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2017/03/31

お題「期末につきメモメモで勘弁」

期末のように見えますがプロ野球的には期初スタートですよ!

○レポの所は本日も大変そうに見えますが

・末初GCレポレートェ・・・・・・・・・・・・・・

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html

ということで最近のT/Nの東京レポレート推移は以下の通り。

2017/3/23 -0.073
2017/3/24 -0.030
2017/3/27 -0.043
2017/3/28 -0.042
2017/3/29 -0.030
2017/3/30 -0.665

23日→24日の金利上昇は24日にトムスタートの期末越えお助けGCがオファーされましたという要因でしたが、実際に30日のトモネがモロに末初取引になったらTKRRが思いっきりぶっ飛んで▲66bpとか期末らしい金利になっております。

まあ昨日もちらっとネタにしましたがスポットスタートのTKRRのターム物の方は29日の所が最後の末スタートで、1wが27日の▲15.2(お助けオペ効果の翌営業日)から28日の▲36.2になって29日▲55.6になっていまして、ここの1wって分解すると「末初3日」と「期初から4日」になるのですが、通常のGC1wって▲10に毛が生えた程度のレートなので、4日分を▲10にして末初を逆算すると、▲15.2→▲36.2→▲55.6の金利低下って通常金利を▲10で計算したら末初レートが▲0.221%→▲0.771%→▲1.164%と末接近に伴い盛大に金利が低下している計算になります(って昨日計算しろと言われそうですがまあ勘弁)ので、そらまあ末初トモネになって前日比63bp金利低下してもシャーナイナイという事ですか。

なお、このレートはリファレンスレートなんで実際にどの辺で付くのか、という話になるとGCのモノがそもそもどのくらい有るのか的なレベルの話になっているんじゃねーの(なお単に経験則的にこういう金利の跳ね方をするときはレート水準どうのこうのよりもアベイラビリティの話になっている事が多いのでそう言っているだけなのですので念のため申し添えます)と思いますので、まあいやはや何ともという感じです。


一方で前日の3-5輪番減額でまあ本日の(プレミアムフライデーだというのに5時公表の)来月の輪番予定の所で中短期もう一発減額あるでとか、短国買入もっと自然減推進してくるかもねとか、受け渡しベースで期初始まりましたしというようなことなど、中短期の国債とか短国は軟化しているので、末初に関してはこれは先行きの金利観がどうのこうの全然関係なく盛大な需給となっているという事ですな、うんうん。


ただまあ何ですな、一回お助け打って「必要ならまだあるで」とアナウンスした割には昨日は華麗にGCレート(なのか気配なのか知らんですが)上昇をスルーしていて、まーだからどうだというのは人によって立場違うから一概に決めるの難しいのですが、「おかわりあるで〜」とアナウンスしてしまうと、末初GCみたいなモロに需給の世界に対してはそのおかわりへの期待が出てしまうのでカバーが遅れ気味になってしまい、最後に大爆発する(おかわりが無い場合)の巻となってしまうリスクというのは市場にビルトインされてしまうので、お助けオペというのも良し悪しな面はあるんですよね〜と思います。

まー翌日物(今回は3日物になるけど)の取り引きですし、金利で解決できる話だったらあまりホイホイとお助けオペを入れない方が良いというのも筋ではありまして、この「市場が壊れたから介入」ってのってさじ加減が無茶苦茶難しい話で、本来は金利(価格)で解決する話で、しかもそれが他の所に波及して疫病状態にならない、というのであればいちいち中銀が介入する話ではない(リーマンショックの場合は価格が解決しないし伝染の恐れが大きかったから介入する意義があった)というのはべき論として存在する訳です。

然るに、足元ではYCCとかいうケッタイなものをやっているので、他の金利形成に変な影響を与えないかとかそういう話になった時に「価格で解決する話だから良いじゃん」とも行かないから益々匙加減が難しいのですけどね・・・・・・・・・コマッタモンダ

そうは言いましても事故が起きて多重衝突とかになるのも市場的に問題ですから、本当はこういうのは(末初用ならハイパーペナルティーで良いと思うけど)ペナルティー金利での常設ファシリティの方が良いのかもしれませんね。バジョットルールそのまんま適用で。


・つーことで本日のSLFはどうなるんじゃろ

昨日のSLF結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170330.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 4,691 4,691 -0.500 -0.500
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(4月3日スタート分) 2,980 2,980

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
2年利付国債371回(58億円)、2年利付国債372回(112億円)、5年利付国債109回(49億円)、
5年利付国債117回(18億円)、5年利付国債124回(71億円)、5年利付国債126回(61億円)、
5年利付国債130回(2,115億円)、10年利付国債301回(102億円)、10年利付国債309回(51億円)、
10年利付国債313回(181億円)、10年利付国債319回(339億円)、10年利付国債332回(120億円)、
10年利付国債334回(104億円)、10年利付国債343回(1,183億円)、20年利付国債139回(40億円)、
30年利付国債2回(19億円)、30年利付国債4回(9億円)、30年利付国債37回(14億円)、
30年利付国債52回(45億円)です。

相変わらず5年130回が2000億円超でているのを筆頭に19銘柄出ているという大変にお洒落な展開になっておりますが、期末は特別措置で30銘柄オッケー(いつもは20銘柄)となっておりまして、さあ今日はどんだけ日銀に駆け込みに行くのやらという事ですが、まあだから中長期の金利がどうなるという話でも直接的には無い(もちろんショートが深いと特に金利上がった時の場中には需給的に割高化しやすい(引値ベースでの話は別として)とかそういう話はあるけど)のでSLFのオファー額を見て悶絶する位しかやることは無いのですけどね。



・当日に輪番大予想をしてフラグを立ててみる

中短期は基本減額してくるでしょと思われる訳で、金利が上がった〜って言ったって5年なのにマイナス10bpよりも低い水準で定着という状態になっていますし、2年とか(新発はちと別として他のカレントで)ちっと金利上がったけどその前の下がり方の方が盛大で相変わらず▲20台とかな訳で、まあこういう時に買入減らしておかないと金利上昇圧力が掛かった時(かからないのではというツッコミをしてはいけません^^)に買入拡大する余地なくなるし、逆になんかショックがあって追加緩和待ったなしとか言われた時にまーた量に転進する時に糊代つくっておく効果もありますから、金利低下気味の時には買入せっせと減らすでしょ。

つーことで1-3はレンジを下方シフトして追加で500位は買入減らすようなレンジが出てきて、3−5はレンジの中心を3500に下げるような感じにしてくる一方で、まあ後ろはあまりいじってこないでしょう、というイメージなんですが、中期が減るでしょうというのはコンセンサスだと思うのですが、どの程度減らしてくるのかはアタクシのは1-3の減額がコンセンサスより多めかもしれませんね。まあ後ろは動かさない(超長期25年超の減額の予想もそこそこあったかもしれません)かなと思いますが。



○ところで80兆円文言ですが

なんか昨日の金融ファクシミリ新聞で思いっきり「4月にも80兆円文言削除へ」とか出ていて、そーゆー話題が出ると削除できなくなるから大人の配慮(最近では忖度とか言うんでしたっけ)をして差し上げて〜と思いましたが(笑)。

まあ普通に新年度以降の見通しを考えると、年度後半になるとただの原油と為替効果の裏ですけれどもコアとかヘッドラインのCPIは上昇しますし、米国様は着々と利上げしますし、まあ海外とかで変なイベントで大コケしないのであれば、年度前半は平和というかウゴカンチ会長相場あっても後半には金利上昇圧力が掛かるかも知れませんね、となるのは概ね誰が考えてもそういう見通しになると思います(ってそれで良いんですよね?)。


でもって80兆円文言ですが、これって時間が経過してどう見ても80兆円行かない(今日のが出たら改めて償還スケジュールとか見ながらきっちり計算し直してみます、すいません)どころか盛大に下振れするのが明らか、という事ではあるのですけれども、金利上昇圧力が掛かれば買入を増やさざるを得ないというのがYCCの建付けなので、そういう意味では年末近くまで放置プレイしておいても別に何か問題が起きる訳ではない(ただし乖離について質問された時の説明はちゃんとやらないとニュースヘッドラインリスクはある)のですが、金利上昇圧力が掛かっている期間中に文言削除すると金利上昇圧力に拍車を掛けてしまうので、実は金利上昇圧力が無い時にしらっと削除した方がお利口という説もあるし、寧ろ低下圧力が掛かっている時に冷やし玉で文言削除する位の方がウマーだったりします。

つーことで、基本的にはずーっととぼけると思っているのですけれども、先行き削除するのが面倒になると考えた場合にはしらっと削除してくるかも知れず、たぶんそれは「目先金利上昇圧力が無いですなあ」と執行部が認識したタイミングになると思いますが、この次にネタにする置物師匠の昨日の国会発言を見るとサクッと撤廃する目も無くは無い。

なお、マネタリーベースというか資産買入に関するあれやこれやもきっちり整理したのを順繰りに打ち込んで行くという構想なのですがとっ散らかっている状態で誠にすいません。



○そんな中に置物師匠ェ・・・・・・・・・・・・・・

80兆円がどうのこうのと言われるのが微妙に話題になったりならなかったり、という時期に華麗なる不規則発言登場。

http://jp.reuters.com/article/boj-iwata-idJPKBN1710CC
Business | 2017年 03月 30日 13:30 JST
米国債の購入不要、現政策で物価目標は達成可能=岩田日銀副総裁

ということで国会にご登場なのですが、このようなご発言があったとの由。

『また、量的緩和政策の効果に関連して「量的緩和をもっと進めろとの学者もいると思う」としながら、昨年9月の総括的な検証の結果、「イールドカーブ・コントロール(YCC)の方が物価2%達成には有効であり、(政策の)持続可能性が高いということが分かった」と指摘。』(上記URL先より)

>イールドカーブ・コントロール(YCC)の方が物価2%達成には有効
>イールドカーブ・コントロール(YCC)の方が物価2%達成には有効
>イールドカーブ・コントロール(YCC)の方が物価2%達成には有効

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません師匠はマネタリーベース直線一気理論展開してましたし、大体からしてマネタリーベースを幾ら幾らにすると予想インフレ率がこれだけ上がるとか大法螺吹いて元の執行部の皆様を石もて追い出して執行部入りした筈なんですが、オッサンその反省や謝罪は無いんですかという感じではございます。

ただまあ置物大先生がこういう話をしらっとするようになっている、ということは国内債券市場的には形骸化しまくっている「80兆円」文言を外すのって実は抵抗が無い(そもそも80兆円文言とかリフレ置物マネタリーベース直線一気理論の体面を立てるために入れているのが見え見えな状態な訳ですから)のかな〜と思いまして、正直トリオ・ザ・リフレさえ黙っていれば別に80兆円文言とかあっという間に外せると思います。あまり他市場が反応しない所でやるとなると、米欧が何となく出口とか緩和縮小とかになっているドサクサの方が良いのかも知れませんけど。



○まーたFED高官が

http://jp.reuters.com/article/mester-rate-idJPKBN1712EN
Business | 2017年 03月 31日 00:55 JST
米FRB、一段の利上げ必要=クリーブランド連銀総裁

『[30日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は30日、米経済は低調だった第1・四半期から回復すると見られるとし、連邦準備理事会(FRB)は一段の利上げを実施し、年内にもバランスシートの縮小に着手する必要があるとの考えをあらためて示した。同総裁は講演で、「経済情勢が予想通りに展開すれば、フェデラルファンド(FF)金利の引き上げを通した緩和策の一段の解消が必要になると考えている」とし、「年内に(FRBのバランスシートをめぐる)再投資計画を変更することにも異議はない」と述べた。』(上記URL先より)

ということでまたまたウホウホ利上げ発言が飛び出しているのですが、来月になったらFED高官のロジック整理整頓ネタを打ち込まないと、って思っていますが、未だに謎なのはそれこそイエレン会見での質問でも結局良く分からない「何でここに来て急に強気度が加速したのでしょうか、皆さんに火を点けた物は何だったのでしょうか」というのが各高官の発言をさらっと読んでいるだけだとイマイチ見えてこないので、もうちょっとゴリゴリ読んで関連付けながら見て行かないと分からんなあと思っていまして、その辺を(どうせ次のFOMCまで少々間もありますので)じっくりと成敗しなければ、と思っております。


てな訳で期末でメモメモだけとなって誠に恐縮至極。






2017/03/30

お題「3−5年輪番減額はまあそうじゃろ/佐藤審議委員イェールでの講演ネタ続き/その他少々」

もう期末ですなあ期末。

○中期輪番減額とかメモメモ

・3−5年輪番減額キタコレ

昨日の輪番オファーですが、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170329.htm

国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2017年3月31日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,800 2017年3月31日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 66,814 2017年3月29日 2017年3月30日

ということで3-5年の輪番がスポ末のタイミングで4000→3800に減額という攻撃が登場しましたが、まあ明日の「来月の輪番」で輪番減額っぽい図が示されるのではないかという見方は多分コンセンサスの方に近いと思いますので、中期輪番そのものが近いうちに減るじゃろ、というところだったとは思いますし、月中の減額だって既に1-3輪番で今月やっておりますので、まあそれ自体はコンセンサスだったかどうかは謎(予想されていたと言っている人とサプライズと言ってる人がいたみたいなので)なのですが、まあ来ましたなという所で。つーか月末ギリギリじゃなくてもうちょっと前(20日の償還再投資来る前とか)に減額しても良かったんじゃないのという気はするけど。

まーこれ自体は「来月の輪番予定額を減らしますよ」という予告ホームランみたいなもんで、もし中期長期の輪番を500億円刻みでやるのが基本とかになっているのだったら(良く分からんけど)月末の所で出すレンジが3500挟みで出してきてもう一発減額というようなのがあるかも知れんなあとか思う(ただのカンで根拠は無い)ところで、まあ輪番は減らせるうちに減らしておかないと、どうせ物価がもうちょっと上がって来たら金利はホイホイと上昇圧力が高まって、その時に水準防衛(をどこまでやるのか、というのが政策運営上超重要課題になりますが)しないといけなくなって買入がドカンと増えるんですから、金利低下モードの時には減額ですな減額。

#なお「このまま買うと80兆円に幾らショート」という話が徐々に話題にならなくなっているのは誠に結構という感じで日銀は考えているでしょうな。ある意味これは結果オーライにも程がありますが、1月後半から2月に金利が暴れて色々と手を打たないと行けなくなって目立ってしまったので、却って「金利水準」の方が注目されるようになって、相対的に量の事がすっかり話題のスコープから外れた、というのはあると思うので、怪我の功名とはまさにこのことで、悪運だけはまだあるんですよねー日銀。


1-3もレンジの下限だし、3-5も減額だしということで、プレミアムフライデーにも関わらず無慈悲に5時発表の明日の輪番予定は中期がそこそこ減った絵となる予定と、短国買入もそこそこ減らしてくる絵(特に短国なんぞは極端に言えば買入残高ゼロにしてみても▲10bpの超過準備政策金利水準があるのですから、そこまで行く前に色々な実需が入ってくるじゃろと思いますし、MB目標は「増えていればよい」なので30兆円台の残高が落ちても長期国債の買入でMB増えとるがなとは思う。まあ中短期ゾーンに存在する担保ニーズとか残高維持ニーズの需要が剥落して影響が出るかも知れないのでどこまで下げられるのかはやってみないと分からんけど)になってくるんでしょうかねえ、とは思いますがどうでしょうかね。

まー昨日の場合は3-5年は減らしましたが5-10年は維持していて、こちらの方は1月に中期輪番スキップした後に4100→4500に増額して、1月末の2月買入予定公表時に4100に減らすつもりが結局4500でオファーする破目になって、そのまま今に至るということになっているので、まあ以前よりも買い過ぎ感は強いのですが、YCCで10年金利の目標があるんだし、指値オペも入れちゃいましたしなので、減らすのはどこかのタイミングであるかも知れませんが、中短期みたいにどどーんと金利が下がってから減らせば良くて、10年5bp位で減らしたらまーた同じドタバタになるでしょうな。今日明日に一段金利が下がると戻してくる可能性が出てきますが、さすがに10年0%辺りに金利が下がってくると買入減るじゃろと思っている人が多いと思うので逆に買い進みにくいという中々お洒落な展開になっているかと。

ちなみに5年130回の国債補完供給は相変わらず2266億円とか出ているというのですがいつまで続くんでしょうかね。


・スポ末でGCレポレート

       1w  2w  3w   
2017/3/28 -0.362 -0.230 -0.169
2017/3/29 -0.556 -0.308 -0.213

一応東京レポレートを見ますとGCレートのリファレンスはまーた1wで▲50台に低下しておりまして、まあ今日はスポットが年初になるので東京レポレート的には平常モードになるのですが、お助けGCオペ自体は打ち込まれましたが、まあ変な爆発は回避されましたけれども、そうは言いましても期末なので下がりますなあという結果というメモメモ。

輪番や短国買入減額の影響もあって短国とか中期の金利は若干上昇しておりますが、GCとかは足もとの資金需給にモロに影響するでござるの巻ですな。


○佐藤審議委員講演の続きである

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170329a1.pdf
日本の教訓
──長期予想インフレ率をめぐって──
(米国・イェール大学における講演の邦訳)


ということで昨日の続き。

・長期予想インフレ率をどうやって引き上げるのかというお話ですが・・・・・・・

『(4)労働市場と長期予想インフレ率』というのが昨日の続きです(頭だけ引用しましたが)。

『一旦下がった長期予想インフレ率を引き上げる方策について、私見では構造政策、なかんずく労働市場改革が重要と思う。』

ほほう。

『長期予想インフレ率と潜在成長率の低下になんらかの関係があるとすれば、前者の引き上げと後者の引き上げに同時に取り組むことが重要である。その主要な手段の一つは労働市場改革である。改革により労働生産性や労働参加率が向上すれば、やや長い目でみて潜在成長率が上昇し、企業の期待収益率や家計の恒常所得も増加する。これにより、金融緩和効果が強まって、物価は上昇し、日本特有のバックワード・ルッキングな期待形成プロセスから長期予想インフレ率にも好影響が及ぶと考えられるからである。』

ということですので、佐藤さんの場合は緩和政策を長く継続するために「できるだけ早期に物価目標を達成」という為に無理な緩和をするこたあねえという話になる訳ですな。

『そのうえで、以下の日本の労働市場慣行が、長期予想インフレ率を上げにくくしている要因と考えられるため、積極的に改めていく必要があると考える。人口減少により人手不足感が高まっている今が改革を進めるチャンスである。』

つーことで以下の話は具体論になりまして、まあ日本の中にいる人たち的には


『第一は、日本の労働市場により柔軟な調整メカニズムを導入する必要性である。この点を敷衍すると、不況期に数量調整(雇用)・価格調整(賃金)どちらによるかが、人々の予想形成に影響している可能性がある。例えば、米国の労働市場ではレイオフという形で主に数量調整メカニズムが働く。一方、日本では主に価格調整で、レイオフは避けられる傾向がある(図表 12)。』

『日本の賃金調整について補足すると、石油ショックなど、過去に起こったさまざまなショックに対し、労働組合は正社員の雇用確保を優先し、経営陣に対し賃金面での処遇の悪化を受け容れてきた歴史がある。こうした労使協調のもとでの正社員の賃上げ抑制はインフレ抑制には効果的であった。』

余談ですがこの辺の話は東洋経済新報社「平成バブルの研究」(村松・奥野編、2002年)の冒頭部分を読むと吉だと思うのでお勧めしておきます。

『そして、正社員の基本給が危機以降大きく下方シフトし、それ以上下がりにくくなり粘着的となった後は、労働組合の保護の枠外にある非正規社員が調整のバッファーとなっている。このような正社員の雇用優先、かつ賃金抑制的な日本型の雇用・賃金慣行は、長期予想インフレ率を引き下げる方向で影響を及ぼしてきた可能性がある。とすれば、その解決策は米国型のダイナミックな雇用慣行を取り入れ、リスクプレミアムを正社員の処遇に反映することであろう。』

『ただし、雇用市場の流動性やセイフティネットが必ずしも十分とはいえないなかで、米国型の雇用形態が社会的に受容されるとは考えにくい。実際、労使間のコンセンサス形成は困難で改革の歩みは緩やかである。』

正社員問題については解雇規制どうのこうのの問題よりも、年金制度などが終身雇用正社員にやたら有利な制度になっているというような点に踏み込む必要があると思いますし、セーフティネットが弱いのでドロップするとやたらその後割りを食うようになっているというのも。

『労働市場改革の成功の秘訣は、米国型のダイナミックな雇用慣行を日本の実情に合わせ修正しながら導入していくことであろう。例えば、政労使の連携による就労・再就職支援の枠組み構築など、成長に繋がるセイフティネット構築により労働組合側の理解を得る工夫が重要である。』

つーことですが、たぶん企業内福祉みたいなのを当てにして社会制度が組まれたままになっているのに労働市場の規制緩和だけ進めていったらそら将来不安の方が増えて消費が伸びんわとか、インフレ期待云々のコインの裏表かも知れないですけれども、労働者の恒常所得の増加期待とか、将来不安を軽減する制度上の担保とかセーフティーネットとかの制度設計をしていかないと〜、とは思うのですが、まあここの講演はどマクロ経済学の先生向けでしょうから事細かい話にはなりませんな。だいたいからして日本じゃないし。


『第二は、フォワード・ルッキングな賃金交渉方式を確立する必要性である。』

ふむふむ。

『この点を敷衍すると、日本の賃金交渉では、前年の消費者物価指数の実績値をベンチマークに毎年、翌年の賃金上昇率が決まる。このため原油価格下落などの外部要因で消費者物価が下落する場合でも、マクロの交易条件改善から企業収益にプラス材料であるにもかかわらず、低い物価上昇率が参照される傾向がある(図表 13)12。


『交渉過程において過去の消費者物価の実績値を参照し、(バックワード・ルッキングに)単年度の賃金上昇率を交渉する現在の慣行に代わり、先行き数年間、あるいはより中長期的な物価のパスの認識を労使間でシェアしたうえで、(フォワード・ルッキングに)複数年度の賃金上昇率を交渉する慣行とすることが必要である13。


これは日銀前から言っていますな、というかこのテーマでの話になると論点は別に与党審議委員も野党審議委員も同じ話になると思う(ただし置物リフレ一派はこういう事に思いっきり無頓着で「名目賃金は上がらないで雇用を増やすのが良い」とか言い出す始末ですけどね)。

『第三は、大企業・製造業と横並びの労使交渉の慣行を改める必要性である。』

『日本では大企業・製造業、とりわけ自動車・鉄鋼といった主要製造業の賃金交渉結果が、非製造業も含めたベンチマークとなる傾向がある。このため、円高でマクロの交易条件が改善しても、主要製造業の利益が減少し賃上げ率が圧縮されると、非製造業の賃上げ率も横並びで圧縮される傾向がある。総産出額に占める製造業のウェイトが2割未満となるなか、主要製造業をベンチマークとすることは時代にそぐわない。賃上げはフォワード・ルッキングな物価予想をベースとしつつ、個々の企業業績を反映すべきであろう。』

なるほどとは思うのですが、実際にこれどうしたら良いのという話でもありますな。非製造業の労使交渉を先にするとか、産別で見た場合に一番威勢の良いセクターに春闘を最初にやってもらうとかですかねえ。



・シムズ理論に関して

『4. 付論:財政政策を巡る最近の話題』というのがありまして・・・・・・・・・・・

『非伝統的金融政策でも期待のジャンプが不十分であったことから、日本では、最近、財政政策の役割に再び注目が集まっている。「ヘリコプター・マネー」や「物価水準の財政理論」(FTPL)はその一例である(図表 14)。』

ということで最後にシムズネタ登場。

『両者に共通する問題は、歳出拡大が人々の期待形成に持続的にプラスに作用するかどうかであろう。家計はリカードの中立命題が想定するほど合理的でない一方、将来不安の一因は増税や社会保険料負担の増大懸念であるとの見方も説得的に思える。ここから、将来の増税を伴わない恒久的な財政拡大が望ましいとの発想が生まれたと考えられる。』

ですが・・・・・・・・・・

『しかし、仮に財政拡張によりインフレが起こることで政府債務が事後的にファイナンスされるとしても、これらの理論モデルに対して、実証的な研究蓄積はまだ不十分である。このため、現実の政策策定や、そのためのマクロ経済予測には使えない。』

と軽くジャブを飛ばしまして、

『経済政策はさまざまな経済主体の利害得失を超える重い判断で実施されるが、インフレはいつか必ず起こる、しかしいつ起こるかはわからない、という経済モデルでステークホルダーを説得することは困難だからである。』

砲撃キタコレ!

『マクロ政策が法律上、会計上、実務上ひいては議会の同意の必要性というさまざまな制約のもとで運営され、政策当局がそうした制約を強く意識せざるを得ない以上、現実の政策運営はプルーデントなものにならざるを得ない。』

ということで、学者先生相手にあまり無責任なことを言われても困りますなあというのを婉曲に(でもないか)説明していますな(^^)。でまあこういうのを見ますと、この前ネタにしました3月会合主な意見にあった『見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。』ってのも佐藤さんじゃないですかねえと想像したくなる訳ですよ。「お坊ちゃんお元気でよろしゅおすなあ」みたいな表現の一環で(^^)。


・改めてまとめですが

『5. 結び』を確認しておきましょう。

『「量的・質的金融緩和」実施以来4年間の経験から、一旦低下した長期予想インフレ率を引き上げることは、大規模な非伝統的金融政策でも容易でないことがわかった。』

そもそも発想が間違いと言わないのがおくゆかしい。

『金融政策単独での効果に限界があるからには、先に論じた労働市場改革などを通じ、人々に染みついた保守的な物価予想を地道に変えていくこと、とりわけ賃金の決定メカニズムの変革が重要と考える。こうした賃金の決定過程においては、中央銀行の物価目標が中長期的な物価のパスの考え方のベースとなることが望ましい。もっとも、そのためには中央銀行の物価目標が人々に十分に信認されなければならない。信認されるためには、金融政策で物価を動かせるという実績が必要である。』

とは言いましても結局通貨安コストプッシュ以外でどうやって動かせる実績を作れるのか、という点についてはどうなんでしょうか・・・・・・・・・・・・・

『信認を取り戻すのは容易ではないが、金融政策で何ができるかを常に考えながら、我々は今後もデフレとの闘いのフロントランナーとして挑戦し続ける。』

とまあ最後は綺麗にまとめていますが、そこに関して実際にどうするのというのは華麗にスルーしているので、何をするとか考えているのか、ただのリップサービスあるいはイヤミなのかが良く分からんですな。


○引き続きFED高官がしゃべるしゃべる


もうどんどん出てきて全然読むのが追い付かない、期末で忙しいし(−−;

SF連銀。
http://jp.reuters.com/article/us-fed-cen-idJPKBN1702V0
Business | 2017年 03月 30日 04:26 JST
米経済、ほぼ完全に回復 年内3回以上の利上げ可能=SF連銀総裁

ウィリアムスさんしらっとこんなのも。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-portfolio-idJPKBN1702VG
Business | 2017年 03月 30日 04:28 JST
FRB、今年の利上げ後に保有債券の縮小開始可能=SF連銀総裁


ボストン連銀
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-rosengren-idJPKBN1702UA
Business | 2017年 03月 30日 04:17 JST
米FRB、年内あと3度の利上げ必要=ボストン連銀総裁


シカゴ連銀
http://jp.reuters.com/article/us-fed-cen-idJPKBN1702UO
Business | 2017年 03月 30日 04:21
米利上げ、年内2回が「非常に安全」=シカゴ連銀総裁

この前までドテン強気だったエバンスさんが最近ちょっとまた日和りだしているのが目につきますな。

なお、FED高官発言整理する場合は多分ベースにイエレン会見(会見が面倒ならその前の講演)とカシュカリ総裁の「何で反対したか」というのを長々と(なお長いけどそんなにヤヤコシイ話はしていない)説明したやつをベースに他の人たちの差分を見ていくと吉なのですが、そう言いながら中々そのネタに着手できておりませんで誠に申し訳ございません。


○まあ何と申しますか・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy17.pdf
2017 年度の考査の実施方針等について

というのを詳しくやっているとこれまた大ネタになるのですが、まあ言いたいことは分かるが、マイナス金利政策を可及的速やかに停止して頂くようにお宅の上のフロアの人たちに言っていただけますでしょうかねえとは思う。構造的な問題は確かにあるのだが、マイナス金利政策が収益面に凶悪な影響がある一方で、そのマイナス金利でどの程度実体経済に効果が追加的にでるのよ(別にマイナス金利じゃなくたっていいんじゃないの、という意味で)という話を上のフロアの方々が真面目にやっているとは到底思えないので。




2017/03/29

お題「本日はスポ末ですのでオペメモ/佐藤審議委員イェールで講演というか講義で期待インフレのお話」

「仕事しました」的な構想ってアタクシは好きじゃないですなあ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170329/k10010928531000.html
「こども保険」で保育の負担軽減へ 自民小委が構想
3月29日 0時08分

『構想では、新たな制度を「こども保険」と名付け、今の厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、働く人や企業などから幅広く徴収します。徴収した保険料は、小学校入学前の子どもがいる世帯に対して児童手当を増額する形などで給付し、保育や幼児教育の負担を減らすことにしています。』(上記URLより)

普通に一般会計でやった方が余計な制度作るよりも本筋だし、その後に出てくる額の事考えたら制度導入の手間暇というか追加の行政コストの方が勿体ないと思うのですが。

○オペ雑談メモ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170328.htm

米ドル資金供給 2017年3月30日 2017年4月6日 1.360
CP等買入 6,000 2017年3月31日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)46,876 2017年3月28日 2017年3月29日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4)10,000 2017年3月28日 2017年3月29日

ということでドルオペは兎も角として、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170328.htm

米ドル資金供給(3月30日スタート分) 550 550
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 2,160 2,160 -0.500 -0.500
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5)  10  10  -0.500 -0.500
CP等買入 13,267 5,995 -0.037 -0.030 70.6

(注4 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(2,116億円)、10年利付国債303回(7億円)、20年利付国債94回(3億円)、
20年利付国債159回(34億円)です。

(注5)国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)の売却銘柄は、10年利付国債305回です。

ということで補完供給は銘柄減って来ましたが相変わらず5年130回の2000億円以上の補完供給が出っ放しという状態になっているのですが、補完供給って、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151218d.pdf

『一の売却対象先に対して同一銘柄の利付国債を連続して売却することができる日数は、原則として最長 50 営業日(注2)とする。

(注2)金融市場の情勢等を勘案して日本銀行が必要と認める場合は、延長することがあります。』

ってありまして、(別の先が入れ替わり立ちかわりで借りているなら別ですが普通に考えるとこれ同じ人がロールしていると思うので)いつまでも借りれない(2か月ちょいで限度が来る)のですがいつまで続くんだかという感じですぬ。

というのは兎も角としてCP買入ですが、決算期末という意味では昨年9月末渡受渡のCP買入(オファー日は9月27日)と比較致しますと、前回は買入5500億円(今回より500億円少ない)に大して応札11,357億円の落札5,500億円でしたが、平均が▲3.2bpなので今回の方が若干金利が高くて、足切は▲6.7bpだったので、まあ今回の方がテール7糸と買入増えていた(って何でこの残高を維持する必要があるんじゃろとは思いますが)割には落ち着いたというか何というかの結果になっておりまするが、感覚的には9月末よりも潰さないと行けないキャッシュが多い(のか運用対象物不足なのかは鶏と卵ちっくですけどまあそんな)イメージがある(補完GCとか出る位ですからねえ)ので、まあ変な暴れ結果にならなくて良かったですねという感じです。


それから東京レポレートちゃんの方ですが、
           1w   2w   3w   1m
2017/3/22 -0.102 -0.496 -0.392 -0.267
2017/3/23 -0.788 -0.521 -0.412 -0.280
2017/3/24 -0.145 -0.136 -0.129 -0.123
2017/3/27 -0.152 -0.137 -0.129 -0.122
2017/3/28 -0.362 -0.230 -0.169 -0.145

ということで24日にお助けオペの実施で期末越えレートが沈静化したのですが、まあこういう場合に良くある話で、この前のアナウンスの中で「状況によってはおかわりやります」と言ってしまっているので、そうなると期末越えのモノ確保に関して粘ってやろうという向きが出てくるから意外にカバーが進まなくて直前になって上がってくるの巻みたいな事になるって図の気がしますが、さて本日はスポ末(なおお助けGCは基本T+1で出てくると思われる)ですが末初のモノはどうなるのやらというか、最後まで粘る向きとか居るのかなあとかまあ傍観の巻。


○佐藤審議委員の米国での講義を寝起きで鑑賞

・・・・するには邦訳版で22ページ組で本文9ページなのでまだ斜め読み状態で申し訳ないのですけれども、のっけからいきなりブチカマシが来ているのでこれはネタにせざるを得ません。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170329a1.pdf
日本の教訓──長期予想インフレ率をめぐって──
(米国・イェール大学における講演の邦訳)



・いきなりキタコレ!!!

題名でまあ想像はつくのですが立ち合いからいきなりのブチカマシが登場します。

『1.はじめに』から。

『はじめに、伝統と実績のあるイェール大学で講演の機会を設けて頂いたStephen Roach シニア・フェローに感謝申し上げる。Roach 氏は日本のデフレの教訓を題材として、マクロ政策論の講座を担当されているとうかがっている。デフレとの闘いのフロントランナーである日本銀行のボードメンバーとして、この場での私の問題提起が、学界における活発な議論に繋がれば光栄である。』

『四半世紀に及ぼうとする日本のデフレの処方箋については、既に多くの理論と実践、及び政策評価によりさまざまな知見が蓄積されてきている。日本銀行も昨年 9 月に「量的・質的金融緩和」の総括的な検証を行い、幾つかの重要な教訓を得た。本日はそれらのうち、捉えどころのない概念ではあるがデフレ脱却に決定的に重要と考えられる長期予想インフレ率の問題に焦点を絞って話したい。』

「捉えどころのない概念ではあるが」とか適当に毒が入っているのですがその次にブチカマシ来ます。

『2.日本の教訓』の『(1)長期予想インフレ率の決定要因』ですけど。

『結論から始めよう。長期予想インフレ率は中央銀行により決定されるという金融政策論の前提(1)は日本の経験により否定された。長期予想インフレ率を目標に向けて下げていく場合と上げていく場合とで、金融政策の効果は非対称だからである(図表 1)。』

1というのは脚注でちょっと分かりにくくなるので()を補記しましたが、脚注は

『1 例えば、FRB は"Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy (January 24, 2012, as amended effective January 26, 2016)" において、“The inflation rate over the longer run is primarily determined by monetary policy, and hence the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation.” と述べている。』

ということでもういきなり来ましたが、説明は実務的には誠にごもっともの話になっていて、ただまあこれが学者先生の皆様にどのような反応になったのか、というのは佐藤さんに何らかの機会にお話を頂くような会見でもありませんかなあと興味があります。


・なおインフレ期待の制御に非対称性がある話は実にごもっともではあるのです

『日本の経験は、一旦、物価の規範(norm)である長期予想インフレ率が低下(de-anchor)すると、ゼロ金利制約の存在により中央銀行の能力が著しく制約されることを示した。この点、学界の方々には違和感があるかもしれないが、長期予想インフレ率を目標に向けて上げていく(re-anchor)場合、中央銀行がonly game in town では限界がある。』

うんうん。

『必要なのは、強力な金融緩和を進める一方で、労働市場改革などの構造政策による潜在成長率(≒自然利子率)の引き上げを併せて進めていくことである2。』

2の脚注は『2 日本の安倍政権の当初の「三本の矢」には、財政・金融政策の協調で構造政策を支えるという積極的な意義があると考えられる。』となっています。まさにそうですな。

『以上は学界も真剣に考えるべき重要な教訓であるように思われる。なぜなら、潜在成長率の低下と長期予想インフレ率の低下の同時進行という抜き差しならない事態が、世界的な金融危機以降、多くの国で実際に観察されているからである(図表 2)。教訓は日本だけにとどまらないのである。』

ということで「大規模な金融緩和でMB増やしたら期待インフレが上がるのでどうのこうの」という置物リフレ理論に対して怒涛のブチカマシをしている訳ですし、そもそも論としてイェールに他の審議委員じゃなくて佐藤さんが登場してこのネタでレクチャーするという辺りが(イェールからご指名なのか日銀にお願いしたら日銀がしらっと佐藤さんを繰り出してきたのかは残念ながら存じませんが)非常に面白い所です。

ということでさらに読んでいきましょう。


・予想インフレのアンカーが重要という話をしつつも置物理論はしれっと棄却

『(2)低すぎる長期予想インフレ率の弊害』ということで、予想インフレのアンカーが重要という話をしつつ・・・・・・・・・

『若干敷衍しよう。より根本的な教訓は、中央銀行は長期予想インフレ率の低下を許容してはならないということである。』

ふむ。

『高すぎる長期予想インフレ率を引き下げることについて、中央銀行には過去の実績に裏付けられた信認がある。インフレとの闘いは、デフレとの闘いより容易、かつ戦略は単純である。この場合、長期予想インフレ率は中央銀行の物価目標により決まる、という経済学の前提が成り立とう。』

なるほど。

『しかし、低すぎるインフレ率により信認を失った中央銀行の物価目標は経済モデルの前提とはならない。日本のように潜在成長率と長期予想インフレ率の低下が同時進行すると、低すぎる長期予想インフレ率を金融政策で引き上げることができるかどうか、現在の経済学には十分な知見がない。』

置物理論が無慈悲な砲撃で火の海になっております。

『後で触れるように、長期予想インフレ率がほぼゼロ%とみられるなか、潜在成長率(≒自然利子率)もゼロ%台、かつ通常の経済取引には名目ゼロ金利制約があるためである。』

『実際、大規模な非伝統的金融政策でも、Friedman 的な貨幣数量説的メカニズムや New Keynesian 的な期待のジャンプはこれまでのところ不十分にしか起こっていない。』

期待のリアンカー(最近そういや都合が悪いのかあまり言わなくなっているが)って話を連呼している(いた)執行部も燃焼させておりますな。

『長期予想インフレ率のリアンカリングは未だ道半ばである。潜在成長率と長期予想インフレ率がここまで低くなっていなければ金融政策はもっと効果的であっただろう。以下では、長期予想インフレ率を巡り、@形成メカニズム、A日本の状況、B金融危機との関係、C労働市場改革との関係、について論じる。』


ということで・・・・・・・・


・長期インフレ予想の形成についての話でもしれっと砲撃に余念がありません

『3. 長期予想インフレ率を巡って』という所ですが最初は『(1)長期予想インフレ率の形成メカニズム』です。

『経済学では長期予想インフレ率と潜在成長率は無関係とされる。しかし、日本の実情に照らすと私にはそうは思えない。むしろ、長期予想インフレ率と潜在成長率は大まかだが相関があると考えられる(図表 3)。』

図表3にそれっぽいグラフがあるのですが、この説明って実は「2%は世界標準だから2%(キリッ)」とか、「潜在成長率とかそういうの関係なく2%なんです(キリッ)」という現在の執行部の物価目標数値の説明にもイヤミになっていますわな。

ただ佐藤さんは確か2%を取り下げるというような話はしていなくて、別に看板としての2%を掲げるのは結構だが、それを何でもかんでも無理してやるのじゃなくてフォワードターゲットでありムービングターゲットとしての2%であり、寧ろ経済の姿が物価2%と整合的であるようなシェイプにしていきましょうという経済全体の目指す姿としての看板として2%というのを掲げるのが吉みたいな話をしている(従来の話を継ぎ合せて解釈しているので違ったらごめんやでなのですが)筈ですので念のため。

『日本では 90 年代後半の金融危機と前後して長期予想インフレ率が急低下した。需要(資産価格デフレによる負のフィナンシャル・アクセラレータ)と供給(金融仲介機能の低下、バブルによる資源配分の歪み)の相互作用により悪化した経済のファンダメンタルズが、90 年代後半の金融危機により一段と悪化した(図表 4)。こうしたなかで、先行き悲観論から人々の中長期的な成長期待が低下し、潜在成長率も低下した状態が長引いたことで、人々の物価観が過度に保守的となった、すなわち、長期予想インフレ率の低下に至ったとみられる。』

さいですな。


次が『(2)日本の長期予想インフレ率』という小見出しになります。

『サーベイ・ベースの長期予想インフレ率の推移をみると、90 年代後半の金融危機とともに急落の後、1%程度となり、その後の世界金融危機、欧州債務危機などでも概ね 1%で粘着的となっている(図表 5)。しかし、このサーベイ結果についてはやや疑問である3。私見では、以下の理由から、実はゼロ%程度に低下しているとみる方が説得的と考える4。』

ということで脚注の3と4は、

『3 市場ベースの長期予想インフレ率(例えば 5 年先 5 年のインフレ・スワップ・レート)は、市場の流動性、厚みなどの点でさらに信頼性に劣るため、あまり参考にならない。

4 この点について補足すると、サーベイ対象のエコノミストの多くが 5-10 年先まで見渡してもゼロ%程度のインフレが続くと考えているとは直観的には思えない一方、エコノミストの物価観と家計・企業のそれに乖離がある、すなわち、家計・企業の長期予想インフレ率がエコノミストのそれを下回っている可能性はあると考えられる。』

ということで一々ごもっとも。

『第一に、ミクロの価格改定頻度をみると、前年比ゼロ%に品目が集中した状態が長く続いてきたため(=最頻値がゼロ)、人々がゼロインフレを定常状態と考えている可能性があること。米国の状況と対比するとわかりやすいであろう(図表 6)5。』

『第二に、公共料金が過度に粘着的であること6(図表 7)7。例えば、東京の地下鉄初乗り運賃は、消費税の影響を除けば、1995 年以降、20 年以上据え置かれている。』

脚注6は

『6 実体としては、 長期の経済低迷を背景に、公共料金の上昇に対する抵抗感が政治的に強まるもとで、公共料金のコスト上昇を財政赤字で補てんするメカニズムが強固に構築されていったという面がある。ただし、そうしたプロセス自体が物価の規範(norm)である長期予想インフレ率の低下を示していると考えられる。』

と、こういう話は別に執行部と乖離がある訳ではない筈。

『第三に、労使間の賃金交渉において賃金改定率が長年ゼロ%で、ベア復活後も 1%にも満たないこと8(図表 8)。』

脚注8は

『8 一方、安倍政権下でベアが復活したこと自体は、長期予想インフレ率がゼロから幾分上離れし始めた証拠である可能性もある。』

『第四に、1%の長期予想インフレ率を前提に日本のデフレ均衡を理論的に説明できないこと(図表 9)。』

ということで貼り付けスキルが無いから元の日銀HP見て欲しいですが、図表9の「インフレ均衡とデフレ均衡」というグラフは中々です。

『第四点について補足すると、名目金利ゼロ制約のもとでも長期予想インフレ率が有意にプラスであれば、実質金利をマイナスにすることでゼロ%近傍の自然利子率を下回る実質金利を実現できる。したがって、金融政策は有効で、デフレ均衡を脱出できる筈である。長期予想インフレ率がせめて 1%程度あれば、金融政策の有効性はもっと高かったのではないだろうか。』

ということで期待インフレの低下を止めるとかいう理屈(ブラードの複数均衡論とかその典型でしたが)でQE2をやったのはそのMBや国債LSAPが定量的に効いたのかどうかは兎も角として、政策がスコープしていたことは妥当だった、という話が以下に続きます。まあ良く良く考えたら佐藤さんって就任時は「緩和派最右翼」扱いだったんですからね!!!!!!!!(みなさんすっかり忘れてると思うが)


・インフレ期待の低下を阻止すべきであったという話

『(3)金融危機と長期予想インフレ率』に参ります。

『90 年代後半の金融危機を潤沢な流動性供給と資本注入により早期に収拾していれば、大規模なクレジット・クランチは避けられ、その後の日本経済のパスは違っていたかもしれない。広く共有されたこの教訓は、その後の世界金融危機の際に生かされた。民間の信用力(solvency)の問題に対しては、圧倒的な流動性供給とともに、迅速な資本注入による信用補完が重要である。』

『日本では、税金で金融機関を救済することへの世論の強い反発により、まず、金融機関への公的資金注入に多大な時間を要した。危機後、数次にわたり公的資金注入を実施し、信用不安を沈静化するのに実に数年を要した(図表 10)。日本銀行が潤沢な資金供給により流動性不安の払拭に成功したのも、99 年のゼロ金利政策、さらには 2001 年の量的緩和以降であった(図表 11)9。』

なるほど。

『所要準備を上回る潤沢な資金供給により市場金利をほぼゼロ%に低下させ、併せてフォワード・ガイダンスを導入することで政策の予見性を高める先駆的な試みではあった。しかし、90 年代後半の流動性不安に対し、もっと早い段階で手を打てたのではないかという思いはある。その点では、当時、日本銀行の金融緩和が不十分であったから危機が長引き、デフレの罠に陥ったとの根強い批判について、シンパシーを感じる部分はある10。』

と言いつつ脚注10には、

『10 一方で、危機以前の行き過ぎた緩和が大規模なバブルの源泉となったことも重要な教訓である。米国でも、IT バブル崩壊後の大規模緩和とその後のメジャードペースのゆっくりとした引き締めが、世界的金融危機に至る住宅バブルの源泉となった。』

というのもありますけど、

『また、日本銀行は、資産価格デフレによる実体経済への負のフィードバックループに重大な関心を払ったのに対し、マイルドなデフレについては長期間関心を払わなかった。実際、日本銀行は、デフレはマイルドで、1930 年代の大恐慌のようなデフレ・スパイラルではないと繰り返し説明していた11。』

ということで・・・・・・・・

『確かに、若干遅きに失したものの、潤沢な資金供給と資本注入によりデフレ・スパイラルは回避できた。しかし、その間進んだ長期予想インフレ率の低下が金融政策にどういう影響を及ぼすか、日本銀行はもとより学界などにもあまり問題意識がなかったようだ。』

まあそうですな。

『後知恵だが、金融危機後のFRB、債務危機後のECBのように長期予想インフレ率の低下だけは絶対に許容しない姿勢を明確にしておくべきであっただろう。』

まあ後知恵なんですけど結果論としてはそうだったんですかね。


・ということで以下の部分は時間の関係上明日に続くのですが(大汗)

次が『(4)労働市場と長期予想インフレ率』となっていまして、

『一旦下がった長期予想インフレ率を引き上げる方策について、私見では構造政策、なかんずく労働市場改革が重要と思う。』

ということでどうしたらよいですかという話が続くのですが、この先がそこそこ長いので(あと3分の1ほど残っている)本日は時間の関係上ここで勘弁して頂くとして、何となく全文引用しているんじゃないかという気がだいぶしてきましたがご勘弁賜ると致したく存じます。









2017/03/28

お題「期末GCお助けだが次回の期末は・・・・・/3月会合主な意見を鑑賞/FOMC会見より(虫干しですいません)」

ほー
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1H45CN
Investing | 2017年 03月 28日 05:07 JST
米金融・債券市場=10年債利回り1カ月ぶり低水準、トランプ氏の政策実行能力を不安視

○期末GCお助け措置の追加雑考

えーっと木曜日にアナウンスされてから金曜と昨日は期末GCお助けオペについて結果とか愚考とかしたのですが、改めて週あけてみて再度愚考したので感想を。

・お助け発動の基準がイマイチ不透明なのと唐突に出た感が強いので・・・・・・

って小見出しの通りなのですが、今般のお助け措置ってまあGCレートがドカドカ下がって市場がだいぶおかしくなっていたので、お助け措置自体は入れてもシャーナイナイという感じではあるのですが、その直前まで平常運転(確かにスーパー量的緩和だし買入系のオペで資金供給しちゃうから事前牽制のジャブとか打てないのは分かるけど)だったのにいきなり引け後の夕方に今日の明日の話をするというのはどうもこう発動基準がよー分からんというのは大いにあるのが今回ちょっと後に引きそうな話。

と申しますのは、これ期末に物無し芳一になるとお助けオペが出る、という風に市場が認識しちゃうとお助けが出るものだということで物無し芳一をカバーしにいかなくなる人が増えてしまい、その結果カバーもしないもんだから物無し芳一状態がGC金利とかに顕在化しにくくなって(足元では繋ぐけどタームでカバーしに行かない)、その結果としてタームのGCが最後の最後まで変調にならないのでお助けが出なくて期末に惨事が発生、みたいな事になりゃーせんかねとか少々気になる所です。

まあそんなのも含めて相場です、と言ってしまえばそれまでなのですが、昔々のトン調節時代の末初向けオペとかと違って量的緩和だし、大体からしてGCのモノの方が問題になるという事になると、これって発動基準がさっぱり分からない(インターバンクの資金需給だったらまあ発動基準がもう少し手触り感あるのだが)となると、期末の度に変な神経戦みたいになりそうでそれがちょっとと思うのであります、って言って言いたいことが伝えられているか物凄く自信が無いのですがまあそういうことです。

という雑感メモだけ置いておいて次の期末にどうなるか注目したいです。



○MPM主な意見

まあ現状維持だし展望レポートないし大体からして経済物価情勢のアセスメントも同じだったので今回はそれほどの話は無いのですが、そうは言いましても何かと味わいのあるのが「主な意見」。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2017/opi170316.pdf

・これは与党の方が言ってるのか野党の方が言ってるのかで違いますな

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですけれども、

『賃金の伸び悩みや税・社会保障負担の増大、実質年金額の減少といった雇用・税財政・社会保障制度に起因する問題が消費を抑制し、2%の「物価安定の目標」の達成を遅らせる一因となっている。できるだけ早く制度的な対応が行われることを期待したい。』

というのがありまして、いやまあこれが野党審議委員の方が仰せになっているとか、最近審議委員になった方々でリフレ系じゃない方が仰せになっている、というのであればまあ話は分かるのですが、よもやこれがリフレ系だったりこの政策当初から突っ込んでいる方々からの意見だったらさすがに顎が外れてしまうので、誰の意見なのか知りたいものですな。

なお、リフレ大先生におかれましては何せこの↓
http://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
2013.1.20
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー

にある『名目賃金は上がらないほうがよいその理由はあまり理解されていない』というご説明もそうですし・・・・・・・

まあそうでなくても総裁の説明とかだってずーっと「賃金と物価は同じように上がる」という説明を何度もしている訳で、一例とすればここ↓
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140320a.htm/

なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか
日本商工会議所における講演
2014年3月20日

の『4.賃金と物価 ?家計からみた物価?』って所をぽちっとなとクリックすると大変に心温まる説明が展開されている訳でして、今更おまいら何をゆうとるのやというか、「物価だけ円安コストプッシュで上げたってそれは持続的な物価上昇に繋がらんじゃろ」というのは異次元緩和導入前からツッコミ受けてただろという事でして、何ちゅうかこれをもし元々からリフレ政策ヒャッハーの方々が言い出したらさすがにそれはと思う。

なお、この話を執行部系またはリフレおじさんたちが言っているのでなければ上記の悪態は加齢もとい華麗に無かった事に致しますのでよろしくお願い申し上げます(誰に?)。



・すいませんこれマジで何言ってるのか分からなかったのですが

というのはさておきまして、『(物価)』の所の説明で読んでてマジで分からなかったのが一つあるんですがこれマジで分からないのでどういう意味なのか伏してご教授を賜りたい。

『現実の世界は膨大な固定費を持つ独占的企業が、相互に牽制しながら価格を設定している。固定費があれば、価格を下げてシェアを取るのが合理的かもしれない。しかし、それはデフレの中で賃金が上昇しない状況で合理的であったに過ぎない。賃金上昇と価格引き上げが経営戦略として認められ、社会的に許容されるようになることがデフレマインドからの脱却をもたらす。』

最後のはまだ何を言ってるのか分からんでもない(でもその説明だと金融政策で何でデフレ脱却が出来るのかという説明になっていないのでやはり良く分からない)のですけれども、前半の話が日本語としてマジで良く分からないのですけれどもこれは何を言いたいのでしょうか????????いや本当にマジのマジで分からないんですが。


・どうもこう「市場の認識」を変な国会質問並みに解釈していないかという気がするのだが

ということでこの部分を読んでしばし昨日のアタクシは頭の中に????がチョウチョのようにヒラヒラと飛び回って頭の中がお花畑になってしまったのですが気を取り直してその先の『U.金融政策運営に関する意見』に進みます。

『海外金利の上昇から、金融政策の転換を求める声があるが、日本の金融政策はあくまでも日本の景気と物価を考えて行うべきである。米国や欧州の物価上昇率は2%近傍となっているが、日本はいまだ0%近辺である。日本の金融政策の転換が必要となるまでには相当に時間がかかる。』

最初の一文以外は言いたいこと分かるのだが、別に「海外金利が上昇したから金融政策の転換をしろ」とかそんなナイーブにも程がある言ってる債券市場の中の人っておらんじゃろ(いるとしたら僭越ながら金利市場に向いていないと思うので転業されることをお勧めします)と思う次第でございまして、ここもとずーっとこの説明が出てくるのが非常に鬱陶しいのですけど、何かこう「市場の一部がこう言ってる」というのを藁人形論法的に説明していねえかと思うのですが、確信犯で藁人形論法しているにしては随分しつこくて、もしかして政策委員会の与党の方々ってマジで市場がこういう認識でいるとか思っているんじゃないかと却って不安になるので、藁人形論法は程々にされた方が良いのではないかと愚考する次第。

・・・・・というのもありますが、最近この「金融政策の転換が必要になるのには相当に時間がかかる」という趣旨の話をよく与党の皆さんから強調されるのですが、そもそも2018年度の終わりに掛けて2%の物価目標達成する、となっていますし、「出来るだけ早期に達成」という触れ込みでやっているからこその「きわめて強力な金融緩和」を行っている訳でして、それだけ極めて強力な金融緩和やっていて、しかも0%近辺の物価が2年後には2%水準で安定推移に近づくという位の勢いの金融緩和なんですから、それって「相当の時間」緩和をドンドン拡大したら物価が盛大に上に振れてしまいませんかねえとイヤミを申し上げたくなる訳ですよ。

と思ったらきっちりイヤミを入れている素敵な意見があるのですがそれはこのあとで。


・一方でこれは中々よろしいというのが金融政策の後ろの方に連発するのだ

一方これは中々よろしい。

『本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。』

情報発信にはオペレーションも含まれていると思います。

『2月に国債買入れ額が大幅に膨らんだことは、長期金利に目標を設定すると大幅な国債買入れを余儀なくされ得るという、イールドカーブ・コントロールの弱点が顕現化したものだ。』

これコピペすると変な半角スペースが途中に入ってしまう(ブラウザーはグーグルクローム)のですけれどもそれは兎も角として、木内さんの意見ですな。

『10 年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は若干スティープであるべきと思う。先行きの不確実性への備えもあり、買入れは極力減らしておくことが望ましい。なお、先行きの外貨調達環境を考えると短国利回りは4月以降もさほど上昇しない可能性があり、一段の買入れ減額の余地がある。』

こちらは佐藤さんですね。


・今回の主な意見の白眉はこれです

そしてその次の部分、どう見てもこれは佐藤さん木内さんのいずれかによる見解なのですが・・・・・・

『見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。』

・・・・・この何が白眉と申しますと、見解が極めて妥当である、ということもさることながら、イヤミ成分がタラタラと入っている事な訳ですよ(いやこれを与党の方が言ってたらビックリするのですがそれはないでしょ)。

つまりですね、後半の「長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。」という見解は一つの見解を述べたと同時に「今の与党連中はYCC政策がいずれ出口に向かう際の政策反応関数に関して何の議論も行っていない」ということを暗に大公開しつつイヤミを言っている訳ですよ。

しかも前段に「見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。」って入れているのも見解を述べる為に必要な前提であると同時に、野党の方々はそこまで早く物価が2%になるとは言ってない訳で、それよりも物価見通しが強い与党の方々が、本格的な外部環境の改善(すなわち均衡イールドカーブの上方シフト)における方策について何の議論もしていないとはお前らナメトンノカ、と言っているのと同じな訳でして、見解を述べるふりをして極めてイヤミたらたらな悪態をついているというのが大変に素敵としか申し上げようがございません。

さっきの「政策の転換には相当の時間が掛かる」という見解って、まあ総裁もそういう話をしていますが、本来的に言えば上記見解の通りのツッコミが成立する訳ですよ。すなわちYCC政策って「均衡イールドカーブに対する適切な金融緩和度合いを調整するためにイールドカーブコントロールを行う」という政策であって、物価やインフレ期待が展望レポートで示されるようなパスで上昇するのであれば、そう遠くない時期に均衡イールドカーブの位置は相応に変化することになりますから、その時点で政策金利を全く動かさないとなると金融緩和度合いが不適切になる、という理屈になっている筈なのですよ。

然るに、イヤミ意見にありますように「物価の基調が高まった時に何をするか考えてない」という状況にある、ということは一つにはまあ執行部無責任じゃのうと思いますし、更に申し上げますと今なにも考えていないということは、物価の基調が高まった場合に別に現政策の延長線上での政策(つまり10年コントロールというYCC政策のままでの政策金利調整)が行われない可能性すら有る訳で、「金利上昇圧力が高まってきて如何ともし難くなった」という時点で、まーた転進という名の撤退(でもマイナス金利付きYCCみたいに中途半端に過去の遺物は残るので益々複雑骨折になる)を行う可能性もあるよね、とまあそんな風に思うのでありました。



○FOMC会見ネタをすっかり飛ばしていたので慌ててまとめるのだ(大汗)

その後も高官発言がバカスカ出ている中で証文の出し遅れ感が強いのですが勘弁してつかあさい。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20170315.pdf


・only文言を削除した意味の説明を見ておりますと・・・・・・・・・・・・

会見の6ページ目くらいから参ります。

『STEVE LIESMAN. (前半というか殆ど割愛)Finally, why did you remove the word “only” before the word “gradual” when you talked about future rate increases?』

これは声明文の中での先行き利上げに関して、これまで「The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate」ってなっていたのに、このonlyが抜けた件についてどうなのよという質問。

『CHAIR YELLEN. (前半割愛)We did remove the word “only” in the statement today from “gradual.” I think this is something that shouldn’t be overinterpreted.』

んなわきゃーねーのだが以下弁明。

『I regard it as a relatively small change and think it’s appropriate for you to consider it in the context, for example, of the fact that our economic projections are virtually identical to those that we issued in December. They’re essentially unchanged both in terms of the path of the economy and the path of the federal funds rate. So we have carried out a modest adjustment of the federal funds rate because we’ve seen the economy progressing over the last several months in exactly the way that we anticipated.』

冒頭説明にもありましたように、今回の利上げに際して先行きの経済物価見通しをほぼほぼ動かしておらず、物価の現状についてマンデートにショートしているという説明が強気化した、となっているのですけれども、ここでもそういう説明になっていて、まあそんなことですけれどもFF金利の「modest adjustment」を行いまして、それと同じようにonlyを抜いたのは「relatively small change」ですよという話にしておる。

『We haven’t in any way changed our view about where the economy is heading or the risks. We had long said that if the economy progressed, and-it’s, you know, it’s been doing nicely, I think, in making progress, in showing resilience, and we have, you know, have some confidence in the path the economy is on. And if we continue to feel that, we will likely regard it as appropriate to make some further moves to scale back accommodation to move toward neutral, along the lines in the SEP.』

『Now, obviously, there are surprises. Our economic forecasts can change. But the word “gradual,” I think, emphasizes that if things continue in the manner that we’ve been going, as we have said now for quite some time, we think that gradual-some gradual increases in the federal funds rate-will be appropriate. And this is not a, you know, this is not a significant-this is not a significant change』

つーことで、まーゆうとることは分かりますし、まあ確かに12月のFOMCの時点でもその雰囲気はあったのですけれども、それにしても直近の盛大な利上げ音頭に加えて今回も何だかんだ言いましてもエライ前のめり(バランスシート縮小の話もするとか言い出しているんですから)になってしまった訳で、やはりその間には変化があったからスタンスが積極的(な緩和縮小)になってきている訳でございまして、何がFEDをそうさせたのか、という事に関する政策反応関数が今回は非常に分かりにくくて、「何をしたいのか」というのは分かりやすいメッセージなのですが「何故そうするのか」という話がこの先の会見内容を見てもどうもこう判然としないんですよね。

でもって講演とかでは断片は少しづつ出ているちゃあ出ているのですが、所詮は断片であって繋ぎ合わせて整合性のある説明がまだ出てきていないと思うのですよ。でもってそれはそれでわざとやっているのか、それとも実は政策反応関数自体がイイカゲンなのか、というのももう少し色々な講演を見たりして考えていくしかないのかも知れませんね。

とだいぶまとめてしまいましたが(汗)。


・「何が政策反応関数なのか」という質問には答えないのが今回の会見での特徴でもある

『NICK TIMIRAOS. Thank you. Nick Timiraos of the Wall Street Journal. Chair Yellen, between the release of the minutes of the previous meeting late last month and your speech in Chicago earlier this month, market expectations about an increase in rates today changed quite dramatically. What happened over the course of those two weeks to make officials far more interested in signaling the idea of raising rates at today’s meeting? And why do you think the market was so out of sync with where the central bank was?』

つーのと最後には市場とFEDの見通しのズレ(out of sync)ってどうよという質問もありますな。

『CHAIR YELLEN. So, when I look at our sequence of communications, they seem to me to have been reasonably consistent over this entire period. We had indicated in December that we expect-we saw the risks as balanced, and if the economy continued to progress along the lines we expected, that several rate increases would likely be appropriate.』

12月に申し上げましたが何か?だそうです。

『The minutes of our January meeting indicated that many participants thought that an increase in the funds rate would be appropriate fairly soon if things continued along those lines.』

1月議事要旨でも申し上げましたがと仰せですがあの時点で3月利上げ予想は穴予想だったと思うで(なおアタクシは3月あるかもと申し上げていた筈ですぜと自画自賛)。

『I indicated in my congressional testimony that I thought that, indeed, the economy was progressing in line with our expectations.』

はあ。

『And, as I think all of us-having that expectation and that if the economy continued to progress along the lines that we expected and we continued to see the risks as balanced-do regard it as appropriate to gradually remove accommodation that’s in place by having several interest rate increases this year. As we saw the data continue to come in in line with our expectations, my colleagues and I spoke out and indicated that, indeed, that had been and continued to be our expectations.』

それは分かったが政策反応関数は何なのよという答えは結局なくて以下は市場との認識乖離に関するお話。

『Now, you know, when you ask me, how did we get out of sync with the market, this is something I tried to reflect on a bit in the remarks I made in Chicago. And, of course, it is true that in 2015 and in 2016 each, we raised the federal funds rate only once, and perhaps market participants have been influenced by that pattern.』

ここ2年は利上げを1回ずつしかしていなかったので利上げするぞーと言っても市場の方は過去の映像に引っ張られているっというのはあったと思う、だそうです。

『I did try to explain the reasons why we had moved so slowly during those two years. And it reflects, I think, a set of shocks partly emanating from the global economy and risks that we saw to the outlook as well as more fundamental assessments-reassessments pertaining to the neutral level of the federal funds rate and the longer-run normal level of the unemployment rate. So I think there are reasons, but it is mportant for the public to understand that we’re getting closer to reaching our objectives; that policy is accommodative; that although the level of the neutral federal funds rate is probably quite low, we nevertheless have an accommodative stance of policy; and it will be appropriate to gradually move toward a neutral stance if we continue on the path we’re on.』

結局「我々はマンデートに接近していると認識しているがその辺りに関して市場との温度差がありますなあ」という説明に終始しているのですが、じゃあ何をもって「マンデートに接近」という話になったのか、という反応関数がワカランチ会長である、というのは変わりません。


・資産価格に関しての質問ではイエレン議長のFEDビュー音頭がつい(かどうかしらんが)登場

ちょっと一ひねりした質問があったのだが。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binya Appelbaum, the New York Times. The Bank for International Settlements has raised concerns that central banks are being insufficiently attentive to asset price-excuse me, asset price inflation. And stock market investors in the United States certainly don’t seem to be waiting for the Trump Administration to actually implement its fiscal policies. And I guess I’m just curious to know how much of a concern that is for you. And, if not, why not, given the remarkably elevated level of stock price evaluations?』

資産価格のインフレーションに関してどう思いますトランプ財政期待で株が上がってまっせと。

『CHAIR YELLEN. Well, we do look at financial conditions in formulating our view of the outlook, and stock prices do figure into financial conditions.』

ふむふむ。

『So I think the higher level of stock prices is one factor that looks like it’s likely to somewhat boost consumption spending.』

ワロタというか何というかで、これはイエレン先生本音ポロリじゃろと思います。

『We also noticed that, in the last several months, that risk spreads, particularly for lower-grade corporate issuers, have narrowed, which is another signal that financial conditions have become somewhat easier.』

何ちゅうかですな、いやその点って言うのはファイナンシャルインバランス的に必ずしも良い話じゃない(株もそうですけど)のですが、まあイエレンさんは本質的に昔ながらのFEDビューな人というのは変わらんのだなあとちょっと微笑ましく思いました。

『Now, on the other side, longer-term interest rates are up some in recent months, and the dollar is a little stronger. How does that net out? There are private-sector analysts that produce financial conditions indices that attempt to aggregate all these different factors affecting financial conditions. And for some of the more prominent analysts and indices, I think the conclusion they have reached is that financial conditions, on balance, have eased, and that’s partly driven by the stock market. So that is a factor that affects the outlook.』

ということで、どうも「金利が上がったけど株があがったりスプレッドが縮小しているから金融環境はそこまで引き締まっていません(キリッ)」とか言いたいようなのだが、こういう説明はちょっと違うんじゃないの、と思ってしまいます。たぶんスタンレーフィッシャー副議長あたりは全然違う話をしてくると思う。


・再度政策反応関数に関する質問が来る

そらそうよという感じで。

『KATHLEEN HAYS. Chair Yellen, Kathleen Hays. Oh, excuse me, Kathleen Hays from Bloomberg. I’m going to try to take the opposite side of this because-on this question about market expectations and how the markets got things wrong, and then how you say the Fed suddenly clarified what it already said.』

うんうん。

『But, for example, if the-if you look at the Atlanta Fed’s latest GDP tracker for the first quarter, it’s down to 0.9 percent. We had a retail sales report that was mixed. Granted the, you know, upward revisions of previous months make it look better, but the consumer does not appear to be roaring in the first quarter, kind of underscoring the wait and-see attitude you just mentioned.』

というのはちょっと前の質疑にあったのですが、トランプ財政でどうのこうのという質問の答えで、コンフィデンスが上がったかも知らんがビジネスコンタクツとの話ではまだ様子見ですなあとなっているしまだトランプ財政は見通しに突っ込めませんわという話をしていたのだ。

『If you look at measures of labor compensation, you note in the statement that they’re not moving up, and, in fact, they are. And if you look at average-there are so many things you can look at. And you yourself have said in the past that the fact that that is happening is perhaps an indication there’s still slack in the labor market.』

一々経済指標を持ち出しておまいらがいう程強いかとこれでもかと並べ立てるブルームバーグの記者ということでこれはどこかの誰かの生霊が憑依しているのではないでしょうか(冗談です)。

『I guess my question is this: In another sense, what happened between December and March?』

質問は仰せの通りと思う。

『GDP is tracking very low. Measures of labor compensation are not threatening to boost inflation any time fast. The consumer is not picking up very much. Fiscal policy-we don’t know what’s going to happen with Donald Trump. And yet you have to raise rates now. So what is the-what is the motivation here? The economy is so far from your forecast in terms of GDP, why does the Fed have to move now? What does this signal, then, about the rest of the year?』

中々しつこい質問ですがその答え。

『CHAIR YELLEN. So GDP is a pretty noisy indicator.』

ワロタ、つーかお前がノイジーと言いたかったのでは?

『If one averages through several quarters, I would describe our economy as one that has been growing around 2 percent per year. And as you can see from our projections, we-that’s something we expect to continue over the next couple of years. Now, that pace of growth has been consistent with a pace of job creation that is more rapid than what is sustainable if labor force participation begins to move down in line with what we see as its longer-run trend with an aging population.』

という調子で失業率や労働参加率の話とか労働市場の話をするのですが以下の引用割愛しまして、その説明に対してカスリーン(で良いのか読み方は?)記者は更に質問。

『KATHLEEN HAYS. [Inaudible] Just quickly, then, I just want to underscore-I want to ask you, so following on that, you expect it to move. But what if it doesn’t? What if GDP doesn’t pick up? What if you don’t see wage measures rising? What if you don’t-what if the core PCE gets stuck at 1.7 percent? Would you-is it your view, perhaps, that if there’s a risk right now in the median forecast for dots, that it’s fewer hikes this year, rather than the consensus, or more?』

『CHAIR YELLEN. Well, look, our policy is not set in stone. It is data dependent, and we’re-we’re not locked into any particular policy path. Our-you know, as you said, the data have not notably strengthened.』

データはnotably strengthenedではないとは言ってるんですが、

『I-there is noise always in the data from quarter to quarter, but we haven’t changed our view of the outlook. We think we’re on the same path, not-we haven’t boosted the outlook, projected faster growth. We think we’re moving along the same course we’ve been on, but it is one that involves gradual tightening in the labor market. I would describe some measures of wage growth as having moved up some. Some measures haven’t moved up, but there’s some evidence that wage growth is gradually moving up, which is also suggestive of a strengthening labor market.』

で以下続くのですが、結局「何がきっかけになって今回利上げをしたのか」というのが「見込み通り推移したからですが何か?」以外のメッセージは無くて、うーんこのというか、だったら12月のところでもっと強いメッセージ出せよと思うのでありました。


・利上げは経済が強いからだそうですよ

この質疑はちょっとウケた。

『JO LING KENT. Hi, Chair Yellen. I’m Jo Ling Kent with NBC News. I just want to know, what message are you trying to send consumers with this particular rate hike?』

『CHAIR YELLEN. I think that’s a great question. I appreciate your asking it. And the simple message is, the economy is doing well.』

ワロタ。

『We have confidence in the robustness of the economy and its resilience to shocks. It’s performed well over the last several years. We have created, since the trough in employment after the financial crisis, around 16 million jobs. The unemployment rate has moved way down, and many more people feel optimistic about their prospects in the labor market. There is job security. We’re seeing more people who are feeling free to quit their jobs, getting outside offers, looking for other opportunities. So I think the job market, which is an important focus for us, is certainly improving.』

以下続くが延々と威勢の良い話をしているだけなので引用割愛。


・symmetricの意味

『JEANNA SMIALEK. Hi, Jeanna Smialek, Bloomberg News. You emphasized in the statement that the Fed’s inflation target is “symmetric.” Would you be able to expand a little bit on why you did that, why it was included, how much of an overshoot would the Fed be willing to tolerate, and for how long?』

『CHAIR YELLEN. Well, a couple of years ago, we included the word “symmetric” in our statement of longer-run goals, and this seemed like an appropriate time to introduce that word into the statement because we had previously indicated that there was a shortfall of inflation from our 2 percent objective.』

『Now, headline inflation has moved almost back up to 2 percent. As I indicated, a better forward-looking measure of inflation, core inflation-that’s not our target, but I think it’s worth looking at because it’s a better forward-looking predictor of headline inflation-I think that’s still running a little bit under 2 percent, but we expect it’s going to move up to 2.』

『And this seemed like a good time to remind Americans that what our objective is is 2 percent inflation. Inflation is not always going to be at 2 percent. It’s-like all economic variables, it fluctuates. Sometimes it’s going to be below 2 percent, sometimes it’s going to be above 2 percent. We’ve had a long period in which inflation has run under 2 percent. As we move back to 2 percent, which is where we’re heading, there will be some times when it’s above 2 percent as well. And it’s a reminder-2 percent is not a ceiling on inflation, it’s a target. It’s where we always want inflation to be heading. And there will be some times when inflation is above 2 percent, just like it’s been below 2 percent. We’re not shooting for inflation above 2 percent, but it’s a reminder that there will be deviations above and below when we’re achieving our objective.』

ということで、声明文で示されているのと同じではありますが、物価水準がマンデート近くになって来たので、これまでは「マンデートに対してショートフォールで推移している物価とインフレ期待の今後の推移をマンデート達成の観点から確認していく」となっていたのが「物価とインフレ期待についてシンメトリックなマンデート達成の観点から確認していく」となっているので、それは当然ながら物価上振れ(本当にするのかよという話はさておきまして)にも目配りした運営をする、ってんですから今後何もなくて経済物価情勢がFEDの見通し通りに推移するなら、基本的には中立金利に近い水準に向けて金利を上げるという話であり、先般のシカゴでのイエレン講演からすると現状より1%上(その後利上げしたからあと75bp程度)をとりあえずは見る、という話をしている訳ですな。まあそうなるかどうかは情勢次第でしょうけど。


関連して同じ人の追加質問。

『JEANNA SMIALEK. How well can you tolerate an overshoot?』

『CHAIR YELLEN. Well, we would-if there were an overshoot and it appeared to be persistent, we would put in place policies to try to bring inflation back to 2 percent. That’s the core set of principles that we have adopted in our statement on longer-run goals and strategy. And exactly how long it would take to get back to 2 percent would depend, in part, on what was happening with respect to employment and our other objectives. So there’s no hard and fast answer to that.』

まあ答えにくい質問ではありますが、以前よりも2%オーバーシュートしても楽勝気分というばかりでもないという説明になっていますな。

とまあそんな感じでしょうか。





2017/03/27

お題「売現先実施/総裁講演は政策枠組みの説明がグダグダですなあ」

ふーん。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170324/k10010923111000.html
「道徳」教科書の初検定 8社すべてが一部修正し合格
3月24日 16時06分

『小学1年生のある教科書では、申請段階では、物語に友達の家のパン屋を登場させていましたが、「国や郷土を愛する態度」などを学ぶという観点で不適切だと意見がつけられ、教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に修正しました。』(上記URL先より)

・・・・・・・(゚д゚)

○売現先オペ実施でGC金利は上昇しましたの

つーことで金曜日は売現先オペ久々にあったのですが、SCで出してくれる訳でもなくてGCだったそうで(すいません)1兆打ち込まれましたが入って来るのは短国の既発のショートとかに成っていない銘柄のようで誠に残念。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170324.htm
国債売現先 10,000 2017年3月27日 2017年4月3日

つーことで結果ですが、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170324.htm
国債売現先(3月27日スタート分) 20,601 10,002 -0.110 -0.130 92.3

となりましたが、これで短国のレートとか2年のレートとか上がったかというとBB引値ベースで3Mカレントが3毛弱甘くなったけど▲31.4とか相変わらずのマイナス30bpモードとなっておりますし、2年はカレントだけ1毛甘(とは言っても2年の新発は発行が4月なので末残に跳ねない)で既発は0.5甘の▲28.0とかまあねという感じですかそうですか。

ただまあ超短い所は1兆円のGC玉供給効果っつーことで・・・・・・・・

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート
           O/N T/N  1W  2W  3W  1M  3M
2017/3/21 -0.088 -0.071 -0.105 -0.414 -0.319 -0.258 -0.166
2017/3/22 -0.086 -0.073 -0.102 -0.496 -0.392 -0.267 -0.168
2017/3/23 -0.086 -0.073 -0.788 -0.521 -0.412 -0.280 -0.169
2017/3/24 -0.066 -0.030 -0.145 -0.136 -0.129 -0.123 -0.154

となっていて、23日に1wが飛んでいるのはSP1Wが3月末越えになったからなので良いとしまして、とりあえずトムスタートで1兆円GC玉の供給があった効果がてきめん(なのかリファレンスなのでとりあえず敬意を表したのかは知らんですけれども)でTKRRのリファレンスは(O/Nには関係ないのであまり変化無かったですけど)1M以内の金利はどどーんと低下の巻となりましたの。

ただまあ中長期債に関しては朝方何となく反応した感はあったのですけれども、超短い所のGC需給に関するお話なのでそこまで長期金利に効かないじゃろというのもあってあまり関係なかったのかねという事でしょうか。

・・・・・・・ただまあ何ですな、今回のアナウンスメントって「明日売現先やるよ短国買入やらないよ」って前日の夕方近くに打ち込んでおりまして、えーっとすいませんせめてそういうの前日の朝に出すとか、もうちょっとこう何とかならんのかよとは思う所でして、いやまあやっていること自体は期末のGCが飛んでいくという状態だったので何らかの牽制を入れても良い所だったと思うのですが、もうちょっとこうマイルドな方法って無かったのかねっつーか、最初から「期末のGCレポ金利が大きく低下しているのでケシカラン」って正面切って言った方が分かりやすかったんじゃないのかなとは思いますけど。


ちなみにSLFちゃんですが、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170324.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3) 70,813 2017年3月24日 2017年3月27日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4) 17,875 2017年3月24日 2017年3月27日

(注3) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却対象銘柄は、
2年利付国債368回、5年利付国債126回、5年利付国債130回、5年利付国債131回、
10年利付国債308回、10年利付国債336回、10年利付国債338回、20年利付国債93回、
30年利付国債36回です。

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)の売却対象銘柄は、
5年利付国債130回、10年利付国債305回です。

というオファーで、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170324.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)2,905 2,905 -0.500 -0.500
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5) 337  337 -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
2年利付国債368回(10億円)、5年利付国債126回(13億円)、5年利付国債130回(2,125億円)、
10年利付国債308回(200億円)、10年利付国債336回(518億円)、10年利付国債338回(3億円)、
20年利付国債93回(26億円)、30年利付国債36回(10億円)です。

(注5) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(302億円)、10年利付国債305回(35億円)です。

前場8銘柄後場2銘柄でして、オファーの方に5年131回があったのでおーと思ったら落札の方は無かったようで(これで5年130と131がどっちもショート銘柄になっているのだったら130のショート戻せんだろと思ったのですがさすがにそこまでの話ではないという理解で良いのかな〜と思ったが良く分からないのでご存知の方教えてジェネラル)、相変わらずの5年130回攻撃となっておりますけど、これ永遠にSLFでつなぐわけにも行かないので(制限があるよ〜)どうするんでしょうかねえとは思うのでした。


○総裁講演であるが金融政策の説明がちょっと複雑骨折

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170324a1.pdf
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」:
導入後半年を経て
── 「ロイター・ニュースメーカー」における講演 ──

ということで総裁の落語来ました。

『1.はじめに』から金融政策の説明の話のあたりまでをきっちり鑑賞。

『日本銀行の黒田でございます。本日は、日本銀行の金融政策運営についてご説明する機会を賜り、厚く御礼申し上げます。日本銀行が、昨年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入してから半年が経ちました。これまでのところ、この新たな枠組みは円滑に機能しています。本日は、やや長い目でみて、一昨年以降の世界経済や国際金融市場の動向を振り返ったうえで、私どもが、マイナス金利の導入を経て、今回の新しい枠組みを採用した経緯や、その基本的な考え方をご説明したいと思います。そのうえで、わが国経済の現状および先行きと、今後の金融政策運営のスタンスについてお話しします。』

ということで始まり始まり。

・マイナス金利政策の導入の説明が色々と過去の説明を無かった事にしている件について

『2.「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」:採用の経緯と考え方』というのがありますが、マイナス金利政策の話から入るのであって、「2年で2%」と大口をたたいた話は無くなっているのですがそれは兎も角としまして・・・・・・・・・・・・

『(1)国際金融市場の不安定化とマイナス金利の導入』という小見出しがあってですな、

『こうした世界経済の逆風は、わが国経済にも大きな影響を及ぼしました。金融市場では、円高と株安が進行しました。物価面でも、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比は、2014 年夏以降の原油価格下落の影響もあって、2016 年は3年振りにマイナス圏となりました。2%の「物価安定の目標」を達成するうえでカギとなる予想物価上昇率をみると、原油価格の大幅な下落の中でも何とか横ばいを保ってきましたが、今ご説明したような世界経済の逆風の中で、弱含みに転じました(図表2)。』

ということで、『(マイナス金利の導入とその影響)』になりますが、

『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、こうした強い逆風に対処し、2%の「物価安定の目標」を実現するために、2016 年 1 月に導入したものです。予想物価上昇率が弱含む中で、実質金利を引き下げるには、名目金利を一段と引き下げる必要があります。マイナス金利は、イールドカーブの起点を引き下げ、国債買入れと組み合わせることによって、長短金利水準のさらなる低下を狙いとするものです。』

という説明になっているのですが、ここで2014年10月の追加緩和での総裁会見を改めて確認してみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf
2014年10月31日のいわゆる黒田バズーカ2の時の説明は・・・・・・・

『日本銀行は、昨年 4 月、15 年にわたるデフレから脱却するため、「量的・質的金融緩和」を導入しました。「量的・質的金融緩和」は、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の実現に強く明確にコミットするとともに、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和を実施することを柱としています。このような政策によって、人々の間に定着してしまったデフレマインドを抜本的に転換することが目的です。』

『ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』

一部を引用しただけですが、これ黒田バズーカ2の時の会見での冒頭説明でして、同じ理屈だとしたら何で金利にフォーカスしてマイナス金利にしたのかがさっぱり分かりません。


さらに嫌味を申し上げますと、先ほどの説明の中で、『2%の「物価安定の目標」を達成するうえでカギとなる予想物価上昇率をみると、原油価格の大幅な下落の中でも何とか横ばいを保ってきましたが、今ご説明したような世界経済の逆風の中で、弱含みに転じました(図表2)。』とあるのですが、

マイナス金利政策導入前の2015年12月決定会合の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k151218a.pdf
『予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』


マイナス金利導入時の2016年1月の展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1601a.pdf
『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』

マイナス金利政策導入後の2016年3月決定会合の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160315a.pdf
『予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。』

となっておりまして、声明文などでの説明だと「弱含み」に転じたのマイナス金利導入後じゃネーノと思うのですけれども、図表2の方を見るとその前から思いっきり下がった事になっておりまして、確かにまあそれらしい話も総括検証でしているのですけれども、こうやって落ち着いている時に改めてこの図と説明を示されると、過去の政策判断における予想物価上昇率の説明と全然違うじゃねえかという感じでして、だったらもっと前にマイナス金利じゃなくて追加の国債購入拡大をした方が良かったんじゃないでしょうかねえ、としか思えんこの説明という所ですな。


・でまあマイナス金利の効果と副作用の説明はいつもどおり

『マイナス金利の導入は、名目金利の押し下げという面で、大きな効果を発揮しました。国債金利は、イールドカーブ全体にわたって大幅に低下しました(図表3)。その結果、貸出金利やCP・社債の発行金利もしっかりと低下しました。この間、金融機関は、貸出態度をさらに積極化させました。このように、マイナス金利の導入は、金融環境を一段と緩和的なものとしましたが、このことは、世界経済の逆風の中にあって、わが国の企業や家計の経済活動をサポートしたと考えています。』

とか何とか言っているのですが、そもそも緩和政策が本当に効いて、この政策がドドーンと効くから物価目標達成だぜヒャッハーと市場が思ったらフィッシャー効果で長期金利には上昇圧力が掛かる筈なのでして・・・・・・・・・

『一方で、イールドカーブのフラット化が想定以上に進んだため、広い意味での金融仲介機能への影響に留意する必要が出てきました。』

とか何とか言ってますが、そもそもフラット化が進展するという時点で政策の効果が信用されていないんだし、大体からして金利が下がって嬉々として効果が発揮だの必要ならば更に金利引き下げだの調子に乗りまくっていたのだからフラット化が想定以上に進んだとかお前もうこの手の話すんなよと申し上げたくなる。

『すなわち、銀行は、「短期調達・長期運用」を収益の基本構造としており、かつ、調達の主な手段である預金金利は低下の余地が乏しいという状況にありました。このため、イールドカーブが低い水準でフラット化する場合には、預貸金利鞘の縮小をもたらし、収益を圧迫することになります。こうした状態が長期間続けば、累積的に銀行の経営体力に影響をもたらし、金融仲介機能に悪影響を与える可能性があります。』

それマイナス金利の前からそうですが。

『このほか、金利水準、特に長期・超長期金利が過度に低下すれば、保険や年金などの運用に影響し、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。』


・オーバーシュート型コミットメントの話

『(2)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の考え方』の話になりますが。

政策の骨子の説明は相変わらずですが、

『一つは、「オーバーシュート型コミットメント」です。具体的には、「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」ことを約束しました。ポイントは、消費者物価上昇率の「見通し」ではなく、「実績値」に基づいたコミットメントであるという点です。』

となっているのですが、MBの拡大方針って言ったって金利の方は操作可能なのですから、MB拡大しながら付利金利引き上げて不胎化するとかやりようはある訳で、これって何がどうオーバーシュートなのかというとまあ看板だけ威勢が良いという話ではあるのですけどね。

『もとより、「物価安定の目標」は景気の変動を均して平均的に実現する必要がありますので、消費者物価上昇率が2%を超える局面があることは当然想定されています。しかし、金融政策が経済・物価に影響するまでには時間差があることを踏まえると、中央銀行が「実績値」をベースにここまで強いコミットメントを行うことは異例です。先行きの金融政策運営をあらかじめ明らかにするという方法は「フォワード・ガイダンス」と呼ばれており、リーマン・ショック後、米国のFRBをはじめいくつかの中央銀行が採用していますが、「見通し」をベースに制度設計を行うことが一般的です。もっとも、わが国では、長年にわたって実際の消費者物価上昇率が2%を下回っています。そのことを踏まえると、予想物価上昇率を2%程度に引き上げ、その水準でしっかりとアンカーするためには、人々が実際に2%を超える物価上昇率を経験し、「物価は毎年2%くらい上がっていくものだ」という物価観を定着させていく必要があります。そこで、日本銀行は、「オーバーシュート型コミットメント」によって、こうした姿が実現するまで、大規模な金融緩和を継続することを約束しました。』

といういつもの説明ですが、これどこまで本気(またはヤケクソ)なのかってのはまあ実際に物価がホイホイ上がってこないと良く分からんですし、そらまあ黒田さんの任期中に出口がどうのこうのとかにならなけば別に人が代わったらとぼけてしまうという大技があるとは思うのですけれども、物価がうっかりホイホイ上昇した時にどうするのというのは興味がある所です。


・YCCの説明はやっぱりあまり誠実な説明じゃないんだよなー

『新しい政策枠組みのもう一つの要素は、「長短金利操作」、いわゆる「イールドカーブ・コントロール」です。』ということで説明がありますが途中から。

『「イールドカーブ・コントロール」では、国債買入れ額を固定する従来の方法に比べて、状況に応じた柔軟な対応が可能です。例えば、国債買入れの一単位あたりの金利押し下げ効果は、経済・物価情勢や国債市場の状況等によって異なります。このため、国債買入れの金額を操作目標とする従来の枠組みでは、日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブと比べて、金利の押し下げに過不足が生じる可能性がありました。』

ということですが、じゃあ日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブについてはどうなっているのか、というのが説明を盛大にスルーするところが黒田クオリティ。

『この点、「イールドカーブ・コントロール」では、長期金利の操作目標を明示することによって、目標の実現のために、柔軟かつ効果的に国債の買入れを進めることが可能となり、結果として、政策の持続性も高まるものと考えています。』

と言っているのですが、長期金利の操作目標を明示していると言いましても、そもそもその長期金利の操作目標がどのように決まるかというのが思いっきりブラックボックス(というかエイヤーと決めてしまってそれを何だかんだと屁理屈捏ねて変えないだけの話なんでしょうけれども)になっているという時点で政策が本当に持続可能かという話なんですよね。

『この点について、しばしば指摘される「国債買入れの限界」について一言考え方を申し上げておきます。これまでのところ、国債の買入れは円滑に行われており、近い将来において問題が生じるとは考えていません。そのうえで申し上げると、仮に、将来いずれかの時点において、買入対象となる国債が品薄となり、国債の需給が逼迫するような状況になった場合、他の条件が一定であれば、一単位の国債買入れによる長期金利押し下げ効果は、より大きなものとなるはずです。すなわち、より少ない金額の国債買入れによって同じ程度の金利低下効果を実現できることになります。』

ということでこの説明がまーたインチキ説明になっていまして、そもそも論として今は別に国債買入額が目標になっていないのですから(80兆円文言に拘る人は別みたいだけど)、「国債買入が札割れになったら政策が限界」という話をしている訳ではないのですから、その点での限界というのは別に問題にならない。

しかしですよ、日銀による「一単位の国債買入れによる長期金利押し下げ効果は、より大きなものとなる」という状況になって「より少ない金額の国債買入れによって同じ程度の金利低下効果を実現できる」という状況というのはどういう状況なのか、と考えますと、それは債券市場における流動性低下が顕著なものとなっている(だから日銀の国債買入での金利低下インパクトが高まる)という事であって、それって今般の総括検証において「経済・物価・金融」の情勢を点検しながら政策運営を行っていく、という理念から考えますと、明らかに「金融面に問題が生じている」という状態な訳でして、それって政策の持続性に問題があるんじゃないの、という事ではないでしょうか。

しかもその次の話なのですが・・・・・・・・・・・

『マーケットでは、「先行き日本銀行の国債買入れが困難となり、その結果として長期金利がコントロールできなくなる」といった見方もあるようですが、そういった事態は考えられません。このように、「イールドカーブ・コントロール」は、きわめて持続性が高いスキームです。』

とありますが、この場合の「買入が困難になって長期金利がコントロールできなくなる」という話って「外部環境の大幅な好転によって金利先高観が強烈に強まった時に、0%近辺の長期金利のコントロールって大丈夫なのか」という話でありますからそもそも上述の説明がインチキ。

それに加えまして、金利上昇圧力が高まった時に確かに無限に買入をすればそら金利は止まりますけれども、そういう時ってそもそも論として「長期金利の水準をその所に止めておくことが政策として正しいのか」という問題に立ち至る訳でして、この人たちの説明って「物理的に可能か」という話と「それはプロコンを考えた時にやって良い政策なのか」という問題をわざと分離して説明するという悪い癖があって、そら物理的に物価何でもいいから上げたければ日銀が1000円札を2000円札に全部交換して上げますとか言い出せば良いんですから、「物理的に可能だから可能」という説明をするのって如何な物かと思いますよ。

#まあ国会みたいな相手の所だったらこの手の説明しないとそもそも滅茶苦茶な反応するアホウがたくさんいるので仕方ない、というのはあるかも知れんが、ロイターの行う講演とか一応プロ向けなんでしょうからもうちょっとまともな話をして頂きたいものです


・今後のスタンスとかいう所は何か説明が色々と自己矛盾しているのでもっと整理してください

途中飛ばして『4.今後の金融政策運営のスタンス』って所ですが、

『最後に、今後の金融政策運営のスタンスについてお話しします。先ほどご説明した通り、「イールドカーブ・コントロール」は、経済・物価・金融情勢を踏まえて、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すものです。今後の政策運営についても、こうした考え方に沿って判断していくことになります。』

だったらイールドカーブ示して下さい。

『この点について、少し敷衍しておきたいと思います。「経済・物価情勢」の判断に当たっては、毎回の「展望レポート」で示しているように、先行きの経済・物価の見通しとリスク要因を考慮していくことになります。また、「金融情勢」の判断に当たっては、金利環境が金融仲介機能に与える影響について考慮します。』

といってましたがさっきの「政策に限界が無い」という話では明らかに極端に金融情勢がおかしくなっているケースを挙げてYCC政策が持続可能という説明をしていましたが・・・・・・・・・

『以上の枠組みに沿って、現在の状況を整理します。まず、「経済・物価情勢」は、ひと頃に比べて好転していますが、2%の「物価安定の目標」には、なお距離があります。1月末の「展望レポート」で示したように、2%に向けた物価上昇のモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けています。リスク要因という点では、経済・物価のいずれについても下振れリスクの方が大きく、特に中長期的な予想物価上昇率の動向については注意が必要です。』

『「展望レポート」の物価見通しは、民間の見通しに比べて高めではありますが、それでも、2%に達する時期は「2018 年度頃」になるとみています。以上を踏まえると、「経済・物価情勢」という観点からは、現時点において、金融緩和度合いを緩める理由はありません。』

という説明も変で、金融緩和度合い自体を一定の範囲内にするのがYCC政策なのであって、外部環境の変化によって金融緩和度合いが同じでも出来上がりの金利水準が代わる筈なのですから、本来の説明であれば「外部環境にはまだ大きな変化が無いので、誘導金利目標について変更するような環境にはないと判断しています」と言うべき。

『この点、日本銀行の金融政策は、あくまでも日本経済の状況に応じて、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から決定すべきものであり、海外の長期金利の上昇に応じて、日本銀行が長期金利の操作目標を引き上げるということはありません。』

この素人向けの説明って金融市場関係者向け(ロイターなのでそうだと理解してますが)の時にするの止めてもらえませんかねえ。


『次に、「金融情勢」、すなわち、金融仲介機能に対する影響についての判断です。この面からも、現時点において、長短金利の操作目標を引き上げる理由はないと考えています。超長期金利は、昨年9月に比べて上昇しており、保険や年金等の運用環境は、幾分改善しています(図表9)。銀行収益に大きな影響を及ぼす短中期ゾーンの金利は引き続きマイナスとなっており、預貸金利鞘の縮小傾向が続いていますが、銀行は積極的な貸出態度を維持しています(図表 10)。』

って説明なのですが、さっきは「現時点において、金融緩和度合いを緩める理由はありません」という説明をしているのでして、超長期の金利が上昇しているんだったら金融緩和度合いが緩まっているじゃんという話になるんですけど・・・・・・・・・・・

『銀行貸出は前年比2%台半ばから後半の伸びとなっています。このように、これまでのところ、経済活動を支える金融仲介機能が低下しているということはありません。もとより、低金利が金融仲介機能に与える影響は、時間の経過とともに累積的に現われてくると考えられます。日本銀行としては、今後とも、金融機関とよくコミュニケーションをとりながら、金融仲介機能に与える影響について、しっかりと点検していきます。』

はあそうですかとしか申し上げようがないのでまあパス。

『以上のように、現在は、経済・物価・金融情勢のいずれの観点からも、2%の「物価安定の目標」の早期実現に向けて、現状のイールドカーブを維持し、世界的な経済情勢の好転を活かしていくべき局面であると考えられます。』

超長期の金利が上がっているという評価なのに現状のイールドカーブを維持とは???????

『なお、この点について、一点付言したいと思います。「金融市場調節方針」は、以上のような考え方に沿って金融政策決定会合で決定されるものです。国債買入れなどのオペ運営は、この「金融市場調節方針」を実現するために実務的に決定されます。毎回の国債買入れの金額などは、金融市場の状況に応じて変化しますが、日々のオペ運営によって、先行きの政策スタンスを示すということはありません。』

と言っても上記のように説明が色々とワケワカラン中ですと、結局オペを見て判断したくなるというのが人情な訳で、そもそもの政策運営の説明が今いちゃもんつけたようにファジーにも程があるからオペで一喜一憂しないといけなくなるんですよねー。

という悪態大会でした。








2017/03/24

お題「期末対策で国債売現先登場!/布野審議委員会見から」

オバマケア代替法案採決先送りですか・・・・・・・・

○期末の債券市場対策をやらなければいけないほどに市場機能が・・・・・・・・・・

昨日の午後にしらっとこんなのが打ち込まれるの巻。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170323a.pdf
3 月末におけるレポ市場の国債需給タイト化への対応について

『最近のレポ市場の動向を踏まえると、この 3 月末に向けて同市場の国債需給が一段とタイト化すると予想されます。このため、日本銀行では、レポ市場の国債需給を緩和するための一時的な措置として、以下の対応を講じることとしました。』

ということですが、そらまあ連日SLFがでていましてしかも5年130回がバカスカ出ているという状態な上に期末と来ますので対応キタコレという所でございますが。

『1.国債供給のための国債売現先オペの実施

3 月 24 日(金)に、3 月 27 日(月)スタート、4 月 3 日(月)エンドの国債の買戻条件付売却(国債売現先オペ)をオファーします。また、27 日以降も、必要に応じて、3 月末を跨ぐ国債売現先オペをオファーする方針です。(注)オファー時刻等については、既に公表している「オペタイムテーブル」をご覧ください。』

つーことで国債売現先オペ実施で、国債供給のためのって言ってるようにこれは日銀の保有銘柄指定で売現先(実質SCレポ)を期末越えで行いますって話で、期末越えレポを貸してウマーという人には残念とは言え、そもそも中短期のこの辺の銘柄って金利水準が水準ですから国内投資家のポートにどのくらいありますねんという話(債券インデックス対比の人とか、とりあえず国債残高要る人とか、そうは言ってもポート全体のリスク量調整で買わないと行けない分というのはあるけど)だとみられますので、まあ期末のオペ爆発は回避できるのですが、じゃあ4月3日になると玉が出てくるのかと言うとそれも怪しいですの。

まーそもそも論として日銀が買い過ぎなのと金利水準が低すぎるので流動玉があちこちにあるという状態になっていないというのが中短期ゾーンには問題としてあるので、もう本質的にこの状況何とかして国債市場の流動性を戻そうと思ったら特定銘柄に関しては日銀売切しないとダメなんじゃネーノ(流動性供給入札で追加出して行くというのはあるけど)くらいのイメージががががが。単売りするとそらややこしい事になるので、この際輪番で買いを入れる時にセットで「国債流動性供給のための国債売却オペ」とか何とか美名を付けて4000億の買入と500億の売切を同時に行うとかやったらどうでしょうかねえ(白目)位の話かも知れない。

つーかまあ日銀が買い過ぎな所に来て、金利が一旦上がると皆さんバカスカ打ち込んで来て、その後需給が物凄くタイトになるという図を示しているという事でしょうなと思いますけど、これはもう4月からの中期輪番は減額必至ですな。

・・・・・・・ということで輪番スキップとかそういう事しなくても元々日銀の買入がでかい訳でして、だいたいどこかの閾値が良く分からんけれども、かつての短国でもそうでしたがストックがどこかに来ると一気に需給が締まってレートがポンポン強くなる(中長期債と違って短国ってレポ市場の流動性が皆無に近い筈なので売る玉が無くなるのが早いですけど)の巻とかそういうのになりましたな、と思いますと、やはり買入を減らすのには別に急ぐ必要は無くて、需給締まって買入減らさないとどう見てもマズイでしょうとなると堂々とバカスカ減らせますね、という事でした。

とは申しましても、これまたかつての短国と同様ですが、こんな状態になってから買入減らしても市場機能がだいぶおかしくなった所での事なので、おかしくなったものが可逆的に直ぐに戻るのかという問題もあってどうなんでしょうかねえ的な。


でまあこういう事が起きるのと、YCCにしておけばこういう措置(これやるとMBは吸収になってしまうので)はやりやすくなっているというのは良かったですねとは思うのですが、まあ国債買入はこの調子ですと受動的にペースを落としていくしか無くなって来まして(でもYCC出来ているのだから無問題)、だんだん「80兆円」の文言がどうのこうのという話もどうでも良く成ってくると良いですねと存じます。


『2.国債補完供給の応募銘柄数の上限引き上げ

3 月 31 日(金)から 4 月 7 日(金)までの間に実施する国債補完供給について、売却対象先ごとの1回当たりの応募銘柄数の上限を一時的に緩和し、従来の 20 銘柄から 30 銘柄に引き上げることとします。

(注)上記期間における国債補完供給を円滑に実施するために必要と認める場合には、当日のオファーおよびオファーバックの時刻を変更する可能性もあります(変更する場合には、別途、各対象先に連絡します)。』

もう面倒だから常設ファシリティ化してよと言いたくなりますが、まあそれをやられると今度はイールドカーブの需給的な要因による歪み(ってまあどこからどこまでがこの要因とかそう簡単に分解できないけど言いたいニュアンスは分かりますよね)が無くなってしまいますし、そういうのも含めてマーケットであって、そういうマーケットで超過リターンを取りに行く、というのが参加者行動でもありますので、常設ファシリティ化したらマーケットメーカー大歓迎で投資家は憤死する人もいるでしょうな。

しかしですな、1年経過したら80兆円とは言わないですけれども、やはり国債市場の流動性更に枯渇する訳ですから(そう考えると新規発行分並みかそれ以下に国債買入拡大ペースを落としてよと思うのだが)、そんな中でセトルメントに対してプレッシャーを与える国債決済期間の短縮化って本当にやらなければいけないものなのか、QQE政策の軌道修正後にやれば良いのではないか、と毎度の嫌味を言いたくなりますな。


『3.3 月中の国庫短期証券の買入れの取りやめ

今 3 月中は、金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れをオファーしないこととします。



オファーしないってんですから今週来週の短国買入は無し(つーか3/31って元々やるのか微妙ではあるのですが)という事になりましたが、何せ昨日の3M入札も

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170323.htm

(3)募入最低価格 100円07銭9厘0毛(募入最高利回り)(-0.3166%)
(4)募入最低価格における案分比率 0.9629%
(5)募入平均価格 100円08銭4厘8毛(募入平均利回り)(-0.3398%)

つーことで相変わらずの▲30bp台(引値も▲34.2なので平均より若干強い)となっていまして、短国買入減らしても3Mは全然金利上がらんという状態でして、まあこの短国買入もバカスカ減らせるでしょと。

まー超短い所はマイナス付利金利があるので、この水準に近くなると国債残高積むとか担保とかのニーズ復活してくるし、▲10bpより金利が上がれば日銀当座預金からの逃避資金がドカドカ入る(のでそこまで金利が上がるとは思えない)となりますので、別に3月中とか言わずに4月以降もバンバン減らした方が良いんじゃないですかねえ。


MB目標は無くなった(正確にはオーバーシュートコミットメントがあるから減らすというのは難しいのだが、どうせ長期国債買っているからその分は増える)のでこういう事が出来るのは、YCC政策で緩和政策の延命を図る(とは日銀は言ってないけど)という趣旨からしたら半年前に打った手が早速効果を発揮しましたという事ですが、政策運営の枠組み的に言えば、「外部環境が大幅に好転した時に長期金利の押さえつけが本当に出来るのか、というよりやって良いのかという状態になるのか」という問題点に加え、「国債の買入ストックが増えすぎて債券市場の機能がおかしくなってしまっても政策を続けられるのか、というよりやって良いのかという状態になるのか」という方の政策の副作用との比較衡量問題がありますなと思うのでした。



○布野審議委員会見から

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1703d.pdf

・利上げの条件に関しては当たり前ですが答えは回避します

『(問) 1 点目は、金融政策について、2%の「物価安定の目標」の達成はまだ道半ばであるため、長期金利操作目標の引上げを検討しているという市場の見方はちょっと違う、という趣旨で講演されていると思います。この点、どのような条件が揃った場合に長期金利操作目標の引上げが検討され得るのか、ご見解をお願いします。(後半割愛)』

『(答) 最初のご質問ですが、今おっしゃったように、日本銀行の掲げる 2%の「物価安定の目標」に照らして消費者物価で安定的に達成することを考えますと、現状では非常に発射台が低いです。先程少し前向きに考えられると申しましたが、発射台が低いという意味において、金融政策を転換する、例えば、長期金利を調整するといった状況にはないと考えています。』

まあそうでしょうな。

『そのうえで、転換の条件については非常に難しい質問ですし、満たすべき必要条件は考えられても、必要十分な条件を満たしているかについては、やはり金融政策決定会合の都度判断していく余地が必ず残ります。例えば、一定の条件を外部とシェアして、それを機械的にやるということであれば会合を開く必要もないので、そういう意味では、事前に条件を示すことはなかなか難しいと思います。』

微妙に唸るがまあ言いたいことは分かる。

『ただ、私の観点から 1 つ申しますと、「物価安定の目標」が実体経済に関わる目標ですので、実体経済の動きを伝える様々な指標に注目して、金融政策の転換を私なりに整理しながら、その都度の金融政策決定会合に臨みたいと考えています。(後半割愛)』

つーことで当然ながらゼロ回答ではあるのですが、物価どうのこうのよりも総合判断的な言い方をしているので、どこまでも引っ張るのか意外に早くその手の話になってくるのかというのは予断を許さんのでは、と何となく思いましたが根拠はアタクシの勘なので何とも。


・景気に関しては「威勢の良い話をする」というよりは「明るい見通しを出しましょう」的な

上記質問の後半ですけどね。

『(問)(前半割愛)2 点目ですが、今朝公表された 2 月の貿易統計において、対米貿易黒字が増加して、全体の黒字も 2010 年以来の高水準となりました。財界ご出身の布野審議委員にぜひ伺いたいのですが、トランプ大統領が対米黒字の大きい国を批判している中、4 月には日米経済対話も控えています。そうした中、米国の政権の保護主義的な姿勢が、日本企業の海外での経済活動にどういう影響を及ぼし得るのか、それがどれくらい日本経済にとってリスクになり得るのか、お考えをお願いします。』

なるほど。

『(答)(前半割愛)2 点目のグローバルな通商貿易の動き、米国の新政権との関係ですが、これは言うまでもないことですけれども、世界経済を巡る様々な各国間の政策論争とは、かねてより自由貿易主義と保護主義的な両方の考え方が絡みながら、様々な交渉、折衝がなされており、最近、特にそういった大きな枠組みが変わったというようにはみていません。そういう意味では、それぞれの交渉、折衝を担当する方々が、双方の自由主義的な考え方、保護主義的な考え方を、どういう形で自国のため、ないしは世界に対する経済の貢献であるとか、様々な分野から考えつつ交渉されるということだろうと思っています。』

『ただ一言申しますと、昨今の世界経済の情勢は、「人」・「物」・「金」、全ての面で、グローバルな産業連関の繋がりが非常に濃密に絡んでおり、一方的に自由主義や保護主義を徹底することには現実的に無理な面もあります。議論を尽くして折衝が行われれば、あまり変なことにはならないだろうと比較的楽観しているところです。』

という話をしまして、その次の質疑が中々面白かったのですけど、

『(問) 春闘についてお伺いします。今回の春闘は、まだ途中ではありますが、ベアが前年を下回る結果になりそうということで、その辺りをどのように受け止めているのかお聞かせ下さい。また、これを好循環に変えていくために必要なことは何か、金融政策だけでは足りないのではないかとも考えますが、政府の政策も含め、どういったところが必要かという点を教えて下さい。』

という質問に対して、

『(答) 何々産業の調子が良いとか、この産業は不況業種であるとか、一律の議論ができないように、各産業における個別企業で様々なパフォーマンスが出ていますので、ベア等賃上げのそれぞれの会社の決定も、幅があるだろうと思っています。そうした幅をもって物事が決まっていくことは、わが国経済や企業行動の成熟度を示しているものと前向きに考えています。』

ほほう。

『そのうえで、春闘については全体を纏めた数字が出てくることも事実ですので、これについては4 年連続のベアアップということで前向きに捉えて良いのでないかと思っています。』

というのは兎も角としまして、

『このベアアップを所得から消費への良い循環に繋げていくためにはどうしたら良いのかということですが、前年と比べれば少し下がる可能性もありますが、全てのことについて良いところもあれば、不満足なところもあるわけです。』

ほうほうそれでそれで?

『その中で、是非皆様にこの場を借りてお願いしたいのは、やはりポジティブな面にもフォーカスして情報を広めて頂き、消費者及び企業家の皆様が、それぞれ自らの意思決定――消費の意思決定であったり、投資の意思決定であったり――をなさるときに、日本の経済は大丈夫だと思って、前向きに消費・投資に取り組んで頂くようなお力添えを是非頂きたいということです。』

ここは「おー」という感じでして、バーナンキだかイエレンだか他の誰かか覚えていないですけれども、中央銀行が明るい見通しとか希望を見せて経済を鼓舞するのって大事じゃね的な発想をするのは当然でしょ的な認識を示したとか示さないとかって話があったと思います。一歩間違えると大本営発表になってしまうのでもろ手を挙げて賛成するという訳でもないのですけれども、まあこういうのって福井の俊ちゃん時代の日銀もそんな感じでしたなあと思うのでした。なお黒田さんの場合は最初は良かったのだが「2年で2%」の大風呂敷が過ぎて、達成時期の先送りを繰り返した結果大本営発表モードの暗黒面に落ちてしまいました。


・海外リスクの話でもリスクの説明はするけれども状況は改善という話をするのだ

『(問) 先程の質問と関連するかもしれませんが、世界経済に少し明るい兆しがみえてきたということは、日本の輸出を考えた場合の外部環境も好転しているという理解でよろしいでしょうか。一方で、リスクについても、海外のリスクをいくつか指摘されていたので、その辺のリスクが顕現化する可能性についてどうみていますか。』

という質問に対しての説明。

『(答) まずリスクについてお答えします。リスクは色々なところで取り上げられていますが、世界第 1 位の経済大国である米国の通商産業政策や財政政策がどのような展開になっていくのかが 1 つのリスクです。もう 1 つは、世界第2 位の経済大国である中国も、高度成長から安定成長へ向けて、中国政府のいう新常態(ニューノーマル)に軟着陸するという課題を抱えていまして、なかなか簡単に舵取りできるものではないという意味でこれも 1 つのリスクです。ヨーロッパも政治の問題を抱えています。』

ということですが・・・・・・

『では悲観すべき状況なのかについては、先程申しましたように、私は今、悲観する情勢にはないように思います。また昨年後半以降、ポジティブな動きが出ています。昨日、今日と株式相場は若干下落していますが、色々な意味で米国経済も縮小に向かうのではなくて、拡大の余地がまだあると私自身はみていまして、ここはポジティブだと思います。』

なるほど。

『それから中国については、私はどちらかというと、楽観的にみる部類に入ると思います。』

ほほう。

『中国経済はよく言われている過剰設備・在庫問題を抱えているのは事実ですが、過剰設備の整理・調整というのは時間が多少かかるにしても、過剰在庫の方は、相当調整が進んだのではないかと思っています。その結果、資源価格であるとか、輸入も現に中国は増えています。そういう意味で、あれだけの大きな経済の成長が低くなったとはいえ、1千兆円規模の経済が5%を超える世界的にはハイスピードで成長しているわけですので、在庫調整もある程度一段落して、多少ものを買い始めているというのは、わが国経済及び東アジア周辺のASEANなどの経済に対しても、ポジティブなインパクトが期待できるのではないかと思っています。』

てな事ですので、

『ですから、リスクに目を配りつつも、少し前向きに考えられるのではないかなと思います。例えば、時計の軸を逆に戻して考えますと、1 年とか 1 年半前は、今よりも悲観度は高かったように思います。そういう意味で、今は多少良いとみています。』

確かに。


・政策の副作用に関して

『(問) 昨年のマイナス金利、それから 9 月のイールドカーブ政策の導入、ともに布野審議委員は賛成していらっしゃいます。確かに先程から言われている2%の「物価安定の目標」は分かりますが、これだけの政策をやってきて、結局、残ったのは日本銀行のバランスシートにおける国債の積上げとか、金融機関の問題とか、様々なことを言われていますが、現状の政策を継続することによる副作用、マイナスのところを、どのように今みていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。』

という質問ですが、

『(答) 私は、ご指摘のとおり、マイナス金利の導入の際も、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に移った際も、賛成しています。その結果を申しますと、金利水準は明らかに下がり、それを多として、前向きの消費や投資に繋げて頂いた消費者や企業家がおられますので、ポジティブな結果が出てきていると思っています。』

YCCになってからは金利が上がっている気がするのですが(その前が下がり過ぎとは言え)・・・・・・・・・・

『また、お金の流れという意味では、銀行等の金融機関を通じた流れもありますし、社債等を通じて、企業が直接資金調達をすることもあります。全体をみますと、それぞれがプラスにきいていると思います。銀行経由のものがあまり増えていないのではないかとおっしゃる方もいますが、細かくみれば、これもプラスにきているのは事実でありますので、私は結果として、良い面が出てきていると思っています。』

設備投資が伸びないんですが・・・・・・・・・・・

『そのうえで、副作用があるのかないのかということについては、これは私の信念ですが、「全ての良き薬には副作用もある」ということで、副作用は常に念頭に置かなくてはいけないと思っています。』

この辺が置物リフレ一派とは違う(ってあんなのと比較すること自体が布野さんに失礼に当たりますから誠に申し訳ないのですが)わけで、副作用を考える必要はないとか言ってたどこぞのジンバブエ先生とは大違い。

『具体的に申しますと、色々な面が考えられますが、おっしゃられているように、金融機関の収益に圧力がかかるという副作用については、注視しなければならないと認識しています。先の「総括的な検証」において、それまで金融政策は、経済と物価をみて運営すると言っていましたが、それに加えて金融の情勢、すなわち金融のプロセスがきっちりと経済において機能しているかどうかも含めて、金融政策を決定していくという形で――それまでもやっていましたが――、明示的に昨年後半以来、考えています。今後についても、同様の姿勢を貫徹して、その都度の金融政策決定会合での意思決定に臨みたいと、私個人としても思っていますし、他の委員も同様の考え方であると考えています。』

まあだから何か動くかというとそういう感じは全然なさそうではございますが、金融面をどう見ても考えていないのが少なくとも2名(桜井さんはその辺考え方を出して無いので良く分からん)いるのがどうもねえとは思います。


○その他備忘メモメモ

・米国金融政策は意見割れますなあ

まあ今後の経済の進展次第、ということでしょうが、しかし「利上げ3回あるで」というのを認識させて全然金利が上がらんどころか下がる、というのは外部要因によるものもありますけれども(「3回出来ねえだろ」というのは有るでしょうから)イエレン先生大勝利ではあります。

でもってウィリアムスさん
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKBN16U2Q7
Business | 2017年 03月 24日 04:20 JST
今年3・4度の利上げ妥当ー米サンフランシスコ連銀総裁=WSJ

『[サンフランシスコ 23日 ロイター] - ウィリアムズ米サンフランシスコ地区連銀総裁は、経済状態は良好とした上で、今年3度もしくは4度の利上げは妥当との認識を示した。』(上記URL先より)

イエレンさんはその前がSF連銀総裁で、まあこの人はイエレン一派みたいですので気にしてます。


カシュカリさん
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kashkari-balancesheet-idJPKBN16U2QO
Business | 2017年 03月 24日 04:23 JST
バランスシート縮小、早期に計画公表を=米ミネアポリス連銀総裁

『[ワシントン 23日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は23日、バランスシートの縮小計画の詳細を早期に明らかにしたいとの考えを示した。連邦準備理事会(FRB)関連の会議で、記者団に対し述べた。総裁は「計画を先延ばしする理由はない。政策には選択が必要な多くのトレードオフが存在する」と指摘。「トレードオフに関して合意が得られたら、できるだけ早期に公表し、市場に備える時間を与えたい。そうすることでサプライズを最低限に抑えることができ、FRBにとっても望ましい」とした。』(上記URL先より)

計画は早期公表だがバランスシートを早期縮小しろとは言っていないので間違えないようにしないといけませんが、カシュカリさんだけは(FOMC反対しましたし)利上げよりもバランスシートの方に拘っている感がありますな。


でもってこの前のカシュカリさんの反対説明の本文部分とか、記者会見の応答の残り(というよりこの前ネタにしたの全体の2割くらいなのだ)とかECBとか積み残しまくっておりますのでせっせと整理しないといけません(すいませんすいません)。






2017/03/23

お題「1月議事要旨と布野審議委員静岡金懇」

いやー昨日はSLFをFLSとか書いちゃうし、会見付のFOMCがあと4回とか3月のFOMCは終わってますがなっての書いちゃうしで昨日は連休ボケが1日遅れてきましたな。誠に申し訳ございませんあばばばばー。

それはそれとして、
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1GZ52B
Markets | 2017年 03月 23日 05:08 JST
米金融・債券市場=国債価格が上昇、短期の財政政策期待後退

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF22H0K_S7A320C1000000/?dg=1
円、一時110円台に上昇 4カ月ぶり
2017/3/22 23:01

トランプ期待剥落モードと謎の期待モードのスイングが続くのかこのまま剥落なのか・・・・・・


○1月議事要旨だが景気認識って割と一致してるんですよねー

1月29−30日議事要旨
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2017/g170131.pdf

・まあ実務的な話ですが

『V.金融政策手段に関する「基本要領」の記載事項の見直し』

という奴があったのをそういやスルーしていたのですがメモメモ。

『1.執行部からの説明

金融政策手段は、基本的な事項を「基本要領」として金融政策決定会合で決定したうえで、実務運用面などの要領の実施にあたって必要な事項を執行部で決める扱いとしている。もっとも、現行の「基本要領」は、記載内容がやや詳細にわたる事項があり、法令改正のほか、取引慣行やシステム対応といった実務面の変更によっても改正が必要となる例がみられる。金融政策に関する審議の一層の充実に資する観点から、政策的な含意をもたない改正を極力回避できるように、「基本要領」の記載事項の見直しを行うこととしたい。』

ということで1月31日に

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170131e.pdf
「共通担保資金供給オペレーション基本要領」の一部改正等について

『日本銀行は、平成29年1月30・31日の政策委員会・金融政策決定会合において、下記1.および2.の措置を講ずることを決定しましたので、お知らせします。

また、当該決定に伴い必要となる関係諸規程を整備するため、下記3.の措置を講ずることとしましたので、併せてお知らせします。

本件の実施日については、改めてお知らせします。

なお、本件は、これまで政策委員会・金融政策決定会合において決定してきた事項のうち、実務的なものについて執行部で定める扱いとする技術的な措置であり、これまでの取扱いに実質的な変更を加えるものではありません。』

というのと条文が物凄い勢いであるのでスルーしておりましたが、相手方の定義にある参照法令条文の部分とか、掛け目の数値がどうのこうの的な部分とか、実務的な部分での入札方法とかの細かい部分の表現をふわっとしたものにして実務的な入札方式が変わっても一々MPMで決めなくても良いようにするとかありますが、共担オペの担保が「根担保」から「担保」に変わったのってのも中々味わいあるなあとか思うのでした。

ちなみに
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170222c.htm/
「共通担保資金供給オペレーション基本要領」の一部改正等の実施日について
2017年2月22日
日本銀行

『日本銀行は、平成29年1月30・31日の政策委員会・金融政策決定会合において決定した「共通担保資金供給オペレーション基本要領」の一部改正等(注)について、いずれも平成29年2月28日から実施することとしましたので、お知らせします。』

とあって既に実施されています。



・何気に経済情勢の現状分析に関しては見解が合っている面が多い件について

『W.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』ですけどね。

『わが国の景気について、委員は、緩やかな回復基調を続けているとの見方で一致した。すなわち、委員は、海外経済が緩やかに成長するもとで輸出・生産が持ち直しを続けているほか、個人消費も底堅く推移するなど、回復の足取りが一段としっかりしてきているとの認識を共有した。』

共有したとな。

『ある委員は、海外経済の好転、政府の経済対策、金融緩和政策の強化がプラスの相乗効果をもたらしており、昨年後半以降、わが国の景気は回復の足取りを強めているとの見方を示した。また、別の一人の委員は、海外経済の緩やかな成長のもとでの輸出の持ち直し、労働需給の改善と実質雇用者所得の増加を背景とした個人消費の改善、業況感の改善を踏まえた設備投資の増加など、このところ、実体経済面での明るい材料が増えているとの認識を示した。 』

ということで威勢のいい一部の意見はあるものの反対サイドの記載はないですの。各項目もそんな感じで推移していまして、個人消費の所だけ、

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しているとの認識を共有した。一人の委員は、個人消費は、以前から堅調であった外食などのサービス支出に加えて、最近では自動車、家電などの耐久消費財の販売、スーパー、コンビニエンスストアの売上も改善傾向が明確になってきていると指摘した。』

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善に加え、株価上昇に伴う資産効果などにも支えられて、緩やかに増加していくとの見方を共有した。ある委員は、過去に購入したデジタル家電などの耐久消費財が買い替えサイクルに入ってくること、株価の安定、消費マインドの好転などから、消費性向はいずれ下げ止まるとの見方を示した。この間、一人の委員は、来年度における年金受取額の減少の影響などには注意が必要であると述べた。』

と警戒的なのが入っていますが、物価の現状認識に関しても、

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は0%程度となっており、当面は、エネルギー価格の動きを反映して、0%程度から小幅のプラスに転じていくとの見方で一致した。』

『ある委員は、除く生鮮食品・エネルギーでみた消費者物価は、前年比小幅のプラスで一進一退の動きとなっており、これまでの個人消費のもたつきや為替円高の影響がラグを伴って現れていると付け加えた。この間、予想物価上昇率について、委員は、現実の物価上昇率が小幅のマイナスで推移してきたことから、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、弱含みの局面が続いているとの認識を共有した。ある委員は、予想物価上昇率の各種指標は総じて下げ止まりの動きとなっており、インフレスワップレートやエコノミストの予想物価上昇率などで、ひと頃と比べて上昇しているものもみられると付け加えた。』

とまあ現状認識の所で「いやその分析は甘い」みたいなのはあまり無い状態ですし・・・・・・・・

『2.経済・物価情勢の展望 』に行きますと、

『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、緩やかな拡大に転じていくとの見方を共有した。委員は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調を辿るとの認識を共有した。』

共有している訳よ。

『また、委員は、輸出も、海外経済が緩やかに成長率を高めていくため、基調として緩やかに増加するとの見方を共有した。そうしたもとで、委員は、見通し期間を通じて、潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方で一致した。』

一致している訳よ。

『2016 年 10 月の展望レポートでの見通しと比べると、委員は、成長率については、海外経済の上振れや為替相場の円安方向への動きなどを背景に、幾分上振れるとの見方で一致した。』

とまあこの辺りまでそんなに見解に差が無いのに急に物価見通しの所で見解が割れるというのが実にこう味わいが深い訳ですな、うんうん。


・では物価見通しのどこで差が出るかと言えばそらもうインフレ期待でしょう

『物価情勢の先行きについて、大方の委員は、消費者物価の前年比は、@需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていく、A2%程度に達する時期は、見通し期間の終盤である 2018 年度頃になる可能性が高い、との見方を共有した。』

ということで大方の委員でして毎度おなじみの2名が反対な訳ですな。

『これらの委員は、2016 年 10 月の展望レポートでの見通しと比べると、物価上昇率の見通しは概ね不変との見方で一致した。この間、複数の委員は、見通し期間中には2%程度に達しないとの見解を示した。』

つーことで・・・・・・・・・・

『委員は、物価見通しの背景となる中長期的な予想物価上昇率と需給ギャップについて議論した。』

そらそうよ。

『まず、中長期的な予想物価上昇率について、委員は、現実の物価上昇率が小幅のマイナスで推移する中で、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、2015 年夏場以降の弱含みの局面が続いているとの見方を共有した。』

これは共有。

『先行きについて、大方の委員は、個人消費が緩やかな増加を続けることを背景に、企業の価格設定スタンスが再び積極化していくほか、労働需給のタイト化が賃金設定スタンスを強める方向に影響するとの見方を共有した。また、これらの委員は、@「適合的な期待形成」の面では、エネルギー価格が物価に対して押し上げ寄与に転じていくことや、このところの為替相場の円安方向への動きの影響もあって、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向を辿り、2%程度に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。』

というのが基本的な理屈だがそもそもQQEの元で一回コストプッシュと消費増税駆け込みで実際の物価が上昇したのですが結局期待ってそんなに上がらなかったという事実があるのですけどまあこの人たちの見解は更に続く。

『ある委員は、実際の物価上昇率が高まることで、オーバーシュート型コミットメントの効果と相俟って、予想物価上昇率が上昇していくとの見方を示した。この委員は、2016 年 10 月の展望レポート以降の新たな展開、すなわち@海外経済の上振れなどに伴う需給ギャップ見通しの上振れ、A個人消費の持ち直し、B最近の為替の円安方向への動きやコモディティ価格の上昇といった点は、いずれもこうしたシナリオの実現をサポートするものであると付け加えた。』

@〜Bって実際問題としてこれ全部外的要因で金融政策効果ちゃいますので、これで本当にフォワードルッキングに繋がるのかと言えば前回と同じことになるんちゃいますかという気はだいぶします。

『一方、複数の委員は、予想物価上昇率の上昇ペースについて、より慎重な見方を示した。』

佐藤さんと木内さん。

『このうちの一人の委員は、予想物価上昇率が適合的に決まる部分が大きいとの「総括的な検証」の結果を踏まえると、見通し期間中に期待がジャンプすることは想定しにくいと述べた。』

良いイヤミですな。


次が需給ギャップ。

『次に、需給ギャップについて、委員は、労働需給の引き締まりが続く中、ゼロ%程度で横ばい圏内の動きを続けてきたが、足もとでは改善の動きがみられるとの見方で一致した。先行きについて、委員は、輸出・生産の持ち直しに伴う設備稼働率の改善に加え、経済対策の効果の顕在化もあって、労働需給の引き締まりが続くことから、需給ギャップは、2016 年度末にかけてプラスに転じ、その後はプラス幅を拡大していくとの認識を共有した。』

というところでサラッと終わっていますが、この需給ギャップがどの程度効くのかとか、大体からして潜在成長率の推計変わってるんだからその分需給ギャップの改善が遅れるのではないかという気がするんですがまあいいです。

つーことで需給ギャップの改善がどの程度効くのかという面での意見の差が良く分からんのですが、まあ想定通りでインフレ期待が上がっていく、という見立ての所で思いっきり意見が違うという話なのでした。実は景気認識には大きな差は無い訳ですね。


・金融政策に関してですが最近よく会見や国会で答弁される部分が気になるので

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』ですけどね。

『金融政策運営にあたって、委員は、「経済・物価・金融情勢を踏まえて、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持しているか」が重要な判断基準であるとの見方で一致した。そのうえで、大方の委員は、物価動向について、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠け、引き続き注意深く点検していく必要があるとの見方で一致した。』

大方の委員とな。

『これらの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえると、現行の金融市場調節方針を堅持し、強力な金融緩和を粘り強く推進することで、2%に向けたモメンタムをしっかりと維持していくことが重要であるとの認識を共有した。』

まあそら良いんですけど実際にそのオペレーション出来るのというのはありますが、という辺りは兎も角としてこの次の部分が気になる表現。

『このうち何人かの委員は、米国長期金利の上昇などを受けて、日本銀行が長期金利の操作目標を引き上げるのではないかとの憶測も聞かれるが、日本銀行の金融政策は、あくまでも2%の「物価安定の目標」の実現という観点から決定されるべきであるとの認識を示した。』

この話って国会とか会見とかでも聞かれる質問の筋を微妙に外してこういう答え方をするのですけれども、そもそも「米国金利が上がるから国内金利を上げないといけなくなる」というのは少なくとも国内金利市場を真面目に見ているとそういう言い方をしない筈で、「円安進行やら実際の物価上昇などで国内金利に上昇圧力が掛かる場合に、YCCで事実上やっている10年0.1%上限金利状態が持つのか」という観点で話をしているのであって、「海外金利上昇即国内金利の引き上げ」というようなナイーブな話をしている訳ではないのですよ。

でですね、まあ確かにこの前の総裁会見とかでも割とナイーブ系の質問があったりするように、メディアとか外野の方では確かにこの意見で示されるようなナイーブ系の話もあるんですけれども、金融政策って金融市場経由で効果を波及させる面もあるのですから、コミュニケーションとして「プロの人たちが納得するような話」というのも入れてくれないと金融市場の方としては(と主語が大きくなりましたが、アタクシだけの話だったらゴメンナサイ)何だかなーと白けてしまうのですよね。

つまりですね、国内の金利市場の人たちは別に「米国が利上げするから日銀も利上げ」とかそういう単純な話をしている訳ではなくて、(概念的に言えば)均衡イールドカーブからの適切な緩和度合いを保つ、というのがYCCの骨子である以上、(推計に幅があるとはいえ)明らかに均衡イールドカーブが大きく上方シフトした時にYCCの長期金利誘導水準をそのままに置くべきなのか、また置くことが可能なのか(コントロールに相当の無理が生じないのか)という辺りの話を念頭に金利水準がどうのこうの、という話をしている訳であって(そうじゃない方もいるかもしれないけど)、市場の人たちがそういう感じで考えているのに、日銀の与党筋から出てくる説明が毎回上記のようなナイーブないちゃもんに対する反論ベースの話ばかりでてくると、こっちとしては藁人形論法で誤魔化されている感が物凄い高まってしまう(だいたいからして黒田日銀になってから人の話の聞く耳もたない的なスタンスに見えているのですし)訳ですよ。

とまあ小姑のようなツッコミではあるのですが、今回議事要旨見てて一番うーんこれはと思ったのこの部分でして、コミュニケーションとしてもうちょっとちゃんとした、というと失礼かも知れませんけれども、政策の基本的な考え方がこうだからこうです、みたいな話やそれに沿った政策運営というのをして頂かないと、市場との対話もへったくれも無いんですよねえ、と思うって書いてアタクシの言いたいことがちゃんと伝わっているのか不安なのですけれども、まあもうちょっと真摯にコミュニケーションしてくれないと対話の水準がドンドン阿呆化してどうしようもなくなると思うんすよねー。


・YCC実務に関しては1月会合なので仕方ないのですが後でみると色々とアレ

気を取り直してその次。

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの見方を共有した。』

1月末の会合であってこのあと2月3日にあのお洒落相場が待っていたと考えると中々味わいがある。

『ある委員は、現行の枠組みは所期の効果を発揮しており、オペレーションの柔軟な調整等、その運用についても市場は冷静に受け止めているとの認識を示した。』

いやーあっはっは。

『また、別の一人の委員は、グローバルな市場の不透明感が高いもとで、金利のボラティリティが高まる可能性を踏まえると、執行部に一定の裁量を持たせ、肌理細かな調節運営を引き続き行うことが重要であると述べた。』

うーんこの。これ文章作った方がアカンタレなのかもしれないけれども、「執行部に一定の裁量を持たせ」というのだと「金利のブレをある程度容認すべし」と読めてしまうので、そこの前段と「きめ細かな」という後段が繋がらない(きめ細かくやるんだったら金利のブレは小さくするでしょ)ので真意が伝わらん。

『そのうえで、委員は、イールドカーブ・コントロールのもとでは、国債買入れの金額やタイミング、回数などは、金融市場調節方針を実現するために実務的に決定されるものであり、日々のオペ運営によって先行きの政策スタンスを示すことはないことを、改めてはっきりと説明していくことが重要であるとの認識を共有した。』

ということでしたが2月になって結局日程を事前公表する破目になったのは味わいが深い。


・木内さんと佐藤さんの反対は今回も同じような感じですがせっかくなので引用だけ

『これに対し、複数の委員が異なる見解を述べた。』

最初が木内さん、次が佐藤さんですなどう見ても。

『このうち一人の委員は、資産買入れ額を金融政策の操作目標とし、その段階的引き下げを確実に図ることで、資産買入れの持続性と市場の安定性を高め、既往の緩和効果を確保していくべきであると主張した。』

『この委員は、日本銀行は、短期金利だけでなく、長期金利についても、2%の物価安定目標を安定的に実現するために操作を行っているため、わが国の物価が低位で推移するもとで、米国長期金利が大幅に上昇すると、長期金利目標を実現するための金利操作は一層困難度合いが高まるとしたうえで、そういった観点からも、イールドカーブ・コントロールの枠組みを見直すメリットは大きいと述べた。』

オペが困難になるというのは仰せの通りですが量を目標にして段階的引き下げをするとテーパリングになってしまうのがコミュニケーション的に難しいのが木内案の難点。

『また、別の一人の委員は、現在の金融市場調節方針は適当でないとの自身の立場を述べたうえで、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状はもう少しスティープであってもよいほか、市場金利がわが国の経済・物価の改善を先取りして上昇する場合には、金融市場調節方針においてもそうした動きを追認していくことが適当であると述べた。』

今の実質0プラマイ10bpがもうちょっと広い方が良いというのはスクラッチで考えればどう見てもそうなのですが、いったんプラス11で指値ぶっこんでしまった以上、中々この追認モードというのも難しくて、おそらく「何で追認しないんだよ」位の勢いになった時には行けるのかも知れませんが、プリエンティブにやるのは難しいし。市場の金利上昇圧力に関しても市場が盛大に先走ってしまっているのをそのまま追認して良いのか的なのもあって判断が物凄く難しくなってしまった感はあります。

『また、この委員は、国債買入れの運用について、理論的には、国債買入れの進捗とともにストック効果から金利低下圧力がかかるので、市場の反応を慎重に探りつつ減額を模索していけばよいとの認識を示した。なお、この委員は、短国買入れについては、市場動向を慎重に見極めつつ、一段の減額を模索すべきであると述べた。』

まあ金利低下圧力のある時にドンドコと買入を下げるのは有りでしょうな。


○布野審議委員静岡金懇ですがあまりオリジナルネタが無いので・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170322a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 静岡県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

ということで静岡金懇な訳ですが・・・・・・・・・・・・

・経済物価情勢と金融政策の説明は思いっきり執行部の話でして・・・・・・・・

『1.はじめに』にありますが、

『日本銀行の布野でございます。本日は、ご多忙の中お集まり頂き、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃から私どもの静岡支店がご支援を頂いており、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。まず私から、経済・物価情勢、金融政策などを説明させて頂き、最後に、静岡県経済について触れさせて頂きたいと思います。その後、皆様から、当地経済に関するお話や忌憚のないご意見を承りたく存じます。どうぞよろしくお願い致します。』

ということで説明があるのですが、経済情勢に関する話と金融情勢に関する話に関して執行部やら展望レポートのベースと同じ話になっていてまあネタにしても重複という感じです。ただまあ読んでてうーんこのと思ったのは、金融政策の最後の部分で・・・・・・・・・・・

『市場の一部には、海外金利が上昇していることを受けて、日本銀行が、近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方もあるようですが、現在の経済・物価・金融情勢を踏まえると、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和をしっかりと推進していくことが重要であると考えています。』

という説明になっているのがうーんという感じでして、いやあの海外金利が上昇したからどうのこうのじゃなくて、10年0%という誘導目標の妥当性が経済物価情勢の改善に伴って変わる筈なのにそれに関する考え方とか何も示されずにただひたすら「今が適切」という話しかしないのは如何な物か、ということで話をしているのであって、そんな単純な話で市場が金利引き上げ云々とか言っている訳ではない(単純な議論も勿論あるでしょうけど)んですよねー。

とか書き出すとさっきと同じ話の繰り返しになるので割愛しますが、たぶんこの論法そのものが市場のプロ(だと思っている人)向けには真摯さに欠ける説明に見えてしまう(いやまあアタクシだけが勝手に考えてムキーってなってるんだったら血圧の上げ損なのですが、笑)というのを日銀サイドの方であまり認識していないんじゃないかなーという風にも思う訳で、藁人形論法をしているようにこっちで考えているほど悪意を持ってこういう説明をしている訳ではない(ただし置物リフレーズは別)のではないかと思うのですけどね。


・成長力の引き上げに対する説明はまあそうですなという説明です

『5.日本経済の課題』という所から。

『次に、私なりに、より長期的な視点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。』

ということで。

『日本銀行の目指す「物価安定の目標」を安定的に実現するためには、経済の基礎代謝とも言うべき潜在成長率の引き上げも求められます。これまでのわが国経済は、資源を上手に調達・活用する一方で、高品質な製品やサービスを開発・提供するというプロセスを通じて自らの成長を実現するとともに、世界経済の成長にも貢献してきました。今後も、このような成長や貢献は様々な方向に拡張が可能であります。人口減少などの構造変化に過度に悲観的になるのではなく、成長力を高めるための前向きな取組みを続けるべきです。』

ということで具体的な話がありますがそこは飛ばして次。

『この際、わが国経済は必要な需要の確保を国内外の双方にバランスよく求めるべきだと思います。海外経済などに不透明感があるなかでは、海外からのリスクに注目しつつ、一方でわが国経済の自立性を強化することも重要です。』

ということでここはほーと思いましたですよ。

『例えば、昨年の円高局面において輸出が底堅く推移しました。これは、為替が輸出量の増減に直結しない非価格競争力が強まり、わが国経済の自立性が高まっている証左だとみています。今後とも、内外の景気や為替動向に左右されにくい差別化された商品を開発・提供する体制の構築と、これを促すイノベーションの一層の加速が求められます。』

と結局需要は外に求めているような気がしますが、言いたいことは何となく分かります。

『この様な潜在成長率の引き上げに向けた取組みには、金融と財政に構造改革を加えた総合的アプローチが必要です。日本経済の構造改革は相応に進みつつあるとみておりますが、一層の加速が求められます。緩和的な金融環境のもとで、資金調達が進み、省力化投資や研究開発投資、国内外のM&Aなど、成長戦略が進展することを期待しています。』

ということで。




2017/03/22

お題「SLFとかPDとかカシュカリ総裁とかの雑談メモ」

まあ!!
http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL3N1GY54B
Markets | 2017年 03月 22日 05:17 JST
米国株式市場=大幅安、減税策の実施遅れるとの懸念で

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1GY4SV
Markets | 2017年 03月 22日 04:55 JST
米金融・債券市場=国債価格が上昇、株安で安全資産に需要

てか何で今日こうなるのじゃ(昨日ならともかく)。

○オペとかPDとかの世間話メモ

・FLSェ・・・・・・・・・・・

昨日の補完供給オペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170321.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)322,729 2017年3月21日 2017年3月22日
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注4)49,904 2017年3月21日 2017年3月22日

午前の部のオファーが3.2兆円とは、という所(午後のオファーも大概ですが)ですが銘柄の方を見たら、

(注3) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却対象銘柄は、
2年利付国債363回、2年利付国債364回、2年利付国債368回、2年利付国債369回、
2年利付国債371回、5年利付国債105回、5年利付国債107回、5年利付国債118回、
5年利付国債126回、5年利付国債130回、10年利付国債305回、10年利付国債308回、
10年利付国債309回、10年利付国債312回、10年利付国債315回、10年利付国債319回、
10年利付国債321回、10年利付国債325回、10年利付国債326回、10年利付国債327回、
10年利付国債329回、10年利付国債334回、10年利付国債335回、10年利付国債336回、
10年利付国債341回、10年利付国債345回、20年利付国債54回、20年利付国債59回、
20年利付国債65回、20年利付国債86回、20年利付国債123回、20年利付国債131回、
20年利付国債159回、30年利付国債4回、30年利付国債25回、30年利付国債43回、
30年利付国債49回、30年利付国債52回、30年利付国債53回、40年利付国債9回、
物価連動国債21回です。

オファー銘柄31銘柄ですかそうですか。


オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170321.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 4,187 4,187 -0.500 -0.500
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5)  21  21  -0.500 -0.500

でもって脚注にありますが午前のオファーの落札結果は・・・・・・・・

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
2年利付国債368回(24億円)、2年利付国債369回(1億円)、2年利付国債371回(60億円)、
5年利付国債105回(60億円)、5年利付国債126回(13億円)、5年利付国債130回(2,868億円)、
10年利付国債305回(145億円)、10年利付国債308回(200億円)、10年利付国債321回(31億円)、
10年利付国債325回(43億円)、10年利付国債329回(30億円)、10年利付国債334回(30億円)、
10年利付国債335回(9億円)、10年利付国債336回(189億円)、10年利付国債341回(1億円)、
10年利付国債345回(71億円)、20年利付国債86回(15億円)、20年利付国債123回(20億円)、
20年利付国債131回(27億円)、20年利付国債159回(1億円)、30年利付国債4回(60億円)、
30年利付国債25回(39億円)、30年利付国債43回(24億円)、30年利付国債49回(20億円)、
30年利付国債52回(15億円)、30年利付国債53回(22億円)、40年利付国債9回(168億円)、
物価連動国債21回(1億円)です。

結果は28銘柄合計4187億円の落札ということですが、とりあえず半分以上が5年130回とゆーこの前までのカレント5Yとなっていましていやもう相変わらずですなあと思うのですけれども。

でまあこれって期末(今月末)のFLSとかどういう事になるんでしょうと思うとオソロシスではございますが、国債がT+1決済とかになってもこの調子で流動性が無いままだとしますと、物凄い勢いでFLSやらフェイルやらが続出しそうで、これ来年のT+1突撃すると何かとってもお洒落な事になりそうな気がしますが、きっと来年には2%物価目標達成が視野に入って国債買入の規模も縮小しているから今ほどの問題ではなくなっているんですよね(棒読み)。

まあしかし何ですな、全てが全てフェイル前提で色々なものが動いてくれれば問題は無いのですが、そもそも日銀オペって相変わらずフェイルすると色々とややこしいとか、T+1対応でトライパーティーレポが発達したので流動性が目出度く上がったととして(何か結局トライパーティーレポの前にT+1だけは特攻されそうですけれども)投資家がSC貸したは良いけどレポエンドでフェイル食らったりした後に売切らないと行けないとかになるとどういう処理になるんじゃろ(ゴーイングコンサーンならフェイルしたまま売れば良いのですけれどもファンドか何かになっていてターミネートしないと行けない場合に困るじゃろ、まあ皆が貸債始めれば割と簡単に玉手当できるのかもしれないから杞憂の気もするけど)とか、細かい所を悩みだすとトマランチ会長になるのがアタクシの仕様。


たぶんそれをやると金利が押さえつけられないのかも知れないと第一感で思うのですけれども、本当は国債買入の量的な目標は無い(80兆円はリフレ馬鹿一派の為に残してある悪魔封じの呪文みたいなものなのだし、金利が下がれば輪番額減るでしょうし上がれば増えるというもの)ので、本当は銘柄毎の発行総額の何%までしか買わないとかすれば良いとは思うのですが、そうなるとまた買入の限界とかそういう話になってしまう(つーても今のペースで買っていても大概買入の限界になるし、大体からして2年で達成する積りで導入しているから馬鹿買入をぶち上げていた訳ですし)ので無理なんでしょうとは思いますけど、これで来年T+1決済は強行するとか政策運営と市場整備実務との連携が取れていないにも程がありますな(と毎度の悪態)。


・PD応札義務引き上げとか発行日前倒しとか

今朝の日経朝刊にも出ていたようで。

http://http://jp.reuters.com/article/mof-government-bond-idJPKBN16O0DT
Business | 2017年 03月 17日 13:28 JST
国債応札義務「発行額の5%」 財務省検討、非価格競争入札を拡充

『[東京 17日 ロイター] - 財務省は、国債の特別資格機関21社を対象とする第1非価格競争入札の発行限度額を引き上げる方向で調整に入った。複数の政府筋が明らかにした。通常の国債応札義務を5%とする案も併せて示し、今月22、23日の国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会で議論する。第1非価格競争入札は特別資格を保有する金融機関が入札の平均価格で国債を購入できる仕組み。現在10%にとどめている限度額について、特別参加者が顧客からの委託に応じやすくするため、発行分の15%から20%とする案を軸に見直す。』(上記URL先より)

というのと、

http://jp.reuters.com/article/jgb-issue-idJPKBN16S0B7
Business | 2017年 03月 21日 13:12 JST
四半期末の国債発行前倒しへ、決済リスク軽減 2年債も=政府筋

『東京 21日 ロイター] - 財務省は、国債償還が多い月に発行する国債を対象に、入札から発行までの期間を短縮する検討に入った。複数の政府筋が明らかにした。入札から2営業日後に発行している通常の利付債と足並みをそろえ、決済リスクを軽減するのが狙い。近く市場参加者と議論を始め、2017年度中の導入を目指す。』(上記URL先より、以下同様)

とありますが、そういえばリーマンショックってあれ9月債入札と重なっていたので新発の発行が払い込みが無い分不成立になるんでしょとかそういう話(その後それどころでは無くなったので実際どうなったのか確認してないなそういや)がありましたなあとか感慨が深いのですが、

『財務省はこれまで、償還を迎えた国債への再投資を円滑に進めるなどの理由から、見直しの対象とする国債発行日について、入札日にかかわらず20日としてきた。ただ、償還資金で新発債を購入する需要が薄れつつある現状を踏まえ、参加者の意見を参考に、期間をどの程度短縮するかや実施時期を今後調整する。』

発行日を20日よりも前にすると多分利息起算日が半年前になって、発行時の払い込み時点での経過利息相当額の払いがでかくなるので、大昔だと課税玉問題があってややこしい事になったのでしょうが、今はそういう問題は無い(はず)ので発行時受渡金額の計算間違えて資金ショートするプレイでもしない限り無問題だし、償還日まで持ち切って再投資という人が微妙に困るかも知れませんが、そこは完全に1対1対応になるという方がレアケースでしょうし、債券インデックスは期近銘柄は外れるのでインデックス対比の人にも別に20日である必要は無いですか。償還金よりも利金再投資のタイミングで20日渡しというニーズはありそうですが。

なお、

『日銀は、国債購入を伴う公開市場操作(オペ)で、未発行の国債を買い取りの対象としていない。国債発行の前倒しが実現すれば、日銀オペに応じやすくなる副次的効果も得られそうだ。』

とありまして「副次的効果」ですかそうですかという部分に関しては突っ込んではいけないということですね分かります(銃声)。

まあ何ですな、最初の方にあったPDの応札義務拡大に対して第U非価格増やすとか、発行前倒しをするとか国債消化に関して色々と考えているなあと思うのですが、その一方で市場機能を叩き壊して喜んでいるとしか思えない日銀がいるというのが実に味わいがあります。


・まあ相変わらずですが市場の流動性指標

http://www.boj.or.jp/paym/bond/ryudo.pdf
国債市場の流動性指標

いやまあこちら見ても「ああそうですか」という感じにしか見えないというか、グラフだけベタベタ貼るんじゃなくて「だからこうなっていると認識しています」みたいな説明してくれよとは思うのですけれども、オファービットのスプレッドは小さくなっていると思いますが、取引の方は益々低調になってきている(まあ1月の途中からおかしくなったのが2月の途中までやっていたのですが)んですねえという感じで、いやーもう市場が見事なまでに息してませんなあという所ではあります。


○FEDネタが消化する前にドンドン投下されますな(白目)

イエレン議長会見の話もまだ途中にも程があるというのに(汗)

・ジョージ総裁は元々タカなので

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-george-idJPKBN16S2JA
Business | 2017年 03月 22日 04:25 JST
金融刺激策の一部解除は可能=米カンザスシティー連銀総裁

『[ワシントン 21日 ロイター] - ジョージ米カンザスシティー地区連銀総裁は21日、経済状況を踏まえ、米連邦準備理事会(FRB)としてこれまで行ってきた金融刺激策の一部を解除することは可能との考えを示した。総裁はイベントの席で「FRBはわたしが思うに非常に重要な時期に移行しつつある」と語った。今年の予想利上げ回数などには言及しなかった。総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持っていない。FRBは経済を引き締め過ぎず、また過熱させないよう留意する必要があり、バランスシートの縮小時期に関しては早急に決まらないだろうとした。』(上記URL先より)

って全文引用になって申し訳ないのですが、カンサスシティ連銀のサイトを見たところ、今のところこちらの発言はサイトに掲載されていないようですの。https://www.kansascityfed.org/

でまあ報道を前提にすると、やはりFOMCの中心的な意見としては、バランスシート縮小よりも金利の正常化の方を優先しているのでしょうなあ、とは思いました。


・カシュカリ総裁の反対表明ネタもあるのだがこれがまた長い

既にご案内の向きも多いとは存じますが(涙)。
https://minneapolisfed.org/news-and-events/messages/why-i-dissented
Why I Dissented
President Kashkari explains his vote at the March 2017 FOMC meeting.
NEEL KASHKARI | President
Published March 17, 2017

でまあ反対する地区連銀の方がこういうのどどーんと出すのってラッカーさんとかよくやっていましたが、今回のカシュカリさんの上記URL先はやたら説明が丁寧でして、それはそれで良いのだがネタにするのにちゃんと整理して読み込まないと行けないので困りますな(汗)。

とりあえずこちらも論点整理の為に細かくネタにした方が良いのだがとりあえず最初と最後だけ読むとこうなる。

『On February 7, I published an essay, “Why I Voted to Hold Rates Steady,” which was a case study that explains the data I look at and framework I use to make my assessment of the appropriate stance of monetary policy. 』

ちなみにこの2/7のは
https://minneapolisfed.org/news-and-events/messages/why-i-voted-to-keep-rates-steady
Why I Voted to Keep Rates Steady
President Kashkari explains his vote at the January 2017 FOMC meeting.

なのですが、これまた冒頭の所に味わいの深い個所があって理由の2番に『Our near-term policy predictions have been wrong a lot over the past few years-better to not make such predictions in the first place.』とかあるのですけど、まあ話を戻しまして・・・・・

『At the February 1 meeting of the Federal Open Market Committee, I voted with all of my colleagues to keep rates steady. Today I publish an update to that initial essay, using the same framework to explain why I again voted to keep rates steady at the FOMC meeting earlier this week.』

ということで反対の理由はなんでしょうと言いますと。

『What is different now is that the rest of the FOMC voted in favor of an increase. I was alone in my dissent. I am not planning to publish an update after every meeting, but given that I reached a different conclusion than my colleagues, I thought it appropriate to provide an explanation.1』

毎回このような紙を出す訳ではないけど今回は少数派だったから出すと。

『In summary, I dissented because the key data I look at to assess how close we are to meeting our dual mandate goals haven’t changed much at all since our prior meeting.』

主要な経済データは前回FOMCの時から特に変わっていない、というのは仰せの通りですし、まあだからこそイエレン議長も会見冒頭説明の所で「経済物価見通しの見直しの結果として利上げしたのではありません(キリッ)」と言った訳ですな。

『We are still coming up short on our inflation target, and the job market continues to strengthen, suggesting that slack remains.』

FOMC声明文の方では「物価はほぼマンデートに近い」「雇用はマンデート状態」という基本認識なので、インフレがショートで雇用にスラックが残っているという認識なので、まずはそこが違うという所ですな。

『Once the data do support a tightening of monetary policy, I would prefer the next policy move by the FOMC to be publishing a detailed plan that explains how and when we will begin to normalize our balance sheet.』

ここでも独自色で、イエレン議長会見での冒頭説明(とさっきのジョージ総裁のコメント)ではバランスシート縮小よりも利上げを優先するスタンスを示していますが、カシュカリさんは利上げじゃなくてバランスシート縮小をどのように、どの時期で行うかのスタンスを示す(縮小しろと言う訳ではない)べきという事ですが、バランスシートに関しての考え方に関してはうっかりすると6月くらいに出してくる可能性が(つーか12月までプレコン付のFOMCが残り4回あるので、うち3回が利上げで残りの1回がバランスシート縮小に関する考え方(というか予告ホームラン)を示すという感じなんでしょうかねえ)。

『Once we put that plan in place, and we see the market reaction to it, we can return to using the federal funds rate to remove monetary accommodation when the data call for it.』

でもってカシュカリさんはバランスシート縮小プランを示して、その後の市場の反応やら経済データの進展を見てからまた金利上げて行けばよくて、バランスシートに関してはどのような条件になったら縮小にどのような手段で着手する、としめすのだからそこはオートパイロットということでしょうな。

そして本来読むべき中身を全部飛ばしまして(後日やります)最後の所。

『Conclusion

As was the case in the February FOMC meeting, we are still coming up somewhat short on our inflation mandate, and we may not have yet reached maximum employment. Inflation expectations remain well-anchored. Monetary policy is currently somewhat accommodative. There don’t appear to be urgent financial stability risks at the moment. There is great uncertainty about the fiscal outlook. The global environment seems to have a fairly typical level of risk. From a risk management perspective, we have stronger tools to deal with high inflation than low inflation. Looking at all this together led me to vote against a rate increase.』

基本従来の話と同じ(現状維持ってんだからそらそうなのだが)ですが、物価が2%のマンデートにショートしていて、雇用もマンデートにショートしている上に、ファイナンシャルスタビリティー的に問題が有る訳でもない、という現状の下、財政や海外経済などに不確実性があり、しかも海外に関しては下振れリスクがある中であり、物価上ブレに対しての対処方法ならあるのだから別に急いで正常化せんでエエンチャウノ、とまあそういう話ですにゃ。

#とかやってたらFOMC会見ネタががががが





2017/03/21

お題「黒田総裁会見とかFOMC会見とか」

ふーん。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-rates-idJPKBN16R1IH
Business | 2017年 03月 20日 23:05 JST
米FRB、年内さらに2度利上げへ=シカゴ連銀総裁

『[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は20日、連邦準備理事会(FRB)は年内あと2度の追加利上げを行う見込みとし、利上げペースは財政政策などによる米経済への影響により、加速も減速もあり得るとの認識を示した。フォックス・ビジネス・ネットワークに対し述べた。総裁は「3回は完全にあり得る」と指摘。「見通しに対する自信を深めるのに伴い、年内計3度の利上げを支持する可能性がある」と述べた。その上で「インフレ率が加速すれば、(自身の)予想は確実に固まる。(年内利上げは)3度、または2度、状況がさらに上向けば4度もあり得る」とした。』(上記URL先より)

ということで今週はFEDの方々の発言が多い筈なのですが追いつけるかどうか(汗)。

○オペ関連メモだけ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170317.htm
国庫短期証券買入 5,000 2017年3月22日
CP等買入 5,000 2017年3月23日

短国買入5000億にしたのか、と思ったら結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170317.htm
国庫短期証券買入 13,955 5,000 0.002 0.010 64.7
CP等買入 11,619 4,996 -0.032 -0.021 10.0

10日の短国買入の応札が10,184億円だったので応札3800増える中で買入2500増やしたのかという所で、まあ別に短国買入減らせばーとは思いますがそこまで過激にやるのもどうかという所ですかそうですか。

でもってCPはまーた期末お馴染みのパターンで足切▲3.2bpで平均▲2.1bpとかもうねという水準でして、そもそもCP買入って今更やる意味あるのかよとはだいぶ思うのですけどねえ。



○黒田総裁会見だが「想定問答がちょっと変わったなあ」という気がする(アタクシの勘による感想です)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1703b.pdf

・金利に関する話では少しまともな受け答えになっている件

『(問) マーケットでは、日銀が長期金利の操作目標を、年内のどこかの時点で引き上げるのではないかという観測も出ています。量については「オーバーシュート型コミットメント」ということで、割と明確に解除の条件を定めていますが、長期金利をいつ上げるかという情報が、少し不足しているように思います。日銀として、どのような条件が整ったら、長期金利の目標を引き上げるのか、またはその検討が視野に入ってくるのか、その条件のようなところについて、お話を頂ければと思います。』

という質疑なのですが、これベンダーのヘッドラインとか読んでいるとイマイチ感が強いのだが、要旨として出てくるのを見ますと何かちょっと説明が今までよりも少しマシになっているように見えるのだが・・・・・・・・・・・・・

『(答) 日本銀行が昨年 9 月に導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」というフレームワークのもとで、経済・物価・金融情勢を踏まえながら、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すことにしています。』

ほうほうそれでそれで?

『当然のことながら、長期金利の操作目標についてもこうした考え方に立って、毎回の金融政策決定会合において、判断していくことになります。金融政策は、ご案内の通り、金融市場あるいは金融機関を通じて効果が実体経済に波及していきますので、政策に関する考え方あるいは前提となる経済・物価情勢についての判断を、できるだけ分かりやすく説明して、理解を得ていくことが大変重要だと思います。』

おー。

『ただ、現状では 2%の「物価安定の目標」までには、まだなお距離がありまして、これをできるだけ早期に実現するためには、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切だと考えています。』

というのはまあそうだなと思いますが、従来だとまるで聞く耳を持たない感じで、この手の質問には暖簾に腕押し糠に釘と言った所だったのですが、「できるだけ分かりやすく説明して、理解を得ていく」とか変な物でも食ったのかというこの発言というか想定問答の作りはどうした事ぞという所ですな。


・同じくで利上げの閾値に関する質問だが

『(問) 先程の質問に関連しますが、長期金利について、どのような条件になれば長期金利を引き上げるのか、その条件のようなものを将来整備する、あるいは対外的に示す、といったお考えはありますでしょうか。(後半割愛)』

まあ難しいでしょと思いますし、実際問題として物価がホイホイ上がってきた場合に外野から「このっまあで良いの」とやいのやいの言われた所でさあどうしましょという話になることだと思います。まあ日銀から能動的にやるの難しいですし、そもそも10年のレンジがやたらタイトなのを何とかしないと(永遠に2%が全然見えないのなら問題は起きないけど日銀の目論見通りに進んだら)今の「10年事実上の0〜0.1%」という無理繰りな枠組みは爆発炎上するしか無いのですから。

『(答) まず 1 点目のご質問について、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」にしても、それ以前のものにしても、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために金融政策を行っています。』

できるだけ早期にってのも何とかしないと。

『従って、ご指摘の 10 年物国債金利の操作目標についても、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することとの関連で、議論しなければならないと思います。』

ほほー、と思うのだがここで何故か説明が微妙に飛ぶ。

『特に金融政策の運営にあたっては、最近エネルギー価格が非常に動いたりしますので、こういったエネルギー価格などの一時的な要因を取り除いて、物価の基調的な変動を的確に評価する必要があるのではないかと考えています。具体的には、エネルギー価格を除いた指標を含めて、様々な物価指標を点検するとともに、物価の基調を決定する要因である需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率の動向、更にはそれらの背後にある経済の動きもあわせて判断する必要があると思います。従って、ヘッドラインの物価上昇率あるいはコア、コアコアといった指標がある数値に達したからといって、直ちに長期金利の操作目標を変えるということにはなりません。』

『あくまでも、今申し上げたように、物価の基調的な変動を十分に勘案して、毎回の金融政策決定会合で議論して決めていくということであって、何か 1 つの指標がある数字になれば機械的に変更するというようなものではないと思っています。(後半割愛)』

まあ何ちゅうか要は「総合判断だから機械的に何らかの特定指標の数値がヒットしたから目標金利をいじるという事ではない」という事を言いたいようなのですけれども、エネルギー価格の攪乱要因がどうのこうのとかそんな事は言われんでもわかっとるわと思う話でして、別にその部分入れないで単に「経済・物価・金融の状況を総合的に判断するもので特定指標の特定数字だけで判断するものではない」と言った方が良いと思うのですが。


・とりあえず「為替」の話をしたくないというのが良く伝わる

『(問) 9 月に「イールドカーブ・コントロール」を導入しましたが、その後、世界的な金利上昇というような形の、大きな局面変化が到来していると思います。この間、日銀は長期金利をゼロ%程度に抑制し続けているわけですが、それによって緩和の効果は、着実に強まっていると認識しておられるのかどうか。また、その効果があるとすれば、具体的にどこに出ているのか。そして効果が出ているとすれば、景気や物価の先行きの下振れリスクが、当時よりも低くなっているのかどうか。これらの点について、ご認識をお願いします。』

要するに円安圧力が掛かって下方リスクって軽減されたし今後は海外金利上昇に対して国内金利を抑えるから円安ヒャッハーですねという質問なのですが・・・・・・・

『(答) 先程来申し上げている通り、「イールドカーブ・コントロール」は、短期金利について政策金利残高に対する−0.1%の金利と、10 年物国債金利のゼロ%程度という操作目標、この 2 点を決めることによって、適切なイールドカーブを実現していく政策です。「量的・質的金融緩和」あるいは「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、今回の「イールドカーブ・コントロール」のもとでの金融緩和、いずれも、基本的なチャネルは同じで、実質金利を十分に下げて、投資あるいは消費にプラスの影響を及ぼし、経済が成長し、雇用が拡大することを通じて、賃金や物価を押し上げていくチャネルを考えています。』

『実質金利を引き下げる場合には、当然ですが、名目金利を引き下げることと、予想物価上昇率を引き上げていくことと両方あります。最近の状況を申し上げると、予想物価上昇率については、昨年前半はずっと下がってきたわけですが、昨年の後半以降、このところは大体横ばいで推移しています。そうしたもとで、「イールドカーブ・コントロール」を行うことにより、実質金利は引き続き非常に低い水準で推移しています。このように、日本の金融政策は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、今申し上げたようなチャネルを通じて、効果を発揮していくものです。』

ということで資産価格だの為替市場だのポートフォリオリバランスだのという発言を避けているのがチャーミングでして、まあポートフォリオリバランスに関しては最近外債投資がどうのこうのという案件もありますし、為替市場はそらもうアメリカ様がてめえコノヤロとかおっぱじまったらそらもうあばばばばーですから、もう思いっきりこの建前論をしかもくどくど説明してくるというプレイ。

『従って、外国の金利が上がったからといって、日本の金利を上げなければならないとか、上げる必要があるとは考えていません。』

別にそんな質問されていないのですが、何でここでこういう話を出してきたのかが良く分からんということで変な繋がり方してるなあとは思いました。まあ利上げネタも騒がれたくないという事でしょうけれども。

『そうしたもとで為替に影響が出るのではないかということを言われているのかもしれませんが、為替は金利差だけでなく、色々な要素で動きます。それから、私どもの経済・物価の見通しについては、為替について現状よりも円高になるとか円安になるとか、そうした特定の見通しは前提にしていませんので、あくまでも先程申し上げたようなチャネルを通じて 2%の「物価安定の目標」を実現することを想定しています。』

置物師匠の2013年8月の高座によりますと、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
こちらの図表6(スライド7枚目)に思いっきり為替の話がありますけどねえ。

というのもさて置いても、元々円安ヒャッハー政策じゃんと思うのですが、まあご時世だから仕方ないけれども思いっきり為替じゃないとか言い出すのはさすがに嘘くさくて笑える。

『下振れリスクが小さくなったかどうかについては、経済全体でみれば、昨年の後半以降、世界経済がかなりしっかりとした回復、成長を示しています。特に、米国がそうですし、また中国も底堅い動きを示していますので、日本経済も含めて世界経済にプラスの影響を与えています。将来に向けた下振れリスクについては、前回の展望レポートでも示した通り、経済や物価については、上振れリスクよりも下振れリスクが依然として大きいという状況にあるという認識であり、あまり大きく下振れリスクが減少したとも、必ずしも言えないのではないかと思います。』

何を言いたいのだかさっぱり分からない表現ですが、要するに下振れリスクが減ったと実は思っているけれどもそれを言い出すと金利引き上げ議論になるからそうは言わない、ということでしょうかねえ。まあ何と言いますか。


・これはイヤミなツッコミ

『(問) 公表文では、リスク要因について、米国の金融政策運営という文言が書き込まれています。米国が金利正常化に向かう中で、今後どういったリスクが考えられるのでしょうか。(後半割愛)』

これはワロタ。

『(答) 1 点目につきましては、公表文でも示している通り、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、ということです。米国の金利が上昇していく場合には、ドルは世界的に使われている通貨ですし、特に新興国の中にはドル建てで資金を調達している国も多いので、このような点についての影響など、色々な影響が考えられます。』

だったら何故新興国経済等と書かん。

『ただ、先程申し上げたように、今の時点で新興国全体として何か問題が生じているということではないと思います。それから、リスクとして考え得るとは言いながらも、他方で米国経済の成長が加速していく中で金利が上がっていくのであれば、米国経済の加速による世界経済に対するプラスの影響がありますので、金利が上がるという面だけで、非常にリスクが大きいとは言えないと思います。ただ、可能性としてここにありますように、国際金融市場に様々な影響を及ぼし得るので、その点はリスク要因として注意していく必要がある、ということかと思います。(後半割愛)』

これは確かに何でリスク要因になっているのかが分からん(もしかして円安ルートで上振れリスクじゃないの)でしたな。


・金利に関する話アゲイン

『(問)(前半割愛)それから、マイナス金利についてもお伺いします。保険ですとか銀行ですとか、マイナス金利の影響を受けて収益が悪化している業界があります。今後、今の金融政策パッケージの中で、副作用が大きいマイナス金利をまず外す、ということは考えられるのでしょうか。もしも残すのであれば、マイナス金利の部分を場合によっては改めて深掘りするという可能性もまだ残っているのでしょうか。』

ってさっきの質問の後半なのですがこれに対する答え。

『(答)(前半割愛)2 点目については、「イールドカーブ・コントロール」のもとで、適切なイールドカーブの実現を図っていますが、これは、実体経済、あるいは物価、そして金融市場に対する影響も勘案しています。従って、今ご指摘されたような保険や年金に対する影響も考慮しつつ、現在の「イールドカーブ・コントロール」を行っているということです。』

ほう。

『経済・物価・金融情勢という 3 つの面をみながら、金融政策を運営していますので、さらに金融緩和を大きく進める必要があるということになれば、マイナス金利についてもさらに深掘りする可能性がゼロとは言えないとは思います。ただし、先程来申し上げている通り、日本経済は緩やかな回復過程を辿っていますし、物価も現時点ではまだ 0%程度ですが、今後 2%に向けて緩やかであっても着実に上昇していくと見込まれますので、今の時点で何かそういうことが考えられるということではないと思います。』

ほー。

『−0.1%のマイナス金利が政策金利残高に適用されていることの影響も十分考慮しつつ、2%の「物価安定の目標」の早期達成に向けて、引き続き適切な金融緩和を進めていきたいと考えています。』

ということで、従来の聞く耳持たずモードからまあやっと何となくマシな話をするようになった感はある。


・もうひたすら為替について質問されたくないの巻

『(問)(前半割愛)2 点目は、昨日のFOMCのドットチャートをみると、3 回利上げすることになっていますが、これは、日本銀行にとっては緩和効果が高まって好ましいという理解でよいのか、前の財務官の渡辺博史さんが、日米金利差が 10年で 400bps くらいまで近づくと国際的な批判がやかましくなるのではないかと心配されているのですが、この辺のお考えをお願いします。』

という質問への答えがもう為替の質問しないれくれ状態なのがワロエル。

『(答)(前半割愛)FOMCのドットチャートなどの解釈については、色々な人が色々なことを言われていますので、私から具体的に何か申し上げることはありません。仮に年 3 回利上げするということになるにしても、それ自体は、米国経済がしっかりと成長を遂げていくこととあわせて起こり得ることですので、それ自体がマイナスになるとは思っていません。そうしたもとで、米国の金利が上がっていくことがどういう影響を及ぼすかについては、先程来申し上げている通り、わが国の金利につきましては、経済・物価の動向に最も適切なイールドカーブとなるように操作していくということですので、米国の金利が上がったから日本の金利も上がっていくということにはならないと思います。そういう意味では、直接的な影響はないと思っています。』

という前半部分は金利目標に関する思惑が出るのはケシカランという話でして、

『為替についての影響は、昔からよく金利格差論がありまして、あるときは短期金利であったり、それもカバー付きとかカバー付きでないものとか、それから長期金利、あるいは中期の金利だったりと、色々なことが議論されますが、その時々で、円ドルレートが日米金利格差に則して動いているときもありますし、そうでないときもあります。』

『私自身としては、為替という非常に多くの要素に影響されるものについて、単なる二国間の金利格差だけでなにか色々言うというのは、あまり予測としても当たらないし、政策論としても、日本の「イールドカーブ・コントロール」という金融政策はあくまで日本の経済・物価・金融情勢を勘案して決めていくものですので、そういった外国の金利が上がる云々ということによって左右されるものではないと思っています。


もう思いっきり「為替の質問はするな」というのが良く分かる答弁ではありますが、そうは言ったって為替を円安に維持するのが重要なルートでしょ。


・またまた利上げの話ですけれどもね

『(問) マーケットの一部では、日銀が、長期金利について今年にも利上げをするかもしれないとの見方があります。これは、コアCPIが 1%位まで上昇してくるのではないか、そうすると長期金利の上昇圧力が高まり、それをさすがに日銀は抑えられないのではないか、指値オペや買入れ額の増額でも抑えられなくなって日銀が利上げをしなければならなくなるのではないか、という見方です。ただ、今日の総裁の発言をお伺いして、やはり、基調の物価が 2%に明らかに上がってこない限り、日銀は利上げをしないという理解でよろしいのでしょうか。


まあ基本はそうだけど10年0%〜0.1%で物価2%まで引っ張れるとは思えないので、これって単に問題を先送りしているだけなんですよね。でもって答え。

『(答) 私が申し上げたいのは、本年の後半にかけて、消費者物価のコアというか、コアコアというか、そういったものが前年比 1%近くになるといったことで直ちに、機械的に長期金利の操作目標を引上げていく、という考え方はとっていないということです。』

日銀はそう思っているでしょうけれども、問題は市場がそれを許すのか許さんのかという話で、その時に日銀はどう出る、という事くらいはさすがに(黒田さんは兎も角として中曽さん以下の執行部は)色々とケースを考えているでしょう、とは思いたい。

『現在の政策は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために行っています。物価の基調的な変動を的確に評価する必要があり、様々な指標を点検して、特に需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率の動向、そしてその背後にある経済の動きといったものを総合的に判断して、毎回の金融政策決定会合で、長期金利の操作目標について議論していくということです。』

要は日銀自ら動くということは無さそうという事です。

『昨年 9 月に「イールドカーブ・コントロール」を導入した時に、適切なイールドカーブを実現するように長期国債の買入れを進め、必要があれば指値オペも実施しますと申し上げ、それに沿って運営してきて、適切な「イールドカーブ・コントロール」は実現できています。ご指摘のように国際的な金利が上がっていくと、「イールドカーブ・コントロール」ができなくなるとか、あるいはその影響によって、先程申し上げたような金融政策の判断とは別に、金利を引き上げざるを得なくなるとか、そういったことは全く考えていません。「イールドカーブ・コントロール」は十分機能していますし、今後ともそれは機能していくと考えています。』

というのはかなり怪しい。

『長期金利の操作目標については、ぴったりゼロ%程度に釘付けするというようなことではなくて、ゼロ%程度といっています。政策金利残高に対する付利は、日銀が決める金利ですので、これはぴったり決められます。一方で、長期金利に関しては、市場で決まってくるものについて、操作目標を決めて、それになるように長期国債の買入れを進めていくということですので、「程度」と断っているように、一定の幅があるわけですが、これまでのところ適切に「イールドカーブ・コントロール」が実現できていますし、今後それが困難になるとか、できなくなるとか、そういったことは考えていません。』

程度の幅の問題があって、とりあえず目先のコントローラビリティの方を重視してレンジを異様に狭くしてしまっているのですが、当然ながらこれって次にマジモンの金利上昇圧力が掛かる時に向けてエネルギーバンバン溜めて行きますので、適当にガス抜きが出来れば良いのですが、ガス抜きが出来るような建付けになっていないので・・・・・・・・・・・・


○FOMCイエレン議長の会見から(終わらないので後日に続く)

FRBのサイトが新しくなっていますな。サイトのリニューアルはまあ良いのですけれども、慣れるまでめんどいのよねー。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20170315.pdf

つーことでQ&Aですが時間と量の都合上最初の所から少々だけで本日は勘弁。

・バランスシート政策と金利政策のバランスについて

『SAM FLEMING. Thanks very much, Sam Fleming from the Financial Times. Picking up on the last topic, balance sheet normalization. Clearly you said you don't want to start pulling in the size of the balance sheet until normalization is well under way. Could you give us some sort of sense about what well under way means, at least in your mind? What kind of hurdles are you setting? What kind of economic conditions would you like to see? Is it just a matter of the level of the short-term federal funds rate as being the main issue? And what kind of role do you see the role of the balance sheet playing in the normalization process over the longer term? Is it an active tool, or is it a passive tool? Thanks.』

質問が色々とあるのですが、バランスシート縮小に着手する「well under way」の意味をもう少し詳しくしてくれ、というのと正常化における金利とバランスシートの使い方についてどうなのよという質問がメインですな。

『CHAIR YELLEN. So let me start with the second question first. We've emphasized, for quite some time, that the Committee wishes to use variations in the Fed Funds Rate target, our short-term interest rate target as our key active tool of policy.』

ということで「金利がメイン」という話ですので、これはつまり「正常化という点で言えば基本的には金利の方を急ぐ」ということを意味すると思うのですがどうでしょうかね。

『We think it's much easier in using that tool to communicate the stance of policy. We have much more experience with it, and have a better idea of its impact on the economy. So, while the balance sheet asset purchases are a tool that we could conceivably resort to if we found ourselves in a serious downturn where we were, again, up against the zero bound, and faced with substantial weakness in the economy. It's not a tool that we would want to use as a routine tool of policy.』

金利の方が使い慣れていますから金利がメインツールですよ金利が、ということで、バランスシートはゼロ金利制約とか、大きなショックなどの時にという話をしているようですな。

『You asked what well under way means. I can't give you a specific answer to that. And I think the right, the right way to look at it is in qualitative, and not quantitative, terms. It doesn't mean some particular cutoff level for the federal funds rate that, when we've reached that level, we would consider ourselves well under way.』

『I think what we want to have is confidence in the economy's trajectory. A sense that the economy will make progress, that we're not overly worried about downside risks, and adverse shocks that could hit the economy, that could quickly after setting it off on the path to shrinking the balance sheet gradually over time cause us to want to begin to add monetary policy accommodation. So I think it has to do with the balance of risks and confidence in the economic outlook, and not simply the level of the federal funds rate.


つーことで、バランスシート縮小の話をするのは定量的な基準ではなくて定性的、つまりは総合判断ということですのでまーここはまだ決まっていないというのもあるでしょう。一応下振れリスクへの懸念がだいぶ無くなった時には、というような話ではあるようですが。


・年3回は思いっきりグラデュアルとな

次も用語の定義への質問ですな。そらまあそうくると思うけど。

『JASON LANGE. Hi, thank you, Jason Lange with Reuters. You mentioned that you don't, that you don't -- you want to not have to raise rates rapidly, if you were to fall behind the curve. In the current context, gradual has been very, very gradual. Could you describe what a rapid rate of increases should be -- how that should be understood?』

そもそも「rapid rate of increases」とは何ぞやという質問。

『CHAIR YELLEN. So, I'm not sure that I can tell you what a rapid rate of increases is. I think the trajectory that you see is the median in our projections which, this year, looks to a total of three increases. That certainly qualifies as gradual.』

年3回はグラデュアルとな。

『My comfort in using the term gradual comes back, in part, to my judgment that the neutral level of the federal funds rate, namely the level of the federal funds rate, that we keep the economy operating on an even keel. That it's a rate where we neither are pressing on the brake, nor pushing down on the accelerator. That level of interest rates is quite low. So, at present, I see monetary policy as accommodative, namely, the current level of the federal funds rate is below that neutral rate, but not very far below the neutral rate.』

『We're closing in, I think, on our employment objective. We're coming closer on our inflation objective. As we reach those objectives, and particularly, in light of the fact that we see the risks of the outlook as roughly balanced at this point, and that's been our assessment for the last several meetings. It looks, to us, to be appropriate to gradually raise the federal funds rate back in the direction of neutral.』

中立金利に向けての距離とかそれに向けた上げ方とかがポイントだそうな。でもって中立金利対比ではまだ金利が低くて緩和的な中で、マンデートはほぼ達成に近く、リスクバランスも中立だそうな。

『And exactly how many increases is that? You know, the SEP give you a sense of what Committee participants envision in a concrete sense, but, you know, if it's one more or one less, I think that still qualifies, to my mind, as gradual, I think if you compare it with any previous tightening cycle, I remember when rates were raised at every meeting, starting in mid-2004. And I think people thought that was a gradual pace measured pace. And we're certainly not envisioning something like that.』

2004年からの毎回の利上げも当時は「gradual pace measured pace」と言われていたじゃないですか、ええもちろん今回そういう事は考えていませんけどね、という事のようで、まあ4回でも十分にグラデュアルなんでしょうなこりゃ。

#以下明日以降につづく





2017/03/17

お題「そういえば金融政策決定会合がありましたが」

という感じで注目度が下がってくるのが今の日銀にとってはウマーなんですよね。

○声明文(と前回の展望レポート)比較である

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k170316a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k170131a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1701a.pdf(前回展望レポート基本的見解)

・80兆円の文言は・・・・・・・・・

『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。』(今回)

ということで「80兆円」の文言は維持されているのですが、まー何と申しますか今月に関して言えば1-3の輪番をしらっと1回4000億円から3200億円に減らして更に3000億円に減らして、3-5輪番は4200→4000、超長期25-40輪番を1200→1000と減らしておりまして、前月からみたら1-3で5800億円、3-5で1200億円、超長期1000億円の減額をしているから結局中期輪番スキップ1回分(8200億円)と同じような輪番減額を別に金利のボラをバカスカ上げるでもなく上げれた上に、短国買入についても今月は思いっきり減らしていっても無問題というこの流れ。

・・・・・・・つーことでですな、まあ無事に(かどうか知らん、単に期末とか金利上昇ネタがあまり無い中なのと減額しているのが主に短い所でそもそも買入が過大だったゾーンなので動いていないだけかも知れん)買入ペースを落としているので、国債買入のペースも(ちょっとだけですが)落ちるわという状況にはなっている次第で、まあオペレーション上との整合性ってのを考えると「80兆円」は益々形骸化の巻となっていますわな。

だったら「80兆円」は削除なり変更なりするのでは、というような見解も散見される訳ですが、「実際のオペレーションが既に80兆円ペースではない」という話に加え、そもそも論として最近の為替市場とかでこの資産買入ペースだのMBだのという話をしなくなっていて、米国が正常化モードに入る中で「金利」の方が話題になる、という日銀してやったり(米国のお蔭なので別に日銀が何かしている訳ではないが)の展開になっているので、逆にここの「80兆円」の意味が段々無くなってきてるんじゃないですかねえと思いますと、重要でも無い文言だったら別に残しておいても問題ないんじゃネーノという話になってくる訳ですな。

これがもうちょっと前だと輪番の減額が色々と物議を醸していたので80兆円の文言にもそれなりの意味があったのですが、「金利がドバドバ上がれば買入ペース増えるし、金利が下がれば買入ペースが減るし」というのを2月3月で実演したので、何となくここの文言も形骸化してきたんじゃないの、とまあそういう風に思うのですが、まーいざここいじろうとすると急に他の市場が何か言い出す可能性はありますけど、「今の買入ペースでどこからどう見ても80兆円の残高増加しない」という点を華麗にスルーしている他市場(債券市場はとうの昔に気が付いているがそもそも80兆円ペースなどで買うのは止めてください死んでしまいますなので華麗にスルーするのが仕様^^)って何なんでしょうねとは思うのでした。

まあこれは80兆円文言自体の意味がどう見ても無いだろうという状況に徐々に持って行って「誰がどう考えてもこれ削除だろ」となるまで放置しておくのが一番オイシイんでしょうな。問題は政策委員会に3人ほどリフレ馬鹿がいることだが。


・・・・・・・ちなみに(何か全然MPM声明文の話じゃないですが)話をさらに脱線しますと、今月いい感じ(かどうか知らんが)で買入を落として来ているのですが、超長期のケツは別として中期に関しては「金利低下しているし需給タイトだから下げてみました」という感じで買入ペースをしらっと落とせていた訳でして、これはつまり「金利が下がっている時に受動的な感じで買入を減らすのは行ける」というまあ良く考えれば当たり前なのですが、そういうお話なのであって、80兆円文言に関しても似たようなもんで、「買入をドンドン減らすぞー」という能動的な姿勢が見えるような削除をするとひと悶着あると思うのですけれども、「何か金利維持してたら買入ペースが読みにくくなってきたから数字入れておくと却って混乱すると思うので外しますね(棒読み)」というような感じで削除できるタイミングまで引っ張って良いんじゃないですかねえ、という感じですな(まあそれってイカサマじゃネーノという議論はあって本来的にはこういうの良くないとは思うが)。




・経済認識に関して

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(前回展望レポート)

うむ。

『国内需要の面では、設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。この間、住宅投資と公共投資は、横ばい圏内の動きとなっている。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)

『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も幾分改善するなかで、設備投資は緩やかな増加基調にある。また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直しを続けている。この間、公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。以上の内外需要の緩やかな増加に加え、在庫調整の進捗を反映して、鉱工業生産は持ち直している。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(前回展望レポート)

企業収益は前回が高水準で更に改善ですかそうですかというところ(業況感は短観直後じゃないので文言が入らないのが仕様)ですが、他を見ますと見事に判断変更なしですな。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。』(前回展望レポート)

予想物価上昇率は弱含みという判断のままで行くのか。まあここいじると金利変更への思惑とか出てくる可能性があるから簡単にいじりにくいのは分かる。


・先行き見通し、リスク要因

『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大に転じていくとみられる。』(前回展望レポート)

判断は同じ。

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『まず国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回展望レポート)

『輸出も、海外経済の改善を背景として、基調として緩やかに増加するとみられる。』(今回)

『この間、海外経済は、先進国の着実な成長が続き、新興国経済の回復も、その好影響の波及や各国の政策効果によって、次第にしっかりとしたものになっていくことから、緩やかに成長率を高めていくと予想している。こうした海外経済の改善を背景として、輸出も、基調として緩やかに増加するとみられる。』(前回展望レポート)

展望レポートの方は基本的に長いので比較するときにこうなってしまうのですが(汗)、結局言っている事は同じです。

『消費者物価の前年比は、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注3)。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回展望レポート)


リスク要因の

『リスク要因としては、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、中国をはじめとする新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱問題の帰趨やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスクなどが挙げられる。』(今回)

についても、前回展望レポートでのリスク要因における海外の部分、

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。具体的には、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、中国をはじめとする新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱問題の帰趨やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスクなどが挙げられる。いずれも経済の下押し要因となる可能性がある一方で、市場や経済主体がそうしたリスクをある程度意識していることを踏まえると、展開によっては上振れにつながる可能性もある。』(前回展望レポート)

というのと言ってること同じでして、まあ総括検証以来やたらドタバタしていましたが先月の半ば位からやっとこうサプライズみたいなのの発出が無くなってきて落ち着いてきましたな、という感じです。


・まあ次の展望レポートも平和に行くのでしょうかねえ

ということでまあ現状認識、先行き見通しともに変わらないので、4月の展望レポートではどういう絵が出てくるのかを楽しみに待ちたいという感じですが、まあ今の所日銀としては「目立たずに米国の利上げをお待ち申し上げております」というのが一番ウマーな訳ですから、次回の展望レポートも普通に「見通し通りのオンラインで動いていますが、そうは言いましても2%物価目標達成までは距離があるので今の政策をこのまま続けていくのが適切です」というトーンでやっていくんじゃないですかねえ、というのが基本的な読み筋になろうかと。

とは言いましても当然リスクは有る訳で、純粋に日銀ファクターというだけの話で考えますと、この先は「調子に乗って輪番減額でやっちまう」というのがリスクでして、確かに4月の所でまた発行バランスが狂うので難しい所ではあるのですが、あまり調子にのってガンガン輪番を下げていくと、そもそも今の相場って日銀買入で動かない分だけ、何かがあった時に動く潜在的なリスクは時間の経過とともに(ガス抜きを適当にしない限り)高まってくると思いますので、たぶんこの輪番の上げ下げ、というか下げの影響って徐々に出るのではなくて、どこかに閾値があってそこを踏むといきなりボラ爆発みたいになると思うし、しかもその閾値って踏んでみないと分からないという性質のもの、というのが相場様の仕様でもありますので、まあ先ほども申しあげましたが、輪番減らすのは方向性として正しいとは思うのですけれども、あくまでも「受動的」な減額(今は短期ゾーンだからいけてるけど長期とかいじるのはかなり慎重にやらないとあっさり地雷を踏み抜くと思う)で行かないとまーたやらかしモードになる可能性は高いので面白いから地雷踏めなどとは申しませんよ(白目)。

なお、安倍ぴょんがどうのこうの材料に関してはまったくの別問題でそっちはそっちで地雷案件のようにも見えますし良く分からん。


・しかし会見ェ・・・・・・・・・・・・・

会見要旨は本日出るのでそれを見ながらという話ではありますが、ヘッドライン見た感じだと何だかなあ感が更に高まる総裁会見だったようで、いやまあ今はまだこれでも良いのかもしれませんが、この馬鹿政策だっていつまでも続ける政策な訳じゃないのだから、今の調子でやっていると政策を微修正しようにも債券市場が大爆発するから出来ないというようなオソロシスな展開になってしまう訳で、広げた大風呂敷についてどう収拾するのか、というのを考えているのか考えていないのかというのは今後懸念されるなあ、と思うのでした。

つーことで今この時はウゴカンチ会長相場ではありますが、もうちょっと先の事を考えるとこのままで持つとも思えない感is有るという所ではありまする。


○その他メモ

・短国買入どうしますかねえ

水曜の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170315.htm

(3)募入最低価格 100円07銭5厘0毛(募入最高利回り)(-0.3039%)
(4)募入最低価格における案分比率 26.3269%
(5)募入平均価格 100円07銭9厘4毛(募入平均利回り)(-0.3217%)

ということで火曜の1Yは短国買入専用機なだけに短国買入の減額がモロに効いた結果になっていましたが、水曜の3Mはそもそも3Mのビルの需給を反映して相変わらずの▲30bp台という貫禄の堅調入札で、昨日の引け見ると他は▲20bp台なのですがカレント3M近辺だけ堂々の▲30bp台というこの確り。

てな状況ですが、1Yが流れたこともあるから買入を増やすのでしょうかね、というのと、落札結果どうなるかというのも少々気になる所ですが、そもそも論として「80兆円」は長期国債の方だし(MBについてはオーバーシュートコミットメントだけ)、MB帳尻でせっせと買っていた分ってのは逆に長期国債をせっせと買ってMB積み上がるんだから、何かの時の為のMB積み上げ糊代用に減らしておく方が吉だから、いきなりゼロにするとやり過ぎですけれども、まー残高はせっせと減らした方が良いとは思うのですが(今だと短い所需給強いし)。


・業態別当座預金をやっている時間が無くなってしまうま(すいません)

時間配分間違えました(涙)。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/
こちらからエクセルでDLできるのですが時間が無くなったのでパス。


#BOEネタも同じくですというか手が回らなかった
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2017/002.aspx







2017/03/16

お題「寝起きでFOMCだがこれ米国金融市場反応しすぎのような気が・・・・・・・・・」

FOMCの時は最初に公表文書だけを読んでから市場の反応は後から見るようにしている(そうしないとフラットに読めない)のですが、(出たその時間は寝ているのがばれますな)読んだところ「SEPとかの見せ方が変わっていないから市場は喜ぶと思うけどこれ何気にトラップが仕込んであるじゃろ」と思ったのですが、見た感じちとこれ市場ハトイエレンヒャッハーになり過ぎてねえか・・・・・・・

というのが(会見Q&A以外をざっと見た時点での)感想ではありますが、何せ寝起きなのでまあ寝起きのおじちゃんの寝言かもしれません。

まあ大体の線ってこの前のイエレン講演と同じようなトーンの論法になっているなあと思いますし、以下申し上げるように結構お洒落なトラップが仕込んであるので、市場が喜んでいるほどハト派ヒャッハーではないんじゃネーノ、という話を以下簡単に。

○声明文は物価に関する記述部分がトラップだと思う

ステートメントである。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20170315a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20170201a.htm(前回)

・第1パラグラフ:物価についての文言はどう見てもキタコレです本当にありがとうございました

『Information received since the Federal Open Market Committee met in February indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has continued to expand at a moderate pace.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has continued to expand at a moderate pace.』(前回)

総括判断に関する文言に変化がないのに利上げとな、という話ですが、これは実は後でネタにしますがプレコンの最初に「別に今回見通しの変更を行っていないけど利上げしましたが」という洒落たトラップが打ち込まれているのですな。

『Job gains remained solid and the unemployment rate was little changed in recent months. Household spending has continued to rise moderately while business fixed investment appears to have firmed somewhat.』(今回)

『Job gains remained solid and the unemployment rate stayed near its recent low. Household spending has continued to rise moderately while business fixed investment has remained soft. Measures of consumer and business sentiment have improved of late.』(前回)

センチメントに関する文言は今回(たぶん量の問題で)削除されていますが、企業の投資に関する判断が引き上げになっています。

『Inflation has increased in recent quarters, moving close to the Committee's 2 percent longer-run objective; excluding energy and food prices, inflation was little changed and continued to run somewhat below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)

『Inflation increased in recent quarters but is still below the Committee's 2 percent longer-run objective. Market-based measures of inflation compensation remain low; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(前回)

いやこれはキタコレだろとあたしゃ思うのですけれども、これまで物価に関して「is still below the objective」だったのが今回は「moving close to the objective」な訳でして、これはまあ(先日のイエレン講演での話と同様に)「とりあえず今時点での実質FFレートを中立に近くする(今時点での中立FF金利はこの前のイエレン講演だと足もとの金利から1%程度上という話で、ロンガーランのFFではありません)方向性を思いっきり示した(still belowなら引っ張る意味があるがmoving closeなら緩和のスケールバックを行う方が妥当という話になるから)」という風に読めると思うのですけれども・・・・・・・・・・・・

なお市場のインフレ期待とかの文言には変化ないです。


・第2パラグラフ:こちらは一部文言変更あるけど基本は同じ話

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will stabilize around 2 percent over the medium term. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will rise to 2 percent over the medium term. Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(前回)

ここでは先行きの所が金融政策スタンスの緩やかな調整によって「inflation will stabilize around 2 percent over the medium term」という表現の変更が行われていますが、これは1パラの物価文言変更を受けているのでまあこれはこういうもんでしょう。でもってリスク認識とかその辺に関する話には変更は無いです。


・第3パラグラフ:利上げしましたよという話

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 3/4 to 1 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(今回)

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/2 to 3/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.』(前回)

まあこちらはFFを50-75→75-100に上げましたよという話ですな。


・第4パラグラフ:物価に関する文言に盛大な仕込みがあると思うんだがこれ

今後の金利政策に関してのパラグラフにはこれまた「おー」とアタクシ的には思うのがあったんですがががが。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

この辺はいつもの当たり前の話をしていまして文言一致の巻で問題はこの次だと思うんだが。

『The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal.』(今回)

『In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal.』(前回)

いやこれは見た瞬間割と(;゚д゚)な感じになったんですけど、まあ確かにこれ単に第1パラグラフと連動しているだけと言えないことも無いのですが、「symmetric inflation goal」に対しての進展を見ていくって言ってるんですから、これ物価情勢次第でもっとバシバシ利上げしますと言っているようなもんですし、これまでは物価目標に対して「current shortfall」だったというのを入れていた(つまり正常化は急がない)のに対して今回は「対象的」となっているんですから、これは出来上がりのSEPで示される金利パスの出来栄えが同じとしてもトーンが違うがなという話だと思うんですがどうでしょうかねえ。


『The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

こちらは今後の利上げペースに関してこれまでの「only gradual increases」のonlyが外されているのがちょっとチャーミング。


・第5パラグラフ:バランスシート政策に関する文言は全文一致

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

こちらはプレコンのイエレンさん説明部分の最後に「今回バランスシート政策に関する討議は行ったけれども今のままで今後も討議するよん」というのがありました(間に合えば後程)。


・第6パラグラフ:カシュカリさんが反対とな

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo. Voting against the action was Neel Kashkari, who preferred at this meeting to maintain the existing target range for the federal funds rate.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo.』(前回)

まあご覧のとおりでカシュカリさんが現状維持を主張して反対。


○SEPはあまり変化が無かったのでヒャッハーとなったのでしょうな

今回
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20170315.pdf(PDF)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20170315.htm(HTML)

ということでHTMLの方からだと貼り付け易いのでその辺から。

・経済見通しがほぼ変わらずで物価見通しはまあ声明文と同様って感じっすか

GDPメディアン(12月→3月)

2017年:2.1→2.1
2018年:2.0→2.1
2019年:1.9→1.9
ロンガーラン:1.8→1.8

失業率(同)

2017年:4.5→4.5
2018年:4.5→4.5
2019年:4.5→4.5
ロンガーラン:4.8→4.7

ロンガーランの失業率が若干下がったのがほーという感じですが、まあ変わらんですな。


PCEインフレ(同)

2017年:1.9→1.9
2018年:2.0→2.0
2019年:2.0→2.0
ロンガーラン:2.0→2.0

PCEコアインフレ(同)

2017年:1.8→1.9
2018年:2.0→2.0
2019年:2.0→2.0
ロンガーランはコアなので無い

ということでこの変化で何で声明文の文言があれだけ威勢良く成るのか、と思う訳ですが、これまた今回ってファンチャートの出方が代わっているので微妙に変化を読みにくいのですけれども、要するに物価の先行きに対しての自信が満々でござる、となったということでしょう。


・ドットチャート

今回はメディアンが

2017年:1.4→1.4
2018年:2.1→2.1
2019年:2.9→3.0
ロンガーラン:3.0→3.0

となっていまして、2017年に関しては

75-100(今回でおしまい):2名→2名
100-125(あと1回):4名→1名
125-150(あと2回):6名→9名
150-175(あと3回):3名→4名
(あと200-225という変態仮面が1名前回も今回もいます)

となっているので、残り2回(年3回)がメインに寄ってきてますが、しらっと残り3回も増えていて、まあそこそこ強くはなっている感もありますけどね。

なお、ロンガーランについては前々回から比較すると、

2.50%:3名→1名→1名
2.75%:5名→6名→5名
3.00%:6名→7名→7名
3.50%:1名→1名→1名
3.75%:1名→1名→1名

ということで、まあ微妙には上がっているのですが、前回はホイホイ上げたのが何人もいてナンジャソラ状態だったのですが、そこまでのことは無かったですねということで、大穴でロンガーランとか動いたら笑うわと思ったがそれは上がらんかったぞなという事で、まあマーケットニッコリという事なのでしょうが、でもまー普通にこれ年3回は自信満々という感じだとは思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・・・・・・


○プレコンについては全部ネタにするのは時間と分量の関係上勘弁ですが

まあ何だ、アタクシがほほーと思った所だけ拾っておきます。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20170315.pdf
Transcript of Chair Yellen’s Press Conference Opening Remarks
March 15, 2017

・今回の利上げは「見通しの改善」ではないというのは割とトラップだと思う

最初の所ですけどね。

『CHAIR YELLEN: Good afternoon. Today, the Federal Open Market Committee decided to raise the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point, bringing it to 3/4 to 1 percent. Our decision to make another gradual reduction in the amount of policy accommodation reflects the economy’s continued progress toward the employment and price stability objectives assigned to us by law.』

『For some time the Committee has judged that, if economic conditions evolved as anticipated, gradual increases in the federal funds rate would likely be appropriate to achieve and maintain our objectives.』

というのは声明文にある通りですが・・・・・・・・・・

『Today’s decision is in line with that view and does not represent a reassessment of the economic outlook or of the appropriate course for monetary policy. I’ll have more to say about monetary policy shortly, but first I’ll review recent economic developments and the outlook.』

ということで、今回は別に見通しが上方修正されたから利上げした訳ではない、という話をしているので、これ財政要因で上振れ(するかどうか怪しいという話はさておきまして)した場合には利上げペースが速まるがなというサムシングを漂わせる(なお後の方で財政は経済ファクターの一つにすぎませんから、とヘッジは入れています)ものがあると思ったのですが、寝起きの寝言かもしれませんのでその辺は個人の感想ですということで。


・物価に関するアセスメント

ちょっと飛びまして2ページ目の頭になりますが、

『Turning to inflation, the 12-month change in the price index for personal consumption expenditures rose to nearly 2 percent in January, up from less than 1 percent last summer. That rise was largely driven by energy prices, which have been increasing recently after earlier declines. Core inflation--which excludes volatile energy and food prices and tends to be a better indicator of future inflation--has been little changed in recent months at about 1-3/4 percent. We expect core inflation to move up and overall inflation to stabilize around 2 percent over the next couple of years, in line with our longer-run objective.』

まあこの辺は声明文での表現を踏襲してるっちゃあそれまでですが、ここでの言い方もキタコレ感はあります。


・正常化を遅らせるのはアカンという話とか中立金利云々の話とか

金融政策のパートの所ですが、

『Today’s decision also reflects our view that waiting too long to scale back some accommodation could potentially require us to raise rates rapidly sometime down the road, which, in turn, could risk disrupting financial markets and pushing the economy into recession.』

というのを入れていまして、これまた先般のイエレン講演とかと同じ話ですが、プレコンというFOMCの見解として出してきていますなあとなっていまして、その次も先般のイエレン講演と同じ話をプレコンとして行っています。

『We continue to expect that the ongoing strength of the economy will warrant gradual increases in the federal funds rate to achieve and maintain our objectives. That’s based on our view that the neutral nominal federal funds rate--that is, the interest rate that is neither expansionary nor contractionary and keeps the economy operating on an even keel--is currently quite low by historical standards.』

中立金利との関係の話です。

『That means that the federal funds rate does not have to rise all that much to get to a neutral policy stance. We also expect the neutral level of the federal funds rate to rise somewhat over time, meaning that additional gradual rate hikes are likely to be appropriate over the next few years to sustain the economic expansion. Even so, the Committee continues to anticipate that the longer-run neutral level of the federal funds rate is still likely to remain below levels that prevailed in previous decades.』

ということでこの辺は先般のイエレン講演と同じ話をしています。


・財政ファクターはいくつも有る中の一要因ですというヘッジは入れています

『As always, the economic outlook is highly uncertain, and participants will adjust their assessments of the appropriate path for the federal funds rate in response to changes to their economic outlooks and views of the risks to their outlooks.』

ということで・・・・・・・・・・・

『Changes in economic policies, including fiscal and other policies, could potentially affect the economic outlook. Of course, it is still too early to know how these policies will unfold. Moreover, fiscal policy is only one of many factors that can influence the outlook.』

となっていまして、トランプの追加来たら加速する、とは言い切っていませんけれども、最初にありました「見通し変わってないぞな」というのはつまりトランプ財政関係なく利上げしています、という話ですのでその辺は留意が必要じゃネーノと。


・資産買入に関しては今後討議

最後の所ですが。

『Finally, we will continue to reinvest proceeds from maturing Treasury securities and principal payments from agency debt and mortgage-backed securities. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, has helped maintain accommodative financial conditions.』

というのはまあ良いとしまして、

『As a matter of prudent planning, we discussed at this meeting a number of issues related to an eventual change to our reinvestment policy.』

まあ想定されていた話ですがキタコレですな。

『We made no decisions, and we will continue our discussion at subsequent meetings. In keeping with the principle that the process of normalizing our balance sheet will be gradual and predictable, we will provide more information about our plans as it becomes available.』

ということで今後徐々にこちらの話も出てくるという事のようです。


・・・・・・・つーことで全般的に見て米国金融市場がハト派ヒャッハーとか反応するのはちょっと過剰反応じゃネーノとは思うのですが、債券ショートとかドルロングとか溜まっていたんですかねえ。





2017/03/15

お題「FOMC待ちというには何か円債ウゴカンチ会長過ぎじゃネーノと思いながら各種メモメモ」

うーんこの。
http://jp.reuters.com/article/ldp-educationbond-idJPKBN16L0F6
Business | 2017年 03月 14日 14:31 JST
焦点:自民特命チームが「教育国債」有力視、5-10兆円案も

『自民党の教育再生本部(本部長・桜田義孝衆院議員)の「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」において、今年1月から馳浩・前文部科学相を中心に財務省の関係部局や文部科学省、内閣府などのスタッフも出席し、検討を進めてきた。議論中の課題について馳・前文部科学相は、1)無償化のための恒久財源が必要であることの論拠、2)財源確保の方法、3)無償化対象の洗い出し、4)給付方法として家計への直接給付か教育機関への給付か──を挙げた。』(上記URL先より)

・・・・・・・・何で国債が恒久財源になるのかおじちゃん頭が悪いので良くわからないんでちゅが。


○材料待ちにしても円債何かまるで動かないですなあ

・超長期入札も無風とな

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1GR2CY
Markets | 2017年 03月 14日 15:07 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発で引け、長期金利は横ばいの0.085%

『国債先物中心限月6月限は前日比8銭高の149円98銭と反発して引けた。朝方は20年債入札に備えた調整圧力に上値を重くする場面もあったが、午後にかけて買い戻し優勢の展開。20年債入札が無難な結果になったことで買い安心感が広がった。ただ、14─15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、15─16日の日銀金融政策決定会合と続くイベントを前に、狭いレンジでの値動きに終始した。現物市場はまちまち。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.085%。新発20年債は流通市場で国内勢の打診的な買いが観測されたが、全般に様子見ムード。』(上記URL先より)

ということで昨日は20年入札があったのですが、
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170314.htm

『6.価格競争入札について
(1)応募額 3兆7,605億円
(2)募入決定額 9,938億円
(3)募入最低価格 100円35銭 (募入最高利回り)(0.680%)
(4)募入最低価格における案分比率 32.8473%
(5)募入平均価格 100円46銭 (募入平均利回り)(0.673%)』

つーことですが結果は事前予想通りだったのですが、そもそも事前調整っぽいのも碌にないし、かといって入札普通に予想通りでも後続は無いというこのウゴカンチ会長ということになっておりまして、FOMC結果待ち云々とかというレベルではないこの状況って何なんですか(おかげでこっちは1週間休んでいたのに何の違和感もなく債券市場に戻る感じでしたが)という風情でして、1月に中期輪番スキップで盛大なボラを出した日銀ですが、まー今月は変なオペの上げ下げが月初一発目だけありましたが、その後の1-3減額はそらそうよという所でサプライズも無かったと思われますので(休んできた時だからよー知らんけど)、そもそも論として日銀が輪番で変な動き方をしなければ市場ってこんなもんになってしまう、つー話ですの。

まーとりあえず中期の後ろから超長期の前半までの所をがっつり抑える感じで輪番をやっていくと今みたいに海外の金利が上がるような感じでも、国内の方でガチ金利上昇ネタ(物価がホイホイ上がるか黒田さんのクビが飛ぶような政治ネタが生じるか)が出て来なければ需給的によー動かん、というところで、今は瞬間的な話ではありますけれどもバランスして思いっきりボラが無くなってしまっているという感じだとは思いますので、暫く動かんのかなあとか頭を抱えている所ではありますな。

まーオペで妙なプロアクティブな動きをしなければ変なボラは出ないという事は分かったのですが、これ金利が動いていないから特に輪番の変化も出ないということでもあって、海外が金利上昇ネタ状態になる中で全然金利動かんちゅーことは逆に金利が下がるネタ(ってのがいきなり来るのかというとそれもまた疑問だが)が登場した時に金利が下がる→日銀大喜びして輪番をいじる(買入減らす方)となって、そこからまた変なボラが出るのかなあとか考える所ではございます。まあ金利上昇ぶち抜きに行くにはそれなりの大ネタが無いと。


・日銀買入専用機の短国1年入札ですが

あと昨日は短国1年もあったのですが、
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170314.htm
(3)募入最低価格 100円25銭0厘(募入最高利回り)(-0.2500%)
(4)募入最低価格における案分比率 6.0820%
(5)募入平均価格 100円28銭4厘(募入平均利回り)(-0.2839%)

1年で3銭4厘とか中々お洒落な流れ方ですが、そもそも1年TBって日銀短国買入専用機みたいなビルですので、そら短国買入が思いっきり減額されたら短国買入専用機の金利は上がるわなと思います。

でまあしつこく申し上げますと、そもそも長期国債買入の方は兎も角として、MB目標達成の帳尻で行われている短国買入なのですから、そらもう中短期国債の価格形成に変な悪影響出ない範囲内でもっと減額して然るべきでしょと思いますし、特に1年TBとか日銀の買入に吸い込まれていくだけの銘柄になってしまってその行為に何の意味があるのかと小一時間問い詰めたい状態ですからね。


・ドルオペ担保用オペとな

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170314.htm
米ドル資金供給 2017年3月16日 2017年3月23日 1.390
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注3)60,000 2017年3月14日 2017年3月15日
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)5,000 2017年3月15日 2017年3月24日

つーことで昨日はドルオペ担保用オペが実施されまして、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170314.htm
米ドル資金供給(3月16日スタート分) 4 4
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)2,597 2,597 -0.500 -0.500
米ドル資金供給用担保国債供給(国債売現先)(3月15日スタート分) 2 2 -0.100 -0.100

ドルオペが400万ドルの実施で担保用オペが2億円ですからこれはお試しというか練習というかの人が居たのでしょうけれども、へーと思いながら見ておりました。なんか結構後場の遅めにオファーしてあっという間にオファーバックしている感じでしたが。


○何かこう財政の方が色々と怪しいのですが大丈夫ですかねえ

・どういう文脈で言っているのかがイマイチ分からんがそんな良い政策なら自分の国でやれと

ジンバブエキタコレ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-14/OMSL6D6JIJUO01
スティグリッツ教授:政府・日銀保有国債の無効化主張−諮問会議
日高正裕、氏兼敬子
2017年3月14日 18:33 JST 更新日時 2017年3月14日 19:16 JST

政府債務が「瞬時に減少」、「不安和らぐ」と−スティグリッツ氏
債務の永久債や長期債への組み換えも提言−金利上昇リスク移転可能

『ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大学教授は14日夕、経済財政諮問会議に出席し、政府・日銀が保有する国債を無効にすることを提言した。会議に提出された資料によると、スティグリッツ教授は、政府・日銀が保有する国債を無効化することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転」できるとしている。永久債の発行は「政府支出に必要な追加的歳入を調達し、経済を刺激する低コストの方法」だとした。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・・いやそんなに良い政策なら債務上限問題で定期的に議会で攻防戦になるお前の国でまず最初に実施してから言えと小一時間問い詰めたい訳で、こんなのどう見てもジンバブエ理論だろお前日本を舐めてるのかと申しますか、スティグリッツ先生におかれましては可及的速やかに天寿を全うして頂きたく存じます。てかさ、こういうのに対して全力で撃破する学者が国内に居ないってのも困るのであって、全力で撃破しないもんだから定期的にゴキブリの如く湧いて出てくる議論ですわなと思います。

つーかね、FTPLだって「インフレタックスで財政赤字は将来的に回収される」という話で、別に財政が打ち出の小づちだとか赤字発散して無問題という話ではなくて、そらまあノミナルで見たらリカーディアンじゃないように見えるけどインフレタックスでの回収という意味では回収するんだから実質ベースで見たら結局リカーディアンじゃねえのという話なんだが、民主国家の政治家にこういう話を持って行ったら「財政が打ち出の小づちだヒャッハー」になるに決まっているでしょうがと思うんですがこの調子で大丈夫なんかよと不安に思ってしまいますがとりあえず市場が今の所ノーケアーみたいなので備忘メモの積り。


○最近BOEネタをさぼっていたらこんなネタが

http://jp.reuters.com/article/britain-boe-resignation-idJPKBN16L148
Business | 2017年 03月 14日 20:32 JST
英中銀のホッグ副総裁が辞任、利益相反問題で

『[ロンドン 14日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は14日、ホッグ副総裁(銀行・市場担当)が辞任したと発表した。ホッグ氏は、兄弟が英金融大手バークレイズで戦略策定に関与している問題を巡り、利益相反の可能性を申告しなかったとして批判されていた。ホッグ氏は2013年に英中銀に入り、1日付で副総裁に就任したばかりだった。』(上記URL先より)

・・・・・・あらまそうですかというだけでこれまた備忘メモですが。


○これまた今更メモですがECBは威勢の良い文言をしらっと削除している件の備忘メモ

FOMCに日銀と来ますのでECBネタを放置しそうなので慌ててステートメントの所だけ。

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2017/html/is170309.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)

Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 March 2017

でまあ微妙に変わっているということでちと長くなるけど前回と比較してみましょう。
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2017/html/is170309.en.html(今回)
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2017/html/is170119.en.html(前回)


・金融政策決定に関する文言

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. We continue to expect them to remain at present or lower levels for an extended period of time, and well past the horizon of our net asset purchases. Regarding non-standard monetary policy measures, we confirm that we will continue to make purchases under the asset purchase programme (APP) at the current monthly pace of ユーロ80 billion until the end of this month and that, from April 2017, our net asset purchases are intended to continue at a monthly pace of ユーロ60 billion until the end of December 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing Council sees a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. The net purchases will be made alongside reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP.』(今回)


『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. We continue to expect them to remain at present or lower levels for an extended period of time, and well past the horizon of our net asset purchases. Regarding non-standard monetary policy measures, we confirm that we will continue to make purchases under the asset purchase programme (APP) at the current monthly pace of ユーロ80 billion until the end of March 2017 and that, from April 2017, our net asset purchases are intended to continue at a monthly pace of ユーロ60 billion until the end of December 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing Council sees a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. The net purchases will be made alongside reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP.』(前回)

金利政策と資産買入に関する文言について(3月→今月みたいなのは別にして)は同じ話ですな。


・金融環境、物価情勢

でもって次のパラグラフに関しては1月は預金ファシリティよりも低い金利での買入を行うとかいう話があるのでそこは比較対象外として。


『Our monetary policy measures have continued to preserve the very favourable financing conditions that are necessary to secure a sustained convergence of inflation rates towards levels below, but close to, 2% over the medium term. Their ongoing pass-through to the borrowing conditions for firms and households benefits credit creation and supports the steadily firming recovery of the euro area economy. Sentiment indicators suggest that the cyclical recovery may be gaining momentum. Headline inflation has again increased, largely on account of rising energy and food price inflation. However, underlying inflation pressures continue to remain subdued. The Governing Council will continue to look through changes in HICP inflation if judged to be transient and to have no implication for the medium-term outlook for price stability.』

『The monetary policy decisions taken in December 2016 have succeeded in preserving the very favourable financing conditions that are necessary to secure a sustained convergence of inflation rates towards levels below, but close to, 2% over the medium term. Borrowing conditions for firms and households continue to benefit from the pass-through of our measures. As expected, headline inflation has increased lately, largely owing to base effects in energy prices, but underlying inflation pressures remain subdued. The Governing Council will continue to look through changes in HICP inflation if judged to be transient and to have no implication for the medium-term outlook for price stability.』

金融政策によって企業や家計の金融環境を緩和して物価が中期的に2%に、という話は同じですが、今回は「Sentiment indicators suggest that the cyclical recovery may be gaining momentum.」というのがしらっと入っていまして、状況の改善を示していますな。


・金融政策運営に関して

『A very substantial degree of monetary accommodation is still needed for underlying inflation pressures to build up and support headline inflation in the medium term. If the outlook becomes less favourable, or if financial conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment in the path of inflation, we stand ready to increase our asset purchase programme in terms of size and/or duration.』(今回)

『A very substantial degree of monetary accommodation is needed for euro area inflation pressures to build up and support headline inflation in the medium term. If warranted to achieve its objective, the Governing Council will act by using all the instruments available within its mandate. In particular, if the outlook becomes less favourable, or if financial conditions become inconsistent with further progress towards a sustained adjustment in the path of inflation, we stand ready to increase our asset purchase programme in terms of size and/or duration.』(前回)

でもって皆様既にご案内の通りですが、今回はこれまで入っていた「If warranted to achieve its objective, the Governing Council will act by using all the instruments available within its mandate.」という威勢の良い「必要ならば更に追加緩和を行います」的な文言(ただしどこぞの日銀と違いまして追加緩和をするとは言っていなくて「必要なすべてのツールを用いて対応する」と言っているだけですけど)がゴッソリと削除されていまして、まあご案内の通りその辺とかその後に出てきた利上げがどうのこうの的なものに反応したりもしていたようですな。

まあ利上げ云々に関してはもうちょっと色々な講演とか後日出る議事要旨とか見ながら考えますけれども、元々ECBの場合はマイナス金利にしてもマイナスの度合いが大きすぎなので、米国がホイホイと金利正常化モード(ちなみに今回アタクシはやや穴狙いかも知れんがロンガーランのFF金利ドットプロットが上にシフトするかもねーとは思ってるんですがどうでしょうかねえ、さすがに恥ずかしいからやらないですかねえ)となると別にドマイナスの短期金利を放置する必要もないでしょうし、大体からして日本とは違うと言ったってそらこんなドマイナス金利長期間放置していたら金融システムへの負担(マイナス金利の負担は金融システムのどこかで負担しないといけなくて、預金者等の資金もってるサイドの利用者の方々に完全転嫁できないのならシステムの中のどこかで負担しないといけないのだから長期化すればそら誰かが悲鳴を上げるわな)がドンドン嵩んでいくのですから、マイナス金利撤収しても極端にユーロ高に振れないとゆーのであれば撤収した方が利口とは思うのですが、詳しいのがイマイチまだ把握できていない(のはアタクシの怠慢のせいですすいませんすいません)のでもうちょっと考えてみます。


○おまけで久々の読書室

今回はお休み期間中に諸般の事情によりまして積読が進捗しましたので忘れる前にご報告しておきます。

・「失われた20年」を超えて(福田慎一著:NTT出版 2015年7月)

1980年代後半のバブル後のいわゆる「失われた20年」について、まあ一般的ではありますが、バブルによる過剰の整理が遅れた10年と、その結果としていわゆる長期停滞になった10年について整理しています。でまあ整理の方は誠に仰せの通りという感じで良くまとまっているのですが、不振部門とか不良債権処理とかに関して何故迅速な処理が出来なかったか、という辺りの経営サイドのインセンティブ構造についてもうちょっと突っ込んだ話をして欲しかったのと、実際に行うという話になった場合にはそもそも日本の雇用制度がそれをしにくい(=企業がコケると従業員が大いに不利益を被るという雇用制度や社会保障制度などの構造がある)という辺りはそらまあ大学のセンセイだからあんまりそういうの実感が無いだろうなあという辺りが微妙に上滑りしてるなあとは思いましたが、まあ良い本の部類に入るんじゃないですかねえ。(一応褒めている)

ISBN978-4-7571-2315-1 C0033 \2300E


・恐慌に立ち向かった男 高橋是清(松元崇著:中公文庫 2012年2月)

どんだけ積読だったのかというツッコミはさておきまして、こちらの本なのですが、元々は財務省の「ファイナンス」に著者が連載していた論考を再構成したものになっていまして、最初と最後の所は高橋是清の話といわゆる高橋財政に関する話なのですが、より面白いのは明治維新以降の幣制と財政に関する話でして、特に正貨流出に関する説明って金本位通貨制度に関する詳しい説明になっているのと、財政に関しても出る方の話の他に当時の税収の構造に関する話などもあって、実際は「明治から昭和の通貨と財政に関する小史」になっているのに本の題名がただのリフレ万歳本に見えてしまうのが極めて惜しいとしか申し上げようがない。暫く前に「日本銀行歴代総裁論(吉野俊彦著:講談社学術文庫)」を盛大にお勧めしたと思うのですが、あれよりは量も少なくてちょうど良いと思いますのでかなりお勧め。

ISBN978-4-12-205604-6 C1123 \762E


・非伝統的金融政策 政策当事者としての視点(宮尾龍蔵著:有斐閣 2016年10月)

毎度お馴染み宮尾前審議委員のちょっと前の著作で、実は積読ではなくて休み前に購入した物件。非伝統的政策の理論的なメカニズムについて色々とモデルを出して「ここはこう説明できるがこれは説明できない」みたいな感じで色々と出してくるのは面白いのですが、まあボリューム的に仕方ない面はあるのは分かるのですが、何ちゅうかこう全体的にちょっと説明が端折っているというかキツイ言い方をするとやや雑で、実際の政策に関する解説もちょっとこうその場にいた市場の中の人的には色々と違和感のある記述が散見されるのですな。でもって金融政策に関する個別具体論っていうのはいわゆる「神は細部に宿る」って奴で、非常に細かい所なのかも知れないですが、そこが違うと話が違ってくるんだよなーというような事になるんですよ。ということでまあスクラッチで読むと政策の具体論に関して誤認するリスクがあるのは難点。まあツッコミ入れながら読むのには良いのではないかと思います、そんなに量も多くないのでさらっとは読める(一応褒めている)。

ISBN978-4-461-16490-1 C1033 \2300E






2017/03/14

お題「まあ国内債券市場も閑散ですので各種虫干し系ネタなど」

とりあえずコメントは差し控えさせていただきます(白目)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170313/k10010909711000.html
時間外労働1か月上限 100時間未満で決着へ
3月13日 18時54分

○計数関連で少々

・マクロ加算掛け目

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170309a.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定める基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2017 年 3 月〜5 月積み期間:17.0%(注)

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、上記3積み期間において、平均して概ね 10 兆円台となる見込みです。』

ということでまあこちらは基本的にMBから逆算するのですが、掛け目自体は7.5%→10.0%→13.0%→17.0%と上がっていくのですけど、良く良く考えたらMBの拡大ペースって既に目標ではない(ものの80兆円という文言だけ残っているのも色々とアレですが)ので、ペースが上がったり下がったりするので、政策金利残高のマクロ残高に関しても実はエイヤーで決めないと行けないのねという所で。ただ残高が全体的に増えるとどうしても偏在部分の絶対金額がかさんで来るのでこれはこんなもんで良いのかもしれませんな。


・個人向け国債3月発行ェ・・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p290306.htm
個人向け国債の応募額(平成29年2月)

『平成29年2月における個人向け国債の種類別の応募額は、下記のとおりです。発行日は、平成29年3月15日を予定しています。

個人向け利付国庫債券(変動10年)第83回債 6,772億円
個人向け利付国庫債券(固定 5年)第71回債 2,076億円
個人向け利付国庫債券(固定 3年)第81回債   467億円』

ということなのですが、こちらの新着情報の
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/info/


2017.03.06
個人向け国債の応募額 →発行額の推移はこちら

とありまして、発行額の推移の方を見ますと(エクセルです)3本合わせた発行額が、
1月:6,342億円
2月:5,727億円
3月:9,315億円
ってな推移になっていて3月の発行額の9000億円規模って2007年辺りの発行額まで遡る上に、この頃って四半期発行だったので実質的には過去最大の発行規模というオソロシスな展開になっております。

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p281205.htm
平成28年12月5日
財務省
個人向け国債の募集発行事務取扱手数料を見直します

ということで4月発行分(今月募集する奴)から事務取扱手数料が下がる影響は思いっきりあるのですけれども、それにしてもこの駆け込み需要と申しますか何と申しますかという勢いだろうなあとは思っていたものの、実際にこの数字見るとさすがにビビるわ。


・いまさらですが先週金曜のオペメモ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170310.htm
国庫短期証券買入 2,500 2017年3月14日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,000 2017年3月14日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2017年3月14日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年3月14日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年3月14日

つーことで短国買入は2500億円のままという事になりまして1-3の輪番も減額されまして、短国買入はこの調子だと月末に出した予定を思いっきりショートする見込みで、

http://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/
3/ 3(金)日銀当座預金増減要因(3月見込み) [XLSX 49KB]

こちら何故かHPリニューアルと共にエクセル化されたのでコピペはしやすくなった(元々スクリーンショットのPDF化状態だった)のですが、リンクしにくくなったのが惜しい所ではあります。

『具体的には、国庫短期証券売買オペを通じて前月末までに取得した国庫短期証券の当月における償還額(48,100億円程度。繰上償還額および対政府等売却額は勘案していない)を、「償還」から差し引いている。』

とありまして、2月末に出ていたのは『金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、3月末の残高を34〜36兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』でして、月末の短国買入残高が363,542億円でしたので(額面ベース)、元々の話だと月間2.5兆円程度は買う予定になっていましたが、何せ短国の金利が低い所で推移しまくっていたのでそらまあ減らすわなという所です。

1-3についても短国強い影響もあるのかどうか知らんですけれども、まあここの金利も相変わらず低いままで推移していたのでここの減額もまあ妥当ですかねえという所で。

落札結果は
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170310.htm
国庫短期証券買入 10,184 2,500 0.034 0.036
国債買入(残存期間1年超3年以下)9,172 3,001 0.010 0.016 82.2
国債買入(残存期間3年超5年以下)8,727 4,004 -0.005 -0.003 53.0
国債買入(残存期間10年超25年以下)5,323 2,006 0.006 0.008 90.7
国債買入(残存期間25年超)2,710 1,002 0.003 0.006 40.0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)279 279 -0.500 -0.500

となっていて、短国買入は1兆円応札があったので5000億円でも行けたのかなとは思いますが、別に短国買入自体MB目標が事実上外れているのですし(まあ長国買入のペースに関しては減らしにくくなってはいますし、まあ減らすと目立ちそうですけれども)、減らして問題の無い時にはジャンジャン減らして少しはここのビルの正常化をした方が良いのではないかと思います。まあここの金利がもうちょっとマシ(買う側的に)になってくると担保需要とかも更に復活してくる(たぶん急に強くなる時ってドル調達絡み以外では国内の「モノ」としての需要なので担保需要か決算向け国債残高帳尻需要の筈なのです)と思いますので、まあ日銀の買入はもっと減らして行けば良いと思います。


・しかしまあ国内債券ェ・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1GQ28N
Markets | 2017年 03月 13日 15:13 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小幅下落、長期金利0.090%に上昇

『長期国債先物は小幅下落。前週末発表の2月米雇用統計は好調で、3月の米利上げ観測を後押しする内容となった。しかし、一部で予想されていたほどの強い結果とはならず、10年債利回りは一時つけていた12週間ぶりの高水準から押し戻された。この流れは円債市場に強いインパクトを与えることはなく、米連邦公開市場委員会(FOMC)など重要なイベントを控える中、模様眺めとなる市場参加者が多くなり動意薄の展開。現物債も小動き。市場が想定する通りに日銀オペが通告され、結果は無難な範囲に収まったものの相場に大きな影響を与えることはなかった。1月の機械受注は市場予想を下回ったが材料視されるまでには至らなかった。長期国債先物中心限月6月限の大引けは、前営業日比5銭安の149円90銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp上昇の0.090%。』(上記URL先より)

ということで確かアタクシ1週間お休みしていた筈なのですが、10年金利の居場所ェ・・・ではありますが、FOMCの3月利上げまで織り込んでも別に10年10bpジェットストリームアタックとか来る訳でもなくという感じで、まあ思いっきり為替がブレ出せば別なのかもしれませんけれども、「10年誘導金利目標を変更しないとマズーとなるような圧力」となるとやはり国内物価がマジモンで上向いてきましたなあ的なインパクトか、それに準ずるような威勢の良い話(思いっきり円安に振れるとか)が無いとという事でしょうか。単に3月で需給が良いからということなのかはどうもこう肌感覚的にどっちというのが微妙に分からんので相場がもうちょっと活発化してくれないと・・・・・・・・・・・・・orzorz


○アトランタ連銀総裁交代とな

https://www.frbatlanta.org/news/pressreleases/atlantafed/2017/0313-atlanta-fed-names-bostic-new-president-and-ceo
Atlanta Fed Names Bostic New President and Chief Executive Officer

『ATLANTA-Raphael W. Bostic will become the 15th president and chief executive officer of the Federal Reserve Bank of Atlanta effective June 5, 2017, announced Thomas A. Fanning, chairman of the board of the Federal Reserve Bank of Atlanta. Bostic, age 50, succeeds Dennis Lockhart, who retired from the Atlanta Fed on Feb. 28, 2017. The appointment was jointly approved by eligible directors of the Atlanta Fed's board of directors, all nonbankers by law, and the Board of Governors of the Federal Reserve System in Washington, D.C.』

ということで経歴とか以下にあるのですけれども、基本的にアトランタ連銀って執行部寄りというか大勢順応型という印象なので、FOMCの議論の論調がこの方の投下で大きく変わるという話では無いでしょうなあと思いますが詳しくないのでパスでメモだけ。



○政井審議委員が海外巡業していたようですが特に独自見解が開陳されている訳でもない件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170308a1.pdf
日本経済と金融政策
(第9回日本証券サミット<ロンドン>における冒頭発言の邦訳 )

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170307a1.pdf
日本の金融経済情勢と金融政策
在スイス日本国大使館主催セミナーにおける講演の邦訳 (於チューリッヒ)

という2本がアタクシお休みしている隙に打ち込まれていまして、政井さん海外巡業キタコレとは思ったのですが、内容を読んでみますと別に金融政策運営に関する独自見解が開陳されている訳でも無いのでうーんこのという感じですが、一応ちょっとだけ。


・ロンドンでの講演ではインフレ期待の引き上げが出来ていない件についての執行部の苦しい言い訳が

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170308a1.pdf
日本経済と金融政策
(第9回日本証券サミット<ロンドン>における冒頭発言の邦訳 )

の方が短いのですがツッコミどころとしては分かりやすい。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、金融緩和の基本的なメカニズム自体は変わっていません。すなわち、@日本銀行の大規模な国債買入れによって、イールドカーブ全体を押し下げること、そしてA日本銀行が2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、予想物価上昇率を押し上げることです。これらによって、実質金利を引き下げることで、経済・物価に好影響を及ぼすというメカニズムを想定しています(図表2)。』

ということではあるのですが、そもそもイールドカーブ全体を押し下げるというのはどっか行ってる訳ですけれどもその説明がどうなっているのか、というのを鑑賞するのが今回のツッコミどころ。

『「量的・質的金融緩和」のもと、基調的な消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)は、プラスに転じ、2年半以上にわたってプラス圏で推移してきました。「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではない状態まで来たと判断されます(図表3)。』

でも目標は全然行かないですし、大体からしてインフレ期待変わってますかというのは後程出てきます。

『昨年、日本銀行が従来の枠組みを強化する形で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したのには2つ理由があったと理解しています。第1に、期待された効果をあげているとはいえ、2%の「物価安定の目標」は実現されておらず、より効果的な枠組みとする必要があったことです。』

ほう。

『第2に、大規模な国債買入れとマイナス金利政策の組み合わせは、イールドカーブ全般に影響を及ぼすうえでの有効性が確認された一方、場合によっては、必要以上にイールドカーブを押し下げ得ることとなり、却って金融機能に悪影響を及ぼす可能性もあることが懸念されたことです。』

という話なのですが、だったらそもそも「マイナス金利」の方を撤回する一方でイールドカーブについては別に押し下げる方向で、というのだってありの筈なのですが、勢いで入れてしまったマイナス金利について今更撤回すると黒田さんの面目玉なのか進退問題なのか知らんけれども、何故か撤回出来ないという困った状態なのですがそこはスルーというのが日銀クオリティ。

『新しい枠組みの中心的な要素である「イールドカーブ・コントロール」では、直接長期金利を目標とすることにより、金融仲介機能への影響も含め、経済・物価・金融情勢に応じて効果的かつ柔軟な金融政策運営が可能になったと考えられます。』

とか言っている割には長期金利をガチガチにコントロールしているというのが何とも。


『新しい枠組みのもう1つの要素は、「オーバーシュート型コミットメント」です。これは、日本銀行の強い決意を示すことにより、予想物価上昇率を高めていくことが狙いです。』

でまあこちらなんですけれども、確かに運営上の話で言えば「10年0%のオーバーシュート型コミットメント」とか有り得んので枠組み自体はこう作っておかないと話にならんというのはあるのですが、やはりこう「MBを1億円でも増やせば強い決意を示してインフレ期待が上がる」というのはちと無理がある理論ですわな。

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を通じてフォワード・ルッキングな期待形成への転換を図ってきましたが、これが十分に強まる前に、原油価格の下落などから、現実の物価上昇率が低下した結果、人々の予想物価上昇率は適合的な期待形成を通じて、低下しました。このため、日本において、2%の「物価安定の目標」を実現するためには、予想物価上昇率を高め、フォワード・ルッキングな期待形成への転換を促していくことが何としても必要だと考えています。このコミットメントはそのための1つの手段です。』

となると実はコミットメントの方じゃなくて、金利コントロールの下で海外金利が上昇する中で国内金利が低位安定させる「ことが出来ていれば」為替が円安傾向になって、その結果として適合的な期待形成を促すことになって予想物価上昇率が上がる、というのが本当のメカニズムでしょと思いますし、MBが効く効かないの話って今更ソロスチャートでもあるまいしとなっている中で為替に効かせようと思ったらMBよりも金利ですよね、というだけの話ではあると思うのですが、それを言い出すと置物一派が今まで主張していたのは何だったのかという話になって面目玉とか進退とか(以下略)。


でまあそこまでは兎も角としてこの部分はワロタ。

『予想物価上昇率は、いわば個人や企業の物価観ですから、それを変えていくのはそう簡単なことではありません。長期にわたるデフレを経験してきたわが国ではなおさらです。もともと、「量的・質的金融緩和」では、必ずデフレから脱却するという日本銀行の強く明確なコミットメントを示すために、目標達成までの期限の目途が2年程度とされました。このため、目標の達成に長い時間を要しているようにみえますが、見方を変えますと、まだ4年しか経過していないとも言えます。』

>見方を変えますと、まだ4年しか経過していないとも言えます
>見方を変えますと、まだ4年しか経過していないとも言えます
>見方を変えますと、まだ4年しか経過していないとも言えます

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

まあ何ですな、これが正副総裁とか正調置物一派が言い出したら「お前は何を言ってるんだ」という事になる訳でございますが、後から入ってきている方が言うと何となく「お、おぅ・・・・・」で済んでしまう雰囲気を醸し出す、というのがこれまあ執行部の狙いではあるんでしょうが(そういう意味ではやはり「お前は何を言ってるんだ」なのですけどね)。こうやって徐々に過去の話を「無かった事にする」攻撃への布石が打たれ出している(人を変えていくというのも一つのやり方ですし・・・・・)のかなあと思うと意外に味わいが深い部分であります。

『もちろん、気長にやっていけばよいというものではありません。まず、日本銀行が「物価安定の目標」に向けた強いコミットメントを様々な形で示していくことが引き続き重要です。そして、日本銀行がきわめて緩和的な金融環境を維持し、そのうえで、政府が大規模な経済対策への取組みを進めるなか、成長力の強化に向けた取組みを官民でこれまで以上に加速させ、民需を高めていく努力が必要だと思います。』

という話になっていまして、えーっとすいません金融政策だけで2年で2%達成できると大口叩いていた置物リフレ一派の皆さんどうしましたと小一時間問い詰めたい訳ですが、政井さんの場合は正調置物一派ではない(と思われるというか見られているというか)はずなので、まあこういう人がこういう説明をすることによって徐々に今までの大風呂敷を撤収しようとしている片鱗を見た感がします。


・チューリッヒの講演は要はロンドン講演の詳細版なのでめんどいのでパス

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170307a1.pdf
日本の金融経済情勢と金融政策
在スイス日本国大使館主催セミナーにおける講演の邦訳 (於チューリッヒ)

ってのがありまして冒頭に、

『本席では、まず、日本の金融経済情勢についてお話しした後、日本銀行の金融政策についてご説明し、私の考えをお話させて頂きます。


とはあるのですが、私の考えらしき部分が良く分からん(日銀の中心的というか公式というかな見解は勿論説明されている)のでめんどいので以下割愛なのですが、後半にある図表が執行部謹製感が強くてまあそういう感じという所ですな、うんうん。

#ということでまだ暖機運転中みたいなメモですいません




2017/03/13

お題「イエレン議長の予告ホームラン講演を鑑賞という虫干しマンですいません」

どもども、ご無沙汰している間に予告ホームランは出るわジンバブエ理論がまた首相から飛び出すわということのようですが、ボチボチ追いついて参ります(ので計数系は今日は勘弁)。

○今更ではありますがイエレン議長の予告ホームランを鑑賞という虫干しネタで

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20170303a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20170303a.pdf
Chair Janet L. Yellen
At The Executives' Club of Chicago, Chicago, Illinois
March 3, 2017
From Adding Accommodation to Scaling It Back

題名がいきなりど直球ですが、「出口政策をここから早める背景はなんですか」という説明になっているので整理しておくのは悪くない(まあ皆様には今更で誠に申し訳ございませんが)。


・今後の政策調整ペースが速まる宣言をのっけから

小見出し入る前のマクラ部分でしっかりこの記述。

『The process of scaling back accommodation has so far proceeded at a slower pace than most FOMC participants anticipated in 2014. Both unexpected economic developments and deeper reevaluations of structural trends affecting the U.S. and global economies prompted us to reassess our views on the outlook and associated risks and, consequently, the appropriate stance of monetary policy, both in the near term and the longer run.』

『Looking ahead, we continue to expect the evolution of the economy to warrant further gradual increases in the target range for the federal funds rate. However, given how close we are to meeting our statutory goals, and in the absence of new developments that might materially worsen the economic outlook, the process of scaling back accommodation likely will not be as slow as it was in 2015 and 2016.』

2015年や2016年のペースよりも早くなるキタコレですが、では遅くなった理由はというのは「予期しなかった経済の進展、米国および主要国経済の構造的な部分の再評価による経済物価見通しおよびリスク認識の変更、それによって近い期間およびロンガーランの適正な金融政策見通しが下振れをしたからです、となっている訳でして、これらの問題についての評価に変更があったから調整ペースが早まるちゅうことですな。


・実質金利の話をして「ここから1%程度は利上げするしその後も多分上げるよー」という説明

最初の小見出しが『Assessing the Degree of Monetary Policy Accommodation』でして、

『In our monetary policy deliberations, the FOMC always faces two fundamental questions: First, how do we assess the current stance of monetary policy? Second, what are the strategic and tactical considerations that underpin our decisions about the appropriate stance of monetary policy going forward?』

政策を考えるに際して重要な2点は、そもそも緩和度合いをどう知るのか、というのと政策の緩和度合いを適正な水準にもって行くにはどうしたら良いのか、というお話ですというのは仰せの通り。でもって、

『Gauging the current stance of monetary policy requires arriving at a judgment of what would constitute a neutral policy stance at a given time. A useful concept in this regard is the neutral "real" federal funds rate, defined as the level of the federal funds rate that, when adjusted for inflation, is neither expansionary nor contractionary when the economy is operating near its potential. In effect, a "neutral" policy stance is one where monetary policy neither has its foot on the brake nor is pressing down on the accelerator.』

ということで「実質的なFF金利」で緩和度合いを考えるというまあいつもの話。

『Although the concept of the neutral real federal funds rate is exceptionally useful in assessing policy, it is difficult in practical terms to know with precision where that rate stands. As a result, and as I described in a recent speech, my colleagues and I consider a wide range of information when assessing that rate.2 As I will discuss, our assessments of the neutral rate have significantly shifted down over the past few years.』

でもって中立金利はここ数年低下している、というのもいつもの話。

『In the Committee's most recent projections last December, most FOMC participants assessed the longer-run value of the neutral real federal funds rate to be in the vicinity of 1 percent.3』

ということでロンガーランの実質中立FF金利は1%近辺。

『This level is quite low by historical standards, reflecting, in part, slow productivity growth and an aging population not only in the United States, but also in many advanced economies. Moreover, the current value of the neutral real federal funds rate appears to be even lower than this longer-run value because of several additional headwinds to the U.S. economy in the aftermath of the financial crisis, such as subdued economic growth abroad and perhaps a lingering sense of caution on the part of households and businesses in the wake of the trauma of the Great Recession.』

説明が基本的に長い(イエレンさんのは丁寧で読みやすいのですがとにかく説明が丁寧なだけに長いというのがあってネタにするときに困ったりする)のですが、構造問題が主要国全てにおいてあるのでロンガーランな実質中立金利の水準が下がっている、という話と、リーマンショック以降の不良資産問題などの後遺症があるので中期的に見た場合の実質中立金利はロンガーランよりも低いという状況でしょうという話をしています。

『It is difficult to say just how low the current neutral rate is because assessments of the effect of post-recession headwinds on the current level of the neutral real rate are subject to a great deal of uncertainty. Some recent estimates of the current value of the neutral real federal funds rate stand close to zero percent.4 With the actual value of the real federal funds rate currently near minus 1 percent, a near-zero estimate of the neutral real rate means that the stance of monetary policy remains moderately accommodative, an assessment that is consistent with the fact that employment has been growing at a pace--around 180,000 net new jobs per month--that is notably above the level estimated to be consistent with the longer-run trend in labor force growth--between 75,000 and 125,000 per month.5』

数字の話が多いので便利なのですが、足元での実質中立FF金利は0%近辺にあるが、足元での実質FF金利は▲1%近辺なので緩和的という話ですな。ついでに雇用の増加に関しては75k〜125k位で安定運行ということのようですな。

『As I will explain, this policy stance seems appropriate given that the underlying trend in inflation appears to be still running somewhat below 2 percent. But as that gap closes, with labor market conditions now in the vicinity of our maximum employment objective, the Committee considers it appropriate to move toward a neutral policy stance.』

キタコレ!ということで、「需給ギャップが改善されて、物価と雇用のマンデートに近い状況になっている中なので、金融政策は今後中立スタンスに向けて進んでいくのが適切」という話ですので、これはもう「ここから1%は金利引き上げますよー」と言っているのに等しい訳でそら予告ホームランだわなと。


・金融緩和ペースが遅くなったことの背景にはロンガーランの政策水準の見直しが

この後『Post-Crisis Period: Same Strategy, New Tactics』、『2014: A Turning Point for Monetary Policy』、『Uneven Progress in 2015 and into 2016』という話がありまして、整理整頓と何で元々言ってたよりも利上げペースが遅くなったかという話がありまして、この辺に関してもイエレンさんらしく丁寧に整理しているのですが、まあこちらは手抜きマンなのでパス(読むのは推奨なのですけど)しまして、『Reassessing Longer-Run Conditions 』という所に飛びます。

『The slower-than-anticipated increase in our federal funds rate target in 2015 and 2016 reflected more than just the inflation, job market, and foreign developments I mentioned. During that period, the FOMC and most private forecasters generally lowered their assessments of the longer-run neutral level of the real federal funds rate.』

利上げペースが2015-2016で遅かったのは物価や労働市場や海外経済だけではなくて、実質中立金利の水準が低下したことがありますよと。

『Indeed, at our October 2015 meeting, the FOMC had a comprehensive discussion of neutral real interest rates and was impressed by the breadth of evidence suggesting that those rates had declined both here and abroad, and that the decline had been going on for some time. In response to this growing evidence, the median assessment by FOMC participants of the longer-run level of the real federal funds rate fell from 1-3/4 percent in June 2014 to 1-1/2 percent in December 2015 and then to 1 percent in December 2016.』

直近までだいぶ下がりましたねということで。

『These reassessments reflected, in part, the persistence of surprisingly sluggish productivity growth--both in the United States and abroad--and suggested that fewer federal funds rate increases would be necessary than previously thought to scale back accommodation.』

でもって労働生産性の伸びの弱さの話とかのいつもの話が背景にあると。

『Partly in response to persistently slow wage growth, FOMC participants and private forecasters have in recent years lowered their estimates of the normal longer-run rate of unemployment. The median projection of FOMC participants of the longer-run level of the unemployment rate fell from about 5-1/4 percent in June 2014 to approximately 4-3/4 percent in December 2016.』

賃金の伸びが弱いので完全雇用水準の推計も下がりましたよと。

『Other things being equal, a lower longer-run level of the unemployment rate suggests that the economy has greater scope to create jobs without generating too much inflation.11 Thus, the downward revisions to FOMC participants' views on the unemployment rate over the longer run contributed to our assessment that monetary policy could stay accommodative longer than we had anticipated in 2014.』

つーことで最後の「今後の話」に参ります。


・今後の話だがこれは出来るなら4回利上げをしようという意思が見られますなあ

『Further Progress since Mid-2016』というキタコレの小見出し。

『The U.S. economy has exhibited remarkable resilience in the face of adverse shocks in recent years, and economic developments since mid-2016 have reinforced the Committee's confidence that the economy is on track to achieve our statutory goals. Job gains have remained quite solid, and the unemployment rate, at 4.8 percent in January, is now in line with the median of FOMC participants' estimates of its longer-run normal level. On the whole, the prospects for further moderate economic growth look encouraging, particularly as risks emanating from abroad appear to have receded somewhat. The Committee currently assesses that the risks to the outlook are roughly balanced.』

この辺は先般のFOMC声明文などでもあったのと同じような説明ですな。マンデートに近い水準になってきている&見通しも心強い状態だしリスクはバランスと。

『Moreover, after remaining disappointingly low through mid-2016, inflation moved up during the second half of 2016, mainly because of the diminishing effects of the earlier declines in energy prices and import prices. More recently, higher energy prices appear to have temporarily boosted inflation, with the total PCE price index rising nearly 2 percent in the 12 months ending in January. Core PCE inflation--which excludes volatile energy and food prices and, therefore, tends to be a better indicator of future inflation--has been running near 1-3/4 percent. Market-based measures of inflation compensation have moved up, on net, in recent months, although they remain low.』

物価に関しては市場のインフレ期待が水準として低いという部分を除くと大変に威勢の良い説明。

『With the job market strengthening and inflation rising toward our target, the median assessment of FOMC participants as of last December was that a cumulative 3/4 percentage point increase in the target range for the federal funds rate would likely be appropriate over the course of this year.』

前回は0.25%づつ3回の利上げというのがSEPで示された中心的見解ですけれども・・・・・・・・・・

『In light of current economic conditions, such an increase would be consistent with the Committee's expectation that it will raise the target range for the federal funds rate at a gradual pace and would bring the real federal funds rate close to some estimates of its current neutral level.』

でもってさっき実質FFレートが▲1%近辺って言ってましたから、それはもう1%上げたいですなというのが出ているようでして、まあそうはいっても6月は様子見になるのかもしれませんけれども、この調子だと年4回利上げという話が盛り上がるタイミングが普通にあるでしょうなあ、と思われる説明ですの。

『However, partly because my colleagues and I expect the neutral real federal funds rate to rise somewhat over the longer run, we projected additional gradual rate hikes in 2018 and 2019.』

しかも今後実質中立金利の水準は今後若干上昇するのでもうちょっと金利上げられるっつーてるんですからもうねという所です。

『Our individual projections for the appropriate path for the federal funds rate reflect economic forecasts that generally envision that economic activity will expand at a moderate pace in coming years, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will be at or near 2 percent over the medium term. In short, we currently judge that it will be appropriate to gradually increase the federal funds rate if the economic data continue to come in about as we expect. Indeed, at our meeting later this month, the Committee will evaluate whether employment and inflation are continuing to evolve in line with our expectations, in which case a further adjustment of the federal funds rate would likely be appropriate.』

これは普通「今月のFOMCで利上げします」と言っているようなもん。

『Nonetheless, as we have said many times--and as my discussion today demonstrates--monetary policy cannot be and is not on a preset course. As in 2015 and 2016, the Committee stands ready to adjust its assessment of the appropriate path for monetary policy if unanticipated developments materially change the economic outlook.』

と一応ヘッジクローズは入っていますが、まあ利上げ予告にも程がありますな。


・でもって纏め

その次に『Monetary Policy Is Not a Panacea』というのがあって、格差が拡大っつーか所得水準の低い部分が回復に取り残されているというようなお話があって、そこは金融政策だけではどうしようも無いので政府などの経済取り組みが必要という話があるのですがそこはパスして『Conclusion』に参ります。

『To conclude, we at the Federal Reserve must remain squarely focused on our congressionally mandated goals. The economy has essentially met the employment portion of our mandate and inflation is moving closer to our 2 percent objective. This outcome suggests that our goal-focused, outlook-dependent approach to scaling back accommodation over the past couple of years has served the U.S. economy well.』

『This same approach will continue to drive our policy decisions in the months and years ahead. With that in mind, our policy aims to support continued growth of the American economy in pursuit of our congressionally mandated objectives. We do that, as I have noted, with an eye always on the risks.』

ということで、

『To that end, we realize that waiting too long to scale back some of our support could potentially require us to raise rates rapidly sometime down the road, which in turn could risk disrupting financial markets and pushing the economy into recession.』

キター!(って実は割愛した所にもあるのですが)金融緩和のスケールバックを遅らせる事によって金融不均衡とかインフレ高進抑制のための急激な金利引き上げの必要性などの問題が生じるから攻撃が華麗に登場の巻となっております。

『Having said that, I currently see no evidence that the Federal Reserve has fallen behind the curve, and I therefore continue to have confidence in our judgment that a gradual removal of accommodation is likely to be appropriate. However, as I have noted, unless unanticipated developments adversely affect the economic outlook, the process of scaling back accommodation likely will not be as slow as it was during the past couple of years.』

現状では政策はビハインド・ザ・カーブではないと言っています(そう言わないとまずいですけど)。でもって最後にまたしつこく「今後の金融緩和のスケールバックは過去2年のような遅いペースでは無いでしょう」としていてもうこれは急に何を食ったのかという位の正常化路線ですよ、という事で、じゃあ何でそこまで豹変(高圧経済とか言ってたのに)するのよ、というのについてはもう少し論考が必要なんでしょうな。


#ということで思いっきり1週間前のネタからスタートでどうもすみません




2017/03/03

2017/03/03(お休み前の補足版)

お題「25-40の輪番が1000億でしたねという件など少々補足」

来週更新をお休みするので今日のマーケットにちょっとだけ補足をば。

○輪番25-40は1000億円など

今日の輪番と短国買入のオファーはこちら。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170303.htm
国庫短期証券買入 2,500 2017年3月7日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年3月7日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2017年3月7日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年3月7日

何気に短国買入もお洒落なのですがそれは兎も角として、今日は輪番25年超を直近の超長期金利上昇にもめげず(?)1000億円でやってきましたな。

・・・・・・・まあそもそも足元の超長期金利上昇が「25-40輪番1000億に減額だぜ」というのを織り込みに行きながらだったので、ここで1200億円継続したらナンジャソラとなるところでしたからまあこれはこれでよろしかったのではないでしょうか。

#別に寄りから相場がコケそうな感じでも無かったのでやりやすかったというのはあるでしょうけれども

ということでですな、まあ1月25日からのドタバタについて(お休み前なので)改めて考えてみたりもしてるのですが、輪番運営のところで何かこう「プロアクティブに対応しよう」とした結果として、市場から見たら自作自演臭というかドタバタっぽい感じになるような動きが多かったのかなあと思ったりもしましたし、そういう点で言えば、本日(3日)に超長期金利上昇を受けてやっぱり月末に出したメッセージの25-40輪番減額ヤラネーヨ、となりますと、そもそもが月末の輪番レンジと月初の1-3輪番大幅減額によって25-40輪番減額の意図をくみ取って市場が超長期の後ろの金利を調整したのにそこでやっぱ止めたとなるとどう見ても1人芝居です本当にありがとうございましたという事になる訳ですな。

ですから、まあ本日の輪番が元々のメッセージ(というか何というか)通りに実施したのは、プロアクティブに動こうとして却って自分の尾を追う犬状態になるという悪循環に陥らないという観点からすると宜しかったのではないかと思いますがどうでしょうかね。

そもそも政策が「オーバーシュートコミットメント」とかビハインド・ザ・カーブを容認するような設定になっている(実際に物価が上がりだすとどうなのかというのはありますが)のですし、長期金利だって精密誘導にはやはりむかないと思うので、そう考えますと輪番でのYCCってのもプロアクティブに動くのではなく、市場が動きすぎた時に輪番の上げ下げや指値を実施する、というリアクティブに動く方が吉なのではないかと思いますし、そうなると市場との対話というのも却ってスムーズに行くんジャマイカということで、要は何を言いたいかと申しますと、とりあえず今月は無暗矢鱈と金利が低下する短期ゾーンはさておき(もう一発2年の金利とか幅を盛って下がったら1-3だけは輪番をレンジの下限まで下げても良い気がするし誰も文句言わないと思う)、他のゾーンに関しては10年10bpのジェットストリームアタックが来ない限りにおいて、一々プロアクティブに輪番を上げ下げしない方が良くて、まあ落ち着けというお話なのでした。


あと短国ですけれども今日の結果を見てあばばばばー。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170303.htm
国庫短期証券買入 6,132 2,500 -0.014 0.020 11.6

平均2毛甘なのに足切1毛4糸強ってどういうことよと申しますか、2500億円の短国買入が流れるとか(超大昔の発行量が無かった時代を除いて)中々見た覚えがないのですけれども何ですかこれはという需給の強さ。

まあ誰かが新発とか相当買ったんでしょうけれどもこりゃすごいというか、短国買入はスキップしても多分話題にならないしこの際もっと減らせますな。


○まあストーリーを書くのには・・・・・ですけれども

本日(3日)はこんなニュースも。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13626650T00C17A3I00000/
黒田緩和の支柱、静かに交代 日銀企画局長は加藤氏に
2017/3/3 14:11

『黒田緩和を支えてきた日銀の内田真一企画局長(54)が3日、名古屋支店長に転出した。内田氏は金融政策を担う企画局長を異例の長さとなる約5年間務め、異次元緩和政策の導入からマイナス金利政策の開始、長短金利操作への転換までを取り仕切った。限界のみえた黒田緩和を当初の短期決戦型から持久戦型に切り替えるのを見届けたうえで、日銀の金融政策の中枢を静かに去ることになった。』(上記URL先より)

ということでまあ政策の建付けがどうだこうだとか悪態は申し上げましたが、何はともあれ色々と大変な中でお疲れ様でございましたという所ですが、どうせ人が代わるから政策が変わる的なストーリー書きやすいから書く向きでるだろうなあとは思うのですけど、基本的に総裁とかが代わるとそらまあ政策変わったりするのは有る話っすけれども、スタッフというか参謀というかな方が代わるから変わるというのはさすがにそれはうーんとなってしまいますな。

というメモだけ置いておきます(^^)/

以下朝の駄文です。

お題「3月利上げ予告ホームランとな/短国が炸裂とな/佐藤審議委員会見から」

この前まで「利上げペースが遅くなるのではとの見方で株価上昇」とか言っていた筈なのに「3月利上げが確実視されて不確実性が無くなり安心感で株価上昇」という説明になっているモーサテ米国株価後講釈オソロシス。

○米国3月利上げ予告ホームランシリーズですなあ

昨日はブレイナード理事が炸裂して昨晩はパウエル理事ということでイエレンさんとフィッシャーさんの講演の前に既に凄い勢い予告ホームラン。

パウエル理事
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKBN1692RE
Business | 2017年 03月 3日 05:20 JST
米3月利上げへの支持拡大、年内は3度の公算=パウエルFRB理事

『[ワシントン 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル理事は2日、FRB内で3月利上げへの支持が広がっているとし、14─15日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが検討されるとの見方を示した。CNBCに対し述べた。理事は、3月利上げへの支持が集まってきたとし、今年は3度の利上げが必要となる公算が大きいと述べた。』(上記URL先より)

こちらはCNBC相手なのでFEDのサイトにはなさそう。


http://jp.reuters.com/article/brainard-idJPKBN1685TV?sp=true
Business | 2017年 03月 2日 11:01 JST
世界経済の回復で「早期」利上げの準備整う=ブレイナード米FRB理事

『[ボストン 1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事は1日、世界経済の回復と堅調な米国経済は、FRBによる利上げが「早期に」適切となることを意味するとの見解を示した。ハーバード大学での講演で語った。ブレイナード理事は「米経済は完全雇用に近づいており、インフレ率も目標に徐々に向かっている。海外の成長はよりしっかりしたものとなり、見通しに対するリスクは以前よりも均衡しつつある」と発言。「成長の継続を踏まえると、追加的な緩和措置を段階的に取り除くことが早期に適切となる可能性が高い」と述べた。』(上記URL先より)

こちらは昨日アップされていましたが、
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20170301a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20170301a.pdf
Governor Lael Brainard
At the John F. Kennedy School of Government, Harvard University, Cambridge, Massachusetts
March 1, 2017

Transitions in the Outlook and Monetary Policy

ってもう題名からぶちかましておりまして、しかも最初のマクラの部分がこれですよ。

『The economy appears to be at a transition. We are closing in on full employment, inflation is moving gradually toward our target, foreign growth is on more solid footing, and risks to the outlook are as close to balanced as they have been in some time. Assuming continued progress, it will likely be appropriate soon to remove additional accommodation, continuing on a gradual path.1』

まあ!

『As normalization of the federal funds rate gets further under way, monetary policy too is approaching a transition, prompting increased focus on the balance sheet. How the federal funds rate and the balance sheet should be adjusted individually and in combination depends on the degree to which they are substitutes, their relative precision, and the degree to which their effects on the economy are well understood.』

利上げついでにバランスシートの正常化に関する検討も、ということでまあこの前出ていたFOMC議事要旨での「バランスシートの扱いについてもこれから議論を行う」という部分はやはりそういうことでございましたかっちゅうことでしたぬ。

『Let me start with the outlook and then turn to policy.』

ということでお話なのですが、それはそれとしましてまーこれってどう見ても一連の流れが3月利上げ予告ホームラン、というかあまりにも市場が3月利上げを織り込んでくれないので強引に織り込ませに行ったということでして、これで余程の不測の事態でも起きない限り14-15のFOMCでは利上げするんでしょうなあ(逆にやらなかったら大騒ぎになりそう)というところです。

それでも「3回」というペースになっているというのも面白いのですが、これって多分思うに「3月利上げして欧州政治イベントや米国経済政策の動向という不確実性のある6月(別に会見やSEPの無いFOMCで上げても良いけどまあ基本利上げの可能性があるのはSEPと会見がセットで予定されている3.6,9,12月でしょうから)は様子見になるし、まあその前に上振れしていて4回利上げもアリじゃんというコンセンサスになったら(まあ欧州政治リスクがあばばばばーなので6月は様子見しないといけなさそうな気もしますが)しらっと上げる、とかまあ考えますと、たぶんアタクシ一応こちらの駄文で申し上げていたように思うのですが、3月上げておかないと年3回の利上げが難しくなる(今回様子見する勢いだと6月ってもっと難しい)という事で、足元株価とか強そうだしレッツラゴーという事でしょうかねえ、よー知らんけど。

あとは真面目に考えれば物価の方が堅調推移する中で(エバンスとかも急に利上げオッケー的になるように)中央銀行の政策責任者として考えた場合、何だかんだ言ってもビハインド・ザ・カーブでインフレ加速ってのは避けたくなる、という中央銀行マン&ウーマンとなると仕込まれてしまう仕様のようなものがあって、物価の推移で浮足立って来た、とか他に考えると金融市場がやたら緩和政策長期化ヒャッハーモードになっていて、そもそも緩和の引っ張り過ぎで信用バブルを促進して崩壊させたという前科が直近にある中ではやはり同じこと2度やる訳には行かない、というマクプルモード、もっと意地悪くに考えると、ヒラリーじゃなくてトランプになったのでこの際利上げ特攻してトランプユーフォリアに水を盛大にぶっかける必要がある、というまあこれもマクプルモードとか、そういう辺りを思い起こしてしまいますな。

しかしトランプ前の「高圧経済」とは何だったのかというこの君子豹変ぶりが何ともかんとも。

#なお前置きで満腹感あるのと佐藤審議委員ネタをやるので肝心の本文はパスします(すいません)


○10年入札があったのにネタは短国爆発(金利が下がる方で)とか今日の輪番どうするのよとか

・短国金利低下方向で爆発の巻

ここの所輪番ウォッチで多忙で短国ネタをスルーしていたらこれですよ、ということで昨日の短国入札。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170302.htm

(3)募入最低価格 100円08銭3厘0毛(募入最高利回り)(-0.3326%)
(4)募入最低価格における案分比率 73.5027%
(5)募入平均価格 100円08銭6厘5毛(募入平均利回り)(-0.3466%)

ちなみに前週の3M短国が▲25.93bp/▲25.05bpだったのですが、先週の途中から短国とか短い所の需給が強くなって、元々3Mカレント近辺は前日の引け時点で▲30bp乗せの水準になっていて、昨日も▲30bp台乗せの気配で入札迎えたのですけれども、入札結果の方はいわゆる市場推計不明玉が多い強い結果となりまして、セカンダリーはショートカバーで踏み上げモードになったようで、新発667の売買参考統計値は華麗に▲41.1bp(666は▲33.5bpですがこちらも2毛ほど強くなっている)となりました。

まあ季節的に短国は爆発しやすい(期末だから)というのはあるのですけれども、それにしましても2月終盤近くまでちょっと頭重そうな場面もあったようには思ったのですけれども、まあ一気に来るときは来る短国らしい展開が来ましたようで。

これそもそも論として日銀の買入ストックがでか過ぎなのでして、今更短国でMBでも無いと思いますのでせっせと短国買入を減らしてどうぞとは思いますし、輪番と違って短国の方は(MBの)帳尻オペという話は市場の方でも認知していますので、短国の金利が妙に上昇しだすまではストック減らした方が色々なものが円滑に回る(ただしあまりやり過ぎると中短期の金利に跳ねるのだが、そもそも誘導目標は短期▲10なんだから今の金利が低いんじゃというのもありますけど、ただ今のYCCでの長期ゼロ(実際はプラス1ケタbpですけど)で据わっているのは短期ゾーンが▲10よりも低い所にいるから、というのもあって中々悩ましいのはわかりますけど、まー短国買入はMBが目標じゃなくなったのですから帳尻も不要で、JGBの短期ゾーンの金利コントロールの為にどの程度が良いのか、という観点で運営すればエエンチャウノと思うのでした。



・一方で超長期金利が上昇とな

でもってその影響なのかどうかは良く分からんですが、中短期も華麗に金利低下の巻となって、一方で超長期に関してはブレイナード大先生の予告ホームラン講演などの影響もありますが、輪番公表→あれこれって25-40のレンジが下にスキューしてね?→思いっきり中短期の輪番を下げやがったよ→となると25-40も減額じゃん(200億円だけど)→アチャー、という流れも引き継ぐ、という事で、まーた輪番減らしたら米国金利上昇とぶつかって超長期売られるの巻とか様式美の世界ですな。

まあ確かに短国大爆発を見ますと1-3の輪番もバッサリ落とせるというのは分かるには分かるのですけれども、水曜の輪番オファーって前回の4000億円から3000-4000のレンジ出していきなりレンジの思いっきり下の方の3200まで800億円落とす、というのは輪番スキップ程ではないですけれども相変わらず乱暴でして、1-3は短国含めて短い所の需給が締まっているから輪番減額でもヘーキヘーキではありましたが、超長期25-40のレンジを下にスキューさせたのが1-3輪番の大幅減額と合わせ技で「やはり何だかんだやったけど日銀は超長期の特に後ろの方は金利上昇放置プレイかよ」という強めのメッセージを出す、という結果になった訳ですな。

つまりですな、確かに需給的には短い所減らしても無問題というかおお減らせやという所ではあったと思うのですが、減らすにしてもいきなり4000→3200とか盛大に下げなくても良くて、だったらその前から1-3とか需給良かったんですから2月の最終回に200〜300下げてから今月入ってもう200〜300下げるとか、もうちょっとグラデュアルにやればいいじゃん何でそう慌てて減らそうとするかね(増やす方はディレクティブからの逸脱に繋がるからどーんと増やすというのは技術上分かるが)と思うのでした。

・・・・・・・ということで本日の超長期輪番ですが、10-25は前回の2000億円が今月レンジの1500-2500の真ん中だから同額でどうぞとは思いますが、25-40をレンジ500-1500の中心の1000億円に下げてくるのか、そのまま1200億円で打ってくるのかというのは中々の見もので、まあどっちになっても文句は出る(当然別方向から出るのだが)って感じかも知れませんけれども、米国金利も上昇していることですしさあドウスルドウスル。

既定路線で行くなら1000億円だけど金利上昇放置するのかヴォケと言われるでしょうし、1200億円にしたら(10年10bp抜けるような話でもないし10年入札別にまあ悪くは無かったし)火曜と水曜に出したメッセージをいきなりちゃぶ台返しとかされると輪番で「動く」基準がさっぱり分からんわヴォケこれじゃ相変わらずオペ不確実性変わらんじゃないかと言われるでしょうし、まあどっちでも言われるのでお好きな方でどうぞという所ですな。ナムナム。


○佐藤審議委員会見を鑑賞しましょう

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1703a.pdf

・YCCの誘導に関して

『(問) 2 点お伺いします。佐藤審議委員は、昨年 9 月からの新しい枠組みに関しては大筋で同意されている一方で、−0.1%のマイナス金利とゼロ%の長期金利については反対されていると思うのですが、どういった金利水準で、どういった操作をしていくのがよいとお考えかというのが 1 点目です。もう一つは足許の長期金利操作の現状についてです。既に指値オペを実施していて、昨日からオペ日程の公表も始まっていますが、米国の長期金利の上昇によって金利操作に苦戦しているようにもみえるのですが、佐藤審議委員はどのように捉えているのか教えて下さい。また、午前中の挨拶で、指値オペは非常時のツールとおっしゃっていましたが、指値オペの使い方に関してどのようにお考えをお持ちか教えて下さい。』

2点ですが基本的にYCCに関する話なのでまとめて引用、なお答えは長い。

『(答) まず、どういった金利水準が適切かというご質問に関してですが、その時々の経済・物価・金融情勢に応じた最適な金利水準としては、私どもが「総括的な検証」のなかで触れている均衡イールドカーブの概念があると思います。』

ということで以下講演で触れた話と同じですがせっかくなので引用します。

『ただし、こうした適切な政策金利水準やイールドカーブの水準に関し、例えば挨拶要旨の中でも触れたように、テイラー・ルールから算出される最適な政策金利水準にはかなりの幅があると思いますが、最適なイールドカーブの水準にもおそらくそれ以上の幅があると思います。そのため、ここが正しい、ここが最適であるとピンポイントでお示しすることはできませんし、ピンポイントで水準をお示しすることも必ずしも適切ではないと思います。その上で申し上げると、これも挨拶要旨の中で触れましたが、望ましい経済・物価・金融情勢を実現するために最適なイールドカーブの形状は、私どもとしては、現状よりは若干スティープであってもよいのではないかという思いはあります。』

そしてこの先が更にイイハナシダナー。

『次に、長期金利操作をどのようにみているかというご質問に関してですが、金融市場局のオペレーションに関し、私は、かつて民間にいたときとは違い、国債市場における現物あるいは先物の板を常時モニターしたり、あるいは国債市場の値動きを日々細かくフォローしているわけではありません。従って、日々のオペレーションについてあまり細かく口出しして現場が萎縮したり、あるいは逆に過剰反応されても困るので、金融市場調節については、基本的には、ボードが大きな方針を示し、現場のことはなるべく現場に任せればよいと思っています。』

そらそうよ。

『その上で、日々のオペレーションについて、あくまでもこれは感想ですが、翌日物金利がかつては 1bp 単位の細かい微調整が可能であったのとは異なり、10 年物国債金利は元々そういった微調整には馴染まないものだと思いますので、ある程度振れが生じることは致し方ないと思いますし、そうした振れ、特に長いところの振れについては、鷹揚に構えていればよいと思います。』

然り、なのですが実際は10年をエライ精密誘導しようとしている感が強いのがアレ。

『FRBの場合は、そもそも翌日物金利の誘導水準に関するディレクティブで 25bps の幅があるわけです。ましてや 10 年物国債金利ではそれ以上の幅があってもよいのではないかと思います。それから、国債市場において、本行が 10年物国債金利を、例えば上下 10bps の狭いレンジに誘導しようとしているのではないかといった見方が広まっているということは重々承知していますが、実際の 10 年物国債金利の操作目標として、そうした固定的なレンジを想定することは適当ではないと思います。』

『これはあくまでも私個人の考えですが、オペレーションについては、ある程度建設的な曖昧さをもって市場と対話できればよいのではないかと思います』

翌日物に関しても日本は精密誘導しようと(昔は)していてしかも出来る、というのは資金需給を完全に日銀が読める、というのが一つありましたので、やはり長期金利はそうは行かないから鷹揚に構えるべきだとアタクシも思います。

あとコントロールという意味でムツカシイのは、後の質疑でも出てきますが金利水準変えようという時で、翌日物金利って達観すれば「その日が終われば満期到来して消えてしまうポジション」の金利であって、つまりは25bpなり50bpなり動かすにしても事前の織り込みを行うのはそれよりも先の金利であって、「翌日消えるポジション」の金利が翌日に不連続に飛ぶということがあっても、その部分については前日のポジションは消えてスクラッチからのスタートになるのですから、まあレートが飛んで既存ポジションが大やられという話でもない。

しかし10年金利だとポジションは残っている訳で、前日まで誘導水準のレンジ上限の10bp死守のオペレーションを日銀がして翌日のMPMで誘導水準を不連続に25bp上げて、オペの水準も一晩にして豹変、というのはやはりそれは死人続出みたいな話になると思うので、このYCCってのは「日銀の思惑通りに物価がホイホイ上がりだしてインフレ期待も何となく高まった気がする」という状況になった時に「どうやって金利目標水準を調整するのか」という所で最大の試練になるのですな。

それは兎も角続き。

『それから、指値オペを実際に打ったということに関しては、執行部、あるいは現場の判断であり、私から申し上げることは特にありません。』

と言いつつ、

『その上で、私個人としては、10 年物国債金利の操作について、先程も申しましたように、世間で言われているような狭いレンジを想定する必要はないと思いますので、市場の自律調整機能にかんがみれば、必ずしも実施する必要はなかったのではないかという思いはあります。』

まあこれやったが為にレンジが狭くなってしまったので佐藤さんの考えと違う方向に行っていますからね。

『現に米国の財政政策を巡る不透明感から、米国の長期金利の低下に連れて、国内の長期金利も低下気味に推移しているのが現状です。指値オペが真に必要な局面はどういう局面かというと、例えばですが、金融機関や投資家がリスク量の削減のためにポートフォリオとして保有している国債を、値段にかかわらず成り行きで売らざるを得ない局面、やや古い例ですが、2003 年のVaRショックのときや、あるいは 2013 年の「量的・質的金融緩和」導入直後の長期金利が上昇した局面などではないかと思います。』

ですです。


・別に佐藤さんも木内さんも「引締めろ」と言っている訳ではないという件

為念的になりますが、バランスシートの圧縮云々に対する質問に対する答えから引用しますけど。

『(答)(前半割愛)バランスシートを圧縮するかどうかということについては、ブラード総裁がどういう趣旨でおっしゃっているのか詳しくは存じ上げませんので、深く立ち入ることは控えたいと思いますが、日本に照らして考えますと、現状、消費者物価指数はまだマイナスの領域にありますので、2%の「物価安定の目標」の達成にはまだ遠い状況にあります。そういう中で、仮にフローの国債の買入れを減らすということはあっても、ストックを減らすという状況に至るまでには、まだ相当距離があると思います。というのも、ストックを減らすということは、買入れをやめて再投資もしない、あるいはもっと極端にいえば保有国債を売却するということだと思いますが、そういった状況に至るまでにはまだ相当距離があるわけです。そういう点では、日本については、今の政策――昨年 9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という形――を新たに整えましたので、その中でうまく先行きの経済・物価情勢を見極めながら、政策の軟着陸を図っていくということに尽きると思います。』

木内さんの金懇質疑でも「2%には程遠い状況にあるので緩和政策は続けるべき」という話を強調しています。佐藤さんにしても然りですし、そもそもこのお二方は2%当分行かないというビューなのでして、「2%当分行かないのだから長期的に持続可能な金融緩和政策を行うべき」という話をしている、ということはちゃんと確認した方が良いと思ったので引用しておきました。


・誘導目標引き上げの政策的および技術的な論点

長くなるので答えの方だけ引用します。

『(答)(前半割愛)それから、現状より若干スティープなイールドカーブが望ましいのならば、10 年物国債金利の操作目標を引き上げるべきではないかという点について、私自身としては、現状の「短期政策金利−0.1%、10 年金利ゼロ%」というカーブ体系のもとでは、反対理由にも記しております通り、10 年未満のゾーンが恒常的にマイナス圏に沈む可能性があり、これは物価の安定とともに金融システムの安定をマンデートとしている日本銀行の政策目的に合致しないのではないかということで、反対しております。先程のご質問とも重なりますが、水準については、なかなか特定の水準を申し上げることは難しいと思います。ただ、私としては、現状よりはスティープであることが望ましいと考えています。』

というのはともかく。

『また、ターゲットを上げるときの方法論ですが、基本的には、ある程度マーケットに催促されてという形になるかもしれませんが、ビハインド・ザ・カーブ、すなわちある程度マーケット追随で慎重に上げていくことでよいと思います。』


『個人的な考えではありますが、日本銀行がマーケットに先んじて地ならしをする――いきなり 10 年物国債金利の操作目標を引き上げる――ということは、基本的にはサプライズを避けるという観点から、やめたほうがよいと思います。』

ほう。


『経済・物価情勢が改善し、挨拶要旨でも触れているように、消費者物価指数は、「除く生鮮食品」のベースでは足許マイナス圏ですが、エネルギーの要因が剥落したり、あるいはエネルギーを除く基調的な部分が消費の改善に伴って少しでも持ち直してくるということになれば、年末にかけては消費者物価指数の前年比が 1%に届いても全くおかしくない状況だと思います。もちろん、これは原油価格や為替の前提次第という面はあります。』

『そうした消費者物価指数が 1%前後にある場合において、長期金利がいつまでもゼロ%近辺に踏みとどまっているかどうかについては、それはその時々の経済・物価情勢次第ですので、確定的なことを申し上げることはできませんが、日本銀行が 10 年物国債金利の操作目標をゼロ%程度に置き続けることはかなり難しくなっている可能性はあると思います。買入れを大幅に増やしたり、あるいは指値オペを多用したりといった局面になっている可能性はあると思います。そうしたことは基本的には好ましくないと思いますので、私としては、経済・物価情勢が改善しているという認識にボードが至るのであれば、10 年物国債金利の目標を微調整することは十分あって然るべきではないかと思います。』

なるほど。


その先の質問に対する答えでさらにこんなのもありました。

『(答) まず、10 年物国債金利の操作の方法については、10 年物国債金利の操作ということ自体が、中央銀行のなかでの初めての試みです。そうした意味では、操作について実務的なプラクティスが確立されているとは言い難い状況であると思います。ボードの中でも、例えば 10 年物国債金利を先行きどういう幅で動かしていくのか、あるいはどういう頻度で動かしていくかについて特にコンセンサスがあるとは思いません。これも、先行きの長期金利の動向、仮に望ましい物価上昇が起こったときに長期金利がどう反応するか、その反応の程度にもよると思いますので、これも今の段階で何か決め打ちをできるものではないと思います。』

然りなのだが執行部方面が何も考えていない風なのが気になる、というか多分ヤバいと思う。

『それから長期金利の調整に関してですが、2%の達成の前に長期金利の目標水準を引き上げることについて、2%の「物価安定の目標」の達成との関係でどう考えるべきかというご質問と理解しました。基本的には長短金利の操作は、2%の「物価安定の目標」の達成のために行うものであって、2%の「物価安定の目標」を達成するために最適なイールドカーブの形状を作っていくためのものだと理解しています。そういう点では、2%の「物価安定の目標」が達成できていないからといって、長期金利を引き上げることがマンデートに反するのかといえば、必ずしもそうではないと思います。むしろ「物価安定の目標」を達成する観点から、最適なイールドカーブを作っていくためにやっていくものであるとご理解頂きたいと思います。』

ここは与党も野党も統一見解ですね。


でもって更に別の質問でオペ日程の事前公表に対しての説明だが。

『(答) オペの実施日を公表するという点については、先月、オペを一部スキップしたということで、市場との対話が若干ぎくしゃくした面は必ずしも否定できないと思います。それが指値オペの実施に至る発端であったと思いますので、その点においてはオペの実施日を事前に公表するということ自体は、オペがスキップされるという懸念を減じるということになり、不確実性を低下させることにつながりますので、オペレーション運営の透明性の向上に資すると思いますし、恐らく市場参加者の方々からも歓迎して頂けるのではないかと思います。』

『ただ、これによってオペレーションの柔軟性が損なわれたのではないかというご指摘も恐らくあるのではないかと思います。その点で確かにオペの回数、あるいはタイミングの自由度がこれまでよりも低下することは事実ですが、金額に関しては従来通り幅を設けており、毎回のオペのオファー金額については、その時々の市場動向に応じて柔軟に調整していく構えと金融市場局からは聞いています。』

でまあその金額を動かすのがいきなり4000→3200とか中期1か月で考えたら6000億円になるとか、節子それはオペ1回スキップ並み(8掛けくらいですけど)のインパクトや、というのをやってしまう「オペスキップしなければ大幅減額しても良いだろう」というプレイはちょっと・・・・・ではありますが佐藤さんに悪態つく話ではないので先に行きまして、

『月中の金利上昇圧力に対しては、例えば、事前に公表した日以外に追加してオペを実施したり、私はよいとは思いませんが、指値オペを実施することも対応としてはあり得ます。予期せざる金利低下圧力が起こったときには、必要に応じて買入れ利回りに下限を設けてオファーするという手段もあるわけです。今回、オペの実施日を公表するということになりましたが、長短金利を操作していくためのオペの柔軟性は依然として金額、回数等の面では確保されていると理解しています。』

と思ったら減額の方で柔軟というか奔放にやってくる金融市場局ェ・・・・・・・・・・・


・5年間を振り返って

という質問へのお答えを最後に鑑賞しましょう(本当に鑑賞だけ)。

『(答)(前半割愛)2 番目のご質問ですが、7 月までまだ任期が 5 か月弱残っておりますので、5 年間を振り返るのはまだ早いと思っていますが、政策運営などに対する私の考え方については、今回を含めて過去 9 回の金融経済懇談会やそれ以外の講演などで、都度お話しておりますので、特に付け加えることはありません。』

『その上で、過去を振り返りますと、私は 2013 年 4 月の「量的・質的金融緩和」に賛成した後は、2014 年 10 月の追加緩和や、2016 年 1 月のマイナス金利政策、それから同年 9 月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について、理由は様々ですが、反対しています。ただ、緩和的な金融環境をできるだけ長く維持し、それによってデフレ脱却への政官財一体となった息の長い取り組みを金融政策面から支援していく、というスタンスでは首尾一貫しているつもりです。』

『ただ、最初の「量的・質的金融緩和」もそうですが、とりわけ 2014 年に「量的・質的金融緩和」を拡大したときは、もともと非常に大規模な非伝統的な金融政策をしていたところに、さらに輪をかけて規模を拡大したということですので、特に政策の持続可能性に関して、私自身、懸念を強めました。このため、政策の持続性を確保すべく、これまで金融政策決定会合において、様々な意見を具申して参ったところです。』

『私としては、これまで行ってきた前例のない大規模な金融緩和策をソフトランディングさせていくことが、今後非常に重要になってくると思いますので、残された任期の間に、引き続き私なりに意見を具申して参りたいと思います。』

『また、これは金融政策に限ったことではありませんが、経済も市場も生き物であり、先行きの予測には限界があると思います。従って、金融政策に関しても、その時々の政策効果を踏まえて、柔軟に対応していくことが重要と思います。それから、常々申し上げていることですが、物価安定の本来の意味を考えると、消費者物価指数の上昇率 2%という表面的な数字に固執することは適当ではないと思います。金融政策の目的とする物価の安定とは、挨拶要旨のなかでもごく簡単に触れていますが、金融システムの安定を含む広い概念であり、中長期的に持続可能なものでなければならないと思います。私自身も引き続きそのことを肝に銘じて、残された任期を務めて参りたいと思います。』

残り7月までよろしくおねがいいたしますm(__)m


○お休みのお知らせ

来週なのですが、不肖このアタクシの個人的事情(要は夏じゃないけど夏休み)のため、来週の更新は誠に恐縮ですがお休みさせて頂きます。まあ急に何か書きたくならない限りは再来週月曜日から再開する予定です。宜しくお願い申し上げます。






2017/03/02

お題「中期1-3年輪番大幅減額とな/佐藤審議委員もたぶん最後の金懇」

まあドル高。
http://jp.reuters.com/article/forex-ny-open-idJPKBN1684UT
Business | 2017年 03月 2日 00:35 JST
ドル急伸、早期米利上げ観測強まる=NY外為・序盤

http://jp.reuters.com/article/ny-fed-idJPKBN1672R5
Business | 2017年 03月 1日 10:56 JST
米利上げの根拠は「かなり強まっている」─NY連銀総裁=CNN

年3回上げようと思ったら今回上げるか次回の予告ホームラン入れて置かないと3回は厳しい感じがします訳で、特攻モードになるんでしょうかねえ。


○輪番中期1-3年大減額なんだが目先の需給で極端に動きすぎじゃないのかと小一時間

つーことで注目されておりました昨日の10時10分でございますが・・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170301.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,200 2017年3月3日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2017年3月3日
国債買入(物価連動債) 250 2017年3月3日

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

物国はさておきまして、昨日申し上げましたように中短期の輪番ですけれども予定公表によりますと、

中期1-3年:3000〜4000(2月最終回4000億円)→3200億円
中期3-5年:3500〜4500(2月最終回4200億円)→4000億円

となりまして、幾らなんでも最初からそんなにドカドカ減らさんだろとか思ったらいきなり初回から中期の1-3年を3000〜4000のレンジの真ん中よりも少ない方にシフトして一気に800億円減額して来るの巻。それから中期3-5年も最終回よりも200億円減額して来て、火曜日に示したレンジの中心値まで下げてくるの巻となりました。1000億円減額で中期輪番は6回になりますから、1月に中期輪番唐突にスキップして8200億円一発減らしたののリベンジマッチキタコレという所ですな、うんうん。


こうなりますと他の年限ですけれども、()内は2月最終回(ってこれ昨日の駄文からコピペするという手抜きプレイですが)で→が今月初回の買入額としますと、

短期:500〜1000(700億円)
中期1-3年:3000〜4000(4000億円)→3200億円
中期3-5年:3500〜4500(4200億円)→4000億円
長期:3500〜5500(4500億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1200億円)

となっているので、短期を刻むかは兎も角として、これは超長期25-40年だけ1000億円(500〜1500の中心値)になりますと言っているのと同じという話でして、超長期輪番は2月の月中に超長期前半後半ともに100億円ずつ拡大したものが、今月は超長期後半だけ200億円減額して超長期輪番増額の帳尻を取りに来たのですけれども、その間にバランスが変わっているから、昨日申し上げた「10年近辺をガッツリ買って後は隙あらば減額」というのが思いっきり3月頭から全力疾走ということになってしまいました。


いやー中短期減額はどこかであるかと思ったのですが、いきなりこんな所で減額するとは、という感じですが、この結果としてどうなったかと言えば、「超長期25年超が1回200億円減る」というのと「10年から遠い所はやたら減額したがっている」という連想の方がインパクト出るという結果となり、昨日の各カレント引けは・・・・・・・・・・

2年374:▲0.255%(0.0)(火曜の新発じゃない方だと373で▲0.275%(0.0))
5年130:▲0.135%(+1.0)
10年345:0.060%(+1.0)
20年159:0.650%(+2.5)
30年53:0.835%(+3.5)
40年9:0.990%(+4.5)

と超長期の後ろに向けてベアスティープニングするという結果になりまして、この措置は中期輪番スキップ後の盛大な金利上昇を受けて市場安定化の為に導入したもの、と理解しておりましたが、何という残念な大減額という感じではございます。

勿論昨日は米国利上げ観測ネタとかトランプ演説が平和(中身が大して無くても落ち着いて話せば評価されるとか羨ましい立場ですな)だったというようなことからドル高円安になっていたりとか言うのは勿論ありましたが、やはり国内金利に関しては中短期の輪番が減額されたことによって超長期のロンガーエンドの輪番が減額されるのではないか、とか、この調子だとまた輪番は削減方向に舵を切っているよね、とか、足元の中短期ゾーンの需給云々などと別のメッセージが今回のオペオファーで出た、と市場が普通に受け取る動きになっちゃいましたね、という事です。

もしかしたら昨日の動きを見て調節部署の中の人たちって「1-3年の輪番を市場の需給動向を受けて思い切って減額してみたが、1-3年ゾーンの引値はほぼ変わらず(3年でやっと1毛甘)となっていたし、5年の引けも1毛甘で止まっているので減額の影響はそれほどなくて成功」「超長期の金利が上昇したのは海外要因」と分析しているのではないかと懸念してしまうのですが、後ろの金利が上がったのは米国3月利上げ云々もあるけどカーブの後ろの売りが加速したのは「あのオペだとロンガーエンドのイールドカーブを日銀が意図的に立ててきていると市場が思った」ということでありまして、そこは履き違えない方が良いと思うのですよね〜。



・・・・・いやまあ確かに中短期特に短い所とか需給がタイトになっているみたいで、金利の水準も盛大に低い(新発じゃない2年カレント近辺で▲0.275%なのですから)のですが、それにしても4000億円を3200億円までいきなり落とすわ月末に出したレンジの中心よりも低いのを出すことによって超長期後半の減額感も出すわとかやるにしても極端で、何でこうブレブレになるのよと思います、だってここまで流れって・・・・・・・・・・

中期輪番スキップ→長期輪番増額→翌月予定での長期輪番予定減額→やっぱり長期輪番減額せず→それでも足りずに指値オペ→今度は長期輪番3連発→超長期輪番増額→輪番日程の事前公表の方向性を示す→3月輪番予定で日程は示すが初回予定出さないわ中期と超長期後半のレンジが妙に少ない方にスキューする→中期1-3年大幅減額

と来ている訳で、まあ意図して市場の見通しを一々外して嫌がらせをしようとしているのであればそれはそれで(市場の片隅の人としては困るものの)一つの思想としては完結しているのですが、何ぼ何でもそんな嫌がらせをしようとしている訳ではないとは思う(と思いたい)のでありまして、そうなると何かこう目先の市場の反応とか短期的な需給の揺らぎに対して一々反応し過ぎなのではなかろうか、と斯様考える所なのでございます。

あとですね、まあ確かに短い所特に1-3とか需給タイトだし4月からはビルとか(短国買入も減りますが)中期とかの市中消化減るので、というのは分かるのですが、そもそも1月25日の中期輪番スキップ、という要は大減額措置から諸々の事が始まった訳でして、中期輪番をいきなりバッサリ減らすというのは多分オペ運営的には鬼門ではないか、とも思ってしまう訳ですよ。

でもって何か昨日も申しあげた気がしますがしつこく申し上げますと、今月の輪番については予定表および中期輪番の入り具合から言って、今の所2月対比で中期大減額、10年は1月最後に増やした4500億円のまま走り、10-25年は2月途中で増やした100億円をそのまま維持するけれども、25年超は2月途中で増やした100億円をドテン200億円減額するように見える、というか普通に考えるとそういう発想をせざるを得ない訳ですが、そうなりますと「長期から20年近辺までをガッツリと買っておけば短い所や超長期ロンガーエンドの金利が少々動いても10年金利のコントロールは出来る」と思っているということを意味すると思うんですが、正直それはちょっと市場を甘く見ていると思うの。

まあ何でそうなのか、と詰めて質問されると答えに困るのですが(大汗)、市場の片隅でおこぼれ拾っております拾い屋おじちゃんの経験則的に申し上げて、中期と超長期のロンガーエンドを同時に不安定にしておいたら、イールドカーブ全体が安定しないんじゃネーノと思う(根拠はただの現場経験的な勘としか言いようがないが)訳で、まあそれでも色々と力技を使って10年を止める余地はあると思いますが、そんな面倒かつコストやフリクションの大きそうな事をせんでも良かろうにと思う訳です。


然るに、今回の一連の措置って何か「10年ピン止め」の方にシフトし過ぎだし、透明性高める代わりに自由度を下げる、というのを拒んだ結果として結局中途半端なままで透明性が高まって無いんじゃネーノという事になっている訳ですな。まあ明日の超長期輪番がまたまた注目されるのですが、ここで超長期輪番の25-40年を事前公表レンジの中心となる1000億円にしないで(さらに減らしたらそれはそれで隙あらば減額としての一貫性はあるので評価しますけど勿論金利安定化策としては全然評価できない)1200億円を継続して来た日には、「じゃあ何で中期1-3年輪番をあんなにガッツリ減らしたの」というこれまた継続性に乏しいその場の市場動向に一々振らされる「自分の尾を追う犬」もビックリの自作自演オペになってしまうのでして、明日のオペはこれはこれで極めて注目されるネタになりそうですな。

ただまあそういうネタになるというのは輪番の透明性が高まったとは言えない、という事でもありまして、そういう風にならないで淡々とオペを実施して、減らすにしたってもうちょっとマイルドにやって何か問題ありましたっけ(途中で中短期の金利がさらにバカスカ下がったり札割れ寸前みたいになったら「もう一段減額だなあ」とかコンセンサスになってきて、それに乗っかってしまえば減額即フリクションみたいな事にならないというものではないかと)と思う訳ですよ。例えばの話2月最終回の中期輪番をちょっと(1-3を200だけとか)減らしてみて、それでも金利低下継続するなら3月初回もちょっと減らしてみて、というような匍匐前進で減らせばそんなに市場にフリクションを発生させないと思うのですけれども、とかそんな話。何せ中期輪番は月に6回あるのですから様子を見ながら減らすんだってあったのではないかとは思うのですけど、何か初手から極端に減らすというのは何とも。


なお、これで3日の超長期で25-40年がどういう額でオファーされるかが注目になるのですけれども、ここで1200億円変わらずとかやるとそれはそれでズッコケ三銃士というお話でござんして、「機動的な対応(キリッ)」としてはそれでも良いのかも知れませんけれども、債券市場超ドミナントプレーヤーが市場の動きに過敏に反応されると皆がそれに散々振り回される訳で、それは市場安定化策にはならないし、結局のところ透明性向上にも寄与しないと思うのですよね。さてどうなることやら。

ちなみに28日にこういうのが出ていたようですがすっかり気づかずスルーしていました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-28/OM2TSS6K50Y401
日銀オペ実施日を初めて公表、透明性高め金融調節を円滑化−3月方針
三浦和美、山中英典
2017年2月28日 18:32 JST

中身はめんどいので引用しませんけど。



○ところでまーた債券市場の機能度が下がっている訳だが

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1702.pdf

ええまあそうですかという結果なのですが、佐藤審議委員講演ネタの方があるのでとりあえず備忘にURL置いてみただけという事でご勘弁。


○佐藤審議委員(多分最後の)金懇はコンパクトに砲撃を加えておりますな

トランプ演説というイベントにぶつかっていましたがちゃんと注目されていたと思いますよ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170301a.pdf
わが国の経済・金融情勢と金融政策
── 徳島県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
佐藤 健裕


・海外経済のリスク要因は

『2.内外経済・金融情勢』の『(1)国際金融市場と世界経済の動向 』

現状の話とかはまあ特段ぶっ飛んだ話をしている訳でもないのでそれ以外の辺りで。

『こうしたなか、先行きのリスク要因は、米金融政策がもたらす国際金融市場の資金フローの変化、なかんずく新興国からの資金流出の可能性である。過去の米金融緩和期に積みあがった新興国債務の問題は、足許あまり注目されないが、いわば慢性疾患であり解決に時間を要する。また、中国は各種経済対策の効果発現により安定成長に向かっているとはいえ、国内の過剰債務問題などの構造問題には引き続き留意する必要がある。なお、昨年は政治情勢が市場の攪乱要因となっただけに、本年も、とりわけ欧州の政治情勢をリスク要因と認識している。 』

新興国の資金フローの変化、中国の構造問題、欧州政治情勢がリスクと、


・賃金と物価に関して

『(2)国内経済の動向 』では賃金と物価の話に力を入れています。

『国内経済の論点は多岐にわたるが、ここでは後述する物価との関連で、最近の雇用情勢と賃金との関係に着目したい。』

ほう。

『全国的に人手不足が深刻化し、雇用情勢は逼迫度合いを強めている。ただし、地方の雇用逼迫には人口動態の影響もあるとみられる。例えば、地域別の有効求人倍率に着目すると、2000 年代以前は、好況時は地域のバラツキが大きく、好調な地域では倍率が大きく上昇したが、雇用情勢の不芳な地域では倍率が低位のままであった。これに対し、今回の局面ではそうしたバラツキが縮小し、もともと低位であった地域も倍率が上昇しており、好調な地域とそうでない地域の差があまりみられなくなっている。実際、昨年は全国 47 都道府県で有効求人倍率が初めて 1 倍を超えた。こうした地方における求人倍率の底上げは、人口移動による求職者数減少の影響もあるとみられ、単純に経済情勢の改善によると解釈するのはやや違和感がある。』

然り。

『こうしたなかで職種別の有効求人倍率に着目すると、逼迫度合いのバラつきは大きい。例えば、介護関連、建設などでは同倍率が 3 倍を超えているのに対し、一般事務の職業では 0.3 倍台にとどまる。とりわけ事務系正社員の倍率は低い。すなわち、特殊な技能を持つ建設労働者や運輸業におけるドライバーなど、あるいは政策的に賃金が抑えられ供給の恒常的に不足する介護関連で需給が逼迫する一方、事務系の職業は引き続き供給余剰である。』

特殊技能もない事務系のこのアタクシはそらもうアレですということですなトホホのホ。

『以上、業種によるバラつきはあるものの、雇用情勢逼迫を映じて非正規雇用の時間当たり賃金は前年比+2%程度の伸びとなる一方、正社員の基本給は雇用余剰感を映じて上がりにくい。また、非正規雇用の賃金や雇用者所得は、正社員より低いので、Composition 効果もあり、マクロ全体の時間当たり賃金や雇用者所得を押し上げるには力不足となっている。このことが以下に述べる物価の上がりにくさの一因であることで大方の見方は一致している。』

ですです。

『経営者の視点でも、事務系正社員に余剰感があったり、生産性に見合わない賃金が支払われているとすれば、固定費である正社員の基本給引き上げのハードルはやはり高いと見ざるを得ない。この問題は、後に述べる労働市場のあり方そのものと関わる課題であり、各方面のコンセンサス形成を急ぐ必要があると感じている。』

しょぼーん。

『(3)物価面の動向 』に参ります。

『12月の消費者物価(全国)は除く生鮮・エネルギーで前年同月比+0.1%と引き続きゼロ%程度で弱めの動きとなっている。昨年前半の市場の混乱などから人々のマインドが慎重化し、消費の足取りが重くなるなか、家計の安値志向や節約志向が再燃し、企業もそれに呼応して価格設定行動を慎重化させたことが主因と考えられる。』

つまりインフレ期待が上がらなかったのか下がったのかですね。

『足許は、市場環境が好転するなかで人々のマインドも改善し、消費は幾分底堅さを増している。基調的な物価の動きは消費動向を敏感に反映するとみられるだけに、昨年来弱めの動きが続いた消費者物価の基調に、早ければこの1〜3月期にも転機が訪れることを期待感をもって見守っている。』

アタクシも期待しているのですがどうなるでしょうか。

『また、エネルギーを含む消費者物価(除く生鮮)の前年比上昇率はエネルギー価格のマイナス寄与がやはりこの 1〜3 月期に剥落し、次第にプラス寄与に転じるとみられることから、基調的な物価の動きと相まって先行き一段と持ち直すことが期待される。原油価格と為替相場の前提次第だが、年度後半にかけては前年比上昇率+1%超えを展望できないわけではない。』

これがどうなるか、ということで年度後半は事と次第によっては面白相場になると思うのですが、債券村の方はその年度後半まで兵糧が持つのか位の勢いなのが悲しい。


・そして物価の話の中にYCCやQQEへの砲撃がドカドカと打ち込まれるの巻

『今のところ、市場の物価観はそこまで強気化しているようには見受けられないが、仮にコンセンサスを上回るペースで消費者物価の前年比上昇率が伸びるサプライズとなる場合、本行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によりゼロ%近傍に張り付く長期金利への上昇圧力が強まる可能性があり、丹念にモニタリングを行っていきたい。』

こちとら面白相場到来とかお気楽に言ってますがそらまあ試練ですよね。

『ところで、「量的・質的金融緩和」実施以来4年間の経験知として、長引くデフレのもとで人々の中長期的な予想物価上昇率が一旦低下すると、大規模な非伝統的金融政策をもってしても、その回復を図ることは容易ではないことがわかった。』

返す刀でいきなりQQEに斬りかかって来ましたよ!

『昨年9月の「総括的な検証」で指摘のとおり、人々の中長期的な予想物価上昇率の形成に際し、日本では過去の消費者物価上昇率の影響が大きい、すなわち適合的な期待形成の要素が強いとみられる。』

『人々の物価観が保守化すると価格改定頻度が低下し、公共料金に代表されるように、とりわけサービス価格は粘着的となる。サービスの対価である価格が低廉に抑えられる結果、サービス提供側の賃金も抑えられる悪循環が生じるのは、人々の中長期的な予想物価上昇率、言い換えれば物価に対する規範(norm)が過度に保守的になり、変化しにくいことに因ると思われる。』

『このような適合的、かつ粘着的な期待形成メカニズムから、一旦低下してしまった予想物価上昇率を押し上げるには、実際の消費者物価が、需要ショック・供給ショックいずれの要因にせよ、ある程度上昇することが必要条件の一つであろう。』

でもって1回目はそのショックでの物価上昇が繋がってくれませんでしたが・・・・・・・・・

『足許のエネルギー価格などの持ち直しは、物価の基調的な動きに転機が訪れると見込まれるなかで、予想物価上昇率を幾分高める方向に働くと考えられる。しかし、その時々の外的環境に左右される面があることは否めない。』

ほほう。

『より本源的には、労働市場における賃金決定メカニズムの変革を通じ、欧米のようなフォワード・ルッキングな期待形成に移行することが望ましいと考えている。すなわち、賃金交渉過程において過去の消費者物価の実績値を参照するこれまでの慣行に代わり、先行き数年間、あるいはより中長期的な物価のパスの認識を労使間でシェアしたうえでの賃金交渉となること、しかも中央銀行の物価目標がそうした中長期的な物価のパスの考え方のベースとなることが理想である。そのためには、中央銀行の物価目標、あるいは金融政策が人々に十分に信認される必要があろう。』

ということで最後に「金融政策が人々に十分に信認される必要があろう」って今の政策への信認が足りないからノルムが変わらん、と期待に働きかける政策が不十分であることを示しています。

でもってじゃあどうやるか、という話も含めた佐藤節がこの次の『3.当面の金融政策運営 』でバンバンでるのでした。つーことで佐藤節鑑賞会であるのですが・・・・・・・・・・


・YCCは箱としては良いのだが運営の建付けが悪いというお話

『3.当面の金融政策運営 』の『(1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について 』から始まります。

『私は、一旦低下した人々の中長期的な予想物価上昇率を引き上げ、デフレ脱却を完遂するには中長期的な息の長い取り組みが必要であり、そのためには、短期決戦型でいわばショック療法的なかつての「量的・質的金融緩和」をより柔軟で持続的な枠組みに作り替えていく必要性を以前から主張してきた。』

結局のところ「期待をショックで大きく変える」のは困難性が高く、地道に長期的な緩和でのサポートをするしかない、という話なので理念としては木内さんと同じだと思うので、もうちょっとうまくまとめて「2名で提案」みたいなのを見たかったなあとは思います。もう2回しかMPM残ってないけど(しかも最後は退任直前)。

『昨年9月に「総括的な検証」を経て決定に至った「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は私の従来からの主張に沿うもので、私はこの枠組み自体には大筋で同意している。』

しかし・・・・・・・・

『もっとも、政策金利を-0.1%、10 年金利の操作目標をゼロ%程度とする現行の金利誘導目標は、期間 10 年までの金利をマイナス圏で固定することにつながり兼ねない。とりわけ、期間 3〜5 年までの中短期ゾーンは現行のディレクティブではマイナス圏で推移し続ける可能性が高く、そうした状況が、金融システムの安定性維持という日本銀行のもう一つのマンデートに資するとは考えにくいとの理由から誘導目標水準には反対票を投じてきた。』

つまり折角の良い箱なのに建付けの方法間違っていると言いたい訳ですねわかります、


・最適イールドカーブなどピンポイントで出せるわけがないのだから・・・・・・・・・・

さらにYCC方面への爆撃が行われます。

『ただし、この枠組みは 1950 年代まで米国が採用した長期金利ペッグと異なり、毎回の会合において次回会合までの操作目標水準を都度決定する柔軟な仕組みである。その下で、長期金利操作についてはその時々の経済・物価・金融情勢やそれらの変化のモメンタムを勘案しながら、最適なイールドカーブの形状を政策委員会で判断している。』

本当に判断しているんですか??????????その割にはいつも「現状が適正」しかコメントが出て来ないんですけどねえ(棒読み)。

『もっとも、最適なイールドカーブの形状に関しては、テイラールールから算出される最適な政策金利水準にかなりの幅があるのと同様、あるいはそれ以上に解釈の幅があり、最新の経済学の知見をもってしても景気中立的な均衡イールドカーブの形状が一義的にピンポイントで定まるわけではない。』

その通り。

『また、長期金利操作に関する政策実務上のプラクティスが必ずしも確立しているとは言い切れない現状では、操作のタイミングや幅などは、無論、政策委員会の判断事項ではあるが、操作に先立っては市場との入念な対話によりサプライズを避けるなどの周到な配慮も必要と私は考える。』

まあ今回もサプライズやっているんですけどね。

『以上の考え方のもとで、長期金利操作の政策反応関数について私なりの考えを示せば、仮に経済・物価情勢が望ましい方向に変化し、また市場がそれに応じて、ないしはそれを先取りして変化しているという認識に政策委員会が至れば、市場の動きを追認する形で操作目標水準を柔軟に調整していくことが適当と思う。』

これは一つの考え方なのですが、これをするには相応に広いレンジでの金利変動を容認する形にしておかないと「市場の動きを追認」ということが出来ない訳で、今のように10年0.10%(だか0.11%)の所で日銀大出動宣言が黙示的にではありますが出ている、という状況になってしまいますと、これはSNBの為替介入パターンと似たことになっているとしか申し上げようがない訳でして、ある日突然大決壊大洪水という事になるでしょうな、と懸念してるんですが。


『例えば、この政策が奏効し、人々の予想物価上昇率が高まれば、債券市場ではインフレのリスクプレミアムが認識され、名目金利に上昇圧力がかかると考えるのが自然である。その場合、私の見方からすると、通常の国債買入れで日本銀行が名目金利をゼロ%程度で抑え続けることができるかどうかは不確実性がある。仮にできるとしても長く抑えすぎると、その間に金融不均衡の蓄積を招く恐れがあり好ましくない。さらに、指値方式の無制限買入れは、市場を制御するのに短期的には効果的かもしれないが、実施することにより中央銀行が特定の金利水準にコミットする強いメッセージを発することになるため、その後の政策運営を縛り、市場との対話に支障をきたすなどの影響が出かねないと私は考えている。その点、指値での買入れなどはあくまでも非常時のツールキットという位置付けと理解している。』

ということでアタクシが申し上げる話をもっと美しい表現でご説明頂いております(大汗)。

『ビハインド・ザ・カーブであれ、市場の状況に応じて柔軟かつ緩やかに操作目標を調整してゆくのがプルーデントな政策運営のあり方であると思う。』

まあこの場合には「市場が追い込み掛けまくってくる」というリスクはあるとは思います。


『なお、私としては、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は適度にスティープであるべきと考えている。』

主な意見などでも出ていましたなあ。

『イールドカーブが過度にフラット化し、先行き金利が低下し続けるという予想が支配的になると、企業や家計の資金調達のタイミングの先送り傾向が強まり、投資や消費の先送り、すなわち需要の後ずれに繋がりやすい。』

そう来たか。

『その点、適度なスティープニングは健全な経済活動を刺激する上でむしろ有用であり、併せて社会保障制度の持続性を高め、人々のコンフィデンス安定に資するであろう。一方、スティープニングのマイナス影響については、20〜30 年といった超長期のタームで資金調達する国以外の経済主体はもともとキャッシュフローが潤沢で安定した企業に限られるため、マクロの設備投資への抑制効果はほとんどないと私はみている。』

なるほど。


・量から金利という説明を思いっきり行っています

次の小見出しが『(2)マネタリーベース目標から金利目標への転換 』とこれまた置物一派が血圧を上げそうな小見出し。

『「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」への政策変更のポイントの一つは、金融調節方針における操作目標をそれまでのマネタリーベース目標から伝統的な金利目標としたことである。』

ここも木内さんと同じ説明ですが、置物一派はどういうのでしょうかね。

『その点、マネタリーベース増額の柱であった年間約 80 兆円ペースの国債買入れ目標も現行の枠組みでは「めど」となり、金融市場調節方針を強く縛るものではなくなった。したがって、長期国債買入れでもなおマネタリーベース目標を埋めきれないことに備え、補完的に実施してきた短期国債の買入れも本来的には不要であると私は考えている。短期金融市場への影響を見極めつつ残高を更に圧縮していくことが望ましいと思う。』

短国買入は減らしても減らしても(つーか今の残高相変わらず多いんだが)レート上がりませんな。

『もっとも、長期金利操作の前提として、年間約 80 兆円かどうかはともかく、相応の量の国債買入れを続けることも必要である。』

そらそうよ。

『その場合の長期金利への影響だが、買入れ継続により中央銀行の資産サイドに国債が蓄積するにつれ、ストック効果から長期金利には低下圧力がかかると考えるのが自然である。』

まーここは微妙ですがFEDの金利が利上げしてもあまり上がらんのをストック効果と言い張ることも可能ですし、ストック効果については説明の方便という気もしますし、まあ何でしょうかねという所。


『理論的には量と金利を同時に目標とすることはできないし、実際の政策の枠組みもそのようにはなっていないので、仮に長期金利操作目標をゼロ%程度とすることを相応の期間継続する場合、長期国債の買入れ額は次第に減少に向かうと考えることもまた自然であると思う。』

まあそうなのですがオペの減らし方が中期輪番いきなり飛ばしたり前回から一発1000億円減らしてみたりとあまり自然じゃない下げ方をするのでそこでギクシャクするんでしょうなあ。

『その場合、約 80 兆円の「めど」との関係が問題になりうるが、私としては「めど」はあくまでめどであるので、あまり縛られる必要もないと考える。ゼロ%程度という長期金利を実現するのに必要にして十分な国債買入れ額が、理論的には次第に減少に向かうということは、やや長い目でみてデフレ脱却後の望ましい出口のあり方を考えると、金融政策のスムーズな正常化を促す重要な要素になると考える。』

なるほど。


・財政と金融の話

実質ケツの部分になってきます。『(3)財政・構造政策との関係 』からで、ヘリマネとかFTPLが話題になりますよね、という前振りに続いてこういう話になる。

『前者のヘリコプター・マネーの定義は論者により区々だが、日本ではそもそも中央銀行による直接的な財政ファイナンスは法律で禁じられている。また、ヘリコプター・マネー論者がしばしば言及する無利子永久国債の中央銀行による引き受けは、たとえ法律上の問題をクリアできても、経済的に無価値、あるいはそれに近いものを資産計上する発想自体、実務上、現実的でない。』

『後者の「物価水準の財政理論」については、仮に財政拡張によりインフレが起こることで政府債務が事後的にファイナンスされるにせよ、実証的な研究蓄積はまだ不十分であるため、政策策定のためのマクロ経済予測には使いづらい。』

一刀の下に斬り捨てております。

『経済政策はさまざまな経済主体の利害得失を超える重い判断で実施されるが、インフレはいつか必ず起こる、しかしいつ起こるかはわからない、という経済モデルでステークホルダーを説得することは困難だからである。マクロ政策が法律上、会計上、実務上、ひいては議会の同意の必要性というさまざまな制約のもとで運営され、政策当局がそうした制約を強く意識せざるを得ない以上、現実の政策運営はプルーデントなものにならざるを得ない。』

しかも斬った挙句にトドメまでさしていますね!!!!!!!

そして返す刀で置物リフレの「金融政策で2%物価目標で世の中バラ色」論まで叩き斬るというキレッキレの文言が入ります。

『非伝統的金融政策の限界から政界・学界で財政拡張に改めて焦点が当たっていることについては、そもそも日本では未曾有の強力な金融緩和でもなかなか景気回復が実感されにくく、また欧州でもソブリン債務危機などから財政政策の限界が強く意識され金融政策への期待が過度に高まったことの反動と認識している。特に 2008 年の世界的な金融危機をさまざまな非伝統的手段で乗り切ったことで金融政策があたかも万能であるかのような誤解(only game in town)が広がった。その点、最近の財政発動への期待の広がりには、歴史は繰り返す、という教訓を感じる。』


とまあここまで滅多切りしておきながら次の所での話のマイルドな纏め方にこれはウマイと感心してしまいました。

『ともあれ、財政政策と金融政策の協調で循環的に景気を下支えすることで時間を稼ぎ、その間に構造政策で潜在成長力を強化するというオーソドックスな戦略が日本のみならず、世界的に一定の支持を得るようになってきたことについては、安倍政権発足当初の「三本の矢」の発想に通じるものがあり、私としてもシンパシーを感じる。


安倍ちゃん肝いりの置物大先生の置物理論系の話をを散々滅多切りしておいてしらっとこういう纏め方を入れるというのが実にウマイなーと感心(皮肉ではなく)しました(^^)。


つーことでさらにまとめ。

『こうしたなか、中央銀行の役割は、緩和的な金融環境を維持することで財政政策と構造政策の効果を最大限に引き出していくことに尽きると思う。』

結局の所中長期的に金融緩和を粘り強く続けるための戦略、つまり短期決戦から長期戦への移行が必要なのですが、まあマイナス金利もそうですし、目先の市場の動きに一々律儀(?)に反応してあれやこれやと繰り出してきて却って市場のボラ投下となっているYCCの運営といい、中々そういう風になっていないのが残念な所です。

『そのなかで日本銀行が長短金利操作という前例のない政策運営を行っているわけだが、長期金利操作のそもそもの前提は、持続的な財政基盤確立に向けた政府の努力により国債市場の信認の維持が図られることである。』

そらそうですな。

『この点、仮に、日本銀行が長期金利をゼロ%程度に誘導することで財政規律が弱まる方向となると、財政への信認に影響し、日本銀行は長期金利操作のために一段の国債買入れ拡大を余儀なくされる可能性がある。また、財政への信認が低下して長期金利が上昇する場合、日本銀行の買入れでリスクプレミアムの拡大を抑えることができるかどうかは不確実である。こうしたもとで、この政策は財政政策スタンス次第で財政従属となるリスクがあることを念頭に置く必要があると私は考えている。』

『国債発行のかなりの部分を日本銀行が買い入れているが、国債買入れはデフレ脱却と「物価安定の目標」達成の観点から行っているのであって、財政ファイナンス目的ではないことを改めて明確にしておきたい。』

全く同意であります。ということで多分最後の佐藤さんの金懇は木内さんのような暴れ講演というよりは淡々としたトーンながらも政策(主に置物理論的なサムシング)に対して情け容赦なく斬り付けまくってトドメまで刺しに行くという感じでしたな。





2017/03/01

お題「輪番予定額と日程が公表されましたが何か思ってたのと微妙に違うなあと」

本日はただの輪番雑談バージョンにてご勘弁ありたし。

○3月輪番予定が公表されましたが・・・・・・・・・・・・・

注目の17時の輪番予定公表ですが微妙に唸る内容。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170228e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について


日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2017年3月1日より適用)。


前回がこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170131c.pdf

ということで最初から比較してみますと・・・・・・・・・・


・買入回数については前月並み維持が確約されています

『(2)買入頻度
現時点で予定している買入れの日程は、別紙のとおり。ただし、必要に応じて回数を増やすことがある。

(3)買入金額
金利操作方針を実現するため、市場の動向等を踏まえて弾力的に運用する。』(今回)


『(2)買入頻度
月8〜10回(営業日)程度(必要に応じて回数を増やすことがある)

(3)買入金額
毎月8〜12兆円程度を基本としつつ、金利操作方針を実現するよう、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。国債種類・残存期間による区分別の買入金額については、別紙のとおり。』(前回)

となっていまして、買入対象国債と買入方式については従来通りとなっています。

変化としては・・・・・・

(2)の買入頻度に関して前回は「全体の回数」については「必要に応じて回数を増やすことがある」となっていましたが、回数についてもレンジになっていましたので、一番少ない「月間8回」になると、1回に2つの残存区分は最低オファーするので、全部合わせると一番少なくなると16残存区分となりますが、中期、長期、超長期をレンジの下限回数のオファーにすると14回(5+5+4)となり、1年未満と物価連動が各2回で変動利付が1回なので、全部を下限でやっても月間8回の帳尻があってしまう計算になっていました。

これに対して3月からの方式では、主要3残存区分については、日程が指定されているので、中期6回、長期6回、超長期5回のオファーが確約済みで、更に「必要に応じて回数を増やすことがある」となっており、減ることは無いので「輪番スキップ」は無い上に回数は維持となっています。



・10年をピン止めする気が満々、というのと、中期を減額しますよ、というレンジの見せ方

ところが(3)の買入金額に関しては別紙にありますように、レンジと主要3残存区分の買入予定日については公約(??)通り記載があるのですけれども、肝心の「3月初回の買入予定額」が書いていないという中々謎展開になっております。

今回はレンジの表示だけで翌月初回の買入予定額が書いていなくて、単にレンジが表記されているだけのものとなっています。

短期:500〜1000
中期1-3年:3000〜4000
中期3-5年:3500〜4500
長期:3500〜5500
超長期10-25年:1500〜2500
超長期25-40年:500〜1500
物国:250
変国:1000(来月は奇数月なので無し)

でもってこのレンジに2月の最終回のオファー額を()で入れてみますとこうなります。

短期:500〜1000(700億円)
中期1-3年:3000〜4000(4000億円)
中期3-5年:3500〜4500(4200億円)
長期:3500〜5500(4500億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1200億円)
物国:250(4500億円)
変国:1000(1000億円)(来月は奇数月なので無し)

これを見ますと、長期と超長期10-25年については前月最終回の買入オファー額が公表されたレンジの中間地点となり、中心からプラスマイナスが均等になっています。また、物国変国には変更が無いのは順当。

短期の方はまあ2月最終回がレンジの中心にあるとしまして(500単位のレンジになっているからここでわざわざ500-900とするのも妙ですし)ここまではまあ2月最終回からの流れを踏襲していると言えるでしょう。

その先が何だかなあの部分になるのですけれども、超長期25-40年と中期3-5年に関しては、2月最終回がそれぞれ1200億円と4200億円ですから、上下500で取ればそれぞれ700-1700と3700-4700になります。

然るに、レンジに関しては一応500単位の近い方に揃えたとは言えますが、額の少ない方にレンジを寄せているとも言えまして、何となく微妙な上に・・・・・・・・・・・・・

中期輪番の1-3年がおーという感じで、これは何と2月最終オファーがレンジの上限となっているというナンジャソラな内容となっておりまして、まー確かに需給が逼迫気味な所ではあるのですが、中期1-3の輪番を増やす気無し、というメッセージを出してくるとはびっくりしたなあもうという所でして、中期1-3のレンジが下振れしているせいか、中期3-5のレンジも(超長期25-40と同じパターンとは言え)レンジが下方シフトしている様に見えます(逆に超長期25-40は超長期10-25のレンジが2月最終回の買入額を中心に持ってきているので、あまり下方シフトに見えない)

つーことで、何か知らんのですが「10年とその近辺に関しては2月に輪番増額したのをそのまま継承してせっせと買います」というのは分かるのですが、10年から遠くなる(短期除く)につれて輪番の予定レンジが2月最終回のオファー額に対して下にスキューしている感じに見えます。



別の視点で前回とのレンジを比較してみましょう。()の数値は2月予定として公表されたレンジ。

短期:500〜1000(500〜900)
中期1-3年:3000〜4000(2800〜5200)
中期3-5年:3500〜4500(3000〜5400)
長期:3500〜5500(2900〜5300)
超長期10-25年:1500〜2500(1400〜2400)
超長期25-40年:500〜1500(600〜1600)
物国:250(250)
変国:1000(1000)

こちらで比較する(ただし1回目の買入予定額が2月最終と違うのは長期(4100→4500)、超長期10-25年(1900→2000)、超長期25-40年(1100→1200)となっています)と、中期のレンジは下限を上げて狭くはしていますが、それ以上に上限を下げていて、やはり中期輪番を減額する気満々に見えるメッセージの出し方になっています。

また、長期と超長期10-25年の所だけは下限、上限ともに上方シフトし、しかも長期の下限の上方シフトが目立つ、という形になっている一方で、超長期25-40年の買入レンジは100億円下方シフトしている、という結果になっております。


ということで、2月最終回の買入額との比較、2月当初公表レンジとの比較、という形で確認しましたが、

・長期輪番を厚めにシフト(しかも増額した4500億円をそのまま容認)
・超長期10-25年もやや厚め
・超長期25-40年はレンジ的には若干下振れ
・中期は1-3年を中心に減らす気満々に見えるレンジのシフト

ということで、10年近辺については2月に指値オペまでやって買入が多くなったのですが、そこは減らしませんよというメッセージを出していて、一方で特に中期が減らす気満々に見えるメッセージになっていますので、確かに金利ターゲットは10年金利に置いているのですからそういうもんと言えばそういうもんでしょうが、イールドカーブコントロールではありますが、「10年金利ピン止めオペレーション」という色合いが濃くなっているようにも見えます。



・しかし初回の買い入れ予定額が無いというのも何とも

そんな訳で10年近辺は引き続き厚め(2月になって厚めになったのをそのまま継承した、という形)に買うものの、特に中期の短い所などを中心に買入そのものは「隙あらば削減」スタンスというのを見せて来ました。

いやまあ中期に関してはここもと需給が良いのか何だか良く分かりませんけれども、直近で金利がエッサホイサと低下してきましたし、年度替わり以降は発行の減額による需給の引き締まりというのもテーマになっている所なので、4月に入る所からは減額になるのでしょうねえとは市場でも思っていたと思うのですが、2月のドタバタ相場の経緯って「1月25日の中期輪番スキップ」からスタートしていまして、今回に関しても中期の金利がホイホイ低下していく中だったので中期輪番減額でもしてくる可能性は無くは無かったのですが、結局2月中は輪番を(途中で増やした分も含めて)減額しないで進めて行ったのですよね。

「オペの実施時期公表で輪番の予見可能性を高める」(いや問題はそうじゃなくてオペ入れてくるロジックとその背景にあるYCCの定量的な考え方なんだけど、という話は兎も角としまして)という話で、かつ月の途中でも買入額の変更などが何度も行われた後ですから、2月の終わりまで輪番減らさないで来たのに、特に中期1-3年とか減らす気満々(しかも今日だけど幾らで来るか分からない)というのを出すのは、相変わらずの不意打ち感が漂いまして、何でそう一々微妙な変化球を投げてくるのかねとは思うのでありました。変化球投げるのもそらまあ投げるなとは申しませんが、それは変化球のコントロールとキレが良い時の話であって(以下の部分は悪態の為削除されました)。

#中期の不意打ちってそこそこ鬼門な気がするのですけれども

でもって昨日までも書きましたように、アタクシ的に普通に考えると今月の1回目は前月最終回と同額、と思っていましたが、長期と超長期はまあこのレンジの出し方だと前月最終回がレンジのほぼ中心にあるので同額で来るのかなあと引き続き思えるのですけれども、中期に関してはこれ前月最終回と同額で来るのかも怪しいし途中で減るのかよという事で、3月初回となる本日の中期輪番がどういうオファーになるのか、というのが非常に訳分からなくなってしまいました。まあ10時10分になると分かるのですが。



・量をある程度固定しながら金利上昇時にはエクストラな対応じゃなかったのか・・・・・・・・・・・・

「回数固定で日程も事前公表しますよー」、「金利が上がった時にはエクストラのオペをしますよー」、というのがこの公表出る前のお話で、確かに一見そういう書き方になってはいるのですけれども、いきなり中期の輪番減らす気満々という数字の出し方になっているし、そもそも初回の買入予定額を示さないし、というのが今回の新方式で出た結果となっています。

どちらかと言えば、という感じだとは思うのですが、これまでに出てきた報道やこの前の木内さんの会見での解説(報道が正しいならば、という留保付の解説)では、

「10年の金利上昇は頑張って止める」
「相場大荒れの原因となった輪番の細かな上げ下げは特に下げ方向は抑制して不確実性を下げる」

という感じで、金利に関しては「定例的な買入を淡々と行うので10年ターゲット逸脱しない限り少々の変動は容認」であって、その10年金利の水準が27日引けで4.5bp、28日の引けで5.0bpとなっているので、「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう」というディレクティブに対してはまだレンジの中での金利がやや高い方にいるんだから、別に金利上昇を牽制しなければいけないような段階ではなく、したがって2月もそうですが3月も変に動いてこないで足元の買入ペースを淡々と進める。

というようなことをイメージさせられた訳です、つまり中期輪番スキップという買入額をバサッと減らしてみたら金利が上がってあばばばばーとなって結局減らした以上に買入をする事になった、というのを反省して買入のペース削減については金利がもう一段下がって10年金利がレンジの上限に近付いていく(▲9.5で輪番削減して+11で指値入れているんだからレンジは▲10〜+10ぷらすまいなす1bpくらいのイメージになっちゃいましたよね)のなら買入を減額してくる。とまあそんな具合で、当面は市場が(金利上がる方での)大暴れをしないように「柔軟な対応」から「ある程度量はガッチリ買いながら市場の落ち着きを待って輪番減額については落ち着いてから考える」という方面にシフトしたのかな、と思ったのです。


でも、この出し方だとそもそも3月1回目の買入オファー額が読めない(特に中期)ですし、レンジの見せ方が10年近辺には厚いですがそれ以外はちょっと薄め(特に中期は減らす気満々)となっていまして、量をガッツリ買うという感じには見えないので、ちょっとナンジャソラな感じがするのと、そもそも10年の金利水準がまだプラス圏にあるのに、今から(中期とは言え)減額のファイティングポーズをとるってどうなのよ(これが10年マイナス5bpとかなら話は分かるのだが)という事で、相変わらず金利を止めたいのか上げたいのか下げたいのかがワケワカランなあと思うのでありました。


・「柔軟なオペ対応」を残したのが吉か凶か

『(3)買入金額』の所では今回前回まであった「毎月8〜12兆円程度を基本としつつ」というのも抜けていまして、こちらに関しても別に中期のレンジが下にスキューしていなければそんなに驚かないのですけれども、中期輪番減額する気満々チックなレンジの見せ方をしながら月の買入総額の文言をバッサリ削除する、というのも微妙な味わいをだしますよね、と思うのだ。

つまり、これは事前に決めたスケジュールで淡々と買っていく、というよりも市場見ながら輪番をホイホイ上げ下げしてもおかしくない(さすがに長期超長期でそれをやる度胸は無いと思うけど)ですよ、という風に全体感として読めてしまうと思うので、これだと「オペの予見可能性を下げる」という事になるのかが何だか良く分からないなあとは思うの。

まー先程申し上げたような「量をガッチリと決めて買う」というのが余程やりたくないんだなあというのは分かるのですが、だったら事前に出ていた話ってのも(どういう説明になっていたのかとか良く分からんし報道の説明でも実際の所がイマイチ分かりずらいのですけれども)、もうちょっと説明のしようというのもがあるんじゃないかなあと思う訳で、ガラッとスタンスを変えたのかと思えば隙あらば中期減額みたいなのが残っているとか、変える気が無いならあまり変な小手先の修正というのはしないで良かったんじゃないかと思います。

まあ長期と超長期は事前に決めたスケジュールに近い所で買ってくる(超長期の25-40が怪しげではあるが)という感じですし、そっちが本命で中期はおまけ、という事なのかも知れませんけれども、だったら別に今回のような変更をしないで淡々とオペを入れていく形でも良かったのではないかと。


とまあそんな感じで全部雑感なのですがあと少々おまけ的になりますが同じく輪番ネタで。

・エクストラオペはたくさん打つのかしょぼいのをやるのか

今回の別紙脚注

『(注2)残存期間 1 年超 5 年以下、5 年超 10 年以下および 10 年超については、市場の動向等を踏まえて、上記に加え、上記以外の日にオファーすることがあります(その場合のオファー金額は上記の金額とは限りません)。ただし、買入対象銘柄の残存期間が重複する利付国債の入札日(流動性供給入札を含む)には、原則オファーしません。』(今回)

後半の方は良いとしまして(従来通り)エクストラオペのオファーに関しての実施は減らす方は無くて増やす方は有り、という事になったのですが、「その場合のオファー金額は上記の金額とは限りません」とかなっているのは何か変な意思でもあるのかね、とこれまた謎感が。


・短国買入は引き続き減額

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、3月末の残高を34〜36兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』(今回)

となっていますが、2月は1月末残が38.0兆円で、償還が5.68兆円、買入が4.0兆円なので、2月末残が36.3兆円の予定になりますから、引き続き減額となるのですが、まー相変わらず1年カレントとかやたらめったら引けが強いとか、需給の方は頑強な強さという感じですので、これは順当。


・プレミアムフライデェ・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで今回の公表分の冒頭ですが、

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2017年3月1日より適用)。── 次回公表は2017年3月31日17時を予定。』(今回)

ということで、来月月末は金曜なのでプレミアムフライデーとかいう日の筈なのですが、この平常運転ぶりにさすが日銀と感銘致しました。これで円債の皆さんプレミアムフライデーは自動的に無しということですね(そもそも期末の週末にプレミアムフライデーとかあったもんじゃないですけど)。

以上ひたすら輪番雑談ですいません。