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2014/09/30

お題「期末なので短期メモ/総裁講演はまあ小ネタで/エバンス総裁とロックハート総裁の講演から少々」

さて半期末でございますが・・・・・・・・・

○毎度の市場メモ雑談な

・TKRRェ・・・・・・・・

と言ってもまあ昨日のTKRR出される前から先刻ご承知の助ではありますが。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

でまあこちらの過去データなんぞを見れば判りますが(エクセルになるのでリンク等はしませんけど)昨日のT+1の翌日物レポレート(つまり末初レート)がマイナス0.1bpになりやがりまして、今年の3月末のマイナス1.1bpに続くマイナスレートになった訳でございますが、その前からの短国マイナス金利とかを勘案すると3末よりも今回の方が短期市場が全般的に息をしていないの状態になっているようにも思えるのでTKRRの水準だけでもないでしょうなあという話ではあります。

つーことで別に昨日この数字が出ましても知ってましたがなという所ではあるのですが、何せ今回は期末のレポレートはこの数字になっていますが、そもそも論として玉が無いとかそういうレベルの話になっているのが厳しい上に、日銀の短国買入が「市場に玉があればマイナス金利でも買う」という状態で、名目ゼロ金利制約のある市場参加者(投資家)を日銀が率先してクラウディングアウトするという民業圧迫オペをしているので状況が改善どころか時間の経過と共に悪化しているのが救いようのない所ではありますな、うんうん。


・ちったあ期末要因も剥落モードのようですが

ということで本日が半期末なので翌日物などが期末モードになりますが、それはそれと致しまして受渡ベースでは昨日から期初になっている事も影響しているのかどうか知らんですけれども、利付国債の引値ちゃんが軒並み超短い所で甘くなっておりまして、期末要因剥落で残高調整発生の巻という感じではありますし、大体からして日銀がせっせと購入しているのは短国であって1年以下の利付国債に関しては月の買入2000億円ちょっとな訳でございまして、短国から難民が流入して凄まじい金利水準になっていたのがちったあ修正という所ですな。

とは言いましても、日銀のMB拡大攻撃がこの調子だと市場の歪みを拡大しようと何だろうと知らんがな状態で継続しますので、一旦剥落しても以前のような普通の(何をもって普通と言うのかという感じですけど・・・・・・・・・・)状況にはならんでしょと存じます。


○国際銀行協会での黒田総裁講演は別にまあいつもの話ではあるが

本チャンはこちら
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140929a.pdf
The Role of Foreign Financial Institutions in Japan's Financial System
Speech at a Meeting Held by the International Bankers Association of Japan

だが手抜きで邦訳を読む
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140929a.pdf

・どうでも良いが最初に小ネタ

何故か知らんが最後の所で金融政策の話をしておりまして、経済物価見通しについてもいつもの話をしているのでありますけれども・・・・・・・・・・・・・

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向を辿り、2014 年度から16 年度までの見通し期間の中盤頃に、2%程度に達する可能性が高いとみています。』

とまあいつもの公表文書通りの話をしているのですが、英文の方ではこれまたいつもの公表文書通りに・・・・・・・・

『The year-on-year rate of change in the consumer price index, excluding volatile food and the direct effects of the consumption tax hike, is expected to be around 1-1/4 percent for some time. It is expected to subsequently follow an uptrend again from the second half of this fiscal year and reach about 2 percent around the middle of the current projection period from fiscal 2014 to 2016.』

となっていて、この「1と4分の1」というのは英文ベースの公表文での説明通りではあるのですけれども、ニュースヘッドラインとかで一部「1.25%」って出ていたみたいで、いやまあスピーチをそのままリファーするとそうなるのでヘッドラインとして間違っている訳では無いのですけれども、ちょっと笑ってしまいました。


・ところで何でマクプルなのでしょうか?????

『本日は、最初に、国際銀行協会の設立以来の30 年間に進んできた内外金融市場の一体化の動きや、その中で外国金融機関が果たしてきた役割について振り返りたいと思います。その後、中央銀行からみた金融システム安定の重要性についてお話しし、最後に、日本銀行の金融政策運営について簡単にご説明したいと思います。』

ということで、章立てとして『(金融のグローバル化と金融システムの安定)』、『(金融システムの「安定性」と「機能度」)』、『(中央銀行にとってのマクロプルーデンスの視点)』、『(金融システムのリスク動向に関する分析・評価)』と来て最後に『(おわりに)』で金融政策の話が出てくるという内容になっています。

でまあマクロプルーデンスの話が何故か出てくるという感じでして、そういう意味で非常に違和感のある講演に仕上がっている(内容自体は一般的な話題ではあるのだが)のですが、何でマクプルの話が出たのかが意味不明ではあります。


・というか内容がだいぶ皮肉というか自爆系の香りもするのだが

最初の『(金融のグローバル化と金融システムの安定)』ですけどね。

『国際銀行協会が設立された1984 年は、「日米円ドル委員会報告書」が公表された年にあたります。同委員会の報告書は、金融・資本市場の自由化、外国金融機関の参入、ユーロ円市場の発展を内容としており、当時の日本に対し、いわば「金融開国」を迫るものでありました。この報告書の公表から30年を経て、経済・金融の両面において、グローバル化は大きく進展しています。』

というのは良いのですが、この円ドル委員会報告書とかその後のプラザ合意とかの流れの中で資産バブルが盛大に積み上がるという経済政策および金融政策(金融政策というよりは規制監督)の大失敗があった訳でございまして、その辺りのレビューは何も無くてその後に金融システムの安定だのマクプルだのという話が出てくるとか何か悪い冗談でもしているのでしょうかと思う訳でございまして、中々自爆スパイスが効いているなあと思ったのはアタクシの眼が濁っているからですねわかります。

まあしかしそれよりもアレなのはその後の『(中央銀行にとってのマクロプルーデンスの視点)』でございましてね。

『金融政策は、「物価の安定」を目的とする政策であり、「金融システムの安定」を目的とするものではありません。とはいえ、金融政策と金融システムの安定との間には、相互に密接な関係があります。まず、金融政策は、金融仲介活動や各種の資産価格への影響を通じて、「物価の安定」のみならず、「金融システムの安定」にも影響を与えます。』

ということですが、一方で最近はMB馬鹿拡大によって金融市場の機能を低下させておられると存じますがその辺については如何お考えなのかと小一時間問い詰めたい。

以下途中飛ばしながら引用していますので話が繋がっているようで繋がっていませんが、実際の文章の途中を割愛しておりますので念の為申し添えますが、この説明とかもうね。

『一方、金融政策の効果は、金融システムを通じて実体経済に波及していくものであり、「金融システムの安定」は、物価安定を目標とする金融政策の基盤でもあります。仮に金融システムの機能度が低下すると、その分、金融政策の効果は低下します。万が一、金融危機により金融システムの機能が大きく損なわれるようなことがあれば、経済活動の落ち込みを通じ、「物価の安定」に悪影響が及ぶことは避けられません。』

と言いながら市場機能を自ら低下させているのは何なんでしょうねえ。

『また、先般の国際金融危機において、わが国をはじめ各国の中央銀行は、CPや社債などの資産の買入れや市場に対する無制限の資金供給といった公開市場操作を通じて市場全体に資金を供給することで、市場の急激な収縮に対応しました。こうした対応については、しばしば中央銀行の「最後のマーケット・メーカー」としての機能と呼ばれることがありますが、これについても、個々の金融機関への流動性供給ではなく、市場全体の流動性の低下に直接的に対処することによって金融システムの安定を守るという意味で、明確にマクロプルーデンス的な視点を伴う政策と言えます。』

これはその通りだがでは今国債市場などで実施している政策はマクロプルーデンスに反する政策であるという事になりますねわかります。

『平常時であっても、金融政策の運営に当たっては、金融システムの状況を適切に把握することが重要です。』

で把握した結果「問題ありません(キリッ)」ですかそうですか。


#と、ただの悪態になってしまいました


○連銀総裁講演ネタが投下されるのだが読むのが追いつかないわ

期末期初モードで忙しいというのに何という千本ノック。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NCO9L66JTSEH01.html
シカゴ連銀総裁:利上げは2016年が適切−低インフレで
更新日時: 2014/09/30 02:24 JST

『エバンス総裁は29日、シカゴでの講演後に記者団に対し、「金融政策が適切で経済見通しが極めて良好な中で、インフレは緩やかに目標値に近づきつつあるにすぎない」と述べ、「そうした意味で適切な政策は2016年第1四半期の利上げだ」と続けた。同総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で議決権を有していない。』(上記URLより)

シカゴ連銀の講演は毎度なのだがURLが長くていかん
http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2014/09-29-14-charles-evans-patience-monetary-policy-nabe.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2014/09-29-2104-charles-evans-monetary-policy-patience-nabe-print.pdf
Is It Time to Return to Business-As-Usual Monetary Policy? A Case for Patience

というのが今朝投下されておりまして、つい先日もエバンス総裁は講演をしていたので、これでハト派全開講演の2連発という形になっているのですが、章立てを見ますと『A Balanced Approach to Monetary Policy』だの『Proceed Cautiously in Normalizing Policy』だの『History Shows That Premature Exit Is a Risk』だのとありましてお察しという内容ではありますが、何せ寝起きなので最後のところだけ引用してあとはまた明日以降に読んでる暇があったらネタにします(が読んでる暇がないのでその間にECBが投下されると見た)。

最後の『Conclusion』から。

『As I think about the process of normalizing policy, I conclude that today’s risk-management calculus says we should err on the side of patience in removing highly accommodative policy. We need to solidify our confidence that our ultimate exit from the ZLB will occur smoothly - and in a way that sustains our escape from it. A corollary to this is we should not shy away from policy prescriptions that generate forecasts of inflation that moderately overshoot our 2 percent target for a limited time.』

基本的にはこの方のバランスアプローチというのは物価がそんなに上がらんので(中の説明はざっと読んだところそんな感じだし従来からその話をしていて、そもそも論としてゼロ金利制約のある中で今の金利水準はまだ高い的な説明になっている)緩和的な金融政策を続けるべきという話です。

『Such a policy strategy more properly balances expected costs and benefits. And it would leave me with much more confidence that inflation will not stall out below target once we start raising rates.』

『I agree with Atlanta Fed President Lockhart in thinking that we ought to be “whites of their eyes” inflation fighters.[18] The last thing we want to do is regress back into the ZLB. Indeed, such a relapse would be a sign there was something else going on that was preventing the economy from being as vibrant as we thought possible.』

ということで、エバンス総裁の(というかこの部分はFOMCのメジャーな考えだと思うのだが)イメージとしては利上げに着手したら中立金利水準までの利上げを継続して実施できるような状態、つまり相当の自信が無いと利上げ着手をしないという話だと思います。まあそれで結局ビハインドする結果になると思うのですけどね!!!

なおロックハート総裁ネタも投下予定。

『To summarize, I am very uncomfortable with calls to raise our policy rate sooner than later.』

早期利上げについてはvery uncomfortableですってよ奥様!

『I favor delaying liftoff until I am more certain that we have sufficient momentum in place toward our policy goals. And I think we should plan for our path of policy rate increases to be shallow in order to be sure that the economy’s momentum is sustainable in the presence of less accommodative financial conditions.』

という説明って以前日本の量的緩和解除の時に植田審議委員(当時)が「経済を吹かしてから」というような表現をした事があったなあとか思いだす訳ですが、金利政策はビハインドのリスクを取る分をマクロプルーデンスで調整みたいなのが今の主要国での正常化政策に関する考え方の主流になっているのですが、まあ実際にはマクプルって金利使わないでワークできるのかというのはアタクシ的には非常に懐疑的でして、そうなると結局緩和政策のビハインドが効いてアセットバブルヒャッハーが再びという事になるんじゃネーノとは漠然と思っていますけどね。

『I look forward to the day when we can return to business-as-usual monetary policy, but that time has not yet arrived.』

でまあその時期について終わった後に記者から質問されて先ほどのブルームバーグニュースにありますように2016年という話になっている訳ですが、まあ最初の利上げを行ってから様子を見て暫く動かない的なアプローチをするなら来年前半というのも有りかも知れないけど、今までのFEDの正常化アプローチってTaperingの時もそうですけれども、一旦開始すると、一応は「状況次第で調整します」とは言うけれども基本的にはゴールに向けてメジャードペースで淡々と実施するという流れでありますので、恐らくはエバンス総裁の指摘するような「相当の自信があるまで」、つまり中立金利までの利上げが可能と見られる状況になってから利上げに着手するんじゃないの(となるとまあ普通に考えても来年9月開始だしもう少し慎重ならもっと先でしょ)という話だとは思うのですがどうでしょうかねえ。


○ロックハート総裁講演ネタと思ったら時間ががががが

時間配分また間違えたorzorz

http://www.frbatlanta.org/news/speeches/140925_speech_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/140925_speech_lockhart.pdf
Key Questions for Monetary Policy
Dennis Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

今日はとりあえず手抜きで『Key points』だけネタにして続きは明日。

『Atlanta Fed President and CEO Dennis Lockhart, in a September 25 speech before the Mississippi Council on Economic Education, shares his views on monetary policy over the medium term. 』

というのはマクラ。

『Lockhart's medium-term economic outlook calls for continued moderate growth around 3 percent annually accompanied by a substantial closing of the employment and inflation gaps. He notes that the economy's performance in coming quarters will dictate the decision to raise interest rates. He expects conditions for policy liftoff to ripen by mid-2015 or later.』

経済見通しとしては当面実質GDPは3%成長ということで、昨日ネタにしたメスターさんと同様でFOMCの中ではやや強気の部類で、利上げの時期に関しては2015年中盤かもうちょっと後となっていますので、FOMCの中での景気認識はやや強めだけれども利上げ着手時期自体はFOMCのSEPの中心よりはやや遅いイメージですね。

『Lockhart believes the United States will approach conditions consistent with full employment by late 2016 or early 2017. He believes the gap between headline employment and broader measures, such as the number of people working part-time for economic reasons, suggests there is more work to do before we can be satisfied with employment conditions. 』

まあこの辺はFOMCの中心的見解と同じような感じで、労働市場のギャップに関しては失業率で計測される以上のギャップが存在していますという話。

『Lockhart describes two inflation worries: persistent undershooting of the FOMC's 2 percent inflation goal and an overshoot of the goal that gets out of hand. Of those, a persistent undershoot is a bigger concern, in his view.』

で、物価に関しては「低インフレの継続」の方が大きな懸念であるということで、インフレが上に振れる懸念はあまり見ていませんという話になっております。

『Lockhart also addresses concerns that the extended period of low rates might be feeding the risk of financial instability. He is comfortable that being patient regarding liftoff will not trigger a systemic financial event.』

金融安定化の論点の話もしているのですが、ではそれはバブル懸念とかそういう話かと言いますと本編の方でも別にそういう話をしている訳ではなくて、それよりも利上げ着手における市場金利の急騰を懸念するってんですからスタイン前理事的な意味合いとはだいぶ違うわな。

『Lockhart is also carefully monitoring geopolitical risks. He says that financial markets seem to reflect a view that the U.S. real economy enjoys some insulation from severe spillover risk.』

まあ地政学リスクに関しては本編でも説明はありますが、リスク認識として注意しますよという感じであります。

ということで、エバンスさんのようなハト派ではない(そもそも経済見通しが強め)のですが、経済の見通しが強めの割に利上げ着手のタイミングやアプローチに関しては慎重であるというのがほほうという感じではありましたです、はい。




2014/09/29

お題「短国買入案の定実施とな/クリーブランドのメスターさんの「ガイダンス文言変更」講演から少々」

ほうほうこれはこれはというニュースが先週末に。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140926/stt14092613320001-n1.htm
金融緩和の出口議論へ 自民党総務会
2014.9.26 13:32

村上さんは集団的自衛権で反対方向で大暴れの人なのでまあ置いとくとしても二階さんのコメントがががががが。

『自民党の二階俊博総務会長は26日の記者会見で、日銀が昨年4月に導入した大規模な金融緩和に関し、将来の出口戦略の在り方について総務会として議論する考えを示した。「大変重要な問題だ。できるだけ早い機会に意見交換する場を設けたい」と述べた。』(上記URLより)

と思ったら日経調査で内閣支持率下がってるのね(ネットにはまだニュース出てない)。


○短国買入ェ・・・・・・・・・・

明日が半期末ではあるのですが、スポ末でしたが短国買入キタコレ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140926.htm
国庫短期証券買入 10,000 2014年9月30日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2014年9月30日
国債買入(残存期間25年超) 300 2014年9月30日
国債買入(物価連動債) 200 2014年9月30日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注3) 2,000 2014年9月26日 2014年9月29日

ということで短国買入1兆円オファーとか実施しまして、なんちゅうかまあ「1兆打つということは1兆以上は札があるんでしょwww」という反応になるのが最近の市場の仕様なのでそれ自体はふーんなのですけどね。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140926.htm
国庫短期証券買入 16,802 10,001 -0.006 -0.002 84.6
国債買入(残存期間10年超25年以下) 3,235 1,004 -0.009 -0.007 19.0
国債買入(残存期間25年超) 1,609 302 -0.022 -0.017 15.7
国債買入(物価連動債) 886 201 -0.260 -0.347 7.3
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 71 71 -0.400 -0.400

でまあ応札は1.7兆円しかないのもさいですかという所なのですが、まあ「応札が来そうな分だけオファーしました」っていうのが見え見えだからという事もあるのか落札利回りは相変わらず強い所で決まっていまして6糸強按分とか新発3Mでもマイナス金利というレベルになっていましてこれまたはあそうですかという結果。

・・・・・・・・・・でですね、まあそれはそれで来るかもねとは思っていたのですが、案の定という感じでスポ末で期末特殊ニーズとかで現先とかレポとかの需要が強い中で足元スーパー玉無状態になっているという市場でございましたので、当然のごとく1兆円の短国吸い上げによって更に玉無状態に拍車が掛かってリアル「玉がありません」状態になってしまって「短期金融市場における資金運用」という状態ではなくなってしまいましたというあばばばばーな展開になっておりまして、当然のようにこの前の3月末の期末よりも状況は酷い事に。

ということでですな、期末の玉無状態とか丸無視しててめえの残高の都合だけで名目ゼロ金利制約を突きぬけて買ってくるとか、それは「公開市場操作」という短期市場オペレーションの趣旨とは全く関係ないですよねとか、そもそも論としてヒアリングしてから「札がある分だけ買入オファー」をするとか、それはもはやオペでも何でも無いので市場を通さずに相対でやってくれと思いますし、金融政策当局としてやってて恥ずかしくないのかねというか「政策委員会がやれと言うからやりますけど市場への弊害は知りませんよやれと言われたんだから」で済むもんなんですかねえとは思うのですが、まあどう見ても9月のオペの打ち方が明らかにそういうヤケクソな打ち方なので、そういうオペレーションが前提という事で考えるしかありませんので、12月のMB末残確保の目処が立つまでは民間をクラウドアウトするような買い方をせっせとやってくるんでしょうなという事で。

つーことで10月に入りますと更にせっせと買入が入るのですが、末残調整で保有になっている年内償還の短国分は用無しになるのでその分の打ち込みが短国買入で入る事を勘案すると、短国の日銀買入残高ベースとしての額は足元の額よりも増えてくる(12月末に落ちるもののロール分についてのんびりギリギリまで調整をしてくるとは思えないから)ことになって、市場の玉無状態は結構長引く可能性があるかもしれませんし、そうなると益々短期市場ががががとなる可能性も。


○クリーブランド連銀メスター総裁は景気には強気とな

http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2014/mester_20140924.cfm
http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/Documents/09-24-2014.pdf
The Economic Outlook, Monetary Policy, and Getting Back to Normal

どちらかと言うとあまりタカとかハトとかで確立した芸風を確保していない人の講演を見るという事で、メスターさんはここの所2回ほど講演しているのですが直近の講演から少々ですが、まあ経済に関しては全般的に見方が強いなあという所で『The Economic Outlook』から参ります。

・GDPは3%成長が続くが潜在成長率の見通しも強い

『 I expect real GDP to expand at about a 3 percent annual pace in the second half of this year and over 2015 and 2016. This is a moderate pace of growth, but it is somewhat above my estimate of longer-run trend growth, which I put at around 2.5 percent.』

今後2年間は実質3%成長が続き、その数値はメスター総裁の考えるロンガーランの実質GDP成長率の2.5%を上回る状態となるでしょうと。

『I believe several factors support above-trend growth over the next couple of years. Household and business balance sheets have improved and so have consumer and business confidence, which should support spending. In addition, monetary policy remains highly accommodative. And I expect labor markets, which have shown significant progress, will continue to strengthen and help sustain consumer spending.』

その理由はバランスシートの改善によるコンフィデンス改善、緩和的な金融政策、労働市場の改善が続くことだそうな。

『Of course, there are risks around this forecast. These include geopolitical risks, which have escalated in recent weeks, as well as weakness in some economies abroad. Despite the risks, it’s my view that our economy is on firmer ground than it has been for some time.』

地政学リスクや海外経済の減速リスクなどはあるが景気は堅調に推移するとの見立て。

『My output projections of 3 percent in 2015 and 2016 put me at the upper end of the central tendency of FOMC participants’ new projections for 2015 and just above the upper end for 2016. The central tendency is obtained by dropping the lowest and highest three projections from among the FOMC participants. For 2015, the central tendency is 2.6 to 3.0 percent, and for 2016, it is 2.6 to 2.9 percent. I note that my 2.5 percent estimate for longer-run growth is also somewhat more optimistic than the central tendency of 2.0 to 2.3 percent.』

でまあこのメスターさんの見通しは自分で思いっきり言ってますけど、「FOMCの中では強気の部類」ということでして、成長率見通しについてはcentral tendencyのレンジの一番上の所にいて、ロンガーランの成長率の見立てに関してはcentral tendencyのレンジよりも強いという数値になっています。

『Of course, there is always a good deal of uncertainty around estimates of trend growth, perhaps even more so today in the aftermath of such a deep recession. I lowered my estimate of trend growth after the Great Recession, but perhaps not far enough given the low productivity growth we’ve experienced over the past couple of years.』

ロンガーランの見通しについては金融危機後に下げたものの、まあそんなに大きくは下げていないそうな。

『On the other hand, I think it is premature to discount the future too much. It is good to remember the experience of the 1990s when over a period of several years, many forecasters revised down trend growth estimates only to subsequently revise them up significantly in response to strong productivity growth.』

ワロタという所ですが、ショックなどの後に低成長が続くとロンガーランの成長を過少推計する向きが多いけれども、1990年代にも同じような事があって結局その後推計を元に戻した人が多かったですよねとのご指摘。


・失業率に関してはロンガーランのノーマルレベルをやや高めに置いている

労働市場の話に関してはそんなに変わった話をしている訳でも無い(足元の数値はがっかりだが1か月の数値で見るもんじゃないとか)ので結論部分だけ引用。

『I expect that by the end of next year, the unemployment rate will fall to around 5.5 percent, which is my estimate of the longer-run, or natural, rate of unemployment, and remain near there in 2016. Like longer-run growth estimates, there is considerable uncertainty around estimates of the longer-run unemployment rate. These estimates depend on demographics, production technology, and other structural factors, and can vary over time. My estimate is on the upper end of the central tendency of 5.2 to 5.5 percent of the FOMC’s projections of longer-run unemployment. This means that I am projecting a somewhat faster return to full employment than some of my colleagues.』

ということで、失業率のロンガーラン水準が5.5%でcentral tendencyの上限になっていて、かつ上記のようにGDP見通しもcentral tendencyの上限ですので、労働市場がノーマルな水準まで改善する時期の予想がFOMCの中心的見解よりも早めになっています。


・物価に関してはそんなに変わった話になっていない

物価の説明部分は超あっさり味でして(GDPと雇用の説明はそこそこ長い)、全部引用しても以下のような感じです。

『Turning to inflation, although it remains below the FOMC’s goal of 2 percent, inflation measured by the year-over-year change in the price index for personal consumption expenditures has increased to 1.6 percent this year from 1.2 percent last year. Consistent with a pickup in economic growth and expectations of inflation remaining well anchored, my projection is that inflation will gradually move back toward the FOMC’s 2 percent goal by the end of 2016. Of course, this projection is dependent on appropriate monetary policy. So let me turn to that now.』

ということで適切な金融政策の元で2016年に向けて物価は2%に向けて接近してくるという見通しになっていますが、ロンガーランの失業率がやや高いのと、ロンガーランのGDP水準がやや高いのが相殺されて物価に関してはニュートラルになっているということでしょうかねえ。特段説明が無いから良く判らないけど。


・フォワードガイダンスは時間軸にあらずという説明部分

で『Monetary Policy』の部分ですけど基本的な説明部分はさておきましてフォワードガイダンスとか時間軸とかの話から。

『As one can see by looking at the SEP, there is some diversity of views about the appropriate path of interest rates. That is to be expected. Monetary policy must be dependent on the realized and expected evolution of the economy, and differences in the outlook across FOMC participants can result in different views of appropriate policy.』

『In addition, policymakers will calibrate their views on appropriate policy to changes in their outlook over time. This is what is meant by policy not being on a preset course: It should respond to changes in the realized and anticipated course of the economy.』

ということで金融政策は経済の状況および見通しによって変化しますとそらまあ正論ですが・・・・・・・・

『Indeed, this is a part of the Committee’s forward guidance, which remained unchanged last week.』

お、おう・・・・・・・・・・・・

『The guidance indicates that in determining how long to maintain the current target range for the fed funds rate, the FOMC will assess both realized and expected progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation, and we will look at a wide range of information in making that assessment. The guidance then indicates that, based on that assessment, the Committee continues to anticipate that it will likely be appropriate to maintain the current 0-to-1/4 percent target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends. 』

ほうほうそれでそれで?

『I would prefer this second part of the forward guidance be reformulated. Even though the Committee has emphasized that policy is contingent on the state of the economy, in my view, the “considerable time” part of the guidance tends to focus the public’s attention on a calendar-time for liftoff rather than on the changes in economic conditions that will help determine changes in appropriate policy.』

ということでフォワードガイダンス文言を直すべきという話なのですが、considerable timeという文言はtime-dependentのように見えるので直せという話であって、確かこの講演の時に早期利上げガーみたいな反応があったと思うのですが、別にメスターさん早い遅いの話はしていないと思う。

『I believe the Summary of Economic Projections is a better vehicle to convey information about the anticipated timing of liftoff, as it ties policy paths to the economic outlook. But I acknowledge there is a range of views about forward guidance.』

ということで、SEPのドットや利上げタイミング予想をコミュニケーションツールとして使うという話をしているのですが、ただまあSEPを使うのは却って混乱を招くと思いますよあたしゃ。

『With the fed funds rate effectively at zero, forward guidance has been used as a tool of monetary policy to add policy accommodation.』

でまあそこまでで話を終わらされますと何というフォワードガイダンスのサイレント形骸化と思うのですが、さすがにそこまで図々しくは無くて、「これまでの間フォワードガイダンス文言が時間軸政策として緩和の強化に使われていました」という説明が始まる辺りはメスターさん比較的狸度が低いなあと思うのですよ。

『Indicating that the future path of short-term interest rates will be low for a long time can put downward pressure on longer-term interest rates, thereby spurring current economic activity even when the policy rate is at the zero lower bound.』

先行きの金融政策パスを示すことによって長期金利に低下圧力を掛けるという金融緩和強化をこれまでは行ってましたぞなということですが・・・・・・・・・・・

『But in more normal times, away from the zero lower bound, I view forward guidance more as a communications device that conveys to the public how policy is likely to respond to changes in economic conditions. As such, I would like to see the forward guidance evolve over time to give more information about the conditions we systematically assess in calibrating the stance of policy to the economy’s actual progress and anticipated progress toward our dual-mandate goals, and to the speed with which that progress is being achieved.』

ということで、メスターさんとしてはフォワードガイダンス文言によって先行きの金融政策パスについてを示すのではなくて、ガイダンス文言は金融政策の反応関数について明示的に示す為のものとして使うほうがヨロシという話をしておりまして、まあガイダンス文言がタイムディペンデントになるのは良くないというのは判るのですが、主張そのものは却って市場を混乱させる可能性があるなあとは思うので、もうちょっと曖昧に「総合判断」でも良いように思えますけどね。

『A faster than expected pace of progress toward our goals would argue for a faster return to normal-that is, an earlier liftoff and more rapid funds rate increases than currently anticipated by the Committee?while a more subdued pace would argue for a slower return-a later liftoff and less rapid increases. I believe that effective communication about the contingent nature of our policy will be a key ingredient as we move back toward more normal monetary policymaking.』

まあこの辺は普通の話でして、金融政策の話に関してメスターさん自身としてどの時期に利上げという部分は避けていて、(引用していませんが)「先般のFOMCでの決定について賛成票を投じました」という表現にとどめておりますが、まあ話のトーンから考えてそんなにハトハトな人では無いものの、この説明の中でファイナンシャルスタビリティーの話とか殆どしていないので別にタカという話でも無さそう。ただまあ今回はどちらかと言うとロンガーランの話をしているのでファイナンシャルスタビリティーに関しての見解はまた別の場所で話があるかもです。


・正常化におけるオペ運営に関しては特段変わった話はありません

以下が『Normalization Principles and Plans』ですが、こちらは特段変わった話はしておりませんので一つだけトピックを。

『In addition, the Fed will use other tools as needed to ensure adequate control of the policy rate. One of these tools is an overnight reverse repurchase agreement facility. Basically, with overnight reverse repos, the Fed lends securities from its large portfolio overnight in return for liquidity from eligible counterparties. Offering this alternative investment should help put a floor on the fed funds rate. But there is the potential that in times of market stress too much liquidity could be drawn from the private market to the Fed’s facility, thereby exacerbating financial market stress. To limit this possibility, the FOMC has been considering and testing different design features, and as the FOMC indicated, the overnight reverse repo facility will be used only to the extent necessary and will be phased out when it is no longer needed to help control the fed funds rate.』

ということで出口においてRRPを使う件については、RRPによってMMFなどの運用資金が吸い上げられることによって民間のファンディングに悪影響を与えたくない、という説明になっているのですが、「in times of market stress too much liquidity could be drawn from the private market to the Fed’s facility, thereby exacerbating financial market stress」と言っているのはお為ごかしというか理屈の為の理屈みたいな話でして、そもそも市場にストレスがある時にはRRPによるクラウディングアウトもへったくれも無くて、クレジットリスク取れない時なのだからどうしようも無くて、それこそRRPでの資金吸収をしながら民間クレジット商品の買入なり担保政策の緩和なりをするという話じゃないですかねえとは思いました。


ということで、今年の投票権の方なので肝心の来年は投票権無いのですけれども、まあやや強めな感じではあるかなあとは思われます。






2014/09/26

お題「今日はスポット中間期末で短国買入にちょっとだけ注目/イエレンFOMC会見ネタファイナル」

水曜気分だが金曜とは得してるのか損してるのか良く判らんのですが、何で今日はおはぎゃーなんですかねえ。

○毎度の市場雑談メモだが今日はスポ末ですな

・3M入札はまあこんなもんですか

最近前場のWI取引が全然参考にならんのですが前場引けはお約束のゼロビットでございましたけど、まあそうは言ってもプライマリー段階でマイナスでも買う需要もそんなにある訳ではなく・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140925.htm

(3)募入最低価格 99円99銭7厘5毛(募入最高利回り)(0.0090%)
(4)募入最低価格における案分比率 96.3964%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘3毛(募入平均利回り)(0.0025%)

平均と足切りの間に2厘ほど差があるのを見てついうっかりテールが流れたとか思ってしまいますが、良く良く考えると足切り利回りでも1bp割っておりまして、ゼロが多くて何が何だかという所でありますが(−−)、まあ利回りプラスはプラスで良かったですねえ(棒読み)という感じですな。

でまあ今回はいわゆる不明玉も今月入ってからのアチャーな多さからやや通常モードに近いスケール(2兆半ば)になってきたこともありますし、末残調整自体はある程度の所までは進捗しているでしょうというのもあって、マイナスをどこまでも突っ込んで残高を調整をしないといけないという程の事も無かったようで、結局プラス水準で終了の巻でBB引値および売買参考統計値はともにプラス0.3bpと久々に入札日即マイナス(とかゼロ)というような水準では無かったのですが、そうは言いましても1bp割れ水準で殆どゼロなので状況が相変わらずであることは継続中なんですけどね。


・ということで本日は短国買入を入れるのかが注目というか何というか

てな訳で昨日の短国は年末跨ぎ3Mの一発目で、利回り水準自体は相変わらずの1bp割れというそれを利回りというのかという状態ではあるものの、マイナス突っ込んでヒャッハーヒャッハーという程の焼け野原振りも示さずという状態ではあったのですが、ここで注目されるというか何と言うかなのは金曜お馴染みの短国買入オファー。

昨日の3M短国入札がまたまたマイナス利回りヒャッハーとかやって玉が無くて悲惨な状態で札も無いわという状態になっていると買入の打ちようも無かった訳ですが、昨日の入札後の引けとかの状況から勘案するに昨日の短国は一応オペ先の持ちになっている部分があると見られますので、そういう意味では「札はある」状態。

その一方で日銀としてはとにかく年末のMB目標達成の為には年末時点での短国買入残高を40兆円台前半まで積み上げないといけないのですが、10月以降どうなるか判らんですけど9月はこの有様の需給関係で、しかも日銀買入で金利水準がマイナスとかハチャメチャな水準になってしまったので、金利がちょっと上昇したら9月の金利水準で買えなかった人たちの買いが待っているでしょうし、12月末にどうせ同じ現象が起こると思うと末残調整の動きも前倒しになるでしょうしとか考えますと、まあ需給が急に緩むというのも考えにくい訳ですから、まあ10月以降以前のように2.5兆だの3兆だのというような買入でポンポン残高積めるのかも微妙でございますから、「玉がある時に買入をせっせとオファーする」という動きになるんでしょう。

とまあ考えますと、期末で国債の絶対量が不足していてアチャーという状態になっているのではありますが、オペ先に短国があると聞くと思いっきり日銀が短国買入を打ち込んでくるという図になりそうで、スポ末で常識的にそういう事はしないだろと言いたくなるのですが、市場機能だの知った事かという状態でとにかくMB目標積み上げだけしか念頭にないですよと今月の短国買入の入れ方で宣言している訳ですからなりふり構わずの露骨プレイが今日も炸裂するでしょうなあと実に残念な思いと共に眺めるのでありました。

でまあ今日そんな感じでオペ打ち込みが入ると末初の現先玉とか大丈夫かよという感じではあるのですが、そんな事を言っているうちに民間投資家に買われてしまったら日銀の買入残高積み上げに支障をきたすから頑張って買うんでしょうね(迫真)ということでしょう。まあ本来的に言えば末初だけの現先ニーズとかあるから短国買入入れるにしても受渡ベースで期明けになる月曜か火曜(できれば末残固まっている火曜)にやった方が今の玉無し状態になっているマネーの市場には随分と優しい(短国アウトライトの人は別)のですけど、あまりそういうのは期待せずに今日の10時10分を待つのでありました。

まあいずれにせよ、どうせそんな感じのスタンスで10月入っても必死こいて日銀が新発3Mを買ってきますから、そう考えますと需給が仮に緩んだとしても緩んだ分日銀がバキュームオペを実施すると考えると、まあ業者サイドも安心感がありますので、そう簡単に投げも入らずでしょうからやっぱり水準訂正とかしないでしょうなあと思うのでありました。

しかしそうやって日銀が必死こいて短国買いを入れてしまって民間の投資家の購入機会を盛大に奪ってしまうという一種のクラウディングアウトみたいな状態を発生させるとか、本来の意味での資産買入政策の趣旨を考えるとそれで良いのかとおもいますし、「12月末のMB目標達成の為にオペ先に買える短国があったら買う」ってもはやそれは何の為にオペレーションを実施しているのかという事を考えた場合に、金融政策として意味があるのかねとも思いますし、「とりあえずやる事にしたのでやりますけど副作用とか弊害とか点検しませんし市場に指摘されても全然知りません」とは中央銀行として如何なものかという所ではありますけどねえ。


○イエレン議長会見ネタファイナルである

引っ張ってすいませんすいません。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf

本日は18ページ目の辺りからになりますが、今回は質問する方も論点が整理されていて、しかも良い質問を入れてくるので読んでて読みごたえがあるのと、昨日までネタにしてお判りと思いますが、イエレンさんの説明って長いには長いのですが、ロジックが明快なのであまり長さを感じないで、量(全部で22ページ)ある割にはあまり引っかかりがなく読めるという代物ですのでオヌヌメ。

・フォワードガイダンスの実質的な変化(形骸化)を思いっきり説明している質疑応答

イイシツモンダナーというのがありましてね。

『ROBIN HARDING. Robin Harding from the Financial Times. Madam Chair, I want to come back to the forward guidance. Quite a large part of the Committee has recently criticized the guidance as being calendar-based. But if I understood your comments earlier, that's not correct. How should people understand that?』

フォワードガイダンスは一種のカレンダーベースなもの(そもそも最初の導入時はそういう雰囲気をプンプンさせることによって効果を出していた)では無いというように説明しておりましたが、どう理解すれば良いのでしょうかとは良い質問。

『And if it doesn't have a defined meaning, what purpose is it actually serving? And do you expect to have to revisit it in the near future? Thank you.』

でまあフォワードガイダンス文言に一定の決まった意味づけがないのであれば、そもそも何のためにフォワードガイダンスを入れてるのよ?この文言って近いうちに替わる可能性があると思ってますかねえと大変に良いツッコミが入っていますのでどこぞの島国の中央銀行総裁会見に参加される皆様におかれましてもこのような良い質問を入れて頂きたい物だと切に願いたいものであります。

で大木こだま師匠じゃなかったイエレンさんのお答え。

『CHAIR YELLEN. So we are constantly discussing forward guidance and thinking about whether it's appropriate and how to revise it. And we did do a major overhaul of our forward guidance in March. I think the Committee participants who have spoken out on this topic recently want to make sure that we have the flexibility, that the Committee has the flexibility to respond to unfolding developments. They want to make to sure that if progress really does turn out to be faster than we have--we would expect, that the Committee will be in the position to start sooner tightening monitor policy. 』

「flexibility」キタコレ!ということで、この先も何発もflexibilityというのが続きまして、まあ端的に言えば従来はいわゆる時間軸効果を出すために使っていたフォワードガイダンス文言が変化して「ただの現時点での見通しを端的に示す文言」になっていることをここでより明瞭に説明しています。

『They do not want to be locked into something that the markets see as a calendar-based and firm commitment.』

ということで、まあ従来からfirm commitmentとは言ってませんでしたが、思いっ切り「コミットメントに非ず」と直球キタコレでありまする。

『And so they want to emphasize data-dependence of our policy and make sure that we have appropriate flexibility. But I agree with that. And as I said earlier, I think we do not have any mechanical interpretation that applies to this. It, of course, gives an impression about what we think will be appropriate, but there is no mechanical interpretation. And I've said repeatedly and I want to say again that if events surprise us, and we're moving more quickly toward our objectives, and the Committee sees a need to move sooner or later depending on what the data is, that we do feel--I do feel we have the flexibility to move.』

いやー説明がしつこいですなあという所で、しかも口調がアレなので相当ねちっこい説明の印象ですかねえとか思ったりする訳ですが(^^)、これバーナンキ先生の口調でのベシャリだと相当明瞭に聞こえそう。

『And it is important for markets to understand that there is uncertainty, and this statement is not some sort of firm promise about a particular amount of time.』

この前の「6か月」発言は何だったのかという感じですが(ってまあ6か月というのはそれはそれで見通しとしてその程度を中心とした期間でゼロ金利継続という話ではあるのかも知れませんけど)、今回の説明では思いっ切りこの辺りをフレキシビリティとかデータディペンデントとかで説明している感じですな。


・利上げペースが遅くなる理由についてのロジック

次の質問である。

『STEVEN BECKNER. Good afternoon, Chair Yellen. Getting back to the one aspect of the forward guidance is the statement, which you’re reiterated about the funds rate probably needing to stay below normal for some time after achieving mandate-consistent levels on unemployment, inflation, so forth. The SEP assessments of appropriate funds rate levels show the funds rate getting up to that 3.75 percent normal level at the end of 2017. If you look at the SEP projections of unemployment, inflation, and so forth, they seem to get back to those mandate-consistent levels by the end of 2016, if not much sooner. So what is the justification for waiting that much longer to get back to normal, particularly when you have such a large balance sheet that you intend to reduce only gradually? Is there a danger of getting behind the curve?』

『And secondly, can I just ask: Can you envision a time when to reduce reserve pressures you may have to resort to asset sales that you don't anticipate doing now?』

後半は別の質問(ちなみにその質問の答えはすっかり忘却して次に行ってます^^)ですが、前半はSEPの見通しだと2016年で経済はロンガーランノーマルなのに金利が2017年でロンガーランノーマルだとすると金融政策がビハインド・ザ・カーブになりませんかという奴でして・・・・・・・・・・

『CHAIR YELLEN. So on the first question of some time before rates return to normal levels, as I mentioned, you can see in the SEP that by the end of 2017, many participants are anticipating that rates will return to what they think are normal longer-run levels, but the economy in their view will have probably gotten back to normal levels of unemployment and near-normal levels of inflation sometime in 2016. So that looks like a year or more in which rates would be below normal longer-run levels.』

でその理由はと言いますと・・・・・・・・

『We asked participants why they hold the views that they do about appropriate policy, and there are number of different explanations that participants give. But a common view on this is that there have been a variety of headwinds resulting from the crisis that have slowed growth, led to a sluggish recovery from the crisis, and that these headwinds will dissipate only slowly, that they are dissipating.』

議論の中で勿論委員の中での見解の差はあるけれども、基本的に言えば金融危機の後遺症が成長を阻害しており、その後遺症が長引いている為にノーマルレベルまでの金利引き上げには時間を掛けられるという見解ですというのはまあその前にもイエレンさんが言っていたネタなので想定通りちゃあ想定通りの答え。

『An example would be the fact that mortgage credit really is at this point available really to those with pristine credit. Credit conditions there are abnormally tight.』

でもってここからほほうという説明がちょっと入るのですが、その金融危機の後遺症の例を挙げているのが興味深い所で、最初がモーゲージクレジットなどのクレジット環境がabnormally tightだというのを挙げていまして、逆に言えばここら辺の状況が改善されるのであれば正常化ペースは早まる可能性があるという事でもある(イエレンさんはハトだからそんな話はあまり考えてないかも知れないが現実問題としてそうなった場合には変わる可能性がありますよねという意味)と思いますけどどうでしょうか。

『Another thing that we see is that households’ expectations about their likely income paths remain quite depressed relative to pre-crisis levels. That’s something that may be holding consumer spending. So the view would be those forces will dissipate over time, but only very gradually. And in addition, we have had slow productivity growth and a slow pace of potential output likely depresses the pace of investment spending. And so, those are some of the things that participants mention is why it will take some time to get back.』

他には家計の所得期待が伸びなくて消費がヒャッハーにならない(とは言ってもFOMCでの認識は消費が強いという話になっていますので念の為)とか、生産性の伸びが弱いとか、潜在的な生産が弱くて投資が中々伸びないとか、これらの要因を挙げているので、まあこういう辺りは「金融危機の後遺症」として見ているという話ですな。

『So the story is it's not that the Fed is behind the curve in failing to return the funds rate to normal levels when the economy is recovered; it is rather that in order to achieve such a recovery in 2016 or by the end that it's necessary and appropriate to have somewhat more accommodative policy than would be normal in the absence of those headwinds.』

ということで結論は「ビハインド・ザ・カーブどころか金融危機の影響が2016年になっても残っているので緩和的な金融環境が適切ですよ(キリッ)」ということで、まあ当然ちゃあ当然ではあるのですけれども、説明ロジックがクリアカットなので分かりやすく、イエレンさんの説明はまあそうだろうなあとは思う物の、これらのヘッドウィンドを過大評価する場合には別のリスクも発生しそうですなということで。


・正常化プロセスが遅れると2004年の二の舞になりませんかというツッコミに対して

その次にPETER BARNESさんのスコットランド住民投票と欧州経済大丈夫かねな質問があるのですが(その前のGreg IPさんの質問のフォローですが、そもそも昨日引用するときにGreg IPさんの質問を割愛してますので)割愛しまして最後の質問。

『PEDRO DA COSTA. Thank you. Pedro da Costa with Dow Jones Newswires. My question is about your particular views about whether a gradual approach to tightening is better than a more aggressive and less predictable one, because there was some discussion about--internally and externally about whether it was the Fed’s predictability in the 2004-ish period that kind of created the conditions of complacency that led to the housing bubble. So I wonder if you'd be more inclined to be gradualist in your approach and more transparent in outlining future moves, or whether you think keeping the market guessing there's some values for that? Thanks.』

前回のITバブル対応の緩和からの正常化プロセスが遅かった事が住宅バブルを発生させたという指摘がだいぶあると思うのですが、今回も正常化プロセスに時間を掛けるという点についての説明とか資産市場の現状評価とかどうよと。

『CHAIR YELLEN. You know, this is something the Committee is going to have to discuss when the time comes to normalize policy. Looking back on the period, the run up to the financial crisis, I don't think by any means measured pace and the very predictable pace of 25 basis points per meeting explains why we had a financial crisis, but it may have diminished volatility and been a small contributing factor, and the Committee will have to think about how to do this. I think many people in the aftermath of that episode think that somewhat less of a mechanical pace would perhaps be better, but this is a matter that we will in due time have to discuss.』

ここは質疑が(珍しく)微妙に噛み合っていない気がするのですが、前回の正常化サイクルでメジャードペースとして会合毎に25bpずつの利上げを行ったこと自体が住宅バブルを生んだとは考えていないという話をしつつ、それがボラを下げたというのはまあそうかも知れんけどとは言ってますな。

で、正常化プロセスに関してメジャードペースみたいなのが良いのか良くないのかという点に関しては今後とも議論するという話ではあるのですが、まあこのニュアンスからすると正常化へ着手したらそのままメジャードペースで引っ張っていくし、そうであるからこそ利上げの着手はそんなに早くならないというのが(早めにやって止めるというアプローチではない)アタクシが受けたニュアンスなのですが、まあその部分は解釈が分かれそうなのであくまでもアタクシの愚考という事で。

なお、そのアプローチだとやはり正常化プロセスがビハインド・ザ・カーブになるリスクは相応にあると思います。「先の方まで正常化行けるという見通しが出来る」所までゼロ金利引っ張るとなると、恐らくはビハインドするでしょと・・・・・・・・

てなわけでイエレン師匠の会見質疑を3回に分けてほぼ全部引用しちゃいましたが今回は論点をクリアカットに説明しているものでつい長くなってしまいました(大汗)。来週は地区連銀総裁ネタと英国ネタですかねえ。





2014/09/25

お題「9月12月越えの3M入札とな/イエレン議長の会見が判りやすい点を鑑賞(ただし引用大会で長い)」

これはどっちつかずで両方から相手にされないパターン。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140925/t10014854081000.html
対ロシア 追加制裁実施も慎重に対応
9月25日 5時07分

『政府は、ウクライナ情勢を巡ってロシアに対する追加の制裁措置を実施しましたが、外務省関係者はロシア経済などに大きな影響を与えるものではないとしていて、北方領土問題もにらんで日ロ関係の決定的な悪化につながらないよう慎重に対応していく方針です。』(上記URLより、以下同様)

というのはまあ判らんでも無いが・・・・・・・・・・・

『今回の追加制裁について、外務省関係者は「ロシア経済などに大きな影響を与えるものではない」と述べています。』

相手に影響が無い追加制裁ですよとか当局者サイドが(関係者というのは怪しいがわざわざ外務省と言ってるから当局の筋から出てるんでしょ)自分から言ってどうするんだよアホジャネーカというかちょっとタガが緩んでるなあと。

ちなみに
http://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/economic_sanctions/ukraina_20140924.htm
ロシア連邦の特定銀行等による証券の発行等の禁止措置を実施します

ですかな該当措置は。


○さて期末年末越えの短国入札ですよ!!!!(備忘メモ)

ということで今日の短国入札様ですが。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20140918.htm

3. 償還予定日 平成27年1月8日

ということで、四半期末を2回通過する新発3Mでありまして、従いまして年末のMB残高確保という意味では日銀が涎を垂らして狙っている銘柄でもありますという状態。

でですね、まあ9月末でこの有様だったのですから12月末も同じ事になるでしょうし、もしかしてこの前に出ていたある意味衝撃の8月積み期間に都銀が超過準備拡大していなかった事象を見ると、12月末までの間に国債買入で膨れる予定の超過準備は誰が持って、国債残高の帳尻はどうなるのとか考えると碌な未来が想像できません、と考えますと年末越えの残高積みもある程度計画的にやった方が良いとか考える人は出るでしょとか、まあニーズがあるストーリーしか思い浮かばんという残念な状況。

まあさすがにこの市場状況で末残調整を今日の短国入札で勝負しようというのは相当の胆力があるのか変態仮面なのかという所だと思いますので、いつもほど末残確保でヒャッハーとかにはならないんじゃネーノとは思いますし、とは言いましても30日渡しの所では最後の最後での末残調整ニーズ(現先とか)が盛大にある筈なので残高の確保は必要でしょうし、それよりもオソロシスなのは日銀の成行買い攻撃でありますな。

つまりですね、先週の短国買入に関してみますと「1年短国の札が入りそうな額を逆算してオファーを打ち込んで来ました」というのが思いっきり見え見えというなりふりカマワンチ会長状態になっておりまして、もはやそれをオペと言うのかオペやってて恥ずかしくないのかとか小一時間問い詰めたいレベルに達している以上、今日の3M短国の最終投資家ニーズがイマイチになったとしてもどうせ「いやー日銀はん年末の短国残高これだけ稼げまっせどうですか」となれば大喜びして札があるだけ短国買入を入れてくるだろうという浅ましい状態に日銀がなっているので(ただし必要残高を確保したら終了になるのは要注意)入札での札が無くても日銀がケツ拭きをしてくれるという素敵な状態になっているとしか申し上げようがない日銀の「札のある分だけオペを打ってくるプレイ」でありますので、まあ流れても最終的に日銀に打ち込むだけのことでしょうなあと。

でまあ常識的に考えると、いつもの金曜日短国買入オファーというのは今回は期末渡しになってしまいますので、先ほど申し上げた期末1日だけニーズとかの対応があるから普通は末渡しに短国買入を打っても札が入らないから回避すると思うのですけれども、入札がコケた場合は末渡しの短国買入が来る可能性もあるなあとか思いますし、10月になると実は9末残高確保で買った短国の大処分市で日銀に短国打ち込まれて涙目という可能性もあったりして色々と悲喜こもごもの光景が発生しそうでございますな。

#などと一部の超マニアしか興味の無い雑談メモ誠に恐縮至極

ま、常識的に考えると10月になっても短国カレント全銘柄マイナス金利とかいう話にはならないとは思うのですけれども、相変わらずのモノ無し芳一攻撃で短国の引値は強いですし、気が付けば2年以下の利付とかもドンドン気配が強くなっていますし、日銀は日銀で目先はMB末残確保を前倒しで行ってきそうなオペの打ち方してきますしと考えますと何だかなあという所ではあります。


○地区連銀総裁発言とか(これまたメモ)

ふむ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NCF14K6JTSED01.html
クリーブランド連銀総裁:FOMCガイダンスの機能向上を
更新日時: 2014/09/25 02:17 JST

『9月24日(ブルームバーグ):米クリーブランド連銀のメスター総裁は連邦公開市場委員会(FOMC)声明の金利ガイダンスについて、経済状況の変化に政策がどう対応するかを示す「意思伝達ツール」としての機能を高めるべきだと述べた。メスター総裁は24日にクリーブランドで講演。事前原稿によると、「ガイダンスは時間の経過とともに姿を変えるのが望ましい。2つの責務の達成に向けた経済の実際の進展と想定される進展、そしてそのスピードに合わせて、われわれが政策スタンスを系統的に判断する状況をより詳細に情報を与えるようにするべきだ」と述べた。』(上記URLより)

ということでFOMC終わると色々と発言が飛び出すのがFRBの仕様なので、フォローしないといかん訳ですが(超大汗)、ガイダンスに関しては「時間軸ではない」という機軸をより明確にしてきているというのがこの次のネタとなりますイエレンさんの会見でありまして、まあはっきり言って今のフォワードガイダンスって「単なる現時点での見通し」であってあまり先行きの金融政策パスに対してコミットしたものでは無いという軽い物になってきていますので、そういう意味では機能向上したいというメスター姐さんのスタンスも判らんでもないですが、ミーが思いまするに変にガイダンス文言を機動的に変化させるような仕組みにすると却って市場のボラを高めるようにも思えるので、次に変えるときは次回FOMCでの利上げ予告に使う位に留めておいた方が実用的な気もします。

まあこの辺に関しては最近出ている地区連銀総裁とかの講演などを見ながらまた纏めたいと。


○イエレン議長のFOMC記者会見は説明ロジックが明瞭で分かりやすいという件

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf

昨日はQ&Aの最初の2つの質疑(だけで3ページくらい費やしている)をネタにしましたが、本日はその続きをば。

でまあ今回の会見ですが、慣れてきたみたいでイエレンさんの説明が一つ一つの質問に対してかなり長くなってきたという感じ(元々長いのですが)なのですが、今回は説明ロジックがかなり明瞭になっていまして(なお音は聞いていませんがどうせベシャリの方は大木こだま師匠ばりの粘っこい喋り方だとは思いますが)、逆さ絵先生のだいぶイカサマ臭いロジックとか、ドラギ俊彦先生の歯切れは良いけどイカサマ説明とかと比較してみますと実にクリアで分かりやすいです。

まあ現状では金融政策の方向性が確りあって、あとはそのスピード調節をどうするのかという話で金融政策運営の論点が明確になっているから説明ロジックも明瞭になる、という事が原因なのかもしれませんが、前任とはまあだいぶ違うイエレン節というのが見えてきた感じがします。

・労働市場のスラックをとにかく強調する件

3番目の質疑応答も長いのですが、これは後の質疑応答でも同じネタが出てくるのでパスしまして次の質疑応答が基本的な部分を踏まえているのでまあ良い整理である。

『CHRIS CONDON. Thank you, Madam Chair. Chris Condon, Bloomberg News. Madam Chair, the economy has been growing now for five years and some economists believe the expansion will last another five years. Why, in your view, is economic growth not creating more inflation and wages and in PCE? Is this all about remaining slack in the labor market, or are there other forces at play?』

これまで5年間経済が拡大していて今後も拡大するという見通しだが何で物価や賃金がもっと上昇せんのかという点の整理を願いますとはまあ基本的だが良い整理。

でまあ説明が丁寧なのよね、全般的に言えるのですが。

『CHAIR YELLEN. Well, to my mind, the very slow pace of wage increases does reflect slack in the labor market. We had a very deep recession, as is perhaps to be expected in the aftermath of a very significant financial crisis. We faced headwinds in the economy recovering, so the recovery has been slow.』

ということで、「労働市場のスラック」と「金融危機の後遺症」を挙げていますが・・・・・・・・・・

『Growth has been positive, and it's lasted for five years. But it’s nevertheless been slow relative to past recoveries that have not been associated with financial crises. And while unemployment has come way down from the slightly over 10 percent level it reached, at 6.1 percent, it remains significantly above the level that most FOMC participants would regard as consistent with normal in the longer run, 5.2 to 5.5 percent.』

景気は5年間回復してて失業の水準も改善したけどまだロンガーランのノーマルレベルよりは「significantly above」とな。

『So there is significant underutilization of labor resources.』

ということでキタコレである。

『We continue to discuss whether or not the unemployment rate itself is an adequate measure of how much underutilization of labor resources there really is. And, as I went into detail in Jackson Hole, and won't repeat all of that, there are other ways in which we see underutilization--high levels that have come down only very marginally of part-time employment for economic or involuntary part-time employment, perhaps some remaining shortfall of labor force participation as a result of cyclical factors. And so, I think there still is--and the statement says that--significant underutilization of labor resources and a very modest pace of wage increases that's picked up very little I see as essentially a reflection of that.』

とまあ説明がやたら丁寧ですが、その労働市場のスラックは失業率だけではなく色々な指標に出ております通りで、これが相変わらずデカイ結果として賃金の上昇が弱かったりする訳ですという話ですが、まあこんな感じで説明が全部丁寧なのがイエレン師匠のクオリティ。

まあ何ですな、説明が明瞭で丁寧というのはどこぞの極東の島国の中央銀行総裁やら置物副総裁とかもそうですが、当初自信満々の時には明瞭で丁寧でも、ボロが出てくると段々明瞭だけどインチキになるのか、意味不明瞭になるのか、というような流れになるのかも知れませんけどね!!!!


・ドットと市場の見通しとの差異について&イエレン議長の立ち位置を聞くという剛球質問

『JON HILSENRATH. Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Chair Yellen, I want to come back to the interest rate projections that have been put out today. The public, I think, would be enlightened by knowing a bit more about where you stand in relation to these projections.』

イエレンさんはドットのどこにいますかとはこれまた剛球質問。

『And with that in mind, and in the name of transparency, I wonder if you could describe to us whether you're at the low end of those projections within the central tendency or at the high end.』

ワロタけどそれは「んなこと言われたらあんた、往生しまっせ〜」で終了する質問だと思う。

『I also want to ask you about a San Francisco Fed paper that came out recently, which suggested that market expectations have been running below the Fed’s own projections.』

誰か聞くと思ってましたが、このペーパーをネタにしている余裕が無くてすいませんすいません。

http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2014/september/assessing-expectations-monetary-policy/
September 8, 2014
Assessing Expectations of Monetary Policy
Jens H.E. Christensen and Simon Kwan
(画面レイアウトズレズレ防止にリンクは途中までの所で貼っていますがペーパーにちゃんと飛ぶ予定です)

『So I wanted to ask you if you see that as well, and whether it's all troubling that market expectations might not be aligned with the central--with what the Fed put out today.』

市場の予想とSEPのドットが違う件というペーパーは「基本的に市場の方が遅い」という話で、どこぞの中央銀行が市場のインフレ期待と一般人向けサーベイのインフレ期待の特性について紙を出して何とかストの皆さんを盛大にdisったという事案があったのに被るなあという話ではあるのですが、それに絡めた質問ワロタ。

『CHAIR YELLEN. So, with respect to identifying myself, the Committee has had discussions during the years that we have been providing these forecasts of the participants to the public as to whether or not it's desirable from the standpoint of Committee functioning to identify who's who in these pictures. And thus far, well, occasionally an individual will indicate in the speech what their personal views are. We have not yet decided that would be a desirable thing for the point of view of our decision-making process to identify individuals.』

要するにゼロ回答。

『We have a subcommittee on communications that's now chaired by Vice Chair Fischer, and they will be considering the SEP and whether or not some changes are appropriate. But until--and unless there is some change in the Committee stance on this--I don't want to identify myself.』

一応コミュニケーションの改善検討会はやっているのでそのうち改善するかもしれませんけどとは付け加えていますが、まあ普通この手のドットで一々各人の数値を紐付けしないのが基本でしょうね。

『You asked, second, about the San Francisco Fed paper that did point to a notable divergence between market views and the views of the Committee. I'd say that there have been any number of different analyses of this topic, there are many different survey measures and interpretations of what the market thinks. And I don't frankly think it's completely clear that there is a gap.』

実際は市場が示すの金利見通しとFEDのSEPで出ているドットにそんなに大きなギャップがあるとは思わないとはこらまた中々面白い説明なのですが・・・・・・・・・・・

『There are different views on whether or not such a gap exists. To the extent that there is a gap, one reason for it could be that markets and participants have different views on the evolution of economic conditions. For example, I think I'd note that when the Committee participants write down their forecast for the federal funds rate, they are showing the funds rate path that they consider most likely. Their economic forecasts are of the conditions that they think are the most likely ones. You don't see the full range of possibilities there. And the path for the funds rate is the path that each individual thinks is most likely.』

『Market participants, understanding that there are a range of possible outcomes with upside and downside possibilities, are doing something slightly different, I think, when they're determining market prices. They are taking into account the possibility that there can be different economic outcomes, including--even if they're not very likely--ones in which outcomes will be characterized by low inflation or low growth and the appropriate path of rates will be low.』

ということで、インチキ説明が待っているのかと思いきや納得のいく分かりやすい説明でして、SEPでの見通しは「メインシナリオ1本」で示しているけれども、市場の価格形成においては「メインシナリオ」だけではなく「リスクシナリオをウェイト付けて考えた部分」が反映され、現状ではダウンサイドリスクに対してウェイトが掛かっているので、SEPの金利見通しが市場の金利見通しよりも強くなる、という説明になっていて、いやあこれは確かに仰る通り。

『So, differences in probabilities of different outcomes can explain part of that. We, you know, want to learn, we--market participants may have different views on the economy than the Committee does, and that's something we want to try to infer and learn market views in part from information of this type. What can I say is that it is important for market participants to understand what our likely response or reaction function is to the data and our job is to try to communicate as clearly as we can the way in which our policy stance will depend on the data, and I promise to try to do that.』

なるほどとしか言いようがないです。


・バランスシートをどうするのかという件

次の質問である。

『YLAN MUI. Hi, Ylan Mui, Washington Post. My question is about the new exit principles. You guys say that you don't plan to end reinvestments until after the first rate hike. Can you give us a little bit of a sense of what are the conditions you're going to be looking for when you eventually began to end the reinvestments? It sounds like tapering the reinvestments is also on the table. What might go into your decision on whether or not to end them altogether, whether or not to taper them? And do you have a general timeline for how long you think it will take to shrink the balance sheet once you actually start?』

再投資停止とかその後のバランスシート正常化のパスについての質問ですな。

『CHAIR YELLEN. OK. All good questions.』

ドラギ俊彦先生とか本家俊彦先生辺りがこういうとインチキ説明の前振りなのですが、イエレン先生の場合は本当に「good questions」という認識をして嬉々として説明を始めるようです。

『So, I think the Committee would--will be focused on, we intend to use the path of short-term interest rates as our key tool of policy. And of course, market participants will be very focused, as we are, on what is the appropriate timing and pace of interest rate increases when that time comes. And I think the Committee would like to feel that it has successfully begun the normalization process and that we're successfully communicating with markets about how that process will be playing out over time. And I think when the Committee is comfortable that that process is established, is working well, and we’re comfortable with the outlook, that they will begin the process of ceasing--or possibly tapering-- but eventually ceasing reinvestments. So, we say that it will depend on economic and financial conditions, but we want to make sure normalization is successfully underway.』

あくまでも基本は金利政策になるのでそっちを注目してくれという事ですが、バランスシートの正常化に関してもあくまでも状況次第で変化するということで決め打ちを全然していないのがイエレンクオリティ。

『If we were only to shrink our balance sheet by ceasing reinvestments, it would probably take, to get back to levels of reserve balances that we had before the crisis. I'm not sure we will go that low but we've said that we will try to shrink our balance sheet to the lowest levels consistent with the efficient and effective implementation of policy. It could take to the end of the decade to achieve those levels.』

ということで、再投資停止だけでバランスシートを正常化させるとすると、2020年近くまで正常化に時間が掛かるという事ですが、説明も思いっきり仮定法過去になっていて、とにかく先行きに関しての予断を与えないように与えないようにという説明になっている(ただし経済認識は労働市場のスラックを強調しているから結果的にはハト型になるのだが)という事ですな。


・労働市場の循環論VS構造論

『BINYAMIN APPELBAUM. You said a few moments ago that there is perhaps some remaining shortfall of labor force participation as result of cyclical factors. This seems consistent with a recent paper by some members of your staff finding that labor force participation is unlikely to recover. Is that now the house view that slack essentially consists of unemployment plus part-time workers who want full-time work and that labor force participation is basically out of the equation?』

これ原文ママで引用していますが、たぶん質問者が「cyclical factors」と言ってるのは「structual factors」なのかと思います。で、2番目の質問は次の小見出しで行います。

『CHAIR YELLEN. I’m sorry. Just remind me what was the first question? The first question--
BINYAMIN APPELBAUM. The first question was--
CHAIR YELLEN. Please.
BINYAMIN APPELBAUM. The first question was has the labor force participation--
CHAIR YELLEN. Ah, labor force participation--
BINYAMIN APPELBAUM. --been removed from slack equation?』

たぶんcyclicalだと質問の意味が通じないのでこんなやり取りをしたのかと思われ。

『CHAIR YELLEN. So the recent Brookings paper by the Fed economists clearly indicates, and I said this at Jackson Hole, that there are structural reasons, particularly demographics but not only demographics, why labor force participation should be expected to decline over time. And I agree with that, and I believe that most of my colleagues would endorse that as well.』

ということで構造要因があることも認めています(ここにあるようにジャクソンホール講演でもその部分はありましたな)。

『However, they did indicate that in the paper that they see some remaining cyclical shortfall. By one technique that they used, they placed the estimate at a quarter percent, but by another technique that they used it could be, I believe they said, as large as 1 percent. And so my own personal view is that there is some cyclical shortfall, and something certainly--probably within that range.』

ふむ。

『But nevertheless, it's a meaningful cyclical shortfall. It's not completely--so I'm giving my own personal view, not a Committee assessment--that, you know, I see the flat--and given the underlying downward trend in labor force participation, we might interpret the flattening out of labor force participation over the last year as showing that that cyclical component has diminished somewhat. I think there is something that remains, but eventually I would certainly agree with the authors, we should expect over time to see labor force participation declining. And then let's see, the second piece was--』

ということで、循環要因による影響も相応にあるという説明で、だから緩和的な金融政策をやや長くしても無問題というロジックになる訳で・・・・・・・


・政策金利は当面テイラールールよりも低い位置にいるでしょうという話

先ほどの2番目の質問に戻りますね。

『And the second question, in the statement of exit principles, you said that the Committee will act as soon as economic conditions warrant. There had been an idea in circulation at some point that you might stay lower for longer as a means of compensating for some of the damage done during the recession. Is this an indication that that debate has been settled and that that idea is off the table?』

で、イエレンさんの答え(ちょっと上の最後から引用開始します)。

『And then let's see, the second piece was--』

『BINYAMIN APPELBAUM. Is the debate about lower for longer essentially over?』

『CHAIR YELLEN. Well, you know, we stayed low for a very long time. We have been at zero for a very long time and below the levels that some common policy rules would now be suggesting, given the level of unemployment and inflation. So the recovery has been very slow. We've also been doing unconventional policies, of course, buying assets. And in the general sense, I think we have been lower for longer than--if you complete that sentence--then many standard policy rules would suggest.』

テイラールールよりも低い水準の金利を継続しておりますが回復ペースは依然スローですと。

『So in a sense, that is a policy that we have had. And once we decide it's appropriate to begin to normalize policy and to raise the level of our target for short-term interest rates, it would still take some time for rates to get back to levels. You can see in our projection that by the end of 2017, the participants are on average projecting that rates will reach the levels they consider normal in the longer-run. And similarly, we could make a similar statement with respect to where the funds rate would stand relative to the recommendations of rules. So that would take some time to return to those kinds of levels.』

でまあその背景の話はさっきもしている通りなので割愛していますが、労働市場のスラックと金融危機の後遺症があるからテイラールールが示す金利よりも低い水準が当面継続されますという話っすな。


・反対意見については自信満々に「あるのが当然」というスタンス

次の質問である。

『MARTIN CRUTSINER. Thank you. Marty Crutsinger with the Associated Press. Madam Chair, there were two dissents from today's decision. I’d kind of like to get your thinking on how you treat dissents. I think in Chairman Bernanke's eight years, the largest number of dissents was three. Do you see two dissents as a yellow warning flashing light that policy may need to be moderated down the road? How should market participants read the dissents?』

反対が増えているというのは緩和政策をもっとモデレートにすべきという事の警告なのではないでしょうかと。

『CHAIR YELLEN. Well, I think it's very natural that the Committee should have a range of opinion about a decision as crucial as what is the right time to begin to normalize policy, and we do have a range of views in the Committee. I don't consider two dissents to be an abnormally large number.』

現在の政策運営のcrucialな論点は正常化着手をいつすべきかという話であり、それに反対があるのは当然で反対2名が異常な状態とは思いませんよとはそらそうだという話。

『Presidents Plosser and Fisher have been quite clear in all of their speeches recently in stating that they think the time has come to begin normalizing policy. I think they perhaps have some concerns that if we don't begin to do so soon that inflation will pick up above levels we--that they would consider it desirable, or that they have some financial stability concerns.』

タカ派の2名はインフレ高進やファイナンシャルスタビリティーの問題を懸念していますと。

『But the committee adapted today's statement by an overwhelming majority, and I don't consider the level of dissent to be surprising or very abnormal.』

ただ委員会としてはご覧のような決定をしましたという事でまあ当然の説明だが自信満々モード。


・潜在成長の低下に関する質疑

『GREG IP. Greg Ip of The Economist. There's been another downgrade in your near-term growth forecast and a downgrade in your unemployment rate path forecast. Does it appear the potential is much lower than you thought; and therefore slack is closing more quickly than you thought? This seems to be a persistent pattern to your forecasts.』

ということで、成長見通しが下がって物価見通しが上がって失業見通しが下がっているのはそら潜在成長が低下してるってえ話じゃネーノという指摘。あと実は2番目の質問があるのですが、欧州情勢、特に欧州の期待インフレの低下についての質問して、まあ面白くないので割愛します。

『CHAIR YELLEN. So there's been a little bit of downgrading, I think, even this time in the longer-run, normal growth rates that Committee participants have written down.』

確かにっ今回のSEPではロンガーランのGDPの数値が中央値で2.1-2.3→2.0-2.3ではありますが、全員の数値は1.8-2.5→1.8-2.6になっていたりします。まあ中央値がそうなっているのですからアグリゲ−トすれば下がったという話ではありますが。

『You are certainly right in saying that over a number of years now, there's been a pattern of forecast errors in which either we've been on track with respect to unemployment, or unemployment has come down in some cases faster than we anticipated, and yet growth has pretty persistently been surprising the Committee to the downside, and that is a statement about productivity growth, which has been pretty disappointing. So we have had downward revisions in the level of potential output and to some extent, at least for a time, in the projected pace of growth. So that tension has been there.』

ということであっさり味で「we have had downward revisions in the level of potential output」と言っているのがほほーという所ではあります。

『There are a range of views about long-run growth. A lot of people are writing about this topic. I think the Committee's longer-run estimates are neither at the most pessimistic and--nor the most optimistic end.』

ということで、潜在成長が下がっている可能性を認めているとは(ほんのちょっとという話でしょうが)こらまたという所です。

#残り少々ありますので明日にでも投下の所存





2014/09/24

お題「総裁会見とか岩田一政さんのネタとかイエレン議長会見とかのネタを」

昔から連綿としてありますが最初に流行ったのは平成バブルの頃でしたかね。
http://www.asahi.com/articles/ASG9L7W8SG9LUTIL04Q.html
航空機リース市場が活況 節税目的で法人資金流入
2014年9月23日15時26分

これ節税と言ってるけど減価償却使った収益の先送りスキームなんですけど相変わらず「節税」って言われているのもこれまた昔と変わらないですなあ。

○質問がヘボなのだが答えを見ると先行き頭が痛い総裁会見

まあ大した会見では無いのですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409d.pdf
黒田総裁記者会見要旨(9 月21日)
――G20 終了後の麻生副総理・黒田総裁 共同記者会見における総裁発言要旨

『【問】声明の中で、「金利が低く資産価格の変動が小さい環境下において、金融市場に過度のリスクが蓄積する可能性に留意する」とあります。日銀がQQEを続ける中で、日本では低金利が続く状態だと思いますが、日銀が過度なリスクの蓄積を防ぐためにできることは何でしょうか。また、日銀が低金利政策を維持したとしても、他国の政策によって市場が大きく変動して、日本の長期金利が急騰してしまうリスクについては、どのようにみていますか。』

なんか質問する奴は真面目に金融市場の勉強をしてから聞けよと思うのだが、今の国内金利市場の問題は日銀のQQEが無茶やり過ぎて債券市場では市場機能が大きく低下して入札と輪番でしか相場が動かないという価格調整機能の喪失が進んでいることで、短期市場では短国のマイナス金利が発生していて、このマイナス金利は実体経済のゼロ金利制約というのがある以上、確かに日銀はマイナス金利の買入で利益提供状態(しつこく言うがECBのマイナス金利は利益提供ではなくてペナルティ)になっているのだが、その利益というのはあくまでも日銀オペ先の利益であって、実体経済との関係で言えば金融市場で発生しているマイナス金利の負担を誰かが背負わないといけない形になる訳で、それこそ定着して長期化したら預金とか運用商品のマイナスという形で一般に負担が回ってくるリスクもある(回らない場合はその手前の所で誰かが腹切りをしているだけの話)という話がQQEの弊害として発生しているってえ話なんですよね。

なお、金利が急騰どうのこうのというリスクとか言われましても、財政赤字拡大がザルで日銀の買入が財政ファイナンスで財政インフレ必至みたいな話にならない限り基本的に金利が急騰とかするかよヴォケという所で、財政規律がとりあえずちゃんとしていて状況がサステイナブルである、という風に認定されている(のが重要で実際の赤字額が多いか少ないかよりもそっちのほうが重要)限りにおいてはとりあえず国債買入をバンバンやってもそれだけでは爆発しないというのがQQE実施によって得られた現状での知見ではないかと思われます。

つーことで、まあ質問している方の聞き方が赤点再履修レベルで、リスクの蓄積防云々を質問するのではなくてQQEの副作用方面を聞いて頂きたい所なんですけどね。

でまあ答え。

『【答】G20では、先進国で非伝統的な金融緩和政策が続いており、金融市場においてリスク・プレミアムが縮小し、ボラティリティも低下しているため、潜在的に過度のリスクが蓄積する可能性について、注意してみていく必要があるとの議論が行われました。』

はあそうですか。

『一方、わが国については、日本銀行の「金融システムレポート」や「展望レポート」などにおいて、金融面の不均衡について定期的に点検していますが、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていません。』

『日本銀行としては、今後も2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、「量的・質的金融緩和」を着実に実施していく方針に変わりはありません。』

まあ観察されたら時既にお寿司なんですけどね。

『長期金利については、金融政策決定会合の後の記者会見でよく質問を受けており、その時にお答えしている通りです。現在、「量的・質的金融緩和」のもとで、毎月、大量の長期国債の購入を続けており、ターム・プレミアムを圧縮し、長期金利を低位に安定させる一方で、物価上昇が続き、特に期待物価上昇率が上がっていく中で、実質金利が低下してきています。それが、経済の回復を助けており、当面、こういった政策を続けていくということに尽きると思います。』

ということでして、金利が低下しているのは政策効果というロジックを全く崩していませんが、これ長期じゃなくて短期の方についてもコメント頂きたい所ですが、まあ特に問題なしで政策効果位の説明を続けている所がオソロシスでありまして、まあこの調子だと短期市場の明日が債券市場になったとしても知らんぷりをしてきそうな雰囲気がプンプン漂っている事がオソロシヤとしか申し上げようがありません。

いやね、短国のマイナス金利が発生してしかも見事に継続中という状態になっているのだから、ちったあMB積み上げの技術的困難性とか、市場機能の破壊状態とか、そういう副作用方面に関する考察をする時期にでもなっているんじゃないですかねえとは思ったのですが、まあ物の見事にその手の雰囲気を出してこないというのはどういう事なんでしょうかねえと。

まー2%目標どころか足元で物価上昇率が+1.3%近辺で推移していますし、まだQQEの2年間にも達していない中で「オペレーションの限界」とか言い出すとその時点で負けになってしまうから突っ張らざるを得ないというのは判るので、何ぼ何でも来年になった時に(どうせ継続でしょうから)オペレーションをどうするのかとか考えているとは思うのですが、黒田さんの場合は芝居でそういう話をしているというよりは素で話をしているのではないかという恐れがあって、本当に「実質金利が下がれば無問題」とか言いながら「短国市場が壊れたって別に実体経済に影響がある訳無し」とか「長期国債を買って金利が下がれば実質金利が下がるから結構なこと」とか副作用丸無視で突っ込んで来そうな所が何ともな訳で。


『【問】声明文では、金融政策について、「デフレ圧力に適時に対処すべき」とあります。これによって、日本の金融政策はどのような影響を受けるのか、改めてお聞かせ下さい』

まーたクレクレか!!!

『【答】新興国では、インフレ率が高くて、一部の国ではインフレの抑制に取り組んでいる一方で、先進国では、インフレではなく、例えば、ユーロ圏のように、ディスインフレ傾向が続き、物価上昇率が極めて低い──確か0.4%程度まで落ちてきている──といった国もあります。そこで、先進国については、「引き続き経済回復を支えており、中央銀行のマンデートと整合性を保ちつつ、必要な場面ではデフレ圧力に適時に対処すべきである」と、当然のことを言っているわけです。』

ここでしらっと「当然のこと」と言っているのが味わいがあって、消費税再増税に対しての議論を牽制しているのがアレですが、まあしかし消費税に関しては黒田さん踏み込み過ぎのように見えますけどねえ。その辺りも日銀っぽくない雰囲気を出していて、だからこそ従来の日銀のようにちゃんとフィージビリティとか考えてるのかという辺りが大丈夫かと思わせてくれる人なのですがまあそれは兎も角としまして。

『日本の場合には、「量的・質的金融緩和」を導入した昨年4 月の段階で、消費者物価上昇率がマイナス0.5%程度だったと思いますが、それがプラスになり、最近では1%台前半で推移しています。2%の「物価安定の目標」との関係ではまだ途半ばですが、物価上昇率がマイナスであるというデフレの状況からは脱しつつあるということだと思います。』

道半ばとか言い出してからそろそろ9か月位経過しているのですが・・・・・・・・


○まあどうでも良いですが岩田一政さんの記事

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NC7BVM6JTSE801.html
岩田元日銀副総裁:円安は「自国窮乏化」−08年と類似
更新日時: 2014/09/22 11:55 JST

まあブルームバーグはこの記事を流す時にヘッドラインに「岩田氏」とか「IWATA」だけで流すのは誤解を招くので(師匠が言う話ではないのだが遂に師匠が以下自主規制かと思ってしまうので心臓に良くない)もうちょっと考えて名前をちゃんと入れて欲しいものです。

『9月22日(ブルームバーグ):元日本銀行副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長は、今の円安は行き過ぎとの見方を示した上で、現在の情勢は、円安が「自国窮乏化」につながり、景気後退に至った2008年前半に似ていると警鐘を鳴らした。』(上記URLより、以下同様)

はあそうですかという所でして、ところでおじちゃん2008年3月まで日銀副総裁やってらしてませんでしたっけとか思うのですが、一応過去のアタクシの駄文を見ると交易条件の悪化に関しては何度か指摘をしていて、物価はめでたく上がっているものの、だからそれでウッシッシという訳にも逝かないみたいな説明をしているのはしているんだが、そうだったら量的緩和政策の解除の後にもっと利上げしておけば良かったんじゃないですかねえと思うのでして・・・・・・・・・・・・

『岩田氏は「円安が進み、エネルギー価格も上昇ないし高止まりすると、交易条件は大幅に悪化する。企業の仕入れ価格は大きく上がるが販売価格はあまり上がらず、利潤が圧縮され賃金も抑制される」と指摘。その上で「実質所得の国外流出が輸出や生産、所得の増加といった効果を上回ると、経済全体として消費者の効用の水準は低下する」という。』

2008年2月の講演で2007年の成長下振れの要因として交易条件の悪化と実質賃金の低下と米国サブプライム問題を挙げていますが、特に交易条件の悪化と実質賃金の低下に関して結構しつこく説明していたという事案があることは確認しました。

『岩田氏は「相対的に拡張的な金融政策と原油高騰の組み合わせで、08年前半は言ってみれば自国窮乏化の状態にあった。交易条件の悪化は、消費者からすれば産油国から増税されるのと同じだ。しかも、今年8月の景気動向指数の結果次第で、テクニカルな意味で景気後退と認定される可能性がある点も、08年前半との類似点の1つだ」という。その上で、「今は幸い、地政学リスクがあるにもかかわらず、原油価格は落ち着いているので多少は救いだが、水準としては高いので、自国窮乏化のリスクが徐々に表れている」という。』

原発問題はサラッと触れないのが大人の対応という奴ですねわかりますという所ですが、確かにまあ米国のサブプライム問題があったから中々利上げという話にはなりにくい状況であったのは判るのですが、もし円安もあって交易条件が悪化して景気後退につながったというのであれば、実は当時の適切な金融政策はもうちょっと緩和度合いを下げなければいけませんでしたという話にはならんのかなあと、そっちの考察をして頂きたいものではあります。ただどう見てもそういう状況下での緩和縮小って非常に難しいんでしょうけれども(為替の事をそんなに盛大にキニシナイで済む米国は除く)・・・・・・・・


○イエレン議長会見ネタである:フォワードガイダンス文言の実質形骸化みたいな部分は面白い

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf

会見では「従来のスタンスと変わりません」を盛大に連呼していた訳でして、しかもドットの話をするときに2015年末の数値が何となく上昇した話には触れないで、「2016年末という経済がほぼ中立の状態になった時でも金利水準が3%と中立金利水準よりも低い状態になるので金融政策は長期間に渡って緩和的です」(キリッ)と説明する辺りが非常にこう気を使ったというか良く練っている冒頭説明でございましたというのは月曜に申し上げた通りです。

ついでに話を脱線させますと、2016年末が3%だとするとやはり初回の利上げって来年の9月のFOMCで、そこで25-50に上げてから毎回のFOMCで引き上げを続ける、という形にした方が金融市場にはストレスを却ってかけないと思う次第で、次回上げるのか上げないのか判らんという状態で利上げサイクルをやると一々市場が思惑で大きく振れるので実践的では無い気がします。

ということでQ&Aコーナーである(がどうせ今日も一部になります)。


・フォワードガイダンスに関する質問が一発目である

『STEVE LIESMAN. Thank you. Chair Yellen, there was some debate going into this meeting about the phrase “considerable time,” whether it would remain in the statement.』

まあ当然だが最初の質問はconsiderable time文言である。

『I want to know if you could me tell just a couple things about it. First, was it debated at the FOMC as whether or not it should be included? And I'm sorry, we've been over this before, but what does it mean time-wise, and that's just two questions. I have just a couple more here. Is the statement a form of forward guidance? And finally, how do you square this idea of a date when you and others on the FOMC have continuously said that you're data dependent to the point where, if the data were to turn, would it not necessarily be a considerable time until you raise rates? Thank you.』

2つの質問とか最初に言いつつ更に質問をしているのはご愛嬌ですが、まあ達観してしまえば全部金利フォワードガイダンスに関する質問ではあります。

『CHAIR YELLEN. So, of course, the Committee discussed its forward guidance today, and it discusses what the appropriate forward guidance is at every meeting.』

今回のみならず毎回議論していますとな。

『This is part of our assessment of economic conditions and the appropriate stance of monetary policy. In terms of what the term “considerable time” means, the Committee decided that, based on its assessment of economic conditions, that characterization remains appropriate, and it was comfortable with it.』

ガイダンス文言は経済の状況の分析によってこうなっています、という話をしている辺りがしらっと味わいがある所で、つまりは経済の状況が変わればガイダンスで示す文言は変化するのでという話をしており、いつの間にやらフォワードガイダンス文言をコミットメントじゃない状態にしているのに成功しているのがFRBのお上手な所ですな。いやまあ元々からコミットメントでは無いとは言っていましたが、最初のうちはこのフォワードガイダンス文言を使って「先行きの金利見通しに影響を与えて長期金利を低下させる」とか言ってまして、それってコミットメントもどきですよねという話でしたので、まあこの辺はお上手というところではございます。

『I think if you look, for example, at the projections of individual participants that are revealed in the SEP, well, that's the view of each participant in, again, I'd emphasize, not a Committee collective view. There is relatively little change in the assessment of the outlook by participants between this meeting and the assessment in June. So the outlook is little changed, a slight decline in the anticipated path of the unemployment rate, and a very slight uptick in the inflation projection, but really quite minimal. So, the outlook hasn't changed that much from June and the Committee felt comfortable with this characterization.』

SEPの使い方もある意味お上手ですが、まあこれはやや諸刃の剣的な部分はあると思いますけど、SEPでのドットでは無くて経済物価見通しの部分があまり変化ないのだからフォワードガイダンス文言も変化なしでカンファタブルであるとか綺麗に整合性を取って説明してくるのがイエレンクオリティかなとは思います。

『Now, you said, "Isn't this calendar-based guidance?" I want to emphasize that there is no mechanical interpretation of what the term "considerable time" means.』

・・・・・・・・・・・ここはワロタという所ですが、この前の「半年」はどうしましたねん???????

『And, as I've said repeatedly, the decisions that the Committee makes about what is the appropriate time to begin to raise its target for the federal funds rate will be data dependent.』

data dependentキタコレ。

『And in my opening comments just now, I again emphasized something I've said previously, which is that if the pace of progress in achieving our goals were to quicken, if it were to accelerate, it's likely that the Committee would begin raising its target for the federal funds rate sooner than is now anticipated and might raise--might then raise the federal funds rate at a faster pace. And the opposite is also true, if the projection were to change. So there is no fixed mechanical interpretation of a time period.』

あくまでも今後の状況次第という話をしていまして、つまり今のガイダンス文言はあくまでも「今の時点での見通し」という話でありまして、それだったら別にSEP出しているからそれでエエヤンという感じでもあるのですが、まあ先行きの判断を縛らないようにガイダンス文言の実質的な形骸化を図っているというのは把握した。

『I think it would not be accurate to describe the Committee's guidance about the timing of the federal funds rate and when it will move above zero as being calendar-based.』

だったらフォワードガイダンス要らないような気もしますがねえ(ゲス顔)。

『The Committee has started with a broad general statement of what determines how long it will keep the federal funds rate target at zero.』

と思ったらしらっと「has started with a broad general statement」だとよ。

『It is said that it will be looking at the actual and projected pace at which the gaps between our employment and inflation and our goals for those variables are closing. And then, what the Committee does at each meeting is, after saying that the assessment will take into account many different indicators and take into account inflation pressures and other things, it goes on to provide at that meeting, its assessment of the implications of its view of the data at that time. And that assessment really hasn't changed over the last several meetings. The Committee, based on its assessment at each meeting, has felt comfortable saying that, based on its assessment of those factors, it considers that it will be likely appropriate to maintain the current target range for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if inflation remains below the 2 percent objective.』

『So I wouldn't describe that as--I know “considerable time” sounds like it's a calendar concept, but it is highly conditional and it's linked to the Committee's assessment of the economy.』

considerable timeというのはcalendar conceptに聞こえるというのは理解していますが、実はそうではなくあくまでも経済の見通しに沿ってマンデートに整合的な金融政策を実施します、という話をしているのが中々面白いというか、これ一つの質問に対する答えで丸々1ページ以上使って説明している辺りも味わいがありまして、まあ足元の認識は「物価はそんなに上に跳ねない」「労働市場にスラックが残っている」という話になっているので、そうは言っても正常化プロセスの着手は直ぐに行われないですし、「金融危機以降の問題が依然として残っている」という認識になっているから正常化プロセスの時間もゆっくりという話になる訳でして、逆に特に労働市場のスラックの部分に対する見方が変わってくると思いっきり話が変わって来るという話でもあり、まさしくdata-dependentという話になるんでしょうなあと。


・ではデータがどうなると変化するんですかという質問が次に飛ぶ

『HOWARD SCHNEIDER. Howard Schneider with Reuters.』

この人は初顔かな?

『Thank you. So if you would help us--I mean square the circle a little bit, because having kept the guidance the same, having referred to significant underutilization of labor, having actually pushed GDP projections down a little bit, yet the rate path gets steeper and seems to be consolidating higher. So if it's data dependent, what accounts for the faster projections on rate increases if the data aren't moving in that direction?』

イエレンさんのお答え。

『CHAIR YELLEN. Well, the growth projections for 2014 are down a little bit, but the unemployment path is also marginally lower. So, while the projected path of the labor market, unemployment, and other measures of the labor market, of course is partly dependent on the growth outlook. It isn't totally dependent on the growth outlook. And the Committee assesses, the labor market is continuing to improve, and you see a small reduction in the path of the unemployment this year, and then over the rest of the projection period.』

判ったような判らんような説明ですな。

『So, if you ask me--you asked me why is the projected funds rate path moved up, well, you know, each participant knows the reason they wrote down what they did. But as a guess, I would hazard--first, I would say there is relatively little upward movement in the path, and I would view it as broadly in line with what one would expect with a very small downward reduction in the path for unemployment and a very slight upward change in the projection for inflation. So, most participants, in deciding on the path, I think, look at, as our guidance says, how large is the gap between performance at the labor market and that associated with our maximum employment objective, how large is the gap between inflation and our 2 percent objective, how fast will those gaps change.』

今後の見通し変化によってどうのこうの的な説明をしないで足元のSEPでの「今の見通しは変わらない」という話をしている辺りがほほうという感じで、さっきのフォワードガイダンスの形骸化的な話をしながらでも見通しは同じですもんねという話に持ち込む辺りがバランス考えているなあというか、まあイエレンさんの基本がハトなんでしょうねえという所で。

『And you see in the projections very modest reductions in the size of those gaps and modest--very small change of a slightly faster pace at which those gaps would change. I would describe the change in the projections, both for the economy and the path of rates, as quite modest. But the fact that they move does illustrate the data dependence principle that I think is really so important for market participants to keep in mind that what we do will depend on how the data unfolds. There is uncertainty about that. And as expectations and the actual performance of the economy change, you should expect to see movements in the dots. I think it's also notable that the further you go out in the projection period, the wider the set of dots.』

『You see a big range out in 2017 and that reflects, in part, different forecast by different members of the Committee about how rapid progress would be. What you don't see in the dot--so-called dot plot, is also the uncertainty that each individual, each participant, sees around their
own projection.』

で金利見通しのドットの話になってくる訳ですが、今回割とこのドットについて明確に説明してやがるなあと思うのですが、2017年のドットがご覧のように凄まじく幅広いのに見られますように、ドットに関して過大な意味合いを持たせて解釈するよりも経済見通しの数値の方が重要的な言い方をしているのが中々。

『So, things will depend on how the economy evolves. That will change over time and there's a good deal of uncertainty associated with it.』

ということで、あくまでも先行きは先行きという話をしていますなという所に加えまして、ご覧になって判ると思いますが、最初の2つの質疑でどちらも1ページ以上使って答える攻撃というのもこれまた味わいがあるというものです。

#以下はまた後日に続くということで



2014/09/22

お題「短期市場メモ&FOMC会見の冒頭コメントを鑑賞」

なんか最近モーサテのゲストの人数が激減してるんじゃないかというような感じで同じようなメンバーになっている気がするんだが・・・・・・・・・

#あと昨日の夜ですのでまあ今朝とあんまり変わらないのですが、9月月報と8月議事要旨のネタを投下しそこなっていた分がありますので投下しまして、昨日の日付でこの駄文の下の方にございますので長くなってすいません

○毎度の短期関連雑談メモ

・短国買入に味わいが

短国買入が2500だの5000だの申し上げていましたが1年短国のオペ打ち込み玉がそこそこあったのでオペ打ち込みですかそうですか。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140919.htm
国庫短期証券買入 17,500 2014年9月24日
国債買入(残存期間1年以下) 1,100 2014年9月24日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年9月24日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年9月24日

でまあ17500億円のオファーでほーという所ではあるのですが、まあ金曜の場合はオペが幾らでオファーされても「まあそれだけ札があるんでしょうな」という所で、最早入る札から逆算して短国買入が実施されるとか、それを金融調節というのかとしか申し上げようがない状態ですな。なおベンダーとかに出てこないからネタにしにくいネタとしては各種オペに関しては一社当たりの応札限度額というのがあって(当たり前だがオペ先には通知されているので市場(のオペ先とマニア)には(概ね)周知されています)、こいつは基本的に一定のオペもあるのですが、特に短期系についてはその時の状況によって必ずしも一定していなくて、この推移にも味わいがありますな。

なお結果。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140919.htm
国庫短期証券買入 24,609 17,501 0.002 0.003 97.8
国債買入(残存期間1年以下) 3,854 1,103 0.002 0.002 97.0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,295 3,005 -0.002 -0.001 35.1
国債買入(残存期間3年超5年以下) 6,260 2,003 0.002 0.002 30.3

前週は2500億円の買入に対して5447億円の応札でしたが、先週は一転して24609億円の応札とか中々味わいがありますが、どんだけ新発1年を日銀に打ち込む気満々で入札してるのよという所でございまして、何ちゅうか日銀がセカンダリーで市場にあるものをマイナス金利だろうと買う攻撃に対して思いっきりぶつけに逝っているの図とか、まあ今に始まった訳ではないですが露骨な展開という所で、資産買入でMB拡大で実質金利引き下げという政策の趣旨に対して鑑みると味わいが深すぎますなという所ですが、結局単に日銀の買入が意味の無いボラを与えているだけのような気が。


・政府預金(国内指定預金)の金利とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140919c.htm/
「対政府取引に関する基本要領」等の一部改正に関する件

『日本銀行は、政策委員会において、最近の金融市場の動向を踏まえ、対政府取引の適切な運営を確保する観点から、下記1.および2.の諸規程の一部を別紙1および2のとおり改正することを決定しましたので、お知らせします。』

ということで。

http://www.boj.or.jp/note_tfjgs/trans/yoryo12.htm/
対政府取引に関する基本要領

今回の変更部分は
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/data/rel140919c.pdf

にありますけれども、政府当座預金勘定がゼロ金利なので国内指定預金の適用金利をマイナスにすると制度の意味がなくなるので下限金利を設定したという事ですが、下限をゼロにしているのはまあ当然ちゃあ当然ですがプラスじゃないのねという所で。でもって何らかの都合によってFBの引受を行う場合ですけど・・・・・・・・・

『3.政府短期証券の引受けおよび償還』

『(1) 政府短期証券の公募入札において募集残額等が生じた場合および国庫に予期せざる資金需要が生じた場合には、例外的に、所要の政府短期証券の引受けを行うものとする。この場合の引受け利回りは、引受け対象とする政府短期証券の引受け日が公募入札方式による当該政府短期証券の発行日である場合には、当該公募入札における募入平均利回りとし、その他の場合には、銘柄ごとの流通市場における実勢相場等を勘案した利回りとする。』

『6.政府短期証券の引受け利回りの下限等』から。

『(1) 3.(1)の規定による引受け利回りが0%を下回る場合には、引受け利回りは0%とし、3.(2)の規定により繰上償還を行う場合において、3.(4)に定める償還価格が額面を超えるときは、償還価格は額面とする。

(2) 5.(1)ハ、の規定により買入れを行う場合において、5.(2)に定める売買価格が額面を超えるときは、売買価格は額面とする。』

ということでして、預金に対しても引受に対しても下限金利をゼロに設定していて、まあそれはそれで話としてはそうだろうなあとは思うのですけれども、翻って考えますと、ECBのマイナス金利のように最初から預金ファシリティにマイナスチャージをするという明確な意図を持ってマイナス金利を実施している訳ではなく、単に資産買入政策の実施をしているうちにマイナス金利になってしまいましたよテペヘロという状態になっているという事を示しているとも言える今回の措置でございまして、結局の所日銀のマイナス金利買入によって日銀のオペレーションや当座預金制度の外側の部分で名目ゼロ金利制約によるコストが発生しているという事態になっているという形ですな。まあ日銀が政策的な意味で明確にマイナス金利にするという意図を持ってマイナス金利の資産買入をしている訳ではない、という事でしょうが、政策的な意図がないだけにタチが悪いというものですな、うんうん。


○イエレン議長の会見であるがまずは冒頭部分をば

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20140917.pdf

質疑に入る前の部分を鑑賞してみますね。

・「スタンスは変わっていない」をやたら強調するの巻

『CHAIR YELLEN. Good afternoon. The Federal Open Market Committee concluded its meeting earlier today and, as usual, released its monetary policy statement. The Committee also released a document describing the approach the Committee intends to take when, at some point in the future, it becomes appropriate to begin normalizing the stance of policy.』

とまあ今回こんなん出しましたという話ですけど・・・・・・

『Let me underscore that our release of this information is not meant to convey any change in the stance of policy.』

ということで、今回出口戦略云々の話をしましたがこれは何らかのスタンス変更を意味するものではありません(キリッ)って奴ですが、この説明が今回の冒頭部分でやたらめったらしつこく強調されているのが今回の冒頭部分の特徴に見えます。


・物価の見方に関しては「長期間の低下状態のリスクが減る」と示す

でまあ景気に関しての話が始まるのですが、労働市場は更に改善しているものの依然としてスラックがありますよという話と、基調として経済は強くて民間需要が強いですという説明がありまして、まあその辺りは順当かなという所ですけれども、物価に関する部分では小見出しのような説明が。

『Inflation has been running below the Committee’s 2 percent objective, but with longer-term inflation expectations appearing to be well anchored and the economic recovery continuing, the Committee expects inflation to move gradually back toward its objective. Moreover, inflation has firmed some since earlier in the year, and the Committee believes that the likelihood of inflation running persistently below 2 percent has diminished.』

キタコレという所で、物価に関しては声明文の方では足元の物価上昇改善が止まっている件を示唆する内容になっていましたが、冒頭説明の方では別に物価に関してはハトという感じではなくて改善を強調も別に改善ヒャッハーという程でも無いという感じですな。

『As is always the case, the Committee will continue to assess incoming data carefully to ensure that policy is consistent with attaining the FOMC’s longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』

ということであくまでもデータを慎重に点検するという話をしています。


・フォワードガイダンスに関して

その次がSEPの説明ですが、最初の説明では金利のドットではなくて(それはこれからネタにするフォワードガイダンスの後に出てくる)経済物価見通しの朗読みたいなもんなので割愛しまして、Taperingに関しても従来通りの説明で、次回にTapering終了しますよああそれも状況次第ですからねという話をしています。で、Tapering終了しても残高効果があるから緩和的な環境で云々という毎度の説明をしております。

でもってその次がフォワードガイダンス。

『Regarding interest rates, the Committee reaffirmed its forward guidance that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee’s 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations remain well anchored.』

ということでご案内の通りですが、フォワードガイダンスは「reaffirmed」されています。

『This judgment is based on the Committee’s assessment of realized and expected progress toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation?an assessment that is based on a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments.』

うむ。

『Further, once we begin to remove policy accommodation, it is the Committee’s current assessment that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』

で、利上げに着手しても利上げプロセスは緩やかなものになります、という説明トーンも従来の説明と変えていませんでして、今回の冒頭説明における金融政策スタンスに関する部分では「従来と同じ」というのをやたらと強調しているなあという印象ですな。


・ガイダンスとドットについて

『This guidance is consistent with the paths for appropriate policy as reported in the participants’ projections.』

ということで・・・・・・・・・・・

『As I will explain in a moment, the FOMC now anticipates that it will continue to establish a target range, rather than a single point, for the federal funds rate when normalization begins, and the dots in the chart I’ve distributed now show, for each participant, the midpoint of this target range.』

利上げ着手後しばらくはFF金利ターゲットについてレンジで出すのでSEPでの表示もそれを反映してレンジの中心という形になりましたという事で。

『Notably, although the central tendency of the unemployment rate in late 2016 is slightly below its estimated longer-run value, and the central tendency for inflation is close to our 2 percent objective, the median projection for the federal funds rate at the end of 2016, at 2.9 percent, remains nearly a percentage point below the longer-run value of 3-3/4 percent or so projected by most participants.』

ここが実に説明の中で味わいがある所で、2015年末の金利がどうのこうのという話をしないで、2016年末という経済見通し的に中立水準まで改善した場合の金利水準の説明をしているのが実に味わいが深い訳ですよ。

つまり、2015年末の話をするとまたぞろ利上げタイミングだの何だのという話になってきて市場がヒャッハーとなる訳ですが、より先の話をして「経済が中立に戻った時でもFF誘導目標金利は中立金利と見られる水準よりも低い水準に留まる」という話をしてタカ色が出ないようにするという工夫が良く出た説明であると思うのですよね。

ちなみに、2016年末が大体3%だとしますと、年間8回のFOMCで25bpづつ利上げをすると考えますと、2015年末が100bp、2016年末が300bpでして、そうなると実は来年9月に利上げを着手してFOMC毎に25bpのメジャードペースで丁度良さそうな気がしますがどうでしょうかねえ。

『Although FOMC participants provide a number of explanations for the federal funds rate running below its longer-run normal level at that time, many cite the residual effects of the financial crisis, which, although slowly diminishing, are likely to continue to restrain household spending, constrain credit availability, and depress expectations for future growth in output and incomes. As these factors dissipate further, most participants expect the federal funds rate to move close to its longer-run normal level by the end of 2017.』

では経済が中立水準なのに何で2016年末の政策金利が中立より下なのか(=緩和し過ぎじゃないかというツッコミに対してのお答え)という話については「経済の抑制要因となる金融危機以来の影響がまだ残っているから」という説明をしているのはちょっと丁寧になった感があります。


・説明の中で更に「スタンスは従来通り」を強調

その次にしつこくこの説明が。

『Let me reiterate, however, that the Committee’s expectations for the path of the federal funds rate are contingent on the economic outlook. If the economy proves to be stronger than anticipated by the Committee, resulting in a more rapid convergence of employment and inflation to the FOMC’s objectives, then increases in the federal funds rate are likely to occur sooner and to be more rapid than currently envisaged. Conversely, if economic performance disappoints, increases in the federal funds rate are likely to take place later and to be more gradual.』

まあここも毎度説明しているのですが、この「state-contingent」と「data-dependent」の話をここに入れてくるというところで、とにかくスタンスに変化なしというのを強調していますな。


・正常化の説明が始まります

以下金融政策の正常化の説明である。

『Let me now turn to our statement on “Policy Normalization Principles and Plans.” This statement is intended to provide information to the public about the eventual normalization process; it does not signal a change in the current or future stance of monetary policy. As is always the case in setting policy, the FOMC will determine the timing and pace of policy normalization so as to promote its statutory mandate of maximum employment and price stability.』

ふむ。

『Since the crisis, the Federal Reserve has been providing extraordinary accommodation using nontraditional tools of monetary policy. The FOMC’s intention has always been to return to a more traditional approach, and throughout this period, the Committee has been preparing for the normalization process. In June 2011 the Committee set out some broad principles and some more specific tactics for how it envisioned the normalization process to take place. In June 2013 we noted that conditions had changed significantly in ways not anticipated in June of 2011, including the size and composition of the Fed’s balance sheet, and that some revision of those earlier plans was appropriate. The document released today reflects our updated plans, which readers of our minutes will know, have been under discussion for the last few FOMC meetings. The new approach retains many broad objectives and principles from the original, but also has some new elements.』

延々と説明していますが、要は以前に出した正常化のプリンシパルに対してFEDのバランスシートの状況も変わったし、手段に対する研究も進んだしという事で書き換えましたけど、「which readers of our minutes will know」ってありますように、従来からの議論として議事要旨で示されていた内容を纏めたものになっていますというのは先日申し上げた通りです。


・金利誘導が重要だが偶にぶれることもありますとな

『As was the case before the crisis, the Committee intends to adjust the stance of monetary policy during normalization primarily through actions that influence the level of the federal funds rate and other short-term interest rates, not through active management of the balance sheet. The federal funds rate will serve as the key rate to communicate the stance of policy.』

FF誘導金利が金融政策スタンスを示すようにしていきますとな。

『To begin normalization, the Committee will raise its target range for the federal funds rate. The Committee expects that the effective federal funds rate may vary within the target range, and could even move outside of that range on occasion, but such movements should have no material effect on financial conditions or the broader economy.』

とサラッといってまして、もう最初からコントロールが難しい時のヘッジをしている感じなのがワロエルのですけれども、多少のブレは金融環境や経済に大きな影響を与えません(キリッ)とかいってますが、それは「ちゃんとコントロールできている」という前提によるものなのではないでしょうかねえ(ニヤニヤ)。


・基本はIOERでの制御をするそうな

『The primary tool for moving the federal funds rate into the target range will be the rate of interest paid on excess reserves (or IOER).』

ほほう。

『The Committee expects that the federal funds rate will trade below the IOER rate while reserves are so plentiful, as is the case at present. The Committee also intends to use an overnight reverse repurchase agreement facility, which, by transacting with a broad set of counterparties, will help ensure that the federal funds rate remains in the target range. I would like to emphasize that the overnight RRP facility will only be used to the extent necessary and will be phased out when no longer needed to help control the federal funds rate. In addition, the Committee will adjust the particular settings of these tools as needed, and could deploy other supplementary tools as well, to ensure that we achieve our desired stance of policy.』

でまあ超過準備が死ぬほどある内は短期市場金利が超過準備付利金利(IOER)よりも低くなるので、リバースレポファシリティ(RRP)を使って準備預金適用先以外から幅広く流動性を吸収する事によって金利をコントロールするという話なのですが、ここでほほーというのは思いっきり「RRPは補完的措置」と言い切っている事でして、それで金利コントロールできるのかというと多分無理で、(そもそもFFが25bpから下限ゼロのレンジになったのはIOERでの金利下限がワークしなくなったからなのだから)まあ最終的には泣きながらRRPを連発する事になるんじゃないですかねえ。

基本的に不胎化吸収を行う際にMMFとかから吸収すると短期市場の民間資金調達に対してクラウディングアウトみたいな現象が起きるリスクがあるからやりたくない、というのは分かりますけれども、実際にそのように上手く行くかはかなーり怪しいと思う。


・バランスシートについての説明はまあ順当

『Turning now to our plans regarding the Fed’s balance sheet, the Committee intends to reduce securities holdings in a gradual and predictable manner primarily by ceasing to reinvest repayments of principal on securities held in the System Open Market Account.』

そらまあいずれ減らすわな。

『Regarding the timing for ceasing reinvestments, the Committee now expects this to occur after the initial increase in the target range for the federal funds rate. The Committee currently does not anticipate selling agency mortgage-backed securities as part of the normalization process, although limited sales might be warranted in the longer run to reduce or eliminate residual holdings; the timing and pace of such sales would be communicated to the public in advance.』

基本的に今のところは売却の予定はないとはいってますが、「now expects」だの「currently does not anticipate selling」だのということで、あくまでもまあ今の話ではありまして、実際に正常化していく中で短期の実効金利がアガランチ会長という事になった場合にはさてどうなるんでしょうねという所です。

まあストック効果については、もしそれがあるのであれば、その分だけ金融市場に効果があるという事ですけれども、金融正常化に置いてはそれは効果では無くて金融市場の価格形成をゆがめる物になるという事でして、もしFEDのバランスシート上のMBS残高が顕著な効果を与えるのであれば、MBSの価格形成を歪める(MBSを割高にする→不動産バブル発生装置になるリスク)訳ですし、長期国債残高が顕著な効果を与えるのであれば、長期国債の価格形成をゆがめる(長期国債を割高にする→イールドカーブを無駄にフラットさせる)訳ですし、まあどうなるのやらというのはFEDが身を切って実践しますけど、良く良く考えたら金利市場という意味では日銀の買入の方が余程凶悪なのであって、そちらの方も気になりますなと話が逸れましたすいませんすいません。

『It is the Committee’s intention that the Federal Reserve will, in the longer run, hold no more securities than necessary to implement monetary policy efficiently and effectively, and that these securities will primarily consist of Treasury securities.』

長期的には必要最低限の国債保有だけにしますよというのも従来通り。


・で最後にまたまたこれ

『As I stated earlier, today’s release of the Committee’s updated normalization plans is in no way intended to signal a change in the stance of monetary policy.』

しつこく「スタンスの変更ではありません」である。

『Rather, it is meant simply to provide information about how the Committee envisions the normalization process in light of the changes in economic and financial circumstances that have occurred since we put forth our original plans more than three years ago. That said, conditions could change further and we will learn about our tools during normalization; the Committee has agreed that it is prepared to make additional adjustments to its normalization plans if warranted by economic and financial developments.』

正常化プロセスもデータ次第で状況に応じて判断するとここも強調という中々気を使っていますな。

『Thank you. Let me stop there. I’ll be happy to take your questions.』

質疑応答は後日。


2014/09/21

お題「休日虫干し(というか積み残し)ネタシリーズ」

朝でも何でも無いのですがこの調子だと完全に積み残しそうなネタを投下しておきます。

○9月金融経済月報を前回と比較の巻

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1409.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1408.pdf(前回)

てな訳ですいませんすいません。

・現状判断部分は(当たり前ですが)声明文と同様で総括同じで住宅と鉱工業下げ

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

うむ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

うむ。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)

『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(前回)

ということで、住宅投資が下がっているのと、生産については主文が入れ替わっているのでこれまた下げというのは声明文をネタにした時に投下したとおりです。


・先行き見通しは前回からの推移で考えた場合に帳尻が色々見えてワロタ

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

へえへえそうだっか。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(前回)

ほうほう。

『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

とまあここまで同じで・・・・・・・

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。住宅投資は、当面、駆け込み需要の反動の影響が残るものの、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(今回)

『雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、個人消費や住宅投資は引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。』(前回)

まあ大体こうやって表現が長くなる時というのは碌な事が無い訳ですが、住宅投資の先行き見通しは「当面」反動の影響が残るということですから、短期的な先行き判断を下げておりますな。といいますか、実際には8月月報の時に輸出の判断を下げる代わりに「消費税増税の反動が和らぐ」という形で個人消費と住宅投資の判断を上げていまして、この時に上げてはみたもののやっぱり住宅で反動が和らぐという見方をしたのが時期尚早だったというのがまず第一の帳尻なのですが、生産の所の表現が中々いい感じで味わいを出していてクソワロタという所です。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面弱めの動きを残しつつも、緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで、これまた生産の所も「当面弱めの動きを残しつつも」と苦しいヘッジクローズが入ってクソワロタという感じなのですが、何故クソワロタかと申しますと、実際問題としては住宅の現状と先行き見通しの短期的な部分がちょっと下がっただけで生産の見通しにヘッジクローズ入りますかねえという風に考えますと、まあ他の部分の文言を変えてはいないものの、これって要するに輸出と設備の判断を下げた前回の月報では前述のように消費と住宅投資の所を生産の見通しを引き上げる事によって帳尻を合わせて、その結果生産の見通し文言に変化が無かったのですけれども、前回帳尻の為に先走って引き上げた住宅投資の判断を下げざるを得なくなったことから、生産も結局帳尻のツケが回ってきたという形になっているのですな。

てなところがまあ味わいというか侘び寂びの世界であります。


・ヘッジクローズ、物価に関しては同様

以下は基本同内容です。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

うむ。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみと、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

予想物価上昇率は精々横ばいとかのような気がするんだが、どうも日銀に言わせるとフィリップスカーブは上にシフトしてきているという話らしいので、予想物価上昇率も上昇しているという話になるみたいですよ。何だかなあという感じはしますが。

以下金融環境に関しては引用割愛します。特段のインプリケーションはありません。


○8月会合議事要旨から

市場のヒャッハーと師匠の落語などで後回しになりましたが今さらですがネタ投下。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140808.pdf

・前向きの循環メカニズムは確りと働いているとな

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『1.経済情勢』ですが、海外はまあ普通の事しか書いていないので国内から。

『わが国の景気について、委員は、最近の輸出や生産には弱めの動きがみられるものの、家計・企業の両部門において、景気の前向きの循環メカニズムがしっかりと働いていることから、総括判断としては、緩やかな回復を続けているとの評価を維持することが適当であるとの見方で一致した。』

家計と企業の両部門で前向きの循環メカニズムがしっかりと働いているそうですわよ奥様!

『景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』

へえへえそうだっか。


・輸出についての議論部分は日銀文学というか何というかが炸裂している点に注目

『輸出について、委員は、このところ弱めの動きとなっているとの見方で一致した。委員は、弱めの動きの背景として、新興国経済のもたつきや米国の需要が1 〜 3 月期に落ち込んだことがラグを伴って春先まで日本の輸出を下押ししたことなど循環的要因の影響を指摘した。同時にこれらの委員は、製造業の海外生産移管といった構造的要因も相応に影響しているとの見方を示した。』

あくまでも循環要因がメインとな、と思わせますが次の所と合わせてみると味わいがあります。

『先行きの輸出については、委員は、先進国を中心に海外経済の成長率が高まっていくもとで、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。このうち複数の委員は、海外生産移管などに起因する構造的な下押し要因の影響も、先行き徐々に減衰していく可能性が高いと述べた。別の何人かの委員は、構造的な要因の影響を重視し、海外経済に対するわが国の輸出の感応度は低下しているとの認識を示した上で、輸出は回復に向かうものの、そのペースは緩やかなものにとどまるとの見方を示した。』

なんかしらっと書いてありますが、先行きの所で思いっきり構造要因の話が出ていまして、というかそもそも執行部以外の審議委員の中ではこの「輸出全然伸びないじゃん」という指摘を以前からしている方々が相応においでな訳でして、実際問題としては輸出をどう見るかという点については相当に見解が割れていると思われますが、前段の部分では弱めの背景について循環重視の委員のコメントだけ掲載するという中々イカサマの香りがする技を使っておりまして、印象として構造重視の所を強く出さないようにしている辺りが日銀文学の妙味というものです。

なお、前段の部分では別に「との見方で一致した」とか書いていなくて、あくまでも循環要因を重視する委員の見解を紹介しているだけですし、そもそも議事「要旨」なのですから別に全部の議論を掲載する必要もない訳で、イカサマの香りとは申しましたが別にインチキでも何でも無く、これはこれで文学的な手法を駆使しているだけという点については誤解の無い様に願います(^^)。


・設備投資は毎度の見通しだがそれは持続性があるのかと小一時間

『設備投資について、委員は、市場予想を上回る好調な企業決算が続いていることや、良好な企業マインドを背景に、緩やかに増加しているとの判断で一致した。先行きについても、委員は、企業が積極的な設備投資意欲を堅持していることなどから、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』

まあ意欲があるのと実際にやるのとはまた別の話ですけどね!!!!

『何人かの委員は、先行きの設備投資に関して、日本政策投資銀行の最新のアンケート結果に言及し、2014 年度の設備投資計画が高めの伸びを示していると指摘した。』

なんかこういう個別の日銀以外からのサーベイの話が事例として出てくるという辺りがこれまたアレ。

『さらに何人かの委員は、労働市場のタイト化を背景とする省力化投資や、設備の老朽化を受けた更新投資が出てくることが期待できると付け加えた。』

でまあこの辺りの部分なんですが、8月議事要旨ではまあこういう状態ですが、今しがた引用した9月月報の元となっている金融政策決定会合では生産の先行きを短期的な部分とは言え見通しを下げる中でどういう留保条件を入れながら設備投資の見通しを突っ込んだのか興味がありますな。

・雇用所得、消費に関する部分

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに伸び率を高めているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、経済に前向きの循環が働くもとで、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

実質賃金ェ・・・・・・・・

『個人消費について、委員は、品目によってその程度には差はあるものの、全体としては、駆け込み需要の反動減の影響は徐々に和らぎつつあるとの認識で一致した。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動について、何人かの委員は、耐久財を中心に駆け込み需要が大きかったため、反動もそれなりに大きくなると見込まれるとの認識を示した。』

はあそうですか。

『ある委員は、耐久財以外の動向についても、しっかりと注視していく必要があると付け加えた。』

『一方、別の一人の委員は、インターネット通販の販売額は4 月を底に順調な回復が窺われると指摘した。』

前半はまあ耐久財以外も不味くねえかという話で、通販の話とかこらまた唐突に来てますなあ。

『先行きの個人消費については、委員は、実質所得の押し下げの影響には注意が必要だが、雇用・所得環境の着実な改善が続いていることを踏まえると、底堅く推移していくとの見方を共有した。』

何という実質所得問題無し攻撃。つーかこれ企業収益伸びなくなったらどうすんでしょ。


・生産について

『鉱工業生産は、委員は、足もとでは駆け込み需要の反動や輸出のもたつきなどを反映して弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けているとの見方で一致した。』

基調としてはキタコレ。

『このうち多くの委員は、足もと、一部業種で在庫の増加や出荷・在庫バランスの悪化がみられることを指摘した。』

ダメじゃん。

『先行きについては、委員は、内外需要の動向などを反映して、緩やかな増加基調をたどり、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』

ということで、全体的に楽観見通しを根底に置いた結果として楽観の循環メカニズムとなっている見通しというのが続いている訳ですな、9月はどうなったんでしょう。


・円安で輸出が伸びない件の新たなトリクルダウン屁理屈キタコレ!!!!!!

8月会合議事要旨のオモシロポイントに参りましたよ!!!!!!

『複数の委員は、輸出から生産、生産から投資といった、従来の典型的な景気回復のメカニズムが今次局面では変化している可能性に言及した。』

ほうほうそれでそれで????

『これらの委員は、海外の子会社等の収益が国内に還流し、設備投資や、賃金・所得に波及していく可能性を指摘した。』

屁理屈キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

えーっとですね、つまり「円安になっても輸出数量が伸びないし現地生産部分は兎も角国内生産に跳ねないから回復メカニズム働かないじゃん」という指摘が散々なされている訳ですが、これに対抗する屁理屈を繰り出して来たという話でして、円安になると輸出企業の収益が伸びるのでトリクルダウンが来て国内もウハウハという話なのですが、この手のトリクルダウンネタって何回か言われていますがついぞ実現した事の無いネタでありまして、まあその時点でインチキの香りが大変素敵に漂ってくるというものであります。

なお、そういう観点で先般日銀から出ていた論文を見るとまあ何と申しますかな味わいがあるという話になるのですよね。一応念の為URL貼っておきます。

企業の海外進出と収益力
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j08.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j08.pdf(全文)


・物価に関しては師匠の謎理論が登場していたようです

今回の議事要旨ネタのオモシロパートその2は物価の所に少々。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。』

『その先の消費者物価の前年比については、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、今年度後半から再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』

とまあこれは良いのですが、この次の部分は先般の講演や会見での説明を踏まえると置物師匠の置物理論のようです。

『この点に関連して、一人の委員は、既往の原油高や円安効果が剥落していくため、先行きの消費者物価の前年比伸び率の低下を懸念する声があるが、品目の相対価格の積み上げで物価予測を行うのは不適切であり、マクロ的な物価の決定要因である需給ギャップと予想物価上昇率に着目すべきであると指摘した。』

いやその需給ギャップだって最終的には個別の積み上げだし、そもそも予想物価上昇率って直接的な計測が困難なものに対して着目して先行きの見通しをどうのこうのとかナンジャソラというか、そもそも個別の積み上げを否定してどうすんねんと思うのですが、どうも師匠の謎理論は判らん。

『この間、複数の委員が、このところのサービス価格の動きに回復感を欠いている点には注意が必要であると述べた。このうち一人の委員は、企業が販売価格を持続的に引き上げるようになるためには、成長期待や将来所得の上昇期待が高まる必要があり、この点、政府による成長戦略の迅速な実行や企業による成長力や競争力を高める努力が欠かせないと述べた。』

まあそうですなという所ですが、師匠の置物理論の場合は需給ギャップと予想物価上昇率で決定するそうですし、成長期待とか将来所得の上昇期待とかはインフレ期待が高まって実質賃金が下がると勝手に上がるというポンチ絵を相変わらず書いて講演しておられますので、一人謎理論を炸裂させているという風情なのでしょうな。


・物価を多面的に見るという件について

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、いつもの議論といつもの木内さんの反対提案ネタはいつも通りでして、それ以外の所から。

『委員は、金融政策運営に関して月々の消費者物価(除く生鮮食品)の数字に注目が集まる傾向があるが、物価の基調を的確に把握することが重要であるとの認識を示した。』

ほうほうそれでそれで??

『この点に関連して委員は、@「物価安定の目標」は、消費者物価の総合指数で定義している、A物価の予測に当たっては、一時的な変動要因の影響を除いた基調的な動きを捉える必要があるため、展望レポートにおける物価見通しは、基調的な物価の動きを比較的よく表している「除く生鮮食品」指数を用いている、ということを確認した。』

別に確認するまでも無い話のような気がする当たり前の話で、「確認した」という文言が何か物凄い違和感があるのですけどねえ。「という事をより一層周知すべきである事を確認した」というのであれば判るのですが・・・・・・・・・・・・・

『そのうえで、物価情勢の判断に当たっては、引き続き、様々な物価指標を点検することが重要であり、また、それらの指標の背後にある経済の動きとも併せて評価していく必要があるとの認識を改めて共有した。』

今更共有するのかという感じですが、ただまあこういうのって従来置物師匠一派の方々が主張しているインフレ目標政策のメリットとだいぶ違ってくる話になりまして、何せ置物師匠一派の皆様におかれましてはインフレ目標によって総合判断を隠れ蓑にして日銀のデフレバイアス政策が炸裂しないようにすべきとか、甚だしきはインフレ目標政策をそれこそエアコンの自動運転による温度調節に例えていたりしてたりした訳でして、この物価を多面的に判断というのはそういう面からすると置物師匠の従来の理論からは結構背馳すると思うのですけどどうなんでしょうかねえ。

ま、だからこそこの議事要旨が「確認した」「改めて共有した」となっているのかも知れませんけどね!!!


#ということで虫干しネタ恐縮至極



2014/09/19

お題「短国入札は入札後マイナスに進むの巻が連発ですなあ/企業の海外進出に関するレポートとな/ドラギ落語鑑賞会」

昨日のみならず今日も米国の株式市場と債券市場が連日FOMCの解釈を逆にして反応しているように見えますがどうなっているんでしょうかねえ・・・・・・・・・

#SEPのドットよりも声明文の方が意味があると思うのですが


○短期は相変わらずの展開でありますが

・3M入札

落札結果である。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140918.htm

(3)募入最低価格 99円99銭9厘0毛 (募入最高利回り)(0.0040%)
(4)募入最低価格における案分比率 50.5824%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘6毛 (募入平均利回り)(0.0016%)

・・・・・・・・・・よし!金利があるな!!!(錯乱)

という事で一瞬平均1.6bpに空目しますが0.16bpが平均落札利回りという大変に残念な結果でございますが、落札結果発表後すかさずマイナス金利水準まで価格が進むというお洒落な展開になっておりましたな。引けに掛けてはゼロ水準に戻ったので、今日の短国買入の基準となる売買参考統計値の平均単利利回りはこの銘柄は0.000%になっていて珍しくゼロの利回りになっていますな、とか先週火曜日の短国買入以来すっかり目線がおかしくなっておりますが(白目)。

しかしまあ何ですな、ここの所短国の入札って落札結果が出てあっという間にマイナス利回りに突っ込むというオモシロ展開になっております(昨日の新発は最終的にゼロ水準に押し戻されてましたので少しマシな展開)けれども、これを勝手に解釈致しますと・・・・・・・

まあ何だかんだと言いましても短国は債券であって金利商品でありますので、マイナス金利を平然と買う事が出来るのって誰ですねんと考えますと、投資という意味ではやはりマイナス金利というのはどういう事よという話になる訳ですよね。勿論為替スワップ絡みとかで調達金利がマイナスの人ならマイナス金利で運用しても調達運用のスプレッドが確保できていますが、金融市場の外側であります所の実体経済には名目ゼロ金利制約というのがある訳で、調達金利は基本ゼロ金利制約に引っ掛かってマイナスにするのが色々と難しいと来ていますので、そーゆー意味で投資の観点からしてキャッシュフロー確定証券のマイナス金利を堂々と買うというのは難しいですなあという話で、マイナス調達ではない限りキャピタル狙いという形じゃないとマイナス金利って買えませんよねという話で、そう考えますと入札段階では名目ゼロ金利の所で投資家需要が大幅に変わってしまうという事になりますので、強い強いと言っても中々ゼロを割って入札をというのも難しいですなあとなります。

一方でセカンダリー市場になりますと、今や短国の市中消化額の3分の1程度を購入するという超ドミナントプレーヤーの日銀様が調達コストとかそういう概念が無い方々で別の目的で成行買いをしてマイナスでも何でも買ってくるので、セカンダリー市場になるといきなりゼロとかマイナスとかに進んでしまう、という事になっているというのが今の市場でありまして、そう考えると日銀の短国買入の残高効果が市場の価格形成をどんだけ歪めていますねんという話なんですなあとか、中々見られない異次元政策を実施しているせいで、中央銀行の市場介入による市場への影響がどうなるのかというのを実感として見られて大変に有意義ではございます(白目)。


・固定金利オペは若干の残高増加

めんどいから固定金利の所だけ引用しますね
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140918.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年9月22日 2014年12月22日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140918.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(9月22日スタート分) 2,527 2,527

この辺の人様の担保繰りは良く判らんのですが、今回のオペは落ち分が1590億円の所なので930億円ほどの残高増加なのですが、元々の落ちも少なかったのであまり影響なし。ただ、この足元の状況でも増額ロールになるんですなというのはどうもこれは実際にやっている中の人がどういう事情で動かしているのかがイマイチ判らんので良く判らんっすな(汗)。


・そして今日は短国買入ですなあとか

でまあ本日は金曜ですので毎度おなじみの短国買入ですが、市場動向ヒアリングとかしてオファー額が決まるでしょうからまあ2500だか5000だか知らんですけれども、水曜に入札のあった1年短国を出来るだけ買いたいでしょうから打てるだけ打ってきて、買入レートの方も大変に素敵な事になるんでしょう(ちなみに1年新発の売買参考統計値はマイナス0.4bp)という所でして、そーゆー意味では足元から少なくとも来週の3M入札までは需給がスッカラカン状態が続くという事でもう何だかねという所ではございまする。

でもってあたくし不覚にも勘違いしていたのですが、来週の新発3Mは年末越えでございまして・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20140918.htm
1. 入札予定日 平成26年9月25日
2. 発行予定日 平成26年9月29日
3. 償還予定日 平成27年1月8日

これは四半期2回跨ぎでニーズが集まる!!とも思うのですが、そもそも目先の期末の方をどうするのかという方が重要な話でして、末残調整ニーズってまあ最後までぶれるものですけれども、そうは言いましてもコアの部分はこの市況だとギリギリまで引っ張る訳にも逝かんでしょうから、そんなこんなも考えますと昨日の入札の方が需要は強いんじゃネーノとも思う所でどう転ぶのか難しい。とは言っても別に流れるような事は無い(流れるようなら四半期2回跨ぎのニーズが鬼のように到来するので)でしょとは思います。

実は来週の新発3Mが年末跨がないのなら26日に末渡しで短国買入をオファーする意味が全くないので今日の短国買入で期内の短国買入は着地だと思ったのですが、来週の3Mが年末越えとなりますと来週の金曜に短国買入を打つという無謀プレイが出る可能性もあるなあとか思うのでありました。なお、30日受渡に関しては末残調整ニーズの最後の最後の帳尻ニーズがどこから飛んでくるか判らない(短国の場合最後の最後は現先で残高調整をするという荒業があるのでレギュラー受渡を過ぎてからも動きますからねえ、特に末残ニーズの場合は)ので、普通短国買入をオファーしても玉が余って死んでいる時でも無ければ誰も応札しない筈なので、常識的に考えると30日渡しの短国買入をこの市場状況で打ち込んでくるのはピラニア養殖池に丸裸で特攻するようなもんなのでまあ無いとは思いますけど、新発が年末越えならば新発を買いに期末渡しを外してその後に買入を打ち込んできそうですな、うんうん。


○これはまた味わいのありそうなワーキングペーパーシリーズ

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j08.htm/
企業の海外進出と収益力
2014年9月18日

でまあ本文は
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/data/wp14j08.pdf

なんですが、本論は12ページ分ほどあってまだ超斜め読みしかしておりませんので内容がどうのこうのの前に最初の要旨の部分を見るとこれはこれで味わいがあるというものです。

『要旨』から。

『本稿では、わが国企業の海外進出の積極化が収益力や企業価値に与える影響について、実証的に分析した。』

ほうほう。

『具体的には、上場企業のマイクロデータを用いて、海外進出の程度を収益率や企業価値に回帰したパネル推計や、国内・海外部門の補完性(一方の事業がもう一方の事業の収益性を向上させる効果)を明示的に考慮した利潤関数の推計を行った。分析の結果、企業が海外進出の程度を高めることは連結ベースの収益力や企業価値にプラスの効果を与えており、さらに、その効果は近年高まっていることが確認された。このことは「収益力や企業価値の高い企業ほど海外進出を行う」という逆の因果関係に起因するバイアスを取り除いた上でも見てとれた。』

なるほどという所ですが、今まさに「企業が海外現地生産したり競争力が低下したりしているから円安になったり海外(というか米国)経済が堅調になっても輸出が伸びないのに大丈夫か日本経済」という話が盛り上がっているタイミングでのこの要旨の投下というのが実にこう侘び寂びの世界を感じるものであります。

『また、企業の海外事業と国内事業の間には補完的な関係があることが示唆された。すなわち、企業は、国内事業を維持しつつ海外事業を拡大させることで、より高い収益性を得ることができる。企業の海外進出による収益力や企業価値へのプラス効果が近年高まっている背景には、海外での経験蓄積、現地需要の取り込み、生産コストの抑制が寄与した可能性がある。』

ということで、企業の海外進出で収益力が向上しますよという趣旨の分析内容になっておりまして、これは裏を返すと国内でなんぼチマチマやっていても企業収益力も上がらんし企業価値も上がらんという残念なインプリケーションを示しておりまして、(別にこのレポートはそんな事を言ってませんけど)海外に進出して稼いで来やがれとか何か時代が一巡して振り出しに戻ったかのような感もする話ですなあという所で。

つーかですな、引用した趣旨の前半部分に話を戻しますと、円安に振っても輸出が増えないから国内生産も増えなくて国内所得の海外漏出のデメリットしか無いじゃないか!!という昨今のツッコミに対する回答である、と考えてこの趣旨を読みますと、企業が海外進出を拡大していく中で国内の生産部分への恩恵が確かに弱まっているのだが、このように企業収益力や企業価値が高まるので、企業部門からのトリクルダウンが発生して結局の所国内経済にはプラスなんです(キリッ)という新たなる「先行き輸出が盛大に伸びなくったって大丈夫じゃないかにんげんだもの」な理屈展開に対する武器としても使えるという辺りに侘び寂びの世界を感じますなあ、というような事でちょっと引用してみましたが、詳しくは週末にでも読んでみようかなあとは思います。

#なお積み残しネタが大量にある(というかネタがわんこそば状態)ので今週末こそ真面目に成敗しないといかん


○ドラギ総裁の会見(9月4日のネタで今さらにも程がありますが)鑑賞ファイナル

どうもすいませんすいません。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014

最後の方の質疑を少々鑑賞しますね。

・直球質問に対するお答え

『Question: Mr Draghi, two questions if I may. Firstly, as we sit today would you describe inflation expectations as anchored? And secondly, could you address what appears to be an apparent contradiction in the sense that you've said you have unanimity amongst the Governing Council for the use of non-standard measures and yet today you had no unanimity. Could you address that please?』

インフレ期待がアンカーされているの?という結構な直球質問と、決定は全員一致じゃないのに将来必要な際には非伝統的な措置を取りますというのは全員一致とは何ですねん?とこれまた直球質問。

『Draghi: The inflation expectations we've seen, they are still anchored. But we've seen the downside risk increasing of late, and that explains why we have decided to strengthen the measures decided in June and complement these measures with others.』

この辺が微妙に歯切れが悪い所で、アンカーされてるけどリスクが有ると。

『The second point is that unanimity and agreement is not a blank cheque, as in “No matter what we are going to do, we are going to be unanimous”. We are unanimous in the intent, but when the time comes to decide exactly what measures we should undertake there could be differences of view. So I don't think it's contradictory really.』

どう見ても屁理屈です本当にありがとうございました。つーかその「何をするかについては別として必要な時に必要な行動をするのが全員一致」ってのの全員一致アピールに何の意味があるのかよというと、ただの景気づけだけじゃねえかと小一時間。


・ABS買入プログラムとTLTROの矛盾について

『Question: First one is on the ABS purchase programme. If I understood correctly, you said that real estate ABS will be included. I wonder why that is, given the fact that loans to households for house purchases have been excluded from the targeted LTROs.(後半割愛)』

ABS買入プログラムでは不動産担保のABSを買入対象に加えると言っているのに、何でTLTROでは家計の住宅購入資金融資を対象にしないのでしょうかとはこれまた鋭いツッコミ。

『Draghi: On the first point, you are absolutely right to raise this point.』

だいたいこのおっちゃんが最初にこう言い出す時はその後に無茶振り屁理屈が飛んでくる前触れであるというのは把握している。

『There is an apparent contradiction here, but in facts it's not the case. What we will do when buying our ABSs will actually free space in the sellers’ balance sheet. The sellers may well not be banks only by the way; they could be also institutional investors. We free space and then it's not at all to be taken for granted that the seller will use this money to re-invest in real estate. The seller will use this money according to his or her business decisions at that time. That's why there isn’t a contradiction between our decision with the TLTRO not to finance new investments in real estate, new lending in real estate. So that's how we can explain it.(後半割愛)』

なんか無茶苦茶強引な屁理屈を展開しているようにしか見えんのだが、中央銀行が資産買入をすると売った人のバランスシートに余裕が出来るのでその余裕で別の投資なりが行われるので経済に好影響とかもはや屁理屈としか思えん訳で、単にABS買入の残高を稼ぎたいからじゃネーノとしか申し上げようが無いのが味わいの深い所。


・利下げがテクニカルかどうかの話

『Question: (前半割愛)And the second question is, to be honest I don't understand why you call the lowering of the interest rate only a technical adjustment. I don't think that you called a similar move in June a technical adjustment.』

そらそうだ。

『Draghi:(前半割愛)Now, I define a technical adjustment. Really, the reason why I use that is that, for all practical purposes, we were already at the lower bottom. So people wouldn’t really expect any big change in interest rate. But you are right. Perhaps my definition is unduly limiting the movement that we had.』

要するに今回こそ下限に達したと言いたいのと、前回下限みたいな事言ったからそこと整合性を取ったということなんでしょうな、何だかねえ。


・この質疑は味わいがある(^^)

『Question: Mr Draghi, isn't there a risk that with the ECB emphasising so much the risk of low inflation that this itself could trigger a de-anchoring of expectations?』

低インフレがインフレ期待を下げるリスクがあると連呼すると却ってインフレ期待を下げる事になりはしませんか?という誠にご尤もな質問に対する答えに味わいが。

『Draghi: Well, you see, this question is actually a question we also asked ourselves.』

ほう。

『But the answer to this question is: would the truth be a risk? In other words, do we really think that telling people things other than the truth would affect their behaviour?』

そしてその答えは・・・・・・・・

『And the answer is no.』

中央銀行が物価目標2%と力強く掲げたらインフレ期待が上昇します(キリッ)という訳にはいかないようですよ(ニヤニヤ)。

『We think that we ought to state things as they are. We don't see deflation. We have seen, as a matter of fact, low inflation for a long time. As I’ve said several times, the longer the period of low inflation the higher the risks of de-anchoring.(以下物価の状況と先行き見通しの説明は割愛)』

ということで、たぶん無意識のうちに黒田さん砲撃食らってますなという味わいのある質疑が最後にあったのでありました(^^)。


#ちょっとネタの積み残しが多いので週末少し成敗しますが読まないといけないものも多いので大変ですが今週はマジでやりますよ〜(キリッ)



2014/09/18

お題「だいたいFOMCネタでその他少々国内ネタ」

ワロタ、またやってるのかよ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140918/t10014682231000.html
浅尾代表と渡辺前代表の対立深まる
9月18日 5時08分

○FOMC声明文そのものはこんなもんでしょうとは思うのですが

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140917a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140730a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気に関する全体認識を引き上げ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity is expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that growth in economic activity rebounded in the second quarter.』(前回)

ということで全体認識に関しては「expanding at a moderate pace」になって上方修正キタコレですが、念のため申し上げると「indicates」と「suggests」の違いがあって、たぶん後者(今回)の方が動詞としては弱いと思うので状況を強くしたものの動詞の所でちょっとマイルドにしている感じで微妙なヘッジ振りもあるのかねと思ったがよーわからん。

『On balance, labor market conditions improved somewhat further; however, the unemployment rate is little changed and a range of labor market indicators suggests that there remains significant underutilization of labor resources.』(今回)

『Labor market conditions improved, with the unemployment rate declining further. However, a range of labor market indicators suggests that there remains significant underutilization of labor resources.』(前回)

失業率の改善に関する表現の部分は足元の状況を示しているものの、基本的な認識は同じで労働市場は改善しているけれども依然として労働市場のスラックがありますという話っすな。

『Household spending appears to be rising moderately and business fixed investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing.』(今回)
『Household spending appears to be rising moderately and business fixed investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains slow. Fiscal policy is restraining economic growth, although the extent of restraint is diminishing.』(前回)

家計、企業の投資、住宅セクター、財政政策に関しての表現は同じです。

『Inflation has been running below the Committee's longer-run objective. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Inflation has moved somewhat closer to the Committee's longer-run objective. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

今回物価に関して「has moved somewhat closer」の表現を外しておりますが足元ちと足踏みだからですかねえ。別に下向いているという話ではないですが。


・第2パラグラフ:1か所以外変化なし

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators and inflation moving toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced and judges that the likelihood of inflation running persistently below 2 percent has diminished somewhat since early this year.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators and inflation moving toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced and judges that the likelihood of inflation running persistently below 2 percent has diminished somewhat.』(前回)

先行きは適切な緩和的な金融緩和によってマンデートに向けて経済が改善云々という話は前回と思いっ切り同じでして、今回は最後の所の「2%割れの物価水準が長期化するリスクが減っている」という部分が「今年の初めから改善してきています」という表現になっていて、まあ微妙にここの表現が変わっていますが多分少し改善の時間軸を長くしているだけちょっと強くなったように見えますし、足元の改善ペースを受けた表現変更なのかも知れませんが、どちらかというと物価が跳ねださない限りは当面は労働市場の改善の方が金利引き上げに関連する話に影響するので注目度は相対的に低いのかな。


・第3&第4パラグラフ:基本的に同じですな

第3と第4が資産買入に関する部分です。これもめんどいので一気に引用しちゃいますね(読みにくくなりすいませんが)。

『The Committee currently judges that there is sufficient underlying strength in the broader economy to support ongoing improvement in labor market conditions. In light of the cumulative progress toward maximum employment and the improvement in the outlook for labor market conditions since the inception of the current asset purchase program, the Committee decided to make a further measured reduction in the pace of its asset purchases. Beginning in October, the Committee will add to its holdings of agency mortgage-backed securities at a pace of $5 billion per month rather than $10 billion per month, and will add to its holdings of longer-term Treasury securities at a pace of $10 billion per month rather than $15 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee's sizable and still-increasing holdings of longer-term securities should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with the Committee's dual mandate.』(今回)

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months and will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. If incoming information broadly supports the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective, the Committee will end its current program of asset purchases at its next meeting. However, asset purchases are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on the Committee's outlook for the labor market and inflation as well as its assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)

ここを前回と比較するとクソ長くなるの前回分の引用を割愛してすいませんが、今回と前回の違いは第3パラグラフにおける数値(そらまあ資産拡大ペースが変わるのだから当たり前)の部分と、第4パラグラフにおける次回の会合でTapering終了しますよという部分が変わっただけで、基本的な説明となる部分については同じ説明をしていますので、そういう意味で政策的な話としては次回のTaper終了が声明文として明言したという所だけですな。


・第5パラグラフ:フォワードガイダンス文言には変化がありません

まあTaper終わった後にご相談でしょ、と思ったら今回は別の紙が出ていた件は後ほど。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy remains appropriate.』(今回)
『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy remains appropriate.』(前回)

同じですな、うんうん。

『In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored.』(今回)

『In determining how long to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. The Committee continues to anticipate, based on its assessment of these factors, that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored.』(前回)

まあこのパラグラフの方が今回は注目ネタなので前回と並べてみましたがご覧のとおりで全文一致となっておりますよ。


・第6パラグラフ:将来の利上げはバランスアプローチで穏健に実施云々も全文一致

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)

ご覧のとおりでまるで同じ。


・第7パラグラフ:タカ派芸人2名目も反対とな

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(前回)

ふむ。

『Voting against the action were Richard W. Fisher and Charles I. Plosser. President Fisher believed that the continued strengthening of the real economy, improved outlook for labor utilization and for general price stability, and continued signs of financial market excess, will likely warrant an earlier reduction in monetary accommodation than is suggested by the Committee's stated forward guidance. President Plosser objected to the guidance indicating that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for "a considerable time after the asset purchase program ends," because such language is time dependent and does not reflect the considerable economic progress that has been made toward the Committee's goals.』(今回)

『Voting against was Charles I. Plosser who objected to the guidance indicating that it likely will be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate for "a considerable time after the asset purchase program ends," because such language is time dependent and does not reflect the considerable economic progress that has been made toward the Committee's goals.』(前回)

プロッサー先生の反対理由は前回と同じですが、フィッシャー先生の反対理由が「フォワードガイダンスで示されるよりももう少し早い緩和の縮小が必要」という風になっているのですが、では何をどうしたいのかがイマイチ判らんので???ですが本人から何か出てくるのでそれを見ましょう。



○「初めて出ました」というか別にこれ議事要旨で散々出てたと思うのだが・・・・・・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20140917c.htm
Policy Normalization Principles and Plans

ということで正常化に向けた基本的な考えとプランが出ているのですけど、基本的な話はここ数回の議事要旨で散々出ていた話の纏めでありますな。でまあ(この次にネタにする)SEPの利上げ見通しがやや強くなったのと相俟って反応したのかも知れませんが、内容自体は特段驚く事もなくて、最初に見た時にはHPのお題でおーと思って中身見たらなんだ普通じゃんと思って、声明文みたらなるほど声明文があまり変わっていないので下手にハトハト解釈されても困ると思ったのかなあとか単純に考えたのですけどね。

なお、一つだけ意味があるとすれば「償還再投資停止と利上げのどちらが先か」の話が決着している事です。

『During its recent meetings, the Federal Open Market Committee (FOMC) discussed ways to normalize the stance of monetary policy and the Federal Reserve's securities holdings. The discussions were part of prudent planning and do not imply that normalization will necessarily begin soon.』

議事要旨に散々書いてありましたな。

『The Committee continues to judge that many of the normalization principles that it adopted in June 2011 remain applicable. However, in light of the changes in the System Open Market Account (SOMA) portfolio since 2011 and enhancements in the tools the Committee will have available to implement policy during normalization, the Committee has concluded that some aspects of the eventual normalization process will likely differ from those specified earlier.』

『The Committee also has agreed that it is appropriate at this time to provide additional information regarding its normalization plans. All FOMC participants but one agreed on the following key elements of the approach they intend to implement when it becomes appropriate to begin normalizing the stance of monetary policy:』

建付けとしては以前出した正常化手順に関する話のmodifyという感じのようですが、これが死亡フラグにならないように願いたい物です(ゲス顔)。

『・The Committee will determine the timing and pace of policy normalization--meaning steps to raise the federal funds rate and other short-term interest rates to more normal levels and to reduce the Federal Reserve's securities holdings--so as to promote its statutory mandate of maximum employment and price stability.

○When economic conditions and the economic outlook warrant a less accommodative monetary policy, the Committee will raise its target range for the federal funds rate.

○During normalization, the Federal Reserve intends to move the federal funds rate into the target range set by the FOMC primarily by adjusting the interest rate it pays on excess reserve balances.

○During normalization, the Federal Reserve intends to use an overnight reverse repurchase agreement facility and other supplementary tools as needed to help control the federal funds rate. The Committee will use an overnight reverse repurchase agreement facility only to the extent necessary and will phase it out when it is no longer needed to help control the federal funds rate.』

最初が利上げに関する話で、正常化の時には金利を引き上げていくという形での金利政策に移行して、その際には超過準備付利金利の引き上げや、リバースレポなどの活用を行いますよという話。


『・The Committee intends to reduce the Federal Reserve's securities holdings in a gradual and predictable manner primarily by ceasing to reinvest repayments of principal on securities held in the SOMA.

○The Committee expects to cease or commence phasing out reinvestments after it begins increasing the target range for the federal funds rate; the timing will depend on how economic and financial conditions and the economic outlook evolve.

○The Committee currently does not anticipate selling agency mortgage-backed securities as part of the normalization process, although limited sales might be warranted in the longer run to reduce or eliminate residual holdings. The timing and pace of any sales would be communicated to the public in advance. 』

次がバランスシートに関する話で、基本的には売却は行いませんよという話で、しかも償還再投資の停止は利上げ後に行うそうな。で。仮に必要があって売却する場合は事前にアナウンスしますよと。


『・The Committee intends that the Federal Reserve will, in the longer run, hold no more securities than necessary to implement monetary policy efficiently and effectively, and that it will hold primarily Treasury securities, thereby minimizing the effect of Federal Reserve holdings on the allocation of credit across sectors of the economy.』

これは将来の話ですが、最終的には金融調節技術上必要な程度(長期負債見合い)の長期国債保有額までバランスを縮小して、当然ながらその時には国債以外の資産を持つのはFEDがクレジットアロケーションに介入することになるので行いませんよと。

『・The Committee is prepared to adjust the details of its approach to policy normalization in light of economic and financial developments. 』

最後も当然ですが、この原則も経済情勢によって変化する場合がありますということで、報道上は「初めて出ました」と連発されているのですが、思いっきり議事要旨の議論通りになっていまして、まあ一つだけまとまったのは償還再投資の停止を利上げ前にという見解もそこそこあった部分を利上げ後で押し切った所ですな。


○SEPの金利見通し刻みにワロタ

本日はFOMC以外にもネタがあるのでSEPの数字を細々引用するの明日にするかという所なのですけれども(前の日に準備しろですかそうですか)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140917.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20140618.pdf(前回)

なお、単に見るだけとか数字をコピペするのはこちらが便利。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20140917.htm

・例によって実質GDP見通しが微妙に下がって失業率見通しが微妙に上がっています

Central tendencyで見た場合でもRangeで見た場合でもなのですが、見通しの部分で2014と2015についてアグリゲートした実質GDP見通しが微妙に下がって失業率見通しが微妙に下がっている(失業率は2016年も下がっている)という事で、これはつまり本当は中立金利が下がっているという事を意味しますよね、ほんのちょっとですけど。


・金利のドットについて

2枚目の金利見通しのドットの表を見た途端に皆さん気が付くと思いますが、今回は刻みが謎の0.125%になっております。

・・・・・・・・でですね、これを見た瞬間に前回FOMC議事要旨にあった「当面の誘導金利については25bpのレンジで示して、初回の利上げの時には25-50の誘導目標にする」という部分を思い出すのが普通の反応だと思うのですが、どこぞのテレビ番組でコメントしていた人はドヤ顔で「利上げの刻みが0.125%になる」という説明をしていて、爆笑の発作が起きたのですがまあ良く良く考えると確かにナンジャソラというドットでもあります。

えーっとですな、ドットの表の部分ですけど、PDFじゃなくてHTMLの方の表を引用しますとここの部分の定義はこうなっています。

『Midpoint of target range or target level (Percent) 』(今回)
『Target federal funds rate at year-end (Percent) 』(前回)

・・・・・ということで、基本的にドットが0.125になっているのは「レンジの間」という意味だと考えた方が無難なようですが、まあ今回は色々と味わいがある内容です。

(1)2015年のレンジが相変わらずバラバラ&レンジが上方修正な件

2015年末の時点で見通しがまだゼロ金利維持状態になっているのが2名いる(1名降りた)のかよまだゼロ金利かよというのもほーと思いましたが、前回は概ね1.25%の所までで11人が収まっていたのが、今回は1.375%(1.25-1.50)の所までで11人になっていますので、若干上方修正になりました。

(2)どうも初回利上げ9月予想だと遅そうな件

実はアタクシは初回利上げ9月でFOMCごとに上げて年末が75-100だと思っていたのですが、年末75-100までの票が6票しかなくて、9月初回利上げだとちょっとFOMCの中心見解よりもハトのようでございます。

で、中央値を取ると125-150になっているので、その場合は6月FOMCで利上げして25ずつ利上げしてレンジを維持していくという形になるので、まあ順当に6月か7月で考えておくのが妥当のようですね。

(3)不思議なのは金利が相当上がってもドットに0.125%刻みがある点

えーっとですな、FF金利の誘導ですけれども、暫くはレンジにするにしてもそのうちピンポイントにするだろと思うのですが、2016年とか2017年とかでも刻みが0.125%になっている人がいまして、ナンジャソラという感じです。

ただし、FOMCごとに0.125%の利上げというのは出来上がりのドットの位置から逆算すると普通にねえだろとは思うのですけど、確かに2017年とかで3%台の所で0.125%刻みのドットがあるとドヤ顔説明も出る罠とは思いましたですので最初爆笑しましたが、まあそこまで罵倒する気にもならない面はあったりします。



○マイナス金利ェ・・・・・・・・・・・・(メモだけ)

ええい時間が無い

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140917.htm

(3)募入最低価格 99円99銭4厘 (募入最高利回り) (0.0059%)
(4)募入最低価格における案分比率 73.1838%
(5)募入平均価格 99円99銭8厘 (募入平均利回り)(0.0019%)

あばばばばーという所ですが、その後セカンダリーで結局マイナスになってBB引値も堂々のマイナスとなってこれで直近カレント4銘柄(3M2本と6Mと1Y)がマイナス引けですかそうですか今日の3M入札どうするんでしょうねえというお話で日銀何市場壊してますねんという所です。


○黒田総裁会見であるが見所はこの二つくらい

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409c.pdf

・円安容認というかもっとやれ発言をよく見ると・・・・・・・

『(問) 総裁は、以前の会見等で、円安は日本経済にとって悪いとは思わない、という趣旨のご発言をされておりました。一方で、本日の会場などからは、ネガティブなインパクトへの懸念の声ですとか、長期的な安定を求める声が強かったような印象を受けましたが、円相場の、特に円安の日本経済への影響について、これまでのご意見等に変わりはありませんでしょうか。』

『(答) 変わりはありません。為替レートはもちろん安定することは望ましいですが、それはあくまでも経済のファンダメンタルに則して安定するということです。行き過ぎた円高が是正される、それから米国経済の順調な拡大のもとで、米国の金融政策についてテーパリングが最終局面に入っており、いずれ金利も上がっていくというような状況のもとで、ドルが高めになり、円が若干安めになったということ自体はある意味で自然なことで、それが特に日本経済にとってマイナスになるということはないと思います。』

後半のところだけ思いっきり取り上げられてはいましたが、まあ前半の所を見るにそこまで無茶振りな円安もっとやれという程でもないですわな。

『為替については、もちろん注視していくことが必要ですが、今の時点で円高が是正されていく、あるいは米国の経済や金融情勢を反映して自然な形でドル高が進んでいくということが、日本経済にとって特にマイナスになるということはないと思います。』

ということですので、実際には何でもかんでも円安にせえという話をしている訳ではなく、ファンダメンタルズに沿った金融政策運営を各国中銀がする中でその金融政策に関する影響から為替が動くのは健全、とまあそういう趣旨の話をしている事になっておりまして、何でもいいから物価上げるためにヤケクソで円安にしろという話な訳でもないのですが、そうは言いましても既にベンダーバイアスとして「円安ヒャッハー」で「追加緩和ヒャッハー」と成っているだけに中々素直にヘッドラインが流れないのが痛いところではありまする。


・マイナス金利云々

『(問) 最近日銀の短国オペでマイナス金利が頻発しているようですが、これをもって、「量的・質的金融緩和」の効果が発現していると捉えることができる一方で、買入れが順調にできるのかという点について、市場では疑問を呈する見方があるようです。これについて、総裁ご自身は、どのようにお考えでしょうか。』

『(答) 何か非常に重大な問題が起こっているとは思っておりません。マーケットの状況を常によく注視しておりますし、買入れがやり難くなったとか、そういうようなこともございません。』

ですから買入がやりやすいじゃなくて市場のマイナス金利状態が与える悪影響というか副作用の方が問題なんですがという悪態は昨日申し上げた通りですが、これで注視しているとか言うのが更にトサカに来る訳でどうせてめえは金利屋じゃないから分かってないだろうに何偉そうに抜かしてるんだこの(以下罵倒文言の為削除されました)。

『冷静に市場の状況は把握しておりますので、先程申し上げた通り、金融政策としては、「量的・質的金融緩和」は、毎月毎月、大量の国債、あるいは長期国債等を買い入れることによって、緩和効果が累積的に強まっていくと考えております。』

・・・・・・・・・orz

というかですね、さっきの円安に関する話でもそうですし、今の買入やり過ぎによる副作用が出てくるのではの話でもそうなのですが、今の日銀執行部方面から出てくる情報発信って木久扇師匠の理論にでも毒されているのか知らんですけれども、「常に効果の話だけして副作用の検討をしない」という「プロコン分析丸無視」状態になっているのが非常に懸念されるところなんですよね。

つまり、円安に関してもなんかここへきて不味いだろという話があちこちから出てくるのに「円安は経済に効果」という話だけ延々としておりますし、国債馬鹿買いにしてもそら発行量まで全部買いに行こうとすれば買えるかもしれないし、別に不動産でも芋の葉っぱでも金ファミリー証券(って覚えている人はジジイ認定)でも何でも買えば日銀のBSは拡大するしMBは出ますしという話でございますが、とにかく「MB増やせば効果がある」あるいは「(実質)金利を下げれば効果がある」という方向の方だけの話をしている訳で、その反対側として起きる可能性のある副作用というのは薬が強ければ強いほど問題になる筈なのに、「薬がまだ効きがイマイチだったらもっと薬を強くすれば良いじゃないか」というような理論でアプローチしていく次第で、それで金融政策を実施する主体として本当に良いのでしょうかと小一時間問い詰めたい次第。

つーかですね、そういう副作用とかの総合的な検討を何もしないで単純に「2%物価安定目標を達成すればそれで良い」だけの政策しかしないんだったら中央銀行の独立性とか専門性とか別に要らないんじゃないですかねえ昔のマル卓に戻せばいいんじゃないですかと小一時間という所でございまして、どうせ執行部はあの調子なので審議委員の皆様の奮起を促したい物であると存じます次第でございます。

しかし「足りないなら量を出せば良いじゃないか」というヤクを強くすれば良い的ダークサイドにすっかりこの方が転落したのが残念です

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0HC0PB20140917
株価上昇には金融緩和、500兆円目指せ=中原・元日銀審議委員
2014年 09月 17日 18:19 JST

『[東京 17日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済アドバイザー、中原伸之・元日銀審議委員は17日に開かれた自民党大島派の勉強会で講演し、さらなる株価上昇のためにも日銀の金融緩和が重要とし、今年末270兆円が予定されている資金供給量(マネタリーベース)を2016年末までに500兆円に増額するのが望ましいと述べた。』(上記URLより)


ご参考
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93306B20130404
インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
2013年 04月 5日 08:42 JST

『[東京 5日 ロイター] 元日銀審議委員の中原伸之氏は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が打ち出したマネタリーベース(資金供給量)を2年で倍増させる量的緩和について、あまりに急激・巨額な金融緩和であり、「急激な円安や長期金利上昇などが起きないか私も心配」と懸念を示した。』(上記2013年4月のロイター記事より)

つーかそれ以前の問題として「株価上昇のためにも金融緩和が必要」とか金融政策の目的が何だか審議委員やっていたのに忘れてしまわれるとはまさか中原さん(以下の文言は削除されました)。




2014/09/17

お題「短期関連雑談/総裁講演はいつもの平常運転/ドラギ総裁定例理事会会見での一番の演説パートはこれです」

いやあ大江アナの話題は昨日の夕方から盛大に大騒ぎのネタになりましたなあ・・・・・・

○短期市場関連メモメモ

・短い所の引値キタコレ

ここもと長い所に関しては円安(というかドル高というか)とか米国金利がどうのこうのとかで売られたりする展開なのですが、そんな中短期方面が延々と金利低下ヒャッハーとやっているので同じ金利の世界にいるのに思いっきり別天地感の強い今日この頃でありまする(−−;

でまあ昨日は短国買入も入札もございませんで、ついでに短国はお察し状態になっているので市場で(売る方はともかく)買いに行こうにも碌にモノが出てこない訳でございますから取引が低調にならざるを得ずという展開なのでさすがに昨日は短国の引値は大体前週末並みという結果(売買が碌すっぽ無いのだから前日比変わらずになるわな)になりました。

・・・・・・と思ったら今度は利付国債の残存の短いのの引値が強くなっておりまして、そらまあ短国買えないなら利付の短いのでもという話になるんでしょうなあとは思う次第で、ただ利付国債の場合は発行総額が短国ほど多くないですし、流通玉も少ないと来ていますので、短国みたいなロットでの買いは出来ませんですし、日銀の買入も短国のような盛大な買入額では無くて月に2200億円となっていますので、短国のヒャッハーに対してやや遅れて推移していたんですな。

という流れではあったのですが、先週金曜の短国買入で止めを刺してしまったようで、昨日は残存1年以内の利付国債の引けが軒並み1毛とか強くなってしまいまして、短国金利の低下というよりは短国市場の玉スッカラカンでマイナス金利という異常状態が波及して参りましたよという流れでして、中間期末を控えてこの状況とかもうねという所ではございます。

これが例えば利下げ観測とかで発生している事態ならば別にシャーナイナイなのですけれども、日銀がひたすら短国を買い続けている結果として起きているというのがねえ・・・・・・


・業態別当座預金残高の都銀残高は一時的現象なのかそれとも・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

毎度おなじみのこれですが、8月積み期間は超過準備預金残高が全体として若干程度の減少になっておりまして、当座預金残高で見ると証券の残高が若干拡大しているのでトータルで若干の拡大となっていますな(なお平残数値の方で話をしています)。

でまあそれはそれで良いのですけれども、今回見ていてほえーと思ったのは従来趨勢的に拡大傾向にあった「都市銀行」の超過準備が2兆円近く減少している所であります。まあ上記のURL先からZIPで落として来てご鑑賞いただきたいのですが、この1年着実に超過準備残高を拡大させていたので、減少するとはこらまたほほうというのと、まあ減少した分って短国の買入に化けている部分があるだろうなあとか思いますと、そら短国需給が逼迫するわという風にも思う訳で味わいがあります。

んでもってこちらの動きなのですが、一時的現象というのであればまあそういう事もありますねという話で良いのですけれども、これが超過準備の拡大も無限にやる訳にも行きませんですしねえという話が背景にあったりすると、そもそも論としてのMB拡大が物理的に可能なのか(MB拡大には日銀の資産買入が必要だが資産買入の裏側には日銀当座預金の拡大を伴うので、日銀当座預金をこれ以上拡大できないという参加者だらけになると資産買入が札割れになるのか無限に高い所まで買入を行わないといけなくなる)という話になるので9月積み期間の動向に注目しようかと思いましたがそもそも9月は国債償還要因などで資金が余剰になるのであまり比較参考できないのでした(汗)。


○問題はそこではないのですが・・・・・・・・

詳しくは会見詳細が出てから更に悪態という所ですが、今晩はFOMCもありますので忘れる前にメモを置いておく。

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0HB0OD20140916?sp=true
為替の安定極めて重要、安定確保されるよう努める=日銀総裁
2014年 09月 16日 18:20 JST

為替どうのこうのに関しては相変わらず円安がヨロシという話を連発しておりまして、暫く前からのこれ以上の円安進行は日本経済に対して必ずしもプラスでは無いという指摘は華麗にスルーし続ける辺りも味わいがあって、日銀は物価目標のマンデートの為であれば他の事が犠牲になっても別にどうでも良いというスタンスが明確化されておりまして、金融政策ってそういう事で良かったんでしたっけという気はだいぶするのですがそれはそれとしてマイナス金利に対する質疑のヘッドラインを見てのけぞったのだが、ベンダー的にそちらの話はニュース的に面白くないようで扱いが小さいのが残念。

『日銀の短期国債買い入れオペで、金利がマイナスでも買い入れを実施している点については「重大な問題とは考えていない。金利がマイナスで買い入れが難しくなったことはない」と指摘。大量の国債を買い入れるQQEの枠組みが限界に近づきつつあるとの一部の懸念をけん制した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・orz

えーっとすいません。「買入が出来るのか」という意味ではそらマイナス金利だろうが何だろうが購入すれば買入は出来るので、買入が難しくなった云々が問題じゃないのですけれども、大丈夫ですかこのオッサンという所でありましてですなあ・・・・・・・・・

まあ何ですな。そらまあ物理的に値段を無限に引き上げて行けば発行残高の範囲内まで購入するのはそらまあ可能なのはその通りで、「買入が難しくなった訳ではないから残高はまだ増やせる」というのは全くおっしゃる通りではありますが、問題は「値段を無限に上げて行くので買入は大丈夫」という話では無くて、「対象資産の価格を無限に吊り上げる事が政策として適切な行為なのか」という話でありまして、極端に言えば明日100円で償還する国債を100万円で日銀が買って良いのでしょうかという話で、そうなりますと「日銀が勝手に財政を出して日銀オペ先に対してヘリコプターマネーを実施する」って話になりますよね。まあそれは極端な話ではありますが、「買入価格を引き上げれば買入は可能で問題は無い」という説明って突き詰めるとそういう話になりますよねと思う(なお先に念の為申し上げておきますが、恐らく上記のような極端な例の場合は市場価格もトンデモナイ事になっていますので実際にはどこにシニョリッジが漏出するのかは良く判らんですけどね)のですよね。

つーかまあ黒田さんって元が為替方面ですし、為替介入の場合は要するに交換レートですからどの辺まで買っていくとかそういう話って価格の問題ではありますが、債券の場合は「金利」というものがありまして、その金利というのは値段として見た場合には値段が高くなればマイナスになるだけの話かもしれませんが、実体経済においては「名目ゼロ金利制約」というのがあるので、実体経済における名目ゼロ金利制約に引っかかった時点で思わぬところに弊害が出てくる可能性があるというのが問題だという話をしているのですが、どうも為替介入のノリで残高積んでいるだけじゃねえかと疑問に思ってしまいますなあということで。

しかし円安無問題発言と言い、MB積み上げの為にはマイナス金利買入をしても問題無くて弊害も全く無いかのような説明をする話と言い、物価安定目標のマンデート達成の為には他の部分で副作用や弊害が発生しようとひたすらその目標しか気にしないとかいうのって金融政策当局のスタンスとして如何なものかと思うんですけどねえ。

なおその辺の詳しい悪態は会見テキストを見ながら。


○黒田総裁講演はまあいつもの話である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140916a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──

まあ経済物価情勢に関する話は従来の説明をそのまま踏襲しているのですけれども、最近のご批判に対する説明部分をまあ一応見ておきましょう。

・実質賃金がどうのこうのの件

『2.内外経済の動向』の家計の説明から。

『家計部門に関しては、このところ、物価上昇に賃金の上昇が追い付いておらず、物価上昇率を勘案した実質賃金が減少し、それが個人消費を下押ししているという意見も聞かれます。この点については、消費税率引き上げに伴う影響と本来の物価上昇とを区別して考えることが重要です。』

キタコレ。

『4月以降の消費者物価の上昇率は、消費税率引き上げ分によって一時的に嵩上げされているため、賃金の上昇率はこれを下回っています。もっとも、消費税率の引き上げは以前から予定されていたものであり、ここにきて新たな下振れ要因が生じているわけではありません。』

いやでも現実に金出たのは4月からでしょと思いますし、賃金だって消費税上げて法人税下げるからお前ら賃上げしろやヴォケっていう流れだったんじゃないですかねえとは思いますが、「以前から予定されていたのでお前ら最初から分かっていただろう」とは中々お洒落な説明。

『私どもも、消費税率引き上げ以前から、これを前提としたうえで経済・物価の見通しを作成しています。また、消費税率の引き上げが実質所得にマイナスの影響を与えるのは事実ですが、財政や社会保障制度の持続性に対する信認を高めることにより、家計の支出行動に対するマイナスの影響をある程度減殺する力も働くと考えられます。』

えーっと、消費税上げた側から法人減税とかそっちの話ばかりですし、そもそも中長期的な財政維持に関しては社会保障費を何とかしないといけないんじゃなかったと思いますが・・・・・・・・・・

『そのうえで、最近の家計の所得環境についてみると、雇用者所得はこのところ前年比2%程度の伸びで増加しており、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて1%台前半で推移している消費者物価の上昇率を上回る伸びとなっています(図表2)。』

これエコノミスト的な方からすると「消費税抜きの実質賃金」という話をよくするのですけれども、従来から賃金の改定が恒常的に行われている経済だったらそれでも良いのかもしれませんけど、今回って超久しぶりに賃金の改定が行われた訳で、賃金改定自体がトレンドとして定着するのかどうかがまだ判らない中で「消費税引き上げは一時的なので来年は大丈夫」という理屈を持ち出すのってのもどうかと思う次第(賃金改定も一時的だったらどうすんの)なのですけどね。

『具体的には、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施されたことから、所定内給与が前年比プラスに転じました。また、夏季賞与の増加などから特別給与がしっかりと増加しています。さらに、この間には雇用者数も増加しています。今後も、景気が緩やかに回復するもとで、雇用環境の改善傾向は続き、賃金にはさらに上昇圧力がかかっていくと予想されるため、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとみています。こうした雇用・所得環境の改善に支えられて、今後も個人消費は底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみています。』

とまあいつもの説明であります。


・設備投資が出る理屈もいつも通り

その次の設備投資が出てくる理屈もいつも通り。

『設備投資については、海外生産シフトの進展などから伸びは期待できないとの指摘もありますが、私はむしろ、現在は増加しやすい環境にあると考えています(図表3)。』

なお図表3というのが何かのメカニズムの表でもあったりするのかと思ってみると椅子から落ちますので注意しましょう。

『すなわち、第1に、長年にわたる投資抑制の結果、設備の老朽化が進み、円滑な生産に支障をきたす事例が出てきていることから、「更新投資」のニーズが高まってきています。』

生産の拡大を伴わないのであれば一発ものですけどね。

『第2に、人手不足で賃金が上昇する一方、設備投資資金を調達する際の借入金利は低水準であるため、追加で人を雇うよりも「省力化投資」を行う方が有利な環境になってきています。』

それは設備投資にはプラス要因でも雇用環境にマイナス要因になりますがががががが。

『第3に、過度な円高水準の修正が始まってから2年近くが経過し、再び日本国内において研究開発などの「拠点整備のための投資」が実行に移され始めているようです。』

「いるようです」ですかそうですか(−−;

まあいつもの説明ですけどにゃ。


・物価に関しては「需給ギャップ」と「予想インフレ」のいつもの話

『3.わが国の物価情勢』の所の説明もいつも通りである。

『こうした動きの背景には、需給ギャップと予想物価上昇率の改善があります。』

前段の説明はめんどいので引用しないでここから(^^)。

『まず、需給ギャップについては、消費税率の引き上げに伴う駆け込みと反動の影響はありますが、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていることから、過去の長期平均並みであるゼロ%近傍まで改善してきています。』

なんかこの前は1-3の駆け込みモードの時に「改善してきてゼロ近傍からプラス」みたいな話をしていたような気がするのですが何時の間にか駆け込みと反動、というか駆け込みも大きかったけど反動の方が足元大きくてまだ戻ってないような気もしますが基調的にゼロ近傍ですかそうですか。

『また、予想物価上昇率についても、月々の振れはありますが、均してみれば全体として上昇してきています。』

こちらも「均してみれば」ですかそうですか。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が1%を超える上昇を続ける中で、企業の価格戦略については、これまでの低価格戦略から、付加価値を高めながら販売価格を引き上げる動きがみられてきています。』

つ東大日次物価指数

『賃金についても、今年の春闘でもみられたとおり、労使間の交渉において物価上昇率の高まりが意識されるようになってきています。』

この時だけは消費税込みの物価上昇率の高まりになっているのが日銀文学の醍醐味と言っても差し支えありません。

『こうした需給ギャップと予想物価上昇率の改善は、今後も続くと見込まれます。そのため、消費者物価の先行きについては、暫くの間、1%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2014 年度から16 年度までの見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。』

という説明をしていて2年で2%はどこに逝ったのというのもいつもの話ですが、あとここを見て微妙にあれれと思ったのは需給ギャップに関しての数値の置きがどうなっているのかでして、GDPの推移からして需給ギャップのプラス幅がバンバン拡大して物価が更に上昇という理屈が使いにくくなっている中で、逆に「需給ギャップのプラス幅はこの程度ですがインフレ予想の高まりでフィリップスカーブが上方シフトしているからこの程度での需給ギャップでもほらこんなに物価が上昇しています」という説明をおっぱじめますと「物価の数値がとりあえずタッチするかどうか」という話では無くて「安定的に基調的な物価推移が上方シフトしているんですよ」という理屈を繰り出してくる可能性があるなあとふと思った次第でありまして、災い(足元の反動の大きさ)転じて福(物価上昇は需給ギャップのプラス要因よりもインフレ期待のシフトによる政策効果であるという説明)と成すの図なのかもしれないと思うのでありました。



○ドラギのおっちゃんネタの続きで質疑1本だけ

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014

・ジャクソンホール講演に関するドラギのおっちゃんの演説を鑑賞

つーことで昨日の続きだけはネタにしておきたいので。

『Question: (前半割愛、というか昨日のネタ)And my second question would be on your calls for using the fiscal leeway we are having, and how are the responses from governments? Is it true that there was some frustration in certain governments, or have you been misinterpreted?』

財政云々のジャクソンホール講演に関して(ドイツの)政府方面から批判が出ているようですが如何?

『Draghi: (前半割愛)Yes, you are absolutely right. There have been many interpretations on what I said, but in fact, I thought I was exceedingly clear in what I said in Jackson Hole.』

ほうほう。

『Let me just try to sort of recap, without going through - actually, I expected a question like that, so I thought I should read through the speech again, but I’ll save you from that.』

その質問を待ってました!と演説モード開始(^^)。

『The idea is that there are, I would say, three instruments for revamping growth. Structural reforms, fiscal policy and monetary policy. During that presentation, I started with monetary policy, I went through fiscal policy, but then I concluded that there is no fiscal or monetary stimulus that will produce any effect without ambitious and important, strong, structural reforms. So in a sense, the key point is to do structural reforms.』

財政金融政策だけではなく構造改革が重要とな。

『On the fiscal policy, I said four things.』

で、財政については4点を申し上げましたと。

『The first is that, and I repeated this in the Introductory Statement today, the Stability and Growth Pact is our anchor of confidence. The rules should not be broken.』

『Second, within the existing rules, there is some flexibility, but within the rules, and also, I would add, that these discussions on flexibility should not be viewed or should not be such that they would undermine the essence of the Stability and Growth Pact. Within the Stability and Growth Pact, one could do things that are growth-friendly and also would contribute to budget consolidation, and I gave an example of a balanced budget tax cut. Reducing taxes that are especially distortionary, where the short-term multipliers could be higher, and cutting expenditure in the most unproductive parts, so mostly, actually not mostly, entirely, current government expenditure.』

1番目が「Stability and Growth Pact」を順守することが必須という話ですが、次が「でも柔軟な活用が重要なのにそういう議論が少ないのが良くない」という話をしていて、どう見てもドイツに財政出せですなこりゃ(^^;

『I also said, and that’s the third part, that we should have a discussion on the fiscal stance of the overall euro area.』

3番目も「各国の取り組みでだけは無くユーロ圏全体としての議論が必要」という話で、これまたドイツ何とかしろという話といいますか、ユーロ版地方交付税交付金という訳にはいかないでしょうが、何らかの施策が必要と言いたいのかなあとは思うのでありました。深読みしすぎかもしれませんが。

『And finally, I made a point about - which actually was a reference to a programme that had been launched by the new president of the Commission, Mr Juncker - about a very large public investment or private investment programme in the Union, and he gave a figure of ユーロ300 billion. This is what I said. 』

EUによる公的及び民間による投資プログラムがあるそうな。

『Let me add one thing from a confidence strengthening viewpoint.』

4つで終わりかと思ったらさらにもう一つ。

『Because in many parts of the euro area, there are several reasons why growth is not coming back, but one of them is actually that there is lack of confidence. There is lack of confidence in the future, lack of confidence in the prospects, in economic prospects, of these countries. From a confidence viewpoint, it would be much better if we were to have first a very serious discussion on the structural reforms and then a discussion about flexibility.』

で、成長モメンタムが落ちている(から追加緩和を実施した)のに対して重要なのはコンフィデンスの回復で、そのためには構造改革と財政のフレキシビリティーが非常に需要である、という話をしていまして、まあ政府サイドのケツを結構強烈に叩いている感じでもありますし、金融政策単体では限界があるという話をしているようでもあります。

『That’s the idea, that’s a suggestion, but that’s what I said in Jackson Hole, so if there have been over- or under-interpretations, it’s not my responsibility. I think the message came out quite clearly.』

まあ演説して最後に「That’s the idea, that’s a suggestion」と言ったのはちょっと勢いで言い過ぎたかもという事なのかもしれませんが、まあ今回の質疑応答の中で一番の演説パートですのでやっとネタにして遅くてスイマセンでしたという事で。








2014/09/16

お題「短国買入実施とな/ECBドラギ総裁会見虫干しネタである」

FOMCは久々に会見付きなので楽しみですな。

○相変わらず短期関連はネタが続くのでありました

もう短期のマイナス金利ヒャッハーだの師匠講演と会見が相変わらずのアレだのと先々週のECB以来ヒャッハーモードが続いて、書き物でコピペがおかしくなったり冒頭でうんこを連発したりとすっかりアレでしたが、短期市場のヒャッハーはまだ続くのでありまして・・・・・・・・・


・短国買入2500億円実施とな

金曜は直近カレント3銘柄が全部マイナスという状況の中でさて短国買入どうするのよという感じだった訳でして、まあ9月の中間ラップとかマジでどうでも良くて本命は10月からの3か月物を如何に円滑に購入するか、と考えたら先行き考えたら、どうせ期末ニーズが入ってくる9月だし、ここで期末ニーズに競合する形で日銀が買入をして短国市場をおかしくする必要もなかろう、とは思ったのですが・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140912.htm
国庫短期証券買入 2,500 2014年9月17日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年9月22日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年9月22日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2014年9月22日
国債買入(残存期間25年超) 300 2014年9月22日

ということで輪番オペに加えまして短国買入をオファーしてくるの巻でして、しかも買入オファー額が2500億円とかナンジャソラというロットで入って来まして、しかも売買参考統計値がマイナスの直近3銘柄も買入対象となりまして、火曜日だと新聞報道的にマイナス購入(でまあ多分マイナスが入ったとは思いますが)でしたが、まあ金曜はどこからどう考えてもマイナス金利の買入をする気満々という打ち方となりました。

結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140912.htm
国庫短期証券買入 5,447 2,502 -0.009 0.000 88.8
国債買入(残存期間1年超3年以下) 8,208 3,005 0.003 0.003 68.4
国債買入(残存期間3年超5年以下) 7,924 2,000 0.005 0.005
国債買入(残存期間10年超25年以下) 3,116 1,004 0.007 0.009 3.9
国債買入(残存期間25年超) 1,334 301 -0.005 -0.003 88.0

・・・・・・・えーっと2500億円ぽっちの買入で平均引けは兎も角として足切りが9糸強と大流れとなるとはもうどんだけ市場に玉が無いのかという所で、確かに投資家は期末ニーズで持っている訳だからそう簡単に日銀に売却しないでしょうし、大体からして今日銀にロットで売却したは良いけどでは購入できますのというと買えないという状態なのですから誰も売らないでしょうし、業者は恐らく碌に在庫が無くて、入札で落札上位の人が持っているかも知れません程度の状況なんでしょうなあという状態でして、2500億円とかの超少額(短国市場にしては)の買入をしたら市場の悲惨な状態が更に分かりやすくなるというアチャーな結果となりました。

#つーか応札5447億円って何よ

でまあ2500億円とか殆ど残高積み上げ的に見た場合に誤差の範囲内にしかならないのに、わざわざマイナス金利を購入するという断固たる決意をお見せになるわ、お見せした結果として短国市場が盛大に壊れた状態であることを白日の下にさらすと共に、マイナス金利購入だけではなく短国市場が壊れた状態であってもMB積み上げの方が重要なので壊れた市場をさらに壊してでも短国買入を継続するという決意までお見せになられてしまいますともうねという所です。

#そら引値も更に全般下がる罠

ま、中央銀行が市場を壊すのを全く気にしない(というか積極的に壊そうとしている位の勢い)という形で買入をしますとそらまあ市場機能もへったくれもありませんからマイナス金利は期末要因抜けたらマイナスそのものは収まるかもしれませんけれども、兎に角市場機能など知らんという動きが控えている以上短国の金利は上がらないでしょうし、他にも色々と影響しそうですなあとゆー所ではございます。

しかし「壊れた市場を修復する為に資産買入政策を実施する中央銀行」というのは信用緩和政策として実施されましたけれども、「定量的に何の効果があるのか不明なマネタリーベース積み上げの為に市場機能を積極的に壊す中央銀行」というのは前代未聞にも程がありますが異次元緩和で中の人たちもすっかり異次元緩和されてしまったようで誠に遺憾の極みでございます。


・貸出増加支援が意外に出ている件

9月の貸出増加支援結果がでました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140912b.pdf

『新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 25,865 億円
貸付先数 32 先』

という事で、今回は1兆円そこそこ位しか出ないのかという予想もあったのですが、2.6兆円近くの新規実行となりまして、これはMB積み上げに朗報という所でございます。つーか貸出増加支援がこの程度出るのであれば何で無理繰り短国買入を実施するのかねと思う次第(借入予定額のヒアリングとかしてなかったら仕方ないけど)でして何だかなあという気も。

でまあ話をちょっと戻して2500億円の短国買入ですけれども、貸出増加支援が意外に出ているのはそれはそれとしても、足元で短国金利マイナスの中で短国買入をスキップしてしまうと「日銀のマネタリーベース積み上げに技術的困難が発生している」という風に解釈されて、12月の末残目標もあるし、2年で2%の物価安定目標達成もあるしという事を考えた場合、目標期間の手前で「異次元緩和政策の技術的な限界」という話が出てくるのがアナウンスメント効果的にマイナスとなるという考えもありまして、まあその結果として買入は継続してオファーするという事になったのでしょうなあとも想定されるところです。

とは言いましても現実問題としてオペが限界に達しているのは金利に出てしまっていますし、昨年の12月のようにMBの中間メドの数字を出していた所での着地が見えた時には短国買入をスキップしたりというのもありましたので、何か先週火曜日に短国買入を実施したのが以降に起きたことの全てを覚悟して行ったことなのか本当に大丈夫かよという風には思うのでした。


○黒田総裁の挨拶(リアル挨拶)は小ネタで

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140912a.pdf
政策研究大学院政策研究大学
学位記授与式における挨拶 の邦訳

邦訳って事ですので本チャンは英文なのですがめんどいので見ていないのと、何がどうなっているのか良く判らないけれどもこのPDFのコピペがおかしく出てくるので(他の日銀から出てくるPDFは普通にコピペできる)一番吹いた所だけ引用します。

『理論と実践を如何にバランスするかについて、何か1つの決まった答えが用意されている訳ではありせんが、皆さんに忘れないでいて欲しいのは、目の前の現実に囚われ過ぎると思考幅が狭くなり、本当に必要な政策対応をとることが出来なくなる可能性があるということであり、理論に立ち返ることが、そうした時に思考の自由度を取り戻すきっかけになり得るということです。』

・・・・・・・・・つまり目の前の悪い経済指標に一々反応しないということですねわかります。


○ドラギのおっちゃん会見鑑賞会ネタの今更ながらの続きである

というか8月決定会合議事要旨ネタとかも味わいがあるのに先週は短国市場ヒャッハー状態と師匠の高座で完全にアレになっておりましたわ(大汗)。今週せっせと立て直します。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014

先週火曜にネタにして以来続きをやっていませんでしたすいませんすいません。

・ABS買入を不胎化するのか&今回の利下げが何でまた急に来ましたねんという質問

『Question: My first question is more a comprehension question on this covered bonds and ABS programme to be launched. What about the sterilisation of the purchase of these assets? Is it something that is in mind, or is it not relevant, because we heard about sterilisation of purchases of other kinds of assets, like SMP for example. So it is not a question, but maybe you can clarify this.』

『And the second one, after having announced a bunch of measures in July, three months ago, you’re acting now, but in a surprising way with regard to interest rates, and so maybe the impression could be that the ECB is acting in a kind of hasty manner. So can you maybe comment on this or say, why these steps now and not the whole thing three months ago?』

つーことで小見出しにしたような質問ですが、後半は「何か今回の利上げがエライ慌てて実施したように見えますが」というニュアンスでの質問ですの。

『Draghi: This is a very natural question to ask, and one should ask, what has changed since then?』

最初どっちの質問に対する「自然な質問」かと思いましたが後半の質問に対してですな(^^)。

『What happened in August is that we’ve seen a worsening of the medium-term inflation outlook. We have seen a downward movement in all indicators of inflation expectations across all maturities. As I had a chance to say in Jackson Hole, one of the most used measures, the five year in five years inflation, had dropped by something like, I remember 18 basis points, just below 2%. So after the speech, some of these measures backed up. Some of them went back to their original level, but most of them did not.』

ということで、足元での変化は「8月に中期的なインフレ見通しが下がった」というのを「インフレ期待が全ての年限において下落の動きが見られること」というのが今回の追加緩和措置の背景としています。

『Add to this that I would say most, if not all, the data that we got in August, both hard and soft, on GDP and inflation, as I said in the introductory statement, showed that the recovery was losing momentum. The growth recovery was losing momentum.』

で、もう一つの理由が「成長のモメンタムが失われてきている」という事でして、ちなみに会見のこの先でも「recovery was losing momentum」というのを連呼していて、回復のモメンタムが失われてきているというのを強調しているのがポイントのようです。

『So the Governing Council basically decided to a great extent to strengthen the measures, complete and strengthen the measures decided in June. In this sense, the ABS outright purchases could be viewed as a measure that strengthens the TLTRO. So that’s the reason essentially. And again, the change in interest rate is also - I would say that the main reason is to make sure that there are no more misunderstandings about whether we have reached the lower bound. Now we are at the lower bound. So I think that’s the answer to your point, which is a very legitimate question really.』

ということで今回の措置を実施したということですが、前回マイナスにした時にローワーバウンドという話をしていた金利をもう一発下げたのは前回の説明にmisunderstandingsな所がありましたが、今回は本当に本当にローワーバウンドという事ですので、まあここからの追加措置は金利以外という事になるんでしょう。

なお不胎化に関する質問はスルーしていますが、まあそもそもSMPの不胎化停止したくらいですから不胎化はしないんでしょう(質問者もそのつもりのようです)。


・どういうABSを購入するのか&利下げで何を狙っているのか

『Question: I have two questions. The first is on the purchase programmes that you announced. Do you have more details of what kind of ABS you are planning to buy? Mortgage, residential mortgage, just to SMEs?』

『And on the rate cut, could you give a bit more light on what you expect to achieve with a rate cut? It will make the TLTROs more attractive? This is what I’m thinking, but this is the question I’m asking you.』

ということで・・・・・・・・・

『Draghi: The purchase of ABS will involve both newly created and existing ABS and would also include the real estate, the RMBS, real estate ABS. It would also include a fairly wide range of ABS containing loans to the real economy.』

不動産担保証券なども含めて広い範囲のABSを購入するそうな。

『The other question is about the interest rate. Well, it’s a convention, a standard monetary policy decision, and one expects effects according to the usual line of thinking, but in this case it clearly signals to the banks that are going to participate in the TLTRO that they should not expect any further lowering in interest rate, so they should not hesitate to participate in the TLTRO because of this reason, because they could wait for a lower interest rate in the future. 』

特に追加のツッコミは無かったのですが、ここの説明の中で一つアチャーなのは政策の狙いについて「a standard monetary policy decision」としている事でして、さっき(と言っても先週火曜引用ネタの部分ですが)「テクニカルな調整」と言っていたのは何だったですねんという所で、まあ先週引用した「我々は既に担保としてABSを受け入れているのでABSには詳しいです(キリッ)」→「だったら何でブラックロックをABS買入プログラムのアドバイザーに起用したのでしょうか(ニヤニヤ)」というコンボが炸裂したように、どうも今回の追加緩和は色々と細かい所の説明が雑というか練りが甘くなっているなあという感じです。

つまり、何か議論百出でとりあえず打ち込めるものを打ち込んでみたという印象を強くするものでありまして、だからこそ説明の中で微妙なボロが出てくるという話で、従いましてこの決定内部でも相当議論があって出来上がりになる所でつぎはぎとか入ったのではないかという気もするのですがどうでしょうかねえ。

なお、この説明の後半にありますし、質問者が質問していましたけれども、もう利下げが無いとなるとTLTROの借入枠を利下げまで温存するという思惑は起き難くなるわなとは思いますのでその部分は質問者とドラギ総裁に同意。


・追加緩和の背景は判ったが見通しが変わっていないとはどういう事ぞという質問

いやあ中々良いツッコミが続きますよ。

『Question: I have two questions. Considering the inflation expectation in your staff projections, which have not moved for 2015 and 2016. Why have they not moved if you’re seeing a clear trend of lower inflation in the future?(後半割愛)』

良いツッコミですな。なお2番目の質問がまた大ネタ(ジャクソンホール講演に関してで答えも長い)なのですが時間の都合上(汗)明日に続きます。

『Draghi: On the first question, the staff’s projections foresee a return of inflation and an upward trend essentially because of the recovery, of the exchange rate, of the effects of our monetary policy, of better prospects for global demand.』

スタッフ見通しは今回の金融政策も加えての先行き見通しですよとかワロタという感じですが、ここでもしらっと為替レートの単語がありまして、とにかくユーロ安にしたいのは良く判るというものです。

『So by and large, these are the underlying assumptions, and in some cases, I do think they also foresee an increase in the price of food. So there are assumptions. The usual assumptions are behind this. The downward trend that we are witnessing this year is viewed as a temporary deviation from a baseline which will see inflation expectations going back toward 2%, but not at 2%, in 2016.』

ベースラインシナリオは同じで足元の動きは一時的な乖離だがという説明をしているのと、インフレ期待が下がって経済の回復モメンタムが失われつつあるという説明をしているのとがどうもこう上手く繋がっていないように思えますが、見通しは下げないというのも何だかねえとは思うのでした。




2014/09/12

お題「さらにしつこくマイナス金利談義/師匠の記者会見は記者のツッコミが素敵でプチ炎上モード」

最近どこぞの新聞社を巡って盛大なうんこの投げ合いが展開されているのだが、ライバル叩きと自分らの勢力拡大の為にあまりにも下品にうんこを投げ合っていると昭和初期の政党同士のうんこの投げ合いと同じような末路を辿るんじゃねえのかと心配なのですけどねえ。だいたい事実関係捻じ曲げ報道がケシカランのはそうだがうんこ投げてる連中も普段から盛大にやっている訳で、ここでうんこの投げ合いをしても結局全体の首を絞める行為になるように見えますが、こういうのが貧すりゃ鈍すって奴でしょうなあと。

○短国市場のマイナス金利は3M新発にも延焼しておりますな:さらにしつこくマイナス金利談義

ということで昨日の注目ネタ(かどうか知らんが)の3M短国入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140911.htm

(3)募入最低価格 99円99銭8厘5毛(募入最高利回り)(0.0060%)
(4)募入最低価格における案分比率 89.2441%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘3毛(募入平均利回り)(0.0028%)

前場から何か3M既発銘柄でホイホイマイナスの出合いが業者間で散見されてあちゃーという感じで推移しておりまして、何かもう前場引け時点でこりゃ1bpまで足切りが届くのかというような感じ(ただし盛大に流れる可能性もあってその場合は2から3が止まり所ってイメージ)だったと思われますが、平均が0.28bpで足切りが0.06bpという結果に。

んでもって落札結果発表後も全然コケる気配もなく、とか思ってたら市場推計の不明玉が4兆円とか見たことが無い数字になっておりまして(まあ推計値ですので本当は誰かが持っているのかも知れませんけど)、結局新発3Mは最終的にはマイナスの出合いになるわ、何か知らんけど月曜の6Mが更にレート進んでいましてマイナス深くなるわというあばばばばーの有様になっておりまして、日本相互証券の引値が新発479回がマイナス0.7bpだわ先週の3Mの477回がマイナス0.1bpだわ6M新発の478回に至ってはマイナス1.2bpだわという残念にも程があるレートになっておりまして、直近発行3銘柄が全部マイナス金利というアチャーな事案となりまして、いやあ日銀の火曜の短国買入が見事な燃料投下というかガソリン持って燃える火の中に突っ込んで行ったという感じで、盛大に短国市場が焼け野原になってしまいまして、関連市場(現先とか)にも延焼とかもう完全に偉大なる日本銀行様による無慈悲な砲撃によって火の海にされてしまったの巻。

ちょうどまあ足元では期末要因があって為替絡みで円転コストが爆安状態とかの要因も相俟っておりまして、そのタイミングで6M新発短国の買入で年末残高を稼ぐ買入をオファーしたらもう大々的に丸焼けになってしまった次第ですので、期末要因と海外要因が一巡すると少しはマシになるかなとは思います(というか思いたい)が、これ月末まで継続されるだけでも色々と弊害が滲み出てくるだろうなあと考えられます次第です。


でまあ何ですな、水曜の日経1面に思いっきりでていましたから皆様ご案内の通りでございますが・・・・・・・・・・・

http://www.nikkei.com/article/DGKDASGC09H0O_Z00C14A9MM8000/
日銀、損失覚悟で資金供給 短期国債オペ 初のマイナス金利 償還額より高く購入
2014/9/10付 情報元 日本経済新聞 朝刊

というような話ってえのはまあ火曜日の買入結果が出て「これだとマイナス買入してるのではないか」という話題になった辺りから為替が明らかに円安に振れていましたから、今回のマイナス金利での短国買入というのは相当なインパクトを市場に与える結果となりましたが、まあ当然ながらマイナス金利で買う気が無いのであればヒアリング段階であの程度(買入オファー5000億円に対して応札8000億円程度)の札しか入らないのがある程度想定できる段階で買入のオファーを行わないでしょうし、行うにしても引値でその当時だと1銘柄だけ突出して金利が低くてマイナス利回りになっている3M新発の477回債を買入対象から除外するという選択肢もあった訳で、それらの選択肢を排除して買入を実施したということですから、まあ「日銀の決意を示す為に損失覚悟で買入実施」という話になるし、「日銀も遂にマイナス金利政策を実施」と特に海外辺りがヒャッハーとなるのも当たり前ですな。

そんでもって翌日の師匠の高座では会見でマイナス金利に関しての弊害とか副作用に対する考慮はないのかという質問に対して全く無頓着な回答(後でネタにします)をしてますし、黒田総裁も円安は問題なしという話をしている訳ですので、まあ今回わざわざ短国市場の需給が超逼迫する中で敢えて出来上がりマイナス金利での買入となる短国買入を実施した、というのはマイナス金利の導入による円安誘導という日銀の強い意志を行動で示したもの、とまあそういう解釈を市場全体からされるのもまあ当然の結果であります。


その一方で(これまた後でネタにしますが)金沢金懇でも岩田副総裁は懇談会出席者(つまり地元企業の経営者など)から為替市場の安定が望ましいと言われたり、それよりも以前の支店長会議の時に梅森名古屋支店長が記者会見でこれ以上の円安は企業にデメリットという声も多いという話をされたりしておりまして、遂に足元では経済同友会からも・・・・・・・・・

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140910/k10014481211000.html
長谷川代表幹事 さらなる円安歓迎しない
9月10日 5時07分

『経済同友会の長谷川代表幹事は、訪問先の中国で記者団に対し、外国為替市場で円相場が1ドル=106円台の円安ドル高水準になったことについて、「さらに円安が進むことは多くの人が歓迎しない」と述べました。』(上記URL先より)

ということで円安に振っても誰得であるという話が産業界から続々出ているという状況なのが実にこう日銀の毎度の間の悪さクオリティを遺憾なく発揮しておられる次第でして、産業界からこのような声が出ている中ではあっても円安誘導を強行しているということで、「2年で物価2%がマンデートなので、実質購買力の低下も産業界の要望も知った事か物価が上がれば良いんだよ」というような「やれと言われたからやったんだもんボク悪くないもん」的なヤケクソプレイに打って出られましたかそうですかという図に完全に嵌っているのが実に見事なお話ではありますし、当然ながら短国買入実施する前にヒアリングとかしていて「やったら日銀がマイナス金利政策みたいな捉えられ方をしますよ」という指摘も市場からされていたと思いますので、このような諸々の動きに対する覚悟を持って火曜日の短国買入を実施されたのかと存じます次第。

しかしまあ何ですな、マイナス金利付けにいったタイミングの間が何ともという所でして、お蔭で為替市場のボラが高まった上に、為替の円安進行を受けて債券市場では久々にボラが出ながら金利上昇という形になっておりまして、日銀の短国買入でマイナス金利買入(と思われる)事象を作りに逝った結果としてマーケットに盛大にボラティリティを提供したという事で久々に破壊力のある日銀オペだったという感じですな。


・・・・・・・・・などとつらつらと申し上げてみましたが、まさかとは思いますが今回の買入は単に6Mの新発短国の買入残高を確保して年末のMB目標を進捗させようというだけの意識で実施したらマイナス金利(を買ったと言われても仕方のない結果)になっちゃいましたよテペヘロというような話だと致しますと、その無造作さと乱暴さに呆れて物も言えない(散々言ってるけど^^)わけでございますし、まさかとは思いますが金融市場でマイナス金利が恒常的に付いた場合に実体経済における名目ゼロ金利制約との間で起きる可能性のあるフリクションという副作用について何も考えずにいるなどいう状態で無邪気にお花畑を飛びまわっていたら地雷を踏んでさっきまで綺麗なお花畑だったのが一転して焼け野原という事案になった等という事は賢明な日銀諸氏におかれましては当然のごとくあり得ないと存じますが、アタクシの杞憂であることを切に願いたい物であります(-_-メ)。

一応本日は金曜日ですので短国買入デーではあるのですが、どう見ても今日買入入れても6Mが入る感じでも無いですし、キャピタル狙いで買入をして日銀打ち込みヒャッハーで強くなっているとしても、その場合って結局の所6Mをさらに深いマイナス金利で買う事になって焼け野原状態は更に地獄絵図へと発展していく訳でございますが、それだけの覚悟を示したいというのであれば別にまあ今日買入を入れるのも可能性としてはありますが、市場機能はかなり再起不能なダメージを受けるので正常化する際に物凄いコストが掛かる話ではあります。

でまあ需給面というのを考えたらカレント3銘柄がマイナス引けという事態だとこれ普通に考えたら短国買入入れているどころの騒ぎじゃないとなりますので、そうなりますと火曜日の5000億円の買入によってその先のオペレーションを非常に窮屈にしたという話になるので、お前の落とした斧は金の斧か銀の斧か状態ワロスワロスという話になるんですが、まあいずれにせよマイナス金利買入(と思われても仕方のない結果)の実施に対してこれだけのリアクションが起きる事になった訳ですが、どういう覚悟で買入を強行したのかが実に興味深い所ではありますので、是非次回のMPM後の定例会見ではその辺のご覚悟についてもお伺いしたいものであります。


なお、これまたしつこく申し上げていますが、日銀の「資産買入でマイナス金利」というのはECBの「預金ファシリティのマイナス金利適用でマイナス金利」というのと表面上の現象としてのマイナス金利は全く性質の異なるものなので(という話は恐らく短期市場で実務やっている人以外だと相当のマニアじゃないと直ぐにピンと来てくれないと思いますが・・・・・・)、量をターゲットにした金融政策では無く、金利政策として意図的にペナルティ金利を導入して派生して起きる量の縮小はスルー(今回ターゲットを絞った資産買入(要するに信用緩和的な物)を入れましたが)している現在のECBと違いまして、MB拡大を円滑に実施する(というと格好が良いが要するに札割れ対策)ためにプラスの預金ファシリティ金利以下の利回りでの債券購入をしていたらついにプラス金利で札が足りなくなってマイナス金利に突っ込んでしまった(かどうかはまだ確定していないが)という日銀とは、そもそも意図的か否かという部分からして違う訳で(いやまあ今回意図的にマイナスを付けに行ってるのだったら意図的かも知らんがMPMでスタンス表明していないという意味での意図的という話ね)、単に資産買入によるMB拡大政策の枠組みが実務的にフィージビリティーの限界に達しつつある為に起きた事象だとは思うのですが、まあ当然ながらそのような背景よりも現象としての「中央銀行がマイナス金利での資産買入」の方が注目されますからね。

なお、ちょうどその辺の質疑も師匠の会見であって、まあ師匠の答え自体はああそうですかという感じなのですけれども、その答えが出てくる背景というのを考えるとちょっとうーむという感じがする、というのはこの次にご紹介いたします。


#自分でも論点を整理しながら頭の体操をしているので、毎度話がくどくて誠に申し訳ございません



○師匠の会見のクオリティが壊滅的な件について

ベンダーニュースで見た時にはそんなに炎上している感じにも思わなかったのですけれども、これは壊滅的クオリティとしか申し上げようがないですので鑑賞鑑賞。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409b.pdf

・まずは軽くジャブから

『(問) 大きく2 点お伺いしたいと思います。先週来、急激に円安が進んでいますが、製造業を中心に、海外からの部品調達も増えていて、円安は必ずしも望ましいことではないという声も聞かれるようになっています。株式市場でも、あまり好感していないようで、円安が進んでいるにもかかわらず、あまり株が上がっていません。まずは、円安についての見解をお伺いしたいと思います。』

『これに関連して、今日のお話でも、円安は物価上昇をもたらすということが統計的に必ずしも成立していないという話がありましたが、供給制約が原因でコストプッシュ型のインフレになっているのではないかという懸念が根強くありますので、それについての見解を改めてお聞かせ下さい。(後半は後ほど)』

ということで、今回の会見ですが当然ながら物価に関する質問が多くなっていて、あとは為替の質問が多くて、なんでこんなに集中するのだろうと思ったのですが、その理由は後で分かります。

『(答) まずは円安が進んでいることが経済にどのような影響を与えるのかということですが、幾つかあると思います。ひとつは、輸出を促進する効果があるということです。ただ、それは、海外経済がもたついているという要因とか、あるいは海外生産が増えているという構造的な要因があるため、円安の効果で輸出が伸びるというのは、例えば2000 年代中頃に比べると、やはり弱いということは否めないと思います。それから資源調達の面では、円安は困るというような影響はあると思います。』

講演テキストの方では金融緩和のメカニズムとして予想インフレ率が上がって実質金利が下がると外貨高円安になって資産効果は出るわ輸出は増えるわでウハウハという話をしていた筈なのですが、こちらの「円安は困る」とは何のことでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

『ただし、円安が進んでも、それをさらに乗り越えていくというような企業の取り組みも進むのではないかと思います。』

なんか急にシバキアゲ根性論のようなものが飛び出しておられますが、円高のせいでエルピーダがどうのこうのとか師匠一派の皆様は仰せになっておられましたが、つまり以前仰せになっておられたような日銀のせいでエルピーダがどうのこうのというのは、「それをさらに乗り越えていくというような企業の取り組み」が足りなかったという事になるんでしょうか。自分が外から勝手放題言っている時には全部金融政策のせいなのにいざ中に入ると円安の問題はお前らで何とかしやがれとはこれまた豪快な説明に恐れ入るしかありません。

『また、物価上昇との関係では、今日申し上げた通りであり、円安によって、短期的、一時的に物価が上昇するということは間違いないと思いますが、もう少し時間が経ってくるといろいろな調整活動等が出てくるので、それだけでは中長期的な物価高の要因にはならないということです。やはり最終的には金融政策がどうあるかということに大きく依存すると思っています。』

置物理論に基づく金融政策で超円高デフレを克服という趣旨の著書があったように思いますが為替は関係ないということですかそうですか。


・2年で目標達成しない場合のツッコミキタコレ

というかこれ今引用した実質冒頭の質問の続きでして記者の皆さん優秀ですな。

『(問)(前半は直上で引用した部分)2 点目ですが、副総裁は、2013 年3 月に、2%の物価目標について所見を述べられたときに、2 年で達成できなかったらお辞めになるというようなご趣旨で強い決意を示されたと思います。あれから1 年半が経って、今日も、趨勢的に2%の達成はできるというご趣旨で発言されたと思うのですが、2013 年3 月時点でのご覚悟に今の時点でお変わりはないか、ということを改めてお聞かせ下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答)(前半は直上で引用した部分)それから2 年程度云々というご質問ですが、今一応そういう状況に向かっているので、それが達成できなかったらどうかということを今は考えていません。いずれにしても、オントラックであるし、オントラックを持続できるような金融政策を実現できるように努力したいと思っています。』

とのことですが、講演の方では「2015年度を中心とする期間」に2%に達するという話でありまして、既にこの時点で2年で達成できるというタイムスケジュールになっておりませんが、そうなりますと何がどうオントラックであるのかという点についてより明確な説明、すなわち講演の方で説明したのは展望レポートで示した見通しだが、岩田副総裁の見解としてはあくまでも2年間である所の2015年春に2%に達するという見通しであると断言して頂きたい所ですが、そういう話は一切しないところが卑怯者クオリティとだけ申し上げておきましょう。


・需給ギャップと予想インフレ率に関するツッコミ

一つ飛ばして次の質問もテラ優秀。

『(問) 講演の中で、物価を押し上げている最大の要因は、「量的・質的金融緩和」による需給の改善であると述べられています。』

さよですな。

『ただ、需給ギャップについてですが、足許で、4〜6 月は、消費増税駆け込み需要の反動で大きく落ち込んだこともあって、民間の今年度の成長率見通しは、ほぼ0%に近いような状況になっています。日銀は、10 月末に展望レポートを公表して、そこで新たな見通しをお出しになると思うのですが、下方修正は必至ではないかとみられています。』

(;∀;)イイシテキダナー

『物価を決めるもうひとつの重要な要因と指摘されている期待インフレについても、1 年半前、2013 年の4 月4 日に「量的・質的金融緩和」を導入した時と比べれば、確かに水準は高いのかもしれませんが、3 か月前、あるいは6 か月前と比べてみると、せいぜい横ばい、ないしはBEI等をみるとむしろ下がっているのではないかという指摘もあります。』

(;∀;)イイシテキダナー

『需給ギャップがこのような状況であり、期待インフレもそんなに上がっていないということであれば、やはり物価の上昇について、どうして上がっていくのかということになるのではないかと思います。(この先も面白いので後ほど)』

で、師匠の説明が全然説明になっていないのがもう壊滅的。

『(答) まず需給ギャップに関してですが、成長率が鈍化しているというご指摘でした。今後、見通しは、展望レポートでまとめていくので、今、申し上げることはできませんが、私は、需給ギャップは縮まっていくというように思います。』

?????????????

『それから、需給ギャップの見方として、私は、雇用指標の方を注視しています。』

ほうほう需給ギャップのファクターとしてはGDPではなく雇用だと仰せで。

『雇用は相当タイトになってきていると思いますので、その面から需給ギャップを捉えると、やはり需給ギャップの改善が物価を押し上げる要因として働いていくと思っています。』

雇用だけ逼迫しても別にそれだけで有効需要が増えるんでしょうかねえ。それ雇用が逼迫する背景に何があるかによって変わってくるんじゃないですかねえ。

『それから、予想インフレ率は、全体としては、やはり上がっているという傾向には、変わりはないというように思います。』

はて???

『ご指摘のBEIは、10 年物では、8 月頃から少し下方のトレンドにあったかと思いますが、それは個々の投資家の益出しなども短期的には影響しますので、そういうことを繰り返しながら、BEIもだんだんと上がっていくのだと思います。』

えーっと、益出し云々とかおじいちゃん自分で何を言ってるのか分かってますかねというのがまずは頭の痛くなる所ですが、さらにBEIが今後上がっていく見通しの根拠が無いんですけど大丈夫ですか????

『BEIは、8 月末で下げ止まって、今また上昇トレンドに戻っていると思います。』

ほほう。まあ円安進行の影響ですけどまあ良いとしましょう。

『そのほか、BEIだけではなく、企業、家計がどのように予想しているかは、もう少し色々なデータで見ています。そういう面で、全体に上がっているというのは、単月での振れはありますが、その傾向は、変わっていないのではないかと思います。(続きは次のコーナーで)』

「単月の振れはありますが」って今まさに仰せになった8月末から直近という2週間にも満たない期間のものがまさに「単月の振れ」じゃないんですかねえと思いますが、実は最後の質疑の答えの中ではこんな話をしていたりするんですよね。10ページ目に飛びますけど。

『(答)(途中割愛)。ただし、単月でみれば、マインドが足許では少し下がるというのは避けられないので、もう少し長い目でマインドの変化とか、そういうものをみていきたいと思います。それを早急にマインドが弱っているとか、景気ウォッチャーが単月で下振れたからといって、マインドが落ちているという風に、判断するのは避けたいと思っています。』

8月末から2週間の動きを捕まえて「下げ止まって今また上昇トレンドに戻っている」という発言をしたお方が同じ時間帯に同じ口で申し上げたとは思えないこの時間軸自由自在な説明、ともうしますか、はいはいおじいちゃんさっき逆の話をしてたでしょというワンダーランドな世界に最早ひれ伏すしかありません。


・師匠がどうも講演で謎のアドリブ炸裂したために見事に丸焦げになっている件について

今引用した質疑の最後の所が実は大変に香ばしくて師匠の姿焼きがこんがりと出来上がっているということで質問した記者様マジ有能。

『(問)(前半は直上で引用した部分です)むしろ、今、円安が加速しており、先程の講演では、講演録にないご発言ですが、円安自体がデフレ要因になる可能性があるので、金融政策で対応が必要だということもおっしゃいました。アドリブで講演中におっしゃったと思いますが、そういうことからすると、足許の円安は、むしろ今後の金融緩和、追加緩和の必要性を強めるようになるのではないかと思うのですけれど、如何でしょうか。』

な、なんだってー!!!というかそういや一部では「円安進行で実質所得が減少するから追加緩和待ったなし!!」とか言い出す人まで居るというのを聞いて耳を疑ったのですが、実は元ネタは師匠のアドリブだったんですね!!!!

『(答)(前半は直上で引用した部分です)円安というのは、それ自体が短期的には物価を上げる要因であると申し上げたのですが、中長期的にみると必ずしもそうではないので、それがデフレ要因であるかというところは、私がもしそのように言ったのであれば、それは言い間違いです。』

ほうほう。なおこの後同じ記者と思われる方の無慈悲なツッコミが待っておりますのでお楽しみに。

『正確に言うと、こういうことです。円安は、まずは物価を上げる要因になるわけです。しかし、実質所得が輸入物価の上昇等で下がってくるので、他の物を買う際には節約しようとして、物価を下げる要因にもなって、その上げる要因と下げる要因がどこまで相殺し合うかということです。』

講演テキストの方にはそんな説明一切無くて、実質金利が下がって外貨高になってウハウハという話しかございませんでしたがががが。

『時間の取り方によっても違うと思います。上げる圧力に対して、下げる圧力もありますので、両方を合わせるとニュートラルになる可能性もあるし、上げる方の力が最後まで強い場合もあるし、下げる力の方が強くなる場合もあるということで、円安ということだけで、物価の動向をみるというのは難しいと思います。』

2012年にお書きになられた著書につきましてはどのようにご説明頂けるでしょうか????

『むしろ需給ギャップであるとか、予想インフレ率とか、雇用指標はどうかとか、具体的に言うとフィリップス曲線がどう変化するかとか、そのようなことをみた方が分かりやすいと思います。』

すいませんちょっと仰っている事が良くわかりませんが。

『短期的には、個々の価格から予測は当たりますが、中長期的に考えると、どちらに物価が変化するかは分かりません。だから、もう少しマクロの指標をみた方がいいというのが私の趣旨です。』

個々の価格のトレンドと中期の変化は独立であるとはこれまた斬新な理屈、というかそもそもさっきの質問だって「円安」という全体にかかわる部分についての物価への影響だし、同じ質問の前段は思いっきり需給ギャップと予想インフレ率の見通しに関する質問なのですが何を仰せなのでしょうか???

『円安になるとデフレになると言った覚えはありません。』

ということですが、この次に無慈悲な攻撃が登場しますよ!!!

『(問) テープを聞き、メモもしていますが、申し上げると、「円ドルレートが安くなると、輸入財が高くなるので、短期的には物価を上げる要因になるが、消費者の色々な行動を考えると、それがむしろ物価を引き下げる方向に働く」とおっしゃっています。』

無慈悲な砲撃キタコレ!!!

『(答) それだけだと正確ではありません。他の財は下がるという要因があるということです。』

しかしその程度で引き下がるようなヤワな同志ではありません!

『(問) その後に、「金融政策がそれにきちんと対応しないと、結局下押し圧力が強くなるということです。それ以外に、短期的には輸入価格が上がって物価が上がるから実質所得が下がって、消費者が節約行動をとるので、物価が下がる圧力が強くなる。その下落はデフレになっていくので、それを食い止めて、バランスを釣り合わせながら物価を上げるには、量的・質的金融緩和のような政策が必要になる」と言われました。』

どう見ても火の海です本当にありがとうございました(・∀・)

『(答) 分かりました。もう少し正確に言いますと、そのように円安になるから物価が上がるという面もありますが、中長期的には、他の価格が下がる要因がありますので、下がる方が相殺する以上に働くリスクもあるということです。そういうリスクが大きいかどうかを見極める必要があります。それが、デフレになるほど下がる方の影響があるかどうかを見極めた上で、金融政策を運営すべきだということです。正確に言うと、そういうことです。』

「正確に言うと」もへったくれもそもそも記者の方の取ったテープ起こしだと両面の話なんぞしてないじゃないですかいい加減にしろ!!!という所ですけれども、それ以前の問題としてQQEのメカニズムについて講演テキストでは予想インフレ率の低下で(途中割愛)円安ウハウハという話をしているのに、こちらでは中長期的に物価にマイナスの場合もあるとかちょっと何を言いたいのか判らないという所です。

つーことで、毎度申し上げておりますように、説明のパーツパーツではその部分だけ単独で見た場合には筋の通った話をしているのですが、全体として見た場合の整合性やバランスが全然とれていない、という毎度の指摘に通じるのがこの一連の話で、まあ学者先生が意味不明な机上の空論を供述している分にはハイハイワロスワロスという事で良いのですが、全体的な整合性もバランスも考えないで部分的な適合だけ考えてバランスもへったくれもない政策を実施したら案の定実行してみたら乱暴な政策でございましたというのが足元で起きている現象だとしますと、このパーツパーツだけしか考えない理論によって既に問題が出ている訳で、2年と言わず早急に以下悪態という所ですな、うんうん。


・円安進行に関しての質疑もこれまたアレ

この次にこんなのがあります。

『(問) 円安の関係ですが、今日の講演にもありました企業の海外との連結での収益がよいという話ですが、足許の円安進行は、ポジティブという理解でよろしいでしょうか。』

『(答) 製造業には、そういうものがあったと思います。海外の子会社の配当が入ってくるものを円に換算すると高くなる、という効果があったと思います。』

ほらまた狭い一面の話だけしかしないよ。で、一つ飛ばして次の質疑。

『(問) 円安についての質問で恐縮ですが、今日の企業の方との懇談会では、企業の方から、更なる円安について、安定してほしいなどの何らかの意見があったのかどうか、というのがまず1 点目の質問です。あと、先程来、色々と出ていますが、全体として、ここから先円安が進むことが日本経済にとって、良いのか悪いのか、一概に言えないのかどうか、というところをお伺いしたいと思います。また、先週、黒田総裁が、記者の質問に対して、円安がないと2%達成できないというふうに考えるのは邪推だとおっしゃったわけですけども、その点について副総裁のご見解をお願いします。』

という質問だったのですが、円安の全体としての評価についての説明をしないで2%物価の方の話になっておりますがまあそこは良いとしましょう。で2%達成云々の部分です。

『(答) 本日の懇談会では、企業の方からは、為替は安定して欲しいという意見がございました。』

まあこれは良いとして。

『それから、円安でないと2%にならないとか、円高になると2%にならないとかというのは、先程申し上げたように、色々な要因がどのように相殺されるかによって違います。上がる・下がるという2 つの要因があるというよりは、時間軸でも違うということです。』

2012年の師匠様の著書「デフレと超円高」では『第一章円高はなぜ起きるのか』『第二章デフレは円高を生む』という章立てになっていたと存じますが・・・・・・・・・・

『長くなるほど、いろいろな調整もあって違ってくるということがありますけれども、そういうことを考えながら、金融政策を運営していますが、円安にならなければ2%達成しないとか、そういうふうには思っていません。』

どうも何を仰せになりたいのかが意味不明な日本語で。

『今日の説明でもありましたが、需給ギャップを縮めていくには、いろいろな経路があります。』

実質金利を引き下げると全部上手く行くという置物桶屋理論だったのではないでしょうか????????

『円安というのもそのひとつですが、それも短期と中期では違うし、先程記者の方から、円安になるとデフレになるから私が対応しなければいけない、と言ったのではないかとの指摘もありましたが、そうは言っていません。そう言ったのであれば、私の舌足らずで、きちんと説明しなければならないと思います。』

どうもさっき突っ込まれた事が気になっておられるようです。というか桶屋理論の表は何だったんでしょうか。

『世の中が円安になると必ず物価が高くなると思っているようなので、それに対しては、他の価格に対して、直ぐに調整は働きませんが、中長期的にそういう下げる力もあるということです。』

これ要旨作る事務方も相当苦労したと思われますな。

『円安になればなるほどよく、日本銀行は、物価が上がればいいので、円安で2%を達成しようとしているというご意見に対しても、説明をしたということです。』

円安によって資産効果と需要創出と輸出拡大が起きるという説明をしておられたのは師匠様なんですけどねえ。

『色々な経路を通じて、物価に影響は与えますが、一番の基本は、需給ギャップと予想インフレ率です。』

2012年の師匠様の著書「デフレと超円高」では「第五章デフレは貨幣的現象である」という小見出しがあった筈ですが何故需給ギャップと予想インフレ率なんでしょうか。

『予想インフレ率と需給ギャップに注目するのは、フィリップス曲線に注目しているということでもあります。』

『フィリップス曲線の動きは、今日説明しましたが、フィリップス曲線は、失業率の状況がどのようにインフレ率に影響していくのかを示すものですが、実際のインフレ率に加え、予想インフレ率にも依存するので申し上げました。』

などと意味不明の供述を繰り返しており、

『この問題は大学の講義みたいに難しいので、うっかりすると間違ってとらえられるなというふうに、反省しております。』

(誤)大学の講義→(正)蒟蒻問答

つーか難しいも糞も最初の説明が只の舌足らずどころか一面だけの話で全部話した気になっているだけだろいい加減にしろ!!!!!


・ということで円安の経済の影響ですが

『(問) トータルでみた経済への影響の見解についても、お願いします。』

『(答) それは状況によります。円安になればなるほどよいというわけではありませんし、円高になればなるほどよいというわけではありません。』

何度も同じツッコミをするのもいい加減疲れますが講演テキストでは以下同文。

『需給ギャップが落ち着いてきて、やはり完全雇用になってくると、それで雇用が安定してくるとか、物価も安定してくると、為替というのはどこかで均衡してくるのだと思います。どこで均衡するかというのは、予想することは難しく、私から言うこともできません。』

あのーすいません。おじいちゃん展望レポートで経済物価見通しの予測をしていると思うのですが、中長期的な均衡点を何も置かないで積み上げで予想しているんでしょうか???というか別に積み上げで予想したって良いとは思いますが、だったら先ほどから物価の話をするのに「中長期を考える上ではマクロの動向が重要」とミクロの積み上げはあくまでも短期の話だという主張をしているのに、その中長期の話においてどこかで均衡するか予想するのは難しくってナンジャラホイというか最早何を言ってるのかが判らんですけど。


・短国マイナス金利買入に関する質疑

まあ問題あるとも答えにくいので、その点については仕方ないかなあとは思っていたのですが、やはり質疑を見ると問題が大いにある説明をしているのでありました、市場動向云々とは別のレベルですけど。

『(問) (前半割愛)2 点目は、昨日、短期国債の買い入れで、日銀がマイナス金利で買ったのではないかと、市場で言われておりますが、事実の是非はお答えできないということは理解できるのですが、一般論として、マイナス金利であっても、マネタリーベースの目標のためには、国債をしっかり買っていくということは変わらないのかということと、マイナス金利で買うことにコストなり副作用といったものがあるのか、という点について、ご見解を伺いたいと思います。』

ということで、まあマイナスだから問題というような説明はしにくいだろうなと思ったのですが、師匠の説明はそういう次元を超越した斜め上の論点を呈示していました。まあ市場は斜め上の論点へのツッコミではなく(先ほど申し上げたように)マイナス金利ヒャッハーという現象面の話だけで反応していますけどね!!!

『(答)(前半割愛)それから、マイナス金利の話ですが、これは、2012 年7 月の金融政策決定会合において、短期国債の買い入れをより確実にするために、入札の下限金利というのを撤廃しておりますので、もしあったとしても、問題はないと認識しています。オペレーション上も、何かそれが障害になることはないと思います。』

2012年7月の入札下限金利撤廃というのはこの時の声明文に説明のようなものがあります。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf
(ちなみに当該部分は2ページ目になります)

『8.なお、このところ、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション等において応札額が未達となるケースがみられている。日本銀行は、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて前述の金融緩和を間断なく進めていく観点から、本日の会合で以下の措置を決定した。

(1)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを5兆円程度減額し、短期国債買入れを5兆円程度増額する。
(2)短期国債の買入れをより確実に行うため、当該買入れにおける入札下限金利(現在、年0.1%)を撤廃する。CPの買入れについても同様とする。
(3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』(2012年7月決定会合声明文より)

・・・・・・・ということでございまして、マイナス金利での短期国債買入というのを想定したような決定とは全く関係ないものでありまして、今回の事案に関して2012年7月の決定からの既定路線であるかのような説明は強引にも程がある訳で、これはまあ師匠がオリジナルでこんな答えを出すとも思えない(別に馬鹿にして言ってる訳では無くて、こんな技術的なクソ細かい話って就任後の分ならまだしも就任前の話だったら師匠知らんでしょという意味です)ので想定問答を棒読みしたのかとは存じますが、あまりにも想定問答の作りがダメダメすぎるので猛省を促したい所であります。

まず「2012年7月」というマイナス金利での買入が想定できないような時期からの既定路線であるかのように説明するのがインチキな上に、2012年7月という前任総裁副総裁の時期を出している所が、あたかも前任に責任を転嫁するかのようなレトリックでケシカランと思う訳で、とりあえず想定問答は赤点再履修にも程があるという所ですな。

それにですね、この想定問答(勝手に想定問答棒読み扱いしていますが師匠の完全オリジナルならゴメンナサイ)ですけれども、もっと重要な点として、質問にもありますような「コストなり副作用といったものがあるのか」という点に関する部分が単純にオペレーショナルな部分、すなわち日銀とオペ先との間の関係にのみフォーカスした答えになっている点がゴミ答弁にも程がある所でして、先般来申し上げておりますように、オペマイナス金利のデメリットってオペレーション技術上の問題というよりは、市場と実体経済を繋ぐ部分において、「市場金利には名目ゼロ制約は無くても、実体経済には名目ゼロ金利制約がある」というギャップが顕在化する点の影響考慮が重要な点であり、それは実際に何かトンデモナイことが起きる可能性を秘めているけれども実際には起きて見ないと判らず、多分起きたら盛大な不都合が生じて金融政策のトランスミッションメカニズムに悪影響を与える事になるであろう、という話であって、単純なオペが打てる打てないの問題だけで済む問題ではないのですよね。

でまあ今回作られた想定問答(しつこいですが師匠の完全オリジナル答弁だったらスイマセン)のクオリティから勘案しますと、前半の市場雑談でも申し上げた「本当に覚悟を持ってマイナスを付けに行った(かどうか確定していませんが普通に市場がマイナスを付けたと認識するような状況を作ったという意味において)のか」という点に関して、実はお前ら何も考えないでマイナス付けにいったんじゃねえのか事態を分かってるのかと小一時間問い詰めたくなる、という点でも中々象徴的なコメントなのではないか、とまあ斯様思うのでありました。


#最後は師匠鑑賞会じゃなくて短期市場悪態コーナーになってしまいましたなすいませんすいません






2014/09/11

お題「さあ3M短国入札(で雑談)/師匠の金沢金懇での高座を鑑賞するの巻」

ドル高ェ・・・・・・・・・

○さて本日は3M短国入札ですが

えーっと昨日は日銀のマイナス金利買入雑感を書いてみたものの、中々こう上手く論点が整理できていないわ、書いたり消したりしながら書いていたら消し忘れとか接続詞がまあ落ち着け状態になったりと誠にアレでございましたな。

・・・・・・ということで本日は3M入札なのですが、昨日の短国市場ではベンダーも6M新発の価格が着くとニュースヘッドラインが出るとか中々の注目状態になっていたようで、それによりますと新発6Mはマイナス0.5bp→プラス0.1bp→マイナス0.9bpというような動きになっていたみたいで、引値も見事に強くされてBB引けはマイナス0.4bpだわ売買参考統計値平均単利はマイナス0.3bpだわと、前週の新発3Mと共に直近入札のあった2銘柄が共にマイナス金利(ちなみに477回の売参はマイナス0.1bpに金利上昇しています)という大変にスットコドッコイな状態になっておりましてもうねという状態。

という異常事態なんだかこれから恒常化するのか知らんあばばばばーな状態の中で本日の3M入札を迎える訳でございますが、まあ普通に考えるとゼロとかマイナスとかの金利で「資金運用商品」としての短国ニーズがバカスカあるとは思えない(為替絡みとか信用リスク絡みとかでマイナス調達が出来れば別だが)訳ですし、マイナス金利でも買いますよウヘヘヘヘと言っている日本銀行様はプライマリーでは買いに来ない訳ですし(というかプライマリーで買う位なら最初から相対で対政府取引してくれ)、まあ常識的には入札からいきなりゼロだのマイナスだのとはならんでしょとは思いつつも、兎に角日銀が短国市場の需給逼迫を無視して、というか需給逼迫に更に拍車をかけて市場を壊す買い方をしているだけに、在庫確保ニーズとか残高維持ニーズとかも相当エネルギー強いでしょうし、はてさてどうなるのやらという話で、もはや予想するだけ精神衛生上良くないので結果に注目しましょうねとだけ申し上げておきます。

しかしまあ何ですな、実体経済には名目ゼロ金利制約がある訳ですからマイナス金利というのが金融市場で恒常的に付くというのは金融政策を何のために実施しているのかと考えた場合に弊害の方が大きいんじゃないの、というのは引き続きの見解として置きますけれども、このマイナス状態も間違って恒常化(まあ普通に考えると期末要因含めているので恒常化しないと読むものなのですが)するとやはりマズーだと思うのです。


・・・・・でまあ昨日は日銀のマイナス金利買入の可能性がありました案件でさすがに何とかストのレポートとかベンダーの記事とかありましたが、あれで「追加緩和の可能性が高まる」とか言っている人はとりあえずお前らその席空けて俺様に用意しろやと申し上げたくなる次第でありまして、短期国債買入の買入残高累増に伴い市場のキャパを超えてしまったという状況がこのマイナス金利かもしれない買入や、実際についているマイナス金利として顕在化してきたという話ですから、「来年以降のMB拡大が同ペースで実施することができません」という政策実行におけるフィージビリティー問題に到達したという話ですし、「超過準備付利下げ」とかゆうとる方も居ましたが、買入でマイナス金利が付くという状態というのはつまり「バランスシート拡大政策をそれだけ無理をしないと実施できない」という事を意味しますので、同じ理屈で考えると超過準備付利についてはバランスシート拡大政策を更に実施する為には引き下げをするのは逆効果でもし追加でやるなら引き上げをしないといけないという話になるのですが判りますかね何とかストの皆様♪

まあさしあたってのオペ円滑実施でMB拡大円滑実施というのであれば、海外中銀のデポに対しても準備預金非対象先の当座預金残高と同様に付利対象にすれば海外分の短国自動購入ニーズがその分ドロップするから少しはオペ運営が楽になるんじゃないでしょうかねえと思いますが、それって一面ではシニョリッジの海外流出とも言える話で、えーっとシニョリッジを海外流出させて積み上げるMB残高の政策効果に対して払っているコストの方が物凄い勢いで大きいんじゃないですかねえ(まあシニョリッジ漏出云々マイナス金利の国債購入にも言えますが)と思う次第で、もっと真面目にQQEのプロコン比較というのを行っていただきたいですなあ次回のMPMでは、と思うのでありました。



○師匠の高座キターーーーーーー!!!ですが今回は参考文献も並べて味わってみましょう(・∀・)

師匠の金沢市での金懇テキスト
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140910a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
―― 石川県金融経済懇談会における挨拶 ――

でまあ暫く前の高座の時に申し上げましたが、この鶴光師匠もとい副総裁様におかれましては、(1)アプリオリに「こうなる」と言っている所与の部分についてその前提が怪しい、(2)相関関係と因果関係の取扱いが雑で(というか意図的かどうか知らんが曖昧に扱っていてというのか)自説に都合の良い因果関係がホイホイ出て来る、(3)何らかの現象について説明する際にその時々で違う説明をするので通してみると前後矛盾が発生する(つまり説明がご都合主義)、(4)説明に都合の良い話だけ持ち出してくる、というのがありますなあというのが特色だなあと思う訳で、こんなので何で経済学者が務まるのかよく判らんのですけれども、まあ今回もそのようなクオリティが炸裂していてツッコミ所がどうのこうのというよりも突っ込まない場所を探す方が大変という素敵な仕上がりになっています。

でですね、今回のカウス師匠もとい副総裁様の高座を鑑賞するのにちょうど良い参考文献があるわ(ただし別に中身ではなく小見出し見るための参考文献だが)と思ったので参考文献も並べて鑑賞すると実に香ばしくなって参りますのでオヌヌメ(かどうかは知らん)。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=288091
デフレと超円高 著:岩田規久男
発売日: 2011年02月17日定価 : 本体740円(税別)
ISBN:978-4-06-288091-6
判型/ページ数:新書/240ページ
シリーズ:講談社現代新書

以下、『』が毎度の引用部分ですけれども、特段注釈がないのは昨日の金懇挨拶テキストからの引用、引用部分に(2011年の岩田さん著書紹介より)とあるのが上記URL先からの引用になります。


・物価動向の説明が色々と怪しい点について

でまあ最初の小見出しは『2.日本経済の現状と先行き』でして、説明内容は思いっ切り展望レポートの話になっているのですが、物価の辺りは微妙に師匠節が混じっています。ということでいきなり本文5ページ目まで飛びます(そこまでの説明は展望レポートの棒読みと言っても過言ではないので、ある意味ここだけはツッコミを入れても展望レポートの楽観大本営へのツッコミなのでおもんない)。

『(2)物価動向』のところから。

『続いて、物価動向についてお話します。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、7月は+1.3%となっており、「物価安定の目標」である2%の実現に向けての道筋を順調に辿っているとみています(図表7)。』

とまあそれは良いとして。

『物価動向をみるうえで重要なことは、毎月の消費者物価指数の数字は振れを伴うものであって、基調的な物価上昇圧力は、「需給ギャップの改善」と「予想インフレ率の高まり」という2つの要因で決まるということです。物価の基調を判断するためには、こうした2つの要因を丹念に点検していく必要があります。』

ここの部分なんですが、既に出ているけどまだネタにしていない8月金融政策決定会合議事要旨で似たような話をしている人がいて「細かい物価のコンポーネントを見て上がる下がるの先行き予測をするのは意味が無く、コンポーネントの積み上げで考えても意味が無い」的な正論と珍理論の紙一重的な話をしている部分があってこれは師匠かなと思ったのですがどうも師匠のようです。

でまあそれは兎も角として、師匠におかれましては「基調的な物価上昇圧力は、「需給ギャップの改善」と「予想インフレ率の高まり」という2つの要因で決まるということです」と仰せのようですが、ここで2011年の著書の見出しを拝見してみますと・・・・・・・・

『第五章  デフレは貨幣的現象である』(2011年の岩田さん著書の見出しより)

という小見出しがございまして、ええっとデフレが貨幣的現象なのに物価上昇圧力には需給ギャップと予想インフレ率の要因で決まるとは2011年の説明との整合性をお伺いしたいのですがまさか日銀に入って変な物でも食ってはいはいおじいちゃんおじいちゃんとなってしまわれたのではないかと大変に心配になる所ではございます。まあMB増やすと予想インフレ率が上昇する(と毎度のように師匠はアプリオリに認定しているのですがそもそもそのメカニズムもおかしいだろと思いますが)というから予想インフレ率は貨幣の上げ下げに影響されるのかもしれませんが需給ギャップは貨幣の上げ下げ関係ないだろいい加減にしろ!という所ですな、うんうん。

『先ほど申し上げたとおり、労働需給が引き締まっているほか、設備についても過剰感はほぼ解消され、稼働率が高まっています。こうしたもとで、需給ギャップは緩やかに改善し、最近ではゼロ近傍になっています(図表8)。また、後ほどご説明するように、中長期的な予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられます。』

まあこれはどうでもよい、というか需給ギャップ最近ではゼロ近傍って直近のGDPはどうしたと思いますがそのインチキ説明はそもそも執行部として行っているので師匠云々関係なし。

でまあ先行きの話なんですけどね。

『やや仔細に申し上げると、暫くの間は、石油製品を中心としたエネルギー関連のプラス寄与が縮小していくことから、1%台前半で推移するとみています。しかし、その後は需給バランスが需要超過方向で推移し、中長期の予想インフレ率が上昇していくもとで、再び上昇傾向を辿り、2014年度から16年度までの見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いと考えています。』

えーっとすいません、「2年で2%物価目標達成しなかった場合は責任があって最高の責任の取り方は辞職」だったと思うのですが、「2015年度を中心とする期間」だったら2013年4月から2年以上たっている可能性の方が高いだろいい加減にしろ!という所でありまして、いけしゃあしゃあと何を仰せなのでしょうかこの人はと思う次第です。

まあ一億歩譲ってこの部分は展望レポートでの見通しを申し上げたという事だと致しましても、「2年で2%を達成しないと辞任」とまで大見栄を切って前任者を石持て追い出した(ようなものの)お方なのですから、当然説明の中に「私は2013年4月に申し上げましたように2年間、つまり来年の春には達成できると考えています」という一文を加えるべきではないかと思うのでして、早くも「2年で2%達成できなかったら辞職」を逃れようとする気満々なのが見て取れるというものであります。


・QQEの効果の話が相変わらずのクオリティ

次が『3.金融政策運営について』でして、相変わらずの置物理論で風が吹けば桶屋が儲かるという話をしているのですけどね。『(2)「量的・質的金融緩和」の波及経路』という小見出し(本文7ページ)の辺りからです。

『まず、金融緩和の波及経路についてご説明すると、最初の重要なポイントは、「予想実質金利の引き下げ」です(図表10)。』

ということで図表10というのが毎度お馴染み風が吹けば桶屋が儲かるの図表なのですが、相変わらずQQEを実施すると何で予想実質金利が下がるのかがアプリオリになっています。

『「量的・質的金融緩和」は、長期国債の大規模な買入れ等を通じて名目金利に下押し圧力をかける一方、予想インフレ率を押し上げることにより、その差分である予想実質金利を低下させることを意図しています。』

でまあ予想実質金利が低下するとどういう効果があるのかというのが相変わらずである。

『予想実質金利が低下すると、様々な面から実体経済における需要が刺激されます(図表11)。例えば、予想実質金利が低下すると、相対的に不利になった現預金や債券から、株式や土地・住宅等の実物資産、あるいはより金利の高い外貨への資金シフトが起り、その結果、株高や外貨高による資産効果によって家計の消費が刺激されます。』

ということで、外貨高になると資産効果でウハウハという話をしておりますが、外貨高というのはエネルギーなどを輸入に依存している日本の場合はそういう物のお値段が上がって実質購買力の海外漏出が起きるという面がありますよという話をスルーしているのが毎度の「物事の一面だけで説明する」というそれで社会政策をやる積りかよという話ではありますし、(今日テキストでますけど)会見では円安が良くない場合もあるみたいな発言もしていたみたいで、だったら円安でウハウハというこの説明は何なんだかという話。

『また、予想実質金利の低下に加え、消費の増加、株高および円安など複数の要因に後押しされた企業は、設備投資に積極的になると考えられますし、円安による輸出の押し上げ効果も期待されます。』

ちょっと笑ってしまったのはここでして、従来は「企業は予想実質金利が低下すると設備投資を拡大します」(キリッ)とアプリオリな話として説明していた置物桶屋理論の表現が変わっている事で、「複数の要因」だの「考えられます」だのという逃げ口上が入っている訳でして、先日ネタにした国会での所信聴取での説明はどこに逝かれたのでしょうかと小一時間問い詰めたい訳ですし、円安による輸出拡大も「期待されます」とか実際に円高修正したものの輸出がそんなに伸びていない件についての逃げ口上がある辺りが実に味わいの深い所ではございます。


・賃金に関する説明が中々アレな点

でまあその次が『(3)「量的・質的金融緩和」の効果』でして、執行部的な説明が続く部分は正直どうでもよい(執行部的な説明に突っ込んでも良いのだがいつもの話なのでパス)のですが、その後に味わいが。

『こうしたお話しをすると、「名目賃金の上昇が物価の上昇に追いつかない結果、実質的な賃金水準は下がっているのではないか」とのご批判を受けることがあるのですが、私としては、「物事には順序があるので、もうし辛抱強く政策効果を見守ってほしい」と申し上げています。』

もうワロタというか何というかですが、まあその前に2年で2%が来ないと辞任になっちゃいますね!!!!!

で、この次に賃金が上がるのにちょっとお時間がかかるという話をしているのですが・・・・・・・・

『企業側の立場で考えると、一旦増やした正社員は簡単に減らせませんし、一旦上げた給与はなかなか下げられません。』

・・・・・・・・・えーっと、ジャクソンホールでの黒田総裁の講演でもありましたし、他の多くの人たちも指摘していますが、日本の場合は雇用の需給調整を行う際に、雇用者での調整を行うよりも給与水準での調整を行う傾向があって、その結果として失業率などは低位で推移するものの、名目賃金上昇圧力が弱いどころか下落の圧力が掛かり、それも日本の粘着性の高い物価低迷の一因になったという話になっていると思うのですが、また随分と面白い説明ですね師匠!!

というか、師匠の2011年の著書紹介文でも・・・・・・・・

『緊急出版! 日本経済の危機と希望を問う!若者の就職難、雇用の不安定、賃金の低下、社会保障制度は崩壊寸前、今の生活のままでいいのか。』(2011年の岩田さん著書の紹介文より)

とありますが、まあこれは出版社が勝手に書いた事で、名目賃金には下方硬直性があるからデフレになると企業の労働コストが高止まりして企業収益を悪化させるのが経済学の常識ですねわかります。


・円安と物価の話も味わいがあります

ちょっと飛びまして本文10ページ目に『(5)物価上昇の要因――円安と物価――』というのがあります。

『このような状況から、日本銀行としては、先ほど申し上げたとおり、2%の物価安定目標は達成できるものと考えていますが、当然ながら、そのことに否定的なご意見も聞かれます。代表的なものは、「現在の物価上昇は円安による輸入物価(特にエネルギー価格)の上昇によるものであり、その効果が剥落すれば物価上昇のペースは下がるに違いない」という議論でしょう。』

ほほう。

『しかし、実際のデータを確認すると、「量的・質的金融緩和」以前は、為替レートの変化と物価上昇率の間に、有意な相関は見出せません(図表16)。つまり、円安が物価上昇をもたらすという関係は、必ずしも成立していないのです。』

ちなみに図表16というのは1998年4月以降の前年比ドル円為替レートの%対比と、コアCPI前年比%をプロットしたものになっておりまして、相関係数マイナス0.15というのが堂々と出ておりますな。

・・・・・・・・さて、ここで2011年の師匠の著書の題名と見出しを確認してみましょう。

題名→『デフレと超円高』、目次→『第一章  円高はなぜ起きるのか』『第二章  デフレは円高を生む』(以上2011年の岩田さん著書紹介ページより)

デフレは円高を生むという著書をだしておられます一方で「円安が物価上昇をもたらすという関係は必ずしも成立していない」とはこれまた豪快な説明でございまして、師匠におかれましては早急に2011年の著書を全面的に回収して焚書の措置を取られた方が宜しいのではないかと進言させて頂きとう存じます。

『この理由を簡単にご説明すると、「他の条件を一定とした場合、円安などによって輸入品の価格が上昇すると、それ自体は物価の上昇要因である一方、そのことによる実質的な所得の減少は、輸入品やそれ以外の財・サービスに対する需要を減少させ、それらの価格を引き下げる効果をもたらす」ということです。』

っていうのはこの部分だけ切り取るとその通りですが、はいはいおじいちゃんさっき「外貨高の資産効果や輸出拡大で需要が上がってウハウハ」って話をしてたでしょいもう忘れたんですかという話で、片方の口でそういう話をしているのに、ここで急に「他の条件一定で」みたいな話を持ち出すとか説明がご都合主義にも程がある訳で、こういう辺りが置物師匠一派の置物理論のアレな所で、パーツパーツでは部分的にフィットする説明をしているのですが、部分部分の説明が正しくても全体の整合性が取れていないので何が何だか判らん話になりますし、実際に政策をおっぱじめてみると当初こそパーツの部分のフィットで効くにしろ、徐々に全体の整合性問題が発生してプロコン的におかしい事になる、というのがQQE実施して1年半経過となった時点で起きてる現象なんじゃネーノと思うのでありますがどうでしょうかねえ。

と、考えますとちょっと先にある部分、さっきもそんな事言ってましたが、この師匠の説明に関してははいはいおじいちゃん鏡を見て下さいねと申し上げたくなる味わいの深さを感じる訳です。

『このように、円安などを原因とした特定の財・サービスの価格上昇が、全体としての需要や物価に対して最終的に及ぼす影響は、様々な波及効果の集積として決まってくることであり、一対一の関係として語れるものではありません。言い換えると、ミクロの変化を単純に積み上げても、マクロの変化を予想することはできないということです。』

まあお前の図表10とか、さっきからの「パーツパーツの説明は合っているけれども全体の整合性を何も考えていない説明」について良く良く自省してから同じ言葉を仰せになられた方が宜しいのではないでしょうかと。

『マクロ的な物価の動向を予想する際には、やはりマクロの視点で分析することが必要です。』

ぷぷぷ。

『具体的には、経済全体の供給力に対して、どのくらいの総需要が存在しているのかという、需給ギャップ分析が重要になります。足許の物価上昇の最大の要因は、金融政策の効果などによって経済全体の需要が拡大していることであり、そうした需要圧力があるからこそ、輸入品のコスト増や消費税率引き上げの価格転嫁も、円滑に行われているのだと考えています。』

つ貨幣的現象

・・・・・・ということで、まあ色々と読んでいて頭痛が酷くなる講演で誠にアレでございましたが、基本的な説明については2013年10月の中央大学での講演辺りで盛大にツッコミをいれましたので、まあ今回は従来の話にちょっと付け加えられた部分をツッコんでみました。

#もっと生産性のあるネタがあるのに師匠ネタやってるんじゃねえという指摘は謹んで却下致します(^^)







2014/09/10

お題「短国買入でマイナス買入が発生した可能性があるので予定を変更しましてマイナス金利雑考をお送りします」

SF連銀からはオモシロペーパーがあるし蟹総裁の講演はあるし日銀のMPM議事要旨はあるし、更に先週のドラギの俊ちゃん会見はまだ途中だしと中銀ネタがここへきて多いのですがどうしてこう出るときに皆まとめて出すかね(^^)。

さてさてこれらのネタに加えまして、本日は石川県の金融経済懇談会で我らが師匠が落語もといご挨拶をされまして、そのうえ記者会見があるという事でして、金懇会見と言えば某サユリ様と記者様とのやり取りが面白いので本日はぜひともそれ以上のハイクオリティな応酬を期待したい所であります。

・・・・・・・などと思ったらこの絶妙の時期にこんな記事が投下されておりました。

○まあどうでも良いネタだが話のマクラにするには長すぎるので雑談ネタ

朝日新聞のサイトですが「東洋経済の眼」って名前のコラムコーナーです。
http://www.asahi.com/business/toyoeye/ASG9355WBG93ULFA01V.html
岩田副総裁の覚悟 日銀を追い詰めずに見守ろう
2014年9月6日09時53分

上記のように朝日新聞のサイトですが書いているのは東洋経済さんのようですが、この題名を拝読するに「2年で2%」目標達成に向けての達成に関連して岩田副総裁様を「追い詰めよう」というような人がいるんですか随分な悪党もいたもんですねえどこのロクデナシなんでしょう(棒読み)。

などと思いを馳せつつ記事を拝読しますと大変に豪気な記載が。

『しかし、岩田規久男副総裁は就任直前、国会で「(2年で2%を)達成できないのは責任が自分たちにあるというふうに思う。最高の責任の取り方は辞職することだ」と明言しました。就任前、白川日銀を激しく批判していた副総裁だけに、日銀関係者の間では今も「2%が実現できなければ辞めるべきだ。辞めれば、男岩田の株もあがる」という声がくすぶります。』(上記URLより)

>辞めれば、男岩田の株もあがる
>辞めれば、男岩田の株もあがる
>辞めれば、男岩田の株もあがる

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとですな、大口叩いてやると言ったことが実現できないという時点でただの敗者な上に大口叩くわ元の人たちを悪しざまに罵って石持て追い出すわで、通常の敗者よりも罪が一段と深いとしか思えんのですけれども、何で「男岩田の株があがる」のかアタクシ愚昧にしてさっぱり理解に苦しむ次第であります。

まあ斯様な声を上げておられる方というのが実在するのか記事を書かれた方の想像上の存在に過ぎないのかは存じ上げませんが、仮に実在するのであれば、「男岩田の株もあがる」などと発言されておられる貴殿の首から上に存在するであろう物体はゴミ袋かなにかなのではなかろうかと小一時間問い詰めたい所ではございます。まあ皮肉で言ってるのを東洋経済の記者さんが真に受けただけのような気がしますけどね!!!!!

しかしこの石川金懇の前にこのようなコラムが東洋経済方面から飛び出してくるという辺りに絶妙な侘び寂びの世界を感じる次第でありますなあ。

・・・・・・・・うむ、また無駄な悪態からスタートしてしまったorzorz


○日銀短国買入でマイナスを購入しやがった可能性がありそうな件について

昨日短国買入をオファーしやがるとはねえ・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140909.htm
国庫短期証券買入 5,000 2014年9月11日
米ドル資金供給 2014年9月11日 2014年9月18日 0.590

ドルオペの方は兎も角として、昨日は上記のように短国買入が5000億円打ち込みとなったのですが、まあ打ち込みの時点で対象銘柄に売買参考統計値がマイナスな477回債が入っている(日銀のサイトだと詳しいのは出てこないのですがベンダー情報による)時点でおいおいマイナス金利大丈夫かと思っておりましたが、まあ6M入札の翌日ですから要するに6Mをそんなに買いたいんですかねえとは思われる次第。

でも6M新発って入札の平均落札よりも売参が若干甘いのでそもそも6Mが主に入るにしても落札結果が甘になるとも思えないのだが大丈夫かよとか、そらまあ477回もショートカバーなどのマイナスの出合いあるけど、そもそも短国の場合は長国と違って業者が揃ってショート振ってレポして投資家ロングの業者全員ショートというような現象は起きない(償還までの期間が短いので大した売買益が期待できないのにコスト払ってショートポジションをキャリーする意味が無いし投資家層が限定だから)のであって、普通にロングになっている人もいますので、まあ477回を引けで入れてもマイナス0.4bpだよなあとか思う訳で・・・・・・・・

で、結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140909.htm
国庫短期証券買入 8,387 5,000 -0.011 -0.006 39.5
米ドル資金供給(9月11日スタート分) 0 0

結果は6糸強の1毛1糸強で、全部が6M新発だと辛うじてプラス金利での買入ですが、3か月ゾーンですと477回は勿論のことその手前の銘柄でも売参が1bpだったので足切りで入っていると出来上がりマイナス0.1bpでの買入となりやがりまして、まあこれはやっちまいましたなという結果。

と申しますか、今回の応札8387億円という方にえーと思った次第。まあ在庫状況から考えて札がそんなにあるのかいなとは思いましたが、ヒアリングとかしているだろうに8387億円しか札の無い状況で5000億円の買入をオファーするとか、高々5000億円ぽっちの買入の為にマイナスまで突っ込みに行くとはねえというところで、まあ何考えてるんだという感じではあります。

先日来申し上げておりますように、本来年末の残高目標という観点からしますと10月以降の3Mを着実に購入していって残高稼ぎをすれば良い話でして、そのためには只でなくさえ需給が逼迫している今月の短国市場における需給を更に逼迫させて(さらに言えばマイナス金利での購入によって不安定化もするリスクもありそうですがねえ)しまったら10月以降の短国購入を円滑に進められるのかいなという話になる訳で、MB積み上げの最後の最後の所とかなら兎も角、まだまだMB積み上げをしないといけない上に、年末以降をどうするのかという問題もある中で、目先の5000億円積み上げの為にマイナス金利の買入をするとか来年の種籾を全部食ってしまう貧すりゃ鈍すの典型のように見えてしまいますが大丈夫ですかねえとか思うのであります。

でまあこの結果を受けて6M新発も引け後だか引け近辺だかにはマイナスでの出合になっておりましたが、日本相互証券の引けはショートカバー銘柄の477回が相変わらずマイナスの他は6M新発がゼロで、あとは前日比強くなっていますが一応プラスの金利になっておりまして自重自重という所ですかそうですか。売買参考統計値は平均単利マイナスなのは477回だけで6M新発の478回も6bpなのでこれもまあ自重という感じですが、ただまあ市場で買いに行こうとすると素敵なレートを掴みに行くことになるでしょうなあという所で。

実際問題としては短国の買入銘柄明細は月イチでしか公表されないので、今回の買入で実際に出来上がりマイナス(オーバーパー)の買入があったかどうかについては売り付けた当事者と日銀しか判らない(来月477が入っているのが判れば間違いなしという所です)のですが、まあ以下はマイナス金利の買入があったというのを前提に申し上げますと(というかマイナス金利買入をする気が無いならそもそも論として477回を買入対象銘柄から外しているので普通にマイナス買っているでしょと思います)、マイナス金利で買入を今回行ったということで、只でなくさえ市場機能的にメタメタになっている短期国債市場の機能が更におかしくなるのは必定というのがまずやりやがったなあのその1という所ですか。

つまりですな、今や短国市場のドミナントプレーヤーになってしまった日銀はマイナス金利での買入をドカンと行うけれどもそれは週に1回程度で入札の日は外している訳で、それ以外の通常日と入札の日はマイナスで購入する投資家って非常に少ない(と思われる)訳で、時点による需給の差が極端にぶれる格好になりますので、当然ながらオファービットも開きますでしょと思われる次第。しかも日本の短期市場においては最大かつまともにロットの捌ける市場が短国市場しか無いので、その市場が機能不全になってくると短期市場全体の価格形成にも影響してくるリスクが有ります罠と。

まあ前回のマイナスキタコレの時は一時的かという印象もありましたが、こう何回も続くというのと、日銀がマイナス金利での買入を行うという事でドミナントプレーヤー(ただし買うだけ)の日銀の動きが入ったという事ですから、まあこりゃさすがに一時的現象という訳にも逝かんでしょうなあと思われるところで、これから年末の目標達成に向けて短期市場あばばばばーという感じでしょうなあと思うのでありました。

ちなみに、今回のマイナス買入ですけれども、まあ普通に考えると年末に向けて10月から本格的に買入の積み上げをしないといけないという前にわざわざ自分からガソリン背負って火の中に飛び込むとかスットコドッコイとしか思えないのですが、もしかしたらこれは12月のMB目標達成に関しても調節技術的に大変だし、今の買入パターンを来年も継続する事は物理的に不可能であるという事を早めにアピールすることによって調節部署から政策委員会だの執行部(というか企画)だのに対して「お前らのフィージビリティー無視のディレクティブは回らねえんだよヴォケ」というアピールをしているのではないかなどと格好の良い事も妄想してみたくなりますが、まあ単に残高積みたくて来年の種もみ種イモを全部食ってしまっているだけのプレイのような気もしますな、うんうん。


○まあ思考訓練の一環ですが「マイナス金利をドンドン買えば良いじゃないですか」という素朴な質問に対して

でまあこれ昔からずーっと言われるのですが、こうやってマイナス金利買入ケシカラン的な話をしておりますと、割と「別に高い値段で中央銀行が買っていって、札が入らなければ更に高い値段を買えば問題ないじゃないですか」というツッコミが飛んでくることが多いのですよね、というか実は市場の人の方がそういう傾向が強かったりもします。

でまあそう正面切って突っ込まれると意外に説明が難しいのですが、直観的に市場のマイナス金利が恒常化するというのは弊害あるだろというのはある訳で、その辺のギャップについて思考訓練の一環(?)としてつらつら考えてみたのでちょっと記してみます。まあ異論は色々とあると思いますけど。

・たぶん市場単体あるいは中銀と市場の関係でみれば「ただの価格の問題」となるのかも知れません

まあそういう事でして、要は国債金利がマイナスとかプラスとか言うのはあるにせよ「価格の問題」と考えてしまえばまあこれは単なる価格形成の問題で、マイナス金利で購入してもよりマイナスの深い金利で売却すれば間尺にあう話ですし、運用調達という面で見た場合でも市場金利が低下すれば運用も調達も金利が低下するでしょと考えると、はてさて何か困るのかねとツッコまれると確かに答えが難しいのですよね。

ひとつ言えそうなのはさっき申し上げたようにオファービットが更に拡大して流動性が更に低下するとなりますと、日銀がこの政策の出口に立った時に市場機能が落ちていることから市場による価格調整でのソフトランディングが難しくなり、激烈な調整を強いられるリスクが高まる、すなわち出口政策の潜在的コストが大幅に上昇するという話かなとは思いますが良く判らん。


・恐らく問題になるのは「市場と実体経済の間のゼロ金利制約」なのではないでしょうか

ということで考えてみますと、市場内部で話が完結している分にはマイナスだろうが何だろうがそれは価格の問題という事になると思うのですけれども、これを市場の外側との関係、つまりインターバンク市場やら中銀当座預金制度へのアクセスのできない世界との関係で考えた場合に色々と問題が生じると思うのですよね。

つまり、これは長期金利の世界になりますから今のケースとは違いますが、例えばの話市場金利が全部マイナスになりましたのでお預かりしております保険商品は自動的に元本割れになりますのでよろしくお願いしますという話になる訳で、そうなりますとマイナス金利の負担が実体経済の方に転嫁されるという現象が生じる話になります(後に述べるようにちょっと状況は違うのですがユーロ圏のマイナス金利だとカストディ預け金とかでマイナスチャージとか発生してるみたいですがそういうのも転嫁の一例でしょ)し、まあそもそそんな話はマーケットの中では通用しても世間様には通用しないというのが「名目ゼロ金利制約」という奴でございまして、マイナス金利の損失転嫁を嫌って閉店ガラガラという話になりますとそれこそ市場機能という意味でもそうですが、それ以上に「市場と実体経済の間のリンクが切れる」という話になるんじゃないですかねえと思うのですよね。

ユーロ圏だってマイナス金利になって資金の巡りが良くなったかと言えばまあ普通に悪くなっているようですが、まあ今回のマイナスが一時的現象で済めば良いのですが、オペの規模やら今後のMB拡大を「目標達成まで継続する」とか言っている状態な訳ですからして、マイナス金利問題というのはまあMB馬鹿拡大政策を修正しない限りは時間の経過と共に拡大していくリスクがあると思われまして、そうなった場合に「市場単体」で見た場合はマイナスだから直接的に何か凄まじい問題になるのかというとそうでも無さそうな感じではありますが、実体経済における名目ゼロ金利制約というのがある以上、市場でマイナス金利ヒャッハーとやる中で市場と実体経済のリンクがおかしくなってくるという問題が発生する(とりあえず短期の部分ではありますが)拡大するんじゃないのかなあとか何となくですけど思うのですよ。

で、そもそも金融政策というのは別に金融市場をどうこうしたいから金融政策を実施している訳ではなくて、あくまでも金融政策を通じて実体経済に対して望ましいと思われる影響を与えたいというのが最終目的でありますからして、金融市場と実体経済のリンクが一部とは言え切れてしまう中でディレクティブがこうなのだからこうやって行きますというのは金融政策の本来の趣旨からして何やってるんですかという話になってくると思うのですよね。

まあ今の(特に師匠の)理屈ですとMBを拡大すると実体経済にインフレ期待の上昇という形から実質金利の低下→投資や消費の拡大、という謎理論が構築されているから、マイナス金利も辞さずに資産買入政策を継続してMBを拡大すれば実体経済に好影響という話になっているのでしょうが、既に1年半実施してMBを幾ら拡大したら定量的にインフレ期待がこれだけ動くという話はどこに行っておられるのでしょうという状況ですし、実質金利が低下して設備投資って景気のドライバーになるような伸び方してましたっけという状況でもありまして、そもそもの前提となる戦略についてももうちょっと考えて頂かないと、金融市場と実体経済のリンクが一部でおかしくなる、すなわち金融政策のトランスミッションメカニズムの機能を落としてまで拡大するMB残高のメリットはどこにあるのか、というプロコンへの考察が必要な時期が思ったよりも早く来たのではないかという風に今の所考えている次第なのですがどうでしょうかねえ。

あと、実体経済と金融市場のリンクがおかしくなるというのは、


・ECBのマイナス預金金利は一種のペナルティ金利だし大規模量的緩和している訳ではないですが・・・・・・・

あとはあまり経済的な話ではないのですが、ECBのマイナス金利のケースと日銀のマイナス金利買入(買入をしている事を前提にしているけれども本当にそうなのかは確認不能ですのであくまでも仮定の話ですのでしつこいですけど念の為)の違いって、ECBの場合は「預り金に対するマイナスチャージ」なのに対して、日銀の場合は「金融機関(オペ先)の保有する債券をマイナス利回りで購入する」というのがだいぶ違う所。

つまりですな、ECBの場合はマイナス金利を適用しているのはあくまでもチャージであり一種のペナルティーであるのに対して、日銀の場合は明白な形で金融機関(オペ先)への利益提供になっているわけでございまして、一方で日銀は超過準備等に対して10bpの金利の支払いも実施しているという形になっている訳で、上記のようなマイナス金利チャージの問題が実体経済の方に波及するような話になってくると、これ前も申し上げましたが「日銀は金融機関に利益供与を行っている」という批判が飛びやすくなりますし、金融機関も金融機関で色々といちゃもん飛んでくるでしょと思う次第なので、そもそも政治的に持つのかよという疑問が。

まあ要するにマイナス金利での資産購入をしないとバランスシート拡大政策が実施できないという状況になるまでのバランスシートを無理矢理拡大しているからこういう結果になっているって事ですから、そもそも論として現在の政策運営に対するフィージビリティーに無理があって、この点で言えばバランスシート拡大政策そのものが実施するシステムとして破綻しているんじゃネーノ的にも思うのですけど。


・などとつらつら書いてみたがまだ思考実験の世界だしマイナス定着しないかもしれませんし

ということで本日は本当はドラギ総裁の楽しい会見ネタとか決定会合議事要旨ネタとか、SF連銀の割と味わいのあるペーパー(中身はまあ普通なのですけど別の意味で味わいがある)とかがあったのですけれども、思考実験のマイナス金利雑考みたいなしょうもない話ですいませんすいませんというところであります。

まあ直観的にはマイナス金利の恒常化って駄目だろうと思うのですが、では何故ダメなのかと考えるのは意外に頭の整理が難しくて、何となく整理した積りになっているものの、まだまだ全然整頓できていない話でありまして、今後も折に触れて雑考したいと思いますので皆様におかれましても何か論点ありましたらご教示いただけますと誠に幸いなのでありまするm(__)m




2014/09/09

お題「短国買入の限界にどう見ても達している件について/ドラギ総裁会見質疑は質問も面白い」

なんかよくわかんないけどドル円ヒャッハー!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NBKQ8J6KLVR901.html
NY外為:ドルが上昇、利上げめぐる観測などで−円は下落
更新日時: 2014/09/09 04:49 JST

『9月8日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場ではドルが上昇。ドル指数は14カ月ぶり高水準を付けた。金融市場が米利上げペースを過小評価しているとの観測が広がった。またスコットランド独立の是非を問う住民投票を18日に控え、逃避需要からもドルは買われた。』(上記URLより)

・・・・・・・・・逃避需要で円が買われないのかというのと、どうせ円安に振れても輸出自体は伸びないで輸入物価は上がるのでしょうが日銀的には物価が上昇すれば後は知らんがなだからまさに神風ですね(白目)。

てかまあ歴史的経緯は判るが今さらスコットランド独立って何だかなあで、独立して経済回るかという話だったらカタランが独立する方がまだ現実的な話じゃネーノとは思うのだが・・・・・・・

○6M入札でさて短国買入どうするの

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140908.htm

(3)募入最低価格 99円99銭0厘 (募入最高利回り) (0.0201%)
(4)募入最低価格における案分比率 72.2617%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘 (募入平均利回り) (0.0121%)

ということで昨日の6MTB入札ですが、前場はまあ当然のごとく0%だのというような気配をやっておりましたが、さすがにうっかりするとゼロを掴まされそうという状況の中でプライマリーから突っ込んで行く普通の投資家(短国をモノとしてではなくて短期の資金運用として購入する人)もあまり現れず、というかこれ業者としてもプライマリーの所で投資家の札受けられないだろと思われるところで、まあ実需が盛大に引っ込むと入札も盛大に流れるという事で・・・・・・・・・

と思ったのですが、入札流れて、というかそもそもプライマリー段階で泡吹き状態で状況を見ていた皆様が落札結果見たら利回り付いているしじゃあとりあえず買えますおとなって買いがキタコレというのと、市場推計のいわゆる不明玉が発行額3.5兆円に対して2.5兆円ほどということで、結局流通玉薄いじゃんという事でその後はコケはせずにちゃっかり1bp台前半の水準で堅調となるの巻だったようですな。

つーかですな、まあ玉無しショートカバーニーズとかそういう要因があるのですけれども、先週の新発3Mの477回債は昨日もマイナス0.5bp出合いとかやってて、日本相互証券の引けはマイナス0.5bpと前週末から3糸強くなるわ、とうとう売買参考統計値ベースでも平均マイナス0.4bp、中央値マイナス0.5bp、最高値(最低利回り)マイナス0.5bpで最低値が0.0bpとか何か凄まじい事になっております。

ただまあ他の銘柄に関しては3Mカレントに近いゾーンで1.0bpで後ろは1.4bp水準で、新発6Mも日本相互証券の引けと売参平均値は1.4bpになっておりまして、まあ477回だけ別物という所ではあるのですけれども、昨日の入札後の動きを見ますと「潜在的には買い需要が盛大にあるけれども、買いに行っても玉が無いので仕方ないから出てくるのを待っている」という状況が激しく強いというのは把握した訳ですな。


・・・・・・・・ということで短国買入どうするのという話になる訳ですが、まあヒアリングとかしているから買入にどの位応札来ますかというようなのは勘案するとは思いますが、それはそれとしましても477回を応札されると出来上がりマイナス利回りでの購入待ったなしという事になるのでどうしますねん(現実問題としてはマイナスを受けるのか477回を買入対象から外すかという話で、まあ1銘柄だけ突出してマイナス利回りになっているという形になっているから異常値銘柄扱いして外すという手はあるでしょう今回に関しては)という話になりますし、大体からして落札後の動きからも判るようにそもそも流通玉が枯渇状態になっているので、そもそも論としてここで買入をして入札で少し出た玉を吸い上げてどうするんだという風には思われる所。

年末のMB目標達成という観点からしますと、昨日の6Mを買うのも残高稼ぎにはなるのですけれども、それよりも本命は10月入り以降の3Mが年末越えになるので、ここからの短国買入をどの程度スムーズに実施していくかという話の筈でして、そーゆー観点からしますと今月需給が超逼迫しているのが明らかな中で無理矢理に屁のような残高を積み上げて短国市場の需給を更に締め上げてしまうよりは、10月入り時点での発射台を作っておいた方がどう見ても作戦的に妥当だと思われますので、今月は無理に残高稼ぎに逝かない方が良さそうには思えますけどねえという所で(買うなら期末ニーズ一巡が確認できてからで)。


しかしまあ何ですな、8月末の日銀の短国買入残高が42兆2160億円な訳ですが、この状況において期末ニーズとか来た所で短国需給が逼迫して市場が大変な状態になっていると考えますと、どこからどう見ても今の金融政策運営の「年間MB70兆円拡大、長期国債買入残高50兆円拡大、その他で20兆円拡大」という枠組みを継続するのが困難であるのが確実というのが見えた訳でございまして、少なくとも来年1月以降にどういうセッティングをするのかというのを決めて頂かないと市場がぶち壊れるなんてもんじゃない状態になってしまうのでございますが、どうも実務経験やら実務的観点が無くて金融政策ガーとか仰せの方々はそういう実務的な限界な話に対して超無頓着で、だったらマイナスでも何でも買えばいいじゃないかと机上の話をおっぱじめだすので困ったもんでございます。

つーかですな、良く良く考えてみますと「短期が変えないなら超長期でも買えば良いじゃない」という話もあるんですけど、年間70兆円拡大を殆ど長期国債買入で賄うとかになりますと、(まあ50兆円でも大概ですが)買入残高の累増によって短国市場のような状況が長期国債市場でも発生してしまう訳で、そんな事をした日にはこの異次元緩和政策をどう足抜けするのでしょうかという時に非常に困難な事になる訳ですが、ちゃんとその辺考えているのかよと小一時間問い詰めたい所ではあります。


○ドラギ総裁の会見ネタである(^^)

どうも連日短国市場ネタでああでもないこうでもないと書くので時間と量が費やされてしまって甚だアレでございますが。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014

手抜きでWebcast見てないですけど、質疑応答そのものは基本が一人一発だと思われますのですが、一人の人が連続して無慈悲なツッコミを入れているかの如く流れるように質疑が展開されているという美しさが実に素敵でありまする。

・前回「利下げは限界に達した」ってゆうてませんでしたっけという質問キタコレ

最初の質疑である。

『Question: My first question is, was this a unanimous decision on the interest rates and on the ABS and covered bond purchase programme? And my second question is about your previous comments about, for all intents and purposes, being at the lower bound on interest rates. You’ve cut interest rates further. Is there a risk that this undermines a bit the reliability of your forward guidance and your communications on the policy outlook to the financial markets and to the public?』

決定は全員一致だったのですかというのはまあお約束の質問としまして、後半の質問は「前回利下げした時にlower bound(下限ですかね)に到達したと言ってたのにまた利下げしやがりましたが、そういうウソツキをしていると信認問題になりませんかねえ」とはこれまた辛辣。

『Draghi: The answer to the first question is no. It was not unanimous. And to the second question: no there isn’t such a risk, because we announced about the interest rates that they would be for all practical purposes at the lower bound, but technical adjustments could be possible, and that’s what we did. And now we are at the lower bound, where technical adjustments are not going to be possible any longer.』

全員一致じゃないというのはまあ良いとしまして、後半の説明が既にインチキの風格を漂わせておりまして、大体からして「there isn’t such a risk」とか信認問題はお前が大丈夫だと言ってもこのウソツキ野郎という風に外野が思えば信認問題な訳で、お前が「そのリスクはありません」(キリッ)とか言っても知らんがなとしか申し上げようがなく、この辺りに関してはやはりあの福々しく景気が良さそうに見える福井の俊ちゃんが満面の笑みで話をするのとは貫録の差があるという所でしょう(なぜならこの後も無慈悲なツッコミが飛ぶので)。

でまあ「今回こそ下限に達しました」ということで、では今回の利下げは何ですねんというと「technical adjustments(技術的調整)」ってナンジャラホイというか、じゃあ利下げの目的は何ですねんという感じですがこれはかなり後の方でツッコミが飛んできますので乞うご期待(^^)。


・バランスシートのインパクトとかQEの議論があったのかとかのQE質問

次の質疑である。

『Question: Mr Draghi, you said that the new measures and the TLTROs will have a sizeable impact on your balance sheet. Could you give us more insight into how much you expect the impact to be for the new measures? And my second question is, following your speech in Jackson Hole, did you discuss QE today?』

先ほどのステートメントで今回の買入とTLTROはバランスシートに「sizeable impact」があるという説明をしていましたが実際そのインパクトはハウマッチ?というのと、ジャクソンホールの講演のフォローとしてQEの議論はあったの??という質問です。

でまあこの2つの質問を見て分かりますように、ドラギ総裁の会見質疑については質問する方が過去や直近の説明に対して「えーっと前回の話と違いますが〜」って感じでツッコミを入れてくる所が実に美しい展開でありまして、まあECBの場合は他の主要国中銀と違って総裁のグリップが掛け難いのではないかと愚考される部分はあるので同情の余地はあるのですが、それにしてもドラギのおっちゃんはどこの福井俊彦だという感じでその場その場で結構都合の良いような説明でお茶を濁したり、威勢の良い空元気を出して来たりというような感じはある訳で、まあ最初の内はその威勢のよさに圧倒され気味ではありましたけれども、さすがに同じ事何年もやっていますと段々威勢だけでは回らなくなってくるという事でしょうかねえ

『Draghi: On the first question - you know, this is quite a complex package of measures.』

複雑とか言ってとりあえず話を誤魔化す気満々の掴みです。

『You have the TLTROs which are going to unfold over several operations over two years initially, then two more years. So that’s one thing. Then you have the ABS, which is in a sense a very novel programme. Then we have the starting again of a covered bond purchase programme. As you all know, it’s not a new thing, but the purposes of this programme are very different from the previous programmes.』

尤もらしい話をしているが結局「新しい取り組みです」(キリッ)という話しかしとらん。

『So all this makes a precise estimate of the impact that these transactions will have on our balance sheet very complicated, especially at the stage when none of these operations have as yet been undertaken. So we may be more precise especially once the TLTROs, at least the first two TLTROs, have taken place.』

やってみないとバランスシートへのインパクトは判りませんというのはその通りとしか申し上げようがないですが、だったら冒頭説明部分で何で「sizeable impact」とかQEを連想させるような話をしたのよという所ですが、まあ当然ながら市場はヘッドラインで動いてしまいますし、まあ何とかストとか言われる人でも一々会見を逐語確認していない人もいるでしょうから、冒頭声明文の「balance sheetへのsizeable impact」のQEチックな部分を見て米英日のようなバランスシートターゲットヒャッハー的な反応をする向きもあるでしょうなあ(実際は預金ファシリティマイナス拡大とバランスシート拡大政策の相性は明らかに悪い)ということで。

『The aim here, however, is twofold. The aim is to increase the measures that produce credit easing for the banking industry and banking sector, which as you know represents more than 80% of total intermediation, credit intermediation, in the euro area. The second aim is to steer, significantly steer, the size of our balance sheet towards the dimensions it used to have at the beginning of 2012.』

でまあこの目的として、1番目の方の「credit easing」というのはまあ判らんでも無いが、実際にはABSなどを買うのは良いけど、どの辺のクラスまで買うかによって単なる流動性供与になるのかクレジットイージングになるのかは変わるので制度のデザイン次第(シニアと保証付メザニンを買うという話がその後にある)ではございます。2番目の説明はなんじゃそらという感じで、バランスシートを拡大とか言ってるなら預金ファシリティをプラスにしろよという事で、QEな話をして市場を喜ばせようというのは判るのだが、実際にやっている事との乖離があるじゃろと思う次第。

『Yes, it was discussed. QE was discussed. Some of our Governing Council members were in favour of doing more than I have just presented, and some were in favour of doing less. So our proposal strikes the middle of the road, but to answer your question, yes it was discussed. A broad asset purchase programme was discussed, and some Governors made clear that they would like to do more.』

QEが議論されたのかという質問に対しては「もっとやれという意見もあったし、そうじゃないのもあって中庸を取りました」という説明をしていまして、おお威勢が良いじゃんと思われるのですが、次の質問が中々優秀。


・そもそもQEの定義が「資産買入です」ってナンジャソラ

『Question: I wonder if maybe you could clarify for us what your definition of quantitative easing is.』

ところであんさんのQEの定義って何ですねんというのは中々優秀な質問。

『I gather from the answer to the last question, the size of this programme will not yet qualify as quantitative easing, and maybe you can clarify at what point we should start calling it quantitative easing.』

これは良い質問ですな。

『And the second question is, I’ve seen various estimates of the size of the asset-backed securities market in the eurozone. I’d be interested in what your estimate is and whether that puts any kind of ceiling on what you can do with the programme you’ve just spoken about.』

ABS市場の規模から考えると買入サイズのリミットとかありませんですかねえと。

『Draghi: On the first thing, the definition of QE is not really related to its size, but rather to its modalities.』

な、なんだってー!!!

『So QE is an outright purchase of assets.』

アウトライトでの買入がQEというのもナンジャソラという所で、調節技術論的に言えば中央銀行の長期負債に対して長期資産を保有するのはリーズナブルな話になりますので、中央銀行発行のバンクノート見合いで長期国債を保有していても別におかしくないので、それまで含めてQEになるんかいなという気はだいぶする。

『To give an example: rather than accepting these assets as collateral for lending, the ECB would outright purchase these assets. That’s QE. It would inject money into the system. Now, QE can be private sector asset-based, or also sovereign-sector, public sector asset-based, or both. The components of today’s measures are predominantly oriented to credit easing.』

ということでその資産買入の説明ですが、今回の買入は主にクレジットイージングに基づいているという説明になっておりまして・・・・・・・・・

『However, it’s quite clear that we would buy outright ABS, the senior tranches, and the mezzanine tranches only if there is a guarantee. In other words, very much like what the Fed did a few years ago. So there is also this component.』

でまあここで買入資産についての話がありまして、シニアと保証付メザニンを買うという話をしていまして、それを「FEDが前に行ったものに似ている」という話をして「So there is also this component」という話なのですが、現実問題として概ねシニア債しか買わないで、しかもそもそも論としてABS市場自体が大したことない中で本当にクレジットイージングの効果が出るのかいなという気はだいぶします。金利は下がるかも知らんが。

つーか、米国の場合はMBS市場のスプレッド縮小とかを狙っていたのに対して、ECBは金融政策のトランスミッションメカニズムを機能させるとかクレジットの供給を促すという話になっている辺りが若干アレで、結局どういう経路で効かせたいのかが良く判らんというところではあります。

『Let me also add, to answer your question about the size of the ABS: this is very difficult. We have gone through several figures. Some of them even leaked out, and it’s pointless I think to discuss. We would have loved to give you a figure, obviously. For communication purposes, it’s much better to be clear, but at this stage especially, it’s very difficult to assess the size of this.』

でまあロットの方に関してはコミュニケーションポリシーとしては数字をクリアにした方が良いのだが、やってみないと判らないから何とも言えませんという話をしているのでありました。まあ仕方ないけどね。

『Let me also add one thing, because the ABS may sound more, I would say novel, than they are in the ECB policy-making, and indeed, the modality is novel, because we would do outright purchases of ABS, but the ABS have been given as collateral for borrowing from the ECB for at least ten years, so the ECB knows very well how to price and how to treat the ABS that’s accepted, especially since we have, - and this is in a sense another dimension that makes any precise quantification difficult at this point in time - we have narrowly defined our outright purchase programme to simple and transparent ABS.』

あまり判らん判らん言ってるとマズイと思ったのか追加で説明が続いてまして、「我々はABSをこれまでもずっと金融機関の担保として扱っていますので、これらの商品内容については良く分かっております(キリッ)という話をしております。

『We have gone through this several times, and that’s where in a sense the credit easing component comes back into place, because we want to make sure that these ABS are being used to extend credit to the real economy.』

でまあABS買入によってクレジット環境の緩和を期待する、という話ですな。



・見事な逆手取り質問また炸裂

でまあ次の質問もこれまた優秀というか逆ねじモードキタコレなのが一つあります。

『Question: For my first question, you noted that the decision today was not unanimous. Could you tell us a little more about the scale and the nature of the dissent, and you noted just in your previous answer that the ECB already has a lot of expertise when it comes to the handling of asset-backed securities because they’re accepted as collateral. Given that, what is the hiring of BlackRock adding to the process of devising the programme?』

前半の反対はどの位のレベルの反対があったのかというのは兎も角として、後半の質問がワロタというか優秀にも程があるという所で、ECBはABSについて充分な知見があるとさっき言ってたけれども、じゃあ何でブラックロックをアドバイザーに起用したんですかとはこれまた意地悪。

『Draghi: On the scale of the dissent, I could say that there was a comfortable majority in favour of doing the programme, and now on the content of the discussion, I’ve given some hints before.』

賛成がcomfortable majorityだったという話だけでお茶を濁すという時点でお察しという所で、反対したドイツ方面の方々は相当文句タラタラだったんではないでしょうかと。

『On BlackRock: one thing is to accept the ABS as collateral, another thing is to design a programme of outright purchases, and that’s where BlackRock Solutions would actually be helpful in doing it.』

ブラックロックソリューションをアドバイザーに採用したのは買入プログラムのデザインの為ですとな。

『As had been announced some time ago, they’ve been hired by the ECB through a competitive tender within the existing rules. They’ve been tendered out in the form of a competitive negotiated procedure without publication of a notice. This procedure is foreseen in the ECB Rules of Procurement, Article 6.1, in line with the European Public Procurement Directive. It’s common practice in EU member states.』

選定の際には然るべき手続きを取って入札とかしていると説明しているのはまあ質問の意地悪成分に対応しているという所ですの。

『So their contribution would be to advise on developing a programme to purchase ABS. I could go on with the tendering procedure if you are interested. The ECB has invited a number of appropriate consulting firms to take part in the tender etc, but just be assured that the rules have been followed.』

まあそう答えるしかないですが、確かに「我々はABSについては既に詳しいんです(キリッ)」とか説明したら「じゃあ何で外部アドバイザー採用して金払ってるんだお前は馬鹿か」という質問が飛ぶわなという所で、記者のツッコミもさるところながらドラギのおっちゃん余計な話をし過ぎのような気もしますなあという所で。

#以下さらに続くが時間と量の関係で今日はここで勘弁






2014/09/08

お題「新発477回がBB引値でマイナス&売参ゼロ金利!!/黒田総裁記者会見から少々」

何がどうなっているのですかねえorzorz

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0H01IF20140905
ウクライナ政府と親ロシア派が停戦、直後に爆発音も
2014年 09月 6日 01:29 JST 記事を印刷する

で、モーサテは何でタカ&トシを呼んで金融政策の話をさせるんですかねえという所ですが、まあモーサテが自ら金融政策の質問をする訳がない(んなもん東京の何とかストで何人も説明できる人がいる)ので、これは御自身が散々引っ掻き回した年金資金運用の話について無かったことにしようとする御意向を反映しておられるというのだけは良く判りました。つーか何だこの誰でもできる社内ミーティング資料で小僧に纏めさせるレベルの話の整理は・・・・・・・・・


○短国買入見送ったけど新発短国マイナス金利ヒャッハー

ヒャッハー!!
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0R62E720140905
〔金利マーケットアイ〕翌日物0.06%後半中心、3カ月物国庫証券マイナス0.010%
2014年 09月 5日 15:14 JST

木曜はゼロレートが付いたりした新発3M短国でございますが、金曜は日銀の短国買入が見送られたにも関わらずマイナス0.1bp→マイナス0.2bpと順調に(?)金利が低下して結局最後はマイナス1bpをマーク。

でまあBBの引値がマイナス0.2bpになってマイナス利回りヒャッハーとか思いながら売買参考統計値の公表を正座して待っておりましたが、短国477回の売買参考統計値は平均値の利回りで0.000%ときっちりとゼロ金利になりました。最高値(最低利回り)がマイナス0.2bpで最低値がプラス0.3bpで中央値は堂々のマイナス0.2bpなのでお察しという所ですけれどもまあヒャッハー状態ですな。

でこれ何がオソロシスと申しましても金曜は短国買入が見送りになっていることでして、まあ一応ECBの利下げがどうのこうのという影響の話に後講釈的になっているのですけれども、利下げが入って急にフローが炸裂してどうのこうのという訳では無さそうで(影響皆無とは言わないが)、それ以前の問題で水曜の入札で期末ニーズらしきものが炸裂してヒャッハーの流れがそのまま続いているのと、更にそれ以前の問題として日銀の短国買入残高が資金需給の関係上8月にもちゃっかり伸びてしまっているのでフローではなくストック効果の方が効いていて、ちょっとニーズが高まるとあっという間にあばばばばばーとなるという流れでして、そういう意味では根が深い話。

いやまあ期末要因だから期末通過したらという意見もありますでしょうが、そもそも短期の主力商品が3か月(正確には13週間物)の短国であって、期末月1か月間ヒャッハーとかやりやがりますとその3か月の3分の1の期間な訳で、大概な長期間でもうねという所ですし、10月以降は資金不足になる上に年末のMBその他部分の積み上げを前倒しで来るでしょう(今までの行動パターンからするとギリギリに帳尻とはいかないでその前に前倒ししてくる)からかなりの大旱魃状態が続きそうでナムナム。


まあ何ですな、金曜に関しては事前にヒアリングしてどう見ても札が全然ないという事で短国買入を見送ったというのと、どこからどう見ても金曜に短国買入を実施しても入るのは(金曜も申し上げたように)年内物しか入らないので期末のMBその他要因には跳ねないわ、明らかにマイナス金利まで突っ込みに逝かないと買えないわという状態になるので、オペを実施してもメリットが無いから実施見送りという話になった訳で、本日は6MTBの入札がありまして、この入札が何ぼになるのかというのもオソロシスな話ですが、まあ買うなら年末越えのこの銘柄でしょうから、短国買入を明日にでも打ち込んだ方がマシという事で。

しかしですな、ここでオモシロ状態なのは金曜の(本日付)売買参考統計値の新発477回がゼロ利回りヒャッハーという事ですので、この銘柄を引けで入れてゼロ利回り、前日比強で入れたらマイナス利回りという買入が発生するのが明白な所でして、「マイナス利回りでの短期国債買入」となるとそれはそれでインパクトのある話で、それをやる覚悟の程がどうなんでしょうという所っす。

つまりですね、「マイナス利回りでの買入」ってえのは意外にこれ誰も得しない話で、まあアウトライトで目先儲かるとかそういう得する話はありますけれども、(超過準備に10bp付利しているから実態ベースでは何を今さらではありますが)マイナス金利で民間が保有する資産を購入するというのはもう明白なまでのシニョリッジの漏出になりますから、そらまあ瞬間芸でそういう事がある位なら兎も角、それが恒常化するってえ話になりますと「日銀の民間への利益供与」という批判がいつ飛んできてもおかしくない訳ですし、マイナス金利で売りつけてヒャッハーとか民間サイドも単純に喜べる話でも無く、またぞろ(信用創造のメカニズムからしたら全くの的外れな批判ですが)「銀行は日銀に国債をマイナス金利で売却して利益を上げながら貸出を増やさないのはケシカラン」というような批判も飛んでくるリスクのある話で、実はこれ誰も得しないんですよね・・・・・・・・・

#ECBのマイナス金利はECBの預け金にチャージという話だからシニョリッジの漏出とか民間への利益供与という話にはならないので「資産買入でマイナス金利」とは実は逆の話になるのですな

でまあその誰も得しないマイナス金利での民間保有国債買入ですけれども、まあ当然意味があるなら実施する必要がある訳ですけれども、マネタリーベース直線一気の置物師匠理論によるマネタリーベース拡大したらインフレ目標達成という定量的な関係が今や日銀ですら物価上昇のメカニズムにMBの定量的効果の話をしていないという状態な訳で、もはや何のためにマイナス金利まで短国を買いに行くんだかという話ってもうちょっと真面目に考えた方が宜しいのではないかと思うのですけどねえ。

とは言いましても、まあMB2倍2ばーいを提唱してしまった手前というのもありますし、買入政策で実質金利に低下圧力という話をしているのですから、まあ短期マイナスまで買う位ならば長期とか超長期とかの国債買った方がええんでねえのという風に思う次第で、10年は既に日銀の買入が短国程ではないけど市場のキャパオーバーとかになっていて、カレントの殆どが日銀保有(この辺の銘柄がチーペストになったら先物の価格形成がどうなってしまうんでしょうねえ)となっていますので、もう中短期と超長期買い増すしか無いじゃんと思うのですけど(今の年間MB70兆円をまだ続ける場合なので、見直しするなら知らんけど)。

ちなみに、マイナス金利買入を避ける究極の手段としては(オペを打たないという選択肢は目先は使えてもMB目標の手前長期化できないですから)オペ対象銘柄から477回短国を外すというのがありますが、それをしますと今度は「マイナス金利での買入をしないとなるとマネタリーベースの積み上げが困難になる時点がやってくるし、既に今この状態となると来年入り以降の異次元緩和継続が困難になるのが明白」という話になってきて、それはそれでまた問題が生じるという事で、中々見事な究極の選択になっておりましてオペ担当部隊の中の人たちにおかれましては結局どうするんでしょうかねえナムナムという所ではあります。

てなわけで、まあ今日は6Mの入札結果がまたオモシロ結果になる(結果もそうだが売買参考統計値が幾らで出るかも注目)でしょうねという話に加え、明日は短国買入を実施するのでしょうかというのもこれまた注目されるところではございます。


○黒田総裁記者会見ネタである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409a.pdf

・経済に対する説明はまあ想定される通りではありますが

最初の幹事社の質問ですが。

『(問) 景気の現状認識についてもう少し詳しくお尋ねします。先月発表された4〜6 月期の実質GDPが年率でマイナス6.8%とかなり大きな落ち込みとなりました。その後も、個人消費や生産等、経済指標で弱い数字がみられて、消費増税後の回復ペースが鈍化しているのではないかという指摘も出ています。今回、個人消費や生産の基調判断を維持されていますが、増税の影響やその後の回復が想定通りなのか、総裁のご見解をお伺いします。』

まあ想定通りの答えだが折角なので引用しておきましょう。

『(答) 4〜6 月期のGDPは、1〜3 月の駆け込み需要が大きかったことの反動から、やや大きめのマイナスになりました。もっとも、1〜3 月と4〜6 月を均してみると、基調としては、潜在成長率を上回る成長を続けているとみることもできると思います。』

「平均してみると」キタコレですが、そもそも論として決定会合の声明文(と今日時間が無いのでパスする予定の金融経済月報もそうですが)では現状認識や先行き見通しとして「消費増税の反動の影響が徐々に和らいでいる」という話をしている訳でして、つまり消費増税の反動に関しての説明をするのでしたら1−3と4−6足して平均してプラスだからプラスというのは説明にインチキ成分が入っている訳で、では7−9は既に巡航速度なのかと言うとそういう話して無いのに1−3と4−6平均してどないしますねんという事で。

『個人消費については、特に自動車、家電といった耐久消費財は、駆け込みが大きかった分、反動減からの戻りがやや遅れていることは確かです。一方、百貨店やスーパーの売上高は、月々の振れを均してみると、持ち直し傾向とみてよいと思います。』

そ、そうなのか??

『また外食や旅行などのサービスについては、そもそも消費税率引き上げの影響は限定的であり、底堅い動きを続けています。このように品目によって程度の差はありますが、全体としてみれば、反動の影響は徐々に和らぎつつあると思います。』

ふーん(棒)。

『この間、ご承知のように、雇用・所得環境は、夏のボーナスがしっかりと増加し、所定内給与もベースアップを反映して持ち直すなど、着実に改善しています。』

もうこの話来ると思いましたよ。

『そうした状況のもとで、家計のコンフィデンスも改善しており、個人消費は、先行き底堅く推移していくとみています。鉱工業生産は、ご指摘のように、やや弱めの動きになっています。耐久消費財などの駆け込みの反動減の影響もありますが、予測指数あるいは企業ヒアリング等の結果を踏まえると、緩やかな増加基調を辿ると考えてよいのではないかと思います。また、先程申し上げたように、企業は、収益が好調なもとで、前向きな投資スタンスを維持しています。』

えーっと、鉱工業生産ってここもと予測指数の達成度合いが悪いというのが続いていると思いますし、ハードデータは弱いけれどもヒアリングなどのアネクドータルなものは強いです(キリッ)ってどんだけ願望入ってるんだという話で、だいぶ説明が怪しいのは見えて参りますな。

『以上のように、引き続き駆け込み需要の反動の影響はみられていますが、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと働き続けている、維持されていると言ってよいと思います。』

「言ってよいと思います」という表現にさすがに説明の無理矢理さを感じているのかもしれませんが、この辺りは黒田さんの福井俊彦力の足りないところで(^^)、働き続けています(キリッ)っとやってこそ俊ちゃん、というか俊ちゃんだったら話を逸らして煙に巻くんでしょうかねえ(^^)。

『先行きは、緩やかな回復基調を続け、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくと考えています。』

というのがまあ説明の基本になります。


・円安に関しての質疑に微妙な味わいが

『(問) 2 点お伺いします。(前半割愛)もう1 点、円相場についてお伺いしたいのですが、ここ数日1 ドル105円台ということで、年初来の水準まで円安が進んでいます。エコノミストとか産業界から、これ以上の円安は日本経済にとってデメリットも大きくなるのではないかという声もありますが、今の日本経済の構造から考えて、円安のメリット、デメリットをどのように整理されておられますでしょうか。』

『(答)(前半割愛)2 点目については、いつも申し上げている通り、為替レートの先行きなどについて、特別なことを申し上げるつもりはありませんが、米国経済は着実に回復を続けており、米国の金融政策もテーパリングを終了しようかというところまで来ているわけです。一方、欧州あるいは日本では、引き続き緩和的な金融政策が続く状況のもとで、ファンダメンタルズの反映として、ドルが強くなっていくことは、何ら不思議でないと思いますし、米国経済の回復が順調で着実であるもとで、為替レートがドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスということはないと思っています。』

説明の前半でドラギさんと同様に金融政策の違いがどうのこうのという話をしていますが、えーっと黒田さん2年で2%達成するんじゃなかったでしたっけ???そうだったら目先は兎も角2年ってもうすぐ来るんで金融政策の方向性云々って話をするのは不適切ではないでしょうかねえ?????????

・・・・・・・などという事を勘案しますと、実は2年で2%はさすがに無茶でさてどうしましょう的な意識が実はあるからこういう話を平気でしてるんでしょ黒田さんホレホレホレという所で、実にここは味わいがあるなあと思うのでした。

最後の方でも為替の質問があったのですが、質問がなげえよ(会見ビデオを見ると誰か分かりますよん)。

『(問) 為替についてお聞きします。ジャクソンホールにいらっしゃった時のイタリア紙のインタビューの内容が伝わってきています。その内容について、円がtoo strong against the dollar and the euro compared to 2007 levels──即ち、ドル、ユーロに対して依然として強すぎるとのご発言だったように伝わっています。正確にはどのようにおっしゃったのでしょうか。』

『昨日、黒田総裁の後任の財務官でいらっしゃいました渡辺博史JBIC総裁のお話を聞いたところ、2007 年というのは渡辺財務官がちょうどお辞めになった時期ですが、当時と比べても日本の産業構造というのは、調達構造が変わっており、輸出産業でも部品などを数多く調達していて、部品だけみても貿易赤字になっている状況ということでした。そして、昨日の為替は105円超でしたが、これ以上円安になればマイナスになる産業も増えてくるとおっしゃいました。同じ財務官のご出身で言われることがこれほど違うと我々もちょっと戸惑うわけですけれども、類推するに──邪推かもしれませんが──黒田総裁が2%を何が何でも達成させたいというお考えということからすると、もっと円安にならないと2%は難しいのではないか、つまり、このままの為替の水準であれば昨年4 月におっしゃった2 年で2%というのは難しいのではないかと感じていらっしゃるのではないかと邪推してしまうのですけれども如何でしょうか。』

後半の質問が論点が散漫すぎる。

『(答) それは、邪推だと思います。』

ちなみに質問聞いている時から黒田さんガハハ状態でしたしこの時点でもガハハ状態。

『まず為替レートについては、具体的にこれからどうなるのかということを予測するのは極めて難しいわけですが、中長期的にみれば、ファンダメンタルズに近寄っていくということはあるとは思います。世界的な金融危機が起こった後、円は欧米の通貨だけでなくてアジアの通貨に対しても極端に高くなったわけです。現在は、それが緩やかに巻き戻して、だんだんと経済のファンダメンタルズに近づいてきているということだと思います。』

はあそうですか。

『これからさらにどうなるかということ、どうなるべきかということはなかなか難しいですが、為替の動向に一定の影響が出得る金融政策において、米国と日本、欧州との違いをみると、日欧は金融緩和が当面続いていく一方、米国はテーパリングを終了し、いずれ短期金利も上がっていくというように景気が非常によいということです。』

あれ日本の景気は前向きの循環メカニズムで物価目標達成待ったなしなんじゃなかったでしたっけ????

『そういう景気のよいところの通貨が、通常であれば、ファンダメンタルズに沿って強くなっていくということは、ある意味で自然だと思います。ただ、実際にそうなるかどうか、そうなるべきかとか、どの程度の水準が適切かということを数値的に言うのはなかなか難しいと思います。今の水準から円安になることが、日本経済にとって何か非常に好ましくないとは、私は思っていません。』

ということで、結局理由は特段無しで「円安に振れてもヘーキヘーキ」という話をしているのですが、まあこれは問題もあるとか言い出したら為替が暴れるでしょうし、しかしながら現実問題として産業界からもあんまり円安に振らんでヨロシという話が出るので円安バンザイという訳にも行かずという所で、従って「需給ギャップの改善とインフレ期待の上昇によるフィリップスカーブの上方シフトで物価が上昇する」という話をしており、しかもその需給ギャップ改善の中にあるのが主に生産拡大ではない要因の設備投資と労働需要の逼迫による賃金上昇という話で、輸出頼みシナリオにしていないという理屈が既にできているので、「円安に振らなくても2%目標ヘーキヘーキ」という話になるのでありました。


・消費税効果はワンタイムなので実質賃金を見るのは消費税抜きという珍理論キタコレ

だれだこの屁理屈思いついたのは???

『(問) 先程、賃金について言及されていましたが、実際、物価上昇に対して消費増税分を除いたものを含めた実質賃金は下がっている状況です。そうした状況を、総裁はどうご覧になられていますか。また、そういう状況が続けば、悪いインフレに傾くのではないかという声もちらほら上がってきていますが、どのようにお考えでしょうか。』

足元は悪いインフレですが中期的に見たら購買力が低下するので却ってデフレ圧力になりませんかという話をした方が良さそうではあるが。

『(答) 前回の決定会合後の記者会見でも申し上げましたが、物価上昇のうち増税に伴うものは、いかなる形であれ──所得税を上げても、消費税を上げても――、実質所得を削減するという面があります。その部分と経済の底流的・基調的な物価上昇の部分を同等に扱うのは必ずしも適当でないと思います。賃金の上昇から底流的な物価上昇率を割り引いたものが、実質賃金のトレンドと言えます。』

な、なんだってー!!!!!

『増税は、確かに実質所得を下げますので、消費に対して一定の影響が出ることは事実ですが、時間を追って、消費やGDP成長率への影響は段々小さくなっていきます。またご案内の通り、消費者物価上昇率は12 か月前との比較であり、消費税増税の1 回限りの影響は12 か月経つと全部落ちますので、トレンドとしての物価上昇率と、トレンドとしての賃金上昇率をみて、実質賃金のトレンドを考えていくことが適切ではないかと思っています。』

これは究極の屁理屈としか申し上げようがありませんが、そもそも何で賃金が上昇したかというと消費税上げて法人税下げるとかやる中で政治的にお前ら賃金上げやがれという話が政府方面から飛び込んでいた要因とか、まあさすがに企業としても消費税上昇するのに賃金据え置きはまじいだろという要因があったりする訳ですし、企業収益がどうのこうのという話も勿論ありますけれども、そもそもその企業収益がアグリゲートして上昇したのって円安に振って輸出企業中心に収益が上がったり財政支出拡大したりとか、こちらもまたワンタイムエフェクトの世界でしょと思う訳で、今年賃金を引き上げた要因の中で非正規にかかわる部分はまあ持続してくれるのかも知れませんけれども、常用雇用者の所定内賃金に関わる部分について足元の動きについて「トレンドとしての賃金上昇率」とか言われましてもナンジャソラと思うのですが、どういう屁理屈構成になっておられるのでしょうか・・・・・・・・・・・・

『なおご承知のように、直近7 月時点では、名目賃金も2.6%くらい伸びており、雇用の増加と合わせてみた雇用者所得の増加は4.2%という伸び――若干でき過ぎだと思いますが、――です。そうしたことも考えていく必要があると思っています。』

と、やはりここでもこの話キターという所ですな、うんうん。


・ずっと雨は降り続けないワロタ

こんな質疑がありました(^^)。

『(問) 個人消費の足許の弱さの背景について、さらに詳しく伺いたいのですが、天候不順の影響を総裁も感じていらっしゃるのでしょうか。また、日本の消費者は非常に価格に敏感であったりして、他の国の消費者よりも感度が高いとも言われますが、消費税率が3%上がって、物を買うと意外と高いなという消費者の実感がボディーブローのように効いてくるようなリスクがないのでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 消費税率の3%引き上げ後の最近時点の経済動向については、今日の決定会合後のステートメントでも示されている通り、住宅投資は反動減がまだ続いているわけですが、消費は基調としては底堅く、反動減の影響も徐々に和らぎつつあるとは思います。耐久消費財を中心に弱いところもあるというのは事実であり、全体としてみた場合に、1 つは、駆け込みがかなりあったものについては、その反動減からの戻りが若干遅れているという面があります。』

若干遅れるということですので戻るという事になっております。

『もう1 つは、増税が実質所得を引き下げるという、その部分だけを取ればそういう影響がありますので、ワンショットだとはいえ、その効果はすぐ消えるのではなくて、ある程度は続きます。』

ワンタイムエフェクト言いますけど税率が下がる訳ではないんで前年比ではヨコでもねえ・・・・・・・・

『3 つ目は、ご指摘のような天候要因というものも、7〜8 月にかけて大雨とか冷夏とか色々とあったと思います。しかし、いずれも構造的、あるいは長期的に続くということではなく、特に駆け込みの反動減の影響というのは、駆け込みの大きかった耐久消費財についてはある程度長引いているわけですが、これもいずれにせよ、時間とともに段々薄らいでいきます。実質所得減による影響も、次第に和らいでいきます。』

ほうほう。

『天候不順の影響も、ずっと雨が降り続けるわけではありませんので、いずれなくなっていくわけですし、いずれも一時的な要因ではないでしょうか。』

ワロタというか何ちゅう説明ということで、トレンドとしては戻るかも知らんが夏は終わってしまったので夏物はもう売れないと思いますがががががが。

『その一方で、雇用・所得状況は引き続き改善していますし、消費者のコンフィデンスも改善していますので、基本的には、個人消費は底堅く、反動の影響も段々と和らいでいくと思っています。』

とまあ説明は毎度こんな感じで推移している会見ではありました。


○予告編メモ:ドラギ総裁の会見がかなり面白い件について

ということで黒田さんの会見を見たのですが、一方のドラギのおっちゃんの会見ですけれども、別に同じ人が質問を続けている訳でも無いのですが、何かこう質疑応答が(特に前半)流れるように繋がっていまして、実にこう記者の方々のツッコミが容赦ないわというのが非常に面白いので実は鑑賞物としてはこちらの方がオヌヌメだったのですが、予定通り(?)時間が無いというかこれ結構な大作になってしまうのでどうしようか考えている内に時間ががががとなってしまいました。

ということで明日以降投下致しますね!!





2014/09/05

お題「ECB利下げは色々説明あるけど目先は為替狙いっすかねえ/日本はまた微妙に下方修正/短国またゼロ%とか」

タカ&トシ先生は言いたい放題言って逃亡ですかそうですか。
http://blogs.wsj.com/economics/2014/09/03/quitting-japan-top-economist-blames-labor-laws/
Quitting Japan, Top Economist Blames Labor Rules
8:06 pm ET Sep 3, 2014

いやあ公的年金問題で散々言いたい放題引っ掻き回して何の責任も負担しようとしないどころか結果が出てくる前にさっさとコロンビア大学に高飛びとかアタクシのような凡下には理解の範囲を超えますですわ。

#「まだ研究をしたい」ってタカ&トシ先生って政策プロモーターだと思ってました当方と致しましては盛大な認識違いでございまして誠に失礼致しましたと申し上げておきましょう(棒読み)


○ECBヤケクソ(かどうか知らんが)利下げキタコレ!!だが量的緩和どうすんの??

ということで今回は別に何もやらないでやるやる詐欺をどの位のチラリズムなどと思っていたのですが、まさかの利下げキタコレであります。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2014/html/pr140904.en.html
4 September 2014 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB took the following monetary policy decisions:

・The interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem will be decreased by 10 basis points to 0.05%, starting from the operation to be settled on 10 September 2014.

・The interest rate on the marginal lending facility will be decreased by 10 basis points to 0.30%, with effect from 10 September 2014.

・The interest rate on the deposit facility will be decreased by 10 basis points to -0.20%, with effect from 10 September 2014.

The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

ということで何と全部10bpの利下げで、これで預金ファシリティ金利が▲0.20%になるとはこりはまたヤケクソキタコレという感じですが・・・・・・・・・・・・・

いやまあ利下げがやや意外だったのは、オペレーショナルな面から考えた場合に「量をターゲットとした緩和政策」を実施する際には預金ファシリティーの金利は高めに置いた方が超過準備積み上げに対するインセンティブをご提供するので量が積みやすくなるのに対して、ECBの場合は預金ファシリティー金利のマイナスを拡大している訳で、つまり超過準備保有に対してペナルティーを課す状態で量の拡大をしろとか言われても難しい事になるので、今後国債購入をして量的緩和スキームの方向にレジームを変更するためのハードルを更に引き上げているので、利下げはあまりやらないかなあと思っていたのですけどね。

更に申し上げますと、まさかMRO金利をマイナスにする訳にも行かない(マイナスにしたらどう見ても「銀行に補助金を出している」という批判が殺到して収拾がつかなくなるでしょ)ので、金利を下げるにしても今回で打ち止めになってしまいますし、上記の理由で量的ターゲットを用いたレジームを導入するのが更に難しくなっているので、ここから先の手段自体はあるのですけれども、「見せ方」が難しくなっているなあとは思います。

でまあこの次にありますように、今回はABSとカバードボンドの買入というAPPだけど量というよりは信用緩和っぽい施策が打ち込まれておりますが、マイナス金利の中での資産買入で残高が積み上がるものとしては、このように信用緩和ちっくな物でしたらクレジットリスクや流動性リスクの部分が預金ファシリティのマイナス金利のデメリットよりも上回るからおっけーという話でしょうし、同じ理屈で域内国債でもへっぽこ銘柄であれば買入残高は積み上がるでしょう。そうでなければマイナス金利の水準まで委細構わず買入を続けるという荒業を炸裂させるしかありません(後の方で申し上げますが今日辺り下手したら短国だけど出来上がりマイナス金利の購入ケースが出そうな日銀がいますが^^)ので、まあそういう意味では「量をターゲットにした量的緩和」ではなくて「買入対象資産をターゲットにした資産買入政策」であればマイナス金利との併存は技術的には可能だと思います。

でまあ後はレトリックの話で、資産買入政策を量的緩和ちっくに見せておくものの、量を前面に出してしまうとマイナス金利の関係上量が積みにくいから見栄えが悪くなるので、あくまでも「買入対象資産」を前面に押し出して、マネタリーベース云々に関しては「これこれの資産買入を実施しました、ああ量に関しては市場の皆様がこれだけしか持ってこなかったから仕方ないですねウチのせいじゃありませんよ」という事で済ませるという形になるんでしょうな。

ということでまあ基本的にはこれとりあえず為替と債券には効くわなと思いますが、マネタリーベースがどうのこうの的な話では弱いので、この辺のバランスが市場の着眼点が変わった時にどうなのよというのは無いでもないですが、目先は米国が出口モードですからドラギのおっちゃんが言う「金融政策の方向性が違います」(キリッ)ってのが効くんでしょうかね、良く判らんけど。

#しかし「金融政策の方向性が違います」っていうと格好良さげに見えるが、「うちは他の先進国と比較してダメダメです」って話の裏返しであって自虐ネタにも程があるんですけどね!!!!!!!


○ドラギ総裁会見であるがQ&Aまで読みこめていません(すいません)

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140904.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 September 2014

もうQ&Aが出ていますな。

『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council, which was also attended by the Commission Vice-President, Mr Katainen.』

カタイネンさんも出席してますねん(言ってみたかっただけ)。

『Based on our regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided today to lower the interest rate on the main refinancing operations of the Eurosystem by 10 basis points to 0.05% and the rate on the marginal lending facility by 10 basis points to 0.30%. The rate on the deposit facility was lowered by 10 basis points to -0.20%.』

利下げキタコレ!

『In addition, the Governing Council decided to start purchasing non-financial private sector assets.』

民間の非金融機関の債務の購入を開始することを決定しましたキタコレ!

『The Eurosystem will purchase a broad portfolio of simple and transparent asset-backed securities (ABSs) with underlying assets consisting of claims against the euro area non-financial private sector under an ABS purchase programme (ABSPP). This reflects the role of the ABS market in facilitating new credit flows to the economy and follows the intensification of preparatory work on this matter, as decided by the Governing Council in June.』

ABSの購入を行う事によってABS市場を通じたクレジット供給を促進しますとな。

『In parallel, the Eurosystem will also purchase a broad portfolio of euro-denominated covered bonds issued by MFIs domiciled in the euro area under a new covered bond purchase programme (CBPP3).』

ユーロ建てのカバードボンドの購入も行いますと。

『Interventions under these programmes will start in October 2014. The detailed modalities of these programmes will be announced after the Governing Council meeting of 2 October 2014.』

これらの施策は次回の定例理事会で詳細を決定して、10月より実施しますと。

『The newly decided measures, together with the targeted longer-term refinancing operations which will be conducted in two weeks, will have a sizeable impact on our balance sheet.』

おーインチキレトリック早速出しているじゃんという事でして、資産買入政策を打ち込んでおいて常設預金ファシリティー金利のマイナスは拡大しているので、先ほど申し上げたように「バランスシートの量で勝負」の政策とは相性が悪いのですが、あえて「sizeable impact on our balance sheet」と言って何となく量的緩和をしているっぽい説明をしているのがドラギ総裁の福井俊彦力とでも申しますインチキクオリティであります。なお「バランスシートにインパクト」とはいってますが「量」(またはサイズ)とは言っていない辺りが中々チャーミング。


『These decisions will add to the range of monetary policy measures taken over recent months. In particular, they will support our forward guidance on the key ECB interest rates and reflect the fact that there are significant and increasing differences in the monetary policy cycle between major advanced economies.』

で、パラグラフで思いっきり為替誘導ちっくな話をしているのがまたお洒落にも程がある訳で、「there are significant and increasing differences in the monetary policy cycle between major advanced economies」って要するに米国や英国は出口モードだけどEUは追加緩和だからユーロが安くなりやがれこの野郎という事で、まあ以前からちらちらこの話はしていますが、今回はまた盛大に露骨な発言ですな。

『They will further enhance the functioning of the monetary policy transmission mechanism and support the provision of credit to the broad economy.』

まあこれは普通の文言。

『In our analysis, we took into account the overall subdued outlook for inflation, the weakening in the euro area’s growth momentum over the recent past and the continued subdued monetary and credit dynamics. Today’s decisions, together with the other measures in place, have been taken with a view to underpinning the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations, in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』

でまあここの表現もまた微妙な言い方になっていますが、今回の決定によって中長期のインフレ期待がターゲットの2%に確りアンカーされる事を展望しているという話になっていまして、まあこの前のジャクソンホールでの話とかとも総合しますと、「中長期的なインフレ期待の低下を防ぐ」という目的があるという建付けになっているという事ですわな。

ただまあインフレ期待の低下リスクへの対応という意味では米国でも日本でも基本的には「量的緩和政策による国債大量購入」というスキームを使っていまして、今回のような「ゼロからマイナスの金利と信用緩和的な資産買入のセット」というのはECBが嚆矢となるので、はてさてどうなるのやらという所ではあるのですけどね。これで「期待に働きかける」のですかねえ・・・・・・・

『As our measures work their way through to the economy they will contribute to a return of inflation rates to levels closer to 2%. Should it become necessary to further address risks of too prolonged a period of low inflation, the Governing Council is unanimous in its commitment to using additional unconventional instruments within its mandate.』

今後必要になれば更なる追加緩和を実施する用意がある事を全員一致ということですが、じゃあ何をやるのかという話は無いですけど、まあ利下げ余地がマジでなくなった(しいて言えばあと4.9bp位下げられるかもしれませんけど)ので、次に何か必要になったら必然的に非伝統的政策になるので、まあこういう話になりますし、大体からして景気見通しが強くなっても居ないのに「これで打ち止め」という訳にも行きませんからシャーナイナイですな。


で、この先が経済物価情勢および金融面での現状認識と先行き見通しの話になるのですが、途中を飛ばしてまずは物価の部分を前回と比較しつつ引用しますね。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140807.en.html(前回)

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.3% in August 2014, after 0.4% in July. This decline reflects primarily lower energy price inflation, while the other main components remained broadly unchanged in aggregate.』 (今回)

足元の下げについては一時的なエネルギー価格の要因が大きいという話をしていますが・・・・・・・・・

『Inflation rates have now remained low for a considerable period of time. As said, today’s decisions, together with the other measures in place, have been taken to underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations, in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%.』(今回)

ということで先ほど冒頭の部分にあったインフレ期待がどうのこうのの部分がまた説明されています。

『On the basis of current information, annual HICP inflation is expected to remain at low levels over the coming months, before increasing gradually during 2015 and 2016. 』(今回)

ということですが、前回はどうなっていたかと言いますと・・・・・・・・・

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 0.4% in July 2014, after 0.5% in June. This reflects primarily lower energy price inflation, while the other main components of the HICP remained broadly unchanged . On the basis of current information, annual HICP inflation is expected to remain at low levels over the coming months, before increasing gradually during 2015 and 2016. Meanwhile, inflation expectations for the euro area over the medium to long term continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2%. 』(前回)

ということで、物価の足元の弱さの要因、先行きに関して数か月の間低い状態が続いて2015年から2016年に向けて物価が2%に向けて戻るという見通しについては前回と同様ですが、ご覧になれば判るように、前回は「中長期のインフレ期待は確りとアンカーされている」(キリッ)という文言からご覧のような表現に変更になった訳で、まあどうせ質疑応答でこの辺は質問あるでしょうからQ&Aで確認したいですな。

『The September 2014 ECB staff macroeconomic projections for the euro area foresee annual HICP inflation at 0.6% in 2014, 1.1% in 2015 and 1.4% in 2016. In comparison with the June 2014 Eurosystem staff macroeconomic projections, the projection for inflation for 2014 has been revised downwards. The projections for 2015 and 2016 have remained unchanged.』(今回)

先行き見通しに関するECBスタッフの見通しに関しては文章にありますように四半期毎に出てくるので前回は出ていませんが、足元の見通しは下がっているけれども先行きの見通しは変わっていないとか中央銀行の願望レポートクオリティにも似た大変に心温まるものとなっています。

『The Governing Council, taking into account the measures decided today, will continue to closely monitor the risks to the outlook for price developments over the medium term. In this context, we will focus in particular on the possible repercussions of dampened growth dynamics, geopolitical developments, exchange rate developments and the pass-through of our monetary policy measures.』(今回)

『The Governing Council sees both upside and downside risks to the outlook for price developments as limited and broadly balanced over the medium term. In this context, we will closely monitor the possible repercussions of heightened geopolitical risks and exchange rate developments.』(前回)

ということで、今回のIntroductory statementでは物価に関する部分での先行きリスク認識がバランス云々という文言がばっさり抜けまして(追加緩和しましたし中長期的なインフレ期待に関する警戒をしているのだから当然ですが)、先行きの動向に注意するという形で、実質下振れリスク警戒の姿勢を強めた(ただし下振れリスクが高いという表現は避ける)というのが前回との違いです。あと、今回しらっとここでも為替市場の影響とか入れているのがお洒落ですな。


あとついでに折角だからジャクソンホール以来に話題の財政に関する文言を前回と比較してみます。

『With regard to structural reforms, important steps have been taken in several Member States, while in others such measures still need to be legislated for and implemented. These efforts now clearly need to gain momentum to achieve higher sustainable growth and employment in the euro area. Determined structural reforms in product and labour markets as well as action to improve the business environment are warranted. As regards fiscal policies, comprehensive fiscal consolidation in recent years has contributed to reducing budgetary imbalances. Euro area countries should not unravel the progress made with fiscal consolidation and should proceed in line with the Stability and Growth Pact. The Pact acts as an anchor for confidence, and the existing flexibility within the rules allows the budgetary costs of major structural reforms to be addressed and demand to be supported. There is also leeway to achieve a more growth-friendly composition of fiscal policies. A full and consistent implementation of the euro area’s existing fiscal and macroeconomic surveillance framework is key to bringing down high public debt ratios, to raising potential growth and to increasing the euro area’s resilience to shocks.』(今回)

『As regards fiscal policies, comprehensive fiscal consolidation in recent years has contributed to reducing budgetary imbalances. Important structural reforms have increased competitiveness and the adjustment capacity of countries’ labour and product markets. These efforts now need to gain momentum to enhance the euro area’s growth potential. Structural reforms should focus on fostering private investment and job creation. To restore sound public finances, euro area countries should proceed in line with the Stability and Growth Pact and should not unravel the progress made with fiscal consolidation. Fiscal consolidation should be designed in a growth-friendly way. A full and consistent implementation of the euro area’s existing fiscal and macroeconomic surveillance framework is key to bringing down high public debt ratios, to raising potential growth and to increasing the euro area’s resilience to shocks.』(前回)

ということで、前回よりもそもそも分量が多くなっているのですが、これに関してはEUでの各種施策の進展を踏まえた部分もあるので微妙ですが、今回はcomprehensive fiscal consolidationの話では無くて最初に来ているのがstructural reformsの話になっている辺りが、ジャクソンホールの講演との地続き感を見せているのが作りとして考えているなあというのと、後半の方にあります「成長にフレンドリーな財政健全化政策」という話に関する表現が・・・・・・・・・・

『There is also leeway to achieve a more growth-friendly composition of fiscal policies.』(今回)
『Fiscal consolidation should be designed in a growth-friendly way. 』(前回)

ということで、「財政健全化政策を成長にフレンドリーに」という表現から「財政政策の組み合わせにより成長にフレンドリーになる余地がある」という表現になっていまして、財政政策を出せやゴルァというような表現に近づいてきている辺りもこれまたジャクソンホールの地続きという所でしょうか。

『We are now at your disposal for questions.』

以下は週明けで勘弁ナリ。



○ジャパンの金融政策決定会合ですがまたも現状判断需要項目の引き下げですなあ

ということでECBの後に肝心のジャパンの金融政策決定となという所ですが、もはやだいぶどうでもよくなっているなどという事はございませんよ(−−;

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140904a.pdf

前回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140808a.pdf

・現状判断は総括判断は不変もまたまた個別項目で判断の下げとな

まずは総括判断。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

往生際悪く毎度の「基調的には」攻撃なのでありますが、会見(会見要旨が出てからネタにしますが)ではひたすら何ちゃら細胞の存在の如く「回復しています前向きの循環メカニズムは続いています」(キリッ)となっているのでありました。以下は個別の需要項目である。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(前回)

海外と輸出は前回と同じですが、まあ輸出は弱めの動きというままですな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

とまあここまでは前回と同じです。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。』(今回)
『雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費や住宅投資は、基調的に底堅く推移しており、全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(前回)

基調的に底堅く推移しているのは個人消費だけになりまして、住宅投資については駆け込み需要の反動減が続いている、という判断に下がっている訳ですが、では前月の「全体としてみれば駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある」というこの「全体としてみれば」とは何だったのかと小一時間問い詰めたい。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けている。』(前回)

日銀文学キタコレ(・∀・)!!!

・・・・・・・と申しましてもこれはだいぶ分かりやすくて、要するに従来は主文が「鉱工業生産は緩やかな増加」だったのが今回「鉱工業生産は弱め」と変わっていますので判断が引き下げになったという事です。

なお、声明文英文版(英文版はあくまでもご参考の英訳バージョンでMPMでの決定事項は日本語声明文になります。議事要旨を見れば判りますけど決定事項の所にある声明文は日本語バージョンだけな)を見るとこの禅問答が分かりやすくなります。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140904a.pdf(今回)

『Reflecting these developments in demand both at home and abroad, industrial production has recently shown some weakness, although it has continued to increase moderately as a trend.』(今回)

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140808a.pdf(前回)

『Reflecting these developments in demand both at home and abroad, industrial production has continued to increase moderately as a trend, although it has recently shown some weakness.』(前回)

ということで、こちらですと何が主文かが分かりやすいと思いますので、この手の文学鑑賞の場合は英文も併せて読むと吉という場合もありますぞなもし。


『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

おいこらどこの予想物価上昇率が上昇しているんだと小一時間問い詰めたい所ではありますが、ご覧のとおり金融環境や物価に関しての判断もまた不変で、今回下がったのは住宅投資と鉱工業生産となります。


・先行き見通しは同じ文言ですが物価再加速の時期が逃げ水のようにロールオーバーされていますがががががが

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

ということで、先行き見通しに関しては基調判断部分は前回と同じ文言(というか先行きの基調判断を下げるとなると追加緩和待ったなしですがな)になっておりますが、毎度申し上げておりますように、先行きの物価見通しに関しましては本年1月以降延々と「暫くの間」1%台前半で推移という話をしておりまして、暫くの間means半年程度とのことですので、どう見ても物価再加速時期の想定がドンドンと後ずれしている訳で、置物師匠のマネタリーベース直線一気理論によりますと、2%の予想インフレ率達成の為に必要とされていた量を遥かに上回るMB拡大をしている訳でして、デフレは貨幣的現象なんだからマネタリーこんなに出しているのに何でこう物価再加速時期が後ずれするのか小一時間師匠に質問して頂きたいものであります。

・・・・・とか何時の間にか話が逸れましたが、まあ要するに先行き見通し不変も物価上昇再加速時期がどんどんずれていて、2年で2%大丈夫というのはさすがに無理が出て来てないか10月の展望レポートでどう誤魔化すもとい説明するんだという感じではあります。

まあ何ですな、2年で2%行かなかったら置物副総裁様は国会での発言通りに潔くご退任ということで、まあ折角ですので白装束に身を包んで過去に日銀を最大級に罵りつつお書きになられた書籍などを白木の箱に詰めて盛大に焚書でもしていただくセレモニー位して頂きますと誠に有り難く存じます次第ですし、国権の最高機関たる国会で発言した事を今更無かったことにするとなりますと即ち国民の代表を欺いて日銀副総裁にご就任遊ばされたという事になりますからどうなんでしょうかねえとかは全てアタクシの妄想でありまして、実際には「物価目標は金融政策で達成できる」訳ですので、当然期限に達成できると信じていますので楽しみに待っておりますよ!!!!!

・・・・・・うむ、結局話がそれてしまったorzorz


・リスク要因も文言不変

他のリスク要因もあるんだからいい加減文言変えれば良いのにとは思うのですけどねえ。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)



・決意表明的な文言と木内さんの提案と却下振りも不変である

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

どう見ても全文一致です本当にありがとうございました。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)

殆ど意地になって提案しているような感じですけれども、前回も申し上げましたように、そもそも来年の4月まであと半年ちょっととかになっている訳で、今さら「2年間程度の集中対応措置」という文言を使わない方が良いのではないかと思うのですが・・・・・・・・


・なお会見は何となくは聞いてみたものの・・・・・・・・・・・・

詳しくは会見要旨出てからにしますが、会見の説明はとりあえず自分の見通しに都合の良いデータをひたすら強調するとか、まあ何ちゅうか説明がアナザーワールドに逝っている感がしまして、段々話がかみ合わなくなっているなあというのが第一印象。今回も説明が無駄に長くて、それはまあ相手の質問に対してストレートに答えると不都合な経済指標とか市場の動きとかが飛び出してくるので、まずはその質問に対してせっせと迂回路を用意して、そこから迂回路経由で自分たちの説明に都合のよい材料を出して来る、という風な説明になるので冗長感が漂うんだと思います。詳しくは後日。


○市場メモ雑談

・短国市場が更にヒャッハー

ヒャッハー!!
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0R528X20140904
新発3カ月物国庫証券利回り、ゼロ%付ける
2014年 09月 4日 15:18 JST

・・・・・・・ということで昨日の短国市場ちゃんですが、在庫すっからかんなのでシャーナイナイではあるのですが、前日0.1bpとかで出合いやがった新発3MTBが昨日は貫録のゼロ出合いとなりまして、またやってくれましたなという所です。日本相互証券の引けは0.3bpになるわ、日本証券業協会の売買参考統計値の平均単利は0.4bpになるわと誠に香ばしい展開になっておりまして、本日は週に1度の短国買入フライデーでございまして、短国買入の足切りが4糸強となりますと出来上がりゼロ%、5糸強よりも強くなりますと、何と日本銀行様による債券のアウトライト買入オペで出来上がりマイナス(短国だからまさかのオーバーパー)での買入という大変に素敵な事案が発生する訳です。

という訳でまあこの際ECBも利下げした事ですしヤケクソで買入をどどーんと入れてマイナス金利で買入行って対抗でもしたら如何でしょうかただし短国市場が壊れますけどねえ(既に壊れているけどマイナスやったら止めも止めでインドで引導という感じですわ)と存じます次第。

なお、本日短国買入を入れてもそもそも札があるのかいなという気もします(水曜の新発を強い所で買った投資家さんは「短国というモノ」が必要で買っているので、よほどとんでもないマイナス金利にでもならない限りは持ってるのを日銀には入れないでしょ)し、仮に短国買入行ったとしても、ほぼ年内償還物が打ち込まれて年末のMB稼ぎに使えないと思われますので、思い切って今週はスキップして、もうどうせなら月曜に6か月があるんだから火曜日に短国買入を2兆でも2.5兆でも入れてみたらとか思ってしまう(したがって翌週は当然ながら17日の1年TBの翌日に短国買入ということで^^)次第です。


・固定金利オペの足の置き方

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140904.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 8,000 2014年9月8日 2014年12月8日

・・・・・・まあ何の変哲もない3か月もの固定金利オペのロールオーバーなのですが、その前日に行った固定金利オペの足が12月12日でして、これで12月は固定金利オペの足が来る日が1、8、9、12日となり、オペのオファータイミングで言えば12月の第1週から第2週に3発のオファーという事になります。あと今月は22日足の固定金利があります。

でですね、最初見た時に何で12月に足を持ってくるかねと思ったのですが、これはつまり年末のMB積み上げ目標のある中で、残高維持に不確実性のある固定金利オペについては基本的に月の早い時期に年内分のロールを基本的に終了させておこうという計画なのねと思って勝手に納得しました(なおこれはアタクシが勝手に納得しているだけで事実は別の所にあるかも知れませんので念の為)。

となりますと、やはり日銀MB目標達成に向けた「その他」項目の帳尻という面を考えますと、10月11月に3か月物を含めてせっせと買入を進捗させ、その後に固定金利オペの不確実性のあるロールがやはり不確実で落ちてしまったとなった時に再度帳尻の短国買入オペ実施となる、という流れになるんでしょうなあとか思いますと10月11月の短国買入は相当ラッシュになりそうですね。

#なお落札の方は1430億円の落ちに対して1650億円の落札と220億円の差異(今回は増加)でした





2014/09/04

お題「短国がまたまた0.1bpとかヒャッハーモード/月初なので各種係数関連の纏めメモ/内閣改造関連の備忘メモ」

フィッシャー総裁(ダラス連銀の方)は安定のタカ派通常運行。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0R459920140903
UPDATE 1-段階的な利上げ、米経済の足かせにならず=ダラス連銀総裁
2014年 09月 4日 03:58 JST

こちらはまあ火消しというか何というか。
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0R43PW20140903
ECB総裁の財政発言、曲解されている=ラウテンシュレーガー理事
2014年 09月 3日 19:47 JST

○短国入札がヒャッハーとかその関連の計数とか

・3M入札後にまたまた0.1bp出合いヒャッハー

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20140903.htm

(3)募入最低価格 99円99銭4厘5毛 (募入最高利回り)(0.0220%)
(4)募入最低価格における案分比率 66.8168%
(5)募入平均価格 99円99銭4厘9毛 (募入平均利回り)(0.0204%)

ということで昨日は(今日MPM結果発表目なので)水曜日ですが3M新発の入札があったのですけれども、入札が強めの上にいわゆる不明玉が3.7兆円ほど(発行額は5.7兆円な)となり、ショートカバーを強いられた方もいたのかセカンダリーで0.5bp出合いかよアイヤーというところでしたが・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0R42EG20140903
〔金利マーケットアイ〕TB落札利回りは8年7カ月ぶり低水準、業者間で0.001%に低下
2014年 09月 3日 15:31 JST

『新発3カ月物利回りは入札結果発表後の業者間取引で、一時0.001%まで低下。入札で在庫を確保しきれなかった業者からショートカバーの動きが強まった。市場では期末に向けて銀行勢の需要が強まれば、利回りが一時的にマイナスの水準に低下する可能性も否定できない」(国内金融機関)との見方が出ている。』(上記URLより)

なお日本相互証券の引けは0.7bpとか大変にワンダホーな事になっているようでorzorzorz

・・・・一方でGCレートとかそんなに下がっている訳では無くて、相変わらず短国一人旅状態になっているのがオソロシスなのですが、まあ日銀が先月せっせと購入した効果もありますけれども、9月ですので期末モードでして、中間期末を控えて債券残高の帳尻に動く人がいて、当然ながら債券残高の帳尻なのですから利回りとか知らんがなで「モノ」としての短国が必要ですからそらまあレートどこでも買いますがな。でまあ日銀様の輪番積み上げとなる中でオペに協力してせっせと保有国債日銀に放り込んで残高を落とすのですが、決算的な意味では保有国債の残高の帳尻取らないといけないし、短国で埋めておけば保有国債のデュレーションも短くなるので決算上も美しいのでちょうどヨロシという事ですかよくわからんけど。

でまあこの動きが続きますかという話になると日銀の短国買入がどのようなペースになるかがもう一つのポイントになりますでしょうなあと思われますが、昨日申し上げましたように先週の短国買入がどう見ても1.5兆円で足りそうな所にわざわざ刻みを入れて1.75兆円買って市場の玉を盛大に吸い上げてしまっているのが不穏でして、まあその辺不穏だから念の為早めに押さえておこうというのもあったんでしょうかねえ、よー知らんけど。


・短国保有残高関連

毎度おなじみのこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額(8月末)

日銀買入残高(営業毎旬の保有残高は長国の償還乗換分が加わるので毎旬の数値と異なる)は8月末で42兆2160億円でして、短国の市中消化額が大体130兆円なのでどんだけ買ってますねんという話で、そら金利も歪みますわな。何せ7月に残高約7兆円増えて8月は2兆3635億円増えてという盛大な増加なので短国一人旅になるのは仕方ない、って先月も同じ話をした気がします(−−;

なお、年末越え残高ですけれども、末時点での残高が14兆2690億円となっているのですが、7月末が11兆2972億円(先月計算して駄文に書いた数字計算違いでしたすいませんすいません訂正しておきます)なので、3兆円位増えているのですが、うち1年新発(474回)が11223億円で6か月新発(470回)が8909億円で、前の月の1年新発(466回)が8481億円という感じになっていますな。

まあせっせと年末越えの積み上げは進んでいるのですが、先のスケジュールを考えると今月ってまあ6Mとか1Yとかの買入を積むのは引き続きオイシイのですけれども、3M新発が普通に入ると12月に償還が来る(昨日の新発は12月8日償還な)銘柄を購入することになって、ここの残高を無用に積み上げるとロールの時に残高目標直前の時点となってしまうのでマズーになるとか考えると、まあ年末という時点を切られて目標額が張られている以上、今月は6か月と1年の新発が出る週(つまり来週と再来週)の時の短国買入は気合を入れてくるにしても、今週とかどうせ入れる玉も無いのですし(なお出来上がりマイナス金利というドリームチャンスではあるのですが^^)そんなに無慈悲オファーとかしてこないと思う(というか思いたい^^)のですけどねえ。


・固定金利オペである

昨日のオペ結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140903.htm
米ドル資金供給(9月5日スタート分) 2 2
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,942 3,001 0.008 0.008 56.7
国債買入(残存期間3年超5年以下) 9,659 2,000 0.005 0.006
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,108 4,008 0.008 0.010 1.6
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(9月5日スタート分) 2,590 2,590
CP等買入 11,491 5,128 0.092 0.094 17.7

ドルオペ2百万ドルだけ入ってるやん!とかそういう話はさて置きまして、固定金利オペは2590億円の応札となりまして、折り返し前が5420億円なので2000億円程減額ロールとなりまして、ありゃまあという所ですけれども、昨日申し上げましたように今月はそもそも固定オペの落ちが少ないのであまり固定金利オペ要因でのその他部分の影響はないでしょうなあと思われます。

でまあ当然ながら今月の固定金利オペのエンドが少ないという事は12月の固定金利オペのエンドも少なくなる予定で、22日エンドのオペが年末越えでロールされるかどうかで若干ずれますが、12月に落ちが来るのはこの調子だと5本でして、残高も1兆前半位になる(そらまあこの先のオペが全部8000億とかになったら話は全然別ですが)と思われまして、まあ当然ながらこの辺の足の入れ方とかはオペ担当部署の中の人が先々まで考えて綿密に練っている世界(の筈)ですので、同じ理屈で今月って普通に考えると12月のロールの事を考えるとあまり無茶買いはしてこないとなる筈なんですけどねえ。


あと、CP買入のレートが相変わらず9bp台になっていまして、短国が1bpだの0.1bpだのとヒャッハーヒャッハーしている中でこの水準という所に日銀短国買入のストック効果の恐ろしさを感じるのでありました。

しかしまあ何ですな、資産買入に関してストック効果とフロー効果とどっちが効くのかという話がありまして、だいたい中央銀行の理屈からすると「ストックが効果を出します」という話をして来ることが多くて、一方で市場ちゃんにおいては基本的にフローがどうなるで一々大騒ぎになる、というのが(ジャパンで)良くある図式なのですが、この辺りって市場の片隅でおこぼれを頂戴して棲息すること十ウン年(だったっけ)の不肖このアタクシが思いまするに、おそらくストックが効果を出すというレベルってえのは市場に対する買入シェア的な閾値みたいなのがあって、その閾値に来るまでは基本的にストックってあまり効かなくて、一方でフローは実際の売買行動に思いっきりぶつかるのでこうかはばつぐんだという話になるんじゃないかと。

でまあストックがどこかの閾値を超えてくるとストック効果が急速に出てきて、フローも効くのですが市場の玉を吸い上げまくってしまうと少々フローを落としてもストックの効果が強く出てあまり金利の水準が変わらんとかそんな事になるようにも思えます。その閾値が幾らなのかよく判らんですけど、一つには市場の流通玉がゼロになるのか近づくのかとなる辺りなのかなあと体感的には思うけど分析不能なのでパス。


○その他計数関連

・長期国債保有残高関連

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

ということでこれまた毎度おなじみの奴ですが、先月の買入銘柄の平均残存年限はあたくしが計算したベースですと6.9年くらい(6.96年とかになったのだが)なので、まあ見事に7年の所に収まっているという素晴らしい実績で、先日のオペ2500億円刻みもそうですが、こういう数字を帳尻もとい見事に着地させる日銀オペレーション実行部隊の能力の高さには感心する次第であります。

まあそもそもその7年というのって腰だめの数字にしか見えないし、7年という数値に何の定量的な意味があるのやら(それまでの平均3.5年程度のニバーイニバーイという意味はありましたがそれって定量的効果を狙っているんじゃなくて定性的効果でしょと小一時間)とか考えますと、何か必死こいて7年に着地させるために貴重な才能と能力を摩耗させているのではないか等とツッコミを入れたら実行部隊の皆様の立つ瀬がないのでツッコミを入れるのは謹んで自粛させて頂きたく存じます。

でまあ先月の買入上位銘柄を出したら相変わらずカレント大会で、10年334回債は16487億円とかまたカレントかという所ですが、2年338回債が6391億円で5年107回債が4839億円とか中長期はカレントかカレント近辺か、市場価格が付利金利をちょっと下回った水準の所かというのがいつも通りのクオリティ過ぎて中々泣けますな。

なお、将来の償還スケジュールの方ですけれども、暦年ベースの2015年に償還が来るのはあたくしが計算したところによりますと28兆9163億円ありまして、7月末時点で28兆0448億円だったので、来年の償還額がしらっと8700億円程増えているのがチャーミング。

ということで、先月計算した時には置きとして1年以内の輪番部分だけが残高に跳ねるという超雑な計算をしていましたが、1年超3年以内輪番でも残存1年近くの所が案の定打ち込まれておりましたので、残高50兆拡大ペースを継続とした場合でももうちょっと増える(先月計算した時は月間6.6兆円という数字になった)のかもしれませんねという所です。まあ多分なのですが1年以内輪番って今の感じだと短い所の打ち込みの方が多くなりそうなのでそんなにここからぶれるとも思えませんが。

で、2016年まで今のMB拡大継続とかどう見てもサステイナブルでは無いので計算してもしょうがないのですけれども、2016年の国債償還額は今の所19兆4009億円になっていますが、ここから中期輪番で2年カレントがバカスカ入ってくるので更に残高は増えるのでしょうなあと思うのでした。


○内閣改造関連市場メモ

ふむふむ、段々コメントが落ち着き気味になってきましたか。

http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0GY0DY20140903?sp=true
第2次安倍改造内閣と自民党役員人事:識者はこうみる
2014年 09月 3日 14:50 JST

なんか一昨日の報道の時なんぞは厚生労働大臣に塩崎さんが内定でGPIF改革で株と外債ヒャッハーとかいやあの厚生労働省のお仕事ってもっともっと沢山あるし、そもそも税と社会保障の一体改革の話じゃなくてGPIFの方がネタになるとかどんだけ市場脊髄反応してますねんとは思いましたが、まあ労働市場の改革とか社会保障改革の方がどうなりますやらという話が本命でしょうがとは思うのでした。塩崎さんにおかれましては第一次安倍内閣の時にまあ微妙にアレでございましたので、この間にどのような変化をなされておられるのかという所が注目されるというところでしょうかねえ。

でまあそのヒャッハーちゃんは一旦組閣が確定したところでポジションの閉じも入ったようですが、谷垣幹事長というのがほえーという所で、二階総務会長は事前に報道されていましたからサプライズではありませんでしたが、更に組閣後に出てきたのが地方創生だのの連発で、ま〜理屈からするとアベノミクスのトリクルダウンで地方にもアベノミクスの効果をって話になります(なお来年の政治日程については考えないことにしておく)が、重点施策になった地方創生ネタを実行するのにも財源の確保が必要でしょうという事でガッキー幹事長と来た日には消費税の税率引き上げは予定通りで進行ですなあという想像が出るようで、物価連動国債のカレントが引値で20銭上昇してBEIが120を回復していたのが実にチャーミングでありましたな(^^)。

いずれにせよそんなに極端な変化は無くて、ガッキー幹事長で消費税予定通り(そもそも予定通りに実行しないとなると法的手当てが必要なので順当に考えると予定通りなのだが)という確度が高まったというのだけが今回のビックリでしたかねという所です。


#各種材料は今日から今晩に掛けて出るので本日はメモ状態ですいません





2014/09/03

お題「今月の短国買入を想定してみる/師匠の2013年3月の高座を鑑賞してみるの巻(続き)」

ここもとダメ指標が続いていましたが直近で毎勤統計が出てドル円が105円乗せになりましたので今週のMPMでも「前向きの循環メカニズム」キタコレでしょうなあ・・・・・・・・・

○市場雑談メモ

・今月の短国買入は普通に考えるとだいぶ減るのですが・・・・・・・・

マネタリーベース
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1408.pdf

ということで計数が出た訳ですが、まずマネタリーベースについては末残数値で243.5兆円になっていまして、今年末の目標が270兆円で、目標数値ベースで行けば昨年末が200兆円(実数値で言えば201.8兆円)でしたので、そのまま目標に向けてリニアに拡大という計算で行きますと今月末は252.5兆円に達していると綺麗に進捗しているという走りになります。

ということで今月は前月末対比で9兆円のMB積み上げが最低でも必要ということになりますが・・・・・・・・・・

日銀当座預金増減要因(2014年9月見込み)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1409.htm/

こちらの数字にありますように、9月は国債大量償還要因がありますので、日銀保有国債の期落ちまで含めた資金需給見込みが3.36兆円の不足となっていまして、このため9月は国債と短国の買入をフローベースで9.4兆円ほど積んでおく必要があるという話になりますな。

で、今月の輪番は奇数月なので6.29兆円になるのですが、例によって例のごとく月末跨ぎの買入部分の足ずれ要因(最近は中間期末でも期末跨ぎの輪番がありますので)による出入りがあるのと、おそらく「1年以内輪番」が9月20日償還銘柄が打ち込まれると想定されるのでその分を調整しないといけないのですな。

前月からの跨ぎが6400億円あって月末の輪番がどうなるのか良く判らんですけど、まあめんどいのでツーペーにして(一番多いケースで中期+長期で9000億円なのでその場合は2600億円減らさないといけません)、1年以内輪番が2200億円なので、まあ今月の長期国債買入でのMB積み上げ分は6兆円で置いてみますと、残り3.4兆円を「その他」で積まないといけませんな。

その他要因のうち固定金利オペは今月の足は残り3本しかなくて、8500億円くらいですし、固定金利オペの残高自体が足元で10兆割れ(9.9兆円台後半なので殆ど10兆ですが)となっていますのでそんなに残高は落ちないという風に読んで置きまして、もう一つの注目の貸出増加支援オペですがこれがどの位出るのかは入れる人に聞かないとワカランチ会長ですけどそんなにロットは出なさそうなのでめんどうなのでゼロで置いて全部短国という事にしますと、既に先週1.75兆円の短国買入を実施しているので、今月の短国買入って残り2兆円も実施すれば充分ですがなという計算になりますぞなという事ですな。

・・・・・・・・・とまあ普通に考えるとこうなるのですが、謎なのは先週金曜の短国買入が短国需給を見たいっぱいいっぱいと思われる1.75兆円という初めて出てきた2500億円区切りでオファーしてきたところでして、9月の資金需給から考えたら、わざわざ刻みを謎にいじってまで買って短国需給をひっ迫させんでもよかろう(おかげで短国現先のレートとかに影響している訳だが)と思う中であえて1.75兆円で短国買入を入れてきているので、これはもしかして9月末残時点でMBの積み上げペースを少し上げておこうという意識があるのかも知れませんな、という想像が出来る訳ですよ。

順当に逝くと今月の短国買入は月内受け渡しが来る分であと4本オファーできる(のだが半期末になる9月30日渡しの短国買入はオファーしても札が全然入らないリスクがあるので避けて10月1日オファーとかにした方が良いんじゃネーノと思う)ので、毎回1.5兆円でオファーしたとしても6兆積めて進捗が超順調という話になる次第で、そんな感じで積み上げてくるのかも知れないなあと思いつつ今週末の短国買入オファーの額を正座して待機したいと思います。

まあ何ですな、6月末や3月末に見られました期末残高帳尻ニーズに関しては足元の相場推移を見るとどうみても残高積めていない方々が多うございますでしょうから今月も末に向けて凶悪化することが想定されますし、大体からして国債大量償還に伴う短期資金潰しニーズも下旬からは絶賛発生します上に、足元ではECBの追加緩和ヒャッハーというのが出たりするとまたまた短国ニーズが海の向こうからもやってきそうですし、それら諸々を勘案すると短国買入が減ってくれた方が短国マイナス金利ヒャッハーとかその手のこまったちゃん現象が起きなくて良いのですけど、さてどうなるんでしょうかねえというメモでした。

#なお国債残高関連計数ネタは後日で勘弁(汗)


○師匠の国会所信表明に見る異次元緩和のメカニズムのサルベージをするの巻

明日の金融政策決定会合と明晩のECB定例理事会を控えてヒマネタを投下している訳ではありません(キリッ)。

公表予定
http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
10(水)
8:50 ○ ● * 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等
8:50 ○ ● 企業物価指数(8月)
10:30 ○ ● * 【挨拶】岩田副総裁(石川)
16:30 ○ ● * フェイルの発生状況(8月)

・・・・・・・・・ということで来週水曜日には石川県の金融経済懇談会で岩田副総裁が講演をされるということでもございますので、平場での記者会見付きの講演という機会が何故か少ない(理由は知らん^^)師匠様ですが会見も当然ながら付いておりますので、是非ともこの辺りでのご説明を頂いた話に関するレビューと「2年間で達成しない場合の責任の有無と有る場合についての責任の取り方」についての質疑を拝見したい所でありますが、質疑を見るよりも想定問答を見たいような気もします(ニヤニヤ)。

という訳で例によって
http://kokkai.ndl.go.jp/
から詳細検索→発言者の欄に「岩田規久男」と入力→検索をして、検索結果一覧を表示しますとその中にあります

183 参議院 議院運営委員会 13号 平成25年03月12日

ということで、第183回通常国会における2013年3月12日開催の参議院議員運営委員会をポチッとなとして鑑賞をしようかと思います。

でまあ所信の話の部分も色々とアレですがそこから始めているとオワランチ会長になりそうなので、最初の櫻井充委員との質疑を鑑賞するのだが櫻井さんの質問が中々よろしいので実はそちらの鑑賞かも知れません。

・物価が上がれば消費や設備投資が増えるんでしょうかという論点

質疑はまず最初にそういう話から始まります。発言番号の11番目から引用します。

『○櫻井充君 いや、先ほどの所信の中では購買力低下のところで今のような説明だったんです。ここ、少なくとも、文書がきちんとしてあるので、そのまま衆議院の議事録を読ましていただきますと、デフレ予想の下では、家計や企業が、お金をそのまま持っていれば実質的な購買力が上がると考えてしまって投資や消費を抑制しておりましてというふうにお話しされているわけです。』

確かにそういう理論です。

『私が申し上げたいのは、家計はこのようなことを考えて消費を抑制しているわけではないということです。これは、内閣府の調査、内閣府だったかどこか忘れましたが、なぜ貯蓄をするのかということを尋ねたときに、結婚している世帯は六〇%以上が二つしか理由がないんです。病気や不時の災害への備え、それからもう一つは老後の生活資金です。独身の方々はこの順番が変わりますが、六十代の方では七〇%以上の方々が老後の生活資金やそれから病気や不時の災害への備えということでこれ貯蓄しているんです。』

ふむ(改行は適宜割愛しています)。

『ですから、今参考人がお話しされていることの前提は、今のようなマインドになっているから、このマインドに働きかければ消費が増えるという話になっていますが、その前提そのものが私は違っているんではないのかということを申し上げているんです。この点について、消費者のマインドについてどのようにお考えでしょうか。

(;∀;)イイシテキダナー

『○参考人(岩田規久男君) 御指摘のとおりの部面があって、二つあると思います。 一つは、やはりデフレになってくると、お金が、現金、預金が一番いいんだからそれを一番持つという、これは企業も家計も同じだというふうに思います。もう一つは、デフレ予想の下で将来の所得がやっぱり伸びないということを経験して知っているということがやっぱり消費を抑制すると。この間の所信表明ではその後の方のことはちょっと申し上げませんでしたけれども、二つの面が今言ったようにあるというふうに思っております。』

ほうほう。

『○櫻井充君 おっしゃるとおり、企業の中ではそういうところはあると思いますよ。それも全面的に否定しているわけではありませんが、問題は、個人の購買力が上がってこない限りは、幾ら企業が設備投資をしようと思ったって設備投資する意味がありませんよね。私たちは何を考えていたのかというと、需要をどう喚起するかということで、可処分所得を増やすべきだということを考えておりました。』

『今回はそうではなくて、需要サイドに働きかける前に、金融的な手法を使って企業なりなんなりが設備投資をしていってと。ですが、こうやって設備投資をしても、繰り返しで恐縮ですが、需要が喚起されない場合にはバブルのときと同じような格好で過剰設備になってしまったりするんではないのかという、そういう危険をはらんでいるんではないかと思っています。(以下割愛)』

・・・・・・・・・でまあこの議論のここまでの結論ですが、日銀様の見通しによりますと今後の設備投資がヴィンテージの更新だの省力化投資だのという物であって、生産拡大に伴う設備投資が拡大するという話になっていませんですよねえ師匠どうですかねえという所ですな。


・大規模緩和の効果の説明が前後矛盾している件について

『○櫻井充君(前段割愛、というか先ほどの部分です)これは、済みません、多分平行線なのでここで終わりにさせていただいて、もう一点、今の中で、お話をお伺いしておりましたが、二%上げるんだと、日銀がその強い意思を示すことがインフレを招いていく、インフレをつくってくるんだというお話でした。では、より具体的にどういうことを行って二%上げようとされているんでしょうか。つまり、二%上げます、上げますと言ったとしても、実態上、何をしてくるのかということによって違うと思っているんです。』

『これは、昨日も黒田参考人に私はお伺いしましたが、必ずしも私は明快なお答えをいただけたとは思っておりません。そういう点で、済みませんが、端的に、より具体的にどういうふうにしてその二%の物価上昇を実現されようとしているんでしょうか。』

ということで師匠のお言葉。(発言番号14番になります)

『○参考人(岩田規久男君) デフレからの脱却とかあるいは景気回復というんで、普通の景気回復のときは、金融政策で金利を下げて、そして銀行の貸出金利を下げて貸出しが増えていってという経路が普通通常なんですが、デフレ期待で、しかも、のときにはなかなかそういうふうにならないで、むしろデフレ予想をインフレ予想に変える、あるいは長期金利などを下げるという金融緩和政策が有効になってまいりまして、それによって人々の、特にマーケットのまず予想が変わると。』(原文ママ)

期待に働きかけるとな。

『マーケットの予想というのは、株式市場とか国債市場とか外貨の市場ですけれども、その市場では既に、アベノミクスで大胆な金融政策が取られるということで、先ほど申したように予想インフレ率一%ぐらいまで上がってきております。』

当時の物価連動国債市場は流動性がアレな上に消費税増税もBEIに跳ねるんですけどね!!!

『それが、株高、円安をもたらしていく。株高は設備投資を有利にする要因です。これは資本コストが下がるという要因なんですけれども。それで設備投資が有利になるんです。円安は輸出が有利になるということで、輸出が拡大すればやっぱり生産能力が要るというので設備投資に結び付くということで、それがまずコスト面から今までより設備投資が有利になるということが起こってまいります。』

・・・・・・・・・という説明をしているのですが、先ほどの部分にもありましたけど、そのちょっと前の発言番号の4番(冒頭あいさつ)部分でもこのように説明しているのですよねぇ。

『(これはちょっと前の発言番号4番から一部引用しています)こうした状況で、人々が、結局将来もデフレが続くだろうというデフレ予想あるいはデフレ期待を抱いてしまう。そうすると、そういうデフレ期待の下でいろいろな行動をしますために、実際にもデフレになってしまうという悪循環に陥っております。デフレ予想が蔓延しますと、企業も家計も基本的にお金を持ったままでいれば自然に購買力も上がるということで、投資や消費を抑制するようになっております。これが日本の経済の低成長と円高をもたらしてきた要因だというふうに思います。』

・・・・・・・・・・えーっと、企業も家計もキャッシュで持っていて投資をしないので状況が悪化するという説明をしているのにこちらでは株高が設備投資が有利になるとはどういう説明ですねん。資本コストが下がるってどういう説明ですねん????

『それが、やがて所得が増える、そういうことで、それから、株式は既に、株式を持っている人では消費が増えるということもありますが、いずれにしても、そういうふうになってくると、生産が増え、雇用需要が増えてまいります、どうしても。それが賃金に、上がるだろうという、だんだんだんだんそういう予想と、実際にもそういうことが起こってくるので消費も増えていくというのが、過去の、これは過去のデフレ脱却の歴史が全部示しているということで、そういう経験に基づいてお話ししています。』

どう見ても風が吹けば桶屋が儲かるの話ですが、そもそもデフレでみんな投資しないんだったら株が上がって消費が何で増えますねんということで、まあ資産効果の方は実際にそらまあ起きる話ではあるのですが、それなら一方でデフレでキャッシュを持つのが有利云々というデメリットの説明が変な訳で、デフレ云々が原因なのでは無くて、櫻井さんも指摘するように先行きの成長が見込めないから投資や消費が抑制されて、その結果としてキャッシュ志向が発生すると同じくしてデフレ傾向になったという説明をする(つまり因果関係が逆)というのが妥当に思えるんですけどねえ。


・株高で含み益が出るので企業が設備投資をするというサブプライム住宅居住者もビックリの珍理論

今の答弁の続きのツッコミがどう見ても素晴らしい(皮肉では無く)。

『○櫻井充君 例えばアメリカのように多くの国民の方々が貯蓄ではなくて株式を持たれている場合には今の理論も成り立つんだろうと思います。現実に、現在株高になって高級品は売れてきておりますから、株式を持っていらっしゃる方々は今のお話のとおりだと思います。ところが、日本の場合には決して多くの方々が株式を持たれているわけではないということ。』

うむうむ。

『それから、今の理論の中で私はやはり疑問を感じることは、企業が設備投資をしますと。設備投資が有利になるからそれはするのかもしれませんが、そこに実需が生まれるかどうかということが最も大切なことだと思います。』

全くですな。で、この次が円安で物価が上がるだけで良いのでしょうかというツッコミであるがその答えがかなり斬新。

『一方で、円安になった場合にはどうなるかというと、現在は石油の価格も上がり、それから輸入の小麦の価格もこれから上がってきて、先ほど参考人の中にもありましたが、結果的には、数年前に投機マネーが原油に入って、一バレル百六十ドルでしたか、あのぐらい付けた当時に、確かに国内物価は上がるんです。上がっております。ですから、円安になって間違いなく国内物価は私は上がると思っていて、日銀のその金融政策の結果なのかどうか、まだ今のはアナウンスメント効果だけで、多分間違いなく輸入物価が全体の物価を引き上げることになると思うんですよ。』

うむ。

『そうなると何が起こるかというと、賃金はまだ先に上がりませんから、そうなると、結果的には購買力の低下を招いてしまっていて、今のような議論にはならないんじゃないだろうかと、そう思いますけれども、その点についていかがですか。』

(;∀;)イイシテキダナー

なおこの時期に浜田先生は「実質賃金はむしろ下がった方が良くて、その分で雇用が増えるのが重要」とドラギ先生のジャクソンホール講演的なまあ一つの正論だがそれデフレ圧力にならんかという話をしておられたのはご案内の通り。

でまあ師匠。

『○参考人(岩田規久男君) まず起こることは、先ほど言った円安の効果は、輸出産業中心ですけれども、まず製造業中心ですけれども、企業収益が非常に良くなります。バランスシートも、それから企業は全体に輸出産業ではなくてもやっぱり非常に株式をたくさん持っています。』

な、なんだってー!!!!!

・・・・・・・えーっと、さっき師匠様「デフレで企業が投資しないでキャッシュを抱えているから良くない」って話をしていたんじゃなかったでしたっけ????

『大体今、全体の株式と出資金の中では企業は二七%も持っております。』

?????????????

『ですから、バランスシートはすごく良くて、要するに含み益が出てくると。そこから企業の生産活動が活発になって、雇用、所得という順序になるんですけれども。』

含み益が出るから生産活動が活発になるとは恐れ入った理論でして、アメリカのサブプライムな住宅にお住いの方々のホームエクイティ―がどうのこうのの話を思い出す訳ですが、バランスシート含みが増えて借金の余力が高まったからヒャッハー借金してパパ投資しちゃうぜーどうせまた株価が上がるから大丈夫だぜ〜!!!・・・・・・・こうですか、わかりません><

『今言った、株式は日本ではそれほど保有していないから、そこからの消費は、いわゆる資産効果というのは小さいだろうというのは、アメリカに比べればそうであろうというのはおっしゃるとおりだというふうに思いますので、むしろこれからは企業活動が活発になって、雇用が増えて、所得が増えて、デフレ予想がなくなると将来の人々も所得が増えるだろうという予想がだんだん出てくるというふうに思っております。』

資産効果で設備投資が出るとは斬新な理論ですので是非ジャクソンホールで発表して頂きたいと思います。


・結局話は噛み合わないのですがどう見ても櫻井さんのツッコミが妥当というかまさにそうなっていますがががが

さらに櫻井さんのツッコミは続く。

『○櫻井充君 おっしゃっていることの全てを否定しているわけではありませんで、ある部分については私はそのとおりだと思っているんです。ただし一方で、先ほどから出ているのが正の作用であって、その副作用といいますか、その部分についてどう勘案していくのかというところ、そこの全体のバランスで見てこなければいけないんだと思います。』

これって師匠一派の皆さんの得意技で、確かに仰せの話の一部は正しいのですが、話が全体として整合性が取れていないというのは、因果関係を確信犯なのか無意識なのか知らんがしょっちゅう取り違える事と、部分最適の話を全体に推し進めようとしてプロコンの比較衡量の観点がろくすっぽ無い事だと思いますので、櫻井さんのツッコミ誠にご尤もなのですよね。

『今の中で、円安のことのデメリットについてのお話はございませんでした。繰り返しで恐縮ですが、それからもう一つは、先ほど参考人のお話の中で、銀行からの貸出しは増えなくていいんだと、これは一つの考え方だと思いました。というのは、古典的な考え方かもしれませんが、金融緩和する際に日本銀行が一般の金融機関に対して持っている国債を買い取ってキャッシュに変えて、一般的に考えれば、そのキャッシュを銀行が企業に対する融資活動を行わない限り市場に対してお金が出てこないだろうと。』

この国債買って融資云々は櫻井さんも間違えていますな。まあ中々判りにくい話ですわ。

『ですが、先ほどの参考人のお話で、別に銀行は貸さなくていいんだというお話がありました。それはそれで一つだと思います。であったとすると、その中でもう一つおっしゃっていたことは何かというと、企業は内部留保を抱えているんだと。ですから、その企業が内部留保を抱えているので、それを出してくるからそれでいいんだという話がありました。』

うむ。

『これは、前提はここに立つと思いますが、確かにデフレなので今設備投資をしなくていいと、そういう立場に立っていれば、立場に立っていれば、確かにインフレになっていけば企業は設備投資を行うということになるんだろうと思います。しかし、今あれだけ内部留保を抱えている人たちが果たして単純にデフレだとかインフレだとかいうことで設備投資をしているのかしないのかということだと思います。』

(;∀;)イイシテキダナー

『繰り返しで恐縮ですが、実需がなければ、実需がなければそこに対して設備投資をしないというのは、これ企業の行動として当たり前ですし、それからもう一つは、実需が発生すると思えないような中で設備投資をしていった場合に、僕はこれ景気一時的に良くなると思いますよ、バブルになりますから。だけど、問題は、そのときに、繰り返しで恐縮です、実需が生まれなければバブルのときに企業が苦しんだような過剰な設備投資になってしまうんではないのかと。』

(;∀;)イイシテキダナー

『先ほどのお話の中で、金融資産なり外債なりにという話になっていました。これは結果的には金融でお金がただ単純に回っていくだけの話であって、実体経済上に対してどこまで影響が出てくるのか。これはもう一度、今度逆に言うと、アメリカでどうなっているのかというと、株式は史上最高高になっていますが、一方で失業率は七・七%と高止まりになってきていることを考えてくると、やはりそこに乖離があるんじゃないだろうかと。つまり、今のように相当多くの方々がストックを持っていらっしゃると、金融政策をやると確かに活性化されるように見えるけれど、実体経済上には格差が広がるだけの感じがしてならないんですが。』

『改めてもう一度お伺いしておきたいのは、円安になって購買力が低下するという懸念はないのかどうか、どうしてそこに実需が、今の参考人のお話でどうしてそこに実需が生まれるのか、より具体的に説明していただけないですか。』

途中で話がちと脱線気味になりましたが軌道修正して「円安で購買力が下がる話はどうなのよ」になりましたな。


師匠のお答えですが・・・・・・・・・・

『○参考人(岩田規久男君) 金融政策というのは基本的には金利が、例えば政策金利が下げる余地があって金利が安くなる場合もそうですし、今度の場合は、長期金利は下がると思いますが、予想インフレ率が少し上がってくるというのは、結局、一番企業の企業行動に影響を与えるのは予想実質金利です。名目金利ではなくて、将来どれだけインフレ率が起こるかを加味した予想実質金利。』

予想実質金利が下がると自動的に企業行動が活発化されるようですが、それは基調的に需要超過の経済だから起きるという話なのではないでしょうかねえ。

『金融政策というのは、結局は予想実質金利を下げることというコスト面から影響を与えるものなんです。これはもう金融政策はそういうものなんですので、それでもって実体経済というのは、コスト面は下がったから企業収益は、コストが下がったから設備投資は前よりも、デフレ期待のときよりは有利になって設備投資は起こってきて、設備投資が起こると、あとは御承知のとおり乗数理論というのが起こってきまして所得が増えるという、この循環で、金融政策の役割はそこにあるということです。』

いつの時代の金融政策なんでしょ??

『円安に関して輸入物価が上がるということでありますが、それは、ですから、金融政策をやる場合に簡単に、エネルギー価格が上がっただけでインフレ率が目標達成したと思ってすぐ引き締めるというようなことは世界のインフレターゲットの国は全部やっておりませんで、もうちょっと中長期的にそれがどう影響するかを見ていきながらやって実際に効果を上げているということでございます。』

結局全然答えをしていないのが素敵でして・・・・・・・・・

『○櫻井充君 端的にお答えいただきまして、どうもありがとうございました。これで終わります。』

まあ時間がここで終わったから追加砲撃が出来なかったというよりは、何度聞いても同じ答えしかしないなあという所だったのでしょうか、櫻井さんに感想を聞いてみたいものですな。


・忘れたとは言わせません

なおこの次がみんなの党の中西健治委員の質疑になるのですが、中身は兎も角最初の所の念押しが誠に素敵。発言番号20〜23になります。

『○中西健治君 みんなの党の中西健治です。岩田参考人、岩田教授にはこれまでもいろいろと御教示いただいておりまして、大変お世話になっております。今日はよろしくお願いいたします。まず、これまでの岩田教授の主張の幾つかをまとめてみますと、日銀法改正については、責任を明確化することで物価目標の達成が早まる効果があるということで賛成だということだと思います。それから、責任の取り方ということについては、最高の責任の取り方は辞職だということをおっしゃられていると思いますし、あと外債購入については、今は必要ないけれども、手段としては取っておくべきだということだと思いますが、確認ですが、今の認識でよろしいでしょうか。』

『○参考人(岩田規久男君) そのとおりでございます。』

『○中西健治君 これも確認に近いことということになるのかもしれませんが、安倍総理は国会答弁でデフレは貨幣的現象であるということをおっしゃられております。岩田参考人も近い考え方なんじゃないかなというふうに思いますが、貨幣的現象かどうかという言葉はともかく、金融政策だけで物価目標二%は達成し得るということでよろしいでしょうか。』

『○参考人(岩田規久男君) 物価に影響するのは金融政策以外でも確かにございます、先ほど言った輸入物価とかそういうのありますが。結局、いろんなところで、ほかの要因で上げ過ぎる要因があった場合には、金融政策のやり方を変えれば結局は二%のインフレになるということで、あるいはデフレ要因がほかにあったとしても、金融政策が結局しっかりしていれば二%のインフレはできるということで、最終的には金融政策が決めることができるということだと思います。』

ということですので、当然ながら2年で2%に対する所見が来週の金懇で聞けると期待しておりますよ!!!!







2014/09/02

お題「物価目標達成見通しが更に後ズレ??/ドラギ総裁ジャクソンホール講演ネタの続き」

ほうほう。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GW21V20140901
インタビュー:消費税10%、1年半先送り望ましい=内閣参与
2014年 09月 1日 23:14 JST

本田先生(この記事の内閣参与は本田参与な、ヘッドラインに入れておけと)の場合は以前から消費税上げダメよの話をしているのですが・・・・・・・

そもそも第二の矢では財政出すという前提に消費税引き上げとのバーターという部分があり、しかも「落ち込みが想定以上に大きい」と本田さんが仰せですが、その前の駆け込みも想定以上に大きかった訳ですし、この春の賃金引き上げに関してだって特に正規の所って「消費税が上がるのに賃金上げない訳にもいかんだろ」ということで消費増税以下の賃上げが入った訳ですからして、消費増税とセットで起きたプラスの部分を全部スルーしてマイナスの話を強調するとかズルい論法だと思うのですよねえ。

まあいずれにせよ今後増税先送りガーの話が出る中でどうするんでしょうねえ。地方創生とか俺たちの自民党が帰ってきた感のする施策するにもゼニが要るんですよねえ先送り出来るんですかねえ。

#1年半先送りmeans永久に先送りですもんねえ


○誰も反応しない日銀決定会合前観測記事でしたが・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NB79NH6KLVRC01.html
黒田日銀、必要なら追加緩和辞さず−消費増税の実施を要望
更新日時: 2014/09/01 13:34 JST

ちなみに英文ヘッドラインでは例によって「BOJ OFFICAL SAID」云々となっていましたが、どこのオフィシャルセッドだよという毎度お馴染みブラックアウト期間中に飛び出す飛ばしヘッドラインについては以前は日経の得意技でしたが、最近はページビュー欲しさに外資系ベンダーがプロ向けとか言ってる癖に投下してくるという実に残念な事案が続きますな。

まあヘッドライン出ても各市場とも1ミリも反応していないので超スーパーどうでも良いのですし、内容も羊頭狗肉にも程があって、こういう記事にコメントを名前入りで出される何とかストの皆様におかれましても誠に災難という感じっすけど、それは兎も角として味わいのある記述があったのでちょっとネタに。

上記URL記事でこんなのがありましてですね。

『9月1日(ブルームバーグ):2回目の消費税率の引き上げが予定通り実施された場合、それによって景気が落ち込み、2%の物価目標の達成が危うくなれば、日本銀行は追加緩和を辞さない構えだ。関係者によると、黒田東彦総裁は今年4月の消費増税と同様、2015年10月の2回目の消費増税についても予定通り実施することを政府に求める意向だ。同時に、増税で景気が落ち込んだ場合は日銀には対応の余地があるものの、増税先送りで財政再建に対する信認が揺らいだ場合はやれることはほとんどない、という姿勢を堅持する見込みだ。』(上記URLより)

さらっと読むと「そらそうよ」で終わりなのですけれども、良く良く考えますと来年の消費税率引き上げというのは来年の10月であり、『それによって景気が落ち込み』という事象が発生するのはどう見ても来年の年末から再来年の頭になりますが、その時点で『2%の物価目標の達成が危うくなれば、日本銀行は追加緩和を辞さない構えだ。』という説明がそもそも日銀による諸葛孔明の罠に嵌っているのか素で記事書いている人が寝惚けているのかのどちらかでありまする。

と申しますのは、そもそも2%の物価目標については置物副総裁が職を賭す覚悟で2年間で達成すると仰せで、しかもその覚悟と強いコミットメントによってインフレ期待を引き上げて実質金利を下げるという事を異次元金融緩和という政策の骨子にしておりました訳でして、すなわち来年の年末ごろになって「2%の物価目標の達成が危うくなる」とか言うのは寝言にも程がある話であって、何時の間にお前ら「2年で達成」のコミットメント取り下げたんだおい副総裁出てこいという世界のお話になる訳でございます。

まあこの「関係者によると」ってただの市場関係者じゃないかという気もだいぶします(でも英文ではBOJ OFFICIALって書いてるからねえ)けれども、仮に日銀サイドに取材してこの手のニュアンスの話を聞かされるとなりますと、明らかにそれは物価目標達成時期の盛大な後ズレを意味するので、来年の秋の消費増税の影響とか今から1年以上先の話をするまでも無く今直ぐ追加緩和しやがれとしか申し上げようがございませんので、そもそも記事の書き方として「関係者は物価目標達成時期が大幅に遅れることを示唆」という話になるんじゃないですかねえ(ニヤニヤ)という所ですな。

なお、念のため付け加えると、展望レポート辺りでの表現はどう見ても微妙で2年で2%達成はどうしたという話になるのですが、それにしても「消費増税後の落ちこみで達成が困難になる」というようなタイムスケジュールにはなっていないですし、政策企画的理屈からするとそもそも物価目標達成の見通し時期は後ズレすらしていないのであって、来年の年末の時点でまだ2%達成していないなどという状況そのものが「前提としてあり得ない」話なので、何でこういう記事構成になったのかブルームバーグニュース様のポンチ絵の描き方の方が気になる次第であります。

#したがってこの記事で市場が1ミリも反応しなかったのは、そもそも追加緩和辞さずの時期が再来年の話だしという意味で反応しなかったのか、それともそもそも置いている仮定が日銀のシナリオと整合的では無さすぎるからという意味で反応しなかったのかは知らんが、悲しいまでに無視されたのは当然ちゃあ当然なのでありました


○ドラギ総裁のジャクソンホール講演ネタ後半戦である

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB,
Annual central bank symposium in Jackson Hole,
22 August 2014

ということで「労働市場の改革が失業の改善に重要」という話をしているのですが、その改革というのが思いっきり「賃金の調整をもっと可能にする」だの「金銭による整理解雇をもっと可能にする」という盛大に地雷案件を踏み抜きに逝っている辺りがおっちゃんやるなあという内容であることに加え、お前それは思いっきりデフレ圧力を掛ける話じゃねえかECBの物価安定目標との整合性はどうなりますねんという気がするというのは昨日引用したとおりで、では金融政策でどう対応すべきかという部分は、先般斜め読みシリーズで前段の前提なしで引用しましたが、再掲モードになりますがもう一度ここを読み直すと別の味わいがあるのだ。

『2. Responding to high unemployment』という小見出しから参ります。

・単に「金融政策緩和し過ぎのリスクを恐れるべきではない」だけの話ではない最初の部分

『So what conclusions can we draw from this as policymakers? The only conclusion we can safely draw, in my view, is that we need action on both sides of the economy: aggregate demand policies have to be accompanied by national structural policies.』

政策としては需要サイドと労働市場の構造問題(前半で引用した制度改革のような話などですにゃ)サイドの対応の双方をしないといけません。

『Demand side policies are not only justified by the significant cyclical component in unemployment. They are also relevant because, given prevailing uncertainty, they help insure against the risk that a weak economy is contributing to hysteresis effects.』

需要サイドの政策って要は金融政策ですが、シクリカルな問題への対応に加えて、弱い経済が構造問題になる(これまた昨日引用した「不景気が長引いて構造失業率が高まる」件)のにも対応していますと。

『Indeed, while in normal conditions uncertainty would imply a higher degree of caution for fear of over-shooting, at present the situation is different. The risks of “doing too little” - i.e. that cyclical unemployment becomes structural - outweigh those of “doing too much” - that is, excessive upward wage and price pressures.』

でまあここが最初の威勢の良い所で、先行きの不確実性が高い中で金融緩和政策は緩和のし過ぎのリスクよりも緩和が足りないリスクの方が大きいとキタコレなのですが、冷静に考えたら前段で構造改革の話を思いっきりしていて、どう見ても物価に下押し圧力を掛ける話をしているのですからある意味順当な説明でもあるということが言えたりもします。まあそこまで考えて言ってるのかどうか知らんが。

『At the same time, such aggregate demand policies will ultimately not be effective without action in parallel on the supply side.』

で、サプライサイドの政策も併用すべきと。

『Like all advanced economies, we are operating in a set of initial conditions determined by the last financial cycle, which include low inflation, low interest rates and a large debt overhang in the private and public sectors. In such circumstances, due to the zero lower bound constraint, there is a real risk that monetary policy loses some effectiveness in generating aggregate demand. The debt overhang also inevitably reduces fiscal space.』

でもってインフレが低くて金利がゼロ金利制約にあって過剰債務問題がある中では、金融政策の需要サイドへの効果が低下するリスクが実際にあり、おまけに過剰政府債務で財政出動余地も限られるという話ですな。

『In this context, engineering a higher level and trend of potential growth - and thereby also government income - can help recover a margin for manoeuvre and allow both policies regain traction over the economic cycle.』

だから潜在成長力を引き上げると政策対応余力が出ますとは言うのは簡単なのですが・・・・・・・

『Reducing structural unemployment and raising labour participation is a key part of that. This is also particularly relevant for the euro area as, to list just one channel, higher unemployment in certain countries could lead to elevated loan losses, less resilient banks and hence a more fragmented transmission of monetary policy.』

構造実業率を下げて労働参加率を上げるのはそのキーとなるパートということで、これが改善しない国があるとユーロ圏の分断は続くと中々大きく出ています。


・金融政策の対応に関して

次の小見出しが『Boosting aggregate demand』ですが。

『On the demand side, monetary policy can and should play a central role, which currently means an accommodative monetary policy for an extended period of time. I am confident that the package of measures we announced in June will indeed provide the intended boost to demand, and we stand ready to adjust our policy stance further.』

需要サイドは主に金融政策という話はまあヨロシとしまして・・・・・・・・

『We have already seen exchange rate movements that should support both aggregate demand and inflation, which we expect to be sustained by the diverging expected paths of policy in the US and the euro area (Figure 7).』

ここでまず最初に地雷を踏みに行っていますが、この「欧州と米国の金融政策の方向性が違うから為替市場がユーロ安になっています」という話は理事会後の会見などでも言及しているので通常クオリティは通常クオリティなのですが、思いっきりこのように需要と物価に対して結構な動きのユーロ安とか露骨に言うのは結構な地雷臭なのですけどねえ。

『We will launch our first Targeted Long-Term Refinancing Operation in September, which has so far garnered significant interest from banks. And our preparation for outright purchases in asset-backed security (ABS) markets is fast moving forward and we expect that it should contribute to further credit easing.』

ABS買入はまだやるやる詐欺のような気もしますし、これらの施策が本当の所どんだけ定量的に効いてくるのか微妙な気もしますがまあ良いとしまして。

『Indeed, such outright purchases would meaningfully contribute to diversifying the channels for us to generate liquidity.』

これらの買入は流動性を作ることによっても効果を出す(キリッ)と仰せで、この辺りから徐々に「量的緩和導入」の期待を持たせるような話が出てくるのであります。

しかし流動性言うのならそもそも何でマイナス金利政策を導入して超過準備を保有することにペナルティーを課したのかと小一時間問い詰めたいのだが、マイナス金利撤回して大規模QEに切り替えた方が政策発動余地も高まるし、マイナス金利による市場のシュリンクも避けられると思うので早よ方向転換しなはれとは思いますけどねえ。


・物価の部分は初稿からの差し替えで量が多くなっています

『Inflation has been on a downward path from around 2.5% in the summer of 2012 to 0.4% most recently.』

続いて物価の話。

『I comment on these movements about once a month in the press conference and I have given several reasons for this downward path in inflation, saying it is because of food and energy price declines; because after mid-2012 it is mostly exchange rate appreciation that has impacted on price movements; more recently we have had the Russia-Ukraine geopolitical risks which will also exert a negative impact on the euro area economy; and of course we had the relative price adjustment that had to happen in the stressed countries as well as high unemployment. 』

ここなのですが、講演直後にアップされた原稿からここの説明が変わっていまして、一々手打ちするのが面倒なので前のテキストを打ちませんが(あたしゃ23日土曜日に印刷したので読んでいるのは基本的に初稿の方)、ここの部分は物価下げの理由の方の説明になっていますけど、初稿ではここの部分は「中長期的なインフレ期待を下げないように非伝統的な政策を今後も必要があれば実施します」という話になっていて、中長期的なインフレ期待の低下に対応という文言が入っていましたが、そこで話が終わって財政の話になっていたのですよね。

『I have said in principle most of these effects should in the end wash out because most of them are temporary in nature - though not all of them. But I also said if this period of low inflation were to last for a prolonged period of time the risk to price stability would increase.』

『Over the month of August financial markets have indicated that inflation expectations exhibited significant declines at all horizons. The 5year/5year swap rate declined by 15 basis points to just below 2% - this is the metric that we usually use for defining medium term inflation.』

『But if we go to shorter and medium-term horizons the revisions have been even more significant. The real rates on the short and medium term have gone up, on the long term they haven't gone up because we are witnessing a decline in long term nominal rates, not only in the euro area but everywhere really. The Governing Council will acknowledge these developments and within its mandate will use all the available instruments needed to ensure price stability over the medium term.』

ということで物価に対する言及部分が凄く長くなっていまして、こちらでは「中長期的なインフレ期待の低下リスク」というような直接的な表現は無いのですが、その代わりに低インフレの長期化の話とか、BEIの推移も注意深く見るとか、実質金利の話とか、思いっきり「インフレ期待の低下に警戒」という文脈に繋がる話をこれでもかと行っていますので、初稿部分(初稿はここの部分が3行コメントだった)から見ると随分と強調した格好になっています。


・で、財政の話でのっけから凄まじい地雷を踏み抜きに逝っている件

『Turning to fiscal policy, since 2010 the euro area has suffered from fiscal policy being less available and effective, especially compared with other large advanced economies.』

他の先進国と比べても財政出動余地が無くて苦労しているということですが・・・・・・・・・・・

『This is not so much a consequence of high initial debt ratios - public debt is in aggregate not higher in the euro area than in the US or Japan. It reflects the fact that the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.』

>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.
>the central bank in those countries could act and has acted as a backstop for government funding.

な、なんだってー!!!!

ということでここ読んでてコーヒー吹いたのですが、「米国や日本は中央銀行が政府債務のバックストップとして機能することが可能かもしれないという事実があるので欧州よりも財政赤字拡大の余地がある」ってそれお前米国や日本はは財政ファイナンスをしていますって言いたいのか、ECBも財政ファイナンスをすれば財政の発動余地が高まりますと言いたいのかのどちらか(または双方)って話じゃねえかドイツ様と話はついているのかこのオッサンとしか申し上げようがない超地雷案件というかそもそもそれECBの設立法を盛大に無視してねえかという話。

『This is an important reason why markets spared their fiscal authorities the loss of confidence that constrained many euro area governments’ market access. This has in turn allowed fiscal consolidation in the US and Japan to be more backloaded.』

でまあここで話は「だから市場の信頼を勝ち取るために財政健全化が重要」という話をしているので、前記の大地雷部分はただのサービスフレーズなのかも知れませんが、まあ前記の部分やら、その前の財政発動余地がどうのこうのな部分とセットで見ると「ECBは財政ファイナンスで域内国債を買う気満々なのでお前ら財政出せや」という話をしているように取れますので、リップサービスにしても何ぼ何でもこれは地雷というか毒ガス級の話じゃねえのと思いますけどねえ。

『Thus, it would be helpful for the overall stance of policy if fiscal policy could play a greater role alongside monetary policy, and I believe there is scope for this, while taking into account our specific initial conditions and legal constraints.』

でまあこんな話をしていまして、金融政策だけでは無くて財政政策の発動余地もあるとか言い出したらそらまあ財政ファイナンスして国債購入方式の量的緩和発動キタコレとかいう話にはなる罠と思いますが、最後にお為ごかしのように「while taking into account our specific initial conditions and legal constraints」とか言ってるのがドラギインチキクオリティでして、ドラギ先生が気合が入っているのかただのリップサービスやるやる詐欺なのかによってここら辺の解釈が異なってくるわけですよ。

つまりですね、気合が入っているのであれば「我々の初期条件や法律の制約があるけれども、それは上手い事スルーして財政ファイナンスするからもっと財政出せ」という話をしているようにも見えますし、単なるインチキリップサービスなのであれば「とまあ威勢の良いことを申し上げましたが我々は初期条件や法律の制約に縛られますから財政ファイナンスなんてできないので各国で財政改革をもっとやって効率的な財政運営しないとECBだけでは大変なんでそこんところヨロシク」という話をしているようにも見えるという代物であるというのがこの一連の盛大な地雷説明のアタクシ的な解釈。なおドラギのおっちゃんが何か変なもんでも食ってヤケクソモードになって居る可能性も無いではないですが(−−;

『These initial conditions include levels of government expenditure and taxation in the euro area that are, in relation to GDP, already among the highest in the world. And we are operating within a set of fiscal rules - the Stability and Growth Pact - which acts as an anchor for confidence and that would be self-defeating to break.』

で、そうは言っても財政状況は宜しくない中でStability and Growth Pactに沿って財政をという話をしていて、結局何を言いたいのかがちと混戦気味ですが・・・・・・・・

『Let me in this context emphasise four elements.』

財政に関する論点を4つにまとめるとな。

『First, the existing flexibility within the rules could be used to better address the weak recovery and to make room for the cost of needed structural reforms.』

ここも味わいがあって、要は今の所まだ発動余地のある財政を構造改革のコストに対応する為や、より効率的な景気対策に使えという話で、無駄な財政打ってるんじゃねえという話ではあると思いますが、わざわざ「within the rules」と言っているのは「ルールの柔軟性の中を突いて財政ファイナンスしまっせ〜」と無理矢理読めば読めない事もない辺りが誠にアレ。

『Second, there is leeway to achieve a more growth-friendly composition of fiscal policies.』

これも同様ですなあ。

『As a start, it should be possible to lower the tax burden in a budget-neutral way. [14] 』

成長すると税収が増えるので税金の負担を下げても財政中立的に運営することが可能(キリッ)というのは低成長が定着する中でそんな美味い話があるかいなという気が全力でするのでこの時点で何だかなあという感じですが、脚注を出して来る辺りがまたイカサマチックでよろしい。

『This strategy could have positive effects even in the short-term if taxes are lowered in those areas where the short-term fiscal multiplier is higher, and expenditures cut in unproductive areas where the multiplier is lower.』

『Research suggests positive second-round effects on business confidence and private investment could also be achieved in the short-term. [15]』

んな都合の良い話があるかいなとは思いますが。(経済が高成長ならば話は別だがそもそもゼロ成長なのにそんな上手い話あるのかよという意味ね、為念)

『Fourth, complementary action at the EU level would also seem to be necessary to ensure both an appropriate aggregate position and a large public investment programme - which is consistent with proposals by the incoming President of the European Commission. [16]』

で、EU全体としての取り組みもという話ですな。


・次の構造改革の話は引用割愛である

次が『Reforming structural policies』でして、最初に『No amount of fiscal or monetary accommodation, however, can compensate for the necessary structural reforms in the euro area.』ということで構造改革しろという話で、労働市場に関しては昨日引用した「労働規制の緩和」というデフレ圧力的なネタに加えて、労働者のスキルを引き上げるための失業者や若年層への教育とか、労働生産性を引き上げるための方策とか、そもそも単純なコスト勝負をしたらユーロ圏が新興国に勝てるわけがないのでより付加価値の高い産業へのシフトとかそんな話をしています。


・まとめは引用だけしておくですがここも微妙な地雷が

『3. Conclusion』から。

『Let me conclude.』

へえへえ。

『Unemployment in the euro area is a complex phenomenon, but the solution is not overly complicated to understand. A coherent strategy to reduce unemployment has to involve both demand and supply side policies, at both the euro area and the national levels. And only if the strategy is truly coherent can it be successful.』

『Without higher aggregate demand, we risk higher structural unemployment, and governments that introduce structural reforms could end up running just to stand still. But without determined structural reforms, aggregate demand measures will quickly run out of steam and may ultimately become less effective. The way back to higher employment, in other words, is a policy mix that combines monetary, fiscal and structural measures at the union level and at the national level. This will allow each member of our union to achieve a sustainably high level of employment.』

需要サイドの緩和的な政策と供給サイトどいうか構造サイドの構造改革が必要と。

『We should not forget that the stakes for our monetary union are high.』

しらっと地雷臭がしますが・・・・・・・

『It is not unusual to have regional disparities in unemployment within countries, but the euro area is not a formal political union and hence does not have permanent mechanisms to share risk, namely through fiscal transfers. [18] Cross-country migration flows are relatively small and are unlikely to ever become a key driver of labour market adjustment after large shocks. [19] 』

『Thus, the long-term cohesion of the euro area depends on each country in the union achieving a sustainably high level of employment. And given the very high costs if the cohesion of the union is threatened, all countries should have an interest in achieving this.』

ということで、最後の所ではマネタリーユニオンの掛け金が高いですと仰せなので何ですねんと思いますと、その後が上記のように「色々な統合を進めないといけない」という話になっていて、まあユニオンの皆様としては当然となる各種の統合(ここでは労働規制の統合しろやゴルァ的な話ですが)の話って各国にお持ち帰りになるとそれはそれで政治的に色々とアレな案件ですがなと思うので、最後でもしらっと今回は地雷を踏みに逝っている感じで中々なオモシロ講演でした。


なお最後に『The text has been updated to reflect new comments on inflation made during delivery.』ということで、初稿の部分からの追加は先ほどご紹介した部分です。

まあこの地雷を盛大に踏んだ案件ですが、実際にどこまでECB理事会の中で意見が集約されているのかがさっぱりワカランのでドラギ先生の飛ばしなのか先行きの政策を盛大に示唆しているのかが全く分からんというのが実に解釈に困る所でありましたな。



2014/09/01

お題「短国買入の謎刻みキタコレ/ジャクソンホールのドラギ講演は労働市場改革を主張する割と地雷案件」

岸信介さんが大野伴睦さんに切ったカードがこんな所で出るとは・・・・・・・
http://www.asahi.com/articles/ASG8Y74SRG8YUTFK013.html
石破氏入閣受諾、「次はあなた」が最後の決め手
2014年8月29日23時22分

まあこのセリフが本当かどうか知らんけのでアレだが本当ならこれで総理総裁の目は無いわなあと思いますが安保と外交があまりにも危なさそうなのが見えて来ましたのでゲルの目が消えて結果オーライかもしれませんけどね。

まあ当時の大野伴睦さんは空手形を承知して話を聞いていたようですけど、朝日新聞の写真セレクト通りでその話通りだとするとどう見てもゲルは以下自粛。


○短国買入の刻みががががが

ということで先週末のオペだが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of140829.htm
国庫短期証券買入 17,500 2014年9月2日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2014年9月2日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 2,000 2014年9月2日
国債買入(変動利付債) 1,400 2014年9月2日

輪番は順当としまして暫くの間5000億円の刻みでオファーされていた短国買入が今回謎の2500億円刻みでのオファー(というか昔は1000億円刻みだったと思うので500億円という刻みは初めてだと思う)という謎にも程がある実施。

なお結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba140829.htm
国庫短期証券買入 23,628 17,501 -0.005 -0.001 11.0
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,987 3,001 0.005 0.005 89.2
国債買入(残存期間3年超5年以下) 8,781 2,002 0.007 0.007 33.4
国債買入(変動利付債) 5,261 1,406 -0.150 -0.188 50.4

落札結果が平均1糸強で足切り5糸強とか業者の短国在庫状況から類推される中ではまあ順当に強い結果になっておりまして、相変わらず短国買入で短国の価格形成がアレというのは続くのですが、何も2500億円の刻みとか入れなくてもよかろうにと思う次第で、この応札の入り方から勝手に憶測を逞しくするとヒアリングした結果2兆でオペ入れると札が怪しいのだが、出来るだけ買入を積み上げたいのでより刻んで見ましたという事で、とにかく買入出来るなら買入したいというオペ担当の心意気だけは伝わるのですが、トン調節を行ってる時代ならともかく本来的には雑な枠組みの中でアホのように超過準備拡大しているんですから、こういう所で2500億円とか刻むのって無駄な細かさというか能力の無駄遣いというかな感じがしますがねえ。

とは申しましても、元々のQQE導入時の作り込みがざっくりの割に妙な所で細かいから運営するオペの方も苦労が絶えませんなあ(棒読み)というのが金曜のオペオファーでございましたとさ。


○ドラギ総裁のジャクソンホール講演は良く良く見ると色々と地雷案件

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2014/html/sp140822.en.html
Unemployment in the euro area
Speech by Mario Draghi, President of the ECB,
Annual central bank symposium in Jackson Hole,
22 August 2014

先日頭出しだけしたのですが、この講演真面目に読んでみると言っている話のパーツパーツは筋が通っているのだが全体的な整合性が微妙に怪しい代物に仕上がっておりまして、確かに(あたくしもとりあえず斜め読みした時にネタにした)政策対応をどうすべきか云々部分だと金融政策と財政政策のセット打ちが必要みたいな話があるのですが、それ以外の部分の説明が何とも微妙っつーか何っつーかなので、前半部分も鑑賞という所で。

・最初のユーロ圏の説明はまあ普通だが後部分から見ると微妙な話がある

てな訳で前半が『1. The causes of unemployment in the euro area』なのですが、そちらではユーロ圏における失業率上昇が2段階で起きて、一発目がリーマンショック、二発目がユーロ圏のソブリン危機という形で起きましたという話をしています。

でまあその辺は極めて普通の説明なのですが、結論は当然ながら「ソブリン危機を起こすと政策の発動余地がなくなって死ねる」という話でして・・・・・・・・・

『The sovereign debt crisis operated through various channels, but one of its most important effects was to disable in part the tools of macroeconomic stabilisation.』

ソブリン債務危機が起きるとマクロ的な安定化策が取りにくくなるという話で。

『On the fiscal side, non-market services - including public administration, education and healthcare - had contributed positively to employment in virtually all countries during the first phase of the crisis, thus somewhat cushioning the shock. In the second phase, however, fiscal policy was constrained by concerns over debt sustainability and the lack of a common backstop, especially as discussions related to sovereign debt restructuring began.』

財政面から見ると、2回目(ソブリン危機)の時には財政制約があって財政政策によって経済安定化とか雇用の確保が出来ませんという話で。

『The necessary fiscal consolidation had to be frontloaded to restore investor confidence, creating a fiscal drag and a downturn in public sector employment which added to the ongoing contraction in employment in other sectors.』

なので財政の堅固さによって投資家の信頼を得る事が重要ですよという話をしているので、後半の部分の記述を見て財政ヒャッハー(まあ確かにそういう余地があるという話をしているのだが)というだけを見てヒャッハーというのもどうなのかねという希ガス。

『Sovereign pressures also interrupted the homogenous transmission of monetary policy across the euro area. Despite very low policy rates, the cost of capital actually rose in stressed countries in this period, meaning monetary and fiscal policy effectively tightened in tandem. Hence, an important focus of our monetary policy in this period was - and still is - to repair the monetary transmission mechanism.』

ということでソブリン問題でユーロ圏の分断が起きて金融政策の政策波及メカニズムが機能しにくくなるのがケシカランという話ですな。

『Establishing a precise link between these impairments and unemployment performance is not straightforward. However, ECB staff estimates of the “credit gap” for stressed countries - the difference between the actual and normal volumes of credit in the absence of crisis effects - suggest that that credit supply conditions are exerting a significant drag on economic activity. [2] 』

ということでソブリン危機になったらおしマイケルという話をしているのですが、後の方で微妙な話があるのでちと引用しておきました。(なお後の方の微妙な話は時間の都合上明日送りになるのでした、汗)


・循環問題が構造問題になるとかその手の話

次が『Cyclical and structural factors』という話ですが。

『Cyclical factors have therefore certainly contributed to the rise in unemployment. And the economic situation in the euro area suggests they are still playing a role. The most recent GDP data confirm that the recovery in the euro area remains uniformly weak, with subdued wage growth even in non-stressed countries suggesting lacklustre demand. In these circumstances, it seems likely that uncertainty over the strength of the recovery is weighing on business investment and slowing the rate at which workers are being rehired.』

つーことでユーロ圏の現状は宜しく無くて、ストレスの無い国でも賃金は弱いわ需要は弱いわで、循環要因による影響もあるという話ですが、ここから先は構造的な話をして、構造の話→ユーロ圏の改革が必要というのが基本ロジックになるのですよ。

『That being said, there are signs that, in some countries at least, a significant share of unemployment is also structural.』

でまあ最初がユーロ圏の失業がシクリカルからストラクチャルになっている部分という話をしておりまして・・・・・・・・・

『For example, the euro area Beveridge curve - which summarises unemployment developments at a given level of labour demand (or vacancies) - suggests the emergence of a structural mismatch across euro area labour markets (Figure 3).』

要するに労働需要(あるいは労働力の余剰)と失業率のプロットで、図表の方は上記URL先をご覧下さいという所ですが・・・・・・・・

『In the first phase of the crisis strong declines in labour demand resulted in a steep rise in euro area unemployment, with a movement down along the Beveridge curve. The second recessionary episode, however, led to a further strong increase in the unemployment rate even though aggregate vacancy rates showed marked signs of improvement. This may imply a more permanent outward shift.』

詳しくは図表見てちょという所なのですが、最初のリーマンショックの時には失業率の上昇と労働需要の低下が同時進行で起きたのですが、その後のちょっと回復→またソブリンキタコレの流れの中では労働需要が戻る中でも失業率がサガランチ会長になっているという状況を示していまして、つまり労働需要が戻っても失業がそのままという状態になっていて、最初はシクリカルな需要ショックで起きた失業の増加がその後構造的な問題になってきているという話になっています。


・要因は「ジョブの破壊」と「スキルのミスマッチ」というのが最初に来ます

『Part of the explanation for the movement of the Beveridge curve seems to be the sheer magnitude of the job destruction in some countries, which has led to reduced job-finding rates, extended durations of unemployment spells and a higher share of long-term unemployment.』

つーことで原因の説明として最初に出てくるのがジョブの破壊ということで・・・・・・・・

『This reflects, in particular, the strong sectoral downsizing of the previously overblown construction sector (Figure 4), which, consistent with experience in the US, tends to lower match efficiency. [3] By the end of 2013, the stock of long-term unemployed (those unemployed for a year or more) accounted for over 6% of the total euro area labour force - more than double the pre-crisis level.』

図表6というのにありますが建設セクターがその前のバブルでヒャッハーだったのがあばばばばーになってしまったのでそのセクターの雇用吸収が大きかった所ほど死んでいると。

『Another important explanation seems to be a lack of redeployment opportunities for displaced low-skilled workers, as evidenced by the growing disparity between the skills of the labour force and the skills required by employers. Analysis of the evolution of skill mismatch [4] suggests a notable increase in mismatch at regional, country and euro area level (Figure 5). As the previous figure shows, employment losses in the euro area are strongly concentrated among low skilled workers.』

もう一つが低スキル労働者の失業が高いという話で、つまりはスキルのミスマッチがという話。

『All in all, estimates provided by international organisations - in particular, the European Commission, the OECD and the IMF - suggest that the crisis has resulted in an increase in structural unemployment across the euro area, rising from an average (across the three institutions) of 8.8% in 2008 to 10.3% by 2013. [5] 』

これらの要因なども含め、構造的失業率が危機の後上昇している、という話でしてこれはユーロ圏だけではないとな。


・労働市場の改革が必要という話の部分が言いたい事は分からんでも無いが微妙な仕上がりになっています

で、恐らくこの次の『Nuancing the picture』の部分が今回の失業云々に関するお題に対する一番の読みどころになっていて、まあこれは精読すると(お話としては)オモロイかも。

『There are nevertheless two important qualifications to make here.』

まずは最初に話として留保がありますのでということで。

『The first is that estimates of structural unemployment are surrounded by considerable uncertainty, in particular in real time. For example, research by the European Commission suggests that estimates of the Non-Accelerating Wage Rate of Unemployment (NAWRU) in the current situation are likely to overstate the magnitude of unemployment linked to structural factors, notably in the countries most severely hit by the crisis. [6]』

構造失業率の推計には不確実性があり、リアルタイムでは判らないという話をしておりまして、その例として現状のNAWRU(賃金が上昇しない程度の失業率水準)は特に金融危機の影響が大きかった国における構造失業率を過大評価させる可能性があるとの指摘を紹介しています。

『The second qualification is that behind the aggregate data lies a very heterogeneous picture. The current unemployment rate in the euro area of 11.5% is the (weighted) average of unemployment rates close to 5% in Germany and 25% in Spain.』

これはユーロ圏での話ですが、ユーロ圏の域内で状況に差があるという点ですな。

『Structural developments also differ: analysis of the Beveridge curve at the country level reveals, for example, a pronounced inward shift in Germany, whereas in France, Italy and in particular Spain, the curves move outward.』

先ほどの失業と労働需要の関係に関しても国によって違いますと。


・労働市場改革というか解雇規制を減らしたり賃金水準の弾力化が必要みたいな話をしているのですが

で、その後。

『In Germany, for example, the inward shift in the Beveridge curve seen over the course of the crisis follows a trend that began in the mid-2000s after the introduction of the Hartz labour market reforms. Its relatively stronger employment performance was also linked to the fact that German firms had instruments available to reduce employees’ working time at reasonable costs - i.e. the intensive margin - including reducing overtime hours, greater working time flexibility at the firm level, and extensive use of short-time work schemes. [9] 』

とまあこの辺から労働市場改革をしろという話に入るのですが、まずはドイツでのハーツレーバーマーケットリフォーム(というものらしい)による賃金の弾力化とか解雇規制の弾力化(金払って解雇するのを緩和する)によって効果が出ているという話でして・・・・・・・

『Even within the group of countries that experienced the sovereign debt crisis most acutely, we can see a differential impact of labour market institutions on employment. Ireland and Spain, for example, both experienced a large destruction of employment in the construction sector after the Lehman shock, but fared quite differently during the sovereign debt crisis.』

で、例は同じくストレス食らった国のアイルランドとスペインの比較になります。

『Unemployment in Ireland stabilised and then fell, whereas in Spain it increased until January 2013 (Figure 6). From 2011 to 2013 structural unemployment is estimated to have risen by around 0.5 percentages points in Ireland, whereas it increased by more than 2.5 percentages points in Spain. [10]』

図表6というのを見てちょなのですがアイルランドとスペインの失業率の問題があって、アイルランドは失業率上がったけどその後徐々に落ち着いているのにスペインは上がって更に上がるとなっていますよという図表があって、その先に説明があるけれども横にあるグラフが「賃金の水準」という事でまあお察しな展開になるのですよ。

『This diverging performance can in part be accounted for by differences in net migration. But it also reflects the fact that Ireland entered the crisis with a relatively flexible labour market and adopted further labour market reforms under its EU-IMF programme beginning in November 2010.』

移民比率の問題も一部にはありますが、アイルランドではEUとIMFによる労働市場改革が2010年11月から行われているのが違いです(キリッ)とな。

『Spain, on the other hand, entered the crisis with strong labour market rigidities and reform only started meaningfully in 2012.』

スペインの労働改革は2012年に始まったばかりと。

『Importantly, until then, the capacity of firms to adjust to the new economic conditions was hampered in Spain by sectoral and regional collective bargaining agreements and wage indexation.』

スペインでは物価上昇で給与の物価スライドが起きているという話ですが、しかしそれがケシカランという話になりますと労働市場的にはそれで雇用が確保できるのかも知れんがどう見てもデフレ圧力です本当にありがとうございましたという話なんですけどねえ。

『Survey evidence indicates that Spain was among the countries where indexation was more frequent - covering about 70% of firms. [11] As a result, as Figure 6 shows, nominal compensation per employee continued to rise in Spain until the third quarter of 2011, despite a more than 12 percentage point increase in unemployment in that time. In Ireland, by contrast, downward wage adjustment began already in the fourth quarter of 2008 and proceeded more quickly.』

ということでさっき申し上げた表の右側ですが、アイルランドでは賃金がこの間低下していますという話っすな。

『The upshot was that, whereas the Irish labour market facilitated some adjustment through prices, the Spanish labour market adjusted primarily through quantities: firms were forced to reduce labour costs by reducing employment.』

賃金調整によって雇用確保できましたという話なのですが、それってまるでジャパンの話であって、つまりは欧州の「労働市場改革」って賃金デフレ圧力からいわゆるデフレ均衡的なリスクを高めているだけのような気がするんですけど、物価安定目標というECBのマンデートとの整合性はどうなっているのかという点については(恐らくそこはツッコまれると答えが出来ないので)講演中には触れていないのですよね。

『And due to a high degree of duality in the Spanish labour market, this burden of adjustment was concentrated in particular on a less protected group - those on temporary contracts. These had been particularly prevalent in Spain in advance of the crisis, accounting for around one third of all employment contracts. [12] 』

でまあその結果スペインの場合は非正規労働者などに雇用者数調整の形で労働コスト削減の皺寄せが来るという話をしていますが、でも米国だってこのリーマンショック以降の間って賃金の上昇自体は弱いですけれども、別に賃金水準自体がマイナス推移していた訳ではないのに雇用の回復が進んでいる訳でして、労働市場改革が進むと話が上手く行く、というのは講演での説明的には何となく説得力があるような気もせんでもないですけれども、冷静に考えると本当にそれで良いのかという気がだいぶする訳です。

まあドラギ総裁としては労働市場改革を含め(後の方で出てきますが)EUの経済統合とか財政統合とかそういうのを進めていきたいという中でのロジック展開だと思うのですが、どうも話が一点突破的で全体としての整合性(デフレ圧力どうすんのとか)についてのデザインは無いなあという感じがするのよね。


『To sum up, unemployment in the euro area is characterised by relatively complex interactions.』

ということで最後ですが。

『There have been differentiated demand shocks across countries. These shocks have interacted with initial conditions and national labour market institutions in different ways - and the interactions have changed as new reforms have been adopted. Consequently, estimates of the degree of cyclical and structural unemployment have to be made with quite some caution. But it is clear that such heterogeneity in labour market institutions is a source of fragility for the monetary union.』

ということで、労働市場改革で雇用法制も一本化していかないとマネタリーユニオン(要するに通貨だけ統合している状態)というのは色々と脆弱性があるんですよ(だからお前ら労働市場改革して解雇規制や賃金調整を緩和しろ)というのは判ったのですが、そもそもそれはデフレ圧力にも程があるとか、いわゆる格差拡大ですよね政治的に大丈夫ですかとか、まあそういう意味では結構微妙なテイストというか地雷テイストのある前半部分になっている、ということであります。

以上の内容を踏まえて改めて先日ざくっと引用した『2. Responding to high unemployment』を読みますと、金融政策と財政政策をもっと実施云々という話とまた違った味わいを感じるのですが、惜しい事に時間と量の関係で明日送りになるのでした(超大汗)。