altered relative to the case in which financial stability considerations are completely set aside?』

じゃあ実際にどうやってその金融安定化の概念を踏まえた運営を行うのか?具体的にどのような指標などを見てどのような運営をすべきなのか?

『This question is very difficult.』

そらそうよ。

『In the interests of advancing the conversation, I will venture some tentative thoughts on one possible approach, which is somewhat different than what I have seen in other recent work on this topic.』

ということで、スタイン理事の今回の講演は「some tentative thoughts」という事ですが、まあ最近見たこのトピックに対するアプローチと比較して若干異なるという事で内容を読みたくなる訳ですな、うんうん。

『While I hope to convince you that this path is worth exploring, I cannot say that I know yet exactly where it will lead--and, in particular, whether it will ultimately deliver monetary policy prescriptions that differ in a quantitatively meaningful way from those offered by our current models. So I do not intend anything that follows as a comment on the current stance of our policy.』

ということで、まだこのアプローチに関する見解は暫定的なものなので今の政策に関してどうこういう積りではありません、と言ってますがしらっとそうじゃなかったりもするんですけどね(^^)。

『Before getting too deep into the details, let me preview my bottom line.』

先にまとめが入ります。

『I am going to try to make the case that, all else being equal, monetary policy should be less accommodative--by which I mean that it should be willing to tolerate a larger forecast shortfall of the path of the unemployment rate from its full-employment level--when estimates of risk premiums in the bond market are abnormally low.』

今の政策についての見解ではないとか言いながらいきなりこういう説明が飛び出していますが(^^)、「when estimates of risk premiums in the bond market are abnormally low」な状態な時には失業率の改善速度がやや遅くなるようなペースでの金融緩和に留めるべきであるという説明でして、これはもうキタコレです罠。

『These risk premiums include the term premium on Treasury securities, as well as the expected returns to investors from bearing the credit risk on, for example, corporate bonds and asset-backed securities.』

で、その「債券市場のリスクプレミアム」とは何ぞやと言いますと、「タームプレミアム」と「クレジットリスクプレミアム(社債と資産担保証券)」の二つを含みますとかもうキタコレとしか申し上げようがない所であって、そこを盛大に叩くのを前面に打ち出している日銀のQQEに関する見解をお伺いしたいものでございます。

『As an illustration, consider the period in the spring of 2013 when the 10-year Treasury yield was in the neighborhood of 1.60 percent and estimates of the term premium were around negative 80 basis points. Applied to this period, my approach would suggest a lesser willingness to use large-scale asset purchases to push yields down even further, as compared with a scenario in which term premiums were not so low.』

もう本論入る前のボトムラインの所でこういうの出てきてお腹一杯という感じですが(^^)、昨年のTaperingトークの前の金利水準(10年1.6%)ではタームプレミアムがマイナス80bp(脚注にもうちょっと細かい数字があります)になっていたので、これはもう金融政策はless accommodativeであるべきという結論になるとのスタイン理事の見解。つまり今はそれなりに適切な所にいるという話ですかねタームプレミアム的な話をした場合。

『The informal intuition I have in mind is that there is a cost associated with pushing risk premiums too low, because doing so increases the likelihood that they may revert back in a way that hinders the Federal Reserve's ability to achieve its mandated objectives. In what follows, I will try to make this intuition more precise and to generalize its applicability. 』

で、クレジットリスクプレミアムに関してもプレミアムが低すぎることによるリスクには注意しないといけませんという話をしていていやはやという感じ(PDFだと最後に図表があって、図表を見た感じですとTaperingトークの前のリスクプレミアムがタームにしろクレジットにしろtoo lowだったという感じになっています、念のため)ですが、ここから先がまあ説明コーナーになるのでございますが、時間が無くなってしまったのと量的にここから先が長くなるので明日に続くという事でご勘弁下さい。まあ概念的にはそんなに難しくないようには思えるのですが2次方程式だの分散だの微妙な単語が出て来まして数字に弱いハクション大魔王のあたくしにはアレなもんで(式はほぼ出てこないのでご安心くらはい)。




2014/04/21

お題「市場雑談/今さらですが3月FOMC議事要旨でほほうと思った辺りを」

ふーん。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140421/k10013890351000.html
自民 女性の就労促す法案の提出目指す
4月21日 4時18分

『政府は、「女性の活躍」を成長戦略の柱の1つに掲げ、安倍総理大臣は、専業主婦世帯の優遇につながり女性の就労意欲を抑制しているという指摘もある、所得税を軽減する「配偶者控除」の見直しなどを検討するよう、関係閣僚に指示しています。』(上記URLより)

つまりお前ら全員働けやゴルァという話で、つーか専業主婦だって社会的な機能はある訳で何で働いていないという扱いになるという風潮なのかよく判らん。

『これまでの法案の検討では、政府に対し、税制や社会保障制度を見直して、女性の就労を促すことや、仕事と子育ての両立に向けて、時間外労働を減らす対策や保育所を着実に整備することなども求めることにしています。』(上記URLより)

「税制や社会保障制度を見直して、女性の就労を促す」って太鼓持ち放送局らしくサラっと言ってますが、要するに「家庭から追い立てて働かせるために制度見直し」するんでしょと小一時間問い詰めたい次第ですな。

#話は全然違うが雨公の命名する「モメンタム株」って良く良く考えたら単に「勢いでクソ割高な所まで買われている株」の事みたいだがそう命名すると何となく尤もらしく聞こえるもんですな


○市場メモ少々

・短国買入2兆円とな

1年短国入札があったので早速短国買入が2兆円に増額オファーキタコレ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140418.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年4月22日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年4月22日
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年4月22日

結果ですが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140418.htm
国庫短期証券買入 58,621 20,005 0.003 0.004 43.2
国債買入(残存期間5年超10年以下) 12,246 4,004 0.005 0.007 45.2
国債買入(残存期間10年超) 4,422 1,704 0.002 0.006 37.9

まあ引値の関係で3か月ゾーンの新発以外が入りやすそうで、この水準だと新発1年って業者だと入れにくいかなという感じもするので日銀的には残念な結果になった気もせんでもないですが、それはそれとしてやる気出して2兆円吸い上げを実施しましたので、先週先々週に短国入札がやや立て込んでいましたのですけど、今週からは短国入札のペースが下がって週1の3Mとなります。んでもって5月は資金需給的に短国買入のペースがまた上がると予想されていますので、そんなこんなで今週からは短国の需給が改善する傾向になるでしょうなあという所で。


・市場メモではないがGPIF関連

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL180U0_Y4A410C1000000/
官房長官、GPIF運用委人事「有識者の報告踏まえ人選中」
2014/4/18 17:19

『菅義偉官房長官は18日午後の記者会見で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会の人選について「今、厚生労働省で有識者の報告書を踏まえて人選している」と述べた。GPIFの運用委員会の委員は今夏までに全員が任期切れとなり、後任には運用で株式を増やすなどの見直しに前向きな人が選ばれるとの見方が出ている。』(上記URLより)

日銀人事に法制局長官人事に公共放送人事と来てこれですかそうですか。まあ日銀人事は見事に無毒状態になっていますが。

『運用委の人選では一部報道で、国債を中心としたGPIFの資産構成を見直すよう提言した政府の有識者会議の参加者が後任に選ばれるとの観測が浮上している。』(上記URLより)

ということで、金曜顎が外れそうになったニュースヘッドラインとしては、官房副長官だか何だかが「国債よりも株式の方が信頼できる」とか何とか言ったとかゆー事案でしたが、惜しくもその発言ネットの方に転がっていないので残念ながら話の肴にならんのですけど、えーっとつまり国債を払う気が無いのかねとか思ってしまいましたよウヒョヒョヒョヒョ。

それは兎も角として、この調子だとそのうち「俺様の選挙区に敷設する高速道路や新幹線に投資するインフラファンドの方が国債や株式よりもGPIFの投資対象として適切だから投資しやがれ」とか言い出す人たちが出てきても不思議では無いかもしれませんねえあっはっは。

しかしまあ何ですな、昨日もタカ&トシ先生(って誰だよ言い出したの。最近タカ&トシを見ると自動的にクソジジイの顔が浮かんできてテレビ消したくなるんだがorzorz)が色々と仰せになっていましたけど債券市場全然反応して居なかったりするようですが、しかしこのジジイは「グローバルスタンダード」とか言ってる割に日本の年金と海外の年金の負債構造の違いとか、制度の違いとかを理解して話をしているのではなく、単に海外の(日本で言う)2階建て年金部分の運用と、GPIFの比較をしてああだこうだ言ってる訳で底が浅すぎて困りますし、アロケーションをそんなにダイナミックに動かせないだろとか、まあ何だかんだと底が浅いですなという所ですが、底が浅いのはどこぞの置物副総裁もそうですので安倍ちゃん人事の真骨頂という所ですなorzorz


○今更FOMC議事要旨ネタですが経済では「労働市場のスラック」がテーマになってますな

例によって今更ネタで恐縮ですがががが(出たのは9日でしたな)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140319.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140319.pdf

今回の議事要旨自体は基本的にあまり突拍子の無い話は出ていなくて、バーナンキの時の話の流れが続いていますなという感じではあるのですが、一方でイエレンモードになっているなと思われるところもありまして、まあその辺をサラサラと簡単に。

・労働市場のスラックに関する論議にスペースが割かれています

3月にご案内のようにフォワードガイダンスの表現が変更になって、どちらかと言うと「フレキシブルインフレーションターゲット」に向いた感じになったというイメージでしたが、その後のイエレン議長の講演では労働市場の話をしてハトキタコレとかそういう話になってましたな。

でもって今回の議事要旨なのですが、例の「SEPのFF金利予想の上昇がタカ派と見られるのに懸念」「6か月という議論が無かった」ばかりが注目されていましたが、まあ読むならこの辺じゃネーノと思うので今さらながらの虫干しネタ状態で恐縮でありまする。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の所ですけどね。

『In their discussion of labor market developments, participants noted further improvement, on balance, in labor market conditions.』

ということで労働市場に関する議論が2パラグラフ分ありまして、今回のこのコーナーの中で突出して量が多くなっているのがおーという感じです。

『The unemployment rate had moved down in recent months, as had broader measures of unemployment and underemployment. Other labor market indicators, such as payrolls and hiring and quit rates, while not all showing the same extent of improvement, also pointed to ongoing gains in labor markets.』

改善してますねという話が続いています。

『Going forward, participants continued to expect a gradual decline in the unemployment rate over the medium term, with judgments differing somewhat across participants about the likely pace of the decline.』

一方で失業率の今後の改善ペースに関する見解は分かれているとな。

『It was also noted that uncertainty about the trend rate of productivity growth was making it difficult to ascertain the rate of real GDP growth that would be associated with progress in reducing the unemployment rate.』

生産性のトレンドレートに対する不確実性が実質GDP成長がどの程度失業率の押し下げに寄与するかを見極めるのを難しくしているとの事でして、次のパラグラフになります。


『While there was general agreement that slack remains in the labor market, participants expressed a range of views regarding the amount of slack and how well the unemployment rate performs as a summary indicator of labor market conditions.』

つーことでここからが労働市場のスラックに関する議論です。スラックが無いという人はいないものの、ではそのスラックの程度はどないよという話をしていまして、まあイエレン議長が割と労働市場に関する話をする人なんでその影響(逆さ絵先生は労働市場云々よりもより「フレキシブルインフレーションターゲット」の枠組みに寄っている人でした)があるのかなあと思ったのですが思い込み過ぎですかね。

『Several participants pointed to a number of factors--including the low labor force participation rate and the still-high rates of longer-duration unemployment and of workers employed part time for economic reasons--as suggesting that there might be considerably more labor market slack than indicated by the unemployment rate alone.』

まずは数名(Several)は各種労働関連の指標を見ると「失業率で示されるよりも実際のスラックはconsiderably moreであることが示唆される」という事でスラック大きい(のでインフレはそう簡単に跳ねない)という見解。

『A couple of other participants, however, saw reasons to believe that slack was more limited, viewing the decline in the participation rate as primarily reflecting demographic trends with little role for cyclical factors and observing that broader measures of unemployment had registered declines in the past year that were comparable with the decline in the standard measure.』

他の2名はこれに対してスラックはより限定的であるという話をしていて、それは労働参加率の低下部分は循環的というより構造的要因と見なしているから、という話ですが、これはまあイエレンさんとは逆の見解の人たちという事になりますな。

『Several participants cited low nominal wage growth as pointing to the existence of continued labor market slack.』

数名(この数名がさっきの数名と同じか違うかが謎ですが、恐らく数人のうち何人かが含んでいるとかそういう話なんでしょうかね)は名目賃金の伸びが弱い事は継続的な労働市場のスラックの存在を意味していると指摘。

『Participants also noted the debate in the research literature and elsewhere concerning whether long-term unemployment differs materially from short-term unemployment in its implications for wage and price pressures.』

長期失業と短期的失業の与える賃金や物価上昇圧力に対するインプリケーションが異なるかどうかについて論議があるとな。


・ファイナンシャルスタビリティーに関してはややトーンアップ

一方で金融安定化に関する話もしておりまして、こちらもほほうという所です。

『In their discussion of recent financial developments, participants saw financial conditions as generally consistent with the Committee's policy intentions.』

現状では金融市場環境はFOMCの意図しているような状態と整合的ですと。

『However, several participants mentioned trends that, if continued, could become a concern from the perspective of financial stability.』

数名(several)は今のトレンドが続くと金融安定化に関する懸念になり得るという指摘キタコレ。

『A couple of participants pointed to the decline in credit spreads to relatively low levels by historical standards; one of these participants noted the risk of either a sharp rise in spreads, which could have negative repercussions for aggregate demand, or a continuation of the decline in spreads, which could undermine financial stability over time.』

こらまたエライ具体的な指摘なのですが、2名がクレジットスプレッドがヒストリカルスタンダードから比較して低い水準に低下している事を指摘していまして、そのうち1名はこのスプレッドが急速に拡大した場合には需要に悪影響を与えるリスクがあり、またスプレッドが今後も継続して縮小する場合は金融安定化の観点からリスクがあると指摘していますな。

『One participant voiced concern about high levels of margin debt and of equity market valuations as well as a notable shift into commodity investments.』

voiced concernってのがこらまた珍しい表現だなと思いましたが、1名は負債のマージンが高まっている事や株式市場の価格が高まっている事、商品市場への投資資金の顕著な流入などに懸念を示しているとな。

『Another participant stressed the growth in consumer credit to less creditworthy households.』

他の1名は家計に対する消費者信用供与におけるクレジット判断が緩くなっている事について指摘しています。

・・・・・・ということで、確かにプレコンでイエレン議長は労働市場に関する話の部分では割とハトちっくになっている(自信の主張を出してくる講演では更にハトになる)し、ファイナンシャルスタビリティーの話をすると妙にタカちっくになるのはこういう辺りが背景にあった(議長なので全体の見解の話をするから)のかねえという所です。

ちなみに今回『Staff Economic Outlook』の中でファイナンシャルスタビリティーの話が無くて「あれ?」と思ったのですけれども、ここで結構突っ込んだ話をしているのがへーという感じでした。


・小ネタ少々:単身者世帯の住宅の方が変動が少ないとな

『Staff Review of the Economic Situation』でこんなのがありました。

『The pace of activity in the housing sector appeared to soften. Starts for both new single-family homes and multifamily units were lower in January and February than at the end of last year.』

住宅市場についてですがね。

『Permits for single-family homes--which are typically less sensitive to fluctuations in the weather and a better indicator of the underlying pace of construction--also moved down in those months and had not shown a sustained improvement since last spring when mortgage rates began to rise.』

とまあここなんですけどね(^^)。単身者世帯の住宅市況の方が季節要因のような物に影響されないという事のようで、何でそうなんだかさっぱりワカランチ会長なのですが、米国に何年か住むとその理由って判るのでしょうかねえ誰か教えてジェネラル!


・小ネタ少々:潜在的生産上昇率の見立てを下げましたか

『Staff Economic Outlook』の所ですけどね。

『In the economic forecast prepared by the staff for the March FOMC meeting, real GDP growth in the first half of this year was somewhat lower than in the projection for the January meeting.』

GDP成長率の見通しを足元で若干下げたと。

『The available readings on consumer spending, residential construction, and business investment pointed to less spending growth in the first quarter than the staff had previously expected. The staff's assessment was that the unusually severe winter weather could account for some, but not all, of the recent unanticipated weakness in economic activity, and the staff lowered its projection for near-term output growth.』

季節要因などもあるがそれだけでは無いですね足元の予想以上の弱さは、という事で・・・・・・・・

『Largely because of the combination of recent downward surprises in the unemployment rate and weaker-than-expected real GDP growth, the staff lowered slightly the assumed pace of potential output growth in recent years and over the projection period.』

ここはキタコレという事で、失業率の改善が予想以上でGDPは予想より弱めに推移しており、結果として連銀スタッフは潜在的な生産上昇率の推計を若干引き下げたとな。

以下はまあおまけで付けておきます。中期的なGDP見通しも若干下げています。

『As a result, the staff's medium-term forecast for real GDP growth also was revised down slightly. Nevertheless, the staff continued to project that real GDP would expand at a faster pace over the next few years than it did last year, and that real GDP growth would exceed the growth rate of potential output.』

『The faster pace of real GDP growth was expected to be supported by an easing in the restraint from changes in fiscal policy, increases in consumer and business confidence, further improvements in credit availability and financial conditions, and a pickup in the rate of foreign economic growth. The expansion in economic activity was anticipated to lead to a slow reduction in resource slack over the projection period, and the unemployment rate was expected to decline gradually to the staff's estimate of its longer-run natural rate.』

先行きの成長ペースの促進要因と阻害要因とか、スラックがあるからロンガーランの水準に戻るのに時間がかかるとか、まあその辺の話は従来通りです。

ということで月曜雑談ということで虫干しネタで勘弁という所でした(汗)。





2014/04/18

お題「またも伊藤先生が吠えるが債券市場無反応ワロタ/さくらレポート関連その他少々」

そういえば一昨日辺りに「市場が追加緩和を催促しているのだから追加緩和をすべき」(他にも3つほど前後の整合性の取れない理由を付けていたが)というような怪電波レポート(なおれっきとした何とかスト様謹製なのだがががが)を受信したのだが、もはや物乞いというよりはゆすりたかり強要の類になっておりますわなと申し上げたくなる次第。

○債券市場が盛大に無反応というのにワロタ訳ですが(伊藤先生の毎度の話)

昨日は前場からこんなのが出ていまして、超長期国債の入札があるのに前場から債券売る話をするとかお前は債券ショート筋から(内務省検閲)かと言いたくなるような話ではございますが、何が凄いってこのヘッドライン出ているのに債券市場が盛大に無反応どころか超長期入札後に相場堅調になっている(堅調だったのは先物から10年だが)こと。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N45Y1D6JTSF001.html
伊藤教授:GPIFは約25兆円の国債売却すべき、日銀が受け皿に (1)
更新日時: 2014/04/17 15:56 JST

『4月17日(ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )は国内債が6割を占める資産構成を6月にも改定し、大規模な国債売却を進めるべきだ−。伊藤隆敏政策研究大学院大学教授は、GPIFは日本経済が緩やかなインフレに向かう中、大胆な改革を進める必要があるとの見解を示した。』(上記URLより、以下同様)

色々とアレなのですが、アタクシなんぞは最初肩書の方を見てしまい、ああ遂に伊藤タカ&トシ先生(最近はそういう二つ名が流行してると聞いておりますが)東大から追放されたのかとか思ってしまいましたが惜しくもそうではないようですな(^^)、まあそれは兎も角。

まー何と申しますか、あんさん公的年金運用の何とかの座長やっているんだからそういう話は会議でやれという所でありまして、説得力があって合理的な意見を持っているんだったらその会議の中で普通に話が共有されるでしょと思うのでありまして、外のメディアに向かってああだこうだと与太話をすると言う時点であんさんの見解に無理があるのかダメダメなのかという事なんじゃないですかねえと言う所。

経済系の学者先生で色々とホイホイしゃしゃり出ると言えば竹中平蔵大先生がいらっしゃいました(まあ平蔵先生は学者というより政策プロモーター以下自主規制)けれども、平蔵先生におかれましては庇護者が居なくなったらさっさと逃げ出したとは言え、それまでの間は矢面に立ってやっていましたし、選挙にも出馬して、まあ責任は取りに行っていた訳ですが、どうせこのタカ&トシ先生はこのような変更を行った結果機会利益を喪失したり損失が出たりした場合に本人の財産(如きでは屁のつっぱりにもならんのだが)でも投げ出して貰いますかとか言い出したら「どのような資産に投資するかは専門家に決めてもらう」とか言い出して逃げるタマにしか少なくともアタクシには見えない所がうんこな所でありますな。

いやまあてめえの財産でやるなら勝手なんだが、GPIFの運用資産って「基礎年金部分も含む」年金支払原資なんですけどねえ・・・・・・・・・・

という所で、まあ中身を突っ込んでもアレだが一応備忘メモ。

『公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めた伊藤教授は17日のインタビューで、日本銀行の黒田東彦総裁が掲げる「2%の物価目標の達成を視野に、いずれは国債利回りも上昇する」と予想。国内債券71兆円を抱えるGPIFは「国債からの急速なシフトが必要だ。25兆円程度、金利上昇時の損失がより大きくなる満期の長い物から売っていくのが望ましい」と述べた。今なら量的・質的金融緩和で巨額の国債購入を進める日銀が受け皿になり得ると言う。』

第一に日銀が受け皿になったとしてもその分日銀の市中からの買入が減る話ですから金利上昇要因になりますけどねえと思いますが、何気にワロエルのは「金利が上がって損が出るから日銀に売る」というロジックでして、それってGPIF的には損が減るかもしれませんけど、その分の損失は日銀に付きますので結局の所統合政府内での付け替えに過ぎない訳で、それって庭先論にも程がある話ですし、年金基金の損失(損が出る、という前提で考えた場合ですけど)を誰が負担するかという議論の話を完全にスルーしてねえかと思うのですけどねえ。

まあそもそもそれ以前の問題として「金利が上昇したら損失」というロジックもよく判らん所で、日々の時価評価的な含みは損だけど、満期保有すればどうせ(相手がデフォルトしない限り)元本帰ってくるんだし、金利が極端に急上昇しない限り「運用環境の改善」という事で、償還やクーポンの再投資利回りの上昇によって取り返しが可能な話になるんですけどねえと思う訳で、どうもこのジジイは債券投資を償還の無い株式投資(株式投資はクーポンないけど配当はあるな)と一緒くたにして考えてねえかと小一時間問い詰めたい次第。

何せこの先生かつての量的緩和時代に当座預金残高積み上げがオペレーション上困難になってきた(なにせリアルゼロ金利だったので)時に某経済新聞の経済教室だか何だかのコーナーに堂々と「量的緩和政策の拡大の為に当座預金付利」という話を執筆なされたという実績をお持ちな位に視野狭窄というか一知半解なお方でございますのから債券投資と株式投資をごっちゃにしている可能性が微し存な所がオソロシス。

『GPIFの資産構成比率を定めた基本ポートフォリオに関し、伊藤教授は「国内債を現在の60%から40%程度に引き下げ、乖離(かいり)許容幅は上下8%ずつから同10%に広げるのが一案だ」と言う。GPIFの裁量を拡大すれば「金利上昇の過程でいったん30%まで落とし、場合によってはその後50%に戻すことも可能だ」と説明した』

・・・・・・・・・マーケットインパクトというのがあってですねえ。

『伊藤教授は、海外の主要な年金基金は「内外債券の合計で35−40%しか持っていない」と指摘。かつては資産の大半を国債で運用していたが、世界的なゼロ金利政策と低金利という環境変化に対応してきたと説明し、GPIFは世界標準を目指して「早く出遅れを取り戻すべきだ」と語った。』

・・・・・・・・何か色々と事実誤認があるような気がするんだが。

まあいずれにしてもこれだけの大きな資金を運用する主体がポート動かすとなった場合に、事前の事前に「将来こうしますのでよろしくお願いします」とか鉦や太鼓で宣伝してどないしますねんという所で、そんな事したら市場に先回りされて肝心のポートの入替の時に高値掴みや安値叩きをさせられる事になってしまうだけの話でして、事前に大宣伝するとかナントカな働き者とはまさにこのジジイのような事を言うのでしょうなあと思うのでした。

そういや関連してこんなのもありましたよね、一昨日ですけど。

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0N80SP20140416
UPDATE 1-GPIFの動きが6月以降出てくる=株式相場で麻生財務相
2014年 04月 16日 11:40 JST

『[東京 16日 ロイター] - 麻生太郎財務相は16日午前の衆議院財務金融委員会で、株式市場の動向に関連して、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の動きが6月以降出てくる。そうした動きが出てくるとはっきりすれば、外国人投資家が動く可能性が高くなる」と語った。』(上記URLより)

まあ海外投資家様に日本株支えて頂きたいというお気持ちは把握致しましたが、どちらかというと最近いったん買ったポジションを落としたと言われている海外投資家のヤロー共はそのまま放置プレイしておきまして、日本人の財産でもある年金資金で株を購入して株価が上がったのを見た海外投資家が泣きながら踏み上げ買いをして来るという図式の方が日本としてオイシイんじゃないですかねえとか思ってしまう訳でして、いやあの年金基金って国民の皆様の年金原資なんですから(以下の部分は内務省検閲により削除されました^^)。


○さくらレポート関連:このタイミングで上方修正箇所があるとは強気にも程がある

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer140417.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer140417.pdf(本文、PDF注意)

なお、以下の引用は特に断りの無い限り上記URLのうち概要の方からとなります。

・判断が全然引き下げられないとかテラ強気

『各地の景気情勢をみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。』

「影響を受けつつも」「基調的には」回復ということですが、駆け込み需要の反動で足元落ちてきていますなあという言い方では無くてあくまでも「これは一時的な話」という主張が思いっきり篭っているのがこの辺の文言に出ていまして、何ちゅうかその強気攻撃でろくにヘッジが入っていない(月例経済の方は若干ヘッジが入りだしている感じがある中で)とかエライ強気ですなあという話っす。

『この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調をたどる中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』

雇用所得環境キタコレ!

『前回(14年1月)と比較すると、8地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)は、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はないとしている。北陸は、設備投資の持ち直しの明確化等を背景に判断を引き上げている。』

という内訳は以下の通り。

『北海道: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかに回復している

東北: 回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には回復を続けている

北陸: 緩やかに回復しつつある
→消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している

関東甲信越: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている

東海: 回復している
→足もと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動もみられているが、基調としては回復を続けている

近畿: 緩やかに回復している
→ 消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している

中国: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調としては緩やかに回復している

四国: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている

九州・沖縄: 緩やかに回復している
→消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』

消費税率引き上げの話がああだこうだという話をしておりまして、結局の所必殺ワード「基調的には」の後の部分を読むしかないのですが、そこを見ますと北陸だけ「緩やかに回復しつつある」→「緩やかに回復している」になっていて、それが上方修正となっているようですな。


・各需要項目に関して

まずは公共投資。

『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、5地域(北海道、北陸、関東甲信越、中国、四国)から、「増加している」、「増加傾向を維持している」等の報告があった。また、3地域(東海、近畿、九州・沖縄)からは、「高水準で推移している」等の報告があった。』

まあこれは良しとしまして設備投資。

『設備投資は、5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿)から、「増加している」等、4地域(北陸、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しが明確になっている」との報告があった。この間、企業の業況感については、「引き続き改善している」等の報告があった。』

北陸が設備投資を上方修正して景気判断引き上げ、他は概ね前回同様。で次は個人消費。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動がみられている」等の報告があった。』

基調判断の話はまあ同じような感じ。

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きが続いている」、「底堅く推移している」等の報告があった。スーパーは、複数の地域から、「横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』

前回はスーパーで下げ止まりとかになっていたので改善。

『乗用車販売は、新型車投入効果等もあって、「増加している」、「底堅く推移している」等の報告があった。』

前回は駆け込み需要で強めだったので若干下がっています。

『家電販売は、節電機能に優れた白物家電等を中心に、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。』

こちらは何と前回よりも若干上がっています。納車とか納品の関係で車より家電の方が駆け込み遅かったんでしょうな。なおこの辺の消費税影響云々については本文の方で多分説明があるのですが時間と量の関係でパス。

『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、北海道、九州・沖縄から、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』

円安効果キタコレですが、前回は「複数の地域」で今回は北海道と九州とな。

『住宅投資は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う既往の受注増等もあって、5地域(東北、関東甲信越、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、「高水準で推移している」等の報告があった。また、東海、近畿からは、「駆け込み需要の反動もみられているものの、基調としては底堅く推移している」等の報告があった。一方、北海道からは、「持ち直しの動きが一服している」との報告があった。』

東海、近畿は駆け込み需要の反動が指摘されてまして前回対比下がっています。

『生産(鉱工業生産)は、国内需要が消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも堅調に推移し、海外需要も緩やかに持ち直していることを背景に、4地域(北海道、東北、関東甲信越、中国)から、「緩やかな増加を続けている」等の報告があったほか、3地域(北陸、東海、近畿)からは、「高水準で推移している」、「堅調に推移しているとみられる」等の報告があった。また、四国から、「緩やかに持ち直している」との報告があったほか、九州・沖縄からは、「全体としては横ばい圏内で推移している。この間、一部では増加に向けた動きもみられている」との報告があった。』

こちらは前回対比で見ると全体的には若干強くなっていますかね。微妙だけど。業種別の話はとばしまして・・・・・

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。』

引き続き強い。

『雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は改善している」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「持ち直している」、「改善の動きが明確化してきている」等の報告があった。』

キタコレで今回も強くなっているのでした。


・地域の視点のテーマの選び方が結構驚いたぞなもし

今回のお題は『各地域の製造業の生産・輸出動向と事業戦略』となっていました。で、内容に関しての引用は時間と量の関係で割愛しますが、今回ほほーと思ったのは「製造業の輸出」という微妙に期待外れの物に関してのテーマというのがほほーという感じ。

例えば前回の地域の視点のお題は『各地域における最近の雇用・賃金動向 ――人手不足感が強まるもとでの企業の対応――』となっていまして、だいたいこの手のネタを出す時というのは自分たちの政策がこう展開していってイイハナシダナー的な物を持ち出すのが仕様になっているのですが、今回は微妙に期待外れのテーマを取り上げている辺りが味わいがあるのでした。

で、最後の結論部分だけ引用します。

『最近の製造業を巡る環境変化や企業の事業戦略が地域経済に与える影響をみると、主要産業における海外生産シフトや国内生産拠点の再編等が経済を下押ししている地域がみられるほか、内需型産業中心の地域でも、円安に伴う電力料金・原材料価格の上昇が企業収益を圧迫しているとの声が少なくない。』

自画自賛系じゃないのが出てくるとな。

『こうした状況を踏まえ、量産工場による雇用創出等を重視してきた地方自治体の企業立地等の産業政策にも変化がみられている。たとえば、大手製造業の撤退が続いた地域では、優れた技術を有する地場企業の育成や既存技術の転用などにより成長分野への新規参入を促す動きがみられている。また、大都市近郊では食料品・物流等の内需型産業、災害が少ない地方ではBCP拠点、専門研究機関が集積している地域では研究開発拠点など、誘致企業のターゲットを明確化する動きがみられており、特定業種への補助金など、支援制度も多様化している。』

ほう。

『この間、大手・地場企業を問わず、従業員の雇用確保や技術流出リスク回避の観点から、引き続き国内生産を重視する声が少なくない。こうした企業からは、研究開発・設備投資に係る支援、労働市場の柔軟性向上、金融サポートの充実等を求める声も多く、官民が連携し製造業の国際競争力の維持・向上に向けて取り組んでいくことが期待されている。』

だから成長基盤強化であり貸出増加支援ですねわかりますという所ですが、レポートの中の「地域の視点」としては威勢の良い話じゃないのがお題になっているというのがほーという所でした。色々と妄想はたくましくなるのですが割愛。

なお、支店長会議での総裁冒頭あいさつは平常運転にも程がありました。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1404.htm/


○市場メモ

時間が無いのでメモを少々

・3月業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

ここから表計算ソフトにDLして見ますと、まあ大体皆さん増える中で証券の当座預金残高だけは伸びないとなっていますが、そらまあ証券の場合は商品有価証券のバランスシート制約の問題があるでしょうからこうなるわなとは思いますけど。


・3M入札とな

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140417.htm

(3)募入最低価格 99円98銭5厘0毛(募入最高利回り)(0.0595%)
(4)募入最低価格における案分比率 60.9836%
(5)募入平均価格 99円98銭5厘0毛(募入平均利回り)(0.0595%)

ということで、3M新発なのですが前引けで6bpオファーだったので6台かもと期待されましたけれどさすがに6台ではニーズがてんこ盛りだったようでその手前で切れてショートカバーでセカンダリー若干強含みのようでございますな、うんうん。

まー足元入札連発と短国買入が若干少な目で、GCが若干高めの推移なので短国需給が重めで推移していたと思うのですが、レート調整して行った結果6bpの所でコツンと来た感じですかねえ、よー知らんけど。






2014/04/17

お題「寝起きでイエレン議長講演だがハト成分はハト成分だがリップサービス成分も多そうな希ガス」

昨日某ベンダーで「生活防衛へFX取引も選択肢に」とか何とかいう大変に素敵な題名の記事が出て大変に心が温まったのでございますが、惜しい事に同社のインターネット版のサイトには当該記事がアップされていないのでネタにできないとは残念無念(違)。


○イエレン議長講演とな(ただし寝起きの斜め読み)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140416a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140416a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At the Economic Club of New York, New York, New York
April 16, 2014
Monetary Policy and the Economic Recovery

まあ何となくポイントっぽい気がする所を中心に斜め読み。

・3つの論点とな

講演の最初の部分は米国経済の現状の話なので割愛してその次の『Three Big Questions for the FOMC』というのがありますので観賞。

『Because the course of the economy is uncertain, monetary policymakers need to carefully watch for signs that it is diverging from the baseline outlook and then respond in a systematic way. Let me turn first to monitoring and discuss three questions I believe are likely to loom large in the FOMC's ongoing assessment of where we are on the path back to maximum employment and price stability.』

ってな事で、最初の小見出しが『Is there still significant slack in the labor market?』でして、スラックがあるかどうかは多くの指標を見ながら判断云々というのがありまして、じゃあどのような指標を見ますねんという話。

『I will refer to the shortfall in employment relative to its mandate-consistent level as labor market slack, and there are a number of different indicators of this slack. Probably the best single indicator is the unemployment rate. At 6.7 percent, it is now slightly more than 1 percentage point above the 5.2 to 5.6 percent central tendency of the Committee's projections for the longer-run normal unemployment rate. This shortfall remains significant, and in our baseline outlook, it will take more than two years to close.』

最初に出した数値がまあ当然ですが失業率で、FOMCメンバーの考えるロンガーランの望ましい失業率水準の5.2-5.6%に対して足元は6.7%なのでそれは大きいですし、FOMCの見通しによればこの水準に戻るのに2年以上かかりますと。

『Other data suggest that there may be more slack in labor markets than indicated by the unemployment rate. For example, the share of the workforce that is working part time but would prefer to work full time remains quite high by historical standards.』

フルタイム労働を希望しているけれどもパートタイムで働いている人の割合が過去平均より大きいとな。

『Similarly, while the share of workers in the labor force who are unemployed and have been looking for work for more than six months has fallen from its peak in 2010, it remains as high as any time prior to the Great Recession. There is ongoing debate about why long-term unemployment remains so high and the degree to which it might decline in a more robust economy. As I argued more fully in a recent speech, I believe that long-term unemployment might fall appreciably if economic conditions were stronger.』

長期失業率の高さという奴で、これに関してはイエレン議長は先般の講演などでも説明していましたけれどもより循環的な要素が大きく、経済の改善によって改善する筈であり、改善が鈍いのは労働市場のスラックの存在を意味するという解釈になっているですな。

『The low level of labor force participation may also signal additional slack that is not reflected in the headline unemployment rate. Participation would be expected to fall because of the aging of the population, but the decline steepened in the recovery. Although economists differ over what share of those currently outside the labor market might join or rejoin the labor force in a stronger economy, my own view is that some portion of the decline in participation likely represents labor market slack.』

労働参加率に関してもこれまた見解が分かれる話ではありますが、イエレン議長はより循環的な部分が大きいとみているようで、経済の改善が進めば改善する筈だという見解のようですな。

『Lastly, economists also look to wage pressures to signal a tightening labor market. At present, wage gains continue to proceed at a historically slow pace in this recovery, with few signs of a broad-based acceleration.』

賃金上昇が弱いという話ですな。この辺は先般の講演および(だいぶ遅れてネタにした)FOMC後の記者会見で労働市場の指標を何を見ますという質疑応答の中でも示されていましたな。

『As the extent of slack we see today diminishes, however, the FOMC will need to monitor these and other labor market indicators closely to judge how much slack remains and, therefore, how accommodative monetary policy should be.』

労働市場のスラックが大きいので緩和的な金融政策が必要ですという話で、労働市場の話をするとハト的な話になりますなあという所ですね。


次の小見出しが『Is inflation moving back toward 2 percent?』であります。

そこの前半はまあインフレ率が低いのが続くとマズーですよねという話をしているのでそこは割愛しまして考察部分から参ります。

『I will mention two considerations that will be important in assessing whether inflation is likely to move back to 2 percent as the economy recovers.』

2%に戻るでしょうという見通しの背景とな。

『First, we anticipate that, as labor market slack diminishes, it will exert less of a drag on inflation. However, during the recovery, very high levels of slack have seemingly not generated strong downward pressure on inflation. We must therefore watch carefully to see whether diminishing slack is helping return inflation to our objective.』

最初に指摘されているのが労働市場のスラックの存在ですが、あれさっきスラックが大きいって話をしてたやんという所でして、先ほどはスラックが大きい点を強調しておきながら、こちらではスラックが減ってきたら物価は上昇するでしょうとは都合の良い話ですなあと思う訳ですが、ここの文章だけを取り出してみた場合には上記部分の後半にありますように、「経済回復過程において労働市場の大きなスラックがあったにも関わらずインフレへの下方圧力が小さかった」ことから「スラックの減少がインフレが2%水準に向けて戻る助けになるかどうかについて確認しないといけません」という話をしておりまして、これどちらで解釈するのかがムツカシヤなのですけれども、「労働市場のスラックは実はインフレに対する影響が小さいのではないか」という話をしているのか、それとも「労働市場のスラックが解消されるに連れインフレ圧力が想定以上に高まるのではないか」という話をしているのかが良く判らんのですが、というか多分その辺が謎なので「注意深く見守る」ということになったのかなあとも思うのだが、ちょっと???ではありました。

『Second, our baseline projection rests on the view that inflation expectations will remain well anchored near 2 percent and provide a natural pull back to that level. But the strength of that pull in the unprecedented conditions we continue to face is something we must continue to assess. 』

物価が戻るという見通しのもう一つの背景はインフレ期待がアンカーされている事という毎度の話っすな。

『Finally, the FOMC is well aware that inflation could also threaten to rise substantially above 2 percent. At present, I rate the chances of this happening as significantly below the chances of inflation persisting below 2 percent, but we must always be prepared to respond to such unexpected outcomes, which leads us to my third question.』

物価の話をすると雇用の話をする時のハト成分があまり無かったりする訳でして、今の状況で「物価が上振れする事に対しても準備しないといけない」とか言うかねという感じなのですが・・・・・・・・

『What factors may push the recovery off track?』というのが次の小見出しのお題。

『Myriad factors continuously buffet the economy, so the Committee must always be asking, "What factors may be pushing the recovery off track?" For example, over the nearly 5 years of the recovery, the economy has been affected by greater-than-expected fiscal drag in the United States and by spillovers from the sovereign debt and banking problems of some euro-area countries. Further, our baseline outlook has changed as we have learned about the degree of structural damage to the economy wrought by the crisis and the subsequent pace of healing.』

ということで、多くのファクターが経済に影響を与えますよという話をしていて、それによって見通しに変化が生じますという話をしているのですが、この後に関しての説明はこれまでの回復過程において「こういう見通しでいたら実際にはこうなったのだがその要因は概ねこんな感じと推定される」みたいな説明をしているという所なので割愛してまとめの所。

『These episodes illustrate what I described earlier as a vital aspect of effective monetary policymaking: monitor the economy for signs that events are unfolding in a materially different manner than expected and adjust policy in response in a systematic manner. Now I will turn from the task of monitoring to the policy response.』

ということで、どうもここの部分は「金融政策運営は予めどうすると決めて行う物ではなく、状況の変化に応じて調整するものです」という話をしたかったみたいですな。でその次が金融政策の運営に関する話。


・非伝統的金融政策のコミュニケーションポリシーとかいう辺りの部分から

『Policy Challenges in an Unprecedented Recovery』ってお題の部分ですけど、前半はこれまたここまでの取り組みの話をしていて、その中で先ほどの部分にあった「状況に応じて調整しました」(キリッ)というのが入っていまして、まあそこはパスしてその先ね。

『Let me review some important elements in the evolution of the FOMC's communication framework.』

コミュニケーションのフレームワークの重要な要素とな。

『When the FOMC initially began using its unconventional tools, policy communication was relatively simple. In December 2008, for example, the FOMC said it expected that conditions would warrant keeping the federal funds rate near zero for "some time." This period before the "liftoff" in the federal funds rate was described in increasingly specific, and (as it turned out) longer, periods over time--"some time" became "an extended period," which was later changed to "mid-2013," then "late 2014," then "mid-2015." This fixed, calendar-based guidance had the virtue of simplicity, but it lacked the automatic stabilizer property of communication that would signal how and why the stance of policy and forward guidance might change as developments unfolded, and as we learned about the extent of the need for accommodation.』

金利政策のガイダンス文言の話ですな。 当初はカレンダーベースでしたよと。

『More recently, the Federal Reserve, and I might add, other central banks around the world, have sought to incorporate this automatic stabilizer feature in their communications. In December 2012, the Committee reformulated its forward guidance, stating that it anticipated that the federal funds rate would remain near zero at least as long as the unemployment rate remained above 6-1/2 percent, inflation over the period between one and two years ahead was projected to be no more than half a percentage point above the Committee's objective, and longer-term inflation expectations continued to be well anchored.』

で、それをスレッショルド方式に変えましたと。

『This guidance emphasized to the public that it could count on a near-zero federal funds rate at least until substantial progress in the recovery had been achieved, however long that might take. When these thresholds were announced, the unemployment rate was reported to be 7.7 percent, and the Committee projected that the 6-1/2 percent threshold would not be reached for another 2-1/2 years--in mid-2015.』

失業率スレッショルドを設定した時には6.5%の数値に到達するのに2015年の半ばまでかかると想定していましたと。

『The Committee emphasized that these numerical criteria were not triggers for raising the federal funds rate, and Chairman Bernanke stated that, ultimately, any decision to begin removing accommodation would be based on a wide range of indicators.』

ふむ。

『Our communications about asset purchases have undergone a similar transformation.』

で、資産買入の期間に関するコミュニケーションポリシーの話に。

『The initial asset purchase programs had fixed time and quantity limits, although those limits came with a proviso that they might be adjusted. In the fall of 2012, the FOMC launched its current purchase program, this time explicitly tying the course of the program to evolving economic conditions. When the program began, the rate of purchases was $85 billion per month, and the Committee indicated that purchases would continue, providing that inflation remained well behaved, until there was a substantial improvement in the outlook for the labor market.』

「substantial improvement in the outlook for the labor market」まで継続としましたよと。

『Based on the cumulative progress toward maximum employment since the initiation of the program and the improvement in the outlook for the labor market, the FOMC began reducing the pace of asset purchases last December, stating that "If incoming information broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-term objective, the Committee will likely reduce the pace of asset purchases in further measured steps at future meetings." Purchases are currently proceeding at a pace of $55 billion per month.』

で、労働市場のアウトルックが顕著に改善したからTapering開始しましたと。

『Consistent with my theme today, however, the FOMC statement underscores that purchases are not on a preset course--the FOMC stands ready to adjust the pace of purchases as warranted should the outlook change materially. 』

必要なら変更しますとは言ってますが、アウトルックが大きく変わればという事ですからまあ普通にTapering継続っすな。まあこの辺は前振りみたいな所です。


・で、低金利継続がどうのこうのという辺りと思われる部分

『Recent Changes to the Forward Guidance』って所ですが。

『At our most recent meeting in March, the FOMC reformulated its forward guidance for the federal funds rate. While one of the main motivations for this change was that the unemployment rate might soon cross the 6-1/2 percent threshold, the new formulation is also well suited to help the FOMC explain policy adjustments that may arise in response to changes in the outlook.』

失業率スレッショルドの到達が想定よりも早く(一方で労働市場のスラックもあり物価が低い事から)フォワードガイダンスの文言を変更しましたと。

『I should note that the change in the forward guidance did not indicate a change in the Committee's policy intentions, but instead was made to clarify the Committee's thinking about policy as the economy continues to recover.』

今回の文言変更は金融政策スタンスの変更を意味するものでは無いとこれまた毎度の説明。

『The new guidance provides a general description of the framework that the FOMC will apply in making decisions about the timing of liftoff.』

さあその部分が近づいて参りました。

『Specifically, in determining how long to maintain the current target range of 0 to 25 basis points for the federal funds rate, "the Committee will assess progress, both realized and expected, toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation." In other words, the larger the shortfall of employment or inflation from their respective objectives, and the slower the projected progress toward those objectives, the longer the current target range for the federal funds rate is likely to be maintained.』

ということで、ここの部分がハトキタコレという事になっている部分だと思います。まあ確かにその前に労働市場の話でハト成分の話があってからなので、「the larger the shortfall of employment or inflation from their respective objectives, and the slower the projected progress toward those objectives, the longer the current target range for the federal funds rate is likely to be maintained.」と言っていますからハトキタコレという受け止めになるでしょうな。

ただまあそうは申しましても、「労働市場のスラックがより大きかったり、物価の上昇がより弱かったりする場合には現状の実質ゼロ金利政策が想定よりもより長期化します」と言ってるのって、良く良く考えたら当たり前の話をしているに過ぎず、これ逆の話(より改善したらゼロ金利政策は短くなる)をしても文意は同じになるんですけれども、まあその中でこういう表現をして「ハト成分アピール」をしたかったというのはその通りですので、これはつまり(どこぞのモーサテで言われていたような)「6か月発言の事実上の修正」でも何でも無くて、単に「おまいら慌てるな」と言っているだけであり、別に撤回しているような物では無いとゆー風に読めるのですけどね。

『This approach underscores the continuing commitment of the FOMC to maintain the appropriate degree of accommodation to support the recovery. The new guidance also reaffirms the FOMC's view that decisions about liftoff should not be based on any one indicator, but that it will take into account a wide range of information on the labor market, inflation, and financial developments.』

つーことです。もう少し続きがあるので引用。

『Along with this general framework, the FOMC provided an assessment of what that framework implies for the likely path of policy under the baseline outlook. At present, the Committee anticipates that economic and financial conditions will likely warrant maintaining the current range "for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored."』

失業率スレッショルドは外しているけど物価に関して「見通し数値が2%を下回り、インフレ期待がアンカーされている間は資産買入プログラムが終了しても今の低金利は継続しますという文言は生きていますよと。

『Finally, the Committee began explaining more fully how policy may operate in the period after liftoff, indicating its expectation that economic conditions may, for some time, warrant keeping short-term interest rates below levels the Committee views as likely to prove normal in the longer run.』

経済の数値がロンガーラン水準に戻った時でも金利はまだ中立金利よりも低い位置にあると想定されるという文言の件ですな。

『FOMC participants have cited different reasons for this view, but many of the reasons involve persistent effects of the financial crisis and the possibility that the productive capacity of the economy will grow more slowly, at least for a time, than it did, on average, before the crisis. The expectation that the achievement of our economic objectives will likely require low real interest rates for some time is again not confined to the United States but is shared broadly across many advanced economies.』

現状では金融危機以降の構造的な問題が世界的にあるので、上記のような金融政策正常化プロセスを辿る事が正当化されますという話をしていますにゃ。

『Of course, this guidance is a forecast and will evolve as we gain further evidence about how the economy is operating in the wake of the crisis and ensuing recession.』

とは言えそれは現在の見通しであり、状況が変われば(=構造問題が解消されれば、ですな)また変化し得るという事でありまする。


あとは最後の纏めなので割愛しますが、確かにこのイエレンさんの説明は労働市場に関する部分で循環ファクターの方が構造ファクターより大きい(という見解はサンフランシスコ連銀総裁時代から継続していたので今に始まった話では無いのですが)という部分がハト的で、んでもってそことの合わせ技で考えると話題になった「the larger the shortfall of employment or inflation from their respective objectives, and the slower the projected progress toward those objectives, the longer the current target range for the federal funds rate is likely to be maintained.」という部分がハトメッセージに見える、というかまあそう見られる事を意識して講演テキスト作ったんだろうなあというのは判るのですけれども、ただまあ全体の文脈から見ると特段超ハトとか、軌道修正という話をしている訳では無く、演出狙っている成分の方が大きそうな点は注意した方が良さそう(=経済が順調に回復すれば手のひら返しクルーという意味ね)ですなという所だと思います。


#とか何とか書いていたら他のネタを書く時間がががががががが

○一応市場メモ

・1年TB

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140416.htm

(3)募入最低価格 99円95銭7厘 (募入最高利回り)(0.0431%)
(4)募入最低価格における案分比率 17.9878%
(5)募入平均価格 99円96銭0厘 (募入平均利回り)(0.0401%)

4bp台後半にでも乗ってくれるかと期待しましたが、1年TBは相変わらず謎の需要の強さで堅調な結果だわ不明玉は2兆だわショートカバーで堅調だわとなりましたが、引値が強くなると次の短国買入でこの銘柄が入りやすくなるので日銀ニッコリですね。


・固定金利オペ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140416.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年4月18日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年4月18日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年4月18日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2014年4月18日 2014年7月29日


オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140416.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 11,726 2,506 0.002 0.003 1.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 12,980 2,508 0.003 0.004 15.9
国債買入(残存期間5年超10年以下) 15,405 4,006 0.005 0.006 64.8
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月18日スタート分) 7,893 7,893

昨日のオペは昨年のシグナルの折り返しで、元は10230億円あったので、7893億円の折り返しとは打率8割近くでドカベン山田太郎もビックリ(昭和の香りですかすいませんすいません)という所ですが、何せ(昨日はスルーしましたが)一昨日の固定金利なんぞ3か月のロールでしたが、1661億円の足に対して3301億円のロールでしたのでロールの方が多かったりして、最近は謎の順調ロールが続いていますな・・・・・・・

というただのメモでした。









2014/04/16

お題「追加緩和話は引き続きだが総裁やる気なさそうなんだが/市場雑談メモ/遅ればせながら金融経済月報」

今日は為替の人が追加緩和クレクレとコメントと物乞いモード大流行ですな>モーサテ

○追加緩和がどうのこうの系ニュース雑談

・黒田総裁と安倍首相の会談とな

確か先週金曜にどこかのベンダーでニュースが出てた時にあたしゃもう会談終わったもんだと勘違いしてたのですが昨日だったのですな(大汗)。

http://mainichi.jp/select/news/20140416k0000m020061000c.html
安倍・黒田会談:追加緩和、必要なら「ちゅうちょなく」
毎日新聞 2014年04月15日 19時40分(最終更新 04月15日 20時22分)

『そのうえで、日銀が今後1年程度での達成を目指す2%の物価上昇の目標について「達成に向けた道筋を着実にたどっていると(首相に説明した)」と語った。一方で「(目標達成は)道半ば。目標達成に支障を来すような事態があれば、ちゅうちょなく金融政策の調整を行うと(首相に)お話しした」と述べ、物価・経済情勢が日銀の想定から大きく外れる状況になった場合、速やかに追加金融緩和に踏み切る意向を改めて示した。』(上記URLより)

ふむふむ。まあ例によってヘッドラインの印象でお得感を出していますが、冷静に読みますと「必要ならば必要な政策をする」とかそれ殆ど同語反復の世界ですし、もっと意地の悪い話をするとフォワードガイダンス的な政策というのは将来における政策運営に関して一定のコミットをする事によって金融政策の先の効果まで先食いしましょうという施策でありますから、本当はフォワードガイダンス的な政策を実施する場合って必要な時に調整するとかしたらガイダンスの意味がなくなってしまうのですけどね、とそれは余談ですけど。

まあ何ですな、黒田さんがお上手なのは「必要な時になったら躊躇なく必要な措置を取る」という話をしている中で「いや別に今は必要ないでしょ」という話は基本的にスルーする(この前の定例会見ではマッコウクジラで発言しましたが)所ですな。まあ良く見れば「順調に進捗中」という認識なんですから「今は必要ない」と言ってるのと同じなのですが、これ同じような話って麿総裁の時にも麿総裁は同様に「必要な時には追加緩和」みたいな話をしているのですが、残念なことに発言する側から「でも今は別に必要ないもんね」という話を直球で投げ込んで来るので、同じような話をしているのに麿総裁の場合は「今は必要ない」という方がヘッドラインになってしまい、黒田さんの場合は「ちゅうちょなく」がヘッドラインになるという所でございます罠。

つーことでまあ普通に「いやー金融政策が絶賛大効果ですよ」という話をして終了のような気はだいぶするんですけどね。


ちなみに念の為ですが、特にネタにせずスルーしておりましたがG20での黒田総裁会見でも・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1404c.pdf
黒田総裁記者会見要旨(4月11日)
――G20 終了後の麻生副総理・黒田総裁 共同記者会見における総裁発言要旨

『【答】特別なリアクションや注文はありませんでした。従って、日本の金融政策に関する理解というのは、十分進んでいると思いました。2%の物価安定目標に向けての道筋を着実に辿っていますが、まだ道半ばであり、今後とも引き続き、着実に実施していくということです。そうしたもとで、物価安定目標の達成に支障をきたすような事象が起きれば、当然躊躇することなく、必要な金融政策の調整を行う用意はもちろんあります。』

ということでして、先ほどの毎日新聞記事先にあるコメントと同じでして、この全くぶれない黒田総裁クオリティーっていうのは俊ちゃんのハチャメチャロジックとは対極の世界を形成しているなあ(というか俊ちゃんが2σの向こう側だったんだなあと今にしてみると思う、当時は割とふーんという感じで受けとめられていたが)という所でありまする。

ま、こういう総裁だと事務方はやりやすいですよね。見通しコケたら立て直しが大変そうだけど。



・ワロタというかこれはまたお前が言うなというか

で、あまりん。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0N704Z20140415
UPDATE 1-日銀の追加緩和「勝手に期待し、勝手に落胆」=株価下落で甘利再生相
2014年 04月 15日 09:52 JST

えーっとですね、追加緩和がどうのこうのとかおたくらのブレーンとやらの人たちが散々話をしておりますし、それを受けてか知らんけど政権の皆様(安倍ちゃん含む)も「日銀の適切な対応に期待」とか何とかゆうとった訳でして、おまいらも追加緩和期待を煽っているんだが大丈夫か細川たかし先生ってな所ではございます。まあおとぼけで言ってるんだったら良いのですが、うっかりすると素で言っててもおかしくないのが現政権クオリティなので一抹の不安はあるのですががががが。


・中原伸之さんェ・・・・・・・・・・・・

読者様からこういう記事がありますがなとご指摘頂かないと気が付かない所でした、感謝感謝。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA3E04X20140415?sp=true
アングル:中原・元日銀審議委員が追加緩和は「来年」と提唱
2014年 04月 15日 16:14 JST

『[東京 14日 ロイター] -元日銀審議委員の中原伸之氏が、日銀の追加緩和は来年の実施が望ましいと提唱している。現行の異次元緩和が予定している270兆円のマネタリーベース(資金供給量)達成を見極めた上で、さらに100兆円以上の増額を打ち出すべきという内容だ。』(上記URLより)

さて・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93306B20130404
インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
2013年 04月 5日 08:42 JST

『これまでも中原氏は、安倍晋三首相の事実上のアドバイザーとして、現在は50兆円超の当座預金残高を年末まで100兆円に引き上げるなどの量的緩和策の再採用を提唱してきた。ただ同氏は2012年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円まで拡大するとの日銀の発表について「あまりに急激な金融緩和で驚いた」と指摘した。』(上記2013年4月5日の記事より)

とまあそういう事で、この前も似たような話をしていましたが、以前の話との整合性はどこへという感じでございますけれども、良く良く見るとインタビューのその先の部分もアレ。

今回のインタビュー関連記事に戻りまして
http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA3E04X20140415?sp=true(再掲)

『そのうえで「米国も2008年以降、足かけ5年にわたり3回の量的緩和政策を続けた。日本も5─6年、量的緩和を続けるべき」との見解を示した。』(上記2014年4月15日の記事より、以下同様)

えーっとですね、2008年っていうのはサブプライムショックとかリーマンショックとかからの話でございまして、信用バブル崩壊による金融危機対応から始まっている米国の金融政策が5年だから日本も5年とか何を仰せなのかよく分かりませんですが、最近の日本のどこにバブル崩壊を伴う金融システム不安とかがあるのか小一時間お伺いしたい所でございます。つーかそもそも論からして日本の実質ゼロ金利も随分長いですし、量的緩和的な言い方を強めたオーバーナイトのバンド化した包括緩和から計算しても2010年10月以降になるんですけどねえ。

『また、追加緩和の手段としては新たに買い入れる資産の2割程度を米国債など外債にするのも選択肢と指摘した。為替介入と同じ効果を持つ外債購入に対して、海外から批判を招きかねないとの指摘も政策当局や学識経験者の中にあるが「米国は金融緩和縮小を進めており、(米国債を買い入れれば)米国から反対はないだろう」との見通しを示した。』

財政ファイナンスという意味ではそうかも知れませんが、以前の米国と違いまして今の米国金融政策当局はマクロプルーデンスの重視という姿勢を強めておりまして、足元で行われているTapringなんてモロにそのマクロプルーデンス丸出しの話をしてますからして、米国の金融政策当局からしてみますと金融政策を正常化方向に進め、しかもマクロプルーデンスの観点というのが追加されている(サブプライム問題前はマクロプルーデンスなんぞ知るかという事で問題起きてから対処すれば良しというスタンスでしたから)中で日本から国債買われたらいい迷惑だと思うのですけど、何か随分安易ですなあ。

ということで、何が何やらというかはいはいおじいちゃんというか何というかで実にこう残念なお話ではある事よと思うのでありました。


○市場雑談系

・そういえば10年カレントの出来がどうのこうのとか話題でしたが

月曜は月曜相場で10年カレントの出来が日本相互証券さんの所で無かったというオソロシスな一日で何年ぶりとかいうお洒落な話になっておりましたが、昨日は昨日で5年国債入札だというのに先物の前場出来は1万枚行かないし(というか7000弱)10年カレントは前場は前日に引き続きで出合い無しとか何というお洒落な展開。

まあさすがに後場に出来はありましたし、超長期とかは月曜も火曜も一応売買動いてたっぽいので、単に10年カレント0.60%で売りも買いもウゴカンチ会長という事なのだとは思いますけれども、それにしても10年位までの所がろくすっぽ動かずですし、最早入札と輪番しか動くネタが無いのですが、その入札や輪番でも輪番減額騙し討ちとかそういうお洒落な事でも無い限り動かないという困った状態になっているのはもう何だかねという感じで。

でまあ動かない動かないとかゆうとりますが、こうやって流動性が無くなってくると外的ショックに脆弱になりやすくなるっちゅうリスクは高まってきますし、そこへ来て国債買占め(というか「買い締め」というのが良いのかも^^)している日銀様におかれましては「補完貸付は5営業日しかロールしません」という事実上お前ら借りに来るんじゃねえ的な「制度運営の明確化」を行ってしまうという事で、まあ別に今直ぐにどうのこうのという話では全然ありませんけど、そうやって業者がショートセールしにくくする話を推進してどないすんねん(SCレポがT+0化するという意味で国債アウトライト決済をT+1化するという話も業者がショートセールし難くなる話)という所ですな。

どうもね、株式市場の空売り規制なんかもそうですけど、空売りそのものを規制すると価格が維持できるという信仰が政策当局の皆様的にはあるのかもしれませんけど、皆さんが揃って「売り」一色になっている時って言うのはショートセールの買戻し以外の買いってなかなか入らないのでして、ショートのできないものってそもそもマーケットメーカーが付かないですし、値段崩れだすと凄まじい崩れ方になると思うので、まあどうも日銀様におかれましては「市場」という訳のわからん所を相手にするのはお苦手のようですが、昨日も悪態申し上げましたように、あの施策を出して「市場の流動性を高めます(キリッ)」とか言い出す所が絶望的にアレという所ですな。


・超長期国債先物取引

さて、そんな困った相場でございますが、ここで超長期国債先物取引の状況を見てみましょう。

http://www.ose.or.jp/market/trading_data/today_overview
当日取引高等

例によって「JPXデリバティブ取引市況(日通し)(2014/04/15)」から売買高をエクセルにDLして確認いたしますとこの通りです。

夜間:0
前場:5
後場:26
合計:31

例によって立会外取引はゼロ枚なので立会内取引でこの数字ですが、中々素敵な状況になっておられるようで、テコ入れマダーって所ですなうんうん。


・レポとか短国とかその辺のメモ

今日は1年短国の入札がありまして、まあ日銀様におかれましてはこの1年短国を短国買入で吸い上げるべく虎視眈々と狙っておられる(1年TB買えば年末のMB残高に跳ねる、つーか他の物買っても年内に償還来るので無駄働きにも程がある)訳ですけれども、今週月曜の短国買入を1兆5000億円で珍しく抑制してきた(固定金利オペのロール進捗が順調なせいもあると思うけど)影響か足元ではGCレートがやや上昇圧力という感じになっておりますので、まあ普通に普通の入札になるんじゃないですかねえ(てきとう)。

まあそげな感じで今週の短期債需給は若干緩めで推移するのかも知れんけど、GCに関しては短国需給だけではなくてその他の要因もあって上昇している感じですし、何故かここへきて期末に一回低下したあと若干戻し気味だったCP新発レートがまた低下しているのも見られたりというような流れですから、まあその辺りの局地的な話だけでどうこうというのも何ですけど、結局の所リアルマネー系の資金というのは短期市場にウジャウジャ転がっていて、短国のように一発のロットがでかい物だと微妙に需給が緩んでいるようには見えるのですが、実際の所はそんなに金利上昇って感じでもないんじゃネーノと思うのでした。

あとそれから、どうせ1年短国買いに今週金曜の短国買入は普通に多目にオファーすると勝手に妄想しているアタクシだったりするのが上記の何となくなイメージの背景にあったりするのかも知れんが。


○金融経済月報比較を忘れていたので投下

どうもすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1404.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1403.pdf(前回)

・現状認識は声明文と同じっすけどね

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

基調判断は声明文の通り。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

海外の見方は変わってないのですよね〜(声明文でもそうですけど)。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(前回)

これまた声明文どおりですが生産の現状判断を3月に上げた分を2月以前の状態に戻しています。

『企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(今回)

これは短観対応ですな。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

駆け込み需要は終わりましたからその分が抜けるのは当然で見通し通りっす。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

公共投資の見通しが「横ばい圏内」に代わっているのですが、これは前回を見れば分かりますように前回の時点での「織り込み済み」の話なので従来の見通しからのオントラックである事には変わりはありません。

『個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動から減少する局面を伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

個人消費や住宅投資に関して今回は消費税前の駆け込み成分が無くなっているので、従来の「振れを伴いつつ」から「減少」という話になっていますが、これもまた従来の見通しのオントラックの範囲内の話でありまして、形式的には見通しが下がっていますが、惜しくもこれは実質的な見通しの下げとは言えませんのでクレクレの皆様残念無念。


・先行きリスク

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

声明文どおりで全文一致。今さら欧州債務問題ねえという感じですがががが。

・物価

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

何という全文一致。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きとなるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ほほー。国内企業物価に関して先行き見通しがしらっと横ばいになっていますな。


なお、金融環境の所は特段変化がない(現象面の記述はアップデートされていますけど)ので引用割愛します。






2014/04/15

お題「補完供給オペのイミフな「明確化」/今さらイエレン議長のFOMC後会見ネタで考えてみた件」

お告げキタコレ
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/118
2014年04月14日 ストラテジーブレティン 第118号
日本株が反発に転ずる理由 @〜いずれ日本人投資家のリスク回避が是正される〜

今年に入って下がる度に中国ガーとか米国ガーとか追加緩和ガーという話をしておられたのですが今回は追加緩和ガーという話をしながらも反発に転じるというのがお題になっているのがちょっとトーンが違うように見えますな。

しかし「期待に働きかける政策とは円安株高進行」ってえーっと日銀の働きかける先は「インフレ期待」なんですけど大丈夫ですかおじいちゃん、と思ったらモーサテでも堂々「金融政策で株を上げろ」という話をしている利益誘導クレクレ話をしている人が居まして、えーっとすいません実力反映しない株価を作っても意味ないと思うんですけどそれでプロの目ですかそうですか。(なおムーシャ先生は割安修正の為に金融政策投下しろと言ってるだけマシ)


○一瞬改善にみえるが盛大に改悪の変更(正しくは「明確化」)とは遺憾の極み(補完供給関連)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140414b.pdf
国債補完供給の実務運用の変更について

これはペーパーの右上に「日本銀行金融市場局」とありますように金融市場局の判断での決定でありまして、基本要綱の範囲内の運用についてのお話ですな。

『日本銀行は、国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和することにより、金融調節の一層の円滑化を図るとともに、国債決済の円滑確保にも資する観点から、国債補完供給に関して、下記の措置を実施することとしましたのでお知らせします。』

ほう。

『1.オファーの1 日2 回化』

『1 日2 回のオファー実施を可能とする取扱いに変更します。概要は以下のとおりです。』

・・・・・・・・ということで従来オファーが午後2時だけだったのですが午前のオファーもするようになったと。うんうん。(次の『ロ. 銘柄別の売却上限額』は単に前場に貸出した分は貸せなくなりますよという当たり前の話です)

『2.「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」に関する公表頻度の引上げ』

『―― 本件の取扱いは、5 月9 日時点の残高にかかる公表(5 月13 日公表予定)から開始します。』

末残公表だけではなくて旬報方式になるようですな。

・・・・・・・・とまあここまでは良いのですけど、問題はこの次。


『3.連続利用に関する取扱いの明確化

国債補完供給の連続利用の可否について予見可能性を高める観点から、同一銘柄の売却(注1)に関する取扱いを以下のとおり明確化します。

今回明確化する取扱い

(2014 年4 月21 日以降のオファー実施分から適用)

同一銘柄の売却に関する取扱い
一のオペ先に対して同一銘柄を連続して売却することのできる日数は、原則として最長5 営業日とします(注2)。

- 金融市場の情勢等を勘案して日本銀行が必要と認める場合は、延長することがあります。

(注1) 利回り競争入札を通じた売却を指します(再売却は含みません)。
(注2) 買戻日については、従来の取扱い(原則として売却日の翌営業日に買戻を実施(オーバーナイト供給))から変更はありません。』

・・・・・・・・・・・・・おおもう何だかねえ。

えーっとですね、「5営業日までしか使えない」という制度にする意味が全くもって意味不明と言う所でございまして、オファーを1日2回にして残高公表を月3回に増やすという努力がこの「明確化」で全部台無しどころかドテンマイナスになっているというここまで市場センスの無いのも珍しいわという事でネタというか以下悪態になるのでした。

つまりですな、これロンバード貸出が最初に導入された時にも補完措置というような感じで同様に5営業日しか貸しませんという建付けになっていたのですが、この「5営業日しか貸しません」というのは要するに「この制度は限界的な制度だからなるべく使うな」と言っているのに等しく(仮に日銀の現場がそうではないと言ってもカウンターパーティーたる民間はそういう受け止め方をするし、大体からしてそういう認識が無いなら常設ファシリティー化するでしょ)、つまりは国債補完供給オペ利用にはStigmaがあると言っているのに等しい訳ですよ。

いやまあこれで足元で別に日銀がろくすっぽ国債を保有していないというのであれば別なのですが、国債市場の流動性を馬鹿買い政策で盛大に殺しているのに、わざわざ国債のレンディングにStigmaを設けて使いにくくしてどうしますねんと存じます次第。

更にこれ酷いと思うのは、先ほど引用しましたようにリリースで『国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和する』とか言っている点でして、まあ確かに他の施策を見ると補完供給の使い勝手を良くしようと思って色々と新しい措置を突っ込んでいる積りなのでしょうが、この「努力したつもりでやっている事が逆方向」というのがもうアレな働き者の風情を醸し出している訳で、市場との対話がどうのこうのとか言ってその成果物がこれですかと非常に残念としか申し上げようがない部分。

金と違ってモノの場合って限界的な部分で問題になるのは該当のモノがあるかどうか(金には色は無いがモノは個別ですから)という話になるので、そのロールが5営業日しかできないというのはかなり問題になるというか基本的に借りに行かん罠となりますし、そうなりますと限界的にショートセールに制約が掛かりやすくなるんですけどという話っすな。

ちなみに通常ベースで業者が投資家からレポする場合って決算制約のような時期の場合は別ですが通常はロールを前提にタームで借りたりして、ロールが止まるというのはその投資家が売却をする場合ですから世の中のショートセールがその分減るというような状況な訳ですが、日銀の場合は国債は馬鹿買いして買い集めるわ、売却はしないわな所に来て、持っている玉をレポ市場でロールしないわと仰せという事ですから、国債流通市場的にはナンジャソラという話です罠。

いやあのですね、別に通常ベースの金融政策やってて日銀が国債市場に対するプレゼンス無いなら兎も角、しつこく申し上げておりますように日銀が盛大に国債を買い占めて国債流通市場に対して盛大にストレスを掛けている状態になっているのに、そのストレスを解消するどころか悪化する方向(正確にはこれ「明確化」ですので従来から運用面で使いにくくしてたんでしょうなあという想像に難くないので、悪化ではなくて明確化なのかも知れんが)の話をするとか、国債大量発行&事実上財政ファイナンスと言われても文句の言いにくい状態になっており、将来的にこの金融政策を正常化しようという事を考えているのであれば、何でレンディングファシリティーをわざわざ使いにくくする「明確化」するんだよと思う次第。

まー何ですな、これ借入の日数制限残したままで出口政策モードになった時に国債流通市場が更に低下しちゃって何かの拍子に金利急騰みたいなリスクの背景になる可能性も無い訳では無いという話になると思われます(1998年や2003年の国債市場暴落はトリガーは別ですが背景にはどちらの場合でも「国債流通市場での流動性の低下」(特に98年の場合は極端な低下で原因は前年の東証債券先物取引のシステム変更がきっかけでしたが)があるので、将来の出口政策モードあるいは財政拡大状態の継続時に大丈夫かよとか思うのでありますわ。

ちなみにFEDの場合ですが。
http://www.newyorkfed.org/markets/securitieslending.html
Securities Lending

『The Bank provides a secondary and temporary source of securities to the financing market through a Securities Lending program to promote smooth clearing of Treasury and Agency securities. The program offers securities for loan from the System Open Market Account (SOMA) portfolio in accordance with program terms and conditions. Securities loans are awarded to primary dealers based on competitive bidding in an auction held each business day at noon eastern standard time. 』

関連して各種のファシリティーの紹介ページ
http://www.newyorkfed.org/markets/Forms_of_Fed_Lending.pdf

細かい要綱がちと見つかりませんでしたが、別に「何日間限定」というような制限はなく借りれますと言う風にしか見えないのですし、セキュリティーレンディングの方のトランザクションボリュームを見ますと恒常的に残高があるようでして、日銀の補完供給のように実施される日があったりなかったりするようなオペではなくて、常設ファシリティ―みたいな形になっています罠という所です。まあ普通にこういうもんでしょと思うのですけどねえ。



そういや話はちと違いますが、国債市場の流動性という話では相変わらず「国債決済アウトライトT+1化」というのも日銀様におかれましては推進していると仄聞しますが、未決済取引残高の圧縮よりもレポT+0化によるレポ市場に掛かるストレスの拡大と、T+0化の事務コストを嫌ってレポ市場から退出する参加者が出る事による国債流通市場に掛かるストレスの方が同様に出口政策や国債大量発行という財政問題がある中ではシステミックリスクに繋がる話だと思うのですが、相変わらず少なくとも表に出ている部分ではそういう考察も無かったりするという次第で、引き続き債券市場との対話というのはどうもグダグダですなあというのと、庭先お掃除が得意ですなあというお話なのでございましたとさ。


○イエレンさん「パーツの説明」と「全体の説明」の整合性でコミュニケーションギャップが起きている気がする件

という壮大なネタな割に出てくるのが今更のこれなんですが(大汗)
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140319.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
March 19, 2014

・マクロプルーデンス的な説明をしているのはほほうという感じでタカ成分っすね

例の「6か月」の所ばかりが注目されましたけど、この質疑も結構アレ。19ページなのですけど。

『GREG ROBB. Thank you. I’d like to take you back to last summer when there were hints-the Fed made hints that they were going to taper, and long-term interest rates spiked, mortgage rates rose. What lessons-looking back at that crisis, at that period, what lessons have you learned from it, and are you confident that you won’t repeat that-those mistakes again?』

また出口トークで金利スパイクさせるんじゃないのホレホレとな。

『CHAIR YELLEN. Well, I think there were quite a number of things happening at that time. I think it’s probably true that monetary policy may have played a role in touching off that market reaction, but I think the market reaction was exacerbated by the fact that we had a very significant unwinding of carry trades and other leveraged positions that investors had taken, perhaps thinking that the level of volatility was exceptionally low and perhaps lower than was safe for them to have assumed.』

昨年の金利上昇には金融政策(つまりTaperingトーク)の影響もあったが、キャリートレードやその他のレバレッジによって拡大したポジションの巻き戻しの影響もあったという説明が来ている時点で怪しげな雰囲気を醸し出しております!

『But we certainly saw-now, in some ways, the fact that term premia in interest rates have come up somewhat, although it has had a negative effect on the recovery and that’s evident in housing-in the slowdown in housing-perhaps it’s diminished some financial instability risk that may have been associated with these carry trades and speculative activities that were unwinding during that time.』

キタコレという事で、こりゃ確かにタカ派呼ばわりされても仕方ないわという話ですぞなってもんで、つまり足元ではこの前そのような事がありましたのがその結果これらのトレードが巻き戻されて現在はその手のリスクが無くなっていますとの認識キタコレです。

『A lesson is that we will try, and we were trying then, but we will continue to try to communicate as clearly as we possibly can about how we will conduct monetary policy and to be as steady and determined and as transparent as we can to provide as much clarity as is reasonably certain-given that the economic developments in the economy are themselves uncertain-but we will try as hard as we can not to be a source of instability here.』

ということで、最終的には説明の透明性という話をしているのですが、市場における過剰なキャリートレードやレバレッジの存在が市場価格の急変動に寄与したという話をした結果として、最後に「we will try as hard as we can not to be a source of instability here.」って話をしているというのは、これすなわち明言はしていないけど「市場における過剰なリスクテイクに対しては十分に注意して事前に対処する」というBISビューというかスタイン理事のお話というかに思想としては繋がる部分(それを金融政策で対応するかというのは別ですけど)だったりして、マクロプルーデンスキタコレというのはFEDも変わったなあと思うのでした。


・労働市場で何を見る?はハトとな

という質問がありまして16ページのケツから質問で答えが17ページから。

『JEFF KEARNS. Jeff Kearns from Bloomberg News. You’ve spoken in the past about- thinking about back to March of last year-of how you supplement your view of the labor market beyond unemployment with other gauges like quit rates and layoffs and things like that. How has your dashboard evolved in the past few months in terms both of the-which indicators you like to watch most, and also in terms of the quality of data that you think-whether it’s positive, negative-that you’re getting from these indicators. Thank you.』

『CHAIR YELLEN. So I have talked in the past about indicators I like to watch or I think that are relevant in assessing the labor market.』

以下山のようにあるのだ(^^)。

『In addition to the standard unemployment rate, I certainly look at broader measures of unemployment. I mentioned U-6 in my statement. It- 5 percent of the labor force working part time on an involuntary basis, that’s an exceptionally high number relative to the measured unemployment rate, and it-so, to my mind, is a form of slack that is-adds to what we see in the normal unemployment rate and is unusually large. However, it is coming down, as well as U-3. It’s moving in the right direction and has move deven more recently than U-3. Of course, I watch discouraged and marginally attached workers.』

U-6とかU-3の失業率(パートタイムでどうのこうのとかその辺の話みたい)とな。

『The share of long-term unemployment has been immensely high and can be very stubborn in bringing down, that’s something that I watch closely. Again, that remains exceptionally high, but it has come down from something like 45 percent to high 30s, but that’s certainly on my dashboard.』

長期失業者ですな。

『Labor force participation-I do think most research suggests that due todemographic factors, labor force participation will be coming down, and there has been a downward trend now for a number of years.』

労働参加率は最も重視しますと言ってるようにこの先の説明がクソ長いです。

『But I think there is also a cyclical component in the fact that labor force participation is depressed. And so, it may be that as the economy begins to strengthen, we could see labor force participation flatten out for a time as discouraged workers start moving back into the labor market. And so that’s something I’m watching closely.』

『In the Committee, we’ll have to watch-there are different views on this within the Committee, and it’s hard to know definitively what part of labor force participation is structural versus cyclical, so it’s something to watch closely.』

FOMCの内部ではこの件について循環的なファクターと構造的なファクターがどうなのかという議論があるようですが、イエレンさんは基本的に循環ファクターの寄与が大きいとみているようですな。


『I’ve also mentioned, in the past, measures of labor market turnover.』

労働市場におけるターンオーバーだそうです。

『You mentioned quits. A remarkably large share of workers quit their jobs every month, usually going directly into another job. And I take the quit rate in many ways as a sign of the health of the economy.』

『When workers are scared they won’t be able to get other jobs, they show a reduced willingness to quit their jobs. Now, quit rates now are below normal pre-recession levels, but on the other hand, they have come up over time, and so we have seen improvement.』

ここは少々ほほうと思いましたが、退職が多いのは労働市場が活性化しているというサイン(転職活動が活発だという意味で)とはオモシロスと思いましたな。

『The job opening rate has also come up. The hires rate, however, remains extremely depressed, and I take that as a sign of a weaker labor market. But most of these measures, although they don’t paint the identical extent of improvement, if you ask about my dashboard, the dial on virtually all of those things is moving in a direction of improvement.』

新規雇用関連の数値も注目で改善傾向と。

『The final thing I’d mention is wages, and wage growth has really been very low.』

賃金キタコレでこれはまだ弱いと。

『I know there is perhaps one isolated measure of wage growth that suggests some uptick, but most measures of wage increase are running at very low levels. In fact, with the productivity growth we have and 2 percent inflation, one would probably expect to see, on an ongoing basis, something between-perhaps 3 and 4 percent wage inflation would be normal.』

『Wage inflation has been running at 2 percent. So not only is it depressed, signaling weakness in the labor market, but it is certainly not flashing. An increase in it might signal some tightening or meaningful pressures on inflation, at least over time. And I would say we’re not seeing that.』

従来の傾向だと現在の成長であれば本来3−4%の賃金上昇が起きる筈なのに足元では2%程度の賃金上昇しか起きていないという事で、これは労働市場のスラックがある事を意味し、その為にインフレ圧力も起き難いという結論になっていてなるほどという所です。

つまり、フレキシブルインフレーションターゲットの枠組みは明確になっていますが、一方でイエレン議長はこの説明に延々と時間を割いているように、労働市場にも注目しているという所ですな。


でですね、まあイエレンさんコミュニケーションが少々アレだなと思うのは、ここで見られるように、ファイナンシャルスタビリティーの話をするとタカに見えて、労働市場の話をするとハトに見えるように、トピックトピックの説明は誠に仰る通りでご尤もとしか申し上げようがないのですが、「じゃあ金融政策運営はどうなる」という整合性の部分が見えてこない所で、まあ取り纏めする人だからその辺も明確に出しにくいというのはあるのかもしれませんけど、パーツパーツの方向性が微妙に違うので、コミュニケーションギャップは今後も起きるなあと思うのでありました。






2014/04/14

お題「市場メモ/宮尾さんの強気化は雇用情勢由来か?/決定会合議事要旨は益々強気化&あっさり化」

引用増量企画でどうもすいませんすいません。

○市場メモ雑談

・2M短国入札ェ・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140411.htm

(3)募入最低価格 99円99銭2厘5毛 (募入最高利回り)(0.0547%)
(4)募入最低価格における案分比率 49.4009%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘6毛 (募入平均利回り)(0.0540%)

ということで5bp台に乗った落札になりまして金曜に5bpってタッチはしても抜けないですなあって話をした途端にこの有様とは俺様涙目という感じですけれども、2か月ものなので短国買入の対象にならないのと、今回の短国は6月4日の税揚げ足なのでロールが行われない(5月と6月の入札スケジュールをご参照下さい、なお4月の2Mは税揚げに足をぶつけるのでロールされないというのが仕様)のがあるので、償還再投資の際にリスクがあるぞなという事で今回はニーズが少なかったようで。

ま、今日の短国買入で先週の新発がホイホイ吸い上げられるから結局需給は良くなるんでしょうけど。


・1年オペのロール

金曜のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140411.htm
社債等買入 1,000 2014年4月17日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 20,000 2014年4月15日 2014年7月25日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140411.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月15日スタート分) 11,820 11,820
社債等買入 1,892 929 0.103 0.113 98.6

この回は昨年4月11日に実施した一発目のオペでして、最初の最初に実施されたシグナルオペで4/15〜4/15の1年オペのロールでしたが、15000億円のオファーに対して26310億円の応札があった奴だったのですが、オファーを2兆円で実施するとはお洒落なという所ですな。

でまあ応札は15003億円のエンドに対して11820億円ですので、先週木曜の3Mオペのビックリ増額ロールでついに固定金利オペの岩盤の可能性が微し存という事を申し上げましたがそうではなかったようで(^^)。

つーても3分の2以上は歩留まりしているのでまあ多いっちゃあ多いざんずなと思うのでありました。



○宮尾審議委員会見だがやたら景気に強気になったのは雇用状況のようです

金曜は何となくケチョンケチョンにしたような気がする宮尾審議委員講演ですが、では会見ではどうだったでしょうかという話。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1404b.pdf

・最初の説明部分からして強い

最初の質問は実質的に「じゃあ説明してちょ」という奴ですが、今回の宮尾さんの話ではこんなのがありました。

『まず、当地の景気については、堅調な内外需を背景に、自動車や鉄鋼を中心とした製造業が高操業を続けています。また、公共投資や住宅投資の増加から建設業でも繁忙度が高まってきています。更には、消費者マインドが改善するもとで、個人消費についても堅調に推移しています。このため、「全体としては緩やかに回復している」という意見が聞かれました。』

ほほう。

『こうした基調的な変化に加えて、業種、あるいは時期のばらつきはみられますが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要により、3 月末にかけて売上が大きく増加したという声が多く寄せられました。この点、4 月に入ってからは、予想された売上の反動減がみられているという指摘が聞かれました。』

ふむ。

『もっとも、その程度については、「確かに反動減は出ているものの、駆け込みの強さから考えればさほど落ち込んでいない」とか「反動減は限定的なのではないか」など、今のところ予想していたよりも小さいという声が、住宅、耐久消費財、小売、サービスなどについて聞かれました。先行きについて、反動減が終息する時期は、夏場以降ではないかという事前の予想に対して、「もう少し早く終息するのではないか」という声も聞かれました。』

ということで、何か既に懇談会での話が威勢が良いというのがありまして、まあこの先の会見での話も基本的に威勢が良いのですよね。


・見通しに対する自信が強まっているとな

ででもって次の質問。

『(問) 2 点あります。1 点目は、本日の講演要旨を読ませて頂くと、非製造業と消費中心の今回の景気回復の持続性に自信をお持ちであるようにお見受けしますが、このシナリオ通りだと、現在の異次元緩和についても、ビルトインスタビライザー的な効果もあって、このまま自然に物価上昇率2%を安定的に達成するというシナリオが、以前に増して確度が高まっていると発信されたいのかということを確認させて頂きたいと思います。(以下割愛)』

で、この質問に対する答えですけどこれがまた長いのだが強い強い。

『(答) まず、1 点目ですが、講演では、消費あるいは非製造業を中心とした、景気回復の持続性に関して、メカニズムとして、次のような点が重要であると申し上げました。すなわち、まず、供給面では、非製造業を中心に様々な潜在的需要の掘り起こしが進み、成長力あるいは収益力が高まってきています。

『それから、労働面、雇用・所得面では、企業は、持続的に新しい取り組みを進めるうえで、沢山人を雇わなければならないということで、労働需要が増える一方、家計も、より主体的な理由も含めて、積極的な労働供給を増やしています。そういった中で、労働市場はタイト化して、賃金は上昇し、雇用者数も増え、雇用者所得もしっかりと増えてきているということで、雇用・所得環境が持続的に改善してきています。』

『最後に需要面としては、新しい需要の掘り起こしが進み、雇用・所得環境が持続的に改善する中で、消費支出が基調的に高まっています。このように、供給、雇用・所得あるいは労働、そして需要といった3つの面から、景気回復の持続性が高まっており、メカニズムとして働いてきているのではないかといったことを申し上げました。』

というのは金曜にご紹介したけど小見出しだけ並べて中身はスルーした辺りです。小見出し見ただけで強いですなあという話でしたが実際にもこんな感じでまあ強い強い。

『こういった私の説明が、先々の経済・物価見通しに与える影響については、前回の、昨年秋の金融経済懇談会でも述べていますが、私どもが描いている、2%の「物価安定の目標」に向けて、着実に近づいていくという経済・物価の見通しに対して、確度を高める1 つの要因になるのではないかと考えています。』

まあ強いですねという感じですが、前回対比で今回妙に強くなっている筈でして、「前回述べていますが」とわざわざ言っているのはご本人的には前回対比妙に強くなっている点についての自覚はあるんでしょうなと思わずここ見て笑ってしまいました。

『そう申し上げたうえで、毎回の金融政策決定会合では、そういった中心的なシナリオあるいはリスク要因について点検していきます。特に、今月末には、新しい展望レポートをお示ししますので、先行きの経済・物価情勢、メインシナリオとリスクバランスについて、しっかりと点検していきたいと思っています。その際に、今申し上げたようなメカニズムを踏まえたうえで、どういった評価になるのか、分析・点検していきたいと思います。』

今申し上げたようなメカニズムを踏まえたらアホみたいに強い見通しになると思います。


・何で強くなったのかという点はどうも雇用情勢のようですな

『(問) 本日の講演の中で、「リスクは概ねバランスしているとみています」とおっしゃいましたが、昨年11 月の時点では、若干、下方向のリスクを意識されている発言だったと思います。先ほどの、消費ですとか非製造業の動向というのも1 つの理由だと思いますが、なぜリスクがバランスしているとみられているのか、もう少しご説明頂けますでしょうか。』

これは良い質問。

『(答) リスクバランスについて、大きく海外要因と国内要因に分けて考えると、まず海外要因は、講演でも、新興国・資源国の動向、欧州債務問題の動向、そして米国経済の回復ペース、といった項目を挙げています。』

ほうほうそれでそれで?

『そうした中で、特に先進国で一番重要な国である米国では、この間、財政を巡る不確実性は大きく後退してきました。また、金融政策面でも資産買入の減額をスタートしました。こういった動きは、昨年秋、11 月の半ばには、まだみられなかった状況であり、財政をめぐる不確実性が大きく後退し、また金融政策の運営面で、資産買入の減額をスタートしたことからも、海外要因の不確実性、リスク要因は相応に低下してきたのではないかと思います。』

何でTaperingが始まるとリスク要因が低下するのか謎だがそうらしいです。

『一方、国内経済要因では、足もとの駆け込み需要とその反動減の大きさをどうみるかという問題がある一方、本日の講演でも強調したように、労働需給が一段とタイト化する中で、雇用・所得環境は想定よりも上振れて推移する可能性も考えられます。』

まあここが主因のようですな。

『こうした海外要因、国内経済要因を総合して、現時点の判断としては、リスクは概ねバランスしていると評価しています。ただ、これに関しても、繰り返しですが、4 月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。』


・2013年度GDP成長見通しが下振れそうなのですが・・・・・・という質問が2種類の論点から

『(問) 2 点伺います。1 点目は、本日の講演の中で、2014 年度、2015 年度に関して実質成長率も物価も想定通りとおっしゃっていますが、昨年度に関して言うと、成長率の見通しが+2.7%ということですので、これはどう考えても下振れるかなと思います。一方で、昨年度の物価見通しの+0.7%というのは確実に達成されるかと思いますが、昨年度の景気の下振れが、2014 年度、2015 年度の成長率の見通しにどう影響するのでしょうか。』

ふむ。

『もう1 点は、昨年度に関して、成長率は下振れているけれども物価はオントラックという点についてです。日本銀行では、物価を説明する要因として、需給ギャップと期待インフレ率と輸入物価を挙げていますが、そうした要因との関係で、どういった分析、または理解をされているのか、お伺いします。』

イイシツモンダナー、で宮尾さんの答え。

『(答) まず、1 点目の、2013 年度の実質GDP成長率が仕上がりとして下振れた場合に、その後の2014 年度、2015 年度の経済・物価見通しにどういう影響を及ぼすのかという点です。』

興味津々。

『そこはまさに、今月末の次回展望レポートでしっかりと考えていきたいと思います。』

何という出オチ。

『今のところ私自身は、この講演で強調したような「景気回復の持続性」といった観点から、消費や非製造業主導の景気回復のメカニズムが働くということを盛り込んだうえで、どうなるのかということを考えていきたいと思います。』

どう見ても強気見通し確実です本当にありがとうございました。

『最終的な経済・物価見通しの値がどうなるのかということは、9 人の政策委員の中央値という形で出てきますので、事前に数値について申し上げることは不可能ですが、やはりメカニズムが重要だと思っています。景気回復の持続性、内需を中心とした前向きな循環メカニズムが今後もしっかりと働いていくのかどうかということを、点検していきたいと思います。』

強い見通しを出すと言いきっているのに等しいな。で、成長下ブレなのに物価が上の件ですが・・・・・・

『2 点目の、2013 年度の成長率がやや下振れる一方で、物価はオントラックだということをどう考え方として整理するのか、ということについてです。』

ふむ。

『物価を説明する要因としては、需給ギャップ、予想インフレ率、それから輸入物価という3 つの主だった経路があります。』

ほうほうそれでそれで?

『内需主導、消費主導の回復のもとで、特に生産要素の稼働状況から推計される需給ギャップは順調に改善を続けており、日本銀行の推計値では、ゼロという水準に近付いているという結果も得られています。』

需給ギャップゼロ攻撃キタコレ!

『もちろん需給ギャップの推計値は幅をもって理解されるべきですが、方向としては改善の方向が、少なくとも生産要素の稼働状況という観点からは見受けられます。そういったところが起点となって、景気回復が持続するという見通しが徐々に広がる中で、企業も、生産コスト等を販売価格によりストレートに反映させる形で、価格設定行動を前向きに変化させているという兆し、可能性も窺われるということかと思います。』

前向きの循環メカニズムとな。

『いずれにしても、2013 年度のGDP成長率と物価については、次回の展望レポートで考え、あるいは数値等でお示ししますが、メカニズムとしてはそういった理解が可能ではないかと思います。』

結局有耶無耶のうちに前向きの循環メカニズムで通してしまい、質問への答えになっていないのが味わいがあるというか何というか。まあ展望レポートでどんだけ威勢の良い話が出てくるでしょうねえ。


○3月金融政策決定会合議事要旨から少々

議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140311.pdf

まあ経済の見立てが強いですねえという所なのですが、『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々参りますです、はい。

・経済全体に関して

『わが国の景気について、委員は、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働く中で、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。』

前向きの循環メカニズムキタコレ。

『何人かの委員は、昨年10〜12 月の実質GDP(2次速報値)は外需の影響を受けて前期比年率で+0.7%と、昨年前半に比べて低めの伸びとなったが、内需は底堅く推移しており、基調的には潜在成長率を上回るペースで回復を続けていると付け加えた。』

つまりGDPの足元の減速に関してはあまり懸念していないという話。

『景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』

これまた声明文などにあった通り。

『何人かの委員は、駆け込み需要は住宅投資や耐久財消費で顕在化しているが、3月末にかけて非耐久財についても影響が出てくるとみられ、今後も駆け込み需要の規模とその反動については、注視していく必要があると述べた。』

という所でしたが、先ほどネタにした宮尾審議委員の会見での話などは「思ったほど駆け込みの落ちこみが大きくないかも知れない」という岡山恐るべしという話になっておりますのでこれはという話ですな。

あと需要項目に関してですけど輸出と所得と消費を見てみましょう。


・輸出について

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波や東アジアの春節の影響、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。』

国内出荷優先の動きとな??そんなに日本経済って供給制約のある経済でしたっけ????

『先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。もっとも、何人かの委員は、輸出が勢いに欠けている背景には、循環的な海外需要要因や、一時的な要因だけでなく、わが国製造業の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因の影響も大きいことから、先行きも弱さが残る可能性があると述べた。この間、一人の委員は、4月以降、輸出が一時的な下押し要因の剥落から増加すれば、駆け込み需要の反動による国内需要の落ち込みの影響を緩やかなものにするとの見方を示した。』

構造的な説明をする人も複数いるようですが、1名は強い話をしているとなという所です。


・雇用・所得について

これは強い。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。』

とまあ強い訳ですが。

『賃金の先行きについて、多くの委員が、今春の賃金改定交渉においてベースアップも含めた賃金上昇の動きが拡がっていると指摘した。複数の委員は、ベースアップは直接的には正規社員の所定内給与の引き上げを指すが、過去の傾向からは、非正規社員も含めた労働者全体の時間当たり賃金とも高い相関がみられ、全体としての賃金増加に繋がる可能性が高いと述べた。このうちの一人の委員は、景気回復期には所定外労働時間やボーナスの支給月数も上昇するので、基準となる所定内給与の上昇は賃金全体への影響が大きいと付け加えた。』

やたら強いですな。

『何人かの委員は、消費の基調や人々の物価見通しに対しては、人々の恒常所得の見通しが重要であり、賃金上昇に向けた動きが持続的なものかどうかを引き続き点検することが重要であると述べた。』

まあ慎重な見解もありますな。

『一人の委員は、現状の良好な雇用環境が、恒常所得の見通しを押し上げている可能性が高いと付け加えた。』

でも強い人がいますな。

『この間、ある委員は、今春の賃金改定交渉後も、賃金上昇率が、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみた物価上昇率を下回る可能性があるとの見方を示した。』

まあそうでしょうねえ。ということで一部指摘する人もいるけれども全体の認識が強いという感じになっております。


・物価もキタコレ

物価に関して。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。』

これは声明文で示されている現状と見通し。

『多くの委員は、1 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.7%となるなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

キタコレですにゃ。で、まあめんどいのと量が多くなりすぎるので2月分の当該部分を引用しないのですけれども、2月会合議事要旨でもこの物価に関する議論があるのですが、2月会合時点でも強めの話になっていたのですがここは3月議事要旨で更に強気化しているという感じです。

『一人の委員は、昨年後半の成長率が、前半に比べて低下した一方で、物価上昇率は想定よりやや強めに推移しているが、この背景としては、@非製造業を中心とした景気回復のため労働需給がタイト化しやすいことや、A企業の価格設定行動の変化が影響している可能性が考えられると指摘した。』

これまたキタコレな話で、経済成長見通しに対して実績が下振れたのに物価上昇率は想定よりも上振れたという事の背景に労働需給と価格設定行動の変化という話をしているというのはこれすなわちフィリップスカーブが上方シフトしている可能性を示唆するという理屈を立てることも可能ですわなという所(コストプッシュで云々の話では無いから)で1名の指摘だけどほえーという感じです。

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べて大きくなっている可能性があるとの見方を示した。』

例によって端折っている記述で何とかならんかと思うのですが、恐らくこれは「いやいやそんなにベースラインは強くないでしょう為替で下駄履いているでしょ」という話をしている人の見解だと思うのですよね。つまり直前のフィリップスカーブ上方シフトみたいな話をしている人に対して「いやそうじゃなくて円安のコストプッシュだし、円安のベース効果が剥落したら物価上昇率止まるっしょ」という話をしていると見ました。

ま、その人が1名しか居なかったりするのがアレですけど。

『4月以降の物価の基調判断について、委員は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて評価することが適当であり、消費者物価については、課税品目すべてにフル転嫁された場合に見込まれる2.0%ポイント程度を差し引いたベースで評価することを確認した。ただし、4月に限っては、消費者物価統計の作成上の要因から、1.7%ポイント程度を差し引いたベースで評価することが適当であり、このことを対外的にも丁寧に説明していく必要があるとの認識を共有した。予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』


ところで話はずれますが、まあ今回に始まった話では無くて展望レポートの時以外ずーっとそうなのですけれども、声明文のリスク要因の中で謎の反対をしている白井さんの見解と思われる部分に関する見解が議事要旨に見られないという不思議現象が起きているのですが、これはつまり白井さんの謎反対に関する説明はそもそも議事の「要旨」として残すほどのものでは無い、という事を意味しているのでしょうか(銃声)。


・金融政策決定に関して超あっさり味ですな

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分が超あっさり状態。

全部引用すると長くなるので途中からね。この前の部分は単に金融政策を維持しますという決定の話です。

『金融政策運営の考え方について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。委員は、わが国の経済・物価が、概ね見通しに沿った動きとなっており、現在の方針のもとで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと推進していくことが適当であるとの認識を示した。』

うむ。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

木内さんですな。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』

効果に関してもまああっさり味ですが、ここの記述の変化が面白かったので後ほど。

『貸出増加支援資金供給等について、何人かの委員は、前回会合で決定した制度の延長・拡充を受けて、一部の金融機関が当制度に応じた貸出ファンドの増額を決めるなど、良好な反応がみられているとの認識を示した。このうちの一人の委員は、貸出競争を助長する可能性など将来の金融機関の財務体質に及ぼし得る影響にも引き続き注意していく必要があると述べた。』

まあここもあっさり味という事で、金融政策運営に関する議論の部分が見事にあっさり味なのはほほーという所ですな。


○3月金融政策決定会合議事要旨から(スペシャル編):QQEの効果の記述が気になったので確認した件

今回の議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140311.pdf

過去の議事要旨はこの辺に
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/index.htm/

さて、今回の議事要旨ですが、毎度の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所なのですけれども、毎度流して読んでいた『「量的・質的金融緩和」の効果について』という議論の部分が、というか今回の場合は『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分そのものがあっさり味にも程があるという点は今申し上げた通りですが、これを過去から並べてみると意外に面白かったりするのでご報告。

今回の記述(さっきの再掲)。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』(3月会合議事要旨より)

ま、あっさり味で予想物価上昇率が高まっている中で金利は安定推移だから実質金利は下がっているの巻ですな。

2月議事要旨から。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。』(2月会合議事要旨より)

全文一致ですね。では1月はどうでしょう。

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。この間、一人の委員は、資金循環統計や広義流動性で、家計の株式や投資信託などの保有が拡大していることを指摘し、家計を中心としたポートフォリオ・リバランスが着実に進んでいるとの見解を示した。』(1月会合議事要旨より)

ポートフォリオリバランスに関する指摘をしている文言がありますね。では12月は??

『「量的・質的金融緩和」の効果について、委員は、効果は引き続きしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。長めの金利への働きかけについて、委員は、わが国の長期金利は、日本銀行による巨額の国債買入れが行われるもとで、低位安定しているとの見方で一致した。委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの認識を共有した。この間、複数の委員は、投資信託などの増加により広義流動性の前年比伸び率が拡大していることを指摘し、家計を中心としたポートフォリオ・リバランスが着実に進んでいるとの見解を示した。』(12月会合議事要旨より)

あらら?この時はポートフォリオリバランスに関して「複数の委員」が指摘していましたね。

・・・・・・・てな感じでこの辺の記述でポートフォリオリバランスの話が無かったことになるかのように華麗にフェードアウトしているのがワロタという感じですが、一方で予想物価上昇率が上昇するメカニズムについて云々というのも実は2月議事要旨から記述が無くなっていまして(1月までは引用部分の直後にあった)、2月の場合は貸出支援措置の延長+拡充というのがあって、それに関する記述を追っかけていてうっかりここら辺りの記述あっさり味化を見落としたのですが、今回特段の決定も無い会合だったのであっさり味状態になったのが分かりやすくなっていまして(実際は前回あっさり味になっている)、ふとこの辺りを時系列で追ってみた次第。

実際は(延々やっていると長くなりすぎますので割愛しますが)このQQEの効果や状況に関する部分の説明ってもっと前に遡ると遡る程にああでもないこうでもないという成分の記述が増える傾向にありまして、徐々に足元ではその辺に関しては「実質金利低下」すなわち実際問題としては「期待インフレが上昇(して2%目標に近くなっている)を受けた実質金利の低下」をQQEの効果に関する説明部分として一本足打法状態になっているというのが見て取れますなという話で、本来はこれを1か月間前にもっと掘り下げないといかんかった話で1か月遅れまして誠に慚愧の念に堪えませんm(__)m

#引用しませんがもうちょっと前から見ると色々とオモシロヤですよ







2014/04/11

お題「市場メモメモ/宮尾コウモリ審議委員講演は今回は執行部の口伝でおもんねーわ/本家俊ちゃんの凄まじさを改めて鑑賞」

シバキアゲの効果が出ていますね(白目)。
http://mainichi.jp/select/news/20140410k0000e040226000c.html
大阪府:小中教員不足深刻、講師足りず…授業3カ月無し
毎日新聞 2014年04月10日 15時30分

で、何で雨株市場はおはぎゃーなんですか????

○市場雑談系メモメモ

・近くて遠い5bpとな

昨日の短国3M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140410.htm

(3)募入最低価格 99円98銭7厘5毛(募入最高利回り)(0.0501%)
(4)募入最低価格における案分比率 47.2357%
(5)募入平均価格 99円98銭8厘0毛(募入平均利回り)(0.0481%)

ということで足切りは前回の3Mと同じく5bpには乗っているのですが実際問題としてはその水準は盛大にビットという感じで、結局4.8-5.0とかそんな感じのようでおじゃる訳でございますが、今週は日程の都合上短国買入が入らなくて入るの月曜になるというのと、期末要因剥落と債券市場的には投資家期初の動きによって業者的にはそこそこ在庫ファンディングニーズが上がるという流れになってはいるのですが、そういう状況を踏まえても5bpという水準を明確に上回って金利上昇という感じにはならないですなあとい所です。

でまあ来週はまた短国買入入りますし、需給は改善方向となるでしょうから短国の金利水準っちゅうのもこの辺の水準から中々アガランチ会長ということですっかり定着モードでございますな、ナムナム。


・固定金利オペが増額ロールだと?

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140410.htm

国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年4月14日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年4月14日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年4月14日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年4月14日 2014年7月14日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140410.htm

国債買入(残存期間1年超3年以下) 12,418 2,503 0.005 0.005 75.9
国債買入(残存期間3年超5年以下) 16,212 2,504 0.005 0.005 86.9
国債買入(残存期間5年超10年以下) 14,282 4,005 0.004 0.005 87.8
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月14日スタート分) 3,570 3,570

輪番の中期が甘いとかそういう話もあるような気がしますが、毎度おなじみの固定金利オペのロール状況の方が気になるので確認をしますと、こちらのオペは元が1月16日にオファーされた1/20〜4/14の3か月もの固定金利オペで、3000億円落札されたものでございまして、つまり今回は何と固定金利オペが増額ロールの巻となっておりますぞなもしという所で。

いやー何か知らんがこの前まで全然ロールが進まなかったのが正解なのか、需要の底溜まりの部分にヒットしたからロールが進むようになったのか何だかよく判らんですな正直言って。

いずれにせよ固定金利オペがもっと減るという仮定の元で短国市場死亡の可能性を懸念していた訳ですので、短国市場の死期が先に延びるような結果になるのは結構な話(結局の所は日銀の馬鹿買いによって死期は来るリスクがオオアリクイなのですけどね)ですな。


・超長期国債先物ェ・・・・・・・・・・・・・

どこかにデータは無いかと思って探していたらこの辺にデータが。

http://www.ose.or.jp/market/trading_data/today_overview
当日取引高等

ここの「JPXデリバティブ取引市況」という所にある「JPXデリバティブ取引市況(日通し)(2014/04/10)」(これは今朝だから4月10日となっている)の所にエクセルファイルがありまして、そこからDLして来ますと各市場の取引高が取れるという便利な代物。

さて、このファイルを見ますと昨日の超長期国債先物取引の取引高が確認できるわけですが・・・・・・・

超長期国債先物の取引高、ちなみに超長期国債先物は立会外取引の売買高は今の所ゼロです。
夜間:4
前場:15
後場:15
日通し合計:34

・・・・・・・・・・・・うむ、早速開店休業への道を着実に進んでいますなorzorzorz


○宮尾審議委員講演は正直おもんないわだが読みどころはちょっとだけ

宮尾審議委員の講演がございましてですな
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140410a1.pdf

前回の講演が昨年の11月13日に長野県での金懇(なお長野市ではなく松本市ですよ)で行われた訳ですが、この時には異次元成分の足りない物価上昇メカニズムの説明と、消費増税に対するリスクの強調というのをしていまして、会見でも何か弱気っぽい話をしていた方なので今回はさてどうなることやらと思っていた訳です。何せ会見をネタにした時には「宮尾審議委員の会見ですがこれは野党審議委員への道ですわという憶測ががががが」などと申し上げていた次第。

ちなみにこの辺りが過去駄文です。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugenmiyao.html#miyao131115

そんなわけで今回の講演でどうなったのかと思っていたのですが、まあ今回は執行部見解のまんまという話を展開しておりまして、前回の講演で見せた野党の香りはどこに逝ったのかという感じがする訳でございますが、まるで上がれば強気のコメントをして下がれば弱気のコメントをするヘタクソ何とかストみたいなこの日和っぷりでして、いやまあ前からそういうのは思ってるんですけど、この人自分の主張の核になるような物が全然無くて何かこうフラフラしているようにしか外野から見ると見えないという残念なお方(執行部ベースで一貫するならまだ判るのだが時々ぶれるというのがマジでわけわからん訳でどこの小早川秀秋だとか思うのよね)で、学者系政策委員って置物といい不思議おばちゃんといいこの方と何でこうアレなのしかおらんねんという所で、良く良く考えたら軸がぶれていないという意味では置物先生の方がマシじゃん(ただし軸の位置がお花畑にあるのだが)という感じであります。

ということで正直この講演おもんねーわとしか申し上げようがないのですが備忘メモでもあるので忘れないように少々引用。


・景気回復の持続性には個人消費と非製造業とな

まあ何ですな、今回の講演は執行部見解の口伝みたいな感じなので、逆に執行部的理屈がどう展開されているのかを(もちろん総裁会見などでも確認できていますが)確認する回という所で。

経済の先行きに関しての話でこんなのがありまして・・・・・・・・

『なお、景気回復の持続性の観点からは、特に個人消費・非製造業の動向が重要とみております。この点は後ほどやや詳しくご説明致します。』

でまあその後で『(2)景気回復の持続性』というのがあってですね・・・・・・

『現在の景気回復の大きな特徴は、従来の「輸出主導」ではなく、「消費・非製造業主導」という点です。消費の回復は、株高による好調な高額消費だけが要因ではありません。その底流では、身近な消費・非製造業関連の分野で、潜在的な需要を喚起する取組みが幅広く進展してきています。企業の収益力も高まってきており、それが雇用・所得環境の改善基調を支えているとみられます。』

ということで、この先の章立てがこうなっています。

『(イ)消費・非製造業主導による景気回復の現状
(ロ)需要を喚起する新しい取組みの進展
(ハ)変容する労働・雇用環境
(ニ)消費主導の景気回復の持続性』

でまあ内容は一々引用しませんが、イ〜ハの題名からして内容はお察しの通りで強気の威勢の良い話が並んでいるという事で、おまえ11月の講演は何だったんだと小一時間問い詰めたい訳ですが、どうせ問い詰めても想定問答集を棒読みされるだけだと存じますのでまあ良いのですけど。

で、ニの持続性の所から少々。

『これまでの議論をまとめますと、まず経済の供給面では、非製造業を中心に消費需要を喚起する新しい取組みが進捗し、より高い付加価値が生み出され、設備投資も活発化しています。それらは企業の収益力・生産性向上の基調を支え、経済の成長力を高めます。』

はあそうですか。

『労働面、雇用・所得面では、企業の労働需要は幅広く増加する一方、女性の自主的な労働参加が促され、家計の労働供給が増加しています。労働に対する需要の増加に供給の改善が伴うことで、雇用者数は大きく増加し、賃金も緩やかに伸び、雇用者所得は基調的に改善します。』

はあそうですか。

『需要面では、より高い付加価値が生み出され、家計の雇用・所得見通しが改善する結果、消費支出は基調的に高まります。企業が海外で稼ぐ力を高めることも、国民全体の貯蓄や純資産を増やし、息長く消費活動をサポートします。』

こらまた随分と威勢の良い話で日本経済死角なしですね!!!!!(棒読み)

『このように3 つの側面を総合して考えると、消費・非製造業主導による自律的な景気回復メカニズムは持続するとみられます。こうしたもとで、消費税率引き上げによる成長率の一時的な振れや家計の可処分所得への影響などがあるとしても、基調としては潜在成長率を上回る成長を続けていくとみております。』

ということで、威勢の良い話をしているのですが、従来は確か持続的な経済成長をするには(財政で下駄を履いている)内需や非製造業から輸出から来る景気の拡大に需要がバトンタッチされていくというような話をしていた筈(少なくとも円高修正している中ではそういう話をしていましたよね)でございまして、どうも思ったより輸出が伸びないという残念な事態になっている中で経済拡大の持続性について輸出の話を綺麗にスルーするという新たな理屈を前面に出すようになってきやがりましたなという所で、まあ今回の講演ではここのロジックが唯一の見所かなあと思うのであります。

いやまあ経済の状況に応じて見方が変わるのはそらそうなのですが、何かすっかりまた都合の良い方のロジックに七色の変化球の如く各種の変化球を投げ込んでくる辺りに深い味わいを感じるというものでございまして、今後はこのロジックで行くんですなあ(まあ昨日ネタにしたように総裁講演の説明も雇用状況が改善して賃金上昇して物価が上昇してという一点突破の話でしたもんね)という感じであります。


・物価は強気ですなあ

前回は腰の引けた説明をしていたのですがどうしたんでしょうかねえ(棒読み)。

『(3)高まる物価上昇圧力』

はあそうですか。

『消費主導の景気回復が持続するなかで、物価上昇圧力も高まっています(図表14)。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+1.3%となり、エネルギー関連だけでなく幅広い品目で改善しています。食料・エネルギーを除いてみた場合の消費者物価の前年比も+0.8%にまで回復してきました。先行きについても、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は、しばらくの間、+1%台前半で推移するとみています。』

はあそうですか。

『その背景としては、財・サービスへの需要が持続的に増える状況のなかで、企業がより高めのマークアップを設定したり、コストをよりストレートに価格に反映させるなど、前向きな価格設定を実施し始めた点を指摘することができます。これは、同じ需要の増加に対して、物価がより大きく上昇する(つまり、フィリップス曲線の傾きがより急になる)ことを意味します(図表15)。とりわけサービスと耐久財に対する消費需要は持続的に増加してきており(図表5、6)、それが全体の物価上昇圧力を高める方向で作用しているとみられます。』

コストプッシュではないというようですよ、わーすごいですねえ(棒)。

『こうした動きは、実際、様々な品目でみられ始めています。消費者物価を構成する品目を子細にみると、前年比で物価が上昇した品目数は着実に増加する一方、物価が下落した品目数は着実に減少してきています(図表16)。今後も消費主導による自律的・持続的な景気回復が続くなかで、物価上昇圧力は幅広く高まっていく可能性が高いとみています。中長期の予想物価上昇率も高まっていくとみています。』

エライ強気ですなあ。


・オープンエンドでフォワードガイダンスでの話がわけわかんない件

金融政策の説明とかだいぶどうでも良いのですが。

『将来の政策に関するガイダンスとしては、「2 年程度の期間を念頭に」という決意のもと、「目標を安定的に持続するために必要な時点まで」として将来の政策の継続を政策目標にリンクさせ、オープンエンドの要素を持たせています。経済物価情勢次第で対応が決まるという点では、state dependent なガイダンスです。』

そもそも2年程度で達成するという決意を示しているんですからその時点でstate dependentとか言ってしまうと気合成分が足りなくなると思うのですが。

『また、オープンエンドの要素を持たせることで、経済・物価の見通しが目標への経路から下振れると人々が予想すれば、緩和の長期化すなわち緩和の強化が予想され、それが新たな経済・物価の見通しに織り込まれて目標に近づくという安定化メカニズムが働くことも期待できます。』

えーっとですね、今やっている政策は「期待の転換」を伴わないといけないという建付けに(今のところは)なっている訳で、そもそも目標の経路から下振れると予想される時点で負けなのではないかと思うので、安定化メカニズムが働く事は期待しちゃだめだと思うのですけど。

という事で、どうもこの辺の説明はワケワカランぞなもしという話ですが、まあそもそもが2年で達成と言っているのにオープンエンドというのが話として矛盾しているのですから、説明しようとすると絶対ツッコミ所が出てくるので下手に触らない方が身のためだと思います。


○さてここで話は変わりますが俊ちゃんの過去の無茶苦茶ロジックを鑑賞してみましょう!!

先般駄文でドラギ総裁の会見ネタを持ち出した時に「ドラギ俊彦」と咄嗟に二つ名を付けてみたら一部の読者様におかれましては盛大にツボって頂いたようで今後はドラギ俊彦先生とお呼びして麿並みに定着を図りたい(誰に?)と思う今日この頃ではございますが、話が七色の変化球のように変わるドラギ俊彦先生と言えども本家の俊ちゃんにはまだまだである、という事を確認するために2004年1月の金融政策決定会合での福井総裁定例会見の要旨を鑑賞してみましょう、というヒマネタ(暇では無いが)なのでありました(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/
平成16年1月20日(火)
総裁記者会見要旨 ( 1月20日)

なお引用時にスペースや改行で手を加えておりますので念のため申し添えます。

『(問)本日の金融政策変更の理由について説明を頂きたい。』

『(答)今年初めての記者会見である。本年もよろしくお願い申し上げる。本日は本年最初の決定会合であるが、皆様にご報告申し上げる点が2点ある。 1点目は、金融市場調節方針について、日銀当座預金残高の目標値を従来の「27〜32兆円程度」から「30〜35兆円程度」と、3兆円の幅を持って引き上げたということである。』

ということでこの回というのは「景気判断を据え置き(実質的には回復が継続しているという認識な上に上振れという認識)する中で追加緩和を行ったという中々不思議な会合でして、 田谷さんと須田さんが反対に回って7対2になったんですよね。

『(途中割愛)このうち、当座預金残高目標値の引き上げは、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとすることを目的とするものである。(以下割愛)』

・・・・・・・・・・最早当座預金残高が拡大することによってどのような効果があるからどうだという話でも何でも無く「気合を入れる為に押し上げ緩和を行った」という訳のわからん話になっております。

『(問)当座預金残高目標値の引き上げについて伺いたい。本日発表された金融経済月報の基本的見解でも、経済・物価動向については標準シナリオ通りに沿って動いているという判断を示しているが、そうした中で、なぜ、当座預金残高目標値の引き上げが必要なのか、また円高けん制の狙いがあるのかという点について、説明を頂きたい。』

そら質問する罠。

『(答)経済あるいは金融情勢についての私どもの見方は、本日発表した金融経済月報の基本的見解の中で示している通り、現状、景気は緩やかに回復している。また、先行きについても景気は回復を続けると見込まれるが、引き続き企業の過剰債務など構造的な要因が根強いことを踏まえると、景気の回復テンポは緩やかにとどまる可能性が強いと考えている。現在のところ、米国、中国を始めとした海外経済が、事前の予想よりやや強めに推移しており、これを大きな背景として日本からの輸出が順調に増えている。さらに、生産の増加、企業所得の増加、企業の支出――設備投資の増加――というような前向きの循環メカニズムが既に働き始めている。むしろ、こうした循環メカニズムはやや強含みで作動し始めている。』

前向きの循環メカニズムというのは日銀の得意な言葉ですね。しかも上振れとな。

『そうした中、今後、こうした動きが持続的な回復につながり、デフレ脱却の目途をつけるところまで行くかどうかという点については、不透明要因が多い。特に、大企業・製造業を中心に始まった景気回復の動きの裾野が、非製造業さらには中堅・中小企業の分野においても――それぞれの企業におけるさらなるリストラ努力の成功を伴いながら――、広がっていくかどうか、そして経済全体としてみれば、需給ギャップの縮小が順調に進み、デフレ脱却の目途が見えてくるかどうかという点がなお不透明ということである。』

で?

『昨年10月に発表した展望レポートの中で示した標準シナリオとの関係では、概ね標準シナリオの通りに経済は動いているが、先行きこれをさらに良い姿につなげていく必要がある。そうした意味で、現在比較的良い方向に経済が動き始めていることは、極めて歓迎すべきことであるが、これで満足してはならない。おそらく、民間企業や金融機関におかれては、構造的な改善を伴いながら、こうした好循環をより確かなものに持っていこうという努力と決意を固められつつある段階ではないかと思う。金融政策の面でも、こうした民間の決意と努力をさらにしっかりとサポートしていきたい。今回の措置の真の狙いはこの点にある。』

ただの気合で追加緩和とかもう景気判断と関係ねええええええという所ですな。


『(問)標準シナリオについてもう一度お伺いしたい。現状では、経済は標準シナリオ通りに動いていると判断されており、長・短期金利についても、――先程、万全を期したいと指摘されたが――現状をみれば安定している。また、市場にショックが持ち込まれた時もあったが――金融機関の破綻があったけれども――、特融も出さずに今のところ落ち着いて動いている。今回は、事実上、景気回復局面での金融緩和ということになると思うが、デフレ脱却シナリオというものがあって、それを基に判断するということになれば、マーケットからは非常に読み難い、透明性に欠けるような金融政策と受け取られないか。』

当然の質問。

『(答) そのリスクは全くないと思う。』

えー!!

『デフレ脱却後の正常な経済の回転の中で――好況・不況の波の中で――動いている場合に、景気回復が進んでいる時には追加緩和はあり得ないということと、構造改革の推進を伴いながらデフレ脱却のプロセスを歩んでいる現在の状況とでは、前提条件が全く違うということだと思う。』

何という屁理屈。

『従って、我々は標準シナリオ通りに動いていても――あるいは標準シナリオから上振れる条件が幾らかあるにしても――必要に応じて追加緩和はあり得るということは、前から申し上げている。その通りのことを今回判断したということである。』

でまあこの俊ちゃんの凄まじいのはこんな感じで緩和やっておいてそこから半年位で出口政策に向けての地均し情報発信をおっぱじめだした(緩和政策のビハインド・ザ・カーブのリスクの話を始めたり、量的緩和終了後の政策の枠組みがどうのこうのみたいな話を始めた(出口後の政策枠組みについて最初に講演で言及したは中原(真)審議委員でこの年の5月)訳ですが本格的な地均しはもうちょっと後)という所でして、そらまあ市場も毎回振り回されるわという所です。

『量的緩和の場合には、金利が生きている時の経済とは違って、金融市場における金利の動きというものを、緩和効果である程度封じ込めているというところもある。』

ふむふむ。

『従って、追加緩和の有無を読めないというのは当然のことであり、ここを読めるように機械的にやっていくということはほとんど不可能なことだと思う。』

な、なんだってー!!!

『我々も金融政策決定会合に臨んであらゆる材料を点検し、ディスカッションをして始めて結論の出る話である。』

ということで、政策の予見可能性とか市場との対話とか全て放棄して俊ちゃんロジック全開という感じですが、ちなみにこの会見最初から最後まで読みますと最早何が何だか判らないとしか申し上げようがなく、この時期の俊ちゃん(まあ量的緩和解除するころには何か怪しげなるもののそこそこロジカルに戻っていたのですが)はもうロジックも何も放り出して「こうしないとイカンからこうする、市場との対話とか予見可能性とか知らんがな」という開き直りもここまでくると清々しい状態で、この時期の俊ちゃんから見ますと逆さ絵先生のインチキロジックやドラギ俊ちゃんのびりーぶみーなど可愛いもんですなという話だと思います。

という鑑賞会でありましたとさ。まあこの回の議事録は面白そうなので6月の公開を楽しみに待ちたいと思います。








2014/04/10

お題「FOMC議事要旨から少々/黒田総裁会見はまあ平常運転だがずいぶん強気っすな」

昨日色々見てたら「黒田総裁は今回緩和期待を後退させることによって追加緩和のサプライズ効果を上げようとしている」という斬新なコメントを幾つかの所で見つけてしまいましたが、一歩間違えるとストーカーの理屈と思われますのでおまわりさんこの人ですと言われないように願いたい物です。

○FOMC議事要旨を超チラ読みしたのだが・・・・・・・・・・

朝起きたらNYダウが上昇しているのでどうせミニッツだろうと思ったらそのようで。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3S05L6VDKHT01.html
FOMC議事録:金利予測が利上げペース過剰に示すと警戒
更新日時: 2014/04/10 05:16 JST

でミニッツ。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140319.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140319.pdf

とりあえず寝起きで読みたい時は『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツに今後の金融政策運営に関する話があって、まあそれ以外に見るのは『Committee Policy Action』の所に何かオモロイものがあるかという感じなんですけどね。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツの2パラグラフから。

『In their discussion of monetary policy going forward, participants focused primarily on possible changes to the Committee's forward guidance for the federal funds rate.』

フォワードガイダンス文言を変更した訳でしてその際の議論っすな。

『Almost all participants agreed that it was appropriate at this meeting to update the forward guidance, in part because the unemployment rate was seen as likely to fall below its 6-1/2 percent threshold value before long.』

失業率スレッショルドに到達しそうなので文言変更しましょうってまあ緩和継続方向だからあまり文句言われないけどこれって将来フォワードガイダンス政策を実施する際にガイダンス文言のクレディビリティーを下げる話でもあるんですよね。まあ今後フォワードガイダンスを物価数値以外で数値的な物を出すのは難しくなった(つーかもうこれからは「質的」な話しかしないと思われる)と存じます。

『Most participants preferred replacing the numerical thresholds with a qualitative description of the factors that would influence the Committee's decision to begin raising the federal funds rate.』

まあこれは決まった件なのでヨロシとして。

『One participant, however, favored retaining the existing threshold language on the grounds that removing it before the unemployment rate reached 6-1/2 percent could be misinterpreted as a signal that the path of policy going forward would be less accommodative.』

これコチャラコタ総裁の反対なのかと思うのだが、何で文言変更すると「as a signal that the path of policy going forward would be less accommodative」なのかがイマイチワカランチ会長でして、本人がステートメント出していたのでそれを読まないととは思うんですけど。

『Another participant favored introducing new quantitative thresholds of 5-1/2 percent for the unemployment rate and 2-1/4 percent for projected inflation.』

6.5%を5.5%に下げたらどうよという意見を言う人がいるようだがそれはどう見ても悪手だろ。

『A few participants proposed adding new language in which the Committee would indicate its willingness to keep rates low if projected inflation remained persistently below the Committee's 2 percent longer-run objective; these participants suggested that the inclusion of this quantitative element in the forward guidance would demonstrate the Committee's commitment to defend its inflation objective from below as well as from above.』

数名が物価が持続的に低い状態にある間は金利を抑えておくというのをガイダンスに入れるべしとな。

『Other participants, however, judged that it was already well understood that the Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance.』

いやいやその件は既に周知されているから追加せんでもよかろうとの他の人。

『Most participants therefore did not favor adding new quantitative language, preferring to shift to qualitative language that would describe the Committee's likely reaction to the state of the economy.』

てな議論を経て結局ガイダンス文言に数値的な話を入れるのを止めましたと。


次のパラグラフ。

『Most participants also believed that, as part of the process of clarifying the Committee's future policy intentions, it would be appropriate at this time for the Committee to provide additional guidance in its postmeeting statement regarding the likely behavior of the federal funds rate after its first increase.』

利上げペースに関する文言(ロンガーランの水準に経済が行ってもまだ金利の方はロンガーランの水準まで引き上げていませんよ云々という声明文にある奴)についての議論とな。

『For example, the statement could indicate that the Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』

この文言ですな。

『Participants observed that a number of factors were likely to have contributed to a persistent decline in the level of interest rates consistent with attaining and maintaining the Committee's objectives. In particular, participants cited higher precautionary savings by U.S. households following the financial crisis, higher global levels of savings, demographic changes, slower growth in potential output, and continued restraint on the availability of credit.』

金利をあまりホイホイ上げなくて良い要因はこれらの要素だそうな。ふーん。

『A few participants suggested that new language along these lines could instead be introduced when the first increase in the federal funds rate had drawn closer or after the Committee had further discussed the reasons for anticipating a relatively low federal funds rate during the period of policy firming.』

数名はこの文言出すなら利上げ着手した時に出した方が良いんでネーノと。

『A number of participants noted the overall upward shift since December in participants' projections of the federal funds rate included in the March SEP, with some expressing concern that this component of the SEP could be misconstrued as indicating a move by the Committee to a less accommodative reaction function.』

さっきのブルームバーグニュースのヘッドラインに該当するのはここだと思われます。SEPでの金利見通しが上方シフトした事についてFOMCのスタンスが緩和的でなくなったとの誤解を与える事について懸念したというのが数名(some)の委員からでたそうな。

『However, several participants noted that the increase in the median projection overstated the shift in the projections.』

数名(several)はそもそもSEPの金利見通しが過剰に評価されているんじゃネーノという話をしたのかねこれ。

『In addition, a number of participants observed that an upward shift was arguably warranted by the improvement in participants' outlooks for the labor market since December and therefore need not be viewed as signifying a less accommodative reaction function.』

えーっとですね、こういう見解も示されている訳でして、別に金融政策スタンスや、先行き利上げペースなどの見方に対する変更は無いけれども、経済物価見通しが改善しているのだから上方シフトするの当然じゃろという見解も数名(a number of)から出ている訳で、さっきの部分に飛びついてハト派FOMCキターとやるのはちょっとクレクレ病の懸念があるように思えるのだが。

『Most participants favored providing an explicit indication in the statement that the new forward guidance, taken as a whole, did not imply a change in the Committee's policy intentions, on the grounds that such an indication could help forestall misinterpretation of the new forward guidance.』

で、結論としては殆どの参加者は今回のガイダンス文言変更がFOMCのスタンス変更を意味しないという事を明示的に示して、スタンス変更との誤解を与えないようにしましょうという事で一致したという事ですので、まあ確かにタカ派キターと反応する話でも無いのかもしれませんが、そうは言いましてもハト派ヒャッハーというのも変で、まあ順当にTaperが進んでその後利上げというのは同じなんじゃネーノと思うのでした。

#その他については週末読む(と思う)


○黒田総裁会見である

会見である
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1404a.pdf


・企業の物価見通しが2%に到達していませんがという質問が

『(問) 3 月短観で初めて「企業の物価見通し」を調査項目に加え、企業が1年後は1.5%、3 年後と5 年後は1.7%の物価上昇を見込んでいることが分かりました。いずれも日銀が目標としている2%には達しませんでしたが、これをどう受け止めているかお聞かせ下さい。』

緩和バイアスの質問をしたいのは分かりますが、先日来申し上げておりますようにこの数値を持って「悪い数字なので緩和待ったなし」と解釈するのは基本的な政策ロジック的プロトコルの理解度に問題があるか、重篤な追加緩和クレクレ病に罹患されているかのどちらか(または両方)だと存じますので早急に豆腐の角に頭をぶつけて以下自粛。

『(答) ご案内の通り、「企業の物価見通し」について短観で聞くのは新たな試みであり、従来からの結果と比較して変化は分かりませんし、統計の持つクセをまだ承知していないので、この統計をどのように使っていくかはこれからの課題であるとは思いますが、私自身は、非常に興味深い結果が出たのではないかと思っています。』

ほう。

『1 つは、ご指摘のように、企業の人たちは1 年後1.5%、3 年後1.7%、5 年後1.7%の消費者物価の上昇を予想しており、これはエコノミストあるいは市場関係者の見方よりも、ある程度高い物価上昇見通しになっているということです。』

これは!!!!ということで先般出た日銀レビューの家計のインフレ予想云々の話から始まる一連の流れキタコレでありまして、つまりエコノミストや市場関係者の物価上昇見通しよりも実際の物価上昇見通しは高い可能性がある事を示唆しています(キリッ)って話。

でまあ更にこのエコノミストや市場関係者の分が悪いのは、何せ昨年来ここまでの間物価見通しを盛大に外しまくって日銀大勝利となっている所でして、つまりはエコノミストや市場関係者の皆さん(ってアタクシも市場関係者ですかそうですか)黒田総裁に盛大に喧嘩売られてますよという大変に心の温まる説明ですな。

『もう1 つは、足許の見通しよりも中長期の将来になるに従って、少しずつ物価上昇率が上がっていく、高まっていくとみていることも非常に興味深いと思います。』

中長期の見通しが2%に収斂しつつあるという大勝利宣言への伏線ですねわかります。

『いずれにしても、今後とも、こうした調査等を活用しつつ、物価上昇期待がどのようになっていくかは、十分注視していきたいと思っています。』

まあ都合の良いのがホイホイ出てきて都合の良い話をするという事ですねわかります。

なお後の方でまた「1.5%は低いではないか」とお馬鹿な質問をしている記者がいたようで質疑がありますが引用は致しません、というか豆腐の角に頭を(以下略)。



・短観で見る需給ギャップ

黒田総裁の自信満々モードは別に今に始まった話ではありませんですからして、質問するならこういう方向で聞くのがヨロシアルと思うのだが。

『(問) 短観について追加でお尋ねします。先程言及されましたが、雇用の不足感が強まり、設備の過剰感が解消してきています。一方、成長率でみるとGDPギャップがかなり大きい状況ですが、現時点の日本経済の需給ギャップをどうみているか、それが足許および先行きの物価にどう影響していくとみているかお聞かせ下さい。』

キタコレ。

『もう1 点、今回の短観では先行き判断がかなり悪化しています。このこと自体をリスクとして考えているか、あるいは統計上のクセのようなものとみているのかお聞かせ下さい。』

でその答え。

『(答) まず1 点目ですが、私どもも大変重要なポイントだと思っています。今回は、消費、住宅投資、公共投資を中心とする景気回復が続いており、冒頭申し上げた通り、非製造業――大企業のみならず中小企業まで含めて――が極めて順調に回復してきています。』

キタコレ!

『ご承知の通り、非製造業は製造業と比べかなり労働集約的で、非製造業の売上等が伸びれば労働需要の伸びも大きくなることもあり、雇用はおそらく昨年予想した以上に順調に改善してきており、失業率も有効求人倍率等も、ほとんどリーマンショック前のピークに達しています。こうした面からは、需給ギャップ、GDPギャップはかなり縮小してきているとみられます。』

さあ盛り上がって参りました。

『需給ギャップあるいはGDPギャップの推計方法は色々あり、どれが唯一ということはないと思いますが、私どもが特に注視している賃金・物価の動きをみる際には、雇用情勢は非常に重要です。それらをみている限りでは、労働市場はタイト化し、これが最近のベアを含む賃上げ等にもプラスに影響していると思いますし、物価上昇率を押し上げる要因にもなっているのではないかと思っています。』

いやあ強気強気。

『2 点目ですが、先程申し上げた通り、3 月短観の足許の業況感は極めて良く、ほとんどあるいは一部では既にリーマンショック前のピークを超えて91 年以来の高さに達しています。先行きについてはやや慎重な見方も出ており、これには、レベルが高くなっていくと先行きの見通しについてやや慎重な見方が出てくるという統計のクセがあると思いますが、それ以上に、少し慎重化しているといっても、そのレベル自体が依然としてプラスの領域にあって高いので、あまり心配する必要はないと思います。』

「少し慎重化しているといっても、そのレベル自体が依然としてプラスの領域にあって高いので、あまり心配する必要はないと思います」とはこらまたキタコレですなあ。

『消費税率引き上げに伴う駆け込みと反動減の状況――反動減を懸念して、業況感が慎重になっていることはある意味理解できますが――については、先程申し上げた通り、日々、色々なヒアリングのデータ等も入ってきますので、それらをよくみていきたいと思います。短観では、設備の不足感、先行きの設備投資計画はしっかりしていますし、雇用の不足感がますます高まり、先行きも不足が続くとみていますので、企業は、より中期的には比較的強い見通しを持っていると思っています。』

ということで結局強気ということです、いやまあヘッジが入らないの今に始まった話では無いのですけれども特に今回はヘッジの入り方が極めて少なくて何というか大丈夫か的なのはあるんですけどね。


で、需給ギャップに関しては別の質問も。

『(問) 先程、需給ギャップについて、「かなり縮小してきている」というご指摘をされましたが、そうしますと、今後については、円安がさらに進行しなくても、需給環境を反映して、ある種実力ベースの物価上昇率が2%に向かっていくとみているのか、また2%の目標達成という意味では、昨年よりも自信を深めているのか、ご見解をお願いします。』

『(答) 私は基本的に、ご指摘のようなことだと思っています。つまり、需給ギャップは引き続き縮小しており、おそらく失業率や短観の様々なデータからみると、ほとんどゼロに近くなっているのではないかと思います。そういうことですので、賃金・物価については、基本的に「量的・質的金融緩和」を導入した際に申し上げた通り、2 年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成するという目標に向けて、着実に進行していると思っています。』

まあ強気。

『雇用の状況は、むしろ想定以上に改善していると思います。』

うひょー。

『ご承知のように、雇用者所得は、基本的には「雇用×賃金」です。雇用は、非常に良くなっており、予想以上に改善しています。賃金も、春闘のベアもまだ交渉が終わっていませんので、最終的なことはまだ分かりませんが、これまでのところのデータでも、ベアも含めて、それなりに上昇しているということです。こういった状況は、業種、企業規模や地域等で若干の違いは残るかもしれませんが、賃金の上昇にしても、物価の上昇にしても、それから雇用の改善にしても、広がりを持って進んできていますし、今後それがさらに進んでいくだろうと思っています。』

『そういう意味で、「物価安定の目標」の達成については、従来同様、確信を持っています。』

いやはや。


・追加緩和は現在考えていない云々に関して

『(問)(前半割愛)3 点目は、追加の措置についてですが、必要があれば調整すると再三おっしゃっており、マーケットでは追加緩和への期待が非常に強いですが、現時点で調整が必要なのかどうか、その見解を伺わせて下さい。』

『(答)(前半割愛)3 点目の追加緩和については、現時点では考えていません。』

アイヤーという所ですが、そらまあ現時点で考えていたら現状維持じゃないから当たり前なんだが。

『冒頭に申し上げた通り、わが国経済は、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、着実に進んでいるということですので、現時点で追加的な緩和を行う必要があるとは思っていません。』

実に(日銀の説明および認識を是とした場合に^^)当たり前の話。

『毎回申し上げているように、上下双方向のリスク要因を点検し、必要があれば躊躇することなく調整を行うということです。』

でまあこういう発言は毎回同じように行っていまして、従来はヘッドライン詐欺の影響でこの部分をまずヘッドラインで打ちこむ、というのが複数ベンダー(しつこく申し上げますがヘッドライン詐欺成分が殆ど無いベンダーも存在しますので念の為)の従来の仕様となっておりまして、ここの部分ばかり今まで強調して見せられていたので緩和ドリームでクレクレ病に罹患されて症状が重篤になられている方が多いという事ですが、従来からちゃんと公表文書を読み込んでいればヘッドライン詐欺との差があるのには日本語読めれば気が付くと思うんですけどねえ。

『追加的な緩和を行うのかとか、どういった追加があり得るのかということについて、具体的なことを申し上げるのは適切ではないと思います。色々な追加の余地もあるでしょうし、逆の方向の調整の余地もあると思いますので、いずれにせよ現時点では追加が必要になったとはみていませんが、常に双方向のリスク要因をチェックして、必要に応じて躊躇することなく政策を調整する用意があるということです。』

逆の方向キタコレ!!!

・・・・・・でまあそれについて質問が来てましたな(なお質問の時に確か黒田さんニヤニヤしてた筈)。

『(問) 先程の発言で、常に上下のリスクを点検し、必要であれば躊躇なく行動する、その中で色々な追加の余地もあるし、逆の方向の調整の余地もあると思うということがありました。この逆の調整の余地というのは、引き締めということだと思うのですが、この発言の趣旨についてもう少し詳しく教えて頂けますか。物価上昇が思い通りにいっているから、そういったことも今考えなければいけないということなのでしょうか。』

ちょっと惜しいなという感じで、引締めと質問したら以下のような答えになってしまうので、今のQQEのペースを落とす可能性もあるのでしょうか位にしておけば面白かったかもしれないなあと。

『(答) 今、上下双方向ともに具体的なリスクが顕現しつつあるとか、顕現化する可能性が高いとか、そういうことはありませんので、何か「量的・質的金融緩和」について早々に出口を議論するとか、そういうことは全くありません。皆さんの色々なご質問に、追加緩和に焦点を絞ったものがあったので、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、毎月のように金融政策決定会合後のステートメントにも書いてある通り、「上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」ということを申し上げたわけです。出口を今から議論しようということでは全くありません。』

追加緩和追加緩和うるさいから両方向って言って見たんですよとかナンジャソラ(^^)。


・GDP見通しが達成できないのに需給ギャップが縮小続けているとはこれ如何にというツッコミ

この質疑はワロタ。

『(問) 総裁は先程、需給ギャップについて、ほぼ0%に近いところまで来ているというご認識を示されました。これは政府がいわゆるGDP統計をベースにして出している需給ギャップの数値より、日銀の判断としては、需給ギャップの改善が進んでいるという認識を示唆されていたものと受け止めました。そうしますと日銀はGDPベースの経済成長率見通しも出しているわけですが、これが13 年度に2.7%というのは、おそらく4 月末の展望レポートで何がしかの下向きの修正が必要になると思いますし、ゲタの関係で14 年度にも何がしかの影響が出るかもしれないと思っています。』

ふむふむ。

『GDP成長率の動き以上に需給ギャップが改善しているとなると、そうした経済成長率見通しの下方修正自体は、従来総裁がおっしゃっているリスクの顕在化すなわち、政策の調整を必要とするリスクの顕在化とは言えない、というように判断できるのか、その点についてご説明お願いします。』

なるほど。イイツッコミダナーという感じですが。

『(答) この点は、2%の「物価安定の目標」自体についての考え方と関連するのですが、もちろん日本銀行としては物価の安定ということが最大の使命であり、いわば国際的なグローバル・スタンダードになっている2%の「物価安定の目標」を昨年の1 月に決定し、それを2 年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に達成するために、4 月に「量的・質的金融緩和」を導入したわけです。そのような意味では、この2%の「物価安定の目標」というのは、極めて重要であると思っています。』

何か答えになっていませんがががが。

『その「物価安定の目標」というのは、あくまでも日本銀行法に書いてある通り、それを通じて国民経済の健全な発展に資するということであり、物価さえ上がれば他は何も考えなくて良いということではないと思います。中央銀行の使命としては、やはり物価の安定ですし──多くの中央銀行が2%の物価上昇率を目標としているわけですが──、日本銀行としても物価の安定を目標として、それを実現することが、最も重要であると思っています。ただ、その2%は単にある一時点でそこに行けばいいというのではなく、やはり安定的に2%を達成するということです。そのためには当然ですが、経済が順調に拡大し、賃金も上がっていくという中で物価が安定的に2%というところでアンカーされるということが望ましいわけでして、当然のことながら、経済全体を見つつ、2%の「物価安定の目標」の達成に向けて、最大限の努力をしていくということに尽きると思います。』

結局質問に対する答えを全く行っていないという黒田総裁にしては珍しいオッペケペーな質疑応答でして、まあ雇用情勢の改善と一般のインフレ期待の上昇に足元の物価上昇というメカニズムだけの一点突破で説明しているから横から攻撃されると弱いという事ですな!!!!


・置物理論関連の質疑から

『(問) 「量的・質的金融緩和」から、ちょうど1 年ということであえてお伺いします。株価が上がって、為替も戻り、物価も上がってきています。これは日銀が今やっているベースマネーを増やし、リスク資産を買うという行為が因果関係をもって効果を発揮していると1 年経ってみて言えるのでしょうか。つまり、ベースマネーを増やしてもあまり効果がないのではないかという議論がかつてあったわけですが、この議論には終止符が打てるとお考えでしょうか。もし、因果関係がちゃんとあるということであれば、実際にバックワードと先程おっしゃたように、何か問題が起こった時に、同じようにかどうかはともかく、リスク資産を買ったり、国債を買ったりということが効果を発揮すると言えることになるかと思いますが、その点も踏まえてお考えをお聞かせ下さい。』

ふむふむ。

『(答) この点は、内外の学界でも議論をされているところです。欧(英)米の量的緩和も、日本の「量的・質的金融緩和」と同様に、単にベースマネーを増やすというだけではなくて、長期国債とかリスク資産を大量に購入するということをやっていますので、ベースマネーだけを増やして、資産側で長期国債とかリスク資産を買うということを含めない純粋のベースマネー増だけの金融政策というのは、日米欧(英)ともやっていないわけです。』

後の方で説明がありますが、純粋な云々というのは短期オペだけでMB増やすという事のようです。

『量的・質的金融緩和を実施しているところですので、議論はまだ完全には収束していないと思いますが、現時点では、おそらく日米欧で実施されている量的・質的金融緩和が一定の効果を持っているというのは学界の多数意見になってきていると思います。』

ほほう。

『他方、そういったものではなく、純粋に短期のTBを買うなどして、ベースマネーを増やすという、かつて日銀がやっていた純粋の量的緩和についてどうかと言われると──これは先程申し上げたように現在日米欧がやっているのとは少し違う話になってくると思いますが──、学界の議論も色々あり、それでも一定の効果があったのではないかという議論が最近行われているようです。』

置物理論では日銀当座預金をいやまあいいです。

『ただ、これは日米欧における現在の量的・質的金融緩和とは違ったものであり、現在の日米欧における量的・質的金融緩和については、より効果があるのではないかという意見が強くなってきているとは思います。』

ふむ。

『いずれにせよ、経済学の議論というのは慎重な分析をして結論が出されても、その結論について、自然科学のように決定的な実験というのができませんので、学界の意見が100%収束するということは難しいと思いますが、現状をみる限りでは、日米欧のものについては一定の効果があるのではないかと考えている人が多いように思えました。ただ、これは決定的なものではありませんので、まだ色々とご議論があろうかと思います。』

まあ結論は出てませんが効果はあるんじゃネーカ的な答えしかできません罠とは思いますがMB拡大して実質金利が下がって云々という置物メカニズムの件はどうなったねんという気はだいぶします。




2014/04/09

お題「総裁会見ライブの影響雑感/声明文はほぼ「想定通り」の内容/その他市場メモ」

ふむふむ。
http://jp.reuters.com/article/idJPTJEA3700F20140408
NY外為市場・序盤=円上昇、日銀の追加緩和見送り受け
2014年 04月 8日 23:48 JST

『[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日序盤のニューヨーク外為市場は、円がドルやユーロに対して上昇した。日銀が追加金融緩和を行わず、黒田東彦総裁が現時点で追加緩和を検討していないなどと表明したことを受け、円が買われた。』(上記URLより)

さてこれはという所ですけど・・・・・・・・・


○総裁会見ライブ中継でヘッドライン詐欺が大幅に軽減されたようです

昨日から総裁定例会見がライブ中継可能となった(従来は基本的に会見が15時半からで会見内容について会見終了だか16時半だかまでエンバーゴが掛かっていた)のですが、日経電子版とブルームバーグ(たぶんプロフェッショナル版限定だと思うが)が会見の内容を生中継していたようです。

でまあ当然ながらニュースの方も会見と同時にニュース配信可能で、中継画面が引きになった時に見たら最前列でラップトップPC使っている人とかいて会見の感じが違うように見えた訳ですが(ちなみに従来からエンバーゴの後にはブルームバーグと日経CNBCが会見の録画画像を放送していたと思います、ブルームバーグしか見たことないけど)、そんなわけで会見の音声が聞ける中でベンダーのヘッドラインが流れるという初めてのパターンで中々新鮮な感じがしましたよ。


でですね、まあ今回の会見なのですが、例によってテキストの方は本日出ますので詳しい話はまた明日のネタにしようか(今晩はFOMCミニッツがあったような気がしますが)という所っすけど、兎に角今までと全く違っているのが・・・・・・

「ベンダーのヘッドライン詐欺がほぼ皆無になった」

というのが物凄い勢いで大きな変化になったと思います。

・・・・・・・・・つまりですね、今までは会見終わってからベンダーがニュースヘッドラインを打つという形になっていまして、会見録画もまあ見ることは出来るのですけれども、普通はヘッドラインを見てから会見の最初から最後まで録画を見るというのも中々めんどいですし、そもそもヘッドラインが最初に出てしまって相場の方が反応してしまう(しない事もあるが)という事で、ヘッドラインでまずは動いていた訳ですな。

でまあよく不肖このアタクシなんぞが翌日に出てくる会見要旨の方をネタにしながら「ヘッドライン詐欺」などと申しておった訳ですが、会見要旨をどう見ても(たまに会見録画もチェックしたりしましたが)そんな趣旨の発言じゃねえだろという内容のヘッドラインを流すベンダーというのが複数(全部ではない)いまして、まあ要するに会見での発言の中でニュース見る側が反応しそうなフレーズだけを前後の脈絡をスルーして切り取ってヘッドラインにする、という動きってまー昔からあったのですよ。特に最近だと英文のヘッドラインが酷かったりするのですが。


然るに、今回からはライブ中継でベンダーの向こう側の人たちが見ているという事で、発言の一部を切り取ってセンセーショナルなヘッドラインをフレームアップするという時間的余裕(他社のヘッドラインに盛大に遅れるリスク)も恣意的な切り取り(をするとライブで見ている人たちに真っ向勝負でバレるので)も出来なくなったようで、今回の会見放送に関して言えばチェックしていたベンダーヘッドラインで従来あった発言の一部を切り取ってフレームアップしたヘッドラインというのがほぼ観測されなくなったというのが物凄い勢いで違っている点ではないかと思いました。

つーことでですね、まあ以前より会見要旨を確認(稀に気になる時だけ録画チェック)して内容を拝読しております不肖このアタクシに言わせて頂きますと、今回の総裁会見もまあ平常運転でいつもの話をしているようにしか見えないのですけれども、最初に引用した記事にありますように、会見の途中から徐々に円高進行しまして、まあ海外の円高は他の要因もありそうではございますが、ニュースでも追加緩和観測後退みたいな話がホイホイ出てきているようで実に香ばしい展開となっております。

よーするにですな、おまいらベンダーのヘッドライン詐欺に乗り過ぎじゃヴォケという所でございまして、大体からして今回だって日銀公表文書特段の変化なく(その件は下の方で)、その公表文書に沿った話を黒田さんしているだけの話だし、大体からして「現時点で追加緩和を考えていない」というのが何故かニュースになっていましたが、そもそも追加緩和を現時点で考えているんだったら当日の決定会合で追加緩和してるだろそらニュースでも何でも無い当たり前の話だろと思う次第でございまして、まあつまりは「追加緩和を煽ると市場(特に海外投資家)が好意的に反応する」ので追加緩和方向になる発言を殊更に強調したヘッドライン(英文の方が基本的に酷いケースが多い)詐欺だけ見てああだこうだ反応してただろおまいらという所でございまして、そういうノイズが激減したというのはコミュニケーションポリシー上大変に良い傾向になったと思うのでございます。

ただまあこのライブ中継の問題としては、不規則発言をうっかりしてしまうとそれはそれでエライコッチャになってしまいますので、現在の黒田総裁のように発言が大体安定している方(この前ちょっとアチャーという感じのもありましたがアレは珍しいケース)ですと大丈夫だと思うのですが、そうじゃない方だと色々とやらかしが発生しそうでリスクかなとは思います。

でもまあそんなリスクを勘案したとしても、ベンダーが勝手に掛けるバイアス(黒田さんの場合は就任時の経緯やQQEでのバズーカの影響で緩和バイアスをベンダーサイドが思いっきり掛ける傾向があって最近は市場のクレクレの影響で更にそのバイアスが強くなっている(なお念の為申し添えますが必ずしも全てのベンダーがバイアス掛けているわけでは無い)次第)によって本来発言している趣旨が微妙にバイアス掛かって伝わってしまう、というある意味ベンダーのプロテクションレントみたいな部分が排除されるというのは実に良い話でありまして、そう考えてみると何を発言しても兎に角台無し方向のヘッドラインバイアスを掛けられていた前の麿総裁なんぞはベンダーヘッドライン詐欺の被害者でありまして、こんなに効果があるならもっと早くから実施できていれば良かったですよねという所かと思います。

ま、いずれにせよ今までベンダーがどんだけヘッドライン詐欺をしていたのか、という事や、どこのベンダーのヘッドライン詐欺が酷かったのか、という事などを皆様におかれましてもご検証して、総裁会見でそういうのを従来していたという事は他のネタでもその手のベンダーバイアスが掛かっていたのではないか、などという辺りをご確認しつつニュースベンダーの見方を検討される事をオヌヌメしたいという所かと存じます。

この差が昨日の「追加緩和期待の剥落」という為替市場の反応でしょという所かと存じますが如何でございましょうかね。


○声明文の確認である:「想定通りの反動が見込まれる」って感じですかね

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140408a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140311.pdf(前回)

#どうでも良いのだが今回決定事項の公表文書1つの筈なのに何故URLに「a」が付いているんじゃ????

・現状判断:生産が下がっていますが基本的には消費税の駆け込み反動対応という認識ですかねえ

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

ちなみに前々回ですけど・・・・・

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている』(前々回)

ということで、前回までは駆け込み需要に関する言及があり、その部分が今回消費税増税になったということで「振れを伴いつつ」という表現に変わっています。ただし、この部分に関しては(後でも引用しますが)前回(なお前々回も同様)の先行き見通しの中で、

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

という形で見通しに言及していますので、つまり「見通し通りに推移しております」という話であって表面上は下方修正ですが、これは「想定通りの下方推移」であり政策判断に影響を与えるものではありませんな。


以下需要項目別。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。』(前回)

海外、輸出、設備投資、公共投資は全文一致です。

『個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(前回)

冒頭の部分で示された消費増税の振れに関する部分が個人消費と住宅投資の部分に対応している形で、今回は基調的にはということで下方修正。雇用所得環境については「改善」という判断を継続し、生産についてはこの「緩やかな増加基調」という表現は前々回と同じ表現に戻しておりまして、生産に関しては前回上方修正したのに今回元に戻った点がまあ若干ションボリーヌという所で、今回の声明文の中で敢えてネタにするならここかなとは思いまして、「生産が思ったより伸びてくれない」という認識を示しているかねとゆー所ですが、駆け込み需要という攪乱があるのでニャンとも。

『企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(今回)

これは短観出た直後の回に出てくる仕様のようなもんです。先行きDIは盛大に落ちてますが「慎重」ですかそうですか(ニヤニヤ)。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

物価は貫録のカワランチ会長。


・先行き見通し:貫録のカワランチ会長

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

何という全文一致。


・リスク要因:カワランチ会長は良いのだが欧州債務問題はさすがにもう良いんじゃないですか?

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

注1というのはいつもの意味不明審議委員の意味不明な反対ですが、それはそれとして今更欧州債務問題の今後の展開でもねえだろとは思う。主要国のバランスシート調整の動向とかにした方が良いんじゃないですかねえ。


・最後の決意表明みたいなところも同じですな

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)

でまあ木内さんの提案も同じですが、先般の木内さんの講演を見ましたのでまあ何で「集中対応期間」という分かりにくい文言が出てくるのかは把握したという感じですな。この「集中対応期間」という表現ってそれ以外の期間はちゃんと対応しないような言い方に見えるからもうちょっと表現が何とかならんのか(だいたいからして残り1年だし)と思いますけど。

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委』(今回)


ということで声明文もほぼ無風という感じ(生産の所だけ若干微妙という程度)です。


○その他市場メモ

・固定金利オペ今回も歩留まり多くロールとな

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140408.htm
米ドル資金供給 2014年4月10日 2014年4月17日 0.580
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 20,000 2014年4月10日 2014年7月23日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140408.htm
米ドル資金供給(4月10日スタート分) 0 0
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月10日スタート分) 12,680 12,680

元のオペがオファー額2兆円で応札額が15078億円でしたので、今回はそのうち12680億円が折り返しになるという事で、中々今回も歩留まり多しという感じでございます。ついこの前まで3か月オペのロールが全然歩留まりしてなかったのはナンデスネンという気もしますが、まあ足がそれなりにある中で急にオペ残落とすのもよろしくないということですかそうですかという事にでもしておきますかねえ(棒)という所ですな。

まーいずれにせよオペがそこそこロールされておりますので、その分短期国債買入に掛かる皺寄せが軽減されますからして、オペが落ちまくってMB維持の為に短国買入が嵩みまくってヒャッハー金利が長期化して市場にプレッシャーが掛かるという、もはや何のためにMBを拡大しているのか訳がワカランチ会長という状況が発生するのが少しだけ先送りになったのは慶賀すべきことではありますが、結局オペを3か月近辺でロールしているので7月から8月に掛けてまたオペの巨大な落ちがやってくるという残念な事態があるので問題が3か月ほど先送りになっているだけではあるのですがorzorz


・超長期先物ェ・・・・・・・・・・

昨日の超長期先物は日中取引分で118枚(前日の夜間で少し出合いがあったようで)ですが、9時5分時点での出合いが4枚とか中々お洒落な展開だわ、値幅だけは無駄にある(チーペストが18年なので当然なのですが、それに加えてそもそもの値段が200円近くあるので価格変化が妙に大きく見えてしまう)わと中々素敵な取引でございますなあという所で。

しかしまあよー判らんのだが、上の方の売り板だけは妙に厚いのってヘッジャーのニーズでも入っているんでしょうかとは思うのですが、先物というのはヘッジャーだけだと取引が活性化しないのでスペキュレーターマダーという所ですかわかりません><;

とまあそんな感じで日々微妙な出来高となっておりますが、さて超長期先物の行方はどっちでしょうかね。





2014/04/08

お題「超長期先物とかオペとか/ドラギ総裁会見は言語明瞭に核心に触れない威勢の良い話をする攻撃」

このオッサンは何を言ってるんだか。
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014040701002309.html
「愛人かこって」と橋下氏 高層マンション建設なら
2014/04/07 23:08 【共同通信】

とまあジャパンは太平楽なのですがまたウクライナがががががですかそうですか。

#ところでどうでも良いのだがFOMCのミニッツで利上げまで6か月云々の議論内容が出たりして本当に利上げの時期議論があるとリスクオフで円高という解説がテレビの方から聞こえてきた気がするんだがお前は従来日米金利差ガーという話をしてただろと小一時間


○市場メモ雑談

・超長期先物ェ・・・・・・・・

まあ何ですな、始まったのは良いのだが朝から10時までの間に出来高18枚とかでコーヒー吹きそうになった訳ですが、終わってみたら出来高119枚になっていて、建玉見たら速報ベースで90枚になってましたのですがこれはまずまずだったのかダメダメだったのか良くわかりませんが、TIFEEが何を考えたか突っ込んで結局盛大にダメダメだったスワップ先物とか初日から開店休業だった事を考えますとまだマシですかそうですか。


・6MTB入札とかCP買入とか

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140407.htm

(3)募入最低価格 99円97銭6厘(募入最高利回り)(0.0478%)
(4)募入最低価格における案分比率 55.0695%
(5)募入平均価格 99円97銭7厘(募入平均利回り)(0.0458%)

ということで順当に5bpには届かないという結果になりまして、とりあえず短国買入ペースが少々落ちても(というか週2兆買いが入り続けると需給的に厳しいわなという感じですよね)需要の方は当然ながらある訳でして、まーメドとして5bpの辺りでは買い意欲が強まるという感じなんですかね、よー知らんけど。

GCレートとかも期末のあばばばばー状態から脱却はしたものの、結局6bpとか7bp位まで上昇したもののそこからは上がらんどころか新発短国が捌けてくると下がりそうな感じでして、リアルゼロ(とかマイナス)とか見てしまうと6bpだの7bpだのは何と無限大倍(ではなく除算不能ですが^^)という事で何か知らんがお安く見えてしまう所がエッシャーの騙し絵状態でございますが、こういうのを目線が変わると申しますな、うんうん。

つーことで目線が変わるとどうなりますかと申しますとですな、

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140407.htm

CP等買入 4,500 2014年4月10日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年4月9日
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年4月9日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年4月9日 2014年7月14日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140407.htm

国債買入(残存期間5年超10年以下) 10,236 4,010 -0.019 -0.018 96.2
国債買入(残存期間10年超) 6,032 1,704 -0.013 -0.011 7.8
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月9日スタート分) 2,190 2,190
CP等買入 9,420 4,440 0.075 0.078 11.0

CP買入の平均が7.8bpで足切りが7.5bpとかになりやがっておりまして、前回期末前(3/26)に実施したCP買入は5000億円のオファーでしたが平均8.2bpの足切り7.5bpとなっていまして平均落札のレートがちゃっかり低下していますな。

期末の所では既に短国とかの需給が逼迫しておりましたが、CPに関してはやや金利が低下して来やがりましたなあという感じでしたけど、こちらに関しては期初になって買入レート一段の低下とかうーんこの目線が変わりやがってという感じですかねえ。まーCPに関しては期末期初なので発行体サイドが発行を圧縮する関係上需給が足元で良いという要因もありますが、こちらに関しては現先とかレポとかのレートの目線が変わると需給が少々緩んでも中々上がりにくくはなるかなという感じで。


ところで昨日は固定金利オペの3か月の方のロールがあったのですが、昨日の結果だけを見ると2190億円と相変わらずの盛大な札割れに見えますが、元々のオペが1月9日にオファーされた1/14〜4/9の固定金利オペでして、この時の落札結果が2121億円でしたから何ということでしょう今回も順調にロールされているではありませんか(某リフォーム番組風に)という中々素敵な展開となっておりまして、何ですかこの固定金利オペの順調なロールは(棒読み)という所でございますが、はてさてこれからどうなるんでしょうかね。

でもって本日は10日に足が来る1年固定オペ(2013年4月15日にオファーした4/17〜4/10の2兆円オファーして15078億円札が入った奴)のロールがある予定になっていますので、はてさてこれがどの位歩留まりしてくれるんでしょうかというのが本日の注目という所ですな。

ちなみに最近はMPMの時は輪番も国債入札(ついでに短国買入も)無いので動く材料が無いですなあなどと言われるようになっているという大変に素晴らしい市場のテイタラクになっていますので、1年オペのロール状況でも確認しますかね(^^)。


・市場ネタでは無いが7月本命はおかしいだろと思う件のメモ雑談

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3FZYM6KLVS501.html
日銀追加緩和は7月本命、エコノミスト予想−手段はETF倍増が有力
更新日時: 2014/04/07 11:26 JST

ということのようですが、7月の展望レポート中間レビュー時期に追加緩和実施というのは日銀の立場考えたら一番無い選択肢だと思うのですけどねえ。

つまりですね、そもそも消費税の影響で4−6は反動減があるってえ見通しを出している訳でして、その見通し通りに反動減が起きたのに対応して追加緩和実施って言うのはそもそも最初の反動減の予想時点でおかしいとか超恥ずかしい話でして、ゴメンナサイするにしたって普通に考えて予想通りの反動減の後の戻りが全然ないどころか下がってしまいました2年まであと半年ですからゴメンナサイとなる10月展望レポートだろと思う訳で、エコノミスト的に経済予想するとそうなるのかも知れんが、政策当局の行動パターン考えたら7月というのは一番あり得ん時期だろと思うんですけどね。

しかも7月に経済の落ち込み対応でやるなら今までのロジックからしてMB拡大方向じゃないとおかしいので、MBの稼げないETFというのは(他のMB拡大とセットなら判るが)メインに置けないと思うわけでして、そういう意味から言っても経済対応の調整で追加緩和やるのにETFというのは日銀のロジックと行動パターンから考えておかしいだろ(やる可能性はまあ皆無だと思うけど今日ビックリでやるならETF一択ですけどね)と思うのですけどね。「見通し通りに推移しているけどちょっと調整してみましたテペヘロ」という時じゃないとETFはメインにならんぞな、と思いますよ。

大体からしておまいらエコノミストの皆さん(ごく一部の人を除いて)全員揃って物価見通し盛大に外しまくってるんですけど物価見通しが日銀の目論見通りに推移したらそもそも追加緩和って無いんですよ分かってますかと小一時間問い詰めたい所ではございます。


○ECBドラギ総裁会見ですけどね

ふむふむ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3N5SD6K50XX01.html
ECB、QEめぐり高官発言相次ぐ−実践までは長い道のりか
更新日時: 2014/04/08 02:30 JST

ということで実際にQEどうするねんと思われるのですが、ここでドラギ総裁の会見を確認して見ましょう、という企画なのだが、色々と面白いので全部引用したくなるし、一方で引用しなくても良さそうな気がするという謎の会見が今回のドラギ会見なのです。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140403.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 April 2014

・ドラギ先生が福井の俊ちゃんの生霊かと思う件について&そもそも物価見通しが変わっていないのは重要

Introductory statementの方は公式発表文書なのでこらまあ良いのですが、今回は会見で当然ながら延々とQEに関してと物価に関しての質問が相次ぎました。

・・・・・・・でですね、この会見の質疑応答をざざーっと読んだのですが、ドラギ先生物凄い勢いで威勢の良い応答をしているのですが、良く良く読んでみるとじゃあ何をどうするのかという件に関して別に何か話をしている訳でも無くて(適当に事例は出している)、しかもいつ実施するのかという件に関しても明示的に直ぐに実施みたいな話も近い将来に実施みたいな話も皆無で、勢いだけしか見せていないというお前はどこの福井俊彦だという受け答えになっているのが実に味わいが深いというものです。

つーことで俊ちゃん生霊乗っ取り説を取りたくなる今日この頃ですが(大嘘)、まーこれはどこからどう見ても「具体的には何も決まっていない」けど「とにかく時間稼ぎしたい」という状態で、その中で一番懸念しているのが「ユーロ高にならないようにしたい」ということだというのは把握しました。

というのはですね、まず時期に関して何も話していないのはある意味当たり前で、質疑でもあったのですけれども、散々威勢の良い話をしながら「物価の中長期的見通しに変化はなく中長期のインフレ期待はマンデート近辺に確りとアンカーされている(キリッ)」「物価に関するリスクはおおむね上下にバランスしている(キリッ)」という説明をしている(というかステートメントでもそう書いてある)のでして、したがってそもそも論としてここの見通しにある程度の変化あるいは見通しの下方リスクが非常に強まるという話をしないと追加緩和にならんという話です罠。

ってな事をざーっと読みながら思うのですが・・・・・・・・


・物価のリスクに為替に関する文言が挿入とな

質疑の一発目で指摘されていましたけど、Introductory statementの中で物価に関するリスクの文言が前回と今回で異なっている所があります。

『The Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook for price developments as limited and broadly balanced over the medium term. In this context, the possible repercussions of both geopolitical risks and exchange rate developments will be monitored closely.』(今回)

『Regarding the Governing Council’s risk assessment, both upside and downside risks to the outlook for price developments are seen as limited and are considered to be broadly balanced over the medium term.』(前回)

ということで、地政学リスクと「通貨レートの進展」について注意深く観察する必要がある、ってな文言がしらっと追加されていまして、最初の全体の所で堂々と書くと色々と話がややこしくなるので、リスクに関する所でこのような文言を入れているということで、まあ要するにユーロ高でデフレ圧力になるのが困りますがなという話をしているというのは判ると思います。


てな訳で会見質疑応答からほんのちょっとだけ(割と質疑が同じような話でぐるぐる回っているのでどれをネタにするのかが難しくて後日追加するかもしれません、つーかイエレンデビュー戦のネタもまだあまりやっていないのでした(半月経過したけど))。

・威勢の良い応答&ユーロ高阻止姿勢

最初の質問ですが。

『Question: Mr Draghi, in your comments, you noted that the Governing Council was unanimous in its commitment to using unconventional instruments that are within its mandate. Can you tell us whether or not that includes quantitative easing (QE) with the government bond element to it?』

具体的にQEって何しますねんとな。

『And for my second question: Is the Governing Council unanimous in what sort of conditions it would need to see resolved in terms of the outlook and also in terms of the exchange rate in order to tap some of these unconventional measures?』

でもってどういう条件になった時にQE発動するねんとな。

ドラギ俊彦総裁のお言葉。

『Draghi: I think you have rightly pointed to the key sentence in the statement: “The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments …” - meaning that we haven’t finished with our conventional measures - “... also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.” So this statement says that all instruments that fall within the mandate, including QE, are intended to be part of this statement. During the discussion we had today, there was indeed a discussion of QE. It was not neglected in the course of what was actually a very rich and ample discussion.』

全ての手段を含みますとか多くの議論をしたとか言って如何にもやる気満々に見えますが、結局何がどうなるとQEを発動するのかという話はスルーしているのですが、最初にこの質問に対してグッドクエスチョンですみたいな言い方をするとか。

『The exchange rate is very important for price stability, so much so that we have made an explicit reference to it in the introductory statement, as you have seen, where we say that “… the Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook for price developments as limited and broadly balanced over the medium term. In this context, the possible repercussions of both geopolitical risks and exchange rate developments will be monitored closely”.』

物価のリスクに為替を今回加えましたと。

『But, as I have said several times, it is not a policy target. It is an increasingly important factor in our medium-term assessment of price stability, but it is not a policy target. In this sense, we do not link our medium-term assessment to a precise level of the exchange rate. It is part of the overall information that comes into play when we undertake our medium-term assessment.』

まあ為替に関しては露骨に言うと問題だからこういうしか無くて、とりあえずユーロ高阻止したいのは把握した。


・だから見通しは何を見たら変わりますねん追加緩和はまだかよというツッコミから

ちょっと飛ばしてこの質疑から。

『Question: Can you describe a little bit more what kind of information you are looking for on whether or not these latest inflation figures are changing your medium-term outlook? If you’re not going to act when its 0.5%, what does it take to get you to act on some of these things?』

最初の質問でじゃあどうしたら動くのというのを華麗にスルーしたのでちょっと後の質問で聞かれるのでありました。

『And my second question is: you clearly changed the rhetoric a little bit in terms of your willingness to act swiftly - being resolute - but do your rhetoric and your easing bias lose credibility each passing month that you do nothing in the face of these very low inflation rates?』

「your easing bias lose credibility each passing month that you do nothing」とは中々辛辣な突っ込みですがさてこの答え。

『Draghi: On the first point: there are a couple of factors that somehow clouded the analysis of whether this latest inflation data would actually be a material change in our medium-term outlook or not.』

足元の物価動向に関しては攪乱要因が二つあるので中期的な見通しを考えるのが難しくなっているとな。

『One has to do with the volatility of services prices and the fact that Easter time this year comes remarkably later than last year.』

いや確かにイースター休暇の足ずれ大きいけどそもそもイースター休暇って毎年動いてるじゃねえかデータの蓄積はねえのかと小一時間問い詰めたいこの言い訳。

『The explanation is that, around Easter time, services expenditure usually goes up - demand for services goes up - especially travel, and this affected last year’s prices and it’s going to affect this year’s prices. So you have a base effect which produced much lower inflation data in March and may well produce higher inflation data next month.』

何というインチキな言い訳。

『The second point was simply a base effect of energy prices.』

エネルギー価格のベース効果言い訳キタコレですが、これだって毎度毎度動いているだろと。

『These two factors somehow made the analysis, which is relevant for our decision-making, more complex. We need some more observational points and we will have our assessment in the course of time.』

何という言語明瞭だけど取ってつけた言い訳ということでドラギ先生インチキレトリックの得意だった俊ちゃんの生霊説が更に濃厚になるのでした(超大嘘)。

『Now, I’m not sure we’re actually losing credibility on our forward guidance.』

お前の説明がと言われているのに話をしらっとフォワードガイダンス(しかもECBのはガイダンスにすらなっていないが)のクレディビリティーにするとはさすがは俊ちゃん。

『As a matter of fact, if you look at the short-term interest rates and the forward yield curves, our forward guidance has been, and is being, quite successful. The medium-term forward interest rates have been fairly well anchored and stable at the levels that we wanted, even though the period over the last three, four, five months has seen a substantial - I wouldn’t say volatility - but certainly numerous actions by other jurisdictions, both on the monetary policy front and also, if you consider the volatility that has characterised the emerging market economies, exchange rates and interest rates. So, notwithstanding these external developments, the medium-term forward curves and the short-term money market curves remain pretty stable. If you judge successful forward guidance by this measure - perhaps I am biased observer, of course, but I think the Governing Council would agree with this and would tend to define the forward guidance as having been quite successful.』

イールドカーブ動向を捕まえてフォワードガイダンスが効いているって話をしているのですが、そもそも今はフォワードガイダンスもへったくれも市場で正常化方面への期待が皆無な訳で、追加緩和まだかという話をしている中なのでイールドカーブ動向が安定しているからフォワードガイダンスが有効に機能しています(キリッ)とか言語明瞭インチキレトリックにも程があるというものです。

・・・・・・・・てな感じでまあ言語明瞭で何か凄いことを言っているように見えるのだが、良く良く読むと肝心の部分を華麗にスルーしている、という質疑応答が延々と続いて面白いちゃあ面白いのだが、他にオモロイのがあったらまた追加投入します実は時間ががががが(汗)。







2014/04/07

お題「月曜につき各種雑談で勘弁」

雑談状態でどうも纏まっておりませんで恐縮至極(汗)。

#そういえば今日から超長期国債先物開始ですな

○オペ関連雑談メモ

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140404.htm

国庫短期証券買入 15,000 2014年4月8日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年4月8日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年4月8日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年4月8日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140404.htm

国庫短期証券買入 35,525 15,006 0.005 0.006 52.9
国債買入(残存期間1年以下) 6,007 1,104 0.003 0.005 10.0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 11,466 2,501 0.005 0.005 90.8
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,251 2,503 0.005 0.006 93.3

つーことでまず短国買入ですけれども、1.5兆円の打ち込みはまあ恐らく市場の予想通りと思われます。まあ今月に関してはご案内の通りで1年オペのエンドがバカスカ来るのですが、既に先週の2本が(多分衆目の一致する以上に)札を集めるという不思議現象が発生しておりまして(だって3か月とかいつものオペと同じで違うのはエンドの量が多いだけなのですが何故かこっちはロールの歩留まりが良いとな)短国買入をそうホイホイ実施しなくて済むとなっておりまして、当初ビビッていた2兆円連発攻撃とかには今の所なっていないようで何より。

しかしまあ冷静に考えますと、今短国買入を行っても入るのは概ね3か月物になってしまいますから、6月末までの残高には跳ねるにせよ、真に積まないといけないのは年末のMB残高ですからして、まー今ですと年末越えるのは1年短国しかありませんよって、そう考えますと1年TBの入札後の短国買入で1年物がバシッと入って頂くというのが一番ウマーな話でして、何もここで必要もない馬鹿買いをして短国の需給を無駄に逼迫させると本命の買入に支障をきたしますので(つーても結局入札後の引値次第というのもあるが)暫くこんな感じですかね。まあ1年オペロール分の札の入り方を見ながらの展開にはなるんでしょうが。


でまあ輪番の方ですが、金曜は超長期輪番を予想する向きが多かった(1年以下と超長期という予想では無かったかしら)ようで、輪番オファーを見て瞬間アチャーという動きになっておりましたが、まあ瞬間芸に留まったのでそれほどの話でも無かったかも知れませんけれども、まあ何ちゅうか超長期輪番に関しては毎度毎度微妙に物議を醸しますなあという感じですな。

まあ話がややこしくなるのは以前市場局が出した輪番スケジュールの「ようなもの」が昨年の買入ペースをベースにして作っている事でして、長期国債だけで言えば今年は昨年よりもペースを落とさないといけないという状況なのに出した紙を差し替えるでも引っ込めるでもなく継続する所に問題がある訳でして、まああのスケジュールのようなものは建付けとしてはあくまでも「目安」ですし、紙を出しているのは市場局ですから別にディレクティブとかでも何でも無いのですけれども、何もしないで有耶無耶のうちにというのは「市場との対話」という観点ではうーむという所かと。

いやね、短期市場における金融調節だと主要な参加者の頭数も少ないし、資金需給に関しては日銀の方が情報持っていますし、調節の呼吸みたいなのも日銀にしたって参加者にしたってまあ長年の蓄積があるのですけど、どうも債券市場となりますとそもそもが日銀の守備範囲外だったこともあって、相変わらず慣れないですなあというか、だいたい市場の予想を要らん所で外してやらかしになってしまうというのが散見されるのが残念という所なのですが、どうも外野から悪態が飛んでも定期的にやらかしをするのは、まあ何だかんだゆうて本来業務の守備範囲の問題でしょうなあと思うのでした。

つまりですね、以前は債券だけではなくてかつてはGCレポ市場とかCP市場とかでも微妙なやらかしがあったりしました(ってリーマンショック後にレポ金利が恒常的にロンバード水準に張り付いてCP金利も上昇して大変な事になったとかの事案だが、まあ調節担当部署的には当時はコールの金利にディレクティブが掛かっているのでレポやCP市場の金利上昇による金融引き締まりガーでやらかしと言われても調節部署的には困るのであって本来はボードはよ動けやという話になるのだが)ように、どうも日銀様におかれましてはインターバンクに関しては超越神業な天才調節をするんですけど、市場ちゃんの方にももう少しこう何とかならんかねと思うのですけどまあ難しいでしょうかねえ。


○決定会合プレビュー雑談というか何というか

今週は金融政策決定会合ですが、先般来各ベンダーが何とかストの皆様にアンケートとか取っておりまして、何をどうすると40人とかのサーベイになるのか判らん(金融政策に関するレポートで読む気が起きる代物って以下自粛)ですけれども、まあ何かその中で圧倒的に多いのは消費税増税の影響が経済指標として確認される7−9月期に追加の金融緩和という話みたいですな。

はあそうですかという感じではあるのですが、消費税増税の影響が数値として見えてくる7−9に緩和という予想は黒田日銀の行動様式を理解しとらんという風に思うのでありまして、まあ端的に申し上げますと7−9にやっぱり消費税増税の影響を緩和するから追加緩和しますとか言うのってそれは第一に逐次投入しないという現在の政策の枠組みに反しますし、第二に消費税増税で一時的に落ちこむ点も踏まえての見通しで政策をしているという話に反しますので、つまりは7−9に普通の追加緩和みたいなのを出すというのはエコノミスト的にはそういう話になるのかも知らんが、政策の行動様式というかプロトコルを考えた場合にタイミングとして????な所かと。

いやね、これがまた残り半年くらいになって点検して安定的に2%に行くという物価目標の達成に対して調整が必要という判断になるというのならまだ判らんでも無い(つまり展望レポートのタイミングとなる10月後半)のですが、少なくとも現在順調に推移しているという感じの情報発信が続いている中で普通の追加緩和というのは無いと思います。


でまあ普通に考えると追加緩和ってこりゃねえだろという話ではあるのですが、黒田日銀お得意の「期待の転換」理論からしますと、まあサプライズで実施するならば明日しかあり得んと思うのでございます(なお明日あるとは思ってませんので念の為)よね。つまり市場が予想するような範囲で何かをやるとしてもそれは期待の転換とかいうような効果には繋がらないですし、逐次投入モードに陥ってしまいますので、2%の物価目標に関して2年という看板辞めて中長期で達成という話にでも成れば別ですけれども、そうでない限りは追加緩和って普通やらないだろと思うのですよね。

大体からして追加緩和を普通に7−9に実施したらそれは「見通しを外した」という事を宣伝するようなもんで、第一の矢の失敗って話になりゃせんですかねえと思うんだが。

つーことであたくし的には今の感じが続くなら追加緩和しないでしょと思いますが、もし追加やるなら市場の後追いしても仕方ないので無警戒の今週(では何をするかと言うとETF買入位しか思い浮かばないが)でオナシャス(なお可能性はほぼ無いでしょうが)。


○イエレン議長FOMC後の会見ネタを若干

今更で恐縮ですが。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140319.pdf

何かこう微妙に残念というかオモロイ質疑応答があるのでその辺でも。

・それは確かにそうかも知れんがだったら出すなよ・・・・・・・・

ステートメントとSEPの全体数値が出た時にSEPの金利見通しプロットに変化があったのに市場が反応した訳ですが、それに関連する質問に対するイエレンさんの答えが何ともアレ。


『JON HILSENRATH. Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Chair Yellen, in the interest rate projections made by FOMC participants that supplement your statement, there seems to be a slight upward drift in the expectations for rates going out to 2016. For instance, a majority of officials see rates at 1 percent or higher in this forecast round. In the last forecast round, a majority saw officials less than 1 percent.』

SEPでの政策金利見通しのプロットが上がりましたよねという事で・・・・・・

『I wonder if you could explain why there is this small upward drift in expected rates among Committee members, whether these projections are a good guide for the public about where rates-about the path of rates going forward, and also how you reconcile this upward drift with the assurances that the Committee makes in its statement that rates will stay below normal levels well into the future.』

これは上方修正だと思うのだがSEPがコミュニケーションツールというなら説明しろと。

で、この答がテラヒドス(^^)。

『CHAIR YELLEN. Well, to my mind, there is only very limited upward drift.』

これはのっけから酷い。

『You know, the Committee-I think the Committee, in assessing the economy-if you compare today’s assessment with December’s, is virtually identical. Almost nothing has changed in the overall Committee assessment of the outlook.』

おーるもーすとなっしんぐはずちぇんじどと仰せとな。

『As I mentioned, unemployment has come down. The labor market more broadly, I think, has improved a little more than we might have expected, and that slightly more rapid improvement in the unemployment picture might explain-I can’t speak for why people write down what they do, but-a little bit of the upward shift in those dots.』

ふむふむ失業率の改善が早かったとな、と思って安心しているとその次にまた素敵な説明がががが。ちょうどページが変わる所なので中々いい感じでオチになっているのがオモシロス。

『But, more generally, I think that one should not look to the dot plot, so to speak, as the primary way in which the Committee wants to or is speaking about policy to the public at large.』

ドットに多くの意味を求めるべきでは無いというのは判ったがだったら出すなよ・・・・・・・・

『The FOMC statement is the device that the Committee as a policymaking group uses to express its opinions, and we have expressed a number of opinions about the likely path of rates. In particular, the Committee has endorsed the view that it anticipates it will be a considerableperiod after the asset purchase program ends before it will be appropriate to begin to raise rates. And, of course, on our present path, well, that’s not utterly preset. We would be looking at next fall. So, I think that’s important guidance.』

FOMCのステートメントの方が重要なコミュニケーションツールである(キリッ)とかもうね。

『Looking further out, let’s say if you look toward the end of 2016 when most participants are projecting that the employment situation-that the unemployment rate will be close to their notions of mandate-consistent or longer-run normal levels.』

で、ここからは2015年末の数字という質問の筋をそらしてロンガーランの政策金利水準(要するに中立的な政策金利)の4%よりもSEPで示されている皆様の見通し金利が低いですよという説明を延々としているのでした。

『What you see, I think, if you look this time-if you gaze at the picture from December or September, which is the first year that we showed those dot plots for the end of 2016, is the massive points that are notably below what the participants believe is the normal longer-run level for nominal short-term rates, and the Committee today, for the first time, endorsed that as a Committee view. So I think that’s significant. I think that’s what we should be paying attention to, and I would simply warn you that these dots are going to move up and down over time a little bit this way or that.』

ということでGDPと失業率がロンガーラン水準と想定されている2016年末のFF金利見通し数値がロンガーランよりも低い事に注目すべきである(キリッ)ってもうね。

『The dots moved down a little bit in December relative to September, and they moved up ever so slightly. I really don’t think it’s appropriate to read very much into it.』

12月はちょっと下がって今回ちょっと上がっただけであってそれに多くの意味を求めるべきではなくそれよりもステートメントや2016年末のドットを見るべきであるとかもう何だかねとしか申し上げようがないご都合主義の説明。


つーことで、まあイエレンさんの説明って結構ああいえばこういう系のアレなのかなとは思うのですが、そうは言ってもそのああいえばこういうが露骨なのでドラギ先生や福井の俊ちゃんのようなタイプでは無いなあ(ドラギと俊ちゃんは似てると思う)と思うのでした。


・例の「6か月」のやり取りを確認

うーむこれは。

『ANN SAPHIR. Ann Saphir with Reuters. First, I just wanted a quick clarification. You said that something would happen by next fall, and we-on a clear path-on a path until next fall. I was unclear if you were speaking of rate hikes or if you were speaking-』

『CHAIR YELLEN. I simply meant to say that if we continued to reduce the pace of our asset purchases in the manner that we have, in measured steps, that the program would be winding down next fall.』

端数の50億ドル分の処理によって9月になるのか11月になるのかが違うというのが中々味わいがあるのですけどまあ今のペースなら秋とな。

『ANN SAPHIR. In this coming fall, you mean, not the fall of next year, is that-just-』

『CHAIR YELLEN. Yes, this coming fall.』

さいですな。

『ANN SAPHIR. To be clear-I just wanted to be clear about that. Then once you do wind down the bond buying program, could you tell us how long of a gap we might expect before the rate hikes do begin?』

キタコレ。

『CHAIR YELLEN. So, the language that we use in the statement is “considerable”period. So, I-you know, this is the kind of term-it’s hard to define. But, you know, it probably means something on the order of around six months or that type of thing.』

あちゃーというか何というかですが、この流れを見るとうっかり発言では無い罠という感じですよね。思いっ切り確信犯的に話をしてるでしょ。

『But, you know, it depends. What the statement is saying is, it depends what conditions are like. We need to see where the labor market is, how close are we to our full employment goal-that will be a complicated assessment not just based on a single statistic-and how rapidly are we moving toward it? Are we really close and moving fast? Or are we getting closer but moving very slowly? And then, what the statement emphasizes, and this is the same language we used in December and January, we used the language especially if inflation is running below our 2 percent objective. Inflation matters here, too, and our general principle tries to capture that notion. If we have a substantial shortfall in inflation, if inflation is persistently running below our 2 percent objective, that is a very good reason to hold the funds rate at its present range for longer.』

とまあ色々な状況を点検するし、実際には慎重に判断しますという話を延々とそこに付け加えていますけれども、まーゆうてもその前の所で全てです罠という感じではありまする。

#ということであと少しネタにするかなという感じですがドラギ先生の会見もやらねばなのです




2014/04/04

お題「ECBキタコレ/市場雑談とかその他少々」

異次元緩和1周年ですなあ。

○ECBキタコレというかまたやるやる攻撃とな

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140403.en.html
PRESS RELEASE
3 April 2014 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.25%, 0.75% and 0.00% respectively.』

据え置きですかそうですかという所ですが、会見の方で非伝統的政策の導入についての発言があったという事ですな。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140403.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 April 2014

後で前回との比較やるからまた引用しますがここの第2パラグラフ。

『Looking ahead, we will monitor developments very closely and will consider all instruments available to us. We are resolute in our determination to maintain a high degree of monetary accommodation and to act swiftly if required. Hence, we do not exclude further monetary policy easing and we firmly reiterate that we continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.』

必要ならば追加緩和を辞さずキタコレという事ですな。

『This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity and subdued money and credit creation. At the same time, we are closely following developments on money markets.』

この部分は大体前回の話と同じです、後で申し上げますがここの部分の文章構成が前回と違うのでちと読みにくい。

『The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.』

という事で「低過ぎるインフレが長期化する事に対するリスクに対応するために非伝統的政策を使う事に対するコミットメントについて全員一致している」という威勢が良いんだが相変わらずのドラギ先生の攻撃キタコレという所ではあります。

いやまあECBの場合は物価が現実問題としてマズーという流れになっていまして、物価が上向きになってくれないとデフレ均衡のリスクが有る(とは言いましても欧州の場合は域内が一物一価じゃないから本当にそうなのかという気はするんだが)という事ですから何らかの手段をという話になりますし、そうなった場合にマイナス金利やるよりは米国のQE2みたいなのをやった方が目先は変わるし、米国のQE2は(本当にそうだったのかは別にして話のうえでは)ディスインフレ回避に効果があったという話になっていますし、そういう意味ではろくすっぽ前例のないマイナス金利実施するよりはどうみてもマシだわという風に思いますので、とりあえずマイナス金利方向には逝かなさそうになって外野的にもホッとしましたという感じです。

ただまあ「リスクに対応するために非伝統的政策を排除しない」って冷静に考えたらそんなもの当たり前の話ですし、つまりこれ本当に次回とかの会合で資産買入みたいなのを実施する気が満々なのか、一般論に近い話を(キリッ)と発言してやるやる詐欺なのか(まあやるやる詐欺やっている内に状況が改善して結局やらずに済みましたというのがベストだとは思ってるでしょうけれども)がよくわからんちんな所でございまして、まあその前に「追加緩和を辞さず」って言ってますからドラギ先生的にはやる気はあるのかもしれないとは思うのですが、実際問題として「全員一致している」というのは「必要ならば必要な措置を取ります」というのが一致しているだけですからねえ。

バイトマン先生が非伝統的政策排除する必要なし発言している事ですし、方向性としてマイナス金利導入みたいな実験的手法を取るよりは資産買入でしかも信用緩和にならないようなやり方(つまりお助けオペではない形)で実施した方がマイナス金利よりも毒性弱いと思いますので、やっと普通の方向になったという感じかなあとも思うのであります。

とは申しましても、ここで問題なのはECBの場合既に預金ファシリティー金利がゼロ金利になっていることでして、常設ファシリティ―の金利がプラス金利になっている他国と違いまして、超過準備を塔の如く積み上げるというのは積み上げる側のインセンティブ的に無理があると思われますので、そんなに馬鹿みたいに国債購入とかできないと思うのでどうするんでしょうかねえというのはあります。

いずれにせよ次に打つのが非伝統的政策の可能性が高くなったという事になりましたので、当然ながら預金ファシリティーのマイナス金利とかあり得ない(量的緩和政策と矛盾する)というのだけは確実かなと思います。


では折角なので前回から行ったオープニングステートメントの最初の部分だけ前回と比較企画。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment.』(今回)

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment.』(前回)

ユーロエリアの経済に関しては引き続き見通し通りに推移してるんですとよ。

『At the same time, recent information remains consistent with our expectation of a prolonged period of low inflation followed by a gradual upward movement in HICP inflation rates. The signals from the monetary analysis confirm the picture of subdued underlying price pressures in the euro area over the medium term.』(今回)

『At the same time, the latest ECB staff macroeconomic projections, now covering the period up to the end of 2016, support earlier expectations of a prolonged period of low inflation, to be followed by a gradual upward movement in HICP inflation rates towards levels closer to 2%. In keeping with this picture, monetary and credit dynamics remain subdued.』(前回)

前回はECBスタッフの経済見通しのリバイスがあったのでその説明が入っていますが、物価に関してはこれまた「a prolonged period of low inflation followed by a gradual upward movement」ということで低インフレがやや長めに続いた後に徐々に上昇基調という見通し。

でまあここが曲者っちゅうか何ちゅうかなのですが、先ほど引用した部分(の方が文章的には後になるのですが)では低すぎるインフレが長期間続くリスクが云々という話をしておりまして、一方で政策の変更をしていないという今回の判断のベースには(別に今回だけではないが)やや長い期間の低インフレが続く、というのがありまして、結局その低インフレがどの位続くとリスクですねんというのが何が何やら良く判らんのですよ。

まあね、結局の所単にECBの中の皆さんの見通しが弱気になったら追加緩和ちゅうそれだけの話で、弱気にならなければ「暫く低インフレですがその後戻ります(キリッ)」って言うでしょうし、弱気になったら「低インフレの長期化はリスクなので対応しました(キリッ)」という話になる訳で、要するにまあ悪く言えば恣意的な所で決まるんでしょという話っすけど、そう考えた場合にECBって各国の状況が一本値じゃない(日米英だって地域差はあるけど欧州程では無いでしょ)ですから、さてこれどうなるんでしょという所で、そうなると経済絶好調のドイツ様のバイトマン先生の見通ししだいという事になるんでしょうかよくわかりません。

『Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)

『Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(前回)

ユーロ圏の中長期的なインフレ期待は2%近くで確りアンカーされている(キリッ)っていうのはまあ何時ものことっつーかこれが揺らいだらもうマズーという話になる訳ですが、しかしまあ欧州様だってあの物価水準で平然とこういう話をしている訳で、そういうのも考えますと先日の日銀短観のおまけで出てきた企業の物価見通し集計の中長期1.7%(しかも中小企業は1.9%)をみて2%に届いていないから追加緩和待ったなしとか言うのはそもそも中銀ヲチの修業が足りんとしか申し上げようがありませんな(^^)。


次のパラグラフなのですが、今回文章構成が変わっているので比較するのがやりにくいぞなもし。

『Looking ahead, we will monitor developments very closely and will consider all instruments available to us. We are resolute in our determination to maintain a high degree of monetary accommodation and to act swiftly if required. Hence, we do not exclude further monetary policy easing and we firmly reiterate that we continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. 』(今回)

『We are monitoring developments on money markets closely and are ready to consider all instruments available to us. Overall, we remain firmly determined to maintain the high degree of monetary accommodation and to take further decisive action if required』(前回)

前回はこの次のパラグラフにあった部分(上記引用部分)がこちらに入った形(なのでパラグラフの構成も前回と違う)になっていますが、ここの追加緩和も辞さず部分は前回よりもトーンが強い形になっているかと思います。

で、前回はフォワードガイダンスを強調しますよというような話があったのですが、その部分が上記引用部分に含まれるような感じになっていまして、フォワードガイダンスを強調します云々の話をしている場合じゃねえという事でしょうかね(^^;

『Regarding the medium-term outlook for prices and growth, the information and analysis now available fully confirm our decision to maintain an accommodative monetary policy stance for as long as necessary. This will assist the gradual economic recovery in the euro area. We firmly reiterate our forward guidance. We continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.』 (前回)

前回はこういう話をしていたのですが、今回はそれよりも先ほど引用したように「追加緩和も辞さず」というトーンになっていますので、フォワードガイダンスがどうのこうのという表現が先ほどの引用部分にとってかわった感じですね。


『This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity and subdued money and credit creation. At the same time, we are closely following developments on money markets.』(今回)

『This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity and subdued money and credit creation.』(前回)

マネーマーケット動向云々の文言は前回は先ほど引用した次のパラグラフの方に入っていまして、まあ物凄く細かい事を言えば、前回は金融市場の動向(つまり一部新興国のあばばばばーなど)を「必要ならば必要な措置を取る」という部分に入れていたのですが、今回はあくまでも経済の見通し部分に関連する所に入れている訳でして、つまりは金融市場で変なことが起きるリスクというよりは、思いっ切り直球ストレートに物価情勢に対応して追加緩和を辞さずという話をしている、とまあそういう風になると思います。

『The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.』(今回)

これは先ほども引用したキタコレの部分で、当然ながら前回に該当する文言無しです。

#うむ、思ったよりも長くなってしまいました


○スタイン理事が辞任とな

こりはビックリ。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20140403a.htm

『Jeremy C. Stein submitted his resignation Thursday as a member of the Board of Governors of the Federal Reserve System, effective May 28, 2014.』

この前理事になったばっかりやん!!

『Stein, who has been a member of the Board since May 30, 2012, submitted his letter of resignation to President Obama and plans to return to his teaching position in Harvard University's department of economics.』

ハーバードの教授職に戻るとな。

『"Jeremy has made important contributions and served as an intellectual leader during his time at the Board," said Federal Reserve Chair Janet L. Yellen. "His understanding of monetary policy and markets as well as his expertise in banking and financial regulation has proven invaluable in his service to the Federal Reserve and the country. My colleagues and I will miss him." 』

スタイン理事に関しては金融不均衡とかに関してガチガチの人で、就任直後から緩和政策の弊害として米国金融市場のうち、特にクレジット市場やシンジケートローンなどの市場における不均衡の拡大(つーかまあ要するに色々とユルユルになってしまうという問題)をやたらめったら警告していたので、景気見通し云々関係なく緩和政策の長期化に関して否定的な方という素敵なタカ派、というかBISビューのお方でしたな。

報道によるとハーバードに戻らないとアカポスが無くなるからという事らしいですが、BISビューの方には居心地悪かったんでしょうかねえとか穿った見方をしてしまうアタクシですけど、まーTaperingは既定路線になったから一定の役割は果たしたという認識なのかも知れず、中々ユニークでしかもロジカルな人だったのでちと残念なのと、ボードのタカハトの力関係で言えばややこれでハトに寄ったんじゃないですかねえと思うのでありました。


○市場雑談などなど

・短国3Mが流れるとな

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140403.htm

(3)募入最低価格 99円98銭7厘5毛 (募入最高利回り)(0.0501%)
(4)募入最低価格における案分比率 10.6809%
(5)募入平均価格 99円98銭8厘4毛 (募入平均利回り)(0.0465%)

ということでついこの前まで玉無芳一でエライコッチャでしたが3MTB入札は足切り5bpまで流れるの巻となっておりました。まあ足元でGCレートが上昇(つーても以前から見たら低いけど)してますし、期末の特殊需要が一巡して用済みになったモノも出てきたっぽいので一旦金利が上昇しましたぞなという事だと思いますが、どうせ今日短国買入でまた吸い上げ攻撃が来るので、GCとかまで含めた場合の需給は若干緩んでいるにせよ短国の方は物がそんなに余る訳でもないでしょうなあとorzではあるのでした。

とは言いましても、とりあえず地獄の黙示録状態のレートは3日ほどで一旦落ち着いてくれましたので一息という所ではあります。


・シグナルオペのロール

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140403.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 20,000 2014年4月7日 2014年7月18日

こちらのオペですが、昨年4月11日に4/15〜4/7の期間で2兆円オファーされたもののエンド対応となりまして、ちなみにこの日は1年オペ最初に実施した日ですけれども、しつこく2発目の2兆円というのを打ち込んだ方に対応します。

で、前回は謎の4か月オペ8月1日エンドでしたが、今回は3か月ちょっと長いという7月18日エンドとなっていまして、額が大きいオペの期日を分散する為に前回は謎の4か月を打ちましたが、今回は3か月に毛が生えた期間にして結局基本は3か月でロールという話のようですな。

そしてオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140403.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月7日スタート分) 15,180 15,180

元のオペが1兆8000億円(元のオペですが朝の一発目は1兆5000に対して札が2兆6310入ったので、午後になって2兆円の追加で追い打ちを掛けたらさすがに札割れしましたという結果)だったので、結構ロールされたという感じでして、正直こりはビックリというかそんなにニーズあるんかいなという感じではありますが、短期オペに関しては昔からの蓄積があるだけに帳尻合わせるの得意でございますなあ(意味深)という所でして、資金供給オペの札読みのそのお力を債券市場との対話に活用して頂きたいと思うのですがそちらの方は輪番オペで色々と市場のオモシロ反応を誘発するという所が何ともアレでございまして、つまり市場と違いまして(内務省検閲)。


ま、それは兎も角として大いに懸念されていたシグナルオペのロールですが、今月7兆からあるシグナルオペの期落ちですけれども1日と3日で3兆円分が都合2兆5000億円ロールされた形になりまして、市場の皆様が当初懸念していたよりはロールの進捗がよくて(半分行けば御の字位のイメージだったと思う)これは短国買入に掛かる負担が減るわというニッコリの展開ではあるのですが、そこで調子に乗って今日の短国買入とかが普通にどどーんと来るのが最近の調節クオリティなので油断はできません(−−)。

つーても1年オペを3か月とかでロールしておりますので、年末のMB目標に対してという意味では(3Mでやるなら)あと2回ロールしないといけなくて、さてその時に札ってどうなんでしょとは思いますが、こうなったら6月の貸出増加支援オペが盛大に伸びることを願って止まないものでありまするという所ですな、うんうん。


○市場雑談では無いがこれはほほうというネタ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140403a.htm/
「市中流通拠点における貨幣の受払要綱」の制定について
2014年4月3日
日本銀行

『日本銀行は、貨幣流通の円滑化を図る観点から「市中流通拠点における貨幣の受払要綱」を制定し、日本銀行本店における当座預金取引先が、当座勘定への入金および当座勘定の払戻のための貨幣の受払を、市中において貨幣流通の拠点となっている貨幣センター(以下「市中流通拠点」といいます。)において行い得ることとしましたので、お知らせします。』

『市中流通拠点での貨幣の受払は、市中流通拠点を運営する警備輸送会社を選定した後、2015年4月中の別に定める日から実施します。』

http://www.boj.or.jp/paym/torihiki/touyo14.htm/
市中流通拠点における貨幣の受払要綱


・・・・・・えーっとこれはつまり現在各銀行が個別に日銀に取りに行っている(といっても行員がジュラルミンケース持ってヘコヘコとかいうのではないが)現送現受業務に関して、警備輸送会社がカストディアンというか一次下請けをしますよという風に変わって、警備輸送会社の現送拠点みたいな所で受け払いの代行を行うという話ですかそうですか。多分初めての企画でこれは結構歴史的変化の気がするのだがあまり詳しくないので間違ってたらすいません。

まあどこかがやるんでしょうけれども、これ受けるの凄い高度な能力が必要になりそうですね〜。



○決定会合プレビュー雑談という程でも無いが

ロイターの記事から
http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA3202M20140403
需給ギャップが日銀の試算でゼロに改善、増税後も物価上昇=関係者
2014年 04月 3日 11:53 JST

『[東京 3日 ロイター] -日本経済の潜在的な供給力と需要との差を示す「需給ギャップ」が、日銀の試算でほぼゼロに縮小しているもようだ。試算通りに需給ギャップがゼロになれば、雇用や設備の過剰感がなくなり、物価上昇に弾みが付きやすくなる。』(上記URLより)

・・・・・・・・まあこんな報道がホイホイでる雰囲気の中で追加緩和とかねーわなという所ではあるのですけれども、需給ギャップと言えば鉛筆舐め舐めの余地がある物件でございまして以下お察しという事で内務省検閲の入る前に時間も時間なので雑談では無くただのメモでした。

#計数ネタ後回しで申し訳ないです、週末に数字精査してからネタにします





2014/04/03

お題「短観の「企業の物価見通し」結果を肴に雑談三昧企画(^^)」

ということで企業の物価見通し集計(短観の一部です)ですが、まあ肴として面白いのでネタにせざるを得ないアタクシ(^^)なのですが、ノリノリで雑談してたら月初恒例の計数ネタを書いている時間が無くなるという誠に遺憾な事案が発生してしまったことを平にお詫びいたしますm(__)m

○「2%届いてないから追加緩和待ったなし」という奴は修業が足りん(と思う)

つーことで今回初見参の集計である。

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1403.pdf
2014年4月2日 日本銀行調査統計局
短観(「企業の物価見通し」の概要)―2014年3月―
第160回 全国企業短期経済観測調査

・そもそも第一回なのであまり意味を捻りださない方が良いのですけどね

えーっとですな、この集計結果が話題になっていますし、この結果色々な意味で鑑賞物としてはかなり秀逸なので以下ネタにしない訳には逝かない(野次馬かと)という事でネタにはするのですが、極めて真面目に申し上げますと、この手の統計って数回行って統計の癖とかが出て来てからじゃないと直接インプリケーションを引っ張り出すべきではないと思われますので、そもそも論としてはこの統計をもって金融政策に対するインプリケーションを過大に引き出さない方が良い訳です。

とは申しましても、これ酒の肴としては(いやまあ今飲んでるのはペパーミント茶ですが)相当にウマーなのでネタにするという所である点は最初にお断りしておきますね、とマジレス。


・どう見ても執行部ウハウハです本当にありがとうございました

まずは上記URL先の2ページ目の『2.物価全般の見通し』に目が行くと思います、というか普通最初に注目するのはこれですけれども、この数字最初に見たアタクシの感想は「これはまた日銀執行部してやったりの結果キタコレ!!」という代物でありまして、この数字を見て「2%届いてないから追加緩和待ったなし」とか(4月馬鹿以外で)言う人は基本的に政策ウォッチャーを名乗ってはいけないと思いますが、アタクシが見た(あまり真面目に見てないが)範囲内ではさすがに円金利系の何とかストの皆様で2%達成しないから追加緩和待ったなしという話は無かったと思います。

まー何ですな、この数字自体は単なるアンケートで良く見ると「知らんがな」という回答も多くて正直どうなんだという気もするのですが、料理の仕方によってはかなり面白料理が仕上がるというものになりますので、まずは自信満々モードの執行部様になった積りでこのアンケート結果を見るあるヨロシアルね。


まず「1年後の全業種見通し平均1.5%」ってのが何故かニュースのヘッドラインになっていたりしてて、この数字を持ってああだこうだ言い出すのはもう根本的に赤点再履修クラスでして、1年という短期のインフレ予想というのは足元の色々な要因によってぶらされやすい物なので、そらまあ極端に上や下に振れた場合にはそれが中長期的なインフレ予想に影響するかとかを考えないといけませんけれども、金融政策インプリケーション的に言えば本来はどうでも良い数値であって、まあ極端にぶれない限り知らんがなという話です。


ということでまあ見るなら3年とか5年の所の数値を見るのが筋の良い話になる訳ですが、こちらの全業種全産業平均の数値は3年も5年も1.7%になっていまして。「1.7%なので2%に足りないから追加緩和」という方がまだ筋は良いのですけれども、まあそれもやっぱり指摘としてはちょっと残念な部類になる訳です。つまりですね、じゃあ逆に聞くけどこの数字が2.2%だったら引き締め待ったなしなのかという話でありまして、この手の数字って当然ながら上下に適宜アローワンスのある話でしょとゆー所で、1.7%という数値は「2%に近い」と十分に言える数値じゃないですかねえと解釈する方が政策当局者的には普通の解釈になる筈。

ただまあ先ほども申し上げましたが、この統計自体が初回ですから前回との比較とかできませんし、インフレ予想として使う事を考えた場合にどのような癖があるのかとかもわからなない状態ですから、これが本当の意味での物価安定2%に近いような結果なのかというとそれはまだワカランチ会長としか申し上げようがないでしょうねというのが本来の話。

でもこれを無理矢理料理すると「企業の期待を見た場合にデフレ期待からは脱却している可能性がありますなあ」とか「1.7%という数値になっているということでこれは日銀の提唱する物価安定目標2%に期待が収斂されていってるような状況を示唆していますなあ」とか威勢の良いことを言い放題となりますので実にこう心温まる内容ですな。

それからですな、欧米の中銀だっていつも「中長期的なインフレ期待はマンデート水準で確実にアンカーされています(キリッ)」とか言い張り続けてアクチュアルの物価水準がマンデート水準を盛大に上回って推移したり盛大に下回って推移したりしているのにインフレ目標は達成出来ているという話をしている(しかもそのインフレ期待とは何ぞやという話は細かく定義しないで有耶無耶のまま)訳でございまして、そういう意味からしたらこの数字だけを使えと言われたら普通は「中長期的なインフレ期待は2%近辺」とか平然と言ってのける事も可能という結果でございます罠、と思うのがこの統計の物価部分を見た場合の感想にならないと政策ウォッチャー的にはおかしいですという所です。


さてさて、ここで更に味わいがあるのは何かと申しますと、ここの物価全般の見通しに関して「大企業」と「中小企業」に分かれている所でございまして、ここの数字を見ると更に味わいというか侘び寂びというか伏線張りまくった映画かよというものを感じる訳でございます。

つまりですな、物価見通しに関しての数値ですけれども、大企業と中小企業では思いっきり差があって、大企業の見通しって短期も中長期も1.1〜1.3%という残念な水準となっている一方で中小企業の見通しは短期だと1.7%ですけれども中長期の見通しが1.9%で思いっきり揃っているという大変に素晴らしい結果で、日銀ヲチャーに年季が入るとまずこの数字を見てキタコレとなるのが正しい在り方(かどうかは知らんが)というものです。

さてそれはどういう事かと申しますと、日銀レビューとしては結構な話題になったような気もする先般の『家計のインフレ予想の多様性とその変化』という日銀レビューを先日アタクシもネタにしたと思いますが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/(概要説明)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j01.pdf(本文)
家計のインフレ予想の多様性とその変化

こちらでああだこうだと説明している中で企業のインフレ期待に関するレビューが本文の1ページのケツの所から2ページの左側の辺りにありまして、『QUICK 短観』の2 年後以降予想を基にして試算している企業のインフレ予想に関してこのような分析をしております。

『上場企業間のインフレ予想のばらつきも、市場のそれに近い。特に大企業では、業界の需要予測を立てる際、エコノミストの経済・物価予測を参照したりすることから、結果として、市場と似通ったばらつきが生じやすいと考えられる』(上記日銀レビューより)

で、その参照にされる市場のインフレ予想に関してはこのように説明していましてですな・・・・・・・

『一方、市場関係者やエコノミストの場合、予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている。このため、インフレ予想のばらつきは、モデルの予測精度の差などに起因したものとなる傾向が指摘されている3。市場のインフレ予想の多様性は家計ほど強くなく、今後10 年間のインフレ予想(10 年予想)は、2004 年の調査開始以降、中央値を挟んで上下0.3%pt という極めて狭い範囲に半数の予想が集中している。』(上記日銀レビューより)

ここの部分ってぼかした言い方してますけど、しらっと「市場の予想は予測モデルを使って経済の前提数値を置いてインフレ予想を出すという形なので、従来の延長線上の予想になってしまう」という事を暗に指摘しておりまして、つまり「日銀様が今行っている期待の転換によりフィリップスカーブを上方にシフトさせるというレジームチェンジの政策効果を市場関係者やエコノミストは織り込んでないんですよねえあっはっは」という事でもありますな。

でまあ先般このような伏線が張られていたものがここで回収される訳ですが(^^)、大企業のインフレ予想というのはつまり市場の予想であります所の「レジームシフトを織り込んでいない」数値を前提にしたものであるので低めに出るのは当たり前で、より幅広い経済主体のインフレ予想がどうなっているのかとして見た場合には中小企業のインフレ予想が中長期でほぼ2%となる1.9%になっている点により注目すべきではなかろうか、とまあそういう話になる訳ですよね、うんうん。

そうやってこの数字を執行部になったつもりで料理致しますと、2%行ってないから追加緩和待ったなしどころか執行部の大勝利宣言とか某局某課あたりで万歳三唱と共にインフレ予想2%慶祝提灯行列が練り歩かれてもおかしくは無い、というアンケート結果になるというキタコレにも程がある結果である、とまあそういう話になるので無いかと存じますが如何でございましょうかねえ。

まあしかし何ですな、「2%」って連呼してみるもんですなという所でありまして、気合でフィリップスカーブを上方シフトして信じる者は救われるというシンデレラの魔法も使ってみるもんですなあ(棒読み)というのが今回の結果(の物価全般の見通し)だと思われます。3ページ目に回答の分布図があるのですけれども、先ほどの日銀レビューで説明があったような分布の偏りに関しては2ページ目に思いっきり記載されていましたけど、折角だから規模別まで含めてグラフも乗っけて頂ければ更にビジュアル的に面白かったと思います。

ま、最初に申し上げたように、この数字って初回集計ですからまあこの結果を振りかざしてドヤ顔すると次回のアンケートで盛大なブーメランになるリスクも思いっきり存在しますから、そらまあこれでドヤ顔とかするとは思えません(というかドヤ顔したらトンマにも程がある)ですけれども、少なくともこの物価全般の見通し数値を見て悪い数値とかいう方は追加緩和クレクレ病の症状が深刻になっておられると存じますので、参禅でもして心を洗ってこられる事をお勧め申し上げたいと存じます。


・と申し上げましたが1ページを見ると実にアレな結果もあったりする訳で

とまあそういう事で政策自画自賛モードの脳内セッティングを行った場合に2ページ目が極めて魅力に富んだ解釈ができるという事がお判りになったかと存じますが、一方で1ページ目を見ていると実にこう寒風吹きすさぶシベリアの冬といった風情を感じさせるものであります。

つまりですね、1ページ目って『1.販売価格の見通し』なんですけれども、これを見ると大企業の見通しと中小企業の見通しに乖離があって、大企業は販売価格見通しを製造業でゼロ近辺だの甚だしきは5年後がマイナスとかどう見てもデフレマインドです本当にカムサハムニダという数値になっておる訳ですよね。

一方で中小企業に関しては製造業で短期が1.2%で中長期になると徐々にその数値が上がっているのですけれども、当然ながら価格支配力という観点で考えた場合、製造業大企業様が販売価格上げねえよという中で本当に製造業中小企業が見通し通りの販売価格上昇ができるんですかとか考えますと実にこう薄ら寒い物を感じる次第でありまして、こっちを見ると「コストプッシュのインフレが川上で止まって企業収益や生産性が低下してハイおしまい」というあばばばばーな図しか思い浮かばないという大変にアレな数値。

非製造業の方が若干数値は上になっていますが、こちらでも大企業の方が先行きの販売価格見通しが低くなっておりまして、つまりはコストプッシュの影響を吸収する体力のある大企業と体力が相対的に弱い(と思われる)中小企業の間の差が表れていると考えますと、なるほど短観で(ってこれも短観ですけど)中小企業の先行き業況指数(ってこの先行きは3か月後ですけど)の水準が落ちるわなとかこれまた勝手にオモシロストーリーを立てて料理ができる話だなあと思うのであります。

てな訳ですからして、まあいずれにせよこの数値をどう解釈するかという話はあと数回データの蓄積が無いと行かん訳ですが、まああと2回短観行えば10月展望レポートの季節となりますので、そういう意味では丁度良いかもしれませんな(ニヤニヤ)。


・ところでこのような指摘ががががが

あたしゃこの短観の回答票なんぞを見たことは当然の如くございませんのでよー知らんのですが、今回の見通しアンケートなんすけど物価見通しに関する選択肢の分布票(2ページにある)のを見ると数字を選ぶ方の選択肢(知らんがなという選択肢が3つある)の回答の真ん中になるのが選択肢の5番と6番になると思うのだが、その5番と6番ってゼロ近傍ではなくて何故か+2%程度、+1%程度という選択肢になっているのは何かの工夫あるいは意図でございましょうか???というツッコミをする人が実は大変に多いのでございますけれども、この点につきましては是非ともご説明をお伺いしたい物でありますな(^^)。


○月初計数関連ネタががががががが

なお、月初恒例の国債購入銘柄とか短国の償還予定計算とか資金需給とかに加え、生活意識アンケートの結果も出ておりまして、その辺のネタをいじらないと行けなかったのですが、最初に申し上げた(というか最初に申し上げた部分に今追記したのだが^^)ようについうっかりとノリノリで料理大会をしてしまったので、時間がなくなってしまいましたすいませんすいません。

まあ何ですな、今回一番困るのは国債購入銘柄の明細の中で月末跨ぎの輪番で超長期の購入があるので、平均残存を計算しても6年台半ばとかになってしまうので今月の平均残存調整攻撃が来るのかどうかの当たりが全然つけられないという役立たずな結果になっているのですよね〜。

まあ何ですな、当日の実勢と売参から入りそうな銘柄を想定して計算するのが一番良さそうで、そうじゃ無かったら月末跨ぎ分の1702億円を10年超の買入実績で按分して買ったことにでもしますかねとなるのですかね、よー知らんけど。

なおその辺のネタは多分明日投入の所存ですが、ついでに本日は3MTBの入札もあるので、まあどんな感じになるんでしょうかという所です。





2014/04/02

お題「1年シグナルオペ初回の期日対応はという超マニアネタ雑談/短観ってこれ雇用と価格の所がウハウハじゃネーノ」

価格据え置き宣言に加えて値下げ775品目とかこれはデフレ脱却の国策に反しますなあ(棒読み)ということであまりんかガースーのコメントはよ。

http://www.itoyokado.co.jp/special/sale/2013toku/(無駄に派手な画面なので注意)
http://www.itoyokado.co.jp/dbps_data/_material_/localhost/pdf/2014/20140331.pdf(PDF注意)

それはそれとしてこれは・・・・・・・

http://www.asahi.com/articles/ASG416FF4G41UCVL034.html
NHK会長「1人の行為で信頼全て崩壊」 入局式で訓示
2014年4月1日20時23分

自分の発言にも言及してこの訓示をするというのはハイブロー過ぎるのですが、これはもしかしてモニターか何かでチェックして笑った人間を後で別室連行の刑とかそういう罠なのかも知れませんよ!!!!!


○またまた市場雑談メモ

・1年固定金利オペが4か月でロールとな

昨日は10年国債入札とか、期初のとりあえず売買益確保の売りが来たと思ったらすかさず買いが入って(ってか入替ですかねえ)盛大に堅調相場とか、長い方も久々に色々と話題があった感じの相場様でございましたが、一方で地味にマニア方面で注目される1年固定金利オペのロールがやって参りました。

オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140401.htm
米ドル資金供給 2014年4月3日 2014年4月10日 0.580
米ドル資金供給 2014年4月3日 2014年6月26日 0.580
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2014年4月3日 2014年8月1日

オファーロットの1兆5000億円というのはこの折り返し元のオペが1兆5000億円でしたので、それに合わせたという事だと思うのですが、この8月1日というエンドを見せられて外野的にはポカーンという感じで「まあ札があるんだろうけどナンジャコリャ」というのが正直な感想。

と申しますのも、ここもとの固定金利オペって普通に3か月のタームでロールされていたので、1年でも3か月でもなく急に4か月というのが来るのが唐突感が思いっ切りあるという所でありまして(8月1日が資金過不足(この場合は余剰)の大きな日だというのならまだ判るのだが、特段資金過不足がデカイ日でも無い筈なのにわざわざ足を置く意味が無い)、見せられたほうとしては先ほどのような????感を持つのでありました。

で、オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140401.htm
米ドル資金供給(4月10日エンド分) 0 0
米ドル資金供給(6月26日エンド分) 0 0
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月3日スタート分) 10,430 10,430

まあそんな訳で8月1日エンドってナンジャソラというオペではありましたが、市場ヒアリングでニーズの調査をしたので1兆円もロールされて大勝利という事なのかも知れませんが、どうにも微妙なオペでしたなという感じですわ。

つまりですな、これ1年シグナルオペのロールになるので、1年(1年にすると来年足が集中しちゃうので適当にぶらしても良いのでしょうが)で打つとか、それとも貸出増加支援オペの今後の実行に合わせて足を置く(共通担保を4年固定金利オペに使って下さいね的な意味で)というイメージで6月なり9月なりの足にするとかいうのだと何か意味のありそうな話になったのですが、何ちゅうかこう「とりあえず市場ヒアリングした結果ニーズがありそうなのがこの辺だったのでオファーしました」感が満載で、シグナルオペのロールなんだからもうちょっとメッセージ性のあるオペを実施しても良かったんじゃないのという感じです。

でまあメッセージ無いなら無いで普通に3か月打つ(先ほど申し上げたようにここもとの固定金利オペって普通に3か月のタームで打っているので)とか、3か月近辺で8000億円二本立てで打つとかすれば、「固定金利オペに関しては淡々と実施する」というのが判りますし、一部を二本立ての片方だけ1年にするというのも有りだった気もするのですが、淡々と実施するでもなく、かと言って1年デュレーションの負債を金融機関に作るチャンスを与える訳でもなく、何かまあとりあえず今回はここの落ちにしておけば札が入りそうだからオペを打ちましたというように見えてしまうのはどうにもこうにも。

ま、そういう「見せ方」を工夫している余裕も無いという感じでオペでのMB積み上げが大変になっているというのがあるんでしょうなあとは思うのですが、それが露骨に見えてしまうというのも残念という感じでして、去年とりあえずヤケクソで打ち込んだQQEが何とか1年は運営できたものの、ここへきて最初の時点でフィージビリティーとかをろくすっぽ考えないで突っ込んだ弊害がボロボロと出てきたという感が満艦飾と相成っているのが実にこう味わいの深い物を感じるのでありました。

まあ何ですな、とりあえず今月はオペの足が多いから足をぶらす為にちょっと先のエンドで打って、今日以降(今日は3か月物のロール)のオペの足を適当に分散させる為に少し足を長くしただけとかそういうオチなのかも知れないですが、何にせよ折角市場に対してメッセージを出すチャンスだったので「何が何だかよく判らない」というオペエンドの設定は結果的に札は入っているのですけれども、市場との対話という意味ではセンスがねえなあとは思うのですが、そもそもこの前闇討ちで超長期輪番を減額している時点でセンスが無いのでこういう仕様なんでしょうなあとゆー話で、どうも日銀は(これまでそういうのやっていないからノウハウの蓄積とか無いから仕方ないけど)資金需給読みとかそういうのは超精緻なのですけれども、市場というもうちょっと意味不明な物を相手にするというのが苦手のようですな。

ただまあ苦手ですなとか言って済ませている場合でも無く、QQEでの長期国債馬鹿買いだって何時までも続けられる訳でもなく(というか来年継続とか無理じゃろ)いずれ買入規模の縮小とか、それこそ出口政策とかの話になった場合、ここまで市場にストレス与えているだけに反動も大きい訳でして、その反動で市場が変なことにならないようにというのは日銀にケツが回ってくると思いますのでこの調子で良いんでしょうかという懸念はありますなあ、などとたかが1年オペのロールネタでこれだけ雑談をするアタクシの方が変ですかそうですか。


・GCレートはとりあえずヒャッハー脱却のようで何より

昨日のGCレートはやっとマイナスだのゼロだの1bpだのというヒャッハーレベルから脱却したようで、昨日は先ほども申し上げたようにそこそこ投資家の売買があったようですので、その点からしてもGCの調達サイドのニーズも増えたとは思いますし、期末特殊ニーズも若干軽減されたという所で日中そこそこ動いた模様ですけど、とりあえずゼロだの1だのという素敵な水準じゃなくなった事も影響しているのか超短い所の利付とか短国のBB引値のレートは若干上昇しておりましたな。

つーことで明日から今期の短国入札が始まるので、まあ3bp割れとかいうような入札にはならないで済みそうというのでとりあえず短期市場崩壊の危機は次の四半期末まで先送りされたのかどうか知りませんが、目先直ぐに崩壊はしないで済みそうですなあっはっは。

しかしまあ何ですな、31日に短国買入1兆円というのがありましたが、28日だと末渡しだし1日だと残高の大きい1年固定金利オペのロールにぶつかるし、今日だと入札前日ということでまあ31日に短国買入を打ち込んだという話(明日は入札)だとは思うのですけれども、その辺りも何というかもう末初で需給厳しい中でも短国買入いれざるを得ないとかいう奴で、先ほど申しあげたオペの必死感が出ているようで何ともアレという所ですの。

とか何とか言ってるうちに明日の短国入札で3bp割れじゃなくて良かったですねとか言ってたらやっぱり短国買入2兆円とか打ち込まれると結局短国の需給は締まったままになってしまいそうな気もしますので、全然安心できんっつーか短国金利5bp割れた状態が恒常化すると他の金利に波及するぞなもし(というか既に波及してるんだが)というお話で、とりあえずゼロだのマイナスだののヒャッハーな短期市場焼け野原にはなっていないものの、誰得低位金利恒常化状態になってしまうというリスクは別に消えている訳では無いでしょうなあという残念な市場雑談メモなのでありました。


○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1403.pdf

ちゃんとした分析は本職の何とかストのレポートでも見てください。つーかこれは株価チャートか何かだと思って業種別計数とかその他諸々の全ての計数をチャートにしてゴールデンチャートの如く並べてただひたすら眺めていると何かが見えて来そうな気がします。なかなかやってるヒマも気力もないのだが。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (12月時点)     (3月時点)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   +16→+14    +17→+8 
製造業中堅企業  +6→+3      +12→+3        
製造業中小企業  +1→▲1       +4→▲6

非製造業大企業   +20→+17   +24→+13
非製造業中堅企業  +11→+10    +17→+5
非製造業中小企業  +4→+1      +8→▲4

9月、12月に引き続きで前回先行き予測DIを達成しかも上振れという状態で、12月に引き続き足元の数値はやたらめったら強く、前回基本的に先行きを下で見ていたのに上に振れているというのがつえええええという感じです。

とは言いましても、先行き予測の落ちこみ方が基本的に「12月に予想していた先行きよりも悪くなるし、12月の水準は盛大に下回る」という結果になっているのはあばばばばーという所で、しかも中小企業の先行き予測数値がうんこなのが実にこう見苦しい内容ですな。

ちなみに前回駄文では『まあしかし何ですな、今回の3月予測の数値をみると全てのセクターにおいて3月予測の数値が9月時点の現状判断、先行き判断DIよりも上な訳ですから、まあ若干頭打ち感はあるかも知れんが水準自体悪くなる雰囲気じゃないですな。』(昨年12月17日に書いた駄文)とか申し上げておりましたが、まあそんな感じでしたなという所ですが、あまりにもここまでが絶好調過ぎで、駆け込み需要が予想以上に優勢だったという事ですかそうですかという事なんですかねえ、よー知らんけど。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が良い)

          (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  +3→+3       +2→+4
製造業中堅企業 +0→+1       ▲4→▲1
製造業中小企業 +0→▲2       ▲4→▲1

非製造業大企業   ▲11→▲11     ▲14→▲12
非製造業中堅企業  ▲13→▲14    ▲16→▲15
非製造業中小企業  ▲19→▲21    ▲23→▲20

製造業大企業以外がマイナスになっているとかイイハナシダナーとしか申し上げようがない良い数値で、先般の雇用指標と整合的ですね。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期) 2014年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11   91.20   91.25  91.16
2013年9月調査    −    −    −    94.45   94.77  94.14
2013年12月調査   −    −     −    96.78   97.60  95.97
2014年3月調査   −    −    −    98.37   97.66  99.06       99.48   99.38  99.58

まあこんなもんですかそうですか。さすがに100円台ではまだ組みません罠。


・価格判断DI

9月短観からしらっと投下された物件ですが、『2.需給・在庫・価格判断』にございますな。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

          (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲4→▲3        ▲3→▲3
製造業中小企業 ▲7→▲5       ▲5→▲2

非製造業大企業  +1→+3      +6→+6
非製造業中小企業 ▲5→▲2      ▲1→+4


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

             (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +21→+20       +22→+22
製造業中小企業 +37→+44       +39→+46

非製造業大企業  +21→+20      +22→+22
非製造業中小企業 +30→+34      +32→+39

・・・・・・・・・まあこの数値ですが、基本的にここまで3回の傾向として、仕入の方は実際よりも高めの数字が出て販売の方は実際よりも低めの数字が出てくるという傾向が見られるとは思うのですけれども(こんなのが事実ベースだったら企業の業況判断が良い訳ないので)、まあコストプッシュ的なサムシングは相変わらずという所です。

今回日銀がニッコリと思うのは販売価格判断DIが非製造業の方で前回予測数値以上に改善しておりまして、先ほどの雇用判断の改善と整合的になっていまして、そういう意味では単なるコストプッシュでは無くて、雇用の改善に伴う販売価格の上昇という前向きの循環メカニズムキタコレという理屈が盛大に登場できるという意味でホクホクにも程があるでしょうなあと思うのでした。


・金融商品取引業の業況判断DIェ・・・・・・・

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

          (12月時点)      (3月時点)
          現状→3月予測   現状→6月予測
金融商品取引業 +68→+64   +35→+32

前々回は28悪化、前回は29改善、今回は33悪化とか何ちゅうボラだという金融商品取引業ですが、前回あたくしこんな事を書いておりましたよ。

『今回はまた華麗に上昇とかワロスワロスなのですが、何かのフラグにしか見えないのは実は6月短観の時もDIが現状判断+67で先行き見通しDIが+60と、まるで今回と同じような水準になっていることでございまして、このジンクスが再発すると3月短観では全業種中最悪の落ち込みを金融商品取引業が華麗に示すのではないかとか変なフラグに気が付いてしまいましたorzorz』(昨年12月17日に書いた駄文から)

・・・・・・・・orzorzorz

まあある意味北禿先生かムーシャ先生かという業況判断DIで実にこう面白いのですが、そらまあ追加緩和クレクレクレクレピーチク煩いわなという事ですねわかります(違)。


なお、一応真面目な話もしますと、ヘッドラインの数字は市場予想よりちと悪かったようですが、そもそも水準自体が馬鹿みたいに高いのでアレ。先行きの落ち込みが大きいのは気になりますけど、単に事前の山が高すぎだったので反動が出ているだけかもしれないですし、良く良く見ると雇用と価格の所が如何にも前向きの循環メカニズムが働いているっぽい内容になっているので、短観そのものを普通に見ると微妙に微妙かも知れんけど、日銀政策ロジック的(調統エコノミスト的な話じゃなくて企画的に)に見た場合には日銀益々自信を深める内容になっているんじゃないの、とは思いますがどうでしょうかね。






2014/04/01

お題「今日はスポットで1年オペの期落ちが来ます/イエレン講演直近の奴を寝起きで超斜め読み」

4月1日ですがエープリルフールネタは思い浮かびませんのでパス、というかよくよく考えたら昨日ネタにした置物副総裁様の講演が4月じゃないけど(内務省検閲)。

○市場(といっても短い方)メモ雑談を少々

・TKRRはプラスに戻りましたが・・・・・・

東京レポレート
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

31日の数値ですが、翌日物のT+0が0.004%でT+1が0.001%という事でまあとりあえずプラスの数値にはなりましたが、つーてまあ普通のレートに戻っているのかというと0.1bpとかの世界ですし、何せ期末期初の関係で実弾の売りでも出ない限り短国の発行日までは需給に変化無し子ちゃんという事になります(つーか実弾売り出ていると思われる側から短国買入で盛大に吸い上げが行われていたのだが)ので、一応0.1bpとかになっていますがGCニーズはまだまだあるようでございましてこんな感じのレート推移が続きそう(まあ入札で改善するとは思うけれども)だわで、当たり前ですが短国のアウトライトのレートもアガランチ会長だわ(さすがに末渡しの時みたいに全部2bpとかいう事は無いようだが)という状況ですので、色々と波及しそうですなあという所で。

つーかまあ昨年も期末期初の所で現先とかレポとか逼迫して(昨年の場合は4月に実施されると見られていた大規模緩和の時に間違って利下げされると困るということで短国のレートが馬鹿下がりして玉が逼迫した面が大きいので今年とは話が違うが起きた現象は同じ)コールとかの金利の位置が結局変わってしまいましたなあというのがございましたが、期末期初の度にこれやられたら勘弁という所でありまして、まあ何と申しますか厳しいですなあ。


・今日から1年オペの期落ち祭りが開催されますよ!!!

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140331.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年4月2日 2014年7月7日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 2,000 2014年3月31日 2014年4月1日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140331.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月2日スタート分) 1,630 1,630
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 4 4 -0.400 -0.400

ということで今回の固定金利オペですけれども、元が3200億円実施されていた3か月固定金利オペの折り返しになりまして、きっちり半分だけロールされましたですかそうですかというか、半分くらいはロールされるんだほほーという所ではあります。まあロットが少ないっすからこんなもんかもしれないけど。

でまあ今月期落ちの来る3Mの固定金利オペは受渡で明日落ちの3200億円が一番ロットがでかい筈で、大体2000億円とか3000億円とかのロットですから恐らくこんな感じで半分程度の歩留まりという感じになるのかねとは把握しましたが、問題は今月期日が続々到来する1年固定金利オペの方がどうなるかという話。

早速4月3日の期落ちで1年物のうち4月12日(最初に固定金利1年物を突っ込んだのは11日ね)にオファーした(オファー額は15000億円)の期落ちが13470億円やって参りまして、さて今日はこのオペの折り返しどうするんでしょうかねえという話。

普通にいつもの3か月オペ固定金利で8000億円オファーとかしますとそもそもがロールに対してショートになる(2本立てにすれば別だが)訳ですし、まーそれ以前の問題としてこれ1年固定だったらニーズがあるんじゃネーノという気はするがその辺は期落ちの来る人たちに直接聞かないとワカランチ会長なのでよー知らんですけど、まあいずれにせよどういうオペの打ち方になってどれだけロールされるのかは注目という所ですな。つーかこのオペがバカスカ落ちると短国買入にまた皺寄せががががという話になるんですけど(ちなみに4月が大体7兆円、5月が大体3兆円の落ちがあったりします)。


○イエレンさんの直近講演ネタという先入先出スキームネタ攻撃である

日銀講演関連ですっかりネタの順序が後回しになる中でFOMCの会見どころかそれ以降にFEDの中の人たちがああだこうだ話をしていておりまして全然追いついていないという甚だ遺憾に存じますな状態になっておりますのですが、直近ではこんなニュースフローが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3B31S6VDKHT01.html
FRB議長:米経済は「当面」、金融当局の支援が必要だろう
更新日時: 2014/04/01 03:09 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3BHJG6VDKHT01.html
米国株:上昇、FRB議長発言で−S&P500種は5四半期続伸
更新日時: 2014/04/01 05:18 JST

まあ何ですな、ドットコムバブル時代の連想もあって株式市場が上昇するとバブル警戒ガーという話も出ますけれども、実際問題としてFOMCの議事要旨を見てもそうですし、いわゆるタカ派というかBISビューちっくなFOMC参加者(スタイン理事が代表格)の講演とかを見てもそうなのですが、基本的にFEDって株式市場が上昇する件についてはそれほど「金融不均衡」「システミックリスクに繋がる問題」というような面でのリスクとは思っていなさそうな節がございまして、恐らくこの辺の市況がどうのこうのよりも問題になりそうなのはクレジットとかその辺の話なので、例えばシンジケートローンのコベナンツがどうのこうのとか、投資不適格級の内容がどうなっているのかというような方面で過剰なリスクテイクが行われていないかという方を気にしていると思うんですよね。

という風にあたしゃ理解しておりますので、まあこの辺のFRB高官発言で株がヒャッハーヒャッハー言う分にはまあそれが直接的にFRBの行動に影響を与える(株式市場が浮かれているから冷やさないと系の発想)とも思えません(極端に動いたら別かも知れんが)のですが、しかしまあハト派っぽいテイストの発言(という程でも無い気がするが)でこんな感じで株式市場がウヒョーとなるのはやはり今の相場が緩和マネーマンセー相場であるという事を示していると同時に、この調子で緩和マンセーのクレクレ市場をやっておりますと日銀にもクレクレ五月蝿くなる日も遠くはなさそうですなあという感じが致しますです、はい。

ということで順序が思いっきり前後するのですが話題のイエレン講演を超斜め読み。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140331a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140331a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At the 2014 National Interagency Community Reinvestment Conference, Chicago, Illinois
March 31, 2014
What the Federal Reserve Is Doing to Promote a Stronger Job Market

つーても寝起きの斜め読みなので整理できないまま突撃しますが最初の部分から。

『I am here today to talk about what the Federal Reserve is doing to help our nation recover from the financial crisis and the Great Recession, the effects of which were particularly severe for the people and the communities you serve.』

『Part of that effort has involved strengthening the financial system. New rules are in place to better protect consumers and ensure that credit is available to help communities grow. The Federal Reserve also plays a role in communities by fostering dialogue that promotes community development. I will highlight some initiatives around the Federal Reserve System that I believe are making a real difference. Later today, I will visit the Manufacturing Technology Program at Daley College, on Chicago's south side, where adult students are acquiring the skills they need to connect to good-paying jobs in that sector.』

『The Fed supports the work you do in communities because you make a difference. You help ensure that credit is available for families to buy homes and for small businesses to expand. Your organizations sponsor programs that help make communities safer and families healthier and more financially secure. One of the most important things you do is to help people meet the demands of finding a job in what remains a challenging economy. And that help is crucial, but I also believe it can't succeed without two other things.』

金融危機でボコボコになった金融システムを安定化させて皆様の借入などを円滑にするようにしましただのという話と、これは講演のこの先に出てくる労働市場の話の前振りと思うのだが労働スキル支援プログラム(みたいなもんと思われる)を訪問してきましたとかいう話で前座。

『The first of these is the courage and determination of the people you serve. The past six years have been difficult for many Americans, but the hardships faced by some have shattered lives and families. Too many people know firsthand how devastating it is to lose a job at which you had succeeded and be unable to find another; to run through your savings and even lose your home, as months and sometimes years pass trying to find work; to feel your marriage and other relationships strained and broken by financial difficulties. And yet many of those who have suffered the most find the will to keep trying. I will introduce you to three of these brave men and women, your neighbors here in the great city of Chicago. These individuals have benefited from just the kind of help from community groups that I highlighted a moment ago, and they recently shared their personal stories with me.』

労働市場がオッペケペーで色々と問題ががががという話で、それで色々と大変という話についての物語もあるようで。

『It might seem obvious, but the second thing that is needed to help people find jobs...is jobs. No amount of training will be enough if there are not enough jobs to fill. I have mentioned some of the things the Fed does to help communities, but the most important thing we do is to use monetary policy to promote a stronger economy. The Federal Reserve has taken extraordinary steps since the onset of the financial crisis to spur economic activity and create jobs, and I will explain why I believe those efforts are still needed. 』

でまあ労働市場というか雇用創出の為にFRBが金融緩和を行っている事についての説明もしますよ、ということで、今回の講演はまあここまでの前振りを見れば分かりますように、物価の話は後半にあってインフレに関する注目の話もしているのですが、普通に労働市場の話を延々としておりまして、そらまあハト派に見える罠という感じなのですが・・・・・・・・・・・・

『The Fed provides this help by influencing interest rates. Although we work through financial markets, our goal is to help Main Street, not Wall Street. By keeping interest rates low, we are trying to make homes more affordable and revive the housing market. We are trying to make it cheaper for businesses to build, expand, and hire. We are trying to lower the costs of buying a car that can carry a worker to a new job and kids to school, and our policies are also spurring the revival of the auto industry. We are trying to help families afford things they need so that greater spending can drive job creation and even more spending, thereby strengthening the recovery.』

一見するとサラッと流してしまうのですが、ここの部分を読んでいてほほうと思ったのは、金融政策によってメインストリートの皆さんにこのようなサポートをしているんですという説明をしている中で、その政策の波及チャネルを「by influencing interest rates」という話に絞っている事でして、勿論この後の方では資産買入の話もしているのですが、説明の最初の部分となる概論部分で「金利を低位に安定」という言い方をするというのは要するに資産買入政策はその買入自体が止まる訳では無いにせよ、明らかに「補完的」な政策という事になった訳で、つまりは(まあさすがにここまでくると米国市場もそう認識しているでしょうが)Taperingは所与の行動であり資産買入自体が終わった政策扱いという事になると思うのですがどうでしょうかねえ。

『When the Federal Reserve's policies are effective, they improve the welfare of everyone who benefits from a stronger economy, most of all those who have been hit hardest by the recession and the slow recovery. 』

でまあここから経済状況に関する説明が始まるのですがそこは飛ばして経済情勢の結論に。

『And based on the evidence available, it is clear to me that the U.S. economy is still considerably short of the two goals assigned to the Federal Reserve by the Congress. The first of those goals is maximum sustainable employment, the highest level of employment that can be sustained while maintaining a stable inflation rate. Most of my colleagues on the Federal Open Market Committee and I estimate that the unemployment rate consistent with maximum sustainable employment is now between 5.2 percent and 5.6 percent, well below the 6.7 percent rate in February.』

『The other goal assigned by the Congress is stable prices, which means keeping inflation under control. In the past, there have been times when these two goals conflicted--fighting inflation often requires actions that slow the economy and raise the unemployment rate. But that is not a dilemma now, because inflation is well below 2 percent, the Fed's longer-term goal.』

デュアルマンデートのうち雇用はまだ最大雇用レベルに遠くて、インフレに関しても低いので緩和政策を継続することによるコンフリクトは起きませんとな。

『The Federal Reserve takes its inflation goal very seriously. One reason why I believe it is appropriate for the Federal Reserve to continue to provide substantial help to the labor market, without adding to the risks of inflation, is because of the evidence I see that there remains considerable slack in the economy and the labor market. Let me explain what I mean by that word "slack" and why it is so important.』

物価の目標について重要視していますが、では労働市場の為に大規模緩和をしてもインフレにならないと見られる点については経済や労働市場に大きなスラックがあるからです、という説明をしていまして、まあ一般向けという建付けなので一般ピープルのインフレ警戒に対する説明も加えていますが、スラックに対する説明が結構長いのですよ。

でまあ概念的な話をした後に、ではそのスラックがどのような所に出てきますかという話があって、そこの部分だけ引用するとこうなります。

『One form of evidence for slack is found in other labor market data, beyond the unemployment rate or payrolls, some of which I have touched on already.』

『A second form of evidence for slack is that the decline in unemployment has not helped raise wages for workers as in past recoveries.』

『A third form of evidence related to slack concerns the characteristics of the extraordinarily large share of the unemployed who have been out of work for six months or more. 』

『A final piece of evidence of slack in the labor market has been the behavior of the participation rate--the proportion of working-age adults that hold or are seeking jobs. 』

つーことですので、毎度おなじみの雇用統計のヘッドラインデータに加え、失業率の低下と賃金の上昇の関係(が今弱くて賃金が上がらん)、長期失業者が多い問題、労働参加率の低下問題、というのをスラックのデータとして挙げていまして、まあこの辺の改善なり構造的な問題なら構造的な問題としての解明が無いうちは物価ってそうホイホイとは上昇しないでしょうから、それなら緩和的な金融環境を継続できますよね、とまあ極めてリーズナブルな説明になっています。

でまあもうちょっと先に行ってニュースで話題になった部分に参ります。

『Since late 2008, the Fed has taken extraordinary steps to revive the economy. At the height of the crisis, we provided liquidity to help avert a collapse of the financial system, which enabled banks and other institutions to continue to provide credit to people and businesses depending on it. We cut short-term interest rates as low as they can go and indicated that we would keep them low for as long as necessary to support a stronger economic recovery. And we have been purchasing large quantities of longer-term securities in order to put additional downward pressure on longer-term interest rates--the rates that matter to people shopping for a new car, looking to buy or renovate a home, or expand a business. There is little doubt that without these actions, the recession and slow recovery would have been far worse.』

キリッって感じですが、景気回復の為にこのような緩和をしましたよってな話で資産買入の件が出てきました。

『These different measures have the same goal--to encourage consumers to spend and businesses to invest, to promote a recovery in the housing market, and to put more people to work. Together they represent an unprecedentedly large and sustained commitment by the Fed to do what is necessary to help our nation recover from the Great Recession.』

さあ来ましたよ!

『For the many reasons I have noted today, I think this extraordinary commitment is still needed and will be for some time, and I believe that view is widely shared by my fellow policymakers at the Fed.』

ということでまあここの部分が記事になったんでしょうなあという所ですが、「this extraordinary commitment」ってのは前文にある「an unprecedentedly large and sustained commitment by the Fed to do what is necessary to help our nation recover from the Great Recession」というのに掛かっていると思われますので、まあ確かに異例の金融緩和が必要です(キリッ)って話はしているのですが、良く良く見ると、その異例のコミットメントやらは「is still needed」と必要と言ってますが、将来に関しては「and will be for some time」とゆーことで、将来の所には別にコンシダラブルだのエクストラオーディナリーだのとはゆうとらんというのが中々お洒落で、まあそうは言ったってTaperingするだけであと半年以上かかるのですから普通に長期間継続するのですが、その前に「unprecedentedly large」だの「extraordinary commitment」だの威勢の良いセリフを入れて景気づけしている割には「for some time」ってナンジャソラという感じはせんでもない訳で、見せ方勝利という事ではないかという気もするが、それだけ米国金融市場もクレクレになっているという事の証左なのかもしれませんね。

『In this context, recent steps by the Fed to reduce the rate of new securities purchases are not a lessening of this commitment, only a judgment that recent progress in the labor market means our aid for the recovery need not grow as quickly. Earlier this month, the Fed reiterated its overall commitment to maintain extraordinary support for the recovery for some time to come.』

でまあTaperingしているけれどもこれは緩和を減らしている訳ではなく、我々のコミットメントを減らしている訳でもありません、繰り返しになりますがFEDの経済に対する異例な規模のサポートを維持するというコミットメントは当面継続されるものです(キリッ)という所でして、やたら威勢のいい話はしているのですが、良く良く見るとコミットメントがどうのこうのとか言ってるけど「緩和的な政策を実施する」というコミットはしていても、それがどの程度の将来に渡って実施するのかというコミットは「当面」としか定義していないというのが中々お洒落というか存外な狸ですなあという風に思ったのですが、まだまだこれから色々と見て行かないといけませんね。

なお講演の以下はシカゴ(イリノイ)経済に対するFRBおよびシカゴ連銀に対する取り組みの話で最後の纏めになっている(と思う)ので割愛します。