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(各日付の最初にラベルを「140801」というような形式でつけていますので「URL+#日付(6桁表示)」で該当日の駄文に直リンできます)


2014/08/29

お題「短国金利若干上昇ではありますが/2年で2%の落とし前について雑考(今回は頭出し)」

色々とツッコミどころの多そうなニュースですな・・・・・・・・・
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140828/stt14082813150003-n1.htm
国会周辺の大音量デモ、規制検討 自民ヘイトスピーチPTで
2014.8.28 13:15


○市場雑談というかメモ

市場雑談と言えば10年の金利がじりじり下がったりしている件なのでしょうけれども、どうもこう戻り高値更新に対してヒャッハー感が無いのでネタらしいネタが無かったりするのですよね〜(−−;

・3M入札は久々に平均も3bp台

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140828.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘5毛 (募入最高利回り)(0.0381%)
(4)募入最低価格における案分比率 16.1517%
(5)募入平均価格 99円99銭1厘4毛 (募入平均利回り)(0.0344%)

ということで久々の3bp台になって参りましたが、ここもと(そんなに短国の在庫が重いとも思えないのですが)GCレートが妙にサガランチ会長になっている上に、9月は国債償還要因があるからそんなに短国買入が盛大に入らないのでは(ただしこれは日銀がどの位MBの進捗を四半期末の帳尻で行おうとするのかによって全然違ってくるので注意)とか、欧州追加緩和ネタはあるけどまあ超短い所に関しては実際に金利アクションが起きる前にそう思惑で馬鹿下げという訳にもいかない(3か月で償還来るから実際に利下げが起きる前に償還したら間抜けにも程があるぞな)でしょうし、買入オペ狙いトレードするのも3か月じゃリターンの割に在庫抱えた時のリスクが大きい(GCが高いから)という辺りですかねえ良く判らんですけど。

とは言いましてもすっかりここもと3bp割れの新発を見慣れておりますので、3台半ばとかになってしまいますと安く見えてしまう(全然安くないのだが^^)のでまあ捌けるという所ではないかと思われます。いずれにせよ日銀の無慈悲短国買入次第で需給が振れるという状態になっていて、完全に短期国債市場については日銀の買い過ぎで市場が壊れた形になっていま
わなというのは毎度の指摘の通りですけどね。


・固定金利オペ

27日オファー分の結果(固定オペの結果のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140827.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(8月29日スタート分) 6,085 6,085

28日オファー分の結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140828.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(9月1日スタート分) 1,470 1,470

29日スタート分は過去の1年シグナルオペの慣れの果て分だったので12095億円の折り返しが6085億円に減りやがりましたなという所で、1日スタート分は通常の3か月で1440億円の折り返しになっていまして、ロールが終わった所で固定金利オペ残高がまたまた10兆をちょっと割るという数値になるのですが、9月は固定金利オペの落ちが少ない(1日落ち分も含めて1兆円ほど)のでMB積み上げの「その他」部分的にはここで大きなブレ要因にはならないでしょうな。でまあ9月は貸出増加支援オペの(新方式後の)2回目が炸裂なのですが、まあこちらでそんなに残高出ないでしょうから来月の「その他」部分に関してはMB拡大の着地(というか帳尻)をどこに置くかで大体決まるという感じになるんでしょうね。



○「2年で2%」雑考

昨日付けた国会会議録情報のリンクですけれども、あれは自分で検索とかをした直後だと直リンでページが開くのですが、普通に踏むとセッション時間切れになってしまうのですねすいませんすいません。

ということでまずは浜田先生のお告げから。

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0GR0RB20140827?sp=true
アベノミクスは成長戦略に注力を、2年・2%こだわらず=浜田参与
2014年 08月 27日 18:58 JST

まあ浜田先生が「2年2%にこだわらない」と仰せになるのは今に始まった事ではないので特段のサプライズでは無くてはいはいまたですねという所ではありますけど・・・・・・・・・・・・

『GDPや個人消費など足元のさえない指標を受け、市場では日銀による追加緩和観測も再燃しつつあるが、消費増税による反動減の影響という「ショックが発生している時に、金融政策の先行きを足元の数字で決めることは適切ではない」と語った。』(上記URLより、以下同様)

ほうほう追加緩和催促ではないとな。

『その上で、供給制約が意識されている中で「それを無視して需要を付ければ、(供給の)天井にぶつかり、金融緩和を続けていくこと自体ができなくなってしまう」と主張。一段の緩和によってインフレが生じる可能性にも言及し、「私はインフレが欲しいわけではない。(日銀が目標に掲げる)2年で物価2%にこだわる必要はない」との見解も示した。』

供給制約による物価上昇論なのですが、供給制約によって物価が上昇した場合って一段の緩和でインフレというよりは、供給制約によって物価が上昇した場合はコストプッシュ的な状況なので、上昇した物価によって需要に悪影響なのでサステイナブルでは無いというような話のような気もするんですけど、まあそれは兎も角として・・・・・・・・・・


2年で2%の看板なのですけど、これに関しては昨日一昨日とお笑いネタにしてしまったジャクソンホールでの黒田総裁の講演からしますとですね・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140824a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140824a1.pdf

『こうしたもとで賃金を引き上げるには、何らかの仕組み、つまり「見える手」のサポートが必要です。』(上記URLの講演テキスト抄訳より、以下同様)

ってのを昨日は統制経済キタコレとか茶化してしまいましたが、実際問題としては先の方にあるように、

『日本銀行の物価安定の目標は、そうしたメカニズムの中で、企業が賃金を決定する際のメルクマールとなり得るものです。』

というのに「見える手」というのに掛かっているというのが話の本意でして(ですよね???)、要するにこの「2%」の看板を思いっきり掲げるのが重要という主張は全くぶれていないのが黒田緩和のポイントになっている(その部分には野党審議委員の反対もありますけど)訳でして、浜田先生の主張する「供給制約による天井論」を敷衍した場合って「2%が(短中期的に)本当に適正な水準なのか」という話に繋がってしまいますのでまあ現在の黒田さん的にそれは引けない所でしょと思います。

それに「2年で実施」という強力なコミットメントを行う事によって期待の転換を図って実質金利の引き下げを行うというのもQQEのもう一つの骨子であって、「中長期的に目指せば良いじゃないの潜在成長力が弱いんだもの」という話をしておりますと期待の転換が図れませんという事に繋がりますので、ここへきて急にひよるというのも難しいと思いますけどねえという所。

いやまあ現実問題考えたら落とし所を模索した方が良いんじゃネーノとか、浜田大先生以前何って仰ってましたっけとかそういう話もありますが(^^)、その辺はスルーしまして今後の政策運営という話を考えますと、まだ2年で2%の達成時期まで半年以上も残っている訳ですからして、こんな所でロジックをひよって落とし所に持って逝くという事は無理としか申し上げようがなく、同様に物価が盛大に落ちでもすれば別ですが、基本的に1%を軽く割れる位でも別に10月展望レポートでシナリオが崩れる訳でも無いのですから、10月緩和とかいうのはまー普通に考えると無いですよねという話になりますという事で。

流れとしては物価が上がってみたものの「こんな筈じゃなかった」という不満が澎湃として沸き起こって、2年で2%を目指す必要は無くて1〜2%位でいいじゃないか的な話が一般ピープルから政治的な動きになってきて外からタオルが飛んでくるという事にならない限り、日銀はQQEのリングで大量緩和のタコ踊りを継続しないといけないという誠にアレな状態が続くものと思われますがどうでしょうかねえ。


○ということで関連で国会ネタサルベージというか久々に会議録鑑賞会

てなわけで国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/

こちらの詳細検索というのをクリックして、真ん中の辺りにある発言者検索に「岩田規久男」と入力しますと師匠の国会での答弁がサルベージできます。

で、就任前の所信聴取祭りが

183 参議院 議院運営委員会 13号 平成25年03月12日
183 衆議院 議院運営委員会 12号 平成25年03月05日

ということで、第183回通常国会の議員運営会で行われたのですが(中曽さんとセット)、まずは3月5日の衆議院議員運営委員会から。

衆議院のサイトからも検索できて、こちらからですと会議録に直リンもできます(というか上記の会議録検索システムでも直リンできた筈なのだが久々なのでやり方忘れました)。なお参議院のサイトですと過去30日分は参議院のサイトから検索できるのですが、その前については会議録検索システムで見ろという仕様になっています。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/002018320130305012.htm
第12号 平成25年3月5日(火曜日)

会議録検索システムの検索結果だと発言順に発言者と番号が振ってあるのでそちらから見る方が吉なのですが、発言番号で言いますと20番目からがアレ。

・忘れたとは言わせませんよ!!!!!

『○津村委員 はい。失礼いたしました。二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。そこで、お伺いしたいんです。 一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。』

『○岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。』

(;∀;)イイハナシダナー

『○津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。』

津村さん念押しキタコレ!

『○岩田参考人 それで結構でございます。』

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

・・・・・・・まあ何ですな、参考人の所信聴取ですから別に嘘こいたから偽証とかいう話にはならないですけれども、国会でこれだけの大口を叩いたのを無かった事にするというのはつまり国民に対して大嘘をついて日銀副総裁にご就任された、というとんでもない話になりますので、こちらにありますように来年の春に消費者物価指数が2%に達していなかったら当然のごとく責任を取って頂くという事でちゃんと落とし前をつけて頂くようにお願い致します。


・なお「消費増税ガー」などという泣き言は不可ですので念の為

津村さんの質疑が続きますがその先の阪口直人委員による質疑ではこのような説明がががが。

発言番号の29からです。

『○阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。日本維新の会は、改革をとにかく前に進めていく、そして地方の自立を実現していく、そういった基本的な考え、哲学を持っておりますので、本日は、そういった考えに立って質問させていただきたいと思います。さて、特殊法人や霞が関の改革が、スピード感があるかどうかは別として、ある程度進んでくる中で、日銀の組織、これはなかなか進んでいかないということが言われておりますが、日銀の組織の評価と、そして、その改革のあり方について、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。』

なんじゃこの質問はという所ですが師匠の答弁が実に素敵。

『○岩田参考人 私が一番懸念しているのは、どうも日本銀行が、物価の安定あるいは一%とか二%とかそういうインフレ目標達成を金融政策だけではなかなかできないという立場に立っている。やはり、世界のインフレ目標国のように、物価の安定は責任を持って日銀がやるんだ、中央銀行がやるんだ、そういうような考えをもう少し持っていただきたいというふうに思っておりますので、それが組織上の問題でそうなっているのかどうかよくわかりませんが、私、そういうふうな考え方も、もう少し柔軟になってほしいなという気持ちは持っております。』

ということですので、当然ながら師匠におかれましては来年の春に2%達成できなかった場合には言い訳も泣き言も無く、最高の責任を取って頂けるものと期待しております。いやもちろんアタクシとしては来年の春に2%達成している事を期待しておりますのでそのような事態が起きないように心の底から祈念申し上げておりますけれどもね(棒読み)。


『○阪口委員 岩田候補の、とにかく、そのときの経済や政府の政策のせいにはせず、日銀の責任で二%を達成する、この覚悟、これは大変にすばらしいものだと思います。また、先ほど、それが二年という期間内に達成されなかった場合には責任を負うんだと。このことも、ある意味、きょうは、市場を動かす上での大きな御発言であったかと思います。(以下割愛)』

いやあここでも念を押されていて実に素敵ですが、良く良く考えたら「そのときの経済や政府の政策のせいにはせず」といか「二年という期間内に達成されなかった場合には責任を負うんだと」とか勿論賞賛して話をしているのですが、良く良く考えると中々こうオソロシスな賞賛ですな、うんうん。



・出口政策の話をしているのですが・・・・・・・・・・・・・

さっきの津村さんの質疑の続き。

『○津村委員 私は、失敗してほしいと思っているわけではありません。ぜひ、二年間で頑張っていただきたい。しかし、任期は五年ございます。そうしますと、二年後に目標を達成した残り三年間、ここも大事な職責があるわけで、いわゆる出口戦略について、中央銀行のトップの方はしっかりとシナリオを描いていただきたい。大変大きな国債残高が積み上がって、しかも、長期のものを買おうとおっしゃっているわけですから、なかなかそれを売却するのは難しいと思います。そういう意味では、副総裁候補は、日銀の自己資本はマイナスになってもいいという御発言までされていますけれども、出口戦略について具体的なシナリオをお持ちですか。』

ここで委員長から時間が無いので早くしてというのが入りますがそこは飛ばします。

『○岩田参考人 はい。出口戦略をするためには、国債を、まず売りオペをするというよりも、日銀当座預金の付利を引き上げていって銀行の信用創造を少し抑えるというのが最初の常道だというふうに思っています。それからもう一つ、金融システムの安定化をさせるためにこそ、銀行等にはもう少しデュレーションを短いものにしていただきたい。三年ぐらいまでにしていただきたい。そのためにこそ日本銀行は長期国債を買う、そのかわり短期の国債を民間には持っていただく。そのことをうまく進めるためには、やはり物価連動債を、これはインフレヘッジになりますので、ぜひ発行を再開していただきたい。そうすれば、投資家はインフレヘッジのできる国債を持つということになって、金融システムは安定しますので、出口戦略が非常にやりやすくなるというふうに思っております。』

これ発言がベンダーで出た時も「ナンジャソラ」の声が飛び交っておりましたが、銀行の信用創造がどうのこうのという話(これ全部読むとまあその手の話があるのですが)ということはつまり異次元緩和をすると銀行は自動的に信用創造が拡大という理屈になっているようでして誠にオモシロスと思いますし、物価連動国債を銀行が購入してインフレヘッジって話も(発言が出た時にもツッコミを入れたと思いますが)そもそも論として銀行は負債がインフレ連動している訳ではないですので、そらまあBEIが割安とか儲かるからというような理由で買う事はありますけれども、別にALM的に物価連動国債を買う必要ってない(負債が基本的に預金なのでインフレリスクは無いようなもんだわ)ですし、株も持っていますから別に物国そのものをヘッジで買う必然性ないですし、それで金融システムが安定して出口戦略がやりやすくなるとか中々意味不明で実に心が温まるものを感じます。


#なお、参議院での所信聴取に関しては金融緩和を盛大に行うとどうやって効果があるのかという説明が実に味わいが深いのでまた後日というかネタが無かったら来週月曜にでも(^^)今日は時間切れですすいません





2014/08/28

お題「ブラード総裁とロックハート総裁のインタビュー記事から/黒田総裁講演@ジャクソンホールの続き」

高値更新したところで登場するのがムーシャ先生クオリティ。
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0GP1HS20140827
コラム:株高を正当化する米経済の循環回復=武者陵司氏
2014年 08月 27日 10:03 JST

○ブラード総裁とロックハート総裁のインタビューから少々

米国のMarketWatchのGreg Robb記者(いつもFOMC後の議長記者会見で登場してくる一人)がジャクソンホールでインタビューしていたようで、月曜に記事が出ておりましたぞな(汗)。

ブラード総裁
http://www.marketwatch.com/story/feds-bullard-europe-is-biggest-risk-to-outlook-2014-08-23
Fed’s Bullard on Europe, asset sales and Yellen’s speech

ロックハート総裁
http://www.marketwatch.com/story/feds-lockhart-not-convinced-economy-ready-to-lift-off-2014-08-24
Fed’s Lockhart on timing of lift off, ‘highly valued’ markets and more

ということでまあ簡単に(そんなにインタビュー自体も長くは無いが)参ります。まずはブラード総裁から。

・ブラード総裁は景気見通しに強気で政策運営はタカ的と

http://www.marketwatch.com/story/feds-bullard-europe-is-biggest-risk-to-outlook-2014-08-23

最初の説明の所から。

『JACKSON HOLE (MarketWatch)-For a few months now, St. Louis Fed President James Bullard has been saying the first rate increase by the U.S. central bank should come at the end of the first quarter 2015.』

とありますように、利上げ時期に関してタカ的なのは今に始まった話ではありませんがね。

『That puts him ahead of the consensus of the Fed’s policy committee, which sees a rate hike after midyear. But Bullard is often ahead of his colleagues. He was one of the first Fed officials to spell out the need for bond-buying to support the economy. Former Fed Gov. Laurence Meyer ranks Bullard as the Fed official who moved markets most in 2013.』

とありますように、この先生新しいテーマに突っ込んで行くのが好きなお方ですが、まあ市場を動かした云々よりも昨年の場合はスタイン前理事の方が影響が大きかったとは思いますがそれは兎も角。

『Bullard sat down for an interview on the sidelines of the Fed’s Jackson Hole summer retreat. A few highlights: Bullard thinks the economy is on track for 3% growth in the second half, he’s worried about the European economy. On the exit strategy, Bullard said that unlike many of his colleagues, he would be prepared to sell assets from the central bank’s balance sheet and he is worried that Congress might object to the Fed paying interest to excess reserves that the banks are holding at the central bank.』

ということで本職のFed担当記者の方がまとめてしまっているのでこれで終了という説もありますが、それで終了してしまうとアレなので少々引用を。

経済物価見通しに関しては強いという話なのですけれども、ではどんなもんなのかいなという話の質疑から。

『Bullard: Data ebbs and flows and it is hard to read. I think the tracking estimates that I’ve seen for the second half of the year are over 3% still even given the data that you’re describing, so I would say we are still in pretty good shape. We are basically on track for what we expected at this point.』

3%成長を見ているのでまあそもそも強めですわな。

『I think the important thing about inflation is that it has come up off its lows, where it was, and it has come up some. And I certainly wouldn’t expect it to go up in a straight line. So I think that story about inflation coming back to target is very much intact.』

でまあ物価に関しても先行き見通しはFOMC参加者の平均よりも強めの見立てになっています。そうなりますとこういう質問が飛んで来まして・・・・・・・・・

『MarketWatch: Some Fed officials have said inflation can go over 2% for some period, that that wouldn’t be a problem because we have spent so much time below target. What is your sense of that?』

これはコチャラコタ総裁が言う「プライスレベルターゲットを意識して(暫くの間低インフレだったのだから)インフレの上振れを容認すべき」という見解に対してどう思いますかという話っすな。

『Bullard: I actually have inflation going above target in 2015. But part of that is predicated on the momentum in the economy continuing. So we will see if that develops. But that is the way we’re envisioning it in St. Louis. So we’ll see, but that is what we’ve penciled in for our forecast.』

見通しとしては2015年は2%を上回るとの事で強気強気。

『MarketWatch: You’ve said that before in a speech in June. But you didn’t say how long inflation would get over 2% before you got nervous.』

ほうほうそれでそれで?

『Bullard: The way we have it is that it would go to 2.4% by the end of 2015 but then it would be back down at 2%. Of course that is based on some kind of optimal policy assumptions. But no, I don’t think 2% inflation is a cap on inflation. I think you are supposed to hit that on average over time, and various shocks are hitting the economy and that is making inflation bounce around. But on average you should hit your 2%.』

つーことで物価に関しては来年は2.4%まで上昇してその後2%に向けて下がるという想定(ブラード総裁の想定する金融政策運営を前提にしているので、つまりは足元では物価に上昇モメンタムがあって、金融政策の適切な出口政策によってその後落ち着くという見立てなんですな)で、ただ2%は別にシーリングでもハードターゲットでもなくて景気サイクルの間に平均して2%ならヨロシという説明もしていますな。経済物価動向の見立てに関しては合っているのかどうかは知らんが理屈の筋は通っています。

で、リスクについてですが。

『MarketWatch: What could make you more dovish?』

なるほどこういう言い方で質問するのか。

『Bullard: I think the biggest risk right now in the global economy right now is Europe. I am trying to understand the latest data there and the potential for further slowdown. I think this was supposed to be a year of recovery there. They’ve got some geopolitical risks weighing on that economy and I think it would be unfortunate if they didn’t get a year of growth here. So we’ll see where it goes. There again, I think the tracking forecasts for Germany and some of the other countries are still positive for the second half of the year, so we will see if that is the way it materializes. But it is making me a little bit nervous that they are supposed to be coming out of recession and maybe they are going back into recession, so hopefully that doesn’t happen.』

ということで欧州の減速リスクた、地政学リスクに起因するリスクなどに注意しているそうです。

で、出口政策運営ですけど、バランスシートをどうするのという質問がありましてその答え。

『Bullard: I think the minutes say the committee wants to get the balance sheet size to the lowest practical level and that we want it to be all Treasuries eventually. And it is not very explicit on how fast that is going to happen.』

まあミニッツではいずれ縮小して国債だけにするがその時期と規模は明示していないですから。

『In my own view, I’d like to see us discontinue the reinvestment [of proceeds of maturing securities] at some point. I’d actually prefer to do that before raising rates so then it wouldn’t be a big deal for the balance sheet but at least the balance sheet would be going in the right direction and we could say, don’t worry, we are going to get it back to normal. I don’t really see much purpose at keeping it at a very high level for such a long time. I really don’t think that is necessary and I think we could gradually let it go back to normal.』

償還再投資に関してはビックディールではないから利上げ前に行う方が宜しいと、資産規模を大きいままにしておく必要もないでしょうとか割とタカ。でもって資産売却するんですかという質問の答えですが。

『Bullard: I think selling has been unpopular in the committee but I think it is a perfectly reasonable way to run policy and if you did it in a managed way, then I think it would be a perfectly good thing to do-and it would help us get the balance sheet back to normal faster.』

売却はFOMC全体の中では少数派だけど「perfectly reasonable」ですってよ!!

『It would be a tighter policy so you wouldn’t want to do that unless you felt confident that you could put upward pressure on longer-term rates. But I think the economy has improved and we probably can afford to do that.』

長期金利などが上がるという理由であまり好まれていない手法かもしれませんが、経済が改善してくれば売却による金利上昇も無問題になるでしょうとかキタコレにも程があるブラードのおっちゃん。

さらにこんな質問が(次のロックハートでも出てくる質問)。

『MarketWatch: Your predecessor as president of the St. Louis Fed, William Poole, has said he’s worried that there will be blowback from Congress on one key aspect of your exit plan, paying excess reserves to banks. He said that if rates go up 1%, the Fed will be paying banks $30 billion. Aren’t you worried populists on both sides of the aisle will oppose that?』

プール総裁とかマジナツカシスですが、プール総裁の指摘として利上げプロセスでIOER引き上げるとFEDから支出がバカスカ出る事になって議会あたりがギャースカ言い出す可能性がある件についてどう思いますかと。

『Bullard: I’ve worried about that. I’ve talked to people in political circles about that. For now, they don’t seem to be focusing on it. But I am worried that when we actually get to that juncture and we start doing that we will face political opposition on both sides of the aisle and that would be very difficult for the Fed because we are relying on that tool as a major part of our exit strategy. So that argues for some kind of sales program or at least allowing the runoff of the balance sheet so that you start to get it back to normal sooner. Otherwise you are just paying a heck of a lot of interest that you don’t really have to pay.』

で、ブラード総裁もその点を懸念しているとしていて、今のところは金利がこの水準だし入ってくる利息の方がプラスだから大丈夫だが今後はマズーというリスク意識を持っていて、その点もバランスシートの正常化を早めるべきという考えになっているとの事でこらまたタカタカしています。

『MarketWatch: What would the Fed’s defense be to criticism about paying interest to banks?』

『Bullard: We’re doing it because we’re trying to meet our mandated objectives for monetary policy and we think that this is a good way to do it. But I think the optics are very difficult to defend and might get us into trouble here.』

てな感じで、政策として適切に行っていても「銀行に利息を払ってケシカラン」という批判に対しての説明というのは政治的イシュ―化すると難しくなるという認識を示しています。以下もうちょっとありますが割愛。


・ロックハート総裁は「pragmatic moderate」で「silent majority」なのね

http://www.marketwatch.com/story/feds-lockhart-not-convinced-economy-ready-to-lift-off-2014-08-24

これまた最初の説明の所から。

『JACKSON HOLE, Wyo. (MarketWatch)-To find out where the silent majority at the Federal Reserve stands on an issue, it is a good idea to see what Dennis Lockhart, the president of the Atlanta Fed.』

さすがGreg記者。

『Lockhart describes himself as a “pragmatic moderate” at the central bank, looking to balance the views of the inflation-fearing hawks and the growth-promoting doves.』

ほほう。

『With the central bank inching closer to the first rate hike since 2006, Lockhart sat down to give his views on the economy, the balance sheet and bubbles. Some highlights: Lockhart thinks it is too early to know if the economy is on track after a horrible first quarter and he is open to asset sales to shrink the central bank’s $4.4 trillion balance sheet.』

ということで、Greg記者の言う「FOMCのサイレントマジョリティー」の見解としては、FOMCとしては足元の経済物価情勢が1Qの落ちこみから戻ってオントラックになったかという判断をするのには今後の指標などを見極める必要があるという説明をしておりまして、バランスシートの縮小時に資産を売却する件については「オープン」となっています。

であと補足しますと、オープンとは書かれていますがまあニュアンスとしては「全く売らんと言ってる訳ではない」程度に見えましたし、ここの纏めにないのですが、資産市場の一部で好ましくない価格形成が起きている点については思いっきり認めているのがほほうという感じでした。

見解は議長と同じだそうでその辺りを。

『MarketWatch: As a moderate on the Fed, you must be under a lot of pressure these days. Getting pulled in all directions?』

『Lockhart: To the extent that someone who is not defined as either a hawk or a dove, or an extreme dove, is part of a debate with points of view that range from-“We should go to lift off early because there is relatively little effective slack” to those who say “we should go longer because there is considerable slack,”-if you think of that as being pulled in one way or the other I suppose it is just that I am part of that flow of debate.』

ということで経済におけるスラックの程度に関する部分がFOMCでの参加者の見解の差になっていますということでして・・・・・・・・・

『MarketWatch: Are you more dovish than Janet Yellen?』

『Lockhart: I think I align pretty well with Janet.』

ほほう。

『What I have been saying here in interviews is that I am still looking to mid-2015 (for the first rate hike). Using a simplistic categorization that my staff came up with, I am more of a U-6er than a U-3er…』

ということで、以下はU3カテゴリーとU6カテゴリーの失業がどうのこうの的な話をしておりますがその辺飛ばしまして纏めのところを。

『Lockhart: I am trying to make the point that it is early to draw conclusive notions of what is really going on. The first quarter was horrible. Second-quarter GDP growth was quite strong, but final sales was 2.3 [percentage points] of the 4%. So there was a big inventory component there.』

2Qは強かったけど在庫の寄与も大きかったよねと。

『The third-quarter tracking estimates are around 3% which is what I am expecting as a run-rate growth rate, but they are tracking estimates. In the first quarter, we were looking at tracking estimates that turned out to be tremendously off what the ultimate measured results were. So I just think you have to be a bit tentative, at this particular point in time, in concluding that we’re on the track that we need to be on to get to lift off at mid-2015 or earlier.』

ついこの前今年の1Qの落ちこみが「想定外」だったのだし3Qは年率3%成長との想定だがそれを確信できるほどではないというお話。ただし経済がオントラックだたら2015年半ばまたはもうちょっと早くても出口政策着手というのですから、まあイエレン議長の講演や前週のミニッツなども含めまして利上げ着手は遅いぜヒャッハーというのは少々話に無理があるかもという認識に米国市場がなるのもまあノーマルな反応。

『So I just want to let more time pass, more data come in, more accumulation of evidence that the track we think we are on, we are in fact on.』

ということでもう少し様子見とのことです。で、ブラード総裁にもぶつけられた質問のうち利息を払ってどうのこうのに関しては「私は政治分析をする人ではないので知らんがな」で逃げていますが、バランスシート規模のマネージに関する質問の答えは以下の通り。

『Lockhart: I think it is going to be a very gradual reduction in the balance sheet assuming a kind of moderate pace of growth and assuming no reversal in the economic performance.』

ということで、資産縮小で悪影響の無いようにということですのでブラード総裁よりはずっとマイルド。

『I think the game plan is and should be a gradual reduction in the balance sheet that will start with ending reinvestment (of proceeds of maturing securities.) I am not one who wants to rule out asset sales but I think we’ve communicated that in all likelihood we are just going to let the balance sheet run off through maturities and that is going to take a while.』

資産売却を別に排除はしないけどとはいってますが、まあこのニュアンスは基本的に「売らずに済ませられるものなら売らないに越したことはない」という感じですよね。

最後にバブルの質問があってここがほほうという感じでしたので引用します。

『MarketWatch: I would be remiss not to ask you about the state of financial markets as you hold a conference of the topic annually. Are there bubbles forming, frothiness to be concerned about?』

バブルまたはフロスの兆候は?

『Lockhart: I think it is hard to deny that there are certain markets that are highly valued. I think the real question is, is that so widespread-underpinned by excessive leverage-that we are flirting with another systemic event. And I am not there. But I would not deny that we have some highly valued markets.』

ということで、これ7月FOMCミニッツと同じですけど、明らかに「一部の資産市場における利回り追求的な行動による異常な価格形成がある」というのは認めていて、「ただその不健全な価格形成が金融システムリスクなどに繋がる物ではないので今の所利上げなどの対応をする必要なし」という認識なんですよね。

『MarketWatch: You are not worried about with rates so low, there is a misallocation of credit?』

『Lockhart: I try to frame this as whether there is something that monetary policy should address, in which monetary policy is the right tool to address it, because we are taking really severe systemic-scale risks. I am not in that arena in my thinking at this stage.』

ということで、まあシステミックリスクでは無いので今の所は金融政策攻撃は要らんとはいってますが、こういう認識がFOMCの中心的見解だとすると利上げってそんなに引っ張れないという意識は強くなるかもしれませんな(今直ぐにスタンスがどうこうとは思いませんので念の為)ということで。


○黒田総裁のオモシロ理論@ジャクソンホールの続き


http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140824a1.pdf
デフレーション、労働市場、量的・質的金融緩和
カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウム(米国ワイオミング州ジャクソンホール)における講演の抄訳

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140824a1.pdf
Deflation, the Labor Market, and QQE
Remarks at the Economic Policy Symposium
Held by the Federal Reserve Bank of Kansas City

例によって日本語版からで昨日の続きですよ。

・QQEと賃金と物価の話が原因と結果を都合よくひっくり返す置物理論状態

『2.「量的・質的金融緩和」と労働市場』の説明が(も)何ともアレという話を本日は一席(^^)。

『次に、日本がこの状態からどうやって抜け出しつつあるのかについて、お話します。経済の不確実性と将来に対する不安が、賃金を抑制してきた原因であるならば、賃金の引き上げを実現するためには、将来に対する明るい展望を経営者と労働者が共有することが必要です。したがって、処方箋の第1は、デフレの下で停滞を続けていた日本経済を、緩やかなインフレの下で持続的な成長が実現する経済へと変貌させることです。』

(キリッ)という感じなのですが、そもそもあんさんさっき(引用したの昨日ですけど)「デフレだから売り上げは減るわ賃金は下がるわ」という話をしていたのですからデフレが原因で起きた事象ということで賃金の低迷だの企業活動の低迷だの合成の誤謬の発生だのという話をしていました訳で、それらの問題の解決をするのに「デフレを解決すれば良いのです」ってナンジャソラという話ですな。

この「相関部分だけ捉えて因果関係に関して原因と結果を説明に応じて自由自在に入れ替える」というのは木久扇師匠一派の皆様がお得意とする説明で、因果関係はあるもんだから途中で原因と結果が自由自在に入れ替わっている事に気が付かないで何となく説得力があるように見えてしまうという置物師匠の理論的バックグラウンドの特色なのですが、総裁講演でもキタコレとは実にこう味わいが深いとしか申し上げようがありませんな(−−)。

『この点、昨年のこのシンポジウムで詳しく説明した日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、その後も、所期の効果を発揮しています。その結果、労働市場にも、明るい日が差しつつあることは先に申し上げた通りです。』

ただまだ完全ではありませんとかその手の説明の部分はスルーしましてその先。

『より厄介な問題は、デフレが長引く下で賃金決定の慣行が変質したことです。もともと終身雇用の割合が高く、労働移動が少ない日本では、労働需給がすぐには正規の労働者の賃金に反映されにくい傾向があります。』

という話になっているのですが、そもそもその前には「雇用者数の調整の代わりに賃金の引き下げで対応しているから物価が上がりにくくなってしまった」という説明をしていませんでしたっけさっきと話が違いませんかと思いますがまあツッコムのは止めておきましょう。

『こうしたもとで賃金を引き上げるには、何らかの仕組み、つまり「見える手」のサポートが必要です。』

アダムスミスに掛けたのかも知れんがあまり上手く無いと思う。

『この点、デフレ期以前には、春に主要な企業が一斉に労使交渉を行う「春闘」が、賃上げのフレームワークとしての役割を果たしてきました。しかし、デフレが長期化する中で、そうしたメカニズムが機能しにくくなりました。すなわち、企業にとっては販売価格が伸びない中でのコスト削減のために賃金の引き下げが必要でしたし、また、労働者にとっては、雇用の保障と引き換えに、それを受け入れることに一定の合理性があったためです。』

既にさっきと矛盾した話ががががが。

『ここ10年ほどの間、春闘によってベースとなる賃金水準を引き上げるという慣行(ベースアップと呼ばれています)は、ほとんど実践されませんでした。』

『今年の春、政府からの賃上げ要請もあって、久しぶりのベースアップや賞与の引き上げが、大企業のみならず中小企業においても実現しました。』

さっきの「見える手」の文言がここに掛かると統制経済キタコレという解釈になりますので「見える手」は表現的にあまり宜しくないと思うのですけどねえ・・・・・・・・・・

『今後とも賃金が適正なペースで上昇していくためには、賃金を引き上げるための協調メカニズムを構築することが必要です。』

前段からの流れだとこの協調からは「官民協調」とかいう混合経済あるいは特振法または満州(銃声)。

『日本銀行の物価安定の目標は、そうしたメカニズムの中で、企業が賃金を決定する際のメルクマールとなり得るものです。日本銀行が予想物価上昇率をしっかりと2%にアンカーすることによって、労使がそのことを前提に交渉を行うことが可能になり、また、それによって、企業や家計は、2%の予想物価上昇率を前提として、しっかりと行動計画を立てることができるようになります。』

といってますが、今回のベースアップって消費税上がっているからさすがに上げないと不味いだろというのがベースにあったんじゃないですかねえと思う次第で、物価安定目標2%を意識しているんだったらインフレと消費税の両方を考えてもっとベースアップしてて不思議じゃないんですけど・・・・・・・・

『このように、適切な賃金決定メカニズムを構築することは、予想物価上昇率を2%にアンカーするためにも必要です。』

えーっとですな、今しがた「日本銀行が予想物価上昇率をしっかりと2%にアンカーすることによって、労使がそのことを前提に交渉を行うことが可能になり」って言ってるのに、その直後に予想物価上昇率が2%にアンカーされる為には賃金決定メカニズムの構築が必要ってニワトリタマゴ状態の話になっているようにしか読めませんのでもうちょっとクリアな説明をお願いいたしたい訳で。

つーかですな、以前のように「何だか知らんが気合でインフレ期待を2%に上げる」という説明をした方がまだ話が分かりやすいのですが、良く良く考えたら「気合で上げる」だと労働市場がどうのこうのと全然関係ない独立事象としてインフレ期待の話が出てきて、シンポジウムのお題と全然関係なくなってしまうので、無理矢理関連付けようとして話を作ったのかもしれません(というかそうでしょどうせ^^)が、このQQEとインフレ期待と賃金の話は何が原因で何が結果なのかがシッチャカメッチャカで何を言いたいのかさっぱり判りませんので無理矢理にも程があるわ(と言ってもこれ何か微妙な気はするけど程度で流せそうなんですが)と思いましたですよ。


○しまった時間が無いので予告編

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0GR0RB20140827?sp=true
アベノミクスは成長戦略に注力を、2年・2%こだわらず=浜田参与
2014年 08月 27日 18:58 JST

浜田先生消費税の「段階的引き上げ」好きですなあとか思うのですが、折角2年2%も近くなって参りましたので、この浜田先生の見解をマクラにして過去の国会発言でもサルベージしようかと思っていたのですよね。
とても便利な国会会議録検索システムはこちら。
http://kokkai.ndl.go.jp/

でね、こちらの「詳細検索」画面をだして、発言者の所に某師匠のフルネームを入れる(手入力)とこんな結果になるのですな(手打ちして検索ボタンを押した直後は「該当件数9件」とかしか出てこないので念の為)。

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_list.cgi?SESSION=22914&SAVED_RID=1&MODE=1&DTOTAL=9&DMY=23107
検索結果(一覧表示)

こちらの
007 183 参議院 議院運営委員会 13号 平成25年03月12日
008 183 衆議院 議院運営委員会 12号 平成25年03月05日

辺りを見ると中々こう味わいがありまして、特に衆議院での]津村啓介委員との質疑応答、参議院での櫻井充委員との質疑応答なんぞが実に素敵で、お二方ともいい仕事をしておられますなあというネタを投下するという予告編ではありますが、まあ2年で2%も近くなって参りましたのでアタクシがネタにする前にご確認されるのも吉かと存じます。





2014/08/27

お題「FOMC議事要旨鑑賞(ファイナル)/黒田総裁のジャクソンホール講演は置物臭漂う理論展開」

でしたら東京じゃなくて全国あちこちで五輪を開催したら如何でしょうか。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140826/k10014086821000.html
首相 人口一極集中に歯止めを
8月26日 12時17分

○FOMC議事要旨ネタの続き(引っ張ってスイマセン)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf

・昨日の訂正および補足(利上げ着手時の金利について)

昨日引用した出口政策に関する部分ですけど、読者様からご指摘頂きまして微妙に訂正を。

『Almost all participants agreed that it would be appropriate to retain the federal funds rate as the key policy rate, and they supported continuing to target a range of 25 basis points for this rate at the time of liftoff and for some time thereafter. However, one participant preferred to use the range for the federal funds rate as a communication tool rather than as a hard target, and another preferred that policy communications during the normalization period focus on the rate of interest on excess reserves (IOER) and the ON RRP rate in addition to the federal funds rate.』

ここの所なのですが、あたくし後半の「one participant」以下の所の「1名はFF誘導目標をハードターゲットにするよりもレンジにすべき」という部分に釣られまして前半の部分を「最初の利上げはFF誘導目標25bp」と解釈したのですが、良く良く考えたらこの部分は「continuing to target a range of 25 basis points」なのですから25bpのレンジでの目標にして利上げするという話で、その期間は「at the time of liftoff and for some time thereafter」なので、最初の利上げは「FF誘導目標金利は25−50bpのレンジ」となりそうですなすいませんすいません。

恐らくこれは(昨日引用した)この先の部分での説明にありますように、当初は短期市場金利の誘導が上手く行くかどうかが微妙な所があるというのが背景にあって、誘導もできないのにピンポイントの数字を出すのはコンフィデンスの問題になるという認識があるんじゃないのと思われまして、ただまあ利上げ後の状況を見ながら短期市場金利の誘導がそれなりに出来るようならいずれはピンポイントという事になるってえ話なんでしょうね。

なお言い訳をしておきますと、あたくし的には最初の利上げは過去の日銀の「量的緩和解除」みたいなイメージで「最初は実質的にFF金利誘導レートをバンドから25に上げると最初のインパクトが小さくて良いんじゃネーノ」という事を考えていたので最初は25だろうと思っていたのですが、25-50への引き上げですと25にするよりも最初の利上げタイミングを遅らせることができる(FOMC1回分だけ)と思うのですが、最初からひょいと金利が上がるのもどうなのかねという感はあるのでどうなんでしょうかね。まあ問題はその後の利上げペースになりますけど。

まあ初回が25-50だとすると9月のプレコン付FOMCで25-50に引上げをして以降のFOMCで利上げすれば年末のFF金利は75-100になるので直近のSEPでの執行部ベースでの数値と思われるドットからすると妥当な線になるのではと思います。


・FOMC参加者の討議部分から

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

全体感に関しての部分を引用しますぞな。

『In their discussion of the economic situation and the outlook, meeting participants generally viewed the rebound in real GDP in the second quarter and the ongoing improvement in labor market conditions as supporting their expectations for continued moderate economic expansion with labor market indicators and inflation moving toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』

ということでマンデートに向けた経済の進展は継続しているという認識は継続強化という所ですな。

『Although most participants continued to view the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced, some pointed to possible sources of downside risk, including persistent weakness in the housing sector, a continued slow rise in household income, or spillovers from developments in the Middle East and Ukraine.』

リスクに関しては概ねバランスだそうですが、数名はダウンサイドリスクを見ていると。

『Participants noted that inflation had moved somewhat closer to the Committee's 2 percent longer-run objective and generally saw the risks of inflation running persistently below their objective as having diminished somewhat.』

物価に関しても低インフレ継続のリスクは低下したという認識で、まあ声明文でもそのように示されていましたからビックリという程ではないですけれども、普通に強めの話になっています。

で、以下は需要項目別の話ですが例によって長くなるので引用しませんけど、消費は強めだが数名の委員は消費者態度が依然として慎重な事を指摘、住宅投資に関してはスローという話ですけど、その住宅投資の中で「先行きの収入期待が弱い事や、学生ローンの負担が大きい事によって初回住宅購入層の住宅購入意欲が下がっている」という指摘があるのがオモロイです。で、企業マインドや企業活動は強くて、労働市場は強いという話になっております。

で、その労働市場に関して更にこのような記述が。

『Participants generally agreed that both the recent improvement in labor market conditions and the cumulative progress over the past year had been greater than anticipated and that labor market conditions had moved noticeably closer to those viewed as normal in the longer run.』

「greater than anticipated」だの「noticeably closer to those viewed as normal」だの大変に威勢の良い認識が示されておりますので強いですな。

『Participants differed, however, in their assessments of the remaining degree of labor market slack and how to measure it.』

ジャクソンホールの前振りキタコレ(違)。

『A few argued that the unemployment rate continues to serve as a reliable summary statistic for the overall state of the labor market and thought that it should be the Committee's principal focus for evaluating labor market conditions.』

『However, many participants continued to see a larger gap between current labor market conditions and those consistent with their assessments of normal levels of labor utilization than indicated by the difference between the unemployment rate and estimates of its longer-run normal level.』

労働市場のスラックに関してどのような捉え方をしているのかという点について少数名のようですがやはり失業率をメインに見て判断という人もいるというのが示されていてほーという感じで、もっとこの点は普通に「総合判断」なのかと思いましたが、ちょっと穿った読み方をすると労働市場のスラックを言い訳にしてハトハトしている執行部に対するカウンターという事なのかもしれませんなとは思います。

『These participants cited, for example, the still-elevated levels of long-term unemployment and workers employed part time for economic reasons as well as low labor force participation. Several participants pointed out that the recent drop in the unemployment rate had been associated with progress in reabsorbing the long-term unemployed into jobs and reducing part-time work, suggesting that slack was diminishing and could be reduced further as employment opportunities expanded.』

ただまあ総合的に見るという人の中でも複数名(Several)は足元の失業率低下は他の指標の改善も伴っているので、労働市場のスラックは解消に向かっており、今後の雇用拡大によって更に改善するという主張もありまして、存外ハトハトではないというのが見て取れます。

でですね、この議事要旨で何となく伝わる(とアタクシが勝手に解釈する)ニュアンスからすると、恐らくイエレン議長の労働市場に関する認識についてはFOMCの中心的な見解からするとかなりハト側に寄っていて、さすがにジャクソンホールでそこまでハトハトな事を言うのもFOMCでの議論からズレていてミスリードになるという意識であのジャクソンホール講演になったんじゃないでしょうかねえと思うのでありました。

次は賃金について。

『Labor compensation was still rising only modestly. Many participants continued to attribute the subdued rise in wages to the remaining slack in the labor market; it was noted that the elevated level of relatively low-paid part-time workers was holding down overall wage increases.』

賃金の伸びはまだきわめて緩やかで、スラックがのこっているからでしょうという話ですが、低賃金とかパートタイムのとかの賃金がアガランチ会長なのも平均賃金の上昇を抑えているという指摘もあります。

『Several other participants pointed to reports that wage pressures had increased in some regions and occupations that were experiencing labor shortages or relatively low unemployment.』

複数(Several)の参加者は一部の地域が職種で賃金上昇圧力が観測されると指摘。

『However, a couple of participants indicated that the pass-through of labor costs has been more attenuated since the mid-1980s and that wage pressures might not be a reliable leading indicator of higher inflation.』

ほほーと思いましたが、2名はそもそも賃金コストの上昇を価格転嫁する動きが以前と比較して弱いので、インフレ拡大のインディケーターとして賃金上昇圧力を使うのってどうなのよという指摘をしているのがオモロスと思いました。

で、物価に対して。

『Inflation firmed in recent months, and most participants anticipated that it would continue to move up toward the Committee's 2 percent objective. Many of them expected that inflation was likely to rise gradually over the medium term, as resource slack diminished and inflation expectations remained stable.』

とまあ物価に関してはイイハナシダナーな見立て。

『In support of their assessments, several reported results from various statistical models of inflation and inflation expectations. Most now judged that the downside risks to inflation had diminished, but a few participants continued to see inflation as likely to persist below the Committee's objective over the medium term. Several commented that the upside risks had not increased. However, a few others argued that the recent tightening of the labor market had increased the upside risks to inflation and inflation expectations, particularly in an environment in which the economic expansion was expected to strengthen further.』

ということで、物価の見立てに関しては見解がそこそこ割れているようで、先行きに関して低物価が継続するリスクを示している人はいるわ、労働市場のタイト化によってインフレおよびインフレ期待のアップサイドリスクを示している人はいるわと、思いっきり見解がバラバラなのが味わい深いです。

で、以下は先週寝起きで引用したファイナンシャルスタビリティーの話と金融政策運営の話ですのでパスします。


・声明文でのニュアンス変更に関する議論でちとビックリ

『Committee Policy Action』の所ですけれども、最初の方は声明文どおりの話をしているのでまあ良いとしまして途中に興味深い説明が。

『Members discussed their assessments of progress--both realized and expected--toward the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation and considered enhancements to the statement language that would more clearly communicate the Committee's view on such progress.』

「more clearly communicate the Committee's view on such progress」の積りで文言を変更したそうな。

『Regarding the labor market, many members concluded that a range of indicators of labor market conditions--including the unemployment rate as well as a number of other measures of labor utilization--had improved more in recent months than they anticipated earlier.』

ほうほうそれでそれで?

『They judged it appropriate to replace the description of recent labor market conditions that mentioned solely the unemployment rate with a description of their assessment of the remaining underutilization of labor resources based on their evaluation of a range of labor market indicators.』

な、なんだってー!!!

『In their discussion, some members expressed reservations about describing the extent of underutilization in labor resources more broadly. In particular, they worried that the degree of labor market slack was difficult to characterize succinctly and that the statement language might prove difficult to adjust as labor market conditions continued to improve. Moreover, they were concerned that, despite the improvement in labor market conditions, the new language might be misinterpreted as indicating increased concern about underutilization of labor resources.』

ここで7月30日の声明文出た時の反応を思い出しますと、この「some members」が示した懸念の通りの反応を市場が示したと思われる訳でして、スラックが残っているという点を指摘した部分を「ハト派的」と解釈した人って結構多かったと思うので、まあ見事にこの人たちの懸念が大当たりとなっていますなっつーか、だからこそ(また同じ話ですが)ジャクソンホールでイエレンさんがハトハト話が出来なかったという事になるのかも知れませんなあと思いました。いやあの文言を見て「労働市場の改善がFOMCが従来予想していた以上に堅調に推移しているんですよヒャッハー」とは読めんわなという事でここの議論内容には(まあその前でそういう話にはなっていますけど)ビックラでありましたとさ。

『At the conclusion of the discussion, the Committee agreed to state that labor market conditions had improved, with the unemployment rate declining further, while also stating that a range of labor market indicators suggested that there remained significant underutilization of labor resources. Many members noted, however, that the characterization of labor market underutilization might have to change before long, particularly if progress in the labor market continued to be faster than anticipated.』

でまあここで更に追い打ちが掛かる訳でして(^^)、多く(Many)のメンバーは今回声明文での労働市場の状況に対する文言は状況の改善が続けば近いうちにまた変更になるでしょうという話をしていまして、これはどう見ても7月30日のFOMC声明文における労働市場の「スラックが残る」の表現がミスリードにも程があったというのが示されていると思われるのでここもまたタカじゃねえかという話になるんですよ。

で、インフレに関する文言。

『Regarding inflation, members agreed to update the language in the statement to acknowledge that inflation had recently moved somewhat closer to the Committee's longer-run objective and to convey their judgment that the likelihood of inflation running persistently below 2 percent had diminished somewhat.』

まあこちらの文言に関しては特段大きな揉め揉めは無かったようですが、先行きの見通しに関してはやはり2%を大きく下回る状況が続く懸念を示す人が居る一方で上振れリスク意識がいるという見解の隔たりは大きく、まあそういう意味では今後FOMC参加者の皆様から色々と情報発信が出るのでしょうが、その情報発信がいい感じで動物園状態になりそうで、各地区連銀総裁や理事のスタンスがどうなっているのかとか、その変化があるかとかを丁寧に見ていく必要性は更に高まったという事で宜しいんじゃないでしょうかね。

・・・・・と考えると日銀見てる場合じゃないですななどという事はございませんので念の為申し添えます(ニヤニヤ)。


○黒田総裁のアレなジャクソンホール講演

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140824a1.pdf
デフレーション、労働市場、量的・質的金融緩和
カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウム(米国ワイオミング州ジャクソンホール)における講演の抄訳

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140824a1.pdf
Deflation, the Labor Market, and QQE
Remarks at the Economic Policy Symposium
Held by the Federal Reserve Bank of Kansas City

当然ながら下の方が本チャンなのですが、抄訳と書いてある方が本文6ページあって本チャンの方が本文5ページ(図表は同じ量)とはどういう事ですねんと思いながらめんどいので日本語を鑑賞したのですがこれがまた実に微妙な仕上がり。

・大体からして最後の部分がへっぽこ

普通は最初から読むのですがいきなり最後の所から入るという謎展開で(^^)。

『おわりに』から。

『以上、日本の労働市場に関してバランスシート調整とデフレの影響についてお話しましたが、まだお話していないテーマがひとつ残っています。少子高齢化という労働供給面の問題です。』

いやそっちの方が構造問題の先行事例なのだから重要だろうよ・・・・・・・・・

『日本の労働力率は、少子高齢化を反映して趨勢的に低下しており、今後、深刻な労働力不足が発生することが予測されます。この問題は、人口構成という最も予測しやすい要因に起因するものであり、早くから認識されていました。しかし、労働需要が低迷し、人手不足という形で顕在化していなかったため、本格的な対応が採られぬまま今日を迎えてしまいました。』

ふむ。

『幸い、今回の景気回復局面では、女性・高齢者を中心に労働力率が上昇しています(図表8)。これを循環的な現象にとどめず、女性や高齢者が働きやすい環境を整え、長期的に労働力不足を補っていくことが是非とも必要です。また、外国人材の活用についても検討する価値は大きいと思います。さらに、省労働力的な設備投資やそのための研究開発に力を入れることも、将来の労働力不足を軽減することにつながります。これらの点は、いずれも政府の成長戦略で意識されています。遅ればせながら、これが着実に実行されれば、日本経済は、本来の活力を取り戻し、持続的な成長を達成することができると考えています。』

とまあエライ簡単に言っていますが、構造問題に関しては供給の問題だけではなくて産業構造の変化に伴う変化もあるでしょうし、またその点について金融政策でどのように対処するのかという話もある訳で、労働市場の問題って賃金経由で物価に影響してくるという話になっているのですからして、労働供給面の問題が顕在化しましたねえあっはっはではなくて、その部分と金融政策の関係ってどうなのよ的な話を一席頂戴したいのですがががが。


・でまあ説明は基本的に「デフレ」と「不景気」をわざと混同した置物理論的な説明になっています

『1.デフレ下の労働市場』という所ですがね。

『2000年代、デフレ圧力が強まる中、企業の販売価格が低迷しました。』

と簡単に済ませていますが、そもそも販売価格が低迷したからデフレちっくになった訳で、ではそのデフレ圧力は何で起きたかの話が無い時点で説明に置物臭が漂ってまいります。

『売り上げが伸びない以上、収益を確保するための主たる手段は、人件費をはじめとする経費の削減になりました。』

えーっと、売り上げが伸びないのと販売価格が低迷するのは必ずしも一緒の話じゃないでしょうと思う訳で、円安に振って現地通貨建ての単価が下がるので輸入数量が上がってヒャッハーというような事案もあるのですから、そもそもは過剰供給なのか需要不足なのかその合わせ技なのかという話が背景にあって、その為に販売価格を低迷させても売り上げが伸びずに収益を確保しないといけませんという事になったんじゃないでしょうか。で、それによってデフレ圧力が発生という結果になる訳で、「デフレ圧力が強まるので販売価格は低迷するわ売り上げが伸びないわ」という説明は原因と結果を逆にしている置物先生お得意の置物理論の受け売りですね!!!!!


『人件費の抑制は、まず、雇用の非正規化という形で行われました。雇用者に占めるパート労働者の比率は、90年代初の資産バブルの崩壊以来一貫して上昇してきましたが、2000年以降もその上昇ペースは衰えませんでした(図表3)。また、人件費の抑制は、賃金の抑制という形でも行われました。非正規雇用の賃金は、スポット的に決まる面が大きく、需給を反映して上下してきました。対照的に、正規雇用の賃金は、長期的な暗黙の契約に基づいて決まる面が大きく、デフレの長期化や厳しい雇用環境が、労働者を益々不利な立場に追い込んでいきました。経営者側からの賃下げ要請に対し、労働者側は、現在の仕事を失うよりは賃下げを受け入れるという状況が続きました。要すれば、日本では、欧米のように失業率が大きく高まることはありませんでしたが、その分、賃金が大きく低下しました。90年代の終わり頃までは、時間当たり給与が消費者物価の伸び率を上回っていましたが、その後は、物価上昇率と同じか、むしろそれを下回って推移しています(図表4)。マクロ的にみると、わが国の労働分配率は、2000年代に低下し、リーマン・ショック前後に上下に変動していますが、平均的にみれば90年代の水準を下回っています(図表5)。』

まあ人件費の話は仰せのとおりですが、そういえば置物先生一派の説明だと賃金下方硬直性があるからデフレだと企業収益が低迷するとかいう話してませんでしたっけ以前はと思いましたがまあどうでもいいです。

『さらに、デフレは企業の投資行動にも大きな影響を及ぼしました。デフレ見通しは、投資収益の割引現在価値を引き下げ、企業の投資意欲を低下させました。また、将来の損失に備えてキャッシュを積み上げるという企業行動を助長しました。これらの結果、本来投資主体であるはずの企業を貯蓄主体に変質させ、現在もその状態が続いています(図表6)。わが国の企業は、資産バブルの崩壊後、過剰債務を削減すべく、貯蓄を推進してきましたが、過剰債務が解消した2000年代以降も、こうした動きが続いています。とりわけ近年は、企業の貯蓄超幅が家計の貯蓄超幅を超えるまでに拡大しています。』

実質金利の理論キタコレですけれども、実質金利が高いと投資意欲が下がるのは判るが、供給サイドで不足が生じるまたは不足が生じるという期待が無い中では実質金利の低下が投資意欲に対するインセンティブになるのかというと、「利回り追求」の投資には向かっても経済の総供給力拡大に繋がる投資には向かないんじゃないですかねえ。

しかし「近年は、企業の貯蓄超幅が家計の貯蓄超幅を超えるまでに拡大しています」というのも先ほどの人件費の話も実際の事実ではあるのですが、併せて書かれますと「企業が人件費削減してマクロ的に見たら家計から企業へ貯蓄が移転しましたぜヒャッハー」と読めてしまうのが(銃声)。

『こうした企業の貯蓄主体への変質は、「節約のパラドックス」を通じて、経済を縮小均衡に陥らせます。企業が、賃金抑制によって得た利潤を内部資金として蓄積し、投資に回さなければ、総需要は縮小します。総需要の減少は、企業収益を圧縮するため、企業は再び賃金を抑制する必要に迫られます。これは典型的な「合成の誤謬」です。こうした賃金の低下と総需要の減少の悪循環という現象は、当初は資産バブル崩壊に伴うバランスシート調整が引き起こしたものでしたが、デフレマインドの蔓延によって長期間固定してしまいました。』

デフレ均衡みたいな話は直観的には何となくそうかなとも思わんでも無いですが、企業が投資するインセンティブという事を考えると成長期待というか要は需要拡大期待の方が大きなファクターのような気もするので、何でもかんでもデフレのせいにして説明するのも如何なものかと思うのですが、それは置物理論の根幹を成す部分なので変更できませんかそうですか。

つーかね、安倍ちゃんも基本置物理論的な考えだろうなと思う次第で、その意味では「2%物価目標を達成したら景気が良くなる」とか「株価が上がれば景気が良くなる」とか、それは本来景気が良くなる事の結果として発生するだろうという事象について因果関係をひっくり返した理解をしているんじゃネーノという疑惑がある訳で、世の中には「スタグフレーション」もあれば「不景気の株高」もあるというオソロシスな点についての顧慮が欠けているのではないかというのが今後の経済運営に対する大いなる不安要素だったりします、話がそれましたが(汗)。

で、この後「ではどうするか」という話なのですが、要するに「デフレを脱却すれば良い」という理屈が展開されるのですが惜しくも時間と量の関係で続きは明日ですいませんすいません。

つーても講演テキスト日本語訳6ページとかなのでまあ直ぐに読めますぞよ。流して読むと流せるのですけれども、一々意地悪くツッコミを入れると上記のような感じに(まあこれでも流していますが)なるという事で(^^)。




2014/08/26

お題「FOMC議事要旨ネタ(ただし明日に続く)/ドラギのおっちゃんの威勢の良いフレーズ@ジャクソンホール」

パシフィックセンチュリーですかそうですか。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO76157820W4A820C1TJ1000/?dg=1
シンガポール政府投資公社、東京駅前の高層ビル買収へ
2014/8/26 2:04 情報元 日本経済新聞 電子版

あの物件が動くときって大体不動産市況的に象徴的な動きになったりするような気がするのですがさて今回はどうなるんでしょうかねえ。

○FOMC議事要旨ネタである

つーことで議事要旨ネタで寝起きで読んだ分の続きです(汗)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf

・今回も出口政策の戦術についてのお話

最初の所で前回の議事要旨と同様に『Monetary Policy Normalization』というのがあったりしますのでまずはこれを鑑賞ですが、前回はおーと思いましたが今回は政策インプリケーションというよりは最早手順問題の話になっていて、そういう意味では方向性がどうのこうのという話ではない気もします。

『Meeting participants continued their discussion of issues associated with the eventual normalization of the stance and conduct of monetary policy, consistent with the Committee's intention to provide additional information to the public later this year, well before most participants anticipate the first steps in reducing policy accommodation to become appropriate.』

continuedってあるのはここの所この話をしているという意味な。

『The staff detailed a possible approach for implementing and communicating monetary policy once the Committee begins to tighten the stance of policy. The approach reflected the Committee's discussion of normalization strategies and policy tools during the previous two meetings.』

ということで・・・・・・・

『Participants expressed general support for the normalization approach outlined by the staff, though some noted reservations about one or more of its features. Almost all participants agreed that it would be appropriate to retain the federal funds rate as the key policy rate, and they supported continuing to target a range of 25 basis points for this rate at the time of liftoff and for some time thereafter.』

殆どの参加者は正常化着手時にFF誘導金利を政策ツールにして、最初の利上げ時には政策金利を25bpにするのが適切とのコメントになっています。実はあたしゃもしかして最初に50bpに引上げというのもあるかなと思っていたのですが、初回は0-25のレンジから25にするという事のようです。

『However, one participant preferred to use the range for the federal funds rate as a communication tool rather than as a hard target, and another preferred that policy communications during the normalization period focus on the rate of interest on excess reserves (IOER) and the ON RRP rate in addition to the federal funds rate.』

ただし2名の別意見があって、FF誘導金利をレンジのままで置くという見解と、超過準備付利金利とオーバーナイトリバースレポファシリティの指値金利をFFレート誘導目標と共に(正常化のプロセスの期間中については)フォーカスすべきであるというお話ですな。

『Participants agreed that adjustments in the IOER rate would be the primary tool used to move the federal funds rate into its target range and influence other money market rates. In addition, most thought that temporary use of a limited-scale ON RRP facility would help set a firmer floor under money market interest rates during normalization. Most participants anticipated that, at least initially, the IOER rate would be set at the top of the target range for the federal funds rate, and the ON RRP rate would be set at the bottom of the federal funds target range.』

まあ何ですな、これ超過準備が大量に残った状態が前提になっているからだと思うのですが、本来IOER金利って短期市場金利のフロアになる筈なのですが、現実問題としては超過準備がアホほどあって、しかも準備預金制度の外側にある人たちの金がアホほどあるので、IOERの金利が短期市場金利のフロアとして機能しない(準備預金制度の外側の人の資金運用ニーズが高いから)ので、RRPを導入した筈で、なんかIOERとRRPでコリドアというのは妙な気はするんですけどね。

つまりですね、基本的には短期市場金利のコリドアを作りたかったら常設の預金ファシリティと貸出ファシリティ金利でコリドアを作るものであって、上限はIOERではなくてディスカウントウィンドウの金利だろと思う次第なのですが、まあ米国の場合はそんだけ準備預金制度の外側にある当座預金残高が大きいちゅうことでしょう。

『Alternatively, some participants suggested the ON RRP rate could be set below the bottom of the federal funds target range, judging that it might be possible to begin the normalization process with minimal or no reliance on an ON RRP facility and increase its role only if necessary. However, many other participants thought that such a strategy might result in insufficient control of money market rates at liftoff, which could cause confusion about the likely path of monetary policy or raise questions about the Committee's ability to implement policy effectively.』

数名(some)の参加者はRRPレートをもっと低い水準即ちFFレート誘導として考えるレンジよりも下に置くべきという話までしておりまして、さすがに他の人たちはその話に対して「んな事をしたら短期金利の誘導が上手く行かない(=金利が低い所に張り付く)のでFEDに金利コントロール能力が無いと思われると不味いだろ」という話をしています。

『Participants generally agreed that the ON RRP facility should be only as large as needed for effective monetary policy implementation and should be phased out when it is no longer needed for that purpose.』

ということで、どうもRRPファシリティはできれば使わないで済ませたいというのがFOMC参加メンバーの見解みたいですが、そもそも論として超過準備がアホほどあって、しかも超過準備付利制度が短期金融市場のフロアーとしてあまりワークしていない(これは預金保険とかの関係も確かあった筈、つーかワークしていれば今だってIOERは0.25%なのですからもっと実効FFレートが高くてヨロシなのですが)訳で、そんな中でRRPファシリティを使わずに済まそうというのは調節技術的に難しいと思いますので、何かこの調子で正常化という事になった時に暫くは面倒な事になるかもですね。

『Participants expressed their desire to include features in the facility's design that would limit the Federal Reserve's role in financial intermediation and mitigate the risk that the facility might magnify strains in short-term funding markets during periods of financial stress.』

でもってRRPファシリティですが、何でそんなに使いたくないかと言うと、これを投下すると当たり前ですが準備預金制度の外側にいる短期の資金運用の人たち(MMFとか)が大喜びしてここで運用してくるので、そうなるとMMFの資金を短期資金繰りの当てにしている人たちの首が締まるからイクナイという話をしている訳ですが、おまいらその一方でシャドウバンキング規制でMMFの規制がどうのこうのとかやっているという状況なんだからシャドウバンキングの資金を安全資産に回すようなインセンティブが起きるこの制度ってシャドウバンキング規制的にみたらイイハナシダナーじゃねえかと思いますけどねえ。

というかですな、そういう意味で言えば短期金融市場における最大の資金運用先が短期国債であるというジャパンの市場に対してお前らと同じようなシャドウバンキング規制のポリシーを適用するって話がおかしくねえかという風に思う訳で、IOSCOやらバーゼル委員会の皆様に対して小一時間問い詰めたい次第でございます・・・・・・って話が脱線しましたすいませんすいません。

『They discussed options to address these concerns, including methods for limiting the program's size. Many participants noted that further testing would provide additional information that could help determine the appropriate features to temper the risks that might be associated with an ON RRP facility.』

てな訳で、まあ基本的にはこのRRPファシリティは青天井にはならないみたいですけど、さてそうなった場合に短期金利のコントロールってちゃんとできるのかよというのは甚だ疑問の残る所ですけど、まあ金利上げられないとなったらRRPファシリティの拡大をする事になるでしょうから何とかなるとは思いますが、一方で準備預金制度の外側に運用資金がアホほどある事を前提にした短期金融市場のファンディングに対しての悪影響で今度はFF金利は低いけどオープン金利がエラク上昇するみたいな事態になるリスクもあるんですなあとか、まあそんな事を思いつつこの辺りを読むのでした。

『Participants also discussed approaches to normalizing the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet.』

ここからはバランスシートのサイズの話。

『In general, they agreed that the size of the balance sheet should be reduced gradually and predictably. In addition, they believed that, in the long run, the balance sheet should be reduced to the smallest level consistent with efficient implementation of monetary policy and should consist primarily of Treasury securities in order to minimize the effect of the SOMA portfolio on the allocation of credit across sectors of the economy. A few participants noted that the appropriate size of the balance sheet would depend on the Committee's future decisions regarding its framework for monetary policy.』

最終的には縮小するもののまあ基本的にはあまり過激な縮小(売却)はしないでという話になるんでしょうなとは思います。

『Most participants supported reducing or ending reinvestment sometime after the first increase in the target range for the federal funds rate. A few, however, believed that ceasing reinvestment before liftoff was a better approach because it would lead to an earlier reduction in the size of the portfolio.』

利上げの前に償還再投資を止めるか止めないかの見解の相違ですが概ね利上げまでは償還再投資継続と。

『Most participants continued to anticipate that the Committee would not sell MBS, except perhaps to eliminate residual holdings. However, a couple of participants preferred to sell MBS in order to unwind the effect of the Federal Reserve's holdings on mortgage rates relative to other interest rates more rapidly than would occur as a result of repayments of principal alone. Some others noted that, given the uncertainties attending the normalization process and the outlook for the economy and financial markets, it could be helpful to retain the option to sell some assets.』

MBSに関してですが、2名の参加者はFEDのMBS購入残高があるという状態はクレジットアロケーションに介入しっぱなしという状態であって、正常化の際にはそれは好ましくないので売却せえという話をしておりましてほほーという感じですな。またそのほかにも「正常化の時の状況によっては資産売却の可能性を残しておくことが吉なのでは」という話をしていてそらまあそうだなと思うのでありました(売る可能性がある、と思わせるだけでも正常化という意味では引き締め効果になるでしょ)。

『Participants agreed that the Committee should provide additional information to the public regarding the details of normalization well before most participants anticipate the first steps in reducing policy accommodation to become appropriate.』

ということでここから先は「出口政策に向けたコミュニケーションについて」というお話。

『They stressed the importance of communicating a clear plan while at the same time noting the importance of maintaining flexibility so that adjustments to the normalization approach could be made as the situation changed and in light of experience.』

まあそらそうですが正常化着手後の初期反応では色々とややこしい事になりそうですな。

『Participants requested additional analysis from the staff on issues related to normalization as background for further discussion at their next meeting. A few participants also suggested that the Committee should solicit additional information from the public regarding the possible effects of an ON RRP facility, but some others pointed out that the Committee would continue to receive such feedback informally in response to its ongoing communications regarding normalization. The Board meeting concluded at the end of the discussion of approaches to policy normalization.』

ふーんと思ったのはレポファシリティなどを打ち込んだ市場への効果についてもっと大々的に意見を募集するのか、オフサイトヒアリングベースでやるのかという話をしている辺りですけど、まあ前回対比で随分量が増えたこのコーナーは次回のFOMCでも思いっきり議論されそうですなということで。


・連銀スタッフの経済状態および金融市場の見立ては「金融安定のリスク」認識部分に注目である

まずは『Staff Review of the Economic Situation』ですけど、一々引用しているとクソ長くなるので盛大にパスしますが、全体的に物価がやや上昇、労働市場は全般改善、鉱工業生産は上昇、消費は資産効果も含めて想定よりも強い上昇、住宅投資は上昇、企業の固定資産投資は上昇、政府支出は下げ、輸出増えて輸入減って貿易赤字縮小という話をしておりまして、その次が物価について。

『U.S. consumer prices, as measured by the PCE price index, increased at a faster pace in the second quarter than in the first and were about 1-1/2 percent higher than a year earlier.』

ということで上昇キタコレですが・・・・・・・・

『Consumer energy price inflation rose in the second quarter, but retail gasoline prices, measured on a seasonally adjusted basis, subsequently moved lower through the fourth week of July. Consumer food price inflation also increased in the second quarter, reflecting the effects of drought and disease on crop and livestock production; however, spot prices for crops moved down in recent weeks, and futures prices pointed to lower prices for livestock in the year ahead. The PCE price index for items excluding food and energy also rose more quickly in the second quarter than in the first and was 1-1/2 percent higher than a year earlier.』

ヘッドラインについてはエネルギーと食糧に関連する一時的な要因があるようですが、コアについてもやや強いという話になっていますな。

『Near-term inflation expectations from the Michigan survey were little changed, on net, in June and early July, while longer-term expectations declined. Measures of labor compensation indicated that gains in nominal wages and employee benefits remained modest.』

賃金の伸びが相変わらずmodestな話をしておりますが、しらっとミシガンサーベイによるインフレ期待について「ロンガータームが下がっている」というのが入っているのがほほーという所です。

で、この次は海外経済に関してですが、まあここはやや上昇という話をしている訳ですけど、日本の話も出ているので引用だけしておく。

『Recent indicators suggested that foreign economic activity strengthened in the second quarter: Chinese GDP accelerated substantially, and Mexican data suggested a pickup there. Real GDP growth remained strong in the United Kingdom, and data for both Canada and the euro area showed improvement relative to the first quarter. By contrast, household spending in Japan dropped sharply following the country's April 1 consumption tax increase. In many advanced foreign economies, inflation picked up in the second quarter from very low rates in the first, although second-quarter inflation in the euro area remained well below the European Central Bank's objective.』


で、金融市場に関する部分(『Staff Review of the Financial Situation』)ではファイナンシャルスタビリティーの話がまたまたキタコレです(その前の部分については「全体として見ると緩和しているが、住宅モーゲージ関連は依然タイト」という認識になっています)。

『The staff's periodic report on potential risks to financial stability concluded that relatively strong capital positions of U.S. banks, subdued use of maturity transformation and leverage within the broader financial sector, and relatively low levels of leverage for the aggregate nonfinancial sector were important factors supporting overall financial stability.』

最初の部分ですけれども、金融市場の状況がどうのこうのという話をする前に「金融機関の資本は以前より充実しているし、金融機関および非金融機関のレバレッジや期間ミスマッチの拡大などはかつての金融危機前の状態よりも遥かに小さいので金融安定化については堅固です(キリッ)」という話を入れている辺りが何ちゅうかまあ微妙ですな。

つまりですね。

『However, the staff report also highlighted that low and declining risk premiums, low levels of market volatility, and a loosening of underwriting standards in a number of markets raised somewhat the risk of an eventual correction in asset valuations.』

ということで、金融市場(あるいは資産市場)の動向という意味では、リスクプレミアムの縮小とかボラの低下とか、貸出あるいは債券引受の与信基準のユルユル化などが発生しており、資産価格のバリュエーションが変化した場合のリスクが高まっている、という指摘をしておりまして、これは即ち「市場の価格形成的にはちとマズーなのだが、まあ金融機関も非金融機関も今の所堅い運営をしているから大丈夫でしょう」という話になっていまして、それって本当の本当に大丈夫かおいおいおいとゆー話になっている訳ですよね。

従来はこの辺りに関しては「一部の価格形成などに若干利回り追求的なサムシングがありますけれども、全般で見た場合に金融市場や資産市場などにおける金融不均衡の問題は無いと見られる」という表現になっていましたので、ここの部分の表現が結構警戒的になりやがったなあという話で、寝起きで引用大会をやった部分でFOMC参加者の議論で金融安定化云々の話が出たのはまあそういう背景ですよねというのが判るという事で。


・結構細々と引用していたら時間がががががが

お前場また寝坊したのかなどというようなツッコミはあろうかと存じますが、時間と量の関係でこの先の『Staff Economic Outlook』と『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』という部分が時間切れですいませんすいませんすいません続きは明日(大汗)。


○そういやECBドラギ総裁のジャクソンホールも話題になったようで

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB, Annual central bank symposium in Jackson Hole,
22 August 2014

まあ良く考えたらジャクソンホールのお時間だと欧州市場ちゃんは終わっていたという事なのかも知れませんが、週明けになって妙にドラギ総裁講演で欧州は金融緩和で財政拡大ヒャッハーという市場反応になっておりますな。

でまあ時間切れという位ですからこのネタもまた明日間に合えば投下する訳ですが、例によって例のごとく威勢の良い話をするのがドラギクオリティという感じですが、そんなに盛大にヒャッハーという反応をするもんかねという所でもあって、まあ地合いだからという事でしょうが少々反応のし過ぎのような気もします。

ただまあこの辺の説明はドラギのおっちゃんの本領発揮という所ですよね。

中段の小見出し『2. Responding to high unemployment』から。

『So what conclusions can we draw from this as policymakers? The only conclusion we can safely draw, in my view, is that we need action on both sides of the economy: aggregate demand policies have to be accompanied by national structural policies.』

各国の構造改革をしながら需要を喚起する政策が必要ですと。

『Demand side policies are not only justified by the significant cyclical component in unemployment. They are also relevant because, given prevailing uncertainty, they help insure against the risk that a weak economy is contributing to hysteresis effects. Indeed, while in normal conditions uncertainty would imply a higher degree of caution for fear of over-shooting, at present the situation is different. The risks of “doing too little” - i.e. that cyclical unemployment becomes structural - outweigh those of “doing too much” - that is, excessive upward wage and price pressures.』

こういう辺りがドラギ総裁のお得意攻撃キタコレでして、「労働市場の状況を見た場合に、需要喚起政策のやり過ぎによって賃金や物価の上昇圧力を過剰に高めるリスクよりも、需要喚起政策が足りなくて循環的な要因によって悪化した状況が定着する事によって構造的な要因になってしまうリスクの方が遥かに大きい(キリリッ)」というもうドラギのおっちゃんらしい威勢の良さです罠という所で。

『At the same time, such aggregate demand policies will ultimately not be effective without action in parallel on the supply side. Like all advanced economies, we are operating in a set of initial conditions determined by the last financial cycle, which include low inflation, low interest rates and a large debt overhang in the private and public sectors. In such circumstances, due to the zero lower bound constraint, there is a real risk that monetary policy loses some effectiveness in generating aggregate demand. The debt overhang also inevitably reduces fiscal space.』

更にサプライサイドに関する政策も必要だし、ゼロ金利制約もあるのだから金融政策だけでの需要喚起だけでは足りないリスクもありますから財政は必要ですよねああでもデットオーバーハングの問題もありますけど、という感じで、まあこの辺が「財政も出せと言ってるからヒャッハー」の原因だと思うのですが、これ威勢が良いとも言えるけど、良く良く考えたら「金融政策に全部ケツを持ってくるんじゃねえ」というメッセージでもあるという事が綺麗にスルーされている感はありますな。

『In this context, engineering a higher level and trend of potential growth - and thereby also government income - can help recover a margin for manoeuvre and allow both policies regain traction over the economic cycle. Reducing structural unemployment and raising labour participation is a key part of that. This is also particularly relevant for the euro area as, to list just one channel, higher unemployment in certain countries could lead to elevated loan losses, less resilient banks and hence a more fragmented transmission of monetary policy.』

とまあそういうことで、締めを良く見ると構造改革とかの重要性の話をしているのですが、その前の部分のインパクトがヒャッハーの為に地合いとして食いつきたかった市場が食いついたという所でしょうかねえ。

#ということで簡単に頭出しだけでした(汗)



2014/08/25

お題「イエレン議長のジャクソンホール講演ネタである:まあ基本は循環要因重視で賃金に注目みたいだが・・・・・」

ほうほう。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H0N_U4A820C1MM8000/
消費税10%「予定通りに」3割 本社世論調査
内閣支持率横ばい (1/2ページ) 2014/8/24 22:00
情報元 日本経済新聞 電子版

『日本経済新聞社とテレビ東京による22〜24日の世論調査で、消費税率を予定通り2015年10月に10%に引き上げることに関して「反対」が63%で「賛成」の30%を上回った。7月の前回調査より賛成は6ポイント下がり、反対は4ポイント上昇した。内閣支持率は7月の前回調査より1ポイント上昇の49%で、ほぼ横ばいだった。』(上記URLより)

ダブルスコアなのに「予定通りにが3割」というヘッドラインを出すあたりが実に味わいが深いとしか申し上げようがございませんな(白目)。


○ジャクソンホールイエレン講演であるがハトはハトですな

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140822a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20140822a.pdf

本文16ページありますが、説明の中で過去の金融政策の話とか現在の金融政策の枠組み(ガイダンスの話とか)を長々と説明している部分があって増量されている部分がありまして、そんなに読むのはキツくはないかもです。

・最初の所では「ハト」と「労働市場重視」がわかります

でまあ冒頭。

『In the five years since the end of the Great Recession, the economy has made considerable progress in recovering from the largest and most sustained loss of employment in the United States since the Great Depression.1 More jobs have now been created in the recovery than were lost in the downturn, with payroll employment in May of this year finally exceeding the previous peak in January 2008. Job gains in 2014 have averaged 230,000 a month, up from the 190,000 a month pace during the preceding two years. The unemployment rate, at 6.2 percent in July, has declined nearly 4 percentage points from its late 2009 peak. Over the past year, the unemployment rate has fallen considerably, and at a surprisingly rapid pace.』

とまあここまでは足元までの労働市場の改善について威勢の良い話ですが、

『These developments are encouraging, but it speaks to the depth of the damage that, five years after the end of the recession, the labor market has yet to fully recover.』

ハトキタコレ。

『The Federal Reserve's monetary policy objective is to foster maximum employment and price stability. In this regard, a key challenge is to assess just how far the economy now stands from the attainment of its maximum employment goal.』

ではそのゴールに対して今はどうなんでしょうか?

『Judgments concerning the size of that gap are complicated by ongoing shifts in the structure of the labor market and the possibility that the severe recession caused persistent changes in the labor market's functioning.』

労働市場のギャップを判断する事は難しくて、それはリセッションが労働市場に与える構造的変化や労働市場機能に対する永続的な変化によるものですと。

『These and other questions about the labor market are central to the conduct of monetary policy, so I am pleased that the organizers of this year's symposium chose labor market dynamics as its theme.』

「central to the conduct of monetary policy」とまで仰せですが、では物価はどないですねんというのはだいぶ後の方に出てくる。

『My colleagues on the Federal Open Market Committee (FOMC) and I look to the presentations and discussions over the next two days for insights into possible changes that are affecting the labor market. I expect, however, that our understanding of labor market developments and their potential implications for inflation will remain far from perfect.』

ふむ。

『As a consequence, monetary policy ultimately must be conducted in a pragmatic manner that relies not on any particular indicator or model, but instead reflects an ongoing assessment of a wide range of information in the context of our ever-evolving understanding of the economy.』

金融政策は「ultimately must be conducted in a pragmatic manner」とな。

ということで本論が始まりますが、小見出しが『The Labor Market Recovery and Monetary Policy』、『Interpreting Labor Market Surprises: Past and Future』、『Implications of Labor Market Developments for Monetary Policy』という風に繋がりますです。


・金融政策ガイダンス文言における労働市場

『The Labor Market Recovery and Monetary Policy』の所ですが、労働市場が悪いので大規模緩和を行いました云々の事実説明話が続いた後に金融政策のガイダンス文言の話(もまあ事実説明ですけど)があってそこが味わいがあるのでネタにしますね。

『The FOMC's current program of asset purchases began when the unemployment rate stood at 8.1 percent and progress in lowering it was expected to be much slower than desired. The Committee's objective was to achieve a substantial improvement in the outlook for the labor market, and as progress toward this goal has materialized, we have reduced our pace of asset purchases and expect to complete this program in October.』

今のQE3導入とその後のTaperingについての説明で、10月に買入拡大終了ということですな。

『In addition, in December 2012, the Committee modified its forward guidance for the federal funds rate, stating that "as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored," the Committee would not even consider raising the federal funds rate above the 0 to 1/4 percent range.2』

でまあこちらがガイダンス文言な。

『This "threshold based" forward guidance was deemed appropriate under conditions in which inflation was subdued and the economy remained unambiguously far from maximum employment.』

ということで「スレッショルドベース」のガイダンスと仰せなのですが・・・・・・・・・・・

『Earlier this year, however, with the unemployment rate declining faster than had been anticipated and nearing the 6-1/2 percent threshold, the FOMC recast its forward guidance, stating that "in determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the Committee would assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation."3』

この辺りまでご覧になって判ったと思いますが、この調子でイエレンさんの今回の講演では事象の説明の部分がやたらめったら丁寧というか長いので、分量だけは多くなっているという感じです。まあ整理には良いのですけどね。

という話は兎も角として、ここの部分が先般ガイダンス文言を変更した話ですよね。

『As the recovery progresses, assessments of the degree of remaining slack in the labor market need to become more nuanced because of considerable uncertainty about the level of employment consistent with the Federal Reserve's dual mandate.』

えーっと、労働市場が改善する中でスラックを計測するのが微妙になって来ましたとはこれはこれは。

『Indeed, in its 2012 statement on longer-run goals and monetary policy strategy, the FOMC explicitly recognized that factors determining maximum employment "may change over time and may not be directly measurable," and that assessments of the level of maximum employment "are necessarily uncertain and subject to revision."4』

いやまあ確かにそうかも知れんがスレッショルドベースでフォワードガイダンス出しておいて「雇用の最大化という状態は経済の状況によって変化するし直接計測が可能な訳でも無い」という理由を出してガイダンスをホイホイ変えてしまうというのはどうなんでしょうかねえと思います。

『Accordingly, the reformulated forward guidance reaffirms the FOMC's view that policy decisions will not be based on any single indicator, but will instead take into account a wide range of information on the labor market, as well as inflation and financial developments.5』

ということで、結局スレッショルドベースのガイダンスはその場しのぎの内容でしたという話なのですけれども、そう言わないで「このように進化しました(キリッ)」という内容にするのが何ともまあという所です。


・労働市場のアセスメントの話はもうやたら丁寧というかクソ長い

『Interpreting Labor Market Surprises: Past and Future』がまあメインなので長いんですけどね。

でまあ基本的な話は「循環要因」VS「構造要因」の話になっていまして、幾つかの指標についてその循環VS構造の話をしています。

まずは労働参加率。

『Consider first the behavior of the labor force participation rate, which has declined substantially since the end of the recession even as the unemployment rate has fallen. As a consequence, the employment-to-population ratio has increased far less over the past several years than the unemployment rate alone would indicate, based on past experience. For policymakers, the key question is: What portion of the decline in labor force participation reflects structural shifts and what portion reflects cyclical weakness in the labor market? If the cyclical component is abnormally large, relative to the unemployment rate, then it might be seen as an additional contributor to labor market slack.』

なんかここでも判りますように、ざっくり話をしようとすれば1行で済むマクラの部分で1パラ使って説明しやがるのがイエレン講演クオリティ。

『Labor force participation peaked in early 2000, so its decline began well before the Great Recession. A portion of that decline clearly relates to the aging of the baby boom generation. But the pace of decline accelerated with the recession.』

労働参加率は2000年から低下している(=構造要因)が、リセッションで加速(=循環要因)したと。

『As an accounting matter, the drop in the participation rate since 2008 can be attributed to increases in four factors: retirement, disability, school enrollment, and other reasons, including worker discouragement.8』

労働参加率の増加の要因だそうな。

『Of these, greater worker discouragement is most directly the result of a weak labor market, so we could reasonably expect further increases in labor demand to pull a sizable share of discouraged workers back into the workforce. Indeed, the flattening out of the labor force participation rate since late last year could partly reflect discouraged workers rejoining the labor force in response to the significant improvements that we have seen in labor market conditions. If so, the cyclical shortfall in labor force participation may have diminished.』

ということで、労働参加率については基本的に今後の労働市場の改善で改善していく(構造要因よりも循環要因の方が大きい)という見立てが基本になっています。でこの後もうちょっと突っ込んだ話がある(disabilityとschool enrollmentの話です)のですが引用してると終わらないのでスルーしましてその次に参ります。

『A second factor bearing on estimates of labor market slack is the elevated number of workers who are employed part time but desire full-time work (those classified as "part time for economic reasons"). At nearly 5 percent of the labor force, the number of such workers is notably larger, relative to the unemployment rate, than has been typical historically, providing another reason why the current level of the unemployment rate may understate the amount of remaining slack in the labor market.』

ということで、次の「労働市場のスラックを測定するファクター」としてフルタイムで働きたいけどパートタイムで働いている人という層についてですが、この数が現状ではかなり多いという説明になっていまして、こちらに関しても労働市場の現状についてイエレンさんがハトハト状態であるという事を示していますな。

『Again, however, some portion of the rise in involuntary part-time work may reflect structural rather than cyclical factors. For example, the ongoing shift in employment away from goods production and toward services, a sector which historically has used a greater portion of part-time workers, may be boosting the share of part-time jobs. Likewise, the continuing decline of middle-skill jobs, some of which could be replaced by part-time jobs, may raise the share of part-time jobs in overall employment.12』

でまあここがほほーという感じですが、パートタイムジョブの拡大には構造的な部分もあって、産業構造がサービス業化していくとか、中程度のスキルの労働がパートタイムに置き換わるようになっていくとかそういう部分もあると。

『Despite these challenges in assessing where the share of those employed part time for economic reasons may settle in the long run, the sharp run-up in involuntary part-time employment during the recession and its slow decline thereafter suggest that cyclical factors are significant.』

しかしながら全体として見た場合には構造要因よりも循環要因の方が極めて大きい、と結局の所循環要因でござるという話をしておりますので同様に基本的な労働市場の見立てはハトなんですけどね。


その次が労働市場のフローという話。

『Private sector labor market flows provide additional indications of the strength of the labor market. For example, the quits rate has tended to be pro-cyclical, since more workers voluntarily quit their jobs when they are more confident about their ability to find new ones and when firms are competing more actively for new hires.』

離職者が増えるというのは労働市場が活発だという事ですっつー話ですな。

『Indeed, the quits rate has picked up with improvements in the labor market over the past year, but it still remains somewhat depressed relative to its level before the recession.』

これまた「改善しているけどまだ水準は弱い」攻撃です。

『A significant increase in job openings over the past year suggests notable improvement in labor market conditions, but the hiring rate has only partially recovered from its decline during the recession. Given the rise in job vacancies, hiring may be poised to pick up, but the failure of hiring to rise with vacancies could also indicate that firms perceive the prospects for economic growth as still insufficient to justify adding to payrolls. Alternatively, subdued hiring could indicate that firms are encountering difficulties in finding qualified job applicants.』

で、足元で改善する中で新規雇用も上昇していますが、まだ伸びが弱い点については、先行きの経済への確信が足りないとか、必要なスキルの労働者が確保しにくいとかの理由がありそうですと。

『As is true of the other indicators I have discussed, labor market flows tend to reflect not only cyclical but also structural changes in the economy. Indeed, these flows may provide evidence of reduced labor market dynamism, which could prove quite persistent.13 That said, the balance of evidence leads me to conclude that weak aggregate demand has contributed significantly to the depressed levels of quits and hires during the recession and in the recovery.』

でまあ毎度のように循環と構造の話をしておりますが、基本的にはやはり循環要因が大きいという話になって
おりますの。

で、ここでへーと思ったのは「労働市場モデル」の存在。

『One convenient way to summarize the information contained in a large number of indicators is through the use of so-called factor models. Following this methodology, Federal Reserve Board staff developed a labor market conditions index from 19 labor market indicators, including four I just discussed.14』

というようなモデルがありそうで、この脚注14に
http://www.frbkc.org/publicat/research/macrobulletins/mb13Hakkio-Willis0718.pdf
というリンクがあるがまだ読んでいない(汗)。

『This broadly based metric supports the conclusion that the labor market has improved significantly over the past year, but it also suggests that the decline in the unemployment rate over this period somewhat overstates the improvement in overall labor market conditions.』

ということで結論はやはり「失業率で見られる以上に労働市場のスラックは存在する」という話でした。


・物価と労働市場(つまり賃金)

『Finally, changes in labor compensation may also help shed light on the degree of labor market slack, although here, too, there are significant challenges in distinguishing between cyclical and structural influences.』

ということで賃金キタコレ。

『Over the past several years, wage inflation, as measured by several different indexes, has averaged about 2 percent, and there has been little evidence of any broad-based acceleration in either wages or compensation. Indeed, in real terms, wages have been about flat, growing less than labor productivity.』

でまあ過去数年間は賃金は概ね2%程度の上昇を示していましたので実質では概ねフラットですと。

『This pattern of subdued real wage gains suggests that nominal compensation could rise more quickly without exerting any meaningful upward pressure on inflation. And, since wage movements have historically been sensitive to tightness in the labor market, the recent behavior of both nominal and real wages point to weaker labor market conditions than would be indicated by the current unemployment rate.』

ということで今後賃金が上昇してもそれほどのインフレ圧力にならないという話キタコレですな。

『There are three reasons, however, why we should be cautious in drawing such a conclusion.』

で3つの理由とな。

『First, the sluggish pace of nominal and real wage growth in recent years may reflect the phenomenon of "pent-up wage deflation."15 The evidence suggests that many firms faced significant constraints in lowering compensation during the recession and the earlier part of the recovery because of "downward nominal wage rigidity"--namely, an inability or unwillingness on the part of firms to cut nominal wages. To the extent that firms faced limits in reducing real and nominal wages when the labor market was exceptionally weak, they may find that now they do not need to raise wages to attract qualified workers. As a result, wages might rise relatively slowly as the labor market strengthens. If pent-up wage deflation is holding down wage growth, the current very moderate wage growth could be a misleading signal of the degree of remaining slack. Further, wages could begin to rise at a noticeably more rapid pace once pent-up wage deflation has been absorbed.』

ほほーという感じですが、「賃金の調整中」という解釈でして、これはまあ米国の場合雇用の頭数は切るけど賃金は下げない(日本は賃金を平気で下げてくるが)というのが仕様になっているので、ここへ来てコストを調整する為に賃金引上げを抑制しているという解釈で、その場合ですとどこかの時点で調整のニーズが無くなってくるので賃金上昇ペースが加速するでしょうという話。

『Second, wage developments reflect not only cyclical but also secular trends that have likely affected the evolution of labor's share of income in recent years. As I noted, real wages have been rising less rapidly than productivity, implying that real unit labor costs have been declining, a pattern suggesting that there is scope for nominal wages to accelerate from their recent pace without creating meaningful inflationary pressure.』

こちらは構造的に賃金が上がりにくい系の話で、労働分配率が構造的に低下傾向になっているから賃金が上がりにくいという話で、それなら当面は賃金インフレ圧力という話になりません罠。

『However, research suggests that the decline in real unit labor costs may partly reflect secular factors that predate the recession, including changing patterns of production and international trade, as well as measurement issues.16 If so, productivity growth could continue to outpace real wage gains even when the economy is again operating at its potential.』

でまあそこには生産構造の変化や貿易による要因(海外の労働者が安くて云々)があるという説があってもしそうなら潜在成長力を上回る成長が続いてもインフレ圧力が起きにくいですと。

『A third issue that complicates the interpretation of wage trends is the possibility that, because of the dislocations of the Great Recession, transitory wage and price pressures could emerge well before maximum sustainable employment has been reached, although they would abate over time as the economy moves back toward maximum employment.17』

リセッションによるディスローケーションの問題(って要するに色々な所で市場調節機能的な所が弱くなっているので非効率になっているからという事ですかね)によって最大雇用に達する前に賃金や物価がホイホイ上昇する可能性という話ですが、実は今日は時間の都合上ネタにできない7月30日のFOMC議事要旨(そっちはやはり結構なタカ成分でした)でもそんな議論がありまして、これ読んで議事要旨読んだらほほうと思いましたよ。

『The argument is that workers who have suffered long-term unemployment--along with, perhaps, those who have dropped out of the labor force but would return to work in a stronger economy--face significant impediments to reemployment. In this case, further improvement in the labor market could entail stronger wage pressures for a time before maximum employment has been attained.18』

ふむ。


・金融政策運営のパート:まあ要するにこのお題で見た場合は「賃金動向」っすかねえ

小見出し『Implications of Labor Market Developments for Monetary Policy』である。

最初の説明はパスしましてその直後から。

『However, with the economy getting closer to our objectives, the FOMC's emphasis is naturally shifting to questions about the degree of remaining slack, how quickly that slack is likely to be taken up, and thereby to the question of under what conditions we should begin dialing back our extraordinary accommodation.』

そらそうよ。

『As should be evident from my remarks so far, I believe that our assessments of the degree of slack must be based on a wide range of variables and will require difficult judgments about the cyclical and structural influences in the labor market.』

でまあそのスラックについても今まで申し上げたように色々と計測するのがムツカシヤと。

『While these assessments have always been imprecise and subject to revision, the task has become especially challenging in the aftermath of the Great Recession, which brought nearly unprecedented cyclical dislocations and may have been associated with similarly unprecedented structural changes in the labor market--changes that have yet to be fully understood.』

でまあ難しいだの状況見ながら変わるだのという辺りを読むと確かに何か日和っているという風にも見えますけどまあここはこんなもんじゃないですかねえ。

『So, what is a monetary policymaker to do?』

キタコレ!

『Some have argued that, in light of the uncertainties associated with estimating labor market slack, policymakers should focus mainly on inflation developments in determining appropriate policy. To take an extreme case, if labor market slack was the dominant and predictable driver of inflation, we could largely ignore labor market indicators and look instead at the behavior of inflation to determine the extent of slack in the labor market.』

労働市場のスラックの計測は難しいのだからそれよりもインフレを重視すべきという見解に対して・・・・・・・・・

『In present circumstances, with inflation still running below the FOMC's 2 percent objective, such an approach would suggest that we could maintain policy accommodation until inflation is clearly moving back toward 2 percent, at which point we could also be confident that slack had diminished.』

でもそのアプローチでもインフレが明確に2%に戻るまでは政策を継続するという事になるでしょ(ドヤァ)という事で。

『Of course, our task is not nearly so straightforward. Historically, slack has accounted for only a small portion of the fluctuations in inflation. Indeed, unusual aspects of the current recovery may have shifted the lead-lag relationship between a tightening labor market and rising inflation pressures in either direction.』

ドヤァと言ったものの、そうは言ってもスラックだけでインフレが決まるものではないという話をしていますな。

『For example, as I discussed earlier, if downward nominal wage rigidities created a stock of pent-up wage deflation during the economic downturn, observed wage and price pressures associated with a given amount of slack or pace of reduction in slack might be unusually low for a time.』

ということで例として挙げているのがさっきの賃金の部分で、従来の賃金上昇圧力が弱い要因がペントアップ要因(貰う側からしたら逆の意味ですが)だとすると最大雇用に達する前にでもインフレ圧力が高まるかもしれませんよと来ていますので、やはり賃金動向を見るのが重要なのでしょうなという話なんですかねイエレンさんとしては。

『If so, the first clear signs of inflation pressure could come later than usual in the progression toward maximum employment. As a result, maintaining a high degree of monetary policy accommodation until inflation pressures emerge could, in this case, unduly delay the removal of accommodation, necessitating an abrupt and potentially disruptive tightening of policy later on.』

で、ここでほほーという感じですが、このような場合には利上げ着手が遅れるのでその後の金利上昇ペースが乱暴な物になるという話をしているので、つまり賃金がホイホイ上がるようだとイエレンさん的には緩和を引っ張って後からジャンジャン利上げするのではなく、普通にはやめに着手してその後をプルーデントに上げていくというアプローチを好みそうですね。

『Conversely, profound dislocations in the labor market in recent years--such as depressed participation associated with worker discouragement and a still-substantial level of long-term unemployment--may cause inflation pressures to arise earlier than usual as the degree of slack in the labor market declines.』

ここもほほうという感じですが、構造要因による問題が大きい中では労働市場からの物価上昇圧力がスラックが大きい状態でも起きるかも知れませんよねと。

『However, some of the resulting wage and price pressures could subsequently ease as higher real wages draw workers back into the labor force and lower long-term unemployment.19 As a consequence, tightening monetary policy as soon as inflation moves back toward 2 percent might, in this case, prevent labor markets from recovering fully and so would not be consistent with the dual mandate.』

で、ここではバランスアプローチの話になっていまして、労働市場のスラックが極めて大きい場合には物価がやや高めであっても経済のスラックを解消することを重視する為に緩和的な政策を取るという「バランスアプローチ」の話をしていてきちんと両論併記状態になっているんですな。

『Inferring the degree of resource utilization from real-time readings on inflation is further complicated by the familiar challenge of distinguishing transitory price changes from persistent price pressures. Indeed, the recent firming of inflation toward our 2 percent goal appears to reflect a combination of both factors.』

ほう。

『These complexities in evaluating the relationship between slack and inflation pressures in the current recovery are illustrative of a host of issues that the FOMC will be grappling with as the recovery continues. There is no simple recipe for appropriate policy in this context, and the FOMC is particularly attentive to the need to clearly describe the policy framework we are using to meet these challenges. As the FOMC has noted in its recent policy statements, the stance of policy will be guided by our assessments of how far we are from our objectives of maximum employment and 2 percent inflation as well as our assessment of the likely pace of progress toward those objectives.』

ということで、まあ結局どうする的な話は決め打ちしないようになっていまして、その辺りはハト成分不足という評価になるかも知れませんが、まあFOMC全体でも先行きどうするのかというのは判断が無茶苦茶難しくて悩んでいるんじゃないでしょうか。だからこそ「There is no simple recipe for appropriate policy」とか言ってるんですし。

でまあ最後の所は引用だけしておきますね。

『At the FOMC's most recent meeting, the Committee judged, based on a range of labor market indicators, that "labor market conditions improved."20 Indeed, as I noted earlier, they have improved more rapidly than the Committee had anticipated.』

『Nevertheless, the Committee judged that underutilization of labor resources still remains significant.』

ということでまあスラックは「still remains significant」だそうな。

『Given this assessment and the Committee's expectation that inflation will gradually move up toward its longer-run objective, the Committee reaffirmed its view "that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after our current asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored."21』

これは声明文。

『But if progress in the labor market continues to be more rapid than anticipated by the Committee or if inflation moves up more rapidly than anticipated, resulting in faster convergence toward our dual objectives, then increases in the federal funds rate target could come sooner than the Committee currently expects and could be more rapid thereafter. Of course, if economic performance turns out to be disappointing and progress toward our goals proceeds more slowly than we expect, then the future path of interest rates likely would be more accommodative than we currently anticipate.』

強けりゃ早期利上げだし弱けりゃ利上げは遅いと普通の話ですな。

『As I have noted many times, monetary policy is not on a preset path. The Committee will be closely monitoring incoming information on the labor market and inflation in determining the appropriate stance of monetary policy.』

『Overall, I suspect that many of the labor market issues you will be discussing at this conference will be at the center of FOMC discussions for some time to come. I thank you in advance for the insights you will offer and encourage you to continue the important research that advances our understanding of cyclical and structural labor market issues.』

ということで最後の方ほぼ丸引用になってしまいました長くてすいませんすいません。


○その他メモだけ

・FOMC議事要旨

こいつは結構なタカでした。幾つかオモロイのがあったが、声明文の文言変化に関する部分の説明は正直あたしゃ「えー」と思いましたよ。あと最初の所に出口政策の話があるのだがリバースレポをあまり使いたくないみたいだがそれで利上げがワークするの???

・黒田総裁講演@ジャクソンホール

相変わらず最近の出来が悪いわと思いますが、明らかに今回の説明は「不景気」に起因する話を全部「デフレ」に置き換えている辺りがイカサマというかあの内容で大丈夫かという所ですし、労働市場の構造変化という意味では産業構造の変化とか人口動態の変化とかが思いっきり起きている日本の話って参考になると思うのだがそっちの話を全然しないで「デフレを脱却するとうまくいきます(キリッ)」という話をしてもしょうがないだろ何しに行ったんだと小一時間という所。




2014/08/22

お題「BOE議事要旨ネタの続き:物価上昇圧力に関する中心的見解と利上げ派の主張が面白い」

何だこりゃ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF2100K_R20C14A8EE8000/
東京都、公金で株式投資を検討 運用専門家で新組織
2014/8/22 0:16 情報元 日本経済新聞 電子版

運用が目的の年金基金じゃないんですから資金繰りの為に持っている余剰資金の効率的な運用の矩を超えてませんかねえしかもわざわざその為に組織作るとかその費用も税金ですよねえちょっと何をしたいのか良く判りませんなあ。そんな金があるなら保証協会使った東京都の制度融資を拡充させたりした方が宜しいんじゃないですかねえ。


○市場関連雑談

・値幅4銭の後に2日で33銭下げなので忘れないようにメモだけ置いておく

という事で長い所ですが、お盆ウィーク明けの月曜が先物値幅4銭で出来高1万枚割れとか中々落涙を禁じ得ない相場だと思ったら水曜と木曜の2日で絶賛先物33銭下げとか何なんでしょうねこの相場という所ですが、「おお!0.5%割れか!円債は今期も目標達成できて良かったなあ!!」のノリがさてどうなるのやらという所ではありますが(^^)、過去のどっひゃーな相場の場合って往々にこのままスココーンなのですが、なにせ日銀の無慈悲な国債買入があって売る物ってありましたっけ状態になっているのがニャンとも難しい所ではあります。

とか何とか尤もらしい事を申し上げていますが、どうせ為替が抜けて米債が動いたから反応して居るんでしょ(てきとう)という事にしておきますか。まあしかしカーブの動きとかも結局目先の輪番スケジュール的に需給がどうよとか、発行日程と輪番での買入バランスとか、その辺りの読みが一番重要という状況は相変わらずでして、まあ市場の価格形成がどうなっていますねんと考えた場合には、特にイールドカーブの形状とか思いっ切り日銀の国債馬鹿買入が影響しているという状態になってしまっておりますので、緩和政策の弊害なんてもんじゃねえぞと思うのですが、そういうのって中の人的には困ったもんじゃという風になっても外から見たら毎日取引はあってイールドカーブは形成されているので中々こう外野から見ても伝わらず、恐らく誰が見てもこれおかしくねえかという状況になった場合(短期で言えば短国が年柄年中マイナス金利とか)には時既にお寿司になっているという事でしょとは思います。


・3MTB入札とか固定金利オペとか

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140821.htm

(3)募入最低価格 99円99銭2厘0毛 (募入最高利回り)(0.0317%)
(4)募入最低価格における案分比率 77.0528%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘7毛 (募入平均利回り)(0.0289%)

ということで足切りが久々に3bp台に上昇しておおまともな金利とかついうっかり勘違いしてしまいますが、そもそも論としてコール金利と比較してどうなのよとかそういう観点からすると相変わらずの日銀無慈悲買入攻撃という事ですが、まあ良く良く考えたら昔々その昔に短国が3か月と6か月が月に1本ずつしか出ていなかった時代(割引短期国債の時代)は常に需要超過で公定歩合が0.5%の時に0.3%とかで売買されていましたなあとか(なお20世紀の話ですが何か?)くだらない事を思い出してしまうのでありました。まあその位のインパクトは日銀買入にあるという事で。


なお固定金利オペ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140821.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(8月25日スタート分) 4,032 4,032

昨日オファーのあった固定金利オペですが折り返しのオペが3430億円ですのでしらっと増額ロールとなっていまして、固定金利オペの残高が10.5兆円少々という水準になっておりまして、固定オペの残高もうちょっと落ちていくのかと思っていたのですが10兆円の所で粘っている感じになっておりまして、こんな所で底溜まりになるんかいなというのも若干意外感あるのですが、まあ現象としてはここで今の所キープされているという状況。

MB目標(実質的には銀行券の部分ってそんなにぶれないから結局の所事実上当座預金残高目標みたいなもんだが)達成のためのコンポーネントの中で短期オペ部分は「その他」になっておりまして、固定金利オペとか成長基盤オペとか貸出増加支援オペとかは日銀が押し貸しが出来るものではないので、これらの残高については受動的となって、短国買入の所で最後の帳尻が来るという形ですので、固定金利オペが落ちなくなってくるとその分短国買入を増やす必要がなくなってくれるのでオペ的には楽になるという所ではあります。

とは言いましてもどうせ今日の短国買入って新発1年買う為にロットを増やしてくるんでしょ。



○BOE議事要旨ネタのつづきであります

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1408.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING 6 and 7 August 2014

『The immediate policy decision』の所からネタのつづきでごんす。

・グローバルの全般的な状況についてとリスク資産価格調整に関して

第32パラグラフから。

『The macroeconomic news regarding the global economy had been relatively limited during the month. The recovery in US growth in the second quarter had been a little firmer than anticipated. By contrast, another quarter of materially sub-trend growth in the euro area seemed likely in Q2, and HICP inflation had fallen further in July.』

マクロ的な経済数値に関しては米国がやや強くて大陸欧州はヘッポコ状態との評価。

『There had been a number of significant geopolitical events regarding the conflict between Ukraine and Russia and also in the Middle East. The Argentinian government had defaulted on a debt payment. And a large Portuguese bank had imposed losses on some creditors and required state support.』

地政学イベントとかアルヘンのデフォルトとかポルトガルのエスピリトサント銀行の話とか。

『The prices of some risky assets, such as high-yield corporate bonds and equities, had fallen on the month. Although actual and implied volatilities across a range of asset classes remained low, it was possible nonetheless that these price falls represented the first steps by investors in a reassessment of risk appetite and a return of asset price volatility to more normal levels. Whether or not such a process would be detrimental to sustaining the expansion might depend on how gradual or abrupt it proved to be.』

ということで、ハイイールド社債や株式の価格の調整に見られるようなリスクの高い資産価格が調整している点については、その一方で市場のボラが小さい事を引き合いに出して、「投資家のリスクアペタイトの見直しによってよりノーマルなレベルへの再評価を行っているのではないか」というような見方を示しているので別にこれらの価格が下がってあばばばばーという認識では無くてどちらかというとガス抜き調整できて良かったね位の認識でいるように思えます。

まあ何ですな、話は脱線しますけど、米国の場合Taperingトークで泡を吹いたのはモーゲージ金利にまで影響してしまったからという所で、恐らく単にリスクの高いセクターでの価格調整が起きただけとなると、これでマクロプルーデンス政策発動しなくてすんだわ位の認識で鼻歌混じりという事になっていたんじゃないですかねえ。


・賃金上昇圧力が(生産や雇用者の伸びに対して)弱い件について

第33パラグラフ。

『Domestically, output growth had remained firm and employment growth firmer such that productivity had continued to disappoint. Although output growth looked likely to be a touch stronger than previously assumed going into the second half of the year, it also seemed probable that output per worker would recover more slowly, with productivity growth assumed to remain below its pre-crisis rate throughout the three-year forecast contained in the August Inflation Report. While employment growth had been strong, wage growth had been weak. This had been a feature of the UK labour market data for some time. 』

この「productivity」の話はアタクシがBOEの議事要旨見だしてちょっとしたころから延々と話題になっているネタですな。直近では生産や雇用者の拡大にも関わらず賃金がろくすっぽ上がらんとはどういうことやねんという話ですが・・・・・・・・・・・・

『One explanation was that it would simply take time for the tightening in the labour market - evidenced by the reduction in unemployment and indications of skills shortages from business surveys - to feed into pay claims, especially if perceptions of job insecurity following the financial crisis remained high.』

生産性はラグを持って改善して来て、しかも長期停滞によって労働市場におけるスキルギャップなどの問題が高まってしまったのでそのラグが長くなったというのが一つの考察。

『Another, not necessarily inconsistent, explanation was that there had been an increase in the supply of labour that households, especially in older age cohorts, were prepared to offer at a given wage rate. That might reflect increased longevity, recent reforms to state retirement and benefit rules, or concerns about debt levels and pension provision. This would tend to increase the degree to which output and employment could expand without generating inflationary pressure.』

もう一つの考察は必ずしもメジャーな考えでは無いようですが、家計からの労働力供給、つまり年寄りなどが労働市場に入ってきて、それが賃金の押下げに繋がっているという話で、では何でジジイが労働市場に出てくるかというと先行きの年金とかへの不安とか家計の借金が大杉勝男だとかそういう事で、もしそういう形なら賃金って中々上がらんだろというお話。

・・・・・・・うむ、どこかの国でも起きそうな悪寒ががががががが。


・中心的なビューはインフレ圧力は弱いという話

第34パラグラフ。

『The Committee’s central expectation - assuming that Bank Rate followed the path implied by market yields and that the stock of purchased assets remained at £375 billion - was that inflation was likely to remain close to, but a little below, 2% for the next couple of years, before reaching the target at the end of the three-year forecast period. Inflation would be dampened by the effect on import prices of the recent rise in the sterling exchange rate. And a modest expansion in supply capacity would help to slow the rate at which slack was absorbed, thereby limiting the build-up of domestic inflationary pressure resulting from the pace of output and employment growth.』

ということで、中心的なビューは引き続きなのですがインフレを抑制する要因(余剰生産力とかの他に為替市場でのポンド高による輸入価格の影響も入れていますな)があるのでインフレ圧力はそんなに強くないよと。

『In the Committee’s best collective judgement, the degree of slack had narrowed somewhat, and the central estimate was now broadly in the region of 1% of GDP. There was, however, a wide range of views on the Committee - on either side of that central estimate - about the likely extent of spare capacity currently remaining in the economy, and also about its likely impact, and that of its components, on inflation.』

でまあ余剰生産力自体は縮小してきているという認識ですが、でもまだ物価上昇圧力を高める物ではないと。

『In the view of some members, the degree of spare capacity had diminished sufficiently that, although some slack still remained, exactly how much was uncertain enough that estimates of it were becoming a somewhat less informative guide to the appropriate future path of monetary policy.』

ただ一方で数名の委員はそこは余剰がかなりなくなってきている可能性ねえかとの指摘。となっていますが、ここまで(この先は適切な金利がどうのこうのの話)の所を見ると、中心的なビューに関する説明についてはそんなにタカタカしていないですねというのも割と目に付くところです。


・利上げ派2名の見解

で、昨日は金利をどうしますかという議論の部分について引用しましたが、上記のように物価に関するアセスメント部分はあんまりタカではないのですが、では金利はという事になると現状維持派の中でもハトハトしているの一部で、中心的には利上げに関してそんなに真っ向否定という訳でも無いという辺りがまあタカ派議事要旨と取られた所以だと思いますが、では利上げの人の見解はと言いますと・・・・・・

第39パラグラフ。

『For two members, in particular, economic circumstances were sufficient to justify an immediate rise in Bank Rate.』

キタコレ、というか2名提案してますが。

『These members noted that the continuing rapid fall in unemployment alongside survey evidence of tightening in the labour market created a prospect that wage growth would pick up. They noted that it was possible that wages were lagging developments in the labour market to some extent. If that were true, wages might not start to rise until spare capacity in the labour market were fully used up.』

労働市場のスラックが解消される前に賃金上昇が先に来るのではないかという見通しですな。

『Since monetary policy, too, could be expected to operate only with a lag, it was desirable to anticipate labour market pressures by raising Bank Rate in advance of them.』

仮に賃金の上昇が労働需給改善のラグを伴って上昇するというのであれば、金融政策に関しても同様にラグがある訳ですから、プリエンティブに対応しないとホームメードインフレが上に振れてしまうのではないでしょうかという話っすな。

『Moreover, if recent robust GDP growth rates had been underpinned by stimulatory monetary policy, in addition to a release of pent-up demand driven by reduced uncertainty and improved credit conditions, then the erosion of spare capacity would be likely to remain rapid while policy remained expansionary.』

緩和的な金融環境がスラックの改善に効果を出しているのであればなおの事プリエンティブな対応が必要という話ですか。

『In the judgement of these members, even after a rise of 25 basis points in Bank Rate, monetary policy would remain extremely supportive, and an early rise would facilitate the Committee’s aspiration that the rises in Bank Rate should be only gradual.』

extremelyにワロタですが、早めの利上げをしてもまだ緩和的だし、早めの利上げ着手は逆に先行きの利上げペースも緩やかになることを意味するので却って宜しいという説明をしていまして、つまりこのメンバーもタカ的ではあっても別に物価がボンボン上昇するからホイホイ利上げしろという話をしている訳ではなく、利上げ着手が遅れることによって却って調整速度を早くしないと行けなくなる事について警戒している、という点は注目すべき所ですな、うんうん。

『These members further noted that, while there were always likely to be risks associated with the possible financial market reaction to the first increase in Bank Rate after such a protracted period, it was unclear that these risks would be lessened, and indeed possible they would be augmented, by delaying that increase.』

まあこれはややコジツケ感がありますが、同様に利上げ着手が遅れると金融市場でも将来の利上げ速度が却って早くなるという懸念から市場が望ましくない動きをするんじゃないかとの説明。

ただまあこれって確かにFRBが前回「メジャードペースの利上げ」をする中で金融市場では株高ヒャッハークレジットバブル(は余計でしたが)ヒャッハーとかやっていたという事を考えるとあながちコジツケとも言えない面はありますなという所で。

つーことで久々にBOEネタ趣味コーナー連投でありました(汗)。




2014/08/21

お題「議事要旨ネタを2発(ただし斜め読みベースですいません)」

今日はまあそうはならないと思うのですが、昨日は為替が円安(というかドル高)にぴよーんと振れて債券は珍しく20銭近く下がったというのに株式市場ちゃんが碌すっぽアガランチ会長だったのはどういうメカニズムだったんでしょうか。つーかトピマイナスでしたし日経がプラスじゃなかったらトリプル安ヒャッハーですよ先生。

つーか昨日の貿易統計って何か相変わらずアレなのですが・・・・・・・・

という話は兎も角として議事要旨ネタ2発投下の巻である(ただし斜め読みと寝起き手抜き読みベースですが、汗)。


○寝起きでFOMC議事要旨

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20140730.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20140730.pdf

・利上げタイミング云々の部分は何ちゅうかこう解釈に困る面もありそう

毎度おなじみの手抜き速読法ですが、『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツの部分を読むヨロシね。

『With respect to monetary policy over the medium run, participants generally agreed that labor market conditions and inflation had moved closer to the Committee's longer-run objectives in recent months, and most anticipated that progress toward those goals would continue.』

へえへえそうだっかロンガーランゴールに着実に近づき続けますかそうですか。

『Moreover, many participants noted that if convergence toward the Committee's objectives occurred more quickly than expected, it might become appropriate to begin removing monetary policy accommodation sooner than they currently anticipated.』

な、なんだってー!!!

・・・・・・・・という事でそら反応するわという事ですが、某モーサテ辺りでは「あくまでも条件付きの早期利上げ論」とか講釈している向きもあったようですけれども、「経済の回復ペースが早ければ正常化着手が早くなる」というのが「条件付き利上げ論ですのでヘーキヘーキ」というのはさすがに無理筋の話で、そもそも上記の話って「犬が西向きゃ尾は東」というのと同じような説明で、問題はこういうのが出て来るというのはそれだけ物価雇用の改善が著しいという認識を持っている人が結構居ますよという事を示したっつーことを意味するって話だという所ですよね。まあ市場ちゃんの初期反応もそういう動きになっていたようですが。

『Indeed, some participants viewed the actual and expected progress toward the Committee's goals as sufficient to call for a relatively prompt move toward reducing policy accommodation to avoid overshooting the Committee's unemployment and inflation objectives over the medium term.』

でまあさっきの記述は兎も角として、こちらを見ますと「some participants」におかれましてはよりタカ派というか正常化着手とっととしなはれ系の話をしているので、まあ前段の話ってある意味一般論ちっくな話でしたけどこちらはより普通に前のめりの話ですわな。

『These participants were increasingly uncomfortable with the Committee's forward guidance. In their view, the guidance suggested a later initial increase in the target federal funds rate as well as lower future levels of the funds rate than they judged likely to be appropriate. They suggested that the guidance should more clearly communicate how policy-setting would respond to the evolution of economic data.』

とまあそういうことで、この前のめりな「some participants」様におかれましてはフォワードガイダンスの現在の文言に関しても利上げ着手のタイミングが遅くなるかのような誤解を与えているという話になっているので結構な前のめりですなと思います。someだから2名を超えていると思われますがタカ派寄りの中でどの位この声が強いのかは気になりますな。

『However, most participants indicated that any change in their expectations for the appropriate timing of the first increase in the federal funds rate would depend on further information on the trajectories of economic activity, the labor market, and inflation.』

一方、ほとんど(most)の参加者は利上げの適切なタイミングは今後の状況を見て変化する(つまり今は特段前のめりにはなっていない)という見解を表明しておりますので、まあセントラルビュー自体はそんなに大きな変化があるとも思われませんが、前段であれだけああでもないこうでもないというのが議事要旨として出ているという事は、それなりにタカ派寄りの人が増えてきているという事か、タカ派寄りの人たちの中での早期利上げ開始論が強硬になっているという事か、またはその合わせ技か、というのが想定されますな。

あと大穴で考えられるのは、直近でのフィッシャー副議長の講演などにも見られるように、緩和継続的な発言がFEDの主流派からホイホイと出てきているので、この辺りの議論状況を見せることによって少しバランスを取りに行っているという可能性もあるのですが、まあ素直に考えるとそもそもFOMCでの議論内容は従来からこんな感じなのだが、イエレン議長が個人的にハト派全開なので「イエレン委員」としての発言をするとどうしてもハト派丸出しになる(FOMC後の会見が比較的ハトじゃないように見えるのはFOMCの全体ビューを統括して説明するというFOMC議長としての話をするからですよね、と考えると整合性は取れる)上に、フィッシャー副議長もイエレンさんの意向も踏まえてああいう講演をするから、どうしてもハト派の声の方が強く見えてしまう、という事だと思われますけど。

『In particular, although participants generally saw the drop in real GDP in the first quarter as transitory, some noted that it increased uncertainty about the outlook, and they were looking to additional data on production, spending, and labor market developments to shed light on the underlying pace of economic growth.』

ここで1QGDPがあばばばばーだった件についてですが、概ね一時的との評価のようですが、一部の委員はこの結果を踏まえてより慎重にデータを見るべきとの主張ですな。

『Moreover, despite recent inflation developments, several participants continued to believe that inflation was likely to move back to the Committee's objective very slowly, thereby warranting a continuation of highly accommodative policy as long as projected inflation remained below 2 percent and longer-term inflation expectations were well anchored.』

でまあ物価動向に関する話もここで出てくるのがほーという感じですが、数名(several participants )は足元で物価がやや上昇していますが物価は引き続き上昇力が弱いので低金利政策の長期化は正当化されますという話をしていた、とこちらに出ておりますので(この2パラ前に物価の話がある、後でネタにする)、まあ利上げ云々に関しての議論がそこそこ盛り上がったんじゃネーノ(盛り上がったというののは利上げをする方向でという意味では無くて委員の間での温度差が拡大してという感じがしますが)と思います。



・ファイナンシャルスタビリティーの話とな

今引用したところの1つ前のパラグラフがアタクシ的にはちとビックリしました。

『In their discussion of financial stability issues, participants noted evidence of valuation pressures in some particular asset markets, but those pressures did not appear to be widespread and other measures of vulnerability in the financial system were at low to moderate levels. As a result, they generally saw the vulnerabilities in the financial system as well contained.』

えーっとですな、まあ結論としては穏当に「一部の金融市場における価格形成に問題が見られるものの全体としてみた場合に金融不安定化に繋がるような事象は観測されませんし先行きの兆候も見られません」とはなっているのですが、前回のミニッツ辺りではこのファイナンシャルスタビリティーネタ自体の扱いが小さくなっていて、スタイン理事退任でいきなりファイナンシャルスタビリティーの金融政策対応云々のネタが消えやがりましたなあと思っていたので、今回こういう形でどどーんと飛び出してきた方にアタクシとしては少々サプライズ。

『Some participants discussed how the Committee might better incorporate financial stability risks in its discussion of macroeconomic risks.』

Some participantsからのマクプル利上げ論議キタコレ!

『They also suggested that the Committee consider how promptly various financial stability concerns could be addressed, if need be, and which tools, including monetary policy and regulatory responses, would be most timely and effective in doing so.』

とは思いましたが、この結論部分は割と普通の話になっているのですが、一方で対処の中に「including monetary policy and regulatory responses」などという文言がしらっと入っておりまして、マクプル利上げなんて飛んでもありませんわオホホホホというイエレンさんの主張するラインとは違った話になっているのが中々味わいがありまして、このファイナンシャルスタビリティーに関する論議の部分が今後どういう記述になってくるのかは注目したい所ではあります。


・物価に関して

『Inflation firmed in recent months, and most participants anticipated that it would continue to move up toward the Committee's 2 percent objective.』

というのが今引用したひとつ前のパラグラフ(逆順に引用してますな^^)です。

『Many of them expected that inflation was likely to rise gradually over the medium term, as resource slack diminished and inflation expectations remained stable. In support of their assessments, several reported results from various statistical models of inflation and inflation expectations. Most now judged that the downside risks to inflation had diminished, but a few participants continued to see inflation as likely to persist below the Committee's objective over the medium term.』

やはりインフレの方が上を向いてくると皆さん元気になるのねという感じの記述になっていますが(^^)、ダウンサイドリスクに関してもかなり薄れたという漢字の人が多いようで、複数名はまだ物価がアガランチ会長となる件を懸念しているようですが、あくまでもa fewのようで。

『Several commented that the upside risks had not increased. However, a few others argued that the recent tightening of the labor market had increased the upside risks to inflation and inflation expectations, particularly in an environment in which the economic expansion was expected to strengthen further.』

でまあここもおーという所ですが、複数名(a few)の方は何と物価のアップサイドリスクにも言及という話でして、これはまたヒャッハーという所で、こらまあ思ったよりタカ派内容と評価されるのは当然ですなと言うか、そもそもイエレンおばちゃんが自分の見解を表に出し過ぎで、しかもそれがFOMC全体の議論の中心的見解からハトにずれているから会見とかミニッツとか出ると急に「あれれ?」となるんじゃネーノとは思う訳で、長期金利を跳ねさせたくないのは判るけど、コミュニケーションとしてちょっと今後苦労しそうな気がします。



○BOEネタから少々

http://www.bankofengland.co.uk//publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2014/mpc1408.aspx

『Regarding Bank Rate, seven members of the Committee (the Governor, Ben Broadbent, Jon Cunliffe, Nemat Shafik, Kristin Forbes, Andrew Haldane and David Miles) voted in favour of the proposition.』

おや?

『Ian McCafferty and Martin Weale voted against the proposition, preferring to increase Bank Rate by 25 basis points.』

2名が25bp利上げ提案キタコレ!!!!

でまあミニッツはこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2014/mpc1408.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING 6 and 7 August 2014

・フォワードガイダンスはただのガイダンス攻撃キタコレ

こちらの議事要旨は手抜き読みしたければ『The immediate policy decision』を読むヨロシだけど今回は(というかいつも比較的長いのだが)特に長いのでめんどい。

第31パラグラフから。

『The Committee set monetary policy to meet the 2% target in the medium term, and in a way that helped to sustain growth and employment.』

これはいつも言ってる話。

『The Committee had given guidance in its February Inflation Report on how it would seek to achieve the inflation target over the policy horizon. The central message of that guidance remained relevant: given the likely persistence of headwinds weighing on the economy, when Bank Rate did begin to rise, it was expected to do so only gradually. Moreover, the persistence of those headwinds, together with the legacy of the financial crisis, meant that Bank Rate was expected to remain below average historical levels for some time to come.』

ガイダンス文言で示している金利パス、すなわち金融危機以来の経済回復をスローにする要因が残り続けている中では利上げを上げるにしても極めて緩やかなペースになるし、政策金利の水準も過去のヒストリカルアベレージよりも低い状態が適切になるでしょう、とまあここまではハトちっくではあるのですが・・・・・・・・・・・・・

『The actual path for monetary policy, even after the first rise in Bank Rate, would, however, remain dependent on economic conditions.』

なるほど。

『In other words, the Committee’s guidance on the likely pace and extent of interest rate rises was an expectation, not a promise.』

な、なんだってー!!!!

・・・・・・・・というかですね、ガイダンス文言って所詮ただの「今の見通しではこうです」という話であって、そういう意味では景気物価見通しが盛大に改善すればガイダンス文言そのものがコロッと変わるのは建付け上当然ではあるのですが、ハトな話を並べておいてしらっとこのような梯子外し文言を入れているという諸葛孔明の罠ちっくな文章の作りがジョンブルクオリティー。

ちなみにこの最後の梯子外し文言は前回のミニッツ(ってネタにしてないですねすいませんすいません)では無かった表現というのがこれがまた味わいのあるところです。


・利上げに関する議論から少々

でまあこの先も色々とネタがあるのですが時間と量の関係上(単にFOMCミニッツで時間を食い過ぎただけですが)明日のネタに回しまして利上げに関する話の中から。

第37パラグラフより。

『There were also arguments regarding the current and prospective impact of Bank rate on the economy, on which these members placed different weights.』

利上げの影響についての議論部分です。

『It was possible that, given the strength of the headwinds faced by the economy, even the current extraordinarily low level of Bank Rate was not providing a great deal of stimulus to activity. A premature tightening in monetary policy might leave the economy vulnerable to shocks, with the effectiveness of any further necessary stimulus being limited by the effective lower bound on Bank Rate. In addition, increases in Bank Rate well ahead of any pickup in wage and income growth risked increasing the vulnerability of highly indebted households. Finally, an unexpected increase in Bank Rate might cause sterling to appreciate further, bearing down on inflation and further impeding UK economic rebalancing.』

これは利上げすべきでないの人たちの主張部分で、利上げしろの2名はまた別の話をしているのですが、現状維持派の見解として利上げはショック耐性を下げるとか、家計の債務負担を引き上げるとかいう話の中で「予期されていない時点での利上げを行うとポンド高が進行してあばばばばー」という言及をしているのが味わいがあるというか露骨というかで、為替に関してはドラギのおっちゃんVS英国中銀という風情ですの。


第38パラグラフより。

『That said, a potential over-reaction in financial markets was not necessarily a reason to delay an increase in Bank Rate if that were merited by the economic data.』

とは言いましても市場のオーバーリアクションを懸念しすぎて適切なタイミングでの政策対応を怠るのはオッペケペーのやることであり経済データを見てメリットデメリットを判断すればヨロシとか市場の反応に対してややナーバスな傾向のあるイエレンおばちゃんに嫌味を垂れているようにも見える辺りがこれまたジョンブルクオリティ。

『It was also noted that the longer the expansion continued, the less likely it became that some of the downside risks to growth and inflation would appear. This, along with a continued improvement in credit conditions, would in time diminish the need for such a low level of Bank Rate.』

ということで、まあ現状維持派としても緩和的な金融環境を続ければダウンサイドリスクはより薄まっていくので、クレジットコンディションの改善が続けば今のスーパー低金利を継続する必要もなくなって来るでしょう、という話をしておりますので、まあ普通に正常化を向いているというのは把握しました。


#その他の部分は明日に続きます(と思います)






2014/08/20

お題「ドラギ総裁会見ネタ(古くてすいません)の物価に関するパートも味わいがあります/その他少々雑談」

ほうほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140819/k10013927331000.html
シティバンク銀行 個人向け業務見直し
8月19日 22時13分

『関係者によりますと、この個人向けの業務についてシティバンク銀行は、日本の低金利が長引き十分な収益を上げることが難しい状況が続いているなどとして、撤退することも含め大幅に見直す方針を固めました。』(上記URLより)

>低金利が長引き十分な収益を上げることが難しい
>低金利が長引き十分な収益を上げることが難しい
>低金利が長引き十分な収益を上げることが難しい

日経でも出てますが公共放送のネタになる辺りがほほうという所ですが、このように収益環境の厳しい中で国債決済T+1化というシステム投資負担が盛大に掛かる割にはメリットは未決済残高削減程度という施策を推進している場合ではないと思うのですけどねえ、と我田引水モード。

○昨日の訂正である(汗)

業態別当座預金残高の話ですけどね。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

7月積み期間の超過準備というか当座預金残高について、都銀の一手拡大という話を申し上げましたが、冷静に見直したら「その他準備預金制度適用先」の超過準備が+1.2兆円(平残ベース)となっていまして、都銀の一手拡大ではありませんでしたすいませんすいません。

とは言いましても傾向として目立つのはやはり都市銀行(と「その他」の人)が頑張って超過準備を積んでいますなあという感じでして、この6月積み期間と7月積み期間の所は国債償還要因の剥落というのが思いっきりあるのですが、次の積み期間の動きなども見て輪番に入れる物がもう無い人が多いのかとか見たいなあなどと思うのでした。

ちなみにこれなんですけど、アタクシは普通に平残の推移を見て傾向についてネタにしておりまして、何の疑いも無く平残使うのが常識だと思い込んでいますがそれで良いんですよね??


○銀行に預貸率目標だと??

まあ既にご案内のネタですがメモとして置いておく。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF1800T_Y4A810C1EE8000/
銀行に預貸率目標、自民内で浮上 規制論に戸惑いの声も
2014/8/18 20:30

もう何を言ってるんだかというか、そんなに銀行の預貸バランス改善(貸出が増えるのが改善というのかは知らんが)させたいなら、預金がアホのように増える要因、すなわち政府部門の資金不足の絶賛拡大の方を何とかしてから話をしろと申し上げたい訳で、国債等の発行残高を盛大に減らして頂ければ黙っていても銀行の預貸バランスは改善するんでちゅけどねえと思う次第。まあおまいらのザル財政のケツを銀行に持ってくるんじゃねえとしか。

まあ以前の場合は不良債権処理の資本制約を解消するために公的資金突っ込んだんだからその趣旨を鑑みて不良債権処理だけじゃなくて前向きな貸出をしやがれというのは理屈としては無い訳でも無かったとは思いますが、公的資金も返済しておりますし、そもそも民間の資金余剰の原因は政府部門の財政赤字垂れ流し状態によるものなのですけどという事で、今回の目標という話は賃上げ要請的なサムシングを感じる訳で、色々と出てくる要請とか株式市場に対しての一連のアレとかも含めますとどこの満sy(以下の記述は内務省検閲により削除されました^^)。


○ドラギのおっちゃん虫干しネタの続き

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 August 2014

・物価情勢がうんこである件について

まあ当たり前だが物価がヘロヘロである件について突っ込まれる突っ込まれる。

『Question: When you talk about being unanimous to do more if the medium-term outlook is too low for inflation, we’ve now got inflation at 0.4%, can you just explain why that isn’t already too low? Why that isn’t already something that should be triggering a response from the ECB?(後半割愛、というか昨日やった)』

オッサン前から「中期的な物価見通しが低すぎる場合には必要な行動をすると全員が一致している(キリッ)」って言ってるけど何でこのバカタレな物価水準で行動しないんじゃこのウソツキヤローということですな。

『Draghi: (前半部分は上記質問の後半部分につき割愛)On the other thing: isn’t 0.4% low enough? Well, it didn’t really come as a surprise because, as I told you a moment ago, this data is mostly due to the changes in the price of energy.』

足元で低いのはエネルギー価格の低下によるものなのでサプライズでも何でもありません(キリッ)。

『And if we consider the HICP, excluding food and energy, we would have 0.8%, unchanged from the previous month. But having said that, there is no doubt that inflation is low and will remain low.』

それを除けば0.8%ですとかいってますが、まあさすがに0.8%というのが低いというのは認めてますな。

『Inflation expectations, however, over the medium to long term, remain firmly anchored. In the short term, we observed a decline in inflation expectations because, as is quite natural, they are heavily determined on the basis of current inflation.』

この中長期的なインフレ期待云々の話はまあ何ぼでも言えるわなあと思いますが、短い期間のインフレ期待は足元の物価上昇率低下を反映して下がっていますがこれは自然とな。

『On a specific point that was raised by a usually accurate market observer, also if we look at five-year inflation expectations, derived from the break-even of the linkers, we would observe a 0.5% inflation expectation. This was a quite interesting point, but at least we think the calculations should be done differently. We should observe, not one issue, but the overall, the universe of issuances of linkers with that maturity. And this would show that the expectations over the five-year horizon are still anchored at 1%.』

まあ何ですな、自分に都合の悪い数字についても言及する辺りが味わいがあるのですが、債券市場におけるBEIで5年の数値を見ると0.5%だけど、それだけではなくて色々と見ますと(っていうのがインチキ臭いがそれは兎も角)1%程度だと。

『So we haven’t observed any decline on the medium- to long-term expectations.』

そ、そうなのか・・・・・・・・・

『Long-term expectations remain anchored at 2%. Other expectations remain anchored at the previous levels. Short-term expectations, indeed, have declined.』

ということで中長期のインフレ期待がアンカーされています(キリッ)という鉛筆舐め舐め要素を入れやすい話をして追加をしない言い訳にしている、というのはまあ冒頭のステートメント通りですし、それしか答えようがない次第ではあるのですが、まあそういう言い訳。

でですね、ちと話は脱線するのですが、ここでのドラギのおっちゃんの説明を見てて思ったのですが、先ほど申し上げたようにここの質疑では足元のHICP物価指数が0.4%増に留まるという点での質問であったにも関わらず、インフレリンカーの5年BEIの話というやや説明上都合のよろしくないネタを自ら持ち出している訳で、これはドラギのおっちゃんが余裕綽々モードなので都合の悪い数値の話も平然と持ち出しているのか、それともおっちゃん本当は追加緩和をやりたいけど理事会的には許さんと特にドイツの石頭辺りが文句垂れるので微妙にこういう数値も交えながら説明をしているのかというのが良く判らん所ではありますな。

まあ普通に余裕綽々モードなんじゃネーノ(恐らくTLTROがどどーんと出た所でドヤる積りで余裕ぶっかましているのではと妄想)とは思いますが、一方で東洋のとある島国の中央銀行では「ハードデータが弱いですが」という質問に対して直接説明しないでああでもないこうでも無いと言いながら自分の都合の良い数字だけここぞとばかりに並べて説明しているという事案があるとの噂もございまして、ドラギのおっちゃんのこの余裕綽々っぷりと比較すると益々味わいというのを感じるのでありました。


その後の質問も中々手厳しい、つーかまあ当初と違いまして最近のドラギ会見は記者のツッコミがいい感じで無慈悲な砲撃になっておりますな。

『Question:(前半割愛) My second question is on inflation. The ECB staff forecasts have been persistently too optimistic on the inflation outlook.』

「persistently too optimistic」ワロタ。

『What considerations have you given to reassessing how these forecasts are being made, to get them more accurate in the future? And perhaps related to that, how big are the risks that we will see another downgrade of ECB staff inflation forecasts in September?』

何という無慈悲な質問、というかそらまあ経済調査スタッフがエコノミスト的にピュアな予想をしようと致しましても政策企画(以下自粛)。

『Draghi: (前半割愛)On the second question, we’ll certainly keep in mind your suggestion. And our staff is continuously improving, and we are really worried and we want to take action on this. And we’re very well aware.』

仰せの事は我々も充分に承知しておりまして今後とも改善を図りたいと存じますということですか。

『But one has to understand one thing, that the ECB was not alone in overestimating inflation.』

物価見通しに対して下振れていますが物価見通しが強かったのはワシらだけではないという言い訳ワロタ。

『And to some extent, as I’ve said many times, much of the fact that inflation has been lower than estimated and expected was due, first, to energy prices and food prices, until the third quarter of 2012 and, second, to the exchange rate developments thereafter.』

ということでエネルギー価格要因と為替要因が効いているという話をしておりまして、ここで為替要因の話をしているのがそらまあそうですけどわざわざ為替の話をしている辺りも味わいがありますな、うんうん。


・相対物価の域内の調整に関する考察とか、もう少し長い目で見た場合の相対物価調整とかの話

この質疑はアタクシ的にオモロカッタので引用。

『Question: Maybe following up your statement before on inflation again, does the ECB expect that in the short to medium term there will be inflation rates going more apart within European countries? Take Germany. Inflation should rise maybe above the target of 2 %, and this is supported by higher wages you heard the debate in the last days, while other countries in the south or periphery in times of very low inflation, so good deflation, maybe, are tied with ongoing reforms. So this divergence is complicated maybe for you to interpret, but, is this an expectation of the ECB, as well?(後半割愛、というか2番目の質問に答えてない気がする)』

ECBは物価目標出しているけど域内の国での違いがあるとかの問題ってどうなのという質問でして・・・・・

『Draghi: On the first part, I think your question reveals the complexity of the issue. We have countries where inflation will have to go above 2 %. And certainly the aim of the ECB, the objective of the ECB and the way price stability has been interpreted by the Governing Council of the ECB all throughout its existence, almost all throughout its existence, is that inflation should go at below but close to 2 %, and we are far from that objective.』

全体としての2%というのが目標ですので・・・・・・・・

『So any development that would bring this inflation rate towards the 2 % is welcome. But it’s not the ECB business to determine wages for the world, for the euro area, or for single countries. The wage determination is in the hands of social partners.』

賃金動向の話はECBでは如何ともし難いというのはまあそうですな。

『For the other countries, the countries that now are having deflation, the key question -- there’s no doubt that this sort of negative growth in prices depends on the lack of demand, but also on relative price adjustment. And then the key question is, is this going to be a short-term affair? In which case, it would not be a source of deflation.』

域内の各国の物価動向が異なっている点については、「域内における相対価格の調整」であれば問題が無いのだが、そうでないのであれば問題なのでそこの見極めが重要で、足元で起きている現象は域内における相対価格の調整であるとの評価ですな。

『Or is it going to last a long time? And it can last a long time for at least two reasons. One is that there are self-fulfilling expectations of continuously falling prices, which lead people to postpone their expenditure plans and, therefore, cause further fall in prices.』

で、足元の物価上昇鈍化に関してインフレ期待の低下から自己実現的にデフレ的な均衡になるような状態かという点を確認するのも重要ですと。

『We are not seeing this sort of phenomenon at the present time. But there is another reason. What we define by a relative price adjustment often is not a relative price adjustment within certain sectors, where simply people just change prices in their catalogues. Often, it reflects a different reality where entire sectors are going to be annihilated, are going to be destroyed, and new productions have to take place, new sectors have to start their activity.』

でまあそのような状況にはなっていませんと。で、その後ああだこうだと話をしていますが、要するに物価の変化は一つの財やサービスの特定カテゴリー相対価格の変化だけではなくて、消費や生産の変化による財やサービス消費の構成変化によるものもありますぞなという話をしておられるようで。

『And this is a much longer process that doesn’t have to do necessarily much with expectations and self-fulfilling expectations, but it takes -- it may take a long time, because it takes changes -- it takes movements of factors, people from one sector to another, and we may well observe this phenomenon in the so-called deflation countries.』

ほほうという感じですが、このような構成変化が生じる中で物価が低いという状態がデフレ国と言われる国で観測されますという話ですからジャパンの話なのかスイスの話なのか知りませんが、この辺りに関するもうちょっと突っ込んだ説明を一度お願いしたい物ですなあと思ったのでネタにした次第。

『On the other point you made about what the ECB is doing, well, I listed before why the fundamentals for a weaker exchange rate are now better than they were a few months ago. I think this is quite relevant. And I listed a series of factors that I think I should not repeat now.』

為替レートネタキタコレ。

『But the main factor is that basically monetary policies in Europe and in the United States and in UK are going to stay divergent, are on diverging path for a long time, and a much longer time in Europe than elsewhere so I think that’s the point.』

金融政策の方向性がBOEやFEDの出口モードと違うからユーロが下がるんですね分かります、ってどこかの黒い総裁も似た話をこの前していますな、あれは聞かれて答えているので聞かれもしないで答えるのとは違うけど。

でまあここの金融政策の方向性がどうのこうのの部分がネタとしては市場ネタとしてはクローズアップされていましたが、それよりも相対価格の調整がどうのこうのの話の方がアタクシ的にはもうちょっとどういう話なのかをお伺いしたいという所ではございました。

『But, again, let’s not forget: the creation of better financial or tax conditions are a necessary, but not a sufficient condition for restoring growth.』

ふーんという所ですがもしかしたらこれが引用割愛した2番目の質問に対する答えかも知れん。この先に3番目の質問に対する答えがありますが引用割愛します(一行コメントですが)。

#ということで超虫干しネタ恐縮でした




2014/08/19

お題「市場関連メモ/虫干しネタですいません先々週のECB総裁会見ネタ」

さすがにこれはウィンドウズアップデートを確認しましたですよ・・・・・・・・
http://news.mynavi.jp/news/2014/08/18/157/
8月のWindows更新プログラム、「問題ない場合でも削除を推奨」 - 日本MS [2014/08/18]

この辺もご参照あれ。
http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2014/08/16/2982791-knownissue3.aspx
【リリース後に確認された問題】2014 年 8 月 13 日公開の更新プログラムの適用により問題が発生する場合がある

『2014 年 8 月 13 日公開の更新プログラムの適用により問題が発生する場合があることが確認され、サポート技術情報 2982791 「MS14-045: Description of the security update for kernel-mode drivers: August 12, 2014」が更新されました。日本版のサポート技術情報は数日内に公開いたしますが、下記のStop 0X50 エラーの問題に遭遇されている方のために、本ブログで復旧方法をご案内します。』(上記URLより)


○市場関連メモ雑談

・業態別当座預金残高

もはや最近は多すぎでアレですが。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

先月積み期間の平残ですが、都銀の超過準備が増えていて(+5.2兆円)他の超過準備が軒並み減っている(トータルの超過準備は+2.3兆円、トータルの当座預金残高+0.4兆円、差分は概ね証券会社要因で証券は当座預金残高が2.2兆円減っている)はというのがやや味わいのある所。

他の超過準備が減っているのは6月積み期間に四半期お馴染みの国債償還要因があるから(もう一つは6月積み最終の所で年金定時払いがあるので7月積み期間に預金が増えるというのがあるかな?)という話ですが、当然ながら自然体の場合は都銀も同様に減るという所になるのですが、結論として他の業態が自然体で国債償還要因で減る中で都銀が日銀のMB増額の為にヘコヘコ実施している買入オペにせっせと参加(またの名を協力とも言うが)した結果を反映していますなという解釈で宜しいでしょうかねえ(・∀・)。

そらまあ他の業態が日銀オペに対して売る物が無いという状態だったら玉無し芳一だし流動性は無いし金利はアガランチ会長になる罠とorzorzorz。


・1年TB入札など

1年TB入札がありましたが、最早この商品日銀オペ打ち込み銘柄なので普通に金利商品だと思って購入するサイドからしたら利回り形成が変態仮面なので手を出せんわ。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140818.htm

(3)募入最低価格 99円98銭0厘 (募入最高利回り) (0.0200%)
(4)募入最低価格における案分比率 80.9033%
(5)募入平均価格 99円98銭2厘 (募入平均利回り) (0.0180%)

ということで、まあ1年物の利付国債に関してもそらまあ玉無芳一ですからレートはだいぶ水準訂正されてきましたけど、そうは言いましても同じ期間の利付よりも利回り半分以下とか誠にこうお洒落なアレになっておりまして実にケシカラン。

でまあケシカランのは兎も角として、今回の入札に関しては前月に行われた1年物TBよりはまあだいぶマシでして、何せ先月の場合は1.5bpの一本値で落札されるわ2.5兆円の発行に対していわゆる不明玉が2.3兆円だわというオペ狙いだか何だか知らんけどハチャメチャな入札になっておりましたが、今回は一応テールは存在するし、いわゆる不明玉も1.3兆円となっておりまして、さすがに先週金曜の短国買入絞った(というか結果および金曜のGCレートや短国現先レートから見ると絞らないとあじゃぱーになっていたと思うが)のがちったあ効いたのかどうかは知らんけどまあ前回よりはマシという話ですかそうですか。


ところでCP買入オペですが。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140818.htm
CP等買入 10,349 4,431 0.092 0.094 52.7

前回のCP買入(8/5実施)が今回と同じ4500億円の買入予定で12,475/4,268で平均が9.3bpで足切りが9.2bpということでほぼ前回並みの買入になっております。でまあこのCPちゃんですけれども短国の金利が下がって利付の金利も若干下がっているのですが、一方であまり金利がサガランチ会長になっているのがほほーという所というのは毎度悪態を申し上げておりますように日銀の介入度合いが少ないぶんだけこっちの方が価格発見機能がまだワークしているという事ではございますが、このCP市場ちゃんに関しては別のオモシロ現象も。

というのはですな、これまた日銀短国買入の影響でもあるのですけれども、短国買入のペースから考えると9月になりますと期末要因も含めまして(先ほどの業態別当座預金残高を見ますと日銀当座預金取引先にはもう売る国債が無いんでしょうなあという推測が出来る訳でなおの事)短国の需給が逼迫するでしょう(四半期国債償還要因でキャッシュも余りますし)という想定はまあ普通に考えると誰でも出来る話でして、そうなりますと特に期末近辺、まあその前の国債償還のある20日(今回は22日)渡しの辺りからかもしれませんが、玉無芳一ヒャッハーという事になるのが想定されまして、下手すると本当に玉が無くて死ぬという可能性も気にしないといかんぞなという事になる訳です。そ〜なりますと9月末に足が来るCP(決算タイミングにバランスシート政策上CPの償還を持ってきてCP残を落とす発行体さんは普通にいますので当然そういうCPは存在する)は償還時に再運用するのが中々マズーな事になりますので、(そこで運用終了なら問題ないですけど)再投資前提で考えた場合には再投資リスクを意識すると買えませんがな銘柄になる訳ですよ。でまあそんな事を皆さん考えた結果なのか、9月後半から月末に足が来るCPが嫌われてやや金利が上昇の香りという風情になっておりまして中々味わいがありますです、はい。


・10年0.495%引けキタコレでヒャッハーと書こうと思ったのですが

昨日の債券市場は週末に欧米でリスクオフ(という割に株が下がっていないので本当にリスクオフなのかいな単なる流動性相場ヒャッハーじゃねえのという疑惑もあるのだがががが)で金利が下がって戻ってきたからという事で寄りから先物は146.20越え(21銭寄付き)だわ10年は0.495%だわということで、金曜もまあ0.495%マークしていましたけど金曜の場合はとりあえず記念に付けてみたという感じでして、昨日の場合は明確に0.495%がビットサイドだったのでキタコレ!な所。

とは言いましても、昨日の場合は輪番は無いわ入札は無いわですし、お盆ウィーク明けの月曜だったので月曜相場様炸裂で先物の高安は4銭だわ売買は1万枚を盛大に下回るわという閑散相場にも程がある状況でして、何ちゅうか戻り高値キタコレとかやっているというのに盛り上がらない事この上ない相場展開なのがまあ実に残念。

まあ何ですな、昨日の場合はまだお盆ウィーク明けでしたので、そこで偉い人が登場して「おお0.5%割れか〜円債儲かって良かったなあ」とそれまでの発言が無かったことになる攻撃が炸裂するので今日の20年国債入札結果を受けた辺りから段々こうマズーな雰囲気(なお売る程ロングの方におかれましてはマズーでもなんでもありませんので念の為申し添えます^^)になってくるということでしょうか判りません。ちなみにどうでも良いですが、ここで「何で買っていないんだ」と言う偉い人はまだ修業が足りなくて、達人はそのような指示めいた事は言わずに「金利が下がっているんだから債券部門は儲かっていて良かったな」という風に言うのがコツであると・・・・おやこんな時間に何で宅配便が来るんでしょうか??


○すっかりスルーしておりましたがドラギ先生の落語鑑賞会

出たばっかの金曜に冒頭ステートメントだけやったのにすっかりスルーな先々週のネタですどうもすいませんすいません。つーか海外ネタ追いつくのが中々しんどいのだが何か作戦を練らないと(大汗)。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 7 August 2014

・冒頭のステートメントでは変わった話は無かったですの

でまあ冒頭ステートメントの本当に冒頭部分だけ先々週の金曜に(すいません)ネタにしましたけど、経済と物価の話の部分ってまあ前回6月の会見での説明を踏襲していますなという感じです。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. In the first quarter of this year euro area real GDP rose by 0.2%, quarter on quarter. With regard to the second quarter, monthly indicators have been somewhat volatile, partly reflecting technical factors. Overall, recent information, including survey data available for July, remains consistent with our expectation of a continued moderate and uneven recovery of the euro area economy.』

てなわけで、物価が足元弱い事に関してはテクニカルな問題ですよという話で、先行きの回復に関しては冒頭の所の一番最初にもあったのですが、「moderate and uneven」という言い方をしていまして、前回の説明だと「very gradual recovery」というような表現だったのに対して「uneven」という文言が入ったのが特色で、それ以外はあまり前回と変わった話はないです。念の為引用します。

『Looking ahead, domestic demand should be supported by a number of factors, including the accommodative monetary policy stance and the ongoing improvements in financial conditions. In addition, the progress made in fiscal consolidation and structural reforms, as well as gains in real disposable income, should make a positive contribution to economic growth. Furthermore, demand for exports should benefit from the ongoing global recovery.』

毎回の説明ですが物価が弱い件について「実質可処分所得の増大」とポジティブネタにするのは政策ロジック的に見た場合にどうなのかと思うのだが毎度言ってますな。

『However, although labour markets have shown some further signs of improvement, unemployment remains high in the euro area and, overall, unutilised capacity continues to be sizeable. Moreover, the annual rate of change of MFI loans to the private sector remained negative in June and the necessary balance sheet adjustments in the public and private sectors are likely to continue to dampen the pace of the economic recovery.』

でまあ労働市場が弱いだのローンが弱いだのバランスシート調整が途上だのという経済の抑制要因の話もこれまた毎度同じです。

リスク認識に関しても同じでして。

『The risks surrounding the economic outlook for the euro area remain on the downside. In particular, heightened geopolitical risks, as well as developments in emerging market economies and global financial markets, may have the potential to affect economic conditions negatively, including through effects on energy prices and global demand for euro area products. A further downside risk relates to insufficient structural reforms in euro area countries, as well as weaker than expected domestic demand.』

地政学リスクも含めて前月の説明とほぼ同じで地政学リスクと新興国た金融市場に関する部分の接続詞が「and」から「as well as」になった位。


物価に関しても変わらなくてですね。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.4% in July 2014, after 0.5% in June. This reflects primarily lower energy price inflation, while the other main components of the HICP remained broadly unchanged . On the basis of current information, annual HICP inflation is expected to remain at low levels over the coming months, before increasing gradually during 2015 and 2016. Meanwhile, inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』

足元は弱いですがエネルギー価格とかの要因でメインの部分は変わっていませんので無問題だよ先行きは上昇するよああそれからインフレ期待はアンカーされてるから無問題という毎度の説明でして・・・・・・

『The Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook for price developments as limited and broadly balanced over the medium term. In this context, we will closely monitor the possible repercussions of heightened geopolitical risks and exchange rate developments.』

ということで、物価の上下リスクに関してはバランスしている上に「as limited」ですよというのも前月もいってますが、まあここの認識も同じでして、そらまあこの前金融政策いじったばかりですからそういうしかないですなあという所でもあります。

でまあその他の話も事実関連の計数に関しては兎も角として、内容は前月と同じ話になっています。

ということで質疑応答。

・一発目の質疑からまずワロタ

『Question: You were saying that the TLTROs would enhance our monetary policy stance. What do you exactly mean by that? And my second question is whether there is downside risk to your economic scenario having intensified, looking at the situation in Russia and the Ukraine?』

ということですが、まあ後半の地政学リスクの話はさておきまして、前半の質問が何とも(^^)。

『Draghi: Indeed, the TLTROs will enhance our monetary policy stance in a sense because they implement a significant expansion in credit.』

え????そ、そうなんですか?????????????

『They’re not really like the LTROs emergency funding. But these TLTROs are funding, they are to be used to lend to the real economy, to the non-financial companies, and especially to the SMEs.』

LTROは単なる流動性供給だがTLTROは貸出を伸ばすものである(キリッ)って話ですけど、あーた低利のファンディングだったら別に市場調達で特段問題なく出来るのであって、「よーしパパファンディングが付くからドンドン貸出基準を緩めちゃうぞー」とは成らないと思うのですが。そらまあ貸出金利が下がったりというような効果が出るかもしれないけど貸出がこれで伸びるというのはちょっと・・・・・・・・やるなら金融機関の資産査定をユルユルにすればこうかはばつぐんだ!だと思うのですけど。

『We do expect a sizeable take-up. During the last press conference I think I mentioned an upper ceiling. Now, market estimates and indications by individual banks would seem to say that, overall - so not only in the first two tranches, but also in the periodic operations - a take-up between ユーロ450 billion and ユーロ850 billion should materialise.』

ということで4500億から8500億ユーロとはずいぶんレンジがありますがまあそんだけ出るんだとよ。

『On the other hand, it’s quite understandable because these are funds that are at pretty long-term maturity with very, very attractive financial conditions.』

ふーん。

『Also, let me add that the indications coming from the bank lending survey that, as I just said, show a gradual-show actually I think for the first time a pickup in demand for loans and a gradual lessening of tightness on the supply side, would seem to indicate that these TLTROs will actually happen at the right time when there is demand for them.』

『So in this sense they are, not only enhancing our monetary policy stance, but they actually would give confirmation to our forward guidance.(以下は後半部分の回答なので割愛)』

なんちゅう説明やと思うのですが、では冒頭説明で(めんどいので引用割愛しましたが)ローンが伸びていないという話をしている訳で、本当にTLTROをやるとローンが盛大に伸びるのかいなというとだいぶ怪しいなと思いますがまあシャーナイナイですな。


・ABSやるやる詐欺に関しての質疑

『Question:(前半は地政学リスクが拡大したら追加緩和するのかという質問ですが割愛) And talking about the ABS purchase plan, you’ve often said that this is not something that the ECB can do alone - there are many actors, many institutions in Brussels and in Basel who are looking after that. But what can the ECB do on its own if it needs to act on a relatively short timeframe?』

ABS買入に関しては関係者が多いとか言ってるの言い訳だろうという事ですねわかります。

『Draghi:(前半割愛)On the ABS, you’re right. I said that the ABS final action will depend on the action of many other actors. First of all, we have intensified preparations on the ABS, the various committees of the ECB have worked, and are working, on that. And in the last press conference I kind of listed all the areas that need work.』

「you’re right」と言いながら正しいと言ってるのは元々の言い訳に関する部分を「正しい」と言っている辺りが実にこうインチキ話法っぽくていいですね!!!

『I would only add that we are proceedings with our work regardless of what the timing is for possible regulatory changes in this area.』

どう見てもやるやる詐欺です本当にありがとうございました。

『And the other news is that we are about to hire - I can’t disclose any names, because the thing isn’t finished yet - but we are about to hire a consultant who will help us to design this programme in the best possible fashion.』

制度デザインするコンサルタントを採用したとかナンジャソラという感じで直ぐに実施する気ねえだろという感じですが。

『And in so doing, it would lead to a reconstruction of a market that has disappeared with the crisis, also for good reasons. That’s why we are focusing our efforts on a market which would trade products that are, as I said on other occasions, simple, transparent and real. Simple, transparent and real. Simple means readable. Transparent means that you can actually go through and price them well. And real means that they are not going to be a sausage full of derivatives, as said in a somewhat more popular language.』

ということで市場の再育成(リーマンショックでコケたから)とか微妙な話もしていますが、これは最後の方の質疑で更に煙巻きモードの答えになっていく伏線のような気がする(^^)。

で、この質問の次の人も突っ込む。

『Question:(前半割愛、というかそれはそれでオモロイので後ほど)And just to get back on the ABS question, you gave some more details about the preparatory work, can you give us a sense, will this actually lead to ABS purchases? Or is this something that you will be talking about, consulting about, and may not actually lead to the ECB buying any of these things? Or are you confident that this will actually result in an ABS purchase programme? And do you have any better sense when that might be?』

ニヤニヤ。

『Draghi: The second question is, in a sense, either strange or easy to answer.』

ほえ?

『If we were to work on things that don’t happen, we wouldn’t spend our time well.』

仮定法過去キタコレ。

『So the work we are doing is with the expectation that we will take action in this field. Let me add that a final decision hasn’t been taken yet. So the final decision is to stand ready with a programme that would help to strengthen our accommodative monetary policy stance, injecting money into the real economy.』

結局威勢の良い言い方をしているだけで具体的な話は無しと。

でまあ他にもツッコミが来る来る。実は前に引用した質問とこの質問の間にもう一つテクニカルな質問としてABS買入に関する質疑があったのですがそこは割愛しまして。

『Question: I just want to follow up on the question on ABS purchases and the first answer you gave on this topic, because it seems to suggest that such purchases are already a done deal and that it’s not a question of if, but only a question of when and how. Is that correct? (後半割愛)』

『Draghi:(前半割愛)On the other point about ABS, well, in a sense, you know, ABS is just a name. And we know that the traditional ABS that were being traded before the crisis had many -- to be charitable -- many imperfections. And we certainly would not and could not recreate that sort of market, because it was considered -- some of these imperfections were actually considered one of the major roots or the major causes of the financial crisis. So our effort isn’t simple, because we want to recreate a market that is limited to a product that is -- as I said before -- simple, transparent and real.』

『Second, this market can actually -- we do -- I mean, Bank of England and ourselves believe that this market can restart, but the economics of this market must work. And what is now one of the major impediments to this is the present regulation. Having said that, no matter what regulators will be doing, we want to be ready. And that’s why we’ve intensified preparation.』

ということで、ダンディールだよなという質問に対しては「いやいや我々の政策の目的は実体経済に資金を回す事(=貸出を拡大させることという意味なんでしょ)ですからそれに沿った適切な政策のデザインが必要でしてねえ」みたいな感じでああでもないこうでもないと説明していく所が実にこう味わいがあるなあという感じです。


・なお他のトピックは「物価動向」と「地政学リスク」とちょっとだけポルトガルでありました

てな感じで質疑は進行していったのですが、今回の質疑応答って質疑応答の中でABS買入の話と地政学リスクの話と物価がアガランチ会長な話に思いっきり話が集中していまして(最初のだけはTLTROが何で金融政策スタンスを強化するのかという中々味わいのある質問でしたが)、特にABSやるやる詐欺の所は微妙に面白かったので先にネタにしたという所ですが、他のトピックに関しては明日にでも続きをする所存(と思います、大汗)。



2014/08/18

お題「フィッシャー副議長のマクロプルーデンスンに関する講演部分(しつこくネタを引っ張る)」

ほほう。
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014081701001490.html
石破氏が安保相受諾を検討 幹事長に岸田氏ら浮上
2014/08/18 02:00 【共同通信】

本当に法制担当に向いているのか謎なんですけどねえ・・・・・・・・・

○まずは各種雑談系

・短国買入2兆円も応札は少ないですな

金曜のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140815.htm
国庫短期証券買入 20,000 2014年8月19日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年8月19日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年8月19日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年8月19日

ということで短国買入は2兆円のオファーになりまして、まあ固定オペのロールも進捗しているので今月は馬鹿買いしなくても良いというか、その前に買入をやり過ぎてしまったので市場に玉が無いのでちったあ考慮しましたかねという所で。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140815.htm
国庫短期証券買入 36,082 20,003 -0.001 0.001 76.1
国債買入(残存期間1年超3年以下) 14,271 3,005 0.003 0.004 14.8
国債買入(残存期間3年超5年以下) 9,885 2,002 0.006 0.006 100.0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 11,321 4,008 -0.003 -0.002 41.9

結果は応札3.6兆円で平均は1糸甘ですけど足切りは1糸強になっていて、2兆円の買入とやや絞り気味にしては強めの落札結果という事ですから玉が無いんですなという所です。

まあ今日1年TBの入札があって、本命(?)はそっちの買入になりますので、今週の方が重要でその前に変に玉をスッカラカンにしたくないという所で、どうせ放置していても1年TB入札が強くなるので玉をカラにして激強入札にしたくなかったんですかそうですか。


・追加緩和ネタがそろそろ復活と思えば

まあニュースベンダーもネタなしで困っているんでしょうけど。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NABWLR6K50XU01.html
日銀が14年度成長率を下方修正へ、4回連続−追加緩和の公算も (1)
更新日時: 2014/08/15 14:12 JST

『8月15日(ブルームバーグ):日本銀行は2014年度の実質国内総生産(GDP)見通しを4回連続で下方修正する可能性が浮上している。期待していた輸出の回復が遅れていることで、消費税率引き上げ後の個人消費の落ち込みをカバーできず、4−6月の実質成長率が大幅に落ち込んだことが背景にある。関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

ついこの前のブルームバーグが出しているBOJウォッチャー(とも思えないのが結構混入しているけど)サーベイですと追加緩和なしが遂に最多とかになっていましたが、足元のハードデータが弱いので早速こういう流れ来ましたかと思ったのですが、何ぼ何でも「関係者への取材」という記事の中にいる「関係者」がどう見ても市場の関係者しかいないという記事って何ですねんと思ったらこの記事の英語版のヘッドラインは『BOJ Officilals Said・・・・』ってなっていたのにはワロタです。

まあ何ですな、経済データに関してはここから7−9月期に持ち直すという話になっていますし、大体からして7−9自体は4−6が弱いから下駄もあって前期比で見たらまあそこそこの数字になるでしょうという事で、そういう中で中々追加緩和というのって難しいでしょうし、大体からして消費税増税の影響で追加緩和とかしたら再増税は何で行うのですかという話になるでしょうから、まー普通に考えると意地でも追加は出来なくて、多分追加緩和自体は難しいと思うのですよね。ただまあ一方でこういうネタがそろそろまた出てくるとなりますと、ここから10月に向けて追加緩和クレクレ隊が息を吹き返すかも知れませんねと思ったのでメモメモ。


・まあその消費増税ですが

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140814-00007249-wsj-int
増税は消費者に「大きな打撃」=浜田内閣官房参与
ウォール・ストリート・ジャーナル 8月14日(木)10時2分配信

この前は安倍ちゃんどこぞの先生と焼肉をご会食されておられましたが、浜田先生もこのような話になっていて、いやあの財政散々吹かして消費税引き上げ前の駆け込み需要で大いに持ち上がった部分の話は金融緩和の効果で反動減は消費税増税ガーとか、かつて麿日銀時代には悪いのは全部金融政策のせいになっていた麿批判の真逆やってるだけじゃないですかと小一時間問い詰めたい所ではあるのですが、まあ消費税増税の影響ガーの話がこうホイホイと出てくる中で安倍ちゃんどうするんでしょうなあというのが若干気にはなっている所。

ま、普通に考えると再増税をやらない訳にも行かないのでしょうけれども、徐々にまた怪しげな雰囲気を漂わせつつあるということで、さっきの追加緩和クレクレも含めまして気になる所なのでメモメモ。

しかしまあ何ですな、

http://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」
【第15回】 2013年1月20日

『その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます。』(上記URLより)

消費税増税して法人減税とかは行っている訳ですから、そういう意味では「雇用されている人々が実質賃金の面では少しずつ我慢」というのって物価上昇も含めて今まさに進行している話なのですけれども、実際にやってみたら「増税は消費者に大きな打撃」っていやあのその先生「実験してみたら想定の効果が出ませんでしたねえ」と今更言われましても困るんですけど・・・・・・・・・・



○なおもしつこくフィッシャー副議長講演ネタである(その3)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf

Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the Swedish
Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead

金曜日に飛ばした金融政策と金融監督関連の部分である。まあ今回は多分フィッシャーさん初回みたいな感じなので全般が長いという話だと思うの。PDF版だと11ページ目から18ページ目になります。

・金融監督の話は仰せご尤もだが国際的協調を更に進めたいという部分は少々気になる

『The Post-Crisis Regulatory and Supervisory Environment』という所は金融監督(プルーデンス)関連のお話です。

『The severity of the Great Recession and its ongoing fallout, importantly including its influence on public opinion, has heightened the focus on the challenge of avoiding another such crisis.』

今般の金融危機のようなものを再発させない為にはどうするかという話。

『Indeed, financial sector reform proposals by groups such as the Basel Committee on Banking Supervision, the Financial Stability Board, and the Group of Thirty were circulating within a few months of the Lehman Brothers' failure. Since then, policymakers, acting in their own countries and in coordination with others, have enacted financial sector regulatory reforms on a scale and scope not seen since the Great Depression.』

『Designing, implementing, and understanding the consequences of these important reforms are major challenges for policymakers in a post-Global Financial Crisis world. Most of the initial proposals incorporated some or most of the following goals: 』

つーことでプルーデンス政策運営の9つの基本的な理念。

『1.To strengthen the stability and robustness of financial firms, "with particular emphasis on standards for governance, risk management, capital and liquidity";
2.To strengthen the quality and effectiveness of prudential regulation and supervision, with higher standards for systemically important firms;
3.To build the capacity for undertaking effective macroprudential regulation and supervision; 4.To develop suitable resolution regimes for financial institutions;
5.To strengthen the infrastructure of financial markets, including markets for derivative transactions; 6.To improve compensation practices in financial institutions;
7.To strengthen international coordination of regulation and supervision, particularly with regard
to the regulation and resolution of global systemically important financial institutions, later known as G-SIFIs;
8.To better monitor risks within the shadow banking system, and find ways of dealing with them; and
9.To improve the performance of credit rating agencies, which were deeply involved in the collapse of markets for collateralized and securitized lending instruments, especially those based on mortgage finance. 』

ということで、金融機関の資本バッファーの拡大、監督の強化、流動性リスクのより厳格な管理、デリバティブ取引の集中清算、システム的に重要な金融機関の監督強化、破たん処理の確立、国際的な監督の共通化、シャドウバンキングなどの監督強化、外部格付けの適切な運用などの話で、まあこれ自体は以前から言われている話ですけどちょうどまとまっているので引用という所で。

で、これらの監督をどうのこうのという話について米国の取り組みについて具体的に色々とありまして、このような取り組みがという説明はこれはこれで面白いのですが長くなるので飛ばして最後の所を引用しておきます。

『In summary, considerable progress has been made in strengthening bank capital and liquidity; in improving the quality and effectiveness of prudential regulation and supervision; in developing suitable resolution regimes for financial institutions; and in strengthening the infrastructure for the clearing and trading of derivative contracts.』

金融機関の資本や流動性向上、金融監督の機能向上、金融機関の破綻処理方法、デリバティブ取引のクリアリングなどに関しての進展は大幅に進んだとな。

『It is clear that further progress is needed with respect to goals 6-9, relating respectively to: improving compensation practices; strengthening international coordination, especially with regard to the resolution and regulation of G-SIFIs; finding ways of dealing with the shadow banking system; and improving the quality of credit rating agencies.』

でまあ今後の課題は国際的な協調、特に重要な金融機関の破綻法制やシャドウバンキング規制、格付け会社の規制などという話になっています。

・・・・・・・でですね、まあそれはフィッシャーさん的にはそうですかという話ではあるのですが、現実問題として金融システムのありかたが違っている各国の事情を斟酌しないで「米国様がこういう規制監督をしているからおまえらもそうしろ」的な話が一部目に余る部分もあったりする訳でして、そもそも金融危機だってお前らのおイタが原因だろボケアホカスとは思うので、まあこの辺の話って仰ることは理屈としてはそうですかねえとは思いますが、国際的協調(または米国流の押し付け)を意識するあまり別の制度上の問題が生じそうな気がするんですよねえ。まあ杞憂だと良いですけど。

『That leaves aside the question of the capacity for effective macroprudential supervision, an issue we will take up as we begin to discuss the optimal conduct of monetary policy in the wake of the crisis, given the heightened attention of monetary policymakers to the importance of maintaining financial stability.』


・マクロプルーンデンスと金利政策に関してが次のネタですよ

で、次は「マクプル利上げという考えに対して」です。

『Issues Facing Monetary Policymakers in the Wake of the Crisis and Recession』というそのまんまの話ですが・・・・・・・・・・・・

・いきなり「フレキシブルインフレーションターゲット」の話

『Prior to the global financial crisis, a rough consensus had emerged among academics and monetary policymakers that best-practice for monetary policy was flexible inflation targeting.』

まあ一方でリジットなインフレ目標の話を思いっきり就任前にしていた置物が日本橋本石町に設置されてますけどね!!

『In the U.S., flexible inflation targeting is implied by the dual mandate given to the Fed, under which monetary policy is required to take into account deviations of both output and inflation from their target levels.』

これはオモロイというか、前半で米国の成長力が弱いという話をしながら金融政策的にはデュアルマンデートをフレキシブルインフレーションターゲットの文脈で説明するとは中々。

『But even in countries where the central bank officially targets only inflation, monetary policymakers in practice also aim to stabilize the real economy around some normal level or path.』

でまあ諸外国のインフレーションターゲットもフレキシブルインフレーションターゲットですよねと。


・量的緩和などの非伝統的政策について

『Much has changed in the world of central banking since the onset of the Great Recession. With short-term interest rates near zero, many central banks considerably expanded their balance sheets, for instance through large-scale purchases of assets or significant liquidity injections. They also engaged in forward guidance to put downward pressure on interest rates and support aggregate demand.』

ゼロ金利制約で資産買入や流動性供給、フォワードガイダンス導入などを行っていますと。

『I consider quantitative easing to have been largely successful, and that data dependent forward guidance consistent with the central bank's expectations of its future intentions can also be successful. But the use of these tools--particularly as reflected in the size of central bank balance sheets--will make the conduct of monetary policy more complicated during the recovery.』

で、量的緩和政策は効果を発揮しているが、景気回復時にはややこしい事にもなりますぞなと。

『In the United States, we have a number of tools to control short-term rates, despite the large level of reserves in the system. Raising the rate of interest paid on excess reserves should play a central role in the eventual normalization of short-term interest rates. An overnight reverse repo facility could also play a useful part in setting a floor under money market rates. With these and other possible tools, we will be able to raise rates and maintain them near their targeted level at the appropriate time.』

ということで、米国では利上げのツールもありますのでヘーキヘーキという話をしているのですが、良く良く考えると買入政策をしている際にはFRBって「バランスシートの負債サイド(大きさそのもの)ではなくて購入している資産の種類などに意味がある」という言い方をしていましたし、そのストック効果で金利を下げているという話をしていたのに、正常化局面においてはそのバランスシートの資産はそのままにして単に吸収オペで短期金利を引き上げるので無問題という話をしているのって、冷静に考えると緩和政策開始前と正常化プロセスでバランスシートの資産部分の扱いに矛盾が生じているのではないでしょうかと思うのですよね。

・・・・・って話って別に今に始まった訳ではないのですが、フィッシャーさんがこうやって懇切丁寧に説明してくれるもんだから却って気が付くというのが諸葛孔明の罠。



・マクロプルーデンス利上げに関して

『Another important question is whether monetary policymakers should alter their basic framework of flexible inflation targeting to take financial stability into account. My answer to that question is that the "flexible" part of flexible inflation targeting should include contributing to financial stability, provided that it aids in the attainment of the main goals of monetary policy.』

『The main goals in the United States are those of the dual mandate, maximum employment and stable prices; in other countries the main goal is stable prices or low inflation.』

ということですので、金融安定化に問題がある場合にフレキシブルターゲットはその金融安定化に含まれますよという話ではありますが・・・・・・・・・・・

『What can the central bank do when financial stability is threatened? If it has effective macroprudential tools at its disposal, it can deploy those. If it does not itself have the authority to use such tools, it can try to persuade those who do have the tools to use them. If no such tools are available in the economy, the central bank may have to consider whether to use monetary policy--that is, the interest rate--to deal with the threat of financial instability.』

ということで、まあ順当(?)に「まずは金融監督のツールを使う」という話になっています。

『At the moment in the U.S., though there may be some areas of concern, I do not think that financial stability concerns warrant deviating from our traditional focus on inflation and employment.』

でこれまた順当に米国の現状では、一部に確かにまあ懸念されるような分野も無い訳で無ないけど金融安定に問題があるとは思えませんと。

『A decision on whether to use the interest rate to deal with the threat of financial instability is always likely to be difficult--particularly in a small open economy, where raising the interest rate is likely to produce an unwanted exchange rate appreciation. So a critical question must be whether effective macroprudential policies are to be found in the country in question.』

で、マクプル利上げという判断は難しいのであって、クリティカルな質問はマクロプルーデンス的な監督政策(利上げ以外の)のツールがあるかという話ということですな。


・イスラエルのマクロプルーデンス成功の例

ということで・・・・・・・・

『I had some experience with these issues while at the Bank of Israel. In Israel, three separate regulators deal with different aspects of macroprudential policy, but there is no formal financial stability committee. The Bank of Israel is also the supervisor of banks, so has considerable power over housing finance, which essentially is available only from the banks. Starting in 2010, the Bank of Israel adopted several macroprudential measures to address rapidly rising house prices, including higher capital requirements and provisioning against mortgages; limits to the share of any housing financing package indexed to the short-term (central bank) interest rate to one-third of the total loan, with the remainder of the package having to be linked to either the five-year real or five-year nominal interest rate; and, on different occasions, limits to the loan-to-value (LTV) and payment-to-income (PTI) ratios. Additional precautionary measures were also implemented in the supervision of banks.』

ということで、イスラエルの例ですが、モーゲージに対する要求賦課資本を引き上げること、住宅ファイナンスのパッケージに対する短期金利連動ローンを3分の1に制限(残りは3年か5年金利にリンクする)すること、LTVがPTIの規制を実施することなどの銀行への規制を実施したそうな。

『The success of these policies was mixed. The limit of one-third on the share of any housing loan indexed to the short rate substantially raised the cost of housing finance and was the most successful of the measures. Increases in both the LTV and PTI ratios were moderately successful. Increasing capital charges and risk weights appeared to have little impact in practice.』

短期金利連動の制限は借入金利の引き上げを通じて効果があって、LTVとかの規制はやや効果があったものの、モーゲージの資本賦課引き上げはあまり効かなかったそうな。

『This experience led me to three conclusions on the effectiveness of macroprudential policies. First, we were very cautious in using these new tools because we did not have good estimates of their strength and effectiveness. Quite possibly, we should have acted more boldly on several occasions. Second, use of these tools is likely to be unpopular, for housing is a sensitive topic in almost every country. And third, coordination among different regulators and authorities can be complicated.』

でまあこの辺の結論がほうほうという感じですが、ツールの効果は使ってみないと判らないし、下手したら効きすぎる可能性もあるし、住宅問題は政治的にセンシティブだし、複数の監督機関にまたがる規制だと色々と難しい面があるとの教訓を出していまして、さて米国はどうなるんでしょうなあと思うのでした。

『The difficulty of coordinating among different independent regulators makes it likely that the degree to which macroprudential policies can be successful depends critically on the institutional setup of financial supervision in each country. Different countries have structured their macroprudential policymaking institutions in different ways. In the U.K., the Financial Policy Committee has been set up within the Bank of England, with the power to make financial policy--including macroprudential policy--decisions. In the U.S., the Financial Stability Oversight Council is a coordinating committee of the major regulators. And in Sweden, responsibility for macroprudential oversight and financial stability lies with the Financial Supervisory Authority, which is separate from the Riksbank.』

ここは各国の監督当局がどういう作り込みになっているかという話。


・で結局結論は「マクプルは監督ツール」である

『Overall, it is clear that we have much to learn about both the effectiveness of different macroprudential measures, and about the best structure of the regulatory system from the viewpoint of implementing strong and effective macroprudential supervision and regulation. And, while there may arise situations where monetary policy needs to be used to deal with potential financial instability, I believe that macroprudential policies will become an important complement to our traditional tools.』

ということで結局結論はマクロプルーデンスの政策ツールが重要ですという話で・・・・・・・・

『Learning how best to employ all of our potential policy tools, and arrive at a new set of best practices for monetary policy, is one of the key challenges facing economic policymakers.』

という結論になっていまして、あくまでも利上げではなくて金融監督ツールで金融不安定化に対処するという話になっていまして、まあ利上げでマクプルという話では無かったという事で。




2014/08/15

お題「フィッシャー副総裁講演ネタのつづき:「成長力が弱い」という認識なのでやはりハト全開/その他雑談」

まーた金融緩和ゴルディロックスヒャッハー相場かよ・・・・・・・・・・・

ところで「97年に緊縮しながら増税」とか仰せの方が某テレビの中におられますが、97年の消費税引き上げってネット増税になってないと思うのですががががが。

○短国入札とかの雑談

・3MTB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140814.htm

(3)募入最低価格 99円99銭3厘5毛(募入最高利回り)(0.0260%)
(4)募入最低価格における案分比率 39.3546%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘3毛(募入平均利回り)(0.0228%)

ということで昨日は3MTB入札(5年入札があったではないかというツッコミはしないように)がございましたが盛り上がるでも盛り下がるでもなく淡々と入札して日本相互証券の引けは0.025%という結果。玉が少な目になっている上にこちらの新発は前日の2Mと違って短国買入オペ日銀お買い上げゾーンになっておりますのでちょっと流れたかなという感じですかね良く判らんけど。

でまあ今日は短国買入でまたまた玉がお吸い上げという事になるのですねわかりますorz


・機械受注ェ・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0QK03Y20140814
UPDATE 2-機械受注6月戻り鈍く、7─9月緩やかな回復も設備投資に警戒感
2014年 08月 14日 11:24 JST

まあ一々予想よりも上がった下がったと一喜一憂する指標では無い(ぶれるから)という話はありますが、しかしまあGDPと言い機械受注と言いハードデータでろくでもないのが出てくる昨今でありまして、2年で2%大丈夫なんですかねえというのは益々アレになっておりますな。

ということで追加緩和ガーという話も出てくる訳ですが、そもそも論として「MB増やせば期待インフレが上がって実質金利が下がって消費や投資が喚起されるわフィリップスカーブがシフトアップするわウハウハですよ」という前提で当座預金残高を70兆から80兆円程度に拡大すれば直線理論によって期待インフレ率2%ですという岩田規久男大先生の置物理論が正しいんですかという考察が必要じゃないのかねという話ではないかと思うのですけどね。

いやまあ緩和的な金融政策はそれはそれで必要だと思いますけど、馬鹿みたいに国債買ってMBを積み上げるという処方箋の方に問題があって、まあ例えとして適切かどうか知らんけどインフルエンザになっているのに胃薬飲んで治そうとしているような努力をしていませんですかねという点を考えて頂きたいという所ですなと。

今の調子だと「MB270兆円で効かないなら340兆円にすれば良いじゃないか」という方向になるのが自明な訳ですけれども、インフルエンザなのに胃薬飲んで「効かないからもっと飲めば効くに違いない」とか言ってバンバン飲んだら最初は副作用でなくてもそのうちどこかでウェーッヘッヘッヘみたいな状態になってしまうリスクがあるんじゃネーノと思う訳でして、別にMB出すのが効かんとは言わないけど、方向性としてMBの量を出せば定量的に期待インフレがどうこうなるという話なのかという点はもうちょっと考えて頂きたい訳で、国債馬鹿買入が大して効かないけどまあ毒にはならないといかいうレベルなら別に良いのですけれども、どこかで閾値を超えて毒になるとその時って時既にお寿司の不可逆変化になるリスクがあるので、なんか考えて頂きたい物だと思いますが、リフレ派置物理論だとそもそも理論は世界標準の金融理論なので処方が間違っているなどという事はあり得ず、MBの積み上げが足りないからだと言い続けるという最強理論になっているので困りものという所です罠。

つーかですな、そもそも「物価安定目標」って現在の日銀の中心的な(というのはフォーキャストターゲット的な説明をしている野党審議委員の方々もいますので全員がそういう説明をしている訳ではない、という意味です)説明を概念的に言えば需給ギャップがゼロの時にCPIが2%レベルになるというフィリップスカーブになっているという話の筈で、需給ギャップがこれからプラスになるので目標達成に向けて物価が上昇しますよとか言いましてもそれだけではまだ目標達成になっていないような気がする訳で、2年で2%達成って大丈夫かねとしか申し上げようがないのですが、この辺の収拾も含め、恐らく10月展望レポートでは突っ張り続けるでしょうからその後の年末に向けてがオモシロ展開になるんでしょうなあという所です。

#何時の間にか全然違う話になっておりました


○フィッシャー副議長講演ネタの続き

クソ長いとか申しておりますが、まあこの講演、論点が非常に多くて読み物としては非常に面白いのですが、論点が多くて引用してネタにする方としてはしんどいとしか申し上げようがないです(笑)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf

Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the Swedish
Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead

・供給サイドに関しての話(続き):生産性の伸びは弱い状態が続きそうという見立て

一昨日の続きからなのですが、いきなり引用するとアレなのでまずは再掲。

『How much of this weakness on the supply side will turn out to be structural--perhaps contributing to a secular slowdown--and how much is temporary but longer-than-usual-lasting remains a crucial and open question.』

ということで、供給サイドについての弱さの中にどの程度の構造的要因があるのか、というのは重要かつまだ解明されていない問題であるという話をしておりまして、最初の部分と需要サイドの部分に関してはハト派全開というのは良く判ったのですが、ここで供給サイドの話が出てくる所から特色が出て来ます、という話を一昨日引用しまして、

・労働供給に関しては人口動態などの構造要因と景気サイクルの循環要因、長期失業による労働スキルの低下などの構造だが元は循環から来ている要因など、構造要因と循環要因の双方があります

・資本投下(設備投資)に関してはリセッション以降落ち込んだが、直近では金融環境が大いに緩和されており、経済成長自体はプラスで推移する中で中々投資が立ち上がらないという問題があり、長期期待成長などの低下という問題があるのではないか

てな話をしておりまして、供給サイドのもう一つの論点が生産性の話になっています。

『Turning next to productivity growth, Solow's famous result over fifty years ago was that over eighty percent of growth in output per hour in the period 1909-1949 came from technical change. Between 1964 and 2003 total factor productivity growth in the United States averaged around 1-1/2 percent, contributing to a 2 percent expansion per year in U.S. GDP per capita. At this rate, American standards of living would double every 35 years.』

『However, productivity growth in recent years has been disappointing. Over the past decade, U.S. total factor productivity growth declined to 1 percent, which some argue may represent the real norm for the U.S. economy. In this view, the long period of rapid productivity growth spurred by the technological innovations of the first and second Industrial Revolutions ended in the 1970s and the economy has continued at a lower productivity growth rate since then, except for a brief burst in the mid-1990s. In particular, these authors argue that the information technology (IT) revolution of the past several decades--including the diffusion of computers, the development of the internet, and improvements in telecommunications-was an anomaly and is unlikely to generate the productivity gains prompted by earlier innovations such as electrification and mass production. 』

ということで、だいぶ前からの話をしておりますが、米国の生産性向上のペースが近年鈍化しておりますという話で、この10年では生産性向上が年率1%程度にとどまっていてdisappointingという事で、過去は技術的な大きなイノベーションなどで生産性が向上していたがという指摘。

『Obviously, future productivity growth in the United States and in the world is yet to be determined.』

ということで、では先行き何らかのイノベーション的な話があるかというと米国でも世界でもまだそれは見つからないですなあという事で・・・・・・・・・・・

『Possibly we are moving into a period of slower productivity growth--but I for one continue to be amazed at the potential for improving the quality of the lives of most people in the world that the IT explosion has already revealed.』

>we are moving into a period of slower productivity growth
>we are moving into a period of slower productivity growth
>we are moving into a period of slower productivity growth

アイヤーとしか申し上げようがないですが、生産性が大きく伸びない時期に今はいるのではないかという話で、ただまあIT技術の進歩には期待をしたいようですな。

『Possibly, productivity could continue to rise in line with its long-term historical average. After all, as the experience of the 1990s shows, productivity cycles are extremely difficult to predict and, even considering the slowdown of the past decade, U.S. total factor productivity growth fluctuated around 1-1/2 percent in the postwar period. In addition, the recent weakness could reflect Reinhart-Rogoff cyclical factors associated with the financial crisis, and pent up improvements could be revealed once confidence returns.』

生産性の向上はロングタームのヒストリカルアベレージの1%程度で推移するでしょうという見通しで、ただまあ足元ではリセッションの影響もありますのでコンフィデンス回復したらペントアップとか戻るんじゃねえのという話も。

『Finally, fears about the end of productivity gains are based on evidence from the United States and other advanced economies. Globally, however, there is tremendous scope for productivity gains reflecting technological catch up, infrastructure investment, and the potential for human capital increases due to improvements in education and nutrition, and the incorporation and inclusion of women into the labor force. These gains should benefit not just the emerging market economies but also the rest of world more generally, including the United States.』

ということで生産性伸びないかもねという事ですが、一方で新興国の技術キャッチアップとかインフラ整備、先進国も含めてレーバーフォースの拡大(女性をより労働力化するとか)などによって生産性の向上が図られるかもしれませんという希望的な話をして生産性の話を締めていますが、まあ途中の説明を見ますと中々ハト派バリバリという内容になっていますな。

『At the end of the day, it remains difficult to disentangle the cyclical from the structural slowdowns in labor force, investment, and productivity. Adding to this uncertainty, as research done at the Fed and elsewhere highlights, the distinction between cyclical and structural is not always clear cut and there are real risks that cyclical slumps can become structural; it may also be possible to reverse or prevent declines from becoming permanent through expansive macroeconomic policies.』

ということで供給要因の見立てに関する纏め部分になってまいりますが、循環要因と構造要因の切り分けというのは難しいし、循環要因が構造要因になっていく(長期失業の問題などですな)という事もあり、しかも循環要因と構造要因では適切な対応が異なる部分があるという話で、この「循環要因と構造要因の切り分けは難しくて政策当局者の大きな課題である」という説明は一昨日引用した需要部分での話でも同じ指摘をしておりまして、この点についてフィッシャーさんは所謂どちらかという論には与しないという感じですな。

『But three things are for sure: first, the rate of growth of productivity is critical to the growth of output per capita; second, the rate of growth of productivity at the frontiers of knowledge is especially difficult to predict; and third, it is unwise to underestimate human ingenuity.』

つーことで、生産性の向上が重要で向上の努力が必要という話をしている訳ですが、ただまあここまでの説明を総合すると「米国経済の基調的な成長力はあまり強くなく、今後頑張って強くしていかないと低成長経済が続く恐れがある」というのがフィッシャーさんの認識でして、つまりフィッシャーさんの場合は利上げのタイミングについてはどうなるのかというのは微妙ですけれども(というのは、今回の講演では特段物価上ブレ懸念を示していませんが、潜在成長が弱い経済でインフレ期待がそれなりにあるのであれば、成長がちょっと上に振れると物価は上に跳ねやすくなるので、その点についてどういう認識をしているのかは示していないので判らんということです)、成長力があまり強くないという認識を示しているという事はどう考えても利上げサイクルはゆっくりですし、均衡金利水準も低い所にあるでしょうというハト派全開の経済見立ての披露でありました。


・金融政策とかマクロプルーデンスの話もかなり面白いのですが一旦飛ばして(来週ネタにします)最後の部分

途中については後でまたネタにしますが『Concluding Remarks』から。

『As we continue to move forward in the aftermath of the global financial crisis and the Great Recession, policymakers around the world are dealing with new challenges that these historically important events have raised.』

うむ。

『In addition to the difficulties of assessing the relative importance of cyclical (short-term) versus structural (long-term) factors affecting the global economy, and in thinking about how to return to higher output and productivity growth, policymakers are focusing on the uses of monetary policy in attaining the dual goals of maximum employment and stable prices and in maintaining financial stability. They need also to strengthen financial sector regulation and supervision to reduce the probability of another crisis.』

でまあ最後の一文の所は本日飛ばした部分になりますのでさて置きまして、纏めの所でもこの循環と構造の話をしている訳でして、フィッシャーさんの思いを感じるという所ですな。

『At the same time, and although I earlier foreswore discussion of fiscal policy, it is clear that fiscal policies can be used both to increase growth and to deal with potential problems of financial stability. 』

ということで財政政策の役割も言及していて、まあ要するに構造要因に関して金融政策で処方というのは処方が違うのでという事でしょうな。うんうん。




2014/08/14

お題「GDPとか市場関連雑談/7月会合議事要旨を鑑賞」

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC1300G_T10C14A8EA2000/?dg=1
幻の大型M&A急増 破談・撤回、6年ぶり高水準
2014/8/14 0:58 情報元 日本経済新聞 電子版

・・・・・・・・ヘッドラインを見た瞬間日経新聞様の渾身の自爆ギャグと勘違いしたのはアタクシだけですかそうですか。

#段取り悪くて時間が足りなくなったのでフィッシャー副議長講演ネタは明日で勘弁

○GDPとか短国入札とかの雑メモ

・何という中途半端に悪いGDP

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0QJ0A220140813
再送-UPDATE 1-景気認識は不変、再増税へ必要なら政策対応=GDPで甘利再生相
2014年 08月 13日 11:06 JST

まあ在庫は増えるわ輸出は減るわ消費は弱いわと中々お洒落ではあるようですが、まあ詳しい話は本職の方が色々と解説していますように、7−9はプラスになるようですし、上記のあまりんの話でも別にまあ参ったという感じにはなっていないという程度の悪い数字というのが、弱い野球チームの得意とする「追いつかない程度の反撃」みたいな感じで味わいがあるというものです。

どうせ悪いなら降参する位悪いと政策の転換が起きるので、それはそれで灰汁抜けするのですけれども、この程度の状態だとどう見ても往生際悪く粘れる(いやまあ7−9に思いっ切り戻ってくれるのかも知れませんが)という話で、マズーな時はマズーな流れになるもんで、止めを刺されないで妙に粘って結局時既にお寿司になる頃に政策対応という図がこう浮かぶわけで。

なお、あまりんや安倍ちゃんも「1−6均してみればその前の四半期よりもプラス」という理屈を展開しておられましたが、そらまあ消費税増税の反動減の影響が4−6で終わってくれるのであればその計算で問題無いと思いますので7−9は反動減の影響が無いといいですねえ(棒読み)という所でございます。

まあ消費税の話ばかりクローズアップされてますが、消費税抜きベースでも物価上昇による影響(石田審議委員の受け売りになりますけど帰属家賃除く総合CPIで消費税抜きでも足元は2%で推移しているんですから)も消費に効きだしていて、賃金上昇がおいついていない影響がキタコレのような気がするんですけどねえ。

統計上は定例給与と賞与をひっくるめて総合的な数字(もちろんコンポーネントも出るけど)での話で実質賃金という話になると思うのですが、月給取りの家計管理的に考えたら月々の収支尻が悪化するというのは大きい訳で、賞与なんていつ減るか判らんものが増えて収支尻が合うから月々の収支尻悪化してもヘーキヘーキというのは瞬間的には兎も角永続的にそう思うのは中々こう根性が要りそうな話ではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ。

ま、それはともかくとして、この程度の数字だと政策対応も出る訳もなく、まあ今月来月の経済指標が出てくる時期に状況を見ていくという話になって、政策インプリケーション云々については先送りという感じなんでしょうね。


・2M入札はまあ穏当な水準(か?)

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140813.htm

(3)募入最低価格 99円99銭6厘5毛 (募入最高利回り)(0.0266%)
(4)募入最低価格における案分比率 86.1119%
(5)募入平均価格 99円99銭6厘7毛 (募入平均利回り)(0.0250%)

ということで短国買入と関係ない銘柄ということもありまして(かどうか知らんが)まあ水準としては穏当な所に落ち着いたという感じですが、良く良く考えたら3bp割れ水準で金利低いぞなもしという所ですけど、GCレートが低くて業者の在庫がスッカラカンという状況の中でしたのでまあこの水準で仕方ないんでしょうな。特段ショートカバーも投げもなく落札水準近辺での推移だったみたいなので穏当穏当。

というか先週の6か月入札の0.015%というハイパー逆イールドは何なんですかというと日銀買入(以下いつもの悪態なので割愛)。


・輪番1年以下は償還銘柄打ち込みですかそうですか

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140813.htm
国債買入(残存期間1年以下) 4,852 1,100 0.012 0.015 58.0
国債買入(残存期間10年超25年以下) 4,579 1,007 0.006 0.007 7.1
国債買入(残存期間25年超) 1,221 303 0.003 0.003 89.0

ということで(この前もそうですが)輪番の1年以下は見た目甘い結果になっていますが、これは9月20日償還銘柄(業者的には償還銘柄持っていてもバランスシートの無駄遣いだし償還直前になると振替決済停止期間に入るから担保にもGCレポにも使えなくなって資金の無駄遣いになる)の打ち込みとかの要因でしょうかねえ良く判らんけどという所でメモだけ。


・債務管理レポートキタコレ

http://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2014/index.html
債務管理リポート2014 −国の債務管理と公的債務の現状−

これは毎度読み物として大変に読みごたえがありますので今年も出ましたので夏休みの読み物として熟読される事をオヌヌメしておきます。



○7月決定会合議事要旨ですが微妙にツッコミネタがありますな

7月会合議事要旨である。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140715.pdf

・短国マイナス金利が説明でスルーで議論もスルーですかそうですか

ご案内の通り、6月末に向けて短国玉が逼迫しまくって入札は強いわGCレートなども6月末の所でヒャッハー状態になるわとなった後に、7月にはまたぞろ買いが入って短国ゼロだのマイナスだのとかいうのをやっていた訳ですが・・・・・・・・・・・・・・

最初の執行部報告の金融市場のお話から。

『短期金融市場では、金利は、長めのゾーンを含め、低位で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)、GCレポレートとも、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている。長めのターム物の銀行間取引金利は、横ばいとなっている』

>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている
>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている
>短国レートは、極めて低い水準での動きとなっている

極めて低いですかそうですか。

で、委員の議論パートでも短国金利が超越低下して市場機能がうんこになってこれでは今後オープンエンドでオペを継続できないのではないかというような考察がある訳でも無いという誠に遺憾の極みな展開で、このような記述があるのみでした。

『最近の債券市場の動向について、何人かの委員は、このところの長短金利の一段の低下には、海外金利の低下が影響しているとの認識を示した。何人かの委員は、市場参加者の経済・物価に関する見通しがここにきて変化しているわけではないことを踏まえると、日本銀行による巨額の国債買入れが進む中で、イールドカーブ全体の金利低下を促す効果が強まってきている可能性があるとの見方を示した。』

まあ何ですな、そういやリーマンショックの時の事案を思い出しますと、取引再構築コストを考えたらGCレポもどうかねみたいな動きになってGCレポレートが絶賛上昇してオープン金利が全般上昇してついにはCP金利まで盛大に上昇してというような時も政策金利の引き下げ対応だけやってオープン金利の高止まりによる金融引き締まりに対して数か月放置プレイだったという事案がありまして、どうもこうオープン市場とか債券市場とかいうような日銀の庭から垣根一つ隔てた位の所になるとその垣根低い筈なのに急速に感度が落ちるのが日銀クオリティというのが全然変わっていないというか全然勉強していないというかだなあというのが良く判る所でして、この程度の認識でQQEの国債馬鹿買い政策の正常化できるのかいなという不安しか起きない今回の議事要旨における市場動向に関する記述でありましたという事ですな。

#興味ないし知らんがな、コールの上げ下げだけやるわというのであればそれはそれで良いのだが、だったら馬鹿買い入れて介入するなと小一時間問い詰めたい訳ですよ


・欧州ディスインフレに関する記述がちと変化と

という悪態は兎も角として『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『ユーロエリア経済について(途中割愛)緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。何人かの委員は、緩やかなディスインフレ基調が続いていることには留意が必要であるとの認識を示した。』

ということですが、前回6月の議事要旨ではここの「何人かの」が「多くの」だったのですが、これはECBの追加緩和政策が効くからヘーキヘーキという事で指摘を止めた人がいるということですかね、まあどうでも良いけど。


・輸出に関して

でまあ問題はジャパンの景気なんですけどね。

『輸出について、委員は、このところ横ばい圏内の動きとなっているが、先行きは、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『複数の委員は、海外への生産拠点の移管などの構造的な要因が今後も輸出の増加を抑制する可能性があると述べた。何人かの委員は、6月短観における海外での製商品需給判断DIの改善や最近の外需向け機械受注の増加は、先行き輸出が増加していくことを示唆しているとの見方を示した。』

構造要因あって長引くんじゃネーノVS循環要因だからヘーキヘーキ対決。

『このうちの一人の委員は、日本企業が比較優位を持つとみられる設備投資関連財の輸出について、先進国経済の回復を背景に今後増加が期待できるとの認識を述べた。』

ここの部分、前月も同じように構造要因VS循環要因対決があったのですが、今回の記述は循環要因の人たちの説明部分がだいぶ勢いを欠いているのが味わいがあります(比較出すと長くなりすぎるので割愛しますが前月のを見てちょ)


・設備投資に関して

その次。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』

ほう。

『委員は、6月短観をみると、企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、5月の機械受注など一部に弱めの指標もみられるが、短観では2014 年度に設備投資をしっかりと増加させる計画となっており、企業の前向きな姿勢は維持されているとの見方を示した。』

物は言い様ですね!!!!

『このうちの複数の委員は、企業収益の改善傾向が続く中で、労働市場のタイト化を背景とする省力化投資や、設備の老朽化を受けた更新投資が出てくることが期待できると付け加えた。』

これ毎回言われてますが、生産の拡大に伴うものではないから持続性に欠けるんですねという話にならない所がチャーミング。

『別の複数の委員は、建設投資関連で弱めの指標がみられることには人手不足などの供給制約が影響している可能性があり、先行きの設備投資が計画対比で下振れるリスクには注意が必要であるとの認識を示した。』

ふーん。


・消費に関して

ここの記述はオモロイ。

『個人消費について、委員は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ということで・・・・・・・

『駆け込み需要の反動減について、委員は、各種のデータや企業からの聞き取り調査には強弱様々なものがあるが、全体としてみれば概ね事前の想定の範囲内となっているとの見方で一致した。』

これ実は前回議事要旨と比較すると更に味わいがあるのですが、ここの部分もちょっと勢い弱くなっているんですよね(^^)。

『多くの委員は、これまで公表されたデータは、反動減が想定の範囲内という企業の見方と総じて整合的であるとの認識を示した。何人かの委員は、旅行や外食などのサービス消費が底堅く推移しており、消費者マインドも改善してきていると付け加えた。』

この説明前月もあったですが・・・・・・・・・

『この間、複数の委員は、企業からの聞き取り調査では想定の範囲内との声が多く聞かれる一方、各種のデータには大きめの反動減を示すものもあるとの認識を示したうえで、これには聞き取り調査の対象が大企業中心であることが影響している可能性があると指摘した。』

イイシテキダナー。

『ある委員は、消費動向調査などでみると消費の二極化が進んでいると指摘したうえで、基調判断にあたってはこうした点にも留意する必要があるとの認識を示した。』

これも実感として判るわ。つまり足元は二極化してるんでしょうという一連の指摘ご尤も。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の改善が続くもとで引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方で一致した。』

この部分の議論については前回は微妙に記述があった(実質所得の低下がどうのこうのみたいな話)のですが、今回は議論そのものの記載が無いのが味わいがありますな。


・物価に関して

『物価面について、委員は、消費税率引き上げ以降も物価の基調に変化はなく、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、夏場にかけてプラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。』

今回ここに「+1%台前半」って思いっきり書いてあるのにニヤリ。

『何人かの委員は、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の高まりという物価の基調を規定する2つの要因はしっかりと作用しており、物価上昇圧力は先行きさらに高まっていくと述べた。』

一致してなくて「何人かの委員」ですかそうですか(^^)。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。ある委員は、コスト転嫁が難しかったとみられる中小企業・非製造業でも販売価格判断DIが1991 年調査以来の「上昇」超になるなど、企業の価格設定行動は付加価値を高めながら販売価格を引き上げる方向に変化し始めているとの見方を示した。』

ふーん。

『ある委員は、各種アンケート調査における家計や市場参加者の予想物価上昇率をみると、分布の上方シフトがみられる一方、平均値は明確には上昇していないと指摘した。』

なるほどこれは良い指摘。


・展望レポート中間評価

『以上のような認識を踏まえ、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるという、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移するとの見方で一致した。』

うむ。

『何人かの委員は、輸出の回復時期が幾分後ずれしているものの、総じてみれば見通しに沿った動きであるとの認識を示した。』

で、物価ですが・・・・・・・・・・

『消費税率引き上げの直接的な影響を除いた物価情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)は、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移するとの認識を共有した。』

『多くの委員は、消費者物価の前年比は、@暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い、また、Aその後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられるとの見方を示した。』

という大勢見解に対して・・・・・・・・・

『これに対し、何人かの委員は、4月の展望レポート時と同様に、見通し期間の中盤頃に2%程度に達するとの見方には不確実性が高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは中心的な見通しに比べて慎重であると述べた。』

野党の皆さんですね。

『先行きのリスク要因について、委員は、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられるとの認識を共有した。』

まあここはいつも通り。


・物価安定目標に関する話がチラリズム

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけどね。

『委員は、金融政策運営に関して月々の消費者物価の動きに注目が集まる傾向があるが、物価の基調を的確に把握することが重要であるとの認識を示した。』

およよ?

『何人かの委員は、物価の基調を規定する要因である需給ギャップと予想物価上昇率の動向をよくみていく必要があると付け加えた。』

えーっとその動向はどうやって測定するんでしょという事で、つまり鉛筆舐め舐めですね与党の皆さん。

『何人かの委員は、物価情勢を総合的に判断するうえでは、生鮮食品を除く消費者物価だけでなく様々な指標を丹念に点検していくことが大切であると述べた。』

これは石田審議委員や佐藤審議委員(良く考えたらお二方とも元は住友銀行ですな^^)が強調している論点であって、今回この話でましたかそうですかという所ですな、うんうん。







2014/08/13

お題「市場メモ少々/フィッシャー副総裁の講演は経済の成長の弱さについて切り口を色々並べる」

昨日の朝刊での首相動静覧を見たら『日銀が民間金融機関から国債を購入し、民間金融機関の日銀預け金が増え、それが家計や企業の預金増になるというのは金融論のイロハだ。』という大変に意味不明な説を唱える方と焼肉をお召し上がりになっておられたとの記載があって何ともアレ。

ちなみにこの先生は「消費税増税の悪影響ガー」という方でございまして、消費税増税前の財政大盤振る舞いと駆け込み需要の部分は金融緩和の効果で足元は消費税ガーという説明に誠にアレな物を感じますがそれは兎も角としてまあそういう事ですので。


○市場メモといっても短い所の方で

30年国債入札があって何か昨日の引けってナンジャラホイとかゆー気もするのですが、そういう話はスルーしまして(−−;

・日銀保有国債銘柄別残高

毎度おなじみのこれですけれども、私家版てきとう集計の結果だけメモメモ。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/

まずは購入銘柄の平均残存年数ですが7.97年と長めですが超長期輪番が3回あったので長いのは別に無問題かと思われます。で、銘柄数なんですけど今回は52銘柄の買入になっていて、細々とオフザランも入っているという感じですが、上位銘柄を見ますと毎度毎度の如くですが10年334回債が6771億円で2年333回が2369億円、2年334回が2362億円とかカレント銘柄となっていまして、その次が5年107回、5年119回と毎度同じの銘柄が入ってくる(前者は残存3年ゾーンの絶対水準で0.10%を割った所で後者はカレント)とかお約束の展開になっております。

まあいずれにせよ7年中心にしようとして、長期の所が主に10年カレントが打ち込まれるというバランスだと超長期の後ろの買入は今のバランスで無いと中々帳尻が合わないという所で、年内は今の方式での買入が継続するという理解でよろしいんじゃないですかね。超長期の後ろは日銀様の買入が少ないので需給がイマイチなのが続くという所ですが、それって市場が日銀買入を前提にしているという話で、そらまあMPMの2日目になると「今日は入札も輪番も無いから材料がありませんなあそういえば明日の輪番の予想はどうですかねえ」という流れでして、足元では材料として輪番>>>MPMとなっているって良く考えたら変なキノコでもキメてるんじゃないかというような債券市場でして、変なキノコをキメ過ぎて更生が不能になる前に何とかした方が良いんじゃないかと思いますよウヘヘヘヘヘ(白目)。


・TKRRェ・・・・・・・・・・・・

これまた毎度おなじみの東京レポレート。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

月曜の短国買入の結果があの有様で、短国の在庫が空っぽとなるとレポレートにも影響するでしょうなあと思ったら案の定結果で、トモネの翌日物GCの東京レポレートが昨日は前日の0.086%から一気の低下で0.046%と利回りほぼ半分というボラティリティーの高さ(え?)でありまして、超短期ゾーンはイールドボラティリティーだけ見ると凄まじいまでのブレっぷりなのですが、いかんせんこれ元の絶対値が低いだけで金利収入実額ベースで見ると雀の涙が一滴と二滴の差みたいなもんなのが惜しい所です。

つーことで本日は2か月ものTBの入札が行われまして、足が10月2日という微妙に使い勝手が良いのか悪いのか判らん(半期末越えとしては使えるが期初早々に落ちるので再投資という点で少々使いにくい)ですが、これは通常日銀の短国買入に入らないものなので日銀短国買入狙いでの買いが入らないのが特徴。

とは言いましても、足元がTKRRに見られるように玉がスッカラカン状態で、おまけに2か月ものの発行は2.5兆円しかありませんのでまあ普通にニーズがあるんでしょという事で、とにかくオペ狙い状態になっていてハチャメチャな値付けになっているゾーンとは違って実需ベースでこの発行量だとどういう落札になるのかというのはちょっとだけ楽しみだが強い結果になって更に玉無しニーズあり状態なのが明らかになるのではないかという悪寒しかしない所が・・・・・・・・・



○フィッシャー副総裁講演ネタである

昨日は寝起きで超越斜め読み(というか見ただけ)しましたが・・・・・・・・・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.pdf

Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the Swedish Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014
The Great Recession: Moving Ahead

・出だしの講演だからなのかも知れんが説明がなげえええええええ

ということでこちらの講演なのですが、前半が経済の説明になっているのですが、この説明がまあ懇切丁寧っちゃあ丁寧なのですが、説明がやたらめったら長くて引用してネタにする方としては中々泣ける内容に仕上がっております。

いやまあまとめてしまえば「何か随分とハト派ちっくですなあ」で終わってしまうのですけれども、経済に関するポイントについてああでもないこうでもないと話をしているのでそれはそれで確認する必要がありますな。ということで・・・・・・・・・・・

『Today I will discuss three key aspects of the challenges policymakers face as they seek to move ahead. These are: (1) The impact of the Great Recession and the associated Global Financial Crisis on the growth of output, both in the short term and over the longer term. (2) The reform of the financial sector--in other words, how much progress have we made in creating a safer and more stable post-crisis financial environment? (3) The impact of the crisis on the conduct of monetary policy--in particular, how to balance the goals of achieving stable inflation and full employment while also taking into account the need to maintain financial stability.』

『I will leave it to others to address the important challenges facing fiscal policymakers as they determine the appropriate roles and paths for fiscal policy at both the macro- and micro-levels.』

『To keep the focus sharp, I will deal primarily with the economy of the United States. But policymakers around the world confront related challenges and I will draw also on the post-crisis experiences of other economies.』

てな話ですが、まあ最初の部分になります米国経済の話がやたら長いので以下鑑賞。


・まあ小見出しが『Challenges Arising from the Growth Slowdown』な訳でして・・・・・・・・

でまあ米国経済の話がおっぱじまるのですが、これがまた小見出しで出落ち状態な訳で、要するに弱そうな話をああだこうだとやっているという感じです。

『I begin by reviewing recent global economic developments and the questions they raise about where we are likely to go from here. There has been a steady, if unspectacular, climb in global growth since the financial crisis. For example, based on recent IMF data from the World Economic Outlook, which uses purchasing power parity weights, world growth averaged 3 percent during the first four years of the recovery and as of July was expected to be 3.4 percent this year.』

『The IMF expects global growth to reach 4 percent next year--a rate about equal to its estimate for long-run growth. This global average reflects a forecast of steady improvement in the performance of output in the advanced economies where growth averaged less than 1 percent during the initial phase of the recovery to an expected 2-1/2 percent by 2015.』

とまあ先進国は回復基調という話を最初にしているのですが・・・・・・・・・

『In contrast, the recovery in the emerging market economies started strong but has since fallen off, in part, as fiscal policy stimulus has been pared back.』

ということで新興国に関してはイマイチとの事ですが、更にここからが追撃の如く弱い話が。

『But--and this is no small "but"--the global recovery has been disappointing.』

ということで、講演始まって割と最初の方だと言うのにいきなりこの「世界の回復は失望的」という攻撃キタコレというカマシが来ております。

『With few exceptions, growth in the advanced economies has underperformed expectations of growth as economies exited from recession. Year after year we have had to explain from mid-year on why the global growth rate has been lower than predicted as little as two quarters back.』

さらに追撃が来るのですが、「毎年のように回復見通しの実績が年初に想定するパスよりも弱いという状況が先進国で続いております」とか講演冒頭にしてハト派全開の雰囲気。

『Indeed, research done by my colleagues at the Federal Reserve comparing previous cases of severe recessions suggests that, even conditional on the depth and duration of the Great Recession and its association with a banking and financial crisis, the recoveries in the advanced economies have been well below average.』

『In the emerging market economies, the initial recovery was more in line with historical experience, but recently the pace of growth has been disappointing in those economies as well. This slowing is broad based--with performance in Emerging Asia, importantly China, stepping down sharply from the post-crisis surge, to rates significantly below the average pace in the decade before the crisis. A similar stepdown has been seen recently for other regions including Latin America.』

ということで、厳しいリセッションの後なので回復が遅れるという事は織り込んでいるにしてもやはり先進国の回復ペースがスローだとか、新興国では当初の立ち上がりは平均レベルだったがその後ダメダメになっていて、アジアとか中国とかラテンアメリカとかあじゃぱーですよとな。


・ロンガーランの成長見通しが低下している件

『These disappointments in output performance have not only led to repeated downward revisions of forecasts for short-term growth, but also to a general reassessment of longer-run growth.』

毎年の年後半にしょぼーんという話だけではありませんという件ですな。

『From the perspective of the FOMC, even in the heart of the crisis, in January 2009, the central tendency of the Committee members' projections for longer-run U.S. growth was between 2-1/2 and 3 percent. At our June meeting this year, these projections had fallen to between roughly 2 and 2-1/4 percent.』

なるほどと言う所ですが、2009年のSEPと直近のSEPを持ち出してきて、FOMCメンバーの想定するロンガーランのGDPの望ましい水準の値が低下しているとの指摘キタコレ。

『This downward revision is not unique to our institution or to the United States. Indeed, the IMF's expectation for long-run global growth is now a full percentage point below what it was immediately before the Global Financial Crisis. This reconsideration reflects lower projected growth for both the advanced and the emerging market economies.』

ということで、これは米国だけの話では無くて世界的に期待成長率が下がっていますという実にこうあちゃーな指摘をしていたりするのですな、うんうん。

『This pattern of disappointment and downward revision sets up the first, and the basic, challenge on the list of issues policymakers face in moving ahead: restoring growth, if that is possible.』

ということで、この事実は政策当局者が直面する政策課題を意味しており、それは成長力を回復させることである、それが可能であるならば、だそうな。

『In some respects, we should not have been surprised at the prolonged hit to output growth following the global financial crisis. As Cerra and Saxena and Reinhart and Rogoff, among others, have documented, it takes a long time for output in the wake of banking and financial crises to return to pre-crisis levels.』

『Possibly we are simply seeing a prolonged Reinhart-Rogoff cyclical episode, typical of the aftermath of deep financial crises, and compounded by other temporary headwinds. But it is also possible that the underperformance reflects a more structural, longer-term, shift in the global economy, with less growth in underlying supply factors.』

ということで、金融危機の影響によるシクリカルあるいは一時的な大きな落ち込みからの回復サイクルなので時間がかかるという所ではあるのだが、ロンガータームの構造的な問題による可能性もという説明になっておりまして・・・・・・・・

『Separating out the cyclical from the structural, the temporary from the permanent, impacts of the Great Recession and its aftermath on the macroeconomy is necessary to assessing and calibrating appropriate policies going forward.』

でまあリセッションの後遺症に関して構造的な部分と循環的な部分を分けて考える事が政策運営において重要ですよという話。

『The difficulty in disentangling demand and supply factors makes the job of the monetary policymaker especially hard since it complicates the assessment of the amount of slack, or underutilized productive capacity, in the economy. Over the longer term it will be possible to disentangle the amount of slack on the basis of the behavior of prices and wages as the levels of resource utilization in economies rise, but it would be better to understand why growth has been so slow without experiencing either a runup in inflation or a descent into deflation.』

経済のスラックを測定するのも難しくて、ロンガータームで考えた場合には賃金や価格の動向を見ながら判断するという話ですが、それよりも重要なのは「低成長の中でインフレの急上昇もデフレへの低下も起きなかったのは何故ですねん」というのを理解する事ではないかとの指摘が。


・米国経済の向かい風について

という指摘に続いて米国経済の話がおっぱじまります。

『In the United States, three major aggregate demand headwinds appear to have kept a more vigorous recovery from taking hold. The unusual weakness of the housing sector during the recovery period, the significant drag--now waning--from fiscal policy, and the negative impact from the growth slowdown abroad--particularly in Europe--are all prominent factors that have constrained the pace of economic activity.』

米国経済の向かい風としては住宅セクター、最近影響が薄れてきたが財政緊縮、海外経済特に欧州経済がダメダメな件だそうな。

『The housing sector was at the epicenter of the U.S. financial crisis and recession and it continues to weigh on the recovery. After previous recessions, vigorous rebounds in housing activity have typically helped spur recoveries. In this episode, however, residential construction was held back by a large inventory of foreclosed and distressed properties and by tight credit conditions for construction loans and mortgages. Moreover, the wealth effect from the decline in housing prices, as well as the inability of many underwater households to take advantage of low interest rates to refinance their mortgages, may have reduced household demand for non-housing goods and services.』

『Indeed, some researchers have argued that the failure to deal decisively with the housing problem seriously prolonged and deepened the crisis. Growth in other countries that experienced financial crises, including the United Kingdom, Ireland, and Spain, has been weighted down by struggling residential sectors.』

とまあこの辺までは住宅がコケたあと回復に時間が掛かっていますがな的な話で、その影響がどうのこうのという話なので普通の話。

『More recently, many of these factors have abated in the United States and yet, after encouraging signs of improvement in 2012 and in early 2013, over the past year the growth of residential construction has faltered and home sales have fallen off. The sharp rise in mortgage interest rates in mid-2013 likely contributed to this setback.』

ここでまたほほーという話になるのですが、昨年のモーゲージ金利の急上昇が住宅回復に水を差したという指摘をしているのがまたハト派テイストですよ先生。

次が米国の財政緊縮の影響に関してどうのこうのという話ですが、これは危機の時に拡張的な財政をおこなった(米国だけではなく欧州なども、と説明に入っていますが)事の反動がこのように起きてこのように経済に影響しているという話なのですがここ長いので引用割愛します。

で、世界のスローダウンですけどまあそんなに変わった話をしている訳ではありませんが引用だけ。

『A third headwind slowing the U.S. recovery has been unexpectedly slow global growth, which reduced export demand. Over the past several years, a number of our key trading partners have suffered negative shocks. Some have been relatively short lived, including the collapse in Japanese growth following the tragic earthquake in 2011. Others look to be more structural, such as the stepdown in Chinese growth compared to its double digit pre-crisis pace. Most salient, not least for Sweden, has been the impact of the fiscal and financial situation in the euro area over the past few years. Weaker economic conditions in Europe and other parts of the world have weighed on U.S. exports and corporate earnings; added to the risks that U.S. financial institutions, businesses, and households considered when making lending and investment decisions; and at times depressed U.S. equity prices.』


でまあまずはそのまとめ。

『The housing market, fiscal consolidation, and unexpectedly anemic foreign demand all play a significant role in explaining the weakness of aggregate demand in the U.S. economy, weakness that could not have been accurately predicted based on past recession experiences or by the fact that this recession started with a massive financial crisis.』

上記の3点の影響は米国経済の需要の立ち上がりが弱い事に関する説明になりますと。

『But, turning to the aggregate supply side, we are also seeing important signs of a slowdown of growth in the productive capacity of the economy--in the growth in labor supply, capital investment, and productivity. This may well reflect factors related to or predating the recession that are also holding down growth.』

ということで、先ほどの説明の中でもあったように思えますが、需要サイドではなくて供給サイドの方に目を転じると、経済の生産力、つまり労働供給、資本投下、生産性の成長力もまた回復力に影響するファクターですよと。


・供給サイドに関しての話

『How much of this weakness on the supply side will turn out to be structural--perhaps contributing to a secular slowdown--and how much is temporary but longer-than-usual-lasting remains a crucial and open question.』

ということで、供給サイドについての弱さの中にどの程度の構造的要因があるのか、というのは重要かつまだ解明されていない問題であるという話をしておりまして、最初の部分と需要サイドの部分に関してはハト派全開というのは良く判ったのですが、ここで供給サイドの話が出てくる所から特色が出てきますな。

『Looking at the aggregate production function, we begin with labor supply.』

ということでまずは労働供給に関して。

『The considerable slowdown in the growth rate of labor supply observed over the past decade is a source of concern for the prospects of U.S. output growth.』

米国経済の労働供給力がここ10年で落ちていることは、米国の生産力の伸びに対する懸念になっていますと。

『There has been a steady decrease in the labor force participation rate since 2000. Although this reduction in labor supply largely reflects demographic factors--such as the aging of the population--participation has fallen more than many observers expected and the interpretation of these movements remains subject to considerable uncertainty.』

『For instance, there are good reasons to believe that some of the surprising weakness in labor force participation reflects still poor cyclical conditions. Many of those who dropped out of the labor force may be discouraged workers. Further strengthening of the economy will likely pull some of these workers back into the labor market, although skills and networks may have depreciated some over the past years.』

てな訳で、人口動態的なファクターという構造要因と、景気が弱い事によるレーバーフォースからの退出という循環要因があるという指摘に加え、長期失業などによる労働者のスキル低下も問題であるという指摘をしています。

次が資本投下に関して。

『Another factor that may be contributing to a slowdown in longer-run output growth is a decline in the rate of investment.』

ということで・・・・・・・・

『As is typical in a downturn, movements in investment were important to the cyclical swings in the economy during the Great Recession. And, as would be expected given the depth of the downturn, investment declines were especially large in this episode. However, in the United States, and in many other countries as well, the growth rate of the capital stock has yet to bounce back appreciably--despite historically low interest rates, access to borrowing for most firms, and ample profits and cash--causing concerns over the long-run prospects for the recovery of investment.』

でまあ米国以外もそうですがという話で、資本投下(というか設備投資)がリセッションの後からの回復が弱くて、しかも直近では金融環境はアホほど緩和されているのに企業が借り入れなどをして投資をしていく動きが弱く、長期的にみて投資の伸びが弱いままなのではないかという懸念があるという指摘でございますな。

で、次が生産性の話になってまとめっぽくなるのですが、惜しくも時間と量の関係上(単に時間切れになっただけではないかというツッコミ不可) 続きは明日。



2014/08/12

お題「決定会合レビュー続編で会見と月報鑑賞など」

夏前にクソ暑くなって夏休みシーズン本番になって天気が悪いのが続いた年というのに記憶があるのだが何年の時でしたっけ??

なお、フィッシャー副議長の講演があったようですが・・・・・・・・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20140811a.htm
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "The Great Recession--Moving Ahead," a Conference Sponsored by the
Swedish Ministry of Finance, Stockholm, Sweden
August 11, 2014

最初の小見出しが『Challenges Arising from the Growth Slowdown』なので報道の通りでお察しという感じですが日本ネタ優先で今朝はパスで勘弁してケロケロ。

ちなみにその小見出しの先は金融規制関連の話になっているので多分景気の見立てに関してはここの部分を見るのがヨロシなのだが超ウルトラ斜め読みすると海外経済がイマイチで住宅市場が弱くて労働市場は構造的に弱いというエライ弱気な説明をしているような気がしますが、そこまで弱いのか米国という違和感が何となくあるけど精読していないのでパスね。


○その前に市場メモというか短国買入メモ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140811.htm
社債等買入 1,000 2014年8月15日
国庫短期証券買入 25,000 2014年8月13日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年8月13日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年8月13日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年8月13日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注3) 4,000 2014年8月11日 2014年8月12日

ということで短国買入ですが3兆では無く2.5兆円でのオファーでしたが・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140811.htm
国庫短期証券買入 33,482 25,001 -0.005 -0.001 61.5
国債買入(残存期間1年超3年以下) 11,220 3,002 0.002 0.003 8.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 13,125 2,002 0.006 0.006 87.0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 12,202 4,006 0.005 0.005 82.4
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 119 119 -0.400 -0.400
社債等買入 1,893 1,001 0.111 0.119 61.2

つーことで結果はというと2.5兆円の買入に対して3.3兆円の応札しか入らなくて足切りも5糸強まで流れていまして、先週の馬鹿強い入札だった新発6MTB(470回)ですと11日付の売買参考統計値が1.2bpなので一番強い所で0.7bpの出来上がり利回りで日銀様お買い上げという結果になっておりまして、入札馬鹿強い所に入れて強くして大勝利でしたね(棒読み)という所ですが、まあ応札がこのテイタラクという状態ですので先月後半に3兆連発買入を行った効果が出て参りましたなという所で、またも市場流通玉がカラカラ帝という残酷な状態になっておられますな。まーオペ担当部署もヒアリングとかで玉がねえというのは把握して今回3兆では無くて2.5兆円のオファーにしたのでしょうが、それでもこの有様となってしまって世の中玉が無いのがあからさまに判るの図になっちゃいましたな。

ということで、まあ要するに短国買入に関しては既に現状の残高(年末にかけては7月末の残高が維持できていれば概ね問題は無いと思う)を維持しているだけで何かの拍子に短国の需給が結構逼迫する事になってしまいますね、という事が判った訳でして、来年のMB拡大の「その他」で短国買入を増やすのはどう見ても無茶(その他部分で貸出支援オペを例えば今の2倍から4倍までオッケーみたいな荒業を使って枠を増やすにしたって貸出支援オペは共通担保貸出になるのでその分だけ担保玉のニーズが高まるから結局の所短国の需給に皺寄せが来る)ですなあさて来年のオペ運営どうするんでしょうかねえという所ですが、暫く前の総裁会見での発言っぷりを見るにどうも短国市場が残忍なカラカラ帝状態になっても知らんがなと思っているのではないかという節がある所がオソロシスではあります。


○決定会合レビュー:金融経済月報を鑑賞の巻(今回は前回比較の他におまけつき)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1408.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1407.pdf(前回)

まずは前回比較をば。

・現状判断部分は声明文と同様です

というか現状判断部分は声明文と同じ文章なので同様なの当たり前なのですが。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(前回)

声明文と同様なので手抜き攻撃ですが、輸出、生産の現状判断が下がっていまして、雇用所得環境と個人消費および住宅投資の表現を強めています。


・先行きは輸出を下げていますよ!!!

で、先行き。

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

という基調判断部分は声明文の通りで変化はありませんが、その内訳には変化が。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

アタクシ基本的にこの手の差分チェックを人力でする人なのですが、文章のニュアンスなどを読みつつもあとチェックするのは字数でして(^^)、文言の位置がずれる→字数が違う→変化がある!とピクピク反応するのですが、こちらの差分は字数を見て気が付くの巻という状態でした(笑)。

この「緩やかに増加していく」→「緩やかな増加に向かっていく」という変化が何ともこう味わいがある訳でして、「緩やかな」というヘッジ文言を入れつつも言い切り方になっていたのが、今回「増加に向かっていく」と更にヘッジ文言が入ってきているという判断引き下げですな。

ちなみにニュアンスを確認する為に英文を比較するとこうなります。

http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2014/gp1408a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/mopo/gp_2014/gp1407a.pdf(前回)

『Exports are expected to head for a moderate increase mainly against the background of the recovery in overseas economies.』(今回英文)
『Exports are expected to increase moderately mainly against the background of the recovery in overseas economies.』(前回の英文)

日本語のまんまという感じですな(^^)。

でまあ輸出が下がっている分の帳尻は同様に雇用所得と消費や住宅になります。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

ということでここまでは同じ。


『雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。』(今回)
『雇用・所得環境の改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

てな訳でこちらでも「着実な改善」とか駆け込みの反動を「さらに」和らぐとか、先行き見通しの輸出の下げ部分を帳尻合わせに来ております。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

なお、上記のように生産には変化がありませんので下がっているのは輸出だけです。


・リスク要因以下は変化なし

基本声明文と同じなので引用だけ。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

変化なしですな。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

これまた変化なし。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ところでいるまで「暫くの間」なのでしょうかという話については昨日も悪態申し上げた通りでございます。んでもってその先は金融環境ですが特にインプリケーションも無いので割愛します。


・たまには本文を鑑賞

本文3ページ(ファイルの5枚目)以降に輸出の話があるのですが、こちらを鑑賞すると中々アレ。

『実質輸出は、弱めの動きとなっている(図表6(1)、7)。』という所の先の方からね。

『輸出が新年度入り後も勢いを欠いている背景としては、ASEAN諸国の一部などわが国との関係が深い新興国経済のもたつきが挙げられる。』

ほほう。

『また、駆け込み需要に伴う国内向け出荷優先の動きは概ね収束したとみられるが、寒波等の影響を受けた1〜3月の米国経済の減速が予想以上に大きかったことや、本年にかけて自動車メーカーを中心に海外生産を拡大する動きが相次いだことが、ラグを伴いつつ、輸出の下押し要因として作用している。』

ふーん(棒)。

で、地域別で一番の注目は米国ですが・・・・・・・・

『米国向けは、1〜3月に前期比で小幅増加したあと、4〜6月は幾分減少した。米国景気の緩やかな回復や為替相場動向を踏まえると、基調的には緩やかな増加傾向にあると考えられるが、前述した寒波の影響や現地生産拡大の動きなどが、自動車関連を中心に、下押し要因として作用しているとみられる。』

はあそうですか(棒)という所ですが、この「減少したのに基調的には緩やかな増加」という表現は何というかもうねという表現で、日銀文学というよりは最早大本営発表文学を思わせる(銃声)。

でまあ財別の話もあるので当然自動車に注目するのですが・・・・・・・・・

『財別にみると(図表7(2))、自動車関連は、1〜3月にかけて減少したあと、4〜6月も横ばいにとどまっている。米国の自動車販売が2006 年以来の高水準となっていることなどを踏まえると、基調的には緩やかながらも増加傾向を維持していると考えられるが、一部新興国の弱さや米国の寒波、現地生産の拡大など、前述した諸要因がマイナスに作用しているとみられる。』

まあ米国向けといえば自動車なので同じ表現がここにもキタコレですが、米国の自動車販売が高水準なのにジャパンの輸出が横ばいにとどまっているというのに「僕の輸出がこんなに伸びない訳がない」ということで基調ながら増加傾向を維持とかどう見ても大本営発表です本当にありがとうございました。


でまあ先行きの輸出については本文6ページ辺りになるのですが。

『先行きの海外経済は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとみられる。また、上記のような為替相場の動きも、引き続き輸出の押し上げに作用していくと予想される。』

という説明になっているのですが、為替円安になっても輸出伸びていないと思うのですけどという所ですが、その後は地域別の話をしていまして、その次に関連してということで情報関連分野の話が出てくるのですが、肝心の米国向け自動車に関しての先行きの話が・・・・・・・

『この間、自動車を中心とした海外生産拡大の影響は、当面、輸出の下押し要因として残るとみられる。』

の一言で片づけていまして、木内審議委員が指摘する「結局の所全然輸出伸びて無いじゃん」な話については華麗にスルーというのが実に味わいがあるというものです。

ということで、折角輸出の部分が話題になっていたので本文の方の鑑賞結果もおまけということですが、何ともこう大本営発表なテイストを漂わせる表現に味わいがあるという所ですね!!!!!!


○総裁会見の説明が中々無理矢理な件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1408b.pdf

会見の放送を見ますと説明がクソ冗長で、やたらああでもないこうでも無いとクドクドと説明しているという感じだったのですが、そのクソ冗長な部分を要旨に落とす所でそこそこ丸めて来ましたなという所で、その点では要旨としてはいい感じでまとまっているのですが、丸めて要点を絞ると説明の無理矢理というか苦しくなっていねえかというのがより判りやすくなるという諸葛孔明の罠状態(^^)。


・ハードデータが弱いが大丈夫かという質問に対する説明

実質最初の質問からいきなりカマシが参ります。

『(問) 景気の認識について、より詳しくお伺いします。4〜6月期の景気は、消費増税の反動減の影響が想定よりも大きかったとの見方や、足許で、6月の鉱工業生産が大きく落ち込んだり、7月の百貨店売上高は一部店舗でマイナスが続くなど、経済活動の弱さを示すデータもあります。それにもかかわらず、今後緩やかな回復を辿るとする根拠等についてご説明下さい。』

ニヤニヤ(・∀・)

『(答) まず、個人消費については、消費税率引き上げに伴う反動減が引き続きみられていますし、品目による程度の差はあるわけですが、全体としてみれば、その影響は徐々に和らぎつつあるという点には変わりないと思います。先行きは、先程も申し上げた通り、消費税率引き上げによる実質所得押し下げの影響を含めて、引き続き注意深く点検していく必要はありますが、基本的に、雇用・所得環境の着実な改善が続いていることを踏まえると、個人消費は底堅く推移していくとみています。』

ふーん。

『鉱工業生産については、駆け込み需要の反動減や輸出のもたつきから弱めの動きとなっていますが、予測指数や企業ヒアリングの結果を踏まえると、基調としては、緩やかな増加を続けていると評価できると思います。また、企業の業績やマインドは総じて良好な水準にあり、企業の積極的な投資スタンスは維持されていると思います。』

出た都合のよい指標持ち出し攻撃。

『このように、わが国経済は、家計・企業の両部門において、景気の前向きな循環メカニズムが維持されており、先行きも緩やかな回復基調を続けるものとみています。』

どう見ても棒読みです本当にありがとうございました。実際はもうちょっとくどくどだった気もせんでも無いが一々ビデオ見直す気もせんので暇な方確認してちょ。


・円安でも輸出が増えない件について

次の方の質問である。

『(問) 2点お伺いします。1点目は、輸出について、総裁は、海外経済が回復してくれば増えるというお話をされていますが、実際は、円安になったにもかかわらず増えないという状況が続いています。これは日銀の想定外の動きとみているのかどうか、詳しくお話して頂けますでしょうか。(2点目割愛)』

さて・・・・・・・・・

『(答) まず、1点目の輸出の足許の弱さですが、今年の1〜3月期がマイナスで4〜6月期も僅かながらマイナスと言うことで、2四半期マイナスが続きました。マイナス幅は非常に小さいので、横ばい圏内の動きと見ることもできますが、2四半期マイナスが続いたということから言って、足許は弱めということは否めないと思います。』

ふむふむ。

『ただ、その理由については、基本的には、従来から申し上げているような新興国経済の回復が若干もたついていたこと、それから、米国経済の1〜3月期の減速が寒波の影響で予想以上に大きかったことという循環的な要因や一時的な要因があったわけです。』

循環要因だから戻ると言いながら戻っていませんが・・・・・・・・・

『米国の第1四半期のマイナス成長は、春先までラグを伴って、日本からの輸出を下押ししていた可能性はあると思っております。このほか、日本企業の海外生産の増加、海外展開といった構造的な要因も影響はしていると思っておりますが、構造的な要因というのはそう簡単に変わるわけではなく、別の言い方をすれば、何年も前からあったものであり、足許が弱いことには、やはり循環的な要因や一時的な要因が影響していると思われます。』

えーっと木内審議委員は「足元どころか長期にわたって基調的に見ると横ばい」という指摘をしていますが・・・・・・・

『先行きについては、世界経済は、先進国を中心に成長率が、昨年よりも今年、今年よりも来年と高まっていくというのが、IMFを含めてコンセンサスになっています。そういうもとで輸出は、特にわが国の製造業が得意としている高付加価値の製品を中心に、緩やかな増加に向かっていくとみています。』

こうふかかちせいひん???????

『この点、資本財・部品の輸出の先行指標となる機械受注の外需、あるいは短観の先行きの海外での需給判断DIも、改善傾向が示されています。』

まあいつまでもこの話をしていますな。

『なお、先程申し上げた構造的要因につきましても、もう少し長い目でみると、かつての過度な円高水準が是正されて、海外生産比率の上昇ペースは少なくとも鈍化しているようです。最近の政策投資銀行の調査などを見ましても、今年の国内での設備投資計画というのは、非常にしっかりしたものがある一方で、海外での投資は、ここ数年に比べるとかなり減速するという見通しです。』

でも国内での投資ってビンテージ更新と省力化であって生産の拡大じゃないですよね。

『こういう点からも、これまでのようなペースで海外展開がどんどん進んでいく姿にはなかなかならないのではないかと思っております。』

海外展開が止まっても別に国内に戻るとも思えませんし、海外展開が止まったから輸出が伸びるのかというとそれは別問題のような気がしますが。

『いずれにせよ、構造的要因については当面続くなか、輸出が弱めになっている一時的な要因は剥げ落ちつつあり、循環的な要因は先程申し上げたように、先進国を中心とした景気回復が全世界に及びつつあるということで、世界経済の成長が加速していく中で日本の輸出も緩やかながら増加していくと見ています。(以下割愛)』

てな訳で随分と説明が無理矢理っぽいですな。


・需給ギャップは改善している(キリッ)の話

これは質問者の質問がヘタクソだが説明もまた妙なので面白ネタでもある。

『(問) 年度後半の物価の見通しについてお尋ねします。日銀は、年度後半から物価上昇ペースが再拡大していくとみていますが、その根拠の1つは需給ギャップの解消、もう1つは予想物価上昇率の上昇です。』

と、ここまでは良いのだが・・・・・・・・・

『そうした中、最近株価が世界的にかなり動揺している状況で、先行きに不透明感が強まっています。また、本日発表された景気ウォッチャー調査でも、先行きのマインドにやや鈍さがみえています。個人、企業のマインド面の鈍さがあっても、先行きインフレ予想が上がっていくというシナリオにかなり疑問を感じる部分もあるのですが、総裁はどうお考えでしょうか。』

これ質問の仕方が間抜けで、景気のマインドと期待インフレを2%でアンカーさせるのは別問題になるので、こういう質問をしてもしょーがないですし、大体からして期待インフレの計測は(需給ギャップも大概だが需給ギャップ以上に)難しい訳で、(後の方で別の記者が質問していますが)よりあからさまに出てくる需給ギャップが本当にプラスで推移するのかという筋で質問しないといけないのよね。つーかこの手の質問って基本的に「日銀のロジックに乗って逆手を取る」形で質問しないとオモシロ回答は出てこないのでこの記者は質問の下手さを猛省すべきと思われます。

しかし回答で自爆気味の黒田総裁なのでした(^^)。

『(答) 基本的に、ごく短期を除けば、中長期的に物価上昇を決定していく大きな要因としては、今ご指摘のような、需給ギャップの動きと人々の予想物価上昇率の動きの2つが非常に重要であるということは、色々な研究で示されています。私どもの「量的・質的金融緩和」によって2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという政策を考える上でも、この2つに注目しています。』

で?

『これまでのところ、需給ギャップは着実に改善しており、日銀の推計ではこの1〜3月は若干プラスになりました。4〜6月はおそらくGDP自体が反動減でマイナスになると思いますので、需給ギャップがどうなるかはまだ分かりませんが、いずれにせよ私どもの見通しでは潜在成長率を上回る成長が2014年度、2015年度、2016年度と続く見通しであり、需給ギャップは引き続き改善し、プラス幅をさらに拡大していくとみています。』

なんか凄い説明だが、1-3でプラスを前面に出すと4-6は盛大にマイナスになるのだがその話をスルーして先の話をするとか中々豪快な説明。

『この点から、物価上昇率が、先程申し上げたような形で年度後半から再び加速して、見通し期間の中盤頃に2%程度を達成するという見通しには変わりはありません。』

ふーん。

『一方、物価上昇期待については、期待ですのでなかなかハードデータは見出し難いですが、様々なアンケート調査あるいはブレイク・イーブン・インフレ率をみると、いずれも緩やかながら上昇してきています。特に昨年「量的・質的金融緩和」を導入した頃と比べると、かなりはっきりと物価上昇期待というのは上昇してきています。これは、おそらく実際に物価が上昇してきているもとで、期待自身も上昇してきているということだと思います。』

そら消費税上がってますしと思いますし、実質所得の話はどうなのという気もしますが。


でまあ関連してちょっと後の方で別の方が需給ギャップがそんなに行かないのではという質問をしていますがそこで追加緩和と絡めない方がオモシロ答弁が聞けたように思えるのが残念な所。

『(問) 先程、物価目標の達成に重大なリスクが生じてくれば、調整を行うとおっしゃいました。需給ギャップは、非常に大きな影響を与える要因だと思います。もともと日銀は、2014年度の成長率について当初1.4%ないし1.5%と見込んでいました。それが4月、7月と2回連続で下方修正され、足許では1.0%になっています。4〜6月も今のところ、想定以上に落ち込みが大きくなるのではないかとみられています。先程も、総裁は、14年度、15年度、16年度は、潜在成長率を上回る成長を続けるとおっしゃいました。一方で、経済・物価見通しが大きく下振れた場合には、調整を行うともおっしゃっています。次回10月の展望レポートで、3回連続で14年度の成長率を下方修正せざるを得ない状況になり、0.5%前後とみられている潜在成長率近辺まで成長率が下がる状況になった場合には、やはり躊躇なく調整を行うと理解して良いのでしょうか。(2点目割愛)』

説明がクソ長いです。

『(答) 1点目の成長率についてです。昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した時からの展望レポート、中間評価の動きをずっとみて頂くとお分かりになる通り、物価上昇率の見通しはほとんど変わっていませんし、どちらかといえばむしろ上がっているかもしれません。一方、成長率の見通しは、特に足許で若干下がっています。これは、昨年来申し上げている通りですが、内需が最初予想したよりもかなり強い一方で、特に昨年後半は外需がマイナスに効いて成長率を押し下げました。輸出マイナス輸入がマイナスに効いたのは、内需の強さを反映して輸入がどんどん伸びた一方、輸出が循環的な要因等により期待ほど伸びなかったためです。』

何ちゅうか物は言いようとはこのことですな。

『こうした中で、内需中心の景気回復が起きています。』

(キリッ)という感じですが。

『内需中心ということは、非製造業、サービス産業の需要が増えます。非製造業は労働集約的な産業が多いので、労働需給はかなり逼迫してきています。また、設備投資をリーマンショック後あまり実施していなかった――減価償却が投資よりも多かった──こともあり、資本ストックがマイナスになり、需給ギャップがかなり急速に縮んできて、物価上昇率が昨年4月に想定した通り、あるいはそれよりもやや強めに推移しています。』

ほうほうそれでそれで?

『成長率は、想定よりも足許少し弱めになってきていますが、今後の見通しについて、0.5%前後あるいはそれ以下と言われている現在の潜在成長率を下回る可能性は、あまりないと思います。もちろん、4〜6月は1〜3月の反動でマイナス成長になると思いますが、基調としての日本経済の回復、成長は続いていると思いますので、展望レポートで示したような成長が、今年度、来年度、再来年度続いていくという見通しに変わりはありません。』

ということで、結局は何だか判らないけど兎に角大丈夫だから大丈夫なんだよという説明になっているのでした。


・実質賃金低下に関する説明がイカサマにも程がある件について

『(問) 実質賃金の低下とインフレ期待の関係についてお伺いします。毎月勤労統計によると、実質賃金は、12か月連続マイナスの状態になっています。そうした中で、人々は、今後、持続的に2%のインフレを維持できる状態になるという未来をなかなか信じ難い体感のようなものがあるように思います。この後、賃金が上がっていくメカニズムというものがどのように起こるのか、改めてご説明頂けないでしょうか。また、その点について日銀以外の、政府、企業、民間あるいは個人について期待することがあれば教えて下さい。』

ふむふむ。

『(答) 実質賃金が下がっていることは、大半というかほぼ全て、消費税率引き上げによるものです。』

そ、そうだったのかー!!!!

『今回の消費税率引き上げによる影響は、一時的な、1回限りのものですから、12か月経つとその影響はなくなります。消費税率引き上げの影響による実質賃金の低下が、未来永劫続くということではないと思っています。』

前年比ではそうですけど上がった税率は下がらないのですけどという事で、都合よく前年比の話を持ち出している所が実にアレ。

『ちなみに、消費税率引き上げの影響を除いて、生鮮食品を除く消費者物価指数の動きをみると足許1.3%ですが、ご承知のように、雇用の改善と名目賃金の上昇の両方を合わせると、雇用者所得は2%強ぐらい増加していますので、消費増税分を除くと、実質賃金は増加しています。』

何というものは言い様。一人当たりベースでの実質賃金の低下の話は完全スルーですかそうですか。

『もちろん、消費増税も負担であることは間違いありませんので、それが実質賃金を下げていることは事実ですが、税金の負担の部分とそれ以外の部分とは分けて考える必要があるのではないかと思っています。』

ふーん。

『税金の影響を除いた基調的な部分で言うと、雇用者所得も物価上昇率を超えて上がっていますし、今回の消費税率引き上げは、実質賃金の上昇率にずっと影響を与えるものではなく、統計上も12か月経つと剥げ落ちます。消費税率引き上げについては、駆け込みとその後の反動減という動きのみならず、実質賃金を押し下げる効果の影響もみていかなくてはならないと最初に申し上げましたが、その影響は無限に続くものでなく、基本的には、1年間統計上に現れるものと思っています。』

もう段々説明がアレになっておりますし、大体からしておまいら2%の物価目標掲げているんだがそっちと賃金の伸びとの兼ね合いはどうなっているんだよと小一時間ですし、来年度賃金がちゃんと上がってくれるのか全然わからないのですけれどもねえ。今年度の場合は消費税引き上げもあったのでさすがに雀の涙程度でも賃金上げないとという話になっていたでしょうけど来年度ってどうなのよという話ですがな。

つーかそれ以前の問題として来年度も黒田さんの主張によりますと消費税率上がるんでまた効果が出てくるんですけどねえ・・・・・・・・・・・

『従って、今後の中長期的な動向をみていくためには、やはり実質的な成長がどのくらいになっていくかが中心です。当面は、潜在成長率を上回る成長が──昨年度もそうでしたが──、今年度、来年度、再来年度と続きますが、いつまでもずっと続くわけではないので、中長期的には、やはり潜在成長率を押し上げていく、引き上げていくことが必要です。そのためには企業が前向きの投資を行い、イノベーションを進める、あるいは政府が日本再興戦略の改訂版で示されたような各種の規制緩和とかその他の政策を着実に実行していくことを通じて、潜在成長率自体を中長期的に押し上げていくことが、中長期的な実質賃金の上昇のために一番必要だと思います。』

まあ最後の所は普通に重要だがどうでも良い話なのでまあこんなもんでしょ。


・物価が上がっても成長下振れしたらどうすんのという質問

『(問) 先程来の質問にも出ているように、足許で弱めの経済指標が目立っている一方で、物価については今のところ日銀の想定通りに進んでいる面が大きいと思います。そこで率直にお伺いしますが、今後、成長が下振れても物価が日銀の見通しに沿っているのであれば、追加的な政策対応は必要ないとお考えなのか、それとも、成長が下振れれば先行きの物価安定についてそれなりの阻害要因になるとお考えなのか、ご所見をお願いします。』

ちょっと惜しいちゃあ惜しくて、多分「それとも」以下の所は不必要で、そこは相手に答えさせる方が良かったように思えます。

『(答) 日本銀行の金融政策の一番大きな目標は物価の安定であり、それを、消費者物価の総合指数で2%程度の上昇が安定的に持続することと定義しています。これは、各国の中央銀行の考え方と基本的に同じです。その点からいえば、日本銀行の最終的な政策目標が、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、安定的に持続させることであるのは間違いありません。その際に、景気動向や雇用・賃金の動向等をみて、今後の物価動向を推し量ることもしていますので、金融政策が毎月の物価上昇率だけに左右されることはないと思います。』

ふむ。

『日本銀行の金融政策の第1の政策目標は、物価の安定ですので、物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリスクが生じることがあれば、当然、金融政策の調整は行います。金融政策の目標は、あくまでも物価の安定ですが、消費者物価指数の動きだけをみているわけではありません。』

ということで、最後の部分ですけど、これは「物価の数値だけでは無くて景気とかも見ています」という意味で説明はしている(物価の指標として色々と見ているという話ではないのは明らか)のですが、これだと成長が下振れても物価目標行けば無問題と言っているのかそうじゃないのかがちと良く判らんです。


・物価のコンポーネントの何が上がるのかという質問

『(問) 物価上昇に関して、どのような業態、業種の物価が上がっていくのか、そのメカズニズムも含めて具体的に教えて頂けないでしょうか。』

これ質問丸め過ぎで、実際は「年度後半に上昇するということですが、どのコンポーネントが上昇するということなのでしょうか」という質問だったと思います。

『(答) 個々の財貨・サービスの価格がどう動いていくかというと、それぞれの財貨・サービスの様々な需給要因がありますので、それによって動いていきます。そういった個々の価格の動きを全体として総合した物価指数がどのように動いていくかというときには、先程申し上げたようなマクロ的な需給ギャップ、それからマクロ的な物価上昇期待というものが大きな影響を与えるということは、多くの研究で指摘されている通りです。』

ほうほうそれでそれで??

『逆に言うと、個々の財貨・サービスの価格、例えばガソリンの価格ですとか、特定の食品の価格については、影響を与えるファクターが色々あって、その動きから個々の価格を予測して、総合して、消費者物価の上昇率を予測するということは、むしろできないわけです。』

え?

『短期的には個々の価格の動きから消費者物価の動きを推測するということはできますが、半年、1年、2年、3年といった一定の期間を通じた消費者物価指数のマクロ的な動向をみるときには、個々の価格の動きを足し合わせるよりも、マクロ的な需給バランスや人々の物価上昇期待というものを予測して、そこから物価上昇率を予測するというのが理論的に正しいだけでなく、実際にもそれが一番当たるといいますか、それしかないと思います。』

なるほど!だから日銀の物価見通しは短期は精密だけれども(銃声)。

『繰り返しになりますが、個々の価格について、ガソリンの価格が来年どのくらいになっているかとか、そういったことを予測するというのは、できないとは言いませんが、財貨・サービスの価格を全て予測して、それを総合して、消費者物価指数の動きを予測しても当たりません。』

当たらないのに短期的な「暫くの間」の物価見通しについて声明文で示しているのは何ででちゅかねえ(棒)。

『消費者物価やマクロ的な計数は、マクロ経済の動向によって決まってきます。需給ギャップが縮んでいく、あるいはプラス幅が拡大していくという中で、消費者物価指数は上がっていきます。それを踏まえて予想物価上昇率も現に上がってきていますし、今後とも上がっていくと思います。両者が相まって2015年度を中心とする期間に2%の「物価安定の目標」が達成されるだろうと思っています。先日公表した展望レポートの中間評価でもそういう数値になっています。』

何ちゅうか凄い答えなのですが、質問の方は会見のビデオを見た限り「今年度後半に上昇していく物価のコンポーネントは何でしょう」というものでしたので、この説明って何なんですかというか、そもそも短期的には推測できるという話をしているのに半年後はもう判らんとか何か説明が強引ですなという所で。

・・・・・ということでまあ総じて今回の総裁の説明は出来が悪いという感じですな。段々「2年」が近くなっているのですから益々ツッコミがきつくなってくると思いますよ大丈夫ですかねえ。



2014/08/11

お題「決定会合レビュー:アタクシ的には微妙なテイストに仕上がっていますな/銀行決算レポートキタコレ」

厭債害債さんがエントリー連投しておられます。

http://ensaigaisai.at.webry.info/201408/article_1.html
GPIF改革と利益相反

http://ensaigaisai.at.webry.info/201408/article_2.html
Guesswork

http://ensaigaisai.at.webry.info/201408/article_3.html
やはりそうでしたか

実に仰せのとおりであたくしが付け加える事などございませんですな。


○MPMレビュー:声明文は輸出と生産をを下げるが微妙に上げる項目ありとな

声明文である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140808a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140715a.pdf(前回)

・現状判断:輸出と生産を下げて雇用と個人消費を微妙に上げるとな

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

という総括判断には変化ありません。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ということで輸出の判断下げているのですが、それはそれとしまして海外経済に関しては「回復している」という判断が継続している訳で、海外経済が回復しているのに輸出が弱めとはこらまたどういう事ですねんという辺りは月報の中で何か書いてあるかどうか確認したいですね!!!!

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

設備投資と公共投資は同じです。

『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(今回)
『個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。』(前回)

今回は雇用所得環境に関して「着実に」改善と改善の表現を強くしたのと、個人消費や住宅投資に関する表現も「全体として見れば」とか微妙にヘッジを入れながらも駆け込み需要の反動の影響が徐々に和らぎすつあるそうですよ先生!!

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(今回)
『鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(前回)

生産は今回「足もとでは弱め」となっていますが、基調としては緩やかな増加という判断を継続という良く良く考えたらナンジャソラという感じで、これまた輸出の所と同様に怪しげな説明となっていますなあという感じです。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

つーことで金融環境とか物価の話は同じです。


・先行き見通しは同じ

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

でまあ毎度なのですが、物価安定目標に対する水準にまだ届いていないという状況の中で物価の見通しの「暫くの間」の表現が変わらないというのはつまり物価安定目標達成の時期が後ずれする事になるのですけれども置物副総裁首洗ってますか????


・リスク要因も同じ

展望レポートの中間レビューは今回ありませんので飛ばしましてリスク要因。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


・所期の効果を発揮しているとな

毎度の最終パラグラフ。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

ということでこちらも堂々の同じ表現になっています。ついでに木内さんの提案も毎度同じなのですが、「2年間程度の集中対応措置と位置付ける」というのは残り半年とかの状況になっているので表現を変えた方が宜しいのではないでしょうか。


・ということで感想

えーっとですな、この後の会見ネタ(詳しくは本日テキスト出てから)にも通じるのですが、今回の声明文の表現は「輸出は下げるのに海外経済は回復継続のまま」とか「生産は下げるのに基調的な云々は同じ」というような微妙に往生際の悪い下方修正部分に加え、バランスを取っているのか知らんが消費税増税の反動に関する説明を(ホンマカイナという感じもするのですが)入れてみたり、雇用所得環境の表現を強くしてみたりという事で、何というか言い訳っぽいテイストに仕上がっておりますな。

でまあ今回はこのような変化が起きているのですが、何ともまあ中途半端というかな変化だなあと思う所でありまして、ヘーキヘーキと突っぱねる(達観すれば輸出だって横ばい圏内で突っ張って表現するという手はあったと思う)という手もあるような気がする所を素直(かどうか知らんが)に下げてくる辺りがほうほうそうですかという所なのですが、一方で国内需要に関する表現を強くしてみたりという微妙な往生際の悪さもあって、出来上がりのテイストが実にこう微妙になっているようにアタクシには思えますがどうでしょうかね。

ということで、まあ普通に日銀の行動パターンを考えたら10月の展望レポートは突っ張ってくると思われるのですが、経済のデータを素直に見てるとうーむという感じになっているのではなかろうか、という風に今回の表現変化(と会見)を見て思ったのは考え過ぎでしょうかねえ。

従いまして、足元で「追加緩和なし」に「転んでいる」方というのは正直何を考えているのか判らんという所でして、あたくしなんぞだいぶ前から総裁講演やら展望レポートの表現から「これはギリギリまで突っ張り続ける」という想定をしていた訳ですが、展望レポートの7月中間レビューが終わってさて10月展望レポートに向けて経済物価情勢の点検を開始、しかも消費増税以降のトレンドはどうよという時期に経済指標は微妙だわとなっている所に来て、今回の声明文が微妙なテイストな上に総裁会見が更に微妙なテイストになっていて、基本的には10月は突っ張るし下手したら年末も突っ張るんじゃないのと思っていましたが、本当に突っ張り切れるのかについては少なくとも年末はマズーな感じになりつつあるかもというイメージになったんですけど。

もちろん会見での基本的な説明部分は従来通りなのでそこを見ておりますと特段強気姿勢に変化なしという事になるのでしょうから、あたくしの感想もちょっと先走りな所はあるのですが、まあ今回の声明文と総裁会見から受ける印象は「ちょっと苦しくなってきましたな」という感じをあたくし的に受けるものでありまして、まあそういう事なんじゃないのとゆー所っす。


○総裁会見ですが・・・・・・・・(予告編)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9ZC6N6K50XV01.html
日銀総裁:目標達成にリスク生じれば当然、金融政策の調整行う
更新日時: 2014/08/08 18:18 JST

『8月8日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は8日午後の定例記者会見で、「あくまで日銀の政策目標の第一は物価の安定だ」としながらも、物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリスクが生じれば、「当然金融政策の調整は行う」と述べ、成長率が今後大幅に下振れた場合などに追加緩和を行う可能性を示唆した。』 (上記URLより)

会見の中継を聞いた限り下振れしたら追加緩和という質問してたのがブルームバーグの日高さんだったと思われますので何というヘッドラインという感じですが、総裁の説明は「リスク要因の大きなものが顕在化した場合」みたいな説明だったのでまあ何ですなという感じですし、大体からしてもうその手の表現はさすがに市場の皆様も見慣れているので特に反応もせずという感じでしたけどね。


・・・・・・・・・でまあそれはそれとしまして今回の総裁会見も一応通して聴いてみた訳ですが、今回の会見での一番の印象は「説明がアホのように長い」という所です。いやまあ具体的に前回と比較して時間を見るとかそういう事していませんのであくまでも印象論になってしまうのですが、一つの質問に対して黒田さんが答えるのがとにかくああでもないこうでもないとか、そもそもその点につきましてはこうでして、みたいな感じの説明が続いてとにかく冗長という印象を与えましたです。

ということで、ああでもないこうでも無いとグダグダと話をこねくり回す、というのは「質問の筋を外して都合の良い話をする」とか「そもそもその部分を説明したくない」などというような下心があるのでは無いかという印象を与える(オマエモナーという声が聞こえたような気がする・・・・・^^)訳でして、本当の本当に自信満々死角なしという状態でしたら言い切り方で(キリッ)というのが語尾に来るような話っぷりになるのですよね。

そういう意味では総裁会見実況放送が始まって「こんなに自信満々なのか」と市場の皆様もビックリという展開だったついこの前の会見と比較致しますと、今回の説明はまあグダグダ感が漂う物件に仕上がっておりまして、さきほどの声明文での微妙な往生際の悪さと相俟って「あれれ??」感を醸し出すテイストになっております、と思ったのですがどうですかな。

ということで、まあ会見要旨は今日アップされる訳ですが、要旨は要旨ですので、質疑応答の趣旨を損なわない程度に答えの方を簡潔にまとめた方がグダグダ感を与えずに済むと思いますので事務方におかれましては会見要旨まとめの力が問われますなあという所で(ニヤニヤ)。



○しらっと機構局から銀行決算の概要が

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron140808a.htm/(要旨)
2013年度銀行決算の概要

全文はこちら(表題含めて26枚カラー刷である)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron140808a.pdf(全文)
リスク管理と金融機関経営に関する調査論文
2013年度銀行決算の概要

ということで、こちらはFSRとかの一環で出ております銀行決算レビューでして、カラーになっておりますので色刷り印刷なんぞをして目の玉ひん剥いて読むのが吉と思われます。内容的にはFSRでの分析と同じような物の内容限定バージョンという感じになっておりまして、基本的にはこの内容がそのままFSRに反映されるという物ですのでFSR並みに確認をするのが宜しいかと。

でまあ中を色々とネタにすると面白そうなのですが月曜でもありますので(??)要旨の所をば引用すつので上記の「要旨」のURLから(ちなみに本文の1ページ(表紙の次なのでファイルの2枚目)にも同じ要旨の記載があります)。

『2013年度の当期純利益は、大手行で前年比約5%、地域銀行で約3割の増益となった。地域銀行では、2005年度の過去最高益を上回った。』

『こうした増益の背景には、国内景気が緩やかな回復を続ける中、資産内容の改善に伴い信用コストが大幅に低下したことに加え、幅広い項目で株価の上昇が利益の押し上げ要因として寄与したことがある。』

ほう。

『すなわち、信用コストについては、不良債権の新規発生の減少や引当率の低下等から、大手行で戻入益が発生したほか、地域銀行でも大きく低下し、増益に寄与した。また、株価の上昇は、(1)償却損(減損)の減少と売却益の増加に伴う株式関係損益の改善に加えて、(2)保有投信の解約益等の増加(資金利益の増加)、(3)投信販売手数料の増加(非資金利益の増加)を通じて利益を押し上げた。』

なるほど。

『この間、国内の貸出利鞘は縮小を続けた。』

キタコレ。

『このため、貸出残高は増加したものの、国内業務部門における基礎的な収益力の低下傾向には歯止めがかかっていない。特に地域銀行では、国際業務部門の貸出増加が増益に貢献している大手行とは異なり、こうした傾向が強い。』

ということで要旨が終了していますが、この前のFSRとか(暫く前からその傾向があるのですが)相変わらず「国内業務部門における基礎的な収益力の低下傾向」の話があって、更にその影響が大きいのが地域金融機関でありますという指摘になっていまして、国内業務部分の基礎的な収益力の低下傾向がどうのこうので地域金融機関の皆様どないかしてください的な締め方を言外に示す要旨(本文は淡々と状況を記述しているだけなんですけどね)になっているのが毎度のテイストであります。

つーてもそもそもQQEとか貸出支援措置とか言って国内業務の基礎的収益力が低下するような事を実施してるの誰ですねんとか、それ以前の問題として物価は上がらん成長力は弱いという状況を長期化させて預貸収益が伸びない構造にしているのはどこの誰ですねんとか、プルーデンスウィングとしては確かにこの指摘は全く持って仰せのとおりではあるのですが、そもそもマネタリーポリシーウィングの方が(銃声)。

つーかこの話って地域金融機関がどうのこうのという話では無くて「そもそも論としてもはや国内で稼げなくなっている」という文脈で読みますと、円安になっても輸出が伸びないという製造業のアチャーな話とオーバーラップして大変に残念な香りが漂ってくるんですけどねえ・・・・・・・・orzorz



2014/08/08

お題「ECBから少々/3M短国入札は流れるとな/暇でも無いのに夏休みヒマネタ」

いやあそういや今日はMPM二日目だから輪番とか短国買入とか無い日でございましたな短国3兆円買入オファーは月曜ですね(大汗)。

○ECBから少々

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140807.en.html
PRESS RELEASE

7 August 2014 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.15%, 0.40% and -0.10% respectively. The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ということで決定はまあ予想通りの現状維持。

でもって総裁会見。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html(今回)
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140703.en.html(前回)

冒頭説明の最初の部分だけ前回と比較という毎度の寝起き攻撃。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』(今回)
『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』(前回)

さいですな。

『The available information remains consistent with our assessment of a continued moderate and uneven recovery of the euro area economy, with low rates of inflation and subdued monetary and credit dynamics.』(今回)

『The latest information signals that the euro area economy continued its moderate recovery in the second quarter, with low rates of inflation and subdued monetary and credit growth.』(前回)

今回は「ユーロ圏の等しくない回復」ということで直近のイタリア経済指標があばばばばーであったことを受けたと思われる部分が入っているので、まあそういう意味では問題意識自体は高まっているということですし、大体からして「域内不均衡」をついこの前までアピールして金融緩和政策の正当性を強調していたという事を考えますと、域内不均衡を示唆するようなこの文言が入ったのはその面からも問題意識の高まりという話になると思いますけどどうでしょうかね。

『At the same time, inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)
『At the same time, inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(前回)

インフレ期待がアンカーというのは毎度同じ(というか違うと大変)。

『The monetary policy measures decided in early June have led to an easing of the monetary policy stance. This is in line with our forward guidance and adequately reflects the outlook for the euro area economy, as well as the differences in terms of the monetary policy cycle between major advanced economies. The targeted longer-term refinancing operations (TLTROs) that are to take place over the coming months will enhance our accommodative monetary policy stance. These operations will provide long-term funding at attractive terms and conditions over a period of up to four years for all banks that meet certain benchmarks applicable to their lending to the real economy. This should help to ease funding conditions further and stimulate credit provision to the real economy. As our measures work their way through to the economy they will contribute to a return of inflation rates to levels closer to 2%.』(今回)

『The combination of monetary policy measures decided last month has already led to a further easing of the monetary policy stance. The monetary operations to take place over the coming months will add to this accommodation and will support bank lending. As our measures work their way through to the economy, they will contribute to a return of inflation rates to levels closer to 2%.』(前回、このパラグラフはまだ文章が続きますが比較の関係上以下は後で)

金融政策スタンスがどうのこうのの部分ですが、ECBはこの辺の説明で語順をホイホイ変えてくるので並べて前回比較がめんどいのですけど、要するに前回も今回も「この前打ち込んだ追加緩和が金融環境の緩和に貢献」「さらにまもなく予定されておりますTLTROをお楽しみに」という話をしている訳です。

でまあフォワードガイダンスがどうのこうのの部分が前回は上記引用部分に続けて話をしているのですけれども、今回は次の次のパラグラフに飛んでいるので、引用はこの先に行います。

『As stated previously, and as a follow-up to our decision in early June, we have intensified preparatory work related to outright purchases in the asset-backed securities market to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism. 』(今回)

『As a follow-up to the decisions taken in early June, the Governing Council today also decided on specific modalities for the targeted longer-term refinancing operations (TLTROs). The aim of the TLTROs is to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism by supporting lending to the real economy. A press release on the modalities for the TLTROs willbe published today at 3.30 p.m. As announced last month, we have also started to intensify preparatory work related to outright purchases in the ABS market to enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism.』(前回、ここは引用の順序を入れ替えています)

前回はTLTROの詳細を公表しましたが、今回についてはABS買入についてどうなりましたねんと言いますと、これがまた「引き続き勉強中です(キリッ)」という結論になっておりまして、ドラギおじちゃんのやるやる詐欺の本領発揮ですねわかります。

ということでフォワードガイダンスに関連する部分の比較です。

『Looking ahead, we will maintain a high degree of monetary accommodation. Concerning our forward guidance, the key ECB interest rates will remain at present levels for an extended period of time in view of the current outlook for inflation. Moreover, the Governing Council is unanimous in its commitment to also using unconventional instruments within its mandate, should it become necessary to further address risks of too prolonged a period of low inflation. We are strongly determined to safeguard the firm anchoring of inflation expectations over the medium to long term.』(今回)

『Concerning our forward guidance, the key ECB interest rates will remain at present levels for an extended period of time in view of the current outlook for inflation. Moreover, the Governing Council is unanimous in its commitment to also using unconventional instruments within its mandate, should it become necessary to further address risks of too prolonged a period of low inflation. We are strongly determined to safeguard the firm anchoring of inflation expectations over the medium to long term.』(前回、ここは先ほど引用した部分の前に入ります)

つーことでフォワードガイダンスに関する部分とか、インフレが長期にわたって低位に留まるリスクがある場合に対して対処することについて全員が一致しています(キリッ)という所とかの表現は同じということで、まあ基本的に前回の話と同じです。

でまあこの先が経済物価情勢に関するもうちょっと詳しい話になるのですが、寝起きなのでこの辺で勘弁という事で、今回見た感じですと前回と違う部分でアタクシ的にうーむと思ったのは最初の部分の「uneven」かなあと思いましたがどうでしょうかね。

でまあその認識は認識で良いのですが、じゃあECBでなんか打つ手あるのという話になると、いわゆる量的緩和政策のようなバランスシート拡大政策は預金ファシリティ金利をマイナスにしているのでしんどくて、信用緩和ちっくな物ならできますけれども目の玉飛び出るようなバランスシート拡大は同様に無理ですし、大体からして信用緩和するにもクレジット関連の市場規模がという話でさてどうするんでしょうかねえ(という意味で預金ファシリティマイナスは悪手だったと思う)。


○ちなみにBOEは現状維持

http://www.bankofengland.co.uk//publications/Pages/news/2014/008.aspx

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee at its meeting today voted to maintain Bank Rate at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of purchased assets financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.

The Committee’s latest economic projections will appear in the forthcoming Inflation Report to be published at 10.30 a.m. on Wednesday 13 August.』

13日にインフレーションレポートが出るとな。

『The minutes of the meeting will be published at 9.30 a.m. on Wednesday 20 August.』

ということでメモでした。


○市場雑談関連

・3か月短国入札ェ・・・・・・・・・・・

ということで最初にも書きましたように今日は無慈悲短国3兆円買入(と勝手に見込む)の日ではなくてそれは月曜のお話でしたすいませんすいません。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140807.htm

(3)募入最低価格 99円99銭3厘0毛 (募入最高利回り)(0.0280%)
(4)募入最低価格における案分比率 16.4550%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘1毛 (募入平均利回り)(0.0236%)

ということでこの結果ですが、前回と比較すると平均利回りが若干低くて足切り利回りが高いと来ておりまして、要するにここもとのあじゃぱー入札の影響で「プライマリー段階でニーズが確定している分とかプライマリーディーラーの落札義務額分とかについては下手に普通の札入れて空振りするとカバーさせられに行って死ぬのでその分は目をつぶって高い所に入れる」けど「何ぼ何でも2bpカツカツとかだと実需ニーズが無いしGCレートが別に極端に低い訳でも無いので在庫もこの水準でそう沢山持てませんわなあ」という動きになったので足切り水準は甘めになったけどアベレージは強めになったとまあそんな所でしょうな。

つーか前場引けの段階ですとビットサイド2bp台前半だった筈なので落札結果自体は前場の引けの気配から見ると結構甘い所になりやがりまして、前日の6M入札のようなアオリイカ入札とは違う風情になっている所が実にこう味わいのある所です。というか味わいも蜂の頭も日銀オペ狙いの札がどの位入るのかとか、現実問題として除く日銀オペでの実需のニーズがどこにありますねんというのを勘案するとまあこうなるんでしょうというお話で、連日のように盛大に悪態を申し上げておりますが、日銀の短国買入が市場の価格形成に大変に素敵な悪影響を与えているという事を毎度毎度の短国入札が如実に示しているという所でありますといういつもの悪態で締めるのでした。


・固定金利オペのロールはまずまず

めんどいのでオペ結果だけ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140807.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(8月11日スタート分) 4,040 4,040

今回のオペですが、折り返し元になっているのが2本あってそれぞれが2580、2370億円で合計4910億円となっておりまして、今回はオペのおまとめサービス(違)となっておりますので、結果としてはロールが900億円程度の減額となっておりまして、ここもとのオペが基本的にそんな感じですけれども案外固定オペの残高が落ちませんなあという所です。

でまあ背景は知らんという所ですが、一応固定金利オペに関してはレポとか有担保コール市場調達で使いにくい適格担保部分のファンディングをつけるという意味では使い勝手があるので、可能性としてはその手のニーズ分の底溜まりがというのもあるのですが、残高的にはもうちょっと下の方じゃないのかねと思うのでどうなんでしょうかねとは思います。


・債券市場ネタメモ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9VND56TTDS001.html
債券は続落、GPIF関連報道受けた株上昇で−流動性供給入札は強め
更新日時: 2014/08/07 15:40 JST

ということで関連報道とはこちら。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N0QD0H420140807
再送-GPIF改革、日本株は20%超へ調整=政府・与党筋
2014年 08月 7日 14:33 JST

ネット版だと最初に出たのが14:10だと記憶しておりますが、まあこんなのが出たと思ったら債券がヘロヘロになった(という程別に暴落した訳ではなくて世が世なら誤差の範囲内の世界だが最近はウゴカンチ会長なので10銭も動くと暴騰暴落の世界^^)という風情だったようで。

『ただ、与党内にも「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」との指摘があるほか、想定より年金給付への備えが必要になるとの判断に傾けば、株の比率そのものは一気に引き上げず、上下双方向に認められている「かい離許容幅」を柔軟に使った運用を検討する見通しだ。』(上記URLより)

>「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」
>「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」
>「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」

全くおっしゃる通りですが何せ日本経済はこれから力強く成長して健全なインフレ時代になりますので長期的に見て株式が有利(つーか債券だって経済が健全に成長するような状況だと金利って別に急騰する訳じゃないから徐々に運用利回りが健全に改善していくような気がするのですが・・・・・・・・)ということですからね!!!!なお昨日の場中は途中まで日経平均ベースで15100近辺で(内務省検閲)。


○夏休みお勉強ネタで間違いさがし2題ほど(ただのヒマ(暇ではないが)ネタ)

まずはロイターより。
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0G705420140807
日銀固定金利オペ応札が増加、短国からシフトする銀行に別の思惑も
2014年 08月 7日 11:56 JST

中々こう腹筋の崩壊を禁じ得ない記事で、こういう記事にうっかりコメントを採用される何とかストの方もいい迷惑にも程があると存じますが、さてどこが変でしょう?????

(考慮時間1分^^)


・・・・・・・・まあ幾つかツッコミ所がありますが、最大のツッコミ所は冒頭部分という出落ちなところがもう何なんでしょという所です。

『[東京 7日 ロイター] - 札割れが多発していた日銀の固定金利方式の資金供給オペ(金融市場調節、固定金利オペ)で、応札が増え始めるという「珍現象」が起き、7月末のオペでは札割れを回避した。背景には、超人気の短期国債運用から固定金利オペに金融機関が資金をシフトさせている事情があるようだ。』(上記URLより)

>超人気の短期国債運用から固定金利オペに金融機関が資金をシフト

・・・・・・・・・・・・・・・・えーっとすいません。短期国債は運用ですけれども固定金利オペは「資金調達」になるのですが固定金利オペにどうやって資金をシフトするのでしょうかと小一時間問い詰めたい訳で、生兵法は怪我の元とはよく言ったものです(と言ってるアタクシも生兵法で良く細かい怪我はしておりますので他山の石と致しますが)。


続きまして久しぶりに産経電波浴シリーズで某ヨーイチ先生。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140807/dms1408070830010-n1.htm(1ページ)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140807/dms1408070830010-n2.htm(2ページ)
マクロ経済学の重鎮が「学部レベル」の誤り 実態とは真逆の論を説く不思議 (1/2ページ)
2014.08.07

まあ何ですな、前半のページで批判している「国債購入して民間から資金を吸い上げという理屈がおかしいだろ」というのは仰せのとおり(国債購入して当座預金が増えても貸出が碌に伸びない、というのは要するに日銀の買入が「単なる両建て化」しているだけだという指摘をするのなら意味はあるけれども、「資金を吸い上げ」というのは明らかに間違いで、資金供給オペでクラウディングアウトは起きませんわな、なお更に追加するとヨーイチ先生時々人の批判する時に恣意的な切り取りの仕方をする場合があってあたしゃ元文書読んでないので実際の所がどうなのか知らんのだが)でございますが、威勢よく一刀両断しに行ったら振り下ろした刀で自分の足を思いっきり斬っているのが誠に見事なヨーイチ先生本領発揮の芸風であります。

さてどこで自分の足に斬り付けてしまっているでしょうか??????

(考慮時間3分^^)


・・・・・えーっとですな、

『日銀が民間金融機関から国債を購入し、民間金融機関の日銀預け金が増え、それが家計や企業の預金増になるというのは金融論のイロハだ。』(上記URLの2ページ目の部分の方の中段辺り)

という説明が刀の振り過ぎで自分の足を思いっきり斬っているというチャーミングな所でして、日本銀行と民間金融機関の取引と、民間金融機関と民間の非金融機関における取引は別の次元の話になりまして、日銀当座預金の増減と民間金融機関の預金増減は基本的に独立事象な訳ですよね。

何度か説明してますが折角ですので(暇ですので、ではありませんよ!キリッ)もうちょっと詳しく説明しますと、どこぞの銀行が融資先に融資をします、という時にどのような現象が起きるかと言いますと、その銀行は自分の所のバランスシート上で資産勘定に貸出金を立てて、負債勘定に預金(普通の企業だと預金は資産だが銀行からしたら預り金なので負債ですな)が立つのですが、この時に日銀当座預金勘定の増減は発生しません。つまり日銀と関係なく個別金融機関のバランスシートが拡大するのかどうかというのが預金貸出金の増減に反映されるのですな。

#ですから「超過準備を貸出に回せ」という話はそもそも話の筋がおかしいという事です

ではその預金を企業が使ったらどうなりますねんという話ですが、これまた以前から何度も説明しておりますように、企業が使うにしても結局回りまわって結局どこかの人の預金口座に入ってきますので、金融機関間でのデコボコはあるかもしれませんが、金融機関全体という意味で見た場合には金融機関同士での資金の入り繰りはあっても全体の総額は同じという話になるんですよね。

なお念のため申し上げますが、貸出が伸びて預金が伸びてという事になると、恐らくは銀行券の需要が高まると思われますので、その分だけ民間金融機関の対日銀ベースでの資金不足が生じる(ワタクシらのケースを考えればよろしい訳だが、現金を引き出せば預金残高が減るのと同様で、預金者が預金から現金を引き出してくると金融機関は日銀当座預金を取り崩して現金を調達するニーズが起きるので日銀当座預金残高減少要因になる)でしょうし、預金が金融機関全体で拡大すると所要準備預金が拡大するのでその分だけ対日銀での資金需要が高まるというのもありますので、「中長期的に事後的に見て」金融機関の預貸金が増えた場合に中央銀行の資金供給が拡大せざるを得なくなるという話はあるのですが、ヨーイチ先生の仰っているのはヨーイチ先生一派がお得意とする「因果関係をひっくり返す攻撃」の典型の説明ですな。

ということで、「金融論のイロハ」と仰せのようですが、まさかとは思いますがその「金融論」とはヨーイチ大大大先生様の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか???????

#つい見つけてしまったので思わず久々にしょうもないクイズネタになってしまいましたとさ


2014/08/07


お題「短国入札が案の定な件/プロッサー総裁の反対票理由ネタを今さら鑑賞」

モーサテの観光立国にバス不足が課題で運転手も不足で大変ダー云々の話が延々と続いたところで解説の足立さん「値段を上げてください」の一言で一刀両断していて誠に仰る通りと思うのでありました。

○毎度の短国

もう何だかね。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140806.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘 (募入最高利回り)(0.0199%)
(4)募入最低価格における案分比率 19.0877%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘 (募入平均利回り)(0.0159%)

いやまあ確かに前場引けで2bpビットとかだったので強いですかねとかいう感じではあったのですが、そのまんま足切りは2bpだわ平均は更にその2つ上(ということはもっと上の札もあったという事でしょうからオソロシス)ということで、しかも市場推計の落札分布では発行3.5兆円のうちいわゆる不明玉が3兆円に上るという状態。

というころで毎度の事になりますが、この6か月新発も流通玉がスッカラカンとなるというのが確定という状態になっておりまして、このまま明日の短国買入で多くの部分が日銀に打ち込まれる(ちなみに前回の6Mは3.5兆円の発行のうち2.1兆円が日銀に吸い上げられるの巻となっています)の図となるということで、完全に日銀買入を前提にした別世界のレート形成になっておりますので、市場通すと迷惑にも程があるので日銀相手に直接発行して下さいと言いたくなりますと言うのは昨日も申し上げた通りですな。

でまあ本日は3Mの入札があるのですが、こちらの3Mはまだ年末越えではありませんので日銀の短国買入的にはイラネ(しかも今3Mカレントを買うと11月の日銀短国残高縮小要因になってその分帳尻の買いを入れないといけなくなる)という所かも知れませんので、まあ短国直接引き受けという訳にも行かないのでしたらば、年末越えの短国レートだけ完全に別世界に分断して頂くという意味で短国買入の買入対象銘柄を2015年償還物だけに限定したら如何でしょうか(ゲス顔)勝手にそこだけでゼロでもマイナスでもやってろという感じでございますけど。

・・・・・・・・・・てな話は兎も角として、こうやって無理繰りマネタリーベースを積み上げる事に定量的な意味があってその結果一時的にこの変態相場を我慢すれば金融政策の正常化が早くにやってくるというのであればそらまあ市場の中の皆様も我慢すると思うのですが、最近はMBを何ぼ増やしたら予想インフレ率が上昇して正常化が近づくというような置物師匠の理論はすっかりどこかに逝っておられますし、そらまあ短国の金利下げて短期金利を全般的に下げるという話はあるとは思いますが、中長期の金利と違ってそもそものスタート時点が0.1%なのでそこから下げてどうしますねんという話ですしと考えると、一体全体何のためにこの短国馬鹿買入をやっているのかという点についてもうちょっと考えて頂きたい(ちなみに考えるのは政策委員会の仕事でオペ部隊はやれと言われれば無謀だろうがなんだろうが突撃するように訓練されているので致し方なし)と思うのであります。

とまあ尤もらしい事をゆうておりますが、まあ要するになんですな、今でも既にどう見ても短期市場アップアップになっているのにMB70兆円拡大をそのままオープンエンドで継続したら短期市場そのものが金利もさることながら市場そのものがシュリンクしてしまう(日銀が投資対象になる玉を吸い上げてしまうのだから市場規模が減ってしまう、というくらい有意な買いを行っている訳ですな)訳で、市場がシュリンクするとこちとらメシのタネが無くなってしまいますので勘弁してくらはいという話っすよ。

なお、短期市場に関しては先般も申し上げましたように短期国債の市中消化額が130兆円になっていて日銀の買入残高が40兆円状態で、もしQQEをオープンエンドでやるとなるとうっかりすると来年末の短国買入残高は60兆円になってしまう訳ですから、市場規模がほぼ半分になってしまうという訳で無茶買いであるというのがわかりますが、冷静に考えますと長期国債だって今の調子で残高拡大していくと益々市場規模が縮小してくる訳で、債券市場だって最近の取引のアレっぷりは大変な物になっている状態で、オープンエンドで買入継続とか無茶にも程があるんで枠組みに関してもうちょっと考えて頂きたい(別に今それを公表しなくても良いけど)と思うのであります。

つーことでそもそもMB年間70兆円というのを来年も続けるのは無謀にも程があるという愚痴でありました。


○またまた忘れていましたがプロッサー総裁のタカ派芸を鑑賞

http://www.philadelphiafed.org/newsroom/press-releases/2014/080114.cfm
President Plosser Comments on FOMC Dissent
August 1, 2014

Philadelphia Fed President Plosser Gives Statement on Dissenting Vote at the
Federal Open Market Committee meeting of July 29-30, 2014

金曜に出ていたプロッサー総裁による俺様の反対理由表明ですので一応鑑賞。

『The economy has improved significantly this year, and inflation and unemployment have moved much closer to the FOMC's longer-term goals. However, neither the pace of the reduction in asset purchases nor its end date has been modified, nor has the time-dependent language associated with the projected liftoff of the federal funds rate been adjusted.』

『Thus, I cast a dissenting vote because I opposed retaining the statement language that reads "…it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends." I viewed such language as an inappropriate characterization of the future path of policy and so may limit the Committee's flexibility going forward.』

ということで、経済物価情勢が改善しており、目標に近づいているにも関わらず、資産買入縮小のペースは変えないし、その上先行きの金融政策運営に関する文言も変えないとは如何な物かということで反対したとのお告げですが、確かにまあプロッサー総裁が上記の所で指摘しているように、資産買入規模の縮小ペースに関しては「経済状況によって変化させる」という話だったにも関わらず、結局タイムディペンデントみたいな形での縮小になっている訳で、このままフォワードガイダンスの文言を継続したら、結局利上げタイミングも経済物価情勢ではなくタイムディペンデントになるんじゃネーノという指摘をしているのですな。

『In December 2013, the FOMC began to taper its asset purchase program, indicating that it was not on a preset course, but that the pace depended on the performance of the economy.』

ということでTaper開始の時に「経済次第」と言ってたのはどうしたといういい感じの逆ねじ食らわせ攻撃ですな。

『The Committee also indicated it was likely that it would be appropriate to maintain the current range of the federal funds rate well past the time that the unemployment rate declines below 6.5 percent. At the time this decision was made, the unemployment rate was 7.0 percent, and year-over-year PCE inflation was 1.0 percent. With the recovery appearing somewhat unsteady and with the possibility of inflation falling further, caution and patience seemed prudent.』

当時はまだ先行きに対して慎重に見る必要がありましたが・・・・・・・・

『My own assessment at that time was that the economy would gradually recover. I projected that by the fourth quarter of 2014 the unemployment rate would decline to 6.2 percent, and year-over-year PCE inflation would rise to 1.8 percent. Consistent with that view of gradual economic recovery, I believed that an appropriate monetary policy would require the funds rate to rise to 1.25 percent by year-end 2014.』

『Moreover, I anticipated continued progress toward economic health in 2015, with the unemployment rate reaching 5.8 percent and inflation running at 2.0 percent. Consistent with these outcomes, my associated funds rate was in the neighborhood of 3.25 percent at the end of 2015.』

ということで、プロッサーのおっちゃんの主張は思いっきり経済見通しによるものでして、スタイン前理事のような「プルーデンス的に見た場合の金融不均衡リスクガー」という要素は全然入っていないのは注目すべき所ですし、他のタカ派の方でも特にこの金融不均衡ネタを正面切って突っ込んでくる人はいませんので、即ち経済物価情勢というか物価が強くなって来ればタカ派が元気になって、物価がしょぼーんとしてくるとタカ派もしょぼーんとなる、という形にはなりますが、米国金融市場でクレジットバブルヒャッハーとかやっていてもマネタリーポリシー的には知らんがなという形になるというのがまあ明確ではありますな。

しかし2015年末の適切なFF金利が3.25%近辺です(キリッ)とかどんな利上げを想定しているんじゃこのおっちゃんは・・・・・・・・・・・・

『My views on the appropriate funds rate settings were - and continue to be - informed by Taylor-type monetary policy rules that depict the past behavior of monetary policy, which I find useful for benchmarking my policy prescriptions.』

テイラールール(というか多分その修正版)で金利政策運営を考えるべしとな。

『With the economy having already reached my year-end 2014 forecast for inflation and unemployment, and appearing to be well on its way toward achieving my 2015 forecasts approximately a year ahead of schedule, the funds rate setting remains well behind what I consider to be appropriate given our goals.』

ほうほうそれでそれで?

『In addition, the economy today is very close to achieving the central tendency outcomes for 2015 reported in the December 2013 Summary of Economic Projections. Specifically, the central tendency projection for unemployment at the end of 2015 was 5.8 to 6.1 percent, and that for inflation was between 1.5 and 2.0 percent. From this perspective, we are nearly 18 months ahead of where the Committee thought we would be just seven months ago. Consistent with these projections for 2015, 14 of 17 participants indicated that the federal funds rate should be above zero, with a median value of 75 basis points. Yet the Committee's statement does not appear to reflect what was once thought to be appropriate policy based on the behavior of unemployment and inflation. 』

プロッサー総裁的には現在の「物価と雇用のゴールに近づいても政策金利は低く抑えるのが適切」というFOMCの中心的な考え方がそもそもケシカランという話であって、テイラールール的に運営せえという話なのですが、どこでその話をしてたか忘れましたが、イエレン議長は副議長時代から何度かその辺のテイラールールと実際の金融政策運営の話をしていまして、「経済に大きなスラックがある内は、いわゆるテイラールールのような形で求められる政策金利水準は過大推計になる(スラックがある分だけテイラールールよりも低くないとイクナイという理屈)」という話をしておりますので、この辺りに関する認識部分でFOMCの中心的な考え方(というか執行部の考え方)との乖離があるというのもポイントになるかと思われます。

『Thus, given the clear progress we have made toward achieving our long-term goals over the past year, and the progress and momentum that appears to be building in the economy and in the broader labor market, I no longer believe that the forward guidance language in the statement is appropriate or warranted.』

ということで反対をしているという話で、タカ派ゆうてもプロッサーさんの他にラッカーさんだのフィッシャーさんだのジョージさんだのが居まして、この人たちのこの手の説明を良く良く再確認する必要はあるのですが、基本的に(前のスタイン理事とは違いまして)このタカ派のセンセイ方の説明って概ねプロッサーさんが今回示したような話に近い話をしているとあたしゃ認識しております。

つーことで、今後の利上げタイミングやそのペースに関しては、「実際の物価推移」というのに加え、「経済のスラック」に関する指標、と言いましても直接スラックを計測できる訳では無くて色々な指標を見ながら判断するという話になりますが、その辺りの指標とされているもの(最近は賃金に関しての話が多いようですな)の推移というのが、イエレンチームが正しいのかタカ派軍団が正しいのかという話のポイントになるとは思います。

でですね、更に余談ちっくになりますが、そういう意味では延々と「経済の余剰生産力ガー」と言い続けていた英国中銀様におかれまして物価がホイホイ上昇してきて割と豹変してきたりするという先行事例がありまして、そらまあ経済の構造が米国と英国では全然違うので必ずしもそれがそのまま使える話で無いのですけれども、最近ちとネタ採用していなくてアレなBOEのここ暫くの議論を再度じっくり確認しておくというのも米国の今後の経済指標から金融政策運営を見る中での参考になるかも知れませんなあと勉強する気を新たに起こす今日この頃でした(勉強する気は起こったが勉強するとは必ずしも言ってません^^)。


○題名に釣られたが一般的な話でした

http://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2014/html/sp140804.en.html
Mario Draghi: Central bank communication
Opinion piece by Mario Draghi, President of the ECB,
published in Handelsblatt on 4 August 2014
Edited transcript of Mario Draghi’s speech at PR Manager of the Year Award (15/07/2014)

7月15日にスピーチした内容についてドイツの新聞のハンデルスブラットに掲載されたので絶賛掲載したようなのですが、ドラギのおっちゃんが「中央銀行のコミュニケーション」というお題で話をするとはやるやる詐欺の極意と奥義みたいな話かと思ったら別にそんな事はありませんでした、と超斜め読みで読んだだけなのでそう思ったのですがどうですかね。

後半の方から。

『In the first case, the main challenge for the ECB was to reconcile three attributes of central banks that do not immediately fit together: being very powerful and independent yet unelected. The best example of a country that had done this successfully was Germany. Its answer was to uphold the Deutsche Bundesbank’s independence but to constrain its powers within a narrow mandate. And the contours of that mandate were not set by the central bank itself, but by legislators, who themselves were democratically elected.』

『This model has worked because, by sticking closely to its mandate, the Bundesbank has gained the trust of the people. It has cultivated this trust by actively communicating the rationale for its mandate and its plans to achieve it. This inspired the ECB’s founding fathers to give the ECB an equally clear and narrow mandate oriented towards price stability. And we have established trust by clearly communicating that mandate and, of course, delivering it.』

ブンデスバンクでのモデルを基に物価安定に関するECBのコミュニケーションも基本がつくられたそうですよ。

『This task is more complex for the ECB, however, than it was for the Bundesbank in the past or the Fed today. Building trust among the 335 million citizens of the euro area is a major communication challenge. We are communicating in 18 countries using 15 different languages. In all these countries, citizens’ expectations are different.』

ただ、ドイツ一国と欧州全体という違いがありECBの与えられたタスクはより複雑になっていると。

『For example, my predecessor as ECB President would tell me that if he took a walk in Frankfurt, people would often ask him “when are you finally going to raise interest rates?” But if he took a walk in another major city just a few days later, people would ask him “when are you going to lower interest rates?” We deal with this plurality by making use of the inherent advantage of having a Eurosystem of 18 national central banks - that is, having communications departments in each country that make our messages heard and understood in the local context. But this remains a continuous challenge.』

でまあ合議体としての利点をコミュニケーションポリシーの中で生かしていくとかそんな話をしておりまして、まあ特段変わった話をしている訳ではありませんでしたという所ですな。以下は「非伝統的政策をしているので更にコミュニケーションは重要」という話になっていますが引用割愛します。

まあこれですが、話自体は前に行われたものですがECB理事会の直前にドイツの新聞がしらっと出してECBのサイトにも出てくるという流れに何か意味があるのかも知れないし単に新聞サイドが理事会の直前だからここで記事にしたらウケるだろうと思って出しただけなのかも知れませんので、あまり深く意味を考える必要はないのかもしれませんけれども・・・・・・・・・



2014/08/06

お題「計数ネタの続きを少々/金融経済月報ネタを忘れていました(大汗)/決定会合プレビュー雑談」

しかし何ですな、債券先物が終値ベースで最高値更新しているのに何とも盛り上がらないとはどういう事ですねんという所ですがまあそういう事(−−;

○市場雑談というか計数関連雑談

・今月の資金需給見通し

これも一昨日に出ていたんですけどね(大汗)。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1408.htm/
日銀当座預金増減要因(2014年8月見込み)

でまあこちらの見込み数値からしますと15兆6800億円の不足になっておりまして、今月の輪番は変国の回になりますので通常のペースですと6.41兆円の買入になります。で、受渡しベースの入り繰りがありまして、先月に実施した8/1渡の分が6300億円あって、一方で日程を逆算すると恐らく今月も月末跨ぎの輪番オファーがあると思いますので、あるので、その組み合わせがどう来るのかが謎な部分がありまして、そこの入り繰りが読めない(というか前月の末残対比のMB気にするんだったら何で先月の輪番の最終回が30日になったのよという風に思うのだが)というのが惜しい所ですが、まあ面倒なので長期国債買入を6.4兆円で置くとします。

でまあ15.68兆円の不足を埋める資金供給という事で実施されるのが輪番の6.4兆円と残りが短国買入となる訳ですので、概ね9兆円強の買入が必要になるという話になりまして、これを4週間で割るとMBの帳尻という意味では先週の3兆円オファーって多くねえかという気もするのですが、固定金利オペのロールがどの程度落ちてくるのかが例によって不確実ですし、まあ財政要因もあくまでも予想ベースですので余裕を持つのも必要でしょうし、MBが2か月連続で伸びなかったりすると何か色々と言われそうですから残高は今月に関しては伸ばして置きたいでしょうしなどと考えると、年末越えの短国入札がある今週と来週は少なくとも無慈悲3兆円オファーでその後調整が入るかもしれませんなとかそういう感じっすかねえ、良く判らんけど。


・物は試しに来年以降の長期国債の償還スケジュールを計算してみた

昨日ネタにした日銀保有の長期国債残高云々ですけれども、まあ目先の話はさておきまして、鬼に笑われながらも来年の計算をしてましたので第1回私家版集計という事で(^^)。

まあ計算もへったくれも単に償還日毎に額面残高を足し合わせていくという単純なお話になるのですが・・・・・・・・・・・・(数値はアタクシの計算ベースなのでご利用は自己責任で)

今年年末までの償還額:11兆3557億円
来年1年間の償還額:28兆448億円

でまあちなみに何ですけど、営業毎旬報告を見ますと7月末時点での長期国債の残高が172兆5182億円でして、今年の輪番の残りは買入額が月に6.3〜6.4兆円(奇数月と偶数月で物国変国の違いがあるので出入りあり)の現在のペースが続くとして5か月で31.8兆円になりまして、先月末の輪番分の受渡の入り繰り要因が6300億円ありますので結局32.4兆円の積み上げになりますな。

となりますと年末の日銀買入国債残高は保有分償還を差っ引きますとここから21兆円程度の増加となりまして、輪番で年内償還銘柄が打ち込まれるケースも特に四半期償還月にはあるので20兆円強で見ておくとして、年末の国債買入残高が193兆円程度になることが想定されますので、QQE実施時に示していた2014年末のメド数値190兆円を3兆円程度オーバーして達成という事になります。

まあそれはそれで良いとしまして、では来年はどうなりますねんという話ですが、上記の通りで来年の償還予定額が28兆円ありまして、これに1年以内の輪番オペで増える分が全部来年の償還になると見て(さっきと違う置きとか言わないで)、めんどうなので1年超の輪番は基本2年カレントが入るという事にして来年の償還に跳ねないとした場合、来年の輪番償還残高はここから2200億円の5か月分が乗ってくるので29.1兆円が来年の長期国債償還額になります。

という事はですよ、来年1月以降もこのままMB拡大政策を実施するという事になった場合、短期オペ部分がご案内の通りでもうどこからどう見ても限界に達しているのですが、そこをさて置きまして長期国債残高増加を年間50兆円ペースで考えると、来年のフローベースの必要買入額が79.1兆円になりますので12で割ると6.6兆円程度という計算になりますが、MB70兆円拡大を継続するとして短期オペが無理なので輪番での拡大メインで70兆円とかやりますと99.1兆円という話になるので月の買入が8.2兆円程度とか、これは国債増発でもしてくれないと無理ゲーという結果になってしまいましたぞなという事で、いずれにせよ12月以降のMB拡大については何とか考えないと「今の政策オープンエンド」というのは物理的に無理という話でしょうな。結局の所MB70兆円のうち「残り20兆円」部分の帳尻がどう見ても合わないということで。

以上計算本人は合っている積りでやっていますが、自分で検算しただけなので内容については皆様のご確認をお願いします(違ってたら伏してお詫びして訂正するから教えてジェネラル)。


・CP買入などなど

昨日のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140805.htm
米ドル資金供給(8月7日スタート分) 0 0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 1 1 -0.400 -0.400
CP等買入 12,475 4,268 0.092 0.093 54.5

ということでCP買入のレートが平均9.3bpで足切り9.2bpになっているのですが、前回のCP買入(7/25)が9.1/8.8でその前(7/16)が9.2/9.0なので相変わらずのレート推移という感じになっておりますな。

昨日も申し上げた通りで短国の方は日銀の無慈悲買入攻撃でレートがすっかり3bpビットとかやらかしやがっているのですが、一方のCPは引き続きこのようなレート推移となっておりまして、ひじょーに価格形成が変な事になっているのが実に味わいのある話ではありますな、うんうん。

なお本日は6MTBの入札が実施される訳ですが、どうせ日銀が必死こいて買入をしようとしますのでそれを見越して強い入札になってセカンダリーも玉無し芳一になって金曜の短国買入で日銀に吸い上げられて終了だと思うので、入札とかもう面倒だし市場が荒れるだけなので日銀が直接引き受けたら宜しいんじゃないでしょうかと思いますが(ヤケクソ)。



○そういえば今週MPMだが金融経済月報ネタを忘却していたので慌てて帳尻

今月というか最早先月の月報ですすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1407.pdf(7月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1406.pdf(6月)

例によって【概要】だけネタにするのですが(大汗)。

・現状判断部分は声明文と同様ですけどね

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(7月)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(6月)

ということで基調的には緩やかな回復。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(7月)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(6月)

海外の判断は毎度なのですが、木内審議委員に言わせると輸出に関しては「このところ」じゃなくて「リーマンショック以降」になりますね!!!!

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。企業の業況感は、駆け込み需要の反動の影響がみられているが、総じて良好な水準を維持している。』(7月)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移している。鉱工業生産は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調としては緩やかな増加を続けている。』(6月)

業況感に関しては短観を受けた四半期ものですのでそこはパスしまして比較しますと、鉱工業生産に関しての現状判断が「駆け込み需要の反動を受けつつも」から「振れを伴いつつも」となっていまして、これはつまり「駆け込み需要の反動から立ち直っている」という事を意味する言い方になりますので判断を若干強めていますな。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(7月)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(6月)

でまあこれも声明文でもありましたが、上記の続きで「駆け込み需要の反動が弱くなって来ましたぞな」という話になっておりますな。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(7月)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(6月)

輸出はいつになったら緩やかに増加するんでしょうとかいうツッコミはさておきまして、公共投資、設備投資の見通しも含めて変更はありません。

『雇用・所得環境の改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(7月)
『個人消費や住宅投資は、駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(6月)

ということで、雇用所得環境に関しては「改善が続く」と若干言い方を強めにしておりまして、消費や住宅投資に関しては駆け込み需要の反動の影響が和らいでくるという先行き見通しの総括判断部分にある話をこちらで持ち出しておりますので、まあ7月月報のテーマは「消費税増税の反動減が緩和されてきました!」という事ですな。


・リスク認識は音が飛んでるレコードの如くの繰り返しである

って円盤のレコードとかソノシートとか言われても若人は判らんですかそうですか。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(7月)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(6月)

しかし毎度同じですの。


・物価に関して

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(7月)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(6月)

同じですなあ。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(7月)
『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(6月)

で、先行きの見通しで「暫くの間」というのは声明文にもございますが、1月から延々と「暫くの間」であって、確かに1月決定会合後の総裁会見では「暫くの間」について「半年程度」という定義を仰せだった筈ですのでどう見ても物価の先行きの見通しで言いますと2%の目標達成時期が後ずれしているようにしか見えませんなあという話は既に5回位申し上げておりますのでしつこくは追求しませんけどね!!!!!

つーかですな、まあ展望レポートとの先行き見通しの棲み分けの問題があるのは承知しておりますけれども、そもそも金融政策に関しては(危機対応みたいな場合は別ですが)目先の動きに対して一々反応するのではなく、もう少し先の状況を展望して運営をするというのが本来の建付けでありますので、金融政策運営に関する声明文とかこちらの月報とかで、物価に関してそんなに目先の話をする必要があるのかねという風にも思えるのですよね。

つまり「暫くの間」の話では無くて、基調として物価安定目標へのパスを外していないのかという話を(特に金融政策決定の声明文では)言及した方がヨロシという事で(まあそこで展望レポートとの棲み分け問題がどうのこうのというのはあるのですが)、目先の見通しの話をするから会見でもそうですし何とかストの方々もそうですし、足元で1%割るか割らないかでひと騒動みたいな本筋から外れた話で盛り上がってしまう訳でして、まあ丁寧に説明したいのは判るけど足元の話をそんなに触れる必要あるのかね(特に物価に関しては)と思うのですけどね。

なお、金融環境の所は毎度同じの『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』なので以下の引用はパスします。

#超昔のネタになってしまいましてどうもすいません


○決定会合プレビュー雑談

という程の事でも無いですけどね。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N9T82M6LUTXG01.html
日銀「追加緩和なし」最多に、想定外の悪化で緩和期待復活も
更新日時: 2014/08/05 17:21 JST 

『8月5日(ブルームバーグ):物価情勢がおおむね日本銀行の想定通りに推移していることを受けて、追加緩和の予想時期について「追加緩和なし」が初めて最多回答となった。もっとも、消費増税の落ち込みが想定以上に大きいとの見方が強まり始めており、今後の展開次第では再び追加緩和予想が前倒しされる可能性もある。』(上記URLより)

との事で、やっと追加緩和なしが最多回答になったとはこれはまた随分とビハインド・ザ・カーブ(多分誤用)ですねと誠に心温まるものを禁じ得ない訳でございますが、従来より日銀が何度も説明しているように、まあ今の所は「暫くの間」物価が1%台前半での推移になるという話になっておりますので、そうなりますと7−9で明確な落ち込みでもしない限りは10月末の展望レポートでも「標準シナリオ通りに推移していて物価安定目標の達成に向けて着実に進展」と突っ張り続けるのは明らかですし、最近はちゃっかり2%到達時期を「2015年度を中心とする時期」と後ずれさせておりまして、それで2%の物価安定目標はQQE導入から2年で達成していますか大丈夫ですか出来なかったら辞任する置物副総裁首洗って待ってますか命乞いの準備は出来てますかという所ではあるのですが、まあ何はともあれそういう説明をしている以上は「日銀のスタンス的に見た場合に」追加緩和は無いでしょうし、大体からしてさっき色々と計算したように現在のQQEでのMB拡大ペースだって来年維持するのはかなり無理筋な訳でして、追加緩和ゆうても何をやれちゅうねんという話ではある訳ですな。

・・・・・・・・・・・という状況の中で追加緩和予想というのも何ですねんとは思いますが、逆に今更転向しておられている向きというのもナンジャソラと思う訳で、上記URL先の記事にもありますように、消費増税の影響、というよりもあたしゃ増税だけではなくて税や社会保障負担とかその他の手当てみたいなのの変更に伴う財政面と、石田審議委員が説明していた帰属家賃除く総合物価指数がやや大きく上昇しているという面による実質可処分所得の低下の影響じゃネーノと思うのですが、駆け込みからの戻りが実は弱いですねというような話になって来ている中で何で転向するのよと思う訳ですけどどうなんでしょうかねえ。

つーかブルームバーグのサーベイのアンケート先の名前が上記URL記事にあるのですが、人数集めりゃ良いってもんじゃねえだろと(以下禿しく自主規制)。




2014/08/05

お題「月初2営業日の計数関連雑談/木内審議委員会見から」

うーむ。
http://mainichi.jp/select/news/20140803k0000e040096000c.html
民間船:有事の隊員輸送 船員を予備自衛官として戦地に
毎日新聞 2014年08月03日 09時14分(最終更新 08月03日 11時56分)

先の大戦の戦時徴用に関しては大変にアレ(その絡みでこの前ちょっと話題になった上海での裁判がありましたが)だったとの事(検索すると色々出てきますよん)ですので、運用については良く良く考慮して頂きたい物だと。

なお話は全然違いますがこんなのがありますよどうですか。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140801a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140801c.htm/

若干名というのを「若いのを千人」と読むのはオヤジギャグにも程があるので自主規制。


○計数関連を少々

・長期国債銘柄別残高

毎度おなじみのこれ。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

7月を通して見ますと買入銘柄の平均残存はアタクシがてきとうに計算すると6.59年になる(ちなみにアタクシの場合は償還日と7月末の日数差分を単純に365で割って額面加重平均している(閏年補正とかしませんぞな)上に物国変国も単純に償還日で計算しております)ので、やっと今のやり方で平均7年程度に収まりましたねえという所でめでたしめでたしという所です。

まあそのせいで昨日の輪番でも25年超が滑っておられたりしているんですけど、そういう事は気にしないので無問題という事ですねわかります。

ちなみにこの残高集計をしていて爆笑の発作を禁じ得なかったのは10年カレントの相変わらずの集中ぶりで、10年334回債の7月買入額面合計はアタクシの計算が間違っていなければ14070億円とか銘柄別でダントツ(2位は5年106回の3259億円)で新発債速攻日銀お買い上げ状態という大変に素敵な財政ファイナン(自主規制)。

あと、7/20-7/31で見た場合は10年334回債が8597億円でこれまたダントツとか、買入銘柄の平均残存は7.59年(アタクシのてきとう計算ベース)ですかそうですかとかいうのがありますが、銘柄数に関しては7/20-7/31で多分71銘柄とかで1か月だと136銘柄とかになっていまして、5-10年の所とかだとカレントしか入らないのですが、超長期を25年の所で切った上に超長期カレント自体が入札強かったりした影響とか、中短期の所だと5年カレント以外も入るとかそんなのもあってちったあ分散していますな(と言っても上位銘柄への集中は相変わらずだが)という所で。

まあこの単月の結果からしますと、年内に関しては今の感じでの買入が継続するという事になるんでしょうが、来年に入った場合にどうなるかというのはさっぱりワカラン所ではありますのでそれは追々計算してみることとします。


・短期国債買入残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

こちらは毎月公表なのですが、7月は3兆円攻撃によりまして年末越えの銘柄の買入残高が13兆4396億円となりまして(アタクシの手計算ベースです)、6月末が9兆1378億円だったので4兆3018億円の残高増加かくにん!よかった!という所ですかそうですか(棒)。

でまあ短国の買入残高自体は40兆9525億円になっていまして、短国の市中消化がだいたい130兆円になりますので、日銀の買入残高が3分の1に迫る勢いになっておりますが、6月末の買入残高が33兆9800億円でして、そら残高ベースで7兆円も増えれば短国の需給が強くなって短国一人旅になりますわなという所です。

まあ最近は短国だけではなくて利付の短い所も残存1年で引値が4だの5だのという事になっておりまして、短国の需給逼迫に利付国債も連行されてきている感がありますが、CPとかは今の所ついていって無いので、やはり日銀の無慈悲短国買入が短期市場の価格形成をゆがめているということですかそうですか。


・マネタリーベースと営業旬報

MB残高
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1407.pdf

平残ベースだと7月も拡大しているのですが、末残ベースだと6月が243兆4,305億円で7月が243兆1,864億円なのであれだけ必死こいて短国買入3兆円攻撃をかましながらも末残ベースで前月対比で減ったですかそうですかという所ですな、うんうん。


営業旬報
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac140731.htm/

つーことで営業旬報の別表を見ますと長期国債の買入残高が172兆5182億円となっていまして、年末の残高目標が190兆円ですので、長期国債の積み上げがここから18.5兆円拡大(単純に逆算しているだけですので念の為)されますな。

資産合計は268兆9676億円でして、目標が290兆円なので残りが21.1兆円という事になっておりまして、差分が2兆円ほどありますが、7月は長期国債発行償還の足ずれの要因がありまして、恐らく12月末現在の残高という話になった場合には7月の状態から財政が払い超になっていると思いますし、この前(7/18)に計算した時もそうですが、短国に関しては恐らく7月末の残高ベースをそのまま維持して年末を迎えれば(ただし固定金利オペが減ったらその分を埋める必要あり)MB目標は達成しそうという事で良いのかなと思います。


以上計数関連雑談でした。


○木内審議委員会見である

遅くなってすいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1408a.pdf

・経済に関しては「腰折れはしないけれども執行部の見るようなペースは無理じゃろ」という見立てとな

質疑では経済見通しの質問が多く、特に輸出と設備の質疑に集中していますな。あと神戸も関係する国家戦略特区の質疑も多いのだがそれは聞く相手を間違えてるだろうと思います、ということで。

『(問) 2点質問があります。1点目は輸出関連です。ご指摘のように輸出の回復が遅れていることについて、昨日公表された鉱工業生産などにもそれなりに影響が出ていると判断できるのでしょうか。また、ご指摘のように世界的に貿易が伸びない中で、輸出に代わる日本経済の需要面の牽引役は何になるのか、見解をお願いします。(後半割愛)』

『(答) 1点目ですが、足許の生産統計は回復の傾向を示していますが、回復は比較的緩やかではないかと思っています。4〜6月期の生産の落ち込みも、予想よりやや大きめだったと思いますし、7〜9月期の回復ペースもやや弱めと見込まれます。』

まず生産の話をしていますが要するに弱めと。

『これは、一つには消費増税の影響があると思います。消費増税に伴う駆け込みとその反動は、予想外の動きにはなっていませんが、実体経済に相応に大きな影響を与えたことは確かです。一方で、在庫にもやや過剰感が生じています。これは、輸送機械を中心に比較的幅広くみられており、少し需要を強く見過ぎていた面があったのかも知れません。』

在庫過剰ネタキタコレ!

『その背景には、消費増税の影響に加えて、輸出の弱さも部分的には貢献している可能性があります。ただ、足許の輸出については、挨拶要旨にも書きましたが、一時的な要因ではなくて構造的な要因だと思います。リーマン・ショック以降は概ね横ばいと言ってよい状態ですので、足許だけが弱いということではないと思っています。』

>リーマン・ショック以降は概ね横ばいと言ってよい状態ですので
>リーマン・ショック以降は概ね横ばいと言ってよい状態ですので
>リーマン・ショック以降は概ね横ばいと言ってよい状態ですので

どう見ても執行部説明にマッコウクジラで反対しています本当にありがとうございました。

『その意味では、輸出の回復を前提としない景気の回復シナリオを展望する必要があると思います。』

で、その場合どうなるかという話は後ほどの質疑で出てくる。

『牽引役というお話がありましたが、現状をみると、内需は比較的堅調なので、輸出が回復しないからといって景気回復がすぐ頓挫してしまう状況にはないと思います。』

ということなので輸出がヨコヨコでもまあ腰折れはしませんでしょという話。

『もう少し長い目でみた場合、牽引役として期待したいのは設備投資です。』

ほう。

『従来は、輸出が回復しないと、特に製造業の設備投資が出にくいということはありましたが、例えば政府の成長戦略などが効果を高め、先行きの成長期待が高まり、これに応じて企業が設備を積み増していく動きが出てくれば、輸出に代わる内需の成長の柱になっていくことが考えられます。ただ、現状はそこまで至っていないと思います。(後半割愛)』

そらまあ時間がかかる話だわな、ということで木内さんの説明は「短期的にグイグイズンズン上昇は無理じゃろうけど中長期的に行きましょうや」というのが基本線になっております(だからこそ2年で2%を引っ込めろという話になっているのだが)なという所です。


で、その輸出の回復を前提にしないシナリオですけど・・・・・・・・・

『(問) 先程輸出の回復を前提としないシナリオも考えていく必要があると仰っていましたが、その場合、日銀の展望レポートで出している緩やかな回復基調が続いていくというシナリオを変える必要はないのでしょうか。また、足許輸出は横ばい圏内で動いていると判断されていますが、輸出が弱い中でも振れの範囲内であり、横ばい圏内に収まっているとみているのでしょうか。』

『(答) 先程申し上げたとおり、輸出の先行きの回復を必ずしも前提としないシナリオも有り得ると個人的には思っています。しかし、だからといって、回復が頓挫してしまうかといえば、現状でもそうですが、輸出が伸びない中、内需で景気の回復が続いていますので、これがすぐ途絶えるということではないと思います。』

ここまではさっきと同じ。

『ただ、従来考えていたよりも輸出が伸びないのであれば、例えば成長率の見通しなどがやや下方修正を受ける可能性が有り得るのではないかと思っています。』

まあそうなりますな。

『輸出については、長い目でみますと、概ね横ばいということだと思います。確かに本行が計算した実質輸出で言いますと、第1四半期・第2四半期はマイナスになっています。そういう意味で言うと、横ばいではなくて減少ととらえる考えもあるかも知れませんが、もう少し均してみる必要があり、均してみると概ね横ばいだと思います。』

『6月までの輸出は弱いという状況ですが、今後については、やはり2期連続マイナスの後なので、多少輸出が戻ると思います。ただ、輸出が戻った時に、それを輸出の回復と言うか持ち直しと言うかについては、私はやはり慎重に考えるべきであって、現状の判断としては横ばいでいいのではないかと思っています。』

ということで横ばいですかそうですか。


・設備投資に関して

とは言いましても、そもそも日銀執行部の標準的なシナリオでも設備投資の話とか需給ギャップと予想インフレ率がどうのこうのという話をしておりますように、日銀執行部も輸出が盛大に伸びない場合でもシナリオがコケないというポンチ絵は描いているのでありまして、では設備投資に関してはどういう話かと言いますと・・・・・・

『(問)(前半割愛)2点目は、先程のお答えでも設備投資を重視と言われていますが、おそらく自動車とか家電の工場をもっと作れということを仰っているのではないと思います。タイやメキシコといった他の国でということであれば、地産地消で日本発の可能性はない訳ですが、具体的にどのような産業の設備投資を仰っているのでしょうか。』

『(答)(前半割愛)2点目については、どの業種で設備投資が出てくると申し上げる訳ではありませんが、昨年は中小非製造業の設備投資が強く、それが足許では大企業製造業中心の設備投資に重心が移ってきている感じがあります。輸出が回復しない中でこうした動きが出てきたことには、やや意外感があります。』

ほう。

『ただ、輸出は伸びないけれども大企業製造業の設備投資がどんどん増えていくかというと、将来的には、国内の期待成長率が上がることが押し上げに寄与する可能性がありますが、まだ少し早い感じがします。足許の大企業製造業の設備投資については、国内経済の需給関係が改善し、需給ギャップが本行の計算で足許プラスに転じた中で、これまで更新投資を控えてきたがやや限界にきて、投資が出てきているという側面が強いように思います。』

ということですが・・・・・・・・・・

『ただ、その場合、必ずしも持続性は高くないと思います。』

そらそうよ。

『これが持続的な回復につながっていくためには、輸出に期待できないということですと、国内の潜在成長率に対する中長期的な期待が高まってくることが必要であり、それに向けて、政府の成長戦略などにも期待したいと思っています。』

つー説明でして、ヴィンテージ更新と省力化投資で設備投資が伸びてヒャッハーという日銀執行部シナリオは持続性無いでしょという指摘なのでした。


・2年で2%を引っ込める場合の話について

『(問) 本日の挨拶では、展望レポートの物価見通しについて修正案を出した話をされていますが、日銀として「2年で2%」という目標をやめた場合の説明責任はどうすればよいとお考えなのでしょうか。また、その場合、どのような政策が考えられるのでしょうか。』

そのお答えが長いのですが引用しますね。

『(答) 挨拶要旨では、従来私が主張していることを繰り返して書いているだけであり、政策委員会全体として今の枠組みを変えるかどうかについては全く分かりませんので、それを前提にお答えすることは難しいと思っております。ただ、私自身の考えということで言いますと、2%というのは日本経済の実力から考えますと、やはり高いと考えています。中長期であれば、そこまで物価安定の妥当な水準が高まる可能性はあるかもしれませんが、現状はそこまで行っていないと思います。現状では、もう少し低い位置に望ましい物価安定の水準があると考えています。それはどの位の水準かというと、明確には分かりませんが、1%あるいは1%前後ぐらいではないかと思っています。』

という説明は講演でも行っている通りですな。

『一方で、現実の物価水準は、例えばCPIのコアで見ますと1%台前半、コアコアで1%弱ということですので、比較的近い水準まではきています。金融政策の役割としては、望ましい物価上昇率に対して現実の物価上昇率が乖離しているときに、金融政策を通じて、その乖離を埋めるというのが重要な役割だと思います。』

つまり望ましい物価上昇率に近いので乖離を埋める役割は今ほど大きくない方が良いとな。

『これは挨拶要旨の中でも「3つのギャップ」という形で書いています。』

この部分は長くなるのでネタにしなかったのですなすいません。まあ読んで味噌。

『物価安定という状況は、多くの人や企業や家計にとって望ましい物価上昇率であり、これを前提に経済活動を行っているという水準だと思います。私は、望ましい物価の水準は、国毎に同じではないと思いますし、時代によっても変わり得ると思いますので、2%の目標を中長期的な目標としては受け入れていますが、現状ではやや高いのではないかと思っています。』

という説明を木内さんが金懇で行っている翌日には内外情勢調査会で黒田総裁が2%を短期的に目指す事についての正当性や、そもそも2%はグローバルスタンダード(キリッ)という説明をしておりまして、木内さんがいう「望ましい物価の水準は、国毎に同じではない」という点を盛大に否定している所が実に味わいがあるというものでございますな。

『私自身の物価見通しについては、概ね現状程度ということですので、物価は比較的安定した状態が続くという見通しです。先程申しました、中長期の予想物価上昇率と現実の物価が乖離しているときに、そのギャップを埋めていくのが中央銀行の役割だという点でいうと、既にそれなりに達成しているということではないかと思っています。』

達成キタコレ!!!

『これに対して、これからさらに需給ギャップが改善していき、景気が過熱感を強めていけば、物価上昇率はもっと上がっていく可能性があると思います。しかし、果たしてそれが持続的な物価上昇なのかと考えると、一時的に物価は上がっても、景気が過熱している状況では、経済が不安定になりやすいと思いますし、いずれ景気後退に向かっていけば、物価はまた下がってしまうと思います。物価を経済の実力に見合った水準に誘導していくほうが、経済の安定にとってはプラスですし、それが中央銀行の役割だと思います。』

どう見ても黒田レジームと真っ向対決です本当にありがとうございました。

『物価安定を通じて、国民経済の健全な発展に資するというのが、我々の最大の、最終的な目標だと思います。それに照らした場合、物価安定の目標については柔軟に運用したほうが、日本経済、国民にとって良いというのが私自身の考えで、それに沿って中長期の目標とすべきだと考えています。』

『短期間で目標達成を目指すと、経済がむしろ不安定になってしまう、あるいは金融不均衡を生みだしてしまうことを個人的には懸念しており、昨年の4月以来こうした提案をしてきています。それを今回の挨拶要旨にも書いた訳です。』

ということでこれはこれで筋が通っているのだが、まあもう一つの論点として「2年で2%」とか盛大にぶち上げないで同じようなQQEを実施した場合にどういう風になっていたのか、という点についてはこればかりは再現実験が出来ないので何とも言えない所で、実験室での自然科学実験みたいに再現性のあるテストが出来ませんからねえ。

『ただ、政策委員会全体としてどういう決定をするかについては、分かりませんし、それについて申し上げるのは適切ではないと思っています。』

そらそうですな、ということでまあ木内さん的には「まず目先の物価安定は達成できているので、今後はこの物価安定を維持しながら徐々に成長力の強化によって中長期の物価均衡水準を引き上げて行く為に金融政策でのサポートを行いましょう」という話なので、国債馬鹿買入とかではない方法で低金利政策継続で行きましょうという話になる(講演にあった通り)ですな。

#その他在庫の話とかQQE長期化の弊害とかもありましたがだいたい上記の引用で木内さんの今回の説明の趣旨はカバーしていると思いますので時間と量の関係でパス




2014/08/04

お題「黒田総裁の講演ですが説明が段々無理筋になってきている件について鑑賞」

金曜日は木内さんの会見テキスト(出たのが遅い)と黒田総裁の内外情勢調査会の講演があったのですけれども、改めてちょっと総裁講演を突いてきたら意外なまでにツッコミ甲斐がありまして、時間と量の関係上木内さんの会見ネタに手が回らなくなってしまいましたすいませんすいません。

○オペメモ(メモだけ)

オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140801.htm
国庫短期証券買入 30,000 2014年8月5日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年8月5日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2014年8月5日

えー短国買入3兆かよと思ったのですが、これで3週連続の短国買入3兆で、この2週間は3Mしか新発の無い中で3兆円攻撃連発なので需給がーという所ですが、今週は6Mの入札があるので今週金曜も3兆円買入ですね(白目)。

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140801.htm
国庫短期証券買入 42,912 30,004 0.000 0.002 53.4
国債買入(残存期間1年以下) 5,756 1,100 0.016 0.017 84.0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 16,817 4,005 -0.003 -0.003 46.7

応札が4.3兆円しかないとなという感じですが、まあ7月からこれだけ無慈悲な買入を行ったのですからさぞかし6Mと1Yが入っている事でしょうと銘柄別残高を見るのが楽しみです(棒読み)。


○黒田総裁の内外情勢調査会の講演は説明が段々無理筋になってきているという印象が

石田さんと木内さんの中々味わいのある金懇講演がFOMCの前後に行われたですなあと思ったら総裁講演までぶつけてくるとは何という味わい。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140801a1.pdf
最近の金融経済情勢と2%の実現に向けて
―― 内外情勢調査会における講演 ――

・経済に対してはいつもの話ですがまずは設備投資の話から

前半が経済に関する話でして、まあ基本的にいつもの話なのですが、設備投資の先行き見通しの辺りから侘び寂びを感じるのが吉かと。

『(企業の前向きなスタンスと設備投資)』って小見出し(本文3ページ、PDFの4枚目)から。

『もう一つの日本経済回復の原動力は、企業部門の前向きな動きが続いており、ここにきてさらに明確になってきたことです。』

ということで・・・・・・・・・

『企業マインドをみると、消費税率引き上げによる反動の影響にもかかわらず、高水準を維持しています。』

ということで短観の内容が続くがパス。

『このように、消費税率引き上げ後も企業マインドは高めの水準となっており、前向きなスタンスが維持されていることが分かります。加えて、企業収益も改善を続けています。短観で収益計画を確認すると、昨年度に引き続き高めの水準を維持しており、6月短観では上方修正されました。企業も消費税率引き上げ後の収益に自信を持ち始めているように思います。』

ほうほうそうですか。

『こうした企業の前向きなスタンスと高水準の企業収益は、設備投資に好影響を与えています。』

ほー。

『すなわち、GDP統計ベースの実質設備投資は昨年4〜6月以降4四半期連続で増加しており、特にこの1〜3月は前期比+7.6%と大幅な増加となりました(図表6)。』

過去の話ですかそうですか。

『これには、一部ソフトウェアのサポート期限切れに伴う更新需要や排ガス規制強化前の建設機械の駆け込み需要なども寄与していますが、そうした一時的な要因を除いてみても設備投資の足取りがしっかりしてきたように思います。これまで相対的に出遅れていた製造業の設備投資も、漸く回復が明確になってきました。』

で、先行きですが・・・・・・・・

『先行きについても、企業収益が改善傾向を続ける中で、設備投資は振れを伴いつつも増加基調を続けるとみています。実際、6月短観で2014 年度の設備投資計画をみると、大企業で例年を上回る増加計画を立てているなど、全産業全規模ベースでも増加する計画となっています(図表7)。』

短観の話だけとな。

『企業マインドや収益の改善に加えて、現在は設備投資が増加しやすい環境がいくつかあります。ここでは以下の3点を指摘しておきたいと思います。』

ということで説明があるのですけどね、

『まず、第1に、長年にわたるデフレが続く中で企業が設備投資を抑制してきたことから、資本ストックが積み上がっておらず、循環面から設備投資が増加しやすい状況にあることです。この点、短観の生産・営業用設備判断DIをみると、その過剰超幅は着実に縮小してきており、全産業全規模ベースではほぼ過剰感が解消されています(図表8)。加えて、これまでの設備投資抑制の結果、設備の老朽化が進んでおり、生産水準が上昇する局面で円滑な生産に支障を来たす事例が出てきていることも、更新投資を中心に設備投資を後押しするとみています。』

毎度の設備投資が出る説明なのですが、こちらも毎度の如く引用して悪態を申し上げますと、ヴィンテージ更新投資ってそらまあサイクルとしては出るかも知らんが先行きの持続的な拡大にならんと思いますが。

『第2に、先ほど申し上げたとおり、労働需給のタイト化により労働者を確保しにくくなってきたうえに、賃金が上昇してきていることが挙げられます。一方で、設備投資を行う際の資金調達金利は低水準にあり、金融機関の貸出態度も緩和していますので、新たに労働者を雇うよりも省力化設備などの設備投資を行う方が、相対的に有利な環境になりつつあるように思います。』

この省力化投資の話ってそらまあ個別企業のミクロ面での話としてはあるかも知れないけど、それが大きな設備投資として出るもんですかねと思いますし、大体からして総裁も説明しているように、これって「新たに労働者を雇うよりも」という形での投資だったら労働市場に対してはマイナスに作用しますよねと思いますし、日銀がこういう指摘をするような状況があってそれなりに企業が省力化設備の投資を検討しようとしているという話が伝わっているというのは、よーするに企業が労働コストを上げたくないというインセンティブを強く持っているという事を意味してて、賃金の持続的上昇とか期待できないって話なんじゃ無いかという非常に悪い予感がするのはネガティブ思考ですかそうですか。

『こうした設備投資は、労働需給がタイト化する中で労働力をより効率的に活用し、ひいては労働生産性を向上させることにも繋がると考えられます。』

しらっとこういう説明になっているけど、労働力の効率的活用とか労働生産性向上って長期的には良い話だけど短期的には物価の下押し圧力になるっぺよということで、その辺の説明を華麗に触れないでこの話をしてくるのが最近(今に始まった話でも無いかも知れんが)の得意技。

『第3に、円高が修正されて1年以上が経ち、企業が内外の拠点展開の見直しを進めていることです。リーマン・ショック後の円高局面で企業の海外投資のウェイトが上昇してきましたが、その流れは円高水準が修正される中でもしばらくは残りました。内外の投資の意思決定を行い、それを実行するにはある程度の期間が必要だからです。』

『ここへきて、ようやく設備投資計画に占める国内のウェイトが高まる兆しがみられます。例えば、日本を戦略的に重要な製品の製造や研究開発、生産工程改善などの拠点として位置付け、そうした分野での国内投資が行われたり、計画されたりしています。』

この話なんですけど、それは判ったが肝心の輸出が伸びない訳で、需要が伸びないのに供給力増やしてもシャーナイナイな訳で、やはり輸出増加→生産拡大→新規投資という流れにならんと持続的な拡大が展望できないでしょと思うのですが、次のコーナーに出てくるように輸出が出る出る詐欺状態でいつまで経っても出てこない中で、先行きの強気経済シナリオを継続する為にはどうしますねんとなるとこういう話で持って行くしかない訳で(とか言うと「そんな逆算のような見通しを出している訳ではない失礼な」と言われますかそうですか)、何ちゅうか謎の理屈で設備が伸びるようだが、いずれにせよ売上が持続的に拡大しない中での設備投資っていうのはそんなに持続的に伸びるものじゃないと思われるのですけどねえ・・・・・・・・・


・輸出の説明である

次が『(海外経済とわが国の輸出)』である。

『一方、輸出については、円高修正にもかかわらず、横ばい圏内の動きが続いています(図表9)。その背景には、円高で加速した海外生産シフトや、これまで日本企業が強みを持っていた情報関連財などの競争力低下といった構造的な下押し要因が働いている可能性もありますが、基本的には、わが国経済との結びつきが強いASEAN諸国をはじめとした新興国経済のもたつきといった循環的な要因が大きいと考えられます。』

さてここでこの前ネタにしました石田審議委員の金懇での説明を再確認してみましょう。

『この間、輸出については、引き続き横ばい圏内の動きとなっており、依然として勢いに欠ける状態が続いています(図表7)。背景としては、第1四半期の米国の成長率がマイナスとなったことや、わが国経済と結び付きが強いASEANなどの新興国経済のもたつきが大きく影響していますが、現地調達の拡大を伴う海外生産移管の進展などの構造的な要因も効いている可能性が高いとみています。』(ここだけ7月29日石田審議委員の山口金懇挨拶から)

ということで構造要因の話と循環要因の話の認識に温度差があるのが明らかですね!!!

『また、米国での異例の寒波、そして消費税率引き上げ前の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きなど、輸出を下押しする一時的な要因が減衰しながらも、春先頃まではなお残っていたことも考えられます。』

その割にはその後戻っていませんけどナンナンデショと思いますが、こんな調子なので先行きは・・・・・

『先行きについて、輸出の前提となる海外経済は、先進国が牽引役となる形で緩やかな回復が続くとみています。』

ということで以下説明がありますが、要は構造要因じゃないから海外が回復すると回復するという希望的観測だが、そもそも論として上記の「輸出の関係なくて設備が伸びます」みたいな話にありますように、物価に関しても輸出関係ない絵になっているので、輸出が出ないとゴメンナサイになるのかというとさにあらずという所が実にこう味わいが深いというか日銀執行部のああいえばこういう言い訳縦深陣地が構築されているのでありますた。


・2年で達成の話が後ずれしていますが置物副総裁の辞任マダー???

『3.物価動向と2%の「物価安定の目標」実現への道筋』という所ですけど、

『先行きについては、景気回復に伴って需給ギャップが改善する一方、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみています。その後は、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2016 年度までの見通し期間の中盤頃、すなわち15 年度を中心とする期間に、2%程度に達する可能性が高いと予想しています。』

中曽副総裁の金懇でも「2015年度を中心とする期間」という話がありましたが、総裁の講演でも思いっきり講演テキストにこのような記述が載るようになったかと思いますが、2015年度を中心とする期間と言いますと2016年3月まで2015年度になりますが、QQE投下の時に「2年で目標達成」という話をしておりましたし、置物副総裁様に至っては「2年で達成しなかったら辞任」という話をされておられたと思いますがその件の落とし前については如何となっておられますでしょうか。

あとですな、2年といっても幅がある、というのは勿論以前からお話をされていたので承知していますが、2年と3年ですと1.5倍も違う訳でして、輪番オペの残存7年はきっちりと抑えようとしているのに、それより重要な物価安定目標の達成時期は1.5倍もぶれるのを容認するかのようなご説明は何なんでしょうねえ2年で達成する気があるんですか無いんですかと小一時間。



・物価目標が行くという話の部分を鑑賞

で、先行きの話。

『まず、労働や設備の稼働状況を示す需給ギャップについてです。現在、個人消費や公共投資といった国内需要が景気を牽引し、非製造業を中心とした景気回復が続いています。非製造業は、製造業に比べて労働集約的であることから、労働需給は引き締まりやすくなっています。建設や小売、サービスなどの一部には人手不足によって事業展開が制約されるケースも散見されます。また、設備についても、さきほど申し上げたとおり、過剰感はほぼ解消されています。生産設備の稼働率が高まる中で、トラブルの発生もみられています。』

トラブルの発生って何じゃそら?どこぞの牛丼チェーンだったらあれはちょっと特殊ケースじゃろうよ。

『以上を合わせてみた「需給ギャップ」は、緩やかに改善して最近ではゼロ近傍になっており、この1〜3月は消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあってプラスになりました(図表12)。』

4〜6月は反動で盛大にマイナスになっているような気がしますが・・・・・・・・・・・・・

『先行きについては、潜在成長率を上回る成長が続く、すなわち需要の伸びが供給力の伸びを上回る中で、需給ギャップは徐々にプラス幅を拡大していくとみています。したがって、この面からの物価上昇圧力は着実に高まっていくと考えられます。』

はあそうですか。

『次に、人々の中長期的な予想物価上昇率は、全体として上昇してきているとみられます(図表13)。このことは、賃金や価格設定などの行動にも影響を与え始めています。例えば、春闘でもみられたように、労使間の賃金決定において、物価上昇率への意識は高まっています。』

消費税増税は???というかそもそも政府があれだけやいのやいの統制経済かという位に言ってますからねえとは思いますが、でも省力化投資へのインセンティブが企業サイドにある位には労働コストを上げたくないんでしょ???

『また、企業の価格戦略をみても、デフレ下では消費者の低価格志向が強かったことから、コストカットを優先した低価格戦略が多くみられました。しかし、最近では、価格に見合う物であれば多少値段が高くても受け入れる消費者が増えており、品質や機能面などで付加価値を高めながら販売価格を上げるといった動きもみられています。短観の販売価格判断DIは、「下落している」と答えた企業の割合が「上昇している」と答えた企業の割合を上回ってきましたが、この6月調査ではゼロになりました(図表14)。』

単にコスト上昇に耐えられなくなっただけの可能性は??

『このように、実際の物価上昇率の高まりが人々の物価見通しや行動に変化をもたらし、それがまた実際の物価上昇率を押し上げていくというメカニズムが働くもとで、人々の予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、この面からも物価上昇圧力は高まっていくと考えられます。』

はあそうですかという所で。


・物価2%に関する論点とな!!

というような気合の話や微妙に都合の良い所をつまみ食い的な話はさておきまして、この次のコーナーが中々。

『以上のとおり、これまでのところ日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどっていると考えています。しかし、生活者の立場からは、消費税率の引き上げによる物価の上昇もある中で、「なぜ2%の物価上昇を目指すのか」という声が聞かれます。また、人手不足などの供給面の制約が目立つ中、「成長率は低いままで物価だけ上昇するのは望ましくないのではないか」という疑問も聞かれます。そこで以下では、これらの点についてご説明したいと思います。』

連発した野党審議委員向け説明会キタコレ!

『(なぜ2%を目指すのか)』という所の途中から。

『そのうえで、では「なぜ2%なのか」について、ご説明します。日本経済は、1998 年度から15 年間にわたりデフレに苦しみました。ただ、その間の消費者物価指数でみた物価の変化率は、年平均で−0.3%とほぼ0%でした。しかし、消費者物価指数には実際のインフレ率よりも高めになる「上方バイアス」があり、0%でも実際にはデフレなのです。また、デフレのもとでは金利水準もそれに見合って低くなるため、経済にマイナスのショックが加わった場合にゼロ金利に直面しやすく、短期金利面からの政策対応余地が限られてしまいます。こうした点を考慮して、0%よりは少し高い物価上昇率を目指した方が国民経済にとって望ましいというのが世界各国で共通する考え方になっています。』

ボスキンバイアスの話と糊代の話は分かるがでは何故2%????というとこの次。

『そしてその水準は、米国、ユーロ圏、英国など先進国の多くでは2%程度とされており、これがグローバル・スタンダードになっています。』

グローバルスタンダードキターですけれども、木内さんが金懇で説明した「中長期的に目指すのは判るが短期的には日本経済の今の実力から考えて2%は安定的に維持できない」という議論に対して「グローバルスタンダード」で済ませているというこの何とも説明になっていない説明。

『日本銀行は、昨年1月、「物価安定の目標」を2%と定め、公表しました。その後、この2%をできるだけ早期に実現し、それを安定的に持続するように、「量的・質的金融緩和」を推進しています。こうした揺るぎない中央銀行の決意と行動によって、企業や家計は2%の物価上昇率を前提に行動することが可能になります。』

気合ですかそうですか。

『そうした認識が定着すれば、経済に加わる様々なショックによって一時的に物価が上下に振れることがあっても、中長期的には物価は2%程度に戻ってくると信じられるようになります。』

信じる者は救われるですかそうですか。

『このような状態を人々のインフレ期待(予想物価上昇率)がアンカーされていると言います。このことは、経済がデフレに陥ったり、インフレ率が2%を超えて大幅に上昇を続けたりしないための重要な要素です。今後とも、日本銀行は、2%を実現し、これにアンカーすることを目指して、金融政策を運営していきます。』

だから中長期で目指さないで2年で目指すという点について木内さんへの反論は????


・野党審議委員(?)への反論は続くのだがどう見てもこっちの方が屁理屈というか置物状態というか

次の小見出しが『(2%の実現と成長力)』である。

『次に、2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の成長力についてお話します。趨勢的な人口減少と高齢化、長年にわたるデフレのもとでの資本ストックの蓄積鈍化などによって、日本経済の中長期的な成長力である潜在成長率は低下してきました(図表15)。』

ふむ。

『こうした中、最近では「人手不足などの供給制約によって成長率は上がらないのではないか」、また、「低成長のもとで、物価だけが上がるのは望ましくないのではないか」といった声が聞かれます。』

キタコレ!!

『この点は、短期的な経済の動きと中長期的な成長力の問題を区別して論じる必要があります。』

ほほう。

『まず、短期的にみた場合、特定の業種・企業で供給面の問題から事業展開が制約されることはあり得ますが、経済全体としては、労働や資本の稼働率を上げたり、効率性を高めることによって、潜在成長率を上回る成長を実現することは可能です。さきほど申し上げた2016 年度までの日本銀行の経済・物価見通しでも、そうした姿を想定しています。』

そらまあそうだが「持続的に潜在成長率を上回る成長」じゃないですよね。

『一方で、中長期的には、経済の成長力は供給力に規定されますので、これを引き上げて行く努力が必要です。』

中長期的な経済の成長力は供給力に規定されますとな。ふーん。

『この点、政府は、「民間投資を喚起するための成長戦略」として「日本再興戦略」を策定し、この6月にその改訂を行ったところであり、その着実な実行とそのもとでの企業の積極的な取り組みを強く期待しています。日本銀行としては、我々の2%実現への取り組みと並行して、成長力強化の動きが着実に進展していくことが望ましいと考えています。』

でまあそれには時間がかかる話(中長期的といみじくも総裁が説明しているとおり)だから2%は中長期的に目指すもんじゃないですかねという木内さんの論点についてですが・・・・・・・・

『ただし、潜在成長率がどのようなペースで上がるにせよ、2%の「物価安定の目標」はできるだけ早期に実現すべきだと考えています。』

ほう。

『これは「物価さえ上がれば良い」と思っているからではありません。』

え、違うの????

『2%の物価上昇を早期に実現し、そこにアンカーすることは、企業や家計の積極的な行動を促し、それ自体として、成長力を高めることに貢献すると考えるからです。』

潜在成長率が低い中で供給制約の結果物価が上昇した場合には、結局の所経済全体として単なるコストプッシュになって、サステイナブルではないか、成長力が更に下がるかというような話になるだけになりませんでしょうか、というのが「短期的に2%安定目標達成は無茶でもう少し低い所で良いのではないか」というツッコミの基本的な趣旨だと思うのですが、全然そこの辺りの答えになっていないのが困る所。つまり「デフレの弊害」の裏側という意味での上記の説明は判るのですが、その説明は「2%」であることの説明にはなっていなくて、デフレ状態でなければ良くて2%である必要はないという論点に対する反論に1ミリもなっていないのですけどねえと思いますがどうでしょうか。

『すなわち、デフレ経済のもとでは、現金を持つことが相対的に有利になるため、企業が設備投資や研究開発などリスクを取ることに消極的になり、潜在成長率は低下しました。一方で、企業や家計の予想物価上昇率が2%にアンカーされれば、企業はリスクテイクにより前向きになり、設備投資による資本蓄積や研究開発による生産性の向上などを通じて、潜在成長率を引き上げることになります。』

ということで、2%の物価目標が達成されたら潜在成長率が上昇するという中々素敵な理論キタコレでありますので何とかストの皆様の無慈悲な砲撃をよろしくお願いいたしたく。

『このことは、昨年来物価情勢が好転する中で、企業に前向きな動きが拡がってきたことをみても明らかです。』

いやあの円安株高だの財政支出だの消費税駆け込みだので需要が高まって企業に前向きな動きが広がって物価上昇率に影響したんでしょという話で、物価を無理矢理上げれば企業に前向きな動きが広がるとはこれまた奥の深い話でありますが、良く良く考えますと置物副総裁様などは学者様として日銀をケチョンケチョンにけなしていた時期には「物価が上がれば全てハッピーで、物価は強力な金融緩和でMB増やせば上がるのにやらない日銀はヘッポコ」という理論を強力に唱えておられましたので、物価情勢が好転すると企業が前向きの行動をとる言わんばかりの説明をしても不思議ではありません。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することで、企業や家計が前向きな経済活動に取り組みやすい環境を作りたいと考えています。そのもとで、日本経済が活力を取り戻し、再び力強く成長することを期待して、本日のお話を終わらせて頂きたいと思います。』

ということで、結局何で2年で2%なのかの理由はただの置物的因果関係倒置説明以外には見られないという所で、思わず色々とツッコんでしまいましたとさ。







2014/08/01

お題「だいたい木内審議委員の講演鑑賞会である」

月の初めからおはぎゃあございますが、エスピリトサントの大赤字にしろアルヘンのデフォルトにしろある程度想定される範囲のリスクなんではねえかのと思うのですが何でダウ300も下げるねん。

○市場メモメモ

・3MTB入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140731.htm

(3)募入最低価格 99円99銭1厘5毛 (募入最高利回り)(0.0337%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.0161%
(5)募入平均価格 99円99銭2厘7毛 (募入平均利回り)(0.0289%)

ほう流れましたかという感じですが、日本相互証券の引けは0.028%ということでまあ3bpのレベルに皆さんすっかり目が慣れてしまってますが、ただまあ2bp台でのニーズというのも中々盛り上がらんという絶対水準のイメージがやっと落ち着いてきたようにも見えるのですが、今日の短国買入が何ぼで打たれるかでまた状況が変わるんですかねまあ良く判らんですが。

しかしまあ何ですな、BB引けでも売参でも良いのですが、短国の引値を並べてみますと6か月とか1年とかの所がやたら気配強くて、まあオペに入らないクソ短い所は良いとしましても、オペ対象の3Mカレントよりも金利が低いという逆イールド状態になっていまして、一方で誰がどう考えても利下げ期待とかは無い(利下げしたら超過準備の積み上げに困難度が高まるからあり得ない)のにこの逆イールドェ・・・・・・となっていまして、これはどう見ても日銀の短国買入オペ狙いで日銀が買いたい年末越え銘柄の気配が強くなっているという話でして、日銀の短国買入が需給を歪めているという事でありますな、うんうん。いやまあ先行きの短国需給逼迫で一段の金利低下の可能性でというのは勿論あるのですが、それも元はと言えば日銀の短国買入のせいなので(^^)。

そういや昔々その昔の短国市場(6Mと3Mを月に1回入札していて割引短期国債という名前の債券だったころ)って潜在的な需要に対して発行が少なくて基本的に政策金利よりも低い利回りで売買されていて、短国現先オペのレートとか中々素敵な水準(当時は買入は無かった)でしたが、発行量が相対的に多くて流動性が相対的にあって投資家のニーズが高かったのが6か月だったから6か月の方が平気で金利低かったりしたことがありますが、現物債の需要が超過した市場では何が何だか判らない価格形成(いやまあ中でやっている人たちは判るのですが)が置きますなあという所ではございます。


・固定金利オペ関連

水曜のシグナルオペ結果(固定金利の所のみ引用)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140730.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(8月1日スタート分) 12,880 12,880

昨日の固定金利オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140731.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(8月4日スタート分) 2,850 2,850

昨日もちょっと申し上げましたが、足元で固定金利オペのロールが謎の増額となっておりまして、水曜のシグナルオペロール分(の成れの果て分)が10430→12880と増額、昨日の固定金利オペも2310→2850と増額になっておりまして、何で増額になりますねんと????な状況ではあるのですけれども、一時的な問題なのか、それとも固定金利オペの底溜まりのニーズ分に到達したのかは良く判らん(イメージ的には残高10兆円レベルで底溜まりになるとは思えなくて、まだ兆円単位で減るもんだと思っているのだがただの確度ゼロの勘なのですいません)のでこれは今後の入り具合を見ていくしかないかなとは思います。

まああとあるのは、先月も1回あったのですけど今月も11日エンドとか18日エンドとかで微妙に足を揃えているオペがあって、この時にオペのオファーが一本化されることが想定されるので、オペの全体としてのオファー本数が減るという話になるので、一本のオペに対してこれだけ入れる的な平準化の調整でちょっと増えているのかも知れませんな、うんうん。


○木内審議委員講演キタコレ!!

FOMCの前日に石田審議委員の金懇を打ち込み、FOMCの翌日に木内審議委員の金懇を打ち込むというこの日程の組み方に微妙な味わいを感じるのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140731a1.pdf

・前回かなりクリアになりましたが今回も更にクリアカットに

木内さんの前回金懇は3月だったのですが、この時に白日銀ロジックキタコレで結構なクリアカットな説明をしているなあという事を申し上げたと存じますが、まあ今回も更にクリアになった感はあります。

でですね、後でも申し上げますが最初に勝手に私家版まとめをしておきますと、引き続き「2%の物価目標は中長期で目ざすもの」で「今の日本経済の実力からすればこの程度の水準でも上等」という話をしているのですが、それはどう見ても麿時代の物価安定の目途です本当にありがとうございましたという話になるのですな、というのがまあ分かりやすく。

でまあ木内さんのそこら辺の説明に加えまして、今回は講演の最後の方でしらっと「ゼロ金利政策重視への移行」という話をしているのがほほうという所でして、いやまあ木内さんの金融政策に関する説明で一番不透明なのが毎度提案している「2年間の集中期間」に関して、その先のイメージが非常にこう判り難かった所なのですが、今回その片鱗だけちょっと見えたという感じです。

ただまあ相変わらず具体的な細かい話は無い(まだする時期ではないという事なのかも知れませんし、そもそもの提案が「集中期間の後に考えましょう」なのでイメージが確立していないのかもしれませんけれども)のが木内さんの毎度の金融政策の提案における微妙な所でして、何かこう傍から見ていると提案は判るのだが「じゃあその先の金融政策のフレームワークは??」っていうのが何だか判らんのが弱いんだよなあと思っているので、今回この言及がちょっとだけあったのは良かったとは思います。

ということで内容を鑑賞ですが最初の所は展望レポートの説明なのでパスして、『3.経済・物価見通しを巡る主な留意点』という所からになります。

『前述のとおり、今月、日本銀行は4月の展望レポートで示した2016 年度までの経済・物価見通しの中間評価を行いました。私自身は、景気は今後も緩やかに回復を続けるとみているものの、経済に関する中心的な見通しに対して、供給側・需要側両面で成長率の下振れリスクがあることを意識しています。また、物価については、中心的な見通しより慎重な見方をしています。以下では、こうした私自身の見方に基づき、先行きの見通しに関する留意点を幾つか述べたいと思います。』


・実質成長率が上がりにくい件

『(1)需給ギャップと潜在成長率』という小見出しから。

『日本銀行は2014 年1-3 月時点の需給ギャップを+0.6%と、2008 年以来ほぼ6年振りにプラスに転じたと推計しています。この推計結果は幅を持ってみる必要がありますが、短観の生産・営業用設備判断DI と雇用人員判断DIを加重平均した指数もこうした推計結果と整合的な動きを示しており、日本経済は需給逼迫の度合いを次第に強めていることが確認できます(図表5)。』

ほうほう。

『特に労働市場では、直近6月の有効求人倍率が前述のとおり高水準であったほか、失業率も3.7%とここのところ3%台後半の低水準で推移しているなど、需給逼迫の傾向が強くみられています(図表6)。』

ふむ。

『その一方で、潜在成長率は低水準にとどまっているため(図表7)、現行ペースでの成長が続けば、早晩、供給面での制約が顕在化するとみられます。このことは、賃金、物価の一時的な押し上げに寄与するものの、実質成長率は容易に高まらなくなることを示唆しています。』

一時的には上がるが無理に上げると問題が生じますという話は後でも出てきます。


・輸出に関しては構造要因の指摘とな

『(2)輸出動向』について。

『輸出は、4月以降、増税後の輸出余力拡大の効果も予想されていましたが、これまでのところ勢いを欠く状況が続いています。しかし、少し長い目でみると、実質輸出の弱さは足もとだけの現象ではなく、リーマン・ショック以降は均してみれば殆ど横這いで推移しているようにもみえます(図表8)。』

アイヤー。

『この背景には、リーマン・ショック、円高の進行、東日本大震災などにより、国境を超えたサプライチェーン体制のリスクが浮き彫りになったことを契機に、アジア地域を中心とした生産・貿易構造に変化が起こり、その過程で海外需要に対する輸出の感応度がかなり落ちてきたことがあると思います。また、世界金融危機以降は、世界経済の成長ペースと比較して貿易の増加ペースが落ちていることが指摘されていますが、こうしたグローバルな構造変化とも関連している可能性があります(前掲図表8)。』

構造要因キタコレ。

『また、輸出環境を左右する海外経済動向については、中国経済の下振れリスクを最も注視しています。』

ほー。

『中国経済は、景気対策の効果などから、足もとの景気は安定しているように見受けられますが、先行き、不動産市場の調整から成長率が低下すれば、アジア周辺諸国の経済ひいては日本の輸出環境にマイナスになると考えています。』

目先は成長重視に舵を切ったっぽいのでしばらく持ちそうではあるのですがどうなんでしょうかね。


・消費の先行きに関しての指摘で既に2%の短期的な達成をdisるとは

『(3)消費動向』ですが、最初の所は端折りまして実質所得の話の辺りから白い説明が登場。

『他方、所得・消費の両面をみると、直近1-3 月の実質雇用者報酬は前年比-0.6%と、実質個人消費の+3.7%を大幅に下回っています(図表10)。当面一人当たり実質賃金の低下が続くとみられる中(図表11)、先行きについても、実質雇用者報酬の改善傾向は緩やかなペースで進むとみられます。その場合、先行き個人消費の基調的な増勢を弱め、物価上昇率の鈍化に繋がる可能性があるため、注視していく必要があると考えています。』

イイシテキダナーですがこの次が思いっきり漂白モードキタコレですよ。

『もっとも、増税の一時的な影響を除いても実質賃金の低下が続いているとみられるなど、物価・賃金・個人消費の3つの変数の間で、増加ペースにかなり不均衡がみられる現状を踏まえると、仮に個人消費の基調的な増勢が少し弱まったとしても、長い目でみて経済にとって必ずしもマイナスとは言えないと個人的には考えています。』

ほえ??

『個人消費の増勢鈍化が物価上昇率の抑制に繋がれば、実質賃金が上昇し、それに見合ったペースで個人消費の緩やかな増勢が続くと予想されます。』

いきなり物価上昇率の抑制で実質賃金上昇した方が良いという指摘キタコレでこれはどう見ても「2年で2%」をマッコウクジラで否定しているのですな。

『供給面での制約も意識され始める中で、このように需要が適度なペースで増加していけば、緩やかながらもよりバランスのとれた、息の長い景気回復が続いていくと考えています。』

ということで、この時点で「2%は現在の日本経済の実力対比過大な水準」という話がなされているのが実にチャーミングですが、基本的に現在の執行部ベースの説明だと2%の水準設定についてはCPIの計測バイアスの問題と糊代の問題によっての設定となっておりますので、つまり経済の実力云々とは独立に2%の数値を設定しているという建付けになっておりまして、実を言うとここの部分のロジックを木内さん的な変更を行うというのは麿理論を盛大に否定している黒ちゃん置物先生理論からすると容易に受け入れられない(自己否定になるから)ものでありまして、(理屈としてはそうなるはずなのですが実際は知らん)意外にここの間のギャップって大きい筈ですよ、という点だけついでに申し上げておきましょう。


・物価見通しに関しての説明もまあ分かりやすい

その次の『(4)物価見通し』から。

『当面の物価動向は、主として、需給ギャップの改善などによる基調的な物価上昇圧力の強まりと、輸入物価の押し上げ効果の減衰とのバランスにより左右されると考えています。この点について、私自身は、(1)労働需給の逼迫が賃金全体の押し上げにどの程度寄与するかがなお不確かであること、(2)原材料価格上昇分の価格転嫁と比べて、賃金上昇分を価格転嫁することは消費者に受容され難い面もあることから、需給ギャップ改善を背景とした物価上昇圧力が、円安効果の剥落による物価下落の影響を上回るかについては不確実性があると考えています。』

思いっ切り執行部ベースの中心的な見通しをマッコウクジラとな。

『もちろん、予想以上の需給逼迫等を背景に、賃金・物価の上昇率が先行き上振れる可能性も排除はできません。但し、その場合は、成長ののりしろが限られているために成長率は容易に高まらずに、経済が不安定化することで物価上昇率の高まりは持続性を欠くと考えられます。また、中長期の予想物価上昇率も安定的に高まり難いと考えられます。このため、物価上昇率が持続的に2%程度で推移することを目指す「物価安定の目標」の達成に近づくことにはならないと考えています。』

(;∀;)イイハナシダナー


・物価安定の目標に関する説明を鑑賞

今回もまたその説明があって、『4.金融政策運営』の『(2)「物価安定の目標」と中長期の予想物価上昇率』という部分を鑑賞するのだ。

『2%の「物価安定の目標」は、物価上昇率を一時的ではなく安定的に2%程度で持続させることを目指すものです。その実現のためには、企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率が2%程度に達し、かつその水準で安定することが必要条件になると考えています。』

そらそうよ。

『私自身は、日本の中長期の予想物価上昇率は、日本銀行が掲げる物価目標の水準や財・サービス及び労働市場の需給関係、実際の物価上昇率の足もとでの変化等よりも、潜在成長率や労働生産性上昇率などの供給側の要因で決まる部分が大きいと考えています。』

つまり金融政策で中長期の安定はさせることが出来るが、その望ましい中長期水準の値そのものについては、経済構造によって決められるものであるという話ですな。前の金懇でもこの説明をしています。

『それ故に、各国毎に「物価安定の目標」の水準は異なるのが自然だと考えており、2%という水準は先進国での平均的な目標水準に近いとしても、少なくとも現時点では、日本経済の実力をかなり上回っていると思っています。実際の物価の上昇を反映して短期の予想物価上昇率が上がった結果、金融市場で示される中長期の予想物価上昇率も緩やかには上昇していますが、2%の水準にはなお相応の距離があるとみています(図表12)。』

ということで。

『その一方で、「量的・質的金融緩和」は、正常化のプロセスが容易でない、財政ファイナンス観測を高めかねないなどの相応に大きな潜在的リスクを抱えていると考えています。私自身は、2%の「物価安定の目標」は中長期でみた場合にのみ、日本経済の実力と整合的になりうると考えていることから、仮に現在の大規模な金融緩和策が長期化あるいは追加的措置によって強化されれば、逆にこれらの副作用がプラス効果を上回り、長い目でみた経済の安定をむしろ損ねてしまうリスクを強く意識しています。』

キタコレ。

『この点、現在のコミットメントのもとでは、2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとの見方が広がれば、プラス効果よりも副作用のほうが大きいと判断される場合でも、金融市場の期待等の外部要因に影響されて、日本銀行の政策がそうした対応を余議なくされる可能性も否定できません。』

なるほど。

『このため、「物価安定の目標」を中長期の目標としたうえで、「量的・質的金融緩和」を「2年間程度の集中対応措置」と位置付ける提案をしてきました。これは、一定期間経過した後に、「量的・質的金融緩和」の効果と副作用の比較考量をしっかりと行い、経済・金融情勢次第で柔軟に見直す環境を予め確保しておくことを狙いとしているものです。』

ということで先ほど申し上げたように後の方でちょっとだけ「金利重視政策」という話をしてはいるのですけれども、木内さんの提案の中で微妙に弱い所は、この「2年間の後」に関するグランドデザインがイマイチ見えない事で、もうちょっと詳しい説明なりイメージなりが欲しい所ですな。


・成長力強化と金融政策という話の中でしらっと凄いことを

『(3)成長力強化と金融政策』ですけれども後半の方でしらっと凄いことを。

『こうした経済の供給面での改善は、基本的には、政府や民間企業の取り組みによって実現されていくものです。これに対して、主として経済の需要面に働きかけることを本来の機能とする金融政策は、良好な金融環境を提供することを通じて、そうした取り組みに対する側面支援を行うことができると考えています。』

さよですな。

『この点、先行き供給制約の傾向が次第に強まっていくと予想される中では、経済の安定維持の観点から、将来的に景気過熱感が出てこないかという点も注視していく必要があると個人的には思っています。』

ピャー!

『「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」という政策運営の理念に照らして、緩やかでも息の長い景気回復を実現し、その間に生産性上昇率や潜在成長率を高めていくことが、実質所得の増加や国民生活の質向上に繋がると私自身は考えています。』

ということで、しらっと「緩和のさせ過ぎはイクナイ」という話を暗にしているのがチャーミングですが、この次の『(4)「物価安定の目標」と「2つの柱」』という部分がこれまた白日銀キタコレになっておりますが、全部白日銀ですので講演テキスト11ページ(ファイルの12枚目)をご鑑賞下さい(^^)。


・フォワードガイダンス政策についてしらっと言及している辺りに盛大な侘び寂びを感じる件について

『(5)市場とのコミュニケーション』という部分ですけど。

『金融政策は、金融市場や金融機関行動の変化を通じて効果を発揮するものです。従って、金融政策の有効性を高めるうえでは、市場参加者とのコミュニケーションが非常に重要です。とりわけ非伝統的な政策を多くの先進国の中央銀行が実施している現在、市場とのより良いコミュニケーションは各国共通の課題になっていると言えます。』

ふむ。

『この関連で、最近の注目すべき事例は、既に金融緩和策の正常化プロセスに着手した米国や、正常化を視野に入れつつある英国で、経済や金融システムを不安定化させる可能性がある長期金利の大幅上昇を回避することを意図したとみられるフォワード・ガイダンスが、短期間のうちに軌道修正を余議なくされたことです。』

これはまた(;∀;)イイシテキダナーな話。

『英国では、政策金利引き上げに関わる失業率の閾値は維持されましたが、その重要性は大きく低下しました。また、米国では、失業率の閾値が撤廃されました。そして両国の対応に共通していたのは、多くの経済指標を参考にする姿勢へのシフトです。』

総合的判断の時代ですねわかります。

『これは、本来フォワード・ガイダンスが持っている「期待への強い働きかけ」という性格が弱められ、政策の自由度、柔軟性を重視した「総合判断」という、伝統的な金融政策手法へ回帰する動きとも解釈できると思います。』

期待への強い働きかけが弱まっているとか中々チャーミングな説明をしますな(^^)。

『このように、非伝統的政策を実施している主要先進国の中央銀行においては、市場とのより良いコミュニケーションのあり方がなお試行錯誤されている状況と言えます。日本銀行としても、こうした諸外国の経験にもよく目配りをしながら、今後ともコミュニケーションをしっかり図っていく必要があると考えています。』

気合で期待を変換の金融政策に対して嫌味をタラタラと言っているように見えるのは気のせいですかそうですか。


・最後の所で「金利政策への転換」の言及がちょっとだけ

『(6)2つの政策ツールの併用』という所から。

『「量的・質的金融緩和」で実施されている資産買入れ策など非伝統的な政策は、ゼロ金利制約のもとで、経済・物価に上向きのモメンタムを生じさせ、その方向性に影響を与える、時限性の高い政策ツールとして有効であると私自身は考えています。これに対して、伝統的な金利政策は、経済・物価を望ましい水準へと誘導していく局面でのファイン・チューニング的な常用手段として位置付けることができると思います。』

ということで・・・・・・・

『前者が既に相応の成果を挙げている中にあって、現在は、ゼロ金利を維持することによる政策効果が、「量的・質的金融緩和」の効果に次第に上乗せされていくかたちで、緩和的な金融環境がさらに強化され始めていると考えられます。』

木内さん的には現状の物価水準はそれなりに経済の実力に整合的ということですから、QQEの効果は既にでているので今後はQQEではなくて金利政策という話になるのですな。

『他方で、非伝統的な政策は歴史の浅い新しい政策手法であるがゆえに、その副作用には概して未知の部分が多いと考えられます。また、資産買入れ策を中核とする非伝統的な政策の正常化過程は、相応の時間を要する可能性が考えられるため、金融市場の安定を維持しながら正常化を円滑に実現させるためには、フォワード・ルッキングな政策姿勢が求められると思います。』

とはどういう事かと言いますと・・・・・・・・・

『これらの点を踏まえれば、今後も経済・物価情勢が順調に改善傾向を辿り続けていった場合、将来的には、この2つの政策ツールの役割や効果と副作用のバランスを勘案しながら、政策運営の重心を資産買入れからゼロ金利政策の方に徐々に移し始めていくことを検討する必要があると個人的には考えています。』

ということで、ここでさらっとゼロ金利政策重視という話をしているのですが、もう少し量の出口も含めましたグランドデザインをこの先の機会に説明して頂けるとアリガタヤと思います。


ということで、まあ説明はこれはこれでクリアカットではあるのですが、異次元緩和とはだいぶ話が違っているというのも事実でありまして、現実問題としてこの木内さんのロジックを入れてくるというのは黒田体制のロジックと相当の隔たりがあって中々難しいんじゃないのと思われますので、まあ野党審議委員(勝手に野党認定)ならではという話ではあったりしますけど、まあ野党の話も無いと合議体の意味がないですから宜しいんじゃないですかねという所で。