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2015/10/30

お題「決定会合プレビュー雑談/FSRの「BOX」を鑑賞するの巻」

5中全会の目玉政策はこれですかそうですか。
http://jp.reuters.com/article/2015/10/29/china-growth-birth-idJPKCN0SN1BJ20151029
International | 2015年 10月 29日 23:35 JST
中国、今後5年は中高速の成長目指す 「一人っ子政策」廃止へ

まあ何ですな、一人っ子政策廃止しても経済が成熟してくると勝手にそうなってしまいますという例も有る訳でございまして。


○決定会合プレビュー雑談

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF29H0Q_Z21C15A0EE8000/
日銀、物価見通し下方修正へ 30日に決定会合
2015/10/30 2:00

『日銀は30日、金融政策決定会合を開く。半年に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をとりまとめ、物価見通しを下方修正する。物価上昇率2%という政策目標の達成時期も現在の「2016年度前半ごろ」から先送りする。金融政策運営については、景気と物価の先行きを点検しながら、追加緩和の必要性を慎重に見極める。』(上記URLより)


http://jp.reuters.com/article/2015/10/29/boj-qqe-idJPKCN0SN0CU20151029
Business | 2015年 10月 29日 14:56 JST
焦点:日銀、QQE維持の公算 物価目標達成時期の先送り検討へ

『[東京 29日 ロイター] - 日銀は30日に開く金融政策決定会合で、現行の量的、質的金融緩和(QQE)政策の維持を決める公算が大きい。ただ、原油価格の下落や新興国を中心とする海外経済の減速で、2%の物価目標は2016年度前半から遅れ、達成時期の先送りが議論される可能性が高い。』(上記URLより)


ということで直前の報道を拝見しますと「展望レポートで手前の物価や成長の見通し、2%到達時期の見通しが下がる」「追加緩和の可能性はあるけどあんまりなさそう」というような感じになっているかと思われます。でまあ今回の追加緩和以外の話で言いますと、何とかストの皆様の所ではこの先の政策について「追加緩和無し」と「追加緩和有り」の見方を変更している人がここに来て現れていたりとかで、見方というか考え方が微妙に揺らいでいるようですな。

まー何でこんだけ色々な見解が出るかと考えますと、第一にそもそも日銀の行動反応関数が何が何だか分からなくなっていることで、前回の追加緩和がそれまでの説明を覆して打ち込まれた上に、その時に理由になった「原油価格の低下によるインフレ期待や物価の基調への悪影響」が更に懸念されそうな今年の頭辺りでは動かずを決め、その後2%達成時期は延びるのに「基調」を持ち出して動かず。しかもその「基調」を説明するのに持ち出してくる指標がコロコロ変わる、とまあそういう状態になっていて予想しろと言われましても、どこに力点を置くのかで論建てが全然変わってくるぞなというお話。


でもって第二にはオペの限界という話で、FSRでは(まだネタにしていないけど)市場の流動性は保たれています(キリッ)という話なのですが、市場そのものが息をしていない状態で碌に売買する人居ないし、輪番と入札しかネタが無いというか、そもそも入札で流れてもどうせ明日輪番だからとその後コケないし、入札が無駄に強くてもどうせ明日輪番だからとそのまま値持ちするしとか、もう何だかねという状態になっている訳ですが、来年は今の枠組みのままでも月間10兆円ほどのフローでの買入を実施しないといけないという状態なのにこれ以上追加できるんですかと考えますとフローの買入が来年のどこかで爆発するリスクも真剣に考えた方が宜しいですし、大体からしてバーゼルVのレバレッジ規制が今年からお試し期間開始している中で、ここからMBを80兆円拡大するためには超過準備が80兆円増えないといけないのですが、そんな量の超過準備誰が持つんでしょと考えるとそっちで爆発する方が現実的かも知れませんが、いずれにせよこの先1年は続けられても2年は持たない枠組みになっているのではないでしょうか。


ここに外野の事情なども加わるのですが、「オペレーションが向こう1年から2年位のタームで完全に限界を迎える」という中で、2%物価到達までの時間が従来以上に掛かる可能性というのを意識した場合には、「コアCPIが2%を見に行く前にオペレーション的に政策が回らなくなる」という最悪の状況が発生するリスクを念頭に置かないといけないでしょと思うのですよね。

つまりですな、今回の展望レポートで衆目が一致するのが「2%到達時期見通しがまた後ろに倒れる」という事だと思いますが、2%到達時期見通しが後ろに倒れるという事なのであれば、今申し上げた「物価がいかないのにオペ大爆発」という一億玉砕ポツダム宣言シナリオという最悪シナリオの可能性が更に高まるという事になるのですから、尚更の事追加金融緩和とかもっての外という話になる(今の政策建付けだとMB拡大ペースを引き上げることが追加金融緩和なので)訳で、政策の維持可能性という観点から考えると追加緩和は無いでしょとなる筈です。


ちなみに余談ちっくになりますが、そもそも前回の追加緩和の時は2%物価到達時期見通しっていうのは変化していなくて、「追加緩和効果によって2%物価到達へ力を加えることになるので物価2%到達時期は変更しませんが何か」という話になっていましたし、大体からして追加緩和を実施するのに2%物価到達の見通し時期が後ろにずれるのであればお前は何の為に追加緩和をしているのかと小一時間な訳で、金融緩和効果で物価を行かせますというのを主眼にしている以上、追加緩和するなら物価見通しは不変(=従来シナリオのオンラインとする為に追加緩和をするのだから)であるべきで、「追加緩和しますが物価達成時期は遅れます」じゃあ最初から敗北宣言をしているようなもんなので、間違って追加緩和した場合は当然2016年度前半に2%というのは変えないのが今の政策の建付け上妥当な態度だと思いますがどうでしょうかね。


てな話はさておきまして、アタクシはご案内の通りで、どう計算しても2年は続けられない(運が良ければ1年位は続くかもしれないけど)この政策の建付けの性格上、2%達成で目標達成に視野的な話ができないのであれば、政府との共同文書の基本的な骨子に立ち戻って黒田日銀になって勝手に置物理論に拠って加えられた「2年で達成」という縛りと、その縛りによって突っ込んだマネタリーベース置物一気理論を棄却して、より長い期間粘り強く緩和政策が可能な枠組みに転換しないと無理でしょと申し上げている訳ですな、うんうん。

なので追加緩和があるとすれば(これも先日申し上げましたが)政府方面がすっかり2年どころか2%達成の方まで興味が無くなっている(ような情報発信が続く)という梯子外し状況にトサカに来てヤケクソになって無理心中追加緩和を打ち込んでくるという可能性と、来年の早い時期(下手したら年末)に政府のデフレ脱却宣言的な威勢の良い勝利宣言が出るときにしらっと長期的な政策枠組みに政策を転換するので最後に景気づけに追加緩和をしてもオペが爆発する前に撤退ができるという所まで見据えた追加緩和、という位しか思い浮かばないのですけどねえ、という所ではあります。

最近の債券市場の惨状振りを見ていると来年4月ごろ追加緩和とかのんびりした話の前にオペの弊害の方がもっと顕在化する(とまだ良いのですが市場がそのまま死んでしまうのが一番恐ろしい)んじゃネーノ位の事も気になるというものでございまする。


○市場雑談メモ

・タカ派チックなFOMCでも先物プラスとな!!!

昨日の債券市場はFOMC様を受けて金利上昇した上に鉱工業生産が予想よりも強いという日銀ニッコリの指標まで出たのでて長い所とか弱くて超長期2甘だの何だのやっていたはずなのですが、輪番が普通に入って普通の結果で結局サガランチ会長になったと思ったら引け前になってナンジャソラという感じで相場がホイホイと強くなって債券先物は何と前日比プラスの引け。

結局FOMCの12月利上げ示唆とは何だったのかというプライスアクションになってBB引けは30年近辺以外全ゾーン引け変わらずで、5年は相変わらず3.5bpだわ2年は相変わらず0.0bpだわ10年は29bpだわとなっておりまして、追加緩和期待にしても何じゃそら状態でありますな。

なんかこうなってくると追加緩和無しになっても追加緩和無し→債券下落→追加緩和無しで売られたところを買おうとしていた人が千客万来→まさかのドテン上昇とかになって、後付講釈として追加緩和無しで株や為替が動いたのを受けて債券買いとかいう解説になるんじゃないか位のオソロシスなものを感じるのでありました。


・3M短国だが100円足切が遠いですなあ・・・・・・・・・・

うむ
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151029.htm

(3)募入最低価格 100円00銭0厘5毛(募入最高利回り)(-0.0018%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.9838%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘0毛(募入平均利回り)(-0.0037%)

今回は足切が前回よりも5毛安くなりましたが相変わらずのマイナス金利入札での決着となっておりまして、どんだけマイナス街道続きますねんという感じですが、6Mと1Yがオペ専用機になっていて3Mがあまり入らない筈なのですが、そうは言いましても中々ゼロ金利に近づいてこないというのは、まあこれだけマイナス続いている中ですから皆さんすっかりスッカラカンになってしまってニーズが常にあるとか、規制絡みのドルファンディングの影響による担保ニーズとかがやはり根強いということなのでしょうかねえ、良く分からんけど。


○FSRでは今回の注目ネタがBOXにまとめられていて分かりやすいので鑑賞鑑賞

FSR全文から
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr151023a.pdf

先般引用しましたが、こちらの巻末に

BOX1 海外M&A 関連貸出と与信管理
BOX2 賃家業向け貸出と与信管理
BOX3 与信ポートフォリオの変化と信用リスク分析の高度化
BOX4 地域金融機関の有価証券ポートフォリオのリスク分析
BOX5 不動産市場の状況について
BOX6 金融マクロ計量モデルの改良

というのがあって、まあこの辺を注意していますよいうメッセージ性がありますのでメッセージを鑑賞しようじゃないかという企画である(^^)。

なお、図表がいっぱいあるので内容を見ようと思ったら上記URL先を見に行ってちょ。


・海外関連貸出を調子に乗ってやっているようだが与信管理ちゃんとしろですかそうですか

『BOX1 海外M&A 関連貸出と与信管理』を鑑賞。

『日本企業によるM&A が活発化するもとで(前掲図表IV-1-8)、海外M&A 関連貸出は、大手行の貸出増加を支える主な要因の1 つとなっている。海外M&A案件は、買収に伴う非金利収益(M&A アドバイザリー手数料や幹事行引受手数料等)が大きいほか、買収後の取引機会の増加も見込まれる。こうしたなか、大手行では、海外M&A 案件に積極的に取り組んでおり、グループ証券会社との連携強化等を進めてきている。』

『以下では、主にコーポレート・ローンを念頭に、海外M&A 貸出における信用リスク管理上留意すべき点を挙げる。』

ということで・・・・・・・・・・

『第一に、比較的短期間で審査を行う必要がある点である。競合が激しい海外M&A 案件では、企業から案件を持ち込まれてから1〜2 か月程度で必要なデューディリジェンス(due diligence)を行い、少数行で大口のブリッジローン実行にかかる与信判断を行うことが求められることが多い。ブリッジローン実行後は、いずれかのタイミングで、社債やシンジケート・ローン等によるリファイナンスが行われるのが一般的である。ブリッジローン実行段階では、こうした債務の切り替え等の実現可能性も含めて、適切に審査を行う必要がある。』

『第二に、海外事業のリスク特性の複雑さである。海外事業については、商慣習や法制等の違いを踏まえての審査が必要となる。また、所在国の経済情勢や為替水準の影響も考慮する必要がある。』

『第三に、買収企業にとって規模が大きい海外M&A 案件は、企業の将来性に多大な影響を及ぼす可能性も考えられる。実際、2014 年以降の日本企業による海外M&A 案件をみると、大口案件を含め、取引額(買収価額+被買収企業の純負債)が被買収企業の期間収益の20 倍を超える取引の比重が高まっており、一部では過熱感が指摘されている(図表B1-1)。また、買収に際して計上した「のれん」が買収企業の純資産対比でかなり大きい案件もみられる。』

第一と第二はまあ一般論ですが第三の最後の辺りからメッセージが。

『大手行は、相対的にリスクが大きいと見込まれる案件等を中心に、通常の財務分析に加え、海外拠点や現地コンサルティング会社等を通じた実態把握、買収先企業の経営陣との面談等を行っている。また、買収企業の財務の健全性を担保するために、国内企業向けシンジケート・ローン等に比して保守的なコベナンツ条項を課すケースもみられる。』

と言いつつ・・・・・・・・・

『今のところ、海外M&A 関連貸出における大口の信用コストの計上はみられていないが、潜在的な影響の大きさに鑑み、海外M&A 関連貸出に取り組むに際しては、@海外事業のリスク評価態勢の検証・整備、A為替や海外経済動向等を織り込んだストレス・テストの充実、BM&A 実施後の買収企業のモニタリング態勢の充実等を進めておくことが必要である。』

ということで拡大するのは良いけどザルになるなよというメッセージが来ておりますな。


・アパートローンェ・・・・・・・・・・・・

『BOX2 貸家業向け貸出と与信管理』というのがもうね。

『近年、地域金融機関を中心に、個人や個人設立の資産管理会社等に対する賃貸不動産向け貸出(以下「貸家業向け貸出」)が増加している。これは、土地所有者、富裕層の資産運用や節税ニーズ等の高まりを受けて、各地域で貸家着工が増加していることを反映している(図表B2-1、図表B2-2)。』

さいですな。

『一方、貸家に対する需要をみると、わが国の総人口は減少に転じているが、@高齢化や晩婚化を背景とした単身世帯の増加などに伴って世帯数がなお増加していること、A都市部や市街地への移住等の社会移動があることから、需要も相応に増加しているとの指摘がみられる。』

ほほう。

『実際、足もとの貸家着工は、空室率の低い都道府県ほど高い伸び率となっているほか、世帯数の増加との間に強い相関関係がみられる(図表B2-3、図表B2-4)。』

それは分かったがそっちは供給の話なのではないか??

『もっとも、貸家業向け貸出は、対象物件の経済的耐用年数が長く、融資期間が10 年以上、中には20 年を超えるものも少なくない。この点、やや長い目で貸家を巡る需給環境をみると、貸家着工と将来の世帯数予測との相関は必ずしも高いものではない。』

そもそも節税ニーズで建ったものに本当に需要予測が存在しているのでしょうかねえ。

『ここでの分析は都道府県単位の粗いものに過ぎないが、現実の融資実行に際しては、個々の物件の所在地における貸家需給やその見通しを踏まえて判断していく必要がある。』

ということですが、先ほどアタクシがツッコミを入れた辺りはおそらく書いている日銀でも先刻ご承知の助で、以下の説明を見ると「お前ら担保有るからってホイホイ出すんじゃねえ」というメッセージを非常に丁寧な口調で説明しているようにしか見えないのは気のせいですかそうですか。


『貸家業向け貸出の与信管理では、融資期間の長さなど事業特性を踏まえた入口審査と中間管理の両方が重要である。』

事業特性とな。

『まず、入口審査では事業主や施工業者等が策定した収支計画の妥当性の検証を行った上で、家賃以外の収入や担保保全の適切性を確認する。収支計画の検証に当たっては、対象物件の立地、周辺の家賃設定・空室状況等を確認すること、先行きの家賃収入(入居率×家賃水準)や貸出金利に一定のストレスを負荷しつつ、修繕費見込み等も勘案した収支シミュレーションを実施することが有効である。この点、考査等では、ストレスの妥当性が検証されていない、対象期間が短い等の課題がみられる。』

基本は収益返済らしいのですが、節税マンションの場合を念頭において「家賃以外の収入」という文言が入っているのがチャーミング。

『貸出実行後は、一定の頻度で空室率や収支の計画と実績を比較し、乖離がある場合はその事由を分析した上で、事業主に対する収支改善支援、入口審査基準の調整等、所要の対応を講じていくことが必要となる。また、所在地別、築年数別、債務者属性別の延滞率やデフォルト率など、データの整備を図るとともに、ポートフォリオ・ベースで分析・管理を行っていくことも有用である。』

不動産って特殊性が強いからポートフォリオベースの分析ってあんまり馴染まないような気もするのだが、個別データを集めてできるだけ一般化した分析もしろと言いたいのは分かります。

『現状、与信費用が増加している訳ではないが、融資期間を通じた中間管理が求められる。』

ということでこれは要するに今後与信費用が増加するリスクがあるんじゃネーノというメッセージですな。


・不動産市場に関して

『BOX5 不動産市場の状況について』も鑑賞。

『今回の金融活動指標では、「不動産業実物投資の対GDP 比率」が趨勢からの乖離幅を広げ、引き続き「赤」となった。ここでは、最近の不動産市場の状況を、取引・価格動向や、金融面の動向など、幅広い観点から点検する73。』

うむ。

『不動産の取引金額は、高水準で推移しているが、2007 年頃の水準には至っていない(図表B5-1)。物件タイプ別にみると、引き続きオフィスの取引が活発である。主体別では、足もとは、J-REIT が再び取引シェアを拡大している74(図表B5-2)。海外投資家は、リーマン・ショック前の投資物件の処分の動きと、新規の物件取得の動きが併存するもとで、ネット買越額は概ねゼロ近傍となっている(図表B5-3)。』

取引金額としては全体として見た場合にまだ過熱している訳でもないがREITの買いが目立つと。


『不動産価格は、全国的に下げ止まりつつある。地価の対GDP 比率は、過去からのトレンド並みの水準で推移しているほか、個別地点ごとにみた商業地価(鑑定価格)の上昇率の分布には、過去の2 度の不動産ブーム期にみられたような上方への広がりは、観察されていない(図表B5-4、図表B5-5)。東京23 区の商業用不動産の取引価格分布をみても同様である(図表B5-6)。』

不動産価格に過熱の状況も無いとな。

『J-REIT のイールド・スプレッドも、縮小する動きはみられない(図表B5-7)。もっとも、オフィスビルの空室率が低下している東京都心部では、賃料の本格回復に先行する形で、投資家の購入スタンスの前傾化を映じた高額物件取引も散見され、投資家の期待利回りが過去最低水準を更新する地域もみられている(図表B5-8、図表B5-9)。なお、地方圏においてはこうした動きは一部にとどまっている。』

つまり都心部の局地的な現象が起きているだけよ。


『金融面の動向をみると、J-REIT では高水準の資金調達が続いているが、レバレッジの高まりはみられない(図表B5-10)。』

ほうほうそうですか。

『銀行の不動産ファンド向け投融資を形態別にみると、大手行が貸出を幾分増加させているほか、地域銀行のエクイティ投資が増加している(図表B5-11)。J-REIT 以外の上場不動産業者(主に大企業)も資金調達を増加させているが、不動産ブーム期にあった2007 年頃と比べると低水準にとどまっているほか、借入は限定的である(図表B5-12)。「不動産業実物投資の対GDP 比率」の投資主体は、概ねこの上場不動産業者(主に大企業)に該当しているとみられるが、投資は今のところ、手元資金や資本調達によってファイナンスされている部分が大きいとみられる。』

ここまでは問題なしという説明。

『一方で、中小不動産業者(うち低信用先)における有利子負債残高(前年比)の分布は、不動産業のデフォルト率が急速に高まる直前の2000 年代半ばほど顕著ではないものの、足もと、上方への広がりがより明確になりつつある(図表B5-13、図表B5-14)。』

ここでちょっと指摘が入っています。

『以上みてきたように、多くの指標は、リーマン・ショック前の不動産ブームの頃を下回っており、不動産市場全体としては過熱の状況にはないと考えられる。ただし、不動産業大企業の実物投資の増加に加えて、J-REIT・海外投資家の物件取得が活発化しており、東京都心等では高額物件取引もみられている。また、銀行の不動産関連投融資も積極化しつつある他、中小の低信用先の資金調達では借入れが増加する兆しも窺われている。これらを踏まえると、不動産市場の状況については、引き続き注意深く見守っていく必要がある。』

ということで、まあこういうので「問題があります」とかレポートをドドーンと出すわけには行かないというのは大人の事情として良く分かるので、まあこの辺のニュアンスでお察しという話なので前回の纏め部分を出してみますね。

『以上みてきたように、最近の不動産市場では、景気の回復等に伴って、取引や金融活動が徐々に活発になってきている。不動産価格については、現状、過去の不動産ブーム期にみられた過熱感は、全体として窺われないが、オフィス物件を中心に取引金額が高めの水準にあること、海外投資家など投資家の不動産投資スタンスが積極化してきており、J-REIT 価格が上昇していること、不動産向け貸出が徐々に伸びを高めており、低信用先の資金調達も増加傾向にあることなどを踏まえると、先行きの不動産市場の動向については、注視していく必要があると考えられる。』
(2015年4月のFSR全文のBOX5から)

・・・・・・・・まあニュアンスとしては半年前の記述よりも若干警戒感は出ているようにも見えますね。





2015/10/29

お題「FOMCは年内利上げに向けた態勢立て直しを行った、ということで良いと思うのだが」

結果を何も見ないで声明文を読んで「ドル高株安債券安」を予想したら株は下がった後に上がったとはこらまた株式市場強いですな。

なんかモーサテの解説で2004年の利上げ開始局面との比較をやっていて利上げすんなと言わんばかりの話をしているのだが、そもそも2004年の正常化局面って正常化着手が遅れてクレジットバブルが発生したという結果的には正常化着手が遅れたという評価になっていると思うのですがその話を完全スルーして比較するとか何だかねえ。

ということでFOMC声明文である。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20151028a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20150917a.htm(前回)

○第1パラグラフ:消費と投資を上げて労働市場の改善ペースは下げとな

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity is expanding at a moderate pace.』(前回)

総括判断は変わらん。次が消費支出と投資。

『Household spending and business fixed investment have been increasing at solid rates in recent months, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft.』(今回)

『Household spending and business fixed investment have been increasing moderately, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft.』(前回)

輸出の判断はソフトで据え置き、家計と企業の消費や投資については判断引き上げで拡大が確りとしたペースになっているという認識キタコレ。


次は労働市場。

『The pace of job gains slowed and the unemployment rate held steady. Nonetheless, labor market indicators, on balance, show that underutilization of labor resources has diminished since early this year. 』(今回)

『The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, labor market indicators show that underutilization of labor resources has diminished since early this year. 』(前回)

労働市場に関しては改善ペースに関する文言が弱くなっているのですが、しかしながら労働市場の数値は労働資源の未稼働部分は無くなってきていることを示す、というのは同じにしていますが、その中に「on balance」とかあるのがチャーミング。


次は物価です。

『Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation moved slightly lower; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation moved lower; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

ほぼ同じですが、マーケットベースのBEIが前回「moved lower」でしたが今回は「moved slightly lower」なので少し改善といえば改善ですがあまり変わらんですな。


○第2パラグラフ:注目の第2文が削除キタコレ!!!

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(前回)

というのは毎回同じなのですが・・・・・・・・・・・・・・

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Nonetheless, the Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

ということでキタコレでございまして、前回急に打ち込んだ上記引用部分の前半、つまり第2パラグラフ第2文に打ち込まれた「最近のグローバルな経済や金融市場動向は経済活動を幾分か抑制するかもしれず、近いタームでのさらなるインフレ下方圧力になると思える」というハト満開の上に、外部要因を言い訳にして下方リスクじゃあ手が打てないじゃん的なものを出してきたのがバッサリと抜けたの巻と相成りました。

ここの文言をどう取り扱うか、というのが議事でどのように論議されていたのかを是非みたい所ではございますが、とにかく9月の段階では唐突にこの文章が打ち込まれて来まして、FEDの政策反応関数がさっぱり訳が分からなくなった上に、海外要因などを大きく懸念とは従来のFRBにしてはお珍しい事で、となってこれはどう見てもカオスです年内利上げどころではないですよというイメージになったのですが、やはりこの文言は明らかに政策反応関数を訳分からなくするものだったので外したという風に思いますが、もしかしたら単に海外(新興国)が落ち着いたから(?)削除したのかも知れず、やはり議事要旨での表現を確認したい所です。

まあそれ以前の問題として議事要旨は利上げタイミングに関する議論の方が更に興味深いですけどね!

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced but is monitoring global economic and financial developments.』(今回)

『The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced but is monitoring developments abroad. 』(前回)

前回の第2文に打ち込まれていた海外経済と海外金融市場に関するああだこうだの話は今回のここの部分に入り、リスクはバランスしているけれども「monitoring developments abroad」をしますよという状態から、「monitoring global economic and financial developments」とあるので、そういう意味では前回の第2パラの第2文を継承しているには継承しています。

ただし、前回の第2パラではこの海外経済と金融市場については「インフレに対する幾分かの下方リスクとなりうる」と下振れリスクという話が独立した状態でしたが、今回はリスクはバランスしているという表現の中に混ぜ込まれた形になっているので、まあ海外ガーの話をフェードアウトさせて、自分たちの所で何ともできない状況に振り回されることは無いでしょという判断にでもなったのか、単に海外の見通しが改善したのかは知りませんが、これで海外に振り回されるような形ではなくて、いつもの米国クオリティで「海外?知らんがな」という感じで政策判断を打ち込んで頂きたいものですな、

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(今回)

『Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.』(前回)

物価に関する文言は全文一致ですな。


・第3パラグラフ:予告ホームランキタコレ・・・・・・なのかどうかはワカランチ会長

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. 』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate.』(前回)

政策は現状維持ですから同文ですな。

『In determining whether it will be appropriate to raise the target range at its next meeting, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』(今回)

『In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』(前回)

キターーー(・∀・)ーーーー!!!!!!!

ということで、3パラは政策金利に関する話なのですが、従来の文言は「どの程度の期間現在のターゲットレートを維持するのが適正化ということを判断するのに〜」という書き方だったのですが、今回の文言は石直球で「次回のFOMCで利上げを実施するのが適切かどうかを判断するのに〜」となりまして、これは予告ホームラン的な文言キタコレではあるのですが、とは言いましても・・・・・・・・・・・・・


『This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term. 』(今回)

『This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.』(前回)

ではその判断はどのようにして行いますか、という説明部分の文言、特に反応関数の部分になります労働市場の「some further improvement in the labor market」と物価の「reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent」という表現には変化が無いという作り方にしていまして、「12月の利上げは有るかも知れませんけれどもあくまでもその時点での経済物価見通しによりますから別に決め打ちしてませんよー」と言わんばかりのヘッジの入り方となっていますな。


・第4パラグラフ以降は全文一致です

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions. 』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions. 』(前回)

買入の残高が維持されているからどうのこうのとかいう話は今回もいつも通り。

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(今回)

『When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.』(前回)

利上げ着手後の利上げペースは緩やかなものになりますというのもいつも通り。


最終パラグラフでもラッカー怒りの利上げ提案が前回と同じですよ。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting. 』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting.』(前回)

ということでこの辺は同じです。


つーことで今回のFOMCですけれども、前回の声明文で海外ガーとか物価ガーとかあれこれと9月見送りになる説明をし過ぎてしまい、却ってコミュニケーション障害が発生してしまったという格好になっていましたが、今回は12月の利上げについて今後どう見ていくという話をしており、しかもその話の部分で余計なものをごちゃごちゃつけないで従来通りの物価見通しと雇用の状況という話に持ってきたので、態勢は立て直せたようにも思えますな。

というかですね、前回の逆さ絵おじさんのTaperingについても地均ししておいて散々年内着手といってたのに何だかんだとウダウダズルズルと着手が遅れて、結局年末になってやっと打ち込めたという実績があるだけに(しかも打ち込んだときは理由が微妙で、やるんだからやるんだよ的な感じになっていた)、まあここまで頑張ったんだったら12月に上げに来る意思だけは強いというのが示されたのではないでしょうか、という事で。



○市場雑談その他

・10年30bp割るわ5年4bpだわで本日は3M入札

http://jp.reuters.com/article/2015/10/28/idJPL3N12S2BK20151028

『<15:14> 国債先物は続伸、5年債1月29日以来の低水準


長期国債先物は続伸。27日の米債高を材料視した買いが先行。FRBの早期利上げ観測が後退していることに加え、日銀の追加緩和観測がくすぶる状況で、海外勢を巻き込んだ短期筋のニーズが強まった。現物債は堅調。長期ゾーンは先物に連動性を強めたほか、超長期ゾーンは日銀オペで同ゾーンの結果がしっかりだったことが材料視された。中期ゾーンも国内銀行勢の需要が観測されており、5年債利回りは1月29日以来の低水準となる0.040%を付けた。』(上記URLより、以下同様)

なんちゅうかこの売り向かう動きも無く無抵抗で金利が下がっている感じがするこの盛り上がりに欠ける中での金利低下更新、というのはお祭り感もヒャッハー感も昂揚感もなく、どちらかと言いますと絶望とか書こうと思ったが目から水が出てきた。

『長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比8銭高の148円61銭。一時は148円63銭と1月20日以来の高水準を付けた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低い0.295%と4月28日以来半年ぶりに0.3%を割り込んだ。』

ということで誠にアレな展開で2年カレントも0bp出合いとかみたいで、スポ末のレポ市場とかはレートは下がったものの7月みたいな大荒れという訳ではなくて、まあコストの所で解決するレベルのお話だったようですが、バランスシート調整とか、それに絡む為替ファンディングの辺りとかは毎度の仕様でございますので、特に12月末を迎えていく中では怪しげな展開が待っているのでしょうなあと思うのでした。

でまあそんな中で本日は3M入札ですが、当然ながら年末を越えられる短国なのでニーズあるでしょと思いますが、そうは言いましてもオペに入っているのは多分6Mが多くて次に1Yとかだと思われますので、3Mの在庫自体はあるように見えるのですが、でもちょっとマイナス辺りで妙に安定してしまっているのはナンナンデショという所ではあります。

一応付利下げ警戒とかあるのかも知れんですけど、それは枠組みの変更を伴う話だから直ぐに打ち込める政策じゃないと思うのですよね〜。


・またブルームバーグの微妙なインタビュー記事大会

昨日は時間の順にこんなんでました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151028-00000066-bloom_st-bus_all
柴山首相補佐官:30日の日銀会合での追加緩和、「不思議ではない」
Bloomberg 10月28日(水)10時6分配信

・・・・・・・・・・・なんか記事見ても一般的な話をしているだけのように見えるのですが妙にキャッチーなヘッドラインに仕立て上げるのがブルームバーグクオリティ。最初ヘッドライン見た時には柴山氏の「僕言いましたよね」スキームかと思ったけどそうでもなさそうですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151028-00000026-bloom_st-bus_all
浜田内閣参与:日銀は緩和必要ない、エネルギー除く物価上昇する限り
Bloomberg 10月28日(水)11時0分配信

でまあ1時間後にこれを出すとかいうことで、ブルームバーグは何をしたくてこういうヘッドラインの乱れ打ちをしているのかという感じではあるのですが、それ以前に良く良く考えてみるとブルームバーグのこの手の記事って出てくるのが政権ブレーンだか関係者、という事にはなっているけど実際問題としてはやや微妙なメンバーのお話は多いし、観測記事になると「事情に詳しい関係者」ということで話が出てくるのですが良く良く見たらそのメンバーは単に証券会社の何とかストではないかと小一時間問い詰めたいようなケースがあったり(というかそもそもあそこの日銀サーベイについてもメンバーの数集めようとして石やらドテカボチャやらが混在しているとしか思えんのだが)という事で、何ちゅうかインタビュー記事をホイホイ出すその心意気は壮としたいのですが、微妙なヘッドラインをバカスカ流されてもねえとは思うのですよねえという事で。







2015/10/28

お題「追加緩和ネタが朝日から出てましたがちと盛り上がり不足/FSRの概要部分から」

さて今晩はFOMCですな。

○決定会合プレビュー雑談というか何というか

・朝日新聞がこんなの出してましたな

http://www.asahi.com/articles/ASHBV5WZMHBVULFA02V.html
日銀、追加緩和を議論へ 物価上昇めざし賃上げ促す構想
2015年10月27日14時38分

例によって全文は読めないのですが、上記URL先にはこのような説明が。

『日本銀行は30日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和を議論する。日銀内で浮上しているのは、追加緩和で企業心理を改善させ、賃上げを促す構想。新興国経済の減速で国内景気の先行きに不透明感が出て、物価の上昇要因となる賃金の伸びが鈍る懸念があるためだ。ただ、追加緩和を不要とみる会合の委員もいて、結論はなお流動的だ。』(上記URL先より、以下同様)

>追加緩和で企業心理を改善させ、賃上げを促す構想

・・・・・・・・・・?????

『そこで、日銀が目標とする前年比2%の物価上昇を貫徹するとの決意を追加緩和で示せば、企業が「日銀の言うとおり物価が上がる」と信じ、賃上げに動くのではないか、というのが追加緩和構想の狙い。』

そもそも2年で達成と大見得を切ってしかも超越マネタリーベース拡大を実施している上に昨年追加緩和をしているのに達成時期は更に後ずれするという状態なのに、何で「日銀の言うとおりに物価が上がる」という話になるのか分からんし、そもそも物価が上がるから賃上げをするのではなくて、賃上げ自体は企業が粗利をどこに振るのかという話になるのですからして、自分の所の成長期待が高まらないのに賃金をホイホイあげられるのかと小一時間ではございますな。

まー賃上げが課題なのはわかるのですが、賃上げの為に円安に振ってコストプッシュで物価を上げようとかいうのも何だかなあという感じでして、それよりも賃金改定時期の前に政府がデフレ脱却宣言した方が話が早いでしょと思いますけどねえ。


・残り少ないカードとな

今朝の日経らしいですが
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF27H0M_X21C15A0EE8000/?dg=1
追加緩和の必要性見極め 日銀、30日に決定会合
2015/10/28 2:00日本経済新聞 電子版

『日銀は30日開く金融政策決定会合で経済・物価見通しを下方修正し、物価上昇率2%という政策目標の達成時期を従来の「2016年度前半ごろ」から先送りする。景気と物価を支えるため、追加金融緩和に踏み切るかが最大の焦点となる。日銀は残り少ない緩和カードで最大の効果を得られるように、慎重に緩和の必要性とタイミングを見極める。』(上記URL先より)

「残り少ない緩和カード」と来ましたかそうですかという所で、以前のように2%早期達成できないならドンドン追加緩和みたいな話はすっかり影を潜めていまして、安倍ちゃん取り巻き方面からの追加緩和牽制情報発信もそうですけれども、追加緩和おかわりクレクレな話からの転換というか、置物理論の2年で2%と心中する気はないというトーンが益々高まっているという風に思えるわけなのですが・・・・・・・・・・・・・


・今週追加緩和の見通しやや減少とな

ブルームバーグから
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWTDTK6K50XY01.html
日銀追加緩和で市場予想は拮抗、「30日なし」が若干優勢−サーベイ
2015/10/27 15:25 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行が30日開く金融政策決定会合で、追加緩和に踏み切るかどうか市場の予想はほぼ拮抗(きっこう)する中で、追加緩和なしが若干優勢だ。』(上記URL先より、以下同様)

ほほー。

『ブルームバーグが21日から26日にかけてエコノミスト36人を対象に行った調査で、16人(44.4%)が30日会合で追加緩和を予想した。前回調査における30日会合の緩和予想(36人中15人=41.7%)は上回ったものの、10月6、7日会合を合わせた緩和予想は17人(47.2%)だったので、ここからは後退した格好。追加緩和観測は1カ月前と比べるとやや盛り上がりに欠けている。』

そらそうよ。

『日銀は30日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2017年度までの成長率と生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)の見通しを公表する。いずれも下方修正は必至で、「16年度前半ごろ」としていた2%達成時期も先送りする公算が大きい。もっとも、足元でエネルギーを除く物価の上昇が進んでいることに加え、政治的な圧力も高まってないことから、市場の見方も分かれている。』

ということですが、確かに従来の「2年で2%」路線を重視するのであれば追加緩和10月でも時既にお寿司位の話ではあるのですが、そもそも論として「2年で2%」のセッティング自体が無理があったし、それだけ単独で早期達成をさせようとしても却って経済にマイナスということも見えてきた中で、従来の短期決戦前提の政策枠組みとオペレーションの枠組みで良いのか、という話を考えたらどうなのよ、というのがアタクシしつこく申し上げておりますネタなのですが、まー確かにそれを言い出すと「日銀の説明を前提にしない話を予想にする」という事になるのでよー言いませんわなという事になるとは思うのですけど、枠組み変更という話がボチボチ位しか出てこないのも何でじゃろとは思う今日この頃ではございます、はい。

いずれにせよ昨年の追加緩和以降(特にコアCPIの上昇が落ちだしてから)って政策ロジックについては当初との整合性がグダグダになっていますし、大体からして物価に対するアセスメントとかでも1年前くらいは知らんがなと言っていた東大日次物価指数を急に持ち上げたりとかいうのに始まって、綺麗に言えば「ロジックの整合性よりも結果を出すのが重要」という事になるのですけれども、まあ傍から見ておりますと「やりたいことが先にあってそれに対してロジックをその場のご都合で組み立てて取りあえず何とか説明をする」というプレイになっておりますので、もとより政策ロジックの継続性を考えながら政策の予想をするのは不可能、というかそれで考えると間違いの元という状況になっておりますので、枠組みが今のままの内はあまりロジカルに政策を予想しても無駄うちになるでしょうなとは思うのでした。


○FSRキタコレ

つーことでFSR

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr151023.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr151023a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr151023b.pdf(概要)

前回分はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr150422.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr150422a.pdf(全文)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr150422b.pdf(概要)


・要旨というか紹介ページの方で前回比較をしてみませう

比較する意味があるのかというツッコミはさておきまして(汗)。

『要旨:金融システムの総合評価』から。

『わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融仲介活動は、より円滑に行われるようになっている。』(今回)
『わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融仲介活動は、より円滑に行われるようになっている。』(前回)

全文一致ですな。

『金融システムの機能度』から。

『金融機関は、国内外の貸出において、リスクを取る方向での業務運営を引き続き指向している。国内では、大企業のM&A向けや内外事業展開等に伴う資金需要へ積極的に対応しているほか、成長性や業績回復を見込んだ下位格付け先への貸出や企業再生関連の貸出等への取り組みにも広がりがみられる。こうしたもとで、国内貸出は企業向けが牽引する形で緩やかな増加を続けており、企業規模、業種、地域のいずれの面でもさらに広がりが出てきている。』(今回)

『金融機関は、引き続き、国内外で貸出を積極化している。国内では、リスクを取る方向での業務運営を指向し、成長事業の育成・事業再生への取り組みを強めている。こうしたもとで、金融機関の国内貸出は、企業向けを中心に緩やかな増加を続けており、企業規模、業種、地域のいずれの面でも徐々に広がりが出てきている。』(前回)

ということで国内に関しては貸出などが拡大している話になっていますので、金融緩和効果とか成長基盤だの貸出増加支援だのの効果も出ているというネタになりますな。


『海外でも、本邦企業のグローバル展開を支え、成長力の高い海外諸国の金融ニーズを取り込んでいく観点から、融資に積極的に取り組んでいる。非日系企業を中心とした取引先拡大等を企図して、貸出債権を買い取る動きもみられている。こうしたもとで、海外貸出は高めの伸びを続けているが、このところのアジア経済減速を受けて伸び率は幾分鈍化している。』(今回)

『海外においても、本邦企業のグローバル展開を支え、成長力の高いアジアなど海外諸国の金融ニーズを取り込んでいく観点から融資に積極的に取り組んでおり、海外貸出は高い伸びを続けている。』(前回)

アジアがコケ気味なので表現が変わっているのがチャーミングですが、海外も引き続き拡大という話になっておりますな。

『有価証券投資では、高水準の円債残高を維持しつつ、投資信託等による運用を一層積み増すなど、リスク・テイクを徐々に強めていく姿勢を継続している。生命保険会社・年金などの主要機関投資家でも、リスク性資産への投資を増やす動きが続いている。』(今回)

『有価証券投資では、高水準の円債残高を維持しつつ、外債、投資信託など運用の多様化を図り、リスク・テイクを徐々に強めていく姿勢を継続している。この間、国内長期債投資を中心としてきた主要機関投資家でも、リスク性資産への投資ウエイトを高める動きがみられている。』(前回)

とはいえここの内訳に関しては(これまでもそうですが)ポートの状況に関しては主体によって異なるという話は本文で展開されております。たぶんその辺までネタにしている時間が無いのですけれども(汗)。

『金融資本市場を通じる金融仲介は、エクイティ・ファイナンスが引き続き高水準であるほか、CP・社債の発行環境も良好である。こうしたもとで、企業・家計の資金調達環境は、より緩和的となっている。この間、家計の金融資産運用は、預金中心の構図に大きな変化はないが、投資信託等への純流入が続くなど、リスク性資産の比重が高まってきている。』(今回)

『金融資本市場を通じる金融仲介は、エクイティ・ファイナンスが引き続き高水準で推移するなど、良好な発行環境が維持されている。こうしたもとで、企業・家計の資金調達環境は、より緩和的になっている。一方、家計の金融資産運用は、預金中心の構図に大きな変化はないが、このところ投資信託等への純流入が続くなど、リスク性資産の比重が徐々に高まっている。』(前回)

CPや社債の発行環境は良好というのが書いてあるのですが、これ本文見れば分かるのですが肝心の発行の方って特に伸びていないのですけど、そこは「銀行の貸出姿勢が積極的である」ということで話を丸く収めておりますが、わざわざCP社債の話を入れるのねとふーんと思いましたです(発行がバシバシ増えているなら入れる意味も分かるのですが残高伸びていないのに何で?という意味)。


『金融システムの安定性』はまあ不安定とか出たらマズーではありますのでお察しですけど。

『以上の金融仲介活動において、過熱を示す動きや過度な期待の強気化といった金融面の不均衡はみられていない。』(今回)
『以上のような金融仲介活動において、過熱を示す動きや過度な期待の強気化といった金融面の不均衡はみられていない。』(前回)

そらまあ見られますと言い出すと第2の柱が登場しますから。

『不動産市場は地域差を伴いつつ徐々に取引が活発になっているが、全体としては過熱の状況にはないと考えられる。金融機関は、全体としてみると、充実した財務基盤を有している。自己資本比率は規制水準を十分に上回っている。』(今回)

『金融機関は、全体としてみると、充実した財務基盤を有している。自己資本比率は規制水準を十分に上回っている。』(前回)

でまあここで不動産市場がという話が出ていて、昨日申し上げましたように最後のBOXの所でも貸家向けの貸出と与信管理の話と、不動産市況の話がありますし、こうやって紹介ページの所というある意味新聞1面みたいなところに確りと不動産の話を載せているのは一応のメッセージと受け止めて置けば吉かと。


『金融機関の負っているリスクは、前回レポート時から概ね横ばいとなった一方、自己資本は内部留保の蓄積等から増加した。こうしたもとで、金融機関のマクロ的なリスクと財務基盤の適切なバランスは引き続き確保されており、金融システムは相応に強いストレス耐性を有している。』(今回)

『金融機関の負っているリスクは、前回レポート時に比べて信用リスク量の減少等からやや減少し、自己資本は利益の蓄積等から充実が進んだ。こうしたもとで、金融機関のマクロ的なリスクと財務基盤の適切なバランスは確保されており、金融システムは相応に強いストレス耐性を有している。ただし、経済・金融のショックの背景、程度、速さなどによっては、金融システムの安定性に影響が及ぶ可能性がある点には留意が必要である。』(前回)

ここの説明が妙にあっさりになっていますが、こちらに関しては別に留意をしなくなった訳ではなくて、今回のFSRの位置づけを年度の中間レビューみたいな形にしていて、リスクアセスメントの所は前回との変化を中心にしている事から、前回と同様の話となる部分は概要の所で軽めになっているという建付けになっているからだと解釈しましたがそういう事で宜しいのでしょうかね。

『資金流動性に関しては、金融機関は、円資金について十分な流動性を有している。外貨資金は引き続き市場性調達の比重が高い調達構造となっているが、銀行の安定調達基盤の拡充に向けた取り組みに進捗がみられた。一定期間調達が困難化しても資金不足をカバーできる外貨流動性を確保している。』(今回)

『また、資金流動性についてみると、金融機関は、円資金について十分な資金流動性を有している。外貨資金は市場性調達の比重が高い調達構造となっているが、一定期間調達が困難化しても資金不足をカバーできる流動性を確保している。』(前回)

前回との違いはボルカールールなどの各種規制がより強化というか規制の本格的な実施が始まったものが有る点で、それへの対応が進んでいるという事なのでしょうが、そうは言いましても国内の短国市場やらに外貨ファンディング絡みの影響が出たりするケースもあったりするように見えますので規制効果オソロシス。

『この間、アジアなど新興国経済の減速に対する懸念が強まるもとで、夏場以降、国際金融資本市場のボラティリティが高まった。わが国においても、株価が下落するなど海外市場の影響が及んだが、金融機関の財務基盤や金融システムの安定性への影響は、今のところ限定的なものに止まっている。』(今回)

『この間、資源価格が大幅に下落し、国際金融資本市場では幅広くボラティリティが高まった。ボラティリティの上昇は、ある程度本邦市場にも及んでいる。』(前回)

まあここは4月からはだいぶ変わりましたからね。


・最後の部分がちと書き方が違う

でもって最後が『マクロ・プルーデンスの視点からみた課題』である。

『将来にわたって金融システムの安定を維持していくには、引き続き、金融機関のマクロ的なリスクと財務基盤の適切なバランスを確保していくとともに、先々の脆弱性に繋がっていく可能性がある金融システムの構造的な変化に対しても、着実に対応していく必要がある。

金融機関のマクロ的なリスクは、内外貸出や有価証券投資でリスクを取る方向の業務運営を進めるもとにあっても、総じて抑制されている。もっとも、これは、近年における安定的な金融環境の継続(信用コストの低位安定、市場ボラティリティの低さ)による面が大きく、この間、信用、市場、資金流動性など各種のエクスポージャーは増加を続けている。金融機関は、引き続き、積極的にリスク・テイクを進めている分野におけるリスク対応力の強化を図っていく必要がある。とくに、海外業務では資産の拡大に対応した外貨の安定調達基盤の拡充や与信管理の充実が、市場運用ではリスクの横断的、多面的な把握と管理が重要と考えられる。また、大手金融機関のシステミックな重要性の高まり、地域金融機関の基礎的な収益力の低下といった構造的な課題は、前回のレポートから変わっていない。

日本銀行は、金融システムの安定確保に向けて、モニタリング・考査等を通じてこれらの課題に対応していく。』(今回)


前回は『将来にわたる金融安定の確保に向けて』というお題なのですな。

『わが国の金融システムは安定性を維持しているが、将来にわたってこれを維持していくには、引き続き、マクロ的な視点からみて、金融機関のリスクと財務基盤の適切なバランスを確保していくとともに、先々の脆弱性に繋がっていく可能性があるリスクの構造的な変化に対しても、着実に対応していく必要がある。

マクロ的なリスクの蓄積の観点から注目しておくべき点としては、(1)金融機関の国際業務、海外エクスポージャーの拡大、(2)金融機関の資産負債管理における市場運用の重要性、マーケット・エクスポージャーの高まりが挙げられる。リスクの構造的な変化の観点から注目しておくべき点としては、(3)大手金融機関のシステミックな重要性の高まり、(4)国内預貸業務(とくに地域金融)における収益性の低下が挙げられる。また、(5)家計の資産選択行動の変化や、(6)国際金融規制の実施に伴う金融システムへの影響を注視していく必要がある。

以上の点を踏まえて、個々の金融機関が対応していくべき経営面の課題としては、(1)リスク・テイクを積極的に進める分野、とくに海外業務と市場運用におけるリスク対応力の強化、(2)大手金融機関におけるシステミックな重要性への対応、(3)地域金融機関における基礎的収益力低下への対応が挙げられる。

日本銀行は、引き続き、金融システムにおけるマクロ的なリスクの蓄積状況や構造変化に関する実態把握と分析、ストレス耐性の検証等を行っていく。そのうえで、リスクの所在や課題を提示しつつ、幅広い関係者との間で認識の共有や協議を行っていくとともに、所要の対応を講じていく。金融機関との間では、量的・質的金融緩和による緩和的環境を活用した前向きな金融仲介活動を幅広くフォローしていくとともに、上述の諸課題に対応していく観点から、(1)国際業務、(2)ALM・市場運用、(3)大手金融機関のシステミックなリスク特性と経営管理、(4)地域金融機関の収益力、(5)産業力強化・企業活力向上に向けた取り組み、(6)金融機関・証券会社等のマーケット業務と金融商品販売業務の動向、に関する実態把握を強化し、意見交換を行っていく。』(前回)

前回はこの『将来にわたる金融安定の確保に向けて』の所での金融機関のリスクアセスメントとか金融機関に内在するリスクに関するアセスメントとかの所にやたら力が入っていた感じで、概要の方でもそんな感じの書き振りになっているのですが、今回は中間評価という事もあるのか「マクロプルーデンス」という書き方で割とあっさり味の概要につくってあるのですが、その一方でBOXの方で纏められているのは「与信管理」「ポートフォリオ分析」「不動産市場」というお話になっていますので、今回はリスク管理手法と与信管理の中で一部分野に関する注目を入れているという感じになるんでしょうかね、よくわからんけど。


・ストレステストシナリオのお手本を投下とな

本文の最初の所ですけれども、『(今回の特徴)』というのがありまして。

『今回のレポートにおける編集・分析面の特徴は、次の5 点である。@年度半ばの中間的なレビューと位置づけ、X章のリスク分析やZ章の金融安定に向けた課題に関する部分を中心に、年度初(前回レポート)からの変化を中心とした記述にした。』

『Aこれまで分離していた金融機関の円・外貨金利リスク、株式リスクを「市場リスク」として統合した。金融機関の有価証券投資において運用の多様化が進み、各種のリスクを横断的にみていく必要性が高まっていることに対応したものである。B金融機関が積極的にリスク・テイクを進めている分野(M&A 関連貸出、貸家業向け貸出、有価証券投資等)についてBOX を設け、リスク管理上の留意点を提示した。』

ということで金融システムレポートだから当然ちゃあ当然なのですがリスク管理の話が今回は力入っていますし、そのリスク管理も統合的にやりなさい的なお話になっておりますな。

『Cマクロ・ストレス・テストのモデルやシナリオ設定方法等を拡充するとともに、個々の金融機関が行うストレス・テストの参考に資するよう、方法論やデータの開示を拡充した。シナリオ設定の考え方に関する「別冊」を公表するほか、テストに関する主要データを日本銀行ホームページからダウンロード可能とした。』

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb151026.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb151026a.pdf(本文)
マクロ・ストレス・テストのシナリオ設定について

でもってこちらの概要ページから表計算ソフトにデータを落とせるというモノになっております。とりあえずアタクシも落としては見ましたがそのまま放置プレイだったりしますが。

『Dアジア経済の減速、夏場以降の市場ボラティリティの高まりを踏まえ、X章のリスク分析やY章のマクロ・ストレス・テストにおいて、金融機関への影響や留意点についての説明を加えた。』

という話はありますが、不動産の所はここで書くとやや刺激的なのかスルーしているようで。ただBOXで説明があったりするのでそちらも気にはしている(だいたい日本の場合バブルキタコレは不動産ですから)という事でしょうな。


・それは良いのですが元々FSRって金融市場レポートと統合した筈なのですが・・・・・・・・・

とまあそういう感じで別冊がホイホイと出たりする益々充実のFSRなのですが、甚だ寂しいのは金融システムレポートって金融市場レポートと統合して出すようになった(2011年10月号から)のですけれども、金融市場レポートの方が扱いとしてドンドン影が薄くなっているように見える訳でございまして(書いてある話分量等はまあ同じちゃあ同じなのですが)そらまあQQEで金利市場の流動性を叩き潰す(というかそもそも長期金利に直接働きかける政策を実施しているのだからそうなるのは当然)ようになっているのでその辺をゴリゴリ分析すると日銀が悪いよ日銀がとなって不都合にも程があるというような大人の事情は理解するのですが、すっかりプルーデンス物になってしまいましたなあという所ではあります。

ちなみに市場の流動性指標に関してはオファービットスプレッドが縮小しているとかいう指摘はあって、だからこそ流動性は維持(キリッ)みたいな話がありますが、ちょっとした売買が入るといきなり無抵抗状態でイールドカーブが動くという今の市場動向を見るに、スプレッドが縮小したというよりは単に投資家の方が大玉を振り回せなくなっているだけという気がするんですけどねというネタだけ申し上げておきますです、はい。

#本文ネタについては追々投下するものがあったら投下します(汗)



2015/10/27

お題「ドラギ会見ネタの続きです」

やはり追加緩和不要とな
http://jp.reuters.com/article/2015/10/26/hamada-boj-idJPKCN0SK0P220151026
Business | 2015年 10月 26日 17:12 JST
30日の日銀会合、労働市場タイトな中で静観あり得る=浜田内閣参与

『[東京 26日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は26日、ロイターとのインタビューに応じ、市場で追加金融緩和観測が広がっている30日の日銀金融政策決定会合では、雇用情勢の改善が続く中で日銀が追加緩和を見送る可能性があるとの見解を示した。』(上記URL先より)

>雇用情勢の改善が続く中で日銀が追加緩和を見送る

・・・・・・・・・・物価安定目標いや何でもないです。

○ドラギ総裁会見ネタの続きです(汗)

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is151022.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Malta, 22 October 2015

Q&Aの続きである。

・マイナス金利拡大はワークするのか&買入は続けられるのかという質問

こんなのありました。

『Question: First of all I would like to ask you a question on what you said on the deposit rate, that it could be lowered further. Could you explain a bit more the reasoning behind these discussions, how it could work? And also you had said that the rates were effectively at the lower bound, so how would this measure up? How would you explain this move to the market?』

以前はローワーバウンドに到達したと言ってたのだが一段のマイナス拡大でどうワークするのかと。

『And a second question is, if you were to expand QE, do you feel there might be risks that you run into scarcity, that you might have to extend the pool of purchasable assets?』

APPを拡大した場合に物無し芳一になるリスクがあると思うのだがどうなのでしょうかと。

『Draghi: On the first question, we touched lower bound but, also in this, my answer is linked to the previous question.』

前の質問はネタにしていませんすいません。

『When we are at practically zero nominal rates, the real rates are being driven by the expectation of inflation. So lower expectations of inflation imply higher real rates - and this is an answer to Brian Blackstone before, that's why we fight negative expectations of inflation. Whenever expectations of inflation become more and more negative, we have higher and higher real rates. That's one of the reasons why we consider other nonstandard monetary policy measures, one of which is the negative rate on the deposit facility. So there we've decided a year ago that that would be the lower bound, then we've seen the experience of other countries and now we are thinking about that.』

ということでインフレ期待が下がると名目金利に変化が無くても実質金利が上昇してしまうので云々という話をしておりまして、それだと預金ファシリティを更にマイナス化するよりもAPPをした方が良いのではないか(本当にそうかという話はさておきまして、FEDのQE2にしても日本のQQEにしても、国債を中心とする大規模LSAPの実施によってインフレ期待に作用(QE2の場合はインフレ期待の低下リスクを防ぐでしたし、QQEの場合はLSAP等のパッケージに達成時期のコミットメント(最近空文化していますが)によってインフレ期待をシフトアップさせようとしたわけでして)となりますので、インフレ期待系の話をするならAPP拡大という話になるんですよね従来の各国中銀のロジックからしますと。

『I should say, we've not taken any decision about that. It was an open discussion on all the monetary policies. We've discussed some other monetary policy instruments besides this one.』

ということで預金マイナス拡大に関する質問では最後にマイナス拡大を必ずやる訳ではなくて他の色々なツールもありますしという話をしておりますな。

『On the scarcity, I've been asked this question many times. We haven't seen yet this scarcity. Let me say that also the fact that the ECB, the Eurosystem now is a constant source of demand on the markets, this is helping market makers to show their bid prices and this by itself increases liquidity. Also we're not chasing bonds that we know are less available, so that's another thing. And let's not forget that the ECB is also lending bonds to the market makers and the market participants, so it's also increasing liquidity.』

買入の物無し芳一になって云々ということは今の所ないし、市場の流動性もあります(キリッ)という話をしているのですが、その後半の言い訳が「ECBが常に市場の買い手なので市場のビットサイドを安定的に供給するソースになっている」とか「ECBは保有している債券をレポ貸出している」とかいうのはお前は何を言ってるんだという話であって、一方的に機械的に買う人間がいたらその買いが市場のキャパを越えた時点で市場の流動性とかまともな価格形成とかがおかしくなってくるのは明らかなのですし、レポ市場に物が出るからと言っても結局ECBが購入した物は売却されないのですから、ECBの保有分を当てにしてSC調達してもいつまで経っても買い戻しが出来ないのですからショートメイクがし難いのは変わらんですよね。

そらまあ中央銀行の立場としては「我々の買入によって市場の流動性が無くなって大変なことになっております」とか言い出したら「じゃあ買入止めろや」となりますので言えない、というお立場は理解するのでございますが、何もワケワカメな屁理屈を立てて大丈夫とか言う必要はないと思うのですよねえ。

『But as I've said many times, we stand ready to adjust the design of our asset purchase programme according to the needs and when and if needed.』

とまあそんな説明をしていまして、昨日紹介したようにリスクガーという話をしている中では「商品市場価格」「新興国経済」「ユーロ高」「インフレ期待の低下リスク」という話をしているのですが、最初の2つがどう見ても外部要因ですので、金融政策でどないかするのはユーロ高とインフレ期待の低下という話になると思うのですが、このどっちをネタにするのかによって打ってくる政策が微妙に異なる(マイナス金利の拡大ってマインドの悪化を招く可能性がありますから)ので、まー今回やるやる詐欺をかましておいて12月の頭の次回会合まで時間を稼ぎつつ、どっちの方にウェイト置いて追加金融政策を実施するのか、というのを決めようってな話なのではないかと愚考するのでありました。


・新興国経済の波及ルートに関して

これはまあオーソドックスな質疑。

『Question: You stressed that emerging market developments are a worry for the Governing Council in terms of the growth outlook. How would you judge if China slowed down to 4.5% not 6.9%, and how big of a threat is that for the inflation outlook - not for the growth outlook? And how big a threat for the inflation outlook is the resilient exchange rate of the euro? That's the first question.(後半の構造改革の質問は割愛します、というかそっちに答えていない)』

『Draghi: The first question is quite important. There are two ways to respond. One is to look at different channels of propagation of what happens in China towards the euro area. And then there is a different way. Let me first explore this way. First of all, we look at all these channels, namely the direct trade channel or indirect trade. On the direct trade channel, the conclusion is the exposure of the euro area to the Chinese economy is not very significant. After all, the exports of the euro area to China are 6% of the total. However, there are some countries where such a figure is higher and reaches almost 10%, in the case of Germany. Still, I'd say this is not exceptional.』

とまずは貿易を通じた(直接貿易と中国経済減速で影響受ける他国との貿易と)ルートで、欧州特にドイツとかはその影響がやや大きめと。

『The second is so-called indirect channels, where you have also to account for the changes in oil prices and commodity prices that a higher recession in China would imply.』

中国経済減速懸念→商品価格低迷→物価アガランチ会長→マズーということかね。

『The third channel is the financial channel and again we do not see a very significant exposure of the euro area towards China.』

中国関連の与信エクスポージャーなどの問題があるがこれはまあそんなに大きなもんではないと。

『But then there is another channel, which is the confidence channel. We think that so far what happens to the growth in China hasn't affected confidence in the rest of the world and more specifically in the euro area. At the latest meetings in Lima, the IMF confirmed the growth projections for this year as far as China is concerned, which are above 6%. So your perspective is not something that is on the screens now. Of course, any very large surprise in a very large economy might have the potential to affect confidence worldwide, and then we would have to see in which way and how to cope with that.』

中国経済減速懸念が世界経済の先行きに関するコンフィデンスにマズーな影響を与えるチャネルです、ということでまあ質疑自体は概ねオーソドックスなのですが、割と丁寧に説明している感じでして、中国経済に関しては最初の貿易の所にもありますように問題認識は強そうですな。


・為替に関する例の質疑

『Question: I also tried to ask about the channel, how strong is the channel of the exchange rate for the inflation projections, medium-term projections?』

これはまた直球ストレートズバッとキタコレ。

『Draghi: Regardless of what happens in China. Of course, one of the downsides I mentioned before, one of the downside risks to our inflation projections comes from the exchange rate.』

ほうほうそれでそれで??

『As I've said before, the nominal effective exchange rate has been appreciating over the last few months - four, five months - to a somewhat significant level. But let me restate: the exchange rate is not a policy target for the ECB. It's never been; it's not now. However, it's significant, as I've just said, for price stability and for growth.』

為替市場は我々のターゲットではないですと繰り返したい!とか言っているのですが、どこからどう見てもダチョウ倶楽部メソッドにしか見えませんがこれはwwwww


・今回緩和を提案した人がいたという話

『(質問前半割愛)And the second question, could you tell us if there was a discussion today for acting today? You said that a new rate cut was discussed today: I'd be interested to know if you could elaborate a bit more on the argument raised for postponing an action to the next meeting.』

『(回答前半割愛)Second, I would say there were a few members of the Governing Council who hinted at the possibility of acting today, but I wouldn't say it was a prevailing theme of our discussion today.』

まあこちらは文字通りですな。その提案内容は良く分からんのだが一応議事要旨らしきもの(あれはしかし読みにくくてかなわん、慣れのせいもあるけど)が出るのでなんか書かれているのかな。


・構造改革が進まないと金融緩和やってても効きが悪いのでは系の質問

他でも質問有ったのですがこっちの質疑の方が短いので引用するという手抜きプレイ。

『Question: Allow me to touch again on the issue of structural reforms. Unfortunately, not all countries take it as seriously to act in this manner like the country we're in at the moment. Would you go so far to say that if structural reforms are not taken more seriously and more stridently by the relevant governments, QE won't be able to fulfil its total amount, will not be able to be so successful as you would like it to be?』

『And if this is so, my second question, does it make any sense then to adjust QE or even to expand it?』

ということで構造改革が必要という話を逆手にとっての質問だったりする。

『Draghi: No, I never said that QE would not yield its benefits if there were no structural reforms. I would say that structural reforms will transform what is a cyclical recovery produced, amongst other factors, by our monetary policy into a structural recovery later on. It's quite apparent that the monetary policy measures that we've been undertaking over the last year and a half, two years, especially, but even before, have significantly improved the financial markets, the credit markets and the money markets. And now it's time we see these improvements being translated into a recovery which is resilient, especially in its domestic component.』

そらまあ構造改革が無いと効かない、とは言わないのでクレジット市場への効果だの循環的回復のサポートだのという効果の話をすることになりますし、ここで最後に「especially in its domestic component」という話をしているように、金融政策はそういう効果がありますという話には持っていっております。

『So no doubts whatsoever about the effectiveness of our monetary policy, regardless of whether structural reforms have been implemented or not. Let me also add that we shouldn't have a too negative picture of how structural reforms have been implemented, because there has been some progress in several of our countries about that. It's not that countries didn't do anything. So more can be done, there's room for improvement, but quite a few reforms have been undertaken in several of our euro area countries.』

まあこういう風に言うしかないですが、構造改革の進展有無にかかわらず金融政策は金融政策で実施する、という言い方になっていますが、でも構造改革が進む必要がありまして的なこのややこしい話をしないといけない、というのは特にECBのようにカウンターパートの政府サイドがあちこちにあるとなりますと大変なのかも知れませんが、ジャパンのように思いっきり構造改革放置プレイで金融政策ばっかり負担が来るの巻(最近風向きが変わってきたかもですけれども)とかいうのもありますし、低成長下における金融政策の有効性とかをゴリゴリと突っ込まれると政府の問題とかに話が進展するので非常にこうややこしい説明になるわなとは思うのでした。


・そもそもQEが効いてないんじゃねという意地悪質問

『Question: Is there concern in the Governing Council that the asset purchase programme could be insufficient to create conditions that support growth and avoid the threat of deflation?』

中々のイヤミ。

『Draghi: Our judgement today is that the monetary stance that has been designed with the monetary policy measures announced in January, with the credit-easing measures announced in the course of 2014, is essential for producing recovery in output and convergence of inflation towards the objective of being below but close to 2% over the medium term. These objectives are predicated on the full implementation of this monetary policy. That's the current assessment. However, if we were to see that the technical assumptions underlying these projections have worsened, or the downside risks are increasing and further on materialising, we may well change the size, the composition, the design of all our monetary policy instruments as needed.』

まあこれもこう答えるしかないのかも知れませんが、これまでの政策は効果を発揮しており、今の所の見通しだと今の政策を予定通りに全部実施したら物価は中期的に2%に到達します(キリッ)。でも必要な時には必要な調整をするのでそれを毎回点検します、という回答になりますぞな。

ただまあこれ1回延長くらいならまだ誤魔化せるのですが、どこぞの中央銀行のように延長に次ぐ延長をしておりますと「そもそもお前らの政策は政策の量が足りないのではなくて施策のやり方に問題があるのではないか」というツッコミが徐々に飛んでくる訳でございまして(^^)、まあ今回はこの程度で済んでいるという感じですが、12月追加緩和を実施した途端に「そもそもこれまでの効きが大したことなかったのに追加して意味があるのか」とか言われ出すんでしょうなあ(だから国内ではこのように効いているという話を既にしているのですけど)とゆーところで。


つーことで総合すると「まあ12月には期間の延長だけではなくて何かやらんといかんでしょうな」という感じなのでしょうが、何をやるのかに関してはちょっと微妙で、為替に効かせたいというのが一番のメインなんでしょうな。でまあその間にリスクオンモードになって商品とかが上昇したりドル高にでもなってくれればウマーという事も考えている(と言って12月空振りは無いでしょうが)のかなあとは思ったりするのでした。



○FSRが出たと思ったら早速別冊が(予告メモ)

まあ別冊自体はFSRの中に「これについては間もなく出る別冊を参照しやがれ」というのがあったのですかさず出る予定だったと思われますが。

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr151023.htm/
金融システムレポート(2015年10月号)

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb151026.htm/
マクロ・ストレス・テストのシナリオ設定について

ということで出ているのですが、今回は金融機関の経営課題がどうのこうのというよりは全体的なマクロシナリオの話とか、あとは個別案件でFSRの最後にある本文95ページ以降の

BOX1 海外M&A 関連貸出と与信管理
BOX2 賃家業向け貸出と与信管理
BOX3 与信ポートフォリオの変化と信用リスク分析の高度化
BOX4 地域金融機関の有価証券ポートフォリオのリスク分析
BOX5 不動産市場の状況について
BOX6 金融マクロ計量モデルの改良

というのが纏まっていて、しかも不動産融資ネタが2つに増えているぞなという辺りがございますので、最初から読んでいくとふむふむと流してしまいそうな場合は本文95ページから最初に読むと面白いのではないかと存じます(アタクシの超主観ですが)、はい。






2015/10/26

お題「ジャパンは政府方面から追加緩和の羽交い絞めとな/ECBドラギ会見から」

あらま
http://www.asahi.com/articles/ASHBQ5J5SHBQUTFK00V.html
参考人学者の違憲指摘を問題視 自民、船田氏を更迭へ
2015年10月23日06時44分

○追加緩和必要なし攻撃がまた来ていますな

http://jp.wsj.com/articles/SB12707975987092023884404581310451683937480
金融緩和より財政出動を=本田内閣官房参与
2015年10月23日 14:20 JST

『【東京】安倍晋三首相の経済顧問を務める本田悦朗内閣官房参与(明治学院大客員教授)は、停滞する日本経済の再生のためにも、最大5兆円規模の追加的な財政出動策を打ち出す必要があるとしたが、日銀が新たな措置を講じなければならない状況にはないとの見方を示した。本田氏は、民間消費を迅速に引き上げるため、低所得・無収入家庭に属する2200万人に最大5万円の現金を給付する措置を補正予算に盛り込むべきだと提案した。』(上記URL先より)

金曜はWSJの他に共同通信でもこのネタが投下されて、共同がヘッドラインを出した時(夕方だったかな)に為替市場が反応しておりましたが、リフレ派方面からは今回は完全に「財政ガー」という話になっておりまして、置物MB直線一気理論を用いれば金融政策だけで物価目標が達成できてその結果全てが上手く行くという話はすっかり無かったことになっているのですが、まあ置物一派の逃げっぷりが凄いと申しますか、おまいら元々2%目標どころか3%目標の方が良いとか言ってただろうがと小一時間問い詰めたいですな。

しかしまあ何ですな、ドラギのおっちゃんのインチキ攻撃(この先でネタにします)に加えまして中国様の利下げまで来ましてすっかり為替市場やら株式市場の方が日銀的にはウマーな方向になっておりますので、これは追加緩和を打たなくても無問題という感じになってきておりまして(というかもう一発円安になる方が物価には良いけど景気に良いのか微妙ですし)、益々様子見モードという所でしょうな。


その前にはこんなのありましたな。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151023-00000039-reut-bus_all
麻生財務相、30日の追加緩和に慎重 「金融でできること限られる」
ロイター 10月23日(金)12時34分配信

『物価が上がらない原因は「カネがないのではなく、需要がない」ためだとも説明。「黒田日銀総裁もそこを考え、需要が出るためには、たとえば、企業の内部留保が賃金などに回ることによって働いている人の可処分所得が増え、消費が増えることを期待していると思う。(金融政策と需要増の)両方が相まっていくことだ」と述べ、「今すぐ日銀の金融緩和だけで本来の目的にはなかなかいきにくい状況にある」と語った。』

『2%の物価目標の妥当性に関して「オープンエンドで進んできたその方向は間違っていない。2%目標を今この場で変えることは考えていない」と述べ、枠組みの変更は必要ないとの認識を示した。』(上記URL先より)

物価は貨幣的現象なので中央銀行の金融政策単独で達成可能という話に砲撃を盛大に加えていますが、もともと麻生さんはこういう主張をしているのでいつも通りではあるのですけれども、まーこういう流れになったのはコストプッシュのような形で物価だけ上げても意味がないどころか実質所得の低下を通じてマズーであり、本来期待していた企業収益からのトリクルダウンの方がワークしにくい、ということで、段々選挙モードになってきて政権全体としてもそういう流れになってきたというお話なんでしょうね(軽減税率とかの話もそうでしょうし)。

でもって2%物価目標の妥当性云々の所ですが、「オープンエンドは正しい」という事でして、枠組み変える必要はないとは言っていますが、2年で達成するために派手な政策を実施するのが正しいのかという話をしていない(ここで報道されている限りは)のでありまして、そういう意味では「2%の物価上昇が安定的に推移するのに整合的な強い経済を作るまで緩和政策を続ける」というような形での政策枠組みの変更は別に否定していない(たぶんその時には「政策の枠組み自体に変化がある訳ではなくて手段が違っているだけ」と強弁する)ので、まあ色々と含みのあるお話ですなあと思うのでした。ただ麻生さんの発言がそのまま安倍ちゃんと完全一致する訳でもなさそうなので微妙ですけどね。


とまあそういう訳で、今回に関しては政権サイドの方から物凄い勢いで「いいから余計な事すんな」とばかりに追加緩和けん制発言がバカスカ出ていますし、置物リフレ一派の皆さんもここに来て口裏があっているかの如くの牽制モードになっておりまして、黒田さんを皆で羽交い絞めにしているの巻ということで、常識的に考えると益々追加緩和をしない方向にしか思えないのですが、政権とも示し合わせてサプライズ演出をするためのプロレスで実はサプライズ追加緩和という荒業は考えられないことも無いですが、前回の追加緩和の時は置物一派の皆さんは追加緩和追加緩和言ってましたので、さすがにそれは無いかなと。

でまあ周囲からこれだけ羽交い絞めになる中で黒田さんがランボー怒りの追加緩和とかやったら最早爆笑するしか無いのですが、まあその点だけはちょっと気になるけど普通に考えてそれは無かろうという感じではないかと。


○市場関連メモ

・短国買入また1.5兆円かよ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151023.htm
国庫短期証券買入 15,000 2015年10月27日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151023.htm
国庫短期証券買入 28,570 15,001 0.003 0.009 71.9

札は2.8兆円あるということで余っているので1.5兆円の打ち込みという事なのかも知れませんけれども、札が余っているようだとすかさず買入が多めになるとそれは所謂日銀トレードにお墨付きを与えるという効果にもなるんですけどねえ。

あと可能性としては
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

の直近の数値を見ますと(なお先々週の短国買入は翌月曜に実施されているので20日の残高には跳ねていない)9日の短国買入で6M新発の562回債が8,438しか購入できていない(月曜の方は良く分からん)ので、月曜の分だけでは6Mと1Yがまだ残っているのでもっと買いたいという事なのかも知れませんが、そこまでするならもうカレント3Mは発行後2週間くらいで買入から外せば(暴論)とでも申し上げたくなるわけですが。


○ECBドラギ会見ですが良く良く読むと「結局何をするのか」がさっぱり分からない毎度のやるやる詐欺

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is151022.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Malta, 22 October 2015


・金融政策の成果は「クレジットコンディション」

最初のステートメントについては金曜には経済の所までネタにしましたのでその続き。

『Turning to the monetary analysis, recent data confirm solid growth in broad money (M3), notwithstanding a decline in the annual growth rate of M3 to 4.8% in August 2015 from 5.3% in July. Annual growth in M3 continues to be mainly supported by its most liquid components, with the narrow monetary aggregate M1 growing at an annual rate of 11.4% in August, after 12.2% in July.』

まあこれは良いとして次。

『Loan dynamics continued to improve.』

ということでローンの状況が改善というのを前面に出しています。今に始まった話ではなくて最近ECBの高官から政策効果というとこの話が出るのが仕様ではありますが。

『The annual rate of change of loans to non-financial corporations (adjusted for loan sales and securitisation) increased to 0.4% in August, up from 0.3% in July, pursuing its gradual recovery since the beginning of 2014.』

『Despite these improvements, developments in loans to enterprises continue to reflect the lagged relationship with the business cycle, credit risk, credit supply factors, and the ongoing adjustment of financial and non-financial sector balance sheets.』

『The annual growth rate of loans to households (adjusted for loan sales and securitisation) increased to 1.0% in August 2015, compared with 0.9% in July.』

改善しているけれども各種要因によって伸びは抑制されていますが・・・・・・・・・・

『The euro area bank lending survey for the third quarter of 2015 confirms the increase in demand for bank loans, supported by the general level of interest rates, financing needs for investment purposes and housing market prospects. In addition, credit standards eased further on loans to enterprises, notably due to increasing competitive pressures in retail banking, while tightening somewhat on loans to households for house purchase. Overall, the monetary policy measures we have put in place since June 2014 provide clear support for improvements both in borrowing conditions for firms and households and in credit flows across the euro area.』

ということで銀行の貸出態度が改善とかローン金利の低下とかクレジットスタンダードが緩和とかそういう効果が出ていて、企業や家計のクレジットフローに貢献しているというお話。

でまあ説明の方はこの後クロスチェックがあって最後に構造改革の重要性という話をしておりますので一応最後の所だけ引用しておく。

『Monetary policy is focused on maintaining price stability over the medium term and its accommodative stance supports economic activity. However, in order to reap the full benefits from our monetary policy measures, other policy areas must contribute decisively. Given continued high structural unemployment and low potential output growth in the euro area, the ongoing cyclical recovery should be supported by effective structural policies.』

『In particular, actions to improve the business environment, including the provision of an adequate public infrastructure, are vital to increase productive investment, boost job creation and raise productivity. The swift and effective implementation of structural reforms, in an environment of accommodative monetary policy, will not only lead to higher sustainable economic growth in the euro area but will also raise expectations of permanently higher incomes and accelerate the benefits of reforms, thereby making the euro area more resilient to global shocks. Fiscal policies should support the economic recovery, while remaining in compliance with the EU’s fiscal rules. Full and consistent implementation of the Stability and Growth Pact is crucial for confidence in our fiscal framework. At the same time, all countries should strive for a growth-friendly composition of fiscal policies.』

まあここは毎度の話なのですが、金融緩和でやる気を見せているようなプレゼンをしているので一応ねという所で。

以下質疑応答から。

・ノボトニーさんの金融政策の限界論に関して

冒頭の質問がこれ。

『Question: If I could ask you to develop the last point that you made. Governor Nowotny last week said that monetary policy may be coming up to its limits and perhaps it was up to fiscal policy to loosen a little bit to provide a bit of accommodation. Could you share your thoughts on this and perhaps even touch on the Italian budget?(後半割愛)』

財政出してくれないと金融緩和が限界にという事についての見解如何とな。

『Draghi: On the first issue, I'm really commenting only on monetary policy, and as we said in the last part of the introductory statement, monetary policy shouldn't be the only game in town, but this can be viewed in a variety of ways, one of which is the way in which our colleague actually explored in examining the situation, but there are other ways. Like, for example, as we've said several times, the structural reforms are essential. Monetary policy is focused on maintaining price stability over the medium term, and its accommodative monetary stance supports economic activity. However, in order to reap the full benefits of our monetary policy measures, other policy areas must contribute decisively.』

物価安定のために金融政策を実施します経済政策はまた別でみたいな分かったような分からんような話をして質問の趣旨を煙に巻いています。

『So here we stress the high structural unemployment and the low potential output growth in the euro area as the main situations which we have to address. The ongoing cyclical recovery should be supported by effective structural policies. But there may be other points of view on this. The point is that monetary policy can support and is actually supporting a cyclical economic recovery. We have to address also the structural components of this recovery, so that we can actually move from a cyclical recovery to a structural recovery. Let's not forget that even before the financial crisis, unemployment has been traditionally very high in the euro area and many of the structural weaknesses have been there before.』

問題としては高い構造的な失業と低い潜在的な生産の伸びで、そこに対して我々は対処しないといけないが、金融政策としては景気の循環的な回復をサポートするものです、という事で、ノボトニーさんの指摘する限界論に関してはスルーしていますな、うんうん。


・12月追加緩和のトリガーは?

さっきの質問の後半。

『(質問の前半割愛)And if I could ask a second question that's regarding December, I'm curious, what will be the triggers? What specific measures will you be looking at in December to make your decision whether to adjust the programme?』

『(回答の前半割愛)On your second question, as you might have seen in the introductory statement, there was a very rich discussion about all monetary policy instruments that might be used if warranted. No specific choice has obviously been made yet. So there was a thorough assessment of the situation, which I'll elaborate further following your questions, and the conclusion was that we are ready to act if needed; we will examine all incoming information and we are open to a whole menu of monetary policy instruments.』

色々な議論がありましたという事で、後の質疑でもいろいろ出てきますが今回追加緩和という見解もあったようですな。

『To this extent, the Governing Council has tasked the relevant committees to work on different monetary policy instruments that could potentially be used, to examine the pros and cons of different instruments. In other words, if one had to summarise what was the attitude or the stance of the Governing Council discussion today, one would say it was not "wait and see", but it was "work and assess".』

"wait and see"ではなく"work and assess"である(キリッ)ということでやる気満々っぽく見せていますが、まあ冷静に考えたら会合毎に施策の状況を点検するって言ってるんだから本来は常に"work and assess"なのですが、こうやってキャッチーな言い方をすることによって雰囲気盛り上げるのは得意ですなドラギ大先生。


・経済のリスクというよりインフレ対応的な説明

『Question: Just following on from your previous answer, would it be possible for you to elaborate a little on the discussion today about the options that you still think are available to beef up the monetary policy response? And you've said in the past that rates, particularly the deposit rate, are now at the zero bound. Is that a statement you'd still stand by, or are rate cuts another potential option available to the Council?』

議論の一端を教えてちょ&預金ファシリティ引き下げについてですな。

『Draghi: Let me just report to you on the general lines of our discussion today. First of all, we examined the prospects for a firming up of our recovery and we concluded that the recovery is continuing, and is projected to continue at the same pace it had in the second quarter of this year. But we have to distinguish two components: the domestic part of this recovery and the external part.』

域内に関しては回復が継続しているが海外ガーと。

『The domestic part has shown resilience, mostly driven by consumption, and the drivers of this recovery are the lower oil prices, our monetary policy and, to some extent, the fact that many countries have achieved some progress in fiscal consolidation. So the headwinds coming from fiscal policy would be lower than in the past.』

域内は良いそうで。

『To see how important our monetary policy is, consider that real disposable income and consumption have grown at the same pace, which implies the growth rate of savings has been flat. And this is so because interest rates are so low. So we often complain about interest rates being low for savings, but there is also a positive side to that.』

金利の低い話について実質可処分所得の伸びと消費の伸びがパラレルで拡大するような状態なら貯蓄がフラットで推移しますが、金利が低い点についてはメリットもあるという話があるとか説明していまして、まーECBのマイナス金利というのは(マイナス金利じゃなくて単なる低金利なのかもしれないけど)それなりに批判があるんだなあというのはこの説明を読んでいて思うのでした。

『On the other hand, we have an external demand which has shown weakness mainly for the challenges that emerging market economies are now experiencing, and more particularly China.』』

ということで中国および新興国のリスクという事ですが、これって外生要因の話で金融政策で何を対処しますねんという話になりますけど・・・・・・・・・・・

『On the inflation rate side, the picture is in a sense less sanguine.』

ということでインフレに関する説明の方が前面に出る感じです。

『We see that headline inflation will stay low for a protracted period of time, although as I just said in the introductory statement, we expect some pick-up, due mostly to base effects and possibly projections of higher oil prices. Having said that, the core inflation is basically stable at 0.9%.』

物価が低い状態が続いていますとな。

『When we look at the expectations of inflation, which of course is a very relevant variable for our monetary policy decisions, we see that since our last meeting survey-based short-term inflation expectations have declined, but medium to long-term inflation expectations, after some decline following our last meeting, have recovered and are basically unchanged since then. And we see that the latter development is both for market-based inflation expectations and survey-based inflation expectations.』

近いタームのインフレ期待が下がっていますと。

『However, we see some downside risk as far as this picture is concerned. And the downside risks come from a continuing high output gap, from the possible further fall in oil prices, from the fact that the nominal effective exchange rate has appreciated in the last three or four months, if I'm not mistaken, by almost 6%, and, finally, from the fact that we continue to observe a high degree of correlation between headline inflation and medium-term inflation expectations, which means a high degree of correlation between oil prices and inflation expectations.』

でまあ見通しは今後徐々に物価上昇ですが、物価に関してのダウンサイドがありますということで、これでもかと説明するなかで思いっきりユーロ高の影響の話を数字まで出して説明しているのがこれまたですし、インフレ期待の低下リスクという話もしております。

まあだから追加緩和というのは分かるのですが、ただまあインフレ期待がどうのこうの的な話になると、昨年から実施している政策がそもそも効果が少ないから今に至るなんじゃネーノというツッコミが飛ぶとどうこたえるのかというか、そもそも政策をどのような波及ルートでどこに効かせるのか、という論点になった場合に結構追加緩和そのものは説明が難しかったりします。

なお単純に「見直しをした結果2017年9月までこの政策を継続するのが妥当と判断しましたこれも追加緩和ですよ(キリリッ)」という説明をして市場がズッコケモードになるというオモシロ展開も想定されない訳ではないですが、ドラギのやるやる詐欺は結局最後に追い詰められて何かやらない訳に行かないという事になるので、まー只の期間延長で許してもらえることにはならんでしょうなあとは思います。

『This is a risk because it could lead to a de-anchoring of inflation expectations. We are not saying that these risks are materialising, but they are present and as I observed in the course of the last meeting these risks have gone up, and we want to be vigilant, as people used to say in the old times.』

てな訳で、インフレ期待のアンカーが外れ(て下に行く)可能性についてのリスク認識というお話になっていまして、まあこういう風に言っておかないと「海外ガー」だけの説明だと「じゃあ追加緩和をして何に効かせるの」という話になってしまいますが、今申し上げた通り「ここまでの政策を実施しているのにインフレ期待低下リスクがあるというのだったら追加やって何の意味あるの」という話をされても意外に説明に困りそう。

でもって最終的にはこのインフレの説明の最初にあるように、「実際の物価が弱い」というのが原因という話になって、そこの理由で色々とある中で金融政策でモロに効かすことができるのが「為替市場」ということですので為替という話になる(金曜に引用したロイター記事の為替言及部分の発言はもうちょっと先に出てきます)のでしょうな。理屈で考えますと。

『On the other hand, we see that credit markets are improving, and we can expand on that in the coming questions. So the overall assessment, as I said, is not wait and see, but it's work and assess, so the Governing Council is there, ready to act if the convergence of our inflation path to 2% in the medium term is pushed back.』

クレジットに関しては効果が出ているという話はさっきもありましたな。まああくまでも「リスクがある」「これから点検をする」という話で、金曜は「予告ホームランキタコレ」と思ったのですが、冷静に読み直すと別に追加緩和決め打ちではないのですが、そうは言いましてもわざわざ市場が動くような言い方をして緩和効果の先食いをしている訳で、最終的には何かしないと話が済まないというのはドラギの過去の実績からしてそうでしょうなあという事ですからね。

『On the interest rate on the deposit facility, I said before - I don't know whether it was the last meeting or the meeting before that when I was asked whether it was discussed, I had said it was not discussed. This time it was discussed. Further lowering of the deposit facility rate was indeed discussed, and it's one of the instruments of monetary policy that I referred to when I said all instruments have been discussed.』

預金ファシリティ金利の引き下げについては、従来議論をしなかったが今回は議論をしましたとな。

#以下続くのですが時間の関係で最初の2つの質疑だけ(つーても印刷かけると紙2枚分)ですいませんすいません



2015/10/23

お題「寝起きでECBネタ/置物リフレ派の転進例を今日も鑑賞」

ほほう。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO93148890T21C15A0EE8000/?dg=1
物価2%上昇の品目2割超す 食品など値上げ増
2015/10/23 0:54日本経済新聞 電子版

『モノやサービスの一部に価格上昇の波が広がっている。消費者物価指数の伸び率を支出額に応じた品目割合でみると、約4分の1が前年同月より2%以上、上昇している。品目の数でも上昇が下落を上回る。』(上記URL先より、以下同様)

これは新手の2%達成に向けた説明ですかと思ったら・・・・・・・・・・・・

『原油安が物価全体を下押しする一方、パンやセーターなど生活実感に近い物価が上がる形だ。景気の足踏み状況が長引く恐れが出る中、日銀の金融政策の運営も難しくなっている。』(以下の記事は会員ページになります)

あれ???物価が上昇するのが目標なのに日経新聞まで悪い話扱いにするの??????


○ECBドラギ総裁の予告ホームランじゃなかった予告追加緩和キタコレ

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is151022.en.html
Introductory statement to the press conference
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Malta, 22 October 2015

ちなみに前回のも適当に比較します。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2015/html/is150903.en.html(前回)

『Based on our regular economic and monetary analyses, and in line with our forward guidance, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged. As regards non-standard monetary policy measures, the asset purchases are proceeding smoothly and continue to have a favourable impact on the cost and availability of credit for firms and households.』(今回)

『Based on our regular economic and monetary analysis, and in line with our forward guidance, the Governing Council decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』(前回)

『Our asset purchase programme continues to proceed smoothly. Regarding non-standard monetary policy measures, following the announced review of the public sector purchase programme’s issue share limit after the first six months of purchases, the Governing Council decided to increase the issue share limit from the initial limit of 25% to 33%, subject to a case-by-case verification that this would not create a situation whereby the Eurosystem would have blocking minority power, in which case the issue share limit would remain at 25%.』(前回)

前回はAPPの銘柄別買入上限を引き上げたという決定があったのでパラグラフが分かれていますけれども、今回に関しても引き続き「買入はスムーズに進んでいます」というのを入れながら説明していろまして、また資産買入に関しては「a favourable impact on the cost and availability of credit for firms and households」と非金融機関や家計に対するクレジット環境の緩和という文脈での評価を行っています。まあこの評価そのものはここもと折に触れて言及しているのでそれ自体は従来路線ではあります。


『The Governing Council has been closely monitoring incoming information since our meeting in early September. While euro area domestic demand remains resilient, concerns over growth prospects in emerging markets and possible repercussions for the economy from developments in financial and commodity markets continue to signal downside risks to the outlook for growth and inflation.』(今回)

新興国経済の先行き見通しと金融市場およびコモディティ市場の経済に与える悪影響が成長と物価にダウンサイドリスクを与えているとキタコレな説明。

『Most notably, the strength and persistence of the factors that are currently slowing the return of inflation to levels below, but close to, 2% in the medium term require thorough analysis.』(今回)

中期的に2%近辺への物価目標に到達できるかに関しても最近の動向を見るとさらなる分析が必要ですということで中期的に物価は行きまぁすという説明ではない訳ですので・・・・・・・・・・

『In this context, the degree of monetary policy accommodation will need to be re-examined at our December monetary policy meeting, when the new Eurosystem staff macroeconomic projections will be available.』(今回)

キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーー!!!!!!

『The Governing Council is willing and able to act by using all the instruments available within its mandate if warranted in order to maintain an appropriate degree of monetary accommodation. In particular, the Governing Council recalls that the asset purchase programme provides sufficient flexibility in terms of adjusting its size, composition and duration. In the meantime, we will continue to fully implement the monthly asset purchases of ユーロ60 billion. These purchases are intended to run until the end of September 2016, or beyond, if necessary, and, in any case, until we see a sustained adjustment in the path of inflation that is consistent with our aim of achieving inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

ということでどこからどう見てもユーロスタッフの経済見通しが出てくる次回12月会合で何か追加緩和を実施しますという説明になっておりまして、どう見ても予告ホームランです本当にありがとうございましたという風情で、毎度のやるやる詐欺というかやるやる攻撃なのですが、しかしこういう口先介入しますと緩和効果を先食いすることになりますし、大体からして色々な緩和パッケージを突っ込んでも結局物価が上がっていないのであれば、そもそも緩和政策の設計のどこかに問題があるのではないかという考察をした方が良いのではないかとも思うのですが、とりあえず突っ込んだ政策を拡張するという話になるのは洋の東西を問わず共通現象ですな。

なお、冒頭コメントの所では資産買入に関しての拡大を示唆しているような説明ですけれども、(まだ出ていないので週末に読みますけど)会見Q&Aでは預金ファシリティ金利の引き下げの議論も行いましたという事になっているようですな。

買入の期間に関してはそもそもが「必要があれば期間を変更」となっているので見通しが下がれば本来は自動的に延長になるのですが、そこは既に「2016年9月まで」と言っているので、そこの期間を延長する(たぶん1年じゃないの)事によって追加緩和をしたように見せかける事が出来るという便利な設計になっておりますので、まあ最低でも期間の延長はするのでしょう。オペがどこまで持つのか知らんけど。

・・・・・・・・・ちょっと余談になりますけれども、「オープンエンドで買入を拡大」という政策デザインをすると上記のような「延長したから追加緩和」という見せ方が出来ないという中々残念な事になりますので、実は長期的に粘っていく政策の時には「追加緩和の余地(というか正確に言えば追加緩和をしているように見せかける出し方のオプション)」的にオープンエンドというのは1枚カードを捨てることになってしまいますので、オープンエンド政策(キリッ)と言っている時は実は短期決戦で勝てると思っている時に使うべきなんでしょうね、ああそういえば日銀も元々は2年で達成するでしたな(軽やかに微笑みながら)。

でまあこの調子だと段々長期戦になってきそうなのですが、おじちゃん良く分からないのですけれども預金ファシリティのマイナスを拡大して政策を長期化するって技術的に問題があるようにしか思えないのですが大丈夫なんですかねえ。

ちなみに前回のこの辺りですけれども、

『Underlying our monetary policy assessment was a review of recent data, new staff macroeconomic projections and an interim evaluation of recent market fluctuations. The information available indicates a continued though somewhat weaker economic recovery and a slower increase in inflation rates compared with earlier expectations. More recently, renewed downside risks have emerged to the outlook for growth and inflation. However, owing to sharp fluctuations in financial and commodity markets, the Governing Council judged it premature to conclude on whether these developments could have a lasting impact on the outlook for prices and on the achievement of a sustainable path of inflation towards our medium-term aim, or whether they should be considered to be mainly transitory.』(前回)

とありまして、現在(9月時点)で起きている足元の弱さに関して一時的なものなのか否かについて点検をしていかないといけませんって話をしていますので、普通に話の流れとして今回の説明は「点検の結果これはアカンヤツの可能性が高まっているので12月のスタッフ見通しの時点で再度点検してその結果政策の調整をします」という文脈になっておりまして、そらもうどこからどう見ても追加緩和予告ホームランですがなという所ですな。


以下の経済に関する部分は今回のステートメントからの引用で参ります(前回との比較はパス)。

『Let me now explain our assessment of the available information in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP increased by 0.4%, quarter on quarter, in the second quarter of 2015, following a rise of 0.5% in the previous quarter. The outcome for the second quarter reflected positive contributions from both domestic demand and net exports. The most recent survey indicators point to a broadly similar pace of real GDP growth in the third quarter of the year. Overall, we expect the economic recovery to continue, albeit dampened, in particular, by weaker than expected foreign demand.』

『Domestic demand should be further supported by our monetary policy measures and their favourable impact on financial conditions, as well as by the progress made with fiscal consolidation and structural reforms.』

てな訳で国内というより海外という話をしているのですが、会見の方を読まないと良く分からん面があるのですが、主に海外要因ということになると追加緩和するのは良いけどその政策波及ルートとかどういう説明するんだろというのは疑問が少々。

『Moreover, the decline in oil prices should provide support for households’ real disposable income and corporate profitability and, therefore, private consumption and investment. However, the recovery in domestic demand in the euro area continues to be hampered by the necessary balance sheet adjustments in a number of sectors and the sluggish pace of implementation of structural reforms.』

まあこの辺は毎度の説明。

『The risks to the euro area growth outlook remain on the downside, reflecting in particular the heightened uncertainties regarding developments in emerging market economies, which have the potential to further weigh on global growth and foreign demand for euro area exports.』

新興国がリスクということで、その中で世界経済および欧州の輸出に対してのウェイトが上がっていますのでという話をしていますね。

『Increased uncertainty has recently manifested itself in financial market developments, which may have negative repercussions for euro area domestic demand.』

金融市場の状況も欧州の需要に悪影響のリスクがあるという話で、リスク要因の説明を読みましても「それは分かったが追加緩和でそのどこに対して作用させたいのか」というのが微妙に謎としか申し上げようがないのですが、質疑応答の所では為替市場ルートという話が結構あからさまになっているようですな。

『According to Eurostat, euro area annual HICP inflation was -0.1% in September 2015, down from 0.1% in August. Compared with the previous month, this mainly reflects a further decline in energy price inflation.』

はいはいマイナスマイナスでエネルギーのせいとな。

『On the basis of the information available and current oil futures prices, annual HICP inflation rates will remain very low in the near term. Annual HICP inflation is expected to rise at the turn of the year, also on account of base effects associated with the fall in oil prices in late 2014. Inflation rates are foreseen to pick up further during 2016 and 2017, supported by the expected economic recovery, the pass-through of past declines in the euro exchange rate and the assumption of somewhat higher oil prices in the years ahead as currently reflected in oil futures markets.』

今の所は物価見通しは2017年に向けて上昇していくという話になっています。

『However, there are risks stemming from the economic outlook and from financial and commodity market developments which could further slow down the gradual increase in inflation rates towards levels closer to 2%. These risks are being closely monitored by the Governing Council.』

ということで、物価目標達成時期がより遅くなるリスクが経済見通しおよび金融市場やコモディティ市場の動きに見られますのでこれらのリスクを慎重に点検します、という話になっています。

とこの辺で勘弁。


・ちなみに会見では・・・・・・・(詳しくは読んでから)

http://jp.reuters.com/article/2015/10/22/ecb-chief-suggests-reviewing-policy-in-d-idJPKCN0SG1U520151022?sp=true
Business | 2015年 10月 23日 00:25 JST
ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨

『<為替相場>

為替相場は、ECBの政策目標でない。これまでも、現時点でもだ。

しかし、(為替相場は)物価安定や成長に重要だ。

為替相場は、インフレ見通しが下振れるリスクの1つだ。名目実効為替レートは過去4、5カ月間ほど、幾分顕著な水準に上昇している。ただ、繰り返し強調しておく。為替相場はECBの政策目標でない。これまでも、今もだ。ただ、物価安定や成長に大きな意味を持つ。』(上記URL先より、以下同様)

ということのようですので、為替ルートで何とかしたいという話なのかねとは思うのですが。


『<中銀預金金利の一段の引き下げについて>

これまではこの件について討議しなかったと言ってきたが、今回は討議した。私はすべての手段が検討されたと言ったが、(中銀預金金利の引き下げは)このなかに含まれる金融政策手段の1つである。』

『<資産買い入れプログラム>

資産買い入れは順調に進んでおり、企業や家計の信用コスト・機会へプラスの効果をもたらし続けている。』

『<マイナスの中銀預金金利>

インフレ期待のマイナス幅が拡大すればするほど、実質金利が上昇する。この現象も、マイナスの中銀預金金利など、他の非標準的な金融政策手段を検討する1つの理由だ。1年ほど前、下限金利を(マイナスにすると)決めた。現在見直している。まだ何も決定していない。あらゆる金融政策について、率直な議論を行った。この(マイナスの中銀預金金利)ほかの一部金融政策手段も話し合った。』

などとあって、質疑のテキストを読んでみたいとは思うのですが、ヘッドラインだけ見ていると為替をやりたいのだけは分かるのですが、金利をやりたいのかAPPをやりたいのかが謎としか申し上げようがないのでこれは読んでみたらわかるかと存じます。


○その他メモ少々

・3M入札

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151022.htm

(3)募入最低価格 100円00銭1厘0毛(募入最高利回り)(-0.0037%)
(4)募入最低価格における案分比率 58.6469%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘2毛 (募入平均利回り)(-0.0044%)

前回は平均が1厘5毛なので平均は下がったのですが、足切の1厘ちょうどは同じなのですけれども前回の9割案分から6割案分に案分比率が下がっていまして、一瞬前回比少し弱くなったかとも思ったのですが、どちらかと言えば目線が揃ってきた感があって、しかもその揃った目線が100円に近付かないたあどういう事やという感じではあります。

まあ本日の短国買入はどうせ1兆円となって、カレント3Mはそのまま浮く状態になると思われる(6Mと1Yで札は十分あるでしょ)次第ですが、GCレートはそこそこの水準で推移する割に短国の目線が全然サガランチ会長なのは、マイナス入札が続きすぎて粘着してきやがったなあということでしょうかねえ、よー知らんけど。


・なんじゃこの提言は

毎度おなじみのコーゾー先生ですが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWLWXK6S972901.html
自民の山本議員:最大2.5兆円給付を、年金受給・低所得者や育児支援
2015/10/22 16:12 JST

『(ブルームバーグ):自民党の山本幸三衆院議員は22日、年金受給者や低所得者などへの最大2兆5000億円の現金給付を2015年度補正予算に盛り込むことを求める文書を公表した。村井英樹衆院議員とともに所属している岸田派有志の提言としてまとめ、安倍晋三首相らに最終的に提出する考えだ。 』(上記URL先より、以下同様)

金融緩和一本槍の山本先生もすっかり2%物価目標でどうのこうのの話を引っ込めているようで結局置物リフレ一派の皆さんは肝心の置物教祖様を日銀に置き去りにしてすっかり梯子を外しているという状態で置物先生に同情したくなる位の勢いですな、1ミリも同情しないけど。

『17年4月からの消費税率の10%への引き上げ延期は、アベノミクスの失敗とみなされる恐れがあるため難しいと山本氏は予想した。このため、消費税上げをスムーズに乗り越えるためには、機動的に予算措置を講じ短期的に景気浮揚させることも重要であると2兆5000億円給付の狙いを説明した。 』

何が何だか分からないのですが、消費増税のせいでアベノミクスが失速したので再浮揚させないといけないと言いながら消費増税の延期はアベノミクス失敗と見なされるので難しいって政権の体面の為には良くない政策を実施するのも止む無しと言っているのと同じなんですけど貴殿はそれでも責任ある政治家なのかと小一時間問い詰めたい訳で、庭先だけ綺麗にすれば良いというような話はだいぶ呆れますな。

『現在の経済状況について山本氏は、14年4月からの消費増税の影響もあり、企業収益の改善が所得分配を通じて「消費が増加するという流れを作りきれていない」と指摘した。好循環の阻害要因を政策的に取り除くため、補正予算では大胆かつ分かりやすい所得再分配を実施すべきである、との考えを示した。』

と言ったって恒久的措置にするならまだ話は分かるのですが・・・・・・・・・

『年金受給者4000万人に1人当たり3万円で1兆2000億円、低所得者1000万世帯に各4万円で4000億円、児童手当の拡充として1800万人の児童1人当たり5万円で9000億円を配分することを山本議員らは求めている。このうち年金受給者と低所得者は一部重なるため、実際の所要財源は小さくなる見通しも示している。財源としては15年度税収の上振れ分や14年度の剰余金、外為特会などを挙げた。』

と言っている位なのですから補正一発だけの措置であって、そんな一発だけの配分によって消費増税のマイナスが山本先生のいうようにQQEの効果を全部打ち消すくらいの超強力な効果があるのに対抗できるとは思えませんけどねえ。

という雑談ではあるのですが、置物リフレ派の皆さんが最近すっかり蜘蛛の子を散らす勢いで撤収するなかで完全に日銀だけ放り出されているというこの状況に世の無常というものを感じる今日この頃ではございます。



2015/10/22

お題「金融政策イベント待ちですのでまあ小ネタである」

ほうほうこれはこれは。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWHT3A6JTSER01.html
ドイツ銀がヘッジファンドに7170億円誤って送金、1日で回収−関係者
2015/10/20 10:30 JST

○パウエル理事の米国国債市場の流動性に関する講演は8月の講演と大体同じ

こんなんありましたが。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20151020a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20151020a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the Federal Reserve Bank of New York, New York, New York (via prerecorded video)
October 20, 2015
The Evolving Structure of U.S. Treasury Markets

こちらのネタについては

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20150803a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the The Brookings Institution, Washington, D.C.
August 3, 2015
Structure and Liquidity in Treasury Markets

というのがあって夏枯れの中でネタにしたのですが、概ねこちらで話をしている事から特段進展はしていないように見受けられますが一応メモ程度に。

途中の辺りから。

『My discussions with market participants and regulatory colleagues suggest a range of opinions about Treasury market liquidity. While most market participants perceive some reduction in liquidity, views on the severity of the situation seem to be more mixed. Some measures such as trade size and market depth have declined, and investors today have to employ increasingly sophisticated strategies to execute larger trades at a good price. Some other measures show no decline in overall market liquidity. However, we need to consider not just the average level of liquidity under normal trading conditions, but also the risk that liquidity may be more prone to disappearing at times when it is most needed, as it seemed to do on October 15.』

ということで米国国債市場の流動性が急に蒸発するリスクに関して、その背景となる市場の構造に変化が生じているという話をしていまして例に出しているのが昨年10月に瞬間34毛甘とかやらかした市場の価格ワープだったりするのは前と同じです。

『This concern is an important one. Because U.S. Treasury securities reflect the full faith and credit of our government, they are rightly considered risk-free. But the value of any security, even a U.S. Treasury, will reflect not just its inherent credit risk but also investors' faith in the markets where it is traded. We need investors to have full faith in the structure and functioning of Treasury markets themselves. Treasury markets need to be as safe as the securities that trade on them. Episodes such as October 15, in which Treasury prices fluctuated wildly with no obvious reason, threaten to erode investor confidence. The growing list of similar events in equity and other markets underscores this concern.』

『Confidence in Treasury markets helps to support demand for Treasury securities and keep our government's financing costs low. Households and firms and even foreign governments hold Treasury securities as a key form of savings in no small part because of their trust in their safety and liquidity.』

とまあそういう感じで「米国債券市場がセーフヘイブンと見なされるのにその市場の流動性がブローアップしたらマズーだろ的なお話をしているのですが、まあそういいながら銀行のトレーディング勘定をゴリゴリ規制するとか、そっちの方で色々とリスクを取れないようにしている一方取引が高速化して自動化したら、そらまあ何かのストレス時にボラが爆発するのは当たり前だと思う訳で、前回の時も思ったのですが、パウエル理事のこのテーマの話って言いたい理屈は分かるしまあそうでしょうなとは思うのですが、FSBとかボルカールールとかその辺からやって来ましたな規制絡みとの整合性という意味では相性の悪い話なんですよね。


上記の所から少しとんだところですけど。

『I would point to four important trends that have been driving the changing structure of these markets: first, advances in computerized trading and high-speed communications and the entry of new players using these technologies; second, the intensified prudential regulation and supervision of the systemically important banks that are the largest dealers; third, the banks' own re-evaluation of risk in the wake of the financial crisis; and fourth, the increasing importance of mutual funds and other asset managers.』

市場構造の変化ということで示している4点は同じで、規制の変更によってそもそもマーケットメーカーがリスクを取りにくくなっている点を構造としておりますが・・・・・・・

『While markets will always continue to evolve, there is no reason to think these trends will suddenly reverse. In all likelihood, they are here to stay.』

ということで。

『Although post-crisis regulatory changes have likely increased the costs of market making, markets were already undergoing dramatic changes well before the crisis. High-frequency and algorithmic trading firms already accounted for a large and growing share of transactions in the interdealer market, altering the speed and nature of market making.』

『As traditional dealers have lost market share, they have sought to remain competitive by internalizing a greater share of their customer trades, finding matches between their own customers and keeping those trades off the public interdealer markets. But internalization does not eliminate the need for a public market, which is where price discovery mainly occurs. Dealers need to place the orders that they cannot internalize onto that market, and at times of market stress such as on October 15, they will likely need to put most of their orders onto the public market.』

顧客取引を自社プラットフォーム内でマッチさせる的な話って言うのは簡単なのですがそもそも取引主体が各社結構ばらばらに動いてくれないと難しい話でして、それはまあ今の金融規制の流れが皆さん自分の考えで色々な方向でリスク取ってくださいね的なものを難しくする物である(上に金融政策の自由度が少ない)中では絵に描いた餅的な悪寒がしますがね。

『The current structure of the trading platforms in both the cash and futures markets is based on a central limit order book, which provides for continuous trading but also provides strong incentives to be the fastest. There may be adaptations of this market structure that could give greater emphasis to liquidity provision rather than a never-ending competition for more speed.』

『Some of the panelists we'll hear from tomorrow argue that it may be possible to do so, for example by considering frequent batch auctions as an alternative to the central limit order book, or by placing minimum time limits on orders. Ideas such as these make me wonder whether it might collectively be possible to come to a compromise in which more trading is done directly on the public market, if at the same time the public market rules were adjusted to emphasize greater liquidity provision, and particularly more stable liquidity provision, over speed. Perhaps public-private forums such as this conference can help in achieving that type of cooperative approach. I look forward to hearing views on these ideas tomorrow.』

このネタも8月講演で出ていたのですが、市場の取引のHFT化に合わせての変化ということでたとえば入札のクオータリーファンディングではない発行方法とか、まあその手の変化もという話なのですが、トレード現場にいた者としての実感を申し上げますとHFT化してそれに対応した取引プラットフォームになったらフラッシュクラッシュが起こるのはある意味必然であって、昔々その昔の日本の債券先物における注意気配制度みたいに、HFTがワークしにくくなる方がフラッシュクラッシュしなくなりますし、価格推移が安定化する(と申しましても当時は金利があったしトレードも活発だったから値動きは普通にバカスカありましたが)ので取引が集中しやすくなって参加者の相場観が多様化しやすくなるとか、まあそういう風には思うのですけれども、それって理屈としてはあまり通り難い話なのでまあ無理でございましょうなあと思います。なんちゅうかその手の提言だか研究成果だかが出るんですね。

『Treasury repo markets have also been undergoing structural changes. This is a good time to look at potential changes to the clearance and settlement infrastructure in these markets, as we will discuss tomorrow afternoon. We should take this opportunity to ask whether current market structures are well-suited to the new environment, or whether we should be aiming for a substantially different approach in the longer run. There is a tight link between funding liquidity in repo markets and market liquidity in cash and futures markets, so a healthy, liquid repo market is essential to the overall health of the market.』

USレポ市場と決済に関する改革についての言及も8月の指摘通り。

『However, regulatory changes have made repo activity more expensive.4 There are currently a number of private proposals to expand the use of central clearing for repo markets that could help to reduce those costs. Since the crisis, reforms have supported greater use of clearing for a wide range of products, and I believe that greater clearing in Treasury repo markets could be beneficial.』

でまあこれらの改革は取引のコストを引き上げているというのは引き続き認めているけれども、金融の安定化によってそれ以上のメリットがあります(キリッ)という話をしているので、結局のところ同じ話になっていたりしまして、だったらそもそも論としてフラッシュクラッシュの発生とかを懸念するなよとは思うのですが。

『The conference will conclude tomorrow with a discussion of regulatory requirements in Treasury markets. Many point to post-crisis regulation as a key factor driving any recent decline in liquidity.』

規制によって市場の流動性が低下しているという指摘(あるいは苦情)は多いようで。

『Although regulation seems to have had little to do with the events of October 15, I would agree that it is one factor driving recent changes in market making. The same regulations have also greatly strengthened the major banks and made another financial crisis far less likely. In my view, we should be prepared to accept some increase in the cost of market making in order to improve our overall financial stability.』

でも結局結論は同じで、金融安定化の為にやむなしという結論になっていまして・・・・・・・・・・

『That said, these regulations are new, and we should be willing to learn from experience. Regulatory requirements for Treasury markets may need to change over time to reflect a rapidly evolving market environment.』

市場の流動性に関しては新しい規制に慣れてきたらお前ら何とかしろ的な結論になっているのが結構な無責任感も漂うのですが、この手の規制ネタって大体振れ幅が無駄に大きいので、やはり金融機関の安全性とか資本充実とかリスクテイクするな的な話と、市場の流動性のバランスという面においては(市場の流動性、というのがはっきり言って計測不能な話(現場感覚の世界)だし、リスクが顕在化するときというのは突如顕在化するものなので)、どう見てもそら計測可能な金融機関の安定性とか頑健性の話の方に今後も走っていきそうだなあというか、そもそもFSBの話も大概に金融機関シバク方向ですもんねえと思うのでした。

#ということでネタにしたのですが8月投下したのと大きな変化は無かったようですいません(大汗)


○社債取引情報が出るとな

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/torihiki/index.html
社債の取引情報

『本協会では、社債の店頭取引における実際の取引価格を公表する「社債の取引情報の報告・発表制度」を設け、以下に発表しています。』

社債市場活性化のなんちゃらで進んでいた話の一環でして。

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/torihiki/seido/index.html
社債の取引情報の報告・発表制度について
平成27年10月20日

詳細版はこちら
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/torihiki/torihiki/seido_syousai.pdf
社債の取引情報の報告・発表制度について(詳細版)
平成27年10月20日


詳細版の方から引用しておきます。

『<本制度の趣旨>

これまで、日本では、社債の店頭取引における実際の取引価格を公表する制度はなく、取引当事者以外の第三者が取引価格を把握することは困難でした。

社債の店頭取引の価格情報としては、日本証券業協会(以下「本協会」といいます。)が発表する売買参考統計値のほか、情報ベンダー又はその他の機関が発表している価格等がありますが、これらは気配等に基づき算出又は評価した価格であり、実際の取引価格ではありません。このため、本協会では、平成 24 年7月 30 日に公表された「社債市場の活性化に関する懇談会」の報告書「社債市場の活性化に向けた取組み」において、社債の流通市場の活性化のため、本協会が社債の取引情報の発表を行うことが提言されたことを受け、「社債の価格情報インフラの整備等に関するワーキング・グループ」において検討を行い、日本で初めての取組みとして、社債の取引情報を発表する制度を設け、平成 27 年 11 月2日より開始することとしました。 』

とまあそういうことですが、

『(1) 発表対象の社債の取引

次の@及びAの両方の要件(以下「発表基準」といいます。)を満たした社債の取引のうち、1取引の取引数量が額面1億円以上の取引です。なお、次の@及びAの「銘柄格付」及び「発行体格付」とは、いずれも信用格付業者(金商法第2条第 36 項に定義する信用格付業者)から取得した格付(非依頼格付を除く)をいいます。

@ 当該社債の銘柄格付がAA格相当以上であること
A 当該社債の銘柄格付を二以上取得していること、又は、当該社債の発行体格付を二以上取得していること 』

とありまして、さっきのこちらのページ
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/torihiki/index.html
社債の取引情報

の中に、

発表対象銘柄一覧/発表停止銘柄/発表中止銘柄等
次月分(xls,170kb)

というのがありまして、銘柄一覧見ますと上記の発表対象の社債の取引の条件にあるAA格相当以上というのは最高格付けがAA−以上で2社以上からの格付けを取得している発行体の銘柄という事のようですし、発表においては、

『(5) 発表停止の取扱い

更新判定日において発表基準「AA格相当以上」を満たしている社債であっても、その後のクレジットイベント等の発生により当該社債の利回りが急上昇し、マーケットにおいて実質的には明らかにAA格相当と取り扱われていない社債については、社債の取引情報の発表を停止することが適当であり、外形的には発表基準を満たす社債であっても、次の@「発表停止基準」に該当する場合、又は、A「申請に基づく発表停止」により発表停止の決定を行った場合には、発表停止基準に該当した日又は申請に基づく発表停止の決定を行った日の翌営業日から当該社債の取引情報の発表を停止します。』

『新たに発表対象銘柄となる社債(更新判定日において新たに発表基準を満たした社債)については、予定していた発表月の第一営業日からの取引情報の発表を停止します。なお、発表停止となった社債については、本協会ウェブサイトにおいて発表することとしています。』

とありますので、まあこの公表によってクレジットイベント発生時の妙な売り煽りを助長する的な事が起きないような工夫がしてあるのはWGが色々と考えて作りましたなあという所ではございます。

実際に公表が始まってまた微妙に影響が出るとは思うので11月以降については注目ですな。


○追加緩和ネタの外野ネタから少々

・これはどういう意味なのやら

http://jp.reuters.com/article/2015/10/21/abe-idJPKCN0SF08T20151021
Business | 2015年 10月 21日 13:26 JST
GDP600兆円に向け旧「3本の矢」を一層強化=安倍首相

『[東京 21日 ロイター] - 安倍晋三首相は21日、官邸で開いた政府与党連絡会議で、名目国内総生産(GDP)600兆円の達成に向け、アベノミクスの旧「3本の矢」を一層強化する考えを示した。その上で、少子高齢化という構造的課題に真正面から立ち向かい、「1億総活躍社会」を実現すると強調した。』(上記URL先より)

うむむ。

新三本の矢って要するに構造改革やりますよ成長戦略やりますよという話をしているので、まあその中身が兎も角として方向性としてやっと空振りだった以前の三本の矢の三本目を打ち込んできましたぜヒャッハーという事になったと理解しているのですが、ここに来て旧3本の矢とか言い出すのは何なんでしょというところではあります。

まあ財政出すとかの文脈で話をしているような気もするのですが、これを言い出すとまた元の金融政策一本足打法に戻るのかよとか思われるので如何な物かという感じはします。まーそういう話ではないとは思うのですけれども、債券市場はスルーしていましたけど他の市場はこれに反応して追加緩和ヒャッハーみたいな動きをしたような形跡もあるようですので・・・・・・・・・・・・


・訳の分からん理屈で久々に電波浴

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWIFVO6KLVRZ01.html
「黒田総裁は天の邪鬼」、30日は追加緩和ない可能性も−高橋洋一氏
2015/10/21 11:38 JST

何が凄いと言いましても、自分たちのマネタリーベース直線一気理論がワークしていないことを全部消費増税のせいにしていることでして・・・・・・・・・・・・

『高橋氏は、14年4月の消費増税の影響は軽微だと発言していた黒田総裁は予測を間違ったと述べ、「消費増税をしなかったら物価は既に2%に達していたのではないか」とみる。消費増税が実施されるのであれば、「中央銀行としてはその影響をもう少しきちんと予測しないといけなかった」と述べ、「このまま何もしなかったら16年度前半の2%達成も無理だろう」という。』(上記URLより、以下同様)

『消費増税が実施されれば、いくらマネタリーベースを増やしても物価目標2%を18年4月までの黒田総裁の任期中に実現するのは無理だと述べた。消費増税の影響を短期間で補うだけの力は金融政策にはなく、「増税が実施されれば黒田総裁はお手上げだろう」と語った。』

金融政策がへっぽこだからデフレ脱却できなくて、適切な金融政策を実施すれば早期にデフレ脱却できて2年程度で2%物価目標達成できるという理論は何だったのでしょうかねえと思いますし、そんなに消費増税が強力なんだったら消費税を撤廃したら物価はどのくらい上昇するのかぜひご教授賜りたいものです。

『高橋氏は追加緩和の具体的な手段としては、「マネタリーベースの量が予想インフレ率に影響を及ぼすので、マネタリーベース目標を増やせばよい。10兆〜20兆円増やせばよい。買うものは何でも良いが、最後は出口を考えないといけないので、一番大きな市場である国債が無難だ」と指摘。』

ほほう。

『その上で、「マネタリーベースを増やすと、少なくとも過去のデータから見ると半年くらいのラグで予想インフレ率が上がる。予想インフレ率が上がると実質金利は下がるので、その分だけ設備投資の有効需要が増えて消費も増える。為替が円安になることで需要創出効果も出る。それで需給ギャップが縮まり、結果的に物価が上がっていくというプロセスだ」と言う。』

でも消費税の影響が大きいって何だよその理論という所ですが、この半年のラグってやたら主張するのですがどこか別の所で見た事あるなあとか思っていたら、読んだのにまだ読書室に登場していなかったような気がする「歴代日本銀行総裁論(吉野俊彦、補論鈴木淑夫・2014年講談社学術文庫)」の補論部分にあるのに気が付いたのでご報告しておきます。

つまりですね、1974年の森永総裁時代に1973年の大インフレ(狂乱物価)が起きた原因を当時の調査局などに分析させた結果として、『@マネーストックの増加率と約六ヶ月後の国内物価の上昇率とのあいだに高い相関関係が認められること』(「歴代日本銀行総裁論(吉野俊彦、補論鈴木淑夫・2014年講談社学術文庫)462ページより引用)というのがあるのですけれども以下自主規制。

『マネタリーベースと物価の関係について高橋氏は「やりながらでないと分からないところがちょっとある。アクセルを踏んだ時、どのくらいエネルギーとリンクするのかは非常に難しい。ただしアクセルを踏めば、ある程度エネルギーが上がっていくことは間違いない。どのくらいのスピードになるかは、スピードを見ながらアクセルを調整するとしか言いようがない」と説明している。』

えーっとすいませんそれ踏み過ぎて暴走したらどうするんでしょうかと思いますし、「分からん」じゃあ政策にならないですし、だったらQQE導入当初に「必要なものは全部打った、逐次投入はしない」と言っていた日銀を猛烈に批判しないといけない筈なのですが大丈夫ですかというか、要するにマネタリーベース直線一気理論がその計算通りに全然行ってないことの言い訳にしか見えませんで、往生際が悪いと申しますかぬ(自主規制)という慣用句が宜しいのか存じませんが、まあ理屈が思いっきりワークしていないのを全然認めないとは知的誠実さis何処とは思うのでございました。

ということで「消費増税ガー」というのであれば、消費税率引き下げあるいは撤廃で物価目標は達成出来ますって主張しないと話の筋が通らんと思うのですけどねえという電波浴なのでした。

#時間が無くなったので昨日の金融コンファランスネタの続きとか短国入札ネタが(汗)




2015/10/21

お題「黒田総裁のちょっと前のインタビューとか早川さんのインタビューとか/国際コンファランスの議事要旨から少々」

メディアでは煽りモードなのですがそんなに追加緩和期待ガーという感じなのですかねえというのはやや謎な気もするのですが。

#まあ皆があまり信じなくなると騙し討ちの効果が出ますけどね!!!

○こんな記事出てましたようで(黒田総裁のインタビュー?記事@CNBC)

http://www.cnbc.com/2015/10/11/bank-of-japan-governor-kuroda-says-inflation-in-line-indicates-october-easing-unlikely.html
(URLが長いのでリンクは途中までで貼っています)

BoJ's Kuroda hints October stimulus is unlikely
Geoff Cutmore | Nyshka Chandran
Sunday, 11 Oct 2015 | 10:50 PM ET

ということで先週頭の記事なのでちと古いのですけれども。

『In an interview on the sidelines of an International Monetary Fund meeting (IMF) in Peru, Kuroda told CNBC that Japan's inflation rate was in line with the central bank's expectations.』(上記URL先より、以下同様)

ということなのでインタビューみたいですけど。

『"If necessary, we can further ease our monetary policy but at this moment the inflation dynamics is as we anticipated. So, at this stage we just continue QE, but if necessary we can adjust."』

物価の基調は予想通りに推移しているそうです。でまあちょっと飛ばしまして先の方に。

『Kuroda, however, continued to be a cheerleader despite rising evidence of a weaker economy, insisting that current policy was paving the way for strengthening underlying inflation.』

微妙にCNBCの悪態を感じる。

『"If you look at it [headline inflation] carefully, energy items may be declining by about 1 percent or reducing the CPI rate by 1 percent, but non-energy items are raising CPI by about 1 percent, so they are cancelling out," he told CNBC .』

はいはい原油のせい原油のせい。

『"Unless oil prices decline further, the negative impact from oil will eventually dissipate, fade out, disappear and then 1 percent inflation is quite likely to come and because of the reduced output gap, and tight labor market conditions, I think we can approach 2 percent inflation sometime next year."』

しらっと「sometime next year」になっているのがチャーミングでして、2016年度前半だったのではないかと小一時間なのですが、まあ年度と言われても説明しにくいからこういう言い方で表現したという事で一応従来と同じ話をしていると整理しておきましょう(棒)。

あと黒田総裁のコメント部分(この記事は””で括られている部分が幾つかあるのですが、黒田さんのコメントじゃないどこぞの何とかストとかのコメントがあって紛らわしいので注意)は最後の所にございます。

『Commodity prices are a double-edged sword for Japan. The nation is one of the world's biggest oil importers so it benefits from cheaper prices but at the same time, its exports suffer because lower oil prices hurt emerging Asian nations dependent on commodity exports. Those emerging markets buy more than 50 percent of Japan's exports.』

ここはCNBCのコメントでして、微妙にさっきのもそうですが悪態成分が入っていまして「黒田総裁は原油が戻ればというけどそれ経済にマズーじゃないのですかねえ」としているのですが・・・・・・・・・・

『On oil, Kuroda refuted speculation that a price recovery would hurt Japan, saying it would instead reflect a stronger global economy.』

ということで、そこは問題ない(原油価格上昇=世界経済の拡大なので)的な話をした模様。

『He also ruled out taking a page from the European Central Bank's book, saying he wasn't considering using negative interest rates on bank deposits as a way of stimulating the economy.』

マイナス金利否定キタコレ!!

『"We don't think it's necessary. The ECB certainly introduced negative interest rates but after that, they embarked on QE and we have been implementing a large-scale asset purchase program for more than two years, so I don't think it's necessary to make interest rates negative."』

ここの黒田さんの説明は確かにそうですよねという所で、そもそもECBの場合はマイナス金利の方が先にあって、あれをやった時には「ああLSAP政策方向じゃないのね」と思われたのですが、なぜかそのあとLSAP政策を打ち込んでくるという謎プレイをしておりまして、単にマイナス金利やっても思うように効かなかったからつぎはぎで突っ込んできた感が強いのですが、まあ他の話についてが適当に誤魔化すことも多いのですが、マイナス金利とかの付利をいじってくる政策に対しては妙に威勢よく否定してくる黒田日銀という所ですな。

テクニカルな論点からすればQE政策でMB拡大政策をする場合には、超過準備を積み上げやすくしないとそもそもAPPに対する売却インセンティブが下がってしまうので、そのためには超過準備に一定のメリットを与えないといけない、という話ですから付利はいじれないという事なので、皆さんがそれを強く認識しているのでしょうねえとは一応額面通りに取るとそうなります。これだけ否定するから騙し討ちあるでという意見も別に否定はしませんが、ただそれよりもMB拡大政策とのフリクションという技術的な問題の方が大きいのでやらんとは思いますけどね。

ただまあ何ですな、利息払って集めている超過準備って日銀が売出手形なりのような形で資金吸収しているのと経済的にどこが違うのか(要求払性の違いとかはあるけど)と考えますと、そもそもそのMBの意味は何なんですかという話をしたくなりますがそのようなことを言ってはいけません(^^)。


○早川さんの毎度の悪態来ました

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWB10X6S972U01.html
直前発表の統計が日銀の背骨砕く公算も、30日に会合−早川元理事 (1)
2015/10/19 11:31 JST

『(ブルームバーグ):元日本銀行理事の早川英男氏は、30日開かれる金融政策決定会合について、追加緩和の手段が限られる中で、「ここは取りあえずいったん様子を見るというのが、いかにも日銀が考えそうなことだ」と語る。一方で、会合前日に発表される「9月の鉱工業生産が悪かったら、方針は1日で変えられる。日銀はそこで背骨を砕かれる可能性もある」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

まあそういう風に言われるだろうなという事で、前回の定例記者会見で黒田総裁が前代未聞の「生産統計が弱いかもしれませんが製造業はGDPの20%ですからそれを過大に評価する必要はありません(キリッ)」という耳というか目を疑う説明をしたんだとは思います。

つまりですね、

『日銀は2001年3月19日、量的緩和を導入した。その1回前の2月28日の会合で、当時ターゲットだった無担保コール翌日物金利を0.25%から0.15%に引き下げたが、引き金になったのが当日発表された鉱工業生産だった。当時、調査統計局長として決定会合に出席した早川氏が「ショッキング」と形容したほど大きな打撃だったことが、10年後に公表された議事録で明らかになっている。』

『早川氏は当時を振り返り、「もともとITバブル崩壊で米国経済が悪くなっていたので、どこかでショックが来るかもとは思っていたが、予測指数と全く違う数字が出てきたのでびっくりした。これは無理だと。あんな数字が出れば、ここは何もしないでよいという話にはならない」と語る。』

『さらに、「既に公表されていた貿易統計が悪くてやばいなと思っていたが、思った以上に生産が悪かった。今回もまずは貿易統計、そして生産だ。貿易統計に基づく生産の予想も外れることもある。生産が悪かったら金融政策は1日で変えられる。9月の生産、それに10月の予測指数の改定が出て、これで日銀は背骨を砕かれる可能性もある」としている。』

というように、従来日銀は生産統計の所はハードデータとして重視して情勢判断をしているので、早川さんの説明のように過去でもこういう話がありました的な説明をしていまして、当然ながら足元生産が怪しげな状態で推移しているのですから、戻りが見られないどころか悪化コースとかになった時にどういう説明をするんだよという事だと思うので、まあ生産統計注視という話なんでしょうな。

ただですな、そこで浅ましく粘るのが黒田日銀クオリティだと思う訳でして、おそらく早川さんの指摘するリスクシナリオになっても知らんがなというか下記の早川さん指摘のメインシナリオのままで突っ張って来るのではないかと愚考します。

『早川氏は「15年度の成長率と物価は大きく下げざるを得ないだろう。成長率は1%前後、物価は0.5%はさすがにもう難しい。一方で、0.2%だとあまりに悲惨なので、0.3〜0.4%くらいは行くのではないか」とみる。』

鉛筆を舐めるんですね分かります。

『16年度については「成長率はあまり変えないのではないか。物価はちょっと下げるくらいで1.6〜1.7%程度か。見通しが下がった要因は原油であり、原油を除けば全く想定通りというストーリーではないか。そういうストーリーを組むことに無理はない。16年度前半の2%はさすがに無理なので、16年度中には、とか何とか言うのではないか」という。』

先程の黒田総裁の記事でもまあそんな感じっぽいですよね。

『その上で、「今回どうしても追加緩和をしなければならないほど日銀のロジックが崩壊しているかというと、そこまでは行っていない。確かに成長率は下がったが、それは極端な話、日銀のせいではない、物価の下方修正はもっぱら原油のせい、2%達成のタイミングの後ずれもしょせん原油のせいだと言い張ることができる」と語る。』

ですので、生産がもう相当ダメなのが出てくればという話で、今の感じの平常運転だとおとぼけで現状を継続となるんでしょうというのが早川さんの見立てで、ブルームバーグは毎度のようにヘッドラインが詐欺気味なので困りますが、早川さんの予想のメインは現状維持、ただ日銀の心が折れるとすれば生産、という指摘をしているという話ですし、まあ一応日銀見物に余念のないこのアタクシも生産ダメだとどうするんでしょと思います。そういわれるのがマズーだから総裁がこの前のオモシロ発言をしたと思うのですが。

『民間エコノミストの間では、円安による食料品の値上がりであり、円安効果がはげ落ちると止まるとの見方もある。早川氏は「円安効果がかなりあるのは事実だが、一方で賃金が効いているのも事実だ。今の勢いで上がっていけば、16年度前半は苦しくても16年度のどこかで2%に近づくというストーリーを書けなくはない」と語る。』

早川さん割と「賃金上がるから物価は上がるはず」派ではあるのです。

『ただし、「心配なのはコアの賃金だ。企業は史上最高の収益をため込んでいるし、足元のCPIがゼロ近辺に低迷しているだけに、労組もベア要求には及び腰だ。昨年のベアが0.4%、今年は1%くらいほしかったが0.6%で着地した。来年は最低1%は行ってほしい。仮に来春のベアが今年を下回るようなことになれば、2%物価目標の実現は長期戦、消耗戦にならざるを得なくなる」という。』

どう見ても長期戦です本当にありがとうございました。

『早川氏は「昨年の経験から、ここで追加緩和を行って一段の円安になったからといって、ベアが上がるわけではない。』

まあそうですな。

『量的・質的緩和は短期決戦が前提だったが、どこかの時点で長期戦、消耗戦を前提にしたスキームに変えていかないといけないだろう。』

アタクシが追加緩和よりも(実際は敗戦処理だが)「転進」をどうするか考えないとマズーでしょと思うのはまさにここでして、長期的に継続できる政策フレームに組み替える(その時に長期間継続のコミットを出す必要は出るでしょうなあ)ことをしないと政策の設計上限界が来てしまいますし、転進するにしたって戦況が丸見えになっているのですから、何でもいいから大勝利的な取り繕いができるタイミングで何とかしないと。

『少なくとも、マネタリーベースを増やしたらデフレマインドが払しょくされるという問題ではないことは十分証明済みだ」としている。』

最後に置物リフレ理論に砲撃を怠らないのが早川クオリティ(^^)。


○先般の国際コンファランスの議事要旨が出ていましたが・・・・・・・・・

例のピーターパン発言が開会挨拶で炸裂したやつですが。

http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kk34-4-1.pdf
「金融政策:効果と実践」
―2015 年国際コンファランスの模様―

以下の引用部分は上記PDF資料からとなります。まあ面白いので読んでちょ。

・最初にちゃんとピーターパンの話を書いているのですからこれは大真面目ということですね

『開会挨拶において、黒田は、中央銀行が現在直面している様々な課題を提示したうえで、ピーターパンの物語の一節「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう(The moment you doubt whether you can fly, you cease forever to be able to do it)」を引用することで、そのような課題解決に向けた前向きな姿勢と確信の重要性を強調した。』

という事なのであれは中央銀行は強気スタンスであるべきだという大真面目な話のようですが、さっきのCNBCインタビューでもチアリーダーとか言われているから伝わっているのですかねえ(ニヤニヤ)。


・置物MB直線一気理論が全然採用されていない件について

3ページ目からが『3. 政策パネル討論』という所なのですが・・・・・・・・・・・・

『伊藤による座長のもと、チェケッティ、グッドフレンド、メノン、中曽、パパデモスの 5 名のパネリストによる政策パネル討論が行われた。冒頭、伊藤が、黒田の開会挨拶に沿って、@非伝統的金融政策の効果と波及経路、A予想物価上昇率、B先進国の間における金融政策の方向性の相違がもたらす国際的な波及、C長期停滞、の 4 つのトピックを提示した。各パネリストは、これら 4 つのトピックのうちのいくかに関するプレゼンテーションを行った。その後、コンファランス参加者を交えた一般討論が行われた。』

ということで、

『チェケッティは、「非伝統的金融政策:伝播(transmission)と波及(spillovers)」と題してプレゼンテーションを行った。まず、金融政策の伝播に関して、@投資コストの低下、A株や不動産、その他資産の価格上昇、B非金融法人や家計の純資産の増加、C銀行の資本や貸出能力の改善、D資産価格のボラティリティの低下、E自国通貨への減価圧力、といった金融緩和が実体経済に伝播する経路について議論した。』

『これらの経路の多くは、家計や企業のバランスシートに影響を与えるほか、いくつかは必然的に国際的な波及を引き起こすと指摘した。次に、金融政策手段には、伝統的な政策手段である短期金利だけでなく、フォワード・ガイダンスや量的緩和(QE)、資産買入れといった非伝統的な政策手段があることを示しつつ、金融政策手段について議論した。そのうえで、金融環境を変える際に、両者は同様の伝播経路を持つことから、非伝統的金融政策とされる政策には、伝統的金融政策と特段異なる点はないと主張した。』

どうもマネタリーベース直線一気でインフレ期待がどうのこうのみたいなお話ではないようで。

『グッドフレンドは、「米国の経済情勢と中央銀行政策に関する見方」と題するプレゼンテーションを行った。まず、米国経済に関する最新の見通しを紹介した。その中で、労働参加率について、米国で労働市場への参加意欲がそがれている可能性について懸念を示した。次に、中央銀行政策に関する見方に話題を移し、中央銀行政策の分類、その波及経路および財政政策的特徴に着目して議論を進めた。』

『ここで、中央銀行政策は 4 つのタイプに分類できると紹介し、第 1 のタイプは純粋な金融政策であると述べた。これは、銀行の準備預金を調節し、インターバンク金利に関する予想が長めの金利に及ぼす影響を通じて、経済活動に影響を与える。第2 のタイプは信用政策である。これは、信用スプレッドを低下させ、信用リスクを納税者に移転する。第 3 のタイプは付利政策であり、文字どおり準備預金への利払いである。第 4 のタイプは QE 政策(グッドフレンドの言葉によれば、債券市場キャリー・トレード政策)であり、ポートフォリオ・リバランス・チャンネルや信用チャンネルを通じて作用する。これらの政策手段は、中央銀行ではいずれも単に金融政策と呼ばれているが、仕組み、波及、金融的な費用と便益、中央銀行や納税者へのリスク、金融財政当局間の財政移転への含意、といった様々な面で、著しく異なると強調した。』

ちなみにこの人の中での1の説明が(これだけ読むと)間違ってませんですかという気がするのでありまして、金利政策における政策関数は短期市場金利(良くあるケースは銀行間取引翌日物金利)であって、準備預金調節は短期市場金利を政策目標水準に着地させるために実施するものなので、ここでのグッドフレンド氏の説明だと因果関係を逆にしていないかという希ガス。


・中曽さんはブラードなどが言う「複数均衡論」に乗っているとの由

次のプレゼンターの部分を飛ばしまして中曽さんの所。

『中曽は、「日本の失われた 20 年と QQE による脱却」と題してプレゼンテーションを行った。その中で、長期停滞に関する日本の経験と、日本銀行の量的・質的金融緩和(quantitative and qualitative monetary easing: QQE)による日本経済のデフレ均衡からの脱却について中間評価を行った。』

ほう。

『日本の失われた 20 年に関して、1990年代以降の長引く景気低迷は、米国の長期停滞論に関する最近の議論と同様に、デレバレッジや金融仲介の機能不全、人口動態といった複合要素に起因すると述べた。しかしながら、もうひとつ非常に重要な要因としてデフレがあった点を強調した。』

ほー。

『そして、日本経済は、失われた 20 年の後半の局面において、デフレ均衡に陥っていたとする仮説を支持したいと述べた。』

キタコレ。

『すなわち、1990 年代の日本の銀行危機後に生じたデフレが予想物価上昇率を引き下げ、長い時間をかけてデフレ期待が自己実現した。これに対し、日本銀行は、デフレを完全に終わらせるため、2013 年4月に QQE を導入したと説明した。QQE によるデフレ均衡からの脱却についての中間評価としては、QQE は、名目金利の引下げと予想物価上昇率の押上げを通じ実質金利を引き下げることにより、需給ギャップと物価上昇率を押し上げたと述べ、所期の効果を発揮していると指摘した。最後に、QQE によるデフレ均衡からの脱却メカニズムに対する理解を促すものとして進化論的ゲーム論(evolutionary game theory)から得られた着想を紹介し、プレゼンテーションを締め括った3 。』

まあ所期の効果は2年で2%なんですけどね!!!!!


・こういう所でもこんな間違いが平気で出てくるのか・・・・・・・・・・・

でまあその先の中身も興味深い論点が出ているのですが、ECBの政策を説明しているパパデモスさん(ギリシャ中銀)の討論部分での説明がアレなので引用。本文7ぺージになるのですが。

『門間一夫(日本銀行)や植田和男(東京大学)によるマイナス金利についての質問に対して、グッドフレンドは、マイナス金利政策がユーロ圏の国々でのみ機能している事実は、ユーロ圏がそれほど深刻な状況にあることの証左であると述べた。』

まあそれよりもLSAPやる前だから入れられたという事だと思いますけどね。

『また、欧州では、マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMF)が、米国と比べて発達していない点にも言及した。』

これは分かる。

『パパデモスは、ECB による預金ファシリティへのマイナス金利は、主に銀行の資産を準備預金から貸出へ向かわせることを企図していることから、信用緩和政策、特に、長期資金供給オペにとって補完的かつ支援的な役割を果たしていると述べた。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・・・

えーっとですね、そもそも市中銀行の準備預金と貸出の所には直接的な関係は無いのでして、貸出そのものは当該銀行の中で(貸出債権)/(預金負債)の記帳が発生するだけの問題であって、そこに準備預金は介在しませんので「準備預金から貸出に向かわせる」という時点でお前大丈夫かという所なのですが、そういやECBの高官発言でこの手のがあって仰天した覚えがあるのですが、こういう認識が背景にあるのかよと頭がクラクラするのでありました。

という所で時間と量の関係上本日はこの辺で勘弁。





2015/10/20

お題「さくらレポート関連/中原伸之さんも梯子外しとな/その他メモ」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151019/k10010274511000.html
携帯料金の負担軽減策 きょうから有識者会議
10月19日 5時26分

有識者会議とかわざわざ開くほどの話なのかねとは思いますが、物価2%目標の達成で色々な事がめでたしめでたしとなるという置物理論とは何だったのかと小一時間問い詰めたい。


○支店長会議総裁挨拶を一応確認

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/siten1510.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/siten1507.htm/(7月)

『(1)わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。先行きについても、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『(1)わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。先行きについても、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(7月)

ということでまあここの部分って基本的に直近のMPM声明文から特にはみ出るようなのは出てこないので新味は特に無いですな。でもって以下の部分ですが、7月挨拶の時はちょうどギリシャの選挙とかあったのでそれに関する言及があって、そこの部分が今回削除されているという流れで後は全文一致になります。

しかしですな、

『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについても、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについても、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(7月)

というのを毎度の如く繰り返しているのですが、この「当面0%程度で推移」というのが3か月経っても変わらんという状況と「2016年度前半に物価2%達成」というのを組み合わせますと、それは「物価の動向が見通し通りに行っていない」という話になる筈なのですが、何故か物価の基調攻撃で見通し通りという理屈になるところがオソロシス。


○さくらレポートの現状認識に特に下方修正は無いとな

さくらレポートである。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer151019.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer151019.pdf(全文)

なお前回の概要はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer150706.htm/

・現状認識は全地域横ばいとな

でまあ概要の方からで『I. 地域からみた景気情勢』から。

『各地の景気情勢を前回(15年7月)と比較すると、全ての地域で景気の改善度合いに関する判断に変化はないとしている。』

ほほー。

『各地域からの報告をみると、輸出や生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、国内需要は、設備投資が緩やかな増加基調にあり、個人消費も雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移していることなどから、全ての地域で、「緩やかに回復している」、「回復している」等としている。』

設備投資は「増加」なのではなくて「増加基調」なのですかそうですかという話ですが、この部分前回7月の判断と比較するとこうなります。

『各地の景気情勢を前回(15年4月)と比較すると、8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)で、景気の改善度合いに関する判断に変化はないとしているほか、北海道からは、生産の増加などを踏まえて判断を引き上げる報告があった。』(7月)

『各地域からの報告をみると、内外需要の緩やかな増加を反映して生産が持ち直している中で、雇用・所得環境が着実な改善を続けていること等を背景に、全ての地域で、「緩やかに回復している」、「回復している」等としている。』(7月)

ということで、この後の項目別展開で出てくるのですが、生産の方が下がったのはさておきましても、今回の判断で思いっきり出ている「設備投資」の判断なんですが7月時点での判断と比較するとやや強気度合いが減っておりまして、今回の所で殊更設備投資を出してくるという辺りに大本営発表いや何でもないです。


ということで全地域の矢印は横向きになっているのですが、コメントは変化しているのがありますな。

関東甲信越:「緩やかな回復を続けている」→「輸出・生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、緩やかな回復を続けている」

東海:「着実に回復を続けている」→「輸出や生産に新興国経済の減速の影響などがみられるものの、設備投資が大幅に増加し、住宅投資・個人消費が持ち直していることから、着実に回復を続けている」

近畿:「回復している」→「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、回復している」

ということで、関東甲信越と近畿ってこれ横向きなのかよという気もする訳ですが、更にややこしいのは東海の判断でして、やたら説明が長くなっているのは何ですかという所ではありまする。


・需要項目別判断

『公共投資は、近畿から、「増加している」との報告があったほか、3地域(東北、関東甲信越、四国)から、「高水準ながら横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。一方、5地域(北海道、北陸、東海、中国、九州・沖縄)からは、「高水準ながらも、減少傾向にある」、「緩やかに減少している」等の報告があった。』(今回)

『公共投資は、東北、関東甲信越から、「緩やかに増加している」、「足もと増加している」との報告があったほか、近畿、四国から、「高水準で横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。一方、5地域(北海道、北陸、東海、中国、九州・沖縄)からは、「高水準で推移しているものの、減少している」等の報告があった。』(7月)

近畿が引き上げ、東北と関東甲信越が引き下げ。


『設備投資は、3地域(北海道、北陸、東海)から、「一段と増加している」、「大幅に増加している」等、5地域(関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに増加している」、「増加している」との報告があったほか、東北から、「堅調に推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、「幾分悪化している」との報告があった一方、「改善している」、「総じて良好な水準で推移している」等の報告があった。』(今回)

『設備投資は、3地域(北海道、北陸、東海)から、「一段と増加している」、「大幅に増加している」、3地域(東北、関東甲信越、近畿)から、「緩やかに増加している」、「増加している」との報告があったほか、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「底堅く推移している」、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「改善している」、「総じて良好な水準が維持されている」等の報告があった。』(7月)

えーっと、設備投資なんですけれども確かに全体としての判断は増加傾向が続いているのですが、これって7月の時の判断よりも悪化しているのではないかと思う(中国、四国、九州沖縄が下がっている)のですが、前回の総括判断の所では「生産が出てきました!!」という説明だったのにそこがコケると早速設備投資の話を出してくる辺りが何とも味わいがあるというものです。


『個人消費は、雇用・所得環境が着実な改善を続けていること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」、「全体としては堅調に推移している」との報告があった。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境が着実な改善を続けていること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」、「全体としては堅調に推移している」との報告があった。』(7月)

個人消費は見事に全文一致なのですがホンマカイナという気もせんでもない。

『住宅投資は、東北から、「持家を中心に増加している」との報告があったほか、7地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しつつある」等の報告があった。また、近畿から、「下げ止まっている」との報告があった。』(今回)

『住宅投資は、近畿から、「全体として弱めの動きとなっている」との報告があった一方、3地域(北海道、中国、九州・沖縄)から、「下げ止まっている」等、3地域(北陸、関東甲信越、東海)から、「持ち直しつつある」との報告があった。この間、東北、四国から、「高水準で推移している」、「底堅く推移している」との報告があった。』(7月)

住宅投資は上がっています。


『生産(鉱工業生産)は、新興国経済の減速に伴う影響などから、5地域(東北、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)から、「このところ横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。この間、4地域(北海道、北陸、近畿、四国)から、「緩やかに持ち直している」、「高水準で推移している」、「増加している」との報告があった。』(今回)

『生産(鉱工業生産)は、内外需要の緩やかな増加を背景に、4地域(北海道、北陸、東海、近畿)から、「高水準で推移している」、「増加している」等、3地域(関東甲信越、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があった。この間、東北、中国から、「横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。』(7月)

こちらは先に横ばい圏の話をしているのですが、まあそうは言いましても横ばいという話で減少とか弱含みという話ではないので「新興国の影響は一時的だぜヒャッハー」という話なんでしょ。

『主な業種別の動きをみると、輸送機械は、「横ばい圏内の動きとなっている」等の報告があった。また、はん用・生産用・業務用機械、電子部品・デバイス、電気機械は、「緩やかに増加している」等の報告があった一方、「弱めの動きとなっている」との報告があった。この間、化学は、「高水準で推移している」等の報告があった一方、鉄鋼は、「減産を継続している」等の報告があった。』(今回)

『主な業種別の動きをみると、電子部品・デバイス、電気機械は、「高めの操業を続けている」、「緩やかに増加している」等、化学は、「増加している」等の報告があった。一方、鉄鋼は、「操業度を引き下げている」等の報告があった。この間、はん用・生産用・業務用機械は、「減少している」等の報告があった一方、「増加している」等の報告もみられたほか、輸送機械も、「減産の動きが続いている」等の報告があった一方、「全体として高操業となっている」等の動きがみられるなど、区々の動きとなっている。』(7月)

前回の総括判断では「生産が持ち直し」となっていて、今回は「輸出や生産に新興国経済減速の影響」なのですが、個別の書きっぷりを見ると生産に関して前回対比そんなに判断を下げている感じでもないというのがさっきの設備投資の判断の前回対比と並べてみると中々ヤヤコシイですな。まあ水準感ということなのでしょうけれども。

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は着実な改善を続けている」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「着実に改善している」、「緩やかに増加している」等の報告があった。』(今回)

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は着実な改善を続けている」等の報告があった。雇用者所得についても、多くの地域から、「着実に持ち直している」、「緩やかに増加している」等の報告があった。』(7月)

大体強気なのは同じなのですが、雇用者所得の所で「持ち直し」というのと「改善」というのが表現として変化しているのですが、たぶん「改善」の方が判断文言としては強いと思われまする。


・地域の視点関連

毎度の『II.地域の視点』ですけれども、今回のお題は『各地域における少子高齢化・人口減少を踏まえた企業の戦略・対応状況』となっています。

『1.全体感

わが国は少子高齢化・人口減少に直面しており、先行き一段と進展していく見通しにある。こうした環境下で、各地域の企業においては、現状では人口増加が続いている都市圏を含め、業種や規模を問わず、少子高齢化・人口減少の進展への対応に取り組む動きが着実に広がっている。』

うむ。

『すなわち、多くの先で、国内市場が中長期的に縮小する想定のもとで、既存事業の競争力向上を図ったり、成長分野や海外等で新たな需要を獲得することにより、引き続き業容の維持・拡大を目指す動きがみられている。』

ということで先の方とか本文にもうちょっと詳しい話があるのですが、業務縮小や撤退という話ではないですという説明になっていて、ほほーそうなのですかと思いつつも、そもそもそういう所はひっそりと廃業していくような気もせんでもないのだが。

『また、既に顕在化している人手不足への対応として、シニア層・女性の活用や処遇改善等による人手の確保、省人化投資等を通じた所要人員の圧縮を進める先が数多くみられる。』

処遇改善等による人手の確保という話だがうーんこのというサムシングも。

『2.少子高齢化・人口減少に対する企業の受け止め方

少子高齢化・人口減少の進展に対する企業の受け止め方をみると、需要面に関しては、一部にはシニア層などの需要増加を期待する声が聞かれるものの、人口減少が先行して進んでいる地方圏の内需依存型企業を中心に、先行き国内需要の減少は避けられないと危惧する先が多い。』

そらそうですな。

『また、供給体制面に関しては、最近の国内景気の緩やかな回復もあって、既に人手の確保が困難となっている企業が少なくない状況を受け、多くの先から、更なる人手不足の深刻化が今後の事業展開の制約要因になることを懸念する声が聞かれており、地方圏を中心に実際に事業縮小や廃業に追い込まれる先もみられている。』

なるほど。

『このように多くの先がマイナス面の影響を指摘する中でも、需要の変化に応じて新たな分野での取り組みを強化する契機になり得ると捉える先が少なからずみられる。こうした先を含め、少子高齢化・人口減少への対応は、多くの先で重要な経営課題と位置付けられている。』

でまあ以下具体的な話というのがあるのですが割愛して結論部分を。

『4.先行きの展望

以上のように、多くの先では、国内需要が中長期的に減少していくことを想定しつつも、新たな需要の獲得等による業容の維持・拡大を図っている。一方で、人手不足の解消に関して、企業単独での対応には限界があるとする先がみられており、自治体や金融機関等に更なる支援を求める声も聞かれている。今後、このような面での支援機能の充実が図られるとともに、現在取り組んでいる需要の変化への対応や供給体制面での施策の成果を上げる企業が着実に増加し、地域の活性化に繋がっていくことが期待される。』

まあ暗い話にする訳にもいかんという所なのでしょうが、人手不足なら処遇をもっと上げればいいじゃないと単純に行かないというのもあるんじゃないですかね。


ちなみに最近のお題ですけれども、

『各地域における少子高齢化・人口減少を踏まえた企業の戦略・対応状況』(今回)
『各地域における消費関連企業の最近の販売動向と事業戦略』(7月)
『各地域における製造業の生産動向・生産体制』(4月)
『各地域における中小企業の現状と活力ある企業の特徴』(1月)

となっていて、何気に今回はネタが威勢良くないように見えるのですが・・・・・・・・・・・・


○中原伸之さんまで梯子を外しに来るとは・・・・・・・・・・・

ほほう。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWB5S16S972D01.html
「追加緩和は必要ない」、昨年は増税後押しが隠れた理由−中原伸之氏
2015/10/19 10:34 JST

『(ブルームバーグ):元日本銀行審議委員の中原伸之氏は、昨年10月の追加緩和は黒田東彦総裁が消費税の10%への引き上げを計画通りやるべきだというシグナルだったが、今は送るべきシグナルはないと述べ、30日の金融政策決定会合は現状維持で十分だとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほほう。

『中原氏は16日、ブルームバーグのインタビューで、「世界中が低気圧に覆われている。価格低下圧力がものすごく消耗戦が起こっている。世界的にこの10年間、実質賃金がずっと下がっている」と指摘。価格競争は今後ますます激化し、「イノベーションをやってもすぐに技術を盗まれる。これが世界の天気図だ。これはしばらく続く」と述べた。2%の物価目標を掲げる日銀はこうした天気図の変化に伴い「別のことを考えなくてはならない」と語った。』

何ちゅうか色々とツッコミどころがありまして、そもそも価格低下圧力があるのに「実質賃金」がずっと下がるとはどういう事なのか良く分からんというのもあるのですが、もっとアレなのは「世界中が低気圧に覆われている」という話が「世界的にこの10年間」起きていて、その結果として「こうした天気図の変化に伴い別の事を考えなくてはならない」というのなら元々「2年半前」に打ち込んだ2%物価目標が実際にやるべきことと整合性が取れていなかったという話になるのですが・・・・・・・・・・・

でまあそれは兎も角として、ついに中原伸之さんまで「2%物価目標」について梯子を外しに掛かるというか、置物リフレ理論から続々と沈没船からの逃走が始まるとは実に感慨深いものがあります。

『30日の金融政策決定会合については「日銀の金融政策は現状維持で十分だ。今の天気図がどのようになるか、もう少し様子を見なければならない。』

ここ10年間続いている話が1か月や2か月で変わるものなのですかねえ。

『私はもともとマネタリーベースを600兆円まで拡大していいと言って来たが、今はやる必要はない。為替が落ち着いているので、特にやる必要はない」という。』

ここで昨年9月の中原さんの主張を確認してみましょう。
http://jp.reuters.com/article/2014/09/17/ex-boj-nakahara-idJPKBN0HC0PB20140917
Business | 2014年 09月 17日 18:19 JST
株価上昇には金融緩和、500兆円目指せ=中原・元日銀審議委員

なんか数字が違うような気がするのですが、まあそもそもそのMBどうやって達成するのかという話でして、具体的な施策を伴わないでMB倍増とか言われましてもそれは政策論としてあり得ないのですけど、まあ今回のインタビューのあとの方でも「為替」の話がありまして、よーは為替が円高に振れたら対策やれやという話なのは趣旨として分かりました。

でまあ一方で以前のように円安に振れ的な話って本当に出てこなくなりましたねえという事で、ちょっと為替が円高に振れると追加緩和ガーという話が出てくるのですが、為替が落ち着いて株価がサガランチ会長となって来るとややその辺の話が落ち着いてくる、という辺りに見事なクレクレの香りを感じますが、まあ騙し討ち緩和して円安に振る必然性が無い以上は騙し討ち緩和をすることも無いのではと思いますし、「円高に振れたら緩和登場」的な認識を強く持たせておけば為替に黒田プットが働く的なことになるので、逆に追加緩和カードを切らなくても済むような気がしますから、まあ今の状況で引っ張れるだけ引っ張るということになるんじゃないでしょうかねえ、よー知らんけど。


○米国が何が何だか分からんですが(メモだけ)

http://jp.reuters.com/article/2015/10/19/fed-mce-san-francisco-idJPKCN0SD2AE20151019
Business | 2015年 10月 20日 04:56 JST
近い将来利上げ開始、米景気に勢い=サンフランシスコ連銀総裁

『[サンフランシスコ 19日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は19日、海外から強い逆風が吹きインフレを抑えるものの、米景気には勢いがあり、米連邦準備理事会(FRB)は「近い将来」利上げを始めるべきとの認識を示した。』(上記URL先より)


http://jp.reuters.com/article/2015/10/19/usa-fed-dudley-corriere-idJPL3N12J3D220151019
News | 2015年 10月 19日 18:35 JST
UPDATE 1-米利上げ検討は時期尚早、状況変わった─NY連銀総裁=伊紙

『[ミラノ 19日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は世界経済への懸念などを理由に、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを検討するのは時期尚早との見解を明らかにした。15日のワシントンでの発言を伊コリエレ・エコノミア紙が19日伝えた。』(上記URL先より)

・・・・・・・・ということで何が何だか良く分からんのですが、とりあえずコミュニケーションが無茶苦茶混迷を極めていて、これはもう立て直しに相当の努力を要するとしか思えませんですし、この調子で正常化着手どうするんだよとしか思えないです。まあ急におりゃあああと正常化するかも知れないけど、米国の正常化が遅れると為替経由ジャパンのクレクレ相場行きともなりかねませんので誠にアレ。


○なお短国買入メモ

短国買入のみ引用
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151019.htm
国庫短期証券買入 15,000 2015年10月21日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151019.htm
国庫短期証券買入34,466 15,002 0.008 0.013 89.5

ということでごく順当に1.5兆円の買入が入り、平均1.3bp甘で足切0.8bp甘なので3Mカレントものは基本的に入れても儲からんという水準ですが、応札が3.4兆円ということですのでマイナスで突っ込んでいる3Mがそこそこ残っているのではないかと思うのですが、では今週の3Mは100円になるかというとこれがまた謎ではありますな。





2015/10/19

お題「市場雑談/総裁挨拶はいつも通りですがさて・・・・・・/メスター総裁は潜在成長の低下を指摘しながら利上げは無問題とな」

金曜日に申し上げた違和感の答えがこちらにありました。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201510/article_3.html
安倍首相とブラックロック

○市場メモ雑談

・1年入札はマイナス更新ですかそうですか

はあそうですか。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151016.htm

(3)募入最低価格 100円03銭6厘(募入最高利回り)(-0.0358%)
(4)募入最低価格における案分比率 27.6323%
(5)募入平均価格 100円04銭2厘(募入平均利回り)(-0.0418%)

ということで足切は遂にマイナス3.5bp水準まで金利低下しておりまして、これが1年短国の入札での最低金利(というかマイナスの深い金利)更新になるのですが、それ以前の問題として1年短国とか6M短国とかって入札のあとアホのように強くなってマイナス8bpとかそういう訳のわからん引値になるのが仕様なので、入札の水準のこの程度があまり気にならないという状況に。

でもって売買参考統計値を鑑賞。

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php

こちらから本日付の売買参考統計値を見ますと、6Mカレントの引け(平均値単利)が堂々のマイナス10.5bp(1.5の間違いではない)でこちらの新発の引けがマイナス5.7bpとなっていまして、その一方で直近の3Mカレントは新発564回がマイナス1.0bpで563回がマイナス0.4bpで563回がマイナス1.2bpとなっておりまして、まあ本日の短国買入は6Mと1Yを入れる気満々(特に6Mだがそもそも入れる玉がどのくらいあるのか)ということですかそうですか。

でまあ毎度申し上げておりますように、こういう風にして維持しているマネタリーベースに一体全体何の意味があるのかと小一時間問い詰めたいとしか申し上げようが無いのですが、政策委員会ではこういう点についての問題意識は無いのでしょうかねえ。


・業態別当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/cabs.htm/

9月の当座預金残高は平残ベースは全体で8兆円拡大、9月末残ベースでは全体で11兆円拡大していますが、今回見ていてほほーと思ったのは「都市銀行」が9月に末残を久々に積み上げになっていることですな。

末残の方を見ますと都市銀行って5月に89.5兆円に積み上がっていたのですが、そのあと6月からは90兆円手前の所で末残は増えない(なお平残は増えている)ような動きになっていたのですが、9月末の所では前月比5兆円の末算拡大になっていまして、久々に増えてるじゃんとゆー所ですが、しかしまあ良く良く考えると日銀買入とか海外要因とかもあると思うのですが、短国需給が結構逼迫する中で誰かが殊更にバランス圧縮に来たわけでもなかったという事ですかオソロシスと申しますか、まあそもそも国債償還要因あるにせよ前月比11兆円も末残で当座預金が増えればそら現物債の需給が締まるわなあとも思うのでした。


○まあ未だにT+1をやろうというのが分からんですけど進捗状況が出ていますな

http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/jgb_kentou/kokusaik-giji.html
国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ 議事要旨・資料

議事要旨
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/jgb_kentou/dai42kai_gijiyoushi.pdf

資料
http://market.jsda.or.jp/shiraberu/saiken/kessai/jgb_kentou/jgb_kentou/dai42kai_shiryou.pdf

個別銘柄方式のGC取引やっていると事務回らないので銘柄後決め方式のGCに移行するという話は特にこの銘柄の多さにおける在庫ファイナンスの立場からはその通りなのですが、この超低金利状態の中でわざわざコスト払ってトライパーティーレポで運用しないといけないという必然性に乏しいというのが資金運用側としてはあるので銘柄後決めになることのメリットが双方(というか運用側)に見える必要があるとは思います(T+0の市場が出来ますキリッというのはそもそもコール市場があるので)。ちなみに金利がまともに付くと国債等担保のコールローンレートってGCレポレートとだいぶ差が付いていたので黙っていても多分メリットが出てくるのでしょうが。

という話はまあ置きまして、議事要旨の方ではこういう記述がありますけどね。

『国債の決済期間T+1化(以下「T+1化」という。)の実施目標時期が 2018年度上期で合意され、2017 年秋口からは、T+1化移行時に円滑に事務を行えるようするための総合運転試験(以下「RT」という。)の実施が想定されている。』(上記議事要旨より)

2%水準への物価上昇見込時期が元々の「QQE導入から2年間(キリッ)」から「2015年度中」に有耶無耶になったと思ったら「2016年度前半」と先送りをされている訳ですが、これが今回の展望レポートで更に先送りされそうな勢いになっているという今日この頃な訳ですが、そもそも論として今の政策が続かないにしても、何らかの形で超スーパー緩和政策は継続しているのでして、正常化路線で利上げを行うにせよ、バランスシートの縮小とかその辺の話って米国の例から見ても物価目標達成とか言い出した時期よりも更に後になる、という事になると思いますので、そうなりますと2018年度上期って日銀の出口政策に絡んで国債市場にストレスが掛かっている時期になりゃあしませんかねえというかなりそうな悪寒。

まあそうなったら後寄せするというのも検討されるとは思うのですが、いずれにせよ毎度申し上げていますが、超異例の政策からの出口をしないといけない前に決済にストレスをわざわざ自分から掛けに行く必然性って何なのと小一時間という所ではありますし、マネタリーポリシーの方とこの手のプルーデンス絡みの制度設計の方がお互いに自分の庭先掃除だけしていると変な所にゴミが残って甚だ遺憾なことになりゃあしませんかと思うのですよねえ。


○総裁の挨拶は例によって例の如くいつも通りですが

全国信用組合大会における挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko151016a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151016a.pdf

『最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営』というのを拝見。

『このところの金融経済情勢をみますと、金融市場では、夏場以降の中国株価の下落などを背景に、グローバルに振れの大きな展開となりました。また、海外経済については、中国を始めとする新興国経済が減速しています。もっとも、先進国経済は堅調に推移しており、世界経済全体としては、緩やかな成長が続いています。』

はあそうですか。

『わが国経済については、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかな回復を続けています。』

>所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで

ふーん。

『企業部門については、今月初めに公表した短観をみますと、製造業の一部にやや慎重な動きもみられますが、業況感は総じて良好な水準が維持されています。また、史上最高水準の企業収益が予想されるもとで、設備投資計画が上方修正されるなど、積極的な設備投資スタンスが維持されています。』

短観が良くて日銀歓喜という所ですが、設備投資に関しては出る出る詐欺ではないか疑惑がががががが。

『家計部門でも、労働需給の引き締まり傾向が続き、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、家計支出は底堅く推移しています。個人消費は、各種の統計で7〜8月は4〜6月対比で増加しており、天候不順の影響などによるひと頃の弱さから脱しつつあります。』

実質賃金の伸びが弱いという話は華麗にスルーですねわかります。

『先行き、輸出は、当面横ばい圏内の動きを続けた後、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくとみられます。』

9月議事要旨での議論ですと新興国経済の減速からの脱出には少々時間がかかるとのことですが。

『また、国内の企業部門・家計部門については、今申し上げたように、前向きの循環メカニズムがしっかりと働いており、内需は増加基調を辿ると考えられます。このため、わが国の景気は緩やかな回復を続けていくとみています。』

・・・・・・・・・・・

『物価情勢をみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%程度となっています。昨年度後半以降、上昇率が低下している背景には、エネルギー価格の大幅な下落があります。もっとも、エネルギー価格の影響を除いたベースでみますと、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価の前年比は1%を上回る水準まで上昇するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、物価の基調が着実に高まり、エネルギー価格下落の影響が剥落するに伴い、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。』

この「1%」を超えているというのが説明的にはキモでして、1%超えた状況でないと「デフレではない」と言い難い(上方バイアスと糊代の関係上)ので、この1%を上回るを連呼するのは(最近の仕様ですけれども)ややきな臭い訳ですよ。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、今後も2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、これまでも申し上げているとおり、経済・物価情勢については上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていく方針です。』

といういつもの話で締めているのですが、最近の金融政策決定会合などで示されている内容から特段変化がない(まあ有ってもビックリですが)という強気一辺倒な訳で、これをまともに読めば10月展望レポートでは「エネルギー価格の影響ガー」と言って物価2%到達時期の先送りが実施されるものの、基調は改善しているので何ら問題はありません(キリッ)となって政策変更ナンデスカソレという話になるというのが妥当なのですが、何せ昨年の前科があるので誰も信用していないという事で。


○クリーブランド連銀のメスター総裁のロンガーラン成長に関する講演(の最後の所から)

https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20151015-long-run-economic-growth.aspx
https://www.clevelandfed.org/~/media/files/speech%20pdfs/sp%2020151015%20long-run%20economic%20growh%20pdf.pdf?la=en
(PDF版はファイルがダウンロードされます)
Long-Run Economic Growth
10.15.15 Loretta J. Mester
New York University Stern Center for Global Economy and Business, New York, NY

お題が『Long-Run Economic Growth』ということで、長期的な成長力に関するお話をしていまして、
途中の小見出しが、

『Some Data: Output Growth, Potential Growth, Productivity Growth』
『Determinants of Long-Run Economic Growth』
『Human Capital』
『New Technologies』
『Economic Policy』

と来ていまして、まあ小見出しを見てお察しという所ですが、最初のデータに関する所ではまあ想定通りだと思いますが米国の生産性とか潜在成長率が低下しているという話をしていて、でもってその要因に関してああでもないこうでもないという話をしております。

でもって金融政策に関してが最後の小見出しの『Monetary Policy』。

『The astute listener will notice that I haven’t talked about monetary policy. That’s because for the most part monetary policy cannot affect the long-run growth rate of the economy. However, it can contribute to the economy’s ability to reach that potential by promoting price stability. Price stability allows markets to work more effectively at allocating resources; it allows households and businesses to focus on productive activities rather than on ways to protect the purchasing power of their money and to make long-term plans and commitments without having to deal with uncertainty about the value of their money.』

長期的な成長力に関して金融政策が貢献できることは少ないが、物価の安定を通じて経済の安定化を図ることが出来る、という事で・・・・・・・・・

『While monetary policy cannot affect the economy’s long-run growth rate, it does need to consider it. The economy’s long-run equilibrium real rate of interest, that is, the level of the policy rate that is consistent with stable prices and maximum employment in the long run, is determined by the long-run rate of the growth of consumption and, therefore, output.』

でもってここに来るまでに話をしている(引用していませんが、汗)長期的な成長に絡めての話になるのですけれども、「金融政策は長期的な成長や生産によって決められる均衡金利水準を考慮すべきである」ということでキタコレでありまする。

『A reassessment of the economy’s longer-run equilibrium rate may tell us something about the neutral fed funds rate toward which monetary policy normalization is headed over the longer run, but we need to be cautious about its implications for short-run policy.』

ほう。

『First, as we’ve discussed, estimates of productivity growth and long-run growth are imprecise and subject to revision. This means there is considerable uncertainty around the neutral fed funds rate as well. And research has shown that over-reliance on mismeasured objects such as output gaps, unemployment gaps, or equilibrium real rates can lead to poor policy decisions that induce undesirable fluctuations in the economy.』

生産性の増加やロンガーランの成長の推計は必ずしも正確には出来ない、という話をしていますな。

『Second, if the neutral fed funds rate is lower than we’ve thought it to be, then that might suggest that the current funds rate is less accommodative than we thought. But, all else equal, it also means that there is less of a gap between current growth and potential growth, so a less accommodative stance would be appropriate. Of course, all else might not be equal; a reassessment of long-run growth might also be met by changes in current spending, which would need to be taken into account.』

今の推計値が上下共に違う可能性があるので考慮しないといけない、という話なので一応ニュートラルには説明していますけれども、その前の所で成長とか生産とかがトレンドとして減速しているという話をしているのですよね。

『Finally, the implications of any reassessment of the long-run growth rate for current policy need to be put into context both in terms of the size of the reassessment and the difference between the current policy rate and the long-run neutral rate.』

ほう。

『I recently revised down my assessment of the longer-run nominal fed funds rate to 3.5 percent from 3.75 percent, consistent with my revision of longer-run output growth.』

ということでメスター総裁はロンガーランの中立FF金利について3.75%から3.5%に下げています、とここまではそんなに威勢の良い話ではないのですが、正常化の話になると急に威勢が良くなるという謎の仕様になっているのがメスタークオリティ。

『Of course, given the error bands around long-run estimates, I admit this is not a statistically significant change. The revision means I expect the neutral fed funds rate to be somewhat lower than it’s been in earlier periods. However, the current funds rate is still well below that rate.』

中立金利に対してはいずれにせよ今の金利はとても低いです(キリッ)。

『Based on my current assessment of the outlook and the risks around the outlook, I believe the economy can handle an increase in the fed funds rate and that it is appropriate for monetary policy to take a step back from the emergency measure of zero interest rates. A small increase in interest rates from zero is not tight monetary policy.』

少々の利上げは金融引き締めを意味しないので今の緊急避難的なゼロ金利政策からのステップバックが適切であると考える(キリリッ)。

『Indeed, I anticipate that beyond liftoff, economic developments will likely mean it will be appropriate for monetary policy to remain very accommodative for some time to come, supporting continued expansion and providing some insurance against downside risks, with rates expected to move up only gradually to more normal levels and with the decisions about that path dependent on incoming information on the economy’s performance and risks to that performance.』

一方でダウンサイドリスクには対応する為に金融政策は緩和的であるべきなので、利上げパスはゆっくりとということですが・・・・・・・・・・・・・・

『Given the outlook, delaying the start of liftoff for too long risks having to move rates up more aggressively later on, but I see benefits of our being able to take the gradual path.』

正常化着手が遅れると正常化政策の実施において金利を急速に上げないといけなくなるのでそれはイカン、と早期利上げだけどゆっくりやるべき、という話をしている訳ですな。

『One benefit of the gradual approach is precisely what we have been discussing today: it will allow us to recalibrate policy over time as some of the uncertainties surrounding the underlying economy in the post-crisis world, like the longer-run economic growth rate, are resolved.』

そのゆっくりとした利上げで緩和的環境が長くなるので成長力を戻す施策にも寄与、という事なのですけれども、先般のFOMC議事要旨やらFRB理事のハト講演にもありますように、実際問題としてはゆっくり利上げというのを実施するとその間延々と金融市場が「利上げモード」になるので、金融環境は政策金利水準よりも引き締まってしまう、というのが既にTaperingトークから以降の金融市場環境を捕まえて「金融環境の引き締まり」を指摘するハト派FRB理事の指摘にいみじくも現れているように思える訳で、実際にはこのアプローチはあまりワークしない(ポンポン上げて打ち止め感を出した方が良い)ような気がしますがどうでしょうかね。なんかこの辺でチョンボやりそうな悪寒。

ちなみにメスターさんは直近ではこんな話もしています。

http://jp.reuters.com/article/2015/10/17/mester-fed-liftoff-idJPKCN0SB03T20151017
Top News | 2015年 10月 17日 12:20 JST
米利上げ先送り、景気リスク高まる=クリーブランド連銀総裁

『[ワシントン 16日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は16日、連邦準備理事会(FRB)が利上げを先送りすればするほど、国内景気へのリスクが高まるとの認識を示した。』(上記URLより)








2015/10/16

お題「ダドリー講演は足元の金融政策には言及していませんが鑑賞」

うーんこの。
http://jp.wsj.com/articles/SB12537489679309604143004581293982435511592
安倍首相、ブラックロック幹部招聘 成長促進会合
By ELEANOR WARNOCK AND SARAH KROUSE 2015 年 10 月 15 日 09:56 JST

『安倍晋三首相は、国内企業に設備投資を促進させる方法について、世界最大の資産運用会社である米ブラックロックに助言を求める。』(上記URL先より)

・・・・・・・・この湧き上がる違和感is何????


○ダドリー総裁講演はルールベースの金融政策運営の問題点を指摘だが・・・・・・・・

基本的にはそういう話をしているのですが、まあそこに仮託して今の金融政策運営に関する話をしている、と思えばそう読めないことも無い(やや強引だが)というお話ではあって、テイラールールの問題点というか限界点の話をする中で3つネタを挙げているのですが、1つがタカ風味で2つがハト風味と思われますがどうでしょうかね。

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2015/dud151015.html
Panel Remarks at the Brookings Institution
October 15, 2015
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at The Fed at a crossroads: Where to go next?, Brookings Institution, Washington, D.C.

・テイラールール系のルールベース政策の問題点その1:フォワードルッキングではない

講演の真ん中あたりから参ります。

『As I see it, the Taylor Rule has several significant shortcomings that can be detrimental to the attainment of the Federal Reserve’s mandated objectives. These shortcomings are not just theoretical; they have been very relevant to monetary policy in recent years.』

理論的に不足という意味ではないのだが政策運営においては不足があるとな。

『First, the Taylor Rule is not forward-looking. Its policy prescription is based on the current size of the output gap and the deviation of current inflation from the Fed’s objective, not on how these variables are likely to evolve in the future.』

テイラールールはこれまでの経済指標からあるべき金利水準を計測するという仕組みになっており、フォワードルッキングになっていないというお話で、仰せの通りという話ではあります。

・・・・・・ただまあここの辺りで味わいがあるのは、(別に米国の話ではないですが)日本におきまして置物一派の皆様が日銀批判をするときに「インフレターゲットを設定して政策運営の恣意性を排除することが重要」という趣旨の話をよくしていた訳でして(最近はすっかり言わなくなっていますけれどもね)、そういや以前も置物リフレ一派の方がテイラー教授を呼んで講演会やったら全然白川日銀批判をしなくてアチャーという事例がありましたが、まあ置物理論ってそんなもんなんでございますなあと読みますと中々味わいがあります。

『So, in a rapidly changing environment, the Taylor Rule and other similar prescriptive rules will wind up being “behind the curve.” For example, in the fall of 2008, Taylor Rule prescriptions were well above the level of rates that was appropriate given the sharp and persistent deterioration in the economic outlook and the sharp tightening in financial conditions that occurred during that period.』

状況が急速に変わるときにはテイラールールはビハインド・ザ・カーブになるという話をしておりまして、まあこれ自体は普通の話をしているのですけれども、一応ここの部分に関しては「フォワードルッキングな政策運営」という話をしているので、正常化着手に関する考えという意味では従来通りややタカ(というほどでもないが)感というかブレイナードなどのハトとはちょっとニュアンス違いますよねという辺りですな。

『Of course, many economists at that time recognized that such prescriptions would have been inappropriate and suggested various ad hoc modifications to the prescriptions-in fact, John himself suggested that modifications to his rule were appropriate at that time.』

『Nonetheless, there was no consensus about the “right” modification to the rules at that time, in part, because the circumstances were unprecedented and the outlook so uncertain. If the FOMC had been required to justify to Congress deviations from a reference rule at that time, I believe that this would have slowed down how we responded to the crisis and would have resulted in a monetary policy that was not sufficiently accommodative. The consequence could have been a longer financial crisis and a deeper recession.』

テイラールールその他の修正版というのも色々と出ていますが、現状では実用的なものではないとな。


・テイラールール系のルールベース政策の問題点その2:均衡中立金利水準は変化しうる

『Second, the Taylor Rule, as typically used, assumes that a 2 percent real short-term interest rate is consistent with a neutral monetary policy. However, a large literature concludes that the equilibrium real short-term rate is very unlikely to be constant, with its value affected by many factors, including the pace of technological change, fiscal policy and the evolution of financial conditions.』

テイラールール系の問題点の第2点目としてあげているのは、そもそも均衡実質金利水準が一定ではない可能性を無視している点であるとのことで。

『Sometimes it can be much higher than 2 percent. Presumably, this was the case during the late 1990s as rapid technological change lifted productivity growth. Sometimes it can be well below 2 percent. For example, when credit availability dried up during the financial crisis in late 2008, this drove down the equilibrium real rate far below 2 percent.』

『More recently, the slow growth rate of the economy and the low rate of inflation are evidence that the equilibrium real short-term rate today is well below the 2 percent rate assumed in the Taylor Rule.』

ということでこちらの話はハト的な話になっておりまして、現在の均衡実質金利水準は2%よりも低い水準にあると想定されますという事で・・・・・・・・・・・

『If 2 percent really was consistent with a neutral monetary policy, then the very low real rates of recent years-buttressed by our large-scale asset purchases-should have been extraordinarily accommodative. As a result, we should have grown much faster than the 2-1/2 percent pace evident over the past couple of years and seen an inflation rate much higher than what we experienced. This conclusion is supported by a number of more formal models. For example, the Laubach-Williams model currently estimates that the equilibrium real short-term rate is around zero percent.』

というお話ですので、つまり金利水準に関しては今の均衡金利水準はテイラールールで想定する水準よりも低い位置にある筈ということで、それは即ちFOMCの参加者が想定している中立金利水準までの利上げを直ぐにしないという話に繋がる、とまあ基本的にはSEPなどで示されている政策金利パスの妥当性を主張する話をテイラールールネタに仮託して話をしているとも読めますな。


・テイラールール系のルールベース政策の問題点その3:ファクターはもっと多い筈

『Third, the Taylor Rule -and more broadly, any prescriptive rule for the systematic quantitative adjustment of the policy rate to changes in intermediate policy inputs such as real GDP or inflation-is incomplete because it does not fully account for factors that are crucial to how monetary policy impulses are transmitted to the real economy.』

テイラールールなどの機械的ルールは金融政策が実体経済に与える波及経路というファクターについての説明が不完全である(キリッ)と言われましてもまあそれは困るような気もするがそういう事のようで。

『Monetary policy affects economic activity through its impact on financial conditions-including the level of equity prices, bond yields, the foreign exchange value of the dollar and credit conditions. If the relationship between the federal funds rate and other indicators of financial conditions were stable, then one could just focus on the level of short-term rates.』

『But, because financial conditions vary considerably relative to short-term rates, as we have seen in the financial crisis and its aftermath, one needs to consider developments in financial conditions more broadly in setting monetary policy. 』

『In fact, at times, when short-term rates have been pinned at the zero lower bound, the Federal Reserve has taken actions that eased financial conditions without changing short-term interest rates. Such actions have included forward guidance that the FOMC was likely to keep short-term rates low for a long time and large-scale asset purchases that led to lower bond term premia.』

ゼロ金利制約においては短期金利水準はどうしようもないので、タームプレミアムを下げる政策を採ったり、ガイダンス政策によってフォワードの金利に影響を与えてみたりというような政策でファイナンシャルコンディションを緩和しました、という話を後半でしているのですが、前半の部分ではファイナンシャルコンディションに影響を与えるファクターという事で株価とか為替とかクレジットコンディションとかその他諸々、という話をしておりまして、これってまあブレイナードが指摘している「ファイナンシャルコンディションが足元でタイトニングしているので利上げを急ぐべきではない」的な話に地続きな部分があって、ファイナンシャルコンディションガーという話をしだすと、実はFRBって自分たちでここ2年間ほど延々と「正常化するぞ正常化するぞ」トーク(と実際にTapering)を行っている訳で、そらあーた2年間も延々と正常化トークをしたらファイナンシャルコンディションがタイトになってくるわというお話でもあるので、この論点をフォーカスすると実は正常化がやり難くなるというトラップな論点。


・金融政策の反応関数の説明が重要という話をしているのだが・・・・・・・・・・

『Now, as I said at the start, just because I don’t want to follow a rule mechanically does not mean that I favor the polar opposite-that is, a fully discretionary monetary policy in which market participants, households and businesses cannot anticipate how monetary policy is likely to evolve as economic and financial market conditions and the economic outlook change.』

『If households and businesses do not have a good notion of how the Federal Reserve will respond to changing economic and financial market conditions, then this would loosen the linkage between short-term rates and financial conditions. This would also likely lead to greater uncertainty about the outlook and higher risk premia, and it would make it more difficult for policymakers to attain their objectives.』

との仰せですが、そのFEDの政策反応関数がさっぱり分からなくなっているのが足元の状況ではないかと小一時間問い詰めたい。


『Instead, what I favor is a careful elucidation of those factors that influence the economic outlook and how monetary policy is likely to respond to changes in the outlook. This includes fiscal policy, productivity growth, the international outlook and financial conditions, as well as how much employment and inflation deviate from the Fed’s objectives.』

って並べているがそれだと結局どのファクターが利くのか分からん。

『By conducting policy in a transparent way and communicating what is important in determining the central bank’s reaction function, I think policymakers can strike the best balance between a monetary policy that fully incorporates the complexity of the world as it is, while, at the same time, retaining considerable clarity about how the FOMC is likely to respond to changing circumstances. A formal policy rule such as the Taylor Rule misses this balance by going too far in one direction. 』

てな訳で単純なルールベースではなくて多くのファクターを加味して政策判断をするのだが、その判断についての透明性と説明を、というお話をしているのですが、肝心のFRBが何を見ているのかがさっぱり分からんのですよねえ。

『What is important for attaining the Federal Reserve’s mandated objectives is not that monetary policy is described in terms of a formal prescriptive rule, but rather that the FOMC’s intentions and strategy are well understood by the public.』

だからその「intentions and strategy」が分からんのや。

『This argues for clear communication through the FOMC meeting statements and minutes, the FOMC’s statement concerning its longer-term goals and monetary policy strategy, the Chair’s FOMC press conferences and testimonies before Congress, and speeches by the Chair and other FOMC participants.』

『But it also is important that the strategy be the “right” reaction function. This means a policy approach that responds appropriately to important factors beyond the two parameters of the Taylor Rule-the output gap estimate and the rate of inflation.』

お、おぅ・・・・・・・・・

としか申し上げようがないのですが、このダドリー講演見てますとどうも「一生懸命に政策反応関数について皆が説明しようとして益々訳が分からなくなっている」という大変に素敵な状態にFRBそのものが陥ってしまっているという事なのではないかと思う次第で、こりゃ当分バタバタするなあとは思うのでありました。


・ちょっと余談ですが

まあしかし何ですな、この「コミュニケーションやろうと思って却って混乱」というのは、そもそも論として正常化を何の観点でやろうとしているのかのコンセンサスが取れていないというのと、あとはやはり「地均しの時間を掛けすぎ」という技術上の問題があるという所なんでしょうな。

基本的には正常化やるならやるで、ある程度「ここまでは金利を上げる」というのについて腹を括って正常化で金利上げるならバンバンバンと一気に上げていったん打ち止め感を出す、という形にしないと、いつまで経っても金利先高観測だけ延々と続く訳ですからそら金融環境が徐々にタイトになるでしょうし、それを2年もやってたら軽めのサイクルで景気1回転しちゃいますがなという所で、まーこれまでの正常化トークのツケが回ってきた感がありますぞな。

ということで、どうせやるなら短期金利1%か1.5%位まで上げれるという見込みが付く(だから長期的中立まで上げない)所から1回のFOMCで50bpとかのペースで2発か3発利上げしていったん打ち止めとかにすれば、金融環境がそこまでタイト化しないようにも思える訳で、確かに「データ次第で様子を見ながら慎重に利上げするが着手は早めに」というのは話としては美しいのですけれども、それによって利上げ観測が延々と続いた場合の金融環境のタイト化の方が実際にバシバシ機械的に利上げするよりもキツイというのが今回のFRB正常化プロセスで示されているような気がします(あくまでも気がするだけですが)。

でまあさきほどのダドリー総裁の話だと均衡実質中立金利が低い可能性があるってんですから、実はもっと早めに短期金利を1%程度まで上げておいていったん打ち止めとかにした方が良かったのではないか(均衡金利が低いのならロンガーランの数値まで上げる必要ないのだから)という風にも思えますが、実際問題としてやったらどうなっているのかは追試のやりようがないのでワカランチ会長ではありますのでこれも机上の空論かも知れませんな。

とは言えロンガーランの中立金利まで上げられるとなってからちんたらメジャードペースで利上げしたらクレジットバブルになっていましたテペヘロという過去の悪事例もあるので、じゃあどうすべきかというのはやってみないと分からんという事なのでしょうが難しいですな、と結局結論の何もない余談を余計につけてどう見てもただの余談ですすいませんすいません。



○市場メモというか短国入札メモ

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151015.htm

(3)募入最低価格 100円00銭1厘0毛(募入最高利回り)(-0.0037%)
(4)募入最低価格における案分比率 92.3488%
(5)募入平均価格 100円00銭1厘5毛 (募入平均利回り)(-0.0055%)

前回の3Mが平均2厘8毛で足切が1厘5毛だったので100円に向けて匍匐前進という結果ですが、まあ今週に関しては今日1年の入札があって、月曜の短国買入がどこからどう見ても1年短国がせっせと打ち込まれるデーになりますので、年末の残高ガーとか年末のドル円ベーシスガーという話が暫く前ほど大騒ぎになっていないとなると、そらまあリアル資金というかマイナスファンディングじゃない資金の見合いで買える水準の所までは向かっていくでしょという所ですな。

まーこんな感じになって行ってもどうせ今日の1年は強い所で入札して終値まで強くなりましてという毎度のパターンになる(流れそうとかいう話になってちゃっかり上で切られる悶絶モードとかになる悪寒がしていますが)のでそちらは別世界でありますが、短国買入で捌けないとなるとマイナスで買うのはマイナスファンディングの人と、どうしてもモノとしての短国が必要な人という事になるので、日銀がスケベ心を出して短国もっと買おうとかやらかしてこない限りは期末のあばばばばーモードは一服という感じになるんでしょうかねえ、とか言ってると油断も隙もないのが短国クオリティではありますが。

しかしこの辺はやや落ち着いてきましたが5年とかまた強かったりして(昨日はちょっと弱かったみたいですが)中期は相変わらずですのう。










2015/10/15

お題「市場関連メモと計数関連/短期市場サーベイ出てました/盛大に出遅れましたがブレイナード講演から少々」

米国10年2%割れですかそうですか
http://jp.reuters.com/article/2015/10/14/us-sept-ppi-biggest-fall-in-eight-months-idJPKCN0S81SE20151014
Business | 2015年 10月 14日 23:24 JST
米9月卸売物価指数、8カ月ぶりの大きな低下 年内利上げに疑問符


しかしまあ何ですな、「日銀の緩和は全通貨ベースの実効レートでそんなに円安効果が無い」と解説しているのに、その前には「為替市場の動きを受けて追加緩和期待が高まる」という説明をしている訳ですが、そもそも効かないのであれば何で緩和をするのかと小一時間問い詰めたいのですが>モーサテ


○市場メモ雑談と計数関連雑談

・またまた金利低下しておりますが

http://jp.reuters.com/article/2015/10/14/idJPL3N12E2DU20151014
News | 2015年 10月 14日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利0.305%に低下

『<15:10> 国債先物は続伸、長期金利0.305%に低下

長期国債先物は続伸。5年債入札を前にしたヘッジで上値を重くする場面もあったが、日経平均株価が下げ幅を広げると、短期筋の買いが優勢になった。中心限月12月限は一時148円44銭と10月5日以来の高水準に上昇した。現物債は中長期ゾーンの利回りに低下圧力がかかった。5年債入札が無難な結果に収まったことで、国内銀行勢などからの需要が強まったとの観測がみられた。前日の相場で利回りに強い低下圧力がかかっていた超長期ゾーンはさえない。

長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比8銭高の148円40銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp低下の0.305%と4月28日以来の低水準を付けた。』(上記URL先より)

とまあそういうことですが、株価が下がったからどうのこうのというよりはここに来て益々FEDの利上げ観測後退チックな展開になっている方が効いているんじゃネーノという感じではあるのですが、しらっと5年がまたまた5.5bp水準まで強くなっている辺りなどもチャーミングだったりしますな。

付利下げに関しては全力で総裁会見で否定されましたし、アタクシ思いまするに何かやるならそれなりに「大きな政策パッケージ」として見せに来る黒田日銀が付利を5bp如き下げて追加緩和です(キリッ)というような細かいことをやるとも思えない訳で(まあ超過準備を思いっきり(マイナス50bpとか)チャージでもする位の派手な事でもやるなら別ですが実現性皆無)、中期の金利また5bp接近とか何ですねんとは思いますが、何せ昨年騙し討ち緩和をしただけに総裁が全力で否定しても騙し討ちがあるのではないかと思われますから致し方なしという所でしょうかねえ。

総裁の発言が額面通りに受け止められない、というのは普通にコミュニケーション政策の失敗でありますし、要はサプライズ狙いの政策というのは規模とかでサプライズするならワークするにしても、タイミングでサプライズを狙うというのはその結果が騙し討ちになってしまうと一度は効くけどそれ以降のコミュニケーションに問題が生じる訳ですが、逆に考えますと追加緩和に消極発言をしても勝手に市場が期待して緩和効果が出るのであればとりあえず出口方向じゃないときであればタダで緩和効果が出せますな(違うか)。

まあ5年入札とかそんなにビックリするような強い入札じゃなかったと思うのですけれども、地合いが強めになると「まあどうせ明日輪番で吸い上げられるから買っておいて日銀に打ち込んでヒャッハー」という発想になって相場が妙に値持ちしてしまうという傾向がますます高まっているようには見えまして、日銀買入による市場の流動性低下とかは価格形成行動の方に随分と出ているような気がするんですけどねえ・・・・・・・・・・・・


・本日は3M入札でござる

さっきの
http://jp.reuters.com/article/2015/10/14/idJPL3N12E2DU20151014
からですが。

『短期市場では、無担保コール翌日物は0.075─0.077%を中心に取引された。主な取り手は地銀、信託、証券などで、大手行は0.075%付近で調達した。レポ(現金担保付債券貸借取引)GCT+1レートは0.082%に上昇。3カ月物の国庫短期証券は弱含み。ユーロ円3カ月金利先物は閑散小動き。6日物の米ドル資金供給オペに応札はみられなかった。』(上記URL先より)

期末期初の所では短国落札金利が最低を更新するという中々あじゃぱーな展開になっておった訳でございますが、GCレポレートの方は持ち直して来ておりまして、先週の3M入札も微妙に流れた感もあったのでさてどうなりますやらという所ですな。今週は明日1Yの入札がある関係上短国買入が月曜に回るのですが、1Y入札後なのでどうせ1.5兆円の買入で来ると思いますが、どこからどう見ても明日の1Yが短国買入専用機としてワークするのでこちらの3Mは浮いてくると思うのですが、如何せんマイナス街道の期間が長いので結局100円超の水準で決着でしょうなあとは思います(ヤケクソ)。


ちなみに短国買入残高ですけれども。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

今回公表分は10月2日の短国買入(1兆円)分が反映されていますが、買入銘柄に関しては10/1に最低落札金利更新をした3Mカレントの561回が3444億円で、毎度の1Yカレントの558回が4527億円で、残りが9月最終週に入札のあった3M560回の1186億円となっていて(あと12/10償還の6Mの成れの果てという謎銘柄が845億円あります)、だいたい入札激強銘柄が叩き込まれるというのは毎度のお話。

月次の償還額を見ると今月は5.95兆円(13日償還済みを含む)で9日に1.5兆円買入をして今月あと1.5兆円と1兆円の買入となるんでしょうなあとは思いますが、来月の償還が5.18兆円で、12月の償還が4.22兆円となっていて、12月償還はもう少し増えるかもしれませんが、12月の償還ペースが少ないので基本的にはここから年末に向けて短国買入ペースは伸びない筈なので、短国の需給は改善してくれる筈なのですが、一方でそもそも9月末に短国需給が逼迫する背景にドルファンディング絡みのベーシススワップ金利絶賛低下モードとかあったりしてましたので、海外が期末になる12月跨ぎの所は金融規制絡みもあって益々ドルファンディングがアレという懸念があるのでまあどうなることやらという所ではありますなと妄想中です。


・たまには長期国債保有残高を確認

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

こいつなのですが、買入銘柄の平均年限がどうのこうの方は華麗にスルーしまして、来年の償還額なんぼですねんと計算(単に償還日をヘコヘコ入れて表計算ソフトでソートするだけのお仕事ですけれども)すると来年の償還額が額面で38.12兆円という数値が出てまいりますな。

・・・・・・・・・となりますと、日銀の「年間80兆円ペースの国債買入残高拡大」というのをやるのに来年は年間で120兆円近くの購入が必要で、それはつまり月間10兆円近くの購入をしないといかん(なおここからまだ輪番で来年の償還銘柄が増える可能性もありますがそこはざっくりで)という話になるように思えるのですが、ただでなくさえ今や「どうせ明日輪番で吸い上げられるから入札が流れて掴まされてもヘーキヘーキ」となっている長期国債市場がどうなるのかとか考えると大変にオソロシスなものを感じるのですが、漫然と今の政策をあとまる1年以上とか継続できるのでしょうかとしか思えません。

ちなみに「どうせ明日輪番で吸い上げられるから入札が流れて掴まされてもヘーキヘーキ」という動きの発展形が現在の短期国債市場でございまして、ヘーキヘーキと言いながら買い進めて逝ってしまった挙句に投資家の買いが限界的なレベルまで金利が低下してしまい、入札が流れて業者が掴まされた場合に日銀と一部の限界的な買い以外に買い手が見当たらないというお洒落な展開になってしまい、セカンダリー市場皆無状態という事になる訳ですなナムナムナム。

てな事を考えますと、マネタリーベースを今から倍にすると2%達成とかいうレポートをどこかで見た気がするのですが、それは具体的な実現可能性を無視しまくった机上の空論というか白昼夢というかなお話としか思えませんなあという所で。

なお、再来年の償還額は今の所24.52兆円なのですが、当たり前ですが1−3輪番でここからまだ残高が増えますのでまあその後も運営できませんわなあという所ではあります。


・市場メモではないがこれは・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi1509.pdf
企業物価指数(2015年9月速報)

まあ何ちゅうかアチャーな指標でしたが、そう言えば企業物価指数はCPIに対して先行性があって、このトレンドがどうのこうのなのでみたいな話を日銀がしていたような気がしたのだがサルベージ出来ていないし気のせいかも知れません(汗)。



○うーんこのレポートは

先週金曜にこんなの出てたんですけどね。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/ron151009a.htm/
わが国短期金融市場の動向
――東京短期金融市場サーベイ(15/8月)の結果――

本編はこちら
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2015/data/ron151009a.pdf

でまあ概要の方のHTMLから少々。

『概要』

『短期金融市場の取引残高は増加し、特に資金調達残高は、08年の調査開始以来最高となった。』

ほほう。

『この背景として、資金調達サイドをみると、日本銀行の補完当座預金制度のもとでの超過準備の付利金利(0.1%)をメルクマールとする裁定取引の増加や、円転コストの低下を受けた外貨保有主体による円転の増加が要因として挙げられる。』

ということなのですが、「日本銀行の補完当座預金制度のもとでの超過準備の付利金利(0.1%)をメルクマールとする裁定取引の増加」としらっと書いてありますが、要するに超過準備水準が拡大される中で裁定取引という名前で調達(コールだのレポだの)と超過準備の両建てが拡大しているというお話ですわな。

つーことは現状の超過準備水準を維持していく中では既に「マネタリーベースが拡大する中で、金融機関などが投資として保有する国債を売却する(ことによってポートフォリオリバランスが進む)」というだけではなく、ただの両建てによってMB拡大が進んでおりますぞなというお話でもありますので、それってそもそも金融政策として何の意味がありますねんと突っ込みを入れたいステージということで、そうやって拡大しているMBを更に拡大して実体経済に何の意味をもたらしますねんと小一時間問い詰めたい所ですな。

まあその件をさておくとしましても、バーゼル規制のレバレッジ規制のお試し期間が今年から始まっている訳でして、こちらはリスクウェイト調整を掛けない総資産対比のレバレッジを規制する代物でありますから、そもそも上記の裁定取引がいつまでも出来るわけでもない訳で、先ほどネタにした国債買入フローの方もそうなのですが、「超過準備を誰が持つのか」という点でもMB拡大がどこまでできますねんというお話になると思うのですけどねえ。

『他方、資金運用サイドをみると、株価上昇を受けて増加した余剰資金を投資信託等の主体が短期金融市場で運用したほか、海外貸付や外貨資産投資を企図した円投取引が増加した。こうした中、国庫短期証券の利回りが概ねゼロ近傍で推移したことを背景に、運用利回りの確保を企図して、コール市場(無担保コール市場および有担保コール市場)において運用を増加する動きもみられている。』

>国庫短期証券の利回りが概ねゼロ近傍で推移した
>国庫短期証券の利回りが概ねゼロ近傍で推移した
>国庫短期証券の利回りが概ねゼロ近傍で推移した

どうみてもマイナス水準なのですが何でこういう所で大本営発表するかね。

『この間、短期金融市場の機能度については、利回りの低下等を背景に、全体の2割程度の先が「低下した」と回答したものの、全体の7割程度の先は「概ね変わらない」と回答した。』

全体で、と言えばそら短国のアウトライト以外は概ね変わらないという答えになるのでしょうが、リスクフリー資産であるところの短国アウトライト市場が壊滅しているのって問題のレベルが非常に大きいのですけどねえ。

『これらの点を踏まえると、わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられるが、日本銀行としては、今後とも短期金融市場の動向を、日々のモニタリング活動や本サーベイ、市場参加者との対話などを通じて、適切にフォローしていく考えである。』

そらまあ「機能が維持されていません」とか言い出すと金融政策の副作用ガーという話になるというのは分かるのだが、もうちょっと物の言い方というのは無いのかと小一時間ではあります。




○出遅れましたが話題のブレイナード理事の講演

どうもすいませんすいません。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20151012a.htm
Governor Lael Brainard
At the "North America's Place in a Changing World Economy," 57th National Association for Business Economics Annual Meeting, Washington, D.C.
October 12, 2015
Economic Outlook and Monetary Policy

『Policy Considerations』以降から少々。

『There is a risk that the intensification of international cross currents could weigh more heavily on U.S. demand directly, or that the anticipation of a sharper divergence in U.S. policy could impose restraint through additional tightening of financial conditions.』

これは先行き警戒というか、これ言い出したらそもそも他の主要国が正常化着手に向かわない状態だと正常化着手ができないという話になりゃしませんかねえ。

『For these reasons, I view the risks to the economic outlook as tilted to the downside. The downside risks make a strong case for continuing to carefully nurture the U.S. recovery--and argue against prematurely taking away the support that has been so critical to its vitality.』

ダウンサイドリスク3つとな。

『First, casual empiricism would suggest that we are experiencing a period of unusually low rates not only in the United States but also at the global level. Ten-year sovereign bond yields in G-7 economies excluding Japan currently range from just above 1/2 percent to just above 2 percent--well below the average range of 4 1/2 to 5 percent in the decade before the financial crisis.』

『This observation receives substantial support from a number of rigorous empirical papers over the past year that have estimated the longer-run equilibrium federal funds rate to be lower now than previously. The projection of a relatively low neutral rate over the next few years also receives some weight in the September 2015 Summary of Economic Projections. Most FOMC participants lowered their estimate of the appropriate target level for the federal funds rate in the long run, and a majority of participants now forecast a level no higher than 3.62 percent--down from 4.12 percent in September 2012.』

金融危機以降中立金利が下がっているお話ですな。

『A lower equilibrium funds rate implies a higher probability of policy being constrained by a lower bound for nominal interest rates.』

中立金利が低下しているのでゼロ金利制約がより厳しくなっているということで、要は実質金利が想定よりも低い可能性があるので利上げは慎重にという話でしょうな。

『Second, the ability of policymakers to react to unexpected shocks using conventional tools remains highly asymmetric in the neighborhood of an effective lower bound. From the perspective of risk management, in today's circumstances, we have considerably greater latitude to adjust the path of policy in response to inflation that exceeds current forecasts than we have to provide additional accommodation in response to additional adverse shocks.』

なんか似たような論点なのだが、現状でもゼロ金利制約が厳しいということで、何かあった時の対応として引締めは簡単だけども緩和は難しいので、引締めを急がなくても宜しいがなという説明ですな。

『Consider two possible scenarios. First, many observers have suggested that the economy will soon begin to strain available resources without some monetary tightening. Because monetary policy acts with a lag, in this scenario, high rates of resource utilization may lead to a large buildup of inflationary pressures, a rise in inflation expectations and persistent inflation in excess of our 2 percent target.』

『However, we have well-tested tools to address such a situation and plenty of policy room in which to use them. Moreover, the persistently deflationary international environment, the gradual pace of increases in U.S. resource utilization, the estimated small effect of resource utilization on inflation, the likely low level of neutral interest rates, and the persistence of inflation below our 2 percent target suggests this risk remains modest. Financial markets appear to agree, as five-year inflation compensation is well below 2 percent.』

その中で金融市場でのBEIの話が出てくるというのもこれまたお洒落でして、先ほどの金融市場も含めて「市場の動向を注目」ということでして、悪口を言えば自分の尾を追う犬になりそうな悪寒も。

『Now, take the alternative risk: that the underlying momentum of the domestic economy is not strong enough to resist the deflationary pull of the international environment. A further step-down in global demand growth and a further strengthening in the dollar could increase the already sizable negative effect of the global environment on U.S. demand, pushing U.S. growth back to, or below, potential. Progress toward full employment and 2 percent inflation would stall or reverse. With limited ability to ease policy, it would be more difficult to move the economy back on track.』

更に海外経済の影響のリスクを懸念していて、追加緩和の対応余地が少ないので正常化は慎重にというお話になっておりますな。逆の糊代論という発想はないようで。

『Indeed, many central banks in advanced economies have tightened policy since the financial crisis, prompted by improving domestic activity. In these cases, the tightening was reversed as the outlook evolved. Given the current uncertainty, we should put some weight on the risk of following this pattern. Indeed, market participants put the probability of returning to the zero lower bound within two years of liftoff at 20 percent.』

危機後の早すぎる正常化着手が結局元に戻ったという事例が過去にもありましたという話はまあ分かるのですけれども、ここでまた「市場が想定する利上げ時期」がどうのこうのという話をしていて、どうもこの先生今後も市場に振り回されまくりそうな悪寒。

『To be fair, the past few years have demonstrated the capacity and will of central banks in many jurisdictions to deploy unconventional monetary policy tools, including quantitative and credit easing, forward guidance, and negative rates. That said, resorting to such tools is not without costs and uncertainties.』

一応非伝統的政策のコストにも言及していますが・・・・・・・・・・

『We should not take the continued strength of domestic demand growth for granted. Although the outlook for domestic demand is good, global forces are weighing on net exports and inflation, and the risks from abroad appear tilted to the downside. Our economy has made good progress toward full employment, but sluggish wage growth suggests there is some room to go, and inflation has remained persistently below our target.』

結局「経済にはまだ改善が必要」ということで賃金動向と物価の話をしていまして・・・・・・・・・

『With equilibrium real interest rates likely to remain low for some time and policy options that are more limited if conditions deteriorate than if they accelerate, risk-management considerations counsel a stance of waiting to see if the risks to the outlook diminish.』

実質均衡金利は当面低い水準にあり、追加緩和の余地が限られている中ではリスクマネジメント的に正常化は遅らせるべき、という結論になっていてまあハトなのですけれども、金融不均衡でまたまたバブルが発生的な言及がほぼ無い(ちょっとだけさっきありましたが)上に、市場の動向に過剰に反応している感がございまして、うーんこのという感じではあります。


まあ「経済を吹かしてから正常化は迅速に」という戦法もあって、緩和を引っ張っておいて正常化着手の際にはそれこそFOMC1回で50bp利上げして1年で2%まで金利上げてしまうというような方が良いのかも知れないのですが、前回それやって深刻なクレジットバブルを作りましたよねというのがFRBにはあると思います(イエレンとか当事者ですし)ので、これはこれで理屈は分かるのですが実際にFRBがこのパターンで行くのかというのは微妙ちゃあ微妙ではあるとは思います。

ただまあ理事が続々とこうなっているというのと、議事要旨でも実際の物価水準がどうのこうのという話が続いていましたし、(ネタにする時間が無いのですが)直近のフィッシャー副議長の講演というかスピーチでも海外経済の影響がどうのこうのという話をしておりまして、まあ今までのFRBですと「海外情勢とか知らんがなステイツ様はステイツ様の経済状況見て金融政策するんじゃヴォケ」という感じだったのですが、イエレン議長のキャラなのか単に米国経済が海外に引っ張られやすくなったという事なのかは知らんですけれども、海外ガーの話が多いなあとは思うのでありましたということで。










2015/10/14

お題「9月決定会合議事要旨を細々と鑑賞してみましたが微妙な焦げ臭さがががが」

早速の出オチとか伝統芸能の世界ですな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151013/k10010268391000.html
住民票にマイナンバー誤記載し発行 取手市
10月13日 22時16分


○9月決定会合議事要旨を鑑賞

うむ。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150915.pdf

・中国経済と新興国経済の辺りから参ります

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』の海外経済の最初は例によって例の如く、

『海外経済について、委員は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、基調として先進国を中心に、緩やかな成長が続くとの見方で一致した。 』

となっていますが、では中国と新興国に関してはどうなのかという事で後半から参ります。

『中国経済について、委員は、総じて安定した成長を維持しているが、製造業部門を中心に幾分減速しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、景気の減速に対して当局は既に金融・財政面での対応を行っており、また今後の政策対応余地も比較的大きいとの見方で一致した。』

ふむふむ。

『この間、何人かの委員は、地方政府の財政問題や資本流出の懸念など、景気対策が効果を発揮していくうえでの懸念材料を指摘した。このうち一人の委員は、中国の金融当局の政策対応について、分かりやすい情報発信がなされることが期待されると述べた。』

先般の泡吹き対応が何ともですけど。

『また、複数の委員は、不動産市場の持ち直しや、とりわけ大都市圏の住宅価格が反転していることなどを指摘したうえで、中国経済についてこのところ過度に悲観論が拡がっている面もあるとの見方を示した。』

まあこの辺はどうなんでしょうね。

『先行きについて、委員は、製造業部門を中心に幾分減速しつつも、当局が景気下支え策に積極的に取り組むもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。そのうえで、委員は、中国経済の減速が世界経済に与える影響については、引き続き注視していく必要があるとの認識で一致した。』

ただ安定した成長経路ではドライバーにはならないですよねとは思いますが、続いて新興国。

『新興国経済について、委員は、このところ減速しているとの見方を共有した。何人かの委員は、その背景として中国経済の減速と資源価格下落の影響を指摘した。このうち一人の委員は、いくつかの新興国において、資本流出を伴うかたちで通貨安・株安が生じている点には注意が必要であると述べた。』

さいですな。

『先行きの新興国経済について、委員は、当面、減速した状態が続くが、やや長い目でみれば、先進国の景気回復の波及や金融・財政面からの景気刺激策などによる内需の持ち直しから、成長率が徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

やや長い目でみればというのは色々と便利(?)な言葉で、何せ予想物価上昇率も「やや長い目でみれば全体として上昇」ですからね!!!!!


・前向きの循環メカニズムがワークしているといつまで言い続けられるのやら

『以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

ということで国内経済になりますが、

『わが国の景気について、委員は、輸出と生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっているが、国内需要の面では、前向きな投資スタンスが維持されているほか、個人消費が底堅く推移しているなど、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けており、緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。』

『景気の先行きについて、委員は、所得から支出への好循環が続くもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

なんちゅうか「輸出と生産は伸びないけれども前向き循環メカニズム」って何じゃそらという感じですが、所得から支出へのメカニズムがワークしても生産伸びないのにサステイナブルにメカニズムがワークするもんなのかいなという気はだいぶする。

以下項目別展開ですけれども色々と謎な話があって非常にアレ。


・輸出は新興国が回復して回復ということのようですが

『輸出について、委員は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっているとの認識で一致した。委員は、その背景として、中国をはじめとして新興国・資源国経済が減速する中で、世界的に貿易・生産活動が停滞していることや、IT関連需要の弱さが挙げられるとの認識を共有した。』

ふむ。

『一人の委員は、最近の輸出の減少が一時的要因によるものであれば、反動増がみられるはずだが、これまでのところ、そのような動きは小さいと述べた。』

イイシテキダナー。

『先行きの輸出について、大方の委員は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくとの見方で一致した。そのうえで、多くの委員が、中国を含む新興国経済の減速が長引いた場合のわが国の輸出や国内景気への影響については注意が必要であると指摘した。』

これしらっと書いてますけど、そもそも「新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて」って言ってますが、その新興国経済は先程の部分で『当面、減速した状態が続くが、やや長い目でみれば』回復するでしょうという見込みになっておりますので、それって要するに「当分ダメです」というお話なのではないかと存じます。

ただまあここれキチンと予防線が張ってありまして、先ほどの部分にありますように「所得と支出」だけで循環メカニズムが回るという(ホンマカイナという)理屈になっていますので、輸出が伸びないであろうという事に関しては知らんがなという風にとぼけるのが可能(日銀的な屁理屈の上では、という意味で実際の経済がどうなのかというのは別問題)という事になるのがアレです。


・設備投資に関する議論の記述に大本営発表的なテクニックを感じる件

その次が企業部門です。

『企業収益について、多くの委員は、円安や原油安の効果もあって新興国経済の減速にもかかわらず改善を続けており、過去最高水準まで増加していると述べた。』

まあこれは良いとして、

『設備投資について、委員は、企業収益が明確な改善を続ける中で、緩やかな増加基調にあるとの見方で一致した。』

出る出る詐欺っぽいのですがまあそれはともかくとして。

『ある委員は、法人企業景気予測調査をみると、景況感は前回調査時の見通し対比悪化しているものの、2015 年度の設備投資は製造業で大きく増加する計画が維持されているうえ、製造業・中小企業の設備投資の理由の第1位として「生産能力拡大」が挙げられていることを指摘し、前向きな動きとして注目していると述べた。別の一人の委員は、仕入価格を反映する企業物価がこのところ低下していることもあって、中小企業を含め企業収益は幅広く増加しており、企業が支出を拡大するための環境は整っていると述べた。』

ほー。

『一方、多くの委員が、新興国の減速を受けた輸出の弱めの動きなどが、好調な収益環境にもかかわらず、設備投資を下押しするリスクがあるとの見方を示した。』

あれ????

・・・・・・・・・・・えーっとですね、この部分の記述なんですけど、サラッと読んでいると前半の威勢の良い話がああだこうだと書いてあるので先行きが明るいという話に読んでしまいそうなのですが、良く良く見ますと「ある委員」と「別の一人の委員」が威勢の良い話をしている部分を先に丁寧に記述していまして、良く良く見ると「多くの委員」は下押しリスクを指摘していまして、しかもそっちの方が優勢な見解になっているのに、文章作成テクニックによりまして設備投資の先行きに関して明るい話の方が印象的になる、という風になっているのが実にこうお洒落というか大本営テイストというかになっていまして、戦況が悪化してくると大本営発表に磨きが掛かる的な香りを感じてしまったのは気のせいでしょうか。


・雇用所得環境に関して

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも、経済活動や企業業績の回復につれて、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』

ほうほう。

『何人かの委員は、名目賃金は、毎月勤労統計のサンプル替えの影響で基調が読みにくくなっているが、ベースアップの効果から、所定内給与は緩やかに上昇率が高まっているなど、改善傾向にあるとの見方を示した。』

『夏季賞与に関連して、ある委員は、7月の毎月勤労統計の特別給与が低い伸びにとどまった一方、同月の家計調査報告の実質収入の前年比は高い伸びを示しており、毎月勤労統計のサンプル替えの影響などを勘案すると、夏季賞与は相応に上昇したとみるのが実態に近いのではないかと述べた。』

だそうなのですがそれならもっと消費が強くならないのかねとは思う。

『また、雇用者所得について、複数の委員が、家計調査報告の勤労者世帯の収入をみると、前年比でしっかりと増加を続けていると述べた。さらに、これらの委員は、同調査において、このところ配偶者の収入が高い伸びを示していることを指摘したうえで、配偶者の労働参加が進むことを通じて家計の所得が高まっているとの見方を示した。』

というと美しいのですが、それは生活費の上昇に所得の上昇が追い付かないので配偶者が労働参加を進めないとマズーという事を示しているだけなのかも知れませんぜ。

『また、別の一人の委員は、所得環境という点では、4〜6月に実質GDPが前期比マイナスとなる中でも、実質GNIは堅調に増加しており、マクロでみた所得形成のモメンタムは着実に強まっていると述べた。』

ほえ?

『実質賃金について、複数の委員は、今年は昨年と違って消費税率の引き上げがなく、原油価格は昨年と比べて低下していることから、実質賃金も持続的なかたちで前年比プラスで推移していくとの見方を示した。』

来年度前半には物価が2%になるのになぜ持続的に前年比プラスで推移できるのか小一時間問い詰めたい。


・消費について

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しているとの認識を共有した。』

『多くの委員は、このところ天候不順の影響などにより一部でもたつきがみられていたが、消費者マインドが改善傾向にあるほか、雇用・所得環境も着実に改善を続けていることから、全体としては底堅さを維持しているとの見方を共有した。』

『この点、ある委員は、家計調査報告で勤労者世帯の実質消費支出をみると、天候要因の影響を受けた6月以外は前年比プラスで堅調に推移していると指摘した。』

もっと伸びないと前向き循環メカニズムで2%目標達成にならんように思えますがまあそれは兎も角。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。最近の株価下落の影響に関して、ある委員は、消費に与える悪影響は限定的なものにとどまるとの見方を示した。』

まあ別に株が上がったからと言って全体的な消費が底上げされた訳ではない(高額品とかは別ですが)のですから逆も然りでしょう。

『別の一人の委員は、消費者マインドが改善しているものの、その水準は高くないとの認識を示したうえで、先行き実質所得が高まっていくとの期待が十分強いとは言えないため、今後の消費回復ペースも緩慢なものとなるとの見方を示した。』

激しく同意。


・生産も「新興国が戻ると戻る」だそうで

次の住宅の部分はパスしまして生産ですが、これもまた輸出と同様で・・・・・・・・

『鉱工業生産について、委員は、新興国経済の減速に加え、在庫調整の動きもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっているとの認識で一致した。委員は、企業の生産活動は、内外需要の緩やかな増加を背景に持ち直してきたが、新興国経済の減速の影響や世界的なIT関連需要の弱さに加え、軽乗用車の在庫調整が長引いていることもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっているとの見方を共有した。』

輸出の所と同じ話に加えて軽乗用車の在庫調整の話がありますな。

『先行きの生産について、委員は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱し、在庫調整が進捗するにつれて、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

お、おぅ・・・・・・・・・・

『一人の委員は、新興国・資源国の情勢等から下方リスクに留意する必要はあるが、収益環境が良好であることや資源価格の下落が、外需の悪化に対する日本経済の耐性をもたらしており、マインド面での悪化もみられないことから、先行きは踊り場を脱して緩やかな回復に復していくとの見方を示した。』

ということで、どうも見通しにある「前向き循環メカニズム」からは輸出と生産をスルーしても回るという割と斬新な話を9月の時点で既に示していまして、だからこそ先般ご紹介しましたように、先日の金融政策決定会合後の黒田総裁会見で「ご承知のようにGDPに占める鉱工業生産の影響、シェアは多分2割ぐらいだと思います。(略)鉱工業生産は重要ではありますが、それが大半を決めるという状況ではないと思います。」という斬新な説明が飛び出すという事になったわけでして、まあそういう屁理屈が展開されていたのだろうなあと想像はついていたものの、9月議事要旨で確認できたというものでありまする。


・金融政策論議の部分だが物価の話はまあいつも通りに「基調」攻め

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『以上のような金融経済情勢についての認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。』

てな訳で。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」について、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。』

本当に発揮していたら今頃2%達成とかいうのは措きまして。

『これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は、今後も改善傾向を辿るとの見方で一致した。多くの委員は、「量的・質的金融緩和」の導入以降、名目金利が低位で安定的に推移するもとで、やや長い目でみた予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下しているとの認識を示したうえで、そのことが企業・家計の支出行動を支えていると述べた。』

元々の置物理論だと実質金利が低下すると「需要が喚起される」でしたが最近は(別に今回だけではなくて前からこう書いてますので念のため)支出行動を「支える」になっておりますよね。

『委員は、新興国の減速に伴い、このところ輸出や生産が横ばい圏内の動きとなっているものの、「量的・質的金融緩和」のもと、国内需要の堅調さは引き続き維持されているとの認識を共有した。』

って国内だけでサステイナブルに回りきれるのかというのはどうなんでしょうかねえ。


『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

基調キタコレ。

『多くの委員が、7月の消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比がプラス幅を拡大したことや、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇品目比率から下落品目比率を差し引いた指標が一段と上昇していることなどを指摘し、物価の基調は改善を続けているとの見方を示した。』

ということで色々なものを見て判断、というのはその通りではありますが、どうもこう自分たちの政策決定に対して都合の良いものを殊更に取り出している感がありますが、つまりはこういう色々な数値を出してきて「基調は〜」という方向で物価は堅調というストーリーを作ろうとしているというのは把握した。

『このうち何人かの委員は、今後、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、一時的にマイナスになる可能性に言及したうえで、そうした動きは原油価格下落の影響がラグを持って続いているためであり、物価の基調が変化したことを示すものではないとの見方を示した。』

マイナス転しても基調に変化なしだそうです。去年は原油下がって急に実際の物価動向によって予想物価上昇率の低下懸念がとか言ってたのにね〜。



・賃金の部分で焦げ臭い表現が・・・・・・・・・・・・

『委員は、2%の「物価安定の目標」の実現に当たっては、賃金の上昇を伴いつつ、緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要であるとの認識を共有した。』

>緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要
>緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要
>緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要
>緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要
>緩やかに物価上昇率が高まっていくことが重要

ここが怪しいのですが、前回8月の議事要旨ではこの部分が・・・・・・・・・

『何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、2%の「物価安定の目標」を実現するに当たっては、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が高まっていく、という状態を作り出していくことが大切であり、このところの賃金・物価動向をみると、そうしたメカニズムが働き始めているとの認識を示した。』(8月の決定会合議事要旨より)

となっていて、今回「緩やかに」物価上昇率が高まっていくことが重要となっていまして、えーっとすいません緩やかに上昇していくのが重要だというのと2016年度前半には2%に到達というのとの整合性はどうなっているのかと小一時間問い詰めたいのだが、これはどうも「2%目標」についてそもそも2年で達成はとっくの昔に空文化していますが、この直後に出てくるアベノミクス第2弾において金融緩和で2%早期達成が最前線から一歩引いている(別になくなったわけではないが)のと合わせて考えると何となく焦げ臭いものを感じるのは考えすぎでしょうかねえ。

『この点、多くの委員は、企業収益が過去最高水準となっていることを踏まえると、名目賃金の上昇ペースは緩やかなものにとどまっているとの見方を示した。これらの委員は、「量的・質的金融緩和」を着実に推進していくことによって、企業が賃上げを実施しやすい環境を維持・促進していくことが必要であるほか、政労使会議など、賃上げに向けた企業努力を促すような働きかけや施策も重要であるとの見方を示した。 』

賃上げしろと日銀まで仰せですが、ちなみにこんなのありました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151013a.htm/
日本銀行職員の給与等の概要について

#ベア増加よりも年収ベースの増加の方が大きいですかそうですか


・予想物価上昇率ではブーメランが投擲されていますな

『予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとの見方で一致した。』

まあいつもの話。

『複数の委員は、2年連続でベースアップが実現し、今年度は価格改定の動きに拡がりと持続性がみられることを指摘したうえで、予想物価上昇率については、市場の指標やサーベイ調査だけでなく、こうした企業の価格設定スタンスなどをみていくことも重要であると述べた。』

という話を9月には行っているのですが、短観でこれが盛大なブーメラン投擲になっているのがワロタとしか申し上げようがない。ちなみに10月の総裁会見では・・・・・・・

『(答) ご指摘のように、短観で企業の販売価格の見通し、あるいは仕入価格の見通しも若干下がっていることは事実です。仕入価格の見通しの方がやや下がっており、その背景には石油その他輸入原材料の価格が低下していることが影響しているようにも思われます。販売価格の下がり方よりも仕入価格の下がり方が大きいので、企業収益はさらにそこから増えることになってくるわけです。(以下割愛)』(10月決定会合後の総裁会見より)

となっておりますがね!!!!

『別のある委員は、市場関連の予想物価上昇率指標が低下している点について、原油価格の動きとともに欧米の類似の指標と連動している面が大きいとの見方を示した。』

ワロタ。

『こうした議論を踏まえ、多くの委員は、先行き、物価の基調を規定する需給ギャップは着実に改善し、予想物価上昇率も高まっていくことから、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2016 年度前半頃に2%程度に達する可能性が高いが、原油価格の動向によって多少前後する可能性があるとの見方を共有した。』

お、おぅ・・・・・・・・・


・木内さんの提案と反対意見なのですが・・・・・・・・・・

『一方、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は、実質金利の低下が一巡する中で限界的に逓減しており、国債市場の流動性に与える影響などの副作用が既に効果を上回っていると述べた。また、タームプレミアムを押し下げる効果が低下している可能性や、市場が資産買入れの限界を意識することで、その効果がさらに減殺されている可能性もあると指摘した。』

提案内容はご案内の通りなので割愛しますが前月の説明は以下の通り。

『一方、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は逓減しており、導入時の規模であっても、その追加的効果を副作用が既に上回っていると述べた。この委員は、副作用として、金融面での不均衡の蓄積や国債市場の流動性に与える影響に加えて、金融緩和の正常化の過程で日本銀行の収益が減少し、自己資本の毀損や国民負担の増加にも繋がりうることを指摘した。』(8月議事要旨より)

比較してみると味わいがありますが、ではかみついている2名の見解はと言いますと・・・・・・・・・

『これに対して、ある委員は、中国経済が減速しており、その影響が懸念されるもとで、金融緩和の程度を縮小することは適当ではないとの見方を示した。』

木内さんの提案も緩和拡大であって拡大ペースが減るだけなんですけどねえと思いますし、何で「中国経済が減速しており」で反対になるのかが良く分からん。

『別の一人の委員は、「量的・質的金融緩和」はタームプレミアムの押し下げ以外にも、予想物価上昇率への働きかけなど、複数の経路を想定した政策であり、政策効果は幅広い観点から分析していく必要があると述べた。』

じゃあ何がどう効いているのか分析してください。


・・・・・・・とまあ毎度の噛みつきなのですが、最初の頃に比べてここのトーンが落ちているのが印象的でありまして、何せ当初は「副作用は理論的にも現象面でも観測されない(キリッ)」とかカミツキガメ状態になっていたのに、ここに来て随分大人しくなっている辺りもこれはもしかして政策委員会のトーンが置物リフレ理論に対して相当距離を置いてきているという焦げ臭さがあるのか(あたくしのべき論的願望がはいっているような気がするので念のため申し添えます)もしれないとちょっとこの辺を読んでウキウキしているアタクシがいるのでありました。

ちなみに前回前々回はこういう噛みつきになっておりました。

『これに対して、複数の委員は、金融政策の遂行に当たっては、日本銀行の財務の健全性に配慮しつつも、物価安定の実現という政策目標を最優先すべきであるとの見方を示した。そのうえで、委員は、「量的・質的金融緩和」のもとでは、従来より収益の振幅が大きくなると見込まれることを踏まえ、日本銀行の財務の健全性を確保する観点から、平成 25 年度および 26 年度決算では、財務大臣の認可を受けて、剰余金について、法定の5%を超える金額を準備金として積み立てていることを確認した。また、ある委員は、正常化の過程での国民負担を論じるのならば、金融緩和の過程での日本銀行の収益の増加や景気回復の利益についても考えるべきだと述べた。』(8月議事要旨より)

『これに対し、何人かの委員は、消費者物価上昇率が0%程度で推移するなど2%の「物価安定の目標」に向けてなお途半ばである現時点での減額開始は、政策効果を大きく損なうとの見方を示した。複数の委員は、現状、金融面での不均衡や金融緩和の副作用を示す理論や事実に基づく具体的な根拠はないと述べた。このうちある委員は、減額開始が金利の急上昇や実体経済の悪化を招くおそれがあるほか、金融政策の遂行に当たっては、日本銀行の収益よりも、物価安定の実現という政策目標を優先すべきであると付け加えた。また、この委員は、短期間での「物価安定の目標」の達成が難しいと主張しながら、金融緩和スタンスを後退させるのは矛盾しているとも述べた。』(7月議事要旨より)

・・・・・・・なんかこう段々威勢が悪くなっているように見えるのですがこれはどういうインプリケーションがあるのやらという事で、まあ勝手読みすると置物リフレ理論の退場近し(理論は退場するけど置物が退場するとは思いませんがね)なのかも知れませんよ、というのは少々読み過ぎであることはご承知おき頂きたいとしつこいですけど申し添えます。


#いかん議事要旨ネタだけで時間切れorz




2015/10/13

お題「市場メモ/金融経済月報/SEP関連メモ」

新日銀ネット第2段階分の稼働は予定通り本日から実施です。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151011a.pdf
2015年10月11日 日本銀行 新日銀ネット第2段階開発分の稼動開始について


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151011b.pdf
新日銀ネットの全面稼動開始

○市場メモ雑談

・3M入札は割と穏当になって買入も順当

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151008.htm

(3)募入最低価格 100円00銭1厘5毛(募入最高利回り)(-0.0056%)
(4)募入最低価格における案分比率 24.5617%
(5)募入平均価格 100円00銭2厘8毛(募入平均利回り)(-0.0105%)

前週はマイナス1.88bp平均足切マイナス1.10bpとなりまして、bpで書くとイマイチ比較がしにくいのですが、お値段的には足切が3厘0毛で平均が5厘1毛なのですから前週から見ますとだいぶ穏当な入札になっております。

この間のTKRRですけど
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

2015/9/28 0.074
2015/9/29 -0.068
2015/9/30 0.049
2015/10/1 0.070
2015/10/2 0.092
2015/10/5 0.072
2015/10/6 0.059
2015/10/7 0.063
2015/10/8 0.049
2015/10/9 0.101

ということでT/Nの数字をダラダラと並べてみましたが、ドマイナスの数字になっているのは末初取引分ですが、末初取引の後の余波が一巡したかなと思いきや月曜からのGCは徐々に弱くなってきて、6M入札もご案内のように期初から最低金利更新とかやっておったのですが、3Mと6M発行日スタートとなる所では0.101%に金利が上昇の巻となりまして、そこに来るまでにGCレートが上がりそうで上がらないという感じになっていた(8日のT/Nに関してはもしかしたら新日銀ネット絡みで13日の足を避けたのかも知れませんが)のであの金利水準でそんなにポコポコ売れるもんなのかいなと少々????ではあったのですが、火曜の6Mはつよつよでしたけれども3Mはマイナス幅縮小という事で穏当穏当。

金曜の短国買入(短国買入のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151009.htm
国庫短期証券買入 15,000 2015年10月14日

どうせなら1兆円でオファーしてくれればもう少し金利が浮くのにと思いつつも順当に1.5兆円でのオファーとなりました。

結果(短国買入のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151009.htm
国庫短期証券買入 29,231 15,002 0.006 0.013 43.7

平均が1.3糸甘で足切が6糸甘とは微妙な流れ方という感じですが、金曜日付の売参を見ますとカレント3Mは563回がマイナス0.5bpなのでこれは箸にも棒にもかからず、前週の3M561回はマイナス2.5bpでして、平均落札コストがマイナス1.88bpですので1.3糸甘だとワークしないけれども6糸甘だったら落札コスト前後という数字になりますな。

でもって6Mと1Yはと言いますと、先週入札のあった6M新発は平均マイナス2.82bpでしたが、売参はマイナス8.7bpですので普通に大利食い。前月の1Y新発は558回で月末時点では発行の半分が打ち込まれているのですが、こちらは平均落札がマイナス2.52bpで売参はマイナス5.2bpなのでこれまた利食いになっている(正確には発行日以降のファンディングコストを計算しないといけないが)という事で、主に6Mと1Yで入ったとは思うのですが、微妙な流れ方をして前週(10/1)の3Mまで掛かっているのかどうかは興味があります。

ちなみに超どうでも良いのですが、9日付の売買参考統計値を見ますと6Mカレントの562回債の平均値単利はマイナス8.7bpと相変わらずの低さを誇っているのですが、その両隣の既発銘柄の引けは519回(3/22償還の1年物)でマイナス0.1bp、526回(4/20償還の1年物)でマイナス0.2bpと中々お洒落なイールドカーブになっているような気がするのは気のせいです。


ちなみに金曜の固定金利オペはほぼ落ち分のロールになっていました。


○金融経済月報なんですけどね

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1510.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1509.pdf(前回)


・声明文が基本的に同じなので現状判断はまあ同じ

『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで全文一致。

『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

はあそうですか。

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。この間、企業の業況感は、一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(今回)

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(前回)

ということで現状認識に関しては声明文で示されている通りで、短観に関する部分が書かれている(大企業製造業の現状判断DIが下がったので「一部にやや慎重な動き」という表現になっている)だけの変化ですね。


・先行き見通しですが

『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)
『先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)

ここまでは声明文にありますな。

『輸出は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

『輸出は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

見通しは同じとな。

『国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が明確な改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加を続けると予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が明確な改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加を続けると予想される。』(前回)

ここも同じ。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、持ち直しを続けると予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、持ち直しを続けると予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・ということで先行きの見通しも全然下げていないというこの大本営発表モードはナンナンデスカというオソロシイ内容。

#リスク要因の比較はめんどいので割愛します


でもって内容の部分で少々ツッコミを入れたいのですが、図表に関しては貼り付けをするスキルがございませんので図表なんちゃらという部分はすいませんが日銀のページを参照にしてちょ。


・生産の部分の説明が何とも

本文10ページになるのですけどね。

『鉱工業生産は、新興国経済の減速に加え、在庫調整の動きもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている(図表 20)。企業の生産活動は、昨年末以降持ち直してきたが、新興国経済の減速の影響や、世界的なIT関連需要の弱さに加え、軽乗用車の在庫調整が長引いていることもあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』

とありまして、図表20というのがPDFの43枚めにあるのですが、これ目盛をあまり細かくして出していないから分かりにくいのですが、直近盛大に落ち込んでいるような図にしか見えないのに堂々の「横ばい圏内」となっている所が実にアレ。なお先行き急上昇しているように見えるのは予測指数を反映しているからであることは言うまでもありません。

まあ落ち込んでいるにしてもゼロ近傍なら「横ばい圏内」とか言えるのかもしれませんが、マイナスに盛大に突っ込んでいる中で横ばい圏内とはこれいかにという感じですけど、先行き見通しは以下の通りになります。

『先行きの鉱工業生産は、当面横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国経済が減速した状態から脱し、在庫調整が進捗するにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。企業からの聞き取り調査などを踏まえると、7〜9月の鉱工業生産は、前期比で小幅のマイナスも含め横ばい圏内で推移すると見込まれる。』

うーんこの。業種別の見通しはご参考までに。

『業種別にみると、はん用・生産用・業務用機械は、中国向けの金属工作機械や産業用ロボットを中心に減少すると予想される。輸送機械は、北米向けが堅調に推移する一方、国内向けは軽乗用車の在庫調整の影響などから、減少すると予想される。鉄鋼も、アジア需給の悪化や軽乗用車の販売不振に伴う在庫調整の動きから、ペースを鈍化させつつも減産が続くとみられる。電子部品・デバイスは、中国のスマートフォン関連需要の伸び悩みを主因に減少すると見込まれる。』

『一方、化学は、化粧品などの日用品が訪日外国人向けを中心に堅調に推移するもとで、石油化学関連のプラント定期修理の終了の影響もあって、しっかりとした増加に転じる見込みである。10〜12 月については、海外需要の動向を巡って不確実性は高いが、生産は再び増加に転じるとの感触である。』

『業種別にみると、輸送機械は、海外需要が北米向けを中心に堅調に推移するもとで、生産拠点の国内回帰の動きや国内向けの新車投入効果もあって、増加すると予想される。電子部品・デバイスも、新型スマートフォン向けの部品を中心に、増産に転じると予想される。化学は日用品などを中心に増産が続き、鉄鋼も自動車関連を中心に8四半期振りの増加に転じる見通しにある。一方、はん用・生産用・業務用機械については、海外向けの半導体製造装置や金属工作機械が弱めに推移するもとで、国内向けの土木建設機械において排ガス規制強化前の作り込みの反動減が予想されることから、全体として減少すると考えられる。 』

だそうです。


・物価に関しては大勝利宣言の布石が着々と打たれています

物価に関しては色々とああでもないこうでもないと説明していますが。

『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている(図表 30(1))。8月の前年比をみると、除く生鮮食品は−0.1%と前月(0.0%)から伸び率がわずかに低下し、2013 年4月以来のマイナスとなっている。一方、除く食料・エネルギーは+0.8%と、前月(+0.6%)から小幅にプラス幅を拡大している。基調的な変動を捉えるひとつの方法として、刈込平均値をみると(図表 31(1))、このところ振れを伴いつつ0%台半ばで推移している。』

『除く生鮮食品・エネルギーの前年比をみると(図表 31(2))、1〜2月をボトムに再び伸びが高まってきており、8月は+1.1%と、昨年2月の直近ピーク(+0.9%)を上回っている。』

>昨年2月の直近ピーク(+0.9%)を上回っている
>昨年2月の直近ピーク(+0.9%)を上回っている
>昨年2月の直近ピーク(+0.9%)を上回っている

昨年の2月と言いますと消費増税直前の駆け込みでヒャッハー気味になっていた時期で、この時期には日銀大勝利宣言モードのときでして、その時を上回っているという文言をしらっと入れている辺りがなんとも怪しげ。


『この間、消費者物価を構成する各品目の前年比について、上昇品目数の割合から下落品目数の割合を差し引いた指標をみると(図表 31(3))、4月以降、はっきりと上昇しており、足もとでは直近ピーク(2008 年10月)を明確に上回る水準で推移している。 』

>足もとでは直近ピーク(2008年10月)を明確に上回る水準で推移している
>足もとでは直近ピーク(2008年10月)を明確に上回る水準で推移している
>足もとでは直近ピーク(2008年10月)を明確に上回る水準で推移している

2008年と言えば円安原油高で物価が跳ねた時(まあその後海外金融危機で死亡しましたが)という訳でございまして、これまた味のある表現が打ち込まれております。


ちなみに項目別展開。

『最近の消費者物価の前年比をみると、財(除く農水畜産物)は、石油製品を除いてみれば、このところ着実な改善を続けている。』

「石油製品を除いてみれば」だそうです。

『内訳をみると、食料工業製品は、個人消費が持ち直すなかで、4月以降、為替相場の動きによるコスト高の転嫁を背景に、幅広い品目で値上げの動きがみられることから、プラス幅の拡大傾向が続いている。』

強気の価格設定で値上げとはさすがに書いていない辺りはお洒落。

『耐久消費財は、2月をボトムに伸びが高まっており、6月以降は、テレビや白物家電の値上げにも支えられて、プラス幅がはっきりと拡大している。その他財についても、5月以降、生活関連財等の値上げの動きなどから、プラス幅を拡大している。』

『一方、石油製品は、原油価格の動きを反映して、昨年 11 月以降、振れを伴いつつも、下落幅の拡大傾向を続けている。この間、被服は、振れを均せば、小幅のプラスで推移している。 』

うむ。

『一般サービスは、昨年6月以降0%程度で推移していたが、このところ伸びを高めている。』

ほほう。

『仔細にみると、外食が、4月以降、原材料高や賃金上昇を背景とした値上げが幅広くみられていることから、プラス幅をはっきりと拡大している。他のサービスも、このところ緩やかにプラス幅を拡大している。』

コストプッシュ・・・・・・・・・・まあ賃金上昇が消費増につながっていれば前向き循環ですけどね。

『内訳をみると、携帯電話通信料は、6月以降、昨年同時期の新料金導入による押し下げ効果が減衰し、8月には完全に剥落した。宿泊料は、堅調な訪日外国人需要を背景に、振れを伴いつつも、しっかりとしたプラスを続けている。また、家事関連サービスの一部には、人件費上昇を背景とした値上げの動きがみられている。もっとも、医療・福祉関連サービスや教育関連サービスには、そうした動きは窺われないほか、外国パック旅行は、このところ弱めの動きが続いている。この間、ウエイトの大きい家賃は、小幅の下落が続いており、年度替わりの4月以降も基調に変化はみられていない。 』

家賃に関してはさておきまして、結局の所コストプッシュの価格転嫁が出来る所は転嫁しているけれども、そうじゃない所は価格転嫁できなくてキツイという状態になっているのではないかと。

『公共料金については、4月以降、伸び率のはっきりとした低下が続いており、8月は前月から下落幅が一段と拡大している。これは、4月以降、制度変更に伴う保育所保育料の下落などが下押しに作用するもとで、燃料費調整制度に伴う電気代・ガス代の押し下げ寄与がはっきりと拡大していることによる。』

まあこれはよろし。

『国内の需給環境について、9月短観をみると(図表 32)、製商品・サービス需給判断DIは、大企業と中小企業の間で若干のばらつきがみられるものの、総じてみれば、昨年初にかけて改善したあと、横ばい圏内の動きとなっている。生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIの加重平均である短観加重平均DIは、6月に新卒採用の影響もあってわずかに悪化したが、9月は再び「不足」超幅を拡大しており、先行きも同様の傾向が続くと見込まれている。この間、販売価格判断DIについては、景気回復を背景に既往のコスト高を転嫁する動きが続くもとで、非製造業を中心に緩やかな改善傾向を続けていたが、足もとでは商品市況の下落の影響からやや弱含んでいる。 』

短観は需給ギャップの改善傾向だそうで。

『この間、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる(図表 33)。 』

でまあこの図表33の所なのですが、毎度毎度予想物価上昇率についてはこの一言で済ませているのですけれども、この図表33を見てますと、『(1)家計の予想物価上昇率』ではきっちり下向き、『(2)エコノミストの予想物価上昇率』は『2〜6年度先の予想物価上昇率(ESPフォーキャスト)』は横ばいですがより長期の『6〜10年先の予想物価上昇率(コンセンサス・フォーキャスト)』は下向き、『(3)市場参加者の予想物価上昇率<QUICK調査>』は盛大に下を向いており、『 <物価連動国債のBEI>』では短い物国のBEIだけ上がっていますが、これは期近マジックによるものなので参考になりません。

・・・・・・・・・ということで、添付されている図表33の何処をどう見るのと「予想物価上昇率は全体として上昇」となるのかさすがにこれは理解に苦しむとしか申し上げようがないのですが、もうちょっと明快な説明を求めたいですし、説明できる別のデータがあるならそれをちゃんと出して頂きたいものですな。


○SEPネタ(メモ)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150917ep.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee

SEPバージョン(PDFの場合は議事要旨の後ろについているがHTMLバージョンの場合は別URLになる)がございましてですね・・・・・・・・・・・・・・・

『The Outlook for Economic Activity』

『Participants generally projected that, conditional on their individual assumptions about appropriate monetary policy, real gross domestic product (GDP) would grow from 2015 through 2017 at a pace slightly above their estimates of its longer-run normal rate, and that real GDP growth would then slow in 2018 to a rate at or near their individual estimates of the longer-run rate. Participants pointed to a number of factors that they expected would contribute to moderate real output growth over the next few years, including improving labor market conditions, strengthened household and business balance sheets, the boost to consumer spending from low energy prices, diminishing restraint from fiscal policy, and still-accommodative monetary policy.』

『Compared with their Summary of Economic Projections (SEP) contributions in June, all participants revised up their projections of real GDP growth for 2015, reflecting stronger-than-anticipated growth over the first half of the year. Most participants revised down their projections of real GDP growth in 2016 and 2017. Several participants cited slower projected productivity growth as a reason for their downward revisions. The median value of participants' current projections for real GDP growth was 2.1 percent in 2015, 2.3 percent in 2016, 2.2 percent in 2017, and 2.0 percent in 2018. Although about half of the participants marked down their projections of real GDP growth in the longer run, the median remained at 2.0 percent.』

これ図表があって、前回の見通し分布が破線、今回のが棒グラフで示されていて、説明読むよりもそっちをみた方が一発で分かるのですが(汗)手前の見通しが上がって後ろがさがっているのですよねGDPは。なおリスク認識はダウンサイドが若干上昇。

『Most participants projected that the unemployment rate would decline a bit further over the remainder of 2015 and be at or below their individual judgments of its longer-run normal level from 2016 through 2018. The median of participants' forecasts for the unemployment rate in the fourth quarter of each year was 5.0 percent in 2015 and 4.8 percent from 2016 through 2018. Compared with the June SEP, participants' projected paths for the unemployment rate generally shifted down somewhat through 2017. Many participants noted that recent data pointing to faster-than-expected improvement in labor market conditions were an important factor underlying the downward revisions to their unemployment rate forecasts. All but a few participants revised down their estimates of the longer-run normal rate of unemployment; as a result, the median estimate edged down to 4.9 percent. Several participants noted that still-subdued wage and price inflation despite the stronger-than-expected momentum in the labor market suggested a lower level of the longer-run normal rate of unemployment than they had thought previously. A few also mentioned research indicating that demographic groups with lower average unemployment rates have accounted for an increasing fraction of the labor force.』

失業率の見通し自体が下がっているのはウマーなのですが、ロンガーランの失業率も下がっているのはこれはこれで微妙。(完全失業率が低いとなったら改善までの距離が長くなるので)また、リスク認識的には失業率アップサイドが若干増えています。

『The Outlook for Inflation』

『Compared with the June SEP, almost all participants marked down their projections for PCE inflation this year, noting that inflation had been running below their earlier projections and that further declines in energy prices and import prices were putting additional temporary downward pressure on PCE inflation. Nearly all participants saw PCE inflation picking up in 2016 and rising further in 2017, and almost all saw inflation at or close to the Committee's 2 percent longer-run objective in 2018.』

『Some participants also marked down their projections for core PCE inflation from 2015 through 2017, although almost all still expected core inflation to rise gradually over the projection period and to reach a level at or near 2 percent in 2018. The median values of projections for PCE inflation were 0.4 percent in 2015, 1.7 percent in 2016, 1.9 percent in 2017, and 2.0 percent in 2018, and the median values for core PCE inflation were 1.4 percent in 2015, 1.7 percent in 2016, 1.9 percent in 2017, and 2.0 percent in 2018.』

『Factors cited by participants as likely to contribute to a rise of inflation toward 2 percent included stable longer-term inflation expectations, tighter resource utilization, a pickup in wage growth, the waning effects of declines in energy prices and appreciation of the dollar, and still-accommodative monetary policy.』

『Figures 3.C and 3.D provide information on the distribution of participants' views about the outlook for inflation. The range of participants' projections for PCE inflation in 2015 widened slightly compared with June, reflecting in part differences in participants' assessments of the effects of the declines in energy and import prices on the outlook for inflation. The dispersion for PCE inflation for 2016 and 2017 was about unchanged. Similarly, the ranges for core PCE inflation widened slightly in 2015 and were unchanged for 2016 and 2017. The distributions for both inflation measures in 2017 and 2018 were notably more concentrated near the Committee's 2 percent longer-run objective than those for 2015 and 2016.』

ということで超手抜きメモで引用だけしているのですが、物価に関してはこれまた図表を見ると分かりやすいのですが、見通しも下がっていますし、リスク認識に関しては前の2つよりも物価に関してのダウンサイドリスクが割と分かりやすく増えていまして、従来はバランスだったのですが、今回リスクに関してはPCEインフレ、コアPCEインフレの双方とも「リスクは概ねバランス」から「リスクはダウンサイド」の方が優勢になるという結果になっておりまして、要は「物価のダウンサイドリスクへの意識が高まった」というのが今回の利上げ見送りの一番の要因というのが(これだけを見てロジカルに考えればそうなる、という意味で)分かるというものです。

ちなみに「先行きの不透明感」に関するグラフもある(図表4の辺りになります、数値の見通しは図表3です)のですが、不透明感に関してはそれほどの変化は無くて、このSEPのみを額面通りに受け止めると、先行きの不確実性がどうのこうのよりも物価に関するリスクの方が問題として大きく認識されている、という事になるようですがまあ実際は総合的なサムシングとかそういう話なんでしょうけど念のためメモを置いてみました。



2015/10/09

お題「FOMC議事要旨を寝起きで鑑賞/総裁定例会見より」

ファンの方はともかくメディアがノーベル文学賞今年も受賞ならずというネタでいじるのはそろそろ止めて差し上げた方が・・・・・・・

○寝起きでFOMC議事要旨

寝起き超斜め読みなので引用大会ですいませんが。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20150917.htm

・利上げ判断の議論部分を引用してみるよ

まずは『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最後の3パラグラフでござる。

『Participants discussed the potential implications of recent economic and financial developments abroad for U.S. economic activity and inflation.』

とのことですので鑑賞。

『A material slowdown in economic growth in China and potential adverse spillovers to other economies were likely to depress U.S. net exports to some extent.』

『In addition, concerns associated with developments in China and other emerging market economies had contributed to a further appreciation of the dollar and declines in prices of oil and other commodities, which were likely to hold down U.S. consumer price inflation in the near term.』

『In the United States, equity prices fell, on balance, amid significant volatility, and risk spreads for businesses widened.』

海外経済の輸出への影響とか、中国新興国への懸念がドル高と商品価格下げとなって近いタームの消費者物価に引き下げ要因とか、株式市場の下落やボラの上昇やらスプレッドの拡大とかまで指摘ということで、FOMC後のイエレン議長による説明でてんこ盛りになっていたリスク要因が指摘されていますな。

『Many participants judged that the effects of these developments on domestic economic activity were likely to be small, but they acknowledged the risk that they might restrain U.S. economic growth somewhat.』

これらの影響は小さいがそうは言ってもこれらのリスクが米国経済の成長に幾分か抑制要因になるかもしれませんと認識していますという事ですが、どう見てもビビリ入っているだろという所ですな。

『In particular, the appreciation of the dollar since mid-2014 was still a substantial drag on net exports, and the further rise in the dollar over the intermeeting period could augment the restraint on U.S. net exports.』

でここでドル高の悪影響の話が出てくるのがこれまたアチャーという所で、これ言い出すと他の主要国が緩和継続とか拡大モードの中だと正常化できるのかよという連想が起きると思うのだが、FRBはその辺りあまり何も考えずに議論してるのかと疑いたくなる。

『Some participants commented that the recent decline in equity prices needed to be viewed in the context of overall valuation levels, which they saw as relatively high, and a couple noted that volatility had begun to subside.』

株式市場の下げとかマーケットボラの件についてはさすがに複数名とか2名とかの参加者からそこまで大騒ぎする話かよという指摘があるのはちょっとホッとするのだが、マイナーな意見であるというのも何と申しますかで、中国ガーというのは勿論あるのですけれども、市場のボラ自体は元々正常化に関する説明がブレブレで政策反応関数が訳分からんことによって起きている面も相当あるだろと思うのですけれども、その反省度合いが少ないようで誠に遺憾。


次のパラグラフ。

『During their discussion of economic conditions and monetary policy, participants indicated that they did not see the changes in asset prices during the intermeeting period as bearing significantly on their policy choice except insofar as they affected the outlook for achieving the Committee's macroeconomic objectives and the risks associated with that outlook.』

だったらファイナンシャルコンディションが幾分かタイト化したとかそういう話すんなよ。

『Many of them saw the likely effects of recent developments on the path of economic activity and inflation as small or transitory. Most participants continued to anticipate that, based on their assessment of current economic conditions and their outlook for economic activity, the labor market, and inflation, the conditions for policy firming had been met or would likely be met by the end of the year.』

従って年内には利上げするのが適切と多くの参加者が考えていると。

『However, some participants judged that the downside risks to the outlook for economic growth and inflation had increased. In their view, although the time for policy normalization might be near, it would be appropriate to wait for information, including evidence of further improvement in the labor market, confirming that the outlook for economic growth had not deteriorated significantly and that inflation was still on a path to return to 2 percent over the medium term.』

一方で数名の参加者は正常化タイミングは近いのは認めているものの、よりエビデンスが必要でまだそんなにさっさと利上げできる状況ではない、というのはSEPで年内利上げに札を入れなかった3名(利上げしないは4人だがコチャラコタは来年もマイナス金利というオモシロ予想をしているので「近い」とは言わない気がする)ですな。

『A few mentioned that a pickup in wage increases could bolster their confidence that resource utilization had tightened sufficiently to help move inflation toward the Committee's objective, but they did not view an acceleration in wages as a necessary condition for gaining such confidence.』

そうでしょうなあという感じですが、賃金が上昇してくると確信が持てるようになるんだけど、それが必ずしも必要条件な訳ではないという見解が出ているのは賃金がなかなか上がらんというイメージが共有されているんでしょうなあと。


次のパラグラフから。

『Participants weighed a number of risks associated with the timing of policy firming.』

キタコレ。

『Some participants were concerned that the downside risks to inflation could be realized if the target range for the federal funds rate was increased before it was clear that economic growth would remain at an above-trend pace and downward pressures on inflation had abated. They also worried that such a premature tightening might erode the credibility of the Committee's inflation objective if inflation stayed at a rate below 2 percent for a prolonged period.』

早すぎる利上げ着手は物価にダウンサイド圧力を掛けるリスクがあるという数名の指摘で、物価が伸びていない状態が長いのだから急ぐ必要なしという指摘。

『It was noted that monetary policy was better positioned to respond effectively to unanticipated upside inflation surprises than to persistent below-objective inflation, particularly when the federal funds rate was still near its effective lower bound. Such considerations also argued for increasing the target range for the federal funds rate gradually after policy normalization was under way.』

政策金利が下限制約にあるという状況は経済のアップサイドへの対応は出来るけれどもダウンサイドへの対応が下限制約に引っかかるのだから慎重に対応するのが吉という話があるものの・・・・・・・・

『Some other participants, however, expressed concerns about delaying the start of normalizing the target range for the federal funds rate much longer. For example, a significant delay risked an undesired buildup of inflationary pressures or economic and financial imbalances that would be costly to unwind and that eventually could have adverse consequences for economic growth. In addition, a prompt decision to firm policy could provide a signal of confidence in the strength of the U.S. economy that might spur rather than restrain economic activity. These participants preferred to begin policy firming soon, with most of them expecting that beginning the process before long would allow the target range for the federal funds rate to be increased gradually.』

数名の参加者(なので反対票の人以外で投票参加者以外も含めて)は利上げ開始が遅れる事への懸念ということでインフレ圧力を高める事に加えて金融不均衡の話キタコレというのがありますし、早期利上げの実施は「FOMCは経済の見方を強く見ている」というメッセージを与えてコンフィデンスを高めることもできるでしょうとの指摘。


・では何を持って判断するのか

でもって『Committee Policy Action』の所にはそんな議論があって、ここの3番目のパラグラフから3つほど。

『In assessing whether economic conditions had improved sufficiently to initiate a firming in the stance of policy, many members said that the improvement in labor market conditions met or would soon meet one of the Committee's criteria for beginning policy normalization.』

労働市場に関しては多くのメンバーが正常化認定。

『But some indicated that their confidence that inflation would gradually return to the Committee's 2 percent objective over the medium term had not increased, in large part because recent global economic and financial developments had imparted some restraint to the economic outlook and placed further downward pressure on inflation in the near term.』

数名のメンバーは物価の方のコンフィデンスが増えていませんキタコレで要因は海外と金融市場の状況がこれからさらなる抑制圧力になるとな。

『Most members agreed that their confidence that inflation would move to the Committee's inflation objective would increase if, as expected, economic activity continued to expand at a moderate rate and labor market conditions improved further.』

ただ殆どのメンバーは物価に関してもコンフィデンスは強まったそうな。

『Many expected those conditions to be met later this year, although several members were concerned about downside risks to the outlook for real activity and inflation.』

多くのメンバーは年内には利上げ条件を満たすとみているけれども複数名は見通しに関して経済と物価のダウンサイドリスクを懸念しているとな。

次のパラグラフ。

『Other factors important to the Committee's assessment of the inflation outlook were the expectation that the influences of lower energy and commodity prices on headline inflation would abate, as had occurred in previous episodes, and that inflation expectations would remain stable.』

『With energy and commodity prices expected to stabilize, members' projections of inflation incorporated a step-up in headline inflation next year. However, several members saw a risk that the additional downward pressure on inflation from lower oil prices and a higher foreign exchange value of the dollar could persist and, as a result, delay or diminish the expected upturn in inflation.』

『And, while survey measures of longer-run inflation expectations remained stable, a couple of members expressed unease with the decline in market-based measures of inflation compensation over the intermeeting period.』

つーことで物価のリスクに関して更に議論されている訳でして、一応エネコモ価格が安定化すればという話になってはいるものの、市場のインフレ期待が下がっている件についての指摘もあったり、ドル高の影響の話もあったりと、警戒モードのネタが議事要旨としてこれだけ並べられるとうーむという感じですな。

でもって次のパラグラフ。

『After assessing the outlook for economic activity, the labor market, and inflation and weighing the uncertainties associated with the outlook, all but one member concluded that, although the U.S. economy had strengthened and labor underutilization had diminished, economic conditions did not warrant an increase in the target range for the federal funds rate at this meeting.』

ということで、これらの要因を考えると米国の経済は強くなって労働市場のスラックは消えてきているものの、まだ利上げのタイミングではないとの結論(地区連銀総裁の方のフィッシャーを除く)とな。

『They agreed that developments over the intermeeting period had not materially altered the Committee's economic outlook. Nevertheless, in part because of the risks to the outlook for economic activity and inflation, the Committee decided that it was prudent to wait for additional information confirming that the economic outlook had not deteriorated and bolstering members' confidence that inflation would gradually move up toward 2 percent over the medium term.』

それは分かったが結局何がポイントなのかがいまいち明示的ではないのがぐぬぬという所です。ただまあ今回の議事要旨ではマンデートのもう一方になります物価の話を延々としているので、物価がちゃんと上がって来るのかというのが重要という話になる訳で、はてさてそれって今月のFOMCまでにコンフィデンス高まるのかねえというのは無理でしょと来ますし12月に関しても中々こうぐぬぬな感じと市場は取るんでしょうなあとは思うのでありました。

『One member, however, preferred to raise the target range for the federal funds rate at this meeting, indicating that the current low level of real interest rates was not appropriate in the context of current economic conditions.』

これはラッカー怒りの反対ね。


・ちなみに最初の所でバランスシートの話があります

最初に『System Open Market Account Reinvestment Policy』というのがあるのでメモついでに引用だけ置いておきます。

『A staff briefing provided background on the macroeconomic effects of alternative approaches to ceasing reinvestments of principal on securities held in the SOMA after the Committee begins to normalize the stance of policy by increasing the target range for the federal funds rate. The briefing presented analysis that was based on an assumption that the cessation of reinvestments, once implemented, would be permanent. The briefing suggested that if economic conditions evolved in line with a modal outlook, differences in macroeconomic outcomes would be minor across approaches that ceased reinvestments soon after initial policy firming or continued reinvestments until certain levels of the federal funds rate, such as 1 percent or 2 percent, were reached. As a result, the appropriate path of the federal funds rate would be only modestly affected. However, if substantial adverse shocks occurred, continuing reinvestment until normalization of the level of the federal funds rate was well under way could help avoid situations that would warrant a larger reduction in the federal funds rate than perhaps could be accomplished given the constraint posed by the effective lower bound to nominal interest rates.』

どうもバランスシートの縮小は政策金利1%超えてからやっとご相談とかそんなイメージのようですな。

『In the ensuing discussion, participants considered the advantages and disadvantages of alternative approaches to reinvestment. Participants referred to the Committee's statement on Policy Normalization Principles and Plans, which indicates that the timing of the cessation or phasing out of reinvestments will depend on how economic and financial conditions and the economic outlook evolve. Several participants emphasized that continuing reinvestments for some time after the initial policy firming could help manage potential risks, particularly by reducing the probability that the federal funds rate might return to the effective lower bound. Some participants expressed a view that, in contrast to the assumption in the staff analysis, the Committee could choose to resume reinvestments if macroeconomic conditions warranted. At the same time, it was also highlighted that a larger balance sheet could entail costs, and that the Principles and Plans indicate that, in the longer run, the SOMA portfolio should be no larger than necessary to conduct monetary policy efficiently and effectively. The Committee made no decisions regarding its strategy for ceasing or phasing out reinvestments at this meeting.』

とまあそういうことで、償還再投資に関して特段何か決まったという話ではないのですが、割とバランスシート縮小に関する影響については気にしているんだなあというのは把握しました。



○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1510a.pdf

・物価見通しはどう見てもこれは後ずれだが知らんがなというスタンス

『(問) 生産、輸出関連の統計で最近弱い動きがみられ、マーケットでは 7〜9月期のGDPがマイナスになるのではないかとの見方も引き続きあります。国内景気の足取りのもたつきが需給ギャップの改善を遅らせ、物価の基調に与える影響をどうお考えになりますか。また、16 年度前半頃としている 2%の物価目標の達成時期が後ずれするリスクが高まっていないのか、ご見解をお聞かせ下さい。』


『(答) 先程申し上げたように、わが国経済は、確かに輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられていますが、先日の短観でも確認されたように、過去最高水準の収益を背景に、企業の前向きな投資スタンスは維持されています。また、雇用・所得環境が着実に改善する中で、個人消費は底堅く推移していますし、住宅投資も持ち直しており、景気は全体として緩やかな回復を続けているとみています。また、これも様々なデータ、さらには日銀短観でも確認されたことですが、企業の人手不足感がさらに強まるなど、労働需給の引き締まり傾向も続いており、マクロ的な需給バランスは、労働面を中心に、着実に改善傾向をたどっているとみています。』

『こうしたもとで、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落に伴って 0%程度になっていますが、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価の前年比は、既に 1%を上回る水準まで上昇していますし、その他様々な指標をみると、物価の基調は着実に高まってきているとみています。』

こういうのを暖簾に腕押し糠に釘という。

『先行きの消費者物価の前年比は、物価の基調が着実に高まるもとで、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である 2%に向けて上昇率を高めていくと考えており、2%程度に達する時期は、2016 年度前半頃になると予想していますが、原油価格の動向によっては多少前後する可能性はあると先程申し上げたところです。』

『いずれにしても、先行きの具体的な消費者物価上昇率の見通しについては、次回の決定会合で十分に議論して、「展望レポート」でお示しすることになります。』

どう見ても次回展望レポートで後ずれする気が満々です本当にありがとうございました。


・暖簾に腕押し暖簾に腕押し

『(問) 2 点伺います。1 点目は先程も言及があった短観ですが、販売価格判断DIや翌日発表になった企業の物価見通しをみると、かねがね価格設定行動が大事だと言われているその辺りが少し弱いのではないかという気がします。今回、物価の見通しについても判断は変えていないのですが、短観の結果を踏まえた上で、なぜ最終的に変化しなかったのかをもう少し細かく教えて下さい。(後半割愛)』

『(答) ご指摘のように、短観で企業の販売価格の見通し、あるいは仕入価格の見通しも若干下がっていることは事実です。仕入価格の見通しの方がやや下がっており、その背景には石油その他輸入原材料の価格が低下していることが影響しているようにも思われます。販売価格の下がり方よりも仕入価格の下がり方が大きいので、企業収益はさらにそこから増えることになってくるわけです。』

出ると思った。でもそれって物価には低下圧力ですよね?

『将来の価格の動きをみるためには、足許の需給ギャップの動向、企業や家計その他の予想物価上昇率の動き、企業の価格設定行動、あるいは賃金の動向といった各種の指標をみながら考えていく必要があると思います。全体としてみると、先程申し上げた通り物価の基調が着実に高まっていることは事実ですので、そうしたことを踏まえて、今回の公表文にも示した通り、従来の考え方を踏襲したわけです。もとより、物価の動向、特に物価の基調については、引き続き十分注視していきたいと思っています。(後半割愛)』

「全体として見ると」というフワフワの前提を置いて「事実です(キリッ)」とか言われましても何が何やらとしか申し上げようがないですが、まあこうやって言い逃れを続けるという事ですな。


・昨年との違いについて

『(問) 予想物価上昇率について、市場のBEIとか、今回の短観の企業の物価見通しなどのサーベイをみても、結構下がってきている指標が増えてきていると思うのですが、その中で今回も全体として上昇しているとみられるという判断をされた背景を教えて下さい。また、市場などでは、予想物価上昇率が下がってきているので、昨年同様 10 月末に追加緩和をやるのではないかというような見方が増えています。総裁からみて、昨年の 10 月と比べて何が違うのかまたは同じなのか見解を教えて下さい。』

うむ。

『(答) 前段の点については、確かにBEI、ブレイクイーブン・インフレーション・レートは、若干下がってきている──これは実は欧米でも同じなのですが──、そういう状況があることは事実ですし、日銀の短観でも、それ程大きなものでないにしても、販売価格や仕入価格あるいは、CPIの見通しについて若干低下しているということは事実です。』

欧米のBEIが下がったから日本のBEIも下がって良いという理屈は無いと思いますが。

『他方で家計の物価見通しというか、物価の予想は全く変わっていません。』

それ昔から大体同じなんですが。

『また、企業の見通しやエコノミストのフォーキャスト、その他の色々なものをみても、足許は若干下がっていますが、先行きだんだん上がっていくという見通しは変わっていないようです。』

それは原油価格や商品価格の影響が剥落する分を見ているかも知れんが絶対水準で2%行くとかいう予想はよほどの変態仮面じゃないと居ないと思うのですけれども・・・・・・・・・・・・・

『さらには先程申し上げたように、企業の価格設定行動が、日次物価指数や週次物価指数などをみますと、昨年とかなり様変わりで、価格の引き上げが続いています。』

さてここで昨年9月に行われた定例記者会見での総裁発言を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409a.pdf

『東大物価指数につきましては、日次であり、先行的な意味があると理解していますが、しかもカバレッジが2 割弱ということでもありますし、ごく短期的なセールス等の動きをよく反映するということもありますので、消費者物価の動きとは必ずしもパラレルではないという面もあります。』(昨年9月4日の総裁定例会見より)

・・・・・・・・・東大物価指数はこの1年で長足の進歩を遂げてしまわれたようで慶賀の念に堪えません(棒読み)。

というイヤミを垂れつつ更に続く。

『賃金についても、今年の春闘で昨年以上のベアその他が決定されたわけでして、そういったことを全体としてとらえると、予想物価上昇率も長い目でみれば全体として上昇しているという判断は変える必要はないと思っています。』

なお金融経済月報(ちょっとそこまで今日は時間がなさそう)の図表26から33辺りを見て何でそういう答えになるのかは意味プーではあります。

『追加緩和云々ということにつきましては、従来から上下双方向のリスクを点検して、「物価安定の目標」の達成のために必要とあらば、躊躇なく政策の調整を行うと申し上げていまして、この考え方には全く変わりはありません。』

はあそうですかという所ですが、この「違っている所」ってそう簡単にひっくり返しには来ないネタなので意地汚く粘る理由としては結構強力だと思いますけどね。



・日銀は政府の助け舟に乗るのでしょうか?????????

アタクシは追加緩和がどうのこうのというよりは、どうせ追加緩和しても2%に直ぐ行くわけではないですし、そもそも円安で強引に持って行くのを封印されてしまっている以上「デフレ脱却」で「第一の矢は強い経済を作る」という政府の話に乗ってしまって2年2%理論からの撤退を図らないとダメでしょと思っておりますので、まあ政府の最近の動きは「梯子外し」ではなくて「助け舟」だと思っているのですが、さてそこに乗るのか乗らずに屋根の上で一人裸踊りをして気が付いたらおまわりさんこの人ですと自爆してしまうのかは黒田さん次第なんでしょうなあとスタンスがどうなるかを見て判断するしかないですねとは思うのですよね。

ということでこんな質疑から。

『(問) デフレ脱却に関して教えて下さい。日銀関係の方に色々と話を聞いている中で、「デフレマインドはまだ払拭されていない」と言われます。総裁もそのような話をされていると思います。デフレマインドが払拭されないということは、まだデフレ脱却には時間がかかるのだろうなと考えてはいたのですが、先般、安倍総理が会見の中で「デフレ脱却は目の前だ」ということを話されました。デフレ脱却は目の前なのでしょうか。』


回答はご案内のようにヘッドラインになっていました。

『(答) デフレというのは「物価の持続的な下落」です。消費者物価あるいはその他の色々な物価指標でみても、90 年代の後半から─―消費者物価等で言うと 1998 年以来だと思いますが――、ずっと基調的にマイナスだったわけですが、この 2 年半くらいの「量的・質的金融緩和」のもとで、物価の基調がかなり変わってきていることは確かだと思います。』

キタコレ。

『ただ、足許では、原油価格の大幅な下落等の影響もあって、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比は 0%程度、生鮮食品とエネルギーを除いたところでみて 1%をちょっと超えたくらいですので、2%の「物価安定の目標」の達成およびそれを持続的に安定的に維持するという目標からみると、まだ道半ばだと思いますが、長きにわたって続いたデフレとデフレマインドは、この 2 年半くらいの間にかなり変わってきたと思います。』

ほう。

『ベースアップも長らくなかったわけですが、昨年、今年とこの 2 年間、ベースアップもありましたし、色々なデータからみていわゆるデフレ状況ではなくなったと思いますが、私どもの 2%の「物価安定の目標」との関係で言えば、まだ道半ばであるということだと思います。』

ということで、デフレは脱却しているという事のようですな。2%目標の時期を中長期的とかローリングターゲットにすれば「短期勝負の政策スキーム」といういつまで経っても未達呼ばわりでいずれ政策がテクニカルに爆発するという問題を軽減できると思いますが、これだと乗るのか乗らないのかはまだ良く分からんですかね。


・生産が弱いがキニシナイという斬新な発言部分

昨日もネタにしましたので引用だけ。

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、鉱工業生産は横ばいとのご認識かと思いますが、数字をみるとかなり下降トレンドにあるようにもみえます。マクロ的需給バランスという点で、人手不足なので生産下振れはさほど影響はないということでよろしいのでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 鉱工業生産指数は、4〜6 月が若干のマイナスで、7〜9 月はまだ分かりませんが、7 月、8 月をみる限りでは若干のマイナスで、全体としては横ばい状態だと思います。ご承知のようにGDPに占める鉱工業生産の影響、シェアは多分 2 割ぐらいだと思います。経済全体としての需給ギャップはやはり、全体の労働需給や企業の設備の稼働状況あるいは不足状況を勘案してみていく必要があろうと思います。鉱工業生産は重要ではありますが、それが大半を決めるという状況ではないと思います。(後半割愛)』

ふつうそれは前向き循環メカニズムが生産の所で切れている状態と定義されると思うのですが、黒田さん的にはそこを言い出すと敗北宣言な上に、今の枠組みだと逐次投入で追加やってもそれで物価があっという間に上昇しない限りただの無駄玉な(上に政策の爆発を早める)だけに、そういう話は強弁でスルーしながら、強い企業収益と雇用の所で説明していくという荒業に出ているということですな。


・付利がどうのこうの

最後の質問でしたが。

『(問) 付利の引き下げについてお伺いします。総裁はかねて付利の引き下げについては検討されていないというふうに重ねて表明されていますが、そのお考えというのは現在でも変わっていないのか確認させて下さい。また、近い将来そうした考えが変わる可能性がないかどうかについても併せてお願いします。』

『(答) 付利の引き下げについては検討しておりませんし、おっしゃるように近い将来考えが変わる可能性もないと思っています。』

字面で出ているよりも会見ビデオのニュアンスはもっときっぱりという感じで、どうせなら会見要旨の所に(キリッ)と入れて欲しかった(嘘)という所ですが(^^)、これを受けて昨日は中期が6.5bpの引けまで金利上昇していたり、付利下げを全力で予想していた何とかストの方々(の一部)が色々と混乱しておられたりと大変に香ばしい光景が見られましたな。


#うーむ月報と市場メモェ・・・・・・・・・・



2015/10/08

お題「決定会合は追加緩和無しの示唆もなしと/市場メモ少々」

利上げ後ずれの見方からリスクオンの動きで株や商品が堅調→ふむふむ
リスクオンの動きを受けて債券市場は軟調に推移→ファッ?

・・・・・・・何が何だか良く分からんですな後付講釈だけ聞いていても。

○決定会合レビュー雑談

・市場のプライスアクションは中々味があった件

昨日の金融政策決定会合は順当に12時に結果公表となって、債券は昼休みになりますのでさておきまして、株価指数先物とかドル円とかについては「追加緩和実施せず」→「株安円高」というファーストアクションがあった訳ですけれども、その後しばらくすると株はホイホイと値を戻すわドル円はホイホイと値を戻すわという展開になりまして、債券市場ちゃんも後場寄り後に下げて前場の安値(そもそも何で前場下げましたねんという所でもあるのだが)にツラ合わせに来たのですが、そこですかさず買いが入って戻るの巻。

ということで、追加緩和が無くて失望売りがどうのこうのとか恫喝まがいのレポートなんぞが出ていたりもしていたような気がしますが、追加緩和に関しては期待する動きもあったにしても「追加緩和が無かったら売られるだろうからそこで買いですな」という向きも入っていて、その人たちの動きの方が目立ったという事でしょうか(^^)。


・声明文:ものの見事に何も変化がないという攻撃キタコレ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k151007a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150915a.pdf(前回)

『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで声明文の比較なのですが・・・・・・・・・・

『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

うむ。

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。この間、企業の業況感は、一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(今回)

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(前回)

ということで、今回変化があるのは短観を受けて出ている業況感のコーナーでして、前回が7月会合の文言になりますが、前回は「企業収益が改善するなかで、業況感は総じて良好な水準で推移しており」だったのが今回やや表現が弱くなっています。

でまあそこを見ておーという事も可能は可能なのですが、これは今回の短観で大企業製造業の業況判断DIが前回よりも下がったために「一部にやや慎重」という表現を入れているという所だと思われまして、そこまで大きな意味があるという印象はない。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

金融環境とか物価とかの所も相変わらず同じ。


先行き見通し以降も同じです。

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)


『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(前回)

ということで、引用するまでも無いのではって勢いのコピペ決定会合声明文でございまして、足元生産が弱い指標が出ているとか賃金の指標があまりぱっとしないですよねとか、そういう話は盛大にスルーして先月と同じです攻撃恐るべしという所ですな。



・会見ネタは詳しくは明日ですけど簡単に

こんな辺りから。
http://jp.reuters.com/article/2015/10/07/idJPL3N12724C20151007
News | 2015年 10月 7日 18:58 JST
UPDATE 2-2%早期達成姿勢は変わらず、新興国減速の影響注視=日銀総裁

『[東京 7日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は7日、金融政策決定会合後の会見で「物価の基調は着実に高まっている」として追加緩和を見送った背景を説明した。一方、2%の物価目標の早期達成に必要なら、ちゅうちょなく追加緩和に踏み切る姿勢を強調。新興国経済の減速が国内の輸出・生産に影響を与えている点にも言及し、市場の追加緩和期待をつなぎとめた。』(上記URL先より、以下同様)

という風な解説になっていますが、印象としては追加緩和期待をつなぐというよりは追加緩和期待を盛り上げないようにする、という感じではなかったかと思います。

つまりですね、まああたしゃ毎度申し上げておりますように追加緩和をするよりもQQEの枠組み変更で金利政策に移行して時間軸を思いっきり長くするのと長期金利安定化スキームを打ち込むのが現実的に採る選択肢だと思うのですけれどもそれは兎も角として、月末追加緩和をするにしたってこのタイミングで追加緩和を示唆しちゃうとクレクレばかりが盛り上がってしまっていざ追加緩和を実施という事になると何をやっても材料出尽くしで、うっかりしたら「追加が足りない」とか言われる可能性だってある訳で、戦術的にも今回追加示唆とかしないわなあと思うのでありました。

でまあどうせ10月追加緩和をぶち上げている方々からもそういうレポートとか出てくるだろうなあとは思いますし、大体誰でも想像できそうな話ではありますが、これって既に「中央銀行のコミュニケーション」という意味では対話もへったくれも無くなっている状態な訳でして、まあうっかりしたら黒田総裁の時に出口に掛からないのかもしれませんけれども、こういうコミュニケーションをしていて出口政策とかまともに出来る気が1ミリもしないですから、何だかんだ言いまして将来は恐いですなあ以外の感想が中々出てこないというものです。


質疑応答は大体予想通りで「都合の悪い経済指標等でのツッコミ」→「似たようなジャンルの都合の良い経済指標等での返しで問題ないと説明」というああいえばこう言うを絵に描いたような質疑応答になっておりまして、一応念のためその一端を上記記事から引用しましょう。『<家計の予想物価上昇率は安定>』という小見出しから。

『現時点では追加緩和に踏み切らない理由として、「物価の基調は着実に高まっている」と説明。生鮮・エネルギーを除く新コアコアCPIが8月は前年比1.1%まで上昇したほか、日用品などの価格上昇が続いている点を指摘した。日銀が2日に公表した企業の物価見通しは、1─5年後いずれも下方修正された。市場では、日銀が物価のけん引役として重視する予想物価上昇率が低下している証左として追加緩和観測が高まっている。しかし総裁は、家計のアンケートでは将来物価が上昇するとの回答比率が横ばいであることを踏まえ、「家計の予想物価上昇率は全く変わってきていない」と反論。企業の物価見通しも、「足元下がっているが先行き上昇する見方は変わっていない」と指摘した。』

まあ質問された時点でこういう答えが出てくるのは確実でしたが見事にテンプレ通りの回答でちょっと笑ってしまいましたですが、そういう質疑の中でこの部分はちと「おー」と思った。『<新興国減速で輸出・生産横ばい>』という小見出しから。

『8月の鉱工業生産が前月比で1.2%と大幅に下落し、7─9月も2四半期連続で前期比マイナスとなる可能性が懸念されているが、総裁は「GDPに占める鉱工業生産のシェアは2割くらい」と指摘。物価を左右する需給ギャップを占う上では「全体の労働需給や企業設備の稼動状況などを見ていく必要があり、鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない」と説明した。』

>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない
>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない
>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない

・・・・・・・・・・・・(゚д゚)

えーっとすいません、生産って経済の前向き循環メカニズムが回るためのエンジンの一つではないのかと思うのですが、とは思いますし、上記説明にある全体の労働需給とか設備稼働状況云々というのを見るというのは話としては分かりますが、そうは言いましても生産統計って確りと経済状況にリンクしていると思いますし、まあ大体過去生産の所が変調になると先行きの経済見通しが変調になるという流れがある訳でして、これはちょっと強がりモードではないかと。

あと、質疑応答の最後の最後にこんなのがありましたな。

『仮に追加緩和に踏み切る場合、市場では国債の買い入れ拡大余地が少ないため、金融機関の手元資金に付く利息である当座預金の付利を引き下げるとの憶測がくすぶっているが、「付利引き下げは検討していないし、考えが近い将来変わる可能性もない」と切り捨てた。 』

これは結構なきっぱり型の言い切りでして、マネタリーベースを拡大するというQQEの建付けが生きているうちには付利の下げというのは選択肢にならんでしょうなあと思います。つまり建付けを全面的に変える場合に話としてあり得ないことも無いのでしょうが、現実に付利撤廃するとMBを増やしにくくなり、金利政策フレームワーク言いましてもどうせMB減ると引締めだ引締めだと言い出す置物理論の人たちがいるので、MBの積み上げがやりやすい状態というのは維持しておいた方が良いと思いますし、何らかの都合でまたMB積み上げをしようとした場合に一旦付利を廃止してしまうと廃止後に(利上げでもないのに)付利復活という訳にも行かないですから、まー枠組み変更しても付利は残しておいた方が無難ですよね(出口の問題もありますし)。



ただまあ何ですな、昨年10月に騙し討ち緩和を実施した、というのが思いっきりここに来て負の遺産になっている訳でして、「追加緩和を示唆しないのは次回の緩和でサプライズを与えるため」という解釈が普通に湧き上がってくるのが今のマーケットの仕様になっていますので、まさに先ほど申し上げたコミュニケーションの崩壊という話ではあるのですが、まーそういう調子で10月展望レポートで追加緩和ガーの話はまだまだ続きます、黒田先生の今後の作品にご期待ください!状態になっているのは致し方なしという所かと思いますが、そうやって追加緩和クレクレ状態の中毒状態に市場をしてしまうのが中期的に見てどうなのと言うと明らかにダメだろとしか思えません。


でまあ昨日は追加緩和空振りを受けて何とかストの皆様のレポートとかも出ていたようなのですが、どこの誰とは申しませんが「内閣改造の日に日銀が追加緩和で内閣改造のニュースを食うのは良くないので今回は次回緩和に向けた検討にとどめた(概ね意訳)」というようなレポートを拝読した瞬間にコーヒー盛大に吹いた次第なのですが、なんか知らんけど追加緩和を盛大に煽っておられた方々にくやしいのうwwwくやしいのうwwwという風情になっているのが何ともかんとも。

なお、10月30日追加緩和を全くないとは申しませんが、やるにしてもその追加緩和は次の政策枠組み見直しまでの時間繋ぎの物であり、逆にQQE政策の変身時期が極めて近い事を意味する追加緩和であって、追い込まれて追加緩和という敗北宣言は出てこないという妄想は相変わらず変化ないと申し上げておきましょう。


○市場メモ雑談

・SLFで短国とな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151007.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)964 2015年10月7日 2015年10月8日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2015年10月9日 2016年1月19日

(注3) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却対象銘柄は、国庫短期証券554回です。

短国554???ということですが、これは11月30日償還の暫く前に出ている3M短国の成れの果てでして、こんな銘柄流通玉あるのかよと思って日銀の買入明細見たら日銀保有分が964億円しか無い(まあそもそもSLFオファーされるときのオファー可能額が日銀保有額全部なので明細見なくても良いのですが、笑)次第で、そういやこの時期の短国買入は6Mと1Yのカレントしか入っていないわなとか思うのでした。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba151007.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)480 480 -0.400 -0.400
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(10月9日スタート分)3,393 3,393

ということで480億円落札ということですが、こんなオフザランどうなるのやら(まあ日銀が全部持っている訳ではないのでどこかの投資家に行けば出てくるでしょうが)と思ったです。


あとついでに固定金利オペは増額ロールでしたな。


・さて3M

本日は3Mの入札な訳ですが、期末前の短国逼迫の流れがそのまま続いていて、期末要因剥落どころか期初からいきなり短国入札の最低金利が続々更新とかどういう事やとしか申し上げようがないトホホな展開になっております。

短国買入のバランスから考えてどこかで短国が余って出てきて金利が浮上してくる筈とか思いながらもこの有様ということでして、まあ今週の入札やってマイナス金利で買う人が買って残りがどのくらい出てきますかという風になって在庫が徐々に重くなってくるのかなあというイメージですが、どーしてこうマイナス街道突っ走るのかねえと存じます。まあ今回も強いんでしょ(なげやり)。

あと、今回の新発の発行日の13日は新日銀ネットバージョンなんちゃらの稼働日に当たりますが、まあこの手の決済物って警戒する動きって必ず入るのですが、基本的に通常の取引を通常に打ち込む分には問題ない筈なのですけどね。


・基本は自動運転の話なのですが

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151007a.pdf
「適格担保取扱基本要領」の一部改正等について

これ自体は半期ごとの定例見直しで、ほぼ機械的にやる話だと理解しておりますが、今回ちょっと気になったのは、『18.企業を債務者とする電子記録債権』以降の所でして、電子債権とか証書貸付債権とかの掛け目がそこそこ下がっているのってなんか政策的な意味合いとかあるんでしょうかというお話なのですがご存知の方教えてジェネラルなのです。







2015/10/07

お題「6M入札がまたも低金利更新とかその他/FRBネタ少々」

ほほう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151006-00000526-san-pol
安倍首相会見 「TPPは国家100年の計」「関税撤廃の例外、数多く確保」
産経新聞 10月6日(火)12時0分配信

『TPPのメリットについて首相は「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれる。世界のバラエティーあふれる商品を安く手にできるだけでなく偽物の商品を買わされて後悔することはなくなっていく」と説明。「海外に旅行したときの電話代も安くなるかもしれない。サイバーの世界を飛び交う個人情報もしっかりと守られるようになる」と強調した。』(上記URLより)

何でもかんでも物価を上げれば良いというものではないという事ですね分かります。

#ところでMBの「伸び率」の表を出して解説している人がモーサテにいて朝から脱力なんですが


○6M入札とかその辺のメモ

・6M入札はまたまた利回り水準のマイナスが深くなるの巻

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151006.htm

(3)募入最低価格 100円00銭9厘(募入最高利回り)(-0.0181%)
(4)募入最低価格における案分比率 3.8245%
(5)募入平均価格 100円01銭4厘(募入平均利回り)(-0.0282%)

日銀短国買入専用機となっている6Mとか1Yの新発入札がマイナス入札になるのはいつもの事なので最早どうでも良いのですが、あちゃーと思ってしまうのはその水準がここに来て3Mとかもそうなのですが価格水準が切りあがっている(マイナスが深くなっている)事ですぞな。

期末前の9月2週目の短国買入の所で(資金需給的に打ってきたというのは後付では分かるのですけれども当時としては)意外なことに短国買入が予想されているよりも5000億円ほど多く打ち込まれてしまって急に玉が無くなった所に来て、期末要因でニーズがあるところにS&Pの格下げが打ち込まれてドル円ベーシスが一段の強含みとなってしまって短国が更に逼迫、という流れがそのまま持ちこされている格好になっていて、足元でのこの状況という事になっているかと存じます。

だいたいこれまでは期末月になるとその前までに短国買入が進捗していて期末になると買入フローを落としてくるのでそこで短国の需給が緩和されて期末要因分を相殺するという形になっていたので、3月中盤から4月の頭、6月中盤から7月の頭、という時期に3Mの短国入札がゼロから場合によっては若干のプラス水準まで金利が浮上してきて、それがちょうど償還ロール部分とマッチするような形になっていた訳ですが、今回は上記のように9月の1週と2週の3M入札で足切100円まで戻ったものの、その後にマイナス金利状態になって更にそのマイナス水準が深くなるという形になっているのが中々タチの悪いパターンで、3Mサイクルで回っていたシーズナリティーが崩れるというのも困ったもんだという感じではありますな。

まー普通に計算するとここから12月に掛けて短国買入の残高は漸減方向になる筈ではあるのですが、何せ7月の第2週以降マイナス街道をひた走り状態となっていて、9月の1週2週に瞬間ゼロ金利まで浮上したもののその後またマイナスでマイナス拡大と来ますと、それは3MTBが1回転してしまうのですけどという状況ではございますので、まーその短国買入の残高減る前に3M入札が1回転してしまっているというのがアレ。


短国そのものは元々がマイナス水準とかゼロ金利とかの物件になっておりますので、そもそも論としてこの水準が追加緩和を織り込む織り込まないという議論をするのも無駄というお話ですので、ここもとの動きというのは単に需給を反映したものであるとしか思えず、別に本日のMPMで何も無かったとしても明日の3Mがそれを受けてどうにかなるかと言うとまあ何も変わらんでしょうなあと思うのでした。


なお、昨日はまた利付の短い所の引けが進んで、BB引けベースで1年辺りの引けがマイナスになるわ、2年とかはその前(先月末)から進んでいたので昨日進んだわけではないのですが、引けがゼロ金利水準まで低下しておりまして、まあこの辺は短国の需給が恒常的に逼迫している関係もあるでしょうが、一応追加緩和リスクのヘッジらしきものも入っているのかねえとか、5年が5bp割れとかやっているので5年から手前に入替が入ってるのかなあとかまあ色々と妄想はするのですが、この辺も強くされますとMPMに向けてさあ盛り上がって参りました感が出てしまいますなという事で一応メモを置いておきます。


・「早期達成」ならそうかもしれんが

IMFというのは金融政策に関しては余計な話しかしませんなあ。

http://jp.reuters.com/article/2015/10/06/imf-on-boj-idJPKCN0S01U020151006
Business | 2015年 10月 6日 23:24 JST
日銀、物価目標達成へ必要なら追加緩和を=IMF

はあそうですか。

『[東京 6日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は6日公表した世界経済見通しで、日本について、物価上昇率を2%の目標に向けて押し上げるために必要なら、日銀はできれば年限のより長い国債を買い入れるなどの追加的な金融緩和を実施する態勢をとるべきと指摘した。』 (上記URL先より)

えーっとですな、さっきネタにした安倍ちゃんのTPP会見でも「輸入品が安くなるのがメリット」とか思いっきり説明したりしている訳でして、もはや「単なるコストプッシュで物価を押し上げるのは意味がない」って認識に政府がなっているという中で「物価を押し上げるために追加緩和」とか言い出すとかお前は何を言ってるんだ状態。

でまあ何ですな、梯子外しちゃあ梯子外しなのですが、どこからどう見ても2%の早期達成が困難で、その一方でQQEが短期決戦を前提にしている建付けなので自爆必至という特攻政策を実施している日銀としては、この流れがどう見ても助け舟でありますのでこれに早晩乗ってくるでしょうという話を昨日も申しあげましたが、まー問題は黒田総裁が何を考えているのかというお話でして、結局の所昨年の追加緩和だって何でそうなったのかって(後付屁理屈はあるけど)正直意味不明(インフレ期待の低下云々は後付にも程があるでしょ)なのでして、今の流れについて黒田さんが「助け舟ヒャッハー」と思っているのか「梯子外すんじゃねえよゴルァ」とお怒りなのかによって出てくる結果が全然違ってくるというのが政策読めんわという事になる訳ですが、まあ本日の決定と会見でも正座して待つしかないですなという所で。



○議事要旨が出る前に再度確認用メモを置いておく

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20150917.pdf

13ページの中盤辺りからになります。

『JEANNA SMIALEK. Jeanna Smialek, Bloomberg News. You mentioned earlier that, you know, there is always going to be some uncertainty in the global economy, yet it seems that uncertainties are what kept you from hiking this month. You know, how do you communicate to markets what is the kind of uncertainty that keeps you from lifting rates and what is the kind of uncertainty you can overlook and, you know, move in spite of?』

何が要因で利上げをしなかったのかという割と直球質問。

『CHAIR YELLEN. So, that’s a very hard question, and, you know, it’s why we come together and have very careful evaluations of a wide range of factors.』

very careful evaluations of a wide range of factorsと言った時点でグダグダの香りが。

『But, at the end of the day, what we’re focused on are two things: the path for employment and whether or not we feel confident that we’re on a road that will take us to our maximum employment objective and whether or not we see the risks around obtaining that as balanced. Of course, there will be uncertainty around it and whether or not we have reasonable confidence that inflation, will, over the medium term, go back to 2 percent. And it’s really through that filter that we’re trying to look at uncertainty. Of course, there are many uncertainties in the global economy, but we’re asking ourselves how economic and financial developments in the global economy affect the risk to our outlook for our two goals and whether or not they create unbalanced risks that we want to wait to resolve, to some extent.』

労働市場の改善の確認がもう少し必要というのと物価に関するリスク要因の増加、という声明文記載のネタが要因とは言っているものの、その中身についてああだこうだと話をして結局の所どこの不透明感が晴れると利上げ着手が出来るのかの答えは全くできていませんですよね。


従って次の質問が飛ぶのですが、これは先日もネタにしたのですがああでもないこうでもないと言い過ぎという奴ですな。簡単にざざっと引用します。

『PETER BARNES. Hi, Chair Yellen. Peter Barnes, Fox Business. Could you talk about-a little bit more specifically about what foreign developments you discussed in the meeting today, what you’re concerned about?』

そらそう質問するわな。

『We all assume it might be China-that was in the July minutes. Are you concerned about the Chinese economy slowing, the markets there? Do you have any concerns about the European economy? And then, related to stock markets, could I ask you how you feel about U.S. equity markets right now? Because you did talk about your concerns about them back in May. You saw they were generally quite high and were worried about potential dangers in U.S. equity market valuations, but now equity prices have pulled back. Thank you.』

中国なのか欧州なのかはたまた株式市場なのか、結局どこが確りすれば利上げするのかが分からんぞなという趣旨の質問ではあります。

『CHAIR YELLEN. So, with respect to global developments, we reviewed developments in all important areas of the world, but we’re focused particularly on China and emerging markets.』

『Now, we’ve long expected, as most analysts have, to see some slowing in Chinese growth over time as they rebalance their economy. And they have planned that, and I think there are no surprises there. The question is whether or not there might be a risk of a more abrupt slowdown than most analysts expect.』

海外では中国と新興国を特に懸念で、少々のスローダウンは見込んでいるのでサプライズではないが大きな調整になるかどうかだという事ですが、そもそもサプライズじゃないのなら何で見送りの判断になるのやらという気はする。

『And I think developments that we saw in financial markets in August in part reflected concerns that Chinese-there was downside risk to Chinese economic performance and perhaps concerns about the deftness with which policymakers were addressing those concerns.』

『In addition, we saw a very substantial downward pressure on oil prices and commodity markets, and those developments have had a significant impact on many emerging market economies that are important producers of commodities as well as more advanced countries, including Canada, which is an important trading partner of ours that has been negatively affected by declining commodity prices, declining energy prices.』

金融市場に関してはお前が言うなという感じなのですが中国のせいらしいですし、原油と商品価格の低下の悪影響の話をしていまして・・・・・・・

『Now, there are a lot of countries that are net importers of energy that are positively affected by those developments, but emerging markets-important emerging markets-have been negatively affected by those developments. And we’ve seen significant outflows of capital from those countries, pressures on their exchange rates, and concerns about their performance going forward. So a lot of our focus has been on risks around China, but not just China-emerging markets, more generally, and how they may spill over to the United States.』

って米国への影響を確認したいとか言ってるといつまで経っても利上げできませんな。

『In terms of thinking about financial developments and our reaction to them, I think a lot of the financial developments were really-so, we don’t want to respond to market turbulence. The Fed should not be responding to the ups and downs of the markets, and it is certainly not our policy to do so. But when there are significant financial developments, it’s incumbent on us to ask ourselves what is causing them.』

『And, of course, while we can’t know for sure, it seemed to us as though concerns about the global economic outlook were drivers of those financial developments. And so they have concerned us in part because they take us to the global outlook and how that will affect us.』

市場の動向とかも「一々反応すべきでない」とか言ってるのに「大きな動きの場合は影響を見極めたい」とか言ってまして、一々全部「影響を見極めたい」になっているのですが、まあここらへんは議事要旨を見るときにどういう議論になっているのかの確認ポイントだと思いますので再掲して見ましたという感じ(俺様用備忘メモ状態ですかそうですか)ではありますが、ああだこうだと説明しているのは議論が紛糾しているのでしょうからその辺を確認したいですよね。

『And, to some extent, look, we have seen a tightening of financial conditions during-as I mentioned, during the intermeeting period. So the stock market adjustment, combined with a somewhat stronger dollar and higher risk spreads, does represent some tightening of financial conditions.』

『Now, in and of itself, it’s not the end of story in terms of our policy because we have to put a lot of different pieces together. We are looking at, as I emphasized, a U.S. economy that has been performing well and impressing us by the pace at which it’s creating jobs and the strength of domestic demand. So we have that. We have some concerns about negative impacts from global developments and some tightening of financial conditions. We’re trying to put all of that together in a picture. I think, importantly, we say in our statement that in spite of all of this, we continue to view the risks to economic activity and labor markets as balanced.』

『So it’s a lot of different pieces, different cross currents, some strengthening the outlook, some creating concerns, but overall, no significant change in the economic outlook.』


・市場の混乱はFEDのせいではないかという質疑を見るとコミュニケーションはまだまだ混乱するでしょうなあ

こんなんありました。

『MARTIN CRUTSINGER. Marty Crutsinger, Associated Press. In July, when you were talking to us, you said that you yourself expected to see the first rate hike before the end of the year. Is that still your expectation? And also, when you talked about the developments in financial markets and what caused the August turbulence-you mentioned China and other things-you did mention the prospects of a Fed rate increase. Do you think that played a role as well?』

『CHAIR YELLEN. So you ask me about my own expectation, and I’d say-I don’t want to-I speak on behalf of the Committee and try to explain Committee decisions, and we don’t identify who’s who in terms of our projections of the funds rate, and I don’t want to change that and have the focus be on my personal views on the path. You know, I have characterized the Committee view as, you know, a forecast that will likely, if it prevails, if that’s how the economy evolves, call for a funds rate increase later this year. And I think that’s a fair summary of the Committee’s assessment of things. You asked me, I think, also about uncertainty about our own policies.』

最初は前半の「年内利上げ」に関する質問ですが「私の意見云々ではありませんでFOMCの中心見解を述べたもの」と話を誤魔化すの巻。

『MARTIN CRUTSINGER. Well, no, not uncertainty, just the fact that the market turbulence-a lot of people in August said part of that was a concern about the Fed was about to raise interest rates, and you didn’t mention that as one reason for the turbulence.』

再度質問。

『CHAIR YELLEN. So I think the main drivers of the turbulence have been concerns about the global outlook, that’s how I read it. But I know that, of course, there is uncertainty about Fed policy. 』

ワロタ。

『As I mentioned, we’re well aware that there’s been a huge focus on the decision today. And, you know, I would ask you to appreciate that there are a lot of cross-currents in economic and financial developments that we need to take into account in deciding on what the appropriate course of policy is. And we don’t make continuous decisions every single day about our policy, we meet periodically. We do our darndest to pull together the best analysis we can and to exchange views and to arrive at Committee decisions. I do understand that, during this intermeeting period, that every word that an FOMC member has said has been parsed for its potential implications for what our decision will be. I think it’s, you know-that’s an unfortunate state of affairs, but I understand, and I think it’s natural when you’re at a point when conditions may be falling in place for there to be a shift in policy. It’s natural that that should happen, and it does, to some extent, contribute to uncertainty in financial markets.


我々はプリセットの正常化をしている訳ではないので状況の変化に応じて対応するから、変化が生じるのは当然だし、市場がそれに反応することになるのが「FEDのせいで市場が動く」という風に言いたくなるのも理解しますが知らんがなという説明になっておりまして、こらまあ今後も市場が混乱するわなあと思う次第で、足元では経済データがあの調子なので市場ちゃんが利上げ相当遅れるぜヒャッハーとやっていますが、経済データがちょっと良くなってくると今度はホイホイと市場が逆にぶれるというのはあるでしょうなあと思うのでした。


○ダドリーのマクプル講演ネタをするつもりが時間切れなのでメモだけ(すいません)

昨日ちょっとネタにしたダドリーさんのマクプル講演ですが。

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2015/dud151003.html
Is the Active Use of Macroprudential Tools Institutionally Realistic?
October 3, 2015
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer

マクプルのツールの説明の中に「適切ならば金融政策で対応」というのがありますなというのを昨日ご紹介しましたが、講演の方を読んだ感じですと「金融政策で対応するケースとはどういう時でしょうか」的な話は特段詳しい言及が無かった(ように思われた)ので、まあその点ではBISビューキタコレというフィッシャー副議長の講演とはだいぶ違うようですので、まあ一安心(?)という所です。

ただ、マクロプルーデンスの政策ツールの活用に関しては、そもそも論を持ち出していて、「金融不均衡やらバブルやらの発生に関しては、常に「従来のツール」の外側で起きている」というような趣旨の話をしているのがほほーという感じでして、金融不均衡にはプルーデンス政策を割り当てれば良し的な政策割当の限界について言及しているのが味わいがあるかなとか思うのでございました。

というネタをやるつもりだったのですが時間切れでパス(大汗)。





2015/10/06

お題「市場メモ雑談&微妙な米国マクプルネタ/決定会合プレビューを更に頭の整理してみた(ただし雑談ですすいません)」

ほうほう。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H65_V01C15A0MM8000/?dg=1
TPP、大筋合意 31分野で協定締結
2015/10/5 22:12日本経済新聞 電子版

○市場雑談メモ関連

昨日スルーしてしまったので(汗)。

・5年5bp割れェ・・・・・・・・・・・・

まあ金曜から5年5bp割れで金曜の5年カレントの引けが4.5bpだったりするのですけれども、昨日は昨日で5年カレント4bpとかやっておりまして、ここだけ見ますと追加緩和をしないと許さん状態になっている中期債ェという所ではあります。

まーあんだけ「付利下げ無し」と黒田総裁以下日銀サイドから出ていても追加緩和のネタから付利の話が出てきてしまうプライスアクションになってしまうのは、そもそも昨年10月の追加緩和が騙し討ちだったので「また騙し討ちがあるかも知れない」と思ってしまうという事でして、まーこの調子だと黒田日銀の間に物価目標が達成できなさそうなので良い(なお次のプレビュー雑談で申し上げておりますが、黒田日銀のうちにQQE政策の見直しをしないと政策そのものが自爆してしまうので、その収拾のための政策枠組み変更はしないとマズイと思います)のでしょうが、既に市場との対話が崩壊というか放棄状態になっている中で、金融政策の正常化って絶対無理無理無理と思いますのでもう知らんがなとしか申し上げようがないですな。


・短国残高とかその他

毎度のこれ
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/

9末時点での短国買入残高は37.3兆円なのですが、3M短国の発行量が減ってきているので(今月から更に減る)市場の玉については逼迫感相変わらずですし、3M新発短国が年末を越える訳でして、年末越えのドルファンディングってどうよという点からも短国買入残高におかれましては減少して頂きたいものであります。

でもって今月は日銀保有分の償還が7.05兆円ありますが、

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1510.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年10月見込み)

財政要因の所を見ますと長期国債要因は輪番での購入を入れるとほぼツーペーになって、残りの部分の帳尻を短国買入で調整という話になるのですが、前月に予想ベースから下振れしていた「その他」の所で今月は4.5兆円ほどの余剰になるので、短国買入をそこまでバカスカやらなくても良いとかそういう話になるんでしょうな、うんうん。


金曜日は
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of151002.htm
国庫短期証券買入 10,000 2015年10月6日

というオペでしたので、今月は受け渡しベースで4回(30日のは月末跨ぎ)の買入が想定される中で1兆円の買入2回に6Mと1Yの入札週に1.5兆円の買入を行って受渡ベースで5兆円の買入が実施される、という計算でまあ宜しいのではないかと思いますが、短国買入の残高が2兆円減っても3Mの入札が既に1回3000億円減額になっているので4週間で1.2兆円の発行減になっていて短国買入残高の減少があっても需給がそこまで緩む感じがしないのがあばばばばーな所ですな。


なお本日は6Mの入札がありますが、先ほど引用した短国買入残高を見ますと9月19日〜9月30日までの買入(というのは18日の1兆円と25日の6000億円の買入分です)で増えている銘柄というのは、

588回(1Y新発)13544億円
556回(6M新発)2400億円

で残りはちょぼちょぼ(100億円以下のオーダー)という事で、相変わらず日銀短国買入は1Yと6M短国の専用機状態(3Mが馬鹿入札になった場合にその銘柄が打ち込まれる)という状態ですので本日の入札もお察しという所ではないかと存じます次第。


・ダドリー講演というのもありましてですな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVPQMY6TTDS201.html
ニューヨーク連銀総裁:金融危機回避の手段の整備に取り組む必要
2015/10/05 06:06 JST

『(ブルームバーグ):米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は、米当局が金融安定に対するリスクの増大を認識し将来の危機防止に間に合うよう行動できるには「程遠い」状態だとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほほう。

『ダドリー総裁は3日にボストン連銀主催の会合で講演し、「私見では、マクロプルーデンス政策の利用は有望であるものの、こうした手段を米国でうまく活用できる状態には程遠い」と指摘。米国の規制体系は断片的であるため、どれか一つの規制当局が十分に包括的な形でリスク軽減手段を実行することはできないと述べ、「その結果、米国でマクロプルーデンスの手段を行使すれば、その範囲に大きな隙間が残るのはほぼ確実だ」と発言。』

ほう。

『「関係する全ての規制当局が時宜を得た形でマクロプルーデンス手段の実行に首尾よく乗り出すことは難しいだろう」と付け加えた。』

だそうで、講演テキストはこちら。
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2015/dud151003.html
Is the Active Use of Macroprudential Tools Institutionally Realistic?
October 3, 2015
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Panel remarks at the Macroprudential Monetary Policy Conference, Federal Reserve Bank of Boston, Boston, Massachusetts

まだ真面目に読んでいない(すいません)のですが、最後の方にしらっと

『Prudential tools under consideration included:・Capital requirement tools, including changes in leverage ratio requirements, imposition of a countercyclical capital buffer, and higher differential capital requirements for commercial real estate exposures;
・Liquidity tools, such as changes in the liquidity coverage ratio and net stable funding ratio;
・Credit-based tools, such as limits on loan to value ratios;
・Supervisory guidance; and
・Stress testing.

Monetary policy was also considered as a tool-either as a complement or as a substitute.』

などと記載しているのが少々気になる所でして、良く良く考えてみるとTaperingの時って明示的にはそうは言ってないけど逆さ絵のオヤジはBISビューバリバリのスタイン理事(当時)のロジックに結構乗っている感じでしたなあとか、ああでもないこうでもないと利上げしない言い訳を並べてしまったFRBにとって正常化推進のための必殺兵器がBISビューですよねとか考えますと微妙にこの辺りのホイホイ出てくるマクプル話というのは怪しい香りがせんでもないですな。というメモだけ置いておきます。




○決定会合プレビュー雑談

先週後半あたりから物凄い勢いで何とかストの皆様が追加緩和あるでという話が盛り上がってきておりまして、なんちゅうか乗るしかないこのビックウェーブに状態になっている訳なのですが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVL0ZA6TTDS201.html
10月の日銀緩和予想は約5割に上昇、見送れば信認低下で円高・株安も
2015/10/05 13:18 JST

お、おう・・・・・・・・・・・

えーっとですな、経済物価情勢という文脈で考えますと日銀の見通しであります所の2016年度前半に物価が2%に到達というのは益々無理という所になってまいりましたし、輸出とか生産とかパッとしませんでそもそも今年度後半あたりから角度が上がって回復、というシナリオもどう見てもそうはならないでしょ、という風になっているので、物価のところだけ見ればそらまあ追加緩和しないのはどういう事やという話をするのもそらまあそうなのですけど、予想という意味で考えると別の話になると思うのよね。

でまあ毎度申し上げておりますのを段々整理しているのですけれども、今の政策そのものが長期的に継続することを前提にデザインされている訳ではなく、しかも昨年追加緩和をしているので物理的な限界をその時点で手前に寄せているというのもあります上に、去年と違うのは追加緩和やって物価見通しが早期に達成できるのかというとどこからどう見てもそうじゃないという状況なのに早期爆発の可能性を高めるだけの追加緩和をしますか、というお話な訳ですよ。

ちなみに追加緩和が限界を手前に寄せる件については、長期国債的にはそうなのですけれども、良く良く考えますと追加緩和のどさくさで短国買入の負担を下げていなかったら今頃短期市場が爆発して限界が来ていたのが明らかだったりする訳でございまして、(今の状況から10兆〜20兆円短国買入の残高が多かったら短国市場が壊滅している)ので実は昨年の追加緩和は政策の限界を必ずしも手前に寄せたのかというと微妙でして、どちらかと言うと最初の時点であまりちゃんとデザインしていなかった(規模がでかすぎなのとエイヤーで入れているので仕方の無い面があるが)のでやってみたら短国市場が爆発しそうになって、しかも2年で追われるのかが微妙になってきたので追加緩和のどさくさにマイナーチェンジも入れた、というのはあるのでその点だけは一応申し添えます。

ということで長期国債の買入が純粋にどこまで持つのか、というのと、ETF買入に関しては債券と違って償還が無いから買ったものそのまま残高が増えて減りはしないという問題もありまして、何ぼ何でも中長期的に今のペースでETFを買い続けるという訳にも行かないでしょうから、その辺から考えた場合の限界というのはさすがに近いと思うのですよね。



追加緩和のような政策を逐次投入して延々と続けることが出来るというのであれば、そらまあ見通しが下がる→追加緩和を逐次投入、という事になると思うのですけれども、今申し上げたようにQQEの政策枠組みは追加緩和を逐次投入していくことが出来るようなデザインになっていない(やってあと1回が限界)ですし、そもそもQQE導入がそうですけれども黒田さんの政策の打ち込み方って「小出し感を嫌う」のが明らかな訳でして(QQE2はMB拡大のペースでは小出しでしたが長期国債が50兆円→80兆円にしてETFとかその他で「3」を並べましたから一応ドカンという感じにはしている)、その点から考えますと次回に何かやるとなりますと、一応あと1発は追加緩和を(今の政策枠組みの延長という文脈では)打つことが可能ではあると思いますが、QQE3というにはちょっと派手感に欠ける訳で、その程度の追加緩和をわざわざ打ちに行くのですか???と思うのですけどどうでしょうか。

あと、なんだか知らんのですがやたら「付利下げ」説を唱える人が多いのですが、現在の政策の延長線上という文脈で考えた場合には付利の引き下げはMB拡大という日銀の負債サイドの量拡大をやり難くする政策(付利は日銀負債を拡大しやすくするツール)であるので話として矛盾しますし、大体からして「付利5bp下げ」って小出しの究極みたいな話で、いきなりゼロにするならまだしも、そんな細かい政策黒田さんがよーやらんでしょと思う次第でありまして、それこそ昔の日銀パターンと同じ発想で考えてやしませんかねえという風に思う訳ですよこれがまた。


でもって将来的にも2%の看板は下げられないのですから、緩和政策をかなりの期間長期化しないと行けなくなるのは見え見えですし、以前のように「2年で達成しろ」というような興味も政府サイドの方が失っていると見られる現状を勘案しますと、長期的に継続できない今の政策枠組みは見直し必至な訳で、もう少し先を見た場合には今の政策のデザインを変更しないと行けなくなる筈(何ぼ何でも今のまま拡大して行って物価目標達成前に政策が自爆するような阿呆な選択は取らないという前提ですけれども)なのではてどうしますのやらという所から逆算していって追加緩和の有無とか先行きの政策とかを考えないといかんと思うのであって、10月緩和がどうのこうのというのを単体で考えるのがそもそも意味プーだとあたしゃ思うのですけどどうでしょうかねえと。


でですな、先行き長期的に継続が可能な政策デザイン、という意味でちと考えますと以下の通りになると思いますがどうでしょうかね。

まずMB拡大路線ですけれども、今のマネタリーベース直線一気理論はどこからどう見ても長期化できないので棄却(そもそもマッカラムルールやら何やらで計算したMBにしても物価2%どころか1%にも届いていないのですからMB直線一気理論そのものが棄却されるレベルだが失敗とは言ってはならないのでそこはスルーされるでしょう)でして、MBのレベルに関して明示的な数値を出さない方がどう見ても政策継続が楽なので明示的には出さないでしょ。露骨にガシガシ減らす事もよーしませんとは思いますが。

付利金利に関しては微妙なのですが、MBがガシガシ減っても良いのならば下げるのもアリかもしれませんけどMBを露骨に減らすのは見た目的に宜しくないのでやはり採り難いですし、付利金利マイナスというのはこれまた長期的に継続するのが難しい政策になりますのでオミットでしょ。つまり付利マイナスというのはMB積み上げがしにくいというのも有りますが、そもそも論としてエクセスリザーブを積むなという政策でありますので、エクセスリザーブに掛かるコスト分を金融仲介機能のどこかで負担するか、預金者などの国民の所に負担を転嫁するのかという話になる訳で、短期的にであれば金融仲介機能の所で負担をするのでしょうが、これが長期化した場合にはそうも言ってられなくなり、金融システムに負荷を掛けてストレスを上げるか、預金者の負担になるのかという話になるでしょうから、マイナス金利というのも3年5年とか続けるような政策ではないのでやはり無理がありますぞな。

となりますと、まあ普通に金利政策に回帰して「超強力な時間軸」と「実質金利の上昇を抑制するための長期国債買入」というセットにして、時間軸に関しては従来の日銀路線と変わらんとしても長期国債買入に関しては従来の考え方ではなくて実質長期金利の上昇を抑制するというのを前面に出した政策にするという形でデザインするしかないと思うのですけどね。なおその際にETFの買入どうするのというのはあるのですが、さすがに長期的に継続できないのでどうにかしないといかんでしょ。売りはしないでしょうけど。


ちょうどこの前こんなのが出ていてネタにしましたけど。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j05.htm/
家計のインフレ予想:期間構造と金融政策のアンカー効果
鎌田康一郎、中島上智(日本銀行)

このペーパー自体は「スタッフの出しているペーパー」なので日銀の政策とは直接リンクする話でもないし公式見解でもないですよ、という建付けではありますが、まあここで言及されている、

『鎌田他(2015)での分析結果を踏まえると、インフレ目標を有効に機能させるためには、それをアナウンスするのみでは十分ではなく、中央銀行のコミットメントの信頼性を増すために、何か他の大規模な政策とパッケージで実施することが鍵であるように思われる。』

『物価安定目標の場合には、量的・質的金融緩和が続けて実施されたが故に有効に機能したと考えられる。また、中長期的な物価安定の理解の明確化も、その後に包括緩和が導入されてはじめて効果を発揮し得たと解釈することも可能である。政策効果を高めるためには、インフレ目標を、大規模資産買入れ、フォワードガイダンス等、どのような政策とパッケージで実施するのが有効なのか、事例研究を積み重ねていくことが望ましい。』

という最後の部分に味わいがある訳で、「マネタリーベース直線一気理論のQQE政策で2年で2%達成だぜヒャッハー」という政策の建付けからの華麗なる進化(ただの敗戦処理なのですがそこは指摘しないのが優しいオトナの対応と言いたい所ですけど、置物副総裁が過去に日銀に対して行った批判というより誹謗を勘案すると置物一派だけはちょっとねえと思います)をする場合には、それなりに政策パッケージを打ち込むというのがセットになる訳で、金利政策中心のフレームワークにして「2%物価上昇で安定的に推移するまで強力な緩和パッケージで景気をサポート」という形で見せ方として強力パッケージを入れるというのは日銀も考えてるでしょと思うのですよ。

でもってそうなりますと、国債買入に関しても規模感を強調するよりも「長期金利上昇をさせないような政策」という形で「従来とは違う」のを見せてくるのが「大規模パッケージ」としての見せ方になると思いますのでは無いかと思うのですよね(だからと言って別に長期金利をバカスカ下げに行くような必要は無いと思いけど金利が露骨に上がっても見せ方が良くないのでムツカシイ)。


とか何とかうだうだと雑談を書いている訳ですが、将来的には(それも割と近くに)政策の枠組みを変えないといけないし、そもそもアベノミクス第2弾については金融緩和がメインの矢から一段引いた格好になって、金融緩和で経済をサポートして2%物価目標達成に整合的な経済を作る、という建付けに実質的に変更になっているのですから、その辺を勘案すると今の政策枠組みの延長的な追加緩和というのはどうなのよ(なお最後のダメ押し的な意味でやるというのは否定しない)と思うのですよねえという毎度の結論になりましたです。なんか似たような話ばっかですいません。


しかしまあ何ですな、
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVL0ZA6TTDS201.html(再掲)
10月の日銀緩和予想は約5割に上昇、見送れば信認低下で円高・株安も
2015/10/05 13:18 JST

どこぞからは「追加緩和を見送ったら市場が失望してどうのこうの」みたいなクレクレなんだか恫喝なんだか良く分からないレポートまで先日は出ていて爆笑の発作を禁じ得なかったのですけれども、「見送れば信認低下」というのはもしかして貴殿の信認の事を仰っているのではないかと小一時間問い詰めたいところではありますなあということだけ申し上げておきましょう。




2015/10/05

お題「短観の企業物価はイマイチだが生活アンケートはまあ宜しいんじゃないの/フィッシャー副議長のBISビューキタコレ」

シーズンも終盤ですのでこんなのが。
https://full-count.jp/2015/10/03/post19260/
DeNA中畑監督、辞任会見全文 「ダラダラした組織というのは僕は一番嫌い」
Full-Count 10月3日(土)21時22分配信

『自分の中では、まだまだ本当に志半ばという気持ちは多分にあります。ですが、こういった世界というのはどっかでけじめをつけないと、という部分がはっきりと出てくると思うんですね。

 そういうところを流してしまうと、その後のチーム事情とか、いろんな意味で切り替えのつかないダラダラした組織というのは僕は一番嫌いなんで、ダメな時にはダメだという、そういう風なわかりやすい世界を目指してきたつもりなので、自分なりには、この責任というのは本当に重いものだと感じています。

 あとちょっとで勝てない、もうちょっと という内容だったらまだ良かったかもしれないです。でもあの首位からの陥落する内容というのは、本当にファンの皆さんの期待を大きく裏切ったという部分で本当に重い責任を感じています。』(上記URL先より)

そういえばどこぞに前半絶好調だったのに後半から失速して達成期限を延長に次ぐ延長をしている所があったような気がしますが。


○物価に関する2本のアンケート

・短観の企業に関する物価がどうのこうの

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1509.pdf

『1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)』を見ますと今回は全業種、全規模に渡って見通しが下がっていまして、短観の価格判断DIの落ち振りからしてそうなるでしょうなあとは思いましたがぐぬぬという下げ方です。しかも全体でみても▲0.2〜▲0.3%とかになっていますし。

でもってざっと見ますと「5年後」の見通しの下げ方が大きめに出ていまして、足元の仕入れ価格一段落という問題もあるかも知れませんけれども、非製造業とかでも落ちて来ているという感じになっておりますのはこれ賃金が伸びにくいという事を示唆する(賃金を威勢よく上げるのなら販売価格は上がるでしょ)という気もしますなあ。


『2.物価全般の見通し(前年比)』というのが次のページになりますが、こちらは全体でみたところで1年後が▲0.2%ですが3年後と5年後は▲0.1%なので販売価格見通しに比べれば落ち込みは大したことないという評価をして「実際のCPI総合がこのような動きになっている中でも物価期待には大きな落ち込みも無く安定的に推移しています(キリッ)」という解釈をしてくると思いますですよ今の日銀の話の持って行き方からしますと。

まーいずれにせよこの調査に関しては比較的最近に開始された調査ではございますので、あまりここの数字を弄りまわしてどうのこうのと言うのも統計をどう見る的に言えばどうかなというお話でもございまして、あくまでも今のうちは参考計数であるとゆー所ですな。

ただし、何せ「色々な指標を見て判断」とか言っている日銀だけに、その時の行動に対して都合の良い数字が出ればそれに飛びつくというのが仕様になっておりますので、ここの販売価格判断の数値が落ちているのを捕まえて「企業の価格設定態度に弱気の動きがみられ、期待の押し上げが必要ですね」などと追加緩和をするならするで「使える」理屈もあったりはするのもまた事実ではあろうかと存じます。


・生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1510.pdf

まあこのアンケートも微妙ちゃあ微妙ではありますが、先に物価の辺りから。

『1-3. 物価に対する実感 』以降から。

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が減少した。また、1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+5.8%(前回:+6.1%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。 』

『1年後の物価については、『上がる』(注)との回答はほぼ横ばいとなった。また、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.7%(前回:+4.8%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。 』

『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。また、これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.9%(前回:+3.9%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。 』

ということで、こちらを見ますと「5年後の物価」に関する見方については全然変化がない、という結論になっていて日銀ニッコリの展開であります。まあここで出ている「2%」が物価安定目標の数値として出てくる2%水準と整合的な「2%」なのかという点については正直謎な所があって、そもそも論としてここの物価見通し数値などは上方バイアスが思いっきりかかっているので2%ですと足りないのかもしれませんけどね。


『1-1. 景況感等 』から。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、景況感D.I.は概ね横ばいとなった。先行き(1年後)については、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が増加した。 』


『1-2. 暮らし向き、消費意識 』から。

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は改善した。』

『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。先行き(1年後)は、「増える」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅を拡大した。』

『支出の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が減少し、「減った」との回答が増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅を縮小した。1年後の支出D.I.については、「減らす」との回答が増加したことから、マイナス幅を拡大した。』


ということで思いのほか景況感が悪くない(先行き弱めなのはしょうがないとして)なあという感じなのですが、そのあとまで見ると支出を減らすというのがやや増えだしている訳でして、その前の6月調査の時には支出を減らす向きが減ったのでおーと思ったのですが、9月になってまた支出を減らす人が増えてきているというのは思ったほどの収入増になっていないせいなのか生活物価の上昇が効いているのか、どうなんでしょうかねえ。


まあいつもの事ですが『1-6.日本銀行の金融政策に関する認知度 』から。

『日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることについては、「知っている」との回答は2割台半ばとなった。また、日本銀行が、量・質ともに次元の違う金融緩和(「量的・質的金融緩和」)を行っていることについては、「知っている」との回答は2割台前半となった。』

だいたいいつもこの程度の数字なので別に悲観するような話ではないのですがしかしまあ相変わらずではございますな。


ちとあちゃーなのは物価上昇に関する意識。

『1年前と比べて物価が『上がった』(注1)と答えた人(8割台半ば)に、その感想を聞くと、8割台前半の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。また、1年前に比べて物価が『下がった』(注2)と答えた人(2.1%)に、その感想を聞くと、「どちらかと言えば好ましいことだ」との回答が2割台前半、「どちらかと言えば、困ったことだ」との回答が4割台前半となった。』

とありますが、まあ物価上昇が困るし下落はウマーという回答が多いのは消費者意識アンケートなのでこれは仕様であって別に絶対水準そのものはあまり気にする必要は無いと思うのですが、前回6月調査で物価上昇や下落に関して「上昇は困ったものだ」「下落はウマー」という回答が減っていたのが今回あっさり戻っているのがふーんという感じで、サンプルバイアスのせいなのかも知れませんけれどもここはへーと思いましたが、他の回答の変化から見るとここまで変化せんでも良かろうという気はします。


ということで生活意識アンケートですが、まあこちらに関しては物価の先行きに関しての見通しが相変わらずの安定モードになっている、という点で日銀的にはウマーな結果だったと思いますし、インフレ期待について質問されたら「家計のインフレ期待は先般公表した生活意識アンケートにもありますように確りとしています(キリッ)」というのにはちょうど良い結果になりましたな。消費の指標もそんなに悪くなかったし。



○フィッシャー副議長のBISビュー攻撃キタコレ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20151002a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/fischer20151002a.pdf
Vice Chairman Stanley Fischer
At the "Macroprudential Monetary Policy," 59th Economic Conference of the Federal Reserve
Bank of Boston, Boston, Massachusetts
October 2, 2015
Macroprudential Policy in the U.S. Economy

手抜き読みの巻で最後の『Implications for monetary policy』という小見出しの所から駆け足で。

『Though I remain concerned that the U.S. macroprudential toolkit is not large and not yet battle tested, that does not imply that I see acute risks to financial stability in the near term.』

と、最初にマクプルの政策ツールについて「色々と実際のケースで試されている訳でもないし大きい規模でのツールでもないのだが、今時点でこれが不足して金融不均衡を直ちにもたらすすことは無い」というお話をしていますが・・・・・・・・・・・・

『Indeed, banks are well capitalized and have sizable liquidity buffers, the housing market is not overheated, and borrowing by households and businesses has only begun to pick up after years of decline or very slow growth. Further, I believe that the careful monitoring of the financial system now carried out by Fed staff members, particularly those in the Office of Financial Stability Policy and Research, and by the FSOC contributes to the stability of the U.S. financial system--though we have always to remind ourselves that, historically, not even the best intelligence services have succeeded in identifying every significant potential threat accurately and in a timely manner. This is another reminder of the importance of building resilience in the financial system.』

現状については問題はないとの認識だが、そうは言っても歴史的に見てヘーキヘーキとか言っている内に実はそうじゃなかった的な話もある訳ですよ、という話になって来ましてBISビューの香りが。

『Nonetheless, the limited macroprudential toolkit in the United States leads me to conclude that there may be times when adjustments in monetary policy should be discussed as a means to curb risks to financial stability.』

ほほう。

『The deployment of monetary policy comes with significant costs. A more restrictive monetary policy would, all else being equal, lead to deviations from price stability and full employment. Moreover, financial stability considerations can sometimes point to the need for accommodative monetary policy.』

金融政策によるマクロプルーデンス対応と金融政策による経済物価安定効果のトレードオフ問題キタコレ。

『For example, the accommodative U.S. monetary policy since 2008 has helped repair the balance sheets of households, nonfinancial firms, and the financial sector.』

『Given these considerations, how should monetary policy be deployed to foster financial stability? This topic is a matter for further research, some of which will look similar to the analysis in an earlier time of whether and how monetary policy should react to rapidly rising asset prices.』

安定化政策の中で金融不均衡がどこに出るかと言えばそらもうアセット価格の急上昇ですが、それに対して金融政策はどう対処するのかという話。

『That discussion reached the conclusion that monetary policy should be deployed to deal with errant asset prices (assuming, of course, that they could be identified) only to the extent that not doing so would result in a worse outcome for current and future output and inflation.16』

これはまた殆ど禅問答の世界になりますが、「急激な資産価格の上昇に対して金融政策が対処しないことによって経済や物価の安定を損なうという見通しがあるのであれば金融政策での対処を行うべき」というナンジャソラな説明であります。

『There are some calculations--for example, by Lars Svensson--that suggest it would hardly ever make sense to deploy monetary policy to deal with potential financial instability. The contention that macroprudential measures would be a better approach is persuasive, except when there are no relevant macroprudential measures available.』

『I believe we need more research into the question. I also struggle in trying to find consistency between the certainty that many have that higher interest rates would have prevented the Global Financial Crisis and the view that the interest rate should not be used to deal with potential financial instabilities. Perhaps that problem can be solved by seeking to distinguish between a situation in which the interest rate is not at its short-run natural rate and one in which asset-pricing problems are sector specific.』

でまあさっき出てきた「じゃあどういう時に対処するのか」という話ですが、ここの判断の問題は難しいぞなという話を当然ながらしている訳でして、最後の方で一つ考え方として「Perhaps that problem can be solved by seeking to distinguish between a situation in which the interest rate is not at its short-run natural rate and one in which asset-pricing problems are sector specific.」と、低金利の影響によるアセットプライスの上昇について、その金利が実質金利的にどうなのよという点と、資産価格の上昇が限られたセクターで起きているのかどうかというのが一つの見極めになるという事になっていますが、まあそれでも判断は難しいと思う。

『Of course, we should not exaggerate. It is one thing to say we have no macroprudential tools and another to say that having more macroprudential measures--particularly in the area of housing finance--could provide major financial stability benefits.』

『It also seems likely that monetary policy should be used for macroprudential purposes with an eye to the tradeoffs between reduced financial imbalances, price stability, and maximum employment.』

ということでフィッシャー副議長的には「マクプルの観点で金融政策を使う可能性」について言及とかどう見てもタカ派です本当にありがとうございました(しかも物価雇用ではなくてマクプル系)なお話。

『In this regard, a number of recent research papers have begun to frame the issue in terms of such tradeoffs, although this is a new area that deserves further research.17 It may also be fruitful for researchers to continue investigating the deployment of new or little-used monetary policy tools.』

マクプル政策用のツールについてはもっと研究すべきという話をしておりまして・・・・・・・・・・・

『For example, it is arguable that reserve requirements--a traditional monetary policy instrument--can be viewed as a macroprudential tool.』

預金準備率の引き上げをマクプルツールに使うのはどうかという話だがそれはあんまり意味がない気がする。それで金利引き上げを行うのなら分かるけど。

『In addition, some research has begun to ask important questions about the size and structure of monetary authority liabilities in fostering financial stability.18 』

ということで最後の『Conclusion』に。

『To sum up: The need for coordination across different regulators with distinct mandates creates challenges to the timely deployment of macroprudential measures in the United States. Further, the toolkit to act countercyclically in the face of building financial stability risks is limited, requires more research on its efficacy, and may need to be enhanced. Given these challenges, we need to consider the potential role of monetary policy in fostering financial stability while recognizing that there is more research to be done in clarifying the potential costs and benefits of doing so when conditions appear so to warrant.』

さっきもありましたように、マクプルのツールの研究をしてマクプル政策を有効にしていくのが本道ではあるのですが、マクプル一本槍には限界があるので金融政策での対応も必要であるというBISビューちっくな認識を打ち込むフィッシャー副議長中々の異彩。

『After all of the successful work that has been done to reform the financial system since the Global Financial Crisis, this summary may appear daunting and disappointing. But it is important to highlight these challenges now. Currently, the U.S. financial system appears resilient, reflecting the impressive progress made since the crisis. We need to address these questions now, before new risks emerge.』

今すぐには問題という話ではないにせよ最後に「We need to address these questions now, before new risks emerge.」とか言っているのが中々お洒落ですな。


○ということで・・・・・・・・・・・・

とまあここで時間がアレになってしまいまして(大汗)短国買入とか5年が5bp割れたあどういう事やとか、そもそも金曜は金曜で益々追加緩和ネタを打ち出す何とかストが増えまくっているのですがというようなネタがあったりしますし、雇用統計は雇用統計でアレですしという話もあるのですが、明日MPMプレビュー雑談と共にその辺はということで勘弁。





2015/10/02

お題「短観で日銀はホッと一息でしょうな/追加緩和ニュースのマッチポンプ攻撃/短国3Mはまだ強い」

今日からブラックアウトですから益々色々なネタニュースが出るんでしょうかねえ。


○生産でしょんぼりしていたら短観で蘇生の思いですねわかります

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/tankan09a.htm/
短観

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1509.pdf
概要


えーっとですな、以下私家版安直前回との比較をしておりますが、今回の短観に関しては内容がそんなに悪くなくて、小見出しで申し上げたような感じで「30日の鉱工業生産でこりゃダメだと思っていたら短観の結果で息を吹き返しました」という内容ではないかと思います。業況感に関しては製造業大企業以外で概ね前回時点での予測指数よりも強いですし、DI水準も概ね改善となっているという内容ですし、(ネタにしてませんが)設備投資計画に関しても特段の悪化でもないですしという事で、まあ蘇生しましたなという感じじゃないでしょうか。

つまり、この短観だけで言えば追加緩和の必要性というのは後退していますよね、という話になると思いますし、日銀的には生産統計があの有様で倒れそうなところにこの短観ですので、息を吹き返して「短観から推測される需給ギャップの改善はありまぁす(キリッ)」ということで元気になるの巻という所でしょう。


とは言いましても、先日来申し上げておりますように日銀の追加緩和とか先行きの華麗なる「QQEの進化」という名目の敗戦処理じゃなかった「転身」とかに関して考えますと、「追い詰められて追加緩和」というのだけは日銀の次のアクションとしては取りずらいと言う中で強めの数字が出ていると「最後の花火で追加緩和をして一撃講和(=政策の転身)」という訳のわからん作戦も出しやすくなっているというのもありましてパズルとしては中々ややこしいのかもしれませんね。まあ常識的にはこの短観で追加緩和やらないで済むという風に予測するのが基本ですけど・・・・・・・・・・・・・



以下私家版簡単ウォッチ。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (6月時点)     (9月時点)
         現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業   +15→+16     +12→+10 
製造業中堅企業  +2→+4       +5→+4        
製造業中小企業  +0→0        +0→▲2

非製造業大企業   +23→+21    +25→+19
非製造業中堅企業  +16→+14    +17→+13
非製造業中小企業  +4→+1      +3→+1

ということで今回の短観ですが、製造業大企業以外は「6月時点での先行き見通しよりも業況感が上振れている」という状態になっていまして、これ業況判断強いじゃんという所ですし、先行き予測指数が下を向いている点については指摘があるとは思うのですが、元々短観の先行き見通しってDIが上にある所では先行きが下向きに出やすいというのが仕様なので、それを持って先行き弱いというのはちょっと違うと思う。

ちなみに前回予測から大きくぶれている(方向や符号がドテンしている)業種はどこですねんと思いながら見るとこれはこれで興味深い(マイナスで目立つのが「石炭・石油製品」と「鉄鋼」でプラスで目立つのは「対個人サービス」ですかね)ですよん。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  ▲2→▲3       ▲4→▲2
製造業中堅企業 ▲6→▲9       ▲10→▲10
製造業中小企業 ▲9→▲10     ▲8→▲11

非製造業大企業   ▲17→▲18    ▲16→▲18
非製造業中堅企業  ▲22→▲24    ▲23→▲26
非製造業中小企業  ▲22→▲28    ▲25→▲29


ということで、こちらは基本的に不足感が強くなっていて雇用情勢は引き続き需給逼迫状況であるという数値に日銀ニッコリですがその割にお賃金が増えていない気がするいや何でもないです。



・価格判断DI


販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  ▲4→▲3        ▲7→▲8
製造業中小企業 ▲4→▲4        ▲6→▲9

非製造業大企業  +7→+6      +4→+3
非製造業中小企業 +1→+2      ▲5→▲2



仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (6月時点)        (9月時点)
        現状→9月予測       現状→12月予測
製造業大企業  +14→+16       +4→+6
製造業中小企業 +35→+39       +22→+24

非製造業大企業  +20→+23      +13→+12
非製造業中小企業 +25→+32      +18→+25


こちらなのですが、販売価格判断が下がっているので2%物価目標達成という意味では日銀涙目の展開という事になりますが、仕入価格判断の下げの方が大きくなっているという事ですから「企業のマージンが改善している」という風に取ることもできる訳ですな。

つまりですね、「2年で2%」という文脈で考えればこの数字は明らかにあばばばばーではあるのですが、「2%は強い経済のための手段である」という風に割り切ってしまえば「この要因は原油等の下落であり、2%達成時期が若干後ずれすることを意味するが、企業マージンの改善は経済にとってプラスであるので良い結果(キリッ)」という風に開き直るとこれもまた悪くないですな。というかそもそも開き直るもへったくれもなくて傾向としてコストプッシュの裏が進むのは結構な話ですけど。



・需給判断DI

同じところに需給判断DIがあって、ここの製造業を見るとですね。

国内需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (6月時点)        (9月時点)
        現状→9月予測       現状→12月予測
製造業大企業  ▲12→▲9       ▲10→▲11
製造業中小企業 ▲23→▲22       ▲23→▲24


海外需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (6月時点)        (9月時点)
        現状→9月予測       現状→12月予測
製造業大企業  ▲7→▲5          ▲7→▲7
製造業中小企業 ▲12→▲11        ▲14→▲16


こちらは6月時点の見込みよりも悪化していますし先行きの方向性も前回調査時とは逆(前回は先行き改善方向だったけれども今回は悪化方向)になっているのでこの辺はマズーではあります。



・毎度お馴染み金融商品取引業の業況判断DI

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

        (6月時点)       (9月時点)
        現状→9月予測      現状→12月予測
金融商品取引業 +62→+62   +36→+37

この前回からの下がりっぷりがクソワロタという所ですが、最近は先行き予測に色が出ないのでつまらん。




○ブルームバーグのマッチポンプキタコレ

・まずは岩田一政前副総裁のインタビュー記事

昨日の昼の時間帯だったと思うのだがこんなのが出ました。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVHH8B6S972F01.html
岩田氏:日銀は動かざるを得ない方向に−マイナス金利の導入も (1)
2015/10/01 13:05 JST

マイナス金利ってそれやると量的な拡大が厳しくなるので今のMB拡大路線と整合的ではなくなるんですが・・・・・・・と思って記事を拝読。

『岩田氏は9月30日のインタビューで「黒田東彦総裁の発言を聞くと、追加緩和の必要はないというふうに聞こえるが、実体経済は想定以上に悪い」と指摘。物価についても「エネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI)は前年比1.1%上昇しているが、昨年秋の追加緩和後の円安の効果もそろそろ剥落し始める可能性もある。消費も弱いので物価上昇には持続性がない」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

経済物価状況からのロジックですな。

『その上で、足元で0.8%台のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が0.5%より下がれば、「日銀は何かやらざるを得ないのではないかというのが私の見立てだ」と語った。具体的な手段としては、国債の買い増しは限界に近づいており、株価指数連動型上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ余地も小さいとして、消極的な選択ながら、日銀当座預金残高にかかる付利金利(現在0.1%)の引き下げを挙げた。』

BEIに反応というのはちょっと????なのですが、良く良く見たら付利金利引き下げは「消極的な選択肢」なのに何でニュースのヘッドラインに思いっきりマイナス金利導入とか出るというのがヘッドラインでのインパクト狙い過ぎてあざといですな。

『その上で、「インフレ期待を測るのは非常に難しいが、日銀が直接相手にしているのは市場であり、市場関係者が抱いている期待はやはり無視できない。BEIが0.5%より下がってくれば、日銀は何かやらざるを得ないのではないか、というのが私の見立てだ。方向性としては、何かやらざるを得ない方向に動いている」と語った。』

・・・・・・・・・うーんそれはちょっと違うと思います。

『追加緩和のメニューとしては、@より長期を含めた国債の購入額の拡大、AETFやREITの購入額の拡大や、これまで買っていなかった地方債や財投機関債の買い入れ、B付利の引き下げという3つの選択肢があると指摘。』

地方債や財投機関債を買うと言いましても市中流通している量って僅少にも程がありますし、大体からしてそこらの債券の金利を下げることによる意味is何という感じなのですが。

『「それぞれ問題点があるが、国債はやはり限界に近づいている。買い増せば限界点がますます近づく。ETFも金融危機で金融機関が倒産するといった状況なら別だが、ある程度正常な水準に近づいているときにさらに買うのは、中央銀行の政策としていかがなものか。』

『日銀のバランスシートのリスク量も相当蓄積している。不動産投資信託(J−REIT)も市場規模が小さく買う余地はあまりない」と述べた。』

そもそもETFとかはリスクプレミアムの縮小余地があるから買入を行った(QQE導入の時にCPと社債の買入は残高維持に止まりましたがその理由はリスクプレミアムが既に縮小しておりこれ以上に縮小させる必要が無いが拡大させにいく必要もないので残高維持という理屈でした)というのがありまして、まーどう見てもすっかりその辺の話はスルーされているとは思いますが、一応そういう建付けだっただけに買入拡大となると「リスクプレミアムを縮小しないといけません」という話をしないといけないんですよね本当は。

『岩田氏はその上で、「消極的な選択だが、付利を動かすしかないのではないか。そうはいっても0.1%しかないので、マイナス金利もあり得るのではないか」と語った。』

ただそれをすると量の拡大が出来ないのですがその辺に関する岩田さんの見解はここでは出ていないのでちょっと????なのですが、中銀負債サイドの量を拡大し続けるターゲット政策とマイナス金利政策というのは本質的に相容れないという事くらいは岩田さんご承知だと思うのですけれども・・・・・・・・・・・・・・・


でまあそういう事でナンジャコラという記事ではありましたが、当然ながらまず最初に「岩田」「マイナス金利」と来るとすわ置物副総裁と反応するでしょうし、置物先生ではなくてもやはり前副総裁がマイナス金利に言及で追加緩和の必要性とくればヒャッハーヒャッハーとなるでしょうから株式市場の方はご案内の通り。

ところがですな・・・・・・・・・・


・まーた単なる見通し記事のヘッドライン詐欺かと

昨日の夜の時間帯にはこんなのが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVJ4KY6JTSEA01.html
日銀はひとまず様子見か、短観まずまずで情勢見極めに猶予−関係者
2015/10/01 20:26 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行内で、新興国経済を中心として先行き不透明感が強まっているものの、経済・物価情勢を見極め、追加緩和の判断を下すには、なお時間的な猶予があるとの見方が強まっている。複数の関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより、以下同様)

ということなのですが、

『企業短期経済観測調査(短観)では、新興国経済の減速を背景に大企業・製造業の景況感が悪化したものの、企業収益は高水準を維持し、設備投資計画も引き続き堅調だった。物価もエネルギーを除くと強めに推移している。複数の関係者によると、日銀内では、所得から支出への好循環メカニズム、物価の基調の改善ともに維持されていることから、追加緩和の是非を判断するにはなお状況を見極める必要があるとの見方が強い。』


とありますが、その後にあるのは何とかストの皆さんのコメントが並んでいるだけでして、この関係者とはどこの関係者でしょうかと小一時間問い詰めたいのですが、ブルームバーグの英語ニュースの記事だと『BOJ Is Said to See Little Immedeate Need for Adding Stimulus』とかいうお題になっていて、記事のリードも『Bank of Japan officials see〜』という書き出しになっていまして何だかなあという所ですが、ドル円はこれを見て120円割れとかやっていた(というかドル円見てどうしたのかと思ったらこのニュースがあったわという感じなのですが)という攻撃。

もう何ちゅうか毎度のただの観測記事にしか見えない内容をいかにもリーク記事っぽい英文にするとか大概にこういうマッチポンプは止めて頂きたいですな、と言いつつまあミーもこうやって記事にリンク貼ってアクセス数増加に貢献している所が宜しくは無いのかも知れませんが、結局の所こういうのはブルームバーグならブルームバーグ社の中の人たちがアクセス数で安易に記事の評価を決めてしまうから内容が微妙でも注目を浴びればこっちのもの、という姿勢になり、よりキャッチーな書き方をしないとというスパイラルに嵌ってしまうってな感じでの劣化スパイラルが発生するというのが背景にある訳で、記者さんとか編集さんだけの問題ではないんですけど、まー困ったもんだなとは思うのでありました。

特に最近はブルームバーグの日銀金融政策絡みのこの手の記事がアクセス狙いに走り過ぎているのが目立つ(以前はロイターが総裁会見での発言切り取りを超恣意的に行うのが酷かったのですがライブ中継されるようになって収まったら最近通常の記事も普通になってきたように思える)のですが、これあまりにも度が過ぎるとある時点から急に誰も見なくなるという流れが起きると思いますので、ブルームバーグさんもちょっと考えた方が良いんじゃないのとは思いますがそんなのを市場の片隅で日本語で言っても無意味ですかそうですか(汗)。



○短国ェ・・・・・・・・・・・・・

またこの水準かということで。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20151001.htm

(3)募入最低価格 100円00銭3厘0毛(募入最高利回り)(-0.0110%)
(4)募入最低価格における案分比率 28.8191%
(5)募入平均価格 100円00銭5厘1毛(募入平均利回り)(-0.0188%)

3M短国の入札ですがまたまた落札金利水準が低下する攻撃が炸裂しておりまして、いやまあ良いんですけど何でこんなに強くするのやら。まあ年末ファンディング絡みの裏で年末越えの短国にニーズがあるんでしょうなあというのは分かりますが、それで発行額全部がいきなり捌けるようなニーズまでがあるのかよと考えるとそれもまた????な所ではあるのですよね。

実際問題として期末期初の所ではGCとか現先とか当然のようにモノ無し(マイナス金利で運用するならGCなら出来ると思いますが)モードとなっておりましたが、期末要因一巡するとレポ市場とかは普通モードに戻ってきている訳でして、瞬間蒸発する訳でもないのにマイナスで持ってキャリーコスト的にどうなのかとも思いますが、マイナス何十ベーシスの世界相手なら少々のネガティブキャリーなんぞは屁ということですかそうですか。

なお本日は短国買入デーなのですが、今月の資金需給見込み日銀版が出るのが今日なのでイマイチよくわからんのですが、まあ応札状況(応札限度額が変わると見た目が変わってくるので注意が必要ですが)とか落札利回りとかを確認ということで。






2015/10/01

お題「鉱工業生産と第三の矢と新第三の矢の整理からMPMプレビュー雑談/日銀から味わいのあるペーパー」

下期スタートですな。

○鉱工業生産ェ・・・・・・・・・からいつのまにか決定会合プレビュー雑談

http://jp.reuters.com/article/2015/09/30/gdp-idJPKCN0RU0EY20150930?sp=true
Business | 2015年 09月 30日 15:18 JST
焦点:生産悪化で2期連続マイナス成長の公算、待ち受ける受注減

ということで鉱工業生産が7−9でマイナスになってGDPもマイナスではないかという話になってきておりますが、一方でちょうど昨日ネタにしたように黒田総裁の会見では15日の時点では「GDPプラスでは」だったのが28日の時点では「これまでのデータをみる限りでは、必ずしも 7〜9 月のGDPがマイナスになると言うことも難しいと思っています」にトーンダウンしておりましたけど、残念なことにそれよりもダメという状態になっておりますな。

でまあこうなってきますと「これって去年の追加緩和の時にパターン的には似て来ましたよね」というイメージが湧いてくる訳でして、昨年の場合は生産がコケ出す中で原油価格の下落がキタコレとなって突如追加緩和を打ち込んできたので、今回も生産がコケ出すというのは同じパターンだったりするのがアレ。


ということで追加緩和がどうのこうのという話をする人が増えている、というか追加緩和を言っている人が前のめりになってきているというお話で、まあ経済指標的な意味とか、昨年のパターンから見た場合というような観点ではそういうお気持ちも分からんではない。

しかしここでちょっと考えないといけないのは昨年の追加緩和時点と足元での状況の違いでして、物価の基調がどうのこうの的な日銀の理屈もありますがこんなのはいざ追加緩和をするとなると「物価の基調は確りしているがより強化する」とでも何でも言えるのであまりあてにならなくて、そうじゃない部分の違いな訳ですよ。

つまりですね、昨年の追加緩和前の時点と今年の違いということで考えた場合に、(1)オペレーションの限界がより近くなっている(拡大して1年経過しているのだから当たり前)、というのと(2)どこからどう見ても2%物価が行く時期が半年とかのスパンでは無理、というのがあると思うのですな。それに加えてそもそもQQE政策自体が「短期決戦」を前提にした政策の作り込みで中長期的に続けることができる政策ではない、という政策デザインの問題もあります。

ということはどういう事かと申しますと、今の枠組みの延長線上で追加緩和を実施した場合、ただでなくさえオペレーションの限界があるのを更に手前に寄せることになりますので、短期勝負での勝算が無いと追加緩和って打てないと思います。カードもあと1枚しか残っていないと思われますので、絶対に近い勝算が無い中で最後のタマを打つのは非常に難しいんじゃないですかねえと。


でもってですね、

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2015093000192
新3本の矢で従来政策強化=安倍首相(2015/09/30-09:46)

『【ニューヨーク時事】安倍晋三首相は29日午後(日本時間30日午前)、米ニューヨークで記者会見し、経済政策アベノミクスの第2段階となる新3本の矢に関し、「従来の3本の矢を強化することで、戦後最大の国内総生産(GDP)600兆円を目指す」と語った。その上で「従来の3本の矢は経済政策の手段を示すもの。新3本の矢で具体的な目標を掲げることにした」と説明した。』(上記URL先より)

この会見は東京時間の昨日朝7時半くらいにやっていて国営放送様で生中継してたと思いますが、「従来の3本の矢は経済政策の手段」というこの整理は政府サイドからの絶好の助け舟にしか見えない訳でして、従来は「2%目標が必達」だったのですが、このロジックからしますと「2%達成は強い経済を作るための手段」なのだから、それはつまり他を無視して強引に物価だけを2%に持って行くのが正しい訳ではない、という話に繋がる訳で、2013年1月の政府と日銀の共同文書に戻ることになると思うのですよね。

でまあそうなりますと「2%目標」というのは掲げるにしても、従来の第一の矢のように2%を達成したから良しという話ではなくて、概念的に言えば「2%の物価安定がサステイナブルに実現されるような強い経済を作るための手段として物価目標が設定されています」という話になりますので、それはもう「2%の物価目標が安定的に達成できるまで緩和的な金融環境を継続する」という中長期的な強力な時間軸政策にするしか無いでしょという話になりますな。

何せMBの無限拡大というのは物理的に出来ない中で時間軸に関してはまあ後ろに思いっきり伸ばすというのは可能な話(あんまりやり過ぎると時間的不整合の問題からクレディビリティを下げてしまうリスクがあるが)ですし、無茶なMB拡大に拘らないで長期金利に対する何らかのコミット(ただしこのさじ加減が難しい)を実施すれば中長期的に緩和政策が続けられる訳で、あとは潜在成長が伸びてくるのをちんたら見守っておけば宜しいという話になるとは思うのですけどねえ。

まあ三本の矢についても「手段」と「目標」という整理をすることによってQQEで2%の物価目標を達成すればめでたしめでたし的な置物リフレ理論を奥の方に引っ込めることが出来た訳でして、これはいわゆる一つの「転身」ってやつでございまして、日銀も当然ながらこの「転身」におつきあいして「QQE政策を進化させた新たな展開」とか何とか誤魔化して2年で2%達成の為にはマネタリーベース直線一気理論とかいう結果どう見ても空論だったのに結果責任取る予定もなさそうな置物リフレ理論をこっそりと引っ込めるという方向が必要でしょとか思います。

つーかですね、今月追加緩和というのはさっき申し上げたようにGDP2期連続マイナスですよね的な観点からは仰せの通りかもしれませんが、そもそもQQE政策の建付けとか、今後の維持可能性という事を考えた場合には、ここで見通しの下方修正を行って追加緩和を実施する、という事になりますと「去年に逆戻り」という事になりますが、QQE政策自体に継続可能な時間が限定的になっている上に、物価がどう見てもそう簡単に2%行きそうもない中で、そういう泥沼化確実の政策をやりますか??というお話なのですよ。

では追加緩和が全くないのかと申しますと、一応QQEの枠組みの中ではおそらくあと1回は追加緩和を打てる(がそれによって政策の限界到達点が更に前に倒れる)筈で、やるなら長期国債買入ペースの10兆円拡大と年限長期化(と言っても10年超とかにするのはツイストでもしないと無理なのでそんなに伸びない)にETFをおまけにつけるかどうかという程度かとは思いますが、どちらにしても最後のタマになってしまいますので、その後の政策見直しが実はセットでやってくるという話になるんじゃないかと思いますですよ。

・・・・・・などとまあ思うだけのお話なのですが、順当に「基調が確りしていて昨年とは違う」という駄法螺じゃなかった総裁の説明を真に受けますと、この場合はやはりどこかで勝利宣言とともに政策の枠組み見直しが起きる(いずれにしても政策の限界が爆発する前にコアCPIが安定的に2%に達するとは思えないので行きつく先は玉砕か転身で玉砕はあり得ないので転身でしょ)のですが、まさかGDP2四半期連続マイナスの時に大勝利宣言をする訳にも参りませんでしょうから、そうなると10-12に持ち直してきましたよやっぱり大勝利ですよほらここで計算される物価が+1%台前半まで行っててデフレからは完全脱却しましたよ、というような形でQQE政策の進化系をお見せしましょう!!という感じじゃネーノかと愚考致しますがどうでしょうかねえ。


とまあそんな雑談メモでありました(汗)。


○味わいのあるリサーチラボ登場

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j05.htm/
家計のインフレ予想:期間構造と金融政策のアンカー効果
鎌田康一郎、中島上智(日本銀行)
Research LAB No.15-J-5, 2015年9月30日

最近幾つか出た関連ペーパーを要約してご紹介みたいな物件ですが。

『要旨

家計のインフレ予想の安定化は、中央銀行が物価の安定を達成するための政策の一つであり、それ故に、中央銀行には、インフレ予想の動態に関する深い理解が必要とされる。鎌田他(2015) [PDF 902KB]は、家計を対象としたアンケート調査を分析し、インフレ予想は予想期間の長短によって振る舞いが異なることを示した。』

うむ。

『短期のインフレ予想が現実のインフレ率の影響を受けやすいのに対し、長期のインフレ予想は安定的で、現実の物価動向に左右されにくい。こうした結果は、わが国のインフレ予想が長い目で見て何らかの水準にアンカーされていることを示している。ただし、長期予想は動かないわけではなく、金融政策によって変化し得る。2013年に日本銀行が導入した物価安定目標と量的・質的金融緩和は、両者が相まって、インフレ予想の水準を引き上げ、その安定に寄与した可能性が高い。』

キタコレ!という所ですが、良く良く中身を読みますと実は今回はQQEだけではなくて包括緩和に関しての分析部分も紹介しているのが味わいがあります。まあ中身を読んでちょとは思いますが、この最後の部分を見ますと・・・・・・・・・・・・・・

『金融政策の効果

以上の結果は、これまでの日本銀行の金融政策が、全体として、家計のインフレ予想のアンカー強化に貢献してきた、あるいは、少なくともアンカーを壊すことはなかったことを示している。しかし、これまでに採られた個々の政策手段が、すべてインフレ予想の安定化に寄与したとは限らない。鎌田他(2015)は、2006年9月以降に実施された日本銀行による政策変更を一つひとつ取り上げ、どの政策がどのような形で、家計のインフレ予想の形成に影響を及ぼしたのか、あるいは、及ぼさなかったのかを分析している。彼らは、家計の何らかの意味でインフレ予想に影響を及ぼした可能性のあるものとして、以下の2つの政策を挙げている。』

ほほう。

『一つ目の政策は、2010年10月に日本銀行が導入した包括緩和である。表1によると、同政策は、インフレ予想の水準を引き上げることに効果を発揮していたことがわかる。長期インフレ予想の平均値は、政策の導入を境に約1%上昇し、中長期的な物価安定の理解(日本銀行が2006年に導入し、2009年に明確化を行った)の枠組みの上限である2%にまで達している。短期予想の上昇はさらに大きく、その平均値は、マイナス圏からプラス圏まで2%以上上昇している。しかし、他の統計量、特に分散に、有意な変化は認められなかった。』

実は包括緩和も効いているという説明キタコレ。

『二つ目は、日本銀行による2013年1月の物価安定目標と4月の量的・質的金融緩和の導入である。表1によると、短期予想の平均値は、目標水準である2%へと約2%の大幅な上昇を示している。長期予想の平均値も、幅は小さいが、統計的に有意な上昇を示した。』

実は長期予想に関しては包括緩和で結構押し上げられていたという事ですか。

『また、鎌田他(2015)によると、短期、長期によらず、インフレ予想の足もとの物価変動に対する感応度が低下しており、しかも、金融政策に対する認知度の高い家計の方が、認知度の低い家計よりも、低下幅が大きい。なお、同様の現象は、包括緩和の際にも観察されている。』

つまりアンカーする力が強くなっているというお話。

『インフレ目標政策の有効性

2006年3月に中長期的な物価安定の理解を導入して以来、日本銀行は、段階的に物価安定の定義を強化してきた。2009年12月に中長期的な物価安定の理解の明確化が行われ、2012年2月に中長期的な物価安定の目途、そして、2013年1月に物価安定の目標が導入された。しかし、表1が示しているとおり、2009年と2012年の政策は、インフレ予想に有意なインパクトを与えることはできなかった。なぜなのか。逆に、なぜ2013年の物価安定目標は、インフレ予想に有意な影響を及ぼし得たのだろうか。』

『鎌田他(2015)での分析結果を踏まえると、インフレ目標を有効に機能させるためには、それをアナウンスするのみでは十分ではなく、中央銀行のコミットメントの信頼性を増すために、何か他の大規模な政策とパッケージで実施することが鍵であるように思われる。』

キタコレ。

『物価安定目標の場合には、量的・質的金融緩和が続けて実施されたが故に有効に機能したと考えられる。また、中長期的な物価安定の理解の明確化も、その後に包括緩和が導入されてはじめて効果を発揮し得たと解釈することも可能である。政策効果を高めるためには、インフレ目標を、大規模資産買入れ、フォワードガイダンス等、どのような政策とパッケージで実施するのが有効なのか、事例研究を積み重ねていくことが望ましい。』

ということですので、まあ政策の枠組みを見直す場合には何かのパッケージを打ち込みましょうという話にはなると思いますので、じゃあもうヤケクソで長期金利ペッグ政策でも実施しますか(ただしこれは出口で死ぬのであまり考え無しにやると大変なことになる)というような所ですかそうですかと思います。

でまあ更に申し上げれば、このリサーチラボの説明ですと家計の長期のインフレ期待はそれなりに望ましい水準でアンカーされています(キリッ)とも言えたりしそうな気もするのが、このタイミングでこういうのが出るとはと中々味わいのあるペーパーですなあと思うのでした。


○市場メモ少々

・末初GC

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

東京レポレートの昨日のT+0翌日物は末初取引になりますが水準はゼロレートになっておりまして、前日のT+1翌日物レートよりも低下という結果になっております。

6月に加えて7月末のGC市場玉無し芳一事件とかがあった上に短国市場が期末で急速に干上がったというのもありましたので、末残調整については早めに手当てをしないとどんだけ悲惨な目に遭うか分からんという認識は皆様の中に共有されていたと思われる次第で、参加者全員が厳戒態勢に入っている場合はまあそこまで悲惨な事にはならないの典型的な結果となりました。

まーでも年末の所はかなりややこしい事になりそうなので毎回毎回こんな感じになるんでしょうなあと。

なお3M入札が今日ありますがどうせまだ期末の余波で堅調なんでしょと思います。


・資金需給ですが

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqx/juqx.htm/
日銀当座預金増減要因と金融調節(9月実績速報)

これを見ますと除く国債短国の財政要因で3.2兆円の不足に振れていまして、月初の見込みでは・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1509.htm/
日銀当座預金増減要因(2015年9月見込み)

にありますように、除く国債短国の財政で0.6兆円程度の不足見込みでしたので、財政要因が2.6兆円ほど当初見込みより下振れしていたという事になりますな。

・・・・・・・・ということで無慈悲買入だの何だの申し上げましたが、単に財政要因が下振れしたのが判明したから月後半に謎の買入拡大とかが入ったという事だったのかなあとは思うのですが、昔のようにトン調節を前提に回している時ですと資金需給のブレに関してもその場その場で微調整という事になるので良いのですけれども、今のMB目標の建付けですとその調整機能が短国買入の所に集約されてしまっているので、兆円単位で財政要因のブレがあるという話ですと短国買入の買入見通しを読むのにさすがに影響が出てくる話になりますから、資金需給見通しに関しても半月位の所でリバイスして頂きたいものであると思うのでした。

とは言いましても、そもそも短国買入でMB帳尻をやっているわ買入規模が過大だわという現状だからこういうブレが後から見せられると「あらま」となるのですが、別に今みたいな政策じゃなければ財政要因のブレに関しても通常の資金供給の出し入れの中で微調整が出来るので別に将来的に必要な話でも無いから要らんと言えば要らんのですがね。


でまあ財政要因がズレたということはこの先の資金需給的にたぶん帳尻が入ることになるので、その点からすると10月以降の財政要因が資金余剰方向に振れて短国買入のフローとかも減るのではないかという気はせんでもない。