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2015/09/30

お題「総裁会見は色々と理屈を繰り出して「上手く行っている」アピールに見えますが・・・・・・・」

本格検討とな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150929/k10010251901000.html
携帯料金引き下げ 総務省が本格検討へ
9月29日 13時50分

#今朝は諸般の事情により総裁会見ネタだけで勘弁

○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509d.pdf

・また見事に会話になっていない質疑ワロタ

個人消費について質問が来たのですが・・・・・・・・・・

『(問) 関西経済の現状についてですが、特に大阪商工会議所会頭からは、個人消費については順調とは言い難いとの厳しい見方が示されましたけれども、これは全体の日本経済について、総裁が最近示された個人消費が底堅く推移しているという見方とは若干違うと思うのですけれども、その点についてはどう思われますか。』

その答えがもうね。

『(答) ご案内の通り、関西経済の景気は、以前は、全国、特に関東、中部の景気よりもやや遅れ気味だったわけですけれども、それを完全に克服して、現時点では全国平均よりも少し良いというような状況だと思います。従って、関西地域の景気は回復していると判断しています。』

まあ質問の方が「関西経済の現状についてですが」と入っているのはそうなのですが、どう見ても質問の趣旨は「個人消費が底堅いという日銀の見解は大丈夫か」という話なのですよねえ。

『輸出と生産は、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響がみられているわけですが、そうした中でも、この関西地域では緩やかな増加傾向が続いております。また、国内需要の面では、企業部門で、やはり全国と同様に、あるいはそれ以上に収益が好調ということで、設備投資が増加しています。それから、家計部門については、何人かの方も言っておられたように、雇用の改善が続き、所得も改善する中で、四半期ごとの振れ等はありますけれども、やはり個人消費が堅調に推移しているということは全国と変わりないと思いますし、住宅投資も下げ止まっているということだと思います。このように、関西経済は回復しているわけですけれども、最近の動きについて特徴的な点を言うとすれば 2 つあると思います。』

大商の会頭から個人消費について指摘を受けているのに「やはり個人消費が堅調に推移しているということは全国と変わりないと思いますし」で済ませるのなら何で大阪まで出かけて会合する意味があるのかと小一時間問い詰めたい。

『まず第 1 は、企業収益が好調に推移する中で、関西の製造業の設備投資が非常に積極化しているということです。(以下割愛)』

『それから第 2 に、先程も触れましたけれども、関西を訪れる外国人観光客が急増しており、その恩恵を受ける領域が広がってきているということです。(以下割愛)』

と全然質問と関係ない方に話を進めていくというこの攻撃なのですが、まあ経済見通しのメカニズムに対する質問を受けてこういう風にまともな答えをしない、というのは最近の総裁会見の傾向ではあるのですが、この手の質問にまともに答えないというのの根底にあるのは要するに「まともに答えるとマズー」というのがあるからでしょとは思います。

『先行きにつきましては、関西経済は回復を続けていくとみておりますけれども、海外経済の動向というものは、関西経済のみならず、日本経済をみる上でも重要なポイントですので、引き続き注意深く点検して参りたいと考えています。』

ということで前回MPM声明文でもこの時の講演要旨(昨日ネタにした奴)でもそうでしたが、国内の循環メカニズムは回っているけど海外ガーという話になっていますな。


・物価に関しての質問が多いのですが最初に1.1%キタコレ

まあ当然ではありますが。

『(問) (前半割愛)2 つ目は物価ですが、コアコアが非常に順調に上昇している一方、コアはマイナスになっています。油の先物などをみますと、コアは暫く上がらないとの見方もあるようですが、それが期待インフレ率に影響する可能性を心配しておられるのかどうか。また、心配な場合、躊躇なく調整を入れることはあり得るのでしょうか。』

『(答)(前半割愛)2 番目の点については、ご指摘の通り、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はこのところ 0%程度で推移しており、直近でマイナス 0.1%になっているわけですが、当面 0%程度で推移するとみております。懇談会での冒頭の発言でも申し上げた通り、生鮮食品とエネルギーを除いた物価上昇率でみると――要は物価の1つの基調を示すものですが――、それは引き続き上昇してきており、プラス 1.1%まできています。』

+1.1%キタコレ。

『従いまして、物価の基調はしっかりと改善してきており、今後、原油価格がどんどん下がっていくことがあれば別ですが、原油価格がここで一定になっても、12 か月経てば完全にマイナスの影響は剥落しますし、先物の価格をみると、緩やかに上昇していくようになっていますので、基本的なメインシナリオでは、エネルギー価格の下押し圧力というのはいずれ剥落してなくなっていくわけです。』

はいはい原油のせい原油のせい。

『このように物価の基調は改善していますので、今の時点で何か大きな問題があるということは思っていません。いずれにしても、予想物価上昇率というのは物価安定目標を安定的に達成するためには非常に重要な要素ですので、今のところ概ね安定的に維持されていますけれども、その動向については今後とも引き続きよく注視をしていきます。もとより、物価の基調に変化が生じて必要になれば、躊躇なく金融政策の調整を行うという姿勢に全く変わりありません。』

という毎度の説明。


・物価指標は色々と都合の良いものを見るとな

という上記の質疑のすぐ後にこんなのが。

『(問) 今の発言に関連して、確認ですけれども、物価の基調をみる上では、コアのCPIよりも最近出されている生鮮・エネルギーを除くCPIの方が、より基調を表しているというご判断でよろしいのでしょうか。また、それに関連して、2%の達成時期は来年度前半とされていますが、原油次第では前後するとおっしゃっていますが、仮にコアのCPIが少し後ろになってしまった場合でも、エネルギー・生鮮を除くCPIで 2%の安定が展望できるような状況であれば、それは2%の目標は達成されたと判断することになると考えてよろしいでしょうか。』

その答え。

『(答) 物価安定目標自体は、ご承知のように、消費者物価の総合指数です。しかし、その消費者物価のトレンドを判断する上では、生鮮食品というのは天候その他によって大きく振れますので、それを除いたものがひとつの重要な指標であることには違いはありません。もっとも、このところの展望レポートでも示しております通り、原油価格が大幅に下落する中で、トレンドをみる上では原油価格、エネルギー価格の変動部分を考慮しないと物価の基調がみづらい面もありますので、それを除いたもの、あるいはいわゆるコアコアという食品とエネルギーを除いた部分など様々な指標をみていく必要があります。』

はいはい。

『また、物価の基調という意味では、本日の懇談会の中でも申し上げた通り、企業や家計の物価観について、賃金の動向であるとか企業の価格設定行動もみていく必要があります。』

物価観攻撃・・・・・・・・・・

『そういう面では、賃金はベースアップが 2 年続きで実施され、今年のベースアップは去年よりも高くなっていますし、しかも産業、企業で拡がりをみせています。』

その水準が2%に対して思いっきり力不足なのはスルー。

『それから、企業の価格設定行動の 1 つの指標として、POSデータ等からみた東大あるいは一橋の価格指数の動向をみますと、昨年と違って今年は 4 月以降かなり上昇してきています。あるいは、600 品目ぐらいある消費者物価指数のそれぞれの品目の中で上昇している部分と、下落している部分との差をみたところでも、上昇しているものが下落しているものをさらに大きく上回ってきているようにみえます。』

だから物価観が強いという事のようです。だったら消費がというのは昨日も申しあげたので割愛。

『このように、特定の指標だけで判断するというものではなく、やはりその時々の状況に応じて、様々な重要な指標をみていくということになると思います』

その時々の状況に応じて適当に都合の良い指標を繰り出すということですね分かります。


・マインドセットについてのイヤミな質問に対して

『(問) 先程の質問と重複するところはあるのですけれども、最後の重要なポイントのところで、マインドセットの転換に時間がかかっているとの指摘がありましたが、QQEは最終的にはマインドセットの転換を図ることを目的としていると思いますが、2 年半続けていて今の政策を継続、コミットメントし続けることでその転換が実現できるというお考えでいらっしゃるのでしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー

『もう 1 点それに関連してですが、昨年 10 月に追加緩和をした時にはデフレマインドの転換が遅れるということを懸念されていたと思うのですが、実際にマインドセットが遅れている、転換が遅れているという懸念が今、顕在化した状況ではないかとも思えるのですが、その際に政策の判断などは必要ではないのでしょうか。』

国内経済の前向き循環メカニズムが回っている、という説明をしているのですが、実際問題として設備投資と労働分配の方は伸びていないですよねとかツッコミを受けると講演にあるように「それは企業のマインドセットがまだ進んでいない面がある」とか答えざるを得ない訳でして、そう説明した点に関してのツッコミとは中々イヤミで宜しいですな。

『(答) マインドセットには、狭い意味でのいわゆる物価上昇予想の話と、それを含めた企業の経営とか、あるいは賃上げの動向という広い意味での話など、色々な意味があると思います。』

ああいえばこう言うキター!!!

『去年 10 月 31 日に「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した際には、原油価格はどんどん下がってきており、しかも当面それが続きそうだという中で、物価上昇率自体もどんどん下がっていくことが予想されました。それが予想物価上昇率にマイナスの影響を与えてしまい、デフレからの脱却が遅れてしまうということを懸念して、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したわけです。』

ほうほうそれでそれで?

『幸いに、その後の状況をみますと、予想物価上昇率自体は概ね維持されています。これは「量的・質的金融緩和」の拡大の効果があった面もあると思いますし、あるいは家計や企業の物価についての見方において、足許でエネルギー価格の下落を背景に物価上昇率が下がっていっても、物価の基調はそれほど変わっていないと考えられたのかもしれません。いずれにせよ、幸いに予想物価上昇率はそれほど下がらずに概ね維持されたということです。』

そもそもその予想物価上昇率をピンポイントで正確に把握することが出来ないということは日銀も認めている筈なのですが、こうやって言われてしまうと結局「やりたい政策が先にあって予想物価上昇率のように計測不能なものを持ってくるのはその理屈付けじゃネーノ」という風にツッコミをしたくなりますが。

『そうした中で、講演で申し上げたような企業や家計のマインドセットというのは、今後の賃金の動向、賃金の決定についての企業や家計の考え方、あるいは設備投資などを含めたもう少し広い意味です。』

そもそも置物リフレ理論によりますと予想物価上昇率が上がって実質金利が下がると消費や投資が活発化するという理屈になっていた筈なのですが・・・・・・・・・・・

『実際には企業収益は大きく改善し、雇用情勢も完全雇用に近い状態になっているにも関わらず、まだ必ずしもそれを反映したように賃金の上昇が起こっていない理由として、企業や家計のマインドセットの転換に時間がかかっている可能性もあると言っているわけです。』

現実問題としてそこに時間がかかるんだったらそもそも論として何で「2年で達成」とか言ったのでしょうかねえと思いますし、そういう状態なのだったらそれこそ「色々な指標を見て総合的に判断」する予想物価上昇率は上がっていないという認識をした方が良いと思うのですが、要は現時点で追加緩和をやりたくないから「予想物価上昇率」と「マインドセット」を使い分けているんでしょとしか申し上げようがありません。

『裏を返せば、ある程度時間を経れば、そういった意味での企業や家計のマインドセットも自ずと変わっていくとは思いますけれども、色々な努力の中で――これは企業側の努力もあるでしょうし、家計側の対応もあると思いますけれども――、そういったマインドセットがより早く転換してくれることは、マクロ的にもより望ましいと思いますし、それをここで申し上げているわけです。』

マインドセットに時間がかかるんでしたらそもそも2年で達成という枠組みを放棄して中長期的に達成すべきものであるでしょうし、要はマインドセットって成長期待な訳ですから、それは成長力強化の取り組みが必要という話ですよね、と言い出すと白川ドクトリン成分が高くなってしまうので、白川ドクトリンをケチョンケチョンに言って総裁副総裁になられた方々の面目玉が丸潰れになってしまいますからそこにはまだ踏み込んできませんよねという事で。


・GDPがマイナス転継続しても物価の基調は更に強くなるとな

『(問) 先日の定例会見で、7〜9 月のGDPについておそらくプラスになるのではないかとしていたと思います。GDPもそうなのですが、生産についても 7〜9月はプラスに戻るとお考えなのかをまずお聞きします。』

ふむ。

『もし、GDP、生産が 2 期連続でマイナスになると、これは普通、景気後退と世界的にはそういう評価を受けることになると思います。もともと物価の基調と言うときに予想インフレと需給ギャップが重要だと常々おっしゃっておられますが、2 期連続の減産、そしてGDPがマイナスということになると、これは明らかにGDPギャップということでいえば逆方向にいくわけです。』

うむ。

『2%の物価目標の 16 年度前半達成も、原油だけで後ずれするのであれば、それほど問題はないのかもしれませんが、需給ギャップという面でそういう一時的な停滞ではない若干長めの停滞ということになると、これは明らかに物価の基調は停滞していると言わざるを得ないのではないかと思います。そういったときに、やはり早期の物価目標実現のためにはできることは何でもやるとおっしゃっている黒田総裁ですので、これは何もしないというわけにはいかないのではないかと思うのですが如何でしょうか。』

逃げ場を塞ぎながらの質問ですがその答えはと言いますと・・・・・・・・・・・


『(答) GDPの成長率が 2 期連続でマイナスになったときには、米国の定義ではリセッションというのだと思います。7〜9 月のGDPがどういう数字になるかは、まだ 7〜9 月の月次のデータも揃っていませんので、これはまだよくみていかなければいけないと思っていますが、これまでのデータをみる限りでは、必ずしも 7〜9 月のGDPがマイナスになると言うことも難しいと思っています。』

この前の定例会見では、

『7〜9 月は、9 月のデータはまだ出ていないわけですし、8 月のデータも全て出ているわけではありませんので、7〜9 月のGDPを予測することは難しいわけですが、先程申し上げたようなことからプラスに戻ってもおかしくないと思います。7〜9 月はマイナスを予測するエコノミストもいるようですが、私はおそらくプラスになるのではないかと思っています。』(9月15日の定例記者会見より)

と言っていましたのがややトーンダウンしている感も無きにしも非ず。


『いずれにしましても、雇用状況やGDPギャップの数字をみても、ギャップ自体が非常に小さなものになっていることは事実です。4〜6 月のGDPはマイナスになっているわけですが、その場合に需給ギャップの改善が止まるということはメカニカルにはその通りだと思いますが、需給ギャップの水準が非常に小さいというかプラスの水準であるということであれば、あるいは雇用状況が完全雇用の状況にあるということであれば、物価や賃金は上がっていってもおかしくはないわけです。』

お、おぅ・・・・・・・・・

『いずれにしても、私どもとしては常に景気の状況、さらには物価の基調、特に従来からいっているような需給ギャップ、予想物価上昇率、あるいは賃金、企業の価格設定行動といった様々な物価の基調を十分に点検し、必要があれば躊躇なく政策の調整を行うということには全く変わりはありません。』

ということですが、躊躇なく政策の調整という話はしているものの、この理屈展開ですと追加緩和をやる気がサラサラないという感じにしか見えませんぞなとは思いますし、この理屈を翻して追加緩和する理屈をどう捻りだすのかと考えるとかなり難しいようには思えるのですが、まー昨年の死んだふり追加緩和もありますので何をしでかすかワカランチ会長ではありますけどね!!!



○市場メモとかその他雑談メモ

・末初のレポレートは低いには低いがまあ順当

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

昨日のT+1スタート翌日物取引が末初レートになるのですが、6月末はT+1が末初の時にマイナス8.5bpでT+0が末初の時にマイナス10.9と中々のあばばばばーレートになっておりましたが、今回は昨日のT+1翌日物がマイナス6.8bpとレート水準そのものは低いのですが、期末の前になって短国市場が日銀の無慈悲買入継続攻撃に加えて格下げも影響したと思われるベーシススワップ金利低下攻撃によってマイナス水準を拡大するというプレイが出ていた割にはまあ落ち着いた感じという所でしょうか。

まーレポに関しては7月末の騒動もありましたように、月末になるとGCレポでの運用が出来なくなってしまう攻撃というのが仕様化しつつある(8月は大体無事でしたが10月は分からん訳ですが四半期末はもうどうしようもありません)中ですし、6月末の場合はそうは言っても四半期でしょとか、7月の場合はそもそもノーケアーだったとか、そういう点で参加者の意識としてちょっと予想を超えた展開という感じだったと思いますが、さすがに今月は期末なので皆さん超警戒していた上に短国市場が9月3週からモノ無しあばばばばーとなっていましたので、そーゆー意味では警戒してただけに逆に大波乱にならなかったという事でしょうな。

でまあ10月とかは良く分からんですが、12月になりますと今度は日本的には四半期末ですがグローバル的には年末なのでどうせまた凶暴化するでしょうなあとか思いますし、そういや明日は短国3Mの入札があったりしますけれども、これがまた年末越えの1発目になるのでどうせニーズを集めるのでしょうなあとか思いますと短国市場のあばばばばーはどこまで続くのやらと頭がクラクラしますな。


・また地均しをしようとしているのだが(米国)

http://jp.reuters.com/article/2015/09/29/usa-fed-mester-idJPL3N11Z4X720150929
News - Forex | 2015年 09月 30日 04:07 JST
米利上げ見送りはリスク管理の一環−クリーブランド連銀総裁=日経

『[29日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、今月の利上げ見送りの決定について、世界経済をめぐる懸念、および金融市場の混乱を背景とする「リスク管理」の一環と説明した。日本経済新聞とのインタビューで述べた。』(上記URL先より、以下同様)

手元に日経が無いので良く分からんのですが(汗)。

『一方で、米経済は利上げを開始するのに十分力強いと確信しているとの認識をあらためて示した。総裁は、世界経済の成長予想の見直しや中国をはじめ新興国経済への懸念に起因した米経済見通しへのリスクに言及、「9月の利上げ見送り決定はリスク管理に関する判断だ」と指摘した。これに加え「金融市場の混乱や金融状況にややひっ迫が見られた」とした。』

リスク管理というのは分かりましたが、あれだけリスクの話を持ち出した挙句に金融市場の混乱とか金融状況のタイト化とか言いますと、10月大丈夫かよとしか申し上げようがないですし、しかも「利上げするぞー」と構えた状態のままだといつまで経っても金融市場が落ち着かないので状況が改善しないと思うのですが・・・・・・・・

詳しくは元文章を見つけられたらまた確認しますが、この調子だとコミュニケーションがいつまでたっても混乱状態のままでしょうなあとは思います。


・これは奥が深い(違)

http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/43.htm/
「にちぎん」No.43 2015年秋号/2015年9月25日発刊

にこんなのが。

http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/data/nichigin43-3.pdf
インタビュー/扉を開く [PDF 1,053KB] 自分を生かすための「諦める力」
元プロ陸上選手 為末大

小見出しなどに実にこう味わいがありますな(^^)。










2015/09/29

お題「日米中銀発言ネタである」

何かまたおはぎゃーのようですが、とりあえず下げると中国懸念で話を済ませているような気もせんでもない。

○ダドリー総裁コメントは本チャンが無いので簡単に

うむ。
http://www.wsj.com/articles/feds-dudley-still-likely-on-track-for-2015-rate-rise-1443448239
Fed’s Dudley: Still Likely on Track for 2015 Rate Rise
New York Fed President remains upbeat on the U.S. economy
By MICHAEL S. DERBY AND JON HILSENRATH
Updated Sept. 28, 2015 10:35 a.m. ET

『NEW YORK-Federal Reserve Bank of New York President William Dudley said Monday he continues to believe the U.S. central bank will be able to boost borrowing costs this year, saying the decision will be driven by a broad array of considerations.』
(上記URL先より、以下の記事は会員じゃないと読めません)


http://jp.reuters.com/article/2015/09/28/idJPL3N11Y3XC20150928
News - Forex | 2015年 09月 28日 23:55 JST
UPDATE 2-米、年内利上げの公算 来年中に物価目標達成も=NY連銀総裁

『[28日 ロイター] - ダドリー米ニューヨーク連銀総裁は28日、米連邦準備理事会(FRB)はおそらく年内に利上げする見通しで、早ければ10月にも決定を下す可能性があるとの見方を示した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のイベントで述べた。』(上記URL先より、以下同様)

『総裁は、インフレ率が2%目標を達成する時期について、FRB当局者の予想中央値よりも1年以上早い、来年中の可能性があると言明した。』

『世界経済のさえない状況やドル高が米インフレ動向を恒久的に抑制したり市場のインフレ期待を後退させることはないと確信していると指摘。その上でインフレが上向く可能性や経済が引き続き拡大している点を踏まえ、FRBは「おそらく年内に利上げするだろう」と語った。10月27─28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ決定もあり得ると述べた。』

お、おう・・・・・・・・・・・・・


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVE6P56VDKIE01.html
ニューヨーク連銀ダドリー総裁:当局は年内利上げの方向
2015/09/29 00:50 JST

『(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀のダドリー総裁は世界の成長に不透明感はあるものの、米金融当局は年内に「恐らく」利上げを実施すると述べた。ダドリー総裁は28日、ニューヨークで行われたイベントで「景気は非常に順調だ」と述べ、下半期の経済成長は上半期に比べて「若干減速」するだろうと続けた。利上げのタイミングについては「明確なガイダンスはない。データ次第だ。景気動向に関する私の見解に基づく」とした。ダドリー総裁は最も注視している海外動向は中国だとしながらも、当局が目指す2%のインフレ率と完全雇用を達成する上で海外から受ける影響は限定的だと強調した。』(上記URL先より)


とまあそういうことで、早ければ10月にもという話なのですが、海外の影響が限定的とか言うのであれば何でFOMCの時にあんなに海外懸念による物価へのリスクとか言い出すのか分からん訳で、ここもと一連の発言って見ていると「利上げ路線の地均しをしていたのにFOMC声明とその後の会見で全部ちゃぶ台返しになってしまったのに慌てて地均しをまた始めている」という風にしか見えないのですが、「データ次第」と言いながら時期についてああでもないこうでもないと言う上に、その時期が全然定まらないとかコミュニケーションポリシーの失敗にも程がありますわな。


今回ダドリーさんは海外の影響が限定的というコメントをしているようですけれども、FOMCでのコミュニケーションとして何が悪かったかと言うと「中国や新興国の懸念」と「市場動向が金融環境をタイト化させている」のを「物価の下方リスク」と「米国経済へのリスクになる可能性」という具体的なお話をしている事でして、単に「利上げの環境は整っているが別に急ぐ必要もないので今回はパス」というような話にしておけば良いものを一々理由を挙げたのがダメで、しかも挙げている理由のうち中国と新興国に関しては「待てば直ぐに状況が良くなる」という代物でもないですし、金融市場の動向に関してはそもそも論として米国の利上げ着手がいつまで経っても始まらないという不確実性がボラを上げたり新興国からのキャピタルアウトフローが起きたりしている訳で、お前のせいだお前のという話をしているので、今回の利上げ見送りで様子を見て時間の経過を待っても状況が改善する訳では無いというのがダメダメですなあとは思うのでした。


つーことで、利上げ路線の立て直しを行っているというのは把握したが、そこまで言うならエイヤっと10月に利上げしたらどうなのよとは思いますけど、そういう胆力が無いのであればズルズルと後ろに倒れていくだけのような悪寒も漂って参りますな。

なお、講演(?)のテキストが出るならこの辺だと思いますが出るかどうかは分からん。
http://www.newyorkfed.org/press/#speeches



○シカゴ連銀エバンス総裁は貫禄のハト派講演だが「政策反応関数を明確化しろ」という説明がありますな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVEI946VDKHT01.html
シカゴ連銀総裁:利上げ開始先延ばしを−インフレ加速懸念は行き過ぎ
2015/09/29 04:22 JST

『 (ブルームバーグ):米シカゴ連銀のエバンス総裁は、金融当局はインフレが長期間継続して上向きの動きを示す兆候が表れるまで、利上げを遅らせるべきだと指摘した。またそうした状況は2016年半ばになるまで起こらない可能性があると加えた。』(上記URL先より)

ということで講演はこちら。
https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2015/marquette-thoughts-on-leadership-and-monetary-policy
Thoughts on Leadership and Monetary Policy

でまあ中身は色々と面白そう(超ななめ読みしかしていない)なのですが、目先の利上げ路線に関しての部分だと思う所についてちょっとだけ引用。

小見出しに『A Risk-Management Approach to Monetary Policy』というのと『Effective Communications Is a Critical Policy Tool』というのがありまして、全部引用していると結構長いのでほんのさわりだけになりますがまあ大体小見出しでお察しという内容です。


・物価が上がりにくいのだから利上げ着手は遅くて宜しいという話

『Currently, there are some downside risks to reaching our maximum employment goal - namely, the potential for weak foreign activity to weigh on U.S. growth. But, as I noted earlier, we have made tremendous progress toward this goal. Economic growth appears to have enough momentum that I am fairly confident that we will reach our maximum employment goal within a reasonable time.』

と、目標に向かっての進展があるというのは認めていますが・・・・・・

『However, to reiterate, I am far less confident that we can reach our 2 percent inflation target over the medium term because of a number of important downside risks to the inflation outlook.』

ということで物価の話をしていましてですな。

『With prospects of slower growth in China and other emerging market economies, low energy and import prices could exert downward pressure on inflation longer than I anticipate. In addition, while many survey-based measures of long-term inflation expectations have been relatively stable in recent years, we shouldn’t take them as confirmation that our 2 percent target is assured. In fact, some survey measures of inflation expectations have ticked down in the past year and a half. Furthermore, financial market-based measures of inflation compensation have moved quite low in recent months. These could reflect either lower expectations of inflation or a heightened concern for the economic conditions that are associated with low inflation.』

『Adding to my unease is anecdotal evidence: I talk to a wide range of business contacts, and none of them are mentioning rising inflationary or cost pressures. None of them are planning for higher inflation.』

ということで、海外懸念に加えて物価が弱い状況が続いてインフレ期待がやや弱含みになっている可能性を指摘しています。

『How does this asymmetric assessment of risks to achieving the dual mandate goals influence my view of the most appropriate path for monetary policy over the next three years? It leads me to conclude that a later liftoff and a gradual subsequent approach to normalizing monetary policy best position the economy for the potential challenges ahead.』

『Before raising rates, I would like to have more confidence than I do today that inflation is indeed beginning to head higher. Given the current low level of core inflation, some evidence of true upward momentum in actual inflation is critical to this assessment.』

従って利上げ着手するにはコアインフレおよびヘッドラインインフレの明確な上昇が必要と。

『I believe that it could well be the middle of next year before the headwinds from lower energy prices and the stronger dollar dissipate enough so that we begin to see some sustained upward movement in core inflation. After liftoff, I think it would be appropriate to raise the target interest rate very gradually. This would give us sufficient time to assess how the economy is adjusting to higher rates and the progress we are making toward our policy goals』

利上げ後のどうのこうのはまあ良いとしまして、インフレ値の明確な上昇をするには来年の半ば位が適切ということで、年内利上げじゃないドットの1名がエバンスであることも判明。


・政策反応関数を明確にすべきという話

『Effective Communications Is a Critical Policy Tool』の所はまあそうですなというお話なので引用します。

『In my remarks today, I stressed the need for the FOMC to follow interest rate policies that credibly demonstrate its commitment to a symmetric inflation target. As I noted earlier, one of the channels through which monetary policy affects the economy is through its influence on the public’s expectations about inflation and economic activity. Accordingly, a critical component of monetary policy is to effectively communicate how we aim to achieve our long-run goals and strategies.』

ではどういうコミュニケーションをしますかという話ですが。

『Policymakers must clearly describe how their views on the appropriate path for monetary policy will help generate outcomes for employment and inflation that are consistent with achieving the mandated goals within a reasonable time frame. Moreover, they must demonstrate they have appropriately considered the risks to their outlooks on the economy.』

『I hope I have done that for you today by laying out my forecast for the economy and what I consider to be the appropriate path for policy.』

ほうほうそれでそれで?

『We also need to be clear about how monetary policymakers will react to new data as the economy evolves. We talk a lot about data dependence, but what does that really mean?』

データディペンデントとはどういう事かキタコレ。

『To me, it involves the following: 1) evaluating how the new information alters the outlook and the assessment of risks around that outlook; and 2) adjusting my expected path for policy in a way that keeps us on course to achieve our dual mandate objectives in a timely manner.』

マンデートに対してどういう状態かというのを判断するということですけどね。

『So, if in the coming months inflation rises more quickly than I currently anticipate and appears to be headed to undesirably high levels, then I would argue to tighten financial conditions sooner and more aggressively than I presently do. If instead inflation headwinds persist, I would advocate a more gradual approach to normalization than I currently envision. In either case, my policy forecasts would change and I would explain how and why they did.』

ということで(雇用が完全雇用に近いのだから、ということでしょうが)物価に焦点を当てるべきというお話。

『Such communication helps clarify our reaction to new information - the so-called Fed reaction function you hear financial market analysts talk about. This in turn makes it easier for households and businesses to plan for the future. Such transparency is a key feature of goal-oriented, accountable monetary policy.』

これによって政策反応関数を明確化することができて、市場や一般に向けたコミュニケーションが円滑化するでしょうというお話をしておりまして、まあこれはこれで見解ですわなと思います。今のFOMCは正常化着手をしたいと言っている割に何をもって正常化着手するのかの判断基準がああでもないこうでもないとブレ過ぎている(別に「やるからやるんです」でも良いと思いますけどねえ)のがアレという事で。



○黒田総裁の講演だが何をどうするとそんなに景気強気になるのか&気になる表現があるのですが・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150928a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──

・経済に関しては相変わらず「前向きの循環メカニズム」だそうで

最初の日本経済に関するまとめ部分だけ見ておきます。『(日本経済の現状と先行き)』という所ですな。

『まず、日本経済の現状と先行きについてご説明します。わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環が働くもとで、緩やかな回復を続けています。』

前向きの循環?????

『すなわち、企業部門では、収益が過去最高水準となっており、企業の設備投資に対するスタンスは前向きです。』

でもそんなに出ていないんじゃなかったでしたっけ。

『また、家計部門では、失業率が「完全雇用」に近い水準まで低下するもとで、2年連続でベースアップが実現するなど賃金が増加し、個人消費も底堅く推移しています。』

実質賃金ェ・・・・・・・・・・・

『なお、4〜6月の実質GDP成長率は、前期比で−0.3%と、3四半期振りのマイナスとなりました(図表1)。これは、このところの新興国経済の減速の影響などによる輸出の鈍さと、天候不順もあって個人消費がややもたついたことによるものです。輸出につきましては、新興国経済の減速の影響から、当面横ばい圏内の動きを続ける可能性があります。もっとも、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、輸出も緩やかに増加していくとみています。そのうえで、先行きのわが国経済については、企業・家計の両部門における所得から支出への前向きの循環メカニズムが働き続けるもとで、緩やかな回復を続けていくとみています。以下では、わが国の経済情勢をみるうえでのポイントを2点お話ししたいと思います。』

ということで、そもそも論として実質賃金が伸びなくて消費がダメじゃないですかとか、企業の収益は伸びても成長期待が中々盛り上がらない中では設備投資が出ても限定的ですよね、というような点については華麗にスルーして国内の前向き循環メカニズムが働くという事になっているのが毎度のクオリティではあります。

なお七面倒なので「ポイントを2点」の所はスルーして物価の方に参ります。


・物価の説明で「+1.1%」がまたも登場とな

『3.わが国の物価情勢』まで飛びます。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入直前の−0.5%から、昨年4月には消費税率の引き上げの影響を除くベースで+1.5%まで高まりました。しかし、消費税率引き上げ後、個人消費の弱めの動6きが続いた中で、昨年夏以降、原油価格の大幅下落が生じた結果、消費者物価の前年比上昇率は低下し、本年入り後は0%程度で推移しています(図表6)。』

まあ+1.5%まで上昇して大勝利モードでニヨニヨしていたようですが、今にして思えばこれって消費増税絡みの便乗とかがあった分があったんじゃネーノと思うのですけれども、相変わらずその辺の考察はスルーして「+1.5%まで上昇した」と緒戦の大戦果を強調するのはいつもの話。

『ヘッドラインの物価が上昇していないのは、エネルギー価格が消費者物価の下押しに寄与しているためです。その影響により、消費者物価の前年比は最近では−1%ポイント程度押し下げられています。しかし、原油価格が下落を続けるのでない限り、先行きエネルギー価格が消費者物価の前年比に与えるマイナスの影響は、いずれ剥落していきます。単純な計算ですが、この影響がなくなるだけで、消費者物価の前年比は、現在と比べて1%ポイント程度高まることになります。』

いつもの話。

『また、エネルギー価格下落の影響により見えにくくなっていますが、この間も、物価の基調は着実に改善しています。たとえば、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、2013 年 10 月以来 23 か月連続でプラスとなっており、直近8月は+1.1%まで上昇しています。』

ということで、先般の安倍首相との会談後の黒田総裁コメント報道でも出ていましたが、除く生鮮エネルギーで+1.1%という数字を出していますが、この「+1.1」というのは結構意味がある話で、デフレ脱却がどうのこうのというような話をする際に出してくる物価の数値としては「+1%」に乗っていないとさすがにデフレ脱却の文脈での勝利宣言をするのは無理がある訳でして、とにかく1%を超えている数字を持ち出す必要があるので、そういう意味からしますとこの「+1.1%」を最近連発しているのは実に怪しいとしか申し上げようがありません。

『物価の基調が着実に改善している背景としては、企業や家計の物価観が変化していることがあると考えています。』

「物価の基調」攻撃もさることながら、「物価観の変化」という話をしているのもアレでして、「2%の物価上昇が安定的に推移」という状態については実際の物価推移で言えば「景気サイクルの中で平均的に物価上昇率が2%である」という事でもありますが、別の観点からしますと「経済主体における中長期の予想物価上昇率が2%であって、経済主体の行動の中にその2%物価上昇期待がビルトインされている状態」である、というのもこれまた物価目標2%の安定的な達成、という話になるのですな。

ということですからして、1%台の数字を強調するというのがデフレ脱却アピール攻撃の香りがするのに加えまして、経済主体の物価観がどうのこうのという説明は物価目標達成アピール(さすがに今の状態で達成とするのは無茶ですけど)へ持ち出す理屈の準備ということで詳しく説明しているのではないかとゆー怪しげな香りがする訳ですよね。以下引用します。

『企業や家計の物価観の変化は、賃金改定や価格設定の動きとして現れています。』

はて?

『まず、賃金改定については、昨年春の労使交渉で約 20 年振りにベースアップが復活し、本年も多くの企業で昨年を上回るベースアップが実現しています(前掲図表4)。ベースアップを行う企業は昨年よりも増加しているほか、業種や企業規模にも拡がりがみられています。』

おう図表4を見たけどベア1%も逝ってないし雇用者所得1%も逝ってないじゃねえかよどういう事やと思いますし、何で雇用者所得とベースアップをわざわざ別目盛にするのかも良く分からんわ。

『また、価格設定の動きをみると、仕入価格や人件費の上昇を販売価格に転嫁する企業が増えてきています。家計の側でも、賃金の上昇あるいはその期待を背景に、そうした価格転嫁の動きを受け入れ始めているようにみられます。』

受入れているなら消費がもっと伸びてしかるべきではないでしょうか。

『実際、今年度に入ってからは、価格改定の動きに拡がりと持続性がみられています。例えば、消費者物価(除く生鮮食品)を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標をみると、本年度入り後の上昇が顕著であり、最近では 2000 年以降で最も高い水準となっています(図表7)。さらに、東大や一橋大が食品や日用品の価格を集計して作っている価格指数をみると、4月以降、前年比ではっきりとしたプラスに転じており、その後もプラス幅の拡大傾向が続いています。』

単にコストプッシュが効いてきただけの可能性もあるような気がしますけどねえ。

『昨年も、多くの企業が新年度に価格改定を試みましたが、消費税率引き上げ後の需要低迷を受けて、ほどなく撤回を余儀なくされました。今年は、それとは対照的な動きとなっています。』

牛丼ェ・・・・・・・・・・・・・

『このように、ベースアップと価格改定の動きとが軌を一にして本格化していることは、わが国においても、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという循環メカニズムが作用していることを示すものであると捉えています。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・・・


・金融政策運営の所に「デフレ脱却にコミット」という謎文言が登場

『4.金融政策運営についての考え方』以下ですけどね。

『日本銀行としては、今後も、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、仮に何らかのリスク要因によって物価の基調的な動きに変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく調整を行っていく方針に変わりはありません。』

2年程度を念頭においてできるだけ早期にというのが無くなっているのは今に始まった事ではないのでそれはまあ良いのですけど、その次の『5.おわりに』ですけどね。

『だからこそ、日本銀行は、デフレからの脱却と2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットし続けます。』

という文言がこれまたアレ。

・・・・・・つまりですね、そもそも日銀がコミットしているのは「2%の物価安定目標」であるからして、物価安定目標が達成されれば自動的にデフレから脱却している訳で、元々QQE導入以降の説明だと「デフレ脱却は2%目標達成への単なる通過点なのでデフレ脱却したかどうかの判定をするとかはそもそも副次的なお話です(キリッ)」という建付けになっていた筈でして、わざわざ今回デフレからの脱却にコミットと言い出すのは、新三本の矢で旧第一の矢になった金融政策における「2%」への拘り度合いの低下(看板として下げる訳ではないが)と呼応している、あるいは政府でのそういう流れを意識して「デフレ脱却」の文言を入れてみた、という風に読むということも出来ない訳ではないですよねとか思うと実にアレ。


ちなみに直近の講演ですと
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150917a.htm/
金融システムの現状と証券業界への期待
平成27年全国証券大会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年9月17日

↑こちらではデフレ脱却云々という話はしておりません。


http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150827a.htm/
日本経済の変貌と量的・質的金融緩和
ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年8月26日

↑こちらでは『日本銀行としては、「量的・質的金融緩和」によって、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成し、デフレマインドを払拭することで、成長力の強化に貢献したいと考えています。』(上記URLより)というような形で「デフレマインド」に関する話を色々としていましてデフレ脱却に向けた姿勢のアピールをしていたりするのですが、デフレ脱却にコミットというような表現ではないので今回ちょっと「デフレ脱却アピール」に向けた踏み込みが入ったとも見えるのが中々怪しげではありますな。政府が「デフレ脱却宣言」をした時にそれに乗って「デフレからの完全脱却が出来てQQEは所期の効果を上げたのでこれからはアベノミクス同様に緩和政策も第2ステージに入ります(キリッ)」とか言い出して政策枠組みの変更の香りが・・・・・・・・


なお、先ほど引用したデフレ脱却コミット云々の前後を引用しますね。

『企業は今や史上最高益を享受し、労働市場は完全雇用の状態にあります。これが、将来の経済成長と賃金・物価の上昇に繋がっていく道筋は、経済のメカニズムからみて当然のことですし、私もそう考えています。』

ふーん。

『ただ、程度の問題として「これだけの収益水準の割には設備投資や賃金の伸びが鈍い」と言われることもまた事実です。その背景には、長く続いたデフレのもとで、企業や家計のマインドセットの転換に時間がかかっているということがあると考えられます。』

さっきは物価観に変化があるから基調の物価が強いという話をしていましたがががが。

『だからこそ、日本銀行は、デフレからの脱却と2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットし続けます。そして、別の機会に何度か申し述べたとおり、2%が安定的に実現した世界では、当然、これほどの低金利環境は続きませんし、人手の確保はより困難になるはずです。』

低金利は分かるけど今が完全雇用とさっき言ったばかりなのに安定的な状態になって人手確保がより困難になるというのは意味プー。

『現在の収益を使って将来のための行動に移るタイミングには早い者勝ちの面があり、おそらく皆様方の間でもいち早くそうした行動を起こされている方々がおられることでしょう。経済のメカニズムは必ず貫徹しますし、その中で日本銀行は役割をきっちりと果たす、とお約束して私からの話を終えたいと思います。』

まあそのお約束が信頼されていないから笛吹けど踊らずなんじゃないですかねえという所ですが、期待に働きかける言いましても成長力が上がるとかそういう話が無いとねえという所で。


#以上本日は引用増量大会でありました




2015/09/28

お題「安倍黒田会談は追加緩和よりもQQEの収拾の話の気がするんですが/今更ですがイエレン会見ネタを」

日銀涙目。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/sukiya-yoshinoya-idJPKCN0RP0XR20150925
Business | 2015年 09月 25日 19:16 JST
すき家と吉野家、期間限定で牛丼値下げ 客足回復狙う

コストプッシュで物価が上昇したまま収入増加が追い付かなければこうなりますが・・・・・・・・

○安倍黒田会見で(株式市場などで)追加緩和期待ということのようですが・・・・・・・・・・・・

金曜はこんなんありましたが。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/boj-kuroda-abe-idJPKCN0RP0C420150925
Business | 2015年 09月 25日 14:20 JST
首相と会談、金融政策で要請「ない」 物価基調はしっかり=日銀総裁

でまあこのニュース出て追加緩和ヒャッハーという話も出ているらしい(たぶん株の方がメインだと思うけど)のですがちょっと待てやという感じもする訳ですよ。

元々新三本の矢に金融政策の言及が無い訳で、2%物価目標について2年で達成という話がすっかり無かったことになっておりまして岩田副総裁は何で辞任しないんでしょうかというような事は兎も角としましても、「2%」自体は残るのでしょうが2年とか早期達成とかいうようなお話は無かったことになっている訳ですよね。

一応旧第一の矢は新第一の矢に含まれているらしいのですが。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/idJPL4N11V1G020150925
News | 2015年 09月 25日 12:14 JST
再送-UPDATE 1-新3本の矢の「強い経済」、大胆な金融政策など集約=麻生財務相

『そのうえで新たな3本の矢における財政・金融政策の位置づけについて、物価目標2%達成の必要性は第2ステージでも変わらないとの認識かとの質問に「新たな3本の矢の1本目(強い経済)に、(大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の)今までの3つが集約されている」と説明し、旧3本の矢は引き継がれていると強調した。』

『一方で「物価面だけから言えば、2%目標は大きな目標であって、われわれがPB(基礎的財政収支)目標きちんとしていくうえでも、ある程度インフレ率確保は重要。関心を持っていかなければならない」と語った。』(上記URL先より)

という話は麻生さんもしているのですが、良く良く見ると「大きな目標」とか「達成の必要性」という文言はあるけれども「2年で達成」の話はすっかり抜けている訳でして、まあ普通に考えてこれは「2年で2%」を強調しすぎるとそもそも2年での達成が無理(というか既に過ぎている)となると失敗という話になってしまい、それは見栄え上問題があるので、失敗という話が広がる前に戦線を転身して「2年」の話をスルーするというのはまあ作戦としてはありそうな話。


しかもですよ、さっきの安倍黒田会談後の黒田さんのコメントを見てあららと思ったのですけれども。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/boj-kuroda-abe-idJPKCN0RP0C420150925(再掲)
Business | 2015年 09月 25日 14:20 JST
首相と会談、金融政策で要請「ない」 物価基調はしっかり=日銀総裁

『総務省が25日発表した8月の全国消費者物価指数は、指標となるコアCPIが前年比0.1%下落となり、2013年4月以来2年4カ月ぶりのマイナスとなった。この点について総裁は、コアCPIからエネルギーを除いた指数は「1.1%くらいになっている」と説明。コアCPI下落の影響はエネルギー価格の下落によるものとの認識を示し、「物価の基調はしっかりしている」と強調した。』(上記URL先より)

ということで、「コアCPIからエネルギーを除く指数は1.1%」というヘッドラインがニュースに出ていて反応しているのかと思ったら逆に株式市場方面では追加緩和期待という辺りがわけわかんねーと思うのですが、この「除くエネルギー」を強調するっていうのは政府の「デフレ脱却宣言」という盛大な助け舟に乗って2年で達成を誤魔化す気満々というのをまたまた示した、としか思えず、そこで追加緩和期待とはどういう事やと思いますし、特に株式市場が大喜びするのは(気持ちは分かるが)今後の政策枠組みを考えた場合に正直訳分からんとしか申し上げようがない。



・・・・・・・・・つまりですな、どう見てもこの流れは「2年で達成」というのは無かったことにして、日銀と言うか旧第一の矢的に言えば「このようにデフレ脱却が出来ましたのでQQEの所期の効果が現れましたよ良かったですね」という第一の矢大勝利宣言をするという流れな訳ですよ。そうしないと第一の矢が大敗北となってしまってアベノミクスがそもそも大敗北という事になる(つーかまあ元々のベースにあるトリクルダウンも起きないし物価が上がったら景気が良くなる置物リフレ理論もダメなのですが、そういうのもスルーするためにも戦線の変更は必要な訳で)ってな感じでここらが潮時という状況ではないかと思うのではございますよ、うんうん。

でもってですね、そういう事になりますと、まあ大勝利宣言するには「基調の物価はこんなに強い」だけではなくて、何らかの特殊要因(ということに出来そうなもの)を除く物価数値が1%を超えていないとさすがにデフレ脱却宣言するのに無理があると考えますと、先ほどの黒田総裁の「1.1%」という数字も中々味わいがありますけれども、まあ何かの数値で1%台に乗っている数字を出さないと格好がつきませんよね。

その大勝利宣言はまー宜しいとしまして、大勝利宣言後の政策枠組みを考えますと、「2%」の看板自体を下ろす必要は無い(というか下ろすと円高に振れるのでそれは無い)のですが、達成時期に関しては超曖昧になって、デフレにまた戻らないようにしながら緩和政策を粘り強く続ける、という話にならざるを得ないのですよね。

・・・・・・・・・そうなりますと、今のMB拡大資産買入規模拡大政策というのは明らかに中長期的な継続可能性という意味で無理がある訳で、中長期的に継続する緩和政策として何をやる、という話であれば「時間軸政策を思いっきり長くする」というのと、「長期金利があまり上昇しないようにする、というかイールドカーブがあまり立たないようにする」というのをセットにするのが一番妥当だと思うのですよね。

でもってそういう枠組みの中で資産買入ってどうなるのかというと、長期金利が跳ねない程度に買入は継続するけれどもマネタリーベースは目標から外して今のような持続性大丈夫かというようなペースからはフローが落ちることになるでしょうし、中長期的に継続するということになったらETFのような満期の無いものの買入をジャンジャン続けるわけには行かないですから、持っているものを売るような話は無いにしても買入の継続そのものが無理という話になると思うのですよね、株式市場の皆様的には残念な話ではありますけど。まあ元々QQE政策自体が「2年を念頭に達成する」ことを前提にしている政策であって、超ハイペースなLSAPに関しても「短期勝負」を前提にした政策の作り方になっている訳ですから、それがそのまま中長期的に続くと思うのはロジを無視した発想な訳ですけどね。

あと金利政策に戻った場合にマイナス金利、という話も良く聞かれるのですが、「中長期的に継続する」という政策の枠組みを前提にした場合にはこのマイナス金利というのもちょっと無理がある話。と申しますのは、名目ゼロ金利制約の問題がある中で例えば超過準備をマイナス付利したとしますと、そのマイナス付利分を金融システムのどこかが負担しないといけないという話になる(または預金者に転嫁される)という話になりますので、これまた中長期的な持続性という意味では無理のある政策ではないかと思うのですがどうなのでしょうかね。

じゃあ追加緩和が無いのかと言えば先般も申しあげたかも知れませんが、「最後のダメ押し緩和」みたいなスキームで、2004年の俊ちゃんみたいに「景気判断を引き上げているのに追加緩和」というような意味不明緩和を実施するという手が無くは無いと思いますが、それはその後に君子豹変の大勝利宣言と共に2年で達成の話がどこかに逝って政策フレームワークの変更が伴うという話になると思うのですけどね・・・・・・・・・


とまあ日々微妙に言ってる話が変化しているような気もしますが、まあ考え方のたたき台というか何というかな感じで見立てを更新中という事で宜しくお願い致します。


○短国買入ェ・・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150925.htm
国庫短期証券買入 6,000 2015年9月29日

この6000億円というのをやる意味がMB的にあるのかと小一時間。

結果はこちら
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150925.htm
国庫短期証券買入13,000 6,000 0.000 0.002 96.2

今回の応札限度がどうなっているのかとか知らんですけれども、エライ綺麗な数字の応札ですなという感じではあるのですが、期末でモノが無い所にわざわざ吸い上げを実施するとか市場の流動性とかそういうのはキニシナイというのは良く分かるのですが、その一方で市場との対話みたいなのをやっているのを宣伝しているのがアリバイ工作っぽくて実に見苦しいのでどっちかにして欲しいものだと思うのでありました。

でまあ今日はスポ末なのですがどこからどう見ても短国は(レポ現先を含めて)普通の金利ではモノが出てこないでしょうなあというのだけは把握した。


○今更ですが後出しでFOMC後のイエレン会見ネタで(大汗)

先週やれよと言われそうですが(大汗)。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150917.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
September 17, 2015

・冒頭説明ですがやはりあれこれ言い過ぎですよね

『CHAIR YELLEN. Good afternoon. As you know from our policy statement released a short time ago, the Federal Open Market Committee reaffirmed the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate.』

という事で改めて最初の所ですけどね。

『Since the Committee met in July, the pace of job gains has been solid, the unemployment rate has declined, and overall labor market conditions have continued to improve. Inflation, however, has continued to run below our longer-run objective, partly reflecting declines in energy and import prices.』

ここまでは良いとして、

『While we still expect that the downward pressure on inflation from these factors will fade over time, recent global economic and financial developments are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. These developments may also restrain U.S. activity somewhat but have not led at this point to a significant change in the Committee’s outlook for the U.S. economy.』


顕著なリスクではないとは言いながらも新たな懸念要因を出している訳で、

『The Committee continues to anticipate that the first increase in the federal funds rate will be appropriate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』

労働市場に関してさらなるもう少しの改善というのを残していますが、それはそれとしてじゃあ何が改善すれば良いのよというのはありますが・・・・・・・・

『It remains the case that the Committee will determine the timing of the initial increase based on its assessment of the implications of incoming information for the economic outlook. I will note that the importance of the initial increase should not be overstated: The stance of monetary policy will likely remain highly accommodative for quite some time after the initial increase in the federal funds rate in order to support continued progress toward our objectives of maximum employment and 2 percent inflation. I will come back to today’s policy decision in a few moments, but first I would like to review recent economic developments and the outlook.』

2%への確信が高まる必要があるという話をしながらその前に物価見通しのリスク要因を増やして説明しておいて「the importance of the initial increase should not be overstated(キリッ)」と言われましてもという感じですわね。


ちょっと飛びましてGDPの説明の中で先行きの輸出がイマイチな要因の説明ですけどね。

『Moreover, net exports were a substantial drag on GDP growth during the first half of the year, reflecting the earlier appreciation of the dollar and weaker foreign demand. The Committee continues to expect a moderate pace of overall GDP growth even though the restraint from net exports is likely to persist for a time.』

ということでドル高と海外要因なのですが、ドル高は兎も角海外要因の方が「for a time」で済むのかねという感じはしますが、ここについてはインフレの見通しの所でまた出てきまして、さらにちょっと飛んで引用しますと・・・・

『Inflation has continued to run below our 2 percent objective, partly reflecting declines in energy and import prices. My colleagues and I continue to expect that the effects of these factors on inflation will be transitory.』

というのは従来の奴ですが、

『However, the recent additional decline in oil prices and further appreciation of the dollar mean that it will take a bit more time for these effects to fully dissipate. 』

ということで時間が少々掛かるような話をしているのに利上げが直ぐに出来るのかという話になりますし、ご丁寧にもその後でBEIの推移まで出ている。

『Accordingly, the Committee anticipates that inflation will remain quite low in the coming months. As these temporary effects fade and, importantly, as the labor market improves further, we expect inflation to move gradually back toward our 2 percent objective. Survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable. However, the Committee has taken note of recent declines in market-based measures of inflation compensation and will continue to monitor inflation developments carefully.』

しかし今回の説明って見てて思うのですが、やたらめったら「However」が連発されていまして、ああでもないこうでもない言い過ぎですな。BEIについてはそのHoweverから先ですね。


でもって海外経済と金融市場ですけど・・・・・・・・・・

『The outlook abroad appears to have become more uncertain of late, and heightened concerns about growth in China and other emerging market economies have led to notable volatility in financial markets.』

『Developments since our July meeting-including the drop in equity prices, the further appreciation of the dollar, and a widening in risk spreads-have tightened overall financial conditions to some extent. These developments may restrain U.S. economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Given the significant economic and financial interconnections between the United States and the rest of the world, the situation abroad bears close watching. 』

ということで、後の質疑応答では大体チャイナ(と新興国)のせいにしている感はあるのですが、金融市場に関してはお前のスタンスがブレブレだからボラが上がっているんだろと思いまするに、「自分の尾を追う犬」というよりも「自分の鏡に反応している」というような状態になっているのかなあとは思う訳ですよ。まあああでもないこうでもない言い訳を入れすぎたので先週の講演ではちょっと市場がタカ派に取る内容になっていたという事になっていますが、あれも読み方によっては別にタカ派とも言い難い気もする訳で、要はブレブレという事何でしょうなあと思うのでした。

以下質疑応答から少々。


・海外経済とか金融市場に関する懸念とは???

という質問がありまして14ページまで飛びます。

『PETER BARNES. Hi, Chair Yellen. Peter Barnes, Fox Business. Could you talk about-a little bit more specifically about what foreign developments you discussed in the meeting today, what you’re concerned about? We all assume it might be China-that was in the July minutes. Are you concerned about the Chinese economy slowing, the markets there? Do you have any concerns about the European economy? And then, related to stock markets, could I ask you how you feel about U.S. equity markets right now? Because you did talk about your concerns about them back in May. You saw they were generally quite high and were worried about potential dangers in U.S. equity market valuations, but now equity prices have pulled back. Thank you.』

具体的に何をどう懸念しているのか説明してくらはいというのに対しての答えが長い。

『CHAIR YELLEN. So, with respect to global developments, we reviewed developments in all important areas of the world, but we’re focused particularly on China and emerging markets. Now, we’ve long expected, as most analysts have, to see some slowing in Chinese growth over time as they rebalance their economy. And they have planned that, and I think there are no surprises there.』

中国経済がある程度成長鈍化するのはサプライズではないとな。

『The question is whether or not there might be a risk of a more abrupt slowdown than most analysts expect. And I think developments that we saw in financial markets in August in part reflected concerns that Chinese-there was downside risk to Chinese economic performance and perhaps concerns about the deftness with which policymakers were addressing those concerns.』

懸念はより以上のスローダウンになることで、市場が懸念しているのもそこであり、更に言えば政策当局がきちんと対応できるかの懸念があるのでしょうとかややお前が言うな的なアレ。

『In addition, we saw a very substantial downward pressure on oil prices and commodity markets, and those developments have had a significant impact on many emerging market economies that are important producers of commodities as well as more advanced countries, including Canada, which is an important trading partner of ours that has been negatively affected by declining commodity prices, declining energy prices.』

商品や原油の一段の下げは新興国に悪影響でカナダなどにも影響とな。

『Now, there are a lot of countries that are net importers of energy that are positively affected by those developments, but emerging markets-important emerging markets-have been negatively affected by those developments. And we’ve seen significant outflows of capital from those countries, pressures on their exchange rates, and concerns about their performance going forward.』

新興国の資本流出からのドル高も懸念だそうな。

『So a lot of our focus has been on risks around China, but not just China-emerging markets, more generally, and how they may spill over to the United States.』

とまあそういう説明をされるとうーむとしか。というかイエレンさんになってから海外ガーが増えた増えたという感じで、バーナンキの時は「知らんがな」モードだったのにここの変化は大きいですな。

『In terms of thinking about financial developments and our reaction to them, I think a lot of the financial developments were really-so, we don’t want to respond to market turbulence. The Fed should not be responding to the ups and downs of the markets, and it is certainly not our policy to do so. But when there are significant financial developments, it’s incumbent on us to ask ourselves what is causing them. And, of course, while we can’t know for sure, it seemed to us as though concerns about the global economic outlook were drivers of those financial developments. And so they have concerned us in part because they take us to the global outlook and how that will affect us. And, to some extent, look, we have seen a tightening of financial conditions during-as I mentioned, during the intermeeting period. So the stock market adjustment, combined with a somewhat stronger dollar and higher risk spreads, does represent some tightening of financial conditions.』

金融市場の動向に一々反応する訳ではない、と言いながらもああでもないこうでもないと金融環境のタイト化について説明している時点で市場に振らされているわとしか思えん。

『Now, in and of itself, it’s not the end of story in terms of our policy because we have to put a lot of different pieces together.』

ということで色々なピースを出すのは結構だがそのせいで政策反応関数が訳分からなくなっているのですが。

『We are looking at, as I emphasized, a U.S. economy that has been performing well and impressing us by the pace at which it’s creating jobs and the strength of domestic demand. So we have that. We have some concerns about negative impacts from global developments and some tightening of financial conditions. We’re trying to put all of that together in a picture. I think, importantly, we say in our statement that in spite of all of this, we continue to view the risks to economic activity and labor markets as balanced. So it’s a lot of different pieces, different cross currents, some strengthening the outlook, some creating concerns, but overall, no significant change in the economic outlook.』

最後に「no significant change in the economic outlook」と言ってもその前に色々と説明し過ぎだし、まあこういう説明だと利上げできないんじゃないのという話にはなりますなあと思うのでした。


で、その直後にこんな質問が。

『ANN SAPHIR. Ann Saphir with Reuters. Just to piggyback on the global considerations-as you say, the U.S. economy has been growing. Are you worried that, given the global interconnectedness, the low inflation globally, all of the other concerns that you just spoke about, that you may never escape from this zero lower bound situation?』


海外との相互関連だったら物価もそうですよねとか中々意地悪。

『CHAIR YELLEN. So I would be very-I would be very surprised if that’s the case. That is not the way I see the outlook or the way the Committee sees the outlook. Can I completely rule it out? I can’t completely rule it out. But, really, that’s an extreme downside risk that in no way is near the center of my outlook.』

と反論しているのですが、海外が重要な懸念じゃないんだったらその前にあんなに説明するなよという事で、まあイエレンさんが混乱しているというよりはFOMCでの議論が混乱しているからこういう混乱した説明になるんでしょうなあ(立場上イエレンさんとしては中心的な見解の線で説明するしかないから)。


ということでネタはまだ続くのですが本日は時間と量の関係でこの辺りで勘弁(すいません)。




2015/09/25

お題「アベノミクス第2ステージとな/イエレン議長講演を超インスタント読み/短国ェ・・・・・」

さて今朝はイエレン先生の講演だった筈ですがさすがに間に合うとは思えないのでパス。と申しますか、色々とネタが炸裂していてアタクシも整理出来切っていないのでこの週末は頑張る(連休はどうしてたとか聞かないで)。

と書いたが結局イエレン先生の講演テキストをFRBのサイトで見つけたので超斜め読み&1小見出し文丸引用増量企画を打ち込んでみました(下の方にあります)。


○アベノミクス第2ステージで金融緩和や2年で2%はどこに逝くのでしょうか

http://jp.reuters.com/article/2015/09/24/abe-new-three-arrows-idJPKCN0RO14820150924
2015年 09月 24日 20:27 JST
安倍首相、新3本の矢で「1億総活躍社会」 GDP600兆円目標も表明

『[東京 24日 ロイター] - 安倍晋三首相は24日、自民党本部で記者会見し、新たな「3本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「1億総活躍社会」を目指すと表明した。』(上記URL先より、以下同様)

元々の「第三の矢」はどちらに????

『経済最優先の姿勢を鮮明にし、具体的な目標として名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすと明言。雇用や所得環境の改善をさらに進め、確実にデフレ脱却を実現する意向を示した。』

600兆円の達成時期が分からんのですが、そもそも日本のトレンドグロースが0%台うっかりしたら前半という状況の中で持続可能な成長を続けて今からGDPが2割上がるまでどの程度のお時間が必要なのかと考えるとだいぶ絶望的になるのですが。

『新3本の矢は、1)希望を生み出す強い経済、2)夢を紡ぐ子育て支援、3)安心につながる社会保障──で、「介護離職ゼロ」のほか、出産を望む女性のみを対象に算出する希望出生率を1.8まで引き上げる目標などを打ち出した。』

希望出生率というのが何だか微妙ですなあ。

『急速な高齢化を背景に社会保障費用は増加を続けているが、「生涯現役社会」の構築を目指し、高齢者の活躍推進を強化する考えも示した。』

「安心につながる社会保障」なのに「生涯現役社会」ってそれ年金払う気ありませんというスローガンにしか聞こえないので却って将来不安を煽ると思うのですけどねえ。それに「1億総活躍社会」で「生涯現役社会」という中で子育てはどうするんでしょうか、とか具体策が何もなさそうなので????感が強いですな。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NV67H56TTDS801.html
安倍首相:GDP600兆円達成を−「1億総活躍社会」目指す (1)
2015/09/24 21:01 JST

『(ブルームバーグ):安倍晋三首相は24日、国内総生産(GDP)を600兆円に拡大することを目標に掲げ、今後も経済最優先で政権運営に当たる決意を表明した。達成する期限は明言していない。強い経済、子育て支援、社会保障を「希望と夢と安心のための新3本の矢」と位置付けて取り組む考えも示した。』(上記URL先より、以下同様)

『安倍首相は自民党本部での記者会見で「本日、この日からアベノミクスは第2ステージへと移る。目指すは1億総活躍社会だ」と宣言。その上で、「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。その国家としての意思を明確にしたい」と語った。』


とまあそういう事で今回のアベノミクス第2ステージでございますが、先程のロイターの記事の中にもあったのですけれども『足元の経済情勢については「もはやデフレではない状態まで来た。デフレ脱却は目の前だ」と強調。』(ひとつ前のロイターの記事から)というお話までしておりまして、金融緩和政策に関しては「デフレ脱却で大勝利」という事で済ませようという風に見えてしまう辺りが実にこう味わいが深いものがございます。

まあ敗北とか撤退とかいう言葉を「転身」とか「進化」とか置き換えてしまうのがジャパンの伝統芸能でありますので別に驚く話でもないのですが、第一の矢におかれます所の金融緩和に関しては「2年で2%の物価目標」というのがどこからどう見ても達成不可能だし、2年どころか目先暫くダメでしょという状態になっているわけでして、ここをゴリゴリと突っ込まれるとややこしい事になるので華麗に「QQEの進化」への助け舟が登場したという事でしょうな、うんうん。

まー2年で2%に関しては2%が早期に達成できないでしょというのもありますが、それ以前の問題としてトレンドグロースが0%台前半とかの状態で全然上がってこない経済において、コストプッシュ中心に2%に物価を無理繰り押し上げたとしても持続性がありませんし、消費に悪影響というのが明らかになりまして、「2%物価目標で世の中バラ色」な宣伝をしておられました置物リフレ理論そのものが現実と乖離していたという事を政治サイドでもご認識されてきているのかねとか思うと胸が熱い訳で、アベノミクス第2ステージが進行するなかでデフレ脱却宣言と共にQQEの「進化」が起きるというのもあながち変な話ではなくなって来ましたなあという風に思いますがどうなるでしょうかね。

でもってその時には除くエネルギーとか色々と「基調としての物価はこのように堅調に推移していて問題ありません」と言えるようなネタを次々と繰り出してきて目晦ましイリュージョンと共に「QQEの第1ステージは所期の効果を発揮したのでこれからはQQE第2ステージ」とか何とか言いながら緩和政策をもっと長期的に継続できるような手法と共に、マネタリーベースターゲットからの脱却(をしないと今のペースでのMB拡大は持たない)をして来るというお話になるんでしょうかねえとか妄想は広がるのでありました。


・・・・・・・・まあその「進化」ネタは日銀から言い出すわけには行かないのであくまでも政府サイドの方が何を言い出すのかという所に掛かっている辺りが読み筋に組み込みにくい所ではありますが、少なくとも今回の第2ステージでは金融政策の話が全然出ていないという事でもありますので、まあ政権的に金融政策に関する部分は従来のようにメインで押し出すようなものではなくなった、と受止められ易くなると思いますので、その中で追加緩和を打ってくるのかねという点についてもちょっと????的になって来たのではないかとは思うのですが、まあ黒田日銀は何をしでかすか良く分からんので日銀が梯子外され掛かっているのにトサカに来てランボー怒りの追加緩和とか言い出しても不思議ではないのがオソロシスな所ではあります。

#高度な狸技として今から追加緩和を打っておいて来年の1月だと早いかも知れんが3月とか4月辺りに「基調としての物価はこのように推移しているのでQQE大勝利宣言」をして第2ステージに移行するというのもありそうですが、そこまで先読みしても先でひっくり返ると死ねるので難しいでしょうな


まあこういう記事もありますし今後どうなるかは良く分からん。また元の3本の矢に戻るかも知れんし。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92065770V20C15A9MM8000/
「新3本の矢」問われる具体策
2015/9/25 2:00
日本経済新聞 電子版


○パスすると思ったけどイエレン議長講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20150924a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the Philip Gamble Memorial Lecture, University of Massachusetts, Amherst, Amhearst, Massachusetts
September 24, 2015
Inflation Dynamics and Monetary Policy

小見出しを見たら『Historical Review of Inflation』『Inflation Costs』『Monetary Policy Actions since the Financial Crisis』『Inflation Dynamics』『Policy Implications』『Conclusion』とあるので、最後の2つ部分だけ斜め読みしてみた。


・纏めの所では年内利上げが適切という話をしているのですが・・・・・・・・・・・・

『Conclusion』である。

『To conclude, let me emphasize that, following the dual mandate established by the Congress, the Federal Reserve is committed to the achievement of maximum employment and price stability. To this end, we have maintained a highly accommodative monetary policy since the financial crisis; that policy has fostered a marked improvement in labor market conditions and helped check undesirable disinflationary pressures.』

へいへい。

『However, we have not yet fully attained our objectives under the dual mandate: Some slack remains in labor markets, and the effects of this slack and the influence of lower energy prices and past dollar appreciation have been significant factors keeping inflation below our goal.』

労働市場に幾分かのスラックがあってエネルギー価格の下落やこれまでのドル高が物価を抑えています、ってまた今回も言っているんですけれども・・・・・・・・・・・

『But I expect that inflation will return to 2 percent over the next few years as the temporary factors that are currently weighing on inflation wane, provided that economic growth continues to be strong enough to complete the return to maximum employment and long-run inflation expectations remain well anchored.』

結局どっちやねんというのが訳分からん。

『Most FOMC participants, including myself, currently anticipate that achieving these conditions will likely entail an initial increase in the federal funds rate later this year, followed by a gradual pace of tightening thereafter. But if the economy surprises us, our judgments about appropriate monetary policy will change.』

サプライズが起きれば別ですが今年の後半(って既に9月じゃん)には初回利上げが適切と多くのFOMCと同様に私も思っています、だそうですな。

でもってもうちょっと前の所も見てみます(インスタントですが)『Policy Implications』以降ね。


・物価がマンデートに行く見通しに関して

『Assuming that my reading of the data is correct and long-run inflation expectations are in fact anchored near their pre-recession levels, what implications does the preceding description of inflation dynamics have for the inflation outlook and for monetary policy?』

ということで・・・・・・・・・

『This framework suggests, first, that much of the recent shortfall of inflation from our 2 percent objective is attributable to special factors whose effects are likely to prove transitory. As the solid black line in figure 8 indicates, PCE inflation has run noticeably below our 2 percent objective on average since 2008, with the shortfall approaching about 1 percentage point in both 2013 and 2014 and more than 1-1/2 percentage points this year. The stacked bars in the figure give the contributions of various factors to these deviations from 2 percent, computed using an estimated version of the simple inflation model I just discussed.30 As the solid blue portion of the bars shows, falling consumer energy prices explain about half of this year's shortfall and a sizable portion of the 2013 and 2014 shortfalls as well. 』

『Another important source of downward pressure this year has been a decline in import prices, the portion with orange checkerboard pattern, which is largely attributable to the 15 percent appreciation in the dollar's exchange value over the past year.』

FRBのサイトの方ですと「figure 8」って所をクリックすると図表が出てきて分かりやすい(こちらにはそんなことはしていませんすいません)のですが、最近の物価が弱いのは「原油と為替のせい」というお話をしています。

『In contrast, the restraint imposed by economic slack, the green dotted portion, has diminished steadily over time as the economy has recovered and is now estimated to be relatively modest.31 Finally, a similarly small portion of the current shortfall of inflation from 2 percent is explained by other factors (which include changes in food prices); importantly, the effects of these other factors are transitory and often switch sign from year to year.』

一方でスラックによる押し下げ要因は減っているのだから一時的に弱くても基調は確りですねわかります。

『Although an accounting exercise like this one is always imprecise and will depend on the specific model that is used, I think its basic message--that the current near-zero rate of inflation can mostly be attributed to the temporary effects of falling prices for energy and non-energy imports--is quite plausible. If so, the 12-month change in total PCE prices is likely to rebound to 1-1/2 percent or higher in 2016, barring a further substantial drop in crude oil prices and provided that the dollar does not appreciate noticeably further.』

『To be reasonably confident that inflation will return to 2 percent over the next few years, we need, in turn, to be reasonably confident that we will see continued solid economic growth and further gains in resource utilization, with longer-term inflation expectations remaining near their pre-recession level. Fortunately, prospects for the U.S. economy generally appear solid. Monthly payroll gains have averaged close to 210,000 since the start of the year and the overall economy has been expanding modestly faster than its productive potential. My colleagues and I, based on our most recent forecasts, anticipate that this pattern will continue and that labor market conditions will improve further as we head into 2016.』

寝起きどころかさっき出たのを斜め読みなのでこの辺は流してしまいますが、結論としては労働市場に見られるような経済のスラックがほぼ解消に向かう中でロンガーランのインフレ期待が安定しているから物価については2%に向けて中期的には上昇するでしょうし、2016年に向かうにつれてスラックの解消も確認できるでしょうというお話のようで。

『The labor market has achieved considerable progress over the past several years. Even so, further improvement in labor market conditions would be welcome because we are probably not yet all the way back to full employment. Although the unemployment rate may now be close to its longer-run normal level--which most FOMC participants now estimate is around 4.9 percent--this traditional metric of resource utilization almost certainly understates the actual amount of slack that currently exists: On a cyclically adjusted basis, the labor force participation rate remains low relative to its underlying trend, and an unusually large number of people are working part time but would prefer full-time employment.32 Consistent with this assessment is the slow pace at which hourly wages and compensation have been rising, which suggests that most firms still find it relatively easy to hire and retain employees.』

労働市場のスラックは少なくなりましたがまだありますという話ですが、これは相変わらず先般のプレコンで示していたように「労働参加率」だの「非自発的パートタイム労働者率」だの「賃金が上がらん」だのという話をしていてうーむという所です。

『Reducing slack along these other dimensions may involve a temporary decline in the unemployment rate somewhat below the level that is estimated to be consistent, in the longer run, with inflation stabilizing at 2 percent. For example, attracting discouraged workers back into the labor force may require a period of especially plentiful employment opportunities and strong hiring. Similarly, firms may be unwilling to restructure their operations to use more full-time workers until they encounter greater difficulty filling part-time positions. Beyond these considerations, a modest decline in the unemployment rate below its long-run level for a time would, by increasing resource utilization, also have the benefit of speeding the return to 2 percent inflation.』

『Finally, albeit more speculatively, such an environment might help reverse some of the significant supply-side damage that appears to have occurred in recent years, thereby improving Americans' standard of living. 33 』

現在の失業率自体は完全雇用水準という認識で、もしかしたらそれよりも下がる時期もあるかも知れませんという見通しになっていて、その結果として別の指標でみられるスラックも解消に向かうでしょうというお話をしているように読めると思うのですが。


でまあここまでが物価と労働市場のお話でして、この項の後半が政策に関して。

『Consistent with the inflation framework I have outlined, the medians of the projections provided by FOMC participants at our recent meeting show inflation gradually moving back to 2 percent, accompanied by a temporary decline in unemployment slightly below the median estimate of the rate expected to prevail in the longer run. These projections embody two key judgments regarding the projected relationship between real activity and interest rates.』

SEPの見通しの話ですな。

『First, the real federal funds rate is currently somewhat below the level that would be consistent with real GDP expanding in line with potential, which implies that the unemployment rate is likely to continue to fall in the absence of some tightening. Second, participants implicitly expect that the various headwinds to economic growth that I mentioned earlier will continue to fade, thereby boosting the economy's underlying strength.』

ということで・・・・・・・・・

『Combined, these two judgments imply that the real interest rate consistent with achieving and then maintaining full employment in the medium run should rise gradually over time. This expectation, coupled with inherent lags in the response of real activity and inflation to changes in monetary policy, are the key reasons that most of my colleagues and I anticipate that it will likely be appropriate to raise the target range for the federal funds rate sometime later this year and to continue boosting short-term rates at a gradual pace thereafter as the labor market improves further and inflation moves back to our 2 percent objective.』

「most of my colleagues and I anticipate that it will likely be appropriate to raise the target range for the federal funds rate sometime later this year and to continue boosting short-term rates at a gradual pace thereafter」だそうです、ってまあドットチャートはそう言っていますけど。


『By itself, the precise timing of the first increase in our target for the federal funds rate should have only minor implications for financial conditions and the general economy.』

最初の利上げ時期は重要ではない(キリッ)というのがまーた出ている訳ですが、実際に利上げするかしないかという時には非常に重要ですし、何をもってその利上げ時期を判断するのかが結局良く分からん状態のままで(この講演前半殆ど読んでいないのでアレですが、後半の部分見ても「では今回何で利上げを見送ったのか」の説明が分からんまま)キリッと言われても困るのですけれどもね。

『What matters for overall financial conditions is the entire trajectory of short-term interest rates that is anticipated by markets and the public. As I noted, most of my colleagues and I anticipate that economic conditions are likely to warrant raising short-term interest rates at a quite gradual pace over the next few years.』

今はその話を強調しても仕方ないと思う。

『It's important to emphasize, however, that both the timing of the first rate increase and any subsequent adjustments to our federal funds rate target will depend on how developments in the economy influence the Committee's outlook for progress toward maximum employment and 2 percent inflation.』

というのはその通りなのですが、こういう言い方をすると「市場の反応を気にしてビビってるビビってる」と見れるような気もだいぶするんですけど大丈夫かなあ。


『The economic outlook, of course, is highly uncertain and it is conceivable, for example, that inflation could remain appreciably below our 2 percent target despite the apparent anchoring of inflation expectations. Here, Japan's recent history may be instructive: As shown in figure 9, survey measures of longer-term expected inflation in that country remained positive and stable even as that country experienced many years of persistent, mild deflation.34』

で、更におよよと思うのはこの辺でして、日本の例を出してきて何を言い出すのかと思えば「サーベイベースのインフレ期待はプラス圏で推移する中で物価がマイルドデフレーション状態でしたという例があります」とか言い出すのがアレ。

『The explanation for the persistent divergence between actual and expected inflation in Japan is not clear, but I believe that it illustrates a problem faced by all central banks: Economists' understanding of the dynamics of inflation is far from perfect. Reflecting that limited understanding, the predictions of our models often err, sometimes significantly so.』

『Accordingly, inflation may rise more slowly or rapidly than the Committee currently anticipates; should such a development occur, we would need to adjust the stance of policy in response.』

ということで、そういう例もあることですから実は物価の上昇ペースがいま私らが想定しているよりも遅い可能性があるとか日和ってる日和ってるという感じがするのは気のせい???


『Considerable uncertainties also surround the outlook for economic activity.』

更に日和が出る。

『For example, we cannot be certain about the pace at which the headwinds still restraining the domestic economy will continue to fade. Moreover, net exports have served as a significant drag on growth over the past year and recent global economic and financial developments highlight the risk that a slowdown in foreign growth might restrain U.S. economic activity somewhat further.』

上げない言い訳の方がこうホイホイ出てくる辺りがなんか弱腰に見えると思うんだよな〜。

『The Committee is monitoring developments abroad, but we do not currently anticipate that the effects of these recent developments on the U.S. economy will prove to be large enough to have a significant effect on the path for policy. That said, in response to surprises affecting the outlook for economic activity, as with those affecting inflation, the FOMC would need to adjust the stance of policy so that our actions remain consistent with inflation returning to our 2 percent objective over the medium term in the context of maximum employment.』

これらの問題がサプライズにならない限りは政策の正常化をしますという話にまとめているのですが、その前の説明が無駄に丁寧過ぎて腰が砕けているようにしか見えないのは気のせいですかねえ。

『Given the highly uncertain nature of the outlook, one might ask: Why not hold off raising the federal funds rate until the economy has reached full employment and inflation is actually back at 2 percent? 』

でもってこの項最後のパラグラフになりました。

『The difficulty with this strategy is that monetary policy affects real activity and inflation with a substantial lag. If the FOMC were to delay the start of the policy normalization process for too long, we would likely end up having to tighten policy relatively abruptly to keep the economy from significantly overshooting both of our goals. Such an abrupt tightening would risk disrupting financial markets and perhaps even inadvertently push the economy into recession.』

アクチュアルの物価が2%になるまで緩和続ければという見解に対しては金融政策の効果のラグの話を出してきてそれは無いという説明。

『In addition, continuing to hold short-term interest rates near zero well after real activity has returned to normal and headwinds have faded could encourage excessive leverage and other forms of inappropriate risk-taking that might undermine financial stability.』

しかも不必要な低金利長期化によって金融の不安定化が起きるという話もしているのね。

『For these reasons, the more prudent strategy is to begin tightening in a timely fashion and at a gradual pace, adjusting policy as needed in light of incoming data.』

だそうですが、まあ「adjusting policy as needed in light of incoming data」というのは理想としては美しいのですが、それは市場の期待が全く安定しなくなるのでどうなのよという風に思うのは既にこの利上げ騒動で経験済みのようにしか思えませんけどね。


#ということで簡単にななめ読みのつもりがそこそこの引用になりましたが正直斜め読みでネタにしているので抜けとかあったら教えてジェネラル!!(週末にじっくり読みます)


○短国ェ・・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150924.htm

(3)募入最低価格 100円00銭4厘0毛(募入最高利回り)(-0.0160%)
(4)募入最低価格における案分比率 59.9767%
(5)募入平均価格 100円00銭8厘7毛(募入平均利回り)(-0.0348%)

アイヤーという感じですが、ベーシススワップとか格下げ云々の時からマイナス深くなっていたのですが、ちょっとラグを持って今週(お休み中)とかに短国の買いの方は来てたようでまあ期末に来て2連発で入札がマイナスに突っ込んでその幅が拡大とかもうねという所ですな。

まあ海外の方はファンディングコストマイナス何10bpとかの世界だから国内で普通に太刀打ちできない訳ですが、期末に来てこの強さかよとゆーのもありますが、そもそも論として先々週にサプライズ1.5兆円買入を入れなければ先週木曜の入札がもうちょっとマイルドな結果になっていた筈なのでして、期末で2発連続ドマイナス入札というのはもう何だかなとしか申し上げようがありません。

まあこの状況で短国買入とか入れるとも思えませんが(入れたら市場大破壊攻撃)、無くても別に需給が緩和する気も起きませんでアチャーという所ですな。ただまあ今回に関しては2年とかは普通に1bp(いやまあ1bpが普通なのかと言われるとそれもアレだがマイナスよりは普通)なので国債全部モノ無しというよりは短国需給だけいきなりキタコレになっているという事なのでしょうか。金先が昨日妙に動意付いていたのが謎なのですが・・・・・・・・・






2015/09/24

お題「8月決定会合議事要旨をちょっと鑑賞してみます」

5連休は結構なのですが終わるといきなり期末まで5営業日というのは何とも。

○8月決定会合議事要旨を割と細々読んでみます

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150807.pdf

まあ8月時点のお話ではありますが、先行きの見通しとしてああだこうだという話をしている内容に関してど〜見ましても楽観シナリオの前提がコケ出しているようになっている9月の時点でもまだまだ「前向き循環メカニズム」という話をしている辺りは次回の議事要旨でも鑑賞していきたいなあとは思いますが。

・海外経済に関して市場動向の評価と海外経済の評価が何でこうズレるんでしょ

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』から冒頭の海外部分。

『国際金融資本市場について、委員は、ギリシャ情勢に端を発した市場参加者のリスク回避的な動きについては、差し当たり落ち着いているとの見方を共有した。そのうえで、ある委員は、ギリシャ情勢について、再開された株式市場で銀行株を中心に株価が急落したことは、実体経済の悪化とそれに伴う銀行の資産内容の劣化に対する懸念を示すものであると指摘しつつ、事態の収拾にはなお時間を要するため、引き続き注視が必要であると述べた。この点、一人の委員は、ギリシャの経済規模を考えると、金融面での影響を封じ込めることができれば、実体経済への影響は小さいとの認識を示した。』

ギリシャに関してはまあこの最後の指摘通りという感じでしょうな。ここはまあヨロシ。

『また、多くの委員が、中国株について、大幅な下落は一服しているものの、引き続きボラティリティは高く、今後の動向を注意してみていく必要があるとの認識を示した。』

で、新興国の話になる。

『新興国の通貨・株価および資源価格が下落している点について、委員は、新興国・資源国経済の先行きに対する不透明感が意識されていることが背景にあるとの見方を示した。何人かの委員は、米国における金融政策の正常化が意識されるもとでドル高が進行していることも、新興国の通貨・株価および資源価格が下落している要因となっているとの見解を述べた。』

ですなあ。

『多くの委員が、このところの原油価格の下落は、新興国の需要の不透明感という需要要因と産油国の生産スタンスや生産余力といった供給要因の双方が影響しているとの見方を示した。』

ということで原油市場の話なのですが。

『複数の委員は、資源価格の下落によって、資源関連の投資支出に調整圧力が強まれば、世界経済の成長のさらなる重石となる可能性に留意する必要があると指摘した。一人の委員は、市場では、中国経済減速の影響が新興国に波及するリスクを先回りして織り込んでいると指摘したうえで、こうした市場での価格形成が定着すると成長期待を押し下げるリスクがあるが、世界経済は、先進国を中心に緩やかな回復が続くとの見方が中心的なシナリオと考えられるとの認識を示した。』

という話になっていてなんかピントがずれている気がする。しかしそれよりもその次の海外経済に関する部分が、

『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復しているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかな回復が続くとの見方で一致した。 』

となっていまして、先ほどの金融市場やら商品市場やらの議論部分は反映されないのかよというのが何ともかんともではあります。ちなみに米国と欧州はさておきまして中国と新興国に関しては・・・・

『中国経済について、委員は、総じて安定した成長を維持しているが、構造調整に伴う下押し圧力を背景に成長モメンタムは鈍化しているとの認識で一致した。複数の委員が、当局による金融・財政両面からの積極対応により、4〜6月の実質GDPは前年比+7.0%と1〜3月と等速となり、統計上、減速には歯止めがかかったことを指摘した。』

ふーん。

『先行きについて、委員は、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組む中で、成長ペースを幾分切り下げながらも、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。何人かの委員は、中国の経済統計の解釈は難しいが、引き続き輸出入が落ち込んでいることや製造業PMIが 50 程度で推移していることなどをみると、中国の実体経済についてはなお弱さが払拭されていないとの認識を示した。』

うむ。

『ある委員は、中国株の下落が資産効果を通じて実体経済にどのような影響を及ぼすか注視する必要があると述べた。何人かの委員は、不動産関連指標の持ち直しなどポジティブな材料もあることを指摘しつつ、中国経済については、強弱両面を冷静にみていく必要があるとの見解を述べた。そのうえで、委員は、中国経済の減速がアジア新興国や日本を始めとする世界経済に与える影響については、注視する必要があるとの認識を示した。』

とまあそういう事で今回の議事要旨では海外の議論部分で一番分量が多くなっているのが中国経済でございまして、ではこの議論の後で中国経済の減速って益々見えてきている感があると思うのですけれどもさてどうなっているのでしょうかねえと。

『新興国経済について、委員は、このところ弱含んでいるとの見方を共有した。委員は、先進国経済の回復が波及する一方、中国経済減速の影響や過剰設備・債務の重石が続いているほか、アジアを中心にIT関連財の輸出・生産に弱さがみられており、また、ブラジルやロシアなどでは資源価格の下落の影響もあって経済情勢は厳しさを増しているとの認識を示した。』

『先行きの新興国経済について、委員は、当面、成長に勢いを欠き不確実性も高い状態が続くが、やや長い目でみれば、先進国の景気回復の波及や金融緩和などを背景とした内需の持ち直しから、成長率を徐々に高めていくとの見方を共有した。』

という見通しになっている(8月時点ね)のですがこの辺りはさすがに先般の決定会合声明文で「新興国経済の減速の影響」を入れていますけれども、あくまでもヘッジクローズレベルに留まっているんですよね。


・国内経済に関する議論部分から

『わが国の景気について、委員は、足もと、輸出・生産の増勢が鈍化しており、また、天候不順の影響などを受けて個人消費の一部にもたつきがみられているが、こうした輸出・生産や個人消費のもたつきは一時的なものであるとの見方で一致した。そのうえで、委員は、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続ける中で、わが国経済は、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、4〜6月の成長率が一旦大きく低下する可能性に言及した。景気の先行きについても、委員は、所得から支出への好循環が続くもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。 』

という相変わらずの話で「足元のもたつきは一時的」となっていますが、この辺の議論も9月の会合でどうなっているのやらという所ではありますな。

『輸出について、委員は、振れを伴いつつも、持ち直しているとの認識で一致した。委員は、4〜6月の輸出の弱さは、1〜3月の米国経済の一時的な減速がラグを伴って影響しているほか、最近のアジア経済のもたつきも影響しているとの見方を共有した。』

『先行きの輸出について、委員は、海外経済の回復や既往の円安による下支え効果などを背景として、振れを伴いつつも、緩やかに増加していくとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員が、中国を含む新興国経済のさらなる減速が生じた場合のわが国の輸出への影響については注意が必要であると指摘した。』

まあその「注意が必要」なのが炸裂しているのが昨今の状態ということでございますな。


『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあり、先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

設備投資に関してはまあ確かに出ていない訳ではないのですが、ずーっと期待ほど出てこない状態が継続している訳ですけれども・・・・・・・・・

『何人かの委員は、堅調な機械受注や建築着工床面積の動きは、こうした見方を裏付けていると指摘した。ある委員は、大企業を対象とする日本政策投資銀行の調査で、本年度の設備投資計画が、製造業を中心に高めの伸びとなっている点を指摘しつつ、企業の投資スタンスが一段としっかりしてきていることを示す内容であるとの認識を示した。また、別の一人の委員は、個人消費の一部にもたつきがみられているにもかかわらず、企業の前向きな投資スタンスが維持されていることは、デフレマインドの転換が進むもとで、企業が長期的な視点に立って設備投資を実施するという積極姿勢に転じていることの証左であるとの見方を示した。』

ホンマカイナという気がだいぶするのだが随分と楽観的な見解が見られますな。

『一方で、ある委員は、輸出の増勢鈍化が、製造業の設備投資の増加傾向にネガティブな影響を与える可能性を指摘した。 』

というのは1名かよという所ですが、それよりも企業が最高益を叩き出す中でも国内設備投資に思いのほか向かっていない件についての議論をして頂きたいものであります。


でもって雇用所得ですけどね。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも、経済活動や企業業績の回復につれて、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

問題はそれが2%の物価上昇目標に整合的な動きになっているのかどうかが重要なのではと思うのですけれども・・・・・・・・・・・

『6月の毎月勤労統計の名目賃金が大きめの前年比マイナスとなった点について、多くの委員は、規模が大きめの事業所の特別給与のマイナスが寄与している点を指摘したうえで、企業収益が好調な中でボーナスが大幅に減少するのは不可解であり、これにはサンプル替えやボーナス支給月のズレなどが影響している可能性が高いとの認識を示した。』

まあ毎勤の数字も変ちゃあ変なのですが。

『複数の委員は、各種のアンケート調査をみると、夏のボーナスについても増加が見込まれる姿となっている点は、こうした見方を裏付けると述べた。また、別の一人の委員は、家計調査報告の勤労者世帯の収入は前年比で増加が続いており、6月も賞与を含めてしっかりと増加していることを指摘し、これが実態に近いのではないかとの見方を示した。』

でも伸びが2%物価目標に整合的じゃないと困るのですが。

『そのうえで、複数の委員は、先行き、ベースアップを含む新たな給与水準での賃金の支払いが増えてくることや、夏のボーナスについても増加が見込まれることから、名目賃金の改善が明確になってくるとの見方を示した。』

『一方、一人の委員は、ベースアップは既に相応に統計に反映されており、ボーナスも昨年に比べ伸びの低下が予想されることなどを指摘し、賃金上昇の動きは鈍いと述べた。』

ということでこの議論に関してはその後の毎勤の推移を見ますと後者の方が正しかったように見えますが、この辺の議論の前提がその後の統計を見るとだいぶ怪しくなっているようにしか思えないのになんで9月になっても前向きの循環メカニズムと言い続けることが出来るのかの方が不思議ではあります。

でもって消費。

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しているとの認識を共有した。多くの委員は、天候不順の影響などもあって、このところ一部にもたつきもみられるが、消費者マインドは改善傾向にあり、雇用・所得環境も改善を続けていることから、全体としては底堅さを維持しているとの見方を示した。』

はあそうですかという所ですが。

『一方、ある委員は、食料品などの値上げは、幅広い品目で防衛的な消費行動を生じさせている可能性があると述べた。』

こちらの指摘の方が違和感がないのだが。

『別の委員は、消費のもたつきの原因が天候不順によるものか、値上げによるものか、注意してみていく必要があると述べた。』

『一人の委員は、消費が勢いを欠く背景には、年金受給者の消費動向が影響している可能性もあると指摘した。』

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。ある委員は、今後、個人消費の増加ペースが高まっていくためには、賃金上昇の動きが一層拡がりをもつ必要があるとの認識を示した。』

一人の委員の指摘なのですけれども、結局の所この後に出てきている個人所得に関するデータはどう見ても期待外れで推移している訳でして、そんな中で9月会合では特に認識に変化がないというのが実にこうアレですな。



・金融政策議論に関しての議論もいくつか読みどころがありますな

住宅投資と生産の部分はパスして次の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』のパートから。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」について、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。』

もうここは毎度のことなのでどうでも良いのですが。

『これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は、今後も改善傾向を辿るとの見方で一致した。』

はいはい基調基調。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」の導入以降、名目金利が低位で安定的に推移するもとで、やや長い目でみた予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下しているとの認識を示したうえで、そのことが企業・家計の支出行動を支えていると述べた。』

「やや長い目でみた予想物価上昇率は全体として上昇しており」というのが具体的にどこがどうそうなのか小一時間問い詰めたいし、そもそも論として「実質金利が低下するから企業や家計の支出行動が強くなる」という理屈もさっぱり分からんのですが、そこを否定するとそもそもの置物QQE理論のメカニズムの前提が否定されるので今更引っ込めるわけにも逝かないのはやむを得ません。

とまあここまではまだしもなのですが、最後の部分が盛大に意味不明。

『ある委員は、雇用の増加や賃金の上昇が実感されるもとで、国民全般や企業経営者の金融政策運営に対する信頼度は高い水準にあり、企業経営者の投資意欲も積極化していると指摘した。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

誰の指摘だよ(なんとなく想像はつくのだが)おいおいおいとしか申し上げようがないのですが・・・・・・・・・


でもって次が物価動向に関してが結構長い。

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。多くの委員が、6月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が前月からプラス幅を拡大していることや、このところ消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の伸びが高まっていることなどを指摘して、物価の基調は改善を続けているとの見方を示した。』

除くエネルギーで基調判断ですかそうですかという所ですけれども、昨年10月に追加緩和をした時は原油価格の下落によるバックワードルッキングな物価上昇期待の低下ガーとか言ってたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい。

『この背景について、何人かの委員は、企業や家計の物価観が変化してきていることを指摘した。』

単に円安のコストプッシュがラグを持って効いてきている可能性もあると思うのですけどねえ。

『ある委員は、企業の賃金・価格設定行動の変化について、景気回復が続くもとで、仕入価格や人件費の上昇を販売価格に転嫁できる企業が増えており、実際、今年度の価格改定の動きには、拡がりと持続性がみられていると述べた。』

問題はそれが消費のもたつきに反映されている事ではないでしょうか。

『また、一人の委員は、食料品などの値上げにもかかわらず、消費者マインドが悪化していないことは、雇用者所得が緩やかに増加するもとで、消費者が企業の価格改定を受け入れつつあることを示しているとの見解を表明した。一方、ある委員は、値上げにもかかわらず食料品の売上げが減少していないのは、必需品に近い食料品は価格弾性値が低いという理由によるのではないかと述べた。 』

後者の指摘に賛同したいですな。


所得の所で物価上昇目標に見合わないんじゃネーノとか申し上げた件についての議論もあるのですが・・・・・・・

『何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、2%の「物価安定の目標」を実現するに当たっては、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が高まっていく、という状態を作り出していくことが大切であり、このところの賃金・物価動向をみると、そうしたメカニズムが働き始めているとの認識を示した。』

え?????働き始めているの???????どう見ても2%物価上昇目標に対して整合性が無い程度の上昇しかしていないようにしか思えないのですが・・・・・・・・・・・・・

『一人の委員は、今後とも物価の基調が高まっていくためには、賃金面でのさらなる後押しが必要であると述べた。何人かの委員は、物価の基調の改善が続くためには、個人消費の動向が鍵を握るため、その動向を注視する必要があるとの認識を示した。』

でまあ消費が持続的に伸びるにはやはり実質所得が低下傾向となるのはマズーな訳でして、そもそもコストプッシュで物価を上げてもそれは持続的物価上昇にはならないでしょというお話ですから、円安に振るような追加緩和ってこういう議論をしている中で難しいですよねという事になるでしょうから、追加緩和はやりたくないというのが現在の日銀の基本認識になります、とまあそういう流れでしょうねと。


その次に「エネルギー除く物価」に関する議論もある。

『生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価について、何人かの委員は、この指標は、エネルギー価格の変動が大きい場合に物価の基調をみるのに有用であることから、月次で公表することとしたことは有意義であったとの見方を示した。』

まあ月報無くなったら月次で出なくなりますけどね!!!!

『そのうえで、委員は、「物価安定の目標」は、あくまでも総合の消費者物価の前年比で2%であること、また、物価の基調を把握するためには、一時的な撹乱要因を除いた様々な物価の指標を点検しつつ、それらの指標の背後にある経済の動きや予想物価上昇率の動向などを合わせて、総合的に評価していく必要があることについて、改めて認識を共有した。 』

何でここでこういう議論が飛び出しているのかがイマイチ良く分からんのですが、意味なくこういうのが議事要旨に記載される訳もないですから、これはまあそう遠くない将来においてエネルギー除きのコアCPIに関して言及して大勝利宣言をできませんですかねえという下心満載であると解釈しておきます。


『これらの議論を受けて、委員は、予想物価上昇率について、やや長い目でみれば全体として上昇しているとの見方で一致した。』

そ、そうなのか??

『ある委員は、消費者物価上昇率が当面0%程度で推移すると見込まれるため、バックワードルッキングに予想物価上昇率が低下しないか注意が必要だが、これまでのところ、人々の中長期的な予想物価上昇率は低下していないとの見方を示した。』

便利な概念ですなあ。

『そのうえで、多くの委員は、先行き、物価の基調を規定する需給ギャップは着実に改善し、予想物価上昇率も高まっていくことから、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2016 年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いとの見方を共有した。』

????????????

『なお、何人かの委員は、このところの原油価格の動向について、物価見通しの不確実性の一つとして、背景にある要因も含めて注視していく必要があるとの認識を示した。』

需要要因じゃないのかという話をしたんですね。

『そのうえで、委員は、金融政策運営上、重要なことは、原油価格そのものではなく、原油価格の動きが、予想物価上昇率を通じて物価の基調的な動きに影響を与えないかという点であり、こうした観点から原油価格の動向をみていく必要があるということについて、改めて認識を共有した。』

しかしその予想物価上昇率に関する話がここまでの通りなのですから、結局何が何だか分からんというお話ではあります。


でもってこの先が現状維持の結論に至る話なのですが、そこはパスしまして木内さんの提案にいちゃもんを付けている人の毎度の見解を鑑賞しますね。

まずは木内さんの提案理由(中身の部分は引用パスします)。

『一方、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は逓減しており、導入時の規模であっても、その追加的効果を副作用が既に上回っていると述べた。この委員は、副作用として、金融面での不均衡の蓄積や国債市場の流動性に与える影響に加えて、金融緩和の正常化の過程で日本銀行の収益が減少し、自己資本の毀損や国民負担の増加にも繋がりうることを指摘した。』

ということで副作用に関しては金融面での不均衡とかがメインで、出口政策の困難さとか国民負担の拡大というのも加えているようですがそっちはややおまけっぽい。

『これに対して、複数の委員は、金融政策の遂行に当たっては、日本銀行の財務の健全性に配慮しつつも、物価安定の実現という政策目標を最優先すべきであるとの見方を示した。』

今回ワロタのはこの部分でして、前回までは「複数の委員は、現状、金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はないと述べた。(これは7月会合議事要旨から)」というのがあったのですが、さすがに「副作用の無い政策に効果は無い」という当たり前の指摘でも受けたんでしょうか遂に間抜け部分が無くなって誠に結構なお話ですなあ(棒読み)。

『そのうえで、委員は、「量的・質的金融緩和」のもとでは、従来より収益の振幅が大きくなると見込まれることを踏まえ、日本銀行の財務の健全性を確保する観点から、平成 25 年度および 26 年度決算では、財務大臣の認可を受けて、剰余金について、法定の5%を超える金額を準備金として積み立てていることを確認した。また、ある委員は、正常化の過程での国民負担を論じるのならば、金融緩和の過程での日本銀行の収益の増加や景気回復の利益についても考えるべきだと述べた。』

最後の部分なのですが、そこのバランスに関して今のような買い方をしていくと政策効果に対して出口での正常化におけるマイナスの方が大きいだろという話なので、ただいちゃもんをつけるだけではなくてその点に関して建設的な議論をして頂きたいものでありますな。

ということで少々じっくりと読んでしまいましたです。


○各種市場メモとか雑談とかをちょっと置いておきます

・結局FRB(というかイエレンさん)やってしまいましたなあという感じで

今回の「利上げ見送り」ですけれども、その後地区連銀総裁とかが年内利上げあるでよという話をしているようですけれども、まー普通に考えてあれだけああでもないこうでもないと利上げを見送る理由を並べてしまいますと「FRBは何考えて利上げ判断できるんだ」ってお話になりますわな。

しかもその中に海外情勢のようなFRB的にアンコントローラブルなのを入れてしまっている上に、市場のボラティリティがどうのこうの的な「それはお前のせいだろ」みたいなのも入るとなるとかなーりどうしようもない状態になっておりまして、結局FRBは自信が無いということで株安になるとか何のために利上げを見送ったのかという結果になってもはや笑ってしまうしかありません。

まあ何ですな、こうなるとFRBの政策反応関数が益々分かりにくくなってしまいましたし、後に行けば行くほど景気循環的にも利上げが難しくなってくるでしょうから、ここは一旦リセットして最初からコミュニケーションを作り直さないとどうしようも無いでしょうなあと思いますし、このテイタラクで10月に利上げ判断できるとも思えませんし、年内本当に上げられるのでしょうかねえと言うとそれもコミュニケーショングダグダになっている中で出来るのでしょうかねえというお話ではあるのでしょうな。まあ議事要旨を鑑賞したいと思いますけど、今回は相当やっちまいましたなという結論でよろしいようですな、というメモだけ置いておきます(今日は日銀議事要旨ネタに走ってしまったのでメモだけ)。


・短国買入とか3M入札とか

金曜の短国買入。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150918.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年9月25日

直前の3M入札があの有様でも1兆円買入オファーですかそうですかと思ったらこういう結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150918.htm
国庫短期証券買入 13,490 10,002 0.000 0.002 95.9

ということで、3Mと1Yがそこそこ残っているはずなのに応札1.3兆円って少ないですなあとかそれにしては足切りが引けとか穏当だなとか色々と微妙なのですが、どうも金曜のQUICKニュースによりますとそもそも先々週の短国買入から応札可能額が満額じゃなくてオファー額の半額に減額されているそうで(ちなみに16時30分のNQN記事です)、そら応札が少ないわとゆー所で。

でまあ連休の関係で今日もまた3Mの入札が実施されるのですが、何せ先週が金利思いっきり低下してしまいましたのでどうなるかが読めないのですが、まあ金曜に1兆円買入をしたので、今週金曜の短国買入はスキップしてくるでしょとは思いますけど、先週木曜がアレでしたのでニーズはどうせあるでしょうから弱くはならないんですかねえと。


・新日銀ネット第2段階分の稼働に関して

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150918c.pdf
新日銀ネット第2段階開発分の稼動開始日の決定について

『日本銀行は、本日、新日銀ネット第2段階開発分(注1)の稼動開始日を2015年10月13日(火)とすることを正式に決定しました。以下、詳細についてご説明します。』

ということで来月の頭の連休明けに稼働となりますな(一応以前からこの日という話ではありましたけど)というこれまたメモメモ。





2015/09/18

お題「寝起きでFOMC結果のレビューである/3M短国入札金利が急低下」

なんでNYのスタジオから変なのが解説に出てくるんだよモーサテ。しかも別に公表文書の分析をしてるわけでもなくてめえのポエムだけ話してるみたいだし。

○FOMC声明文比較:上方修正しながら「海外ガー」が登場で金利据え置き

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150917a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150729a.htm(前回)

・第1パラグラフ:だいたいの判断は上がっているのですが・・・・・・・・・・

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity is expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that economic activity has been expanding moderately in recent months.』(前回)

総括判断の表現はexpanding moderatelyからexpanding at a moderate paceなので微妙に上方修正。


『Household spending and business fixed investment have been increasing moderately, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft.』(今回)
『Growth in household spending has been moderate and the housing sector has shown additional improvement; however, business fixed investment and net exports stayed soft.』(前回)

家計消費は同じ、企業の固定資産投資の判断が引き上げになり、住宅市場の改善についても判断が引き上げになっています。ネット輸出についてはsoftという弱めの判断を継続。

『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, labor market indicators show that underutilization of labor resources has diminished since early this year.』(今回)
『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources has diminished since early this year.』(前回)

労働市場の認識については、基本的な部分の文言は同じですが、労働市場におけるスラックの減少についての表現が「labor market indicators show that」と前回の「labor market indicators suggests that」となっていまして、サジェストがショウなのですからまあ強い表現になっているなあという所です。

『Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports.』(今回)
『Inflation continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and decreasing prices of non-energy imports.』(前回)

物価が低迷している件についてはcontinuedからhas continuedになりまして、継続していますなあ感のある表現に。

『Market-based measures of inflation compensation moved lower; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey?based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

市場のインフレ期待がmoved lowerと認識として下がっていますが、サーベイベースのインフレ期待は安定していますとな。


・第2パラグラフ:海外経済に警戒キタコレ!

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつも通り。

『Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Nonetheless, the Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

適切な緩和政策によって経済が拡大してマンデート達成に向けて経済がモデレートに進んでいくという表現は同じなのですが、その頭に思いっきり「最近のグローバル経済や金融市場の動向は経済活動を幾分か阻害し、近いタームの物価に押し下げ圧力をかける」というのが入りましたな。

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced but is monitoring developments abroad.』(今回)
『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced.』(前回)

リスクはバランス、の次に「but is monitoring developments abroad」とあるのが吹いた。

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term, but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

ここの部分ですが、物価に対して一時的に影響を与える、という触れ込みになっているエネルギーあんど輸入価格の影響について、従来「earlier declines in energy and import prices」だったのの最初の「earlier」がしらっと抜けておりまして、輸入価格やエネ価格の影響がやや長引いていることを示唆しているのもチャーミング。


・第3パラグラフ〜第5パラグラフは全文一致

全文一致なので引用だけしておく。全文一致であることは何回か目視したのですがホンマカイナと思われる方はきちんとご確認あれ。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate.』(今回)

ということで金利据え置き。

『In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(今回)

第3パラグラフはここまでですが、前回あった「利上げには労働市場のsome further improvementが必要」というのも同じですけど何の改善が必要ですねんという感じですな。

第4パラグラフ、第5パラグラフは相変わらずの変化なしですな。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)


・第6パラグラフ:ラッカー怒りの反対投票

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.』(前回)

という事でラッカー怒りの反対キタコレですな。


○会見の冒頭コメントをちょっとだけ鑑賞するがちょっと懸念ががががが

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150917.pdf
Transcript of Chair Yellen’s FOMC Press Conference Opening Statement
September 17, 2015

全部引用しているとオワランチ会長になるので詳しくは質疑応答を連休中にじっくり鑑賞して置く所存でございますが、とりあえず寝起きでヒーコラ言いながら斜め読みして今後の利上げに関する部分を紹介してみる。

PDFの4ページ目の半ば位からの話が大体その辺に関する説明になっている。

『The outlook abroad appears to have become more uncertain of late, and heightened concerns about growth in China and other emerging market economies have led to notable volatility in financial markets.』

この前の部分は経済物価情勢に関する説明があって、物価の方がもたついている件についての話もあるのですが、それ以外の話って別によわよわな話をしている訳ではなくて、ここの部分に来て「先行きの不透明」が登場という図です。

でまあエマージング経済への懸念がどうのこうのというのは兎も角として、ここで、「notable volatility in financial markets」という話をしているのがまたアレでして、そのボラは新興国懸念とかももちろんあるのですが、そもそも新興国の懸念の中に米国利上げの影響への懸念もありますし、その米国利上げがどうなるのかの不透明感が市場のボラを高めている、という状況もある訳なのですな。

とまあ考えますと、自分たちが正常化着手に対してグラグラとする動きによって巻き起こされる市場のボラに反応して更にスタンスがグラグラ、という自分の尾を追う犬モードになってきているのではないかというのが大分気になっている所なのではありまする。

『Developments since our July meeting, including the drop in equity prices, the further appreciation of the dollar, and a widening in risk spreads, have tightened overall financial conditions to some extent.』

そらそうかも知れんが金融正常化に対する不透明感というかスタンスがブレブレになっていった中でそういう現象が起きているという面があるのですよねえとしか申し上げようがないのだが、これを言い出しますと本当に利上げ着手する胆力あるのかねと疑問符をつけたくなる。

『These developments may restrain U.S.economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Given the significant economic and financial interconnections between the United States and the rest of the world, the situation abroad bears close watching. 』

ということで、海外情勢および国際金融情勢について動向によっては米国経済物価への下押し圧力の要因になりますのでclose watchingします、というのは自分の影に怯えているように見えまして大丈夫かこれという印象を受けちゃいますがな。


その次のパラグラフ(4ページの後半から5ページの冒頭になります)から。

『Returning to monetary policy, we recognize that there has been a great deal of focus on today’s policy decision. The recovery from the Great Recession has advanced sufficiently far, and domestic spending appears sufficiently robust, that an argument can be made for a rise in interest rates at this time. We discussed this possibility at our meeting.』

今回利上げを実施するかどうかについて議論を行いました、ってことでリセッションからの回復は十分に進んで国内の消費は十分に力強いとかいう状況ですが、では何で利上げを見送るのかというと・・・・・・・

『However, in light of the heightened uncertainties abroad and a slightly softer expected path for inflation, the Committee judged it appropriate to wait for more evidence, including some further improvement in the labor market, to bolster its confidence that inflation will rise to 2 percent in the medium term.』

海外の不確実性の増大と、物価見通しパスが若干弱くなったことによって、先行き経済がマンデート達成するというエビデンスをもっと欲しいという事になりました。でもってそのエビデンスは「some further improvement in the labor market」だそうなのですが、ここから何のimprovementが要るのですかねというお話は労働市場に関する説明部分を見ないといけませんのでちょっと後で。

『Now, I do not want to overplay the implications of these recent developments, which have not fundamentally altered our outlook. The economy has been performing well, and we expect it to continue to do so. 』

別に弱気になった訳じゃないだからね!!!とのことですが、では労働市場に関するアセスメント部分を引用してみましょう。2ページ目の真ん中です。

『The labor market has shown further progress so far this year toward our objective of maximum employment.』

最大雇用のマンデートに向けて更に進展をしておりますという事ですけど。

『Over the past three months, job gains averaged 220,000 per month. The unemployment rate, at 5.1 percent in August, was down four-tenths of a percent from the latest reading available at the time of our June meeting, although that decline was accompanied by some reduction in the labor force participation rate over the same period. A broader measure of unemployment that includes individuals who want and are available to work but have not actively searched recently and people who are working part time but would rather work full time has continued to improve.』

『That said, some cyclical weakness likely remains: While the unemployment rate is close to most FOMC participants’ estimates of the longer-run normal level, the participation rate is still below estimates of its underlying trend, involuntary part-time employment remains elevated, and wage growth remains subdued.』

ということで、失業率とか非農業部門雇用者数とかみたいな数字は問題ないのだが、労働参加率とか非自発的なパートタイム労働の割合とか、労働者の賃金の伸びとかがまだ足りないと仰せになっておりまして、まあ実際に正常化着手するときにはこの話を反故にするという可能性もありますけれども、政策の論理的整合性を考えた場合には、ここで示された労働市場の指標が改善されないと正常化着手に向けた「some further improvement in the labor market」が確認されませんよね、という話になるのですが、改善しなかったらどうする気なんでしょ。


とまあインスタントで金融政策に直接言及している部分とその関連部分についてのみ今回はネタにしましたけれども、イエレン会見は当然ながら質疑応答も含めて鑑賞しないといけませんので連休の宿題ですな。



○SEPだがまたまたロンガーランの中立金利が低下していますな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20150917.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20150917.htm

・経済物価見通しでは物価の見通しが若干下がったという感じですか

経済物価見通しに関して今回からMedianというのが出るようになりました。

『1. For each period, the median is the middle projection when the projections are arranged from lowest to highest. When the number of projections is even, the median is the average of the two middle projections.』

ということでまさに中央値を出すという事になっております。めんどいのでこの数字で見ると、成長率見通しは足元がやや上がって先行きが若干下がっているのですが、基本的に2%台前半での巡航速度の成長という見通しが継続。失業率見通しは若干下がっていますがロンガーランの失業率の数値も微妙に下がっているので、そういう意味では中立でしょうな。

でもって物価に関しては2015年の見通しが下がって(当たり前ですが)その先も0.1%ほどなので誤差ではありますが下がっているという感じです。


・政策金利見通しの方に味わいが

『Figure 2.Overview of FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy』の方がワロタという感じでして。

Appropriate timing of policy firming

               2015 2016  2017
Number of participants  13   3   1

前回が15-2-0だったので2名増加ですかそうですかという所ですが・・・・・・・・・・・

Midpoint of target range or target level (Percent)の所を見ますと、一番吹くのは『-0.125』という所に2015年と2016年末の金利水準の票が1票入っている所で、政策提案に反映されていない所からして今年投票権のない人がファンキーな提言をしているの図という所でございますが、ここまで変態仮面なことを言い出すのはコチャラコタのおっちゃんですかねえ。

でまあそれはともかくとして、年末の金利水準については利上げしないのが3人と上記利下げという変態仮面が1人ですが、25bp利上げが7人いて50bp利上げが5人となっている(75bp利上げというのはラッカーのおじちゃんでしょう、1名います)のですが、今回利上げ見送りになっているのに見通しが2回利上げになっているというのが5人もいるというのが?????な所です。まあ今回投票権のない人が5名雁首揃えているということなのかも知れませんが、今回の利上げを見送って年内2回利上げは無理だろおいおいおいと思うのですが何でこんなに票が入るのかねと不思議ちゃんでした。


ま、それよりもメインイベントはロンガーランのレートで、今回は概ね3.25%〜3.5%の所が中心的になっていて、目の子で平均3.5%程度。前回は概ね今回よりも0.25%ほど高くなっていまして、ここの数値が匍匐前進の如く下がっていくのが実に味わいがありますなあというお話でした。

#その他詳しくは連休中に研究しておきます



○市場雑談メモである、というか3M入札ェ・・・・・・・・・・・・

・3M入札があばばばばー

昨日の3M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150917.htm

(3)募入最低価格 100円00銭2厘5毛(募入最高利回り)(-0.0103%)
(4)募入最低価格における案分比率 40.2646%
(5)募入平均価格 100円00銭5厘2毛(募入平均利回り)(-0.0215%)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとですな、S&P格下げでドル円ベーシススワップのレートがそこそこ動いて、ドルファンディングが厳しい→ドル持っていて放出すると円をマイナス金利で調達できる→短国買ってウマー、というのは確かにあるとは思うのですが、そうは言いましてもここまでマイナスを盛大に突っ込む状況なのかというのが良くワカランチ会長なのですが、まあ今回は期末直前でもありますし、規制絡みの面も含めてドルファンディングが従来よりもタイトというようなお話もありますし、ということで短国のニーズ自体は高まるのではという想定が出るんでしょうなあと。

そんな中での入札ではあるのですが、何せ先週に日銀が短国買入で意味不明にも1.5兆円の買入を打ち込んでしまったお蔭をもちまして市場の流通玉がいきなり消滅モードになってしまいましたので、まさに昨日の入札はカラカラの所に水を入れるというかカラカラの草原に火をつけるというか、まあそんな入札という風情でしたので、何かマイナスでも仕方ないからニーズがある人がドリャーと特攻したのか、単に需要がタイトな所だから乗るしかないこのビックウェーブにということで積極的に上で札を切ってきたのかとかその辺は分かりませんが、いずれにせよ先週の短国買入1.5兆円が超余計なオペレーションで、あのトンチキオペのせいで期末の所がやたらタイトになる、という人災モードとなっているのが甚だ遺憾の極みでございます。

まあ何ですな、今日は1年短国の入札後の短国買入デーというタイミングなのですが、この期末接近の中で3M短国入札がぶっ飛ぶという中で「1年国債買いたいもんね、市場の短国玉枯渇?知らんがな」というようなオペレーションを実施するかどうかが注目される次第でございます。

まあそういうタイミングで
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150917a.pdf
「市場調節に関する懇談会」の開催について


というのが出ているのが何ともまあいつもの華麗なタイミングという所ですな。






2015/09/17

お題「S&P格下げとな/総裁会見である」

ご指示を受けて早速投下とな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150916-00000114-zdn_m-prod
ドコモが定額通話プラン値下げ 月1700円からの「カケホーダイライトプラン」
ITmedia Mobile 9月16日(水)21時29分配信

○市場雑談メモ

・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

毎度のこれなのですが、超過準備の平残増加をみていると8月積み期間では「その他準備預金制度適用先」の伸びが大きいですなあというのがありますが、普段スルー気味にしております末残数値を見ると「都市銀行」の月末残高って最近(5月末残以降)きっちりと同じような水準になっていて、平残の方は増加傾向なのに末残一定とは味わいがあるなあと。

・3M入札ですが

先週の1兆5000億円短国買入という意味不明プレイの炸裂ですっかり玉無し芳一モードになっていますが、そうは言いましても昨日の1年入札は先月ほどの水準にはならずというのもありまして、さてどうなるんでしょうねとは思いますし、何せ営業日ベースの明後日が来週木曜でまたまた3M入札があるというのがどう影響するのかという所ですな。


・貸出増加支援結果(15日の話ですが)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150915a.pdf

新規貸付の概要
貸付期間 4 年
貸付予定額 7,286 億円
貸付先数 21 先

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
         貸付残高  貸付先数
大手行     163,101億円  7 先
地域金融機関等 73,017億円  117 先
合計      236,118 億円 124 先

ということで、6月時点の数値が、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150617a.pdf

(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み
          貸付残高   貸付先数
大手行      162,003億円   7 先
地域金融機関等  69,083億円   117 先
合計       231,086 億円  124 先

となっていまして、6月実行時点から見るとネットで5000億円程度の増加となっていて、まあやや少な目だったという感じではあるのですが、それにしても先週金曜の短国買入がいきなり1.5兆円必要になるような額だったのかというのは少々????ではありますな。



○日本ソブリン格下げとな&置物理論的金融政策万能論に寄りかかり過ぎなんでしょうなあと

・S&P格下げですかそうですか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NURMSS6S972N01.html
日本を「A+」に格下げ、アウトルック「安定的」に変更−S&P
2015/09/17 00:00 JST

『(ブルームバーグ):米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、日本の格付けを1段階引き下げると発表した。S&Pは、日本経済がソブリンの信用力を支える効果が過去3、4年低下し続けていると指摘。当初は奏効する兆しがみられたアベノミクスでは「経済が今後2、3年で信用力を好転させるまで改善する可能性は低い」と判断している。』(上記URL先より、以下同様)

『S&Pは発表文で、「日本の財政状況は極めてぜい弱」と指摘、消費増税効果や税収増を勘案しても一般政府純債務残高の対GDP比は18年度には135%に上昇するとの見方を示した。また、異次元緩和を続ける日銀が出口政策に踏み切れば金利が上昇し、財政をさらに圧迫するとも指摘した。』

本チャンの説明文を見ないで言うのもアレなのであまり申しませんけど、「出口政策で金利が上昇すると財政が圧迫される」というのは何か随分と雑な説明じゃろと思う訳で、経済が信用力を好転させる位に良くなっている中での出口政策での金利上昇のどこに問題があるのかと小一時間なのですけれども、まあ報道ベースの方にいちゃもんつけても不毛な可能性はあったりしますけどそれはともかく。


・金融政策万能論に寄りかかっているのが問題のような気がするという雑談

まあそもそも論として金融緩和に頼り過ぎなんじゃネーノというお話ですし、最近の非伝統的政策の進展というか短期名目ゼロ金利制約に引っかかる状況の長期化というのってベースにトレンドグロースの低下があって、そういう中で金融政策だけで何とかするという話に無理があるんじゃないですかねえという事なんじゃないのとは思う次第。でもってその間に本邦では2%のインフレ目標を掲げてそれを達成すれば全てめでたしめでたし、という非常に簡単なソリューションを提供した置物副総裁リフレ理論によって金融政策(というか資産価格と為替価格ルート)に依存しすぎた結果として時間を空費しているのがアレというような事なのではないかと。

2%物価目標がグローバルスタンダード(キリッ)という説明は黒田日銀のお得意技なのですが、その一方でトレンドグロースが低下するなかで金融政策だけでの対応では不十分的な認識って海外でも普通に出てきていて、かつてのインフレ目標政策によってマクロ金融政策は万能です的な考え方からの転換が進んでいると思うのですが、そちらはスルーというのが置物リフレ理論っぽくて誠に遺憾に存じますという所だったりしますわなと思うのですが、相変わらず金融政策万能論で押してきている感があるのですよねえ黒田日銀って。


ところで、ネタにしようかと思っているうちにすっかり積みネタになってしまっているECBプラート理事の暫く前の講演があるのですが(大汗)、こちらの冒頭でこんな話がありましてですな。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150910_2.en.html
The low interest rate environment in the euro area

Keynote speech by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at a Pension Funds Conference organised by De Nederlandsche Bank in Bussum, The Netherlands,
10 September 2015

冒頭のちょっと後くらいの所からですが、お題のように話し相手が年金ファンドのコンファレンスでして低金利直撃弾を食らっているところ向けの話なので、冒頭に低金利が長期化する環境についてのお話をマクラとして置いているのですな。


『My answer can be summarised as follows. Very low interest rates are not so much a choice of the central bank as a reflection of economic malaise in the global and euro area economy.』

別にワシらが下げたいから下げている訳ではないぞな経済物価状況に即した金利政策したらこうなりますねんと。

『Some of the drivers of that malaise are secular, which are more challenging for public policy to affect. But others are related to demand conditions that appear weak even when compared with a long-term potential growth rate that is already disappointingly low.』

『Such persistent economic slack relative to potential can be reversed through targeted measures. That includes tackling the cyclical headwinds that are dragging on aggregate demand; facilitating the process of balance sheet repair; and removing the structural barriers to higher real growth prospects, which can itself reinvigorate demand through expectation and confidence channels.』

ということで、トレンドグロースの低下をもたらしている経済の(循環要因に対する意味での)構造的な問題に関してはそれに対応した政策が必要ですがなという話をしておりましてですね。

『The role of monetary policy is mainly to provide countercyclical stabilisation while the economy goes through this transition.』

金融政策の役割はこれらの構造対応の政策を実施する間において経済の循環的な後退に対して経済を安定化させる事がメインである、というお話をしている訳でして、どこぞの置物リフレ理論のようにインフレ目標2%達成すると色々なものが上手く回るぜヒャッハーという金融政策万能論とはだいぶ違う次第で。

『When the economy is weak, after all, disinflationary pressures increase, which we have to counter to deliver on our mandate. The monetary policy measures currently in place in the euro area follow from this: they were decided as a direct result of a euro area inflation rate well below comfortable levels and persistent weakness in the economy. And in meeting our objective, we support growth and inflation, which in turn creates the conditions for interest rates to “normalise” once more. Of course, the level that rates will return to in the future is dependent upon the degree to which the secular drivers, currently depressing rates, can be reversed.』

でもって経済が弱い時にディスインフレ圧力が強まるので金融政策はそれに対応しないといけませんなあ的なお話は当然おこなっているのですが、トレンドグロースが高まる政策によって金利が「正常化」できるような環境が整う、という説明をしている訳でして、一方でどこぞではすっかり消えた第三の矢でないかという状況なのが泣けるというお話ではありまして、非伝統的政策を投下せざるを得ない構造的な問題がある中で金融政策単体の有効性が以前のインフレ目標政策でグレートモデレーションな時代に認識されていた状況とは異なっているんじゃネーノという流れになっているのに日本は1周回遅れの置物理論で勝負している辺りがイカンのではないかという雑談でございました。まあ異論はだいぶあると思いますけど。



○総裁会見は順調さを強調するが説明の中身はかなり無理矢理感が漂う

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509c.pdf

なお今回の質疑ですが、追加緩和示唆のような発言は(ベンダー報道の通り)特に無く、メカニズムは回っていますよ大丈夫ですよというトーンになっているのはご案内の通りです。でも説明がだいぶ無理矢理な感じがするのでその辺を簡単に鑑賞しませうなのです。

・予想物価上昇率が上昇しているとはどういう事やという質問

ちなみに金融経済月報でも例によって1行コメントでして、図表を見るとどこからどう見ても上昇しているように見えないというお洒落な予想物価上昇率なのですが月報鑑賞が時間の都合上間に合わなくなった(自分の段取りが悪いからですすいませんすいません)ので興味のある方は昨日出た金融経済月報の図表30をご覧になると吉かと。

『(問) 冒頭のご発言で、予想物価上昇率は長い目でみれば全体として上昇していると言われましたが、新興国の景気減速や資源価格の下落もあって、日本だけでなく欧米も含めてブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下傾向にあると思います。BEIだけで予想物価上昇率を測れるものではないのは承知していますが、現状程度のBEIの低下は許容できる範囲なのか、これ以上低下した場合にはインフレ期待全体に与える影響が出てくるのか、ご見解をお聞かせ下さい。』

BEIの質問に絞っているのが惜しい。どうせ質問するなら「全体として上昇しているとのことですが、ではどこで観測される予想物価上昇率が上昇しているのかを具体的に呈示して頂きたい」とすべき。

『(答) 物価の基調を判断する上では、需給ギャップやその他色々なデータとともに、予想物価上昇率の動きが非常に重要な要素であることはその通りです。』

予想物価上昇率が本当に上昇しているのかという質問なのに物価の基調の話をおっぱじめている時点で既にインチキの香りが漂って参ります。

『予想物価上昇率を把握するための指標としては、ご指摘のBEIのほか、各種のアンケート調査やその他色々なものがあります。そうした諸指標をみますと、足もとBEIのように弱含んでいるものもありますが、総じてみると概ね横ばいです。』

全体として上昇していないじゃないですか!!!!

『BEI自体は──資源価格の下落傾向を反映したものかは市場関係者に聞かないと分かりませんが──欧米とともに若干下振れているものの、予想物価上昇率を把握するための色々な指標全体としてみると、概ね横ばいの状況ではないかと思っています。』

BEI低下のインプリケーションを「市場関係者に聞かないと分かりませんが」って強含みの時にはあれだけ鬼の首を取ったようにBEI上昇をアピールしていた(置物副総裁の方がその傾向が強かったけど)のに何じゃその言いぐさはとしか申し上げようがない。

『また、そうしたもとで、企業の価格設定行動も非常に重要です。企業は将来の物価動向などを考えながら価格設定をしているわけですが、』

今後の物価動向を考えて価格設定???????????

『ご承知のように、消費者物価指数を構成する色々な品目のうち、上昇している品目から下落している品目を引いた数ははっきりと拡大しており、幅広い品目で価格が上がってきています。日次や週次の日用品、食料などの価格指数を見ても、特に 4 月以降、前年比プラス幅が拡大しています。』

特に日常品に関しては円安によるコストプッシュがラグを持って効いてきているという要因があるようにしか思えんのですがねえ。ディマンドプルだったら消費がこんなに弱くないだろと小一時間。

『こうした企業の価格設定行動も、予想物価上昇率を知る上での 1 つの手がかりになるのではないかと思います。さらに、昨年、今年とベアを含む賃上げが続いています。』

ということで予想物価上昇率も「基調」攻撃になっておりましてもう鉛筆なめなめですよ。

『企業の賃上げは、労働市場が非常にタイトになっていることや、企業収益が過去最高水準にあることも反映していると思いますが、企業としては、今後の物価がどのように動くかということも勘案しながら賃上げを認めているわけです。』

今後の物価動向を勘案して賃上げするとは斬新な説明。

『そうした点からみても、全体としての予想物価上昇率の動きは、長い目で見れば上昇していると言っていいのではないかと思っています。』

何ちゅうかもう無理矢理な説明ですな。「予想物価上昇率は足元横ばいで推移」とは言えないというのだけは良く分かりましたが(−−;


・一般物価と個別物価とか物価上昇が消費にマイナスになるのではという話とかに関連して

『(問) 今の物価の話と関連しますが、先日、安倍総理が、携帯電話料金の値下げを進めるべきだというお考えを示されました。政府の方では、物価の上昇が消費全体を弱めているのではないか、あるいは、物価の上昇に賃金が必ずしもついてきていないのではないか、という認識もあるようですが、これが、今お話があった総裁の考えと齟齬をきたしていることはないのか、物価と消費、賃金の関係をどうみているのか、改めてお考えをお聞かせ下さい。』

昨日ネタにした部分の質問ですが改めて。

『(答) 全く齟齬をきたしているということはないと思います。』

『携帯電話の料金が、消費者物価指数の中で占める割合が上昇していることは事実です。一方、電話料金は、かつての電電公社の 1 社独占の時代から変わってきて競争が導入されていることは事実ですが、極めて少ない会社の寡占状態にあります。そのもとで決まってくる携帯電話料金について、おそらく色々な形で競争を刺激して、消費者にとってより使い易い料金体系になることは、消費者の選択の余地を広げ、電話料金が下がることによって実質所得を引き上げ、その他の様々な消費支出を増やしてくれるという面もあります。』

昨日ネタにしましたが、これは一般物価と個別物価の話を混同してはいけません(キリッ)という話なのですけれども、では原油価格の下落で物価目標達成時期を先送りしているという状態とこの説明との整合性はどうなっているのかと小一時間というのは昨日申し上げた通り。

『私どもが狙っている 2%の「物価安定の目標」の早期達成という場合には──当然、需要・供給様々な要因の中で物価が決まってくるわけですが──、主として、金融政策を通じた需要の刺激、需給ギャップの縮小、さらには明確な物価安定目標へのコミットメントを通じて、予想物価上昇率を底上げしていくことにより、経済の好循環のもとで物価が上がっていくことを目標としています。個々の物やサービスの価格について、より生産性の向上を図るとか競争条件を整備する等によって引き下げ、消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環のもとで 2%に向けて引き上げていく面でもプラスになると思っています。』

というこの説明もこの説明単体でみれば話の筋は通っているのですが、ここまでの日銀の説明やらロジックやらとの整合性という点で考えた場合に、今申し上げたように原油価格の下落で目標達成時期を先送りしている件との整合性はどうなっているのかというのがありますし、更に言えば最近すっかりだんまり状態になっていますが、「インフレ期待の形成には実際の物価動向によるアダプティブな要因があって日本の場合はその傾向がまだ強い」(ので物価がとにかく上がるのは期待インフレの引き上げに良い話)という説明との整合性はどうなっているのかというお話で、個別物価の低下によって即座にその分の需要がシフトして他の個別物価が即時に上昇する訳ではないのですから、その間に個別物価の積み上げによる物価指数というのは現実問題として低下圧力が掛かる訳で、それがアダプティブな物価上昇期待の形成に悪影響を与えるという話をしない、というのならまだ大人の事情として理解するのですが、2%目標達成に「プラスになると思っています」とまで言うのは図々しいにも程がありますな。


ちょっと先の方ではこんな質疑も。

『(問) 日用品や食料品など色々な物の値段が上がっていますが、そのほとんどが円安による輸入インフレで、賃金上昇によるインフレにはなかなかなっていないのではないかと思います。今、為替は 1 ドル 120 円近傍で昨年 12 月とほぼ同水準になり、前年比が剥落してくると、物の値段は、輸入インフレが多い中で上がりにくくなるのではないかと思います。そうした場合、総裁の言う物価の基調は、高まってくるというよりは弱まってくるのではないかと考えますが、如何でしょうか。』

うむ。

『(答) 物価の基調を考える場合に、重要なポイントはいくつかあると思いますが、1 つ目は需給ギャップです。これはご承知のように、雇用状況がどんどんタイトになってきていますし、色々な指標でみてもこのところ基本的には需給ギャップが縮まってきて、計算の仕方によっては、もはやマイナスでなくてプラスになっていることもあり得るということですので、需給ギャップの面から言えば、物価の基調の判断についてはポジティブだと思います。』

質問で「物価の基調」と言ったのが惜しい訳で、もっと単純に「コストプッシュで物価が上がることは将来の物価低下要因ではないでしょうか」という聞き方の方がよかったと思う。

『それから 2つ目が予想物価上昇率です。これは先程申し上げたように、足許、若干弱含んでいるBEIのような指標もありますが、そうではなくしっかりした動きを示す指標もありますし、全体として長い目でみれば、予想物価上昇率は上昇してきていることに変わりはないと思います。』

何と図々しい。

『3 つ目は、そのようなことを反映して賃金がどうなるかですが――賃金の動きを表す統計には、ご承知のように毎月勤労統計調査や家計調査など色々な統計がありますが――、1 人当たり賃金と雇用とを掛け合わせた雇用者所得はこのところ 2〜3%ぐらいで伸びてきています。これは、雇用の伸びによる分もありますが、所定内賃金が上がっており、1 人当たり賃金自体も基本的な趨勢として上がってきていると思います。』

ものは言いよう。

『そして 4 つ目には、先程申し上げたことを反映して、企業の価格設定行動がどうなっているかということです。これも、特にこの 4 月以降、明確に企業の価格設定行動がはっきりと価格の引き上げの方にきています。』

だからそれがコストプッシュだと質問しているのですけどねえ。

『物価の基調は今言ったような要因を全体として反映していますので、為替レートが物価に一定の影響を与えることは事実ですが、為替レートが円安になったら必ず物価が上がるかどうかは、また別の問題です。要するに、輸入品のコストだけ上がり、他のものに対する消費が減ってしまえば、他の価格が下がるわけです。また一定の期間をとれば、どんどん円安になるとか、どんどん円高になるということはあまりないわけでして、やはり、先程申し上げたような需給ギャップ、予想インフレ率、賃金、企業の価格設定行動等々が、物価の基調をみる上で重要だと思います。』

『今、為替レートが 120 円程度ですけれども、仮にこれで変わらないとしたらもう物価が上がらなくなってしまうということにはならないと思っています。』

という辺りを見ますと「為替を強引に円安に持って行く」というスキームはもう使えないのではないかと思うのですがどうでしょうかね。


・7−9GDPについて

『(問)(前半割愛)もう 1 点は、4〜6 月期に続いて、仮に、7〜9 月期もGDPがマイナスになりますと景気後退ということになってしまうのですが、総裁はこのリスクについてどうご覧になっているのか、また、そうした状況になると日銀のシナリオに何らかの影響がでないのか、見解をお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)4〜6 月の成長率は──年率マイナス 1.2%だったと思いますが──下落しているわけですが、ご承知のように、1〜3 月が年率 4.5%のプラスだったということとの関連でみる必要もあると思います。また、4〜6 月のマイナスの中には、輸出がかなりマイナスになったということもありますし、消費が 4 月とか 6 月の天候不順等の影響もあって、若干マイナスになったということもありますので、基本的には一時的な要因が多いと思います。』

へえへえそうですか。

『7〜9 月は、9 月のデータはまだ出ていないわけですし、8 月のデータも全て出ているわけではありませんので、7〜9 月のGDPを予測することは難しいわけですが、先程申し上げたようなことからプラスに戻ってもおかしくないと思います。7〜9 月はマイナスを予測するエコノミストもいるようですが、私はおそらくプラスになるのではないかと思っています。』

これはまた大きく出ましたなという所で、ここに関しては7−9マイナス待ったなしという事になりますと、追加緩和大合唱が始まるのは間違いないですし、日銀も追い込まれやすくなる(一時的ですと言い逃れをする可能性もありますが)と思います。


・二つほど無駄な質問があるのですが・・・・・・・・・・・・・・・

ネタが何もない会見だったらこういうヒマネタみたいな質問をするというのもアリかもしれませんけれども(そういえば福井総裁に阪神タイガースの快進撃について質問した記者が今や国会議員様という辺りにいやまあ何でもありません)、経済物価情勢が微妙な状況にある中で金融政策に関するインプリケーションが皆無の質問だわ中身がヨイショっぽいわという質問をするアホウを晒しておく。


『(問) 総裁は 10 年程前に「元切り上げ」という本をお書きになられていますが、中国のこの 1 か月間の金融の舵取り、切り下げと介入による維持について、ご所見をお伺いできればと思います。特に、外貨準備を潤沢に使って維持されていまして、これの国際金融市場へのインプリケーション等、どういう覚悟が必要なのかお願いします。』

お前は何を言ってるんだ。

『(問) 通貨についてお伺いします。IMFは、人民元をSDRの構成通貨に入れるかどうかの結論を年内に出すと言っています。元建ての貿易決済は世界的にみると円建て決済に迫っていて、とりわけアジアでの比率は高いようです。交換性の観点からまだ課題はあるようですが、人民元のSDR構成通貨入りについて、ご所見をお伺いしたいというのが 1 点です。もう 1 点ですが、総裁は財務官でいらっしゃった時に、アジアを舞台にした円の国際化を推進されていました。12 年前に書かれた著書で――また本を出してきて申し訳ないですが、――「通貨外交―財務官の 1300 日」という本を読ませて頂いたのですが、究極の為替政策は円の国際化だと主張されていらっしゃいました。大変重視されていたようなのですが、円の国際化は最近めっきり聞かれなくなっています。元の国際化がアジアで進む中で、円の国際化の現状評価と今後の展望について、ご所見をお聞かせ下さい。』

円の国際化の話は日銀の政策課題としてもあるからまだ分からんでもないが、人民元のSDRどうのとか全然関係ないだろいい加減にしろ。

このネタってそもそも論として日銀総裁がどうのこうのいう話ではないネタな訳でございまして、足元の経済物価情勢を踏まえればこのような重要な時期の会見のリソースを消費する価値のあるネタとは到底思えない質問をする意味について小一時間問い詰めたい次第ではあります。







2015/09/16

お題「決定会合レビュー:「全部新興国のせい」という現状判断が泣ける」

開口一番「日銀は追加緩和を見送りました」って追加緩和するのがデフォとはモーサテも相変わらずのクオリティですなあ・・・・・・ってクオリティを求めるのがアレであってただのバラエティ番組だと思わないと血圧に悪いのは分かっているのですが。

・・・・・・などと思ってたら暫く後に「FOMCで利上げが無い、という前提でイベントドリブンのヘッジファンドが動いている結果株価が上昇しました」(キリッ)という解説者のコメントが聞こえた気がするのだが、米国2年国債の金利が80bpまで上昇している事について小一時間問い詰めたいのですけどねえ。

#なお直後に為替の電話の人が米国2年債金利上昇に言及していたので血圧が低下(^^)


○今回の声明文は「全部新興国のせいだ」ですかそうですか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150915a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150807a.pdf(前回)

まあ現状維持自体は兎も角として景気認識に関する部分が注目される訳ですが・・・・・・・・・


・良く良く見ると現状判断に一部上方修正個所があるとか

例によって現状判断部分であるが、まず見れば分かるのは「量が増えている」ということでして、現状判断の文章量が8行→10行と2行も増えておりますが、当然のごとくこの文字数の増加というのは「判断に対する言い訳文言が増えている」っつーお話でございますので、それだけ日銀としては経済物価の見通しシナリオに対する現状の判断について「マズー」という認識があるというのはそういう事でしょうな。自信満々だったら文章がシンプルになりますもん。


『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(前回)

ヘッジクローズの方に目が行ってしまいがちですが、総括判断は「緩やかな回復」のままであるというこの大本営発表モード恐るべし。


『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。』(前回)

ということで、これ新興国の影響という部分が目立つのですが、全体としての評価は「回復」が「緩やかな成長」となっていて、「成長」という文言自体は強め表現(の筈)なのですが、そこに「緩やかな」というのが入っているという上方修正しているのか下方修正しているのか訳のわからん全体評価になっているのがヤヤコシヤです。まあ海外経済の全体水準については上方修正しているけれどもモメンタムが下方修正という事だと思いますが、そもそも輸出と生産を新興国のせいで下方修正しているのですから、全体的には強いというトーンではないのですけれども、回復→成長という辺りに往生際の悪さを感じます。

ちなみに当該部分の英文はこちらです。英文見ても微妙としか申し上げようがない。

『Overseas economies -- mainly advanced economies -- have continued to grow at a moderate pace, despite the slowdown in emerging economies. 』(今回)
『Overseas economies -- mainly advanced economies -- have been recovering, albeit with a lackluster performance still seen in part.』(前回)


需要項目別の展開について。

『輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、振れを伴いつつも、持ち直している。』(前回)

輸出と生産の判断を下げているのですが、さっき出てきた新興国経済の減速というのをわざわざまた持ち出していまして、「全部新興国のせいだ」というアピールに余念がない辺りにも曳かれ者の小唄的なサムシングを感じるという味わいの深い出来栄えになっております。

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。』(前回)

しらっと企業収益の現状判断を上方修正しているのがお洒落です。まあ企業収益が上がっても投資や労働分配に反映されていないという経済財政諮問会議のお墨付きが出ていますけどね!!!!!!!


『また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(今回)

『雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(前回)

今回は接続詞がさっきのと含めて入っているのも味わいがありまして、先ほどの「一方」に関しては輸出と生産の判断を横ばいにした次の増加という話なので「一方」というのが入るのは普通なのですけれども、威勢の良い話を続けようという中でここでわざわざ「また」と付け加えるような文言を入れているのも味わいがありますな。

でもってそれ以外の文言というのは変化が無いということでして、直近の展望レポートで示されている日銀の物価上昇達成へのメカニズムというのは輸出ドライブというよりは「雇用環境の改善によって賃金が上昇して、所得から消費の流れをメインのドライバーとして経済の好循環と需給ギャップのプラス化が進展していく」というお話でありますからして、「国内に関する景気判断が強気のまま」というのはつまりは「日銀の基本シナリオには特段の問題は発生していません(キリッ)」という事を言いたい、っつーのが今回の声明文の特色であります。

なんちゅう往生際の悪さとは思いますが、そらまあここのメカニズムがやっぱり駄目ですなという話になったら追加緩和するのか、それとももっとそもそも論に立ち戻ってQQEのメカニズム自体がどうなのよというようなお話になって行く訳でして、そう簡単には折れないだろうなあというのは分かるのですが、それにしても賃金とか消費とかマインドとか色々なものがアチャーという感じになってきているのにこの強気判断継続ってもう「やりたい金融政策があってそこから逆算で景気判断をするの巻」というのが強化されている感じで誠に遺憾の極みではありまする。


でもって金融環境と物価環境に関して。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『また、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ところでどこの予想物価上昇率が上昇しておられるのか小一時間問い詰めたいのですが、何せ金融経済月報の方を見ましても同じように「全体として上昇しているとみられる」だけしか表現が無くて、どこのどの数値が具体的に改善しているかという解説は入っておらず、単にグラフが巻末に掲示されているだけという代物ですので小一時間問い詰めても「このグラフをご覧ください」で終了するのが残念な所です。


・先行き見通しやリスク認識は変化なしとな

どうせそうだろうとは思いましたがその通り。

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)

ちなみにこの「当面」というのは目先数か月程度の期間という前提の筈なのですが、いつまで経っても「当面」となっているということは物価2%への到達見込時期がドンドン後ずれしていることを意味する筈なのですが当然ながらその話も華麗にスルー状態なのは今に始まった事ではありません。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

また変化なしか・・・・・・・・・・・・・・


・QQEは所期の効果を発揮だのの話や木内さんの提案も同じです

比較するのも面倒だから今回のを貼るだけにしておきます。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。(今回)

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、2つの「柱」に基づく柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員、布野委員)。』

まあ順当。


○ということでレビュー雑談

・現状維持は想定通りとしても声明文の内容があまり下がっていないのは・・・・・・・

つーことで先ほども申しあげたように、今回の声明文って輸出と生産の所の判断を下げているものの、総括判断は下げていないですし、国内要因に関しては企業収益の所を上げるという荒業に出ているという中々往生際の悪い判断になっているのがナンジャソラという所ではあります。

まあこうなってきますと政策判断の方が先にあって景気判断の文言が後付になっているのではないかと小一時間問い詰めたくなる所ではあるのですが(当たり前ですが日銀はそんなことは無いと断言しますので念のため申し添えます)、所得とか物価目標達成に対して考えたら力不足にも程があるだろとか、消費の方も全然伸び足りないだろとか、その手の部分何も変えていないというのは、将来の時点でいきなりこの辺を変えてくるという騙し討ちの可能性は勿論ありますが、少なくとも今回の時点では追加緩和の思惑を思いっきり否定する方向にいますので、とりあえず今の時点で追加緩和というのを選択肢に入れるという事すら無い、というのが今回は示されたと思います。


実際の景気情勢という意味では、今の時期って「所得から消費、投資への前向き循環メカニズム」がポッキリと折れてしまうかどうかきわどい所に来ているようには(アタクシ的には)思うので、まあ物価目標の達成時期云々以前の問題として経済情勢から追加的な金融緩和措置を行うという話だってもうちょっと情勢見た所であってもおかしくは無いとは思いますが、問題は追加緩和をしたからと言ってそのメカニズムがワークするのかというお話ではないかと思うのですよね。

つまり、追加緩和でどういう政策波及ルートに効かせて効果がでるのか、という話になりますと、昨日ネタにした経済財政諮問会議の討議資料ではありませんけど、アクチュアルの物価を円安ドライブのコストプッシュで引き上げてバックワードの物価上昇期待を引き上げるというのは、物価上昇期待が上がったとしても将来の実質所得への期待が下がってしまうので消費にマイナス、という答えが出てしまっている以上、どういうルートで効かせるのかという話になると思うのですよね。

実質長期金利のルートという話になると思いますが、名目の金利の方は散々下がっている訳でして、期待インフレも無理に上げようとするのは効果があるのか無いのか良く分からん(まあいざとなったら強弁するんですけど)という話でして、そうなるとまた「実際の物価が低迷しているので期待インフレの低下を防ぐため」という話になるのでしょうが、肝心の実際の物価に関して最近では東大や一橋大謹製の物価指数を持ち出して「ほれ物価の基調は強いですがな」という話をしているのに急に話を変えるとかもう政策反応関数がグチャグチャにも程があるという事になるのですが大丈夫ですかねえと。


ただまあ何ですな。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/idJPT9N10A03C20150915
2015年 09月 15日 18:03 JST
日銀の景気判断に「大きな変化ない」、2%目標実現に期待=菅官房長官

『[東京 15日 ロイター] - 菅義偉官房長官は15日午後の記者会見で、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)の継続を決定したことを受け、「引き続き経済・物価の情勢を踏まえながら、2%の物価安定目標を実現することを期待したい」と語った。』(上記URLより)

まあいきなりこういう所で助け舟出すわけには行かないのはその通りなのですが「2%の物価安定目標を実現することを期待」と言いましても物価だけホイホイ上昇するというのは中長期的に見たら安定的な物価上昇に資する訳ではない、というのに近い話を前日の経済財政諮問会議でやってませんですかねえという所で、政府の方もそういう点で言えば過去との整合性と、現実問題としての選択肢という所で悩んでいるのかなあという所で、元々は物価上昇して2%目標達成すれば何もかも上手く回転しますという置物リフレ理論が現実と乖離していただけの話ではあるのですが、まあどういう形で着地させるのかという事を真剣に検討しているのであれば、政策の枠組み自体の変更が伴う話になるので今の時点で追加緩和を実施するのは近い将来の日銀の手足を縛る話になるのでよーやらんのでは、というのも先日も申しあげたとおりなので、まずはここでは下手に追加緩和の思惑を煽らない方が利口ではあるのでしょうなあとは思います。

従って死んだふりしていきなり追加緩和するのか、突如政府と共に大勝利宣言して緩和政策は継続するけれども短期決戦前提のQQEから離脱するのかというようなデジタルな変化の方がありそうだなとは思うのですが、このままダラダラ現状維持でそのままオペの限界に突入というのがアチャーではありますな。


・中期ゾーンとかの金利の動きは何だったのかと小一時間

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/idJPL4N11L2CA20150915
2015年 09月 15日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続落で引け、長期金利は一時0.380%に上昇

『<12:40> 国債先物は下落幅を拡大、追加緩和なく失望売り

国債先物中心限月12月限は後場に入って下落幅を拡大している。足元の12月限は前営業日比13銭安の147円90銭近辺で推移。市場では「一部に期待があった追加緩和がなかったことで、失望売りが出ている」(国内金融機関)という。』(上記URL先より)

昨日の債券市場ですが、MPMの結果が出た後場に先物がギャップダウンして始まったと思ったらその後中期と長期(と先物)がヘロヘロになって、5年カレントとか一時8.5bp水準まで上昇(引けは8.0bp)となっておりまして、それは先週金曜の引けが5.5bpだった(ちなみに月曜の引けは6.5bp)のですが何ですかそれはという展開。ちなみに先物安値は147.78(25銭安)ね。

しかも相場の動きをみておりまして何とも残念だなあと思ったのは(会見期待があったというのは有ると思いますが)株と為替に関してはMPM何もなしの初期反応ではガックリの動きをしていたもののその後やや戻すという中で、債券市場は後場粛々と中長期の叩き料理状態になっていたなあという辺りでして、しかも前週木曜の5年入札がヒャッハー入札になってから金曜に更に盛り上がってまいりました状態になった後の反応なだけに何だかなあという感じではありました。

まあ何と申しますか、今回は追加緩和で付利下げネタが煽られて、ちょうどそこに5年入札という格好のネタが入って相場が自己実現的に付利下げを織り込むようなヒャッハー相場になって、勝手にそれが剥落するという展開ではあったのですが、いつもは株式市場や為替市場の追加緩和期待をクレクレだの何だのと言って悪態をついております所の債券市場無力参加者であります所のアタクシなどから致しますと、昨日の後場の「債券だけひたすら失望売りが続く」というのを見ておりますと穴があったら入りたいという言葉がこれほどピッタリ来る展開もありませんなあという相場展開ではございましたので、忘れないようにメモをしておく次第ではございまする。

まあどうせ展望レポート前にまた追加緩和ヒャッハーとかやるんでしょとか思うのですが、今回ってFOMC前のこの時期にやる訳ねえだろというのがコンセンサスだった筈なのにこの展開ってもう何が何やらワカランチ会長ではありましたな、あー情けない。


・会見に関して詳しくは要旨出てからですが

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/boj-kuroda-presser-cpi-idJPKCN0RF0W020150915?sp=true
2015年 09月 15日 18:42 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
原油次第で目標達成後ずれ、2%目指し政府とそごない=日銀総裁

『携帯電話の通話料金引き下げについては「携帯料金のCPIに占める割合が上昇しているのは事実」としつつ、政府との間で2%の物価目標の早期達成をめぐり「全くそごを来しているということはない」と強調。「携帯料金が下がり可処分所得が上がれば支出が増える」と指摘した。』(上記URL先より)
会見自体は追加緩和示唆などのような市場の喜ぶことはしない(そらまあうっかり示唆しようものなら追加緩和しないと行けなくなって先行きの選択肢が無くなるし、騙し討ち緩和をした方がお得感があるという判断なんでしょ、それって金融政策のクレディビリティとして如何な物かと思うし、市場との対話じゃなくて市場を驚かせる政策とかアホかと思うけど)のは当然ですが、ここの部分はワロタとしか。

まあこれは「個別物価の話と一般物価の話を混同してはいけません(キリッ)」という話で、そういや昔置物師匠が説明していた(最近すっかりその話をしていませんけど)お話でもあるのですが、個別物価が下がったとしても一般物価として見た場合には話は別ですというのはそらまあそういう理屈もアリエールなのですが、だったら原油価格の影響で物価2%達成時期が後ズレするという今日銀が行っているエクスキューズとの整合性がどうなっているのでしょうかねえとしか申し上げようが無いのですが何なんですかこのああいえばこういう状態は・・・・・・・・・・・・

ということで、まあ今回の会見は強弁成分を鑑賞するのが主なポイントとなりそうではありますな。







2015/09/15

お題「追加緩和モードに逆張りしてみる系の雑談/短国買入残高とかPD懇とかの雑メモ」

経済見通しとか金利見通しなら途中の数値というのがあるけど、利上げするかしないかとか追加緩和するかしないかという話ってデジタルな話なのですから次回会合での確率60%だのという予想って良く考えたら無意味にも程があるぞなとは思うのでした。ポジションのヘッジとかには意味あるかもしれんけど。

○市場ネタは追加緩和モードになっているが実は追加緩和のハードルは相当上がっているのではという件

まあ市場ちゃんの方は金曜の引けが5年カレント5.5bpという付利下げ織り込みレートになっておりまして自己実現的に盛り上がると、ゆーかジャパンの金融政策ネタで久々に乗るしかないこのビックウェーブに状態になっているのか何とかストの皆様が揃いに揃ってビックウェーブに乗る辺りが実にこうアレなサムシングを感じる訳でございますが、昨日の債券市場では(単に輪番スキップのせいかも知れんが)5年1甘とかになっておられましたけどそれは兎も角。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/14/idJPL4N11K29B20150914
2015年 09月 14日 15:35 JST
携帯電話3社の株価大幅安、安倍首相の料金値下げ検討指示を嫌気

という例の話なのですが、経済財政諮問会議の要旨を読みますとこれがまた中々味わいがありますなあという風に思うのでして・・・・・・・・・・・・

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/agenda.html
第15回会議資料:会議結果 平成27年
第15回経済財政諮問会議
開催日時:平成27年9月11日(金曜日)17時15分〜18時15分
開催場所:官邸4階大会議室

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/interview.html
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

『<家庭の情報通信費の引下げについて> 』という所から。

『(問)家庭の情報通信費に関して官房長官が引下げを指示したという御説明がありましたが、もう少し具体的にどのような内容の趣旨だったのか教えていただきたい。また、総理も問題意識を持っていらっしゃるようですが、総務大臣から何かございましたか。』

『(答)厳密に言えば総理指示です。総理から引下げについて検討せよという指示が出ました。総務大臣は事前にこの指示が出るということを承知して前向きな姿を事前に示されたということであります。』

ほほう。

『(問)これは携帯の通話料や通信料を引き下げるように指示したということでいいのかというのと、その方策としてどのようなことを通じてそういったことを実現するのかというのを今念頭に置いてらっしゃるのか。あと、今後の議論としては、高市大臣が総務省に持ち帰って検討するということなのか、引き続きまた諮問会議でもやるということなのか。その3点をお願いします。』

『(答)携帯通信料が家計支出に占める割合が拡大をしていると、それだけいろいろなアプリの開発等々あるのだと思いますが、それに対してある種、三社体制で固定化してしまっていて競争政策が働いていないのではないかという指摘もあります。それを含めて総理は料金引下げについて対応せよということを総務大臣に指示をされたわけであります。総務大臣はこれを受けてきちんとした回答を持ってくると思います。 』

思いっきり引き下げ指示とか価格統制するの好きですねえ安倍ちゃんというのはさておきまして、資料の方を見ますと更に味わいが出てくるのですな。話の都合上ネタに出す順序が微妙に逆な気もしますがまずは『資料3−1 経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ(有識者議員提出資料)』というのを見ます。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/shiryo_03-1.pdf
経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ

『中国経済に弱い動きと不透明感などがみられる中、我が国としては、アベノミクスに強力に取り組むことにより、内需、とりわけ民間需要主導の持続的成長への動きを加速し、デフレ脱却・経済再生を力強く進めることが一層重要となっている。政府が一丸となって、課題突破のための構造改革の優先課題に取り組むべきである。』

てなことで最初の項が『1.内需主導経済に向けた優先課題』でして・・・・・・・・・

『経済の好循環を拡大・深化するとともに、それが生産性や潜在成長率の向上に結び付くよう、最優先で取り組むべき以下の事項を「民間需要構造強化プログラム(仮称)」として掲げ、官・民・政が一丸となって課題突破に取り組むべきである。』

ということで4点の項目があって、その最初が『雇用・所得環境の改善や子育て支援・少子化対策の強化を通じて、家計を元気にし、消費を活性化する』と「家計への配慮」が思いっきり出ている訳ですよこれが。

『現状における優先課題は、民需主導の持続可能な好循環を確かなものにすることで海外経済リスクにも強靭な経済構造を構築するとともに、国民の視点からアベノミクスの先に広がる将来展望を明確にすることである。こうした観点から、デフレ脱却・経済再生に向け、思い切った構造改革を推進するとともに、海外経済リスクが顕在化する場合など、アベノミクスの円滑な実施に必要となる場合には、機動的に対応する。』

と来て『(1)家計を元気にし、消費活動を活発化する』の3番目の項目が例の、

『B 家計支出に占める割合が高まっている情報通信の競争環境の整備』となっていまして、これが値下げ指示キタコレとなっているという話ですから、そんなに軽い指示でもないようで。


でまあ有識者資料だけではなくて、内閣府のクレジットが入っている方の資料であります所の『資料1 経済の好循環の拡大・深化に向けて(内閣府)』というのを見ると更に味わいが。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/shiryo_01.pdf
経済の好循環の拡大・深化に向けて

スライドの1枚目の『2015年度4−6月期GDP2次速報の概要』ではこんな記述が。

『○4−6月期の実質GDPは、中国や米国向けの輸出の減少、個人消費や設備投資が前期比マイナスとなったことから、前期比年率マイナス1.2%、名目GDPは499.9兆円(前期比年率0.2%)。企業等のデフレマインドは完全に払拭されておらず(企業収益の増加が設備投資や賃金に十分には行き渡っていない)、消費者マインドも持ち直しに足踏み。』

>企業収益の増加が設備投資や賃金に十分には行き渡っていない

うむ。

>消費者マインドも持ち直しに足踏み

うむ。


スライドの2枚目は『個人消費・設備投資の動向』ですが消費の方ではこんな記述が。

『○個人消費は総じてみれば底堅い動き。 ただし、身近な食料品等の物価上昇が相次ぐ中、低所得者層等の消費活動に影響を与えている可能性。』

アイヤー!!

でまあそこのスライドに『消費者物価(コアコア)の分類別寄与度と変動要因』てのもありますが、まあその辺は上記URL先の資料を読んでちょというお話ですな。


・・・・・・・・・・とまあそういう訳で何を言いたいのかと申しますとですな、先般のネタってポッと出の話という訳ではなくて、「所得環境の改善ペースに見合わない物価の上昇は経済の好循環を阻害する」という良く良く考えたら当たり前の話について政府というか官邸サイドというか、まあそちらの方での共通の問題意識になっている、という話ではないかと思われるのですよね。

となりますと、債券何とかスト界隈では乗るしかないこのビックウェーブに状態で追加緩和ネタがすっかりと盛り上がる中ではあるのですが、上記の問題意識からすると「2年を念頭に出来るだけ早期に2%の物価上昇を達成」という話って経済好循環に対してどうなのかっつー話の方が優勢になっていませんですかねえとゆー事なのですから、(既に2年で達成の方はすっかり無かったことになっている割には置物副総裁は辞任しませんけど)2%の目標そのものがもっとフレキシブルになってくる可能性が高まっているというお話じゃネーノという風に思えたりもするのですがどうなんでしょうかねえと。

つまりですね、今月でも来月でも追加緩和ってえのは、2016年度前半に物価2%到達という日銀の見通しがどう見ても厳しいので追加緩和、という文脈からしたらそらまあ話として分からんでもないのですが、一方で政府サイドの方が成長期待や所得の増加ペースに見合わないペースでの物価上昇が起きると内需主導の経済好循環が回らなくなる、という認識をもっているのであれば、早期の物価上昇を狙う追加緩和政策とは相入れないという事になりますので、追加緩和実施でとにかく物価をホイホイ上げようというのはハードルがしらっと上がっているという事ではなかろうかと。


そうなりますと、昨日もネタにしたと思いますが、麿ドクトリン成分がこっそり入っている(今でも生きている)政府と日銀の共同文書が脚光を浴びる訳でして(^^)、2%の目標自体は当然ながら継続するものの、それは経済の実力というかポテンシャルグロースを引き上げる中で達成していくものであって、その間日銀は緩和的な政策を行って経済の下支えを行う、というような話にしつつ、QQEについては「デフレ状態ではなくなっており、デフレマインドの払拭ができたので大成功」といつの間にやら話を誤魔化して大勝利宣言をして(どう見ても置物リフレ理論とは違いますが)華麗に転身という名の(内務省検閲)という事にすればヨロシがなというのがやはり方向性としては現実的だし、更に政府サイドの認識が経済財政諮問会議の上記資料のようになっているというのがメインストリームなのであれば、実際問題としても方向性はそっちなんじゃないですかねえとか思ってみたりするんですけどどうでしょうかねえ、とまあそんな事で。

でまあQQEによるスーパーAPP政策って短期決戦を前提にしているスキームですから、粘り強く金融緩和を継続するという話には不適にも程があって、そらもう当然ながらスーパーAPP政策は見直すでしょうし、それで金利が上昇したとしてもそらまあ長期金利が2%越えて3%だのになったらアレですけれども、時間軸が強力に効くような政策やって長期金利が(瞬間は跳ねたとしても)そこまで上昇せんのでしたら大問題にはならん(なお債券市場的には長期金利がいきなり50bpも上がったら大問題ですが実体経済という意味で)でしょとか思うのですけどねえ、と追加緩和ネタで妙に盛り上がってしまっているのですが思いっきり逆の話をするアタクシなのでありましたとさ。

しかしまあ何ですな、そうなって来ますと「インフレとインフレ期待が上昇すれば全て解決」的な置物リフレ理論の壮大な実験とは何だったのかというか2年半の期間は何だったのかというような話ではあるのですが、まあ置物一派の皆様におかれましては仮にそういう方向になるのであれば手柄顔するのではなくてとっとと不明を認めたうえで(以下の文言は削除されました)。


○市場ネタ少々

・例によって短国買入残高

毎度おなじみのこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

今回は8/28と9/4の買入(8000+6000)分なのですが、前回との差分を取ってみますとチョー珍しい事に銘柄が分散していまして(って本来のオペの趣旨からしたら分散するべきものなのだが)、3Mのカレント2銘柄で合計1兆円ほど入っているのですが、まだ1年短国が入っているのかというのもへーという感じです。

でまあ11日に1.5兆円の買入とかやりやがったせいで期末前&四半期定例償還前だというのに市場機能を能動的に抹殺しに来るオペレーションのせいで短国市場の流通玉が枯渇するという市場がああばばばーな状態(GCレポはあるけど短国は無い)になっておりますが、まさかとは思いますが前2回の短国買入で3Mばっかり入ったから6Mを買うために突如アホのように買入を増やしたとかいう疑念が少々なのではございます。

ちなみにここから先の償還ですけれども、アタクシの集計ベースだと10月は7.0兆円、11月は5.0兆円なのですけれども、12月の償還が3.2兆円しか無くて(11日の買入で3Mも入っているのではと思うのでここから増えているとは思いますが)、MB目標との整合性から考えると12月に向けて買入フローがだいぶ減る計算になる筈なのですが、先週の急な買入増額とかどうも訳分からん動きもあるのでイマイチ良く分からんです罠。

まあさすがに11日にあれだけ買っているのですから今月の短国買入は今週金曜にやった後は月末まで無いと思いますけど・・・・・・・・・・・・


・PD懇議事要旨である

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/150911.html
国債市場特別参加者会合(第62回)議事要旨

物価連動国債と流動性供給入札と買入消却の話なので簡単に引用だけ。

物価連動国債関連ですが。

『・ 発行額については5,000億円を維持すべきと考える。これまで、当局はマーケットの育成及び流動性の維持・向上を打ち出していたところ、発行額を減額した場合には、かつて発行を停止した経緯があることもあり、投機的な動きが出ることや、発行停止が意識されるリスクも考えられることから、発行額は現状の5,000億円を維持するべき。また、物価連動債は他の利付債に比べて担保や決済面での利便性が低い。このことが海外をはじめとする投資家のファンディングコストに与える影響は大きいため、日本銀行において物価連動債の適格担保の掛け目を見直すことや、清算機関において今後の取り扱いについて検討することを希望する。』

後半の方は言いたい趣旨は分かるのだが普通の固定利付国債じゃないのですから中々そうはいかなさそう。まああんまりホイホイと増額したり減額したりというのもアレで、それこそフローターの時に民間の口車にホイホイと乗って(かどうが知らんが)絶賛大発行したらその後あばばばばーで市場そのものがおじゃんになるという残念な事案もあったので、まあ目先の話で一々反応しないというのも大事かもしれませんな。

『・当局の提案のとおりで問題ない。投資家のニーズが減少している印象はあるものの、世界的に期待インフレ率が低下している中では自然な流れだろう。入札の都度発行額を増減額する方が当局のコミットメントが揺らいだとの印象を与えかねない。もっとも、固定利付債の発行額の大半が日本銀行に買い入れられている状況下、名目金利との差により期待インフレ率を測れば、物価連動債と他の固定利付債では、発行額対比の買入量に差があることから月日の経過とともに期待インフレ率は徐々に低下するほか、古い銘柄と新しい銘柄のBEIの差も広がっていく。発行額は現状維持でもよいと思うものの、日銀買入の平準化や日本銀行が物価連動債に対して設定する適格担保の掛け目を引き上げるなどの対応により市場参加者が物価連動債を購入しやすいようにすることが適切ではないか。』

前半は賛成の方々の共通見解ですが、後半の日銀買入ファクターに関してはなるほど確かにとは思うものの、そもそも論として「定利付債の発行額の大半が日本銀行に買い入れられている状況」という方がおかしいのであって、「日銀買入の平準化」というのはまあ言いたい趣旨は理解しますけどちょっともにょる。


『・4,000億円に減額するべきと考えている。一定額を毎回発行することよりも、ニーズに見合った額を発行することの方がマーケットの育成に資するものと思う。通常の固定利付債とは異なり、物価連動債は発行する度にマーケットに供給されるリスク量が増加することとなるため、入札から次の入札までの間に発行額分の新規ニーズを掘り起こさなければならない。5,000億円の新規ニーズを掘り起こすのは難しいと感じているところ、価格が暴落して投資家が物価連動債から手を引いてしまうリスクを考えると、発行額を減額するべきである。いずれにせよ、マーケットの状況に応じた発行額とするためには、入札日の直前に発行額を決定する方がよいのではないか。』

『・11月については、その次の入札が平成28年1月に控えていることも踏まえると、1,000億円程度減額してもよいと考える。当社も物価連動債については力を入れてマーケット・メイクを行ってはいるが、最近は損失を確定させてでも売却したいという声が多くなっている。原油価格やBEIの下落は世界的な動きではあるものの、特定の投資家に依存しているのが実情であり、今後反発した場合でも逆に相応の売却ニーズが見込まれるようなマーケット環境下では、減額した方がよいのではないか。』

まー環境的に今苦しいので減らせという見解も分かるのですが、さっきの指摘にありますように、そもそも論として日銀の固定利付債の買入で名目金利を無駄に低下させているというのが問題になっている可能性もあり、もし追加緩和じゃなくてAPP規模の縮小という話になるとまただいぶ話が変わってくるかも知れませんなあとか思いつつも、そもそも日銀が2年で2%とか大口叩いて全然達成しないのが悪いという話ではあるので、そう考えると日銀ケツ持ちしろというのも理屈として成立しますかそうですか(^^)。


なお、順序逆になりましたが当局の説明の中で、

『・当局としては、物価連動債の市場を育成していくことは国債管理政策上の重要な課題と考えており、そうした観点も踏まえ、11月の発行額について、国債市場特別参加者の皆様の御意見を伺いたい。』

とありますので、そういう点から考えるとちょっとニーズが増えた減ったでホイホイと発行額が変更になるというよりは将来的にはマーケットをそれなりの規模にしていきたいというのがベースにある中で、市場に無理のない範囲内で発行をしていきますよという話ではないかと存じますです、はい。

#気が付けば時間が無いので雑談大会でどうもすいませんでした








2015/09/14

お題「短国買入とか追加緩和ネタ関連雑談とか」

超どうでも良いのですが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NULF0X6KLVR401.html
トランプ氏がミス・ユニバースの単独出資者に、身売り交渉も−関係者
2015/09/13 12:04 JST

ミス・ユニバースをスミスバーニーと空目する位には俺様お疲れのようです。

○市場メモ雑談

・短国買入が意外にも程がありまして・・・・・・・・・・・・・・

金曜の短国買入オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150911.htm
国庫短期証券買入15,000 2015年9月15日
(他のオペは割愛)

・・・・・・・・・(;゚д゚)

えーっとですね、資金需給から考えたら短国買入って今月ろくすっぽ打たなくてもMBの中間目標回る筈で、そうは言っても10月の短国落ちと財政要因があるから9月にある程度買入をして入れておいた方が後が楽になるので、期末要因で需給が逼迫するのに対して邪魔にならない程度の買入が行われるのでしょうな、という見通しになっていた訳ですよ。でもって日銀の短国買入も9月渡しになる一発目の8月28日の買入オファーが8000億円で9月4日の買入オファーを6000億円に減らして来た、という動きであると思われるような動きをしておった訳ですよね。

でまあそこに対して確かに新発の6Mがマイナス入札になったもののその後は伸びず、3Mも100円がオファーサイドというような動きになるなど、応札の札があるのは明確な状態ではありましたが、そこで突如買入額を1.5兆円に増やすのは何なんですかとしか申し上げようがなく、こういう訳のわからん打ち方をするならそもそも前週に買入を減額した意味が分からないですわな。

一応背景として考えられるのは、今月実施する貸出支援オペに関して、この数字自体はある程度の所まで日銀の方では掴んでいる(ヒアリングしているでしょうから)ので、この数字が伸びないどころかうっかりすると途中返済入って減るとか言うような形でMB達成的にやや厳しいかも、というのがあって、ちょうど6Mと3Mの新発債に荷もたれ感がある状態だからこの際買入を増やそうという位しか合理的な理由が考えられませんなマッタクモウ。

しかしまあ何ですな、それって別に貸出支援オペの結果を見てから短国買入を調整すれば良いだけの話で、そうであれば市場の方だって貸出支援の結果が出た所で短国買入の増額を見込む訳ですからある程度の予想がつくというものであって、それなら特段のサプライズにはならないのですけれども、これはどう見ても闇討ちサプライズ状態。

勝手に妄想しますと、金曜の地合いでそのまま短国買入が6000億だの8000億円で入って来ると、6Mと3Mの新発の市中流通在庫がそこそこ残る格好になって、プラスの金利になる可能性が出てくる訳ですよ。でもそうなりますとプラスの金利じゃないと買わないという人が世の中にはいるので、(担保だのショートカバーだのという話はさておき、マイナスファンディングじゃないのに持ちきりでマイナス利回りを購入するのは理屈がねえ)、その人たちが冬籠り明けの熊の如くむしゃむしゃと購入してくる訳で、民間の需要で短国の業者の在庫が消化されてしまうと日銀の短国買入の量が稼げなくなるからマズーとか考えて在庫が重そうなうちに増額したんですかねえとは思うのですが、それって民間の短国需要の前に先回りして日銀が買占めに行くという民業圧迫プレイにも程があるんですけれども何考えているんでしょうね。

さらにもっと意地悪な妄想をしますと、短国金利が入札段階でプラス圏にいますと投資家が普通に新発短国を買ってくる訳でして、日銀としては短国買入を普通に実施するためには投資家に新発段階であまり買われない方が短国買入の札が確保しやすいのでして、それはつまり「短国市場の民間投資家を意図的に締め出してしまう」方が短国買入が推進しやすいという事でもある訳ですよね。でまあそれって普通に日銀による意図的な民業圧迫で、短期資金運用を強制排除しているだけの話なのですが、この強制排除が市場機能の破壊という文脈ではなく、金利の低下による政策効果とか、短期の資金運用が出来なくなったらその分がポートフォリオリバランス効果がでます(キリッ)という理屈を持ち出して露骨な市場からの投資家排除を正当化しようとしているんですかねえ、などとも思ってしまう次第でありまする。

ということで落札結果は、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150911.htm
国庫短期証券買入 22,938 15,002 -0.004 -0.001 59.1
(他のオペ割愛)

応札は2.3兆円ですからそらまあ1.5兆円物理的にはオファー可能なのですが、不意打ちオファーにも程があったのでその後はですな。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/idJPL4N11H2D220150911
2015年 09月 11日 15:26 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利一時0.345%に低下

『レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートは0.052%と低下。国庫短期証券(TB)買い入れは、新発の6カ月物、3カ月物中心に落札されたとみられている。業者間取引で新発証券はしっかり。ユーロ円3カ月金利先物は強含み。』(上記URL先より)

ということでT+1のレートが低下したと出ていますが、1.5兆円の買入が入ってしまいましたので、T+2のGCレートはそら低下するでしょうなあという所でありまして、いきなり短国買入攻撃で需給を想定外に締めてくると今週の1年は当然としても3Mの入札も堅調に推移しちゃいますなあとは思いますが、これで先ほど申し上げたような貸出支援の実施実績が落ち込むというようなのが起きなかった場合、更に何のために短国買入を実施しているのかが訳分からなくなる次第でして、「業者の在庫が重くなってきたらたくさん買い入れる」などというような連想が起きてしまうとそれこそモラルハザード相場を日銀が自作自演しているっつー誹りを免れないと思いますが、まあさすがにそのような話ではないでしょう。

なお、今月の買入分を先週で全部片付けてしまい残りは期末の需要に向けて買入を殆ど入れない、という意味で買入を増額した可能性は多分無いと思いますが一応微粒子レベルでは存在すると思いますが、そういうのは後にならないと分からない話で、後にならないと分からないという事はその前に逆方向に余計な思惑を増やすだけの効果(というかデメリット)しかないのでオペレーション運営としてはいかがなものかと思われますな。うんうん。


#と短国買入だけでグダグダと悪態を並べる粘着クオリティ


・中期ゾーンェ・・・・・・・・・・・・・・

さっきの再掲。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/idJPL4N11H2D220150911
2015年 09月 11日 15:26 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利一時0.345%に低下

『<15:19> 国債先物は続伸、長期金利一時0.345%に低下

長期国債先物は続伸。前場は高値警戒感が浮上する中、調整地合いとなったが、後場は短期筋が好需給を反映して、上値追いとなる場面があった。一部で日銀の追加緩和への思惑が出ていることも影響した。もっとも、来週に日銀金融政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)など日米金融政策イベントを控えていることから模様眺めとなる市場参加者もみられたため、出来高に厚みを欠いた。

現物債は中長期債がしっかり。国内銀行勢の需要とみられており、中間決算を意識した国債残高の積み増しや、国債大量償還に絡んだ再投資が入ったとの見方が出ていた。また、5年債に関しては、きょう実施された日銀オペで残存3年超5年以下の結果が強めになったことが反映されているとの指摘があった。一方、超長期ゾーンは調整地合いとなり、利回り低下が一服した。』(上記URL先より)

長期の話が書いてありますが、それよりもウギャーなのは中期でして、木曜の5年入札はやたら強い結果になりましたし、その後も金利がえっさほいさと低下して金曜の引けは5.5bpという有様でございまして、一方で2年は多分別の要因による需給だと思うのですが1.0bp水準の引けにされていたりしまして、中期ゾーンが妙な盛り上がりとなっております。

まあ何ですな、何に触発されたのか知らんですが急に官邸に近い方面のリフレ派先生がたが追加緩和がどうのこうのとか言い出していますし、そのちょっと前からせっせと追加緩和予想をする何とかストの方々もありという事で、雰囲気的には今年の1月ほどではないのですが、それでも追加緩和観測盛り上がるの巻となっておりまして中期がやたらめったら堅調という展開。

いやまあ別に相場ですからそういうもんですかそうですか、ってなお話ではあるのですが、追加やるにしたって付利下げるというのはMB目標という建付けの中で買入を物理的限界に手前に寄せるだけの効果しかないので、MB目標そのものの建付けを変更しないと難しいですし、大体からして「MB目標」と「実質金利の低下をイールドカーブ全体に促す」という施策をやっているのですから、それがそのまま追加されるのであれば「国債買入の拡大」と「買入平均年限の長期化」が来るのであって、付利下げリスクを見に行くような価格形成するというのも何だかなあという感じではあります。

ただまあ何ですな、追加緩和を食らったとして、買入拡大とか長期化だと直ぐに極端な影響がでるのかというとこれまた微妙ではありますが、一方で付利下げというのは、実際問題として短い所はゼロ近辺の利回りなので付利が下がっても知らんがなではありますが、より長い所になると付利金利がめどとなっている部分に変化が生じるという事になりますので、

ちなみに更にどうでも良いのですが、付利金利が下がるという事になりますと、今月実施する貸出支援の固定金利0.10%が思いっきりやられになってしまいますので、よー札入れんわという事になってしまいますので、そんな所からもMB積み上げを難しくする(ロールの時に期日前返済が入るかどうかは知らん、4年の固定負債というのにALM的な意味があるから)とか、まあ追加緩和ネタは皆さん不幸になるネタですなあということで。


○2%物価安定目標実施のリフレ政策で全てめでたしめでたしという話は何だったのかというネタ

これはwwww

http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/idJPL4N11H3TR20150911
2015年 09月 11日 20:20 JST
UPDATE 2-携帯料金引き下げを首相が指示、家計負担増を懸念=諮問会議

ヘッドラインで吹いてしまったのだが。

『[東京 11日 ロイター] - 安倍晋三首相は11日開かれた経済財政諮問会議で、携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題だとして、高市早苗総務相に対して料金引き下げの検討を指示した。甘利明経済再生相が、会議終了後の会見で明らかにした。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、物価が安定的に2%程度に上昇して世の中の期待もそういう風になった社会では消費も投資も進んでその結果経済は活性化して色々な問題は楽に解決できるようになる、というのが置物リフレ理論だったりこの前サルベージしておいたデフレ脱却国民会議様の結論だった筈なのですが、「家計負担軽減をするために携帯電話料金を下げろ」となりますとそれ思いっきりデフレ政策になるのですが・・・・・・・・・・・・・・

つーかですね、そんな話している側から消費増税は行うし次の増税も実施しますし、大体からして社会保険料この秋からまた上がるとか、そっちの方の家計負担が絶賛拡大するなかで携帯料金をどうのこうのというのが何ともまあという所ではございますな。

携帯料金が下がるとCPIに思いっきり効いてきますから、それは確かに家計の負担に対しては結構なお話で、そういう意味では話は分かるのですが、とにかくインフレ目標で物価2%への引き上げをしようという政策を日銀が推進するなかで物価に盛大に下押し圧力のかかる政策が経済のために妥当、ということであれば、そもそも物価目標とな何ぞやという話になってくると思うのですよね。


でまあ今回の携帯電話料金云々が単なるその場のお話になるのかも知れませんけれども、官邸方面の置物リフレ一派の方はさておきまして、実際の問題意識として「経済に対する実力以上に物価をコストプッシュで引き上げても、それは一時的にしかすぎず、却って経済にマイナスになる」という認識が広がった結果として今回安倍ちゃんの発言が出ている、という事であればそれはそれでインプリケーションはある話とも取れるのがお洒落ではあります。

つまりですね、QQEでは「2年で2%を達成する為になんでも投入」という政策ではあるのですが、そもそも論としてその前に政府と日銀との共同文書というのが麿の最後の時にありまして・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)


『2.日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』

持続可能な物価の安定ですからね。

『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。』

もともとは2%の目標というのは「今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。」ということで、グローバルスタンダードだから2年で(全然達成していないが)2%(全然達成していないが)という話ではないのですな。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』

でまあできるだけ早期にという文言はあるものの、経済の状況によって持続可能な物価上昇率が上がってくるという話になっているので、実際は次の政府の取り組みに対して日銀は本来文句垂れるべきなんですよね。まあいう訳ないですけど。

『3.政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する。』

『また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。』

ということで財政構造改革という話なのですが、ご案内のようにそっちの方はどうなっているのやらという所だったりするのはご案内の通りで、しかも携帯電話の料金下げようとかデフレ政策が来る始末ではあるのですが、まあ個人消費の事を考えたらそらまあコストが下がる分には結構なお話ではありまして、そういう文脈から置物リフレ理論が机上の論議であって、重要なのは2%を急いで達成させるために円安誘導をしてバックワードルッキングの物価上昇期待を狙うのではない、というお話になってきていると、にわかに昔のこの文書が復活(復活もクソも今でも生きている文書ではありますが)して脚光を浴びるのかも知れませんですよね、という想像(妄想成分も相当入っていますが)も起きるわけですよ。

でまあそんなことまで妄想成分を入れて考えると、益々今の延長線上での追加緩和という話ではなくて、中長期的に持続可能な金融緩和政策の実施というような方向にどこかで転換する方がリーズナブルでしょという話になると思うのですが、そこまで視野に入る場合にはここで今の延長の追加緩和ってよーやらんとも思えますがね。

なおどうでも良いですが。
http://jp.reuters.com/article/2015/05/27/boj-iwata-idJPKBN0OC0I520150527
2015年 05月 27日 16:24 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
電気代値下げによる予想インフレ率への影響注視=岩田日銀副総裁

携帯電話が首相の指示で下がっても同じことを言うのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。






2015/09/11

お題「市場雑談&山本先生の追加緩和ネタですか/FED正常化のコミュニケーションはまだややこしそう/BOE結果メモ」

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUGQS06K50YF01.html
野村HD、三菱UFJが販売額で同率トップに−日本郵政の巨額IPO
2015/09/11 00:52 JST

報道で見たところ個人消化が1兆円程度を見込むということですので、IPOの後の市場動向の方が大事でしょうなあとは思うのですけど。

#本日は概ね雑談系で勘弁

○毎度の市場メモ雑談

・3M短国はマイナス入札も売参は100円とな

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150910.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘0毛(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 8.8270%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘8毛(募入平均利回り)(-0.0032%)

平均、最低が前週の3Mと同じ、足切の案分が前回よりも厚くなりまして(というか前回が0.8453%とかの極薄案分)、本日付(昨日の引け)の売買参考統計値平均値単利は0.000%となっておりますな。

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php

ベンダーによりますと100円がオファーサイドらしいのですが、そらまあプラス金利にはビットが並ぶでしょうというところで、今日の短国買入でどの程度のオファーが入るのか、その後の落札状況がどうなるのか、という辺りを見ながらの展開になるんでしょうな、よー知らんけど。

次に申し上げますが追加緩和観測ガーみたいな話とはこの3M入札は全く関係なく推移していますなあという所ですが、まあそもそもがゼロだマイナスだという金利になっているので別世界にも程がありまして、単に日銀買入の影響だけで動いているのは日銀買入の量がフローベースでも残高ベースでも超ドミナントになっているからというお話ではございますな。

ちなみに短国と長国だとそもそものターンオーバーが全然違う(短国の場合基本的には3か月すると主な銘柄の3MTBが1回転してしまうので、その間に投資家のポートに沈んでいる玉が全部償還されてしまうことになりますが、中長期国債だと投資家のポートに沈んでいるものが償還で一掃されるまで時間が掛かる)ので、輪番を推し進めていった場合に、現時点では市場の注目って買入のフローに集中しているのですが、これが残高がどうのこうの的な(銘柄別の残高はさておき)話になるのかどうかっていうのは良く分からんのですけれども、短国買入が進んでいく中の経験からすると、どこかの時点でストック効果が無茶苦茶出てきて、その途端に買入による金利押し下げが一気に進むという事になるのですが、実際問題としては今申し上げたターンオーバーの問題があって短国とだいぶ状況が違うので何処でオペの限界的な話になるのかが今一歩見当がつきませんな。


・5年国債入札でヒャッハー

アイヤー
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150910.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 7兆9,245億円
(2)募入決定額 2兆2,734億円
(3)募入最低価格 100円15銭(募入最高利回り)(0.069%)
(4)募入最低価格における案分比率  63.1297%
(5)募入平均価格 100円16銭(募入平均利回り)(0.067%)

足切0.07%割れは前場引けのオファーサイドよりも強くて事前の市場観測よりも盛大に強い結果になっておりまして、結果出た途端に更に5年とかその近辺の金利が低下して、余計なことにどこぞの無責任おじさんの何様追加緩和発言が登場して更に強いとかもうねという感じでございます。第U非価格がこの有様。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20150910a.htm
6.募入決定額 3,321億円

ぐぬぬという所ではありますが、中期が走って後ろが置いて行かれる格好になったので相場自己実現的に追加緩和ガー的になっているのが実にこうアレで何だかなあという感じではありますがメモメモという所で。


○追加緩和ネタねえ・・・・・・・・・・・・

ご案内のようにこんなのが出てました訳で。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUG3SR6TTDSV01.html
自民・山本幸三氏:追加緩和、日銀の10月30日会合が「いい機会」 (2)
2015/09/10 18:37 JST

『(ブルームバーグ):自民党の山本幸三衆院議員は、日本銀行の金融政策に関し、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定する10月30日の金融政策決定会合に合わせて追加の金融緩和に踏み切るべきだとの認識を示した。具体策として、現在は「年間80兆円」のペースで行っている長期国債などの資産買い入れを最低10兆円規模で拡大することが必要と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

はあそうですか。

『山本氏は10日、ブルームバーグのインタビューで語った。2016年度前半ごろの2%の物価目標達成は「至上命題」と述べ、日銀は「必要な措置を考えるべきだ」と語った。』

MB拡大を実施したら物価が2016年度前半に2%達成確実になるのでしたらそれで良いのかも知れませんが、元々マッカラムルールだか何だか知らんけど最初のQQEの規模で2年程度で楽勝で達成するMB拡大規模とかいう話だったのがそれを超える買入ペースになるわ、MBの額も最初の想定以上に拡大(そらペースは上げるわ2年を超過するだわだから当然)するわという展開になって物価動向がこの状況なのに、更にMBを拡大する場合の政策効果の波及パスについてご教授賜りたいものであります。

『展望リポートに関しては「どういう見通しをするかによる」としながらも、経済や物価に関する見通しは「どうせ見直しをしたら落ちるだろう。その時に何もしないというのはおかしい」と指摘。10月30日の会合は追加緩和の「いい機会だ」と語った。』

いやあ無責任な所から無責任に発言して都合が良くなると手柄顔して登場して都合が悪くなるといちゃもんつけてとか中々結構なご身分でございますなあとは存じますが、まあこういうタイミングでございますので市場が反応してヘッドライン流した方もニッコリという展開ですなあ(棒読み)。

・・・・・・・というのは兎も角として、追加緩和→結局見通し下方修正→またまた追加緩和、となりますと、それはどう見ても逐次投入の追い込まれ緩和な上に、そもそもMB目標という建付け自体に問題があるのではないかと普通は反省する方向になるもんじゃないですかねえと考えますと、本来的に言えば(物価2%達成の見通し時期がまたまた先送りになるのであれば)政策の建付けを再構築すべき時期で、それってまあQQEのマネタリーベース直線一気理論というか、物価は貨幣的現象一本槍というのが敗北でしたねという話になりますけれども、そこは日本語で便利な「転身」とかいうお言葉がある訳でして(−−;、オペレーションの限界を迎える前にQQEの転身というかリニューアルというかQQEレボリューションというか何だか知らんですけれども、そっちに向かう方がまだ妥当だとは思うのですけどねえ。


しかしまあ何ですな、今の政策の延長での追加緩和をするならMB拡大ペースの引き上げと長期国債買入規模の拡大に買入平均年限の長期化(あるいは長い方のレンジを延長)という辺りになるのでしょうが、タイミング的にサプライズの無い形でやってしまうと無駄玉になりそうなので、こうやって事前の煽りが入ってしまうと益々やりにくいようには思えるのですがねえとは思います。


○米国のコミュニケーションもややこしい事になっていますの

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUH9H0SYF02601.html
米国株:反発、薄商いで振れ幅の大きい展開−FOMC会合控え
2015/09/11 05:17 JST

『レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャルの機関株式トレーディング担当ディレクター、ダン・マクマン氏は「あまり材料がなく、市場では売買高や流動性に欠ける状況だ」と指摘。「投資家は様子見姿勢を取っている。激しく変動しているが、誰もその理由が分からない。特に根拠はないのだろう。こうした環境では合理的な判断を下すのが極めて難しい」と続けた。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・orz

何せFOMC直前になっても9月利上げするのかしないのか分からんという状況で、FEDとしては「利上げの時期よりもペースを見てくれ」という事なのかもしれませんが、そら短期のファンディングレートに直結するのが政策金利なのですから、直前になれば「次回利上げがあるのか否か」というので毎度毎度話がややこしくなるのは仕方ないですし、ここまで直前になっても何が何だか分からんというのもあまり見た事がないから市場がこうなるのはシャーナイナイですわな。

でまあどう見てもこれってFRBの金融政策正常化プロセスに関するコミュニケーションが訳分からん状態になっているのが不確実性を出して、中央銀行発のボラティリティ絶賛ご提供という図になっているのですけれども、この絶賛ボラ拡大を受けてFRBが正常化プロセスの着手タイミングを日和る、という事になりますと、それによって更に不確実性が高まってボラが更に拡大する余地が出てくるというのがお洒落というか何というか。

まさにアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態になっている訳でして、もし日和見をするならば一度スクラッチでロジックを再構築した説明をしないとどうしようもない状態になってきているなあ(9月利上げするならスクラッチにしなくてもロジックは回せるとは思う)と思いますに、これは中央銀行の市場との対話という意味で非常に面白い教材を提供しているなあとは思うのであります。


・・・・・・・・とまあそう考えますと、実際には「メジャードペースでの利上げ」を模索しておいた方が市場が落ち着いたのではないかとは思うのですが、アタクシが勝手に想像するに、(1)前回のメジャードペースの利上げは結果としてクレジットバブルの拡大を防げなくて後で多大なツケが回ってきた、というBISビュー成分の入った反省というのと、(2)直近のTaperingトークの際にTaper開始前に金利が盛大にスパイクした反省、というのがあって今回のようなコミュニケーションになっているのかなあとは思っているのですよ。

でまあ(2)の話で言えばTaperingを実際に進めていく所ではそんなに問題が発生していないというのがある訳ですから、やはりある程度の事前予告型正常化策の方が市場の安定化に資するんじゃネーノとは思うのですが、割とそこは頑固に「データディペンデント」を強調するのって背景に(1)的な考えがあって、市場にボラが出るのは致し方なしというか、逆に期待を安定化させ過ぎると、そもそも金利水準が正常化されている訳ではないのだから緩和効果が期せずして出過ぎてしまい、ビハインド気味に進めざるを得ない状況の中で、正常化の進行がビハインドし過ぎることを懸念しているんだろうなあとか妄想しているのですがどうでしょうかねえ。

一応強引にそのアタクシの妄想をベースにしますと、正常化ペースが遅めになる中で期待をあまり安定化させないような政策が延々と実施されるということになるので、そらまあ各市場は毎度毎度振り回されるのではないか、という風に思うのですがさてどうなることやらという所ですな。

なお余談になりますが、日銀の場合どうなっているかと言うと、そもそも執行部ベースでは「基調攻撃」によって全部済ませるというコミュニケーションなにそれ新種のパスタでしたっけ状態になっていますし、QQE導入1年後に大勝利モード(実際は単に消費増税駆け込みで下駄を履いていただけの幻影だったのですが)のときには「マーケットのエコノミストなどが間違えており我々大勝利やウハハハハハ(だいぶ意訳)」とカザフスタンの国際会議で黒田総裁が豪語する位の有様ですので、そもそも論として市場に対する「自分の意見の説明」はあっても「対話」というものは存在しないので、コミュニケーションも蜂の頭も無いという状況。

従って市場の経済物価認識および先行き見通しと、日銀のそれに乖離が拡大していくと更に話がややこしくなり、そこにサプライズ追加施策でも入ろうもんならもっとややこしくなるのですが、もうコミュニケーションでもなんでもないのですな。


○BOE金利据え置きで評決は前回と同じく8-1(メモです)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2015/009.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion

詳細はこちら
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2015/sep.pdf

金利に関しては8−1で、マッカーフィー委員が25bpの引き上げを主張している、という図は同じでございますが詳細版じゃなくて手抜きで最初のURL先の方から引用しますと・・・・・・・・・・

『The Committee set out its most recent detailed assessment of the economic outlook in the August Inflation Report. The aim of returning inflation to the target within two years was thought likely to be achieved conditional upon Bank Rate following the gently rising path implied by the market yields prevailing at the time. Private domestic demand growth was forecast to be robust enough to eliminate the margin of spare capacity over the next year or so, despite the continuing fiscal consolidation and modest global growth.』

『And that, in turn, was expected to result in the increase in domestic costs needed to return inflation to the target in the medium term, as the temporary negative impact on inflation of lower energy, food and import prices waned. In the third year of the projection, inflation was forecast to move slightly above the target as sustained growth led to a margin of excess demand.』

経済の余剰があるという認識は毎度の通りなのですが、物価に対してはあまり警戒モードになっていないように読めると思う。

『The Committee noted in the August Report that the risks to the growth outlook were skewed moderately to the downside, in part reflecting risks to activity in the euro area and China. Developments since then have increased the risks to prospects in China, as well as to other emerging economies. This led to markedly higher volatility in commodity prices and global financial markets.』

一方でダウンサイドリスクに「中国とその他新興国のリスクが8月インフレレポート時点より拡大」という認識を示していて、最初はその金融市場と商品価格に影響の話ですが・・・・・・・・・・

『While these developments have the potential to add to the global headwinds to UK growth and inflation, they must be weighed against the prospects for a continued healthy domestic expansion.』

経済物価見通しに関しても悪影響、という話をしていまして、これは警戒モードかと思わせるのですが、返す刀で「they must be weighed against the prospects for a continued healthy domestic expansion」と来ていてちと楽観じゃネーノという気がせんでもない。

『Domestic momentum is being underpinned by robust real income growth, supportive credit conditions, and elevated business and consumer confidence. The rate of unemployment has fallen by over 2 percentage points since the middle of 2013, although that decline has levelled off more recently.』

『Global developments do not as yet appear sufficient to alter materially the central outlook described in the August Report, but the greater downside risks to the global environment merit close monitoring for any impact on domestic economic activity.』

海外情勢にはclose monitoringという話はしているものの、トーンは「海外問題はあるけど国内が強いのでヘーキヘーキ」というニュアンスの方が強いように(こちらのだけでみると)読めますな。まあここも結構ぶれぶれだったりしますが、米国と違ってそのぶれぶれがそこらじゅうに影響を与える訳ではないのでまあいっかという所なんですかね。










2015/09/10

お題「そういや債券市場サーベイがありました(汗)/白井さんの講演は毎度のアレなのでツッコミ道の鍛錬素材として」

平均株価が7%上がっているのに債券先物は高安10銭そこそこという安定の日本国債大先生ェ・・・・・・・・・・・・・

○市場雑談系

・本日は3M入札ですな

今週は6Mと3Mの入札でございまして、6Mは毎度のオーバーパー入札になっていましたがその後特にショートカバーでヒャッハーみたいなのも無くて若干のマイナス水準で推移しているっぽいのですが、そんな中で3M入札の実施ということで、先週の3Mは100円足切に辛うじて掛かった感じですが、今日の3Mはもうちょっと確りとした100円(ナンジャソラ)にならんもんかねとは思うのでした。

基本的にはマイナス金利での需要って日銀要因を除けば海外次第の所はあるのですが、各種金融規制が進展してくると、今やっている国際規制って基本的な方向が「ポジション取るな系」になっているので、規制要因からみた場合には期末のドル調達とかって今後タイトになる方向になっていきますから、そういう面でも短国のニーズって確りとはするんでしょうなあとは思うのですけど、その一方で発行年限の長期化方向なのと前倒しが進んでいるので短国の発行は減る傾向となっていて(まあ前倒しは単に今年の要因ですけど)、そんなこんなを考えると足元の金利云々は兎も角として、短国に対する需給の基調部分は強くなる方向なんでしょうなあとは思います。ま、その基調部分を盛大にぶち抜けた日銀短国買入があるので訳が分からなくなっていますけどね!!!


・債券市場サーベイ

そういや月曜にこんなのが出ていました(すいません)。

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1508.pdf
回答期間:2015年8月7日〜8月14日
調査対象先数:39先(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち、調査協力を得られた先)


まあ何ちゅうかはあそうですかという結果なのですが、『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)』  というのに対する回答が前月比で横ばい、3か月前比で改善、と出ているのですが、その注記にある『(注)債券市場の機能度は、(2)@〜Fの質問項目への回答内容等を総合的に勘案して、ご回答下さい。』というふうにある『(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論』を見ますと・・・・・・・・・・・・・

『@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。』
→「1か月前から比べた場合」は前回比13ポイント悪化、「3か月前から比べた場合」は前回比2ポイント悪化

って「前回」というのは3か月前の調査です。以下同様。

『A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。』
→「1か月前から比べた場合」は前回比14ポイント悪化、「3か月前から比べた場合」は前回比5ポイント悪化

『B貴行(庫・社)の取引頻度の変化についてご回答下さい。』
→「3か月前から比べた場合」に前回比15ポイント改善

『C貴行(庫・社)の実際に取引した相手の数の変化についてご回答下さい。』
→「3か月前から比べた場合」に前回比13ポイント改善

『D貴行(庫・社)の取引ロット(1回あたりの取引金額)の変化についてご回答下さい』
→「3か月前から比べた場合」に前回比2ポイント改善

『E貴行(庫・社)の概ね意図した価格で取引ができているかご回答下さい。』
→「3か月前から比べた場合」に前回比11ポイント悪化

『F貴行(庫・社)の概ね意図した取引ロット(1回当たりの取引金額)で取引ができているかご回答下さい』
→「3か月前から比べた場合」に前回比15ポイント悪化


・・・・・・・・ということでですね、市場の板の厚みやオファービットのスプレッドが悪化して、いざ取引をしようとした時に企図した価格で企図したロットが捌きにくくなっている、という評価になっているのに、何でおまいら総合判断が改善しているのかと小一時間問い詰めたい結果になっていて非常に訳分からんのですが、どうも自分の所の取引自体が活発になったので流動性が高まったという答えになっているだけのように見えまして、ナンジャソラではあります。



○白井審議委員の講演は相変わらず不毛にツッコミどころが転がっている件について

まーた海外出張してるのか。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150909a1.pdf
日本銀行と欧州中央銀行(ECB)の非伝統的金融政策
ブリューゲル年次総会でのパネルディスカッション「金融政策とセントラルバンキング:世界の見通し」における発言要旨の邦訳

去年もこれに出てたような気がせんでもない。まあ金融政策運営という点でのインプリケーションは相変わらず無い上に、説明がお前それおかしいだろというのが多々ありまして、頼むから海外でズレた話をドヤ顔でして回らないで欲しいわと思う次第ですが、ツッコミ素材として見ればまあ使えないことも無いので廃物利用ということで少々ネタに。

でまあお題の通りでお話は非伝統的政策の比較、という話なのですが、そもそも論として非伝統的政策の導入から拡大に至る過程っていうのは大体その場で何か捻りださないといけないというような感じで投下されていったものの合計な訳でありまして、最初に何もない所からスクラッチで作ったものと違うので、つぎはぎ感が結構あるというのも特徴なのですけど、どうもその辺を斟酌しないで説明しているから話がズレているのと、そもそもの説明でズレているのがありまして何だかなあとしか申し上げようがないです。

でまあそういう事で説明がズレているものなので政策インプリケーション何かあるのかというと多分あまり無いのですが、以下適当にネタにしてみるの巻なのです。


・相変わらず「日本のフォワードガイダンス」の話をしているのは何とかならんのか

最初が『2.日本銀行と ECB の非伝統的金融政策:共通の特徴 』という小見出し。

『日本銀行と ECB が採用する非伝統的な金融緩和手段には、幾つかの共通点がみられます。それらは、国債を中心とする大規模な資産買入れ、将来の金融緩和方針を示すフォーワードガイダンス、条件付きの長期貸出制度の三点です(図表1、参考図表)。』

でまあガイダンス文言の話があるのですが・・・・・・・・・・・・・

『第二の共通点は、日本銀行も ECB も現行の金融緩和についての将来の方向性を示す目的でフォーワードガイダンスを採用しており、シグナリング効果が期待されています。世界的には、低い政策金利を長く継続する見通しを表明することで短中期イールドカーブに下押し圧力をかけ、追加の金融緩和手段とする事例が幾つかみられます。また、フォーワードガイダンスは資産買入れに関する将来の方針を示す場合にも用いられ、(買入れ資産の残存期間にも依存しますが)長期イールドカーブを中心に下押し圧力をかけることになります。』

あちゃー。

『日本銀行の場合、QQE 導入の際に、金融市場調節方針の対象を従来の政策金利からマネタリーベースに変更していますので、FRB のような政策金利のフォーワードガイダンスはありません。従って、QQE(マネタリーベースとそれを達成するための資産買入れの規模・種類のパッケージ)の枠組みに関する将来の方針に対して適用しており、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する、との成果(アウトカム)ベース表現がこれに相当します。また、経済・物価の上下リスク要因を点検するとの但し書きも付随していますので、リスク評価上問題がない限りにおいて QQE を継続していく状況を示したと言えます。』

えーっとすいません、「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」物価安定目標の達成を図るという強力なコミットメントというのがQQEのもう一つの柱(いつのまにか柱にあった2年程度が何処かに逝ってしまいましたが)なのですが・・・・・・・・・・・・・

『既に 2010 年 10 月からの「包括的金融緩和」によって短中期イールドカーブは低い水準にあったことから、このフォーワードガイダンスによってより長めのイールドカーブに下押し圧力をかけることが想定されています1。同時に、2%目標の安定的な持続とは、予想インフレ率を 2%程度で安定させることと同義なので、予想インフレ率の引き上げ効果も想定されています。』

という説明になっているのですが、2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成という(全然守られていない)コミットメントがある以上、QQE政策の継続期間というのはコミットメント通りに逝くのであれば、本来的に言えば2年程度になる筈であって、そうなるとインフレ期待が上昇したらフィッシャー効果を持ち出すまでもなく長期の金利は上昇圧力が掛かるんですけど。

でもってそのインフレ期待の高まりによって上昇圧力が掛かる長期金利に対して大規模な長期国債買入によって市場の国債需給を締めて、その結果として金利低下圧力をかける、というのがQQEのメカニズムな訳でして、フォワードガイダンスが効いて長期金利が下がるのはそもそも論として日銀の物価目標達成へのコミットメントが信用されていないことを意味するんですが、いつまで経ってもこのお方はフォワードガイダンスと言い続けますなあ。ちゃんと勉強してるのかね。


『一方、ECB では、フォーワードガイダンスとして、2013 年 7 月に政策金利に対して適用しており、ECB の主要諸政策金利について現状あるいはそれより低い水準に、長期にわたり(extended period of time)留まることを予想している、と表明しています。2014 年 9 月の金利引き下げの際に、先行きの金利引き下げ余地はないと指摘していることから、現行の低金利水準(例えば、MRO は 0.05%)の維持期間に対する方針として位置付けられます。』

『加えて、2015 年 3 月には、月約 600 億ユーロ相当の買入れの将来の方針についてフォーワードガイダンスを適用しており、少なくとも 2016 年 9 月まで実施することが意図されており、いずれにせよ中期的に2%未満かつ2%近傍を達成する目的と整合的な物価上昇率の経路へ持続的な調整がみられるまで継続される、と言明しています。』

こちらはまあある意味フォワードガイダンスではあるのですが、別にコミットメントをしている訳ではなく、単に現状での経済見通しに整合的な金利政策(あるいはAPP政策)の実施期間の予想を示しているだけの話で、情勢の変化によって反故にされる可能性もありますがなという話。

でまあこれが一応ガイダンスらしく機能するのは、そもそも市場参加者の経済物価見通しがECBの出す見通しに対して少なくとも市場の方が見通しが強い訳ではない、という事に加え、ECBが物価目標の達成時期に対するタイムホライズンを長めにとっている事がある訳で、短期での達成をコミットしている(達成できているかどうかの話は別ですが)日銀と「共通の特徴」とか言われてもナンジャソラとしか思えないでしょうし、そもそもそんな説明をすると「日銀は短期での達成を諦めたのか」という誤認を招きかねないと思うのですけどねえ。


・ECBのマイナス金利の説明も何か微妙である

『3.日本銀行と ECB の非伝統的金融政策の相違点 』という所ですが。

『ECB がマイナスの預金ファシリティ金利を採用した背景』から。

『ECB では 2014 年 6 月にマイナス 0.1%の預金ファシリティ金利を導入し、同年9 月にマイナス 0.2%へ引き下げています。マイナス金利を今日まで維持し続けている背景には、主に 3 つ要因が影響していると考えられます。』

ということで以下ドヤ顔で説明しているのですが、こんなの元々APPやりたくないからマイナス金利を入れてみたものの、イマイチ効かないし、その間にドラギ総裁がバランスシートとか言い出すもんだからAPPを入れないといけない破目になって、そのAPP導入時にマイナス金利解消すればよかったのに、それを引締めと言われてユーロ高に振れるのが怖かったからマイナス金利を解消しそこなって今に至る、という単にそれだけの流れなんですけどね。

『一つ目は、ユーロ圏国債等の発行残高に占める非居住者の保有割合は 5 割を超えており、しかも短期志向の投資家から長期保有目的の機関投資家や外国の中央銀行まで様々です。このため、マイナス金利にあまり影響を受けずにキャピタルゲイン目的で ECB に売却したり、域内の社債・株式に乗り換える投資家も相応に見込まれることです。』

??????

『二つ目の要因は、企業・家計による潜在的資金需要がある限り、ユーロ圏の金融機関がマイナス金利を回避しようと貸出を促進したり、貸出金利を引き上げても貸出を増やせる可能性があります。その結果、信用創造が進み、金融機関がマイナス預金金利のコストを上回る収益を挙げられる可能性があります。』

ますます訳が分からんのだが、貸出を促進しても超過準備は減らないのであって、マイナス金利を回避しようとするのなら超過準備を減らさないと意味がないという時点で説明がおかしいし、潜在的な資金需要があれば貸出金利を引き上げても貸出を増やせる可能性があるとかいうなら、そもそもそういう問題が生じないようにマイナス金利を回避した方が更にお得じゃないのと思いますし、金利を上げたら需要が減るだろとしか申し上げようがないので何を言ってるのかさっぱり分からん。

『最後の要因としては、ユーロ圏では域内のクロスボーダー銀行間市場が世界的な金融危機以降分断された状態にあり、マイナス金利は資金余剰の金融機関の銀行間市場での行動にあまり影響を与えそうにないことが考えられます。』

は?????


・日銀のプラス付利金利の説明を見るとさっきの説明が変なのが更に分かるというお話

次が『日本銀行がプラスの付利金利を維持してきた背景 』である。

『日本銀行では、プラスの付利金利(0.1%)を 2008 年から維持しています。その大きな背景として、そもそも QQE では、短期金利の引き下げ余地がなくなる中で、長期名目金利の引き下げと予想インフレ率の引き上げによって長期ゾーンの実質金利の低下を促すことで、短期金利の限界的な引き下げよりも大きな緩和効果を創出するストラテジーを採ったことがあります。』

へいへい。

『そのうえで、付利金利を維持した積極的な理由としては、まず付利金利がさらに低下すると、資産買入れの目標額を円滑に実施するのが難しくなる可能性が考えられたことです。9 割以上の国債残高を居住者が保有しており、中でも長期保有目的の金融機関も多く、プラスの付利金利を維持することで売却インセンティブが高まる面もあると思います。』

わけわからん。プラスの付利金利は超過準備の保有インセンティブによってマネタリーベース目標政策の実施を円滑化にするためではあっても、それがあるから売却インセンティブというのはさすがに説明が無利筋で、じゃあ付利金利上げたら売却インセンティブが更に高まるとでも言うのかと小一時間問い詰めたい。

『第二に、マイナスの付利金利を設定しても、金融機関がそれに合わせて顧客の預金金利を(既に 0%程度にある現状から)引き下げることが困難な場合、収益の低下を招いて金融仲介機能を損なうリスクがあります。或いは、金融機関が収益を維持しようと貸出金利を引き上げれば、資金需要が減って貸出が伸び悩む可能性もあるように思います。』

欧州が大丈夫で日本はダメという理由is何???

『なお、一部の欧州諸国では、預金ファシリティ金利だけでなく政策(貸出)金利もマイナス水準に設定している中央銀行がありますが、個人預金金利についてはプラスの水準を維持しながら、大口顧客や銀行間市場の預金金利でマイナス水準を設定し、企業向け貸出金利を引き上げる金融機関もあるようです。日本のように預貸比率が 7 割前後の下で貸出競争が激しい状況では、貸出金利の引き上げは難しく、収益の減少となり易い可能性があります。』

それ普通に欧州金融機関でも負担になっていますが、さっきの説明との整合性is何処??

『そして、第三の要因として、当座預金対象先と非対象先の間の裁定取引等を維持することで、銀行間市場の機能をある程度維持しておくことが重要だと考えられることです。また、一定程度の金融取引が維持されればレファレンス金利としての有用性も維持され、金融取引や金融政策判断でも役立ちます2。』

この「当座預金対象先と非対称先の間に差があって裁定取引が発生」っていうのは地雷説明の香りしかしないので止めた方が良いと思いますよ!!!!!!!!!!


・付利を下げてもインフレ期待に影響しないという謎説明

その次。

『より重要な点は、ECB が負の預金ファシリティ金利を導入した 2014 年後半においても、ユーロ圏の予想インフレ率の低下やディスインフレリスクが進行したことから、日本銀行が重視する予想インフレ率の押し上げ効果はあまり期待できないことが示唆されます。』

『以上より、付利金利の引き下げについては、その可能性を否定するものではありませんが、各国・地域の金融市場構造の違いも勘案して考える必要があるように思います。』

いやあの金融政策の波及する時間の話とかはどうなっているのという話なのだが、まあ付利下げの話を否定したい、という所だけはこの講演の中にある唯一の政策インプリケーションだと思うのだが、その説明が無理筋。


・ECBは信用緩和とな

『信用緩和の重要性の違い』という所なのですが・・・・・・・・・・

『もう一つの違いは、ECB の金融緩和政策では信用緩和の色彩が強いことです。』

え???

『最近のユーロ圏では、民間部門への貸出金利も低下しており、民間貸出残高もプラスに転じています。しかし、中小企業向けの厳格な貸出基準や高めの金利、資金のアベイラビリティが限定される等の状態が残るようです。そこで、TLTROによって金融機関の資金調達コストを引き下げて民間貸出を増やし、また ABSの買入れによって市場を活性化して中小企業を含む銀行ローンの証券化の促進を目指しているようです。ECB の政策では、金融仲介機能を完全に回復していない銀行システムに対する信用緩和の意味合いが常に意識されているようです。』

金融政策の効果に関してのECBの説明では確かに貸出関連の金利やアベイラビリティについての話をしているのですが、だから信用緩和を行っているという説明はちょっと・・・・・・・・・・・・


『他方、日本では、世界的な金融危機直後に CP や社債市場で機能が低下し、日本銀行が 2009 年に信用緩和政策としてこれらの資産を買入れるきっかけとなったことがあります。しかし、銀行危機が発生しなかったこともあって金融機関の健全性が概ね維持されており、中小企業にとっての資金アベイラビリティや借入金利は QQE 導入以前から緩和的な状態が続いています。また、現在では、信用緩和政策は以前ほど意識されていません。』

・・・・・・・・えーっとすいません、株式ETFなんぞを盛大に買っているのは日本だけなんですけれども、という所ですが、まあこの部分はETFの一段の拡大的な意識は白井さんの中ではあまり強くないという事を意味する可能性はあるなあと思います。


・インフレ期待云々の話は段々ツッコミ疲れてきたので概ね割愛しますが一か所だけツッコミ

その次が『4.日本とユーロ圏の予想インフレ率の動向 』ということでダラダラと説明が続くのですが、もうだんだんどうでもよくなってきたので一か所だけツッコミ。

『日本とユーロ圏にみられる共通の特徴として、世界的な金融危機直後の一時期を除いて、家計は足もとの物価が上昇したと常に実感していること、将来の物価も上昇していくと予想していることが窺えます(図表 9、10)。消費支出についても、将来の支出を減らすと予想する傾向が共通してみられます。以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです。』

>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです
>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです
>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです

「立てているようです」じゃねーだろおいおいおい!!!という所でして、おまいら物価上昇目標を引き上げてインフレ目標も引き上げて、しかもそれを2年程度を念頭に出来るだけ早期に実施するって言ってるんだから、家計がその状況じゃ困るんだが、「ようです」で済ませてどうするんだと小一時間問い詰めたい。


#とまあそんな感じでいつものようにアレな講演ではありましたが、ツッコミ道の鍛錬には有用なテキストではあります




2015/09/09

お題「市場メモと指標雑談/MPMプレビューというか何というかの雑談を延々と(汗)」

えーっと。
http://www.asahi.com/articles/ASH983K64H98ULFA00K.html
「カードなければ減税ないだけ」 消費税還付案で麻生氏
2015年9月8日12時20分

・・・・・・・・当て馬の案にしても還付に関する事務負担コストやリスクが徴税のメリットを上回るようにしか見えないのを出すというのはどうなのかと、つーか戻し税(戻しで足りなきゃ給付金)の方が圧倒的に楽ではないかと。


○市場メモとか指標関連とか

・6M短国はまたまたマイナスとな

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150908.htm

(3)募入最低価格 100円00銭1厘(募入最高利回り)(-0.0020%)
(4)募入最低価格における案分比率 38.8938%
(5)募入平均価格 100円00銭4厘(募入平均利回り)(-0.0080%)

今週以降も短国買入自体はフロー低水準で推移する筈なのでマイナス金利で大量お買い上げの日銀様は出てこない筈なのですが、そうは言いましても為替絡みとかを含めた海外のニーズはあるようですのでとりあえずマイナス金利で決着しているという相変わらずの別世界モード。

まあ3か月短国は普通にマイナス金利回避になりそうですから期末残高ニーズとか担保ニーズとかであれば3M買っておけばよかろうという話でしょうし、そもそも論としてここからの6Mって基本的に日銀に吸い上げられている銘柄が続くので、投資家が償還折り返しニーズがあまりないのでどういうニーズになるのかが良く分からんですぞな。

とは言いましても、例によって6Mと1Yを買入で仕入れて(?)おきたい日銀様におかれましては今週の短国買入はオファーを拡大してくる可能性もありますから金曜の短国買入までは引っ張られるんじゃネーノというお話なんでしょうかね(ちなみに日本相互証券の引値はマイナス0.3bpだった筈なので他銘柄対比そんなに突出して低い訳でもない)とは思いますが。


・GDP2次速報とな

http://jp.reuters.com/article/2015/09/08/idJPL4N11E08420150908
2015年 09月 8日 11:15 JST
UPDATE 1-GDP4─6月期改定値は年率‐1.2%、民間在庫増で上方修正

『[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日に発表した2015年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は、前期比マイナス0.3%(1次速報値マイナス0.4%)、年率マイナス1.2%(同マイナス1.6%)と小幅に上方修正された。民間在庫の寄与度はプラス0.3ポイント(同プラス0.1ポイント)で、全体を押し上げた。ロイターの事前予測調査(前期比マイナス0.4%、年率マイナス1.8%)を上回る結果となった。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、内容はご案内の通りで・・・・・・・・・

『民間在庫はフローベースでプラスに転換。「原材料在庫」と「仕掛品在庫」が減少傾向を示す一方、「製品在庫」と「流通在庫」が増加した。在庫増は統計上プラスに寄与するが、内容を見ると、製造したものの売れ残りが積み上がっている状況がうかがえる。一方、設備投資は1次速報のマイナス0.1%からマイナス0.9%へと下振れた。財務省が1日発表した法人企業統計で、食料品や鉄鋼業などが減少したことを反映した。』

残念という所で。

『甘利明経済再生担当相は、GDP発表後の記者会見で「設備投資が期待ほど伸びていないのは、経営者が決断していないからだ」と指摘した。』

・・・・・・・・・・・(−−;

ということですが、当日午後に出た景気ウォッチャーがこれですからねえ・・・・・・・・・・


・景気ウォッチャーがあばばばばー

http://jp.reuters.com/article/2015/09/08/idJPT9N10E00U20150908
2015年 09月 8日 14:15 JST
現状判断DIは49.3、前月比2.3ポイント低下=8月景気ウォッチャー調査

『[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日に発表した8月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DIは49.3で、前月比2.3ポイント低下となった。横ばいを示す50の水準を7カ月ぶりに下回った。企業動向関連、雇用関連、家計動向関連がいずれも低下した。』(上記URL先より)

という事で内閣府のサイトはこちら。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0908watcher/menu.html
平成27年8月調査(平成27年9月8日公表):景気ウォッチャー調査

調査結果抜粋はこちら。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0908watcher/bassui.html
平成27年8月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

まずは『今月の動き(8月)』から。

『8月の現状判断DIは、前月比2.3ポイント低下の49.3となった。

家計動向関連DIは、小売関連などが低下したこと等から低下した。企業動向関連DIは、製造業及び非製造業が低下したことから低下した。雇用関連DIは、小幅に低下した。

8月の先行き判断DIは、前月比3.7ポイント低下の48.2となった。

家計動向関連DI、企業動向関連DI及び雇用関連DIは低下した。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、中国経済に係る動向の影響等がみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、シルバーウィーク、プレミアム付商品券への期待等がみられる一方、中国経済の情勢や物価上昇への懸念等がみられる」とまとめられる。』

でまあ数値の方を見ますと、企業関連動向DIの部分では現状判断DIの非製造業が辛うじて50を維持していますが、製造業では現状、先行きとも50を割っていて(ただし製造業は現状が46.4で先行きが48.3なので辛うじて上向き)、非製造業の先行きは50割れとなっているのでぐぬぬという感じですの。

あと、この「物価上昇への懸念」って昨年の11月調査結果以降思いっきり記載されている話だったりするのですが(その前はエネルギー価格上昇への懸念というのがありましたが)、CPIの水準が今のような状況で物価上昇の影響が「懸念」方向で出ているという時点で日銀置物リフレ理論であるところの「物価上昇期待および物価上昇によって投資や消費が促進される」というのが根本的に変じゃネーノというのが(今に始まった訳ではないのですが)示されていますのうとしか申し上げようがない。

つーかまあハードデータは兎も角マインドの方は何とかなっているので、というのが「基調は堅調」ということで意地汚く粘る為の支えだったように思えるのですが、この先どうやって粘るんでしょうかねえ。


○つーことでMPMプレビュー雑談というか何というか

てな状況となっておりますが来週は日銀決定会合という事で一応雑談ではありますが。

まー今の時点で追加緩和がどうのこうのというのはさすがに時期が早いという感じだと思いますが、(今朝は海外株が戻ってきたので一息なのでしょうが)株はズルズル下がるわ為替は微妙に円が上がっているわ(これもまあFOMC次第の面がありますが)という状況になる中で最近はまたまた追加緩和ネタが浮上しやすくなるのはまあそうでしょうなと思われます。

とは言いましても、政策の建付けとして「マネタリーベースの拡大ペースに意味がある」という風になっている以上、追加緩和をやるにしても手段がそれほどないというのが残念な所でして、国債買入のペースを拡大しても良いのでしょうが、出来るのはせいぜい10兆円が限界ですし、ペースを拡大するのは「短期決戦で大勝利可能」という自信がないと中々難しい、というのはペースを拡大すればオペレーション上の技術的限界を手前に寄せることになるのですから当然のお話だと思うのですけどどうでしょうかね。

でもって最近ときどき聞かれたりするのが付利金利の引き下げという話ですが、これに関しては仮に実施するにしても一番最後の手段だと思われます。付利金利下げても別に今のMBが減る訳ではない(日銀が自主的に吸収しなければ良いので)のですが、そもそも金融規制とかの流れの中で無駄な超過準備を積むインセンティブが今後減ることはあっても増えることが無いという規制上の影響がある中で超過準備付利金利を引き下げてしまいますと、MB拡大の反対側にある「誰が超過準備を持つのか」という点において誰も持ちたがらないという事態が発生するので、資産買入オペを実施しながらMB拡大するのが困難になって、こちらの方がオペレーション上の技術的限界を更に手前に引き寄せる効果が抜群なので、これは中々難しいと思うのですよね。

ただ、付利金利の引き下げって見た目としては分かりやすいので、この説が出てくるとやたらと気にする人が(特に上記のようなメカニズムを良く分かっていない海外の人中心に)出てくるというのもこれまた有るので(もしかしたら6MTB入札が堅調だった時にIOERネタが背景にあるのかと一瞬思ったのですが、引値はそんな感じでもないので違うかなとは思います)、どうもこのネタはいつものように出ますなあという感じです。

なお、何故海外の方がやたらIOERネタに反応しやすいかと言いますと、そもそも論としてECBにしてもFRBにしても「資産買入政策」に関してはあくまでも「買入資産」の方をメインに置いていまして、「マネタリーベース目標」は併用していないので、資産買入を行う中でマネタリーベースが増えなくても極端に言えば気にしない(まあそんな事にはなりませんので結果としてはMBも拡大しますが)というお話(ただしドラギ総裁は国債買入を実施する前には「ECBの資産規模を2012年の頭まで拡大」というような話をしていましたが最近はその手の話はスルーしておりますな)なので、「誰が超過準備を持つのか」的な話ってどうもピンとこないのでしょうなあ、というか日本でも短期から遠くなるとその辺の感覚は通じにくいと思われますのでまーそうなるのは分かるのですが。


では国債買入以外に何の追加緩和があるかと考えますと、あとは買入年限の長期化とか、ETFの買入拡大になるかと思われます。地方債買入だの住宅ローン担保証券買入だのという話もお話としては出てきますが、現状でマーケットの流通玉が碌すっぽなくて投資家のポートに沈んでいるものを買入というのは何ぼ何でも実務的に無理があるのであまり考えにくいですわな。

でもって買入年限の長期化ですが、これは理屈としては通しやすくて、「実質金利の低下が効果がある」とか「長期のイールドカーブにより一層の低下圧力をかける」という説明で緩和ですよウヘヘヘヘとやりますと長期国債買入拡大が10兆しかないのかよと言われてもまあ何となくセット販売で使えそうではありますが、これやりますと出口以降の政策が益々ややこしい事になるのが最大の難点でございますけれども、後は野となれ山となれの精神で特攻すればまあ普通に行けるでしょう。

ETFの買入拡大ですが、こちらだけやる説とかもあるようですけど、さすがに「株価が下がって来たのでETF買入だけを拡大します」とかやると品が無いにも程があるので国債買入のMB拡大とセットでおまけっぽく出す方が格好は付くでしょうという風に思います。しかも日銀砲の打ち過ぎで残りのタマが少なくなっているのも買入拡大を後押しするネタに使えるというものです(というかそもそも現在の金融政策決定会合では「次回会合まで」の方針を決めているのに、どこからどう見ても年間3兆円の買入拡大ペースより1か月以上前倒しの勢いでETFを買っているのはディレクティブとの整合性を事務方が逸脱していないのかというのを次回会見で誰か効いて欲しいものです)。

ただまあこちらに関しては出口政策、というか出口あるのかよという感じの政策ではありますので、品がある無いの問題だけではなく、日銀保有資産の毀損リスクが更に高いお話ではあって、平和に出口に向かえれば良いのですが、それよりも出口無しという中で株価がホイホイ下がってしまうと更にマズーな話になって、財政との兼ね合い問題が一層大きくなってくるのでそんなにハードルが低い話でもないと思うのですよね。


・・・・・・・・・とまあつらつら考えると、国債買入10兆円程度拡大と買入年限の長期化とそこにおまけを付けるかのような感じでETFの残高拡大ペースをちょっと引き上げるというのが妥当な線としか思えませんが、今度はそれを行う理屈はどうなるのでしょうねという所です。

つまりですね、どこからどう見ても今のMB直線一気理論を元にした場合にはオペレーション上の技術的限界がそんなに遅くない時期に来る訳でして、それをわざわざ手前に引き寄せる政策というのはそもそも論として実施しにくい面がある、というのはさすがに執行部や与党政策委員の皆様も分かっている(なお師匠やジンバブエ先生を除く)と思いたいので、そうなると「出来るだけ引っ張ってから追加緩和を行う」という話になるとまあ順当に考えると思うのですよね(なおそうでないケースはちょっと後で申し上げます)。

となりますと、どちらかと言えば「日銀がどこまで判断を変えずに意地汚く粘れるか」という方がポイントになると思われまして、まあ今回の景気ウォッチャーにしても「製造業の先行き判断は上向き」とか「雇用関連DIはやや悪化したとは言え50超をキープ」とか色々と意地汚く粘る事は可能ですし、原油価格が反転上昇しないうちは「原油価格ガー」で粘れるし、東大物価指数とかのように順調に堅調な物価数値もありますし、などなど考えるとまだまだ粘ることは十分に可能だと思うのですよね。

つーことで、前も申しあげた気がしますが、日銀の示すメカニズムそのものがダメだろ的なものが出てくるまでは粘るという話になると、原油価格が上昇に転じた場合に物価が上昇しない(というのは今の感じだとなさそうですが)とか、ヘッドラインやコアの物価が目出度く上昇したら消費が大コケして景気の方がコケてしまう、という方がどう見ても日銀的には苦しい筈で、原油が上がらないでヘッドラインの物価が弱めで推移している方が(足元の円安の勢いが修正されるのも輸入物価上昇の勢い修正に繋がりますし)消費がそこまで落ち込まないという点で日銀にとっては想定する景気のメカニズムが試されないという意味で粘る期間が長くなると思います。てな訳ですから、原油価格がアガランチ会長でウダウダして、物価があまり上がらないで実質賃金がプラス水準で推移して消費が持ちこたえると延々と今のままという感じになるんでしょうなと思います。


ただ、これで引っ張っていく事の問題点としては、引っ張り過ぎた挙句に追加緩和の実施となると明らかに「追い込まれ追加緩和」になりますし、それこそ「戦力の逐次投入」となってしまうのが悩みどころでありまして、そもそもMB直線一気理論そのものの波及経路が怪しいなかで追加緩和も結局MB拡大な訳ですから、だったら「サプライズを狙う」という方がまだ効く可能性がある、という考え方も成立しないでもないので、いきなり訳の分からんタイミングで打ち込むというのも思考実験としては考えておく必要があるとは思います。

なお、円安誘導して何か良い事ありましたっけというツッコミは当然ありますし、この前の追加緩和に関して「サプライズ狙いではないか」とか国会で大門先生に追及されて「サプライズ狙いは行っていませんし行いません(キリッ)」とか黒田総裁が答えたという過去の経緯がある中でサプライズ追加緩和を行うというのはこれまたハードルは高いのですけれども、追い込まれて追加緩和をする破目になる位ならフォワードルッキング的(?)に追加緩和のタイミングでサプライズを狙うというのは魅力のある話ではあるとは思います。まあリスクシナリオみたいなもんですけどね。


・・・・・・・・・・とか何とかあまり纏まってないのですが追加緩和のネタを考えてみた訳ですが、基本的に追加緩和というのは負けているから追加緩和な訳ですので、物価が適当に上がった所で勝ち逃げをするのが一番望ましいのでしょうがそれは厳しそうな感じがプンプンですからね。

となりますと、本来は先日来ネタにしている木内さんの話の方がごもっともでありまして、麿ドクトリンに近い方に戻す方が妥当としか申し上げようがないのですが、木内さんの説明って先日来ご覧になってお分かりのように、現状の建付けに対するダメ出しがあまりにも強烈なのと、出している政策提案がいきなり買入拡大ペースの大幅削減となっているので、今の政策建付けからの歩み寄りようが無さすぎるのが最大の問題点であります。

てな訳で、石田審議委員や佐藤審議委員辺りでもうちょっと歩み寄りが出来そうな政策案を作って木内さんも含めて金融三人衆で新提言という形になるとかなり美しいようには思えるのですが、まあ中々そうはならないのかも知れませんけれども、このまま引っ張っても何か良い事があるようにも思えない(さっきも言ったように短期決戦で勝利できるのであれば別に問題はないがそういう状態になっているとは思えん)ので、本来的なべき論で言えばもうそろそろ置物リフレ理論の無理を認めて総退場して頂いて、でも緩和的政策は長期的に行う中でもう少し長いスパンで物価上昇の環境づくりをする、という風にしないと無理がドンドン重なるだけだとは思うのですけれどもねえ・・・・・・・・・・・

#などと延々と雑談ばかりでどうもすいませんでした




2015/09/08

お題「木内審議委員会見鑑賞大会である(^^)」

引き続き木内審議委員ネタ大会でありまする。

○会見録の勢いがあってこっちが能書きを入れる必要があまりない会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509a.pdf

ということで昨日の続きですが、この会見録って木内さんの説明をそのまま文字にしたのでしょうか状態(要旨だから丸まったりすることは普通にある筈なのですが^^)で、しかも文章の切れ目が中々ないという勢いのよさで、下手に能書きを入れにくい位のテンポなのが何とも味わいがある次第。

・既に現在が一定の安定状態であるという認識&フィリップスカーブのシフトアップ論がありましたなあ

この質問は短いので引用するだよ(^^)。

『(問) もう 1 点目は、この挨拶要旨にも書かれていて、かねてからのお考えを表明されていますが、2%物価上昇率目標についての達成見通しについて、ここにも細かく書かれていますが、改めて、今、足許の経済をみて、その辺について簡潔にご説明頂けますか。


これまた例によって答えが1ページ半ほどある(^^)。

『(答) 金融政策の目的は、経済と物価の安定を確保するということであります。量的・質的金融緩和を導入する前は、需給ギャップも非常に開いておりましたし、それを反映して物価もマイナスでした。』

うむ。

『マイナスが悪いということは一概には言えないのですけれども、少なくともアンケート調査などでみられる中長期の物価見通し、これが企業とか家計にとっては望ましい物価の水準だとしますと、それが、色々な主張はありますが、1%くらいのプラスであったことに対して、実際の物価はマイナスであって格差があったわけです。』

しらっと「マイナスが悪いということは一概には言えないのですけれども」というのが入っているのがチャーミング。

『そういう意味では、経済・物価環境ともに決して望ましい環境ではない。それが、量的・質的金融緩和の当初の効果、量的・質的金融緩和というのは、やはり短期間で比較的効果が出やすい、ただ長期間続けていると、だんだん効果が逓減していくという性格のものですし、実際、そうなっているという風に思いますが、それによって、需給ギャップはほぼ解消され、物価も一応、2%という水準と比べると低いですけれども、例えばコアコア指数等でみますと、ゼロから 1%まで、あるいは 0.5%から 1%くらいまでの間にあって、私はこれが今の日本経済の実力と言いますか、構造面からみたときの比較的安定した状態にあると思っています。』

講演の方でも(昨日引用した部分)こういう説明になっていましたが、QQEが短期勝負であるという話と勢いでごっちゃになっている辺りが話し言葉のテンポという奴を感じますな。

『2%の物価目標というのは、経済が一時的に 2%を目指しているわけではなくて、安定的に 2%を目指している。そのためには、経済が比較的通常の状態、例えば需給ギャップがほぼゼロの状態で、2%で安定する必要がある。』

何か勢いで話をしていますな。まあ仰せの事は分かりますが。

『実は需給ギャップというのは、本行の計算で言いますと、2013 年末以降、もう 1 年以上、1 年半くらいあるいはそれ以上、ゼロ%近傍なのです。その時の物価状態はどのくらいかというと、コアコア指数──通常のコア指数ですとエネルギー価格で振れますので──、食料とエネルギーを除いて、為替変動、エネルギー価格の変動の影響を除いてみた場合は、幅広くみると、ゼロから 1%くらいの状態で安定しています。』

為替変動は除けないような気がしますがまあ言いたいことは・・・・・・・・・・・・

『そういう意味では、デフレではなくなってきていますし、比較的安定している状態だと。そういうことで、私としては、経済・物価環境は安定していると。』

という事を言いたいのでしょうな。

『ただ、物価が 2%で安定するためには、例えば潜在成長率がもっと高くなければいけない、日本経済の構造がもっと強くなければいけないということであり、日本銀行としては──これも個人の意見ですが──、経済を安定させる中で、そういった成長力強化の試みを側面から支援していくと、これが今の時点での金融政策の大きな役割なのではないかと。』

とまあこれはこれで有りな話なのですが、QQE導入時に主に執行部ベースで説明をしていたのは当時の推計されるフィリップスカーブの形状から考えると、需給ギャップを改善させることによって物価の上昇をするにしても、2%に上昇するにはそのままでは非現実的な需給ギャップの大幅プラスが必要という事になるので、まずはフィリップスカーブのスティープ化とカーブそのもののシフトアップが起きる必要があって、特に「2%の物価安定目標達成」という意味で考えた場合には、フィリップスカーブのY切片が2%程度となるようなシフトアップが起きないと安定的に2%とはなりませんな、とまあそんな話で、ではどうやってシフトアップするのかというと「期待に働きかける」というお話になっていた筈です。

ちなみにその説明って昨年の春先CPIが1%台に上昇してカザフスタンだかで黒田総裁が「市場の見通しは間違っており我々大勝利(ドヤァ)」とやっていた時くらいまでは思いっきりしていたのですけれども、最近はすっかりその話をスルーしている辺りが実にこう味わいが深い訳でして、政策効果の説明とか物価の見方に関する説明が全然首尾一貫しておらずに都合の良い数字を出してきて「基調は確り」というのが最近の仕様になっているのは皆様ご案内の通りではありますな。

『今積極的な金融緩和をして、効果は薄れているとはいえ、例えば円安株高などを通じて、景気がやや過熱気味に回復したとしても、それが、潜在成長率が高まってない中で、需要が高めに振れれば、人手不足ですとか成長の制約にぶつかって、景気がむしろ不安定になって、景気が後退する可能性もあると思います。』

成長の天井論ですな。

『そうしますと、痛みを伴う構造改革とか、あるいは景気後退期ではなかなか企業が積極的に設備投資をするということにはならないわけです。そういった、構造改革が進まない、企業の設備投資が積極化しないということになると、潜在成長率も高まらないということになりますので、金融政策の役割としては、私が考える役割としては、実力に見合って、決して強くはなくても、安定した経済、金融、物価の環境を長く維持させる中で、そうした成長力強化の試みを側面から支援していくと、それが 1 年とか 2 年とかいう期間ではなく、もっと長い話です。そうしていくことで、経済の実力も高まり、潜在成長率も高まり、物価もいずれは 2%というのが当たり前になるほど強い経済になるということを私どもは目指していると。』

ということで無理のない御尤もな話ではあるのですがどう見ても麿ドクトリンです本当にありがとうございました。

『その上では、量的・質的金融緩和というのは効果もありましたが、一方で副作用も非常に大きな政策なので、そういった副作用を、将来のリスクを取り除いてやることによって、息の長い経済・物価の安定を確保するというのが、実は私どもとしての非常に重要な役割なのではないかというのが私の考えでありまして、それがいわゆる減額提案の背景となる考えとなっております。 』

ということで説明が思いっきり長いのですが、一方で先般来の議事要旨を見ると木内さんの提案に対して毎回いちゃもんつけている人がいて(しかも回を追う毎に段々いちゃもんのトーンが上がっている)、いちゃもんのレベルは議事要旨を見てお察しという内容な訳でして、木内さん今回の会見でやたら勢いよく話をしているのはそのいちゃもんに対する怒り成分も結構入っているのではないかと勝手に推察するのですけれどもどうでしょうかねえ。


・期待に働きかけたのは当初だけという無慈悲な砲撃で執行部を火の海にするの巻

質問がそもそも木内さんをけしかけていますな、なお前半に関しては昨日回答のみを引用しております。

『(問) (前半割愛)もう 1 点は、木内委員がこのように、1 人、量的・質的金融緩和の減額を提案されていることについて、議事要旨に出ていますが、期待に働きかける政策に対して、冷や水をかけるようなものだというような批判も出ているわけですが、』

前後関係で言いますと上で引用した質疑の次がこの質問でして、木内さんの怒り成分を受けてさらにけしかけに来るとか中々お洒落な燃料投下。

『一方で木内委員ご自身は、黒田総裁を始めとする日銀執行部の、とにかく期限を設定して、そこまでの目標実現に向けて何が何でもやれることは何でもやるというような、ある種硬直的な情報発信についてはどのようにお考えなのかという点です。むしろ、悪害・悪弊の方が大きいのではないかというお考えはお持ちなのか、そしてまた黒田総裁を始めとする執行部の情報発信に対して、ボードメンバーの間でそれをよしとされているのかどうか、その辺りをお聞かせください。 』

どう見ても燃料投下ですがそれに対する答え。

『(答)(前半割愛)2 番目の期待に働きかけるという部分は、政策導入当初については、そういう考え方も部分的には私は支持しておりましたが、既に 2 年あるいは 2年半経って、果たして期待に働きかけるメッセージというのは、どれほどの重要性があるのかなと思っております。』

2年経ってとか入れている辺りに強烈なイヤミ成分を感じます。

『特に、インフレ期待に働きかける政策というのは、むしろ消費にマイナスの面も出てきてしまいます。』

講演でも出ていましたがまさに現象としてはそうなっている訳ですよね。所得とか成長とかの期待が高まらない中で物価だけ上昇させるとか通貨の対外価値を減価させるだけの政策を実施しても、それは残念ながら先行きの消費や投資を手前に持ってくる効果は極めて乏しかったというお話で、経済が全体として成長過程にあるステージではない時には有効性にかなりの疑問がある話だったという事でしょうな。

置物リフレ理論の根幹として「デフレマインドがあるから投資や消費に先送りのインセンティブが働く」という話はそらまあだいぶそうだったのかも知れません(実は単に成長期待や所得増加の期待が無いからだったのでは疑惑はあるのですが)けれども、そこから「だからインフレマインドになると投資や消費を前倒しする効果がある」というのと、そのインフレに関して「インフレは貨幣的現象だから日銀がマネタリーベースを拡大するだけでインフレ転換が可能」という話がどうだったのかという社会的実験については既に2年半とか経過してこの有様で、置物リフレ理論自体が成長経済を前提にした話で、潜在成長率がゼロ%台そこそこというような状態の中では惜しくも置物理論は机上のお伽噺に過ぎなかったっちゅー事なのではと。

なお、現在の執行部理論ですと潜在成長率とは関係なく2%目標はグローバルスタンダードで正しい(キリッ)という話なのでインフレ期待に働きかけてフィリップスカーブをシフトアップさせるという理屈には変化がない筈なのでこの木内さんの説明はこれまたマッコウクジラ。

『ですから政策については、一時的には期待への影響を配慮することを否定はしませんが、持続的にはやはり期待に変化を与え続けるのは難しいので、基本的には政策効果というのは、それが実際にどういうチャネルを通じて実体経済に影響を与えるかというと面で言うと、やはり実質金利をどれだけ押し下げるかということ、これについては昨年半ば以降、実質金利は下げ止まってきていますので、限界的な効果というのは出にくくなっています。』

実質金利の効果は木内さんも乗っている話ですが、そもそもインフレ期待に働きかける方が逆効果なのであれば期待の改善で実質金利を下げてもマイナスという話にはなるように思える。

『ただ、そこまでに金利を下げた累積的な効果はまだ残っていますので、政策効果自体はトータルでいうとまだ出ていると。ただそれは、繰り返しになりますが、残高を減らせば累積的な効果も減ってしまうかもしれませんが、残高を減らさずに減額をするということであれば、今まで作ってきた政策効果自体は損なうことはありません。』

『一方で、効果についてはストックで決まる部分が大きいと思いますが、副作用については、フローで決まる部分もあると思います。つまり、国債をいっぱい買うということによって、国債の流動性が落ちてしまうと、あるいはそれによって市場が不安定になってしまうリスクがあるということもあると思います。』

『そういう意味で言いますと、減額によって、効果にはあまり悪影響を及ぼさず、副作用はある程度逓減できる、つまり限界的な効果と副作用のバランスをよくすることができるというのが私の考え方です。』

とまあこういう風に分けているのですが、ここのストックビューとフロービューの部分て良く分からん所があって、現実問題として米国がTaperingトークを行った際にはストックは依然として増えているのに金利がどどーんと上昇してみたりとかっつーのもある訳で(一方でその後金利が落ち着いたのはストックが維持されているから、という考え方も成り立つ)、何とも言い難いものがありますのでこの切り分け自体はちと物事を単純化し過ぎの可能性はありますな。

『ちょっと話が逸れましたが、情報発信については、期待に強く働きかける政策の、ある意味実効性といいますか、どの程度効果があるかは、常に検討・検証していかなければならないのではないかと、個人的には思っています。ボードの中でどういう議論があるかについては、申し訳ありませんが、議事要旨等でご理解頂ければと、それ以上のことはちょっと私の方から申し上げることは控えさせて頂きたいと思います。 』

まあそもそも論として「2年で達成」というのは有耶無耶のうちにすっかり無かったことになって執行部の皆様は頬かむり状態ですし、この調子で情報発信を有耶無耶のうちに誤魔化して行くことになるんではないでしょうか。まあ最後の部分も木内さんの気持ちを拝察いたしますという所で。


・置物理論に砲撃は続く&共同文書の文言って実は麿ドクトリン成分入りなんですよねえ・・・・・・・・

でもって次の質問(つーかこの流れだと同じ人が質問しているのかね????)。

『 (問) 講演要旨に書かれている 2%の達成については期待に働きかけるような現在の金融政策では限界もある、難しいと認識を示されていますが、2%を達成するために必要なその他のツールというのは──潜在成長力を上げるということをおっしゃられましたが──、具体的にはどのような政策を想定されてお話しされているのか、お願いします。 』

という質問なのに置物リフレ理論に十字砲火を浴びせているのがチャーミングな木内さんの答えを鑑賞。

『(答) 先程のお話でだいたい尽きているとは思いますが、』

と言いながら以下話が尽きない(約1ページ)。

『つまり 2%の物価安定目標は日本銀行が掲げている目標ではありますが、それを掲げるに至った経緯を考えますと政府との共同声明があり、政府が財政の健全化と成長戦略に取り組む、一方で私どもは金融政策を通じてデフレ脱却に取り組むという中で出てきた目標なわけです。』

うむ。

『そういう意味では、私の理解としては、共同声明の中でも 2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成するということが謳われていますが、それは、各主体、企業とか家計などが、成長強化に前向きに取り組むと、そしてその成果が表れる中で 2%が妥当になってくるというような文言になっています。ですので、ある意味それが前提になっています。』

共同声明導入当初の麿ドクトリン的な読み方が出来る部分が2年半を経て復活とな!!!!!

『その中で、政府の財政健全化や成長戦略が重要な役割を果たしていくということですし、それがサポート材料になって、企業の先行きの成長期待が高まり、設備投資が増えることによって潜在成長率が高まってくるということがあると思います。』

「物価は貨幣的現象なので」という置物リフレ理論とは違う建付けね。

『ですので、私どもの金融政策以外の部分については、あまり詳細にどういう政策かというのは言えませんが、今申し上げた財政の健全化、規制緩和などの構造改革、そして将来の成長期待への影響を考えると人口対策が重要になってきます。例えば、企業の先行きの成長期待が高まれば──あるいは生産性が高まると──、労働需要が高まる、労働需要曲線がシフトすると賃金が上がる、実質賃金が上がるとそれが物価上昇につながっていくという経路を辿っていくだろうと思います。』

なお、実質賃金が下がることによって雇用が増えて生産のパイが増えるので物価上昇に繋がるという説明をリフレの方はしておられましたですな、うんうん。

『その意味で、物価が何で決まっているかというと、中央銀行が 2%と言ったから皆の期待が一気に 2%になるというのは、ある意味なかなか起こらないというのは既に 2 年半で証明されたわけです。』

>既に 2 年半で証明されたわけです
>既に 2 年半で証明されたわけです
>既に 2 年半で証明されたわけです

十字砲火キタコレ!!

『やはり、生産性が高まる、成長率が高まる、企業の先行きの成長期待が高まる、それによって企業が賃金も上げ、雇用も増やす、賃金の上昇が物価に跳ね返る、ということで将来的には 2%という──2%と整合的な経済というのはかなり強い経済だと思いますが──、高い目標をみんなで目指しましょうというのが、2%の目標の意味です。』

確かに共同文書の方はそういう建付けを前提にしたような書き方もしているのですが、その後の置物リフレ理論では物価は貨幣現象であってインフレとインフレ期待を2%に上げると全て珍重珍重というお話になってしまいましたので、2%の目標の意味そのものが黒田緩和以降変質しているのですけどね!!!!!!!

『そういう意味では、そうした構造変化がどういうペースで起こるか、なかなか予見しがたい部分がありますので、2%目標をいつ達成できるかの判断は難しいと思います。そういう意味で、私としては中長期の目標として位置付けることが必要だと思います。短期的に達成しようとしますと、例えば無理に景気を過熱させるとかですね、あるいは円安を通じたコストアップ型の物価上昇になってしまって、むしろ経済の安定を損ねてしまいます。』

「例えば無理に景気を過熱させるとかですね」という部分が思いっきり文字起こし状態でワロタ。

『私どもの目標は物価を上げることではなくて、実体経済を改善させ、人々の生活をよくすることが目標ですので、物価だけに無理に焦点を当てた政策は本末転倒で、国民の生活の改善にマイナスに働く可能性があるということですので、中長期の目標として柔軟に位置付けていくのがいいのではないかと考えています。』

質問は「2%を達成するための政策とは」だったのに延々と置物リフレ理論の砲撃大会になっているのが普段どれだけ政策委員会でギスギスして木内さんストレスをためているんでしょうかというのを拝察する次第で、誠に同情の念を禁じえません、ってアタクシのような三下に同情されても意味がありませんかそうですか。

あと質疑の中では「円安に無理に振っても地方や中小企業などには弊害」というネタと米国金融政策の話がございますが、その辺りはパス致します。


○関連してちょっとだけメモ

この木内さんの講演&会見を見ながら仰せのとおりとか言いながら感じているのですが、最近元々が置物リフレ派でQQEの時に大勝利的な話をしていた何とかストの各位が退却というか転向モード(踏みとどまってマネタリーベースの拡大ガーという方もおいでですが)になっているのが実にこう味わいがある訳で、どこの誰とは言いませんが先般は「米国の適正な物価水準が2%ならば日本のそれは1%台前半」「今の日銀のMB拡大ペースは過大」とか言い出す方まで現れるという事象を拝見するに、何というか人の世の浅ましさというものを感じて山奥に庵でも結びたくなる(結ばないけど)始末でありまする。

昨年の場合は「消費増税ガー」という事で話を済ますことが出来たのですが、今年に入って起きているのってまさに木内さんが上記で指摘しているように「生活物価を中心とした物価上昇の中で消費が伸びてこない」「企業は最高水準の収益で円安水準になっているのに国内設備投資はその状況に見合っていないし、賃金もその状況に見合うような力強さに欠ける」という事でありまして、それはつまり「円安輸出ドライブでトリクルダウン」という話と「インフレとインフレ期待を引き上げて投資や消費を喚起する」というメカニズムの根本部分が本当にワークするのか、という話になるのですからそらまあ話は去年よりも本質的ですわな。

と申しますか、実際問題としては去年も同じことだったのが消費増税に伴う駆け込み需要とその反動および消費増税に伴う消費者から見た場合の実質的なコストプッシュ部分が混じってしまい判明するのが遅れたという事なのかもしれませんが、まーしかしネズミが泥船から逃げるかの如き動きに爆笑の発作を禁じ得ないという所でしょうな。

そんな中でそういえば思い切り「デフレは貨幣現象だからマネーを増やせば解決でインフレにすればめでたしめでたし」な話がこんな所にあったなあとか思いながら見ますとすっかり置物理論から逃げておられる方も散見されるのが味わい深いというものです。
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/2010/08/post-70ab.html(直リン自粛)



2015/09/07

お題「市場とか統計関連メモメモ/木内審議委員大会である(なお明日に続く)」

八丈島のきょん!とか言っても最早ぽかーんとされるのでしょうなあ、という位には昭和脳なアタクシ。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/20150904-OYT1T50029.html
脱走した?キョン、南房総で大繁殖…駆除進まず
2015年09月04日 10時28分

○短国買入とか毎勤統計とか雇用統計とか

・短国買入減額とな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of150904.htm
国庫短期証券買入 6,000 2015年9月8日

ということで8000億円のままだと多いかなという感じでしたので、減額は妥当な線ですかねという所ですな。なお結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150904.htm
国庫短期証券買入10,805 6,001 0.000 0.002 91.1

応札が妙に少ない気がするんですが、前日の3M新発に関しては100円足切になったのでそこそこ捌けたからとかそういう事なのかどうか良く分からんではございますな。最初からバカスカ入れてこないという事もあるかも知れずで、よー分からん。レポとか現先の金利は一頃の高かった所よりは下がって推移となっているとかそんな感じだと思われるので、応札額ほど玉がカラカラな訳ではないれすが、とは言って玉が盛大に余っている感じでもないですな。

つーことで今週は火曜に6Mで木曜に3Mとなりますが、6Mがオペ狙いヒャッハーになれるのかどうかでも注目しておこうかと思いますが、さすがに3Mはオペヒャッハーとやるのは無理があるのではないかということで平均100円足切100円位久し振りに見せてほしいものですな。


・毎勤統計ェ・・・・・・・・・・・・・・

統計本チャンページははこちら。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/2707p/2707p.html

ですが手抜きでロイターニュースから。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/idJPT9N10700920150904
2015年 09月 4日 16:12 JST
訂正-7月実質賃金は前年比+0.3%、27カ月ぶりプラス=毎月勤労統計

『[東京 4日 ロイター] - 厚生労働省が4日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比0.3%増となり、2013年4月以来27カ月ぶりのプラスとなった。ボーナス支給の遅れで6月には大幅なマイナスとなったが、再びプラス圏に浮上。物価を上回る賃金の伸びがかろうじて維持された。現金給与総額(事業所規模5人以上)は前年比0.6%増の36万7551円だった。増加は2カ月ぶり。

厚労省では「6月は特別に支払われる給与(ボーナス)に振り回されたが、名目賃金はプラス基調で推移している」と判断した。』(上記URL先より)

ということですが、6月が特別に支払われた給与▲6.7%が影響して現金給与総額▲2.5%に落ち込んだ分が戻ってくるようなプラスにならないと帳尻が合わないと思うのですが(従って市場予想は現金給与総額の予想が+2.0%位で、+0.6%では市場予想よりも低いという結果)、6月に支給がズレた筈の給与はどこに逝ってしまったのでしょうかねえという所ではございます。

まあ何ですな、アタクシが勝手に唱える珍説としては「政府がうるさいので世間体もあるからおまいらの基本給を2年連続で引き上げてみたが、その分賞与の支給原資が無くなったから今年の賞与は総額を削減な」というような感じでは無いかと思うのですが、消えた夏季賞与とはこれまた薄ら寒い夏の日の怪談ではありますな。

つーかですね、この程度の実質賃金上昇ってことは2%の物価上昇になったら盛大に実質賃金がマイナスになりますし、大体からして1%程度の物価上昇にも耐えられるのかよという悲しい状態な訳でして、企業収益が最高水準を絶賛更新するなかで設備投資の伸びはまだパッとしないわ実質賃金はこの有様わということで、そもそも論として企業が高収益を上げたらトリクルダウンという話は一体全体なんだったのかと小一時間問い詰めたい結果になっておりますな。


・雇用統計

またまたロイターより。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/usa-economy-fed-idJPL4N11A3TA20150904
2015年 09月 5日 05:14 JST
米8月雇用統計、9月利上げへ決定打欠く 今後の市場動向が左右か

『[ニューヨーク/リッチモンド(米バージニア州) 4日 ロイター] - 8月の米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、連邦準備理事会(FRB)が9月利上げの是非を判断する決定打を欠いた。そのため今後数週間の金融市場のボラティリティーが、利上げの行方を左右する可能性がある。雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17万3000人増と、予想の22万人増を下回った。だが6月と7月は当初発表から合わせて4万4000人の上方修正となり、賃金の伸びも予想を上回った。失業率は7年半ぶりの水準となる5.1%に低下した。』(上記URL先より)

ということで雇用統計はNFPのヘッドラインだけ見た時は弱いのかなと思いましたが、良く良く見ますと実にこう中途半端な結果になっておりまして、利上げしようと思えばできるし、先送りしようと思えばできますが、どっちにするにしても「その次」以降への対処まで考えてある程度整合性のある説明をしないといけないと思われますので、これは悩みますなというか腹の括り方次第かなあという結果。

まあ25bp如きの短期金利引き上げでコケるというのも違和感あるのですが、中国辺りが諸々のコントロールを回せないような流れになって勝手に自爆とかした時に米国利上げのせいとか言われるのもシャクですし、かと言ってここで利上げしないとなると先行き更に利上げの理由をでっち上げるのが難しくなるので、結果としてはまたまた低金利緩和政策長期化相場ヒャッハーでサーチフォーイールドが金融不均衡という話(すでにそうですという話はさておき)だったりするので、どちらにしてもリスクはあるなあとは思います。


○木内審議委員講演ネタ続きである

金曜にスルーした辺りをまずは参ります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150903a1.pdf


・QQEのプロコンに関して詳しく

『(2)「量的・質的金融緩和」の効果 』と『(3)「量的・質的金融緩和」の副作用』という小見出しから。

『まず、「量的・質的金融緩和」による効果については、日本銀行が本年5月に公表した「「量的・質的金融緩和」:2 年間の効果の検証」の中でも示しているように、実質長期金利の低下を通じて、国内民間需要を増加させ、国内経済全体にプラスの波及効果をもたらし続けている点にあると考えています(図表 12)。また、これまでに累積した政策効果は、既に経済にしっかりと定着してきているとみています。 』

ということで評価は実質金利ルートです。

『この点について、私自身は、以下の3つのギャップの縮小度合いに照らしてみても、明らかであると考えています。』

ほう。

『第一に、経済が需要不足の状態にある場合、需要面に働きかけて需給ギャップを解消させることが金融政策の重要な役割と考えられます。先にみたように、日本銀行の試算によれば、需給ギャップは 2013 年末頃に概ね解消され、その後も中立的な状態が維持されています。』

この中立な状態が維持というのも木内さん的にはポイント。

『第二に、わが国では、長い間、企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率が概ねプラスで推移してきた一方、実際の物価上昇率は低迷してきたため、望ましくない経済環境にありました。「量的・質的金融緩和」導入後、中長期の予想物価上昇率と実際の物価上昇率のギャップは縮小しました。』

ほほう。

『第三に、こうした需給ギャップの縮小や物価上昇率の高まりを受けて、テイラー・ルールに基づく政策金利の水準はマイナスから0%近傍まで上昇し、事実上0%近傍にある実際の短期金利とのギャップが概ね解消されたとの試算も得られます。このことは、「量的・質的金融緩和」によって、ゼロ金利制約の影響が克服されてきた可能性を示唆していると思います。 』

QQEでゼロ金利制約の影響を克服とな。

・・・・・・・と、ここまでは効果なのですが、同じ効果の説明の中でこんな話が展開されるのだ。

『もっとも、2014 年半ば頃からは、政策効果の主な源泉と考えられる実質長期金利の低下が一巡しているため、追加的な効果は逓減してきていると考えます(図表 13)。名目金利を 10 年国債利回りでみると、昨年までの低下基調は一巡しつつあるように思います。こうした動きは、海外での金利動向に影響されている面があるとは言え、近年の日本国債のタームプレミアムの著しい低下が既に限界に近づいているといった国内要因にも根差していると思います。』

効果逓減キタコレ。

『一方、中長期の予想物価上昇率については、各種サーベイや市場指標でみて足もとまで大きな変化はみられず、2%の物価安定目標と整合的な水準までには依然として距離があるもとで、比較的安定的に推移しています(図表 14)。』

ここでも予想物価上昇率ですが安定推移という認識。

『この先も、世界的にディスインフレ傾向が根強い点も踏まえると、期待に働きかけるといった日本銀行の政策姿勢のみで、中長期の予想物価上昇率を継続的に高めていくことは困難であるとみています。 』

執行部砲撃キタコレですが、執行部への砲撃は会見の方が凄いのでお楽しみ(?)に。


ではプロコンのコンの方に参ります。

『「量的・質的金融緩和」の副作用については、潜在的な要素が強いことから必ずしも現時点で明確になっている訳ではありません。』

明確になっている訳ではないとな。

『もっとも、副作用については、将来どこかの時点で顕現化すれば上手く対応することが難しく、手遅れになってしまうリスクには十分注意する必要があります。』

(;∀;)イイシテキダナー

『そうした特性を踏まえ、私としては、日本銀行が国債を大量に購入し保有することによって国債市場を過度に歪めることから派生する様々な問題 ― 国債市場の流動性や価格発見機能といった市場機能の低下など、金融システムの不安定化に繋がりうる潜在的リスク ― を特に注視しています。 』

まあ短国市場はすっかりそんな状態になってしまいましたがね!!!!!

『例えば、国債市場の流動性が著しく低下すれば、ショックに対する耐性が低下し、国債市場のボラティリティが高まるなど、市場が不安定化しやすくなります。特に国債価格は、様々な金融・資産価格形成に影響を及ぼすことから、国債価格の大幅な変動が広く金融・資産価格の見直しに繋がり、それが金融・経済に深刻な影響を及ぼすリスクが蓄積されている可能性もあります。』

という話を置物リフレ派系学者に幾らしてもまあ話は通じないどころか国債市場関係者のポジショントークとか言い出しかねない始末で誠に遺憾であります。

『また、長期国債の大量購入に伴い、中央銀行による財政ファイナンスとみなされるリスクがより高まる可能性や、国債市場の安定が今後も保たれるとの過度な期待から、金利による財政規律メカニズムが損なわれるリスクについても留意する必要があります。』

うむ。

『さらには、国債は無制限に存在する訳でなく、また日本銀行が発行済みの国債を市中から全て購入できるわけではないことを踏まえると、国債買入れ策の持続性の問題がいずれ表面化する可能性もあります。国債買入れの限界がいつ生じるかを予見することは非常に困難ですが、仮に国債買入れに支障が生じるような事態が突然生じれば、金融政策に対する信認の低下や先行きの金融政策運営に関する不確実性が急速に高まることで、金融市場の不安定性が一気に高まることも考えられます。 』

仰せのとおり。

『また、「量的・質的金融緩和」の副作用としては、このような国債市場に関わる問題に加え、将来、金融政策を正常化する過程で、日本銀行の収益が悪化し、自己資本の毀損や国民負担の増加へ繋がる可能性を懸念しています。』

ですなあ。

『例えば、日本銀行が保有する国債残高を償還見合いで減少させていくにつれて利子収入が減少する一方、累積した超過準備に対する利払いが増えることによって、日本銀行の収益環境が悪化し、自己資本が毀損する可能性があります。』

ここの表現は適切ではないと思われる次第なのが今回の講演の一番惜しい部分でして、保有国債が減少すれば超過準備も減るのだからそこの部分ではツーペーな話だし、上記の言い方だとそもそも正常化が出来ないという理屈になるので話が変。問題になるのは日銀の保有する長期国債の購入時利回りに対して金融正常化の際に大量の超過準備を持ったままにしておくには常設預金ファシリティを使って金利を上げることになるので、その時にファンディングコストと保有長期国債利回りの逆鞘問題が発生するのですな。、

『こうした事態が生じると、日本銀行の財務の健全性に対する不安が生じて、通貨価値の安定を損なう可能性があるほか、国庫納付金の減少や日本銀行への資本注入などを通じて最終的には予想外の国民負担増に繋がる可能性も念頭に入れておく必要があります。 』

結論は然り。

『こうした副作用は、「量的・質的金融緩和」の継続とともに逓減することなく増加していると考えています。また、「量的・質的金融緩和」は正常化に着手してもその過程を完了するまでに相当の時間を要することを踏まえると、先行き相当な期間に亘って生じうる副作用を十分に考慮し、伝統的な金利政策と比べても、よりフォワード・ルッキングに政策運営を進めることが重要です。』

ほほう。

『金融政策の副作用は、他の経済政策と比べて、実際に目にみえるかたちで顕現化するまではみえにくいという特徴があると思います。そのため、日本銀行が政策の副作用について広く丁寧に説明するとともに、それら副作用に細心の注意を払って政策運営を行っていることを対外的に示すことで、政策への信頼感が高まるとともに、政策効果を高めることにも繋がると考えています。 』

しらっと執行部に爆撃を加えているのがお洒落ですね。


・2年で2%を真っ向否定(まあずっと真っ向否定していますが)の説明もだいぶこなれてきました

その次のプロコン比較考量部分は金曜にネタにしましたので飛ばして『(5)「物価安定の目標」の実現に向けて 』というコーナーに参ります。

『私は、これまで述べてきたように金融市場調節・資産買入れ方針の修正(資産買入れ額の減額等)提案を行っていますが、それに加えて、2%の「物価安定の目標」の達成時期を2年程度と限定せず、「中長期」の目標と位置付けることを提案しています。 』

それは存じております。

『日本銀行が掲げる2%の「物価安定の目標」とは、物価上昇率を一時的にではなく安定的に2%程度で持続させることを目指すものです。その実現のためには、企業や家計が経済活動の前提とする中長期の予想物価上昇率が2%程度に達し、かつその水準で安定することが必要条件になると考えています。』

ということで、さっき需給ギャップが安定的にゼロ近辺で予想物価上昇率も安定推移という話をしていたのの伏線が回収されます。

『また、企業や家計の中長期の予想物価上昇率は、日本銀行が掲げる物価目標の水準や、財・サービスや労働市場の需給関係、実際の物価上昇率の動向などの要因よりも、潜在成長率や労働生産性上昇率など供給側の要因、いわば経済の実力とも言える成長力によって決まる部分が大きいと考えます。』

QQEで期待に働きかけてフィリップスカーブをシフトアップする(そういえば最近そのネタが都合悪いのか何だか知らんけどフィリップスカーブの話をしなくなりましたなあ日銀執行部は)という理論に思いっきりダメ出ししておりますが。

『この点から、私自身は、2%という物価目標水準は、現時点では日本経済の実力をかなり上回っていると思います。したがって、物価上昇率の基調を高めるような構造変化が一段と進まない限り、金融政策のみで安定的に2%の物価目標を実現することは、現時点では難しいと考えています(図表 15)。こうしたなか、短期間で経済の実力以上に物価を押し上げようと過度な緩和状態を続ければ、経済・物価の安定をむしろ損ねてしまうリスクがあると考えています。 』

というお話ですな。

『また、経済の実力を高めるためには、企業の技術革新とそれを生産性向上に繋げる設備投資の積極化が必要となります。企業の国内での設備投資活動を積極化させ、資本ストックの蓄積を通じて潜在成長率の上昇に結びつけるためには、企業の中長期的な内需の成長率見通しを高める施策も必要となります。この点から、中長期的に内需拡大の障害となりうる人口減少や巨額な政府債務といった構造問題への対応も重要です。また、財政健全化に向けた取り組みは、金融市場の安定維持を通じて、「量的・質的金融緩和」の効果が最大限発揮される環境を整えるとともに、将来的には、「量的・質的金融緩和」の円滑な正常化を可能にさせるという面からも重要です。 』

要するに経済の実力を上げる施策をしろと。

『既に述べたとおり、金融政策に本来期待される役割に照らして、「量的・質的金融緩和」は相当の成果を挙げたと考えます。こうした現状のもと、経済政策全体の中で金融政策が今後担うべき役割は、良好な金融環境の維持を通じて、生産性上昇率や潜在成長率が2%の物価上昇率と整合的になる水準まで高まるよう、政府や企業の取り組みを側面から粘り強く支えることに重点を移していくことであると考えています。』

金融政策だけで経済の実力は上がらないが、経済の実力を引き上げる施策を打っている間に金融環境を緩和的にすることによってサポートをしていくと。

『そのためには、金融市場の大きな混乱に将来繋がりうるような金融緩和の副作用を軽減し、先行きのリスクや不確実性の低下に努めることで、景気が現在の経済の実力(潜在成長率)に見合ったペースで、緩やかながらも息の長い回復を続けていけるような政策運営を行うことが重要です。現在私が提案している金融市場調節・資産買入れ方針の修正は、こうした考え方に基づいたものであり、2%の物価安定目標実現のためには、この方が近道であると考えています。』

という説明は決定会合でもしていると思われるのですが、MPMで木内さんに妙に突っかかっている人(だいたい想像はつきますが)の見解みたいなのが議事要旨に出ているのを見ると、まったくそういうのを理解しようとしないでいちゃもんつけているだけにしか見えないですよね(−−)。


・硬直的な運営はイカンという砲撃が最後に

『また、今後の金融政策運営にあたっては、日本銀行の金融政策運営の枠組みである「2つの柱」をこれまで以上に意識し、柔軟な政策運営を行う必要があると考えます。』

2年で2%ではないのだからそうなりますな。

『具体的には、第1の柱では、先行き2年程度の経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しが、各時点での日本経済の実力に照らして妥当であるか、その都度点検します。この点に関連して、金融政策を通じて2年程度先に目指すべき物価上昇率は、政府や企業といった各主体の取組みによって潜在成長率並びに持続的な物価上昇率の水準が高まるにつれて、徐々に高まっていくと考えられます。その水準は中長期的には2%程度に達する可能性もありますが、その都度、各時点での経済の実力に見合った妥当な水準を踏まえて、政策運営を行うことが重要であると考えます。』

2%は中長期目標と。

『また、第2の柱では、より長期の視点から、物価安定のもとでの持続的な成長を実現するとの観点から、政策運営にあたって考慮すべき様々なリスクをつぶさに点検することが重要です。その際、短期的な経済・物価情勢のみに目を奪われることなく、金融システムの不安定化に繋がりうる中長期のリスクに十分注意し、長い目でみた経済・物価の安定確保を図るといった視点が重要となります。そのことは、中長期的にみて国民経済の健全な発展に資するとともに、将来に亘って、日本銀行の政策の信頼性の維持・向上に繋がるものと考えます。』

今の執行部は短期的な物価しかみていないと仰せですね!!!!!


とまあそんなことで積み残し分もこんなにあったのでした。


○木内審議委員会見がこれまたボリュームが多いのだが論点の整理が出来ている&執行部に無慈悲な砲撃を連発

とにかく今回はとんでもなく長いので多分2日に分けないとしんどいです(汗)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509a.pdf


・中国経済について

『(問) 2 つございまして、世界・日本経済で今何が起きているか、どうご覧になっているかということと、ご講演でも触れられた政策提案について教えて下さい。具体的には、現在世界市場で起きていること、商品市況の暴落と中国からの資金流出、中国の通貨の切り下げ──その後切り下げは中断しましたが──、世界的な株安リスクオフ、これらの日本経済の景気・物価への下押しの可能性とそのマグニチュードというか、腰折れするほどのものなのか、そうではないということなのか、現状での分析をお願いします。それと、そういう状況でも、4 月以降、テーパー提案をされているというようなお話でしたが、市場的に今大丈夫なのかという疑問がございまして、大丈夫なのかどうか、そこもお願い致します。』


ということで中国経済の部分をまずは引用するのだがこれが超長い。


『 (答) 確かに足許では世界の金融市場が俄かに不安定になっているということですが、一方で実体経済については様々な問題を抱えています。特に、中国は色々な構造問題を抱えておりますが、金融市場と同様に、足許で実体経済、世界経済、特に中国経済が、急激に悪化しているということではないのかなと思っています。』

うむ。

『中国発の世界的な金融危機というのはなかなか起こらないだろうと思います。それはやはり、中国は実体経済としては世界と非常に結びついていますが、金融市場としては世界とやや遊離された、乖離された部分が依然としてありますので、そういう意味では、中国発の金融危機というのは起こりにくい、しかもグローバルにみますと、かなりの緩和状態が続いているという中で金融危機はなかなか起こりにくいとは思っています。』

『一方で、より注意しなければいけないのは、中国経済による世界の景気悪化です。世界の株式市場が中国の株式市場と連動して非常に不安定になっているのは、まさに中国経済が世界経済の大きなリスクであるということと、それに対し、中国当局が政策対応で上手くそうしたリスクを軽減できるかどうかに対する心配が浮上しているということが挙げられるのかと思います。』

中国の金融市場はまあ勝手にやってろという所ですが実体経済の方はリスクとして認識と。

『これにつきまして、私自身の考えは、中国経済自体は従来から減速をしてきており、もちろん、潜在成長率が下がるに応じて成長率が下がるのであれば、これはニューノーマルということで、望ましい成長ペースの鈍化なのですが、どうも昨年から今年にかけては、この潜在成長率を下回る、つまり需給ギャップが悪化するような形での減速が起きているのだろうなと思っています。足許で急激ではないにしても、昨年からそういう状況になってきているということで、従来よりも下振れリスクが出てきているのかなと思います。(以下割愛) 』

ということで中国の成長鈍化のペースが速まっているようにみられるので下振れリスクである、という話になっております。更に説明が続くのですが長いので途中を割愛しまして・・・・・・・・・・・・・


・気が付けば執行部に砲撃モード

上記質疑応答の続きです。

『(答)(前半割愛)日本経済への影響ということですが、既に今の時点で日本経済への下方リスクになってきていると思っておりますが、今申し上げた形での政策の変更があれば、年後半、あるいは来年に向けては少し安定化していくのかなと思っています。日本経済全体としては、4〜6 月期にマイナス成長になり、7〜9月期は持ち直してはいるのですが、あまり強くないという意味では、非常に冴えない動きを続けているということです。』

ということで中国の影響の話の続きなのですが・・・・・・・・・・・・

『私自身は、この中国等を原因とする輸出環境の悪化という要因と、一部はやはり値上げ懸念による消費の弱さ、この 2 つが確かに景気の足を引っ張っている部分があると思います。』

>値上げ懸念による消費の弱さ
>値上げ懸念による消費の弱さ
>値上げ懸念による消費の弱さ

『一方で、過去の累積された金融緩和の効果も部分的には効いていますので、ややこれらがバランスする形で、経済の安定が大きく損なわれるということではないのかなと思います。』

うむ。

『ただ、期待されているほどではないというのは、期待自体が過大な部分が大きいのかと思います。』

!!!!

『つまり、日本経済の潜在成長率は依然としてかなり低いということと、金融緩和の効果がそれほど絶大ではないということ、その 2 つを考えれば、概ね、その過大な期待の方が強いのであって、経済・物価の実態の方は、比較的安定した状態にあるのかなと思っています。』

先程の講演の中にもありました安定状態ですね。


・政策対応の話だがQQEって元々短期決戦というのが執行部の話だと思うのでこれはマッコウクジラですな

『最後に、政策対応についてですが、これは従来から申し上げている点ですが、金融政策の目的は何かというと、中長期的な経済・物価の安定を確保するという点にあります。とは言っても、中長期というのはなかなか予測が難しいわけですので、通常の金融政策では比較的短期の経済・物価に合わせてファインチューニングする──景気が弱くなれば金融緩和をする──、これが普通の当たり前の政策なのですが、量的・質的金融緩和というのは通常の金融政策とは全く別種の政策であるというのが私の認識です。』

ほほう。

『非常に中長期の観点から判断をしなくてはいけない政策ですし、特に、量的・質的金融緩和は、私は減額提案をしているとはいえ、やめるということを言っているわけではなくて、私どもがマネタリーベースあるいは国債の残高を長期間維持する必要があるだろうという意味では、副作用についても、向こう 1、2 年ではなく、例えば10 年、20 年先まで考えなければいけないという視点で考えるのが量的・質的金融緩和ですから、それに対して足許の景気が下振れたので、緩和強化という発想には私はならないということでありますし、量的・質的金融緩和の効果自体はかなり逓減していると思っていますので、仮にこれで国債の買入れを増やすとか、マネタリーベースを増やしたからといって、追加的な効果が果たしてどれだけあるのだろうかというと、非常に疑問であると思っています。』

まずQQEが「2年で達成(してないにも程があるけど)」という話をベースにやっているという所を盛大に砲撃した挙句に、昨年の追加緩和に関しても(木内さん反対してますが)盛大に十字砲火を浴びせておりますな。


『もちろん、対応が必要であれば、対応はあるわけですが、それは必ずしも量的・質的金融緩和の方針を変更するというだけではなくて、例えば、一時的に流動性の拡大をするとか、政策手段としては他にもあります。景気の下振れに対して、量的・質的金融緩和を強化するというのは、例えば一つの問題点として、グローバルにやや危機モード、金融危機のような状況になった時は、おそらく金融機関は安全資産の方にお金をシフトさせるわけですから、そういう意味では国債の需要が非常に増えるわけです。』

『こういう時に、私どもがもっと国債を買うということになると、国債の需給が更に逼迫して、つまり、国債の買入れという今の政策の柱の持続性がさらに落ちてしまうと、それが行き詰れば金融市場は大きく混乱してしまうという辺りも考えますと、単純に中国発での足許の景気の下振れに対して、今の政策をさらに強化してくるということが妥当ではないと思いますし、足許のこうした下振れにも関わらず、私自身としては減額という形で正常化の方に足を踏み出すというのが妥当であると考えています。 』

まあここの安全資産のニーズをクラウドアウトする件に関しては少々微妙ではありますが、確かに米国の場合は国債買入に対応して安全資産なくなった時にお助けオペみたいなのがありました。


・買入ペースの減額に関する株安や円高の影響への所感如何?

という質問がありまして(質問も長いので割愛)、その回答の部分を引用してみましょう。

『(答) 第 1 の点ですが、正常化に向かう時には、おっしゃるようなリスクというのが決して排除できないということでもありますし、私の減額提案に対し、議事要旨にもありますが、やや反対意見としては金融市場を混乱させるのではないかと。』

やや反対意見という表現にお気持ちが入っているような味わいが。

『それは配慮する必要があると思いますが、まず今の政策を永遠に続けることはできないわけです。国債を無限に買い続けることはできないわけですので、いずれは正常化に向かわなければいけないと。ただ、今の政策は方針を変えなければどんどん買い続ける政策で、私どもがどんどん国債を蓄積していく政策です。そうすると、それを続ければ続けるほど、正常化に向かう時の金融市場への変動のリスクは高まるのだろうなと思います。』

そらそうですな。

『そういう意味では、もちろん今の時点では、政策変更しない方が波風立たずにいいということですが、それは私としてはやはり無責任ではないかなと、つまり中長期の立場から経済・物価の安定をしっかりと確保できるような政策運営をする必要があるのではないかと。』

これは良い無慈悲砲撃。

『現状で政策効果がすごく大きく出ているのであれば、もちろん考え方は違うかもしれませんが、政策効果は既に大きく逓減している中で、市場の混乱を抑えることが大きな目的で政策を維持するというのは、それはやはり本末転倒ではないかと思います。』

MPMで毎度絡んでいるどなたかの審議委員に対する十字砲火ですね。

『金利あるいは株・為替への影響というのは、もちろん予見できない部分がありますが、私自身としてはやはり、今までの量的・質的金融緩和の経済への効果とか、あるいは他の金融市場への波及効果というのは、基本的には実質金利で決まってきている部分が大きいのではないかと思います。実質金利は、様々な要素で決まるとはいえ、足許ではどれだけ国債を買っているか、いわゆるストックで決まる部分が大きいと思いますので、国債の残高を減らすという判断は非常に大きな判断だなと、将来的には思いますが、私の提案は、国債の残高を減らすという提案ではなくて、買入れ額、つまり本行の持つ国債の残高を増やすペースを減額するということです。さらに重要だなと思うのは、先行き残高を減らすことはとりあえず考えていません、というメッセージを同時に送る、ある意味フォワードガイダンスですが、これをすることによって金利変動のリスクは軽減できると思いますし、そうであれば他の市場、つまり為替・株式市場への影響も抑えることがある程度はできるだろうと考えています。』

文章の切れ目が無くて木内さんもう喋りまくりというのが伝わってくる次第で、以前こんなに喋りまくりだったというほどでもない(もちろん話自体はする方)ので、この金懇会見の場で暴れてしまえホトトギスという勢いが非常によく伝わってくるのであります。

まあそれはそれとして、説明としては「フローは落ちるけどストックは維持」というストックビューの話と、金融緩和政策自体は今の建付けよりも長期化することを前提にしている、というのを前面に押し出せばそんなに金利は上がらんでしょうし、そうなれば株価や為替もそこまで反応しなくてすみませんかねえというようなイメージですかね。

『繰り返しになりますが、国債をもっと買えば買うほど、そうしたリスクはもっと将来的に高まっていくということでして、量的・質的金融緩和が成功か否かというのは、まさに正常化もしっかりした後に判断されるものであって、今の時点で上手くいっていても、正常化で大きく躓いてしまっては、やはり成功とは言えないと思っています。 』

>今の時点で上手くいっていても、正常化で大きく躓いてしまっては、やはり成功とは言えないと思っています
>今の時点で上手くいっていても、正常化で大きく躓いてしまっては、やはり成功とは言えないと思っています
>今の時点で上手くいっていても、正常化で大きく躓いてしまっては、やはり成功とは言えないと思っています

まあ仰せのとおりですな。なお、もっと盛大に無慈悲砲撃が続き、だいたい執行部が火の海みたいな感じなのですけれども、まだまだ量がありまして(大汗)明日に続くのでした。





2015/09/04

お題「短国関連ネタ(昨日の訂正含む)/ECBの追加緩和やるやる詐欺登場/マッコウクジラの木内審議委員講演ですよ」

さあ今日は皆様お待ちかねの毎月勤労統計ですよ!!!!!!!!!

○まずは昨日の訂正(すいません)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1509.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年9月見込み)

こちらから今月の短国買入の数字を予想していたのですが、計算が思いっきり勘違いしておりましたのですいませんすいませんということで訂正。

というのはですね、昨日は今月の財政資金需給を-4.6兆円で計算していたのですが、-4.6兆円なのは昨年でして(超大汗)、今年の財政資金需給は-0.4兆円になっておりやした。

となりますと昨日計算していた短国買入の額が4.2兆円減るという結果になりますので、今月は月末のMBを年末対比で60兆円の積み上げで着地させようとしますと輪番の買入分だけで十分(どころかその他要因が増えたら余る)という結果になりますな。

ただ、10月11月は財政が不足傾向になる(ただし前倒しなどの関係で短国発行が減る可能性があり、その場合はその分だけ財政要因が資金余剰に振れる)のと、10月は日銀保有短国の償還が7兆円と多めにあることから、10月の短国買入のフローを平準化するという観点から数兆円ほど余計に積んでおいてバッファーを確保するということは大いに想定されますので、そう考えるとやはりトータルで2兆少々の買入実施かなとは思われます。

今月は連休の関係上9/17、9/24と営業日ベースで中1日で3Mの入札が連発するので、9/18と9/25に短国買入を入れると入札→短国買入→入札→短国買入という営業日ベースで4日間連発での動きになってしまいますので、どちらかをスキップする(または25日のを後ろに倒して30日辺りにオファーするとか)かもしれませんので、8000億円×4だと32000億円となりますがこれでもちょっと多い希ガス。


○そんなわけで短国市場雑談で3Mがやっと100円に届いたよというメモ

・3M入札の足切が9週間ぶりに100円に届く

ハラショー!!!
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20150903.htm

(3)募入最低価格100円00銭0厘0毛(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率0.8453%
(5)募入平均価格100円00銭0厘8毛(募入平均利回り)(-0.0032%)

ということで案分0.845%とか超極薄案分ではございましたが、7月の頭についた100円足切以来の100円足切となりましたが、まあ背景は先程申し上げたように短国買入のフローが減少する見込みとなってきて、買入オペヒャッハーの日銀トレードをする余地が減ってきた分で金利が上昇の巻ということになっているようで。

まあ何ですな、基本的に持ちきり前提でマイナス金利というのはなかなか買えない人が多い(調達がマイナスとなる海外の為替かませたケースは別)のですが、何せ日銀様におかれましては公社債売買参考統計値の平均単利利回りを基準に別にどの金利でも買いますという状態になっておりますので、そらまあその人の買入フローが減ればマイナスにいつまでも突っ込んでいる理由も無い訳でして、見込み通りに推移するなら徐々にプラス圏になっていくんじゃないですかねえ。


・今日は短国買入

でまあ今日は短国買入なのですが、前回の買入が8000億円で入ってきていましたので、今月は8000億円を基本にして買入を打ってくるという感じだと思うのですが、先ほど申し上げたようにこの調子で3.2兆とか4兆とか買うと結構な買い過ぎになるように見えますので、例によって例の如く6Mと1Yの入札後に頑張って買入を実施するけれども、それ以外は減らすみたいな動きになるかもしれませんし、まー今日の短国買入がどう出るのかはちょっと注目しておりますです、はい。



○ドラギのおじちゃんのやるやる詐欺シリーズ再開のようで

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150903.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 3 September 2015

なお前回はこちらです。適宜引用しますよ。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150716.en.html


『Based on our regular economic and monetary analysis, and in line with our forward guidance, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

『Our asset purchase programme continues to proceed smoothly. Regarding non-standard monetary policy measures, following the announced review of the public sector purchase programme’s issue share limit after the first six months of purchases, the Governing Council decided to increase the issue share limit from the initial limit of 25% to 33%, subject to a case-by-case verification that this would not create a situation whereby the Eurosystem would have blocking minority power, in which case the issue share limit would remain at 25%.』

PSPPによる買入について、場合によっては1銘柄当たり33%までの購入を行う事を可能にしたようですが、基本は25%とするようですな。

『Underlying our monetary policy assessment was a review of recent data, new staff macroeconomic projections and an interim evaluation of recent market fluctuations. The information available indicates a continued though somewhat weaker economic recovery and a slower increase in inflation rates compared with earlier expectations.』

若干弱い経済の状況と、最近の市場の動揺を受けて、物価が戻ってくる見通しおよび目先のインフレ期待が戻ってくる見通しの時期が若干遅れるという経済見通しになりました。と見通し下方修正キタコレ。

『More recently, renewed downside risks have emerged to the outlook for growth and inflation. However, owing to sharp fluctuations in financial and commodity markets, the Governing Council judged it premature to conclude on whether these developments could have a lasting impact on the outlook for prices and on the achievement of a sustainable path of inflation towards our medium-term aim, or whether they should be considered to be mainly transitory.』

とは言いましても、最近拡大している成長および物価に対するダウンサイドリスクにつきましては、金融市場と商品価格の急激な動きによるものであることから、委員会としてはこの影響が継続的なものになるのか、一時的なものになるのかについての判断を下すのは時期尚早と考えています。

ここで前回の会見でのこの部分の説明を確認します(後半部分は今回の会見の後のパラグラフに被ります)。

『All in all, the information that has become available since the Governing Council meeting in early June has been broadly in line with our expectations. Recent developments in financial markets, which partly reflect greater uncertainty, have not changed the Governing Council’s assessment of a broadening of the euro area’s economic recovery and a gradual increase in inflation rates over the coming years. The ECB’s monetary policy stance remains accommodative and market-based inflation expectations have, on balance, stabilised or recovered further since our meeting in early June. The latest information also remains consistent with a continued pass-through of our monetary policy measures to the cost and availability of credit for firms and households. Our measures thereby continue to contribute to economic growth, a reduction in economic slack, and money and credit expansion. The full implementation of all our monetary policy measures will lead to a sustained return of inflation rates towards levels below, but close to, 2% in the medium term, and will underpin the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations.』(7月の会見から)

ということで前回対比で警戒モード丸出しになっていますな。

で、今回のやるやる詐欺フレーズはこの次。

『Accordingly, the Governing Council will closely monitor all relevant incoming information. It emphasises its willingness and ability to act, if warranted, by using all the instruments available within its mandate and, in particular, recalls that the asset purchase programme provides sufficient flexibility in terms of adjusting the size, composition and duration of the programme.』

前回はこのような説明をしています。

『Looking ahead, we will continue to closely monitor the situation in financial markets, as well as the potential implications for the monetary policy stance and for the outlook for price stability. If any factors were to lead to an unwarranted tightening of monetary policy, or if the outlook for price stability were to materially change, the Governing Council would respond to such a situation by using all the instruments available within its mandate.』(7月の会見から)

ということで、前回は「必要な時には措置をする」という話をしていますが、今回のように具体的にAPPのサイズや買入銘柄やデュレーションを調整する、と具体的行動の内容を入れて説明していますし、表現も「やるときはやりますよ」的な説明になっているので、まあ普通にこっちの方が追加緩和の意欲を見せていますわなと。


その次のパラグラフ。

『In the meantime, we will fully implement our monthly asset purchases of ユーロ60 billion. These purchases have a favourable impact on the cost and availability of credit for firms and households. They are intended to run until the end of September 2016, or beyond, if necessary, and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

こちらの説明は従来の説明通りです。で、以下経済のアセスメントと先行き見通しの話とかになるのですが、長くなるので毎度の如くのインスタント読みで勘弁という事で(汗)。


まあ何ですな、今回はFOMCを前に追加緩和をうっかり実施してしまうのもアレということで、FRBの出方待ちという事だと思うのですが、これ日本もそうなのですけれども、欧州の方もFRBが利上げしてくれないと通貨高になってしんどいでしょうなあと思われる次第で雇用統計の奮闘を願いたいものです。


○木内審議委員の金懇講演は論点がかなり整理されてきて説得力が高まるが益々執行部に真っ向勝負モード

ということでECBに金懇の日程をぶつけられるというお洒落なプレイが炸裂している野党審議委員の金懇でございますが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150903a1.pdf

本当は今日はこのネタだけで行けるという感じなのですが、ECBがきっちりとネタを打ち込んでくれましたので、木内さんの素敵な(褒めてる)金懇講演をネタにする時間が足りねえよ(−−)。

・現状は日本経済の実力に見合った状態での安定、という認識

最初の方は日銀政策委員として現状の日銀による経済見通しの話とかなので割愛しまして、『3.経済・物価見通しを巡る主な留意点』という小見出しから参ります。

『私は、過去2年半近くに及ぶ「量的・質的金融緩和」の効果などから、国内の経済・物価は、既に現在の日本経済の実力に見合った安定した状態を取り戻したと考えており、4月の展望レポート、7月の中間評価の予測期間である 2017 年度にかけては、このような安定した状況が続くと予想しています。』

今がすでに安定状態である、ということは(後でも出てきますが)ここから更に無理をする必要はない、という話になる訳ですな、うんうん。

『もっとも、私自身は、前述の7月の中間評価で示された政策委員の中心的な見通しに比べると、経済・物価見通しについてより慎重な見方をしています。以下では、こうした私自身の見方に基づき、先行きの経済・物価見通しに関する留意点を幾つか申し述べたいと思います』



・需給ギャップなどで見ても安定しているので・・・・・・・・・・・

小見出し『(1)需給ギャップ・潜在成長率と成長率見通し』である。

『日本銀行が4月の展望レポートで示した推計では、供給面から日本経済の実力に見合った成長ペースを示す潜在成長率は、0%台前半ないし半ば程度と低い水準に止っています(図表5)。また、日本銀行は、2015 年1〜3月時点で、労働力および生産設備の稼働状況を示す需給ギャップを+0.1%と推計しており、2013 年末以来概ねゼロ近傍の中立的な水準を維持しています(図表6)。ちなみに、OECDの推計値でみても、日本の需給ギャップは、他の主要国よりも良好な水準にあります(図表7)。』

うむ。

『これら需給ギャップの推計結果については幅をもってみる必要がありますが、短観の生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIを加重平均した指数をみると概ね推計結果と整合的な動きを示しており、有効求人倍率などをみても労働需給は中立よりも逼迫の度合いを強めているようにみられます。ただし、こうした需給ギャップが概ね解消された局面においては、景気回復初期のような需給ギャップが拡大した局面と比べると、潜在成長率を大きく上回るような成長は実現しにくくなると考えられるほか、人手不足などの供給制約が経済活動に抑制的な影響を及ぼす可能性も私自身はみています。』

潜在成長率が低い中での成長の天井という論点ですな。

『こうしたなか、私自身は、以下で詳しくみていくように、需要面からは、輸出、設備投資、個人消費のそれぞれに下押し要因がある一方、「量的・質的金融緩和」による累積された効果が経済に好影響を及ぼし続けることから、2017 年度にかけて、基調としては、潜在成長率並みの緩やかなペースでの成長が続き、7月の中間評価で示された政策委員の中心的な見通しよりは低いながらも、安定した経済・物価情勢が維持されるとみています。 』

ということで。


・米国と中国にも慎重とな

『(2)海外経済と輸出動向 』という所から引用。

『海外経済について、直近のIMFなど国際機関による 2015 年の成長率見通しをみると、昨年末と比較して下方修正されています(図表8)。これには、日本にとって重要な輸出先である、米国と中国の成長率の下振れが強く影響しています。 』

『米国経済は、1〜3月に悪天候や港湾ストなどの影響から成長率が落ち込んだあと、全体としては持ち直していますが、足もとでも個人消費を中心に鈍さが残っています。今年前半の平均成長率は従来のトレンドを下回りましたが、年後半の成長ペースがトレンドを回復するかは依然として不確実であり、今後も労働生産性上昇率の下振れ傾向が解消されない場合は、成長トレンドの下振れ観測も加わり、良好な雇用情勢だけでは景気の先行きに楽観論は拡がりにくいように思います。』

結構慎重。

『この間、中国でも成長率の下振れ傾向が続いており、雇用情勢の悪化やインフレ率の下振れなどと合わせて考えると、現状は必ずしも需給ギャップに中立的な安定した状況とは言えず、潜在成長率の低下を上回るペースでの成長率鈍化が進んでいるようにも推察されます。』

中々厳しい見方で。

『また、高水準の民間債務が積み上がり脆弱性を抱えるアジア諸国については、米中経済の下振れの影響が波及するなかで、経済の下振れ傾向がより顕著になる可能性もあります。 』

ということで見方は慎重です。


・設備投資にも慎重ですの

『(3)期待成長率と設備投資動向 』から。

『設備投資は、収益環境の改善や設備稼働率の高まりなどを背景に、増加基調を続けていますが、国内設備投資を中心に、企業の慎重な投資姿勢は依然大きく崩れてはいないようにみられます。これは、将来の人手不足への強い警戒感などから、企業が新規雇用を積極化しているのと対照的にもみえます。』

うむ。

『こうしたなか、企業が設備投資を一段と積極化するには、この先、政府の成長戦略や人口対策などにも後押しされて、中長期の期待成長率が明確に高まることが欠かせないと思います。』

まあそうですわな。

『また、設備投資のストック循環に着目すると、設備投資は、2015 年度に増加したあと、先々は、現時点の期待成長率が続くと仮定すると、2017 年度に向けて伸び率が頭打ち傾向を示す可能性があると私自身は考えています(図表 10)。 』

ということで慎重慎重。


・ 物価の上昇で個人消費があばばばばーという置物リフレ理論にマッコウクジラのコーナーキタコレ!!!

次が『(4)値上げ観測と個人消費動向 』でありまして・・・・・・・・・・・・・

『個人消費は、雇用・所得環境の改善や緩和的な金融環境といった好環境にも関わらず、なお勢いを欠く状態が続いています。その背景の一つには、消費者による当面の値上げ観測があると考えられます。』

キターーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!!!!

『特に4月以降は、食料品など日用品の価格引き上げが広くみられますが、最近の景気ウォッチャー調査のコメント内容や消費動向調査の消費者態度指数のもたつきは、これらが消費者心理に悪影響を与えたものであると私自身はみています(図表 11)。』

(;∀;)イイシテキダナー

『こうした状況を、金融緩和の効果と合わせて考えると、「量的・質的金融緩和」の導入当初は、政策の影響を受けて実質金利が低下を続ける一方、先行きの実質所得の見通しには大きな変化が生じなかったため、将来の消費を前借りする金融緩和効果が一時的に生じたものと考えています。』

『しかし、現在の局面では、実質金利の低下が一巡していることや、賃金上昇率が物価上昇率に簡単には追いつかないとの見方が消費者の間で広まっているように見受けられることから、各種日用品の当面の値上げ観測が広がれば、当面の実質所得の見通しが悪化し、消費活動がより抑制的になる可能性があります。またそうした傾向は、年金生活者を含む高齢者世帯や低所得者により顕著に表れる可能性が考えられます。 』

インフレ目標2%を達成すれば消費意欲は高まるわ投資は増えるはじいちゃんのリューマチは治るわと全てウハウハですよという理論に対してマッコウクジラ攻撃が来ておられますが、まあ現実問題として今消費が出ていないのってそういうことでしょうからマッコウクジラも蜂の頭も無くて、そもそも「インフレ期待で消費意欲を喚起」という置物リフレ理論が机上空論という話なんですけどね!!!!!



さらに『(5)物価情勢と物価見通し 』という小見出しが登場。

『物価情勢については、民間発表の小売価格統計には、食料品を中心に明確な上昇傾向がみられますが、より広範囲の物価指標である総務省公表の全国消費者物価指数には、依然として大きな変化はみられません。』

東大とか一橋とかの物価指数見ているとまーた生活費が上がるじゃないかと頭がクラクラしてきますな。

『振れの大きい食料品とエネルギーを除くベース(いわゆる「コアコア指数」)でみても、幾分上昇率を高め始めた可能性も考えられますが、消費税増税後で価格上昇率が鈍った前年の裏といった面もあり、なお明確な基調の変化とは判断できないと思います。』

基調の変化を強調する執行部に喧嘩売ってますな(^^)。

『ちなみに、消費者物価の上昇率が顕著に高まった 2013 年から2014 年初めにかけての状況と足もとを比較すると、需給ギャップの改善ペースに大きな差があることに加え、今回は、電気製品の価格上昇が、円安の下でも比較的落ち着いている点に違いがあります。こうしたもとで、既往の円安による物価の押し上げ効果は、2014 年に比べると目立たなくなってきているように窺われます。 』

円安に振っても物価に効きにくい攻撃とな。

『なお、足もとスーパーなどでは、食料品価格を引き上げても売り上げが落ちないため、メーカーの値上げを販売価格に転嫁したり、販売促進目的でのセールを控える動きがみられていますが、これには昨年の消費税増税前の駆け込みの反動減の影響で、今年4月以降の前年比の売り上げが高めに振れたことを、売り上げの堅調さの表れと小売店が過大評価している可能性も考えられます。』

ほほう。

『さらには、食料品は必需性が強く、その消費の価格弾性値は相対的に低いと考えられることから、値上げにも関わらず売り上げが落ちにくい一因である可能性も考えられます。こうした食料品など日用品の価格引き上げが、この先消費者の防衛的な消費姿勢を助長し、その結果、値上げの動きが抑えられる可能性も考慮に入れておく必要があります。』

ですなあ。

『こうしたなか、私は、4月の展望レポートでは、「2%程度に達する時期は、・・・2016 年度前半頃になる」との表現に反対しましたが、現在でも、物価上昇率は当面0%程度で推移したあと、かなり緩やかに上昇率を高めていくと考えており、2017 年度まで視野に入れても2%に達する可能性は低いとみています。』

そもそも経済が安定状態に入っているという認識ですしこういう結論になります罠。


・金融政策運営に関して(ちなみに分量と時間の関係で明日じゃなかった多分月曜に続く)

ということで、ここまででもすでにマッコウクジラモードになっていますが、『4.金融政策運営』という所での説明は論点が整理されてきた感があって内容については説得力が高まっている感がありますな。

木内さんの金融政策に対する反対および反対議案の推移に関する説明がありますがそこは端折りまして、現在の金融政策提案に関する説明を読みましょう。

『これは、「量的・質的金融緩和」導入当初から念頭に置いていた、「量的・質的金融緩和」導入から2年経過したタイミングで、効果と副作用の比較衡量を改めて慎重に行ったうえで、もはや長期国債の買入れペースなどについて、導入時の方針であっても、副作用が効果を上回ると判断したことによるものです。また、長期国債保有残高を導入時を下回る年間約 45兆円のペースで増加させる方針に修正すれば、日本銀行の年間買入れ額は長期国債のカレンダーベース市中発行分の 50%弱程度の水準まで下がるなど、国債市場への過度の圧力が相応に緩和されると考えました。 』

なるほど。

『なお、こうした私の提案は資産買入れ額の減額を提案するものであり、資産買入れ残高を減額するものではありません。マネタリーベース増加額および長期国債買入れ額を減額しても、残高の積み上がりとともに今後も金融緩和は累積的に強化されていきます。』

これはポイントなんですけどね。

『私自身は、ひとまず、段階的に減額を進めていき、マネタリーベースと長期国債保有残高が一定となる状態に至ることを目指すのが適当と考えていますが、それは「量的・質的金融緩和」の終了を意味するものではありません。超過準備が解消され、長期国債保有額が正常化する「量的・質的金融緩和」の終了までには、極めて長い時間を要すると考えられます。私の提案は、全体の政策パッケージの中で、「量的・質的金融緩和」のウェイトをやや引き下げて、実質ゼロ金利政策や貸出増加支援資金供給などを含め、多様な政策ツールの組み合わせといった柔軟な政策運営へと移行していく第一歩であると位置付けています。 』

という説明はまあ分かりやすいですけどね。問題はこれをするには置物あたりのクビを飛ばさないと整合性が取れない所なんですけどね。


でもってこの後にQQEのプロコン比較というのがあって、そこも引用したいのですけれども時間と量の関係上後日改めて紹介することにしまして、その後の『(4)効果と副作用の比較衡量 』から引用しますと・・・・・・・・・・・

『これまで「量的・質的金融緩和」の効果と副作用について詳しくみてきましたが、これら効果については、日本銀行の国債購入残高(ストック)に規定される面が強い一方、国債市場の流動性低下など副作用は、ストックのみではなく、日本銀行の国債買入れ額(フロー)にも相応に影響を受けると私自身は考えています。』

このストックビューとフロービューの切り分けは中々斬新。

『既に国債購入残高を増やしても実質長期金利が低下しにくくなり、追加的な効果が明確に逓減する局面に至っていることを踏まえると、国債買入れ額を減額することで、効果を大きく減殺することなく、副作用を減少させることで、限界的な効果と副作用のバランスを改善させることができると私は考えています。』

なるほどです。

『既に述べたように、私の提案は、国債買入れ額(フロー)の減額であって、国債購入残高(ストック)の減額を提案している訳ではありません。「量的・質的金融緩和」の累積的な効果は既に経済にしっかりと定着してきており、国債購入残高を減少させない限り、その効果を大きく損ねることはないと考えています。』

まあフローでの買入が減ると下駄履いている分は落ちるので金利は上昇しますけれども、その分時間軸を強化することによってある程度相殺させることは可能な気がしますがね。

『国債買入れ額の減額措置など「量的・質的金融緩和」の正常化について、金融市場の反応を危惧するあまり対応を先送りすれば、金融市場が不安定化する潜在的リスクはより一層高まり、結果的に「量的・質的金融緩和」の今までの成果を台無しにしてしまう惧れがあります。「量的・質的金融緩和」の成否は、正常化を円滑に完了した時点で評価される点には留意する必要があります。 』

(;∀;)イイハナシダナー


ということでQQEのプロコン比較部分とこの後にある「2年で2%」でなくていいじゃないかにんげんだものという説明の部分を端折ってしまいましたので、こちらは改めて後日(会見と一緒に)ネタにしようと思います。









2015/09/03

お題「月初計数関連雑談(短国市場関連)/中曽副総裁の寄稿文を鑑賞(ただし金融政策話ではない)」

貫禄のクオリティすぎますな(−ω−)
http://jp.reuters.com/article/2015/09/02/markets-turmoil-china-fear-idJPKCN0R20HY20150902
2015年 09月 2日 15:44 JST
アングル:株価変動で中国が捜査拡大、海外投資家に広がる波紋

○毎度の市場メモ雑談

・短国買入が完全に特定銘柄対象になっている件について

毎度おなじみのこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

なのですが、今回のと前回(8/20残)の比較をしますと増えた銘柄が何という事でしょう!新発1年の553回債が17500億円増えているだけではないですか!!!!

・・・・・・・とまあそうでしょうなあというのは21日の短国買入の結果が平均1毛甘で足切9糸甘となっていましたので、売買参考統計値から逆算するとその銘柄しか入らんでしょうなあ(6Mカレントは日銀に打ち込まれ過ぎで買入対象から外れている)という状況だったのでお察しではあったのですが、ここまで来てしまうとそもそもセカンダリー市場から買入のオペを行う意味というものがあるのかという世界ではあります。

なお、そういう時にこういう発言が出てくるのが中曽副総裁の間の悪さ炸裂という所で実に味わいがある。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/02/idJPT9N0Y205J20150902
2015年 09月 2日 12:48 JST
日銀の国債買い入れ、債券市場の機能阻害していない=中曽副総裁

『[2日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は2日、日銀の国債買いれは、国債市場の機能を阻害したり、将来の国債買い入れ能力を損ねたりはしていないとの見解を示した。ジャカルタでの国際通貨基金(IMF)関連の会議で発言した。日本の国債市場の流動性を注意深く監視しているとも述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・・orz

ちなみに上記の発言に関しては日銀のサイトに出ていないのが残念ですけれども、短国買入が上記のような惨状になっている中で「国債市場の機能を阻害していない(キリッ)」とかもうゲラゲラゲラとしか申し上げようがない訳でして、まあ質問されたから答えているのでしょうけれども、注意深く監視した結果として機能を阻害していない(キリッ)とかおまいらの目は節穴かと小一時間問い詰めたくなるので余計なことは言わない事をお勧めしたいと存じます。


・今月の資金需給見込みからすると・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1509.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年9月見込み)

どう計算するかによって若干の差がでるのですが、資金需給見込みが出たので今月の短国買入を適当に置きを入れて計算してみる。

マネタリーベース
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd150831.htm
3,274,500

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd141230.htm
2,758,800

12月末残が276兆円として9月末残は60兆円の増加(年間80兆円の3/4)で行けば宜しいので、9月末残336兆円をゴールにすると327.5兆に対して要積み上げが8.5兆円になりますな。

でもってさっきの当座預金増減要因を見ますと財政要因(日銀保有国債と短国の償還要因も含む)で5兆円のマイナスになっているので、実際には13.5兆円の資金供給オペが必要になります。

ここで今月は貸出増加支援があるのと、ETF買入やJ−REIT買入による積み上げがある一方で固定金利オペの落ち(だいたい限界的なところまで落ちていると思われるが)があるという要因があるのですが、固めに見てそこでの増加をゼロにして考えます(資産の置きにもよるが実際は資金供給方向にぶれる筈)。

そうなりますと輪番と短国買入で13.5兆円の積み上げという事になりますが、そのうち輪番での積み上げが今月は奇数月なので9.2兆円の買入になるのですが、月末跨ぎの受け渡しによるズレがあって、今月に関しては月末跨ぎの輪番が2回分ありまして、先月末に実施した輪番が中期超長期で11800億円分、28日に実施した輪番が長期と変国で5407億円分と、いつもよりも大目に今月にズレています。でもって今月は29日に2年国債の入札がある関係上月末跨ぎの輪番が1本しか実施されませんが、こいつが一応中期超長期(翌日が10年国債の入札だから長期は無いと思料)という事にしておきますと5000億円少々増えるので輪番要因を9.8兆円でみておきます。。


そうなりますと残りの3.7兆円を短国買入実施するという計算になりますので、結論としては相当固く見ても今月の短国買入は4兆円ですし、たぶん先ほどのその他でそこそこ数字が出てくると思われますのでもうちょっと少なくてもMB積み上げ無問題となります。今月は全部実施すれば月内渡しになる短国買入が5回分ある(1回実施済み)のですが、前回が8000億円となっていますので、そのまま8000億円で毎週実施してもMB目標対比の走りは楽勝という結果になりますな。


・ということで本日は3Mの入札ですが

てな計算になりますと、さすがに今月の短国需給はそこそこ緩んでくるでしょと思われるのですけれども、何せ8週連続マイナス金利というナムナムな展開になっておりますので、プラス圏内に入りますとそらもうニーズがワラワラという所でしょうからして、まー精々100円足切とかそういう事になるんでしょうなあよー知らんけど。

また、半期の期末月なので期末残高嵩上げニーズがあるでしょうからそちらの需要もありますし、そんなこんなでそう簡単に短国の金利が上がってこないとは思うのですが、昨年の追加緩和でMB積み上げを長期国債で実施します攻撃にして短国市場へのストレスを軽減するとか言っておきながら無慈悲買入が続いていた訳ですが、上記のようにやっと短国買入残高を漸減させてもMB目標が回る感じになってきた(というかそもそも論として財務省が先行して短国発行を減らしているのだから買入残高もバランス的に減らないとおかしかったのだが、MB目標の走りを調整していたので買入残高の落ちが来るのにラグが発生したのがこの8週連続マイナス金利の背景)ということで。

とはいえこれで先程申し上げた短国買入のターゲットディール状態が解消されるのかと言うとこれはまた微妙な感じで、3Mがバカスカ短国買入に入るようになると償還が早くなるのでフローとしての買入が増えるという結果になり、フローとしての買入が多いと日銀オペトレードがワークしやすくなるの巻となってしまうのが何ともという所ですな。まあしかし昨年9月から始まった短国マイナス金利という馬鹿馬鹿しいにも程がある流れはとりあえず一服の方向じゃないですかねえ、あーつかれた。



○中曽副総裁の寄稿文というのがありましたので軽く

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2015/data/ko150902a1.pdf
Development Finance in the Economy
Facing Double Trilemmas
Article contributed to the Joint IMF-Bank Indonesia Conference
"Future of Asia’s Finance: Financing for Development 2015"

英文しかないので仕方がないから英文を鑑賞しますが、あまり今の金融政策とは関係ない話ではある。

『Introduction』から。

『It is a great honor for me to contribute to the Joint IMF-Bank Indonesia Conference. Under the title “Future of Asia’s Finance: Financing for Development 2015”, I will first look back at Japan’s post-war experience of financing for the development of specific industries, and will then explain lending behavior of Japanese banks including their involvement in project finance for emerging Asian countries in the last two decades. Based on these two examples regarding Japan’s financial intermediation function, I will finally share my views on policies for the stability of development finance in emerging economies facing double trilemmas, i.e., Mundell’s and Schoenmaker’s trilemmas. 』

ということで戦後日本の金融割当の話から始まりますが。

・戦後日本の説明なのですが途中を端折り過ぎなのと結論がちょっと強引じゃないですかねえ

『Evaluation of the priority production system in Japan after World War II: Importance of price stability 』というお題の部分ですが、戦争で生産設備や資源算出に甚大な毀損(ピークの40%レベルに落ちる)を受けた後の復興という話をしていますが。

『In order to overcome this situation, the Japanese government at that time applied the “priority production system”, in which resources such as materials, funds and labor were mobilized intensively and with priority being given to key industries such as coal and steel in order to reconstruct Japan’s post-war economy. This policy was applied from 1947 to 1949. 』

傾斜生産キタコレ。

『The priority production system is considered to have had a stimulating effect on Japan's economy. However, most funding for the priority production system was central bank money provided through the “price-support subsidy system” and the Reconstruction Finance Bank. In the price-support subsidy system, the government provided subsidies to suppliers of important materials such as steel for the differentials between sales prices and production costs in order to enhance production, and these subsidies were financed through borrowing from the Bank of Japan. The Reconstruction Finance Bank was a government-sponsored bank established in 1947 to lend to the aforementioned key industries such as coal, and most of its funding also depended on financing by the central bank.』

傾斜生産制度と価格統制下における復興金融公庫による貸出による資金割当の説明ですな。

『Both the price-support subsidy system and the Reconstruction Finance Bank supported the priority production system and contributed to the reconstruction of Japan’s economy, but their dependence on central bank money became a factor causing high inflation (Figure 1).』

でもって傾斜生産と復金がサポートする傾斜生産によって生産能力の回復が進んだものの、復金の貸付原資が日銀によるファイナンスが太宗であったことから、いわゆる復金インフレが発生しましたよという話(その後ドッジラインが炸裂した訳ですな)。

『Inflation heightened the opportunity cost of holding deposits, with deposit avoidance behavior being observed among a large proportion of households. The decrease in deposits then caused a decline in private financial institutions’ lending to firms in comparison with GDE (Figure 2). In sum, the inflation tolerant aspect of the priority production system weakened the financial intermediation function and impeded fund flows from household savings to corporate investments, thereby having a negative impact on the economy. The net effect of the priority production system on economic reconstruction was lessened due to high inflation. 』

インフレによって預金不足が促進されてこの結果民間金融機関が資金不足になりまして、傾斜生産方式は傾斜生産対象外産業への資金供給フローを阻害して、インフレは生産力増強の効果を減らす結果になりましたとな。

『Japan's experience of post-war reconstruction suggests that price stability is a necessary condition for a stable financial intermediation function, and that policy-makers should pay attention to price stability in order to fully realize the effect of mobilizing resources for financing development. 』

ということで、物価の安定は金融仲介機能の安定化にとって必要であり、政策当局は金融リソースの適切な移動を実現するためにも物価の安定に注意を払うべき、というのが結論になっておりますな。

・・・・・・・とは言いましても、そもそも傾斜生産とか復金インフレとか占領下の時の政策の話で、思いっきり統制経済にも程がある状況下によって行われていた話ですし、その前が生産力の崩壊とかから始まっているのに、金融仲介機能の健全化の為に物価の安定が重要という結論になるのはちょっと?????でありまして、要は物価の安定言いたいだけなんちゃうかという気がせんでもない。


・言いたい事は分かるのだが何か話が飛んでいる気がする

その次の小見出しが『Role shared by public finance and private finance in the context of infrastructure investment』でして・・・・・・・・

『After overcoming the period of post-war confusion, Japan entered a period of rapid growth (during the 1960s). In its initial stage, funding by the World Bank supported Japan's

engagement in big infrastructure projects such as construction of the Shinkansen, the bullet train line, the Tomei (Tokyo and Nagoya) Motor Expressway, and several power plants. This kind of social capital then improved the productivity of the Japanese economy, leading to a virtuous economic cycle. 』

ということで高度成長期の世銀融資によるインフラ投資の話になる。

『Development finance during the period of rapid growth was also served by the so-called “guidance policy finance” of the Fiscal Investment and Loan Program (FILP). Postal savings funds deposited with the Ministry of Finance’s Trust Fund Bureau were on-lent to the FILP, and the Development Bank of Japan, which acquired the assets of the Reconstruction Finance Bank in 1952, allocated funds for industrial development to meet national and regional development goals, as one of the major recipients of FILP funding. 』

更に財政投融資だの開銀だの話が登場。

『Since the 1970s, social infrastructure investments have been financed through the issuance of Japanese government bonds. Many empirical analyses suggest that the productivity effect of social capital is significant and contributes to a rise in potential growth of the Japanese economy.』

その後国債による財政支出でのインフラ整備という話ですな。

『While the government-led system worked well in Japan in the latter half of the 20th century, an important issue to be tackled emerged as outstanding government debt continued to rise significantly and fiscal conditions became severe: how to introduce private funds and the necessary know-how to social infrastructure development.』

社会資本の整備を国主導でやっているのは途中まではワークしたものの財政赤字の累積が問題にと。

『In order to tackle this problem, the PFI (private finance initiatives) Law was promulgated in 1999, and an action plan for the drastic reform initiatives of PFI/PPP (public private partnerships) was launched in 2013. By making use of PFI/PPP, safer, convenient, and resilient social infrastructure will be developed efficiently.』

と、ここでいきなりPFIに話がワープするのは財政赤字問題が拡大する前に民間の投資もインフラ投資に活用しましょう的な話をしたいというのは分かるのだが、途中の話がだいぶ端折られている辺りでちょっと話が雑な気がするのだがまあ大論文出すわけにもいかんからこんなもんなのですかねえ。


・新興国のインフラ整備に先進国の資本フローが影響する件についての説明

その次が『Loans to emerging countries by Japanese banks 』という小見出しですが「日本の金融機関がヘロヘロになった時にはローンが出せなくなって、その後欧米がリーマンショックでヘロヘロになった時には日本の銀行はバランスシート調整を終了していたからローン出しましたね」的な話なので割愛しましてその次の『Financing for development and stability of the global financial system 』。

『As I have discussed so far, the financial system of emerging countries has been affected by the lending behavior of advanced countries’ banks, and this trend will continue.』

先進国の金融機関の貸出等スタンスによって新興国の金融システムが影響されるという状況は変わらないし続くでしょうと。

『Therefore, as a prerequisite to the stability of development finance in emerging countries, stability must be maintained in the financial intermediation function of advanced countries’ banks and domestic banks. 』

『As the financial globalization process evolves, it is important for us to pay attention to two kinds of trilemmas in order to stabilize the financial system and facilitate development finance in emerging countries (Figure 4). As Japan's post-war experience, which I explained in the first part of this article, suggests, price stability is important for fully realizing the effects of financing for development. However, in emerging countries, monetary tightening against the backdrop of inflationary pressure due to overheating of the economy often induces carry trades and accompanies a rapid increase in capital inflows from advanced countries. This boosts the economy further and/or leads to a surge in asset prices and financial imbalances. In such conditions, it is difficult for policy-makers facing Mundell’s Trilemma to achieve price stability by choosing the combination of national monetary policy and capital mobility. Therefore, it is important to use macroprudential policy tools in order to mitigate the effect of capital flows on the real economy and the financial system, and this then contributes to the stability of development finance. 』

つーことで、ここでマンデルのトリレンマが登場しているのだが、そもそも論として「最初に申し上げた通り日本の教訓として物価の安定が金融仲介機能の発展に重要」というのがホンマカイナ(傾斜生産して復金インフレをしないで生産力が急速に復活するのはできなかったんじゃネーノ的な話)というのもありますし、物価安定のために金利を上げるとキャピタルインフローが入ってくるのでマクロプルーデンスが必要です(キリッ)という話って結局マクプル言いたかっただけちゃうんかと(そんなの資本規制引いた方が管理しやすいだろ的なサムシング)思うのですが、などと浅学菲才なのに言い出すアタクシは無謀ですねすいませんすいません。

『When conducting macroprudential policy, global (or regional) financial coordination is important beyond the national-level financial policy framework. In a country faced with Schoenmaker’s Trilemma, it is impossible to simultaneously achieve national financial policy, capital mobility and financial stability including the stability of development finance.1』

で、更にマクプルの話が続く。

『Therefore, a global (or regional) macroprudential perspective is indispensable for maintaining financial stability while allowing for capital mobility. The Chiang Mai Initiative - a multilateral currency swap arrangement among Asian countries - and cross-border usage of collateral assets, which are eligible instruments for central banks, are notable examples of regional financial coordination to complement macroprudential policy of each country.』

『In addition to global financial coordination, when considering macroprudential policy, global financial regulation is also a key factor. If the financial intermediation function of internationally active banks subject to macroprudential regulation is stable, then financing for development is also expected to be stable in emerging countries. 』

ということでマクプル政策を使って物価の安定とキャピタルインフローの安定化を図って国内金融システムの安定を図るのが重要という話ですが中々の無理ゲーのような気がするのは気のせいですかそうですか。


・最後にイイハナシダナーな規制に関するお話

『During the Asian financial crisis, U.S. and European banks filled lending gaps that Japanese banks had left as a result of their withdrawal from the cross-border lending arena, whereas during the recent global financial crisis, these roles were reversed. This kind of substitution by internationally active banks may have somewhat mitigated the shortfall in financing for development in emerging countries. However, it’s not beyond the realms of possibility that all internationally active banks might cut lending simultaneously in the next crisis. It is desirable that as many internationally active banks as possible constantly maintain their lending without severe disruptions. To this end, global regulations are expected to play a crucial role from a longer-term perspective. 』

先進国で金融危機が起きるとまたまた新興国での資本引き上げが全部でないにせよ起きるというお話で、それであるからこそグローバルな規則などを長期的視野で考えないといけません、ということで・・・・・・

『Finally, in relation to global regulation, let me share my views on an ongoing issue. Last December, the BCBS (the Basel Committee on Banking Supervision) published a consultation document entitled “Revisions to the standardised approach for credit risk”. In this document, it is proposed that the risk weight for corporate exposures, project finance, and equities be heightened.』

バーゼル委員会でクレジットリスクやシンジケートローンのリスクウェイトが高まるという話が出ておりますキタコレ。

『Not a few market participants have sent comment letters to the BCBS, pointing out that a significant increase in risk weight leads to a decrease in banks' capital ratios, and the potential impact on financing for development can be huge.』

この顕著な引き上げは開発成長への投資に対する潜在的な影響が非常に大きいという指摘が少なからずバーゼル委員会に寄せられています。

『While I understand that the revisions proposed by the BCBS were made to reflect the experience of the last global financial crisis, a thorough cost-benefit analysis including an examination of the impact on financing for development is necessary.』

これはイイハナシダナーですなと思いますが、中曽副総裁も「バーゼル委員会の言わんとしていることも分かるが、コストメリット比較を考えてこの件については検討すべきである」という見解をしらっと示していまして、これはもう(;∀;)イイハナシダナーですわ。


・結論を一応引用しておきます

最後を引用しますね。

『As the Japanese case shows, the productivity effect of social capital is significant, and stable development finance supported by price stability contributes to an improvement in potential economic growth. In order for emerging countries to stabilize development finance, not only price stability but also effective utilization of financing from advanced countries’ banks is indispensable. Facing the double trilemmas, an adequate combination of monetary policy and macroprudential policy is needed to achieve price stability and stabilize capital flows including those banks’ loans, which will contribute to higher potential growth among emerging economies. 』

ということで、物価安定とマクプル言いたかっただけちゃうんかという気もしないでもなくて、後半のほうはまだ話は分かる(現実問題として資本規制ガチガチで回る時代でもないでしょうから)のですけれども、前半の物価安定の方はちょっと説明が強引な気がするのですが、まあ気合で何とかみたいなピーターパンのお伽噺を展開されるとアチャーですのでこれはこれでよろしいのではないでしょうか(^^)。

なお金融政策と全然関係ないネタで引っ張ってすいませんすいません。




2015/09/02

お題「市場メモメモ/コンスタンシオ副総裁の講演ネタ続き」

ほっほー。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010211471000.html
大阪維新の会 “参加議員”を選別へ
9月1日 5時30分

『「最終的には橋下代表が面接するが、一定の絞り込みは私がする。今までやってきたことを検証させてもらう。今までやってきたことと、きょう言っていることが違うというのは、ちょっと困る」』(上記URLより)

言行一致と一貫性を重視とのことですが念のため年初のニュースを確認してみましょう。
http://www.asahi.com/articles/ASH17469WH17PTIL006.html
橋下氏、住民投票で反対ならば政界引退の意向 都構想
2015年1月7日16時19分



○市場メモメモ

まあ俺様備忘録なので屁のようなメモが入って毎度すいませんな。

・10年国債入札で切り返し

昨日の債券市場は株が弱めでしたが債券の方も弱めでスタートして、中長期国債は利息起算日四半期末月の20日(除く2年)となる関係上四半期末月の入札は発行日が先渡の20日になる→直ぐに輪番オペの対象にならない→業者の在庫負担がある→マズーという話もあって前場の途中までヘロヘロ押して既発カレントで0.40%までタッチ。でもってそうしたら入札前から押し目買いも来てやや水準戻して入札を迎えると。

ところが後場の寄りから債券先物切り返しになり、落札結果を見たら足切が事前予想の99円74銭辺りから盛大に強くて99円78銭で切れるわ、市場推計の落札分布で大手の業者さんが1兆円以上の落札をしたとの観測が出るわで相場は強くなって結局金利は低下して終了の巻となりました。

でまあ10年国債入札って大昔はシ団引受制度の関係上だか何だか知りませんが、応札の制限があったので「10年国債入札満額落札」というのって大昔はたまに見ていたもんで(歳がばれますが^^)ふーん満額ねえとか思ったのですが、やはり1兆円というのは古老に聞きましても初ケースのようでおお凄いじゃんという結果なのですが、なんか知らんけど需要が弱そうという所で押し込んだ入札で思いっきり上で切る攻撃とかやるじゃんとは思う物の、0.3%台でどんだけ需要あるんですかねえとかまあワカランチ会長ですな。

とは言いましても何か知らんが株式市場がまたまたおはぎゃーの香りを示しておりまして、こちらの方からの影響でまた需要変わって来るのかもしれませんけど、先般の株式下げモードからこの方の債券市場の動きは「株下げで安全資産の債券買いの連想」という動きではなくて、「リスクを落としに来るから債券もリスク量を減らさないと」という感じの動きの方が感じられる風情でありまして、株が下がったから単純に債券買いになるのかというのは他の国は兎も角円債に関しては微妙な気がします。大体からして円債の場合は日銀の買入によって水準が底上げ(というか金利的に言えば底下げというのか)されている分があるので水準がねえという所で。



・中国株ガーという話にさせられているようなのだが・・・・・・・・・・・

ふむ
http://jp.reuters.com/article/2015/09/01/crossmarketeye-idJPKCN0R13CY20150901
2015年 09月 1日 19:03 JST
日本株が再び大幅安、「震源地」中国株の代替化観測

ということで中国ガーという後講釈になっているようで、まあアタクシも別に株式を本業にしている訳ではないのではあそうですかというしかないのですが、いやそれだけかなあとは思うのざますが。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/01/idJPL4N1170WT20150901
2015年 09月 1日 11:44 JST
UPDATE 1-法人企業4─6月期に過去最高益、設備投資は前期比減で2次QE下押し

『[東京 1日 ロイター] - 財務省が1日発表した2015年4─6月期の法人企業統計(金融業・保険業を除く)によると、経常利益は円安と原燃料コスト低下を主因に過去最高益となった。一方で、設備投資は前期比2.7%減少し、4期ぶりに落ち込んだ。4─6月期の国内総生産(GDP)の設備投資が、下方修正される見通しが高まった。

4─6月期の売上高は前年比1.1%増と1─3月期の減収からは脱したが、昨年同期が消費税引き上げ直後だったにもかかわらず、伸び率は低い。前期比では2期連続で減収となった。

全産業経常利益は20.3兆円で過去最高額となった。前年比では23.8%増と2桁増加した。前期比でも14.8%増。前年と比べ、期中平均でドル/円で20円近い円安、1バレル45ドルの原油安、5400円程度の株高といった外部環境の好転に恵まれた。このため、製造業では原材料安や円安を主因に化学や情報通信機械、輸送用機械などを中心に増益が相次いだ。非製造業でも、建設や電機、卸売などが増益となった。


他方で、全産業の設備投資の伸びは前年比5.6%増と9期連続で増加したものの、伸び率は1─3月期より低下。季節調整済前期比では2.7%減となった。』(上記URLより)

とまあそういうことで、企業の収益は絶好調なのですが、設備に関しては市場事前予想よりも弱めとなっていますし、賃金に関してはそもそもお察しの状態になっているので、結果として労働分配率の水準が大変に下がっておられるとかいう状況になっておりまして、アベノミスクでトリクルダウンという話はどこに逝ってしまわれたのかと小一時間問い詰めたい状況になっている辺りが実にこう味わいがあるとしか申し上げようがないですな。

今週末は毎月勤労統計ちゃんが出る訳ですが、先に出ている消費があの調子の中でどういう数字が出るのかが大変に楽しみ(皮肉な意味で)という所でして、これでパッとしない数字が出てくると「前向きの循環メカニズム」が全然ワークしてませんがなという話になりますし、まあ本来的には結果としての数字ではある筈の労働分配率の低下もネタにされそうですなあとか思いますと、日銀ちゃんとしては物価目標達成時期が原油価格推移どうのこうのというような問題ではなく、そもそも論としてのメカニズムが全然ワークしてません的な話になってくるので大変に説明が苦しくなるでしょうなあという所ですし、まあ株下がっているのにその辺の経済の基調に関する懸念もあるんじゃネーノとか思ったりもするのです
けれどもどうでしょうかねえ。


・またさぼっていたECB関連の数値ネタ

すいませんすいません。
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150901.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150825.en.html
http://www.ecb.europa.eu/press/pr/wfs/2015/html/fs150818.en.html

9/1残高と前週比増加額
CBPP3 EUR111.1 billion +EUR 1.9 billion -
ABSPP EUR11.1 billion -      -EUR 0.1 billion(償還分)
PSPP EUR289.5 billion +EUR 9.8 billion -

8/21残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 109.2 billion +EUR 1.3 billion -EUR 0.2 billion(償還分)
ABSPP EUR 11.2 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 279.8 billion +EUR 9.9 billion
(その他SMPとCBPP2で償還あり)

8/14残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 108.1 billion +EUR 1.4 billion
ABSPP EUR 11.0 billion +EUR 0.3 billion
PSPP EUR 269.9 billion +EUR 10.2 billion

その前の買入ペース

8/7残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 106.6 billion +EUR 2.6 billion -
ABSPP EUR 10.6 billion +EUR 0.9 billion -
PSPP EUR 259.7 billion +EUR 10.8 billion -

7/31残高と前週比増加額
CBPP3 EUR 104.0 billion +EUR 2.3 billion -
ABSPP EUR 9.7 billion +EUR 0.3 billion -
PSPP EUR 248.9 billion +EUR 11.0 billion -

月に60ビリオンの買入なので4週で割ると15という事になりますが、一応この2週間位買入のペースを若干落としている感じですが、そうは言いましても極端にペースが落ちた観ではなくて、まあ順調に買入が進捗している感じですな、うんうん。


○昨日の続きでコンスタンシオ副総裁の講演ネタである

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150825.en.html
Assessing the new phase of unconventional monetary policy at the ECB

Panel remarks prepared by Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
at the Annual Congress of the European Economic Association
University of Mannheim, 25 August 2015

昨日の続きで恐縮ですが、『Evaluating the new phase of unconventional monetary policy』という小見出しの所から参ります。


・非伝統的政策の効果についての量的なアセスメントキタコレ!なのだが・・・・・・・・・・・

『In order to correctly assess the effects of our policies, we should use what would have happened had we not adopted these measures as a benchmark for comparison. Of course, this is virtually impossible to do since there are no sufficiently reliable and complete models to construct the counterfactual world. We can only analyse how the variables related to the transmission channels or the end results have evolved since we started the new policy. This is what I will do below.』

ということで図表が登場するのですが、最初の図表がいきなり「銀行貸し出しチャネル」となっているのが味わいがある訳でして(図表を貼るスキルは無いので上記URL先を見てちょ)・・・・・・・・・


・銀行貸し出しチャネルを最初に持ってきて説明とな

『Figure 3 shows the evolution of lending rates in the euro area. It shows that the sequence of interest rate cuts implemented by the Governing Council between mid-2012 and mid-2014 was not transmitted to the effective borrowing costs faced by firms. By June 2014 we had cut the main refinancing operation (MRO) rate by 95 basis points, bringing it to 0.05%, down from 1% in June 2012. However, the decline in lending rates for loans in most countries was much smaller, with the median lending rate applied to small-sized loans in the median country having declined by not more than 30 basis points.』

『Since June 2014 the transmission of policy rates to lending rates has improved considerably, with declines in lending rates becoming more pronounced as well as more widely distributed across euro area countries.』

ということで、HFC(非金融部門や家計)向けローンの金利推移と、クレジットイージング政策を実施した後のローン金利変化に関する図表があって、上記の説明のように最初のうちは金利低下が実際の貸出金利に中々跳ねなかったけれども非伝統的政策を実施したら金利低下したので効果かくにん!よかった!!という事のようです。


次が図表4で「クレジットスタンダードの緩和と借入需要」という図表。

『Our quarterly bank lending survey confirms the improvements in broader credit conditions since the introduction of our new non-standard measures. The survey, addressed to the senior loan officers of a representative sample of euro area banks, provides information on financing conditions in euro area credit markets and on banks’ lending policies. The left-hand chart in Figure 4 shows that banks have consistently eased their credit standards for loans to non-financial corporations over the past year.』

『The easing of credit standards stems, notably, from the lower cost of funds and balance sheet constraints, as well as from greater competition among banks. Both developments were clearly objectives of our measures, in particular of the TLTROs. The right-hand chart in Figure 4 shows net credit demand conditions and their contributing factors. Easier access to credit has been coupled with a consistent increase in firms’ demand for loans. The general level of interest rates, according to the survey respondents, is contributing most to the recovery in loan demand.』

銀行のバランスシート改善と貸出金利の低下によってクレジットスタンダードが緩和され、資金需要も出てきましたので効果かくにん!よかった!!という事のようですな。


・・・・・・・・という説明しているのですが、それって非伝統的政策の効果なのかというのはこれまた微妙な話で、単純に低金利政策を長期化するなかでバランスシート調整が進捗したから低金利政策の効果が時間的ラグを持って効いてきているだけで、効果の本質は実は非伝統的政策ではなくて低金利政策の長期化効果(例えば時間軸もどきとか)の方だったりするんじゃないかというツッコミをするとどういう答えが返ってくるのかは謎ではありますな。



・資産効果はまあ分かりやすいですからね


次が図表5で「株価と債券金利の推移」という思いっきり直球な図表。

『As I have already mentioned, an important transmission channel for asset purchases relates to the fact that different assets are imperfect substitutes. Consequently, interventions by the central bank that affect the supply of various assets available to private investors influence the prices of many other assets, including investment grade bonds, equities, real estate and foreign assets, with consequences for the exchange rate. Figure 5 shows the increase in equity and bond prices (the latter illustrated by investment grade corporate bond yields).』

まあこれはそうでしょとしか申し上げようがない。



・インフレ期待とインフレへの効果


次が図表6で「インフレ期待」である。

『The ongoing deterioration of long-term inflation expectations was a major factor in the extension of our purchase programme in January this year. Figure 6 shows the evolution of these expectations over the past decade and since 2012. Euro area longer-term inflation expectations (both market-based and, to a lesser extent, survey-based) had been falling since early 2013, reaching an all-time low by early 2015.』

『Expectations of inflation five years ahead, as expressed in the ECB Survey of Professional Forecasters, fell from 1.98% in the first quarter of 2013 to 1.77% in the first quarter of 2015. The five-year inflation-linked swap rate five years ahead fell from 2.4% to 1.5% over the same period. Since January 2015 this declining trend has been reversed.』

ってドヤ顔(かどうか知らんが)で説明しているのですが、貼ってあるグラフを見ると直近でどう見てもインフレ期待が落ちているんですががががが。

『Both market-based and survey-based measures of longer-term inflation expectations have recovered from their lows. While broadly similar dynamics in market-based measures of longer-term inflation expectations have been observed in other countries, the decline in the euro area somewhat preceded them and was more prolonged.』

ただし他国(USとUK)と比べるとインフレ期待の低下基調が長かったという評価をしているのは、こらまあインフレ期待を上げないといけませんというメッセージを出している訳で、そういう意味ではハト的なお話をしらっと入れていますなという所です。

でもこのインフレ期待に関しては他のファクター色々とあるだろという話であって、「非伝統的政策」が効いているのかというとそこは怪しいんですけどね。


『I will now turn briefly to macro developments, both in terms of inflation and economic growth.』

で、図表7が直球で物価の推移ですが・・・・・・・・・・

『Since last April headline inflation has turned positive but remains very low, affected by the renewed decline in oil prices. Core inflation, excluding food and energy, continues however to firm, reflecting the ongoing economic recovery which is evolving in accordance with our baseline scenario.』

HICPのヘッドラインインフレは弱い(直近+0.24)ですが食糧エネ抜きの基調は確り(直近+0.95)ですとか世界共通の言い訳キタコレ。

『The latest round of our staff macroeconomic projections indicates that by 2017 inflation will be below, but close to, 2% and that GDP growth will also be hovering around 1.9%.』

はいはい見通し見通し。


・非伝統的政策の弊害に関する説明部分が結構長い

『We do not deny that there are risks and shortcomings associated with the type of policies that we have been forced to adopt in view of our mandate to safeguard price stability in a symmetric way. Very briefly I will refer to several of these:』

ということで非伝統的政策の弊害に関する論点にお答えするというコーナー。

『Medium-term inflation risks are very low and central banks have enough instruments to deal with them.』

中期的なインフレへのリスクは低いし対処は可能ですとな。

『The exit strategy may involve the possibility of losses for the central bank. However, as Ben Bernanke has said, this is a possibility that, measured against the gains from a stronger economy and the previous contributions to government budgets, is “not a true social economic risk”. [4]』

出口における財政負担問題に関しては「経済が良くなっていればそっちのメリットの方が大きいから宜しい」という話をしておりますな。まあこれはAPPの規模やバランスシートの保有するモノ次第の面があって、日銀だったりするとこれがまた結構なリスクになる筈なのだが、ここでも引き合いに出されるバーナンキがこう言ってるから大丈夫ヘーキヘーキで済ませようとしているのが今の日銀執行部(とたぶんジンバブエ原田審議委員)なのがオソロシスなのですけど、と話が逸れましてすいません。

『Financial stability risks, stemming from search for yield and higher leverage, are real, but monetary policy cannot be inhibited in the pursuit of its priority goals. Those risks must be addressed by macroprudential policies of a regulatory and administrative nature, and the policy toolkit available to central banks in this respect should be enlarged for that purpose.』

『Potential laxity of credit risk management by financial institutions in a climate of low rates. Supervision, appropriate risk management governance and the regulation of provisions should deal with this problem.』

こらまたバイトマン辺りが目を剥いて湯気を発しそうな事を言ってますなという所で、まあこれはコンスタンシオなので仕様なのですがいわゆるBISビューバリバリの話はしないでマクプルで対処する方面でファイナンシャルスタビリティの対応はヘーキヘーキという説明ですな。まあここはECBでも見解が割れるでしょうなあ。

でまあこの後も説明があってこの次の説明が結構長い。

『Wealth effects and increased inequality. The stronger economy and lower unemployment that result from the LSAPs mitigate but do not eliminate this possible side effect.』

『Sometimes the criticism directed at our policies implicitly attributes responsibility for the low interest-rate environment to central bank policies. But the truth is precisely the opposite: central banks are simply reacting to and trying to correct a situation that they did not create. 』

『Indeed, medium and long-term market interest rates are mostly influenced by investors and market players, as the recent so-called “bund tantrum” illustrates. More importantly though, it should be pointed out that for a few decades now we have been witnessing a sort of secular trend towards lower real interest rates. This trend is related to secular stagnation in advanced economies, resulting from a continuous deceleration of total productivity growth and an increase in planned savings accompanied by less buoyant investment prospects. Monetary policy short-term rates are low because of those developments, not the other way around.』

『At the same time, our monetary policy has to be accommodative precisely in order to normalise inflation and growth rates, thereby opening up the possibility of higher interest rates. Furthermore, in the present short-term conditions, with no fiscal room for manoeuvre, it is monetary policy that has the capacity to create the hope that this normalisation will protect savers in the future and improve net margins for banks.』

2番目以降は同じパラグラフなのですが、長いので分割しちゃいましたけれども、この辺からの説明って「低金利政策が長期化してケシカラン」系の批判にお答えしているのと同じ話で、非伝統的政策の弊害がどうのこうのというのに限定されないでしょというお話になります。


でまあこの後に株価と不動産価格とクレジット市場のバリュエーションに関する説明があるのですが、その最初に『Regarding the risks associated with the search for yield and rich asset valuations, it is important to highlight that there are currently no signs of a general situation of asset overvaluation in the euro area.』という事でお察しの内容ですから引用は割愛します。


・でまあまとめ

最後が『Conclusions』である。

『Our new non-standard measures have successfully improved financial and credit conditions in the euro area and contributed to supporting the normalisation of price stability, as well as the ongoing economic recovery. I am confident that full implementation of the private and public sector asset purchase programmes, as announced, will lead to a sustained return of inflation rates towards levels consistent with our definition of price stability, underpinning the firm anchoring of medium to long-term inflation expectations. As always, the Governing Council stands ready to use all the instruments available within its mandate to respond to any material change to the outlook for price stability.』

まああんまり変わったことを言っている訳でもないのですが、報道ベースでは必要なら措置を取る的なヘッドラインが出ていたように記憶しているのだが、「政策は効果を出している」「弊害も特段顕在化していない」「インフレ期待にも効果は出ているがまだやや弱め」という話をしている上に、ファイナンシャルスタビリティに関するBISビュー的な話を全然していないということで、まあハト的という解釈になるんでしょうなあと思います。

でもって非伝統的金融政策の定量効果については何ちゅうかそれは非伝統的なのの効果なのか低金利政策の累積的な効果が後になって出てきたのかというのは実に怪しいので、その辺は非伝統的政策の仕様ということで、効果とかの話が盛大に我田引水になるんですよねえという所で。







2015/09/01

お題「輪番微調整とか短国SLFとか/コンスタンシオ副総裁の非伝統的政策メカニズム説明から」

はて???
http://www.asahi.com/articles/ASH803QQSH80PTIL00R.html
橋下新党、10月下旬設立 松井府知事が表明
2015年8月31日13時53分

都構想の住民投票がアウトだったら政界引退するんじゃなかったんでしたっけと思う訳で、まあ毎度毎度行動についての話が全然整合性取れてないのに平然としていられる神経が良くわからんのだが、日銀の金融政策を口汚く罵倒しまくって日銀のボードにになった途端に「中に入って初めて知った」とか言い出して最初に叩いた大口を全然履行しない日銀副総裁ってのもいるんですから、全く持って朝から血圧が上昇するというものであります。


○輪番微調整とかSLFとかその他雑談

・輪番買入の微調整来ました

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150831c.pdf

『(注4)2015 年 9 月 1 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下 700 億円、残存期間 1 年超 3 年以下 4,000 億円、残存期間 3 年超 5 年以下 4,000 億円、残存期間 5年超 10 年以下 4,000 億円、残存期間 10 年超 25 年以下 2,400 億円、残存期間 25 年超 1,400 億円、変動利付債 1,400 億円、物価連動債 200 億円とする予定です。』

前月はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150731e.pdf

『(注4)2015 年 8 月 3 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下 700 億円、残存期間 1年超 3 年以下 3,750 億円、残存期間 3 年超 5 年以下 4,250 億円、残存期間 5 年超 10 年以下 4,000 億円、残存期間 10 年超 25 年以下 2,400 億円、残存期間 25 年超 1,400 億円、変動利付債 1,400 億円、物価連動債 200 億円とする予定です。』

今回の変更点は買入明細の中での中期輪番の内訳部分だけが変更になっていて、1回当たりの買入を1-3で+250億円、3-5で▲250億円となっておりまして、トータルではツーペー。他の年限には変更がなくて、全体の買入概要で示している数値やレンジに関しても変更なしとなっています。

・・・・・・・でまあこれで月間に直すと1500億円の割り振り変更になるのですが、中期に関してはまあ辛うじて買入の余地はあるのかも知れませんが、2年とか相変わらずゼロ金利近辺で中々プラスの金利が出ないという時期も結構あるという状態だと思うのですけれども、この辺は投資家のポートに沈んでいたものが出てくることもあるので、3-5よりは買入しやすい可能性もあるとかそういう事でも考えているんですかねえ、よー知らんけど。

あと、ここに来て5年カレントの金利が10bpをそこそこ割った水準で推移していてちょっと強いなあというのもあって、そっちの事も勘案したのかねとか。


・SLFを短国に拡大のようだがワークはするのかね&関連雑談

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150831d.pdf
国債補完供給の実務運用の変更について

『日本銀行は、国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和することにより、金融調節の一層の円滑化を図るとともに、国債決済の円滑確保にも資する観点から、以下の通り、新たに国庫短期証券を国債補完供給の対象に加えることとしました。』

まあ散々無慈悲買入をして市場にストレス掛けまくっている主体からこのように言われますとマッチポンプという言葉が喉まで出かかってしまいますが(^^)、まあやらないよりはやる方が良いのでそこは歓迎して内容を確認しましょう。

『1.売却対象銘柄
日本銀行が保有する国庫短期証券のうち、日本銀行が適当と認める銘柄とします。』

そらそうだ。

『2.銘柄別の売却上限額、連続利用日数および最低品貸料

国庫短期証券の銘柄別の売却上限額および同一銘柄を連続して売却(注1)できる日数等については、想定される利用形態等を踏まえ、以下の取扱いとします。』

とあるのですが、上限が

『日本銀行が保有する残高(オペ等で売却が決定している金額を除く)の 100%または 1,000 億円のいずれか小さい額』

となっておりまして、えーっとすいません1000億円ですかそうですかあの隣に書いてある長期国債の方が4000億円になっているのですが市場での通常売買ロットから考えたら短国の方が上限額高くする方がバランスとれませんかねえという所ではあります。

まあそもそも論として中長期国債と違って短国は日銀買入の話がこうなる前から基本的にショートセールというのはホイホイと実施出来ないという仕様になっていて(持ちきりの投資家が多いから新発近辺以外でモノが出にくい)ショートセールそのもののが一般的に行われない上に日銀の無慈悲買入が進んでいる訳でして、そらまあ余程のケースじゃないとショートはせんのでニーズがあるのかこれ???とは思う次第。

などと書きながら思ったのですが、期末の債券現先ニーズに対してSLFから物を借りてきてニーズのあるところに売現先かませばニーズはあるかいなとか思ったのですが、そもそもマイナスレートでの買現先取引にどの程度のニーズがあるのかが良くわからんし、手間暇かかる割にワークしない(前日からSLFで借りて置く位にしないと決済がバタバタになりそう)ようにも思えますがどうなんでしょ良く分かりません。


つーことで、この「1000億円」という謎の中途半端な上限金額といい、連続適用可能日が中長期国債の15営業日に対して5営業日とか、作ったのは良いけれども利用者が(BCPのお試し以外で)発生するのかいなという気はするのですれども、まあ無いよりはマシとかそんなイメージなのですけれども、これをローンチしたことに関してまたドヤ顔で「このような施策を行い短国市場の流動性を高めました(キリッ)」とか言われましてもちともにょる所ではありまする。


でまあ話はワープするんですけど、短国市場の流動性とか市場に掛かるストレスというのであれば、より画期的な方法をちょっと提案して置こうかと思うのですよね。

現状の短国買入って6Mと1Yがバカスカ打ち込まれていくようになってきたので、償還ロールの額が相対的に減ってきて今月の短国市場はだいぶ流動性が改善されるのではと期待されている訳でございますけれども、この際QQEでMB目標を置いている時限定で短国に関しては1Yと6Mについては全額日銀引受で発行(発行価額は直近の3M短国入札と2年国債入札の利回りからカーブを引っ張って決めればヨロシ)して貰いますと、日銀の所に1年短国が30兆円、6M短国が21兆円入りまして、合計51兆円の買入が勝手にできます。

で、このままですとMB積み上げ過ぎという事になりますので、資金需給動向を見ながら適宜売りオペ、というと聞こえが悪いので「TAP方式での国債発行」とか「短期国債流動性供給オペ」とか何とか売りという言葉を入れないでMB積み上げで余る分だけ売りに出す、という作戦で調節して頂きますと日銀トレードとかそういうしょうもない取引も駆逐されましてより市場の価格形成が普通になるのではないかねとか思う次第。何せ今の短国市場は6Mと1Yを見ればお察しの通りで「日銀の短国買入を前提にした価格形成」が普通になっていまして、いやまあそれが単にリスクプレミアムを下げるとかいうのであれば文句も無いのですが、「普通の投資家を投資機会を奪うような価格形成を行う」のが本当に日銀のやることなのかよというのはだいぶあると思いますがねえと。

でまあポートフォリオリバランスとかいう話になるのかもしれませんが、そもそもポートフォリオリバランスするにしても純粋な自分の手金なら兎も角、基本お預かりしている金をどうしますかとやっている金利系の市場の皆様におかれましては、運用における制約だってあるし、制度における制約だってある(本当に短期国債市場の資金を全部外に出したければ流動性規制無くせとか、決済担保を取るなというような極端な話をしないといけませんがな)訳でして、短国金利のマイナス定着ってポートフォリオリバランスにおける収益性云々によるリバランスのインセンティブを発生させるとかいうレベルを超越した状態になっているので、もうちょっとそういう問題認識を政策委員会に上げてほしいものだと思いますけど、MPMの議事要旨を見ると毎度毎度どなたかの委員様が「副作用は理論的にも実際にも発生していない」とか堂々と発言するという時点で血圧が急上昇してしまう次第ではございますという事で。


・生産もアチャー

さあもりさがってまいりました!!!!!
http://jp.reuters.com/article/2015/08/31/july-industrial-output-idJPKCN0R000320150831?sp=true
2015年 08月 31日 10:57 JST
鉱工業生産、7月は予想に反し低下 先行き在庫調整継続で一進一退

『[東京 31日 ロイター] - 経済産業省が31日発表した7月鉱工業生産指数速報は、電子部品や自動車部品を中心に前月比0.6%低下した。2カ月ぶりの低下となった。事前予測の前月比0.1%上昇を下回った。在庫指数はやや低下し調整は進んだが、水準はまだ高い。先行き予測指数は、IT投資や電子部品の需要回復期待がけん引する一方で、中国経済減速や国内消費の低調を背景に、建設機械や原材料需要の停滞から一進一退が続く見通し。』(上記URL先より)

先週の消費も弱めだわ生産もパッとしないわという事で、輸出は毎度の出る出る詐欺だし、本当の本当に前向きの循環メカニズムが回っているのかよと小一時間問い詰めたい状況となっておりまして、これは今週の毎勤統計がやたら注目される地合いになってまいりましたな!!!!!!


・・・・・・・・・・・でまあ毎勤もクソだったとして、日銀が循環メカニズムの不具合を理由に追加緩和をするのかと言いますとこれがまた中々ネタが難しくて、MBこれだけ増やして循環メカニズムが回らないのであれば、そもそも論として置物MB直線一気理論とか、物価を上げれば経済が良くなるといった置物リフレ理論について「効かないならもっとやればよい」で済むのかと何ぼ何でも2年も大幅に経過する中でツッコミが入ってくるのは必定ですし、大体からして物価を無理繰り上げても需要が減退するだけというのが明らかになった(需要が増えて物価が「結果として」上昇するというメカニズムになっていない訳ですな)中で政策どのルートで説明しますねんという話は大いにある。

となりますと、まあ普通にロジカルに迫るのは無理ですので(元々の置物理論が机上の空論だから仕方がないのだが)「気合ルート」という最早何が何だか分からない説明をするのが合理的という結論にしかならないと思うのですが、はてさてどうなることやらとは思うのでした。なお、足元で原油が戻ってきていますが、これ原油が戻ってくると(1)本当にヘッドラインやコア物価が上昇するのか、(2)前項がクリアできたとして物価上昇で消費が腰折れしないのか、という所が白日の下に晒されるのでこれはこれで面白い展開になるかと思います。



○コンスタンシオECB副総裁のQEに関するお話から(多分その1)

コンスタンシオのおっちゃん今朝も『Understanding Inflation Dynamics and Monetary Policy』ってお題の講演をしているのですが、
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150829.en.html

今朝は一歩出遅れてこちらから少々。
http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150825.en.html
Assessing the new phase of unconventional monetary policy at the ECB

Panel remarks prepared by Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
at the Annual Congress of the European Economic Association
University of Mannheim, 25 August 2015


・大規模APPは非伝統的政策のなかでより積極的とな

『My plan today is to present some key features of the monetary policy measures recently implemented by the ECB. As you all know, in January this year the ECB launched the most recent addition to its suite of tools - the public sector purchase programme (PSPP), popularly referred to as quantitative easing. Together with a programme of targeted liquidity provision and a programme of private sector asset purchases, the PSPP marked a new phase of the ECB’s unconventional monetary policy.』

ということで・・・・・・・・・・

『Previous non-standard measures were mainly aimed at redressing impairments in the monetary policy transmission mechanism and fostering a regular pass-through of the monetary policy stance. Their implications for the ECB’s balance sheet were accommodated in a merely passive way to satisfy the liquidity demand created by banks.』

『In contrast, with the new measures implemented since June 2014, the Governing Council is more actively steering the size of the ECB’s balance sheet towards much higher levels in order to avoid the risks of too prolonged a period of low inflation in a situation where policy rates have reached their effective lower bound.』

1月以前の各施策は金融政策のトランスミッションメカニズムをよりワークさせることを主眼に置いていたが、大規模APPによるバランスシート拡大政策は低インフレの長期化によるリスクに対応したものです、とわけておりますな。


・民間部門のクレジットコンディションと中長期的なインフレ期待に注目とな

次が『General considerations underlying the new phase of unconventional monetary policy』という小見出し。

『The launch of the new phase of non-standard measures in June 2014 must be viewed in the context of the decline in inflation rates since the second half of 2013, which was accompanied by persistently fragile euro area growth prospects, even after the sovereign debt crisis abated over the course of 2012.』

非伝統的政策の最初の導入は2013年半ばのインフレ低下以降のコンテクストでみるとな。

『The economy was still in recession for most of 2013 and annual GDP growth figures only became positive in late 2013, leaving significant economic slack. A weak recovery took hold over the course of 2014 with growth rates around and below 1%, but the outlook deteriorated again during the autumn, with inflation turning negative later that year. The 2015 GDP growth forecasts for the euro area in the ECB staff macroeconomic projections had declined from 1.7% in June to 1% by December. At the same time, and in contrast to previous developments, weak growth was accompanied by a prolonged period of declining inflation, which went from 3% at the end of 2011 to -0.2% in December 2014.』

と、ここで物価動向とかGDPとかの話をしていますが・・・・・・・・

『Credit supply conditions in the euro area remained tight, despite signs of improvement, as indicated by the responses to bank lending surveys. These developments were particularly worrying because they were accompanied by a decline in longer-term inflation expectations.』

問題意識としてとらえているのは「クレジットサプライ」のコンディションと、「長期のインフレ期待の動向(低下)」ということになっているので、まあそういう意味でECBが追加緩和をするという話になりますと、この2点に対する問題意識、政策波及ルートの説明を見ておけばヨロシという事になりますな。


・政策の効果についての部分に味わいがある

でまあ上記引用部の続きは「という訳でこのような施策を行いました」というTLTROとかカバードボンド買入とかPSPPとかの説明があるのですがそこはパスしまして。

『The effects of the measures have to be assessed jointly and taking into consideration that some of the measures started to produce results before the decisions were actually taken. This is particularly true of the PSPP, which was adopted in January; a survey of market participants conducted in October 2014 showed that over 50% were already anticipating that such a programme would shortly be adopted.』

『The distinguishing feature of the new phase of our unconventional monetary policy is the switch to a more active steering of the ECB’s balance sheet.』

つーことで図表1を貼れないのですが、バランスシートが大きくなりましたという話をしているのですが、日本のバランスシートの対GDP比を見ると頭がクラクラしてくるのでおヌヌメ。

『It is important to emphasise the nature of this new phase. Our intention is not to expand our monetary base in the expectation that, through the workings of a stable multiplier, this will result in an increase in monetary aggregates, which will in turn cause an upward movement in inflation by whatever means conceived by the traditional quantitative approach.』

MBさえ出せばという理論を元にしておられた置物MB直線一気リフレ理論とかマッカラムルールとかを唱えておられるリフレ派何とかストの皆様に小一時間ほど所感をお伺いしたい。

『Our main reason for adopting a large-scale asset purchase programme was to harness several new channels for the transmission of an expansionary monetary policy.』

LSAPのメインの理由は拡張的な金融政策の新たなトランスミッションメカニズムを利用することであるとな。

『The expansion in the monetary base and total balance sheet is rather a consequence of these new types of monetary stimulus.』

「rather a consequence」って「MB数値」を「目標」にしているどこぞの中央銀行涙目。

『Recent experience shows abundantly that those traditional relationships are not working well in the new realities of the financial system (see Figure 2).』

図2が貼れないのですが(涙)。

『The first channel through which these new unconventional monetary policy measures are expected to stimulate aggregate demand is by signalling the ECB’s commitment to maintain an accommodative monetary policy stance. [1] The TLTROs are a particularly clear example of this signalling channel. With their pre-specified interest rate and their maturity extending over many years, these operations provided information on the likely path of future interest rates. In the case of asset purchase programmes, the signalling channel operates more indirectly, through the expansion of the Eurosystem’s balance sheet.』

緩和的な金融政策スタンスに対するコミットメントによって需要を喚起する、という話がメインで、その中でTLTROについては緩和的な金融環境を作るというコミットに直接つながるものであり、APPに関してはバランスシートの拡大によって間接的なコミットメント効果のようなものがある、というお話。途中の「With their pre-specified interest rate and their maturity extending over many years, these operations provided information on the likely path of future interest rates.」はホンマカイナという気はするけど。


『The second channel results in part from the first, and relates to the direct impact on medium-term inflation expectations that a LSAP programme implies. It is expected that when forming expectations about future inflation, market players factor in the effect of this non-standard policy measure.』

LSAPによって中長期のインフレ期待を引き上げる、というのもまあどこもLSAP突っ込むときにはそういう説明になっているからそんなもんという所ですが、じゃあLSAPってとっとと削減しないとインフレ期待が上振れしませんかねえという時期になるととぼけるのが中央銀行の仕様です。


『Non-standard measures can also stimulate activity through a third channel, specifically by lowering the effective cost and availability of credit to the non-financial private sector. Again, the TLTRO programme does this, providing explicit incentives for banks to extend their credit supply. The effectiveness of this programme was reinforced by the conclusion of our comprehensive assessment of the quality of banks’ balance sheets in autumn 2014, which provided strong incentives for banks to speed up the repair of their balance sheets.』

3番目のチャネルはクレジットのコストやアベイラビリティーを緩和することによって民間の借入を容易にしますという話をしているのだが、最後の「The effectiveness of this programme was reinforced by the conclusion of our comprehensive assessment of the quality of banks’ balance sheets in autumn 2014, which provided strong incentives for banks to speed up the repair of their balance sheets.」というのはホンマカイナという気がする(規制強化方向なのだから逆じゃネーノ)。

『The fourth channel of transmission of the new unconventional monetary policy, which is specific to the asset purchase programmes, operates through portfolio rebalancing. By means of its purchase programmes, the ECB exchanges longer-term and relatively less liquid assets for very short-term and highly liquid central bank money. This mitigates liquidity and duration risks in private sector portfolios and, given liquidity and Value at Risk constraints, reduces the required compensation for holding risky and illiquid assets. [2] As a result, the programmes encourage portfolio rebalancing and support asset prices. The ensuing improvement in the balance sheet position of investors and banks eases leverage constraints and allows banks to extend more credit at lower costs to the private sector. [3] Better financing conditions improve growth prospects, increase profitability and mitigate default probabilities in the non-financial sector. These positive feedback effects further improve the condition of the balance sheets of investors and banks, and increase their willingness to extend new credit in a self-reinforcing positive spiral.』

ウダウダと書いてありますが、要するにECBが相対的にハイクオリティでデュレーションのある資産を民間から買う事によって、ポートフォリオリバランスを起こしますという話で、まあ毎度お馴染みの理屈なのだが、これについては民間に対するポジション等の規制要因の方が強い話で、片方でバーゼル3ヒャッハーとかやっている中でこれをやられるとポートフォリオリバランスではなくてハイクオリティな資産の価格が無駄に上昇(国債金利の無駄な低下など)することになるように思える訳で、ポートフォリオリバランスというのはあくまでもおまけ程度に考えて欲しい(ポートフォリオリバランス狙いで買入したらおそらく費用対効果が合わない)ところです。


というのが政策の効果という説明でして、この次に『Evaluating the new phase of unconventional monetary policy』と定量コーナーが登場するのですが時間の都合上ここで勘弁ということで(汗)。