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2015/03/31

お題「日銀考査方針が出ていますな/ECB計数関連ネタ/イエレン議長の金曜の講演ネタ続き」

ほほう。
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0MQ0EA20150330
円安はアベノミクス目的ではない、大胆金融緩和の結果=安倍首相
2015年 03月 30日 15:24 JST

『また、政府と日銀による共同声明を踏まえ、日銀による2%の物価安定目標が「うまくいかなければ、(日銀が)説明責任を負う」とし、目標実現に向けた道筋などについて政府に対して説明する必要がある、と語った。』(上記URLより)

「私の金融緩和」だけど旗色が悪くなったら(銃声)。


○日銀の来年度考査方針が出ている件について

先週金曜に出ていたのですけど(汗)。
http://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy15.pdf
2015 年度の考査の実施方針等について

まずは『(2)考査でみられた課題』から引用。

『日本銀行は、2014 年度の考査で、金融機関の業務と財産の状況の的確な把握に努めるとともに、リスクプロファイルに見合ったリスク管理の実効性を点検した。』

ここで日本銀行のリスク管理はどうなっているなどと聞いてはいけません(MPMでいるも点検してますもんね!!!!)

『わが国の景気が緩やかな回復基調を続ける中で、金融機関の経営体力やポートフォリオの質は全体として改善してきており、貸出や有価証券運用などの面でリスクテイクを積極化する動きもみられた。』

ポートフォリオリバランスキタコレですねわかります。

『各金融機関は、引き続きリスク管理体制の整備を進めているが、貸出や有価証券運用の積極化や新規業務への取組みなど、リスクプロファイルの変化に見合った管理体制の整備に課題のある先がみられた(主な課題については、別添参照)。』

日本銀行いや何でもないです。

『大手金融機関は、国際的な業務展開とグループベースの経営戦略を進めており、グローバルかつ複雑なリスクを適時に把握し、経営に活用していく力をいかに高めていくかが課題となっている。一方、地域金融機関は、おしなべて基礎的収益力が低下傾向にあり、先行きも人口減少などによる営業基盤の縮小を予想する先が少なくない。そうした金融機関では、これら環境変化を踏まえて、地域の成長力向上に貢献しつつ、より長期の収益力をいかに向上させていくかが課題となっている。』

・・・・・・・・・・・まあそれはそうなのだがイールドカーブに過度な低下圧力をかけて長期金利を下げることによって預貸利鞘をガシガシ削っているのがマネタリーポリシーウィングな訳でorz

次が『3.2015 年度の考査の実施方針』ですが、細々引用するのも何ですので『(1)基本的な考え方』を引用。

『金融機関は、金融仲介機能を適切に発揮し、企業や家計の経済活動、ひいては、国・地域の成長力向上に貢献していくことが期待されている。経済のグローバル化や人口の減少・高齢化など、わが国の経済が直面する諸課題に対応し、活力ある産業構造を実現していく上で、金融が担うことのできる役割は大きい。金融機関がこの役割を安定的に果たしていくためには、明確な経営戦略に基づいてリスクテイクを行うとともに、リスクを適切に管理し、将来にわたって経営の健全性を維持していくことが重要である。日本銀行は、こうした認識や、2014 年度の考査でみられた課題を踏まえ、2015 年度の考査を以下の考え方に基づいて実施していく。』

というのがマクラでして・・・・・・・

『第一に、金融機関の経営戦略や業務運営方針を確認した上で、資産査定や、有価証券運用・新規業務などの調査を行い、ポートフォリオの質や資産負債構造など金融機関のリスクプロファイルについて、その足許の状況と先行きの方向性を把握する。』

『第二に、金融機関のリスクへの対応力を点検する。』

『第三に、金融機関の経営・業務の状況に応じ、先行きの金融経済情勢の変化やストレス発生時における収益・経営体力への影響と対応を点検する。』

『第四に、2008 年度以降実施している「リスクベース考査」の枠組みのもとで、めり張りのある運営を一段と強化していく。』

でまあ中身の方は全部引用すると長くなるので引用端折っているので上記資料を読んでちょという所ですけれども、内容的には「特に海外業務や有価証券投資業務のリスク管理がちゃんとできているのか」というあたりと、「大手機関の場合は傘下グループも含めて網羅的に点検しますよ」という辺りがあって、地域金融機関に関しては第三の所に・・・・・・

『地域金融機関は、おしなべて基礎的収益力が低下傾向にあり、先行きも人口減少などによる営業基盤の縮小を予想する先が少なくない。こうした点を踏まえ、考査では、ダウンサイドリスクを含む複数のシナリオのもとでの収益シミュレーションを実施するとともに、より長期での地域経済・営業基盤の展望と、そのもとでの課題認識や対応方針を確認する。』

とあるのがお察しという所ですかそうですか(−−;



○ECB関連雑談である

・PSPP関連である

毎度月曜のECB
http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html
Open market operations

Covered bond purchase programme
27 Mar. 2015 26,081
(20 Mar. 2015 26,081)

Securities market programme
27 Mar. 2015 140,945
(20 Mar. 2015 140,945)

Covered bond purchase programme 2
27 Mar. 2015 11,464
(20 Mar. 2015 11,504)

Covered bond purchase programme 3
27 Mar. 2015 62,862
(20 Mar. 2015 59,998)

Asset-backed securities purchase programme
27 Mar. 2015 4,646
(20 Mar. 2015 4,008)

Public sector purchase programme
27 Mar. 2015 41,016
(20 Mar. 2015 26,300)

ということで、先週1週間はCBPP3が28.64億ユーロ(前週は30.51億)、ABSPPが6.46億ユーロ(前週は2.54億)、PSPPが147.16億ユーロ(前週は165.49億)となりまして、相変わらずPSPP中心というかそればっか買ってやがるわと思いますが、開始から最初の2週間分の公表だとほぼ1日32.5億ユーロのペースでしたが、今回公表分は29.5億ユーロにペースダウンしておりますが、1日29.5億ユーロでキープしていれば月間600億ユーロという事に計算上はなる筈なのでペースとしては順調順調という事ですな。

・・・・・・・・なおPSPPの残高が拡大しているのは結構なのですが、ECBのバランスシート総額の拡大という意味では資産買入の反対側で超過準備(ただしマイナス金利ですが)が積みあがっている必要があるのですが、この辺の数字を見ると預金ファシリティがそんなに増えている訳でもなく、他の流動性供給分が落ちているようにも見えますが、資金需給の振れがあるので3週間ぽっちの単純比較はミスリードの可能性があるのでもうちょっと真面目に読んでからにしますね。

http://www.ecb.europa.eu/stats/monetary/res/html/index.en.html
Minimum reserves and liquidity

ちなみに『Data on daily liquidity conditions』の辺りを見るのだ(^^)。


・ちなみに関連でブンデスバンク見てたらトップページにある講演やらイベントの題名に吹いた

ブンデスバンク(ただし英語版)
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Home/home_node.html

をみた訳ですけど、今だと上から3番目に堂々とバイトマン先生の御尊顔とともにこんな小見出しが。

『"Monetary policy should not be absolved of responsibility for financial stability"』

どう見てもECBに嫌味です本当にありがとうございました。

『In the opinion of Bundesbank President Jens Weidmann, monetary policy makers must not stand idly by at the first signs of speculative exaggerations in the asset markets. As part of their existing mandate, they have to also take into account the effects of financial imbalances on price stability. More』

ってな訳で、そのmoreに逝きますとこんなのがあります。

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Topics/2015/2015_03_26_weidmann_ifo.html
"Monetary policy should not be absolved of responsibility for financial stability"

が、とりあえず題名だけでおなかいっぱいなので中身はパス(^^)。


ちなみにトップにあるイベントですけれども

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Topics/2015/2015_03_27_conference_on_debt_and_financial_stability.html
Conference on Debt and Financial Stability

という時点でもう全方位に砲撃する気満々という辺りにドイツクオリティを感じるのでありました。なお中身はめんどいのでパスするので雑談ネタですけど(^^)。




○イエレン議長の先週の講演ですが折角なので残りも読んでみると「先行きの自信がないのね」という所で

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150327a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150327a.pdf

Normalizing Monetary Policy: Prospects and Perspectives


昨日の続きですが、後半3分の1だけ読んだのでその前の方を見るとまた味わいがあるというお話である。最初の所ですが・・・・・・・・

『In my remarks today I will discuss some factors that will likely guide our decisions as we adjust the stance of monetary policy over time. I will also discuss why most of my colleagues and I believe the return of the federal funds rate to a more normal level is likely to be gradual. In doing so, I will address three questions.』

ほうほうそれでそれで?

『First, why does the Committee judge that an increase in the federal funds rate target is likely to become appropriate later this year?』

何で今年に利上げ着手するのが適切なのかとな。

『Second, how are economic and financial considerations likely to shape the course of monetary policy over the next several years?』

向こう数年の金融政策のパスについて(要は緩やかな利上げ)が適切と思われる理由についてと。

『And, finally, are there special risks and other considerations that policymakers should take into account in the current environment? 』

でまあ3番目の所は昨日ネタにしたハト的要素の強い論点整理ですな。


本当はその前に経済物価情勢の話があるのですが、『Why Might an Increase in the Federal Funds Rate Be Warranted Later This Year?』という小見出しの所ですが、最初に年内に利上げ開始するのが何故適切なのかという話を始めますよというマクラを置いてその次から説明が。

・正常化着手はビハインドしないように、というのは実際問題として無理があると思う

『I would first note that the current stance of monetary policy is clearly providing considerable economic stimulus. The near-zero setting for the federal funds rate has facilitated a sizable reduction in labor market slack over the past two years and appears to be consistent with further substantial gains. A modest increase in the federal funds rate would be highly unlikely to halt this progress, although such an increase might slow its pace somewhat.』

今の金融政策は顕著な緩和効果を出しており、利上げ着手してもそのペースが遅いのであれば金融政策は現状の金融政策の与える労働市場のスラック縮小効果の進展を妨げるものではない、と利上げ正当化キタコレである。

『Second, we need to keep in mind the well-established fact that the full effects of monetary policy are felt only after long lags.』

金融政策の効果が出るのにはラグがあるという話をしていまして・・・・・・・・・・

『This means that policymakers cannot wait until they have achieved their objectives to begin adjusting policy. I would not consider it prudent to postpone the onset of normalization until we have reached, or are on the verge of reaching, our inflation objective.』

したがって金融政策正常化がビハインドした場合におけるリスクがありますよという事で、昨日引用した3番目の所の説明とは旗色が違っておりますな。

『Doing so would create too great a risk of significantly overshooting both our objectives of maximum sustainable employment and 2 percent inflation, potentially undermining economic growth and employment if the FOMC is subsequently forced to tighten policy markedly or abruptly.』

正常化の着手が遅れるとインフレが高進したり経済が過熱したりしてその後の政策調整を急激にタイトニングしないといけなくなるリスクがあるとはキタコレ。

『In addition, holding rates too low for too long could encourage inappropriate risk-taking by investors, potentially undermining the stability of financial markets.』

またファイナンシャルスタビリティーの話もしていまして、結論として・・・・・・・

『That said, we must be reasonably confident at the time of the first rate increase that inflation will move up over time to our 2 percent objective, and that such an action will not impede continued solid growth in employment and output.』

初回の利上げ着手は物価が2%に先行き行くであろうという事にreasonably confidentであればおっけーという説明になっていまして、昨日はケツの所から紹介したのでケツの部分では盛大なハト風味になっているのに、ここでは(というかこの部分では)正常化着手がビハインドする点を問題視しちょりますの。

まあつまり「初回利上げはするけどその後は様子見」という姿がイエレンさんの中にはあるんだろうなあとは思うのですが、それって市場(特に債券市場)がいちいち経済指標に反応してボラの高い市場価格形成になっていくのであまり政策テクニック的はよろしくないし、そもそもビハインドを避けようとして正常化着手となると早とちりリスクの方が高いように見えます。

でまあ昨日紹介したように、最後の所での論点整理では「今の状況であれば政策対応を急ぐ必要がない」方の論点に分があるような説明になっている訳で、この講演では上記引用部分と最後の所のコントラストが結構面白いなと思うのであります。


・威勢の良い話のあとで「ではどうなったら自信が」という話になると一気に腰が砕けるの巻

『An important factor working to increase my confidence in the inflation outlook will be continued improvement in the labor market. A substantial body of theory, informed by considerable historical evidence, suggests that inflation will eventually begin to rise as resource utilization continues to tighten.2 It is largely for this reason that a significant pickup in incoming readings on core inflation will not be a precondition for me to judge that an initial increase in the federal funds rate would be warranted.』

つーことでコア物価指数が強くなって来れば正常化着手の1回目の利上げは正当化されやすくなりますなあという講釈でして、そのためには需給バランスが需要超過となってくるのがポイントであり、ということですが・・・・・・・・・・・

『With respect to wages, I anticipate that real wage gains for American workers are likely to pick up to a rate more in line with trend labor productivity growth as employment settles in at its maximum sustainable level. We could see nominal wage growth eventually running notably higher than the current roughly 2 percent pace. But the outlook for wages is highly uncertain even if price inflation does move back to 2 percent and labor market conditions continue to improve as projected.』

賃金の話になりまして、労働生産性は今後は最大の持続可能なレベルに上昇すると想定しているのですが賃金の見通しが高度に不確実(物価が2%水準に戻って今後も労働市場環境が改善するとした場合でも)というお話でして・・・・・・・・・

『For example, we cannot be sure about the future pace of productivity growth; nor can we be sure about other factors, such as global competition, the nature of technological change, and trends in unionization, that may also influence the pace of real wage growth over time. 』

『These factors, which are outside of the Federal Reserve's control, likely explain why real wages have failed to keep pace with productivity growth for at least the past 15 years. For such reasons, we can never be sure what growth rate of nominal wages is consistent with stable consumer price inflation, and this uncertainty limits the usefulness of wage trends as an indicator of the Fed's progress in achieving its inflation objective.』

生産性上昇の先行きにも不確実性があるが、その他の外的な理由など(グローバルな賃金競争とか技術革新とか)金融政策では対応しにくい部分の要因によって、ここまで労働生産性の上昇ほどに実質賃金が上昇しなかったのではないかという事で、この点があるので賃金のトレンドがインフレ目標への達成時期を図る指標として使いにくくなっていることを意味する、ということで要は賃金が何で上がらんのやゴルァという話ですかね。

『I have argued that a pickup in neither wage nor price inflation is indispensable for me to achieve reasonable confidence that inflation will move back to 2 percent over time. That said, I would be uncomfortable raising the federal funds rate if readings on wage growth, core consumer prices, and other indicators of underlying inflation pressures were to weaken, if market-based measures of inflation compensation were to fall appreciably further, or if survey-based measures were to begin to decline noticeably.』

ということでちょっと手前での勢いはどこへやらで、賃金やコアインフレの上昇が必要だし、その他のインフレ期待に関する指標やインフレ圧力に関する指標などが弱かったりしたらやっぱり自信が持てませんという事で、威勢のいい利上げの必要性の話はこの辺から腰砕けの巻。


・テーラールールでは利上げとなるが・・・・・・・・

『Under normal circumstances, simple monetary policy rules, such as the one proposed by John Taylor, could help us decide when to raise the federal funds rate.3 Even with core inflation running below the Committee's 2 percent objective, Taylor's rule now calls for the federal funds rate to be well above zero if the unemployment rate is currently judged to be close to its normal longer-run level and the "normal" level of the real federal funds rate is currently close to its historical average. 』

この前ブラード総裁もゆうてましたが、イエレンさんは「でも違いますよ」という話になるのだ。

『But the prescription offered by the Taylor rule changes significantly if one instead assumes, as I do, that appreciable slack still remains in the labor market, and that the economy's equilibrium real federal funds rate--that is, the real rate consistent with the economy achieving maximum employment and price stability over the medium term--is currently quite low by historical standards.4』

『Under assumptions that I consider more realistic under present circumstances, the same rules call for the federal funds rate to be close to zero.5 Moreover, I would assert that simple rules are, well, too simple, and ignore important complexities of the current situation, about which I will have more to say shortly.』

つーことで単純なテーラールールを適用するのは経済のスラックがあったりする中では適切ではないというお話で、その背景にある話が次のお題になるのだ。で、この項の最後は「利上げ時期については慎重に考えますけれども、それはそれとして重要なのは開始時期がどうのこうのよりも正常化パスのルートだったり、その時の全体的な金融環境だのという話ですがな」的なお話をしていますが割愛して次のお題に。


・利上げパスが緩やかになるのは金融危機の後遺症という話はまあいつも通りだったりする

次が『How Are Economic and Financial Considerations Likely to Shape the Course of Monetary Policy over the Next Several Years? 』というお題です。

『Let me therefore turn to the second question I posed earlier: How are economic and financial considerations likely to shape the course of monetary policy over the next few years?』

つーことで。

『Let me first be clear that the FOMC does not intend to embark on any predetermined course of tightening following an initial decision to raise the funds rate target range--one that, for example, would involve similarly sized rate increases at every meeting or on some other schedule. Rather, the actual path of policy will evolve as economic conditions evolve, and policy tightening could speed up, slow down, pause, or even reverse course depending on actual and expected developments in real activity and inflation.』

とわざわざ最初にいつものお断りを入れているのがアレですが。

『Reflecting such data dependence, as well as some historically unusual policy considerations that I will discuss shortly, the average pace of tightening observed during previous recoveries could well provide a highly misleading guide to the actual course of monetary policy over the next few years.』

データディペンデントだから過去にあったいくつかの正常化過程は今回の正常化においてはミスリーディングなガイドですよ、というのは要するに金融正常化に時間をかけるとゆうとる訳ですな、うんうん。

『Our goal in adjusting the federal funds rate over time will be to achieve and sustain economic conditions close to maximum employment with inflation averaging around 2 percent, responding, as best we can, to the inevitable twists and turns of the economy.』

でまあ時間がかかるので景気サイクル的にデュアルマンデート達成までの間に景気のツイストやらターンがあるでしょうとな。

『Keeping in mind the all-important proviso that policy is never predetermined but is always data dependent, what can we say about the appropriate path of policy, assuming the most likely outcomes for real activity, inflation, and related factors? The answer is that it depends, of course, on one's outlook for the economy.』

政策はデータディペンデントですが、それに関して重要なのは経済見通しですよという話。

『Today I will focus on the modal outlook presented by FOMC participants' submissions to the March Summary of Economic Projections (SEP), which assumes that no further unanticipated disturbances buffet the economy. As I noted at my press conference after last week's FOMC meeting, participants generally project that the unemployment rate will continue to fall through late 2017 to levels at or somewhat below estimates of its longer-run sustainable level, accompanied by growth in real gross domestic product that runs somewhat above its estimated longer-run trend with inflation moving up to around 2 percent. This solid economic performance is projected to be consistent with a gradual normalization of monetary policy: The median funds rate projection in the March SEP increases apercentage point per year on average through the end of 2017.』

でまあこの辺はSEPでの見通しの話になっていますな。

『The projected combination of a gradual rise in the nominal federal funds rate coupled with further progress on both legs of the dual mandate is consistent with an implicit assessment by the Committee that the equilibrium real federal funds rate--one measure of the economy's underlying strength--is rising only slowly over time.』

『In the wake of the financial crisis, the equilibrium real rate apparently fell well below zero because of numerous persistent headwinds. These headwinds include tighter underwriting standards and restricted access to some forms of credit; the need for households to reduce their debt burdens; contractionary fiscal policy at all levels of government after the initial effects of the fiscal stimulus package had passed; and elevated uncertainty about the economic outlook that made firms hesitant to invest and hire, and households reluctant to buy houses, cars, and other discretionary goods. 』

つーことで、緩やかな金利上昇パスを取りますというSEPでの見通しもありますが、そうなる要因としては金融危機の後遺症ですよ、というまあFOMCでの説明通りの説明になっていますな。


・金融危機の後遺症に関しては解消しつつあるという話で

『Fortunately, the overall force of these headwinds appears to have diminished considerably over the past year or so, allowing employment to accelerate appreciably even as the level of the federal funds rate and the volume of our asset holdings remained nearly unchanged.6』

つーことで金融危機の後遺症が解消しつつあるということで、その結果としてバランスシートを拡大しなくても金融緩和の効果で雇用改善が加速しておりますとな。

『Stated differently, the economy's underlying strength has been gradually improving, and the equilibrium real federal funds rate has been gradually rising.』

キタコレという感じで妙にここに来てまた威勢が良くなります。

『Although the recent appreciation of the dollar is likely to weigh on U.S. exports over time, I nonetheless anticipate further diminution of the headwinds just noted over the next couple of years, and as the equilibrium real funds rate continues to rise, it will accordingly be appropriate to raise the actual level of the real federal funds rate in tandem, all else being equal.7』

しらっとドル高の話があるのがチャーミングで、ドル高が経済を下押しするという指摘がありますが、しかしながら今後2年間程度の期間は更に経済の向かい風が弱まるので均衡金利も徐々に上昇しますと割と景気の良い話。

『At present, the equilibrium real federal funds rate, which by some estimates is currently close to zero, appears to be well below the longer-run normal levels assessed by the FOMC. The median SEP estimate of this longer-run normal rate--that is, the long-run projection of the nominal funds rate less 2 percent inflation--stood at 1-3/4 percent in the FOMC's recent projections.8』

これはSEPの話ですな。

『Provided that inflation shows clear signs over time of moving up toward 2 percent in the context of continuing progress toward maximum employment, I therefore expect that a further tightening in monetary policy after the first increase in the federal funds rate will be warranted. Should incoming data, however, fail to support this forecast, then the actual path of policy will need to be adjusted appropriately.』

ということで、今後の経済指標が強ければ利上げ着手が正当化されますし、そうじゃないなら利上げパスについても調整されますよとまあこのコーナーでは「データ次第」としながらも最後の所で妙に強い話になるという感じです。


・つーことで一応まとめると「利上げ1回はしようかなと思うが先行き自信は全くない」ですかね^^

・・・・・・・でまあ昨日引用した最後の論点整理がやたらハトっぽいというのが実にこうアレでして、イエレンさんの今回の講演って良く言えば「今後のデータを見ながらあくまでもデータ次第」という事なのですが、まあ意地悪な言い方をすれば「先行きの見通しに全然自信が無いのでどっちつかずの話をしている」という感じで、まあ要は先行きの確信度が(上にしても下にしても)碌にないので何とも言えませんなあという所なのでしょうかね。


勝手にまとめると「正常化ヒャッハー」ではないものの「初回利上げはしておいた方が良いんじゃないのかなあ」と思っていて、さらに「その後連続的に利上げできる自信は全然無い」という感じが漂ってくる状況でして、まあそういう場合って政策テクニック的には初回利上げをさっさとやって半年くらい様子見宣言しちゃうのもありますが、本来的には「自信を持つまで引っ張ってその代り利上げ着手したら中立金利まで一気に連続利上げ」という方が実は運営しやすいのですけれども、中央銀行の常としてビハインドするのが嫌でしょうし、特に米国の場合はビハインドしてバブル発生を繰り返している以上、ここでまたやらかしたらFRBの存亡にかかわる可能性も出て来るというリスクもあるだけに、まー難しいのかもしれませんね。

ただまあこの全体のトーンを見ると先行きへの自信があまりなさそうという感じで、そういう意味ではハト色の方が強いという解釈で良いんじゃないのかねえとあたしゃ思うのでありましたが、さてどうでしょうかね。







2015/03/30

お題「CPIとか市場メモとか/イエレン講演メモと思ったら長くなり過ぎました/ジンバブエ先生デビュー戦である」

ほほう。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150328-OYT1T50156.html
債務GDP比を財政再建の新指標に…政府方針
2015年03月29日 07時12分

『政府は、2020年度までの財政健全化目標として、国と地方の債務残高(借金)の総額を国内総生産(GDP)比で減少させることを掲げる方針を固めた。』(上記URLより)

まー前から話はありましたが、目標が行かなさそうになると目標を差し替えてしまうという中々こう斬新な(以下自主規制)。この調子で物価目標2%の2年も(内務省検閲)。


○CPI2年でゼロ%キター

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm
平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成27年(2015年)2月分 (2015年3月27日公表)

コアもコアコアも0.0(消費税除く)キタコレという所でありますが。


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MN06920150327?sp=true
アングル:CPI失速、日銀は原油下落で説明可能と静観スタンス
2015年 03月 27日 11:45 JST

『[東京 27日 ロイター] - 2月消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)は、消費税引き上げの影響を除き前年比ゼロ%にとどまった。日銀が目標に掲げる2%への道のりは遠い。未曾有の国債買い入れで昨年4月には1.5%まで上昇した物価は、振り出しに戻った印象だ。だが、日銀は現時点で物価下落は昨年来の原油急落で説明可能として、静観のスタンスを維持している。』(上記URLより)

(・∀・)ニヤニヤ

これ毎度原油価格ガーって言ってるけどコアコアもゼロな訳でして、米国のようにエネルギー除きだとそこまで弱くないというのと全然違うんですが、どこまで原油ガーで言い逃れをするのかが楽しみですが、需給ギャップが改善して賃金が上昇するからそんなことは心配しなくて良いんですね!!!!!!(白目)


なお、こんな記事もあるようで。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE96800420130709?sp=true
〔焦点〕政府のデフレ脱却判断、「コアコアCPI」採用へ
2013年 07月 9日 21:23 JST

『[東京 9日 ロイター] - 5月全国消費者物価指数(除く生鮮、コア)が前年比0.0%とマイナスを脱し、デフレ脱却の局面が近づいているとの声が一部のエコノミストから出ているが、政府はエネルギー関連を除いた「コアコア指数」で判断する方針を明らかにしている。』(上記URLより)

そもそも政府と日銀で一般物価の定義が違うというのってどうなのよ(なお日銀の政策目標としての物価目標の計測は本来的に言うと「中期的な総合CPI」である)とは思いますが、結局コアコアもアガランチ会長な訳でそうなってくると益々マズーな気がするんですけどねえ。2年で達成は諦めたにしろ2015年度中心という話なのですから1年以内に何とかなっていないとさすがにどうしようもなくなると思います(その前に輪番が火を吹く可能性の方が高そう)けどねえ。



○市場雑談メモ

・金曜の債券市場も何だかわからんが良く動きましたな

昨日の債券市場ですが、米金利上昇で弱含み→輪番オペの打ち込みは内訳含め予想通りだった筈なのだが謎の急落→オペ結果の超長期は実勢だと思ったのだがどうもオペは(超長期などは)実勢よりも強くなって然るべきなので弱いという評価のようで今度は超長期がゲロゲロ、とまあそんな展開だったようですがもう何が何やらという所で。

ヘッドライン見た時に一瞬おーと思ったのはこちら。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLUH3B6JIJV701.html
麻生財務相:日銀が現状を認めた−債券流動性低下のリポート
2015/03/27 09:32 JST

国会での質疑でして、実際はただのこういうのがありますね的な話だったようらしいのすが、後付では気にする向きもあったようで、最近は2年で2%の目標をどう軟着陸させに行くかというのが政府サイドの方からホイホイと出ている(黒田さんは軟着陸させる気はないような行動をしていますが)となりますと、緩和的な金融政策の長期化とはなりますが、長期化させるためには今のペースでのMB拡大をするのは政策を長期的に続けられなくなるのだから買入ペース落ちる罠、となるとそらまあ今の相場が輪番で盛大に支えられている訳で、本格的に経済物価情勢を勘案した場合に投資家の買える水準までは調整するでしょとなりますと今の水準ってどうよという話になりますわな特に後ろの方。


そういやここの話とちとずれますけど、この前も人と話をしていて突っ込まれたのですが、置物師匠を降ろして代案はあるのか的に言われたのですけど、「2%目標を中長期で目指す」という形で、しかもフォーキャストターゲット的な考えでやればよいという事で、しかも今の日本の成長力からすると2%安定的に一足飛びに行くのはどう見ても無理ですから、緩和的な政策を長期間続けて、その間に成長力強化や規制緩和などの施策を行う時間を稼ぐという風にするしかない(短期的に2%は無理とする)わけで、そうなった場合に今の「短期決戦」を前提とした政策フレームワークは間違いなので修正するのと同時に、MB直線一気理論やら2年で達成するのがグローバルスタンダードなど吹いた方にはその理論に大穴があった事を認めて責任とってご退場いただく、とまあそういう事で良いんじゃないですかねえと思ったりしますけどね。

まあそれが軟着陸かと言われると微妙ですが(笑)、現実的に2%の達成時期に多少時間がかかっても良いという話なのであれば、緩和政策の枠組みとして「技術的に長期間継続可能な政策枠組み」を作って置くことが必要なのであって、それは何かというと低金利時間軸政策を中心とした緩和政策で、まあMBについても色々とやかましいのがいるから残高維持なりこっそり微減程度なりの形にして、中期的に持続可能な政策にしないと、目標達成の前に政策が技術的に行き詰るとなったら洒落にならんと思うのですけどねえ。


・短国買入打ち込みとな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150327.htm
国庫短期証券買入 7,500 2015年3月31日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2015年3月31日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,500 2015年3月31日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年3月31日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 11,885 2015年3月27日 2015年3月30日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 8,000 2015年3月27日 2015年3月30日

短国買入を末渡しで打ってくるとは意外感が強い。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150327.htm
国庫短期証券買入 18,300 7,504 0.004 0.006 68.2
国債買入(残存期間1年超3年以下) 6,556 3,001 0.003 0.005 97.2
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,264 3,501 0.026 0.032 62.1
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,478 2,406 0.040 0.048 96.5
国債買入(残存期間25年超) 4,268 1,401 0.040 0.047 97.9
国債補完供給(国債売現先)・即日 (午前オファー分) 0 0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 104 104 -0.400 -0.400

そらまあ期末の所ですから残高は皆さんかなり固めにくる訳で、そもそも応札に回す玉もそんなにないでしょと思ったら応札は少な目に見えますが足切は4糸甘の6糸甘ですから強くはないのねという所。

しかし先週も申しあげたように、4月は日銀の買入短国が10兆円の落ちとなっている訳で、その分の残高を維持しにくるとなると、2兆円を5週間で入れてくる(ので今日か明日に2兆円の打ち込みが来る)と思ったのですがちと不思議。

まー可能性があるとすれば、足元で着地はすると思われるものの、期末の所で国債補完供給がそれなりに出てくる可能性があって、国債補完供給って資金吸収要因になりますし、リクエストベースで飛んでくるものなので当日にならないと分からんというのもありますので、ヘッジを入れてきたのかもしれませんなという所ですが、これで4月の短国買入は少々忙しくなるような気がします。


○イエレン議長の講演は長いのでインスタント読みで「時間をかけて正常化」の論点部分を鑑賞

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150327a.htm
Normalizing Monetary Policy: Prospects and Perspectives


すげえ長いのですが、『Are There Special Risks and Other Considerations That Policymakers Should Take into Account in the Current Environment?』というコーナーをインスタント読み。

『As I noted, my FOMC colleagues and I generally anticipate that a rather gradual rise in the federal funds rate will be appropriate over the next few years, conditional on our baseline forecasts for real activity, inflation, and other aspects of the economy's performance. So far in my remarks, I have emphasized one key rationale for such a judgment--namely, that the equilibrium real federal funds rate is at present well below its historical average and is anticipated to rise only gradually over time as the various headwinds that have restrained the economic recovery continue to abate. If incoming data support such a forecast, the federal funds rate should be normalized, but at a gradual pace.』

講演の方でもそういう説明していますが正常化にあたっては「a rather gradual rise」を今回も強調しておりまして、まあこれが基本線であることには違いがありません。

『Several additional factors reinforce this conclusion, and that brings me to my third question: Are there special risks and other considerations that policymakers should take into account in the current environment?』

で、その場合の論点とリスクは??という所でまあこの話は面白いので確認。

『Keeping in mind that the actual course of monetary policy in the future will primarily depend on events as they unfold, I see three additional considerations that are relevant.9 』

ということで・・・・・・・・


・論点整理部分ではこれでもかとばかりに「慎重なアプローチの重要性」の理由を説明しています

『The first, which is closely related to my expectation that the headwinds holding back growth are likely to continue to abate gradually, pertains to the risk that the equilibrium real federal funds rate may not, in fact, recover as much or as quickly as I anticipate.』

ほうほう。

『Substantial uncertainty surrounds all estimates of the equilibrium real interest rate, and, as I will discuss momentarily, market participants appear to be fairly pessimistic about the odds that it will rise significantly over time. Moreover, some recent studies have raised the prospect that the economies of the United States and other countries will grow more slowly in the future as a result of both demographic factors and a slower pace of productivity gains from technological advances. At an extreme, such developments could even amount to a type of "secular stagnation," in which monetary policy would need to keep real interest rates persistently quite low relative to historical norms to promote full employment and price stability, absent a highly expansive fiscal policy.10』

経済の向かい風が想定以上に強いどころか極端に言えば「secular stagnation」だったりしたらどうなるのかというリスクの話を最初にしている所がもうハトチックですな。

『Such a risk has important implications for monetary policy in the near term, when the ability of the economy to adjust to significant rate increases will be especially uncertain. The experience of Japan over the past 20 years, and Sweden more recently, demonstrates that a tightening of policy when the equilibrium real rate remains low can result in appreciable economic costs, delaying the attainment of a central bank's price stability objective.』

『International experience therefore counsels caution in removing accommodation until the Committee is more confident that aggregate demand will continue to expand in line with its expectations--a view that is also supported by the research literature.11』

そうだとしたら早すぎる利上げ着手どころか利上げしようかな状態での金利上昇も悪影響とはこらまたハトなお話なのですが、金利上昇で悪影響というほどの金利上昇を例に出している日本がしてたかよという気はだいぶするので例示については少々疑問。


『A second reason for the Committee to proceed cautiously in removing policy accommodation relates to asymmetries in the effectiveness of monetary policy in the vicinity of the zero lower bound.』

ほうほうそれでそれで?

『In the event that growth in employment and overall activity proves unexpectedly robust and inflation moves significantly above our 2 percent objective, the FOMC can and will raise interest rates as needed to rein in inflation. But if growth was to falter and inflation was to fall yet further, the effective lower bound on nominal interest rates could limit the Committee's ability to provide the needed degree of accommodation. With an already large balance sheet, for example, the FOMC might be concerned about potential costs and risks associated with further asset purchases.』

こらまた微妙な説明してますなという感じですが、引き締めは簡単だけど、ゼロ金利制約に引っかかったままという状況な上にバランスシートが巨大なままになっているので、その場合に何らかの追加緩和を実施しないといけなくなったというケースでの政策発動余地の糊代が無いというのが政策の非対称性という話になるのですが、それって裏を返すと糊代利上げしたほうが政策テクニック的にお得という話にもなるのでここだけは微妙ちゃあ微妙。

『Research suggests that, the higher the probability of monetary policy becoming constrained by the zero lower bound in the near future because of adverse shocks, and the more severe the attendant consequences for real activity and inflation, the more current policy should lean in accommodative direction.12 』

『In effect, such a strategy represents insurance against the zero lower bound by aiming for somewhat stronger real activity and a faster rise in inflation under the modal outlook. Given the modal outlook envisioned in FOMC participants' recent forecasts, with headwinds continuing to diminish, the equilibrium real rate rising, and inflation moving back up to 2 percent over the next few years, the risk that the funds rate would need to return to near zero should be declining appreciably.』

ということでこちらも「物価が上がった時に抑えるのは金融政策対応で引き締めができるが、下がった時に上げるのはゼロ金利制約があるので難しい」という論点から金利引き上げを慎重に、という慎重な話になっておりますな。

『Consistent with this assessment, almost all FOMC participants now view the risks to the outlook for real activity as largely balanced, although some also see inflation risks as weighted to the downside.』

『That said, it is sobering to note that many market participants appear to assess the risks to the outlook quite differently. For example, respondents to the Survey of Primary Dealers in late January thought there was a 20 percent probability that, after liftoff, the funds rate would fall back to zero sometime at or before late 2017.13 In addition, both the remarkably low level of long-term government bond yields in advanced economies and the low prevailing level of inflation compensation suggest that financial market participants may hold more pessimistic views than FOMC participants concerning the risks to the global outlook.』

『Since long-term yields reflect the market's probability-weighted average of all possible short-term interest rate paths, along with compensating term and risk premiums, the generally low level of yields in advanced economies suggests that investors place considerable odds on adverse scenarios that would necessitate a lower and flatter trajectory of the federal funds than envisioned in participants' modal SEP projections.14』

でまあ海外経済のリスク認識が変わったのと、上記のようなゼロ金利制約における政策対応の非対称リスクを考えたからSEPの見通しが変わったとな。

『A final argument for gradually adjusting policy relates to the desirability of achieving a prompt return of inflation to the FOMC's 2 percent goal, an objective that would be advanced by allowing the unemployment rate to decline for a time somewhat below estimates of its longer-run sustainable level. To a limited degree, such an outcome is envisioned in many participants' most recent SEP projections.』

ということで、慎重になる3つ目の論点は労働市場などのロンガーランノーマルの水準が変わっており、その結果として物価の上昇が抑えられているという点。

『A tight labor market may also work to reverse some of the adverse supply-side developments resulting from the financial crisis. The deep recession and slow recovery likely have held back investment in physical and human capital, restrained the rate of new business formation, prompted discouraged workers to leave the labor force, and eroded the skills of the long-term unemployed.15 Some of these effects might be reversed in a tight labor market, yielding long-term benefits associated with a more productive economy.』

『That said, the quantitative importance of these supply-side mechanisms are difficult to establish, and the relevant research on this point is quite limited.』

ということで、ここまで延々と「慎重なアプローチの正当性」について強調するというこの説明の長さよ。


・リスクの説明は超あっさり味

そしてそのあとにやっとリスクの話が来るのですが・・・・・・・・

『Of course, taking a gradualist approach is not without risks. Proceeding too slowly to tighten policy could have adverse consequences for the attainment of the Committee's inflation objective over time, especially if it were to undermine the FOMC's inflation credibility.』

物価が思いのほかさっさと上昇するリスクですな。

『Inflation could, for example, exhibit nonlinear dynamics in which high levels of unemployment place relatively little downward pressure on inflation, but tight labor markets generate marked upward pressure. If so, a decline in unemployment below its natural rate could cause inflation to quickly rise to an undesirably high level. Rapid increases in short-term interest rates to arrest such an unwelcome development could, in turn, have adverse effects on financial markets and the broader economy.』

はあそうですかというか超あっさり味の説明に続いて・・・・・・・・

『Proceeding too cautiously could also have undesirable effects on financial stability.』

やっと出てきたが申し訳程度の話になっておりますな。

『An environment of prolonged low short-term rates could prompt an excessive buildup in leverage or cause underwriting standards to erode as investors take on risks they cannot measure or manage appropriately in a reach for yield.16』

『At this point the evidence indicates that such vulnerabilities do not pose a significant threat, but the Committee is carefully monitoring developments in this area.17 Moreover, in my view, macroprudential regulatory and supervisory tools should serve as our first line of defense in addressing these risks.18』

ただし基本はマクロプルーデンスですしそもそも現状でそんなリスクはない、という説明になっておりまして、まあこの論点整理部分を読みますと金利上昇パスが前倒しになるのを相当慎重になっているという感じではないかと思います(が、糊代っぽい話も混入されているので初回利上げだけはきっちりやりそうな予感)。




○ジンバブエ先生の就任記者会見はクソ面白くも無いがは色々と不思議な件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503d.pdf

例の「日銀が国債を買うと統合政府の債務が消滅する」ジンバブエ理論に関する質疑のみを楽しみにしていたのにその質疑応答はツッコミ方にダメな上に追及を誰もしないとか当日会見に参加した面々揃って顔を洗って出直してこいとしか申し上げようがないのですが、それはそれとして色々と不思議な答えがあって会見要旨を眺めるのでありました。

・2年で2%についてはまあ予定通り2年を諦めているのはヘッドライン通り

最初の質問のうち抱負とかどうでもよいので後半から。

『(問)(前半割愛)2点目として、黒田総裁は、現在、物価上昇率を2年程度で2%に引き上げるという目標を掲げていらっしゃいます。脱デフレに向けて2年程度という期間にこだわるべきか否か、ご見解をお伺いします。』

『(答)(前半割愛)次に、2年で2%という目標をどれだけリジッドに考えるかについては、経済には様々なことが起き得るわけですから、2%という目標の数字と期間を両方ともリジッドに考えることはなかなか難しい、あるいはできないのではないかと思います。ただし、2%というコミットが重要であって、そのことによって現在の景気回復がありますので、それは重要だと思っています。同時に、例えば、原油価格が下がっているという日本経済にとってプラスの面で2%のインフレが達成できない、2年間で達成できない、ということであれば、それは大きな問題とすべきではないと思います。』

ということで2年で達成できなくても原因が原油価格の下げで中長期的に経済にプラス要因があって2年での達成が遅れるのだから問題はない、というのは話の筋としてはまあそうでしょうねえとは思いますが、百万回くらい申し上げたと思いますが、そもそもリフレ派の皆様はそのような要因を言い訳にして物価目標達成を短期間で行おうとしないことに対して散々っぱら罵倒レベルの批判を行って従来の執行部を追い出している、という経緯についての整合性につきましてご説明頂きたいのですが、そういう追加ツッコミをする記者は皆無という時点でやる気あんのかという所ではございますが、まあそういう事ですので2年ではないという話になりますな。


・為替円安の影響の話と自然失業率の話だが良く良く読んでみると説明が色々と変な件について

『(問)(前半割愛)もう1点お願いしたいのですが、同じインタビューの中で、為替相場でこれ以上円安が進んでも良いのだろうか、という質問に対して、完全雇用になるような為替レートがよいのではないか、ということをおっしゃっていて、完全雇用の失業率の水準は、直近の3.5%程度というよりは、2%くらいではないかという認識をされています。この点を改めてブレイクダウンしてお答え頂ければと思います。』

良く考えたら「完全雇用になるような為替レート」ってナンジャラホイというか、それなら最初から為替をバスケットなり単一通貨なりでペッグするような金融政策を実施すれば話は簡単な気がしますがまあそれはともかくとして原田さんの答え。

『(答)(前半割愛)2番目のご質問ですが、まず為替レートの水準について、具体的に、この水準が良いとか悪いとか言うことについては、お答えを差し控えたいと思います。』

だったら何故「完全雇用になる為替レート」というのがあるの???

『ただ、為替レートが上がった時と下がった時で、日本経済に対してどういう影響があるのかを一般的に申し上げれば、為替レートが安くなれば、当然、輸出企業は利益を得ますが、輸入企業は利益を得られません。また、輸入品と競争している企業も利益を得ます。』

おいずいぶん単純だな。

『その時に、日本経済全体として、雇用が良くなっているのであれば、それは、その水準の為替レートが、日本経済全体にとってプラスである可能性が高いということです。』

んーっとちょっと良くわからないのですが、企業収益の話からいきなり雇用に話が飛んでいるのだが、もし雇用が良くなるのがプラスというのであれば非製造業の方が雇用吸収力が高いのだから何も円安に振る必要が無いという話になりゃあしませんかと思いますし、大体からして為替レートから雇用に話が飛ぶのが話があまりにも飛躍してねえか???

『それから、以前に失業率について、3.5%が完全雇用ではなく2.5%くらいが完全雇用であるかもしれない、と申し上げました。それは、物価が上がっていない状況での失業率を完全雇用であるということはできないのではないかということです。』

これは金曜にも申し上げましたけれども、現状認識として「物価上昇が一時的要因で抑えられているに過ぎない」という認識をさっき示したのに、ここでの自然失業率推計においては「物価が上がっていない状況」と述べている訳で、物価が上がっていない状況なら追加緩和を今すぐにでも投下しないとダメという話になるのに(めんどいので引用割愛してますが)その前の説明の所では「今すぐ追加緩和は必要ない」としていまして、結局あなた様は物価動向に関して現状をどう見ているのかが全く持って不明としか申し上げようがありません。

ただまあこれまた金曜にも(というか毎度)申し上げておりますように、リフレ派の皆様ってその場その場で適当に都合の良い理屈と都合の良いデータ切り出しをしてきてその場だけでみた場合に尤もらしい説明をするという、一つ一つの説明には理屈が通っているが全体としての整合性が全く取れていない、というのを得意技としているとしか思えないという特性がありますので、こうやって整合性のない話をしてくるのはまあ仕様ではあるのですが、会見ではこういう整合性のないところについてお前らツッコミ入れろやと思う次第。

『もちろん、失業率が2.5%に近づく過程で――私は2.5%くらいが完全雇用の失業率ではないかと思っていますが――、物価がさらに上がる、2%を超えて上がるということが起きれば、「2.5%くらいが完全失業率ではないか」という私の推測が間違っていたということになります。中央銀行は、あくまでも、物価を主な目標として、日本経済の健全な発展に資するということですから、物価をまず第1に考えて――失業率が良くなった方が良いですが――、失業率を低くするために、物価の安定を犠牲にすることはあってはならないと思います。』

何か尤もらしい事を言ってるが、それって単に「自然失業率よりも実際の失業率が低い状態という状況を長期化するというのは金融政策を過剰に緩和した状態である」という話だし、そもそもデュアルマンデートで雇用の目標があった場合でも同じことでしょ。なんか話を大きくしようとして変なことを言っているなあと。


・この会見でやたら不思議なのは「大学の先生」を強調している部分なのですよ

でまあ次の質問の後半にジンバブエ理論への質問があるがその前半の質問に対して謎の答えが。

『(問) 2点お伺いします。1点目は、先程、今すぐ追加緩和が必要ということではないと言われましたが、今後の経済・物価情勢によっては追加緩和を検討せざるを得ない局面があり得ると思います。追加緩和の手段については、マネーを増やす観点から国債を中心に買うべきなのか、それとも金利が限界的に低下する中で、ETFやREIT等のリスク資産を買うこともあり得るのか、それともまた別の効果的な方法があり得るのか、現時点のお考えをお伺いします。(後半割愛)』

以前は国債中心という答えをしていましたが、今回の回答が非常にこう不可解。

『(答) 最初にご質問頂いた、どういうものを買った方がいいのかという具体的なオペレーションについては、私は部外の学者でしたので、今日の時点ではあまりお話しない方がよいと思います。』

学者????????

http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_harada.htm/
政策委員会審議委員:原田泰(はらだゆたか)

基本的に原田さんって官庁エコノミストから民間シンクタンクのエコノミストというキャリアの方であるという風に理解しておりましたし、上記のご経歴を拝見するに大学のポストは最後の所の『平成24年 4月早稲田大学政治経済学術院教授』という所になりまして、基本的に学者プロパーちゃうやろと思うのですが、実はこの会見で「学者」とか「大学の先生」というような表現をここを含めて3回会見録に残しているのですよね。

でまあこの謎の「学者」連呼についてがひじょーにこう不可解でありまして、いやまあエコノミストでやってたから細かいオペレーションは知らんというのであれば分かるのですが、大和総研にも長く居たはずですし、大体からしてあんたつい2か月前にこんな話をしてたじゃないですか(いつの間にやら会員じゃないと全文読めない仕様になっていて朝日新聞にはガックリですよ)あの話は何だったのでしょうかねえと。

http://www.asahi.com/articles/ASGDS5TCMGDSULFA034.html
さらに金融緩和を、国債まだ買える 原田泰・早大教授
聞き手・福田直之 2015年1月21日11時34分

ということで「国債まだ買える」という話をしていたのは何かの虚言だったのかと小一時間ですよ。

『ただ、株やREIT等をどれだけ買えるかというと、ある程度の制約はあるのではないかと思います。』

大和総研にいた方とは思えないこの逃げ口上という所ですが、「学者」連呼の背景として「政策の具体論でゴリゴリ詰められると困るから逃げ口上として学者と言っておこう」というのがあるのかなあとか思うのですけれども、それにしても原田さんの経歴でしたら著名なお方ですので市場の中の人たちとしてはよーく存じ上げておりますので、この経歴で「学者」を連呼するというのはもしかしてエコノミスト稼業はアカポス持っている人からしたら一段格下であるというような妙な意識でも持っておられる(正直あの謎の教授肩書き的に特任教授的なサムシングを感じるのだが)のですかねえとか、まあ実にこう謎というか物凄い違和感がありますことよ、ということで。

『それは、これ以上買えないということではなく、要するに、昨日まで部外であった人間として、そうしたことについての十分な知識がないということです。』

十分な知識がないのに全国紙の「金融政策 私の視点」というインタビュー企画にホイホイと登場して、その場で十分な知識が無いのに「国債まだ買える」という話を吹いたという事なのでしょうかいやー面白いですね原田先生!!!!!

・・・・・・・・・・・・・・などとイヤミの一つでも申し上げたくなるわけですが、まあ要するに政策の具体論についてはフィージビリティがどうのこうのとか詰められた時に答えが無いから、「学者」だの「部外者」だのという言い訳を逃げ口上にしている訳でして、そう考えますとまあ政策具体論の所で残念ながら非常に弱いという事でしょうから、まー普通に執行部追認機関になるのがこのあたりの応答で読めるところではございますな、うんうん。


・ジンバブエ理論の質問はわざわざ本質を外すような答え方を誘導するとかマジ無能

先ほど引用した質問の後半である。

『(問)(前半割愛)もう1点は、今年1月のインタビューの中で、日銀の国債買入れは、国民の借金を減らすことになるとの趣旨の発言をされています。これは、日銀が国債を買い入れることによって、財政にも貢献できるという意味合いもあるのか、金融政策と財政の関係についてご所見を教えて下さい。』

もうちょっとストレートに「統合政府で国債が消滅するというのは一般的な複式簿記の考え方からして極めて不可解なので分かりやすく説明して頂けませんでしょうか」と聞けというところで、答えは案の定な本質外しである。

『(答)(前半割愛)2点目については、「量的・質的金融緩和」は、日本銀行が主として国債を買うこと――もちろんREITやETFも買いますが――ですので、緩和すれば、必ず国債は買うことになります。国債を買い入れること自体が金融政策であり、その金融政策によって結果的に財政状況が良くなるのは当然のことです。』

??????????????

『その経路として、「量的・質的金融緩和」によって景気が良くなるので税収が増え、結果的に財政赤字を減らすことは事実です。』

ジンバブエ理論と全然関係ない説明キタコレ。

『ただ、結果的に財政赤字が減っているからといって、財政を幾ら出しても良いという意味ではなく、むしろ、財政当局や国会が、財政の制約を判断することではないかと思います。』

ジンバブエ理論はどうなったのかという所ですが、この後ツッコミが無いというかそういう意味では全然違う質問に入る次の質問者も困ったもんだが質問に対する答えが面白いというか何というかである。


・緩和政策のプロコンの話を質問したら色々と斜め上な答えが返ってきている件について

次の質問である。

『(問) 現状の金融緩和について、コストや副作用について言及される審議委員の方がいらっしゃいますが、原田委員は何かコストとして感じていらっしゃることはあるのか、またあるとすれば、それはベネフィットとのバランスでどのように捉えていらっしゃるのか、お聞かせ下さい。』

質問がごく普通なのに答えが盛大に斜め上にかっ飛んでいるのが原田クオリティマジワロス。

『(答) 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からないので、そのことについてのコメントは差し控えたいと思いますが、』

> 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からない
> 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からない
> 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からない
> 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からない
> 他の審議委員が副作用やコストと言っておられるのがどういう意味なのか、私には分からない

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

あのーすいません、決定会合の議事要旨って公開されていてそこで副作用とかコストの指摘がありますし、審議委員の皆様の中でも副作用やコストについてこれまでも何度か金懇挨拶やら講演やらで指摘していて、それって思いっきり公開情報になっているのですけれども、「どういう意味何か分からない」とはこれはまた何を血迷っておられるのでしょうか?????

まさかとは思いますが、原田大先生様におかれましては何も知見が無いのに全国紙の「金融政策 私の視点」というコーナーに登場してご発言されたり、審議委員にノミネートされてからも全くこれらの文書をお読みにならないでいらっしゃるという事でしょうか???????

『あくまでも物価が2%程度で安定するように金融緩和をするのであって、それ以上に上がっても良いと考えているわけではありません。』

後の方でも同じようなのがあって、上がり過ぎないようにという説明をしているのですが、だったら直近でコアCPIがとうとうゼロ%(消費税の直接的な影響部分除く)となっているのも良くないという話になると思うのですが、そっちに関しては原油だから問題ないという説明の非対称性が良くわからん。

『当然、現在の緩和政策をやり過ぎればインフレになりますから、やり過ぎれば副作用があるというのは当たり前のことだと思います。しかし、現在の状況では、物価が目標以上に上がって、国民生活を脅かすようなことは考えられないのではないかと思います。』

えーっとすいません、「緩和政策のやり過ぎで必要以上のインフレ高進」というのは「副作用」ではなくて「金融緩和政策の失敗」でありまして、そらまあプロコン比較の中では「やり過ぎで物価が上がるリスク」というのもありますけれども、普通副作用のプロコンという話の場合は「効果だそうとしてやっている中で発生する余計なもの」という話なので、副作用の話について「やり過ぎれば物価が目標以上に上がって」で済ませるというこの雑っぷりは置物師匠を彷彿させるところで、後の方でも思いっきり師匠節が出ていたりして、まー今後は置物化待ったなしという所ですわな。

ということで、普通の質問なのに答えが盛大にかっ飛びモードという辺り、これからの調教もといご進講によってどうなっていくのかが今後楽しみであります(棒読み)。


・財政政策より金融政策という話

『(問) 2点お伺いします。もっと財政を出すべきだと言う方がいると思います。また、今、国債需給が逼迫しているので、国債も増発すれば良いのではないかと言う方もいます。原田委員の著書をみると、財政については割と健全化と言いますか、金融政策が効くのであれば、財政は出さなくて済むという考えと受け取れます。財政に対する考え方、国債を増発すべきか、減らすべきかについて、ご所見をお願いします。(後半割愛)』

別に国際需給がひっ迫しているから国債増発すればよいというのはちょっと変だろ・・・・・・・・・誰だこの質問したのは???という感じもしますがそれはさておき金融政策か財政政策かという話について。

『(答) 財政が効くかどうかですが、私は、いわゆる財政乗数はあまり大きくないのではないかと考えています。例えば、消費税増税に対して、公共事業の拡大によってそのショックをかなり和らげることができると多くの方は考えていたと思いますが、実際には、その和らげる効果は非常に小さかったのではないかと思います。』

ということなのですが、その一方でリフレ派の皆様におかれましては(この前の置物師匠のインタビュー記事らしきもの(朝日新聞のWebでは全文読めないのでさわりだけでしたが)にありますように)消費税増税が無茶苦茶効いて破壊力抜群だったので2%物価目標達成も遅れた的な話をしていたりする訳でして、財政乗数があまり大きくないというのであれば財政出す方も締める方も同じに効くもんじゃないのと思うのですけれども、自由自在理論ですなあと思うのでありました。

つーかですね、その理屈が正しいのであれば「乗数の少ない財政支出を削減してその分を原資にして消費減税を行えば効果はばつぐんだ!!」という事になると思うのでして、金融政策でどうのこうの言う前に財政支出削減と消費減税のセットを行う方が話が簡単じゃネーノと思う次第で、大規模金融緩和政策でアベノミスクスとかいうような迂遠な策を取るよりも即効性があるじゃああーりませんか(ニヤニヤ)。

まあ世の中そんな訳は無くて、師匠たちの理論って消費増税前の駆け込みは全部金融緩和の効果に含めて、消費増税の駆け込み反動部分は消費増税のせいにしてカウントしているというインチキなのですから世話は無いのですけどね。

『もし金融緩和だけをして財政政策をしなければ、財政状況は良くなります。財政状況が良くなるのは良いことだと思いますし、財政政策の効き方が小さく、かつ金融政策に効果があると分かったのですから、財政政策で無理やり景気を良くすることの必要性は低下しているのではないかと思います。(後半割愛)』

財政政策の効き方が小さいのに消費増税の悪影響は大きいとはこれ如何に?????????????


・2%達成時期に関しては徹底して答えをしないの巻

『(問) 今、2%の物価目標達成の一応見通しとして、「2015年度を中心とする期間」に2%に達するというのが日銀のコンセンサスの見方です。原田さんのこれまでのご発言からすると、この見通しよりもやや先の期間に2%達成の時期をご覧になっているのではないかと思うのですが、具体的にはいつ頃、この2%達成が可能であるとお考えなのか、お聞かせ下さい。さらに、そういう見通しに基づいて、どのような状況になれば追加緩和が必要だとお考えか、この2点をお願いします。』

『(答) 最初のご質問ですが、今まで大学の教師をやっておりました。』

先ほど申し上げた「学者」連呼の2回目がここで出ているのですが、大学の先生やってたの直近3年だけだろと思う訳ですし、というか記者会見の面々的にも金融政策に関心がある層にとっても、原田さんが「いままで大学の教師」とか言われると物凄い違和感があるのですけれども、政策具体論に突っ込まれないためのエクスキューズで説明しているのだろうなあとは思うのですが、こう連呼されるとなんか別の意味で気になってしまうのですけどねえ。

『大学の教師というのは、日々のデータについて、それほど詳しくみることはしていません。それから、日本銀行の方は、外部の方よりも、より多くの、我々の知らない情報も持っているのではないかと思います。』

置物師匠張りのエクスキューズキターーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーー!!!

という事ですので、あの置物師匠のテイタラクおよび置物師匠の以前の発言を写したかのようなエクスキューズ発言がのっけから登場するという時点で、「リフレ派の論客として議論をリードする原田さん」というのを想像するのは無理があるとしか申し上げようがなく、まあ置物師匠がもう一体増えたという事になるんでしょうなと思いますが、期待値をここまで下げてしまうと何か出てきたら思いっきり感心しちゃいそうな自分がいます(笑)。

『これから間もなく、金融政策決定会合もありますし、展望レポートもありますので、それまでに十分に勉強して、どういう時間や経路で経済が動いていくのかについては、その段階で私の考えをお示ししたいと思います。』

なお師匠は一応曲がりなりにも金融政策の波及ルートに関しては根拠薄弱な風が吹けば桶屋が儲かる理論であっても就任記者会見の時点でああでもないこうでもないと講釈を垂れていた訳ですが、そのあたりまあ見事に喋らないというのが世渡り上手と申しますか何と申しますか。

『2番目のご質問ですが、まず、物価が上がらずに人々のデフレマインドがさらに強くなるようなことがあれば、追加的な金融緩和も必要だろうと思います。その時には、先程、原油価格の低下が、長期的には物価を上昇させる要因でもあると申し上げましたが、そういう要因も発現せず、デフレマインドがさらに深まることがあれば、追加的な金融緩和は必要なのではないかと思います。』

既に執行部的なマインドという自由自在攻撃を使っていますし、まあ普通に執行部追認ですな。


・執行部追随なのはここでも

『(問) 去年の10月に追加緩和をした時、日銀の票が5対4に割れました。今後、原田審議委員としては、黒田総裁を支えていきたいと思っていらっしゃるのか、それとも──もちろんご自分のお考えも持っていらっしゃると思うので、それも考えて──、場合によっては反対という立場に回るということもあるとお考えになっているのか、その点についてお伺いできますでしょうか。』

まあ質問が下らないのですけどね。

『(答) あくまでも、物価安定を通じて日本経済の健全な発展に資するのが日本銀行の使命であり、私は、その使命を果たすために審議委員に任命されたと思っております。黒田総裁も当然そのように考えておられると思います。目標について、総裁と齟齬はないわけですから、結果的に総裁のお考えと一致することが多いだろうと思います。それは、誰それを支持するとか、支持しないということではなく、あくまでも物価の安定を通じて日本経済を良くする、そういう政策を続けることが大事だと思っています。また、そのために選ばれたという責任感を持って、仕事を進めていきたいと思います。』

ということで、まあ質疑自体はどうでもよいが、わざわざ執行部よりですという辺りが味わいがあります。


・シニョリッジの質疑だが質問の意味が????

『(問) 原田先生のシニョレッジに対する考え方を教えて下さい。日銀、財務省の場合は、お札の金額と製造原価の差がシニョレッジでなく、見合いの国債があるので、国債の利回り分がシニョレッジだという考え方をしていると思います。それが、国庫納付金になっているかと思います。先生の考えを改めてお聞かせ下さい。』

一応これはジンバブエ理論へのひっかけ質問だと思うのですが、あまりにも質問が細かすぎて何の為に質問したのかが良くわからん作りとなっているのは残念無念。

『(答) シニョレッジというのは、経済学で言うと、毎年毎年入ってくる国債の利回り分です。これを無限に足して、経済学で言う現在価値に直すと、国債の購入額と同じだということになります。ただ、これはあくまでも経済学的に考えてそうだと言っているだけであって、私は、昨日まで学者でしたから、この答えで十分だと思います。』

ぽかーん。時間の概念が無いんだが・・・・・・・・・・・

『しかし、今日からは、日本銀行の中の人間ですので、日本銀行の会計処理としてどう考えるかも必要です。そうすると、これは毎年毎年のフローで計上されるわけですから、毎年のシニョレッジは、ご質問の中でおっしゃった通りとなります。ただ、毎年毎年のシニョレッジを足して現在価値に直せば買った国債の金額になるということも正しいということになります。』

「計上されるわけですから」って政策論するんだったら無限時間の話だけじゃ足りないだろと思うので、学者だからどうのこうのというのは違うだとと思うのですが・・・・・・・・・・・・


ということで、特段炎上するような話は無かったし、ヘッドラインを正座して待っていた向き(アタクシのことですが)には拍子抜けではあったものの、テキストになったのを見ると色々と怪しげなサムシングが結構あるなあというデビュー戦ではありましたとさ。







2015/03/27

お題「短国入札が久々の金利に/原田先生登場/ブラード総裁が「金融安定化の観点での正常化」に言及とな」

さあすぽ末ですよプロ野球開幕ですよ!

○短国入札で色々と雑考

うひょー
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150326.htm

5.価格競争入札について
(1)応募額 13兆7,767億円
(2)募入決定額 5兆3,212億8,000万円
(3)募入最低価格 99円99銭2厘0毛(募入最高利回り)(0.0320%)
(4)募入最低価格における案分比率 25.9473%
(5)募入平均価格 99円99銭5厘9毛 (募入平均利回り)(0.0164%)

ということで平均が1bp乗った上に足切が3bpですよ3bp♪

いつでしたっけそんな利回りとか思ったら7か月ぶりとかの水準でして、短国マイナスとかやっておりました暗黒時代がどんだけ長かったのかと思いますと落涙を禁じ得ないところではございますな。

応札倍率が2.6倍くらいというへっぽこ応札倍率になっておりまして、今回の入札に関しては30日発行で期末の所のニーズには対応しまくっているのですが、何せここまでの短国市場暗黒時代の関係上期末の残高調整を最後まで引っ張って待つというような勝負に出てもリスクばっかりというのが普通の発想であり、そらまあ期末の残高調整終わっていたらこの新発無理して買わないですなとなっているのと、1月決定会合後の債券市場ランコルゲと期末要因で短国ディーラーの方々もそんなに在庫リスク抱える訳にも逝かないでしょうとなりまして応札倍率が下がったという事でしょう、よー知らんけど。

でまあベンダー記事(ブルームバーグとか)とかによりますと落札結果発表後は3bp水準近辺で推移した後、さすがに3bpだと買いも入って引けでは2.4-2.5bp辺りに落ち着いてBB引けも2.5bpで落着したようですが、いやあ久々に少しは見れる水準になりましたようははははという所ですな。

まあ今回の新発に関しては今申し上げたように、期末ニーズに関してニーズのある人が買えないリスクを考えて前倒しで動いた(というか金利があったので前倒しで動けた、というのがありますが^^)などの特殊要因はあるのですけれども、他に違っているのは「短国買入オペ狙いヒャッハー」の動きが止まっている(ように見える)ことでありまして、元より申し上げておりますように、マイナス金利で購入するニーズというのは調達がマイナス金利になるような特殊要因(海外絡み)の人と、決算または担保要因でモノとしての短期国債がどうしても必要な場合だけでありまして、本来的に言えばほかの短期金融商品の金利との関係で適正な水準というのがあって然るべきな訳ですよ。

とまあここまで書きますとどういう悪態が出てくるのかが非常に分かりやすいと存じますが、要は日銀の短国買入がマイナス金利までガンガン買いますよとやった上に、その買い方が市場の状況も委細構わずでノルマ消化に走ったために、一部の「短国買入オペ狙いヒャッハー」組の足元を見られて最終投資家のニーズの無いところまで相場水準を持ち上げられてしまったというのが一連の短国マイナス金利の背景として極めて大きなファクターであった訳ですな。

それが何より証拠には・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/

こちらで過去の日銀購入短国残高を見ますと、昨年の9/30は39.5兆円、昨年の12/30は38.4兆円の買入残高があったのですが、直近の買入残高は3/20で40.0兆円で、ここから償還分2銘柄分を引いて先週実施した短国買入1.5兆円分をプラスすると39.3兆円の買入残高になる予定となっておりまして、実は昨年9月以降でみると短国買入残高は四半期末ベースでは買入残高ってそんなに変わっていないのですよね。

でまあ短国買入残高が変わらない(ちなみに4月発行分から3M短国は5.7兆円→5.4兆円に減額されるので、13週間1回転すると短国発行残高が3.9兆円落ちる予定)のに特殊要因はあるにせよかつてのマイナス金利ヒャッハーからいきなり普通(かどうか知らんが)のプラス金利水準になるという状況はこれ如何にと考えますと、どこからどう見てもいわゆる日銀トレードヒャッハーが余計であって、日銀トレードヒャッハーを起こさせないようなオペの打ち方というのをもっと考慮すれば短国市場がここまでマイナス金利長期化することは無かったと思われます。

つーかですね、マイナス金利にしないでも短国買入残高39.3兆円とか積めている訳でございまして、「買えないみたいだからもっと金利を下げないといけない」というような発想で成行買いを進めるとオペ先の足元を見られて更に金利低下が加速し、その結果投資家不在相場になってしまい、適正とは全然思えないところに価格水準が進んでしまう、すなわち市場破壊で市場の価格発見機能がなくなり、資源の適正配分にも弊害が生じるという副作用を招くというご教訓が得られてきたように思えるのでございます。

でまあ量を買うとか金利を下げるとかそういう話がAPPの時に中銀って出したくなるのですが、やはりそこにも自ずと限界というか適正な規模というのがあって、市場の価格発見機能を叩き壊すようなAPPを行ったら、それこそ単なる市場介入の則を超えて金融不均衡を拡大させる話でして、金融緩和政策で本来目指す効果のルートとは違う話になるんじゃないでしょうかねえ、とかまあそんなことを思ったりもしますし、そう考えた場合にECBのPSPPとか何やってるんだあれはと思ってしまう次第なのであります。

いやまあ日銀トレードヒャッハーは日銀がしたわけでもないからそこまで文句言われるのかよとかゆーのも分からんでもないのですが、昨年短国金利がマイナスに突っ込んだ時と、そのあとの10月になってからの無慈悲買入攻撃の打ち方があまりにも露骨にノルマ達成意識状態で、あれが足元を見られて日銀トレードヒャッハー攻撃となる誘因となり、今年の頭の場合はどこの阿呆が言い出したのか付利下げ思惑とか出て仮需が発生するというような動きでしたし、まあ付利下げ云々は日銀的には知らんがなかもしれんけど、それに関しては10月の騙し討ち追加緩和が思惑を助長した面もありますし、何ちゅうかまあコミュニケーションポリシー的にも、オペレーションの運営にしても市場との対話がうまく行っていない(というか黒田総裁は市場との対話する気ないでしょ)ですなあと思いますし、同じ懸念をECBの無謀な買入にも感じたりしますなという事で。


○ジンバブエ先生ご到着だが会見はクソ面白くなかった模様

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150326a.htm/
審議委員の発令について

ということで・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLT7W26K50YE01.html
原田委員:今すぐ緩和は必要ない、2年で2%達成「できない」
2015/03/26 19:57 JST

ヘッドラインを見たところシニョリッジがどうのこうのという答えがあったのでそこでジンバブエ理論についての質問があったようなのですが、追加緩和がどうのこうのとかいうような話よりも、原田ジンバブエ理論に関しては財政と金融の関係に関して根本的な部分にかかわる問題だろお前らもっと突っ込めよとしか申し上げようがない訳で、日銀記者クラブの面々は豆腐の角に頭をぶつけて下さいと。

でまあそれはともかくとして上記URLより。

『(ブルームバーグ):日本銀行の審議委員に就任した原田泰氏は26日夕、就任記者会見を行い、日銀が2年で2%の物価上昇率の達成を目指していることについて「目標の数字と目標の期間を両方ともリジットに考えることはなかなか難しい、できないのではないか」と述べた。追加緩和については今すぐ必要ではない、との見方を示した。 』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・・・えーっとあのすいません。そもそも置物師匠リフレ理論というのはMB拡大したら簡単に達成できるインフレ目標についてリジットに取り組まないでいる麿日銀が無能の極みなので俺たちにやらせれば上手く行くからちょっとその席空けろやという話だった筈なのですが、今更なんのツラ下げて白日銀ドクトリンみたいなことを言い出すんでしょうか大丈夫ですかという所ではあります。

『原田氏は一方で、「2%というコミットが重要であり、そのことによって現在の景気回復がある」と指摘。同時に、「原油価格が下がっているという日本経済にとってプラスの面で2%のインフレが2年間で達成できないということであれば、それは非常に大きな問題とするべきではないのではないか」と述べた。』

ということで、まあ2年の達成は端から放棄ということで、原油価格が下がっているのが要因だしそれは経済にプラスだから達成時期の遅れを問題にすべきではないとはこらまた白日銀っぽくて実に結構でございますなあ(棒読み)という所で。

しかしまあ何ですな、この先生同じ会見の中で・・・・・・・

『その上で、「現在、物価は上がっていない。物価が上がっていない状況での失業率を完全雇用の失業率ということはできない。私は2.5%くらいが完全雇用の失業率だと思っているが、そうなっていく過程で物価がさらに上がる、2%を超えて上がるということが起これば、その予測が間違っていたということになる」と語った。 』

という説明をしているのですが、先生さっき物価が足元で上がっていない要因に原油価格の動向という一時的要因を挙げていたのに、「今物価が上がっていないから完全雇用の失業率ではない」という結論が何でそう簡単に出てくるのかが意味不明でございまして、原油価格の動向という一時的特殊要因とやらを外して考えた場合にどの程度の物価にあるのかという事を考えたうえで、それでも物価が上がっていないから完全雇用ではない、というのであれば話の筋が通るのですけど、方や置物リフレ理論通りに物価が上がって居ない件に関しての説明では原油価格を一時的要因として除外するのに、完全失業率についての考察の時には原油価格要因を含めて説明するという自由自在な説明振りに頭がクラクラしてまいりますな。

いやまあ置物リフレ理論の皆様の得意技ではあるのですが、一つ一つの説明は一定の見解としてそれなりに説得力のある話にはなっているのですが、主張を全体として見た場合に全然整合性が取れていないというのがジャパンにおけるリフレ理論の凄まじいところでして、座学として一つのテーマについて話をするのならそれなりに面白い思考実験ではあるのですが、いざ政策に落とし込もうとすると、そもそも理論の全体像としての整合性が取れていないので、実際に落とし込むと色々なところに矛盾が生じる、とまあそういう状況なのが良く見える当該記事だったりしますが、会見テキストは今日出る筈なので更に鑑賞しようと思いますです、はい。



○セントルイス連銀ブラード総裁が「低金利長期化は金融不均衡」ネタ打ち込みキタコレ

色々と発言が出ていましてフォロー追いつかないよ!!!(つーかプレコンもまだだわ)
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPKBN0MM26520150326
米指標軟調でも年後半に利上げ、地区連銀総裁の発言相次ぐ
2015年 03月 27日 03:56 JST

ということで、尖った主張をするのが趣味なんじゃないかというセントルイス連銀のブラード総裁の
講演がフランクフルトで実施されたようですが。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2015/03/26/st-louis-feds-bullard-discusses-us-monetary-policy-normalization
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/Bullard-OMFIF-City-Lecture-Frankfurt-26-March-2015.pdf
(URLが長いのでリンクは途中までで張ります)
St. Louis Fed's Bullard Discusses U.S. Monetary Policy Normalization

プレゼン資料の方から引用という訳にもいきませんので、プレスリリースの方の説明を引用します。

・金融政策正常化の論点についてで金融安定化問題キタコレ

『FRANKFURT, Germany - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “U.S. Monetary Policy Normalization” at the Official Monetary and Financial Institutions Forum’s (OMFIF) City Lecture on Thursday.』

ということで・・・・・・・・・

『In addition to touching on the Federal Open Market Committee’s (FOMC) removal of the word “patient” from its policy statement last week, Bullard highlighted some of the factors weighing on the decision to begin normalizing U.S. monetary policy.』

で、そのブラード総裁の指摘する正常化に関する論点はと言いますと。

『These include: 1) U.S. labor markets have been improving at a rapid pace; 2) U.S. GDP growth prospects remain relatively robust; 3) today’s low U.S. inflation is due mostly to temporary factors, which will likely reverse over the medium term; 4) some standard Taylor-type rules suggest the U.S. should already be off the zero lower bound; and 5) financial stability risks are asymmetric toward staying too long at zero.』

ということで、5つの論点として、労働市場の改善は速い、GDP成長は強い、物価は一時的なファクターで弱いだけで中期的には戻る、テイラールールタイプのアプローチ(テイラールールベースに完全失業率との乖離も加えた修正ベースの計算)では既にゼロ金利を解除すべき段階にある、と来まして最後の所で「ゼロ金利政策を長期化することによって発生する金融不安定化のリスクは非対称的に存在する」というのが出ておりまして、さっそくスタイン理事の跡目相続キタコレというので思わずネタにするアタクシ(^^)。


・Patientを外した件の説明

『Bullard noted that the U.S. economy is much closer to normal than it has been for many years. “Now may be a good time to begin normalizing U.S. monetary policy so that it is set appropriately for an improving economy over the next two years,” he said. He added, however, that “Even with some normalization, monetary policy will remain exceptionally accommodative.” In addition, he said that removing this forward guidance should be interpreted as a sign of the strength of the U.S. economy.』

で最初がpatientを外した件。『The FOMC Removes “Patient”』という小見出し。

『“The FOMC has appropriately returned to data-dependent monetary policy by removing ‘patient,’” Bullard said. He explained the word “patient” was a particular type of forward guidance that suggested the policy rate would not be adjusted over the next “couple of meetings.” He noted, “By removing ‘patient,’ the Committee can return to more standard monetary policy decision-making, under which an appropriate policy rate is decided at each meeting.”』

ということで「return to more standard monetary policy decision-making」だそうですわよ奥様。

『Bullard noted that meeting-by-meeting judgment on an appropriate policy rate will depend on incoming data relative to FOMC forecasts. “Better-than-expected outcomes may push the Committee toward a somewhat higher policy rate path, while worse-than-expected outcomes may push the Committee toward a somewhat lower policy rate path,” he said. 』

それは普通。

『Regarding expectations for the policy rate path, Bullard remarked that financial markets indicate they currently expect the policy rate to cross 50 basis points in the first quarter of 2016, which is somewhat later than indicated in the FOMC’s latest Summary of Economic Projections (SEP). “This difference of views on the nature of the U.S. policy rate path will need to be reconciled at some point,” Bullard said.』

ちなみにプレゼン資料ですとPDFの10枚目に『Expected policy rate path mismatch』というのがあって、「市場はSEPよりも先行きのFF金利パスを低く見ている」というのがあるのがチャーミングなのでPDF(パワポをPDFにしているもの)も味わいがありますよ。


・ドル高は無問題??

つーことで経済の話をしているのですが、労働市場の話はまあ普通で、成長の話で面白いのは原油の話と為替レートの話でして、『U.S. Growth Prospects Remain Robust』という小見出しの後半なんですけどね。

『Bullard noted that two important tailwinds are aiding the U.S.: the persistent decline in global oil prices and the onset of sovereign-debt quantitative easing in the euro area, which has driven U.S. bond yields lower. “Both lower oil prices and lower long-term yields tend to be important factors for U.S. macroeconomic performance,”』

こちらではこういう話をしていますが、プレゼン資料の方では24枚目の所に『Real dollar oil price: Return to the old regime?』というのがあって、こちらでは原油価格の下落について、もしかしたら過去のトレンド価格(1988-2003の30ドル)に戻っていく過程(最近のトレンド価格は2008-2014の85ドル)というのではないか、というのがほほーという所です。

『Bullard said. Regarding exchange rates, he noted that a broad range of macroeconomic research suggests limited effects of exchange rate movements on U.S. economic performance.』

ドル高が経済成長を阻害するという言説が多いがそんなこたあない、という説明をしているのがプレゼン資料の25枚目と26枚目の所で、プレゼン資料の25枚目の所では、

『However, real exchange rate movements are not reliably associated with future GDP growth in the U.S. data since 1983, as shown in the following chart.』(PDFの方から)

ってありまして、26枚目にそれらしき分析があって、ドルの実効利回りと1年ラグの実質成長率のとの間には特段の相関がみられない、という資料があるのが味わいがあるのだがホンマカイナという気はする。


・物価に関しては「期待インフレの動向に注意」とここは慎重

『U.S. Inflation Is Temporarily Low 』の所では、期待インフレの動向に注意とここだけは慎重です。

『While inflation was above the FOMC’s 2 percent target as of January 2012, Bullard noted that it ran below target in 2013 and 2014. In addition, market-based measures of inflation expectations have declined to low levels in recent months. “Most likely, these expectations will rise back toward the FOMC’s inflation target in coming months and quarters,” Bullard said. “However, this bears careful watching. Inflation and inflation expectations moving away from target
is a concern.”』

ということで期待インフレの動向に注意するというのはあるのですが、賃金動向に関してはそこまで重視せんでもよしという話をしております。

『He also discussed nominal wage growth, which is sometimes cited as a factor that may influence inflation going forward. “However, nominal wages tend to lag inflation outcomes,” Bullard said. “In addition, nominal wages have a component related to productivity growth, a variable that is difficult to measure and predict.”』

だそうで。


・テイラールールベースでは昨年の秋に利上げすべきという図がどどーんと

で、金利をどうするの部分ですが『Taylor-type Rules 』という部分から。

『As monetary policy approaches normalization, it is interesting to re-examine Taylor-type policy rules, Bullard said. He explained that in a Taylor-type rule, the short-term nominal interest rate should respond to deviations of inflation from target and of actual unemployment from its long-run level. 』

ほうほうそれでそれで?

『He looked at one such policy rule?the Taylor (1999) rule with interest rate smoothing-which suggests that liftoff should already have occurred by now. “The Committee has not moved off of the zero interest rate policy so far, despite standard policy rule recommendations. In this sense, the Committee is already exhibiting considerable patience,” Bullard said. 』

ということでプレゼンの37枚目に『Policy rate path suggested by the Taylor (1999) rule with interest rate smoothing』とありまして、これによると昨年の9月くらいに利上げ着手するのが適切というお話になっていまして、「In this sense, the Committee is already exhibiting considerable patience,」だそうですわよ奥様という所でブラードの芸風が炸裂しております。


・最後に「金融安定化の問題は発生すると大問題で非対称だから注意しろ」キター!!!!

最後に『Financial Stability Risks Are Asymmetric Toward Remaining Too Long at Zero』という小見出し。

『“A risk of remaining at the zero lower bound too long is that a significant asset market bubble will develop,” Bullard said.』

キタコレ!!!

『He noted that the U.S. has been plagued by such bubbles in the 1990s (tech/NASDAQ) and the 2000s (housing prices), with each eventually bursting. Bullard said that such an outcome would be unwelcome and constitutes a significant risk for U.S. monetary policy, much larger than the risks associated with the zero lower bound.』

このようなリスクはきわめて大きくてゼロ金利制約より大変に大きいリスクであるとか大きく出ましたな。

『“If a bubble in a key asset market develops, history has shown that we have little ability to contain it,” Bullard said. “A gradual normalization would help to mitigate this risk while still providing significant monetary policy accommodation for the U.S. economy. Such an approach may extend the expected length of the current economic expansion.”』

ということで、早期の正常化着手はそのようなバブル発生のリスクを軽減することが出来るというお話をしているのが思いっきりキタコレでして、まあ物価よりもこっちの観点での正常化の話がどう進んでいくのかというのがポイントの一つになるのではないでしょうかね。





2015/03/26

お題「師匠が遂に開き直ってお笑いインタビュー炸裂/ジンバブエ先生会見に期待/FOMCネタ今更ですが(汗)」

今週出ていた日経ヴェリタスの何とかストランキングをみたところ、その中の某部門の上位に鎮座ましますどこかの誰かさんの中で、毎度毎度金融政策の解説がどうみてもそれ認識として間違っているだろという方がおられる、という事実を目の当たりにしまして、頭がクラクラするというか金融市場の闇みたいなのを見た気分というかでございますが、日銀におかれましては政策ロジックや前提の説明が一般ピープルどころか足元の金融資本市場にすらきちんと伝わっていないという事実について猛省をすべきではないかなどと思ったりするのでありました。

いやね、別に主張が尖っているとかいうのであれば別にマネタリーベース直線(あるいは対数曲線)一気理論だろうが何だろうが一つの見解なのですが、そういう以前の問題で論のたて方が根本的な部分で政策運営の前提となる部分の説明をユリ・ゲラーのスプーン曲げもビックリな捻じ曲げ方で俺様解釈してるというのはさすがにどうかと思うのですけどねえ・・・・・・・・・


○師匠インタビューが笑ってしまうしか無い件について

こういう重要なインタビューが会員じゃないと全部読めないというのも如何なものかと思いますが・・・・・・・・

http://www.asahi.com/articles/ASH3S40WRH3SULFA00C.html
「景気回復、これから実感」 日銀副総裁、緩和策に自信
2015年3月25日03時09分

http://www.asahi.com/articles/ASH3R7K8XH3RULFA036.html
「デフレ脱却の道見えてきた」 日銀副総裁、一問一答
2015年3月25日03時10分

記事も一問一答も最初の方しか読めない(会員だと全部読めるみたいだが会員のわけがないこのアタクシは読めませんが何か)ので出ている分だけというヒジョーに少ない部分でネタにするのも甚だ遺憾ではあるのですが、それだけでもツッコミどころが満載という辺りで実にこう味わいの深いものを感じるのであります。


まず最初の方のURL記事から。

http://www.asahi.com/articles/ASH3S40WRH3SULFA00C.html(再掲)
「景気回復、これから実感」 日銀副総裁、緩和策に自信
2015年3月25日03時09分

・いわゆる一つの蕎麦屋の出前キタコレ!

『物価上昇に賃金上昇が追いつかない状態は近く解消され、「これからは多くの人が景気回復と実質賃金の上昇を実感できる」との見通しを語った。』(上記URLより、強調部分は引用者による)

ということですが、ここで師匠の過去の講演を拝見してみましょう。

昨年の2月6日の宮崎金懇にて。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140206a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140206a.pdf

『もっとも、私の考えでは、金融政策が本格的な効果を発揮するのはいよいよこれからであり、所期の効果が十分に発揮されるためには、政策のねらいや私たちのコミットメントについて、国民の皆さまに十分理解して頂いているということがとても重要です。』(2014年2月6日金懇挨拶の冒頭部分から、強調部分は引用者による)

・・・・・・なるほど昨年2月の段階で「いよいよこれから」ですかそうですか。

一昨年10月18日の中央大学での講演にて。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko131018a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131018a1.pdf

『これまで、日本経済は日本銀行が想定している経路に沿って順調に回復してきましたが、金融緩和政策の実体経済への影響の遅れを考慮すると、「量的・質的金融緩和」が実体経済に本格的な良い影響を及ぼし始めるのは、いよいよこれからです。』(2013年10月18日中央大学での講演のまとめ部分から、強調部分は引用者による)

ちなみに、直近行われた石川金懇挨拶ではこの「いよいよこれから」という文言が入っていないのが実にいい味をだしておりますが、さて師匠の「これから」とは所謂一つの蕎麦屋の出前もビックリという奴でしょうかねえ(ニヤニヤ)。

なお、どうでもよいですが、今引用した2013年10月18日の講演引用部分の直後には『海外要因など下振れリスクは存在しますが、「量的・質的金融緩和」を継続していくことにより、2年程度で15年近く続いたデフレから脱却し、賃金の上昇を伴った2%の物価安定目標を達成できると考えます。』とも仰せですな。


・蕎麦屋もさることながらまだデフレ脱却もできていないのですかタイムフレームどうなってるんでしょうか

更に先ほど再掲した方の記事の後ろを引用します。

『「デフレ脱却への道は見えてきた」とし、現在の目標自体も変えるつもりはないと強調した。』(上記『「景気回復、これから実感」 日銀副総裁、緩和策に自信』記事URL先より)

とのことで、確かリフレ理論によりますと適切な金融政策を実施すれば数か月以内のデフレ脱却が可能という話でしたし(http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MEJ7MB6JTSFI01.html)、そもそも師匠も以前1年半ほどでインフレ率2%は達成可能と仰せになっておられた筈でございますが、(やまもといちろう氏のブログ過去記事のこの辺をご参照あれ→http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/02/post-15ba.html)
2年で2%目標達成どころかデフレ脱却もできていないたあどういう事でしょうか。

いやですね、別に過去において大口叩いていた訳ではないのなら結構なのですが、簡単かつすぐに物価目標を達成できるかの如き宣伝を行い、それまでの日銀を無知無能であるかの如く徹底的に罵って前執行部を石持て追い出した訳ですから、その大口のケツというものはきちんと結果責任を取って頂かないと、「ハッタリでも大嘘でも吹いて既存の連中を追い出せば後はどうなっても大勝利」というのであれば、まあ大仰に言えば世の中暗黒じゃねえかとしか申し上げようが無いですし、国会でも大口叩いていた訳ですから、そこの落とし前をつけないというのは議会軽視でもあり、国民の代表たる議会を軽視するとは国民を愚弄するにも程があると思うのですけどねえ。


・しかも効果の説明がエライ勢いでイカサマな件について

一問一答の方もほんのちょっとだけなのにツッコミどころ満載というのがオソロシス。

http://www.asahi.com/articles/ASH3R7K8XH3RULFA036.html
「デフレ脱却の道見えてきた」 日銀副総裁、一問一答
2015年3月25日03時10分

『「特に消費増税前の2013年度をみると、大規模緩和の効果はかなり大きかった。個人消費や輸出、企業の設備投資などが増え、実質経済成長率を引き上げたからだ。消費者物価も、緩和を始める前の13年3月には、生鮮食品を除いた指数で前年比マイナス0・5%だった。それが14年3月にはプラス1・3%となり、1年間で1・8ポイントも改善した」』(上記URLより、以下同様)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、2013年度って消費増税前の駆け込み需要で思いっきり下駄をはいている筈なのですが、消費増税の駆け込み部分も金融緩和の効果というのは中々斬新な説明ですし、CPIの説明も都合の良い所を切り取ってくるとかどういう事やとしか申し上げようがない訳で、2014年3月はコア1.3%のコアコア0.7%かもしれませんが、直近はコア0.2%のコアコア0.1%なのでありまして、消費増税前の駆け込み需要やらその他制度要因による駆け込みのある中で強くなったピーク近辺を切り取ってきて全部金融緩和効果にしてしまうとは恣意的にも程があるのですが、そんな中で師匠は平然とこのような説明をしています。

『大規模緩和の成果をみるうえでは、消費増税と原油価格の影響を除いて考えるべきだと思う』(上記URLより)

とか何のギャグを言っているのかという所で、今までの説明はそれでもまだ置物直線一気理論とか、インフレ期待が上がって実質金利が下がるとなんでも上手く回ります理論を引っ張っていた分だけ愛嬌というのもがあったのですが、記事で会員外でも見れる部分だけを見た範囲だけで申し上げるのも何ですが、今回の説明はあまりと言えばあまりな開き直りと牽強付会で、ちょっと見苦しいって程度のレベルじゃねえぞというような所ではありますな、うんうん。


○宮尾審議委員退任→原田審議委員就任ですな

昨日は宮尾審議委員の任期が終了して本日原田先生が審議委員に就任となります。でまあ宮尾さんに関しましては最後の方に来て執行部追認機関状態になってしまった上に、ロジックの整合性がだいぶおかしくなってしまう(最後の講演での「中央銀行の国債買入でのシニョリッジで財政余地」というのは市中の学者が言うならああそうですかで終了ですが中央銀行のボードメンバーが認めるのは良くないでしょ特に財政真っ赤っ赤の日本では)という残念な展開になりましたが、まあ5年間お疲れ様でございましたので今後巻き返して下さい(棒読み)とゆーところで。

原田先生の場合は何せ入口がジンバブエ理論炸裂ですからまあ逆に期待値というのもがゼロというかマイナスですし、非伝統的政策やっている中では金融政策論に深く技術論が絡んでくると思うのですが、技術論について1ミリもご理解がなさそうですので、追加緩和方向や出口における技術面において有効性のある具体的な政策提言が出来るとも思えず、結局の所執行部追認機関になるだけでしょうなあと。

とまあそんな訳で、期待値の高かった執行部追認機関→期待値の無い執行部追認機関という入れ替えになるのでとりあえず今回の審議委員交代での一番の注目材料は皆様もご案内の通りで就任記者会見でございまして、だいたいスケジュール的には辞令が交付されてから日銀に到着して夕方ごろに記者会見という段取りの筈ですが、当然ながら「日銀が国債を買うと統合政府の債務が消滅」というジンバブエも裸足で逃げ出す珍理論について記者の皆様からゴリゴリと突っ込んで頂きませんと、何のための記者会見なのかさっぱりわかりませんし、日銀記者クラブの皆様の存在意義を問われると存じますので一つ宜しくお願い致したく存じます。つーか質問しないんだったらおまいらちょっとその席俺に寄越せと。

しかしどう説明するのかがヒジョーに楽しみでして、唯一合理的な説明が可能なのは「事実上返済しなくて良い中央銀行債務」というアプローチになるのですが、それって銀行券発行残高と所要準備預金部分のことになり、マネーの量によってインフレの制御ができるという立場にあるリフレ派の皆様の理論を敷衍すると、日銀が購入する国債のうち統合政府から消滅させることが出来るのは銀行券発行残高と所要準備預金部分であり、この数値はある程度幅をもって可変な訳ですから、両者の規模を勘案するとリフレ派の皆様が散々罵っておられたいわゆる「銀行券ルール」が実に妥当性のあるルールである、という結論が導出されるという大変に素晴らしいブーメランブーメランになるのですので、まあそこまで会見で突っ込んで頂きたい(つーかロジカルに攻めたらそうなる筈ですけど)次第であります。


○だいぶ出遅れましたがFOMC関連とかその辺

・イエレン会見ネタを今更投下する前にちょっと雑談

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ML1M520150325
ドル高は「ディスインフレ圧力」、影響は一時的=シカゴ連銀総裁
2015年 03月 26日 04:19 JST

ということでハト派のエバンス総裁は通常運転なので、まあこれはこれでそうですなあという所なのであまり反応はしてなかったぽいですね。

でまあ直近のSEPに関してはそれなりに執行部のグリップが効いたという面もあるのでしょうが、FRBにおける「タカ派」というのは前いたスタイン元理事は別なのですが、他のいわゆる「タカ派」の人というのは基本的に「インフレタカ派」で、「これだけ緩和しているのだから物価が早晩跳ねるだろう」という見通しに依拠してタカ派スタンスな話をしていたのですな。

従いまして「これだけ緩和しているのにアクチュアルな物価が全然上がらんどころか弱含み」というのを延々と見せつけられるとどこかで折れるという話にもなりますし、上記のエバンス総裁の主張であるディスインフレ圧力とか見せられますと更に折れるという事になるんでしょ。


・・・・・・とまあそうなりますと、いわゆるひとつの「物価が上がりにくいから超緩和的な金融政策が長期化」という話になりまして、そのような場合はゴルディロックスで株高ヒャッハーという話になるのは普通に必然、という事になるのですけれども、えーっとすいませんそれって一度どころか数度見たような光景にしか思えないのですが何でしたっけそれって????という所ではございますな。

まーそういうのに関してポジション持っている方としては商売的にはゴルディロックスヒャッハーと言って乗っていれば良いのですけれども、はてさて政策当局様におかれましては同じチョンボを何回もするとかゆー事になりますと貴殿の首の上についているものはカボチャか何かでいらっしゃいますでしょうかという話になる訳でして、まあそう考えますとここからの金融政策のテーマってインフレもさることながら、「原油や商品価格が上がらず通貨が強い中での緩和政策長期化思惑」によって発生する「金融不均衡の拡大」という所になるのではないかと思われまして、以前のスタイン理事的なマクロプルーデンスアプローチおよびそれに乗っかってQE3終了に持って行ったバーナンキ議長のアプローチという面も考慮すべきだと思いますし、ちょっとその点を市場全体が軽視してないか(なおECBとBOJは明らかにその辺無視しているというかヤケクソになっているのですが)という風には思うのですよね。

つまりですな。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ML1OH20150325
日本の状況よりインフレ2%超えの方がまし=シカゴ連銀総裁
2015年 03月 25日 23:43 JST

『総裁はロンドンでのイベントで、「日銀が直面する課題をわたしは非常に深刻に受け止めている。そういった状況に直面するよりもインフレ率が2%を超える方がましだ」と述べた。』(上記URLより)

という説明をエバンスさんはしているのですが、そもそも日本がこういう課題に直面したのって80年代後半に盛大にも程がある大資産バブルを発生させて、資産デフレのスパイラルを発生させた上に、その大資産バブル時代に経済の過剰を盛大に積み上げてしまったのが原因にあって、では何でバブルが発生したかと言うと「物価が上がらんから金融緩和継続はできますよねああ株が上がっても誰も困らないですよねウヘヘヘヘ」と政府日銀の緩和政策が行き過ぎた事なのであって、そういう観点がエバンスさんの説明に(いやまあ全部読んでないから断定するのも良くないが)抜けているのではないかという懸念はありますな、とまあそんな感じではありまする。


・ということで超出遅れましたがFOMCプレコンネタでございまする(冒頭説明部分)

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150318.pdf

時間と量の関係で冒頭説明部分のみで勘弁(汗)。

・冒頭でハト強調しておりますな

『CHAIR YELLEN. Good afternoon. As you know, the Federal Open Market Committee this afternoon reaffirmed the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate. We also updated our forward guidance, indicating that an increase in the target range for the federal funds rate remains unlikely at our next meeting in April.』

と、最初はガイダンス文言変更の話をしているのですが、最初はpatientをリムーブとは言わずに「4月FOMCでは利上げしません」という言い方をしているのが中々ニクい所でして、とにかくpatientを削除するに際して金利が跳ねると困るというのが良く伝わる芸の細かさ。

『With continued improvement in economic conditions, however, we do not want to rule out the possibility that an increase in the target range could be warranted at subsequent meetings. Let me emphasize, however, that the timing of the initial increase in the target range will depend on the Committee’s assessment of incoming information. Today’s modification of our guidance should not be interpreted to mean that we have decided on the timing of that increase. In other words, just because we removed the word “patient” from the statement doesn’t mean we are going to be impatient.』

6月以降の利上げに関しては排除しないという話ではあるものの、利上げ前のめり感を出さないようにこれでもかとばかり説明しておりまして、大木こだま師匠ばりのベシャリでこの説明をイエレンさんにされますと早期利上げ観測も萎えるというものです。

『Moreover, even after the initial increase in the target funds rate, our policy is likely to remain highly accommodative to support continued progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

利上げしても中立金利までの引き上げパスは慎重ですという説明もありますな。

『I will come back to today’s policy decisions in a few moments, but first I would like to review economic developments and the outlook, which formed the basis for our policy decisions.』

ということで、経済の説明をする前の決定事項の説明部分でまあ見事にネチネチと早期利上げ観測を否定しているというのがまずは出落ち状態な会見冒頭説明ですにゃ。


・雇用と経済情勢の説明パートはまあ別に弱くはない

『We have seen continued progress toward our objective of maximum employment. The pace of employment growth has remained strong, with job gains averaging nearly 290,000 per month over the past three months. The unemployment rate was 5.5 percent in February; that’s three-tenths lower than the latest reading available at the time of our December meeting. Broader measures of job market conditions-such as those counting individuals who want and are available to work but have not actively searched recently and people who are working part time but would rather work full time-have shown similar improvement. As we noted in our statement, slack in the labor market continues to diminish. Meanwhile, the labor force participation rate-the percentage of working-age Americans either working or seeking work-is lower than most estimates of its trend and wage growth remains sluggish, suggesting that some cyclical weakness persists. So considerable progress clearly has been achieved, but room for further improvement in the labor market continues.』

まずは雇用情勢ですが、こちらを1行でまとめると「改善がだいぶ進んでいますがまだ完全には満足ができるものではなく改善が必要」となりますな(簡単にし過ぎ)。

『We continue to expect sufficient underlying strength in economic growth to support ongoing improvement in the labor market. After averaging about 2-1/2 percent over 2014, growth of real gross domestic product appears to have slowed in the first quarter of this year, in part reflecting a moderation in household spending. In addition, the recovery in the housing sector remains subdued and export growth looks to have weakened. Looking ahead, however, the Committee continues to expect a moderate pace of GDP growth, with robust job gains and lower energy prices supporting household spending.』

先行きの見通しについても「今後の経済成長は労働市場の継続的な基調の強さをサポートするのに十分」という説明になっていますが、近いタームに関しては住宅と輸出の弱さが足かせになっているという説明になっておりますな、うんうん。


・物価に関しては「足元弱いが先行きは大丈夫ですよ」という説明ですが・・・・・・・

『Inflation has declined further below our longer-run objective, largely reflecting the lower energy prices I just mentioned. Declining import prices have also restrained inflation and, in light of the recent appreciation of the dollar, will likely continue to do so in the months ahead. My colleagues and I continue to expect that as the effects of these transitory factors dissipate and as the labor market improves further, inflation will move gradually back toward our 2 percent objective over the medium term.』

ということで物価に関してはエネルギー価格とドル高の影響が押し下げ要因になっているが一時的、という毎度の説明。

『In making this forecast, we are attentive to the low levels of market-based measures of inflation compensation. In contrast, survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable. The Committee will continue to monitor inflation developments carefully.』

インフレ期待に関しては引き続き市場ベースのインフレ期待(ちなみに市場のはinflation compensationと言ってサーベイなどはinflation expectationとして術語を分けているのが特徴的なのですけどね)の低下を指摘して、今後もインフレ期待の動向に注意するというのもいつもの話。


・ガイダンス文言変更の説明について

上記の次がSEPの数値の説明ですがそこはパスしましてガイダンス文言のお話。

『Returning to monetary policy, as I noted at the outset, the Committee reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. But with economic conditions improving, and with further improvement expected in the months ahead, we have again modified our forward guidance.』

ということで「状況が改善しているからガイダンス文言を変更している」という説明してますな。

『In December and January, the Committee judged that it could be patient in beginning to normalize the stance of monetary policy. That meant that we considered it unlikely that economic conditions would warrant an increase in the target range for the federal funds rate for at least the next couple of FOMC meetings.』

へいへい。

『While it is still the case that we consider it unlikely that economic conditions will warrant an increase in the target range at the April meeting, such an increase could be warranted at any later meeting, depending on how the economy evolves.』

つーことで、6月利上げに関しては別に否定していないというか、アタクシが勝手に思いまするにマクプル的な観点やらいちいち市場がぶれるのを防ぐためには6月に利上げしてそのあとしばらく様子見しますと宣言した方が良いような気もするのですが、この部分が別にそういう意味だという訳ではありませんので念のため。

『Let me emphasize again that today’s modification of the forward guidance should not be read as indicating that the Committee has decided on the timing of the initial increase in the target range for the federal funds rate.』

さらにしつこく早期利上げ観測が盛大に浮上するのを抑止シリーズ。

『In particular, this change does not mean that an increase will necessarily occur in June, although we can’t rule that out. As we noted in our statement, the decision to raise the target range will depend on our assessment of realized and expected progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation. We continue to base that assessment on a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』

『We anticipate that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when the Committee has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』

という説明なので、まあハトはハトなのですけれども、結局の所このあたりって総合判断の世界になってしまいますので、実際に物価とか賃金が上昇しそうな兆候が出るとか、マクプル的な懸念を持つようになるとかになりますとあっさり豹変する可能性がある点は注意(なのでとりあえず早めに初回利上げ「だけ」しておけばと思うのですけどね)でしょうな。


・利上げ後の金利パスもスローという説明はいつも通り

『Once we begin to remove policy accommodation, we continue to expect that-in the words of our statement-“even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.”』

というのは声明文通り。

『This guidance is consistent with the paths for appropriate policy reported by FOMC participants. Compared with the projections made in December, most participants lowered their path for the federal funds rate, consistent with the downward revisions made to the projections for GDP growth and inflation as well as somewhat lower estimates of the longer-run normal unemployment rate.』

SEPでも示されていますというのも実はこれ毎回言っていまして、確かに今回は下がったのではあそうですねと思うのですが、逆にこの部分は前回までのSEPのドットチャートがやたら金利高かった時にこういう説明をしている方が違和感ありました。

『The median projection for the federal funds rate is just below 2 percent in late 2016 and rises a bit above 3 percent in late 2017. The median projected rate in 2017 remains below the 3-3/4 percent or so projected by most participants as the rate’s longer-run value, even though the central tendency of the unemployment rate by that time is slightly below that of its estimated longer-run value and the central tendency for inflation is close to our 2 percent objective.』

説明はご覧のとおりで「中立金利まで利上げするという見通し時期はずいぶん先ですよ」という説明でございますので念のため。

『Participants provide a number of explanations for the federal funds rate running below its normal longer-run level at that time. These include, in particular, the residual effects of the financial crisis, which are likely to continue to constrain spending and credit availability for some time.』

利上げパスに時間がかかる要因についての話もいつも通りで金融危機の後遺症ってやつです。

『I would like to emphasize that these forecasts of the appropriate path of the federal funds rate are conditional on participants’ individual projections for economic output, inflation, and other factors. But our actual policy actions over time will be data dependent. Accordingly, if the expansion proves to be more vigorous than currently anticipated and inflation moves higher than expected, then the appropriate path would likely follow a steeper and higher trajectory; conversely, if conditions were to prove weaker, then the appropriate trajectory would be lower and less steep.』

この見通しはあくまでもコンディショナルですよとか、このあたりの説明は見事にいつも通りです。で、最後に資産買入に関して「償還再投資を継続してバランスシート規模を維持します」という話をして質疑応答コーナーに入りますが以下は後日。

つーことで冒頭ステートメントに関してですが、フォワードガイダンス文言の削除と、早期利上げ観測の急浮上をこれでもかと否定する説明になってはいるのですが、その一方で「データディペンデント」とか「コンディショナル」という話はきっちりとキープしておりまして、まあ上手い具合にガイダンス政策から脱却して政策を総合判断のフリーハンドに持って行くことが出来たなと思います。

でまあ今後気になることと言えば、アタクシ的には物価がそう簡単にホイホイ上がる感じでもないとなりますと(いやまあホイホイ上がったら話は簡単ですけど)正常化が早まるファクターとしてはスタイン=バーナンキアプローチ(と勝手に命名してみた)のマクロプルーデンス的な観点という事になりまして、まあ今の所そのご本尊と目されているフィッシャー副議長が慎重スタンスなのと、そもそもスタイン理事のようなマクプルバリバリの人が他に見当たらない(セントルイスの毎度おなじみブラード総裁はそうなる素質があると思う)のですっかり市場がノーケアー状態になっているように傍から見ると思える(実際に米債のアメリカンな人がどう考えているのか知らんが)のは気にかかるところではあります。

#ということで超出し遅れネタで申し訳ありません






2015/03/25

お題「20日報関連計数雑談/黒田総裁講演続き/日銀から何本かペーパー出てたので軽く鑑賞」

さあ2014年度もあと5営業日ですよorzorz

○市場雑談および係数関連

・超長期が相変わらずの動き

月曜は10年の引けが1.5毛強で30年の引けが1.5毛甘だと思ったら、昨日は10年の引けが変わらずで30年の引けが4.5毛強とかもう何だかねという所ですが、昨日のトピックとしては流動性供給入札の結果発表が30分遅延して(その前の後場寄りからそうでしたが)一瞬何かあるのかと色めきたったりもしていた気がしますが、結果はまあ微妙に応札倍率が前回の同ゾーン(中期から長期)の時に比べてイマイチなのと落札結果が微妙に甘かったくらいで、まあ別にどうという話では無かったのですが、後場途中から引けにかけて前日にあんなにヘロヘロ(しかも前日も後場途中から一気にヘロって引けにかけて戻るという豪快な展開でしたが)だった超長期特に30年とかが強いとかいやーもう流動性無いですなあという所で(^^)。


・ところで流動性と言えば輪番オペですが

無理やり話を繋げておりまして甚だ恐縮ですが(−−;

日銀の保有国債明細
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/

・・・・・・・でまあこちらから各銘柄について償還毎に集計しましてさて輪番ってどうなるのよというのを計算(というほどの物でもないが)すると、年内の各四半期ごとの中長期国債(と物国と変国を入れて)の償還ですが、4-6で6.6兆円、7-9で5.4兆円、10-12で8.7兆円の償還と出てきまして、合計で20.7兆円の償還があるように思えます(なおアタクシが表計算ソフトなどでホイホイと計算しているものなので合っている自信はありますが無保証無答責)ので、年間80兆円の残高拡大をするためには、3四半期ベースですと60兆円の残高拡大が必要で、償還20.7兆円+60兆円として計算すると80.7兆円を4月以降フローベースで購入するという単純計算になりますな。

したがってこれを単純に9か月で割ると9兆円弱(8.6とか8.7とか)の買入がフローベースで必要になるのですが、1年以内対象の輪番は基本的に償還銘柄が打ち込まれるのでこれはストックに跳ねない(と考えると1年以内の輪番とか無駄だろと思う)ので、その分のフローの月1000億円を別腹だと思いますと、フローベースで月9.1兆円弱の買入が必要になりますなというお話。


ちなみに今年の走りですが、3月20日の営業毎旬と12月31日の営業毎旬を比較しますと・・・・・
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac150320.htm/
長期国債 216,646,675,588
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac141231.htm/
長期国債 201,767,624,480

ということで14.88兆円増えておりまして、3月20日以降に受渡が来る輪番(3/19以降の実施分)が中期3回、長期4回、超長期2回、物国1回あって、合計すると4.33兆円分残っていますので、これが全部3月中の残高に跳ねると19.21兆円の残高拡大になりますが、恐らく1回分の輪番は3月跨ぎになるオファーだと思われますので、そう考えますと概ね第1四半期の長期国債残高拡大が19兆円を割り込む(長期なのか中期なのかで差が出るが18兆円台後半)になるものと思われますので、年間80兆円を四半期展開した場合の20兆円にちょっと足りない程度になります。

となりますと、第1四半期の買入が1.5兆円進捗悪いと考えた場合に9か月でその分の挽回に月0.16兆円ほど必要になるのかなとも思います(どこを発射台にするのかによって若干のズレがありますが、基本的に数値目標らしきものがあったのが昨年末の所なので、発射台は年末で考えるのが妥当じゃネーノと思いますがどうでしょう)ので、まあそんなこんなで来月以降の月間必要買入額がフローベースで9.1兆円は普通に必要になりそうという計算になって、3月の(途中で下げられた)月額買入フローですと月額の買入フローが8.4兆円弱(奇数月と偶数月は平均して計算すると8.38となる筈)ですので、まあ4月以降は買入フローを上げないとマズーという話になりますなという感じですよね、うんうん。

#ちなみに日銀保有明細の額面残高は211.99兆円で、毎旬の216.65兆円と差異がありますが、これは額面と簿価の差分であるという理解で大体あっていたと思う訳で、オーバーパーの部分での差分とか考えると細かい検証が必要なのかもしれませんが、まあ概ね1年以内輪番を除いて9兆円少々と見れば良いのかねとか思うのですが、さすがにそこまで細かく計算できない(というかそもそもディレクティブで示している「残高」が簿価残高なのか額面なのかは定義されていないですし)ので勘弁

・・・・・・・・なお、ふと思い立って2016年の日銀保有国債の償還スケジュールを計算したら、3月20日の時点でアタクシの計算間違いでなければ30.9兆円の償還がありまして、ここから1-3年の輪番の際に打ち込まれ銘柄があると更に増える可能性も無きしも非ずとか要らん事を考えないにしても、年間80兆円の残高拡大に見合うフローの買入ペースが単純計算でも9.24兆円(除く1年以内)とかこれまたお洒落なペースで買入をしないといけなくて、どう見ても市場が回りません本当にありがとうございましたという所ですな。まあその前に爆発しそうですが。


なお、以上の計算はアタクシが表計算ソフトとか電卓とか筆算とかの高度な手法を用いてやっつけ(ではないが)で計算したものですが、皆様におかれましては自力で計算しておられると思いますので内容無保証無答責で伏して宜しくお願い申し上げます、つーか間違えていたら教えてジェネラル!!!


・短国残高明細

調子に乗って短国残高明細を見てみる。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

4月償還:9.65兆円
5月償還:7.38兆円
6月償還:3.77兆円

でまあ6月償還物はそもそも足元までであまり短国買入に打ち込まれていない(518と516の3Mは買入残高が3/20時点ではゼロとな)ので、ここの所で思いっきり断絶があるのですが、これはまあこの先の買入で若干は是正されるにしても、4月償還9.7兆円って多いわという所で、4月渡しでは短国買入を5回入れられると思うのと、4月は日銀買入中長期国債の償還が殆ど無い(2年債1銘柄の0.3兆円だけ)なので償還を全部戻しに行く必要があるのかはよくわからんですけれども、残高キープするとしたら2兆円×5回かよというお話になりそうですな、うーむ。

#実際は貸出支援基金要因と固定金利オペ要因の分だけ調整する可能性があります

ということで、おそらく今週金曜の短国買入は実施せずに月曜か火曜に買入を入れる(本当は水曜にオファーした方が末残通過後だから札を入れやすいと思うけどそうすると水曜金曜に短国買入になるのもうーむという感じですな)ことにすれば4月渡しで短国買入が5本打ち込めるので、2兆円づつ打ち込むとちょうど良いという感じですかね。

しかし6月償還が少なくてしかも資金余剰月(国債償還と年金定時払いのダブル)なのでこの調子だと6月の買入が盛大に落ちる形になりまして、まあ四半期末だから決算要因のニーズがあるので日銀買入が無い方が市場的には助かるので問題ないっちゃあ問題ないのですが、見事なこの償還分布の偏りってどうなのよ(と言ってもどうしようもないのだが)とは思うのでした。



○黒田総裁講演ネタの続きである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf

・追加緩和に関する屁理屈は完全にこの流れですね

でまあ昨日の続きですが、QQEがこんな効果を出しましたという話が延々とある中で追加緩和に関する説明が何とも。

『さらに、こうしたデフレマインド転換のモメンタムは、原油価格の下落の影響によって、消費者物価上昇率が低下する中でも、維持されています。インフレ予想に関する指標のうち、ブレーク・イーブン・インフレ率などの市場指標は、欧米と同様にひと頃よりも低下していますが、エコノミストや家計などを対象とする各種のアンケート調査では、中長期の予想インフレ率は、上昇傾向が維持されています。これは、原油価格の下落がインフレ予想の低下を通じて、賃金交渉や価格設定行動などへ影響を及ぼすリスクに対して、昨年10 月に「量的・質的金融緩和」を拡大して予防的(preemptive)に対応したことが成果を発揮しているからだと考えています。』

・・・・・・・・・・結局「インフレ予想」について都合の良い数値を捕まえてきて下がっていないから効果という話なのですが、そもそもサーベイベースの数値は家計のとかはもとより高いでしょと思いますし、エコノミストと名がついている人が中長期予想をするときに足元の原油価格下落をそのまま中長期のインフレ予想に跳ねさせるアホウはおらんだろと思うのだが。

『このように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、「理論の上でも、実践の上でも、しっかりとワークしている(QQE works both in theory and practice)」と言ってよいでしょう。』

ねえねえ理論って何の理論???置物MB直線一気理論はとっくの昔に棄却されてませんですか????

『この先も「量的・質的金融緩和」を着実に推進していくことで、2%の「物価安定の目標」を実現することができると考えています。』

理論的にワークしているんだったら2%物価目標の達成時期について「このくらいの規模の緩和が行われた時点で」というのは示せるんじゃないですかねえ(ゲス顔)。


・2%目標との関連では完全に「足元の物価は知らんがな、基調だよ基調」という説明に

でまあ経済物価情勢の説明パートになるんですけどそこでの物価の話がワロス。

『以上の経済情勢のもとで、経済のスラックを示す需給ギャップは、労働市場を中心に大幅に改善しており、概ね過去平均並みのゼロ%程度となっています。先行き、日本経済がゼロ%台前半ないし半ば程度と推計される潜在成長率を上回る成長を続けていくもとで、需給ギャップはさらに改善するとみられます。』

まあそもそもそんな低い潜在成長率をちょっと上回ったから需給ギャップが改善とか言われましても本来的に言えばそれって物価の振れが激しくなる要素じゃネーノという感じではありますが。

『加えて、先程述べたように、中長期のインフレ予想は上昇傾向を維持しています。物価の基調を規定する2つの要素である需給ギャップとインフレ予想が好転していますので、基調的な物価動向については改善していると考えられます。』

という説明になっておりますので・・・・・・・・・

『もっとも、実際の物価は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比でみると、昨年夏以降、主として原油価格の大幅な下落から伸び率が鈍化し、今年の1月は消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースで+0.2%となりました(図表8)。先行き、エネルギー価格下落の影響からゼロ%程度となり、当面そうした状況が続く可能性があります。』

という事象が発生したとしても・・・・・・・

『しかし、基調的な物価上昇率は今後もしっかりと高まっていくと予想されますので、前年比でみた原油価格下落の影響(base effect)が剥落するにつれて、消費者物価上昇率は高まり、2%達成が見込めるようになります。』

とまあお馴染みの説明になっているのですが、10月の追加緩和時よりも物価が下がっていて、しかも2%達成時期に関して事実上の先送りのような説明をした上に政府の方からは更に早期達成についての要請が弱まっているという状態になったおり、そういう意味では10月に示した「姿勢」というものについてそのコミットメントがまた弱まっていると見なされてインフレ期待が下がるというリスクは無いんですかねえ(ニヤニヤ)。

『原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2015 年度を中心とする期間に2%に達すると考えています(前掲図表7)。』

ほうほうそれでそれで??

『その時期は、原油価格の動向によって多?前後する可能性はありますが、エネルギー価格の寄与に伴うものであることがはっきりしているのであれば、base effect がなくなることは容易に見通せるはずなので、市場参加者がそこに政策的な意味合いを見出すことはないと思います。』

いやー昨年の原油価格低下の時も「base effect がなくなることは容易に見通せるはずなので、市場参加者がそこに政策的な意味合いを見出すことはない」ということで騙し討ち追加緩和になったのですけれども、自分たちの騙し討ちプレイを差し置いて何を言ってるのでしょうか。

『もちろん、こうした物価の基調的な動き、とりわけインフレ予想の動向、に変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針に変わりありません。』

でしたら原油価格が見通し通りに上がらなかったら追加緩和しろよと思うのですがねえ。


・原因と結果を逆に説明していたりする話

次の『4.成長戦略と金融政策』という所ですけどね。

『そのうえで強調したいのは、デフレから脱却すること自体が、日本経済の成長力の強化に資するということです。』

ほえ??

『成長力の源泉は、あくまでも民間企業の投資であり、イノベーションです。政府の成長戦略の役割は、企業がビジネスチャンスを十分に活かせるような環境を整備することです。デフレから脱却し、経済主体が2%の物価上昇を前提に行動するような経済・社会を実現することは、企業や家計の失われたアニマルスピリットを復活させることになります。そうなれば、リスクをとった積極的な投資が行われるようになり、各種のイノベーションも生じやすくなります。』

実質金利が低下すると自動的に消費や投資が活発化するという置物風が吹けば桶屋が儲かる理論によりますとそうなのかもしれませんが、そもそも論として2%物価上昇目標が安定的に達成できる時点では潜在成長率も上がっているべきものでしょうし、大体からしてその時点では企業の投資行動も活発化していないといかん筈の話で、これって「企業行動が活発化したら企業行動が活発化する」という同義反復の説明だろと。

成長期待が高まって企業活動が活発になって生産の拡大を伴って投資や消費が拡大するから物価が安定してプラスで推移できる環境になるという順序であって、足元までの流れっていうのは「コストプッシュで物価を強引に上げてみたものの、物価あげたら実質所得の低下から消費が落ち(消費税ガーという方々も多いのだが、消費税ガーの連中ってその前の駆け込み需要については金融緩和の効果で片付けるという非対称的な説明をするので信用ならん)、持続的な物価上昇というのはコストプッシュだけだと難しいんじゃないですかねという話だと思うのですよねえ。

#そういう意味では「これ以上の円安イラネ」という政府の方がリーズナブルなのだが今更何を言うという気も


・最後の部分の説明が微妙に弱気感を漂わせますな

『5.おわりに』の途中から。

『そのうえで、不幸にしてデフレに陥ったとしても、政策面でのイノベーションによって、そこから脱却することは可能だということです。日本銀行は、「量的・質的金融緩和」によってデフレからの脱却を果たすことで、リーディング・ケースを示したいと思います。』

あれ??デフレからの脱却だけでは足りないのでは?????

『一旦デフレに陥っても、そこから脱却する金融政策手段があることが明らかになれば、中央銀行が物価安定目標を実現する能力に対する人々の信認が高まり、インフレ予想がアンカーされる力を強めます。その結果、そもそも経済がデフレに落ち込むのを防ぐことに役立つのです。』

こういう問題が起きても対応するツールがあるから大丈夫!と思われるとそもそも問題が起きない、というのはその通りではあるので、この説明そのものはその通りではあるのですが・・・・・・・・

『その点で、日本銀行の「量的・質的金融緩和」が成功することは、日本経済だけでなく、世界の金融政策の歴史においても、重要な意味を持つと考えています。』

え???「必要な施策は全て投入した」って自信満々に言ってた訳で、「成功することは」じゃなくてそもそも失敗しないことが前提になっていた政策なんじゃないですか????漸進主義の政策なら効果見ながら微調整のしようはあるけど、こんな極端な政策やって「てきとうにやったら失敗しちゃいましたテペヘロ」で済むと思ってるの??????


○日銀から(期末接近なので)色々とペーパー類が出ている訳だが

・国債市場の流動性についてのペーパーはこの前の中曽副総裁講演よりはだいぶマシにはなったものの・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2015/wp15j02.htm/(サマリー)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2015/data/wp15j02.pdf(本文、ちと長いので注意)

サマリーの方から。

『市場の「流動性」が高い、あるいは低いといった表現は良く使われるが、その意味するところは必ずしも一様ではなく、「流動性」を定量的に測定することも容易ではない。そうした制約を踏まえたうえで、本稿では長期国債先物、現物国債、SCレポなどさまざまな市場の取引データを用いて新たな流動性の諸指標を構築し、国債市場の流動性について多面的に考察する。』

11月の中曽副総裁講演で先物市場では売買ができているから問題がないという話をしていたり、短国マイナス金利知らんがなとか言い出してそのあと日銀トレードは跋扈するわ流動性低下ヒャッハーとなるわで、それが1月21日のMPMで破裂して22日以降の北斗の拳相場になったわけですが、それに比べればまあだいぶマシではあります。11月の中曽講演への悪態はこちら


『先物市場のビッド・アスク・スプレッドや値幅・出来高比率といった伝統的な指標をみる限りでは、2014年10月の量的・質的金融緩和の拡大以降も、国債市場の流動性は目立っては低下していないようにみられる。』

結局それか!

『しかしながら、先物市場におけるいわゆる「板」の厚みや1回の取引が市場価格に及ぼす影響、現物国債市場における証券会社の提示レートのばらつき、SCレポ市場における国債の「貸借料」など、本稿が新たに取り上げる諸指標は、2014年秋以降、国債市場の流動性が低下していることを示唆している。』

低下していることを示唆しているとかいうレベルじゃないんですけどね。

『これは、この時期の長期金利の急激な低下や短期・中期ゾ−ン金利のマイナス化を反映した一時的なものである可能性がある一方、日本銀行による巨額の国債買入れや市場の構造変化、金融規制の変化などを反映している可能性もあろう。国債市場の流動性については、今後とも幅広い指標を用いながら継続的かつ多面的に点検していくことが有益と考えられる。さらに、市場参加者とのコミュニケーションを通じて、上述のような各種指標に表れにくい市場流動性に関する見方なども丁寧に確認していくことが求められる。』

・・・・・・・・とまあそういう説明で、結局「一応気にしていますよ」というのは分かったのだが、そもそも金利低下やマイナス金利化が日銀買入のせいだろとか、金融規制云々の話をしているが本当に流動性のある市場なら別に他の参加者が出てくるだろとか思う訳で、ほぼほぼ日銀の無慈悲買入のせいだろオメーとしか思えないのだが結論はまあこの程度ですかそうですかとゆー所ですが、まあヨイショレポートしか出てこないのではというような中で一応は日銀買入の影響について言及しているだけだいぶよろしいんじゃないですかねとは思います。

ちなみに中身なのですが、現物の所でエンサイドットコムとかの電子取引プラットフォームでのデータを使うんだったら、そもそも現物債の店頭取引が円滑に行われるために必要不可欠な業者間売買のブローカー取引部分についての集計をした方がよろしいと思いますし、ブローカー取引が活発であればディーラーのポジションがほぐれやすいので対顧取引もやりやすいというものでありまして、業者間売買取引(アウトライトと入替取引の出来高とか日中ボラとか板の厚さとか)についての考察があると大変に読みやすかったと思いますけどどうなんでしょうかね。

あと、先物と現物債の相関がどうのこうのが市場流動性指標というのはイマイチ良くわからん分析で、イールドカーブがバカスカ動いたらそこの相関って関係なくなる(まあイールドカーブが無茶苦茶に動く市場だから流動性が無いという言い方も分からんではないが)ので、そこってクソ真面目に分析するもんかね(日中のイールドカーブのボラティリティを計測するのであれば意味があるかも知れないけれども)と思うのですけどね、うんうん。

#電子取引だけが店頭売買ではない、とはいっても最早そこまでくると数値が出てこないものなのでそれは仕方ないですな


・日銀リサーチラボが2本ございました

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j01.htm/
金融不均衡を察知せよ!:金融活動指標による金融不均衡の把握

『資産価格のバブルや信用量の過剰な積み上がりなど金融不均衡を放置しておくと、金融危機やそれに伴う急激な信用収縮といった問題に繋がりうる。こうした事態を引き起こさないためにも、いち早く金融不均衡を察知することが求められる。本稿では、金融不均衡を把握するために開発された『金融活動指標』について解説を行う。『金融活動指標』は14のマクロ経済指標から構成されている。それぞれの指標が、過去の趨勢からどの程度乖離しているかによって、金融活動の過熱・停滞を判断するものである。こうした動きを色で表現した「ヒートマップ」によって、金融不均衡の状況を視覚的に把握することが可能となる。「ヒートマップ」において赤色が増えてくれば、より広範囲にわたって金融不均衡が過熱方向で蓄積されていると判断される。』

ということで、こちらはFSRで毎度掲載されておりますヒートマップについての説明になります。以前もWPとか出ていました(下の方に参考文献がある)のですが、今回はまあ簡単な解説になっております。

『最後に、留意点をいくつか述べる。第一に、選択された指標は過去の経験に基づき決定されている。このため、新たな金融活動や変化する金融仲介活動――例えば、海外との繋がりの強まり――を把握するうえでは限界がある。このため、ヒアリング情報なども活用しながら、金融システムのリスクを総合的に把握していく必要がある。第二に、金融不均衡を把握するうえでは、様々な相互作用に対する目配りをする必要がある。金融活動指標は、それぞれの主体の動きに着目している。もっとも、過去の金融危機の経験を踏まえると、金融と実体経済の相互作用や金融機関間の取引関係など様々な相互作用も把握・分析していく必要がある。そのために、早期警戒指標に加えて、相互作用を勘案したマクロ・ストレス・テストの活用などが重要である(日本銀行が行っているマクロ・ストレス・テストについては北村ほか(2014) を参照)。』


もう一本はこちら。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j02.htm/
金融危機後の景気回復はなぜ緩慢なのか:金融政策運営への含意に関する一考察

『先般の世界的金融危機に限らず、これまでの金融危機の歴史を振り返ると、危機後の景気回復は、通常の回復局面に比べて緩慢となっている。その背景には様々な要因が考えられるが、金融危機による企業の資金調達環境の悪化を通じた生産性の低迷等が指摘されている。そうしたもとで、危機後、緩慢な景気回復に陥らないようにするには、金融政策をどのように運営したらよいのであろうか。Ikeda and Kurozumi (2014) [PDF 425KB]は、企業の資金調達環境の悪化を契機とする生産性低迷から緩慢な回復が生じるモデルを構築し、金融政策分析を行っている。その分析からは、(1)金融政策運営は、危機後、インフレ率に反応しつつも、実質GDPの変化に対して強力に対応するという政策スタンスを示すことが重要なこと、(2)こうした景気安定化重視の政策スタンスは、企業の将来に対する期待の改善を通じて、投資や生産性の回復を促すため、インフレ安定化重視の政策スタンスよりも望ましいこと、が示されている。』


ということで次の『金融危機後の緩慢な景気回復の要因』のところに・・・・・・・・

『一般的には、実質成長率は、「労働投入」、「資本投入」、「全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)」の3つの要因によって規定される。ここでは、米国連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストによる研究(Reifschneider, Wascher, and Wilcox (2013))を参考に、これらの要因から、金融危機後の緩慢な景気回復の背景を整理する。』

つーことで整理があるのですがその金融政策へのインプリケーション。

『それでは、金融危機後の景気後退からの回復が緩慢にならないようにするには、金融政策運営をどのように行ったらよいのであろうか。』

『従来の金融政策分析(例えば、Woodford (2003))は、この問いへの答えを提供するのに十分な分析枠組みを備えていなかった。従来の分析で用いられたモデルには、経済は、何かしらのショックが生じたとしても、比較的速やかに元の成長パスに復するという仮定が置かれていた。その上で、インフレ率とGDPギャップの変動の加重和によって近似的に測られた社会厚生を悪化させる源泉として、主に価格硬直性が導入されている。こうしたモデル設定のもとで社会厚生を最大化する金融政策の特徴は、社会厚生悪化の源泉である価格硬直性に対処するため、インフレを安定化させることであった(従来の金融政策分析についての平易かつ簡潔な解説は、木村・藤原・黒住(2005)を参照)。』

ほほう。

『一方、Ikeda and Kurozumi (2014)は、金融面の影響を受けて、景気が後退し、その後の回復が緩慢となるメカニズムを導入したモデルを構築して、金融政策分析を行っている。その分析からは、金融政策運営は、金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要との結果が示されている。』

>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要
>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要
>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要

ほっほー。

『Ikeda and Kurozumiのモデルには、企業の資金調達環境の悪化が、足許の景気を後退させると同時に、新しい技術に対する企業需要の低下から技術導入やR&Dに関する投資を減少させる結果、TFPが低迷し、景気回復が緩慢となるというメカニズムが取り入られている(図4)。こうしたメカニズムは、金融危機後の緩慢な景気回復を表現するモデルを構築した近年の研究(例えば、Queralto (2013))でも取り上げられている。』

全要素生産性要因が重要とな!!

『このモデルにおいて、インフレ率や実質成長率等に応じて政策金利を調整する金融政策ルールを考えると、緩慢な景気回復の原因となる企業の資金調達環境の悪化が生じた場合に、社会厚生を最大化する政策ルールは、インフレ率に反応しつつも、実質成長率に対して強力に政策反応するという特徴をもつとの分析結果が得られている。』

ほうほう。

『こうした結果が得られるのは、Ikeda and Kurozumiモデルでは、資金調達環境の悪化による景気後退からの回復が緩やかなものにとどまるため、価格硬直性に起因する社会厚生の悪化よりも、緩慢な回復に起因する社会厚生悪化の方が相対的に大きく現れるからである。また、こうした景気安定化を重視した政策スタンスは、企業の将来に対する期待の改善を通じて、投資や生産性の回復を促す。実際、金融危機シナリオのもとでシミュレーションを行うと、景気安定化を重視した政策スタンスは、従来の金融政策分析が望ましいとしてきたインフレ安定化の政策スタンスよりも、TFPの回復を促すことが示されている(図5)。』

ということですが、これは金融危機が起きていない日本の事ではなくて欧米の事を述べているのであって、置物理論に対するイヤミだとか考えてしまうのは心が濁っている証拠ですので注意しましょうね!!!!!!








2015/03/24

お題「市場関連メモ/2月議事要旨ネタ/黒田総裁の外国特派員協会講演は理論が雑で泣ける件」

いやあ米国ネタがたくさん出ていまして全部追いかけられませんがな(涙)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLOL776VDKHU01.html
NY外為:ドル下落、FRB副議長がスムーズな金利上昇を否定
2015/03/24 05:26 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLNY3Z6K50XY01.html
クリーブランド連銀総裁:6月利上げは「実現可能な選択肢」
2015/03/24 03:26 JST

でまあ講演山のようにあって(その前にもあったし)全部読むのは中々ホネ(汗)。


なお全然話が違いますが、某先生が謎の高度な計算式を持ち出してきている記事があってナンジャコラと思っていたのですがabz2010さんが突っ込んでいましたので貼っておきますね。

http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20150321
2015-03-21
異次元緩和と原油価格とインフレの関係について



○市場関連メモメモ

・円債は超長期中心に相変わらずの流動性のなさ

えーっと、昨日の債券市場は先物とか10年とかは強かったのですが、超長期が上値重いですねえとか思っていたら後場途中から超長期が盛大に大コケして30年カレントは一時1.340%(+4.5)まで叩かれたと思ったらBBの引けは1.310%(+1.5)って何ですかそれはというプライスアクション。

でまあタチが悪いのはその間って特段大きな動きがあったような感じでもないことでござりまして、期末で皆ポジション動かしたくない中でちょっとフローが入ると思いっきりそこのゾーンが動くとか、入札前のセットアップで動くとか(昨日は先物は前日比プラスなのに2年も謎の1毛甘とかやっとる)で、まあ期末抜けて少しは流動性が復活することを期待したいのですが、この貧弱な流動性と連日のボラの高さ(ただしトレンドが出ている訳でも無くて結局レンジみたいになっているのだが)は更に参加者をリスクを取らない方向に誘導しますので、いざ物価が上向きになるとか、政府からタオルが飛んでくるとか、要は現状の年間80兆円国債買入残高拡大という無慈悲買入の持続性に対する疑問が飛ぶような話になった場合にどうなるのというのは中々アレ。

つーかこの調子で市場がスカスカになるってのはいわゆる運用部ショックの前みたいな感じではあるのですが、ただまあその時と違うのは流動性皆無になっている理由が先物の売買システム変更によってヘッジ機能が消滅したというのではなくて、日銀が力技で市場の国債を無くしてしまっているからという所でして、そういう意味では運用部ショックのような無抵抗暴落ではなくて、「やったぜパパ債券投資復活だ♪」と投資家が出てきてそのあとがどうなるかという話になるのではないかと愚考されるのがまあ違うんでしょうかね。よーしらんけど。


・ECBの買入メモ

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html

EURO outright operations

Covered bond purchase programme
20 Mar. 2015 26,081

Securities market programme
20 Mar. 2015 140,945

Covered bond purchase programme 2
20 Mar. 2015 11,504

Covered bond purchase programme 3
20 Mar. 2015 59,998

Asset-backed securities purchase programme
20 Mar. 2015 4,008

Public sector purchase programme
20 Mar. 2015 26,300


先週月曜公表の数値がこちら。

Covered bond purchase programme
13 Mar. 2015 26,108

Securities market programme
13 Mar. 2015 140,945

Covered bond purchase programme 2
13 Mar. 2015 11,873

Covered bond purchase programme 3
13 Mar. 2015 56,947

Asset-backed securities purchase programme
13 Mar. 2015 3,754

Public sector purchase programme
13 Mar. 2015 9,751


カバードボンドプログラム2までは休業状態なのでそれ以降という話ですが、CBPP3が30.51億ユーロ、ABSPPが2.54億ユーロ、PSPPが165.49億ユーロでして、前回公表されていたのが実質3営業日分でしたので、97.51÷3×5=162.52ですので、まあきっちりと1営業日で32.5億ユーロ程の買入をしているというお話のようですな。

しかしまあ何ですな、日米と違って国債流通市場の規模が小さい中で毎日きっちり4500億円ほどの買入をスパスパ入れられますと、そもそもオペレーションどこまで持つのかねという感じではあります。

でまあCBPP3はそうはゆうても30億ユーロとか入れていますが、今の買い入れペースですと1営業日で32億とか買っている訳で、営業日が基本的に22日だとすると月に600億ユーロの買入とかものすごい勢いでオーバーしそうな勢いになっていますが、欧州の国債市場がこのペースで壊れないで持つのかよと言いますとどう見ても持たない訳で、ジャパンのQQE政策で発生している事象からなんか勉強しようという気はないのかよECBという所ですな。

#つーてもECBは昔も意味不明利上げをしてみたり、今回の一連の流れでもつぎはぎ政策を行って全体の整合性が取れないから市場に物凄い歪みが掛かってみたりと、人の迷惑顧みずの典型(で一番の被害者はユーロペッグしている周辺の小国)なんですよね・・・・・・・・・・・

まあとりあえず日次でPSPPでは32.5億ユーロ程度の買入をホイホイと行うというのが示された訳ですので、このペースがどこかで変化するのかとかそのあたりが楽しみなのと、実際問題として総額ではなくて内訳(どの程度まで出るのか不明ですが)が出る筈の月初が楽しみというものであります。

#ペースが落ちた時に「政策の限界」となるよりも先に「預金ファシリティ金利の引き下げクルー」となりそうな悪寒がして今から頭が盛大に痛いのですがががが


○MPM議事要旨ネタ続き

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150218.pdf

・政策決定部分での先行き政策に関するパートから

ということで昨日の続きです。

『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

まあこれは良いのですが、この後債券市場の流動性低下に関する話が出てくる訳で。

『何人かの委員は、この間の国債市場におけるボラティリティの高まりを指摘した。』

キタコレ。

『複数の委員は、金利低下方向へのやや行き過ぎていた見方の調整を映じていると指摘したうえで、イールドカーブは引き続き低水準に維持されており、「量的・質的金融緩和」の効果は引き続きしっかり発揮されているとの見方を示した。ある委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は、資産買入れの進捗とともに累積的に強まり、イールドカーブ全体へのアンカーになると考えられると述べた。』

まあその程度の認識だということです。

『また、別の委員は、このところの金利上昇には、米国金利上昇や原油価格の下げ止まりが影響しているとの見方を示した。』

1月22日からの金利上昇ってどう見ても1月21日の金融政策決定会合で追加緩和の思惑が飛んでしまったのが要因でして、10月緩和の時点で示されたヤケクソ追加緩和ロジックからすると原油が一段下がったのだから追加緩和のおかわりというような話になって来ますよねとなっていましたから、そらまあ普通に考えて追加緩和無いと思っても「何をしでかすか分からない」という認識になっていましたからアタクシも無いと思いながらも市場の思惑に煽られて正直生きた心地しなかったのですよね。

#付利下げとか煽ってた連中はハイボラ債券市場の責任とって欲しいわと思うわ(笑)

でまあこれは制度の建付け上の問題なのですが、12月の決定会合議事要旨の時点で1月の会見で示されるような方向性は出ていた(12月になったら急に総合判断だの基調だのという話がメインになっていた)のですが、議事要旨が出たのは1月会合後でしたし、12月会見の時点ではそこまで転向した感じを出していなかった訳で、ここは金融政策運営のミスコミュニケーションではあると思うのですが、10月に1回市場との対話を放棄する形で騙し討ち追加緩和を実施して、1月にまた前に戻って基調だの総合判断だの言いだしてダマテンで元に戻した格好になっていますので、そら債券市場のボラは上がるし、その上流動性を日銀買入で枯渇させているんですから一度上がったボラがそう簡単に下がらん罠という話になりますよね。

10月追加緩和時点で市場との対話を放棄したので、緩和政策を継続しているうちはまだしもですけれども(それでもこのボラですけど)出口という話になったらどういう事になるのか(出れないとかそういうツッコミは無し)とかおそロシアにも程がありますな、うんうん。

『一方、複数の委員は、市場参加者のリスク許容度の低下や市場機能の低下を映じている可能性があると指摘した。』

『複数の委員は、国債の買入れを継続することは技術的には当分可能であるとみているが、先行きにおける持続可能性についても留意しておくことが必要であると述べた。』

・・・・・・・・ということでどう見てもこちらの指摘が妥当というか、この指摘以外あり得ないと思うのですけれども、実に嘆かわしいのはここの表現にありますように指摘しているのは「複数の委員」であって、「多くの委員」では無いことです。

まあだいたい誰がしてきているのかは想像がつきます(石田、佐藤、木内のお三方確定で森本さんも含まれるかも)のですが、問題はここの文章の流れを読むに執行部サイドは知らんがな状態になっていそうな気がする(まあ正式に問題があると認めるとQQE継続する際のプロコン比較の中のコン成分が増えるという話になるので執行部的に認めにくいというのは分からんでもないが)ところでして、この調子で市場との対話とか言われましてもヘソが茶を沸かすので勘弁してください。

『また、ある委員は、消費者物価の前年比に対する原油価格下落のマイナス効果が剥落し、物価上昇率が高まる局面において、金融市場のボラティリティが高まる可能性について述べたうえで、適切な情報発信を進めていくことの重要性を指摘した。』

その前に輪番札割れ(割れないにしろ前日比50毛強とかの大流れ)とか政府からタオルとか、そちらの方が先に来るのではないかという悪寒もしますが。


・経済のパートから投資と消費と雇用の所を引用しますね

前半の経済に関する議論から少々。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で緩やかな増加基調にあるとの認識を共有した。先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続けるとの見方で一致した。』

ほう。

『ある委員は、昨年10〜 12 月のGDPベースの実質設備投資は前期比ほぼ横ばいであったが、資本財総供給の動きなどを踏まえると設備投資は緩やかな増加基調にあるとみられ、2次速報値での改定状況や投資計画の実行状況を注視していると述べた。別のある委員は、緩和的な金融環境のもと、原油安による収益押し上げ効果もあって、中小企業の設備投資の増加も期待できるとの見方を示した。』

ということで設備投資の出る出る詐欺は今度こそという見通しなのでしょうかね。


『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの認識を共有した。多くの委員は、今春の賃金改定交渉では、好調な企業収益を背景に、大企業を中心として賃上げが期待できるとの見方を示した。このうち一人の委員は、アンケート調査によれば、人手不足感の強い中小企業でも賃上げに前向きになっていると述べた。』

春闘に期待しておりますが出だしは順調でよかったですね(棒)!!!

#この程度で物価2%になるのかどうか知らんが


『個人消費について、委員は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体として底堅く推移しているとの認識で一致した。』

ほう。

『委員は、駆け込み需要の反動減が長引いていた自動車や家電といった耐久消費財においても、販売が改善傾向にあるとの見方を共有した。委員は、先行きの個人消費について、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。』

へー。

『何人かの委員は、消費者マインド関連指標について、なお慎重さが残るものの、改善の動きがみられつつあると述べた。また、何人かの委員は、先行きの個人消費をみていくうえでは、賃上げなどを通じ、名目所得が幅広く改善していくかどうかが重要であるとの見方を示した。』

お賃金キター。

『複数の委員は、最近の原油価格の下落が、先行き、家計の実質購買力の上昇を通じて個人消費を押し上げるとみていると述べた。』

どさくさに紛れてしらっと物価目標2%を否定するかのような記述があるのですが、あまりにもしらっと入れられているのでこの文脈でどういう話があったのかが分からないのが残念ですな(−−;

『一方、ある委員は、1月入り後の消費について、ヒアリング調査などによれば百貨店やスーパー、乗用車販売などでもたついている可能性があると述べた。』

まあ実際はそんなことろではないかと。



○黒田総裁外国特派員協会での講演ネタ


こっちが本ちゃんですが・・・・・・
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf
Quantitative and Qualitative Monetary Easing:Theory and Practice
Speech at the Foreign Correspondents' Club of Japan
March 20, 2015
Haruhiko Kuroda
Governor of the Bank of Japan

手抜きでこちらをば(汗)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150320a1.pdf(邦訳)
「量的・質的金融緩和」の理論と実践


・出オチで読む気を無くす講演なのだが

もうこの講演最初の所で読む気を盛大に無くすんですよね。

『ECBが資産買入れ策を導入した結果、現在、FRBやイングランド銀行(BOE)を含め、世界の主要中央銀行の多くが量的緩和(QE)を採用しています。私の尊敬する友人である伊藤隆敏教授の言葉を借りれば、“We are all QE-sians now”と言えるでしょう。』

もうね、ここでげんなりですが気を取り直して読んでみましょう。


・QEの説明がだいぶ雑なので更にげんなり

ということで何でQEになったかという話だが整理が雑なのが非常に気になる。

『今、“We are all QE-sians now”と申し上げましたが、こうした状況にいたったきっかけは、2008 年のグローバル金融危機です。欧米諸国では、グローバル金融危機によって、景気が大きく悪化し、失業率が大幅に上昇しました。そこで、中央銀行は、金融緩和によって経済を刺激する必要に迫られました。当初、欧米の中央銀行は、伝統的な政策手段である短期金利の引き下げによって対応しましたが、景気の悪化があまりにも大きかったため、短期金利は直ぐにゼロ%のフロアに直面してしまいました(図表1)。ゼロ金利制約のもとでさらに金融緩和を進めるにはどうすればよいか。FRBやBOEは、その答えとして量的緩和を導入しました。量的緩和は、中央銀行が国債などの債券を多額に買い入れることによって、なお引き下げ余地のある長期金利を低下させることで、景気を刺激することを主たる目的とするものです。』

・・・・・・・・・いやお前その説明雑にも程があるだろという話で、ゼロ金利制約だからどうのこうのの話の前に「危機対応のために実施した各種政策」というのがあって、米国のQE1だって基本は「信用危機などの問題で市場の価格発見機能が喪失し、取引が蒸発してしまったために中央銀行が市場のマーケットメーカー機能(実際は買うだけだが)を果たすことによって市場の価格発見機能を復活させる」というものであって、単純な金利引き下げとかMB拡大という話ではないでしょと思うのですよね。

でまあその「市場の崩壊に対応するための施策」というのは細部の作り込みが重要で、たとえば米国で言えばdiscount window利用に対するstigma問題のように、せっかく流動性ファシリティを新設しても使われないのでは意味がない、というような問題が生じる(日本でも規模は小さいけど作り込みに問題があって短期オープン金利の高止まりから利下げしているのにCP発行利回り上昇とか起きた訳で)わけで、そういう細かい話には黒田さんどう見ても全く興味ないだろうなとは思うものの、このQEの説明はあまりにも雑すぎで、まあご本人の趣味的にそういう話はしない(これがどこぞの麿なら信用緩和と量的緩和の違いの説明を延々とするに違いないと思います)のでしょうが、まあこの総裁だからこそ市場を叩き壊しても知らんがなというオペレーションをしてくるのでしょうなあと思うと、冒頭に出てきた誰かさんの名前でげんなりした所にげんなりの上塗りになるというものです。


・なおQQEメカニズムの説明は相変わらず何で期待インフレが上がるのかの説明が皆無

でまあ気を取り直してちょっと先に飛びましてQQEのメカニズムの話を鑑賞。

『「量的・質的金融緩和」の考え方は、以下のとおりです。まず、短期金利がゼロまで低下していることを踏まえ、FRBやBOEのように、多額の国債買入れによって、長期金利に低下圧力を加えることとしました。この点は、既にお話したとおりです。』

別にQE使わなくても長期金利の低下圧力はかけられるのですが・・・・・・・・・

『そのうえで、経済活動に影響を与えるのは、名目ではなく実質金利、すなわち、名目金利から予想インフレ率を差し引いた金利の水準であるという点に着目しました。』

実質金利が吹けば桶屋が儲かる木久扇副総裁理論キター。

『この点、日本では予想インフレ率が2%の物価安定目標に比べて低すぎる状態にあったことが、ブレークスルーとなりました。つまり、予想インフレ率を引き上げることができれば、実質金利を低下させ、企業や家計の経済活動を刺激することができるのです。』

で??

『その意味で予想インフレ率の引き上げは、デフレ脱却というこの政策の目的そのものであると同時に、この政策の波及経路の出発点でもあるのです。』

ふーん。

『では、どうすれば人々のデフレマインドを変え、インフレ予想を引き上げられるのか。デフレマインドが蔓延していた企業や家計が「これからは、毎年2%程度物価が上がることを前提に行動しよう」と思うようになるためには、何よりも、中央銀行が2%の物価上昇の実現に強くコミットすることが必要です。』

コミットすれば期待が飴細工のように変わるとな。

『こうした観点から、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度を念頭に置いてできるだけ早期に実現し、かつ、これを安定的に持続することをコミットし、そのための手段として「量的・質的金融緩和」という大規模な緩和措置を導入しました。』

ではQQEのような政策をするとどのような形でインフレ予想が上がって、その定量的な効果はどうなのかという話ですが、さっきマクラの所で話題になっていたどこかの先生のような謎の直線一気一次関数理論が提唱されるのかと思えばさに非ずでして・・・・・・・・・・・

『このようにして、実質金利が低下すれば、設備投資、個人消費、住宅投資といった民間需要が刺激されます。』

QQEを実施するとインフレ予想が上がるのは所与らしいですが、そんな簡単にインフレ予想が自由自在に操作できるんだったら苦労せんわとしか申し上げようがないこの雑な「理論と実践」で講演の題名が泣くわ。

『民間需要が高まれば、需給ギャップ、すなわち経済全体としてのスラックが縮小し、物価に上昇圧力がかかります。人々が実際に物価上昇を経験すれば、中央銀行のコミットメントに対する信頼性が高まるため、人々のインフレ予想はさらに上昇し、こうした一連のプロセスがさらに強まっていくという好循環が働きます。「量的・質的金融緩和」は、このようなメカニズムによって現実と予想の物価上昇率を、2%に引き上げることを狙いとしたものです。』

もはや何も申すまいという所ですが、一応この次に『3.「量的・質的金融緩和」の実践』というのがありましてその冒頭で・・・・・・・・・

『ここまで「量的・質的金融緩和」の理論について述べてきましたが、この政策は実際どの程度効果を発揮しているのでしょうか。』

というのがあるのですが、元より定量的にこれだけMB出すとこれだけインフレ予想に効くとか、実質金利がこれだけ下がるとこの程度の効果が上がるかというような考察が無いというか、そもそも定性的にどういうルートで効くのかという考察も曖昧というか雑な為に、以下の部分では「ここまでこのようになりましたよ」という話はあるものの、実際にどれだけの政策をやってどういう効果になった的なレビューは無い訳で、一応FRBとかでもQE2やった時とかインチキでも「これだけの量のQEでこれだけ金利が下がってこれだけ雇用が創出された」的な説明をどう見てもイカサマ説明でしたがやっていた訳で、その手の説明皆無のままオペの限界に突き進む黒田日銀って何なんでしょと思うのでありました。

なお続きは明日やるかもしれませんがやらないかもしれません。



2015/03/23

お題「中銀ネタがどんどん出てくるのだが市場ネタメモ置きますね/2月決定会合議事要旨からは総合判断の香りが」

春分の日も過ぎまして本格的な春ですなあ。つまり季節はまた過ぎるのでしたorz

#なお本日は決定会合議事要旨、黒田講演、イエレンおばちゃんの記者会見ネタなどスタックしているのですが、金曜に市場ネタを投下しそこなった+新ネタが入っているので市場メモであります

○市場雑談というか何というかで

・債券市場(特に超長期)が連日大暴れの件について

先週月曜と火曜は(月曜がT+2が3/9利払い銘柄の振替停止期間で火曜がMPMだったので)中長期国債入札と輪番が無くて債券市場ちゃんが息をしていないの状態だったわけですが、水曜以降の債券市場ちゃんは木曜に20年入札を控えて何故か入札前から先回り買いだか何だかでヒャッハーヒャッハーとやりやがるという相場なのですが、とにかくこう板の薄い中ちょっとした売買で値がすっ飛ぶという展開になっておりまして、金曜は金曜で謎の超長期失速とかやりやがりましてもう何だかねという状態。

特に足元では期末で決算固めて動きにくいという人が多いというのもあるのでしょうが、まー輪番にしても入札にしてもその時のオファービットとかすっ飛ばしたところで決まるし、大体からしてザラ場に関しても特に超長期とかオファービットが離れまくってちょっと売買が入るといきなりそっち方向にヒャーと動くという流動性皆無状態になっておりまして、これはもしかして3月中に夢の輪番札割れとかスーパー大流れとかが見れるのかもしれない(という風に警戒している人もいるのでまあ成らないとは思うが、割と無警戒の時に突如来るという可能性の方がありそう。ひところの短国買入ほどの所までは行ってないとさすがに思うので)という感じですが、間違って札割れだの超越大流れだのしますと、またぞろ「QQEの持続可能性ガー」という話になるし、一方で年間80兆円のペースはやっていかないと行けないというのに、超長期はご覧の流動性で、長期と中期はそもそも市場キャパ的にかなりの買入をしていて中期は今月途中で減額の刑とかになっている(なお今の買入だと年間ではペースが足りない)というオモシロ状態・・・・・

まあしょうがないから長期輪番を拡大(超長期をあまり増やすと7-10年を逸脱する)するという事になるんでしょうかねえ、精密に計算していないから知らんけど。


・ということで国債投資家懇談会だが

木曜の投資家懇の議事要旨
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/150319.html

『○リオープン方式等について、理財局から以下のように説明を行った。』

『・ここで10年債の各銘柄の市中残高をみると、大規模な日銀買入が継続する中、資料1のP3のとおり、1銘柄当たりの市中残高が著しく減少している。特にシングル・イシューとなった銘柄の中には市中残高が1兆円を切るものも出てきており、こうした銘柄が将来チーペスト銘柄になった場合における先物市場への影響等も懸念される状況となっている。 』

ということで10年長国でカレントが30bp動いたら新銘柄、超長期は強制リオープンと現物債市場の流動性の低下(特に先物CTDになった時の影響)を気にしていますがまあ当然。

『・なお、前回の懇談会でもお伝えしたとおり、4月以降、すべての国債及び国庫短期証券の入札において、各入札参加者による応募の限度額が発行予定額の2分の1に引き下げられるとともに、国債市場特別参加者の応札責任が発行予定額の4%以上となるので、協力願いたい。 』

短国に関しては買占め日銀トレードヒャッハー(最近は普通にベンダー記事のネット版に日銀トレードがどうのこうのとか出てきてヤフーニュースでも見れるようになるとか大丈夫かよと思ったりしますが)防止の為の施策が来月から発動ということで、これも流動性向上施策で、そらまあ発行サイドですから市場の流動性について気にするのは順当なのですけれども、無邪気に買入をホイホイ増やしている日銀ェ・・・・・・という所ではありますが、まあそもそも論として麿の頃はこういう事はやらずに済んでおりまして、債券市場の流動性とか知らんがなという筆頭が黒田総裁その人なので、そういう意味では財務省としては製造物責任を取って貰っている訳でまあ頑張って頂きたいものです。

でまあ参加者の見解(投資家懇談会は意見コーナーがPD懇よりも一つ一つが長くてよい)ですが。

『3. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて〔参考配布:参考資料〕 』ということで。

市場ボラや市場の流動性低下に関して。

『・1月末からの金利やボラティリティの上昇は、国債市場の機能低下・流動性低下を反映しており、日本国債は現状、リターンに比してリスクが高い印象を持っている。何かをきっかけに金利やボラティリティが上昇する事態は今後これまで以上に起こるものと考えているが、リターンとリスクを勘案した慎重な運用を行い、国債投資の残高は維持していきたい。 』

うむ。

『・先日の20年債入札以降、再び金利が低下しており、来年度の運用を不安視している。金利水準が購入ターゲットに入ってくればしっかり買うというスタンスで臨む所存。日本銀行による巨額の国債買入が継続する中、証券会社から必要な量を必要な時に買うことができない状況となっており、証券会社のマーケット・メイク能力が低下していることを懸念している。』

金利が低いと債券市場の人って困るんですよね。つーか良く良く考えたら「利息を払う人」がいるから市場がトータルで運用としてウマーな訳で、ゼロ金利だのマイナス金利だのになったらそら市場トータルのパイが減るからマズーな訳で、金利が上がって債券に損が出ると市場関係者は困るのでどうのこうのという外れたご意見を良くリフレの一派の方々が仰せですがそういうこと。


『・国債市場の流動性が低下する中、売りが売りを呼び、買いが買いを呼ぶ不安定な市場となっている。市場機能が低下する中、中央銀行の適正なバランス・シートの大きさについても、今の金融緩和が続いているうちに議論する必要があるのではないか。 』

なおECBは日本のどこをどう参考にしているのか知らんけど、いきなりQQE+追加緩和位の市場インパクトで買入を行っているので日本よりも欧州の方が先に爆発するかもしれません。バランス自体は欧州の方が小さくてもそもそも国債市場が小さいですからねえ。


『・1月から2月にかけてのボラティリティ上昇は、日銀買入を背景に金利が投資家の求める水準を下回る中、金利が上昇しても買い手が現れず、市場参加者のリスク許容度が低下したこと等が要因。国内投資家は今回、一定の経験を積んだものと思うが、今後欧州マネーの流入がボラティリティを増幅しないか懸念している。(後半割愛)』

ですなあ。

『・金利が投資対象として誰にとっても魅力のないところまで低下し、その後上昇したという動きを見れば、日本国債はバブルの領域に入っていると言えよう。こうした動きを生んだのは中央銀行であり、その政策が続く限り、金利は低位で推移を続けるものと思う。(途中割愛)証券会社がヘッジをしづらくなっていることもボラティリティ上昇の一因ではないか。証券会社からすると、市場の流動性が低下し、最大の国債保有者である中央銀行が国債の補完的な供給しか行わない中、ある銘柄を買った時に他の銘柄でヘッジすることが難しい。そのため保有する国債を売却しようとすれば、利回りが投資家の求める水準に届かない結果、自然とボラティリティが上昇してしまう。』

その通りなのだが日銀ケチョンケチョンでワロタ。

『・(前半割愛)証券会社のマーケット・メイク能力低下の背景には、国際的に資本規制が強化される中、流動性低下によって収益を上げづらくなっている日本国債部門に対して資本やスタッフの配分が薄くなっている面があるのではないか。この結果、日本国債のボラティリティが上昇すると、投資家としては他の投資対象も検討せざるを得なくなる。(以下割愛)』

アチャーという所ですな。でまあ財政健全化に関してはこんなのが仰せのとおりなので引用しておきます。

『・(前半割愛)財政規律に関連して、財政健全化目標を巡る議論に注目している。日本はGDPの2倍を超える債務を抱えており、他の要因が一定であれば、GDPが金利上昇の2倍以上のペースで拡大しないと債務残高対GDP比が拡大することとなるが、この達成は非常に困難。債務残高対GDP比の削減が達成できないと市場が見た場合や、急激な円安に伴う金利上昇などによって成長率と金利が逆転した場合の反応が懸念される。将来の人口減少を考えると、一人当たりの債務が累増することは明白であり、これにより潜在成長率が押し下げられる可能性もある。歳入・歳出の見直しを先送りせず着実に進めることが必要。』

ですなあ。



・SLFの緩和キタコレ

どうでも良いのだがアタクシのPC環境(アドビのバージョン)のせいなのか知らんが、このリリースをコピペするとイジョーに変なコピペが出来上がるのですが何なんでしょ(稀に日銀の文書の中である例、あと「少」の字が何故か文字コードANSI形式でサポートされていないとか(金曜のがそうでした))。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150320b.pdf
国債補完供給の実務運用の変更について

『日本銀行は、国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和することにより、金融調節の一層円滑化を図るともに 国債決済確保にも資す観点から国債補完供給 に関して、下記の措置を実施することしまたのでお知らせします(3月23日以降に実施する国債補完供給より適用) 。』

ということで、上限額が2000億円→4000億円になったのと、ロールが可能な営業日が従来のかなりけち臭い5営業日から15営業日に拡大されまして、まあ足元で中期の輪番を減額せざるを得なくなったと思ったら今度は超長期の輪番が飛びまくるとか、中々涙なしには見れない状態になっておりますのでSLFの緩和キターという所です。

・・・・・・・・そういやさっき引用した国債投資家懇談会の所でも「最大の国債保有者である中央銀行が国債の補完的な供給しか行わない中」とかあった訳で、SLFがまさに本当の本当に補完的な役にしかたたないという状態なのでという話ですが、そもそもSLF出ちゃうとMBが減少してしまいますし、レポなんだから問題ないだろとは思うのですが、どうもこちらの方の貸出行為は日銀って昔から積極的じゃないんですよねえ。

つーことで今回SLF緩和しましたが、そもそも足元の債券市場の流動性に関してはSLFを少々手直ししたからどうのこうのという状況ではなく、そもそも流通玉が無いという状態まで来ているのでSLFでレポ目先出来たって最終的にポジションほぐせないような状況では如何ともしがたい訳で、それこそ日銀がスイッチングオークションでもしたらおもろいですけど、やや言い過ぎかも知らんがスイッチで出すものが無いわ状態ですからねえ。そらまあ日銀が持っているのを全部業者がリクエストするとレポで出してくれるくらいの話になれば別ですけどさすがに現実的に無茶な話なので。

ということで焼け石に水という所ですがやらないよりはマシですな。


・そういや短国買入1.5兆円も足切やや弱めと

金曜日に諸般の事情でネタにしなかった短国入札がこうだったので・・・・・・・・
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150319.htm

(3)募入最低価格 99円99銭8厘0毛(募入最高利回り)(0.0080%)
(4)募入最低価格における案分比率 67.8333%
(5)募入平均価格 99円99銭9厘5毛(募入平均利回り)(0.0020%)

短国市場に関しては既発債はこの時期なので売る人が居ないことからモノ無し状態で、ここのところ直近発行銘柄だけはモノが余っているけれどもそれは別に甘いオファーが出るわけでもなく、結局の所セカンダリーの取引が全然なくて入札の時の需給バランスと短国買入だけという相場でしたが、木曜の3Mはこれまた久々(1か月ぶり)に平均もプラス利回りという結果でした。まあ期末の残高は確保しないといけないという動きはあるにせよ、冷静に考えてみれば期末の債券残高さえ確保していれば何もこんなゼロカツカツ金利の短国を好き好んで積み上げる必要もない訳で、そらまあ期末需要が一巡したところで(さすがにこの期末は先が読めない(普通に考えたら日銀の買入も減るのだが、なにせ市場の事考えないで無慈悲に帳尻プレイをしてくるので油断ならない)から残高が必要なお家の事情的な買いは2月に短国金利が何となく上昇したところでかなり入っているでしょ)ゼロカツカツでの買いも一巡(金利が普通なら需要は何ぼでもあるでしょうが)という所だったのかと思われます。


でまあ金曜の短国買入。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150320.htm
国庫短期証券買入 15,000 2015年3月24日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 2,314 2015年3月20日 2015年3月23日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年3月24日 2015年7月3日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150320.htm
国庫短期証券買入 36,308 15,001 0.003 0.003 93.6
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 29 29 -0.400 -0.400
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(3月24日スタート分) 3,900 3,900

1.5兆円の打ち込みってえー多くないかそれという所なのですが、一応ブレを考慮して買入を行ったというのと、来週金曜のT+2が期末当日になるからさすがに買入入れないという事なのかね(従来あまり気を使っていないようにも見えるのだが)とは思ったのですが、それはそれとして前述のように前日の3M結果からして入札いれれば玉が入るとか、6Mや1Yを買いたいというような事情もあったとは思われます。

1糸甘か2糸甘くらいかと思ったら3糸甘のほぼ満額という落札結果で、20日前の振替停止期間絡みのGCレポ金利低下が先週の頭にあったわけですが、そちらの要因が剥落したのと新発が出てGC上がる一方で短国入札に関しては日銀トレードヒャッハーとならない限りにおいてはそらまあ需要の出る金利というものがあるだろうというお話。

今月は期末直前の30日にも短国の発行日がある(昨年12月は22日が年内最後の発行日でそのあと30日まで新規供給が無いというスケジュールがアレだったのですが)のですが、先ほど申し上げましたように多分末の短国買入が無いとなると末初の短国需要は何とかなるのかなとは思うのですが、短国買入は4月分が月曜か火曜に入るような気がするので、無慈悲買入VS期初の期末越え分用無し売りファイッ!というのが4月の頭に実施されるという所ですな、うんうん。


○2月決定会合議事要旨は物価目標の柔軟化および裁量による総合判断に傾いていることを示しますな

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150218.pdf

・物価の見方に関して

ということで今朝はインスタントで『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のところから拾ってみます。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、昨年10 月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は改善傾向を辿るとの見方を共有した。』

ということでこのコーナーの冒頭から基調キタコレ!

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

この前は足元の動きがインフレ期待を下げるという話をしていたのにねー。

『何人かの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検するとともに、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方を示した。』

経済の動きも併せてとなると思いっきり総合判断ですね!!!!ってまあ野党審議委員の皆様が主張している(そもそも総合判断で追加緩和に反対していたのですから)わけでして。

『この点、多くの委員は、景気が緩やかな回復基調を続けるもとで、需給ギャップは改善傾向を辿るとの見方を示した。予想物価上昇率についても、委員は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとの見方を共有した。』

すっかり足元の物価注目の話がどこぞに。

『一人の委員は、サーベイ調査でみると、短期の予想物価上昇率は現実の物価上昇率の動きを受けて低下しているが、中長期の予想物価上昇率は維持されており、市場の指標であるブレーク・イーブン・インフレ率も原油市況の反発などから上昇に転じていると述べた。』

『別の委員は、企業の価格設定スタンスが、価格引き下げから価格引き上げ方向に転換してきていると述べた。』

何か都合の良いものを並べているような希ガス。

『こうした議論を踏まえ、多くの委員は、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いとの見方を示した。』

ふーん。

『これらの委員は、先行きの原油価格については不確実性が高く、原油価格の動向次第では、その時期は多少前後する可能性があると付け加えた。また、別の一人の委員は、日本経済のファンダメンタルズがやや長い目でみてしっかりと改善し、賃金と物価を循環的に押し上げる力も高まっていることを踏まえると、2%の目標は十分に実現可能だと指摘した。何人かの委員は、消費者物価の前年比は、原油価格下落の影響から、目先ゼロ%近傍まで低下する可能性があるが、重要なのは物価の基調であり、この点では変化はないと指摘した。複数の委員は、こうした物価の見方について、しっかりと説明していく必要があると述べた。』

前回下がった時よりも一段と下がっているのに基調が強いっていうのは何なんでしょ。原油安は日本経済にとってはプラスだから基調という意味では強化されるってのは今に始まった話じゃなくてこの前の原油価格下落での追加緩和対応とは何だったのかと。

『これに対して、一人の委員は、原油価格下落の影響を除いても物価上昇は緩やかであり、フィリップス曲線のシフトも観察されていないと指摘し、短期間のうちに消費者物価の前年比が安定的に2%に達するのは相当難しいと述べた。』

最後に冷水をぶっかけている審議委員が1名いてルイボスティー吹いた(^^)。

市場機能の話とか経済物価情勢の先行きに関する話(と今日やっていないほかのネタ)は明日で勘弁でございますが、政府からの出席者の見解に面白い部分が。

『財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。』

ということで・・・・・・・・・・

『・日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待している。』

前回はこのように記述されていました。

『・日本銀行におかれては、引き続き、「量的・質的金融緩和」を着実に推進され、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成して頂くことを期待している。』(1月決定会合議事要旨)

・・・・・・・・前回までは「QQEを推進して」「できるだけ早期に」達成しろという表現だったのに対して、今回は「経済物価情勢を踏まえつつ」となっている上に、早期にというのがなくなっているという実にこう味わいの深い文言になっておりまして、つまりは無理やり円安に振ってまで早期達成しなくて良いわ迷惑じゃヴォケというのが政府のQQE梯子外しキターという所でして、さてこうやってQQEタコ踊りの梯子を外されたところで黒田総裁がどういう動きに出るのか、という辺りは金曜に外国特派員協会で講演をしているのでそれをネタにしないといかんのだが時間と量の関係で本日はパスですすいませんすいません。

#最近は特に中銀ネタが投下されるときに集中する傾向がありますな




2015/03/20

お題「総裁会見ネタの続きです」

諸般の事情でその他ネタもあるのだが(特に市場メモ系)総裁会見の続きでパス。

○黒田総裁会見続きである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503c.pdf

・債券市場の流動性

『(問) 日銀が市場関係者を対象に先般実施した「債券市場サーベイ」で、債券市場の機能度がさほど高くない、あるいは低いとの回答が全体で9割以上を占め、3か月前より機能が低下したとの回答が7割位を占めています。総裁はかねて、市場関係者とは色々な形で対話して、オペレーションがスムーズにいくようにしているし、これまでのところ何か重大な問題が起こっているとは考えていないとお答えになっていますが、今回のサーベイを踏まえた上でも問題がないとお考えか、また、今後さらに市場機能が低下するリスクについてどのようにお考えか、お伺いします。(後半割愛)』

ちなみに昨日は国債投資家懇談会の後の財務省説明の中で「市場参加者から国債市場の流動性の低下への懸念が聞かれる」という説明と共にリオープン発行をする条件を更に緩和するとか流動性向上に関する施策が出てきていたのですが・・・・・

『(答) まず1点目の「債券市場サーベイ」は、今回新たに実施したものであり、サーベイの癖などについてまだ十分に把握していませんので、その結果については、ある程度幅を持ってみる必要があるだろうと思っています。何度か繰り返しているうちに、次第にその癖もはっきりしてくると思います。そうした前提付きではありますが、今回のサーベイの特徴をいくつか申し上げると、確かにご指摘のように債券市場の機能度について、3か月前と比べた変化では「低下した」という回答が多かったです。』

とはいうものの・・・・・・

『もっともこれには、今回の調査期間にかけて、ご案内のように長期金利の動きがやや大きかったことも影響した可能性があると思います。』

これは酷い。流動性が低かったからあのような動きなんだし、足元の債券市場の超長期大暴れとかどうみてもそうじゃんと思うのだが、「値動きが大きかったから低下したと誤認している」と言わんばかりの説明。

でまあ黒田さんが信念持ってそういう話をしているのならまだアチャー程度で済む話なのですが、これ一番困るのって日銀の中の人たちの企画だの市場局だののスタッフのレベルで「なあにこのくらいなら問題ない」と思っている可能性があることでして、短国マイナス金利だって色々な面での弊害が出て大騒ぎになるまで結局放置状態になっていたという実績を踏まえますと実に心もとないですな。

『また一方で、債券取引の執行という意味では、意図した価格や取引金額で「取引ができていない」とする先は?なく、債券市場の流動性について、現時点で大きな問題は生じていないと思われます。これは、他の様々な統計や色々な市場関係者からの意見も踏まえての判断です。』

あのサーベイを見てどうしてそういう答えになるんだ・・・・・・・・・・・・・普通は「さほどできていない」と「できていない」が流動性低下に問題があるという状態だろと思うのだが。

ちなみにこちらね→http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1502.pdf

『ただ、債券市場の動向は引き続き注意深くみていく必要がありますし、市場関係者との対話も今後とも続けていきたいと思っています。』

どう見てもアリバイ臭がプンプンしますがね!!!!


・バーゼル3の国債リスクがどうのこうの

『(問)(前半割愛)関連してもう1点、国債のリスクについてお伺いします。バーゼル委員会で、銀行のバンキングアカウントで保有する資産の金利リスクについて規制強化の議論が進んでいると思います。同時に別の枠組みで今、国債の信用リスクについても議論が始まっているようです。こうした規制強化が進んだ場合、国債をたくさん抱えている日本の銀行の経営にも影響は大きいと思うのですが、国債を持つことがリスキーとならないためにはどうするべきか、総裁のお考えを改めてお伺いしたいと思います。』

これは財政再建発言をさせようという誘導尋問。

『(答)(前半割愛)2番目の国債のリスク云々の話については、ご指摘の通り、バーゼル委員会では、以前から、銀行が保有する国債の金利リスクについて議論されています。国債に限らず、銀行勘定で保有する様々な資産について、あるいは負債も含めた全体について、金利リスクを含めた議論が行われていますが、まだ現時点では色々な議論が行われていて、特定の方向性についてコメントできるような状況ではないように思います。』

『日本銀行としては、邦銀が抱える金利リスクの実態を十分把握して、規制の影響も見極めて、バーゼル委員会での議論にしっかりと貢献していきたいと思っています。一方、もう1点ご指摘になったソブリンリスクに関する検討については、まだ始まっていません。バーゼル委員会の、今後の検討項目の一つとしてレビューをすることが公表されており、しかもそのレビューについては、「慎重に、包括的な視点から、ゆっくりと進める」という方針が示されており、特定の方向での議論が前提になっているわけではないと承知しています。日本銀行としては、こうした方針のもとで、邦銀への影響にとどまらず、金融仲介活動あるいは市場機能、ひいてはマクロ経済への影響などを十分に配慮した、適切な検討作業となるように、バーゼル委員会でしっかりと議論に貢献していきたいと思っています。』

ということで普通にバーゼルの話でスルーの巻。


・丁寧にイヤミな質問

『(問) 就任から2年という先程の質問に関連した質問です。コアCPIの前年比がほぼ0%に近いため、市場からは2年程度で2%という目標に関してかなり厳しい見方が上がっていると思います。先程、総裁はチャレンジングな試みだったと言われましたが、やはり物価を上げるのは難しかったとお感じでしょうか。総裁にとって、2年間で最大の一番の想定外は何だったと感じていますか。また、2年程度で2%という物価目標は、追加緩和なしに達成が可能なのでしょうか。』

丁寧にききながら後半が辛辣。

『(答) 足許で、物価上昇率が消費税の影響を除いて0.2%程度の上昇になっていることは事実です。1月の中間評価の時に申し上げましたが、このところの大幅な物価上昇率の低下は、基本的に原油価格の大幅な低下が効いていると思います。それは、米国や欧州をみても分かり、これらの国もヘッドライン・インフレーションの率はマイナスあるいはゼロに非常に近くなっています。』

全部原油のせいになっていますが日本のコアコアも弱いように思えますけどね!!!!

『その意味で、原油価格の5割の下落は足許の物価上昇率を引き下げていますが、需給ギャップがほぼゼロになっていますし、中長期的な予想物価上昇率は比較的維持されていますので、賃金、企業・家計の物価観まで含めてみた物価の基調は着実に改善していると思っており、物価安定の目標の達成が日本において特に難しくなったわけではないと思います。』

まあこういうしかないのだが屁理屈モード。

『ただ、欧米の場合は、物価上昇期待が、物価安定の目標の辺りに比較的アンカーされていますのでよいのですが、日本の場合は、0%近傍にアンカーされているのを?しずつ上げてきている途上ですので、よりチャレンジングであることは変わりないと思います。ただ、足許の物価上昇率の低下は、ほとんど原油価格の下落で説明できますので、何か従来に比べて困難さが増したということではないと思います。』

追加緩和全くないと思われても困るが追加緩和は想定にはないというのがこの答えの屁理屈の前提にあるようにしか見えませんな。

『想定外のことと言いますと、一番大きかったのは、原油価格の大幅な下落は、おそらく世界中でほとんどの人が予想していなかったと思います。3年くらい100ドル台で続いたものが、半年足らずで半分くらいになったのですから、非常に大幅で急速な原油価格の下落であり、日本経済のみならず世界経済にも様々な影響があります。もちろん、成長率については世界経済にとってプラスですが、足許の物価上昇率を世界的に押し下げているという意味でも大きな影響を与えており、ここは非常に大きな想定外だったと言えると思います。』

ほほう。

さてここで師匠の就任記者会見での発言を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

5ページ目に師匠のお言葉がございます。

『(岩田副総裁発言の途中から)私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するためには、2 つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。(途中割愛)2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。(以下割愛)』

・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー


・基調判断ってそれ裁量だからリジッドなターゲッティング政策じゃなくね??という話

『(問) 最近の日銀の政策委員の方々の講演、会見などを聞きますと、物価の基調が大事であって、その基調は総合的に判断するということを多くの方がおっしゃっています。中曽副総裁も会見でおっしゃっていました。まさかこの総合判断という言葉を黒田総裁がお使いになるとは思わなかったですけれども、先程も、総合的にみると物価の基調は着実に改善しているとおっしゃっています。』

とここまでがマクラ。

『物価の基調と総合判断という言葉は、?しでも日銀を長くみている人間からすると、すごく感慨深いものがあります。特定のコミットメントをしていない時は、物価の基調をみて総合的に判断するというのが政策判断だったわけです。それが裁量的過ぎるということでルールを入れようという長い論争があった上で、黒田総裁が、総裁になる?し前にインフレターゲットが入った。それに基づいて2年前にQQEを導入したわけです。』

その通りで、師匠一派はインフレ目標政策は中央銀行の裁量を減らしていくから効果が出るとか、例えば冷暖房の自動運転みたいなのにたとえていましたわな。

『それが、原油が下がっているということで、それを除いて考えた方がよいということのようですけれども、それであれば2年前に原油を除く指数を日銀が総務省と相談して作るなりして、それを目標にすれば良かったわけです。それをしないのは、おそらくビールが下がるとか、ケチャップが下がるとか、そういうものを除いていたら物価に意味がないということで、それはしないということだったと思います。』

(・∀・)ニヤニヤ

『自身が総裁になられて、デフレの理由が何であっても、止めるのが中央銀行の責任であるとおっしゃっています。それが、2%の期限である2年が経って、物価は2%どころかゼロに近づいている。そういうタイミングで物価の基調が大事で、総合判断と言う。何と言うか先祖返りと言うか、非常に皮肉な感じがするのですけれども、今、どういうふうにお考えなのかをお聞きします。』

これは良いイヤミ。


『(答) 今おっしゃったことは、そういうことをおっしゃる方がおられますけれども、私からみると全く間違っていると思っています。』

さすがにこれはイヤミたらたらなのが分かりますよね!!!

『これは日本だけではなく、欧米の中央銀行もそうですが、物価安定目標、インフレターゲットというもの自体は、ほとんどの国が総合物価指数でみています。これは、家計からみれば、総合物価指数が一番重要であろうということで、それをターゲットにしているわけです。』

話がそれていますが・・・・・・・・・

『ただ、物価安定目標、インフレターゲットというのは、ある一瞬到達すればよいということではなく、安定的にそれが持続できるようにすることが目標です。当然、足許で物価がどっちの方に向かっているかということを判断する際には、総合指標の場合は色々な短期的なノイズとか、影響する要素が入ってきます。それぞれの国で、その国の経済に即して動向を判断する時に、どういった指標でみるかは、色々なものをみているわけです。米国の場合は、ご承知のように、GDPの消費デフレーターのコアのようなものでみようと、日本の場合は、従来から、生鮮食品を除く消費者物価指数でみようと、欧州は欧州で、それぞれあるわけです。それらもその時々で、経済状況に応じて様々な指標を合わせてみているわけです。米国の場合もそういったGDPの消費デフレーターのコアのようなものを基礎としながらも、雇用状況とか、賃金の上昇率、さらにはその他の色々な状況をみながら、まさに物価安定目標、インフレターゲットに向けてどのように進んでいるか、進んでいないか、それに合わせて金融政策を運用することになっています。』

総合判断であるという話を延々と他国の話を持ち出して更に論点をずらしております。

『わが国の場合も、従来から、見通しや、足許でどういう方向に進んでいるかという時は、生鮮食品を除く消費者物価でみていたわけであり、今もそれが重要な指標であることは変わりなく、その予測等も示しているわけです。』

と、すっかり話をそらしていますが、そもそも「リジッドな目標設定を行っていたのに変わったですなあ」というのに対して「世界は目標達成に対する部分で裁量的にやっているのがスタンダードである」という返事をしているのがもう完全に論点ずらし。

『前々回の公表文にありましたように、足許で原油価格が非常に大きく動いていると、それは今後とも何年もずっと下がっていくというものでなければ、いずれ剥げ落ちるわけですので、そういった要因も合わせて物価安定目標に向けてどのように進んでいるということを判断する必要があるということです。その意味では、2%の「物価安定の目標」を設定し、それに向けて強いコミットメントをし、「量的・質的金融緩和」を導入し、それをさらに昨年10月に拡大しました。そのもとで、様々な指標をみて、物価安定目標を達成し、安定的にそれを持続できるようになるまで続けると言っているわけですから、まさにそういった状況になるのを、今あるいは2年前から、常にみている、それを何れにせよ総合判断して、金融政策に役立てる、つまり、もし仮に上下双方向のリスクを点検して、必要があればまさにそれを踏まえて金融政策の調整を行うということです。』

長い説明というのは大体苦しい時と決まっていますよね皆さん???(吐血)

『おっしゃっていることを言う方もいますが、私自身は一貫していますし、日本銀行として、2013年1月に2%の「物価安定の目標」を設定して以来、物価安定目標自体は、非常にはっきりしており、全く揺るぎないと思っています。』

まあどう見てもなし崩し的に漂白されているけどな!!!!!


・大演説質問とその答え

まあこれは鑑賞用。

『(問) 2%程度を達成する時期について、「2015年度を中心とする期間」というのは2016年度の初めの方まで含むものだとマーケットは理解していると思います。ということは3年以上経ったところを目標時期に置いていることになると思いますが、2年程度を3年以上と読み替えるのは普通の日本語ではなく、これはいくら何でも強弁ではないかと私は思います。』

ワロタ。

『だからアベノミクスがだめだとかクロダノミクスが成果を上げていないというつもりはありませんが、少なくとも物価安定目標については、当初の目標を達成できなかったのだということをはっきり認めて──これから半年以内に2%にいくということは考えられないわけですから──、その上で、この政策が正しいんだということを素直に説明するべきではないでしょうか。3年以上を2年程度というのは非常に分かり難く、はっきり言って日本語ではないと思います。その点、強弁ではないのかという点について、総裁は、今、どうお答えになるのか聞きたいというのが1点目です。』


『2点目は、総裁は、就任の時そうはおっしゃいませんでしたが、岩田副総裁は、2年で達成できなかったら辞めると言っています。辞めるべきかどうかについてはよく分かりませんが、地位に恋々とする方ではないのだから辞めればいいのではないかと思いますが、誰か行内に引きとめるような人がいるのでしょうか。それとも本人が翻意したのでしょうか。公約違反なのだから、本来、本人が出てきてしゃべるべきことですが、代弁するおつもりがあるのであれば、総裁の口から、なぜ岩田さんは辞めないのかを説明して欲しいと思います。』

金懇で出てきたときに聞いてください。

『3点目は、物価上昇の基調は変わっていないと繰り返しおっしゃっていますが、疑問があります。現在、エネルギー価格を除いたコアコアでも0.5%であり、2%には程遠いです。これが上がり始めているのであればいいですが──原油が主因であることも事実ですが──、やはり物価の基調だって決して強くはないです。それを証明するかのように10年物の長期金利は、総裁が就任した時よりも僅かだが低いわけです。それは、国債を大量に買っているからこうなっていると言うのではなく、物価の基調を反映しているからではないでしょうか。』

3点目はまあ良い論点。


で、その答え。

『(答) まず、1点目ですが、物価上昇率の政策委員見通しの中央値について、最新の見通しでは、2015年度が1.0%、2016年度が2.2%となっています。足許、原油価格の下落で0.2%程度の上昇に止まっていますが、原油価格は、昨年の夏以降に下がってきており、その影響がまだ続いています。しかし、その影響は、おそらく今年の秋以降はだんだん剥げてくると思いますので、そういった意味で、1.0%という年度の見通しを出しているのだと思います。もちろん、年度内の物価見通しについては、委員は示しておりませんので、何とも言えませんが、年度の前半は──今年の4月から年度の前半になるわけですが──、やはり当面0%程度の上昇になると申し上げているので、逆に言うと、年度の後半でかなり物価上昇率が上昇していくことになります。それは需給ギャップが縮んでいくということと、予想物価上昇率が比較的維持されているもとで原油価格の影響が剥げ落ちていくということで、年度後半には物価上昇率が上がっていくということにより、全体として1.0%が達成できるとみています。そういう意味で、2015年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いということを引き続き申し上げているわけです。』

見事な無回答。途中で質問者がそんな話は聞いていないとか不規則発言してたのここでしたっけ??

『2点目は、私がとやかく申し上げる立場にありません。』

まあ仕方ない。

『3点目は、コアコアと言いましても、石油価格が下がるとエネルギー価格そのものだけでなく、運送費やその他コアコアに入っているものにも影響があり、実は、欧米でもコアコアは若干下がっています。従って、原油価格の低下は、直接的にはコアコアに大きく影響するものではないとしても、それなりの影響は出てくるということはあり得ると思います。逆に言うと、原油価格の影響が剥げ落ちた場合、そういった下押し自体は?なくなってくると思います。その一方で、需給ギャップが改善しているということ、さらには物価上昇期待が比較的維持されているというもとで、企業の賃金あるいは価格設定行動、家計の物価観といったものを含めた物価の基調というものは改善をしていると思いますし、今後も改善していくと思っています。』

これはまた随分な言い逃れですな・・・・・・

ということで、まあ物価に関する質疑は基本的にまともに答えないで「基調」の話に持ち込んで誤魔化すというのが延々と続いたので、質問者がイカって質問が長引いたのと、答える方がそもそも質問の論点を外しながら答えるから答えが長くなる、というコンボによっていつもより長い会見になったようですね!!!!!





2015/03/19

お題「寝起きでFOMCである」

とりあえずニュース等を何も見ないで出物(ただし声明文とSEP)を読んだあとに「株高債券高」と思いながらニュースを見たらその通りですかそうですか。

モーサテの米国の人が「マーケットが知りたいのは利上げのペースです」とか言ってるのを見ると(ついこの前までは利上げ時期ガーと言っていたのに・・・・・)FRBの宣伝ってうまく行ってるという所ではあるのですけれども、コミュニケーション開始して浸透するまで米国だとこの程度の時間が掛かるということなのでしょうかねえ。


声明文
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150318a.htm

SEPサマリー
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150318.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150318.htm

プレコン
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150318.pdf

とりあえず声明文の方は概ね想定通りなのですが、今回はSEPのドットがだいぶ注目されてしまった上に、そもそも盛大なタカ派芸人が抜けて前回との連続性が無いところで単純平均したドットの数字が大きく下がってウヒョーとなっている点はちとコミュニケーション的にどうだったのかなという気はせんでもない。

という話は後程。


○声明文:足元をやや下方修正&ガイダンス文言変更部分ワロタ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150318a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150128a.htm(前回)


・第1パラグラフ:総括判断ちょっと下げ&輸出の弱さに言及キタコレ!!!!

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that economic growth has moderated somewhat.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in December suggests that economic activity has been expanding at a solid pace.』(前回)

つーことで総括判断が「moderated somewhat」と下がりましたよ!!!

『Labor market conditions have improved further, with strong job gains and a lower unemployment rate. A range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources continues to diminish.』(今回)
『Labor market conditions have improved further, with strong job gains and a lower unemployment rate. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources continues to diminish.』(前回)

労働市場に関しては基本的に同じことを言っていますが、前回あった「On balance」というのが抜けていますので、まあこれは労働市場のスラック解消に対する自信を更に強めた表現で、こういうヘッジクローズが抜けるのって中央銀行文学的には割と強くなっているという解釈になります。

『Household spending is rising moderately; declines in energy prices have boosted household purchasing power. Business fixed investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains slow and export growth has weakened.』(今回)
『Household spending is rising moderately; recent declines in energy prices have boosted household purchasing power. Business fixed investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains slow.』(前回)

家計消費、企業投資に関する表現は基本的に不変なのですが、エネルギー価格の最近の下げに関して「recent」というのが抜けていて下がっていますという期間も長くなったので外したという所かと思われます(何故かというとこの先の所では相変わらずこのあたりの要因を一時的ファクターとしているので)。

で、今回おーと思ったのは今回「export growth has weakened」というのが入っている所で、海外経済が弱いのかドルが高いのかという話をしていないところが実にキュートとしか申し上げようがないので、これまあどっちでも使えるようにあえてファジーにしているんでしょうなあとゆー所ではあります。

『Inflation has declined further below the Committee's longer-run objective, largely reflecting declines in energy prices. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has declined further below the Committee’s longer-run objective, largely reflecting declines in energy prices. Market-based measures of inflation compensation have declined substantially in recent months; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

物価に関しての説明も基本は同じなのですが、市場のインフレ期待に関しては前回は「ここ数か月顕著に低下」だったのが「低いレベル」ということで、表現が「動き」から「水準」になっていまして、この次のパラグラフでの物価に関する説明(やらSEPやら)も合わせますと、物価に関しては「下げ止まり」という認識を持っているのではないかと思われるのですがどうでしょうかね。


・第2パラグラフ:物価の先行き見通しが「下げ止まり」っぽくなっています

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

この辺は全文一致。

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced.』(今回)
『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced.』(前回)

リスクの見通しについても同じく「概ねバランス」です。

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of energy price declines and other factors dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『Inflation is anticipated to decline further in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of lower energy prices and other factors dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

インフレの見通しの目先部分は前回が「近いタームでもう一段弱くなる」だったのが今回は「近いタームで現在の低いレベルで推移する」となっていて、物価については下げ止まりという認識を示しておりまして、一方で毎度のごとくエネルギー価格とかは一時的要因扱いなので、まあこのあたりは(次のパラグラフも含めて)利上げ着手態勢という所ではありますな。


・第3パラグラフ:ガイダンス文言の変更の仕方がクソワロタ

正直これはワロタ。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

金利を据え置きました今後の判断は総合的に色々な指標を見ながらデュアルマンデートに向かって経済が進んでいるのかを見ていきながら行いますよとかその辺の毎度の文言は不変です。

『Consistent with its previous statement, the Committee judges that an increase in the target range for the federal funds rate remains unlikely at the April FOMC meeting.』(今回)
『Based on its current assessment, the Committee judges that it can be patient in beginning to normalize the stance of monetary policy.』(前回)

「前回のステートメントと整合的に次回4月のFOMCでの利上げは行われないと判断しています」(キリッ)って中々ワロタという表現でして、確かにpatientは「次の2回は利上げしない」と言ってたのでそういう意味では確かに「前回時点での判断を踏襲」なのだが、patientを単純に取るのではなく、わざわざ「Consistent with its previous statement」とか入れている辺りが、変に金利跳ねないでというお願い状態になっているのが伝わってワロタという感じで。

『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term. This change in the forward guidance does not indicate that the Committee has decided on the timing of the initial increase in the target range.』(今回)

『However, if incoming information indicates faster progress toward the Committee’s employment and inflation objectives than the Committee now expects, then increases in the target range for the federal funds rate are likely to occur sooner than currently anticipated. Conversely, if progress proves slower than expected, then increases in the target range are likely to occur later than currently anticipated.』(前回)

ここの表現を微妙に変えていまして、従来は利上げ時期が経済状態によって手前によるかもしれないし先になるかもしれないし、という表現をしていたのが、あっさり味というか普通に「利上げ着手するには先行き見通しがマンデートに向かっているという自信が必要」という話になっています。

何でこういう変更をしてるのかというのが微妙ですけど、ガイダンス文言を外したので利上げ時期に関してフリーハンドになって別に「次2回は上げない」的な状態じゃなくなった(今後も次回予告だけするのかもしれないけど)のと、利上げ時期に対する過度な注目を避けたいので利上げ時期に関する表現をあまりくどくないようにしたという所なんでしょうかね、良くわからん。

あと、最後に「今回別に次回の利上げ時期を決定したわけじゃないですよ」としつこく入れている辺りも、まあ即座に市場が反応して金利上昇ヒャッハーとなってほしくないという気持ちの表れであるという事は把握しました(^^)。

・第4パラグラフ、第5パラグラフは前回と全文一致です

全文一致なのであっさり味で今回の引用だけにしておきます。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

バランスシート政策に関しては償還部分の再投資購入を継続して、バランスシートは緩和的な効果がありますとか、利上げ後もバランスアプローチで政策金利運営を行い、中立金利までの金利引き上げには時間をかけられますとかそういう所ですね。


・第6パラグラフ:今回も全員一致

うむ。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(今回)

ということで、声明文単体で言えば「利上げをする気は満々」「ただし足元の状況的にちょっと日和気味」だけども「物価については下げ止まり」というお話ではないかと思いますが、まあ初回利上げ時期はともかくとして別にタカな訳ではないというお話で。



○SEPでヒャッハーなのだがドットに注目があつまるのはコミュニケーション上はあまり良い話ではないと思うの

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150318.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150318.htm

・経済物価見通しはそんなに大喜びするほどハト転ではないように思えるのだが(むろんタカではない)・・・・・・・・・・・

1ページ目ですけどね(なお引用はHTMLの方からやる)。

              2015     2016     2017   ロンガーラン
Change in real GDP 2.3 to 2.7  2.3 to 2.7   2.0 to 2.4   2.0 to 2.3
December projection 2.6 to 3.0  2.5 to 3.0   2.3 to 2.5   2.0 to 2.3

               2015    2016     2017   ロンガーラン    
Unemployment rate 5.0 to 5.2   4.9 to 5.1  4.8 to 5.1  5.0 to 5.2
December projection 5.2 to 5.3  5.0 to 5.2  4.9 to 5.3  5.2 to 5.5

               2015    2016    2017  ロンガーラン
PCE inflation      0.6 to 0.8  1.7 to 1.9  1.9 to 2.0   2.0
December projection 1.0 to 1.6 1.7 to 2.0   1.8 to 2.0   2.0

ということで、GDPは全体として下げ、失業率は全体として下げるもロンガーランの失業率が下がっている、物価に関しては足元が下がっているけど後ろはほぼ同じ、という結果で、「潜在成長率をやや上回る成長が向こう2年ほど続き、長期均衡失業率並みか若干下回る程度の雇用環境が継続する中で物価の見通しは足元の一時的な同じです」という図になりますな。

でね、アタクシのスキルおよびテキストサイトということで引用できないけどSEP2ページ目のファンチャートの方を見ますと、これが割と味わいがありまして、中心的な見通しの部分が太めの線で示されて、それ以外の外れ値の方がシャドウになっているのですが、前回はそのシャドウが弱い方(GDPと物価だと下、失業率だと上)に寄っていたのですが、今回はこのシャドウの分布が強い方に寄っていまして、見通しの中心は下がっているけど全体感でみた場合にそこまでヒャッハー喜ぶものかねという気はせんでもない。つーか物価見通しの中長期部分が殆ど変っていないし、失業率はロンガーラン水準での推移ですから別にここでハトには傾いたというほどのものでも無くて・・・・・・・・・・・・


・ドットはメンバーの変化も勘案しても下がりましたねという所です

でまあ問題は3ページのドットでして。

Appropriate timing of policy firming
Number of participants
2015 15
2016  2

というのは同じですが、『Appropriate pace of policy firming: Midpoint of target range or target level for the federal funds rate』についてはいろいろと下がっていてここでまあ市場がヒャッハーとなっている次第なのはご案内の通り。

今回は極端なタカ派芸人が抜けた(今年の投票権はない)のが効いていて、2015年末に1.75-2.00とかいう人が居なくなったというのも効いているとは思うのですが、上の方に入れていた人たちが盛大に降りてきたのと、ドットの分布的に目で見た場合の中心っぽいところも下がったなという感じです。

ということで、これ単純平均とると報道されていますように50bp位下がったように見えるのですが、普通に考えて2015年末に1.5%だの2%だのという数値ってそんなに現実的な数値かよ(6月から毎回25bp利上げとかしないとそこまで行かない)と思いまするに、極端な上と全然利上げしない派というのは基本的にカットして考えた方が良いんじゃねえのとも思ったりするんですけどね。

でもってドットの分布を目の子でみて、大勢見解の居場所はどこよと考えますと、前回SEPでは年末のFF金利水準が0.75-1.00%に4票あって、1.00-1.25に3票、0.50-0.75に2票だったのが、今回SEPでは0.50-0.75に7票、0.75-1.00に3票、0.50-0.75に1票なので、もうちょっと現実的に考えると大体25bp下がったという評価をするのが妥当じゃないかと思う(大体からして年末1.5だの2.0だのという見通し元より市場の誰もしてないでしょ)のですよね。

・・・・・・・・ということで、このドットってまあ単純平均とか取ってアセスメントするものじゃないと思いますし、政策金利見通しに関しても置きが違う所に来て政策スタンスとして金融安定とかに関する論点とか人によって差があるので、このドット自体がかなりの幅のある概念になってしまいますし、今回のようにタカ派芸人が去ると投票権の有無関係なく思いっきり水準が動いてしまうとなっていまして、実際問題としてはこのドットに過度な注目が集まるのはコミュニケーションポリシー的にはあまり望ましくない状態ではないかと思われます。

とはいえ、フォワードガイダンスは先行きの手足を縛るのでそれも使いにくいという事で、本来はSEPに関してより「経済物価見通し」とか「メカニズム」とかの話に注目をしてもらうようにしながらの方が良いのでしょうが、こういう形で見やすいドットを出してしまっているのは今後色々と苦労しそうだなという気はしますです、はい。


なお、今回もう他に「おー」と思ったのは、というか順当ではあるのですが、ドットの中で中立的なFF金利水準というのが出ているのですけど、この水準がまた順調に低下して、中心的なドットが3.50-3.75の水準になったことで、前回は3.75-4.00が中心水準でしたので順調に低下しとるわという所ではあるのですが、しかしそれにしてもまだ3%台後半が中立金利って高くねえかという気がするのに関しては変わりません。

でね、2015年はさっき申し上げた通りですが、2016年のドット分布に関しては前回は中心的というかまあ穏当なところに置かれているドット(1%台)では1.25%に3票、1.50%に1票、1.50-1.75%に1票、1.75-2.00%に1票、2.00%に3票と割とばらけていたのですが、今回の2016年末のドットが1.50-1.75%に6票が固まって入っている所にかなーり「ほほー」と思った次第で(1.75%-2.00%に3票)、何となく利上げ着手後のペースについても1年に1%だから結構ゆっくり(メジャードペースでGOならば8会合で2%上げられますからね)という感じで考えているのねというのは把握しました。


○ということで時間切れなのでプレコンネタは後日

なお寝起きでここまで到達したのですが、気合が足りなくてプレコンまで間に合わなかったのでそちらは後日で勘弁である。

#この先はFOMC以外の昨日のネタ(すなわち黒田総裁会見ネタ)が続きます





○各種ネタメモ

・2日動かないと思ったら超長期入札で何故か大フラットニングキタコレ

20年国債入札結果。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul090.htm

(1)応募額 3兆7,164億円
(2)募入決定額 1兆879億円
(3)募入最低価格 99円80銭 (募入最高利回り) (1.212%)
(4)募入最低価格における案分比率 98.5294%
(5)募入平均価格 100円01銭(募入平均利回り) (1.199%)

昨日は20年国債入札を前に前場から何故か知らんが30年が引っ張って超長期がホイホイと強くなって、フラットニングして迎えた入札で大丈夫かよおいと思ったらテールは21銭ありましたけれども順調な結果(平均は前場引けの実勢近辺だった筈)という評価で後場は更に超長期がぶっ飛びまして特に30年がヒャッハーヒャッハーと値を飛ばして逝きまして、終わってみれば30年カレントのBB引けが11毛強だの20年が8.5毛強だのとなり、更に何だかワカランチ会長ですが5年カレントは2.5毛強で0.10%割るわ、2年はカレントまで全部引けが0%になるわと中々のおそロシアな相場になりました。

でまあなりましたというのはそうなのですが、その前2日は輪番も入札もない(火曜はMPMで月曜はT+2が3/9利払銘柄振替停止期間につき輪番が入れられない)ので相場ちゃんが息をしていないの!!状態だったのが息を吹き返したと思ったらおまいら吹き返し過ぎにも程があるわとゆーことで、相変わらず動けばハイボラティリティという流動性のないへっぽこ相場が続くのでございました。

よく輪番がどのくらい持つのという話が出ると、物理的に発行残高がこうだからこうみたいな話が出てくるのですが、こういう動けばハイボラ動かないと息をしていないの相場を連日やらされますとポジションが思うように捌けないし構築できない(特に大手では)という事になりますので、自然とリスクエクスポージャーも取りにくくなるという事になって、外部ショックに脆弱な相場となっていくのでしょうなあと思った水曜のひと時なのでした。


・1年短国は思いのほか穏当な結果

こちらは1年短国。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150318.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 6.3884%
(5)募入平均価格 100円00銭2厘(募入平均利回り)(-0.0019%)

もうちょっと強くて足切100円まで届かないのかとも思ったのですが、こちらは1年短国にしては穏当に100円足切で決まって、BBの引けは−0.2bpだからセカンダリーで特に盛り上がったわけでもなく淡々とアベレージ水準の引けにしているでござるの巻。

もしかしたら20日は短国買入をスキップあるいは相当減額してくる可能性はあって、しかも昨日は固定金利オペがまさかの増額ロール(5655億円の落ちに対して7592億円のロールで2000億円弱増額)となりまして(ただし固定金利オペは短国入札の後に実施しているのでこの結果が入札に影響して居るわけではないのであしからず)で益々短国買入打たなくて良い状態になっている(まあ20日は短国買入スキップはしないと思うけど)ので、そんなこんなで1年短国ニーズもそこまでは盛り上がらんという所だったのでしょうかねえ、良くわからんけど。

でまあ本日は3M短国の入札ですが期末越えニーズだのなんだので短いところがやたらと堅調というかモノ無し芳一状態になっているので、短国買入がろくすっぽ入らないにしてもそっちのニーズでまあゼロにかなり近いくらいのプラス金利にしかならんのでしょうな。


・レポ市場に関する日銀レビューシリーズ

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j05.htm/
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j05.pdf

これは腰を据えて料理すると色々と味わいがあるのだが、トライパーティー形式の銘柄後決めGCレポって在庫ファイナンスで山のようにトラザクションしないといけない状態になっている業者的にはニーズが高いのだが、資金運用サイドとしてはトライパーティーに払うフィーが出ないこの現状金利状態ェ・・・・・というのがあって、だったら他の運用手段があるわなとかそういう話になって(そらまあGCレポ取引金利が相対的に高くて運用として魅力が高ければ流れてくると思うが、金利の絶対水準が小さすぎて差があっても実収入ベースで屁のような差しかでないと厳しいでしょ)コールに取引が流れるだけのような希ガス。

まあレポ信託でGCSCがセットになっている分というのはそのまま移行すると思うのですが、それにしてもトライパーティーに払うフィー分をこの金利でどう捻出するのかと考えるとこの短国がリアルゼロ金利状態というのは如何ともし難い状況です罠と存じます次第です。

なお詳しく読み込んだ後再度ネタにするかもしれませんししないかもしれません。まあざっと見たところ「国債決済期間短縮至上命題でちょっと突っ走り過ぎじゃあございませんですかねえダンナさん」という気はしますがね。


○総裁会見であるがやたら長い割には内容の充実度に欠ける会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503c.pdf


・やはり「2年で2%」の手形が1号不渡になりそうな件についての質問が多い訳で

実質最初の質問がさっそく2年前の手形に関してですが今ですと期日未到来呈示ですから0号扱いですね!!!

『(問) 総裁就任から間もなく2年を迎え、4月には「量的・質的金融緩和」のスタートからちょうど2年を迎えると思います。改めて緩和策の効果についてお伺いします。同時に、2%の物価目標の到達時期に関して、4月には丸2年が過ぎてしまいますが、過ぎた後もやはり「2年程度」という言葉を使うのかどうか、お伺いします。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) 「量的・質的金融緩和」という2013年4月に始めた金融緩和は、所期の効果を発揮していると考えています。』

はあそうですか、でどういうルートで効果を出したのでしょうか???

『まず、景気については、先程申し上げた通り、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムが作用しており、緩やかな回復基調を続けています。そうしたもとで、物価の基調は着実に改善しています。すなわち、需給ギャップは、概ね過去平均並みの0%程度まで改善しています。』

基調キタコレ。

『予想物価上昇率は、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられます。また、昨年春の賃金改定交渉において約20年振りのベースアップが実現し、本年も賃上げの方向が労使双方から示されるなど、家計や企業の実感としても、物価を巡る状況は大きく変化していると思います。』

サーベイの数字ってそんなに大きく変化してましたっけ???

『このように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針に全く変わりはありません。』

ということで、結局「2年たったのにまだ2年という積りですかずうずうしいですねえ」という質問に対しては全く答えないという所が実にチャーミングでして、最初がこれだったせいもあるのかも知れませんが、その後も「おいこら2年で2%はどうしたんだ」系の質問が多くてワロタとしか申し上げようが無いのが今回の会見。


・物価がマイ転しても即追加緩和ではないという説明

その次の質問。

『(問) 2点お伺いします。まず1点目ですが、足許で原油価格が再び下落しています。今後も原油価格の動向次第では、短期的にコアCPIがマイナスになるという可能性も排除できないと思うのですが、物価がマイナスに転じた場合、実際の物価の見通しと、物価の基調やインフレ期待に与える影響を現時点でどのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 先程も申し上げた通り、物価の先行きについては、エネルギー価格下落の影響が足許出てきている一方で、需給ギャップとか、中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は着実に改善していると考えられますので、いわば、この両者の引っ張り合いのような状況になっているわけです。』

また基調である。

『こうしたもとで、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面0%程度で推移する可能性が高いと申し上げたわけですが、もちろん、エネルギー価格等の動向によっては、若干のマイナスになるという可能性も排除はできないとは思います。今のところは、まだその辺りは、はっきり分かりません。』

ここはヘッドラインになっていました。

『需給ギャップあるいは中長期的な予想物価上昇率、もう?し広く言えば、物価を巡る家計や企業の見方といったものを総合的に見ていると、物価の基調は着実に改善していると思われますので、仮に生鮮食品を除く消費者物価の前年比が一時的にマイナスになるようなことがあったとしても、物価の基調がどうなっているかということにかかっており、物価の基調は今のところ変化するような状況にはありませんので、そういった一時的な動きによって、どうこうといったことはないと思います。』

一文で基調を3回連呼キタコレですが、基調が強いので一時的な動きは知らんがなだそうですわよ奥様!

『ただ、物価の基調に関し、今申し上げた需給ギャップ、中長期的な予想物価上昇率、更には企業や家計の物価観といったものは、今後とも十分注視していく必要があると思っています。(後半割愛)』

ということで、前回は原油価格が下がって期待インフレに悪影響と言いながら緩和したのですから一段の原油下げの場合に期待インフレに悪影響はないのでしょうかという質問をしているはずなのですけれども、その部分に関しては論点をそらして全く答えになっていない回答ですな。


・論点をずらす回答が多い事よ

さっきの質問の後半。

『(問)(前半割愛)もう1点です。今年の春闘で、先程もお話がありましたが、昨年を上回るベアの実績が伝えられています。現在、ご覧になって、今のベアについての具体的な動きというのが、物価2%達成に向けて十分な内容と考えておられるか、お伺いします。』

(;∀;)イイシテキダナー

『(答)(前半割愛)そうした中で、もちろん賃金の動きも非常に重要であり、私どもも注視しているわけですが、ベースアップ、あるいはボーナスを含めた給与全体の具体的な水準については、現在労使間で交渉されているわけですので、私から何か感想めいたことも申し上げるのは差し控えたいと思います。これも以前から申し上げていることでありますが、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」によって、企業収益あるいは雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が次第に高まっていくという好循環を作り出していくことを目指しており、この点、企業収益が過去最高水準まで上昇している、さらには、失業率が構造失業率に近い3%台半ばまで低下しているといったことで、労働需給も引き締まっています。こうした良好な収益環境、あるいはタイトな雇用情勢等を踏まえますと、ベースアップやボーナス等のかたちで、賃金の上昇が実現する環境が整っていると考えています。』

いやあの労使交渉の水準の是非について聞いているんじゃなくて2%達成に必要な水準かどうかについての質問なのですから差し控えるとかそういう話じゃないと思いますし、2%が安定的に維持できるためには名目賃金がどのくらい上昇するのが望ましいとか賃金版フィリップスカーブを持ち出せば済む話ではないでしょうかと思いますが、そこをゴリゴリと詰めると「威勢の良い報道で浮かれたくなるけどまだ足りん」という話になるのでお答えしないというのが実際の所なんじゃないですかね。


・答えが無いものだからだんだん質問が辛辣に

その次の質問が中々よろしい。

『(問) 2点お伺いします。まず1点目です。先程のお話にあったように、物価がマイナスに転落する可能性が排除できないとのことですが、これが人々のインフレ期待を損ねるような懸念はないのでしょうか。その懸念はないとお考えなら、その理屈を教えて頂ければと思います。』

さっき完全に論点をそらして答えなかったので再質問キタコレ!!

『もう1点は、総裁任期5年の中でこれから3年目を迎え、折り返し地点に入るわけですが、その中で「2年を念頭に、できるだけ早期に」というコミットメントは、さすがに3年目は実現ができないとやや信認が揺らいでくる時期に差し掛かってきます。』

(;∀;)イイシテキダナー

『2月下旬の講演では、長らくデフレが続いた日本で物価を2%にアンカーするためには、速度と勢いが必要だというお話をされました。その中でも、この3年目は大規模な「量的・質的金融緩和」が成功するかどうかの分かれ目になる年かと思いますが、総裁は、この3年目という新たに迎える1年間を、ご自身の異次元緩和の中でどのように位置付けていらっしゃるか、お伺いします。』

速度と勢いがないし1年間手形をジャンプとかダメだろという質問ですねわかります。

『(答) インフレ期待が様々な要素によって影響されることは事実ですし、足許の物価上昇率がどんどん下がっていくと、インフレ期待に影響するのではないかという懸念があり得るのも事実です。昨年10月31日に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した一番大きな理由は原油価格が下がったことではなく、原油価格が下がる、さらにはその当時消費は弱めの状況が続いていくという中で、消費者物価の上昇率がどんどん下がっていき、それが物価上昇期待を押し下げ、賃金決定あるいは企業の価格設定に影響が出てくるという可能性、懸念を払拭するために、いわば英語で言うところのpreemptiveに「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したわけです。』

この辺の屁理屈の整理はかなりきれいにまとまるようになりましたな。

『その後の状況をみると、中長期的な物価上昇期待は概ね維持されており、幸いにそうした懸念は払拭されていると思っています。』

この前は懸念があったわけで、そこから物価が下がっているのに懸念が浮上しないとはこれ如何にということで、「基調」だの「総合判断」だの自由自在だなオイという所です。

『従って、今のところ、そうした懸念があるわけではないし、出てくるとも思っていませんが、先程も申し上げた通り、物価の基調に最も大きな影響を与える需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率を今後とも十分みていきますし、企業や家計の物価観――その中には当然、賃金の上昇率あるいは企業の価格設定行動等々も入ってきますが――をよく注視、モニターしていくことに変わりありません。』

どう見ても春闘でドヤ顔です本当にありがとうございました。

『今のところ、仮に足許の物価上昇率が原油価格の大幅な下落を反映してマイナスになったとしても、直ちに物価の基調に影響が出るような状況ではないと思っています。』

何故??

『ただ、何度も申し上げますが、その辺りは十分注視していくつもりです。』

そして後半の質問に対する答え。

『それから、私が総裁に就任して2年ということですが、特に2年ということで意識することはありません。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

すいませんQQEは2年じゃなかったでしたっけという所で、こういう辺りに巧まずして本音が飛び出す訳だ。

『毎年毎年、その時その時の課題をきちんと果たしていくことが重要だと思います。現時点では、2%の「物価安定の目標」を、2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することが最も大事だと思っていますので、それに向けて引き続き最大限の努力を払って参りたいと思っています。』

意識してないジャン。

『日本経済は、1990年代の後半頃から2012年まで15年程度の期間ずっとデフレだったわけでして、そのデフレのもとで物価上昇期待も非常に低位――ゼロかその近傍――に落ちていたので、2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続することから言いますと、物価上昇期待自身も2%程度のところにアンカーしていく必要があると思います。』

デフレではなくてディスインフレだったのではないかという気もしますけどね。別にスパイラル的に一般物価が下がったわけではないでしょうと。90年代の資産デフレというか不良債権や過剰投資の積みあがりによる巨大なスラックというのはあったでしょうが。

『欧米のように、物価上昇期待が目標近傍に比較的アンカーされている国とは違って、よりチャレンジングであることは前から繰り返している通りです。その意味では、速度と勢いは非常に重要であり、だからこそ2013年4月に強いコミットメントとともに「量的・質的金融緩和」を導入し、さらに昨年10月に拡大したわけですので、引き続きその実現に向けて邁進していきたいと思っています。』

でも2年ということで特に意識しないんですよね!!!!!


以下続くのですが時間と量の関係上(というかやりだすと量がかなりあるのでここまで前夜に珍しく準備したのだが寝坊回避の為にここで断念というのが正直なところです、笑)続きは明日。





2015/03/18

お題「目先の物価マイ転は開き直りそうですが先行きを真面目に考えると意外に難しいですなという雑談など」

そういや今週末は今年のスペイン総選挙前哨戦になるアンダルシア州の地方選挙ですよ!!!

○市場メモ追加とか訂正というほどでもないが訂正みたいなもんとか

・ECB関連

えーっとですな、昨日はECBネタを投下してみましたが、細かいところをあまり見ないでとりあえず数字だけペタペタ張っただけなので追記。

http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html

Public sector purchase programme
13 Mar. 2015 9,751

こちらの数字は受渡ベースの数字ですので、1週間で98億ユーロの買入ではなくて3日間での買入という実績になっていて、まあスタートダッシュはずいぶん威勢よく買えましたなという話ですな。この調子なら当面月600億ユーロの買入自体は楽勝(他の買入も含めてなので)に見えますが、まあどこの時点まで投資家などが保有する玉を引っぺがしてこれるのかという話になりますので先行きはやはりワカランチ会長ではあります。

でまあPSPPのブレークダウンは月一公表になるのですが、どうも国別残高と国別のデュレーションしか出なさそうで、何とも不透明なものになりそうなのがECBクオリティという所で、来週になってペースの確認をするのと、来月になってブレークダウンの確認をして本当にマーケットニュートラルになっているのか(そもそも論としてその「マーケットニュートラル」というのがきちんと定義されていないファジーな状態なのですけど・・・・・・・)というお話ですな。



・貸出支援関連

しかしまあ何ですな、2日連続で輪番と長期国債入札が無いと債券市場ちゃんが息をしていないの!!状態になって甚だ遺憾の極みですけど・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150316b.pdf

新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 44,000 億円
貸付先数 40 先

ということで4.4兆円増えているのですが、その一方で既存の分でロールされていないのがあって、実際の残高はそこの下にありますように、

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
大手行 160,497億円 地域金融機関等 62,957億円 合計 223,454億円

でして、12月時点での数字が

大手行 134,054億円 地域金融機関等 55,719億円 合計 189,773億円

でしたので、残高増えているのは3.37兆円となっておりましてございましたすいませんすいません。

でまあ当初下馬評よりも少ないには少ないのですが、財政要因とオペ要因で3月末に20兆円(80兆の4分の1)だけ資金供給を拡大するという計算をすると、輪番が予定通りに実施されるとして3月までの数字が17.5兆円程度になる(当座預金増減要因からやっつけで計算しているので概ねあっていると思うのだがあまり自信が無い)ので、貸出支援が3.3兆円増えていればここから先短国買入をやらなくても四半期の走りは達成可能という感じになるのかなと思います。

まあ実際は幾つかぶれる要因がありますし、今日は1年TBの入札がある訳でして、後のオペの事を考えると今週は短国買入を打ち込んでおいて1年新発TBを購入しておいた方が吉なので短国買入自体はオファーされるようには思いますが、そんなに買わなくて良さそうな気がします。

ただ期末だなんだと短国の需給が良好(というか入札以外で全然動くタイミングが無く、流通玉も無いけど買う人も手を止めているという感じで売りは出てこないという状態ですな)なので、短国買入が減るくらいの方が市場にフレンドリーだとは思いますけどね。


・次回からは貸出支援に系統金融機関も加わりますな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150317a.pdf
「系統中央機関の会員である金融機関による成長基盤強化を支援するための資金供給および貸出増加を支援するための資金供給の利用に関する特則」の制定等について

これは日銀当座預金取引先以外への与信という話になるので意味合いとしてはかなり重い話(1月に決定済みで今回は要綱発表ではある)ではあるのですけれども、詳しい内容その他については本日はパスです(大汗)。



○3月決定会合声明文はついに足元の物価マイ転でも「基調が良いので知らんがな」と開き直る

小見出しが長いですかそうですか(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150317a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150218a.pdf(前回)

・現状判断:物価の記述のみ変更

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(前回)

から始まる現状判断記述部分ですが、まあ物の見事に全文一致状態になっております。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ここまで全文一致ですな。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

こちらも全文一致とな。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

とまあそういうことでここまで全文一致という無風にも程がある現状認識。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台前半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ということで現状判断の物価の表現は(実際の数字なので当たり前ではありますが)下げられましたですな。しかしどうでも良いちゃあどうでも良いのですが、予想物価上昇率って毎度「全体として上昇」という判断をしているのですが、延々と上昇していたらとっくの昔に2%を超えていそうなもんですけどねえ(ゲス顔)。



・先行き見通し:足元の物価マイナス転でも「基調が良いので知らんがな」と開き直りキター!!!

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

ということで「当面プラス幅を縮小」というのが遂に「当面0%程度」という表現に変化しておりまして、0%「程度」には当然ながら小幅の上下が含まれますので(会見でも質問が出ていたようですが)、これはつまり向こう数か月程度(が「当面」という言葉の日銀文学的な意味)の期間にCPI前年比がマイナス転換しても「想定通り」という話になります。

でまあ目先のCPIマイナス転換を今現在見通しに入れている中で今回の金融政策判断が現状維持、ということになりますと、そらまあマイナス転したら即追加緩和という可能性はなくなったという話(だってマイナス転即追加緩和なのなら見通しでマイナスの可能性を出した今回の時点で追加緩和するのが筋)ですな。もちろんほかの条件が大きく変化していれば別ですけど。



・リスク要因といつもの宣言文書は毎度同じ

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

へえへえそうだっか。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(前回)

こちらも毎度同じですな。


・木内審議委員の反対票と提案は今回も同じだが「集中期間」は次回に終わりますね


『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員。反対:木内委員。反対した委員は、「『量的・質的金融緩和』の拡大」(2014年10月31日決定)前の金融市場調節方針が適当であるとした。』(今回)

『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員。反対:木内委員。反対した委員は、「『量的・質的金融緩和』の拡大」(2014年10月31日決定)前の金融市場調節方針が適当であるとした。』(前回)

ちなみに木内さんは「MB年間80兆円ペース拡大」と「国債買入残高80兆円ペース拡大」に反対しているので反対は2か所にあります(が同じなので1つだけ引用)。

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)

ということで木内さんの反対票と別議案に関しては毎度のように出されて毎度のように否決されているのですが、「2年間程度の集中対応措置」という部分はどういう扱いになるのかというのと、反対票の「追加緩和前に戻す」というののリンクがどうなるのか、次回(または展望レポートの回になるのかもしれませんが)辺りにどういう出し方をするのか意外に難しい気がします。

木内さんの基本的な考えとして「物価安定目標を中長期的に目指す」というのがメインで残るのですが、ではQQEのペースをそのまま継続するのかという話になるとアセスメントが必要になる訳で、他の誰も実施しなくて木内さんだけが実施することになってしまう「集中対応期間が終わったところでのアセスメント結果」を出してもらうという事になりますので、はてさてどういう結果をだしてくれるのか注目したいですし、内容的に他の審議委員が乗れるものに変更できるかどうか(たぶんならないと思うけど)というのもあまり期待しないけど期待をするかというところでしゅ。



○足元の物価マイナス転でも「基調」で逃げる攻撃が確定しましたが先行きを妄想すると意外に難しい

つーことでまあ今回の決定会合はクソ面白くもなく想定通りの結果が炸裂しまして、2年で2%とは何だったのかという話にはなるとは言いましても、そのあたりの話は1月2月の決定会合およびその後の説明で勝負付けは終わっている感じでしたから今回「目先のマイナスは知らんがな」という話を思いっきり表に出してくるのは見え見えなので会見どうでも良いかと思ってたら意外に延々と会見をやっていたのがふーんという所で。

でまあ足元では春闘での賃上げガーと威勢の良い話(って過去最高過去最高言うけど、その過去最高とはディスインフレ突入以降の過去最高であってもっと前だともっと上がっていたのでは無いか等という景気の悪い話をしてはいけませんかそうですか)をしていまして、これが「企業や労働者の物価感が2%の物価安定目標に向けてリアンカー(「リ」アンカーゆうて過去に2%アンカーされていた事ありましたっけというツッコミをしてはいけません)されつつあります(キリッ)」という話になりますので、基調としての物価安定目標に向けた動きは着実に進んでいます(キリッ)と逃げられる訳ですよ。

ちなみに総裁がいつかの講演だかで話をしていましたと思うのですが、スウェーデンだかの話を持ち出してきて「労使の賃金交渉の話のスタートが2%水準から始まるという状況こそが2%の予想物価上昇率が安定的にビルトインされている状態である」と評価しておりまして、そういう文脈で言えばこの賃金の部分を思いっきり重視しているので、春闘の威勢の良いニュースが出ている間は「基調」で言い逃れする気が満々という大変に素敵なお話ではあります。

さらに申し上げますと、非常に皮肉な話ではありますが物価がアガランチ会長となっていることから、賃上げとのセットでこの先では実質賃金のプラス転換となって皆さんハッピーじゃないですか!!という話にもなりますし、それによって個人消費がウマーとなるかもしれませんしと、実にこういいことずくめな訳でして、まあ何ちゅうか暫くは言い逃れ可能という流れが続くわけですよ、うんうん。

まあそれから強引に通貨安に持って行って肝心の輸出は伸びないけど通貨安でコストプッシュの輸入インフレとなっても誰得な上に消費が落ちるだけじゃんというのが示されてしまった(本来コストプッシュの部分を輸出の伸びを起点としたメカニズムによって相殺するのでウマーという見込みだったのが当てが外れた訳で)ので、これ以上円安に振ってもウマーでもなんでもないという認識が政治方面にも広がってきたというのがあって、追加緩和打ち込んで一段の円安に振って物価を強引にコストプッシュで上げる必要がないじゃろという話になってきたのも大きい、とまあそういう話です罠とゆー所だと思うのですよ。

てな感じですので、現状出ている説明とロジックを総合的に勘案すると賃上げの結果の波及と原油価格下落のベース効果一後の状況を確認するまでは現在の政策に変化は起きない、とまあそういう結論が導きだされるというものであります。


・・・・・・・ただまあ以上の話って肝心の「物価の基調」の部分やら「インフレ期待」にかかわる部分やらが鉛筆なめなめの世界である、というのが曲者なのでありまして、足元では統一地方選挙を控えて特に回復の出遅れで物価上昇だけ先に食らってマズーな地方の声を重視している政治方面が、統一地方選挙終わったらあっさり味で豹変して「円安にしやがれゴルァ」となるやも知れずですし、まあ日銀の現執行部としては政府の方面から正式にタオルを放り投げてくれない限り(というかうっかりしたら正式にタオルが飛んできても意地を張って)「2年程度を念頭に置いてできるだけ早期に2%の物価目標達成」という看板は下ろせないのですが、政治方面から達成期間に関して梯子を外されているので動きようがないという状態であって、梯子が再度確りと設置されたら2年で2%タコ踊りを盛大に再開するという可能性も大有りと考えますと、まあ先行きシナリオ通りに推移したとして本当の本当に追加緩和無いのか、と言われると中々そこまでは断言できませんなあという話なのが困る訳ですよ。


でまあその円安ヒャッハーという線以外にどういうのが考えられるかと、「早期に達成」という看板を下ろさないままでその達成時期に関して「基調」を使いながら有耶無耶のうちに引っ張るという「勝ち逃げ」スキームというのがアリエール話というか、まあ現実的にはそういうのが逃げ場として使えるかなとは思うのですよ。

その場合って勝ち逃げタイミングとしては「賃金も上昇しています、今年は実質賃金も上がっていますので皆さんハッピーですよね、ああそれから足元の低迷は原油のせいで、これも景気にはプラスですから基調としての物価は2%に向けての道を更に固めていますよね!!」という説明をしやすい時期、という事になりますので、時期的に来年とかまで引っ張ってしまわない方がお得としか申し上げようが無いですし、あまり引っ張ると昨年のように逃げ損なってアチャーという事になると思われるんですよね。

でまあそのタイミングでQQE大勝利宣言をしつつ、2%物価目標達成に関しては「基調」だの「インフレ期待のリアンカーに成功」だのと言って達成したことにしつつも、実際の物価上昇にもうちょっと時間がかかるから緩和的な金融政策は続けますぜウェーハッハッハという事で、まあその時に日本版Taperingをするのかというとそこまで気合は入れられないでしょうけれども、一方で国債買入の物理的限界というのもあるのでどうなんでしょうねという所ではあるかも知れませんね。

#ただまあ本来的に言えば目標達成が展望みたいな話が人口に膾炙すれば債券投資家が一段とポジション落とすのですから買入は続けやすくなるのでしょうけれども何せ買入が無慈悲すぎるので


ということで、まあ次回会合で何もない(ジンバブエ先生がどういう提案をするのか、というかその前に就任記者会見で「日銀が国債買うと統合政府での債務が消滅する」という珍理論について日銀事務方の中の人たちが破綻の無い理屈にどう直したのかの結果が見たいですが)でしょうし、普通に考えると先ほど申し上げたように当分動かない筈なのですが、つらつらと可能性を考えると意外に難しいわというお話になりますな、うんうん。

#明日は総裁会見ネタにFOMCと大ネタ連発である



2015/03/17

お題「貸出支援は4.4兆円とな/ECBの買入残高公表/ECBプラート理事の「ソブリン債購入の論点整理」から少々」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150317/k10010017701000.html
日産 月額平均5000円の賃上げ軸に大詰め
3月17日 4時16分

基調的なインフレ期待はこのように引きあがっています(キリッ)!ですねわかります(白目)。

・・・・・・・・えーっとそれと期待に働きかける政策をしているのですから物価目標達成時期について「できるだけ早期に」という看板は嘘でも下ろせないと思いますけどねえ>モーサテ解説

○市場メモ関連

・業態別日銀当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

例によってこちらからDL致しますと、2月積み期間平残での超過準備で大きなところは都市銀行+0.6兆、地方銀行+0.7兆、外国銀行+1.0兆、信託銀行-1.0兆、その他準備預金先+0.5兆円ということで、トータルで2月は平残が1兆円しか増えていないのであまり派手な変化はありません。ちなみに証券の当座預金残高に関しては先月は動いていないようでまあもとよりこちらの当座預金残高ってあまりぶれないのですけれども、GCと超過準備のトレードみたいなのは起きません(当たり前ですが)というお話で。


・貸出増加支援は4.4兆円ですかそうですか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150316b.pdf

新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 44,000 億円
貸付先数 40 先

ということで期せずして4揃いになりましたが(^^)、5兆円程度出るのではとか言われていたりしたのでアタクシ的にはもうちょっと出なかったのか残念いう感じですが、とりあえずこれが出ると短国買入の負担が軽くなる(ただしこの貸出支援貸出そのものが共通担保貸出なので担保繰りという意味ではツーペーで、担保が短国に限る訳ではない分だけ短国市場にやさしいという話)という所。



・ECBの買入明細の細かい情報が見つからないのは多分アタクシの探し方がヘボなのでしょうが誰か教えて(平伏)

買入プログラムの実績がECBより投下。
http://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html

下の方にこんなのが。

EURO outright operations
Instrument Reference date Outstanding amount (*)

Covered bond purchase programme
13 Mar. 2015 26,108

Securities market programme
13 Mar. 2015 140,945

Covered bond purchase programme 2
13 Mar. 2015 11,873

Covered bond purchase programme 3
13 Mar. 2015 56,947

Asset-backed securities purchase programme
13 Mar. 2015 3,754

Public sector purchase programme
13 Mar. 2015 9,751

* Net settled amount (in ユーロmn) as of given date

ということで、PSPPでの買入残高は97.51億になりましたということですな。で、画面の右側に『For more information on the outright purchase programmes see: Monetary policy portfolios』というのがあるのですが。

http://www.ecb.europa.eu/mopo/liq/html/index.en.html#portfolios

こちらではCBPP3のブレークダウンは掲載されている(エクセルへのリンクがある)のですが、PSPPのブレークダウンは掲載されていないという謎展開で、ブンデスバンクのサイトを見に逝ったもののアタクシの探し方がヘボなせいかそれともそもそも掲載されていないのかがよくわからんのですがブレークダウンみたいなのが見当たらなかったりするので(大汗)、総額だけは分かるものの細かいのが今の所分からなかったので見つけた人誰か教えてジェネラルであります。

そもそもアウトライトの話の中でPSPPの説明文書へのリンクが無いたあどういう事やと思ったりもしますが・・・・・・・・・・
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Tasks/Monetary_policy/Open_market_operations/open_market_operations.html
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Tasks/Monetary_policy/Outright_transactions/outright_transactions.html


○またまたECBだがプラート理事の講演の論点は面白い

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150311_1.en.html
Public sector security purchases and monetary dominance in a monetary union without a fiscal union

Speech by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at the Conference The ECB and Its Watchers XVI,
Contribution to the Panel on Low-interest-rate Policy and Non-standard Monetary Policy Measures:
Effectiveness and Challenges,
Frankfurt am Main, 11 March 2015


『Summary』はあっさり味。

『The Governing Council decision to start purchases of public sector securities has demonstrated its ability to meet the mandate of price stability and bring inflation rates back to levels below but close to 2 percent. With this policy, it makes full use of all legal and effective monetary policy instruments.』

そらまあそういう罠。

『The design of such purchases has taken into account the specificities of the institutional set-up, notably the fact that the euro area is a monetary union that is not a fiscal union.』

マネタリーユニオンだがフィスカルユニオンではないという欧州の状態とな。

『This is an assertion of monetary dominance, in compliance with the principles enshrined in the Maastricht Treaty.

Nevertheless the overall success of the euro area depends on all stakeholders doing their job.』

ということで最後の所は昨日ネタにしたドラギのおっちゃんも言ってましたが、いいからお前ら財政構造改革をしろという話をするのはまあそうですなということで。


・マネタリードミナンスとは???

『Thank you very much to the organisers for inviting me to participate this morning. [1] In my contribution I would like to address the topic of this panel from a particular perspective, namely monetary dominance and the purchase of public sector securities in a monetary union without a fiscal union.』

monetary dominanceとな。

『To preview my reasoning, monetary dominance is not about how the central bank implements its policy - i.e. the assets that it buys - it is about how much control the central bank has over its policy - i.e.
why it buys those assets.』

資産買入政策における論点としてmonetary dominanceという概念ということで・・・・・・・・

『Indeed, the independence that has been given to the ECB (and, in particular, the purpose of the monetary financing prohibition enshrined in Article 123 of the Treaty) is precisely to ensure that the central bank has full control over its balance sheet - that it cannot be forced by governments into monetising deficits or inflating away debts - and hence that monetary dominance is preserved.』

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ということで、ECBのみならずということで、中央銀行が資産買入をする際に、政府の債務をマネタイズするようなことが起きると、インフレ目標の達成に対して阻害要因となる(=インフレ上昇を止められなくなるから)という話を思いっきりしておりまして、今度審議委員になられる中銀が国債買うと政府債務が消滅するという超越理論を唱えるジンバブエ原田先生もそうですが、急にその流れに迎合してジンバブエ理論を現役の政策委員会審議委員であるのに説明しだした中央銀行政策決定機関の一員としてあるまじき発言をしておられた宮尾大先生におかれましては目の玉良く開けて朗読されたいものだと思います。

『The decision taken by the Governing Council in January to expand the purchase programme to include public sector securities as well as the specific design elements of the programme, demonstrate that we can make full use of all instruments of monetary policy to deliver on our mandate of maintaining price stability. This is an assertion of monetary dominance, in compliance with the principles enshrined in the Maastricht Treaty.』


・中央銀行の資産買入に関する金融政策としての論点

でその概念説明ですけど。『Conceptual Aspects』というところに。

『Central bank purchases of public sector securities are a sensitive topic because, by definition, they constitute the most direct link between central bank actions and the budget constraint of the fiscal authority.』

中央銀行が政府セクターの資産を購入することは「中央銀行の行動と政府の予算制約とのリンクを強めるのでセンシティブなトピックである」という説明でありまして、「中央銀行の国債買入のシニョリッジを使って財政支出が可能という考えもある」という話を中央銀行政策委員の立場で堂々発言している宮尾さんは爪の垢を煎じて飲むべきだと思うの。

『The existence of this link naturally leads to the question: which constraints or institutional safeguards are necessary to have in place so that a central bank can fulfil its mandate of maintaining price stability?』

ということで、まずは通常の形の説明が『A “single economy” perspective』に。

『Let me start with the case of a single economy perspective - by which I mean a country with one central bank and one fiscal authority - and I will then turn to a monetary union with one central bank and many fiscal authorities. 』

ということで説明開始。

『The relationship between monetary and fiscal policy from a single economy perspective goes back to the classical paper by Thomas Sargent and Neil Wallace on the ‘unpleasant monetarist arithmetic’. [2]』

「マネタリストの不快な算術」という概念については以前佐藤審議委員も講演で指摘していました。

『The premise of their argument is that the central bank contributes to the budget of the government via seigniorage income. In its canonical version, this income stream captures the ability of the central bank to issue non-interest bearing central bank liabilities in exchange for interest-bearing assets (either outright or via revolving refinancing operations).』

ジンバブエ理論に対しての論点ですな。

『The issuance of central bank money comes with a positive return differential, leading to an income stream that is eventually returned to the fiscal authority.』

『For the central bank to be unconstrained in its ability to ensure stable prices, it is crucial that in all states of the world the amount of that seigniorage income will be solely determined by monetary policy concerns.』

『In other words, drawing on the taxonomy established by Sargent and Wallace, the central bank must be able to exercise monetary dominance.』

宮尾さん是非およみ頂きたい訳で、シニョリッジが出来るから財政がどうのこうのとかそういうのに中央銀行が巻き込まれると物価安定のマンデートを達成する能力を失う(要は物価上昇した時に止められなくなる)と思いっきり説明しているんですよね。

『As we all know, monetary dominance, when translated into the realm of institutional design, corresponds closely to the concept of a strictly independent central bank bound by a statute that assigns it to the pursuit of an overriding objective of price stability. This, in turn, is the single most important requirement for the ability of the central bank to deliver price stability.』

ということでイイハナシダナーではあるのですが、財政の方は相変わらずのグダグダの中で国債買入を莫大に実施している日銀に関するプラート理事の率直な所感をお伺いしたいものです。

『The second, and more controversial, concept I would like to mention goes back to the so-called ‘Fiscal theory of the price level’, as originally presented by Chris Sims, Michael Woodford and Eric Leeper. [3]』

ほほう。

『It is conceptually different from Sargent and Wallace. It establishes a link to the budget constraint of the government, which operates through revaluations of outstanding amounts of nominal government debt, via adjustments in the price level. The idea is that such revaluations have the ability to ensure that government debt, when perceived to be on an unsustainable path, can be stabilised without outright default.』

財政問題に関してアウトライトデフォルトを起こさないという事を前提に物価レベルの調整をという概念のようですな。

『In this concept, the requirement of the independent central bank that actively engages in setting its policy in the exclusive pursuit of its objective of price stability is no longer sufficient to ensure that the central bank has control over the price level. What is also needed is a solid fiscal framework that ensures that the fiscal authority follows sound fiscal policies which are sustainable at the going price level.』

で、この場合は財政の健全性が無い場合ですと物価安定を中央銀行が独立して追及すると財政の方が回らなくなってしまうので、物価安定には財政の健全な運営が大事ですよという話で。

『What is striking about this theory is that there is no room for the possibility of outright government default. This can be defended under the conditions of a fiat currency in a closed economy. But these narrow conditions have led to a controversial reception of the theory in the profession - after all, we can all cite examples where countries have defaulted outright rather than implicitly through price
level adjustments.』

とはいえまあ通常は(閉鎖経済じゃないなら)物価調整で進めるよりもアウトライトデフォルトをすることになるんでしょという話で。

『At the same time, this theory offered an early conceptualisation of a relevant insight that was well understood by the founding fathers of the Economic and Monetary Union in Europe: an independent central bank with a clear mandate of maintaining price stability should be supported by a fiscal framework which ensures sound fiscal policies.』

ということで物価安定のためには健全な財政政策が必要という話はわかるのですが、では何故財政が真っ赤で垂れ流し状態になっている日本の物価が低いままで維持されているのかというのはどうなんでしょという気はだいぶするので、そういう辺りはツッコミどころのようには思えますけどにゃ。


・財政統合をしていないECBの場合はソブリン買入も財政移転の要素があるとな

『A “monetary union without a fiscal union” perspective』というのが次の小見出し。

『To what extent can this theoretical apparatus be exactly applied to the special environment of a monetary union with a single monetary policy and many fiscal policies? The economic literature suggests that, in general terms, it remains valid, but with the requirements for ensuring monetary dominance becoming stricter.』

ということで・・・・・・・

『The reason is that in a monetary union the single monetary policy establishes a link between otherwise separated budget constraints of the many fiscal authorities. This can be easily seen if one assumes that central bank incomes or losses from monetary policy operations are shared between governments before they are returned to them.』

『Under this assumption, central bank purchases of government debt from any single member country, will in fact affect the budget constraints of all the other member countries.』

財政統合していない状態で通貨だけ統合されているという状態で中央銀行が政府機関債務を購入するのは、それによって生じたインカムやロスが各国にシェアされるという意味で財政移転効果があるとはまあ言われてみればそうですな、屁理屈のような気もするけど。

『The fact that in a monetary union without a fiscal union the single monetary policy establishes a crucial link between otherwise separated budget constraints of governments has been addressed in a number of thoughtful studies (like the ones from Bergin or Chari and Kehoe [4]). At the risk of over-simplifying their nuanced messages, these studies suggest that compared to a single economy, more binding constraints and institutional safeguards are required in a monetary union in order to protect a stability oriented monetary policy.』

『In particular, monetary dominance needs to be credibly exercised against a large number of fiscal authorities. Consequently, this calls for a governance structure which not only endows the single central bank with a large degree of independence, but it should also entail a fiscal framework which recognises that sound fiscal policies in every single member country are a matter of common concern.』

ということで、域内ソブリン債を物価安定目標達成という文脈での金融政策で買入をするという点について、いわゆるフィスカルドミナンスにならないようにという通常の問題に関しても「財政当局が異なる」という意味でさらに話がややこしくなるという論点でして、なるほどほかの先進国がいうような単純な話ではないですし、シニョリッジの移転だの損失の共有だのという話を考えた場合に、ECBではなく各国の中央銀行がソブリン購入を行う主体になるとか、損失負担の割合をどうするのかという話って、まあそんな文脈から考えられた話なのねと何となく理解したような気になりました。

でまあそう考えますと、実は各国中銀(特にブンデス)が自分の所での購入できるものが足りなくなった場合にどうするのかという話ってえのも意外にセンシティブな面があって、スープラを買うのならまあ有りの話かもしれませんが、他国の国債を購入するとなると話がかなりややこしい事になるのねと、まあこの辺は一つの政府(財政当局)に一つの中央銀行で回っている社会じゃないのって難しいのねなどと思うのでした。

実際はこの先にも話が続くのですが(というかここマクラみたいな部分)続きは時間があったらしますが本日は時間の関係上この辺で勘弁ということで。



2015/03/16

お題「しつこくECBでドラギ総裁の講演から」

さあ企業のインフレ期待が示されて来ましたよ良かったですね(棒)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150315-00000061-jij-bus_all
トヨタ、ベア4000円で決着=02年以降で最高―一時金「満額」6.8カ月・春闘
時事通信 3月15日(日)17時47分配信

でまあ今週は日銀とFEDネタがありますのでその前に引き続きECBネタでございますが、先週は政策投下後にエライ人の話がありましたのでその辺をとゆーところで。

○ドラギ総裁の説明である

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150311.en.html
The ECB and its Watchers XVI Conference
Speech by Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 11 March 2015

・まずはサマリーから

『Summary』というのが最初にあるのにちょっと便利。

『In January, the ECB decided to expand its asset purchase programme to include government bonds after it became clear that there was a need for more monetary stimulus. Asset purchases are unconventional, but not unorthodox, and they have been part of the ECB’s toolkit from the start. By deploying this tool, the ECB underlined its ability and determination to stabilise euro area inflation in line with its objective.』

追加が必要になったので実施しました。資産買入は非伝統的ですが別に異端の手段ではないですよと。

『The impact of the programme and the ECB’s previous monetary policy measures is visible: Bank lending rates to companies started to decline in the third quarter of last year, market-based measures of inflation expectations have reacted positively to the ECB’s balance sheet expansion over recent months, and euro area long-term sovereign yields have fallen - in spite of the renewed crisis in Greece.』

今回の追加よりも前の資産買入(昨年夏以降に投下したもの)の効果を説明しておりまして、銀行貸出金利の低下が昨年3Qから始まっているとか、バランスシートが拡大すると市場ベースのインフレ期待が強くなっているとかありますな。

で、その最後にあるのが「ギリシャ問題が新たに課題が出てきたのにもかかわらず他の周縁国の国債金利が下がっています」というのがほほうという話。

『This suggests that the asset purchase programme may be shielding other euro area countries from contagion, which also helps the ECB achieve its monetary policy goals across the euro area.』

ナンジャソラという感じですが、APPはギリシャ問題の拡大を防ぐ事にも効果がありますという話ではありますが、そうは言っても周縁国の場合は問題が発生している訳ではないから拡大していないという面もありそうですし、大体からして今回の措置を見ればわかるように、投資不適格状態の場合はEU/IMFのプログラムを実施しないとダメという状態なので、実際に問題が起こった場合に本当に飛び火しないのかはよくわからん。まあ問題もないのに十把一からげで売られるという事態になっていないというのはその通りですけれども、別にそれはAPP関係ないような気も。


『The euro area economy grew more than expected in the fourth quarter and unemployment fell to its lowest level since August 2012 in January. While this cannot exclusively be attributed to the ECB’s monetary policy, it certainly supports the recovery.』

4Qの景気は予想よりも良かったよ金融政策だけの貢献じゃないけどサポートは間違いなくしているでしょ。

『Even though inflation is expected to remain very low or negative in the months ahead mainly due to the sharp drop in oil prices, it is expected to move closer the ECB’s policy target over the coming years to reach 1.8 per cent in 2017 - conditional on the full implementation of all policy measures.』

先行きに関しては上方修正しているのは直近のECB理事会通り。

『The beneficial impact of the ECB’s asset purchases on financing conditions will increase the benefits of governments’ structural reforms, rather than reducing incentives for reforms. Firms will be encouraged to increase investment, bringing forward the economic recovery.』

で、ECBの資産買入が(利払い負担を軽減することによって)政府の財政構造改革を遅らせるのではなく、財政構造改革を進展させるでしょうとか、企業の投資が拡大するでしょうという話をしておりますな。


ということで資産買入プログラム実施に関する説明である。

『Reaching deeper into the monetary policy toolbox』という小見出しから。

・今までの政策のチャネルに加えて新しいチャネルの投下が必要でそれは「資産市場へのより直接的な働きかけ」

『At the time of the last Watchers’ conference policy rates were already moving towards zero and we had reached a point where there was little room for manoeuvre with the standard instrument of monetary policy. We did eventually reach the effective lower bound later in the year by lowering incrementally the corridor of policy rates in June and September.』

昨年はゼロ金利制約のある中で追加の利下げなどの金利政策を実施しました(APPの話はあと)と。

『When a central bank’s ability to steer the overnight rate is limited, it can still alter its monetary stance by means of directly influencing expectations.』

まずここでどこの黒田総裁ですかと思ってしまいましたが(^^)、期待に働きかけるとは何ぞやと。

『This is the context in which the ECB introduced forward guidance in 2013. Our forward guidance was effective in flattening the money market curve and decoupling it from the curve in the United States.』

一瞬期待に働きかけるのはインフレ期待かと思いましたが、フォワードガイダンスでイールドカーブにどうのこうのという話でした(^^)。

『But its power becomes more limited, as the horizon over which the policy rate is intended to be at the effective lower bound extends beyond the forecast horizon. Moreover, forward guidance by the ECB was not and could not, in Paul Krugman’s words, “credibly promise to be irresponsible”.』

しかし金利の低下ゾーンが拡大するとフォワードガイダンスの効果が徐々に限定的になる上に、そもそもワシらのガイダンスは「無責任に対して約束する」というものではなかった(つまりコンディショナルなガイダンスであってインフレ高進しても継続みたいなコミットメントではなかったという説明なのですが、宮尾先生見てますか〜)ので効果がそれ以上には出ないと。

『What this means is that when the need for additional monetary stimulus arose, the ECB could no longer rely solely on acting in the money market, counting on transmission from the money market to other market segments, and from those to the real economy.』

ということで追加緩和が必要になったそうな。

『Like other major central banks, we therefore had to intervene directly in markets beyond the money market to have a more direct impact on the various channels of monetary policy transmission. And the way to do that was to purchase assets in those other markets.』

つーことで、この小見出しの最後は短期金融市場経由のトランスミッションメカニズムではなく、資産市場へのより直接的なトランスミッションメカニズムが必要ですという話をしておりまして、まあインフレ期待がどうのとか量がどうのというよりはやはりまあ普通に「資産価格ルート」を考えているというのが見えますな。


・「量を出したい」というのもあるようなのですがその背景は特に定量的な話ではないように見える

次が『Unconstrained monetary policy is key』という小見出しでして、これまでの資産買入プログラムの話をしていますが、その中でこんな説明が。

『Our decision in September to make use of asset purchases had significant effects. But still, when we announced the purchase of asset-backed securities (ABSs) and covered bonds, there were some in the market place who doubted our commitment and the effectiveness of our monetary policy.』

昨年資産買入を突っ込んだ時に疑問もあったわけですが。

『They thought we might be hampered either by there being a limited availability of assets that we could purchase in the market or by legal or political obstacles to our ability to expand the range of assets, should it become necessary. If we were so constrained, that would affect our credibility because our ability to anchor expectations relies in part on the fact that we are free to set the appropriate monetary stance.』

でまあその中でリーガル面とか政治的な面での買入への問題というのもありましたし、もう一つあったのはABSなどの市場が小さいのに効果あるのかよ(ただし最初にあるように効果はありましたけどねウヘヘヘヘという話はしている)という疑問がありましたと。

で、法令の方はともかくとして、買入サイズによる制約があるという話になると資産買入プログラムそのものの有効性に疑問がもたれ、その結果として資産買入プログラムの効果が減殺されてしまうというのが懸念されますね、という結論になっておりまして、だからこそ市場規模の大きい国債を買いますよという話になっているので、そういう意味では量を出すという話もポイントとしてあるみたいですね。ただし定量的な話でもなんでもないという感じなのですけど・・・・・・・・・・・

『In this context, the decisions we took in January to expand the range of our asset purchases must have assuaged those concerns. We can deploy - and we are deploying - monetary policy in a way that can - and will - stabilise inflation in line with our objective.』

はあそうですか。


・でもって実体経済にどういう効果がという話

次が『How the expanded asset purchase programme is working its way into the real economy』である。

『As its name indicates - the expanded asset purchase programme is just an extension of the programme that we announced in September as part of a more comprehensive easing package. This package has been effective in improving the pass-through from liquidity injections into private sector borrowing costs: bank lending rates to non-financial corporations started to decline in the third quarter of last year,coinciding with the first targeted long-term refinancing operation (TLTRO) and our announcement to purchase ABSs and covered bonds, and also following the repair of banks’ balance sheets during the comprehensive assessment.』

今回のソブリンQEはこれまで実施した資産買入プログラムの延長ですという話で、これまで実施したプログラムについての効果は上記にありますように主に金利ルートの話で、非金融機関の借入金利で実体経済に効果という文脈になっておりますな。

『Furthermore, model-based estimates indicate that - controlling for other developments - market-based measures of inflation expectations have reacted positively to the progressive expansion of our balance sheet over the last few months.』

でまあこれが激しくインチキくさいのですが、モデルで試算すると直近数か月のバランスシート拡大によって市場のインフレ期待が上昇しているという結果が出ています(キリッ)とか言ってまして、どう見てもホンマカイナとしか申し上げようがないのですが、このあたりがドラギ総裁が無茶振り発言をする「2012年頭のバランスシート規模」という話に繋がっているんでしょうなあと思います。

『There is thus good reason to believe that as our balance sheet grows more substantially under the expanded asset purchase programme, it will support a rebound of these measures.』

だからバランスシートの拡大という話もしているんですよという事だが、預金ファシリティーをマイナスに下げて量の拡大を抑制しておいて「金利も量も」という説明になっているのが分かると思いますが、これはどこからどう見ても市場実務的な意味で無理があるわけで、実体経済への低金利への波及という話であれば、無理にマイナス金利に持って行く必要があるのかという風に思うのですが・・・・・・・・・

ただまあ話がややこしくなるのは、資産市場ルートでのダイレクトな話もしておりまして、結局何をやりたいのかというのが散漫になっている(のは内部での見解が割れているんでしょう)という感じではあります。


『Second, our policy announcement was largely anticipated. On 1 January 2015, 60% of surveyed experts attached a 65% or higher probability that we would announce a public sector securities purchase programme at our January meeting. And, according to various surveys, expectations were already quite high in autumn last year.』

資産買入が事前に予想されていましたが・・・・・・・・・

『These anticipation effects show up in the financial data. According to estimates, the impact of the asset purchase programme has accounted for most of the fall in euro area long-term sovereign yields since August last year. The same applies for movements in other financial markets metrics, such as the fall in long-term corporate bond yields of non-financial corporations.』

でまあその予想で金融市場がすでに反応していましたが、長期のソブリン金利を下げるという効果がでておりますと。

『Beyond anticipation effects, the announcement of the expanded programme of asset purchases itself also led to substantial further falls in longer-term sovereign yields. For instance, from just before our announcement on 22 January to the close of business the day after, German 20-year maturity yields fell by almost 25 basis points and Italian 20-year maturity yields fell by almost 35 basis points.』

『We also saw a further fall in the sovereign yields of Portugal and other formerly distressed countries - in spite of the renewed Greek crisis. This suggests that the asset purchase programme may be shielding other euro area countries from contagion, which also helps us achieve our monetary policy goals across the euro area.』

でまあ金利が下がった話のほかに、先ほどのサマリーであった周縁国金利の低下でcontagionを防いだという話がこちらに。

『The reductions in sovereign yields seem to have passed through into other fixed-income assets, as well as to equities and the exchange rate.』

キタコレ!ということでしらっと話をしていますが資産買入は国債だけではなく株価や為替にも影響と。

『Yields on covered bonds and corporate bonds declined in tandem with longer-term sovereign yields - even though corporate bonds are not included in our purchase programme.』

社債の金利なども低下すると。

『Such spillover effects are associated with portfolio rebalancing, which is one of the channels through which the asset purchase programme reaches the real economy: our purchases reduce returns on safer assets. This encourages investors to shift to riskier, higher yielding assets. Pension funds, banks and other market participants that we buy securities from are likely to substitute these for other long-term assets, thereby eventually pushing up prices more broadly.』

で、この金利低下効果のスピルオーバーによって投資家のポートフォリオリバランス効果が出ていますという話をしておりますな。ホンマカイナという感じではありますけど。

『We are aware that our measures may entail some financial stability risks. But currently these risks are contained. And should they emerge, macroprudential policy is best suited to address them.』

ただまあポートフォリオリバランスという話をしております一方で金融安定化リスクの話をしておりますので、まあ真面目にポートフォリオリバランスはありまぁす(キリッ)ということなのでしょう。

『Experience with large-scale asset purchase programmes in other jurisdictions shows that the portfolio balance channel works. For instance, model-based estimates show that as a consequence of the Bank of England’s quantitative easing programme, insurance companies and pension funds invested less in gilts and more in corporate bonds, [1] leading to price increases of both investment grade and non-investment grade corporate bonds.』

でまあこのLSAPによるポートフォリオリバランスというのはBOEでも認められていますということで、実体経済への影響の話をする小見出しのはずが結局資産価格チャネルの話になっているのがチャーミング。

『Drawing inferences from the experience in other jurisdictions is certainly helpful to gauge the potential impact of our own programme.』

『Much has been said about the different conditions - meaning much lower bond yields - under which we are starting our expanded asset purchase programme from those under which other central banks did so. It is claimed that this reduces the impact on bond yields. But, in fact if one standardises the size of the various programmes and takes into account anticipation effects, the overall impact of our programme on bond yields was comparable in size to that observed in other jurisdictions such as the US and the UK.』

この辺からは政策デザインに関する他国との違いの話で、今日はネタにしている時間が無かったりする(無計画ですいません)プラート理事のPSPP導入後の講演ではこの「財政が別で金融政策が同じ」場合の資産買入政策に関する論点を色々と説明しています。

『Conditions also differ because financial structures differ. In the euro area, corporate debt financing mainly takes place via banks, as opposed to capital markets in the United States. There is, however, no reason, once the transmission channel is not impaired by banks’ poor balance sheets, why this difference should impede the effectiveness of a broad-based asset purchase programme that works through a multitude of channels.』

金融市場構造の違いの話で米国の場合は直接金融チャネルが欧州よりも太いという話な。

『The programmes of both the Bank of England and the Bank of Japan were effective and the respective economies are almost as bank-based as the euro area.』

とは言えBOEや日銀のように間接金融が大きいところでも効いているのでECBのソブリンQEも効きますという話をしておりますな。


・結局のところECBは「各個の戦術を逐次投入しているがグランドデザインが足りない」と思うのだ

『One criticism is that we should have implemented our asset purchase programme much earlier. But it is not that we have not been acting last year. In a speech in Amsterdam in April last year I laid out three contingencies that would warrant a monetary policy reaction.』

僕前言ったでしょ攻撃とな。

『These were, first, an unwarranted tightening of monetary policy stance (e.g. from developments in short-term money markets) that could be tackled through more conventional measures. Second, a further impairment in the transmission of our stance, in particular via the bank lending channel, for which a targeted LTRO or an ABS purchase programme might be the right response. And third, a worsening of the medium-term outlook for inflation, which would warrant a more broad-based asset purchase programme.』

去年のアムステルダムの講演で(1)望ましくない金融政策スタンスのタイト化には伝統的(金利)政策、(2)金融緩和のトランスミッションメカニズムの毀損、特に銀行貸し出しチャネルなどに対してはLTROとABS買入、(3)中期的なインフレ見通しの弱まりには幅広い資産買入、という3本の話をしたでしょ、という説明でドラギ総裁のドヤ顔が目に浮かびます。

・・・・・・・・・えーっとですね、まあそれはそれで良いのですけれども、問題なのはこの(1)〜(3)を各個撃破というか個別対応で打ち込んでいることでありまして、実務的に見た場合にマイナス預金金利と大規模資産買入がコンフリクトを起こすというようなデザイン面の考察が欠けているので、戦略的な兵力の逐次投入になっているんじゃないでしょうかねえと思います。

『As these contingencies materialised we acted, first in June with the announcement of the TLTRO and ABS purchase programme. Then, as medium to long-term inflation expectations started to drift downward in the summer and the risks of a too prolonged period of low inflation were rising, we broadened our asset purchase programme with covered bonds in September and public sector securities last January.』

でまあこれらの問題にこれまでこのように対処しましたという説明だがな。

『Summing up, market reactions both before and after our announcement, as well as experience in other jurisdictions show that the asset purchase programme can work. What is the evidence that the easing of financial conditions is finally starting to affect the real economy?』


・で、PSPPなどがどうやって効くのかという話が最後に

『The expanded asset purchase programme and the outlook for growth and inflation』という小見出しが。

『Developments are pointing in the right direction. The so-called surprise index that compares actual macroeconomic data with consensus estimates of market analysts shows that on average the latest news is positive.』

『The slowdown in growth has reversed. Euro area real GDP rose by 0.3% quarter on quarter in the last quarter of 2014, which is somewhat higher than previously expected. Survey evidence points to further improvements in economic activity at the beginning of this year so that the economic recovery should gradually broaden and strengthen. And in January, the euro area unemployment rate dropped to the lowest level observed since August 2012.』

何ちゅうか凄いのは「こうやって効果をこれから発揮します」という説明ではなくて「ほらこのように既に効果を出していますよ」という話をしている辺りで、だったら何で追加緩和をするのよと言いたくなるのですが・・・・・・・・・(^^)。

『Of course, these improvements cannot and should not solely be attributed to our monetary easing.』

そらそうよ。

『But our monetary policy is certainly supporting the recovery.』

だそうです。


『This is also reflected in the ECB staff macroeconomic projections that we published last week.』

『In those projections, expectations for real GDP have been revised upwards, both for 2015 and 2016, relative to the previous exercise. These upward revisions are mainly driven by the favourable impact of lower oil prices, the weaker effective exchange rate of the euro - and the impact of our recent monetary policy measures.』

ECBスタッフ見通しが上方修正されていましたな。

『The latter have had a very substantial impact on what we call “market-based technical financial assumptions”, such as interest rates, exchange rates and stock prices, with the effect being especially large on long-term interest rates.』

今回の追加緩和で金利が下がって株が上がって為替がユーロ安に動いたのも経済に好影響ですよということで、結局資産市場チャネルかよという気ががががが。

『Annual HICP inflation, in turn, is expected to remain very low or negative in the months ahead and to start increasing gradually later this year. The ECB staff projections for inflation this year have been revised downwards to 0.0%. This mainly reflects the sharp drop in oil prices at the end of last year.』

ということでインフレの話なのですが・・・・・・・・・・・

『But there is good reason to believe that the effect of this shock will not extend beyond 2015, in part because our monetary policy decisions have significantly decreased the risk of second-round effects.』

『Accordingly, the inflation projection for 2016 has been revised slightly upwards to 1.5%; and for 2017 inflation is expected to be 1.8%. This expected pick-up in inflation is supported by the favourable impact of our recent monetary policy measures on aggregate demand, the impact of the lower euro exchange rate and the assumption of somewhat higher oil prices in the years ahead.』

『The ECB staff projections fully incorporate the estimated impact of our policy measures. They are thus conditional on the full implementation of all the announced measures. And this is indeed what we have started doing last Monday.』

・・・・・・・・・・ということで、物価見通しは達成できるでしょうという話をしているのは良いのですが、資産買入プログラムの追加部分がどういう効果を出すのかというのは結局何が何だかよくワカランチ会長なままで終わるのでした。

最後は『Conclusion』である。

『Let me conclude. Our recent monetary policy measures are a valid and effective tool to bring inflation closer to our policy goal. They can support a faster and more sustained recovery. This will especially be the case if they fall on fertile ground. Governments can create a more investment-friendly environment by swiftly, credibly and effectively implementing structural reforms. The beneficial impact of our asset purchases on financing conditions, rather than reducing the incentives for reforms, will actually increase the benefits of such reforms, as firms will be encouraged to increase investment, bringing forward the economic recovery. Effective, price-stability oriented monetary policy and structural reforms work hand in hand.』

ということでまとまっているのですが、どうもこうポイントが微妙な政策効果の説明ですなあという事で。


あと、プラート理事
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150311_1.en.html
Public sector security purchases and monetary dominance in a monetary union without a fiscal union
Speech by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at the Conference The ECB and Its Watchers XVI,
Contribution to the Panel on Low-interest-rate Policy and Non-standard Monetary Policy Measures: Effectiveness and Challenges,
Frankfurt am Main, 11 March 2015


クーレ理事
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150310_1.en.html
Embarking on public sector asset purchases
Speech by Benoit Coure, Member of the Executive Board of the ECB,
at the Second International Conference on Sovereign Bond Markets,
Frankfurt, 10 March 2015

の説明が論点整理に宜しいと思いますのでおすすめ(時間と量の関係上できなかった・・・・・orz)。




2015/03/13

お題「今日は虫干しECBネタですいません」

http://www.asahi.com/articles/ASH3D5PYLH3DUTFK00R.html
安倍首相「番組それぐらいで萎縮、情けない」 予算委
2015年3月12日20時57分

・・・・・・まあ何だ、内務省検閲によりノーコメントということで。

ということで(どういうことだ)超遅くなりましたがECBネタで少々

○先般のドラギ会見ですが例によって例のごとくの仕切りが影響しているようでアレ

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150305.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Nicosia, 5 March 2015

ということで先週のECB定例理事会後の会見ですけれども、最近ECBが得意とする「施策は実施しますが詳細は会見の後に説明」という何のための記者会見だというECBの得意技が炸裂しているせいか、ソブリンQE買入の手段絡みの質問が殆ど無くて(要綱が出てない上にそもそも出たのもアレだから出てても質問のしようが無かったかもしれないけど)ギリシャ関連の質問と物価見通しの質問が少々という感じでした。

まあそれはそれで良いのですが、これそろそろプレスの方が怒り出すような気がするんですけどECBっつーのも大概にファンキーなところですなと思う次第。

・買入に関する説明部分

『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with our forward guidance, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. As regards non-standard monetary policy measures, the focus is now on implementation.』

ということでソブリンQEに関する説明が以下始まる。

『Following up on our decisions of 22 January 2015, we will, on 9 March 2015, start purchasing euro-denominated public sector securities in the secondary market. We will also continue purchasing asset-backed securities and covered bonds, which we started last year. As previously stated, the combined monthly purchases of public and private sector securities will amount to ユーロ60 billion.』

ここでの新たな情報は3/9から開始という所だけな。すでに始まりまして今のありさまなのですが。

『They are intended to be carried out until the end of September 2016 and will, in any case, be conducted until we see a sustained adjustment in the path of inflation which is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

これは前回の時にも説明していた通りですが、実は物価目標水準に近づく時期が前倒しになると途中で終わってしまう仕掛けになっておりますが、欧州市場はヒャッハーヒャッハーとやっております訳で。

『Further information on certain implementation aspects of the public sector purchase programme will be released at 3.30 p.m. CET on the ECB’s website.』

これが相変わらずのECBクオリティで、これで質疑応答しろと言われても質問のしようがなくて、たまたま今回はギリシャの話があるからそっちの方が質問しやすいのでその先の質疑応答ではギリシャネタだらけになっていました。

『We have already seen a significant number of positive effects from these monetary policy decisions. Financial market conditions and the cost of external finance for the private economy have eased further, also following our previous monetary policy measures. In particular, borrowing conditions for firms and households have improved considerably. Moreover, money and credit dynamics have been firming.』

これまでの緩和政策は金融環境を緩和してマネーやクレジットの活動が徐々に活発化している辺りなんぞが特に効果を発揮しています(キリッ)とな。

『The substantial additional easing of our monetary policy stance supports and reinforces the emergence of more favourable developments for the euro area economy. In an environment of improving business and consumer sentiment, the transmission of our measures to the real economy will strengthen, contributing to a further improvement in the outlook for economic growth and a reduction in economic slack.』

追加の金融緩和政策はセンチメントの改善や実体経済への金融政策のトランスミッションを強め、それによって経済の見通しを更に高めて経済のスラックの低下に寄与するというまあフワフワな説明な訳よ。

『Thereby, our measures will contribute to a sustained return of inflation towards a level below,but close to, 2% over the medium term and underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations.』

それによって物価が2%近くに上昇したりインフレ期待を確りアンカーさせるということだそうで、以下の説明が経済物価情勢のいつものアセスメントになります。

・・・・・・・つーことで、結局今回のソブリンQEによって「金利に作用」するのか「量に作用」するのかという話は無い上に、そもそもインフレ期待の下落を止めようとしているのか、金利を下げて需要喚起をしようとしているのか、はたまた銀行貸出を伸ばそうとかしているのか、というようなトランスミッションメカニズムに関しての説明もない訳で、マイナス金利は「金利を下げる」でしたし、ABS等買入は「ABS市場の環境を緩和して貸出市場に働きかける」でしたし、まあそれなりに導入時に説明があったのですが、今回のソブリンQEの特徴は何というかこうフワフワとした説明をしている所で。


ちなみにQ&Aでは今回のソブリンQEに関する直接的な質疑は以下の2つ。

『Question: There are more and more government bond yields that have turned negative in the eurozone. You said in January that negative bond yields wouldn’t prohibit you from doing QE, but is there a limit to how low, how negative these bond yields can be in order for you to purchase bonds at a negative yield?(後半割愛)』

『Draghi: First of all, let me say, our monetary policy decisions have worked, and it’s with a certain degree of satisfaction that the Governing Council has acknowledged this. The monetary policy decisions we are discussing today are the final set of measures of a series of decisions that have been taken starting in June last year, and we see that the objectives are gradually being attained. The market reaction to the announcement, the expectation first and the announcement second, of our asset purchase programme has also been quite effective and quite positive.』

『We haven’t even started, and a lively discussion about whether we’ll actually be able to do this has developed. It’s quite interesting that until a month ago, nobody had any doubt that public debt, sovereign debt in the euro area, was actually very, very big, and now some people worry that we won’t have enough bonds. Incidentally, I’m told that the very same statements were made when the US and the UK started their bond buying programme. But the bottom line of this is that there may be complexities. We think they’re not relevant. We observe that almost half of the euro bonds are outside the euro area and we also observe that the average weighted price of bonds in the 2 to 30-year maturity is well above par. It’s exactly 124%. So how negative do we go? Until the deposit rate.(後半割愛)』

ということで、ここで−20bpまで買いますという話をしておりますが、前半の所では政策アナウンスした時点(1月)から金利が低下してすでに効果とかいう話をしておりまして、「量が効果」なのか「金利が効果」なのかが実にこうファジーになっているのが味わいがあります。

でもって質問の買入政策の限界については全く問題ありませんという説明キタコレですが、まあ何ちゅうかそう答えるしかない面はあるにせよ、結構乱暴な説明だなとは思います。


この質問は面白い。

『Question: In the last weeks, we have seen negative yields in public debt, in some public debts. In Germany, even five-year bonds are in negative territory.. Do you think these countries, Germany in particular, should use this new fiscal space to guarantee the effectiveness of the monetary policy transmission mechanism?』

ドイツなどはマイナス金利になったのだから金融政策の有効性を高めるために追加財政の余地はないのかとな。

『Draghi:(前半割愛)On the first point, I frankly don’t want to pass judgement on specific individual countries’ fiscal policies. What I could say, however, is that the monetary policy measures that we decided in January, but also for the previous ones, to be fully effective, need first and foremost strong structural reforms. That is, otherwise we can provide as much credit as possible. We can refinance the banking system so they can lend as much money at the lowest interest rates. But if the structural conditions are not in place, there will be little incentive to use this credit.』

『I’m not saying that these measures are not effective. I’m saying that their effectiveness is going to be lower. And from our viewpoint, that means it’s going to take longer to get to our objective of price stability, namely an inflation that is close but below 2% in the medium term.』

個別国に関する答えはしておりませんが、低金利によって金融機関の貸し出し行動が活発化することを期待しているような説明があったり、構造改革に期待するという説明があったりで、まあ綺麗な言い方をすればソブリンQEは「総合的な金融環境の緩和によって貸し出しの増加などに期待しながら域内の構造改革促進の際の下支え機能を出す」という事になり、具体的に国債を買う事によってどのようなルートでどう効くのか的な個別具体的な話を突っ込まれると困るんだろうなあというのは把握しました。


○そんな訳で今更1か月前に出ている議事要旨をネタにするのだ

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2015/html/mg150219.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank
held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 21-22 January 2015

今更でどうもすいません。しかもクソ長いのできちんとまとめられるかという不安ががががが。


・ということで今回は追加緩和実施に関する議論部分を駆け足でみていくことに

後半3分の1くらいの所になります『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions 』の『Monetary policy stance and policy considerations 』から。


・そもそもソブリンQEはお助けでやる以外却下という見解もあるようだ

最初のパラグラフ。

『With regard to the monetary policy stance, the members broadly shared the assessment that inflation dynamics had continued to be weaker than expected, economic slack had remained sizeable and money and credit developments had continued to be subdued, notwithstanding recent more positive monetary developments.』

経済物価情勢が弱いというのは認識を共有。

『The Governing Council was thus faced with heightened risks of too prolonged a period of too low inflation. On the basis of its reassessment of the outlook for price stability and the monetary policy stimulus achieved, the Governing Council discussed (i) whether or not there was a need for policy action at the current meeting; (ii) which instruments to use if additional monetary policy measures were seen as warranted; and (iii) how to frame the regime of risk sharing and the precise implementation modalities to be applied to an expanded asset purchase programme.』

で、追加緩和検討する理由は「望ましくない低インフレが長期間継続するリスク」であるという整理もついている。

『As a general starting point, all members considered asset purchases, including sovereign bond purchases, to be part of the set of monetary policy instruments which, as foreseen in the ECB’s legal framework, were at the Governing Council’s disposal if and when required for it to deliver on its price stability mandate, although some members argued that this instrument should only be used in contingency situations.』

ソブリンQE実施という選択肢に関して数名はお助けオペで実施する以外での適用はいかがなものかという見解があるようで。


・相変わらず「量が足りない」という話になっているのだが預金のマイナスを戻す気はないというのが不思議ちゃん

その次のパラグラフ。

『A number of considerations were put forward in support of monetary policy action being taken at the current meeting. While the existing monetary policy measures adopted in June and September 2014 were showing encouraging results with regard to a further improvement in overall financing conditions, it had become increasingly evident that they would fall short in quantitative terms.』

ということで、2014年に実施した緩和政策は「量的な観点が欠けている点でさらなる改善が必要であることが徐々に判明してきた」という認識になっているのが相変わらず不思議で、預金ファシリティを懲罰金利にしておきながら「量が足りない」とか言っているECBの整理(FRBにしろ日銀にしろ預金ファシリティはプラスの金利なんだが)ってどうなっているのかがさっぱり分からん。

『This implied that the expected stimulus via funding cost relief and the boost to lending provided by the TLTROs and the existing private sector asset purchase programmes was more limited than had initially been envisaged. The view was widely shared that inflation developments continued to be weaker than expected. Inflation outturns had been on a continuous downward trend, which had led to successive downward revisions of the inflation outlook for the euro area to levels well below the Governing Council’s aim of inflation rates over the medium term of below, but close to, 2%. In addition, shorter-term inflation dynamics had started to influence inflation expectations at longer-term horizons.』

『In this context, the potential for second-round effects on wage and price-setting had increased, significantly increasing the risk of inflation remaining too low for too prolonged a period of time.』

インフレが政策突っ込んでいるのに中々戻ってこなくてセカンドランドエフェクトの懸念があるので追加は必要ですというのは分かるのだが、だったらもっと量を志向したらと思うのですが、先ほどのドラギ会見での説明でも「金利が先に下がって効果が出た」という話をしていて、結局このあたりが良く言えば総合的なのだが悪く言えばフォーカスが曖昧なのがどうもねという所です。


・おそらく「実質金利上昇」の呪縛があるのではないかと思うのだ

その次。

『Taking into account both the weakened medium-term outlook for price stability and the smaller than envisaged monetary stimulus introduced by the policy measures adopted in June and September 2014, the prevailing degree of monetary policy accommodation was seen to fall short of sufficiently countering the heightened risks to the ECB’s medium-term price stability objective.』

だから預金プラスにして量を稼げばよいジャンと思うのだが・・・・・・・・

『Against this background, there was a broadly shared view that the conditions were fully in place for taking additional monetary policy action at the current meeting. Moreover, an unwelcome tightening in the monetary policy stance - as reflected, for example, in higher real interest rates in an environment of declining prices with policy rates at the lower bound - needed to be countered.』

しかしこの「今回実施しないと市場が期待を外されるから反動が起きて悪い結果になるのを避けるためにも追加緩和すべき」って完全に市場後追いというか、合議制委員会の意味がなくなるような話になるからこういう論点はたとえ思っていても中央銀行の議論として表に出さない方が良いと思うのだが(相当期間がたってからならありとしても直後はまずかろうよ直後は)。

でまあここであるのは「実質金利が上昇するという問題が」という話をしておりまして、インフレ期待がアンカーされていないという建付けになっていない以上、名目の金利が上がると実質金利が上昇してしまうので、そうなると預金ファシリティ金利を下げられないという話。

まあ当初の時点で量的緩和政策をする気が特になくて、そこまで追い込まれる見通しもあまりなかったからだろうなあとは思うのですけれども、日本や米国のLSAPを見ればわかるように「金利を極限まで押し下げる」よりも「金利を残して量の拡大で勝負」した方が政策発動の余地がのこるのと時間稼ぎがしやすいのでして、そもそもECBは預金ファシリティをゼロ金利まで下げた時点で緩和政策が長期化する可能性への考慮がかけていたとしか申し上げようがない。

『Monetary policy needed to act to anchor inflation expectations in line with price stability over the medium term. Such anchoring required forceful policy action in addressing too low a level of inflation, just as had been the case in the past when countering inflation rates above the ECB’s price stability objective. In addition, the current meeting was the right time to take monetary policy action as it would allow the measures to provide decisive support to the momentum of the recovery in the period ahead.』

インフレ期待をアンカーするのが重要云々というのはまあ通常の話なのでここはヨロシ。


・反対意見について

その次が反対意見のお話。

『A number of considerations in favour of maintaining a wait-and-see stance at the current meeting were also advanced by some members, as the cost-benefit assessment of the proposed measures was not positive in their view.』

コストとベネフィットを勘案して今回は見送りという人たちの論点紹介コーナーになります。

『In short, a slightly different assessment of the economic situation, the inflation outlook and money and loan dynamics could be made, the effectiveness of the proposed measures could be questioned and the potential negative side effects of these measures should not be underestimated.』

ということで・・・・・・・・・・・

『In greater detail, although inflation had fallen uncomfortably low, the recent sharp decline in oil prices had been the dominant factor behind the decline. Given the uncertainty about the impact of the oil price shock on the medium-term price outlook, notably in view of its positive impulse for growth prospects, and the possibility that the oil price shock might be a one-off event or might reverse, the extent to which the relevant medium-term inflation outlook had changed significantly remained unclear.』

『Accordingly, risks of second-round effects seemed rather contained. Moreover, recent declines in inflation expectations might also be mainly driven by negative inflation risk premia, low liquidity and high uncertainty, which, while worrying developments, could not be taken as evidence of an unanchoring of inflation expectations. Reference was again made to the market-based measures of long-term inflation expectations in the United States, which were currently moving in tandem with those in the euro area despite the implementation of large-scale asset purchases in the United States.』

足元の物価下落の原因の原油安はそもそもワンタイムだし経済にはプラス効果があるし、確かにまあセカンドラウンドエフェクトの観点もあるが、足元のインフレ期待関連の指標数値の低下はインフレリスクプレミアムの低下などの要因であってインフレ期待がアンカーされなくなっている訳ではないのではないかという状況認識の話がまず入りますな。

『On the basis of these considerations, in the view of some members there appeared to be no urgent need for monetary policy action at the current meeting. In particular, broad financial and monetary conditions, including interest rate and exchange rate developments, had provided additional stimulus over recent weeks.』

したがって現状の緩和的な金融環境を勘案すると別に追加緩和イラネというのが数名の反対意見のベネフィット部分の話。

『Moreover, while the decline in inflation expectations had led to a tightening in the monetary policy stance in terms of real short-term interest rates, real lending rates for loans to NFCs had improved more recently, for example when compared with their level in May 2014. In this context, it was also highlighted that there was still monetary accommodation in the pipeline owing to the ongoing implementation of the existing monetary policy measures, and the full effect of these measures on the economy was still to be seen.』

現実問題として非金融セクターへの貸し出し金利というのは低下を続けている訳で、インフレ期待が低下すると実質金利が上昇してケシカランという議論についても、実効的な面でみれば貸出金利が低下傾向を続けているので大きな問題にはならないのではないか、とはこれまた中々面白い方向からのツッコミ。


・ソブリン購入に関する論点

『It was also cautioned that the case for action could not be separated from the issue of the choice of instrument. Purchases of sovereign bonds were associated with a number of challenges and side effects particularly related to the nature of sovereign bond purchases within the specific institutional framework of Economic and Monetary Union. Therefore, purchases of sovereign bonds should remain a contingency instrument of monetary policy, to be used only as a last resort in the event of an extremely adverse scenario, such as a downward deflationary spiral.』

更に国債買入に関する話に限定した論点が出ておりまして、そもそも論としてマネタリーユニオンの観点からいかがなものかと思われるのでもっと極端なケースで発動すべきという見解ですな。

『However, thus far there was no evidence of a serious risk of deflation, which clearly argued against mobilising the instrument of sovereign bond purchases at the current meeting.』

で、いまはそこまで極端な状態じゃないでしょという指摘。

『As regards the most appropriate instruments for achieving additional monetary stimulus, the point was made that purchases of corporate bonds, possibly complemented by purchases of supranational bonds, could be seen as the most natural extension of the Governing Council’s credit easing package, representing a more targeted measure directed towards a further improvement in the financing conditions of firms. However, it was widely judged that, given the current level of corporate bond yields and the size of the corporate bond market, the credit easing potential of corporate bond purchases appeared rather small, and therefore offered only limited scope for providing the degree of accommodation needed at this stage. At the same time, the remark was made that this asset class should not be excluded from future consideration, if needed.』

これはソブリン購入正当化のほうの話で、社債とかは有効だがソブリンは量があってたくさん買えますとここでやっと量の話が出てくる。

『Consequently, it was broadly agreed that any further monetary policy measure would need to involve purchases of government securities. One of the variants mentioned, namely to limit the purchases to a portfolio comprising only sovereign bonds of the euro area countries with the highest credit ratings, was generally regarded as being insufficiently effective.』

で結論としては域内の高格付けソブリン債を買いますという話に。

『Against this backdrop, a large number of members were in favour of expanding the existing private sector asset purchase programmes to include purchases of a broad portfolio of securities of euro area governments and agencies and of supranational institutions. Purchases of sovereign debt appeared to be the only remaining instrument of sufficient scope to provide the necessary monetary stimulus to deliver on the ECB’s price stability objective. Through the compression of euro area sovereign yields, portfolio rebalancing effects could be set in motion, including spillovers to the prices of a multitude of other assets. As a result, forces would materialise which would lead to an easing of conditions across broad sources of financing, including those relevant for the borrowing conditions of euro area NFCs and households.』

ということでa large number of memberがソブリンQE実施に賛成ということですが、ここではその効果にポートフォリオリバランスだの全体的な金融環境の緩和だのという説明になっています。


・政策の有効性に関する指摘がいくつか

でまあその次。

『Some degree of caution was still expressed with regard to the potential effectiveness of sovereign bond purchases. Sovereign bond yields in the euro area had already approached rather low levels, limiting the scope for further yield compression and, consequently, the potential funding cost relief to be passed on to final borrowers’ financing conditions. In addition, portfolio rebalancing effects could turn out to be more muted than envisaged given the ongoing need for balance sheet adjustment in the financial and non-financial sectors. Moreover, in the United States the capital market-based transmission channels were at work, most notably via direct effects on mortgage and housing markets and the greater role of corporate bond markets, and these factors might be weaker in the case of the euro area.』

ということで、そもそも金利が低いだろとか、ポートフォリオリバランスはここまでそんなに効果出てないだろとか、資本市場経由の効果は米国などと違って弱いのにQEで効くのかとか色々とツッコミは入っています。

『It was noted that monetary policy action, particularly in the area of sovereign bond purchases, could not be seen in isolation from the actions of other policy actors. Possible moral hazard implications for euro area governments could weaken their incentives for structural reforms and fiscal consolidation. Hence, there was broad agreement that the effectiveness of sovereign bond purchases would also depend on the appropriate action on the part of other policy-makers in the euro area. Growth-friendly fiscal policies, while fully respecting existing commitments, were seen as an effective instrument to support economic growth in the euro area at the current juncture. Moreover, the determined implementation of structural reforms, together with actions to improve the business environment, would increase investment activity, boost job creation and increase productivity growth. This would not only raise the euro area’s long-term growth prospects, but would also reinforce the positive effects of any monetary policy measures on economic growth and inflation developments. These were strong messages to be conveyed to euro area governments and the European Commission.』

国債買入でモラルハザードとか、財政構造改革がお留守になるのではという話もありますな。


『It was also noted that the Governing Council had to be wary of possible financial stability ramifications which could arise from intervening in already generously priced markets. Spillovers from sovereign bond purchases not only into corporate bond prices, but also into equity prices, could trigger the mispricing of risk and feed financial market exuberance with potential destabilising effects on financial markets. At the same time, it was remarked that this should be addressed by macro-prudential policy.』

金利低下で貸出金利などが低下するのは良いとして、株式市場などへのスピルオーバーなどからファイナンシャルスタビリティの問題が生じないかとか、まあ色々と指摘があるのは把握したが、結構まあこれを見ると議論がまとまっていない中突っ込んだなあ感は強いのでありました。

#以下の部分は損失負担の議論なので割愛します






2015/03/12

お題「引き続き欧州金利低下&日本は流動性低い〜/白井審議委員講演は最後を見て顎が外れてしまったという悪態」

クソ寒い時よりも中途半端に気温が上がっている時にお布団から出たくなくなる現象について考察したい(^^)。

○例によって市場関連メモメモ

・引き続き欧州金利ェ・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL4N0WD4QG20150311
ユーロ圏金融・債券市場・終盤=利回り低下継続、独連銀に国債買い入れ枠末達懸念
2015年 03月 12日 02:55 JST

『[ロンドン 11日 ロイター] -
(カッコ内は先物が欧州市場の前営業日終値比、現物が前営業日終盤)

*GMT:17時44分

先物清算値
3カ月物ユーロ(6月限)   100.00 (+0.00)
独連邦債2年物(6月限)  111.21 (+0.00)
独連邦債5年物(6月限)  129.48 (+0.01)
独連邦債10年物(6月限) 158.64 (+0.31)
独連邦債30年物(6月限) 174.58 (+2.48)
 
現物利回り
独連邦債2年物       -0.241 (-0.237)
独連邦債5年物       -0.118 (-0.114)
独連邦債10年物      0.206 (0.234)
独連邦債30年物      0.653 (0.724)』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・ということで昨日の欧州というかドイツ様ではイールドカーブのロンガーエンドの方が盛大に金利低下しております。というか東京の夕方だと10年とかの金利上がっていた時間帯もあったような気がするのですが、結局ヒャッハーと金利低下していて、だんだん「金利低下の余地があるところの金利をつぶす」というどこかで見たような展開になっているのがお洒落というものです。

『市場では利回り低下を背景に、買い入れ対象の国債が不足し、独連銀が買い入れ枠を達成できないのではとの観測が浮上している。(途中割愛) ロイターの試算によると、買い入れ可能な独連邦債はおよそ7000億ユーロ程度。こののうち2000億ユーロ超の期間2━4年の国債利回りはマイナス0.20%か、もしくはこれを下回っている。』(上記URLより)


まあここで良いのだか良くないのだかワカランチ会長ではあるのですが、ECBの場合は別にマネタリーベースにコミットしている訳ではないですし、買入についても詳細が適当にぼかされていますし、中銀バランスシートが拡大しないからその分の効果が足りないとか言ってるくせに預金ファシリティを下回る出来上がり利回りの国債は買わない(米国のAPPにしろ日本のQEにしろ超過準備付利金利よりも低い出来上がり利回りの国債をホイホイと買っている)という謎仕切りを設定していますし、この政策で市場のどこにどういう作用をさせてたいのかについての話がファジーにも程がある(まあ本音ではユーロ安にして時間稼ぎをしたいんでしょうけれども)ので札が割れた後どういう動きになるのかというのも良くわからんところです。

一応このへんの解説記事らしきものを見ると短いところが買えない分後ろの買いが増えるのでは的な思惑なのかなとは思いますが、PSPPのFAQコーナーなどでは「イールドカーブ中立」と言っているので、札割れ上等とかいう可能性もあるような気がするんで、なんちゅうかはしゃぎすぎではないかという気はだいぶしますな、うんうん。

まあ何ですな、「こんな凄まじい額の国債購入したら長期金利もゼロに向かっていくではないか〜ヒャッハー!!」となって0.315%テイク〜ン!とかこの前やっていたような記憶があったようななかったような気がする(白目)上に、「日銀トレードヒャッハー!!投資家が買わなくても日銀が上までどんどん買うからどうせ投資家もついて行かざるを得ないぜ追加緩和だってあるぜヒャッハーヒャッハー!!」となって0.195%テイク〜ンとかつい先日やっていたような気がする(吐血)ので、まあ欧州の皆様のお気持ちは分からんでもないという所です。

でもまあジャパンのようにオモシロ火吹き状態になるのがどこかで起きるとは思うのですが、それがいつ起きるか分かれば苦労はしないわけで、お気楽に「いつか爆発する」とか言っていましても相場戦略的には1ミリも意味がない(そもそも債券投資というのは利払と償還がある関係上通常はロングの方が有利にできているのでいつか爆発系のショートメイクはエアポジションなら最強だが実際の戦略的にはどうなのよという所で)のが残念なところです(涙)。


しかしドラギ総裁のこのコメントは実際の本文を見た方が良いのかもしれないがニュースヘッドラインで反応。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0WD3C020150311
UPDATE 1-ECBの債券買入れ、ギリシャ問題の波及回避に寄与=ドラギ総裁
2015年 03月 11日 19:03 JST

『ドラギ総裁は「ギリシャの危機にもかかわらず、ポルトガルなど、債務問題で支援を受けた国の国債利回りは一段と低下している。これは、資産購入プログラムが、(ギリシャからの)波及を防いでいることを示唆している」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・うーんこのという感じですが、そもそも周縁国お助けスキームの国債買入ならOMTという抜かずの宝刀がありますのでそれ使えと思いますし、PSPPはインフレ期待を引き上げたり需要を引き上げたりするために従来の金融政策ツールに加えて量を出すような政策を実施しましたという建付け、という形でリリースされているはずですので、そもそも金利低下をするのはPSPPの実施による効果について市場が信用していないことを意味する(実際問題として米国にしても日本にしても従来よりも大規模な資産買入(QE2とかQQE)を実際に打ち込んだ後は結局金利が上がっている(その前に金利が下がるが)という事象が生じている訳で、そもそもECBの場合は国債買入の追加緩和をしている中で金利が盛大に低下しているというのは政策効果に対して市場が期待していないことをいみするのだから懸念しろよと(まあ口に出さなくても良いけど)とゆーところではありますな。

まあ単に金利を下げてユーロ安に持って行って時間稼ぎをしたいだけ、という事なのかもしれませんが・・・・・・・


○相変わらずの流動性無し子ちゃん相場ですにゃ

http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPL4N0WD28T20150311
〔金利マーケットアイ〕国債先物は大幅反発、長期金利0.415%に低下
2015年 03月 11日 15:21 JST

『<15:15> 国債先物は大幅反発、長期金利0.415%に低下

長期国債先物は大幅反発。前日の海外市場で欧米金利が低下した流れを引き継ぎ買い戻しが先行した。後場は日銀オペで需給の底堅さを確認できたため、海外勢を巻き込んで買い戻しに拍車がかかり、上値追いとなった。引き続き変動率は高い。現物債は先物に連動性を強めた長期ゾーン、しっかりした日銀オペ結果を受けた超長期ゾーン利回りに強い低下圧力がかかった。長期ゾーンに国内銀行勢、超長期ゾーンに保険会社の押し目買い観測が出ていた。あす入札を控える5年債も強含みで推移。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比49銭高の147円09銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同5bp低い0.415%に低下。』(上記URLより)

・・・・・・・まあ米国金利の影響もあるんでしょうけれども、前日は流動性供給入札が滑って債券市場があばばばばーとなったと思ったら昨日は海外金利下がったし輪番もあるしで強くなって輪番も超長期が確りで今度はヒャッハーヒャッハーの展開とかで、40銭だの50銭だの上がったり下がったりとはご苦労な話ではありますが、よーするに市場の厚みが全然ないのでこのありさまという所でもありますし、この調子で輪番どこまで持つのかよというのもある(だいたい中期減額しているけどこのままだと国債買入ペース足りないだろとか)とか、まあ流動性は無いわ(期末要因で流動性が更に落ちている面はあるけど)大丈夫かという所ではあります。

なお、本日は5年と3M短国の入札がありまして、短国の方は最近は日銀トレードヒャッハーというのもすっかり静かになりまして(そらまあ今月は短国買入少なくなるのだから当たり前だが)、一方で期末要因だの諸々の流れで流通玉の方はあまりなくて、ゼロ近辺の水準ですっかり売りも買いも止まって入札の時以外動かんという閑散相場になっております。

ということで、まあ5.7兆円の入札で明日オペが入るのが入って1兆入らなくて5000億円とかでしょうから、入札とセカンダリーをマイナス利回りで回すと在庫が残ってキツいでしょうから入札の所ではプラス利回りになるんじゃないですかね(てきとう)。

5年に関してはしかしまあ別にいいんですけど何も昨日相場持ち上げなくてもと思いますし、大体からして水準がちったあ戻ったとはいえ10bp台前半と中途半端に低い金利でどうなんでしょうかねえとしか(−−:


○白井審議委員の講演は内容が無く量があるのだがまたまた「さゆりちゃんの事大主義」が炸裂している件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150311a.htm
緩やかなインフレ経済への転換に向けて
―企業と家計のインフレ予想の現状―
ブリューゲル(3 月4 日)、欧州中央銀行(3 月6 日)、イングランド銀行(3 月10 日)における講演の邦訳

何と表紙と図表を含めると42ページもありまして、どんだけ凄い話をしているのかと思って読んだのですが、これがまた内容が全然無くて読んでいて苦痛としか申し上げようが無いのだが、これを海外でドヤ顔で講演していたかと思いますと、最早国辱レベルですし、あなたさまの出張経費は実質的には公費なんですけどと思いますと大変に血圧も上昇する健康によろしくない講演ではあります。


・でまあ内容はマジで無いのだがどういう風に無いのかだけ報告

最初にこんな説明しています。

『そうした点を念頭に置いて、本日は、QQE導入以降の約2年間に亘る日本銀行の「経済・物価見通し」を振り返り、かつ「直近」の見通しを上振れ・下振れさせるリスク要因について、私の見方をご説明します。その後、物価安定目標の実現において各中央銀行が重視する予想物価上昇率について、わが国の現状についてもお話しいたします。』

でまあ後半の予想物価上昇率に関してですが、日銀短観の物価に関するサーベイと、生活意識アンケートの物価に関するサーベイの結果として公表されている結果および図表を延々と並べてああでもないこうでもないと屁理屈を繰り広げている部分が講演テキスト本文7ページ目から16ページ目まで延々と続くという、そういう説明はスタッフがやる話だろお前は政策委員なんだからその結果を踏まえてどうするという話をしやがれという状態でありまして、まあ何なんでしょこの人はという所です。


・ということでまあ読む部分は最後のまとめの部分だけなんですけどね

つーことでまあこの白井講演ですが、まとめの『4.最後に』という1ページ弱の部分だけが読み物として使えるという頼むから早く審議委員引退してくださいという感じなのですが、この内容がまた顎が外れるレベルで酷いというかさゆりちゃんの事大主義(悪い意味で言ってますよもちろん)炸裂の巻という浅ましさを感じるものです。

『日本銀行が2%の数値目標を掲げた理由は、@再度デフレに陥らないために、統計の上方バイアスも勘案したある程度の「物価上昇率のバッファー」を残しておく必要性、A景気後退局面において柔軟な金融政策発動余地を維持しておく必要性、B恒常的な円高を避けるために国際基準となりつつある2%程度の目標に合わせる必要性、等を考慮したためです。加えて、わが国経済は、過去15年間に亘り名目GDPが横ばいないし低下していますが、この伸びがプラス圏内で推移するような経済状況の実現が不可欠だと考えられているからです。』

とまあここまでは普通なのですが・・・・・・・・・・

『とはいえ、家計は「物価上昇は生活費の上昇をもたらし好ましくない」と捉える傾向があり、しかも2014年度は実質所得が低下したことから、2%目標を掲げることの意味を広く理解していただくのは容易ではありません。しかし、2015年度以降は(名目・実質)所得が上昇していくことが見込まれます。そこで、2%目標の重要性や金融緩和の意図に対する理解が国民・市場に浸透していくように、日本銀行による広報活動をもっと工夫する必要があると考えています。今後も改善を目指して努力をしていく所存です。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、そもそもQQE実施して物価が先に上昇すると賃金は基本的に遅行して上昇する(浜田先生などは実質賃金が下がることによって雇用の数量が拡大することが重要と説明していましたよね)わけで、賃金が遅行して上昇するのは最初から分かりきった話であり、それに対して2年の目標達成期限がもうすぐというこの時期に『2%目標を掲げることの意味を広く理解していただくのは容易ではありません。』とかお前は2年間何無駄飯食ってたんだと小一時間問い詰めたい。

ちなみに2013年11月27日の徳島金懇では白井さんこのような説明をしていましたけどね。

『『以上の英国の事例をわが国に置き換えますと、以下の点が指摘できるかと思います。

・ 実際のインフレ率が2%目標に向けて上昇していく途上において、中長期の予想インフレ率も上昇しうると考えられること。

・ 中長期の予想インフレ率が2%に向けて収束していく途上でアンカーが確立するまでの間は、実際のインフレ率は(国際商品市況やその他の影響を受けるため)中長期の予想インフレ率をオーバーシュートして上昇することが起こりうると考えられること。

・ 2%の物価目標については、一定のレンジよりも、ポイント水準の方が望ましいと考えられること。』
(以上2013年11月27日の徳島県金融経済懇談会挨拶より)


・しかしこれは事大主義さゆりちゃんが炸裂したと思えば驚かないという点について

つーことで、そもそもお前QQEの推進をなんだと思っているんだというゴミ講演が飛び出してしまい、今回はあまりのゴミさに遂に細々としたいちゃもんをつける気力もわかないというゲロクオリティになっているうんこ講演な訳ですが、うんこはうんこなりに意味合いというのを考えますと、そういえばこのお方は執行部が変わる直前の決定会合で謎提案をして自己アピールをした、という見苦しいにも程がある上にコミュニケーションポリシーを混乱させるというクズ提案をしたという実績がほんの2年間にある訳ですよ。

でまあ今回は急に「2%を一般の方々に理解いただくのは難しい」とか2%目標そのものに対して問題提起をするかのような話(当然2年云々の必要性の話はない訳で)をしているというのは、まあ2年前の浅ましい行動と同様に政治方面から吹いてくる風を読んでさっそく鞍替えに入っている、とまあそのように考えますと、さゆりちゃんの事大主義(悪い意味で使われる方の事大主義ですよ)がさっそく炸裂して新しい風に尻尾を振って擦り寄っているという事で、なるほどそういう流れになっているのかなどと思いますとそれはそれで味わいがあるというのものです。そういえば今度来るジンバブエ先生も2%目標よりも重要なのは雇用が良くなることであって2%は手段に過ぎないとかお前今までの話はどこに逝ったんだよという話をしていますからね!!!!!!

しかしまあ何ですな、この前の宮尾さんの講演も大概でしたが、日本の経済学者ちゅうのはこういう芯も何もないのだらけなのかよと小一時間問い詰めたくなる訳で、先日も悪態をついたと思いますが、こんなフニャフニャなのが揃っていますと執行部は楽でいいだろうなあと思いますけど、まあそもそも理論の前提自体が必ずしも堅確なものではないだけにコロコロと転がってしまうんでしょうなあと思いますと、実業界なり金融市場なりという確固としたバックグラウンドのある審議委員の皆様のしっかりぶりと学者の腰抜け振りというのがまあそんなもんなんでしょうかねと思ったりする春のひと時なのでございました。

何せ白井さんの場合はさっき全面的にすっ飛ばしましたけれども経済物価情勢の所の最後で物価についてこういう話をしているんですよ今回。

『最後に私の個人的な見解ですが、物価上昇率の一時的な低下は、(昨年10月に追加緩和をしたこともあって)物価の基調や国内需要の回復ペースが持続している限り、容認し得ると受け止めています。しかしながら、物価上昇率が2%程度に近づくタイミングについては、直近の見通しから後ずれする可能性を含めて、不確実性が高まっていると考えています。』

だったら追加緩和の提案しろとか思う訳で、このように両建てポジションを作って当たった方だけ後から引っ張り出してきて「私が指摘した通りになりました(ドヤァ)」と言い出すという辺りがもう何だかねという所ですが、どうも白井大先生におきましては政府方面からの梯子外しプレイの空気を読んで自分も先に足抜けをしようとしているようで、実に浅ましいのですがこういう浅ましプレイが便利使いされてしまうという世の中というのもまあ釈然としませんなあと思うのでありました。





2015/03/11

お題「ECB関連ネタ(昨日の訂正あり)/債券安から株安(?)/中曽副総裁会見はまあ想定通りですけど・・・・・・」

モーサテのコメントのおじさん、6時前には「中央銀行のバランスシート規模」って話をしていたのに6時のプロの目のお時間には「日米金利差に着目した円安が進行していますが」ってキャスターのマクラをそのまま流しているんですけど結局どっちですねんと小一時間問い詰めたい。

○ECBの買入は中々訳の分からん手段で「金利低下効果はばつぐん」なのですが・・・・・・・(昨日の訂正あり)

など等と言いつつまずは昨日の訂正ですすいませんすいません(平伏)。

昨日ECB絡みでブンデスバンクのサイトを引用したんですけどね。

http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Tasks/Monetary_policy/Outright_transactions/outright_transactions.html

最初にあるのを喜んで引用したのですが、良く考えたらOMTと書いてありまして、これは周縁国の国債をお助け購入する方の施策でして、今回の買入はPSPPという奴でしたので、全然違う話を引用していましたすいませんすいません。

・・・・・・・・でもって改めて確認したのですが、実際に購入を開始しているもののサイトに説明が何もないという状態であることを確認いたしましたのでご報告致しますどうもすいませんすいません。


ということで実際にどういう買い方をしているのかが極めて謎ではあるのですが、事前アナウンスとか無くて突然「この銘柄いくら買いたいのでお値段プリーズ」みたいに引き合いが飛んでくるというしきりになっているようで、これは金利低下効果としては確かに抜群なのですが、普通こういう買い方するかよというお話でありまして、そらまあオーダー飛んでくる方としてはいつ飛んでくるのか分からないからうっかりショートポジションを作れないという事になります(店頭で別件で何か売った瞬間に中銀からオーダー飛んできたら死ねる)からそらまあ金利低下バイアスが盛大に掛かるわと思われます。

しかもタイミングも良くわからないですしどういう銘柄で来るのかも(もしかしたらそのうちパターン化されるのかもしれないですけど)分からん上に、中銀への売却に関しても売却した本人は何を幾ら売却したかわかりますけれども、極端なケースで「レートが気に食わないから買うのマルね」というプレイに出られましても事後的な買入残高を見て判断できるかできないか、というお話になりますので、まあ不透明にも程がある買入手法でありますな。

買ったかどうかが分からないのと、そもそもどの銘柄に買いが来ているのかがオペ先以外に伝わらないとなると(それに対してエンバーゴが掛かっているのかどうかも分からんのだが)債券市場の価格形成的にも訳分からん(FRBは買入ゾーンを明確にしているし、日銀の場合は入札方式で買入較差利回りが出るからその日のイールドカーブ形状からどの銘柄が入ったのかは概ね想像可能)という状態ですから、まあ不透明感プレミアムで金利は下がりやすいですが、一方で買入タイミングが訳分からんとなりますと、肝心の「最終投資家が保有する債券を売却させる」というのってワークするのかよというのがこれまた疑問。

つまりですね、FRBにしろ日銀にしろ買入のスケジュールって事前に相当の部分が出ていますし、入札形式で実施されているので、投資家がオペ参加先にそのタイミングで売却するなりして投資家の玉を引っ剥がす事が期待できるわけですが、買入のタイミングとか銘柄とかが直前まで分からないで急に来るとなりますと、そもそも買入残高を効率的に積み上げる気があるのかきわめて????な感じではあります。

ただまあ昨日一昨日の値動きを見れば一目瞭然ですが、この「不透明部分」があまりといえばあまりにあるせいで債券市場の価格形成に与える影響の方は大きくて、少ない買入で金利低下効果を出す(ただし短期ゾーンの金利は▲20bpで打ち止めですが)にはパワフルという建付けになっております。


・・・・・・・・まあそれならそれで良いのですが、そうなりますとそもそもこのPSPPでやりたいのは何なのですかという話でして、「量的な面が足りないので今回の買入を実施しました」という説明をしていた筈なので、そうなると「量的緩和」方面でのアプローチという話になるはずなのですが、やっていることは「中長期金利を思いっきり下げる」という金利アプローチでございまして、結局金利をやりたいのか量をやりたいのかがまるで分からんというお話で、(頭出しだけしてネタにしていませんが)1月の定例理事会での議論でも「国債買入によって結局何をしたいのかが良くわからん」という状態だったのですが、それがそのまま持ち込まれたような格好になっておりまして先行きが思いやられるところです。

http://www.ecb.europa.eu/mopo/liq/html/pspp-qa.en.html
Q&A on the public sector purchase programme (PSPP)

ここで「買入33%ルール」に対する答えがありますけれども、

『Likewise, the issuer limit of 33% is a means to safeguard market functioning and price formation as well as to mitigate the risk of the ECB becoming a dominant creditor of euro area governments.』

という説明をしていまして、ECBがユーロ圏国債市場の支配的な参加者となることによって市場機能や価格形成に影響を与えるリスクを軽減する為に33%ルールを作りました、という話になっているのに、実際の買入は欧州中央銀行による思いっきりマニュピレーションスキームになっておりまして、大丈夫かおいというか、今後また手直しが入って市場が混乱しそうな悪寒しかしないのであります。まあマニュピレーションが行き過ぎるとこうなる訳で・・・・・・・・・・


○流動性のない相場に流動性を供給したら急落とな

http://jp.reuters.com/article/jptokyomarket/idJPL4N0WC2ET20150310
〔金利マーケットアイ〕

『<15:10> 国債先物は大幅続落、長期金利0.470%に上昇』

『長期国債先物は大幅続落。先物3月限の取引最終日を11日に控え、中心限月交代に絡む持ち高調整の動きが活発化。前引け段階で3月限と6月限の出来高が逆転したことで、事実上の中心限月交代となった。午後の取引では下落幅を急拡大させた。きょう実施された流動性供給入札が低調だったことが背景にある。現物債も同様に入札低調を確認すると、長いゾーンを中心に利回りへの上昇圧力がかかった。外為市場で円安が進行したことも材料視された。国内銀行勢や保険会社の処分売りとの観測が出ていた。中期ゾーンも軟調。イールドカーブはベア・スティープの形状。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比36銭安の146円60銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同4.5bp高い0.470%と2014年11月20日以来の高水準を付けた。』(上記URLより)

ということで昨日の債券市場は円安とか来週の20年入札とか毎度のように意識して何となくパッとしない展開だったのですが、流動性供給入札の結果が滑ってしまったのを見て先物がスコーンと下げて、超長期が弱くてなんか知らんけど5年とかも弱くてという素敵な展開ですが、良く良く考えたら(考えなくてもそうですが)ジャパンの期末月でありますので、期末でポジション縮小とかその手のお家の事情もありますし、ここもとの債券市場の無慈悲価格形成攻撃やら日銀トレードヒャッハーもやり難いというのもあってマーケットメーカーの皆様におかれましてもポジション縮小しているという状態なので、需給が動く要因があるとそのまま素直に価格が飛ぶというお話で、流動性のない相場なので流動性供給入札の結果ごときでこの展開とはダジャレにもなりませんな。

なお、実際に株が債券で反応したのかは知らんですけれども、債券がスココーンと下がった辺りから株価の方も指数先物とかよわよわになっていまして、そういやこの前10年入札が滑った時にも株が下がりやがったなあとか思うのですが、最近は円債市場の動きを他市場が見て反応という、人の市場を見て動く国内債券市場の中の人の仕様的には戸惑ってしまう展開となっておりますな。

ちなみに先週の10年入札の時には「入札滑る」→「債券下落」→「それを見た株が下がる」→「それをみた債券が戻る」というオモシロ展開を形成していましたが、債券市場のほうも人から注目されるのにだんだん慣れてきた(かどうか知らんが)のか、昨日の場合は株が下がったのを見て急に買い戻しが盛大に入るというような展開になっていなかった(ちょっと戻ってたけど)というのがチャーミングでしたが、為替ちゃんの方が株安を見て円安一服になっていたっぽいのがお洒落というかワロタというかでした。



○中曽副総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503b.pdf

今回の質疑応答なのですが、為替に関する質問とか格差に関する質問とかそれは想定問答以上の答えはでてこないだろor答えを求める方が無駄だろというのがありますので、まあそれ以外をサラサラと。


・誘導尋問には想定問答

『(問) 黒田総裁が就任されて間もなく2年が経ちますが、2013年4月の「量的・質的金融緩和」導入以来、政策の枠組みや政策の手段・手法がかなり変わったと思います。副総裁がこの2年間をどう評価されているのかを改めてお伺いします。また、最も印象に残っていることがあればお願いします。』

ふむ。

『(答) 2年経過したからといって、特別な感慨があるわけではありません。物価安定目標の達成は未だ途半ばです。できるだけ早期にデフレを克服して、日本経済を持続的な成長経路に戻すという使命を果たすために、就任記者会見でも言ったと思いますが、折れない心、気持ちを持って引き続き臨みたい、という点も変わっておりません。』

ということで気合の強調シリーズは先日のNYでの講演、黒田総裁の日本記者クラブでの講演など、最近政府サイドの腰が引けているのに対して腰をひっぱたきに行っているのが日銀執行部の仕様です。

『同時に、日本銀行の役割は、金融政策以外にも、金融システムの安定、決済システムの運行など国民経済・国民生活を支える多様な分野がその仕事の領域にあるということを改めて認識しています。そういった分野で確かな成果を挙げていかなくてはならないと思います。』

決済システムの方は良いとしまして国債馬鹿買入している口で金融システムの安定っていうのは何だかねと思いますけどまあ想定問答としてはこう答えるしかないですね。

『こうした中央銀行の様々な使命や役割を果たしていく上で、職員の一体感を保ち、日本銀行の先輩たちが長い歴史の中で築き上げてきた組織の伝統や文化、いわばDNAを次の世代へしっかり承継していくことも、私自身日銀の中で育ってきた者でありますから、組織運営上、自分に課された非常に重要な仕事と自覚しています。』

ほほー。


・こうとしか答えようがないのは分かるがどう見てもアレな市場機能に関する考察

『(問) 黒田総裁は金融政策の調整が必要になった場合、手段はいくらでもあるとおっしゃっていますが、中曽副総裁は、長期国債の買入れについても、まだまだ買入れ余地があるか、持続可能とお考えなのか、お聞かせください。』

ニヤニヤ。

『(答) まず、私どもの政策は、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、所期の効果を発揮しており、順調にその道筋を辿っていると思います。引き続き、現在の金融市場調節方針のもとで、「量的・質的金融緩和」を着実に推進していくことが重要であると思っています。今後、何らかのリスク要因で見通しに変化が生じて、物価安定目標を実現するために必要になれば、調整を行う方針ですけれど、具体的な手段については、経済・物価情勢、金融市場の動向、その時々の状況に応じて、物価安定目標を実現するために必要なことを行うということに尽きます。適切な手段を常に考えていくのが、プロフェッショナルとしての責務であると考えております。』

でしたらそもそも実施した手段のレビューを行って、これからどれだけのMB拡大を行ったら期待インフレ率が2%に達するのかの適切な規模や期間についてのご検討もお願いしたいのですけれども。

『国債の買入れ余地などを判断するに当っては、国債市場の今の状況をどう判断するかという点が大事です。おそらくご質問の背景として大量の国債買入れによって、イールドカーブ全体が潰されてきている、あるいは、市場流動性が枯渇してきている、そのような問題意識をお持ちなのではないかと思います。』

で?

『元々、QQEというのは、大量の国債買入れによってイールドカーブ全体の低下を促すことを企図しているものですから、金利の低下やイールドカーブのフラット化というのは、意図した政策効果が現れているという面もあります。』

QQEというのは期待インフレに直接働きかける政策なのですから、本来は金利が低下したりイールドカーブがフラット化するのは企図した通りに期待インフレ率が上昇していないことを意味するのではないでしょうか??インフレ期待がアンカーされている中で名目ゼロ金利制約のもとで実質金利を低下させるために長期金利に低下圧力をかけるというのであれば金利の低下やフラット化は意図した効果ですけどね。

『その上で、国債市場の機能とか流動性の評価について申し上げておきたいのは、QQEを導入する時から国債市場に影響を与える様々な問題点について認識しながら丹念なモニタリングを続けてきたつもりですが、これまでのところ、国債市場の流動性が大きく低下していることはないと判断しています。』

といったその日に債券市場サーベイが出ているのがお洒落ですね!!!!!!!!!

『実際、多少細かい話をさせて頂くと、自分自身が見ている指標としては、国債の先物市場や現物ディーラー間の取引市場の出来高なのですけれども、これは割と高めの水準を維持していますし、そのもとで、国債先物市場の値幅・出来高比率も、一時期を除くと過去のレンジ内で推移していると思います。』

債券市場サーベイではそうではない結果が出ていますが。

『そうしたことを踏まえますと、国債の買入れは方針に沿って着実に進められており、私自身は先行きも支障を来たすような事情があるとは考えていません。もとより、国債市場の動向については、市場関係者との十分な対話も含めまして、今後とも注意深く見ていきたいと思っています。』

どう見てもアリバイ(以下自粛)。

しかしこの答えやたら長いのですが、この前の木内さんの場合と違ってこの中曽さんの長いのは「答えが苦しいので大演説にしている」という感じが漂いますな。答えはまだ続く。

『さらに付け加えさせて頂きますと、この先、国債市場の機能を見ていく上で、自分として注目をしていきたいと思っているのは、先程申し上げた指標に加えて、長国先物市場における板の厚さ、あるいはSCレポ・レート、証券会社のマーケット・メイク機能の状況、こういったものです。』

まさに債券市場サーベイで問題があるという結果が出ておりますが・・・・・・・・・・、

『先程、市場との対話という点も申し上げましたけれども、この点につきましては、日本銀行の金融市場局が四半期ごとの調査として新たに開始した債券市場サーベイの結果に注目しています。第1回の2月調査の結果は、今日公表される予定ですので、この結果をみながら、情報を有益に活用しながら、市場参加者との対話を一段と強化していきたいと思っています。』

これはひどい。内容公表のタイミングよりも前の会見(出たのが4時過ぎだかで会見が1時半)とは言え内容分かっているのにここまでとぼけた説明するのかよと。

『このほか、ご案内のように、日本銀行は市場流動性に配慮した施策として、オペ運営の見直しとか、国債補完供給(SLF)の実施要件の緩和など様々な対応を行ってきました。この点についても付言しておきたいと思います。』

まあ相変わらずSLFの要件に関しては利用する方にスティグマが発生するような作りのままですけどねえ。


でまあ改めて最後の方でこんな質疑がありますが、まあこんな感じですよ。

『(問) 昨年10月の追加緩和に反対された委員の方から、副作用ですとかコストについて指摘される機会が増えているのですけれども、中曽副総裁は、コストとベネフィットでいうと、ベネフィットの方が勝っているということで賛成されたと思うのですが、その中でも何かコストとか副作用として認識されていらっしゃるものがあるのか、あれば具体的にお聞かせ下さい。』

『(答) 先程、ちょっと詳しめにお話しましたけれども、国債市場の機能や流動性については、そういった問題が潜在的にはあるだけに、よくモニターをしていく必要があるということを申し上げました。モニターしていくべき指標は、具体的に先程挙げた通りです。私自身は、今のところそうした指標をみる限りは、政策遂行に支障を来たすような特段の問題や事情が生じてはいないと判断しているところです。』

まあこうとしか答えようがないという立場も理解はするのですが、しかしながらあの債券市場サーベイの結果が公表されるその当日数時間前というタイミングで上記のような認識を示されますと、市場の方としては「ああ執行部は大本営発表に徹していて市場との対話をしていないなあ」となるのか「そもそも現場の状況について幕僚が大本営に情報を上げてないんじゃねえの」となるのか、「それ以前の問題として現場部隊が戦況を把握していない(というのが一番困るが)んじゃねえの」となるのか知らんですけれども、読んでる市場的には盛大に腰が砕けるのでもう少しモノの言い方というものを考えていただきたいと思います。

せめて「効果の方が大きく勝るので継続するに問題なし」位にしていただきたいと思う訳で、あたかも債券市場に問題無しみたいな話を(置物あたりが言うならともかく市場に詳しいはずの中曽さんが)言い出しますと市場がドッチラケモードになってしまい、その結果として「この人たちには何を言っても無駄」という認識を強くされますと、そもそも政策当局として必要な「現状認識能力」に悪影響を与えることになると思いますし、そういう点ではQQE以降にダメージはボディーブローの様に効いてきているように思われますので日銀の為に惜しむところでありまする。



・2%物価目標の達成基準について聞かれたがゼロ回答キタコレ

『(問) 2点お伺いしたいと思います。1点目は、2%の「物価安定の目標」ですけれども、何をもって2%を「安定的に」持続すると捉えられているのかという点をお伺いしたいと思います。一度2%をつけただけでは、安定することはないと私は思うのですけれども、どれくらい2%近辺を続ければよいのか、2016年度の見通しの中央値は2.2%ですが、これは上振れであって、金融政策対応が必要な数字なのかどうかという点をお願いします。(後半割愛)』

『(答) まず、安定的に持続するという意味ですけれども、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するとしているわけです。実際の物価上昇率というのは、景気循環ですとか、あるいは商品市況の変動などによって上下に振れがありますけれども、ある程度の期間を均してみれば、2%を中心とした動きになるような状況を目指しているということであります。(後半割愛)』

・・・・・・・・いやまあそうくるとは思いましたが見事なゼロ回答に恐れ入りました。



2015/03/10

お題「景気ウォッチャーェ・・・・・/その他市場雑談/中曽副総裁講演はまあ普通にいつもの話という感じ」

ECB国債購入のモーサテ解説が相当怪しげなのだがそもそも債券に詳しいとも思えない人に解説させる放送局も放送局。

とは言いましても、まあ市場の反応自体がいやそのりくつはおかしいという感じでもあったりするので何でああいう反応なのかを知るのには便利かもしれませんけどね。

○まあ事実なので仕方ないですけど内閣府今回も後ろから銃撃

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0309watcher/menu.html
平成27年2月調査(平成27年3月9日公表):景気ウォッチャー調査

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0309watcher/bassui.html
平成27年2月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

『今月の動き(2月)』ですが・・・・・・・

『2月の現状判断DIは、前月比4.5ポイント上昇の50.1となった。
家計動向関連DIは、小売関連が上昇したこと等から上昇した。企業動向関連DIは、製造業及び非製造業が上昇したことから上昇した。雇用関連DIは、求人の増加がみられたこと等から上昇した。』

ほう。

『2月の先行き判断DIは、前月比3.2ポイント上昇の53.2となった。
先行き判断DIについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や燃料価格低下への期待等がみられ、家計動向部門、企業動向部門及び雇用部門で上昇した。』

>物価上昇への懸念等がみられるものの(略)燃料価格低下への期待等がみられ

ちなみに物価上昇への懸念というのは昨年の10月調査(そこまでは「エネルギー価格上昇等の上昇懸念」)から入っていまして、燃料価格低下の期待は昨年12月調査から入っているの今に始まった話ではないのですが、日銀執行部の皆さんが「2年で2%達成の意欲」というのを示しているタイミングでこの銃撃というのが実に味わいが深いという所でして。

『今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、一部に弱さが残るものの、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や燃料価格低下への期待等がみられる」とまとめられる。』

てな話でして、まあ内閣府としては調査結果を平明に出したらこうなりましたという結果なのでしょうけれども、実際問題として物価の方が日銀の思惑通りにホイホイ上昇(またぞろドル高モードですしガソリン価格とか底打ちチックになってきましたし)してきた時点で政治的に厳しくなってきた場合に急に政治サイドが「日銀は国民生活を無視して自分の事だけを考えて物価上昇させようとしている」とか盛大に梯子を外しに来るに100ドラクマという所ですな、うんうん。


○アリバイサーベイキタコレだが内容ワロタ

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1502.pdf
債券市場サーベイ<2015年2月調査>
回答期間:2015年2月18日〜2月25日
調査対象先数:40先

・・・・・・・・ということでサーベイキタコレであるが、そもそも長期金利の先行き見通しなどというものが無駄以外の何物でもなく、質問内容に関しても別に自由記述欄や要望みたいなのがある訳でもなくて、これならQSS調査の方がよっぽど読む意味あるわという物件なのですが、何せ「市場との対話を行っています」という一貫の中で「市場機能はありまぁす(キリッ)」とエクスキューズするためのアリバイサーベイにしか見えない物件なのでこのようになるのも止む無し。

などと悪態をつきながら中身を読みますと、

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい)』

短期国債の流通市場は何故念頭に置かないのでしょうか??????などと突っ込んではいけません。

『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)』

『(現状)
1. 高い 2先
2. さほど高くない 26先
3. 低い 12先』

40社中2社しか「債券市場の機能度が高い」と言ってませんがそれでも債券市場の機能などに問題がないと仰せで。

『A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。』

『(現状)
1. 多い 0先
2. さほど多くない 22先
3. 少ない 18先』

多いというのがゼロとかもうね。

でまあこの項目の最後の当たりが更に味わいが深い。

『E貴行(庫・社)の概ね意図した価格で取引ができているかご回答下さい。』

『(現状)
1. できている 13先
2. さほどできていない 19先
3. できていない 7先』

『F貴行(庫・社)の概ね意図した取引ロット(1回当たりの取引金額)で取引ができているかご回答下さい。』

『(現状)
1. できている 14先
2. さほどできていない 13先
3. できていない 12先』

・・・・・・・・ということで、現時点で取引の流動性に問題があると考えている向きが6割超という状態になっております次第ですが、これはまあどこからどう見ても将来の金融正常化に対して阻害要因になる話でありますし、更に言えばこんな状態でレポ取引にストレスを掛けることになる国債決済のT+1化を推進するとか自殺行為としか思えないのですが大丈夫かよという感を更に強くするアタクシ。

念のためしつこく申し上げておきますが、流動性が急になくなるとどういう事になるのかというのは昔々その昔(確か1998年)に債券先物の取引システムを意味不明に改定した際に、注意気配制度とか特別注意気配制度とかを無くしてしまって値段がとんでもなくワープするようになった結果、当時多くの現物債の取引のヘッジが集中していた債券先物市場の流動性が蒸発してしまい、ヘッジ市場の流動性が急になくなってしまったのでオファービットは開くわ売買のロットは捌けなくなるわとなって、その後の債券暴落の土壌を作った(引き金になったのは運用部ショックと言われるものだが、実際問題としては運用部の国債買入停止額自体は当時の市場規模でも屁であって、本当の原因はその前に行われた東証の債券先物システム変更による極端な流動性の低下)という事案がある訳で、せっせと国債買入を継続して流動性を無くしていくところに国債決済のT+1化とか将来の悲劇の伏線を張りまくっているようにしか思えないのですけどねえ。


○その他市場雑談系

・ECB買入ェ・・・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NKYG9S6JTTEV01.html
ECBのQE始動、初日の購入は小粒−忍耐強く経済再生へ
2015/03/10 02:20 JST

『ECBとユーロ参加国の中央銀行は、総額1兆1000億ユーロ(約145兆円)の経済注入を目指すQEの下でソブリン債購入を開始した。事情に詳しい複数の関係者によれば、9日には少なくとも5カ国の国債を購入したものの、個々の取引規模は1500万−5000万ユーロと、プログラム全体の規模に照らして小粒だった。 』(上記URLより)

ということで昨日は日本時間の夕方にベンダーヘッドラインで「ECBがドイツ国債の購入を実施した」みたいなのが出るには出るのだが、そのソースが「事情に詳しい関係者」だったりして(日本時間で夜になってからは買ったという声明そのものは出たようですが)、何が何やらという感じでして、何でオークション形式じゃないのかも良くわからんですし、実際にどういうオペレーションやっているのかが不透明な状態で実施とか、色々な意味で大丈夫かよと思ったりもしますが、買入をどのくらい実施したのかとかいう話が出てからまた考えないといけないのかとかもう訳分からん。

(以下の部分は勘違いのため全文取り消しします@3月11日)
ちなみにブンデスバンク(の英語版のほう)だとここになんか説明らしきものはある。

http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Tasks/Monetary_policy/Outright_transactions/outright_transactions.html

Outright Monetary Transactions (OMTs) in the secondary markets for government bonds

『In order to safeguard orderly monetary policy transmission and the singleness of monetary policy, on 6 September 2012 the Governing Council of the ECB specified a set of technical features for outright monetary transactions in the secondary markets for government bonds. A necessary condition for conducting outright monetary transactions is strict and effective conditionality attached to an appropriate European Financial Stability Facility/European Stability Mechanism (EFSF/ESM) programme. Such programmes can take the form of a full EFSF/ESM macroeconomic adjustment programme or a precautionary programme (Enhanced Conditions Credit Line), provided that they include the possibility of EFSF/ESM primary market purchases and a member state has access to the bond market. Hitherto, these necessary preconditions set by the Governing Council for conducting outright monetary transactions in the secondary markets for government bonds have not been fulfilled by any euro-area country. 』

がしかしここまではただのECB理事会決定事項。ちなみに昨日の向こうの昼間にアップされたっぽい。

『The Governing Council will consider outright monetary transactions if they are warranted from a monetary policy perspective and as long as programme conditionality is fully respected. Following a thorough assessment, the Governing Council will decide on the start, continuation and suspension of outright monetary transactions in full discretion and acting in accordance with its monetary policy mandate. Any outright monetary transactions will be focused on the shorter end of the yield curve and, in particular, on government bonds with a maturity of between one and three years. No ex ante quantitative limits are set on the size of outright monetary transactions. Any liquidity generated by outright monetary transactions is to be fully sterilised by targeted operations.』

別にここでは何をどうした的な話がある訳ではないので残念という所なのですが、良く良く見たらここの最後に書いてあるのは「買入によって供給された流動性はターゲットオペで不胎化される」という風に書いてあるように見えるのだが目の錯覚????

・・・・・・・ということでなんだか相変わらず良くわからないECB買入なのですが、わけがわからないから各市場の人たちが勝手に都合の良い解釈をして反応してくれるからオイシイのかもしれませんね(白目)!!



・短国ですが

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150309.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年3月11日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150309.htm
国庫短期証券買入 34,347 10,001 0.002 0.003 11.6

ということで昨日は短国買入でしたが、輪番の方で中期を減らした分の影響が短国に来るかと思ったらとくには来なかったようで(貸出支援基金が6兆とか出るとそもそも短国買入自体がほぼマルでも大丈夫な筈なのである意味順当だったのかもしれませんが)1兆円に減額オファーとなりましたら応札が3.4兆円と増加になっております。

とは言いましても、そもそも先週は3Mと6Mの入札があったので、その玉が大量に残っていればもっと応札が増えてしかるべきという所でしたので、マイナス入札やってそのままマイナス推移していた6Mは良くわからんですけれども、まあ3Mの方は平均マイナスですけど足切プラスでしたからその所でそこそこ捌けたんじゃないですかねえという感じですし、短いところの利付とかも基本堅調ですので、期末対応やら貸出支援基金に向けた担保繰りとか四半期国債償還に向けた担保繰りとか、まあいろいろなニーズがあるんでしょうなあというメモだけ置いておくのでした。


○中曽副総裁金懇はまあ普通の執行部説明

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150309a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 愛媛県金融経済懇談会における挨拶 ──

ということでまずは冒頭から。

『日本銀行は、日本経済が長年続いたデフレから脱却し、持続的に成長することが何よりも大事だと考えています。その実現のため、一昨年の4月、「量的・質的金融緩和」を導入し、昨年10 月末にはその拡大を決定しました。そのもとで、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向け、着実に歩を進めています。』

ほー。

『しかし、「2年程度で2%を実現することは難しいのではないか」とか、「無理に物価上昇を起こせば、却って生活が苦しくなるのではないか」といったご質問を頂くこともあります。本日は、わが国の経済情勢についてお話しした後、日本銀行の金融政策運営と物価情勢についてご説明することを通じて、こうした疑問にもお答えしたいと考えています。』

ふーん。

・QQEのメカニズムだがどうみても説明がトートロジーな件について

でまあ経済情勢の話はどうでもよいので割愛しまして『(「量的・質的金融緩和」の狙い)』って辺りから。

『「量的・質的金融緩和」の効果の波及メカニズムを改めて整理しますと、日本銀行が2%の実現に向けて強いコミットメントを示すことで、人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げることを効果の起点にしています。同時に、巨額の国債買入れによって名目金利に低下圧力を加えることで実質金利の低下を促し、設備投資など民間需要を刺激します。そして、これは予想物価上昇率の引き上げとあいまって、実際の消費者物価の上昇につながります。』

強いコミットメントを示すと期待インフレ率が勝手に上昇する、というのが前提になっているようで、それってまさしく置物師匠が学者自体から唱えてきていた置物リフレ理論ですね。

『それでは、なぜ需要喚起だけでなく、予想物価上昇率の引き上げが必要なのでしょうか。それは、日本銀行が最終的に目指す物価の安定は、一時的に達成すればよいものではなく、持続的なものでなければならないからです。』

ちょっと待て。

『すなわち、需要を喚起すればその間は物価が上昇し、一時的に2%を達成することは可能かもしれませんが、人々が低い物価上昇率を前提に意思決定や経済活動を行っている場合、2%を安定的に持続することはできません。』

そもそも「2%の実現に向けて強いコミットメントを示すと予想物価上昇率が上がって実質金利が下がるので需要が喚起される」という説明をしているのに、「人々が低い物価上昇率を前提に意思決定や経済活動を行っている場合」に何で「需要を喚起すればその間は物価が上昇」するのかと小一時間問い詰めたい。

・・・・・・・というかまあつまりこの説明って問わず語りに「今の物価上昇は需要を喚起しないで円安コストプッシュや消費税駆け込み需要とかで無理やり作ったものです」と言ってるようなもんですよねと思ったのですが違いますかねえ(ニヤニヤ)。

『しかし、中長期的な予想物価上昇率が2%まで上昇し、人々が2%の物価上昇を前提に意思決定や経済活動を行う世界では、物価は景気循環や商品市況の変動などで一時的に上下に振れても、最終的には2%に戻ってくることが期待できる状態になります。すなわち、ある程度の期間を均してみれば、物価は2%を中心とした動きになります。』

ところでなんで日銀が気合を入れると人々の物価感が飴細工のように変わってくれるものなのでしょうかと思う訳で、まあそういう点からしますと置物リフレ理論って中央銀行が全知全能で万能であるという理論なので、本当は日銀の中の人的には喜ばしい理論なのかもしれませんよwww


・物価は基調で判断といういつもの話はいつも通り

でまあ追加緩和の説明の所に飛びますと、その結論はいつも通り。

『したがって、原油価格が下落して実際のインフレ率が低下したとしても、それが予想物価上昇率に影響を与えず、物価が基調的に2%に向かっているのであれば、金融政策で対応する必要はありません。逆に、原油価格の下落が中長期的な予想物価上昇率に影響を与え、先行き2%の実現が難しくなるとみられる場合には、金融政策による対応が必要になります。』

その予想物価上昇率の判断が完全に鉛筆なめなめなので政策判断がどうなるかは予想がつかないという理解でよろしいですよね!!!!!

『以上申し上げたとおり、日本銀行は、原油価格の下落に機械的に対応して追加緩和を行ったわけではありません。原油価格の下落などによって消費者物価の前年比上昇率が伸び悩むなかで、デフレマインドの転換が遅延するリスクが顕現化し、基調的な物価の動きに悪影響が及ぶことを未然に防ぐために行ったものです。』

ものは言いよう。

『このように、金融政策を運営する上では、物価の基調的な動きを正しく捉えることが、非常に重要なポイントとなります。それでは、物価の基調的な動きはどのように把握すればよいのでしょうか。』

『現実の物価には商品市況など一時的な変動も反映されますが、物価の基調は需給ギャップと中長期的な予想物価上昇率によって規定されます。そこで、物価の基調的な動きを捉えるためには、まずは、これら2つの要素を把握することが重要になります。』

事後的にしかわからない数値と鉛筆なめなめ数値キタコレ!!

『中長期的な予想物価上昇率については、物価連動国債から把握できるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)といった市場指標や、企業・家計・エコノミストなどへのサーベイ調査など数値で表されるものだけではありません。』

そらまあその数字だけだと都合が悪いからな。

『予想物価上昇率は言い換えると人々の物価観、すなわち「人々がどの程度の物価上昇を前提として意思決定や経済行動を行うか」ということですので、それは企業の価格設定行動や労使の賃金交渉、家計の消費パターンなど日々の経済活動に表れてきます。昨年の春闘で物価の上昇を前提として久方ぶりにベアが実施されたことや、消費者が単なる低価格指向ではなく、?々高くても値段に見合うものであれば購入するようになり、企業の価格設定スタンスにもそれに合わせた変化がみられることは、予想物価上昇率の上昇、すなわちデフレマインドの転換が着実に進捗している証左と言えます。』

とりあえず去年の春闘は官製だろとか今年も官製じゃねえのかとかいうツッコミもあるし、だいたいからして消費の所は景気ウォッチャー調査でも見てろと小一時間ですが、まあこれを見ますと分かるように、明らかに来年度に向けた賃金改定の動きに期待している、というか最早それしか2%早期目標達成という意味で使えるものが無い(1%程度で良いなら今の状況でもだいぶ説明できるのでしょうが)という辺りに世の無常というものを感じる次第。


『物価指数を点検する上でも、物価の基調を捉えるためには、単一の指数だけでなく、様々な指数をみていくことが必要になります。日本銀行では、消費者物価指数の総合、除く生鮮食品(いわゆるコア)、除く食料・エネルギー(いわゆるコアコア)のほか、価格変動率の高い品目を控除した刈込平均値、上昇・下落品目比率など様々な指数を点検していますし、必要に応じてその構成品目まで遡って分析を行っています。』

てな話なのですが、都合の良い時はコアCPIの話ばっかりだったという実績があるだけに何だかねという感じ(他の審議委員は刈込平均の話とか除く帰属家賃の話とかしていましたが)で、それならそうと最初からこの話を強調してくれないと「ご都合主義」としか捉えられないと思いますけどね。


・なお先行き見通しはやはり賃金に期待

『以上を踏まえた上で、先行きの物価情勢についてお話しします。日本銀行・政策委員会が1月に公表した「展望レポート」中間評価の見通しでは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、2014 年度+0.9%の後、2015 年度はこれまでの原油価格の大幅下落の影響から+1.0%にとどまる見通しです(前掲図表10)。しかし、物価の基調は着実に高まっていくとみています。』

基調キター!

『すなわち、物価の基調を規定する需給ギャップは、わが国経済が基調として潜在成長率を上回る成長を続けるもとで、改善を続けていくとみています。また、予想物価上昇率も着実に高まっていくと考えています。』

ほう。

『実際、今年の春闘にあたっては、労働組合から昨年を上回る賃上げ要求が出され、経営者側も賃上げに前向きな姿勢を示しています。人々の働き方が多様化していることもあって、賃上げはベアや賞与、各種手当など様々な形態を取ることが考えられますが、どのような形にせよ、現実に賃金が上がってくると、人々のデフレマインドの転換はさらに進捗すると考えています。』

ということでどう見ても賃金頼みなので、ここがコケますと一気に日銀の心が折れてしまいます。

『また、原油価格下落の影響は、前年比でみると1年経つと剥落します。したがって、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、来年度前半は既往の原油価格下落の影響から低めの伸びとなりますが、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくという前提にたてば、来年度後半は原油価格の影響が剥落するに伴って伸び率を高めていき、2015 年度を中心とする期間に2%程度に達するとみています。』

・・・・・・・・・はあそうですかと申しあげようがございませんがまあそういうことで。


#以下の部分は時間の都合で明日やるかもしれないしやらないかもしれません




2015/03/09

お題「木内さんの会見が大演説モードなので鑑賞するが引用大会ですいませんすいません」

雇用統計キタコレという所ですが、メジャードペースでの利上げを行わないというのであれば、経済指標が出るたびにヒャッハーヒャッハーとなる訳ですな。

○輪番中短期減額なのだがこの前月間予定で減額出した直後に減額とは相変わらずのアレで

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150306.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2015年3月10日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,500 2015年3月10日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,400 2015年3月10日
国債買入(残存期間25年超) 1,400 2015年3月10日

中短期超長期・・・・・・・っておい中短期500億円×2の減額してるのかよ。

ということで、オペのオファーが出た途端中期とか先物とかが押し込みましたというのはまあ普通と言えば普通の反応なのですが、これがかつての短国買入のようなケースになりますと「短国買入オファーが予想以上に減った」→「応札する札が無いに違いない」→「ヒャッハー、金利低下だぜ!!」となって更に気配が強くなるという(実際の買いが期待より減るという意味では需給悪化要因にもかかわらず)金利が低下するというオモシロ事態が生じますので、まだまだ中短期利付国債の世界はそこまでの修業が足りないという所です(^^)。

つまりですね、本当の本当に投資家全く不在になってオペトレードだけで動くというひところのマイナス金利長期化短期国債市場のようになりますと、札割れを恐れた形で入札をオファーしてくる日銀の行動様式を勘案し、オファーが想定より少ない=市場のポジションが想定以上に軽いという発想になるのですが(^^)、まあまだ投資家がいる世界でありますので、単純に買入額が減った方が効いたという事で。

でまあこの減額の背景は中短期輪番の札が減ってきてこの調子でオペを打ちこんでいると盛大に流れたり札割れになったりという事案が発生しかねず、そうなるとまたぞろオペの限界(スイスの例の一件があったせいか国内投資家よりも海外投資家の方がこのオペの限界問題に関してはナーバスなのでおそらくそういうオペ結果が出ると海外投資家がオモシロ反応をしてくると思います)という話が出てくるのは日銀的にはマズーでしょうから、先を打って減額したという話でしょうな。

しかしまあ何ですな、3月買入の明細について前月末に出したばっかりでその数字をオペ1回でいきなり変えてくるとか、もちろんレンジの範囲内だからダマテンでやっても制度上は問題ないのですが、また「変えた途端に手直し」かよという所でして、なんちゅうかこう外から見ると行き当たりばったり感をまた出しやがったなと思われる次第で、こりゃ債券市場のボラを上げるなあとか思うのでした。



以下木内さんの演説が長いので大鑑賞会であります。


○木内審議委員会見は期待通りの執行部砲撃な件について&執行部ロジックと水と油な件

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1503a.pdf

質疑応答の形式なのですが、まあ今回の木内さんの説明が長い長いという所でして、この説明の長さは普段あまり出てこない(出してくれない?)からですかね(^^)。


・質疑の最初は追加緩和の副作用とかなのですがその前にこの質疑を

『(問)(前半割愛)2 つ目は物価ですが、CPIが数字の上ではゼロとかマイナスになる可能性が十分あると思うのですが、今のところ順調な期待インフレ率、人々の価格設定行動に影響を及ぼし得るのか、あるいはその点はあまり心配しなくてよいのか、ご見解をお願いします。』

『(答)(前半割愛)2 番目のご質問ですが、個人は物価指数の動きを毎月細かくみて、それによって期待インフレが形成されていくわけではありませんので、原油価格の下落により一時的にコアCPIが前年比でゼロやマイナスになっても、人々あるいは企業の中長期の予想物価上昇率に非常に大きなマイナスの影響を及ぼすことはないと思います。』

バックワードルッキングでどうのこうのという話をして追加緩和をした黒田さんに対するイヤミキタコレ。

『従来から申し上げているとおり、物価については基調的な動きが重要であり、CPIのコアだけではなく、いろいろな指標をみる必要があります。ただ、様々な指標の中で有力な指標の1 つである、食料・エネルギーを除くベースの消費者物価でみても、足許で前年比+0.4%程度です。物価上昇率がプラスで定着しているのは「量的・質的金融緩和」の1 つの大きな成果の表れだと思いますが、物価目標である2%と比べると大きく乖離しているのは、原油価格下落の影響だけではないため、再度、物価の安定というのはどのくらいの水準が適切なのかを考えていく必要があると思っています。』

そもそもコアコアでまだ全然2%じゃないのですからそもそも論として2%見直せ、という話ではあるのですが、もうちょっとクリアにこの辺を整理して具体的な金融政策提案に打ち込んで頂きますと分かりやすいのですけどね。この後で延々と金融政策に関する話があるのですがもうちょっとここをクリアに強調して頂きたい。


・追加緩和の副作用質問さっそく登場:追加的効果が減る中で副作用が高まる

『(問) 2 点お伺いします。懇談会でも詳細に述べられていますが、追加緩和の副作用について、何を一番心配されているのか、改めて教えて下さい。昨年10月末の「量的・質的金融緩和」の拡大に反対した理由だけではなく、さらに拡大するような話が執行部で出てきた時に、どういうリスクが一番心配なのか。特に一般の人の生活に及ぼし得る事象として何があるのか。最近、債券市場では金融と財政の両方が緩みきっている中で、先週NHKで預金封鎖の特集番組が放送されるなど、だんだん警鐘を鳴らす声も出てきていますが、分かりやすくお願いします。(以下割愛)』

ということで先ほど申し上げたようにこれに対する説明が長いのよ(他のも長いけど)。

『(答) 第1 の点ですが、私自身が追加策に反対したのは、一言で言いますと、効果と副作用を比較考量して、副作用の方が効果を上回ると判断したからです。こうした判断に際しての考え方は、もともと2 年程前に「量的・質的金融緩和」を導入した時から変わっていません。』

ほう。

『当初はもちろん効果が副作用を上回るという判断で導入に賛成しましたが、この政策を続けていけば、効果については徐々に低減していくだろうと考えていました。一方で副作用は低減していかないとすると、どこかの時点で副作用が効果を上回り、妥当ではなくなる時期がやってくると考えていました。だからこそ2 年程度を目途に一旦立ち止まって、効果と副作用を冷静に比較考量して、必要であれば見直しをすべきであると言って参りました。昨年10 月末に追加策に反対したのは、まさにこうした考え方の延長線上です。』

なるほど。

『追加策をしなくてもどこかの時点では副作用が効果を上回ると思っていましたが、追加策の実施によってタイミングが早まったということです。』

という所までがマクラでして(^^)。

『副作用に関するご質問でしたが、効果についても一言申し上げたいと思います。政策効果としては、実質金利の低下が重要な源泉だと考えていますが、名目金利は相当下がってさらなる低下余地が小さくなっている一方で、世界的にインフレ期待が高まりにくい中、実質金利の低下余地は狭まってきていると思います。』

MBを積み上げるとインフレ期待に直接働きかける事ができるので実質金利が下がります(キリッ)という執行部の理論に対してマッコウクジラの効果否定。

『足許での国債市場の混乱は、ある意味、実質金利を安定的に下げていくことがやや難しくなってきた可能性を示していると思います。効果については非常に大きなものはなかなか期待できない一方、副作用についてはさらに大きくなると考えています。』

で、その副作用。

『副作用としては、私自身は国債市場を通じた副作用を特に警戒しています。』

ほほう。

『現時点では、国債市場で非常に大きな副作用が明確にみられているわけではありません。しかし、将来のどこかの時点で非常に大きな問題として表面化する可能性があり、表面化してしまってからでは手遅れであるといった類の副作用を個人的には一番心配しています。』

まあ今大きな副作用とは言わん(言うならもっと緩和止めろ的な提案が出ます)ですが、さてこの手遅れの副作用とは????

『もう少し具体的に申し上げると、実体経済で決まるべき水準よりもう少し低い水準に金利が誘導されている可能性があり、その結果として政策効果が生まれているわけですが、それが行き過ぎると、例えば国債の売買が非常に細ったり、流動性が低下したりします。そうすると、何かイベントがあると金利が大きく上昇したり、ボラティリティーが非常に高まったりします。』

QQEの建付けでは資産買入でインフレ期待に直接働きかけて予想インフレ率を引き上げ、その一方で予想インフレ率が上昇する中で上昇する市場金利を資産買入で抑制する、という話なのですが、木内さんの懸念は買入が行き過ぎて市場そのものが壊れてしまうとまずいのではないかという話で。

『金利が非常に大きく上がれば、例えば住宅ローンの金利が非常に上がってしまうとか、急速に円高方向への巻き戻しが起こるとか、それに合わせて株価が下がるといったこともあり得るわけで、これらは我々の生活にも大きく関係します。』

まあこれはさておき。

『また、国債市場の金利水準が経済ファンダメンタルズからみた水準と乖離している、金利がある意味で歪められているということは、国債市場はいろいろな金融資産の価格形成のベースになるので、いろいろな金融資産・商品の価格が影響を受けて歪められている可能性があります。』

第2の柱キター!!!

『これは金融不均衡、いわゆるバブルに繋がり得るものです。金融不均衡の形成過程で、例えば株が大きく上がると、その時点ではもちろん良いわけですが、いずれ何かをきっかけに大きな巻き戻しが起きると、バブル崩壊というかたちで我々の生活にも非常に大きな問題に繋がってくることがあり得ます。こうしたことが起こらないように、十分に配慮しながら政策運営をしていくことが重要だと考えています。』

『金融政策は効果を最大限にすることだけを目指すのではなくて、効果と副作用のバランスを最大限にすることが重要ですので、副作用にも十分注意を払って政策運営をしていく必要があると思います。「量的・質的金融緩和」は、この2 年のタイミングで、政策の重点について、効果を最大限にするという意識から、より副作用に目配りをする方へと、リスク管理の比重を高めていく必要があるのではないかと考えています。(後半割愛)』

ということでリスク管理の比重を高める話は後程出てきます。


・さらに副作用論で副作用のテールリスク顕現を懸念

『(問) 先程の副作用の質問とも重なる部分もあるかと思いますが、もうすぐ2年間の節目ということで伺います。「量的・質的金融緩和」の当初期待された効果や、あるいは新しく明らかになった限界などについて、現時点でどのようにご覧になっているでしょうか。この間、地域が違うので単純比較はできないとは思いますが、半年に1 度のペースでのこうした経済界との懇談会を通じて、実体経済の変化等をどう感じていらっしゃるのか、あるいはまた物価面での「量的・質的金融緩和」の効果や限界などについてどうご覧になっているのか、ご意見を伺わせて下さい。』

ということでまた演説。

『(答) 先程申し上げましたが、私自身は効果と副作用のバランスはだんだん悪くなっていくと思っていました。「量的・質的金融緩和」は、その方針を変えなくても、徐々に緩和が強化されていくものですが、それに合せてどんどん累積的に効果が高められていくかは当初からやや疑問がありました。スタート時点では非常に大きな成果を生むわけですが、だんだんと効果は低減していくだろうと思っていましたが、過去2 年を振り返りますと、やはりそういうところはあるのかなと思っています。』

だったら「比率」で拡大していけばよいのでは、という意見が一部ではあったりしますよね。
まあ物理的に無理ですけど。

『副作用については、これも先程も申しましたが、見えにくい部分があり、今の時点でどれだけ副作用が高まっているかということを示すことはできません。効果については、長期的な効果もありますし、今みえている効果もあるわけですが、今みえている副作用を計算するというのは非常に難しいと思います。しかし、それを放置しておくとどこかの時点で非常に大変なことになってしまって手遅れになる、あるいは手遅れになっては困るということで、副作用に常に配慮して政策運営をするのが原則ではないかと思っています。』

全く持って仰せのとおりで、今の執行部の理論ってほぼ「テールリスクとか無いですから(キリッ)」って感じでの説明になっていますので木内さんの説明が非常に普通に見えます。

ただまあその点について今の執行部に同情する面があるとすれば、そもそもQQEそれ自体が「期待に働きかける」「期待をジャンプアップする」という意味で無理のある政策でして、「2年で2%」という無茶な目標を掲げた政策に関して「本気でタコ踊りを踊る」というのが必要とされる所でもあるので、木内さんの説明は冷静に考えれば普通の対応というかあるべき対応なのですが、そもそもQQEの建付け自体がタコ踊りをすることによって期待に働きかける、というものであるからして、執行部としてはここでタコ踊りを止める訳には行かないというのはあるんですよね。

『そういう意味で、副作用については、依然として慎重にみて政策運営をすべきであると思っています。』

ですからまあこういう委員がいてもよいけど、基本がタコ踊りというのは今更変えられないと思いますし、官邸のリフレ派アドバイザー先生たちが2年の期限が近づいて責任追及を恐れてさっそく逃げ態勢に入っている辺りに対しては日銀執行部静かに怒り心頭という所ではないでしょうかねえ。なおこの演説さらに続きますよ。



・効果について:実質金利の押し下げが難しくなっているので政策の限界という論点

ということで今の続き。

『一方、効果については、これも先程も申し上げましたが、実質金利の低下が「量的・質的金融緩和」の一番の効果の源泉ではないかと思いますので、それが大幅に下がるような局面では効果もかなり出やすいと思います。』

なるほど。

『導入当初はそういう面もあったとは思いますが、その後は、名目金利も下がりにくい一方、世界的な環境の変化もあって期待インフレ率が高まりにくい環境になってしまったため、効果はやや低減している面があるように思います。足許の国債市場の動きをみますと、安定的に実質金利を下げていくこと自体が、技術的にも容易ではないということが徐々に明らかになってきたのではないかと思っています。』

期待インフレが上昇しにくい+名目金利が下げにくいというセット技で。

『先程、金融市場を通じた副作用といったことを申し上げましたが、もう少し実体面からみた副作用について、あるいは政策の限界ということで申しますと、この2 年間で、金融政策の限界点についても世の中でそれなりに理解が進んだのではないかと思っており、これは非常に重要な点だと思っています。』

フリーダム発言キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!!

『金融政策はオールマイティーではありませんし、金融政策に出来ることは限られています。』

執行部に迫撃砲打ち込みですねわかります。

『その限られた中で、金融政策として、金融当局として出来る限りのことをやるという判断で、「量的・質的金融緩和」を導入したわけです。』

金融政策だけで2%は達成できます(キリッ)ではなかったのか(・・??)


『限界点は何かというと、1 つは1 年ほど前からかなり強く認識されてきたように、人手不足、成長の天井ということです。金融政策は主に需要サイドに働きかけて、需要を高めることに貢献する政策だと思います。実際、「量的・質的金融緩和」以降、大幅なマイナス状態にあった需給ギャップは、日本銀行の計算によれば、1 年程前にほぼゼロの状態まで改善しましたが、これは非常に大きな成果だと思います。ところが、このまま需給ギャップがさらに改善していくと何が起こるかというと、人手不足が強まります。成長の天井にぶつかるということは、潜在成長率並みの成長しかできなくなるということです。それは我々の計算でいうと、0%前半から半ば程度という非常に低い成長率です。そうすると、物価や賃金が上がっても、実質賃金の上昇率は高まりません。実質賃金の上昇率は生産性上昇率並みに高まるものであり、それ以上はあまり高まらなくなれば、生活は良くならず、むしろ供給制約によって景気が腰折れてしまうかもしれない、金融市場が非常に不安定になってしまうかもしれないということで、成長の天井を上げる、あるいは生産性上昇率を高めていくという供給サイドの政策の方が重要であるという認識が広まったと思います。』

白川ドクトリンキタコレ!!!ということで、講演でもありましたが、2%の物価安定目標は経済水準とか成長力とかに関係なくグローバルスタンダードという執行部とはまったく別のロジックで、これ自体どう見ても過去の白川ドクトリンですわなというお話。

『これは、金融政策の限界を理解してもらったということでもあり、その結果として追加緩和の効果が出にくくなっているということでもあると思います。』

アタクシはその通りだと思うのだがおそらく限界を理解してという立場に無い人の方が執行部や政府などだと思いますよ。

『しかし、各種経済政策はバランス良く出していくことが必要なので、金融政策の限界や問題点が広く理解されたということは、ある意味で、「量的・質的金融緩和」の非常に大きな成果の1つだったと思っています。』

これはまた執行部に盛大にイヤミとしか申し上げようがないですな(・∀・)。

『それから、これは我々がそのように考えているということではありませんが、円安を金融緩和の1 つの副作用と捉える人がいることも事実です。実際には金融政策で為替をコントロールできるわけではありませんが、結果として金融緩和が円安に繋がって、円安によって一部の企業や家計が経済的にややデメリットを受けている可能性もありますので、そういう点にも配慮していく必要があると思っています。』

おおこれもイヤミ。



・国債買入の限界について

『(問) 2 点お伺いします。本日の懇談会の中で、国債の買入れについて、「買入れの持続可能性についても留意しておくことが必要である」と述べられていますが、持続可能でなくなるタイミングまたは経済情勢について、どのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』

でまあ皆様には耳タコかもしれんがせっかくの良い説明なので引用しておく。

『(答) 国債が円滑に買入れられなくなるタイミングというのは、つまり金融機関から国債を購入することが難しくなってくるタイミングです。現状ではそういう状況には至っていませんが、どこかの時点で、日本銀行が高い値段で国債を買ってくれるとしても売りたくないという金融機関が増えてくると、そこが限界になってくるということです。』

で?

『我々の国債買入れは変動金利入札で行っていますので、金利が変動すれば理屈上では札割れはなかなか起こりにくいのですが、短国などでは既に起こっています。キャピタルゲインではなくインカムゲインをかなり重視する金融機関が多い中で、そうした金融機関は、国債を高値で売れるといっても、一旦売ってしまうとより低い利回りの国債を買わざるを得なくなります。このため、どんなに高い値段でも中央銀行へ売りたくないということになってきた時が限界ではないかと思います。』

さいですな。まあ何度も指摘されている事ですけれどもせっかくの機会なので引用。

『それがどのタイミングかということは、例えば応札倍率などは毎回非常に注視していますが、正直に言って分からないわけですが、突然買えなくなる可能性がないわけではありません。』

ですな。

『その時に何が起こるのかといえば、例えば金融市場では、この政策はどうなってしまうのかということで、いきなり障害が起こり得るわけです。先行きの金融政策がどうなるか分からないと、非常に不確実性が高まり、金融市場に大きな混乱を生んでしまう可能性があるので、そうしたことが起こらないように事前に対応する、つまり国債市場への圧力をやや弱めるような調整を行うということも、リスクを回避するための1 つの手段ではないかと思っています。(後半割愛)』

>国債市場への圧力をやや弱めるような調整

キタコレ!!


・ということで具体的にはどうするのかという話だが説明含めて延々2ページにわたる大演説を鑑賞

『(問) 木内委員は、徐々に「量的・質的金融緩和」の副作用の方が大きくなってきているとして、従来からおっしゃっているように、本日の懇談会でも、「政策運営の重心を資産買入れからその他のツールに徐々に移し始めていくことを、いずれ検討する必要がある」と述べています。ここで言っている「その他のツール」というのは、どういったことが考えられるのか、どのようなことを念頭に置かれているのか、お聞かせ下さい。』

ということですがこの答えが大演説なのよこれがまた(しかも切りにくい)。


『(答) 我々の金融政策は常に複合的に行われていると思います。「量的・質的金融緩和」だけで2%の「物価安定の目標」を達成しようというのは必ずしも正しくなくて、実際には、それ以外の政策も並行して行っています。』

お、おう・・・・・・・

『1 つは支援オペであり、もう1 つは金利政策です。』

ほう。

『金利がゼロで変わらないから、その政策効果が変わらないかというと、そうではありません。例えば、物価が大きくマイナスの時には、いわゆる非負制約があるので、実質金利は高めになり、ゼロ金利はむしろ景気を悪くしている面があると思います。伝統的な金利政策では、金利がゼロまで下がると、厳密にはそれ以下に下がれないわけではないものの、下がりにくいという点に限界があります。物価が下がっていくと実質金利が逆に上がり、金利をゼロに据え置くだけで景気をさらに悪くしてしまうので、その効果を相殺する方策として、資産買入れを含むいわゆる非伝統的な政策を行ってきたわけで、これは日本だけでなく、グローバルなトレンドであると思います。』

この後に出てきますが、つまり物価がマイナスからプラスになってきているので金利政策で良いじゃないかという話になるのですよ。まあそのロジックだと物価安定目標2%に中々到達しないという話だから今のドクトリンとは全く相いれないのですけどね。

『その場合は、例えば、国債を買って長期金利を下げることにより景気を浮揚させる効果によって、ゼロ金利による景気の抑制効果を相殺するという発想になります。つまり、その時点で、伝統的な金利政策と非伝統的な資産買入れ政策は既に混在しています。現在は「量的・質的金融緩和」の効果もあって、物価は2%には遠いとは言えプラスが定着してきて、需給ギャップも改善したことから、おそらくゼロ金利であっても景気を浮揚する効果が出てきていると思います。』

ということでそういう説明来ましたでしょ?

『意識はあまりされていないかもしれませんが、ゼロ金利政策によって景気浮揚効果も出ていることなども含めて、すべてを考えながら金融政策を運営していく必要があると思います。そして、それぞれのツールには特徴があります。』

ほう。

『例えば、「量的・質的金融緩和」について私が2 年間程度の集中対応措置として位置付けているのは、それが非常にパワフルではあるものの、長く続けていくと副作用が高まっていく一方、効果は低減していくものであり、ファイン・チューニング的な政策にもそぐわないと思っているからです。また、2 年間の集中対応措置といっても、2 年間で止めるということを言っているわけではなくて、その期間は規模として最大限を維持していくというのが、集中対応措置の私なりの意味合いです。』

うむ。

『実際に、「量的・質的金融緩和」を止めるために、持っている資産を一気に売却して超過準備をなくすなどということは、金融市場に対しての悪影響を考慮すればまず考えられません。従って、「量的・質的金融緩和」は非常に長期化しやすいということを前提に運営していかなければなりません。』

この次に10月緩和に対するダメ出しが来るのだ。

『「量的・質的金融緩和」は、景気が少し悪くなったから、あるいは物価が下振れたから強化していく、というようなファイン・チューニング的な政策には馴染まないものであり、もっと中長期の観点でやるべきだと思います。』

どう見ても砲弾着弾です本当にありがとうございました。

『一方、他の政策については、もう少しファイン・チューニングが出来ると思います。従って、将来的には、ファイン・チューニングには馴染まない「量的・質的金融緩和」のウェイトを全体の政策のパッケージの中で下げていく、例えば国債の買入れ額を少し小さくするといったことを検討していく必要があるのではないかと思います。近い将来はないと思いますが、遠い将来のいずれかの時期では、金利を変更するというのも選択肢としてあり得ると思います。ただ、これについては付利の金利を下げるという手もありますが、「量的・質的金融緩和」を実施している中で、資産の買入れと金利の引き下げというのは相入れない部分がありますので、そういう選択肢はなかなか選択しにくいと思います。』

時間軸政策ならわかるが付利を下げるのは現実的ではないでしょ。

『しかし、例えば国債買入れを少し減額していくという方向であれば、国債市場に対しても少し圧力が小さくなり、そうした中で、将来は例えば付利の金利を下げていくというのも選択肢としては残されていると思います。』

無理だし意味ありません。国債買入「残高」を落とせるのなら可能性は無いわけではないけど、木内さんのイメージは残高は維持だと思いますので。そらまあ盛大に国債売却するなら付利下げも手だが、そこまで来るとそもそも何をやりたいのかが無茶苦茶になってしまうのでやはりありえませんな。

『いろいろな政策の組み合せの中で、その時々に望ましいツールにウェイトを高めていくことが必要だと思います。2 年前は「量的・質的金融緩和」という非常にパワフルな政策が有効だったと思います。ただ、その結果として需給ギャップもプラスになり、物価もマイナスからプラスが定着しました。私は、金融政策の役割としては、「日本経済の実力に見合った水準で経済・物価の安定を確保する」、「需給ギャップが中立化する」、「物価がそれに見合ってプラスで安定する」、そこまでが非常に大きな役割としてあって、それらはだいぶ達成されつつあると思います。』

この辺が木内さんの微妙に説明が苦しいところで、QQEが効いて需給ギャップがプラスになったという効果は認める云々という話と、ここから先の金融政策効果と副作用の切り分けの部分との整合性があまり綺麗に整理されているように見えないです。

つまり、そもそも2%ではなくて1%的な説明をもうちょっとクリアカットにする(実際は足元で均衡みたいな話をしておりますので、そういう認識をしていて、要するに1%まで目指すのがQQEでその先は無理する必要なしという話だとは思うのですけど)と分かりやすいように思えますという事で。

『望ましい物価の水準というのは、例えば成長戦略が上手くいき、生産性が上がっていけば、その水準も上がってくるので、我々はその望ましい水準を常にみながら、目標を少しずつ切り上げていくことが必要だと思います。その過程では、「量的・質的金融緩和」よりもう少しファイン・チューニングに適した政策が有効になってくるので、そういう変更を徐々に考えていかなければならないというのが、懇談会のテキストの最後で述べている様々な政策ツールの組み合せということの趣旨です。望ましいポートフォリオというか、組み合せに徐々に調整していくという発想が、これから重要になってくるのではないかと思います。』

であれば、木内さんの認識的にほぼ均衡状態なのでしょうから、2年たったところで「国債買入残高の拡大を停止して金利政策の時間軸を導入、2%の物価目標は中長期で目指す」というのを明確に出す位の事をしていただきますとだいぶクリアカットになるのですが、さて4月会合辺りでどういう提案がでますかねえという所で。

#引用大会でどうもすいません




2015/03/06

お題「ECBの詳細が出たがどうも詳しいのが良くわからんぞなこれ/木内審議委員講演はまあ想定通りである」

今月は中銀ネタ月間ですなしかし。

○ECBである

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2015/html/pr150305.en.html
PRESS RELEASE
5 March 2015 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting, which was held in Nicosia, the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.05%, 0.30% and -0.20% respectively.』

こちらは金利の話なので現状維持。

・資産買入詳細について

http://www.ecb.europa.eu/mopo/liq/html/pspp.en.html
Implementation aspects of the public sector purchase programme (PSPP)

『In the context of the Eurosystem's expanded asset purchase programme announced on 22 January 2015, which consists of combined monthly purchases of EUR 60 bn in public and private sector securities, purchases under the public sector purchase programme (PSPP) of marketable debt instruments issued by euro area central governments, certain agencies located in the euro area or certain international or supranational institutions (referred to in legal texts as "international organisations and multilateral development banks") located in the euro area will start on 9 March 2015 (for more information, see also the Q&A on the public sector purchase programme).』

ということで9日より買入を開始とな。で、ここの最後に(for more information, see also the Q&A on the public sector purchase programme)ってのがあるがそれは後程。


『Implementation

In its implementation of the PSPP, the Eurosystem intends to conduct purchases in a gradual and broad-based manner, aiming to achieve market neutrality in order to avoid interfering with the market price formation mechanism.』

徐々&幅広く買いますよ市場ニュートラルで買いますよ市場の価格形成メカニズムは阻害しないようにしますよとな。

『In principle, purchases of nominal marketable debt instruments at a negative yield to maturity are permissible as long as the yield is above the deposit facility rate.』

預金ファシリティレート(今だとマイナス20bp)以下の金利では買入を行わないというのが中々お洒落で、預金ファシリティレートよりも低い金利の国債をバカスカ購入しているとある極東の中央銀行様見てますか〜♪

・・・・・・というのは良いのだが、預金ファシリティが懲罰金利になっている状況なのに預金ファシリティよりも低い金利の買入をしないとなると、MBを本格的に積み上げる気はなくて、買入残高で勝負ということになると思うのですが、それってどういうルートでの緩和効果を考えてるんだかさっぱり分からんぞなもしと。

『If the purchasable volume of marketable debt instruments issued by the central government and agencies is insufficient in the respective jurisdiction to accommodate the corresponding share of purchases under the ECB's capital key, substitute purchases are foreseen.』

買入する国債とエージェンシー債が足りなくて残高を稼げないときはほかの買入を考えるみたいですよ、でもどうするんだ???

『If these substitute purchases comprise marketable debt instruments issued by international or supranational institutions located in the euro area, such purchases will be subsumed under the 12% allocation for these securities in the PSPP. The remaining purchases of marketable debt instruments issued by international or supranational institutions located in the euro area will be conducted on behalf of the Eurosystem by the Banco de Espana and the Banque de France.』

どうも国債やエージェンシー債が足りない時にスープラとか国際機関債を買うらしい。

『International and supranational institutions and agencies

The initial list of international or supranational institutions located in the euro area and of agencies located in the euro area whose securities are eligible for the PSPP is as follows:』

以下買入適格の国際機関とスープラのリストがありますが割愛。

『Securities lending

The marketable debt instruments purchased under the PSPP will be made available for securities lending. This will be implemented in a decentralised manner, mirroring the organisation of the PSPP.』

買入を行った銘柄について(市場流動性確保の為に、でしょうな)レポを実施する用意がありまして、それは購入した各国中銀の方で実施しますよああそれからこのプログラムとのセットねこれは。

『The Eurosystem will start to gradually lend securities using the channels for securities lending available under its existing infrastructure, including so-called fails mitigation programmes by international central securities depositories, agency lending and bilateral securities lending. The Eurosystem aims to develop these existing formats in the near future.』

でまあ具体的には今ある施策を使ってやりますよとかそのような話をしているようで。


でもってこれではナンジャソラという感じなのですが、さっき「Q&Aを見ろ」というのがありましたのでそのURLに逝ってみる。


・詳細の詳細について

http://www.ecb.europa.eu/mopo/liq/html/pspp-qa.en.html
Q&A on the public sector purchase programme (PSPP)

Q&AといってもFAQ形式みたいな感じですな。

『Will the Governing Council decide each month on the exact composition of the asset purchases to be made and instruct the national central banks (NCBs) to carry out these purchases, or will the NCBs have a degree of flexibility? 』

『The Eurosystem will follow an internal benchmark when coordinating its purchases, with some flexibility for the NCBs to purchase their shares within the universe of eligible instruments. The need for flexibility and the leeway granted to NCBs will be assessed by the Governing Council, which may adjust the implementation framework in this regard on the basis of the experience gained.』

というのが最初のQ&Aでして、どうもさっきの説明にあるように「市場ニュートラルで買います」というのは分かるのですが、結局具体的にどの銘柄の場合どういう買い方をするのかはQ&Aの後ろの方にですな・・・・・

『How will you weigh different maturity buckets for your purchases?』

『The intention is to be market-neutral. The Eurosystem wants to create as little distortion as possible. At the same time, this will not be a strict target and flexibility will be applied, also taking into account the relative values of bonds and the liquidity of the different maturity segments.』


『What is the duration of purchases and how will duration be weighted?』

『There is no duration target for the programme.』


『How will you decide on the maturity breakdown of the purchases? By current outstanding amounts or by new issuance?』

『Purchases will in principle be weighted by nominal outstanding amounts, with eligible remaining maturities at the time of purchase ranging from 2 to 30 years, also taking into account the issue and issuer limits as well as potential distortions in certain maturity buckets.』

ということで、結局のところ「2年から30年の残存期間の国債を発行額面に応じてニュートラルに購入します」というのだけは分かるのですが、具体的にどのタイミングでどの年限を購入するのか的なオペのオファーの仕方がここを見ても良くわからんというかマルナゲータ状態になっているのでさっぱりワカランチ会長。

ただまあ細かい話だけは書いてあるのでなんかあるのかもしれませんけどね。

『Are the issue and issuer limits based on nominal or market value?』

『These limits will be based on nominal values.』

買入のリミットに関しては市場価格ベースではなくて額面ベースだよ、とか・・・・・

『What exactly does the 2 to 30-year maturity restriction mean?』

『The maturity restriction means that the Eurosystem will only buy securities which, at the time of purchase, have a minimum remaining maturity of 2 years (i.e. purchases of securities with a remaining maturity of 1 year and 364 days are NOT possible) and a maximum remaining maturity of less than 31 years (i.e. purchases of securities with a remaining maturity of 30 years and 364 days are possible).』

購入日において残存期間が2年以上(1年364日はダメ)31年未満(30年364日まで)が買入対象だそうで。


とまあそういうことで、9日から始まるのですがなんかこうやっつけ感が強いなあというのと、預金ファシリティよりも低い出来上がり金利では買入をしないという辺りで、まあ短期債買わないからそれでも良いのかもしれませんけれども、これだとなんでもいいからMB積み上げ、という事にならないですなあと思いますが、預金ファシリティよりも低い出来上がり金利での購入を行う事によって金融機関に利益供与みたいなことを言われたくないというのもあるんでしょうなあとか思うのでした。

いずれにせよ、先ほど申し上げましたように、預金ファシリティより低い出来上がり金利の購入をしないという事になりますと、特に短いゾーンでは早晩札割れになるんじゃないのと思うのですけれども、実際に札が割れだしたらどういう対応をするのかが楽しみというかなんというか・・・・・・・・・・・・


なお、肝心のドラギのおっちゃんの会見まで手が回らないので今日はパスです週末読みますすいませんすいません。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150305.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Nicosia, 5 March 2015


○木内審議委員金懇講演は予想通りに盛大に野党モードで展開されております

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150305a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 群馬県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

ということですが、日銀の仕様としまして野党審議委員であることが明確なお方の金懇だの講演だのというのは何故か知りませんが海外中銀の大ネタがあるときにぶつけられたり、国内で選挙とかのような大ネタがある時にぶつけられたりという傾向があるように思えるのですが、スケジュール調整している事務方の(銃声)。


・景気に関しては慎重(だが追加緩和する気が無いのはご案内の通り)

経済物価情勢に関する説明の『3.経済・物価見通しを巡る主な留意点』から。

『私自身は、景気は今後も緩やかに回復を続けるとみているものの、前述の展望レポートの中心的な見通しに比べると、経済・物価見通しについてより慎重な見方をしています。以下では、こうした私自身の見方に基づき、先行きの見通しに関する留意点を述べたいと思います。』

ということで・・・・・・・・・

『(1)日本経済の成長力』

ほほう。

『供給面から日本経済の実力に見合った成長ペースを示す潜在成長率は、日本銀行の推計では、このところ0%台前半ないし半ば程度と低い水準にとどまっています(図表6)。』

さいですな。

『また、設備投資は増加基調に転じているものの、企業の資本ストックの蓄積ペースはなお緩やかであることなども踏まえると、この先、潜在成長率が短期間で顕著に上昇する姿は見込み難いと考えられます。』

おう・・・・・・・

『他方で、同じく日本銀行の推計でみると、需給ギャップはここのところ概ねゼロ近辺の中立水準で推移しており、OECD 推計に基づく国際比較でみても良好な水準にあるほか、労働需給はかなり逼迫した状態が続いています(図表7、8)。これらの推計結果は幅を持ってみる必要がありますが、仮にこうした環境の下で潜在成長率を大きく上回る成長ペースが続けば、人手不足など供給制約が強まっていくと予想されます。』

しかしながら・・・・・・・

『私自身は、潜在成長率から大きく乖離していない緩やかな成長ペースが続くことで、安定した経済・物価環境が維持される公算が大きいとみています。』

つまり先行きの急上昇は見ていないというオチ。


『(2)原油価格下落と世界経済』

という所については原油価格が下がってウマーですよという話をしているものの、その直ぐ後にそんなにウマーでも無いんじゃネーノという話をしております。

『このうち、プラス効果の程度を測るうえでは、原油価格の下落が米国の景気にどの程度恩恵をもたらすかが注目されます。この点、米国でのエネルギー消費効率の高まり等の構造変化によって、原油安は期待ほどには個人消費を押し上げない可能性があるほか、石油関連産業の設備投資の減少や、産油国を含む海外景気の下振れによる輸出の減少につながる可能性も考えられます。』

『また、原油価格の下落によるプラス効果が見込まれる中でも、多くの先進国および新興市場国での中期的な成長期待の低下に起因する投資の弱さなどを理由に、IMF では直近の世界経済見通しを下方修正した点も注目されます(前掲図表3)。これらも勘案して、私自身は、日本の輸出を左右する要因となる海外景気については下振れリスクをより意識しています。』

ということで結局下の話になっておりますな。

『(3)消費動向』

こちらでは賃金上がってウマー論に対してやや異論を。

『但し、仮に主要企業で相応のベースアップが実施されたとしても、経済全体でみた所定内給与の上昇率との間には乖離が生じ得ます(図表11)。その理由としては、中小企業の賃上げ動向も全体の方向性を左右することや、非正規労働者の多くはベースアップの対象にならないこと、相対的に賃金水準が低い非正規労働者の構成比率の高まりが賃金の平均水準を押し下げている面があることなどが考えられます。こうした点を踏まえると、労働需給の改善傾向が続く中でも、先行きの実質所得の改善ペースは緩やかなものにとどまり、個人消費もそれに見合った緩やかなペースでの増加を続ける可能性が高いと考えています。』

というころでまあ慎重ですな。


・物価見通しについてはそもそも展望レポートに反対議案だしていますので・・・・・・・・

次が『(4)物価見通し』である。

『物価見通しについて、私自身は、昨年10 月の「展望レポート」で、「消費者物価の前年比は、2015 年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」との記述を修正する議案を出しており、その後も中心的な見通しより慎重な見方を維持しています。』

そしてその説明。

『物価見通しと需給ギャップの関係をフィリップス曲線で整理すると(図表12)、消費者物価の前年比が2%程度に達するためには、需給ギャップの改善に物価が比較的明確に反応していく(傾きのスティープ化)とともに、フィリップス曲線自体も中長期的な予想物価上昇率の高まりを反映して上方シフトしていくことが必要です。』

さいですな。

『しかし、「量的・質的金融緩和」の導入以降、需給ギャップは大幅に縮小して過去1 年近くにわたり概ね中立水準を維持し、その間円安の動きもみられましたが、物価の上昇ペースは、原油価格下落の影響を受け難い、食料およびエネルギーを除くベースの消費者物価でみてもなお緩やかにとどまっています。』

図表12を見ますと直近1年(くらいでみるのは妥当性としてどうかという議論はありますがそこはスルーしてくださいませ)のプロットからしますと「フィリップス曲線のシフトアップはやや進んだけど、カーブは相変わらずフラットなまま」という感じに見えますな。

『こうした現状を前提とすれば、先行き原油価格下落の影響が剥落していき、需給ギャップが更に改善していくとしても、物価の上昇ペースは引き続き緩やかなものにとどまるとみられます。』

ということでそうなるという事なのかなとは思いましたがどうでしょうか。


・金融政策運営に関してはこりゃ執行部とは全く相容れない主張だわ

メインイベントは『4.金融政策運営』であるので鑑賞鑑賞。

『「量的・質的金融緩和」の拡大については、政策委員会メンバーの間で慎重な意見もありましたが、採決の結果、その実施が決定されました。私自身は、「量的・質的金融緩和」が既に相応の効果を挙げて、日本経済の潜在成長力に照らして経済・物価は概ね安定した状態を取り戻している中、拡大の効果はそれに伴うコストや副作用に見合わないとの考えから、この決定に反対し、その後の会合でも拡大以前の方針が適当であると考えて反対票を投じています。』

うむ。

『その背景にある考え方は、私が「量的・質的金融緩和」の導入時点から続けている提案、すなわち、(1)2%の「物価安定の目標」の達成時期を2年程度ではなく中長期の目標とすること、(2)「量的・質的金融緩和」を2年程度の集中対応措置と位置付け、その後必要に応じて柔軟に見直すこと、とも密接に関わっています。以下では、そうした点も含めて、金融政策運営を巡る幾つかの論点について、私自身の考えを申し上げたいと思います。』

ということで・・・・・・・・・・


まずは『(1)「物価安定の目標」について』ですが。

『日本銀行が掲げる2%の「物価安定の目標」は、物価上昇率を安定的に2%程度で持続させることを目指すものです。その実現のためには、企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率が2%程度の水準で安定することが必要ですが、なお相応の距離があるといえます(図表14)。』

という説明をしている図表14が思いっきりBEIとかインフレスワップの数値を出しているのは置物師匠に対するイヤミですねわかります(^^)。

『私自身は、日本の中長期の予想物価上昇率は、潜在成長率などの供給側の要因で決まる部分が大きいと考えています。従って、2%の「物価安定の目標」の実現には、金融緩和で作り出した良好な経済・金融環境を活かしながら、幅広い経済主体が成長力強化に向けて息の長い取り組みを行っていく必要があり、その取り組みが順調に進んでも、目標の実現には相応の期間を要すると考えています。私が2%の「物価安定の目標」について、2年程度ではなく中長期の目標と位置付けることを提案しているのもそのためです。』

ということで、これは従前からの木内さんの主張ですが、執行部の説明はご案内の通り「2%はグローバルスタンダード(キリッ)」という奴でして、木内さんの主張と対比した形で言えば「潜在成長率などの条件とは無関係に中長期的に適切な物価上昇率というものは決まっている」という話なので、現執行部の説明とは全くこの部分が相容れない筈です。

『金融政策では、緩和的な金融環境の維持を通じて、こうした取り組みを粘り強く側面から支援していくことが重要ですが、既に述べたように、潜在成長率が依然低水準にとどまる一方、経済の需要面に働きかける金融政策の効果もあって、需給ギャップはここのところゼロ近傍となっています。こうした中、短期間で経済の実力以上に物価を押し上げようと過度に緩和を強化すれば、経済ひいては物価の安定をむしろ損ねてしまうリスクがあります。』

どう見ても白川ドクトリンです本当にありがとうございました。

『私としては、「物価安定の目標」の達成期間を柔軟化して、緩やかでも息の長い景気回復を実現し、その間に生産性上昇率や潜在成長率を高める取り組みが着実に進められるように金融面からサポートすることが、国民経済の健全な発展のためにも、また政策運営に対する信認という観点からも、望ましいのではないかと考えています。』

麿モードですな。

『なお、成長力強化に向けた取り組みの進展に伴って潜在成長力が上がり、それに見合った安定的な物価水準も上昇すると考えられますが、短期的には、そうした取り組みの一環である規制緩和で特定分野の価格が下がるなど、物価に下方圧力が加わる可能性もあります。こうした点からも、「物価安定の目標」は柔軟に運営される必要があると考えています。』

これは最後に良いイヤミ。


・QQEの拡大に効果が乏しいという主張

『(2)「量的・質的金融緩和」の拡大』という所から。

『2013 年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際、私自身は、一定期間に限れば効果が副作用を上回るぎりぎりの規模と判断し、その具体的な緩和策に賛成しました。しかし、私自身は、導入当初から、この規模の緩和策が長期化あるいは強化されれば、むしろ副作用がプラス効果を上回り、長い目でみた経済・物価の安定を損ねるリスクが高まると考えており、先般の拡大についても効果はコストや副作用に見合わないと判断しました。』

ということで・・・・・・・・・

『拡大の効果の面をみると、追加措置によって金利が更に低下しても、名目金利は既に歴史的な低水準にあり、世界的に予想物価上昇率が高まり難い環境のもと、政策効果をもたらす実質金利の低下余地は小さいと考えられます。また、期待に働きかける経路を通じた効果は、「量的・質的金融緩和」の導入時には相応の効果を持ち得たとしても、追加措置による効果は導入時と比べてかなり限定的なものになるとみられます。』

気合によって予想インフレ率に直接働きかけて実質金利を下げる系の気合話をだいぶ否定していますな。

『他方で、拡大のコスト・副作用の面では、市場機能の一段の低下や、一層の金利の低下が金融機関の収益や仲介機能に与える影響などに注意する必要があります。例えば、国債市場の流動性が極端に低下してしまえば、ショックへの耐性が低下し、ボラティリティが高まるなど市場が不安定化しやすくなります。』

仰せのとおり。

『また、長期国債の買入れを年間約80 兆円の増加ペースに引き上げたことで、フローでみた市中発行額の大半を買入れることになり、実質的な財政ファイナンスとみなされる潜在的リスクがより高くなる懸念もあります。日本銀行の買入れによって国債市場の安定が保たれるとの期待が過度に強まり、金利による財政規律維持のメカニズムが損なわれるリスクについても、これまで以上に留意する必要があると考えています。』

ほう。

『昨年末に日本国債の格下げが行われた際、国債市場に目立った動きはみられませんでしたが、仮にそれが財政環境を映し出す市場機能の低下を示唆しているのであれば注意する必要があります。』

なるほど。

『国債市場は金融・資産市場での多様な価格形成の基礎をなしていることも踏まえると、国債市場において日本銀行が過大な存在となり、金利が極めて低い水準で推移するもとで、各種の金融不均衡が蓄積するリスクにも十分目配りする必要があります。』

第2の柱キタコレ。

『なお、金利が一層低下すれば、資金運用難の状況を強めるとともに、安定的な利子所得の取得を優先する機関投資家の国債売却意欲を削ぐ可能性があります。日本銀行による国債買入れの継続は技術的には当分可能であるとみていますが、先行きにおける買入れの持続可能性についても留意しておくことが必要であると考えています。』

オペの技術的限界指摘キタコレ。

・・・・・とまあ予想通りですが追加緩和やこれ以上の緩和拡大にケチョンケチョン。


・前日の宮尾講演に結果的に大砲撃とな

次が『(3)財政健全化と金融システムの安定維持』であるが・・・・・・・・

『量的・質的金融緩和」を円滑に遂行していくうえでは、財政健全化に向けた取り組みが不可欠です。日本銀行による巨額の国債買入れは、あくまでも「物価安定の目標」の実現のために行っているものです。しかし、仮に財政運営への信認が低下して、市場がこの措置を財政ファイナンスと広く受け止めた場合、リスクプレミアムの拡大から金利が上昇することで、「量的・質的金融緩和」の効果が減殺されるリスクがあります。』

まあこの点に関しては執行部も同じ話をしているのですが、一方で昨日ネタにした宮尾審議委員の講演では国債大量購入でシニョリッジが発生するので(実際にはそれは見せかけのものであり正常化過程で回収されるべきものであるという話は申し上げた通りですが)それを財政支出なり減税に使えるという一種のジンバブエ理論を持ち出してきていましたので、その宮尾さんに対する期せずしたイヤミになっているのがお洒落ですな。

なお、このコーナーでは「第2の柱」に留意しろという話をしておりますが引用割愛しますね。趣旨はさっき引用した第2の柱キタコレの内容を展開したものです。


・QQEではなくて緩和的政策の長期化&それに沿った政策デザインが必要という話

『(4)幅広い政策手段の活用』という所ですけれどもね。

『量的・質的金融緩和」で実施されている資産買入れ策などの非伝統的な政策は、ゼロ金利制約下で経済・物価に上向きのモメンタムを生じさせ、その方向性に影響を与える、例外的でやや時限性の高い手段と位置付けられると私自身は考えています。』

モメンタムを出すという話に関してはこれは執行部(日本記者クラブでの黒田総裁講演ご参照)の整理と同じですね。

『現行の資産買入れ策は、日本銀行の保有資産残高を継続的に増加させるため、買入れを続ける限り、残高の積み上がりとともに緩和が累積的に強化される性質のものです。また、他の政策手段と比較して、「量的・質的金融緩和」は正常化に相当長い期間を要する可能性が高いため、その中長期的な政策効果の発現を十分に考慮に入れて、フォワード・ルッキングに政策運営を進めていくことが重要です。』

その前に第2の柱に関する説明(引用パスした部分)がありますように、やや早期の撤収について望ましい
という立場ですな。

『これに対して、伝統的な金利政策は、経済・物価に強いモメンタムを与えるというよりも、経済・物価を望ましい水準へ誘導していく局面でのファイン・チューニング的な常用手段として位置付けられると考えられます。』

という整理になっていまして、途中をちょっと割愛して結論部分に参りますと・・・・・・・・・・・

『前述のとおり、「量的・質的金融緩和」の最終的な成否は、安定した経済・物価環境を維持しながら、金融政策の正常化を円滑に実現することにかかっています。そのためには、「2つの柱」による点検を踏まえて、こうした様々な政策ツール(引用者注記:ゼロ金利政策効果、量的緩和効果、貸出支援基金などの話をしています)を幅広く並行的に活用しながら、中長期的に望ましい経済・物価環境の実現に向けて金融面からの後押しを粘り強く続けていくことが重要であると私自身は考えています。』

ほほう。

『この点、先に述べた「量的・質的金融緩和」の性質などを踏まえれば、政策運営の重心を資産買入れからその他のツールに徐々に移し始めていくことを、いずれ検討する必要があると私自身は考えています。』

ということで、そもそも木内さんの金融政策論によりますと緩和政策を長期化しないといけないという話になるので、そうなりますと長期的に持続可能な緩和政策が必要だという話になりますし、すでに経済に関しては需給ギャップがゼロ近辺で安定的に進行しているという認識になっていますので、そうなりますと、大規模資産買入のような無理な政策を実施する必要はありませんぞなという話になり、ゼロ金利政策と時間軸の合わせ技に貸出支援基金などのような措置でサポートをするというお話になると思われます。

会見も面白かった(ヘッドラインを見る限り)ので会見テキストを待ちたいと思います。

#うーむ週末の宿題が多い・・・・・・・






2015/03/05

お題「ECB会合の前に駆け込みECBネタのつもりでしたが予定を変更して宮尾審議委員講演をお送りします」

さあ今晩はお待ちかねタンホイザのECB理事会ですよ!!!!!!!

○市場雑談メモ

・今日は3M入札と30年入札ですな

30年入札の前に3M入札と書くのがドラめもんクオリティでございますが、昨日もGCレポとか現先市場では玉なし芳一状態になっておりまして、中々こう素敵な展開となっております。

・・・・・・・となりますと今日の入札マイナスかという話になるのですが、まあ一方で今月は短国買入がそれほどのハイペースで実施される訳でもなく、そうなりますとたとえば今週だと今日の3Mに明日の6Mと入札が連発して、しかも短国買入に打ち込んでウマーと思われるのはどう見ても明日の6Mであることを考えますと、今日の3Mは投資家に打ち込んでおかないと在庫負担的に重いでしょとゆー話になるはず。

てな訳でまあ普通にプラス水準で入札やって投資家の買いを誘発させてまずは玉を軽くしましてから日銀買入で売り抜けるチャンスを狙いに行くしかないでしょと思います次第で、間違って入札がマイナス金利水準に下がってしまうと投資家に打ち込み損なって在庫が軽くならないので結局プラス金利に押し戻されるでしょうなあという所です。いずれにせよ入札後のGCや現先レートなど見ると面白いのかもしれません。

なおうっかりしていましたが3日にこれ出ていましたな。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1503.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年3月見込み)

今月は財政要因での資金不足が7000億円程度でして、短国に関しては買入残高維持をするのであれば7.1兆円の買入を3月受け渡しベースで実施する必要がありますが、買入短国の残高は12月末が383650億円で、2月末が413355億円と3兆円買入残高が拡大しておりまして、この間に固定オペと被災地支援オペの合計額が1.4兆円減少(82822億円→68882億円)しておりますので、単純に計算するとMB進捗の帳尻分で短国買入を1.5兆円ほど余計に積んでいる格好ですから、そこを調整すると今月の短国買入は6兆円もあれば十分で、そうなると1.5兆円4本で十分というお話。

また、当月にロールが来る固定金利オペは1兆円強なのですが、それよりも大きいのが貸出増加支援の四半期実行の方で、こちらについては今回はそこそこの量が出るとの下馬評になっていまして、これが出る分は短国買入の残高を減らすことが可能になりますので、まあそんなこんなで今月の短国買入は貸出増加支援での基金拡大がどの程度出るのかにもよるのですが、まあ多く見ても6兆円程度しか出ませんなというお話になると思われます。

なお、貸出増加支援についても共通担保は食う話になりますので、担保繰りという面においては貸出増加支援増えて短国買入減ってもツーペーな話ではあるのですけど、共通担保だと別に担保は短国に限定されるものではありませんので、短国市場的にはやはり需給が緩和する方向になるでしょうから、そんなこんなでまあ今月は海外で突発的にニーズが爆発でもしない限り普通にゼロに近い毛ほどのプラス金利で推移するという話になるんでしょうかね、良くわからんけど。


でまあ30年入札の方ですが、昨日は昨日とて朝からまた30年ヒャッハーみたいな超長期の叩き料理が行われていたわけですが、途中で先回り買いでも入ったのかゲロゲロマーライオン状態だったのがだいぶ解消されるという展開になっておりましたので、まあその流れからか今日は何とかなるでしょう的な話もある一方で、この前絶対水準1.5%でいったん捌いたことから、絶対水準バイヤーの金利目線は当然ながら上がる(金利が高くならんと買わん)という話になるでしょうし、まあどうなんでしょうねという所です。

しかしまあ何ですな、中短期に関しては何だかんだと言ってもド短期の金利がアガランチ会長であるために安定しますし、超長期に関しては金利水準調整すれば絶対水準の投資家も見えてきたというのに、10年の所だけは明確な投資家が見えないまま、日銀の買入パワーが強い(10年カレント銘柄の日銀保有状況を見ると笑ってしまうしかない)ので妙にお高いところで値持ちしているという状態で、需給が一発で変化する入札(しかも四半期の場合は発行日が20日になるので輪番にすぐに入れられない)が来ると30銭だ40銭だとテールが流れるという実にこうアレな流れになっておりまして、市場の流動性が日銀買入が進む中でドンドンひどい事になり、はてさてこの馬鹿買入政策どこまで続けられるんでしょという(概ね肌感覚ではあと1年持てば上等と思うのだが単なるドタ勘なので良くわからん)というお話でもあったりしますな、うんうん。


さて、本日は今晩のECB前に前回のECB議事要旨を見ながら「そもそもソブリンQEやるのは良いけれども何の整理もできていないのに大丈夫か」という話をする予定だったのですが、不意打ちでもう講演とか無いと思っていました宮尾審議委員が大和証券の投資セミナー(ですよね講演の題名の副題見ると)で特別講演をしておりまして、その講演が卒業論文というか卒業試験という風情でもありますので、審議委員としての最後の晴れ舞台とやらを鑑賞するのであります。


○宮尾審議委員の卒業論文がどう見ても赤点再履修な件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150304a1.pdf
金融政策運営の課題
大和インベストメント・コンファレンス東京2015における特別講演

ということで、審議委員としての最後の晴れ舞台・・・・・・・のはずなのですが、最後の最後にこの講演とは正直失望したというか、日本の経済学者のレベルのアレさに失望というよりは絶望する次第で、今後「専門家を」とか言いながら学者が増えたら政策委員会がスリーピングボードになってしまいますなあという悪寒が漂う内容でございました。

ではどこがどう絶望なのかを鑑賞しましょう。ちなみに今回の講演の内容は最初の所で説明していますが以下のような感じらしい。

『間もなく、日本銀行審議委員としての5 年間の任期を終了することになる。この間、内外の金融経済情勢、金融政策運営の両面で、大変多くの出来事があり、まさに激動の5 年間であった。この間の出来事や経験を踏まえ、本日は、金融政策運営における課題について、いくつかの論点に絞って述べたい。具体的には、次の3つのことを申し上げたい。@長期国債など大規模な資産買入れ政策の効果、A金融政策のコミュニケーション、B2%の物価安定目標へ向けた今後の道筋についてである。こうした議論を踏まえ、最後に、中央銀行による説明責任のあり方に関して若干の私見を述べ、終わりとする。』


・金利政策としての資産買入と政策金利維持の時間軸政策は本質的に同じなのですが・・・・・・・・

最初がまあこの大規模資産買入の効果に関する説明なのだが、資産買入政策と政策金利を低位水準で長期的に維持する時間軸政策の違いについてドヤ顔で説明している所が本質的におかしいという所から参ります。本文1ページのケツ辺りから。

『米国、日本、欧州の資産買入れ措置は、それぞれの詳細は異なるが、共通する特徴は、大規模な買入を実施し、かつ買入の継続期間について「オープンエンド性」を持たせている点である。(中略)これは、あらかじめ期限を区切った資産買入れと比べて、非常に強い緩和措置であり、次の3つの点から、より強力な効果を発揮しうるとみられる。』

はて??

『第1に、資産買入を継続する期間について、あらかじめ限定せず、政策目標にリンクすることで、目標達成に対する強い意志と決意を示している。』

『日本の「量的・質的金融緩和」の場合には、2%目標の実現に強く明確なコミットメントを示すことで、予想インフレ率に働きかけ、同時に大規模な国債買入れによってイールドカーブ全体に低下圧力を加えることで実質金利を低下させ、民間需要を刺激する。』

『一般に、オープンエンド性を付与することで、非伝統的かつ大規模な政策措置を相当な期間継続する姿勢を明確にし、その結果、長期金利や資産価格への働きかけを強めて金融環境を一段と緩和的として、企業収益や雇用・賃金の改善をもたらし、より強力な効果を発揮しうる。』

まあこの時点でツッコミどころもあるのだが先の所での説明で盛大なツッコミどころが登場するのでここは流す。

『第2に、緩和政策へ強力かつより長期にコミットすることで、民間部門の生産的なリスクテイクや「企業家精神」を促して、経済の供給面に好影響を及ぼす可能性がある。』

第1でオープンエンドの緩和政策にコミットという話をしているのに何でここで同じことについてわざわざ第2の分類するのでしょうかね。

『たとえば、@事業構造の転換や新たな需要の掘り起こしなどを後押しする、A新技術を体化した設備投資や研究開発投資などを促す、といった取組みにつながれば、資本ストックを増加させ、全要素生産性を高めることができる。経済の供給サイドが改善し、国全体の恒常所得見通しが改善することで、需要の持続的な増加へとつながることが期待できる。1』

国債買入政策を実施することによってどういうパスでそのようになるんでしょうか定量的な考察を頂きたいものですな。

『第3に、オープンエンドである結果、市場が予想する買入期間は、経済見通しの変化に応じて、変化しうる。仮に経済見通しが下振れても、予想される緩和期間が長期化するため、緩和効果が強まり、その結果、目標達成時期が近づくという安定化メカニズムを内包している。』

経済見通しが下振れたら普通に追加緩和になるんだから別にオープンエンド関係ないだろと思いますし、だいたいからして経済見通しが下振れるような状況下だったら緩和が足りないのだから予想される緩和期間んが長期化されて高まった緩和効果と実際に経済見通しが下振れすることになる背景となった経済への悪影響が相殺されるだけで、別に目標達成時期が近づく訳ないだろいい加減にしろ。

・・・・・などと思いますが、まあそれよりも呆れるというか意味不明なのはこの先の部分です。


『では、大規模な資産買入れとそのオープンエンド・アプローチは、別の非伝統的手段である「政策金利のフォワードガイダンス」、すなわちゼロ金利あるいは超低金利をより長期に継続するとの約束と比較して、どう評価できるだろうか。』

ここでバランスシート政策の資産サイドによる資産価格への影響の話をするとか、MB拡大でインフレ期待が高まるという話をするならまだわかるのですが、宮尾さんの説明はマジでこの人5年間審議委員やってて何を見てきたのかと小一時間問い詰めたくなる内容なのですよ。


『ここでは、2つの観点から議論してみたい。』

『第1 は、金融環境(長期金利や資産価格など)への影響という観点である。』

で、特定のアセットクラスに対する影響とかいうのならまだわかるのですが・・・・・・・・

『大規模な長期国債買入れは、タームプレミアム部分に低下圧力をかけるだけでなく、将来の短期金利の予想経路にも影響を及ぼしうる。』

ということで、金利アプローチで説明をおっぱじめているのですが、金利アプローチという面で言えば、低金利政策のフォワードガイダンス政策による時間軸効果も「将来の短期金利の予想経路に影響を及ぼす」もの(というか政策金利のガイダンスなのだからより直接的)ですし、その結果としてタームプレミアムに低下圧力をかけるのは同様であって、資産買入政策独自の特色ではないのですが大丈夫でしょうか宮尾先生。

『長期国債を大規模かつより長期に保有することで、異例の緩和措置をより長期に継続する――したがって、結果的にゼロ金利や超低金利政策もより長期間続ける――というシグナルと市場が受け止めると、予想短期金利の部分にも下押し圧力がかかる可能性がある(「シグナル効果」)。』

すいません意味がわかりません。目標達成が展望できたら出口政策に入るのは資産買入でも低金利時間軸でも同様なのですが。


『他方、ゼロ金利のフォワードガイダンスでは、将来、政策金利の引上げが望ましい局面になってもゼロ金利を続けると事前に約束することで、短期金利の予想経路を引き下げ、長めの金利に低下圧力を及ぼす。ただし、その約束は、実際に利上げが望ましい局面になると破られるという誘因を持つ(事後的には反故にすることが望ましい)ことから、「時間非整合(time inconsistency)」の問題を含んでいる。大規模かつオープンエンドの長期国債買入れがもたらす「シグナル効果」は、時間非整合性の誘因を抑えるコミットメント・デバイスとしても機能する可能性がある。以上から、大規模な国債買入れは、緩和的な金融環境を実現する上で、より大きな効果を発揮しうるとみられる。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

あのーすいません、資産買入による量的緩和政策であっても実際に出口政策が望ましい局面になったら出口政策を実施しないと今度は景気の過熱による望ましくないインフレーションや金融市場や資源配分の不均衡をもたらすから、時間的非整合の問題に関してはゼロ金利のフォワードガイダンスと資産買入との間に差異はないんですけれども、何でそこで差が発生すると言えるのかちょっととっくりと教えて頂きたいのですけれどもね。


・言うに事欠いてジンバブエ理論登場とかもうね

でまあその次。

『第2 の観点は、マネタリーベース拡大の含意についてである。長期国債買入れのオープンエンド・アプローチには、負債サイドでマネタリーベース、とりわけ準備預金が大規模かつより長期に拡大するという含意がある。一方、金利のフォワードガイダンスには、このような量的な側面は存在しない。』

で、その量がインフレ期待に直接働きかける的な話をするのであれば、まあマネタリーベース直線一気の置物理論を敷衍しているのでまだ分からないでもないのですが、言うに事欠いてこの人何を言い出すんだというのがその先に来るのだ。

『流通市場から長期国債を買入れて、マネタリーベースとりわけ準備預金が長期的に拡大することは、どのような経済効果がありうるだろうか。最近の学界の研究では、この問題に対して理論的な分析が試みられており、定性的なメカニズムとしては、以下のような効果が考えられる。』

ほう。

『政府の長期負債(長期国債)が中央銀行の短期負債(準備預金)に置き換わる結果、政府と中央銀行から成る政策部門全体でみると利払い費用が減?し、?なくともその意味でシニョリッジ(通貨発行益)が発生する。』

ジンバブエキター!!!

『ここで、政府の将来にわたる財政支出計画を一定とすると、シニョリッジが発生した分、政府の予算制約式において追加的な財政余地(fiscal space)が生み出される。その生み出された財政余地が、先々の財政支出の増加もしくは減税にまわれば(あるいは、そのように民間が予想すれば)、景気を刺激することができる。2』

えーっとすいません、まあ脚注を見るとそういうの大真面目に論じられているのかもしれませんけど、非伝統的政策による国債買入の拡大によって生み出されたシニョリッジは、その政策を終了させる段階で強制返済の刑になる(返済しなかったら金融緩和の行き過ぎでインフレ高進が止められなくなる)わけで、未来永劫デフレ均衡が続いて大量の国債買入が維持できるというのであれば、その分のシニョリッジを使う事は出来るかもしれませんが、それはそもそも資産買入政策の効果が無いという金融政策無効論に発展しちゃいますし、だいたいからしてバーナンキの背理法が成立して無税国家になってしまうという話でしょという事で。

『このような長期国債と準備預金の交換に基づく潜在的な景気刺激効果は、ゼロ金利政策のフォワードガイダンスには起こりえず、大規模かつ長期のバランスシート政策に固有のものである。』

大体この説明がおかしいのは、長期国債と「準備預金」の交換という説明をしていることであって、大規模国債買入政策で行われているのは、長期国債と「超過準備」の交換であって(額が小さいうちは準備預金かもしれなないが)、超過準備というのは金利誘導政策を実施する際において、資金吸収オペで回収するか、あるいは超過準備預金に対する付利を行う事によって不胎化をしないと、金利誘導政策が実施できない、つまり出口においては長期国債と交換したはずの「超過準備」はただの金利付き負債に化けてしまうのでありますから、ここで発生するシニョリッジはあくまでも見せかけのものであり、それを使うのは出口において逆回転を発生させるだけの「未来からの前借」でしかなく、これを景気刺激効果にカウントするのがそもそもおかしいです。

『もちろん、現実の政策実践においては、生み出された財政余地の利用をきっかけに、政府の財政健全化努力が後退したと市場に疑念をもたれるリスクがあり、注意が必要である。実際、理論分析では、時間を通じた政府の予算制約式が成立しており、財政収支は最終的に均衡することが前提となっている。日本の場合、政府は中長期の財政再建にコミットする姿勢を明確に示しているが、それはこの理論分析においても重要な前提となっている点は強調しておきたい。』

なんか小難しく言ってますが、時間を通じた政府の予算制約式って要するにこのシニョリッジを使うのは未来からの前借って事だと思いますが、あたかもこのシニョリッジを使うことが出来ます的な話をするのって、要するに財政問題ガーと頭を抱えている政治方面に盛大に尻尾を振っていることで、セントラルバンカーとしての任期切れも近いので早速そちらにすり寄る辺り、執行部が変わると見るや謎提案ですり寄った同僚の学者様にも似た行動様式に落涙を禁じ得ない次第で大変に痛み入る次第でございます。


・ということでおかしな結論なのだが最後に出口に言及しているのがまた笑えるというか笑えん

『以上議論してきたように、大規模な資産買入れ政策とそのオープンエンド・アプローチには、実質金利などを通じた伝統的な波及経路に基づく効果や、経済の供給サイドを通じた効果をより強めるという側面に加え、政策金利のフォワードガイダンスに伴う「時間非整合性」を抑制する効果も期待される。さらには、シニョリッジを通じた潜在的な景気刺激効果も、理論的なメカニズムとして示唆される。』

というなんだかなあという結論がこのコーナーからは出てくるのですが・・・・・・・・・

『その政策アプローチが全体としてどの程度の緩和効果を発揮しうるのかという問題は、将来の正常化あるいは引締めの際、それをどのタイミングでどの程度調整すべきかという論点とも密接に関わってくる。』

え???

『マネタリーベース拡大政策に、ここで論じたような多面的な景気浮揚効果が内包されているのであれば、その政策アプローチの調整ならびに転換、あるいはそのガイダンスには、逆の引締め効果が働くことになる。』

えーっとすいません、それこそが時間的非整合性の問題であり、長期国債買入で発生するかのように見えるシニョリッジが単に見せかけのものであるという事を意味するのではないでしょうか今までの説明部分との整合性考えた方がよろしいんじゃないでしょうかねえ。

『目標達成が十分近づいて正常化プロセスを検討する際には、政策金利に関する調整やガイダンスとの組み合わせなども含めて、適切な調整が図られることになろう。』

「適切な調整が図られることになろう」ってあーたそれはつまり自分の任期中に出口政策の問題が発生するわけではないので、今のうちだけであれば出口に関する問題は目をつぶってしまえという無責任極まりない話をしているという事と理解致しましたがそれで宜しいでしょうか???????


・強力なコミットメントとかオープンエンドの時間軸効果的な話をしているのに柔軟性とかもうアホかと馬鹿かと

次がコミュニケーションに関するところだがこれまたクオリティが酷い。

『非伝統的な政策運営を実施するなかで、コミュニケーションの重要性は、近年一段と高まっている。各国の中央銀行は、数値を伴う政策目標の導入、自らの政策アプローチの明確化、先行き経済の見通しの公表など、透明性と説明責任を高める努力を続けてきている。独立性を付与された現代の中央銀行にとって、透明性と説明責任を高めることは、信認を確保するうえで極めて重要である。』

ということでああだこうだと話をしているのですが、まあ途中のお話の部分は割愛して結論らしき部分を本文6ページの所と、そのあとの最後のまとめ的な部分になる本文10ページを鑑賞してみましょう。

まずは本文6ページの後半から。

『実際、日本では量的・質的金融緩和政策の先行きに関するガイダンスについて、「2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する。その際、経済物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という、ブロードなアプローチを採用している。』

ぶ、ぶろーどなあぷろーちですと???

『政策目標という「制約」のもとで総合判断するという政策アプローチは、「制約付の裁量(constrained discretion)」という柔軟なインフレ目標政策のエッセンスそのものである。日本を含む各国は、柔軟なインフレ目標政策の枠組みに依拠した実践をまさに行っており、総合判断のウエイトは今後も高いものになると予想される。』

おいこらちょっと待てという所ですが、これが最後の『5.おわりに』の所で更に強調されます。

『現代の金融政策運営には、経済の基本的な構造変化の可能性を抱えるもとで、新たな政策に挑戦するという大きな使命が課せられている。国民や市場との対話に難度が増すことは避けられない。しかし、今日議論したような論点も含めて、より丁寧な説明を継続し、課題を共有することで、前向きな対話を進めていかなければならない。』

はてそもそもここまでの宮尾さんの説明が意味不明で対話が成立しないと思いますが、などというようなツッコミはさておきこの部分の最後の所である。

『基本的な透明性は確保しつつ、裁量的な総合判断のウエイトを高めることが、これからの中央銀行に望まれる説明責任だと考える。そうした認識が、国民そして市場に、幅広く共有されることを願ってやまない。』

・・・・・・・・・・orzorzorz

えーっとですね、さきほど宮尾さんオープンエンドの資産買入政策の効果が高いという理論的な背景として、時間的非整合性の問題が生じにくいという話をしていましたよね??

で、時間的非整合性の問題が生じる要因に「ただし、その約束は、実際に利上げが望ましい局面になると破られるという誘因を持つ(事後的には反故にすることが望ましい)ことから、「時間非整合(time inconsistency)」の問題を含んでいる。」(ちょっと上の方で引用した奴の再掲だよ!)ってお話をした訳でして、裁量を高めたら時間非整合の問題を強める話になるでしょ宮尾さん何言ってるんですか、というかあんさん5年間審議委員やってて何を見て何を聞いて何を考えていたのかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。


そもそもですね、コミットメントを使った時間軸政策において、時間的非整合性の問題を起こさせ難くするためには、「本来裁量的に総合判断した場合に適切と思われる時点よりも長期に緩和政策を継続するという事前コミットメントをおこない、将来の金融政策発動(緩和終了)により強い制約を課す」ことが必要になるわけでして、オープンエンドの資産買入政策の効果についての話を延々と繰り広げたあとに何でこの結論に達するのか全くもって意味が分からんというか、そもそも論としてしてこの先生時間軸政策のキモの部分を全然理解しないまま5年間審議委員やっていたのかと思いますと、涙も枯れ果ててしまうという所でございます。

確か宮尾さんはそれなりに金融政策論などに詳しいという前評判があったはずで、ボード入りするときにも結構その手の方で期待されていた筈なのですが、最後の最後の卒業試験で赤点再履修モノの講演を出してくるとか何なんでしょうかとしか申し上げようがない次第で、なんちゅう成長力の無い(というかマイナス成長してねえか???)お方だと思う次第。

審議委員の普通のパターンだと最初のうちやらかしてしまうお方が、任期後半以降とか退任直前とかになると盛大にキレッキレ(良い意味で)の情報発信をしてくる(最近の森本さんとか石田さんが好例)というのがよくある話で、普通は経験値とともに成長力というものがあるはず。

つーかあの置物師匠だって日銀ボード入りしてから「例えばオペについても、外部にいたときは簡単だと思っていたが、実務はそのような簡単なものではないとわかった。」(2013年6月24日ロイターとのインタビュー記事)とか、「それが、日本銀行では様々な、膨大な指標が提供されるようになり、予想インフレ率は様々なサーベイデータをみなければならないということがだんだんと分かってきました。」(2015年2月4日金懇での会見)などと、おじいちゃんここ来るまでの70年間何の勉強をしてたのというツッコミをしたくなるものの、置物は置物なりに勉強している訳で、それに対してこの宮尾さんは卒業試験で赤点再履修(宮尾さんが再履修しても迷惑なのでそのまま放校で結構なのですが)講演をするとかワンダホーすぎてもう涙がちょちょぎれてしまいましたとさ、という所です。


・とまあ悪態申し上げましたが追い打ちをかけるとそもそも今の政策との整合性が取れていないのだ

とまあそんな感じでああだこうだと悪態の巻でしたが、更にそもそも論に戻りますとこの講演は今の日銀の金融政策の説明としておかしい点が2つあります。

ではそれは何ですかと申しますと、「マネタリーベースを拡大して国債の大量購入を行ってインフレ期待に直接働きかける」というQQEのメカニズムに関する説明がろくすっぽ無い事がまず一つありまして、だれかお願いですからMB直線一気理論でもマッカラムルールでも結構ですが、大規模なマネタリーベースが期待インフレ率を押し上げることに関するメカニズムの説得性のある説明をしていただきたいと切に願う次第ではございますがそれはともかくとして。

更におかしいのはこの講演では日本のQQEを含めまして「オープンエンド」をメリットとして強調しているのですが、そもそも日本のQQE政策におけるキモは、前述のマネタリーベース直線一気置物理論に加えまして「2年を念頭にできるだけ早期に達成する」という期間に対するコミットメントであり、目標達成の期間に対してコミットを行っている状態であるならば、そもそも論として宮尾さんがここまで説明しているオープンエンド政策だから強力な政策である、というのは日本のQQE政策を論じる際に不適切であるという事になる(引用していないが日米欧の資産買入政策(欧はこれからですが)に関してオープンエンドであることが共通という話をしている)のでして、そもそもこの説明はQQEの建付けに対する説明とは相入れない話だったりするのでして、時間軸政策の本質が分かっていないとか、時間的非整合性についての理解がおかしいとか、そういう以前に今やっている政策の枠組みとか建付けに対する理解も怪しいとかもう何だかねという所です。

つーことでまあこれ読んで日銀のこれまでまたはこれからの金融政策に対する何らかの示唆が得られるかと言いますとものの見事に何もないという日銀ウォッチャー泣かせのゴミ講演なのですが、こうやってツッコミ入れながら悪態をつくという意味では日銀ヲチャー的には大変に素敵な講演でしたとさ、とまあそういう所でございました。

#まあしかし債券金利の世界で「特別」というとトクホンシとかトクテッケンとかトクオオとか微妙なサムシングな香りがする訳でして、今回の講演が「特別講演」というのはそういう事だったのかもしれませんね(白目)





2015/03/04

お題「また10年入札か!!/追加緩和に関する見解がリフレ派でも分裂とな/ECB会合前にECBネタ(予告編)」

いやそのりくつはおかしい
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150302-OYT1T50149.html
格差問題で竹中平蔵氏「正規が非正規を搾取」
2015年03月02日 23時03分

何で労働者が労働者を搾取するんだよ典型的な「分断して統(銃声)。


○毎度の市場メモ

・10年国債入札がまたあじゃぱー

昨日の10年国債入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2014/resul086.htm

(1)応募額 6兆406億円
(2)募入決定額 2兆1,807億円
(3)募入最低価格 99円70銭(募入最高利回り) (0.431%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.8952%
(5)募入平均価格 100円03銭(募入平均利回り) (0.396%)

おおまたテール33銭かよという所で、市場予想の足切りが100円から05銭位の間だったはずなのでまあ盛大に流れやがりまして、落札結果発表直後に先物は一気に40銭くらい下がって当日安値の147.38(-0.49)まで下落したのですが、その後超長期と何故か5年とかもヘロヘロになるとかダメじゃん展開の後、なぜか知らんがまたまた超長期の気配がすっ飛んでしまい、引けにかけて戻ったりしながら推移する間に入札が流れた長期よりも木曜に入札のある30年の気配の方が甘いというなんか先月拝見した展開と同じような動きでナンジャソラというところで。

でまあ後講釈としては10年国債入札が不調で30年入札に対する警戒でベアスティープということになるのですが、まんま2月と同じパターンで30年入札を迎えるとかもうお洒落としか(^^)。

落札分布見ると別にどこかが多く入れた訳ではなくて、皆さん万遍なく必要分は落札しているものの、不必要な止め札みたいなのを入れる人がいなかった上に、投資家の札があまり明確なのが見えなかったので、全員の必要分を全部足しても札が届かずオッペケペーということで、ここしばらく少し落ち着くかなとか思ったものの、やはり相変わらず落ち着きませんなあという所でしょうか、良くわからんけど。


・短国買入残高雑考

長期国債買入については本職の皆様どころか現場の皆様もせっせと考察しておりますので、まあそちらはスルーいたしましてマニアネタな短国の方でも(^^)。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額 公表データ

ということでこちらから2月27日残高をDLして前回分と比較したりという事をしますが、今回は2月20日の買入分がモロに跳ねております。

でまあ今回の特徴は「買入銘柄が妙に分散している」というのと「明らかに投げている銘柄が多い」という所でして、前日19日に行われた3Mの入札が久々の平均プラスになって新発はそれなりに捌けたのでしょうが、実際にはそれよりも新発以外の持ち部分を捌く必要があったのねというのが読み取れます。

具体的には、よくある「特定銘柄だけドカンと入る」という形ではなく、2.5兆円の買入に対して514回債が5863億円、511回債が5157億円、512回債が4342億円、513回債が4291億円、510回債が3058億円という形で買入銘柄が分散しているというのがほほーという感じでして、更にこの時の買入は平均2糸甘で足切1糸強(ただし案分3%)となっているので、基本は引けまでしか入っていないという形になるのですが、20日付の売買参考統計値から類推しますと、カレント1年とカレント6か月の507回と511回以外は投げレート(引けで入っていれば514回は入札の足切では入っているがまあ事実上投げでしょ)となっているというのが中々イイハナシダナーな状態となっておりますな、うんうん。


とまあそういうことで、20日の買入では日銀トレード以外の投げも入りましたかウヒョヒョヒョヒョという所ですけれども、27日の買入ではまた日銀トレード大勝利のような気がするので意地悪検証をしようかと思う所で、今週は金曜に6Mの入札があるので短国買入が来週月曜になって、その結果10日報は2月27日の買入分がモロに跳ねるので鑑賞のし甲斐があるというものですな。

あと、保有銘柄の月別償還を見ますと、3月の償還は70794億円で不変(3月償還はすでに対象外なので当たり前)、4月の償還は508回がちょっとだけ(241億円)入ったので96456億円、5月の償還は当たり前ですが今回増えたので63227億円となりまして、6か月と1年のカレントの日銀買入額がイマイチ(511回の残高は15352億円で直近の6M2銘柄が2兆円以上入っているのに対して少ないし、513回の残高は4291億円だし507回の残高も9786億円であまり多くはない)で推移している分償還が多くなって来るのも(ロールニーズが早く来るのでフローの買入額が増えるという意味で)どうもねえという感じではあります。


○追加緩和に関してリフレ派でご意見が分かれるとな

リフレって世界標準の金融政策なんですから出てくる話も世界標準だと思うのですけどねえ(棒読み)。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0LZ0PB20150303
原油下落による物価下落で追加緩和不要=本田内閣官房参与
2015年 03月 3日 18:38 JST

『[東京 3日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済アドバイザーを務める本田悦朗・内閣官房参与は3日、ロイターに対して、原油価格下落の影響で消費者物価指数はしばらく上昇しないが、経済の基調は改善を続けており、日銀が追加緩和に踏み切る必要は当面ないの見解を示した。』(上記URLより)

ええまあ何の責任も無い立場で勝手に日銀を「2年2%」という無茶目標に追い込んで、追い込んだ本人は2年たったところでさっさと梯子外したあおめでてえなというかお前何様だよという風情ではあります(てかインタビューするから図に乗るんだけどな)が、「目先の物価の動きではなく経済の基調が重要」ってそれ白川ドクトリンのまんまだろと小一時間ですけれども、まあ要するにこれ以上の円安は困るって話で、その手のヘッドラインが出た昨日の昼にドル円が120円20銭近辺から119円80銭近辺までスココーンと下がったのはご案内の通り。


一方でこういう見解もある訳で。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NKFBXL6K50Y901.html
リフレ派の嶋中氏:黒田総裁の日銀理論に異論
2015/03/02 12:00 JST

『その上で「日銀が物価目標達成のためにどれくらい強い決意を持っているのか、原油が理由であろうとなかろうと絶対にマイナスを定着させない、という強い決意を持っているかどうかが試されている」と発言。「断固たる態度で臨むと言ってきたので、周りの雑音がいかに喧しくても、ぜひそれを見せてほしい。それでこそ黒田総裁だ」と述べた。 』(上記URLより)

えーっとすいませんリフレって世界標準の金融政策のはずなのですが、追加緩和に関して思いっきり正反対の話が出てくるとかどういう事なんでしょうかねえ(ニヤニヤ)と思いますけれども、10月の追加緩和の時の黒田ロジックを敷衍するとそらまあCPIがマイナス近辺に突入して暫くゼロ近傍で推移しそう(なんですよね?)という状況が発生するというのは「バックワードルッキングで形成される物価上昇期待」に悪影響を与えるという話になる(そもそもアクチュアルの物価が上昇していた時にその理屈でインフレ期待が上がっていますといったのだから逆の時にだんまりなのはおかしい)ということですので、まあそういう意味では4月に「死んだふり追加緩和」をしたって10月の理屈ではおかしくはないですな。

とは言いましても、ご案内のように1月2月ですっかり10月緩和のロジックが引っ込んでいるという事実もあって、最早何が何だか分からんというのが予想する方としての見解になるのですが(涙)、屋根の上に颯爽と上がって纏を振り回していた筈なのに気が付いたら下の建物が火の海で、しかもその屋根に上がれと言ってた人たちが「あいつは何であんなに燃えている屋根に乗っているんだ」と言い出すという始末になっているのが現在の日銀と考えますと、怒りの追加緩和とかもはや何が何だか分からないですが面白いからやってみたらとも思ってしまいますわうひょひょのひょ。

しかしまあ何ですな、追加緩和は追加緩和で良い(ちなみに債券市場と短期市場的には堪ったもんではないので良くない)のですが、そもそもこれだけの国債馬鹿買入を実施してMBを馬鹿拡大しているのに物価の方が中々上がらんどころか2年でゼロ%とかもう何だかねという所で、マネタリーベース理論を唱えておられたリフレ派諸氏におかれましては、「どれだけやったらどれだけ物価が動くのか」について「物価はマネタリーな現象」というのですからきちんと定量的に示して頂きたい訳で、定量的な適正値を示すことができない金融政策理論ってただの机上の空論で実際に使えないだろこのスットコドッコイとしか申し上げようがないので、その説明をはよとは思いますけどね。


なお、実践的に考えた場合、10月追加緩和でどう見ても追加緩和のタマを(国債買入によるMB拡大方面では)打ち尽くしている格好になっておりまして、次にMB拡大ペースを更に上げると政策が技術的に行き詰るまでの時間を早くして自分の首を絞めるだけになりますので、まあ実際問題としては追加緩和するにしても「ツイストオペ」みたいな目くらましをするとか、なんかの変化球を投げないといけない(付利下げ等はMB政策を放棄しない限り技術的に無理だし本格的なマイナス金利政策は日本の金融構造における事情的に実施は困難)でしょうなと思います。

しかしこの本田先生の説明(言い訳)はウケますな。

『本田氏は「原油価格の急落は予想ができなかったのだから、2年で達成できないのは仕方がない。しかし(2年程度で達成との)目標を外すと(人々の物価観である)期待インフレ率が落ちてしまう」とし、2年程度で2%との文言維持が望ましいとの見解を示した。』(上記本田参与の記事URLより)

毎度の引用になりますが、2013年4月にはこのような質疑応答が国会で展開されておりました。

『○岩田参考人 私が一番懸念しているのは、どうも日本銀行が、物価の安定あるいは一%とか二%とかそういうインフレ目標達成を金融政策だけではなかなかできないという立場に立っている。やはり、世界のインフレ目標国のように、物価の安定は責任を持って日銀がやるんだ、中央銀行がやるんだ、そういうような考えをもう少し持っていただきたいというふうに思っておりますので、それが組織上の問題でそうなっているのかどうかよくわかりませんが、私、そういうふうな考え方も、もう少し柔軟になってほしいなという気持ちは持っております。』

『○阪口委員 岩田候補の、とにかく、そのときの経済や政府の政策のせいにはせず、日銀の責任で二%を達成する、この覚悟、これは大変にすばらしいものだと思います。また、先ほど、それが二年という期間内に達成されなかった場合には責任を負うんだと。このことも、ある意味、きょうは、市場を動かす上での大きな御発言であったかと思います。(以下割愛)』(以上上記2013年3月5日での国会質疑より)

・・・・・・・・いやあもうねという所ですけど、ただまあ物価が上がらん方面での未達でどうのこうのというのはまだ「緩和が足りないから」という逃げ口上があって面白くない訳でして、実は不肖このアタクシも「これだけの過激な緩和をするんだから物価さすがに上がるだろ」と思っていた口でして、どちらかというと「経済の成長とかを伴わないで物価だけ先行してホイホイと上昇した結果「2%の物価上昇ケシカラン」となって日銀火達磨」という展開が来る方が胸が熱いという風に思う次第。

つまり、本当の地獄は物価が上がらないことではなくて、物価が上がった時にその物価上昇に世間が耐えられないという展開だと思いますし、だいたいからしてこれだけ国債を盛大に買って物価が上がらないなら本当に無税国家キタコレになるとかバーナンキの背理法を持ち出すまでもなくあり得ないお話が展開される(そもそもそうなったら「物価は貨幣的現象」というのも否定されますし、金融政策無効論になってしまいますし)ので、まあどこかで物価がホイホイ上昇しだすとは思いますが、その時にどういうフリクションが起きるのかというのを(あまり見たくはないが)見て、無理矢理インフレに振るという政策の当否がそこで問われるという話になると思うのですけどね。


○ECB会合も近いので今更ECBの前回会合議事要旨(をネタにするつもりが本日は予告編)

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2015/html/mg150219.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank
held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 21-22 January 2015

出たのだいぶ前なのですが(3週前の木曜とかでしたっけ)ネタにしそこないましたのでECBの金融政策決定会合も近い所でネタに投下・・・・・・と思ったのですが、微妙に寝過ごした上に前半の所でつい手が滑って時間を使ってしまいましたので本日は予告編。

・体裁は「執行部の説明」と「委員会の論議」となっています

議事要旨は2部構成になっていて、『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options 』というのと『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions 』になっていちぇ、前半のレビューのうち経済物価情勢の部分がクーレ理事、海外経済とユーロ圏のマネタリー環境に関する部分がプラート理事、金融政策の提案にかかわる部分もプラート理事が説明していますな。

でまあそこの説明と議論の部分(全部まともに読むとA4の紙で15ページびっちりとあるので結構めんどい)を見て思った点をさきにつらつらと並べておきますので、そのあたりについてECB会合前に駆け込みという事であすのネタにしますすいませんすいません。


・問題は「ソブリンQEで何をしようとしているのか」の論点が全然整理できていないこと

今週の会合で資産買入の詳しい内容が出てくるという話になるのですが、1月理事会での説明および議論を見ておりますと、「そもそも国債QEをやることによってどこに作用をさせたいのか」「その作用によってどういう経路でどういう効果をだしたいのか」という論点整理が全然できていないなあというのが印象が強いところです。

すなわち、「ここまでの政策は効果があったもののマネタリーの動きを見ると不十分」というのが今回の追加緩和決定の背景にあって、まあその話は当然ながらあるのですが、そもそも論として「何で不十分なのか」という点の掘り下げが不足していて、マネタリーベースが足りないのか、インフレ期待が低下して実質金利が上昇しているのが悪いのか、クレジットなどがタイトなのが悪いのかというような話に関して、一つ一つの現象の認識はあるものの、ここまでの金融政策のどの部分が足りないのかという話がすっぽり抜けているんですよね。

でまあその抜けた前提に立って追加緩和の話をしているので、そもそもソブリンQEをやることによって何をどうしたいのかが不明確なまま「とりあえずなんか派手な事をやるか」的な感じで政策を突っ込もうとしている、という感がぬぐえない訳で、ここの説明および議論の中で、ソブリンQEの実施によってどのような現象が起きてどのような経路でどの点に効くのかという話が欠落しているのは重大な問題点だと思います。

#なんか書いているうちに悲しいものがこみ上げてきた気がするが気が付かなかったことにする

つまりですね、そもそも従来の金融政策の枠組みがマネタリーの不足で効かないというのであれば、マネタリー的に引き締め政策になっている預金ファシリティマイナスを解消すべきですし、ソブリンQEの量でインフレ期待に働きかけたいのであれば同様にマイナス金利のフレームから抜けないといけないのですが、そのあたりが非常にこう中途半端な感じで話が進んでいるので、ソブリンQEで量を出したいのか金利を下げたいのかとか、まあその辺が良くわからんままで突入ということですから、これはまあQE導入後も複雑骨折みたいな状況が続くんでしょうなあと思うのでした。

という話を明日のネタにする予定ですどうもすいません寝坊助で。







2015/03/03

お題「中曽副総裁の米国でのスピーチも妙にやる気をアピールする内容ですな」

朝刊コーナーで海外資産を買えみたいな煽りをモーサテ様がおっぱじめているのが何かのフラグに見えてしまうので勘弁してください。

○市場メモである

・2月のマネタリーベースはかすかに前月比プラスキタコレ

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqf/juqf.htm/
日銀当座預金増減要因と金融調節(2月実績)

こちらを見ますと、銀行券が3454億円の発行超、当座預金が701億円の減少となっていまして、マネタリーベース的には2700億円程度の増加となりまして、これはまた2月20日に短国買入を5000億円拡大したのが綺麗に効いていますなという形で、まあ相変わらずこういう所は芸術的に調整して来ますなという所で、無駄な能力のような気もしますけどこの手の帳尻芸自体はアタクシも個人的には嫌いではありませんので面白いからつい見てしまうのでした。


ちなみにMBの出来上がり数値だけでしたら月末分は月初翌営業日に当座預金増減要因の確報がでるのでそちらでも確認可能。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150227.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (2月27日<金>分)
マネタリーベース 2,788,700

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150130.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (1月30日<金>分)
マネタリーベース 2,786,100

まあ当たり前ですがここの数値も2600億円の増加となっております(ここの誤差分がどこに起因するのかがイマイチ良くわからんかったので誰か教えてジェネラル)ので、要するに2月に関してもマネタリーベースは前月比プラスを維持となりましたので、まあ今後も財政要因での出入りの部分は少なくとも前月比プラスを維持できそうなところまでは短国買入で埋めてくるというのが読めたという所です。

なお、今月の資金需給予想は(すでに短資会社からは予想が出ていますが)日銀から出てくるのが今日になりますのでそれを見ながら適当に計算しようかとは思っております。


・短いゾーンが妙に堅調な件について

先週途中からそうなのですが、短いところがここへきて妙に強くなっていて、残存2年切った辺りで実力の利回りがゼロからマイナス近辺になってみたり、短国のカレントがゼロ%ビットになってみたりと妙に確りの展開。

でまあいつもですと海外ガーとか決算ニーズガーという話で収めてしまう所ではあるのですが、一方で短国でも日銀買入対象外の短いところは別にマイナスというほどひっ迫している訳でもないですし、何で強くなるのか良くわからん。まあ為替がらみのベーシス云々よりもイールドカーブ操作とか資金の避難場所として選好されているような感じではあるのですが、それにしても中短期がここでそんなに強くなるのかねというのは少々?????と思いつつ。どうせ短国需給だって今月そこまでひっ迫しないと思うのですけどねえ・・・・・・・・・

なお昨日の輪番ですが。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150302.htm
国債買入(残存期間1年以下) 2,070 500 0.043 0.043 99.8
国債買入(残存期間10年超25年以下) 6,827 2,407 -0.004 -0.001 73.1
国債買入(残存期間25年超) 4,287 1,404 -0.009 -0.005 9.9

1年以下の輪番が甘いのは毎度の四半期償還モノの投げ込みになっているからという事だと思いますので追い風参考記録ですな、うんうん。



○中曽副総裁の米国でのスピーチは「インフレ期待のリアンカー」言及&「2 percent」を連呼とな

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2015/data/ko150228a1.pdf
Japan's Economy and Monetary Policy
Initial Remarks at the 2015 U.S. Monetary Policy Forum
Held in New York

本文は3ページ分しかないのでまあサラサラと。まずは冒頭から。

『It is my pleasure to join this panel at the U.S. Monetary Policy Forum together with distinguished panelists. In my initial remarks, I would like to touch upon three issues.』

ほう。

『First, I would like to briefly talk about Japan's growth potential to provide you with the background to the current policy pursuit. Second, I will discuss ongoing policy efforts and the aims of these efforts, while highlighting the substantial progress made in the labor market. And third, I will offer a few thoughts on an issue that has yet to be addressed, namely the need to anchor inflation expectations.』

まあ米国でのスピーチだから「highlighting the substantial progress made in the labor market」とか言ってるのかも知らんが、日本の金融政策のマンデートは物価なので『Disappearing Slack in the Labor Market』という小見出し出してアピールしても知らんがなとしか申し上げようがないのですけどね。


・インフレ目標の「リアンカー」についてのコーナーがありまして

スピーチの後半は『III. (Re-)Anchoring Inflation Expectations: An Issue Yet to Be Addressed』という小見出しでしてね。

『In addition to such composition effects -- which are common to the U.S., Japan, and other countries -- Japan faces the unique challenge to fully dispel the deflationary mindset that has been entrenched in Japan's economy, as well as society more broadly.』

昨日ネタにした金曜の日本記者クラブでの総裁講演でもやたらと「インフレ期待の引き上げによるリアンカー」の説明がありまして、まあそれはそもそものQQEでの骨子でもありますが、一方で最近は官邸方面リフレ派ブレーン様が急に「2年で2%」を緩和するような梯子外しをしてきておりますのでその辺に対する異議申し立てにもなっているのですが、中曽さんもこの話をするの巻という所ですな。

#しかし余談ですがこういう話をするのなら理論的支柱(笑)の方が出た方が良いんじゃないのですかねえ(棒)

『This deflationary mindset looming over the corporate sector prevented firms from taking more ambitious investment and wage-setting decisions. If inflation expectations were anchored at 2 percent, firms would invest and raise nominal wages more willingly, on the assumption that, in the future, prices will rise by 2 percent every year.』

企業のインフレ期待が2%でアンカーされれば投資が増えて賃金も上昇しますという話ですが、それってホンマカイナという気はだいぶするんですが特に投資に関して、と思いますがQQEの置物タコ踊り理論の支柱なので如何ともしがたし。


・今年の賃金改定をインフレ期待の変化(キリッ)と無理矢理持って行きたいというスタンスが見え見えの部分

『Despite the lingering deflationary concerns, green shoots can increasingly be observed with regard to wage and inflation expectations.』

賃金とインフレ期待に対して明るい芽が出ているという事ですが、2年で目標達成するんじゃなかったんでしたっけ未だに「green shoots」とか遅いにも程があるんじゃないですかねえ、というツッコミはしないでおきますが、インフレ期待が上昇する芽が出ているそうですよ何処なんでしょうかねえ。

『By and large, long-term inflation expectations in the U.S. and Europe appear to be well anchored at around 2 percent. Although long-term inflation expectations in Japan long hovered around 0-1 percent, they have recently been gathering momentum (Chart 3).』

そ、そうなのか???と思ってこのチャート3というのが最終ページにあるので見るのだが・・・・・・

『Chart 3 Inflation Expectations in Advanced Economies』というのがあって、まあ見てちょという所ですが、これを見ますと確かに足元でちょっと上がった(けど直近は下がっているけどな)けど、ここの数値自体はこの10年で見た場合に1%台で延々と推移しておりまして、そもそもの「deflationary mindset」というのは何でしょうかと小一時間問い詰めたいところです。

大体からしてこのグラフなのですが、脚注に『Notes: 1. Figures are inflation expectations 6 to 10 years ahead, taken from the "Consensus Forecasts."』とありまして、つまりこれはコンセンサスフォーキャストの推移なのですが、講演本文でお話をしているのは「This deflationary mindset looming over the corporate sector prevented firms from taking more ambitious investment and wage-setting decisions.」ってありますように「企業のインフレ期待」に関する話をしている訳で、そもそもコンセンサスフォーキャストと企業のインフレ期待は違うだろと小一時間、ということでまあ「自分の説明に都合のよいデータを持ち出してきて説明にならない説明を展開」というところまでリフレ派にならなくても良いのですけどねえと存じます。

『Not only various indicators of inflation expectations but also firms' actual behavior provide clear indications of a regime change.』

ということで、「企業行動がインフレ期待のレジームチェンジを明確に示す」だそうですわよ奥様!!!

『Most importantly, more firms have expressed their willingness to raise wages this year.』

お、おう・・・・・・・・

『I think this is a notable manifestation of the improved inflation expectations in the corporate sector.』

大きく出たなおい。

『Reflecting the tight labor market conditions, wage increases are expected to accelerate as a result of the annual spring wage negotiations currently underway. These wage negotiations should provide renewed momentum to the virtuous cycle from income to spending operating in the direction of solid economic expansion and stable inflation at 2 percent.』

ということで春闘に期待しているのは分かったが、インフレ期待の上昇やら生産投資が伴ってというので無くて、労働市場のタイト化で賃金上昇するのってそれコストプッシュインフレの賃金版であるに過ぎず、先行きの企業収益の悪化になるって、それは既に円安に振って物価を上げてみたものの実質所得が下がって消費が落ちましたという昨年から今年にかけての事案を企業セクターで繰り返すだけの結果になるんじゃないですかねえと思うのですけど。

『Overall, the "payback effect" after the consumption tax hike last April is now judged to be behind us and the economy seems to be back again on a sustained growth path.』

消費税の影響も終わってきましたし経済は持続的な成長パスに戻ってきたとな。

『With the underlying trend of inflation dynamics firmly pointing upward, I think we have a good chance of overcoming the deflation and witnessing a true dawn to Japan's economy.』

だそうですが、もう完全に賃金一本足打法と化しておりますので、賃金上昇が思ったほど行かないとなりますと日銀としては心が折れてしまうので追加緩和をするのか執行部が泡を吹いて体調不良にでもなるのか知らんですけれども、まあその時点で勝負ありという事になりますな。

一方、春闘の方がまあまずまずの結果になる(なるんでしょ?)となりますと「企業のインフレ期待は変化してきている(キリッ)」とか言い出してくることになりまして、この場合は追加緩和とかそういう話はひたすらとぼけ続けるものの、問題はアクチュアルの物価がそのおとぼけをどの程度まで許してくれるのかという話ではありますな、うんうん。


・最後の所では「2%達成に向けたやる気アピール」である

『That said, firmly anchoring inflation expectations at 2 percent, which is the Bank's price stability target, requires continued efforts down the road. Despite all the green shoots, we are still only halfway toward achieving our target. As evidenced by the expansion of QQE last October, the Bank's commitment to achieving the price stability target of 2 percent is unshakable. The Bank will continue with QQE and will make adjustments, if deemed necessary, so that the target will be achieved at the earliest possible time. Let me stop here. Thank you.』

というのが最後の所なのですが、現状ではまだ道半ばで目標達成への意欲は変わりません(キリッ)という話をしておりまして、金曜の黒田総裁の日本記者クラブでの講演と同様に妙にやる気だけは見せていまして、とにかくやたらめったら「2 percent」を連呼している(ただし2年という記述はなくなっていますけどね!!)のがアレでございますなという所で。


○でまあ関連して雑談だが

ということで金曜の黒田総裁講演ではやたらとインフレ期待のリアンカーとか早期達成へのアピールをしてきまして、中曽副総裁のスピーチでも2%の連呼ということで、つい先日10月追加緩和が無かったかのような1月決定会合議事要旨が出た後に今度はやる気アピールとかコミュニケーションが混乱しているようにしか見えない日銀の情報発信がキタコレということで頭が痛いアタクシ。

まあ先般の国会(参議院財政金融委員会)でも円安に振るのに対して与党方面から思いっきり羽交い絞め状態にされていましたし、官邸ブレーン様からは2年達成が出来なくなったので叩いた大口の収拾の為にすっかり腰が砕けて「2年で2%」の緩和をする(しかしそれって昨日も申しあげましたが日銀に無茶な目標をやらせるように仕向けておいて実際に全然無理という事になった時点で梯子外して逃げ出すということで卑怯者にも程があって、部下に特攻をさせておきながら本人は敵前逃亡した軍司令官が先の大戦でも居たとか何とかいう話がありますが、まあこういう手合いがのうのうと生き延びて日銀は蜂の巣とかナンジャソラではありますね)という状況になっておりまして、政治的に見ても追加緩和で円安振ってというよりは2年で2%の少なくとも2年の方がだいぶ緩和される形になっていますし、1月2月の日銀の声明文とか総裁会見とかを見ると物価安定目標の達成時期をかなり先送りして「基調」で逃げる態勢になっている訳ですよ。

まあここ2回の講演っていうのは「基調で逃げる」と思われたり「早期達成が緩和される」と思われたりすると「インフレ期待のリアンカー」に対して阻害要因となる、ということを受けて日銀のやる気をアピールしてインフレ期待のリアンカーに寄与したい、というのと政府方面などからの梯子外しは許さん(責任問題の意味もあるしインフレ期待のリアンカーに阻害という意味もあるでしょ)という文脈で進められているものであって、どうせ2年での達成は無理だし暫く厳しい状態が続くので、物価安定目標の実際の達成時期に関してはしばらく「基調」を使って逃げるという話になるのかとは思いますけれども、こうやって急に何か変なもんでも食ったかのように総裁副総裁からやる気アピールが出ると????感が漂うのも事実ですな。

ちなみに原田大先生様は2年で2%についてはすでに逃げを打っていて、それよりも雇用が改善するのが重要とか既に改善している方の雇用を持ち出して目標をすり替えることによって置物リフレ政策の成功をアピールする気満々という所ですが、ああいえばこういう的にすり替えをするのもリフレの皆様の得意技(大体からしてあんたら昔マンデルフレミングとか言って財政は効かないから金融政策やれといってた筈なのにいつの間に消費増税ガーになるんだよとかまあ山のように事例はある)だったりしますので、そうホイホイすり替えをされましてもこっちは何を持って中央銀行が動くのかがロジカルに分からないというのは困るんですけどねえとしか申し上げようがないですわマッタクモウ。

ということで、直近2つの講演を額面通りに捉えると「やっぱり物価がゼロ近傍に下がったらインフレ期待の低下リスクが高まるんじゃないですかねえ」ともいえるのですが、おそらくは「賃金改定」をネタにして「ご覧のとおり企業のインフレ期待が高まった結果として賃金の設定行動が変化しています(キリッ)」としてくるのかとは思いますが、一応前者に豹変することもできるような言い方になっているのがヤヤコシイわという所ではありますな、うんうん。





2015/03/02

お題「石田審議委員会見は無慈悲な執行部への砲撃/黒田総裁講演は梯子外しに対する執行部心の叫びですねわかります」

早いものでもう3月。

○市場メモを少々

・短国買入は応札減少とな

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150227.htm
国庫短期証券買入 15,000 2015年3月3日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2015年3月3日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2015年3月3日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2015年3月3日

ということで1.5兆円のオファーとまあ順当かな(詳しくは資金需給見込みを見る必要がある)とゆー所ですが、落札結果は以下の通り。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150227.htm
国庫短期証券買入 25,720 15,003 -0.002 0.002 54.9
国債買入(残存期間1年超3年以下) 9,246 4,000 -0.014 -0.007 60.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,320 4,002 -0.002 0.002 96.4
国債買入(残存期間5年超10年以下) 10,439 4,003 0.005 0.007 78.1

前日に入札が行われた新発3Mは引けが0.6bpとかでしたので入らないですかなとは思ったのですが、一応足切で入れれば前日比では強いところで入るのねという所で、今回は落札でどの銘柄が入ったのかが微妙なのですけれども、まあ普通に考えると引けがやたらと強かった514回(1週前の新発)が打ち込まれたのでしょうなあと思います。

しかし最近は新発ではなく何故か1週前の新発の引けが強いという現象が発生しておりまして、中々こう味わいが深いものがあるのですが、金曜の引値を前日の引値と比較して味わいを感じるなどという事は良い子の皆さんにはお勧めいたしませんので念のため申し添えます。


・輪番は短期ゾーン減額とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150227d.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150130d.pdf(前回)

2ページ目の所に明細がありますが、今回は表の数字には変化なし(前回は1〜5年のところの下限を5000から4000に減らした)となっていますが、一方で1回の買い入れ予定額を1年以下700億円→500億円、1〜3年4000億円→3500億円に減らしていまして、一応1月末に表の数字をいじったのは意味があるのか??と思いつつも、短いところの応札が減ってきているのでそれに対処したという所でしょうな、うんうん。


○石田審議委員会見はトーンは穏やかだが内容は無慈悲な執行部砲撃になっている件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502e.pdf

執行部を火の海にしておりますなという所ですがでは鑑賞を。

・まずは総裁disである

2つ目の質問(最初のは所感をお願いしますなので実質最初)である。

『(問) 本日の懇談会における石田委員の発言についてお伺いします。石田委員は、先行きの金融政策運営方針で示されている「必要な調整」について、持続的な経済成長の実現が損なわれるリスクが大きくなった場合に対応して行うものであり、2%の「物価安定の目標」の達成時期やそのペースに対応して行うものではないと理解している、という発言をされたと聞いています。』

ふむふむ。

『しかしながら、普段から黒田総裁は「2015年度を中心とする期間に2%に達する」ということで、2015年度を中心とする期間を意識して政策運営をされているようにみえます。本日の石田委員の発言では、この「物価安定の目標」の達成時期の後ズレを容認するような発言と受け止められるのですが、この点の真意をお聞かせ願います。』

さてどうでしょうか???

『(答) 2013年1月に政府・日銀の共同声明が出され、日本銀行は「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指すとしています。それを踏まえて私も発言しており、とくに齟齬があるとは思っていません。』

ちなみに共同声明はこれ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf

出来るだけ早期にとは言っているのですが、その時期について2年とは書いていない(そもそも2013年1月ですからQQEの前ですし)わけで、この共同声明を持ってくる辺りが小太刀の冴えという所です。

『より長期的な視点とは、例えば、足許で物価が2%を下回る水準にあっても、先行き2%を超えて上昇スピードが増していく可能性が高い場合、あるいは逆に2%を上回る水準であっても、先行き低下トレンドに転換する可能性が高い場合など、やや長い目でみて経済・物価のトレンドの変化を見極めながら、調整の要否を判断していくということです。』

ごもっとも。

『目標の実現時期が若干前後するとか、一時的に物価が一定の水準を割り込むといった短期的な動きに対して調整を行うものではないと思っています。要は、振れに対していちいち対応するのではなく、基調をみて対応していくという意味ですから、その点については総裁とそれほど意見が異なっているとは思っていません。』

10月緩和に対するイヤミ(石田さん反対してますからね)キタコレですな(^^)。


・次の質疑では師匠に無慈悲な砲撃が

『(問) 午前中の講演の中で、委員は「家計や企業の中長期的な予想物価上昇率は、各種サーベイをみる限り安定的に推移しているなかで、今後、消費者物価が2%程度に向けて再び上昇していく道筋が見えているのであれば、政策運営上、とくに問題になることはないと考えています」と述べていますが、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率が下がる場合というのは、2%を見通せる道筋が見えなくなる状況なのか、そのまま見えている状況と判断されるのか、その点についてはどのようにお考えでしょうか。』

質問の後半が妙だがまあそれはそれとして。

『(答) 中長期の予想インフレ率については、家計を対象にした「生活意識に関するアンケート調査」では2%程度、企業を対象にした「短観」では1.7%程度で安定している一方、エコノミストに対するサーベイ、例えばESPフォーキャストの12月調査における長期予測では1.5%程度となっています。また、物価連動債から導かれるブレークイーブンインフレ率は足許0.9%程度です。』

とまあこれは良いとしまして。

『予想インフレ率は、経済学の概念としては明確なのですが、実際にどう把握して、それをどのように実務に使っていくかというところに困難があると思います。』

無慈悲砲撃キタコレ!!

『またその他にも、賃金の設定や企業の価格設定行動に表れる企業や個人の物価観も見ていく必要があろうかと思います。ところがこれらは、方向性はある程度分かるとしても、水準を捉えることはなかなか難しいと言えます。』

>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます
>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます
>水準を捉えることはなかなか難しいと言えます

素敵な砲撃ですな。

『私としては、経済主体たる企業・家計に対するサーベイの結果を重視しつつも、足許における賃金・物価の動向、あるいはそれに対する対応等々をみて、総合的に判断していかざるを得ないのではないかと考えています。』

インフレターゲットというのは自動運転のようなもので恣意性を排除するのが良いという宣伝をしていたリフレ派の皆さんのご見解をば。


・物価が安定してるかはジャッジメンタルである

ということで上記に関連して先の方にこんな質問が。

『(問) 物価目標については、様々な指標を総合的に判断せざるを得ないというなかで、石田委員が冒頭引用された2013年1月の共同声明でも、基本はヘッドライン、総合指数であるとしています。一方で日銀は、見通しベースではコアCPIを用いています。石田委員のこれまでの発言を勘案すると、必ずしも総合指数あるいはコアCPIが2%にタッチしなくても、基本的にそういう方向に安定して向かっていくと判断すれば、2%に達する以前に方向転換をする、アクセルを緩めるようなこともあり得る、という理解でよろしいでしょうか。』

『(答) あくまで物価指標は最終的にはヘッドラインCPIということですが、それが実際に全ての基調を表しているわけではないので、基調についてはコアCPIをみていくということになっていたと理解しています。今、原油価格が動いていますので、しばらくの間は、原油価格がどの程度影響を与えるのかみていこうということです。』

うむ。

『しかし、ヘッドラインCPIが安定しているかどうかは、最後は判断になります。』

(;∀;)イイシテキダナー

『経済指標は毎月変化していきますし、公表されるまでにはタイムラグもあります。また、金融政策についても効果の発現までにタイムラグがあります。そのように様々な限界がある中で、日本銀行としては最大の注意、努力を払って、基調的なインフレ率が2%に安定しているか、すなわち、総合で2%に安定しているかを判断する必要があります。総合指数自体が月々振れることは避けられず、現実の数字をみながら判断していくことに難しさはありますが、やはり日本銀行として責任を持って判断し、決めていかなければならない、というのが私の理解です。』

全く同意である。


・資産買入政策は市場にストレスを掛けているのは事実であるという指摘は重要

『(問) 現時点で日銀が相当額の国債等の資産を買うことによって、国債市場も副作用が大きくなっているとの声も聞かれますが、ここまで量的・質的金融緩和を継続する中での副作用という点について、改めて現時点でどう評価されているのでしょうか。』

この答えが素晴らしいので正座して読むべし。

『(答) 現在の「量的・質的金融緩和」は、いわゆる非伝統的政策と呼ばれるもので、今までやってきていない政策です。もともと伝統的な金融政策については、例えばマーケットに直接介入しないようにとか、様々な原理・原則、注意事項等があったかと思います。しかしながら、非伝統的政策、とくに「量的・質的金融緩和」は、各種資産を買い入れることを通じて、その他の資産を含めて、資産価格に直接・間接的に働きかけている政策であり、いわゆる一般的な需要と供給がバランスしてマーケットメカニズムが働いていく世界とは?し違っています。市場への介入、もっと言えば、市場を歪めることは、もともと避けられない政策であり、私はこういう政策をとる以上は、何らかの副作用はもとより避けられない、という覚悟であります。』

『私としては、大規模な非伝統的政策を推進している以上、市場の状況に十二分の注意を払い、異常な兆候を看過しないよう、最大限努めていく必要があると考えています。』

能天気にマイナス金利は効果とか言い出す執行部は爪の垢を煎じて飲むべきだと思います。


・付利金利引き下げについてはまあ否定

以前付利金利引き下げの提案をしたときにはケチョンケチョンに悪態をついた覚えがありますが(汗)、この素晴らしい金懇挨拶と会見要旨を拝読しますとその節はケチョンケチョンに申し上げて誠に恐れ入りますという所でありますが、その付利金利ネタ。

『(問) 石田委員はちょうど2年ほど前に、日銀当座預金の超過準備にかかる付利の引き下げを主張されました。それ以来、その主張はされていないのですが、直近の1月の会合の前に市場でそういった期待というか、観測が高まりました。改めてこの付利の引下げについて、どのようにお考えなのか、ご意見をお聞かせ下さい。』

『(答) 将来の金融政策について、仮定の話を色々と申し上げるのは差し控えたいと思います。ただし、2012年12月に付利の撤廃を提案した際の金融政策の枠組みは、いわゆる「包括緩和」と呼ばれるものであり、現在の「量的・質的金融緩和」とはコンセプトが異なっています。』

マネタリーベースで勝負という建付けに変わりましたからね!!!

『またこの間、経済の状況、例えば円相場等も大きく変わっていますので、今の段階では必ずしも同列に考えられるものではないということだけ申し上げておきます。』

たとえば円相場とかしらっと言ってるのがチャーミングで、円安誘導を否定してたりもしますがこの後にまたその話があるのよね。


・追加緩和の効果に関する質疑以降が無慈悲に執行部を火の海にしている件

『(問) 先程の質問に関して、追加緩和して4か月経って、追加緩和の効果が出ているか出ていないかとか、そういった評価について改めて伺いたいと思います。』

『(答) それは難しい問題です。』

ヒャッハー!!!

『量的緩和政策を実施していない海外の中央銀行総裁も言っていますが、効果が出ているのか出ていないのかと問われても、その政策を実施した場合と実施していない場合を現実に比べることができません。ですから、それについての答えは分からないということしか申し上げられません。』

これわwwww

『ただし、買入れのボリュームなどは増えていることから、当然ながらマーケットに対する影響、例えばイールドカーブにおける特にロングエンドに与える影響は強くなっていると思います。』

追加緩和でインフレ期待の低下リスクが回避された(キリッ)という宣伝に無慈悲砲撃ですな。


・物価だけ上げても効果ないでしょという説明が更に追い打ち砲撃

その次の質問、というか今回の会見は質問している方と答える方が実に綺麗に進行していて見ていて素敵。

『(問) 講演の中で、消費の弱さについて、実質賃金の下落が大きく影響していると指摘されていました。経済の先行きをみる上でのポイントとして、実質賃金の動向が非常に重要だというご指摘を前提に考えた場合、物価と賃金のペースについてどうお考えか教えて下さい。やはり物価の上昇というのは、賃金とか景気に歩調を合わせるのが望ましいとお考えなのか、あるいは物価が先行するような状況というのは、日本経済全体にとってよろしくないとお考えなのでしょうか。』

『(答) 良いか良くないかは別にして、昨年4月から起こったことは、物価は上がったが、所得がそれについてこなかったということです。』

(;∀;)イイシテキダナー

『よく言われるのは、物価が上がれば将来モノが高くなるから先に買う、デフレで将来モノが安くなるから今買うのは差し控える、それによって経済の循環がプラスになったり、マイナスになったりするということですが、現実に起こったことは――マグニチュードが大きかったせいかもしれませんが――、物価は上がったが、消費は冷えたということではないかと思います。』

どう見ても置物リフレ理論盛大に火の海です本当にありがとうございました。

『やはり物価が上がって賃金が上がらなければ、家計の購買力は低下しますので、消費には下押し圧力が出てきます。あるいは、賃金だけ上がって物価が下がったら、今度は企業収益が圧迫されて色々と問題が出てきます。このように、物価安定の下での持続的な経済成長というものは、なかなか難しいものだと思います。やはり2%の物価安定のためには、物価が相応に上がるもとで、相応の賃金上昇が必要だと考えています。』

まあそうですなということで。


・為替に関しては「いいから安定しておけ」とな

『(問) 講演の中で「円安環境のもとで経済の好環境を生み出す動きは着実にみられ始めており、為替相場が安定していけば…」と述べていますが、これだけをみると、現状程度の為替水準であればということが前提で、ここからさらに円安が進むことにはならない、という理解で良いのでしょうか。』

ということで・・・・・・

『(答) 私が申し上げたかったのは、このところの為替円安は、かなりスピードがあったということです。それに対し、企業などの経済主体からは、先行きの計画がなかなか立てにくいというお話を伺うことが多くあります。要するに、どこかの時点で落ち着けば、企業としての将来の計画が立てやすくなり、防衛するなり、攻めるなり、方向性を定めて戦略を策定することができるということです。』

なるほど。

『為替相場が大きく動いている状況では、将来どのような条件になるか分かりにくいため、明確な方向性を打ち出しにくくなります。一般論としてそういうことが言えるので、為替相場が安定すれば――水準ではなく、安定したということだけで――企業部門にはプラスになるのではないかということです。とくに工場設備の設置・更新や立地戦略を策定するとなると、ある程度先をみないと判断できないと思います。』

これ以上の円安誘導には否定的と、メモメモ。


ということで、中々こういい感じの会見でございました。


○総裁の日本記者クラブでの講演は「おめーら梯子外すんじゃねえよ」という執行部の叫びですねわかります

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150227a1.pdf
原油価格と物価安定
── 日本記者クラブにおける講演 ──

題名がナンジャソラという感じですががが。

・もう最初にいきなりこれですよ

最初の『1.はじめに』から。

『現在、日本銀行は、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するため、「量的・質的金融緩和」を推進しています。そのもとで、わが国経済は基調的に緩やかな回復を続けており、物価は企業収益や雇用者所得の増加を伴いながら上昇しています。もっとも、昨年夏以降の原油価格の大幅下落に伴い、このところ消費者物価の前年比プラス幅は縮小しています。』

ほうほうそれで?

『こうした中、「2%の達成にはある程度時間をかけるべきではないか」、「そもそも2%を目指すことは困難ではないか」、といった意見も聞かれています。』

野党審議委員disキターでもあるのですが、良く良く考えてみると本田先生や浜田先生に対して「人を屋根まで持ち上げておいていきなり梯子外したあどういう事だ」と言っているようにも見えますな。

『そこで、本日は、まず、日本経済の現状と先行きについてお話したのち、「物価安定の目標」の考え方と原油価格下落への対応を中心に、最近の金融政策運営を説明します。』

ということで・・・・・・・・・


・政策フレームの説明パートに参りますね!!!

経済の説明に関しては足元の輸出の戻りを過大視していないかとか、消費って本当に底堅いのかよとかツッコミどころはありますがそこは華麗にスルーして『3.「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」』に飛ぶのだ。

『3.「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」』の『(1)物価安定目標の考え方』から。


『日本銀行を含む多くの中央銀行は、「2%」程度の物価上昇率を目標に、金融政策運営を行っています(図表6)。』

出たな。

『具体的には、日本、英国、カナダ、ニュージーランドなどでは「2%」をターゲット(Target)として掲げているほか、米国でも「2%」を長期的なゴール(Longer-run goal)としています。また、ユーロ圏では、物価安定の数値的な定義(Quantitative definition)を示すというかたちで目標を示しており、その値を「2%未満かつ2%近傍」としています。』

はあそうですか。

『このように、表現の仕方は様々ですが、「2%」程度の物価上昇率を目標にして金融政策運営を行うことは、グローバル・スタンダードだといえます。』

またグローバル・スタンダードか!!!

なお、「2年で頑張って達成」としているのはグローバルスタンダードではないんですけどね、という部分の説明は一応後にある。

では2%の概念はと言いますと・・・・・・・

『そのもとで、各国の消費者物価の動きをみると、2%程度で安定しているといわれる米国や英国でさえ、その時々ではかなり広いレンジで推移しています(図表7)。「ある程度期間を均してみれば2%を中心とした動きとなっている」というのが実態です。すなわち、実際の物価上昇率は景気のような循環的な要因や商品市況の変動などによって上下に振れますが、各中央銀行は、中期的に――「景気循環の波を通じて(over the cycle)」と呼ばれることが多いのですが――平均して目標とする水準を達成するように金融政策を運営しているということです。』

ということで、まあこれは概念的にはこうなる。


・インフレ目標をリアンカーさせようとしているので・・・・・・・・・

で、その続き。

『このように、各国では「景気循環の波を通じて」、「平均して」2%の物価上昇率を実現するという考え方が採られています。その際、各中央銀行が政策運営にあたって重視しているのが中長期的な予想物価上昇率の動向です。』

キタコレ。

『なぜなら、中長期的な予想物価上昇率が2%程度でアンカーされていれば、言い換えれば、「物価がだいたい2%くらい上がる」ことを前提に企業や家計が行動していれば、景気の循環や一時的な要因により実際の物価上昇率が目標とする水準から離れたとしても、中期的、平均的には目標を達成できる可能性が高いと考えられるからです。』

ということで、ちょっと飛ばして(なおこの途中の部分もポイントではあるのですが、インフレ期待がアンカーされているのかいないのかの違いという話のマクラ部分なので引用飛ばすけどその理屈に詳しくない方は講演テキスト5ページの後ろから6ページを読むべし)『(2)2%の早期実現を目指す理由』まで飛びます。

『以上が、物価安定目標の標準的な考え方です。日本銀行の「物価安定の目標」も、基本的には同様の考え方に基づいています。』

うむ。

『しかしながら、日本の場合は、出発点となる状況が米国や欧州とは大きく異なります。すなわち、米欧では、従来から2%程度にアンカーされてきた予想物価上昇率をどのように維持するかということが課題となっているのに対し、日本では、長年にわたるデフレのもとで予想物価上昇率は2%よりもかなり低い水準にあり、これを政策的に引き上げるという課題に挑戦しているところです。』

キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!

『そこで、日本の置かれた状況を確認すると、1990 年代後半以降、わが国の消費者物価の前年比は、マイナスないし小幅のプラスでの推移、すなわち、「景気循環の波を通じて」、「平均して」みると、ゼロ%近傍での動きとなっていました。』

うむ。

『このように長きにわたってデフレが続くもとで、中長期的な予想物価上昇率も低下し、人々に「物価は上がらない」という感覚が定着してしまいました。そうした世界では、現金や預金を保有することが相対的に有利な投資戦略となるため、設備や研究開発に投資して新たな挑戦を行う意欲が削がれます。この結果、日本経済の活力は奪われ、これがデフレからの脱却を一段と難しくするという悪循環が発生しました。』

いわゆるデフレ均衡論ですけれども、成長期待ってデフレだけで止まってしまうものではない訳でして、実際問題としては成長力の引き上げのための経済政策というのもあってしかるべきだったんじゃないですかねえという気はだいぶしますが、いちおうこれはこれで理屈。

『こうした状況から抜け出るためには、企業や家計の「物価は上がらない」という感覚を、早期かつ抜本的に転換する政策が必要となります。そのための処方箋として導入したのが、「量的・質的金融緩和」です。この政策は、中長期的な予想物価上昇率を2%程度まで引き上げ、そこでアンカーし直し、米国や欧州のように物価が平均的にみて2%程度上昇する経済状況を作り出すことを目指しています。』

まあ問題は物価が上昇しても消費が落ちてしまったという石田審議委員の指摘だったりするんですけどね!!!


・早期達成が重要という主張を力説するのは「リアンカーのため」であるという話

でまあその続き。

『「量的・質的金融緩和」は、第1 に明確なコミットメントとそれを裏打ちする大規模な金融緩和によって予想物価上昇率を引き上げるとともに、第2に巨額の国債買入れによって名目金利に低下圧力を加えることにより、実質金利を低下させ、設備投資など民間需要を刺激するというメカニズムを想定しています。』

ワークしていないような気がしますが気合に免じてスルーしておく。

『すなわち、波及メカニズムの出発点として、まず予想物価上昇率に点火しようとしたのです。「人々のデフレマインドを転換して、予想物価上昇率を引き上げることができるかどうか」、それはデフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の成否を握るカギになっています。』

点火したかも知れんがその結果消費が抑制されているような気がするがスルーしておく。

とまあそういうことで・・・・・・・・・・

『このような日本経済の置かれた特殊な状況とその処方箋においては、各国の物価安定目標よりも、「期限」という要素が重要になってきます。』

ほう。

『日本銀行が「いつかは2%にするので、それを信じて行動を変えて欲しい」と言ったとして、長らくデフレのもとにあった企業や家計が行動を変えたでしょうか。疑問です。』

2年で2%とか無茶な事言ってタコ踊りをしているんだからお前ら梯子を外すんじゃねえという事ですねわかります。

『日本銀行が、「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に」という期限を示し、「そのために必要なことは何でもやる」と明確にコミットしたことで、企業や家計の物価観が変化し始め、「量的・質的金融緩和」のメカニズムが動き出したのです。』

本当に動いているのかは微妙な気がしますが。

『日本銀行が2%の「早期の」実現にこだわるのは、こうした理由によるものです。米国のように2%にアンカーされた後には、もう?し鷹揚に構えてゆっくりと目指せばよいのかもしれません。しかし、2%に持っていくまでは、人々の期待を変えるだけの「速度と勢い」が必要なのです。』

屋上に上がって置物タコ踊りを始めた手前引くに引けない・・・・・というとちょっと酷いかも知れんが、まあ「期待をリアンカーさせようとしている」という手前、期待がリアンカーされるまで引くに引けないという理屈になっているのは把握した。

『デフレ均衡はひとつの安定的な状態ですので、そこに向けて引力が働きます。だからこそ、景気の循環的な振幅や金融・財政面の刺激策にもかかわらず、15 年も続いてしまったのです。そこから脱出するためには、ロケットが強力な地球の引力圏から離れる時のように、大きな推進力が必要となります。すでに安定軌道を回っている人工衛星とは違うのです。』

セントルイス連銀ブラード総裁のいう複数均衡に乗ってますな。

『そして、他国の衛星より低い、例えば高度1%の軌道まで辿り着けば十分ということではありません。低い軌道では、また引力に引き戻される惧れがあるからです。』

麿disキタコレなのだが、目先は1%程度でも良いみたいなすっかり腰の引けた政策ブレーン様たちに向けて「梯子外すんじゃねえよコノヤロー」という日銀執行部心の叫びであると理解しました!!!!

『2%の高度は、各国が採用しているグローバル・スタンダードですが、そこには、上昇率が高めに出るという消費者物価指数の「上方バイアス」とデフレに陥らないための「のりしろ」、この2つのグローバルな経験知が込められていると思います。』

・・・・・しかし「グローバルな経験知」なのでしたらやはりそこにはローカライズするという発想も必要なのではないでしょうか(ニヤニヤ)。

『話をまとめますと、日本銀行の「物価安定の目標」は、枠組みとしては他国の物価安定目標と変わるところはありません。ただ、「デフレ均衡からの脱出」という局面においては、通常よりも強力な手段を使う必要があります。2%の早期実現のコミットメントと異次元の規模の緩和措置によって、予想物価上昇率の引き上げ(あるいはデフレマインドの転換)を、十分な「速度と勢い」で実現していくというのが、「量的・質的金融緩和」の核心なのです。』

とまあそういう事で、昨今2年で2%が明らかに無理になったところで腰がすっかり引けてきている官邸ブレーンに向けた盛大な叱咤が黒田総裁から入ったということですな!!!!!!


・追加緩和に関する説明ワロタ

最後に『(4)物価見通しと金融政策運営』から。

『こうした中、日本銀行は、昨年10 月、「量的・質的金融緩和」の拡大(いわゆる追加緩和)を決定しました。これは、原油価格の下落そのものに対応したものではありません。原油価格の下落が、現実の物価上昇率の伸び悩みを通じて予想物価上昇率に影響し、デフレマインドの転換が遅延するリスクを危惧したものです。』

はあそうですか。

『先ほど述べたとおり、予想物価上昇率の上昇は「量的・質的金融緩和」のメカニズムの起点であり、その成否を握るカギです。日本銀行が、2%の早期実現に本気ではないと思われてしまったら、せっかく順調に働いてきた「量的・質的金融緩和」は機能しなくなってしまいます。実際、緩和後に各種の市場が大きく反応したところをみると、それ以前に本気度を疑われていた部分があったのかもしれません。しかし、いずれにせよ緩和後にはその疑いは晴れたということでしょう。』

疑いが晴れたどころか「こいつら物価が下がってヤケクソ緩和打ち込みやがった」という認識になって、追加緩和がドンドンくるんじゃネーカという話になって1月追加緩和という話にもなってきたわけですけれどもね。

なお、1月2月の決定会合にてすっかりその話が無かったことになっているように見えますがががが。

『昨年10 月以降も原油価格はさらに下がっていますが、デフレマインドの転換は着実に進んでいるとみています。予想物価上昇率に関する指標のうち、ブレーク・イーブン・インフレ率などの市場指標は米欧と同様に下落していますが、エコノミストなどに対するアンケート調査では中長期的な予想物価上昇率は維持されています。企業行動の面でも、昨年に続き今春も、労使双方で賃上げに向けた動きが進展しており、2年連続の賃上げが実現しそうです。10 月の緩和措置によって、デフレマインドの転換が遅れるリスクは、ひとまず予防できたと考えています。』

はあそうですかというか追加緩和関係あったのかという気がしますがまあそういう事で。

なお、理屈は分かったのだが実績は??????というツッコミは武士の情けでスルーしておきますね!!!!!!

#以上、本日は単なる引用大会でした(汗)