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2017/02/28

お題「本日は17時に注目な訳で/カプラン総裁のタカ発言に反応らしいがこの前と同じ発言なので織り込み済みの筈だが」

本チャンの前座はこれですか。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170228/k10010892411000.html
トランプ大統領 国防費10%増額の方針明らかに
2月28日 1時34分

『アメリカのトランプ大統領は新政権として初めて示す2018年度の予算の編成方針について、公共の安全と安全保障を重視するとして国防費を大幅に増やす一方、その増加分をほかの省庁の予算の節約などで賄う方針を明らかにしました。政府高官は国防費の増加は前の年度と比べて10%、日本円で6兆円になるとしています。』(上記URL先より)

つーてこれは別に財政の割り振りが代わる話なのか・・・・・・・・・・

○昨日の輪番も特に変更は無く注目は本日の翌月予定に

昨日の輪番オファー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170227.htm
国債買入(残存期間1年以下)700 2017年3月1日
国債買入(残存期間1年超3年以下)4,000 2017年3月1日
国債買入(残存期間3年超5年以下)4,200 2017年3月1日

直近では金曜日の引けの時点で2年が▲27bp、5年が▲14bpとなっていましたが、1月の輪番スキップの時の前日引けはどうなっていたかと言いますと・・・・・・・・

1月24日引け

2年:▲0.250%
5年:▲0.145%
10年:0.040%
20年;0.615%
30年;0.790%
40年:0.940%

でまあ長期の方はさておきまして、短い所に関しては特に2年が強い(ちなみに短国も6Mとか1Yのカレントは強くて、6Mカレントは▲28.2ですけれども周辺の引けが▲20台前半なのでこの銘柄だけ強くて、1Yカレントは▲43.8で他が大体▲20台前半、1年の利付が▲25位なので突出して強い)という状況になっておりますが、スキップは論外にしても特に中期輪番を減額するでもなくホイホイと前回と同額の買入を実施の巻となりまして、あの中期輪番スキップとは何だったのかと感慨も深い所ではございますな。

ということで例のオペ日程事前大公表ネタが投下されてからの輪番オペですが、このニュース出てから相場堅調になって超長期入札も無事通過して、という中で金曜日に今月1回のオファー額を増額させた長期輪番と超長期輪番のオファー額をそのままで実施、しかも長期輪番は月曜にやるんじゃないの?というマーケットコンセンサスを外してまで打ち込んできて、昨日は金利がそこそこ下がって前回中期輪番をスキップしたレベルに来ていましたが中期輪番についても額をいじらずスキップもせず、というオペレーションになっています。

・・・・・・・・・・・てなこの動きを総合しますと、まあ普通に考えますと「来月の買入に関しては特に金利上昇要因になるようなこともなく、回数に関しても従来通り(中期長期6回超長期5回)で行い、1回の買入予定額は今月の最終回と同額(つまり長期4500億円のまま、超長期3200億円のまま)で実施しますよ」と言っているようなもんだと思うのですよね。いやそれが普通の解釈だとアタクシが勝手に思っているだけで、実は違いますよとか言われると何気に汗なのですが。

つまりですね、先週火曜以来の一連の流れは「中期輪番スキップとか不意打ちの闇討ちをしてどうもすいませんでした」ということで、もうちょっとプライマリーディーラーにフレンドリーなオペを打ちます、というメッセージになっていると言う風に解釈できますがな、とアタクシは思いますので、中期スキップサーセンでしたという話の中で来月の輪番を減らすんだったら、月末引け後の公表という前に相場が強くなってヒャッハーとやっているうちに少し減らす(それこそ長期とか4100→4500なのですから4100じゃなくて4300位に戻しておくというのも「減っているけど前より増えている」というオモシロ感覚になった気もします)という格好にして、月末は淡々と通過、という風にした方が良いとアタクシは思うのでした(異論はあると思いますけど)。


あと注目されるのは来月の予定表の中で1回のオファー額のレンジがどうなるかでして、

ちなみに前回のはこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170131c.pdf

『5 年超 10 年以下(前月最終回)4,500(翌月初回)4,100 程度(翌月レンジ) 2,900〜5,300 程度』

って大変にお洒落なレンジになっているのですが、このレンジをそのまま相変わらず広いので出してくるのか、ある程度狭めてくるのかというのも興味深い所でありまして、回数固定になった上に、昨日ネタにした木内さんの会見での説明の通りで、この方式は「おかわりはあってもスキップは無い」という方式になりますので、基本的に回数は減ることは無い訳です。

とは言いましても、レンジを物凄い幅を取ってくると「スキップはしないけれども超減額が可能」みたいな話になってしまうので、ここまでやって来た輪番運営はどちらかと言えば「量はあまり気にせず柔軟運営」で「裁量で行ける範囲内でこっそり買入ペースを落としていく(中期輪番スキップはちょっとアレでしたが)」だったのを、今回のやり方変更で「事前に決めた量を淡々と購入し、市場の動きが極端じゃない限り細かく動くような裁量は取らない」という形になった、という風に理解できると思うのですよね。

従いまして、そういう風に運営する、というのであれば今出しているレンジってあまりにも広すぎてあって無いようなもんにも程があるので、オペレーションの不確実性を減らすという趣旨でやるならばレンジってもっと狭くした方が良いと思うし、まだ一定量(結構な量)日銀の新たなパターンについても「そうは言ってもまた裁量で急にいじったり隙あらば減額とかしてくるんでしょ」という不信感もある(そらこれだけコロコロ変わったら信用せんわと思う)ので、アホのようにレンジを取った状態で出すのはちょっと????だと思うんですよ。もし金利上昇して輪番増やしたいならエクストラで輪番を打つなり指値入れるなりすれば良いですし、金利低下して輪番減らしたいならまだ抜いていない伝家の宝刀「日銀の決めた任意の利回りよりも低い金利での買入は募外にする」(輪番以外では実績あり)というのがありますよね。

まーこの方式最初に出した時は長期と超長期の減額をしらっとやっただけ(昨年9月末)でしたけれども、その後指値オペをぶっこんだり(昨年11月と今月)輪番日程をいじって更に事前予告をしたり(昨年12月)とか、色々と飛び道具は使いましたし、しかも今回はもう少し淡々と実施するようにします、ってな話ですから「紙」の方でレンジを広めに出すのってのは止めてもう少しレンジを狭くする(長期で中心からプラマイ500〜800とか位ですかねえ、あまりイメージないけど)とかになるかなあとか勝手に妄想しております。まあ「淡々とやります」をアピールするならそういう感じかな。


などと申し上げておりますが、実は別にそこまで淡々とやる訳ではなく、相変わらず「市場動向見ながら機動的な対応(キリッ)」というのは実はあんまり変わっていなくて、単に2月はその前からの流れで色々とやらかしてしまったのでおとなしくしているだけ、という可能性も大いに有る訳です。

例えば木内さんの言うように輪番は「減らすことは無くても予定外を増やす可能性はあります」となりますと、実は回数を減らして(特に金利水準自体は前回のスキップ並みまで来ている中期とか)おいて、それで金利が不安定になるようならエクストラをぶち込んで対応するし、別に問題なさそうならそのままで実施すれば引き続きステルステーパリング(全然ステルスじゃないけど)が出来てウマー、という変化も考えられる訳でして、まあそれやったら先週の話と、市場にゴメンナサイしたかのような輪番オペの入れ方は一体全体なんだったんだとなると思うので、まあ普通だとやらないと思うんですけど(やるなら金曜や月曜の輪番を減額して地均し的な事前予告モードに入るべき)、何せ調節の皆様と債券市場の人たちとの感覚がどうも合っていない感じがするのがどうも・・・・・・・・・・・・・・・・・・


でまあ3月分に関してもそんな訳で微妙ではあるのですが、より話がややこしいのは4月分をどうするという話で、4月分以降になると国債の市中発行が変わりますので・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2017/calendar161222.pdf
<カレンダーベース市中発行額>

中期とか長期とか、既に日銀が市場キャパ的に威勢よく買っている年限の新発が減りますし、まあこの時は逆に日銀の買入予定が減っても「まあそうですね」と割とみなさん納得の減額になるとは思うのですが、例の新方式検討の話以降の日銀の買い方がどちらかと言えば威勢の良い買い方になっていますので、3月の運営をどうするか次第ですし、まあそもそもそんな事よりも外部要因(トランプとか3月FOMCとか)の方がよっぽど金利動向に影響はしそうではありますけれども、3月迎えた場合に減らすのか減らさないのかとかは、まーたそこまでのスタンスとの継続性についてツッコミが来そうではありますな。


まーいずれにせよ、毎度申し上げておりますように、オペのスタンスが妙にブレブレになるので市場は散々振り回されて困ったもんというか文句殺到という感じでしょうが、オペのスタンス以前の問題として、「YCCのバックボーン」について、ただ単に「10年金利はゼロ近辺だしイールドカーブは今の水準が適正」というのを連呼してその場しのぎをするのではなくて、もうちょっときちっと出してくれないと、そらオペレーションだってその場しのぎをせざるを得なくなる罠、とまあそう思うのでした。

とりあえず余程変なことをしない限りは今日の夕方のオペ日程公表によって3月相場は落ち着くというか期末意識した動きとかになって来るんでしょうが、オペがその場しのぎモードになっているだけに、債券市場のテーマもその場しのぎチックにならざるを得ない、という感じでしょうかねえ、よー知らんけど。



○またFED高官から利上げ発言とな

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-early-hike-wise-idJPKBN16622J
Business | 2017年 02月 28日 04:23 JST
米FRB、近い将来に利上げ必要=ダラス連銀総裁

『[ノーマン(米オクラホマ州) 27日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は27日、米連邦準備理事会(FRB)はインフレ対応で後手に回らないよう、近い将来に利上げする必要があるだろうとの認識を示した。総裁はここ数週間、早めの利上げが賢明との考えを繰り返しており、「早めというのは近い将来という意味だ」と発言の意図を明確にした。講演後、記者団に対し述べた。』(上記URL先より)

上記記事にもありますように投票権もあるのでダラス連銀HPに行ってみたのですが。

https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan.aspx
Speeches and Essays by President Robert S. Kaplan
2017
2016
2015
Assessment of Current Economic Conditions and Implications for Monetary Policy
February 13, 2017

とありまして、13日の講演しかアップされていませんで、それはさわりだけネタにしたのでネタにならない残念無念という所ですな。

再掲になりますが
https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170213.aspx

とありまして、金融政策については最後の方に、

『Based on these considerations, as we continue to make progress in achieving our dual-mandate objectives, I believe that we should be taking steps to remove additional amounts of monetary accommodation. I believe that future removals of accommodation can likely be done in a gradual and patient manner. However, it is my view that moving sooner rather than later will make it more likely that future removals of accommodation can be done gradually-that is, reduce the likelihood that the Fed will get “behind the curve” and feel the need to remove accommodation more rapidly.』

『In addition, as we make further progress in removing accommodation, I believe we should be turning our attention to a discussion of how we might begin the process of reducing the size of the Federal Reserve balance sheet.』

とあるので、どちらかというと「過熱する前に利上げしろ」というビハインド・ザ・カーブを避けるような利上げを推奨している上に、バランスシートの扱いについてもディスカッションすべき、ということでタカ方面の方だし、この講演の方は13日ということですので、既にカプランさんがこういう発言するのって織り込み済みの筈なんですが、一々そういうのに反応した(という後講釈になって居るけれども本当はどうだかわかりません・・・・・・・・・・・・)という辺りが、これまたFEDのスタンスに対する警戒意識というかリスク意識というかが米国市場にもそれなりに高くて、あくまでもコンセンサスのメインは3月利上げって何でしたっけ位だとは思うのですけれども、半身に構えざるを得ないという所なんでしょうかねえ、と思うのでした。

一応こんな解説になっているようで。
http://jp.reuters.com/article/usa-moneymarkets-march-or-may-idJPKBN1662AT
Business | 2017年 02月 28日 05:09 JST
3・5月の米利上げ観測高まる、ダラス連銀総裁発言受け

#本日は諸般の事情で雑談バージョンですんません(もうちょっとFEDネタ用意中だったのですが整理できてない)










2017/02/27

お題「長期輪番だと??という市場メモ/木内節炸裂の会見を鑑賞の巻(引用大会)」

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170224b.htm/
本店で金融高度化セミナー「金融機関のガバナンス改革と経営管理の高度化-理論と実践」を開催

主催の『日本銀行金融機構局金融高度化センター』様におかれましてはまず自分の所につきましての御所感を頂きたい、ってツッコミを入れれば良いのでしょうかこれは。

○輪番でサプライズを出さない筈と理解していましたが・・・・・・・・・・・・

とまーたオペ雑感なのだが。

・何で長期がそこで入る???

金曜の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170224.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年2月28日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年2月28日
国債買入(残存期間25年超) 1,200 2017年2月28日

ということで輪番が長期超長期でオファーされていたのですが、超長期は順当なのですけれども、従来の輪番パターンだとここは長期ではなくて1年以下(なお一般的な予想は1年以下です)か中期を入れて来て、今日が長期と残りという組み合わせになる筈で、先般の報道だとオペ日程の事前公表を行う、ということをする方向、ってな話だった訳でして、それってオペの日程の所でサプライズを出しません!ってことだと思うのに、別に債券市場が売られている訳でもない中で何で市場コンセンサスを外して長期の輪番を入れたのかがワケワカラン。

・・・・・・・・ということで市場ちゃんの方ですが、

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G92CU
Markets | 2017年 02月 24日 11:19 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で前引け、長期金利は1カ月ぶり0.065%に低下

『<11:10> 国債先物が続伸で前引け、長期金利は1カ月ぶり0.065%に低下

国債先物中心限月3月限は前日比12銭高の150円28銭と続伸して午前の取引を終えた。前日の米債高を受けて買いが先行。日銀が午前10時10分、長期・超長期を対象に国債買い入れを通告すると、需給が引き締まるとの思惑から、一時150円32銭と1月24日以来の水準に上昇した。現物市場は堅調。イールドカーブはブルフラット化した。前日に20年債入札を順調に通過した買い安心感に加えて、「日銀が国債買入日の事前予告に踏み切った場合、金利上昇が抑制されるとの思惑から、短期筋から割安な超長期を物色する動きが出ている」(国内金融機関)という。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp低い0.065%と1月25日以来の水準に低下した。』(上記URL先より)

という感じで、元々寄りから超長期っていきなりフラットしてスタートしていたのですが、輪番で長期まで入ってしまうからそらもうブルフラットワッショイですよという展開になりまして、まー木曜のブルフラットも日銀の輪番日程事前公表ネタで輪番ウマー相場復活ワッショイ的な風情を感じましたが、金曜に入ってもその流れですかとか思っていたら日銀が長期輪番を入れてくるから一段と加速するの巻となりました。

・・・・・・・・・・・・何ちゅうかね、マーケットコンセンサスを外してまで打つ外部的な必然性の無い所でわざわざ長期の輪番を打ってくる、となりますと、そらもう急に日銀がそれまでのオペ柔軟化から超一変して今度は全面屈服したみたいに見えてしまう訳で、今までは別に金利を下げようというような意図的なオペをしてなかった(指値や増額止めに行くのはあれは金利を上げないものであって下げに行くものではない)のに、これだと日銀がこれまでのオペ柔軟化で上がった金利をわざわざ下げに行っているような打ち方にも見える入れ方なのですよ。


でもって輪番結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170224.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 10,062 4,504 -0.013 -0.010 25.0
国債買入(残存期間10年超25年以下) 8,396 2,014 -0.017 -0.014 54.3
国債買入(残存期間25年超) 4,266 1,204 -0.045 -0.040 73.9


でもって後場の債券市場も最初のうちはブルフラットになっていまして、これはもう市場が完全に日銀の足元を見出してワッショイモードやってるわ〜という展開になりまして、なんかこう「1月25日の中期輪番スキップ以来日銀のオペに散々振り回されたこの恨み晴らさずに置くべきか」位の気迫(??)を漂わせていまして、まあ市場って当局なり何なりが弱み出しだしたら徹底して叩きに行くのが仕様(ただのイジメですが)でもあって、いやー市場らしい展開だわーでもこのままどブルフラットで引けたら日銀馬鹿にされてんなー、などと思っておった訳です。

ただまあワッショイは続かず、というかそもそも前場のバランスだと超長期ゾーンが盛大にブルフラットしていたので、10-25の輪番でバランス上20年新発が捌けなくなる(10年に近い方の実勢が20年カレントの所よりも利回り低下少ないから仕方ない)ので残った(と思われる)上に戻りで売り物でも出たのか、引けてみたら10年1.5強に対して20年カレントが1強で30年カレントが0.5強のバランスと、結局ブルスティープして、5年から8-9年位までが一番強いバランスになったので、まあ結果としては日銀追い込み漁でワッショイワッショイというのは回避されて日銀の面目玉も潰れずに済みましたという結果ではございました。


あと、話の流れでうっかり飛ばしてしまいましたが、オペ日程事前公表(を検討中らしい)というネタが打ち込まれた結果として超長期が盛大にフラットニングした(金曜は結局スティープになっちゃいましたが)という事実があって、金曜も寄り前からオラオラフラットニングしていた訳ですからして、今月途中で100億円×2の増額をした超長期輪番の減らし所だったような気もする(月末になって翌月予定で下げてくる位なら、あの地合いの強さで減らしても別に問題ねえだろと思ったんだが)のですが、結局「地合いが強くなっているのに途中で増やした超長期輪番を減らさない」というプレイに加え、10年の輪番も結局前月末時点では4100億円だったのに初回から全部4500億円(指値はさておきまして)となって、これも1月の途中で10年が8.5bpに金利上がった後に増やした4500億円を前日の引けが7.5bpでしたが減額せずというかコンセンサス外してまで打ってくる、というプレイになっているのも地味におうどうしましたねんという所で、ついこの前までは隙あらば減額という感じだったのに今度は一旦増やしたら金利が下がっているのにその増額分を維持とか、別に方針変更なら方針変更でも良いのですが、何がどうなってどういうロジックの下で変わっているのか、というのを示していく、すなわち「おまいらのロジックどうなっとるんじゃ」というのを何とか立て直して頂きたいものだ、と金曜と同じ悪態になるのでした(一文が長い)。


○木内審議委員会見は木内節炸裂の巻

(;∀;)イイハナシダナー
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1702c.pdf

質問が微妙なのにもイイハナシダナーな答えが続くのだ。

・YCCのままだと微調整は難しいという話

『(問) 2 点伺います。1 点目ですが、本日の挨拶要旨で、2%の「物価安定の目標」からみて依然として物価上昇率が低位で推移するもとで、近い将来に長期金利の目標水準を引き上げることには大きな問題がある、と指摘していますが、実際に近い将来、こうした引き上げを検討しなくてはならない局面が可能性としてどれくらいあって、どういう状況において起こりうるのでしょうか。敢えてこのように述べているのは、その可能性について市場でも声が少し出ているからなのか、という問題意識でお伺いします。(後半割愛) 』

これ後半の話もまあ面白いのですが、そこ自体はいつもの「量を段階的に減らせ」という話なので割愛します。あとこの質問者は木内さんに「利上げ」発言をさせてヘッドラインをにぎわせようという下心が見え見えで、木内さんの講演での説明趣旨と違う質問とかすんじゃねえよ顔洗って出直してきやがれとは思いました。

まあそれは兎も角木内節を鑑賞。

『(答) 1 点目ですが、現在のイールドカーブ・コントロールは、オペレーション上の困難さを抱えていると思っています。挨拶要旨にも書きましたが、昨年 11 月の米国の大統領選挙をきっかけに、米国の長期金利が上がり、そうするとどうしても、日本の金利にも上昇圧力がかかるということがありました。これへの対応策は、基本的には、国債の買入れの量を増減する、つまり金利が上昇するときには買入れ額を増やすというかたちで対応していくということですが、金利の動きが非常に激しいときには、国債の買入れ額を予想外に増やさなくてはいけないということにもなり、私はそれをコストだと思っています。』

ほほう。

『国債の買入れに限界がある、あるいは買入れを増やすことによって国債の市場流動性が低下すれば、どこかの時点で国債市場が非常に不安定になる可能性があると思いますので、買入れ額を増やすということはコストだと思っています。』

なるほど。

『もう 1 つの対応策として、金利目標を引き上げるということでそうした圧力を弱めるということもできるわけですが、あまり頻繁に金利の目標値を変えますと、また次の金利引き上げがあるのではないかといった市場のスペキュレーションが起きることにより、実際の金利にも上昇圧力がかかるというかたちで、金利のコントロールがより難しくなる可能性もあります。』

仰る通りですね。

『また、長期金利は政策金利ですので、短期政策金利と同様に物価上昇率 2%の達成という方針に基づいているものであるにも拘わらず、2%の達成が全く見えていない状況のなかで、技術的に金利のコントロールが難しくなったために長期金利の目標値を上げるということは、2%の「物価安定の目標」達成のために政策を実施しているという説明と矛盾してしまうことになり、コミュニケーション上非常に難しいことになります。』

全くその通りです。

『このように、国債の買入れを増やしていくのもコストであるし、金利目標を引き上げるのも難しいということで、政策がある意味行き詰まってしまう可能性があると私は思っています。』

しかも足元ではガチガチのオペ運営をやるという事になっていますので、本格的に物価目標達成に向けた動きが出ようものならそらもう凄い事になりますぞな。

『ではその時に、どういった解決策があるのかと言いますと、私自身が提案していますように、金融政策の操作目標をイールドカーブから国債の買入れ額に移して、さらには買入れペースを徐々に落としていくということではないかと思っています。』

なるほど。

『ちなみに、これは金融引き締め策ではありません。政策効果――つまり国債の買入れによって金利がどれだけ下がるかということ――は、基本的には日本銀行の保有国債の残高で決まっていると思っています。』

ストックビューキタコレですがFEDも出口ではストック効果という話をしています。まあそれしか言いようがないという面はあるのだけど。

『ですから、買入れのペースを落としても残高を減らすということにならない限りにおいては、緩和が縮小することにはならないと思っていますし、一方で買入れペースを落とすことによって、国債買入れの持続性を高めることができますので、緩和の効果を損なわずに買入れの安定性、持続性を高めるという点で、非常に良い政策なのではないかと私自身は思っています。』

ということで。


・日銀財務に関して

まあこれは色々な意見があると思いますが、めんどくさいので質問は割愛して(つーか質問で「日銀の損失はどのくらいになるとお考えですか」とかこれまたヘッドライン狙いみたいな文言が入っていて何だかなあである。答えだけ引用します。

『(答) バランスシートの規模が大きくなることは、「量的・質的金融緩和」、資産買入れ策の大きなコストです。これは、海外、例えばFRBでもそのような理解がされています。』

以下木内節をご鑑賞あれ。

『バランスシートが非常に肥大化した時の問題はいくつかありまして、例えば、国債の買入れ残高を増やして、しかもそれが簡単には減らないということ自体が、財政ファイナンスではないかという観測を生んでしまうのではないか、という問題があります。』

『また、ご指摘のとおり、正常化に向かう時に日銀当座預金への付利金利を引き上げていくと、保有国債からの利子収入以上に利払いが増えるため、いわゆる逆ざやになり、赤字になる可能性があると思われます。私自身がシミュレーションをしているわけではないので、規模感は申し上げられませんけれども、資産買入れ策の大きなリスクの 1 つと認識しています。』

ということですが意見はあろうという話が次に。

『これについては、ご承知のとおり色々な意見がありまして、中央銀行の財務の健全性は果たして重要な問題なのかどうかという点について、例えば、長い目で見ればそれは重要な問題ではないという意見もありますが、私としては非常に深刻な問題と受け止めています。』

ほう。

『どういう問題があるかと言いますと、まず赤字になり、財務体質が悪化し、自己資本が毀損されていくということが、我々の本来の使命である、「物価の安定」という使命にとって大きな逆風になる可能性があると思います。』

何故かと言うと・・・・・・・・・

『日本銀行は会計規程で自己資本比率 10%程度という目標を掲げています。財務の健全性を非常に重視しているということを標榜しているわけです。このもとで、もし金融政策の正常化の過程で赤字になり、自己資本が毀損されて自己資本比率が下がっていく時に、金融市場では、中央銀行が物価の安定よりも財務の健全性の回復を優先する政策を行うと考える可能性が生じます。』

『それは何を意味するかと言うと、利子収入を増やす一方、利子の支払いを増やさないということなので、できるだけ付利金利を上げないことになります。その一方で、インフレ期待が大きく高まってもそれを容認し、長期金利が上昇するもとで、買入れを続けている限りにおいては、国債の利子収入が増える。そうしないと、会計規程という我々のルールに反することになるし、収益悪化により国庫納付金も納められなくなる。国庫納付金は政府の歳入の一部でもありますので、やや政治的な問題になりやすい。政治的な問題になると、日本銀行の独立性に何がしかの悪影響を及ぼすことになるので困る。こういった観点から財務の健全性を優先する政策を行うとの見方が金融市場で広がる。そうすると日本銀行の最も重要な使命である「物価の安定」は二の次になってしまうので、インフレ期待が不安定になる、金融市場が不安定となるというかたちで問題が発生し、結局は国民のコストになってきます。』

さらに・・・・・・・

『もう 1 つは、金利を上げる過程だけではなくて、既に我々は多くのリスク資産――ETFやJ−REIT等――を買っています。それらの価格が大幅に下がった時には減損処理をする必要があるので、それによって収益が悪化する、自己資本が毀損される可能性があります。政策が正常化へ向かうのがかなり先だとしても、そのもっと手前の時期に、株価が下がるといったときには、財務の問題が表面化して金融市場の不安定化に繋がってしまい、それが経済、国民生活にとってマイナスになる可能性があります。』

なるほど。

『このように、財務の健全性の問題は非常に重要な問題であると考えています。今のバランスシートの規模から考えると、金融政策正常化の過程では非常に大きな衝撃が収益あるいは財務に及ぶ可能性があるということを踏まえてリスク管理をする必要があると考えています。』

金融高度化センターの出番ですね(違)!!!


・YCCの建付けと運営について

この後第2の柱の点検の重要性というのもあって、決め台詞に『第 1 の柱のみに基づいて 2%の物価目標達成のためなら何を犠牲にしてもいいという考えだと、非常に危ういと個人的には考えています。』という声に出して読みたい言葉があるのですが、これまた凄まじく長いのですいませんが飛ばしまして、その次の質疑から。

『(問) 2 点お伺いします。まず、イールドカーブ・コントロールに関してですが、5 つのマイナス面を挙げていらっしゃいますけれども、導入から 5 か月経つなかで、いくつかのマイナス面が顕在化したとすれば、その具体的な時期と場面を教えてください。もう 1 つは、一昨日に日本銀行で開催された「市場調節に関する懇談会」で、今後の調節運営を安定化させるために、オペ実施日を事前に公表することを検討しているという話が出たと聞いていますが、こういう説明についてその狙いどおりにいきそうかどうか伺います。』

後半かなりテクニカルですが。

『(答) イールドカーブ・コントロールの問題点は、挨拶要旨でも指摘していますが、量と金利を同時に目標にすることはできないわけであり、金利で目標を定めたら量のコントローラビリティーは下がってしまうということです。』

仰せの通り。

『イールドカーブ・コントロール導入直後の市場は比較的安定していたのですが、米国の長期金利が上昇に転じた昨年の 11 月大統領選挙後の動きをみると、株価が上がりましたので日本経済にとってはやや追い風のような印象も受けましたけれども、イールドカーブ・コントロールの観点からすると、逆風であったと思いますし、政策の持続性・安定性を測るうえでの最初の大きな試練になったと思っています。』

『それ以降は、ご案内の通り、オペレーション上は非常に難しい状況が続いていますし、特に 1 月のオペの回数を減らすといったことをきっかけに、市場との対話がややギクシャクした面があったのではないかと思います。』

(;∀;)イイハナシダナー

『そういう意味では、私が考えていたように、イールドカーブ・コントロールのもとで量のコントロールが難しくなり、結果的に大量の国債を買わなくてはならなくなってしまい、国債の買入れペースを落として安定性を高めるというような望ましい方向に向かっていかないリスクが既に顕在化していると思っています。』

まあそういう理屈だとそうですな。

『今回の見直しのきっかけとなったのは、米国大統領選挙であったり、その後の我々のオペレーションであったわけですが、底流にあるのはイールドカーブ・コントロールという枠組みの難しさということです。』

その通り。

『時間が経てば経つほど実体経済の環境が変わってくるわけですが、目標とする金利水準は一定ですから、両者の間に歪みが溜まっていく。その歪みを国債買入れの増減で調整していくのが基本的な考え方ですので、時間が経てば経つほどおそらく実際の目標と市場実勢に照らした理論値とのかい離が開いていくことになり、オペは時間とともに難しくなっていく。さらに、市場に大きな外的ショックがあった時には、相当難しくなっていくということです。』

正論。

『これまでのところ、運営が相当に難しくなってくるところまでは行っていないかもしれませんが、米国の大統領選挙後が最初の試練であったと思っています。』

ということで既に質問2に入っているような気もしますが後半の質問への答えがまた良い説明なのよ。

『2 番目については、正式に発表されたものではないと思いますが、報道されているところで私が理解している点に基づいてお話ししますと、1 月のオペの買い入れの回数を減らすといったあたりから、市場とのコミュニケーションがやや難しくなってきました。』

うむ。

『金融機関は、日本銀行にオペで売ることを前提に国債を入札で買うわけです。』

しらっと身も蓋も無い話を。

『非常に短期間で日本銀行に売るので、在庫の管理のリスクは小さい。ところが、回数が減ると、思いのほか長く在庫として持っていなければならないので、そこが大きなリスクとして意識されたのだと思います。』

うむ。

『それに対して、今回報道されたような変更が行われるならば、予めオペの日程を明らかにしておくということですから、そうしたリスクを下げる効果があると思います。ただ、これについては、報道されたことが正しいとすれば、何かあった時にオペの回数を増やすことができますが、発表してからオペをキャンセルすることはないということであれば、金利が上がっているときにはオペの回数を増やすことがありますが、金利が下がっているときに既に発表したオペの回数を減らすことはないということになります。』

しらっとまた重要な話をしていますので注目が必要ですが、まあ確かに運営としてはそうなるでしょうと思われますな。あとは「額の上げ下げ」をどういう所でやるのか、あまり煩雑に上げ下げすると結局また意味不明の柔軟化になってしまうのか、狭いレンジでの運営を狙うのか、というような論点が浮上してくると思います。

『しかし、実際には、先行き市場の金利が下がることもあり得るわけですので、果たして金利上昇に対応した今回の変更がオペ全体の安定性に非常に貢献するような決定打になるかどうかについては、やや疑問があると思っています。』

確かに金利が下がった時の運営で苦労するでしょうな。

『また、今申し上げたような経緯で見直しが講じられるならば、それは金融市場局が決める話で、政策委員会が決定するものではないのですが、この底流にあるのは、達観すれば、金利を維持するためには国債の買入れはコントロールできないという、イールドカーブ・コントロールが持っている本来的な難しさといいますか、そういったところが表れていると思います。』

その通り。

『ですので、報道されたような対応によって、オペの安定性が確実に高まるかというと、先程から申し上げている理由で、決定的な安定策にはならないと私自身は思っています。』

ということで正に仰せの通りなのですが、どこぞのベンダーはこの一連の説明の中で先ほどあった「予めオペの日程を明らかにしておくということですから、そうしたリスクを下げる効果があると思います」の部分だけ殊更に切り取ってヘッドラインにしていて、お前は何を言ってるんだというところで猛省を促したい。


・政策の運営に関して

『(問) 7 月に任期を終えられますが、5 年間を振り返って、どのような思いかをお聞かせ下さい。具体的には、最初の大規模緩和に賛成されて、その後の追加緩和、マイナス金利政策、長短金利操作付き量的・質的金融緩和については反対をされて、さらには国債買入れ額の減額を提案されているということですが、そういった面でご自身が果たされた役割も含めてお願いいたします。また、今も非常に難しい状況になりそうだというご指摘もありましたが、これまでどこかで金融政策を転換するポイントはあったのかどうかということもお願いいたします。』

これはまた。

『(答) 私自身の考えは、金融政策決定会合毎の提案や、このような記者会見の場、金融経済懇談会の挨拶要旨のなかで既に申し上げてきた通りです。その意味で正常化はもっと早いタイミングで始めておくべきであったと思っています。マイナス金利政策自体は副作用の方が大きいと思っているので、引き続き反対です。イールドカーブ・コントロールについては、先程申し上げたような多くの問題点があって、その効果との見合いで考えると、やはり副作用の方が大きいのではということで反対です。私自身としては、国債の買入れ額に目標を定めて、秩序立って下げていくような提案や、物価上昇率 2%の目標を中長期の目標にすることで、金融政策の柔軟性を高めることができる、正常化に向かえるよう環境を改善するという提案をしてきました。私の考えとしては、それらが望ましい代替案ということです。』

ちょっと惜しいのは今の政策との折り合いをつけながら何とかできなかったかという点ですね。

『それから、7 月まで任期がありますので総括するにはまだ早いのですが、1 点だけ申し上げますと、政策委員会の審議委員というのは、金融政策決定会合のメンバーというだけでなく、その他の日本銀行業務全体の最高の意思決定機関のメンバーでもありますので、様々な決定も行うわけですが、政策委員会の設計時に期待されていたような機能を最大限果たしていくこと、つまりメンバー9 名全員がそれぞれ独自の考え方をしっかり言うということ、また、全会一致制ではないということが重要なポイントです。』

>メンバー9 名全員がそれぞれ独自の考え方をしっかり言うということ
>メンバー9 名全員がそれぞれ独自の考え方をしっかり言うということ
>メンバー9 名全員がそれぞれ独自の考え方をしっかり言うということ

しらっと砲撃していますね!!!

『全会一致制では必ず意見を統一しなくてはいけないわけですが、金融政策決定会合やそれ以外の会合でも、多数決制で決定がなされるということは、少数意見を重視する設計であるということです。その時点では少数意見であっても、その後その意見が段々と影響力を持ってきて、多数意見になることもあるという点も含め、少数意見を殺さないという、非常に民主的な制度です。』

ですです。

『そう考えると、政策委員会制度というものが、本来、新日銀法が成立したときの精神に照らして、非常に有効に機能すれば、日本銀行の政策や業務の向上に繋がり、ひいては国民の生活・経済の安定に繋がることになります。』

非常に有効に機能していないと言いたいんですねわかります。

『そうした点から、私も一生懸命その役割を果たそうと考えて、金融政策でもそうですが、それ以外の業務全般についても、議論が進むなかで自分の意見は述べ、賛成できないところは賛成しないということによって、非常に建設的な意思決定に貢献してきたと思っています。』

とはいうものの・・・・・・・・

『さらに、金融政策については、少数意見の一部が外部に公表される制度になっているということは、かつて日本銀行の内部だけのある意味一方的な意見だけで政策が決まってしまい、それがバブルの発生を許してしまったのではないかという反省に基づいて、外部の人を入れ、色々な少数意見も踏まえたうえで、最終的に多数決によって決定したということを対外的に示すことになり、政策に係る意思決定の信頼性を高めるものです。自分自身もこうしたところに貢献したいと思っておりましたし、残りの任期でも同じように努力したいと思っています。』

なるほど綺麗な悪態というのはこうやってつくのか、と不肖このアタクシ痛く感じ入った所です。


なお、最後にマイナス金利の導入経緯の説明が足りんというのもあるのですが時間と量の関係上割愛しますが、今回14ページ(実質13ページ)もありますので一読あれ。






2017/02/24

お題「とりあえずブルフラットしたわけだが/木内さん多分最後の金懇挨拶ですな」

それはもっと前にどこかの誰かさんに向けて欲しかったですなあ。
http://jp.reuters.com/article/ecb-eurozone-praet-trump-idJPKBN16212Q
Business | 2017年 02月 23日 19:29 JST
トランプ氏発言は物事を単純化、社会にリスク=ECB専務理事

『[ロンドン 23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のプラート専務理事は23日、トランプ米大統領の物事を単純化した発言は背景にある複雑な要素を無視したもので、社会や金融システムにとって危険だとの見方を示した。専務理事はロンドンでのイベントで、物事をあまりに単純化した発言をすれば、世界のシステムは深刻な悪循環に陥る可能性があると警告。「われわれが新大統領から受け取っているシグナルは、複雑な背景がある物事をあまりに単純化した発言であり、気掛かりだ」と語った。』(上記URL先より)

トランプ云々の部分を置物リフレ理論に置き換えても全く違和感がありません。


○オペ日程がガチガチに戻るという話が大いに影響したということで

昨日の債券市場ちゃんですがまたまた手抜きでロイターさんから。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G82CZ
Markets | 2017年 02月 23日 15:18 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は一時1カ月ぶり0.070%

『<15:10> 国債先物が続伸で引け、長期金利は一時1カ月ぶり0.070%

国債先物中心限月3月限は前日比8銭高の150円16銭と続伸して引けた。前日の米債高に加えて、日経平均が上値の重い展開となったことを受けて、買いが先行した。午後に発表された20年債入札結果が順調になると、ショートカバーの動きが強まり、一時150円26銭と1月25日以来、約1カ月ぶりの高値を付けた。現物市場は超長期ゾーンを中心に利回りが低下。20年債入札を順調にこなしたことで、スティープ化ポジションを巻き戻す動きが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同1bp低い0.070%と1月27日以来の水準に低下した。』(上記URL先より)

ということで昨日の引けは

2年373:▲0.265%(変わらず)
5年130:▲0.120%(変わらず)
10年345:▲0.075%(0.5毛強)
20年159:0.655%(3.5毛強)
30年53:0.850%(4.5毛強)
40年9:1.005%(5.0毛強)

と華麗にブルフラットして引けていましたが、超長期入札が

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170223.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 4兆237億円
(2)募入決定額 9,936億円
(3)募入最低価格 98円75銭(募入最高利回り)(0.671%)
(4)募入最低価格における案分比率 84.1181%
(5)募入平均価格 98円79銭(募入平均利回り)(0.669%)

前場引けが10銭高くらいで平均落札も足切も大体2毛強のバランスで、まあ入札時点でも強かったのですけれども(あと5銭位は下とみられていた筈)、引けで8銭高の3.5毛強となったので入札レベルから見ても華麗にフラットニングして入札行った皆さんウマーの展開という事になりました。

でまあ本日は順当に行けば超長期の輪番が入る(あとは中期ですかね、1年以下とかの辺りは良く分からん)という事になりますし、大体からして昨日の報道通りの「オペ日程事前通告」という事になりますと、それは流れとして最近やっていた「柔軟なオペ運営」から「硬直的なオペ運営」というゆうてみればYCC導入前に戻すことになりますよね、となればそらもう今月の残りだって市場を驚かすようなオペ運営をする訳が無いでしょうとなりますな。ということで、急にワケワカランのが入ってくるリスクを勘案してあんまりこう買うのもなあ〜となっていた分で金利が中々サガランチ会長になっていた分のリスクプレミアムちっくなディスカウント部分を剥がす方向に動きました、(でもって10年は0.10%というか0.11%で止めるのが示されているからそっちは逆に止めを期待して0.10%近辺のロングが溜まりやすかったから上昇時に超長期対比遅れる)ということなんでしょ、よー知らんけど。


ということでまあ本日の輪番がどの程度順調に(というのも変な言い方だが)推移するのかとかニヨニヨしながら見ていく訳ですが、この輪番予定事前大公表ってとりあえず目先はそういう部分でリスクプレミアムみたいなのが乗っていた分が剥げるのですが、より長い期間で見た場合に今度はYCCとの整合性問題が出てくる(硬直的なオペ運営していたら何もない時は良いけれども何か有った時のコントロールが難しくなるし、コントロールしようとして機動的な対応をしたらその時点で「さっきと話が違う」となって不確実性リスク大復活となる)ので、まあオペがどうのこうの言うのはあくまでも短期的な話で、本質的な所でYCCのロジックというか哲学というかをきちんと説明しないといかん、というのは昨日うだうだ申し上げた通りでしょうな、と思う次第で、これをもって「コミュニケーションの改善」というのはちょっとおいおいそれは短期的な視点にも程があるわと存じますがあんまりこれをゴリゴリ言ってると(以下自主規制)。



○木内審議委員の金懇ですよ!!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170223a1.pdf

・木内さんの経済見通しは引き続き「現在は概ね均衡状態」という見立て

経済物価情勢に関しては日銀の公式見解の説明をした後に『(2)私の見通し』ということで説明があります。

『一方、私は、現在の成長率および物価上昇率は、わが国経済の実力に照らして概ね安定した状態にあり、展望レポートの見通し期間中、そのような安定した状態が続く蓋然性が高いと考えています。しかし、こうした私の見通しは、従来と同様、中心的な見通しと比べると相応に慎重と言えます。』

ということでこの説明はぶれませんな。

『その背景には、第1に、景気回復期間が長期化するなか、需給ギャップは既に概ね解消されており、潜在成長率を持続的にはっきりと上回るような成長をもたらす牽引役は、金融緩和の効果を含めて、見当たらないため、概ね「0%台半ば程度」と推計される潜在成長率並みの成長が続くとみられること、第2に、このため、需給ギャップは概ね中立的な水準を維持すると考えられることから、短期的な変動要因(生鮮食品価格やエネルギー価格、為替相場の変化による輸入品価格の変動等)を除いた基調的な物価上昇率が先行き顕著に高まるのを期待することは難しく、わが国経済の実力に見合った物価環境が続くとみていること、があります(図表3、4)。』

でもって『(イ) 経済見通しの留意点』ですけれども、

『私は、わが国経済は、2018 年度までの見通し期間を通じて、概ね潜在成長率並みの成長を続けると考えていますが、見通し期間の終盤を中心に下振れリスクの方が大きいとみています。以下では、経済の先行きに対するリスクとして特に留意している点について述べたいと思います。』

とありますが、『海外経済と輸出』『設備投資』『個人消費』とありまして、ここまで輸出が強いのがドライバーになっていたので、今後の輸出の動向に注意、というのが一番大きなファクターとしているようですが、個人消費の所でしらっと、

『個人消費に関する留意点としては、第1に、物価の動向が挙げられます。すなわち、名目賃金が引き続き緩やかな伸びに止まるなか、生鮮食品価格の高騰やエネルギー価格の上昇、為替円安による輸入品価格の上昇などが生じる場合、家計の実質賃金の見通しが悪化し、個人消費に抑制的な影響を及ぼす可能性があります(図表7、8)。 』

と物価が上がれば全て解決という置物リフレ理論に無慈悲な砲撃を加えているのがチャーミングですな。


・物価見通しの違いに関して

『(ロ)物価見通しの背景にある考え方』の説明は分かりやすく説明していますので確認しましょう。

『こうした両者(引用者追記:展望レポート見通しと木内さんの見通し)の違いの背景については、第1に、需給ギャップの見通しの違いが考えられます。中心的な見通しでは、需給ギャップが先行き改善傾向をたどり、需給面から物価押し上げ効果が相応に発揮されることが見込まれています。しかし、既に述べたとおり、潜在成長率をはっきりと上回るような成長は容易に持続可能でなく、需給ギャップの顕著な改善は生じにくいと私は考えています。』

ほほう。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率の見通しの違いが考えられます。中心的な見通しでは、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられています。しかし、物価上昇率は依然として低水準にあり、それが今春の労使交渉で賃金引き上げ率を抑制する要因となる可能性が高いことなどを踏まえると、中長期的な予想物価上昇率は、当面は現状程度の水準で横ばい圏内の動きに止まると私は考えています。』

ここのところは日銀執行部としてもゴリゴリ突っ込まれると困る所の筈なのだが、あまりゴリゴリと突っ込むと「だったらインフレ期待が上がらないでデフレマインドに近いままの状態で問題がないと思っているのか」と改善のための方策ではなく、急に「敗戦思想はケシカラン」とかいう神州不滅モードになって話が有耶無耶になるので全然建設的な方向にならないのが執行部の得意技。

『第3に、サービス価格の見通しの違いが考えられます。すなわち、公共料金や一部サービス価格は、需給の変化に対する価格感応度が低いとみられ、労働需給が引き締まるなかでも依然鈍い動きを続けています。特に、家賃は足もと下落幅を緩やかに拡大しており、先行きの物価上昇率を抑制する可能性があると私は考えています。』

『第4に、為替円安の影響に対する見方の違いが考えられます。中心的な見通しでは、このところの為替相場の円安方向への動きの影響もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されています。この点、2013 年以降の経験に照らすと、国内電気製品に使われる部品の輸入比率の高まりなどの構造変化を背景に、為替相場が輸入物価を通じて物価に与える影響は強まっているとみられるものの、その影響は比較的短い期間に止まり、基調的な物価上昇率に与える影響は限定的であると私は考えています。』

たぶん3番目と4番目って実際には中心的見通しというか執行部の理屈もそんなに大差はないように思えます。ただこの点についても「でも物価はあがりまっせ」という話になるのって、第4に関して実際の物価が瞬間風速的にであっても上昇すると適合的期待形成にバトンタッチする、という(少々あるいはかなり虫の良い)パスを想定しているので出てくる見通し結果が異なってくる、ということじゃなかろうかと。

『第5に、賃金の見通しの違いが考えられます。すなわち、今春の労使交渉で賃金引き上げ率が顕著に高まるのを期待することは難しく、エネルギー関連や食料工業製品、電気製品といった価格変動の激しい品目の価格が為替円安の影響もあって一時的に上昇する場合、消費者心理の悪化を通じて、個人消費が下振れることにより、物価上昇率が抑制されるといった事態が再び繰り返される可能性も相応にあると私は考えています。』

まあこれは結果がしばらくしたら出るでしょうな。


・YCCケチョンケチョンの巻を鑑賞しましょうということで

当然ながら読みどころは『3.金融政策運営』である。

『「イールドカーブ・コントロール」の導入には、イールドカーブが低水準でフラット化したことにより、銀行収益を過度に圧迫する可能性や、長期・超長期金利が大きく低下したことにより、年金や保険等の運用利回りが低下し、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性といった「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入後に生じた諸問題への対応という側面が大きかったと私は考えています(図表 11)。 』

マイナス金利の問題点という所から丁寧に砲撃しています。

『また、「イールドカーブ・コントロール」の導入に当たり、金融市場調節の操作目標を長短金利に変更したことによって、国債買入れペースが変動しうる状態となったことから、この先、国債買入れペースが縮小して、国債買入れの持続性が高められる可能性も生じるなど、「イールドカーブ・コントロール」にはプラスの側面があると私は考えています。』

金利上昇圧力が掛かるとあっさり買入ペースが拡大する、というのは今回盛大に実証されましたな。

『しかし、以下で詳しく申し上げるとおり、「イールドカーブ・コントロール」にはマイナスの側面も多くあると私は考えており、プラス面、マイナス面双方を比較衡量したうえで、昨年9月の導入時点から直近1月の金融政策決定会合まで、「イールドカーブ・コントロール」に反対を続けています。』

ということで小見出し『(1)「イールドカーブ・コントロール」に対する評価 』に入ります。


『(イ)長期金利操作の問題点』

『まず、長期金利を操作することの問題点としては、第1に、「イールドカーブ・コントロール」のもとで、先行き、国債買入れペースが国債買入れの持続性を高めるのに十分なペースで低下していくかは不確実であり、逆に国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあると考えています。一般に、「量」と「金利」は一体的に決まるものであるため、両方に明示的な目標を設定しつつ安定的な金融調節を行うことは難しいと私は考えています。したがって、「金利」をコントロールしようとすれば、「量」のコントロールを失う可能性が生じます。』

そらそうよ。

『この点にも配慮して、新たな枠組みでは、国債買入れ額は「めど」とし、長期金利の目標水準は「程度」とするなど、「量」にも「金利」にも緩やかな目標を設定しているとの説明もできます。しかし、それでは何れの目標の達成も難しくなる可能性が十分にあると思います。こうした可能性は、国債市場に外的なショックが生じる場合に顕現化しやすく、昨年 11 月以降の米国長期金利上昇に伴うわが国長期金利への押し上げ圧力が長期金利操作への最初の試練になっていると私は考えています。』

まあ試練の結果「柔軟なオペ運営」を盛大に行ったと思ったら「硬直的なオペ運営」に盛大に豹変するの巻となりましたな。

さらにケチョンケチョンは続く。

『第2に、国債買入れペースの調整を通じて、直接的に影響を与えることができるのは、名目長期金利を構成する要素のうちタームプレミアムの部分に限られると考えられます。しかし、既往の国債買入れによってタームプレミアムは相当程度押し下げられており、追加的な低下余地は限られている可能性が考えられます。』

なるほど。

『そうしたもとで国債買入れペースの大幅な振幅を避けつつ名目長期金利を円滑にコントロールしていくためには、短期金利の見通しに関する情報発信(フォワード・ガイダンス)を活用することも展望されます。しかし、長い期間の金利になるほど、フォワード・ガイダンスの信頼性は低下しやすく、金利のコントロールは難しくなると私は考えています。』

まあある意味オーバーシュート型コミットメントが一種のガイダンスなのだが、あれはあれで別に金利にコミットした訳でもなく、量が増える事にはコミットしているけれどもその額が1兆なのか100兆なのかということにはコミットしていない(そもそもそれやったら量的ターゲットのままなのでそうならない)ですからね。

『第3に、長期金利を一定の水準にコントロールすることは、金利の変動を通じた経済の自動安定化装置機能を損ねてしまうことになり、長期金利をコントロールしない場合と比べて経済の振幅を増幅し、経済を不安定化させてしまう可能性が考えられます。』

つまり・・・・・・・・

『例えば、経済にマイナスのショックが生じて予想物価上昇率が下振れる場合、名目長期金利が下振れないようなオペレーションを行えば、実質長期金利がその分上昇して景気抑制効果が生じます。逆に経済にプラスのショックが生じて予想物価上昇率が上振れる場合、名目長期金利が上振れないようなオペレーションを行えば、実質長期金利がその分低下して過度の景気浮揚効果が生じる可能性があります。』

この結果として生じる政策の不具合を調整しようとなると、長期金利目標を調整することになるのですが、その調整をどう行うのか、という事になった場合にはYCCで徹底抗戦の建付けを行うと、調整の際に大きなショックを起こすことになるので・・・・・・・・・・・・・

『この点、日本銀行の金融政策運営については、経済・物価・金融情勢を踏まえ、必要な政策の調整を行うことができる枠組みとなっていますが、長期金利の目標水準の変更は現実には容易でないと私は考えています。』

という事になりますよね。

『すなわち、目標水準を頻繁に見直すと、目標に対する信認の低下を招き、市場を不安定化させてしまうリスクがあります。また、日本銀行は、短期金利だけでなく、長期金利についても、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するために操作を行っていることを踏まえれば、依然として物価上昇率が低位で推移するもとで、近い将来に長期金利の目標水準を引き上げることには大きな問題があると思います。』

それは仰せの通り。

『第4に、現在のペースで国債買入れを続けると、国債市場の流動性が大きく低下し、流動性プレミアムの上昇から長期金利が上昇して、国債買入れペースの一段の拡大の必要が生じるといったスパイラル的な状況に陥る惧れがあると私は考えています。』

まあ逆もあるんじゃないですかね。というか逆が先に起こりそうですが。

『第5に、指値による国債買入れオペや長期固定金利資金供給オペの実施は、金利のコントローラビリティを高めることに資する可能性がある一方、国債市場の機能を著しく損ねて国債市場を不安定化させることや、金融市場全体の価格体系を歪めかねないと私は考えており、実際のところ、これらの手段の導入に反対しました。』

とまあ丁寧に砲撃を加えたあと、返す刀でマイナス金利にも嫌味を打ち込むというのが丁寧ですな。


・マイナス金利の弊害はまあ当然の指摘

『(ロ)マイナスの短期政策金利の副作用 』というイイハナシダナーな小見出しに参ります。

『次に、短期政策金利をマイナスにすることの副作用としては、金融機関の収益悪化を通じて金融仲介機能が低下するリスクが挙げられます(図表 12)。現在は、こうした問題は顕現化していませんが、先行き、マイナスの短期政策金利を長期間続けていく場合のリスクとして、私は懸念しています。具体的には、銀行は、収益環境の悪化に伴い、収益拡大を企図して過剰にリスクを取る可能性がある一方、将来的には、金融経済情勢の悪化などから損失が発生することなどによって、過度にリスク回避姿勢を強める可能性があります。その場合、企業や家計の借り入れ制約の強まりや、銀行による資産の投げ売りなどによって、実体経済や金融市場に悪影響が及ぶリスクも考えられます。』

『また、より長い目でみると、銀行の健全性の低下は、経済の効率性や生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、収益力の低下が続くもとで、損失吸収力が低下した銀行は、問題先の適切な処理を先送りすることも考えられます。その場合、資本と労働が非効率な企業に固定化され、経済全体でみると、全要素生産性の上昇率を長期に亘って押し下げることに繋がりかねません。』

『こうした点を踏まえると、金融政策は、通常、経済の需要面に影響を及ぼすと考えられますが、金融システムの安定を損ねてしまう場合には、生産性上昇率や潜在成長率といった経済の供給側にも悪影響を及ぼし、社会厚生上の大きな損失をもたらす惧れがあると考えています。』

という話ですが、まあこれはこの辺りはFSRでも指摘されている話でもあります。


・いつも断片しか出て来ないので・・・・・・・・・・・

『(2)国債買入れの安定性・持続性強化に向けた提案 』という小見出しが、

『私は、金融市場調節の操作目標を資産買入れ額としたうえで、資産買入れ方針に関して、長期国債保有残高が年間約 45 兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどを内容とする議案を提出しています。以下では、私がこうした提案を行っている趣旨を説明したいと思います。』

となっていますのでこういう機会じゃないと詳しく読めないので鑑賞しましょう。

『(といいつつ長いので最初の説明は割愛して)したがって、日本銀行が発行済みの国債を全て保有することができる訳ではなく、現在の買入れペースを続けていけば、国債買入れが困難な状態に近づくことは必至であると私は考えています。』

そらそうよ。

『また、国債買入れの困難度が増すにつれて、先行きの金融政策に対する不確実性の高まりや国債市場の流動性の過度の低下などから、金利が大きく変動しやすくなり、金融市場や実体経済に深刻な影響を及ぼす惧れがあります。こうした事態の発生を未然に防ぐため、私は、2015 年4月の金融政策決定会合以降、国債買入れペースを年間約 80 兆円から年間約 45 兆円へと減額する提案を行っています。』

ということで・・・・・・・・

『また、昨年9月の「イールドカーブ・コントロール」導入後、金融市場では、日本銀行が超長期国債の買入れペースを一時縮小したことなどを踏まえ、「日本銀行は、環境が許す限り、国債買入れペースの縮小を進めていくのではないか」との見方が相応に広まっていると私は考えています。しかし、それにも拘らず金融市場で大きな混乱が生じていない背景の一つには、金融市場が、「長期金利の押し下げとそれを通じた金融緩和効果は、中央銀行の国債買入れペース(フロー)ではなく国債保有残高(ストック)に依存する」というストックビューの考え方を一定程度受け入れていることがあると思います。』

うーんここは微妙。短国買入が一つの示唆になると思うのですが、多分ストックビューってのはそのストックがある閾値に達すると急激に効いてくるんじゃないかと思っているんですが。

『こうしたもとでは、国債買入れ額のコントローラビリティが不確実な「イールドカーブ・コントロール」ではなく、金融市場調節の操作目標を資産買入れ額に設定したうえで、当面は国債保有残高を一定とする状態まで国債買入れペースを段階的に縮小させていくような施策が、政策の持続性と市場の安定性を高めることに貢献すると考えています。また、これによって実質長期金利を安定的に低位に維持し、これまで積み上げてきた緩和効果をしっかりと確保していくことが最も重要であると私は考えています(図表 14)。』

テーパリング!とやってしまうとストックが効かなくなるようにも思える(根拠は無くてアタクシの動物的な勘なのですが)ので、これはこれでちと極端にも思えまして、もっと超グラデュアルに買入拡大ペースを落とす(それこそオーバーシュートコミットメントを背景にすれば物価2%が見えてくる時期がケツ、みたいな減額ペースを最初は見せながら様子見て徐々に落とすとか、ちょっと思いついただけなのでアレですけど)とか、まあそんな感じじゃないと金利は跳ねてしまう気もせんでもない、というかする。


・物価目標に関する話

次が『(3)「物価安定の目標」の考え方と金融政策の役割』で最初の小見出しが『(イ)2%の「物価安定の目標」の柔軟化 』である。

『まず、私は、望ましい物価上昇率とは、家計や企業が物価動向に煩わされることなく安定した経済活動を行うことができる水準と考えています。また、そうした水準は、家計や企業の中長期の予想物価上昇率と概ね整合的であると思います。しかし、中長期の予想物価上昇率を示す様々な指標が長期に亘り2%を明らかに下回ってきたことなどを踏まえると、現時点では、物価上昇率が持続的に2%程度となる2%の「物価安定の目標」を短期間で目指すことは、その達成が難しいばかりではなく、家計や企業の経済活動にとってむしろマイナスとなってしまうため、望ましくないと考えています(図表 15)。』

という説明は穏当なのですが、じゃあそれだと永遠にインフレ期待が上がらないだろうと執行部的な理屈だと突っ込まれる訳ですが、『(ロ) 経済構造と物価の基調 』という次の小見出しを読んでみませう。

『また、基調的な物価上昇率は、財・サービスの需給関係、労働市場の動向、現実の物価上昇率、中央銀行が掲げる物価目標の水準など、様々な要因によって規定されると考えられますが、やや長い目でみると、生産性上昇率や潜在成長率といった経済の構造的な要因によって決まる部分が大きいと私は考えています。』

『例えば、潜在成長率が低水準にあり、企業の国内成長期待が低い状況では、企業は将来収益を圧迫する基本給の引き上げなどに対して慎重になるのは自然であり、労働者はそうした企業の姿勢を認知するものと考えられます。』

『こうしたもとでは、家計や企業の中長期の予想物価上昇率は低位に形成され、そのことが現実の物価上昇率を低位に抑えるという側面があると思います。また、このもとで仮に金融政策の影響などから物価上昇率が一時的に高まる場合、消費者は実質賃金の上昇率が低下してしまうとの懸念から支出を抑制し、その結果、物価上昇率が短期間で低下してしまうことも考えられます。』

うむ。

『しかし、金融政策が前向きな経済構造の変化を直接もたらすことは難しく、そうした変化の実現のためには、イノベーション向上に向けた企業の努力と、それを最大限引き出すための規制緩和や人口対策などを含む、政府の構造改革の取り組みが必要です。そして、国民が持続的に生活の質を向上させるためには、生産性上昇率や潜在成長率の改善を通じて成長力を強化することが不可欠です。』

実に正論なのですが、まあこれを声高に主張すると「じゃあ金融政策って何なんですか」と言われてぐぬぬとなってしまうからこうは言えません、と執行部の発想だとなってしまう、というのもこれまた理解できる話なので(納得するとは言ってない)、まあこれはこれで仰せの通りとは言え、それを言っちゃあおしマイケル的なサムシングもあるので難しいですの。

ということで『(ハ) 今後の金融政策の役割』という次の小見出しの木内さんの説明ですが、

『この先、前向きな経済構造の変化が進み、強い経済を実現することができれば、家計や企業の中長期の予想物価上昇率が2%程度の水準まで高まり、そのことが現実の物価上昇率が安定的に2%程度で推移していくことを支えることで、2%の「物価安定の目標」が妥当となる局面に至ることも期待できます。』

ふむふむ。

『しかし、このような変化がどのような時間軸で生じるのかは予想が難しいため、2%の「物価安定の目標」は中長期的に目指す目標とし、2%の「物価安定の目標」と整合的な強い経済の実現を政府や企業とともに目指すための一種の象徴として位置付けることが良いと私は考えています。』

まあそうだろうなあとは思うのですが、いったん「期待に働きかける」とか言い出した手前引っ込みは付かないでしょうなとも思う。

『ただ、前向きな経済構造の変化を促す政府や企業の取り組みは、金融経済情勢が不安定な状態のもとでは進みにくいと考えられます。したがって、日本銀行が担うべき役割は、金融・経済の安定を確保することで、潜在成長率や生産性上昇率などで示される経済の実力が2%の物価上昇率と整合的になる水準まで高まるよう、政府や企業の取り組みを側面から粘り強く支援することにあると私は考えています。』

『そのためには、無理に金融緩和の強化を図るよりも、実質長期金利を安定的に低位に維持し、既往の緩和効果をしっかりと確保することで、安定した金融経済環境を維持していくことが重要です。私が現在提案している金融調節方針の修正は、こうした考え方に基づいたものであり、2%の「物価安定の目標」の実現のためには、その方がむしろ近道であると考えています。』

まあ理念の方はそうなんですが具体策がいきなり45兆円ペースというのはちと唸る。


・第2の柱と副作用との話

最後の方は『(ニ) 柔軟な金融政策運営の重要性 』、『(ホ)日本銀行の責務 』とありますが、ポイントだけ引用します。

『また、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を中長期的に目指す姿勢とするとともに、中長期的な経済・物価の安定確保の観点から、金融不均衡の形成などのリスクにも十分に目配りをして、柔軟に政策運営を行うことが重要です。』

『こうした枠組み(引用者追記:第1の柱、第2の柱による点検)は、足もとの物価の安定に注意が向けられるなか、金融面の不均衡拡大への対応が遅れて、中長期的な経済の安定に資する政策が採られなかった 1980 年代後半のバブル期の反省に立って作られたものと言えると思います。このような2つの「柱」の点検という枠組みが作られた背景や考え方を、今一度思い起こしてみる必要があると私は感じています。』

『最後に、日本銀行は、物価安定目標の柔軟化と柔軟な政策運営のもとで、「量的・質的金融緩和」導入以降の異例の金融緩和策を、適切な時期に正常化へと向かわせるとともに、流動性低下に起因する国債市場の混乱や低金利下での金融仲介機能の低下、巨額のバランスシートのもとで生じうる短期金利引き上げ時の日本銀行の財務環境の悪化といった様々な金融緩和の副作用が顕現化して日本経済と国民生活に大きな悪影響を及ぼすことのないよう、これらの副作用の管理を確りと執り行い、金融経済情勢の安定維持に最大限努めるという重要な責務を負っていると私は考えています。』


ということで、たぶん最後の金懇になると思いますが、会見でも木内節が炸裂していたようですので本日出る会見要旨についても楽しみに待ちたいと思います。




2017/02/23

お題「日銀オペの日程事前予告計画とな/1月FOMC議事要旨の寝起きインスタント読み」

声に出して読みたい日本語来ました。
http://jp.reuters.com/article/aso-sims-idJPKBN16105S
Business | 2017年 02月 22日 10:44 JST
シムズ理論、財政再建がいい加減になりかねないリスクも=麻生財務相

『[東京 22日 ロイター] - 麻生太郎副総理兼財務相は22日午前の財務金融委員会で、インフレによる政府債務解消を目指す「シムズ理論みたいなものがでてくると『いいじゃないか』と言う、いい加減な奴が出てくる」と批判し、あくまで歳出削減・歳入拡大による財政再建を進める重要性を強調した。』(上記URL先より)

>シムズ理論みたいなものがでてくると『いいじゃないか』と言う、いい加減な奴
>シムズ理論みたいなものがでてくると『いいじゃないか』と言う、いい加減な奴
>シムズ理論みたいなものがでてくると『いいじゃないか』と言う、いい加減な奴


それはさておき日銀オペネタがやっと無くなって慶祝の至りと思ったらまたネタが投下されるの巻キタコレ!ということで。

○いやだからそうじゃないんだって・・・・・・・・・・・(オペ事前予告関連ネタ)

一昨日はこんなのがあった訳ですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170222b.pdf
「市場調節に関する懇談会」(2017 年第 1 回)の概要

日本銀行では、「市場調節に関する懇談会」(2017 年第 1 回)を下記のとおり開催しました。
1.開催要領
(日時)2017 年 2 月 21 日(火)17 時 30 分から
(場所)日本銀行本店
(参加者)全オペレーション対象先の市場部門担当役員または実務責任者
(日本銀行出席者)金融市場局長、市場調節課長、総務課長、市場企画課長


でまあ資料が続くのですがそれはさておきまして、こんなのがあったとの報道な訳でして・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G72LB
Business | 2017年 02月 22日 16:34 JST
日銀、国債買い入れ日の事前予告を検討=市場筋

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

ということで気を取り直して記事の方ですが、

『[東京 22日 ロイター] - 日銀が長期国債買い入れオペに関し、現在非公表のオペ通告日を事前に予告する方向で、オペ参加者と調整に入ったことがわかった。複数の市場筋が明らかにした。複数の市場筋によると、日銀は買い入れ見直しについて、21日に開いた「市場調節に関する懇談会」で提案した。日銀からのコメントは得られていない。日銀が検討する通告日の事前公表は、買入規模が大きい「残存1年超5年以下」「残存5年超10年以下」「残存10年超」の主要3ゾーンになる見通し。1回ごとの買入予定額もレンジを示すとの見方も浮上している。』(上記URL先より)

とまあそういう報道な訳ですが、いやあのそれはちょっと違うんじゃないのかねえという話を一席。

#なお日銀からのコメントは無いそうなので、以下アタクシがうだうだ申し上げるお話は上記のロイターさん記事の内容を前提とした一席である、ということでご諒解賜りたいと存じます。


・オペの予見可能性を高めるというのはそういう事ではないのですが

いやですね、確かに1月の中期輪番スキップ以来のドタバタの中で「オペの予見可能性があまりにも下がり過ぎた」と批判の大合唱な訳ですし、まあ不肖このアタクシもそんな事は書いた気がしますけれども、「オペレーションの予見可能性を高める」というのは日程を事前に決めるとかそういう細かいテクニカルな話とは違うんじゃないですかねえ、と申し上げたい訳ですよ。

つまりですね、1月の中期輪番スキップ以来のドタバタで問題になっているのは、オペのスケジュール云々という話もあるけど、それよりも問題なのは「オペの打ち方が変わる理屈がまるで首尾一貫していなくてさっぱり読めない」という事なのですよ。中々表現しにくくて恐縮なのですが、つまりYCCやって行く中でその時の状況によってオペの入れ方とかが変わるってのは良いのですけれども、「そもそもYCCにおける金利コントロール、すなわちオペレーションの運営をこのようなロジックで行っている」というのをきちんと説明すれば、オペレーションの上げ下げが行われたとしても、「ああこういう環境(市場金利とか物価とかその他諸々のバックグラウンドであり、それはまあ時々でフォーカスするものが違うにしても)だから、オペの増額/減額を行ったんだなあ」と納得がいく訳ですし、そういうのが確りとしていれば市場環境やらその他の環境を見ながら、そろそろこの辺りには牽制が入るだろう、とか買入額が減額になるだろう、とかロジカルに考えられる訳ですよ。

とは言いましても、そもそもYCCにおける「イールドカーブコントロール」の話にしても、導入当初においては、

『1 今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』(2016年9月21日声明文1p脚注より)

と言っておきながら、その後イールドカーブが大きく動いているのに常に「現状のイールドカーブが適切」という現状追認話しかしないし、しかも何で現状追認するのかの説明も無い(毎度しつこく申し上げますが)っつー事で、適切なイールドカーブとか10年金利の水準とか言うのに何らかのバックグラウンドがあるのかが極めて怪しい訳で、まずはそのそもそも論に立ち返って頂かないと、オペレーションの予見可能性も蜂の頭も無い訳ですな。

#なお、こういう悪態をつくと「短期金利だってテイラールール通りに運営して上手く行くわけではないように、そもそも理論的にこうだからこうすべきというのは政策実務になじまない」と言われるのが見え見えなのですが、だったら最初から「イールドカーブコントロール」とか「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止する」とか言うなと小一時間問い詰めたい訳です



・柔軟な運営から硬直的な運営への振れ幅が大きすぎるんですけど

でまあ理論的な云々は毎度申し上げている悪態ではありますが、今回の話って「オペの予見可能性を高めたい」という事を理論的バックボーン云々はさておけば(って本来は置いてはイカンのだが)、確かにオペの入るタイミングが分かるから「中期のオペが今月も5回なのでは」とか「長期のオペが6回じゃなくて7回になるのでは」的な不確実性は無くなります、というのは事実。

でもね、12月末からのオペ運営ってのは、(1)12月末に公表した1月の年限別オペオファー回数をレンジにした、(2)1月下旬に中短期のカレント中心に現物債の需給が逼迫して金利低下傾向が強まったのを見て、すかさず(かどうか知らんが客観的に見たらそう言われると思う)前月にレンジ化した回数の調整をスキップという形で実施した、という流れになっていて、それで金利が上がったので今度は輪番増やす→落ち着いたと見て1月末公表の2月予定の所では元に戻す、という形で「輪番オペの柔軟な運営」をしていた訳ですよ。

でもって2月に入ってからのドタバタはご案内の通りですが、今度は金利上昇を牽制しようとして3回連続の長期オペオファーとか、やはり「柔軟な運営」を行う(1月のとはベクトルが違うが)というのをやっていて、まあ足元でやっと落ち着いて来た感じだったわけですな。

・・・・・・・となったのでおとなしく淡々と変な調整しなければ良いのに、と思うに今回の話だと主要ゾーンのオペタイミングを事前に晒すという、思いっきり柔軟性の無い運営をしますので、その代り予定が分かるからポジション運営やりやすいだろう、という運営に一気に舵を変更する、というお話にしか見えないのでありまして、確かに予定を事前に大公表だからその点では「読みやすい」のですけれども、そういうオペ技術よりもうちょっと大きな話になりますと、あまりと言えばあまりのスタンスの大変更になる話な訳ですよね(中期輪番1回8200億円分のスキップとか凄まじく「柔軟な運営」からいきなり翌月の予定全部事前に出すという落差がでか過ぎということですな)。

でもってこれだけ思いっきり変えられると、確かに目先暫く(1か月なのか数か月なのか知らんが)はオペが事前に読めるということで不確実性が下がるという話かも知れんですが、ちょっとオペ運営で不都合があったからと言って基本的なスタンスがいきなりガラッと変わってしまう、という事になりますと、新方式を採用したとしても、やっているうちに都合が悪くなったらまた運営のスタンスが突如豹変するんじゃないですかねえ、とまあそういう事を意識せざるを得なくなる訳で、確かに目先はこれで落ち着くという短期的な話はできるのですが、賞味期限は「このやり方で不具合が発生しないうちに限る」んだったら中期的に持つのかよとヒジョーに疑問な訳です。



・事前完全公開方式の問題点とか弱点とかを考えてみたのだが

しかしまあ何ですな、日程全公開方式って日銀が債券市場におけるスーパードミナントプレーヤーになっている上に、(まだ中長期国債買入ではつかわれていない「これよりも低い利回りでは買いません」攻撃があるというものの)成行で買いまぁす!と思いっきり宣言する訳ですから、そらもう世の中の皆さんはそのオペ日程を所与とした取引が横行するでしょうなあ、というのは容易に想像が出来るところであります。

でもってそうなりますと日々のイールドカーブ形成が毎度のようにオペ日程前提で行われるという事になりまして、そらもう市場における自由な価格形成を盛大にゆがめる事になりますな。勿論長期金利を誘導しようという政策をやっているのですからカーブ形成に対して介入していくことになって、その結果価格形成が歪む、というのは長期金利まで含めた金利政策を実施しましょう、とやっているので多かれ少なかれ起きるものではあるのですが、それにしても物には限度というものがあるんじゃないですかねえ、という感じで、事前完全公開方式ってさすがにどうかと思う。

つまり、たぶん事前完全公開方式でも市場そのものは値動きをすると思うのですが、その値動きが金利を巡る様々なファンダメンタルズを反映したプライスアクションではなく、超ドミナントプレーヤーが事前に予告する成行買いのスケジュールに依存するものとなってしまうから、それを市場での価格形成と言えるのかよ、というような話だという事ですし、多分そうやっていると目先の金利は総体として動きにくくなるのかもしれない(以下に申し上げるように本当にこれで金利のコントローラビリティが上がるのかも微妙なのですけど)けれども、そうやってガチガチでコントロールしようとすると今度は本当に動くとき(経済物価情勢が好転してきたとき)の金利上昇圧力が溜まり過ぎて爆発した時に大爆発になるんじゃネーノという懸念がしますな。


まーそれはどちらかと言えば規範的な話ではあるのですが、そもそも事前完全公開方式で金利コントロールの方が上手く回るのかというのもこれまた微妙で、さっき申し上げたような「オペの上げ下げのロジックが示されていない」という状況下であることが変わらないので、金利コントロールのために公開日程の中でオペの上げ下げを行う(という方式を考えているのかどうかは何だかよくわからんが)となると、結局のところその上げ下げの部分で「その上げ下げがどういう基準で発動されているのかがさっぱり分からん」となりますと、結局「オペの予見可能性」ってのは相変わらず訳のわからんまま、という事になりゃあせんか、と思うのですよね.

でもってオペの上げ下げも基本的にやらない、となりますと今度は何らかのネタで金利が動いた時の対処どうしますねんという話になりまして、そこで臨時に追加オペやりますとかやった日には結局前と変わらないままになってしまいますし、指値オペ入れるにしても指値水準についてはひとたび入れてしまうとその後別の水準で指値入れるのが難しくなる(オペは先行きの政策スタンスを示すものではなく、既に決定している政策スタンスを実施するものなのに、指値オペの指値金利を変えるとなると、それは政策スタンスの変更を意味する、という風に市場は解釈する。どう日銀が説明してもそれは政策スタンス変更としか解釈できない。)し、そうなると物凄い勢いでバランスシート使いながら金利防衛みたいなことをしなきゃいけなくなるような事が起きる(まあ目先直ぐにそういう事が起きる訳ではないと思うけど)のではないか、という風にも懸念したりする訳です。

つーことで、これって一見すると透明性かいぜん!よかった!と言いたくなるのは分かるのですが、金利操作における機動性を捨て去ってしまった時に、それなりにちゃんとした(というのも変ですけど)金利上昇圧力が来た時に対処できるのかいな、というさっきの話に戻っていて恐縮ですが、まあそういう気がしますし、大体からしてこれでは「金利コントロール」というよりも「決まった量を事前スケジュール通りに出す」という量的緩和政策っぽいやり方に戻ってないかという気までしてくる所でもあります。

・・・・・というとなんのこっちゃと突っ込まれそうですが、オペのタイミングに関して透明性高めたいとかいうのを突き詰めちゃえば、主要3ゾーンの買入に関して入札もMPMも関係なく1か月分の予定を毎営業日日割りにして全ゾーン毎日買入すればいいじゃんという話になって、それはもはや金利じゃなくて単に量を予定通りに出すという運営じゃん、とまあそういう事でござんす。


まーいずれにせよ、何ちゅうかもうやっていることがブレブレにも程があるのであって、折角落ち着いて来たんだから余計な事しないで別に先週今週のオペのように淡々とオペを行って、ただ金利が上がり過ぎたり下がり過ぎたり(と言っても下がる方は昨年9月水準から見れば遠いのですけど)したらエクストラの対処をする、というのと、柔軟性をはき違えて市場が見て説明が届かないような先般の中期輪番スキップみたいな変なことをしない、というだけで別に良かったと思いますし、折角日銀が変に動かなくなって落ち着いて来たわと思っていたのにまーた動いてしまうという辺りに、ヘイヘイ日銀焦ってるよ焦ってるよ!!!と野次を飛ばしたくなるものを感じてしまいますな。



・つーかこれ見事に「自分の尾を追う犬」状態ではないかと

つーことで、何ちゅうかこの「そうじゃないんだよなー」というアタクシの悪態がお伝えできているのかどうか自信は無い(さすがにこれは前日に書いたのを今朝見直して浄書してます)のですけれども、オペの日程事前大公開とかそういう小手先の話じゃなくて、YCCの運営に関してどういう風に行うかという説明(「10年0%程度」というのは説明になっていない、為念)をきちんと筋道立てて行う、というのが重要であって、一連のドタバタってその肝心な部分を欠いたままで目先の動きに対応して目先をどう収拾するかという事にあまりにもフォーカスし過ぎなんじゃないですかねえ、と思う訳でして、それってFRBのアラン・ブラインダー元副議長がたとえた「自分の尾を追う犬」状態に陥っているように見えるし、何か手を打てば打つほどやっていることがドンドン目先の収拾ばかりになっているように見えるのですよ。

ですから、今すぐにというのは無理かも知れないですが、(そもそもロイターさん報道の新方式が本当に実施されるかどうかも分からんですけれどもそういう風になると仮定したとした場合の)新方式を実施したからと言って本当の本当に日銀のコントロールがずーっと無事に出来るという保証も何もない訳で、賞味期限が来てからまた何かドタバタした挙句に継ぎはぎに次ぐ継ぎはぎ状態の運営スタンス変更とかやった日にはドンドン市場からの信認無くしていくだけになることを心配している(杞憂なら良いのですが多分そうなると思う)アタクシとしては、あまりと言えばあまりのドタバタ状態になったYCCの建付けについて、経済物価情勢的に余裕のあるうちに、もう少しじっくりとスクラッチで考え直して行かないと碌でもないことになるんじゃないの、と思うのでありまする。


#まあそんな感じですが、中々こう上手くまとまらない(一応推敲したけど)のは勘弁



○FOMC議事要旨のインスタント読み

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170201.htm(HTML版)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170201.pdf(PDF版)
Minutes of the Federal Open Market Committee
January 31-February 1, 2017


・SEPのファンチャートに関して

今回は年初一発目なので年次の色々な改訂に関する議案がずらーっと並んだ後に、しらっと『Illustration of Uncertainty in the Summary of Economic Projections』という小見出しがあるのでそっちを先に。

『Participants considered a revised proposal from the subcommittee on communications to add to the Summary of Economic Projections (SEP) a number of charts (sometimes called fan charts) that would illustrate the uncertainty that attends participants' macroeconomic projections.』

SEPにおける見通しのチャートって現在は分布図(先行きパスにおける中心的な見通し数値がどう分散しているのか)になっているのですが、そこに上振れ下振れリスクの範囲を含めたファンチャートの形で示すというのを検討中のようです。この前連銀高官の誰かの講演でそんな話がありましたなあと思ったがとっさに思い出せない(すいません)。

『The revised proposal was based on further analysis and consultations following Committee discussion of a proposal at the January 2016 meeting. Participants generally supported the revised approach and agreed that fan charts would be incorporated in the SEP to be released with the minutes of the March 14-15, 2017, FOMC meeting. The Chair noted that a staff paper on measures of forecast uncertainty in the SEP, including those that would be used as the basis for fan charts in the SEP, would be made available to the public soon after the minutes of the current meeting were published, and that examples of the new charts using previously published data would be released in advance of the March meeting.』

ということで、3月のSEPからFOMC当日に公表される分(SEPってクソ長い文章として議事要旨と一緒に出ていまして、当日に出ているのは数字だけのダイジェストです)の紙にファンチャートが採用されるようで、そのファンチャートの見本は3月会合(3/14-15)前に公表するそうです。


・例によってインスタント読みなのだが市場の反応がハト扱いになるのはうーんと唸ってしまう

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の所をケツから読むのがインスタント読みなのですけれども、ここの最後から3パラグラフを読んでみると・・・・・・・

『Most participants continued to judge that, while the outlook was subject to considerable uncertainty, a gradual pace of rate increases over time was likely to be appropriate to promote the Committee's objectives of maximum employment and 2 percent inflation.』

ということで、確かに先行きに関しては「considerable uncertainty」って言ってるんですけど。

『Some participants viewed a gradual pace as likely to be warranted because inflation was still running below the Committee's objective or because the proximity of the federal funds rate to the effective lower bound placed constraints on the ability of monetary policy to respond to adverse shocks to the aggregate demand for goods and services.』

物価がまだターゲットじゃないし緩和余地が乏しくて引締め余地はたくさんあるから利上げを急ぐ必要なし、という人がまず出てきます。

『In addition, it was noted that the downward pressure on longer-term interest rates exerted by the Federal Reserve's asset holdings was expected to diminish in the years ahead in light of an anticipated gradual reduction in the size and duration of the Federal Reserve's balance sheet. Finally, the view that gradual increases in the federal funds rate were likely to be appropriate also reflected the assessment that the neutral real rate--defined as the real interest rate that is neither expansionary nor contractionary when the economy is operating at or near its potential--was currently quite low and was likely to rise only slowly over time.』

今後の緩やかな利上げに加え、先々(年単位の話)には徐々にFEDのバランスシートの縮小や買入年限の短期化があってストック効果からの長期金利の低下圧力が減る(ので緩やかな利上げが適切である)ことやら、自然利子率が引き続き低いので緩やかな利上げが適切であることなどなどが指摘されています。


でもって次のパラグラフ。

『Participants emphasized that the Committee might need to change its communications regarding the anticipated path for the policy rate if economic conditions evolved differently than the Committee expected or if the economic outlook changed.』

見通しと異なる経済推移や先行き見通しが代わった時にはコミュニケーションを変化させる必要があるとな。

『They pointed to a number of risks that, if realized, might call for a different policy trajectory than they currently thought most likely to be appropriate.』

ということですが・・・・・・・・・・・

『These included upside risks such as appreciably more expansionary fiscal policy or a more rapid buildup of inflationary pressures, as well as downside risks associated with a possible further appreciation of the dollar or financial vulnerabilities in some foreign economies, together with the proximity of the federal funds rate to the effective lower bound.』

ということで、海外とかドル高の下押し圧力が見通しを変えるリスクというのはあるのだが、一方でトランプ財政が上振れリスクになっているし、「a more rapid buildup of inflationary pressures」ってそれド直球リスクがしらっと入っている辺りが何気にほえーと思うのですけれども、前後の文脈で「財政政策の行く末を見ないと」が連発されているので中和されている感がある。

『Moreover, most participants continued to see heightened uncertainty regarding the size, composition, and timing of possible changes to fiscal and other government policies, and about their net effects on the economy and inflation over the medium term, and they thought some time would likely be required for the outlook to become clearer.』

財政についてはこの先どうなるかの不確実性がある、と再度出ていまして、まあここで示されている「財政政策の行方を見極めたい」という話でして、

『A couple of participants argued that such uncertainty should not deter the Committee from taking further steps in the near term to remove monetary policy accommodation, because fiscal and other policies were only some of the many factors that were likely to influence progress toward the Committee's dual-mandate objectives and thus the appropriate course of monetary policy.』

2名の参加者は財政はしょせん一つのファクターであって、それを過度に重視して利上げを遅らせるのは如何な物かという主張をするものの、

『However, other participants cautioned against adjusting monetary policy in anticipation of policy proposals that might not be enacted or that, if enacted, might turn out to have different consequences for economic activity and inflation than currently anticipated.』

他の方々は財政どうなるのかを見切り発車というのはちょっと・・・・・という感じですので、まあ財政がどう出るかを警戒している、という事ですから、ここの字面だけ見ているとトランプ財政がどうなるか見えてくるまで動かない、という風に読んでしまいそうですが、良く良く考えるとこの前のイエレン議会証言とか最近の連銀高官の発言って総じて「財政政策はそらまあファクターとしてあるけど、財政政策見ないと動かないという訳じゃない」という情報発信が多いという点は考慮に入れて置く必要があるんじゃネーノと思う。


でもってこのコーナー最後のパラグラフですけれども・・・・・・・・・・・・・

『In discussing the outlook for monetary policy over the period ahead, many participants expressed the view that it might be appropriate to raise the federal funds rate again fairly soon if incoming information on the labor market and inflation was in line with or stronger than their current expectations or if the risks of overshooting the Committee's maximum-employment and inflation objectives increased.』

fairly soonというのがどのタイミングなのかがアレですが、この感じだと6月まで待つような書き方では無いように思えますということで、この最終パラグラフは思いっきりタカっぽく読める訳で、その辺りも今日の市場の反応が割とハト解釈っぽいのに対してうーんと唸ってしまう所です。ああそれからここでもド直球のオーバーシュートの話がありますね。

『A few participants noted that continuing to remove policy accommodation in a timely manner, potentially at an upcoming meeting, would allow the Committee greater flexibility in responding to subsequent changes in economic conditions.』

糊代利上げ論キタコレ。

『Several judged that the risk of a sizable undershooting of the longer-run normal unemployment rate was high, particularly if economic growth was faster than currently expected. If that situation developed, the Committee might need to raise the federal funds rate more quickly than most participants currently anticipated to limit the buildup of inflationary pressures.』

完全雇用の中で労働市場の過熱からインフレ圧力が高まる中で利上げを遅らせると後で強烈に引き締めをしないといけなくなるリスクを指摘とかこれまた真っ向ド直球。

その一方で、

『However, with inflation still short of the Committee's objective and inflation expectations remaining low, a few others continued to see downside risks to inflation or anticipated only a gradual return of inflation to the 2 percent objective as the labor market strengthened further.』

物価がまだ2%行ってないしインフレ期待も高くなく、物価にはダウンサイドリスクが残っている事からもう少し労働市場の改善を見てからでエエンチャウノという人もいるのですが返す刀で・・・・・・・・

『A couple of participants expressed concern that the Committee's communications about a gradual pace of policy firming might be misunderstood as a commitment to only one or two rate hikes per year and stressed the importance of communicating that policy will respond to the evolving economic outlook as appropriate to achieve the Committee's objectives.』

FEDがgradualと言っているのを市場は年に1回とか2回の利上げしかしないコミットメントだと
市場が誤解している事について懸念を表明する人がキタコレでありますな。

『Participants also generally agreed that the Committee should begin discussions at upcoming meetings about the economic conditions that could warrant changes in the existing policy of reinvesting proceeds from maturing Treasury securities and principal payments from agency debt and mortgage-backed securities, as well as how those changes would be implemented and communicated.』

おまけにここのパラグラフの最後の締めはupcoming meetingsにおいてバランスシート政策の変更(つまり償還再投資の減額あるいは停止によるバランスシート縮小措置)の議論を行う事でも合意、とあって、これケツの方から読むとタカに見えるけれども前の方から見ると割とハトちっくに見えるというエッシャーのだまし絵みたいなかき方になっている辺りにFED文学の香気を感じますな、うんうん。


#ということですが引用したちょっと前に短期市場の話があって面白そうだがちょっとパス




2017/02/22

お題「米国メモとECB議事要旨ネタですが円金利ネタが無いから海外に走っている訳ではあります」

いやー日銀の面白オペは面白いだけではなくて円債村をきれいさっぱり焼き払う効果が高かったようですなあ。パルチザンもどこかに行ってしまったようだし。

・・・・・・・という訳で今月動く可能性があるとすれば明日の超長期入札しかなさそうですし、まあ輪番は中期が今日と金曜、超長期が金曜で、あと物国と短期と長期2回を来週月曜も含めた3日の所に適当に嵌めこめば良いという計算ですし、別に金利がホイホイ下がっている訳でもないから額の変更も無いでしょうしと考えると明日緊張するような事でもない限りは何もないですなあ月末の17時まで(−−;


○米国関連メモメモ

・ハーカー総裁

昨日はハーカー発言でドルが上昇しただの何だのという説明がベンダーから出てましたな。

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-harker-march-idJPKBN1602J0
Business | 2017年 02月 22日 05:20 JST
3月米利上げ支持、成長継続なら=フィラデルフィア連銀総裁

『[フィラデルフィア 21日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、指標が米経済の拡大継続を示す内容となれば、3月会合での利上げを支持するとの立場を示した。記者団に対し述べた。何が3月利上げを支持しない要因となり得るかとの質問に対し、総裁は「米経済の継続的な成長と整合しない指標が出てきた場合」と答えた。その上で「現時点で3月利上げを選択肢から排除すべきとは思わない」とした。』(上記URL先より)

ちなみに昨日の講演はこちら。
https://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/harker/2017/02-21-17-wharton
An Economic Outlook
Presented by Patrick T. Harker, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Philadelphia
The Wharton School of the University of Pennsylvania
Philadelphia, PA
February 21, 2017

講演の後半がスチューデントローンの話になっていて、前半に景気と物価と金融政策の話がちょろっとあるんだが、『Monetary policy』の所は、

『So, what does all this mean for monetary policy? Given the state of the economy - more or less back to normal - I continue to see three modest rate hikes of 25 basis points each as appropriate for 2017, assuming things stay on track.』

と思いっきり25bp3回の利上げがよろしいという話をど直球で行っていまして、

『I’ve said it before and I don’t mind repeating myself: Monetary policy is a fairly limited tool that is fairly limited in its scope. A lot of people would like to see growth above our 2 percent projection, but that’s not really up to Fed officials. That’s the kind of policy that’s outside our purview.』

『If we really want to move the needle, we need to invest in physical and human capital.』

とだけ(マジでこの小見出しの部分これだけ)になっていて、単に直球投げ込んでおしまいという中々シンプル(?)なものです。(記者の方との話はもうちょっと突っ込んでいるのかなとは思いますが)

まーしかし年3回利上げするとしたら3月FOMCに上げておかないとその先選択肢が狭まると思うのですが、イマイチ先行きが不透明というか微妙な中で特攻利上げ出来るのでしょうかねえ(そらまあここから出るデータが目を剥くようなものとか、財政ヒャッハーがあっという間に出てくるというのであれば別でしょうが)とは思いつつ、3回どうしてもやりたいなら3月にやった方が後々運営しやすいからぶち込むような気もしますし、まあどうなんでしょうかね。


・カシュカリ総裁

http://jp.reuters.com/article/us-job-market-some-room-idJPKBN1601TC
Business | 2017年 02月 22日 01:29 JST
米労働市場になお「余地」存在=ミネアポリス連銀総裁

『[21日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は21日、米労働市場にはまだ「余地」があると述べ、連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制に向け早期に利上げに踏み切る必要があると考えていないことを示唆した。』(上記URL先より)

ということなのですが、昨日のスピーチは

https://www.minneapolisfed.org/news-and-events/presidents-speeches/qa-with-neel-kashkari-in-golden-valley
President's Speeches
Q&A with Neel Kashkari
Neel Kashkari | President
Federal Reserve Bank of Minneapolis

Financial Planning Association of Minnesota
February 21, 2017

ってあるのですがリンク先みれば分かる通りでようつべ1時間とかのヴィデオなのでちょっと(汗)。


○出遅れましたがECB議事要旨

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2017/html/mg170216.en.html
Account of the monetary policy meeting
of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main
on Wednesday and Thursday, 18-19 January 2017
16 February 2017

ということでECBの議事要旨なのですが、これ説明のパートと議論のパートで重複した話が物凄く多いので(慣れていないだけと言われればそうなのかとも思いますけれども)、最初からまともに読んでいくと半ばの所から同じ話がもう一回延々と始まるような感じで読みにくくて、只今絶賛手抜き読み(正直FOMC議事要旨でもヒマだとスタッフの説明の所を延々と読むのですが、初見の時はそちらは盛大に飛ばして(各パラグラフの頭1行だけ読んで読み飛ばす)議論部分のケツから読んでいくという手抜き読みをしているんですけど、汗)を検討中です。


・「足元の物価上昇は一時的で基調は弱いままなので大規模緩和は継続すべき」をやたら連呼

イマイチ手抜きにならんのだが『Monetary policy stance and policy considerations』から読んでみる。

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Praet in his introduction that, while inflation had increased lately, largely owing to base effects in energy prices, underlying inflation pressures had remained subdued and signs of a convincing upward trend were still lacking.』

ということで結局こうなるとじゃあどういう説明してるんだと最初の所(『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options』のうち前半の『Financial market developments』がクーレ理事で、後半の『The global environment and economic and monetary developments in the euro area』がプラート理事の説明)を見るのが本当は吉なのですがとりあえずそういうもんだと流してしまいますと、ここもとユーロ圏物価が上がっているけど瞬間風速チックな話で、基調は強くなくて別に上昇トレンドがある訳ではないですよという執行部説明に皆さん共有と。

『It was broadly agreed that a very substantial degree of monetary accommodation continued to be needed for euro area inflation pressures to build up and to secure a sustained return of inflation rates towards levels below, but close to, 2% over the medium term.』

従ってvery substantialな緩和が必要であると。

『Members expressed satisfaction about how financial markets had received the December 2016 policy announcements, demonstrating that the underlying rationale of the APP’s recalibration and the guidance provided in the Governing Council’s communication had been well understood by market participants. The decisions taken in December had succeeded in preserving the very favourable financing conditions that were necessary to secure a sustained convergence of inflation rates towards levels below, but close to, 2% over the medium term.』

12月の決定が緩和の縮小に向かうスタンスではないと市場に取られたのは満足という事ですが、まあユーロ圏の場合は国ごとの国債金利の問題もあってこの辺について各国に落とし込んだ場合にどうなのかとかそういう話をもっと入れて欲しいのだが話がふわっとした感じで書くのがECBの仕様だなあとは思っています。

『Financial conditions had overall recorded some broad-based improvement since the December monetary policy meeting and borrowing conditions for firms and households were continuing to benefit from the pass-through of the policy measures.』

金融環境が緩和して家計や企業へのパススルー、というのがECBが毎度お話をしている件なので、まあここも順当な説明。

『While more time was needed for the policy measures to fully unfold their effects on the euro area economy and ultimately on inflation outcomes - also considering that in the presence of ongoing balance sheet adjustments transmission lags were likely to be longer than usual - it was stressed that the measures were increasingly bearing fruit in terms of rising confidence, employment gains and a broadening of the recovery. Moreover, the accommodative monetary policy stance appeared to be increasingly visible in developments in inflation expectations, which had shown signs of a reversal from previous flat or negative trends, while also reflecting changes in the global environment.』

でもって今後金融緩和効果が更に実体経済に広がって、物価にも効くことを展望している、というかそうなる為にはまだ時間が必要ですぞなとかそういう話で、まあ兎に角「緩和政策の出口戦略」とか「緩和政策を穏当に縮小する」みたいなことを言われないようにという配慮が。実際にやっているのは残高拡大ペースの縮小なんですけど・・・・・・・・・・・・・・

『Members agreed on the appropriateness of the current monetary policy stance and recent developments were generally seen to vindicate the decisions taken by the Governing Council at its meeting in early December 2016.』

うむ。

『While there had been some positive news since that meeting, the fundamental picture remained largely unaltered and there was no room for complacency, as risks and uncertainties had not receded substantially, notably those related to the political environment at the global level and within the euro area.』

海外(米国でしょ)と欧州の政治リスクもあって先行きのリスクは別にそんなに減ってはいないと。

『Moreover, the recent pick-up in inflation had been mainly driven by an increase in energy prices and, hence, it was premature to draw conclusions as to the possible implications of these recent developments for the medium-term outlook for inflation. The view was widely shared that there was, as yet, insufficient progress towards a durable and self-sustaining convergence in the path of inflation consistent with the Governing Council’s inflation aim. Underlying inflation dynamics had remained subdued and the scenario of an upward trend in inflation still depended crucially on the prevailing very favourable financing conditions, which to a large extent reflected the current accommodative monetary policy stance.』

でもって物価に関して足元で上がっているけれども瞬間風速ですよね、という議論となりましたというのを繰り返していまして、物価上昇してくる中で緩和縮小観測が盛り上がるのを避けたいというのは把握した。

『In this context, it was recalled that, in line with the Governing Council’s monetary policy strategy and past communication, monetary policy had to be forward-looking and oriented to the medium term, meaning that the Governing Council would look through the volatility in short-term data if judged transient and to have no implication for the medium-term outlook for price stability.』

足もとのデータに一々反応しませんよとかしつこいしつこい。

『Therefore, there was broad agreement to look through recent upturns in headline inflation driven by energy prices, while carefully monitoring potential indirect and second-round effects. This was seen to be fully consistent with the Governing Council’s past decisions and established approach to treating temporary changes in inflation on the upside and on the downside.』

でまあ物価上昇がセカンドランドエフェクト出すかどうかは見るとかいう話だが、全体のトーンが全然物価上昇でニッコリという感じになっていないのが何とも。

なお、こういう場合って文言をそのまま素直に読んでしまえば足元の物価に反応しないで先行きもそんなに強気じゃないからやたらと「一時的な話ですからね!」と主張している、という事になるのですが、別の可能性もあって、先行きそこそこ自信はあるものの、さて緩和縮小正常化に向かう事が出来るのかというとまあそこまで決め打ちするほどには至らん、というような微妙な時に、市場が先にはしゃいでしまうとそれはそれで困りますがな、とか思って殊更に先行きに慎重な考え方を示してくる、という場合もあると思われる(昔の日銀とか)ので、逆にここまで「物価上昇は瞬間風速」というのを強調されるとそっちの可能性も一応考えておくには考えて置く、というのがアタクシの仕様です(異論はあると思うけど)。

『Against this background, it was widely agreed that it was imperative to maintain a very substantial degree of monetary accommodation for inflation pressures to build up and durably support headline inflation. Otherwise, recent encouraging developments in inflation expectations and the prospects for a sustained adjustment in inflation towards the Governing Council’s inflation aim could be put at risk.』

今のvery substantial degree of monetary accommodationが弱まることはインフレ期待が最近若干改善しているのだがその改善に水を差すとな。

『Therefore, the Governing Council was seen as well advised to remain patient and maintain a “steady hand” to provide stability and predictability in an environment that was still characterised by a high level of uncertainty. At the same time, the point was made that the window of opportunity provided by a prolonged period of favourable monetary and financial conditions needed to be used by other policy areas to bolster sustained growth, namely by speeding up structural reforms.』

というこの緩和スタンス継続の連呼ですが、ただまあ実際は買入拡大ペースを落としながら期間を伸ばしてトータルの数字で誤魔化すという実質的なペースダウンをしているんですけれども、そこは盛大にスルー(というか緩和スタンス継続(キリッ)で済ませる)というのが中々味わいがあります。

『Looking ahead, incoming information had to be monitored carefully, while more time was needed to better assess the recent uptick in inflation and the extent to which energy price developments were passing through to underlying inflation and affecting the medium-term outlook for price developments.』

先行きに関しては最近よくなってきているデータの今後の推移を見ますとな。


・資産買入プログラムの実務的な部分だが「基本は変えない」ということのようで

『Members considered the implementation of the APP to be proceeding smoothly following the decisions taken in December to expand the universe of eligible assets. It was, however, noted that repo rates had recorded a rather pronounced decline over the year-end, especially in some jurisdictions, despite the enhancements made to the Eurosystem’s securities lending facilities. This suggested that these developments were driven by a number of special factors. Moreover, in addition to the impact of the APP, there were also several structural factors boosting the demand for high-quality collateral, including market trends and regulatory changes.』

資産買入はスムーズに進行しているものの、年末のレポ金利がレコードローになった事からするに、市場の国債需給が逼迫しているという話だが、要因は別にワシらの買入だけじゃなくて制度要因があって、高格付けの担保に対する需要が高まっているんでしょう、とAPP継続可能性に関しても説明(実際は説明じゃないのだがこちらの議事要旨って基本的に説明チックなんですよね)。

『It was highlighted that the enhancements to the securities lending programme had been welcomed by market participants as overall use of the programme, and especially of the cash collateral option, had increased, mitigating collateral scarcity around the end of the year.』

レポプログラムの強化は年末の担保需要による需給ひっ迫に対する効果がありましたと。

『Against that background, the Governing Council should carefully monitor market developments and the use of the securities lending facilities, and stand ready to make further adaptations, if needed.』

ということでして、どこぞの国よりも全然買入シェアが低い筈のECBはこのように「証券貸出プログラムの使用状況を見ながら必要ならば更にプログラムの充実を行う」と仰せのようですなあ。


『Regarding the implementation details on the Governing Council’s December decision to permit asset purchases below the DFR “to the extent necessary”, the choices outlined by Mr C?ure were seen to primarily hinge on the relative weights to be given to the different criteria and restrictions attached to the APP.』

12月に資産買入の制限を一部緩和された件ですが・・・・・・・・

『It was recalled that sticking to the issue and issuer limits had been assessed as most important in this regard. While significant weight was also placed on limiting deviations from the ECB’s capital key, it was also underlined that limited and temporary deviations were possible and inevitable. Thus, there was some room for a trade-off between relative deviations from the capital key across jurisdictions and limiting the extent of purchases below the DFR.』

ということで、買入シェアのキャピタルキーから柔軟対処というのと、買入レートが預金ファシリティ金利(▲40bp)より低い所になる緩和措置というのは普段使いするものではないし、しかもキャピタルキーからの逸脱に関しては結構うるさいという事のようで。

『All in all, broad support was expressed by members for the way forward indicated by Mr Coure, whereby PSPP purchases below the DFR should, in the first instance, be guided by the application of the capital key across jurisdictions, subject to purchasability constraints. This baseline approach could be reconsidered by the Governing Council should undue market effects materialise. At the same time, it was agreed that, under the PSPP, priority should be given to purchases of assets with yields above the DFR, thereby limiting the amount of purchases below the DFR if not required to achieve the envisaged amounts for each jurisdiction.』

つーことで預金ファシリティ以下の金利での買入は行わない方が基本、ということで、どこぞの中央銀行も何でしたらこれを見習えば買入ペースって自動的にさがりませんかねえ、どうせ短期の目標は「▲0.1%」で一部の超過準備へのペナルティーレートと一緒じゃないですか(ってやったら利上げと言われるから出来ないんですけどね、笑)。


・決定事項に関する部分はここまでの繰り返しなのでまあ頭だけ引用しておく

次が『Monetary policy decisions and communication』というのがちょっとだけある。

『As regards communication, members widely agreed to maintain the communication adopted at the December monetary policy meeting and, hence, to confirm the intended pace and horizon of APP purchases and the forward guidance on the key policy rates, as had been suggested by Mr Praet in his introduction.』

これは本当は最初の所を読み直さないといかんのだがまあスルーして。

『This implied reiterating that asset purchases under the APP would continue at the current monthly pace of ユーロ80 billion until the end of March 2017 and were intended to continue at a monthly pace of ユーロ60 billion from April 2017 until the end of the year and, in any case, until the Governing Council saw a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. While it had to be acknowledged that both inflation and growth developments were moving in the right direction, uncertainties had not receded. Therefore, the Governing Council should also continue to signal its willingness and readiness to act, if warranted, to achieve its price stability objective.』

『This included, in particular, its preparedness to adjust the purchase programme in terms of size and/or duration should the outlook become less favourable, or should financial conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment in the path of inflation.』

ということで先行きについても必要ならば緩和バイアス付きで、買入拡大とか買入残存の延長とかのオプションを軸にしますよ的な情報発信を継続するそうな。

『Finally, it was felt that a strong call should be made for other policymakers to step up their efforts in support of the euro area recovery and the prospects for sustained growth in the euro area. The presence of an accommodative monetary policy stance and the firming recovery provided euro area governments with a favourable environment to engage decisively in structural reforms to boost investment, reduce structural unemployment and increase potential output.』

各国政府による成長力強化が必要であるとの主張も継続するとか、まあここは普通の話でして、以下は今回の決定事項(現状維持およびIntroductory statementを決定する)の提案の話になりますので引用割愛します。

#虫干しネタ遅れてすいません




2017/02/21

お題「しかし円債アクティビティ無いですのう/メスター講演は政策運営の独立性とコミュニケーションの話」

はいはいフランスフランス。
http://jp.reuters.com/article/france-election-poll-idJPKBN15Z1P8
World | 2017年 02月 21日 01:15 JST
仏大統領選、ルペン氏が決選投票で対抗馬との差縮める=調査


○日銀の金利抑制姿勢が浸透したから・・・・・・・というのともちと違うのだが

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G5298
Markets | 2017年 02月 20日 15:06 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小幅続伸で引け、長期金利0.090%に小幅上昇

『国債先物中心限月3月限は前営業日比5銭高の149円96銭と小幅続伸して引けた。前週末の海外市場で仏大統領選挙を巡る懸念などで米国債が買われた流れを引き継いで買いが先行し、一時150円02銭と1月27日以来の水準に上昇した。ただ、きょうの米国市場が休場でマーケット参加者が限られたことに加えて、21日に流動性供給入札(対象:残存5年超15.5年以下)、23日に20年債と続く国債入札を控えて、積極的に買い進む動きは見られず、狭いレンジでの値動きに終始した。現物市場は閑散。持ち高調整主体の取引。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.090%に小幅上昇した。』(上記URL先より)

とまあそんな解説になっていますが、昨日は10時10分の輪番タイムに輪番無しという順当な結果になったので、これで長期7回は無くて、もし何らかの事情で10年の金利が上がって止めたいとなったら10年には指値が入ることで確定ですなとゆー感じになりましたが、まあいずれにせよ先週月曜からやっと「日銀が順当に輪番を打ってきた」というのが続いておりました、そうであればまあ世の中こんなもんよという感じではあります。

とは言いましても最近の市場のアクティビティーの無さって「日銀が順当にやればこんなもんよ」とはちと違う気もする訳で、それが何かというのを表現できないのがアタクシ的に誠にアレなのですが、1月の中期輪番減額の前の時の債券市場と比較して一段とゴーストタウン化が進んでいる感じがする(個人の感想です)のです。

でまあ何でゴーストタウン化しているかと考えますと、これまた状況証拠を突き合わせながら個人の妄想で考える世界になりますのでニャンとも言えませんが、輪番トレードみたいなのが非常にやりにくくなったのと、入札の準備がやりにくくなっているというのと、あとはもう少し長いスパンで見た場合に海外投資家の反応とか、そんなこんなを考えるの巻だったりします。

まーオペがこれだけゴチャゴチャいじられると輪番が読みにくくなるのでトレードしにくいというのもありますが、それに加えて1月以降の動きってのは「中期輪番スキップ」→「金利が上がったので長期輪番増額」→「何か落ち着いてきたので月末公表の買入予定は長期輪番増額を元に戻すアナウンス」というように来ていた訳でして(その後指値オペとかオモシロ展開になったのだが)、まあ1月末の動きというのは「輪番は隙あらば減額」だけども「金利が急騰するのは困る、特に10年コントロールできないと言われたらおしマイケルなのでそれは阻止」という割と虫の良い事を考えてオペが運営されているであろうことは読み取れると思います。従いまして、輪番ヒャッハーとか言ってうっかり買い上げてしまうとそこで輪番減額ですよ(スキップするのはもっとすごい金利低下ネタの時に限るでしょうさすがに)となる訳で、減額リスクがあるとなればあんまり勝負できないです。

入札に関しても調子にのって事前ヘッジをホイホイ入れて水準調整をし過ぎると日銀の止めが入ってくるリスクがあるとなっているから事前準備もしにくいので、叩きはしにくいのですが、じゃあ金利が上がらないから下がるかと言えば入札を前に金利下げてしまうと、前述のように輪番トレードが足掬われるリスクがあるのに買う訳にも行かずとなりますし、入札のあとに関しても事前のポジション整理が進まないで迎えるとなると、その後のほぐしにも時間が掛かるのでやっぱり買いでホイホイやりにくいと。

とまあそういうのもあるのですが、この一連の動きで久々に日本の債券市場に対して耳目が集まってアタクシのマニア向け駄文というか独り言にも御訪問者がちと増えたみたいな感じという事案が発生しましたが、この何が何だか訳が分からん動きを見せつけられますと「日銀の金融政策って今まで説明していた話と整合性取れているの????やっていることちゃんと説明しているの??????」という疑問が湧く結果になっていたと思うの。でもってそうなると海外とかの参加者って日銀の政策に期待してどうのこうのみたいなことを今後ともしていくのでしょうか、という辺りも気になるなあとか、まあそんなことを思いながら、余りと言えば余りの閑散というかアクティビティの無さの中思うのでした。

#とは言えボラが欲しいから日銀面白オペをやれと言う程アタクシの性根は曲がっていないのでこれはこれで本来そういうもんだと割り切るしかないと思うんだ


○メスター総裁の講演はそんなに現世利益的なネタは無かったですけど

米国休場なのに講演となと思ったらシンガポーでの講演でした。

https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20170220-a-serenity-prayer-for-monetary-policymakers.aspx
A Serenity Prayer for Monetary Policymakers
02.20.17 Loretta J. Mester
The Global Interdependence Center, Central Banking Series, Singapore

・政治との距離というのは最近の連銀高官が明示的あるいは暗黙の場合もあるけど出してくるネタですな

小見出しの無い最初の部分については、金融危機以降非伝統的政策を実施してきてどうのこうのという話をしていて、そこに関してはこれまでの説明と一面こういう批判もあるけどみたいな話をしていますが、その先の辺りから参ります。

『Some critics of the Fed believe that monetary policy was excessively accommodative and a key driver of conditions that led to the crisis, while other critics believe that the economy could have emerged much more quickly from the deep recession had monetary policy reacted differently.』

やり過ぎというのともっとやればよかったという批判が来るのはまあ分かる。

『On the other side, there are fans of the Fed who believe that the nontraditional actions taken by central banks were very successful - so successful that policymakers should consider expanding the use of monetary policy beyond its typical purview.』

こんなにうまく行ったのだからもっと金融政策の範囲を拡張しろというのもあるのか。

『In my view, both sides represent exaggerated expectations of what monetary policy can achieve. And this distorted view is troubling because it makes it harder for the public to understand the rationale for policymakers’ decisions and to evaluate their performance.』

でもってそれに対するメスター総裁のお答え。

『It is no secret that there are several legislative proposals to change the way the Fed pursues its congressionally mandated monetary policy goals. Some proposals seek to restrict the Fed’s ability to pursue these goals in a way that is insulated from short-run political influence. This restriction on monetary policy’s independence would be a significant loss for the nation because, as a substantial body of research and actual practice indicate, when a central bank formulates monetary policy free from short-run political interference and is held accountable for its decisions, better economic outcomes result.』

つーことで今のFEDのマンデートとかについて変えて行こうというご提案があるのは事実ですが、短期的な政治的な目的の達成などから独立して物価と雇用の安定に沿った政策を行うのが長期的に見て国益である、という話をズバッと行っていますの。まあこれは強い方のパターンですけれども、どこぞの中銀と違って「財政と協力してどうのこうの」みたいなのは出て来ない、というのが中々こう味わいが深いのですが、「高圧経済」とか言っていた時とこれだけ変わったということは、まーこちとら海の向こう側にいるから報道ベースの話ばっかりで考えているけれども、中の人たち的に見ると政治との距離感の問題については色々と考える所が大きいのではないかと愚考しますがどうなのでしょうかね。

『Accountability must go hand in hand with independence. That’s why I believe it is time to recalibrate expectations of what monetary policy can achieve. The public needs to know what it can reasonably hold monetary policymakers accountable for. Indeed, even those who set policy would benefit if we kept in mind the serenity prayer: give me the serenity to accept the things I cannot change, the courage to change the things I can, and the wisdom to know the difference.』

金融政策の独立性には金融政策のアカウンタビリティが必要だが、あたかも金融政策が万能の杖であるかのような説明を行うべきではなくて、金融政策で何が出来て何が出来ないのか、ということもきちんと説明しないとアカウンタビリティもへったくれも無いでしょ、という割と重めのネタを最初の所に突っ込んでいます。

『For the rest of my talk, I’ll elaborate on what this serenity prayer means for four aspects of monetary policy: how monetary policy should address business cycle fluctuations; monetary policy and long-run growth; monetary policy vis-a-vis fiscal policy; and monetary policymakers’ projections of the economy and future path of policy.』

以下が「ビジネスサイクルと金融政策の関係」「金融政策と長期的な成長力との関係」、「金融政策と財政政策の関係」、「先行きの金融政策見通しパスについて」という小見出しが4つ並んでいる訳ですけれども、とりあえず手抜きで(というかメスター総裁の文章微妙に小難しいのでざざーっとネタにするのが意外にムズイので小分けにするというこの力不足)現世利益に通じる最後の所を鑑賞の巻。


・今後の金融政策について

『FOMC Projections』という現世利益の香りがする小見出しにワープします。

『The final topic I’d like to discuss is the FOMC’s projections of the economy and federal funds rate path. The FOMC is not prescient, nor should we expect it to be.』

へいへい。

『Four times a year, the FOMC provides a summary of economic projections across FOMC participants, conditional on the path of policy that each participant sees as appropriate. The media focuses attention on changes in the projections over the year, and at the end of the year, stories are written about what actually came to pass compared to what the FOMC was projecting at the start of the year.』

そらそうよ。

『For example, according to the central tendency of FOMC participants’ projections, at the start of 2012, real GDP growth for the year was expected to be 2.2 to 2.7 percent. It turns out that the economy grew at only a 1.3 percent pace that year, a forecast miss of around 1.0 to 1.5 percentage points. On the other hand, participants underestimated the improvement seen in the unemployment rate in 2012. At the start of the year, they projected an unemployment rate of 8.2 to 8.5 percent by the fourth quarter, but unemployment ended up lower, at 7.8 percent.』

2012年頭のSEP見通しと結果を比較すると成長が下振れ、失業も下振れと。

『The FOMC also was more optimistic about growth at the start of 2015 than what came to pass, and inflation ran below projections over 2013?2015.』

2015年頭の成長見通しも楽観的だったし、大体からして物価は2013-2015の間それまでの中期見通しに届かず推移しておりましたがなと。


『The public has to hold the FOMC accountable for its performance, but it should not hold monetary policymakers to an unrealistic standard. To evaluate the performance of the FOMC’s projections, it is important to put these forecast misses into context by remembering that forecast errors of this magnitude, both above and below actual outcomes, are the norm among economic forecasters, not the exception.12』

『Forecasting is difficult because the economy is constantly being buffeted by shocks, data are revised over time, and there is uncertainty about which model will best predict the future path of the economy at any given time.』

とはいえそもそも経済予測は難しいですし当てれば良いという物でも無くて・・・・・・・・・・

『In its Summary of Economic Projections, the FOMC publishes a table of the average historical forecast errors across various private-sector and government forecasts.13 For real GDP growth, a 70 percent confidence interval around the forecast one year out is about ±1-3/4 percentage points. The forecast the FOMC made in early 2012 was within the interval. The confidence bands around forecasts of unemployment and inflation one year out are also wide: about ±3/4 percentage point for the unemployment rate, and about ±1 percentage point for inflation. So the FOMC projection performance is quite reasonable by this metric.』

ということで過去もこのくらい見通しずれるんですとかいう話だが、マンデートが2%の時に物価見通しがプラマイ1%ずれるものです(キリッ)というのは何というか・・・・・・・・・・・・

『Similar scrutiny has been applied to changes in the policy path that the FOMC includes in its projections. A small change in the path can generate many headlines. But we should expect the policy paths to be responsive to changes in economic conditions and changes in fiscal and other government policies, to the extent that they change the outlook.』

SEPで出した見通しに対してどのように経済が推移しているかという事を精査し、状況の変化に応じて見通しは都度変えて行かないといけませんし、それはそうすべきであるという話。ただ、その見通し変化というのは細かな物であっても市場の反応するヘッドラインになってしまう、ということはご承知の上であると。

『Changes in appropriate policy that are based on sound monetary policymaking principles and are systematically related to changes in underlying conditions that affect the medium-run outlook provide useful information on the Fed’s reaction function, helping the public better anticipate how the Fed will change policy when economic conditions change.』

「Changes in appropriate policy that are based on sound monetary policymaking principles」とまあそれはその通りなのですし、メスターさんの言っている趣旨はこれでその通りだとは思うのですが、ただまあこれをゴリゴリ突き詰めていくと足元の動きに一々反応するようになるので、reaction functionをどこに置くのかというのがポイントになるんでネーノと思う。

『As a way to convey some of the uncertainty around our future policy path and outlook, I have been an advocate of the FOMC’s publishing confidence bands around its projections.14 The Committee is discussing it.15』

SEP(か何か別のもの)の中でバンド付きの見通し数値を出すというのはどうでしょうかという議論中らしい。

『Confidence bands will help the public understand some of the risks around our projections and remind them of the reasonable amount of variation to expect in outcomes relative to projections. The bands will also illustrate that while the dispersion across FOMC participants’ projections of the policy path often gets a lot of attention, this dispersion is actually quite narrow compared with the confidence bands.』

『Finally, confidence bands will also be a helpful reminder to policymakers themselves of the uncertainty we constantly live with. So, we all need the serenity to accept that policymakers aren’t prescient and their forecasts will change over time, and the courage to hold policymakers accountable for being principled and systematic in how they react to changes in economic conditions.』

バンドで出すことによって先行きに対してどの程度のリスクをFOMCとして見ているのか、メンバー間での見通しのばらつきがどの程度なのかを示すし、バンドである、ということは即ち政策についてもプリセットコースというのは有り得ないという事を一般向けにも中の人向けにも認識させるものとなるというお話をしていまして、まあどちらかというとここのコーナーは金融政策どうしますかというよりは今後のコミュニケーションポリシーどうしますかという話をしています。

まあこれもやりかた難しくて、恐らくメスター流をゴリゴリやると今度は「自分の尾を追う犬」リスクが出てくるようにも見える(ただし市場がどうのこうのは言っていないのでそこまでを反応関数にする気がないのかもしれないけど)のでどうなのとは思います。最後のまとめ『Conclusion』ですが。

『In summary, I am a strong supporter of insulating monetary policy decisions from short-run political considerations. Accountability must go hand in hand with such independence. For the public to be able to hold policymakers accountable for their policy decisions, it must understand what it is appropriate to expect from monetary policy.』

『Today, I talked about four areas where expectations need some recalibration: how monetary policy should address business cycle fluctuations; the relationship between monetary policy and long-run growth; monetary policy vis-a-vis fiscal policy; and monetary policymakers’ economic and policy path projections.』

『The serenity prayer provides some guidance for that recalibration: We need the serenity to accept the things that cannot be changed by monetary policy (and look for more appropriate solutions). We need the courage to change the things we can (by keeping monetary policy focused on its longer-run goals of price stability and maximum employment). And we need the wisdom to know the difference.』

ということで、主にコミュニケーションの話と、中央銀行としての矩の話をしていましたという感じです。




2017/02/20

お題「超長期まーたジリジリ来てますのう/連銀高官発言チェックの巻(虫干し系ですいません)」

これなにかのギャグだと思っていたのだが・・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170220/k10010882701000.html
自民 教育国債検討も議論の先行き不透明
2月20日 4時28分

○超長期ェ・・・・・・・・・・

またもの手抜きでロイターさんなのだが、最近仕様を変更したのかどうか知らんのですが、URLに一々日本語タイトルが出てくるようになっているのはどうした事ぞ(カットしてもページには行けますが)。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G22AR
Markets | 2017年 02月 17日 15:21 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発、40年債1.075%と昨年2月24日以来の高水準

『現物債は小動き。超長期ゾーンの金利は終盤にかけて上昇した。来週に20年債入札を控えていることに加え、日銀オペが需給の緩みを示す結果になったことが影響した。40年債利回りは昨年2月24日以来の高水準となる1.075%に上昇した。日銀オペで残存10年超の買入予定額は、「残存10年超25年以下」が2000億円、「残存25年超」が1200億円と、増額となった前回10日オファー分から据え置かれた。長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比6銭高の149円91銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.090%。』(上記URL先より)

ということで、先々週までは日銀輪番に振り回された債券市場でしたが先週は一転して徐々に活力が無いじゃんという感じの相場になっておりましたが、金曜に関してはまあだいたい輪番どこいれてもそれほど違和感ないけど超長期ですかねえとかそういう感じでいたら輪番は超長期と変国。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170217.htm
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年2月21日
国債買入(残存期間25年超) 1,200 2017年2月21日
国債買入(変動利付債) 1,000 2017年2月21日

ということでしたが、超長期はこの前100億円×2増額した所ですが、足元ではジリジリと超長期の金利が上昇する中で間違って減額したら何のために先週増額したのかという話になる所だったのですが無事(??)に前回と同額の買入予定額となりました。

でまあそこが予想通りに順当だったので輪番自体は(応札確かに多めだったかも知らんが)概ね普通の結果で普通ですなあとか思っていたのですが、昨日も昨日とて何となく超長期が弱めという結果になって20年の70bpや30年の90bp(単利ですが)は別に抵抗されるでもなくジリジリ金利上昇の巻となっておりましたな。

でまあ結果論だからどっちが正しいとか分からないけれども、先々週の金曜って超長期の輪番を増額したじゃないですか。そのタイミングって30年入札がまずます悪くなくてその後持ち直した感じだった翌日の所で何にビビったのか輪番を増額して、結局そこの所で(20年の輪番の応札がスッカラカンだったのに30年の方がフラットニングしたのも謎でしたが)変にフラットニングさせてしまったものの、その後またジリジリとスティープっていうこの展開って、日銀が変に輪番増額で市場のリズムをおかしくしてカーブの自然な動きに変なノイズを入れることによって変な怪我人を増やしているように思える(個人の感想です)って感じはするのですけれどもねえと。

本日はたぶん輪番無い日になって、20年の入札は木曜日(明日は5〜15年位の流動性供給)ですので、まあそこまでの間にチンタラ調整していくのでしょうかねえとかそういう話になるとは思いますし、何かそこでは特段動くような事も無いと思いますが、20年の入札後の金曜にどうせ超長期輪番入れるんでしょう。でもって勿論その時次第ですけれども、20年入札がイマイチの場合に輪番また増やすのかどうかとかはこっそり楽しみにしています(そこまでの相場次第では別にどうでも良い状態になっているかも知れんが)。まー何ちゅうか時々止めを入れたくなる気持ちも分かりますし、超長期を完全に放置した(あるいは完全放置だと市場が認識すると)らそこに金利上昇圧力が集中してカーブのバランスから言って10年を止めにくくなるので牽制を入れたくなるんでしょう。ただまあこの牽制の入れ方ってある意味難しくて、端から止める気満々だったら指値オペぶっこみ何ぼでも買うで〜なのですが、止める気満々ではないが牽制したい、というオペレーションっていうのは最初からそういうもんだとアナウンスしていれば兎も角、一応「イールドカーブコントロール」と言っているだけに変なノイズになってしまうし、今の輪番の上げ下げって「止める」のと「牽制」が適当にごちゃ混ぜになっているから話がワケワカラン(その前の中期スキップは論外としまして)のですよね〜。

ということでまあ早めにYCCの基本的な考え方を再構築したらどうですか、といういつもの結論にいつの間にか流れるのでした(大汗)。


○FED高官発言を念のため確認しておくの巻(虫干しネタあり)

・ウィリアムス総裁(ただし虫干し)

http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2017/january/looking-back-looking-ahead-economic-forecast/
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Looking-Back-Looking-Ahead.pdf
Looking Back, Looking Ahead
Presentation to the 2017 Economic Forecast
Sacramento, California
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on January 17, 2017

ということで先月のを今更引っ張りだして確認しますが(すいません)。

最初の小見出しが『Through the lens of the dual mandate』となっているのですが、こちらを見ますと、まあ雇用に関してはどこの高官もゴールにという話はしますが、この人はその中でもトーンの強い方で・・・・・・・・・・

『Put in those terms, our goal isn’t to have an unemployment rate of zero. Instead, it’s to be near what economists call the “natural rate” of unemployment, the level where the economy is running neither too hot nor too cold. It’s impossible to know exactly what that magic number is, but it’s generally thought to be between 4-3/4 and 5 percent today.1 By the way, that’s about the same number that economists typically thought before the recession, so in this one respect the economy hasn’t changed much over the past decade.』

『With the national unemployment rate now at 4.7 percent, we’ve reached that goal.』

とまあ威勢の良い話をしていて、雇用者数に関してももうちょっと後の方で、

『That’s great news about the job market, and it means that we won’t need as much job growth going forward as we’ve seen in the past few years. Because we’re at maximum employment now, the future is less about creating an ever stronger labor market, and more about maintaining a healthy one.』

てなことで、雇用者数がもうそんなにバカスカ増えなくても良いですとか景気の良い話。

『That means creating enough new jobs to keep up with the increase in the size of the labor force. That number depends on things like the number of people retiring this year or graduating from school and entering the workforce. Relative to past decades, labor force growth has slowed substantially due to an aging population, stabilization in women’s participation in the labor force, and other factors. As a result, the number of new jobs we need has dropped as well.』

『I put it at around 80,000 a month currently. Looking ahead, estimates that take account of likely labor force trends imply a range from 50,000 to a little over 100,000.』

『Last year job gains averaged about 180,000 a month. That’s more than twice as fast as we need to keep up with the trend in labor force growth and, quite honestly, is unsustainable in the long run.』

ということで、今後は去年のような月18万のNFP拡大は要らんという威勢の良い話。


一方の物価ですが・・・・・・・・・・

『Turning to our second mandate of price stability, the Fed’s monetary policy committee-the Federal Open Market Committee, or FOMC for short-has set a long-run goal of 2 percent inflation. Inflation has been running persistently below that goal for several years. Over the past couple of years, the strengthening of the dollar and declines in energy prices have pushed inflation down, but these influences have been fading. To cut through some of the noise, it’s useful to look at measures of inflation that strip out volatile prices and provide a clearer view of the underlying trend. These suggest that underlying inflation is running about 1-3/4 percent. So, we’re not quite at our target yet, but we’re getting closer. The combination of fading transitory factors and a strong economy should help us get back to our 2 percent goal in the next couple of years.』

雇用の所を延々と説明していたのですが物価についてはこのパラグラフだけとなっていまして、これ最近(これは1か月前ですが、汗)の連銀高官の講演とか発言で目立つのですが、雇用情勢の所をどう見るのかという話が凄く強調されていて、物価に関しては割とみなさんあっさり味の論評しかしていないなあという風に思うのですよね。

でもって2%については多くの連銀高官が行きます系のお話になっていまして、まあ結局の所は雇用情勢がどのくらい今後のインフレ圧力を高めるかという話が議論の一つとして焦点になっているんでしょうかねえ、とか何とか思いながら今週のFOMC議事要旨を待機したいと思います。


でもってもう一つの論点ですけれども、小見出し『Monetary policy』の途中からこういうのがある。

『History teaches us that an economy that runs too hot for too long can generate imbalances, eventually leading to excessive inflation, asset market bubbles, and ultimately economic correction and recession.』

まあ皆さん誰もそうだとは言わないのですが、大統領選挙の結果が出る前にイエレン議長が「高圧経済」とかキャッチーなお言葉を述べていたのに対して別に他の連銀高官があまり文句も言っていなかった(一部のタカ派を除く)という流れだったのに、いきなり大統領が予想外のトランプ大先生になったと思ったらイエレン子飼いのウィリアムス(イエレン前のSF連銀総裁)までこの有様、という辺りはそら政治的中立とは言っても盛大に意識しとるじゃろうという所で、まあ何のかんの言いましてもトランプ財政大警戒してるんでしょうとは思われますの。

『A gradual process of raising rates reduces the risks of such an outcome. It also allows a smoother, more calibrated process of normalization that gives us space to adjust our responses to any surprise changes in economic conditions.』

ほう。

『If we wait too long to remove monetary accommodation, we hazard allowing imbalances to grow, requiring us to play catch-up, and not leaving much room to maneuver. Not to mention, a sudden reversal of policy could be disruptive and slow the economy in unintended ways.』

おまけにこの部分もう一つ次のパラグラフがありまして(ちなみに金融政策のパートは4つのパラグラフがありますので半分このネタに使っている)、

『As I said, my goal is to sustain the economic expansion. The best way to accomplish that is by supporting a pace of growth consistent with the economy’s potential and 2 percent inflation. I fear that if we allow the economy to overshoot this mark by too much, eventually we will need to reverse course to bring the economy back on track.』

『The experience of past business cycles shows that this is a hard, if not impossible, act to pull off, and ultimately ends in recession. A gradual process of removing monetary accommodation reduces this risk.』

とまあこういうのをイエレン子飼いの兄ちゃんが言っている(先月ですけど)という辺りに関しては、まあこのネタ出た時にもそれなりに相場ネタにはなっていたと思いますが、先般の議会証言を想起しますとなるほどという感じではないかと。


・カプラン総裁の先般の書き物

https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170213.aspx
Essay by President Robert S. Kaplan
Assessment of Current Economic Conditions and Implications for Monetary Policy
February 13, 2017

ということでエッセイになっているのですが小見出しが、

Energy
The District
The U.S.
Unemployment
Inflation
Non-U.S.
Broader Secular Trends
Fiscal and Structural Policies Beyond Monetary Policy
My Views Regarding the Current Stance of Monetary Policy

と来ていまして、何気に長いのが最後の3つのうち特に『Broader Secular Trends』と『Fiscal and Structural Policies Beyond Monetary Policy』の所なのですが、この部分は経済構造のトレンドとしてという部分に関わる話なので、直接の金融政策というよりは財政政策や経済政策に関する話となるので、結局手抜きで最後の所を読むのだ。

『As I mentioned earlier, I believe we are making good progress in accomplishing our dual-mandate objectives of full employment and price stability. Regarding our full-employment mandate, I believe there is still some amount of slack in the U.S. workforce. In addition, I continue to believe that in a more interconnected world, excess capacity outside the U.S. may be dampening inflation pressures in the U.S. As a result of these factors, I think we still may have some scope for further job growth without overheating the economy or unduly stressing the capacity of the U.S. workforce. However, having said that, it is my view that we are moving closer to full employment.』

米国景気の状態は良く、ほぼ完全雇用ではあるが、依然として労働市場に若干のスラックがあり、海外経済の弱さがあるので、暫くは経済が過熱するリスクは少ないとみていると。

『Regarding inflation, I believe that as the impact of lower energy prices begins to dissipate, and as the labor market continues to tighten, headline inflation is likely to move toward our 2 percent objective over the medium term.』

物価に関しては(飛ばしましたが)さっきのウィリアムス総裁と同様で、小見出し上は並んでいますけれども、やはり物価に関する記述はあっさり味となっていて、皆さんこの傾向は同じという所です。

『While the key secular drivers I discussed earlier will continue to pose challenges for economic growth, I also believe there is a cost to excessive accommodation in terms of penalizing savers, as well as creating distortions and imbalances in investing, hiring and other business decisions. These imbalances are often easier to recognize in hindsight and can be very painful to address.』

構造問題に関しては米国経済の成長力が弱くなっているという認識の一方で過度な金融緩和のコストにも言及とな。

『Based on these considerations, as we continue to make progress in achieving our dual-mandate objectives, I believe that we should be taking steps to remove additional amounts of monetary accommodation. I believe that future removals of accommodation can likely be done in a gradual and patient manner.』

「in a gradual and patient manner」という説明で皆さんしらっと流しているのですが、この文言で市場が想定するものと、FED高官の人たちが考えているものが違う気がするし、そもそもFED高官の中でもこの文言によって示される利上げペースが違うのではないか説がだいぶあるのですけど。

『However, it is my view that moving sooner rather than later will make it more likely that future removals of accommodation can be done gradually-that is, reduce the likelihood that the Fed will get “behind the curve” and feel the need to remove accommodation more rapidly.』

ということで、これまた高圧経済の逆の話でビハインド・ザ・カーブをすると後で思いっきり引締めしないといけなくなるのでイクナイ、という結論になっていまして、こちらは先週月曜に投下されていたネタですけれども、まあこんな感じのばかりがホイホイ出てくるという感じではございますな、とFOMC議事要旨が今週出てくる前に念のため確認なのでありました。






2017/02/17

お題「市場計数等メモメモ/黒田総裁のプルーデンス系講演ですけど・・・・・・・・」

どうも先週までの相場における日銀砲火で円債村はすっかり丸焦げになっているようで活力がががが。

○日銀当座預金残高

トップページからのリンクはいきなりエクセルですので。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/

毎度の『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)』ですけれども。

補完当座預金制度対象先ベースの当座預金座残高は平残ベースで3兆1,630億円減少。
マクロ加算残高の理論値が1,380億円の増加。
ゼロ金利適用残高が1兆5,880億円増加。
プラス金利適用残高は6,460億円増加。

マイナス金利適用残高は5兆3,970億円の減少という結果になっています。

都市銀行のマイナス金利回避に向けた根性は相変わらずでして、

11月ゼロ金利適用残高:最大利用の残高34兆1,160億円に対して33兆5,120億円
12月ゼロ金利適用残高:最大利用の残高41兆0,760億円に対して40兆2,010億円
1月ゼロ金利適用残高:最大利用の残高41兆1,100億円に対して40兆4,210億円

とまあ相変わらずマクロ加算の範囲内にバッチリ抑えようという資金管理をガッツリと継続しておりましてマイナス金利適用残高はゼロ。

でもって今回は全体として補完当座預金制度先の当座預金残高は減少していまして(なお、「その他当座預金先」の残高は3,960億円増加している)、元々都市銀行はマイナス適用がゼロですので、マイナス適用減った分ってどこかと思うと、概ね外国銀行(2兆弱)、信託銀行(9,000億円弱)、その他準備預金制度適用先 (2兆4,000億円ほど)となっています。

12月積み期間(12/16-1/15)では信託銀行とその他準備預金制度適用先がどどーんとマイナスを拡大していたのが落ちたのですが、今回は外銀が久々に大きく落ちているのは何でじゃろと思うのだが人の懐具合は良く分からんので現象だけメモしておこう。

プラス金利の内使い切れていない分(億円表示)
9月:29,906
10月:20,778
11月:19,220
12月:30,190
1月:22,940

ゼロ金利の内使い切れていない分
9月:101,618
10月:79,931
11月:84,340
12月:111,540
1月:97,040

ということでして、さっきの所でしらっと流しましたが、当座預金残高減少よりもマイナス金利適用残高が減少しているのはマクロ加算やプラス金利適用残高の利用が増えているためということですな。

あと、補完当座預金制度適用外の人の残高ですけれども、
6月:78,697
7月:83,311
8月:84,720
9月:87,969
10月:88,726
11月:90,490
12月:96,900
1月:97,660

となっていまして、当座預金残高は落ちていますが、こっちの方は落ちないというまあ何となくそうだろうなあという結果。

○その他少々

・3M短国

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170216.htm

(3)募入最低価格 100円05銭0厘5毛(募入最高利回り)(-0.2024%)
(4)募入最低価格における案分比率 95.5407%
(5)募入平均価格 100円05銭3厘8毛(募入平均利回り)(-0.2156%)

ということで、大体▲20bpにちょっと乗った辺りが落ち着きどころみたいな感じになって来ているようには見えますな。モーサテによると何故か日経の方では短国金利上昇というのがニュースネタになっているようですからこれはどう見てもフラグですね(^^)。


・何気に超長期ェ・・・・・・・・・・

昨日の流動性供給入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170216.htm

4.募入最大利回格差 +0.010%
5.募入最大利回格差に係る案分比率 93.6363%
6.募入平均利回格差 +0.001%

超長期対象で1毛弱流れましたが前場引けの水準からすると足切が弱いので、元々ヘロヘロ感のあった超長期は地味に(派手には動いていない)ヘロヘロという感じですな。本日は輪番のうち超長期輪番は入るでしょうから輪番はちょっとだけ楽しみ。つーても何か先週までの相場で一戦終わった感があってあまり相場が戦闘モードになっていないような気がする(気のせいだったらすいません)のだが。


○棒読み感満載の総裁講演だが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170216a1.pdf
頑健な金融システムの構築に向けて
─ 金融危機後の取り組みと今後の課題 ─
預金保険機構(DICJ)・国際預金保険協会(IADI)国際コンファレンスにおける講演の邦訳


ということで元を見ますと・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2017/data/ko170216a1.pdf
Building a More Robust Financial System:
Where Are We after the Global Financial Crisis and Where Do We Go from Here?
Speech at the DICJ-IADI International Conference


となっていまして、レジリアントな金融システムじゃなくてロバストな金融システムの構築というお題になっていまして、アタクシの気のせいだったらゴメンやでなのですが、resilientの方を良く見ていた感がある(勘違いだったらすいません)のでお題を見た所でふーんと思ったのだが詳しい人教えてジェネラル。

まあ基本棒読みなのですけど最初の所で、

『このような認識に立って、以下では、金融危機後の金融システム強化に向けた国際的な取り組みと残された課題について、@国際金融規制、Aマクロプルーデンス政策、B中央銀行の「最後の貸し手」機能、という3つの側面からお話しします。そのうえで、将来にわたる金融システムの安定確保を図るうえでの新たな課題である金融機関収益の問題について、私なりの考えを申し述べたいと思います。』

という風にあって、じゃあAとBと最後でも見てやろうかという所です。


・マクプルの話が全然活かされそうもない件について

『(マクロプルーデンス政策の枠組み整備)』の所ですけれども途中から。

『このように、マクロプルーデンス政策手段や制度的な枠組みの整備は進んできていますが、マクロプルーデンス政策手段を実際に、効果的かつタイムリーに運用していくことは容易な課題ではありません。』

そもそもやる気ないだろ。

『まず、監督当局や中央銀行が、金融システムの過熱や停滞の兆候を適切に把握することが大前提となります。また、発動する際には、政策の発動から効果が顕現化するまでのタイムラグや、規制の対象外となっているセクターへの効果の漏出、不動産市場に関しては住宅関連税制といった他の政策領域との関係調整など、数多くの問題が指摘されています。このように、新たに導入されたマクロプルーデンス政策手段の効果については、まだ十分にテストされているとは言えず、実践と検証を積み重ねていく必要があると考えています。』

何という棒読み感。

『いずれにせよ、マクロプルーデンス政策を担う監督当局や中央銀行には、金融システムにおけるマクロ的なリスクの蓄積状況についての分析力に磨きをかけるとともに、ミクロの金融機関行動において、金融システムの不安定化の芽が生じていないか、常時把握する力を一段と向上させることが求められます。日本銀行としても、考査・モニタリングや金融システムレポートにおける各種の分析を通じて、ミクロ、マクロの両面での実態把握力をさらに強化させていく方針です。』

との話だが、FSRを見ると随分と「今の政策を漫然と続けると大変なことになります」というメッセージが(大人の事情により婉曲だったりオブラートに包んでいたりする部分もあるけど)満載なのに、何を今更「実態把握力を強化させていく方針」(キリッ)とか言ってるんだよ実践しろよ実践と思うのだが、まあまるでそういうのやる気ないだろうなあと。


・LLRの話だが微妙にそれはそうなのか感はある

『(「最後の貸し手」機能の新たな展開)』の所だが。

『3つめに、中央銀行の「最後の貸し手」(LLR)機能の展開についてお話しします(図表4)。「最後の貸し手」機能とは、伝統的には、特定の金融機関の経営悪化が預金者の心理的な連想や決済ネットワークを通じて他の金融機関に伝播するというシステミック・リスクが生じた場合に、「支払能力はあるが流動性不足に陥った(solvent but illiquid)」金融機関に対して、自国通貨を供給することが一般的な理解とされてきました。』

って話なのだが、本来のバジョット・ルールに則して言えば、ここに「ペナルティ金利で」というのが加わるのであって、その意味では最近のLLRってそこは微妙に踏み外していて、寧ろ緩和政策における流動性供給の補完措置としての部分までをLLRという言い方をしているように思える。

『これに対し、先般の国際金融危機では、金融市場の参加者間でのカウンターパーティ・リスクに対する懸念と、これによる市場取引の急激な収縮がシステミック・リスクの源泉になりました。こうした状況を踏まえ、主要国の中央銀行はCPや社債の買入れなどを通じて金融市場に対して資金供給を行い、市場機能を下支えしました。こうした政策の導入を通じて、中央銀行の「最後の貸し手」機能は、「最後のマーケット・メイカー」機能(MMLR)を包摂する形にまで発展しました。』

明確な緩和策として後付で社債等の買入を実施したECBは別なのだが、日銀の場合は本来危機対応で実施した筈のCPと社債買入をダラダラと継続して今や「最後のマーケット・メイカー」じゃなくて「最初のマーケット・メイカー」になっているのがCPや社債市場の実態なのですが。そちらに関する所感について小一時間お伺いしたいがどうせ黒田総裁にそういう興味が無くて意見もなかろうというのだけは想像がつく。

『また、金融機関のグローバルな業務展開に伴い、外貨建ての資金仲介が拡大する中、先般の国際金融危機では、スワップ市場の機能不全などに伴う外貨の流動性不足も深刻な問題となりました。これに対処するため、2007 年には、ECBとスイス国民銀行がFRBとの間でドル資金に関するスワップ契約を結び、自国や地域の金融機関に対してドル資金を供給することとしました。リーマン・ブラザーズの破綻後には、日本銀行、BOEとカナダ銀行がスワップ契約に加わったほか、2011 年には、ドル以外の主要通貨も対象とする多角的スワップ網が整備されました。こうしたスワップ網に基づく外貨資金供給の枠組み整備は、「最後の貸し手」機能が、「最後のグローバルな貸し手」機能(GLLR)も含む形まで発展したと整理することが出来ます。』

ということなのだが、同じくこれ危機対応で開始したものに対して今でもダラダラ続いていて、まあファシリティ自体は使われていないから単に準備だけというのもあるが、本来外貨資金繰りまで面倒を見る必要が(どこかのハードカレンシーにペッグしている通貨ならともかく)あるのかねという疑問も無い訳ではないと思うのだが、何かこうLLRの話が勝手に拡大している感みたいな微妙な違和感を受けますな、と個人的には何となくもやもやとする。


『このように、「最後の貸し手」機能に関しても、中央銀行の役割は大きく強化されています。市場の混乱に伴う主要通貨の流動性供給という点では、バックストップがかなり整備されたと言ってよいでしょう。そのうえで、今後は、国際的に活動する金融機関が、個別の要因で外貨資金不足に直面した場合への対応や、主要通貨以外のローカル通貨の資金不足への対応が課題になると考えられます。』

ということで、そこまで考える必要あるのかという気はするんだが。

『特に、日本の金融機関は、現時点で外貨繰りに特段の問題は生じていないとはいえ、近年、アジア諸国を含めグローバルにプレゼンスを拡大しているだけに、日本銀行にとって、金融機関の外貨の資金不足が金融システムを不安定化させるリスクへの対処は喫緊の課題となっています。』

何つーかこれ言いたいことは分かるし気持ち(なお黒田さんは棒読みでしょうから気持ちと言ってもこの原稿作っているであろう中の人の)も分かるのだが、本来はそういう規模になるまで金融機関が特攻するような状況になっている時点でマクロプルーデンス政策が上手く行っていないのであって、そこを何とかしようとしてセーフティネットを張りまくるというのはどうなのかと。

でまあそういう点で言えば、相変わらず延々と続いているドル資金供給オペの金利ってまあほぼほぼペナルティ金利になっていて(NY連銀ご指定レートだから)、碌に残高出ていないというのはまあこの観点から見たら良い話(そらまあ外貨調達コスト下がった方がウマーという議論もあるがそれはマーケットの観点で別問題という事で宜しくお願い致します)ではありますかな。

『こうした問題意識から、日本銀行では、個別金融機関の一時的なドル資金不足が生じた場合には、自ら保有するドル資産を活用して資金供給を行うこととしています。また、ローカル通貨に関しては、昨年、オーストラリア・ドル、シンガポール・ドルについて、両国の中央銀行との間でスワップ契約を締結しました。これにより、万一、日本の金融機関の資金繰りに支障が生じた場合には、日本銀行がスワップによって調達したオーストラリア・ドルやシンガポール・ドルを原資として、当該金融機関に対して資金供給を行うことが可能になりました。』

『もとより、金融機関にモラル・ハザードを生じさせることは避けなければなりませんが、今後も、関係当局との間で議論を重ねたうえで、バックストップとしての外貨流動性供給の枠組み整備を続けていく方針です。』

一応ここでやっとモラルハザード防止の話が出てくるのだが、その前の取り組みの話がやたら威勢よく書かれているあたりにちょっとそのバランスはどうなのかなと思ったのだが、まあアタクシの考え過ぎかもしれませんし考えすぎだったらゴメンです。


・どうみてもマッチポンプです本当にありがとうございました

最後が『(新たな課題:金融機関の低収益性)』である。

『ここまでお話ししたとおり、国際金融危機の教訓を踏まえ、こうした危機を再発させないための取り組みは様々な面で進展しています。それぞれの取り組みについて、なお課題は残されているものの、危機以前と比べれば、グローバルな金融システムの頑健性は大きく向上しているといえるでしょう。もっとも、これにより、金融システムの安定を維持していく上での課題がなくなったわけではありません。より長い目でみると、金融機関の収益力低下が金融システムを不安定化させる潜在的なリスクへの対応が重要性を増してきています。』

どの口がそれを言う。

『国際金融危機後の低成長・低インフレのもとで、多くの主要国中央銀行は、非伝統的な政策を含む極めて緩和的な金融政策を採用してきました。冒頭にお話ししたように、こうした金融政策は、それ自体、必要なマクロ政策として行っているものですが、これによる金利の大幅な低下は、利鞘の縮小を通じて金融機関収益の下押し圧力として働いています。』

>必要なマクロ政策として行っているものですが
>必要なマクロ政策として行っているものですが
>必要なマクロ政策として行っているものですが

マイナス金利が必要なマクロ政策なんですかねえ。

『現時点では、各国の金融機関とも、実体経済の改善による信用コストの低下や金利低下による有価証券売却益の増加などにより、全体としては、相応の収益水準を維持しています。』

日本はこの前のFSRを見るにそういう状態から次の状態になろうとしているように見えますが。

『もっとも、仮に現在のような低金利環境が長引いた場合には、利鞘の縮小傾向が続き、金融機関収益は一段と低下する可能性があります。特に日本では、もともと、高齢化の進行や人口減少といった構造的な要因が金融機関経営に対して逆風として働いています(図表5)。』

マイナス金利の言及はしないのは分かるがまあ何ちゅうかこの心に響かない説明(って本チャンは英語ですからそっち見て響くか響かないか言わないといけないんですけど本来は)。

『また、欧州でも、一部金融機関の不良債権問題もあって、金融機関の収益力低下は金融システム安定に対するリスク要因として指摘されています。このように、この問題は、大なり小なりグローバルに共通の課題となっています。』

ということで・・・・・・・

『金融機関の収益力低下が金融システムの安定性に悪影響を及ぼす経路はいくつか考えられます。具体的には、収益力の低下は自己資本の蓄積を妨げるため、仮に大きな信用コストや市場環境の急変による有価証券投資での損失が生じた場合に、自己資本が毀損されるリスクを高めることになります。そうした場合には、金融機関がリスクテイクに慎重になり、円滑な金融仲介機能が阻害されるおそれがあります。他方で、こうした事態に陥ることを回避すべく、金融機関が収益確保のために過度なリスクテイクを行う場合、そのこと自体が金融システムに新たな火種を持ち込むことにつながりかねません。したがって、金融システムが今後も安定性を維持していくためには、長い目でみた金融機関の収益力低下への対応が一層重要なものになっています。』

マイナス金利ェ・・・・・・・・・・・

『金融機関の収益力向上に向けては、まずは、個々の金融機関自身が、自ら置かれた経営環境を正しく認識したうえで、それぞれの環境に応じたビジネスモデルを構築していくことが出発点になります。』

マイナス金利で殺しておいて何を言う。

『具体的な取り組みとしては、中小企業向けや個人向け貸出の需要掘り起こし、有価証券投資でのリスクテイク、手数料ビジネスの強化、店舗網の大幅な効率化を含むコストカットなど、様々な選択肢があり得ます。その中から、各行が適切なものを選んでいくことが求められます。その際には、金融機関間の合併・統合なども選択肢の一つとなり得るでしょう。』

何ちゅうかこれマイナス金利を嬉々として導入して金利が馬鹿低下したのを「政策効果」とか言ってたその口が言うと金融機関に対して喧嘩を売っているようにしか見えない訳で、もう少しこういうの考えて作った方が良いと思うんだが。

てかさ、話は飛んじゃうけど先般来の輪番オペ騒動もそうなんだけど、どうもやっている本人たちはピュアにこれが最適解とか思ってやっているように見えるし、講演のこの辺りなんかも確かに単体として見たら全くの正論なんでしょうけれども、結局何か部分最適みたいな感じになっていて、全体としての整合性(この講演だったらマイナス金利とYCCで金利を馬鹿みたいに下げているというマネタリーポリシーやっている事との整合性)に無理があるから、結果として出てくるものが金融機関なり国債市場なりに対して盛大に喧嘩を売りに行っているように受ける側から取れてしまう、というのが茲許のアカンヤツやという所で。いやまあそれで物価目標達成するとか結果出していれば文句有ってもそれはそれという話になるのだが、結局2%目標全然達成してないでしょ。

『金融機関の収益力向上に向けては、当局の役割も重要になってきます。その際、個々の金融機関の置かれた状況は一つ一つ異なること、先行きの経営環境の変化をにらみながらフォワードルッキングに対応していく必要があることなどから、one-size-fits-all である規制的な手段は必ずしも適切ではない可能性があります。』

マイナス金利を撤回してから言ってください。

『むしろ、金融機関の個々の事情に応じて柔軟に取り組みを促すことができる、監督や指導といった「ソフトなアプローチ」の方が有効と考えられます。こうした点を踏まえ、日本銀行としては、考査やモニタリングを通じて、金融機関がリスクテイクを強めている分野での適切なリスク管理を促すとともに、収益力強化に向けた金融機関との対話を一層深めることを考えています。あわせて、金融サービスの付加価値向上に資する各種セミナーの開催などを通じて、金融機関の取り組みを積極的にサポートしていく考えです。』

個別行への監督指導がソフトアプローチとな、と思ったら英文も『"soft" approach 』となっていました・・・・・・・

#ということでECBネタはパスで勘弁







2017/02/16

お題「市場メモ/今度はローゼングレン総裁とハーカー総裁が講演とな」

急にひっそりとした円債村に潜むパルチザンへの補給物資到着となるでしょうか。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1G04X0
Investing | 2017年 02月 16日 05:35 JST
米金融・債券市場=利回り急上昇、消費者物価の大幅な伸びで

『米金融・債券市場は、10年債利回りが一時、約2週間半ぶりの高水準をつけた。1月の消費者物価指数(CPI)が大幅な伸びを示し、利上げ時期が近づいたという見方が強まった。終盤の取引で、10年債は11/32安。利回りは2.51%。一時、2.52%まで上昇した。市場関係者の1人は、10年債利回りが2.50%を突破した際に、一部に買いが入ったと指摘する。1月のCPIは、前月比で0.6%上昇と2013年2月以来、3年11カ月ぶりの大幅な伸びとなった。』(上記URL先より)

そんな本日は超長期の流動性供給デーなので日銀軍の鎮圧砲火も普通だと発生しない中でまーたパルチザンが登場するのかしないのか。

○ちょっとだけ市場メモ

・まあやっと輪番が順当に実施されてくる訳で

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170215.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)4,000 2017年2月17日
国債買入(残存期間3年超5年以下)4,200 2017年2月17日
国債買入(残存期間5年超10年以下)4,500 2017年2月17日

ということで昨日は中期長期の輪番。入札の翌日なので中期を実施して翌日が超長期の流動性供給なので超長期は外してという事になりましたが、これ長期を1回変な所でやっている関係上このペースだと長期輪番って月7回打てないことも無いのですな。

まあ今朝のように米国金利上昇して戻って来るとまーた長期金利チクチクやってくるかもしれませんので、頑張れば7回長期輪番出来ますよというのは抜かずの宝刀には良いのですけれども、まあ長期に関しては既に指値実施したので、変に輪番7回目打つくらいなら指値やっとけという感じでして、とにかく中期輪番のスキップというのから今回の混乱は始まっている訳で、輪番の1回当たり金額の増減ならともかく、1回分の輪番が動くというのはあまりにも需給関係に対して不意打ちにも程があって、この前までの混乱のように市場を無駄に不安定化させるしか効果が無いという事が分かったと思いますので、輪番についてはとりあえずおとなしく実施して欲しいですな。


・5年カレント補完供給

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170215.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)20,000 2017年2月15日 2017年2月16日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4)1,000 2017年2月15日 2017年2月16日
(注3)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却対象銘柄は、2年利付国債372回、5年利付国債130回です。
(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)の売却対象銘柄は、国庫短期証券659回です。

あら2年債と思ってびっくりしましたが。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170215.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)7,492 7,492 -0.500 -0.516
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5)50 50  -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、2年利付国債372回(198億円)、5年利付国債130回(7,294億円)です。
(注5) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)の売却銘柄は、国庫短期証券659回です

ということで、結局毎度の如く5年130回がSLFヒャッハーという状態なだけでしたが、本日は130回新発分のおかわりがでてきますのでさてどうなるやら。


○連銀総裁からボコボコと発言が

今朝だとこの2本。

・ローゼングレン総裁

http://jp.reuters.com/article/rosenglen-idJPKBN15U2JZ
Business | 2017年 02月 16日 05:03 JST
米FRB、経済予想通り拡大なら年内3回以上の利上げ必要=ボストン連銀総裁

『[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は15日、米経済が予想通りに加速すれば、年内は3回以上の利上げが必要になる可能性があるとの見方を示した。』(上記URL先より)

つーことで講演はこちら
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2017/monetary-policy-as-the-economy-approaches-the-feds-dual-mandate.aspx
Monetary Policy as the Economy Approaches the Fed’s Dual Mandate
By Eric S. Rosengren
February 15, 2017

講演のフルテキストは上記URL先の所にフルテキストのDLがあるのですが、上記URL先のサマリーで勘弁頂くとしまして。

『Boston Fed President Eric Rosengren said today that the economy has continued to improve and called for continued gradual removal of monetary policy accommodation.』

ほう。

『"Over the next year or two, I expect real GDP to grow somewhat faster than 2 percent, the unemployment rate to continue to gradually decline, and inflation to gradually return to the Federal Reserve's 2 percent target," Rosengren said.』

明るい見通し。

『While his forecast envisions a continuation of the economic growth we have seen over the past several years, Rosengren emphasized that the "starting point" is quite different now. "The labor market has significantly improved during the recovery, and my own assessment is that there is very limited slack remaining," he said, showing how the unemployment rate, quits rate, unemployment duration, and participation rate data all support this conclusion. "There is limited room for further tightening in labor markets before one might see more inflationary pressures."』

ということで労働市場のスラックは殆ど無いという認識。

『"Importantly, if GDP is growing faster than potential and we reach both elements of the dual mandate, the Federal Reserve risks 'overshooting,' potentially jeopardizing the very significant progress of the U.S. economy since the financial crisis."』

従ってオーバーシュートのリスクが高まっているキタコレ!

『In Rosengren's view, it will likely be appropriate to raise short-term interest rates at least as quickly as suggested by the Fed's policymakers in the current Summary of Economic Projections median forecast, and possibly even a bit more rapidly than that forecast.』

ベンダーの記事通りの話をしてやがっていますな。

『Consumption is likely to continue to be relatively robust, reflecting payroll employment, real income growth, and wealth gains over the past several years - and "likely to offset areas of the economy that remain relatively weak," notably exports.』

うーんこの全部見通し強い攻撃。

『Rosengren cautioned that significant risks to the U.S. economy still exist, particularly from conditions in overseas economies. And he noted that the future stance of U.S. fiscal policy is still unknown. "These areas of uncertainty can materially impact the forecast, and by extension, the path of policymaking that would be consistent with those forecasts." Rosengren was speaking to the New York Association for Business Economics.』

ということで海外が顕著なリスクという話ですからこっちは下向きリスクなのですが、トランプ財政に関しても不確実性を見ていて、そっちは情報リスクじゃねえかという事になると、このおっちゃん今回は投票権無いから気楽に喋れる(というか米国地区連銀の総裁ってそもそも気を使わないでフリーダムに喋っているという説はだいぶあるが)面はあるにせよ、物凄い勢いでタカ派丸出しな講演だったでしょう(すいませんPDFの方の全文は読んでないです)という感じで、ここに来て3月利上げの地ならしでもしてるのかという勢いになっていますな。

まあ地均しというよりは出来る可能性があればやるかも知れないから、ある程度市場を臨戦態勢にしておかないと利上げでショックになってしまう(利上げというのは相当の連続利上げで無ければ上げた所で長期金利上昇は一服みたいになるもんで)やも知れずということなのかなとも思いますけれども、理事連中は兎も角として地区連銀総裁ってそんなに発言に統制は利かないと思うので。


・ハーカー総裁

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-harker-fiscal-idJPKBN15U2JW
Business | 2017年 02月 16日 05:02 JST
年内3回の米利上げ予想、政策変更の効果勘案せず=フィラデルフィア連銀総裁

『[ 15日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は15日、年内3回の利上げが妥当であるとの自身の見通しについて、トランプ政権が検討している財政政策変更の効果は勘案していないと語った。ハーカー総裁は「政策の詳細が一段と明確になるまで、見通しに織り込むことはできない」とした。減税が景気を刺激する可能性がある一方、通商政策の変更は経済に打撃を及ぼす恐れがあるとし、正味での効果はそれぞれの政策変更度合いに左右されると指摘した。』(上記URL先より)

ということでハーカー総裁。
https://www.philadelphiafed.org/newsroom/press-releases/2017/021517
Philadelphia Fed’s Harker: Broad Policies Are Needed to Boost Economic Growth
February 15, 2017

全文はこちら
https://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/harker/2017/02-15-17-la-salle-university-16th-annual-economic-outlook
La Salle University 16th Annual Economic Outlook
Presented by Patrick T. Harker, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Philadelphia
The Union League of Philadelphia
Philadelphia, PA
February 15, 201

でまあ全文の方ではなく手抜きでサマリーの方を読む(よって以下は全文ではなくサマリーから)。

『Philadelphia, PA - Inflation and labor market indicators suggest that the economy is “in pretty good shape,” but fiscal and other policies are necessary to move the needle on economic growth, Federal Reserve Bank of Philadelphia President Patrick T. Harker said today at the La Salle University 16th Annual Economic Outlook.』

ということで。

『“After eight-plus long years of recovery, I can say that we’re more or less back to full health,” Harker said. He also said that inflation is on track to meet the Federal Reserve’s 2 percent target this year or next, and that unemployment is at or below its natural rate.』

見通しだけで言えばもう達成も同然とな。

『“From an economic modeling standpoint, growth right now is more or less what we should consider normal,” Harker said. “My forecast for 2017 is a touch above 2 percent.”』

成長も自然な状態だと。

『However, Harker said that there are sections of the population that have not experienced economic prosperity through the recovery. “I’m not blind to the realities on the ground, particularly in my own district,” Harker said. “There are pockets here and around the country that have been left out of the rebound.”』

とはいえ人口動態の問題という新しい条件変化がある点、経済成長が必ずしも全体に行きわたっていない点についても言及。

『To address these economic inequalities, Harker said that investment in human and physical capital is vital.』

そらまあそうだが金融政策の役割では無いな。

『“One of the areas we’ve focused on at the Philadelphia Fed is skills training and alternative routes to education and professional readiness,” Harker said. “The data show that there’s a skills gap. That is, there are jobs out there that can’t be filled because people just don’t have the right training.”』

でまあそういう話は金融政策というよりはむしろ政府の経済政策ですなということで。、

『Harker emphasized that the Federal Reserve’s power to spur economic growth is limited. Rather, fiscal and other policies are needed to make substantial changes. “The United States is and has been an economic powerhouse for most of the past century. We’re the world’s largest economy and we have consistently been a source of innovation and invention,” Harker said. “If we want to keep our global edge, it’s time to think about broad policies that look to where we’ll be in the future.”』

ということで、纏めの所は全然金融政策ではないので、具体的に何言ってるかを講演本文から見ますと、講演本文の『Monetary Policy: The Basics』のケツの方にこんなのが。

『For our part, that’s about how we manage interest rates. I see three hikes as appropriate for 2017, assuming things stay on track.』(こちらは講演本文より)

とあって、まあ普通に3回利上げだぜと言い切っていますな。スタンス自体は従来通り。


・その他昨日までにあったのは直近ではこのあたり

カプラン総裁
http://jp.reuters.com/article/kaplan-rate-idJPKBN15T2S7
Business | 2017年 02月 15日 05:43 JST
米FRB、早期の利上げが賢明=ダラス連銀総裁

『[ヒューストン 14日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は14日、連邦準備理事会(FRB)は早期に利上げに動くことが賢明となるとの考えをあらためて示した。同総裁は記者団に対し、大規模な緩和にはコストが伴うとの考えを示し、「次の一歩を進めてから状況を検証することの利点はある」と述べた。』(上記URL先より)

講演はこちら
https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170213
Assessment of Current Economic Conditions and Implications for Monetary Policy
February 13, 2017


ラッカー総裁
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-lacker-portfolio-idJPKBN15T2E7
Business | 2017年 02月 15日 02:49 JST
年内のバランスシート縮小望む、資産売却検討を=米リッチモンド連銀総裁

『[ニューアーク(米デラウェア州) 14日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のラッカー総裁は14日、米連邦準備理事会(FRB)はバランスシートの縮小を決める際、保有証券の売却を検討すべきとの考えを示した。総裁はバランスシート縮小について「年内に着手することを望む」とし、「われわれは資産売却を検討する必要がある」とした。』(上記URL先より)

講演はこちらですが、
https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2017/0214-lockhart-crisis-recession-recovery-huntsville.aspx
Crisis, Recession, and Recovery: 2007-16

『Note: This is the full text of a speech delivered by Dennis Lockhart in Huntsville, Alabama, on February 14, 2017. This text includes references to slides shown during delivery. A version of this text with embedded slides is available for download as a PDF. This speech is an update of one Lockhart delivered on January 9, 2017, to the Rotary Club of Atlanta.』

ということで1月の話のアップデート版ですが、まあ大体この人タカ派なので大体内容はお察しですけどね。









2017/02/15

お題「イエレン議長講演は割と威勢よく早期利上げの可能性を示す(気合の入り具合は謎)」

何かあちこちで色々なニュースが飛んでいてカオスですな。

○イエレン議長講演

ロイター記事はこちら
http://jp.reuters.com/article/yellen-senate-idJPKBN15T25J?sp=true
Business | 2017年 02月 15日 05:42 JST
米FRBは利上げ継続へ、待ち過ぎは賢明でない=イエレン議長

『[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は14日、上院銀行委員会で半期に一度の証言を行い、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが必要となる可能性が高いと述べた。ただトランプ新政権の経済政策をめぐりかなりの先行き不透明性が出ているとの認識も示した。』(上記URL先より)

ということで、講演の本チャンを寝起きのボケボケ体に鞭打って読むのだ。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20170214a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20170214a.pdf
Chair Janet L. Yellen
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs, U.S. Senate, Washington, D.C.
February 14, 2017


・景気の現状について

『Current Economic Situation and Outlook』というまんまの小見出しである。

『Since my appearance before this Committee last June, the economy has continued to make progress toward our dual-mandate objectives of maximum employment and price stability.』

正常化実施中であるから当たり前だがこういいますよね。

『In the labor market, job gains averaged 190,000 per month over the second half of 2016, and the number of jobs rose an additional 227,000 in January. Those gains bring the total increase in employment since its trough in early 2010 to nearly 16 million. In addition, the unemployment rate, which stood at 4.8 percent in January, is more than 5 percentage points lower than where it stood at its peak in 2010 and is now in line with the median of the Federal Open Market Committee (FOMC) participants' estimates of its longer-run normal level.』

まず最初に労働市場が出てくるというのはちょっとトランプ政権の雇用大事大事モードに対して気を使っているのでしょうかねえ??でもってここに関してはまずここまでは物凄く威勢の良い表現。

『A broader measure of labor underutilization, which includes those marginally attached to the labor force and people who are working part time but would like a full-time job, has also continued to improve over the past year. In addition, the pace of wage growth has picked up relative to its pace of a few years ago, a further indication that the job market is tightening. Importantly, improvements in the labor market in recent years have been widespread, with large declines in the unemployment rates for all major demographic groups, including African Americans and Hispanics.』

『Even so, it is discouraging that jobless rates for those minorities remain significantly higher than the rate for the nation overall.』

労働市場に関する現状説明の中では何らかのスラックに関する言及があるのですが、今回の話っぷりはスラックがあってまだまだ完全ではありません、というような感じの説明にはなっていなくて、改善がドンドン進んできているという威勢の良い話。最後にマイノリティーの失業率が依然として高い件に言及しています。


『Ongoing gains in the labor market have been accompanied by a further moderate expansion in economic activity. U.S. real gross domestic product is estimated to have risen 1.9 percent last year, the same as in 2015. Consumer spending has continued to rise at a healthy pace, supported by steady income gains, increases in the value of households' financial assets and homes, favorable levels of consumer sentiment, and low interest rates. Last year's sales of automobiles and light trucks were the highest annual total on record.』

国内経済については経済が堅調で住宅価格も健全な上昇をしているので、家計ではセンチメントも好ましい状態にあって低金利も含めて個人消費を後押ししているとかそんな景気の良い話。

『In contrast, business investment was relatively soft for much of last year, though it posted some larger gains toward the end of the year in part reflecting an apparent end to the sharp declines in spending on drilling and mining structures; moreover, business sentiment has noticeably improved in the past few months. In addition, weak foreign growth and the appreciation of the dollar over the past two years have restrained manufacturing output.』

『Meanwhile, housing construction has continued to trend up at only a modest pace in recent quarters. And, while the lean stock of homes for sale and ongoing labor market gains should provide some support to housing construction going forward, the recent increases in mortgage rates may impart some restraint.』

企業セクターの投資がイマイチですよという話があって、住宅市場の方は改善しているけれども、最近のモーゲージ金利上昇が悪影響を与えているというのをしらっと入れていますね。


・物価について

『Inflation moved up over the past year, mainly because of the diminishing effects of the earlier declines in energy prices and import prices. Total consumer prices as measured by the personal consumption expenditures (PCE) index rose 1.6 percent in the 12 months ending in December, still below the FOMC's 2 percent objective but up 1 percentage point from its pace in 2015. Core PCE inflation, which excludes the volatile energy and food prices, moved up to about 1-3/4 percent.』

まあここは物価の現状。

『My colleagues on the FOMC and I expect the economy to continue to expand at a moderate pace, with the job market strengthening somewhat further and inflation gradually rising to 2 percent.』

これもFOMCで示す見通しのとおりですな。

『This judgment reflects our view that U.S. monetary policy remains accommodative, and that the pace of global economic activity should pick up over time, supported by accommodative monetary policies abroad. Of course, our inflation outlook also depends importantly on our assessment that longer-run inflation expectations will remain reasonably well anchored.』

緩和的な金融政策と海外各国の緩和的な金融政策に支えられた経済の今後の引き上がりを見込んでそういう見通しにしていますよああそれから米国の長期的なインフレ期待が強くアンカーされて推移している、というのも前提にありますよと。

『It is reassuring that while market-based measures of inflation compensation remain low, they have risen from the very low levels they reached during the latter part of 2015 and first half of 2016. Meanwhile, most survey measures of longer-term inflation expectations have changed little, on balance, in recent months.』

インフレ期待に関しては市場の方がだいぶ弱かったのが少しましになってきましたが、サーベイベースの方は特段の変化はないですな。


『As always, considerable uncertainty attends the economic outlook. Among the sources of uncertainty are possible changes in U.S. fiscal and other policies, the future path of productivity growth, and developments abroad.』

とまあ割と威勢の良さ目の話をした後に最後にヘッジクローズを入れる、という形で経済物価情勢の説明と見通しを示しています。


・金融政策に関してだが利上げに前のめりじゃないですか

次がもう『Monetary Policy』ですよ。

『Turning to monetary policy, the FOMC is committed to promoting maximum employment and price stability, as mandated by the Congress. Against the backdrop of headwinds weighing on the economy over the past year, including financial market stresses that emanated from developments abroad, the Committee maintained an unchanged target range for the federal funds rate for most of the year in order to support improvement in the labor market and an increase in inflation toward 2 percent.』

というマクラに続いて、

『At its December meeting, the Committee raised the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point, to 1/2 to 3/4 percent. In doing so, the Committee recognized the considerable progress the economy had made toward the FOMC's dual objectives. The Committee judged that even after this increase in the federal funds rate target, monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』

状況が極めて改善したので利上げを開始しましたと。でもってこの先辺りの説明がきな臭い。

『At its meeting that concluded early this month, the Committee left the target range for the federal funds rate unchanged but reiterated that it expects the evolution of the economy to warrant further gradual increases in the federal funds rate to achieve and maintain its employment and inflation objectives.』

前回は利上げをしませんでしたが、それと同時に「経済の進展は将来の緩やかな金利上昇を正当化する」というのを前回の声明文で協調しました、という「私言いましたよね」スキームが登場しているのが怪しい。

『As I noted on previous occasions, waiting too long to remove accommodation would be unwise, potentially requiring the FOMC to eventually raise rates rapidly, which could risk disrupting financial markets and pushing the economy into recession.』

さらに「私言いましたよね」が続いていて、正常化タイミングを待ちすぎると良くないって指摘を更に投下。

『Incoming data suggest that labor market conditions continue to strengthen and inflation is moving up to 2 percent, consistent with the Committee's expectations. At our upcoming meetings, the Committee will evaluate whether employment and inflation are continuing to evolve in line with these expectations, in which case a further adjustment of the federal funds rate would likely be appropriate.』

ここまでのデータは見通し通りの堅調推移であり、次回のFOMCではこの経済物価情勢の推移が見通し通りであるか、そして見通しに適切なのであれば追加の利上げが適切なのか(そもそも見通し通りに推移すれはいずれ金利が上がっていく話なのでそのタイミングの問題という話じゃな)を検討キタコレ!!


というのの後に以下中和成分が撒かれます。

『The Committee's view that gradual increases in the federal funds rate will likely be appropriate reflects the expectation that the neutral federal funds rate--that is, the interest rate that is neither expansionary nor contractionary and that keeps the economy operating on an even keel--will rise somewhat over time. Current estimates of the neutral rate are well below pre-crisis levels--a phenomenon that may reflect slow productivity growth, subdued economic growth abroad, strong demand for safe longer-term assets, and other factors. The Committee anticipates that the depressing effect of these factors will diminish somewhat over time, raising the neutral funds rate, albeit to levels that are still low by historical standards.』

中立金利の話をしているのは、利上げ後のターミナルレートは昔より高く成りませんよという話をしているということですが、こちらの説明はターミナルレートが下がる話はしているが利上げペースの云々についてはスルー。

『That said, the economic outlook is uncertain, and monetary policy is not on a preset course. FOMC participants will adjust their assessments of the appropriate path for the federal funds rate in response to changes to the economic outlook and associated risks as informed by incoming data. Also, changes in fiscal policy or other economic policies could potentially affect the economic outlook.』

先行きの変化で正常化のペースは変わりますというのは当たり前ですが、ここでしらっと「財政の不確実性」があるのがチャーミング。

『Of course, it is too early to know what policy changes will be put in place or how their economic effects will unfold. While it is not my intention to opine on specific tax or spending proposals, I would point to the importance of improving the pace of longer-run economic growth and raising American living standards with policies aimed at improving productivity. I would also hope that fiscal policy changes will be consistent with putting U.S. fiscal accounts on a sustainable trajectory. In any event, it is important to remember that fiscal policy is only one of the many factors that can influence the economic outlook and the appropriate course of monetary policy. Overall, the FOMC's monetary policy decisions will be directed to the attainment of its congressionally mandated objectives of maximum employment and price stability.』

最後の方は金融政策の方向性がどうのこうのではなくて、財政とか税制とかその他諸々に対しては、それを前提にした場合の経済において、何をすればデュアルマンデートに近づけられるか、という事を考えてやりますよ、ということでトランプ政権に付かず離れずみたいな感じで(当然だが)ヨロシイのではないでしょうか。

『Finally, the Committee has continued its policy of reinvesting proceeds from maturing Treasury securities and principal payments from agency debt and mortgage-backed securities. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, has helped maintain accommodative financial conditions.』

資産規模に関しての話はここでは触れていませんね、質疑で何かあったですかね。

まあ利上げ意欲はとりあえず見せましたのでタカを括っていただろう3月についても少々可能性意識するんですよねさすがに。


○今日はまあ面白オペとか無いでしょうから平和平和(だと思いたいメモ)

昨日は・・・・・・・・・・・・

・5年国債入札がまずます
・先週金曜日には威勢が良かった(20年の輪番が札無し芳一だったのになぜその後30年が強くなったのかが意味わからなかったですけど)超長期が早くもグダグダ化していますなあ
・10年も9bpですなあ

という中で海外が金利上昇で戻って来て今日はパルチザンの遊撃戦が見れるのか輪番吸い上げ装置が淡々と吸い上げを行うだけなのか。

あとはSLFが益々凄いことになっているのも何ですねんとか、引け後に出てきた直近の国債銘柄別残高を鑑賞しないといけませんよね〜などと色々あって、計数ネタとかもありますので時間があるときに整理しておかないといけないのだが貧乏ヒマなしとはまさにこのことorz





2017/02/14

お題「オペ雑談は昨日で終わりだった筈なのですがやはり言わずにいられない(−−;/エバンス総裁講演メモメモ」

ヒャッハー!
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FY472
Markets | 2017年 02月 13日 23:36 JST
米国株式市場・序盤=主要3指数が最高値、トランプ・ラリーで全面高

なのは良いのですが、トランプラリーってあの「何が出るかは申し上げられませんが凄いのが出ますよ」ですよねえ・・・・・・・・・・・・・・・

○市場世間話というか何というか

・債券先物出来高8974枚に激減とな

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FY24H
Markets | 2017年 02月 13日 15:16 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続落、長期金利0.090%に上昇

『<15:11> 国債先物が続落、長期金利0.090%に上昇

長期国債先物は続落。前週末の海外市場で、1月米輸入物価指数が市場予想を上回ったことを材料に米債が下落した流れを引き継いだ。また、日米首脳会談を受けた週明けの東京市場で、円安・株高方向に振れたことも上値を重くした。現物債は金利に上昇圧力がかかったが、各年限ともに狭いレンジでの取引となった。あすの入札を控えた5年債は小幅な調整がみられた。内閣府が発表した10─12月期実質国内総生産(GDP)は、前期比プラス0.2%と市場予想(同プラス0.3%)を小幅下回ったが、材料視されなかった。長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比7銭安の149円85銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp上昇の0.090%。』(上記URL先より)

ということですが、昨日の債券先物市場はだいたいいつ見ても同じような値段で、そもそも板動いてるのかという状態。

まあ何ですな、昨日の場合は入札は無いし(5年入札は今日)、輪番に関しても中期は入札前だし長期は先週までに打ち込み過ぎたし超長期は入れると2営業日連続だしとなりますから、まあ輪番無くてもそらそうよという日、ということで入札も無ければ輪番もネタ輪番が無い、と来たら急に取引が絶賛大閑散になりまして、締めてみたら債券先物の出来高が8974枚となりまして、金曜の先物出来高の半分以下に一気に落ち込むわ日中値幅は7銭だわ殆どの出来が4銭位の幅に収斂しているわという状態で、日銀が債券村のパルチザン制圧で大火力使ったら村が丸焦げになってしまったようで急に人が居なくなってしまったのかどこかに隠れているのかという風情ではございます(月曜は基本売買閑散な事が多いのですがそれにしても年末直前並みとかもうねという感じです)、ナムナム。

でまあ大火力で丸焦げになったのでとりあえずしーんとしているとか言うのでしたらまだしもなのですが、連日悪態をついておりますように、日銀のオペ投下基準がもはや何が何だかさっぱり分からない、というよりはグランドデザインが全然ないので、村の皆さんがランボー怒りの逃散とかおっぱじめて(まあマイナス金利からこの方もはやどうしようもないので静かに円債村からの静かなる退出は続いているのですけれども)そもそも村が成り立たなくなるのではないかという薄ら寒いものを昨日は感じるのでありました。


・また5年カレントが補完供給でバカスカ出ているのだが

昨日のオペ結果といってもSLFしかやっていないのですが。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170213.htm

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、2年利付国債370回(4億円)、5年利付国債106回(4億円)、5年利付国債130回(5,284億円)、10年利付国債335回(5億円)、10年利付国債345回(60億円)です。

つーことで5年130回ちゃんが2220億円→3156億円→5284億円と本日の入札を前にジャンジャンと補完供給が増えているというお洒落な展開なのですが、じゃあ5年カレントにそんなにニーズがありましたっけというと、海外の買いって基本的に短国とか利付にしたってもっと年限短いところ(だから2年とか相変わらずの▲20bp台)だと思いますし、大体からして先月中期の輪番1回スキップした分の帳尻は中期では行われていない(だいたい長期で行われた訳で)のですからどういう風になるのかさっぱり分からんですな、まあ5年だから何とかなるんでしょうかねえよー知らんけどなと安易に申し上げておくのだが。

しかしまあ何ですな、先月は中短期のSLFがバカスカ出やがるとか言っている中でいきなりの中期輪番スキップが打ち込まれたのですが、前回の場合は中短期が他の動きは知らんがなという風情で日々じりじりと買われていたという印象はありますが、まああれも入札がやや滑ったのにその後何故か日々じりじり買われるわSLFはバカスカ出るわという謎展開でしたので、今の段階でどうのこうのという話でもないんでしょうし、幾らなんでも先月突如中期輪番をスキップしたのが先週金曜までのドタバタ劇場の元なのですから、さすがに今月は輪番を不用意にスキップするようなことは無いでしょ、と信じたい。


・良く良く考えたら輪番には応札義務が無いというのですよねえ

という小見出しだけで分かる人は分かるでしょうが。

そもそもですな、今はYCCとか言ってますが、実際問題として対市場として日銀が日々やっているのは輪番オペで国債を市場からせっせと購入するというオペレーションであって、その金利水準コントロールというのはありますが、それ以前に大規模資産買入というのをやっている訳ですよ。

でまあその大規模資産買入ですが、持っている人がいないと売るという訳にも行かず、当初は投資家の保有債券を引っぺがす(それを日銀はポートフォリオリバランスとしてウホウホしていましたが)形でせっせと資産を拡大していまして、まあそれは今でもそういう点は多々あると思いますけれども、投資家の保有玉たってゼロには出来ないし、持っている物はホイホイ償還になってしまうし、と来れば日銀の買入ってカレント銘柄を打ち込まれるの巻というのが多いですね、というのもこれまた事実としてある筈なのですよ。

ということはですよ、輪番円滑に回すにはプライマリーディーラーが(それが望ましい姿なのか如何な物なのか、という議論はありますけれども)新発落札してその後に投資家に売るだけではなくて日銀にお買い上げいただきますみたいなサイクルが回っていないと行けない、とまあ物凄く乱暴に割り切るとそういう話になりますが、先月25日の中期輪番スキップからの一連の日銀国債買入の七転八倒振りっていうのは、日銀何やっていますねんというのもありますが、これはプライマリーディーラーにとっては「大火力持った占領軍が平和に暮らしているはずの村に重砲や毒ガス兵器持ち込んで何の脈絡もなくぶっ放しだした」という風情でございまして、これはアカンがなという事だと思うのよ。

まあ日銀オペ利用して小銭稼ぎ的なサムシングな面はあったりなかったりしますけれども、そうは言いましてもこの輪番オペが持っているのってプライマリーディーラーが日銀のオペに協力してホイホイと札を入れているから回っているというのはありますし、参加者がたくさんいれば別にオペ自体が壊れるというような事にはならないと思うのですが、毎度申し上げておりますように今回の一連のオペドタバタって全部日銀のワケワカラン行動によるもの、となりますと、今後に関しても「日銀は慌てるとどういう基準で打っているのかさっぱり分からないオペレーションをおっぱじめるし、ちょっと平和だと思うと急に輪番スキップとか乱暴な事をしてくるし、こんな事では恐ろしくてポジション傾けられません」となる筈なんですよ。

でもってそうなって参加者がポジションを縮小するという話になりますと、実質的に参加者が減っているのと同じことになって、静かなる逃散が進んでいけば、元々応札義務とか無いんですからそのうち村民怒りの輪番不参加祭りとか、入れるにしたって20毛強しか入れねーよヴォケみたいになってきた日には日銀どうするんでしょうかねえ、とは思います。

大体からして先々週金曜の指値オペであれだけ札入ったのって入札直後という要因はあるにしても、日銀に対する不信感がプライマリーディーラーの中で高まって、その結果としてポジション外せるものは外しておきましょうという動きがああいう結果になっている訳ですし、普通「日銀が0.10%(か0.11%かは兎も角として)で絶対に止める」と信じる向きが強ければ金利って上がる可能性が無くなるのですからそれは下がるしかないぜヒャッハーというのがディーリング的な発想になる筈の中、海外金利要因は若干あるかも知れませんが碌に金利がサガランチ会長(さっきのロイターにあるように昨日の10年引けは8.5bp)という辺りに、「日銀信用してヒャッハーと買い上げると足を盛大に掬われるだけなのでそんな事するかよばーかばーか」という市場の静かなる怒りがあると思うのですよねー。


でもまあ日銀の認識ってえのはちょうど昨日ネタにした中曽副総裁の会見での説明通りで、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1702b.pdf
の9ページですけど、

『段々(引用者注:日銀の買入が)難しくなるのではないかとの意見や議論があることも認識していますが、これについては、技術論になりますが、一般的に、日本銀行の国債買入れ残高が段々と増加するのに伴って、国債の需給が一段と引き締まるとすれば、他の条件が一定との条件下ではありますが、日銀のオペレーションの効果はそれだけ大きくなる筋合いだと私は思っています。』(2/2の高知金懇における中曽副総裁発言)

という話をしていますように、本質的に言えば「買入が進んでストック効果が出るとちょっとの買入で金利がバカスカ下がるから逆に言えば碌に買わないでも金利コントロールが出来てウマー」位の認識をお示しになっておられる訳ですけれども、それってそれこそ市場が逃散一揆モードになっているのか単に物無し餓死モードになっているのか知らんけど、毎回20毛強とか30毛強とかな応札ばっかりになって毎回毎回輪番がダダ流れになるという市場崩壊状態になっているという事を示している訳ですよ。

まあ中曽さんですからその位は先刻ご承知で、「オペに限界がある」と言えないので大本営発表をして神州不滅とか連呼しないと行けないというお立場である、とは思うのですが、昨日ネタにした「ゲームチェンジャー」と言い、こういう説明ってやっぱりマーケットをいたぶって楽しんでいるんでしょうかと死屍累々(かどうか知らんが)の市場から見ると文句の100万個も言いたくなるのですが、どうも市場が壊れる事に関する認識が甘すぎにも程があるし、茲許のオペ大暴れとか市場が壊れる傾向に拍車を掛けまくっているように見える訳で、もう少しオペレーションの考え方というのをきちんと整理して、何をどう考えて出すのか、あるいはてきとうなんだが大方針としての方向性はこうなっていますという話をするのか、まあちゃんと示さないと加速度的に市場が壊滅していくと思うし、国内債券市場壊滅されるとそこの片隅でひっそりと(かどうか知らんが)棲息しております不肖このアタクシなんぞも困りますのでもうちょっと深刻に考えて頂きたいものだ、とか何とか思うのでした。


などと雑談は尽きないのですが何時まで経っても雑談ネタなのでまあこの辺で。


○今日はイエレン先生ネタなので前座のつもりで元々ハト大先生のエバンス講演(からほんの少し)

こういうのありましたけどね
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-inflation-idJPL3N12950020151009
Markets | 2015年 10月 10日 04:46 JST
来年半ばの米利上げ、インフレ目標達成に寄与=シカゴ連銀総裁

『[ミルウォーキー 9日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンス総裁は9日、2016年半ばに利上げを実施し、その後は緩やかなペースを維持することがインフレ目標の達成につながるとし、連邦準備理事会(FRB)はインフレ率を2%に向かわせるために、マイナス金利などの追加的な緩和政策を実施する必要はないとの見解を示した。エバンス総裁は講演後、「フェデラルファンド(FF)金利引き上げを2016年半ばまで遅らせ、その後は緩やかなペースにとどめることが、合理的な期間内にインフレ率を2%に上昇させるというFRBの目標と一致する」と言明。「一段と早く上昇することを望んではいるが、現段階ではこれが適切な政策と考える」と語った。』(上記URL先より)

でまあこの講演後のなんちゃらというのはシカゴ連新のサイトに掲載されていないのですが、講演そのものはこちらに。

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2017/2-09-risk-managment-low-interest-rate-environment-cfa
Last Updated: 02/09/17
Risk Management in a Low Interest Rate Environment

でまあ最初にサマリーがあるのでここぞとばかりに引用しますと、

『What about the future? In my remarks today, I will discuss my outlook for the U.S. economy and share my views on U.S. monetary policy. Naturally, the views I express will be my own and do not necessarily reflect those of my colleagues on the FOMC or in the Federal Reserve System.』

ということで、

『To begin, let me lay out my main points:

1. I envision the U.S. will experience sound economic growth and a healthy labor market over the next several years. The achievement of the Fed’s employment goal looks to be on course.

2. Inflation has been too low for too long, but we’ve seen some promising signs that it may be poised to return to the 2 percent target that the Fed judges to be consistent with its price stability mandate.3 Still, downside risks remain.

3. An important structural feature to keep in mind when calibrating the future path for monetary policy is that the so-called equilibrium, or neutral, level of interest rates4 is likely a good deal lower than it has been in the past.

4. In a world characterized by lower equilibrium interest rates, there is less room to reduce policy rates when, sometime in the future, the need will inevitably arise. Accordingly, risk-management considerations point policy toward lowering the chance that policymakers again will face difficult ZLB outcomes in the future. This is an important reason why I favor taking a gradual path for the adjustment of the funds rate back toward its long-run level.

Now, for the details.』

ということでお話が始まるのですが、上記のメインポイントにあるように、エバンス総裁は構造的に成長力などが弱い中では中立金利水準が低下する点の他に、物価が低迷しっぱなしだとFEDの物価安定に対する信頼性が低下するリスクがあり、むしろ物価が多少オーバーシュート気味になっても引き締めは可能なので心配し内容が良いという話をしています。

また、本来的には中立金利水準(3%を想定)まで金利を上げて置けば次回の緩和局面になった時に金利政策の発動余地が3%分あるということは指摘しているものの、非伝統的政策でも緩和はできるのでそんなに急いで上げる必要は無し、というトーンになっていますので、エバンスタカ転という程でもないようにも見えますが、そうは行っても中立金利までの引き上げはしておいた方が良い、という辺りをもうちょっとゴリゴリやるとタカになってしまうというのもあるかも知れません、まあそれこそトランプ財政次第かも知れませんね。

でもって最後の最後にまとめっぽいのがまたありまして、

『With regard to current risk-management issues, many have made the following argument, and so I’ll just state it briefly. Central bankers have a pretty good handle on how to address rising inflation concerns: Use conventional policies and raise short-term policy interest rates. But when inflation is too low inflation and our policy rate is stuck at the zero lower bound, we struggle to provide adequate accommodation with unconventional policies.』

『Because of this asymmetry, risk-management policies would favor skewing policy today to lower the chances of facing more difficult zero-lower-bound outcomes in the future. I think this strategy is important now. And it will likely continue to be important as we adjust to a low equilibrium interest rate environment. With these considerations in mind, I believe that appropriate policy calls for a slow pace of normalization in order to give the real economy an adequate growth buffer to withstand downside shocks that might otherwise drive us back down to the ZLB.』

ということで、金融政策でインフレは止まるけどデフレの対処では色々な非伝統的政策を打たないと行けないので面倒なこと、中立金利が下がっていることを理由に、基本的には金利をゆっくり上げろとは言っていますが、ここの最後の一文にあるように「次の緩和局面におけるバッファーとして中立金利までの引き上げ」というのは指摘しているのがハト系ながら微妙な所。

『There is another facet to consider, namely, Fed credibility. When making their decisions, economic agents - households and businesses alike - depend on the ability of policymakers to reliably obtain their objectives. If policymakers are unable to achieve their mandated objectives within a reasonable period of time, then credibility will suffer and make those goals even more difficult to achieve.』

エバンス総裁はそう心配されますがジャパンの黒田総裁をご覧ください!2年で達成できなくても大丈夫じゃないですか!!!!!!(白目)

『Today, given how long we have been below our inflation objective, I believe the risks are greater that the public doubts our resolve to bring inflation up to 2 percent than they question our will to bring it back down if we were to overshoot 2 percent by a meaningful amount. So, in my opinion, preserving the Fed’s credibility currently requires providing sufficient accommodation to achieve our symmetric inflation objective and maximum employment.』

『One aspect of this strategy is the willingness to accept a modest undershooting of our unemployment goal in order to insure meeting our inflation target. I think the international experiences in Japan and the eurozone show that it is cheaper and more effective to follow policies that establish this credibility before the ZLB looms large.』

多少の物価上振れはキニシナイし、完全雇用以上の状況がモデストなのであればキニシナイとな。

『Of course, we would be in a better place if we had stronger sustainable output growth - both in the U.S. and abroad. Hopefully, nonmonetary policymakers, innovative businesses and hardworking households throughout the world will implement the new policies, develop the new technologies and gain the education and workplace skills that will support stronger growth in structural labor inputs and productivity. The resulting boost to potential output growth would yield rising equilibrium interest rates and important improvements in our many nations’ standards of living. Such success would also better allow monetary policy to become boring again and let monetary policymakers recede further into the background - something that I very much look forward to.』

景気認識の話とか途中全部飛ばして最初と最後だけ引用しましたが、経済の認識と先行きに関しては別に悲観的ではなくて、その辺りはこの辺に出ているかなとも思います。




2017/02/13

お題「そろそろオペ雑談もいったん終了ですかね/タルーロ理事辞任とな/中曽副総裁会見」

まーた米株が減税ヒャッハーモードなのか。

○オペ雑談もそろそろ終わりにならんのかと言いたいがネタが投下される次第で

・うーんこの超長期増額

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170210.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2017年2月14日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,200 2017年2月14日
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,000 2017年2月14日
国債買入(残存期間25年超)1,200 2017年2月14日

ということで輪番が中期と超長期で打ち込まれまして、中期が打ち込まれるのは2打席連続(ただし営業日連続ではない)になりますけれども、そもそも先週の月曜に中期を入れるのが順当の所だったのでここらで入れて置かないと指値オペで増えた買入の帳尻が中期スキップみたいに言われかねないのを気にして入れて来たと思えばまあそんなもんじゃネーノとは思う。

問題は超長期輪番の増額でして、金曜日に関しては木曜の30年入札後の超長期の地合いが好転しており、金曜に関しても米債金利上昇の影響で先物は10銭少々下がって10年は9bp(+1.0)とかやっている間に30年堂々の引け変わらずという風情でフラットニングの展開。

とまあそういう状況で輪番だったのですが、最近はオペ予想コンセンサスがどこにあるのかとか言われても微妙にアレではありますが、多分「木曜の30年入札で底打ち確認したんだから別に増額しなくても良いんじゃネーノ」という方が一般的な見方だったと思うのですが、何故か100億×2本の増額を入れてくるの巻で、正直ここで増額するなら何で一週間前の金曜(長期輪番を4500億円にしたけど止まらなくて後場12:30に指値を入れたドタバタデー)に長期超長期で輪番打たないんだよと思うし、まあ色々と後でもうちょっと書く。

でもって輪番結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170210.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下)9,244 4,001  0.005  0.008 56.9
国債買入(残存期間3年超5年以下)10,373 4,205  0.012 0.013 45.5
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,965 2,001 0.007 0.013 20.8
国債買入(残存期間25年超)3,560 1,206  0.008 0.009 74.1

超長期輪番のうち10-25とか応札倍率が盛大に低くて強い結果になっておりまして、えーっとすいません札が無いのに増額(相場が崩れている中だったら分かるのだが相場は明らかに持ち直している中でしたよねえ)とか札読めてるのかという一段の謎感を漂わせて輪番が終了しまして、当然ながらこの結果を受けて債券市場様は超長期フラットニング(短国買入が微妙に気を使って買入残高の減額を調整してきた事が影響したのかどうかは知らんが2年も堅調)という結果になりました。


・相変わらず発動基準が謎すぎて訳が分からんのですが

ということでまあ昨日は超長期輪番増額だったのですが、金利上げたくないんだったらそもそも先週金曜に入れろよという話ですし、30年入札が滑ったらなら分かるけど入札は若干弱かったかも知れんがその後の相場展開は順調な動きになっていて当日も朝から30年堅調という所でして、別に輪番を増額しなくても相場が崩れるような展開になるのは考えにくい流れだったので、どちらかと言えば金曜の輪番増額は「超長期の押し上げでもしたいのですか???」というような入れ方になっておりまして、そうなってくると一体全体何考えてオペ運営しているのかとか、この手の発動基準が益々意味不明となるんじゃないかねえ、とまあそういう風に思う訳ですよ。だいたいこんな謎な所で増やしたら暫く減らせないぞと思うのですけど。

でもって金曜にも申し上げた通りで、とにかく「輪番オペそのものがボラを拡大する」という流れを切らないと何時まで経っても輪番でバタバタ動く→慌てて輪番で対応→相場がバタバタ動く、の悪循環がトマランチ会長となってしまう訳でして、基本的には「最初に決めたスケジュール通りに買入を淡々と行う」+「とは言っても10年金利のディレクティブがあるから10年金利見ながら止める時はバシッと止める」というセットにして、変にちょこまか動かないというのが市場も変に振り回されずに済みますし、大体からして他市場まで巻き込んで大注目とかにならんで済むというものであります、と思うのですけど。

いやそういう意味では今回の一連のオペって元はと言えば中期輪番スキップから始まっている自業自得ボラ拡大による金利上昇への対処で益々ボラ拡大させた、という大変にトンチキな展開ではあったのですが、一応「10年が上がりそうなら止める(その止める水準がタイトにも程があってこれ中期的に持たないだろという話はさておき)」という感じに見えてきたのですが、ここで別に増額しなくても相場がコケるような感じでもない(個人の感想です)状況で超長期輪番増額というのは、直近の話とはまた別になってくるので、まーたワケワカラン事をしとる、という事になりまして、結局の所オペが盛大な不確実要素であることが変わらないとなると、PDは入札ポジション持ちにくいし、マーケットメーカーはポジション傾けにくいしとなって、国債市場の現物債の流動性が改善せんので、いいからもう少し「ああなるほど」と万人が納得するような打ち方をしましょうね(その意味では去年の方がまだ話が分かった)という事でございまする。


ちなみにこんな記事もありまして
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12765140Q7A210C1000000/
日銀からの「バレンタイン」 超長期債の買い入れ増
経済部 湯田昌之
2017/2/10 14:42日本経済新聞 電子版

『すれ違い気味だった日銀と債券市場の対話がかみ合い始めた。10日の金融調節で日銀は超長期国債の買い入れ額を増やし、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時小幅に低下(債券価格は上昇)した。入札を経て、買い入れが決済されるのはくしくも2月14日。日銀から届いた一足早い「バレンタインチョコ」に市場はひとまず安堵した。』(上記URL先より)

以下の記事は会員向けになりますのでパスですが、ひとまず安堵ってのには微妙に????を覚える訳で、そらまあ30年入札翌日の輪番ですから超長期ロングになっている入札組はウマーだと思いますというように、立場によってそら話は違うのでしょうが、まあ上の方で散々申し上げたように、オペ発動基準の不透明さを市場が思いっきり感じている状況を払拭する方がより重要であって、足元超長期をとりあえず対処療法的に買入増やせば良いというもんじゃないと思うのですよね。すなわち別に輪番が増減しても良いのだが、その基準がある程度普通に市場動向を見れば予想できる、という状況にあれば別にちゃんと読まない方が悪いのでという話なのだが、今の打ち方だと目先の状況にひたすら右往左往しているようにしか見えない訳ですよ。

でもってこれがまあ逆に市場の予想を外して嫌がらせをするのを目的としているんだったらそれはそれでケシカランけれども面白いのですが、まあ一連の動きを見ると「良かれと思ってやっている」というのは垣間見えると思いますのでこれがまた誠に遺憾に存じます所で、どちらかというと心は籠っているが(以下の部分は内務省検閲によって削除されました)。


・ちなみに補完供給

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170210.htm

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、5年利付国債130回(3,156億円)、10年利付国債334回(211億円)、10年利付国債345回(46億円)です。

ということで補完供給でまーた5年カレントが入っていまして、木曜日も

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170209.htm

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、2年利付国債370回(1億円)、5年利付国債130回(2,220億円)、10年利付国債334回(85億円)、30年利付国債52回(63億円)です。

てな訳で木曜は木曜で5年カレントが(午後の補完供給でカレント2銘柄前の128がありましたけれどもこいつは8億円なのでまあスルー)入っているということですが、まあ明日は5年入札ですし、ここもと長期と超長期ばっかり熱心になっていて(一応金曜に中期は来ましたがそもそもが先週月曜の帳尻ですし)どうなのよ的なサムシングはあるから事前準備もせっせと行う(というか恒常的にここショートですよね)ということですかよー知らんが。


○しかしまあ何ですな

これは先月の中期輪番スキップの時ですが、
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12098480V20C17A1000000/
日銀、突然のオペ見送りで市場に動揺
経済部 三田敬大
2017/1/25 14:00日本経済新聞 電子版

『日銀が25日の国債買い入れオペ(公開市場操作)で、市場が当然実施すると予想していた年限の買い入れを行わなかった。市場は予定していたオペを見送ったとみなし、月間合計の買い入れ額が減少するとの観測が広がっている。需給悪化につながるとの思惑から債券市場では売り圧力が強まり、幅広い年限での利回りが上昇(債券価格は下落)した。』(上記URL先より、以下の記事は会員限定ですので会員の方は読んでちょ)


今回って確かに「10年金利0%程度」ということで0%程度なのが0.1%なのかよという点については如何な物かというのはあるのですが、そうは言いましても一応金利上圧力を止めた訳ですけれども、その間って・・・・・・・・・・・・・

中期輪番8200億円スキップのあとに・・・・・・・・

長期輪番400億円増額(以下全部1月当初目標対比)
長期輪番400億円増額
指値オペ長期7239億円実施
長期輪番400億円増額
長期輪番400億円増額
超長期輪番200億円増額

ということで中期輪番8200億円スキップして発生した金利上昇圧力を止めるのに結局9000億円の買入を実施しましたし、たぶん長期と超長期の輪番は今月減らしにくい(よほど金利が下がったら別だが)と思うのでこれからも増えるという事になると思うの。

でですね、そもそも論として中曽さんとかは「米国金利上昇を受けて金利上昇圧力」と立場上そういうしかないから大本営発表していますが、今回の一連の金利上昇って正直他の外部要因や経済物価のファンメタが大きく変化した訳ではなくて、単に日銀の「中期輪番スキップ」って無邪気に豪快な地雷を踏んだだけの自業自得金利上昇な訳よ。

でもってその程度のことで収拾にこれだけドタバタしないと行けない、というのが今回の一連の相場(さすがにこの一連の相場は一勝負終了でしょ、と思いますけどあくまでも個人の感想)が示したことな訳でして、これ物価が本格的にプラテンしてきて市場の皆様がタカを括っている現在の先行き物価見通しパスに変化がしょうじるような事態を迎えるとか、まーた円安株高ヒャッハートランプ財政ヒャッハー相場になるとか、タカ派FOMC爆誕とか、そういうようなもうちょっとマジモンの金利上昇ネタが生じた時に、日銀は本当にYCCが出来るのか(10年カレントだけ止めて無茶苦茶なイールドカーブになってしまう、というのはもはやYCCではない)という大変に素敵なお話が(目先どうこうという話ではなく本当に物価があがるような事態かFEDがガラッとタカ派満載になるかというようなときでしょうけれども)待っているようにも思えます(個人の感想です)ので今回の一連の騒動(?)は先々の課題を突き付けたなあと思いつつ、ひと相場終了感と共に連日のオペ雑談も多分今日でいったん休息でしょうな、と勝手に思っておりますけどどうなるでしょうかね。


○タルーロ理事辞任とな

https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20170210a.htm

『Daniel K. Tarullo submitted his resignation Friday as a member of the Board of Governors of the Federal Reserve System, effective on or around April 5, 2017. He has been a member of the Board since January 28, 2009.』

ということでまあ既定路線とか言われていましたがタルーロ理事辞任。

金融規制に関して今後どうなるのというのは後任人事とか見ないと分からん(というかそこまでアタクシ詳しくないので後任人事見ても人に聞かないと分からんと思うが、汗)のですが、金融規制が緩和される方向になりますと、その程度にもよりますが「金融規制をばっちり行っているから低金利環境を少々長めに継続してもヘーキヘーキ」という理屈が崩れてしまいまして、より金融政策がマクプル的な方向を見ないといけなくなる、という話になる可能性もありますので今後の動向は注意しないと、というメモでした。

おっちゃんのお手紙はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/other20170210a1.pdf


○中曽副総裁記者会見だが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1702b.pdf

・マイナス金利に関して

まあ普通の話ちゃあ普通の話ですがせっかくなので引用。

『(問) 2 点お伺いします。まず 1 点目ですが、マイナス金利が適用されてから、まもなく 1 年になります。金融機関から、マイナス金利については、「効果は限定的」といった批判的な声が目立ちますが、改めて、マイナス金利の効果について、どう評価されているのか教えて下さい。(後半割愛)』

『(答) 1 点目については、マイナス金利を導入した時に、マイナス金利政策自体は準備預金を 3 段階の階層構造として、金融機関の収益への直接的なインパクトを極力抑えると同時に、短期金融市場の金利をマイナス圏に誘導して、なおかつ、マクロ加算残高へと資金が流れることを通じて市場取引規模の維持にも配慮するといった意味で、制度設計面ではかなり工夫を凝らしたつもりでした。』

まあそれで短期金利マイナス化して金融機関以外は直撃したけどな。

『ただし、導入後、特に去年の前半は、世界経済の減速など様々なリスクが顕在化するもとで、国際金融市場が不安定化してしまうなど、わが国経済は逆風に見舞われたことから、政策効果はみえにくかったかと思います。』

はいはい海外のせい海外のせい。

『もっとも、貸出金利や社債の金利は、はっきりと下がりました。それから、金融機関は積極的な貸出態度を維持していましたので、マイナス金利のもとで、極めて緩和的な金融環境が企業や家計の経済活動をサポートしたと評価しています。』

それが設備投資などに出なければやった効果が低いとしか言いようがない。

『市場取引の面でも、マイナス金利導入後、一時大きく減少してしまった無担保コール市場の取引規模も、足許では 7.3 兆円と、マイナス金利導入前の水準まで回復していますので、その部分でも、一応効果は出たかと思っています。』

マイナスチャージの押し付け合いをしているだけで市場とは言い難い。

『一方で、予想外だったのは、国債のイールドカーブ全体にわたって大きな低下圧力が働いたことです。特に、長期・超長期金利などが、予想以上にフラット化してしまって、この結果、金融機関の利鞘縮小が進み、マイナス金利政策が長期化した場合には、金融機関収益に及ぼす影響があるということを改めて認識したところです。また、長期・超長期金利が過度に低下すれば、保険や年金の運用を難しくして、マインド面などを通じて経済活動にも悪影響を及ぼすという可能性も認識しました。』

予想外も蜂の頭も、「政策が効いて物価がホイホイ上がりだす」という政策パスが全然伝わってこないのですから、そらマイナス金利の金利そのものに与える影響の方が意識されますがな、ということでマイナス金利突っ込んで金利が大きく低下したのは「政策効果」とかほざいていましたけど、どう見ても「政策効果を信じていないから金利がバカスカ低下した」ということではないでしょうかねえ。

『こうした点を念頭において、去年の 9 月に、「総括的な検証」を踏まえて、それまでの政策の枠組みを強化して、持続性も柔軟性も兼ね備えた「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したわけですが、マイナス金利と大量の国債買入れの組合せが、長期金利の水準に強力に作用し得ることを改めて認識したマイナス金利導入以降の経験が、従来はコントロールできないと考えていた長期金利を操作目標にする「イールドカーブ・コントロール」という新たな政策枠組みの道を開いたとも言えると思います。そうした政策の枠組みを考えていく上での変革をもたらしたという意味で、マイナス金利導入後の経験は、私にとっては、ゲームチェンジャーだったと認識しています。(後半割愛)』

「政策の枠組みを考えていく上での変革をもたらした」と物凄い婉曲な表現ですが、要は間違っていたから修正しましたスイマセンと言いたいのでしょうが、その同じ口が「ゲームチェンジャー」とかドヤ顔的な用語を使ってくる辺りがもうねという所で、このマイナス金利1年で国内債券でどんだけ死屍累々(戦って死屍累々なのではなくてインパール作戦状態で死屍累々なのですがしかも)なのかと市場の中であばばばばーとやっている人間としてはその他人事刊というか市場は実験モルモットじゃ無いんですけど的なピキピキ感が。


・まだ試行錯誤は続くらしい

ということでオペ関連質問。

『(問) 先程、国債の買入れオペについて、今、知見を蓄積されているところだということですが、先週のオペの結果、指値オペなどもあって、マーケットの中では、日銀がどんなオペをするのか不安が高まっていますが、今の時点では、これ以上の、ガイドラインというか、日銀のオペに対する考えを伝えることは難しいということでしょうか。』

良い質問。

『(答) 先程のお話と重複を避けるように申し上げると、私自身は、金融市場調節方針を示すことによって政策の方向性を示す一方で、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すための十分なスキルと手段を、現場は有しているという判断に基づいて、現場のオペレーションデスクに実際のオペレーションの運営を委ねるということで良いのではないかと思っています。』

無理無体な命令を現場に与えて置いて「十分なスキルと手段を有している」という辺りに牟田口廉也の香りが漂って参りますが。

『段々難しくなるのではないかとの意見や議論があることも認識していますが、これについては、技術論になりますが、一般的に、日本銀行の国債買入れ残高が段々と増加するのに伴って、国債の需給が一段と引き締まるとすれば、他の条件が一定との条件下ではありますが、日銀のオペレーションの効果はそれだけ大きくなる筋合いだと私は思っています。』

それは本格的な金利上昇圧力(今回のようなのと違う)時にどうなんでしょうかね。

『そうしたもとで、長期金利のコントロールの方法としては、若干繰り返しになりますが、通常の国債買入れについては、買入れ額やタイミング、頻度、これを国債の需給環境、市場動向を踏まえて実務的にオペレーションデスクが決定していくことが良いのだと思います。もちろんその際には、金利の水準だけではなく、金利の変化のスピードやモメンタム、あるいはその背景にある要因なども勘案しながら、イールドカーブ全体として、金融市場調節方針と整合的にカーブが形成されるようにオペ運営を行っていけば良いと思っています。その際には、特定の金利水準やレンジを念頭に置いていることはないと思います。』

おうどう見ても特定の水準意識してるし、だいたいからして水準、スピード、モメンタム、背景要因とか言ってるけど、じゃあ今日の変更の理由はこの4要素のうちどれ(または複数)なんだとか説明できないだろという事で、まあこのようなことは細々キャッチーな言い方をするのではなく「総合判断ということにつきます」とした方がまだマシだと思う。どうせYCCの理論的バックボーンって少なくともオペレーションに落とすレベルでの精緻な物ではないんですから。

『それから、補助手段としては、指値オペや 10 年まで期間を延長した固定金利の共通担保オペ、これらを臨機応変に活用していくことが考えられます。以上のような対応によって、長期金利をコントロールすること、今の枠組みのもとで長期金利をコントロールしていくことは、十分に可能であると私は考えています。』

現場の皆さんジンギスカン作戦はまだまだ続くし撤退命令も出ませんから頑張ってくださいませ(同情)。


でもって最後の質疑がこれなのだが・・・・・・・・・・・・

『(問) 先程から、「最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促す」という発言がありますが、現在の金利は適切な水準にあるのでしょうか。』

『(答) 繰り返しになりますが、今の経済・物価・金融情勢を踏まえると、現在の短期が−0.1%程度、長期金利の 10 年物が「ゼロ%程度」と、このもとで形成されている現在のイールドカーブは適切なものだと認識しています。』

ってそのカーブ9月から随分変わっているんですが、というようなゴリゴリツッコミを本当は実施して欲しかったですが、質疑応答はここで終わっているのだ、残念無念。





2017/02/10

お題「30年入札通過/中曽副総裁高知金懇よりほんの少々だけ」

これわwwww
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-taxes-idJPKBN15O2NE
Business | 2017年 02月 10日 04:24 JST
トランプ米大統領、税めぐり「驚くべき」提案発表へ

だいたいこういうので「驚くべき」なのはその出来栄えがうんこであるというのが経験的には良くあるんじゃよ、という死亡フラグ感が漂うのですがさてどうなるやら。

しかしこのせいでまーた米国10年2.4%近くに戻っているというのも何とも。

○30年国債入札後反転で今回の流れは一段落かとも思うのですが・・・・・・・

ということで先々週水曜日に起きた「中期輪番スキップ事件」から始まったどこからどう見ても「日銀の自業自得な債券市場炎上騒動」ですが、当初は天ぷら火災に水をぶっかけて大延焼するわ大延焼して債券市場以外の皆様の大注目を集めるわと大変に香ばしい展開を経ていよいよ一段落、というつもりだったのですが本日の米国長期債動向の影響次第ではもう少しなんでしょうかねえ、よー知らんけどな。

・30年国債は事前のトークがドン引きだったので結果は下値不安軽減で良いんじゃないの

ほいな。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170209.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 2兆3,390億円
(2)募入決定額 7,232億円
(3)募入最低価格 92円50銭(募入最高利回り)(0.920%)
(4)募入最低価格における案分比率 19.9288%
(5)募入平均価格 92円77銭(募入平均利回り)(0.907%)

つーことで、前場引け時点では先物独歩高で30年とか引けの0.905%とか堂々のオファーサイドだった筈。まあテール1毛3糸だしビットサイドの向こう側だしなので低調は低調なのですけれども、元々がもっとあばばばばーな入札になった時に日銀は止めに掛かるでしょうか的な弱気トークが途中までは絶賛展開されていた(なお入札超直前は知らんので勘弁)ですし、一応大荒れシナリオとして入札ダダ滑りの地獄セカンダリーに日銀はどう出ますねん10年止めるのは分かったけど超長期をドウスルドウスルという奴でしたので、まあそこまでの最悪が参加者の頭の隅にあった筈なので、そこからみれば「ちょっと弱かった」程度の入札なのでまあこんなもんでしょと。

でまあその後何がどうなってそうなっているのかは知らんですけど、円債村ではそもそも日銀の爆買いで玉無し芳一となっております、というのは基本的な部分としてありますので、金利上昇している時に落ちるナイフを掴みに行く人は中々いなくても、一旦落ち着いたとみると(水準とか割高英安とか当然ありますよ)安いんじゃないのと思えば買いも来るという所なんですかねえ、よー知らんけど。


ということでまたまたロイターさん
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FU2CL
Markets | 2017年 02月 9日 15:12 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が大幅続伸、超長期ゾーンに押し目買い

『<15:10> 国債先物が大幅続伸、超長期ゾーンに押し目買い

長期国債先物は大幅続伸。前日の海外市場で、トランプ米政権の政策懸念や欧州情勢の不透明感などから、安全資産の米債が強含みとなったことを受け買いが先行。さらに先物の限月交代に絡む買い戻し圧力が加わって、一時149円99銭と1月31日以来の水準に上昇した。30年債入札を前にした調整が入る場面もあったが、総じて堅調に推移した。現物債では、超長期ゾーンの金利が低下基調になった。市場で不安視されていた30年債入札を波乱なくこなしたことで、安心感から押し目買いが入った。長期ゾーンも小じっかり。中期ゾーンは高安まちまち。』(上記URL先より)

ここもと短国買入の減額によってちょっと目を疑う水準にあった短国の水準がようやくちったあ見れる水準まで調整してきているので、その辺の調整を受けて超短いゾーンが小甘くなっていますが、終わってみれば超長期復活したので前場は先物独歩高っぽかったけどフラットニング(ただし7-10はスティープ)と相成りました。

2/9

40年9:1.025%(-3.5)
30年53:0.870%(-3.5)
20年159:0.680%(-3.5)
10年345:0.080%(-1.0)
5年130:▲0.100%(-1.0)
2年373:▲0.210%(0.0)

ということで一応「懸念されていた30年入札も無事に通過し」という話になりましたが、まあ今回の場合は米国金利の低下とか欧州金利の低下(つーかリスクオフムードというか)もあってまあ本格的な買いという水準にはちと足りないですけど、そうは言っても別に大した材料も無い(材料は日銀のオペを巡るドタバタだけでしたから)のにここまで売って来ましたのでということなんでしょうかねえ、でまあ今日落ち着くかなと思ったら米債6毛甘というのをどう評価して良いのかがワカランチ会長ではあります。


・「止め」は頑張ってやるけれども「積極的な金利押し下げ」は期待しない方が良いと思うぞ

ということで本日は超長期と何かのオペが入る訳ですが、(そんなことは無いと思うけど)寄りから海外金利上昇を受けて5毛甘とかでスタートするなら別ですが、まあ普通に始まって迎えるんでしたら別に金利を押し下げます的な超長期輪番増額とかやらんでも済みそうですし、何ぼ何でも長期輪番の4連発とかも要らんような気がするが、寄ってみないと良く分からないのでまー外野は眺めてニヤニヤするというもんでしょう。

いやまあ米国受けてまた金利上昇アタックナンバーワンとかやるんだったら止め輪番(長期をどう見ても玉そろそろ枯渇するんじゃネーノという状況下でまさかの4回目とか、超長期の増額とか)が入るのかも知れませんが、何も日銀が自分で金利押し下げ介入みたいな買入をバランスシートの絶賛拡大を伴いながら行う必然性もその必要もない(淡々と予定通りにオペ入れたら市中が玉無し芳一でレートが流れて金利がド下がりするケースは別モノとして考えるべき)と思うのですよ。

まあ昨日の朝までの状況だと30年入札がダダ滑りしたら金利上昇アタックあばばばばーで債券市場世紀末救世主伝説ヒャッハーというリスク認識は強くあったと思うので、やれ10年輪番7回実施だ超長期輪番増額だ指値だというようなトークも飛んでおりましたが、まあ今日普通に淡々とオペ実施して市場が淡々と消化、となりますと中期輪番スキップ以来の日銀自業自得阿鼻叫喚相場の第1ラウンドは終了で、次にもうちょっと強めの金利上昇ネタが飛んできたときに今回の防衛線をどうするのかというアタックはまた飛び出す(その位のネタが飛んできたとき、という場合ですよ)とかそんな感じっすかねえ。

何かここで「積極的な金利押し下げ」期待みたいなトークが出てきたらさすがにそれはお前ちょっと違うんじゃネーノとは思います。落ち着いて来たんですからオペの方も淡々と実施して一旦はボラを落ち着かせるのが重要で、ここで金利押し下げオペみたいなのを実施すると今後は逆側のボラが上がってしまうので、それは何らかの拍子にまた金利上昇向きのボラ発生として降りかかってきて、結局オペ運営が日々煉獄状態になると思うの。

・・・・などと偉そうに言ってたら金利押し下げオペみたいなのが飛び出したらゴメンやで。


・なお短国入札は3Mも金利上昇

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170209.htm

(3)募入最低価格 100円04銭7厘5毛(募入最高利回り)(-0.1904%)
(4)募入最低価格における案分比率 19.5705%
(5)募入平均価格 100円05銭3厘1毛(募入平均利回り)(-0.2128%)

まあこんなもんでっしゃろという感じで引けは▲20bpヒゲ位だったと思いますが、元々短国に関しては発行が減っているのに日銀の買入ストック残高が増えすぎて、国内勢にとって誰得債券と化していましたので、まあせめて▲10〜▲20位で推移してくれおと申し上げたい所ではございますな。なお▲10より甘くなれば超過準備(のマクロ加算超過)ペナルティよりマシなのでどうせそこまでしか行かんわという安易な発想をしておりますけどね。


○中曽副総裁講演だが何かさっきみた文言があるwww(超一部のみがネタになる)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170209a1.pdf


・見通し関係は展望レポートの通りでどうでも良いので金融政策から

途中を全部飛ばして『4.日本銀行の金融政策運営』から参ります。

『もう1つの要素は、「オーバーシュート型コミットメント」です。これは、「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」という、強力なコミットメントです。』

という話なんですがね。

『先ほどご説明したように、わが国では、予想物価上昇率について「適合的な期待形成」の要素が強いことを踏まえれば、予想物価上昇率を2%まで引き上げ、その水準でアンカーするためには、人々が2%を超える物価上昇を実際に経験することが重要であると考えています。こうしたコミットメントにより、「物価安定の目標」の実現に向けた日本銀行の強い姿勢を改めて示すことで、2%の実現に対する人々の信認を高め、予想物価上昇率をより強力に引き上げていくことを狙いとしています。』

という説明なのですが、そもそも適合的な期待形成の方が圧倒的に強いという状態ですがな、って話をしていて、QQE当初の「MB拡大で期待を引き上げ」はどこに逝きましたというか、置物リフレ理論結局全然当初目論見外してるじゃんという反省を執行部にはして頂きたいのですが、それはそれとしてこの説明だと、「適合的な期待形成をアンカーするために実際の物価上昇2%が必要」という話になっていまして、いやそれは分かったのだが、当初って2%行かせるためにはフィリップスカーブの上方シフトが必要で、そうじゃないのならば需給ギャップが+6%とか突拍子もない吹かし方しないと2%って行かないんですけど、という説明だった筈。

でもって別にフィリップスカーブが上方シフトした訳でもなく、スティープした訳でもないという状況の中で、オーバーシュートコミットメントは分かったが、そもそもどうやって2%に届くか、というパスについての説得力が非常に弱いのではないか、と毎度思う。


『先行きの金融政策運営については、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すという観点から、毎回の金融政策決定会合において、「金融市場調節方針」を決定します。』

だったら議事の中で適切なイールドカーブの水準がどうなっているのかという話があるかと言えば、たぶん佐藤さんと木内さんと思われるツッコミらしきものはあるものの、議論のようなものが発生している訳でもないし、大体からして展望レポート全文の方は漫然と「前々回、前回、今回のMPM初日の引けイールドカーブ」が何の注釈も無く出ているだけということで、それだけ偉そうなことを言うなら「2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブ」とは何ぞやというのをきちんとしたカーブ図(幅がある、というなら別にファンチャートっぽいような絵柄で出して頂いても一向に構いませんが)を出してみろやゴルァ!と小一時間問い詰めたい訳ですが、何せ雨宮理事がついこのまえ「それは大きな課題です(キリッ)」とか言っている時点でもう何だかという所ではあります。

でまあ平時だったらこういうのスルーされますが、金利が上がるにしても下がるにしても、何らかの方向性を持って動いた時に、この「最も適切と考えられるイールドカーブ」が示されることもなく、そもそも根拠としてのガイダンスも何も無いという素敵な状況の中でお前は何をコントロールしているんだ、となって相場が荒れるというのが今回の状況ですし、しかも今回なんか単に中期の輪番スキップという自業自得で生じたもので、外部環境からオラオラオラと売りに来た訳ではないという状況なのにこの有様なんですから、米国利上げ回数の見方が長期的に変化するとか、日本の物価が思いのほか強くなってくるとか、もっと力強い売り材料出た時に防御陣地あっさり攻略されるぜよと申し上げたい。


『この点、市場の一部には、海外金利が上昇していることを受けて、日本銀行が、近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方もあるようです。』

これ展望レポートの主な意見にもありましたので、あれは中曽さんの作品なのが分かった。

でもって近い将来が何時の話なのか知らんが、すくなくとも海外金利だけで日銀が利上げするとか予想しているのはさすがに見た記憶が無い(あったらゴメンやでだけどそんな程度で利上げというのは基本的にあり得ないのでそういうレポートは読む価値が無いと思うよ)のですが、「今ゼロとかの物価ですが、これがホイホイ上昇してきて0%台後半とかになって1%が展望できるような状況で、米国も無事に出口政策が進行している、という時に10年を0%で止めるのはさすがに無理があるんでネーノ」という意味での利上げ論というのはあると思うし、そういう事に対してのお答えをして欲しいですわな。

とは言いましても、まあ今そういう話をしたら無駄に混乱するだけなので別にそういう答えをする必要も殊更無いともアタクシも思いますので、別にそれはそれで良いのですが、何かこういう極端な論に対して「お答えします」みたいな説明って、置物リフレ一派のが得意技としている藁人形論法みたいで見ていてあまり美しくないし、中曽さんも置物論法の聞きすぎで置物脳が侵食しているのかと思うと悲しいです。

『しかしながら、「展望レポート」でも示したように、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているものの、力強さを欠いており、その実現にはなお距離があります。経済・物価見通しについては、海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って、引き続き下振れリスクが大きいと考えられます。こうした状況を踏まえると、現在の局面においては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが、何よりも重要であると考えています。』

だったら何で中期輪番減額したかと小一時間。



○その他メモ

・メモメモその1

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170209a.htm/
分析データ「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の公表系列・公表日程の変更

だそうです。


・メモメモその2

中曽さんの某社会見ヘッドラインを見ていて今回あれ??と思ったのですが、日本文のヘッドラインの方は割と釣りっぽい「経済物価情勢が好転した時に金利が上がっても引き締めではない(とか何とかいう趣旨)」のが上がっていました(ただし記事クレジットの記者名を見た所で「また○○の釣りヘッドラインか」とでもなったのか反応していなかったように見えますが)。

でもって英文ヘッドラインをみたらもっと穏当なのになっていて、いつもなら英文でもっと釣りを打って来るのにどうした事ぞと思って記事クレジットみたら別の方になっている、という事案を発見しましたのでお暇な方はご確認ください。なおどこの某社かは皆様お察しの通り。



2017/02/09

お題「さて30年国債入札/1月会合主な意見とな」

欧州リスクオフってもはや定番ネタですなあマッタクモウ。

○いざ30年国債入札へ

・3打席連続長期輪番で10年カレントに重砲装備のトーチカ構築

昨日の輪番オファー

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170208.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2017年2月10日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,200 2017年2月10日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年2月10日
国債買入(物価連動債) 250 2017年2月10日

・・・・・・・・・・・うーんこの。

昨日申し上げたように物国輪番は頭鉄板裏目無しという奴ですが、他に入ったのが中期と長期という内容。でもって中期輪番は当初予定通りの4000+4200で実施になりまして、これは本来月曜に入ってくる見込みだったものなので違和感は全く無いのですが、長期輪番実施というのがうーんこのという感じで。

いやまあ昨日申し上げたように、何か謎のやる気元気いわきを示すのであれば3打席連続長期輪番オペというのはあるかもねえという見通しはあったと思いますので、予想する方もべき論的にどうなのというのは見解が分かれるにしても、実施する可能性そのものはあるなあ位の構えだったかなと。

つーことで日銀のやる気を感じて債券先物はオペオファー通知後に10銭少々上昇するという展開を示したものの、翌日(つまり今日)に30年入札のある超長期は先物6銭高で5糸甘オファー1毛甘ビットとか中々素敵な気配になっておりまして、月曜の輪番もそうですけれども、何かここへきて「イールドカーブ全体を何となくざっくりと防衛」というのではなく、「10年10bpの辺りに重砲装備のトーチカを構築して陣地防御するけど後は特に防衛の強化はしませんですぞな」という感じを示しているような動きになっているので、圧倒的な火力を避けて弾幕の薄い所でパルチザンが遊撃戦を展開中の巻。


オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170208.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 10,552 4,002 0.001 0.003 99.1
国債買入(残存期間3年超5年以下) 11,179 4,204 -0.002 -0.001 70.2
国債買入(残存期間5年超10年以下) 13,179 4,510 -0.004 -0.003 81.6
国債買入(物価連動債) 1,071 251 -0.110 -0.168 100.0

中期と物国は敢えてスルーしまして長期の方ですが、応札13179億円ってまだ応札あるじゃんという風情ですし、平均4糸甘足切3糸甘だと何かぱっとしない(ビットサイド位なので)結果となりまして、その上6M入札が・・・・・・・・・・・


・6M入札が滑りましたがそもそも6Mというのは・・・・・・・・・・

6か月短国入札結果が12:35に出るのですけれども、

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170208.htm

(3)募入最低価格 100円09銭2厘(募入最高利回り)(-0.1853%)
(4)募入最低価格における案分比率 58.3396%
(5)募入平均価格 100円11銭1厘(募入平均利回り)(-0.2235%)

ということで前場引けの時点では▲20台の所に気配があった(あまり当てにならない場合も有る気配とはいえ)ので、アベレージは確かに▲20台のビット水準っぽい所でしたが、足切が6Mモノにしては盛大に流れて▲10台後半まで突っ込むの巻。

まあ何ですな、6Mというのは古老に言わせますとニーズのあまり無い(期間が中途半端なのと発行が月1で週1の3Mに対して使い勝手が悪い)物件ではあったのですが、時代が変わりまして日銀様による短国お買い上げショーが毎週のように行われるようになりますと、絶好の日銀持ち込み玉になってしまいまして、特に日銀の買入がバカスカ短国レートを押し下げるようなストックまで拡大した所では、もはや日銀ががっつり成行で買ってくれるので日銀銘柄っぽくなってしまうわ、この人値段水準どうでも良く買ってくれるからそういう銘柄は強くなるわとなりますな。

ただし、これって要するに「一般の投資家の買いニーズを日銀が蹴散らしている状態」であり、「一般の投資家が買える水準を大きく上回る水準まで日銀が買い上げることによって買入の安定消化が進んでいるという状態」でもあるので、YCC始めてMB目標はすっかりなくなった(長期国債80兆円はメド文言として残っているが、MB80兆円と言っている訳ではない)のでここぞとばかりしらっと減額モードに入っているのですよ。

でまあそうなると日銀買入で無理やり持ちあげている分はどうしても剥落していく傾向が出るのは短国買入減らしたら致し方ない、というよりは市場正常化に向けて大変に結構な事になると思いますので(個人の感想です)別にここが少々コケても(どうせ▲10に近くなって着たら買いが来るでしょ、よー知らんけど)本質的には問題ないというか、元々が押し下げられ過ぎなのですけど・・・・・・・・・・・・


・ということで拠点防御はしているものの

まあ何ですな、昨日の場合は6Mの短国が滑ったということで後場2年が▲0.205%(+1.5)とかやっておりまして、全般的に中期もパッとしないですし、超長期はそらまあ翌日が入札なんですから当たり前ですがコンセッション(というほどコンセッションしていないが)モードと来ますと、10年輪番やる気元気いわきと言いましても他の全部の年限無視してヒャッハーと買い上げるような威勢の良い展開にはなってくれませんですし、しかも本日は30年国債入札。

念のため昨日の引け

2/8

40年9:1.060%(+0.5)
30年53:0.905%(+0.5)
20年159:0.715%(0.0)
10年345:0.090%(-0.5)
5年130:▲0.090%(0.0)
2年373:▲0.210%(+1.0)

となっていましてまあそんなに動いてないのですが、良く良く考えたら3打席連続長期輪番(その間に指値まで行っているので3打数5安打位の勢いですな^^)とかやっていて、長期の買入強化を明確に示したというのに5糸しか金利がサガランチ会長とか、ついこの前まで100億2年限の買入を前倒しで実施しただけでウギャーと踏み合戦になった超長期(あれは入札前日だからというのが正しいけど)輪番のアレと比べてどんだけ金利押し下げ効果が無いのかと大変に悲しい思いを深くするものであります。

まーまーそうは言いましても、別に日銀は金利をぐいぐい押し下げようとして買入を行っている訳ではなくて、金利が適度な緩和度合いにあるように、金利水準の無駄な上昇に対して介入を行う、というスタンスでやっております(ように見えます)ので、確かに10年金利の防衛陣地が完成したのですが、戦線の他の部分は別に手当を強化した訳ではないですな。

でもってこれまではそうは言いましても日銀の買入があるからヘイコラとしていた円債村の村民(多くの村民が逃散、あるいは出稼ぎに出たまま帰ってこない、などの事例が次々と報告されていますが)が「どうもこの占領軍って全戦線維持とか言ってるけどできないのではないか」と思いだして占領軍の制圧力に対する疑問が発生しだしますと、そらまあ無理繰り押さえつけていた分への反発圧力はでますよねというのは毎度申し上げている通り。


・30年入札とその後の超長期輪番のスタンスはどうなるのでしょうかね

てな訳で占領軍の制圧力がどうなのよ、というよりも放置プレイっぽい感じになっている(つーて淡々と買入は入っていますけど)超長期30年の入札を本日は迎えるの巻となっていますが、まー水準も単利で90bp乗ってきたし、何ぼ何でもこの入札は先週末のドタバタ位から皆で気にしていた案件ですので、普通はこういう場合にはそんなに悲惨な事は起きないのですが、問題はどこまで準備ができているかという位で、何せ日銀がどんなタマ飛ばしてくるか分からない(それこそ前場にヒャッハーヒャッハーとかコンセッション叩き料理やっていたらいきなり指値打ち込まれて王大人が出てきて死亡確認とか言われるプレイだってアリエールな訳ですし)中でどの程度のコンセッションが出来ているのかという辺りでしょう。

まあつーて皆で警戒している入札はだいたい何とかなる(それが本当にズル剥け脱線入札になった場合はまさにあばばばばーになるのですが)としたものですが、10年はバカスカ止めようという姿勢を示すものの、その他については知らんがな的な印象を与える日銀オペがどうしてくるのか(なお海外もあの調子ですから、そもそもコケもしないで順調な入札になったら別に日銀が特攻してくる必要もなくなるけど)、特に超長期相場が日銀のスタンスを試しに行くような動きになった場合にその挑発に乗るか乗らないか、というのが暫くの注目でしょうね。


・しかしこれ10年買入を入れまくっているのだが今月の帳尻や如何に

そもそも指値で通常オペの1.5倍少々の買入を行ってしまっていますし、今月は結局4500億円の買入でスーッと行くしか無さそうになってきたので、前月対比で400×6+7239=9639億円の買入を行っている(つまり通常が4100×6なので24600+9639=36239億円のお買い上げ)という事で、これ残りの帳尻どうするんでしょ。いややる気満々札割れ辞さずで7回目まで入れてバンバン買うってのも考えられますが、金利を押し下げる買入をするという趣旨では無かった気もしますし、そうなると益々オペの整合性が取れなくなりますなあ。

しかしこの状況だと(もうちょっと金利下げ下げモードになっているなら別だが)帳尻で中期の輪番減らしたりするとそれはそれであまり上手くなさそうですし、大体からして長期7回実施の可能性はあっても最後の方に来るまで何回になるか分からんという仕組みになっているので、これまるでオペの先行きが読めない、という困った状態になっていまして、いやまあこれまでも良く分からんという面はあったのですが、ドタバタオペでそれに拍車が掛かっている感じですな。


まあ中期輪番のダマテンスキップで市場の反応を試そうと思ったんでしょうかねえとは思ったりもするのですが、もしそうならば結局このダマテンスキップで8200億円の買入を減らした側から10年の輪番がここまで1600億円の増額で指値オペが7239億円ですから、結局減らした以上に買入を行って依然として金利上昇圧力がという事で、一体全体なんだったのでしょうかねえという所です。


○1月会合主な意見ですが

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2017/opi170131.pdf

・物価見通しはもっと威勢の良い意見を与党の皆さんは書くべきだと思うの(棒読み)

『(物価)』の所から。

『消費者物価の前年比は、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれ、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、見通し期間の終盤である 2018 年度頃になる可能性が高い。』

これはまあ公式丸写し的な見解。

『今後、資源価格による物価押し下げ圧力が剥落すること、需給ギャップが引き締まっていくこと等により、物価上昇率はプラスに転じていく。ただし、インフレ期待の形成は適合的であり、物価上昇率が高まっていくには暫く時間がかかるとみられる。』

この後は野党審議委員の皆さんのコメントが入るのですが、与党の2番手のコメントが何かパッとしない内容でして、おまいら「金融政策で期待を引き上げて2年で2%」じゃなかったのかよと小一時間問い詰めたいですし、金融政策で期待が上がる系の威勢の良いコメントになっていないのは弱気感を漂わせますの。

『予想物価上昇率が適合的に決まる部分が大きいとの総括的検証の結果を踏まえると、見通し期間中に期待がジャンプすることは想定しにくい。』

野党キタコレ。

『経済情勢の改善にもかかわらず、基調的な消費者物価が前月比でほぼ横ばい傾向を続けているのは期待外れである 。展望レポートの見通し期間中、消費者物価上昇率は2%を大きく下回り続けると予想している。』

ということで何か与党2野党2の筈が与党その2の見解が弱いからダメダメ感が漂う出来上がりになっております。大丈夫でしょうかねえ。


・YCCに関する話を見ると色々と怪しいというか悲しいものを感じるのですが・・・・・・・・・・

『U.金融政策運営に関する意見』から。

与党の皆様奮闘の巻。

『日本は2%の物価安定目標からほど遠い位置にあるので、米国の金利が上がっても、短期金利を▲0.1%に、10 年物国債金利を0%程度に維持する形で、イールドカーブ・コントロールを続けるべきである。』

『わが国の経済・物価情勢は着実に改善しているが、海外経済を巡る不確実性等も踏まえると、早急な政策変更には慎重であるべきである。当面は、現行の枠組みの下で、粘り強くその効果を見守ることが肝要である。』

『経済の好循環が緩やかに続いている現況下において、息長く腰を据えた脱デフレ完遂の取組みに資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。』

『米国長期金利の上昇などを受けて、日本銀行が長期金利の操作目標を引き上げるのではないかとの憶測も聞かれるが、2%の物価安定目標にはまだ距離があるため、現在の方針を堅持することが何より重要である。』

もちろん米国金利上昇などの外部環境の好転が金利上昇圧力に繋がっているのも当然なのですが、米国金利上昇だから金利上昇圧力なのか、というと国内の金利上昇圧力が掛かりだしたり、足もとで更にヒャッハーとなっているのって、まあ直接的には先々週の中期輪番スキップですけれども、「日銀のYCC政策における実運用がどうなっているのか、どういうロジックでやっているのか」という事が分からなくなってきた(話が違うじゃないかというオペレーションが続いているし、展望レポート全文でイールドカーブ比較の中から9月のカーブが抜けて、9月の時点で言っていた「現状程度のイールドカーブを維持する為に必要な措置を行う用意として指値を用意しました」という現状程度のイールドカーブは何処に逝ったの?的なこととかの総合的なお話)というのがあると思うので、米金利上昇がどうのこうのじゃなくてもっと本質的な問題で金利上昇圧力が掛かっているの。

でもってその本質的なのは何かと言えば、その辺の政策建付けが訳分からなくなってきている中で、これまで何だかかんだと無理繰り押さえつけていた金利が、そのグリッドを行うロジックとか手法とかが訳分からなくなってきて、日銀の政策運営のところで?????が増えてしまった結果として発生しているリスクプレミアムのようなものによって金利上昇圧力になっている、
ということだと思うのね。

だから、「利上げなどが無いということを」みたいな話を言われましても、それは市場での話と多分話が食い違っていると思うの。むしろどういうロジックでこの10年0%というのを打ち込んでいるのか、イールドカーブコントロールというけどどういうイールドカーブを意識しているのか、ナローなバンドでペッグするのかより幅を持たせるのか、とかそういう辺りの整理が必要なのであって、「2%になるまで0%を維持する(キリッ)」じゃあ何の解決にもならんと思います。


・オペの評価の中に一人馬鹿がおる

とアタクシの愚見解が長くなりましたがその続き。

『現行の金融政策の枠組みは所期の効果を発揮している。オペレーションの柔軟な調整等、その運用についても市場は冷静に受け止めている。』

お前は何を言ってるんだ????????????????12月会合の意見なら分かるけど1月31日だぜ。


・という馬鹿はさておいて他の見解を

『グローバルな市場の不透明感が高いもと、些細なことでレベル感は大きく変わり得るものであり、そうした時にイールドカーブのコントローラビリティに対する市場の疑念が高まりかねない。執行部に一定の裁量を持たせ、肌理細かな調節運営を引き続き行うことが重要である。』

こちらは前半はその通りなのだが後半が良く分からん。「些細なことでレベル感は大きく変わり得る」のだから、そこは「肌理細かな調節運営」ではなくて、そのレベル感の変化に対して一々細かくマネジメントするよりも市場の価格形成をある程度受容するざっくりとした調節運営を行う方が良いのだが、現に「引き続き」行っている「肌理細かな調節運営」の結果が今のざまな訳で。

『イールドカーブ・コントロールのもとでは、国債買入れオペの金額やタイミング、回数などは実務的に決定され、日々のオペ運営によって先行きの政策スタンスを示すことはないことを、改めてはっきりと説明していくことが重要である。』

そらそうなのだが実際にやっている事が・・・・・・・・・・・・・・

『日本銀行は、短期金利だけでなく、長期金利についても、 2%の物価安定目標を安定的に実現するために操作を行っている。このため、物価が低位で推移するもとで、米国長期金利が大幅に上昇すると、長期金利目標を実現するための金利操作は一層困難度合いが高まる。この点からも、イールドカーブ・コントロールの枠組みを見直すメリットは大きい。資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを秩序だって段階的に低下させていくことが、政策の持続性と市場の安定性を高める。』

木内さんキタコレだがテーパリングあり気だとさすがに今の状況で政策には落とせないと思う。

『10 年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は適度にスティープであるべきと思う。また、理論的には、国債買入れの進捗とともにストック効果から金利低下圧力がかかるので、金融調節方針と整合的なイールドカーブ実現のためには、市場の反応を慎重に探りつつ減額を模索していけばよい。経済・物価情勢の改善を先取りして長期金利が上昇する場合、市場追随で政策を調整していくのがプルーデントな政策運営と思う。なお、短国買入れについては、市場動向を慎重に見極めつつ一段の減額を模索すべきである。』

佐藤さん短国買入までしらっと言及するとはマニアですなマニア。


・オオトリがこれまた不思議な見解

『マイナス金利には、住宅投資の拡大、貸出の増加、企業の低金利での社債の発行などの効果があったが、世界経済の変調で世界的に金利が低下したため、円高、株安を招き、輸出、生産が低迷するなど、プラスの効果を打ち消してしまった。その後、世界経済の回復とともに、円安、株高に振れていることから、マイナス金利のプラスの効果が世界経済の変調で打ち消されてしまったと解釈できる。


何か物凄くややこしい言い方をしていますが、この説明だと「マイナス金利政策の効果は海外経済の循環的な(だってこの間別にショックがあった訳じゃないでしょ)動き如きできっちり相殺されてしまう程度のモノしか無い」と言っているだけの話で、それは即ち「この程度の効果しかない政策なのに副作用は色々と発生しているのだがそれで良いのか」という話になると思うのだが・・・・・・・・・・・・・





2017/02/08

お題「市場世間話雑感/12月会合議事要旨だがYCCの部分が今になると微妙に微妙な仕上がりになっている」

このニュースヘッドラインが出た時にドル円が反応したのはワロタ。
http://jp.reuters.com/article/trump-invites-abe-to-florida-resort-idJPKBN15M2BS
World | 2017年 02月 8日 04:56 JST
米大統領、安倍首相をフロリダ州のリゾートに招待=ホワイトハウス

トランプと仲良し→為替でごちゃごちゃ言われないので円高にならない、だそうで。

○30年入札が明日な訳ですが(という備忘録兼オペ世間話)

・大物の入札も無くて輪番が無いと平和ですな(白目)

ということで昨日は物国の入札がありましたので普通にしていると輪番オペが無いという日でござりまして、しかも海外が謎の米金利低下円高で戻ってきた(雇用統計を受けて利上げ期待がどうのこうのとか後講釈があったが雇用統計は金曜の話なので月曜に1日遅れて反応するとか良く分からん)ので、そらまあ債券市場も確りするから輪番ホレホレの催促も起きないというものです。

・・・・・・・とは言いましても朝方はちょっと堅調になりそうな感じもあったのですが、まー何か動かないのか動けないのか知らんですが、海外がフォローだったのに金利がヒャッハーと下がる元気も無くて、おまけに物国入札はちょっと弱くて(BEIの前日引けからみたら7つ程度弱い)、物国そのものは相場に大きな影響を与えるロットではないと思うのですが、物国の落札が出た後は超長期が一段上値重い(なお物国は10年物)の巻という状況になっていました。

つーことでカレントの引け

2/7

40年9:1.055%(0.0)
30年53:0.900%(0.0)
20年159:0.715%(0.0)
10年345:0.095%(-0.5)
5年130:▲0.090%(-0.5)
2年373:▲0.220%(-0.5)

ということで、20年カレント近辺から後ろは大体引け変わらずで引かせていまして、海外がこれだけフォローなのに金利全然下がらんというのはどういう事やという非常に遺憾な状況になっておりますが、そらまあ明日30年国債の入札がありまして、茲許の日銀オペを巡るバッタバタ状態に加え、金曜月曜で示されたのが「日銀はイールドカーブ全体をどうにかするというよりは10年の0.1%辺りの所を防衛するという点の防御になっていて、超長期の金利上昇知らんがなとなっている」と解釈するのが妥当と見られるオペ運営になっているので、そらまあ水準だいぶ調整したとは言え30年入札は警戒されるので、米金利低下に円高だぜヒャッハーと買い祭りにするのはちと無理ということですかねえ、よー知らんが。


・今日の輪番で変なことをしてこないようにして落ち着かせないと・・・・・・・・・・

でまあ問題は明日の30年入札で、あとはその前の本日の輪番というお話になるのでしょうが、今日の輪番は物国は鉄板としまして、中期か長期か超長期のどれが入るかというお話になるのでしょうが、長期は3日6日と2営業日連続の掟破り買入&3日の指値オペ(しかも7000億円超のお買い上げ)というのをやっておりますので、ここで入れると定例の輪番で3回連続(+指値1回)という月初から何やってるんですか状態。超長期は翌日に30年入札があって、まあ確かに入札に不安がががががというのはあるのですが、そうは言いましても引けの単利ベースですが90bpになってきていまして、もう一発金利が上がるとかなーり最終投資家のポートに沈んでくれるレベルが見えてくるので、こんな所で輪番入れて邪魔すんなという所でしょうなあ状態。中期に関しては月曜に中期超長期だと思っていたら中期が長期に入れ替わっていた、というのもありましたので、ここで中期を打たないと本格的に「長期の輪番と指値で増えた分の買入部分の帳尻の為にまた1回スキップして今月も5回になるのでは」という思惑が盛り上がって来ると思いますので、まあ中期という感じでしょう。

とまあここまでが普通の読みだと思う(普通と違ってたらゴメンナサイ)のですが、長期輪番とか超長期輪番とかをアピールとか言って打ち込んでくると、長期の場合は月初実質1週で3本とかになるので、うっかりすると「指値まで打ち込んで1.5回分以上余計に買っている上にこれだと輪番7回あるで」位の話になってくれそうですが、ただまあ10年輪番ばかりをアピールすると10年は止まるのですが月曜の引けのように10年カレントだけ堅調というイールドカーブが無駄に歪んで誰得展開になりそうですが、まあ物国の他に2本打つ(別に1本で良いが)なら超長期より長期ですかねえ。

超長期の場合は入札を警戒して、という話ではあるのですが、それはまたまた胆力の無さを露呈しましたなという話になりますし、入札前に輪番とかプライマリーディーラーに対して嫌がらせ以外の何物でもない(個人の感想です)と思うので、そういう掟破りみたいなのを乱発しますと「目先の入札の所では金利上昇が抑制されるけれどもその先に禍根を大きくする」という最近の日銀輪番オペの得意技の泥沼スパイラルに歯止めが掛からんという状態になるので、「長期だけではなくて超長期の金利上昇も監視していますよ」アピールを30年国債入札の前日に打ち込むのは筋悪いのですが、入札前のコンセッションにビビったら何をしでかすのか分からんという恐怖はありますなあという所で。


まあコンセンサスがどうのこうのと偉そうに語るほどの者でもございませんが、まあそういう小者のアタクシから見ましても中期輪番のスキップ以降の動きって、日銀がわざわざ自分で輪番サプライズを起こして、それによって発生した悪影響を何とかしようとして更にサプライズを起こしてしまう、という悪循環に陥っていると思う次第で、「市場との対話」とか完全に崩壊した状況になっておりまして、何か何ぼでもたとえ話が思いつきますが、ラブラブ恋人が急に無茶苦茶こじれてしまったような状態になって、もう何をしてもムキーっとなってしまう状態になっている相手のどこがどうムキーっとなっているのかが分からなくて、良かれと思ってフォローしようとして更に相手のカンに触って一段と怒らせるみたいなお洒落な展開になっているのが今の市場との対話という所、と考えると「まあ一旦頭を冷やして落ち着け」という話になりますし、そういう時は良かれと思って余計な事をする、というのも却って怒りの火にガソリンをぶち込むような惨状が待っているのではないか、と斯様思うのですがどうでしょうかねえ。

という雑談メモでした。さてさて虫干しネタの成敗をしないと。


○12月決定会合議事要旨から

ほいな
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g161220.pdf

・トランプ政権に向けた(この時はまだ就任前)議論だが何故ここに高圧経済ネタが??

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』から少々。

『米国新政権のもとで生じ得る世界経済への影響について、委員は、新政権の経済政策にはまだ不透明な部分が多いこともあり、今後、注視していく必要があるとの認識を共有した。』

そらそうよ。

『何人かの委員は、最近、米国の長期金利の上昇とドル高が進むもとで、新興国では通貨や株価が下落したことを指摘し、先行き新興国を巡る資金フローには注意を要すると述べた。何人かの委員は、ドル建て債務が多い新興国にとっては、こうした市場の動きが景気回復の重石となり得るため、影響をよく見極めていく必要があると指摘した。』

ほほうと思いますが、その割には1月展望レポートでは海外経済の見通しサックリと上げてきましたな。

『一方、ある委員は、積極的な需要増加策を通じて短期的な成長率を高めることで、中長期的な生産性が回復するとの考え方─いわゆる「高圧経済論」─に対する見方は、米国の有識者の間でも分かれていると指摘した。そのうえで、この委員は、やや長い目でみて、米国経済の成長率が一段と上振れていく可能性も念頭におく必要があるとの見方を示した。』

この決定会合って「高圧経済?そんな事言いましたっけウフフフフ」というFOMCイエレン会見の後なのですが何でこうなる??????????????

『何人かの委員は、企業のサプライチェーンがグローバルに連環しているもとで、新政権の通商政策とそれが世界経済に与え得る影響に留意する必要があると述べた。 』

まあこれは普通ですな。ということで高圧経済云々の話の所がイエレン議長が盛大に「I never said that I favor running a high pressure economy.」(12月14日のFOMC後会見より)という話をした後だというのに出てくるのかがイマイチ不明。


・国内経済について少々

『以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

つーことなんですが、毎度の出る出る詐欺の設備投資。

『設備投資について、委員は、企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善する中で、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。先行きの設備投資について、委員は、製造業は既往の海外経済の減速や円高の影響が残るものの、全体としては、高水準の企業収益などを背景として、緩やかな増加基調を続けるとの見方を共有した。』

という見通しはいつも通りなのですが何時まで経っても成長ドライバーになりませんのう。

『ある委員は、12 月短観では、企業収益が引き続き高水準で推移していることが確認されたほか、これを背景に、設備投資についても総じてしっかりとした計画が維持されているとの認識を示した。別の一人の委員は、改定されたGDP統計をみると、新製品を生み出すための企業の研究開発投資意欲は高い水準でしっかりと維持されているとの認識を示した。ある委員は、このところの円安・株高傾向も、設備投資の増勢を支えていくとの見方を示した。』

という指摘になっているのですが、なんちゅうかこの今までもこのような話をしているけれども全然設備投資がコケはしないけど強くも無いというのが続くのって何なんでしょうね。


雇用について。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識を共有した。ある委員は、パート労働者の名目賃金の前年比が高まっていることを指摘し、今後の動向を注視したいと述べた。先行きの雇用者所得について、委員は、労働需給の引き締まりが続き、企業収益が総じて高水準で推移するもとで、緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。複数の委員は、個人消費や物価への波及の観点を含め、来年の春闘の動きを注目していると述べた。』

ということで春闘って何でしたっけ位の盛り上がりの無さをこれからどういう風に評価していくのかが注目されますが、昨年までのパターンだと「春闘に期待」とか言ってたのにいつの間にかその話がフェードアウトするという忍法無かった事にするの巻をやっておりましたな。

まあ経済に関してはこのくらいで金融政策の方に。


・適合的な期待形成に期待とな

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』から。

『以上のような金融経済情勢についての認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。』

ということですが、

『金融政策運営にあたって、委員は、「経済・物価・金融情勢を踏まえて、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持しているか」が重要な判断基準であることを確認した。』

毎度のお話。

『そのうえで、大方の委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されており、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

『何人かの委員は、労働需給の引き締まりに伴う賃金上昇圧力や個人消費の改善に加え、原油価格の上昇や円安の進行など、先行きの物価上昇を支える要因は増えてきているとの認識を示した。何人かの委員は、実際の物価上昇率が高まれば、適合的なメカニズムを通じて、予想物価上昇率の形成にもプラスの影響を及ぼすことが期待できると指摘した。そのうえで、このうち一人の委員は、現状、企業の価格設定行動にはいま一つ積極化の動きがみられていないため、この点は引き続き注視していく必要があると付け加えた。この間、別の一人の委員は、最近の円安は、短期的に物価を押し上げたとしても、基調的な物価上昇率を高めるものではないとの見方を示した。』

ということで、どう見ても最後の人の「最近の円安は、短期的に物価を押し上げたとしても、基調的な物価上昇率を高めるものではないとの見方を示した。」というのが仰せの通りという感じですが、この議論を見ると「物価が神風でとりあえず上がってくれているうちに何とか適合的な期待形成に変化が起きて欲しい」という事なのでしょうが、賃上げモードだった2014年ですら結局のところは適合的な期待形成が持続的にワークしたとも思えない中でどうなんでしょうかねえ。


・YCC政策に関連してちょっとアレな点を(議事要旨ネタと若干ずれるが)入れて置きましょう

『「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について、多くの委員は、米国を中心に世界的に長期金利が上昇するもとでも、わが国では、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されており、当初の想定どおり機能しているとの認識を示した。』

ということなんですが・・・・・・・・・・・・

直近の展望レポート
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1701b.pdf

前回の展望レポート
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610b.pdf

直近のレポートだと図表43(ファイルの80枚目)、前回のレポートだと図表44(ファイルの80枚目)になりますが、その上の方の『(1)イールドカーブ』の表を見ますと、「前々回、前回、直近」の国債イールドカーブを並べた表になっておりまして、それはそれで良いのですけれども、そうなると9月の総括検証時の声明文脚注で『今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』とあったのに、直近の展望レポートでの前々回決定会合って10月の会合になっていまして、えーっとすいません9月の決定会合で指値オペを導入した背景となっていた「現状程度の水準」はどこに逝ったのでしょうかと小一時間問い詰めたい訳ですよね(というネタを展望レポートネタで投下すべきなのだが全文ネタはまだやっていない(というか多分やらない)のでここで)。

しかし12月会合での議論は・・・・・・・・・・

『複数の委員は、長短金利を操作する現在の政策のもとでは、経済情勢が好転すると、金融緩和効果が増幅され、2%に向けたモメンタムを一段と強める方向に作用すると指摘した。一人の委員は、国債買入れ額を操作目標とする以前の枠組みに比べ、直接的に最も適切な金利水準を示す現在の枠組みの方が、人々にとって金融緩和の効果が分かりやすいとの見方を示した。』

という話になっていまして、一方で現実のイールドカーブの方はホイホイと変化している訳ですよ。確かに10年の金利は「ゼロ%程度」で変えてはいませんが、金融緩和度合いって別に短期金利と10年金利の2点だけで決まるものじゃないでしょうって話な訳ですよ。

まあこれは12月20日時点での話で、この前に超長期輪番前倒しの刑とかがあったのはあったのですが、とりあえず今のような惨状にはなっていないというのは勿論あるのですけれども、逆に今の状況ってのが政策委員会的にどうなのよと小一時間問い詰めたい(与党の方に)という話になっているように思えるわけでございまして、いやまあ何というかYCCの建付けとかオペ運営とか一度落ち着いて整理した方がよいんじゃないですかねえ。

『別のある委員は、オーバーシュート型コミットメントが持つ効果は、物価上昇率が高まるにつれて人々により強く意識されるようになるため、次第に強まっていくとの見方を示した。そのうえで、多くの委員は、2%の「物価安定の目標」までなお距離がある中で、これをできるだけ早期に実現するためには、現在の政策枠組みと金融市場調節方針をしっかりと堅持し、強力な金融緩和を進めていくことが重要であるとの認識を示した。 』

というのはまあ良いとしまして、その後決定事項の話の後に・・・・・・・・・・

『この間、国債買入れの運営について、多くの委員は、金利の水準だけでなく、金利の変化のスピードやモメンタム、その背後にある要因なども勘案しながら、イールドカーブ全体として金融市場調節方針と整合的に形成されるよう行っていくことが重要であるとの認識を共有した。』

「イールドカーブ全体として」なのなら尚更さっきのツッコミをしたくなりますな。というかこの水準スピードモメンタム要因とか言ってるけどどう見ても目先の泥縄対応いや何でもないです。

『複数の委員は、市場では、「ゼロ%程度」との長期金利操作目標の上限・下限をそれぞれ+0.1%・−0.1%とする見方があることを指摘したうえで、そうした画一的な基準を設けることは適当ではないとの認識を示した。』

これは先日もネタにした通り。複数で2名は思い浮かびますが他の人がいるのかどうかが気になります。

『別のある委員は、現在の政策枠組みのもとで、政策委員会が適切な金融市場調節方針を決定し、そのもとで金融市場調節部署が市場動向を踏まえつつ柔軟に調節運営を行っていくためには、両者の間の密接なコミュニケーションがこれまでにも増して重要となっているとの認識を示した。』

コミュニケーションも蜂の頭もそもそも総裁がこういうオペレーションに興味を持っているとは思えないのにお前は何を言ってるんだとは思う(野党的な方がイヤミで言ってるのかも知れませんが)。


・いつもの反対意見ですが

ということでまあいつも通りの決定なのはご承知の通りとしまして、

『これに対し、複数の委員が異なる見解を述べた。ある委員は、イールドカーブ・コントロールのもとで国債買入れ額が先行き減少していくかどうかは不確実であるとして、金融政策運営においては、資産買入れ額を操作目標とし、その段階的引き下げを確実に図ることで、資産買入れの持続性と市場の安定性を高め、既往の緩和効果を確保していくべきであると主張した。』

これは木内さん。

『また、別の一人の委員は、現在の金融市場調節方針は適当でないとの自身の立場を述べたうえで、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状はもう少しスティープであってもよいほか、市場金利がわが国の経済・物価の改善見通しを映じて上昇する場合であれば、金融市場調節方針においてもそうした動きを追認していくことが適当であると述べた。そのうえで、この委員は、長期金利はもともと微細な調節に馴染まないため、アローアンスは特に上方向は広めにみておいてよいと付け加えた。』

ということでこれは佐藤さんですな。


まあ前回は兎も角として、次回の決定会合ではもうちょっとYCC運営に関する議論が出てしかるべきかなとは思います。




2017/02/07

お題「10年を止める姿勢を明確化したものの・・・・・・・(今日も輪番雑談でスイマセン)」

これはどうしたあるね。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170207/k10010867011000.html
NY外為市場 円相場 一時 2か月ぶり111円台に値上がり
2月7日 2時25分

○何かこのところ輪番雑談ばっかりで申し訳ないのですが今日も輪番雑感ばっかり

小見出しが長いですかそうですか(−−;

・10年輪番を2営業日連続で投下するものの・・・・・・・・・・・

昨日は雇用統計の後の米債が微妙な出来栄えで帰ってきたことから微妙に強く始まったのですが、何せ市場が「日銀の姿勢を試してみましょう」モードになりつつある(というか既になっているのか)こともあってオペを前にほーれほれ(という程でもないが)と弱含みの巻で、おまけにずーっとそうなのですが超長期がヘロヘロの巻。

でもって昨日のオペオファーはこちら。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170206.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年2月8日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,900 2017年2月8日
国債買入(残存期間25年超) 1,100 2017年2月8日

金曜の輪番が1年以下と長期(増額のように見せかけたものの実は同額)だったので、2営業日連続は基本無いというケースだと中期超長期で入るのですが、昨日は長期をやや掟破り(まあ入るかもねとは思っていた人も多いようには見えますが)で実施して、(ここで減らしたらアホウにも程があるので減らさないのは当たり前だが)4500億円のままで打ち込んできました。

・・・・・・・・・・ということなのですが、超長期に関しても何気に金利が上昇傾向を続けていまして、

12/13
10年345:0.080%
20年158:0.645%
30年53:0.805%
40年9:0.945%

2/3
10年345:0.095%
20年159:0.685%(158は0.680%)
30年53:0.865%
40年9:1.010%

ってこれ12月13日というのは翌日に超長期入札の前日だというのに超長期輪番を打ち込んで入札準備していたマーケットメーカーを盛大に踏ませるというプレイを演じる直前の引値なのですが、ご覧のとおりで後ろの金利はその時に比べてホイホイと上昇するの巻という状態になっているのですが、10年金利のオラオラには配慮しましたよというオペ異例打ち込みを行いましたが超長期は依然として静観連絡船の構えという状態になっております。しかも中期の輪番がその分パスされているのもお洒落というものです。


・10年だけ止める姿勢を示したら超長期が・・・・・・・・・

毎度お馴染みロイターさんで恐縮ですが(ロイターの回し者ではない)、

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FR276
Markets | 2017年 02月 6日 15:08 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反落で引け、長期金利は0.100%に小幅上昇

『<15:05> 国債先物が反落で引け、長期金利は0.100%に小幅上昇

国債先物中心限月3月限は前営業日比21銭安の149円55銭と反落して引けた。朝方の買い一巡後は、日銀買い入れへの不透明感が意識されて軟化。日銀が午前に通告した国債買い入れで、市場の一部に増額期待があった超長期のオファー額が据え置かれると、一時下げ幅を広げた。午後に入ると、無難な日銀買い入れ結果を手掛かりに下げ渋る場面もあったが、引けにかけては超長期ゾーンに売りが出たのを受けて水準を切り下げた。現物市場は超長期ゾーンを中心に軟調。9日の30年債入札を控えて短期筋から調整売りが出た。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.100%に上昇。』(上記URL先より)

ということですが、そもそも金曜の所で超長期輪番入れても良かったんじゃないかと思っていた所で、昨日の超長期輪番は超順当だと思ったのですが、ただまあ別に足元の金利水準に何か牽制がある訳でもないという状況。12月の超長期輪番増額と前倒しの時って掟破りは掟破りでしたけれども、まあその時の10年も8bp水準まで来ていて、超長期入札が厳しいかなという風情で(本来はそこを放置して金利が上がった所で対処すればよかったと今でも思うけど)まあ超長期がコケて10年に波及するのが嫌だから入札前に止めに入った、という気持ち自体は分からんでもない(やり方に賛成はしないが)。

でですな、その理屈だったら今週は木曜に30年入札を控えていまして、しかも先般来の輪番大暴れの結果として「事前にポジション作って入札に備えるような事をすると予想外の輪番オペ一発で事前のポジションが死亡するリスクがあるから入札準備ができんがな」という事になってしまっている、という状況になっているという状況も踏まえると、30年の入札ってかなり緊張して迎えないといけなくて(米債が戻ったのはやや福音だけど)、それが10年金利への上昇圧力になりえる、とゆー風に考えるのが順当じゃないのと思います。

つまりですよ、日銀オペのドタバタによってオペ運営に関する信認が絶賛低下中(のような気がするのだが気のせいだったら正直スマンカッタ)という中ですと、10年の金利をコントロールしようとした場合に、10年だけは止めるけど後は知らんがな、みたいな動きをしておりますと、結局他の年限の金利に上昇圧力が掛かり、そちらの影響によって10年のコントロールが難しくなる、という話になると思うの。たぶん10年を10bp位のところで止めておけば自ずと10年からみたスプレッドで考えて止まり所があるだろう、っていうような事を考えていると思いますし、まあ何も無いならそういうのは成り立つには成り立つのでしょうが、イールドカーブ全体に金利上昇圧力が掛かる(しかし冷静に考えて別に何かあった訳でもないのに何でこんなに金利上昇圧力が掛かるんでしょうね、ということは大変に興味深いお題であって、まあこの次の所でアタクシなりの愚意見は書いてみるが、正直良く分からんし頭の体操および市場とはみたいなことを考えるのには良い素材)中で10年だけ止めて止まりきるのかというのは実に怪しいというのが現状なのだと思います。

#まあ米金利が下がって帰ってきたからまた今日は別の話になるのかも知れんけど

ということで引けのカーブは

2/6
2年373:▲0.220%(+1.0)
5年130:▲0.085%(+1.5)
10年345:0.100%(+0.5)
20年159:0.715%(+3.0)
30年53:0.900%(+3.5)
40年9:1.055%(+4.5)

てな訳で「10年カレントは10bpで止まっている感じだけど他の年限に売り圧力」というこの美しい(かどうか知らんが)引けになっておりまして、いやはや何ともというか超長期どうするんじゃこれという流れになっておりますの。

ついでに中期に関しても輪番無かったから金利が上がったというのもあると思いますが、より根本的には先月の輪番スキップや長期輪番増額→すかさず次回予定を戻す(結果的には戻さなかったけれども)という動きから、輪番って基本的にあまり増やしたくない(減額にどれだけの熱意があるのかは見解分かれると思うけどあまり増やしたくないんだろうなあという所までは市場コンセンサスの意識としてあるんじゃネーノ。よー知らんけどな)というのが見えてしまっているので、長期の輪番が結局増額で走っていて、更に指値で中期輪番1回分近く打ち込まれてしまっている、という状況の中ですと、帳尻で中期輪番をまたスキップするんじゃないかとか(ここだけは指値オペ実施前の水準よりも金利低いですからねえ、特に2年)、そっちに意識が行ってしまいますから、そういうのもあって10年カレント以外が売り圧力みたいになっている感が。


・まあしかし何でこうなってしまったんでしょうねえ

などと書いていたら米国の状況が変わってすっかりヒャッハーになって一瞬の悪夢で済んでしまうかも知れませんけれども、まあ一応今の状況についてどうしてこうなったと考えてみるが、たぶん色々と異論があると思う。

まあ何ですな、元々が日銀のオペを前提にして色々と動いていたのに、イールドカーブをコントロールするため、ということで飛び道具(最初は中期の指値)を飛ばして行ったのが、やはり使い所が早すぎたということはあるのかなと思います。つまり、飛び道具飛ばせばその時には効果出るのですけれども、「掟破りの飛び道具(そもそも指値の前に輪番増額という話だった筈なのに中期輪番の増額の前にいきなり指値が飛んできた)」を出すと相場形成の前提となっている(というのも本来宜しくない話ですがそうなっていたので仕方ない)中でホイホイと飛ばすというのはやはり悪手であったのでしょうな。

でまあ悪手とかいうと戦術にだけ問題のような言い方になるのですが、もっとそもそも論を掘り下げて行くと、YCCという政策そのものの建付けが問題含みになっていた訳で、「10年0%」もそうですし、それよりも「望ましいイールドカーブ水準。あるいは中立的なイールドカーブ水準(均衡イールドカーブ)」に関するきちんとした考え方があるかの如き政策建付け(YCCの当初の説明からすると、幅はあるものの、何らかの中立的な金利水準みたいなものがあって、それに対して経済物価金融情勢を考えると適切な緩和度合いというのがある(緩和をすればするほど良いという物ではない)ので、その緩和度合いを適切な程度に保つことによって緩和的な政策を継続する、というものだった筈)になっていて、9月の総括検証&YCC導入直後には「概ね現状程度のイールドカーブを維持」みたいな話をしていた訳ですが、結局の所YCCの元となる中立カーブなりその類のものと、適切な緩和度合いというものに対して何らかの定量的なバックボーンが示されないままだから、「YCCで目指しているイールドカーブって何なの?」となって来る訳で、その辺がさっぱり分からんからオペが何考えて運営されているのかも謎になるし(直近は「他は知らんが10年は抑える」になっているけど)という事で、まあ訳が分からん状態になっているという問題が根底にあるから、輪番の胆力がどうのこうのだけ言ってるのもフェアじゃないなあと実は思っているのですよ。

まー金利が上がっているのは勿論外部要因色々あるけれども、本質的には日銀輪番オペジャンキー相場になっていたのが、最近は急にその逆みたいになって、オペジャンキー状態はオペジャンキー状態なのですけれども、今度はタマがどこからどう飛んで来るか分からんという、輪番オペが偶に発生する巨大不確定要素になりえるとなってしまって(特にPDに言えるのは)ポジションを取り難くなった(ちょっと前まではオペ前提にポジション運営されていた、というのもまあアレですけど)ので、そうなると事前スケジュールのある中長期国債入札が市場のデルタを一気に変える要因になるので、入札の度に一気に捌ききれないポジション分だけロングのリスクが残るので、そのリスクに対応するために金利が上がる(つまり最終投資家のポートに沈んだまま出て来なくなるような金利水準まで金利が上がれば入札の方は捌けるようになるけれども、そこまで金利が上がっている間に発生するMTM損失大丈夫かという話があるので事は一筋縄ではいかない)という話になると思いまする。


でもって戦術的には今回は初期消火に失敗している(そもそも火を点けたのが中期輪番スキップだから初期消火失敗するのは順当なのですが)というか、燃え上がる天ぷら鍋に慌てて水を掛けて更に爆発みたいな大変に素敵な状態になっておりまして実に困ったもんです。圧倒的な砲撃力があるのに、砲弾を妙にケチっているうちにパルチザンがドンドン発生して、段々強力な火力を投入しないと納まらなくなっているという状態で、昨日の引けなんぞはイールドカーブ全線(ただし日銀のトーチカ陣地のある10年カレントは除く)にパルチザンが発生しているという風情でございまして、10年10bpというトーチカ陣地を作ってしまったものは今更しょうがないので、まあ精々トーチカ陣地を守るべく10年砲撃もそうなのですが、陣地は孤立しては成り立たないので火力をバンバン使っていく(=金利維持の為に国債買入ペースが盛大に拡大するのはやむなしと割り切ってバンバン買入を入れる)ことによって、いったんパルチザンを制圧しにいかないとちょっと厳しいんじゃないですかね、という感じで思うのですよ。

でもって一度パルチザンを黙らせてからですが、そうは言ってもそもそも全戦線を維持するのって無理がある(=政策の建付けが色々と無理がある)ので、落ち着いたところで戦線を整理して、必要な所は縮小するなりして(=政策の建付けを整理しなおしてもうちょっと「こういうロジックでこういう運営をする」というのを分かりやすくする、今はこれまでやった政策を全部盛りトッピングしているから一つ一つのパーツは分かるのだが全体の整合性が訳分からんことになっている)、3月会合に向けて色々と整理するしか無いと思いますけどどうでしょうかねえ。何せ今はこれまで日銀のオペをバックボーンにして国債入札とかこなしていた(しつこいようだがそれが良い話なのかというのは別問題)ある意味協力者の皆さんが裏切られた感になってそれこそパルチザン側になってしまうリスクが高まっているんですから。


まーべき論で言えばこんなにちょこちょこ動く必要は(大体からして元々の9月の輪番減額から始まっているのだが)無かったですよねという事ですが、覆水盆に返らず社蓄盆に帰らずということですので、どう収拾するかを考えたら中途半端な事をするのではなくて、大火力で圧倒するか一旦全部ゲロゲロマーライオンさせてスッキリさせるかのどっちかのような気がしてきたのですけれども、正直どうなのかはまだアタクシも良く分かっていないし、まあ何をやっても色々と面倒な事は起こると思う。




○てな訳で他のネタがすっかりお留守になっていますが(涙)

毎日ああでもないこうでもないと取り留めもなく書き連ねていて誠に申し訳ないのだが、まあ壮大な実験の更に壮大な実験というYCC政策については、段々こうやってオペレーショナルな問題なのか建付けの問題なのかが出てきているというのは、その実験で村の飯の種が無くなってみたり火炎放射器で盛大に焼かれてみたりと散々な目に遭っているという事実を抜きにして考えると非常に興味深い事案である、とは思いますので、茲許の話はうだうだと重複しているような気がしますが書いてみて後で見直そうと思っております。

てなわけで他のネタががっつりお留守になっていますが、そちらはこれから追々成敗していきますけれども、何でああ米国の連銀高官って利上げやる気元気いわきになっているでしょうかねえ???

#雑談ばかりでどうもすいません








2017/02/06

お題「日銀オペが盛大にドタバタの金曜日でした」

あんなに物足りなかった節分の豆の年齢分食べが最近すっかり苦行になっている皆様本日もおはようございます!

○というとで日銀エンターテイメントの1日でしたのでまずは現象面を

毎度おなじみの如くロイターさんのニュースで恐縮ですが。

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FO1HE
Markets | 2017年 02月 3日 15:21 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発、長期金利0.090%に低下 日銀指し値オペを好感

『<08:52> 国債先物は小反発スタート、日銀の出方見守る

国債先物中心限月3月限は前営業日比4銭高の149円72銭と小反発して寄り付いた。市場では「反発スタートとなったが、基本的に日銀の出方を見守る動きになっている。きょうの実施が確実視されている残存5年超10年以下を対象にした日銀オペの結果や指し値オペに対する警戒感もあるようだ」(国内証券)という。』(上記URL先より)

ということではじまりはじまり〜♪


・10時10分の前に議事要旨が間の悪い事にでていましたな

まあ兎に角オペまでは様子見なのですが、寄りはちょっと高かったですけれども、そらまあオペ待ちで徐々に上値重くして来るなあという感じではありましたが、金曜は12月議事要旨がでてまして、その中で・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g161220.pdf

(日銀決定会合議事要旨ネタは別途行います)

10ページ目の所にこんなのがありましてですな。

『この間、国債買入れの運営について、多くの委員は、金利の水準だけでなく、金利の変化のスピードやモメンタム、その背後にある要因なども勘案しながら、イールドカーブ全体として金融市場調節方針と整合的に形成されるよう行っていくことが重要であるとの認識を共有した。』(上記12月決定会合議事要旨より、以下同様)

という例によって例のごとくの話なのですが、この「水準」「スピード」「モメンタム」「背後にある要因」というのがキーワードみたいに扱われているのですが、じゃあ前週実施した中期輪番のスキップは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳ですけれども、改めてぐぬぬと思いますね。まあそれはそれとして次の部分。

『複数の委員は、市場では、「ゼロ%程度」との長期金利操作目標の上限・下限をそれぞれ+0.1%・−0.1%とする見方があることを指摘したうえで、そうした画一的な基準を設けることは適当ではないとの認識を示した。』

これ佐藤さんや木内さんが指摘しそうなのは分かるのですが、他に誰かいるかどうかですな、と思いつつこのオラオラ日銀10bp止める気あるのかヘイヘイオペやってみろよーとなっている所で出るのがお洒落としか言いようがない。

『別のある委員は、現在の政策枠組みのもとで、政策委員会が適切な金融市場調節方針を決定し、そのもとで金融市場調節部署が市場動向を踏まえつつ柔軟に調節運営を行っていくためには、両者の間の密接なコミュニケーションがこれまでにも増して重要となっているとの認識を示した。』

これはまたwwwという感じで、実際にはこの後のオペがあばばばばーとなってしまいまして、債券市場は無制限大パルチザン祭り大会になってしまうんでしょうなあという結果になった訳でございます。なお、あまりにもタイミングが良いのでうっかりしそうですが、これ12月の議事要旨ですからね。



・ということで運命の10時10分(短国ネタもあるのだがとりあえずは別途)

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170203.htm
国債買入(残存期間1年以下) 700 2017年2月7日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年2月7日

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)(;゚д゚)

組み合わせは平常運転扱いの短期と長期で、額については月末に最終回4500→4100に下げてきた分を戻す4500億だけというオファーと相成りました。

まあ何ですな、金曜にアタクシもちょっとだけ指摘致しましたが、今回って「減らした分を戻しただけ」というオペですと非常に中途半端な増額という結果になる訳でして、止める気があるならドカンと増額する(切りの良い所で5000でも6000でも、てか5000でも微妙だった気が)というのが必要だったというのは市場のコンセンサスだったようでで、債券市場は盛大に急落するのでした。

#為替市場が4500で喜んで円売りしてたら円債急落を見て慌てて円買いになるとか中々微笑ましい展開

ということでロイターさんから(URL再掲)
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FO1HE

『<10:32> 日銀が国債買入通告、長期増額でも10年債一時0.150%に急上昇

日銀は午前10時10分、国債買い入れを通告した。対象は「残存1年以下」(買入予定額700億円)、「残存5年超10年以下」(同4500億円)の2本。日銀が1月31日に公表していた「残存5年超10年以下」の2月初回の買入予定額は4100億円だったが、日銀は400億円増額の4500億円をオファーした。しかし、国債先物が急落、10年最長期国債利回り(長期金利)は昨年1月29日以来の0.150%まで急上昇した。市場では「400億円の増額だけでは物足りないと市場は見たようだ。また、一部で観測があった超長期ゾーンのオファーがなかったことも影響しているもよう」(国内証券)とみている。超長期ゾーンの金利にも強い上昇圧力がかかっている。』(上記URL先より、以下同様)

やるならもっとドカンと実施すれば良いのに、この程度の出し惜しみをするもんだからそらもう「日銀止める気あるのかよゴルアアアアアア!!!!」という相場展開になる訳で、ついでに超長期も弱くなっていくという展開にもなるというのがアチャーというお話。

まさに見事なまでの「戦力の逐次投入」でして、4500じゃあ止まらないという市場のコンセンサスの中できっちりと4500が入ってくる辺りがもう見事で、どうせならもっと増やすか増やさないかをして欲しかった所ですし、アタクシは金曜に申し上げていたように超長期もこの辺でしらっと入れて置くともう1回打つ余地があるような空砲チックな事もできたかもとは思ったのですが。


まあ何ですな、4500億円じゃあ止まらんというのに申し訳のように4500にしか増額してこない(というか8.5bpの時に4500億円にしたのだから11bpの時に4500億円というのは増額ですらないという事ですから売られているというのも勿論ある)というのは何とも中途半端でございまして、「金利上昇は牽制したいけれども実弾はあまり打ちたくない」という姿勢が打ち出されました、というのが1つと、超長期の金利上昇もドンドン放置プレイとなるとそれ10年金利に上昇圧力掛かって来るんだが大丈夫なのかというような見方にもなるでしょう。

中途半端に増額する位なら4100億円のまましらっとオペを打っておいて「10bp?ウフフ?何か言いましたっけ?」とかオトボケになられるとか、そこで金利がある程度以上上昇したら後場に止めオペをする、というのであれば、この場合は「10bpを明示的に止める訳でもないが、急上昇には対応する」というスタンスを示すという事になるんだよなあとか思いつつ、どうすんだよこの中途半端なオペという事で前場の引けを迎えるのでありました。

またまたロイターさんで誠に申し訳ございませんが。

『<11:15> 国債先物は大幅続落、超長期債利回り大幅上昇

国債先物は大幅続落で午前の取引を終えた。日銀オペの動向を意識しながら取引が始まり、午前10時10分の国債買い入れオペの通告を受け相場は急落した。日銀が1月31日に公表していた「残存5年超10年以下」の2月初回の買入予定額は4100億円だったが、今回のオペでは400億円増額の4500億円のオファーだった。しかし、増額規模が物足りないと判断した向きが売り圧力を強めた。』(上記URL先ロイターニュースより)

そら売るわな。

『現物債は軒並み金利に強い上昇圧力がかかった。先物同様の理由に加え、一部で観測があった超長期ゾーンのオファーが日銀オペでなかったことが影響した。20年債利回りは昨年2月18日以来の0.725%、30年債利回りは昨年2月25日以来の0.900%、40年債利回りは昨年2月24日以来の1.050%に上昇した。長期国債先物中心限月3月限の前引けは、前営業日比23銭安の149円45銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比3.5bp上昇の0.140%。昨年1月29日以来の0.150%まで急上昇する場面があった。』(上記URL先ロイターニュースより)

ということで瞬間10年15bpまで叩いてましたがさすがにそこは買いも来るじゃろというか日銀のオペおかわりを警戒するでしょうし、輪番結果も見たいでしょうからということでとりあえず13〜14bp辺りになっていたようで。


・ということで後場は日銀のおかわりを試す展開になる訳ですが・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170203.htm
国債買入(残存期間1年以下) 4,279 700 0.089 0.124 3.6
国債買入(残存期間5年超10年以下) 16,403 4,504 0.032 0.035 61.3

短い所はどうせ2月15日償還の2年債とか打ち込みに来るのがいるので大甘になるのは仕様でしてこれはどうでも良いのですが、長期の方は平均3毛5糸甘で足切3毛2糸甘ですから14bp位の所からガッツリ札が入っている(10年カレント換算)となっていまして、まーあまりぱっとしない結果という事になって後場の寄りになる訳ですよ。

でまあ後場は14時の午後オペオファータイムに向けてまたオラオラオラとやるのか、と思わせる先物寄り前にまーた0.15%ヒットとかお洒落な事を業者間でやってるわと思ったら12時半にオペ通知のベンダーヘッドラインが流れてウヒョーの巻。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170203.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2017年2月7日

(注4) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)の固定利回較差は、0.006%。この結果、10年利付国債345回の買入利回りは、0.110%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

何と12時半とな!!!ということですが、オペのオファータイムに関しましては、

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/opetime.htm/
オペタイムテーブル(注1)

下の方の脚注に

『(注1)これは一般的なタイムテーブルであり、上記とは異なるタイムテーブルでオペを実施することがあります。また、オファーバック時刻は目処であり、記載している時刻と前後することがあります。』

ってありますし、変なシグナルみたいなオペとかやるときに変な時間にオペ実施とかありましたので、確かにまあ先日付タイムテーブルでは午後は2時なのですが、2時までのオラオラが来る前にいきなり奇襲攻撃キター!という奴でして、そら金利下がるわとなったのですが・・・・・・・・・・・


またまたロイターさんからですいません。

『<12:49> 日銀が「指し値オペ」通告、長期金利が0.105%に急低下

日銀は午後0時30分に国債の買入(「指し値オペ」、固定利回り/残存期間5年超10年以下)に踏み切った。オファー額は無制限、2月7日スタート、固定利回格差は、 0.006%。この結果、10年利付国債345回の買入利回りは、0.110%となる。指し値オペの実施について日銀は「長期金利が急激に上昇していることを踏まえた。10年物国債の操作目標をゼロ%とする調節方針をしっかりと実現する」としている。指し値オペ通告を受け国債先物が反発、昨年1月29日以来の0.150%まで急上昇する場面があった10年最長期国債利回り(長期金利)は足元で0.105%に低下している。』(先程のロイター記事URL先より)

てな訳で急低下は急低下なのですが、金利の低下って瞬間芸に留まってしまいまして、まあ指値オペの指値水準よりはそら金利が低い(当たり前)ですけれども、別にこれがあったからと言ってヒャッハーとなって金利が下がるという程でもありません。

そら冷静に考えればそうなる訳で、こういう動きを見てシロウトの何とかスト方面から「日銀の断固たる姿勢が示された」みたいなコメントなり相場後講釈なりが出ていたりして誠に見苦しいというか情けないのですが、(後で簡単に悪態じゃなかったアタクシなりの解説論評をしますが)一定以上の古参兵だったら今回の日銀の動きって「だったら何で前場にやらない」という話ですし、ついでに言えば「午後2時まで待って打ち込む胆力も無かったのね」という話でもあって、これは「前場の4500億円は失敗でした」というのと「2時まで待つ胆力もありません」という事をわざわざ示しているの巻なのが何ともという話になる訳で、そうなると「そらまあ今日は指値無制限入れるから止まるけど、日銀の長期金利市場介入ってこの調子でやっていって本当にコントロールできるのか??」という疑問まで起きてしまうような動きになっている訳ですよ。となると今日1日が止まるから「断固たる姿勢が示された」とか言っているのは見方が皮相的にも程がある訳で、普通の反応はそうならんじゃろ。

しかしこの12時半というオファーも胆力云々とは別問題で酷い話で、長期輪番を今しがた3.5甘平均で買っているのにその後の後場の先物が寄る前にいきなり0.6甘の指値無制限ビット入れるってそれ長期輪番入れた人(指値対象銘柄と被った場合は特に)モロに下で投げさせた後の騙し討ちみたいなオペになっている訳で、輪番入れた人たち踏んだり蹴ったりの巻となっているのも色々と禍根を残しそうな感じです。



ということで何か14時前後に嫌がらせのように11bpをわざわざBB手数料払って取引しているお洒落な人がいたりしましたがオペ結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170203.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 7,239 7,239

まあ新発だけじゃない筈(確かカレント3銘柄位じゃなかったっけ、日銀のサイトにちゃんと書いてないから良く分からん)なのですが、それにしても結構札が入った格好でして、中期輪番をこの前8200億円減額したのに、その後長期輪番を400億円×2回増額した挙句にこの固定オペが7200億円ですから、どういう背景があったのかは存じませんけれども、思い切って中期輪番スキップして国債買入の残高を落としてみようと思ったら金利が上がってしまい、しかもその後の火消しで初期消火しなかった(むしろ火を煽った)が為に減らした分の輪番がほぼ全部お買い上げとなっている所に爆笑の発作を禁じえないところであります。

で、もってその後もちょっと売られそうな感じの場面もありましたが、さすがに長い所に買いもあったようで引けに掛けては戻って来まして終了となったので一応金曜は止まった事になったのですが・・・・・・・・・


○今回のドタバタは「日銀の長期金利コントロール大丈夫か」と「どんな不意打ちがあるかわからん」という禍根を残す

・まあ今日は止まったが中期的に見てこれはアカン

まあ何ですな、さっきの方からちょこちょこ入れていますが、まず前場4500億円にしかしなかったというのが第一の悪手。やるならもっとドカンとやらないと行けないですし、やらないならやらないでそれは別の意味で評価ができる(金利上昇が最終的にはドカンと止められるけど皆さんどうします?と日銀が強く出ている感があるから)のですが、4500億円だと「申し訳程度にちょっと増やしてみました(そもそも前回の4500から見たら増額ですらないのだが予定が4100でしたからね、つーかだから4500億円キープで10年入札通過させればって言ったじゃんと思う)というのが見え見え。

さらに第二の悪手が指値オペを12時半に行ったことで、これは「今日の金利上昇は止まるけど後々色々と禍根を残す」という奴ですぞな。

つまり、さっきも申しあげたとおり、14時まで待たないでオペ実施ということは「14時までの金利上昇に耐える胆力がありません」というのをゲロっている事になりますし、しかも遠い所じゃなくて輪番の結果よりも全然強い所に指値入れてくるというのは「こんなに相場が売られるとは思ってませんでした」という4500億円をオファーした時に市場を読み間違えたという事をゲロっている訳ですよね。

しかも一応対応可能ということには元よりなっているので別に話としては有りなのですが、この程度の金利上昇ネタでいきなり大火力の指値実弾砲撃を奇襲で行う、という事をやってしまいますと、これはもう日銀のオペがどういうやりかたをしてくるのかというのでリスクでかすぎとなります。

でもってこれまた毎度申し上げておりますように、そんな掟破りの圧倒的な火力による奇襲の可能性、となりますと、そらもうマーケットメーカーとかポジションが倒れているのがリスクという事になりますので、この前の10年入札もちとその毛があったような気もせんでもないですが、国債入札に向けたポジション作りを困難にしますし、在庫もって走るにしてもリスクが大きいですし、ということで、入札がドッカンドッカン流れてしまうリスクというのを相当に拡大した(勿論ドッカンドッカン流れればそこで最終投資家の買いが入るからそこでは止まるけど、不調入札続いたら投資家目線だって変わってくるリスクがある)ということで、これ目先の金利は確かに止まったけど、何かの拍子に金利上昇ネタが飛んできたときに次の手はどうなるんでしょ、という事になる訳ですよ。

従って、これを「日銀が断固として止めたから云々」というのはちょっとナイーブにも程がある話ですし、大体からして他の年限どうなるんだという事でもあるので、まあそういう事ですよというのが今の所の所感である。



・色々と気になるポイントとか戦記物にたとえてみればとか

てな訳で雑談のネタは尽きないのですが、とりあえず「増やした後落ち着いたら買入を元に戻すの巻」に関してどうするのかが目先では話題になるでしょうな。つまり10年カレントとかこれ盛大に吸い上げられたと思うのですが、指値オペで7200億円とか通常の輪番の2回分近くが余計に入ってしまいましたので、この帳尻をどうするのか、ということで、長期輪番回数減らすとか輪番オファー減らすのかとか、それとも中期辺りで帳尻取ってくるのかとか、その辺は皆さん色々とネタにすると思います。

でまあ更に雑談をしますと、今回は一応止まった格好ではありますが、あのオペの打ち方と相場の反応を見ていると「10bpだったら断固として止める」というのを結構信用してきた向きってのも相当にあったと思うのですよ。でもって今回は一応止めたには止めたのですが、あまりにもドタバタやり過ぎで、この調子で今後大丈夫かと思わせてくれるやり方を見せられますと、圧倒的な火力で絶賛制圧中の占領軍に対して債券村の皆さんヘイコラしていたのですが、実はこの占領軍あまり上手くないんじゃネーノ、という話になりますとそらもう無制限パルチザン祭りが始まるわ占領軍の協力者も去っていくわという事になり兼ねない展開でして、戦記に例えるネタで色々とこじつけられますなあという感じですが、そういうのは本石町日記さんの所が得意そうなのでぜひよろしくお願いいたしますという意味不明の呼びかけでとりあえず時間も無いので本日は全部雑談でしたすいませんすいません。











2017/02/03

お題「またまたオペ雑談ですなあ」

さ あ も り あ が っ て ま い り ま し た ! ! ! !

○10年入札で早速牽制クレクレとな

・10年入札後に早速10bp明確に超えて金利上昇の場面登場とな

毎度のロイターさんで恐縮ですが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FN1FS
Markets | 2017年 02月 2日 15:23 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物続落、長期金利はマイナス金利導入以来の0.1%超に上昇

『<14:14> 長期金利が1カ月半ぶり0.100%、指し値オペにらみ思惑的な取引

10年最長期国債利回り(長期金利)が一時前日比1bp高い0.100%と16年12月16日以来、約1カ月半ぶりの水準に上昇した。市場筋によると、0.100%の水準で、午後1時56分ごろに10億円程度、午後2時10分ごろに数百億円程度の出合いがついたもよう。市場では、日銀の指し値オペ通告時間(午後2時)に合わせて、「短期筋の思惑的な取引が入った」(証券)との声が出ている。』

『<15:15> 国債先物続落、長期金利はマイナス金利導入以来の0.1%超に上昇

長期国債先物は続落。前場は前日の調整への反動から強含みで推移した。後場は日銀の国債買い入れオペに対する不透明感が残る状況で、10年債入札が市場想定より弱かったことから売り圧力が強まった。一時昨年12月19日以来となる149円56銭まで売り込まれた。現物債は午前の取引では小動きだったが、入札後の取引で一気に軟化。長期金利は先物同様の理由で金利に強い上昇圧力がかかり、一時0.115%で日銀のマイナス金利導入以来の高水準に達した。超長期・中期ゾーンも日銀オペへの不安心理を反映した売りに押されたとみられている。』(以上上記URL先より)

ということで昨日は10年国債入札があったのですが、前場は先物ちょっと上がったりちょっと下がったりしている中で8.5bp/9.0bpの気配で延々と推移していたという感じで、入札の方も8.5bp/9.0bpのレベルで迎えるといううーんこの微妙な水準というところ。

でもって落札結果が

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170202.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 7兆8,467億円
(2)募入決定額 2兆1,703億円
(3)募入最低価格 100円07銭(募入最高利回り)(0.092%)
(4)募入最低価格における案分比率 82.4440%
(5)募入平均価格 100円12銭(募入平均利回り)(0.087%)

ということで、事前の足切予想が9bpビットサイドの辺りになる9銭近辺だったので若干弱めという結果であったのですが、その後については上のURL先にありますロイターさんの市況解説にありますように、別に買われることもなく、一応オペ打ち込みタイムとして設定されている14時を前に10bpが出合いに行くという中々お洒落な展開となって、そらまあそんなので一々指値打っていたらこれから将来どうしますねんと思いますので指値とかねーわ(後でその雑談をします)と思う訳ですがその通りに日銀動かずの巻で、その後あららと言う感じで11.5bpまでやっていましたけれども引けに掛けてはさすがに戻って10.5bpで引かせるの巻。その間に超長期が一段と弱くなっていて10年1.5毛甘となっている側から超長期は20年で2甘だの30年で3甘だのやっているのでそっちもアチャーという感じではあるのですが。


何気にアレだったのは株式市場がどうも最後売られたのって金利が上昇したのに反応したという話になっているっぽい所で、確かにこの前(先週金曜)には10年輪番増やして為替市場が円安に反応したように見える動きがあったりしていましたし、日銀のYCCに関する個別のオペが単発ベースで(昨日の場合は何もしていませんが)他市場も興味を持つという展開になっているのが中々味わいがございます。


・ということで今日のオペは思い切り注目されてしまうの巻

まあそもそも昨日ネタにした総裁会見での話のように、「日々のオペレーションで将来の政策意図を示すことはない」のでして、そういう点からして「今日のオペが注目される」とかいう時点で如何なものかというお話なのですが、まあ注目されるようになってしまうようなマイクロマネジメントっぽいオペレーションをやっているのだから仕方ない。

つーことでですな、まあ米債も横だし株式為替もそんなにう動かないで戻って来ましたので、本日は外要因あまり関係なく円債市場のお家の事情でスタートという事になるでしょうから、とりあえずは10bpに掛かった水準からスタートする、という事になるんですかね(個人の感想です)。

でもって、本日は順当に考えると長期の輪番(あともう一つの年限は予想が分かれる所かね)が入るのですが、31日に公表された当初予定の4100億円というのに対して実際にどういうオペが打ち込まれるかが注目される、という大変に面白い展開になりました。

何せ先週金曜日は前日木曜1/26の10年カレントの引けが8.5bpの所で堂々の輪番400億円増額を実施した訳ですから、そこから「2bpも」金利が上昇して帰って来ている上にちょうど10年国債入札の直後で需給的にも10年にモノがあるという状況下において日銀は「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」と言っている訳ですから、そらもう今日は日銀がちゃんと「10年0%程度」の金融市場調節方針に対する姿勢をお見せするでしょうオラオラ日銀オペドカンとやらんかいヴォケというこの日銀の姿勢を試すモードになっております(とか何とか言ってたら寄りから何か要因があって金利さっくり低下するとオモロナイのですけれども)。


いやだから31日の時には長期輪番の予定額減額しないで4500にしておいて10年国債通過してから減らせば良いじゃんって私言いましたよねとは言いたくなりますが、まあこの間にトランプ砲とかあって、トランプ砲って実は円安誘導と金融政策運営をからめているからトランプ円安牽制砲撃が来ると円高になっても必ずしも金利低下ヒャッハーとならないで、緩和政策の修正を迫られてマズーという思惑になる、というまさにそのトランプ砲が益々怪しげになってきているというような要因がありますからこういうのは単に結果論であって、私言いましたよねとかドヤ顔するほどの物では無い(4100に戻してもこういう市場展開になっていなかったかも知れず、4100に戻して債券市場が平穏無事だったら減らした方が大勝利だったと思うし)とは思うのですが、まあ何か4100億に戻すの早かったなあという結果論is有るという感じではあります。

それは兎も角、まあ元々10年▲9bp近傍の金利低下の後で長期とか超長期の輪番を減額に掛かって来た上に、途中での指値オペとか超長期輪番増額前倒しとかもそうですし、直近の(中期輪番スキップの影響で金利上昇した後の火消しなのでただのマッチポンプですが)長期輪番増額に関しても、基本的には「10年0%程度が0%プラスマイナス10bp」というのを思いっきり意識されるようなマイクロマネジメントを行ってきただけに、そらもう今日の輪番で日銀がどういうスタンスを示して来るのかは注目されるのですが・・・・・・・・・・・・・・・・


これね、先ほども申しあげましたが、株式市場とかもしらっと注目しているみたいですし、この前の長期輪番増額のタイミングでいきなりドル円が動いた(本当に材料があれだったのかというと実情は良く分からんが)とか為替市場も反応するリスクがある、というのがまた悲劇というか喜劇でありまして、債券市場の内部的な話だけでオペをやって良いものかどうか、すなわち幾ら日銀サイドの方が「日々のオペレーションには先行き政策意図はありません」と言いましても、そんなの受け取る方が勝手に解釈してくるとか、それ以前の問題として「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」という0%程度というものの定義について市場が質問をしている、というのが今回の市場展開なだけに、そらまあ他市場の方も注目するでしょうし、為替なんかですと「米国は利上げモードだけども日本の金利はペッグされているようなもんだからそらもう日米金利差でウハウハよ」というストーリーになっているのですから、日銀のスタンスオラオラオラと言われるのはそら仕方ない所でもありますのでどうするんでしょうかねえ。


・というのに一々お答えするのはもっと将来の話とすべき、というべき論はあるものの・・・・・・・・・・

つーことで、何か先週水曜の中期輪番スキップ以来、日銀のオペで債券市場がドタバタして、そのドタバタに対処してオペをいじったらまたそれでドタバタしてというフィードバックループの挙句にこんなことになっている感が物凄くあるので実に嘆かわしいところではありますが、さて本日どうしますかということで大体以下こんなべき論ではあるもののという雑談でも。


べき論は長期4100億円(当初言ってた通り)で淡々とやって、まあ折角だから今日は長期と超長期で入れてくればと思うのですよ。

つまり、別に何か物凄い外部環境の変化があって金利が上がっているとか、何かアタックして金利が上がっているとかでもないですし、この程度の状況で一々買入を拡大していたら物価指数がプラテンしてきて市場の先行き物価見通しがもうちょっと強くなるとかなったら金利上昇圧力って一段と強くなるわけで、その時にどんだけ買う破目になるんだよとか考えると、いったん振り落としをして、腰の入った最終投資家の買いを持ってポジション整理しないと、ゲロゲロマーライオンの時に変なところでマーライオンを止めると碌な事にならんの法則(朝だというのにスイマセン)と同じ話ではないかと思うのですよねー(だからそもそも先週金曜の長期輪番拡大が悪手、つーかその前の中期輪番スキップが原因なので雉も鳴かずば撃たれまいとはよく言ったものです)。

勿論そのケースだと「10bpで止めるんじゃなかったんですかー」ということで一発売られるというリスクが高いのですが、売られるったってそこまでゲロゲロマーライオンになるのかねえという気がせんでもないとタカを括っている(個人の感想です)からというのもありますし、大体からして他市場から注目されてしまった以上、債券市場よりも他市場の反応の方が怖いから中々この選択肢を取るのは胆力を必要としますなあという感じです。


従って長期輪番増やして対応するんじゃネーノとは思うものの・・・・・・・・・

これね、31日の輪番予定額公表の前後では、「4100に減らしておいても将来金利が上がった時の増額含みだからヘーキヘーキ」ってな感じだったと思うのですが、いざこういう風になってみますと本当に4100→4500だけで止まるのかというと、これがまた止まらんのではないか的な意見も強いようでして、だからこそアタシャ4500キープの方がと思っていた訳ですけれども、まあ結果論ではあるものの、元々「増やした物をさっくり減らした」という所にもインパクトがあった所ではあったので、400増やして全部減らしたら次に同じことをするのに同じ額で済まないの巻となっているというのは味わいがあります。

いやね、400増やすところを800増やすとか、何だか知らんけど前回よりも多くしてインパクトを出せば姿勢を示したからとかいうことでとりあえず目先は安泰になるのかも知れませんが、こんなの誰が考えても分かりますように、そうやって止めたもののその後に外部要因でまたまた金利が上昇して10bpマークとなった時には更にプッシュしないと行けなくなる、というこの正にジャンキー相場になってしまって輪番クレクレの餓鬼が群がる蜘蛛の糸という大変に壮絶な光景が目に浮かんでくるので、目先は凌げてもどうなんでしょうかねえ、とは思います。まあ長期と超長期入れてどっちも増額とか色々と手はあるとは思いますが、超長期だけ増やすと10年却ってレラティブに売られる可能性があるようにも思えます、よー知らんけどな。

なお一番の悲劇あるいは喜劇は中途半端に増額したら金利止められなくてあばばばばーという展開でして、これが一番の間抜け展開になりますが、じゃあ幾ら入れたら止まるのかとか正直こんなのやってみないと分からない(大体からしてこれまでの実績(?)があるので今日増やしてもすかさず次回は元に戻る、という予想形成がすっかり出来上がっている(「次回もこの額で打ちます」とか間抜けなアナウンスでもすれば話は別だが)というのも止めようという観点からは辛いですね)ので、いずれにせよ結果論の世界ではありますな。ドキドキ。


ちなみに10年指値とかいうのも手としてはあるのですが、非常時でもなんでもないこのような時に指値打っていたらそれこそちゃんとした(??)金利上昇圧力が発生した時の調節手段が無くなってしまうでしょと思いますし、下手したらその指値水準まで売り込みに行くかもしれないので(その時点での金利よりも低い所で入れるという豪快なプレイをすれば話は別ですが、入札レベル並み以上の指値水準で買入を実施とかもはや何をやっているのか意味不明にも程がありますし)これまたそう簡単にはやるもんじゃないと思います。



・まあいずれにせよ色々なものが曖昧なままでやっているからこういう話になるというのはある

例えばですよ、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf

こいつは9月の総括検証を受けてYCC導入した時の声明文ですが、この時には声明文1pの脚注1に

『1 今回の枠組みの変更に伴って、イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば 10 年金利、20 年金利を対象とした指値オペを実施する用意がある。』

というのがありまして、「イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止する」というのがあった訳ですよ。

然るに足元の状況ってご案内の通りで、確かに10年0%程度ちゃあ0%程度の所でキープされているけれども、じゃあ他の年限の金利ってどうなっているかというと、中短期の場合は追加緩和期待が剥落したから当たり前の面はあるけど9月声明文の「現状程度」とは違うし、超長期に至ってはご案内の通りという水準なのです。

でも直近の声明文だと
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k170131a.pdf

『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)』

とは言っているけれども当初声明文にあった脚注ってすっかり外れている(11月の声明文からすっかり外れている)し、まあそもそもが脚注なので知らんがなとか言われてしまえばそれまでですが、とにかくこの辺りの話が曖昧なまま突っ走っているので、そら9月の時点から経済物価情勢や金融情勢に何の変化も無ければそのまま推移していたんでしょうが、状況というのは変わる訳で、状況が変わる中で当然ながら「その変化した状況においてコントロールすべき金利に対してはどのような定量的な判断を下すべきなのか」というのがある程度でも良いから考え方が分からないと、市場だって判断のしようがないのですが、何せ先般ネタにしたように、

『第三に、より当面の課題として、イールドカーブをコントロールする前提として、望ましいイールドカーブの姿をどう判断するかという問題があります。伝統的金融政策においては、望ましい短期金利水準を判定する上で、様々なベンチマークが考案されてきました。例えば、先ほども触れたテイラー・ルール、MCI(Monetary Conditions Index)、あるいは自然利子率を用いたヴィクセル的な方法などです。我々は、こうした方法を、単一の短期金利からイールドカーブ全体に拡張して、新たな判断基準を構築しなければなりません。日本銀行は「均衡イールドカーブの概念と計測」というかたちで、すでに一昨年からこうした方面での理論的・実証的な取り組みを始め、成果を公表していますが、なお研究途上の課題です8。』(雨宮理事の先月11日の講演より)

>なお研究途上の課題です
>なお研究途上の課題です
>なお研究途上の課題です

という力強いお言葉を賜っておりまして、そんな状況で金利水準の細かいところでホイホイ輪番の上げ下げされますとそら何が何だか分からなくなり、その結果として投資家はともかくとして、入札での応札落札義務があるプライマリーディーラーは入札でリスク取り難くなるでしょと以前申し上げたような展開が徐々に見えてきたような感じでもある訳で、そもそもが政策の建付け的に色々と無理がある(金利水準について何らかの規範的な計測方法があるのならまだ対処のしようはありそうだが)中で精緻にオペをするというのは色々と難しいんじゃねというのが根底にあるので、本日の所はどうなるか知りませんが、無事におさまっても先々めでたしという事ではないと思います。







2017/02/02

お題「FOMCである/10年が9bpですが/定例会見は残念な仕上がり」

FOMCと日銀MPMが接近すると一気にネタだらけになって非常に遺憾なのですけれども、MPMの日程がFOMCの後出しなので(個人の感想です)仕方ありません。

○FOMC声明文は予告ホームランなどを避けつつも微妙な所で強い話もするという細かい芸風に見えたけど

https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20170201a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20161214a.htm(前回)

今回は声明文だけですので声明文比較をサラサラと。

・第1パラグラフ:現状認識部分は色々と上方修正というか表現が強めになるとかそんな感じ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has continued to expand at a moderate pace.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been expanding at a moderate pace since mid-year.』(前回)

been expandingがcontinued to expandになるとかそういう感じの表現変更がこの先も続いていまして、 経済の拡大状況やら状況の改善やらが継続していたり、良い状況になっていますよー的なトーンになっていて、このパラグラフのパーツパーツで別に物凄い上方修正とか殆ど無いのですが、全体を何となく比較すると強くなっていますなあという感じを受けるんですよね。

『Job gains remained solid and the unemployment rate stayed near its recent low. Household spending has continued to rise moderately while business fixed investment has remained soft. Measures of consumer and business sentiment have improved of late.』(今回)

『Job gains have been solid in recent months and the unemployment rate has declined. Household spending has been rising moderately but business fixed investment has remained soft.』(前回)

ここのパラグラフで前回から目立った変更があるのは上記の3文目の「消費者や企業のセンチメントは最近改善してきている」というのが新たに入った所で、まあこちらに関しては素直に強い認識を示したということでございましょう。

しかしまあ何ですな、ただのスーパードメスティックおじさんである所のアタクシにとっては、上記の中で「but」が「while」に変わっているのがどういう意味なんじゃろとかさっぱりチンプンカンプンで誰か教えてジェネラルという所であります。マジ分からん。


『Inflation increased in recent quarters but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective. Market-based measures of inflation compensation remain low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)

『Inflation has increased since earlier this year but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation have moved up considerably but still are low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.』(前回)

物価動向に関する表現とかも現在完了形だったのが過去形になるとか微妙な違いを示しているのが最早良く分からん(ただの無知ですかそうですか)レベルの話になっていますが、まー状況が大きくは変わっておりませんが改善中は改善中、みたいな感じなんですかねえ。

でもって市場のインフレ期待に関しての部分はうだうだと書いてあったのがだいぶスッキリしておりまして、前回のFOMCではまだ水準はアカンけど足元急速に改善してきたぜヒャッハーという話になっていたのが、超あっさり味になっておりまして、まああまりこの辺りの状況が大きくは改善していない(悪化している訳ではない)という認識を示しているんですかね。


・第2パラグラフ:物価見通しの文言がしらっと変更になっているのが割とキタコレ感があるのだが

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

ここはご挨拶みたいなもんで毎回同じ。

『The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will rise to 2 percent over the medium term.』(今回)

『The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market conditions will strengthen somewhat further. Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further.』(前回)

でもって今回第2パラグラフで変更になっているのがここでして、物価の先行きに関しての表現が「過去のエネルギー価格やら輸入価格の下押し要因が剥落してくると今後物価は中期的に2%に向かって上昇していくでしょう」という留保付の表現になっていたのですが、今回は思いっきりその辺の付属物を落としてきまして、普通に「物価は中期的に2%に向けて上昇していくでしょう」というあっさり表現になりました。

概ねこういう「表現スッキリ系への変化」というのは自信の表れというのが中央銀行文学の仕様となっていまして、これは別に日銀だろうとFEDだろうと同じになっております。でもってFOMC声明文って第1パラグラフはちょいちょい変更があるので当然のように注目されるのですが、金融政策はフォワードルッキングなのですからして先行き見通しを示したこちらのパラグラフの変化というのは重要でごじゃりまして、この部分はタカ派というのはさすがに大げさなのですが(本当にタカ派だったら今回予告ホームラン打ってきても良いので)、まあタカにもなれるように足かせ外しておいた(タカになるとは言っていない)という所ではないかと。

『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(今回)

『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(前回)

リスクの所とか最後の御挨拶みたいなところは同じ。


・第3パラグラフ:政策金利に絡む部分で予告ホームランなどなく淡々と実質全文一致状態

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/2 to 3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(今回)

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(前回)

実質全文一致というのは前回は利上げしているのでそこの文言が違うということでして、他の部分は普通に全文一致状態。


・第4、5パラグラフ:先行きの金利や資産買入に関する新たな示唆はまるでない全文一致モード

第4パラグラフは今後の金利政策運営をどういう感じで進めていきますかという話の部分ですが、こちらでも予告ホームランのような文言は全くなく、淡々と全文一致していますので、並べて引用するのも何ですが自分が後日確認するとき用に並べて置く。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

ということで今後も状況見ながらやっていくし金利引き上げてもまだまだ緩和的だしグラデュアルに引き上げていきますとかそういう話をしている。

第5パラグラフは資産買入の話で、こちらも最近多くのFED高官がああでもないこうでもないという中でしたが、特段の変更は入りませんでした。まあ入れたら大騒ぎだし足元変な人が大統領やっているのですから別にここで炎上ネタを提供する必要はありませんもんね。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

ということで。


・第6パラグラフ:今回も全員賛成(メンバーは交代)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Esther L. George; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel K. Tarullo.』(前回)

ブラード、ジョージ、メスター、ローゼングレン→エバンス、ハーカー、カプラン、カシュカリということで、
若干タカっぽくなりますな。



○ところで10年の引けが9bpなんぞになっているのだが

うむ。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1FM1DU
Markets | 2017年 02月 1日 15:24 JST
再送-〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続落、長期金利0.090%に上昇

『<15:09> 国債先物が続落、長期金利0.090%に上昇

長期国債先物は続落。トランプ米大統領がドル相場への懸念を表明したことを受け、米国債に対する質への逃避買いの流れを引き継ぐことが想定されていたが、予想外に軟調な展開となった。日銀が31日に2月国債買い入れ方針を公表したが、買い入れに対する市場の不透明感が払しょくされず、積極的な買いが手控えられた。2日に10年債入札を控えていることや、日経平均株価がプラス圏に切り返したことで調整色を強めた。現物債は中期ゾーンが買われる一方、超長期・長期ゾーンが売られる展開。長期ゾーンはあすの入札を意識した持ち高調整が入り、中期と超長期はきょう実施された日銀オペ結果の強弱を素直に反映した。中期には海外勢を巻き込んだ需要が観測されていた。長期国債先物中心限月3月限の大引けは、前営業日比11銭安の149円77銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp上昇の0.090%。』(上記URL先より)

とまあそういうことでトランプあばばばばーモードだわ円高(つーても東京時間は切り返していたし株式インデックスも戻ってはいたが)だわという状態の中で債券市場ちゃんの方はと言えば堂々の10年9bpと金利上昇で引けるの巻となっておりまして、大変に味わいの深い展開となっておりました。

まーゆうて本日10年国債の入札があって、どうせ明日は長期輪番あるし新発はリオープンで出るから明日の輪番にホイホイ入れられるしということで、入札はお安い所で迎えた方が参加者皆さんウマーであるというのはあるのですけれども、それにしても長期輪番を増やした分を次回は元に戻すぜよというアナウンスをしたと思ったらいきなり金利が上昇するというのがお洒落ではありまして・・・・・・・・・・

昨日の再掲ですけど、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170131c.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について


で出された数値が結局12月末に出てきた(つまり1月予定の当初)額及び回数のレンジと全く同じとなった、ということで、まー昨日も申しあげましたが、この出し方だと「需給がタイト目で推移して金利低下圧力が強めだったら中期の輪番ってまた1回スキップするかもしれないし、まあ途中で減額だってあるよね」というのと「10年早速減らしたということは、結局のところ買入をバシバシやって金利を抑えようというよりは、あまり量を増やさない(しかも1月は中期輪番スキップがあるから当初アナウンスより7800億円買入減額なんだし)ようにしながら運営しようってことだよね」と言う風に読むことが可能というお話。

しかも、1月(つーて先週水曜ですが)に示された中期輪番スキップというのって、確かに中期の需給がちょっと厳しくなっている(現に今でも中短期タイトっぽい輪番結果や引値になっているし)のはあったけど、別に水準的に金利が馬鹿下がりしていた訳でもないのだから、今までの不規則打ち込み(中期指値とか超長期朝三暮四スキームとか)で見せた金利上昇抑制とは違いますよね、ということも合わせると、どうしても上記のように出た輪番を素直に同額でレンジの中心回数実施すると単純に考えるのは足を掬われるじゃろという警戒感が先に立つ罠、ということになりますな。


であるからして金利低下しても良さそうな所でも金利が低下しなかったというのもあるかも知れず、それよりも実はトランプの「日本の円安誘導ケシカラン」ってのは金融政策に向けた発言であるからして、いつもだと円高で金利低下ヒャッハーとか言ってるけど、円高の要因がジャパンの金融政策ケシカランだったら「いやーあれは黒田というのが勝手にやってたもんで〜」となってしまってそれは債券買っている場合じゃないという読み筋だって出来ますがなというのもあると思いまして、どっちが要因なのかよくワカランチ会長ではありますけれども、現象としては10年9bpに金利上昇して本日入札のあとにどの水準で引かせるのか、というのでもしかしたら日銀のスタンスをさっくり試しに行くような金曜日の朝のひと時となるのかも知れませんなという所でしょうか。

その動きに無慈悲な入札当日の前場に当該ゾーンに輪番(とか指値とか)打ち込みとかの超掟破りな兵器が飛んで来るリスクだってある訳ですからまあ売る方も調子に乗って売る訳にも行かないでしょうが、日銀が調節の所で別に動かなくても良い所で動いたことによって余計な気を使わないと行けなくなった感があるのはどうみてもマッチポンプです本当にありがとうございましたといった風情であります。



○MPMレビューネタの一環で総裁会見だが無駄に長い割に大した話が無い

いやページ数は17あるんですよ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1702a.pdf


・展望レポートでの為替への言及について

そら聞かれる罠。

『(問)(前半割愛)2 点目に、展望レポートでは、このところ「為替相場の円安方向の動きが、価格上昇圧力を高める方向に作用する」と指摘されています。マイナス金利の導入を決めてから 1 年が経ちますが、長期金利の誘導目標も含めて、現在の金融政策が日米金利差拡大の背景になっているのは間違いないと思います。金融政策が為替市場をターゲットとしているものではないということは理解していますが、こうした動きは現在の政策の効果と考えておられるか、ご所見をお聞かせ下さい。』

この質問の惜しいところは「物価」の部分ではなくて「先行きの成長率見通しの上方修正の背景に円安を入れていること」を指摘すべきところなのですがまあそこは良いとしまして、

『(答)(前半割愛) それから、日本の金融政策はあくまでも物価の安定、具体的には 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために運営されており、為替レートの水準や為替レートの安定は目標にしていません。為替につきましては、ご指摘のように、他の事情が一定であれば、金利差が一定の影響を与えるということは理論的に示されているわけですが、為替市場を巡る要因には様々なものがありますので、日米の金利差だけで何か為替レートが決まってくるということでは必ずしもないと思います。いずれにしても、為替政策は、財務省が所管されていますので、私どもとしては、従来から国際的に合意されている通り、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい、と認識しています。』


という答えになっていて、ジャパンの総裁記者会見の残念なのはこのフォローアップ質問が続かない(この前ネタにしたようにECB総裁会見とか連係プレー打ち合わせてるのかよと言いたくなる絶妙の連携が続く)のですが、実はこの答えの前に、これまでの金融政策効果に関する質問で総裁こう答えているのですよ。

『その後、世界経済の成長のモメンタムが高まり、グローバルに長期金利が上昇するもとでも、わが国の長期金利は、操作目標である「ゼロ%程度」で安定的に推移しています。「イールドカーブ・コントロール」は、世界経済がいわば追い風に変わる中で、それを増幅し、強力な緩和効果を発揮しているとみています。』

でもってこれがちょっと前の質問で昨年の金融政策の効果について振り返って解説してくれというのに対する回答で、今回の展望レポート基本的見解で成長率上方修正の背景に為替円安を入れているということは、金融緩和政策は為替円安を通じて成長率の見通しを引き上げることに繋がっているのですから、そら金融緩和効果を強調するんだったら為替狙っているでしょと突っ込む人がいると大変に良い流れになるのですよねえ、とまあ残念に思うのでした。


・需給ギャップ見通しがタイトになっているのに物価見通しが上がらないのは・・・・・・・・

これもフォローアップして欲しかった質問なのですが、

『(問) 本日の展望レポートでは、成長率見通しを全ての年度で上方修正されましたが、一方で物価見通しについては、2017 年度、2018 年度とも据え置きとなりました。普通に考えれば、成長が高まれば物価にも上昇圧力がかかると思います。今回のこうした物価見通しは慎重なようにもみえるのですが、成長と物価の違いにつきまして、どのような理由でこのような数字になったのかについて教えて下さい。


実に当然の質問。

『(答) 一般的に、成長率が上振れして需給ギャップが縮小したり、為替が安くなったりすることがあれば、先行きの物価上昇率を高める方向に働くということはその通りだと思います。一方で、現在までのところ消費者物価の実績値がかなり弱めに推移しておりまして、今回の見通しでも 2016 年度の消費者物価の見通しは下振れています。そういったことを反映して、2017 年度、2018年度の物価見通しが前回と概ね不変となったということではないかと思います。』

ということなのですが、何ぼ何でも発射台が低いだけで説明するのは無理があって、それはインフレ期待が弱い(=フィリップスカーブが下方シフトしている)のか需給ギャップに対する物価の感応度が下がっている(=フィリップスカーブがフラット化している)という話になる筈ですな。

でもって直後の質問で、

『(問) 物価についてお伺いします。物価が上がる環境は徐々に整ってきていると思うのですが、先程もおっしゃったように予想物価上昇率は弱含みの局面が続いています。この理由は何でしょうか。(後半割愛)


というフォローアップ質問としては若干惜しいのがあるのですけれども、

『(答) 今回の展望レポートにも書いている通り、需給ギャップは縮小してきていますし、労働市場・雇用環境はさらにタイトになってきています。』

って自分からゲロしているんだから、本当はフィリップスカーブに絡めて誰か質問を浴びせて欲しかったです(まあ各社自分の所で聞かないといけない質問とかあってその場で臨機応変に対応するというのも難しいのかもしれないけどECBとかFEDとかの会見を見習ってほしい)。

『そうしたもとで、予想物価上昇率自体はやや弱めに推移していますが、予想物価上昇率の色々な指標の中には下げ止まっているものもありますし、上昇しているものもみられます。』

だったら足元の発射台が下がっても先行きの見通しってもっと上がってしかるべきじゃないかと思う訳ですけどね。

『今後については、今回の見通しで示しているように、2017 年度、2018 年度と着実に物価上昇率が上昇していき、2018 年度頃には 2%程度に達する、というものが大方の見通しになっています。ただし、繰り返しになりますが、予想物価上昇率は、今のところは弱めですが、日本において予想物価上昇率が、過去や足許の物価上昇率に相当程度影響される適合的な面があることを踏まえると、今後は、需給ギャップがタイトになり、原油価格のマイナスの影響が剥落していくことによって、実際の物価上昇率が上がっていけば、予想物価上昇率もそれに応じて上昇していくのではないかと期待しています。そういったことを踏まえて、このような 2017 年度、2018 年度の政策委員の物価見通しになっていると思います。(後半割愛)



・某社の某記者の質問に対する返しはまあワロタ

お前はフィリバスターでもしているのかと小一時間な質問があって、さすがに中継聞いている市場関係者100人中150人くらいがいい加減にしろと怒っていたという事をお伝えして当該記者には猛省を促したい所なので質問を引用する気にもならないのですが(大体からして「出口政策のコストをどう考えているのか」の一言で済む質問じゃ)答えの頭だけ記念に引用しておく。

『(答) この場は、記者会見で金融政策決定会合の結果をご説明して、それに対するご質問を受ける場であり、演説の会場ではありませんので、おっしゃった点については、特にお答えするつもりはありません。(以下割愛)』

いやね、暫く前とかだと総裁が全然質問したことに答えていないとかいう感じで市場の人たちでも同情する向きもあったと思うのですが、最近はさすがに「あの質問は演説だろ」という見解の方が圧倒的になってきておりますので、まあさすがにちと考えた方がよろしいのではないかと存じます。



・なお凄まじく惜しい質問がある

というしょうも無い質疑応答の直後にこんな質問がある。

『(問) 本日の展望レポートの中で、景気見通し、成長率見通しを上方修正する理由として、為替の円安方向の動きを指摘されていると思います。そこでお伺いしたいのですが、』

とここまでは良いのだが、

『米国のトランプ大統領がインタビューないしは経済界の首脳との懇談の中で「ドル高が望ましくない」という意向を合衆国の大統領としてはかなり鮮明に打ち出しておられると思います。個々の為替の動きについてお伺いするというよりは、むしろ、1995 年にルービン財務長官が就任されて以降、振れがあるにしても強いドル政策をアメリカが採っていたと思います。トランプ大統領のこの発言は米国の為替政策の大きな変更を含意するものなのかが、1 つ目の質問です。(以下割愛)』

っていう質問になるのが何でかなーという感じですし、大体からして今回の記者会見は「トランプの政策がどうのこうの」という質問が無駄に多すぎで、そんなのまだ出だしたばかりの話知るかボケとしか答えようがないですし、会見要旨だと少し端折っていますが、海外ネタの質問に対して黒田さんは昔の黒田武勇伝を並べる、という実にしょうもない展開が繰り返されていまして、何の茶番だという流れになっているのが実に残念な会見だったなあと思うのでした。



・普通はこの質問関連が何本も出る筈だぞ

というのは勿論輪番オペの謎減額問題なのですが、質問があったのは唯一この一本。

『(問)(前半割愛) もう 1 つはオペの話ですが、前回国債買入れを 1 回スキップされたことで、債券市場ではテーパリング観測もやや高まっているのですが、これについては、買入れの回数、金額が減っても、適切なイールドカーブがコントロールされていれば政策は変わらないということなのか、ご説明をお願いします。』

なお苦言を呈しておきますと割愛した前半の質問が余計で総裁の自慢話風味の説明が答えの前半を占めるが勿論割愛する。

『(答)(前半割愛) また、オペについては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、政策委員会で金融市場調節方針をきっちりと示して、具体的には短期政策金利と 10 年物国債金利の操作目標を定めたうえで、これと整合的な形で適切なイールドカーブが形成されるように国債買入れを運営しているわけです。従って、国債買入れオペの金額あるいはタイミング、回数などは国債の需給環境あるいは市場の動向などを踏まえて実務的に決定されるものです。』

『日々の国債買入れオペの運営によって、先行きの政策スタンスを示すことはありません。あくまでも金融市場調節方針は、経済・物価・金融情勢を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという観点から、毎回の金融政策決定会合において決定されるものであるということです。』

その実務的な決定が買入ペースの減額モードになっているように見えているという質問なのだが、どう見ても想定問答丸読みです本当にありがとうございましたという風情で、本当はこの質問からドンドンと突っ込んで頂きたい訳ですよ。

でもまあ今回の会見って金融政策に関する質疑だというのにトランプ政権の政策の評価とか質問してもそもそも他国の中銀総裁が答える立場にある話でもないのに無駄じゃろ(外交権限と機能ががある内閣に聞くならともかく中銀総裁に聞いたって何かしようとしたって別にできるものじゃない)という質問ばかりで、正直ナンジャソラというかもうちょっと聞く内容考えてくれよと残念な内容でした。









2017/02/01

お題「決定会合レビューである」

あちゃー
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170201/k10010860071000.html
トランプ大統領が日本の為替政策を批判
2月1日 0時21分

『アメリカのトランプ大統領は、31日、製薬メーカーの経営トップを集めた会合で、為替について言及し、「中国が何をしているかそして日本が何年も何をしてきたか見てみろ。かれらは、為替を操作して、通貨安に誘導している」と述べ日本を名指しして批判しました。トランプ大統領が、就任後、日本の為替政策に直接、言及したのは初めてです。』(上記URL先より)

何年もどうのこうのと言いますとオマエモナーなどと言っても通用しないのがトランプクオリティですけれども、そういう話よりも覇権国家というか基軸国家が自国中心主義になるってえのは第2次大戦前の世界恐慌の引き金を引いたのが英国から覇権国が交代した米国が自分の事だけ考えて投資の回収とかせっせとおこなってバランスをおかしくしたという事案があった筈なので、トランプがアホウとかそういう話だけではなく誠にアレではございますな。

ということでだいたいMPMレビューを少々。

○まずは展望レポートの前回声明文部分との比較だが前回展望比上げの12月比横ばいである

まずは展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1701a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k161220a.pdf(12月声明文)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610a.pdf(前回)

・景気認識の全体的な部分は12月声明文対比横ばい

基本的見解の直後の部分については12月声明文とも比較する。まずは現状判断。

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(12月声明文)
『わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで、10月(11/1)展望レポート対比で上方修正、直近声明文対比横ばいですが、この先もそういう内容になります。というか直近声明文対比でみると全文一致です。

『海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)

『海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(12月声明文)

『海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

前回対比で海外経済の主文と輸出が上方修正ですが12月と同じ。


『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善するなかで、設備投資は緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しを続けている。この間、公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善するなかで、設備投資は緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しを続けている。この間、公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(12月声明文)

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。住宅投資は持ち直しを続けており、公共投資は下げ止まっている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は横ばい圏内の動きを続けている。企業の業況感は、総じて良好な水準を維持している。』(前回)

12月と全文一致です。前回対比ではあちこち上方修正していますの。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(今回)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(12月声明文)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(前回)

金融環境の所は同じ、物価に関しては事実関係としての数値の表現が変化していますが、予想物価上昇率の部分に関してはここは弄っていない、というのがまた芸が細かいとも言える(予想物価上昇率が上がってきた、という認識を示したら本来は均衡イールドカーブなり自然利子率なりの水準が上昇するのですから、結果として「10年0%」の誘導目標が正しいのか、という指摘に繋がるので下手に弄るのは得策ではない)のですが、今回の展望レポートでの説明によりますと(量が多いので間に合うかどうか、汗)需給ギャップは前回対比改善していまして、需給ギャップが改善しているんだったら先行きの物価見通しが上がらんというのも(足元が下がったからという言い訳は存在しますけれども)妙な話でして、その背景is何となったら予想物価上昇率が弱含みだからという話になるんでしょうな。


ということで先行き見通し(前回声明文をベースに比較します)。

『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。』(12月声明文)
『先行きのわが国経済を展望すると、暫くの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している。』(前回)

これまた現状認識と同じような感じで以下続きます。

『まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(12月声明文)

『まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回)

という話はずーっと同じですな。

『海外経済は、先進国の着実な成長が続き、新興国経済の回復も、その好影響の波及や各国の政策効果によって、次第にしっかりとしたものになっていくことから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。こうした海外経済の改善を背景として、輸出も、基調として緩やかに増加するとみられる。』(今回)

『輸出も、海外経済の改善を背景として、基調として緩やかに増加するとみられる。』(12月声明文)

『海外経済は、幾分減速した状態が暫く続いたのち、先進国の着実な成長が続き、新興国経済も、その好影響の波及や各国の政策効果から減速した状態を脱していくにしたがって、徐々に成長率を高めていくと予想している。このため、輸出は、緩やかな増加に転じるとみられる。』(前回)

海外経済の見通しについては前回声明文対比でみても上がっていて、「基調として」というヘッジクローズが外れていますので、まーこれは自信満々モード。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。2%程度に達する時期は、見通し期間の終盤(2018 年度頃)になる可能性が高い。』(今回)

『消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注3)。』(12月声明文)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。今回の物価見通しを従来の見通しと比べると、中長期的な予想物価上昇率の弱含みの局面が続いていることなどから、やや下振れている。なお、2%程度に達する時期は見通し期間の終盤(2018 年度頃)になる可能性が高い。』(前回)

ということで、見通しの説明はあまり変わっていないですし(実際の数値に関わる部分の表現は変わっていますが)、2%程度の物価達成時期は10月レポート対比同じですな。


○展望レポート比較:鏡の部分を確認すると「円安効果で成長見通し上振れヒャッハー」というのが

鏡というのは『<概要>』の所な。

『わが国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『わが国経済は、海外経済の回復に加えて、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018 年度までの見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(前回)

潜在成長率の数値をいじっているのですがそこはさておき海外経済の部分を引き上げています。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみられるが、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、見通し期間の後半には2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

基本的な説明は同じです。

『従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の上振れや為替相場の円安方向への動きなどを背景に、幾分上振れている。物価については、概ね不変である。』(今回)

こちらは前回は鏡に無かったのですが、前回の時は成長率は横ばい、物価は下振れでした。でまあそれよりもおーというのは「為替相場の円安方向」で成長が上がったぜヒャッハーというトランプ大先生に因縁を盛大につけられそうなヒャッハー表現を入れている事でして、この「為替が円安に振れて成長率見通しが上振れしたぜヒャッハー」という説明がいつの展望レポートで存在しましたかと過去の展望レポートを遡って確認したら、まさにQQEぶち込んだ直後の2013年4月の展望レポートになるという事に気が付いた(ただしアタクシが目検で過去の展望レポート確認した結果なので一応確認したけど内容無保証です)ので、中々これは味わいがあるというか雉も鳴かずば撃たれまいというかという表現をぶち込んできましたなあという感じです。

あと付け加えておきますと、円安の影響で物価がどうのこうのという表現は何回か出ていまして、ただ「成長」に関する部分で円安ヒャッハーというのが入っていたのが直近で2013年4月まで戻る、ということでございますので一応お間違えの無いように。

『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠け、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(今回)

『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているとみられるものの、前回見通しに比べると幾分弱まっており、今後、注意深く点検していく必要がある。』(前回)

リスクバランスはまあ良いとしまして、物価のモメンタムの部分の表現がこれ威勢が良いのか悪いのかここだけだと微妙(基本的見解を全体としてみると若干威勢が良く成って居る感じ(インフレ期待が底打ちから改善みたいな認識を示している部分がある)でもあるけれども)となっていますが、維持されている云々の所が、前回が「みられる」だったのが「されている」とヘッジ成分が減っているので、一応モメンタムの所は強くはしている感じなのですが、しかしまあヘッジ文言満載という所で歯切れが悪い。まあ歯切れを良くするとさっき申し上げたように自然利子率の上昇云々という話になるので、あまり威勢よい文言に出来ないというのもあるのですが、「なお力強さに欠け」という辺りはまあパッとしませんなあという事を言ってるんでしょ。


『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

というのは毎度同じです。


○潜在成長率の推計値が変わっていますが内閣府より小さいですな

基本的見解の脚注2である。

『2 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、GDP統計の改定に伴い、従来の「0%台前半」から上方修正され、「0%台半ば程度」と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』(今回)

『2 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、「0%台前半」と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』(前回)

ということで、潜在成長率の推計値は内閣府では0.8%に改定していましたが、「0%台半ば程度」だとやや小さい数値になるという事ですな。

でまあここの数字が大きくなると需給ギャップの計算の時に同じ成長率見通しで出して来たらギャップがマイナス方向に寄与するので、物価見通しの鉛筆なめなめ要因でもあるのかとか邪推してしまうのが、アタクシの毎度の仕様でありまする。

まあそれは兎も角として、この結果物価の見通しの要因として3つ示されている中での需給バランスに関しては、

『第2に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、労働需給の引き締まりが続くなか、ゼロ%程度で横ばい圏内の動きを続けてきたが、足もとでは改善の動きがみられる。先行きは、輸出・生産の持ち直しに伴う設備稼働率の改善に加え、経済対策の効果の顕在化もあって、労働需給の引き締まりが続くことから、マクロ的な需給バランスは、2016 年度末にかけてプラスに転じ、その後はプラス幅を拡大していくと見込まれる。』(今回)

『第2に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、新興国経済の減速などを背景に製造業の設備稼働率の改善が遅れる一方、労働需給の引き締まりは続いており、全体として横ばい圏内の動きとなっている。先行きは、経済対策の効果もあって、労働需給の引き締まりは続き、設備の稼働率も、輸出・生産の持ち直しに伴い、再び上昇していくと考えられる。このため、マクロ的な需給バランスは、2016 年度末にかけてプラスに転じ、その後はプラス幅を拡大していくと見込まれる。』(前回)

ということで、結論の部分は同じように今年度末にかけてプラスに転じてその後プラスを拡大なのですけれども、足元の需給バランスに関して「ゼロ%程度」と引き上げになっていまして、需給ギャップについて上方修正されているっぽい表現になっています。


○物価見通しの要因に関して

つーことでちょっと先走ってしまいましたが、物価見通しに関する要因部分をこの際比較しましょう。

『第1に、中長期的な予想物価上昇率は、現実の物価上昇率が小幅のマイナスで推移してきたことから、「適合的な期待形成」4の要素が強く作用し、弱含みの局面が続いている。もっとも、各種のマーケット関連指標やアンケート調査結果をみると、総じて下げ止まりの動きとなっており、上昇しているものもみられる。』(今回)

『第1に、中長期的な予想物価上昇率は、中央銀行の物価安定目標に収斂していく「フォワードルッキングな期待形成」と、現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の2つの要素によって形成される5。中長期的な予想物価上昇率は、現実の物価上昇率がゼロ%程度ないし小幅のマイナスで推移する中で、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、2015 年夏場以降の弱含みの局面が続いている。』(前回)

ということで、先程あるように全体感の所は同じなのですが、インフレ期待に関してここの表現は引き上げになっていますね。

『先行きについては、上記の経済見通しのもとで、個人消費が緩やかな増加を続けることを背景に、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響すると考えられる。これらを背景にしつつ、@「適合的な期待形成」の面では、エネルギー価格が物価に対して押し上げ寄与に転じていくことや、このところの為替相場の円安方向への動きの影響もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)

『先行きについては、上記の経済見通しのもとで、個人消費が緩やかな増加に向かうにつれて、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響すると考えられる。これらを背景にしつつ、@「適合的な期待形成」の面では、今後エネルギー価格による下押しの剥落もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(前回)

先行きの話は基本的に同じ話をしていますが、これまたここでの子細な話を見ますと、円安効果で物価が下駄履く分が適合的期待形成にプラスに効く、という話をしていて、見通しの出来上がり数値は横ばいなのですが、表現的に見ますとちょっと強くなっているというか願望度から期待度にやや成分を変化させているという所でしょうか。

『第3に、輸入物価についてみると、これまで下押し方向に働いてきた原油価格など国際商品市況の既往の下落の影響は、2016 年度末にかけて概ね剥落し、その後は、市況の持ち直しが、消費者物価に対してプラス方向に作用していくと予想される。また、為替相場が輸入物価を通じて消費者物価にもたらす影響についても、既往の円高による下押し圧力が徐々に減衰する中で、2017 年度入り後は、このところの為替相場の円安方向への動きが、価格上昇圧力を高める方向に作用すると考えられる。』(今回)

『第3に、輸入物価についてみると、原油価格など国際商品市況の既往の下落は、当面、輸入物価を通じた消費者物価の下押し圧力となるが、その影響は減衰していくと予想される。為替相場が輸入物価を通じて消費者物価にもたらす影響については、本年入り後の円高もあって、価格上昇圧力を抑制する方向に作用すると考えられる。』(前回)

ということで10月対比なので当たり前ですが円安ヒャッハーになっています。


・・・・・・・・・つーことでもう少し仔細に見たりするとか全文が今日出ますねとかありますが、その辺はまた明日に続く(つーて明日はFOMCもあるような気がしますが)。


○2月輪番の額について:結局「12月末に出した1月の予定額と同じ」という結果ですが・・・・・・・・・

いやあ今回は注目されましたなあ。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170131c.pdf

0年〜1年:700 程度
1年〜3年:4,000 程度
3年〜5年:4,200 程度
5年〜10年:4,100 程度
10年〜25年:1,900 程度
25年〜40年:1,100 程度
物価変動:250 程度
変動利付:1,000 程度

そして買入回数ですが、

0年〜1年:2 回程度
1年〜3年:5〜7 回程度
3年〜5年:5〜7 回程度
5年〜10年:5〜7 回程度
10年〜25年:4〜6 回程度
25年〜40年:4〜6 回程度
物価変動:2 回程度
変動利付:隔月 1 回

ということで、12月末に出した1月の予定額と全く同じという結論になりました。

・・・・・・・・でですね、まあ妥当っちゃあ妥当な結果なのですが、まず中期に関して言えば、昨日の駄文でアタクシが申し上げたように、これだと中期ゾーンの需給動向や金利動向次第ではまたまた1回スキップすることもアリエールという感じですし、そこまでやらなくても金利がホイホイと下がってくれば隙あらば輪番減額というコンセプトなのであれば、月の途中で中期輪番を減額する可能性もあるなあという感じです。何故かと言えば1月は実際は5回しかやっていないので、これをそのまま援用すると2月買入増になるんだが本当かよ感は強いですな。これが最初から減額だと何となく「先に減額したんだから更に追い打ちは掛けないじゃろ」と想像しやすいのですが。

そして長期に関しては、まあ次に金利が上がった時にまた買入額を増やすための糊代作りの為に一旦元に戻しましたよ、というメッセージ性を感じるということでして、まー売るほど物がないという現実もあるので、他の要因に変化が無いのに10年アタックマンとか出て来にくい状態になっているとは思うのと、まあ4500億円で継続してその後減らすよりは増額含みで減額というこの侘び寂びの世界のようなやり方でも通じるということでしょうな。


とは言いましても、まあこれ「途中で弄ってくる可能性が高い」という予定額公表になっているので、平時の微調整程度なら影響小さいのかもしれませんですが、やはりこうプライマリーディーラーとか困るし、そうなると発行の方に悪影響をボディーブローのように与えてくるようには思えます。まあ今後の入札状況とか見ながらまた考え直すかもしれませんけれども、透明性はだいぶ下がったなという印象は市場に強くなったのではないでしょうか。


なお、声明文の80兆円はそのままでしたがその話は総裁会見ネタと共に明日にでも(というか今日は時間と量の都合上パス)。