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2016/12/30

お題「決定会合主な意見だがYCCの今後の運営に一抹の不安が起きますの」

さあ皆さん大納会なのに17時の来月輪番予定が出るまでデスクに張り付きですよ!!

#まあただの4連休ですので年末年始って感じじゃないですけどねえ

○決定会合主な意見を見て気になったことなのだが

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2016/opi161220.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2016 年 12 月 19、20 日開催分)

・経済物価に関してはあまり面白いものは無いのですけれども

『(国内経済情勢)』のところですけれども、

『・わが国経済は、輸出・生産が持ち直しているほか、個人消費も改善が明確となりつつあり、景気回復の足取りがよりしっかりしてきている。

・ わが国では、新興国経済の減速感が和らぐもとで輸出・生産が持ち直しているほか、個人消費の改善も明確になってきている。』

てな感じの話が続くのですが、気になったのは「来年の賃金上昇」に関するコメントがあまり見られない事でして、先般の経団連での総裁講演でも賃上げ要請に関する言及が無かったりしておりました、なんちゅうか非常に不思議感が強い、

『・わが国経済の先行きについては、@原油高と円安が進むもとでの家計のマインド、A深刻な人手不足の影響、Bボラタイルな為替市場の影響に注目している』

というのがあって、家計のマインドと言えば賃金上がらないとマインド上がらんでしょと思う訳でして、大体からして2013年から2014年の所でCPIがホイホイ1.5%まで上昇したものの、実質所得の低下が思いっきり効いて消費が落っこちて企業の価格設定も弱気に転じて行きましたという流れになりましたし、実質値上げは行われたものの量目減らすとかの措置による値上げなので量が出なくなればそら生産も抑えれます罠みたいな流れになった訳ですよね。

でもって暫く前までは「賃上げ重要」を連発していたはずの日銀執行部の皆様なのですが、ここでの主な意見での賃上げに関する言及の少なさや、経団連の講演を見ますと、円安株高で浮かれているのか、それともそもそも論として賃上げがしんどい見込みなのであまり賃上げ賃上げ言わないようにしているのか、まあ何だか非常に気になっている所です。

でもって毎度申し上げておりますように、賃上げもそうですが恒常所得の増加期待とか安定期待とかが無いと借金して新車買ってドライブだぜヒャッハーなどのような事案が社会的に現象化する訳は無いのであって、話としてはそっちの方なんだと思うんだけどなあ。


・物価の評価と見通し

『(物価)』の所から。

『・予想物価上昇率は、下げ止まりあるいは幾分改善している指標もみられるが、全体としては弱含みの局面が続いている。

・予想物価上昇率や需給ギャップはやや長い目でみれば上昇傾向にある。石油価格や一部の他の資源価格は既に上昇傾向をみせているため、今後物価押し下げ圧力は徐々に剥落し、物価上昇率が高まっていくことが期待される。

・市場動向次第で、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率は幾分上振れる可能性がある。

・足もとの円安は、物価を短期的に押し上げるだけに過ぎず、物価の基調を高めるとは考えていない。』

という4つの見解が載っていましたが、しらっと最後にそらおっしゃる通りですなあという身も蓋もない指摘があってワロタ。たぶんこれ野党委員(もしかして野党系の人が他に居ると面白いですが)が執行部および与党審議委員が足もとの円安株高でヒャッハーヒャッハーと浮かれているので一発水をぶっかけに来たのかなあとか思うのでした、


・「本格的に金利が上がるときにも10年0%が維持できる」という考えが気になるのだ

金融政策運営の部分の『金融政策運営に関する意見』だが、

『・「長短金利操作」のもとで、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されている。』

いやあの9月21日に出していた時のイールドカーブと全然違うカーブになっているんですけれどもということで、この「金融市場調節方針と整合的なイールドカーブ」のイメージはどうなっているのかをきちんと示して頂きたい。この表現だと9月に示した「現状程度の水準を維持」というのの範囲内である、という言い方に読めるのでそれだけのアローワンスがあるということなのですかねえ、とか言ってますが何も考えていないという可能性も存在。

『・ 現在までのところ、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は円滑に機能しており、景気回復と物価上昇に貢献している。』

まあどうでもよい見解ナリ。

『・2%の「物価安定の目標」までなお距離がある中、その早期実現に向け、現在の金融政策運営方針を堅持し、金融緩和効果をしっかりと引き出していくことが肝要である。』

言いたいことの趣旨は分かるのですが、それこそ早期実現というような方向に経済物価情勢が進行していった場合には、中立的な金利水準がその間に大幅に引き上がる訳で、その際に10年金利0%というのを維持できるのかという問題が生じるのですよ。そらまあ物理的には10年ゾーン全部吸い上げる勢いで日銀が買えば可能という話であっても、そもそもそれが政策として適切なのかという問題が生じるわけで、市場だって当然そういうことを考え出すと、日銀が0%で止めようとしても他の年限が爆発するとかそういう話になりますし、大体からして2%物価目標達成するときには短期金利がマイナスで10年金利が0の訳は無いのですから、どこかで調整をしないと行けないときにその調整が大災厄的な調整を強いられるリスクが(金利を頑張って抑えれば抑える程)高まりますな。

『・現在の政策は、追い風を受けているとき、それを増幅して強い緩和効果を発揮し、2%に向けたモメンタムに結びつく仕組みである。現在の金融政策運営の方針を堅持すべきである。』

格好良い言い方ですが、要は円安加速装置が付いていますというお話ですし、この説明は説明で言いたいことは分かりまして、escape velocityを出したいという説明なのですが、先行き目標を達成させるのは安定目標なのですから、モメンタムをバカスカ強くして何とかしようというのも発想としてちと危うい所はあるんでしょうなと思う。これが単に低金利で景気を吹かすという話をするならまだ分かるのですが、黒田日銀の場合は昨今の黒田さんのご機嫌振りを見れば分かるように、円安ドライブで物価あげて行きましょうというのがありまして、その円安ドライブってあまりやり過ぎると今度止まらなくなった時にどうするんだ的なそこはかとない不安is有るのですけれども。

『・大恐慌時のFRBの早すぎた出口、日本の早すぎたゼロ金利と量的緩和の解除などの経験を踏まえれば、2%の「物価安定の目標」を達成するためには、相当の期間、現在の金利水準で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を続けるべきである。』

別に日銀の量的緩和解除は早すぎでもなんでもないと思いますけどと思いますし、緩和引っ張ってITバブルにサブプライムバブルを作ったFRBっつーのがいる訳で、日本にその手の問題が起きないか、というマクロプルーデンスの問題も考慮に入れないと行けないのですが、まあどうせ置物かジンバブエだと思うのですが、どっちのカボチャにしてもそういう発想は全然存在しないでしょうからその時点で却下。

でもってそのことよりも気になるのは「2%の「物価安定の目標」を達成するためには、相当の期間、現在の金利水準で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を続けるべきである。」って思いっきり「現在の金利水準」って言っているのだが、たとえばの話コアCPIがプラスに戻って来てある程度の水準を見に行く(0.5%なのか1%なのかは分からん)ようになって、為替市場も125円だの130円だのというような状況の中で(前回と違って)円安牽制も入らない、というような事態になった時に、「10年金利の0%」というのが本当にコントロールできるのか、という話だと思うのよね。

もちろんこれは実際にそういう状況になってみないと答えは分からんのですが、今の金利上昇ってそれはまあ所詮コアCPIマイナスの世界での金利上昇ですからそこまで気合の入った売りとかになるような話ではございませんですし、大体からしてそんなに物価イカネーヨというのが市場コンセンサスになっているので、そういう風にいつまで経っても2%行く気配や気分すら起きませんというのであればまあ、「現状の政策を継続」というのも行けるんですけれどもね。

ということでですね、この後の方にたぶん佐藤さんと木内さんのコメントがあるんですが、この2名は「本格的に経済物価情勢が好転してきた時に起きる金利上昇圧力によって10年0%というコントロールを早期に失う可能性があるで」という話をしているのですが、どうもそれ以外の皆様が10年0%について相当の期間何の問題もなく運営できるという前提のもとで議論をしているように思えまして、その点が非常に不安であります。

もちろん、この政策で長期金利の誘導目標水準を上げるのって、恐らくは細々した微調整ではなくてそこそこの幅をもって上げないと説明がつきにくいし、その前の段階では市場(ただし超長期とか)が走って政策の方がビハインドするという事になるのでしょうが、それにしても今の枠組みが経済物価情勢の上昇局面においてレジリアントであるという発想で政策運営を考えていると、実際に日銀の思惑通りに物価が進んだ場合に甚だややこしいことになりそうですな、


『・経済の好循環が続いている現況下において、息長く腰を据えた脱デフレ完遂の取組みに資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。』

これも基本的に今の枠組みが長持ちするという発想。いやまあ物価が全然上がらないでウダウダする分には長持ちしますが。


『・ポジティブなショックがあるとき、金利をゼロ%で固定すれば金融政策は自動増幅機能がある。2%を超えて物価が上がることを容認するオーバーシュート型コミットメントの意味は、物価が上がっていないときには人々に認識されないが、実際に上がっていくときには、認識されるようになる。9月に決定した政策の意味が次第に広く理解され、効果が強まると期待される。また、実際に 10 年物国債の金利をゼロに抑えるオペレーションが必要である。今が、2%の「物価安定の目標」を達成する好機である。』

ああ分かってねえなあというお話。つまり前半の話は理屈としたは正しいのだが、そもそも10年金利をこの人の想定している状況で未来永劫0%で固定させることが出来るのか、という大問題が存在するわけですし、さらにこの通りに進む中で仮に10年金利を0%のままに据え置いていたら、2%に物価が達成される頃には今度は金融緩和の度合いが酷く成り過ぎで、スパイラル的なインフレ期待やインフレの上昇になって、止めるのに物凄くコストのかかることになるか、トンデモナイ資産バブルが発生してその崩壊時に大変な事になるのか、というような事態が生じます罠。

ですから、オーバーシュート型コミットメントって目標が近づく所では自ずと誘導目標金利の引き上げが行われる、という建付けになっている(実際に引き上げるのが難しいので引き上げ時にYCCの枠組みまた変えそうな悪寒がしますが)のであって、この説明は「そもそも政策の建付けをきちんと理解していない(目標達成するまでの途中で利上げが行われる)」のに加え「10年0%で延々と固定が可能だと思っている(ちゃんとした物価上昇局面だったらどこかで爆発するので無理)」という2点に認識の間違いがありますな。


『・世界的な金利上昇局面においても、わが国の金利は相対的に安定している。こうした動きの違いが、本行の金融緩和政策の効果を印象付け、そのアナウンスメント効果を強めている。予想物価上昇率にもプラスの影響を及ぼすものと期待している。』

はあそうですかってな所ですが皆さん円安一本足打法で円安ヒャッハーとなっている、というのは把握した。


『・国債買入れは、金利の水準だけでなく、その変化のスピードやモメンタム、背後にある要因なども勘案しながら、イールドカーブ全体として金融市場調節方針と整合的に形成されるよう行っていくべきである。』

『・現行の政策枠組みのもとでは、金融政策決定会合における決定と、調節運営との間の連携が非常に重要である。調節運営にあたっては、金融市場調節方針の範囲内において、一定の裁量の活用が望ましい一方、金融市場調節方針の決定にあたっては、調節運営などを通じて得た市場参加者の見方や市場動向を従来以上に考慮していく必要がある。』

このあと出てくる2本が木内さんと佐藤さん(登場順)とみられますのでこのお方はもしかして政井さんか中曽さんかねと思ったりしたのですが、「イールドカーブ全体として金融市場調節方針と整合的に形成」と言いましてもそのイールドカーブ全体というのが3か月前に出した物から何のリバイスアップデートをされていない訳でして、このところが何が何だかさっぱり分からないし、定量的に理論的なバックボーンが分かれば日銀がアップデートしなくても市場の方で計算するんですけれども、そういうの無い中でこういうふわっとした話をされても調節現場は知らんがなとしか申し上げようがないでしょうな。などと同情しつつ建設的な見解(またの名を悪態)を申し上げている訳ですが。

でもってそもそも調節が微妙にワケワカランのってボードの示すディレクティブ(10年ピン止め)と用意している飛び道具の説明とか英文説明とかでYCCと言ってみたり「イールドカーブ全体を操作する」みたいな話をしている所に齟齬があるので、連携が非常に重要ったって連携できんぞなと思いますし、しかも賛成している委員の中でもジンバブエみたいな話するのいるからそこで一つの形が出て来ない中で調節にマルナゲータされてもそら困る罠ということで、いや本当これどうするんでしょうねえ。


・最後の2名は木内さんと佐藤さんですな

これは木内さんですね(理由:国債買入ペースを目標にしようという話だから)

『・資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを段階的に低下させていくことで買入れの持続性と市場の安定性を高めるべきである。長短金利操作によって、為替・株式市場のボラティリティは大きく高まった。また、「指値オペ」の実施を早期に余儀なくされたことは、長短金利操作の難しさを裏付けた。国債買入れを伴わない「指値オペ」は、実効性が低い。超長期国債の買入れ増額措置は、長短金利操作のもとでは国債買入れのペースが高まるリスクが相応に高いという当初からの自身の懸念を裏付けるものである。』

従来の木内さんの説明通りであります。


佐藤さんの意見(と勝手に想像していますが)ですな。

『・10 年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状はもう少しスティープであってもよいと考える。長期金利操作について、市場が経済・物価情勢を先取りして変化しているという判断であれば、ビハインド・ザ・カーブになる形で、それを追認していく調節手法でよい。また、市場では長期金利の「ゼロ%程度」の範囲を±0.1%とみているようだが、レンジはより柔軟であってよい。長期金利はもともと微細な調節に馴染まないため、アローアンスは特に上方向は広めにみておいてよい。』

もう色々と仰る通り過ぎて(;∀;)イイハナシダナーと涙が出て参ります。木内さんは政策手段を買入ペースにしろという人なので別ですが、残りの7名の皆様が金利を上げなければいけない状況の時に、そもそもどういう状況になっているのか、そしてその時にどういう手段を投入するか、という事をまるで考えていない中で佐藤さんが明確なビューを示している訳ですよ。

市場に対するビハインドで後追い利上げという場合なんですが、これもやり方によっては利上げしたら一段の市場の催促スパイラルとかになってしまう可能性があり、昨日から毎度申し上げているように、実は利上げするときにYCC枠組みを修正しないと意外にしんどいのかなとも思うのです。


まあいずれにせよ、金利が本当に上がるような事になった時にYCCの枠組みが持つのか、という点について、佐藤さんと木内さん以外の政策委員の皆様がちとナイーブに過ぎるような印象を受ける今回の主な意見でして、来年も目出度く海外株高米国金利着実に利上げで円安基調とかになった場合に政策がどうなって行くのでしょうかというお話ではありますな、と思いました。



○うーむ時間が無くなったのでネタ帳だけ

・リスクフリーレートの話してる間が無くなった

ほら今日は休日ダイヤですし(違)。
http://www.boj.or.jp/paym/market/sg/rfr1612c.pdf

ええすいません謹賀新年ネタにします。


・個人向け国債手数料引き下げ

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p281205.htm
個人向け国債の募集発行事務取扱手数料を見直します

『個人向け利付国庫債券(変動10年、固定5年、固定3年)にかかる募集発行事務取扱手数料については、平成29年3月募集(4月発行)分より以下のとおり見直します。』

『(見直し前)
個人向け利付国庫債券(固定・3年)  額面100円あたり40銭
個人向け利付国庫債券(固定・5年)  額面100円あたり50銭
個人向け利付国庫債券(変動・10年) 額面100円あたり50銭

(見直し後)
個人向け利付国庫債券(固定・3年)  額面100円あたり20銭
個人向け利付国庫債券(固定・5年)  額面100円あたり30銭
個人向け利付国庫債券(変動・10年) 額面100円あたり40銭』

これってURLみれば分かりますように12/5に出ていたのですが、ついうっかりネタにするのを忘れていたら昨日の日経に出ていたようなので忘れないうちに入れて置きます。


○年末の御挨拶

てな訳で今年はマイナス金利だわブリクジットだわYCCだわトランプだわと、何かそれ以外にも色々あったような気がしましたがもう知らんがなという事で、とにかく金利マーケット受難でございましたので、来年はもうちょっと良い年になって欲しいものです。って年末年始ただの4連休で今年のGWの方が長いだろという説が大いにあってただの週末気分ではありますが、来年も御愛顧のほどよろしくお願い申し上げまする。良いお年をお迎えください。





2016/12/29

お題「いや何でそこで超長期輪番減額するかねえ/その他短期ネタ少々」

何じゃこのテレビドラマと思ったらモーサテ今日からやってないのかorzorz

○輪番超長期減額はする必要無かったと思う

年末モードの相場の中で昨日は急にこんなものが投下されるの巻。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of161228.htm
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,900 2016年12月30日
国債買入(残存期間25年超) 1,100 2016年12月30日
国債買入(変動利付債) 1,000 2016年12月30日

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやー輪番超長期減額して元に戻す攻撃ですよナンデスカソレという感じではあります。

・「金利が大きく下がっているから減額」なら話は分かるのだが全然そうじゃない

えーっとですな、この前輪番3ゾーン打ち込み+入札前日に超長期輪番+入札翌日の超長期輪番の予告、というのを打ち込んだのが14日なのですが、その前日13日の10年と超長期の引けが以下の通り(例によってBB引けの単利なのは勘弁してちょ)。

12/13
10年345:0.080%
20年158:0.645%
30年53:0.805%
40年9:0.945%

でもって27日の引けが以下の通り(20年カレントは159だが比較の為に158にしておいた)。

12/27
10年345:0.060%
20年158:0.570%
30年53:0.680%
40年9:0.800%

・・・・・・・ということでですよ、先般超長期輪番を増額した時点から40年で14.5bp強くなっていますが、30年は12.5bpだし、20年に至っては7.5bpしか金利低下していない訳で、そらまあ30bpとか40bpとか金利が下がって金利低下の方をケアするとかいうのなら分かるのですが、10年だって別にゼロだのマイナスだのに戻っている訳でもなく、20年は10bpも金利下がっていないのにいきなりこの前増やした輪番減額ってそれはどういうことぞという感じです。

念のため9月に輪番減額をした10年の引けが▲9.5bpという時の状況ですが(これは各カレント銘柄の引値単利)

9/28
10年:▲0.095%
20年:0.345%
30年:0.455%
40年:0.535%

な訳でして、まあ別にここまで輪番減額引っ張れという訳でもないですが、増額してから減額するまでがあまりにもタイミングが短すぎるし、その上その間の金利低下が全然大したことがないという所で何をここで減額しますやらという所ではあります。


・自ら「次の輪番増額の効果を落とす」というのがもうね

ということで、まあだいたい皆様も同じように考えると思いますが、「輪番を増やしたくない」という中で、「月末に翌月分を変更すると減額したのが分かりやすくなる(その月の最終回の額との比較で出るというのはご案内の事と存じます)ので目立たずに減額する為に月最終にやった」という事でしょうというのはまー衆目の一致するところだと思います。

でもってですよ、おそらく金利がまた上がったら輪番増額すれば金利上昇をストップさせることができるのだから増額する糊代も作っておかないと、などと考えて輪番減額したと思うのですが、えーっとすいません、じゃあ次回に輪番同じように超長期100億ずつ増額した時に本当に同じように止まるのかよという話になって来るのですよ。

そらまあ実弾の買いが来るんですからその瞬間は止まるのですけれども、こうやって金利上昇牽制で色々な今までのお約束を外してまで実施した輪番増額が、たかだか20年8毛金利低下如きで元に戻される、というのを見てしましますと「今回増額したけれどもどうせすぐ元に戻すんでしょ」となる訳ですから、「輪番が暫く増額されるから安心して持っていられる」というような考えにならん訳で、下手したら増えた輪番の所によーしパパ元に戻される前に打ち込んじゃうぞーとなってしまう位の話ですがな、ということって市場でプライスアクションを目の当たりにしていたら気が付くもんじゃないでしょうかねえと思うのですが、何でここでわざわざ減らすのやら。というかこんな所で輪番減額する位だったら、その前の輪番増額だって不要で、20年入札がこけたら絶対利回り水準でいけるやんという最終投資家が出てきて一件落着(落着しない場合は14時から指値オペ)という話では無かったのでしょうか。

つーことで、これまあ年内はそんなにネタが無いかも知れんけれども、来年になってたぶんやるなら為替方面だと思うのですが、為替方面から一段金利上昇みたいなネタが打ち込まれて来た時に、もう輪番の増額を少々行っても「どうせすぐに減らすんでしょ」と思われる事によって輪番増額の効果を自分から落としているので、その時にはもっと輪番の増額を実施(100億とかじゃない額で増額という事)するとか、それこそ入る所に指値オペ入れるとか、目先の輪番減らすために将来に国債買入をより派手に拡大しないといけない状況を自分から作り出しに行っているというのが落涙を禁じ得ないのであります。


・「水準でやっていない」のか「均衡イールドカーブの位置が実は変わっている」のか

でもってですよ、今回の輪番減額ですけれども、10年以外の所(特に超長期)に関しては止めに入るのに対して一定の金利水準を持って入っている訳ではないというのも示した格好になっている訳でして、この前の総裁会見では答えをはぐらかしていましたが、9月の総括検証とYCC政策公表時に『今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』(9月声明文脚注)とありますように、「概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止」というのが生きている筈なのですが、少なくとも27日引けの時点での金利水準の所で超長期の輪番を減額した、というのは(1)実は9月の声明文で言っている概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するというのはもう生きていなくて10年以外の水準については知らんがなという状態になっている、あるいは(2)9月の時点からの変化によって均衡イールドカーブの水準も変化しているからそもそも望ましい水準が変化しているのでそれに合わせた、というような解釈が出来てしまう訳ですよね。

そうなりますと、いずれにしてもそうですが、じゃあ次に金利があがって12月14日の水準に達した時に、それがチンタラと上がっている分には止めないのかという話とか、結局何か金利が急に勢いよく動いてビビった時に何か牽制してくるけれどもそれだけかよという話とかになる訳でして、今回のようにちょこまかと微調整してくるというのはそれが一々メッセージになってしまうのですよ。まあそれが証拠にたかだかトータル200億円の輪番減額で昨日のイールドカーブって思いっきりツイストスティープしている訳で、チーペスト1毛強の10年0.5強の20年2甘の30年3.5甘(カレントのみ)40年4.5甘とかもう笑ってしまうしか無い訳ですよね。

つーことで何でこういう風に細々とやってしまうのかなあと思う所で、政策ちゅうのはもうちょっとざっくりとしたものなのですから、どーんと腰を据えて構えて、こういうちまちました微調整(話の流れ上書けてませんでしたが、昨日の輪番って2年入札の翌日なのに中期打たなかったのですが、これってMBの目標達成しているもんだから受渡ベースで来年渡しに中期輪番を温存して、来年の数字づくりを考え、年内受渡の輪番は組み合わせの中で一番買入額が小さくなるように調整したんでしょ、ってのが見え見えなのも中々味わいが深かったです、こういうのも微調整ですな)をすると却って足元見られたりするし、市場に無駄なボラを与える事になって、コントロールを逆に難しくすることに繋がると思うのですよね。

・・・・・・まあもっと単純に言えば「動いても動かなくてもそれぞれ別の所から非難轟轟になるんだから、だったら動かない方が良いんじゃないですかねえ」ということですかね。


・まあしかし量を増やしたくないのは把握したがこの先どうなるんでしょ

つーことでまあこの点は衆目の一致する所だと思うのですが、先ほど申し上げた輪番の組み合わせも含めて、ここで減額してくるとか「量は増やしたくない」というのが意図としてある、という風に思いっきり取られてしまっていると思うので、そうなると金利上昇時における市場参加者の気分として、参加者が考える抑止力が弱まってしまっているということになりまして、先ほど申し上げましたように却ってその後の相場止めコストを高めている事でもありますし、長い所での指値オペって来ないのかなあとか思われてしまうので、何か結局無駄な所で指値オペやる破目になるとか、中々残念な展開になりそう。

つーことで、伝家の宝刀なんぞは抜かないでホレホレあるぞあるぞと言っておくのが一番良い訳で、こうやってYCC導入から3か月の間に色々な手を出してしまうと、だんだん打つ手が無くなって来るのでありまして、本当に利上げしないといけないような経済物価情勢が近づいてきたときにオペレーションが持つのかいなと心配になりながら年を越すとかそういう事になるなあなどと申し上げつつ、ダラダラと書き物のネタを提供して頂きましてネタ枯れの中こりゃどうもというところでもありますな(棒読み)。



・・・・・・・でまあこういう状況なのでこりゃオペそのものが出たとこ勝負というか先々のこと考えてないだろとか思いますし、YCCとか格好良い事言っているけどそもそもボードとかにはそのコントロールすべきYCの姿が無いんだろうなあとか意地の悪い年寄りのアタクシなんぞは思ってしまう訳ですが、高度な理論的バックボーンの元にYCCを運営しているという解釈だってやろうと思えば出来るのですけれども、どうもこのドタバタぶりをみていると、そうやって解釈しようとするのって落語の蒟蒻問答みたいなもん(当然ながら解釈する方が禅僧の立場)のような気がだいぶするんですけどどうでしょうかねえ。



○短期市場ネタ少々

・翌日物以外のコールレートも公表とな

http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2016/not161228a.pdf
コール市場関連統計(毎営業日)の公表について

『日本銀行では、コール市場に関する情報の提供を一段と充実させる観点から、「無担保コールO/N物レート」に加えて、その他の計数を新たに公表することとしました。詳細は以下の通りです。』


つーことでそちらにありますように

・無担保コールレート(O/N 物以外)<速報、確報>
・有担保コールレート<速報、確報>
・無担保コール市場残高<確報>
・有担保コール市場残高<確報>

・無担保コール O/N 物取引の出来高<確報>


が公表されますな。これって短資協会がこれまで出していたのを日銀が公表するという事ですが、

http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exmenu_m.pdf
「コール市場関連統計」の解説

『作成部署、作成周期、公表時期等』以下を見ますと、

『作成部署:金融市場局
作成周期:日次
公表時期:定期データ更新日時の通り
公表方法:インターネット・ホームページ
刊行物等:なし
データ始期:無担保コール O/N 物レート 1997 年 11 月
上記以外 2017 年 1 月』

となっていて、定義の方をみると、

『1.公表内容

本邦コール市場において、情報提供会社が媒介した取引(有担保コールおよび無担保コールにおけるブローキング取引)および一方の当事者となった取引(有担保コールにおけるディーリング取引)にかかる以下のデータを公表しています。』

とあって、有担保コール翌日物の金利の所には

『(翌日物)

有担保コール市場における、当日約定、当日資金受渡し、翌営業日を期日とする条件で成立した取引のレート』


と書いてあるのですが、脚注を見ると

『(注1) 有担保コールはブローキング取引のみ(ディーリング取引は含みません)。


と書いてあるので、最初見た時に一瞬「ついに有担保コールのディーリング取引のレートが公表されるようになるのか」と思ったのですが、この脚注を見ると従前短資協会が公表していた「有担保コールのブローキング取引が成立していないのでレートはありません」状態と変わらない事になってしまうように見えるのですが、頭が悪いのでどっちなのかがイマイチ判然としません。

ちなみに

『(**)現在の情報提供会社は以下のとおりです。
・上田八木短資株式会社
・セントラル短資株式会社
・東京短資株式会社 (五十音順・敬称略)』

とありますので、引き続き無担保コールのDD取引とかはカバーされていないのですが、まあそもそも短期の資金取引って個別というかその瞬間の事情によるレートというのの塊みたいなもので、それを何でもかんでも公表すれば良いというものではない(平時には問題ないけれども危機の時などに個別取引が全部公表されたらスティグマの問題とかが起きて一気に市場がシュリンクするリスクを抱えることになるのではないでしょうかねえ)とアタクシなんぞは思うのですけれども、まあここは色々な意見があると思うので別に自分が正しいという積りもありません。


ちなみに短資協会の方ですが、

http://www.tanshi-kyokai.com/

トップページに

『12月28日(水)

これまで当協会から公表しておりました「コールレート(速報、確報)」については、来年1月4日(水)分より、日本銀行金融市場局から公表されます。なお、当HPでは、日本銀行金融市場局から「コール市場関連統計(速報、確報)」が公表された後、同計数を、これまで同様、速やかに掲載することといたします。なお、「過去の市場情報(コールレート確報、時系列データのダウンロード)」も、従来どおり、更新いたしますので、引続きご利用下さい。』

ということなので、短資協会のページからのデータは継続的に取れるようで気が利いてますな。



・リスクフリーレートに関する最終報告書キタコレなのだが時間がないので明日のネタ送り

http://www.boj.or.jp/paym/market/sg/rfr1612c.pdf
日本円のリスク・フリー・レートの特定に関する報告書


結論としてはリスクフリーレートについては無担保コール翌日物加重平均金利を使います、というまあ現状を考えたらそれしか無かろうという穏当な結論には成っていて、まあそれ自体は設定するならそれじゃろと思いますので現実問題としてこの結論になる、というのは分かるのですが、まあこの件につきましては外野なりに色々と思うことはあるので、その話でもしようかと思っておりますがオペの雑談をついうっかりノリノリで時間かけてしまったので、折角1日引っ張るのだからもう少し考えてみて明日の年末ネタ(???)の一つにしようかと思います。まあペーパーは興味深い話だと思う(のはマニアだけですかそうですか)ので読んで味噌。






2016/12/28

お題「引き続き相場は年末モードで世間話モード」

スポ末でやんすな。

○CPIェ・・・・・・・・・で関連雑談

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpipre.pdf
消費者物価の基調的な変動

総合(除く生鮮食品・エネルギー): 10月0.3→11月0.2
刈込平均値: 10月0.0→11月0.0
上昇品目比率−下落品目比率: 10月25.6→11月23.3

ということでして、11月下がっているやんけという悲しい結果になっておりますが、円安効果はいよいよこれからですとか言って暫くは粘れるでしょうし、いやまあ何ぼ何でも1月のCPIとかになってくれば(来年の春先になってくれば)こちらの数値は良く成ってくるのでしょうというお話ではありますが。それにしても「上昇品目」−「下落品目」が低迷しているというのが、企業の価格設定行動が盛り上がらないという事を意味する訳でしょうから、どうもこっちが盛り上がらないというのはそもそも論としてのインフレ期待の盛り上がりに繋がってくれないという意味でショボーンという感じです。

でまあ昨日の黒田総裁講演での悪態の続きになりますけれども、こうやって企業の価格設定行動がイマイチ盛り上がらない(量目減らしたステルス値上げみたいなのは見られるけど正面切った値上げは・・・・・)となりますと、もう一つのインフレ期待の盛り上げに効果の出る個人所得の部分って、一昨日の黒田総裁講演では賃上げ要請をするのをトンと見かけない状態で、しかも最近ちょこちょこ出てくるネタが働き方改革方面なのでして、いやまあ全体の趣旨自体は悪い話をしている訳でもないと思うのですが、先日新聞でどどーんと出ていた「副業解禁」ってのを見たら「つまり本業だけでは食っていけないような給与水準に下がって行くのかよ」というような連想を特にこういうような先行き大丈夫か的な不安の大きめの中では持ってしまうと思うので、何ちゅうか「オーバーシュート型コミットメントでマネーが増える事が確信されればインフレ期待が上昇する!!」というようなナイーブなお話よりも、こういうディテールの所の見せ方何とかならんのかと思います。

さらに脱線すると、マイナス金利政策ってまあ総括検証では期間の関係でデータが取れないでしょうし、分析の所で色々とデータに関しては関与する変数の因果関係とかいじくりまわせば色々な結果が出せるんでしょうけれども、総括検証でも無かった面としまして「マイナス金利政策」が世の中の期待形成にどういう影響を与えていたのか、ということはもっと真剣に分析した方が良いのではないかと思います。今でこそトランプ大明神のお蔭で一連の円高株安が無かった事になっておりますが、その前の動きってリスクオフだの色々なネタはあったにせよ、マイナス金利政策というのがマインドを相当悪化させた可能性というのに注目を置いた分析、というのを勇気ある日銀スタッフの皆様にお願いしたいがさすがに無理ですかそうですか。


とまあ話が思いっきり脱線しましたが、日銀コアCPIがこの調子となっているのかよとちと残念な数値になっておりますが、まあ何ぼ何でも年初にかけてCPIが持ち直して来る訳で、まあゼロ近辺でウダウダしている分には債券市場に影響はそんなに無いとは思いますが、一応こう角度付けて上昇、という事になってきますと、そもそも論として10年0%程度という長期金利の誘導目標が正しいのかとかいう話を言い出す動きは(今回でも10年の誘導目標金利がとか大穴狙いというよりは、将来的には日本が永遠にダメなのでなければほぼ確実にこの誘導金利上昇するのですから、「筆者は真っ先に指摘した」とか言いたいがためのインチキ予想ですけどそういうのがいた)CPIがホイホイ上昇しだした時には市場の方が先に反応するでしょとは思います。


・まあ来年のネタ的になりますがCPIホイホイ上がってきてどうなるのやら

一応話の前提が前年比効果とかもある上に円安なんだから何ぼ何でもCPIってここからホイホイ上がるでしょという前提でお話をしているのですが、これがまた前回の物価上昇が結果的に消費の落ち込みを招いたという反省モードになっていたとすると、企業の価格設定行動が2013年の時よりも弱気化していて、円安効果の部分が価格に反映しにくいという変化もあったりして、一応アタクシは「今度こそ上がるじゃろ気合じゃ気合じゃ」とは思っているクチなのですが、そうはならないのであれば、まあしょうもない相場になりますな。

然るにまあそうじゃないでもうちょっと物価とかが上昇するような感じになった時、という明るい(かどうか知らんが)未来においての話をすると、まあいずれどこかの時期で10年0%程度の水準をどうするのという話になるのでしょうな。

一般的には市場の動きに応じて微調整(10bp引き上げ)みたいな話が今の所多いと思うのですが、それって一度やってしまうとちょっとしたことでホイホイ誘導目標が変化することになってしまいかねませんし、少なくとも市場は「次の調整マダー」と催促というか日銀を追い立てて回る相場になって来るので、そうなってくるとそもそものYCCとは何だったのか、という話になると思うのですよ。

いやまあ最初はアタクシも「CPIが0.5%見えるようになったら誘導水準微調整して「程度」の範囲をちょっとだけシフトさせるのかなあ」とか思ってたこともあったのですけれども、いざ金利上昇モードの時の動きとかを見ていますと、どうもそういう微調整みたいなのは難しい(このYCC自体がもうちょっと市場価格変動放置プレイだったら違っていたかも知れないけど)なあと思うので、そうなると結構な歪みが発生するような状態になるまで誘導金利水準を変えないから、新発10年カレントだけ変な利回りになってしまうとか、そこまで極端ではないにせよ、カーブ形状の中に「金利上昇のエネルギー」を無駄にため込んだ状態になっている所で誘導金利の水準を動かす事になると思うのよ。

でまあそうなりますと、おそらく金利変更が微調整とかだと却って変に市場が爆発するのか更にエネルギー溜めるのか良く分からんがどうも良い予感しませんし、まあドバーッと動かす(0だったのが50になるとか)となるとエネルギーはそこで解放されるにしても、その解放タイムで爆発ヒャッハーと世紀末救世主伝説モードになりそうでありますな。だったら市場に事前に織り込ませてから利上げすれば良いのではという発想もあるのですが「金利全体をコントロールしている」という建付けの中では次の政策変更に向けて市場に織り込ませるという行動は「金利全体のシフトを許容する」ということですからその時点でYCCではないというこの事実。


えーっとですね、「今の経済物価情勢と期待インフレからすれば、日銀の考える中立(均衡)イールドカーブの水準は現在この程度の水準にあります」というのをきっちりと示して、「現状は2%の物価安定目標の達成に対して物価はこの程度、期待インフレはこの程度足りない状態であり、需給ギャップはこの程度必要とみられるので、そこから算出された必要な緩和度合いはこの程度になる、よって名目金利のイールドカーブ水準はこの程度の水準が適切ではないかと考えられる」というのを全部分かりやすく示す事が日銀に出来るのであれば、YCCというよりはフローティングペッグみたいな形になって、そらもう市場参加者も日銀も分かりやすいですし、金利の変化が単純に引締めだ緩和だという事でもない、(均衡金利が上方シフトしている中で名目金利の上げがそれに足りないのなら名目金利はあがっているけれどもファイナンシャルコンディションは緩和されている)という話になって、物凄く分かりやすいんですよね。

然るに11月決定会合議事要旨を拝見するに、そのような均衡イールドカーブのようなものに対する議論がなされた節が1ミリくらいしかなさそうですし、大体からしてこの前の総裁会見で9月からのイールドカーブ変化について突っ込んだ大江さんに対して「今の水準が適切」という答えになっていない答えで返しているという状況な訳ですよ。そうなると通常のオペとかオペに対するディレクティブってのはありゃー何を拠り所にやっているんじゃろというお話ですが、もしかしたら企画や調節の方々には我々のような下々の心の汚い者どもには見る事の出来ない「心の美しい人にしか見えない均衡イールドカーブと心の美しい人にしか見えない適正な緩和度合い」というのが見えているのかもしれませんけれども、まー不肖このアタクシは心が汚いのでさっぱりワカランチ会長で往生しまっせ〜状態でございます。


つーことでね、YCCって実は追加緩和期待が高めの時とか、あまり金利がボンボン上がらないようなときには枠組みとして使えるのですが、本当の本当に物価上昇が来て、2%達成とは言わないまでも割と順調に1%とかが見えるようなときにこの枠組みでオペレーション耐えられないんじゃないかという疑惑が頭の中に浮かんできている昨今のアタクシでして、いや本当に来年日銀の目論見通りのウハウハ展開になった場合にどうするんだろというのは心配になって参りましたという世間話雑談でした。


○その他少々メモ

・CP買入意外に盛り上がらず(別の意味では盛り上がる)

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161227.htm
CP等買入 13,755 4,495 -0.009 -0.007 47.0

年末渡しのCPは大体発行が減るのと資金運用ニーズが高いのとの合わせ技で玉がカラカラ帝浴場となってしまい、そらもう低金利待ったなしよウハハハハハ。というパターンが良く見られるのですけれども、今回はそこそこ月末跨ぎの発行もありましたし、発行体さんの顔ぶれも幅広かった気がする(実際に細かく統計取れる訳でもないのであくまでもイメージだから違ったらゴメンやで)ので日銀へのオファー玉もそこそこあったという感じですね。


・これは面白そうなレポート

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j14.htm/
株式の政策保有が銀行の資本調達コストに及ぼす影響

要旨

『本稿では、本邦国際統一基準行の2006年から2015年までのパネルデータを用いて、銀行による株式の政策保有が自らの株主資本コストに与える影響について、CAPM理論に従って分析を行った。分析の結果、株式の政策保有は、株主資本コストを押し上げている可能性が確認された。これは、株式の政策保有は、銀行の株価リターンのボラティリティ上昇や、銀行の株価リターンと市場ポートフォリオのリターンとの相関を高めることで、CAPMのβに上昇圧力を生じさせるためと考えられる。本邦銀行の株主資本コストは、米国銀行に比べて高いことが指摘されているが、本分析の推計式を用いて試算すると、政策株式の保有比率を米国銀行並みに削減する場合には、株主資本コストの日米間格差が相応に縮小するとの結果が得られた。』

一時下火になっていましたが、昔からこの銀行保有の政策保有株式に関しては機構局お得意のテーマでございましたので、まあ分析には力入っていると思います(思いますというのはまだ中身をちゃんと読んでいない)ので本文はこちら。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j14.pdf


なお、政策保有株式といえば日本銀行とかそういう野暮なツッコミをしてはいけません!!!!!!!


・広報誌が急に記事投下

http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/48.htm/
「にちぎん」No.48 2016年冬号/2016年12月26日発刊

というのは普通なのですが、今回は何か思う所でもあったのか突如3本も記事をトップページに紹介。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161226b.pdf
地域の底力
大分県別府市・由布市
温泉とともに生き さらなる未来を切り開く 大分県別府市・由布市

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161226c.pdf
インタビュー/扉を開く
日本人らしさと自己主張を大切にするサッカーを 高倉麻子(プロサッカー監督)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161226d.pdf
対談/守・破・創
GとLに二分化する日本経済 再生に向けて新陳代謝を促せ
 冨山和彦(株式会社経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO)
 岩田規久男(日本銀行副総裁)

3本投下というのは珍しい気がする(1本2本はある)のですがどうしたのでしょうか(^^)。





2016/12/27

お題「トランプ前の決定会合議事要旨から少々/経団連での総裁講演だが賃上げ要請が何故無いのよ」

この年末モード相場で金曜までやるのかよとか言うと海外がクリスマスから帰ってきて動くフラグになりませんかねえ。

#何で4営業日も残っているのに年末モードなんだよモーサテは(ただしモーサテは29日までの筈)

○決定会合議事要旨はトランプ前でしたが政策に関する部分でも鑑賞

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g161101.pdf
(2016年10月31日、11月1日開催分)

ということですので、まあトランプ相場ちゃんの前ということで政策の話の辺りを鑑賞するのだ。

・その前にトランプ大統領爆誕前の物価見通しを確認

『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』の『2.経済・物価情勢の展望』の物価部分を見る訳ですが。

『物価情勢の先行きについて、大方の委員は、消費者物価の前年比は、@マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていく、A2%程度に達する時期は、見通し期間の終盤である 2018 年度頃になる可能性が高い、との見方を共有した。これらの委員は、本年7月の展望レポートでの見通しと比べると、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることなどから、物価上昇率の見通しはやや下振れるとの見方で一致した。一方、別の複数の委員は、見通し期間中には2%程度に達しないとの認識を示した。このうちの一人の委員は、展望レポートの見通し期間を越えても、比較的近い将来に2%程度の水準に達することは見込んでいないと述べた。 』

複数の委員というのは木内さんと佐藤さんですな。

『委員は、こうした見通しの背景となる中長期的な予想物価上昇率と需給ギャップについて議論した。まず、中長期的な予想物価上昇率について、委員は、現実の物価上昇率がゼロ%程度ないし小幅のマイナスで推移する中で、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、2015年夏場以降の弱含みの局面が続いているとの見方を共有した。』

しかしこれ共有しているのは良いんですが、だったらそもそも論としてQQEって期待に働きかける政策だったんだから失敗しましたよという話はしないのかね。いやまあ面子とか面目玉とかいうのはあるのは分かるけど、これQQEで量をホイホイ出しても結局フォワードルッキングな期待に働き掛けられなかったってのをきちんと残して置かないと将来同じ間抜けな事を実施することにならんですかねえと思うのよ。

『先行きについて、大方の委員は、個人消費が緩やかな増加に向かうにつれて、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響するとの見方で一致した。』

というのだったらこの次にネタにする総裁の経団連講演で賃上げ要請するかと思えばこれがしてないという時点でやる気あるんかいなという疑問is有る。

『また、これらの委員は、@「適合的な期待形成」の面では、今後エネルギー価格による下押しの剥落もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向を辿り、2%程度に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。』

まあこの時はトランプ相場が想定外でしょうから良いのですが、現実問題としてはQQEで行かなかったフォワードルッキングな期待形成がオーバーシュート型コミットメントで何で行くのか(そもそも長期金利操作は人口に膾炙しているけれどもオーバーシュート型コミットメントって全然有名じゃないでしょ)と思う訳で、まあ@の経路によって後から期待形成の強化に繋がるくらいの話じゃネーノと思う。

『ある委員は、為替相場の円安方向への修正も現実の物価上昇率や予想価上昇率の上昇に寄与するとの見方を示した。また、別の委員は、予想物価上昇率の引き上げについて、長期にわたって定着してきた「適合的な期待形成」からの脱却は容易ではなく、これを着実に進めるためには、金融緩和の取り組みと並行して経済成長が持続することが重要であると指摘した。そのうえで、今後、政府による経済対策の効果も加わることから、「フォワードルッキングな期待形成」への移行が期待できると述べた。一方、別の複数の委員は、予想物価上昇率の上昇ペースについて、より慎重な見方を示した。 』

とまあそういうことで、実際にはまさかのトランプ相場でまた円安となって物価に追い風となっておりますので、まあ正直今回がラストチャンスじゃネーノ(ダメだったら多分次は悪性の物価上昇しかなかろうよ)と思いまする。


・政策運営に関する部分ですがYCCの話をまず鑑賞

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』ですが、政策を現状維持という話はどうでも良いので割愛してその後の方から。

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの見方を共有した。』

まあこれですが12月会合でどういうまとめになっているのかが興味ありますなあ(棒読み)。

『何人かの委員は、この間の市場動向をみると、新たな枠組みは市場に冷静に受け入れられていると述べた。』

別にまあ言葉の綾ではあるのですが、枠組みを受け入れるも蜂の頭もこちとらこういう政策が行われるとなったらそれに適応してポジション構築しないと生き残っていけないのだから、冷静に受け入れるも糞も無い訳で、こういう言い方されると結構ムッと来るんですけれども単にアタクシが言葉尻に五月蠅いだけですかそうですか。

『別の委員は、日本銀行による丁寧な情報発信も奏功して、市場では新たな枠組みの政策意図に対する理解が浸透してきているとの見解を示した。』

9月末にいきなり量を減らした(しかも「今月はこれで行きます」と言っておいて月末の場中に急に10年輪番減らすわ引け後に超長期減らすわ、しかも発表方法が「今月最終回の買入額との比較」をして10年を減らしたのが素人に分からないように公表する方法にダマテンで変更した)のが丁寧な情報発信とな????

『また、ある委員は、これまでのところ新たな枠組みは円滑に機能しているが、先行きは様々な状況が考えうることから、オペレーションの結果や金融市場の反応を引き続き丹念に点検していく必要があると述べた。』

別にトランプ相場を予想していた訳ではないでしょうが、この見解は中々良い指摘。

『複数の委員は、長期金利のボラティリティが一段と低下するなか、市場の機能度には留意が必要であると指摘した。このうちの一人の委員は、長期金利操作の前提として、持続的な財政基盤の確立に向けた政府の努力により、国債市場の信認の維持が図られることが重要であると付け加えた。 』

ということですが、この次がまた例によって量の話。

『そのうえで、委員は、イールドカーブ・コントロールのもとでの国債買入れの運営について議論した。』

つーことで。

『大方の委員は、保有残高の増加額年間約 80 兆円の「めど」を維持したうえで、引き続き、金利操作方針を実現するよう長期国債の買入れを運営することが適当との見方を共有した。複数の委員は、買入れ額の「めど」に関する記述を削除することは、市場に対して誤ったシグナルを与えかねないため、これを維持したうえで、国債買入れを柔軟に運用することが適当であるとの見解を示した。』

まあ金利低下モードの時だったらしらっと削除しても良かったかも知れませんが、金利上昇モードの時に敢えて削除することも無いと思う。

『また、このうちの一人の委員を含む複数の委員は、前回会合以降、買入れ額の「めど」を示すもとで実際の買入れ額を若干減額しているが、長期金利は安定的に推移しており、こうした柔軟な買入れの運営を市場は冷静に受け止めていると指摘した。』

まあ現状だとまた話が違うのかも知らんが、この時はまだ金利上昇モードじゃなかったのと、そもそも80兆円の方はおまけだと思っていたし、大体からして80兆円も買入されたらタマランチ会長だから政策長持ちさせるためにも減らしてよという感じだったから別に金利が暴れなかったというのと、他市場がこの買入を足すと70兆円台前半なのに対して別に気にしていないというのがでかいと思う。

『ある委員は、現状程度の買入れペースを継続すると、ストック効果により長期金利は一段と低下するので、金利水準の維持には買入れ額の調整が必要になるとしたうえで、操作目標は金利であるから、公表文中の約80 兆円のめどは先行き適宜プレイダウンしていけばよいとコメントした。』

この意見と次のジンバブエ先生の意見が毎回出てくるのですが、たぶん減らすよりもスッパリ削除して、その際に「減るかも知れないが増えるかもしれません、量は金利を達成させるための手段です」という説明にシフトした方が良いのでは。

『また、別の委員は、国債買入れの運営において、金利への正のショックに対しては長期金利をゼロ%程度に維持する一方、負のショックに対しては、約 80 兆円の買入れを継続して、金利の低下を許容すべきであるとし、そのうえで、ショックが大きく、かつ、持続的な場合には、当然、金融政策決定会合で金融市場調節方針の変更を議論することになると述べた。 』

金利コントロールなのだからそのやり方は政策変更なのだが、この人は効く耳というのを持っていないのかね。


・通貨発行益に関しての認識がおかしいというか視野狭窄な方がおいでの件について

どうせまたジンバブエ先生とか置物師匠なのだが。

『この間、ある委員は、金融政策による日本銀行の財務への影響について、2%の「物価安定の目標」を目指す金融政策の結果であることを対外的に丁寧に説明することが重要であると述べた。複数の委員は、中央銀行は、物価安定を実現するために政策金利の操作や資産買入れを行っているのであり、その結果として短期的には損益の振れが生じうるが、長期的には銀行券を独占的に発行するもとで通貨発行益を生む存在であると指摘した。』

その長期的というのはどういう時間軸の話をしているのでしょうか。

『このうちの一人の委員は、そうした短期的な損益の振れを平準化するため、債券取引損失引当金の拡充を行ったところであると付け加えた。』

これはまだ良いのだが、現実問題としてこの程度の引当って焼け石に水じゃろ。

『もう一人の委員は、2%の「物価安定の目標」が実現し、これに見合う形で金利水準が高まれば、通貨発行益も大きくなると述べた。』

というのがたぶんジンバブエ先生だと思うのだが、お前は何を言っているんだという話で、オーバーシュート型コミットメントを行って2%の物価安定の目標を達成しようとしている中で、物価が達成できる時期において日銀当座預金の残高が幾らあると思っているんだと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

つまりですね、物価目標達成するというような時期において当然ながら金利水準って短期マイナス長期ゼロとかいう訳は無いのであって、そんなことしたら緩和しすぎで物価が爆発してしまうでしょうという事なのですが、その際に政策金利を引き上げようと思ったら莫大な超過準備を不胎化するか回収しないと行けないのであり、不胎化しようとしたら当座預金の付利金利を引き上げたりしないといけないですし、回収するなら資産の売却を行わないといけない(または売り現先オペだがこれは実質的には付利上げと同じ方になる)のであって、「通貨発行益が大きくなる」(キリッ)とか言っているが、銀行券に対して超過準備どれだけ存在して、その不胎化(または回収)にどんだけコスト掛かると思ってるんだよ計算出来てるのかと存じます次第で、何というかまあ置物リフレ理論って元々そういう気があるのですが、部分的には一部正しい話をしているのですが、全体としての整合性(今回だと通貨発行益が高まるのはその通りだが、現実に当てはめると超過準備の存在による損失の方がでかすぎて話にならんというように)が全然とれていない理論なんですよね。

つーかね、この通貨発行益(キリッ)っての実は置物リフレ理論で散々罵っていた銀行券ルールの実務的な意義について述べているのと同じ話なんですよねーと思う。


・まあ今回もあるのだが中々味わいがある部分

『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、@2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、A消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する、B今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うとの方針を共有した。』

まあこれはどうでも良いのだが。

『これに対し、ある委員は、イールドカーブ・コントロールのもとで国債買入れ額が先行き減少していくかどうかは不確実であるとして、金融政策運営においては、資産買入れ額を操作目標とし、その段階的引き下げを確実に図ることで、資産買入れの持続性と市場の安定性を高め、既往の緩和効果を確保していくべきであると主張した。』

これ木内さんの提案だと思うのですが、前回もそうなのですけれども、実は量的ターゲットを最後までただしく主張しているのが木内さんというのが皮肉で味わいがあります。

『この間、別の委員は、長期金利操作の政策反応関数を明らかにし、市場や各経済主体との対話の中で共通認識を形成していく必要があると述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

というこの指摘の後にトランプ相場になって長期金利操作がもはや何が何だか分からない状態になっているというのがもうねという所です。


○総裁の経団連での講演だが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161226a1.pdf
世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

・まあ途中まではどうでも良いのだがこの部分は何ぞ

『4.世界の中での日本経済』の所を見ていて引っ掛かった所ですが。

リーマンショック時のお話なのですが、

『このように、日本経済は、世界の中でも特に不利な状況に置かれていました。こうしたもとで、日本銀行は、既に 0.5%まで低下していた短期の政策金利を 0.1%に引き下げたことに加え、CPなどのリスク性資産の買入れを含めた「包括的な金融緩和政策」を実施するなどの対応を行いました。もっとも、短期金利の引き下げ余地が限定的であった中で、緩和効果は十分ではなく、デフレからの脱却には至りませんでした。』

とか言っているのだが、その前に散々緩和しているから金利が0.5%にしかなっていなかったのですし、大体からしてリーマンショック時の話って危機対応であってデフレ脱却がどうのこうのとかいう話じゃないし、「緩和効果は十分ではなく」とかあの時にオープン市場の金利がロンバードまで跳ね上がってCPのレートとか社債のスプレッドとかどんだけ拡大して、それが内外の中銀の危機対応策でどんだけ沈静化したと思ってるんだよという所でありまして、おまえ金利の上げ下げがどうのこうのとか量がどうのこうのとか言う前に危機対応ってどれだけ重要なのかというのを軽視してるんじゃネーノと言いたくなるので、こういう書き方は無いと思う。まあ黒田さんはそもそもが財務官とかで金融危機対応みたいな話に興味が無いとは思うから認識がこの程度なのは何となく想定はできるのだが、今特段の金融上の問題が生じてない(ように見える)から良いようなものの、プルーデンスに興味の無い中銀総裁ってやっぱりマズイとしか申し上げようがない。


・文章に飛躍がありますな

まあ今悪態をついた部分は基本的にその後の自画自賛の為のマクラと言えばただのマクラなのですが、本当に中銀が重要なのってプルーデンスというか信用秩序維持の部分なのであって、そっちの話をただのマクラ扱いするというのはちょっと危機感欠如にも程があるんじゃないのという事で悪態をついたわけだが、QQEの自画自賛部分もまあアレ。

『そこで、日本銀行は、2013 年4月、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、それまでとは次元を異にする大規模な金融緩和策である「量的・質的金融緩和」を導入しました。』

まあやっている事は従来施策の量を莫大にしただけだけどな。

『この政策は、多額の国債買入れによってイールドカーブ全体にわたって金利に低下圧力を加える一方、日本銀行の強く明確なコミットメントによって人々の予想物価上昇率を引き上げることによって、実質金利を引き下げることを主たる波及メカニズムとしています。その後、2014 年 10 月には「量的・質的金融緩和」の拡大を行ったほか、2016 年1月にはマイナス金利政策を導入するなど、強力な金融緩和を推進してきました。』

はあそうですか。

『その結果、この3年半あまりで、わが国の経済情勢は大きく好転しました(図表9)。過度な円高は是正され、株価は大きく上昇しました。さらに、企業収益が過去最高水準となり、設備投資も回復しました。』

えーっとすいません、「人々の予想物価上昇率を引き上げること」は全然効果出てないんですけれども何自画自賛してるんですかとか言ってはいけないんですかそうですか。まあ以下効果の話をしているのだが、所期のメカニズムである予想物価上昇率は上がっていないのであって、それは「適当に弾を打ったら何だか知らんけど敵陣に着弾した」みたいなもんではないでしょうか。いや勿論「マネタリーショックで資産市場、就中為替市場に影響を与えて物価に影響を与えたり企業所得を引き上げる」というのが所期の経路というのだったらその自画自賛でよろしいのですが。


・来年の展望の辺りだが何で賃上げ要請をしないのか理解に苦しむ

ということで『5.日本経済の課題:来年を展望して』なんですけどね。

『そこで、最後に、来年を展望して、日本経済の課題について申し上げたいと思います。本日ご説明したように、世界経済は現在、新しいフェーズに入りつつあり、グローバルな「追い風」の中で、企業経営という観点でみれば、「チャンス到来」と言える状況が生じつつあります。そうした流れの中で、国内においても、海外においても、先んじて行動することが重要になっていると思います。幸い、技術的な面では、幅広い分野で、IoT、AI、ビッグ・データなどの活用が見込まれており、新しい製品やビジネスが生まれる素地は整ってきているように思います。』

以下延々と話が続いて、何ちゅうかな部分があるのでツッコミを入れるのだが、それはそれとして今回のこの部分で非常に遺憾なのは「賃上げ要請」の話が全然無い事でして、物価上昇期待を高めるという面でもそうですし、そもそも前回の物価上昇局面があっという間にコケたのって駆け込み需要で下駄履いていた部分も勿論ありますけれども、賃上げが不足している上に恒常所得の上昇期待が全然盛り上がらない中で個人消費があっという間にコケて一旦上げた価格を少なくともその後も上げるという行動に出にくくなったというのが有る訳でして、賃上げもそうですし、恒常所得の上昇期待を持たせないままの状態で円安神風ヒャッハーとか黒田さん浮かれているように見えますが、またまた円安と物価上昇を個人セクターが受容しないで、日銀に対してもまーた円安何とかしろとかいう話が飛んできて結局物価上昇2%への道は頓挫する、という同じことになるんじゃないですかねえもうちょっとネジ締めてよとしか思えん。


・金融政策の反論にお答えするという部分が藁人形論法化している件について

でまあその辺は良いとして(シュンペーターの話の部分も何だかなあとは思うがそこは飛ばして)その後の部分で金融政策の話があるのだが。

『日本銀行は、本年9月に行われた金融政策決定会合において、これまでの金融緩和策についての「総括的な検証」を行い、その結果を踏まえて、金融政策の新たな枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。具体的には、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」の2つの柱から成り立っています。この政策の枠組みは、経済や物価を押し上げる「追い風」の効果をさらに強める働きがあります。』

トランプ爆誕の追い風無かったらどういう話をしていたんでしょうなあと思いますがそれはさておき、

『例えば、政府の財政支出は、通常は、金利の上昇などにより、民間投資を抑制するいわゆる「クラウディング・アウト」をもたらしますが、日本銀行が長短金利を抑えることによって、これを防ぐことができます。』

いまどきクラウディングアウトって閉鎖経済じゃあるまいし何をゆうとるんでしょうか。

『また、民間企業の皆様のご努力や政府の成長力強化の取り組みによって、将来の成長や物価に関する期待が高まれば、低い長短金利水準は、経済・物価に対してより強い押し上げ効果を持つことになります。』

おう物価の期待は日銀の政策で高めるんじゃないのかよと思うがまあそこはスルー。

『さらに、グローバル化した金融市場においては、本日お話ししたような海外経済の好転が明確になっていくにしたがって、日本の長期金利にも上昇圧力がかかっていきます。』

さっきのクラウディングアウトの話はどこへ??

『実際、先月以降、米国の長期金利が大幅に上昇し、その影響から多くの国において長期金利が上昇していますが、わが国の 10 年物金利は「ゼロ%程度」で安定的に推移しています。このことは、「イールドカーブ・コントロール」が所期の効果を発揮していることを示しています。』

超長期の金利とか中期の金利とかは盛大に上がっていますし、大体からして総括検証の時って中短期の金利が効いているって話をしている訳で、いやまあ金利そのものは手段に過ぎないですから別にどうでもいいちゃあどうでも良いのですけれども、何ちゅうかこのYCCと言っておきながら10年金利の話しかしないとか、説明が自由自在すぎて、それに対してオペレーションがどう入って来るのか分からんとか債券市場的にはタマランチ会長なのですけど。

『日本銀行は、この政策の枠組みを適切に運営することによって、グローバル経済の回復のモメンタムを、わが国経済にとってより大きな「推進力」に増幅していくことが可能になると考えています。さらに、そのことが企業の積極的な活動に繋がれば、その動きをさらに加速していくことができると思います。』

その続きは流して読むところだが。

『また、日本銀行は、この政策のもう一つの柱である「オーバーシュート型コミットメント」によって、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、大規模な金融緩和を続けることを約束しています。この3年半の金融緩和のもとで、日本経済は、デフレではなくなりました。例えば、4年前、2012 年の年末と比べ、経済・物価情勢が好転したことは、皆様の実感にも合うと思います。しかし、グローバル・スタンダードである2%はなお達成できていないのも事実です。2度とあのデフレの時代に戻らないためにも、今回の緩和によって、2%を是非実現しなければなりません。』

と来まして、久々に「グローバルスタンダードキター!」という感じで、円安になって黒田さんが無茶苦茶気分が盛り上がっているんだろうなあというのは分かります。そらまあ9月の総括検証でこりゃもう任期中2%無理じゃろと思っていたらトランプ相場のお蔭で生き返ったようなもんですからねえ、というのは分かるのですが、グローバルスタンダードとか言ってるヒマがあったら賃上げ要請をしろと。

『この点、2%の「物価安定の目標」について一部には、「わが国経済の現状を踏まえると、高過ぎる目標ではないか」との声も聞かれます。しかしながら、先ほどご説明したように、リーマン・ショックの際、欧米諸国と異なり、金融政策対応の余地が限られたのは、わが国だけがデフレの状況にあったからに他なりません。こうした過去の苦しい経験を踏まえると、グローバル・スタンダードである2%程度の物価上昇を実現し、景気に中立的な金利の水準を引き上げることによって、金融政策の対応力を確保しておくことが不可欠です。実際、海外の中央銀行やエコノミストの間では、「政策の対応力を確保するためには、2%の物価上昇は不十分であり、3%ないし4%の物価上昇を目指すべきではないか」といった議論さえ行われています。日本の経験やグローバル金融危機後の各国の経験を踏まえると、デフレに陥り金融政策の対応力を失うことの危険性がそれほどまでに強く意識されているということです。』

何かそこまで言う話かと思うのだが次が藁人形論法。

『なお、この議論の一つの系として「わが国の潜在成長率は諸外国に比べて低いため、低めの物価上昇率を目指すべきである」との意見も聞かれますが、私は、むしろ逆だと思います。』

低めの数値を目先の目標として置くという話って別に「低めの物価を目指すべき」というのではなくて、まずはサステイナブルな物価上昇を目指すのに無駄に高い数値を置いても仕方ないでしょという話をしているのであって、何かこういう敗戦思想みたいな決め付けするの非常にトサカに来るんですけどねえ。

『景気に中立的な金利水準は、理論的には、潜在成長率に中長期的な物価上昇率を加えたものになります。政策対応力の確保という観点からは、低い潜在成長率は、より高い物価上昇率を目指すべき理由にはなり得ても、より低い物価上昇率で満足すべき理由にはなりません。潜在成長率が低いほど、デフレに陥るリスクは大きくなり、それだけ十分なのりしろが必要になるということです。』

と言ってるんだが、それってサステイナブルな物価水準なの????という疑問にお答えいただきたいと思うのですけれども、今の日銀執行部の説明だと「成長水準などと関係なく安定的な物価水準が存在する」ということでアプリオリに正しいという話になっているのでそもそもの部分で話が始まらないという状況なのですよね。なんかただのスタグフレーションのような気がするんだが。

『もとより、日本銀行が目指しているのは、あくまでもグローバル・スタンダードである2%です。「オーバーシュート型コミットメント」は、日本銀行がこの目標を必ず成し遂げるというスタンスを明確にしたものです。』

はあそうですか。

『この一年は、企業経営者の方々にとっても、日本銀行にとっても厳しい一年でしたが、風向きは「逆風」から「追い風」に変わりつつあります。新しい年、2017 年は、日本経済がデフレ脱却に向けて大きく歩みを進める年になるものと思います。先ほど申し上げたような、企業の皆様の前向きな取り組みによって、こうした歩みが確実なものとなることを期待して、本日のお話を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。』

ということで結局賃上げの話が無いのが何か不満ですなあという所ではありますが、とりあえず円安に振れて黒田さんがご機嫌モードであるというのは把握しました。


#その他日銀から色々と出ていたのですが時間が無いので勘弁




2016/12/26

お題「色々と雑談系メモで恐縮ですが」

何か先週もそうでしたが為替方面の方々のコメント(まあモーサテで聞いているだけだから守備範囲狭いけど)で黒田総裁が現状の為替市場に関して円安牽制をしないスタンスが明確化された!って言うのが非常に多いのですが、逆にこの状況で何で円安牽制を日銀がわざわざしに行くとかいう発想が出るのが禿しく意味不明なんですが・・・・・・・・・・・・・・

○YCCとか輪番とかに関する論点というか気になる点をあれこれ雑談

・国債発行計画との関係とか上げ下げのメッセージ性とか

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2017/20161222.htm
平成29年度国債発行計画の策定等を行いました

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2017/yoteigaku161222.pdf
平成29年度国債発行予定額

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2017/calendar161222.pdf
<カレンダーベース市中発行額>

来年度の国債発行計画の話が出てくる最初の段階では全体減らすけれども後ろの方とか増発もあるのかみたいな感じもあったように思ったのですが、その後金利上昇モードになって結局全体的に減額しますというような結果ですの。まあ直前ではほぼこの結果織り込み状態になっていたのでサプライズは無くて、20年から手前を減額して、5年はやや多め(つーて月2000億円ですが)に減額しましたと。1年短国に関しては政府短期証券と合わせて月間2.3兆円の発行が変わらないとなるので、これは3Mとかが減る余地が出来たとかそんな感じですかねえ。

・・・・・・・・でまあこちらの方が減額になったので日銀の買入がどうなるというような予想というのも存在するようなのですが、んなもん別にちゃんと連携してたら(皆様すっかりお忘れだと思いますが)マイナス金利政策の前に日銀の短国買入のやり過ぎによって短国金利がマイナスにガンガン下がるようになった時に財務省が入札の応札制限を入れて按分狙い攻撃を排除するというランボー怒りの鉄拳が入る、みたいな動きって起きない(最初から短国買入をそこまでやるような施策を日銀が打ってくるという時点でマーケットがどうなるかの想像と配慮が無いのか有ってもどうでもいいと思っているかなので)訳でして、輪番が発行計画に応じて減るというのはちと無いんじゃないですかねえ。

まー実際には来年度になってからの話なので、その時の相場状況次第の面はあるのですけれども、その時点で金利低下局面になっているのであれば国債入札額が減っているので減らす的な話をするのは有りだと思いますけれども、金利低下局面でもない中で輪番を減額するとそれはそれで金利上昇容認みたいなメッセージになってしまうのでまあ無かろうなあと思うのでした。

ちなみに今月途中で増額した超長期の輪番ですけれども、これまた同じ理屈でして、この前増額した結果として超長期の金利が馬鹿低下でもしていればそらまあ月末公表の部分を減額するというのもあり得ますが、別にそんなに金利が低下している訳でもないですし、大体からして・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdf

の2ページ目(別紙)にありますように、オファー金額に関して「当月最終回」との比較で「翌月1回目」の数値を出すような見せ方になっているので、月末跨ぎで買入の1回当たりオファー額を変更するとメッセージっぽくなってしまうという公表方法になっておりますので、まあ普通に考えてこの金利水準でいきなり減らすとかしないでしょ、と思うのですけどねえ。



・イールドカーブコントロールの水準とは???

木曜にネタにした総裁会見の中で、イールドカーブの状態に関する質問をした大変に素晴らしい質問がございました(と申し上げたら質問者がどなただったかの答えを読者の皆様何名もの方からご教授頂きまして誠に恐縮至極です)が、例の総裁の答えって、

『(答) 端的に申し上げて、「イールドカーブ・コントロール」といいますか、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、上手く機能していると思います。9 月に導入した時も、その後の金融政策決定会合でも議論しましたし、今回も議論したわけですが、「イールドカーブ・コントロール」のもとで、現在、適切なイールドカーブが形成されていると思っています。』

というこの「現在のイールドカーブが適切」というのは次回の決定会合の時には是非一段とゴリゴリと突っ込むというか、こういう回答があったら別の人がフォローしてゴリゴリとやって頂きたいのですが、この「現在のイールドカーブが適切」というのには2つの可能性があって、「9月から12月の間に状況が変化しているのでイールドカーブの適正水準が変化している」という可能性と、「9月に示したイールドカーブが適正であることには変化はなく、足元の水準はその適正とみられる許容範囲内で推移している」という可能性がある訳ですな。

でもってどうせどちらかとか答えようにもそんなにちゃんとした議論をしているようには到底思えない(主な意見が出る中で何か言及があったら面白いけど野党系からしか出無さそうな悪寒)のですが、このYCCに関しても非常にこうエエカゲンな概念なので、それを元に日銀がどのようなイールドカーブを考えてそれに対して許容幅がこの程度だからこの辺りで牽制が入ってくるみたいな分析をするのって、たぶん超目先的にはワークするかも知れないですけれども、あまり信用しない方が良かろうという感じは受けます。

というのもですね、総括検証とかを受けた本来的な意味合いで言えば、「日銀の誘導する適正なイールドカーブ水準」っていうのは、概念としては「均衡イールドカーブに対する緩和度合い(金利低下度合い)をイールドカーブの各グリッドで適正と思われる水準(総括検証によれば超長期などは緩和度合いを強くすれば良いという物ではない、という結果になっているので、イールドカーブの各グリッドによって適正な緩和度合いを名目金利に引き直した場合の水準は異なって然るべき)にキープして置くためのもの、という答えになっている筈なので、仮にこのYCCがイールドペッグだというのであれば、名目金利を固定的な水準にペッグするのではなく、実質金利を(概ね)一定の状態にペッグしておく、という話になるはずなんですよね。

ところが、まあ当たり前ですがそんなのよりも名目金利水準の方が注目される訳ですから、そっちに対する話が多くなり、結果として「10年と短期の2点コントロールをしている」のか、「各グリッドのイールド水準をペッグしようとしている」のかが訳分からんオペレーションになっていますし、その上説明がこれですので困ったもんだという感じですな。


いやまあ特に10年はディレクティブがあるから名目金利がある程度の所で止めに行かないとアカンヤツになるのですが、他の年限も何となく前回の指値オペとか超長期輪番拡大と入札前のオペ打ち込みという暗黙の了解破りのプレイの水準で目先暫くは意識されるから止まるのかなあとは思いますし、だからこそイールドペッグちっくなオペレーションが目先はワークしている様に見えるのですけれども、これって金利上昇要因になるような話(日銀の見通し通りに物価やインフレ期待がホイホイ高まる状況)になるとか、そうなるんじゃネーノ的な見通しが高まってくると、そのペッグされたと勝手に思っている金利水準をバックに買いを入れる人というのがまず間違いなく出てくるでしょうし、さほどの大きな変化が無い限りにおいてはその買い向かいがワークすると思われますので、状況が変化してきた場合に「ぶち抜けたときのぶち抜けパワー」が高まると思うのですよねー。

でもってこれ他年限ならばそうは言いましても明確なディレクティブ出している訳ではないのですけれども、10年は思いっきり水準を0%程度とか入れていて、しかも余計な事に▲9bpの時に輪番減額しちゃったからそら普通の想像をすれば10年10bp手前で介入入ると思いますし、そう思うとなるとそこをバックに買いがホイホイ入って、そこで止めないとややこしい事になりそう(別に20位までは程度の範囲内の筈なんで+10で止めるとは別に明示sれている訳では無いのだが前回▲9で輪番減らしたのが効いている訳ね)だし、まあどうするんでしょうなあと。

それから目先の話ではないですし、当面それが起きるとも思えませんが、10年の誘導目標を引き上げないとマズかろう、というような状態になるときってえのがこれまた日銀悩みの種になる筈でして、何せ政策金利をデジタルに動かすのは仕組み上しょうがない(短期だっていつもデジタルに動かしているんだから)のですが、通常の政策金利変更ですと事前に市場が変更を織り込みに行って(あるいは当局の情報発信を受けて市場に織り込まさせて)翌日物金利をデジタルに変える、ってことですからその変更で極端な事は起きないものなのですが、今回の政策建付けの場合、10年金利についてデジタルに動かすし、しかもディレクティブで「程度」の範囲はあるとは言え数値を明示しているだけに、そもそも市場に事前に織り込みに行かせるというのが不可能(だって10年コントロールするって建付けなんだから)なので、政策金利変更って何か無茶苦茶痺れる事が起きそうではありますなあなどと思うのでありました。


○CPレートの公表復活ねえ・・・・・・・・・

先週はこんなのも出ていました(MPMでバタバタしてスルーしていました)。

http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2016/not161221a.pdf
短期社債等平均発行レートの公表について

『日本銀行では、CP 市場の透明性を確保するため、来年から、「短期社債等平均発行レート」(以下、「CP 発行レート」という)の公表を開始することといたします。』

はて???

『CP 発行レートについては、2009 年 10 月 1 日以降、株式会社証券保管振替機構が公表を行ってきましたが、同機構は、本年 3 月 25 日発行分の CP 発行レートから公表を中断し、その後、同日発行分以降の CP 発行レートの公表を行わないこととしました。』

まあお察しということで。

『そうした中、日本銀行としては、CP 発行レートの公表は、CP 市場の透明性を確保する観点から重要であると判断し、CP 発行レートの公表主体となることとしたものです。』

ってやたらとこの透明性が何とかとか言うのだが、CP市場の透明性云々言い出すんだったらその前に今となっては何のためにやっているのかさっぱり意味が分からない日銀のCP買入ってのを止める方が先ではないですかねえと思うのですけれども。

『なお、CP 発行レートの算出・公表にかかる実際の事務は、同機構に委託いたします(同機構による通知は証券保管振替機構のウェブサイト<証券保管振替機構のウェブサイトにリンク>をご覧下さい)。また、ユーザーの利便性を考えて、CP 発行レートの作成周期、公表区分等については、従来と同様といたします。CP 発行レートの公表に関する概要は以下のとおりです。 』

って要するに日銀が保振に公表の復活を・・・・・・・・・・って話だと思うのだが、そもそも一般に公募じゃないCPを事細かに公表するというのも何か微妙に違和感があるんですけどというのはそもそも最初にこのレート公表出た時に申し上げたのですが。



○債券市場参加者会合とな

これまた先週21日に出ていたネタで恐縮ですが。

http://www.boj.or.jp/paym/bond/mbond1612.pdf
「債券市場参加者会合」第4回議事要旨

・立場代われば意見も違う・・・・・・・のか

『3.参加者の意見

●上記説明の後、意見交換を実施した。会合参加者から聞かれた主な意見は以下のとおり。』

ということで意見があるのだが、『イールドカーブ・コントロール導入後の債券市場』の所は、

『イールドカーブ・コントロールの導入によって、債券市場のボラティリティが低下しているほか、最近では 10 年物の金利がプラスに転じているため、投資家には安心感が生まれている。』

というのがあってみたり、

『ボラティリティの低下によりビッド・アスク・スプレッドもタイト化しており、投資家としては安心感をもって取引できるようになった。もっとも、金利の水準は引き続き極めて低く、こうした状況が長期間続けば、投資家が徐々に減少してしまうのではないかと懸念している。』

と微妙な評価があってみたり、

『債券市場における取引量などをみると、引き続き、取引が活発とは言い難い。現在の債券市場の状態は、限られた取引の中で、ビッド・アスク・スプレッドなどの一部の流動性指標が改善しているに過ぎない。』

『現在の債券市場では、多くの市場参加者が同一の投資行動をとる傾向にある。本来、市場においては、様々な見方を持つ参加者が売買を行うことで流動性が生じるものだが、今の債券市場は、そのようになってはいないと感じる。』

とケチョンケチョンなのがあってみたりと見解が広いのはまあ味わいがある。


・金利が抜けるときは・・・・・・・・・・・・

次の『海外金利上昇の影響』の所は纏め方が面白い。

『海外金利が上昇する下でも、国内金利の上昇は限定的であり、ボラティリティも低い。これは、イールドカーブ・コントロールのもとで、市場参加者の間に暗黙の金利レンジ感が形成されたためだと思う。』

『米大統領選後、世界的に金利上昇圧力が高まる中で、国内金利だけは抑えられているが、わが国の債券市場では「マグマ」が蓄積しているように感じている。』

ちょうどこの2つの見解が並べられているのですが、これって良く良く考えれば同じことに繋がる話で、暗黙のレンジ感が形成されるからこそぶち抜ける時には碌な事にならない、という状況な訳でありまして、まあYCCとか言ってやっている政策の建付けがこうなっているのだから仕方ないちゃあ仕方ないのですが、もし日銀が本当に物価が2%に向かって上がっていくと思うのだったら、金利に関しては本当は適当にガス抜き入れて行きながらやっていかないとマズイと思うのですよね。まあ今はそんな話を云々する程の段階ではないのも事実だと思うので別に目先どうのこうのの話ではないが来年の課題になるんじゃないですかねえ。


次の『市場調節運営等』でも、

『現在は、イールドカーブ・コントロールによって国内金利の上昇を抑えているが、そうした下で、金利のボラティリティが突然高まることがないかといった点を懸念している。』

『今後の経済・物価・金融情勢によるが、先行き、金利操作目標の変更が視野に入ってくる局面が訪れると思う。金利操作目標の変更は金融機関の債券ポートフォリオに大きな影響を与えるだけに、その際には、市場参加者に対する適切なコミュニケーションを行ってほしい。』

ということですが、たぶん債券ポートフォリオとかだけではなくて、もっと大きな影響が出てくるように思えます。まあそもそも論としてオーバーシュート型コミットメント自体が「そんなにホイホイと物価情勢が好転しないだろう」というのを前提にした話なので、日銀の思惑通りウマーとなった場合にオペレーションは困難を極めると思いますし、まあそれが債券市場の中で止まっている分にはそれほどの重篤な問題にはならないのでしょうけれども、それが他市場に波及するようなショックになるようなエネルギーをため込んでから何らかの変更を行うという事になった場合は色々と大変でしょ、となるかならないかは知らんけど、来年は話が日銀的に上手く進んだらオペ大爆発の回避をどうするかというテーマが楽しそうですな。


ということでまあ雑談でございました(汗)。




2016/12/22

お題「総裁会見から」

お、おぅ・・・・・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/it-ban-public-money-idJPKBN14A25R
Business | 2016年 12月 22日 04:41 JST
モンテ・パスキ公的救済不可避に、増資の実現困難=関係筋

○黒田総裁会見ですけどこれはうーむという感じで

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1612c.pdf


・ETF買入に関する質問が代わって来ましたなあ&回答が無茶苦茶過ぎて泣ける

割と最初の方にこんな質問が。

『(問) 同じく大統領選後、株価も先週末まで 7 日連続で終値が年初来高値を更新するなど、堅調な状態が続いています。市場への過度な介入との批判もある 6 兆円のETFの買入れですが、これはまだ必要なのか、また、どういう状況になれば縮小を検討できるのか、お考えをお聞かせ下さい。』

という質問に対して・・・・・・・・・・

『(答) 日本銀行によるETFの買入れは、「量的・質的金融緩和」の枠組みの一つの要素であり、資産価格のプレミアムに働きかける観点から行っており、特定の株価水準を念頭において、実施しているものではありません。』

えーっとすいません、「資産価格のプレミアムに働きかける政策」なのであれば、当然の事ですけれども「資産価格のリスクプレミアムが何らかの影響で過大になっていて(=価格がリスクプレミアム乗り過ぎで低くなりすぎている)おり、それが適正な資源配分に悪影響を与えるからリスクプレミアムを縮小させる」というのが政策の具体的なやり方になりますので、「特定の株価水準を念頭において、実施しているものではありません。」というのがそもそも「資産価格のプレミアムに働きかける」と説明が矛盾するんですが大丈夫でしょうか??

『従いまして、ETFの買入れも、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、必要な政策であると考えており、今回も現行の買入れ方針を維持することにしました。先行きについては、経済・物価・金融情勢を踏まえて、金融政策決定会合において適切に判断していくことになると思います。』

これだと2%達成するまでETF買入するような言い方ですが、資産価格のリスクプレミアムがマイナスになるような状態まで日銀が買入を行うという事になれば、それは資産バブルを日銀が人為的に作るとともに、資源配分を(リスクプレミアムが過大な場合の表裏の理屈で)歪めることになるのではないでしょうか。


でまあ後の方でまた質問が飛んで来る。

『(問) 先程のETF増額について今一度確認したいのですが、7 月に倍増した時には、英国のEU離脱をきっかけに世界の不確実性が高まって投資家の心理が冷え込まないように導入したという説明があったかと思います。今日のお話だと、実体経済が意外にしっかりしていて、市場もそれを分かってきた、というご説明だったかと思うのですが、今一度、ETFの買入れ額を減らしたり元に戻したりする条件について、分かりやすく教えてもらえますでしょうか。』

これは良いツッコミなのだが、何せ黒田日銀にロジックの整合性というのは全く存在しないという惨状になっておりまして(マイナス金利突っ込んだ辺りから完全に)、その場その場で適当な屁理屈を繰り出してくるのですが、そこまでの説明との整合性が全然ないから先程のような説明が出てくるのですが、ではこちらの質問に対してどうこたえるのかというと・・・・・・・・

『(答) 先程来申し上げている通り、ETFの買入れはあくまでも市場全体のリスクプレミアムに働きかける観点から実施しているものです。従って、確かに、日本経済の景気について見方を一歩前進させたわけですし、そうしたことが株価にも何がしか反映されていることは十分あり得ると思いますが、今の時点でETFの買入れを減らすという判断は適切ではないと思っています。』

だったら現在の株式市場のリスクプレミアムがどの程度存在しているのか、ということについてレンジでよろしいのでお示しいただけませんかねえ。

『どういった状況になればETFの買入れを減らすのかは、株式市場を含めた金融市場全体の動向や物価の動向によって、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」全体の中で考えていくことになると思っています。ETFだけ取り出して、株価が上がったから止めるとか、株価が下がったら拡大するとか、そうしたことは考えていません。』

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160729a.pdf
金融緩和の強化について

えーっとすいません、ETF拡大の他ってドル特則の拡大とかドルオペ担保の国債貸付とかいうのしか入っていないのですけれどもこれってどう見ても「ETFだけ取り出して株価が下がったら拡大するとか」にしか見えませんけれども遂に説明まで整合性が取れなくなって来ましたか。


・・・・・・・・でまあ多分このETF買入って株式市場の方々とかがもっと「こんな買入を続けていって良いのか」みたいな声が高まって日銀批判に繋がるようになるまで続けるような勢いですが、リスクプレミアムがマイナスになって日銀のストック効果が効き続けるという状態が継続したらどこからどう見ても資源の適正配分に長期的に悪影響を与えますし、大体からしてマイナスのプレミアム状態というのは要するにバブルな訳で、官製バブル作って後どう収拾するつもりなのかというか収拾しないで放り出す黒田日銀とかふざけるな以外の何物でもないのですけど。

まあこの「リスクプレミアム」に関する見方に対してきちんと説明をして頂きたいものですが、どうせ「適正なイールドカーブ水準」と同じで、何の根拠もなくてその場の勢いとノリだけでやっているんでしょそもそも置物リフレ理論だったら当座預金残高80兆円で2%達成だったように、要はこの人たち屁理屈はあっても理論は無くて、根拠となる定量的なものもテキトーですし、この回の会見で黒田のオッサンご機嫌ご機嫌だったようにオッサン為替の事しか関心なくて他の事は全部おまけ位にしか考えてないでしょ。そうじゃないというならそうじゃないような政策ロジックと政策運営をして頂きたいもので。


・金利目標水準の引き上げに関して、YCCと為替

『(問) 現在の政策の枠組みのもとでは、物価が目標とする 2%に達する前に長期金利の目標を引き上げることも可能だと思うのですが、総裁ご自身は、経済・物価・金融情勢がどのような状況になれば、そのような長期金利目標の引上げの検討が可能になるとお考えなのか教えて下さい。(後半は次に)』

そういう質問をしても今の時点でそういう条件を出す訳は無いのだから、質問するなら最初にあるような形で「物価が2%を上回る状態で長期金利の誘導目標が0%のままだと極めて過剰な緩和になってインフレがスパイラル的に上昇するような懸念も出ると思うのですが、それでも金利目標水準は0%のまま維持するのでしょうか」と敢えて初歩的な質問の仕方をした方が良かったのでは?

『(答) まず、第 1 点については、そもそも現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するためのものですので、そのもとで、経済・物価・金融の情勢を踏まえて、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくということに尽きると思います。』

ではその「最も適切と考えられるイールドカーブ」を示して下さい。

『長期金利操作目標についても、こうした考え方に沿って、金融政策決定会合において判断していくことになると思いますが、現状、2%の「物価安定の目標」までにはなお距離があり、これをできるだけ早期に実現するためには、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが最も適切であると考えています。(後半は次に)』

という答えしか出て来ないのですな。まあ(元々そうですけれども)目標水準は毎回のMPMで討議しているというのだけは回答として出てきたという感じです。


『(問)(さっきの続き)もう 1 点ですが、関連で、為替市場で円安が進行している背景に、日米の金融政策の方向性の違いが指摘されていますが、今後さらに円安が進行して、日本の消費等に悪影響が及ぶような情勢になった場合、そういった円安の副作用を回避するような目的で長期金利目標を引き上げるという選択肢はあるのか、この点について教えて下さい。』

日銀はそういう考えはないでしょ。政府や世間が日銀を羽交い絞めにして円安止めさせろという話になったらその時は可能性無くはないけれども、置物リフレ理論によると2%の物価目標が達成されたら全てが上手く行くという理屈なのですから、円安で物価上昇するのは善でそれで消費者が困るように見えるけれどもそれは木を見て森を見ずという議論である(キリッ)ってなもんでしょ、と思ったら期待通りの答えが返ってきます。

『(答)(さっきの続き)第 2 点について、金融政策は為替をターゲットにしていませんので、ご質問に直接お答えすることになるかどうか分かりませんが、現在の為替の状況は、円安というよりもドル高であり、全世界のほとんどの通貨が、先進国・途上国・新興国を問わずドルに対して弱くなっている、ドル高の状況であると思っています。そうした中で、金融政策の違いが何らかの影響を為替に与えるとは思いますけれども、今の時点で円安に回帰し過ぎて問題になるとか、そういった見通しは持っていません。現在の為替の水準も、確か、今年の 2 月頃の水準ですので、別に驚くような水準とも思っていません。』

これ一つだけ面白いのは「今はドル高」という説明でして、いやまあその通りではあるのでこの説明自体はそうですねという所なのですが、「YCCによって主要国対比で日本の金利が抑えられているから為替にも効果が出ている(キリッ)」というYCC政策が効いていますプロパガンダの方を全力で否定することになっている面ですな。

ですから、今回はそういう話が出ていないですけれども、どこかで「YCC政策の効果として年初から起きた為替市場の円高修正が行われました(キリッ)」というようなプロパガンダが入ったらすかさずこの質疑応答による説明を持ちだしてツッコミを入れて頂きますように記者各位におかれましては平にお願い申し上げたいものでございますな(^^)。


あとまあこれがハト発言扱いになっているのですが、

『(問) 先程、為替の水準について、総裁は「驚くような水準ではない」とおっしゃいましたが、今後さらにドル高・円安方向に進んでもおかしくないとお考えなのか、というのが 1 点です。もう 1 つは、最近の長期金利の上昇の要因として、米国の金利に連動した動きだけではなくて、今回判断を上方修正しましたが、日本経済の回復、改善も背景にあるとお考えなのか、その場合は多?の金利上昇を容認することにはならないのか、この 2 点をお願いします。』


『(答) 先程、為替については、何か水準について具体的なことを申し上げたつもりはありませんので、そこは誤解がないようにして頂きたいと思います。金融政策は為替をターゲットにしているわけではありませんし、為替政策はわが国においては財務省が一括して責任を負っていますので、私から為替の動向についてとやかく言うのは適切でないと思っています。ただ、すごく円安、円安と皆さんがおっしゃるものですから、今年の 2 月くらいのところに戻っただけという事実を申し上げたわけです。』

(棒読み)とト書きをつけたくなる発言ですな。まあこの時点で円安止めるような事はしないでしょ。そらあちこちから悲鳴が出てきて政府が羽交い絞めにしてくれば別ですけれども(なお冬に向けて円安だわ原油価格上昇だわで割と早くに悲鳴出てきたらどうするんでしょうねえ)。

『長期金利が色々な状況で動いているということはあると思いますし、あるいは市場の期待が上がってきていることもあるのかもしれません。ただ、私どもとしては、「イールドカーブ・コントロール」という形で、まさに 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すために、現在の「イールドカーブ・コントロール」を行っていますので、海外金利の上昇に応じてわが国の長期金利も上昇してよいとか、長期金利の操作目標を引き上げるということは全く考えておりません。』

質問の筋を思いっきり外して答えておりまして、全然質問の答えになっていませんが、よーは金利上昇容認みたいなヘッドライン打たれて為替が円安になるのを避けるんでしょ、というのは別の質疑でも出てきますので次にご紹介しましょう。



・YCCと言ってもカーブ形状変わっていますよねという質疑

この質疑は惜しい。

『(問) 「イールドカーブ・コントロール」を導入して 3 か月程が経ちますが、上手く機能しているとみていらっしゃるでしょうか。また、導入時と今とを比べて、日銀が理想とするイールドカーブというのは変わってきているのでしょうか。』

これはアタクシが聞いて欲しいとか駄文で何度も申しあげた質問でして、ちゃんと会見聞いていないのでこの下りを誰がご質問したか存じませんが実にイイシツモンダナーであります。

『(答) 端的に申し上げて、「イールドカーブ・コントロール」といいますか、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、上手く機能していると思います。』

まずここにインチキ説明の伏線がありまして、「イールドカーブ・コントロール」といいますか、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という言い方をしているのは、「長短金利操作」即ち短期と10年の誘導目標金利に対してそれに整合的な金利に誘導するという話がワークしているというお話で、他の年限は知らんがなと言い逃れすることができるような内容になっている訳ですよ。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2016/k160921a.pdf
New Framework for Strengthening Monetary Easing:
"Quantitative and Qualitative Monetary Easing with Yield Curve Control"

まあ大体英文(ちなみに英文は参考であって正本は日本文)の声明文には「Yield Curve Control」って書いてあって「長短金利操作」とは書いていないのですから、まずこの時点で二枚舌状態になっていて、イールドカーブをペッグするような話も出来るし、2点だけ抑えて後は市場が動けば良いのではあという話も出来る、という風になっていて、しかも何かこう適当にその説明を使い分けながらやってるだろうというのがオペレーションに対する見方を一段と混乱させているんですよねえ。

という悪態は兎も角この続き。

『9 月に導入した時も、その後の金融政策決定会合でも議論しましたし、今回も議論したわけですが、「イールドカーブ・コントロール」のもとで、現在、適切なイールドカーブが形成されていると思っています。』

ということで、日銀総裁会見のダメだなあと毎度思うのは、FEDの会見だったら「先程の誰々の質問のフォローアップで聞きたいのだが」という形での質問が頻発していて、ツッコミが更にインターラクティブに飛んで来るような感じになるのだが、この実に良い質問に対するフォローアップが他の記者から飛んでこない所。

つまりですね、この回答に対して「先ほどの質疑のフォローアップをさせていただきたいのですが、現在、適切なイールドカーブが形成されている、とご説明を頂きましたが、9月の政策導入時と現在とではイールドカーブの形状や水準が特に中期ゾーンや超長期ゾーンでやや異なっているものの現状は適切、という理解になると思います。これは9月から現在までの経済物価情勢や金融市場情勢を踏まえたから、ということでよろしいでしょうか」とか誰か質問して欲しかったですなあ。いやまあ同じ人が続いて聞いても良いんでしょうが何せ参加者が多いからそういうツッコミが出来ない雰囲気なんだったら、記者の方でちゃんと連携して頂きたいものです。

しかしまあ何ですな、この説明だと「現在のカーブが適正」って言っているのに等しいと思うのですけれども、じゃあ9月に出したイールドカーブの絵はどうなるのかというのも小一時間問い詰めたい訳でございまして、まあ別に能動的に金利を下げに行くような事はしませんよ(買入が需給的に勝手に押し下げ要因になるのはその通りだが)という事を言っているような気もする。まあ先程引用したのと同様で「金利上昇容認」というヘッドラインが打たれるような発言は徹底して回避しているのも分かるけど。


・金利誘導水準に関して

『(問) FRBは、来年に利上げを複数回するように見受けられますが、その状況で 10 年物国債金利をゼロ%にペッグしていると、自然に考えれば円安が進んで、物価も上がると思います。これは望ましい状況という理解でよろしいでしょうか。急激な円安の場合は総合判断が必要になるのか、今のように 2%が遠い状況では日米金利差が拡大すればするほど望ましいのか、確認させて下さい。』

質問の後半が盛り過ぎ。「インフレ予想と物価の急激な上昇の場合には総合判断が必要になるのでしょうか」と聞いた方が良いと思う。まあいざ質問しようとすると色々と盛りたくなってしまう気持ちはよーく分かるのでこうやって後付でケチつけるのも何ですがまあ自戒も込めて。

『また、10 年物国債金利がゼロ%程度という調節目標は、9 月に導入された当時はキャップという理解が多かったと思いますが、今後はフロア的なものと理解した方がよろしいのでしょうか。』

『(答) まず後者のご質問については、キャップとかフロアというものではなく、ゼロ%程度ということが操作目標であり、上下非対称のものであったり、これ以上上がってはいけない、下がってはいけない、というシーリングやフロアではなく、あくまでも操作目標ということです。』

上下対称なの????ということで質問があとから飛ぶので次に引用します。

『FRBが今後、どのような金利を決定していくかは私からコメントすることは差し控えたいと思いますが、いずれにしても、FRBは従来から、物価の安定と雇用の極大化を金融政策の目標として、適切な金融政策を運営されてきたと思っていますし、今後もそうされるだろうと思っています。』

『なお、為替につきましては、いつも申し上げていますように、金利差が一定の影響を与えるかもしれませんが、為替に対する影響は色々な要素がありますので、今から決め打ちをして、こうなるだろうからどうこうする、というのは生産的でないと思います。いずれにしましても、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するためのものですので、そういった観点から、経済・物価・金融情勢を踏まえて、適切な金融政策運営を行って参りたいと思っています。


ということで、まあ質問から真正面には答えない姿勢は徹底しています。


・色々と話題になった質疑

ということで例の言い間違え質疑。

『(問) 本日の総裁の発言を考えてみると、総裁としては長期金利について今特に問題がある水準にいっているとは思われない、もし長期金利が海外などの要因で上がってきた場合、例えば 0.1%を超えてくるような場合は、特に長期金利のターゲットを上げるというよりも、指値オペとかそういったもので対応できる、という理解でよろしいでしょうか。もう 1 つ、足許の日銀の国債購入のペースをみると、来年末は大体 70 兆円強くらいになるとの見方がありますが、これについて総裁は特に問題はないというお考えでよろしいでしょうか。』

前半の質問の仕方が微妙に変ですが、ここで0.1%とか言ったからホイホイと間違えを誘発したんでしょうかねえ。なお惜しくもその間違え部分は編集が入りました。

『(答) まず、長期金利――10 年物国債――の操作目標についてはゼロ%程度としていますので、きっちりゼロ%でなくてはいけないとか、あるいはプラスマイナス 0.1%を超えてはならないとか、超えてもいいとか、そういうことはあまり意味のある議論ではないと思います。』

と会見でまとまっているのにさっきモーサテで出てた日経の記事だと「0.1%で介入」みたいな記事に出来上がっているらしいのですが、これはもしや「中期指値オペ」→「超長期入札前日輪番」と来て、同じ手が二度使えないもんだからメディアに提灯記事書かせて口先介入するという新たな手段に出たんでしょうかねえとか邪推したくなりますな、いやもちろんアタクシの妄想でありますので真面目に受け止められても困りますが。

『ゼロ%程度というところで、政策委員会から執行部に対してディレクティブが示されているわけですので、それに沿って必要な措置を採ります。これまでも短いところで指値オペをやりましたし、超長期のところで若干国債購入額を増やすこともやっています。いずれも、短期の政策金利を−0.1%、10 年物国債金利をゼロ%程度という調節方針に沿って、適切なイールドカーブが形成されるようにオペを行ってきましたし、今後とも行っていくということです。』

ところでYCCというからには長期が国債なんだから短期も国債の金利を見るように思えるのですが、短期の国債の金利って昨日の3M短国も相変わらず引けてみたら▲40bp台とかになっていてディレクティブに違反していませんでしょうかと申し上げたくなりますな(ちなみにその質問に対する答えですが、短期に関しては声明文に「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。」とありますので、別にJGBやTDBの金利が幾らかというのはディレクティブにございませんが何か?で終わってしまいます)。

『なお、今回の金融政策の調節方針にも述べられている通り、国債の購入額については現状程度、80 兆円程度をめどとして行っていくということに尽きると思います。今後どのようになっていくかということは、あくまでも適切なイールドカーブを実現することの結果として出てくるものだと思いますが、当面、現状程度、約 80 兆円の国債購入が続いていくものと考えています。』

これが凄いのだが、今の買入ペースだとどう見ても70兆円台前半にしか収まらない来年の買入について、こういう風に平然と答えるというのがウソツキにも程があるのですけれども、もうこうやって強弁して、金利上昇モードになってきたらどうせ買入増えることもあるでしょうしまあ後の事は後のことで考えて、最後はメドなんだから80兆も70兆円台前半も似たようなもんで、大規模なMB拡大には変わらないでしょう何を細かいことを言ってるんですか、と置物MB貨幣数量直線一気理論が無かった事になるという未来が見えて参ります。


・出口論についてはちょっとだけ真面目な部分もありますな

あまりネタになって無かった気がするけど。

『(問) 出口論について伺いたいと思います。総裁はかねてから出口論を議論するのは時期尚早だとおっしゃっているわけですが、先程、2%の目標はまだまだ遠いとご自身もおっしゃっているように、このままだと総裁の任期中に出口論を議論する時間はもうないということになります。任期中には、出口論はもう議論はされないのでしょうか。そうだとすると、そもそも平和的な出口の手段というのを持ち合わせていないのではないかという疑念も浮かび上がってくるのですが、その点についてお考えをお聞かせ下さい。』

そもそも本来の日銀の物価見通しが正しいならば退任前に出口における政策枠組みの検討は行わないとおかしいですからね。

『(答) 出口論云々につきましては、従来から出口に当たっては、金利水準の調整、あるいは拡大した日本銀行のバランスシートの扱いなどが課題になるということは申し上げていますが、それを実際どのような形で進めていくかというのは、その時々の経済・物価情勢、あるいは金融市場の状況などによって変わり得るものですので、早い段階から具体的なイメージを持ってお話しすることは適当でないと思います。』

ただ、経済物価情勢が好転してきたときにはこの観点を日銀が全然持ち合わせていない、という風に認識された場合には期待がスパイラルになって止められなくなるリスクはあると思うし、そうなったら多分普通のスパイラルではなくて日銀への信認に関わる話が絡むからタチガ悪いと思う。たぶん今の日銀の中の人はそんなの起きないし止められると思っているでしょうが。

『市場との対話という観点からもかえって混乱を招くおそれが高いと思いますので、適切な時期に正に出口論を議論していくということになると思います。』

っていうだけマシになったというか、円安受けて「今度こそいけるかも」感は総裁の頭にもあるんじゃないかと思う。今まではそれ以前の所で門前払いするような説明ばっかりだったから。

『その出口論の議論がいつ行われるかということを事前に申し上げるわけにいかないのは、あくまでもその時々の経済・物価情勢、あるいは 2%の「物価安定の目標」との関連で議論しなければなりませんので、今からいつということは申し上げられないということです。従って、私の任期は 2018 年 4 月までですが、その時までに具体的な出口論が出てくるかどうかということについても、今から申し上げることはできないと思います。議論になる可能性もありますし、そうでないかもしれません。』

珍しく質問に正面からちゃんと回答しているのが最後にありましたな(^^)。




2016/12/21

お題「決定会合レビューである」

これはいわゆる密造酒みたいなもんですかねえ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161220/k10010813051000.html
酒の代わりに入浴剤飲み48人死亡 ロシア
12月20日 6時42分

○決定会合声明文は円安でウハウハの余裕と配慮を感じる作品に

まあしかし何ですな、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161220/k10010813981000.html
円相場 日銀総裁の発言影響で値下がり
12月20日 18時00分

『20日の東京外国為替市場は、日銀の黒田総裁が記者会見で、円安ドル高の流れについて「驚くような水準だとは思っていない」と述べたことが、今の円安を容認していると受け止められ、円相場は値下がりしました。』(上記URL先より)

って日銀が今の為替を牽制する訳がないのにこういうのを材料扱いするってのは、まあ真面目に材料扱いしているというよりは多分その時間帯って欧州債と米債が金利上昇モードだったのでそっちじゃろと思いますし、今この時点で円安けん制を日銀が行うとか考えている人はちょっと身の振り方について考えた方が良いと思いますので、まーただの後付にも程があると思うのですが、時代の流れというのはオソロシイもので、ついこの前までクレクレ言っていた時は何も無かったら一々円高に振れていたのに、昨日なんぞ現状維持で円安に振れていて笑ってしまうしかない展開でしたな。

てのは兎も角。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k161220a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf(前回の展望レポート基本的見解)

経済の見方に関する文言は展望レポート基本的見解で確認するということで。

・景気の現状認識をやたらめったら引き上げる

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで基調判断を上方修正(というかヘッジクローズの削除)をしましたよ!!!!

『海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ということで、新興国に関してこれまで「減速の影響」だったのが「一部に弱さ」という表現になりまして、新興国の判断を引き上げるというプレイにでました。ドル高の影響ェ・・・・とか思うのだがそう来るかという所で。

『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善するなかで、設備投資は緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しを続けている。この間、公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は持ち直しを続けており、公共投資は下げ止まっている。』(前回)

短観の評価は「業況感も幾分改善」とこれまた若干ですが前回対比引き上げ(前回の部分はもうちょっと後の方にありますが、「総じて良好な水準を維持している」となっています)。個人消費の所が今回「一部に弱めの動きがみられるが」という文言を外してきまして「底堅く推移」(キリッ)に上方修正になっております。公共投資については下げ止まりから横ばい圏内だから微妙に上方修正ですが、これは先行きの見通しで元々ここから強くなるという話になっているものなのでまああまりキニシナイ。

『以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は横ばい圏内の動きを続けている。』(前回)

ということで生産も上がっていまして、今回は海外(新興国)、個人消費、生産という重要なポイントで上方修正を入れてきましたので、経済の現状認識についてもう急に自信満々で鼻の穴が膨らんでムハーとか言ってそうなこの声明文。


・さらに余裕ぶっかましていると見れるのはインフレ期待に関する記述部分

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(今回)

『企業の業況感は、総じて良好な水準を維持している。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(前回)

業況感についてはさっきの通りでもうちょっと前に今回の記述があります。物価の現状はまあそうじゃろという表現になっていますが、インフレ期待に関する文言を今回上方修正していないのには配慮(ただし金利市場に本当の意味で配慮していないのは会見でバレバレであって配慮しているのは「不用意に円高に振れないようにする」ということだけですけれどもね)と余裕ぶっかましを感じましたな。

つまりですね、総括検証の結果としてYCCを打ち込むまでは延々と予想インフレ率に関して『やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、全体としては上昇している』という意味不明の表現を続けていて、意地でも下げないという形でしたが、総括検証でYCCの枠組みに変えた時にやっと『予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている』になった訳ですよ。まあその弱含みの局面に対応してオーバーシュート型コミットメントを入れました、というのが日銀の理屈になっておりまして、従いまして「弱含みの局面が続いている」と言っても先行き2%達成への方向性に変化が無いのであれば追加緩和措置を取る必要はない、という整理になっているのですわ。

となりますと、少々状況が良く成っても別に予想インフレに関する文言って変えなくても良いし、これまでの逆でそこの文言を下手に弄ると誘導目標金利の上方修正みたいな思惑が出てくる(総括検証前は予想インフレが「全体として上昇」じゃないという認識だったら追加緩和をしないといけないという理屈)ので、まあここの文言をそうそう変えてこないのは予想される所ではあるのですが、トランプ円安株高ヒャッハーとか言って調子に乗ってここの文言をいじるような事は無かったというのは日銀余裕ぶっこんでるなという風にも思う次第でございます。

#まあその分オペに負担が来るのだがまあそれは調節部署が泡を吹いていれば良いってタカを括ってる位のもんでしょ


・先行き見通しも微妙に引き上げ

『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している。』(前回)

輸出と生産の判断引き上げているのですからそらまあこうなりますが、ヘッジクローズコテコテの状態からシンプルにして来るのは基本的に自信が出てきたときの仕様。

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回)

同じですな。

『輸出も、海外経済の改善を背景として、基調として緩やかに増加するとみられる。』(今回)

『この間、海外経済は、幾分減速した状態が暫く続いたのち、先進国の着実な成長が続き、新興国経済も、その好影響の波及や各国の政策効果から減速した状態を脱していくにしたがって、徐々に成長率を高めていくと予想している。このため、輸出は、緩やかな増加に転じるとみられる。』(前回)

元々の文章量が違うのは方や声明文で方や展望レポートなのでこうなります。海外経済の先行き見通しが引き上がって、その結果輸出の見通しも若干上がっているのですが、「増加に転じる」→「増加する」にするほど自信満々ではないので「基調として」というヘッジクローズが入るというこの細かい芸。

『消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注3)。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

ということでここは基本的に同じ認識。達成時期に関しては声明文だと言及は無いので次回展望レポートでどうするかという話でしょうが、そもそも2%達成時期が願望てんこ盛りのタイミングになっているので特に修正することも無いでしょうかね。


・リスク要因

こちらは前々回(9月総括検証)時の声明文と比較します。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf(前々回の声明文、経済に関しては別紙2)

『リスク要因としては、中国をはじめとする新興国・資源国の動向、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、英国のEU離脱問題の帰趨やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスクなどが挙げられる。』(今回)

『リスク要因としては、英国のEU離脱問題を巡る不透明感が国際金融資本市場や世界経済に及ぼす影響に加え、中国をはじめとする新興国や資源国に関する不透明感、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどが挙げられる。』(前々回の声明文)

「中国をはじめとする新興国や資源国に関する不透明感」が不透明感という表現じゃなくなりましたねえというのと米国経済の動向と金融政策の影響が「国際金融市場に及ぼす影響」になって。「資本市場」が抜けているというのはこれどういう意味じゃろ。


なお、最後のパラグラフには変化がありませんです、まあ毎度のことですが。


○会見(詳しくは本日出てくる)からは「均衡イールドカーブとか望ましいイールドカーブとか何も考えてない」事が明らかに

http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN1490SN?sp=true
Business | 2016年 12月 20日 19:02 JST
日銀、景気判断を上方修正 長短金利目標・国債買入額は維持

『市場で取り沙汰されている長期金利目標の引き上げについては「時期尚早」と一蹴しつつ、トランプ相場による円安を背景に来年1月に物価見通しを引き上げる可能性も示唆した。日銀政策運営の焦点は追加緩和から金利引き上げなど出口方向に急転しつつある。』(上記URL先より、以下同様)

そういや今回金利誘導目標水準の変更とかいう妄言もあったみたいですが、んな事ここの局面でする訳ねーだろとしか申し上げようがない訳で、アクチュアルの物価がもっと威勢よく上がってくれば誘導金利水準の変更(まあその前に市場が追い込んできて10年0%程度が維持できなくなる方が先だと思いますけど)という変化はあるかもしれませんが、円安進行してウマーと言っている中で、ただの市場追随だけで利上げするというのはちとあり得んでしょと思うので、そういうの言う何とかストって大穴狙いにしても幾らなんでもそれは酷いんじゃないのと。いやたとえば今回じゃなくて1月の会合の時に大円安モードになって日銀が金利止められなくなってとかいうのなら分からないこともない(あまり分からないけど)のですが。

『会見中、現在のドル/円は今年前半の水準に戻しただけで、驚くほどではないという趣旨の発言があり、「ドル/円が上昇したのは、こうした発言を円安容認と受け止めた可能がある」(外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也氏)との指摘があった。』(原文ママ)

まあさっき引用したNHKでもそうですしモーサテでもそんなコメントがあったのだが、逆に何で今の時点で黒田総裁が円安牽制発言をしないと行けないのかと思う訳ですが(米国がドル高けん制発言をしてくるなら分かる)、市場の方も何ちゅうかこう日銀の反応関数を誤解してねえかと思ってしまう次第ではあります。政策反応関数が何が何やらさっぱり分からない状況にしている日銀にも問題は大ありだとは思いますが、最近の何とかストの皆様のレポートを拝見しているとそれは無いわみたいなのも散見されまして、日銀がその場その場で都合の良い屁理屈を繰り出してきて、その局面では整合性の取れた理屈を展開しているのですが、全然首尾一貫していなくて政策いじる度に説明の理屈を組み替えているのですからこんなんロジカルに考えれば考えるほど理路整然と読みを外すわなと思ってしまうのだ。

『一方、黒田総裁が会見で長期金利目標を「ゼロ%程度」ではなく、「0.1%」や「1%」と 言い間違い、一部市場関係者の間で話題となった。』

まあこれにはいくつか感想がありますが、何と言いましても「政策金利の水準を言い間違える中央銀行総裁」とかそんなの前代未聞にも程がある訳で、どんだけこのオッサンは金利市場を舐めてるんだよという事でありまして、まー市場に対して凄まじく傲慢なお方ではありますが、ここまで酷いというのは金利市場の皆様がトサカに来て血管切れるレベルだと思います。

でもってまあもうちょっと物語らしく下らない事を考えれば、深層心理でこの数字が出てきたのであれば、1%というのは「物価1%が見えてきたら今度こそこの政策を勝ち逃げ(=勝ったことにして逃げる)しないといけない」と思っているんだろうなあとは思いますが、0.1%というのが謎で、それこそ10年のレンジとして10bpを意識しているのか、それとも単に短期がマイナス10だから間違えたのか、色々と微妙な数字で間違えるなよと思いますな。

まーいずれにしましても、そもそも長期金利誘導目標の金利水準に対して黒田さんが何の興味もないのも分かりましたが、この惨状ですと、当然ながら「望ましいイールドカーブ水準」について金融政策決定会合の中でまともな議論が一切行われていない、という事が明白になりましたので、益々「望ましいイールドカーブ水準とは何ぞや」というのが「総合判断」という名の意味不明数値になることが明らかになりましたので、お前らナメトンノカとかそういう話もありますが、まあ実務的に言えば「どこからどういうタマが飛んで来るのかについて何らロジックは無い」ということで、強いて言えば円高になるのが嫌ですという金利プロパーではないお話だけであって、介入水準については「やばいこれ金利上がると為替が反応しだすかも」と日銀の中の人が泡を吹き出した時であろう、というのが垣間見える非常に残念な会見になったようですな。イールドカーブ水準とかの質問にまともに答えてなかったみたいですし。

#ということで無風会合ではあったがまたもトサカに来るネタがありましたとさ






2016/12/20

お題「イエレン会見続き/PD懇は市場(というか日銀)に関するコメントに味わいが」

さあ何もないという予定の金融政策決定会合ですよ!!!!

○イエレン議長ネタでまずはFOMC後の会見だが意外にネタが無い

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20161214.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
December 14, 2016


ということで質疑は昨日ちょっとだけ頭出しした積りだったのですが、良く良く見ますと先行きの金融政策とか経済の基本的な認識に関する質疑があまり無くて、トランプの影響をどう見ますかという質問に対しては特に経済に関する基本的な部分の答えを行わないようにして回避って感じでイマイチ面白くない。

つーかまあ面白くないというのは、先行きに関しては利上げパスが若干上方修正されたものの、だからと言って「正常化するぞー」と鼻息荒い訳でもないし、まあいずれにせよトランプの出方を見ないと何もできませんけどとりあえず今回は利上げやっておくもんねという風情にも見えます。


・財政との関係の質問は幾つかあった訳ですが

昨日引用した冒頭2番目の質問した人の続きです。

『STEVE LIESMAN. I’m sorry but if there was a rush of fiscal policy that did not increase the productive capacity of the economy, would that mean the Federal Reserve would have to move more quickly with raising rates? 』

『CHAIR YELLEN. I-- You know, it's something I really just can't generalize about because, while it would be desirable to have tax policies that do increase the productive capacity of the economy, an increase in the pace of productivity change is one of the factors that does affect the economy’s neutral rate, a boost to productivity could spur investment as we've been saying we estimate that the value of the neutral federal fund's rate is quite low has-- And one of the reasons for that is slow productivity growth. And so it's very hard to generalize about it because it could affect that neutral rate. 』

つーことで、財政に関してはついこの前まで結構色々な発言をしていたのですが、まさかのトランプ大統領爆誕となってこういうまとまった質疑応答を入れられるとまあ見事なまでに(その前からそういう感じではありましたが)急に超当たり前の一般論の話しかしなくなるの巻と相成りまして、まあFEDネタを勝手に追っかけているつもりのアタクシですが、大統領が代わるとなった途端にここまで急に発言のトーンが変わっているのって見た事が無いように思えるので、そういう点からしますとどんだけこのトランプ大統領爆誕ってえのが掟破りなパターンなのかということで、米国大丈夫かという気もするのでした。


・ビハインド・ザ・カーブかと言われればそうではありませんと答えますが

別の質問から。

『SAM FLEMING. Sam Fleming from the Financial Times. Clearly, there's been a lot of discussion already about fiscal -- fiscal policy. But even if you discount or don't know what the fiscal outlook is going to be next year, unemployment is already below the longer run projection under the policy rule you cited in your August speech. That would suggest that a policy ought to be tighter. Is there a risk that the Federal Reserve is already behind the curve even before any fiscal impact steps in next year? Thanks. 』

財政の事について質問しても暖簾に腕押し糠に釘なだけに「ところで今完全雇用なので財政出ると出ないにかかわらずに今後は政策をよりタイト化しないとビハインド・ザ・カーブになるのでは」という質問を飛ばしてみるの巻。

『CHAIR YELLEN. So I would agree that-- And this we said in our statement, policy remains accommodative. The degree of accommodation I would characterize as moderate. As I've emphasized and said in the statement, we currently judge the neutral level of the federal fund's rate to be pretty low. So there is some accommodation. Remember that inflation is still below our objective. The committee projects at least the median projection shows a very modest undershoot of estimates of the longer run normal rate of unemployment. The median unemployment rate here gets down to four and a half percent, which is just a few tenths below the estimated longer run normal level of the unemployment rate. And we think that that's appropriate because we want inflation to rise to our 2 percent objective in a timely fashion. So there is not a substantial undershoot of the natural rate of unemployment.』

ということで、今の政策は緩和的だけれども中立金利水準も低いので実質金利が無茶苦茶低くて緩和し過ぎということではありませんと。

『 We're not seeing evidence in labor markets of very substantial upward pressures on labor that could signify extreme shortages of labor that could propel inflation higher in a very rapid way, and inflation is still operating below our objective. So, I do not judge that we are behind the curve.』

んでもってここにありますように、賃金動向と物価動向が動き出さないので余裕を持って対応をする(しかし年3回ってどういうタイミングで利上げするんだか良く分からん、2回か4回なら分かるけど)という話なのですが、ここが変化すると一段とペースが上がるし、延々とここがうだうだしていると年3回とか言ってますけど様子見地蔵になって2回とかになるかもという事で、まあ政策反応関数って基本この部分だろうなあというのが分かりやすくてどこぞの中銀は見習って頂きたい(無理だけど)。

『I've-- My judgment is that we're in a good path to reaching our objectives. But of course the outlook is uncertain. We recognize that there are many sources of uncertainty affecting the outlook. And we will have to adjust our thinking as things evolve, as conditions evolve, and we learn more about economic policy changes that could affect the outlook. 』

ということで、このような質疑(財政出たら物価上昇圧力でないの的な)を繰り返した後に昨日引用した「高圧経済が望ましいとか言った訳ではありません」というお前は何を言っているんだという質疑応答が続くのであります。つーかあれ読んだ時に変にキャッチーな言葉使うなよなあと思ったら案の定自分に降りかかって来る辺りが実に味わいが深いですな。


・新政権と金融規制

新政権についてどうですかという質問に対してひたすら答えを逃げるという応酬の中ですけれども、金融規制に関する質問位は引用しておきましょう。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binyamin Appelbaum with the New York Times. The president elect has said that overhauling financial regulation is a high priority for him. I'm curious whether the Fed has been asked to provide any advice on how that might be done. And what advice you would provide to the president elect about how our financial regulatory system should be improved?』

『CHAIR YELLEN. So we have been-- our staff have been in touch with the Trump transition team and we of course share the objectives that the whole government has to work constructively to ensure a smooth transition. I've not been in touch beyond that and it's not something that I would expect. But-- I'm sorry what would I-』

『BINYAMIN APPLEBAUM. About how the system should be improved?』

ということで金融規制に関して。

『CHAIR YELLEN. About how-- Financial rate. Yeah. So, OK on financial regulation, I feel that we lived through a devastating financial crisis that took a huge toll on our economy. And most members of Congress and the public came away from that experience feeling that it was important to take a set of steps that would result in a safer and stronger financial system. And I feel that we have done that. That has been our mission since the financial crisis for the last six or seven years. That's what Dodd-Frank was designed to do.』

とまずそもそもドッドフランク法はリーマンショックみたいなバブル発生崩壊を防ぐものなので、と基本的な部分の必要性については説明。

『I think it's very important that we have reduced the odds that a systemically important firm could fail by requiring higher capital, higher liquidity by performing stress tests that provide us another way of insuring that the firms we count on to supply credit to households and businesses would be able to go on doing that even in the face of a severely adverse shock. The firms, the largest firms have a great deal more capital than they did before the crisis. Those are important changes. We have placed the toughest regulations on those firms that are systemically important.』

『I would advise that-- and we have been trying to do this, that it's important to look for ways to relieve regulatory burden on community banks and smaller institutions to tailor regulation so that it's appropriate for the systemic risk profile of the particular institutions. I think there was broad agreement also that we should end too big to fail and that means not only reducing the odds of the failure of a systemically important institution but also making sure that should such a firm fail that it could be resolved in an orderly way.』

てな訳ですので、大手金融機関に対する規制はあまり緩和するイメージが無くて、中小とか地域金融機関の規制に関してはその実情を勘案して緩和するのは(一律と言うよりは個別対応で)ありでしょうという妥協策を出している感がありますな。

『And the living wills process has been about that and I think we've made considerable progress in making sure that the largest and most systemic firms conduct their businesses in a day-to-day way with some thought about-- with important thinking in place about whether or not the way they are conducting their business would aid resolution in the event that they encountered a severe negative shock. So, this is progress, I would say, is very important not to roll back.』

ただし規制を巻き戻すような事は考えないと。

『There may be some changes that could be made and we've suggested a few like eliminating the burden of compliance with the Volcker rule or incentive compensation, regulations for smaller banks or modestly raising the threshold for banks that are subject to enhanced prudential supervision. But I would urge that it's important to keep this in place.』

つーことで、まあ規制の強化を更にガチガチというのがどこまで進むのか(今やろうとしていて実施時期がこの先というネタ)については微妙ですけれども、ここから新たにガチガチぶっこんでいくという感じではさすがになくなった感が。

とまあそんな感じですかにゃあ。


なお、直近のは
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20161219a.htm
Chair Janet L. Yellen
At the University of Baltimore 2016 Midyear Commencement, Baltimore, Maryland
December 19, 2016
Commencement Remarks

斜め読みしたけれどもそんなに変わった話はしていなかったように見えます。



○PD懇議事要旨から少々

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/161216.html

・要は後ろの増発はちとキツイと

『3. 平成29年度国債発行計画について〔参考配布:資料3〕』から。

まずは理財局から。

『・この中で、超長期債への意見としては、40年債は、本年9月変更後の発行額を維持すべきという意見と減額すべきという意見が共に聞かれている。30年債は、現状維持すべきとの意見が多い。20年債は、減額を希望する意見が多かったものの、現状維持すべきという意見も聞かれている。』

『・10年債への意見として、減額が可能との意見が大勢を占めているが、現状を維持すべきとの意見も若干聞かれている。』

『・中短期ゾーンについては、特に5年債を中心に減額余地があるとの意見で概ね一致している。』

『・流動性供給入札については、市場の流動性の低下に配慮して増額すべきとの意見で一致している。特に、発行総額が減額となる中でプラス利回りの20年債も減額するのであれば、同ゾーンの流動性供給入札を増額してほしい等、超長期ゾーンの流動性供給入札の増額を希望する意見が多く聞かれている。』

『・なお、物価連動債については、これ以上の減額は避けてほしいとの意見が聞かれている。』

ということで、『○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。』ですけれども、

『・1年物T-Bill、2年債及び5年債については、マイナス金利によって投資家の撤退も見られ、需要が減退していることから、減額可能である。10年債については減額余地があると考えていたが、プラス金利となっていることから、現状維持が適当ではないか。10年債を減額せずに5年債の減額幅を広げるという選択肢もあり得る。40年債については、1回の入札当たり5,000億円で問題ない。20年債については減額余地があると考えているが、減額する場合には流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンを増額することによって、超長期ゾーン全体のバランスを保つことが必要ではないか。』

例えばこんな感じでして、暫く前だと低金利環境を生かした超長期の増発的な話もあったと思うのですが、ここもとトランプ相場で超長期まで金利がホイホイ上昇した結果として、増発するとさすがにしんどかろう的な感じになっていますな。

でもってそらまあPDに訊いたらこういう答えになるのは仕様なので仕方ないのですし、金利が上がったり下がったりするとニーズが異なってきますというのは全く仰せの通りではあるのですが、この辺りの需給って結局の所足もとの話になってしまうので、状況が変化するとホイホイと変化してしまう次第で、まあ勿論消化できない発行をしても困るのですが、かと言って足元の状況に過度に対応すると安定性を欠くのでイクナイと思うので、ある程度「中長期的にこういう方向性でやっています」というのと、「足元の状況に過度に反応しない(意見は聞くけど)」という感じでよろしいのではないかと思うのでした。


・日銀のオペに関する意見の所に味わいが

『4.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて』から。

『・前回の本会合から20日余りしか経過していないが、その後ドル高が進み、米金利は上昇している。一方、円金利については、イールドカーブ・コントロールによりグローバルな金利上昇の影響が食い止められている状況が続いていたが、先週から急速に超長期ゾーンの金利が上昇したことから、日本銀行は今週に入り10年超の買入を増額した。

 イールドカーブ・コントロールについて、日本銀行はオペを手探り状態で実施していると考えているが、仮に来週以降もドル高が進み米金利が上昇するのであれば、日本銀行は再び対応を迫られると思われるため、市場は神経質な展開となるのではないか。

 しかし、長期的には、例えば1ドル120円を超える円安となればインフレにつながり、イールドカーブ・コントロールにおける長期金利のゼロ%程度というターゲットが引き上げられることも考えられる。来年以降は、このような動きが少しずつ出てくるのではないか。』

まあそうですなと思う次第で、「日本銀行はオペを手探り状態で実施していると考えているが」って辺りも禿げ上がるほど同意でございます。

『・日本銀行がイールドカーブ・コントロールを導入してから3ヶ月近くが経つが、この間、11月17日には2年債及び5年債を対象に指値オペを実施し、12月14日には残存1-5年、残存5-10年、残存10年超の3つの区分を対象に買入オペを実施する等、これまでには見られなかったような形で買入オペを実施している。加えて、超長期ゾーンを対象とする買入オペを増額したこともあり、指値オペより明確ではないものの、日本銀行が持っている金利の水準感とイールドカーブ形状のイメージが徐々に理解されつつある。(後半はこの後に引用します)』

うーんこのという感じでして、「日本銀行が持っている金利の水準感とイールドカーブ形状のイメージ」がきちんとあるのだったらおう早くMPMで出せやコノヤロウという話であって、それよりもさっきの人が指摘するように「オペを手探り状態で実施している」状態だからこそ訳の分からんタイミングでオペが入って来ていて、やっていることって「とりあえずその場を止めよう」という動きに見えるんですけど、どうも日銀が何か高度なロジックを使って介入レベルを考えているという考えで対応するのはナイーブじゃねえのと正直思う。大体からしてロジックったって昨年12月の補完措置導入以降の金融政策変更とかオペレーション変更って、それ自体の理屈は理屈として通っているのですが、それまでの説明との整合性がハチャメチャで、QQE+マイナス金利+YCCとか増築に増築を繰り返してダンジョン状態になっている平成バブル時代の温泉旅館もビックリ(古くて分かりませんかそうですか)という状況なのですからねえ。

『(先ほどの続き)このため、現状、外部環境の強い影響によって金利の上昇圧力が高まっている中でも、金利が安定的に推移していくことが期待される。ただし、イールドカーブ・コントロールについては、買入額を減らしても金利が上昇しないようにする、いわゆる出口政策に向けた準備ではないかとの見方も根強く残っており、国債買入ペース等の変更に際しては、市場に対し、その理由を丁寧に説明することが望ましい。』

うーんこの。出口の時には金利に上昇圧力が掛かるので、YCCの建付け上買入は増えるのですよね。だから今回の決定会合で輪番のメドとかいじらないと思う(金利低下局面なら別)訳でして、YCCってどちらかと言えば金利低下で追加緩和観測みたいな時に買入をそのままでやっていると金利が馬鹿下がりして困るので、金利をターゲットにすることによって「ほーら少ない量でも金利下がっているんだから効果あるでしょ」と言って長期的に買入を細く長く続けるスキームなんですよねえ。


『・米国大統領選挙後、グローバルに金利上昇が進んでおり、インフレ期待も高まっている。トランプ次期政権の具体的な政策の中身がまだ出ていない段階で、これほど期待が高まっていることは、市場の予想を大きく超えている。このペースが来年1年間続くとは到底考えられないものの、来年も金利の上昇圧力は収まりにくいと思われる。

 海外の金利上昇圧力が続く中で、日本銀行が、金融政策の目標であるインフレを実現させていく観点から、金利の上昇を遅行的にしか許容しないのであれば、フローベースの買入額が減らなくなるため、市場の流動性という観点から不安である。

 海外では、金融政策の変化を経済指標等で事前に織り込ませて先取りさせる動きがあるが、金利ターゲットの場合、何を根拠として変化を事前に織り込ませるのかという判断が難しく、金利ターゲットの変更が市場価格を大幅に変動させるおそれがある。このため、来年以降も当局と市場参加者との対話や、情報発信の在り方が一段と重要になるだろう。』

ということで、「金利ターゲットの場合、何を根拠として変化を事前に織り込ませるのかという判断が難しく、金利ターゲットの変更が市場価格を大幅に変動させるおそれがある。」というの思いっきり同意で、「このため、来年以降も当局と市場参加者との対話や、情報発信の在り方が一段と重要になるだろう」って丁寧にまとまっていますが要は日銀が何をしでかすかさっぱり分からんし反応ロジックも関数も崩壊しているのを何とかしやがれコノヤロウという事ですね、わかります。



○決定会合プレビュー雑談と思ったが時間があまりないのでメモだけ

ということで決定会合ですが、今回は声明文でのアセスメントが強くなったり、先行き見通しが強くなったりというのはあるかも知れませんが、だからと言って政策のベースになる部分で何か変えてくるという気もしませんけれどもどうでしょうかねえ。

と申しますのは、そらもちろん誘導水準とかその手のものは変わらんでしょうし、80兆円のめど文言ですけれども、これも金利上昇圧力が掛かると買入って増える(ただしここまでのオペレーションは「刺さらない中期指値オペ」と「1回200億円の超長期増発」(に加えて入れる輪番の後先をいじってたくさんやったように見えるけど月のトータルでみたら同じで、増えたのは200億円の輪番3回分で600億円しかないという事で実は実弾碌に打ってない)ので、別に無理に削除しなくても経済物価情勢が好転するなら80兆円ペースになるような買入が出来るかも知れないんですよね。

となりますと別に今回この文言を削除する必要もなく、まあそれこそ削除するのって誘導水準を上げるような(長期の)時くらいまで引っ張るかも知れませんねという気がする。


それよりもとにかく会見で質問して欲しいのは「YCCで考えている望ましい金利水準のカーブって出せないんでしょうか」ということと、別の聞き方をするなら「9月21日の声明文の中で示していた「現状程度のイールドカーブ」ですけれども3か月経過してそのイールドカーブには変化は起きないのでしょうか」という所でしょうか。なお想定問答的には「10年金利の0%程度の範囲内に収まっている」で誤魔化し続けることになると思いますけどね!!!!!!!!!!!!












2016/12/19

お題「市場世間話だが中期が今度は上昇じゃの/イエレン会見からちょっとだけ」

中国の「バブル抑制」って殆ど年中行事のような気がするんだがちゃんと抑制できた試しがないような気がするのよねえ。

○超長期金利を抑制したら中期の金利が上がったでござるの巻

例によって手抜きで恐縮ですがロイターの毎度の記事なんぞを見つつ昨日のレビューなど。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1EB2CH
Markets | 2016年 12月 16日 15:13 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利変わらず0.075%

以下(最初のロイター記事URL先より)とあるのは上記URL先からの引用ですな。

・催促付け値には反応しないで中々結構

http://www.nikkei.com/article/DGXLASS0IMB01_W6A211C1000000/
債券寄り付き、新発10年債利回りが一時0.1%に上昇 先物は続落
2016/12/16 9:05日本経済新聞 電子版

『16日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは上昇(価格は下落)して始まった。一時前日比0.015%高い0.100%まで上昇し、日銀がマイナス金利政策の導入を決定した1月29日以来の高水準を付けた。』(上記URL先より)

てな訳で朝方いきなり「10年0.1%」をマークした訳ですが、確かにUST10年2.6%アイヤーではあってもこれはさすがに付け値チックなプライスで、板がスカスカなので今なら0.1%マークできる!って奴でして、まあこれは日銀の10年金利に対するスタンスについて試しに行きましょう的なアレ。

板が揃ってみるとそこまでさすがに10年下げずに8bpだの8.5bpだの(ちなみに木曜のBB引けは7.5bpだから0.10%はBBからは2.5甘ね)という水準で推移しておりまして、でもって10時10分をお迎えしたのですが・・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of161216.htm

国債買入(残存期間1年以下) 700 2016年12月20日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2016年12月20日
国債買入(残存期間25年超) 1,200 2016年12月20日

輪番は1年以下と超長期でして、よくよく考えたら1年以下の輪番も償還銘柄打ち込めないタイミング(20日は償還しているから)なのねと思いつつも、中期や長期の輪番は入らずに元々予告のあった通りの超長期輪番を打ち込むの巻で、超長期輪番はこの前100億円ずつ増やしたのと同じ額で予告通りの展開に。

でもまあ寄り付きの10年出合いが如何にもアレだったですし、そのあと戻っているのですからさすがにこの露骨な催促というより恫喝におつきあいする必要もなかろうという事で、債券先物とか輪番出た後も落ち着いていたかなあ、とか思っていたらその後先物はしらっとズッコケるでござるの巻となっておりましたが・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161216.htm

国債買入(残存期間1年以下) 1,988 704 -0.010 0.000 91.7
国債買入(残存期間10年超25年以下) 3,249 2,001 -0.009 0.002 80.0
国債買入(残存期間25年超) 4,254 1,204 -0.012 -0.007 7.1

1年以下は償還銘柄が打ち込めない(償還だから)そんなに突拍子もないレートは入らずなのは兎も角として、超長期輪番の方がちゃっかり強い結果になっておりまして後場は戻るの巻。


・1年短国ェと中期が

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161216.htm

(3)募入最低価格 100円30銭1厘(募入最高利回り)(-0.3000%)
(4)募入最低価格における案分比率 50.8571%
(5)募入平均価格 100円34銭0厘(募入平均利回り )(-0.3388%)

1年短国なんですが、1年債で4毛とか中々見れない流れ方でして、しかもこれ上で切られたようなのではなくて弱い方に流れた結果でして、水準そのものは前回比では強いのだがそもそも3Mが▲40だぜヒャッハーとかやっている中ですからナンジャソラという感じです。

木曜の3Mが確かに入札自体は過去最低金利更新しましたが、その後の伸びが無い(最近の3Mはお約束のようにホイホイ伸びる)で平均より安い所で引かさせていましたが、今日の短国買入がそんなに入らないかも知れない(別に無理してやらなくてもMB80兆円は行くのではないかと思料)という事になって、もとより最終投資家の買いって為替がらみの海外以外だと中銀のリザーブ用以外が日銀短国買入だけで、ニーズ的にはマージナル(額は必ずしもマージナルでは無いかもですが)な担保需要以外だと中々来ない上に、1年短国は海外の為替がらみの買いが来にくい(来るのは3M)なので短国買入がイマイチさんかも知れないとなったようで。

まー引けの方はアベレージより弱いけど足切よりはマシという▲31.7という微妙な所で引けておりますが、1年入札コケたってなことも影響したのか後場は2年とか5年とかヘロヘロマンとなりまして、今度は5年がこの前の指値オペが投下された時の水準を見に行く勢いとなるのでしたが14時10分も何も無しとなりまして、この間超長期が輪番以降一段と強くなって何か知らんが引けに掛けては先物も大上げとなって(と言っても先物価格下がって引けているのだが)終了の巻。

つーことでさっきのロイターの記事から。

『長期国債先物は続落。米利上げ加速の思惑から前日の米債が売られた流れを引き継いだ。一時149円38銭と1月15日以来の低水準を付ける場面があった。円安・株高も売りを誘った。現物債は高安まちまち。10年最長期国債利回り(長期金利)は朝方の取引開始直後に、日銀の許容レンジ上限とみられていた0.100%に上昇し、1月29日以来の水準を付けた。「指し値」オペへの警戒感も浮上していた。終盤にかけては先物が買い戻されたことで金利上昇が抑制された。超長期ゾーンを対象にした日銀オペがしっかりした結果だったことから同ゾーンの利回りに強い低下圧力がかかる一方、中期ゾーンは調整地合いとなり弱含みで推移した。長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比15銭安の149円57銭。長期金利は同変わらずの0.075%。』(最初のロイター記事URL先より)

てな訳で終わってみると、

12/16

2年:▲0.180%
5年:▲0.065%
10年:0.075%
20年:0.570%
30年:0.665%
40年:0.785%

でして、嫌味ったらしく9月の時の金利水準を再掲しますと、

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

となっておりますので。10年の金利水準が10bpちょっと上昇したとか考えますと、16日位の所から10年超はこの2日フラットしたのでカーブが一見似たような感じに戻しまして、超長期の輪番に関しては「200億円×3回分の増額」と「入札前日と入札翌日に購入」という露骨な価格支持策(ただし朝三暮四スキームでもあるので売り一発来るまでの命のような気がするけど)によって抑制はできたようですが、結局の所売りモードになっている相場様でありますので、今度は中期の金利が上昇して来ていましてさあどうするんでしょうなあという感じです。

何せこの前の中期指値オペの指値水準(実際はそこではつかない水準でしたが)まであと2.5bpの所までやって参りましたのですが、まあここからその2.5bpを売り込むのは中々パワーもいりそう(米債が一段とコケるとか円安が更にヒャッハーとなるとか)ではありますけれども、「超長期抑えたら今度は中期と長期が甘くなってきましたなあ」とか実に味わいの深い相場を見せてもらったのでメモメモという事で。


・国債市場の流動性ェ・・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/paym/bond/ryudo.pdf
国債市場の流動性指標

まあ先物とか見ても面白くないので図を見るなら。

(図表6)

『(1)ディーラーの対顧客取引高(顧客の国債グロス買入れ額)』
『(2)対顧客取引の内訳(顧客の国債グロス買入れ額)』

で長期低落傾向にありますなあという辺りでも見て置くという感じですが、何せ直近が11月になっていまして、そういう意味では中期指値オペ入るまでの動きとか、その後の動きというシリーズになっておりますな。直近に関してはどうなっているんでしょうというのはありますけれども、バタバタと動いている時は一応それなりに売買も存在する筈ですので、流動性とか厚みとかあるように見えてしまう面もあって、中々こう定性的だけじゃない部分ってのは評価するの難しいよね、といつもながら見てて思いますし、市場の訳の分からんところってこの定量で必ずしも見えてこない所なので、まー分析しようという努力をするのは結構な話なのですが、定量分析を幾ら精緻にやっても市場の定性的というか変な魔物みたいなのってのは中々伝わらんのよね、とは思うのでした。


○FOMC会見ネタと思ったら時間がないのでちょっとだけ(すいません)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20161214.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference
December 14, 2016


今回は利上げしただけに冒頭説明は基本的に声明文の説明みたいな感じですのでそっちは一旦飛ばして質疑応答の方をみるのが吉かと。


・来年の利上げ回数が増えた理由は・・・・・・・・・・・・・・

そら最初にこの質問来る罠。

『HARRIET TORRY. Thank you Madam Chair. Harriet Torry with the Wall Street Journal. Why does the Fed now see three rate increases next year instead of two? Is it because the economy is at risk of overheating or is the Fed behind the curve? Or is this a reaction to Donald Trump's election? 』

中々分かりやすい質問。

『CHAIR YELLEN. Well, I would like to emphasize that this is a very modest adjustment in the path of the federal funds rate, and involves changes by only, you know, some of, you know, some of the participants. So, in thinking about the paths and the revisions, there are a number of factors that were taken into account by participants.』

ほうほうそれでそれで?

『The unemployment rate is perhaps a touch, as I said, a touch lower than previously, you've seen some modest downward revisions in that projection. For this year, there was a slight upward revision to inflation and some of the participants but not all of the participants did incorporate some assumption of a change in fiscal policy into their projections. And that may have been a factor that was one of several that occasioned to these shifts, but I want to emphasize that these-- the shifts that you see here are really very tiny.』

つーことで、「利上げが3回になったがそれは非常に小さな変更です」って強調していますが、まあこの説明ですとトランプとか関係なくて、(声明文やSEPでもそうですが)足もとの状況が安心できる状態になったから上げましたというお話。まあ年3回の利上げに関しても、そもそも今年の頭の時点でのドットプロットって来年は3回みたいな感じだった訳で、足元の不確実性が色々とある中で利上げ見送ってみたり先行きのパスを下げてみたりとなっているので、まあそういう意味では本人たちそういう説明に必ずしもなっていないですが、下振れリスクへの対応を弱めても良く成ったからこういう形になったって話ではなかろうかと。

なおこれに関連する質問はドバドバ出ていますが、追加して面白そうなのがあったら明日以降。


・財政政策に対する言及は逃げの一手

次の質問。

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC. In recent testimony, you said your advice was for fiscal authorities to increase the productive capacity of the economy. Do individual and business tax cuts increase the productive capacity of the economy? And how would the Fed’s reaction be different to fiscal policies that increase the productive capacity of the economy and those that don't? 』

財政ガーという話に対してですが・・・・・・・・・・

『CHAIR YELLEN. So, the statement that I made that would be useful to increase the productive capacity of the economy reflects my concern that productivity growth has been very low. It's the ultimate determination of the evolution of living standards. Policies that would improve roductivity growth would include policy changes that enhance education training, workforce development, policies that spur either private or public investment to enhance the quality of capital in the United States that workers have to work with, and policies that spur innovation or competition or the formation of new firms. So, tax policies can have that affect. It really depends on the specifics. I don't think there's anything that I could say in general about what tax policy would do.』

『But that-- And I really can't tell you what the Fed's response would be to any policy changes that are put into effect. I wouldn't want to speculate until I-- we're more certain of the details and how they would affect the likely course of the economy. 』

生産性の拡大が必要で財政政策や経済政策も必要とか言っていたのに急に一般論にするのはトランプ大先生の効果ですかそうですか。この点も結構質問飛んでいました。


・高圧経済云々

この質疑はワロタ。

『CHRISTOPHER CONDON. Thank you. Chris Condon, Bloomberg News. Chair Yellen,you've just spoken about some of the risks, the inflationary risks of running in this expansionary fiscal policy.』

ちょっと先の質疑なもんで。

『But in October, you we're wondering whether it might be possible to repair some of the damage done to the labor force during the recession by running what you termed a "High Pressure Economy". So I'm wondering, why couldn't fiscal policy serve the same end in seeking to run a high pressure economy hoping to draw more Americans off the sidelines and into the workforce? Is there something necessarily riskier about approaching it from the fiscal side or perhaps have you become less enthusiastic about the idea of running a high pressure economy? Thank you.』

(;∀;)イイシツモンダナー

『CHAIR YELLEN. So I want to be clear that what I said in that speech in Boston is that an important research question is whether or not in an economy with a very strong labor market, there might be changes that took place that permanently raised the labor force participation training and other things of the labor force that would be positives for the productive potential of our economy on a long lasting basis. I never said that I favor running a high pressure economy.』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

『And, you know, as you can see in the SEP projections of the participants, and this has long been true not just in this forecast but in the earlier ones as well, you see a modest undershooting. The unemployment rate is projected to modestly undershoot for several years, levels that are deemed to be normal in the longer run that's an appropriate policy purely on the grounds that inflation is running below our objective. And while we don't want to overshoot our 2 percent objective, we also don't want a persistent undershoot of our 2 percent objective, and that does involve on labor market that may succeed in attracting more people off the sidelines into the labor market it's something we will see as we examine experience over the next couple of years. We may adjust our views on this but I do want to make clear that I have not recommended running a hot economy as some sort of experiment.』

じゃああの講演は何ぞという感じですが、まあ新政権が超予想外だったのでこれまで割と威勢の良いことと言いますか何と言いますかを表明していたけれども、ちょっと距離感考えないとイカンってことでしょうね。

というのは把握したが続きはたぶん明日。








2016/12/16

お題「10年夜間で8.5bpまで来ましたがさあドウスルドウスル/短観メモメモ」

ヒャッハー!
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161216/k10010808821000.html
NY ドル高加速 一時1ドル=118円台後半に
12月16日 1時57分

となっていますが、早速物価が上がるとかコストが上がるとかそういう話が。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161215/k10010808321000.html
円相場 117円台に値下がり 円安の影響は?
12月15日 18時40分

○まあ今日もオペがどうなるかとか注目されそうですのう

・超長期は止まったものの・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20161215.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 3兆3,233億円
(2)募入決定額 9,931億円
(3)募入最低価格 99円00銭(募入最高利回り)(0.656%)
(4)募入最低価格における案分比率 59.4576%
(5)募入平均価格 99円19銭(募入平均利回り)(0.645%)

つーことで昨日の20年国債入札ですが、FOMC受けて前日比甘の所で入札をやったのもちったあ効果があったのか事前予想よりも若干強い結果になりまして、その後も今日の輪番が予告されているだけに確り目で推移して先物は前場引け水準と大体同じ(1銭くらい違ったが)ような所で引けてましたけれども新発20年の引けは0.615%なので相対的には超長期強くなるの巻という引かせ方になっておりまして、30年は1.5毛強とかナンジャソラという風情になっておりましたが、まあツイストフラット。

毎度のロイターで恐縮ですが、
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1EA2YH
Markets | 2016年 12月 15日 17:05 JST
〔マーケットアイ〕金利:夜間の国債先物が軟化、長期金利2月16日以来の0.085%に上昇

という記事見出しのネタの前に3時の引けを引用しますと、

『<15:16> 国債先物は反落、長期金利0.080%に上昇

長期国債先物は反落。前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ決定を受け米債が下落した流れを引き継いで売りが先行。一時149円63銭と1月29日以来、約11カ月ぶりの水準に下落した。警戒されていた20年債入札を無難に通過すると一時下げ幅を縮小したが、終盤にかけて再び戻り売りが再び優勢になった。現物債は高安まちまち。先物に連動して長期ゾーンに売りが強まったほか、超長期ゾーンは前日の金利大幅低下の反動もあり調整地合いとなったが、入札を無難に通過した中盤以降は押し目買いが入り金利は低下基調になった。中期ゾーンは軟化。長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比25銭安の149円72銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2.5bp上昇の0.080%。』(上記URL先より)

てな訳で、昨日は超長期入札がまずまずで戻りに行ったのですが、先物から長期のゾーンがコケて10年カレントの引値は2毛甘の7.5bpとなりまして、上記記事のリードにありますように、引け後米債とか欧州債が甘くなってきて先物更にコケて10年も8.5bpに上昇の巻となりました。


でまあこの辺りの市場推移の話って1日の結果だけではまだ勝負付いていないと思うのですが、結果的に見ると「超長期の金利を止めに行ってそっちは止まったけれども売り圧力が肝心の10年に掛かってしまったでござるの巻」という風になっているのが残念無念という風情でございまして、まー海外金利上昇ヒャッハー相場なので仕方ない面は勿論あるのですが、そう考えますとYCCをイールドペッグの積りで運営するのって難しいですわなと思いますし、10年カレント金利をピン止めするようなイメージで運営するのもこれまた難しいですなとか思ったりします。

まー海外の金利上昇対比で日本の金利上昇が大した事が無い訳で、しかも10年とか特にそうですね、と考えまして、その対比で考えたらそらもう円安圧力掛かって物価目標達成に向けてウマー(ってコストプッシュで物価が上がっても一般ピープルの所得上がらないと適合的な期待が形成された分だけ消費が落ちて経済がマズーになって結局ダメじゃん的な話もありますけれども、そもそも物価が上がらないと話が始まらないのでそこは措く)という考えに立てば、そらもう債券市場の方がナンジャコラとか言っても別に日銀として問題は全然ないのですよねーとか言われてしまうとぐうの音も出ないというのもこれまた事実。

つまりですな、金利(特に長期金利)って誘導目標にしているものの、それ自体が本当の目標なのではなくて、物価目標達成のための手段として誘導している訳ですから海外対比で相対的に緩和的な金利環境は強まっているのですよとか言われてしまいますと、いやまあ仰せの通りとなってしまうので、そらまあ9月に導入して3か月でいきなり反故にするとかはあり得ない話ではあるのでしょうが、(大体からして今のトランプ相場がどこまで持続的なのかとは急反転するリスクは具体的に政権始まらないと分からんのですから)日銀の華麗な梯子外しに関しては特に最近(今年に入ってから)はその梯子外しの速度が上がっているのが気になりますのうとゆーことで。


・本命の10年金利が上昇してさあどうする

とか何とか気が付いたら悪態になってしまいましたが(大汗)、まあ10年金利については「ゼロ%程度」で推移させるという中、昨日の引けが7.5bpで夜間が8.5bpで今朝がどこから始まるのかはよー分からんのですが、米債の下げに円安(まあ同じネタですが)とあって金利上がって始まったらさあどうするというお話になりますの。

でまあここで残念無念なのは前回10年が▲9bpになった後に10年輪番を減額(9月末)したことでございまして、そらもう▲9bpで輪番減額したんだったら+9bpになったら何かアクションするじゃろとか期待を持たせてしまうし、そこで放置プレイだと金利上昇容認とか言われるリスクが有りますなとなってしまって、もっと許容レンジを広めにとっておいた方がこんな段階でオペレーション苦労することになる(苦労しているかどうか知らんけどまあ大変そうなのは水曜の輪番で把握した)って残念な所です。まあやっちまったものは仕方ないですけれどもどうするんでしょうねえ。

#とか言ってたら結局警戒感強くてそこまでヒットしに行かないという気もしますけど


・短国は相変わらず

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161215.htm

(3)募入最低価格 100円10銭5厘5毛(募入最高利回り)(-0.3925%)
(4)募入最低価格における案分比率 78.7931%
(5)募入平均価格 100円11銭2厘8毛(募入平均利回り)(-0.4196%)

平均▲41.96って先週の3Mの記録をまーた更新していましたが、さすがに昨日はその後進まなかったようで3M新発の引けは▲40.1と平均よりも甘くはなっているのですが、中長期の債券がこの有様となっている中で短国貫禄の強さでございますな。でもって今日は1年短国(なので短国買入は月曜ですな)入札ですからそっちの結果見てから考える事になるんでしょうが、短国買入どうするんじゃろ。


・金利リスクを調査とな

一応備忘で。

http://jp.reuters.com/article/banks-japan-rate-idJPKBN144254
Business | 2016年 12月 16日 01:16 JST
金融庁、国内銀の金利リスクを緊急調査 日米金利急上昇で=関係筋

『[東京 16日 ロイター] - 米国や日本など内外で長期金利が急上昇していることを受け、金融庁が主要行や地方銀行の金利リスクの管理体制について緊急調査に乗り出したことがわかった。複数の関係筋が、ロイターの取材に対して明らかにした。』(上記URL先より)

ってこれ同じ話が昨日の16時半過ぎ位にブルームバーグが出していてそっちの方が先なのですが、ブルームバーグのネット版ってニュース検索がめんどいのでつい安直にロイターのURLから引用しておりますが、この際日本銀行いやなんでもないです(^^)。


○短観でござるがこれはまあ日銀ニッコリでしょう

昨日はFOMCと日銀オペネタで短観をスルーしてしまいましたので(汗)。

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1612.pdf

だいたい毎度見ている奴を備忘メモメモ。

・先行きDIの達成度合い

         (9月時点)     (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +6→+6       +10→+8 
製造業中堅企業  +3→+1       +6→+2        
製造業中小企業  ▲3→▲5       +1→▲4

非製造業大企業   +18→+16    +16→+16
非製造業中堅企業  +15→+10    +16→+9
非製造業中小企業  +1→▲2      +2→▲2

でまあ前回はこう書いたのですな。

「今回ですけれども、たとえば製造業大企業で言えば3月時点でも現状+6先行き+3とかになっていまして、今回はこれで3四半期連続のDI+6での推移となっていて、しかも今回は先行き見通しが6月時点の時よりもだいぶ改善して先行き見通しが現状よりもさほど弱くなっていない。しかも前回は(まあ6月調査要因というのもありますが)先行き見通しが前回よりも低くなっていたのですが、その数値よりも良い内容である上に割と前回よりも確り目になっていますので、ヘッドラインとしてのこの数字は割と良いというか無問題という感じで日銀ニッコリ。」(前回の短観の時の駄文)

でもって今回ですが、特に製造業が9月時点の先行き見通しよりも現状判断が結構な上方修正になっていまして、前回も日銀ニッコリの風情だったのですが、今回は更に日銀ウマー。



・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲5→▲5       ▲6→▲6
製造業中堅企業 ▲11→▲13      ▲12→▲13
製造業中小企業 ▲9→▲14      ▲14→▲17

非製造業大企業   ▲19→▲20    ▲19→▲20
非製造業中堅企業  ▲27→▲29    ▲29→▲30
非製造業中小企業  ▲27→▲33    ▲31→▲35

前回こう書いたのですな。

「でまあ今回ですけれども、現状判断のタイト化がこの2四半期一服していたのですが、今回は再度タイト化の方向に数値が出てきておりまして、業況判断DIもやや足踏みから先行きへの期待が弱まるという感じだったのが今回の短観で流れが一服してきたように見えるのと平仄が取れている感じがして中々美しい短観じゃないですか!!!!」(前回の短観の時の駄文)

でまあ今回も雇用人員判断DIはタイトなままとなっておりまして、これもまた日銀ニッコリと言いますかこれで何で賃金がもっとホイホイ上がらないのでしょうとじっと手を見るいや何でもありません。


・販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲10→▲10      ▲7→▲6
製造業中小企業 ▲12→▲13      ▲8→▲8

非製造業大企業  ▲1→0        +1→0
非製造業中小企業 ▲7→▲6       ▲6→▲5



仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
製造業大企業   ▲4→+2         +3→+9
製造業中小企業  +5→+14        +12→+23

非製造業大企業  +6→+10       +11→+13
非製造業中小企業 +11→+17      +15→+21

前回はこんなこと書いたのですが、

「前回は販売価格判断の上昇に仕入れ価格の上昇に追いついていないというマズーな話でしたが、今回は製造業に関しては販売価格判断と仕入価格判断の変化度合いから勝手に考えるマージンという意味では改善しているのでウマーという話ですし、まだマイナス数値とは言え(なおこの辺の数字は癖があるので絶対値よりも変化を見ておいた方が吉)製造業の方は販売価格判断が着実に戻って来ているのですけれども(3月→6月でも戻っている)、非製造業の販売価格判断については横ばい状態が続いているので、そらまあ物価が景気よく上がる地合いじゃないわなあという感じです。」(前回の短観の時の駄文)

今回は販売価格判断が引き上がっている(絶対水準については癖があるのであまり気にしないようにしております)のですが、仕入れ価格判断の方が更に上がっていて、先行きに関しても仕入れ価格判断の方が上がり方が大きくて(特に製造業)、そら円安だからそうなるわなとは思いますし、この幅の差についても癖がありそうでして、先行き業況判断が別にこれをストレートに反映していないことを勘案しますとそこまでマズーでも無いのかも知れませんが、まあ企業のマージンどうなるの(それが物価の強さにも跳ねてくるし)というのは少々気になるところ。


・需給判断DI

国内需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
製造業大企業  ▲11→▲11       ▲9→▲9
製造業中小企業 ▲27→▲26       ▲24→▲24


海外需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
製造業大企業  ▲7→▲8          ▲6→▲7
製造業中小企業 ▲17→▲17        ▲17→▲16

前回はこんなこと書きました。

「前回も申しあげましたがこれ水準の絶対値の方はあまり気にしなくて良い(慎重目に数字を出していると思うので)と思うのですが、ここの数字は横ばい圏で推移していまして、特段の変化はないという感じなので、まあこの辺りを見ますと悪化もしないけど先行きそんなに威勢の良い話でもないという感じではあるものの、2四半期程度横ばい気味だった数値に改善が見られているのでまあ先行きの企業活動には期待持てそうな感じだと思ったのですけれども詳しくは本職の方にということで私家版である。」(前回の短観の時の駄文)

でまあここの数字って安定して動かないなあという風に思う所で、あまり見ても面白くないのかもしれないなあと思うのでありました。まあトランプヒャッハーの後の3月短観見てあまり面白く無かったら細かくチェックしなくても良いかも。

・短観の企業物価関連

でもって物価関連。

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2016/tkc1612.pdf


1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)

サンプル替え以降の昨年3月短観分から時系列取っているのでその数字に追加。


1年後の平均値:0.9→0.9→0.7→0.5→0.3→0.2→0.2→0.3
3年後の平均値:1.7→1.7→1.4→1.3→1.0→0.8→0.8→0.9
5年後の平均値:2.2→2.1→1.8→1.6→1.3→1.1→1.1→1.1


大企業製造業

1年後の平均値:0.3→0.1→0.0→▲0.2→▲0.3→▲0.2→▲0.2→▲0.1
3年後の平均値:0.1→0.0→▲0.2→▲0.3→▲0.4→▲0.3→▲0.3→▲0.1
5年後の平均値:0.1→▲0.1→▲0.3→▲0.3→▲0.3→▲0.2→▲0.3→▲0.3

大企業非製造業

1年後の平均値:0.9→0.9→0.8→0.5→0.5→0.4→0.4→0.5
3年後の平均値:1.8→1.7→1.5→1.4→1.2→1.1→1.1→1.2
5年後の平均値:2.0→2.0→1.6→1.4→1.3→1.2→1.1→1.2

つーことで販売価格判断はちょっとだけ上向きになって日銀ニッコリ。


2.物価全般の見通し(前年比)

まあこちらも同様に。

全規模全産業合計

1年後の平均値:1.4→1.4→1.2→1.0→0.8→0.7→0.6→0.7
3年後の平均値:1.6→1.5→1.4→1.3→1.1→1.1→1.0→1.0
5年後の平均値:1.6→1.6→1.5→1.4→1.2→1.1→1.1→1.1


大企業製造業

1年後の平均値:1.0→1.0→0.9→0.8→0.6→0.6→0.5→0.5
3年後の平均値:1.2→1.1→1.0→1.0→0.9→0.8→0.8→0.7
5年後の平均値:1.1→1.1→1.0→1.0→0.9→0.8→0.8→0.7

大企業非製造業

1年後の平均値:1.1→1.1→1.0→0.8→0.7→0.6→0.5→0.5
3年後の平均値:1.2→1.2→1.1→1.0→0.9→0.9→0.8→0.8
5年後の平均値:1.2→1.2→1.2→1.0→0.9→0.8→0.8→0.8

中小企業製造業

1年後の平均値:1.5→1.5→1.3→1.1→0.9→0.7→0.6→0.7
3年後の平均値:1.7→1.7→1.5→1.4→1.2→1.1→1.1→1.1
5年後の平均値:1.8→1.7→1.6→1.5→1.3→1.2→1.1→1.1

中小企業非製造業

1年後の平均値:1.6→1.5→1.3→1.2→1.0→0.8→0.7→0.8
3年後の平均値:1.7→1.7→1.6→1.5→1.3→1.2→1.1→1.1
5年後の平均値:1.8→1.8→1.7→1.6→1.4→1.3→1.2→1.2

うーんこのという感じですが、ただまあ(最近は都合が悪いのでとぼけて言わなくなっていましたが)より一般の物価見通しに近いとか言っていた中小企業の物価観がこれまでのダダ下がり状態からやっと下げ止まったという感じになっているので、まあ日銀的には安堵でしょうし、次回の短観でどういう数字が出てくるのかはかなり注目度あがりそうですな。


という私家版メモメモでありました。





2016/12/15

お題「寝起きでFOMCの前に日銀オペというネタが飛んでくるの巻とな」

国営放送がFOMCの結果報道に続いて円安で物価が上がるとか原油価格が上がって来たので物価が上がるという解説をつけて来ましたよ!!!!!!!!!

○ということで昨日のオペだが胆力の無さを見せつけられるの巻であろう

まあご案内の通りですが、昨日の10時10分のオペオファーがこれ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of161214.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2016年12月16日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,200 2016年12月16日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,100 2016年12月16日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2016年12月16日
国債買入(残存期間25年超) 1,200 2016年12月16日

・・・・・( ゚д゚)

ということで、一応3つの年限を同時にオファーする事はあり得るというのは元々話にございました(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdfの別紙の『(注1)上記 2 つまたは 3 つの残存期間区分(物価連動債および変動利付債も各々1 つの区分として数えます)を同時にオファーします。』ですな)が、中期と長期と超長期をオファーした挙句に超長期の買入額を両方とも100億円増額という攻撃に出ました。

でもってその後にご丁寧な事に・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161214a.pdf
長期国債買入れのオファー日程について

『日本銀行は、残存期間 10 年超の長期国債買入れに関し、本日、12 月の3回目をオファーしたところですが、4回目については、12 月 16 日(金)にオファーする予定ですので、お知らせします。』

というのをわざわざ入れるというプレイに出まして、まあ何だかなあという感じです。


・前日にオペ入れなかったから胆力見せたじゃんと思ったのですけどねえ・・・・・・・

ええまあこれは「日銀の意思を示した」とか言ってしまえばそれは美談(かどうか知らんが)になるのですが、だったら火曜日の5年入札の日に指値オペ入れろよと思います。火曜日に何も入れなかったから「これは超長期の金利形成は市場に委ねて10年金利に影響来そうだったらまた何か考えるのでしょうかねえ」という風に一般的には市場の人って考える筈で、まあ火曜日は日銀も胆力あるじゃんやるじゃんと思っていた訳ですよ。でもってもし木曜の20年入札がコケて10年にも波及するようならその後場14時にバシッと指値オペを20年に打ちこんでオリャーと気合を見せれば良いですし、まあその前に絶対水準が最終投資家の買い目線に接近するから日銀がオリャーとやらなくても止まるんでネーノという感じだった訳ですよ。


然るに、これまで「入札の前の日に当該年限の輪番を入れない」という別に明文化されたものはどこにもないですけれども大体慣例としてそうなっていたのを外して超長期の輪番を入れてきた上に、金曜日にも超長期輪番入れますよとか事前アナウンスを入れるというこれまた異例対応を行ったというのは、まあ最初見ると「日銀の意思を示した」ように見えますし、まあ確かに意思は意思としてそれはそうなのですが、このようなやり方って不肖経験年数だけは無駄に食っているこのアタクシなどから拝見するに、「ヘイヘイピッチャービビってるよビビってるよ!!!」という野次を盛大に飛ばしたくなる方法なのですよね。

でまあ何にビビっているかと言えば当然ですが翌日(つまり今日)の20年国債入札にビビッているとしか見えない訳で、入札前にこれまでの暗黙のお約束破って20年含む輪番を入れて(しかも増額)わざわざ超長期の金利を下げるという動きをした上に、(月5回の予定になっている超長期輪番なので)残り2週間+1日の間にあと2回しか入れられなくなる超長期輪番が金曜に入らないと思って入札で札が入らなくなるのを恐れて「金曜に輪番やりますから入札もコケないでください」とかどんだけビビってるんだよと小一時間問い詰めたい訳ですよ。


でまあ以前申し上げたかと思うのですが、こんなの入札前に入れたら入札の所で無駄に金利が低くなってしまうのだから投資家の買いの勢い弱まっちゃうからマーケットメーカーは応札しにくくなるし(だから金曜に超長期輪番を実施するとか異例の予告をしているのですけど)と、何もメリット無いですし、入札が大コケした所で買入バシッと入れるならマーケットお助けフレンドリーオペですし、投げる人はどうぞという感じなのですが、その一方で今回の打ち方というのは日銀がどう思っているかは兎も角、市場から見たらどこからどう見てもただの嫌がらせをしているというオペの打ち方でして、まるで暗闇で何か恐怖に駆られて銃を乱射しているのか刃物を振り回しているのかってな風情で銃弾や刃物が飛んで来る方と致しましては誠に迷惑至極な動きではございます。



・予見可能性を一段と下げる事とか実弾の買入をあまり増やしたくないのでしょうかという事とか

まー何ですな、今回の超長期輪番および金曜日の輪番予告って二重にこれまでの暗黙のお約束以外のやり方な上に、先ほども申しあげたようにだったら前日にやれやという感じで、前日に期待を空振りさせておいて騙し討ちみたいな方法でやるのって、一時的には良く効くと思う(まあとりあえずブルフラットして引けましたし)のですけれども、こういう猫の目調節(と言っても前世期の営業局時代の用語なので死語にも程がある)みたいな打ち方をすると、今のYCC政策において、9月の時の話と今の状況が整合性どうなっているんだという状況(10年は確かに概ねゼロ%かも知れないが、9月声明文の脚注にあった「概ね現状程度のイールドカーブ」とはどこに逝ったのかというお話で、しかもその間を埋める理屈が示されていない)になっている中において、飛び道具付きオペレーションがこのような到底予見可能性の無いやり方で飛んでくる訳ですから、そんな中でポジションを積極的に取りに行けますかという話で、しかも金利水準が持ちきりで買って気を失っていても何とかなるような水準でもないので持ちきりの人だって中々出て来ないという状況なのですから、益々市場のリスクテイク意欲を阻害して、目先より先の事を考えると却って市場の脆弱性を高めているように思えるのですよ。


しかもですね、さっきから申し上げているように20年国債入札滑ったらその状況次第ですけれども金曜の輪番で増額入れるか(その気になれば2400+1600まではダマテンで増やせるし、その数字だって「程度」なのだから上ブレもできる)まあ木曜の後場に指値オペでもぶっこんでおけば良いと思うのですが、そうではなくて100億円×2の増額と、朝三暮四スキームによる3種類年限の輪番オファーという細かい手段で止めに行ってるっつーのは、中期の空砲指値オペと同様に、買入額そのものはあまり増やしたくない、というかバランスシートのコントロールを失う覚悟でオペレーションする覚悟までは無いんだろうなあと思わせるのも誠に遺憾な訳でして、でまあその買入実弾少ない分を騙し討ちオペと金曜のオペの予告という合わせ技を使うとか、まー辛口かも知れんが小手先の手段を弄して何とかしようというのが一応市場の年寄りとなってしまったアタクシからすると「線が細い」とか「腰が据わっていない」とかそんなニュアンスのイメージを受けるんですよね。



・まあ元々YCCの仕組みが「環境の変化に弱い」のですけどね

とまあここまで昨日のオペに関して悪態をついてみましたが、そもそも論としてこのYCCの当初の枠組みというかそれからの説明とかもそうなのですが、基本的に「足元の環境が長期化しそうだからそれにオペレーションが耐えられるような仕組みを作る」というようなものがビルトインされているというのもこれまた何度が申し上げたとは思いますが、大体からして9月21日の時に示していた「概ね現状程度のイールドカーブ」にしたって「10年金利が0%程度」にしたって、その根拠となる定量的なものが示されているのですかというと示されていない訳で、現状追認のままで良ければそれでそのまま有耶無耶に継続できるのですが、環境が変わった場合にはその時のイールドカーブの形状と水準に対して何らかのアセスメントを出さないと、もはや何を拠り所にしてオペをすれば良いのかとか調節する方も知らんがなという所でしょうし、それはボードがそれなりの物を提示できないとオペ入れる方だって困るし市場だって何がどういう根拠で適切なイールドカーブ水準を考えれば良いか分からんのですからそらもうポジション取り難くなって以下同文となる訳ですよ。

もちろん適切なイールドカーブの水準ってある程度幅を持っている(そもそも中立金利の概念自体が幅を持って解釈するしかないのだから当たり前)のは然るべきなのですが、じゃあその水準が例えば100bpも幅があるのだったらそもそも論としてイールドカーブコントロールって何でしたっけという話になりますし、かといってピンポイントで示すとなるとそれこそ毎日昨晩の海外市場までの結果を受けて日銀が「適切なイールドカーブナウ」とか出さないと行けなくなりますしという話ではありますが、少なくとも9月に出したっきりで後は知らんがななどというのは環境が変化しているのだから何も示さない(文章で示せないなら会見で話せやゴルァという所ですけど)というのはボードの怠慢以外の何物でも無いので、まあ来週のMPMでは出せるもんなら出して欲しいところではありますな。

とは言え、まあどうせそんなの出てくるとも思えませんので、そうなると時間が経過していく中で、経済物価情勢が日銀ウハウハの方に進んでいくにつれ、益々このYCCって無理が出てくると思うのであります。いやまあ円安株高トレンドが反転して元の木阿弥になったら別にオペレーションには困りませんが、その場合は「2年で達成と言って5年間全然達成できませんでした」という素晴らしい成果を日銀が残すだけの話なんですけどね。



・しかしどうもこうタイミングが微妙に変ですなあ

ってのはこの前の中期指値の時も思ったのですが、いやお前止めるなら前の日に止めろよという感じのタイミングでしたし、まあ今回に関しては火曜日にやる必要もあまり無かったと思うので、やったことそのものがちと早すぎた(それこそFOMC受けて債券市場が落ち着くという変化だってアリエールな訳ですし(てのを読めばお分かりと思いますがこの辺の駄文は珍しくも前夜に夜なべしてヘコヘコとキーボードを打っているのだ)、打たないでも済んだ可能性があり、それであれば月末までの超長期輪番も余裕のあるスケジュールが組めた)と思うのですが、まあ水曜にやるくらいなら前日か翌日じゃろと思うタイミングなのですよ。

まあ中期の指値も本来は金利上がったら輪番増額と市場の人たちが考える中でいきなり空砲とは言え指値を行ってサプライズ(騙し討ちでは人聞きが悪いので言いかえてみた)だった訳ですが、今回の超長期輪番についてもサプライズな打ち方になっていて、わざとやっているならさっきからしつこく申し上げているように中長期的に見て逆効果(中期の指値だって行ったが為に今度は長期の指値オペマダーとか言われたりするようになった訳ですし)ですし、そうじゃなくて素でやっているんだったら市場の動きに対して毎度ビハインドしていて壊れた蛍光灯のようなその反応は何とかならんのかと思うのよ。


などと結局また悪態になっているのですが、まー日銀の金融市場調節と言えば歴史的にはインターバンク市場の金融調節を行うものでありまして、インターバンク市場の資金需給に関して言えば、財政要因にしろ銀行券要因にしろ日銀の方が市場参加者よりも情報優位にある上に、インターバンク市場って最終的には資金繰りの問題だから市場参加をしている人って常時参加しないといけない類のものなので、そら日銀が最終的にコントロールできますがなというお話だった訳ですよ。特に昔はトン調節だったし、最終兵器の日銀貸出(特融ではない)があった時代なんかは更にそうですし(そういう意味では今のようなエクセスリザーブがアホほどある市場では勝手が違うと思うけど)。

それに対して債券市場って日銀の庭先だけで片付かない市場な訳ですし、インターバンクみたいに日銀が情報優位な訳でもないですし、そういう市場を短期市場の調節の積りで(いやまあやっている調節の皆様はそんなつもりは無いでしょうなあと思いますが)やろうというのが土台無理がある訳で、その無理な所がこの微妙なタイミングのズレに表れているような気がするんですよね。そうなると将来益々YCC政策って機能できるのかねとかも思ってしまうのですよ、はい。



○ということで寝起きでFOMCなのだがナンジャコラではあるということで声明文

まずは声明文

https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20161214a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20161102a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気の現状認識を引き上げていますし市場のインフレ期待上昇にも言及とな

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been expanding at a moderate pace since mid-year.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that the labor market has continued to strengthen and growth of economic activity has picked up from the modest pace seen in the first half of this year.』(前回)

経済活動に関して「picked up」が「expanding」ですからそらもう上方修正よ。

『Job gains have been solid in recent months and the unemployment rate has declined. Household spending has been rising moderately but business fixed investment has remained soft. Inflation has increased since earlier this year but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports.』(今回)

『Although the unemployment rate is little changed in recent months, job gains have been solid. Household spending has been rising moderately but business fixed investment has remained soft. Inflation has increased somewhat since earlier this year but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports.』(前回)

失業率に関してはまあ出ている数字のまんまではありますが、前回「little changed in recent months」だったのを「has declined」に上方修正して、物価に関してはいわゆるヘッジクローズ的な文言でありますところの「somewhat」が抜けまして、「Inflation has increased since earlier this year」とスッキリした表現になってこれまた上方修正。

『Market-based measures of inflation compensation have moved up considerably but still are low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.』(今回)

『Market-based measures of inflation compensation have moved up but remain low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.』(前回)

まあここも市場の数字をそのままという所ではありますが、市場のインフレ期待が「moved up considerably」と来ているのは強気化、とは言いましても「but still are low」ではありますけどね。


・第2パグラフ:先行き見通し同じじゃねーか何でSEPの金利見通しがそうなるんだよ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

2パラのいつもの最初の文言。

『The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(今回)
『The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(前回)

同じですな。

『Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(今回)

『Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(前回)

・・・・・・・ということで先行きの見通しの話って全然変わらん(まあここの書き方はふわっとしているので文言の変化があると結構目立つのですけど)じゃございませんかという所で、次にネタにしますがSEPの見通しもそんなに目を剥くような上方修正が入っている訳でもないので、まあ文言変わらんのとは整合的ではあります。


・第3パラグラフ:利上げしたけど金融環境は緩和的ですよとな

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(今回)

『Against this backdrop, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The Committee judges that the case for an increase in the federal funds rate has continued to strengthen but decided, for the time being, to wait for some further evidence of continued progress toward its objectives. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting further improvement in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(前回)

前回と政策決定が違いますのでリードの所の話は全然違いますが、最後の「The stance of monetary policy remains accommodative,」以下の所は同じになっております。今の政策は「正常化の途中」というステージなので正常化が終わるまでは当然ファイナンシャルコンディションはアコモデーティブになる訳で、この文言自体当然なので別に驚く話ではありませんけど。


・第4パラグラフ:今後利上げのペースに関して、判断に関しての文言にも変更は無し

これまた全文一致なのですが今回は確認の為に並べてみますね。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

まあ毎度のように毎度の話をしておりまして、引き続きデータディペンデントであり、グラデュアルな正常化ペースでの利上げを行いますという話をしていまして、ここは全然変わっていない。


・第5パラグラフ:バランスシート政策に関しても文言不変

全文一致なのをうだうだ貼って分量を水増ししているわけではありません(^^)。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

バランスシートに関してはしばらくこんな感じではあるのですが、これさすがにSEPのドット通りに年3回利上げとかするようになったらそろそろ償還再投資位は考えないといけないような気がします。まあ今の所あまり関係ないのと、多分本当にホイホイ利上げ出来るようになったら償還再投資止めてもそこまでの問題にならないのではないかと思いますけど良く分からん。


・第6パラグラフ:ブラード総裁も賛成ですかそうですか

いやまあ直近の講演とかからすると賛成するとは思いましたが。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Esther L. George; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

見事に全員一致。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel K. Tarullo. Voting against the action were: Esther L. George and Loretta J. Mester, each of whom preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent.』(前回)

まあ前回のはご愛嬌でつけておきます。

なお、この次にネタにするSEPのドットチャート見ると、「今回利上げした後は向こう2年間利上げしない」という変態仮面の先生が相変わらず存在するのですが、どう見てもブラード先生なのはいいとして、向こう2年間利上げしないんだったら別に今回利上げする必要ないじゃん(なお大先生の理屈だとここが均衡点らしいので屁理屈の筋は通っている)と思うのですががががが。


とまあそういうことで、今回は「足もとの経済状況が金融政策の調整を行うのに適切だと判断したから超緩和的な政策金利水準の水準を訂正しました」という建付けの利上げになっているように見えますが、起き抜けに見た時に会見の冒頭部分とかまだアップされていなかったのでそっちをまた読むべしという所ですな。


○SEPドットチャートェ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ビジュアル的なのはこちら

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20161214.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20160921.pdf(前回)

引用したりするのに便利なのはこちら

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20161214.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20160921.htm(前回)

ということですので、基本的にHTML版の方から数字引っ張りながらビジュアルの方は適宜PDFを見るという感じですな。

・あんまり見通しは変わっていないのだ

HTMLの方から『Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes』を見る訳ですが、手抜きでメディアンを見ますとこうなりますな。

            2016  2017  2018 2019 Longer run

Change in real GDP  1.9  2.1  2.0   1.9  1.8
September projection 1.8  2.0  2.0   1.8  1.8

Unemployment rate   4.7  4.5  4.5  4.5   4.8
September projection  4.8  4.6  4.5  4.6   4.8

PCE inflation      1.5   1.9  2.0  2.0    2.0
September projection 1.3  1.9  2.0  2.0   2.0

Core PCE inflation4  1.7  1.8  2.0  2.0
September projection  1.7 1.8  2.0  2.0

これHTMからペタペタとプレーンテキスト(アタクシの原稿)に貼るのが意外に手間が掛かるので(やってみると分かります)「Central tendency」とかめんどくて貼りませんけれども、メディアンもこの調子ですがCentral tendencyに関しても殆どこんな感じで、気持ち程度に強くなりましたよというような見通しになっております。そらまあトランプ先生が何をどうおっぱじめるのか今の所皆目見当が付かないから何も織り込めないだろという感じですが、物価の見通しとかも特に下がっていないし、声明文で為替の話も無いなあとは思いながら、この辺りが効いて物価が頭打ってきたらどうなるんでしょとか中々来年は酒の肴になりそうなネタが多いなあとか思うのでした。


・一方で金利のドットチャートは強気化というかロンガーランのレートを多分3人が上げているのがワロタとしか

『Memo: Projected appropriate policy path』からで例によって『Median』ですが。

              2016  2017  2018  2019  Longer run
Federal funds rate  0.6     1.4    2.1    2.9    3.0
September projection  0.6   1.1  1.9     2.6   2.9

ということで、2017年末の金利水準が0.3%上方修正されていて、利上げパスが1回増えたのと、ロンガーランの数字が上がっておりますな(2018〜は単にパラレルシフトで大体年3回ペースを織り込んだ数字になっている)、いやはや何とも。

えーっとですな、まあ年の頭は願望入って強めの数字というのはあるのかも知れませんが、見通し文言も見通しの数値に関してもそれほど変えてこないのに年3回復活かよというところで、まーたすっかり足元の情勢を見て元気になっていますのうという所です。まー年3回のある意味メジャードペースみたいなイメージなんですかねえと言いつつ、これ見通し上がったらこのドットが加速するのかも興味深い所ではあります。

つーことでPDFのドットチャートの方をつらつらと眺めますと、来年の利上げに関して、全然利上げしないという変態仮面のブラード先生はさておきまして、それ以外の方ですと3回派が6名、2回派が4名、1回派が2名、4回以上派が5名で、前回は中心の札は2回派だったと思われる(年末の予想値が違うので決め打ちできないけど)感じでしたので、まあこれは普通に利上げ見通し上方修正でしょう。

でもってワロタのはロンガーランの方で、今回の分布は

2.50%:1名(前回3名)
2.75%:6名(前回5名)
3.00%:7名(前回6名)
3.50%:1名
3.75%:1名

となっていまして、これまでダラダラと下がっていたロンガーランのFF金利見通しの下げが止まるだけではなくて、しらっと引き上げたのが多分3人(2.5%の人2名と2.75%の人1名が0.25%引き上げて来たんでしょこれ)いるというのがいやーまだ今回は恥ずかしいからやらないだろと思いつつも、FRBのことだから平然とやってくる人居るかなあとか思ったらやりやがったという感じで、しかも下の人が上げて来ているということはどうせこれまで下げていたのをいきなり上げたとかそういう世界なのではないかと妄想すると中々笑える結果になっております。

この間に見通しのFFレートは2017年の利上げ回数分上がっているので、パッと見ると2019年末の時点では中立金利に戻っているというようなイメージをFOMCの参加者の皆さんは持っているんでしょうなあという所です。まあトランプ大先生の施策が飛んできてこれからどうなるのやらというのは来年のお楽しみでございますな。


#ということで会見ネタと日銀短観ネタは勘弁






2016/12/14

お題「FOMC待ちなので市場雑談ネタで恐縮至極」

今月もあと大体半分。

○指値オペ実施の有無に注目が集まった日でござるの巻

・オペオファー時間前に微妙に止まったりしましたな

ということで昨日は特に超長期の金利が上がったりした中で5年入札ですからこれは指値オペあるのでしょうかな感じでしたが、というか兎に角指値マダーの催促レポートが色々と出ていて中々味わいというのものがありました。

でもって前場はいきなり10年超長期強い所から始まって、いやーそういう事すると指値オペ入れない方が良いんですよねーとか思いながら(なぜなら前回の指値オペの時も朝から中期とか強く推移しておりましたので、2度同じパターンになるとちょっと)見ていたら戻った所でさっくり超長期打たれたりしてて中々パッとしない相場。

でもって5年国債入札は
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20161213.htm

(1)応募額 9兆7,380億円
(2)募入決定額 2兆1,747億円
(3)募入最低価格 100円79銭(募入最高利回り)(-0.057%)
(4)募入最低価格における案分比率  53.0841%
(5)募入平均価格 100円82銭(募入平均利回り)(-0.063%)

ということで事前予想対比イマイチという事になって、先物へロッと下がったりしていましたが、その後5年はまあ金利水準も金利水準(指値入ったのは▲4bpな、実際はそれより金利低い所で打っているけど)という事なのかどうかは知りませんが、とりあえず入札後あばばばばーとなる訳でもなく持ち直していましたのですが、今度は長い所がイマイチ感強くてどうもパッとしない相場ではありましたが、コケるという程でもない結果。

でもって昨日は10時10分と14時の輪番オファータイム(指値輪番も輪番と同じ時間のオファー)の前になると宝くじ狙いの日計りロングでも入るのか先物がピクピク上がったり、オペ無いのを見ると先物がピクピク下がったりしてその間板がウゴカンチ会長という感じで、まさに日銀次第というプライスアクションに落涙を禁じえませんが、まあゆうてそこまで気合入れて指値の有無でトレードって感じでもなさそうですけど。

つーことでまあ昨日は指値そこは入れる所ではないと思いつつも、指値オペクレクレ合唱が段々強くなる中でございまして、しかも10年の引けが昨日で8bpとなりまして、何せ前回の輪番減額行われた時のトリガーっぽかったのが10年の▲9bpという実績を見せられますと、当然ながらその反対になります10年9bpのレベルって輪番増額クルーとか10bp来たら指値クルーという風に期待されてしまいますが、さてどうするんでしょうというのが今日も注目される次第ではあります。

えーっとですね、10年に関しては「コントロールする」ということで「0%程度」というのがある訳ですから、そらまあ誰がどう見ても0%程度を逸脱するような所では何かの意思と行動が出てくるという事になるのですが、これ実際にどこで入るのかが皆目見当がつかなくて、何せそもそもの10年0%ってのも単なる9月時点での現状追認というか、短期マイナス10にしているんだからそこからフラットという訳にも行かない中で現状追認するならゼロ%とか、まあそういう程度の根拠しかなさそうなので、為替と株価がこれだけ変わったのだとそのゼロ%程度に関しても程度の幅が上方シフトしても不思議ではない(キリッ)とかいう理屈もあり得るのが困ったもんな訳で、かねてから悪態を申し上げておりますように、次回のMPMではこのYCCの考える「中立的な金利水準」や「それに対してどのくらいの緩和度合いが良いのか(年限ごとにその適切な緩和度合いも違うらしいのでそれも)」などとか、せめて「10年0%」の根拠を明確に示して頂かないと、この調子だと市場は「日銀のオペいつクルー」というのだけ見てあとは入札で需給が悪くなって輪番で徐々に捌けていくというのを繰り返すだけというのが続いてしまいますぞなという事で。

まー曖昧なままで済ませて行くのが勿論日銀的には一番オイチイのですが、足元のように当初のセッティングと環境が変わった場合には市場が完全に日銀の出方待ちになってしまって、だれも腰の入ったポジション取るとかできなくなるから流動性が無いだけではなくて値が飛ぶ感が出てしまいますのう。


でまあただの後講釈なのですが、こうなってみると9月末に輪番減らしたのがやらなくて良かったオペという感じで、まああの時ってまた早速追加緩和クレクレにされても困るし、せっかく立った超長期のイールドカーブがまたフラットしやがるとかいうのがあったのでお気持ちは分からんでも無いのですが、9月21日に打ち込んでいきなり月末に▲9bpになったというので輪番下げてしまったので、「これレンジがエライ狭いのではないか」という話になり、10年0%が壁みたいな認識になってしまった所で外部環境の変化が発生するの巻となり、それ自体は日銀にはラッキーだったのですが、そこで10年0%を抜けてしまって「狭いレンジだと思ったらそうでもないのか」とか、結局の所このYCCのレンジがどのくらいなのかも任意(いやまあ任意でも良いんですけど)となると、良く良く考えたらワケワカランという事になってポジション取れなくなって今に至るみたいな話だと思う訳で、何かこれ9月末に輪番いじったのが後々になって猛烈に効いてきた気がします。結果論だから運の問題ではあるけれども。

ということで、まああまりバタバタ感を出さないでじっくり構えていた方が良いのではないかとは思うのですけど、市場は10年これ以上金利上昇したら固定金利オペ(か輪番拡大)マダーとかなるでしょうかねえ、よー知らんけど。


一応ロイターさん。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1E82EC
Markets | 2016年 12月 13日 15:24 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、30年債が3月14日以来の0.805%に上昇

『<15:18> 国債先物は続落、30年債が3月14日以来の0.805%に上昇

長期国債先物は続落。12日の米国市場で株価が上昇幅を縮小したことなどから終盤にかけて米債利回りが水準を切り下げたことに加え、米連邦準備理事会(FRB)が13─14日の連邦公開市場委員会(FOMC)でドル高の行き過ぎをけん制する可能性があるとの懸念が浮上したことに反応し、前半は買い戻しが優勢になった。その後は5年債入札のヘッジや入札そのものがやや低調との評価から下落幅を拡大した。

現物債は総じて金利に上昇圧力がかかった。超長期ゾーンは押し目買いから金利に低下圧力がかかる場面があったが、終盤にポジション調整と見られる売りが優勢になった。30年債利回りは3月14日以来の高水準となる0.805%に上昇した。やや低調な入札結果を受けて中期ゾーンは軟化。長期ゾーンも弱含みで推移したが、「指し値オペ」への警戒もあり金利の上昇幅は抑制された。

長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比22銭安の149円82銭。150円割れは1月29日以来。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp上昇の0.080%。』(上記URL先より)


○CPオペとか貸出支援とか

・CP買入ェ・・・・・・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161213.htm
CP等買入 9,156 4,484 -0.010 -0.004 41.7

前回のCP買入が12/6オファーで4500億円の買入だったのですが、応札が10366億円あって、足切が▲0.4bpで平均が▲0.2bpだったので、今回は足切が▲1bpまで金利低下するわ応札は減るわ(まあ間が空いてないから減るのだが)と、月末のCP買入に向けてまーた年末要因で強くなりそうな結果ですが季節の恒例行事なので致し方なし。


まあこのCPと短国はやや別の世界で取引されているのですが、短国に関しても長い所がどうなろうとも貫禄の低金利で推移していまして、おかげで1年どころの利付国債も引けは▲30bpレベルでの推移ということになっていて、良く良く考えるとYCCとか言っているけど足元は▲10じゃなくて▲30(2年は▲20)だし、10年は+8だしということで、イールドカーブのイメージが最初の話と違っていませんかねえとは思いますが、リアルに足元▲10で10年0になるイールドカーブとかロールダウンが碌すっぽないどフラットカーブにされるよりはマシと言えばマシとか言ってる事がヤケクソ感漂いますが(笑)。


・貸出支援オペ結果とな

今回
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161213b.pdf

ちなみに前回
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160914a.pdf


新規が『貸付予定額 53,971 億円』、借り換えが『貸付予定額 5,842 億円』となっていますが、前回の『(参考)貸付日時点の貸付残高および貸付先数の見込み』の計数を比較しますと、差分が46,841億円ですので今回の結果で増えるのが4.7兆円になりますな。


ということでざっくり月末の着地を計算してみたのですが(何か抜けがあったら指摘してちょ)、

11月末
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd161130.htm
マネタリーベース
4,198,400

昨年末
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd151230.htm
マネタリーベース
3,561,400

なので11月末時点での進捗が63.7兆円で80兆円まで16.3兆円。
日銀当座預金見込
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1612.htm/

銀行券要因で日銀当座預金減る分にはMBにツーペーなので12月は財政要因が2.7兆円のプラスで残りが13.6兆円、貸出支援で4.7兆円出れば残りが8.9兆円になりまして、輪番と短国買入でその額は楽勝(社債とCPの残高は11月末の時点でほぼ着地しているので償還分ロールでチャラ)で行きそうに見える(てか短国買入が要らん)のですが、アタクシ何か計算違いをしているかも知れません(固定金利オペの落ちはあってももう屁のような額)でございますけれども、まあとりあえず「量」の方の着地は全然問題無さそうに見えますな。


○その他少々

メモ忘れていましたので

・マクロ加算見直し

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161209c.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて

『2016 年 12 月〜2017 年 2 月積み期間:13.0%(注)

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、上記3積み期間において、平均して概ね 10 兆円台となる見込みです。』

とまあいつもの数字になるのですが、偏在に関しては相変わらず偏在しているのでこれよりは多い額になるというのもいつも通り。しかしこれ今後はMB拡大ペースが必ずしも一定じゃなくなるので、基準比率に関しても難しい事になりますな。

基本的には金利が上がった場合に買入が増えやすくなるので、そうするとMB拡大のペースが想定よりも早くなるので、その結果何が起きるかというとマイナス金利適用残高が拡大するというバランスになるので、コールとかの金利が下がりやすくなったりする(ただしキャッシュつぶしで▲10超の投資をする意味は無いので短国とかにはそこまで影響しない)というこの足元の金利に影響というシーソーゲーム。

・・・・・・とは申し上げましたが、そういうような形で買入が増えた場合は短国買入を減らしてMBを調整してくると思いますので、結局そこで調整されるような気もしますけど、短国の水準がちと低い所に居過ぎなので、ここの金利を変に上げてしまうとそれはそれでイールドカーブに影響するかもしれないし良く分からんですなこのバランス。


・日銀サイトのリニューアル

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161209a.htm/

『日本銀行は、本年12月31日(土)に、日本銀行ウェブサイト(以下、「当サイト」といいます。)をリニューアルする予定です1。』

ほほう。

『今回のリニューアルでは、デザインを変更し、トップページには、(1)日本銀行が当サイトを通じて発信したい情報、当サイトを利用する多くの方にご関心があると思われる情報、および日本銀行をより身近に感じていただける情報を掲載していく領域(スライドショーとピックアップニュース)を設置します。』

というのを見て気が付いたのですが、5分で読めるマイナス金利がトップページにいませんな。

『当サイトの利便性向上のために、(2)探したい情報に分かりやすくアクセスできる工夫をするほか、(3)スマートフォン等の小さな画面でも最適なレイアウトで表示されるようになります。さらに、当サイトのリニューアルに対応して(4)時系列統計データ検索サイトの利便性も向上させます2。』

とは言え慣れるのにはめんどい。というかECBとか特にそうなのですが、アーカイブを見に行くのに一苦労するのに対して、日銀のページってアーカイブ見に行くのが非常に便利なので、その利便性は維持して頂きたいと思います。正直ECBのが一番使いにくい。

『また、過去のリニューアルで行ってきた、個別ページのURL変更は実施しません。今後も、日本銀行では、利用者の皆さまにとって、より分かりやすく利便性の高いウェブサイトの作成を目指してまいります。』

>また、過去のリニューアルで行ってきた、個別ページのURL変更は実施しません
>また、過去のリニューアルで行ってきた、個別ページのURL変更は実施しません
>また、過去のリニューアルで行ってきた、個別ページのURL変更は実施しません

これは素晴らしいです!!!!

ということで期待しております。








2016/12/13

お題「超長期の金利が上昇しているようですがYCC」

月末の金曜日とな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161209/k10010800451000.html
消費促進の「プレミアムフライデー」午後3時の退社を呼びかけ
12月9日 1時41分

月末よりは月中の方がマシな気がするんですけど。糞忙しい月末にそういうの入れると近所の他の日に皺寄せが行ってそっちの消費に悪影響が出そうな悪寒。


○市場色々と雑談

・金曜ネタで短国買入

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161209.htm
国庫短期証券買入 38,719 12,500 0.030 0.031 52.0

ということで金曜の場合は輪番が滑って金利が上がった方がネタになっているのですが、局地的にしか相手にされていない短国ではございますが、オペオファーが1.25兆円と来まして、ああやっぱり札が少ないんだなあと思った訳ですよ。

そしたら応札が3.9兆円もあって意外に札があるのに買入抑えて来ましたなあという結果になっておりまして、理由とすれば(1)前日の3M短国が入札としての新高値を付けていたので、何ぼ何でもある札全部ごっそり持って行くとこの先20日以降の償還再投資対応(がこの金利水準で短国に入らんような気がするが)とか、そもそも需給がタイトなドル円絡みとかもあるので、一段の金利低下を避けた、(2)元々MB目標はもう無いのですが、まあ一応MBの帳尻考えて買入行っていたけれども、貸出支援とかの着地が見えてきたので、需給も強いしここで頑張って札を入れることもありませんなあ、という辺りでしょうか。

なお、この短国買入が思ったより少ない(この調子だと残りの短国買入って今週も1.25兆円で来週は1兆とかですかねえ)のですが、短国市場がこれで金利が上がるというような事も碌になくて安定の短国というのが何ともですな。まあ月末に言っていたよりも買入が減ることになると思うのですが、そうなると何のために短国買入の公表始めたんだかという感じはしないでもない。


・超長期ェ・・・・・・・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1E72HA
Markets | 2016年 12月 12日 16:56 JST
〔マーケットアイ〕金利:長期金利が10カ月ぶり0.080%に上昇、欧州金利上昇で売り

『<15:10> 国債先物が続落で引け、長期金利は10カ月ぶり0.070%に上昇

国債先物中心限月3月限は前営業日比15銭安の150円04銭と続落して引けた。前週末の海外市場で、良好な経済指標を手掛かりに、米債が下落した流れを引き継いだ。いったん下げ渋る場面があったが、週明けの東京市場で円安・株高の流れが続いたことに加えて、日銀が国債買い入れを見送ったことで、下げ幅を広げる場面もあった。

先物3月限の出来高は、13日に取引最終日を迎える12月限を上回った。この結果、中心限月は事実上、12月限から3月限に移行した。

現物市場は超長期主導で金利が上昇。超長期はグローバルな金利上昇が続き、12月に入り入札等で在庫を抱えた業者などから調整売りが出た。また、来年度の国債発行計画で、40年債の増発観測が浮上していることも短期筋の売りを誘った。

10年最長期国債利回り(長期金利)は同2bp高い0.070%と2月16日以来、20年債利回りは一時同7.5bp高い0.635%は2月24日以来、30年債利回りは一時同10bp高い0.800%と3月14日以来、40年債利回りは一時同12bp高い0.945%と3月1日以来の水準に上昇。また、中期ゾーンは13日の5年債入札に備えた調整圧力に上値を重くした。』(上記URL先より)


ということでここもと超長期の金利が上昇している訳で、昨日の引けは(例によって単利)

12/12

2年:▲0.190%
5年:▲0.085%
10年:0.070%
20年:0.635%
30年:0.800%
40年:0.945%

とかゆうているのですが、何せ先々週の末から見ますと、

12/2

2年:▲0.180%
5年:▲0.105%
10年:0.035%
20年:0.475%
30年:0.595%
40年:0.695%

(なお全部カレントにしているので新発30年の3か月ロール分とか無視しておりますのは勘弁)だったりしまして、10年3.5bp上がっている中で20年が16bp上がって30年が20.5bp上がって40年が25bp上がったという展開ですかそうですかという素敵な状況になっておりますが、ここで毎度の如く総括検証MPM直前になります9月の16日、20日の引けは、

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

でございまして、金利の高い方の9/27から見ますと10年が11bp上昇しているのに対して20年が18.5bp上がって30年が24.5bp上がって40年が30.5bp上がっているという計算になります。

ここでディレクティブを考えると『10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。』となっておりますので、10年国債金利が7bpとかいうのはそらまあ0%程度の範囲内に収まっていると思うのですが、しつこく申し上げておりますように、9月21日のMPMでの公表文書には、

『長短金利操作を円滑に行うため、以下の新しいオペレーション手段を導入する。

(i)日本銀行が指定する利回りによる国債買入れ(指値オペ)1


とあって、この1の部分に

『1 今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』

とありましたので、10年の金利は別にまあディレクティブ通りに推移しているのですが、超長期を含めたイールドカーブの水準が「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動」していませんですかねえという風に思うのですがさて日銀どうするんでしょうかねえ。

・・・・・・・ということで突っ込む屁理屈と想定問答的な屁理屈は大体思いつくのですが、ここの文言を良く良く見ますとイールドカーブの「水準」という話をしている訳で、その中で10年は兎も角30年40年とか盛大に金利が上昇していて、少なくとも「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。」という文言に対して何もしないとはどういう事やといちゃもんをつけるのは普通に可能です。

一方で屁理屈をこねますと、元々ディレクティブに関しては「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」となっているだけで10年金利についてはコントロールすると言っているだけで、先ほど引用した「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため」というのは指値オペの使い方について述べたものでありますが、別にイールドカーブの望ましい水準自体は経済、物価、金融環境によって変化しうるものなので、超長期の金利が市場の経済物価への見方を反映して上昇する(リスクプレミアムの拡大ではなければ)のであれば別に問題無し、という理屈もアリエールな訳で、まあ10年金利に波及して10年0%程度という水準に影響を与えるかどうかというのがポイント、ともいえる訳ですな。

でまあ毎度申し上げておりますように、そもそもYCCと言って10年金利をコントロールするのであれば、10年金利の水準について何故この水準が望ましいのか、すなわち10年金利の中立的な金利水準に対して現状ではこの程度の緩和的な環境が必要になる(物価目標行ってないんだから)というのを要因分解(勿論両方ともに幅がある概念という事になるでしょうけれども)して、その結果として誘導目標の0%程度というのが出ました、というのが出てきて然るべきものなのですが、そういう根拠が示されない訳ですな。更に超長期の金利とかに至っては均衡水準のイールドカーブは出ていなくて、最初に出たのが9月21日のMPMでの「現状程度の水準」という誘導水準だか何だか分からない現状追認的なのが出ているだけですので、まあ何が何だか分からない。

何が何だか分からない中で、どうも日銀から出ている説明がヌエ的というかその場その場でテケトーな感じがだいぶするというのがこれまた困るのでして、ロジカルに考えて日銀がどこで介入してくるのかが分からないのですからそら誰も余計なポジション取りたくなくなって、そうなると海外がピョーと動くとそれにつられた動きが飛んできたら無抵抗主義で相場が動きますがなというこのYCCやっているのに却ってボラが上がってしまうというのが、YCC枠組みで目先は止まるだろうけれども動き出したらややこしいことにならんかという本領を発揮した状態になっていると思うの。

とは言いましても、この1年ってそれまでの説明を手のひらクルーってのを連発している(QQEを長持ちさせるような施策を打ち込む→いきなりマイナス金利→マイナス金利で超長期の金利低下を効果とか言ってたのに総括検証アナウンスでいきなり逆の話を始める→総括検証で超長期の金利低下の効果は大したことないけど副作用とか言い出す)というこの流れになっていて、今更日銀が何か屁理屈を繰り出してきても、どうせ何か変化があったら(正直トランプ相場が反転しだしたらまた日銀は別の屁理屈を考えないといけない局面が来ると思うの)その屁理屈も反故にするでしょ、としか思えんので、日銀のロジックにそのままホイホイ乗ること自体がリスク・・・・・・・・・とまあそういう風になって来ると、市場との対話もへったくれも無い訳ですが、まあこのまま黒田さんの間は増築に増築を重ねた奇怪な建築物状態の金融政策運営になるしかないんでしょうなあと半ばあきらめているのでした。

#ということで基本的には10年がボコボコになりそうにならないと動きにくいとは思うが腰が据わって居なければ何か慌てて打ち込み(今日なら指値、明日なら輪番増額)だって可能性があってさっぱり分からない


などと悪態を申し上げておりますが、まあ円安進行だわ株高だわという状況自体は物価目標という意味ではヒャッハーヒャッハーな訳でして、金利の少々の上昇だって景気やマインドや株価や為替に冷水ぶっかけるような変化が起きない限りは日銀執行部的にはヒャッハーと言っていれば良いだけの話でして、イールドカーブコントロールがどうのこうのとかは足さえ引っ張らなければそんなに気にしない(ただし調節の現場は色々と大変)という話でしょうし、寧ろこ2014年の再来で(今回はただの天佑ですが)賃上げが決まる前のタイミングで株高円安というマインドにプラスな動きが出て、賃金に好影響をしてくれればという方で頭がいっぱいなのではないでしょうかと思いますし、まあそういう点からしたら金利ガーとかいうのは馬耳東風という感じっすかねえとは思います。




○ドラギ先生はテーパリング否定しているけどテーパリングだがハト発言に余念がないという感じですか

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2016/html/is161208.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 8 December 2016


・オープンエンドにしていないのでこういう理屈が発生する

最初の質疑から。

『Question: Two questions, please. Could you tell us if any other options were presented in today's meeting, and if so what they were? And could you tell us please as well whether the decision today on the QE extension and the changes to the design were unanimous?』

『Draghi: Yes, the two options that have been presented were the ones that had been studied by the committees in the preceding months. One foresaw the option of continuing with ユーロ80 billion a month for six months, and the other one is the one that received a very, very broad consensus by the Governing Council.』

80*6と60*9のどちらかのオプションがあって賛成多数で60*9にしました、と言っている訳ですが、まあ日本の場合は「オープンエンドです(キリッ)」とやってしまったが為にこういうズルいテクニックが使えないというのがあばばばばばーにも程がある話でして、大体からして「2年で達成する」と言ってるんだから政策の期間も「とりあえず2年」とかにしておけば期間延長の度に追加緩和のような振りが出来た訳で、FEDの真似したんだか何だか分かりませんが、出口がビルトインされていない政策を打ち込む日銀QQEの間抜けさがこういうのを見ると目立ちますなとか何故か日銀への悪態になってどうもすいません。


・減額したのは経済物価情勢の好転によるとちゃっかり発言しているのですが

『Question: First of all a question on the reduction of the pace of purchases from ユーロ80 billion to ユーロ60 billion per month. Could you tell us why you felt it necessary to ensure this second option, this more sustained market presence? What was the rationale for this decision?(後半割愛)』

何でそういうオプションになったんですかと質問が来る罠。

『Draghi: On your first question, first let me say that we have to go back to March 2016, when we up-sized our programme from ユーロ60 billion to ユーロ80 billion. At that time the outlook for a sustained return to our inflation objective was much darker, and deflation risks were not immaterial at that time. So at this point in time, we basically judge that the outlook, for the sustained return to our inflation objective, is not very different from what it was at the beginning of the programme when it was scaled to ユーロ60 billion. And more specifically the risk of deflation has largely disappeared. However, uncertainty prevails. Uncertainty prevails everywhere, and we'll certainly see and assess the progress of the overall situation at the end of 2017.』

なんちゅう物は言いようという感じですが、結局この説明の中では経済(というより物価か)の情勢が好転していて、デフレリスクが抑えられているので以前の600億ユーロに戻しても良いけれども、不確実性はあいかわらずなので期限は長めにしていますとかリップサービスに余念がありません。

『But since uncertainty prevails everywhere, that's the reason for this sentence in the introductory statement that says, "If, in the meantime, the outlook becomes less favourable, or if financing conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment of the path of inflation, the Governing Council intends to increase the programme in terms of size and/or duration.” Now, this means two things. First of all, the Governing Council is acting in a pragmatic and flexible way to cope with risks that may materialise in this period of time. Second, there is no question about tapering. Tapering has not been discussed today.(後半割愛)』

でもって不確実性も高いので再度経済物価状況が思わしくなくなったら買入の拡大とか買入年限の延長とかを実施するのにやぶさかではございませんし、テーパリングではありませんよと、実際は買入ペースを落としながらもこういう発言をするというのが何とも。いやだったら別に80*6で何の不都合があるのよと思いますけれども、そこをリップサービス入れながら減らしていくのがドラギクオリティで、黒田さんおよび黒田日銀にこの芸当ができるのかどうかは分からんですなあ(日銀は理屈を突っ張り過ぎるきらいはある)。


・テーパリングではありませんとな

『Question: You said tapering hasn't been discussed today. How much longer do you think it'll be until that discussion needs to be had in the Governing Council? How much pressure is there to hold that discussion on a possible exit?(後半割愛)』

『Draghi: On your first question, in a sense the intention, the underlying narrative of our monetary policy decisions was exactly to maintain the extraordinary degree of monetary accommodation that we have in place. And to this extent, without distorting prices, we'll certainly continue to exert pressure on market prices, to deliver exactly the degree of monetary accommodation that we want. The second purpose is to transmit a sense that the presence of the ECB on the markets will be there for a long time. So a sustained presence is also the message of today's decision, and that's why tapering was not discussed.(後半割愛)』

引き続き金融政策目的を達成するために超緩和的な金融政策を行い、そのために金融市場の価格形成に対して影響を与えるオペレーションを継続するのであって、金融市場へのプレゼンスは維持するのだから、それはテーパリングとは言わないです(キリッ)。とは物は言いようにも程があるが。

『Question: I wonder if I could go back to the word "tapering" again; although you said that's not discussed, the markets are certainly taking it otherwise and the analysts are using the word "tapering". Maybe you could explain to us what's the difference between what you did today and what people generally consider to be tapering.』

とまあいやその理屈はおかしい買入ペース落としているんだからテーパリングだろ、と言われていますが・・・・・・・

『Draghi: Well, the word has several meanings depending on who is using it, but the natural way to look at a word like that is to have a policy whereby purchases would gradually go to zero. And that's not been discussed. As a matter of fact, it's not even been on the table.』

これまた物は言いようキタコレでございますが、まー確かに出口方向に行くために買入拡大ペースをゼロにすることを展望して買入を減らした(なおこの間FEDは途中で停止だってしますよとは言っていたが淡々とテーパリングを実施しました)のとは違うと言ってしまえばそれまでで、どちらかというと日銀の総括緩和を真似っ子して買入政策の長期化をにらんだ延命策という面は強いので、そういう意味ではテーパリングでは無いとも言えますが、買入ペース減っているのは減っている訳で、これは見事な舌先三寸もといレトリックだと思います。

とドラギ先生の舌先三寸に感心した所で時間が無いので続きは明日以降にでも。





2016/12/12

お題「岩田副総裁会見ネタという不毛なネタであるがまあ見てちょ」

http://jp.reuters.com/article/forex-ny-close-idJPKBN13Z00M
Business | 2016年 12月 10日 09:52
ECBハト派決定でユーロ続落、ドル115円半ばに迫る=NY市場

うーんこのという感じですがドル高トマランチ会長。

○師匠の会見ネタの続きですが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1612b.pdf

・マイナス金利政策の言い訳が見苦しくて却って問題を明らかにしてくれる件

師匠の見苦しい言い訳は続く

『(問) 関連して 2 つお伺いします。1 点目は、今の関連ですけれども、3 年半の緩和で岩田副総裁としては、例えばもっとこうすればよかったとか、あるいはやらなければよかったとか、何か振り返って反省するところとか、もっとこうしておけばよかったと思うところが何かあれば、1 つもないということであれば 1 つもないということを教えて下さい。(後半割愛というかこの次)』

質問はどう見てもマネタリーベース直線一気理論に関する質問なのですが・・・・・・・・

『(答) 私自身が一番迷ったのはマイナス金利の導入です。』

そう来たかという感じですが、そもそも論としてマネタリーベース直線一気理論の師匠としては重要なのはマネタリーの量を出す事であって、金利は後付の話ですし、マイナス金利政策とマネタリーベース拡大の相性が悪い(悪いからこそ総括検証に至ってレジームが変わった訳ですが)ので、置物リフレ理論的にはマイナス金利というのは迷うと思いますな。

『金融機関に対する影響や生命保険など保険も含めて、少し心配しました。』

これ本当にそういう認識を持っているのならちょっとは物事分かってるじゃんと師匠を見直す気になるんですが、これまでの師匠のご発言などを見てこんなことをマイナス金利政策導入時に認識していたとは全然思えないのでお前は何を言ってるんだという話。

『しかし、それは何とか乗り切れるし、ある程度金利を大きく下げることによってできるだけ早く 2%の「物価安定の目標」を達成するという方が大事で、そうなれば金融機関のイールドカーブもスティープ化してきますので、金融機関への悪影響もそれほど長くならないだろうと考えました。』

名目金利を大きくマイナスにすることによって物価目標が早期に達成できる、という理論がさっぱり分からないですな。いや勿論理屈の上で言えば「超強力な副作用満載の劇薬緩和を打ち込むことによって物価目標を早期に達成できればその超強力な劇薬を使うのは一瞬で済む」という話になるのですが、だったら劇薬使うにしたって何らかの勝機を持って使ってくれないと困る訳ですよ。

だってね、マイナス金利政策ってQQEやって効きが段々怪しくなってきた所でQQE2を入れて、そのうち政策が物理的に持つのかという話になってきたら昨年12月の「補完措置」が登場して買入の長期化などの措置を入れ、それでもダメダメ感強い中ヤケクソで1月にマイナス金利を突っ込んで当初超長期の金利が下がっていく中で政策効果だとか言ってたのですけれども、今度は超長期とか金利下げても別に経済にそれが一気に効いてくれる訳でも無いのに金融機関への悪影響だけはトンデモナイ事になってくるってんで9月には「総括検証」に至って今度は金利は効くが下げれば下げる程良いという物ではない、とかもう理屈も運営も継ぎはぎにも程があって、理屈にしてもやってる事にしても全部その場しのぎでやっているのを無理繰り屁理屈付けて合わせているという状態になっている訳ですよ。

と思わず直近までやってしまいましたが、マイナス金利導入の時だって然りで、補完措置やった直後にマイナス金利とか、そんなドタバタやっている中で「ある程度金利を大きく下げることによってできるだけ早く 2%の「物価安定の目標」を達成する」というのに勝算があったとは到底思えないのに何を今更よーいう(または想定問答を使って師匠に言わせる)わ。


『マイナス金利というのは効果もあるし、海外の経験からしても効果があるとして、私も賛成しました。ところが、予想外に効きが非常に強かったということです。』

「予想外に効きが非常に強かった」というこの言い訳なのですが、日銀の方々の対外発言ではまいどこういう説明なのですが、本来「予想外に効きが強かった」のであればインフレ期待が盛大に上がって物価2%に向けてホイホイと経済物価情勢が好転していなければ行けない訳でございまして、これは「予想外に副作用が大きかった」と表現すべきではないかと毎度漠然と思っていたのですが、この盗人猛々しいとしか申し上げようがない師匠の言い訳を見ておりましてやっとこれまで感じていた違和感が理解できて大変に心が晴れやかになります。


『それは事前の予想を覆すくらい、特に中長期、あるいは長期から超長期まで非常に大きく下げてしまったということで、フラット化が進み過ぎたということです。』

というのが「効果」というお話なのですが、政策の「効果」は金利を下げることではなく、置物先生の風が吹くと桶屋が儲かる理論にありますように、金利を下げる事はスタートに過ぎない訳です。

『そうなると、金融機関などの経営、年金等にも影響を与えてくる。これが家計のマインドも冷やすという危険が出てきたので、それを修正したのが「イールドカーブ・コントロール」ということです。』

そもそも論として「金利を下げたら問題が生じた」というのであれば、その金利を下げたという行為自体が間違いなのであって、すなわちマイナス金利政策について「予想外に効きが非常に強かった」という言い回しは失敗を誤魔化すためのレトリックであり、「想定された効果よりも副作用の方が強かった」という事であり、まあマイナス金利はとっとと間違いを認めて撤回して頂きたいものですな。

それから、ちょっと前の所でマイナス金利に対して「海外の経験からしても効果がある」とありましたが、直近のFSRでは、

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr161024a.pdf

の本文69ページ(ファイルだと74枚目)に『BOX3 マイナス金利政策実施国における銀行の収益構造』とあって、預金金利の引き下げ余地のある欧州金融機関と、預金金利に引き下げ余地が無く、かつ住宅ローンなどの競争が激しく貸出マージンの薄い日本の比較がございまして、えーっとすいません「海外の経験からしても効果がある」って何を見てそういう話をしていたんですかちゃんと考えていたんですか、としか申し上げようがない。

『このように、あえて言うなら、少し迷ったのはマイナス金利の導入ですけれども、最終的にはヨーロッパの経験や、』

ヨーロッパの経験はご覧のとおり。

『理論を深めた結果、』

爆笑の発作を禁じえません。

『マイナス金利の導入は 2%の「物価安定の目標」の達成に必要だという結論に至ったということです。』

副作用が出て「金利を何でも下げれば良い」という政策じゃなくなったんですけどねえ、あと量の話もどこかに逝っちゃいましたよねえ。

『この点は、振り返っても結局そうであったと思います。やはり「量」と「質」の両方をコントロールして上手く使った方が、長期的・持続的に金融緩和を続けることができるということです。』

師匠意外に簡単にボロがでるなあと思うのですが、2%物価目標は出来るだけ早期とか2年とか大口をたたいている訳ですし、今でも「出来るだけ早期に」は変わらないという話をしているわけですし、だいたいさっきマイナス金利を導入するのに悩みましたという説明をしている所で「ある程度金利を大きく下げることによってできるだけ早く 2%の「物価安定の目標」を達成するという方が大事で」マイナス金利政策に賛成した訳ですから、結局緩和政策が長期化するというのが明らかならば、マイナス金利政策を賛成する理由が良く分かりませんな。

それとですね、大体からして「2年で達成できなければ辞任」と大口をたたいていたのに「長期的・持続的に金融緩和を続ける」ってそれもう「出来るだけ早くに達成」というのを放棄しているのですから、それはやはり辞任されて然るべきではないでしょうかねえとおもうのですが、

『色々な逆風が吹きましたから、金融緩和は少し長引くけれども、それを持続するためには、やはり今の政策がよいということが最終的な結論でした。(後半割愛、というかこの次)』

ということで逆風のせいにする攻撃が出るのだ。


・実に見苦しい言い訳キタコレ

『(問)(前半割愛)2 点目は、岩田副総裁が仰るレジームチェンジによって期待を高める効果があったのではないかと私も思うのですが、一方で 2 年という期限をあえて区切って強く目標を達成するということを言い切ったことができなかったことで、期待とは逆に失望させる逆の効果があったのではないかと思うのですが、どうお考えですか。』

ニヤニヤ。


『(答)(前半割愛)もう 1 つの質問については、失望させたとすれば非常に残念ですが、実際に 2 年で区切った理由を説明します。』

はあ。

『2013 年 4 月に「量的・質的金融緩和」を実施する前の 15 年間はずっとデフレだったわけです。』

途中で物価が上がっている場面もありましたし、そういう言い方をするんだったら直近だって物価はマイナスに落ちているんだから、2013年4月以降もまだデフレが続いていて脱却はできていないんじゃないですかねえ。

『しかしそのデフレの中でも、日銀はずっと、デフレ脱却に邁進して参ります、と言っていました。もっとも、常にそう言いながら 15 年経ってずっとデフレという状況だったわけです。』

今でもそうジャン。

『2013 年 1 月の政府との共同声明では、「できるだけ早期に実現することを目指す」という表現だったと思うのですが、それでは過去の日銀の歴史からみると、市場に信認されない。できるだけ早期に、というのは、5 年なのか10 年なのか、15 年なのか、はっきりしないわけです。普通は諸外国ではだいたい2年くらいかけて2%の物価目標を実現できているという歴史があります。そういうことで、2 年と区切って日銀の覚悟を示すことが、市場から評価されるために必要だと考え、あえて 2 年と示したわけです。』

それは分かったけど結局2%目標達成どころかデフレ脱却もできていないのですからあんさんらが口を極めて罵った今までの日銀と同じ結果しか出せていないんだから辞任するしかないですよね。

と思うのですが、そこで斬新な言い訳が登場する。

『逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。』

>逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。
>逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。
>逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。
>逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。
>逆風が吹かなければ、おそらく私は 2 年以内で達成したと思っています。

声に出して読みたいお言葉でして、これニュースヘッドラインに出た時に少なくとも金利市場の皆様の大爆笑の発作が起きたり血圧の急上昇が起きたり大変だったと思う位の歴史的妄言でございますな。

逆風っておまえ消費増税については最初から織り込んでいてその影響を考えて見通しだしていただろうし、原油価格に関しても下がりだした時に追加緩和(QQE2)を入れてマインドの悪化を防ぐとかいってたんですけど。だったらリーマンショックとか大震災とかで経済にショック食らった昔の日銀に対しても同じような言い訳の余地を認めて差し上げるのが正しい態度じゃないですかねえとしか申し上げようがない訳で、実に見苦しい上にそれまでの日銀に対する罵倒度合いと比較した場合にあまりにも自分に大甘にも程があって、学者としてどうなのかよと小一時間問いつめたいですな。

まあ何ですな、今度「いやーここで大口の買いが入って無ければこのショートポジションはワークしていたんですよ」とか言い訳してみようかなと言いたくなる斬新な言い訳に落涙を禁じえません。

気を取り直してその続き。

『2014 年 4 月には消費者物価指数(除く生鮮食品)は 1.5%まで上がっています。「量的・質的金融緩和」の導入時点は▲0.5%ですから、その間に 2%ポイント上がっているわけですので、そのペースだとだいたい 2014 年夏には 2%を実は達成しているという計算になります。』

置物直線理論久々に登場ですね。消費増税前の駆け込み需要とか、消費増税対策で行った財政支出とかの効果の話を全部無視して全部金融緩和政策の効果にしているだけではなく、図々しくも2%達成する置物直線を引くという辺りに本物のアレの風格を感じて師匠の面目躍如。

『最初の逆風は消費税増税ですけども、仮に消費税増税がなかったら 2%の「物価安定の目標」は 2014 年夏ぐらいまでには達成できる可能性が実はペースとしてはあったわけです。』

消費税増税が無かったら駆け込み需要も無かったですし対策での財政支出も無かったんですけど頭大丈夫でしょうかねえ。

『それでも原油価格があれだけ下げると、日本の予想物価上昇率はおそらくまだ 2%にアンカーしていなかったと思いますので、原油価格があれだけの勢いで下がれば、やはり物価は下がったのではないかと思います。ただ今ほど下がったかどうかは分かりませんが、今下げている一番の要因としては、原油価格の急落が大きいかと思います。』

無茶苦茶な説明になっていますな。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大

『ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(2014年追加緩和時の声明文より)

とありましたので、原油価格下落に対しても手を打っていた訳で、だったら「原油価格の急落が大きいかと思います」とかのうのうと喋ってないで、2014年10月の追加緩和以降に何故もう一段国債買入の拡大を行わなかったんですか、というだけの話になりませんかね。

まあ現実にはそれやっても別に効かなかったんんじゃネーノとしか申し上げようがないのですけれども、やってもいないのに「原油ガー」「消費増税ガー」とか引かれ者の小唄にしか聞こえませんけどねえ。


・・・・・・・などと悪態をついているうちに時間が無くなってしまったので、マクロ加算の掛け目の話とか短国買入が微妙に少なく打ってきた(入札が強かったのを懸念して減らしたのか月末の着地を見てそんなに入れなくても良かったのかは微妙に謎)とか、ECB受けて超長期金利ェ・・・とかの相場ネタが全部明日になってしまいましたすいませんすいませんすいません。





2016/12/09

お題「ECBは何やりたいのやら/短国▲40bpェ・・・・・・・・/師匠会見」

グローバルに長期金利が上昇したら大きなリスクになりかねない(キリッ)とかいう解説がモーサテから飛んでいる(海外のよー知らん人)のだが、そもそも財政出るぜ景気上向きだぜヒャッハーとなる中で金利が上がるのが何で世界経済に「大きなリスク」なんでしょうかねえ。

○何をやりたいのかがイマイチ分からんのだが(会見とか詳細に読むと分かるのかなあ)

ええすいません単純に何の捻りもしないで半年間延長と思ったのですが、相変わらずドラギ先生は一々捻りを入れないと気が済まないんでしょうか。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2016/html/pr161208.en.html
Monetary Policy Decisions
8 December 2016

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively. The Governing Council continues to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time, and well past the horizon of the net asset purchases.』

ということで金利については現状(MROレートがゼロで貸出ファシリティ金利が25bpで預金ファシリティ金利が▲40bp)維持。

『Regarding non-standard monetary policy measures, the Governing Council decided to continue its purchases under the asset purchase programme (APP) at the current monthly pace of ユーロ80 billion until the end of March 2017. From April 2017, the net asset purchases are intended to continue at a monthly pace of ユーロ60 billion until the end of December 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing Council sees a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. If, in the meantime, the outlook becomes less favourable or if financial conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment of the path of inflation, the Governing Council intends to increase the programme in terms of size and/or duration. The net purchases will be made alongside reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP.』

ミニテーパリングというか何というかですが、4月以降は月額の買入拡大ペースを800億ユーロから600億ユーロに減らして、それで来年の末まで実施しますってイマイチ何をやりたいのか良く分からん内容ですが、最後の所にありますように今回買入の中にあった制限を見直していまして、具体的には残存2年未満購入していなかったのを残存1年未満を購入しないとしたのと、預金ファシリティよりマイナス水準の金利の債券を購入するようにする、とこの前日銀が買入で金利が爆下げしまくる場合の対策として買入金利に気が向いた時には下限を設けますと言っていたのの逆を打ち込んでくるのがお洒落なのですが、後で出てきますが良く良く見るとその買入金利撤廃必殺技は常に使う物ではないようです。

でもってまあ買入減らしながら「必要があれば買入を増やします」とか言っておりまして、まあテーパリングテーパリング言われるのを避ける為に威勢の良い話をする、というこの変なバランスの取り方でして・・・・・・・・・・・

『To ensure the continued smooth implementation of the Eurosystem’s asset purchases, the Governing Council decided to change some of the parameters of the APP, which will be communicated at today’s press conference and in a separate press release.』

とありまして、その内容が買入の対象銘柄の拡大(つーて1年〜2年も買いますという話じゃが)と、買入足切レートの撤廃(こっちは金利下限で買えない方には効くんですけど)という内容。


上記URLの画面の右側に『Related press releases』というのがありまして、そこをポチっとなとするとこんなのが。

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2016/html/pr161208_1.en.html
ECB adjusts parameters of its asset purchase programme (APP)

『Adjustment of parameters ensures continued smooth implementation of asset purchases Decision effective as of 2 January 2017

The Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided today to change some of the parameters of its asset purchase programme (APP) in order to ensure its continued smooth implementation. In addition to the extension of the programme, the following parameters will be adjusted on 2 January 2017:

The maturity range of the public sector purchase programme (PSPP) will be broadened by decreasing the minimum remaining maturity for eligible securities from two years to one year.

Purchases of securities under the APP with a yield to maturity below the interest rate on the ECB’s deposit facility will be permitted to the extent necessary. The implementation details will be worked out by the relevant committees.』

ということで、買入銘柄の残存期間については2年未満の買入を行っていなかったのですが、2年を1年に短縮(というか買入幅の拡大)を行うという事です。でもって買入レートに関しては足切レートを▲40bpに設定していたのですが、この縛りを撤廃しますので、これは短い所の金利が低下した時には一段の金利低下を促す効果が出るという施策なのですが、良く良く見ると買入レートの足切については必要だったら関係するコミッティーで決まる(政策決定会合ではなくてオペの所で決めるっぽい書き方)とか書いてありますし、大体からして買入銘柄の国別限度額とかは弄っていないので、やる気があるんだか無いんだか良く分からん施策になっていますな。


http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2016/html/pr161208_2.en.html

『・New possibility to use cash as collateral
・Pricing will be linked to the deposit facility rate
・Changes aim to enhance effectiveness of PSPP securities lending
・Maximum overall limit of ユーロ50 billion for the Eurosystem

Today, the Governing Council decided that Eurosystem central banks will have the possibility to also accept cash as collateral in their PSPP securities lending (SL) facilities without having to reinvest it in a cash-neutral manner.

The following Eurosystem members will make securities lending available also against cash collateral by 15 December 2016: the ECB, Nationale Bank van Belgie/Banque Nationale de Belgique, Deutsche Bundesbank, Central Bank of Ireland, Banco de Espana, Banque de France, and De Nederlandsche Bank.

The overall limit for securities lending against cash collateral is set at ユーロ50 billion for the Eurosystem. To avoid unduly curtailing normal repo market activity, the cash collateral option will be offered at a rate equal to the lower of the rate of the deposit facility minus 30 basis points (i.e. currently -70 basis points) and the prevailing market repo rate.

The introduction of cash as collateral in the context of PSPP securities lending is intended to enhance the effectiveness of the SL framework, thereby supporting the smooth implementation of the PSPP as well as the euro area repo market liquidity and functioning. This technical amendment does not represent any change in the monetary policy stance of the Eurosystem. It will be reviewed in light of operational needs and the level of excess liquidity.』

買入をバカスカ実施するもんだから現物債券の市場での流動性が厳しくなっているので、PSPPで購入した国債の貸出を行っているのですが、キャッシュコラテラルを認める事によって借入をやりやすくしますという施策。ただしこれをやると資金吸収になってしまうのでその見合いで資金供給オペをやるとかそんなお話を入れていますな。



・ということで会見の冒頭だけ

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2016/html/is161208.en.html
Introductory statement to the press conference

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 8 December 2016

『Based on our regular economic and monetary analyses, we today conducted a comprehensive assessment of the economic and inflation outlook and our monetary policy stance. As a result, the Governing Council took the following decisions in the pursuit of its price stability objective:』

『As regards non-standard monetary policy measures, we will continue to make purchases under the asset purchase programme (APP) at the current monthly pace of ユーロ80 billion until the end of March 2017. From April 2017, our net asset purchases are intended to continue at a monthly pace of ユーロ60 billion until the end of December 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing Council sees a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. If, in the meantime, the outlook becomes less favourable, or if financial conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment of the path of inflation, the Governing Council intends to increase the programme in terms of size and/or duration. The net purchases will be made alongside reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP.』

減らしておいて必要ならば追加的な緩和措置を行う(キリッ)とか言っているんだが、だったら素直に800億ユーロで6か月延長しておけば良いのでありまして、わざわざこういう変な芸を入れるというのがドラギ相変わらずだわとしか申し上げようがない。

『To ensure the continued smooth implementation of the Eurosystem’s asset purchases, the Governing Council decided to adjust the parameters of the APP as of January 2017 as follows. First, the maturity range of the public sector purchase programme will be broadened by decreasing the minimum remaining maturity for eligible securities from two years to one year. Second, purchases of securities under the APP with a yield to maturity below the interest rate on the ECB’s deposit facility will be permitted to the extent necessary.』

これは先程引用した『Related press releases』の部分ですな。

『The key ECB interest rates were kept unchanged and we continue to expect them to remain at present or lower levels for an extended period of time, and well past the horizon of our net asset purchases.』

これは金利の話。でもって最初の所だけ見ますね。


『Today’s extension of the asset purchase programme has been calibrated to preserve the very substantial degree of monetary accommodation necessary to secure a sustained convergence of inflation rates towards levels below, but close to, 2% over the medium term.』

これはただのお約束の呪文みたいなもん。

『Together with the sizeable volume of past purchases and forthcoming reinvestments, it ensures that financial conditions in the euro area will remain very favourable, which continues to be crucial to achieve our objective. In particular, the extension of our purchases over a longer horizon allows for a more sustained market presence and, therefore, a more lasting transmission of our stimulus measures.』

『This calibration reflects the moderate but firming recovery of the euro area economy and still subdued underlying inflationary pressures. The Governing Council will closely monitor the evolution of the outlook for price stability and, if warranted to achieve its objective, will act by using all the instruments available within its mandate.』

とあるのだが、変更するんだから何が変更する理由になったのかとかそういう話が聞きたいのですが。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis.』

仕方がないので寝起きの目をこすってここも見る。

『Real GDP in the euro area increased by 0.3%, quarter on quarter, in the third quarter of 2016, following similar growth in the second quarter. Incoming data, notably survey results, point to a continuation of the growth trend in the fourth quarter of 2016. Looking further ahead, we expect the economic expansion to proceed at a moderate but firming pace. The pass-through of our monetary policy measures to the real economy is supporting domestic demand and has facilitated deleveraging. Improvements in corporate profitability and very favourable financing conditions continue to promote a recovery in investment. Moreover, sustained employment gains, which are also benefiting from past structural reforms, provide support for households’ real disposable income and private consumption. At the same time, there are indications of a somewhat stronger global recovery.』

経済の全体的な現状と先行き見通しについては引き上がったと。

『However, economic growth in the euro area is expected to be dampened by a sluggish pace of implementation of structural reforms and remaining balance sheet adjustments in a number of sectors.』

まあこの構造改革構造改革言うのもいつもの話。

『This assessment is broadly reflected in the December 2016 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual real GDP increasing by 1.7% in 2016 and 2017, and by 1.6% in 2018 and 2019. Compared with the September 2016 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for real GDP growth is broadly unchanged. The risks surrounding the euro area growth outlook remain tilted to the downside.』

成長見通しのリスクは相変わらずダウンサイドなのにわざわざ買入ペースを落とす話を公表したのかよ。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation in November 2016 was 0.6%, up further from 0.5% in October and 0.4% in September. This reflected to a large extent an increase in annual energy inflation, while there are no signs yet of a convincing upward trend in underlying inflation.』

『Looking ahead, on the basis of current oil futures prices, headline inflation rates are likely to pick up significantly further at the turn of the year, mainly owing to base effects in the annual rate of change of energy prices. Supported by our monetary policy measures, the expected economic recovery and the corresponding gradual absorption of slack, inflation rates should increase further in 2018 and 2019.』

一応物価の基調に関しては強くなってきた的な話をしているのですが、そうは行っても別に上昇していくトレンドが出ているというような確信を持てる状況ではありませんって話をしていて、益々だったら800億ユーロ半年間延長で良かったのではないかというこの謎展開。

『This pattern is also reflected in the December 2016 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 0.2% in 2016, 1.3% in 2017, 1.5% in 2018 and 1.7% in 2019. By comparison with the September 2016 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for headline HICP inflation is broadly unchanged.』

ヘッドラインの物価見通しは概ね変化ないんですよね。

ということで、今回の施策なのですが、素直に800億ユーロ6か月の期間延長をしなかった理由を考えると、ペース落とさないと受動的テーパリングになってしまうのが見えてきたから減額したんだけれども、単に減額すると緩和縮小と言われるから延長して、8*6<6*9とかいう理論によってお茶を濁しましたということなんでしょうかねえ、というのは会見の方でもうちょっと見れるかもしれないので週末の宿題。

アタクシ的には別に受動的テーパリングが起きても良いじゃんと思うのですが(欧州だって第一義的には金利政策になっている筈なので)、受動的テーパリングのようなのは気に食わない、という発想だとするのであれば、「量」の方を重視しているという話になりますし、この辺の量か金利かみたいな話はECBは微妙にワケワカラン状態のままで推移させているのですが、まあ相変わらず良く分からんですなという所で。


○短国ェ・・・・・・・・・とか

・3M短国入札が大爆発して▲40とな

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161208.htm

(3)募入最低価格 100円10銭6厘0毛(募入最高利回り)(-0.3903%)
(4)募入最低価格における案分比率 15.2061%
(5)募入平均価格 100円10銭9厘5毛(募入平均利回り)(-0.4032%)

ということで入札▲40bpでしたがセカンダリーも一段と強くなっていて引けは▲43.8とかそんな水準になってヒャッハーヒャッハーとなっておりますな。まあ今回の場合は別にオペ見合いがどうのこうのという訳でも無くて、そもそも玉が無いという状態であって、大体からして短国買入の残高が昨年の今頃は30兆円台の前半(11末で34.8兆、12末で31.5兆)だったのに今年の11月末の残高が42.9兆円なのですから、オペ狙いも蜂の頭も無くて、そもそも論として日銀がマイナス金利政策を導入した上に追い打ちのように強烈にスクイーズを掛けている状態なのでそら金利は下がるわなということで、本日は短国買入の日なのですが、まあ札あるんかいなという感じはする(とか言ったら実はオペ狙いだったりするかもしれませんのであまり決め打ちは出来ないのですが)。


・固定金利オペェ・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161208.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(12月12日スタート分) 1,950 1,950

まあ何ですな、固定金利オペちゃんの方がマイナス金利導入されて一段とニーズが無くなる(GCレポとかコール調達とかで使いにくい種類の担保にファンディング付けるのにはニーズがあるでしょ)の巻となっていて、昨年末の段階で6.3兆円ほどあった固定金利オペの残高がせっせと減少してこの減額ロールで目出度く4000億円割り込む水準になっております。


・30年入札(メモ)

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20161208.htm
(1)応募額 2兆646億円
(2)募入決定額 7,239億円
(3)募入最低価格 99円15銭(募入最高利回り)(0.633%)
(4)募入最低価格における案分比率 51.1013%
(5)募入平均価格 99円55銭(募入平均利回り)(0.617%)

前場に何となく強くなりそうな雰囲気を出しておいて終わってみたらテール40銭ってナンジャソラというメモだけ置いておきます。


○岩田副総裁会見である

師匠登場ですが・・・・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1612b.pdf

・最初から4ページ位が・・・・・・・・・・

いやね、勿論地域経済に関する質疑応答というのもそれはそれで必要な話なのですが、何か最近の金懇では地域経済に関する質疑をわざわざ最初の方に複数打ち込むような流れになっているのが仕様になっているのかよという感じで長崎県経済の話が丸2ページ(会見が9ページで時間が30分なので概ね7分くらいやっている感じですか)続くのでした。せめてこの地域経済の話題やその問題に関して金融政策に絡んで何らかの示唆がありました的な話をして頂きたいのですな。

でまあ地域経済の話はさておき、その次の2つの質問は何のために行ったのか意味が分かりません。

『(問) 1 つ目の質問はアメリカの新政権の政策についてです。今日の午前中の講演では、市場の見方を紹介されていましたが、岩田副総裁としてはどのようにご覧になっているのか、お願いします。具体的には円安が進んでいて、円安が進むほど物価が上がってよいのではないかと思いますが、そうは言い切れないのか、ご所見をお願いします。

2 つ目は米国の長期金利上昇に伴って、日本も長期金利が上がっていると思います。日銀内には、米国金利はそれほど上がらないとの見方もある一方で、グリーンスパンは 5%などと言っていますが、その場合、日本はどうなるのか、どう対応するべきなのか、指値オペで口先だけでよいのか、実弾投入が必要なのか、ご所見をお願いします。


あまりにも質問が漠然としすぎているので再履修。(回答はどうでも良いので割愛)

『(問) 2 点お伺いします。1 つ目は個社の話になりますが、ソフトバンクの孫社長とトランプ次期アメリカ大統領が 6 日、ニューヨークで会談し、アメリカへの 5 兆円投資により 5 万人の雇用を創出すると言っています。トランプ氏になって、ビジネスチャンスが生まれた形だと思いますが、こうした企業の動きの受け止め方、日本からアメリカへのインフラ投資が今後増えそうか、副総裁の所見をお伺いしたいと思います。

2 つ目は、本日の懇談会の挨拶で、モメンタムを維持するためには躊躇なく追加緩和を行うと述べられました。次回の金融政策決定会合は今月 19、20 日に開催されますが、マイナス金利の深掘りや国債買入れを増額するなどの一段の緩和は、今のアメリカ大統領選後の日本経済をみたときに必要なのかどうかお答えください。


1つ目は無駄、2つ目の訊き方では白川総裁だって答えられんわということでこれまた再履修となりまして(回答はどうでも良いので割愛)、これで会見要旨9ページのうち4ページが無駄という事になってしまいました。残念無念。


・以降の質疑は面白い

『(問) 本日の講演で、「マネタリーベースは将来にわたって拡大を続けることを改めて強調しておきたい」と仰っていますが、80 兆円というのは、新しい枠組みでは、あくまでも「めど」となっていて、これまでの操作目標からすれば、明らかに格落ちというか、格下げされています。』

わざわざ記者が政策委員に説明をして差し上げるというオモシロ展開。

『「めど」なので 80 兆円というのは変わり得ると思うのですが、2014 年秋には 50 兆円を 80 兆円にすることで追加緩和といったわけですが、80 兆円の「めど」が、70 兆円、60 兆円と減っていけば、これは明らかに金融緩和度合の強化というよりは、むしろ後退ではないかと思います。』

『岩田副総裁は、「めど」である 80 兆円というのは、10 兆円単位で 70 兆円、60 兆円と減ることはないとお考えなのか、もしそのような発議、提案がされた場合には、反対されるという姿勢なのかどうかという点についてお聞きします。(後半割愛、というか後で)


だいたい誰が訊いているのか想像はつくのですが、そういう喧嘩腰の聞き方をすると相手が引っ掛かってくれない訳で、「目標金利を維持するために買入が少なくても済む場合はこれは金融緩和環境が維持されているという解釈になると思います」とポジティブな聞き方しないと・・・・・・・・・・

師匠のお答え。

『(答) 80 兆円が「めど」になったという点ですけれども、今の「イールドカーブ・コントロール」で、短期政策金利が▲0.1%、10 年物国債利回りがゼロ%程度という現在の方針を維持していく場合には、当面 80 兆円くらいで、若干の上振れ・下振れは今後もあると思っています。この振れが大きかったり、少なかったりすることは、物価上昇率 2%へのモメンタムが大きく変化した場合には 80 兆円が増加することもあります。一方、モメンタムを維持し、2%に近づけば、80 兆円のスピードでなくてもよいということで、当面の間は、80 兆円を「めど」というのは、微調整──減ったとしても微減──に過ぎないということです。』

目標水準を変化させない限りにおいて、という条件が付きますが、金利水準を維持しようとしたら金利上昇局面において買入が拡大するので、「モメンタムを維持し2%に近づく」という状況になったら買入がバカスカ増える筈です。事務方は師匠にどういう説明をしているのでしょうか大丈夫でしょうか。

『それぐらいであれば、予想物価上昇率に大きな影響を及ぼさないと思っています。予想物価上昇率への影響ということを注視しながら、今後の金融政策について自身の考え方を決めていきたいと思っています。(後半割愛)』

買入が予想物価上昇率に影響与えるという置物理論はどちらに???????


・2年で2%行かなかったら辞任の件

今の質問の後半。

『(問)(前半割愛)また、今回展望レポートで、2%の達成時期というのは「2018 年度頃」ということで、「2017 年度中」としていたこれまでの見方からは、先送りされました。岩田副総裁の任期中には殆ど達成の見込みがないという見通しだったかと思います。国会等でも聞かれているように、就任される際には、2 年で 2%を達成できなければ責任を取る、最高の責任の取り方は辞めることだ、と仰いましたが、2 年はもとより任期中も無理だという見通しになっているわけであり、それは、これが駄目であれが駄目でという理由を並べるだけで済むと、責任の取り方としては、それで済むとお考えなのかどうか。任期中に見通しが達成できないということに対してお考えをお聞かせ下さい。』

(;∀;)イイハナシダナー

ちなみに死ぬほどここの答えが長いのはまあお察しの理由ということです。

『(答) (前半割愛)また、任期中になかなか 2%を達していないという点については、元々任期と 2%を達成できるかどうかということは、必ずしも関係はないと思います。私は説明責任が取れない場合は、最終的な責任は辞任だと申し上げました。何度も申し上げたように、2%の「物価安定の目標」を達成できないと、自動的に辞任だと言ったことは一度もありません。ところが、世の中でそのように捉えられています。』

実に見苦しいですな。では就任記者会見を拝見してみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。(就任会見5ページ目より)

『(岩田副総裁) 先程申し上げた「中期的」とは、大体 2 年ぐらいであり、2%は 2 年ぐらいで達成しなければいけないということです。2 年経って、2%がまだ達成できない、2%近くになってもまだ達成できていない場合には、まず果たすべきは説明責任だと思います。ただ、その説明責任を自分で果たせないということ、単なる自分のミスジャッジだったということであれば、最高の責任の取り方は、やはり辞任だと思っています。まずは説明責任を果たせるかどうかが基本だと思います。』(就任会見18ページ目より)

ほほう。

『目標を達成しないときに、責任の取り方には段階があると申し上げています。最終的に、説明責任が全く取れない、間違った政策を採ったため、2%の「物価安定の目標」を達成しないということであれば辞任するということが本意です。』

なるほど。

『そこで、「総括的な検証」では、』

えーっとすいません、総括的な検証を行ったのはつい最近でしてQQE導入から2年後じゃないんですけど。

『2%を達成しなかった理由が、消費増税後の個人消費の想定を超える弱さ、原油価格が 70%程度急落し、長い期間低迷が継続したこと、今年の初め頃から特に──昨年夏頃からもそうですが──、新興国経済の減速に伴って国際金融市場が不安定になったこと等が、物価を実際引き下げたことになりました。こうした点については、「総括的な検証」の中で、言い訳ではなく、事実を申し上げています。』

実に見苦しい。というかこの会見要旨作るスタッフの方々が不憫で不憫で・・・・・・・・・・・

『アメリカでも原油価格が下がった当時は、予想物価上昇率が少し下がりましたが、その後すぐに 2%に復活しています。一方、日本の場合は、足許の物価が下がると、予想物価上昇率も下がるようにして、予想物価上昇率の形成が、適合的とかバックワードルッキングのような形成とか言いますが、今申し上げた3 つの要因で足許の物価が下がると予想物価上昇率までが下がってしまい、そのことが実質金利の低下を妨げることによって、物価の上昇が遅れることに繋がっています。』

ということは師匠が当初掲げた
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
こちらの6ページにある『「量的・質的金融緩和」の波及経路』の『予想インフレ率上昇』というのがワークしなかった、という事になりますよね。

『これに対して、これまでの金融政策が、違った方向にできたのかということになると、時間をかけざるを得ず、達成は難しかったと思います。今までの金融政策──大きくは 3 回変更していますが──が間違ったために、2%の「物価安定の目標」の達成が遅れたということではないと思っています。説明責任は十分に果たしていると考えています。』

元々提示した政策メカニズムが想定通りにワークしていないのですから、それは取った手段として他にやりようがあったという事ではないかと思いますし、いやまあ別に毒にも薬にもなっていないのならともかく、金融市場どころかETFとかまでハチャメチャに市場介入を行って、色々な市場機能を盛大に叩き潰しに行って市場の価格発見機能をドンドン壊す、つまり市場機能による資源の有効的な配分機能をも叩き壊しに行く、というような大きな犠牲を払って得られた成果がこの程度しかない、というのは全然言い訳になっていないと思いますので、置物リフレ理論の読み違い(武士の情けで誤りとは言わない)についてはもっと反省すべきじゃないですかねえ。


とか悪態ついてたら時間が無くなったのでその次の質疑は週明けに続く(大汗)。


ああそういえば追加しておきますが、
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/002018320130305012.htm
第183回国会 議院運営委員会 第12号(平成25年3月5日(火曜日))

民主党津村委員からの質問に対する質疑を引用しておきますね。

『○津村委員 はい。失礼いたしました。

 二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。

 そこで、お伺いしたいんです。

 一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。

○岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。

○津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。

○岩田参考人 それで結構でございます。』(第183回国会 議院運営委員会 第12号会議録より)



2016/12/08

お題「無担保コール市場はジリジリ拡大とか短国ェとか/岩田副総裁講演までとうとう腹(自主規制)」

ここから金融政策ネタラッシュ1週間半ですな。

○コール市場残とか短国とか

・コール市場残高

http://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/call1611.htm/

末残見ても面白くないので平残を確認。

出し手サイドからの集計、左が有担保で右が無担保

都銀等*   0   367
地銀   419  11,239
信託   17,432  47,406
(うち投信)15,208 34,785
外銀     0   262
地銀2    262  1,503
信金中金・信金 891 306
農林系統   0   8,106
証券・証金** 0   120
生損保    5   170

その他とも計 19,008 70,234

10月数値はこちら

都銀等* 0 62
地銀 349 9,841
信託 16,877 46,920
(うち投信)14,461 35,123
外銀 0 423
地銀2 319 1,286
信金中金・信金 1,206 260
農林系統   0 3,384
証券・証金** 0 90
生損保   15 81

その他とも計 18,766 63,200

取り手サイドからの集計。左が有担保で右が無担保

都銀等*   0   6,943
地銀   2,047  19,183
信託    423  14,211
外銀    0   3,573
地銀2   939   2,122
信金中金・信金 320 2,713
農林系統    0   0
証券・証金** 1,800 17,562
生損保     0   0

その他とも計 5,995 70,234

10月数値はこちら

平残[取り手:全市場]

都銀等* 0 6,894
地銀 1,997 19,369
信託 423 11,007
外銀 0 2,541
地銀2 487 2,599
信金中金・信金 300 1,952
農林系統    0 0
証券・証金** 1,996 17,021
生損保 0 0
その他とも計 5,378 63,200

ということですので、10月よりも11月の方が無担保コール市場残高が増えておりまして、これ合計数字だけ並べると、

(数字は出し手ベース)

8月:有担保19,102無担保58,371
9月:有担保19,247無担保58,134
10月:有担保18,766無担保63,200
11月:有担保19,008無担保70,234

となっていまして、有担保コールはだいたい担保制約があるのと、まあ出し手の殆どが投信なので通常の投信のキャッシュ部分という資金繰り上残さざるを得ない部分というマージナルな所でここはあまり動かないイメージ。

無担保の方が何の間のと言って残高が増えていまして、MB拡大するなかで(そういや先月の業態別当座預金残高の計算ネタ投下していなかったorz)マクロ加算の掛け目は増えているのでマクロ的なマイナス金利適用残高は似たようなもんで推移させている、という建付けではありますが、当然ながら資金の偏在というのは存在しますし、その偏在を均す動きが出てくると均さないといけない量自体は増えると思われますから、そういう意味では順調に拡大しているのですが、何せ最近の短期市場において何が困ると申しますと、コールだって(これは今に始まった事ではないけど)別に資金の調達としての指標金利になっているとも思えませんし、短国セカンダリーに至ってはお察しの状況となっておりまして、CPはCPで殆どがほんのちょっとマイナスからほんのちょっとプラスで多くがゼロ利回りに収斂とか、短期市場の指標金利とは何ぞやと言われると各市場の金利は分かるのですが、指標は無いんですよね・・・・・・・・・・


・短国ェ・・・・・・・・・・

6M短国
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161207.htm

(3)募入最低価格 100円17銭6厘(募入最高利回り)(-0.3523%)
(4)募入最低価格における案分比率 46.9028%
(5)募入平均価格 100円18銭0厘(募入平均利回り )(-0.3603%)

先週の3M短国が▲33.30/▲34.80ですし、先月の6M短国が▲29.47/▲30.46でして、順調に年末モードで金利が低下しているのですが、(引けは▲37.9だから堅調堅調)この調子ですと今日の3M短国の具合によっては今週の短国買入もせいぜい1兆円位しか入れられなくなる懸念が出てきますな。まー元々それだけ日銀が買い過ぎていたので、短国買入は減らした方が良いんじゃないのとしか申し上げようがないのですが、12月という帳尻時期にこの需給というのは(12月だから締まるのは順当とは言え)さてどうするんでしょうと気になる所です。


○置物師匠の金懇挨拶も遂に・・・・・・・・・・・・・・・

師匠キター!
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161207a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
─ 長崎県金融経済懇談会における挨拶 ─


・正直3回連続で事務方の作文見せられるとげんなりするんだが

ということで師匠キターと盛り上がっていた(というのは大嘘で、以下の感想が発生するのではないかと最初から懸念しておりましたので全然盛り上がる気が無かったというのが事実)のですが、この金懇挨拶の原稿がもう思いっきり直近2回の金懇と同じ話な上に壊滅的なのはオリジナルな見解(まあゆうて前の2回にはそういう部分もありました)が全然出て来ないと(しいて言えば1か所だけ)いうこの想定原稿棒読み挨拶状態になっていること。

いやですね。「現在行っている金融政策についての解説」とか「日本銀行が中心的な見解として示している経済物価情勢の見方」という話だったら別に金太郎飴になるのは一向に構わないと思うのですけれども、それ以外のオリジナルな話とか、現在の政策はこのようなロジックで行っていますが、このような場合はどういう風に考えるべきでしょうか、みたいなものの考え方については政策委員会の各委員の方々がそれなりのビューを持っている筈で、そういうビューがどうなっているのかというのを公式の場で示して行くことによって、今後日銀が経済をどのように見ていくのか、その結果として金融政策がどのような形になっていくのか、というのをワシらも色々と考えてくし、そこでインタラクティブな議論が起きればまた有益ではないでしょうか、などと思うのですよね。

然るに、今回の置物大師匠の金懇挨拶って何ら師匠のオリジナリティが無いという状態で、就任当初から1年半程度(だったかな)は物凄く訳のわからないオモシロ理論を駆使した大変に素敵な置物リフレ理論を展開しておられたというのに、こんなんだったら壇上に木彫りの熊でも置いて事務方の誰かが説明した方が却って親切なのではないかという気がしますけどねえ。


まあ一万歩譲って執行部の1名だから執行部の話を淡々とするんです、という理屈も分からんでもないですけれども、基本的に岩田さんの場合は外部登用されている人なんですし、他の審議委員の方々におかれましても然りなのですが、日銀のガバナンスを行う機関でもある政策委員会(役員会ですから)が事務方の振り付け通りに踊ってそれで良しというのは、それこそコーポレートガバナンスコード的に如何な物かと思うのですよ。いやまあこの話が岩田さんの理論を全面的に取り入れた~こういう話になる、というのならこれはこれで順当という話ですが、どこからどう見ても岩田さんの理論を盛り込んでみたものの思うように効いてこなかった結果として変わった訳ですから、総括検証の説明とかこの後にあるのですが、岩田さんの唱えていた理論のどこがワークしなかったから現在に至る、という点への所感や、理論のどこに間違いがあったかというような話を虚心坦懐にして頂かないと、何のためにこれだけの政策をやったんだという話になりますがな。


・ということで正直読むところは無いのだが総括検証の説明部分にオリジナルなレビューが無いとは呆れる

『(1)総括的な検証』から。

『「総括的な検証」の内容は多岐にわたりますが、ここでは、私が特に重要だと考えるポイントを3点述べさせて頂きます。』

まあ以下事務方の作文ではありますが。

『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果についてです。導入以降の3年あまりで、わが国の経済・物価は大きく好転し、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなりました。企業収益は過去最高水準となっており、失業率も3%まで低下するなど、ほぼ完全雇用に近い状態にあります。こうした労働需給の引き締まりを背景に、賃金も緩やかに増加しています。デフレのもとで、長年途絶えていたベースアップも復活し、3年連続で実施されました。金融市場では、過度の円高は是正され、株価は大きく上昇しました。日本銀行の金融緩和が景気回復に大きな効果をもたらしたことは確かだと思います。


消費増税前の駆け込みとか増税前の財政とかそもそもの景気サイクル的な話はスルー。

『今回の検証で示した通り、予想物価上昇率は、2013 年 4 月の「量的・質的金融緩和」の導入後、2014 年の夏にかけて大きく上昇しました。さらに、2014年 10 月の「量的・質的金融緩和」の拡大は、予想物価上昇率の下支えに効果を発揮しました(図表8)。これらの事実は、「量的・質的金融緩和」のもとでのマネタリーベースの拡大と「物価安定の目標」に対するコミットメントが、金融政策レジームの変化をもたらすことによって、人々の物価観に作用し、予想物価上昇率の引き上げに効果をもたらしたことを示しています。』

これも最近の理屈だが、元々の岩田さんの理論と比較してどうなっているのかの考察は皆無。

『第2に、こうした経済・物価情勢の好転にもかかわらず、2%の「物価安定の目標」が達成できていない主な理由は、金融政策レジームの変化によって一旦は大幅に上昇した予想物価上昇率が再び低下してしまったためだということです。』

それはそもそも一旦大幅に上昇した予想物価上昇率というのの理由が金融政策レジーム変化によるものでは無かったという可能性があるのではないでしょうか。

『「量的・質的金融緩和」導入後、2014 年4月には消費者物価指数の前年比は+1.5%まで達し、予想物価上昇率も着実に上昇していましたが、その後、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、原油価格の下落、世界経済の減速と国際金融市場の混乱等により、実際の物価上昇率が低下する中で、予想物価上昇率も横ばいから低下に転じてしまいました。長年にわたるデフレにより、わが国の予想物価上昇率の形成には、過去の物価上昇率に引きずられる「適合的」な傾向が強くあります。先行き、2%の「物価安定の目標」を実現するためには、より強力な方法で予想物価上昇率をもう一度引き上げる必要があります。』

結局「あれだけの政策をやってもフォワードルッキングな期待形成の変化が出来なかった」ということであり、MBを何十兆円増やせばインフレ率がこれだけ上がるというような式を散々出していたリフレ理論との差分についての考察を賜りたい。

『第3に、長期国債の大量買い入れとマイナス金利の組み合わせにより、中央銀行がイールドカーブ全般に強い下押し圧力を加えることができると分かったことです。』

という話をしていて、以下どうでも良いので引用を割愛しますが、少なくとも他の政策委員とは違って、岩田さんにおかれましては「リフレ政策理論」を引っ提げて「これまでの白川ドクトリンを石もて追い出すような事をおこなってまで」副総裁に就任してそのリフレ理論を元に政策を実施したのですから、当時の理論と現在の認識の差分についてより詳細に説明すべきではないかと思うのに、ただの通り一遍な話だけされても何のためにあんさん存在しているのよとしか申し上げようがない。


・あいかわらず「量」については発言していますが

『(2)長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策』の所もまあただの説明しかしていなくて、学者様らしい何かこう高級な理論でも展開してくれればありがたいのですが、そもそもがマネタリーベース直線一気理論と日銀罵倒を芸風にしていただけにそういうのを期待するだけ無駄というものです。

『この点、新しい政策枠組みのもとでも、マネタリーベースは将来にわたって拡大を続けることを改めて強調しておきたいと思います。「イールドカーブ・コントロール」のもとでの長期金利の操作は、日本銀行が多額の国債買入れを行うことではじめて実現できるものです。また、「オーバーシュート型コミットメント」では、消費者物価指数の前年比の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束しています。』

どこかで見た説明。

『その意味では、新たな政策枠組みについて、一部にみられるように「政策の軸足を『量』から『金利』にシフトするものである」との理解は適切ではありません。』

唯一置物大師匠のオリジナリティが出たのはここだけでして、上記のようにご説明なのですが、政策のディレクティブは金利になっておりますので、政策の軸足は「量」から「金利」になっているんですよねー。ただし、オーバーシュート型コミットメントがあるから量の総体は減らさないという事。

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」導入以降、一貫して「量」と「金利」の両面から強力な金融緩和を推進してきており、この点に全く変化はありません。』

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで強力な金融緩和を進めていきます。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%に向けたモメンタムを維持するために必要と判断すれば、躊躇なく、追加的な金融緩和をすべきと考えています。』

まあ何ですな、本当は「大規模資産買入付長短金利操作政策、おまけにマイナス金利有り」という政策に今はなっているのですが、そこは転換したとかいうと敗戦だのリフレ理論の誤りだの色々とやかましくいう有象無象が発生するので(オマエモナーというツッコミは馬耳東風)、このQQEが主語になる謎現象はまだ続くでしょうね。


・会見がちょっと面白そうですね

ロイター
http://jp.reuters.com/article/iwata-boj-ycc-idJPKBN13W0IX
Business | 2016年 12月 7日 16:04 JST
よい金利上昇なら長期金利目標引き上げ、国債買い入れ減額も=岩田日銀副総裁

何かヘッドラインを見ると色々とオモシロヘッドラインが出ていまして、正直政策インプリケーションなんぞは全くない(そもそも市場が反応していない)のですが、お笑い劇場として面白そうなので本日の会見要旨を楽しみにしたいと思います(そしてECBか・・・・・・・・)









2016/12/07

お題「10年5bpなのでメモメモ/ダドリー講演は財政の連呼と利上げ予告ホームランは把握した」

あらま
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161207/k10010797611000.html
米 偽の記事「フェイク・ニュース」信じた男が発砲
12月7日 4時38分


○一応メモメモ

・CP買入

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161206.htm
CP等買入 10,366 4,497 -0.004 -0.002 23.6

12月前半なのでCP発行はそこそこある時間帯につきまだ札がある感じですが、まあ年末になってくると発行する方が動かなくなって来るので、この先を意識すると金利は低下するんですかねえ、よー知らんけど。


・ところで適切なイールドカーブとはどうなっているのでしょうか

またロイターで恐縮ですが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1E126F
Markets | 2016年 12月 6日 15:23 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利0.050%に上昇

『<15:19> 国債先物は反落、長期金利0.050%に上昇

長期国債先物は反落。前場は流動性供給(残存15.5年超39年未満)入札を前にした調整がみられたが、入札低調を確認した後場は下落幅を一気に広げた。現物債は超長期・長期債利回りに強い上昇圧力がかかった。先物同様に入札結果が低調だったことが強く影響し20年債、30年債、40年債の各超長期ゾーンの利回りは11月25日以来の高水準に上昇した。長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比21銭安の150円39銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2.5bp上昇の0.050%と2月18日以来の高水準を付けた。』(上記URL先より)

何か下がった時の印象が強いからなのかも知れないですけれども、30年は8000億円で20年は1.1兆円入札やっているのに割と動かない中で4000億円の流動性供給の結果が流れると動くという事案をちょくちょく見る気がするのは気のせいですかそうですか。

ということで昨日の引け(例によってカレントの単利で恐縮ですが)

12/6

2年:▲0.190%
5年:▲0.100%
10年:0.045%
20年:0.500%
30年:0.625%
40年:0.730%

9月MPM直前の水準はこちら。

9/16

2年:▲0.270%
5年:▲0.205%
10年:▲0.040%
20年:0.450%
30年:0.555%
40年:0.640%

9/20

2年:▲0.270%
5年:▲0.210%
10年:▲0.060%
20年:0.405%
30年:0.505%
40年:0.585%

まあ何ですな、「10年金利が概ね0%程度で推移するように」というのと、「9月総括検証時点では概ね現在のようなイールドカーブ」という話をしていますので、10年金利が5bpとかになってもそらまあ「概ね0%」(声明文でCPIの表現をするのに▲0.2%までは「ゼロ近傍」で▲0.3%になると「小幅のマイナス」になるので、日銀文学の表現だと「概ね0%」は別に5bp程度程度では全然逸脱しているという話にはならないと思う)になると考えますと、10年が10bp弱金利上昇したのだから超長期の金利も同じような程度か若干高い程度に金利が上昇しても「イールドカーブの形状は似たようなもん」と言い張ることが出来るのではないかというのが最近の水準。

でまあどうも円安株高が続いている分には日銀ニヨニヨしながら状況を放置プレイのようですし、別に超長期の金利が少々上昇しても為替市場が反応しないのならそのままニヨニヨとしているという風情が思いっきり漂っておりますが、たぶん10年の金利という事になりますと、さすがに他市場の皆様におかれましても「10年金利が概ね0%程度」というのだけは大いに認知されていますし、(ホンマカイナというのは思いっきりありますが)「日本が金利を押さえつける中で海外の金利が上がるので為替に効く(ので金融政策は一層の効果で日銀ウハウハ)」というストーリーになっておりますので、10年金利がこの調子でホイホイ上昇した場合に他市場(というか為替)が日銀の金融政策運営に関する注目を入れてきたりすると日銀マズー。

って全部為替ではないか、という話ですが、何せ昨日までネタにした「なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?」でも原油がどうのこうのゆうてましたが、最後の方に思いっきり『換言すれば、中央銀行の掲げるインフレ目標が「信認」され、2%の物価上昇が既にノルムとして経済社会に定着している欧米諸国と異なり、わが国では、QQE 導入以降も、インフレ目標によって規定されるフォワードルッキングな期待が実際の賃金・物価形成に与えた影響は、限定的なものにとどまった可能性が高い。』とあって、結局のところ適合的な期待形成に頼らざるを得ないというお話になって、それってつまり円安効果で物価を上げることによって適合的な期待形成に働きかける方が効果見えるでしょうってことですから、そらもう物価目標に向けて期待インフレを上げていきたいとなったら円安でしょ円安。


話は飛びますが。まー前回はその適合的な期待形成によるインフレ期待の上昇ってのが結局上手く行っていなかったのですが、まー前回の場合は消費増税という一大攪乱要因があったので、今回は為替ショックで物価を上げた事によって適合的な期待形成を促して、それがフォワードルッキングな期待形成につなげられるか(円安ショックで物価上昇というのは持続的にするのは無理だから)というQQE理論最後の実験となるんでしょうなあというか、今回ダメだったらどうしようも無いんですけどそれはというお話なので、あまり目先の円安でニヨニヨしている場合でもないと思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・



○遅れましたがダドリー講演

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2016/dud161205
The U.S. Economic Outlook and the Implications for Monetary Policy
December 5, 2016
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at the ABNY Breakfast with William C. Dudley, The Roosevelt Hotel, New York City

・最近は金融と財政のコラボ言うのが流行なのですかねえ

まずは最初の方から。

『The U.S. economy-supported by solid gains in household spending?has expanded at a moderate rate in 2016. Job gains have been sturdy, and we have seen some firming in wage growth as the labor market has continued to tighten. Moreover, as the effects of earlier declines in energy prices have dissipated, the overall inflation rate has begun to move up closer to our 2 percent objective. As a consequence, economic conditions are not far from the Federal Reserve’s dual mandate of maximum sustainable employment and price stability.』

「economic conditions are not far from the Federal Reserve’s dual mandate of maximum sustainable employment and price stability」とはまた威勢の良い事で。

『And, I expect that we will make further progress toward these goals in 2017. So, from a cyclical perspective, the economy is in reasonably good shape.』

と循環的にはreasonably good shapeなんですと。

『Over the longer term, however, the U.S. economy faces significant challenges.』

構造ネタキタコレ。

『On the positive side, economic expansions don’t die of old age, and there appear to be few imbalances in the economy that could lead to the current expansion ending. But, in order for this to remain the case, it is important that fiscal policy and monetary policy are well aligned going forward.』

と思ったら金融と財政の話でして、

『It is also important that the United States retains sufficient fiscal capacity so that fiscal policy can support the economy when the next cyclical downturn does occur. If fiscal policy can play a greater role in promoting macroeconomic stability, it would likely reduce the need for monetary authorities to take extraordinary actions to support economic activity.』

経済の下振れに対応するのに財政政策を経済安定化により重要な役割を果たす事になるのなら、金融政策でハチャメチャな緩和をする必要が弱まるのではないか、というお話をおっぱじめていまして、最近はこの話が中央銀行界隈の流行ストーリーなのかよという所ですが、これってマクロ安定化政策における金融政策の限界を中銀が思いっきり認めているという話であって、金融政策と財政等の経済政策の政策割当的な話がこれまで(と言ってもインフレターゲットとかあの辺りからの話だと思うが)使われるストーリーだったと
思いまするにだいぶトーンが変わってきましたなあと。

『There are other structural issues worth noting. In particular, productivity growth has been anemic over the past few years, while income inequality has increased and income mobility remains low. As a consequence, the gains in living standards generated by the current business expansion have been modest compared to previous expansions, and these gains have not been widely shared. Much more could be done both locally and nationally to increase the economy’s potential to perform better for a broader array of our citizens.』

生産性の向上などの経済構造の改善の話もしておりまして、金融政策でやったるでーというトーンは今回のダドリー先生の講演にはあまり強くない、というのが今回の特徴。まあバイアスとして金融政策正常化というのがあるからそうなるのは当然ちゃあ当然かもしれませんけどね。


・経済見通しはまあ普通に強気というか

『The Outlook for Growth and Inflation』の所ですが。

『The U.S. economy has been expanding at a moderate rate. Growth has averaged about 1.8 percent this year and seems likely to continue at or slightly above this pace in 2017. The main driver of growth in 2016 has been the consumer, as real personal consumption expenditures have increased at a 2.9 percent annual rate during the first three quarters. This solid consumption growth has been supported by sturdy job gains and rising nominal wages.』

てな話ですからここからは賃金の所が重要ポイントでしょうな、つーか先週の雇用統計でも賃金の所皆さんで注目していたと思いますけど。

『Payroll gains have averaged about 180,000 per month this year. While this is down somewhat from 2015’s monthly pace of nearly 230,000, it is still considerably higher than the 75,000-110,000 monthly pace consistent with the likely long-term growth in the labor force. And wage gains, while still relatively muted, have begun to rise more rapidly as the labor market has continued to tighten.』

でもってコンポーネント別の話は飛ばしまして物価について。

『With respect to inflation, we are making progress in pushing toward our 2 percent objective. In particular, headline inflation has risen this year as the earlier declines in energy prices have dropped out of the year-over-year figures. And, core inflation has remained broadly steady, running at 1.7 percent over the past year-as measured by the personal consumption expenditures deflator that excludes food and energy.』

威勢の良い方の数字を出している辺りが味わい深い。

『This stability is noteworthy, because one might have anticipated that lower energy prices and a firmer dollar would have pushed core inflation a bit lower. Also, household inflation expectations-which at times in 2015 appeared to be at risk of becoming unanchored to the downside-have been broadly stable. The University of Michigan long-term inflation expectations measure has generally remained in the 2.5-2.8 percent range of recent years. In addition, the New York Fed’s Survey of Consumer Expectations measure of 3-year median inflation expectations has stabilized in 2016 in a range of 2.5-2.8 percent, after declining modestly over the course of 2014 and 2015.』

とまあ家計のインフレ期待は安定しているとか、エネルギー価格が弱めでドルが上がってもコアインフレが安定していることを評価したりと威勢が良いです。


・でもって金融政策

『Implications for Monetary Policy』の小見出しである。

『If the economy grows at a pace slightly above its sustainable long-term rate, as I expect, the labor market should gradually tighten further, and the resulting pressure on resources should help push inflation toward our 2 percent objective over the next year or two.』

威勢がよろしい。

『Assuming the economy stays on this trajectory, I would favor making monetary policy somewhat less accommodative over time by gradually pushing up the level of short-term interest rates.』

予告ホームランですが、この次の部分が中々。

『Following this year’s election, we have seen relatively large movements in financial asset prices. In particular, the stock market has firmed, bond yields have risen and the dollar has appreciated. On balance, it appears that financial market conditions have tightened modestly.』

ドル高と金利上昇でトランプ相場は金融環境を緩やかにタイト化させたのですが・・・・・・・・・

『 My personal interpretation of these developments is that market participants now anticipate that fiscal policy will turn more expansionary and that the FOMC will likely respond by tightening monetary policy a bit more quickly than previously anticipated.』

ほうほうそれでそれで?

『Assuming this expectation is realized, the recent modest tightening in financial market conditions seems broadly appropriate.』

キタコレ!ということでいつもだとちょっと金利が上がると「金融環境がタイト化した」というだけのコメントをして市場がFED腰砕けヒャッハーとかいうのですが、今回は足元の市場変化は金融市場の期待通りに今後政策が進むのであれば、という留保条件が思いっきりついているけれどもappropriateというお言葉が出て来るのが味わいがあります。

『Let me emphasize here that I do not view the recent shift in financial market conditions as one that should prompt great concern. It is important to distinguish between a tightening of financial conditions that is driven by an increase in risk aversion from one that is driven by a greater likelihood of stronger near-term aggregate demand and less downside risk to the growth outlook. We experienced the former at the beginning of 2016, while the latter reflects current expectations of greater fiscal policy stimulus.』

金利が上がったりドルが上がったりするのが毎度良くない話ではなくて「その背景が重要」とか言い出すのはだいたい中銀の下心があるときの物言いとして良くあるパターン。

『Obviously, there is still considerable uncertainty about how fiscal policy will evolve over the next few years. At this juncture, it is premature to reach firm conclusions about what will likely occur. As we get greater clarity over the coming year, I will update my assessment of the economic outlook and, with that, my views about the appropriate stance of monetary policy.』

ということで当然ですが実際にトランプ政権が何を始めるかを見てから経済物価見通しや金融政策スタンスを考えていきましょうというお話。


・低金利となる環境下における財政政策の話がまた登場

次の小見出しが『Monetary and Fiscal Policy in a Low-Rate Environment』ですが・・・・・・・・・

『I also would like to highlight the limitations of monetary policy.』

ほう。

『One important factor contributing to such limits is that the real short-term interest rate consistent over the longer run with a neutral monetary policy stance appears to be very low, and is expected to remain so for some time. This has been helping to keep real inflation-adjusted interest rates lower than they have been historically.』

ゼロ金利制約の問題と来れば・・・・・・・・・

『In part, this reflects anemic productivity growth as well as the slowing of labor force growth due to the aging of the population. An implication of this environment is that there will likely be less scope than there has been historically for the Federal Reserve to cut interest rates when needed in the face of an economic downturn. All else equal, this means a greater risk for short-term interest rates to be pinned at their effective lower bound and for inflation expectations to become unanchored to the downside. Although forward guidance and large scale asset purchase programs have expanded the ways in which the Federal Reserve can provide additional accommodation, these unconventional monetary policy tools also have their own limits.』

生産性の伸びが弱いとかその手の構造問題で潜在成長が弱くなっている中で金融緩和政策の緩和効果が下がりますし、インフレ期待の下方屈折に対する力も弱くなるとか、まあ正常化政策やっているから言える話ではあるのですが、日銀にはションボリですなあ。

『These limits suggest that fiscal policy may need to play a greater role in stabilizing the economy than has been the case in past decades.』

ということでまた財政の話キタコレになるのだ。

『What I have in mind here is putting in place stronger, more robust automatic fiscal stabilizers that would provide income support during economic downturns.』

『By reducing fluctuations in disposable incomes, these types of fiscal actions would stabilize aggregate demand, thereby limiting the risk of monetary policy getting pinned at the zero lower bound for an extended period and the need for extraordinary monetary policy measures.』

理屈はわかるがどういうビルトインスタビライザーを想定しているのやら。

『I favor automatic, rather than discretionary, fiscal actions because they would typically go into effect more quickly and would be better anticipated. Expectations matter greatly in affecting economic behavior. For example, if the economy were to weaken, the anticipation that strong fiscal stabilizers would kick in to support incomes should lead workers to be less fearful about losing their jobs, and businesses to be less concerned that demand for their products might fall precipitously. This, in turn, would make workers more confident that they could sustain their spending, and would make businesses more confident that they could keep workers on their payrolls.』

うーん具体的にどうなるのかのイメージがイマイチ分からん。

『What type of fiscal stabilizers would be most effective? I would turn first to those that Congress has implemented on a discretionary basis during past economic downturns, such as extensions of unemployment compensation and cuts in payroll taxes. For example, when the unemployment rate climbs, extensions of the duration of eligibility for unemployment compensation could be triggered automatically, helping to stabilize household income. Similarly, when the unemployment rate breaches certain thresholds, payroll tax cuts could be triggered, helping to support the disposable income of workers facing reductions in hours. Payroll tax cuts also have the advantage of skewing more toward low- and moderate-income workers, who typically have a higher propensity to consume out of current income.』

裁量的ではない自動的なビルトインスタビライザー機能を財政に求めるという話をこの辺ずーっとしていまして、この後も何で必要なのかという話をしている(その次に構造改革の話をしていますが以下割愛します)のですが、これってまあ理屈としては分かるのですが、インフレーションターゲッティング政策がオートパイロットで行けるというような話に通じる気がするのでして、オートパイロット的な政策運営って理屈の上ではワークするし、裁量を極小化するというのはフォワードルッキングな期待形成に対して効くのでそれ自身が安定化に資する的な話があるのですが、そういう単純なものではないし、長期的にそういうオートパイロットがサステイナブルにワークすると考えるのはちょっと理屈が先に走り過ぎなのではないかと思う。

ただまあこの「低金利環境のようなときには金融政策だけではなく財政政策」というのは最初の所でも申しあげましたように中央銀行今の謎の流行ワードになっているようですので、まー金融政策で何でもやったるワイ主役は金融政策だぜヒャッハーというのから話は変わってきますなあというのは把握した、という所かなあと思いましたけれどもどうでしょうかねえ。


2016/12/06

お題「総括検証シリーズの続きだがいろいろ面白い(ワシの頭が悪いからちゃんと読めていない懸念はある)」

本当はダドリー講演を寝起きでヘロヘロ斜め読みしていたのですが、そっちをせっせと読んでいたら残り時間が足りなくなってしまうという寝ぼけにも程があるプレイになってしまいまして、総括検証シリーズの続きネタで勘弁。

○その前に昨日の訂正です(すいません)

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/juqp1612.htm/
日銀当座預金増減要因(2016年12月見込み)

えーっとこちらにありますように、今月の短国償還は6.18兆円でして、その数字見て慌てて計算し直したら今月の短国償還の額面(日銀保有銘柄から計算)は6兆1817億円でして償還順に(630、612、632、634、577、635)の各回号でして、計算違ってましたすいませんすいません。

でもって話が戻りますと、先月末の日銀保有短国残高が42.88兆円になっていまして、今月の短国買入に関しては

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について


『3.国庫短期証券の買入れ
金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、概ね現状程度の残高を維持する。この結果、12月末の残高は41〜43兆円程度になると見込まれる。』

としているので、一応2兆円近くまで買入が減るのは織り込み済みだったと思うのですが、今月4回短国買入が実施される(受け渡しベース)中で1回目が5000億円しか買えていないので、今月の買入を4兆円にするとしても残り3回で3.5兆円買うとか中々ギリギリ感がただよいますな。基本的に短国買入に関しては札があるのかどうかは事前にヒアリングとかして確認しておかないと、全然在庫の無い時に買入を突撃するととんでもないレートまで買いに行かないと行けなくなる(ショートセールして買入に入れる訳に行かないので)から、需給が年末の為替ファンディングの裏側で非常に強くなっているので、月末にガイダンス対策でとんでもないレートまで買いに行く破目になるのか、それとも買入残高41兆円は届かないで終わるか(正直40兆円台とか国内が全然買っていない状態まで追いやっている状態なので、もっと減額しないと市場もへったくれもあったもんじゃない、と思う)という話。

でまあここで月末のマネタリーベースの着地を積み上げで計算して短国の買入をどこに持って行くと帳尻になるとか(と言っても貸出関連があるけど)計算するとお洒落なのですが、そこまで計算して数字を確認しているヒマがあまりないので勘弁ということで。


○総括検証関連

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j13.pdf
なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?
――時系列分析による検証――

つーことで昨日の続き。

『3.実証分析結果 』からですな。『(1)インパルス応答 』という所から。

『推計した VAR に基づくインパルス応答の結果は、図表 4〜7 に示されている。』

図表貼れないので上記URL先から見てちょ。

『図表 4 は原油価格ショックが各変数に及ぼす動学的影響、図表 5 は為替レートショックが各変数に及ぼす動学的影響、図表 6 は需給ギャップショックが各変数に及ぼす動学的影響、図表 7 はインフレ固有ショック(inflation-specific shock)が各変数に及ぼす動学的影響を示している。』

ということで、昨日も申しあげたとおりで、インフレ期待ショック(があるのであれば)に関しては3つの要因で計算された影響の残差項目で扱われています。それが図表7のインフレ固有ショックですな。

『その際、各ショックの大きさは全て 1 標準偏差であり、原油価格、為替レート、需給ギャップの反応はレベルで、消費者物価の反応は前年比に換算して図示している。実線が推計されたインパルス応答、シャドーは 90%の標準誤差バンドである。』



・原油価格の影響

『 まず、原油価格の影響をみると(図表 4)、原油価格の上昇ショックは、需給ギャップの改善をもたらすとともに、消費者物価の上昇率を 2 年程度に亘って統計的に有意に押し上げている。ここでは、原油価格変動の背後にあるメカニズムに関し、需要要因か供給要因かの区別を行っていない点に注意する必要がある。』

つまり・・・・・・・・

『原油価格の上昇が、主として新興国経済の拡大など需要要因によって生じているのであれば、直接的にエネルギー価格を上昇させるだけでなく、新興国向け輸出の増加を通じて需給ギャップを改善させるため、間接的にもインフレ率の押し上げ要因となり得る。一方、原油価格の上昇が、主として OPEC の協調減産といった供給要因によって生じているのであれば、交易条件悪化を通じて需給ギャップの悪化に繋がり、これは、やや長い目でみて、間接的にインフレ率にマイナスの影響を及ぼし得る。』

ということで、

『ここで推計した VAR のインパルス応答によれば、サンプル期間の平均でみると、前者の需要要因が後者の供給要因を上回り、原油価格の上昇ショックは需給ギャップの改善をもたらしている。以下で示すヒストリカル分解結果も、このインパルス応答に基づいて行っている9。』

ということなのですが、それってサンプル期間(1984〜2015)における原油価格上昇要因が主に需要要因(つまりグローバルに経済が成長していた)という話であって、たとえば以前原油価格が盛大に上がった時に白川総裁(当時)はこれによる物価上昇は中期的に見ればデフレ要因に成りえるというような見解を示していたような記憶があるんですけどねえ。

なお、脚注9に

『9 2014 年夏以降の原油価格の急落について、需要と供給のどちらの要因が大きかったかは実証的に非常に重要な論点ではあるが、本稿の分析の射程を超えているため、ここでは立ち入らない。この点に関する分析は、例えば Baumeister and Kilian (2016)を参照。』

とありまして、まあこの点については今回スルーしているのですが実際は・・・・・・的なニュアンスを感じる味わいの深い記述になっています、というか書かないとちと肝心なところをスルーして何の言及もないとは何ですかとなるでしょうから書くのは良いお話。



・為替レートと需給ギャップの影響

『次に為替レートの影響をみると(図表 5)、円安ショックは、需給ギャップの改善をもたらすとともに、消費者物価にも有意で持続的なプラスの影響を及ぼす。』

さいですな。

『需給ギャップの影響をみると(図表 6)、フィリップス曲線が示唆するとおり、需給ギャップの改善は、消費者物価に対し有意なプラスの影響を及ぼしている。仔細にみると、正の需給ギャップショックの発生後、需給ギャップ自身は 2〜3 四半期後、消費者物価の前年比は 5〜6 四半期後にピークを迎えるコブ型(hump shape)の反応を示しており、インフレ率は需給ギャップにラグを伴って反応している。』

となっていまして、まあ需給ギャップはそら順当ですが、為替レートの所が非常にあっさりとこういう説明になっていて、円安によるコストプッシュの物価上昇って中期的に見た場合にデフレ的に働いて来るという面はネグって良いという事なのか??とは思うのですが、まあそこは華麗にスルーというのが為替効いてるで〜というメッセージを受けますな、うんうん。


・インフレ予想の部分については「期待に対して効いていたかどうか」について

『最後に、インフレ固有ショックの影響についてみると(図表 7)、プラスのショック発生後、消費者物価の前年比は 1 年程度、統計的に有意に押し上げられたあと、比較的速やかにゼロ%程度に収束していく10。』

でまあこちらの脚注10ですけれども、

『10 なお、インフレ固有要因にプラスのショックが発生すると、為替レートが円高化するとともに、需給ギャップが(統計的に有意でないにせよ)若干悪化しているのは、サンプル期間の平均でみれば、金融政策がインフレ率の外生的な上昇に対し引締め方向に反応していた可能性を示唆している。』

ということでこれがまた1984年〜2016年の期間での時系列分析になっているのですが、では今回に関してはここをどう示しているのかというのはこの次の図表9の所にある(後で出る)。

『このインフレ固有ショックは、原油価格や為替レート、需給ギャップでは説明できないインフレ率のショックを表している。これには、例えば、制度要因を背景とする公共料金の価格変更などに加えて、外生的なインフレ予想の変化(例えば、インフレ目標引き上げによるフォワードルッキングなインフレ予想の上昇)も含まれると考えられる。』


・さらに分析は続く

『(2)識別されたショックとヒストリカル分解 』から。

『図表 8 では、見通しを用いて推計した VAR で識別されたショックと、実績値を用いて推計した VAR で識別されたショックを比較している。まず、原油価格ショックをみると、見通しでは、ショックの発生をほとんど見込んでいなかった一方、実績では、2014 年夏以降の原油価格の急落局面において、負のショックが連続的に発生したことが確認できる。この間に発生した負の原油価格ショックの規模は、過去のショックと比べてもかなり大きめであり、かつこれほど多くの頻度で負のショックが発生し続けた局面は過去には観察されない。』

これは展望レポートで示している見通しとの比較の話です。

『次に、為替レートショックをみると、原油価格と同様、見通しでは大きなショックの発生を見込んでいない。実績をみても、QQE 開始から 2014 年央まではさほど大きな為替レートのショックは発生していないが、2014 年 10 月の QQE の拡大後には、比較的大きな円安ショックが発生している。もっとも、2015 年夏以降は、新興国経済の減速が明確となり、それに伴い国際金融資本市場も不安定な動きとなるもとで、相応の規模の円高ショックが連続的に発生したことがわかる。』

基本為替は横で置いているからそうなる。

『需給ギャップショックをみると、見通しでは大きめのアップダウンが観察されるが、これは、主として、見通し作成時点で予定されていた 2014 年 4 月と 2015年 10 月の 2 回の消費増税前後の駆け込み需要と反動に対応している。実績をみると、2014 年初までは概ね見通しに沿った動きとなっているが、消費増税直後に当たる 2014 年後半の戻りが、見通し対比やや弱めとなっているうえ、2015 年には、消費増税が実際には延期されたにも拘わらず、やや大きな負のショックが発生している。』

はいはい消費税消費税。

『最後に、インフレ固有ショックをみると、見通しでは、2015年度末にかけて、正のショックが連続的に発生することが見込まれている。これは、政策委員見通しが、QQE 導入に伴う「金融政策のレジーム変化」を受けて、見通し期間中、フォワードルッキングなインフレ予想が段階的に切り上がっていくと想定していたと解釈される11。』

想定と言うよりは願望あるいは置物理論ですけどね、なお脚注は、

『11 仮に、「金融政策のレジーム変化」によって、予想インフレ率の恒常的なシフトアップが起こり、その後、十分に時間が経過しているのであれば、VAR は、サンプル期間のある特定の時点以降、インフレ率の定数項に構造的な上方シフトが生じていると定式化して推計すべきであろう。もっとも、QQE 導入以降、さほど時間が経過しておらず、それによる構造変化の有無を検出するのに十分な時系列データが揃っている訳ではないため、本稿では、QQE 導入によってインフレ予想のシフトアップが起きたのであれば、それはインフレ固有要因における連続的な正のショックとして現れてくると考えている。』

とありまして、全然そうではないですわな。

『実績をみると、2013 年中は、ほぼ見通しどおり正のショックが発生しているものの、2014 年入り後は、見通しと異なり、大きめの負のショックが発生したことが確認できる。2015 年前半には再び正のショックが発生したものの、後半には再び大きめの負のショックが発生している。』

ということで。


・政策委員会の見通しを(無理やり気味だが)要因分解するとこうなるという話

『以下では、見通しの値を用いて推計した VAR に基づき、消費者物価のヒストリカル分解を行う。これは、QQE 導入当初、日本銀行の政策委員見通しがどのようなメカニズムで消費者物価が 2%に向けて上昇率を高めていくと考えていたかを、定量的に表したものに相当する。』

鉛筆なめていた人もいやまあ何でもありません。

『結果をみると(図表 9(1)@)、政策委員見通しは、@需給ギャップの改善は緩やかにインフレ率を押し上げていくとみていたこと、A原油価格は、既往の下落ショックの影響が見通し期間前半に若干残るものの、その後はそれが剥落するとみていたこと、B2012 年末から 2013年初にかけて進行した大幅な為替円安が、かなり持続的にインフレ率を押し上げるとみていたこと、C為替円安と並んで、インフレ固有の要因も、持続的な物価押し上げ要因になると見込んでいたこと12、がわかる。』

『前述のとおり、インフレ固有要因のプラスは、原油価格や為替レート、需給ギャップでは説明できないインフレ率の上昇を意味しており、これは、基本的に政策委員見通しがインフレ予想について相応の上昇を見込んでいたことを意味している。』


・一方の実績

『次に、実績値を用いて VAR を推計し、同様の消費者物価に関するヒストリカル分解を行う。結果をみると(図表 9(1)A)、@為替レートは、概ね見通しに沿って、押し上げ寄与を拡大していったこと、A原油価格は、見通しと大きく異なり、2014 年度後半以降、大幅な下押し要因として作用したこと、B需給ギャップの押し上げ寄与も、見通しと比べると小幅にとどまったこと、Cインフレ固有の要因は、2014 年末以降、見通しに反し、押し上げ寄与を大幅に縮小してしまったこと、が確認できる。』

ということですので・・・・・・・・・・・・・・


・その差分についての中で今回のハイライトがありますよ!!!!!

『図表 9(2)は、見通しと実績のヒストリカル分解の「差」を示したものである。』

ということで図表を見てちょ。

『2015 年度の消費者物価の前年比は、見通し対比−1.9%下振れている。このうち、約 5 割に相当する−1.0%ポイント程度は、原油価格の下振れによって説明可能である。それ以外については、1 割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3 割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因となっている。』

つまりインフレ予想への働きかけが当初の置物リフレ理論のようにワークしていないという事を示す。

『需給ギャップ要因の下振れは、主に 2014 年後半以降に生じている点を踏まえると、これは、主として、消費増税以降の消費の弱さを表している可能性が高い。』

その前の財政とか駆け込み需要とかを過大評価していた可能性は??

『他方、インフレ固有要因の下振れは、主として予想物価上昇率の下振れを表していると解釈される。』

しらっと指摘しています。

『QQE 導入当初、日本銀行政策委員は、中長期的な予想物価上昇率の先行きについて、「『量的・質的金融緩和』のもとで 2%程度に向けて次第に収斂していく」と想定していた(2013 年 4 月展望レポート)。実際の予想物価上昇率の動きをみると、「総括的な検証」に纏められているとおり、多くの指標は、2014 年夏まで順調に上昇傾向をたどっていたものの、その後横ばいに転じ、2015年夏以降は弱含みとなっている(日本銀行、2016)。』

ということですが、何か常に声明文では「全体としては上昇している」だった気がしますなあ。

『こうした予想物価上昇率の下振れがなぜ生じたかについては、「総括的な検証」(日本銀行、2016)や、その内容を補足説明した西野他(2016)において、別途、詳細な分析が行われているため、ここでは立ち入らないが、筆者らは、この間のベースアップ賃金の上昇ペースが想定以上に鈍かったことの影響が大きいと考えている。すなわち、わが国では、20 年弱に及ぶ長期デフレの中で定着してしまった、「物価は上がらない」という社会通念(ゼロインフレ・ノルム)は根強く、金融政策のレジーム変化が、実際の労使間の賃金交渉に及ぼしたプラスの影響も想定よりも小幅なものにとどまったと考えられる。』

キターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

『換言すれば、中央銀行の掲げるインフレ目標が「信認」され、2%の物価上昇が既にノルムとして経済社会に定着している欧米諸国と異なり、わが国では、QQE 導入以降も、インフレ目標によって規定されるフォワードルッキングな期待が実際の賃金・物価形成に与えた影響は、限定的なものにとどまった可能性が高い。』

置物リフレ理論による「当座預金80兆円でインフレ2%(途中から「期待インフレ2%」と誤魔化しだしていた筈)」というのは何だったのでしょうという事ですな。


インフレ期待引き上げに効果があったから置物リフレ理論の勝ちとかいう向きもありますが、政策にフリーランチはなくて、この程度しかインフレ期待を上げられないという状態なのに、政策で色々なフリクションを発生させて、将来の出口政策を極めて困難にする、というコストを払ってまでやる政策だったのか、他の方法でインフレ期待を徐々に引き上げて行けばよかったのではないか、という考察はまあ逆さに振っても出て来ないでしょうが、そういうのは無かったのかなあと思うのであります。


あと、インフレ予想の分析の方では今度は「適合的期待形成」の話をしているのだが、それとこの分析を合わせると循環論法チックになって、物価が上がらないからインフレ期待が上がらなくて物価が上がらないみたいな話になりゃせんかという気がするのだがどうなんでしょうかね。


・以下サラサラと引用しておきますがしらっとイイハナシダナーな気がする

『標準的なニューケインジアン型の粘着価格モデルでは、インフレ目標が 2%に引き上げられ、それが人々に完全に「信認」されれば、予想インフレ率は瞬時に 2%にジャンプし、実際のインフレ率も素早く 2%に収束する。実際にそのようなことが起きない理由として、インフレ目標が人々に完全に信認されるまでには相応の時間を要することを指摘した先行研究は幾つか存在する。』

うむ。

『例えば、De Michelis and Iacoviello (2016)は、QQE 導入以降のわが国の経済状況は、ディスインフレ政策が完全に信認されインフレが終息するまでにかなりの時間を要した米国のボルカー・ディスインフレーションのエピソードと類似していると指摘している。そのうえで、彼らは、こうしたわが国の状況を説明するモデルとして、Erceg and Levin (2003)に倣い、人々がインフレ目標引き上げによる「恒常的な」インフレ率の上昇と、「一時的な」インフレ率の上昇を完全に峻別出来ないこと(imperfect observability)を取り入れた、動学的一般均衡(DSGE)モデルを提示している。』

『また、Hausman and Wieland (2015)は、アベノミクスは、黒田(2013)や Romer(2013)が例に挙げた大恐慌時のルーズベルト政策のように、レジームチェンジ効果を持つと期待されたが、実際には、その効果は期待したほど大きくなかったとの見解を示している。そのうえで、彼らも、わが国で大規模な金融緩和にも拘わらず、予想物価上昇率が 2%まで上昇しない理由として、インフレ目標に対する人々の信認の問題を挙げている。』

しらっとお洒落な記述が。


・ということで最後の部分である

『4.結論 』である。

『本稿では、QQE 導入から 3 年余りが経過した後も、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「物価安定の目標」である 2%程度に到達しなかった背景について、定量的に検証した。『具体的には、VAR のヒストリカル分解の手法を用いて、消費者物価がどのような要因によって QQE 導入当初の日本銀行の見通しから下振れたのかを実証的に明らかにした。』


『2013 年4月時点の政策委員見通しについて幾つかの強い前提をおいたうえではあるが、分析の結果、2015 年度の消費者物価前年比の下振れ幅(−1.9%ポイント<見通し:+1.9%、実績:0.0%>)のうち、約 5 割(−1.0%ポイント)は原油価格の下振れによるものであり、それ以外については、1 割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3 割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因に起因することがわかった。』

『インフレ固有の要因は、需給ギャップや原油価格、為替レートでは説明できない消費者物価の下振れを意味しており、これは、予想物価上昇率の高まりが当初の想定に比べると小幅なものにとどまったことを表しているとの解釈を提示した。』

そもそも2%物価上昇をアンカーさせるには予想物価上昇率が2%にアンカーされないといけないので、この時点で政策が見込み通りワークしていませんでしたちゅう話なんですよねえ。

『 本稿では、時系列分析に耐えうる長期の四半期データが存在しないとの理由から、インフレ予想そのものを分析対象に含めていない。QQE 導入という「金融政策のレジーム変化」が、人々のインフレ予想、なかんずくフォワードルッキングな予想形成にどのような影響を及ぼし、これが実際の賃金・物価形成にどのような変化をもたらしたのかについて実証的に分析することは、今後に残された重要な課題である。』

ですです。という所ですが、アタクシ頭が宜しくないのでこれこういう風に解釈するのではとかいうのを色々と教えていただけると誠にありがたく存じます。




2016/12/05

お題「短国金利低下とな/櫻井さんはやはり櫻井さん/総括検証補足キタコレ」

ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161205/k10010795141000.html
極右の元首は誕生せず オーストリア大統領選
12月5日 1時51分

○短国ェ・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of161202.htm
国庫短期証券買入 5,000 2016年12月6日

ということで5000億円しか札がありませんかそうですかという短国買入でしたが、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba161202.htm
国庫短期証券買入 8,774 5,000 -0.059 -0.030 54.4

お、おぅ・・・・・・・・・・という感じですが、5000億円と買入の札を絞ってきた所ではあったのですが、応札がそもそも8800億円しか無いという時点で玉無し状態にも程があるのですが、落札も足切流れて強いという結果になりまして、物無し状態はそもそも分かっていたことではありますがまあこんな感じ。

でもって短国の引けは軒並み強くなりまして、大体▲20台前半から半ばというのが相場だった3M前後の短国ですが、既に▲30辺りが中心になっていまして、3M新発649回で▲39.2bpの引けになっていまいして、木曜の入札が▲34.08/▲33.30となってつえーとか思っておりましたが、そんな水準はとっくの昔に正当化という水準になっている上に、周りの銘柄にも別に売りが出る訳でもなんでもないというこの物無し芳一ということで、年末のドル円ベーシススワップがお洒落な状態になっておりますので、金曜の債券市場はJGBも短期だけ強くなるの巻とかにいますな。

ちなみに今月は(アタクシの計算間違いでなければ)短国の償還が5兆円弱(4.93兆円)ありまして、一応今月頭の予定

参考計数はこちらから
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/tmei.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

当面の長期国債等の買入れの運営について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdf

『金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、概ね現状程度の残高を維持する。この結果、12月末の残高は41〜43兆円程度になると見込まれる。』


となっていまして、12月は普通にやっていると短国買入が月内渡しだと4回打てるのですが、5兆の落ちだから1兆以上のオペ打ってこないと落ち分のカバーが出来ないという状態になっていまして、一方で上記のようにそもそも1兆円とかオファーできないという状況になっているので、短国買入の残高って今月も減りますなあという感じですかね。

つーてまあこれ短国買入そのものに無理がある残高という状態になっているので仕方ない面もあると思われますし、別に買入減っているからと言っても金利上げようとして買入を減らしている訳ではなく、単に買入が物理的に無理という状況なので、即ちこのような形での受動的な減額をしている分には単なる需給調整ということではあります。

でもってここのカーブが妙に低くなっているために、足元が▲20だの▲25だのという数字になっていまして(JGBの残存1年は今の所▲30から始まる)、ここが実際問題として▲10ではなくて▲30から始まっているから何となくカーブっぽく見えているというのもありますな。ただの感想だけど。


○櫻井審議委員の会見はまあ講演と同じようなもんです

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2016/kk1612a.pdf

・最近はこのパターンが仕様なのか????

冒頭の質問。

『(問) 2つ質問させて頂きます。1つ目は、本日の金融経済懇談会で地元の政財界から寄せられた話がどのような内容であったか、それを受けてどのような印象をもたれたかを教えて下さい。2つ目は、滋賀県内を視察されたと思いますが、滋賀県全体の経済・景気の現状をどう捉えているか、滋賀県の魅力は何か、先行きをどのように考えているか、お答え頂ければと思います。』

以下延々と滋賀県の話があるのですが、その次の質問が・・・・・・・・・・・・

『(問) 金融経済懇談会の席上、滋賀県ではイノベーションの創出に重点を置いた取り組みが推進されており、新たなビジネスモデルの構築に繋がっていくことが期待されるとのご発言をされたようですが、滋賀県の経済界から、官民一体となった取り組みなどについての話はあったのでしょうか。また、そうした話題については、どのようにご発言されたのか教えて下さい。』

と来まして、結局この会見要旨6枚のうちまるまる2枚とちょっとを滋賀県ネタで引っ張るという技に出ております。いやまあ地元経済に関するお話をするのも良いのですけれども、何かこの前の政井さんの会見でも埼玉県経済に関する質問が最初からうだうだと出ておりまして、でもって何かその答えに思いっきり想定問答有棒読み感が漂っているというのが誠に遺憾の極みに存じます。まあ2回続くと「これはわざとやっているだろう」としか申し上げようがない。


・金利と量の関係

『(問) 本日の金融経済懇談会では、引き続き、量と金利の両面で金融緩和を続けていくと述べられていますが、これまでの金利操作の状況をみると、金利の低下局面では国債の買入れ額を減らし、上昇局面では、先般、指値オペを札の入らない水準で実施したわけですが、そういう意味では、国債買入れについては、減額よりも増額することに対して日銀は抵抗感が大きいように見受けられるのですが、金利の動向と国債買入れの増減について、どのようにお考えか教えて下さい。』

質問は中々結構なのですが、

『(答) 新しい金融政策の枠組みを9月に導入してから2か月が経過し、現在、イールドカーブ・コントロール自体は、かなり上手く、順調に行われているのではないかと評価しています。』

はあ。

『現在のイールドカーブ・コントロールは、量の目途を置き、二つの金利について目標水準を示していますが、これまでのところ、大きな市場金利の変化は生じていないとみています。』

中短期の金利って途中結構動きましたし、そもそも足元のJGBの金利は▲10の誘導水準と全然違いますが。

『その下で、それほど大きな量の変更というのは行っていないと思っています。』

ふーん。

『仮に、今後、何か市場で新たな動きが出てくるのであれば、9月の政策決定の公表文にあるとおり、毎回の金融政策決定会合で金利目標を議論していくことになっていますので、その動きをみながら議論を行うということかと思います。現在、金利が多少上下する動きがみられますが、概ね想定の範囲に入っており、量についても概ね目途の範囲内に入っていると考えています。』

えーっと、量の方はこのままだと70兆円前半になりますし、金利だって元々9月に「現状程度のイールドカーブ」という話をしていて、そこから見たらそら10年カレントは0%近傍かも知れないですけれども、どこが「概ね想定の範囲」なのかと思いますし、だったら櫻井さんにおかれましてはその想定の範囲って具体的にイールドカーブの上限下限みたいな形でカーブを引いてくれますかねえと。


・質問と回答があっていない

これはワロタ。

『(問) 2点質問させて頂きます。1点目ですが、金融政策の新しい枠組みの下でも資産買入れは継続していて、不動産投資信託も購入していますが、市場規模がそれほど大きくない中で、日銀の買入れに対する思惑や期待によって、同じような資産であっても利回りに極端な違いが出たり、一部の市場関係者の見立てでは、相当ディストーションが起きているのではないかとのことですが、規模が比較的小さい市場でもあるので、このあたりのゆがみとみられる部分をどのように解釈されているのか、何でも買っているとやはりリスクとしてみなければならない部分が大きくなるようにも思いますが、その点の見解をお聞かせ下さい。(後半割愛)』

『(答) まず1点目ですが、ETFの買入れに関しては、9月に買入方法を少し変更しているわけでして、現時点で非常に大きなディスト―ションが生じているとは考えていません。今後、これが非常に大きな問題となれば考えなければならないかもしれませんが、今のところは、現在の金融緩和の枠組みの中で、ETFの購入を続けることになるのだろうと思っています。』

それについては質問されていません。

『REITは、確かに不動産に関係するものなので、最近、色々な動きが少し出てきています。金利上昇の影響を受けるかたちでの動きとみられますが、米国の金利上昇と繋がりがあるかと思われますので、状況を見守っていくしかないと思います。大きなゆがみを心配するようなことではないと思います(後半割愛)』

・・・・・・・・・全然質問の趣旨と違う答えをしているのですが大丈夫でしょうか。


・その説明だと今までの政策のdisな上にここからの政策が効くのかの説明になっていないのですが

『(問) 懇談会では、現状の日本経済は均衡状態にあり、そこから抜け出すには魔法の杖はないと述べられていますが、大体、挨拶要旨の中を読めば分かりますが、その真意をもう少しブレイクダウンして説明して頂きたいと思います。また、賃上げにも若干触れられていますが、来年の春闘に対しての見方を――一般論として現状をみると今年以上の何かを期待できるような状況ではないと思いますが――教えて頂ければと思います。』

『(答) 2013年以降、金融と財政が連携して経済の再活性化のために政策を進めてきたことで、一定の成果がありましたが、ここ1年くらいは新たな均衡状態に入ってしまい、これが必ずしも望ましい均衡状態とはいえないものであると思っています。』

均衡になってしまっているんだったらダメじゃん。

『これをもう一段上の均衡状態にもっていくことがこれからの課題だと思いますが、そのための何か魔法の杖というか、マジックみたいなものはおそらくないだろうと思います。』

だったら最初の置物リフレ理論も魔法の杖のような話をしていましたよねえ。

『それは、きちっとした正統的な経済政策や金融政策を地道にやっていくことなのではないかと考えています。』

置物リフレ理論がきちっとした正統的な金融政策とな??????????????

『そして、その中で成長や物価との相互作用をもち、重要な役割を担う賃上げの動きに注目していきたいと思っています。賃上げには個別の事情もあると思いますが、賃上げがある程度のところまで進んでいくことが、成長や物価の見通しを強めることにもなるので、しっかりとその動きを見守っていきたいと思っています。』

ということで「賃上げの動きに注目」というと格好が良いのですが、それってそもそも論で言えば「賃上げの動きが進んでいない」というのは「期待に働きかける政策の成果が上がっていない(上がっているなら賃上げの動向に反映しているはずだから)」という事であり、これだけハチャメチャな金融政策やって金利市場は壊すわ株式はバカスカ買うわ、社債CPにREITもバカスカ買うわという政策を散々実施した結果、その成果が「期待に働きかける政策の効果が上がっていませんので賃上げの動きに注目しないといけませんなあ」となっているって反省しろよとしか思えません。



○総括検証ペーパー来ましたが・・・・・・・・・・・・・・・・・

キタコレ。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j13.htm/
「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(4):なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?
―時系列分析による検証―

まずこの要旨を引用。

『要旨

本稿では、「量的・質的金融緩和」導入から3年余りが経過した後も、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「物価安定の目標」である2%程度に到達しなかった背景について、定量的に検証する。』

キタコレ。

『具体的には、時系列モデルの要因分解(VARのヒストリカル分解)の手法を用いて、消費者物価がどのような要因によって「量的・質的金融緩和」導入当初の日本銀行政策委員の見通し(中央値)から下振れたのかを実証的に明らかにする。分析の結果、2015年度の消費者物価前年比の下振れ幅(−1.9%ポイント<見通し:+1.9%、実績:0.0%>)のうち、約5割(−1.0%ポイント)は原油価格の下振れによるものであり、1割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因に起因することがわかった。』

はいはい原油のせい原油のせい。

『インフレ固有の要因は、需給ギャップや原油価格、為替レートでは説明できない消費者物価の下振れを意味しており、これは、予想物価上昇率の高まりが当初の想定に比べると小幅なものにとどまったことを表していると解釈される。』

ということで本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j13.pdf
「総括的検証」補足ペーパーシリーズC 
なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?――時系列分析による検証――

ですが『予想物価上昇率の高まりが当初の想定に比べると小幅なものにとどまったことを表していると解釈される』である通り、そもそも期待に働きかけるというメカニズムに無理がありましたなあという事になってしまうんですけどね。


・期待の部分が後付ベースになっているのと、CPIの分析が消費税抜きになっているのは・・・・・・

まずは冒頭から。『1.はじめに』の途中から前提条件の話が。

『なぜ、世界に類例のない大胆な金融緩和にもかかわらず、2015 年度に 2%の「物価安定の目標」を実現できなかったのか――。本稿の目的は、ともすると実証的な裏付けなく、narrative に語られることの多かった 2%未達の背景について、出来るだけ客観的かつ定量的な実証分析結果を提示することにある。』

ほほう。

『具体的には、消費者物価と、これに影響を与え得る主要なマクロ経済変数(需給ギャップ・為替レート・原油価格)からなるシンプルな 4 変数 VAR を推計したうえで、ヒストリカル分解(historical decomposition)の手法を用いて、消費者物価が QQE 導入当初の見通しから下振れた背景について、要因分解を行う。』

ということで4変数VARとは何ぞやという話だが引用だけ。

『 本稿が、分析手法として VAR という時系列モデルを採用した理由は、以下のとおりである。第 1 に、VAR は、特定の理論モデルに依拠しないため、マクロ経済変数間の複雑な相互依存関係にほとんど制約を課すことなく、出来る限り「データに語らせる」かたちで、実証分析を行うことが可能である。よく知られているとおり、インフレのダイナミックスについては、需給ギャップとの関係や、インフレ予想の形成メカニズム、為替レート・原油価格のパススルーなど多くの論点を巡って、エコノミスト・経済学者の間で意見は一致していない。したがって、幅広く政策論議に資するような、出来るだけ客観的な実証分析を提示するという本稿の目的に照らせば、特定の理論モデルに立脚するよりも、VAR のような制約の少ない時系列モデルを用いる方が望ましい。』

『第 2 に、VARのヒストリカル分解により、消費者物価の下振れをもたらした要因を、「2 次的な波及効果(second-round effect)」まで考慮した本源的なショックに帰することが可能となる。例えば、為替円安は、輸入品価格の直接的な押し上げといった「1 次的な波及効果」だけでなく、需給ギャップの改善やインフレ予想の高まりといった「2 次的な波及効果」を通じても、インフレ率にプラスの影響を及ぼす。このため、例えば、QQE 導入以降に進行した為替円安が消費者物価に及ぼした影響を評価するためには、1 次的な波及効果に加え、2 次的な波及効果も含めた「出尽くしベース」で推計する必要がある。こうした分析は、全ての変数を内生変数として扱う VAR を用いれば、容易に可能となる。』

とまあ頭の悪いアタクシには何が何だかですが、その次の『2.分析手法とデータ 』を見ると概念的に何をやっているのかは何となく分からんでもない。


・分析の前提である

『2.分析手法とデータ 』になります。

『本稿では、以下の手順で、日本銀行政策委員の消費者物価見通しがどのような要因で下振れたのかを定量的に考察する。』

つまり日銀の(大本営発表)見通し数値と現実の差分を要因分解するというお話のようで。

『@まず、QQE 導入当初に想定していた政策委員見通しをデータとして用いて――見通しをあたかも実績値のようにデータとして扱って――VAR を推計したうえで、消費者物価に関するヒストリカル分解を行い、政策委員見通しが 2%達成に向けて具体的にどのような道筋を描いていたのかを試算する。A次に、実績値のデータを用いて同じスペックの VAR を推計し、実績値ベースの消費者物価に関するヒストリカル分解を行う。B最後に、両者のヒストリカル分解結果を比較することにより、消費者物価下振れの要因を定量的に特定する。』

でもって・・・・・・・・・・

『VAR モデルは、原油価格、為替レート、需給ギャップ、消費者物価の 4 変数を用いて推計する。この順番でコレスキー分解を行うことにより、ショックの識別を行う。すなわち、原油価格は、日本の金融市場や経済・物価動向にはさほど影響されず、国際商品市場におけるグローバルな需給の動向で決定されると考えられるため、最も外生的な変数として最初に置く4。原油価格の次に、需給ギャップやインフレ率に影響を及ぼす先決変数として、為替レートを置く。』

原油価格→為替の順で外生変数で置いて・・・・・・・・・

『その次に、わが国の景気動向を表す需給ギャップ、最後に、以上 3 変数の影響を受けて最も内生的に決定されると考えられる消費者物価を置く。』

その先が需給ギャップで、一番内生的な変数をCPIと。

『推計の頻度は四半期であり、推計期間は、第 2 次石油ショックの影響が概ね収束したとみられる 1984 年第 1 四半期から 2015 年度末に当たる 2016 年第 1 四半期までとする5。VAR のラグは、AIC により 3 期を選択する。』

ということなので、これはマイナス金利政策の影響は見ていないです。推計期間がこれで良いのかというのも微妙に謎ではある。


『推計に使用したデータは、以下のとおりである。原油価格は、先行研究(例えば Baumeister and Kilian 2016)と同様、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)価格を米国の消費者物価(総合)でデフレートしたものを使用する6。』

『為替レートは、日本銀行が公表している円の名目実効為替レートを用いる。』

『需給ギャップは、日本銀行が定期的に「分析データ」として公表している推計値を使用する(推計方法は伊藤他 2006 を参照)。』

『消費者物価(除く生鮮食品)については、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた季節調整値を作成した。』


『実際の推計に当たっては、原油価格、為替レート、消費者物価については、対数前期差をとる一方、需給ギャップは、そのまま使用することにした。』

この部分なんですが、消費者物価の部分がちょっと引っ掛かるんですよね。つまり特に今回の政策の総括検証という意味で言えば、インフレ期待の部分で「実際の」消費者物価の動向って結構影響があったように見えるのですが、そこを消費増税部分調整しちゃっていいのかという気がだいぶするのですが、ただまあ今回の検証って(後の方でもあるけど)インフレ期待が外生的に効くような図になっていなくて、インフレ期待は分析の後計測されるような形になっているのでという事なのかも知れませんが何となく釈然としない。


『日本銀行の政策委員見通しは、各年度の実質 GDP 成長率と消費者物価前年比の予測値しか公表されていないため、以下のような方法で、VAR の推計に使用する 4 変数について四半期ベースの予測値を作成した。まず、原油価格(WTI)と為替レート(名目実効為替レート)については、簡単化のため、2013 年 4 月時点の水準で、見通し期間(2013 年第 2 四半期から 2016 年第 1 四半期まで)を通じて横ばいで推移すると仮定した7。需給ギャップについては、政策委員は直接、見通しを公表していないため、2013 年第 1 四半期の需給ギャップの実績値を出発点として、四半期換算した政策委員の GDP 成長率の見通しと、潜在成長率の見通しの差分を累積していくことによって作成した(詳細は補論参照)。四半期でみた消費者物価の見通しは、各年度内で一定のペースで加速しつつも、年度平均の伸びでみれば、政策委員見通しの中央値と一致するよう作成した。』

外生変数が横ばい推移ってのも微妙ですがまあここは置きの問題ですかね。


・全体の分析にぶち込む数値

『VAR の推計に用いる 4 変数の四半期ベースの見通しと実績値は、図表 2 で示したとおりである。原油価格は、QQE 開始当初は見通し対比やや上振れて推移していたが、2014 年夏以降急落し、見通しを大幅に下回ったことが確認できる。他方、為替レートをみると、QQE 導入直後から 2015 年央にかけて、見通し対比円安化が進行していたが、その後は、円高方向への巻き戻しが起こっている。需給ギャップは、2014 年初までは概ね見通しに沿って改善していたものの、2014年春の消費増税後は横ばい圏内の動きに転じ、見通し対比でみた下振れ幅を徐々に拡大させている。消費者物価の前年比も、2014 年夏頃までは、概ね見通しに沿ってプラス幅を拡大させていたものの、その後は見通しから下方に乖離し、プラス幅が縮小している。』

結局これだと外生変数で動いていただけで金融政策で期待を変えてどうのこうのというのは何だったのでしょうかねという話になると思います。

『図表 3 では、四半期ベースでみた需給ギャップと消費者物価について、見通しと実績値をフィリップス曲線で確認している。(1)の政策委員見通しでは、消費者物価は、需給ギャップの改善を伴いつつも、過去のデータで単回帰したフィリップス曲線が示唆する以上のペースで――つまり、予想物価上昇率の高まりを背景としてフィリップス曲線が上方にシフトアップしながら――、上昇率を高めていく姿となっている8。』

『一方、(2)の実績をみると、2014 年前半までは、過去のフィリップス曲線が示唆する以上のインフレ率の上昇が観察されるものの、その後は、原油価格急落の影響もあって、右上がりのフィリップス曲線の関係を崩しながら、物価上昇率が低下していった姿が確認できる。』

要するに2013年度は効いたように見えたが元のトレンドに回帰してきましたというお話になっている(図表のフィリップス曲線をご覧アレ)というお話ですが、実証分析結果と、頭の悪いアタクシなりのツッコミに関しては時間と量の関係上明日に続くということで。






2016/12/02

お題「櫻井審議委員講演はまあ予想通りに・・・・・・・・・・」

何か今某モーサテみたらどこぞの元審議委員が物価がプラスになったら10年の誘導目標を0%〜0.5%とか0%〜1%のレンジにした方が良いのでは、とか言ってるのが聞こえた気がするのだが、それ誘導レンジでもなんでもないんですけど5年間審議委員やって金利に対する知見をどう得たのか非常に謎。

○櫻井審議委員の講演は案の定だった件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161201a1.pdf

・本文の前に図表が使い回し感強すぎる件について

上記のPDFなんですが、11枚目から図表になるんですけど、図表2と6と8がモノトーンっぽい図表(仔細に見ると図表6とかには一応青いのもある)になっていて、他の図表がえらいカラフルな図表になっているのですよ。

でまあ図表の2と6と8って昔の金融経済月報とか展望レポートからの図表になっていまして、まあ展望レポートの図表って元からそんなに色使わないのでこういう仕様になっているのは分かるのですけれども、今回の櫻井さんの金懇挨拶の場合は他の図表が大体この辺と被っているのですよね。

黒田総裁11/14名古屋講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161114a1.pdf

政井審議委員11/21埼玉金懇挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161121a1.pdf

でまあ別に執行部ベースで説明をするから同じ図表が出てきても別に良いのですけれども、上記の黒田総裁講演も政井さんの金懇も図表って全部カラフルな図表で統一している中でラフルなのとモノトーンなのを混ぜ混ぜしていて、まあそれが別に櫻井さんのオリジナルならまーシャーナイと思うのですが、図表2と6と8は・・・・・・

展望レポート全文
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610b.pdf
の参考計表の数値を直近分までアップデートしている(例えば講演の図表2は展望レポートの図表1のアップデート版)のですな。

そらまあ別にそんな所で手を掛けるのめんどくさいというのも分からんではないのですが、何ぼ何でも日本銀行の政策委員様が行う講演(挨拶だけど)で日銀事務方謹製の公表資料の図表を使っていますというのが見た瞬間に分かる図表でそれをやるというのは、何ぼ何でもデータアップデート版なんだから色ぐらい付けてやれよと思う次第で、使い回し感が強すぎでもうひと手間くらい掛けたらどうなの・・・・・・・・・

というのが講演本文見る前に全部ざざっとみた瞬間に思ったんですけど、重箱の隅にも程がありますかそうですかいや糞細かくてすいませんねえ。


でまあ近いタイミングで3本講演が連発している中で同じ図表がホイホイ出てくるのを見ますと、うーんこのという感は強くなってしまう次第で、そらまあ政策の説明する場でもあるから同じようなのがあちこちで出るのも理屈としては分かるのですが、何か独自の視点によるものとか出て来ないのかねと思いますし、大体からして金融政策決定会合が合議制で色々な方を政策委員として登用している事の意味って何でしたっけとかイヤミの一つも申しあげたくなる訳で、政策委員会がただの執行部の追認機関となってしまうというのはアカンやろと。


・・・・・とまあそういう事になりますと、実は原田大先生の長野金懇での図表

(こちらは図表のパートです)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161012a2.pdf

の方が使っているデータの見せ方が「QE解除」→「QQE導入」とか途中の緩和を全部無視してハチャメチャにも程があるとかそういうツッコミどころは盛大にあるのですが、トンチキであってもオリジナル成分満載となっているので実はこっちの方がマシなのでは無いかというエッシャーのだまし絵もビックリの錯覚を起こしてしまうというのは頭がクラクラして参ります。


・講演自体は案の定である

とまあひとしきり重箱の隅を突いたところで講演本文を鑑賞。最初に、

『本日は、まず国内外の経済動向について私なりの見方をお示ししたうえで、日本銀行が 9 月に導入した新たな金融政策の枠組みとその際に公表した過去の政策運営にかかる総括的な検証の結果についてご説明させて頂きます。その後、長期的な日本経済の課題にかかる私見、最後に滋賀県経済の見方について触れたいと思います。』

とございまして、では国内外の経済動向に関してどういう説明があるのかと次を見る訳ですが、『2.内外経済の現状と先行き 』の所を見ましても海外の所の最後の部分が、

『もっとも、世界経済が現在抱えている不確実性を短期的に払拭することは困難です。米新政権について、市場では拡張的な財政政策や金融規制の緩和への期待が高まっているようですが、具体的な政策の内容は明らかでなく、当面はその影響を慎重に見極めていくことになります。英国の EU 離脱問題は、EU との交渉の帰趨や、他の EU 諸国への影響の波及等について、今後も注意深くみていく必要があります。欧州の銀行部門を巡る不透明感や、世界的に保護主義的な動きが目立ってきていることなど新たな懸念材料も出てきているほか、地政学的リスクはなかなか沈静化の見通しが立ちません。世界経済は徐々に回復過程に移行しつつありますが、高い不確実性を抱えているだけに、その経路が決して盤石でないことも事実であるように思います。』

とか、国内の方が

『11 月に公表した日本銀行の展望レポートでは、先行きの成長率について、委員間でばらつきはありますが、中心的な見通しとして 2016 年度:+1.0%、2017年度:+1.3%、2018 年度:+0.9%と、引き続き潜在成長率を上回る成長を見込んでおります(図表 4)。』

『やや長い目で見れば、物価は名目賃金に沿って動く傾向があります(図表 6)。企業は、賃金が上昇すると、そのコストを販売価格に転嫁しようとします。家計は、物価が上昇すると、実質購買力を維持すべく賃金の引き上げをより強く求めるようになります。今後、雇用環境の改善が続くもとで、賃金が継続的に上昇するとの見方が一層強まれば、こうした相互作用を伴いながら、物価も徐々に基調的な上昇率を高めていくと思われます。この点、今後の物価動向を占ううえで、来春の賃金改定交渉には大変注目しています。』

とか思いっきり想定問答の棒読み講演になっていて、エコノミストだか経済学の専門家のどっちか謎ではあるものの、まあそういう建付けで入ってこられている櫻井さんなんですから独自の分析による考察というのを示して頂きたいと存じますが(棒読み)、まあ案の定のクオリティにある意味予想通り過ぎて別に悲しみも起きないアタクシがいるのでした。


・金融政策の説明の最後の部分でも鑑賞しましょう

でもって次の『3.金融政策 ―「総括的検証」と「新たな金融政策の枠組み」― 』という所なのですけれども、ここは見事に執行部の説明をトレースしていますので読むだけ時間の無駄(まあ見事にトレースしているという事の確認の為にアタクシはちゃんと2度以上読んでいますけど^^)なので割愛しまして、次の『4.日本経済の課題と金融政策 』でも読みましょう。

『次に、少し長期的な視点から、日本経済の課題と金融政策運営について、私なりの考えを述べたいと思います。』

とあるのですが、

『日本経済は、過去長期にわたり、物価が緩やかに低下するもとで低成長を続けてきました。政府と日本銀行は、2013 年に共同声明を発表し、一体となって「物価安定のもとでの持続的な経済成長」の実現に取り組んできました。足もとでは、「持続的な物価の下落」という意味でのデフレではなくなりましたが、依然「物価安定の目標」は達成できていません。景気は緩やかな回復基調にありますが、潜在成長率は低位にとどまっており、持続的な経済成長という点でもまだ十分な成果は得られていないように思います(図表 8)。』

とある図表8が展望レポートの図表なのがもうねという感じですけど、

『こうしたもとで、企業や家計は、先行きも物価や成長率は然程高まらないとの前提で経済活動を行っているように見受けられます。企業は、将来、着実に売り上げが伸びるとの確信を持てない中で、固定費の増加に慎重なスタンスを維持しています。設備投資や賃金(特に恒常的な賃金増につながるベースアップ)の伸びは、企業収益や雇用環境の改善と比較すると緩慢です(図表 9、10)。家計においても、恒常的な所得の拡大や物価の上昇を見通し難いもとで、足もとの収入増を積極的に支出に振り向ける様子は窺われません(図表 11)。』

どこに私なりの考えがあるのか分からんがまあ現状認識ですからね(棒)。

『私は、こうした現状を、ある種の均衡状態にあると捉えています。』

均衡状態とな。

『企業や家計における所得から支出の前向きな循環は、本来、持続的な成長や物価の安定を促進します。設備投資の増加は、資本蓄積や生産性の向上を通じて、潜在成長率を高めます。賃金が増えると、前述したように企業のコスト増等により物価に上昇圧力が生じるほか、家計支出が増えれば、マクロ的な需給ギャップが改善し、やはり物価の上昇につながります。しかし現状は、企業や家計に根付いた低インフレ・低成長見通しが、こうした前向きの循環を阻害することで、自己実現的に成長率や物価の上昇を抑制しているとの側面があるように思います。』

って事は「期待に働きかける政策で2年で2%物価目標達成じゃあ」という政策がワークしなかったというお話になると思うんだが。

『では、均衡状態から抜け出すためには何が必要でしょうか。私は、魔法の杖はなく、幅広い主体の粘り強い努力が必要だと考えます。まずは日本銀行が、新たな金融政策の枠組みのもとで、予想物価上昇率の押し上げや緩和的な金融環境の維持を通じて、物価の安定に努めていくことが大事だと思います。』

というのは良いのだがあれだけ派手派手な金融政策やっているのに「ある種の均衡状態」のままという現実なの何で今度は予想物価上昇率の押し上げが出来るのか意味が良く分かりません。

『同時に、政府や民間部門が果たす役割も大きいと考えます。賃金の引き上げに向けた政府と民間部門の取り組みは、物価の安定を強く支持するものだと思います。また、持続的な経済成長のためには、政府による成長戦略や構造改革の取り組み、民間部門による人材育成や研究開発を含むイノベーションの努力等がより重要になると思います。』

っていう話になっていて、これがオリジナルなのかという気もせんでもないのですが、どうも既視感があると思ったら・・・・・・・・

政井審議委員講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko161121a1.pdf

の『W.2%の「物価安定の目標」の実現に向けて 』以下の話とトーンが同じでして、まあ日銀が単独で物価上昇2%だヒャッハーで国債買入をハチャメチャに行ってマイナス金利までぶち込んで動き回ってもそれだけじゃ無理じゃんとやっと自覚して、緩和政策はやるけどサステイナブルじゃない緩和政策をやっても仕方ない、というスタンスになりましたよという説明を行っている、という事なんでしょうなあって雰囲気がプンプン。

『日本銀行が緩和的な金融環境を維持することは、こうした官民の取り組みをサポートすることで、長期的な成長力強化にも貢献し得ると考えています。日本銀行の「『設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業』の株式を対象とする ETF の買入れ」や「成長基盤強化を支援するための資金供給」も民間部門の努力を後押しするものと期待しています。』

『物価や経済成長にかかる見通しが高まれば、実質金利の低下や自然利子率の上昇を通じて、金融緩和の効果も一段と高まると考えられます。政府、民間部門、日本銀行の三位一体での努力が実を結び、「物価安定のもとでの持続的な経済成長」という新たな見通しのもとで、経済の前向きな循環が強まることを期待しています』

まあこのパートぐらいは全部鑑賞しようかと思って引用しましたが、このパートに入る前にあった「私なりの考えを述べたいと思います」と言ってた割に全然オリジナル感が漂って来ないのですが、まあそういう講演でございましたとさという所で。


○その他少々

・短国ェ・・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20161201.htm

(3)募入最低価格 100円08銭9厘5毛(募入最高利回り)(-0.3330%)
(4)募入最低価格における案分比率 8.5000%
(5)募入平均価格 100円09銭1厘6毛(募入平均利回り)(-0.3408%)

となりましてまーた▲30bp台に突っ込んで全般的に短国強くなって短国に引っ張られているのかどうか知らんですけど多分そうなって2年とかも強いというこの展開。

まあこれは年末のドル円ベーシスが絡んでいるのと、そもそも日銀の短国買入が徐々に減らし気味とは言え元々の残高が大きすぎるという事もあって年末とか盛大に跳ねるの季節行事状態になっているので致し方なし。つーかこれ担保需要とかのマージナル(と言っても全体の額としては担保需要だってたくさんある話だが)な人しか国内では買えないレベルでどこかの別世界レートというのは先般来申し上げている通り。


・リスクフリーレートねえ

http://www.boj.or.jp/paym/market/sg/rfr1610b.pdf
「リスク・フリー・レートに関する勉強会」第14回議事要旨

『事務局から、リスク・フリー・レートに関する国際的な議論の動向についてアップデートが行われた。ISDAからは、FSBからの要請に基づき、LIBOR、EURIBORおよびTIBORを参照するデリバティブ契約の頑健性向上に関する検討部会を立ち上げることが報告され、勉強会メンバーに対し、日本円部会への参加が呼び掛けられた。』

『わが国のレポ指標構築に関する予備的な検討ワーキング・グループからの最終報告が行われ、レポ指標の案としては、前回勉強会において議論された@レファレンス方式、Aブローカー加重平均方式およびB清算取引加重平均方式のうち、@とAを一本化し、レファレンス方式と清算取引加重平均方式に纏めたことが報告された。そのうえで、いずれの方式も、その具体化は2018年に予定されている銘柄後決めGCレポ取引の導入を踏まえて検討されるべきことが報告された。』

まあそらそうでしょ。

『なお、リスク・フリー・レートとして特定されるか否かにかかわらずレポ市場の透明性向上という観点から、実取引ベースのレポ指標を整備すること自体には意義があるとの意見もあわせて報告された。』

『こうした報告を受け、議論を行った結果、レポ指標については、現時点ではリスク・フリー・レートとして特定することはできないと考えられるが、実取引ベースのレポ指標の整備自体は意義があるとの意見集約が、勉強会としてなされた。


つー話で、まあ整備するのは良いのですが、銘柄後決めT+0GC取引にどの程度の幅の参加者が出てきてくれるのかという話を考えないと、結局「取引自体は結構あるけど参加者の厚みが無いからレートとしてそれ使うのどうなのよ」という話になるような気がします。

まあそれ以前の問題で、毎度申し上げておりますが、さっきのところにある「ISDAからは、FSBからの要請に基づき、LIBOR、EURIBORおよびTIBORを参照するデリバティブ契約の頑健性向上」ってのがFSBの持ってきている話が無理筋チックな所があって、市場環境によってその取引の長期的な頑健性って変化しうるのに特定の市場レートを使って頑健性向上というのがFSBって市場分かっているのかよ的なサムシングを感じると毎度の悪態を定期的に投下するのでありました。


でまあそれは良いのだがその次。

『続いて日本銀行から、無担保コール市場の動向について説明があり、議論を行った結果、マイナス金利政策導入後も、市場の厚みや参加者の多様性については、引き続き維持されているとの結論に至った。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやまあ何と申しますか・・・・・・・・・


・ 債券市場サーベイ

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1611.pdf

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい)』ってのを
見ますと取引面という部分はそら相場がこれだけ動くようになったのだから回答がだいぶマシに
なっているのですが・・・・・・・・・

『B貴行(庫・社)の取引頻度の変化についてご回答下さい』
『C貴行(庫・社)の実際に取引した相手の数の変化についてご回答下さい』

って辺りが悪化していて、まあYCCに振り回されていますなあというのを感じるのでありました。


しかしまあ何ですな、

『2.長期金利の先行き見通し
 (1)各年限の新発国債利回りについて、次の時点の見通しをご回答下さい。
 (2)新発10年債利回りの見通しについて、2017年度末、2018年度末の確率分布の予測をご回答下さい。』

って質問項目が相変わらずあるのだが、それは日銀様がお決めになる事なので聞くだけ無駄のような気がするんですけど・・・・・・・・・・・・










2016/12/01

お題「市場雑談/輪番は変更なしだが短国買入がこっそり減額中/前回利上げ提案のメスター総裁講演からちょっとだけ」

12月ですのう。

○原油とか米債がアレですな(ただのメモ)

・OPEC減産合意

って毎度何かに合意するのだかその後また何かの協議とかやってて何が何やらシロウトには難しい話ですなあと思うのですがまあともかく。

http://jp.reuters.com/article/opec-agree-on-output-cut-idJPKBN13P22R
Business | 2016年 12月 1日 01:18 JST
OPEC、減産で合意 全体の削減規模めぐる討議なお継続=関係筋

『[ウィーン 30日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)は30日、ウィーンで開いている総会で減産で合意した。関係筋がロイターに対し明らかにした。OPECが減産で合意するのは2008年以降で初めてとなる。』

『関係筋によると、イランが制裁導入前の水準に産油量を凍結することでサウジアラビアが合意。アルジェリアが提案した生産量の約4.5%(日量約120万バレル)の削減で合意したとしている。』

『国別では、サウジアラビアが生産量を日量約50万バレル削減し、同1006万バレルとすることで合意。イランは生産量を現在の日量379万7000バレル近辺に凍結する。その他の加盟国も生産量の削減で合意した。』(以上上記URL先より)

ということで原油先物ヒャッハーとか上昇していまして、原油価格がスタートラインなのか良く分からんですが米金利は上昇するわドルは強いわというか、特にドルの対円って叩かれても叩かれても円安ドル高になるという感じで、ゾンビのような強さを感じますなあと思う次第で、これって何でですのと詳しいお方の解説頂きたいところではあります。


・米債ェ・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1DV50W
Investing | 2016年 12月 1日 05:51 JST
米金融・債券市場=利回り急上昇、OPEC減産でインフレ加速の思惑

『米金融・債券市場では、国債利回りが大きく上昇した。石油輸出国機構(OPEC)による8年ぶりの減産合意で原油先物相場が8%を超える値上がりとなり、インフレが加速するとの見方から債券への売りが膨らんだ。OPECはアルジェリアが提案した日量およそ120万バレル(4.5%相当)の減産で合意した。』

『午後の取引で、米指標10年債 は17/32安。利回りは2.30%から2.36%に上昇した。インフレ上昇による影響を最も受けやすい30年債 利回りは2.95%から3.02%に跳ね上がった。』(上記URL先より)

10年が6甘で30年が7甘なのに何で30年だけ跳ね上がったとかになるのかとか、そういうツッコミはさておきまして、まーた米債がコケモードになって来まして、日銀的にはまさに天の助けというか神風というかという展開になっております。

まー米債新安値抜けてあばばばばーとかになると円債の方にも影響飛んでくるとは思うのですけれども、とりあえず中期の固定金利オペ打ち込んだのがつい先日で、要はあれって中期の金利がドバドバ上がって夢の逆イールドとかになると「YCC的に考えるイールドカーブの形状」からみて明らかにうんこになるので止めます、という事なのでしょうと整理出来ると思うので、中期は売り込むにしても後ろとの兼ね合いというのがあるでしょう。

まあ何ですな、米国要因だけで円債売り込むのも限界あるじゃろと思いますし(ただし円安がゾンビのように続くのはちょっと微妙)、中期の方には止めが入るのも判明しているので、国内情勢的に売り込む(つまり物価とかインフレ期待が上がるような話への認識が強まる)ようになるまでは叩くにしたって限界はあるんでしょとは思いますが、こういう事を堂々申し上げて1級フラグ建築士になるのがドラめもんクオリティ。


・10年入札ですな

ということで月初ですが10年入札。

40年入札からこの方フラットニングじゃあとやっていてその煽りを食らって10年カレントゼロ%近くになるかよおいおいとみておりましたが、さすがにこういう状況になると10年新発をマイナス利回りで入札特攻というのも無理があるので、昨日の10年引けもあまり突っ込まないで終了してくれてホッとしていたら、米債売られて皆さんニッコリの巻となりました(かどうか知らんが)。

つーことでまあ別にややこしい事にはならない入札でしょとは思いますが、四半期末の月の主要年限の入札ってリオープンルールの関係上新発債で出てくるのと、新発だからカーブ上のロール分があって見た目が良いのと、四半期末はSCレポがあばばばばーになりやすいとか、まーその手の要因もありますので、マイナス金利で入札を迎えたらどうなるのかというのは興味がありましたが、プラス利回りだと物凄い順当な結果になるのではないかと愚行して再び1級フラグ建築士。


○輪番は目立たず目立たず現状維持だが短国がしらっと・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について


『<当面の月間買入予定(利回り・価格入札方式)> 』の所を見ますと、

−1年:700→700
1-3年:4000→4000
3-5年:4200→4200
5-10年:4100→4100
10-25年:1900→1900
25-年:1100→1100
物国:250→250
変国:1000→1000(ただし11月は奇数月なので買入無し)


回数は短期2回、中期長期6回、超長期5回、物国2回で変国は偶数月なので1回ということで全くの無変化キタコレ。

・・・・・・・・・・・でまあ何ですな、今別に日銀が何かアクションを起こさなくても勝手に海外要因で外部環境が好転しているので、特に新たなアクションを起こさなければ勝手に状況がウマーになっていくという果報は寝て待てモードになっているので放置プレイでしょう。

ただまあこのペースで買入をやっていると来年80兆円の国債残高拡大にならないという事実isある訳で、ただまあ国債買入なんぞ更に増やされたりしたら大迷惑にも程があるわという債券市場の皆様のほぼ総意じゃないかという雰囲気によりまして、MB80兆円との整合性について誰もゴリゴリ言わないという何とも味わいのある均衡状態になっているなあという感じです。

でもってこっそり味わいがあるのが短国買入。

10月の買入予定
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160930c.pdf
『金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、概ね現状程度の残高を維持する。この結果、10月末の残高は43兆円〜45兆円程度になると見込まれる。』

11月の買入予定
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161101e.pdf
『金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、概ね現状程度の残高を維持する。この結果、11月末の残高は42〜44兆円程度になると見込まれる。』

12月の買入予定
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161130e.pdf
『金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、概ね現状程度の残高を維持する。この結果、12月末の残高は41〜43兆円程度になると見込まれる。


毎月「概ね現状程度の残高」と言いながら残高の見込み数値のレンジが着実に下方シフトしているというこのステルステーパリングは何ですかという所ではございますが、短国市場の需給状況を考えるとこの40兆円超える残高ってもう市場に無茶苦茶ヒンジ掛けまくっておりまして、先日ネタにしたPD懇資料でも分かりますように、海外と日銀で8割強短国を保有しているという何のためにこの買入やっているんだという状況になっておりますので、まあ減るのは誰も文句は言わない案件ではあるのですが、「現状程度の残高を維持」と言いながら残高を減らすというのが何とも味わいのあるプレイではありますな。


まー元々短国買入に関してはQQE当初「MB拡大ペース」>「長期国債買入残高拡大ペース」で設定されていて、その帳尻が短期オペという形でおっぱじまっていて、しかもマイナス金利政策になって貸出支援等以外のオペがボコボコ落ちる中で帳尻マンの所に負担がキツクなるという構造になっておりました。足元ではまだ80兆円の「メド」という亡霊が残っているので帳尻オペではある程度帳尻を入れないといけないので、そう簡単に残高を落とせないということでしょうな。

でもって今後短国オペどうしていくのかというのも興味が若干ある(先ほど申し上げたように中銀と海外投資家のマーケットになって国内の人たちが盛大に締め出されているので短国市場と言っても何か海の向こうのどこかの島で勝手にやっているマーケット感が強いのですけれども)ところです。と申しますのは、MBについては目標ではなくて、どうせYCCやる中で買入はバンバンやって行きますよああ80兆円も買わなくてもYCCは出来ますから気にしないで、というような感じで運営していくはずなんですよね(なお突如梯子を外すリスクは常に留意する必要はありますが)。

そうなりますと、MB80兆円ペースは若干(さすがにそんなに派手派手には落ちないと思うけど)落ちる、という時に長期国債の買入を徐々に調整していく(そもそも来年度国債市中消化ネット減額になりそうだから金利ターゲットというならその分減らすのは妥当あんど妥当だし)という風になるのかなとも思ったのですが、この輪番予定額を見ておりますと、長期国債買入を減らすのは(金利が下がった時に減らす以外だと)目立つので、短国買入をこっそり減らしていってMBの拡大ペースは落ちるんだけれども、どうせ世の中的には国債買入残高の方が注目されるだろうから、そっちの残高があまり落ちていないという事で帳尻という作戦なのかな、とふと思うのでありました。


○前回も利上げ提案のメスター総裁講演は「金融政策はフォワードルッキング」とな

まーた直近講演の方からですが。
https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20161130-the-national-and-regional-economic-outlook-and-monetary-policy.aspx
The National and Regional Economic Outlook and Monetary Policy
11.30.16 Loretta J. Mester
The African American Chamber of Commerce of Western Pennsylvania Annual Business Luncheon, Pittsburgh, PA

・例によってインスタント読み(後でちゃんと読む)で金融政策のパートから

講演のケツの方の『Monetary Policy』小見出しから。

『Let me now turn to the implications of the economic outlook for monetary policy. All participants on the FOMC share the same objective - setting monetary policy to promote our longer-run goals of maximum employment and price stability. In setting monetary policy, we assess the realized progress the economy has made on our goals and our expectation of further progress based on the economic outlook over the medium run and the risks to the outlook.』

というのはまあただのマクラ。

『In my view, economic developments have corroborated the Committee’s medium-run outlook that labor markets will continue to show strength, that growth will rebound to a pace at or slightly above trend, and that inflation will gradually rise to our 2 percent target. We have seen sustained improvement in the labor market, which, in my view, is now basically at full employment from the standpoint of what monetary policy can do, and inflation has been moving up closer to our goal. I view the risks to the outlook as broadly balanced.』

経済物価情勢と先行きに関しては雇用は完全雇用だし物価についても別に変な事言ってないですし、経済のパスはサステイナブルだという中々力強い見解。

『The current target range for our policy rate, the federal funds rate, is 1/4 to 1/2 percent, which is quite accommodative. When the Committee met in early November, it assessed that the case for moving the policy rate up had continued to strengthen but decided, for the time being, to wait for some further evidence of continued progress toward the dual-mandate objectives.』

『I, and one of my colleagues, dissented from that decision, preferring to see a 25-basis-point rise.』

ということですので・・・・・・・・・・

『I view a small step up in interest rates as appropriate, not because I want to curtail the expansion, but because I believe it will help prolong the expansion. We know that monetary policy affects the economy with long and variable lags, so policy actions have to be taken before our policy goals are fully met. The lesson that policy should be forward looking is based on the history of poor outcomes when that strategy hasn’t been followed and we’ve fallen far behind the curve.』

金融正常化がビハインドする事はリスクです、とイエレン先生の高圧経済に対して砲撃キタコレ!

『If we delay too long and then find ourselves in a situation where the labor market becomes unsustainably tight, price pressures become excessive, and we have to move rates up steeply, we could risk a recession, a bad outcome that disproportionately harms the more vulnerable parts of our society. Delaying for too long might also induce investors to search for yield, raising risks to financial stability.』

これはスタンレーフィッシャー副議長派ですわ。

『I do not think we are behind the curve yet, but I think the risks to macroeconomic stability and to financial stability will grow over time should we fail to take appropriate action given where we are on our goals and the current low level of our policy rate.』

ということなので・・・・・・・・・・・・

『I view another increase in interest rates as a prudent step to take.』

というこの利上げバイアスですが、メスターさんの票決は今年までですな。

『I anticipate that a gradual upward path of policy is likely to be appropriate given economic developments. That means that the policy rate won’t be moving up at each meeting and that policy will remain accommodative for some time, continuing to lend support to the economic expansion going forward. It will allow us to recalibrate policy over time as we gain more insight into the underlying structural aspects of the post-crisis economy and as the economy evolves.』

まあ「another increase in interest rates as a prudent step to take」とは言っても会合毎の連続利上げとかいうような話ではないので、ゆうて年4回とかそんな感じなのかなあとは思いますけれども、すっかりタカ派が増えている地区連銀総裁のコメントという所ですの。

ただまあ次の『Conclusion』にもあるのですが、タカ派ゆうてもそこまでバリバリなのかというとそれはまた別っぽくて。

『Between now and when the FOMC next meets in December, I will continue to assess economic and financial conditions to see if any change is warranted in my medium-run outlook. My colleagues on the FOMC will be doing that too, and, in December, the FOMC will provide a new set of forecasts summarizing our current views on the economy and monetary policy. I look forward to the meeting, and I commend Chair Janet Yellen for fostering an atmosphere of serious deliberation and the free exchange of ideas in FOMC meetings. Setting monetary policy is a complex undertaking, and I believe the history of the Fed has shown that better policy decisions are made when a diversity of information and views is considered.』

まあこれはマクラ。

『Sometimes I’m asked whether the FOMC routinely coordinates our monetary policy actions with those of other countries. The answer is no - we set our monetary policy to promote our goals of maximum employment and price stability in the U.S.14 But we operate in a global economy and there are ties among economies and financial markets, so we must consider economic and financial developments abroad to the extent they affect the outlook for the U.S. economy.』

海外経済動向も考えるべきということで・・・・・・・・・・・・・

『 For example, weak growth abroad has been a drag on our economy because it has meant weaker U.S. export growth. Similarly, the appreciation in the value of the dollar that began in mid-2014 put downward pressure on inflation by holding down import prices. So these developments factored into our assessment of appropriate monetary policy.』

海外ガーというのがあるのでそこまでバリバリのタカではない。

『U.S. fiscal policy is also part of the economic environment. The prospects for some changes to fiscal and other economic policies, such as infrastructure spending, tax code changes, immigration policy, and trade policy, have likely increased. But the form any policy change will take, the timing of passage, and the timing and size of the impacts are very uncertain at this point. When we gauge the effects of any forthcoming fiscal and other economic policy changes on the outlook
for growth, employment, and inflation, the devil will be in the details.』

新政権での政策変化の影響はこれから見極めたいとまあ順当なコメント。

『As we gain more clarity about the policies that might be forthcoming, the FOMC will assess their effects, as well as the implications of economic and financial developments, on the medium-run economic outlook and appropriate monetary policy. Monetary policy is not on a pre-set course and we will continue to use the best available models, analysis, and judgment to assess the situation. As an FOMC member, I will remain focused on and committed to setting monetary policy to promote the Federal Reserve’s longer-run goals of price stability and maximum employment for the benefit of the public.』

つーことでまあ穏当にまとめていて、タカ派はタカ派なんでしょうがどこまでバリバリなのかというのはまた微妙ですの。(ただ全体読み込めていないので何ですが)