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2014/05/30

お題「国債買入予定の公表・・・・・が延々とネタになるとはww/白井さん講演ネタから少々」

はあそうですか。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140529a.htm/
ワークショップ「市場流動性の諸問題 ― 各種市場の流動性指標の活用に向けて ―」を開催

市場流動性の問題っていう題名を見てキャバクラ辺りで嬢相手に説教を垂れるクソオヤジというテンプレのような図を思い出さざるを得ない訳で、指標の活用は良いけどその前におまいらの国債異次元買いがだなあ・・・・・・・・

#またの名をマッチポンプですね

○「紙」の書き換えがキタコレだが色々とクオリティに問題がある(ように見える)件について

昨日の日銀様におかれましては、白井さんの異次元講演もありまして中々お洒落なネタを繰り出して頂きましたが、一日の終わりに出たネタがこれである。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140529b.pdf
2014年5月29日 日本銀行 金融市場局
当面の長期国債買入れの運営について

ということで出てきたのですが、色々な意味でツッコミどころがあるという訳のわからん「紙」を出してきやがりまして何というか読めば読むほど実にアレであるというお話で、まあ市場ちゃんの方も何となくそんな感じの反応だったりもしますな。

なおこの前までのはこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130530b.pdf
2013年5月30日 日本銀行 金融市場局
当面の長期国債買入れの運営について


・数字を減らしたくないのは気持ちは判るがそれは債券市場よりも他市場との対話を優先ということですな

今回の公表文書ですけどね。

『1.買入金額 毎月6〜8兆円程度を基本とする。ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。』

『3.国債種類・残存期間による区分別の買入金額 別紙のとおり』

ということで、前回は7兆円程度だったのですが、ディレクティブにある長期国債買入残高を50兆円増加という数字に着地させることを考えると(年内に償還が来る銘柄の日銀保有残高を全部足せば見えますが)月の買入フローを6兆円前半に置かないと買入額がオーバーになってしまう訳でして、本当に着地から逆算するなら中心の数字を減らした形で、例えば「6.5兆円程度」とか書けば良いだけの話なんですし、そもそも今もその着地に向けたフローでの買入ペース(詳しく計算すると今のペースでもちと速いんですが)という流れの筈なんですよ。

然るに、今回「6〜8兆円」という数字の出し方をしたのは何でかと妄想しますと、こらまあ次に申し上げますコアゾーンの買入フロー額の数値がインチキであることも併せて踏まえますと「小さい数字を出してテーパリングなどと言われたくない」という意図が見え見えにも程がある訳でして、つまりこれは日銀買入で市場の流動性というかプライスアクションがもう残念な事になっている債券市場に向けて正確なスケジューリングを示して差し上げようというような意識ではなく、それよりもそういう細かいテクニカルな数値について全然気にしない癖にこの手の数字を見てヒャッハーと反応するプリオン脳の海外投機家の皆さんを筆頭にした他市場の皆様の反応を重視している、という事を示すものでありまして、つまり今回の数値発表の明細の意味はそういう事ですよ債券市場の皆様。


・買入フローの月額と月間買入予定のフロー明細の整合性が前回以上に取れていない件について

でまあ別紙のとおりと書いてある所に区分別の買入金額が書いてあるのですが、まあ最初に超長期の下限1500億円というのに目が行くと思うのですが、暫く見ている内に債券市場の皆様気が付いてナンジャソラの声が高まった(と思われる)のはこの別紙『<当面の月間買入予定>』の区分別買入のレンジの置き方です。

これね、1回辺りオファー金額のレンジがあって、買入金額の合計が書いてあるのですけれども、良く良く計算してみると各年限のオファー金額の小さい方の合計を全部足し合わせるとその総額が66700億円(変国物国を除く)になって、そもそも「6〜8兆円」のレンジの下限と整合性が無いわ、66700億円(プラス物国変国)の買入ペースで買入を実施して行ったらディレクティブで示している50兆円を軽く超過するわという数字になっていて、その時点でナメトンノカという話になるのですが、大きい方の数字を全部足すと何と97500億円になってしまいまして、レンジの8兆円を大きく上に逸脱するという数字になっております。

なお元々の数字の方もそういう意味では下限が6兆9200で上限が95200だからおかしいのですが、それでも前回は下限を全部足すと7兆円なので数字の整合性は取っていた訳ですが、その時に出した上げ底数字をそのまま維持しようとして出した結果更に上限の数字が拡大するという事で、要するに今回の数値は先ほども申し上げたように「数字を盛る」方を引き続き重視しているというのが継続しているという事で、本当に債券市場を向いて出した数字なのか甚だ疑問という話になる訳ですな。


・そもそもコアゾーンのオファー金額の提示がナメトンノカという件について

債券市場の皆様におかれまして超長期の1500億円下限という数値と共に次に気が付くのが『残存期間:5年超10年以下』のオファー金額であります。

つまり、ここの1回あたりオファー金額が『4,500〜6,000程度』になっておりまして、この数値は直近(といっても昨年5月だが)公表されていた数値と同じとなっているのですが、皆様ご案内の通り足元ではこのゾーンの買入のオファー額は4000億円で推移しておりまして、これに対しては「程度」の範囲内というような扱いになっているのは債券市場の皆様ご存知の通りでありまする。

で、今回当然ながらここの数字は現状に合わせて下限を4000億円にしてくるもんだと思っていた方が多い(というか殆ど)と存じますが、今回はここの数字を何と現状に合わせなかったとゆー驚愕のプレイが炸裂している訳です。

んでもってこの理由を考えると当然ながら一つしかない訳で、コアゾーンのオファー金額の数字をいじる事によってオッペケペーの皆さんからテーパリングと言われるのを懸念したという話ですよねとしか申し上げようがなく、そもそもここの数字を変に盛っているから買入フローの合計下限が全体の6兆円から整合性が取れていない訳でございます。

でまあ他市場の方々なんぞは毎回の実際の買入額がどうなったとかそんなの知らんがなでございますからして、てきとうに盛った数字を出しておけば目眩ましになりますからそれで無問題という事でしょうが、債券市場から致しますとここの5年超10年以下の月額フローが現状と合っていないという時点で「程度」を使ってレンジをブレイクする気が満々なのが端から明らかであるというのが見える訳で、そうなると超長期の下限1500億円だって必殺攻撃「程度」の解釈を使えば1000億円位までは減らされても不思議ではない罠という思惑が置きますがな、と思ったら引け後の超長期の気配的にはそんな感じになっている辺り実にこう味わいの深いプライスアクションではございまする。



・こんなんだったら出す必要あったのかねという感じも否めませんな

とまあそんな訳でございまして、そもそも今回の「紙」の書き直しですが誰に向かって出しているのかと小一時間問い詰めたくなるような物件で、市場との対話と言っても別に債券市場と対話する気無いでしょ、というのが見え見えという代物という所が何とも遺憾の極みという所でございまして、いやまあ中央銀行が市場との対話というのを推し進めすぎるとそれは「自分の尾を追う犬」になり兼ねないし、クレクレを助長する事にもなるから「退かぬ、媚びぬ」というのがあっても良いと思うし、一々全部市場の要望を聞く事も無いのですけれども、こういう風に「私たちは市場との対話をきちんと実施しています(キリッ)」というポーズを示しながら実際に出しているのは端から月間の買入予定がレンジブレイクしている代物という事でして、要するに債券市場と対話する気はありません、というのが見ている方に30秒で伝わってしまうというのは如何なものかと思う訳ですよ。

まあ別に1から100まで市場に配慮せんでも良いのですけれども、それにしたってお約束と言いますかお作法と言いますか、もう少しこう市場向けガイダンスとして整合性を取ったものを出して頂いた上で「状況の変化に応じて臨機の対応」というのをして頂きたい訳で、どうせ次回の5年超10年以下の買入オファー額が4000億円になるのは必定(というか債券市場的にも4000億円だと思っています罠)なのにレンジを4500〜6000と出すとか、端から程度の範囲を最大に炸裂させるとかですと、そもそもこの買入予定自体がエエカゲンという話になるので、それだったら出さない方がマシ位の勢いです罠。

でまあついでに申し上げますと、数字を「盛った」せいで例えば超長期は前回のレンジが2000〜3000億円だったのですが、今回下限の方を実体に合わせて1500に下げたのを誤魔化すために上限も上げて3500にしているのですが、じゃあお前ら超長期債がコケたら本当に3500億円買うんだなオラオラどうなんや!!という話でもあるのですが、誠に惜しい事にそうやって超長期を叩きに行こうという人が居たら皆さんが「どうぞどうぞ」とダチョウ倶楽部状態になってしまう所が今の債券市場の残念な所(売る玉を持っているのは発行体様しかおらんわ)ではございますけれども、当然こういう数字の出し方をすると「相場がコケた時に日銀が馬鹿買いの上塗りをしてくれる」というイメージを振りまく事になります罠。

でも実際問題として出口に対してグラデュアルに金利上昇するのを下手に止めるのが正しいのかとか、あるマネタリストの不快な算術状態になった時にインフレ高進上等と長期国債の買入を増やして更なるスパイラルを招かないのかとか、実際問題としては一筋縄ではいかない話でもありますし、大体からして「出口政策を意識して金利が上昇した場合に買入を増やせるように上限が上がっている」という見方をした人がふと我に帰りますと「あれ?日銀は出口政策を意識しているのか????」という話になる訳でございまして、却って変な思惑を招くリスクもあるというのがあったりして、色々とワラタというか何というかな「紙」なのでございましたとさ。

なお、念のため申し添えますが次回の5-10年の輪番で4500億円オファーしたらナメトンノカ云々は全面的に撤回致しまして焼き土下座でもさせて頂きたく存じます。


○白井さんの講演だが「頭の中が異次元緩和」というフレーズを思いついてみました

なお、もちろん特定の誰かをさして異次元緩和と申し上げている訳ではない点について皆様におかれましては誤解の無きように節にご理解ご支援の程賜りますよう宜しくお願い申し上げます(棒読み)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140529a1.pdf
わが国経済・物価情勢と金融政策:マクロ的な需給バランス、物価、賃金の関係について

上記の「紙」が出るまではこちらの鑑賞会がメインイベントかと思っていたのですが、「紙」の鑑賞会の方が面白いのとついこちらがおまけ状態になってしまっているのが残念無念、つーか今日間に合わなかったら会見ネタと合わせて週明けに。


・「私の言った通り」がやたら多い上に本当に言った通りかよという大変浅ましい件について

まあ何ですな、今回のこの講演ですけど特に前半部分の所でやたらめったら「私ガー」を連発しているのが非常に見苦しい所でございまして、しかもそれがその通りだったらまだ良いのですけれども、どう見てもそれはこじつけというのが散見される所がもう残念というか浅ましいレベルに達しているのであります。

一番吹いたのはこちら。本文2ページのケツの所から始まります。

『なお、所得環境の評価に関して、私は本年1月から4回連続して、金融政策決定会合の「対外公表文」のリスク要因の記述に関して、反対を表明してきました。これは、先行きのリスク要因として海外要因のみが挙げられ、「国内の雇用・所得環境の改善ペース」について触れられていないことに違和感を覚えたからです。』

でまあ実際は雇用所得環境が想定以上に改善して良かったですねという話をするのかと思えばさにあらず、というのが白井大大大先生の異次元緩和な所であります。

『しかし、この私の懸念について、今回の展望レポートでは、昨年10月の同レポートの記述をほぼ踏襲する形で、リスク要因として「消費税率引き上げの影響」を明記しています。また、雇用・所得環境、物価の動向に加えて、新たに「消費者マインド」の変化によっても消費が影響を受け得ることを指摘しており、私の懸念が共有されていることが確認できたと考えています。』

どうしてこの人は「懸念が杞憂に終わって良かったですね」という話を出来ないんでしょうかねえと思うのですが、もしかすると金融政策決定会合大喜利では木久扇師匠とさゆちゃん師匠が黄色い羽織でボケ合戦をかましているのではないかと懸念される所でございます。


ちなみにこれもワラタ。本文1ページね。

『なお、輸出の伸び悩みについては、海外生産移管の拡大、国際競争力の低下、世界経済の回復力の弱さのほか、米国での悪天候による経済活動の減速や国内の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先するといった一時的な要因も影響したとみています。この点、私は昨年10月に、展望レポートにおける景気見通しのリスク評価について、「上下にバランスしている」との議長案に反対し、輸出が想定よりも弱含むリスク等から「下振れリスクを意識する必要がある」と主張しました。結果として、この私の懸念が顕在化するかたちになったと思います。』

・・・・・・・・・はて、全体のリスクという意味では結局下振れしていないでオントラックで推移していると思うのですが、輸出が下振れしたから大勝利とか言われましてもそれ政策運営的に意味のある話なのかねと思う訳で、政策担当者として何を言っているのか全くもって意味不明ですし、これも「輸出に関しては下振れしていますが他がカバーしているので全体として下振れリスクは顕在化していませんが注意は怠れません」とかそういう話をすれば良いだけだと思うのですが、何ちゅうか自己正当化の話をしたがるとか大変にこう人間としての器(以下の部分は諸般の事情を鑑み割愛されました)。

なお、本文5ページの『(3)日本銀行のコミュニケーションについて』の部分がもう「ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよ」感が大変に良く漂う名文なのですが、名文過ぎて畏れ多いので引用割愛致します。


・潜在成長率の図表でニヤリ

講演のお題にもある需給ギャップに関連して潜在成長率の話が出ているのですが、ここで示している図表でニヤリである。本文7ページから。

『第一に、そもそも需給ギャップや潜在GDPの推計においては、データの取り扱いや推計方法によって生じる推計誤差が考えられます。これは、実際のGDPデータについては内閣府の「国民経済計算」から入手できますが、潜在GDPには公式データがなく、各機関や研究者が様々な労働や設備等のデータをもとに多様な統計手法で推計していることによるものです。また、推計方法に関する違いとしては、日本銀行では需給ギャップを推計してから、実際の経済成長率を適用して潜在成長率を推計する手順を踏んでいるのに対して、内閣府では潜在成長率を推計してから、実際の経済成長率を当てはめて需給ギャップを推計している点が挙げられます(図表5)4。両推計値ともやや長い期間をとれば改善を示している点は共通しています。』

『これに関連しますが、第二に、潜在成長率の推計値の違いが考えられます。わが国の潜在成長率については、日本銀行は0%台半ば程度と推計している一方で、内閣府は0.7%程度と推計しており、その分だけ日本銀行の需給ギャップの推計値の改善幅が大きく表れている可能性があります5。日本銀行の推計によると、潜在成長率は世界金融危機前後から低下を示しており、これには人口動態および既存設備の物理的な廃棄や陳腐化・摩耗による資本ストックの減少等の反映方法が影響しているように思います。』

ということで説明は淡々と普通に行われているのですが、注目すべきはこの説明の中にある「図表5」でございまして、潜在成長率の日銀推計値のグラフがありまして、これは実は展望レポートでも毎回出ているもので、先般の展望レポートですと図表40の所に該当するのですが、そこの図表40と今回の図表5を比較致しますと、図表5を見ると潜在成長率の推計値が「ゼロ%台半ば程度」という表現で想定される数字よりもどう見ても小さいです本当にカムサハムニダというのが判るかと思います(図表を張るスキルは無いですし勝手に張るのは多分イクナイと思うので図表は皆さんで日銀のHP行ってみてちょ)。

なお、展望レポートの図表40も同じ図表なのですが、長期時系列にしている関係上目盛が荒くなっていまして、ゼロ%前半なのか半ばなのかというのは一見すると誤差範囲に収まってしまう(定規を当てれば気が付くのだが)という図表の作りになっている所が日銀の卓越したプレゼンクオリティを反映しているのは言うまでもありません。

でまあそう考えますと、白井さんの話はさておきまして考えた場合、これだけ潜在成長率が低いと物価は上にも下にも振れやすくなるという話になると思う訳でして、展望レポートで示している2015年度1.9%、2016年度2.1%のコアCPI見通しっていうのは実質GDP見通しから考えるとどう見ても見通しの置きが過少じゃないか(物価がもっと上に振れないと潜在成長率との関係では整合性が取れない)という話になると思いますし、そうなるとマーケットエコノミストの皆様は夏場以降の物価上昇が進まない話をしている中で、実は日銀は物価の上振れ懸念モードじゃねえかというような話になる次第でして、まあ潜在成長率の話を前面に出して経済物価見通しを出すのは色々と問題含みのような気がせんでも無いとは思うのですけどどうでしょうかねえ。

でまあ白井さんの講演ではこの辺の需給バランスと物価、予想物価上昇率の変化をフィリップスカーブに置き換えて考えた場合どうなるのかという話をしているのですが、予想通り時間が無くなってきたので会見ネタと合わせて週明けにでも(ちなみに白井さんは予想物価上昇率がそう簡単に上がらないからフィリップスカーブの上方シフトは起き難いという見解みたいな気がします)。

なお、オラが予想通りの展開で云々の部分をもうちょっとゴリゴリとネタにしようかとも当初は思っていたのですが、置物副総裁のアレをやっていて生産性の無さに却って朝から疲弊致しましたので(−−;)何かスルー気味ですいませんすいません。と言いつつ週末の虫の居所次第ではまた疲弊上等モードになるかも(^^)。






2014/05/29

お題「黒田総裁の挨拶が白日銀だが只のサービスのような気がする/衛藤金融機構局長のロイターインタビューとな」

USTの金利が順調に低下しているのだが皆さんが揃って3.4%とか言い出すと金利が下がってくるというもんですなあ(白目)。

○白日銀の話をまたしている黒田総裁だがここまで白いとただのサービスの希ガス

こちらが本チャン
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140528a.pdf

だが今回も手抜きで日本語を読む
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140528a.pdf
日本銀行金融研究所主催2014年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳


・こういう挨拶を黒田総裁がするのかと思いつつ色々と妄想してみるの巻

『皆様おはようございます。2014年国際コンファランスの開会に当たり、一言ご挨拶を申し上げることは、私にとって大変光栄なことです。』

ということでこちらは金研が主宰するコンファランスのご挨拶でして・・・・・・・・

『今年のコンファランスのテーマは「金融危機後の金融政策」です。』

てなテーマでして、金研のページはまだ去年の資料しかないので惜しいのですが、まあこのお題からして危機対応の金融政策とか危機への事前対処とかそういう話になるのは明らかという奴でして。
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/conf_index_j.html

『先般の金融危機から早くも6、7年が経とうとしていますが、その間、世界経済は、「大不況(Great Recession)」に見舞われたあと、全体としてみれば、依然として緩やかな景気回復に止まっています。金融危機以降、各国中央銀行は、非伝統的政策を含む様々な政策対応を行ってきました。また、学界では、そうした中央銀行の政策対応に関する研究が蓄積されつつあります。これまでの各国の経験や研究成果を共有し、議論を積み重ねていくことは、今後の金融政策運営を考えていく上で、非常に重要です。そうした意味で、今回のテーマは時宜を得たものであり、それ故に、様々な地域の中央銀行や国際機関の幹部、著名な経済学者の皆様にご出席いただけたのではないかと思っています。改めて、日本銀行を代表して、ご参加いただいた皆様に、心から歓迎の意をお伝えしたいと思います。』

という事ですので、以下どう見てもBISビューで異次元性が無い話が続くのですが、まあここまでBISビューちっくな話をされますと、コミュニケーション力の高い黒田総裁の事ですから「場の空気を読んでサービスをしている」という所なんじゃネーノという感じがする次第で、「私たちは異次元緩和でデフレ均衡からの脱却が云々」というようなネタが今回のテーマじゃないのでそういう話はしませんでしたって位の意味のような気がします。

・・・・・・・で話を終わらせてしまうとネタにならないので以下鑑賞(^^)、などと書くとただの埋め草のように見えますので何ですが(−−)、まあこのお話は現状の日銀政策に関するインプリケーションは(たぶん)無いけど論点整理の一般論としては良い話だと思います。

でね、まあそういうサービス精神の発露であると勝手に仮定して話をしますと、本来こういうのは下手に政策インプリケーションを読まれる可能性があるので中曽副総裁がすれば良い(金融危機後の対応で中曽さん大活躍してたんですし)ようにも見える訳ですが、さらに突っ込んで考えると中曽さんがこういうBISビュー丸出しのような話をすると「日銀の中はやはり白か」などと言われてしまい、変に中曽さんにプレッシャーが掛かるのも宜しくないので、黒田さんが出てきてお話をしたという事なのかとか妄想をたくましくする今日この頃。ま、単に黒田さんこういうの出るの大好きみたいですからホイホイご登壇しただけのような気もしますが。なお金研担当の副総裁でいらっしゃる所のプロの給料泥(以下自粛)。


・ということで論点整理である

『2.先般の金融危機までの中央銀行の政策に関する議論の変遷』の所から。

『過去を振り返ると、先般の金融危機やその後の大不況のような大きな出来事を契機に、それから教訓を抽出し、中央銀行の政策に関する考え方を進化させるという歴史が繰り返されてきました。』

ふむふむ。

『すなわち、学界では、中央銀行の政策の焦点は、大恐慌期(Great Depression)、大インフレ期(Great Inflation)、大いなる安定期(Great Moderation)を経て、変遷してきた、と言われています。』

なるほど。

『中央銀行が設立された当初、その主な役割は、金融危機によって流動性が枯渇した場合に、金融機関に
「最後の貸し手(Lender of Last Resort)」を実施することでした。その背景には、ウォルター・バジョットの古典的な「最後の貸し手」論があります。彼は、いわゆる「バジョット・ルール」と呼ばれる中央銀行の行動原理、すなわち、中央銀行は危機時において、懲罰的な金利で、しかし無制限に貸出を行うべき、との考え方を提唱しました1。』

脚注にありますが「ロンバード街」は邦訳がありますのでマジオヌヌメ。ちなみにロンバード街読むと判りますが、この当時に金融調節だの金利の上げ下げで金融政策だのという話はねえわなという所です。

『このような「最後の貸し手」を主とする中央銀行の役割は、大恐慌期の到来と金本位制からの離脱を経て、ジョン・メイナード・ケインズらによる総需要管理政策の台頭等を背景に、景気の安定化にシフトしました。しかし、中央銀行が好景気の維持に重点を置くあまり、1970年代以降の大インフレ期を迎える結果となりました。』

うむ。

『高インフレに悩まされる中で、「インフレはいついかなる場合も貨幣的現象である(inflation is always and everywhere a monetary phenomenon)」とのフリードマンの見方が次第に支持され、中央銀行の政策の焦点は、物価の安定に移りました2。その代表的な政策としては、当時の米国連邦準備制度理事会の議長ポール・ボルカーによるディスインフレーション政策を挙げることができます。』

まあ話の整理としてはそうなる訳ですが、実際問題としてのボルカーショックはフリードマンの考え方を隠れ蓑にして超インフレファイターシフトをする不人気大引き締め政策実施の方便だった可能性はあるとは良く言われますなというのもご案内の通りかと。

『その後、低インフレ下での安定した成長によって特徴付けられる大いなる安定期が、先般の金融危機まで続きました。この時期には、金融政策は、インフレ予想をアンカーすることで、中長期的な物価の安定を損なうことなく、景気の安定に貢献できるという考え方が支配的になりました。こうした考えを金融政策運営の枠組みとして具体化したものがインフレーション・ターゲティングであり、多くの国で導入されました。』

そして・・・・・・・

『その反面、金融の安定(financial stability)は、中央銀行の政策上、あまり重視されず、一部の中央銀行では、金融監督機能が切り離され、金融政策運営に特化するなどの動きもみられました。こうした中で、先般の金融危機は発生し、その後の大不況に至りました。』

何でもいいからまずはデフレ均衡脱却しないと話が始まらないんだよという説明をこれまで散々実施してQQE政策を行っている黒田さんの同じ口から出た話とは思えないのですが、話の流れを見れば判るように一般論としてのレビューをしているのでありまして、でまあその話の中でファイナンシャルスタビリティーが重要という話をしているので、別に自分の所の金融政策の話をしている訳ではありません。というかフリードマンの話がこれですと既に過去の時代のレジームであるという説明になっておりまして、どこぞのマネタリーベース直線番長の置物副総裁様のMB1次関数理論を盛大に過去の物扱いしているように見えるのは気のせいですかそうですか。

『以上、簡単ではありますが、先般の金融危機までの中央銀行の政策に関する議論を振り返りました。これまで、その時々の課題を克服して、中央銀行の政策が進化してきたことがお分かりいただけたと思います。これまでと同様に、先般の危機とその後の経験から得られた教訓は、中央銀行の政策をさらに進化させることと思います。』


・思いっ切りマクロプルーデンス&BISビュー

『3.先般の金融危機とその後の経験から得られた教訓と今後の論点』というのがどう見てもマクロプルーデンス&BISビューである。

『先般の金融危機とその後の経験から得られた主な教訓としては、次の3つを挙げることができると思います。』

『第1の教訓は、経済全体の安定は、物価や実体経済の安定化だけではもたらされず、金融の安定化も重要であるということです。こうした認識のもとで、先般の金融危機以降、一部の中央銀行に対して新たに金融監督機能が付与されるなど、中央銀行の金融監督機能を強化する動きがみられています。』

『第2の教訓は、金融緩和は、政策金利がゼロ近傍という状況下にあっても可能ということです。先進国の中央銀行は、伝統的政策手段である政策金利を実質的にゼロの下限まで引き下げたあとも、資産買入れやフォワード・ガイダンス等の非伝統的政策を用いて、金融危機後の経済の回復を後押ししています。』

『第3の教訓は、第2の教訓とも関連しますが、経済を回復軌道に導くために、市場等とのコミュニケーションを通じた期待形成への働きかけ(expectation management)が重要ということです。』

まあ第2と第3は自画自賛でもあるが。

『以上が、先般の金融危機とその後の経験から得られた主な教訓ですが、これらを通じて、今後解明していくべき論点も明らかになってきました。こうした論点には様々なものがありますが、ここでは、本日ご参加いただいた多くの方々が直面している課題として、次の3つを挙げたいと思います。』

ほほう。

『第1の論点は、物価と金融の安定をどう両立させるか、ということです。この論点を政策に引き付けて考えると、金融政策とマクロプルーデンス政策の役割分担、すなわち、金融の安定のために、マクロプルーデンス政策を第1の防衛線(first line of defense)、物価の安定を目的とする金融政策を最終防衛線(last line of defense)と考えるか、あるいは、金融政策運営において、物価と金融の両者の安定を考慮すべきか、と言い換えることができます。』

いわゆる政策割り当てルールからするとマクロプルーデンスはあくまでもプルーデンス政策という話になるのでしょうが、そもそも金融不均衡が発生する素地はグレートモデレーションとかゴルディロックスとかいうような時に起きやすい訳でもありますからという話に必ずこの議論を詰めてくるとなってきますので、そうなると徐々にBISビューになってしまうという誠に諸葛孔明の罠としか申し上げようがない展開になって参りますのでどうなんでしょうかねという所です。

まあこの辺の論点でマクロプルーデンスガチガチな代表選手は最近ですとFRBのスタイン理事(もうすぐ理事じゃなくなるけど)なのはご案内の通りで、最近はFRBまでもマクロプルーデンスみたいな話をするようになっておりまして、まあBISビュー的になるのとのバランスってどうなのよとか思ってしまう(BISビュー自体は美しいビューなのだが実際の運用ではオーバーキルのリスクが高い)ので、マクロプルーデンスをどの程度まで反映させるのかという部分って難しいというか、いずれにせよ過去のFEDビュー的な動きにはならないという事ですと、金融政策運営はどうしても過去のグレートモデレーションな時よりは引き締め気味になるから、イールドカーブ的には寝やすくなるんじゃネーノというような全般的な印象はありますけどね。

『第2の論点は、期待形成に働きかける上でのフォワード・ガイダンスの有効性です。』

ほほう。

『先般の金融危機後、先進国の中央銀行で導入されたフォワード・ガイダンスには様々な方式がありました。政策の継続に関する具体的な期間や条件を明示しないオープン・エンド方式から、期間を明示したカレンダー方式、あるいは特定の経済指標に基づく条件を明示した状態依存(state contingent)方式まで存在します。フォワード・ガイダンスの有効性は、コミットメントの強さと柔軟性に依存しますが、このバランスをどう取るかが、フォワード・ガイダンスを議論する上で重要なポイントだと思います。』

まあこれは一般論として仰せのとおりですが、フォワードガイダンスのコミットメントの強さと柔軟性のバランスとか、思いっきり今の日銀が行っているQQE政策がバランス全然とっていない件をスルーしてこういう話をする辺りを物凄く穿って読むとQQEコミットメントにも柔軟性バランスが必要と言っているようにも見えるのが諸葛孔明の罠。

『第3の論点は、伝統的政策と非伝統的政策の国際的な波及効果の違いをどう考えるかという点です。』

な、なんだってー!!

『これまで、伝統的政策の国際的な波及効果や、それを踏まえた金融政策運営のあり方に関して、様々な知見が蓄積されてきています。しかし、非伝統的政策の国際的な波及効果に関する研究は、まだ緒についたばかりであり、今後の研究の進展や知見の蓄積が望まれます。』

そもそもそんなの知らんがなというのがQQEの異次元たる所以であると思うので、こういう話を黒田さんがおっぱじめるのもえーという感じでして、同様に穿って読みますとこれはQQE政策で円高修正はしましたがこれ以上の無理繰り円安誘導は致しませんというメッセージが裏に入っているという読み方も可能ですので念の為申し添えます。まあただのサービス挨拶だと思いますが。

なお、更に穿って読むのも可能でありまして、某識者の方とディスカッション(という名の世間話)をしておりますと、これは黒田総裁の物価目標達成に対する自信満々振りを示しているのであって、自陣満々じゃなかったらこういう脇道みたいな話をする場合でもなく、そもそも変な思惑(白日銀化)を招いて物価目標達成への弊害になり得るという懸念をする筈だからして、つまりはこのような白い日銀の話が最近出るのは目標達成への確信度が更に強まっているという事ではないかという見方も有力ではあるなあなどとも思ったりするのでありました。つまりQQE達成後の次のステージに既に注目が行っている訳ですな、うんうん。


○衛藤金融機構局長のインタビュー記事である

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0E72OF20140528?sp=true
インタビュー:金融不均衡みられず、銀行は収益力強化を=日銀機構局長
2014年 05月 28日 11:53 JST

『──QQE導入から1年経過し、金融面で過熱リスクなどの兆候はないか。』

『「現状、日本の金融システムに大きな歪みや不均衡があるとはみていない。株価や地価はひところより上昇しているが、予想や期待が経済実態から大きくかけ離れて強気化しているとは見ていない」』(上記UR先Lより以下同様)

まあFSRの方で色々と書いてありますがそういう認識となっています。何か最近PCCW丸の内ビルの売却だの8801さんの株券印刷祭りだの微妙なフラグ臭も漂いますがさすがにまだだろという気も。

『──ポートフォリオ・リバランス効果について、目立った変化が出ていないとの見方がある。』

『「デフレが15年続き、いろいろな経済主体の行動にも染みつき、金融機関のバランスシートにも根深くその影響が蓄積されてきている部分がある。量的・質的金融緩和の導入以降、デフレを前提としたポートフォリオ戦略を見直そうという金融機関が増えてきており、円債への投資ははっきり減少に転じた」』

それは多分日銀のオペに金融機関が対応しているからではないかと存じますが(^^)。

『「代わりに金融機関は、貸し出しを通じたリスクと有価証券投資を通じた市場リスクをとろうとしている」「目立った変化に乏しいというのは、国内貸出の伸びが2%台であるとか、機関投資家や家計部門など金融機関以外の資産構成の変化がそれほど大きくないことに注目したものだと思う」』

ほほう。

『「しかし、金融機関はポートフォリオ戦略を見直そうと動いており、そのことが経済や企業活動の活発化に貢献し始めている。こうした動きが続けばリバランスももっと広がりが出ると思う」』

ということですがつまりお前らポートフォリオ戦略を見直せという事ですねわかります(なおそういう意図はありませんよ誤解しないでくださいねと、というのが正しい答えになりますので念の為申し添えます^^)。

『──QQEの出口が意識される局面になれば、金融機関の国債売却で金利が急上昇する懸念はないか。』

『「金融機関は、すでに物価や金融政策の先行きを予想しながら、金利リスクの調整を進めている。確かに参加者による一律のリスク削減が相場を増幅してしまうメカニズムを市場は持っている。金融機関は過去のVaRショックなどの経験も踏まえ、自らリスク管理をやっていくことが求められる」 』

つまりお前ら以下同文ということですが、もちろんこれは一般論としての話であって足元の金融政策運営に関して何らメッセージを発している訳ではないですよというのが正しい答えになりますので更に念の為申し添えます(^^)。

・・・・・・・・でまあこのインタビューの残念な所は、FSRを踏まえた質問のツッコミ部分が不足している事でして、この手のマクロ的な話をするとまあこういう答えになるのは明白な訳でして、よりツッコミをするのであれば今回のFSR全編に渡って指摘されている「一部の収益基盤の弱い金融機関群」の話であって、その収益基盤の弱さの背景とか、今後プルーデンス政策に(マクロプルーデンスおよびミクロプルーデンス的の両面から)どのようなインプリケーションがあったり無かったりするのかとか、今後のこれら一部の金融機関群に対して監督当局の立場としてどのような考えがあるのかとか、まあそういう話を突っ込んで頂きたいのですが、基本的にマクロ的な部分の質問しかない(ように見える)のが残念無念。

もちろんFSRで個別行の話は書いていないし書けないですからこの話もレポート上では全体の中の一部的な書き方になっていますし、まあ平場でインタビューしても中々踏み込んだ話はしにくいとは思うのですけどね。

まあ基本的には金融政策運営に関するインプリケーションを読もうとすると諸葛孔明の罠に落ち込む、というかそもそも衛藤局長が諸葛孔明の罠を張っている訳ではありませんので勝手に自分で作った落とし穴に落ちるだけの話ですけど(^^)、まあ普通にこのインタビューは「現状で金融不均衡はありません」「QQEは金融仲介面でも効果が発揮されている事を読みとる事が出来ます」という説明をしているだけと解釈した方が無難だと思います。ロイターが何かこの辺りの件で陰謀脳を逞しくした記事を書いているみたいなのですが(アホラシイのでURLは張らない)、だいたいロイターがこの手の妄想記事を書くと大外ししているのか誰かのポジショントークなのかというような話になっている事が多い(なお記事のクレジット以下自粛)。


○その他少々雑談

・日銀の決算キタコレ

http://www.boj.or.jp/about/account/zai1405a.htm/

まあ今回は以前ネタにしましたように、というか公表されていましたように利益準備金の積み増しを増やしておりますが、そのうちこれを埋蔵金とか言い出す人が出てくるに100腕時計という所でございますがそれは兎も角。

これまたアホラシイのでURL張りませんけど、出口政策の損失リスクがどうのこうのという解説が良く出てくるのですが、損失そのものに大きな問題があるとは思えない訳で、損失が出れば政府が補填すれば良いだけの問題であって、それ自体が出口政策のリスクや足かせになる可能性ってまあ無いでしょと思います。

とは言いましても当然ながらその「政府が補填」という所に関してのリスクというのはある訳でございまして、それこそ何で補填するのだとか政治的イシュ―になるとよろしくないでしょうし、または補填すべき政府の方が更に真っ赤っ赤で財政大爆発という話になっていたらそれはもうエライコッチャな訳でして、リスクはそっちでしょというお話ですし、財政爆発まで行かなくても「あるマネタリストの不快な算術」状態になるという政策のコンフリクトの方が問題であるという話だと思いますので、出口政策の損失で債務超過ガーとかの一点張りでの説明は眉に唾をつけて読むのが吉というものです。


・市場雑談

今日は3MTBの入札ですが、足元GCレートが何故か上昇したり(ちなみに短国の需給は基本的に良い)してますし、6月は四半期末要因があるものの、貸出支援オペがそこそこ出れば短国買入が大幅に減る可能性もあり(財政要因的には年金定時払いと四半期国債償還がぶつかる月なので余剰)とゆーことでさてどっちに出るんでしょうねえ、というか最近気配も碌に無いみたいなのでどうなるやら。








2014/05/28

お題「政策インプリケーションは1ミリも無いが師匠の高座を鑑賞しませう」

ということで師匠の高座ネタであるがお題の通りただの落語鑑賞会となりますので金融政策運営的な意味を読み取ることはできません。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140526a1.pdf
「量的・質的金融緩和」とわが国の金融経済情勢
―― 共同通信加盟社論説研究会における講演 ――

○昨日も申し上げましたがそもそも論として

まあ何ですな、日銀副総裁講演だと思って読むと血圧が上昇する位で済まないで脳溢血でも起こすんじゃないかというような悲惨な内容だったりするのですが、何がどう悲惨なのかとゆー事をつらつらと(生産的ではないが)考えたところ、そもそも今までの話はどうなったというのがあるのと、この講演で何か言いたいことがあるのかという点がさっぱりワカランという所でしょうか。例えば総裁の(総裁だけじゃなくて他の政策委員の皆さんもですけど)講演とかですと、必ず「今回のテーマ」みたいなのがあって、何か今回伝えたい事みたいなのがあるのですけれども、今回の講演見てて思うのはそもそも何かテーマでもあるのかと言うと明らかに話が散漫だわ、(昨日も申し上げましたが)パーツパーツの部分ではそこそこ話の筋が通っている場面もあるのだが、話が全体として整合性取れていないのは話のテーマがそもそも存在しないからそういう整合性を考える機会もなければ能力も無いという所でしょうかねえ。

ということでまあ鑑賞。


○デフレの弊害と緩やかなインフレの利点という部分で既にツッコミたくなる訳でして

・デフレの弊害の話があるが「何故デフレになるのか」という話が無い件について

『はじめに、「そもそもなぜデフレが問題なのか」「なぜインフレ目標政策なのか」といった基本的な点について、改めてお話ししたいと思います。』

ということで始まるのですが、そこの小見出しが『(1)デフレのもたらす弊害』とあってこういう問題があります云々という話があるのですが、そもそも何でデフレが発生したのかという点についての論考がこの後も含めまして1ミリも無いというのが政策担当者としてアホじゃネーカと思う次第であります。

つまりですよ、そもそも何でデフレが起きたのかという点についてとか、足元までの状況に関する論考が全然無い状態で処方箋が書けるのかよという話でありまして(ちなみに処方箋によりますと中央銀行がインフレ目標政策を実施すればよいという話しか無い)、原因やら状況やらに関する考察も無い中でどういう政策を実施すれば良いのかという話が出る訳もなく(実際問題としてこの講演の数多くある問題点のうちの一つは「何でこういう政策を実施するのか」という点が全然掘り下げられていない点だが掘り下げる能がないのだから仕方ありません)、そらまあ講演がお笑い高座であって政策インプリケーションが1ミリも無い罠という話になる訳ですよ。

でですね、本来この人たちはフリードマンの言葉を使って「デフレは貨幣現象」という話をしてマネタリーベースガーという話をおっぱじめてくるのですが、何でその話が無いのかと言いますとそれはどう見ても師匠が副総裁就任前に話をしていた「当座預金70兆円から80兆円で2%達成楽勝」という直線番長一次関数理論との整合性が取れなくなるからその辺りの話を徹底的に回避している訳で、まあその程度の事は気が付いているんですなあと思えるところが更にこちとらトサカに来るというものですが脳溢血になっても困りますので血圧は上げない方向で(^^)。


・逆が成り立つのか甚だ疑問な説明の代表例

さてこれはどういう事かと申しますと、例えば「経済が良くないので株価が下がる」というのはまあ大体正しいと思いますが、「では公的で株を買って株価を挙げれば経済が良くなるので成長戦略」というのは話がオカシクネエカという話になる次第ということでもありますが、木久扇師匠の高座にはこの手の話が幾つか出てくる訳でして、のっけからそういう話の前振りが出てきます。

『持続的な物価の下落であるデフレは、いくつかの経路を通じて経済の停滞をもたらします(図表1)。まず、物価が持続的に下落するということは、時間が経過するほど同じ金額でより多くの物やサービスが手に入る、言い換えると、現金や預金を持っているだけで価値が増えていくということですから、企業や家計が消費や投資といった支出行動を先送りするようになります。つまり、総需要が減少してしまうわけです。』

ということで、この先に小見出しで『(2)安定した緩やかなインフレの利点』というのがありまして、そこではこんな話をしております。

『すなわち、将来の安定した緩やかな物価の上昇が見通せるとするなら、デフレとは逆に、消費や投資を前倒しするインセンティブが恒常的に働くことになります。支出活動が刺激され、経済全体の総需要が増加すれば、企業はそれに見合った水準まで生産活動を拡大します。』

という話になっていますが、物価の持続的下落は需要を先送りさせる効果があるかも知れませんけれども(実際には物凄い物価下落でもしない限り需要自体が極端に落ちるとも思えんがそこはまあ措くとして)、じゃあその逆になった時に本当に需要が喚起されるのかというと、それは別問題ではないですかねえ。

つまりですよ、師匠の言う「消費や投資を前倒しするインセンティブが恒常的に働く」っていうのはそもそも前倒しする消費や投資が将来にあるから発生するものでありまして、ベースとして経済の成長というか個別経済主体の先行き見通しがプラスになっていない状況下では前倒しをする消費も投資も無いでしょという話です罠と思いますし、大体からして「前倒しするインセンティブが恒常的に」ってそれ単に永久に未来から力を前借りしていこうって話でどこの薬中患者だよともツッコミたくなりますが、つまり「経済が成長過程にあるから需要が喚起されて物価が上昇する」というのは分かりますが、「物価が上昇するから需要が喚起されて経済が成長する」とはならんでしょはいはいおじいちゃん満州満州というお話ではありますな。


・そもそも現状認識とデフレの弊害の話がずれている件について

とまあのっけからそういう話がありますが、デフレのもたらす弊害の説明はまだ続く。

『総需要が減少すると、企業はそれに見合った水準まで生産活動を縮小します。企業収益は悪化し、雇用者の所得も減少しますから、消費や住宅投資、企業の設備投資などの活動がさらに停滞します。つまり総需要がさらに縮小して、それによってますます物価が下落していきます。こうして、物価の下落と不況の悪循環に陥ってしまうのです。』

だそうですがそもそも物価は貨幣的現象じゃなかったでしたっけというのはさて置きまして、こちらの話ですとスパイラル的な悪化の話をしている訳ですが、実際問題として他の政策委員の皆様(黒田総裁含む)は日本の問題について「粘着性のある非常に小幅の物価下落状態」という認識をしめしていまして、スパイラルよりもデフレ均衡的な点について問題視しているというところ(その点についてセントルイス連銀ブラード総裁が指摘する複数均衡の形であるデフレ均衡として捉えるかどうかという部分は見解が一致していないようだが)でして、そもそもデフレの弊害の話をするのに日本経済の現状認識と合っていない部分を持ち出して弊害とか言われましても、政策担当者としての処方箋作りに役立たずどころか処方間違えませんですかねえとか思うのでありますが、こちらの師匠はただの置物で診療行為をしないのが不幸中の幸いというものです。


・デフレなので円高進行とな

弊害の話の続きで、まあ実質金利が高止まりしてどうのこうのの話は良いとしましてこの説明も何だかなあという感じではある。

『物価の持続的下落は、物やサービスに対するお金、すなわち「円」の価値の持続的な上昇を意味しますが、日本だけがデフレの場合、通貨間の関係では、外貨に対する円の価値の上昇、すなわち「円高」をもたらすことになります。』

他の条件が一定ならそうかも知れんが、そもそも何でデフレになっているのかという話をさておいて全てをデフレが原因になっているような説明がワケワカランですわなあ。

『円高が過度に進むと、国際的な価格競争力の低下や、獲得した外貨の円換算レートの悪化等を通じて、輸出セクターに悪影響が生じます。また、日本の労働力や資本のコストが国際比較で割高になりますから、日本企業の生産拠点の海外移転が進む一方で、日本への対内投資には悪影響が及ぶことになります。これは、国内の雇用需要を減らすとともに、成長率の低下をもたらします。こうして、過度な円高の進行という経路を通じても、デフレは日本経済の総需要に負の影響を与えることとなります。』

デフレだから円高になるという話だとそうかも知れんが、1ドル360円から円高が進行する中でデフレでしたっけとか、じゃあ通貨安はアプリオリに良い話なのですかとか、まあ色々と謎の部分は多いのですが、この先の所の先ほど引用したインフレの利点の話ではこんな説明が。

また『(2)安定した緩やかなインフレの利点』の所ですけどね。

『また、主要な貿易相手国との間で物価上昇率の格差が是正されることは、過度な円高の修正をもたらしますし、他国との予想物価上昇率差の縮小とその安定は、為替レートの安定につながります。』

は??としか申し上げようがないですが、原因と結果の話が自由自在になっている所が何ともですな。


・循環論法恐るべし

でまあこの緩やかなインフレの利点の所はこういう纏めになっているのですけどね。

『このようにして、企業の収益が好転し、雇用者の所得も増加しますから、家計の消費や住宅投資、企業の設備投資などの支出活動がさらに活発化します。総需要が持続的に増加することによって、物価も持続的に上昇し、好景気と物価上昇の好循環が実現することになるわけです。』

緩やかなインフレになるから物価も持続的に上昇するじゃあただの循環論法なのですけど・・・・・


○安定したインフレの達成には「インフレ目標政策」が必要・・・・・・で済めば誰も苦労せんわ

次の小見出しが『(3)インフレ目標政策』であるがのっけからいつもの師匠節なのだが爆笑の発作を禁じ得ない。

『それでは、「安定した緩やかなインフレ」を実現するためには、どのような政策が望ましいのでしょうか。その一つの答えが、インフレ目標政策(インフレーション・ターゲティング)と呼ばれる枠組みです。日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」のもとで金融緩和を推進しているのも、インフレ目標政策の典型的な事例であるとご理解頂いてよいでしょう(図表3)。』

まあデフレの原因やメカニズムの考察が無いからいきなりこうなる訳で、それで達成できるとかなら誰も苦労はしません。

『(政策の信頼性と予測可能性の向上)』という小見出しの中も色々とアレ。

『インフレ目標政策には様々な利点があります。』

はあそうですか。

『まず、将来のインフレ率について、具体的な数値目標を掲げるわけですから、目標を達成できたかどうかは客観的に判断できます。』

どうやって判断するのでしょうか。インフレ目標政策を掲げている主要国の中銀ですけど現在はその判断についてリジットな形で足元の物価数値をトラックさせるような運営していなくて、フレキシブルインフレーションターゲッティングという運営にしている筈なのですが、その場合はどのようにして目標を達成できたか判断するのでしょうかねえ。景気が1サイクル終わって事後的に達成したとかしなかったとか言っても政策運営という点からは意味が無いにも程があるんですけどねえ。

『透明性が高くなることで、政策判断や目標の達成状況についての中央銀行の説明責任も重くなりますので、金融政策に対する信頼性は高まりやすいといえるでしょう。』

いやその前に師匠のその謎説明が説明責任になっているのか小一時間。

『将来の物価についての予測もしやすくなりますから、様々な経済主体が、それを前提として経済活動を行うことができるようになります。』

じゃあ均衡だったら同じじゃねえかと言われたらどうするのよ、っていうのはまあ言いがかりに近いけど(^^)。

『そして、この将来の物価についての予測可能性は、金融政策に対する信頼性が高まるほど、さらに強化されるのです。』

との事ですが、するってえと何ですか。貴殿および貴殿の一派の皆さんが日本銀行を口を極めて罵っておられたのは金融政策に対する信頼性を下げて日本銀行の政策運営の邪魔をしまくっていたという話になりませんかねえとか嫌味の一つも申し上げたくなりますなあ。


・でハイパーインフレの防止はいつものクオリティ

『(ハイパーインフレの防止)』というのはいつもの話。

『日本銀行の政策に対する懸念として、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」という懸念の声が聞かれますが、この点についても、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます。』

そもそもハイパーインフレという供給能力が壊滅でもしない限りそう簡単に置きそうもない話を持ち出して「大丈夫です」という時点でウンコな議論というか藁人形論法にも程がある訳で、先般(ちょっと前に)ネタにしましたが米国での佐藤審議委員の講演にあった「マネタリストのある不快な算術」の話とかをちったあ読んでくれよと思いますが、その後の話もいつも通りのお笑いクオリティ。

『なぜなら、インフレ目標政策というのは、将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組みだからです。』

なんか「憲法9条を掲げているだけで日本は戦争も起きないし戦争にも巻き込まれない!!」と夢を見ている人たちの話法と同じように見えて大変に頭の下がる思いでありますので、ノーベル平和賞にノミネートされる様に運動をしたら如何でしょうか。

『日本ではデフレからの脱却の手段として議論されることの多いインフレ目標政策ですが、もともとは1980年代のニュージーランドなど、高インフレに悩んでいた国々によって採用された政策です。』

で?

『仮にこの先、景気が過熱して2%の物価安定目標を大きく上回るような状況が予想される場合には、インフレ目標政策の枠組みに沿った、適切な対応をとるということも、日本銀行はすでにお約束しているとご理解下さい。日本銀行は、日本銀行法で定められた理念に基づき、今後とも、政府との十分な意思疎通を図りつつも、自らの判断と責任において、金融政策運営を行っていくことを強調しておきたいと思います。』

約束してもそれが実行されるかという話を問題にしているのですが大丈夫だから大丈夫とはこらまた能天気でよろしゅおすなあ。


○QQEに関する話も色々とアレである

・波及経路が色々と変である

『3.量的・質的金融緩和について』ということで。

『ここからは、デフレからの脱却に向けて日本銀行が取り組んでいる「量的・質的金融緩和」の内容と、波及メカニズムについてお話しします。』

ということで波及メカニズムの方に参りますが、メカニズム図表の方は相変わらずのクオリティだがそこはスルーして文章の方を。

『「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムの鍵となるのは、予想長期実質金利の引き下げです(図表6・7)。』

そもそも実質「長期」金利というのが微妙に変な所で、貸出ルートの事を考えているんだったら日本の構造上中短期の金利を考えておけば良いのであってより長い金利の話をしてもシャーナイと思いますがねえ。

『予想実質金利とは、金融市場や銀行の店頭などで観察される名目金利から、個々の経済主体が予想する将来のインフレ率を差し引いた数値にあたります。例えば、借り手の側に立って考えると、一定の名目金利でお金を借りたときに、「物価の変化を考慮すると、実質的な借入れコストはいくらになるか」ということについての、借り手の主観的な予想ということになります。』

でまあそれが下がると借入需要が喚起されてという話は前の方でも説明があったが、それが低いからよーしパパ借入して工場作っちゃうぞーとは成らんだろ重要なのは事業の収益性とか将来の成長期待だろとは思いますがさておきまして。

『インフレ目標の達成にかかる明確なコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和によって、予想インフレ率を押し上げる効果が生まれます。』

波及経路の説明の中でこういう話になっているのだが、実質金利を下げるルートが効くという話をしていて、金融緩和で予想インフレが上がるから実質金利が下がるという話だが、そもそも何で金融緩和で予想インフレが上がるのかがアプリオリになっている時点でナンジャソラという話でして、まあこれ前からそういう話なのだが、そもそも論としてこの部分がどういうメカニズムで発生するのかという話が何もない時点で何ですねんという話ではありますな。

でまあ予想実質金利が下がる効果はいつも通りだが一応引用。

『例えば、予想実質金利が低下すると、現預金や債券から株式や土地・住宅等の実物資産、あるいはより金利の高い外貨への資金シフトが起こり、株高や外貨高などによる資産効果によって、家計の消費が刺激されます(図表8・9)。』

『また、予想実質金利の低下に加えて、消費の増加や円安による輸出環境の改善など複数の要因に後押しされた企業は、設備投資に積極的になると考えられます(図表10)。』

もう何だかねという感じで、将来見込みとか無くてそう上手くいくかよという話ですけどね。

『こうして消費や投資などの需要が増加することによって、経済全体の総需要不足が解消されていけば、おのずと物価水準は上向き、それが予想インフレ率を物価安定目標に向けてさらに上昇させるという好循環が期待できます。』

またも循環論法。


○QQE後の現状認識の話が色々と変な件について

現状認識の話ですが、その後に現状の評価という小見出しがあるのですが、その前の部分の話の方が色々とアレ。

『物価安定目標の実現に懐疑的な意見として、「為替レートの円安化が進まないのであれば2%の物価安定目標の実現は難しい」との指摘が頻繁に聞かれますが、今申し上げたように、「量的・質的金融緩和」の波及メカニズムのポイントは、「予想インフレ率の引き上げと需給ギャップの改善の好循環によって2%の物価安定目標を実現する」ということであり、円安による輸入物価の上昇に依存したものではありません。』

えーっと、最近の日銀展望レポートの理論によりますとプラスの需給ギャップとフィリップスカーブのシフトアップで物価目標達成という話になっているので、これはこれで単体での説明はそうですねという事なのですが、おじいちゃんつい今しがたQQEの波及メカニズムの中で「外貨高などによる資産効果」だの「円安による輸出環境の改善」だの思いっ切り説明しているんですけど、何でここで急にそういう話になるんでちゅかねえという所で、話のパーツパーツで正しい部分はあるのだが全体を見た場合の整合性が無いというのはまあこういう辺りにも示されていると思います。


『仮に、昨年4月以降の「量的・質的金融緩和」による消費者物価の上昇が、もっぱら円安による輸入物価の上昇を原因としたコスト・プッシュ型インフレであれば、実質GDPは減少し、それに伴って失業率は上昇したはずです。つまり、スタグフレーションが起きたはずです。』

そもそも実質GDPと失業率ってそんなにダイレクトに連動するかよ普通ラグを伴わないか???

『しかし、実質経済成長率の実際の推移をみると、12年11月にアベノミクス構想が発表される直前は、2四半期連続のマイナス成長(12年第2四半期▲0.6%、第3四半期▲0.8%<季調済前期比>)でしたが、12年第4四半期以降は、6四半期連続してプラス成長になっています。また、13年度の実質経済成長率は、12年度の0.7%から2.3%へと大きく上昇しました。』

財政吹かしまくって消費税増税前の駆け込み需要があったと思うのですが全部無視とは豪気にも程がある。

『失業率についても、「量的・質的金融緩和」を開始する直前の13年3月は4.1%でしたが、14年3月には3.6%まで低下しています。3.6%の失業率というのは、リーマン・ショック前の好況期(07年7月)の失業率と同じ水準です。』

もとの4.1%でも大概に低いけどな。

『つまり、「量的・質的金融緩和」以降のインフレ率の上昇は、実質GDPの拡大と雇用の改善を伴うディマンド・プル型だということです。』

もうね、アホか馬鹿かという感じですが、ディマンドプルなのかコストプッシュなのかを判断するのに実質GDPと雇用指標だけ見るとか随分とまあ雑な議論だわと思いますし、そもそも論としてリフレ派先生方におかれましては基本的に貨幣的現象である所の物価について良い物価上昇も悪い物価上昇という区別は無かった筈なんですけど何言ってるんですかこのおじいちゃんはという感じですなあ。


○成長力の話をするのが変だろという上に「マイルドなインフレでも良くない場合」とは何ぞやという話

・マイルドインフレでウハウハじゃなかったの???

でまあどうでも良い方の現状評価(展望レポートなどの丸写し状態)はさて置きまして、次の小見出しが『4.金融政策と潜在成長力』でのけぞるのでした。

『最後に、日本銀行の金融政策と、日本経済の潜在成長力の関係について、整理しておきたいと思います。』

『ご承知のとおり、日本は現在、@大胆な金融緩和、A機動的な財政政策、B民間投資を喚起する成長戦略を組み合わせたマクロ経済政策に取り組んでいます。こうしたポリシーミックスの中で、金融政策の役割は、直接的には「デフレから脱却して、2%の物価安定目標を実現すること」に尽きるわけですが、潜在成長力との関係では次のように整理できると思います(図表16)。』

ということで潜在成長力がどうのこうのという話をしているのですが、えーっとリフレ派的理論によりますと2%物価目標達成によるマイルドインフレで世界が変わるって話(そんなバナーを見たことがある気がしますがねえ)だったんじゃ無かったんですか???????

でまあその説明の所も色々と???なのだが一箇所だけ。

『経済がある程度好調でなければ、経済の効率性とダイナミズムを高め、生産性を引き上げるための構造改革も進めることができません。デフレ不況下では、規制緩和を通じた競争促進政策等による痛みに対して、強い抵抗が生じるためです。「創造的破壊」という言葉がありますが、デフレ不況が継続していては、「破壊」の後に「創造」が続かないということです。』

としらっと「デフレ不況」といつの間にかデフレと不況が一緒くたになっているのがチャーミングというもので、過去15年間における日本は常に不況だったんですかそうですか・・・・・・・・

最後の所に『(2)今後の課題』があってこれがまたビックリ。

『仮に、成長戦略に基づく政府の施策や民間の取り組みが停滞し、潜在成長力の強化が進まなければ、物価安定目標の達成は、「マイルドなインフレ下における低実質成長」をもたらす可能性があります。』

あれ??マイルドインフレで世界が変わってウハウハじゃなかったんでしたっけ??????


・最後の最後にまた「大丈夫だから大丈夫」理論が炸裂して終了

でその先が締めですが。

『逆に、成長戦略による経済の構造改革が進んだ結果として潜在成長率が上昇した場合、一時的に需給ギャップが悪化し、物価に対する下落圧力が生じる可能性があります。しかし、日本銀行は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を続けますから、そうした物価下落圧力をはね返すことができます。』

もはやナンジャソラとしか申し上げようがありません。

『日本経済が、2%程度の安定したインフレ率の下で、より高い実質成長を実現する日が、そう遠からず訪れることを期待しつつ、着実に「量的・質的金融緩和」を進めていきたいと考えています。ご清聴、ありがとうございました。』

そらご清聴するの大変だ罠・・・・・・・・・・・

#ということで全然生産性の無い話を最後までお付き合いいただきまして誠に恐縮至極に存じます




2014/05/27

お題「展望レポートの会の議事要旨は鑑賞物として中々(引用大会)/置物師匠講演のクオリティがアレな件(ただの予告編)」

欧州議会選挙の結果が出てきた辺りのBBCのヘッドラインだがこいつら対岸的に楽しんでねえかという気がするのは気のせいですかそうですか。
http://www.bbc.com/news/world-europe-27559714
26 May 2014 Last updated at 14:47
Eurosceptic 'earthquake' rocks EU elections

○置物師匠の講演クオリティが甚だ壊滅的な件について(ただし予告編)

昨日は展望レポート会合となります4月2回目(30日)のMPM議事要旨がご案内のように出ておりまして、そちらの方が色々と面白いというか興味の尽きないネタでございまして、その鑑賞をした後に引け後くらいに出て来たんですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140526a1.pdf
「量的・質的金融緩和」とわが国の金融経済情勢
―― 共同通信加盟社論説研究会における講演 ――

まあ何ですな、このテキストですけど日銀副総裁の講演だと思って読みますと血圧が上昇して誠に如何にも程があるのですが、置物師匠のお笑い高座だと思って読みますと抱腹絶倒モノであったりしまして、笑う門にはマチカネフクキタルな訳であるから致しましてお読みになられる皆様にもきっと良いことがあるに違いありません(たぶんそれは違う)。

でまあ講演本文を見ておりますと現状認識は変(ヘッドラインに出ていて皆様のけぞったと思いますがこれまでの物価上昇がディマンドプルとか頭沸いてるのかと)だわ先行き見通しは変だわそもそも論としてデフレが良くない話をするのに何でデフレになったのかの話が無いわですし、当座預金残高をこれだけ拡大すると期待インフレ率が幾ら上がるという話はすっかり無かったことになっているわとか、全体の説明がちゃんとできていないいのでパーツパーツの話は一応筋が通っているけれども全体で話の整合性が無いわと、もう読んでいて抱腹絶倒レベルですなあなどと読んだ次第でありまする。

なおその後に人から指摘されて気が付きましたがその後の図表というかプレゼン資料がこれまた卒倒するレベルでありまして、日銀副総裁御自らが雇用情勢の改善を身をもって示さなくても結構なんですけどねえというレベルではあるのですが、あまりにもツッコミ所が多すぎるのと、そもそも論として元の紙のレベルがアレなのでお笑いネタとしては楽しめても生産性としてどうよという話。

つーことで明日に回すのですが(−−)、実はこの後真面目に(^^)ネタにする4月30日金融政策決定会合議事要旨の中で物価先行きなどの所でどう見てもスットコドッコイな見解を述べているスットコドッコイがいまして、その後にこの落語原稿を拝読した所そこはかとなくアレなソレを感じたりするのでもありまする。

ということで別にんな事も書かなくても良いのではという指摘もあるかと存じますが、いやさすがにちょっと一言くらいは悪態入れておかないと気分がですなあという事で(−−;



○4月30日会合の議事要旨:色々な見解の相違が拡大&物価楽観派の説明が色々と怪しい

つーことでメインイベントである。何か寝坊したような気がするがキニシナイ。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140430.pdf

・委員会の経済情勢検討部分から:海外はまあ普通ちゃあ普通だが国内が無暗矢鱈と景気に強い件

執行部からの報告部分に関しては(展望レポートの中でああだこうだと示されているのもありますからして)盛大に割愛して本文5ページ(PDFファイルの7枚目)の『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から参ります。

最初が海外金融市場の話と海外経済の話でして、全般的にはまあ概ねそんなもんでしょうという感じですが、米国の現状と先行きに関して。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、寒波の影響は薄れてきており、民間需要を中心に、裾野を広げつつ、緩やかな回復を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、最近の各種経済指標から確認できるように、米国経済は、寒波の影響から脱して、景気回復の流れを取り戻していると述べた。複数の委員は、住宅投資の持ち直しのペースが緩やかである点については、今後注意してみていく必要があると指摘した。』

ふむふむ。

『そのうえで、先行きについて、委員は、財政面からの下押し圧力が和らぐとともに、雇用・所得環境の改善が明確となることから、景気の回復ペースは徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

ふむ。

『一人の委員は、米国の労働市場に関しては、多数の長期失業者の存在などを背景に賃金上昇圧力は低位にとどまっているとの見方が多いが、賃金・物価に対しては短期失業率が大きな影響を与えるとの見方もあり、現在、短期失業率が相応に低い水準まで低下していることを踏まえると、今後の賃金・物価動向は注意してみていく必要があると指摘した。』

ということで先行きの米国物価動向には違和感ありというのが1名とな。でまあ欧州でも先行き回復という話の中で1名がちょっと待てという話をしているというのがほほうという感じではありますが、アジア新興国に関して。

『先行きのNIEs・ASEAN経済について、委員は、当面、ASEAN中心に調整局面が続き、成長に勢いを欠く状態が続くものの、その後は、金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもと、先進国の景気回復の好影響が及ぶことから、徐々に成長ペースが高まっていくとの見方を共有した。』

ということで結局先進国次第という話ではあります。でまあこの辺りまではまあそうですかねえという感じではあるのですが、国内の話がこれがまた妙に強いのよ。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方を共有した。委員は、輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、雇用・所得環境の改善を伴いながら、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けているとの認識で一致した。消費税率引き上げの影響について、多くの委員は、駆け込み需要の反動の大きさは、ハードデータが出ていないため断定できないものの、各種のミクロ情報などを踏まえると、今のところ概ね想定の範囲内のようであるとの見方を示した。なお、このうち一人の委員は、自動車業界では、3月までに積み上がった受注残があるために4月は反動減が大きくないとの声もあり、5月以降も状況を注視する必要があると指摘した。』

というのはまあ展望レポートで示されている所です。でまあ以下個別需要項目ごとの話になるのですが、ここの部分って全般的に展望レポートの中で示しているような感じの景気に対するやたらめったら強い話の部分ばかりが連呼されている感じでして、実はこの後に先行き見通しの議論が出てくるのですが、先行きの話で出ている見解との温度差が結構あるのよね。

では見てみませう。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波の影響や消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。ある委員は、既往の円の実質実効相場の低下もあわせて考えると、今後、輸出は堅調に持ち直すと考えていると述べた。』

これ展望レポートでも示されていましたし、この先の部分でも論点になっているのですが、輸出に関しては構造的な要因で伸びていないという話が有る筈なのに、ここでの話って一時的要因で全部済ませている所が大丈夫かおいおいという感じですし、1名が指摘している既往の実質実効為替相場の円安要因で何で今後輸出が持ち直すのかというメカニズムについては説明を頂きたいものであると思いますが何でそう強気なの??

『公共投資について、委員は、増加を続けており、先行きは、経済対策の押し上げ効果から今年度上期にかけて高水準で推移したあと、次第に緩やかな減少傾向に転じていくとの見解で一致した。設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、持ち直しが明確になっており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方で一致した。』

この辺はよろしい。

『ある委員は、実質金利の低下やこれまで先送りされてきた更新投資、賃金上昇を受けた労働節約型投資の必要性などの要因を考慮すると、今後、設備投資の増加ペースは高まるとの見方を示した。』

ヴィンテージの方は判るが実質金利の低下の件と賃金上昇を受けた労働節約型投資ってのは違和感。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。今春の賃金改定交渉について、多くの委員が、ベースアップが相応に実現する方向での動きとなった点を指摘した。このうち、何人かの委員は、企業業績の改善を受けて、ベースアップを伴う賃金上昇の動きが中小企業も含めて広がっていることや、失業率が構造的失業率に近づくもとで労働需給がタイト化していることを考えると、今後、賃金上昇圧力は一層強まるとの見方を示した。』

はあそうですかという感じですが、まあこのベースアップの話は後の方での展望レポートの検討に該当する所でも出てくるのですけれども、正直今回のベースアップって消費税増税対応(で雇用者の負担が高まる点)部分の面があるように思われる訳でして、本当に持続的なのかは良く判らんぞなという気はするのだが妙に強いなおい。

『個人消費について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しており、先行きも底堅さが維持されるとの見方を共有した。複数の委員は、現在、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、雇用者所得の増加が家計支出を着実に下支えしていくことから、早晩、個人消費は底堅い動きへ戻っていくとの見方を示した。』

まあ消費が強いのは判るが雇用者所得の増加って実質ベースではどうなのよという気がする。

更に物価もアホのように強い話ががががが。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。消費税率引き上げの物価への影響について、多くの委員は、東京の4月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみて+1.0%と3月から横ばいとなったことから、税率引き上げ分が概ね転嫁されたとの認識を示した。』

まあここまではヨロシ。

『何人かの委員は、需要が底堅さを維持していることから、一部で懸念されていた実質値下げの動きは広がらなかったと述べた。さらに、一人の委員は、まだ増税分を転嫁していない企業も相応に存在しており、こうした先は、今後、消費が戻ってくる中で、徐々に増税分を転嫁していくと考えられるとの見方を示した。』

そ、そうなのか???

『これに対し、ある委員は、4月の消費税率引き上げは、価格改定の絶好の機会であり、5月以降暫くは、価格改定の動きは落ち着いたものとなるのではないかと述べた。』

システム改定が間に合わずに6月値上げになる都営地下鉄くらいでしょと思いますのでまあ普通こっちの見解が普通じゃないかと思うのだが。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。ある委員は、今月公表されたエコノミストサーベイで、中長期の予想物価上昇率が着実に上昇してきている点を指摘した。』

まあこれはふーんという感じですが、それまで低かった件はスルーして上昇した時だけ指摘ねえという感じは否めませんな。

ということでここまでアホのように強い話が多く(一部に突っ込みを入れる委員はあったものの)何ですかねえという感じなのですが、この先が見解が割れている所です。


・展望レポートの検討部分:物価に関しては見解がマッコウクジラ

ここまで引用しまくって無駄に増量してしまいましたのでちょっと反省して引用部分を減らしますがががが。

物価の先行きに関しては展望レポートに示されるように需給ギャップとインフレ期待でという話をしているのですけど、その背景に関して物価強気派の見解と弱気というか懐疑派の見解がマッコウクジラで対立状態であるのをまずは鑑賞致しましょう。

『何人かの委員は、企業がこれまでのコスト上昇分を販売価格に転嫁する動きや、付加価値を高めて新たな需要を掘り起こしながら販売価格を引き上げる動きがみられており、その傾向は今後も続くとの見方を示した。』

『また、複数の委員は、今春の賃金改定交渉においてベースアップが復活したことは、来年度以降につながるメカニズムとして重要であると指摘した。このうち一人の委員は、企業の価格設定行動の変化やベースアップの復活は、需給バランスに対する物価上昇率の感応度を高め、人々の中長期的な予想物価上昇率を高めるとの見方を示した。』

いやその需給バランスに対する物価上昇率の感応度が上がったって景気が逆サイクルになったら直ぐに物価が下がるって意味ですけど。あとベアに関しては本当に来年度以降に繋がるのかは謎だわな。

『これに対し、ある委員は、予想物価上昇率の上昇や企業の販売価格引き上げは緩やかに進むため、2%の実現は見通し期間の終盤になるとの認識を示した。そのうえで、物価の先行きの記述としては、「2%程度」という幅のある表現でなく、「物価安定の目標」である「2%」の実現時期に焦点を当てた書き振りとすべきであると指摘した。』

これは後の展望レポートでの反対理由を見ると白井さんのようです。2%はピンポイントで目指すものであるから程度という話は変じゃないのというのは当初の政策協定での説明で確か2%はピンポイントという話と程度の話が混線していたのの継続みたいな感じっすな。

『別の一人の委員は、2%に向かって予想物価上昇率が上昇することは不確実性が高いと述べた。』

『別のある委員は、@今後円安の物価押し上げ効果が剥落する可能性が高い中で、労働需給タイト化などの要因が物価をどの程度押し上げるか不確実であり、A予想物価上昇率についても、「物価安定の目標」である2%に向かって上昇し、収斂していくのは難しいとの見方を示した。』

というのが恐らく佐藤さんと木内さんでどっちがどっちだか判らん(多分前者が佐藤さんで後者が木内さん)ですが、まあこういうツッコミでございますな。

『そのうえで、委員は、1月の中間評価時点と比べて、成長率の見通しは2014 年度について幾分下振れるものの、物価の見通しについては、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向がさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変であるとの見解で一致した。』

この辺は定例会見でも散々突っ込まれた話。

『多くの委員は、今回の景気回復は雇用誘発効果の大きい非製造業が中心となっているため、労働需給がタイト化しやすく、労働市場の面から物価が上がりやすくなっているとの見方を示した。』

ふーん。

『一方、ある委員は、供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた。』

4月1回目の会合でも指摘されていましたな。これはご尤も。


・予想物価上昇率の話の部分で短観の企業物価関連の数値を出すのはさすがにちょっと・・・・・・・

その次。

『委員は、予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・価格形成に与える影響について議論した。』

ビジュアル化して割り切ればフィリップスカーブの議論でもある。

『委員は、このところ、労使間の交渉において、物価上昇率の高まりが意識されているほか、企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられるようになっているとの認識を共有した。』

まあ単に低価格だけだとコスト上昇に耐えられないだけのような気もしますがね。

『ある委員は、実際の経済活動の主体である企業や家計の物価観が、これまでの「物価は下がるもの」から、「物価は緩やかに上がるもの」へと変わってきており、そのもとで、企業や家計の行動も変化しているとの見方を示した。』

そうなのかという感じだし、大体からしてデフレとは言われているけどサーベイ見ても「物価が下がる」というのかという感じはするのだが、上がらんという意識は強かったと思うけど。

『企業の物価観について、別の一人の委員は、3月短観で、企業が高めの水準の物価見通しを示し、また、先行き物価上昇率が上昇していくことを予想したことは、一般的に企業は慎重な見方をしがちであることを踏まえると、非常に意味があり、こうした物価観は、今後の価格設定行動や賃金交渉で大きな要素になると指摘した。』

これがまた酷いとしか言いようがないのだが、3月短観での企業の物価見通しは確かに高かったかも知れんが、自社製品(やサービス)の販売価格判断に関しては大企業の見通し数値かなり悲惨だったじゃねえかという所で、あの数値を平場の議論で出してくるとかさすがに如何なものかという話なのですけどねえ。

『複数の委員は、企業や家計の物価観に変化が窺われるもとで、今春の賃金改定交渉においてベースアップが復活した意義は大きいと述べた。』

多分それは復活は復活でも消費税増税対応だと思うぞ。非正規は需給で上がっているにしても。

『また、企業の価格設定行動について、何人かの委員は、景気の持続的改善が続くとの見通しが広がっていることもあり、これまでのコストの上昇を販売価格にストレートに転嫁する動きがみられ始めていると指摘した。』

まあ結局コストプッシュなんですけどね。

『この点について、複数の委員は、こうした動きが今後広がっていくかは、国内需要の堅調さが維持されるかにかかっているとの見方を示した。』

結局はこれなんですけどね。


・マクロ需給バランス云々で成長の天井論

その次である。

『委員は、マクロ的な需給バランス縮小の背景について議論を行った。』

『何人かの委員は、マクロ的な需給バランスが、思いのほか速いペースでゼロ近傍に達していることは、今回の景気回復が労働集約的な非製造業中心であるということに加え、少子高齢化や、リーマン・ショック後の設備投資の先送りなどにより、やや長い目でみて、日本経済の供給の天井が低くなってきていることを示すものであると指摘した。』

キタコレ。何人かの委員とな。

『そのうえで、これらの委員は、日本経済が持続的な成長を続けていくためには、成長戦略の実行などにより潜在成長率を引き上げていくことが重要であるとの見方を示した。』

その場合の成長と物価の話は??というかこの話が出ている(しかも複数委員)のに先行き見通し部分では潜在成長率に関する話が特になくアプリオリに従来の見通しを継承しているような話になっているのは何ですねんという気がするのだが。

『ある委員は、そのためには、非製造業の生産性改善努力が必要であると述べた。別の一人の委員は、女性や高齢者が働きやすい環境を整えることで、労働参加を高めることも求められると指摘した。この点に関して、ある委員は、非製造業では、設備投資は堅調で、収益力も上昇していること、また、幅広い業種で様々な需要の掘り起こしが進んでいることを踏まえると、非製造業の生産性は上昇してきているとの見方を示した。』

ホンマカイナという感じですが。


・先行きの上振れ、下振れ要因で輸出の話と消費税の話を鑑賞

上振れ、下振れ要因に関して少々鑑賞を。

まず輸出。

『輸出動向について、委員は、このところの輸出の弱さは、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高いとの見方で一致した。』

なのに何で先ほどの部分では先行きにその構造要因の言及がないの??????

『そのうえで、委員は、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどの海外経済の動向やわが国企業の内外生産ウエイトの状況次第で、輸出は上下双方向に変動する可能性があるとの認識を共有した。』

ということだが構造要因の寄与の話が華麗にスルーとはどういう事ですねん・・・・・・

消費税の影響について。

『消費税率引き上げの影響について、委員は、実質可処分所得にマイナスの影響を及ぼすものの、@政府による各種経済対策等が講じられていること、A税率引き上げは家計部門で以前から相応に織り込まれているとみられること、B財政や社会保障制度に関する家計の将来不安を和らげる効果も期待できることなどから、消費へのマイナスの影響をある程度減殺する力も働くとの見方で一致した。』

まあそんなに大きくないという気もするが、2番目は実際に時間が経過しないと判らんし、3番目はウソコケとしか申し上げようがない。

『一人の委員は、これに関して、昨年後半頃からの消費者マインドの悪化を懸念していると述べた。ある委員は、先行き、雇用・所得環境の改善が、消費税率引き上げの影響をどれだけ吸収できるかがポイントになるとの見方を示した。』

ですなあ。


・第一の柱、第二の柱

他のリスク要因の話はスルーしまして展望レポート検討最後の部分。

『まず、第1の柱、すなわち、先行き2016 年度までの経済・物価の中心的な見通しについて、多くの委員は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高い、との見解を示した。これに対し、何人かの委員は、物価の先行きの見通しについて、より慎重な見方を示した。』

3名な。

『次に、第2の柱、すなわち、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、委員は、経済の中心的な見通しについては、輸出の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしている、との認識を共有した。物価の中心的な見通しについても、大方の委員は、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしている、との見方を示した。これに対し、一人の委員は、リスクは下方にテールが偏っていると指摘した。』

下方にテールとな!というのは後を読むと判りますが佐藤さんです。


・物価安定の理解に関してたぶん佐藤さんと思われますが論点提示とな

本文13ページからの『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の見どころは一箇所。

『一方、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

というのはいつもの木内さんの提案ですけれどもこの先が見所。

『別のある委員は、「物価安定の目標」は、柔軟な枠組みであり、ピンポイントで2%を実現することが究極の目標であるとの誤解を避けるべきであるとの認識を示した。』

10月展望レポートの時にもこの話をしていましたですけど、そういや白井さんは展望レポートの表現で2%ピンポイントみたいな話をしていまして、白井さんともマッコウクジラなのは中々味わいがありますな!!!!


・ということで展望レポートに3名の反対である

つーことで展望レポートに3名の反対があったのですが、3名の反対理由がこれまた微妙に距離がありまして、まあその前の物価の話での強気派とそうじゃない人の距離感を反映しているのに加え、先ほどの政策枠組みなどにも掛かる部分があるなあと思います。まあ鑑賞しませう。

白井さん。

『これに対し、白井委員からは、物価見通しについて、「見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向かって収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる」を「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するもとで、見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

2%はピンポイントだという話と、見通しの終盤にかけて達成するという話と、その間にQQEを継続するという話を突っ込んでいます。


佐藤さん。

『佐藤委員からは、@物価見通しについて、「本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「見通し期間の中盤頃に2%程度を見通せるようになる」に変更すること、A第1の柱の中心的な見通しについて、「2%程度の物価上昇率を実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、B物価見通しのリスクについて、「上下に概ねバランスしている」から「下方にやや厚い」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

逆に2%はピンポイントではなくて柔軟な枠組みであるという話に加え、「見通せる」という表現を使っているのは以前佐藤さんが講演で説明しているように「フォワードターゲット」の考え方を示していますな。で先行きリスク要因として下方に厚いということですが、物価見通しの「見通せるようになる」という段階での足元の水準感はぼかされているのですが、ただまあ全然無理じゃんという話では無いのですね、うんうん。


木内さん。

『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて、「中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「中長期的な予想物価上昇率も安定的に推移する」に変更すること、A物価見通しについて、「暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「今後も概ね現状程度の水準で安定的に推移する」に変更すること、B先行きの金融政策運営について、「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

長いので整理すると、1番は期待インフレ率の上昇は2%ではなくその手前で止まるので十分という見通し&考えで、2番は実際の物価に関しても同様という話。3番目はいつもの提案で、つまりとりあえず2%は中長期的目標であってまずはデフレ脱却した状態で安定すればエエヤンという話だが、それはQQEの2年で2%で均衡を脱却という枠組みとは違う話でもあるというのは毎度のお話です。

ということで、反対しているお三方もまた見解が違うという所ですが、特に物価見通しに関する部分は強気派とそれ以外のお三方(執行部以外の方々が実際にどうなのかというのはこれまたやや謎で実際は強気派じゃない人もいる可能性が)の見解もだいぶ乖離していますし、何かまあその辺を考えながら読むと中々面白い鑑賞物でしたな、ということで引用第増量企画で誠に申し訳ございませんでした。

#だから置物落語ネタが出来なかった訳で




2014/05/26

お題「ダドリー総裁の出口政策技術論が割と面白い件について」

金曜の午後にこんなの投下されていました。
http://www.musha.co.jp/short_comment/detail/120
2014年05月23日
ストラテジーブレティン 第120号
日本株潮目の転換へ〜Enough is Enough 、悲観論はもうたくさんだ〜

・・・・・・・・・・えーっとあのその先生の楽観論の方がですなあ。

○市場メモメモ

・超長期輪番は同額で実施(なお短国は2兆円)

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140523.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年5月27日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,500 2014年5月27日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,500 2014年5月27日
国債買入(残存期間10年超) 1,700 2014年5月27日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2014年5月27日 2014年9月5日

ということでやたらめったら注目されてしまった超長期の輪番ですけれども、今回は減額無しとなりまして債券市場ちゃんは持ち直しというかその後後場から引けに掛けて先物とか長期とか堅調とか何ですねんという感じでしたが、まあ買いたい弱気の人がいたんですかねえ良く判らんですけど。なお、超長期は朝方弱めで直ぐに戻って輪番1700億円見て最初はパラレルっぽくなったのですけれども、その後改めて「どうせ超長期輪番減額待ったなし」という話にでもなったのか超長期の後ろの方は伸びイマイチさん、という後講釈で宜しかったでしたっけ??

まあこの輪番の件ですけれども、金曜にも申し上げましたようにそもそも論として金融市場局が昨年の5月末に出した「紙」が足元のディレクティブと整合性が取れていない(そもそも昨年と今年ではディレクティブ通りにやったとしても買入のペースが異なる)のが話をややこしくしている訳で、まー確かに機動的な対応が出来るようにということで色々な面を曖昧にして輪番を運営するというのも判るのですけれども、足元では(他にネタがないせいもあるのですが)輪番がどういうスケジュールおよび額で実施されるかが無駄に注目されるという形になっていまして、買入ペースについてそれこそ月次で「来月の予定」でも出したらどうよという感じではありますな。


○ダドリー総裁講演の出口戦略に関する話が割と面白かった件

先般寝起きでネタにしたNY連銀ダドリー総裁の講演ですが出口政策の話が結構面白かったので月曜雑談系のネタという事で。

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2014/dud140520.html

均衡金利が低いのでは云々の話まで引用しましたが、この講演の後半部分が思いっきり出口政策に関するオペレーションの話でして、量的にもほぼ半分を使っていますので読まない訳にはいかないという感じではありましてですな。

・出口政策でのバランスシート運営とな

『The next question I wish to consider is how the Fed will likely manage its balance sheet as the taper process is completed and lift-off eventually occurs.』

ということで利上げ時点でのバランスシート政策をどうするのかという話が始まります。

『Unlike previous normalizations of monetary policy, which only involved the level of short-term rates, this prospective tightening cycle also involves considerations with respect to the size and composition of our balance sheet.』

ですなあ。

『The Committee stated in its June 2011 exit principles that changes in short-term rates will be the primary means for adjusting monetary policy post-liftoff, not discretionary shifts in the balance sheet. In other words, the balance sheet will be set on automatic pilot. I believe this approach still very much applies.』

そういや2011年6月にノーマライゼーションに関する話みたいなのをしてました(まあその後QE拡大に追い込まれたので話はどこかへ消えてしまいましたが)けど、出口ではバランスシートを縮小するより利上げでしょという話でしたな。でその手段は色々とあります(キリッ)の世界なのですが。


・まず最初に出てくるのは「MBSのアウトライト売却はしませんがな」なのに味わいが

でその続き。

『However, the language in the June 2011 exit principles concerning agency mortgage-backed securities (MBS) sales no longer applies. As Chairman Bernanke noted in the press conference following the June 2013 FOMC meeting: “While participants continue to think that in the long run the Federal Reserve’s portfolio should consist predominantly of Treasury securities, a strong majority now expects that the Committee will not sell agency mortgage-backed securities during the process of normalizing monetary policy.” The balance sheet would shrink post-lift-off as Treasury securities matured and mortgages were prepaid, but outright agency MBS sales are no longer contemplated during the process of monetary policy normalization.』

ということで出口政策のバランスシート運営の話ですが、のっけに出てくるのが「MBSは売却しません」って奴でして、これ(めんどいので引用してませんが)前段部分で経済について話をしているダドリーさんが住宅市場について想定よりも弱く推移してやがって遺憾の極みみたいな話をしている(気になる人は確認してちょ)のでして、その絡みもあってMBSの話を最初に打ち込んできているというのが実にこう味わいがあるというものです。

つまりですね、(この後にも出てきますが)出口政策というか正常化の話をする中で、FOMC的にこりは困るというのは「市場が先行きの正常化過程を手前で全部織り込んで金利が上昇する事」というのと「MBS市場がコケて住宅があばばばばーになる事」というのがあるんですね判りますという所なんじゃネーノという話でして、まあ住宅に関する話と相まって味わいがありますなあという所です。


・償還再投資をしながら出口政策とな

その次が味わいがあるというものです。

『Also, I think that the language in the June 2011 exit principles with respect to reinvestment needs to be revisited. The exit principles state: “To begin the process of policy normalization, the Committee will likely first cease reinvesting some or all payments of principal on the securities holdings in the SOMA.”』

確かに以前は正常化においてまずは償還再投資を止めてバランスシートを自然に縮小という話をしていましたが・・・・・・

『There are two considerations that suggest to me that ending the reinvestments prior to lift-off may not be the best strategy.』

それは必ずしもベストではないとな。

『First, such a decision might complicate our communications regarding the process of normalization.』

ほほう。

『Ending reinvestments as an initial step risks inadvertently bringing forward any tightening of financial conditions as this might foreshadow the impending lift-off date for rates in a manner inconsistent with the Committee’s intention.』

償還再投資を止めると利上げの第一歩だと思われて市場が過剰反応するリスクが有るというのは判らんでも無いが虫の良い話にも程があるようにも思える訳で、市場は正常化プロセスを織り込みに行けば当然ながら中立金利水準は何ぼですかというような考え方で織り込みに行くのですから、そこをどうにかしたいという話はまあ図々しい話だとは思いますけどね。

『Second, when conditions permit, it would be desirable to get off the zero lower bound in order to regain some monetary policy flexibility.』

ふーん。

『This goal would argue for lift-off occurring first followed by the end of reinvestment, rather than vice versa. Delaying the end of reinvestment puts the emphasis where it needs to be-getting off the zero lower bound for interest rates.』

つまりゼロ金利制約のあるうちにバランスシート政策の柔軟性を放棄するような償還再投資停止をするよりは、柔軟性を確保しておきたいという事でして・・・・・・・・・

『In my opinion, this is far more important than the consequences of the balance sheet being a little larger for a little longer.』

まあ何ですな、しらっと「柔軟性の方がバランスシートが少々大きい状態が続くよりも重要」とか言っていますが、バランスシート1次関数理論の木久扇師匠におかれましてはこのような定性的な論議についてどのようにお考えなのかと小一時間問い詰めたい訳でございますし、バランスシート拡大ガーとか言ってる人たちにおかれましては、このダドリー先生の「バランスシートがちょっと大きくてもヘーキヘーキ」という説明につきましてのご感想をお伺いしたいですわな。


・ではどうやって利上げをするかというと「オーバーナイトレポファシリティー」の利用とな

んじゃその次。

『With respect to the issue of how the FOMC will control money market rates with an enlarged balance sheet, the Federal Reserve already has the necessary tool-the ability to pay interest on excess reserves. However, the degree of control could be further buttressed. Enhancing confidence in the Fed’s ability to control money market rates, and hence, inflation, might also help keep inflation expectations well anchored.』

とまあまずは超過準備への付利の話をしていますが、これだけですと短期金利の下限に必ずしもならないのは既に現状がそうなっているのですから明らかで、他にもこんなツールがありますよ(キリッ)という事で・・・・・・

『One method the Fed has been testing is an overnight, fixed rate, reverse repo (RRP) facility.』

キタコレ!

『The Federal Reserve posts a fixed interest rate and accepts cash from counterparties, which include some banks, dealers, money market funds, and government sponsored enterprises, on an overnight basis in return for a security. The repo facility is “reverse” because the direction in which the funds and securities move-participants are lending funds to the Fed rather than vice versa. Users of the facility are making the economic equivalent of an overnight collateralized loan of cash to the Federal Reserve.』

ということでここまでがオペの具体的な説明な。

『If implemented, the facility could be set up as “full allotment,” which means that there is no cap on the amount of funds accepted from any of its counterparties at the posted overnight interest rate. Or, caps could be imposed on either an aggregate or per counterparty basis in order to limit total usage.』

で、このオペですけれども基本的にはフルアロットメントで実施するという事でして、ただまあ場合によってはカウンターパーティーごとに利用限度額を定めるかもしれないという事でして・・・・・・

『The amount of funds invested in the facility is likely to be sensitive to the spread between the posted interest rate and comparable money market rates and the level of caps placed on usage. The narrower the spread to comparable money market rates, the greater the participation is likely to be. In our ongoing tests with this facility, the New York Desk has varied the RRP rate from 1 to 5 basis points and the cap on usage by counterparty has gradually been increased to its current level of $10 billion. As expected, narrower spreads to comparable money market rates and larger caps have led to greater usage.』

この辺から更にオペ技術的な話になって大変に面白いのですが、 当然ながらフルアロットメントで実施すれば市場金利のフロアがこの金利になり(それより低いレートでカウンターパーティーリスクを取るアホウはいないから)ますし、利用限度額を定めればこの金利よりも低い金利で資金を出す場合もあります罠という事ですな。で、利用限度額が高くなればそのスプレッドが縮小しますと。

『Although the testing process is still ongoing, early results suggest that the overnight RRP facility will set a floor under money market rates.』

ということで今の所の結果は(当たり前だが)オーバーナイトのRRPファシリティーは短期市場の金利フロアを形成する効果があると。

『Treasury repo rates have generally traded no more than a basis point or two below the overnight RRP rate.2 Thus, the early evidence suggests that this facility would help strengthen our control over money market rates.』

具体的にはトレジャリーレポ市場の翌日物がRRPから0〜2bp以内の所で止まるそうな。


・更にRRPの技術論で設定の仕方の難しさとな

『Two issues with the overnight reverse repo rate warrant careful consideration.』

ほほう。

『The first is how big a footprint the facility should have in terms of volume. To the extent that the overnight RRP rate were set very close or equal to the interest rate on excess reserves (IOER) without caps, then this might result in a large amount of disintermediation out of banks through money market funds and other financial intermediaries into the facility. This could encourage further development of the shadow banking system. If this were deemed undesirable, this would argue for a wider spread between the overnight RRP and the IOER in order to reduce the volume of flows into the facility.』

IOERとRRPのスプレッドが無くてアロットメントが大きいとディスインターミディエ―ションが起きるわシャドウバンキングの皆様がウハウハとなるわなのでケシカランとはこれ米国のシャドウバンキング規制の絡みもあると思うのですが、そういう現象が起きることによって市場金利のフロアが発生する訳ですし、そもそも論としてリスクフリー(信用リスクという意味で)の資産を短期金融市場に提供することによってシャドウバンキングの運用における過剰な信用リスクテイクを防ぐんじゃネーノという気がするのでこの説明は何ですねんという気もするがその話はまた後で出てくる。

『The second issue is the facility’s potential impact on financial stability. In particular, would such a facility make financial instability less likely? And, when financial stress did occur, would such a facility amplify or dampen financial strains?』

何で金融不均衡になるのでしょうかねえという話ですが、And以下にありますように、要は金融危機のような場合には安全資産への逃避が起きるのだが、このようなファシリティーがあると逃避が起きっぱなしになるという話でしてこれまた次に説明が。

『On the first point, it seems that such a facility would tend to make financial instability less likely. The overnight RRP facility allows us to make a short-term safe asset more widely available to a broad range of financial market participants.』

『The provision of short-term safe assets by the official sector might crowd out the private creation of runnable money-like liquid assets. This might enhance financial stability by reducing the likelihood of a financial crisis.』

ということで先ほどの謎説明は「実は金融安定化に繋がる」という話になっていまして、先ほどアタクシが申し上げましたように、シャドウバンキングの皆様に安全資産をより豊富に提供することによってシャドウバンキングが無駄な信用リスクを取らない⇒金融安定化という話をしている訳ですが、そう考えますと米国がシャドウバンキング規制でどうのこうのとゆうてますが、そもそも論として短期金融市場において証券化商品みたいなのが市場として大発達している訳ではない日本や欧州、特に日本なんて短期金融市場の圧倒的多数の運用商品って短期国債(と国債レポ)なのですからして、いわゆるシャドウバンキング規制で金融安定化ガーなどというのは米国と中国だけでやってろやゴルァという感じではありますな。

話が逸れましたが2番目の件。

『However, if a financial crisis were to occur, the existence of a full allotment, overnight, RRP facility might exacerbate instability by encouraging runs out of more risky assets into the facility. That is because the supply of a full allotment facility would be completely elastic at the given fixed rate.』

固定金利のファシリティーが良くない場合があると。

『Money market mutual funds and other providers of short-term financing could rapidly shift funds into the facility away from assets such as commercial paper that support the private sector. In contrast, in the current regime, when financial crises lead to flows into less risky assets, their interest rates fall, limiting the appetite for these less risky assets. Consequently, under a full allotment setup, runs could be larger and these runs could exacerbate the fall in the prices of riskier assets. Note that the risk here is how quickly financial flows could reverse from one day to the next, not the average level of take-up of the facility over time.』

まあここの説明は何だかなあという感じもせんでもない。金融危機の時に安全資産へのニーズが高まると安全資産の金利は下がるが、このようなオペがあったら(固定金利のままだから)安全資産の金利が下がらないので、安全資産の金利低下の行き過ぎから来る裁定が働きにくくなるという事だが、そもそもそういう時には市場機能に任せても仕方ないというのはQE1の時に学んだのではないかという気がする訳で、まあこの辺のロジックは何かだかなあという感じがする(大体危機の時には他のファシリティーが登場するじゃろと思いますし)が、正常化局面なのにこういうイッシューを持ち出すというのが正直謎ではあります。

『Fortunately, this risk seems relatively easy to address. One could design the facility to prevent rapid inflows during times of financial stress. This could be done by building in circuit breakers such as caps on overall usage of the facility.』

しかしどうも方向性として「安全資産を使わせない」という話をして対処するっぽいようで、まあこの説明は正直大丈夫かと思いますし、この調子だと次に何らかの信用系のバブル崩壊があった時にまたやらかしをしそうな悪寒がせんでもないので、話の本筋とは違うがこの辺見ていると別途の不安がありますな。

『The circuit breakers would not affect the amount of take-up during normal times or prevent take-up from rising at moderate rates. Instead, they would be in place to limit the pace and magnitude of inflows during times of stress.』

うーむという感じです。でまあここまでがRRPファシリティーの話で残りがおまけという感じで、つまりはこのRRPファシリティーで利上げ時に市場金利のフロアを設定したいらしいです。

では他のファシリティーですけど。


・タームデポジットファシリティーについて

『A second option to improve the Fed’s control over short-term rates is to drain reserves by offering banks term deposit accounts in which to invest funds for longer terms than overnight. There are two issues that might make this option somewhat less attractive.』

手段はあるがsomewhat less attractiveとな。

『First, to strengthen monetary policy control significantly through this course, it might be necessary to drain most of the $3 trillion of reserves. This could be done of course with effort, but is the effort worth it? 』

『Second, the Fed would undoubtedly have to “pay up” to induce banks to hold term deposit accounts relative to keeping their monies in reserves at the excess reserves interest rate. This would likely result in higher Fed interest expenses relative to relying on an overnight RRP facility to set a floor on money market rates.』

どうも額を沢山実施しないといけないから嫌だ(だったらフルアロットメントは何ですねんと思うが)というのと、利息を払うのが見た目としてよろしくない(RRPも実際は同じなんだが)という事で、何か本質論よりも「オペレーションの見た目」として「世間から銀行への利益供与みたいな言われ方をしたくない」というのがあるようですな。


・ということで以下纏め部分

以下は技術論では無くて今後も研究をしていきますし、そもそも論として技術的な短期的な話だけではなく長期的な話が重要で、バランスシートのマネジメントをそうやって行きますかというのは前例のない話とか、まあそういう話をしていますが折角なので最後まで引用します。

『The choices here are important and I expect that considerable testing, analysis and discussion will be necessary to reach firm conclusions about the appropriate course. My goal would be to clarify our intentions later this year, long before we begin to contemplate raising short-term rates.』

『I also think that the choices are about how to conduct monetary policy during the transitional phase, not about the long-term monetary policy framework. Longer term, the issue will be whether to return to the type of corridor system that was in place prior to the crisis or to instead to stay with the type of floor system that will likely be the type of regime that is in place as the balance sheet gradually normalizes. I expect that the choices made over the near-term can be implemented in a way so as not to forestall either a corridor or a floor system over the longer term. The experience we gain with operating monetary policy effectively with a very large balance sheet will undoubtedly inform that choice. 』

『But, that topic is putting the cart far before the horse. First, we need an economy that is strong enough to more fully utilize the nation’s labor resources and to begin to push inflation back towards the Federal Reserve’s long-term objective. Only then can the monetary policy normalization process proceed. Although we are making progress towards our goals, we still have a considerable way to go.』

『Thank you for your kind attention. I would be happy to take a few questions.』

なお、時間が無くなったので引用だけで済ませている訳ではありまません(^^)。





2014/05/23

お題「総裁会見および会見に関連して国債残高旬報と輪番に関わるエトセトラ」

自民党様謹製の成長戦略がこれですか。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140522/stt14052223490011-n1.htm
プロ野球16球団に拡大を 自民が提言、地域活性化狙う
2014.5.22 23:49

とりあえずこういうのを堂々と出す議員の皆様におかれましては鳴門海峡渦潮ドラム缶クルーズツアーに参加されることをご提案申し上げたくなりますな。つーか昔の自民党だったらそういうの出す前に誰かの一喝が入っていたと思うのですけど大丈夫ですかねと。

#何とかストの見通しが正しいから日銀の説明をまるで考えないで7月に追加緩和とかGPIFの基本ポートフォリオ変更だから追加緩和とか金融政策運営ロジックまる無視の話を公共の電波で発信される何とかスト様におかれましても大阪南港ドラム缶クルーズツアーへようこそ!!!

あと超どうでも良いのですが、昨日は「福井地裁」という字面を見る度に満面の笑みで会見に臨む俊ちゃんの姿が目に浮かぶと言う遺憾な事案が発生していたのですがそんなアホウはアタクシだけですかそうですか。


○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405c.pdf

・デフレ脱却宣言(もどき)関連質疑

実質最初の質問で早速来ておりますが・・・・・・・・・

『(問) 本日発表されたステートメントの最後のところで、「『量的・質的金融緩和』は所期の効果を発揮しており」という文言を加えたと同時に、日銀の金融政策運営について、「15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」という文言が外されたわけですが、日銀として、現在の物価情勢というか、日本経済は、デフレではないと考えている、あるいはデフレからもう既に脱却していると考えているとみてよいのか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』

で、そのお答え。

『(答) 「量的・質的金融緩和」の効果については、先般公表した展望レポートでかなり詳しく説明したところですが、所期の効果を発揮していると認識しています。今回の対外公表文は、こうした認識を踏まえたもので、特別なことを申し上げているわけではありません。』

前回展望レポートで申し上げたものを声明文に落とし込んだだけという意味では特別に何か変えた訳ではないのですが、まあそうは言っても「所期の効果を発揮」というアセスメントをステートメントで示したのは特別じゃないですかねえと思いますけど。

『なお、デフレという言葉は、一般的には「物価が持続的に下落する状態」を示すと理解していますが、その判断にあたっては、背後にある経済の様々な動きと併せて、色々な指標を総合的に点検していく必要があると思っています。』

これは「政府として決めているのは旧経済企画庁なのでうちらは宣言とかしませんのよ」という話をソフトに言っているんですねわかります。

『いずれにしても、日本銀行としては、「物価安定の目標」は、消費者物価の前年比上昇率で2%であり、その実現のため強い決意をもって、今後とも「量的・質的金融緩和」を推進していく所存です。』

と、ここで切れていまして、今回は全編に渡ってそうなのですが、「達成が難しいと思われるような情勢の変化が生じたら躊躇なく対応」的な追加緩和クレクレの皆様歓喜の発言を一切行わないというのが仕様になっていまして、この辺に関しては全く無いと思われても困るのだが、クレクレが図に乗ると一々MPMの度にああだこうだと言われるとそれはそれで困るという話ですな。

でまあここにあります発言部分ですが、「物価安定の目標が2%」という話をしているというのはどういう事を仰せになりたいのか、という事を考えますと、昨日も申し上げましたように「日銀のマンデートは2%物価安定目標であり、デフレ脱却してもマンデート達成でも何でも無いのだからその点に関して一々宣言したって意味が無いでしょ」という所だと思います。


別途こんな質問も。

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、先程も少しお話がありましたが、公表文について、「『量的・質的金融緩和』は、所期の効果を発揮しており」と明記する一方で、「15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」という表現が抜けたことについてです。消費者物価が1%台前半でずっとプラスで推移している状況も踏まえて、「デフレからの脱却に導くもの」という表現が合わなくなってきているということを捉えての変化なのか、マーケットの一部には、日銀による静かなるデフレ脱却宣言みたいな声もあるようなのですが、今回表現を変えた意味合いをもう少し詳しく教えて下さい。(以下割愛)』

どう見ても重複質問です本当にありがとうございました。

『(答) まず第1 点については、先程申し上げた通り、展望レポートで相当詳しく議論しましたし、現在の「量的・質的金融緩和」を昨年4 月4 日に導入して以来1 年強とあって、ご指摘のような事態の流れというものも頭の中にあったことは事実ですが、何かサブスタンスを変えたということでは全くありません。』

サブスタンスキタコレ!というので喜んでいる場合ではありませんが(^^)、まあデフレ状態とはさすがに言わんでしょという意識はあるんですねわかります。

『あくまでも1 年1 か月、ないし2 か月の状況をみて、展望レポートでも2%の「物価安定の目標」へ向けての道筋を順調に辿るという意味で、所期の効果を発揮していると申し上げたわけで、それと同様な言い方をして、引き続き「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する」という従来通りの言い方を繰り返しました。』

展望レポート基本的見解の最終部分は「順調」文言が無くなっていましたけどね!!!!


・クレクレとか知らんがなとな

『(問) 金融市場の動向についてお尋ねします。連休明けの株価がアベノミクス始まって以来初めて、前年同日を下回る状況になって、それが足許も続いています。為替も、今日、チャート上の節目を若干上回って円高が進む場面がありました。そういう中で円安・株高というトレンドについて、トレンドとして何か変化が起き始めているのではないかという指摘があると思うのですが、その指摘をどうお考えになりますか。また、そのことが金融政策の運営上リスクとなってくる可能性があるのかどうか、その点をお聞かせ下さい。』

つまりクレクレ質問という事ですが、今回の会見で良く良く考えたら明確なクレクレ質問はこの程度となっておりまして、日銀の洗じゃなかった宣伝効果がやっと出てきましたね!!(白目)

『(答) 株式市場の動向については、様々な要因によって毎日、毎週、毎月と、影響を受けるわけであり、何か具体的なことを申し上げるのは避けたいと思います。』

というのはまあ普通。

『前々から申し上げている通り、基本的に株価は、企業収益の動向、先行きによって決まってくるところが大きいと思います。日本企業の収益は、2013年度は非常に大きく増加しましたが、2014 年度もそこそこの増加になるとみられており、そういった意味からは、トレンドとしては株高の方向が全く変わったとか、そう言うことは感じていません。』

自信満々キタコレ。

『為替は、もっと色々な要素によって影響され、特に外国の情勢に影響されますので、なかなか具体的なことは申し上げにくいですが、日本経済は緩やかな回復軌道に乗っておるわけですが、まだ2%の「物価安定の目標」に向けた道筋は半ばといったところであり、引き続き「量的・質的金融緩和」を継続していくということです。』

為替の方が株式より複雑というのはさすが元財務官ですね(^^)。

『他方で、米国経済を中心に、順調な回復がみられるところでは、金融政策もテーパーオフと言うか、テーパリングオフと言うか、緩和の程度をだんだん縮めていっているわけであり、そういった内外の景気、あるいは金融資本市場の動向を考えると、為替が円高になっていかなければならないという理由はあまりないと思います。』

まあ言ってる事は分からんでも無いがそこまで言うと辺りが元財務官(^^)。

『金融政策との関係では、どこの国でもそうですが、金融政策は、株価や為替にリンクして考えられているものではありません。』

中銀当局者として当然の発言だがクレクレに砲撃。

『基本的に、ほとんどの中央銀行は物価安定目標を定めて、その達成・維持に努力しており、その際には、各種の経済指標を見ていくわけです。その場合に、為替や株のことも経済に対する影響という観点から見ていくことは当然ですが、中央銀行としては、基本的に物価安定を目標にして、様々の経済指標を見ながら運営していくということだと思います。』

中銀としては全く当然の発言ですがこれでは麿ではないですかという説も有ったりする訳で・・・・・・・


・麿モードキタコレの辺り

幾つかの話があったのだが一番イイハナシダナーな質疑応答はこれですかね。

『(問) 私も潜在成長率についての質問です。私が質問する前から、この問題ばかり総裁は語っておられて、聞いている方は、おやっと、びっくりしているのではないかと思います。15 日の講演でも、潜在成長率について随分おっしゃっておられて、中長期的な成長力、潜在成長率を引き上げる必要があると主張されています。』

ですなあ。

『日銀の金融政策としては、潜在的成長率が高かろうが低かろうが、2%の物価目標を目指してやるということに尽きるのだと思いますが、仮にこの潜在成長率が高くならず、今のような1%を切る、0%に近いような状況の中で物価2%が実現した場合、これは日本経済そして国民の生活にはどのような影響を及ぼすのか、あるいは「量的・質的金融緩和」にどのような影響を及ぼすのか、これについてお聞きしたいと思います。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『おそらく、仮定の話にはお答えできないとおっしゃるのではないかとも思うのですが、もともと15 日の講演でも、成長力引き上げについて、デフレ脱却と日本経済の復活を繋ぐ最後の、そして最も重要なピースになると力説されていらっしゃいます。物価が2%だけど成長は0%と、そういった状況になることはもちろん好ましくないと思うのですが、ただこれはこうなっては困るという意味も含めて、分かりやすく丁寧にご説明頂ければと思います。』

これは中々良い孔明の罠。で黒田総裁が見事に漂白されて答えが麿モード全開となるのでした。

『(答) 中央銀行として、物価安定目標を立て、それを実現していくということは、最大の使命です。最初に言われた通り、実質成長率がどのくらいかということと直接的にリンクして金融政策を緩和したり引き締めたりということは、基本的にはないわけで、あくまでも与えられた経済のもとで2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続させるということが、中央銀行としての使命だと思っています。』

でここから先が漂白モード。

『ただ、日銀法にも書かれている通り、日本銀行としては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するということを使命としているわけですので、2%の「物価安定の目標」が達成されれば、後はどうでもよいというわけではもちろんありません。』

な、何だってーーーーー!!!!!!!

『先程申し上げたように、生産・所得・支出の好循環のもとで、日本経済がバランスよく成長して、雇用・賃金などの増加を伴いながら、物価が2%程度の上昇率に達する、あるいはそれを安定的に持続するということが一番望ましいわけです。そういった面では、先程から申し上げているような努力をしているわけですが、一方で、やはり、中長期的な成長率を高めていくという観点からは、中央銀行の域を超えた、政府とか、あるいは民間企業の努力、先程申し上げた3 つの点――設備投資の前向きの投資を通じて、資本ストックを増やしていく、女性などの労働参加等を高めて労働の供給を高めていく、そして、規制あるいは制度改革を通じて、生産性を上昇させていくということ――が、どうしても必要であろうということを申し上げているわけです。』

どう見ても漂白状態です本当にありがとうございました。

つーかですね、従来の日銀の説明は質問者が言っているように「まず2%の物価安定目標を達成してから後は考える訳で、成長率がどうのこうのとの関係とか知らんがな」という一種のヤケクソ開き直りスタンス(上記回答の最初の部分はその成分っすよね)であって、そのヤケクソ振りがデフレ均衡からの脱却という期待の転換に効果を発揮した訳ですが、デフレ脱却した所で突如このどこの白川総裁ですかというジャガーチェンジ振りを発揮するとかおいおいおいおいおいという感じはするのですな。

まあこれ単体で見た場合にはそらまあ正論ではあるのでして、単に単体での正論の話をしているのか、それとも微妙に曖昧なままで済ませている物価安定目標の定義部分(概念的にはフィリップスカーブで見た場合のY切片が2%であり、あるいは景気サイクルの中で平均的に2%程度の推移をするという話ですが、いずれも相当の事後にならないと判らないので、QQE政策の今後の運営という意味ではあまり意味が無い定義)に関する話が徐々に本格化していく中で一つの方向性を示しているのか、というのは現状では判断しがたい部分ではありますな。


・消費税反動は思ったより小さいキタコレ

これ字面で見るよりは会見録画の方がトーンは景気強気っぽかったように見えますがまあこの要旨がある意味正式版なので、そういう意味ではそこまで盛大に進軍ラッパを鳴らすのもさすがにリスクあるでしょという認識なんですかね(^^)。

めんどいので質問は割愛して答えから引用。

『(答) ご指摘のように、1〜3 月期の実質GDP成長率は、個人消費の駆け込み需要の影響もあって大きく増加し、それに加えて、設備投資も伸びを高めたということがあって、前期比年率+5.9%となったわけです。』

しらっと設備投資の話をしているのね。

『4〜6 月期の成長率は、確かに駆け込み需要の反動の影響から、個人消費が落ち込み、全体としてもマイナスになると予想しています。もっとも、雇用・所得環境が明確に改善するもとで、先程申し上げたように個人消費の基調的な底堅さは維持されるとみており、駆け込み需要の反動の影響も、夏場以降は減衰していくという展望レポートの見方に変わりはありません。』

ふむ。

『実際、4 月入り後の消費動向については、自動車など駆け込み需要が大きかった耐久財を中心に、反動減がはっきり現れているようですが、企業からは、反動減の大きさは概ね想定の範囲内であり、消費の基調的な底堅さは維持されているという声が多いようです。また、百貨店やスーパーなどの小売業界からは、反動減の程度は徐々に縮小してきているという声も聞かれています。外食や旅行などのサービスは、その性質上、消費税率引き上げの影響は限定的であり、底堅い動きが続いているという声が多いようです。今申し上げたような見方は、4 月の景気ウォッチャー調査においても、2〜3 か月先の先行き判断DIが、はっきりと改善していることにも現れているように思います。』

強気キタコレ。

『いずれにしても、消費税率引き上げの影響については、今後とも、各種の経済統計だけでなく、支店等を通じたヒアリング情報も含めた様々な利用可能な情報をできる限り集め、活用して、予断をもつことなく丹念に点検していきたいと思っています。』


・潜在成長率イカサマ説明キタコレの件

『(問) 今説明された潜在成長率についてお伺いします。まず、少し細かい点で恐縮ですが、先般公表された展望レポートのデータによると、潜在成長率は足許で0.2%を少し割っているのではないかと思います。展望レポートでは0%台半ばとご説明されていますが、ほぼ0%まで低下しているのではないでしょうか。数字のご認識を伺います。また、そうした供給制約がある中で、大規模な金融緩和を継続していくことによって、今後、物価上昇と鈍い成長という形で、やや物価と成長のバランスが崩れてしまうのではないかということはご懸念としてあるのか、お伺いします。』

ちなみにこの質問はさっき引用したイイシツモンダナーの前でして、つまり何度もこの潜在成長力を引き上げて云々の話をしているのですよね。

『(答) 潜在成長率の計算というのは、色々なところが行っていまして、その結果、数字も色々違っているわけです。確かIMFは0.8%と言っていたと思いますが、私どものエコノミストは0%台半ばという感触を持っていたわけです。』

か、感触だと????図表出してるやん。

『ただ、この潜在成長率は、何か固定したものというよりも、様々な要因によって変動していきます。その上、政策的な努力によって引き上げることもできますので、あまり固定的に考える必要はないのではないかと思っています。』

えーっとすいません展望レポートとかの説明では思いっきり「潜在成長率を上回る成長ガー」という話をしているんですけど、その基本的部分になる数字が「固定的に考える必要はない」とはこれはまたイカサマ説明ですな。

『ご指摘の点について、確かに2%の「物価安定の目標」の実現という場合には、わが国の経済が生産・所得・支出の好循環のもとでバランス良く成長して、その中で賃金や物価が次第に上がっていくことが望ましいわけです。』

この辺もやや白いですね。

『そのために、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を推進し、緩和的な金融環境を提供して、さらにはデフレ・マインドからの転換を図っているわけです。その結果もあって、このところ労働需給がかなり引き締まり傾向にあり、賃金の上昇圧力が着実に高まっており、企業収益も改善しているということで、好循環は作用していると思います。』

ふむ。

『ただ、中長期的な成長力を高めていくという観点からは、どうしても3 つのことが重要だと思います。まず、第1 が、企業における前向きな投資を促すということであり、第2 には、女性や高齢者などの労働参加を高めることや高度な外国人材を活用することを通じて、労働の供給力を高めていくということです。そして第3 には、規制あるいは制度改革を通じて、生産性自体を向上させていくということで、これらの3 つの取り組みが非常に重要であろうと思っています。』

潜在成長率の推計がおかしいのではないかという質問に対して思いっきり違う話に持ち込んでおりますが、困った質問の時に何時の間にか質問の趣旨と違う話に持ち込んでしまうのは常套手段。

『日本銀行としては、先程申し上げたように、「量的・質的金融緩和」を推進して、企業における前向きな投資を促す努力もしていますし、また、様々な形でリスクテイクをしてイノベーションをしていくということも、側面から応援をしているということです。』

ということでイカサマ説明クオリティの鑑賞でした。


○総裁会見の続きですが債券市場の流動性低下に関しては最後が市場雑談ネタになるのでした

今回もその質問があったのですが毎度のお答えでしたな。質問は割愛。

『(答) 前にも申し上げた通り、国債市場の流動性が非常に低下して、国債の取引がスムーズに行われていないとか、価格付けが適切に行われていないといったことは無いと思っています。ただ、大量の国債の買い入れを行っていますので、常に市場の関係者と意見の交換をし、一番適切な形で、金融緩和が経済全体に波及していくように努めています。』

はあそうですか(棒読み)。

『金利が低いこと自体は、色々な要因があると思いますけれども、1 つの大きな要因は、もちろん日本銀行が大量の国債を毎月購入し、保有残高を着々と増やしていることにあると思います。これは「量的・質的金融緩和」の目的自体がイールドカーブ全体を、短期金利だけでなくて、長期金利まで含めて、低位に安定させることによって、経済の回復、ひいては「物価安定の目標」の達成に繋げようということであり、これ自体は別におかしいことではないと思います。』

まあそうですが。

『将来に亘って金利がどういう経路を辿るかは、日本銀行の国債買い入れのみならず、市場関係者のインフレ期待、物価上昇期待がどのように変わっていくか、あるいは海外の長期金利の動向にも影響されるかもしれません。様々な要因によって影響されますので、今の時点で具体的に将来の姿を申し上げるわけにもいきませんし、あまり具体的に申し上げますと、金利についてフォワードガイダンスを出している様にも見られかねませんので、具体的には申し上げません。しかし、今の時点で何か国債市場が問題を孕んでいるとか、金利が低いことが如何か、といったようなことは全く考えておりません。』

はあそうですか(棒読み)という所でまあこの調子が続くんでしょ。で、国債買入に関してはこんな質問も。

『(問)(冒頭割愛)2 点目は、昨年5 月30 日に日銀は「当面の長期国債買入れの運営について」というペーパーで、1 回あたりの長期国債買入れのオファー金額の目安を公表されています。その資料では、残存期間5 年超10 年以下の長期国債は1回あたり4,500〜6,000 億円程度、10 年超については1 回あたり2,000〜3,000億円程度とありますが、ここ2、3 か月はずっと記載の数字を下回って買入れがされています。この数字について、改めて変更されたり、ペーパーを出されたりすることはしないのでしょうか。理由とか背景とかお伺いできるようであればお願いします。(以下割愛)』

『(答)(冒頭割愛)2 点目については、買入れの方針は金融政策決定会合で決めており、ご指摘のペーパーはあくまでも、それを受けた事務方の運営の指針ということです。常に市場の関係者とは、意見交換をしながら金融政策が一番適切な形で効果を発揮できるように運営していますが、先程申し上げたように金融政策決定会合で決める買入れ方針は全く変化していません。(以下割愛)』

という説明でまあ誤魔化されてしまっているのが残念無念という所なのですが、要するにMPMで決められている「残高増加が年間50兆円程度」「買入銘柄の平均残存期間が7年程度」という方針に対して、金融市場局が出している紙との間にコンフリクトが発生する可能性がある訳で、そのコンフリクトが発生した場合にどういう扱いになるのか、という点と、そもそもコンフリクトが発生したと認識する閾値のようなものがあるのか、という点が市場の一番困っている所なんですよね。

でまあここの説明にあるように「コンフリクトがあった場合はMPMが優先なのは当然」という事ではありますので、金融市場局が出した「紙」の通りに実施する訳ではないのですが、そもそも論としてMPMの指針のアローアンスがワカランチ会長という事ですし、実際問題として今や入札と輪番とインデックス長期化対応位しか債券市場のネタが無い中で、輪番どうなるのな話は超超超超注目されている訳ですからして、そろそろ例の「紙」も含めてちょっと見直した方がエエンチャイマスカとは思います。

ただまあその場合ですけど、市場との対話とか言ってヒアリングかけまくるよりは、ある日突如何の予告も無く出す方が良いんじゃネーノとは思う訳で、前回紙を出した時はどちらかと言えばきゃりーぱみゅぱみゅがマーライオン相場だった時の気休め効果とかそういう世界のものだったので、数字に関するインパクトが無茶苦茶あったかと言うと全体感として見ていたように思えるのですが、今回は市場のネタが輪番しか無いというような状態で、細かい数字の上げ下げだけでも何かインパクトありそうなので、やるならある時突然やらないとその前に無駄に思惑ばっかり出るでしょうなあという風には思うのですがどうですかね。

というのはですね、
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

こやつなのですが、今月から旬報になったのは良いのですが、旬報になったせいで今度は「今月の買入平均年限の中間ラップ」とかの集計が可能になった、というかもう皆さんこの数字をせっせと計算するのが仕様となってしまい、旬報の出るときは皆さんせっせと残業に勤しんでおられる(これ出る時間が遅め)と存じます次第なのですが、今回ですとカレントばかり入ってしまって平均残存の走りが8年キタコレとか話題になる事なる事。

つまりですな、保有銘柄残高公表の方の透明性を高めたのは良いのですが、肝心の輪番オペの運営の方が何かこう中途半端にファジーになっているので、却ってその透明性拡大が市場的には思惑という名前のエサを与える結果になってねえかという大変皮肉な展開ワロタという感じですな。ま、この旬報攻撃は補完供給で借入可能な銘柄をよりタイムリーに見やすくしようという趣旨の方がメインで、どの銘柄を購入したしたのお知らせは副次的(だって短国買入の方は旬報になっていないですから)な話な気もしますが、何ちゅうかアレですなあという事で、最後は総裁会見と関係ない話になってしまいました誠に恐縮至極。





2014/05/22

お題「決定会合レビューである/総裁会見は漂白あるいはシマウマの可能性が/FOMC議事要旨の出オチ鑑賞」

ブーメランってもんじゃねえぞおい。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140521/k10014607691000.html
高村氏 政権代わるたび解釈変わることない
5月21日 12時24分

『このなかで高村副総裁は、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を巡って、公明党が、政権が代わるたびに解釈が変わることはあってはならないとしていることに対し、「必要最小限度に限って行使を認める、いわゆる『限定容認』に対してですらこれだけの抵抗があるので、内閣が代わるたびにころころと解釈が変わるということは100に1つもない荒唐無稽な話だ」と述べ、懸念はあたらないという認識を示しました。』(上記URLより)

えーっと、今行おうとしているのって従来の内閣の解釈を変更しましょうって話じゃなかったんでしたっけ大丈夫ですかその理屈。

#モーサテの米国市場説明なのだが昨日プロッサーとダドリーの講演を「インフレタカ派」と言っていたのに今朝は「連日の連銀高官のハト派発言も市場に安心感」とか言っていまして、まあ池谷さんは原稿通りに喋っているんでしょうけれども原稿を書いている人の記憶力がはいはいおじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょ状態じゃないかと心配するレベルw

#そのモーサテでは若者のインフレ期待を高めることが重要なので黒田総裁が大学などで講演をとかだいぶ斜め上の話が出ていたがそもそも東大物価指数の注目度って4月都区部CPI出た以降は低下しているように見えますがががが


○声明文ではご案内の通り「デフレ」云々の文言削除キタコレ!

ちなみにMPMの終了時刻はQQE導入以来最速となりましたが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140521a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140408a.pdf(4月1回目)

景気に関するアセスメント文言がある(=金融経済月報の公表がある)のは前々回になりますので、本日は基本的に4月8日の公表文との比較を行いますね。

・景気の現状認識:設備投資を引き上げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。』(4月8日)

つーことで表現は変わっていますが、これはまあ時期的に消費税増税直後なのと、増税から1か月経過した後という事での表現変化でありまして、駆け込み需要の反動が発生する事については当初想定通り(ちなみに会見では想定よりも少ないかもという話でしたが詳しくは会見要旨出てから明日)なのでここは実質変化なし。で、以下は各需要項目。


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(4月8日)

とここは同じ。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。』(4月8日)

設備投資は持ち直し⇒増加と判断引き上げですな。

『公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。』(今回)

『公共投資は増加を続けている。個人消費や住宅投資は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっている。企業の業況感は、引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられている。』(4月8日)

公共投資は増加⇒横ばいですが、高水準でとかいう水準感の文言をわざわざ入れている辺りが味わいがあるというもので、でまあ消費税増税の駆け込み関連の文言を変更しているのは最初の部分と同じです。なお業況感云々に関しては短観直後の声明文にだけ出てくる仕様になっているので削除されている事に関するインプリケーションはありません(筈です)。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(4月8日)

ここは判で押したように同じですな。


・先行き見通しは不変・・・・・・なのだが物価の「暫くの間」はそろそろ変えないのかね

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(4月8日)

ということで相変わらず全く同じなのですけれども、このCPI見通しに関しては今年の1月(展望レポート中間評価)の時にそれまでの「当面」から「暫くの間」に変更しまして、その時に「暫くの間」という文言の解釈について質問された時に6か月程度の期間という話をしていた訳で、最初に文言が出てから5か月経っているのにこの「暫くの間」というのが変わらないというのはもしかして物価目標達成時期の後ズレが起きていませんか大丈夫ですかなどと申し上げたくなりますな。

なお、この前の展望レポートでも物価目標達成時期の表現が四半期から半年程度後ズレしてませんでしたっけというツッコミがあった訳でして、ここの「暫くの間」ってそろそろ「当面」に変えないんでしょうかねえと思うのですがまだそこまで自信ないんでしょウヘヘヘヘと一応ツッコミを入れておこうかと存じます。

ちなみに英文の方ですと、「for the time being」が「for some time」になってそのままで推移しています。


・リスク要因では白井さんの反対が無くなりました

やっと取り下げましたかはいはいワロスワロスという所ですが、その反対理由説明などの時間分だけ今回の決定会合の時間が短縮化されたんですねわかります。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(4月8日)

リスク認識は同じですが、注1の毎度お馴染み『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、5.の記述に反対した。』というのが遂に取り下げですかワロタという所です。


・そしてこっそりデフレ脱却宣言キタコレ!

まあ最初に見てあれれと思ったのが最終パラグラフですけどね。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(4月8日)

ということで今回はQQEについて「所期の効果を発揮」とキタコレでありますが、この「所期の効果」というのは先般公表された展望レポート基本的見解の本文8ページにある金融政策運営に関する部分にこのような記述がありますので、実は今回初めて出た訳ではありません。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404a.pdf
の本文8ページ(PDFでも8ページ目)のケツで、本文的にもケツの所です。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(上記URL先の展望レポート基本的見解より)

ということで所期の効果を発揮という大勝利エイエイオーなのは展望レポートを見た時に確認していたのでふーんという感じですが、今回はこのエイエイオーを出したのと一緒に後段の部分がばっさり削除されるの巻となりました(注の部分は木内さんのいつもの提案ね)。

で、以前でしたらデフレ脱却宣言キタコレ!という事になるのですが、何分にも現在の日銀のマンデートはデフレ脱却ではなくて、その先になります2%の物価安定目標でありますので、このデフレ云々の文言削除自体は新たな政策インプリケーションという訳ではありません(ちなみにデフレ判断をする係は旧経済企画庁です)。

つーかですな、そもそもQQEに関して「ここまで順調に推移」という認識を思いっきり示していて、しかも「2年で2%」という目標を立てている中で1年が経過しているのですから、何ぼ何でも未だにデフレ状態だったらダメだろという感じでして、文言が外れない方がおかしい(つーか1月中間評価辺りで外れてもおかしくなかったと思うのだが)ので、まあそういう意味では「ここまで順調に推移」というのを改めてコンファームしましたよという所ではないかと存じますです、はい。


なお、英文ではこの部分はこうなっています。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140521a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140408a.pdf(4月8日)

『Quantitative and qualitative monetary easing (QQE) has been exerting its intended effects, and the Bank will continue with the QQE, aiming to achieve the price stability target of 2 percent, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. It will examine both upside and downside risks to economic activity and prices, and make adjustments as appropriate.[Note]』(今回)

『The Bank will continue with quantitative and qualitative monetary easing, aiming to achieve the price stability target of 2 percent, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. It will examine both upside and downside risks to economic activity and prices, and make adjustments as appropriate.[Note 2]

Such conduct of monetary policy will support the positive movements in economic activity and financial markets, contribute to a rise in inflation expectations, and lead Japan's economy to overcome the deflation that has lasted for nearly 15 years.』(4月8日)

Quantitative and qualitative monetary easing (QQE) has been exerting its intended effectsですかそうですか。


○今回の会見は白日銀成分が濃厚な希ガス(詳しくは明日)

会見の録画を見ましたが、ベンダーのヘッドラインと比較して特段のヘッドライン詐欺が見受けられなくなったのは実に結構なことです。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5X0PH6TTDTH01.html
日銀総裁:2%達成なら後はどうでもいいわけではない−成長力が重要
更新日時: 2014/05/21 18:00 JST

ということで確かにそんな話を総裁がしておられましたが・・・・・・・・

『黒田総裁は「中央銀行として物価安定目標を立て、それを実現していくことは最大の使命だ」と話した。「実質成長率がどのくらいかということと直接的に何かリンクして、金融政策を緩和したり引き締めたりすることは基本的にはない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

ということでして、つまりこれは現在の金融政策運営における執行部的なロジックとなります(筈です)が、潜在成長率が幾らだから望ましい物価水準が幾らみたいな話、すなわち「中長期的に目指す物価水準は別として、経済の現在の実力から見た場合に実力以上の物価水準を目指すのには弊害もあるのではないか」という話に対しては盛大に反対という立場になっている筈でして、執行部的ロジックですと経済の実力云々と望ましい物価水準は別箇のもので独立事象みたいなもんである、という話になっています(筈です)罠という事です。

つーことでその辺は黒日銀であって、成長率なんぞ知らんがなそんなもんは2%の物価安定を達成してから考えればええんじゃ、とまあやや極端な表現になっていますがそういう話っすよね。しかし(これ会見でも同じフレーズの中で話をしていた筈ですが)この後に漂白されたハルヒコ先生が登場するのである。

『一方で、「日銀法にも書いてある通り、日銀としては物価の安定を通じて、国民経済の健全な発展に資することを使命としているので、物価が2%達成されれば後はどうでもいいということではもちろんない」と話した。』

麿日銀キタコレ!!!

『「生産・所得・支出の好循環の下で日本経済がバランスよく成長し、雇用・賃金などの増加を伴いながら物価が2%程度の上昇に達する、あるいはそれを安定的に持続することが一番望ましい」と語った。』

ということですが、経済の実力を云々という話は金融政策でどうなるかというとそれは知らんがなと開き直って、ワシら2%目標がマンデートですねん2年で達成するけえ成長戦略はお前ら頑張れやゴルァという話をするのが黒日銀であって、こんな話をする黒日銀は塩素剤漂白されている可能性がありまして誠に遺憾というものでありますな。

つーことで会見テキストを見ながら会見ネタは明日投下しますが、今回の会見では追加緩和に関しての話も特になく(質問する方もさすがに追加緩和はどうですかという突っ込み方をする向きが激減しているというのも影響しているが)、全般的に白日銀っぽい感じになっていまして、もしかして黒田総裁におかれましては会見の度に白成分が強い時とそうでない時を日替わりメニューで出してくるというシマウマ展開を考えているのでしょうか(4月8日以降ね)とかしょうもない妄想も沸き起こる今回の会見なのでありましたとさ。


○FOMC議事要旨・・・・・・・・はさすがにちょっと今日は(汗)

ブルームバーグニュースは何ぼ何でも記事の横串を通した方が良いのではないでしょうか・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5XVGQ6VDKHY01.html
米国債:下落、FOMC議事録に反応−出口戦略を議論
更新日時: 2014/05/22 05:02 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5XY236VDKHS01.html
米国株:反発、ハト派的なFOMC議事録を好感
更新日時: 2014/05/22 05:35 JST

・・・・・・・・さすがにこのヘッドラインをベンダーのHPで並べられると大草原不可避としかwwwwwwww

で、議事要旨ちゃんですけど、さすがに今日は意外にオモシロネタだったMPM声明文(とちょっとだけ白黒田総裁の会見)ネタがあったので超斜め読み・・・・・・をしようと思ったら冒頭でいきなりの出オチキタコレである。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140430.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140430.pdf

何がどう出オチかと申しますと・・・・・・・・・・

・最初にいきなり「金融正常化」小見出しワロタ

今回の議事要旨の盛大な出オチは冒頭部分であります。いきなり小見出しが『Monetary Policy Normalization』って盛大に茶を吹いてしまうではあーりませんか。

『Monetary Policy Normalization』

キタコレ。

『In a joint session of the Federal Open Market Committee (FOMC) and the Board of Governors of the Federal Reserve System, meeting participants discussed issues associated with the eventual normalization of the stance and conduct of monetary policy.』

出口政策に必要な金融政策運営についての議論キタコレ!

『The Committee's discussion of this topic was undertaken as part of prudent planning and did not imply that normalization would necessarily begin sometime soon.』

そらまあ直ぐに始めたら大騒ぎにも程があるのでこれは当然だが入れておかないと市場がパニクるわな。

『A staff presentation outlined several approaches to raising short-term interest rates when it becomes appropriate to do so, and to controlling the level of short-term interest rates once they are above the effective lower bound, during a period when the Federal Reserve will have a very large balance sheet.』

巨大なバランスシートを抱えた状態での利上げ、短期市場のコントロールをどうするねんという話で、ここで昨日のダドリー講演の後半部分の精読する暇がどう見ても無く(寝起きですから、と言い訳)ネタにしていなかったアタクシにつうこんのいちげきという所ですがががががが。

『The approaches differed in terms of the combination of policy tools that might be used to accomplish those objectives. In addition to the rate of interest paid on excess reserve balances, the tools considered included fixed-rate overnight reverse repurchase (ON RRP) operations, term reverse repurchase agreements, and the Term Deposit Facility (TDF).』

まあ確かにそうでしょと思いますが、恐らく超過準備付利だけではなく、準備預金制度の外側にある人たちに対しても使えるような買現(レポ)とか、外側の人も使えるターム物預金ファシリティーとかを投下しないとバランスシートの不胎化は難しいでしょうな。

『The staff presentation discussed the potential implications of each approach for financial intermediation and financial markets, including the federal funds market, and the possible implications for financial stability. In addition, the staff outlined options for additional operational testing of the policy tools.』

ほっほーという感じですが、金融市場のアプローチの部分でファイナンシャルスタビリティーとか出て来るわ、政策ツールのテストを更に実施という話は来るわで、直ぐに実施しないとは言ってますが連銀スタッフ出口政策の地均しする気満々という所ですな。

『Following the staff presentation, meeting participants discussed a wide range of topics related to policy normalization.』

で、FOMCの議論。

『Participants generally agreed that starting to consider the options for normalization at this meeting was prudent, as it would help the Committee to make decisions about approaches to policy normalization and to communicate its plans to the public well before the first steps in normalizing policy become appropriate.』

今この議論をするのは適切とな。

『Early communication, in turn, would enhance the clarity and credibility of monetary policy and help promote the achievement of the Committee's statutory objectives.』

それを人は地均しと言う。

『It was emphasized that the tools available to the Committee will allow it to reduce policy accommodation when doing so becomes appropriate. Participants considered how various combinations of tools could have different implications for the degree of control over short-term interest rates, for the Federal Reserve's balance sheet and remittances to the Treasury, for the functioning of the federal funds market, and for financial stability in both normal times and in periods of stress.』

個別ツールがどういう影響を与えるかとか中々これはやってみないとワカランというのがありますし、お試し状態の時と本番の正常化局面ではまた違ってくるかもしれませんけど、まあテストしないよりはした方が基本はマシだと思います。ただまあテストがあまりにも安易に行ってしまい現実の時には過酷環境になっていて全然違いましたとか青森5連隊状態なケースもあり得るので注意が必要ですが。

『Because the Federal Reserve has not previously tightened the stance of policy while holding a large balance sheet, most participants judged that the Committee should consider a range of options and be prepared to adjust the mix of its policy tools as warranted.』

逆さ絵時代はどうせ出口まで時間があるからという事で「ツールはあります(キリッ)」で済ませていた節が思いっきりありますが、さすがに具体的に正常化がどうのこうのという話になりますと、(キリッ)だけで済ますわけには行かない、という認識を持たれているようで中々謙虚でよろしい。

『Participants generally favored the further testing of various tools, including the TDF, to better assess their operational readiness and effectiveness.』

TDFとか言うと新しいテーマパークかと思ってしまう程度の能天気ですが何か?

『No decisions regarding policy normalization were taken; participants requested additional analysis from the staff and agreed that it would be helpful to continue to review these issues at upcoming meetings. The Board meeting concluded at the end of the discussion.』

ということ今後も研究をという話で締めていますが、まあ冒頭にこういうのを思いっきり掲載したって所には当然ながら意味があると思われます。

でまあその先は時間が無いので読んでませんから読めたら明日にでも、読めなかったら週初で勘弁。




2014/05/21

お題「寝起きで斜め読みの積りが意外にネタとして料理できたのでダドリー総裁講演をば」

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5T58Z6JTSEG01.html
GPIFに6人以上の理事会、日本銀行並みの法人へ−自民検討案 (1)
更新日時: 2014/05/20 18:06 JST

『5月20日(ブルームバーグ):自民党が検討している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織機構改革案の概要が分かった。GPIFを独立行政法人から日本銀行のような固有の根拠法のある法人に変更し、6−7人の理事からなる合議制の理事会が意思決定する仕組みとする。政府と新組織が協定を締結し、最低収益目標を決めることも検討している。』(上記URLより)

「政府と新組織が協定を締結し、最低収益目標を決めることも検討している」との事でございますが、肝心の政府様におかれましてはプライマリーバランス目標の達成に関してどのようになっておられるのでしょうかと小一時間問い詰めたい。

えーっとですね、本当は今日は先日のブラード総裁の講演で「あれこの人インフレ目標一本足打法だった筈なのに何でまたロンガーランの失業率とのデビエーションがどうのこうのとか言い出しているんだ」というのがあったのでネタにする予定だったのですけれども、ダドリー総裁講演があって市場が反応したという事になっているので寝起きで超斜め読みをして引用してるうちに何となくネタにまとまってしまったので予定を変更してダドリー講演になるのでした(大汗)。


○寝起きでダドリー総裁講演ですが株式市場が反応する程のタカ派ではないと思うのだが

インフレタカ派発言が出たので株式市場がおはぎゃーとなったと聞いたので寝起きで確認。
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2014/dud140520.html
The Economic Outlook and Implications for Monetary Policy
May 20, 2014
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks before the New York Association for Business Economics, New York City

・・・・・・・・と思ったのですが、さすがにこれはちと寝起きで読むにはアタクシの語学力がががががでおじゃりますが、そんなにインフレタカ派なのか??という気もせんでもない(ただし超斜め読みの印象なので違ったらゴミンナサイ)、つーかインフレタカ派発言で反応という割には米債10年とか堅調じゃねえかと思うのでしゅが。

・最初の所を見ると「経済の見立ては同じ」のようだが

『Thank you for inviting me to speak here today. It always is a special pleasure to address my fellow economists. In my remarks today, I am going to focus on the economic outlook and the implications of that outlook for monetary policy.』

で頑張って斜め読みしてみたが長くてさすがにきちんと読みこめていないので簡単にそれらしき所を当たってみますが詳しくはまた後日読んでみる。

『My views on the economy have not changed much since last fall. Although economic growth stalled in the first quarter, some slowing was expected and unseasonably harsh winter weather appears to have done the rest. The fundamental supports for a strengthening economy remain in place, and recent data seem to confirm that forecast. On the price front, I expect inflation to drift higher over the remainder of the year as the effects of some temporary factors that have been holding inflation down dissipate and the labor market continues to tighten.』

まあ物価の基調に対して懸念していないという意味では市場の見方よりも物価に対して強いとも言えますが、FOMCの中心的なビューとそんなに差の無い話を展開しているように見えますけど何でインフレタカ派発言という扱いになって反応するんじゃろ(ちなみにプロッサー総裁も本日はインフレタカ派発言をしていましたが、プロッサー先生は貫録のタカ派芸人なのでそういう発言が出るのはお約束の芸風なのだが)と思うのですけど。

『If my forecast is correct, as growth strengthens and inflation drifts higher, the focus will turn to monetary policy. In particular, what will be the timing of lift-off? And when lift-off occurs, how quickly will the Federal Open Market Committee (FOMC) raise rates and to what level?』

まあこの辺の話が「先行きの正常化プロセスありき」という印象を与えるとは思うのですが、そもそもTaperingを着実に行っている時点で正常化の話をしない方が政策論的に変であって、正常化しないのだったら何でTaperしますねんという事になるのですから、普通にこういう発言になると思うのだが。

『Also, with an exceptionally large balance sheet there will be considerable attention on the methods that the FOMC will likely use in order to exert control over the level of short-term rates. I can’t tell you yet how we will do it, but I am fully confident that we have the necessary tools to control the level of short-term rates and the credit creation process, and I will share with you some of my own thoughts on the subject.』

出口政策のツールはあります(キリッ)という話までしているのでタカ派的な印象を与えるんですかねえ。

『As always, what I have to say here today reflects my own views and not necessarily those of the FOMC or the Federal Reserve System.』

ということで経済見通し⇒物価見通しと来た後に「労働市場のスラックの推計に関する論点」に関してさらっと触れていて、その後に金融政策の話で利上げ着手に関する話をしています。

で、その後辺りから話が更に面白くなりまして、長期的な中立金利に関する論点として、今後の長期的な中立金利はヒストリカルなレベルよりも低くなるのではないかという話をしているのがオモロイ所でして、んでもってその後は正常化プロセスにおけるバランスシートのマネジメントという話になっていまして、技術論スキーな市場現場労務者としてはオモロスという話が延々と続くという展開になっています。

斜め読みをしますとそんな感じだと思われまして、従いまして誠に遺憾なことにネタにするにはこれは読み込みをした方が良さそうな気がするのと、結構論点が多岐あんど重要ポイントという感じですのでネタにするのに準備が必要かもです、と言いつつ一応気になった所だけネタに。


・物価云々の所ですが中心的なビューだと思う

その前に経済の話をしていて、しかも各需要項目の話なんぞもあってそっちもネタにした方が良さそうな気もするのですが、これがまた結構長いので盛大にスルー(ちなみにここから年末に向けて3%成長になります足元の弱さは一時的ですというのが基本的な話)しまして、物価の話の部分ですが、これを見ると普通に普通の話をしているように思えるのだが何でそう反応するんじゃろ。

『With respect to the outlook for prices, I think that inflation will drift upwards over the next year, getting closer to the FOMC’s 2 percent objective for the personal consumption expenditure (PCE) deflator.』

別に2%を抜けるような話をしていない(してたら大変だが)のですけどねえ。

『Some of the factors holding down inflation-such as the cut in Medicare reimbursement rates last April-were one-offs and are now dropping out of the year-over-year figures. In some other areas, such as owners’ equivalent rent, price pressures look likely to firm somewhat.』

でまあ今低いのはメディケアとかの影響があって下がっているのでして、今後は徐々に上昇圧力が強まるでしょうというのもこれまたFOMCの中心的見方だと思いますが。

『That said, I see little prospect of inflation climbing sharply over the next year or two.』

と言っていますのでどこがどうインフレタカ派なのかが判らん。

『There still are considerable margins of excess capacity available in the economy-especially in the labor market-that should moderate price pressures. Most notably, the trend of labor compensation is running at only about a 2 percent annualized pace. This is far below the roughly 3-1/2 percent pace that would be consistent with trend productivity growth of 1 to 1-1/2 percent and the FOMC’s 2 percent inflation objective.』

という見通しになっていまして、しかも物価に関する見通し部分って基本的にこの部分しか無い(この後労働市場のスラックに関する論点についての話になるので、まあそこは物価見通しに影響するマターではあるのだが)のでして、単にFOMCの中心的なビューを述べているように見えますがそれでタカ派というのも何ですかねえという感じです。


・インフレとインフレ目標に関してもごく普通の話

まあそんなのもありまして一応引用。

『Before I turn to the implications of the economic outlook for monetary policy, let me leave you with a final thought on inflation and our inflation objective.』

ほほう。

『I think there is some confusion as to whether the FOMC’s 2 percent inflation objective is a ceiling or not.』

なるほど。

『My own view is that 2 percent is definitely not a ceiling.』

そらそうよという事で、2%物価目標は別にシーリングな訳ではないとはその通りでっしゃろ。

『Once we reach 2 percent, I would expect that we would spend as much time slightly above 2 percent as below it, recognizing that we will hardly ever be exactly at 2 percent because of the inherent volatility in prices. If inflation were to drift above 2 percent, all else equal, then we would tend to resist such a rise. But, if inflation were slightly above 2 percent even as unemployment remained far above levels consistent with maximum employment, then the unemployment consideration would dominate because we would be further from the unemployment objective than we are from the inflation objective. This should not surprise anyone. This is what our “balanced approach”
implies.』

ということで、まあこれも特段変わった話をしている訳ではないですが、アクチュアルの物価が2%から ちょっと上昇したから引締めという物ではなく、あくまでも先行きの見通しがどうかという話が重要で、安定的に推移する中で若干上回るというのと、急速に上昇して抜けたというのでは話が違いますがなという説明をしていて、でもって先ほどの見通し部分というのを勘案するとこれでインフレタカ派という評価になるのは正直ワケワカランと思うのだがアタクシの英語力が無いせいの可能性はありますので念の為申し添えます(−−)。


・金融政策に関して

『Given my outlook for above-trend growth and inflation gradually drifting higher, the inevitable question is what this means for the monetary policy outlook.』

キタコレ。

『Over the near-term, if circumstances evolve relatively close to my forecast, I would continue to favor gradually reducing the pace of asset purchases by staying on the same glide path of a $10 billion reduction in the monthly purchase pace following each FOMC meeting.』

Taperingに関してはそらそうじゃろ。

『Assuming asset purchases end sometime this fall, the focus will shift to the timing of lift-off, the pace of tightening once lift-off occurs and where short-term rates are ultimately headed over the longer-term.』

キタコレ。

『The issue of how the Fed will manage its balance sheet will also be relevant, as well as how monetary policy will be conducted during a period when the amount of excess reserves in the banking system is unusually large. I will give you some of my early thinking on each of these issues in the remainder of my remarks.』

でまあ実はこの正常化プロセスの中でのバランスシートコントロールあんど金利コントロールという話を最後の方、というか後半の部分使って結構真面目に延々と説明しておりまして、まあこの出口政策技術論の話が延々と展開される、というのがもしかしたらタカ派の印象を与えているのかもしれません。

『Turning first to the timing of lift-off, how the outlook evolves matters. We currently anticipate that a considerable period of time will elapse between the end of asset purchases and lift-off, but precisely how long is difficult to say given the inherent uncertainties surrounding the outlook. If the economy is stronger than expected, causing the excess slack in the labor market to be absorbed sooner and inflation to rise more quickly than forecasted, then lift-off is likely to be pulled forward in time. If, instead, economic growth disappoints, inflation stays unusually low and the labor market continues to exhibit evidence of considerable excess slack, then lift-off will likely be pushed back in time.1』

とまあ利上げ開始時期に関してはごくごく普通の話をしている上に、特定時期の言及も避けている感じでございます。んでもってこちらの脚注1ですけどね。

『1 It is worth noting that the views of market participants as expressed in the Eurodollar futures market and those of FOMC participants as expressed in the March Summary of Economic Projections seem consistent with one another and indicate an anticipated lift-off sometime near the middle of next year.』

という事で、ユーロドル先物市場におけるマーケットの利上げ織り込み時期と、3月FOMCで示されたSEPにおけるFOMCメンバー(投票権無い人含む)の政策金利見通しが、共に来年の半ばごろの利上げ開始を示しているのはノートすべきことである、という風に脚注を置いている訳でして、別にダドリー総裁はタカ派的な見解を示した訳ではなく、セントラルビューを示しているだけだと思いますけどねえ。


・長期的な金利の均衡点は従来よりも下がっているキタコレ!

で、次に利上げ後の話をしているのが中々興味深い。

『With respect to the trajectory of rates after lift-off, this also is highly dependent on how the economy evolves.』

そらそうよ。

『My current thinking is that the pace of tightening will probably be relatively slow.』

と、利上げ後の引き締め軌道は相対的に遅くなるでしょうという話です罠。

『This depends, however, in large part, not only on the economy’s performance, but also on how financial conditions respond to tightening.』

経済のパフォーマンスだけではなく、金融引き締めにおけるファイナンシャルコンディションの変化にも応じて引き締めの速度を調整するとな。

『After all, monetary policy works through financial conditions to affect aggregate demand and supply. If the response of financial conditions to tightening is very mild-say similar to how the bond and equity markets have responded to the tapering of asset purchases since last December-this might encourage a somewhat faster pace.』

何ですかねえ、ここに市場が反応したんですかねえ。

『In contrast, if bond yields were to move sharply higher, as was the case last spring, then a more cautious approach might be warranted.』

ただまあこういう話もしている訳でして、要は正常化プロセスの中で金利が無駄に急騰して「意図せざる金融環境の引き締まり」が起きると困るという話をしている訳ですし、前段の部分はそらまあ警戒されるかもしれませんけど、景気サイクルと中立金利(とFEDが考えている水準)まで引き上げるために掛かる時間を考えると、市場があまり反応しないのであれば金利はそれなりのペースで上げた方が良い(中立金利に戻す前に景気が循環的に降下したら正常化プロセスが頓挫するリスクがあるのと、その時に緩和が必要だった場合に糊代が足りなくなるから)と思うので、政策技術論的には特に不思議な話ではないと思いますけどね。

更にこの後に中立金利に対する論点の話があるので、そういう意味では先ほどの部分を(株式)市場が過大に反応したという感じもしますし、逆にこの程度の話でタカ派キタコレとなるのは、明らかにその前に何度か展開されたイエレン議長の情報発信が無駄にハト派に寄り過ぎていた為に期待の逆回転が起きたとも言える訳で、イエレン議長大丈夫かと益々思うのでありますががががが。


・経済の中立水準が下がっていて中立金利が下がっているのではないかという件について

で、その次がそういう話。

『In terms of the level of rates over the longer-term, I would expect them to be lower than historical averages for three reasons.』

中立的な金利水準の低下キタコレ!!!!だから債券市場は10年金利下がっていたのですなと言ってしまえば要は債券市場の反応の方が正解ですなという話になるんだが。

『First, economic headwinds seem likely to persist for several more years. While the wealth loss following the financial crisis has largely been reversed, the Great Recession has scarred households and businesses--this is likely to lead to greater precautionary saving and less investment for a long time. Also, as noted earlier, headwinds in the housing area seem likely to dissipate only slowly.』

ということで経済の向かい風が依然として数年間以上に渡って続くというのが最初の理由。

『Second, slower growth of the labor force due to the aging of the population and moderate productivity growth imply a lower potential real GDP growth rate as compared to the 1990s and 2000s.』

高齢化と生産性の上昇が緩やかに留まっていることによって、レーバーフォースの伸びが弱い事は、90年代や2000年代と比較した場合の潜在的な実質GDPの低下を示しているとな。

『Because the level of real equilibrium interest rates appears to be positively related to potential real GDP growth, this slower trend implies lower real equilibrium interest rates even after all the current headwinds fully dissipate.』

ということでヘッドウインドが無くても構造的に潜在成長率が下がっている可能性キタコレ。

『Third, changes in bank regulation may also imply a somewhat lower long-term equilibrium rate.』

これもまた興味深い論点を示していますなという所で、銀行規制強化は長期均衡金利水準を若干引き下げる要因になるとな。

『Consider that, all else equal, higher capital requirements for banks imply somewhat wider intermediation margins. While higher capital requirements are essential in order to make the financial system more robust, this is likely to push down the long-term equilibrium federal funds rate somewhat.』

ということで、資本規制が強化されると金融の頑健性は高まるけれども、賦課資本が高まってレバレッジが効かせ難くなったらそら均衡金利水準は低下しますわという話をしておりまして、まあ逆に言えば金融規制強化で潜在成長力が落ちるのは合点承知の助という風に説明しているという事でもありまして、しらっと話をしていますが何気に重要な論点に触れていますな、という所です。

『Putting all these factors together, I expect that the level of the federal funds rate consistent with 2 percent PCE inflation over the long run is likely to be well below the 4-1/4 percent average level that has applied historically when inflation was around 2 percent. Precisely how much lower is difficult to say at this point in time.』

ということで、2%物価上昇目標に対する中立的な金利水準は過去の平均的な水準である4-1/4%よりも低いと思われるが、どんだけ低いかについては今の所判断しにくいので勘弁という説明をしていまして、これは中々な話をしてますな、うんうん。

『The fact that the equilibrium real federal funds rate is likely to be lower for a long time underscores the need for caution in applying the benchmark Taylor Rule as a guide to the appropriate stance of monetary policy.』

テイラー涙目ということですか、わかりません(><;

『As typically applied, the Taylor Rule assumes an equilibrium real rate of interest of 2 percent. This seems much too high in the current economic environment in which headwinds persist, and somewhat too high even when these headwinds fully dissipate.』

テイラールールで計算される適正政策金利はそもそも計測的に高杉晋作ということですな。

ということで、まあ確かに話として正常化を前提にしている話でして、最近のイエレン議長のハト派丸出し講演と比較すると極めて中立的な話をしているので市場がちとビックリしたのかも知れませんが、ここの長期中立金利の話なども含めて読みますと別にタカ派丸出しの話ではなく、それよりは中長期的に見た場合のFF金利の位置を修正するような話をしている訳でして、タカ派でガックリという反応を米国の株式市場方面から出ているというのが、先ほども申し上げましたようにイエレン議長のコミュニケーションポリシーの失敗というかタカ派の火消しをしたら火消しをやり過ぎましたねという評価になるんじゃないかなあと思いました。

で、この後は出口政策技術論になりまして、市場現場労務者的には面白いネタではあるのですが時間と量と読み込み能力の関係上スルーします(後日ネタにするかもしれません)すいませんすいません。




2014/05/20

お題「各種雑談メモ/アトランタ連銀ロックハート総裁講演は米国政策の新興国への影響に言及とな」

ふーん「期待」ですかあ・・・・・・・

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140520/t10014567291000.html
日本の集団的自衛権 米軍高官が強い期待
5月20日 5時12分

『そのうえで、「将来的にはNATOの同盟国と同じような共同作戦を展開することも、われわれは考えるべきだ」と述べ、海上自衛隊の活動がイギリスやフランスなどヨーロッパの同盟国の軍隊と同じレベルに拡大されるのが望ましいという認識を示しました。』(上記URLより)

記事の表題にこっちの発言を使わないんですかそうですか(棒読み)。


○こうウゴカンチ会長ですと市場メモもですなあ(だが各種メモ)

まあ10年の位置は似たようなもんの中一応超長期とかのカーブは微妙に動くのですけれども、動くゆうても時々ヒョイと動いてそうじゃない時は動かんとか、実にこう微妙な動きしかしないので困ったもんだ(ってまあボラが急騰して馬鹿動きされても困るとか言い出すのですけれども^^)と存じますが。

・オペ関連メモ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140519.htm

CP等買入 4,000 2014年5月22日
国庫短期証券買入 25,000 2014年5月21日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年5月21日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年5月21日

短国買入また2.5兆円かよという所ですがオペ結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140519.htm

国庫短期証券買入 54,736 25,007 0.000 0.000 95.1
国債買入(残存期間1年以下) 6,298 1,102 0.010 0.010 63.4
国債買入(残存期間5年超10年以下) 18,853 4,008 0.003 0.003 53.3
CP等買入 7,732 3,781 0.085 0.088 8.9

短国買入のレートは引けでしたけれども、2.5兆円日銀様お買い上げの余波でGCレートはきっちり低下という事で、結局短国発行日の所で上昇して日銀買入の所で低下するという毎度のパターンになっていて、変化率だけ見ればGCレートが金利の中で一番良く動いている(ただしただの官製需給)というお洒落な展開になっておりますの。

あと、CP買入に関しては前回が平均8.7bp足切り8.5bpだったので気持ち金利上昇しましたけれどもこちらは直近の短国レートの低下は関係なしという展開でして、そらまあ発行レートの方が横ばいですのでそらそうよという感じですかな。


・早川前理事のQQE評価とな(惜しくもメモ)

こんなのがあったのに今更気が付くのでした(汗)。

http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201405/2014-5-1.html
「異次元金融緩和」:1年後の評価
2014年5月13日(火曜日)

暫く前にブルームバーグニュースでインタビュー記事が出ていて↓

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N56W7R6JTSEO01.html
国債暴落必至、日銀の「不都合な真実」潜在成長率低下で−早川氏 (1)
更新日時: 2014/05/07 16:27 JST

何じゃこのヘッドラインはと思ったらやはりブルームバーグニュースが発言の中の部分で一番センセーショナルな所を切り取ってヘッドラインに仕立て上げるというイカサマクオリティが炸裂した結果ああいうヘッドラインになっただけというのが最初の早川さんのコラムを読むと判るかと存じますが、折角インタビューをしてもああいうヘッドライン打たれるとメディアに出て見解を述べる意味というのが無くなってしまうのではないかと存じますので、このようなイカサマヘッドラインしか打たないようなメディアに対しては真の意味で有識者だと思われる方におかれましてはインタビューなどをお受けにならない方がよろしいのではないかと存じますがねえ。

でまあネタにしようかと思ったのですが、富士通総研様におかれましてはコラムなどを盛大にネット上に公開している割にはコンテンツ利用条件の中に引用に関する項目が入って居ないので引用して良いのか良くないのか判らんという状態なので惜しくもメモとして置いておくだけなのでした。
http://jp.fujitsu.com/group/fri/terms/

ちなみに超まとめるとQQEは資産価格には影響を与え、就中為替市場と株式市場にはこうかはばつぐんだであったという話でして、「実質金利が下がれば全てハッピー」のリフレ派(の一部)をdisりながら返す刀で株高円安の進展を評価しないで「株高円安の効果は所詮偽薬」という反リフレ派(のうち一部)をdisるという話をしています。

でまあ問題は出口ですよね、というのが結論で第三の矢マダーって話でありまして、国債暴落必至とかそういう話ではありませんので念の為。

あとですね、昨日モーサテで早川さんがああだこうだお話をしていたのですが、その中で潜在成長率云々の話をしながら出していたフリップがアチャーという代物だったのですが、それは何でしょうと言いますと展望レポートの図表40とだけ申しておきましょう(^^)。


・一応決定会合プレビューメモ

まあ今回の決定会合で何かある訳はありませんのでそれはそれでプレビューもへったくれも無いのですけれども、今回は決定会合後の総裁会見でこんなツッコミがあった場合にどういう答えが帰ってくるのかなあという辺りを期待したいなあと思います。

でまあツッコミ希望なのは先日の黒田総裁の講演で示されていた「供給力の天井」の話でして、この話って突き詰めると「そもそもそういう状況の中で2%の物価上昇を短期的に目指すのは国民厚生上適切なのか」とか「供給制約があって潜在成長力が低下している経済において2%の物価上昇目標の水準をサステイナブルに達成できるのか(経済が下向きになった途端に物価の低下圧力が強くなるのでは)」とかいう話になって来ますし、そもそも潜在成長率が0%台半ば近辺辺りにあって、将来的にそれが徐々に引きあがって行くという展望レポートの根本部分が正しいのかよという話になるのですな。

あとツッコミ希望なのは先行き物価が上昇していくパスがどうなのかという話で、需給ギャップで押していくと先ほどの潜在成長率低下の話になりますし、為替ルートの話はまあ最近はしないようになっていますから、はてさてどうなんでしょと思われる次第ですな。

なお、まだツッコミをするのは早いと思うのですが、そもそも論として「2年で2%の物価上昇目標」というのの落とし前という意味では、物価上昇目標達成とはどういう状態を指すのか、というのが不明確でして、一応「フィリップスカーブで見た場合にY切片が2%」とか「景気循環の中で平均的に2%で推移」というような話はありますけれども、これらの説明だと超事後的にしか判らないのでありまして、通常の金利政策をやっているなら別にまあそれでも良いのですが、超越QQEを実施しているのですから、そういう事後的な指標を見て達成したのが確認できた時には(QQEが物価に大きな効果を与えているならば)恐らく緩和政策のやり過ぎで手の施しようがなくなっていると思われますので、物価上昇目標達成とは何ですねんという点をどう整理すれば良いのかという説明もそろそろ総裁会見で示して欲しい物ですな(なお今質問したら「総合的に判断」としか言わないと思います)。



○アトランタ連銀ロックハート総裁講演で「米国の金融政策が新興国に影響」話とな

ちなみにロックハート総裁は来年の投票メンバーですな。

http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140511_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/140511_speech_lockhart.pdf

The Global Economy, the U.S. Economy, and the Federal Reserve’s Monetary Policy
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta
Dubai, United Arab Emirates
May 11, 2014

こちらを見ると判りますように、講演自体がUAEのドバイで行われているというのもあるせいでサービスが入っているとは思うのですが、「FEDの金融政策が海外経済、特に新興市場に影響を与える」という話を正面切って説明するのってFEDらしからぬなあと思ったりしたのでネタにする次第。

まあここもと(昨晩ウィリアムスさんがインタビューみたいなのに出てたらしいが)講演記録で出てくるのがイエレンさんの議会証言を別にするとラッカー・フィッシャー・プロッサーという大体読まなくても何の話をするのかが読めてしまう人(だからと言って読んでいるのをさぼっていると肝心な事を読み落とす可能性があるのだが)だったので読んだのですけどね。


・最初にまとめがあるのでまとめを読む

『Key points』ってのがありまして。

『In Dubai on May 11, 2014, Atlanta Fed President Dennis Lockhart shares his views on the state of and outlook for the global and U.S. economies. 』

ほうほうそれでそれで?

『Lockhart notes that the global economy has been gradually recovering with moderate rates of growth and low inflation, but also with significant resource slack in advanced economies.』

ということで、先進国経済には「significant resource slack」という認識を示していまして、成長はモデレートでインフレは低いという説明ですけれども・・・・・・・

『Lockhart’s U.S. forecast calls for growth accelerating to an annualized rate of around 3 percent. He will be watching for a stronger rate of industrial production growth, improved demand for capital goods, and a step-up in consumer spending.』

ロックハート総裁は米経済については3%成長に向けたパスを見ていて、SEPで示されているレンジの中では多分上限に近い方の予想をしています。

『Lockhart expects the Fed’s asset purchase program to be completely phased out by later this year, and says economic conditions will justify beginning to raise interest rates in the latter half of 2015.』

2015年後半から利上げ着手、ということでして、一番早いと7月で普通に考えると9月なんじゃネーノという感じではあります。つーか今の「0-0.25%」というレンジを「0.25%」にするのが初回になるとすると7月から毎回メジャードペースで25bpずつ上げると年末1%になるのか。まあ技術的というか景気サイクル的に25bpづつチンタラと利上げするのが適切なのかはかなり謎だが。

『Lockhart believes that changes in U.S. financial conditions affect interest rates and asset prices in other countries through various channels, but feels that overall emerging market vulnerability to external causes is considerably lower than it has been in the past. 』

でまあ今回の講演でほほうと思ったのがここの下りでして、米国の金融政策が他国に対して色々な経路で影響を及ぼす、という話を正面切ってしているのは割と珍しいなあと思うのでして、基本的にFEDはモンロー主義ちっくな話をして、問い詰められるとそらまあ影響ありますけどねえみたいな感じでお話をする、という流れがFEDの仕様なんですよね。

ただまあ「エマージングマーケットの外的要因に対する脆弱性は以前よりもかなり弱くなっている」という話をしていますし、この「海外への影響」という話はしているものの、だからどうするという話は特段していないので、まあそういう意味ではこの講演がUAEで実施されているのでサービスフレーズを入れたという事なのかもしれません。とりあえず今回はこの部分を引用します。

『Lockhart notes risks to his outlook in terms of U.S. economic growth momentum, geopolitical events, and financial instability, but is not overly concerned that markets or institutions pose broad systemic risks at this time. 』

リスクに関しては上記のとおりですが、ほほうと思うのはリスクの中で(小さいと言う認識は示していますが)「financial instability」が入っている所でして、スタイン理事の影響恐るべしということでよろしいでしょうかわかりません(><;


・米国の金融政策運営は資本流出入で新興国などに影響を与えるとな

ということで後半の『Effects of U.S. monetary policy worldwide』から。

『The world watches U.S. monetary policy closely, and global capital flows are influenced by expectations of Federal Reserve policy. Recent turbulence in certain emerging markets led to substantial controversy over the effect of U.S. policy on the rest of the world.』

こう直球で米国金融政策の与える海外資本市場への影響を示すのはFEDには割とレア(^^)。

『Questions were raised about the wisdom and timing of the Fed’s decision to start withdrawing the extraordinary support provided by quantitative easing and the decision to do so seemingly without regard to the effect on other countries.』

ですです。

『I’ll give you my perspective as one U.S. policymaker.』

ほうほうそれでそれで?

『Changes in U.S. financial conditions do affect interest rates and asset prices in other countries through various channels.』

ほー。

『U.S. central-bank policy influences capital flows and their effects, in turn, on the foreign exchange rate, equity markets and debt markets, both external and domestic.』

『As a result, some emerging economies may face pressures when U.S. monetary accommodation is reduced. They may have to make policy and business adjustments. This was the situation earlier this year, but since then conditions in most affected countries have stabilized or at least calmed.』

Taperingトークから一連の動きは新興国の資本市場や経済金融政策などにも影響を与えたとな。

『Stepping back, my sense is that overall emerging market vulnerability to external causes is considerably lower than it has been in the past. Many emerging-market policymakers responded to the financial crises in Asia and Latin America in the late 1990s and early 2000s by moving to flexible currencies, building official reserves, and cutting their dependence on foreign currency borrowing.』

ということで話はここから「ただし過去(のアジアやラテンアメリカの通貨危機)と比較して新興国の経済や政府の対応は進んでいるので外的要因(つまり米国金融政策)の影響による脆弱性は極めて小さくなっている」という方向に進んでおりますのが微妙な所です。

これがどこぞの麿先生に掛かりますと、金融政策運営に関しては海外への影響からのフィードバックループを無視すべきではない、という話に展開されるのですが、ロックハート総裁はここで米国金融政策運営に関するインプリケーションの方向には持って行っていないのが微妙で、結局サービスフレーズだったのか、それとも一応気にしているのかというのが少々謎な部分ではあります。

『The Fed has tried to be transparent about the direction of its monetary policy. In my view, we have communicated clearly our intention to wind down asset purchases and eventually begin to raise rates as the U.S. recovery advances and our policy objectives look more attainable.』

つまり利上げするとかいう場合にはクリアなコミュニケーションをしましょうとは言ってますが、フィードバックループがどうのこうの的な話にはなっていないので、でもそんなの関係ねえと言っているのかなあという感じもしますがそもそも(見ればお判りになりますが)講演自体が要点だけという感じなので行間が読めず良く判らん。

『These contingencies should have been clear even before last summer when the subject of phasing out the asset purchase program was broached in a Fed press conference.』

ほほう。じゃあ今度はもっと透明にということですかよく判らんけど。

『I believe it is in the world’s interest that the U.S. economy strengthens and that the Federal Reserve pursues policies appropriate for, and supportive of, improving conditions. Also, with my expectation that the United States will experience better economic growth over the medium term, I believe the outlook for emerging economies is also improved.』

最後は「米国様が繁栄すれば世界も繁栄するんじゃ判ったかゴルァ」というメリケンクオリティ。


・リスクに関してはファイナンシャルスタビリティーの話とな

『Risks』から。

『I have presented a rather upbeat outlook for the U.S. economy. I have to acknowledge some risks to my outlook. Risks can express themselves in a number of ways, but at present I see the risks falling under three headings.』

リスクは3つとな。

『First, as I said, it may be a while before we know if the intrinsic growth momentum of the U.S. economy is indeed as strong as I’m projecting.』

これは引用を割愛した前半にあるのですが、ロックハート総裁は米国経済の先行きは割と強気なのですけど、ただ目先数か月は本当に強いトレンドラインに乗れるのか見極めが必要で、もしかしたら3か月程度は見極めが必要になるかもとの説明をしていますのでその点です。

『Second, there is the risk of financial instability.』

ほっほー。

『In a highly integrated global financial system, events almost anywhere can have an impact on financial stability in the United States, here in the Middle East, and elsewhere.』

ふむ。

『To take a U.S.-centric view, given how long a low-interest-rate environment has been in place, it’s wise to keep a close watch on asset markets for signs of “irrational exuberance,” a phrase coined by former Fed Chairman Alan Greenspan.』

根拠なき熱狂キタコレ!ではありますが・・・・・・・・

『I can assure you Fed policymakers are monitoring developments carefully. As one policymaker, I am not overly concerned that markets or institutions pose broad systemic risks at this time.』

まあこの点に関して現状ではさほど問題視はしていないようで、そこはスタイン理事などとは違いますな、うんうん。

『The third area of concern is geopolitical in nature.』

でまあ3つ目の地政学リスクですが・・・・・・・・

『Tensions between Russia and the West over Ukraine have an economic dimension, both in the interplay between the parties and the potential for destabilization of markets and economies. Even in the absence of significant direct exposure (which is the case for the United States), I think there is risk that heightened conflict could produce volatility in global financial and commodity markets that, if prolonged, could spill over to the U.S. and global economies. The recent lessening of tensions is a welcome development.』

ということで、米国はロシアやウクライナ向けのエクスポージャーは大きくないけれども、ひとたび地政学リスクが火を噴くと何らかの形で影響が降ってくる可能性があって、想定よりも大きい可能性がありますよとこちらは警戒していますな。

といった所で。




2014/05/19

お題「長めの短国だけ需給がアホのように良い件/スタイン理事は「出口政策はグラデュアリズム」とな」

早川さんモーサテ登場キタコレ。でまあ話は大体前ブルームバーグニュースで話をしていた件ですな。

しかし早川さんと関係ないですが「金融政策への期待の変化という意味では日本は引き締め方向」って黒田さんは政策運営に関しては同じ話しかしていない訳で、追加緩和を勝手に期待したのはお前らじゃねえかと為替コメントの奴を小一時間問い詰めいたい訳だが(−−)。

○毎度の市場メモ

・1YTB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140516.htm

(3)募入最低価格 99円96銭2厘(募入最高利回り)(0.0380%)
(4)募入最低価格における案分比率 71.5126%
(5)募入平均価格 99円96銭5厘(募入平均利回り)(0.0350%)

ということで1年TB相変わらずの堅調クオリティでして、一方で利付の残存1年って金曜日も申し上げたように7bpとかでやっていまして、レートの差が変じゃろという所ですし、GCレートに関しても国債発行日の所では上昇しますし、CPとかのレートは特段短国に引っ張られる訳でもなく推移するという事でして、ここもとの短期市場まわりでは短国が突出して強くなっているのが謎展開というか何というかという所です。

ということで今回の短国金利低下では短国だけ需給が良いというのが中々謎展開でして、利付が順イールドなのに短国が逆イールドというのはあまり見ない(短国がアホのように強いと普通は利付も引っ張られるし、その後遅行してCPなどの金利にも波及する)ので、今後どっちに転ぶのかが良く判らん&短国だけ何でこんなにニーズ強いの???というのが盛大に買っている当人じゃないとワカランチ会長な話なので知らんがなという所で。


・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

こちらからZIPで落として例によって例の如くみますと、都市銀行が4.5兆円ほど当座預金を増やしていまして、その他準備預金適用先が1.8兆円ほど増やしているのが目立ちますが、一方で信託銀行が落ちているのねというのと、他の業態はまあそこそこ伸びていますという所で。まあ順当ではあるのですが4月積み期間では都市銀行の伸びが目立ちますなあ、つーか最近都銀とその他準備預金適用先しか当座預金残高増えないんですけどという所で、平常運転な結果でしたという事です。


○スタイン理事講演ネタ続き(すいません)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.pdf
Governor Jeremy C. Stein
At the Money Marketeers of New York University, New York, New York
May 6, 2014
Challenges for Monetary Policy Communication

引っ張ってすいませんですがネタの最後の部分。

・金融市場と金融政策の相互作用とな

『The Interaction of the Committee and the Market』という所の最初にいきなりアラン・ブラインダー元FRB副議長の指摘する「自分の尾を追う犬」の件がキタコレです。

『Going further, it is important to note that this evolution of the reaction function does not happen in a vacuum, where the Committee deliberates in a cloistered fashion and then simply reports its decisions to the market. All along, the market is making conjectures about how we will behave, and these conjectures in turn can have a powerful influence on the debate itself.』

で、具体的にはまたまたTaperingトークの話になる。

『This feedback effect has been especially relevant in the case of QE3, because the policy has relied significantly on a signaling channel for some of its effectiveness.』

QE3のケース(というのはTapering前後の話ね)は金融政策の効果に実は政策シグナリング効果の部分が結構ありましたというのを示すフィードバック効果として出てました罠(訳が下手ですいません)。

『That is, QE3 has, in my view, mattered not just because of the direct downward pressure on longer-term interest rates associated with removing a given quantity of duration from the private market, but also because it has buttressed our forward guidance by serving as a credible signal of the Committee's intentions with respect to the future path of the federal funds rate.』

これはほほうという感じですが、FRB(とか国債買入を実施している他の中銀もそうですが)がQE3の時に話をしている「市場から長期債の購入を行いデュレーションをリムーブすることによって長期金利に低下圧力を掛ける」というのではなく、実際の効果は「QEの実施によって示されるFRBの先行き金融政策運営のパスに対する姿勢」が市場の行動に影響を与えているのではないかという指摘で、まあ現場労働者としては仰せのとおりと思いますが、これ言い出すと定量的な効果というよりは定性的な効果の話になってしまいますからして、適切な金融政策規模がどうなんですかとかそういう話をする場合に困るネタでもあるように思えます(^^)。

『Of course, if the Committee is using asset purchases to signal its policy intentions, then the information content of purchase decisions depends importantly on what the public expects it to do.』

勿論FOMC自体もシグナリング効果を考えているのですが、問題はそのシグナリングを市場がどう受け止めるのかという話ですと。

『For example, if it is early 2013 and the market has somehow arrived at the belief that the Committee will continue buying assets at an $85 billion per month clip so long as monthly payroll growth does not exceed 200,000 jobs per month for three months in a row, then even a small cut down to $80 billion per month is likely to elicit a powerful market reaction--not because the $5 billion cut is consequential in and of itself, but because of the message it sends about the Committee's policy leanings more generally. But then you can see the feedback loop that arises: The more strongly the market becomes attached to this belief--even if it was initially somewhat arbitrary--the more wary the Committee must be of making an unexpected change, and this wariness further reinforces the market's initial belief.』

つーことで買入をちょっと減らすという事自体には残高云々という意味では小さい効果しか無い筈なのですが、市場が買入を永続的に行うという想定をする中でほんのちょっとでも買入を減らしますと、そらまあ大騒ぎになります罠という事で、市場の先行き金融政策に対する期待が強固な中で市場の想定外となる変化を中銀が行うとエライコッチャでございますがなという話もその通りですな。

『In this sense, the Committee's reaction function for the appropriate quantity of asset purchases under the QE3 program is not only evolving over time, it is coevolving along with the market's beliefs.』

ほほう。

『In part for this reason, I believe we are currently in a very good position with respect to the market's expectations for our asset purchases going forward. Market participants now appear to almost uniformly expect that, barring a material change in the outlook for the economy, the Committee is likely to continue tapering our purchases in further measured steps over the remainder of this year.』

この講演(5月6日)時点ではこのような説明ですが、さて今はスタイン理事どういうイメージでしょうかねえと思いますが、Taperingに関しては既に市場に完全に織り込まれているので、このままTaperingを継続しても市場への影響はありませんという意味で今のFOMCは「very good position」にいるという話をしています。

まあアセットパーチェスと言ってますから利上げの話に関してはまた別という事かもしれませんけどね!

『With these expectations in place, the execution of the taper itself becomes much easier, as we no longer have to worry about a step-down at each meeting sending a potentially misleading message about our intentions with respect to the future path of the federal funds rate.9』

つまり金融政策と市場との相互作用というのは市場の金融政策に対する期待が強固な時にその反動が大きくなるという話でして木曜に引用した部分を再掲します。

『The case of QE3 illustrates the point that the Committee's reaction function is shaped by market expectations and vice versa. But I suspect that the point has more general applicability. Consider the well-known phenomenon of "gradualism" in monetary policy, whereby changes to the policy rate during an easing or tightening cycle tend to come in a series of small and relatively predictable steps. This phenomenon is reflected in the fact that the Committee's behavior in normal times can be approximately described by an "inertial" version of a Taylor rule--one in which, in addition to putting weight on inflation and unemployment, the Committee also behaves as if it has an aversion to making sudden large changes in the federal funds rate.』

『However, such a reduced-form description of the Committee's behavior does not answer the question of why this kind of inertia might be optimal. Why should the Committee act as if it is averse to making sharp changes in the funds rate?』

『At one level, the answer is clear: This behavior is in the service of our mandate, and nothing more. For if we were to make an unexpectedly abrupt adjustment at any time, it would likely have a large effect on long-term rates and credit conditions more generally, which in turn might compromise our ability to reach our goals for employment and inflation--for example, a large bond-market move of this sort might nip a nascent recovery in the bud, which is why it is to be avoided.』

ということで、一般的な話として金利を引き上げましょうという時に今回のTaperingと同じような事をやっているとまたまた同じような市場環境の急変化が起きる可能性がありますという事を指摘していまして、「更に深堀りすると」ということでFEDの今後の正常化政策の話をしています。

『Digging deeper, though, it is important to recognize that part of the reason that the bond market would react so strongly to a sharp change in the short-term policy rate is that we have settled into a self-sustaining equilibrium in which the Fed tends to act gradually, and the market has come to expect that gradualism.』

ふむ。

『In other words, the market has learned that a given increase in the federal funds rate at the beginning of a tightening cycle is typically followed by many more moves in the same direction, so there is naturally a multiplier effect on long-term rates of a given change in short-term rates. And that multiplier depends on the expected degree of gradualism: The more inertia there is in Fed policy, the more significant is any small move, and hence the larger is the multiplier.』

ということで、結局ここで将来の利上げの際の話にだいぶなっているのですが、金融正常化局面においてどの程度のグラデュアリズムでやっていくのかという事をきちんと市場に織り込ませないと正常化着手の初期段階で市場が過剰反応してしまい、例えばテイラールールなどで適正とされる金利よりも市場金利の方が跳ねてしまって、却って政策が引締め過ぎになるリスクがありますという事も示しています罠。

『Thus, an expectation of gradualism on the part of the market makes it all the more important for the Fed to adjust the policy rate gradually, thereby fulfilling the market's beliefs.』

ということで、正常化を行う時にはその「グラデュアリズム」をどう織り込ませるかが重要という話をしているのですが、一方でイエレンさんが行っている最近の発言に対する市場の反応を見ますと正常化着手を遠のかせるような話であって、これ経済指標が良くなって一転してイエレンさんが会見とかで普通にFEDのコレクティブビューで普通の話をおっぱじめると、それこそスタイン理事の指摘するような状況になります罠(期待の急変になるから)ということで、まあ何だかんだ申しましてイエレン議長のコミュニケーションポリシーは出口政策という意味では真面目すぎなのと市場の反応を気にし過ぎなんじゃネーノという気はするんだが大丈夫でしょうかねえ。やはり俊ちゃんのようなイカサマ成分が必要ではないかと。

でまあこの話もうちょっと続くのですが飛ばしまして結論部分へ参ります。

『Of course, even if this alternative world is a better place, it may be difficult as an institutional matter to get from here to there. And I do not have any particularly helpful insights on how one would make the transition. Nevertheless, I do think there is a useful message to be borne in mind when thinking about communications strategy more generally.』

基本的に市場とのコミュニケーションについては市場の期待を大きくジャンプさせないようにしていくというのがスタイン理事の主張となっておりますが・・・・・・・・・

『There is always a temptation for the central bank to speak in a whisper, because anything that gets said reverberates so loudly in markets. But the softer it talks, the more the market leans in to hear better and, thus, the more the whisper gets amplified.』

なるほど。

『So efforts to overly manage the market volatility associated with our communications may ultimately be self-defeating.』

ということで、市場の急変動を避けようという努力をする、つまりは変化を徐々に織り込ませに行こうとすると、市場の方が今度はFEDのささやきに対して過剰に反応するようになってしまい、市場のボラを下げようというコミュニケーションポリシーが却って失敗になる可能性もあるとか、中々こうスタイン理事の説明は市場に近い話をしていて、ハーバードの先生だというのに随分とまあ市場寄りというか現場寄り過ぎのような気がします(^^)。

『As we evaluate our own performance in the communications department, it is probably better for us to focus on how legitimately transparent we have succeeded in being, as opposed to how much or how little our various announcements have moved markets.』

ということで、筋道の通った形での透明性をどの程度達成できているか、その反対側で各種のアナウンスメントがどのように市場に影響を与える/与えていないか、という点についてフォーカスすることが重要ですという部分で話は終わっておりまして、結局どうしたら良いのかという結論は微妙に出ていないのですが、まあこれだけああだこうだとコミュニケーションポリシーに関してああでもないこうでもないと話をするという事で、就任直後からはマクロプルーデンス丸出しでファイナンシャルスタビリティーの話を散々した結果、恐らくは直近のTapering実施に関して相応の影響を与えたと思われますし、先行きの金融政策運営にも一定の影響を与えたと思われるスタイン理事ですが、とりあえず退任までの期間(とハーバードに戻ってからはどうなのでしょうかねとは思いますが)は「正常化政策に向けた情報発信をどうすべきか」という話をするんですなあという所です。

ただまあ出口という意味ではスタイン理事の言うような「グラデュアリズム」というのが一番美しい形で「出口は市場が運んできてくれる」というのが理想ではあるのですが、基本的に市場というのは実は本当は「先行きを反映する」のではなくて、「過去の延長線上と足元の差分で反応する」という代物のようにも思われる訳でして、って市場の中の人がそういう事言うと何かだいぶ自己否定しているように見えるので甚だ遺憾にも程がありますが(−−)、昨今のジャパンの経済物価状況とか日銀の金融政策に対する市場の期待および後付アクションを見ておりますと、やはり「実は市場もビハインド・ザ・カーブ」という気もしてくる訳ですよ。

とまあ考えますと、グラデュアリズムで市場が出口に運んでくれるというのは理想であっても中々難しい話であって、ある程度インチキ成分を持った福井の俊ちゃんのようなイカサマ出口地均しみたいなのも必要なようには思えますし(なお当時ケチョンケチョンに申し上げておりました件についてお前今更何を言うとツッコまないように、つーか非常にこうあの出口政策に関しては今でもどう評価して良いのか整理が難しいと思うのだが)、スタイン理事の指摘はこれはこれで面白いのだが、どう実践するのかは難しいですな、というか本人もこうすべきという話というよりも論点整理しているという風にも思えます。




2014/05/16

お題「短期市場雑談メモ/総裁講演は特に最後のパートが色々な意味で(;∀;)イイハナシダナー」

「この1年で国内銀行の現預金が大幅に増えているのは待機資金となっているから」という解説をしている人がいるのだが数値を見ると日銀当座預金が増えている現象をもって国内銀行の現預金が増えていると言っているようで、そうだったら「貸出に回す待機資金」でも何でも無いのですが>モーサテ解説

○市場雑談メモ

・3M短国入札ェ・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140515.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘0毛 (募入最高利回り)(0.0401%)
(4)募入最低価格における案分比率 8.1556%
(5)募入平均価格 99円99銭0厘8毛 (募入平均利回り)(0.0369%)

ということで(書いてませんでしたが)今週入ってから短国のレートとかGCのレートとかが低下していまして、先週は6M入札が強くて3Mと逆イールドキタコレとか言ってましたが、今週に入って何か知らんが順調に気配が強くなって来まして水曜の時点で4bpビットとかゆー状況になっていて(さすがにそこでは少し玉が出たっぽいが)入札も案の定4割れ(足切りは4に乗っているのですが按分薄いっすからねえ)水準という素敵な展開になっておりまして、今週から短国買入2兆ペースに下げましたが、やはり日銀の買入の上げ下げが効きますなあ(4月は3月期末ニーズの裏が出ている分もあると思うけど)という所で誠にこうアレであります。


・一方で固定金利オペは割とロールされるの巻

昨日の3M固定金利オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140515.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月19日スタート分) 2,370 2,370

ということなのですが、今回のオペは2月前に実施したオペの期落ちのロールでして、1290億円のロールが2370億円と増額ロールでして、水曜は1年オペの期落ち分がロールされたいたのですけれども、20012億円の期落ちに対して12095億円と6割のロールで若干4月よりは歩留まりが悪かったものの、こちらもまあロールが入っているという感じです。つーか3Mの固定オペのロールが最近は2000〜3000億円で入ってくるようになっているので、6月落ち分だと増額の方が多くなるんじゃネーノとか、もっとバカスカ落ちると思われていた固定金利オペが割とロールされてますなあという印象で、短国は強くて金利下がっているんだったらこっちのロールが減っても良いのではネーノかとか言う単純な話でも無いようでこの辺のメカニズムが良く判らん。まあALM的なサムシングとか、GCレポ市場でのファンディングに向かない商品在庫の底溜まり部分とかそっち方面の要因なんでしょうが。


○総裁講演は最後のパートが色々と味わい深いと思います

モノホンの講演はこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140515a1.pdf
Toward Overcoming Deflation
Speech at the Annual Tokyo Conference Hosted by
the Center on Japanese Economy and Business (CJEB),
Columbia Business School

だがめんどくさいのでこっちをよむ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140515a1.pdf
デフレ脱却に向けて
コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所
東京コンファレンスにおける講演の邦訳

・いつもの話の部分は華麗にいつもの話であるが要は夏場以降が焦点ですな

総裁講演で追加緩和に関する期待みたいな話をしていた連中は思うのは勝手なのですがそれを堂々言いながら何とかストだとか名乗ったりするなよと思う次第でありまして、可及的速やに西(自粛)辺りにでも旅立たれるべきではないかと存じますが。

『2.「量的・質的金融緩和」の効果と経済・物価情勢の展望』という所は展望レポートのまんまの説明ですのでまあパスしましてその先から参ります。

『3. 経済の先行きを巡る論点』って所から。

『こうした経済・物価見通しに関してポイントとなる論点を、実体経済に関して2つ、物価に関して2つ、お話ししたいと思います。』

ほうほう。

『(消費税率引き上げの影響と国内民間需要の持続性)』

キタコレ。

『実体経済については、第一に、──おそらく皆さんの当面の関心事項の一つであろうと思いますが──消費税率引き上げの影響についてです。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要は、3月末にかけて、相応の規模で確認されました(図表3)。1997 年4月に税率が引き上げられた前回の局面では、その後、景気後退に陥ったことから、その再現を懸念する向きもあります。ただ、当時の経済情勢を改めて振り返ってみると、駆け込みとその反動の後、7〜9月に一度は回復の兆しをみせていました。その後、夏に発生したアジア通貨危機や11 月に起きた日本の大手金融機関の破たんの影響から、景気後退に向かったということです。』

ですなあ。

『現状は、当時と異なり、新興国の負のショックへの耐性は高まっていますし、日本の金融システムは、安定した状態にあります。また、今回は、企業の業況感などにみられる景気のモメンタムや、失業率などからみた雇用環境がしっかりしており、このことは、雇用者所得やその見通し、すなわち恒常所得に好影響を与え、個人消費の底堅さを支えると考えられます。企業からのヒアリングによれば、駆け込みの反動は、今のところ概ね想定の範囲内のようです。』

なるほど。

『以上から、この4〜6月の成長率ははっきりと落ち込むものの、その後、反動減の影響は減衰していき、夏場以降は、潜在成長率を上回る成長経路に復するとみています。』

夏場以降ですかそうですかと思いますが、消費とかの部分に関しては概ね同意できるかなあともあたしゃ思いますけど。


『(輸出の回復)』

ニヤニヤ。

『次に輸出です。過度な円高水準の修正にもかかわらず、輸出が伸び悩んでいることから、日本企業の国際競争力の低下を論じる論調もみられます(図表4)。輸出の伸び悩みには、日本企業の海外生産移管の加速などの構造的要因が相応に影響していると思いますが、基本的にはASEANなど日本と関係の深い新興国経済のもたつきなど、循環的な要因の影響が大きいと考えています。』

ということで、まあ一方で展望レポートの背景説明の中では結構この辺のストラクチュアルな話を指摘していたように思えますので、ここの部分に関してはやや楽観モードが入っている感じがします。

『それに加えて、特にこの第1四半期は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要を受けて国内向け供給を優先してきたことや米国の寒波などの一時的要因も、輸出を抑制したと考えられます。』

ホンマカイナ。

『したがって、一時的な要因が剥落するもとで、海外経済の成長率が高まっていけば、輸出は緩やかながらも増加に転じていくとみています。また、構造的な要因の一つである海外生産移管についても、意思決定から移管にかかるタイムラグを考えれば、既往の円高修正はこの先の海外生産移管のペースを抑制すると考えられます。したがって、この面でも、輸出を支える方向に働くとみています。』

という話をしていますが、輸出に関してはそんなに楽観できるんかいなと思いますが。


・物価に関する論点とな

『4. 物価の先行きを巡る論点』ですけどね。

『以上のように、日本経済は、潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高いと考えています。ただ、成長率に関して言えば、輸出の回復が後ずれしているため、13 年度、14 年度は、これまで見ていたよりも幾分下振れています。にもかかわらず、消費者物価は、13 年度は見通しどおり着地し、先行きの見通しも不変です。』

つまり潜在成長率が・・・・という話にはならないで、説明はこうなります。

『これは、第一に、労働需給の引き締まりを中心に需給ギャップが想定通り着実に改善していること、第二に、中長期的なインフレ予想の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられること、によるものです。以下、この2点についてお話します。』

まあ説明はいつも通りなのですが一応整理の為に引用。

『まず、需給ギャップについてです。今回の回復局面は、国内需要が牽引し、特に非製造業の業況が好転しています。これらは雇用誘発効果が大きいため、労働需給は、引き締まり傾向が強まっています。例えば、失業率は構造的失業率に近付いていますし(図表5)、有効求人倍率はリーマンショック前のピーク水準に達しています。我々の短観でみた企業の雇用判断も、不足感が高まっています。』

『こうした労働需給の引き締まりは、賃金にも影響し始めています。今春の賃金改定交渉では、賞与の引き上げのほかに、ベースアップを実施する企業が大幅に増えました。』

というのが雇用のスラック解消の話。

『さらに、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきています。需給ギャップの推計値は幅を持ってみる必要がありますが、こうした労働や設備の稼働状況を踏まえると、過去の長期平均並みであるゼロ%近傍にまで改善しているとみています(図表6)。』

設備稼働状況から見たスラックも解消との話。

『先行きも潜在成長率を上回る成長を続ける中で、労働需給の引き締まりはさらに強まっていく可能性が高く、賃金や需給ギャップの面からの物価上昇圧力は、着実に強まっていくと考えられます。このことが持つインプリケーションについては、本日の最後に触れたいと思います。』

ほうほう。で次が予想インフレの話。

『次に、中長期的なインフレ予想は、様々なアンケートや市場の指標からみて、全体として上昇しているとみられます(図表7)。』

で、実際の物価上昇に応じてアダプティブあるいはバックワードルッキング的にインフレ予想が上昇するという良い物価上昇とか悪い物価上昇などという事は無く上昇する物価が良い物価だという攻撃キタコレという話が。

『冒頭申し上げたように、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は4か月連続で+1.3%になっています。これは1997 年の消費税率の引き上げや2008年頃の国際商品市況高の時期を除けば1993 年以来のことです。企業や家計がそのような物価上昇を実際に経験するもとで、インフレ予想を適合的に変化させる動きも加わって、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向を辿り、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えています。』

つーか今回の説明だと最早日銀の金融政策云々の話では無くてアダプティブな物価上昇が予想インフレ率の改善をもたらすの一本足打法化してねーか・・・・・・・

『こうした動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼし始めています。さきほど述べたとおりベースアップを行う企業が増えましたし、従来は低価格戦略を最優先にしてきた企業の中にも、最近では付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略に切り替える企業がみられてきました。消費税率引き上げ分を価格に転嫁できるかという意味で注目された4月の消費者物価指数について、全国に先行して公表された東京の指数では、価格転嫁は進んでいるようにうかがわれます。』

ほーれほれ来てるじゃないかという事ですねわかります。


・フィリップスカーブの説明はキタコレ&出している図表のセットに味わいが

『(フィリップス曲線)』という小見出しなんですけどね。

『こうした物価上昇メカニズムを、需給ギャップと物価の関係性をみたフィリップス曲線で整理してみます(図表8)。リアルタイムにフィリップス曲線の形状や位置の変化を確認することは困難ですが、最近1年の動きを示す赤い丸は、過去18 年間のフィリップス曲線の上方に位置しています。』

ということでフィリップスカーブの上方シフトの話を今回思いっきり説明に加えていまして、展望レポートでも図表とかは出しているので、フィリップスカーブの上方シフトの可能性みたいな示唆は入れているのですが、そうは言いましてもこういう表現で露骨にフィリップスカーブの上方シフトという話を突っ込んでくるとは自信満々の進軍ラッパにも程があるわ。

『先程述べたような、様々なインフレ予想指標の上昇や、賃金・価格設定行動の変化も併せて考えると、需給ギャップ改善による物価押し上げと、インフレ予想の上昇によるフィリップス曲線の上方シフトの2つの動きが起きていることが推測されます。今後もこれらの動きが続き、2%の「物価安定の目標」の実現に向かって進んでいくと考えています。』

潜在成長率が想定よりも低くて、その間にフィリップスカーブのスティープ化が進んでいるだけの可能性もあるんですけどねえとは思いますが何という勝利宣言。

・・・・・・・・・という所なのですが、ここで図表ちゃんの方を見ると(貼りつけるスキルが無いから上記URL先から見て下さい)ちょっと「ほえ?」と思うのでして、つまり展望レポートや金融経済月報ではこのフィリップスカーブの表を出す時には「コアCPI」と「コアコアCPI」の図表を出すのですけれども、直近のプロットを引っ張ると何とY切片が2%近くになってしまう図ができあがる「コアCPI」の図表を今回出していないというのが実にこう味わいがある訳ですな。

でまあこれはどういう事ですねんと考えますと、Y切片が2%になる図を出すのはさすがに図々しいと思っているのか、それともフィリップスカーブ上方シフトの話をしてY切片が2%の図を出すのは刺激的で超強気メッセージに取られても困るので配慮したという所なのか、まあその両方なのかもしれませんけど、この図表の出し方にはちと笑ってしまいましたです。


・成長力強化の重要性を主張する最後のパートが色々と味わいの深い部分で今回の白眉です

最後の『5. 金融政策運営と日本経済の成長力』という所が今回の見所でありまする。

『お話ししてきたように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しています。したがって、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していくことが重要であると考えています。そのうえで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行います。』

『ここで強調したいのは、我々の2%の「物価安定の目標」への強いコミットメントです。我々の見通しどおりに日本経済が2%の目標に向かっていくのであれば、「量的・質的金融緩和」を着実に推進しますし、そうでないのであれば、2%を実現するように調整を行う、ということです。』

というのはいつもの話ですがこの先が・・・・・・・・

『最後に、本日のテーマに沿って、日本経済の成長力について一言申し上げて講演を終えたいと思います。』

ほうほう。

『日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、長年にわたるデフレ均衡から抜け出し、2%程度の物価上昇率を前提として人々が行動する経済を実現させようとするものです。この15 年間、日本経済で起きていたのは、製品価格の下落が企業の売上げの減少につながり、それが、賃金の抑制、消費の低迷を通じて、再び価格の下落をもたらすという悪循環でした。このようなデフレ経済を前提にした場合には、個々の企業や個人にとっては、「現状維持」や「現金選好」といった行動が合理的になり、「挑戦」はリスクの割には報われませんでした。我々が目指すのは、こうした「協調の失敗」を打破し、アニマルスピリッツを復活させることです。そして、このことは、成長期待や成長力を高めるための、ひとつの重要なピースです。』

でまあこれは良いとしまして。

『ただ、もうひとつ重要なピースがあります。先程述べたように、労働需給の引き締まりなど経済のスラックが縮小している状況を考えると、日本経済が中長期的に成長するためには供給力を強化することが重要だということもはっきりとしてきました。』

ほほう。

『趨勢的な人口減少と高齢化や、デフレのもとでの資本ストックの蓄積鈍化などによって、日本経済の供給力の伸びは低下してきました。それでも、この間は需要も弱かったため、「人手不足」や「供給制約」といった形で表面化することはありませんでした。ところが、この1 年ほどの間に、大規模な金融緩和、財政支出、民間活動の活性化によって、需要が高まると、水面下に隠れていた供給力の問題が姿を現しました。』

な、なんだってー!!!!!

いやまあこの先の話を(後で引用しますよん)見ると成長力強化をしましょうねという話のマクラではあるのですけれども、これって要は「成長の天井」論の話であって、先般ネタにした4月1回目の金融政策決定会合で指摘されていた「供給限界によって起こった物価上昇はサステイナブルではないのでは」という話に繋がってくる話ですし、そもそも論として供給力の伸びが低下してきたという認識だとすると、それは日本経済の潜在成長力が低下しているという話になる訳でして、展望レポートで中心的に示されている経済物価見通しの前提が崩れるんじゃないでしょうかと思うのですけど何という藪蛇論。

でまあこの部分というのは構造問題になる話で、その解決というのは金融政策でどうにかなるという代物ではないですから、成長の天井に達した経済の中で大して成長しないのに物価だけは順調に上昇して、低成長の中で堂々の2%物価達成してしまって「物価2%目標が達成したら色々な問題が解決に向かってバラ色ですよ」という話をしていた木久扇師匠にこんな筈じゃなかったという非難が飛んでくるんですねわかります。

などと思ってしまう訳で、成長の天井云々の話をこんなに早く持ち出してくるとは思わなかったので、今回の講演での超ビックラな部分のその1はアタクシ的にはこのパートです。


なお、この先に関しては要するに成長力を強化しろという話になっていますが、こちらではまたそれはその通りではあるのだが中々のシバキ話があるのが味わいがあるのですよね、以下引用。


『私は、供給力の問題が表面化した今が、日本経済が抱える中長期的な課題を解決していく好機だと思います。』

ほほう。

『規制・制度改革によって生産性を向上させること、女性・高齢者などを中心に労働参加を高めるほか高度な外国人材の活用を図ること、財政と社会保障制度の持続性を確立することなど、課題そのものは、以前から国民の間で共有されてきました。ただ、人々は、これらを十分理解しながらも、これまで実行へのモメンタムがつきませんでした。』

ふむ。

『人手が余っていて雇用の確保が問題のときに、労働参加を高める施策に賛同を得るのは困難です。いずれ人口減少で問題になるとしても、「今やらなくても」となりがちでした。現在、一部の業種で明らかになってきている深刻な人手不足には、高水準の公共工事や駆け込みの影響など一時的な現象も含まれていますので、そのすべてを中長期的な課題に結びつけることは不適当かもしれません。ただ、趨勢的な人口減少と高齢化のもとで、近い将来、労働供給が様々な形で問題になりうることは疑いがありません。だとすれば、具体的な「人手不足」という現象を推進力にして、成長力の問題を広く議論し、解決を模索していくべきだと思います。そして実際に、政府は、幅広い分野にわたって成長戦略の方針を示し、実行を加速しようと取り組んでいます。』

お、おう・・・・・・・・

まあ仰せご尤もではあるのですが、つまりこれは一種のシバキアゲでして、実はデフレ均衡状態というのはそらまあ経済物価情勢的に活力が弱いという大問題はあるのですが、それはそれとして構造問題的な話をすると実はある種のぬるま湯状態でもあったという話だったという事なのかも知れず、もちろん構造問題に関してはぬるま湯につかっていても最終的には放置していると死亡確定となるので、それなら一度ぬるま湯から出して寒風に当てて成長力強化のための改革を推進させないといかんということですかそうですかというお話に読めます罠。

でまあ寒風にあたった事で実は死亡確定を速めるという間抜けプレイな結果になるのかも知れませんし、寒風にあたって危機バネが働いて成長力強化のための改革が進むのかもしれませんし、それがどうなるのかは神の味噌汁としか申し上げようがございませんが、さらっと話をしながらデフレ均衡からの脱却によって別途起こり得る部分を指摘する辺りが何ともお洒落な所です。

まあ何ですな、これを「健全な淘汰が起きる」という言い方をしてしまえば普通に前向きにビューテホーな話になるのですが、今申し上げましたようにデフレ均衡から脱却した結果として成長力強化への取り組みを加速させないと却って問題の爆発を速めただけに終わるかもしれないからもっと政府は危機感を持てというメッセージとして読んで欲しかったんだろうなあとか勝手に想像するに、中々黒田総裁はイイハナシダナーなネタを打ち込んでいる(皮肉でも何でも無く(;∀;)イイハナシダナーだということですよん)ようにも思えるのですがどうでしょうかねえ。

『これが、私のスピーチテーマである「デフレからの脱却」と、コンファレンス全体のテーマである「日本経済の復活」をつなぐ、最後の、そして、最も重要なピースになると信じています。ご清聴ありがとうございました。』

ということで締めはイイハナシダナーなのだが成長の天井論を推し進めていくとさて金融政策として目指す物価の安定とはとかそっちに延焼する可能性があるという意味では中々の地雷臭も漂うこの最終パートは色々と味わいが深いなあと思うのでありました。


ということでスタイン理事講演の最終部分ネタをやってる時間が無くなってしまいましたすいませんすいませんすいません(単に段取りが悪いだけなのですが)。面白いので週末にお読みになられても良いのではと思いますよん。




2014/05/15

お題「欧州追加緩和ネタねえ/スタイン理事置き土産講演から(その2)」

14000円で売ったヘッジファンドは株価が下がらずにイライラしていると思われるので黒田総裁講演で買戻しのきっかけになるかもとかモーサテの株の電話コメントの人が言ってましたが株価が上がらずにイライラしているのはもしかして貴殿なのではないでせうか。

○欧州追加緩和ネタですかそうですか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5KF6C6JTSEB01.html
ECB総裁の「やぶさかでない」発言は行動が近いシグナル
更新日時: 2014/05/14 23:53 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5KU4J6JTSEM01.html
米国債:10年債は6カ月ぶり低利回り−欧州の追加緩和観測で
更新日時: 2014/05/15 04:01 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5KDK66JTSEQ01.html
米生産者物価指数:4月は1年7カ月ぶりの大幅上昇
更新日時: 2014/05/14 23:52 JST

PPIが大幅上昇しているのに欧州追加緩和ネタで欧州金利低下して米国金利もついでに低下とはこれはこれはという感じですけれども、じゃあ何をやるのかというのが今一歩イメージ掴みにくいっつーか、これだけ期待させてしまうと何か「追加のおみやげ」が無いと市場の反応が思いっきり逆に逝ってしまうんじゃネーノという懸念がががががが。

でまあどうも色々とコメントなり何なりを見たり聞いたりしておりますと、少なくともMROの金利は下げて、あとはコリドアをどうするのかが判らん。預金ファシリティーをマイナスにすると量的には引き締め現象が発生しやすくなる筈なのだが、何らかの形で「預金ファシリティーはマイナスだけれども抜け道を使ってゼロ金利超過準備の存在を可能にさせることによってマイナス金利を空文化する」というインチキプレイを炸裂させることが可能であれば、形式上だけのマイナス金利を導入して見た目だけマイナス金利すげえええと言わせるという事は可能なのかも知れません(まあ市場も馬鹿じゃないからそのうち気が付くんでしょうけど)が、現場労務者の実務的な観点から申し上げますとマイナス金利導入と(大規模な)量的緩和政策は両立しえないので、そう簡単にマイナス金利導入って決断できるのかね(大規模量的緩和が不可能になるから先の打つ手がかなり限定される)と思うのよね。

量的緩和の場合、そらまあ日銀みたいな馬鹿買入をしちゃうと債券市場ちゃんが息をしていないの状態になって入札と輪番と四半期の国債償還と月末の債券インデックス長期化以外のイベントが無くなるという事になりますが、まあ無茶振りしなければ小出しに拡大可能でありますが、金利は何せゼロ制約というのがありまして、政策担当者として「次の球が無い」という状態になってしまうのが一番オソロシスであるという事を考えますと利下げもホンマカイナという気はするんですけどねえ。

いやまあ預金ファシリティのゼロ金利維持して0.10%に下げるというのならまだ量的緩和政策導入の余地が残るので有りだとは思うが、それだけだと最早市場が許さんような希ガス。


しかしまあ何ですな、米国債券市場様におかれましてはPPIが盛大に予想以上に強かったのに欧州に連れるとか、イエレン議長のコミュニケーションが上手く行っているとは到底思えん状態になっているような気がする訳でして、3月FOMCで「6か月」と言ったのを火消ししようとしてなのか、FOMC後の発言はコレクティブビューであってその後の講演はイエレンさん個人の見解とか使い分けているのかは判らんのですが、一転してハト風味のサービス発言を連発したらまたぞろ低金利政策継続ヒャッハーの金融相場的な展開になっている訳で、方向が金融政策正常化なのに市場がヒャッハー金融相場をやらかしたらこれ正常化政策方向に着手する時にまた去年みたいな事になるんじゃネーノとか思うのですけどねえ。

とまあそう考えますと、ドラギ俊彦先生はインチキ成分炸裂ですし、我らが黒田総裁はふてぶてしいまでに退かぬ!媚びぬ!でぶれないですし、まあそういう意味での一貫性(ドラギ俊彦の場合はインチキが一貫しているのだが)および図々しさ(褒めています)があるのですが、どうもイエレン議長様におかれましてはどちらかというと真面目なのは判るのですが、その真面目さが微妙に悪い方向に出ていて、一々市場の反応に対して対応しようとして、アラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」になるんじゃネーノ的な所がヒジョーに懸念される所で、これだけの緩和政策の出口という難しい事をするのに対してイエレン議長に福井の俊ちゃんのようなイカサマ成分が欠如している(ように見える)のは市場のボラを無駄に高めるリスクがあるかもねとかそんな事を思う今日この頃でした。


○スタイン理事の置き土産ネタ続き

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.pdf
Governor Jeremy C. Stein
At the Money Marketeers of New York University, New York, New York
May 6, 2014
Challenges for Monetary Policy Communication

・基本はFOMCのコミュニケーションは「個別の見解」の集合体であるということです

『The Committee Is Not a Single Person』という小見出しの所がオモロイという話を昨日申し上げましたのでそちらを引用しますぞなもし。

『It is common to hear observers talk about the Committee's reaction function, which describes how we will behave in various contingencies.』

金融政策の反応関数についてウォッチャーの皆さんは気にしますよね。

『However, even if all of the individual members of the Committee have well-defined and carefully thought-out individual reaction functions--that is, each member knows what his or her policy preference is for any given state of the world--it does not follow that the Committee as a whole has an equally well-defined reaction function.』

ここがFEDの特色ではありますが、合議制の特色を思いっきり出しているなあという感じでして、政策反応関数はFOMCメンバーの中でも異なると堂々の説明ですけど、これは逆さ絵→イエレンとなる流れで加速されている感じですよね。

『The reason for this divergence is that when one says that the Committee has a reaction function for how it will behave if contingency X arises, such a statement implies that we have fully litigated this contingency in advance. In other words, we have debated the pros and cons, we have hashed out our differences, and we have come to an agreement on how to proceed under contingency X.』

ここは「各人の反応関数が違う」という件をもうちょっと丁寧に説明射している部分ですが・・・・・・・

『But such litigation is difficult and sometimes costly, as it may, for example, take considerable time or lead to a loss of cohesion on other, more pressing issues. So it may be easier and more efficient to leave our behavior in some important contingencies for future discussions.』

そらまあそうよという感じですが、反応関数を事前にすり合わせると分かりやすいのではという見解に対してはそら却ってよろしくないでしょうという話でして・・・・・・・・

『Think of why people often forgo prenuptial agreements when getting married--it is simply too painful to negotiate over every contingency ahead of time.』

結婚前に事前に起こり得る危機に対応する反応関数を事前にすり合わせたらtoo painfulワロタ。

『This observation is helpful in understanding some of the differences between an open-ended asset purchase program, such as QE3, and its closed-end predecessors.』

で、具体的にQE3の時にはどうでしたねんという話になる。

『One advantage of going with an open-ended approach is that when we rolled out QE3 in September 2012, we were able to make a forceful statement that we would continue with asset purchases until we observed, as Chairman Bernanke put it in his postmeeting press conference, a "substantial improvement in the outlook for the labor market."8』

さいですな。

『We were able to do so even though I suspect that, had we tried to put a number to it, there would have been considerable disagreement among Committee members as to the exact meaning of "substantial improvement."』

大変に正直で宜しいという所ですが(^^)、QE3を実施した時の終了条件である「substantial improvement in the outlook for the labor market」の定義について、事前にどのような経済条件なのかという事に関する具体的な数値的な話とかは置いていなくて、もしその話を始めたら盛大に見解の不一致が生じて収拾が付かなくなったでしょうという説明に実にこう深い味わいというか滋味を感じるのであります。

でまあこれってFED特有(どうでも良いが変換して最初に「特融」と出た辺りにアタクシのIMEの闇を感じましたががががが)のものという感じもしますが、基本コレクティブビューで勝負してくるBOEやECBの場合でも政策反応関数を具体的にどのあたりまで見せるのかという点に関しては積極的な曖昧性を出している(つーかECBの場合はドラギ俊彦先生のインチキ成分により積極的なインチキ状態だが)訳でして、まあ政策反応関数をどの程度の所まで出すのかというのは、先行きのことは先行きになってみないとワカランチ会長な部分もある経済というのものに対峙する上では必要な事なのかも知れず、このバランスが非常に難しいだろうなあと思うのでした。

つまり・・・・・・・・・

『So in this case, leaving the Committee's reaction function incompletely worked out allowed us to move forward with a major policy initiative in a timely manner, which otherwise might have been very difficult.』

という風にスタイン理事が言うように、政策反応関数をあまり細かく出し過ぎない事によってステートコンティンジェントな対応が可能であるというのはその通りですし、特にFOMCのように合議体モードを強く出している場合にはそもそも政策反応関数に関する見解が全員一致しているとは限らない(つーか一致していないと言いたいようだが)訳でして、そういう中でFEDがあたかも単一の主体として判断するかのようなコミュニケーションポリシー、つまり透明性を過大に高めようとするというのもこれまた弊害があるかもしれませんなあという所になるんでしょうな。

『Of course, the flip side of this reaction-function incompleteness is that it becomes harder for the Committee to precisely communicate its future intentions to the market--in part because these future intentions have not yet been fully fleshed out.』

じゃあ政策反応関数があいまいなままで良いのかというと、当然ながら逆サイドとしてFOMCの将来の金融政策運営に関して、市場に対するコミュニケーションが出来なくなってしまいますなという指摘。

『Rather, it makes more sense in this case to think of the Committee's reaction function as being something that is not entirely predetermined and that will naturally tend to evolve over time. 』

この「経済は生き物であるから政策反応関数を事前に全て決める訳にもいかず、状況の変化によって変化しうる性質があるものだ」というのはなるほど!とも言えますが、これを推し進めるとインチキ成分が高まってしまいます罠というのもあるのでヒジョーに難しいです罠と思います。

ただまあ市場現場労務者10ウン年(もうちょっと長い気がするがキニシナイ)とかやっていて思うのですけれども、まあ結局の所結果で政策当局が勝ってしまうと市場ちゃんというのはその間に起きたインチキとかイカサマとかすっかり忘れてしまう傾向が強かったりするというのは多分事実としてあると思いますので(異論は認める)あまりにもインチキが過ぎるとアレですけれども、「状況によって政策反応関数が変化するのは自然(キリッ)」というのは特に異例の政策を実施しているような時にはそういう図々しさが必要かも知れませんなとも思うのでありました。

そういう意味でイエレン大丈夫かという感じがするのと、アタクシ的にはそのような市場性健忘症に陥らないようにというのも込めて悪態駄文で記録をしているのでした、というような所です。


次の『The Interaction of the Committee and the Market』の部分も割とオモロイのだが、ワタクシの諸般の事情(ただの寝坊ですが)につき本日は時間が無くなってしまったので明日ネタが無かったら投下致します。ちなみにQE3と長期金利の関係の話をしているのですが、「定量的な効果の話をしているけれども実際問題として市場のドライバーになっているのは政策スタンスや政策反応関数に関する市場の期待」だから「グラデュアリズムの変化の場合は市場の反応は小さいけれども、大きくジャンプする場合は(その変化の大小にかかわらず)大きな反応するでしょ」というのを説明しておりましてほほうという感じです。明日ネタに多分するのでまた引用しますがこんな事言ってます。

『The case of QE3 illustrates the point that the Committee's reaction function is shaped by market expectations and vice versa.』

vice versaってのは「逆もまた然り」という意味。

『But I suspect that the point has more general applicability. Consider the well-known phenomenon of "gradualism" in monetary policy, whereby changes to the policy rate during an easing or tightening cycle tend to come in a series of small and relatively predictable steps.』

ふむ。

『This phenomenon is reflected in the fact that the Committee's behavior in normal times can be approximately described by an "inertial" version of a Taylor rule--one in which, in addition to putting weight on inflation and unemployment, the Committee also behaves as if it has an aversion to making sudden large changes in the federal funds rate.』

とまあここまではグラデュアリズムの場合の話ですが、続きは明日にでも(引っ張ってスイマセン)。



2014/05/14

お題「各種雑談メモ/スタイン理事(もうすぐ退任)の置き土産講演が相変わらずユニーク(その1)」

再来年の大河ドラマが真田幸村だそうだが公共放送の真田太平記をリアルタイムで見た(歳がバレますが)おじちゃんとしては真田太平記の再放送を希望したい。

#ちなみに幸村じゃなくて信繁が正しいんでしたっけ本当は

○市場雑談メモである

・30年国債入札でしたが

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul011.htm

6. 価格競争入札について
(1)応募額 2兆5,202億円
(2)募入決定額 5,459億円
(3)募入最低価格 99円80銭(募入最高利回り)(1.710%)
(4)募入最低価格における案分比率 82.5075%
(5)募入平均価格 99円83銭(募入平均利回り)(1.708%)
 
つーことで30年国債なのですが30年国債でテール3銭だわ応札は2.5兆もあるわという結果で入札は順調だったのですが、じゃあ超長期がウヒョーとなるのかというと先物がちょっと上昇したり超長期が若干強くなったものの、終わってみれば引けは先物5銭安で20年は引けで30年は5糸強でいやまあ先物対比で1毛動いているから動いたという事なのかも知れませんが、もう何ちゅうか今に始まった話ではないですけれども、30年国債の入札でも相場がろくすっぽ動きませんですかそうですかという風情に誠に残念なものを感じる次第でありまする。

ところでこちらなんですが。
http://www.ose.or.jp/market/trading_data/today_overview
当日取引高等

『JPXデリバティブ取引市況(日通し)(2014/05/13) 』って所の右側にエクセルの絵がありますが、そこからJPXデリバティブ取引市況の債券先物売買高を見ますと、30年国債入札があって落札結果が発表されたというのに昨日後場の超長期先物の取引高が貫録のゼロ枚(なお前場は14枚)という大変に心の温まる内容に落涙を禁じ得ない所ではございます。


・物国譲渡制限一部解禁の方向とな

ほほう。
http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/press_release/260513-01.html
物価連動国債に係る譲渡制限を一部解除します

『財務省は、平成28年1月以降に満期を迎える物価連動国債について、平成27年1月より、国債に関する法律(明治39年法律第34号)第2条の2に基づく譲渡制限を解除し、個人等による保有を可能とすることとします。なお、平成27年12月末までに満期を迎える物価連動国債については、平成27年1月以降も引き続き、個人等に対する譲渡制限が維持されることとなります。』

最初一部解除とは何ですねんと思いましたが、要は一部の銘柄は譲渡制限が維持されるという事のようですな。まあ今の所はほほうとしか申し上げようがありませんがメモメモ。


・世にクレクレの種は尽きまじ

市場雑談とちと違いますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5HTOT6K50YK01.html
順風の黒田日銀に伏兵、5年ぶり「神の子」到来で冷夏予想
更新日時: 2014/05/14 00:01 JST

『5月14日(ブルームバーグ):消費税率引き上げ後の駆け込み需要の反動も想定の範囲内に終わる兆しが見えるなど、順風満帆に見える黒田日銀だが、5年ぶりに予想されている「エルニーニョ」の到来で冷夏になる可能性が出ており、日銀は一抹の不安を抱いている。関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

はあそうですかという所で、記事の方では何とかストの皆様のコメントがああだこうだと並んでおりますが、冷夏如きで景気の腰が折れるんだったら消費税の駆け込み反動でその前に落ちとるわと思いますし、一時的な落ち込みで金融政策が一々対応せんわ問題は基調的な部分じゃろと思うのですけれども、まあ世にクレクレの種は尽きまじという所ですな。つーか日本の過去の冷害でどうのこうのってえのはそもそも論として不良債権問題だったり経済の大きなスラックだったりが背景にあって、基調が強くなかったから影響したとかいう話じゃネーノと思うのですが、日銀に対するクレクレネタが最近微妙に不足気味なのでネタ探し必死だなという所で。

なお、93年冷害並みになるとコメの値段が盛大に上昇しますが、コメって思いっきりコアCPIの構成要素(生鮮食品ちゃいますねん)なんでCPI的には日銀ウハウハ(ってまあ1年だけの効果で翌年裏が出るから実際には意味は無いが)となりますががががが。



○スタイン理事の置き土産講演でコミュニケーションポリシーとな

今月末で退任するスタイン理事ですが、マクロプルーデンス的な話とか、ファイナンシャルスタビリティーみたいな話を思いっ切りFEDに打ち込んで来て、Taperingにもそれなりに影響を与えたんじゃネーノという意味では異色かつ中々面白い理事だったと思うのですが、置き土産的なこの講演も(賛否ありそうな内容ではありますが)中々味わいがあります。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20140506a.pdf
Governor Jeremy C. Stein
At the Money Marketeers of New York University, New York, New York
May 6, 2014
Challenges for Monetary Policy Communication

・中央銀行のコミュニケーションポリシーのポイントとな

でまあ最初が挨拶みたいな話で、その後は金融政策運営におけるコミュニケーション戦略という話をまずは概論的に行っていまして、最近はそのコミュニケーションを充実させる方向です云々という説明をしております。で、その結論部分からまずは引用。

『These are all welcome developments, and I expect there will be further changes down the road, as the Committee keeps trying to improve how it explains its policy decisions to the public. In this spirit, I would like to spend the rest of my time discussing a few of the things that make life interesting for those trying to communicate clearly and effectively about monetary policy.』

ではどのような論点を提示するのかと言いますと・・・・・・・・・

『More specifically, I am going to touch on three factors that strike me as particularly relevant for our efforts in this area: the fact that the market is not a single person, the fact that the Committee is not a single person either, and the delicate interplay between the Committee and the market.』

市場は単一の人間ではなく、委員会(FOMC)は単一の人間ではなく、FOMCと市場とのデリケートな相互作用がありますよ、という話です。そらまあそうですがという話ですが。


・市場のドライバーは「市場の総意」ではなくてアクティブなポジションを持っている一部の参加者とな

まあこの見解には賛否あると思いますし、ややデフォルメしているんじゃないかという気もしますが、市場のプライスアクションを見てヒーコラ言いながら仕事するのが生業となっておりますアタクシと致しましてはまあ割と賛同できます、というかこのスタイン理事ってハーバードの先生なのにこの手の話が割と現場労務者的に腑に落ちるんですけど。

『The Market Is Not a Single Person』ってお題の所から。

『This point was very nicely made by Hyun Shin in his remarks at the Federal Reserve Bank of Kansas City's symposium at Jackson Hole last summer. Shin wrote:』

ほうほうそれでそれで?

『The "market" is not a person. Market prices are outcomes of the interaction of many actors, and not the beliefs of any one actor....But most discussions of central bank forward guidance treat the market as if it were an individual that you can sit down and reason with....By doing so, I believe we are in danger of committing a category mistake where we anthropomorphize the "market" as a rational individual with beliefs.3』

市場とのコミュニケーションを相手があたかも単一の主体であると考えて行うと間違いが起きるとな。

『Let me give you a particular example that illustrates the wisdom of Shin's observation.』

でまあそんな例とは??

『In early May 2013, long-term Treasury yields were in the neighborhood of 1.60 percent. Two months later, shortly after our June 2013 FOMC meeting, they were around 2.70 percent. Clearly, a significant chunk of the move came in response to comments made during this interval by Chairman Bernanke about the future of our asset purchase program. For example, in his June 19 press conference, he said:』

昨年のTaperingトークにおける金利上昇の例ですか。

『If the incoming data are broadly consistent with this forecast, the Committee currently anticipates that it would be appropriate to moderate the monthly pace of purchases later this year. And if the subsequent data remain broadly aligned with our current expectations for the economy, we would continue to reduce the pace of purchases in measured steps through the first half of next year, ending purchases around midyear.4 』

昨年6月FOMC後のプレコンでの冒頭説明部分でTaper予告キタコレの件すな。

『Perhaps it is not surprising that news about the future course of the asset purchase program would have a strong effect on markets.』

これで市場が動いたのはサプライズではないですが・・・・・・・・

『But here is the striking fact: According to the Survey of Primary Dealers conducted by the New York Fed, there was hardly any change over this period in the expectation of the median respondent as to the ultimate size of the program.5』

しかしこの前後で実は資産買入プログラムの規模に関するプライマリーディーラーのサーベイによる数値に大きな変化は無かったとな。

『Chairman Bernanke's comments may have clarified the FOMC's intentions, but, according to the survey, they did not have any clear directional implications for the total amount of accommodation to be provided via asset purchases. Thus, FOMC communications in this period did not appear to be meaningfully hawkish.』

まあこう纏めてしまうのもどうかという気はだいぶする訳で、これは「実際に資産買入プログラムが市場に影響を与えるのはストック効果でも無いし、実は目先のフロー額でもなくて、先行きの政策反応関数などの見方に変化が生じた場合、ポジションの巻き戻しが起きる」というだけの事を示唆しているんじゃネーノという気もだいぶしますが・・・・・・・・と思って次を読みますとこんな説明が。

『So what gives? One hypothesis is that going into the May-June period, there was a wide divergence of opinion among market participants as to the future of the asset purchase program. In particular, however reasonable the median expectation, there were a number of "QE-infinity" optimists who expected our purchases to go on for a very long time.』

QEの継続期間に関してこの時期は市場の見解が分かれていて、メディアンの見方が6月FOMCの逆さ絵先生会見に対してリーズナブル(つまり逆さ絵会見でのTaper示唆は極端なスタンス変更ではなくある程度予想されていたことという認識で対応という話ですかね)だったとしても、市場では「QEが無限に(近い位)継続する」と言うビューを持っている向きがあったのではという話ですな。

『And, crucially, in asset markets, it is often the beliefs of the most optimistic investors--rather than those of the moderates--that drive prices, as they are the ones most willing to take large positions based on their beliefs. Moreover, this same optimism can motivate them to leverage their positions aggressively.6』

ということで、そういう楽観的な人がアグレッシブなポジションやレバレッジ拡大を行っていたので、そういう人たちによるポジションクローズの動きが市場を大きく動かした、という説でして、何かスタイン理事毎度お馴染みのマクロプルーデンス的な話にもつながりそうなネタになっていますが、まあ全部が全部そうかというと疑問もあるけれども、まあゆうとる事の意味は分かるし、それなりに正しい話のように思える。

そうするとどうなるかと言いますと・・・・・・・

『In this setting, a piece of monetary policy communication that merely "clarifies" things--that is, one that delivers the median market expectation but truncates some of the more extreme possibilities--can have powerful effects. Highly levered optimists are forced to unwind their positions, which then must be absorbed by other investors with lower valuations. This effect is likely to be amplified if the preannouncement period was one with unusually low volatility, as was the case in early May 2013, when the implied volatility on long-tenor swaptions was near historical lows. To the extent that some of the optimists are operating subject to value-at-risk constraints, low volatility is likely to induce them to take on more leverage. If volatility rises sharply in the wake of an announcement, this increase will tend to exacerbate the unwind effect.』

金融政策に対する思惑や市場のボラ低下の長期化によって、市場の一部であっても楽観的なポジションが積み上がるような中で何らかの政策アクション行動を「明確化」すると、その積み上がったポジションの巻き戻しが起きて、それが普通の投資家も巻き込む価格変化になり得るという認識でまたもファイナンシャルスタビリティー的な話がキタコレでありまする。

『To be clear, I am not saying that monetary policy communications should have been different during this period. Rather, the point is that in some circumstances there are very real limits to what even the most careful and deliberate communications strategy can do to temper market volatility.』

スタイン理事は(まあそうでしょうなと思いますが)当時のコミュニケーションポリシーに対して批判している訳ではなく、ポジションが積み上がっているような状況では、最大級に注意深いコミュニケーション戦略を取っても昨年のような大きな金利上昇のような事が起こり得ると指摘しているそうな。

『This is just the nature of the beast when dealing with speculative markets, and to suggest otherwise--to suggest that, say, "good communication" alone can engineer a completely smooth exit from a period of extraordinary policy accommodation--is to create an unrealistic expectation.』

キタコレ。

『In this spirit, I think the FOMC may face a similar communications challenge as the nature of the forward guidance for the path of short-term interest rates evolves over the next couple of years.』

更にキタコレというかイイハナシダナーというか。

『The 6.5 percent unemployment threshold that we had until recently was not only quantitative in nature, but it also represented a relatively firm commitment on the part of the Committee. While this kind of commitment was entirely appropriate at the zero lower bound, as policy eventually normalizes, guidance will necessarily take a different form; it will be both more qualitative as well as less deterministic.』

まあそうかもねとは思いますが、実際にガイダンス文言モードから正常化モードに入る際には、フォワードガイダンスの表現も変わってくるでしょうとな。

『So, for example, when I fill in my "dot" for 2016 in the Survey of Economic Projections, I think of myself as writing down not a commitment for where the federal funds rate will be at that time, but only my best forecast, and one that is highly uncertain at that.』

ワロタ。

『Chair Yellen made a similar point in her March press conference:』

ということで3月の方の会見を持ちだして来るところがスタインクオリティ。

『More generally, you know, the end of 2016 is a long way out. Monetary policy will be geared to evolving conditions in the economy, and the public does need to understand that as those views evolve, the Committee's views on policy will likely evolve with them. And that's a kind of uncertainty that the Committee wouldn't want to eliminate completely from its guidance because we want the policy we put in place to be appropriate to the economic conditions that will prevail years down the road.7 』

というのは3月のプレコンでのお話。

『I agree completely with this view, and I suspect that many in the market also understand the distinction that is being drawn--that as policy normalizes, forward guidance will be less commitment-like and, hence, a less precise guide to our future actions than it has been in the recent past.』

出口が近づいてくるとフォワードガイダンスのコミットメント成分がドンドン弱まって行きますよという警告をしている訳ですが、その点で言いますとジャパンのケースにおける福井の俊ちゃん的なインチキ地均し攻撃というのも(当時はインチキだの何だのと散々悪態つきましたし、そもそもガイダンス文言明確化したのにその後にあのジャッジメンタル成分満載というのも今でもうーむとは思うのですが)意識しているのかしていないのか知らんですが、まあちょっとそんなのを思い出しました。

『But I would not want to presume that everybody is thinking about it the same way; one can imagine that there might again be some optimists who are in this case underestimating the degree of uncertainty about the future path of policy and are placing levered bets accordingly. So we may have some further bumps in the road as this all plays out.』

とは言えスタイン理事のように考えている人だけではないので、今後の出口戦略においてドカンというような動きは起こるでしょうというのが結論でした。


・・・・・・・・もっとサラッと引用する積りだったのですが、引用している内にノリノリになってしまって時間が無くなってしまったので続きは明日ですすいませんすいませんすいません。

ちなみに次の『The Committee Is Not a Single Person』の話が更に面白いのでお暇な方は続きを是非ご覧ありたいのですが連休要因で営業日が少ないのに暇な人間がいるかこのクソボケとか言われそうなので明日また見てちょということで。



2014/05/13

お題「短国買入2兆円とな/ドラギ総裁会見を鑑賞」

景気ウォッチャー先行き結構回復してんじゃんと思うのだが内容を斜め読みすると消費は大丈夫でも今後のコストプッシュ分も転嫁できるのかがどうかってえところでしょうかねえ。よー知らんけど。

○市場雑談メモ

・短国買入は2兆円でオファー&その他少々

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140512.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年5月14日
国債補完供給(国債売現先)・即日(注3) 2,000 2014年5月12日 2014年5月13日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140512.htm
国庫短期証券買入 36,153 20,007 -0.002 0.000 51.4
国債補完供給(国債売現先)・即日(注4) 4 4 -0.400 -0.400

つーことで前週まで2.5兆円ペースで行っていた短国買入ですが今週分は2兆円のオファーとなりまして、オファー2兆円になっただけあって平均は引けという割と穏当な水準での結果になっておりますな。

何せ短国市場様におかれましては引値だけ見ると盛大に逆イールドになっておりまして、オペに入らない糞短い物は足元では期末のようなニーズは無いので現先見合いに近づく(現先レート並みに上昇するとは言わん)し、3Mはカレントが毎週供給される(その分償還されてますけど)しという事ですが、一方で後ろは今の所短国買入で吸い上げられる分を見越して強くなったままという状況になっておりまして(ただし流通在庫がろくすっぽ無い銘柄が多々あるので実際にロットを売り買いした場合は話は別かも知れません)華麗に逆イールド状態はこのまま継続するでしょうなあという所で。

でまあワロエルのはその一方で利付国債の1年以下のゾーンに関して引値とかを見ますとこちらは(ほとんど傾きは無いですけど一応)順イールドとなっていまして、この差は何ですねんと言いますとどう見ても日銀買入効果です本当にありがとうございましたとしか申し上げようがなく、長国買入の1年以下買入フローと短国の買入フローが天と地ぐらい違っているのでこのような価格形成になっているという次第で、まあ別に今に始まった事ではないですけれどもMB目標達成の為にどんだけ市場の価格発見機能を破壊して回っているのかというのが如実に分かりますよね、という嫌味メモでございましたとさ。


○ドラギ俊彦鑑賞会

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140508.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Brussels, 8 May 2014

・Introductory statementの詳細部分からちょっとだけ

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Real GDP in the euro area rose by 0.2%, quarter on quarter, in the last quarter of 2013, thereby increasing for three consecutive quarters. Recent data and survey indicators confirm that the ongoing moderate recovery continued in the first quarter of 2014 and at the beginning of the second quarter.』

この辺は従来通りの話をしています。

『Looking ahead, domestic demand should continue to be supported by a number of factors, including the accommodative monetary policy stance, ongoing improvements in financing conditions working their way through to the real economy, the progress made in fiscal consolidation and structural reforms, and developments in energy prices.』

先行きに関してのサポート要因は緩和的な金融環境、ファイナンシャルコンディションの改善、財政及び構造改革、エネルギー価格動向とな。

『At the same time, although labour markets have stabilised and shown the first signs of improvement, unemployment remains high in the euro area and, overall, unutilised capacity continues to be sizeable. Moreover, the annual rate of change of MFI loans to the private sector remained negative in March and the necessary balance sheet adjustments in the public and private sectors continue to weigh on the pace of the economic recovery.』

労働市場が弱くて経済のスラックも大きく、民間部門のローンが伸びなくて、バランスシート調整がまだ続いているのが景気回復ペースを遅くしているんですってよ奥様、という事ですが、ではそのローンに関してどういう話をしているかというとちょっと先にこんなのが。

『The annual rate of change of loans to non-financial corporations (adjusted for loan sales and securitisation) was -3.1% in March, unchanged from February. Weak loan dynamics for non-financial corporations continue to reflect their lagged relationship with the business cycle, credit risk and the ongoing adjustment of financial and non-financial sector balance sheets.』

非金融部門向けローンが相変わらずあばばばばーなのですが、要因としてはビジネスサイクル要因、クレジットリスクが高い要因、バランスシート調整が続いている要因、という説明になっておりまして、いやあのその要因って金融政策でどうしようもねえじゃんよと思うのでありまして、追加金融緩和をしてこの手の要因にどう働きかけるのかというと知らんがなとしか申し上げようが無い次第でして、しかもクレジットスタンダードに関してはまさに現在銀行検査しているという状況の下でローンを伸ばさせようというのをサプライサイドの方から実施するという施策をする事自体が変じゃネーノと思われる次第で、はてさてこっち方面を言い訳にする施策って出来るのかねと疑問に思うのでした。

『The annual growth rate of loans to households (adjusted for loan sales and securitisation) stood at 0.4% in March 2014, broadly unchanged since the beginning of 2013.』

家計向けローンに関しては状況の説明だけ。

『The April 2014 bank lending survey confirmed the stabilisation of credit conditions for loans to enterprises and households. Credit standards over the previous three months remained broadly unchanged for loans to enterprises but were eased in net terms for households. Broadly in line with these results, in the survey on the access to finance of small and medium-sized enterprises (SMEs) for the period October 2013-March 2014, SMEs reported that bank loan availability had become less negative and had actually improved in some euro area countries. According to both surveys, the general economic outlook contributed less negatively or even positively to these developments. At the same time, banks still reported tight levels of credit standards when seen in a historical perspective.』

貸出態度などは改善しているものの、クレジットスタンダードはヒストリカルに見ればタイトという事ですが、じゃあそれを金融政策でどないせえちゅうねんというのもありますし、そもそも論としてクレジットバブル崩壊対応をしているのとバランスシート調整をしている中でクレジットスタンダードを必要以上に緩めさせる施策ってあり得んと思いますし、この手の基準というのは一旦ユルユルの勢いが付くと当然ながら適正な所で止まるという事がなく、行きつく先はクレジットバブルですからねえ。

ということで、いわゆるローン関連で何かやるという可能性も追加緩和ネタではあるのですけれども、(英国のFLSみたいなのを実施するとか)現状認識を見ているとローンの需要サイドの方に問題があるという認識になっているように見えるので、施策っつーても難しい希ガス。

というのを一応メモしておきましたということで。以下ドラギ俊ちゃん鑑賞会


・最初の質疑がもう象徴的なんですけどね

最初の質疑で既に笑える。質問は2つのパートになりますので分けてネタにしませう。

『Question: In the opening statement, you reiterated the line that there was unanimous agreement about the willingness to use unconventional tools if there was too prolonged a period of low inflation. But is there total agreement about exactly what is meant by the phrase "too prolonged a period of low inflation"? And would you mind enlightening us about when a prolonged period of low inflation becomes a too prolonged period of low inflation?(後半は後ほど)』

オッサンこの前から「too prolonged」な期間の低インフレに対しては対応すると大口叩いてるけど、「prolonged」な低インフレという今の認識をいつになったら「too prolonged」になるのか答えて見ろやオラオラオラ、という質問ですな(後半は後ほど)。

『Draghi: Yes. On the first question, the too prolonged period of low inflation, you have a period like that when you see that the risks of de-anchoring medium-term inflation expectations are increasing. That is a definition that takes into account the two elements of this concept. One is the level of inflation, and that is to say low inflation, and the other one is the length of time while one has low inflation. I think I've said several times that the longer is the period, the bigger are the risks for a de-anchoring of inflation expectations. So that's the answer to the first question.(後半は後ほど)』

テラヒドスという感じですが、インフレ期待がアンカーされなくなるリスクが見えるのが「too prolonged」の定義とかお手盛り判断にも程がある訳でして、ドーバー海峡の向こうにある国のように延々とインフレが上振れて推移しているのに「インフレ期待はアンカー(キリッ)」と言い続けて財務大臣向け書簡をただの紙状態にしていた中央銀行がおりました罠という事で、全然答えになっていないのがもう俊ちゃんの風格を漂わせるマリオ先生という所であります。

で、もう一つの質問は為替なんですけどね。

『Question: (前半割愛、というかさっきの部分)And just a second issue, if I may. We are hearing more and more complaints from Paris about the strength of the euro. Would you like to respond to them at all?』

ユーロ高に関して色々と言われておりますがどう対処されますかと。

『Draghi: (前半割愛、というかさっきの部分)To the second question, I would say that over the last few days we received plenty of advice from political figures, from institutions and, almost every day now, on interest rates, on exchange rates but also, on the other side of the scale, on the excess liquidity. So we are certainly thankful for this advice and certainly respect the views of all these people. But we are, by the Treaty, we are independent. So people should be aware that if this might be seen as a threat to our independence, it could cause long-term damage to our credibility. 』

たぶん質問は「為替市場に対処する方策如何」という話なのですが、中央銀行の独立性に関する方面に話をそらしておりますな。


・為替市場に関する追及は色々と

でまあその後も何度も為替に関する追撃は来るんですよね。直後の質疑応答。

『Question: I have two questions - one a follow-up question on exchange rates. The introductory statement confirmed that the ECB has worries about the high exchange rate. Is intervention in the foreign exchange markets a possibly useful tool to lower the exchange rate? And has it been discussed by the Governing Council today?』

まあ同じ質問ですな。

『And the second question, Governor Luc Coene recently said if the ECB would decide to lower the interest rate on the main refinancing operation, we should also lower the deposit rate to have sufficient impact. Do you agree with his point of view?』

マイナスの預金ファシリティー金利設定に関する質問は後の方でもう一回あります。でドラギ先生の回答。

『Draghi:. On the second question I would refer to Governor Coene.』

ドラギ先生の見解を聞いているのに何で振るんだよwwwww

『But on the first question, yes certainly, we had a discussion. Later on I can report the overall tone of the discussion, but basically we had a discussion on the exchange rate. As I've said many times, it's not a policy target, but certainly is very important for price stability and for growth. And the strengthening of the exchange rate in the context of low inflation is cause for serious concern in the view of the Governing Council.』

議論はしました。為替レートは政策ターゲットではないがユーロ高は経済物価見通しに対して大きな懸念を与えます(キリッ)という話はしていて、ユーロ高懸念というのだけはこの先でもひたすら説明している。

ちなみに先ほど振られたコーエン(と読むのか?)理事のお答えはこちら。

『Coene: Well I can only confirm what I said before, that if you really want to have an impact on the markets that if you only change a policy rate and leave the others unchanged, it will have less impact than if you shift the whole corridor down, then you will have a much bigger impact.』

コリドア狭くするよりは預金ファシリティー下げた方がインパクトあるのはその通りだが副作用はどう考えているんでしょ、というか多分軽視していると思う。


・6月に実施する云々に関する質疑など

でまあその次ですけどね。

『Question: It seems like in recent weeks we've had a mix of these very low inflation numbers, but some pretty good economic data. Do you see any evidence that low inflation is actually hurting the euro zone economy? And if it's not, why are you concerned about it?』

低インフレですが経済データは悪くない訳ですが、本当に低インフレがユーロ圏の経済に悪影響なのでしょうかとは引っ掛け質問。

『And my second question, you mentioned a June meeting in the introductory statement. Is this a signal that we should expect something in June?』

単刀直入質問ワロタ。

『And on this inflation and bank lending points where you said you'd have more information, what kind of information are you going to be looking for to decide whether to act on your easing bias?』

これまたイイシツモンダナーですけど、インフレと銀行貸し出しに関するデータが6月に出るというのは判ったが、じゃあその出たデータに関して金融政策実施の反応関数はどうなっていますねんという話ですな。

『Draghi: Probably the best way to respond to both questions is really to give a flavour of what sort of discussion we had today. I would see this discussion as a preview of the discussion we're going to have next time.』

今回の会合は次回のプレビューです(キリッ)って部分はこちらです。

『And we had an extensive discussion that took note that, while the recovery is firming up in some parts of the euro area, at the same time the Governing Council is not resigned to having low inflation for too long a time, as I said before.』

でもその「too long a time」の定義が先ほど仰せのだと只のお手盛りなんですけど・・・・・・・・・・

『The second point is that it's true that the recovery is proceeding, but it's proceeding at a slow pace and it still remains fairly modest.』

回復しているけど遅いとな。

『And there are some downward risks now, and the risks have to do with the possible weakening of global demand, have to do with geo-political risks that are of serious significance and have to do with the exchange rate.』

ほうほう。

『The third point that was touched in the discussion was really the causes of this low inflation. We've discussed this many times and certainly we would view that the most important causes are the energy prices and food prices. I mean, if you take the first quarter of 2012, inflation at 2.7 percent, and you compare it with the current inflation rate of 0.7 percent, of the 2 percentage points difference, 80 percent is due to lower energy and food prices.』

これも前から説明されているのですが、足元の低インフレはエネルギーと食品の寄与が下落のうちの8割を占めているという話をしていまして、じゃあそれって一時的じゃねえかという話でもあったりするので、この辺りの説明を毎度毎度わざわざしているのがインチキの風格を漂わせる所でして・・・・・・・

『But now the question is, and the question that we have to look into is whether there are other factors besides energy and food that could keep inflation low. Well, some of these factors are the exchange rate and the possible weak domestic demand and weak employment figures.』

ただまあ他の要因もありますよという事で雇用の弱さと為替レートが出てきます。

『The fourth point we discussed touched on what you actually hinted at, on the relationship between credit flows and the business cycle. And one of the reasons why we haven’t expected a serious pick-up in credit for a while is that there is a lagged relationship between credit flows and the business cycle's recovery, and that's certainly something we want to have our eyes on in the coming weeks and, I would say, the coming months too.』

ビジネスサイクルとクレジットフローの関係からすると暫く貸出は伸びないよねという議論もしています、とかゆうとる訳ですが、そうなりますと銀行貸し出しのインフォメーションがアベイラブルになって何かするって何をどうしますねんという風にも思う訳で、何ともこの辺の説明が怪しいのですが・・・・・・・・

『As I said, we discussed the exchange rate. So at the end of this discussion I would say that the Governing Council is comfortable with acting next time, but before we want to see the staff projections that will come out in early June.』

ということで、ニュースでも出ておりました「次回の会合で何か動くことに対して理事会はcomfortableである」という部分になるのでありましたが、しかし物価の下落の大きな要因がエネルギーと食料品で、クレジットフローに関してはサプライサイドではなくてディマンドサイドの問題という話をしているのに次回会合で何をしますねんというのは甚だ意味が判りかねる所でして、要するに何も決まってない/何をするのかの見解が分かれているんでしょうなあというと答えです。


・そこまで言うなら次回何をするんですかという直球質問

直後にこんな質問がががが。

『Question: Mr Draghi, you just said a second ago that the Governing Council is comfortable with acting next month.』

「you just said a second ago」ワロタ。

『Should we understand that to mean that there is a consensus around doing something already? And if so, could you tell us whether that would be a rate cut or what other option you're looking at?(後半はEONIAレートの上昇に関する質問でこれもオモロイのだがパスします)』

『Draghi: What I would say is that there is consensus about being dissatisfied with the projected path of inflation, and so there is a consensus in not being resigned to this and accepting this as a fact of nature, which would lead to having consensus about action, but, as I said before, after having seen the staff projections that will come out in early June.』

何だよこの答えはという感じでして、いやだからその低いインフレが長期間続くのはケシカランという話については別に今に始まった話じゃねえじゃんという感じですし、スタッフの見通しを見てからまた判断します(キリッ)とか最早ナメトンノカという俊ちゃんもビックリのインチキクオリティ。

なお、後半のEONIAに関する質問については結構延々と説明していまして、まあ要は一時的な要因であって、イールドカーブの後ろに影響が出るような想定外の金利上昇にならなければ無問題という認識を示しているのですが、今回の会見ではこれ以外にユーロ圏の金融統合とか政治統合みたいな質問に関しては明瞭な回答を展開しておりまして、その一方で金融政策の具体的な所に関してはインチキクオリティを炸裂されるという質疑応答が何とも素敵な風格を漂わせる所です。


・為替レートが深刻な懸念だったらどういう政策になるんでしょうかという直球質問

ちょっと後の方にこんな質問が。

『Question: I have two questions. Concerning today's decision, was it unanimous? Or were there any governors who already today were in favour of some form of loosening policy? 』

追加緩和の提案は無かったのかという質問に続きまして・・・・・・・

『And the other, you keep saying that the exchange rate in the context of low inflation is a very serious concern. How does serious concern translate into a policy response?』

豪直球質問ワロタ。で追加提案に関してですが・・・・・・・・

『Draghi: Thank you. Let me say immediately that there wasn't a decision today, in the sense I said it's a preview of the next month's meeting, the discussion we had today. But certainly there is consensus or unanimity in not being resigned to the present low inflation for a too long, too protracted a time. That is certainly a unanimous conviction, and it's also, I would say, reiterated in the introductory statement I read just a minute ago, the Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.』

そもそも追加緩和云々の質問には答えないで、「全員がfor a too long, too protracted a timeな低インフレを許容しない事で一致しました(キリッ)」とだけ答えているのですが、そもそも物価安定のマンデートがあるんだからそんなのは別に当たり前の話であって、じゃあ現状がそのtoo longな状況なのかという質問に対しても狸回答という状態なんですよねえ・・・・・・

『As I've said many times, the exchange rate is not a policy target but it's a serious concern for our objective of price stability and therefore this concern will have to be addressed.』

だからそれは政策対応としてどうなのかという質問なのですがまあ答えない答えない。


・じゃあインフレに影響を与えるパスは何なんですかという質問と再び上記の質問

がもうちょっと先に。

『Question: My first question is, what is the expected pathway to affect inflation? And more importantly, can inflation expectations, should the Ukrainian crisis escalate?』

まあウクライナの方は意味判らんが。

『And my second question will touch again the euro exchange rate. You multiple times said that the euro exchange rate is not a policy target in itself. But I would like you to comment maybe, if the Governing Council has some kind of a trigger point where the euro exchange rate is too strong, prompting the bank to act in the future? Thank you.』

You multiple times saidワロタ。

『Draghi: On your first question, I’m afraid the answer is, I don’t know. But what one can tell, is that it depends very much what is going to be the impact of the price of energy, the price of gas especially, and its implications on gas supplies to Europe for the coming year. Other projections about inflation are very, very difficult to make at this stage.』

ワロタというか何というか。

『On the second question, I think I’ve answered before. No, we don’t have a trigger. We just see that this is having the effect of basically depressing further the inflation rate.』

政策対応のトリガーになるレートは無いというのはまあそうでしょうけど。

『Again, if you take that comparison I made with the first quarter 2012, there are actually two stages. One is in fact when energy prices and food prices had the effect of depressing the rate of inflation. That is not, in fact, as continued beyond, I think, mid-2013. After that, the contribution of energy prices and food prices is not really important. And it’s actually the exchange rate that keeps the inflation rate low and depressed. The exchange rate, both nominal and effective, has appreciated by something like 10 percent since mid-2012 to today.』

で、以前との比較で食品エネルギー価格とユーロの実効レートの話をしていますが、結局質問の答えは華麗にスルーという貫録の風格ですな。


とまあそんな感じで、肝心の政策アクションに関する質問に対して全然答えていないのですが、これはまあ答えないのではなくて答えられない(まだ全然話がまとまっていない)んでしょうなあと思うのでした。



2014/05/12

お題「各種雑談メモ/展望レポート背景説明の説明は進軍ラッパだけでも無い件ファイナル/ドラギ俊彦鑑賞会(ただの予告編)」

さあ7月21日まで休日祝日はありませんよ!!

○各種メモを少々

・6M入札は平均4bp割れとな

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140509.htm

(3)募入最低価格 99円98銭0厘 (募入最高利回り) (0.0403%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.7349%
(5)募入平均価格 99円98銭1厘 (募入平均利回り) (0.0383%)

6MTBは期間が中途半端な上に発行が3.5兆円とやや少なめなのもありまして、需給関係が偏る場合がありますが、直近ではこの辺の流通玉がスッカラカンだったようでして、でまあ流通玉がスッカラカンになる背景には当然ながら投資家の買いがあるという事で、入札前から4bp台の気配だった訳ですが、更に入札で強くなるの巻となっております。

まあ冷静に考えればこの前までは短国買入減額の影響で3Mとかの需給がやや緩んだ訳ですが、MB目標達成のためには結局買入が続く訳でございまして、そうなりますと短国市場では吸い上げ祭りは続く(6月の4年まで可能な貸出増加支援オペがどの位応札来るのかが注目ですけど)のですし、そこそこ長い所はそらまあニーズはあるだろうなあという所ですかそうですか。

なお、今の所確定しているのは年末までのMB目標でありまして、それ以降に関しては市場の何とかストの皆様の殆どが目標行かないです無理です緩和継続です(アタクシが認識している目標達成じゃあと言ってるのは2名だったかな)と申しておりますが、実際問題として本当の本当にどうなるのかはワカランチ会長ですから、実はあまり盛大にロングの運用をマネーマーケット的にして良いのでしょうかというのは微妙に謎な部分が無い訳では無い(けどレート形成は別に後ろが立っている訳でもなく2年は付利より下ですけどね)ので、6Mだと11月足だから丁度良いのかも知れませんね、などという事は特に考えている訳ではないと思うのだが後付で変な屁理屈を立てようとすると6Mのニーズが妙に強い事にはそういうコジツケも可能だったりします(^^)。


・決算剰余金の法定準備金積み立てを増やすとな

これまたコジツケ可能ネタ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140509c.htm/
日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請について

『日本銀行は、第129回事業年度(平成25年度)決算において、財務の健全性確保の観点から、当期剰余金の5%相当額(注)を超える20%相当額を法定準備金として積み立てる方針を決定し、本日、財務大臣に対して日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請を行いましたので、お知らせします。』

>財務の健全性確保の観点から
>財務の健全性確保の観点から
>財務の健全性確保の観点から

ほうほう。

まあ足元で国債馬鹿買入によってグロスの総資産ベースが拡大しているから準備金を拡大しましたとか、ETFやJ−REITという償還来ないリスク性資産の買入が拡大しているから準備金を拡大しましたとか、まあそういうのが表面的な話になると思うのですけれども、QQE正常化にあたっていずれかの時点で短期金利をいじらないと行けなくなり、その際に莫大に保有する国債の購入時利回りと短期金利の差分から発生する期間損益が赤くなってしまいますから正常化を見越した対策ですねわかります、とまあコジツケが可能ですなうんうん。まーこの手の話ってえのは何ぼでもコジツケ可能になりますのでご注意ありたしという所ですけどにゃ。


・日銀理事交代

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140509d.htm/
http://www.boj.or.jp/about/organization/tanto.htm/

宮野谷名古屋支店長が理事に昇任されて大阪支店長、大阪支店長の櫛田理事が退任された田中理事の後任担当、名古屋支店長の後任は梅森発券局長という人事が公表されております。で、どうなんでしょうとかいう話につきましては華麗にスルーの所存でメモのみ。


・超どうでも良いですが

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/koukoku260509.html
平成26年度の国債広告を実施します

『(2)キャッチコピー 「たいへんよくなりました」 』

何かこうじわじわ来るキャッチコピーですなこりゃ。


○展望レポートネタの続きである:背景説明の方を読んでいると基本的見解にある進軍ラッパだけでは無いという件

引っ張ってしまいましてすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

先行きメカニズムに関する項目別部分をもう少し引っ張ってみます。本文24ページ(ファイルの26枚目)の対外収支と貯蓄投資バランスに関する所から参ります。

・対外収支とISバランス

まずは貿易収支。

『貿易収支をみると(図表31(1))、2011年度に1979年度以来の赤字となったあと、2013年度まで赤字幅の拡大傾向が続いている。その影響から、経常収支の黒字幅も縮小している。』

さて・・・・・・・

『名目貿易収支の悪化について要因分解を行うと(前掲図表30(2))、2013年度は、外貨建て取引比率の違いを反映して為替円安の価格への影響が輸出面よりも輸入面で大きく働いたことから、輸出入価格要因がマイナス寄与を拡大させたほか、実質輸出入要因(純輸出)のマイナス寄与も拡大気味となった。この実質要因の弱さについては、海外経済が新興国のもたつきなどから過去の平均的な成長率対比で伸び悩む一方、国内需要はかなり強めに推移するという、内外成長率格差が基本的な背景にある(図表30(3))。加えて、前述のような、構造的・一時的両面における輸出の増えにくさと輸入の増えやすさも、実質収支の悪化に影響したと考えられる。』

となりますと・・・・・・・・

『先行きについては、基調的にみて、国内需要の伸び率は幾分減速方向となる一方、海外経済の成長率は高まっていくため、内外成長率格差による収支悪化圧力は弱まるほか、駆け込み需要に伴う収支悪化要因も剥落するため、貿易収支の赤字幅は縮小していくと考えられる。』

という事ですが、金曜に引用したように可能性として構造要因(海外シフトと輸出の一部セクターでの競争力低下)によって輸出が伸びない可能性があり、貿易収支の赤字幅が縮小しないかもしれませんよね。

『また、所得収支についても、直接投資などによる海外資産の蓄積に伴い、黒字幅が拡大していくと考えられる。このため、経常収支の黒字幅は、緩やかながら再び拡大していく可能性が高い17。』

で、ISバランス。

『概念的に経常収支と表裏の関係にある国内の貯蓄投資バランスについて考えると(図表31(2))、見通し期間においては、民間部門の貯蓄超過幅は緩やかに縮小する一方、一般政府の赤字幅は、消費税率引き上げに伴う税収の増加もあって、それを幾分上回るペースで縮小すると見込まれる。このため、国内全体では、貯蓄超過幅は緩やかに拡大するとみられる。』

ということのようですが、一般政府の赤字って本当に縮小してくれるんですかねえ・・・・・・


・企業収益、設備投資

その次が企業収益と設備投資。

『企業収益は、改善を続けている(前掲図表8(1))。先行きについても、国内需要が堅調に推移することに加えて、輸出の緩やかな増加や為替相場の動きにも支えられて、改善傾向を続けると予想される。ただし、見通し期間の後半には、賃金の上昇などを通じ家計への分配がより進むため、企業収益の伸び率は徐々に鈍化していくと考えられる。』

ちなみに企業収益の伸び率は徐々に鈍化するのですが、この後に出てくる所得環境の話を見ると何故かそっちではこの鈍化する企業収益の伸びの影響がスルーされている辺りが大人の事情という風情を漂わせているのですが、4月1回目の議事要旨でも指摘している委員がいましたな。

『この間、為替円安の企業収益を通じた経済全体への影響という観点から、この1年余りの日本経済の動きを振り返ってみると、円安による円換算後の輸出入価格の変化は、製造業の収益を押し上げる一方、非製造業の収益を押し下げるという部門による違いを伴いつつ、経済全体では交易条件を幾分悪化させる方向に作用してきた(図表32(1))。』

円安の影響ネタキタコレ。

『しかし、為替円安は、製造業のウエイトが高い上場企業の株価上昇を通じて、個人消費などの国内需要にもプラスの影響を及ぼした。そうしたもとで、非製造業においては、従来からみられていた高齢者の消費の活発化や公共投資の増加といったポジティブな動きが続いたこともあって、為替円安による交易条件の悪化の影響は限定的にとどまり、非製造業部門の業況感や利益率はむしろ改善した(図表32(2))。また、製造業についても、為替円高の修正を受けて、業況感や利益率は大きく改善し、これが企業の前向きな動きを後押しした。』

ということで、円安の影響は交易条件の悪化よりもそれ以外で効果という話ですが、どさくさに紛れて為替市場と関係ない公共投資の話を加えていたりしてますし、円安効果でここから一段の株高や企業収益の改善が期待できるかという話はかなり怪しい部分がありそうで、そういう辺りを勘案するとここから先の円安ってどうなのよという話をしているようにも思えますな。

『設備投資については、企業収益が改善を続ける中で、持ち直しが明確になっている。製造業においては、回復の初期段階であるため、老朽化した設備の維持・更新投資や、情報化投資や研究開発投資といった戦略投資が中心になっているとみられる18。非製造業においても、物流システムの革新や堅調に推移するシニア層の消費の取り込みなどを企図して、能力増強を含め、前向きな投資に踏み切る動きがみられている。』

でもまあシニア層の消費活発化というのはサステイナブルな話でも無い(いやまあ構造的に将来不安が無くなるというのならともかく)と思うのですが、そうなると消費税増税後の動向を見てからという話になりそうな気がするんだが今後は。

『先行きについては、見通し期間を通じて、緩やかな増加基調をたどると考えられる(図表33)。すなわち、当面は、循環的な回復力が大きい中で、収益の改善傾向や稼働率の上昇などに伴って、設備投資は緩やかに増加していくとみられる。その後、資本ストックが充足されるに伴い循環的な押し上げ効果は次第に減衰していくが、成長期待の高まりや、それに伴う金融緩和効果の強まり、さらには各種企業向け減税の効果もあって、緩やかな増加基調が維持されると予想される。こうした設備投資を支える諸要因について確認すると、以下のとおりである。』

ということで・・・・・・・・


・先行きの設備投資に関する要因について

『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果は、見通し期間中、設備投資を後押ししていくと考えられる。』

というのはいつも通りの実質金利ガーの話なので割愛。

『第2に、設備投資は、リーマン・ショックや震災後の落ち込みから漸く回復過程に入った段階で水準はなお低めであるため、経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善傾向が続けば、循環的にペント・アップ需要が顕在化しやすいと考えられる。』

これも毎度話をしているネタですけれども・・・・・・・・・

『実際、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との前提のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると、対資本ストックでみた設備投資比率は、企業の期待成長率から予想される水準を大きく下回って推移してきた。このため、当面の期待成長率がゼロ%台半ばにとどまるとしても、設備投資の増加余地はなお大きいとみられる(前掲図表33(1))。』

という話をしておりますが、これに関しては毎回の展望レポートやら金融経済月報やらで、こういう見通しを出している割には全然伸びてこないという実にこう残念な話が続いておりますわな。

『設備投資の対名目GDP比率やキャッシュ・フロー比率をみても(図表35(1)(2))、長期的にみれば低めの水準にある。このところ、改善の遅れていた製造業も含め設備の稼働率が上昇しているうえ、企業の設備過剰感も全体として解消されつつある点も踏まえると(後掲図表48(5)(6))、設備投資の循環的な回復力はよりはっきりしてきていると考えられる。』

という話でして、これってまあ読んでいましてそうだろうなあとはアタクシも思うのですが、その割には実績としての設備投資が待てど暮らせど戻ってこない訳で、ナンナンデショと思うのですけど。


『第3に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられる。』

まあ全然進んでいないけどな!!!!!以下書いてあるけど、金曜にもこの第三の矢の部分があったけど、もっと日銀はこの点を散々アピールした方がさすがに良いと思うのです。


・雇用所得環境、家計支出行動の辺りは微妙な見通し説明が続く

『雇用・所得環境をみると、労働需給面では、労働需要を誘発しやすい国内需要がしっかりした動きを続けるもとで、弱めとなっていた製造業を含めて労働需要が増加しているため、全体でも着実な改善が続いている(前掲図表11)。労働投入量(雇用者数×総労働時間)も、雇用者数の伸びを主因に、緩やかな増加が続いている(図表36(1))。』

これはその通り。

『このところの労働需給の引き締まり傾向には、もともと高齢化が労働供給の下押しに作用しやすいことも大きく影響しており、必要な労働力は、失業者の減少のほか、女性や高齢者の労働参加の高まりで確保されている(図表36(2))。こうして新たに活用される労働力は、これまでのところ、パートなどの短時間労働が中心となっており、結果として総労働時間や後述する一人当たりの平均賃金を押し下げやすい状況となっている。もっとも、短時間労働であっても、労働参加の高まりは、所得増加等を通じた需要面への影響も含めて、経済成長の押し上げにつながっていると考えられる(後掲図表38(2)(3))。』

ちなみに基本的見解の所で女性や高齢者云々という話があったのはこの辺りを踏まえた話で、まあ平均所得よりも雇用者総所得がというのは経済成長としてのパイという観点から重要なんだよというのは仰せのとおり。

『労働需給の引き締まりは、賃金にも影響し始めており、労働者全体の時間当たり名目賃金は、振れを伴いつつ緩やかな上昇に転じている(図表37 (3))。一人当たりでみた賃金については、短時間労働者の増加が下押し要因となっている中でも、全体としてみれば、所定外給与や特別給与の増加に支えられて、概ね下げ止まっている(図表37(1)(2))。』

非正規が上げで正規はせいぜいヨコだということですねわかります。

『また、今春の賃金改定交渉では、賞与の引き上げのほか、ベースアップもある程度実現する方向で労使間の議論が進められている(図表37 (4))。』

で、先行きは????

『先行きについても、わが国経済が潜在成長率を上回る成長を続ける中で、企業が正社員を含め採用意欲を高めていることもあって(図表36(3))、労働需給の引き締まり傾向は強まっていく可能性が高く、失業率は構造的失業率並みの水準に向けてさらに低下していくと予想される(前掲図表11(3))20。そうしたもとで、賃金にも、はっきりとした上昇圧力がかかっていく可能性が高い。』

と、こちらでは需給面での説明をしていますが、肝心の原資であります所の企業収益に関しては先ほどの説明部分で収益の伸びが鈍化するという話をしておりまして、そう考えますとあくまでもこの辺のメカニズムが全体としてワークするには「潜在成長率を上回る成長を続ける」というような成長シナリオがベースになっていまして、それって本来的な意味での物価安定目標であります所の需給ギャップがゼロになっている場合での物価上昇率が2%というのの達成って無理なんでネーノという気がしますな。

『賃金の基調的な動きを労働者全体の時間当たり賃金でみると、まず、失業率との関係(賃金版フィリップス曲線)については、非正規雇用の急速な拡大などを背景に弱めとなっていた2000年代央の動きとは異なり、労働需給の引き締まりの影響がよりはっきり現れていくと考えられる(前掲図表37 (3))。』

企業から見たらただのコストプッシュ・・・・・・・・・

『さらには、今後、消費者物価の上昇がより明確になる中で、物価動向がベースアップなどの動きに反映され、賃金全体の上昇につながると想定している(後掲図表46(3))』

昭和時代だったらそうかも知れんが、現状の労使関係とかインフレ期待に関する部分とか考えた場合に、ベースアップの動きには物価動向ではなくてあくまでも企業収益からという話になるんじゃネーノという風にしか思えず、この辺り微妙にロジックが怪しげではありますなという所です。以下ちょっとあるけど割愛。


家計の支出行動ですけどね。

『個人消費は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。この点、勤労世帯の所得をみると、世帯主収入が賞与を含めて増加しているだけでなく、労働需給の改善などを反映して世帯における有業人員割合が上昇し、その結果、世帯主の配偶者や他の世帯構成員の収入も増加している。このため、世帯単位での所得の増加が、個人消費を支える要因となっていると考えられる(図表38(2)(3))。』

図表38の辺りを見ると2012年の方が増加しているような気もするがまあ良いとしまして。

『先行きの個人消費については、最近までのデータで消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で確認されている点を踏まえると(図表39)、一旦はその反動からはっきりと減少することが見込まれる。ただし、その後は再び持ち直し、全体としてごく緩やかながらも増加基調が維持されると予想される。』

ほう。

『こうした見通しの背後にあるメカニズムとして、第1に、高齢者の消費が、需要側(団塊世代の高い消費意欲)と供給側(企業による高齢者需要の掘り起こし)両方の要因から、持続的に消費全体を下支えしていくことが考えられる(図表38(5))。』

これサステイナブルなのか????

『第2に、前述のとおり、雇用者所得の改善が次第にはっきりしていくことが、勤労者世帯を中心に消費を後押ししていくと考えられる。ただし、名目可処分所得の伸びは、税や社会保障の負担増加もあって緩やかなものにとどまるうえ(図表38(1))、消費税率引き上げなどが実質所得を抑制する方向に働くと予想される。』

可処分所得名目で伸びるのか????

『こうしたもとで、マクロの消費性向については、高齢化が進むこともあって、高水準を維持する可能性が高い(図表38(4))。』

ということですが、インフレ期待が変わる上に社会保障改革はどうせ実施しないといけないのですから、高齢者の消費性向に関しても変わるような気がせんでもない。


・物価に関する部分は幾つかネタがございまして・・・・・・・・・・

引用大会で長くなって恐縮ですが今回の各項目については後々自分でも見たいので延々と引用しているという所でありまする(大汗)あと少しお付き合いくらはい。

『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主な要因について点検する。』

ほうほうそれでそれで?

『第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善を続け、足もと需給はほぼ均衡している(図表40(1))。ここ数四半期の動きをみると、需給ギャップの推計値の改善ペースは、実質GDPの動きとの対比でみて速めとなっているが、この点については、今回の景気回復が雇用を誘発しやすい内需中心で実現してきており、そのもとで短期的には、労働需給のタイト化に結びつきやすかったことが影響していると考えられる22。』

そもそも需給ギャップに関しては、ここの脚注22にありますように・・・・・・・

『22 ここでの需給ギャップは、GDPそのものから推計しているのではなく、投入される生産要素(労働・資本)の動きから直接求めている(需給ギャップについて詳しくはBOXを参照)。このところの需給ギャップの改善には、労働と資本の双方が寄与しているが、労働面では、ギャップの寄与が既にプラスに転じているなど、改善がとりわけ目立っている。』

でまあBOXの方は詳しく見てちょ(さすがに引用大会にも程があるのでスルーする)という話ですけれども、本文の方で内需中心での回復で労働需給がタイト化しやすいという話をしている事を勘案すると、需給ギャップの推計そのものが従来の製造業中心の景気回復サイクルの時と違うんじゃないのですかというツッコミが無い訳では無い。

というかそもそもそういう感じで推計誤差のある需給ギャップやら潜在成長率やらの話を思いっ切りベースに持ってきて見通しを出すというのもどうなのかという気が盛大にするのですけどね。

『先行きのマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、潜在成長率を上回る成長が続くという景気展開を反映して、2014年度下期には需要超過基調が定着し、見通し期間の終盤にかけて、緩やかに需要超過幅を拡大していくと予想される。』

で、第2はインフレ期待の話でこれはいつも通りですが、基本的見解にあったように「実際に物価が上昇する形でのフィードバックサイクルも働いてきている可能性」みたいな威勢の良い話が加わっているのがキタコレですが引用割愛。

そして第3は輸入物価ですが、こちらに関しては一旦エネルギー価格の影響の裏が出て、その先は世界経済の拡大に伴い緩やかに上昇というこちらは穏当な話をしています。

で、フィリップスカーブに関する話ですけれども、途中を飛ばしましてその辺の話だけ。

『こうした物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(図表44、45(1))、消費者物価の前年比は、需給バランスの改善に比較的明確に反応していくことに加え、中長期的な予想インフレ率の高まりに沿うかたちでのフィリップス曲線のシフトアップも伴いながら、次第に高まっていく姿を念頭に置いている。』

『このように、今回の局面では、フィリップス曲線を押し下げるような要因がみられないもとで、需給に対する物価の感応度や短期を含めた予想インフレ率が、高まりつつあるかたちで観察されていると考えられる。』

ということで、基本的には足元でフィリップスカーブのスティープ化か進み、今後はシフトアップもしますよという見通しになっています。まあホンマカイナという気はしますが。

#ということで延々と引用大会ですいませんでした



○ドラギ俊彦総裁の会見鑑賞会・・・・・・をしようと思ったのですがががががが

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140508.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Brussels, 8 May 2014

ということで今回は「次回理事会での追加緩和を盛大に示唆」というドラギ俊彦総裁の会見ははてさてどうなんでしょというのを確認したのですが、今回のドラギ俊彦先生の会見では追加緩和とか為替市場に関する質問が当然ながらバシバシ出てくるのですが、微妙に答えになっていない答えを連発するという大変にアレな会見となっております。

で、その会見ネタをやる積りだったのですが、時間と労力の配分を間違えた為に展望レポートネタで時間と労力が無くなってしまうという実にこう残念な展開となってすいませんすいません。

まー一応極めて簡単にまとめてしまいますと、とりあえず「何かやる」みたい話はしているものの、実際に何をするのかという話に関してはまあ答えない答えない、というかどうせ何も決まってないんだろうなあという感じですし、為替市場に関してユーロ高が進行するのは困るというのだけは判るのですが、じゃあユーロ高に対して何か実施するのかという話も当然ながらスルーという所ですな。

これやるやる詐欺で引っ張るにも限界ありますし、ユーロ高の是正に直接何をするとか言われましても金利下げたら次のタマ無くなってしまいますから厳しいですし、量的緩和政策で量を稼ぐのは預金ファシリティーが既にゼロ金利の中厳しいです(大体からして国債の購入がEU条約的に微妙だし)し、もうこうなったら欧州周縁国に着火した方がユーロ高是正に効くんじゃないですかねえ(ゲス顔)。

という話は明日のネタとなりますゴミンナサイゴミンナサイ。




2014/05/09

お題「ECBキタコレ/短国レートは低下/展望レポート背景説明部分ネタの続き」

この「実験ノート」画像の破壊力オソロシス。中学生の夏休み理科自由研究で実験やってもこれよりマシなノートが出来る筈なんだが、それより恐ろしいのはこのレベルで博士号を取って理研のユニットリーダーになった事でして、そちらの闇の解明を願いたい。
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20140507005258.html

#ってかこれを実験ノートでございと公開できる頭の構造が理解致しかねる

○ドラギ総裁「次回に実施」攻撃キタコレ

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140508.en.html(今回)
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Brussels, 8 May 2014

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140403.en.html(前回)

でまあ前回から始めましたステートメントの冒頭部分だけ前回と比較攻撃を今回も実施してみませう。

・現状認識部分もちと弱くなっていますかねこれ

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』(今回)
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』(前回)

というのは一緒ですが^^;

『Incoming information continues to indicate that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment. At the same time, recent information remains consistent with our expectation of a prolonged period of low inflation followed by only a gradual upward movement in HICP inflation rates.』(今回)

『Incoming information confirms that the moderate recovery of the euro area economy is proceeding in line with our previous assessment. At the same time, recent information remains consistent with our expectation of a prolonged period of low inflation followed by a gradual upward movement in HICP inflation rates.』(前回)

あまりこの辺のECB文学をこれまで詳細に読んでいないので知見が少なくて恐縮ですが、景気回復が理事会のアセスメント通りに進行している件について前回がconfirmだったのが今回continues to indicateになっているので表現これ弱まってますよね。

『The signals from the monetary analysis confirm the picture of subdued underlying price pressures in the euro area over the medium term. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term remain firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)

『The signals from the monetary analysis confirm the picture of subdued underlying price pressures in the euro area over the medium term. Inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(前回)

マネタリーの分析が示すシグナルが云々の所は全文一致でして、中長期的インフレ期待に関する表現は前回がcontinue to be firmly anchoredで今回remain firmly anchoredなのは最早ドメドメジャパニーズのあたくしには差がワカランチ会長なのですがどうなんでしょ。


・先行きの金融政策に関しては追加緩和示唆表現を更に強めるとな

『Looking ahead, we will monitor economic developments and money markets very closely. We will maintain a high degree of monetary accommodation and act swiftly, if required, with further monetary policy easing. We firmly reiterate that we continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.』(今回)

『Looking ahead, we will monitor developments very closely and will consider all instruments available to us. We are resolute in our determination to maintain a high degree of monetary accommodation and to act swiftly if required. Hence, we do not exclude further monetary policy easing and we firmly reiterate that we continue to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.』(前回)

先行きの経済状況と金融市場を観察するという部分は今回金融市場の話が出ていますが、前回はこれに相当する部分は後ろの方にありまして今回手前に持ってきたようです。でもって必要なら追加の措置を実施云々というのに関してですが、前回は「we do not exclude further monetary policy easing」という表現でしたが、今回は「if required, with further monetary policy easing」という形でより追加緩和を強く示唆する形になっていましてやる気を更に見せるの巻。


『This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity, and subdued money and credit creation.』(今回)

『This expectation is based on an overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness of the economy, the high degree of unutilised capacity and subdued money and credit creation. At the same time, we are closely following developments on money markets.』(前回)

ここは同じで、金融市場云々は先ほど申し上げた通りこのパラグラフの第一文に移動しています。

『The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation. Further information and analysis concerning the outlook for inflation and the availability of bank loans to the private sector will be available in early June.』(今回)

『The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.』(前回)

前回の文章の次に「Further information 〜」という文章が入っておりまして、インフレーションと民間セクターに対する銀行ローンのアベイラビリティーに関する更なる情報や分析が6月の早い時期に明らかになります(キリッ)っという謎の一文が加わるのでした。

・・・・・・・でまあQ&Aの所でどうせその辺の話が有ると思うのですが、さすがにそれを読んでいる時間と余裕は無かったりしますのでパスなのですけれども、まあこういう言い方をしているのですから追加で金融緩和をするとしたら銀行ローン促進策みたいなのを金融政策的なオペレーションでどう実施するかという話がメインになるんでしょうなあ、というのは把握しました。

とは言えこの部分では「情報と分析がアベイラブルになる」とは言っているが、だから何かを実施するとは言っていない所がドラギ俊彦先生の相変わらずの気合だけは見せる攻撃だったりするのが少々アレですが、Q&Aは週末にでも精読しようかと。


○市場雑談メモ

・短国金利は低下モードですな(つーかもう下がったが)

昨日は3MTB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140508.htm

(3)募入最低価格 99円98銭6厘0毛(募入最高利回り)(0.0561%)
(4)募入最低価格における案分比率 23.8922%
(5)募入平均価格 99円98銭6厘3毛(募入平均利回り)(0.0549%)

ということで3M短国レートは連休中に6bp台半ばとかに上昇しましたが、短国買入効果が出てきた上に、今月の短国買入はハイペースが予想されますので、そらまあ金利に低下圧力が掛かります罠という所で、とりあえず一昨日の時点で6割れやっていましたのでまあこんなもんでっしゃろという感じですかね。GCレートは今の所はまだ微妙ですけど。

あと注目なのはここからどの程度のレベルまで金利低下していくのかという所で、3月の金利馬鹿低下は期末要因が入っていたので追い風参考記録だとは思うのですが、ご覧のとおりで日銀の短国買入のフローベースの所で思いっきり水準が影響されてしまうという残念な単なる需給マーケットと化しておられますので、方向性としてはMB拡大する中で固定金利オペや貸出支援関連オペの残高が積み上がってくれないと年末に向けてはやはり厳しい展開になるでしょうなあという所ではあります。


○展望レポート全文ネタの続き(汗)

てなわけで一昨日の続きですすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

本文20ページ(PDFファイルの22枚目)からが各需要項目別の見通し前提およびメカニズムになっておりまして、まあ政府支出の所は順当な話をしていますのでパスしまして海外経済以降を引用するのだ。

・海外経済に関しては「その他新興国・資源国」以外はまあ強めの見通しだがリスクは概ね下

『先行きの海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及していく中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』

とありまして、基本的見解の所でも同じような感じでの説明になっていましたが、米国、欧州、中国という主要地域に関しては割と強めの見通しを置いていて、その他新興国・資源国に関しては当面は厳しいがその後何とかなるでしょうみたいな説明になっておりますがその部分は基本的見解の説明と概ね同じなのでパスしまして先行きリスクに関して。

『もっとも、先行きの海外経済については、上下両方向の不確実性が存在する。』

上下とな。

『中国経済については、リーマン・ショック後の景気刺激策に起因する過剰設備の問題が根強いほか、過剰債務や当局が進める構造改革の影響を巡る不確実性も依然として大きい。それ以外の新興国・資源国経済については、対外バランス面の脆弱性やインフレ率の高まりといった問題に対する各国の取り組み、地政学要因も含めた国際金融資本市場の動向など、先行きの展開を注意深くみていく必要がある。』

ということで出てくる順が中国→その他新興国となっているとはほほうという感じです。

『欧州経済については、循環的に景気を押し上げる力が想定以上に強い可能性もある一方、最近のディスインフレ傾向や債務問題の帰趨、金融システム健全化に向けた動きには引き続き注意を要する。米国経済については、家計のバランスシートの改善が進んでいるもとで、個人消費を起点とした回復メカニズムが強まる可能性がある一方、企業の投資行動に慎重さが残り続けるリスクもある。』

欧州と米国に関しては先行きの不確実性に上方向もあるのですねという感じですが、欧州のディスインフレの指摘とかしらっと指摘していますなという所で。


・輸出が伸びない要因に関する説明は全文の方が項目が多いですなあ

次が輸出入。

『実質輸出は、勢いに欠ける状況が長引いているが、この点については、以下で述べるような様々な要因が影響していると考えられる。』

ということですが・・・・・・・・・・

『第1に、地域別にみてASEAN向けの輸出が不振となるなど(図表28(1))、わが国経済との関係が深い新興国経済のもたつきの影響が大きいとみられる。』

という説明は基本的見解でもあったな。

『第2に、世界的な投資活動の緩慢さなど、マクロ平均の成長率では説明し切れない海外需要の鈍さが、資本財や部品に比較優位を持つわが国の輸出に対して、とりわけ抑制的に作用している面がある(図表28(2)(3))。』

という説明は基本的見解ではスルーされていましたぞ。

『この点、中国を中心に新興国では、リーマン・ショック後の景気対策などによって設備投資比率が大幅に高まったことから、過剰設備問題が発生し、投資調整圧力が生じている。欧米でも、信用バブル崩壊の後遺症から企業の投資行動には慎重さが残っている。』

ってしらっと書いていますが、これは「先行きも厳しいです」と言っているのと同じですな(−−)。

『また、第3に、より構造的な要因として、情報関連分野などにおいて、競合する東アジアなど海外企業の技術面でのキャッチアップに伴って、わが国企業の国際競争力が一頃に比べて低下していることが、やや長い目でみた輸出の下押しに働いている可能性が高い(前掲図表28(1)、図表29(1)(2))。』

構造的な問題の方でもこの次に出ている方は基本的見解に出ていましたが、こちらの残念な話に関してはスルーされていましたけど、これしかし先行きの夢も希望も無い指摘っすな、ナムナム。

『さらには、第4の要因として、現地調達の拡大を伴う海外生産移管の加速も、輸出の抑制につながっていると考えられる(図表29(3))。この点、海外生産の意思決定から現地設備・生産の立ち上がりまでには相応のラグを伴うことを考えると(後掲図表34(2))、足もとはリーマン・ショック後に円高が進んだ際に決定された海外生産が本格化している局面であり、輸出への下押し効果がとりわけ大きなものとなっていると考えられる。』

ほー(棒)。

『このほか、第5に、消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波が、2013年度末にかけて、輸出の一時的な下押し要因として作用していたとみられる。これらの要因は、輸入に対しても、第3、第4の要因が構造的な押し上げに、第5の駆け込み需要が一時的な押し上げに作用している。』

ホンマカイナというかあるにしても局地的な話で大袈裟にいう話かねえとは思いますが。


で、先行き。

『先行きの輸出を展望すると、上記の一時的な下押し要因が剥落し、海外経済が全体として緩やかに回復するにつれて、輸出は次第に増加に転じていくと考えられる。ただし、現在、輸出を下押ししている様々な要因のうち、海外生産移管などの構造的要因が抑制的に作用する面があるため、輸出の伸び率は緩やかなものにとどまると考えられる。』

>輸出の伸び率は緩やかなものにとどまると考えられる

おーのー。

『この間、為替相場の変動が輸出に与える影響についてみると、元々、企業が現地通貨建ての価格をある程度安定化しようとする行動をとるもとで、為替相場の動きと比べれば外貨建て輸出価格の変動幅はさほど大きくないものの、今次円安局面における外貨建て輸出価格の引き下げ幅が、過去の局面と比べ、目立って小さいわけでない(図表30(1))。これまでと大差のない輸出価格の引き下げが行われていることは、今後も輸出の下支えに作用していくと考えられる。』

ほー。

『また、やや長い目でみれば、既往の為替円安は、これまで加速してきた海外生産移管のペースを幾分鈍化させることを通じて、輸出の下押しの程度を和らげる方向に働くと予想される(後掲図表34(3))16。』

為替で海外生産というのもファクターとしてあるとは思いますが、それよりも海外生産移管って需要が旺盛な地域で現地生産とかそっちのファクターもあるんちゃいますかとは思うが。

『一方、実質輸入は、消費税率引き上げに伴う個人消費の振れなどの影響を受けつつも、基調としては、堅調な国内需要を背景に緩やかな増加を続けている。先行きの輸入については、個人消費の反動減などの影響から減少する局面を伴いつつも、基調としては、国内需要の動きなどを反映し、緩やかに増加していくと予想される。』

輸入は相変わらず堅調だそうでGDP押し下げ作用になりそうですなあ。


・ISバランス関連

まずは貿易収支。

『貿易収支をみると(図表31(1))、2011年度に1979年度以来の赤字となったあと、2013年度まで赤字幅の拡大傾向が続いている。その影響から、経常収支の黒字幅も縮小している。』

『名目貿易収支の悪化について要因分解を行うと(前掲図表30(2))、2013年度は、外貨建て取引比率の違いを反映して為替円安の価格への影響が輸出面よりも輸入面で大きく働いたことから、輸出入価格要因がマイナス寄与を拡大させたほか、実質輸出入要因(純輸出)のマイナス寄与も拡大気味となった。この実質要因の弱さについては、海外経済が新興国のもたつきなどから過去の平均的な成長率対比で伸び悩む一方、国内需要はかなり強めに推移するという、内外成長率格差が基本的な背景にある(図表30(3))。加えて、前述のような、構造的・一時的両面における輸出の増えにくさと輸入の増えやすさも、実質収支の悪化に影響したと考えられる。』

『先行きについては、基調的にみて、国内需要の伸び率は幾分減速方向となる一方、海外経済の成長率は高まっていくため、内外成長率格差による収支悪化圧力は弱まるほか、駆け込み需要に伴う収支悪化要因も剥落するため、貿易収支の赤字幅は縮小していくと考えられる。』

先行きの方はそうなのかねえという気はしますが。

『また、所得収支についても、直接投資などによる海外資産の蓄積に伴い、黒字幅が拡大していくと考えられる。このため、経常収支の黒字幅は、緩やかながら再び拡大していく可能性が高い17。』

だそうな。

『概念的に経常収支と表裏の関係にある国内の貯蓄投資バランスについて考えると(図表31(2))、見通し期間においては、民間部門の貯蓄超過幅は緩やかに縮小する一方、一般政府の赤字幅は、消費税率引き上げに伴う税収の増加もあって、それを幾分上回るペースで縮小すると見込まれる。このため、国内全体では、貯蓄超過幅は緩やかに拡大するとみられる。』

まあ経常黒だから貯蓄超過は拡大となりますけど、本当にこういうバランスで推移するのかというとそれはまた怪しげな感じはする(特に一般政府)のですけどね。


・企業収益とおよび為替の影響の所も中々味わいが

次が(企業の収益環境・設備投資)という所です。

『企業収益は、改善を続けている(前掲図表8(1))。先行きについても、国内需要が堅調に推移することに加えて、輸出の緩やかな増加や為替相場の動きにも支えられて、改善傾向を続けると予想される。ただし、見通し期間の後半には、賃金の上昇などを通じ家計への分配がより進むため、企業収益の伸び率は徐々に鈍化していくと考えられる。』

ほほうという所ですが、しかし良く良く考えてみますと企業収益の伸び率が鈍化した場合に賃金の継続的な上昇というのがサステイナブルなのか、という点は先般ネタにした4月1回目のMPMでも指摘している人がいましたな。

『この間、為替円安の企業収益を通じた経済全体への影響という観点から、この1年余りの日本経済の動きを振り返ってみると、円安による円換算後の輸出入価格の変化は、製造業の収益を押し上げる一方、非製造業の収益を押し下げるという部門による違いを伴いつつ、経済全体では交易条件を幾分悪化させる方向に作用してきた(図表32(1))。』

あちゃー。

『しかし、為替円安は、製造業のウエイトが高い上場企業の株価上昇を通じて、個人消費などの国内需要にもプラスの影響を及ぼした。そうしたもとで、非製造業においては、従来からみられていた高齢者の消費の活発化や公共投資の増加といったポジティブな動きが続いたこともあって、為替円安による交易条件の悪化の影響は限定的にとどまり、非製造業部門の業況感や利益率はむしろ改善した(図表32(2))。また、製造業についても、為替円高の修正を受けて、業況感や利益率は大きく改善し、これが企業の前向きな動きを後押しした。』

という説明になっていまして、要は交易条件の悪化のマイナスをその他のファクターが相殺してプラスになったという話ですが、はてさて今後は円安進めてどうなんでしょうかねという話になると何か怪しいですねえという話になりそうに思えます。というかそういう事を暗に示しているような気ががががが。


・設備投資

『設備投資については、企業収益が改善を続ける中で、持ち直しが明確になっている。製造業においては、回復の初期段階であるため、老朽化した設備の維持・更新投資や、情報化投資や研究開発投資といった戦略投資が中心になっているとみられる18。非製造業においても、物流システムの革新や堅調に推移するシニア層の消費の取り込みなどを企図して、能力増強を含め、前向きな投資に踏み切る動きがみられている。』

ほほう。

『先行きについては、見通し期間を通じて、緩やかな増加基調をたどると考えられる(図表33)。すなわち、当面は、循環的な回復力が大きい中で、収益の改善傾向や稼働率の上昇などに伴って、設備投資は緩やかに増加していくとみられる。その後、資本ストックが充足されるに伴い循環的な押し上げ効果は次第に減衰していくが、成長期待の高まりや、それに伴う金融緩和効果の強まり、さらには各種企業向け減税の効果もあって、緩やかな増加基調が維持されると予想される。こうした設備投資を支える諸要因について確認すると、以下のとおりである。』

成長期待の高まりには何か必要な物があるような気がしますが・・・・・・・・・・(^^)

『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果は、見通し期間中、設備投資を後押ししていくと考えられる。この点、投資採算の観点からみると、企業収益の改善に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想物価上昇率の高まりなどを反映して実質金利が低下していくため、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくと予想される(図表34(1))。また、各種企業減税の効果も、資本コストの低下、キャッシュ・フローの上振れといったルートを通じて、設備投資を支えていくと考えられる。』

実質金利の話はいつも通りなのですが、良く良く考えると最初の一文が微妙でして、そもそもQQE政策は2%の物価安定目標の達成の為に実施しているものであるからして、2%の目標が達成される「見通し期間の中盤」には解除の方向になっている筈で、QQEの効果が「見通し期間中」後押しするというのは何か図々しい表現のようにも思えますが、もしかして実は物価安定目標が厳しいからQQEは続くという意味ですかこれはとかニヤニヤしたくなるフレーズではあります。

『第2に、設備投資は、リーマン・ショックや震災後の落ち込みから漸く回復過程に入った段階で水準はなお低めであるため、経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善傾向が続けば、循環的にペント・アップ需要が顕在化しやすいと考えられる。実際、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との前提のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると、対資本ストックでみた設備投資比率は、企業の期待成長率から予想される水準を大きく下回って推移してきた。このため、当面の期待成長率がゼロ%台半ばにとどまるとしても、設備投資の増加余地はなお大きいとみられる(前掲図表33(1))。』

ペントアップ需要の話は前から指摘されている割にイマイチ伸びないのですが、先行きの成長期待の問題とか、輸出の所にあった海外シフトの問題とか、そもそも日本の製造業の競争力低下による問題とかがあって実は構造的に戻りにくくなっているという可能性はどうなんでしょうかね。

『設備投資の対名目GDP比率やキャッシュ・フロー比率をみても(図表35(1)(2))、長期的にみれば低めの水準にある。このところ、改善の遅れていた製造業も含め設備の稼働率が上昇しているうえ、企業の設備過剰感も全体として解消されつつある点も踏まえると(後掲図表48(5)(6))、設備投資の循環的な回復力はよりはっきりしてきていると考えられる。』

まあそうだと良いですねという所ですが。

『第3に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられる。』

全然進んでいないと思いますが、これは日銀から政府へのメッセージということですね!!!!

『こうした成長期待の高まりは、資本ストックの積み上がりに伴う設備投資の減速圧力を和らげる方向に作用すると考えられる。設備投資の対資本ストック比率の観点から考えても(図表35(3))、見通し期間の終盤にかけて潜在成長率が徐々に上昇していくもとで19、設備投資はその動きに沿って水準を次第に切り上げていくと考えられる。この間、海外設備投資の動きを考えると、海外進出への意思決定から現地設備の立ち上がりまでには相応のラグを伴うことを考えると(図表34(2))、過去1〜2年程度はリーマン・ショック後に円高が進んだ際に決定された海外設備投資が本格化した局面であり、海外設備投資比率の拡大ペースはとりわけ大きなものであった可能性が高い。海外設備投資比率は、今後も増大する海外需要を取り込むために上昇傾向を続けるとみられるが、そのペース自体は、過去も為替相場の影響を受けてきた点を踏まえると、幾分和らいでくると考えられる(図表34(3))。』

という事ですが、つまりは第三の矢マダーって話なのですが、もうちょっとこの辺に関して日銀はアピールというか要求した方が良いとは思います。つーかそうしてくれんと短期市場に加えて債券市場まで先生!市場ちゃんが息をしていないの!!状態になってしまっている市場ちゃんが浮かばれんわと思う次第。

・・・・・・・・何か引用祭りで増量になってしまいましたが時間と量の関係で残りは来週(汗)。



2014/05/08

お題「イエレン議長議会証言は先行きやや慎重も金融安定部分にも味わい/4月1回目会合議事要旨で成長率と物価の論点が」

そろそろムーシャ先生の悲観レポートで株式底打ちを願いたい物です(違)。

○イエレン議長議会証言(ただし超斜め読み)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20140507a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20140507a.pdf
The Economic Outlook
Before the Joint Economic Committee, U.S. Congress, Washington, D.C.
May 7, 2014

・経済に関しては基本的にいつもの話だが住宅市場動向に不確実性とな

まあ3月のSEPと同じ話をしています罠そりゃ。物価の現状の辺りから引用。

『Inflation has been quite low even as the economy has continued to expand. Some of the factors contributing to the softness in inflation over the past year, such as the declines seen in non-oil import prices, will probably be transitory. Importantly, measures of longer-run inflation expectations have remained stable. That said, the Federal Open Market Committee (FOMC) recognizes that inflation persistently below 2 percent--the rate that the Committee judges to be most consistent with its dual mandate--could pose risks to economic performance, and we are monitoring inflation developments closely.』

物価が低くて継続するとリスクという話をしておりますので平常運転ではあります。

『Looking ahead, I expect that economic activity will expand at a somewhat faster pace this year than it did last year, that the unemployment rate will continue to decline gradually, and that inflation will begin to move up toward 2 percent.』

先行き見通しは経済成長がやや加速と。

『A faster rate of economic growth this year should be supported by reduced restraint from changes in fiscal policy, gains in household net worth from increases in home prices and equity values, a firming in foreign economic growth, and further improvements in household and business confidence as the economy continues to strengthen. Moreover, U.S. financial conditions remain supportive of growth in economic activity and employment.』

その見通しの背景は財政制約の軽減、住宅価格や株価上昇による家計のバランスシート改善、海外経済の拡大、企業や家計のコンフィデンス改善、緩和的な金融環境とな。

『As always, considerable uncertainty surrounds this baseline economic outlook. At present, one prominent risk is that adverse developments abroad, such as heightened geopolitical tensions or an intensification of financial stresses in emerging market economies, could undermine confidence in the global economic recovery.』

リスクに関して地政学リスクや金融ストレスの拡大を挙げていますな、ふむふむ。

『Another risk--domestic in origin--is that the recent flattening out in housing activity could prove more protracted than currently expected rather than resuming its earlier pace of recovery. Both of these elements of uncertainty will bear close observation.』

住宅市場動向が横ばいになってきている点も挙げているとか、まあやや警戒的というか、金利が無駄に上昇すると住宅市場に悪影響というのを考えますと、ここの部分ってえのは金利がホイホイ上昇すると困るという認識を示しているとも言えそうですな。うんうん。


・金融政策の部分はめんどいので結論だけ

金融政策のパートは足元までの実施した事に加えて、資産買入のTaperingの話、フォワードガイダンスの話をしているのですが、多分そこでは特段突拍子もない話はしておりませんので最後の結論だけ(手抜き)。

『Because the evolution of the economy is uncertain, policymakers need to carefully watch for signs that it is diverging from the baseline outlook and respond in a systematic way to stabilize the economy. Accordingly, for both our purchases and our forward guidance, we have tried to communicate as clearly as possible how changes in the economic outlook will affect our policy stance. In doing so, we will help the public to better understand how the Committee will respond to unanticipated developments, thereby reducing uncertainty about the course of unemployment and inflation.』

という結論になっていまして、先ほどの経済の所で不確実性の話をして金融政策の部分でも先行き不確実性がありますのでベースラインシナリオから経済が外れていないかを注意深く見て調整する必要があるという締め方をしておりまして、今回は早期利上げ前のめりみたいな話は排除した説明ではありますな。


・しかしファイナンシャルスタビリティーとな

その次のパートは『Financial Stability』でして、こっちの方は少々アレ。

『In addition to our monetary policy responsibilities, the Federal Reserve works to promote financial stability, focusing on identifying and monitoring vulnerabilities in the financial system and taking actions to reduce them.』

ほうほうそれでそれで?

『In this regard, the Committee recognizes that an extended period of low interest rates has the potential to induce investors to "reach for yield" by taking on increased leverage, duration risk, or credit risk.』

キタコレ。

『Some reach-for-yield behavior may be evident, for example, in the lower-rated corporate debt markets, where issuance of syndicated leveraged loans and high-yield bonds has continued to expand briskly, spreads have continued to narrow, and underwriting standards have loosened further.』

しかもその利回り追求の動きがこのような部分に現れるでしょうとは何という具体的言及。

『While some financial intermediaries have increased their exposure to duration and credit risk recently, these increases appear modest to date--particularly at the largest banks and life insurers.』

>these increases appear modest to date
>these increases appear modest to date
>these increases appear modest to date

ただしこの後は「そうは言っても他の部分では問題がありません」という話ですな(まあそうじゃ無かったらエライコッチャになるから当たり前っちゃあ当たり前だが)。

『More generally, valuations for the equity market as a whole and other broad categories of assets, such as residential real estate, remain within historical norms. In addition, bank holding companies (BHCs) have improved their liquidity positions and raised capital ratios to levels significantly higher than prior to the financial crisis.』

株価などは特段問題なく金融機関の流動性や資本なども大きく改善されているとな。

『Moreover, recently concluded stress tests mandated by the Dodd-Frank Act have provided a level of confidence in our assessment of how financial institutions would fare in an extended period of severely adverse macroeconomic conditions or a sharp steepening of the yield curve alongside a moderate recession.』

なるほど。

『For the financial sector more broadly, leverage remains subdued and measures of wholesale short-term funding continue to be far below levels seen before the financial crisis.』

まあ逆に言えばレバレッジの動向やら短期市場への過度なファンディングへの傾斜(長短リスクの拡大)には注意ということですねわかります。

『The Federal Reserve has also taken a number of regulatory steps--many in conjunction with other federal agencies--to continue to improve the resiliency of the financial system. Most recently, the Federal Reserve finalized a rule implementing section 165 of the Dodd-Frank Act to establish enhanced prudential standards for large banking firms in the form of risk-based and leverage capital, liquidity, and risk-management requirements. In addition, the rule requires large foreign banking organizations to form a U.S. intermediate holding company, and it imposes enhanced prudential requirements for these intermediate holding companies. Looking forward, the Federal Reserve is considering whether additional measures are needed to further reduce the risks associated with large, interconnected financial institutions.』

この辺は金融政策では無くて規制で対応という話をしていまして、イエレンさんは以前からファイナンシャルスタビリティーに関してはマクロプルーデンスよりも規制などでという話をしているので、まあ冒頭ではおーという話をしていますが、後半に掛けては淡々と話をしている感じではありますな。ただまあ最初の所でああいう具体的言及があるのがちょっとビックラという感じではありますが、米国市場はあまりそちらには反応しなかったんですかねえ。


・最後の最後も穏当に締め

で、最後のパラグラフ。

『While we have seen substantial improvements in labor market conditions and the overall economy since the financial crisis and severe recession, we recognize that more must be accomplished. Many Americans who want a job are still unemployed, inflation continues to run below the FOMC's longer-run objective, and work remains to further strengthen our financial system. I will continue to work closely with my colleagues and others to carry out the important mission that the Congress has given the Federal Reserve.』

まあ特段の方向性は出さず(当たり前ではありますが)穏当に締めていますな。



○4月1回目の金融政策決定会合では「成長率と物価の関係」が議論とな

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140408.pdf

・国内経済情勢に関する委員会の議論から需要項目部分をダラダラ引用してみる

ということで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から国内経済の需要項目別の議論部分を見ましょう。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残る中で、米国の寒波の影響や消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応に伴う国内出荷優先の動きなどの一時的な要因もあって、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、一時的な下押し要因の剥落や、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。ある委員は、今後輸出が増加していけば、駆け込み需要の反動による国内需要の落ち込みの影響を緩和できると付け加えた。』

ということですがホンマカイナという気はせんでもなくて展望レポートの背景説明の所を見ると味わいがあったりする(のだが上記のように昨日から今朝のネタを優先した結果昨日の続きが間に合うか微妙orz)のですな。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、持ち直しが明確になっており、先行きも、緩やかな増加基調を辿るとの見方で一致した。』

こちらに関してもより長期的に見た場合には2015年度から2016年度に掛けて循環的に景気が下を向いてくるのでという話が展望レポートの背景説明にありましたよね。

『複数の委員は、資本財総供給が伸びを高めているほか、機械受注も増加を続けるなど、持ち直しの動きがはっきりしていると指摘した。』

ほほう。

『3月短観の結果について、委員は、企業の業況感は幅広い業種で引き続き改善しているが、先行きについては慎重な見方もみられているとの認識を共有した。委員は、先行きの業況判断DIの低下には、駆け込み需要の反動に対する企業の警戒感が示されているとの見方で一致した。もっとも、多くの委員は、それでも、先行きの業況判断DIの水準はなお高めであるほか、2014 年度の設備投資計画が例年を幾分上回っており、企業の前向きな姿勢は維持されていると付け加えた。』

まあ短観は強い罠。で次は雇用所得環境。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに持ち直しているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復につれて、持ち直しがさらに明確になっていくとの見方で一致した。』

こちらも強いです罠。そらそうよという所ではありますが。

『何人かの委員は、失業率が3.6%まで低下していることや、短観の雇用人員判断DIの「不足」超幅が引き続き拡大していることなどを踏まえると、今後も労働需給のタイト化は続き、賃金上昇圧力が一段と強まっていくとの認識を示した。今春の賃金改定交渉について、何人かの委員は、労働需給のタイト化や企業業績の改善を背景に、ベースアップも含めた賃金上昇の動きが拡がっていると指摘した。』

ほっほー。

『このうちのある委員は、これまでの連合の集計結果をみると、中小企業においても、賃金上昇の動きが拡がることが期待できると付け加えた。別の一人の委員は、ベースアップが復活したことにより、今後、物価上昇が賃金上昇に反映されやすくなる可能性があると指摘した。』

とまあ威勢の良い話が続くのですが、最後にしらっとこれはまた仰せのとおりな指摘ががががが。

『この間、ある委員は、企業の増益率が低下する可能性などを踏まえると、来春の賃金改定交渉では、むしろ賃金引き上げのモメンタムが低下する可能性があるとの見方を示した。』

いやー何という身も蓋も無い指摘ですが、そらまあそうよという感じも思いっきりしますな。どっちに転ぶのかはまだ判らないですけど。


個人消費の所でも最後に微妙な指摘があったりしますな(^^;

『個人消費について、委員は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ふむ。

『ある委員は、企業からのヒアリング情報などを踏まえると、駆け込み需要は1997 年の税率引き上げ時に比べて大きいとの見方を示したうえで、その背景として、税率の引き上げ幅が大きいことや、雇用・所得環境の改善から家計の購買意欲が強いことを指摘した。』

ほうほう雇用所得環境の改善ですかそうですか。

『先行きの個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動から減少する局面を伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

まあそうですな。

『ある委員は、4〜6月も輸出の増加や公共投資の前倒し執行に経済全体が下支えされる姿が確認されれば、このところ弱めの動きとなっている消費者コンフィデンスも持ち直してくるとの認識を示した。』

実際に1か月経過した足元では反動減が限定的みたいなニュースフローの方が先に出ていたりしますけどね。

『別の委員は、消費の堅調が持続するためには中長期的な成長期待が高まることが重要だが、「生活意識に関するアンケート調査」の経済成長力DIはここ半年ほど改善しておらず、構造改革など今後の政府の取り組みに期待していると述べた。』

これはまたイイシテキダナーな話っすな、ニヤニヤ。


鉱工業生産に関してはまあ普通の話をしています。

『鉱工業生産について、委員は、以上の内外需要を反映して、緩やかな増加基調を辿っており、先行きも、基調として緩やかな増加を続けるとの認識で一致した。複数の委員は、4月の生産予測指数は小幅の減少にとどまっていると指摘した。このうちの一人の委員は、3月短観で先行きの業況判断DIが大幅に低下した輸送用機械においても、4月の生産は小幅減との予測であり、輸出向けや在庫復元のための生産が国内向けの落ち込みを緩和させる方向に働く可能性があるとの見方を示した。』

という所で。


・物価に関する話である

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。多くの委員は、2月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.8%となるなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

まあこの現象面は仰せのとおり。

『ある委員は、消費税率引き上げを契機に過去のコスト上昇分を転嫁する可能性もあるため、4月以降、消費税率引き上げの影響を除くベースの物価上昇率はむしろ高まる可能性もあるとの認識を示した。複数の委員は、短観の販売価格判断DIは、非製造業を中心に改善していると指摘した。』

ほっほー。

『この間、ある委員は、デジタル家電製品などを中心に輸入品の浸透度が上昇していることを背景に、かつてに比べて物価が為替相場の影響を受けやすくなっており、為替円安の一巡が物価に与える影響を注視する必要があるとの見方を示した。』

つまり円安効果の剥落分が思った以上に出るという指摘と、そもそも論としてここまでの物価上昇は円安効果と言えば聞こえが良いけれども単なるコストプッシュの面が強かったのではないかという指摘をしておられるように見えまして中々こう味わいがあるというものでございまする。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

で、短観の例のアンケート。

『3月短観における企業の物価全般の見通しについて、多くの委員は、初回調査でありその結果は幅を持って評価する必要があるものの、市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっているほか、短期に比べて中長期の物価見通しが高くなっており、企業は先行きの物価上昇率が高まっていくとみているとの見方を示した。』

>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている
>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている
>市場関係者やエコノミストの見通しに比べて高めとなっている

(・∀・)ニヤニヤ

というかこの前の日銀レビューと言い、最近は「予想インフレ率に関しては市場は所詮後追い」という市場dis理論がすっかり日銀の定番となっていますなあ(ニヤニヤ)。

で、物価はいいけど価格設定の大企業の5年後ってゼロ近傍じゃなかったでしたっけと思ったらその直後にこんな話も。

『このうちの一人の委員は、こうした傾向は、価格へのコスト転嫁が難しいといわれる中小企業において、むしろ強いという結果になっていると指摘した。この間、ある委員は、販売価格の見通しをみると、前年比伸び率が次第に低下しており、自社製品・サービスの販売価格については引き上げが難しいと判断している可能性があると述べた。』

まあ物価見通しと価格設定は別物状態(特に大企業)という謎な結果でしたから、都合の良い解釈が色々と可能なので、そういう意味ではさすがに執行部の説明部分(前段の方にある)でも短観の話はちょっとあるにしても物価アンケート部分についてはスルーしていましたな。うんうん。


・成長率と物価の関係の議論があったとは!!!!

ということで前の部分がちと長くなってしまいましたがメインイベントキタコレ!です。

『成長率と物価の関係について、委員は、1月時点の見通し対比で成長率が下振れる可能性が高まる一方、消費者物価が幾分強めとなっていることをどう考えるか、という観点から議論を行った。』

展望レポートの前の回でもこの話があったのは当然ちゃあ当然ですけれども、まあ中々興味深い所です。

『多くの委員は、今回の景気回復は雇用誘発効果の大きい非製造業が中心となっているため、労働需給がタイト化しやすく、労働市場の面からは物価が上がりやすくなっているとの見方を示した。このうちの何人かの委員は、成長率自体は下振れているが、労働や設備といった生産要素の稼働状況から需給ギャップを計測すると、最近はゼロ近傍までギャップが縮小しており、成長率以上に賃金や物価に対する上昇圧力が強まっていると付け加えた。』

この辺は展望レポートの説明などでも示されている解釈で、非製造業中心の景気改善によって労働需給のスラックが(製造業中心の時と比較して)解消しやすくなるという点からの指摘です罠。

『複数の委員は、わが国の産業構造は非製造業中心に変化しつつあり、賃金の動向が物価全体に及ぼす影響の度合いが強まる傾向にあるとの認識を示した。』

ということですが、次の「ある委員」の指摘が実にこうご尤もあんど重要だと思うのですが、議事要旨では極めてさらっと一言コメント扱いにしている辺りに大変に深い味わいを感じる侘び寂の世界を垣間見る次第です。

『一方、ある委員は、供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた。』

>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた
>供給制約による賃金や物価の上昇は、持続的でない可能性があると述べた

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

つまり従来の想定以上に今次回復においては供給制約があり、この結果賃金や物価が上昇している訳ですけれども、今後の可能性として一つは「大して成長しないのに物価だけホイホイ上昇」というのがあり、もう一つは「循環的に景気が下向きになった時に、今回の裏が出るので雇用所得環境が急速に悪化し、物価に関しても下押し圧力がかかりやすくなる」という話があり、まあつまりは先般の総裁会見でもゴリゴリ突っ込まれていた潜在成長率が実は下がっているんじゃネーノ的な話に関してやはり政策委員会の方でも指摘をしている人が居ます罠というのが大変に味わいのある所です。でまあ更に侘び寂の世界だなあと思うのはこの辺りの部分についてしらっと1行で丸めている所でございまして、何とも心が温まるものを感じる次第ではあります(^^)。

いずれにせよ潜在成長率が低下という話であれば、物価が本当に2%で安定推移するのかとか、そもそもその2%というセッティングが本当に短期的に目指して良い数値なのか(中長期的な看板として置くのは別に問題無いと思うが)とか、その辺の議論になってくるというのは先般来申し上げている通りなので、とりあえず実際に物価がホイホイ上昇して成長しないのに物価だけ上昇するとは何事みたいなアジェンダが発生しない限りは執行部的にはこの点突っ張るしかないというのはあると思いますけどね。


『企業の価格設定行動について、多くの委員は、需給環境の改善や円安による競争緩和、予想物価上昇率の上昇などから、これまで抑制してきた価格引き上げに前向きになってきている可能性があるとの見方を示した。一人の委員は、労働需給がタイト化する中で、必要な人材を確保するために企業が積極的に賃金を引き上げ、それに伴う労務コストの上昇をサービス価格に転嫁する動きが拡がっていくと付け加えた。』

とまあそういう話を「多くの委員」がしているので、まあ政策委員会の基本線は前向き物価上昇的な話になっています罠という感じは受ける書きっぷりになってはいるので、先ほどの1行部分をここまでクローズアップするのもクローズアップし過ぎですかそうですかという説もありますが、やはりさっきの部分は気になるちゅうか、展望レポートの基本的見解の方で全くもってスルーされていた部分だったのでその前の回のMPMで指摘があったのはニャルホドと思いましたですニャ。

『この間、ある委員は、ヘッドラインの成長率は下振れているが、これには内需堅調を反映した輸入の予想外の強さによる押し下げが大きく、その影響を除けば、2013 年後半も年率3%程度の成長率が維持されていると指摘した。』

まあこの部分も物は言い様で、そうかも知れんが実は供給制約の影響かも知れん。

なお政策決定に関する部分はいつもの話(木内さんの提案も含めていつもの話)なので割愛します。

#ということで予想通り昨日の続きの前にネタの後入れ先出しになってしまいました



2014/05/07

お題「総裁会見ネタ続き&金曜の雑感訂正/展望レポート背景説明はこれはこれでまた味わいがある件(その1)」

結局連休中は特段の更新をしませんでした(大汗)。

○金曜の会見雑感の補足というか何というか

引き続き総裁会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405a.pdf

・潜在成長率に関する雑談の訂正

金曜日は総裁会見見ながらダラダラと駄文というか愚意見を並べてみましたが、今回の展望レポートの基本的見解に関してみておりますと、先般申し上げましたように一見するといつもの強気の話ではあるのですが、良く良く見るとツッコミ所が色々とあって、そのツッコミ所が盛大に記者会見でツッコまれているので今回の会見は見ごたえがあったという所ですな。

で、金曜に書きました需給ギャップだの潜在成長だのの話が微妙におかしかったのでもう一度整理してみます。

質疑でもありましたように、今回の展望レポート(基本的見解)では直近で成長率見通しが下振れて物価が上振れとなった件についての説明が主にインフレ期待の上昇による変化という点で説明しているのが微妙に怪しい所なのですよね。つまり、単に趨勢的に潜在成長率が低下しているから経済成長に対する需給ギャップの感応度が高くなっており、低成長でも物価が上昇しやすくなっているという可能性がある件をスルーしているという話ですな。

あと、直近では消費税増税前の駆け込みが影響して輸入が増えたりしたのが外需のマイナス寄与になったというのはあるのですが、これに関しても実際問題としては経済に供給制約があるという形で潜在成長率が低下している可能性があって、供給制約があって直ぐに天井に達してしまうのでちょっと内需を吹かすと物価が上昇しやすくなるという経済になっておりましたね、という結果になっているのかも知れませんな、という可能性に関しては盛大にスルーしていまして、潜在成長率に関しては見通し期間の後ろに掛けて上昇するという見通しになっている、というのがだいぶ怪しげな話だと思われます。

とは言いましても、そもそも潜在成長率が低下しているという話になりますと、物価安定目標の2%という数値は経済の現在の実力に対して過大である、という議論に繋がりまして、そうなりますとそもそもの金融政策のグランドデザインに影響してくる話になってしまう訳でして(そういう検討を盛大にスルーして「グローバルスタンダードだから2%」で押しているのが現在の執行部)、その点をスルーせざるを得ないのも事実だったりするのが誠に遺憾な所ではあります。

でまあ実際の所どうなのかは後にならないとワカランチ会長なのが物凄い勢いで困る話ではあるのですけれども、仮に足元の経済の実力対比で2%の目標設定が短期的に超過大という事になってしまいますと、実はここから先のリスクは物価上昇の方にあって、成長率自体は大したことないのに物価だけはホイホイ上昇するというスタグフレーション状態(なおリフレ的な理論だとそもそもスタグフレーションというのは辞書に無いように思えるのですがどうでしたっけ)になるという誰得経済になってしまう方がリスクになり兼ねない訳で、もうちょっとこの需給ギャップや潜在成長の推計の部分に関しては色々な可能性を見ながらやって、無理無理2%を作りに行くよりはデフレ均衡から脱却できたことで良しとして、その後の部分は長期的に考えた方が宜しいのではないか(そういう意味ではそれまでの発言との整合性を全く無視すれば浜田先生の指摘ご尤もとしか申し上げようがない)という気がするんですけどそれはグラデュアリズムだからダメですかそうですか。

という話を勢いで書いていたら色々と用語がゴチャゴチャに(何せ経済学関連についてちゃんとトレーニング受けた訳でもなく単なる門前の小僧ですもんで、と言い訳)なってしまいまして金曜は誠に恐縮至極。


・成長と物価の関係について

別の論点からの質問もありましてですね。

『(問) 2 つ質問がございます。2014 年度の見通しで経済成長率が若干下振れていますが、この先も仮に経済成長率がやや下振れても、物価の上昇率が見通しのパスの上に乗っている限りは、現行の政策を維持するという理解でよろしいでしょうか。(後半の質問割愛)』

先ほどああだこうだ書きましたようにこれも中々のトラップ質問ですよね。

『(答) 従来から申し上げている通り、私どもの金融政策は物価安定が最大の使命です。』

ほほう。

『具体的には、2%の「物価安定の目標」を2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現しようということで、昨年4 月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。その際にも申し上げている通り、この政策は2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続できるようになるまで継続します。それとともに、上下双方向のリスクを点検し、必要があれば調整を行うということですので、「物価安定の目標」に向けての道筋から外れるようなことがあれば、当然調整が行われるということです。』

いつも通りですな。

『これまでのところ、全体としてその道筋を着実に辿っていますが、道半ばですので、今後ともよく状況をみて、必要ならば調整を行うということだと思います。』

先月はクレクレ対応にちょっとキツめの話をしてましたかね。後の方で質疑がありますが今回はちょっとクレクレへの突き放し成分を下げている感はありますな。

『経済成長率がどうなるかということは、物価上昇率への影響もあり得ますので、私どももみています。先程来申し上げている通り、2014 年度、2015年度、2016 年度とも、潜在成長率を上回る成長が続き、基調としてそういった成長が続く中で、需給バランスがさらに改善していって、物価が次第に上がっていくという姿が描かれています。それに沿っていくということであれば、現状の金融政策を続けますが、リスク要因から「物価安定の目標」の実現に対して変化が出てくるということになれば、躊躇なく政策を調整していくということです。』

・・・・・・・という事で、まあトラップ質問にしっかり引っ掛かっている感じもありますが、つまり潜在成長率が推計よりも低い状態になっていた場合は物価だけはホイホイ上昇してしまいますので気にせずに目標達成という話になるんですかそうですかという所ではありますな。何せ金融政策で潜在成長を急にホイホイと上げ下げする事はできません罠という所ではありますので実際問題としては「物価だけ上昇すれば良い」のではなくて、本来中央銀行が目指すべきなのは「経済の適切な成長に伴う安定的な物価(若干の上昇)」という話なのですけれども、まあ総裁のこの辺の説明を見ますと成長と物価のバランスという意味では明らかにバランスを失した説明していますよね、という所ではあります。

で、本当の所それで良いのでしょうかねえ、というような辺りも今後の物価安定目標の議論には出てくる話になると思いますし、明らかに「物価だけ上昇すれば良いというのは変」という話をしているのは木内さん、佐藤さん、石田さんがそういう話をしている(木内さんの場合はそもそも2%は中長期で目指すという提案をしていますし)訳で、そもそものマンデートとはみたいな話ってデフレ均衡脱却したという認識になったら盛り上がる可能性はあるでしょうなあとは思うのでありまする。


・そんな訳で追加緩和に関するツッコミ2つ

まあ何と申しますか・・・・・・・・・

『(問) 展望レポートでは、需給環境が改善していくということを今後の物価上昇要因に挙げておられますが、仮に今後輸出が伸びないという状況になって、成長や物価が思うように上がってこない場合は、需給ギャップがプラスの領域に入っていく中でも、追加緩和を検討されることはあり得るのでしょうか。また、追加策に限らず、そういった需給環境の中で、今後、現行政策を継続していくことによる国内景気の過熱リスクみたいなものをどのようにお考えか、教えて下さい。』

そらまあ潜在成長率を上回る成長を3年もしているのに異次元緩和政策が続いていたらどうなりますかねという話ではありますな。

『(答) この点については、今回の展望レポートの中でも触れていますが、最初に申し上げた通り、2014 年度、2015 年度、2016 年度といずれも潜在成長率を上回る成長が見通されており、そうしたもとで、徐々に、しかし着実に物価上昇率が2%の「物価安定の目標」に向けて上がっていく姿を予想しています。そのもとで、当然ながら、上下双方向のリスクは常に考えているわけで、この点も、昨年の4 月に「量的・質的金融緩和」を導入して以降、毎回申し上げている通り、上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うということです。先程申し上げたように、2%の「物価安定の目標」に向けた見通しに変化が生じて、目標を実現するために必要だということになれば、躊躇なく調整を行う方針に全く変わりはありません。』

何という全然答えになっていない答え・・・・・・・・

『(問) 前回の総裁会見の時に、追加緩和の質問に対して、黒田総裁はかなりはっきりと「現時点では考えていない」とおっしゃって、それが結果的に円高・株安になりました。今回、色々追加緩和の質問は出ていますが、その発言をされないということは、市場に対して配慮しているのか、あるいは考えが少し変わったのか、教えて下さい。』

ワロタ。

『(答) これはなかなか微妙なご質問ですので、お答えもやや微妙になりますが、私は、一貫して、2%の「物価安定の目標」へ向けての道筋をこれまで順調に辿っているとはいえ道半ばであり、上下双方向の様々なリスク要因、特に海外要因等がありますので、それを毎回、金融政策決定会合毎に十分点検し、必要あれば躊躇なく調整をするということを申し上げており、今回もその旨を申し上げたわけです。』

どう見ても壊れたレコードあるいはオートリバーステープです(何のことか判らない若者は周囲のジイサマに質問して下さい)本当にありがとうございました。


・債券市場に関して

『(問) (前半割愛)もう1 点は、最近、債券市場で取引が低迷しておりまして、特に4 月14 日はかなり久しぶりに新発10 年物国債の取引が1 日中成立しないということもございました。この債券市場の動向については、やはり機能不全に陥っているのではないかという見方も強いのですが、債券市場の動向の現状について、総裁の今のご認識をお伺いしたいと思います。』

イイシツモンダナー。

『(答)(前半割愛)債券市場の取引については、色々な指標──流動性であるとか、その他──を常にみています。特定の日に取引がなかったことはありましたが、ご承知のように、その前後の日をみても先物にしても現物にしても非常に大きな取引が行われており、債券市場の流動性が極度に低下しているとか、取引が低迷している、停滞しているという状況にはなっていないと思います。』

ひ、ひじょうにおおきなとりひきですか??????????

『ある特定の日に、市場参加者の金利見通しが同じになりますと取引が行われないということであり、1 日の特別な例外的な事象だったと思っております。』

まあ前場各年限のカレントのBBでの売買皆無とか最近良くあると思いますけどねえという事で、どうも現状の日銀における位置づけとしては「QQEによる市場への介入は市場機能を歪めておりません(キリッ)」という話になっているようで、QQE導入当初に混乱して市場との対話ガーとか言ってオペ先集めて会合やったりしていましたが、市場が単にウゴカンチ会長になってしまった点については「市場が安定しています(キリッ)」という位置づけになっているようでして、この前の補完供給貸付の「5営業日限定」に示されますように、どうも本質的には日銀というのは市場は統制下に置くものではあっても、対話の対象として対峙するという認識には無いようでして、まあこの辺りの認識に関しては現在のQQE政策を何等かの形で着地させに行くときに物凄い勢いで禍根になりそうな気が致します。

でまあそこでMOFとの比較を出すと日銀が嫌な顔をしそうですが、MOFの場合は国債大量発行当局でありまして、市場に対しては国債の消化をお願いする側でもありますので、まあ市場に関してそこまで独りよがりな話はしてこないのですが、どうも日銀は公開市場操作という名もありますように、その辺が相変わらず独りよがりというか何というかな所があって、現在のように市場に対するシェアが圧倒的という事になっている中でも相変わらず市場に対する姿勢が「俺様がこう思うのだからそうなっている」という印象を受けるのは何なんでしょうねと思いますが、どうもこればっかりは本質的な所で変わらないなあと思ったりするのでありました。組織的なファクターもあったりしそうですからねえ。


○展望レポート背景説明を含めた全文は中々面白いという件について

89ページ版PDFにつき注意下さい。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

・2013年度後半のレビューに関して

背景説明は12ページ目(ファイルの14枚目です)からになります。

『2013年度後半の日本経済を振り返ると(図表1)、輸出は全体として勢いに欠ける状況を続けたものの、国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給の着実な改善を伴いながら、景気は緩やかな回復を続けた。年度末にかけては、個人消費や住宅投資において、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられた。』

図表1を見ますと直近2Qは外需マイナスで内需に関しては民需が徐々に上昇という絵です。

でまあ輸出入に関して。

『輸出については、海外経済が回復しつつあるもとで、為替相場の動きも下支えとなって、秋口までは持ち直し傾向をたどったが、年度末にかけて横ばい圏内の動きとなった(図表4(1)(2))。この点については、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響しているが、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きく(前掲図表2(2))、さらには、駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波など、一時的な下押し要因も作用したと考えられる。』

で、輸出がヨコの中で輸入が上昇したので外需マイナスなのですが、輸出に関しては駆け込みでの影響があるならばその後は回復という絵になるのですが、ここの点について本当に戻るのかという点についてはホンマカイナという感じではあります罠。今後に注目。

『もっとも、こうした輸出の勢いの鈍さにもかかわらず、国内需要が堅調に推移するもとで(図表5)、景気全体の前向きな循環メカニズムは、しっかりと働き続けた。企業の生産活動の水準をみると(図表6)、過去の局面では輸出の影響を受けやすかった鉱工業生産を含めて、緩やかに増加し、そのもとで企業の収益・業況感は広がりを伴いつつ改善を続けた(図表7、図表8(1))。』

ふむ。

『また、雇用の誘発効果が大きい内需中心の景気回復が続く中で、失業率が構造的失業率に近付くなど(後掲図表11(3))、労働需給は引き締まり傾向となった(前掲図表5(2))。』

キタコレ。

『この間、国内需要の堅調さは、輸入の大幅な増加を通じて(前掲図表4(1)(3))、ネットでみた外需の減少にも影響した(前掲図表1(1))。』

ということですが、まあこの点に関しては実は供給制約の可能性というのもあったりして、内需を吹かし過ぎるとコストプッシュでの物価上昇になりやすくなるという可能性も。

でまあその他国内需要や物価に関してはまあ強い話をしていますが、物価に関する図表15辺りを見ますと何か公共料金の上昇が盛大に寄与しているように見えますけどキニシナイ!


・先行き見通しの部分だが記述が怪しい

『3.2014年度〜2016年度の経済・物価の見通し』から。

『2016年度までのわが国経済の先行きを展望すると、国内需要の堅調さが持続し、輸出も緩やかながら増加していくことから、生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムは働き続けると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも13、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』

というのはまあ良いとしまして。

『2014年度については、家計支出は、上期を中心に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が相応に見込まれる。また、公共投資は、昨年度補正予算の執行などから引き続き高水準で推移したあと、下期にかけて緩やかな減少に転じていく可能性が高い。このため、年度全体の成長率も、かなり高かった2013年度に比べれば、鈍化すると見込まれる。』

ふむ。

『もっとも、輸出は、海外経済の回復を背景に、為替相場の下支え効果もあって、緩やかな増加に転じていくと考えられる。』

この見通しが色々と怪しげな気がする・・・・・・・

『また、国内民間需要の基調的な動きをみると、設備投資は、企業収益の改善傾向が続く中、金融緩和効果や各種の企業向け減税策の効果が下支えとなり、緩やかに増加していくと予想される。個人消費については、消費税率引き上げ等が実質可処分所得の押し下げに働くもとでも、雇用・所得環境の改善に支えられて、基調的な底堅さが維持されると考えられる。』

ふむ。

『このように、国内民間需要が基調的にはしっかりとした動きを続け、輸出の改善も加わることで、2013年度に続いて前向きの所得形成の力が働き、年度全体の成長率は、引き続き潜在成長率を上回ると考えられる。』

でまあその後の記述が何気にほほうという感じなのがありましてですね・・・・・・・

『2015年度から2016年度にかけても、設備投資には次第に循環的な減速方向の力が作用していくものの、前向きの循環メカニズムは働き続けると考えられる。』

しらっと書いていますが、景気循環サイクル的にも先行きは下向きになるというのがあるのがおーという感じです。

『2015年度については、公共投資が緩やかな減少傾向をたどると考えられる。その一方で、海外経済が長期平均並みの成長ペースに復するもとで輸出が緩やかに増加するほか、国内でも、成長期待の高まりと緩和的な金融環境が、設備投資や住宅投資を下支えすると想定している。』

という話ですが、そもそも海外経済が拡大して輸出が伸びてという形ではない回復になっている訳でして、しかもここまでの輸出の拡大が期待外れになっているという中で本当に大丈夫なのかねという話でして・・・・・・

『また、個人消費についても、雇用・所得環境の改善に支えられた基調的な底堅さが続く中で、駆け込み需要の反動減の影響を受ける2014年度と比べれば、伸び率が高まるとみられる。このため、2回目の消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、基調的には引き続き潜在成長率を上回る成長が見込まれる。』


さらにこの後の説明も何か微妙な部分ががががが。

『2016年度については、海外経済が長期平均並みの成長を続けるもとで輸出が増加を続けるうえ、緩和的な金融環境が成長期待の高まりとも相まって国内民需を支えると考えられるため、なお潜在成長率を上回る成長が続くと予想している。』

ということですが、本来物価安定目標が達成されますと、QQE政策というのは終了しますし、その間に潜在成長を上回る成長が継続するとなりますと、物価には当然ながら上昇圧力が掛かり続ける訳でして、そうなった場合には「緩和的な金融環境」がいつまでも続けられる訳ではないと思うのですが、何でここでの置きが「緩和的な金融環境」になっているのかがワケワカランチ会長ではあります。

いやまあ市場の金利を置きとして(今回は長期金利中心に一部補正が入っているようですが)見通し期間中の金利がゼロでの置きになっているような事が基本的見解の方にも書いてあるので、これはこれでそうなのかも知れませんけれども、実際問題としては仮に見通し通りに推移して物価安定目標が達成されているならば、少なくとも2016年度には中立水準に向けた調整が開始される筈で、QQEのような強力な金融緩和は無くなっている筈で、緩和的な金融環境を当てにした見通しというのは変じゃネーノとも思えますがどうなんでしょ。

ま、もしかしたら目標達成に自信がないのかもしれませんけどね!!

で、この後個別需給項目の話になりまして、輸出入、ISバランス、企業、雇用所得環境の辺りが色々と面白いのですが、連休明けで頭の暖機運転に時間がかかったせいで既に時間切れになってしまいました続きは明日ですすいませんすいません。




2014/05/02

お題「総裁記者会見を鑑賞しつつ展望レポート雑感の続きを」

「2年間」まで1年となった為に色々と矛盾というか微妙な部分が出てきていますなあというのが展望レポートの印象で、総裁会見でもいい感じで質問が飛んでいるという所です罠、ということで総裁会見の鑑賞とアタクシの雑感が混在(というか殆どワシの雑談ですすいませんすいません)して誠に恐縮ですがそんな感じになると思いまふ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405a.pdf

○物価安定目標の解釈

実質2番目(最初の幹事社からの質問は「冒頭説明お願いします」なので)の質問からですけど。

『(問) 今回のレポートで、2016 年度の物価の前年比は2.1%と、目標をやや超えている数字です。経済成長率も、2015 年度に比べればやや下がりますが、潜在成長率を上回る数字になっています。そうした中で、この2%の物価の数字自体を、日銀が言う安定的に持続と受け止めてもよいのではないかとの声もあると思うのですが、そうした声をどう思うかお聞かせ下さい。また、これに関連して、金融政策については、安定的に持続するために必要な時点まで続けるとのことですが、今回のレポートをみて、総裁は、そういう時点は2016 年度までの間に訪れる可能性はあると思っていますか。この2 点につきお聞かせ下さい。』

ということで、そもそも論として2015年度、2016年度の物価見通しが2%水準にアンカーされているんだったらそれは物価安定目標達成じゃねえのとはそらまあ聞く罠。

『(答) 度々申し上げている通り、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することとしています。その判断にあたっては、当然のことながら、その時点までの物価上昇率の実績だけでなく、予想物価上昇率の動向、さらにはそこから先の経済・物価の見通しがどうなっていくかを見極める必要があります。その上で、「物価安定の目標」を安定的に持続するような政策運営を具体的に検討することになります。従って、現時点の見通しをもって、出口の時期を特定することは時期尚早であると思います。』

という話をして、出口の話が出ることによって市場(債券とか海外投資家とか)がドッヒャーとなるのを避けたいのは把握しましたが、やはりこの説明だとわけわからん。まあ補足するとなりますと、フィリップスカーブの考え方と期待インフレ率というどちらも揃ってリアルタイムでの計測が困難なものを並べて話をするのが極めてアレですが、これまでの日銀の話からしますと、フィリップスカーブで見た場合に需給ギャップがゼロの時に物価が2%上昇を示しているというのと、中長期の期待インフレ率が2%でアンカーされているというのが物価安定目標の理念的な話らしいので、そういう意味では単に見通し物価が行けば良いという物ではないとゆー話をしてるんでしょうなあという所で。

『足許の物価上昇率をみると、3 月は全国の除く生鮮食品で1.3%、除く食料・エネルギーはもう少し低い水準ですが、いずれにしてもまだ道半ばです。また、先程申し上げた通り、現在の「量的・質的金融緩和」を継続し、2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続できるようになることが一番重要であり、先程申し上げた理由から、現時点の見通しをもって出口の時期を云々することは、時期尚早であると思います。』

出口の話をするのは時期尚早ってえのを2回言っていまして、とりあえず「日銀ショック」みたいなのが起こるのは困るという話なのは分かったが、そもそも論からして金融政策が物価に与える影響には一定のラグがある訳ですので、足元の数値の話を持ち出して出口時期尚早とか言うのはえーという感じではあるのですが、とにかく出口の話をしたくないのは把握しました。

・・・・・・・・・でまあそれは良いのですけれども、目標達成時期まで1年となってきたという時期になりまして、案の定と申しますか何と申しますかですけれども、「そもそも物価安定の目標の状態はどういう状態なのか」という点を結構華麗にスルーした状態のまま走っている問題点が時期の接近と共に出るという感じではありますな。

つまり、まあふわっとした概念としては先ほど申し上げたような「フィリップスカーブのY切片」と「中長期の期待インフレ率」というのがあるのですが、そもそもこれらの概念に関しても実際にじゃあ経済指標や市場の指標としてどのようなものとして示されるのかとか、判断する基準って何なのよという話になると、需給ギャップとか潜在成長率とかの推計って方法によって誤差が生じるもので、それなりの幅を持ってしか推計できないものですから、そもそもフィリップスカーブのY切片が云々とか言いましても実際に判るのは事後的ですし、もとより物価が遅行指標な所に加えて事後的にかつ幅をもってしか判らん数値についてああだこうだという話というのも変ですよねというのはあると思うのですよ。

つまり、インフレ均衡状態で推移しているのであれば事後的な話でもある程度ワークするとは思うのですけれども、現在の金融政策ってデフレ均衡状態からの遷移を促すために強力な政策を打っているという建付けにもなっている(まあ確かにデフレ均衡から脱却したようにも見えますし)わけで、それだけの強力な政策を実施しているという事は、本来的に言えば下手にその政策を無用に継続するとインフレ均衡を通過して今度は望ましくないインフレ状態になるリスクだってある訳で、出口政策が遅れる事は通常の緩和政策よりもリスクが大きい筈なんですよね(そうじゃないのであればそもそも今の金融政策そのものの効果は実は小さくて足元の経済物価情勢への寄与に他のファクターが大きいという話になるでしょ)。

とまあ考えますと、物価安定目標に関して本来的にどういう状態の物なのかという概念についてふわっとしたままの状態で目標達成までの期限が近づいてくるというのはどうなんでしょうかねえという風に思うのでありました。

・・・・・・・てな感じで、本日は恐らくこんな感じで進行しまして雑感うぜえという突っ込みが飛んできそうですがまあ書いてる方もこう綺麗に纏まっている訳では無くてここの所ずーっと今後のQQE政策について考えているものを今回の展望レポートを読みながらまた練っている状態なので勘弁してちょという所で。


○物価安定目標達成時期の後ズレではないとは言ってますが・・・・・・・・・・・

『(問) 物価上昇率2%の達成の時期についてですが、今回の展望レポートでは見通し期間の中盤頃と示されています。この時期について、もう少し具体的にお考えをお聞かせ下さい。また、これまでのご説明にあった2014 年度の終わり頃から2015 年度にかけてという目標達成時期の見通しから何か修正があるのかどうかについてお聞かせ下さい。』

この質問にあるように、そもそも「物価上昇率2%の達成」というアクチュアルな物価上昇率の達成問題と、「物価安定目標としての2%物価上昇達成」というのは実は概念的に差がある話でして、理念的に言えば実際の物価上昇率が2%に達する前であっても物価安定目標達成の為に必要な調整として金融政策の緩和度合を縮小するという可能性だってある(物価上昇の勢いが付きすぎたらそうなる)訳で、まあそんなこんなで実際の物価見通しと物価安定目標の間にも差があるというのがヤヤコシヤ。

『(答) 今回の見通し期間は、ご承知のように2014 年度から2016 年度までの3 年間ですので、序盤と終盤の間である「中盤」とは、当然、2015 年度を中心とする期間を考えています。』

ほほう。

『ただ、具体的にどの時点で消費者物価の前年比が2%に達するかは、政策委員の間で見方が若干異なるところもあるので、「中盤頃」と、ある程度幅を持った表現としています。いずれにせよ、2015 年度までの今回の物価見通しは、政策委員の見通し計数をみても分かる通り、従来の見通しから全く変わっていません。そういう意味で、2%の達成時期が後ずれしているということはない、従来と変わらないということです。』

とは答えているのですが、しかし黒田総裁の定義(というかまあ展望レポートの表現の示す所)からすると、これはどこからどう見ても後ズレしてねえかという気がするんだがががが。

でまあそういう質問をするとどうせ「そもそも2年間という期間はピンポイントの時期ではなくある程度幅を持って見て頂きたい」とか「CPI2%をピンポイントで誘導しようとしている訳ではなく、それよりも経済物価情勢を幅広く考えた上の物価安定目標」とか煙に巻かれるのが確実視されますので、ここからゴリゴリ突っ込んでも実は暖簾に腕押しになってしまうのが残念な所ですが、やはりここは怪しいわ(昨日ご紹介した展望レポート基本的見解の最後の最後の所で「順調に辿っている」が抜けた件と言い)という所ではあります。

まあこの部分に関してはそもそも展望レポートの反対が3人もいるので、反対意見まで含めてアグリゲートするとそこまで強い書き方をするのもムツカシヤという状況だったのかも知れず、この辺りの微妙さに関しては恐らくツッコミを入れてもよく判らん所かなあとは思います。


なお追加でツッコミ質問が飛んでいるので引用しておきますね。

『(問) 今の点と関連して、もう2 点お伺いします。達成時期について、これまでの会見等での総裁のご発言では2014 年度の終わり頃から2015 年度にかけて2%程度に達するとお話をされていましたが、今のお話だと、もう少し幅が出たような言い方に聞こえますけれども、変化があるのかどうか、あと変化があるとすれば、多少意見の相違があるということがありましたので、そういったことが影響しているのかどうか、というのが1つです。』

『関連して今回物価の見通しをみると、政策委員の間で相当幅があって、特に2016 年度にかけては下がるという見通しを示している方もいらっしゃる。中心値としては2.1%となっていますが、2016 年度は、これだけ幅があると、見通しの蓋然性に疑いを持つ方も出てくると思うのですが、その点についてどうお考えなのかというのがもう1 つです。(実は3つ目があるのだが割愛)』

後半の質問は「見通しの蓋然性に疑い」ではなくて「そもそもこれだけの幅のある見通ししか出ないのであれば見通しを出す意味があるのでしょうか」の方が良いようにも思えますがそれは兎も角。

『(答) 先程申し上げた通り、2%の「物価安定の目標」の達成時期が後ずれしているということは全くありません。これは参考で示している政策委員の大勢見通しの数字を見て頂いても分かるように、2014 年度の見通しが消費税率引き上げの直接的影響を除くものは1.3%ということで、従来の見通しと全く変わりませんし、2015 年度は1.9%ということで、これも従来の見通しと全く変わっていません。従って、2%の「物価安定の目標」の達成時期についての考え方、見方が変わったということは全くありません。』

微妙に怪しげですが要は「後ズレしていません(キリッ)」との由。

『先程申し上げたように、見通し期間が2014 年度から2016 年度までの3 年間でありますし、政策委員の間で若干の見方の違いもありますので、それらを含めて中盤頃といった言い方をしたというだけで、大勢見通し自体は、全く変わっていません。さらに2014 年度と2015 年度について、中央値以外に幅を示していますが、むしろ1 月の見通しよりも2014 年度も2015 年度も幅が狭くなっており、この1.3%、1.9%という見通しについては、より確度が高いとみているということを示していると思います。』

数値の話に持ち込んでしかも見通し数値が収斂された話に巧みに話を逸らすとは巧妙にも程がある。

『なお、2016 年度はさらに先であり──中央値は2.1%ですが──、見通しについて幅があるのはその通りです。3 年後ということで、今の時点では見通しに幅があるということだと思います。これはある意味で自然なことではないかと思います。』

まあこれはこうなる罠という所で、ですからして「そもそもそういう数値を出すのはconfusingではないか」というような質問に持ち込んだ方が良いような気がします。まあどうでも良いけど。



○成長率と物価の問題、あるいは潜在成長率の問題

成長率見通しが下がる中で物価の見通しは堅調なままという点についてのツッコミも当然の如く飛んでまいります。

『(問) 展望レポートに関して1 点、その他1 点お伺いします。物価は順調に2%へのパスを辿っている見通しになっていると思いますが、成長率をみると、1%台の前半という見通しになっています。物価に比べて成長率の伸びが弱いというのは、いわゆる生活者からすると物価だけ上がっている状況に今後3 年間なるのではないかとも受け取れます。日銀としては、やはり成長率の引き上げということも重要だと思うのですが、総裁は実質GDPの見通し1%台前半という見通しについて、これが日銀の目指すべき成長率なのかどうか、もう少し高めていくようなことを考える必要があるのかどうか、この辺を1 つお伺いしたいと思います。(2点目割愛)』

で、そのお答え。

『(答) まず、第1 点の成長率についてですが、今回の展望レポートでも示している通り、2014 年度の成長見通しは若干下振れていますが、2015 年度は従来の見通しと変わりません。そして2016 年度も1%台前半の成長で、いずれも潜在成長率を上回っており、需給ギャップが縮小し、賃金・物価を引き上げていく状況になっています。』

ふむ。

『その上で実質成長率がもっと高い方が望ましいのではないか、ということだと思いますが、それはその通りだと思います。現に政府でも、中長期的な実質成長率を、現在、潜在成長率として見込まれている1%以下から、2%程度に引き上げていくことが成長戦略の大きな柱になっているわけです。そういった意味で成長戦略その他、特に民間の企業の設備投資というのが、これまでやや低迷していたわけですが──このところは設備投資が少しずつ出てきていますが──、こういったことも潜在成長率あるいは労働生産性の上昇率を引き上げるファクターになると思いますので、そういったことを十分私どもとしても注視していきたいと思っております。』

という答えをしていますが、後の方で更にもうちょっとゴリゴリとツッコミが入ってきます。

『(問) 成長率については、13 年度、14 年度とも下方修正されています。一方で、物価については、ほぼ前回と変わらない見通しになっていますし、先々は2%で安定するとみていると思います。成長率が下方修正されても、物価は市場の見通しに比べて高い。これは単純に考えると、ゼロ%台半ばとみられている潜在成長率は、もしかしたらもっと低いのではないか、そういう可能性もあるのではと思うのですが、展望レポートでは全く言及されていません。』

(;∀;)イイシテキダナー

『総裁は、前回会見の頃から、需給バランスについて、GDPギャップは概ねゼロに近付いているのではないかと言われています。そういうことを考えると、潜在成長率が、もしかしたら趨勢的に下がっているかもしれない点についてどのようにお考えかお伺いします。(2点目割愛)』

ということでこれは良いゴリゴリ質問ですな。まあ答えはしているのですが、この答えは色々とツッコミ所のある答えでして中々イイシツモンダナーな訳です。

『(答) いずれも難しい質問でして、ごくシンプルにお答えしたいと思います。1 点目の潜在成長率については、その計測方法は色々あり、それによって少し違った数字が出ますので、もともと、ある程度の幅をもってみなければいけないと思っています。現時点で、私どもはゼロ%台半ばとみていますが、ゼロ%台の上の方とみる人もいますし、ゼロ%台半ばより下の方とみる人もいるかもしれません。』

まあそれはそうなのだが、だったら展望レポートの見通しの主要部分に「潜在成長率を上回る成長を」とか入れてメインの説明に置いている件との整合性を小一時間問い詰めたい訳ですが。

『いずれにせよポイントは、成長率はやや下振れましたが、今回の景気回復が内需中心、非製造業中心に進んでおり、ご承知のように非製造業は労働需要を誘発する効果が大きいセクターですので、労働市場はよりタイトになってきているということです。』

それは現状はそうかも知れんが、逆に言えば景気循環サイクルが下向きになった場合には労働市場の現在のタイトさから一気にスラックの状態になるリスクがあるちゅうことであり、それってつまりは需給ギャップの縮小あるいはプラス転換によってもたらされる物価上昇というのはシクリカルに下向き圧力が強くかかりやすくなるという事からすると「安定的な物価上昇」に繋がらないんとちゃいますかねえ。

『潜在成長率が現時点でどのくらいになっているかは、色々な計測があり一概には言えないと思いますが、ご指摘のように、潜在成長率が全然変わらないということはなく、労働力の伸びや資本ストックの伸びなどにある程度影響されることは事実です。私どもは従来から申し上げている通り、まず潜在成長率を計算してというよりも、労働市場あるいは資本の稼働率などをみて、そこから判断をしているわけでして、より実務的、実践的な形でみています。現に、労働市場は非常にタイトになり、名目賃金も上がってきています。』

という理屈は判るが、非製造業中心の回復という局面においては、労働や資本の稼働がよりシクリカルに動きやすいという事なのであれば、従来製造業中心の景気回復で推計していた方式だと過大計測になっている可能性もあります罠という希ガス。

『潜在成長率がどのくらいであり、これをどのように引き上げていくかについては、まずどのくらいであるかは、色々な指標があります。また、どのように引き上げていくかについては、基本的には、やはり成長戦略といいますか、供給力をどのように伸ばしていくのか、労働力をどのように増やしていくのか、資本ストックをどのように増やしていくのか、あるいは技術革新をどのように促進していくのか、にかかっていると思います。』

という事になりますと、期待の転換によってフィリップスカーブの引き上げを行ってカーブのY切片を2%水準に持って行くという話ではありますが、そもそも潜在成長率が上がらない中では自ずとフィリップスカーブを平行移動型でシフトアップさせるというのも限界があると思われる訳で、その潜在成長率に関して金融政策が直接働きかけられる部分というのはかなり限定的であるという事を考慮しますと、そもそも論として物価安定目標2%という数値自体が「ピンポイントの2%そのもの」あるいは「短期的に目指す数値として」経済の実力から見て適正なのかという話も出てくるような気もするので、まあこの「成長は下方修正だけど物価は上方修正」というのは色々な意味でツッコミ所がある訳ですよ。


つまりですね、展望レポートの説明だと成長下振れでも物価上振れとなっている要因として、昨日ご紹介したように非製造業における労働需給の急速な引き締まりによる需給ギャップの縮小と、中長期的な予想物価上昇率の上昇による企業行動への影響というのをあげているのですが、実際問題としてここで質問した記者さんの指摘にありますような「潜在成長率の趨勢的な低下」というのが背景にあったとしますと、今申し上げたように物価安定目標2%のセッティング自体への問題にもなってくると思うのですよね。

すなわち、潜在成長率が日銀(など)が従来考えていたよりも下がっていたという場合、当然ながら通常の場合は需給ギャップやら成長率やらに対する物価の感応度が高まっている、即ちちょっと経済成長率が加速すると物価がホイホイ上昇してしまう訳で、その感応度がアホみたいに高いとちょっと前の質問者が質問していたように、成長率が大して高まらないのに物価だけはホイホイ上昇してしまうというスタグフレーションみたいな状態に陥るという事になる訳ですよね。

でまあ従来はデフレ均衡にあったのでその点が発覚しなかったものの、QQEというショック政策によってデフレ均衡を脱却してみたら実は潜在成長率が低下していて、均衡の向こう側は非常にスティープしたフィリップスカーブが待っていた、という事だったりすると悲劇というか喜劇というかな展開であるのかも知れませんですよね。ちょうど労働人口の趨勢的な低下傾向とか、貿易構造の変化とかがぶつかっているので、実はこの間に趨勢的に低下していた潜在成長率の問題がデフレ均衡の結果発覚していなかったとかだとオソロシスとしか申し上げようがない訳で。

または駆け込み対応で輸入がアホほど伸びた(その結果昨年度後半のGDPがコケたとも言えますが)辺りが示すのは、経済の供給制約が実は結構低い所にあって(というのも潜在成長率の低下という話になります罠)、その結果として成長率に対する物価の感応度が高くなっているとか、まあその手の構造的な問題が「成長率は予想より低かったのに物価は予想通りどころかやや上振れ」という現象として顕在化した、とか考え出すと中々こう気分が暗くなる次第でありまする。

#まあそう考えますと政府の成長戦略は何をやってやがるんだという話ですよねえ・・・・・・・・


もちろん潜在成長率は特段低下していなくて、物価の想定以上の強さについては予想インフレ率の上昇効果が大きく出ているからという推計も成り立つ話であって、こればっかりは事後的にしか判らないのですけれども、今後の経済物価情勢を見ながら判断していくしか無い話ではあると思うのですが、潜在成長率が低下しているという可能性についての金融政策運営に関するインプリケーションとか考えると中々これが奥が深そうなので連休中にのんびり考えたいという所ですな、はい。

#つーことで質疑紹介が一部だけになっていてすいませんすいません、暇だったら連休中に投下するかもしれませんけどあまり期待しないで下さい(去年も大口叩いて結局連休最終日の夕方に一本投下しただけ)



2014/05/01

お題「中身を子細に見ると色々微妙な展望レポート/FOMC声明文は超簡単で勘弁」

○展望レポート:何か今回は色々な方向に伏線を張っていますな

展望レポート(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310a.pdf(前回10月)

・全体的な感想:微妙に色々な伏線を張っているようにも見えますし解釈が少々困るわ

・・・・・とまあ書いてみましたが、今回の展望レポートなのですけれども、基本的にはここまでの推移がオントラック、というよりは物価に関してはむしろ上振れ推移しているという部分に関しては想定通りに強い話が展開されていまして、先行きに関しても強気の話が入っているのですが、微妙な所で微妙にヘッジが入っていたり、その一方で貫録の上振れみたいな出口政策への意識付けをさせるような見通しも入っていたりと、読み方にバイアスを掛けると上下両方に読める可能性があるという中々微妙な作品に仕上がっています。

ということで、恐らく今日は展望レポートを受けて何とかストの皆様がああだこうだとコメントやらレポートを出して来るのですが、割とバイアス掛けて読むことが可能な展望レポートである、という点を認識してコメントを読んだ方が吉のような気がする訳で、てめえの相場観やポジションに都合の良さそうなものに安易に飛びつくと怪我の元かも知れませんよ。

なお、普通に読むとやはり追加緩和は無い、という話になる筈なのでクレクレの皆さん残念でした(^^)。


・内容に入る前に先に数字の方を確認しましょう

2013年度の数字についてはまあご案内の通り下方修正ですが、まあこれに関してはところで何でそうなりましたねんという話について概要説明の中で一応あるのでそちらで。

でまあ先行きですけれども、

2014年度:GDP見通しが下がっているけど物価見通しは上昇。特に全体見通しを見ると下限の人が+0.7%だったのが+0.9%、下から2番目の人が+0.9%だったのが+1.0%となっていまして、ある程度想定範囲内でしたが物価見通しの下の人が上に寄せてきましたな。

2015年度:こちらはそれほど変わっていないのですが、物価見通しの大勢見通しを見ると何故か上限の人が+2.2%から+2.1%に降りてきておりまして、何か知らんが謎だぞそれという所です。

2016年度:今回初めて出ましたが、まあ想像通り+2.1%とかで物価が出ているのですが、後の方にご紹介しますが、潜在成長率について0%台後半から徐々に上昇という見通しになっている中ですし、説明部分でも「基調的には潜在成長率を上回る成長を続ける」という話になっているのに、物価の方は2015年度が+1.9%で2016年度が+2.1%って、潜在成長率を上回る成長が続いて、しかも(後の方で出てきますが)金融緩和政策は継続しているというような前提っぽい想定になっているのに何で物価が上に跳ねないのかは意味がワカランチ会長。

・・・・・・ではありますが、まあこれを質問しても(つーか会見で質問があったような気もするが)これは政策委員会の各メンバーの数値をアグリゲートしたもので前提が違いますからと逃げられてしまいますのですよね。

ということで、数字を細かく見ると何か物価の見通しが微妙に下がった人がいる辺りに味わいもあるなあという所ですが、では内容に参りますとこれがまた一見すると強気の内容で、二度読むと微妙にほえ??というのがあるという味わいのある内容です。


・「基本的見解」の「概要」とな

今回は基本的見解の文章部分が前回の7pから9p(最後の1pは2行なので実質8p)と増えていまして、えーっと確かQQE導入後に一回この基本的見解を簡素化するとか言って色々な説明をバッサリ減らしませんでしたっけ何で増えるんでちゅかねえという所なのですが、良く良く見たら基本的見解の最初の所に「概要」という概要の概要みたいな屋上屋を架すみたいなコーナーが追加になっております。

ナンノコッチャという感じですが、これって勝手な妄想をしますと「分かりやすい表現」がどうのこうのと謎提案をする白井審議委員の見解を反映して最初にエグゼクティブサマリーみたいなのを突っ込んだという事かなと思いますし、白井審議委員ニッコリと言いたい所ですが、後の所でリスク要因の中で雇用や所得に関する部分が削除されていて従来よりリスクとして認識という話をしていた白井さん涙目で相殺ですかそうですかという所で。

でまあ概要なんですけどね。

『・2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(以下暫く今回分)

まあここは毎度同じですな。展望する年度が1年延びています。

『・ 消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』

総裁会見で質問がありましたが、この「見通し期間の中盤」というのは2015年度半ば頃という話だが若干幅はあるという概念だそうでしてここについては後ほど。

『・ 従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れるものの、物価の見通しは、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向はさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変である。』

@の労働市場を中心として経済のスラックがほぼ解消に向かう中で需給ギャップが改善傾向を辿る、という需給ギャップ方面のアプローチに加え、Aの方がキタコレな話で、フィリップスカーブが上方シフトしているのではないか攻撃キタコレであります。

『・「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した2。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

ここの金融政策運営の部分については文言に非常に深い味わいがありますのでそれも後ほど。

つーことで、まあ表面上は強い話でしてフィリップスカーブの上方シフトの可能性を全面的に指摘とかキタキタキターな部分が思いっきりある一方で、ヘッジクローズにあまり良く見えないけれどもヘッジとしても使える部分というオモシロイ部分がありまして、そういう点では実にこう何か「周到に作られた」印象を受けますですよ、はい。

・中心的な見通し:輸出の現状判断は下がったけど内容は強いです罠

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている。国内需要は雇用の誘発効果が大きいため、2013年度の成長率の下振れにもかかわらず、労働需給は概ね想定に沿って引き締まり傾向が強まっている。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかに回復している。需要面をみると、輸出は持ち直しつつもやや勢いに欠ける一方、個人消費をはじめ国内需要は堅調に推移している。こうした内外需要を反映して、生産面では、鉱工業生産の増加ペースが緩やかにとどまる一方で、サービスや建設など非製造業の活動は強めに推移している。』(前回)

輸出が「弱め」と下がっている(4月金融経済月報概要は「横ばい」ですがこれは方向性の話で水準とは別)のですが、一方で「景気の前向きの循環メカニズム」というのが思いっきり入っているのが強いですなあという所で、しかも今回は「労働需給の引き締まり」ということで、雇用のスラックがほぼ解消されたと見なされるという話も出ていてまあ強い強い。


『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(今回)

『先行きは、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(前回)

輸出の見通しはしつこく「今度こそ上昇する」というオオカミおじさん状態ですが、それ以外に関しては基調として強い話です罠。

脚注は潜在成長率に関する記述です。

『3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(今回)

『2 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、見通し期間平均では「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(前回)

ということで、潜在成長率の推計が微妙に上がっている(前回は平均が0%台半ばだったのに対して今回は直近の数値として0%台半ばだから)ように見えるのですが、潜在成長率が上がったら物価って上がりにくくなるんじゃないですかねえ何でGDPが見通し下振れているのに物価が上昇するねんというのは後ほど説明が出てくるですよ。


・謎の脚注4

その続き。

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる4。』(今回)

でまあそこの話は良いとしまして(実質金利の低下が効果で云々の話)脚注4が今回の展望レポートの謎記述にも程がある部分。

『4 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。長期金利について、市場は、見通し期間を通じて、低位で推移すると予想しているが、これには市場参加者の物価見通しが展望レポートに比べ低いことが影響している。各政策委員は、こうした市場の見方を踏まえ、物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している。』(今回)

ということなのですけど、まあ基本的に展望レポートの作りというのは置きになる金融政策運営に関して「市場の織り込む金融政策パス」というのが全体になるというのがお約束になっていると理解している(ちなみにFEDのSEPは「各参加者が適切と考える金融政策パス」というのが置きになりますし、BOEの場合は「市場織り込み」と「現状維持」の二本立ての筈)のですが、今回に関しては脚注にもありますように、市場の先行き経済物価見通し(というよりは物価見通し)と日銀の出して来る見通しとの間に相当のギャップがありますので、市場の織り込む金利パスを使うとそもそも金融政策として適切ではない(緩和し過ぎ)パスになるように思えます。

しかしどうもこの書きっぷりだと政策金利の置きをゼロ金利政策2016年度まで継続するような形になっていますが、実質金利がマイナスで潜在成長率を上回るような状態が1年半位は続くという中で物価水準が2%近辺でそのままアンカーされるには経済に相応のスラックでも無いと難しいんじゃないでしょうかと思うのですが、一方で日銀の見通しの中心的なベースの説明では需給ギャップは解消からプラス方向に推移するという話になっており、基本的に経済のスラックが解消方向という説明をしているのに、何で2015年度は兎も角2016年度に安定して2015年度の水準を維持するのかが良く判らんですなあというようなお話です。

これ「長期金利の先行き想定」って話で最後サラッと逃げているので、短期金利の想定がどうなっているのかが判らないですし、「物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している」って言うのは要するに市場の織り込みパスだと低すぎるから上方修正しているという事だと思うのですが、何かここって丁寧に説明しようとして却って訳分からなくなっているように思えるのですけどねえ。


・先行き見通しの主な変更部分

『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。』(今回)
『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。』(前回)

金融環境の緩和云々については前回と今回ほぼ同じ(謎の脚注部分を除く)です。

『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及していく中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
『第2に、海外経済については、4月の展望レポート時点の想定と比べると幾分弱めに推移しているが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、先進国を中心に、次第に持ち直していく姿を見込んでいる。』(前回)

ここに関しては項目別に見ると中国経済が若干下がっていますが、米国欧州は割と上げ、その他新興国資源国については
やや上がっています。

『第3に、公共投資は、2014年度上期にかけて、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移したあと、次第に緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(今回)
『第3に、公共投資は、既往の各種経済対策の効果に加え、新たに策定される予定の経済対策による追加の押し上げ効果も予想されることから、2014年度上期にかけて高水準で推移するとみられる。』(前回)

こちらはさすがに下がります。


『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

『第4に、政府による規制・制度改革や今後見込まれる各種の企業向け減税措置、企業による内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

今回ほほうと思ったのは『女性や高齢者による労働参加の高まり』、『企業による生産性向上に向けた取り組み』という部分ですな。


・駆け込み需要の反動からの回復時期

『もっとも、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費の基調的な底堅さは維持され、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降、減衰していくと考えられる。』(今回)

『以上の内外需要を反映して、わが国経済は夏場以降、潜在成長率を上回る成長経路に復していくと予想される。』(今回)

ということで、まあ元々そういう感じではありましたが、前回の見通しよりはややニュアンス的には強くなっていると思います。というのは前回は下の通り。

『2014年度の成長率については、上期を中心に駆け込み需要の反動が出ることから、前年度に比べればかなり鈍化するとみられる。ただし、海外経済の持ち直しが明確となる中で輸出が伸びを高めるほか、金融緩和や各種企業減税の効果などから設備投資もしっかりとした増加を続けるため、潜在成長率を上回る成長は維持されると考えられる。』(前回)


・物価情勢の所は色々とオモロイ

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは6、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移していることを反映して、労働面を中心に改善を続けており、最近は過去の長期平均並みであるゼロ近傍に達しているとみられる。』(今回)

『第1に、マクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される』(前回)

という事でまずここで需給ギャップゼロキタコレですよ!!というのと、今回は需給ギャップの改善時期に関しても前倒しになっていいてキタコレです。

『すなわち、失業率が3%台半ばとみられる構造的失業率に近づきつつあるなど7、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっているほか、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。先行きも、消費税率引き上げの影響による振れを伴いながら、2014年度下期にプラス(需要超過)基調が定着したあと、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)

いやー強い強い。更に・・・・・・・

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、全体として上昇しており、こうした動きは実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼし始めているとみられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。こうした予想物価上昇率の高まりは、企業や家計を含めた価格・賃金形成に徐々に浸透していくとみられる』(前回)

ということでここのインフレ予想に関する表現も強くなるわフィリップスカーブの上方シフトを示唆する表現になるわで強い強い。

『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、エネルギーを中心とした押し上げ効果は本年夏頃にかけて減衰していくと予想される。』(今回)
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、当面は上昇要因として作用すると見込まれる。』(前回)

まあこれは下がる罠。

で全体なのですが・・・・・・・・・

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると8、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると4、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。』(前回)

えーっとですな、前回の見通し期間は2013年度から2015年度までなので、見通し期間の後半に掛けてと言いますと2015年度の頭は既に後半になると思うのですけれども、今回の見通し期間の中盤頃というのは会見によると2015年度中ということですので、この表現だと物価安定目標の達成見込み時期が後ズレしているような書きっぷりになっているのが実にこう怪しい表現。

でまあ会見(詳しくはテキストを見てから)によりますとどうもここは「特段の政策的な意図はなく、見方は変わっていません(キリッ)」という話らしいのですが、そうは言いましてもここの表現はそろそろ達成云々の時期が近づいてきたので、微妙に表現をぼやかしてインチキグラデーション攻撃を掛けてきたのではないかとの疑惑も流れる所でございまする。


・上下要因(経済):白井審議委員涙目&輸出に注目

こちらに関しては基本的な部分は前回と同じなのですが違ったのが2か所。

今回の要因としては輸出、消費税の影響、成長期待、財政の維持可能性というのがありまして、前回あった『第2に、家計の雇用・所得動向がある。』(前回)というのが無くなっていまして、雇用所得動向に関するリスク認識が無くなったとか強い強い&白井さん涙目。

輸出に関しては今回新たにこのような記述が入りました。

『このところの輸出の弱さの背景には、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高い。』(今回)

ということでシクリカルな部分だけでは無くてストラクチュアルな部分を入れていますな。まあ輸出に関しては明らかに日銀の期待外れの状態が続いていますからね。


・上下要因(物価):上振れ要因キタコレ

『それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、どのようなペースで上昇していくかについては注意する必要がある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(今回)

『物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。人々のインフレ予想が、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映して、なかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで、既に今回は予想物価上昇率について上がる事を前提にした話になっている(前回は動向が不確実とか割と謙虚な表現でしたけど)上に、最後の所なんぞインフレ予想が上振れの話ですがな・・・・・


『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりが、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。また、同じ成長率であっても、労働集約度の異なる製造業・非製造業間のバランス次第で、経済全体でみた人手不足感は変化する可能性がある。』(今回)

これ新しく入った所ですな、でこちらも上振れ方向の話がメインっぽいですよオソロシス。


『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて注意が必要である。』(今回)

『第2に、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度についても不確実性がある。企業が、厳しい競争環境が続く中でも、財・サービスや労働の需給の引き締まりに応じて、価格や賃金を引き上げていくかどうか注意が必要である。』(前回)

こちらも既に上昇するのが前提で、その幅が問題という感じですな。でまあ最後は輸入物価ですがここは前回同様なので割愛。


・金融政策運営の表現がこれまた微妙

第一の柱ですが時期の表現が先ほどと同様に微妙。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、見通し期間の後半にかけて、日本経済は、2%程度の物価上昇率が実現し、持続的成長経路に復する可能性が高いと判断される。』(前回)

ということで先ほどと同様に時期の表現が妙ですな。

第二の柱の点検部分はニュアンス概ね同じなので割愛しますが、最後の結論部分の表現が更に妙です。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている。今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)

・・・・・・・・・・・さてどこが変わっているかと言いますと、まず第一文の中でQQEの効果に関しては「所期の効果を発揮しており」と勝利宣言っぽい表現をして(キリッ)という風情を醸し出しているのですが、その後いきなり「今後とも、日本銀行は〜」という文章になっていて、文章の流れに違和感ががががが。

で、良く良く前回と比較してみると、前回あった「わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている」という一文が抜けておりまして、つまり前回は「ここまでの政策評価」→「経済物価情勢のパス」→「今後の金融政策運営」という表現の流れだったのが、今回はその「経済物価情勢のパス」に関する表現が無くなっているというのが実にこう味わいが深い訳ですよ。

まあ総裁会見によりますと展望レポートに3名反対が出たとの由ですので、その反対の3名(の誰かか全員か知らんが)が2%へのパスを「順調に」辿るとはケシカラン表現であると全力で主張したのではないかと妄想される所ですが、ここの「順調に」云々が削られている辺りや、達成時期の表現が微妙に変化している辺りなどにフォーカスを当てると実は今回の展望レポートって「先行きの物価目標達成の時期やパスに関して微妙に日和った表現が入っていてヘッジを入れていますな」という解釈も可能というのが何ともまあ味わいの深い所で、これはもうジャパニーズ侘び寂の世界であると認識せざるを得ないという所でありまする。

なお、全文と総裁会見のテキストが今日出ますのでまたそれを鑑賞しつつ続きます、という所で。



○FOMC声明文

同じタイミングでネタを打ち込まれると困りますな(大汗)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140430a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140319a.htm(前回)

たぶん金融政策決定に関する第3パラグラフ以降の文言は特段変化が無く、今回もまた淡々とTaperingが継続し、資産買入やフォワードガイダンスに関する文言は多分同じだったと思う(斜め読みはしたが何せ差分ツールとか使わないで人力差分ツールなので正確性無担保)ので、最初の辺りだけ。

・第1パラグラフ:景気の現状認識が強気化していると思います

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that growth in economic activity has picked up recently, after having slowed sharply during the winter in part because of adverse weather conditions.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January indicates that growth in economic activity slowed during the winter months, in part reflecting adverse weather conditions.』(前回)

総括判断的にはピックアップに上がっていまして、冬の天候要因が剥落して再び回復軌道ということですな。

『Labor market indicators were mixed but on balance showed further improvement. The unemployment rate, however, remains elevated. Household spending appears to be rising more quickly. Business fixed investment edged down, while the recovery in the housing sector remained slow. 』(今回)

『Labor market indicators were mixed but on balance showed further improvement. The unemployment rate, however, remains elevated. Household spending and business fixed investment continued to advance, while the recovery in the housing sector remained slow.』(前回)

消費支出の判断を上げて企業の固定資産投資の判断を下げていますな。

『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing. Inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

財政とインフレ、インフレ予想に関する認識は同じです。


・第2パラグラフ:先行き見通しは同じですな

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will continue to improve gradually, moving toward those the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor market as nearly balanced. The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will continue to improve gradually, moving toward those the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for the economy and the labor market as nearly balanced. The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, and it is monitoring inflation developments carefully for evidence that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(前回)

どう見ても全文一致です本当にありがとうございましたという所です。以下金融政策に関する3パラ以降も基本的に同じ事しか書いていない(数字を前回対比でいじっているという感じだけで違ってたらスイマセン)という予想通りの無風FOMCで、しかも今回は前回反対に回ったコチャラコタ総裁は賛成に回っていますな。

以下細々とやっていると時間がアレなので続きは必要がありましたら後日行います。