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2017/05/31

お題「先週のネタではありますが執行部の情報発信が降参モードになっている件について」

つーことで復旧しているうちに総裁講演とか色々とあるのですが、まあ相場様の方は達観すると同じような感じですので良し(良くない)として頂きたく。

○先日の櫻井審議委員講演ネタの続き

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170525a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170525a1.pdf

・そもそもYCCの運営が上手くいっていると言って自慢するのがダメダメな件について

先週金曜日には『マネタリーベースを操作目標としていた以前の政策は、同様に金利を押し下げる効果を持ちますが、市場関係者以外には馴染みが薄かったのではないでしょうか。直接、長期金利の操作目標を示す「イールドカーブ・コントロール」の方が、幅広い経済主体に対して、緩和的な金融環境を強くアピールできると思います。』という驚愕の部分で話が終わってしまったという感じでしたが、気を取り直してその先を見ると更にアレというのが続きます。『3.金融政策』の後半になりますけど。

『これまで多くの中央銀行は短期金利を金融政策の操作目標としてきました。長期金利の操作は新たな挑戦であり、その導入に当たっては一定の不確実性を孕んでいたように思います。しかし、枠組みの導入以降、これまでのところ、大きな問題なく長期金利を目標水準に維持することができています。今後も、日々の市場の状況に応じた丁寧なオペレーションと入念なコミュニケーションを通じて、経験を蓄積しながら慎重な政策運営を行うことが重要だと考えています。』

金曜にネタにした部分の次がこれでもうブチ切れですよ。おまえな、そもそも物価目標が早期に達成できると市場が思っていたら長期金利には超越上昇圧力が掛かって日銀の買入をとんでもない量でやらないとYCC運営が維持できないんだよ分かってるんのかこの(以下の部分は自主規制により削除されました)。

ということでこのYCCの運営が上手くいっているので云々という話はすればするだけトンチキ感を高めるだけなのでしない方が吉だと思うのよ、いやマジで。


・説明がすっかり「リフレ置物理論離れ」している訳ですが

という悪態を軽く入れた後に『4.日本経済の課題』に参ります。

『足もとの景気は着実に改善しています。一方で、物価や賃金の伸びは相対的に緩やかです。背景として様々な要因が考えられますが、一つには、前述したように家計や企業が抱える将来への不安があるように思います。』

リフレ政策を断行して物価目標2%で世の中のマインドセットが変わるという理論はどこに行ったのでしょうか・・・・・・・・・・

『家計は、将来の恒常的な所得が上向くとの確信が持てない中で節約志向を維持し、また企業は将来の収益環境の悪化に備えて下方硬直性のある賃金の引き上げ――特にベア――に慎重になっている側面があるように思います(図表11、12)。例えば、少子高齢化に伴う日本経済の成長力や年金等の社会保障制度の持続性にかかる疑念、非正規社員の相対的に不利な待遇、また足もとでは、世界的な保護主義傾向の強まりなどが、将来不安を高める一因となっている可能性があります。』

そういうのは物価目標2%を掲げてリフレ政策を実現すれば解消するという触れ込みになっていた筈で、こういうのが理由だから2%物価目標が行かないとか言い出すのは元々のリフレ政策の宣伝文句が誇大広告だったのか机上の空論だったのかという事になると存じますが、リフレ派の皆さんこんな説明で宜しいんでしょうか????

『こうした前提に立つと、どのような政策対応が求められるでしょうか。』

リフレ政策でマネタリーベース2倍にして物価2%を2年で達成するんじゃないでしょうか????

『繰り返しになりますが、足もとの景気は良く、当面は需給ギャップも着実に改善していくことが見込まれます。こうしたもとで、さらに短期的な需要を無理に押し上げる政策は必要ないように思います。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・

『むしろ、景気の振幅を増すことの弊害(例えば効率的な資源配分の阻害)が大きいのではないでしょうか。我々が目指すべきゴールは、「物価安定の目標」を安定的に達成し、そのもとで持続的な経済成長を実現することである点を忘れてはいけないと思います。無理に短期的な需要を喚起して2%の物価上昇を実現しても、それを安定的に持続することはできません。』

2%の物価目標を2年を念頭に出来るだけ早期に達成する、というのが2013年のQQE導入だった訳で、ここまで言うなら政策決定会合で反対票投じろよ、と申し上げたくなるのですが、これはつまり執行部も実際問題として早期達成とか思いっきり降参しているということであり、そのための鉄砲玉として櫻井さんの今回の金懇が使われた、ということだと思います。会見でも中々面白い質疑がありましたがそれはこの後で。

つーかですね、(先日お断りしたようにネット半断ち状態だったのもあって見落としているのかもしれませんが)この櫻井さんの講演と会見って当初のリフレ理論QQE攻撃を思いっきり梯子外しにかかっている話であって、何でリフレ派の皆さんが櫻井さんのこれに文句言わないのかが全く持って意味不明で、もしかして日銀の政策転換で色々と上手く言ってウハウハだからとか言って白川日銀を石持て追い出したのはただの口から出まかせだったのかと小一時間問い詰めたい訳ですけれども、これに文句を言わないリフレ派諸兄の方にブチ切れしたい所ですよ。

『人々の将来不安の原因が、先に挙げたようなより長期的な課題にあるとすれば、地道ではありますが、そうした課題の一つ一つに真摯に対処していくほかないように思います。』

それは白川日銀の時に思いっきり言っていた話で、それがケシカラン無能だ馬鹿だと相手を罵りまくっていたのが置物師匠をはじめとするリフレ派の皆さんだったのですけれども。

『例えば、少子高齢化のもとで成長力を高めていくためには、生産性向上に向けた企業の取り組みやイノベーションを政策面からサポートしていくことが重要だと思います。もちろん、女性や高齢者が働きやすい環境の整備等、労働力の拡充に向けた取り組みも引き続き進められるべきでしょう。社会保障制度にかかる信任を高めるためには、財政の健全性確保に取り組むことも必要です。非正規社員の待遇改善を含む政府の「働き方改革」は大変重要な政策課題だと思います。また、自由貿易の重要性は国際社会で広く共有されていますが、今後仮に保護主義的な動きが強まるようであれば、改めて、国際的な場で自由な貿易と直接投資の重要性について確認する必要があるでしょう。』

2%物価目標で世界が変わる、って言ってませんでしたっけ。

『こうした長期的な課題への対処には時間がかかり、また時として痛みを伴います。そのため、景気が悪化する局面では、対応が一段と難しくなります。足もとの景気は良いですが、景気には波があります。当然ながら、潜在成長率を上回る成長を永遠に続けることはできません。』

だったらフルスロットルで金融緩和のアクセル踏み続けちゃあ行けない筈ですが。

『将来、景気が悪化する前に、長期的な課題にしっかりと取り組むことが重要だと思います。そうした取り組みは、長期的な経済の安定性を高めるとともに、家計や企業の将来不安を取り除くことで、結果的に、足もとの物価や賃金の引き上げにも寄与するものと思われます。』

とまあそういう説明でこのコーナーが締めになっているのですが、これって思いっきり白川ドクトリンの世界でして、リフレ一派の皆様が散々口汚く罵倒しまくっていた白川ドクトリンを堂々と説明するとかよく恥ずかしくないなあと思ってしまうのですが、まあこの位心臓に毛がボーボー生えていると人生楽で良いだろうなあと思ってしまうチキンハートのアタクシには到底真似ができません。

などとブチ切れモードになっているような物言いが延々と続いておりますが、先ほども申しあげたように、これをさすがに黒田さんが言い出したら黒田日銀ついにポツダム宣言受諾で無条件降伏という事で大騒ぎになりますし、岩田置物大師匠が言い出すとさすがにその前に白川さんに焼き土下座しろという話になりますので、ここはちょうどいい塩梅に櫻井さんの金懇があったので全面降伏をぶつけてやろう、という事になったと考えますと、とりあえず大風呂敷の収拾を考えているということですけれどもまあ時既にお寿司なんですよねーという話は後程。


○櫻井さんの会見ですがやはりこの全面降伏モードはなんなんでしょ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1705c.pdf

・「2年で2%」とは何だったのか

順番逆になりますがまずは後ろの方の質疑から。

『(問) 櫻井審議委員はどちらかと言えばリフレ派で、2%の「物価安定の目標」の達成を掲げて、何が何でもこれを早く実現することが必要だと感じておられるのだと思っていましたが、本日の挨拶要旨を読む限り、無理して 2%に持っていく必要はないし、無理することの弊害で景気が振れることもあるとされています。そうなると、先程言われていた 2018 年度という物価上昇率 2%を達成する時期がたとえ少し後ろにずれても、すぐに需要を喚起するような追加的な金融緩和の必要性はないとお考えなのでしょうか。』

うんうんこれは良い質問ですな、逃げ道がない。

『(答) 私がリフレ派と括られるかどうか分かりませんが、少なくとも 2%の「物価安定の目標」の達成時期については、4 月の展望レポートが一つの基準だと思っています。ですから、例えば年末までに達成したいとか、来年の前半に達成したいということで、大きな政策を実施するようなことは、今の状況では必要ないのではないでしょうか。今の政策を続けることでじっくりその効果をみていくことでよいのではないかと思います。ただ、その時期が遅れることになれば、経済の状況次第ではありますが、その時点で何か考えていく可能性が出てくるかもしれません。現時点では、展望レポートのスケジュールが一つの基準になっているということでよいのではないかと考えています。』

まるで追加緩和をする気が無いようですが、更に追い打ち質問。

『(問) 先程来出ている質問の繰り返しになりますが、需給ギャップが改善している中では政策効果を見守るべきと発言しておられますが、逆に言えば需給ギャップが改善基調にある限りは、追加的な政策対応は必要ないとお考えでしょうか。先程の質問にもありましたが、物価の 2%達成が多少後ずれしたとしても、需給ギャップが改善しているのであれば、そこは政策対応が必要ないということでよいのか、教えて下さい。』

さらにこれは良い詰め方。

『(答) まさに状況次第ではありますが、私自身は需給ギャップが改善しているということは、マクロの成長率が上向くということと割とダイレクトに繋がると思っていますので、その意味では、需給ギャップの改善に持続性があるならば、物価の上昇は多少のラグをもって出てくる可能性もありますので、そうした動きをまずは見守ることでよいのではないかと考えています。その意味では、需給ギャップが当面は重要な指標になると考えています。』

展望レポートがそもそも「需給ギャップが改善」→「実際の物価が上昇」→「適合的な期待形成でインフレ期待が上昇」という風になっているのですが、本来リフレ理論によりますと、毎度しつこいですけれども、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdfの7枚目のスライドに
「2%インフレ目標コミットメント」+「マネタリーベース増加」⇒「予想インフレ率上昇」

とありますように、予想インフレ率を上昇させるのが一丁目一番地みたいな所があった筈で、そうじゃなくて「需給ギャップが当面は重要な指標になる」と言っているのは、置物リフレQQE理論は最早無かった事になっているっつー事ですから、まあひどい話ちゃあひどい話ですが、別の考え方をすればやっとまともな思考に戻ってきた(がその間に壊れた市場は覆水盆に帰らず金融社蓄市場に帰らずという事です)という事ですな、うんうん。


・量が従属変数だと??

そのちょいまえの質疑ですが。

『(問) 国債の買入れ額について伺いたいのですが、先日黒田総裁が国会でもおっしゃっていましたが、足もとで 60 兆円増加というペースになっており、決定会合で決められている 80 兆円のめどからはかけ離れた状況になってきていると思います。櫻井審議委員が午前中の挨拶でも指摘された通り、あくまで金融政策が金利の操作に主眼を置いているのであれば、80 兆円という数字は、現状に合わせて修正したり削ったりする必要が今後出てくるのではないかと思いますが、この辺りをどのように認識されているのでしょうか。』

ちなみにアタクシはもうこの80兆円は要らないけど、まあ削ると不測の事態が起きるかも知れないというのが日銀執行部の懸念だと思うのですが、大体からして肝心のその不測の事態を起こしそうな他市場の皆さんが日銀の買入額が今のペースで1年やると幾らになるかとか計算してたらとっくの昔に気が付く筈なのに反応しないのですから、却って削らない方が良いのではとか思ってしまうクチです。

『(答) 長期国債の買入れ額は、現時点では、80 兆円のめどからみれば、少し少ない数字になるかと思います。ご質問で出ていた通り、現在の金融政策の枠組みは、金利を安定的にコントロールすることに主眼があるわけです。金利と量は一体の関係にありますから、金利を一定にしておくということは、量は従属変数になってしまうわけで、そこは変動せざるを得ない。』

>量は従属変数
>量は従属変数
>量は従属変数

『80 兆円のめどに対して、現時点では実際の買入れ額が少し減っているというご指摘はその通りですが、2 月にはそれがちょっと増えることもありました。金利をフィックスすることで量が動くことは当然ですので、私はめどはまだ変えなくても構わないのではないかと思っています。』

それはそうだがマネタリーベース直線一気理論は何処へ??

『もちろん、将来は金額が大きく振れることになるかもしれません。そこはその段階で考えればよいと思っており、今の段階で 80兆円というめどを置いておくことは問題ないだろうと考えています。』

というのをリフレ派委員が言い出すとは・・・・・・という感じですが、まあ要するにそういう事なんでしょ。




○黒田総裁の先週の挨拶(週末のでは無い)

とまあ櫻井審議委員の金懇がすっかり「リフレ理論が無かった事になる」攻撃を加える中、黒田総裁の先週の国際コンファランスの挨拶も大概にアレだったんですよねー。

ここで本来は英文を読むという話なのでしょうが、まあ邦訳の方で勘弁。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170524a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170524a.pdf

『今年のコンファランスのテーマは「金融政策:教訓と課題」です。私からのご挨拶の後、ベン・バーナンキ前FRB議長に、ご本人の研究者として、また金融政策当局者としての経験に基づき、前川講演を行って頂きます。本日午後には、日本銀行金融研究所の海外顧問の一人であるマーク・ガートラー教授から基調講演を頂きます。また明日のプログラムの最後に、シカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁、ECBのフランク・スメッツ総局長、そして私の同僚である日本銀行の中曽宏副総裁の3名をパネリストに迎え、政策パネル討論を行います。パネル討論では、もう一人の海外顧問であるマービン・グッドフレンド教授がモデレータを担当されます。さらに、3人の優れたエコノミストから、金融理論と金融政策実務の両方の最先端における喫緊かつ重要な課題についての研究報告を頂けることを、大変嬉しく思います。今年の国際コンファランスから、多くの知見が得られることを確信しています。』

というのが最初にありますけど。


・インフレ期待の引き上げメカニズムの話はどうなったのか

『インフレ動学とインフレ予想の動学について』という小見出しから。

『2013年4月の「量的・質的金融緩和」導入以降、日本銀行の金融政策運営における極めて重要な要素は予想物価上昇率を引き上げ、2%の「物価安定の目標」にアンカーすることです。』

さいですな。

『2016年9月に、日本銀行は「量的・質的金融緩和」政策およびマイナス金利政策を含むその他の政策効果の総括的な検証を公表しました。また、総括的な検証の補足ペーパーシリーズとして、わが国と他の先進国における予想物価上昇率の特徴についての実証研究論文を公表しました1。これらの研究には、本日の論文報告者の一人であるボストン連銀のジェフリー・ファーラー氏による、サーベイ・データを用いたインフレ予想の役割に注目したインフレ動学の分析フレームワークも含まれています2。』

この前日銀が出していたのもありますが。

『インフレ予想について、過去数年間に多くのことを学んできたことは間違いありませんが、一方で、多くの未解明の研究課題が残されていることも事実です。』

お、おぅ・・・・・・・・・・

『例えば、インフレ予想は、かなりの程度の慣性(inertia)や持続性(persistence)を示し、そうした性質は、古くから知られている「名目価格の硬直性」を考慮したとしても、完全情報・合理的期待を仮定する枠組みで説明することが難しい点については、コンセンサスが形成されているように思います。』

それをQQEで何とかするんじゃなかったでしたっけ????

『しかし、インフレ予想が持続的な動学特性を示す背景にあるミクロ的な基礎付けについては、コンセンサスはなお形成されていません。こうした中、最近では「情報の硬直性」に焦点を当てた研究が増加しており、研究者の皆さんには、インフレ予想についての研究をさらに進展させていかれることを期待しています。』

期待していますじゃねーよ。


・均衡実質金利が分からないのに何でYCC政策をやっているのか

次が『自然利子率』という小見出し。

『2つ目の研究課題として、古くて新しいトピックと言えますが、自然利子率を挙げたいと思います。これは、やや技術的な用語を使うと、均衡実質金利と言い換えることができます。自然利子率は、マクロ経済学やマクロ経済学に関連する時系列分析において、長い間議論の対象となってきました。』

ほうほう。

『例えば「金融政策スタンスは緩和的である」という場合、これは、実際の実質金利が均衡実質金利よりも低い水準に維持されていることを意味します。このとき、「均衡実質金利はどの水準にあるのか」という自然な疑問が提起されます。』

さいですな。

『この疑問は、実は意外と難しい問題です。』

・・・・・( ゚д゚)

均衡イールドカーブに対する適正な緩和度合いが年限によって違ってくるからYCCという形を使ってコントロールするという話だった筈なんですが。

『自然利子率は、厳密な動学的一般均衡モデルの中では、明確な理論的解釈が可能です。それでもなお、モデルの定式化次第で自然利子率の決定要因は変化します。いくつかの特殊なケースにおいて、自然利子率は経済全体の潜在成長率に一致することがよく知られていますが、現実問題として、常にそうなる保証はありません。また、実際に自然利子率を推計するとなると、計量経済学者は多くの技術的な問題に直面せざるを得ません。』

『例えば、固定年限のリスク・フリー金利のデータを取得することは実際には不可能です。現実の金融市場において、絶対的に「安全(risk-free)」な資産は存在しないからです。』

理論的に言っている意味は分かるがそれ言い出したら「政策に使えない」概念になるじゃん。

『また、消費者の時間選好率を推計することは困難であるうえ、無数に存在する消費者のうち誰の時間選好率を推計すべきかという問題に対する一意な回答もありません。』

という問題意識があるのに何で均衡イールドカーブの概念を持ち出したりしながらYCCって話になったのか小一時間問い詰めたい。


『これらの困難を念頭に置きながら、中央銀行の政策当局者は、これまでもなんらかの自然利子率の推計値を使って、注意深く政策決定を行ってきました。そのうえで、中央銀行が自然利子率の水準をどう見積もるかは、近年、潜在的な影響力をますます増大させています。ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授が提唱している「長期停滞(Secular Stagnation)」の議論が説くように、自然利子率に関する不確実性は、中央銀行による政策決定の進路を一段と見極め難くしています3。』

『「長期停滞」仮説の詳細について、ここでは立ち入りませんが、自然利子率が近年低下してきているということ自体には異論の余地は少ないでしょう。自然利子率が低下した結果、名目金利の実効下限制約(effective lower bound)と相俟って、多くの先進国における中央銀行は非伝統的金融政策の新たな手段を導入し、細心かつ大胆な行動に踏み切ってきました。したがって、多くの中央銀行は、未だに古くからの課題に直面していると言えると考えています。』

まー実際はこの通りではあるのですが、だったらYCC入れる時にあそこまで小理屈捏ねなくても良かったんじゃないですかと思いますが、あれはあれでQQEが一発目のこけおどしの効果しかありませんで、消費増税如きにも耐えられない枠組みでしたというのを自分らの顔を立てながらフェードアウトするための儀式として必要だったということなのでしょうけれども、それにしてもYCC枠組みの理屈が弱すぎで、まあ今みたいに情勢に変化無しみたいな状況だと別に問題が起きないと思うのですが、そのうち説明が苦しくなるでしょう(なおその時には総括検証パート2が行われるに1万ドラクマ)。


・一応往生際の悪い部分もある

次の『異質的な主体を考慮したマクロ経済学と金融政策の分配効果』でこんな事言ってます。

『グローバル金融危機の余波の中で、批評家達はマクロ経済学や金融経済学は全く役に立たないと批判しました。こうした批判の論拠となっている誤解の1つとして、批評家達が現代的なマクロ経済学は代表的個人モデルのみに依拠しており、経済における様々な異質性から生じる重要な含意を無視していると信じていることが指摘できます。』

全く役に立たないのではなくて「ふれこみほど役に立たなかった」ではないでしょうかと思いますけれどもそれはさておき。

『異質性の具体例として、貸し手と借り手、金融部門と非金融部門、輸入企業と輸出企業、そしてより物議を醸しやすいものとして、持つ者と持たざる者といった例が挙げられます。異質的個人モデルは、1990年代に考案されて以降、現在に至るまで拡張されてきました5。政策当局者の観点からすれば、真の問題は、異質性がもたらすマクロ的な経済変動への含意を検証するために、より扱いやすい代表的個人モデルの代わりに、異質的個人モデルを用いる必要が本当にあるか否かを考えなければならないということです。』

『これは、適切なモデルの選択という意味で「オッカムの剃刀(Occam's razor)」が適用される古典的なケースと言えるでしょう。』

オッサンの髭剃りならアタクシも持っておりますが、これは何ぞと思って安直にwikipedia先生に聞きに行ったら(良い子の皆さんはもっとまじめに調べましょう)「説明に余計なものを加えないでもいけるんだったら余計な説明すんな」とか何とかいう事のようですが、マネタリーベース直線一気理論というのはレザーで削りまくって単純化しまくった結果として政策レシピがおかしくなったとかそういうことなのではなかろうかと思いますが、ここで適切なモデルの選択で複雑化しすぎるべきではないとかいう話が出てくるのが何とも味わいがありますな。



○まあ何ですな

ということで櫻井審議委員と黒田総裁の先週の金懇挨拶および国際コンファランスの挨拶ですが、櫻井さんが元々こういう思想だったというのはちと考えにくく(だったら謎の上に謎な今般の審議委員ノミネートはねえだろ)、まあ執行部の鉄砲玉になっていると考えまして、黒田さんの挨拶とセットで総合すると・・・・・・・・・

・QQE当初の「マネタリーベースを2倍にしてインフレ期待を高める」は不発
・「強力なコミットメント」でインフレ期待が上がったのかどうかは数字の取り方次第だが下がってはいない
・YCC政策は長期的に緩和政策を続けるのに有効で量は全体のストックを減らさなければ問題ない
・YCC政策で示している長期金利水準とかイールドカーブ水準については中立金利の計測が難しいので何となくの水準

そしてもっと重要なのは

・「2年を念頭に出来るだけ早期に達成」としていた大風呂敷はすっかりなくなってしまった

ことでございます。


でですね、まあここからは推測の世界ではあるのですが・・・・・・・・

4月の展望レポートでの物価見通しって「とりあえず為替とエネルギーの昨年度効果が出て来る中において賃金も上がってきているし、ここから年後半に掛けて物価が強含みになってきそう」というのがあって、例の適合的期待形成の巻という奴で、「年後半に物価が上がって来るとインフレ期待も適合的な面も効いてくるからちょっとは上昇しやすくなる」となって、それが来年度の賃金だの価格改定だのに効いてくるので2%に向けて進んでいく、というお話になっているのですよね大体。

でもって、確かに今年の1月2月に債券売られて指値オペ炸裂とかになった頃って、日銀の謎の中期輪番スキップが直接の原因ではありますが、それだけの話ではなくて、この時ってトランプ効果も含めて「これもしかしたら年後半に思いの外物価が上がってくるかも知れないですよね」という見方をする人もそこそこ出てきていた(まあ自分がそうだったのですが)時期でもあったんじゃないかと思うんですよ。だからこそ「これは日銀梯子外しか」とかいう風に取れますなという事になってしまいまして、オラオラオラと抗日銀パルチザンが発生した次第ではなかったかと。

つーことでしたので、まあ確かに暫く前(大体春先)までは「これ年後半に物価上がってきた時に上手いこと「勝った事にできる」タイミングがあるかもね」というのも可能性としては無くは無かった(ナローパスだけど)という感じだったのでしょうが、新年度入りした辺りで良く良く見れば雇用者所得の伸びはイマイチだわ、物価の伸びもイマイチだわというような状態になっていて、こりゃどうも従来の「今年後半に掛けて現実の物価が上昇してインフレ期待も上がっていく」という美しいシナリオは難しく、必然的に長期戦にならざるを得なくなっている、という認識は大本営発表と言えども何ぼ何でも持っていると思うのです。

そんな訳で、今回総裁講演と櫻井さんの金懇挨拶ってちょうど同時期に用意されたもので、まあ櫻井さんの説明がリフレ派らしからぬ説明になっている事から「執行部の作文」というのが容易に想像できる(でも執行部じゃないから鉄砲玉としてちょっとチャレンジングな発言をさせることも出来るのが審議委員の良い面)上に、黒田さんの今般の講演も説明そのものは単体の話として筋が通っているのですが、これまでの政策運営での説明とか理論とかからしたら話の筋が全然とおっていない。

つまり、この一連の講演ってのは黒田日銀執行部が今まで行っていた政策では2%物価上昇目標は早期には行かない、ということで、2013年に大口叩いて投下した政策は、目標達成対比でみた場合は残念ながら成功しなかった(なお消費税ガーとか原油ガーとかいうのは見苦しい言い訳であって、「一時的変動を除いた一般物価は金融政策によって決まるもの」というのは黒田日銀の当初からの説明だったので、その言い訳は自己否定になるのです)、ということを認めている(失敗というと「いやデフレじゃなくなった」とか「これをやらなかったらデフレマインドが変わらなかった」とか言い出すので敢えて失敗とは言わないでおく)、というのがこのシリーズだと思うのです。



○とはいえ仮に今不発降参宣言しても別に債券市場が何か変わるのかというと変わらんのが悲しい

まあ何ですな、実質的には不成功を認めている、というかゴメンナサイ宣言、というかであるのが今回の講演2発という事で良いと思うのですが(なお金曜日も申しあげたとおり、「不成功だ不成功だ責任取れ」とか文句を言うとブチ切れしてまーた変なことをしだす可能性があるので扱いには注意が必要だが、とりあえず岩田規久男は勘弁ならん)、実はここで「2年で2%は土台無理がありましたテペヘロ」とか言われましても、これがまた債券市場に何か結構な話になるかというと多分ならないというのが絶望感が高い。

つまりですな、「早期達成が無理」「インフレ期待のシフトアップが無理」というお話になりますと、そこから導き出される結論は「じゃあ緩和的な金融政策を思いっきり長期間実施するしかありませんねえどうせ物価がそう簡単に上がらないんだし」という事になりますので、つまりは現状の長期固定化になってしまう訳ですし、オペレーショナルな面で考えれば今の政策枠組みは持たせようとすると(物価が上がらないのならば)結構な時間を持たせられる政策になるのよね。

ただまあこんなの長期化確定とかになると、マイナス金利部分でただでなくさえ面倒なのに、時間軸効果まで効いてきた日には生保年金運用などの面も含めた広い意味での金融システムに対して悪影響だし、金利市場がすっかり死んでしまった後に外的ショックに市場が耐えられるのかという問題もあるし、まー副作用てんこ盛りになりますから、それを長期間継続できるか、ってのはまた別問題として存在しますし、だいたいそんな事になったらこっちの飯のタネいやまあそれは別問題ですけど、まー苦しいという話は変わらん訳です。

これが物価が何となく上がってCPIが1%台前半まで来ている中でしたら物凄い明るい(債券市場の中の人的に)未来の話になってくるのですけれども、CPIが1%届くのもキツーというようなのが続いてその後もアカンガナというような状況ですと、政策が不成功でしたねーで債券市場に何か変化が起きるのか、と言えば達観すれば本質的な部分は変わらないのだろうなーと思うのでした。

と、月曜火曜更新してなかった(ネット接続環境の構築し直しで失敗しまくっていたのですスキルが無くてすいませんすいません)ので悪態成分が高かったような気もしますがまあそういう事で。











2017/05/26

お題「FOMC議事要旨ネタのバランスシートの部分(汗)/櫻井さんの金懇である」

あらまあ。
http://jp.reuters.com/article/britain-security-manchester-may-trump-idJPKBN18L23N
World | 2017年 05月 26日 00:16 JST
自爆攻撃捜査情報漏れ、メイ氏がトランプ氏に不満表明へ

今日は講演ネタとかばっかですけど短国入札ネタをちょっとだけ。

・3M短国入札(メモ)

昨日の短国3M。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170525.htm

(3)募入最低価格 100円02銭9厘5毛(募入最高利回り)(-0.1182%)
(4)募入最低価格における案分比率 93.6292%
(5)募入平均価格 100円03銭0厘1毛(募入平均利回り)(-0.1206%)

となっていまして、先週の3Mが▲12.87bp/▲12.43bpとなっていましたので、入札はちと先週よりも甘くなりましたけれども、引けは▲12.9bpレベルになっていましたので、まあ大体この辺りからは抵抗する感じなんでしょうかね。とは言え最終的には短国買入でどういう動きになるのか次第なのですが。


○FOMC議事要旨ネタの続き(汗)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170503.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 2-3, 2017

・バランスシートに関する議論がありましたな(汗)

昨日は寝起きインスタント読みをしていた訳ですが、最後の所にバランスシートに関する話があったのを華麗に飛ばしてしまっておりましたので(超大汗)そちらをば。最後の最後にある『System Open Market Account Reinvestment Policy』です。

『Participants continued their discussion of issues related to potential changes to the Committee's policy of reinvesting principal payments from securities held in the SOMA.』

というのがありましたな。

『The staff provided a briefing that summarized a possible operational approach to reducing the System's securities holdings in a gradual and predictable manner.』

スタッフからの報告が既に「a gradual and predictable manner」でのバランスシート縮小という話をしている訳で、ドンドンバランスを縮小しようという話にはならないというのはご案内の通り。

『Under the proposed approach, the Committee would announce a set of gradually increasing caps, or limits, on the dollar amounts of Treasury and agency securities that would be allowed to run off each month, and only the amounts of securities repayments that exceeded the caps would be reinvested each month.』

『As the caps increased, reinvestments would decline, and the monthly reductions in the Federal Reserve's securities holdings would become larger. The caps would initially be set at low levels and then be raised every three months, over a set period of time, to their fully phased-in levels. The final values of the caps would then be maintained until the size of the balance sheet was normalized.』

エライ細かい話をしているようですが、バランスシートのキャップをつけるみたいな形にして残高を徐々に減らして行きましょう的な戦術の話をしておりますから、まあバランスシートの縮小というのも相当具体的な所まで来てますよ、という事もアピールしたいのですかね。


『Nearly all policymakers expressed a favorable view of this general approach.』

ここなんですけど、メンバーでもパーティシパントでもなくて「policymakers」ってあるのが気になる。なんでそういう表現になるんじゃろ。

『Policymakers noted that preannouncing a schedule of gradually increasing caps to limit the amounts of securities that could run off in any given month was consistent with the Committee's intention to reduce the Federal Reserve's securities holdings in a gradual and predictable manner as stated in the Committee's Policy Normalization Principles and Plans.』

月次でバランスシートのキャップを徐々に大きく(というか小さくというか)していく、というのをアナウンスしてスケジュール通りに減らしていくんですけど、そのペースは非常にゆっくりとやって行きましょうというような感じのお話ですな。

『Limiting the magnitude of the monthly reductions in the Federal Reserve's securities holdings on an ongoing basis could help mitigate the risk of adverse effects on market functioning or outsized effects on interest rates. The approach would also likely be fairly straightforward to communicate. Moreover, under this approach, the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, once begun, could likely proceed without a need for the Committee to make adjustments as long as there was no material deterioration in the economic outlook.』

でもって色々とメリットがありますという認識を示しているようですが、基本的には縮小のペースを出したらそのまま淡々と減らしていき、余程の事が無い限りは縮小を継続するという事にして、事前アナウンス通りに行う事によって市場としては「事前予想通り」となるので混乱が起き難いでしょうというお話。

『Policymakers agreed that the Committee's Policy Normalization Principles and Plans should be augmented soon to provide additional details about the operational plan to reduce the Federal Reserve's securities holdings over time.』

今後「正常化の原則と計画」についてバランスシート縮小に関する部分を具体的な手段と共に議論して早めに示すということのようで。

『Nearly all policymakers indicated that as long as the economy and the path of the federal funds rate evolved as currently expected, it likely would be appropriate to begin reducing the Federal Reserve's securities holdings this year.』

「this year」であってlaterとかがついていないので、もしかしたら(6月利上げするとして)9月にバランスシート縮小開始して利上げは12月とかそういう変化もあるのかね、とは思いますが、政策金利の引き上げプロセスが開始されていますので、バランスシート縮小(というより全部再投資をするのを止めて徐々に買入フローが減る、となる筈)スキームが入っても、そんなに過激に来ない限りにおいては当初はそんなに影響でないようにも思える(個人の体感的カンです)のですけどね。

『Policymakers agreed to continue in June their discussion of plans for a change to the Committee's reinvestment policy.』

まあ6月もdiscussionが続くのですから6月にバランス縮小ということは無かろう。


ということで、もしかすると12月よりも前倒しでバランスシート縮小が始まるかも知れませんなというのが新たな情報で、あとはまあ予想通りではあるものの、買入に関しては利上げと違って「事前に先の所までアナウンスしておいて余程の経済ショックでも起きない限りそのペースを続けていく」という事になるようですな。


○櫻井審議委員の金懇は単に執行部説明と同じなのだがすっかり昔の話が無かった事になっているのが味わい深い

黒田総裁の金融コンファランスでの講演にツッコミを入れようとか思っていたら櫻井さんの金懇が出てくると思ったらバーナンキ講演まで日銀HPにアップされる、という連続ノック攻撃が来ておりまして、もっと分散して出してよ(無理だけど)と申し上げたくなる次第。

つーことで予定を変更して櫻井さんの金懇ネタを。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170525a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170525a1.pdf

・経済物価情勢に関しては執行部の説明から外に出るものではありません

たぶんアカデミック的な扱いで審議委員になっていると思いますし、マクロ経済に詳しい的な扱いなのではないかと思うのですが、それにしては経済物価情勢の説明が全部執行部の受け売りとなっておりまして、まさかとは思いますが単に執行部に賛成票を投じるだけの機能になってしまうのではないでしょうかと懸念される所ではあります。何が懸念って今のマイナス金利YCCとかケシカランから賛成マシンはケシカランというのも勿論ありますけれども、それよりも重要なのって何かと言えば、日銀の政策委員(特に執行部3名以外)の方々におかれましては、何らかの独自視点を持って金融政策決定に絡んで頂かないと執行部やりたい放題の幕僚暴走リスクが高まる訳でございまして、独自の視点とか主張とかが何もなくて執行部賛成だと執行部が変わった途端にいきなりやってる事が180度変わってしまうとか(「賛成」は同じですけど)になってしまうので勘弁して欲しい、という事なんですよね〜。

でもって最近よく執行部から出てくるのこの話なのでせっかくだから紹介。『国内経済』のケツの辺り。

『先行きの国内経済について、一部には、労働需給のタイト化により成長余地が限られるとの指摘もありますが、個人的にはそうした見方には必ずしも賛同しません。』

個人的には、と言ってますがこれ執行部もこういう見解ですからね。

『足もと、人手不足を理由に、不採算店舗の閉鎖や営業時間の短縮、サービスの受注抑制等の動きがみられています。こうした企業の取り組みは、成長を諦めるものではなく、労働力のより効率的な活用を目指すものだと思います。また一部には、セルフレジの導入など、効率化や省力化を企図した投資に踏み切る動きもみられています。労働需給のタイト化を契機に、こうした企業の生産性向上に向けた取り組みが促されることは、むしろ長い目でみれば経済成長にとって望ましいことのようにも思われます。』

『歴史的にみても、労働力の問題は経済成長を考えるうえで致命的とまではいえません。過去の経済成長において労働力の増加は主たる要因ではなく、その大半は生産性の向上で説明されます。また、生産性の向上を通じた持続的な賃金の上昇は、家計の前向きな支出行動を促すことで、安定した物価上昇にもつながり得るものだと思います。この点、金融政策運営の観点からも、こうした企業の取り組みを前向きに捉えています。』

という主張で、これはこれで仰せの事はその通りなのですが、問題なのは労働需給のタイト化が賃金上昇に繋がっていないことであって、本来は労働需給がタイト化していたら拡大のためには賃金をホイホイ上げるのにそうならないのはなぜですか、という方の話(まあ先の所にそのネタあります)で、それが物価が中々上がりにくい事にも繋がる、という事なんですよね。

でまあ執行部の説明とあんまり変わらない櫻井さんの説明ですけれども、この先の物価の辺りでそういうネタも出てくるのですが、物価が上がらない方ではこの背景についての言及があるのですけれども、上記部分での説明では話を単純化して反論みたいな感じになっていまして、何ちゅうかこう黒田日銀の特徴ではあるのですが、「パーツパーツで言ってる事は仰せのとおりなのだが、前言っていた話との整合性が取れないとか、全体でみた場合に整合性が取れない」というのが仕様になっていまして、それでは想定問答としては問題なく推移できますが、肝心の政策の方が部分最適とその場の最適対応の積み上げになってしまえばそら全体として効くのかよという話になりますな、と思うのよね。


・物価に関してだが「期待に直接働きかける政策」とは何だったのか

『物価情勢』に参ります。

『需給ギャップや企業収益の改善との対比では、このところの物価や賃金の伸びはやや物足りない印象があります。背景として様々な要因が考えられますが、やはり過去数十年にわたり物価上昇率がごく低位に安定していた日本においては、人々が毎年ある程度物価が上昇していくという状態をイメージし難いことがあるように思います。』

・・・・・( ゚д゚)

まあ最近すっかり「適合的な期待形成」という話になってしまいましたが、リフレ派審議委員の筈の櫻井さんがこれを言ってしまっちゃあおしマイケルなのであって、しつこく再掲しますが、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
の7枚目のスライドに「2%インフレ目標コミットメント」+「マネタリーベース増加」⇒「予想インフレ率上昇」

と大口叩いて政策打ち込んで変な買入バンバンやって債券市場は死ぬわ短期市場はマイナス金利にするわETFは何かもう収拾つくのかという状態になるわ、と4年もやった挙句に最初のリフレ理論が無かった事にされましてもすっかり焼け野原にされてしまった方としましては・・・・・・・・

いや別に焼け野原にされても物価目標も達成されて成長力のある経済に戻ってくれれば焼け野原からの復興モードになるのですけれども、焼いた挙句に「やっぱり違いますかねえテペヘロ」とか言って更に焼きにこられましても困るんですがそれは。

『最近、一部のサービス業等の値上げのニュースが、新聞やテレビで大々的に報道されています。こうした反応をみると、日本では、依然として値上げはどちらかと言えば例外的なことであり、当然のこととして受け入れるような状況にはないことを実感します。また、日本経済の潜在的な成長力等にかかる不安が、家計の節約志向や企業の慎重な賃金設定スタンスを強めている側面もあるように思います。この点については後述します。』

ってそれQQEやる前から言われていて、それをリフレ政策QQEのマネタリーベース攻撃で打破できると大口叩いて導入した訳なので、今になって「実感します」とか「側面もあるように思います」とか自分たちが見つけたかのような言い方をしてもお前は何を言ってるんだとゆーお話。

・・・・・・・とまあこちとら焼け野原ペンペン草状態ですからお前は何を言ってるんだと悪態をついていますが、こうやってQQE導入当時の話が「なかったこと」になっていく、という説明がおっぱじまっているというのは、まあ大風呂敷をどうやって畳むか、という点についてさすがに考えないとまずかろうという認識になってきている、という点ではちったあマシな事になるかね、という期待を持たせてくれる(希望的観測というか妄想のような気もするけど)ところではありますので、大人の皆さんはこういう時に「成長力の強化が必要とかそれ白川日銀時代に散々言ってた話を今更言うとかナンジャソラ」とか悪態をつかず、「いやーまったくそうですねー成長期待の強化が必要ですよねー(棒読み)」と支援するという態度も必要かもしれませんね!!!!!!



・金融政策の説明パートで更に驚愕の説明が

今回の櫻井さんの金懇の白眉の部分は金融政策のパートだと思います。まあ政策の説明は思いっきり普通(=執行部説明通り)なのですが、この部分はさすがに椅子から落ちそうになりました。


『「イールドカーブ・コントロール」の導入により、金融仲介機能への影響等にも配意したより柔軟な政策運営が可能となり、政策の持続性も高まったように思います。』

それはそうです(ただしETFは除く)。

『また、副次的な効果として、政策の効果がより理解されやすくなったと考えています。』

・・・・・・・・??

『マネタリーベースを操作目標としていた以前の政策は、同様に金利を押し下げる効果を持ちますが、市場関係者以外には馴染みが薄かったのではないでしょうか。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

さてここで2013年4月4日の公表文を見てみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf

『(1)「量的・質的金融緩和」の導入

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(注1)。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。
』(上記URL2013年4月4日の金融政策決定会合公表文書より)


でもってこの時って「マネタリーベース2倍」「長国保有額2倍」「ETF保有額2倍」「長国買入平均残存期間2倍」とかいうようなフリップを登場さてニバーイニバーイとかやっていたと思いっきり記憶しておりますし、この「2年で2%で2倍」というの物凄い勢いで宣伝していたのですよね。

・・・・・・・ところが今となっては「市場関係者以外には馴染みが薄かったのではないでしょうか」とか物凄い豹変ぶりで、奈良の大仏が立ちあがって走り出すレベルのお話に、金融政策のインチキ説明を延々と見続けておりました不肖このアタクシもさすがに驚きを禁じえません。


『直接、長期金利の操作目標を示す「イールドカーブ・コントロール」の方が、幅広い経済主体に対して、緩和的な金融環境を強くアピールできると思います。』

・・・・・・・ということは「期待に直接働きかける従来の政策とは違うアプローチ」として実施したQQE政策は全くの茶番だった、という説明になってしまうのですがそれでいいのかリフレ派櫻井さん。

『この点、米国の大統領選挙以降、世界的に長期金利が上昇する局面において、日本の長期金利が目標水準にしっかりと維持されたことは、わが国の金融政策の効果を印象付ける良いきっかけになったと考えています。』

というのはもはやどうでも良く、その前の所でお腹いっぱいなのですが、いやもう何だよこの説明って感じで、これを櫻井さんそのまま素で言ってるんだったらリフレ派って何なのという話ですし、まあ執行部が色々と入れ知恵をしているんだったら、昔の事は無かった事にするという攻撃が徐々に目立ってきた、というか黒歴史を封印モードに向かって進んでいる、というかそういう流れが見えてきた、ともいえるかも知れません。


なおこの先の部分もあるのですが時間の関係でパス(後でやります)。


○事務連絡(更新が渋滞するかもというお知らせ)

えーっとすいません、アタクシのインターネット接続環境とかの見直しを今行っておりまして、週末に色々と接続環境をいじる予定にしております。でまあ大体良くある話で週末にうまくそれがコンプリートしてくれない場合がありますので、その場合ネット接続環境がうまく切り替えられるまで(まあ掛かって数日だと思いますけど何せスキルないもんで)更新が止まるかも知れませんが宜しくお願い致します。




2017/05/25

お題「5月FOMC議事要旨を寝起きで鑑賞」

お、おぅ・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170525/k10010993941000.html
温暖化で都心の気温は今世紀末に屋久島並みに 気象庁
5月25日 4時17分

こういう長い期間の予測は置き次第で色々出せそうな気がするんですけどね。

○5年130回のSLFが2ケタ億円と(ただのメモ)

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170524.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)97 97 -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(96億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

昨日はレートの方が▲60じゃなくて▲50でしたが2ケタ億に減りましたかそうですかという所で良かったですなあと思いながら物国いや何でもないです。

というのは兎も角として寝起きでFOMC議事要旨から少々。なお黒田総裁の講演も中々ツッコミどころがあるのですが議事要旨ネタ優先で参ります(汗)。


○5月FOMC議事要旨:これインスタント読みの方法によって印象が微妙に異なるのかも

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170503.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170503.pdf

とは言え毎度のインスタント読みなので精読したらまた追加しますけど(大汗)。

インスタント読み攻撃ですが、例によって『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツから前に戻って読むのですが、逆順に読むとさすがにちょっと纏めにくくなるのでそこは途中から読んだ形で(^^)。

つーことでこの小見出しの中盤(10パラグラフ目)から参ります。その前は経済物価情勢に関して需要項目別にああでもないこうでもないという話があるのですが、その結論からその後が政策に関する話(途中に金融市場の話が入る)という構成でござる。


・先行きの物価に関して

『In light of these developments, participants generally continued to expect that inflation would stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium run as the effects of transitory factors waned and conditions in the labor market and the overall economy improved further.』

「these developments」ってのはその前までの需要項目別のお話ですが、この辺りは普通に声明文などで出ている話と同じ事になっている。

『Participants noted that import prices had begun to increase, supporting their expectation that inflation would gradually rise.』

輸入物価が上がってきているので物価が徐々に上昇するという見通しにサポートとな。

『A few participants, however, expressed uncertainty about the reasons for the recent unexpected weakness in inflation measures and about its implications for the inflation outlook.』

一方で足元の物価推移が思いのほか弱いので先行き物価見通しに対する不確実性というのを指摘するのが数名(A few)いるようで。


・金融市場に関してとか金融安定に関して

『In their discussion of recent developments in financial markets, some participants commented on changes in financial conditions in the wake of the Committee's decision to increase the target range for the federal funds rate in March.』

3月利上げ以降の金融市場動向に関しての指摘が数名(some)からと。

『They noted variously that the decline in longer-term interest rates and the modest depreciation of the dollar over the intermeeting period would provide some stimulus to aggregate demand, that the Committee's recent policy actions had not resulted in a tightening of financial conditions, or that some of the decline in longer-term yields reflected investors' perceptions of diminished odds of significant fiscal stimulus and an increase in some geopolitical and foreign political risks.』

長期金利も下がったしドルも弱含みましたので利上げ以降の金融環境はそれほど引き締め的にならなかったというか寧ろ刺激的になったけれども、この背景には海外リスクの低下や米国財政支出が思ったほど盛大に出ないのではないかという市場の見方を反映している、ということだそうで。

『With regard to financial stability, several participants emphasized that higher requirements for capital and liquidity in the banking system and other prudential standards had contributed to increased resilience in the financial system since the financial crisis. 』

金融機関への資本賦課が引き上げられたことは金融システム安定に繋がっている、という指摘が何故か入っているの巻。

『However, they expressed concerns that a possible easing of regulatory standards could increase risks to financial stability. In addition, it was noted that real estate values were elevated in some sectors of the CRE market, that a sharp decline in such valuations could pose risks to financial stability, and that potential reforms in the housing finance sector could have implications for such valuations.』

でその後にバブル警戒的な金融不均衡の指摘が入って来るのですが、今回はこの金融市場とかの話の部分で利回り追求のうごきによってどうのこうの的な指摘の成分がちょっとマイルドになっているなあという感じを受けまして、もちろん不動産価格上昇によるバブル崩壊リスクは指摘しているのですが、そこまで金融不均衡を強調している感じがしない。


・利上げに関してはやる気満々っぽいし威勢の良い話である

ということでここから金融政策に関して。

『In their consideration of monetary policy, participants judged that it was appropriate to leave the target range for the federal funds rate unchanged at this meeting. Although the data on aggregate spending and inflation received over the intermeeting period were, on balance, weaker than participants expected, they generally saw the outlook for the economy and inflation as little changed and judged that a continued gradual removal of monetary policy accommodation remained appropriate.』

直近データはやや予想より弱かったものの、これは別に経済物価見通しに対して変更を加えるものではなくて、今後の緩やかな金融緩和程度の縮小(と言っていて引き締めではない)が適切であるというのも変える必要が無いと概ね合意、ということですからまあ普通に6月に利上げしますと言ってるようなもん。

『A couple of participants indicated that increasing the target range for the federal funds rate at the current meeting would be warranted by their economic outlook, but they also noted that maintaining the current stance of policy for now would be consistent with the Committee's gradual approach or that the Committee's recent communications had not pointed to an increase at this meeting.』

membersではなくてparticipantsなのですが、2名の参加者は今回利上げするのも有りとか言い出しているのが力強くて、とは言えこの人たちも別にバンバン利上げしろと言っている訳ではなくて、グラデュアルに利上げするという路線は同じだし、その点で言えばここまで今回利上げするみたいなコミュニケーションになっていないので別にまあ今回上げなくてもエエンチャウのという感じの説明をしているのですけど、そんなに威勢の良い人もいる。

『Most participants judged that if economic information came in about in line with their expectations, it would soon be appropriate for the Committee to take another step in removing some policy accommodation.』

どう見てもこれは6月に利上げしますと言ってるようにしか読めません。

『A number of participants pointed out that clarification of prospective fiscal and other policy changes would remove one source of uncertainty for the economic outlook.』

何人か(A number of)の参加者は財政政策の内容が見えてくれば不確実性が下がると言ってまして、これは普通に読むとトランプ財政出たら更にアップサイドに見通しを変えますといっている話。

『Participants generally agreed that the current stance of monetary policy remained accommodative, supporting some additional strengthening in labor market conditions and a sustained return
to 2 percent inflation.』

今のスタンスは緩和的というのはいつも通りの話。


・先行きの物価、インフレ期待に関する一部弱気な指摘があるのですよねー

とまあそういうことで、こういう読み方をすると6月利上げしますぜグハハハハという上記部分の印象が強いので割と威勢が良さそうにも見えるのですが、この部分の最終パラグラフは何か威勢が宜しくない内容となっておりまして、アタクシの場合はインスタント読みはまず最初にここのケツ(つまり『Committee Policy Action』という小見出しを探してその手前から読みだす)から読み出しますので、最初にこれを読んでしまって「ありゃりゃ」と思ったので、もうちょっと金融市場が反応してるかなと思ったら金利下がっているには下がっていますがまあそれほど派手に下がっている訳でもない(株はしっかりみたいですけど)のでほーと思った(確かに6月無いかも的な考えの方もあったので差引チャラみたいなところはあると思う)です。

というパラグラフの鑑賞に参ります。

『Participants generally reiterated their support for a continued gradual approach to raising the federal funds rate.』

つーことで概ねの所では徐々に利上げしていくのが適切的なお話になっているのですけど・・・・・・・・・

『Some participants noted that core PCE price inflation had been running below the Committee's objective for overall inflation for the past eight years and that it was important to return inflation to 2 percent, or that the public's longer-term inflation expectations may have fallen somewhat, and that a gradual approach to tightening could help return expectations and inflation to 2 percent.』

数名(Some)の指摘は「物価が2%割って推移すること8年という状態なので、まずは2%にヒットする事が大事だし、インフレ期待が若干下がっている可能性もあるのだから、グラデュアルな利上げを行うのが2%への回帰に重要である」ということでして、これは「緩和の縮小は慎重にすべきで物価推移に注意すべし」ってんですから、慎重トーンに読めますがどうでしょうかねえ(なおこういう人たちは物価がホイホイ上がりだすと急にタカ転するのでそこは注意が必要というのは念のため付け加えておきます)。

『One participant cited results of a District survey of businesses indicating that more than one-third of respondents saw the Federal Reserve as more likely to accept inflation below its 2 percent objective than above; that participant interpreted the survey results as suggesting that the Committee's communications about the symmetry of its inflation objective had not completely taken hold, a concern also mentioned by a couple of other participants.』

ここのところも面白くて、どこぞの地区連銀総裁がてめえの所でやってる企業向けサーベイの結果として、FEDは2%の物価目標に対して上ブレは容認していないけど下振れは容認しているように見えるという回答が1/3もあったという指摘をしていて、それはインフレ期待の2%アンカーに対してどうなのよという話をしたら、おおそうじゃそうじゃというのが2名いるという事案が発生した、と記載されているのですな。

『Another participant observed that a gradual approach was appropriate because the neutral rate of interest had declined and considerable uncertainty prevailed about its longer-run level.』

均衡中立金利が下がっているのですからグラデュアルなアプローチが重要と他の人も言い出す。

『Several participants, however, pointed to conditions under which the Committee might need to consider a somewhat more rapid removal of monetary accommodation--for instance, if the unemployment rate fell appreciably further than currently projected, if wages increased more rapidly than expected, or if highly stimulative fiscal policy changes were to be enacted.』

と、威勢の悪い話の後に数名(Several)の参加者は経済物価情勢がより好転したり、財政がバンバン出るという話になったらジャンジャン利上げすべしという威勢の良いのが出ますが・・・・・・・

『In contrast, a couple of others judged that the Committee could withdraw monetary accommodation even more gradually than reflected in the medians of forecasts in the March Summary of Economic Projections, noting that slack might remain in the labor market or that inflation was not very sensitive to declines in the unemployment rate below its estimated longer-run normal level.』

他の2名は労働市場のスラックが実際はまだ残っていて(自然失業率が低下しているので)、SEPで示される中心よりもゆっくりの利上げが望ましいのではないかという指摘をしている、というのでここのコーナーが締まっていて、最後のパラグラフは先行きの利上げペースやインフレ期待について威勢が宜しくないののオンパレードっぽい書き方になっているなあ、と思ったのですけれどもいかがでしょうかね。


#ということで寝起き版で恐縮ですがこんなところで




2017/05/24

お題「ダラス連銀カプラン総裁の講演(エッセイ)を鑑賞の巻」

ほれほれこういう話が出てくるようになってくるわな。
http://jp.reuters.com/article/byron-wien-interview-idJPKBN18J19J
Business | 2017年 05月 23日 19:09 JST
トランプ米大統領、辞任なら市場好感も=米著名投資家ウィーン氏

○うーん動かん

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1IP2BN
Markets | 2017年 05月 23日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発で引け、長期金利は横ばいの0.045%

『<15:10> 国債先物が反発で引け、長期金利は横ばいの0.045%

国債先物中心限月6月限は前日比4銭高の150円59銭と反発して引けた。目先の手掛かり難から、朝方から方向感に乏しい展開。前日の米債安を受けて売りが先行する場面があったが、あすの日銀オペに対する期待などから下値にはしっかりと買いが入った。流動性供給(対象:残存5年超15.5年以下)の入札は、ショートカバー需要などを背景に順調な結果となったが、買い進む動きは見られず、上値も限られた。

現物市場は底堅い展開。プラス金利が確保されている超長期ゾーンに国内勢の買いが観測され、イールドカーブはフラット化した。10年最長期国債利回り(長期金利)は同横ばいの0.045%。』(上記URL先より)

・・・・・・・・ということで段々後講釈も書くことなくなるの巻という感じで甚だ遺憾の極みなのですけれども、そらまあ国内は目先物価上昇にモメンタムつく感じじゃないとなると政策動きようがないし、米国はとりあえずFEDは2回は利上げしたがっている中でそれを全否定するほどのネタが出る訳ではないですし、何か全般的に膠着しているのでまあ仕方ないんですけど。

でもってこういうこう着相場になるとYCCの枠組みって便利で、まあこういう感じで何だかこう動くネタは無いのだけど、という時には80兆円買入バンバンやりまっせという量的大拡大目標をやっているとドンドン需給が締め上げられて大変な事になっていたでしょうが(いやまあ今でも大概に大変ですけど)、とりあえず政策を長持ちさせるという事を考えると量にコミットしなければ、量の拡大ペースを減らして持たせていきましょうという攻撃が出来ますから、長持ちはしますよね(なおETFェ・・・・・・という話は別問題)となります。

#まあ政策を長持ちさせるというのは「早期達成」と矛盾するんですけど

つーことで、物価目標達成という面では全くいただけないものの、政策枠組みは長持ちするので時間だけは思いっきり稼げているというのが今の状態で、マネタリーベース直線一気理論とか、国債大量に買うとインフレ期待が上がるとか、2年で達成するとか、結局の所これだけの政策をやってみて初めて当初の理論が現実に達成するのには色々な壁があったというのが明らかになって、まあそうは言っても最初に大風呂敷広げまくって大口叩きまくった手前「間違いでしたすいません」とも言えず(何らかの効果があったという話にしてしまう)こっそりと風呂敷を畳みだしている感はありますな。

#とは言ってもだから緩和が止まってくれる訳でもなく却って長期化懸念なので頭が痛いのですが


あとおまけですけど。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170523.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)108 108 -0.600 -0.600

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(107億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

ということで5年130回ですけれどもこの前191億円まで減っていたので、昨日はもう一段減っていましてもうすぐ2ケタですか良かったですね、と思うのですが、物国16回の1億円がずーっと気にかかってしまうこのアタクシ。


○カプラン総裁の講演(実際は講演じゃなくて書き物みたい)である

他の連銀総裁の講演もここもと打ち込まれているのですが、

シカゴ連銀エバンス総裁
https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2017/05-23-toward-a-more-resilient-financial-system-shanghai
Toward a More Resilient Financial System

ブレイナード理事
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20170522a.htm
Why Opportunity and Inclusion Matter to America’s Economic Strength

フィラデルフィア連銀ハーカー総裁
https://www.philadelphiafed.org/publications/speeches/harker/2017/05-22-17-the-healing-power-of-hope
The Healing Power of Hope

とか利上げがどうのこうのという話になっていないのでネタにならず(金融システム云々は若干ネタにした方が良いのかも知れませんけど)ということで、ダラス連銀カプラン総裁から出てきたネタが金融政策ネタだったので鑑賞の巻。

https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170522.aspx

Essay by President Robert S. Kaplan
Assessment of Current Economic Conditions and Implications for Monetary Policy

『The purpose of this essay is to provide a synopsis of my current views regarding economic conditions in the U.S. and globally, and my thoughts regarding the appropriate stance of U.S. monetary policy.』

ということですが、ダラス連銀総裁なだけに最初がエネルギーの話でその次に地区の経済の話をしているのですけれども、そこはパスして米国経済の所からボチボチ鑑賞の巻。


・結構微妙なネタにさらっと突撃している感があるのですが

『The U.S.』って小見出しの所ですが、

『GDP in the U.S. is estimated to have grown at a 0.7 percent rate in the first quarter of 2017. This disappointing level of growth was due to weak growth in consumer spending as well as a significant inventory deceleration.』

1Qの成長鈍化は消費の弱さと在庫の減少によるものだそうで、

『Despite this poor start to the year, our Dallas Fed economists expect GDP growth of approximately 2.25 percent in 2017. The key underpinning of our forecast is our expectation of a strong U.S. consumer. The U.S. consumer has spent the past nine years deleveraging from record levels of debt to GDP and is today in relatively good financial shape and, as a result, has capacity to spend.』

1Qの減速は一時的で、今年は2.25%成長になるでしょうということで、そのキーは消費が堅調に推移する事であって、家計のレバレッジ解消が進んでいるので金融ポジションが強くなっており、消費の余地があることをポイントにしています。

『In addition to a strong consumer, we also expect GDP growth in 2017 to be bolstered by some improvement in the level of nonresidential fixed business investment. We expect that our estimate of GDP growth, while sluggish by historical standards, will be sufficient to remove remaining slack from the labor market.』

住宅以外の固定資産投資、労働市場のスラック解消も成長に寄与する、とここまではまあ経済の見方は強いという話ですなあという所ですけど、

『Potential changes in fiscal policy and structural reforms have the potential to provide upside to this forecast.』

ここまでは景気が良い話なのだが、

『However, I am also closely monitoring the potential negative effects of policies that could reduce the affordability of and access to health care, and policies that could negatively influence the spending habits of immigrants who reside in the U.S.』

ってしれっとオバマケア見直しと移民政策の動向に関しての話(経済に対してマイナスの影響ときたもんだ)を投下してくるのがお洒落。

『Policy uncertainty in these key areas and the rhetoric associated with the public debate regarding these potential policies bear watching as our economists assess the propensity of consumers to spend versus save.』

つーことでこらまた直近政治ネタに直球で触ってくるとは、と思いましたですよ、はい。


・労働者のスキル向上が必要でそこが弱いと成長力も高まらない、という話

『Unemployment』というのが次の小見出しなのですが、特段変な話はしておりませんし、最初のあたりで『As we move forward, I would not be surprised if the average rate of job growth slowed somewhat, consistent with a declining level of labor slack in the economy.』とか言ってますのでNFPが少々減速しても気にしないというお立場。

雇用者とかの話の次が『Tackling the Skills Gap in the U.S.』となっていまして、

『When we look at measures of discouraged workers and those who are working part time for economic reasons, I would note the high correlation between participation rates (as well as unemployment rates) and levels of educational attainment.』

労働参加率と労働者のスキルのレベルとの関係に注目とな。

『The labor force participation rate for prime-age workers is approximately 88 percent for college graduates and 81 percent for those who have attended some college. However, prime-age worker participation is only 76 percent for those with a high school diploma and only 66 percent for those who have less than a high school diploma.』

この辺は現状のデータの話。

『Our economists at the Dallas Fed believe that the skills gap in the U.S. is substantial.』

雇用者の頭数とかの話ではなくてスキルの話となるとギャップが大きなものがあると考えるそうな。

『The National Federation of Independent Business reports that as of April 2017, 48 percent of small businesses indicated that they were unable to find qualified applicants to fill job openings. CEOs report difficulty in hiring workers for middle-class-wage jobs such as nurses, construction workers, truck drivers, oilfield workers, automotive technicians, industrial technicians, heavy equipment operators, computer network support specialists, web developers and insurance specialists.』

『When these types of jobs go unfilled, U.S. businesses expand more slowly and the nation’s growth is impeded.』

ということで特殊技能とかが必要な職種で必要なスキルを持った労働者を探しにくいというような状況にはあって、こういう高技能高生産性的な職種が埋まらんというのは成長力を弱めてしまうって指摘。

『This is why I have been regularly talking about the need for the U.S. to do much more to beef up public/private partnerships that focus on skills training in order to help workers attain the skills needed to find employment in the 21st-century economy.』

『We also need to invest in programs that improve early-childhood literacy and generally enhance the level of educational attainment among our younger population.』

『Both of these types of initiatives have the added benefit of helping to potentially reduce income inequality by creating broader workforce productivity gains and prosperity.』

だからスキル向上に職業訓練とか教育とかやって行きましょう、とわざわざこういうコーナーを設けて説明しているのはそこに拘りがあるんでしょうなあというお話でした。


・物価については基本順調の認識だが慎重な部分もある

『Inflation』という本命ネタに到着(^^)。

『Progress toward reaching our 2 percent inflation objective has been slow over the past several years. I believe this has likely been due to a rising dollar and weaker energy prices, as well as a number of persistent secular forces, such as globalization and technology-enabled disruption (see “Broader Secular Trends” below).』

これまで物価の伸びが弱かったのはエネルギーとかドル高とかもあるけれども、構造的な要因もありますよ、だそうです。

『Twelve-month measures of headline and core inflation fell in March. Inflation readings, to date, for April show further weakness. While I believe that these recent readings are likely not indicative of a weakening trend, I intend to be patient and open minded in assessing upcoming data releases in this regard.』

という背景もあるから、とは言ってませんけれども、まあこの部分の前にそういうマクラ置いているんですから、足元の物価の伸びが弱めになっている件に関しても、トレンド変化とは考えていないものの、先行きのデータを慎重に見ていく必要がある、という話をしているのでやや威勢が宜しくない。

『In order to analyze inflation trends, our economists look at headline inflation but also track several measures of core inflation. In particular, Dallas Fed economists closely monitor our Dallas Fed Trimmed Mean PCE inflation rate (see chart below). This measure trims out the most extreme upward and downward monthly price movements and, our economists believe, represents a more reliable indicator of the trend of inflation.』

トレンドを見るのには幾つかの指標もみる必要があるがそこで我らがダラス連銀の刈込平均ですよ、と来ました(推移のグラフは最初のリンクの所で見れますよ)。

『This measure gradually increased from 1.7 to 1.8 percent through most of 2016 and ran at approximately 1.6 percent in 2015. Through March, it is running at approximately 1.8 percent on a 12-month basis after having touched 1.9 percent in January and February.』

順調順調。

『The gradual upward trend of this measure has given me confidence that, as slack continues to be removed from the labor market, headline inflation should reach, or exceed, the Fed’s 2 percent longer-run objective in the medium term. I will be closely watching this measure in the months ahead in order to confirm that we are continuing to make progress in reaching our inflation objective.』

とありまして、刈込平均で見たトレンド自体は順調という話をしていて、そちらの方は「The gradual upward trend of this measure has given me confidence」と威勢の良い話をしています。


・長期的なトレンドに関しては経済成長力を下げやすい話を4点中2点で指摘ですな

次が『Non-U.S.』ですが、こちらは色々と不確定要素があるという話をしていて、EM特に中国の動向も注意、とあるのですがそこはパスしまして、次の『Broader Secular Trends』をば。

『In addition to monitoring cyclical trends, my economic research team carefully considers and works to understand several key secular drivers. As I have emphasized over the past year, these drivers are likely having a powerful influence on unfolding economic conditions.』

『I have particularly focused on four key secular drivers:』

ということで長期的な経済のトレンドに関して4点。

『Aging-workforce demographics in the U.S. and across major economies. As discussed earlier, aging-population trends, on balance, reduce labor force participation rates and ultimately create headwinds for potential GDP growth. These demographic trends are also likely to impact the “dependency ratio”[8]-that is, they are likely to lead to a situation in which an increasing share of the population is depending on those of working age to pay for future medical and retirement benefits. These trends are likely to exacerbate the issues regarding the sustainability of U.S. government fiscal obligations (discussed further below).』

ああだこうだ書いているが要するに人口動態が成長力を下げるという話が最初。

『Limits to the sustainability of the so-called global debt super cycle. Historically, the U.S. and other countries have used increasing debt-often through tax cuts and increased government spending-to boost economic growth. At this point, there are likely limits to the ability of countries, including the U.S., to further increase debt to GDP in order to generate higher levels of economic growth.』

『As I discussed earlier in this essay, we have seen a deleveraging of the U.S. household sector since 2008. This has likely created some headwinds for economic growth over the past several years. The good news is that the household sector is in much better shape today.』

『However, while household balance sheets have improved since the Great Recession, government debt held by the public stands at approximately 76 percent of GDP (see chart below), and the present value of future unfunded entitlements is now estimated at $46 trillion.[9] These obligations will increasingly work their way into U.S. budget deficits over the next five to 10 years-raising questions regarding fiscal sustainability which, if not addressed, could negatively impact longer-run economic growth.』

「global debt super cycle」と言われている話だそうですが、特に政府部門での債務拡大による(家計はデレバレッジが進んでいる)先行き成長力への制約とな。

『Globalization. Economies, financial markets and companies are more closely intertwined than ever before. For example, regarding trade, estimates indicate that approximately 40 percent of the content of U.S. imports from Mexico is of U.S. origin.[10] This is because much of this trade is related to integrated supply chains and logistical arrangements between U.S. and Mexican companies.』

『As mentioned earlier, it is our view at the Dallas Fed that these arrangements have helped improve U.S. competitiveness and created jobs in the U.S. Without these arrangements, these jobs might have otherwise been lost to other areas of the world, particularly Asia.』

『While trade and globalization have yielded net economic benefits for the U.S. economy, they have also created severe local hardships that the U.S. and other advanced economies have struggled to address. The challenge is how to reap the benefits of globalization while addressing the disruptions it creates-failing to do so is likely to have negative implications for trade and the pace of economic growth in the U.S. and globally.』

グローバル化の進展により対応が出来なくなる地域とかも出てくるので米国が負けないように対応していかないといけませんねという話なので良い悪いということではないですな。

『Technology-enabled disruption. In order to improve their competiveness, many companies are actively investing in technology, which is leading to a significant reduction in the number of workers needed to produce goods and services. The result is that U.S. workers across a range of industries are finding their jobs being eliminated.』

でもう少し記述があるのですが長くなるので飛ばしますが、テクノロジーの進展によって労働が代替されて賃金や物価に下方圧力が掛かりやすくなる、というのもあって、ともすればこれがグローバル化による賃金や物価の下方圧力と混同されやすいのでは、というお話をしています。


・と言いつつ結局3回利上げを支持しているのですが

ということで最後の『The Current Stance of Monetary Policy』である(手抜きの場合はここだけ読む訳ですが)。

『As I mentioned earlier in this essay, I believe that we are making good progress in accomplishing our dual-mandate objectives of full employment and price stability.』

は良いとしまして、

『 However, I am cognizant that progress toward our 2 percent inflation goal has been slow and, at times, uneven. I intend to be patient in critically assessing upcoming data to evaluate whether we are continuing to make progress in reaching our inflation objective.』

ということでして、さっきの物価の所でもありましたように、「I intend to be patient in critically assessing upcoming data to evaluate」ということでやや慎重スタンスのようです。

『I have consistently stated that I believe there is a cost to excessive accommodation in terms of limiting returns to savers, as well as creating distortions and imbalances in investing, hiring and other business decisions. Monetary policy accommodation is not costless. It has been my experience that significant imbalances are often easier to recognize in hindsight and can be very painful to address.』

カプラン総裁は直前はハーバードビジネススクール教授ですがその前はGSでして、金融政策の緩和長期化による金融不均衡に関しては警戒的なスタンスが強い、というのも仕様になっています。

『However, I also believe that the key secular drivers discussed earlier in this essay will continue to pose challenges for economic growth. As a result, my view is that the neutral rate, the rate at which we are neither accommodative nor restrictive, is likely to be much lower than we are historically accustomed.』

長期トレンドの面では慎重で中立金利は以前よりも低い所にあると。

『Based on these considerations, I have argued that future removals of accommodation should be done in a gradual and patient manner. In that regard, I continue to believe that three rate increases for 2017, including the March increase, is an appropriate baseline case for the near-term path of the federal funds rate.』

ということで結局結論としては年内3回(なので残り2回)が適切とな。

『“Gradual and patient” means to me that I need to be open to assessing incoming economic information in order to update my analysis regarding the appropriate stance of economic policy. I will avoid being rigid or unduly predetermined in my views. If I see information that suggests the economy is developing more slowly than I expect, then the pace of rate increases could be slower than my baseline path, and if economic growth is stronger than I expect, the pace of increases could be faster.』

3回とは言ってますがあくまでもデータディペンデントだそうな。まあこの辺は単に言っているだけという感じもするし、慎重に見たいと言っているようにも見えるし、読み方によって受け取り方が変わりそうな部分。

『In addition, as we make further progress in removing accommodation, I believe we should begin the process of gradually reducing the size of the Federal Reserve balance sheet. I think it will likely be appropriate to begin this process sometime later this year.』

バランスシート縮小着手も今年の終わりに、ということなので標準的なお話を結論にはしています。





2017/05/23

お題「市場雑談/4月ECB議事要旨という微妙な所からネタを拾ってみました」

このウゴカンチ相場orzorz

○めげずに市場雑メモ

・社債買入の落札金利がプラスとな

うむ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170522.htm
社債等買入 4,033 1,000 0.009 0.014 90.8

4月の社債買入のレートが0.0bp/▲0.9bpで3月が▲0.7bp/▲1.4bp、2月が▲8.2bp/▲10.0bpと来ての今月はプラス金利になって+1.4bp/+0.9bpということでして、何気に徐々に落札金利が上昇しているのですが、だからと言っても別にスプレッドが盛大に拡大しているとかそういう話ではなくて、単にオペの所にぶつけられる玉が多いので金利が上がりましたなあ的な話ではありますが。

つーかまあETFも大概にどうかと思いますが、社債にCPって無駄についているリスクプレミアムの縮小を狙って買入を行っている、という建付けの筈だし、今更マネタリーベース関係ないし、政策そのものはYCCになっている(そういや昨日の某モーサテで某タカ&トシ先生(仮称)は「国債の買入は実質的にテーパリングしているが量が目標ではないので問題ない(キリッ)」とかコメントしていたような記憶が)ので別にここで量をどうのこうのって知らんがなという感じですし、日銀の買入でマイナスのリスクプレミアムが発生するのであれば、それは本来の政策のあるべき論からみたらおかしいだろと思いだしたように申し上げるのですけどねえ。


・別にロイターさんのせいではないが時系列になると味わいがあります

毎度のロイターさんのこれですけど(回し者ではありません)ね。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1IO298
Markets | 2017年 05月 22日 15:13 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反落で引け、長期金利は0.045%に上昇

金曜は何か知らんが中期が途中で切り返して堅調モードになったのですが、昨日は輪番が若干滑ってちと弱かったという展開だったのですが・・・・・・・・

『<15:10> 国債先物が反落で引け、長期金利は0.045%に上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比8銭安の150円55銭と反落して引けた。前週末の米債市場がトランプ米政権の政策停滞懸念がくすぶる状況で、金利の上昇が抑えられたことから、朝方は底堅いスタートとなった。ただ、日経平均株価がしっかりと推移する中、中期対象の日銀買い入れが弱めの結果となったこともあり、午後にかけて軟化した。週明けで手掛かり材料に乏しく、全般に様子見ムードが広がった。現物市場は閑散。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1bp高い0.045%に上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

『<12:50> 国債先物は前場安値付近、日銀買い入れ結果は弱め

国債先物はこう着。中心限月6月限は午後、前営業日比4銭安の150円59銭と午前終値(150円60銭)を小幅下回って寄り付いた後、前場安値(150円58銭)付近で推移している。中期を対象にした日銀買い入れ結果が弱含みの内容となったことを受けて、売りが先行した。

市場では、「日銀買い入れ結果はやや弱かった。手掛かり難で、国債先物は前場安値付近で方向感に欠く動き。23日に流動性供給入札を控えていることも買い手控え要因」(証券)との声が出ている。』

『<08:54> 国債先物が横ばいスタート、模様眺め

国債先物中心限月6月限は前営業日比横ばいの150円63銭で寄り付いた。市場では「週明けということで模様眺めという感じだ。ただ、前週末の米債市場がトランプ米政権の政策停滞懸念がくすぶる状況で、金利の上昇が抑えられたほか、きょうは中期ゾーンを対象にした日銀の国債買い入れオペが予定されているため、底堅く推移しそうだ」(国内証券)とみている。』

いや別に晒しあげとかいうのではないのでそこはご理解頂きたい所ですが、まあ別に今に始まった訳ではないっちゃあ今に始まった訳ではないのですが、もう最近って相場のネタが後付講釈でも輪番と入札しか無くて、その輪番と入札は日程がガチガチに決まっているので本来は日程全部織り込んでしまうものなのに、「来週輪番が3発あるのを意識して堅調になりました」とかいう話しかしようが無くなっているという辺りになんちゅう状態じゃと残念無念な展開が延々と続いておりますな。

でまあそういう相場なので駄文の相場ネタもオペの細かい結果の話とかにならざるを得ないという状態で(涙)、これが「市場のエネルギーがドンドン溜まっている」というと格好が良いのですが、どうもこうそんな感じもしない(なお根拠はアタクシのただの勘なので間違っているかも知れませんけど)というのがこの市場のオソロシスな所ではあります。まあ日銀買入パワー恐るべしなのですが、これはストック効果なのか、フロー効果なのか良く分からんのですけど、何か研究するとどっちにしてもそれらしい結果が出せるんでしょうかね。

なおフローというのは、市場のドミナントプレーヤーとなっている日銀が、オペ日程全部公表する+オペをあまりいじってこない、のコンボをかましてくるので市場における一番大きなフローが全部予見可能になり、それ以外の参加者が別にそこに向かってくる訳でもなくボラが下がり、そもそもの金利水準が低い上にボラが無いと来ると日銀以外の参加者は益々取引不活発になってきて、予見可能な日銀のフローが益々市場で圧倒的になるのでそらもう動かんよ、となってしまう。とかそんな感じのイメージ。

日銀のスタンスがどう見ても変わりそうもない、という認識で、先行きなにかの変更でもあるとかいう感じでもあればそらまあ「予見可能」ではなくなるのでボラが出てくるのですけれども、何せ春先までだったらまだ物価が上がりそうな感じもあったし、米国金利もヒャッハーでしたから「この流れだと日銀ワンチャンあるかも知れない」と少しは思わせてくれる雰囲気はあったのですが、どうもここにきて賃金はパッとしないし、物価もパッとしないし米国はあの有様となって「こら政策変わりようがないわ」と「変化への期待」が見事に払しょくされてしまったのが大きいなあと思います。


という動かない愚痴でした。


○仕方がないので(違)ECB4月理事会議事要旨でも斜め読み

って先週出ていた奴で誠に申し訳ございません。

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2017/html/ecb.mg170518.en.html
Account of the monetary policy meeting

でまあこの議事要旨なんですけど、執行部(というか何というか)の報告パートと議論のパートで経済物価情勢の話とか基本被っている(最初のうちは超モロ被りでした)ので、そちらはどちらかを読んでおけば良くて、政策に関するところでもホイホイと読んでいると手抜き読みは何となく出来るような気がする(個人の感想です)のでオススメ。


でもって今回気にしたのは政策どうするとかコミュニケーションどうするのパートでして、前回3月のECB理事会の議事要旨と並べるとちょっと味わいがあるのでその辺りをサラサラと。

http://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2017/html/mg170406.en.html(3月議事要旨)

・コミュニケーションがどうのこうの(執行部編)

前半の『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options』のところですけれども、最後の『Monetary policy considerations and policy options』の部分から。

『As the evidence continued to indicate insufficient progress towards a durable and self-sustaining convergence of inflation towards the Governing Council’s medium-term aim, it was important for the time being to confirm the present monetary policy stance, including the forward guidance. Accordingly, it needed to be emphasised that the economic recovery was increasingly solid, that the risks to the growth outlook had further diminished, while being still tilted to the downside, and that underlying price pressures remained subdued and the inflation path conditional on the very substantial degree of monetary accommodation.』(4月議事要旨)

ということで、経済の話とかはその前に散々あるのですが、経済は良くなってきて、先行きのリスクもダウンサイド方向はだいぶ弱くなっているけど物価目標達成という意味ではまだまだ自律的に物価がホイホイ上がっていくというには不十分だし、リスクについてもそうは言ってもダウンサイドなので、引き続き今の政策方針を維持、みたいな話になっていまして、

『Finally, Mr Praet considered that, at the current juncture, the Governing Council had to be particularly cautious regarding the future evolution of its policy communication. 』(4月議事要旨)

どう慎重にすべきというかというと、

『After a prolonged period of exceptional monetary policy accommodation, financial market participants were particularly sensitive to any perceived change in the future course of monetary policy. Any substantial change in communication needed to be motivated by some more evidence that the present indications of acceleration in activity found confirmation in hard data and fed through to a sustainable adjustment in inflation.』(4月議事要旨)

極めて長期間の金融緩和となっている状況なので、ECBが何らかの政策スタンスを変更するのではないか、という点について市場は非常に神経質になっている、というプラート理事の説明がありまして、だからこそ何らかの政策に関する示唆をするならばハードデータなどのエビデンスが揃う必要が、というお話をしていますな。その結果・・・・・・・・・

『Looking ahead to the Governing Council’s 7-8 June monetary policy meeting, a new round of Eurosystem staff macroeconomic projections and a new assessment of the risks to the outlook would become available to inform discussions on the way forward.』(4月議事要旨)

つーことで6月の定例理事会に向けて四半期のスタッフ見通しがアップデートされるからそこでまた考えましょうみたいなのを執行部は話をしている、っつーことですな。


これが3月議事要旨だと、

『In terms of communication, Mr Praet considered it important to acknowledge the steady firming of the economic recovery, while stressing that the risks, although becoming less pronounced, remained tilted to the downside and that the staff projections were conditional on the full implementation of the Governing Council’s monetary policy measures.』(3月議事要旨)

『It was likewise important to clarify that, in view of the upward revision to inflation for 2017, the Governing Council would look through changes in HICP inflation, to the extent they were judged to be transient and to have no implication for the medium-term outlook for price stability.』(3月議事要旨)

『Finally, it was important to confirm both the intended pace and horizon of the asset purchases and to reassert the forward guidance on policy rates and on the asset purchase programme (APP), as previously communicated. It was furthermore appropriate to de-emphasise the sense of urgency towards taking further actions that had been communicated in the past.』(3月議事要旨)

てな説明になっていて、まだ金融政策スタンスがどうのこうのみたいな話をしている訳ではなく、経済物価情勢とリスク認識のアセスメントに関してちゃんとコミュニケーションしましょう的な話をしているように見えますので、議論としては政策スタンスをどうしましょう的な進展があるというのが示されているものの、だからと言ってそんなに早くやるのはどうでしょうもっとデータ揃ってからではないでしょうか、的な話をしているという感じですな。


・理事会議論の方から

『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions』の所のこれまた手抜きマンで『Monetary policy stance and policy considerations』の所ですけど(ちなみに念のため申し上げるとこの超手抜き読みだと4分の1も読まないことになるのであまり良い読み方とは思わんです、汗)、

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Praet in his introduction that, while the cyclical recovery of the euro area was becoming increasingly solid and downside risks had further diminished, underlying inflation pressures had remained subdued and had yet to show a convincing upward trend.』(4月議事要旨)

つーのは手抜きで盛大にスルーしている経済認識に関してで、これはまあ強くなってきているという執行部の認識を見解を共有。

『There was also broad agreement with the assessment provided by Mr Praet that the ECB’s monetary policy measures were making a crucial contribution to preserving very favourable financing conditions, which were seen as a key factor behind the ongoing cyclical recovery, supporting its resilience to adverse shocks and, over time, a rise in inflation towards the Governing Council’s inflation aim.』(4月議事要旨)

でもってこの部分はほほーと思ったのですが、先ほどのコミュニケーションの所で「スタンス変更について市場がセンシティブになっている」云々の話の続きで、市場が先走ってECBのスタンス変更を織り込みに行くと金融環境が引締め的になるというプラート理事の指摘についても幅広い認識の一致があった、という説明がありましてまあ味わいがあるなと。

まー何と申しますか、これはこれで言ってる事は理屈としては分かるのですが、市場って当然ながら中銀のスタンスを先に織り込みに行くものなのですから、この理屈を変に振りかざすと、元FRB副議長のアラン・ブラインダーさんの言う「自分の尾を追う犬」状態というか円環性の罠と言うかな話になってしまいますので、こりゃECBの緩和スタンス縮小時には変なミスコミュニケーションが起きそうな感じは漂ってくると思いましたがどうでしょうかね。

途中飛ばしてここの小見出し部分の最後に行きますと、

『At the forthcoming policy meeting in June, new staff projections, alongside further data and analyses, would become available, putting the Governing Council in a better position to take stock and reassess the sustainability of the recovery and the outlook for inflation.』(4月議事要旨)

『As inflation proceeded further on its path towards the Governing Council’s inflation aim in a self-sustaining manner, a more encompassing discussion on devising an appropriate strategy for policy normalisation would become warranted further in the future.』(4月議事要旨)

となっているので、スタンスとしては確かに6月理事会でデータを見て今後の政策正常化がいずれ先行き正当化されるようになるかもねという話をしていきましょう(ということなので6月にいきなり正常化になるという話ではないので念のため)という話になっていますね。


さらに次の『Monetary policy decisions and communication』ですけれども、最初にさっきと同じ話で、

『As regards communication, members broadly agreed with the proposals made by Mr Praet in his introduction to keep the communication on the Governing Council’s monetary policy stance and its forward guidance unchanged, while conveying a more positive tone on the state of the euro area economy and highlighting the increasing solidity of the cyclical recovery and that downside risks had further diminished. Similarly, the Governing Council needed to reiterate its confidence in the effectiveness of its monetary policy measures in supporting growth and inflation.』(4月議事要旨)

としつこく「現状の政策スタンスを維持する」というのをコミュニケートすべきという話が繰り返されております。

『At the same time, it was felt that the Governing Council’s communication should be adjusted in a very gradual and cautious manner as, at the current juncture, monetary and financial conditions were particularly sensitive to changes in communication. After a long period of very accommodative monetary conditions, even small and incremental changes in communication could have strong signalling effects when interpreted as heralding a change in the monetary policy stance.』(4月議事要旨)

『A premature and unwarranted tightening of financial conditions could put the prospects of a sustained adjustment in inflation towards the Governing Council’s inflation aim at risk, particularly in an environment of persisting uncertainty. It was, however, also highlighted that a gradual adjustment in communication, in step with the evolution of the Governing Council’s assessment of the economic outlook and the balance of risks, would underpin the consistency and credibility of the Governing Council’s guidance.』(4月議事要旨)

でもって政策スタンスの変更に関してはきわめて慎重なコミュニケーションが必要で、うっかり市場が先走って金融環境が悪化してしまうとマズーですがな、とまあ虫のいい話をしているのですけれども、だったら政策がビハインドするのを辞さず位の勢いになるのかというとそういう話にはなっていないので、これはまあECBの政策正常化という所ではややこしい事になりそうですな、というさっきの感想をさらに強めるのであります。

『Considering the earlier exchange of views on the balance of risks to euro area activity, there was agreement among all members to emphasise in the communication that the risks to the euro area growth outlook were moving towards a more balanced configuration, while still remaining tilted to the downside. Prevailing uncertainties, notably related to the external environment, continued to call for caution. It was also agreed that the communication regarding the inflation outlook should be left unchanged.』(4月議事要旨)

リスクは依然としてダウンサイド、海外情勢に注意、物価に関する考え方も変わらない。

でもってあとは政策決定です。

『Taking into account the foregoing discussion among the members, on a proposal from the President, the Governing Council decided to keep the interest rates on the Eurosystem’s main refinancing operations, the marginal lending facility and the deposit facility unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively. The Governing Council continued to expect the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time, and well past the horizon of the net asset purchases.』(4月議事要旨)

『Regarding non-standard monetary policy measures, the Governing Council confirmed that the net asset purchases, at the new monthly pace of ユーロ60 billion, were intended to run until the end of December 2017, or beyond, if necessary, and in any case until the Governing Council saw a sustained adjustment in the path of inflation consistent with its inflation aim. The net purchases would be made alongside reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme. If the outlook became less favourable, or if financial conditions became inconsistent with further progress towards a sustained adjustment in the path of inflation, the Governing Council stood ready to increase the programme in terms of size and/or duration.』(4月議事要旨)

この辺の話は、

『The members of the Governing Council subsequently finalised the introductory statement, which the President and the Vice-President would, as usual, deliver at the press conference following the end of the current Governing Council meeting.』(4月議事要旨)

とあるように会見の時に出てくるIntroductory statementにある話です。

・・・・・・・・つーことで何か経済については強めの認識ですし、政策正常化に向けた見解もあるようなのですけれども、やたらと市場が先走るのを警戒している、という虫のいい議論になっていまして、このコミュニケーションってそうは続けられない(本当に正常化着手したければ)と思うのですけどね、とは思いました。



2017/05/22

お題「市場メモ雑談/日銀から企業の物価予想に関するペーパーが/メスター総裁ロンガーランではそんなにタカでもなさそう」

ほほう。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170521/k10010989401000.html
新たな財政健全化目標設定へ 政府が検討に入る
5月21日 4時40分

・・・・・・・まあ何だ、コメントは控えておきましょう。

○例によって相場もアレだが相場メモ

・うーんこの相場

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1IL27C
Markets | 2017年 05月 19日 15:18 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が反発で引け、長期金利0.035%に小幅低下

『<15:10> 国債先物が反発で引け、長期金利0.035%に小幅低下

国債先物中心限月6月限は前日比6銭高の150円63銭と反発して引けた。前日の米国市場でリスクオフの流れが一服したことを受けて朝方は売りが先行し、一時150円48銭と4月10日以来の水準に下落した。日銀の国債買い入れ結果の影響は限定的だったが、午後に入り、朝方から軟調だった現物中期ゾーンに見直し買いが観測されると、切り返してプラス圏に浮上した。引き続きリスク回避ムードがくすぶっているほか、来週は3営業日で国債買い入れが予定されるなど好需給環境が意識された。

現物市場はしっかり。5年債利回りは午前の取引で、同0.5bp高いマイナス0.105%と3月10日以来の水準に上昇した。ただ、節目のマイナス0.1%近くまで水準訂正されたことで、午後の取引では中期ゾーンを中心に見直し買いが入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低い0.035%に低下。』(上記URL先より)

前場下がって後場反発ということでしたが、後付説明も「来週は3営業日で国債買い入れが予定されるなど好需給環境が意識された」とか(なお別にこの表現に悪態ついている訳ではありません)もはや後付で説明するにしても理由どう書きますねん状態のこの相場という感じですが、木曜の超長期入札が別に波乱なかった上にここもとずーっとヘロヘロ気味だった中期が戻ったから戻ったという風情(輪番が別にビックリするほど強かった訳ではないが何故か戻ったので誰か水準感で買いでも入ったのかと)ではあるのですが、「来週は輪番が3連続」とかそれは事前予定されているじゃないですかというのを後付言い訳にする辺りが何とも。

まあここもと海外からリスクオフの風が来ても上値が妙に重かったし、リスクオンの風が来ても下がったと思うと戻ったりとか益々何が何やらというマーケットになっておりまして、「YCCが機能しています(キリッ)」は良いのですが市場が動かんモードに。


・短国買入とかその辺

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170519.htm

国庫短期証券買入 30,923 10,004 0.000 0.002 61.0
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)290 290 -0.600 -0.600

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(238億円)、30年利付国債54回(51億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

短国買入は6M入札のあった前週が1兆円でしたので金曜の1兆円もまあ順当な買入で、オファーが3兆ありましてオファーそのものは多いのですが、落札水準が平均2糸甘で足切引けという結果になっていますので、カレント3Mで▲12bp台まで来ているので、ここから先は慌てて叩き売る程でもない(▲11位からは買いが湧いて出てくる水準)ということでしょうな。

ということで在庫はあるけど水準調整が進んでいるということでここからそんなに投げる程でもないという感じにはなっていますけれども、買入自体は残高削減方向とみられますので、本当は国内投資家(というかキャッシュ代替)の買いが来るレベルに水準調整をして、海外と日銀という状況から海外と国内と日銀(で日銀のウェイトが下がる)みたいな風にならんのかなあと思います。引けはカレント中心に若干強含み程度になっているので、まあ暫くはこの辺りで推移するとかでしょうが、その後は海外の需要が強くならないと徐々に重くなるようにも思うのですけどどうなんでしょうかねえ。

あと5年130回のSLFは相変わらずちょいちょいでていますな。あと物国16回1億円ってのが延々と出ているのですが、16回って昔のシリーズの最後の奴で1億円だから却ってカバーが面倒な気がして何とも。


○何か凄そうなリサーチペーパーが出ているのだが良く分からん(涙)

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/wp17j04.htm/
企業のインフレ予想形成に関する新事実:Part II
―機械学習アプローチ―
2017年5月19日 調査統計局経済調査課 経済分析グループ

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2017/data/wp17j04.pdf


本文の冒頭部分『1 はじめに』から。

『企業は、どのようにインフレ予想を形成するだろうか。この問いに対する、もっとも素直なアプローチは、経済理論にもとづいて企業の予想形成行動をモデル化し、実際のデータを用いてそのモデルのもっともらしさを検証することであると考えられる。実際、インフレ予想形成に関しては、これまで、多くの理論モデルが提示され、そうしたモデルを実際のデータで検証することも多くなされてきた。たとえば、Coibion et al. [12] と Kumaret al. [16] は、ニュージーランド企業を対象にインフレ予想に関する大規模なサーベイを行い、その個票データを用いて、Mankiw and Reis [18] らの粘着情報モデルや Sims [23]らのノイズ情報モデルにもとづいた実証分析を行っている。また最近では、宇野 ・ 永沼 ・原 [1] が、シンプルな粘着情報モデルにもとづいて、企業のインフレ予想形成の特徴点や金融政策に対する含意について議論している。』

ほほう。

『本稿は、こうしたこれまでの取り組みとはまったく異なる方向から、企業のインフレ予想形成メカニズムにアプローチする。本稿は、企業のインフレ予想に関する大規模なデータを用いて、企業の予想形成行動を「機械」に学習させることを試みる。』

ほう。

『すなわち、これまでの多くの先行研究のように、最初に企業の予想形成行動をモデル化するのではなく、先験的な制約をできる限り設けずに、「機械」が学習した結果を通じて、企業のインフレ予想形成行動を理解することを狙う。』

へー。

『学習に用いるデータは、宇野 ・ 永沼 ・ 原 [1] と同じ、日本銀行調査統計局が四半期ごとに作成 ・ 公表する「全国企業短期経済観測調査 (以下、短観)」の個票データである。Varian [26] が指摘するように、機械学習の手法を経済学の実証研究に応用しようとする取り組みは、近年、徐々に活発になってきている。もっとも、インフレ予想に関しては、大規模データが限られてきたこともあって、そうした手法を援用した研究は、筆者らの知る限り、Inamura et al. [14] に限られている。』

『本稿では、機械学習の分野で広く知られたふたつの手法を用いる。』

でもって実際に何をやっているかという話の説明もあるのですが、これがまたアタクシの無い知能では(なんとなくどういう概念なのかは説明があるのですが実際に何をどうやるのかは)わからんがなという所ですがヤケクソで引用しておく。

『ひとつは、ランダム ・ フォレストと呼ばれる手法で、機械学習の分野では予測のパフォーマンスがきわめて高いことで知られている。ランダム ・ フォレストは、特定の関数形を仮定しないため、経済学の実証分析で多用されるパネルデータを用いた回帰分析やベクトル自己回帰モデルなどと比べて、先験的に課す制約が圧倒的に少ない。たとえば、通常の回帰分析では、特定の関数形を仮定するため、説明変数の数が多くなるとパラメータの数が多くなり、ともすると適切な推定が困難になるが、ランダム ・ フォレストはノンパラメトリックな手法であるため、そうした「次元の呪い」と呼ばれる問題に悩まされることなく、きわめて多くの変数を説明変数として利用することができる。』

『もうひとつは、ベイジアン・ネットワークと呼ばれる手法である。経済学では、グレンジャー因果性テストや DID 推定 (difference in differences) などの手法を用いて変数間の因果構造を明らかにしようとすることが多い。これらの手法は、時系列方向に十分に長い期間のデータが必要であったり、データが一定の前提条件を満たすことを要求する。もっとも、多くの場合、そうした理想的な環境は整っていない。ベイジアン ・ ネットワークは、時間に関する情報を用いることなく、また、変数間に強い仮定を設けることもなく、変数間の相関構造から因果構造を推定することができる。』

まあ正直何が何だか分からんが、何らかの相関を事前に前提としてぶっこむのではないというのは何となくわかったような気がする(アホですいません)。


・・・・・・でもって問題は結論な訳ですが、

『本稿の貢献は、機械学習の手法を用いて企業のインフレ予想形成メカニズムにアプローチしたことにより、特定の理論モデルに依拠しない、その意味において頑健な事実を発見したことである。「機械」が発見した重要な事実は、次の四点である。』

レジリアントな事実を発見したとな。

『第一に、「物価全般」予想は、各企業に共通した何らかのマクロ変数と密接に関係している。中央銀行にとって、この発見は、金融政策がこのマクロ変数に働きかけられるのであれば、金融政策が「物価全般」予想にも働きかけられる可能性があることを示唆している。』

ということですがこの何らかのマクロ変数っつーのですが、いきなりワープして最後の結論の所となる『5.3 主たる学習結果の金融政策に対する含意』を見ますと、

『結果 1 の金融政策に対する含意は明快である。すなわち、金融政策がこのマクロ変数に働きかけられるのであれば、金融政策は、「物価全般」予想にも働きかけられる可能性がある。この点、宇野 ・ 永沼 ・ 原 [1] は、日本銀行が発行する「展望レポート」を用いた自然実験により、中央銀行の情報発信が「物価全般」予想に影響を与えていると主張している。』

「と主張している」だから決定的に何かであるという話になっている訳ではないようですけれども、そうなのかいなとは思う。

でもってもう一回最初の部分に戻って、

『第二に、「物価全般」「自社の販売価格」いずれの予想でみても、GDP ギャップに関連するような実物変数の重要度は低い。この点は、マクロのフィリップス曲線において、GDPギャップにかかる係数が小さいことと整合的である。また、本稿のデータでは検証が困難ながら、近年のフィリップス曲線のフラット化を示唆している可能性もある。』

ということですが、

『結果 2 は、マクロのフィリップス曲線において、GDP ギャップにかかる係数が小さいことと整合的である。また、本稿のデータでは検証が困難ながら、近年のフィリップス曲線のフラット化を示唆している可能性もある。インフレ率を制御する役割を担う中央銀行にとって、こうした事実は、きわめて重要な意味がある。』

というのがしらっと入っているのですけれども、これって今の展望レポートでの説明が「主に労働需給の逼迫による需給ギャップで実際の物価が上がって適合的なインフレ期待が徐々に改善していくとフォワードルッキングなインフレ期待に繋がっていく」という形になっていて、主に需給ギャップのプラス化による物価の上昇が起点になっている説明に対して中々悲しい結論に見えるのですけれども。


ただまあ結果1の部分に関しては、『ランダム ・ フォレストによる学習』の所を見ますと、

『図 2 は、「物価全般」予想の形成における変数重要度を示している。この結果から、次の四点を指摘できる。第一に、いずれの年限でも、ある年限の「物価全般」予想に対して、もっとも重要な変数は、異なる年限の「物価全般」予想である。このことは、企業のインフレ予想に慣性が働いていることを示唆している。』

『ただし、「物価全般」1 年後予想について仔細にみると、「物価全般」3 年後予想の重要度がもっとも高い一方、「物価全般」5 年後予想の重要度は著しく低い。宇野 ・ 永沼 ・原 [1] は、本稿と同じデータを用いて、「物価全般」の 3 年後予想と 5 年後予想を同じ伸び率で回答する先が 70%を上回っていることを指摘しているが、ここでの結果とあわせて考えると、3 年後予想と 5年後予想を異なる伸び率で回答している 30%弱の企業が、各企業の 1 年後予想を説明するうえで、決定的に重要な情報を有していることが示唆される。なお、ある年限の「物価全般」予想に対して、同じ年限の「自社の販売価格」予想の重要度も高い。』

となっていまして、巻末に図表とかありまして、

PDF24枚目の(表1) に『インフレ予想と直接的に結びついている変数』
PDF26枚目の(図2) に『ランダム・フォレストの変数重要度:物価全般』
PDF26枚目の(図4) に『ベイジアン・ネットワークの学習結果 』

とかありまして、金融政策への示唆として「金融政策がこのマクロ変数に働きかけられるのであれば、金融政策が「物価全般」予想にも働きかけられる可能性がある」とはありましたものの、図表とかマトリックスとか見ているとはてこれは結局具体的にどういうアプローチをしたら良いんじゃろうかというのは難しい話でごわすなと思うのでした。

まあ少なくともこちらの7枚目のスライドにある
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「2%インフレ目標コミットメント」+「マネタリーベース増加」⇒「予想インフレ率上昇」という単純な話ではないというか、一番の問題はここのアプローチをどうすべきかである、という話にきっちりとなっている訳で、現実問題として色々と政策やっているのですが、やはり原点に立ち返って政策はどういうアプローチをするのか、という事をスクラッチで考えて頂きたいものだと思うのでした。


・・・・・・・・と話が飛んでしまいましたが、結論は4つあるので残りの2つを。

『第三に、「物価全般」と「自社の販売価格」とでは、予想形成メカニズムが異なっている。たとえば、マクロ変数は、「物価全般」予想の形成において、より重要度が高い。同様に、企業規模も「物価全般」予想の形成において、より重要な役割を果たしているとみられる。このように、本稿は、「物価全般」と「自社の販売価格」の予想形成メカニズムの違いを示唆するようないくつかの証拠を提示する。中央銀行がインフレーション ・ ターゲッティング政策を採用する際、多くの場合、そのターゲットは、「物価全般」である。これを踏まえると、「物価全般」と「自社の販売価格」の予想形成メカニズムの違いは、少なくとも中央銀行にとっては重要な意味がある。』

なお、後ろの『5.3 主たる学習結果の金融政策に対する含意』ではこれに追記して、

『もっとも、こうした違いが理論モデルにおいて明示的に扱われることは、これまでのところ必ずしも多くない。今後の研究課題である。』

とありますが、物価全般という話はわかるものの、インフレ期待に粘着性があって、特に日本の場合は適合的期待形成の役割が大きいという以上、企業の価格設定行動などのような積み上げの部分が効いてくると思うので、これはこれでどうなのかという気もするのですが、というか短観個票データで見た場合の「企業のインフレ期待」と肝心の「企業の価格設定行動」がリンクしていないというのが政策アプローチを難しくしているとも言えるのではないかと。

『第四に、長期のインフレ予想は、各企業に固有のミクロ変数の影響を受けにくい。宇野 ・永沼 ・ 原 [1] は、長期のインフレ予想の改定頻度が短期より頻繁であることを報告しているが、ここでの発見とあわせて考えると、長期のインフレ予想のより頻繁な改定は、各企業に共通した何らかのマクロ変数によって引き起こされていた可能性が高い。』

なお、後ろの『5.3 主たる学習結果の金融政策に対する含意』ではこれに追記して、

『もっとも、現時点では、そのマクロ変数が何を指すのかについて、はっきりしたことは何もいえない。この点も、今後の重要な研究課題である。』

とありまして、先ほどの所では『宇野 ・ 永沼 ・ 原 [1] は、日本銀行が発行する「展望レポート」を用いた自然実験により、中央銀行の情報発信が「物価全般」予想に影響を与えていると主張している。』とはありましたが、まだ何とも言えないということのようですな。


・・・・・・・・と乏しい脳味噌を用いてネタにしてみたものの、まあ興味のある方は本チャンの方をちゃんと読んだ方が良いと思います(結局それかよというツッコミは無し)。



○クリーブランド連銀メスター総裁講演

https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20170518-economic-outlook-and-some-longer-run-issues.aspx
The Economic Outlook and Some Longer-Run Issues
05.18.17 Loretta J. Mester
Economic Club of Minnesota, Minneapolis, MN

『Longer-Run Issues』の所を少々。

『Astute listeners will have noticed that I didn’t tell you how large the balance sheet will be or how high the fed funds rate will be once we complete normalization. That is, I haven’t told you the end points. To answer those questions, we need to consider some longer-run issues.』

ということで、目先の話(ネタにしませんでしたがまあロイターのヘッドラインにある通り)はさて置きロンガーランにFF金利とバランスシートはどうなるべきかという点については長期的な問題を考える必要があります。とありまして、「Longer-Run Issues」の話はしているのですが、長期的なFF金利とかバランスシートの最終形という話はしていません。

でもって小見出しは色々とあるのですが、経済政策に関わる部分ではなくて、最初の金融政策に絡む小見出しの所を少々鑑賞します。

『Monetary policy implementation framework』という小見出しから。

『Regarding the ultimate size of the balance sheet, we do know it will be larger than it was prior to the financial crisis for the simple reason that the public’s demand for currency is rising over time. But the balance sheet will also likely be considerably smaller than it is today. Just how much smaller depends on how the FOMC implements monetary policy in the future.6』

バラスシートの最終形は危機前よりは大きいけど今よりは小さくなる。でもそれは金融政策の将来のあり方によって決まると。

『Before the crisis, the FOMC kept the supply of bank reserves scarce. Making small changes in that supply by buying or selling short-term Treasuries, allowed the FOMC to ensure that the market-clearing interest rate at which banks lend reserves to each other overnight, the fed funds rate, was maintained at the FOMC’s target.』

『But now, as a result of the Fed’s large-scale asset purchases, reserves are very abundant: indeed, banks are holding around $2.3 trillion in reserves, and more than $2.1 trillion of this amount is in excess of what is required by regulation. At these levels, small changes in the supply of reserves have little effect on the fed funds rate, and the FOMC brings the fed funds rate into its target range by adjusting the rate it pays on excess reserves.』

大規模資産買入で超過準備がたくさんになったので過去のように銀行間市場の需給調整で金利を調整という訳には行かんと。

『Each of these systems has its strengths, and the FOMC has not yet decided which framework it will use in the long run and, therefore, what the size of the balance sheet will be at the end of the normalization process.7』

まあ誠実に答えるとこうなるわなということで、今の時点でどういう形になるか分からんと。

『However, because it will take several years to reduce the size of the balance sheet through asset run-off, the FOMC can end reinvestments before we have decided on the balance sheet’s ultimate size.』

ということで、まあさすがに順当ではありますが、バランスシート縮小には着手する(というのはブレイナードさんの従来の主張)けれどもそのペースは超ゆっくりですな。

次が『Equilibrium fed funds rate』ということで中立金利の話。

『In terms of where the fed funds rate will be in the longer run, one needs to consider what policy rate is consistent with maximum employment and stable inflation over the longer run. There is reason to believe that this equilibrium rate is lower now than it used to be.』

均衡金利が低下している、というのはハトタカ問わずFOMCの全員が言う話ですね。

『In fact, FOMC participants have been lowering their estimates of the longer-run fed funds rate over time. For example, in March 2014, the median estimate was 4 percent. Now it is 3 percent. The equilibrium rate is determined by the long-run rate of the growth of consumption and, therefore, of output. So where the fed funds rate will be after normalization depends on the longer-run potential growth rate of the economy.』

その水準はロンガーランの潜在成長率に依存する、ということで次の小見出しが『Potential growth and productivity growth』である。

『The key determinants of the economy’s longer-run growth rate are structural productivity growth - how effectively the economy combines its labor and capital inputs to create output - and labor force growth. Over the past five years, labor productivity, measured by output per hour worked in the nonfarm business sector, has grown at an annual rate of only about a half of a percent; over the entire expansion it has averaged 1 percent. This is a step down from the 2-1/4 to 2-1/2 percent pace seen over the prior two expansions. Some of the slowdown in productivity growth likely reflects the difficulty in measuring productivity in the service sector.』

労働生産性が低下していると。

『Some of the slowdown is likely cyclical, reflecting persistent effects of the Great Recession, which has retarded investment spending. As the expansion continues and investment expands, it is reasonable to assume that the cyclical impediments will abate and we’ll see somewhat stronger productivity growth. But structural factors are likely weighing on productivity growth, as well.』

循環的な要因で下がっているのもあるが構造要因もあります。

『One such factor is a reduced level of economic dynamism. An enviable aspect of the U.S. economy around the globe is our spirit of innovation, entrepreneurship, ease of business entry and exit, and labor market flexibility. This dynamism has contributed to economic growth and well-being in the U.S. by allowing resources to be reallocated from less-productive to more-productive businesses and allowing workers to move up the career ladder.』

米国経済のダイナミズム(起業とかイノベーションとか労働市場の柔軟性とか)が落ちてきているのが構造要因の一つのファクターと。

『But the degree of dynamism in the U.S. economy has been declining for some time. On average, over the 1990s and until the Great Recession, business start-ups accounted for about 3 percent of total employment per year.8 Since then, this share has fallen to around 2 percent.9 Since 2000, key innovative sectors like high-tech have seen a sharp slowing in the rate of start-ups.10 The decline in business and labor market dynamism is a structural factor that may be contributing to the slowdown we’ve seen in productivity growth.11』

『Labor force growth, the other key determinant of long-run economic growth, is projected to be considerably slower than it has been in recent decades. In the 1970s, the labor force grew about 2 1/2 percent per year, on average, as baby boomers and women entered the work force. Labor force growth has slowed since then, rising at slightly more than 1/2 percent per year over 2010-2016. Demographic factors, including the aging of the population and a lower birth rate, suggest slow growth at about that pace will continue.12 So, longer-run output growth will likely remain below the 3 to 3-1/2 percent rate seen over the 1980s and 1990s.13』

でまあ構造的にこれらのダイナミズムが低下している、という説明がありまして・・・・・・・

『My own estimate is that longer-run growth will be about 2 percent, but I acknowledge that such estimates have wide confidence bands around them and economists hold different views about the future growth prospects of the U.S. economy.14,15 The difference in views largely stems from different assessments of the prospects for investments in technology and human capital.』

ロンガーランの成長に関しては今後の政策によってどう変わっていくかという辺りに依存するということで、以下は経済政策とか構造の話になっているのですが引用は割愛します。


という事ですので、メスターさんの話も目先は正常化路線なのですが、ロンガーランのゴールに関して言えば結構慎重な言い方をしていまして、別にバリバリのタカ路線ではないという感じ(足元の経済と金融政策正常化に関してはタカなのですがより長期の目線では、という意味)かと思いましたし、まあ正常化いう人たちも結局こんな感じなんじゃないのかなあ、とは思ったりするのですがどうなのでしょうかね。



2017/05/19

お題「市場メモ/クーレ理事講演だが微妙に長期金利上昇容認の香りもせんでもない」

ふーん。
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-witch-hunt-idJPKCN18E2ID
World | 2017年 05月 19日 01:59 JST
トランプ氏「史上最大の魔女狩り」、特別検察官の設置を批判

○短国とか補完供給のメモ

・5年130回の補完供給の実力ベース(?)はやはり減ってました

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170518.htm

国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)192 192 -0.600 -0.600

ということで補完供給が192億円まで減っていまして、

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(191億円)、物価連動国債16回(1億円)です

てな結果になっていましたが、補完供給のレートがコールレート下がったので昨日のからまた▲60bpになっていまして、昨日の分に関してはレート下がるの分かっていたのでSC市場の方でカバーしましたということかなーとか思われまして、前日は補完供給の落札が529億円だったのですが、昨日は上記のように191億円になっておりますので、300億円程度の部分は補完供給のレート的にまあ市場でカバーするのとの天秤というような状況だったんでしょうかね。しかしまだ191億円残っているのかよ延々と引っ張りますなあとは思いますけど。

ちなみにレートに関しては
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_b/opetori11.htm/
国債補完供給の取引概要

『(6)上限期間利回り

「最低品貸料」を設定する趣旨から、期間利回りについては、金融市場の情勢等を勘案して、上限利回りを設定します。

上限期間利回りの水準は、無担コール翌日物金利と市場取引における品貸料の推移等を勘案して、市場参加者が本制度に過度に依存することがないようなものとします。具体的には、原則として「無担保コールレート(オーバーナイト物)を勘案した水準(注1)?最低品貸料(注2)」とします。

(注1)前営業日の無担保コールレート(オーバーナイト物)の加重平均値を用います(小数点第2位を四捨五入)。
(注2)当面の間、0.5%とします。』

とありまして、無担保コールの加重平均が一昨日に▲5.1に低下したので上限利回りが変わりましたということですが、ここの説明に「市場参加者が本制度に過度に依存することがないようなものとします」とありますように、SLFってあくまでもマージナルな措置です、という建付けになったままであることは変わっていませんけど、日銀が散々国債購入してストックベースでの買入は今後も拡大する(オーバーシュート型コミットメントがあるのですから)となっているのですから、SLFのこの基本的な建付けもせめてQQE+YCCの出口になってバランスシート縮小開始とかになるくらいまではもうちょっと建付け変えるっての検討できませんかねえ、とは思う。


・3M短国

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170518.htm

(3)募入最低価格 100円03銭1厘0毛(募入最高利回り)(-0.1243%)
(4)募入最低価格における案分比率 32.1837%
(5)募入平均価格 100円03銭2厘1毛(募入平均利回り)(-0.1287%)

先週の3M(682回)が▲13.27/▲12.43で今週の1Y(683回)が▲15.61/▲14.61ですが、本日付(昨日引け)の売買参考統計値で683回が▲15.9、新発684回が▲12.8、682回が▲12.5となっていますので、682回が平均から見ると少々食らっていて(ついでに言えばその後のファンディングコスト逆鞘分もある)684回がチャラ、682回は若干の浮きとなっておりまして、さて本日の短国買入でどうなるんでしょという所ではありますが、日銀買入で嵩上げされている分の需要を徐々に剥がしていくという流れではあるものの、国内のキャッシュ代替でのニーズが顕在化してくれるはずの水準となる短国▲10bpは中々遠いですなあ(そら▲10にしたらホイホイ売れると予想される中ですから▲10は行かんよねという話っすけど)。



○長期金利の要因分解とな(クーレ理事講演ネタの続き)

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2017/html/ecb.sp170516.en.html
Dissecting the yield curve: a central bank perspective

昨日の続きです。後半の『An assessment of recent long-term yield dynamics』から。

『So, you can now easily see that the increased use of non-standard measures also meant that there was a pressing need to upgrade our internal analytical toolkit. Standard term structure models alone were no longer sufficient.』

イールドカーブの従来の分析だけでは不十分なんですと。

『We needed to broaden our set of models to also capture the effects that changes in the amount of bonds available for private investors would have on the term premium. And we needed to refine our event study methodologies and make use of other models and tools, with a view to developing our understanding of the extent to which our actions are reflected in yield movements.[7]』

『Put differently, these efforts were necessary in order to map (expected) purchases in billions of euro into long-term yields in basis points that would help the Governing Council calibrate the pace and size of our purchases.』

中銀が国債買う→市場の流通国債のデュレーションリスクが減る(中銀が買って抱え込むから)→タームプレミアムが縮小する、というのを分析に加えるそうです。

『The residual movement in rates - subject of course to the general large uncertainty one faces when relying on model-based analysis - would then be due to other forces largely outside our direct control. These include, for instance, spillovers from other major economies, flight-to-quality related movements into safe assets, or changes in investors’ outlook for growth and inflation.』

その他の部分(剰余項)はその他他国からのスピルオーバーだの国債選好の高まりだのというのが
あるでしょう、だそうな。

『And as central bankers we also need to carefully disentangle those residual driving forces to help us understand the possible implications for our policy stance.』

何かそれをその他で纏めるかよ、と突っ込もうとしたらこの部分の分析も重要、と言っているのでまあ分かってるジャンとは思いました。

『Let me give you a simple example: an unexpected increase in long-term rates. This is neither good nor bad, per se, from a monetary policy perspective. The implications for monetary policy depend, crucially, on the sources of this movement.』

でもって例として「長期金利が急に上がった時にその金利上昇は政策当局的に良い話なのか悪い話なのか」という設問をしていますな。

『For example, if the increase reflects a re-pricing based on better current or prospective economic conditions, this would not be a source of concern for policy makers. However, if it were induced by markets overreacting to news or misunderstanding our policy intentions, this increase would be undesirable from a policy perspective.』

経済物価情勢の好転を織り込みに行って金利が上がっているのか、何らかのオーバーシュートあるいは将来の政策スタンスへの誤解からの金利上昇か、という分け方してますが、まあ言いたいことは分かるが、そういうの分解できないようにも思う。でまあ引用していると長くなるので適当に飛ばしますが、一応そういうの分解して分析するような研究はあるようですが、クーレ理事の説明だと「後付では分かるけどリアルタイムで分解するというのはパーフェクトには行かないですなあ」とは言ってます。

『Let me illustrate this by focusing on the repricing in bond markets that started around the end of September last year.』

でもって材料は去年秋の金利上昇ね。

『By that time, the ten-year OIS rate had reached a low point of slightly below zero. Since then - and looking through the occasional ups and downs - it has risen by about 65 basis points.』

10年OIS金利が0近辺から65位まで上がった時の話。

『At face value, such tightening of financial conditions looks inconsistent with the stance required to bring inflation back to levels closer to 2%.』

『But the set of models currently in use by ECB staff generally tell one consistent story: for the most part, the steepening of yield curves over the past few months reflects an overall benign increase in the term premium - only around a quarter of the change in yields reflect changes in the expected future policy path. By and large this is also what we have seen in other major economies, in particular in the US.』

分析によるとECBの政策スタンスが変わっていないのに金利が上がったのは海外、特に米国も含めた先行き金融政策パスの変化によってタームプレミアムが拡大したから、という結論らしい。いやそれお前の所の政策スタンスに関しても見方変わって無かったかと小一時間問い詰めたいのだが。

『We think two factors can mainly account for this. First, a decomposition of euro-based inflation-linked swap rates points to a measurable increase in the compensation for inflation risk from historically low and probably negative levels. So, from this angle, the increase in the term premium is likely to reflect a pricing out of deflationary tail risks. This in itself is certainly good news.』

タームプレミアムが上がった要因としては、テールリスクとしてのデフレリスクに対する懸念が低下したことでこれは良い事だそうな。

『The second factor that is likely to have added to the increase in the term premium is uncertainty, mainly coming from outside the euro area. One reason might be that although markets have generally become more optimistic about global growth prospects - buttressed by the undeniable upswing in the global business cycle - they may have also become less certain about the future course of fiscal policy in some jurisdictions as well as about other policies, including trade and regulation. This, in turn, may increase uncertainty about future duration supply, impacting the term premium.』

『Uncertainty, by and of itself, is undesirable. But to the extent that the increase in the term premium likely reflected a reassessment of global economic conditions after a long period of subdued macroeconomic expectations - as also reflected in the adjustment of inflation risk premia - it may not constitute an unwarranted tightening.』

もう一つのファクターは主に海外要因で、海外の経済見通しが好転した事によってタームプレミアムが上昇しましたよ、ということですので、このような要因で金利が上昇するのは「unwarranted tightening」ではない、という説明をしておりまして、まあこういう説明をするのって純粋に説明している場合もあるのですが、政策当局者がこういう説明をおっぱじめるのは金利が上昇した際にも「これは別に予期せぬ引締めではなくて、好感すべきタームプレミアムの拡大(あるいは景気の見方の好転による市場のリプライシング)である(キリッ)」と言い出す伏線であって、近い将来回収されることを想定している、という場合もあるので(ECBは講演とかせっせと追っかけきれている訳でもなんでもありませんので、伏線なのかピュアな話なのかは判然とし難いのですが、これが毎度細々見ている日銀だと伏線なのかピュアな話なのかが何となく予想ができます、つーか日銀の場合は伏線ネタが多すぎるんだが)ちょっとこの辺りは気になる部分ではありました。

『The role of foreign factors in driving euro area yields becomes clearer when considering the indications from another class of models: researchers at the IMF have developed a simple yet powerful methodology to identify yield curve drivers using cross-asset correlations involving stock, bond and exchange markets.[9]』

別のモデルを使うと更に「海外要因です」ということらしい。ナンジャソラという感じですが。

『And these models confirm - as you can see from the chart in front of you - that the bulk of the increase in euro area long-term yields initially came from shocks originating from outside the euro area - the green part.』

ってのは上記URL先にグラフが貼ってある(どうもビットマップっぽい貼り方で単独のURLになっていないので図表は元の講演URLを見てください)のですが、まあこーゆーのは何と申しますか鉛筆なめ余地あるからなあとは思います。

『You can also see, however, that after the first initial sharp upward movement in yields following the US presidential elections, it was increasingly an improvement in euro area domestic growth prospects that contributed to upward pressure on yields. You can see this reflected in the increasing contribution of the yellow component in the chart.』

でもってその分析によるとトランプショック後の金利上昇は欧州経済の見通し好転によるものだそうです。まあそれは何となく同意できるけど。

『But what is even more important is that during this period, and despite stronger global and domestic growth prospects, expectations regarding our monetary policy have, on balance, had a stabilising effect on yields, according to our analysis. This is the blue part in the chart, which you can see shifted into negative territory after our decision in early December to extend the intended horizon of the APP by another nine months.』

さらにその分析に寄りますと金融政策見通し要因は金利押し下げ効果に働いているのが重要です、とこれまたお手盛り感が漂うのですが、ECBの先行きの金融政策期待に関して何らかの思惑が浮上した結果として金利が上昇しているのか、というとそうではなく、ECBの政策(主にフォワードガイダンスという事になるのでしょうが)については引き続き長期金利の押し下げに働いているのでワシらの政策は良く機能しているんじゃと主張する辺りもお手盛り感が漂う。

『In other words, market participants understood our reaction function and agreed with our assessment in December last year that the absence of a sustained adjustment in the path of inflation warranted continued monetary accommodation.』

12月以降も我々の政策反応関数に関する市場の理解は変わっていませんって結論になっているのですが、どう見ても政策スタンスの緩和(緩和規模縮小)を織り込んできてるじゃろとは思うのすけどねえ、という事でまあこんな分析しているけど結局長期金利上昇するの容認してるじゃん、という講演だったように思えますがどうでしょうかね。

最後に『Conclusion』があるがパス。


○メスター総裁講演だが足元の政策に関してはこの前の講演と同じ話だと思う

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-idJPKCN18E2XH
Business | 2017年 05月 19日 05:07 JST
米クリーブランド連銀総裁、FRBは利上げ継続すべきと再表明

というのがあって、反応した事になっているらしいのですが・・・・・・・・・・・

https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20170518-economic-outlook-and-some-longer-run-issues.aspx
The Economic Outlook and Some Longer-Run Issues
05.18.17 Loretta J. Mester
Economic Club of Minnesota, Minneapolis, MN

というのがあって、超ウルトラ斜め読み(というか小見出しと各パラグラフの最初の数単語だけ速攻で読んだだけですすいません)をすると、途中までの部分では先般の講演と同じ話(経済物価情勢、雇用情勢、今後の金融政策運営に関する話)をしているように見えます。

でもって恐らく今回のメスター講演のネタは後半の『Longer-Run Issues』でして、『Monetary policy implementation framework』、『Equilibrium fed funds rate』、『Potential growth and productivity growth』、『New technologies』、『Human capital』、『Globalization』、『Economic policy』って小見出しが並んでいるのですが、金融政策直結の話は最初の3つの小見出しじゃないかと思うのですが、例によって時間が足りないため後日ネタにするかもしれないというメモだけ置いておきます(すいません)。




2017/05/18

お題「そろそろネタが出てそうな相場ですがまだネタ無いのでECBクーレ理事講演などを」

おはぎゃあございますorz
http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N1IJ4VU
Markets | 2017年 05月 18日 05:22 JST
米国株式市場=急落、トランプ氏巡るロシア疑惑で政策遅延懸念

・・・・・・・ついこの前VIXが最低水準じゃんとか言っていたらこれですよ。

一応その他のURLも備忘用に貼っておくとします。

http://jp.reuters.com/article/usa-trump-idJPKCN18D2KF?sp=true
World | 2017年 05月 18日 04:52 JST
トランプ氏のロシア癒着疑惑、共和党内でも独立調査の要求強まる

http://jp.reuters.com/article/trump-russia-idJPKCN18C1EF?sp=true
World | 2017年 05月 17日 20:22 JST
トランプ米大統領、ロシアとの情報共有を擁護 議会は説明要求

・・・・・・・・ナムナム。

○またもオペ関連メモメモ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170517.htm

国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)700 700 -0.500 -0.500
国債補完供給(国債売現先)・即日(午後オファー分)(注5)15  15 -0.500 -0.500
CP等買入 9,398 2,495 -0.010 0.005 10.3

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(529億円)、5年利付国債131回(170億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

・SLF5年130回の残高がまた増えている訳だがまあこの程度なら

5年130回のSLFがまた増えている訳ですが、まあその前にロットが一旦下がっていますから、絶望的にショートを抱えて戻せないという人は一旦カバーを入れている(全部カバーしたかはともかくマネージメントできる程度にはしているでしょ)と思われます(連休明けの辺りでは130回だけスイッチベースの取引気配で無茶苦茶強かったですからねえ)ので、足もとで増えている分はSCレポ市場でカバーするのとSLFでカバーするのの比較で増えたりするというような辺りで増えているんでしょという所だとは思われます(と言いつつこれがまた4ケタとかになったらビビる)。

しかしまあこの「大ショート銘柄になって全然戻せない攻撃」というのって昔々から何度も発生する事案で、マーケットメーカーが安易にホイホイ出したら戻せなくなってあばばばばーとか、強いもんだから安易にホイホイ叩いたら以下同文とか、何度これやれば気が済むんでしょうというお話(別にそういう訳でもなくショートしてたら巻き込まれるという貰い事故事案というのもありますけど)ではあるのですが、これはマーケットメーカーやっていると時々やらかす話で、ただまあそれが大火災銘柄になるのかボヤ程度で済むことになるのか、というのはたぶん経験値の世界だと思うので、そーゆー意味ではマーケットだって参加している人がずーっと同じな訳ではないので変わりばんこに誰かが地雷を盛大に踏み抜くという奴ですな。

ただ、現状では日銀の国債買入攻撃というのがある一方で、SLFでは物が出てくるものの、それは単にレポができるだけという話であって、最終的にカバーするためのモノが出てくる訳でもないのでありますから、カレント銘柄でリオープン入札でカバーするのか、流動性供給入札でカバーするのかしないと結局戻せませんね、ということになってしまい、今般の5年130回のようなお洒落な事になっていく訳ですな。

まあカレントについてはリオープンがあるうちは入札で戻すチャンスがありますし、マーケットメーカーだったら入札入れる際にカレントショートして臨むのが普通ですから、まあカレント銘柄のうちにショートというのは必要ですし、それが無いと入札行き難くなるので、全部が全部ショート銘柄ショートして引っ張るなよという話ではないのですけれども、QQEが続くとやはり現物債市場の流動性には色々と問題が生じるでしょうなあとは思います。

まー日銀の買入が相変わらずストックベースでジャンジャン増えますというのは(ステルステーパーしているとは言っても増えているのは威勢よく増えているので)変わっていない中ですと、こういう戻せなくなってしまいました的な地雷案件は時々発生するでしょうし、そのような案件を踏んだり巻き込まれたりするというのが増えたりすると、マーケットメーカーは徐々にショートセールに慎重になってくるでしょうし、そうなると現物債の流動性が低下してしまい、トータルで見た場合の発行コストなどにも影響してくる訳で、どういうやり方をするのかと言われると難しいのですけれども、現物債の流動性についてもう少しテコ入れしていくことを考える必要が出てきているようにも思えます(根拠は無いが何となくの勘で)。


あとCP買入の平均が高いのは謎ですが、レート間違えて(プラスとマイナスを間違えるとか)応札するのでなければ、日銀保有CPの銘柄の中で空きが出た所ですかさず入れに行った銘柄の中で若干レートの高いのがありましたとかそういう要因でしょう(別にCP市場の需給が悪い訳ではないので)、よー知らんけど。


○ECBクーレ理事がイールドカーブの話をしているので読んでみる(その1)

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2017/html/ecb.sp170516.en.html
Dissecting the yield curve: a central bank perspective

Welcome remarks by Benoit Coure, Member of the Executive Board of the ECB, at the annual meeting of the ECB’s Bond Market Contact Group, Frankfurt am Main, 16 May 2017

イールドカーブを解剖するとかいうECBクーレ理事の講演だが題名に釣られて読んでみた。

『Policy actions and the yield curve』という小見出しの部分だが。

『Let me start by clarifying what I mean by “yield curve”.

This is not a trivial discussion in a currency union with 19 different yield curves. Among these, we generally consider that two curves in particular provide us with insight and inform our policy decisions: the overnight index swaps (OIS) curve and the Bund curve, as these have become widely accepted proxies for risk-free yields in the euro area.[3]』

ということで、イールドカーブの話をしているのですが、クーレ理事の考える「イールドカーブ」とはOISのカーブとドイツ国債のカーブを示しているそうな。

『As such, they serve as the bedrock for pricing virtually all credit products and related derivatives. These curves are vital for the transmission of monetary policy, as they have a significant influence on broad asset valuations and the pricing of bank loans and, ultimately, they affect the investment and saving decisions of households and firms.』

個別国のカーブではなくドイツ国債のカーブが域内のリスクフリーレートとして見なされていて、このドイツ国債の金利水準がローンとか他の資産のバリュエーションとかのベンチマークになるので、この金利が金融政策の波及効果としてのベースです、という話のようですな。

・・・・・・・・と考えますと、ECBが「域内の不均衡を是正する」と言って国債買入を行ったケースに関しては「ドイツ国債の利回りが本来ベンチマークになるのだが、ユーロ危機とか言われた影響で各国の金利がドイツ国債利回りと連動しなくなってきたので、金融政策の波及効果が効きにくくなってきた。だから国債買入を行った」という風にきっちりと理屈が通っている訳ですな。どこぞの「進化した」人とは大違い。

『This means that we need to understand - as much as you do - what drives changes in these curves, so we can draw correct inferences regarding the appropriateness of our monetary policy stance. This has become all the more important in an environment where central banks no longer only control very short-term policy rates but also influence long-term yields through asset purchases.』

金融政策スタンスや資産買入で長期金利に影響を与える訳ですが、何が長期金利に影響を与えるのかというのを理解すれば金融政策を有効に使う事が出来る、という話をしているのですが、一方で長期金利のYCC政策などというお洒落な事をやっている国もあります。

『In other words, we need to make a quantitative distinction as to what part of a given change in the yield curve is likely due to policy itself - our actions and often also our words - and what part is due to other factors, such as spillovers from abroad or improved growth expectations.』

普通の中銀だとこういう話になるのですが、どこぞの中銀は10年金利0%(以下同文)。

『A natural starting point for such an analysis is the use of dynamic term structure models that divide yields into two key components - an expectations component and a term premium.』

つーことで長期金利の構成要素を大きく二つに分けて、期待の部分とタームプレミアムに分けて考える、ということのようですな。

・・・・・・・・・でまあアタクシ思うのですが、日銀のYCC政策って「10年金利0%」に関する根拠がどういう物なのかがさっぱり分からんという代物でして、出来上がりの金利がこれというのは分かりますが、じゃあこの0%の構成要素って何なんでしょうかという話も聞きたくなりますし、より突っ込んでみると元々YCC導入した時には「現状程度のイールドカーブを維持するために各カレント銘柄対象の指値オペを実施します」とか言っていた訳で、その当時の説明だと寧ろ「均衡イールドカーブに対する緩和度合い、即ち「実質的な緩和度合い」を一定の範囲内に維持することによって緩和効果を出す」という感じだったのですが、いずれにせよ「この金利が適正」と言った場合の根拠が存在しているように思えない(あるなら出して下さい)のがYCCの弱い所だと思うんですよね。

『The expectations component reflects the average of current and future expected short-term rates over the maturity of the bond. If the pure expectations hypothesis of the term structure were to hold, this would be all that mattered in terms of explaining movements in long-term rates.』

期待の部分は将来の政策金利の動向という教科書的なお話。

『But broad empirical evidence suggests that the pure expectations hypothesis fails to hold true in practice, and that there is indeed a time-varying premium that investors require in order to hold a long-term bond instead of simply rolling over a series of short-term bonds.[4]』

でもそれだけではなくてタームプレミアムの概念が必要ですよということで、ここでのタームプレミアムは「短期債をロールオーバーするのに対して長期債を保有する場合のタームプレミアム(途中での含み損が出る分に対するプレミアムとかそういうことでしょう)としてのお話。

『Monetary policy - and there we are increasingly certain - cannot only influence the expectations component, but also the term premium.』

でもって金融政策でタームプレミアムにも影響与えるそうな。

『Three examples demonstrate this more clearly.』

ほほう。

『First, by changing our key policy rates, we can directly impact the short end of the curve - the footing of the expectations component. In normal times, medium to long-term rates would adjust to the extent that market participants would see a change in policy rates as the beginning of an incremental series of changes.』

『But with short-term policy rates approaching levels closer to zero during the early phases of the most recent easing cycle, this channel had become less effective. Markets - in the belief that rates could not enter negative territory - stopped short of pricing in the degree of accommodation they would normally have expected in the face of downside risks to our price stability mandate.』

『Our decision in June 2014 to introduce negative deposit facility rates restored our ability to steer market expectations and thereby also medium to long-term rates. Indeed, by signalling to the market that policy rates could go below zero, we ultimately succeeded in shifting downwards the entire distribution of future expected short-term rates, thereby providing important additional accommodation.[5]』

政策金利の変更で将来の短期金利の期待に働きかけるのですが、名目ゼロ制約があるとそれ以上下げられないのでそこで短期金利の期待に働きかける力が弱くなります、ということでマイナス金利政策を導入したら効果はばつぐんでした、という説明です。

『Second, and related, by communicating about where we see the economy heading, and by clarifying our ‘reaction function’ - that is, by providing forward guidance - we can directly influence expectations regarding future short-term rates.』

金融政策反応関数を明確化したフォワードガイダンスによって将来の短期金利の期待を変化させる、というお話。

『Forward guidance has served us well and has contributed to keeping the short to medium end of the yield curve well anchored at times when external shocks were threatening to unduly tighten financial conditions.』

『I will come back to this in a minute. But to the extent that forward guidance reduced uncertainty about the future path of interest rates, it has not only affected the expectations component but also the term premium.』

でもってフォワードガイダンスはタームプレミアムも引き下げるそうな。

『Yet, the main channel through which we - and other major central banks - have recently exerted measurable downward pressure on the term premium, and this is my third example, is through asset purchases. We now have a growing body of evidence that suggests that central banks can lower long-term rates by removing duration risk from the market.』

そしてタームプレミアムを下げる本命は資産買入(長期国債買入)であって、市場の長期国債を購入してデュレーションリスクを市場から持って行ってしまえばタームプレミアムが下がる、という話。

『For example, according to ECB estimates, our monetary policy measures have contributed to reducing euro-area long-term risk-free rates by around 80 basis points since June 2014.[6] Asset purchases have contributed significantly to this drop and have therefore been an indispensable tool to create the financial conditions necessary for inflation to move back towards levels consistent with price stability.』

でもって2014年からの買入はユーロ圏のリスクフリーレート(つまりドイツ国債)のタームプレミアムを80bp引き下げましたよ効果がありましたよ、という話をしているのですが、まあ長期金利の形成を基本は市場にゆだねるm、という建付けになるとこういう説明になるのですが、日銀様におかれましては長期金利の直接介入を行うのですから、その長期金利に関しては要因分解とかして説明してくれると先行きの政策がどうのこうのという話も少なくなるんじゃネーノとかイヤミを言いたくなる次第です。

でもって後半が『An assessment of recent long-term yield dynamics』という直近の長期金利の要因分解という話なのですが、時間の関係上以下は明日に続くという事で。


○ちょっとだけ雑メモ

しかしまあ何ですな、今回のトランプあばばばばーの一件がどうなるのか分からんですが、トランプ前に話が戻ってしまう、という事になりますとそれは中期や長期金利が上昇して日銀オペがあばばばばーとなった時期の前まで戻ってしまう、という事になりかねませんよね。

そうなった場合に日銀って追加緩和しなくて良いのでしょうかという話になるのですが、物価目標2%達成に関してどう見ても事実上「出来るだけ早期に達成」を撤回している(だって展望レポートで見通しが後ずれしても追加しないですよね)ので、実際にはオトボケということで推移すると思いますし、そもそも実務的に見てマイナス金利の深堀りをしても別に物価上昇が早まる訳でもないのに弊害はバカスカ出てくるのですから、QE1ちっくな信用緩和的な流動性供給みたいなもの位しか出来ないんじゃネーノというのが現場感覚。まあそうは行ってもマイナス深堀とか言い出しそうですけど。

つーことでですな、まあ今すぐどうのこうのの話ではないのですが、そろそろ頭の体操はしておかないと行けないのかもしれませんね、というメモだけ置いてみた。数か月後に赤面しながら読み直すのかどうかは分かりませんけどね!!



2017/05/17

お題「市場関連雑メモとその他雑談メモ/いまさらですがFSRから少々」

なんつーかいじればいじるほど訳分からなくなるんですが。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170517/k10010984291000.html
大学入試の新テスト 民間業者活用で公正さに懸念も
5月17日 4時42分


○日銀当座預金残高とかオペとか

・日銀当座預金残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/

毎度の『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)』ですけれども。

補完当座預金制度対象先ベースの当座預金座残高は平残ベースで11兆8,720億円増加。

マクロ加算残高の理論値は7,370億円増加。
ゼロ金利適用残高が3兆7,650億円増加。
マイナス金利適用残高は7兆0,140億円増加して残高も28兆6,170億円となりまして、昨年12月積み期間平残の27兆3,046億円を下回った状態が今年に入って続いていたのですが、4月積み期間平残で既往ピークを更新。

都市銀行の計数はいつみても鑑賞物としてお洒落というのも継続していますが、マイナス金利適用残高が増えた所はどこかというのを見ますと、3月積み期間では信託銀行のマイナス適用がどどーんと増えたのが目立ったのですけれども、今回公表の4月積み期間に関してはマイナス金利適用残高が7兆円拡大する中で、「その他準備預金制度適用先」のマイナス金利適用残高が5兆7,730億円拡大していまして、今回の主役(?)はその他準備預金先だったようです。


プラス金利の内使い切れていない分(億円表示)
9月:29,906
10月:20,778
11月:19,224
12月:30,198
1月:22,939
2月:17,178
3月:25,420
4月:12,750


ゼロ金利の内使い切れていない分
9月:101,618
10月:79,931
11月:84,490
12月:111,544
1月:97,012
2月:94,811
3月:130,210
4月:99,930

四半期ごとにマクロ加算の掛け目が変わって増えた後に徐々にそれが参加者の間でシャッフルされるので減るのですが、使い切れない分が概ね10兆円弱で底溜りとなりますな、

あと、補完当座預金制度適用外の人の残高ですけれども、

9月:87,969
10月:88,726
11月:90,493
12月:96,901
1月:97,650
2月:97,186
3月:103,690
4月:107,460

ここの残高が増えるとマイナス金利適用の一種の尻抜けになるのですが、残高が増えているとは言いましても全体の推移からみればまあ問題になるような話にはならないでしょうなと思われます。って何の話をしているんだと言われそうですが、まあここの残高気にするのはたぶん変な人なので気にしなくて良いかなと(定点観測してるんでしつこく見ていますが)。

つーことでマイナス金利適用残高の方はまーた増えて28兆円な訳ですから、そらもう短国の金利はマイナス金利適用の近辺で需給の閾値が発生するっつー話になるじゃろと思いますし、ずーっとそうですけれども都市銀行さんの所のプラス金利とマクロ加算ってぱっつんぱっつんの所まで使っていますから、当座預金残高増えればその分自動的に潰しに来るニーズがあるでしょうなとか思うのでした。まあジャンジャン短国減らして行くのが宜しいかと。


・5年130回^^;

うむ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170516.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)583 583 -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(442億円)、5年利付国債131回(111億円)、20年利付国債151回(11億円)、
30年利付国債23回(3億円)、40年利付国債9回(15億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

昨日が259億円だったので増えているのですが、連続して借りていない分だと多分そっちは何営業日とかいう計算にならないのではないか(そもそも同じ人が借りているかというのもあるので何ともですが)と思うのですが、減ったと思ったら増えるとか何か味わいがありますなあという事でメモメモ。まあここまで来たら1回戻せよという感じですけど。



○こんなん出てます的なので

・中曽副総裁特別インタビューとな

http://www.boj.or.jp/announcements/annai/genba/tanbou/nakaso.htm/
「日銀探訪」特別インタビュー:中曽副総裁

ちなみにこちらは
http://www.boj.or.jp/announcements/annai/genba/tanbou/index.htm/
「日銀探訪」

「日銀探訪」は、時事通信社「MAIN」に連載されている、日本銀行の各課長のインタビュー記事です

とありますように、時事通信さんの時事メインで連載されている物件ですので、こちらの記事も時事メインですと1か月前に出ていたインタビューですな。

でもってこちらは時事通信さんの著作物扱いなのでとりあえずURLだけ貼って置きますから見に行ってちょという事で。


・なにこれ楽しそうなんですけど

こちらもちょっと前から出ていたのですが(汗)、この前リニューアルした貨幣博物館の夏休み子供向け企画ですな。

http://www.imes.boj.or.jp/cm/info/index_summer2017.html

1.夏休みこどもプログラム テーマ展「みんな夢中!昔のお金集め ―お金の図鑑―」
2.ワークショップA「昔のお金のかたちを写しとろう!ー拓本体験ー」
3.ワークショップB「和とじ本をつくってみよう!ーお金の図鑑づくりー」
4.子ども向け展示解説「お金タイムトラベルツアー」
5.小学校低学年向け「クイズ お金タイムトラベル」を配布

つーことでただのご紹介でした(^^)。


○円債市場ネタが相変わらずのアレ状態なのでいまさらですがFSRでも

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr170419a.pdf

・そもそも構造的にアカンという話は分かりますが・・・・・・・・・・・・

FSRの本文を読むのもありますが、巻末のBOXってのがまあ大体今回のFSRの傾向を示すみたいなのがある、というのは出た時に申し上げましたが、

BOX1 生命保険会社のバランスシートの国際比較
BOX2 金融機関の貸出態度と企業の業況の関係
BOX3 地域金融機関の競争激化とその背景
BOX4 地域銀行の不動産業向け貸出について
BOX5 地域銀行の有価証券評価損益と益出し行動
BOX6 地域金融機関間の競争激化と経営の安定性
BOX7 金融機関の経費率に関する国際比較
BOX8 大規模金融機関の大口与信ポートフォリオの類似度の高まり

という風になっていまして、特に3〜7の辺りが基本的に構造要因の話をしているというのが今回のFSRの特徴でして、「構造的に課題が大有り」という話をしているのですな。

・・・・・・とは言いましても、QQE以降金利をバカスカ下げるわとした挙句にマイナス金利政策まで導入して更に金利ビジネスが成り立ちにくくしているというのもこれまたある訳でして、そっちの分析をすると執行部に喧嘩を売るから忖度が入る、などというようなことをしてはそらもうさっきリンクだけした中曽副総裁インタビューが泣くというものですので、QQEやって4年掛かってこの程度の実績しか出ていないのに対して、馬鹿緩和による政策コストの点検というのをもうちょっときっちりとやって頂きたいものだと思うので次回には5年間の総括という事でお願いしたいところです。

でまあだいぶ前(出たばっかりの時)にBOX3とBOX7とBOX8をネタにしたので、まずはBOX6を鑑賞。

『BOX6 地域金融機関間の競争激化と経営の安定性』(PDFファイルだと85枚目からです)ってところから。

『銀行間の競争が銀行経営に及ぼす影響については、方向性が大きく異なる二つの見方がある。第一の見方は、銀行間の競争が銀行経営の安定性を高めるという考え方(competition-stability view)である。これは、銀行間競争により貸出金利が低下すると、借入企業の破綻リスクが低下し、銀行の経営の安定性も増すというメカニズムを重視したものである。第二の見方は、逆に、銀行間の競争が銀行経営の脆弱性を高めるという考え方(competition-fragility view)である。これは、競争激化により銀行の利鞘が縮小した状態が続くと、信用コストの増加など外的ショックに対する損失吸収力が低下するほか、銀行がリスクテイク姿勢を強めることで、銀行経営が不安定化するメカニズムを重視したものである。この BOXでは、いずれの見方がわが国の金融システムにおいてより合致するのかについて、地域金融機関(地域銀行、信用金庫)を対象に検証を試みる。』

寡占状態だったり規制金利みたいになっていて貸出マージンが過大な場合などは競争によって企業の借入コストが下がって、それが企業の収益力の拡大に寄与するので、貸出の利ザヤが減っても与信先の信用力が高まる分与信コストが下がるので銀行経営の安定に資する、というのが最初のcompetition-stability viewですが、現状はどう見ても叩き合いです本当にありがとうございましたという状況だとは思うのですが・・・・・・・・・・・・

『最初に、経営の安定性指標として、各金融機関の Z スコアを計算する(図表B6-1)。Z スコアとは、収益の変動に対する金融機関の損失吸収力を指標化したものであり、スコアが低いほど、経営安定性が低いことを表す57。計測した Z スコアの推移をみると、近年は、景気回復による信用コストの低下や益出しなどを受け、Z スコアは改善しているが、長期的にみると、スコアの低下した地域金融機関が増えている。』

これ図表見ますと足もとで改善しているように見えるのですが、上記にあるように有価証券関連収益と与信コストの低下によるものですが、前回だか前々回のFSRで指摘されていましたように、先行して与信コストの改善した大手銀行を中心に与信コストの改善が頭打ち(これ以上下がらんという状態になっているということですな)になっているので、今後もここの数値が改善するのかというとそれは怪しい。

『次に、金融機関間の競争が経営の安定性(Z スコア)に与える影響を定量的に評価するため、パネル分析を行う。金融機関の直面する競争環境については、BOX3 で計測した、マークアップ(P−MC)を説明変数として用いる。マークアップが Z スコアに与える非線形的な影響を考慮し、マークアップの 2 乗項も説明変数とした。被説明変数は、Z スコアのほかに、その構成要素である損失吸収力(分子)と ROA の標準偏差(分母)も加えた。』

これBOX3の話をしないといけないので話が長くなりますが、BOX3の方にこういう風に説明がありましてですな、

『ミクロ経済理論によれば、企業の市場支配力は、企業の提供する財の需要の価格弾力性に規定される。需要の価格弾力性が小さく、企業が値上げをしても需要がさほど減少しない場合には、その企業は強い市場支配力を持つ。一方、完全競争のように、需要の価格弾力性が非常に大きい場合――値上げをすると、顧客が他企業にすぐにシフトし、値上げした企業への需要が大幅に減少する場合――、企業は市場支配力を有しない。』

『需要の価格弾力性に左右される企業の市場支配力は、一般に、財価格(P)の限界費用(MC)に対する上乗せ幅であるマークアップ(P−MC)として表現できる44。市場支配力があり、競争を優位に維持することができる企業のマークアップは大きいが、市場支配力がなく厳しい競争に晒された企業のマークアップは小さい。』

となっていまして、BOX3の方にはその結果があるのですけれども、マークアップが趨勢的に低下していて、しかもその分散もだんだん小さくなってきていて、個別行ベースでみた場合でも価格叩き(=金利競争)合戦になっている所がドンドン増えているという図になっています。


という状況なので結論は当然のごとく、

『推計結果をみると、金融機関の競争環境を示すマークアップは、Z スコア(とその分母と分子)に対して、統計的に有意な説明力を持つことが確認される(図表 B6-2)。また、推計パラメータからは、@マークアップと Z スコアの関係は逆U 字型であること、AZ スコアを最大化するマークアップの水準は約 1.3(=30.18/(2×11.52))であること、がわかる(図表 B6-3)。地域金融機関のマークアップ(P−MC)の中央値は、1990 年度時点では、Z スコアを最大にする 1.3 近傍にあったが、その後は傾向的に低下している。つまり、金融機関間の競争激化により、経営の安定度は低下しており、近年は、先述した二つの見方のうち、“competition-fragility view”が合致していると考えられる。』

ということなので、1990年時点(ってバブルの天井からちょっと下がりだしたころですがな)までは金融機関の競争激化がマクロ経済へのプラス効果によるポジティブフィードバックになっていたけれどもその後はドンドン叩き合いをやっている、という話を今更言われましてもという感じではあるのですが、直近のQQEとマイナス金利がどの程度これにトドメを刺しに行っているのか、という分析を一つ宜しくお願いします。

そして最後に割と無慈悲な考察が加えられるのでした。

『金融仲介サービスに対する需要減少に直面した金融機関が、収益確保のために、金利を引き下げて需要減少の影響を抑制しようとしたり、リスクテイクを積極化させるのは合理的な行動である。』

うむ。

『しかし、需要減少が、人口減少という継続的でかつ各金融機関にとって共通のショックで引き起こされている場合、過度な金融機関間の競争を通じて、全体として経営をかえって不安定化させるリスクがある。』

そんな事言われましても・・・・・・・・・・・・

『足もとは、景気回復を受けた信用コストの減少や益出しなどを背景に、Zスコアが安定しており、こうしたリスクが顕在化しているわけではないが、競争激化にはこのような負の外部性が作用している側面があるため、マクロプルーデンス面では、潜在的な脆弱性として認識しておく必要がある。』

ちなみに益出しに関してはその1つ上の『BOX5 地域銀行の有価証券評価損益と益出し行動 』の所で記載されていてこちらも興味深いのですが時間の関係で本日はパスしますが、この益出しに関してはこれまた最後の所で、

『足もと、地域銀行の有価証券評価益は全体としてみれば高水準を維持しているが、個別には既に評価益が小さくなっている先もみられる(図表 B5-4、図表 B5-6)。先行き、地域銀行においては、人口減少など営業基盤の縮小から構造的に収益力に下押し圧力がかかるとみられるが、それを有価証券の益出しで補い続けていくことには限界があり、やがてリスクテイク能力も低下していく可能性が考えられる。』

とこれまたあちゃーな考察がありまして、中々こう情け容赦のない分析結果となっております・・・・・・・






2017/05/16

お題「しかしまあネタらしいものが無い相場で困りますがなという所で金曜の謎ネタの続き」

ほう。
http://jp.reuters.com/article/may-empire-state-idJPKCN18B1TB
Business | 2017年 05月 16日 01:11 JST
米5月NY州製造業業況指数-1.00に低下、昨年10月以来のマイナス

○市場雑談メモ

・いやしかしまあ活力が無いというか・・・・・・

ロイターニュースの題名ワロタ
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1IH268
Markets | 2017年 05月 15日 15:57 JST
〔マーケットアイ〕金利:新発10年346回債が0.04%で出合う、出来高は数十億円程度か

イブニングに入ってやっと10年カレントがBBで出合ったのですが、その前のクロージングの時のコメントがこうでしたからにゃあ。

『<15:08> 国債先物は小幅続伸で引け、新発10年346回債は取引成立せず

国債先物中心限月6月限は前営業日比2銭高の150円68銭と小幅続伸して引けた。前週末の米債高を受けて買いが先行。北朝鮮による弾道ミサイル発射などで、リスク回避的な流れも意識された。前週末からのリバウンド相場が続いたが、週明けで手掛かりに欠け、買い一巡後はこう着感が強い相場展開となった。現物市場は閑散。超長期ゾーンは短期筋によるショートカバーの動きが入り、しっかり。一方、16日に5年債入札を控える中期ゾーンは上値の重い展開。新発10年346回債は午後3時05分現在、取引が成立していない。取引の未成立は5月1日以来。』(上記URL先より)

つーことでまあ昨日は輪番も入札も無かったので元々取引が活発になるネタが無いというのはありますが、しかし月曜とはいえ月のど真ん中だというのに何たる事と思ってしまう訳でして、誠に遺憾の極みではございます。

物価の方があまり上がって来なくて出口の展望どころの話ではない(正当に2%が見えてきて出口になるんじゃなくて、定義を誤魔化して大勝利宣言をするというインチキ出口をするにしても物価水準が1%に届いていないのに大勝利も蜂の頭も無い訳ですから)という状況が続いて、YCCによる国債買入のストックはせっせと増えていく、という状況がこのまま継続すると益々こんな状態になっていく(まあ今の時点でも大概ですが)のでしょうなあと思うとどよよーんとなってしまいます。


・5年130回徐々に解消モードですかそうですか

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170515.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)406 406 -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債127回(130億円)、5年利付国債130回(259億円)、20年利付国債156回(16億円)、
物価連動国債16回(1億円)です

「5年利付国債130回(259億円)」ということで1000億円レベルでのロールが延々と続いていたのですが、先週末から今週に入って、つまり約定ベースでは先週の前半位からという感じだと思うのですが、徐々にSLFでカバーされていたショートをせっせと買い戻すようになってきたようで(130回は強いビットとかあったみたいですし)、フェイルとかバイインとかは見ることもなさそうな感じになって参りましたな。

まーしかしこれよくもまあ延々と引っ張ったなあという感じでして、別に人の懐の話だから知らんがなではあるのですが、こんなにレポコスト延々と払う位なら早めにコスト払ってロングショート解消した方が良かったんじゃないのという気もするのだが人様のお家の事情は良く分からん。


○ウィリアムスさんのプライスレベルターゲットの話続きだが・・・・・・・・・

http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2017/may/preparing-for-next-storm-reassessing-frameworks-strategies-in-low-r-star-world/
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Preparing-for-Next-Storm-Reassessing-Frameworks-Strategies-in-Low-R-Star-World.pdf

PREPARING FOR THE NEXT STORM:
REASSESSING FRAMEWORKS & STRATEGIES IN A LOW R-STAR WORLD

先週末にネタにしたのですが、プライスレベルターゲットに関する説明がやっぱりこうホンマカイナ感がぬぐえない説明になっているのですけれども、まあこういう考えも存在するのかという話でもありますし、あと多分なんですけれども、今の政策フレームワークで必ずしも上手くいっているとも言い難い、とか考えているのかなあとか、まあ色々と妄想は沸き起こるのですけど。

金曜の続きで『Price-Level Targeting and Low R-star』という小見出しの所から。

『If you look at natural interest rates across the globe, you’ll find something they have in common: In country after country they’re at historic lows. What’s more, they appear poised to stay that way as trends pushing the natural rate lower are unlikely to reverse anytime soon.7 To put this in perspective, the weighted average of natural rates in Canada, the United Kingdom, the United States, and the euro area currently stands around 1/4 percent. That’s more than 2 percentage points below the average natural rate that prevailed in the two decades before the financial crisis (Figure 4).8』

金融危機以降自然利子率が下がってきたというお話はまあこれは誰もが指摘する話なのでここまでは分かる。

『Why is price-level targeting well adapted to a low r-star world? If price growth is a little lower than target, say, during a downturn, the central bank aims to get the price level back up in the years ahead-and vice-versa. Baked into its very design is a “lower for longer” policy prescription in response to sustained low inflation.9』

自然利子率がさがっているような状態で、物価水準が目標を下回って推移するような世界においては、通常の前年対比の増加率でのインフレ目標よりも「水準目標」にして置くことによって、途中で遅れている分を取り返す、という必要が政策フレームワーク上存在するので、より緩和的な政策を長期間継続する必要が出てくる、という事になりますよと。

『This helps support the return of the price level to the desired level and anchor inflation expectations even when interest rates are constrained at the lower bound.10』

従って金利の下限制約に引っ掛かった時にも時間軸効果のようなものが出てくるので緩和の効果が出せますよ、という話をしている訳ですな。

『This aspect of price-level targeting can be seen by comparing the prescriptions of a standard Taylor (1993) rule to one adapted to a price-level framework.11 Figure 5 shows the prescriptions for these two policy strategies for the years 2005?2016, where 2005 is chosen as a starting point because this is generally viewed as a year that the economy was close to its goals in terms of inflation and the unemployment rate. For comparison, the actual federal funds rate is shown by the black line.』

図表5ってのはHTMLの方だったらクリックすれば出てきますし、PDFなら文末の表に出ていますけれども、標準的なテイラールールで計算すると足元(2016年まで出している)の適正FF金利って無茶苦茶高い所にある(4%とか)のだが、プライスレベルターゲットのルールだと現在のFF目標と似たところになります(キリッ)って話をしています。ちなみに標準テイラールールとプライスレベルターゲットからの推計FFレートが乖離しだすのは2011年辺りからになるようです。

『Under this price-level strategy, the federal funds rate responds one-for-one with movements in: the inflation rate, the percent deviation of the price level from the target level, and the negative of the percentage point deviation of the unemployment rate from its natural rate. For these calculations, I have assumed a constant natural rate of interest of 2 percent and a constant natural rate of unemployment of 5 percent, consistent with standard views on these natural rates at the start of this sample.』

自然利子率2%、自然失業率5%で計算したらこうなりましたよ、という事のようですが、そもそも自然利子率の推計とか自然失業率の推計に推計誤差がある(というかそもそも論としてその数値自体が見えない数値でもある)ので、こんなんそれらしい結果が出る数値にしておけば標準テイラールール対比でこっちの方が優れてる的なの出せるじゃろという気がだいぶするので何ともかんとも。

後の方でも別にこの話は今の金融政策に対してタカ派ハト派とかそういう話をしている訳ではありませんって説明しているのですが、ただまあこのウィリアムス総裁の説明を見ると、単にインフレーションターゲッティングで2%行けば良いというのではなく、その前に物価目標に未達だった時期に足りなかった分を取り戻すという発想のプライスレベルターゲット政策枠組み、という話をおっぱじめているという点ではやはりハト的なアプローチなんじゃないのかねえとは思ったりもします。基本最近のウィリアムス総裁は正常化路線に向けたタカ派ちっくな話をしていたので、ここでのプライスレベルターゲットの話はやはりちょっとアプローチを変えてきている可能性を秘めているとは思います。


次の小見出し『Price-Level Targeting and Accessibility and Accountability』ですが。

『So there are clear benefits to this framework when it comes to adaptability. How about accessibility and accountability?』

ってそもそもadaptabilityがホンマカイナという感じですが。

『In terms of accessibility, a price-level goal is easy to explain and is in some ways a more natural way for the public to think of price stability than an inflation target.』

と、思いっきり説明しやすいし分かりやすい、と断言の巻。

『A price-level target provides greater clarity on where prices will be 5, 10, and 30 years into the future, time horizons that people think about when buying a car, a home, or planning for retirement. This should lend itself to greater transparency and clarity for the public-especially when interest rates are constrained by the lower bound.』

前年対比のインフレ目標よりも物価水準目標ならば将来の物価水準がより分かりやすい、というお話なのですが・・・・・・・・・・・・・

『The same logic holds true for accountability. A price-level regime would provide a clear and accessible metric by which to judge whether the central bank is successfully delivering on its price stability mandate by looking at whether the price level is near its stipulated goal.』

物価水準目標であれば、前年比インフレではなくて物価水準に対して足りているのか足りていないのか、という観点から金融政策の先行きが読めるので、より政策反応関数が分かりやすい、という話をしているのですな。

このプライスレベルターゲットって時々出てくる話で、以前も米国でプライスレベルターゲットの観点からインフレ目標の前年比2%じゃ足りないから4%にしろみたいな話が話題になって(良く言ってたのはブランシャール)、その時はイエレンさんが割と簡単に一刀両断していたという記憶が思いっきりあるのですけれども、プライスレベルターゲットの弱点って、目標対比でショートになった物価状況がある程度以上続いてきて、目標対比の乖離が大きくなって来た場合に、政策枠組みに対する信認問題に発展する点でして、かつ乖離を埋めに行こうとして、実質的にインフレ目標の上方修正を行う事になった場合に、インフレ期待が不安定化するのではないか、という指摘もある訳ですよ。

つまり、このプライスレベルターゲットってそれこそ中央銀行の宣言によってフォワードルッキングにインフレ期待が変わってくれる、という話を暗黙の前提にしている所があって、それがワークするのかどうかというのはまた別問題だからこそ、ちょっと話に無理があるという気がするのだ。

『And as the examples I discussed attest, this is not a “dove” or “hawk” issue: a flexible price-level framework is well suited for achieving both price stability and employment goals. In the 1960s and early 1970s, a price-level framework would have called for tighter monetary policy, and thereby avoided the stagflation of the late 1970s. In recent years, it called for easier monetary policy than a standard Taylor rule.』

ということでさっき申し上げた「別にこの話は今の政策に対するハト派とかタカ派とかいう話ではない」と修正テイラールールの一つの考え方としての話をしている、ということなのですけれども、足元でプライスレベルターゲットを打ち込んで来れば、それはどう見てもハト派的な金融政策運営になると思いますので、まあちょっと最近のウィリアムス総裁からするとちと変わっているな、とは思うのでありました。


#という虫干しネタでどうもすいません







2017/05/15

お題「短国買入とかSLFとか/原田審議委員の謎理論/この日銀レビューは中々面白いと思う」

うむ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO16373880U7A510C1NN1000/?dg=1
北朝鮮包囲網に衝撃 ミサイル発射、対話機運に不透明感
2017/5/15 0:13日本経済新聞 電子版

○オペ関連メモメモ

金曜のオペ結果(の一部)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170512.htm

国庫短期証券買入 32,119 10,001 0.001 0.002 97.5
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 884 884 -0.500 -0.500

つーことでまず短国買入ですが、先月末に減らしますよ〜と言っていたレンジの下限まで買入減らすという事になりますと7500億円だったのですが、1兆円でオファーしてきたのは足もと短国の需給が重めな中でそこまで無茶せんでええじゃろという事だと思いますが、応札は3.2兆だし引け甘の結果ということで引き続きやや重いようで。

つーても毎度申し上げておりますように、超過準備マイナスチャージとの比較のラインに来ればマイナス食らっている超過準備との裁定が働いてくるので、まあこれに関しては金利が▲10bp近辺の所に閾値があって需給がいきなり変わって来ますから、そういう意味ではそこまで懸念する話ではありませんけど、まあ相変わらずの日銀依存モードではあるものの、方向性として徐々に日銀の買入を減らす(そもそもMBの帳尻以外での短国買入の必要はないのだから)というのは継続しておりますので、まあ絶賛日銀依存症抜きモード中ということで、日銀ドーピング抜き中なのでその中では重くてしんどいとかそう言う事も起きますな。

でもってSLFですが、
(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
2年利付国債355回(399億円)、5年利付国債126回(29億円)、5年利付国債130回(430億円)、
10年利付国債319回(25億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

ということで5年130回のSLFがまた減って430億円まで落ちてきました。そらまあこのまま行きますとフェイル→バイインコースになってなってしまいますから買戻ししないとイカンですがなという所ですから当然ちゃあ当然ですが、ここまでよくもまあ▲60bp引っ張ったなあとも思います。

まー5年130回はちょっと各種市場要因が重なった(5年130がカレントの時に中期輪番スキップ事件とかありましたからねえ)というのはあったと思いますが、日銀の買入がこのまま続きますと、リオープン形式になっていて、カレントにヘッジ売りが入りやすい(というかそこしか売れないでしょうし)中長期国債に関しては、カジュアルにこういうケースも起きる事が増えても不思議ではありませんな。まーその前に参加者がいなくなってカレントのショートをたくさん取るとかそういうアクティブな人がいなくなる可能性もありますが(−−;

ちなみに2年債ってリオープン形式じゃないので、カレントヘッジでショートとかしているとうかうかすると買戻しできなくなるという問題点があり、しかも2年債ですから同じレポコストでもイールドに引き直せば大きくなってしまいますし、流動性供給入札でも短い所は出て来ないのでうっかり大量ショートとかしたら死亡確定なので、入札ヘッジを現物では入れにくい、と来ておりますが、2年債に関しては毎度毎度ですが、新発の入札の所だけは既発対比で甘い所じゃないと基本入札が決まらない、という形になっている、という図になっていまして、日銀の国債買入がこの調子でいつまで経っても続いて、中長期国債に関しても事前にショートをし難くなってきますと、2年債の入札みたいな事になってくるのではないかと思われますな。すなわち「普段は日銀買入で金利を抑えることができても、入札の時には実力が出てしまう」という図でして、国債発行当局的には痛い事になるのじゃないのかなあとも。


○ジンバブエ大先生発言のヘッドラインが流れてきていたのですがこれはマジデスカ

http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
6/ 1(木)10:30 ○【挨拶】原田審議委員(岐阜)

ということで大先生の金懇が岐阜で実施されるようですが、岐阜県経済界の皆様におかれましては貴重な時間をこんなものに費やされてしまうとか御愁傷様としか申し上げようが無い訳でして、どのくらい御愁傷様なのかと言えば金曜にヘッドラインが飛んでいて中々いい感じで呆れたのでメモメモ。

えーっとですね、
http://jp.reuters.com/article/boj-harada-idJPKBN18815O
Business | 2017年 05月 12日 18:40 JST
日銀、出口戦略は極めて慎重に進めるべき=原田審議委員

『[東京 12日 ロイター] - 日銀の原田泰審議委員は12日、都内で開かれた一橋大学主催の金融政策関連シンポジウムに出席し、超金融緩和政策からの出口には「極めて慎重に」なるべきとの見解を示した。同委員は「出口を遅らせると負担が生じる可能性があり、早期の実施についても同様だ」と述べた。インフレ率は様々な要因で振れるため、物価動向の見極めには時間をかけるべきとの見解を示した。原田委員は、失業率が2.8%まで低下しても物価上昇は加速しておらず、雇用拡大のインフレへの影響については不透明と指摘。「インフレ率の基本トレンドを理解するのは難しい」とし、インフレが一定のペースで加速しただけで日銀は緩和策を解除することはできないと述べた。』(上記URL先より)

というロイターニュースを見ると別にふーんで終わってしまうのですが、金曜日はブルームバーグニュースのヘッドラインが出ていてそっちで結構のけぞった方が多いと思うのですよね・・・・・・・・・・・・・

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-05-12/OPU0QN6KLVR601
原田日銀審議委員:「インフレ税」に前向き、現金違法取引への課税に
日高正裕
2017年5月12日 18:54 JST

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、中央銀行の人がインフレタックスって堂々公言して良いのかねと思ってしまうのですけれども、しかもその理由が斜め上過ぎて酷い理屈で、これ本当に本人が発言をしたのか疑いたくなるレベルの話をしておりますが・・・・・・・・ということで以下上記URL先の記事を拝読する。

『原田委員は、「日本では赤ん坊を含む国民1人が保有する現金が80万円に達し、4人家族なら一家に240万円のもの現金を保有していることになる」とした上で、「これは多過ぎる。その一部は違法取引に利用されていると思う」と指摘。』(上記ブルームバーグニュース記事URL先より、以下同様)

まずこの時点で( ゚д゚) って感じですが、

『貨幣価値を低下させるインフレ税は「違法取引に対する税金でもあり、その意味ではインフレ税は良いかもしれない」と語った。』

インフレタックスが「違法取引に対する税金」ってそらまた随分と筋の外れた話をしている訳で、インフレタックスって経済全体に対する実質的な課税であって、「違法取引に対する」とか話が無茶苦茶にも程がある訳で、部屋の中でゴキブリ見つけたから退治する為に核ミサイル撃つ位の話なんですけど。

『インフレで通貨の価値が低下すれば、国債の価値も下がり、政府の債務負担は実質的に軽減される。原田氏は「財政赤字が累積したのはデフレのせいであり、デフレをインフレに変えることができれば、名目GDP(国内総生産)が増えるので、財政赤字問題を解決することができる」と主張した。』

これがまた酷い説明で、インフレになったら財政支出だって増えるんですし、大体からして国債発行残高がこれだけ多くて、利払い費もある国の借換債の利払いが増える訳ですから、フローの支払いは増える話です。それに「インフレで通貨の価値が低下すれば、国債の価値も下がり」って説明していますが、2ケタとか3ケタのインフレでもするならそら債務負担は一気に減るでしょうが、2%のインフレで実際どうなるのかとかちゃんと計算して言っているのか不思議ですし、だいたい中央銀行の人が「通貨の価値が低下」だの「国債の価値が低下」だの日銀法1条とか2条的にどうなのよと思うのですが。

『日銀の金融政策については「量的・質的金融緩和は素晴らしい実績を残した」と称賛。財政赤字の対名目GDP比率は既に低下しており、「日本の財政赤字問題はある程度解決した」と述べた。』

>「日本の財政赤字問題はある程度解決した」
>「日本の財政赤字問題はある程度解決した」
>「日本の財政赤字問題はある程度解決した」

・・・・・・・・・・????????????????

『一方、インフレ率が日銀が目指す2%に上昇すれば、「長期金利は2%以上、たぶん3%近くに上昇する」と指摘し、中期的に財政赤字を解決する良い方法ではあるが、長期的にはその効果は低減するとも語った。』

えーっと、インフレ率が2%に上昇したら長期金利が3%近くに上昇とのことですが、その時にYCC政策ってどうなっているのでしょうか、というかだったら出口政策について何らかの考えがあるんですかという事ですが、さっきのロイターの方だと「慎重」とかワケワカラン次第でして、まあ以前よりこの大先生の理論が色々とおかしい話はネタにしておりましたが、日銀に入ってもこの調子で全然「進化」しない(置物師匠の「進化」ぶりと比較すると目を見張るものがありますな)というのはある意味信念の人なのですが、何かこう訳のわからんアナザーワールドに入り浸ったまま帰ってこない人とも言える訳でして、幾らリフレ派で執行部に賛成するマシンが必要と言っても、日銀政策委員として必要最低限のクオリティというものはあるのではないでしょうか、と思うのでした。


○色々と考えるネタとして面白いレポートが日銀から

金曜にこんなの出ていました。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2017/rev17j07.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2017/data/rev17j07.pdf(本文)
わが国家計の金融資産選択における行動特性

概要の「要旨」および本文の冒頭部分にある要旨部分から。

『わが国では、家計の金融資産の大半を現預金が占めるという状況が続いている。2000年代以降、運用・貯蓄目的の金融資産をリスク性資産に振り向ける世帯は緩やかな増加傾向にあるが、リスク性資産の非保有世帯が今なお多数派を占めている。家計のリスク性資産投資を妨げる要因は実務・学術双方から様々指摘されているが、本稿では、『家計の金融行動に関する世論調査』を用いて、現預金集中からの脱却を難しくしている家計の行動特性について改めて検証した。』

ほほう。

『リスク性資産投資への抵抗感や生活設計の不十分性といった家計の行動特性を把握することは、今後の資産運用行動の変化を占ううえで有益である。また、制度見直しや商品提供のあり方のほか、金融教育の方向性を考えるうえでも重要な視点を提供するものである。』

ということで、本文からちょいちょい引用しますが割とオモロイ。

まずは『はじめに』から。

『こうした現預金中心の資産運用は、家計にとって合理的なのだろうか。一般に、安全資産とリスク性資産をどう配分するかという金融資産選択は、家計にとって難解な問題である。最適な資産配分は年齢に応じて変わり得るが、理論的にもその回答は一意に定まらない。』

ほほう。

『長期にわたって労働所得を獲得できる若年層は、リスク性資産をより多く保有すべきという議論もあれば、老後の生活資金を確保するために、若年層はむしろ安全資産をより多く保有すべきという正反対の議論もある1。


実はここのところにも示唆があるような気がしまして、そもそも「長期にわたって労働所得を獲得できる」という部分に対する認識って例えばアタクシのようなオサーンが若年層だった頃と今って全然違う訳でして、その部分はリスク性資産云々というよりは貯蓄性向の方に現れるのでしょうなあとは思う次第。

ちなみに脚注1は

『1 家計の金融資産選択については、次の論文を参照。塩路・平形・藤木 [2013]、「家計の危険資産保有の決定要因について:逐次クロスセクション・データを用いた分析」、日本銀行金融研究第 32 巻 2 号 63-103 ページ。』

ですがさすがにそこまで読んでいないので良く分からんです(汗)。

『そこで本稿では、『家計の金融行動に関する世論調査』を用いて、わが国家計の金融資産選択の現状について考察する。同調査は、金融広報中央委員会が 1963 年から年に 1 回実施しているサーベイであり、無作為に抽出した 8,000 の二人以上世帯を調査対象としている。2007 年からは、2,500の単身世帯に対する調査も実施している。金融資産の保有目的や選択動機、貯蓄性資産(現金・流動性預金など決済目的以外の金融資産)の保有状況について、定量的、定性的な調査が行われている。』

凄いデータですな。

『家計の金融資産選択は古くからある議論であるが、わが国の家計がリスク性資産の積み増しに慎重である背景について、サーベイを用いて改めて検証することが、本稿の目的である。』

ということで本論になりますが、まあ詳しくは上記レビューは図表込みで全部で6ページというシンプル版なので是非ご覧ありたしという感じではあるのですが、ちょっとだけ鑑賞してみますね。

『投資家層の拡大』って所から。

『投資家層の拡大が続く背景のひとつに、家計の資産選択基準の変化が挙げられる。わが国では、1990 年代後半にかけて金融システム不安が高まるなかで、家計が金融資産を選択する際に、収益性よりも安全性・流動性を重視する傾向が一段と強まった(図表 3)。その後、金融システム不安が後退し、低金利環境が長期化していくなかで、安全性・流動性を重視する傾向に歯止めがかかり、収益性にも徐々に目が向けられるようになっている。』

へー。

『収益性を重視する世帯は、それ以外の世帯に比べてリスク選好が強いという特徴がある。金融資産選択にあたって収益性を重視する世帯はその61%がリスク性資産を保有しているのに対し、安全性・流動性を重視する世帯では 28%に過ぎない。』

なるほど。

『また、収益性を重視する世帯は、株式や投資信託をはじめとする様々な金融商品への関心が相対的に高く、家計部門によるリスク性資産投資の牽引役となっている(図表 4 上図)。これは、安全性・流動性を重視する世帯が、預貯金や保険・年金など、元本保証や利回り保証の付いた金融商品を選好し、リスク性資産にはほとんど関心を示さないことと対照的である。』

そらそうよ。

『この間、投資経験の蓄積も進んでいる。1980 年代末の資産バブル崩壊、1990 年代後半の金融システム不安、2001 年の MMF 元本割れ、2000 年代後半の世界的な金融危機など様々なリスク・イベントを経て、相場の急落による元本割れを経験したことのある世帯は増加傾向にあり、貯蓄性資産保有世帯の 30%を超す。』

ほう。

『いったんリスク性資産投資を始めた世帯は、その後、相場が悪化し含み損を抱えることがあっても、リスク性資産投資から撤退することは稀である。』

お、おぅ・・・・・・・・・・

『また、リスク性資産を積み増すことを検討している世帯も少なくない(前掲図表 4 下図)。このように投資経験を積んだ世帯の増加も、安定的な投資家層の形成に寄与している。』

まあ相場の肥やしかも知れませんが(涙)。

『収益性の重視と投資経験の蓄積を背景とした投資家層の拡大は、単身世帯においてより顕著である(前掲図表 2、3)。単身世帯は、二人以上世帯よりもリスク選好が強く、特に若年層は、金融資産選択にあたって収益性を重視する傾向が強い。』

『昨今、単身世帯は増加傾向にある。こうしたリスク選好の強い単身世帯の増加も、投資家層拡大の一端を担っている。』

なるほど。

『もっとも、貯蓄性資産の保有世帯におけるリスク性資産の保有世帯比率が上昇しているとはいえ、二人以上世帯の34%、単身世帯の48%であり、非保有世帯がなお多数派を占めている。金融商品別の保有世帯比率をみても、もっとも保有世帯比率の高い株式でも 30%に届かず、投資信託は 20%にとどまっている(図表 5)。』

だそうな。


とはいえ、その後に『リスク性資産投資の伸び悩み 』という小見出しがありまして、

『こうしたわが国の状況(引用者注:リスク性資産の保有が伸び悩んでいること)に対し、リスク回避的な国民性、非流動資産である不動産の保有に伴う流動性制約、不十分な金融教育など、様々な仮説が提示されてきた4。いずれもわが国家計の金融資産選択の特徴を捉えたものであるが、その説明力についてコンセンサスは必ずしも得られていない。以下では、@リスク性資産投資への抵抗感、A生活設計の不十分性、Bリスクテイク行動の変化、という観点から、今なおリスク性資産投資が伸び悩む背景について考えてみたい。』

体感的には住宅のせいじゃろと思うのですが、次の『リスク性資産投資への抵抗感』にはこんなのが。

『先行研究でも指摘されているとおり、わが国家計の慎重な投資行動の背景のひとつに、株式投資の収益性の低さが挙げられる。1995 年以降のTOPIX の株価パフォーマンス(前年比ベース)をみると、米国の S&P500 を大きく下回っている(図表 7)。過去 20 年間、TOPIX は、平均的に値下りすることが多かったが、この点は、平均的に値上りすることの多かった S&P500 とは対照的である。』

これはそうだと思う。じゃあ時価総額どうなっているのかという話は某師匠の受け売りになるからスルーしますがどうにもこうにも。

『生活設計の不十分性 』では、生活設計に関する話が面白い。

『生活設計を立てている世帯であっても、その想定期間に老後まで含めている世帯はごく少数である。若年層ほど、先行きの想定期間が短く、20歳代の半数は先行き 5 年程度しか考慮していない。年齢を重ねるにつれて想定期間は徐々に長期化していくが、60 歳代の平均想定期間はなお 10 年程度である。65 歳の平均余命が 21.9 歳であることを踏まえると、十分な想定期間とは言いがたい。また、65 歳の平均余命が過去 20 年間で 2.5 歳長期化し、今後も長期化する可能性があることを踏まえれば、より将来まで見通した生活設計が必要になると考えられる。』

『こうした想定期間の短さは、遠い将来の事柄をどれだけ重視するかという、時間選好率の違いから生じる。具体的には、住宅ローンや子供の養育費など、目先の事柄は真剣に検討する一方、老後の生活費や年金・保険の受給額など、将来の事柄に対する検討が結果として後回しになるような状況を指す。生活設計の有無と金融資産構成との関係をみると、生活設計を立てている世帯では、それ以外の世帯に比べ、どの年齢階層においてもリスク性資産の保有比率が高くなる傾向がある(図表 10)。こうした傾向は、生活設計の想定期間が長いほど顕著である。生活設計を立て老後の生活を具体的にイメージすることが、現預金集中からの脱却に向けた一歩になると考えられる。多くの金融機関が提供している生活設計のためのシミュレータは、その一助になるであろう。』

ということなのですが、まあそれ以前の問題として「生活設計立てようにも将来の雇用や年金などの不安が大きい」というのがあって、それが保守的な金融資産選択に影響するのではないでしょうか、というのは体感的にはあるのですが、このレビューの範囲を超えるのかもしれませんけれども、将来不安に関するファクターが貯蓄投資行動に影響する話というのが欲しいなあとは思うのでした。

ちなみに全文読むと大変に面白いのでお勧めしておきます。









2017/05/12

お題「市場メモ/SF連銀総裁のプライスレベルターゲット政策に関する謎アプローチ」

こんなニュースがあるのだが
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-dudley-balance-sheet-idJPKBN1871HE
Business | 2017年 05月 11日 20:42 JST
米FRB、バランスシート縮小は慎重に行う=NY連銀総裁

講演の方は
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2017/dud170511
Benefits and Challenges from Globalization
May 11, 2017
William C. Dudley, President and Chief Executive Officer
Remarks at the Bombay Stock Exchange, Mumbai, India

って話で、金融政策の話ではありませんでした。残念無念。

なお、モーサテにまーた白井さんが出ているのだが「その話は在任中にやれ」以外の感想が無いので殆ど聞く気が起きない。


○市場メモメモ

・短国とか

昨日の3M
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170511.htm

(3)募入最低価格 100円03銭1厘0毛(募入最高利回り)(-0.1243%)
(4)募入最低価格における案分比率 29.2550%
(5)募入平均価格 100円03銭3厘1毛(募入平均利回り)(-0.1327%)

その前の6Mが▲13.82/▲13.02で連休の合間の3Mが▲13.95/▲13.03でしたので若干金利上がりましたなという感じですが、引けの方は平均位の所で引かせているのでボコボコという訳でもないのでしょ。

今月の受渡ベースの短国買入が4/28、5/2とあって5000億円×2で入って来ていて、一方で償還額に関しては、
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/index.htm/
日銀当座預金増減要因(見込み)の今月分にあるように5.57兆円の償還、

前月末の買入短国残高が
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額の4月末分にあるように31兆6,644億円ですが、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170428c.pdf

3.国庫短期証券の買入れ
金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、5月末の残高を29〜31兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。

となっているので、2.5兆円減で考えると今月あと3回短国買入があるので残り2兆円買えばレンジの下限ですが、下限まで減らしに行くなら今日の短国買入が7500億円とか(1年短国の入札週と6m短国の入札週を増額すると思うので)になるんですかねえ、1兆円なら出来上がり買入が今月3.5兆円の買入で残高が2兆円減って29.6兆円になるのですけど。

まあしかし短国に関しては時々ニーズが強まって確りするのですが、日銀の買入残高が減る傾向にある中ではそんなに金利下がらんという状態となりますけれども、何分にも国内短期市場における資金取引的な意味では▲10bp水準とかGCレート水準とかに金利上がってくれないと話にならないですし、そうなったらまあ買いは湯水のごとく湧いてくるんでしょうから、そんなに波乱になる話ではないと思うのですが定期チェックの如くメモをするのでした。


・5年130回のSLF

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170511.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)771 771 -0.500 -0.500

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
2年利付国債361回(116億円)、2年利付国債369回(50億円)、5年利付国債127回(15億円)、
5年利付国債130回(513億円)、30年利付国債19回(16億円)、物価連動国債16回(1億円)、
国庫短期証券676回(60億円)です。

ということですが、ちと昨日ネタにし忘れておりまして誠に恐縮なのですけど、

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170510.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4) 821 821 -0.600 -0.600

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債126回(22億円)、5年利付国債127回(60億円)、5年利付国債130回(569億円)、
10年利付国債346回(168億円)、20年利付国債61回(1億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

となっていまして、9日(中期流動性供給入札銘柄の発行日、と言っても130回は殆ど追加発行されませんでしたが)の5年130回のSLFは1078億円と相変わらずな出方だったのですが、ここにきてSLF半減キタコレということで玉が出たのか頑張って戻したのかは知りません(他人事なので当たり前)が、さすがに無限SLFって訳にも行かない(というかバイインの刑になる)ですから少し調整入っているんかいという所でこれまたメモメモでした。


・30年入札はまずまずでもスティープ風味とな

http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1ID2GW
Markets | 2017年 05月 11日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続落で引け、長期金利は1カ月ぶり0.050%に上昇

『<15:09> 国債先物が続落で引け、長期金利は1カ月ぶり0.050%に上昇

国債先物中心限月6月限は前日比10銭安の150円58銭と続落して引けた。前日の米債安を受けて売りが先行。日経平均株価がしっかりと推移したことも短期筋の売りを誘った。事前に警戒感があった30年債入札は無難な結果となったが、結果発表後に買い進む動きが見られず、一時150円51銭と4月10日以来の水準に下げ幅を広げた。現物市場は長期・超長期を中心に軟調。同ゾーンは30年債入札結果発表後に短期筋から調整売りが出たが、一方でプラス金利の超長期ゾーンに一部国内勢からの押し目買いも観測された。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp高い0.050%と4月10日以来の水準に上昇。』(上記URL先より)

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170511.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 2兆4,221億円
(2)募入決定額 7,225億円
(3)募入最低価格 99円45銭(募入最高利回り)(0.822%)
(4)募入最低価格における案分比率 79.0333%
(5)募入平均価格 99円54銭(募入平均利回り)(0.819%)

ということでテール3糸で足切も事前より若干良かった(つーてもそもそもが警戒モードであまり強いプライストークでは無かったみたいですが)のですが、やはりこう入札の所でそれなりに投資家のアクティビティが無いとその後ワッショイとかあばばばばーとかいうことにならなくて、そうなると入札後相場を業者だけでホイホイ持ち上げる程の元気がある相場でもないのでヘロヘロ化するという所なんですかねえ、良く分かりませんが。

第U非価格のお時間に新発超長期金利上昇しちゃってましたので第U非価格はボウズになっておりましたな、ナムナム。

まー超長期の後ろは輪番が発行対比でやや少な目(というか長期とかの輪番の買い方がおかしいのですが)になっているのでどうもこういう感じになるのでしょうかねえ、とか言ってたら輪番とかで吸収されるとサックリ確りするかも知れませんから良く分からんとしか申し上げようがございませんが、いずれにせよちょっと膠着感強めてしまっているので、オペと輪番で相場形成と言ってもそこに向けて相場を作るほどのパワーも無いような感じになっているような気はします。と今週1週間GW明けなのに相変わらずのアクティビティに見える債券市場ちゃんを斜に見ておりまして思うのでした。はい。


○ウィリアムスSF連銀総裁講演ネタ(ただしちょっとだけで勘弁)

URLが長い・・・・・・・
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2017/may/preparing-for-next-storm-reassessing-frameworks-strategies-in-low-r-star-world/
http://www.frbsf.org/our-district/files/Williams-Speech-Preparing-for-Next-Storm-Reassessing-Frameworks-Strategies-in-Low-R-Star-World.pdf

PREPARING FOR THE NEXT STORM:
REASSESSING FRAMEWORKS & STRATEGIES IN A LOW R-STAR WORLD

つーお題でして、「low r-star world」って自然利子率の低い世界でどうのこうのというお話なのでまあちと斜め読みなのですが、時間と量の関係で今日成敗がきちんとできないのでさわりの所だけ少々メモしておきます(補足は後日)。

・インフレ期待のアンカーという意味でのプライスレベルターゲットに関するお話

『First Principles』って小見出しのケツの所に、

『Underlying constants like potential GDP, the natural rate of unemployment, and the natural rate of interest are not really constant: They change over time in unpredictable ways. Monetary policy has proven most successful when it has been able to account for these changes. 』

ってことで、潜在成長率や自然利子率が低下している中では金融政策運営の枠組みにもそれに応じた変化が必要、ってな話をしていまして、その次が『Price-Level Targeting and Anchoring Inflation Expectations』って小見出しなのよ。

『Although the natural rate of interest is the topic du jour, the challenges for monetary policy to adapt to uncertain and changing natural rates is not new. In a series of research papers, Athanasios Orphanides and I investigated the design of robust monetary policy strategies that can succeed in the face of real-world uncertainties, including about the natural rates of interest and unemployment.』

でもってそういう中での金融政策の枠組みとしてより良いのは何かという話の中でプライスレベルターゲットがどうのこうのという話をしていまして、過去の経験という話を持ち出してですね、

『Without going into the details-I invite you to read the paper at your leisure-according to our model simulations, such a robust price-level strategy could have delivered fairly stable inflation throughout the 1960s and 1970s and beyond.』

『This result is seen in Figure 1, where the black line shows the actual inflation rate, which twice reaches double digits. The blue line shows the simulated inflation rate that would have occurred if the Fed followed a policy strategy that aims for a constant 2 percent increase in the price level starting in 1966 (the simulation ends in 2003).』

図表の方はPDFの方にあるのですが、図表1とか2を見ますとホンマカイナという感じではあるのですが、プライスレベルターゲットのフレームワークを1960年代〜70年代のインフレあばばばばーの時にぶち込んでいれば実際のインフレもインフレ期待もアンカーされていましたぜ旦那という話をしているのよ。

『Under the price-level strategy, monetary policy would have avoided the mistake of the late 1960s of allowing the unemployment rate to remain very low for a long time, which contributed to the run-up in inflation during that period. As a result, the Great Inflation never materializes.』

ということで「失業率が低い状態が長期化している中で放置プレイをしていたらインフレ高進してエライコトになりましたぞな」ということで、だからこそプライスレベルターゲットという話をしているので、話としてはプライスレベルターゲットなので従来ってこの枠組みはハト派の人間が「ここまでのインフレが目標に対してショートで推移していたので、価格がキャッチアップするまで緩和を続ける、すなわち前年比のインフレ目標では緩和が足りない」というような話をするのに使っていたのですが、どうも話の持って行き方が妙。

『A key to this strategy’s success is the rock-solid anchoring of inflation expectations. Figure 2 compares a real-world measure of one-year-ahead inflation expectations from the Survey of Professional Forecasters (the black line) to the model’s predictions of what inflation expectations would have been if the Fed had followed the price-level targeting strategy (the blue line). An important aspect of this strategy is that it does not allow inflation to stray too far from 2 percent for long. This “walking the talk” of price stability reinforces the public’s understanding of the policy strategy and creates a positive feedback loop where stable inflation anchors inflation expectations, which in turn fosters stable inflation, which reinforces the anchoring of expectations, and so on.』

さっきちと先走ってしまいましたがPDFの方の図表2の話で、これホンマカイナという疑問しか起きないのですが、「プライスレベルターゲット政策という枠組みでインフレ期待をアンカーさせるのが良い」という話をしておりまして、うーんこのという感じですし、

『The price-level policy is not only effective in terms of price stability, but also helps stabilize the unemployment rate by avoiding swings in unemployment resulting from the Fed trying to get inflation back on track (Figure 3).』

失業率の安定にも寄与する(図表3)とまで大きく出ているのですが、そこまでくるとマジデスカという感じがするのですよね。

『With the Great Inflation avoided, the economic slowdown needed to bring inflation down in the early 1980s doesn’t occur. Interestingly, the policy strategy followed in this model simulation implicitly assumes a constant natural rate of unemployment. Nonetheless, the policy does a reasonably good job of tracking the natural rate of unemployment, which is assumed to be equal to the Congressional Budget Office’s estimate shown by the dashed red line in the figure.』

ということででは低い実質金利の世界で何をしますねんという話になるのですが、背景の部分も含めました続きは後日で勘弁ですけれども、枠組み自体はこれ本来ハト的になる筈なのに、話の持って行き方がタカ派という謎な講演になっているので再度熟読してみます。





2017/05/11

お題「ここから物価目標を達成していく、という日銀の説明にはどう見ても無理がある件について」

なんだかなー。
http://jp.reuters.com/article/fbi-trump-reax-idJPKBN18622X
World | 2017年 05月 11日 00:15 JST
FBI長官後任「ましな人物に」、トランプ氏が解任正当化

○4月決定会合主な意見である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2017/opi170427.pdf

・物価シナリオに関してはやはり無理矢理感が

『T.金融経済情勢に関する意見』の物価の部分をまずは鑑賞するのだが。

『先行き、マクロ的な需給ギャップが改善するとともに、エネルギー価格の動向などを映じて現実の物価上昇率が高まるもとで、予想物価上昇率も上昇傾向をたどることから、消費者物価は、2%に向け上昇率を高めていく。2%程度に達する時期は 2018年度頃になり、その後は2%程度で安定的に推移していくとみられる。』

というのは日銀公式見解ですからさておきまして、

『足もとの物価を押し下げている携帯電話機・通信料の下落は、一般物価の動向を規定するマクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率とはあまり関係のない部門ショックによるものと捉えられる。』

ってこれ実は今日のもう一つのネタの総裁講演でも出ているのですが、予想物価上昇率の引き上げが中々進まない背景として「適合的な期待形成」を持ち出して言い訳をしているのですから、「一般物価の動向を規定するマクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率とはあまり関係のない」という説明には無理がありますなあ、という話になると思います。


『物価は、足もとの動きは鈍いが、今後景気の緩やかな拡大が続き、需給ギャップのプラス幅が一段と拡大してくれば、次第に明確な上昇に転じると見込まれる。現時点で、物価の見通しを大きく変える理由はなく、本年後半にかけての展開を注意深く見守ることが肝要である。』

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、資源価格による物価押し上げ圧力等もあって、2%に向けて徐々に上昇していく。ただし、予想物価上昇率の形成は適合的であり、物価上昇率が高まっていくには暫く時間がかかるとみられる。』

『今後、人手不足を通じた賃金上昇により、実際の物価が上がり、予想物価上昇率も次第に上がる。こうしたもとで、消費者物価前年比は上昇基調に転じ、2018 年度頃には2%程度に達すると予想する。』

てな話で、資源価格下落と円高のベース効果剥落→物価上昇、というのと、労働需給の逼迫→物価上昇、というのがありますが、それによって実際の物価が上昇すると適合的な期待形成に好影響を与えて行くでしょう、というのが現在の理屈。

その中でベース効果云々は今年の後半までの話ですし、労働需給の逼迫ガーとか言ってたら早速毎勤で非常にお洒落な結果(賃金前年比マイナス)が出てくるという結果で、こちらは出てくるのにまだまだ時間がかかりそう、という話ですから、やはり説明として無理筋感は漂いますし、だいたいからして適合的な期待形成云々にしても、直近消費税引き上げのドサクサもありましたが物価が上昇した時にはインフレ期待のシフトアップでリアンカーどころか消費がコケた訳で、実際の物価が上がる中で賃金上昇がイマイチ追いつかないし、70歳選択制年金支給的な話のようなのに象徴される将来不安は相変わらず高いという中で本当に期待のシフトアップによって家計の消費行動変わるのかよ、とも思える(なお日銀の理屈だと「需給ギャップがプラスなんだから今回は別」となる)のですけどね。

『就業者の過半の就業先である中小企業の所定内給与の着実な増加により、賃金上昇を実感できる世帯が確実に拡がっていることは、人々のインフレ期待が高まっていく上で、きわめて重要である。』

何かこれも眉唾な感じがする。

『「適合的な期待形成」を通じた予想物価上昇率の押し上げの力には不確実性があり、新年度入り後の賃上げの拡がりや企業の価格改定の動きを見極めていくことが重要である。』

これは与党か野党か分からん。

『小売業の売り上げは、営業時間帯によって大きく異なる。深夜の賃金を上げる代わりに営業を止めれば、労働生産性は高まる。多くの業態で同様のことが起きれば、日本経済全体の労働生産性も高まる。これは日本経済にとって良いことだが、労働需要が減少することになるので、当面は賃金の上昇を抑制し、物価の上昇が遅れる可能性もある。』

これ労働需給が逼迫するから物価が上がる論に反論しているようにも見えるのですが、唐突感が強くて何が何だか分からない。

『非製造業中心に生産性の上昇余地が相応にあり、企業が単純に人手不足から賃上げするとは考えにくい。』

『年度初の値上げ改定の動きが過去数年と比べて弱く、値下げの動きもみられる。』

『見通し期間において、かなりスティープに物価が上昇していく姿を想定することは難しい。


『2019 年度までの見通し期間中、消費者物価上昇率は2%を大きく下回り続けるとみている。』

野党委員は2名の筈ですが2名で2つ出したとかですかね。


・金融政策に関して

『2%に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠ける。引き続き物価動向を注意深く点検しつつ、現在の強力な金融緩和をしっかりと継続することが重要である。』

与党委員の方々の話ですが以下並べてみますと・・・・・・・・・・

『物価上昇圧力は緩やかであり、「物価安定の目標」の達成に向けた経済の好循環を支えるべく、現在の金融政策を継続するべきである。今後も、2%の「物価安定の目標」への理解を推進しつつ、脱デフレ完遂に息長く取り組むことが必要である。』

『「適合的な期待形成」が支配的な日本では、2%の「物価安定の目標」の達成に、欧米に比べ時間がかかることを認識したうえで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を粘り強く続けることが最善の策である。』

『海外の政治・経済情勢を巡る不確実性や地政学的リスクの高まり等も踏まえると、当面は現行の枠組みのもとで粘り強く緩和的な金融環境の維持に取り組むべきである。』

「息長く取り組むことが必要」、「2%の「物価安定の目標」の達成に、欧米に比べ時間がかかることを認識したうえで」、「粘り強く緩和的な金融環境の維持に取り組むべき」とかいう話になっていまして、「2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成」という話がすっかり無かったことになっているというのが実に味わいがありますが、おまいら白川さんに謝らなくて良いの??


この後2つほど微妙にまた唐突感があるというか何だか良く分からない意見があるのですが、鑑賞してみましょう。

『人手不足の深刻化が成長制約となることを懸念する向きが多いが、人工知能等の活用が本格化し、業界内外の競争が一層進む現状は、企業の変革の好機とも言える。デフレからの脱却を確実に進めることは、こうした動きを後押しし、生産性向上ひいては潜在成長力の引き上げに繋がっていくと考える。政府の施策に加えて、日本銀行が強力な金融緩和を継続することが重要である。』

・・・・・・・・・・???????

『 金融緩和が企業の新陳代謝を阻害しているとの見方があるが、高金利で企業の新陳代謝を促せば、企業が退出して失業者が増加する。労働者一人当たりの生産性が高まっても、日本全体の生産は減少してしまう。一方、金融緩和政策で生じた人手不足、賃金上昇圧力は、生産性の低い企業の新陳代謝を促し、失業率の上昇を伴うことなく経済全体の生産性を上昇させる。強力な金融緩和を継続することが重要である。』

こっちの方が話に無理があって、そもそも「高金利で企業の新陳代謝を促すのは良くない」ってお前は何を言っているんだという藁人形論法(金融緩和のし過ぎで企業の新陳代謝が進みにくくなっている、の裏は高金利にしろ、という話ではなくて金融緩和の過剰を調節しろ、です)だし、「金融緩和政策で生じた人手不足、賃金上昇圧力は」ってアプリオリに言っているけど、人手不足は本当に金融緩和政策で生じたのでしょうか???というのが謎すぎる。

「構造改革を進めていく中でのフリクションを小さくするために緩和的な金融環境は必要で、政府においては構造改革の一層の推進によって生産性の低い企業の新陳代謝を促すようにされたい」というような意見なら意味が分かるが、意見が雑すぎて涙が出ちゃいますよ。


以下が枠組みとか国債買入の話になるようですが、

『国債買入れ額の変動は、現在の政策枠組みの導入当初から想定されたものであり、現状、年間約 80 兆円の「めど」との関係で問題が生じているとは考えていない。』

時間かけてなし崩しに既成事実化している、という超インチキ作戦ですけどね!!!

『10 年金利の目標をゼロ%程度とすることには反対であるが、市場に先んじて日本銀行主導で長期金利の操作目標を引き上げる必要はない。物価の基調について、見通しを市場参加者と共有するなかで、市場動向を追認する形で目標を引き上げていくのが理想である。また、長国買入れについては、減額できるときに減額し、リスクの顕在化に備える構えで柔軟に運営していけばよい。短めのゾーンも依然減額余地がある。』

佐藤さんの意見と見ました。「市場に先んじて日本銀行主導で長期金利の操作目標を引き上げる必要はない」というのはその通りで、基本的に受動的にならざるを得ないというのがYCCの枠組みに内包されているメカニズムだと思います。

『2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するという方針が、金融政策の柔軟性を奪っているため、中長期の目標と位置付けるのが良い。』

木内さんの意見と見ましたが、さっきの引用部分でも実は全然「早期達成の為に緩和を強化」みたいな意見どころか「長期間続ける必要が」みたいになっている訳で、80兆円云々もそうですが、この「中長期」に関してなし崩し的に変化している感はあって、さすがにこっちの方はちゃんと説明して欲しいとは思うのでした。

『国債買入れペースをさらに縮小しないと、来年にかけて、買入れの持続性、安定性は確保できない。民間保有国債の削減余地縮小というストック面に加えて、政府の国債発行額の縮小等というフロー面からも国債市場の需給逼迫傾向が進みやすい。このため、資産買入れ額に新たに操作目標を設定し、それを秩序立って段階的に低下させていく施策が望ましい。』

これも木内さんです。

ということで、80兆円の量の問題と2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成する云々が空文化する中で(前者は金利操作になったのだから、という説明はできるけど後者は完全になし崩しなのでウソツキにも程がある)、とりあえずは今のままで問題先送りという事なのでしょうな。


○黒田総裁の内外情勢調査会講演は物価のメカニズムについての説明がやはり何ともかんとも

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170510b1.pdf
経済・物価見通しと金融政策運営
―― 内外情勢調査会における講演 ――

経済見通しは全部飛ばしまして物価の話から。

・物価の説明にはやはり無理があるというのをしつこく確認

『3.物価の現状と見通し』の(物価の現状)から。

『もっとも、生鮮食品とエネルギー価格を除いた消費者物価の前年比は、2015年 11 月の+1.3%をピークにプラス幅の縮小傾向が続いたあと、このところ一進一退の動きとなっています。』

一進一退の動きとな??????

『昨年中の消費者物価の弱めの動きは、個人消費の一部に弱めの動きがみられるもとで、企業の価格設定スタンスが慎重であったことや、為替相場が円高方向に推移したことなどが影響していると考えられます。また、ごく最近の動きについては、携帯電話端末や携帯電話通信料の値下げの動きが、かなりの程度影響しています。こうした特定のセクターにおける一時的な動きは、基調的な物価の動向とは区別して考えることが必要ですが、消費者物価全体をみても、物価上昇のモメンタムがなお力強さに欠けていることも事実です。』

特定セクターの価格ショックは基調的な物価の動きとは別という話をするならエネルギーや為替の影響で云々みたいな話をするのも何だかなあという感じはしますが、まあ力強さに欠けているという話をするのはまだよかろうという感じです。

『この間、予想物価上昇率についても、弱含みの局面が続いています。各種のマーケット関連指標やアンケート調査結果をみると、上昇しているものもみられますが、総じてみれば、なお明確な持ち直しには至っていません』

ちなみにここだけ何故か読点が入っていない。小見出しが(2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタム)に変わりまして・・・・・・・

『このように、実体経済が着実に改善している一方、物価面はこれまでのところ勢いを欠いた状況が続いており、景気と物価にややコントラストがみられているのが最近の特徴です。もっとも、日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムはしっかりと維持されており、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、先行き2%に向けて上昇率を高めていくとみています。』

その根拠は?

『具体的には、以下のようなメカニズムを想定しています。第1に、労働需給が一段と引き締まり、マクロ的な需給ギャップがさらに改善するにつれて、賃金の上昇などを通じて、物価上昇率が高まっていくとみています。第2に、本年後半にかけて、エネルギー価格による消費者物価の押し上げ寄与が拡大していきます。第3に、これらの要因によって実際の物価上昇率が高まることにより、予想物価上昇率が上昇し、より基調的な物価上昇率の高まりにつながっていくと考えられます。以上のメカニズムについて、若干敷衍したいと思います。』

ということで、結局さっきの話と同じではあるのですが、

『このところ、企業において、需要増加と人手不足への対応として、賃金を含む労働条件を改善する動きが拡がりつつあります。振り返ってみますと、消費者物価と時間当たり名目賃金の伸び率は、概ねパラレルに変動するという安定的な関係が確認されるのが、わが国の経験です。実際、財やサービスの価格を引き上げる動きも着実にみられています。』

全体に波及しているのかよという感じですし、この前の毎勤統計ェ・・・・・・・なのですが。

『日本銀行は、企業収益や賃金の上昇を伴いながら、消費者物価上昇率が緩やかに高まっていく姿を目指していますが、こうした動きは、まさに想定しているメカニズムに沿ったものと言えます。』

上がってませんが。

『もっとも、労働需給の引き締まりや企業収益の割には、賃金への波及が弱いことも確かです。その背景の1つとして、わが国では、長年にわたってデフレが続いたため、物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていることが指摘できます。毎年の労使間の賃金交渉において、前年度の物価上昇率を基準とする慣行も、そのひとつです。』

結局適合的期待形成という話にしていて、日銀の金融政策でインフレ期待をシフトアップさせてリアンカーさせるという話は何処に逝ったのか。

『また、賃金上昇や労働時間短縮による実質的な人件費の増加に対し、提供するサービスの見直しで対応する動きも一部にみられています。こうした動きもデフレマインドが根強く残っていることの表れだと思います。』

というより成長期待が無いからじゃないの???

『デフレマインドを払拭することは容易ではありませんが、賃金・物価を巡る環境は、緩やかながら着実に改善しており、この流れをしっかりと確保していくことが大事です。


という話なのだが、デフレマインドなのではなくて成長期待とか先行きの恒常所得上昇期待とかそういう話とか、年金問題にみられる将来不安問題とかの話ではないか、とアタクシ的には思うのですけどねえ。

#ただそうなると金融政策なんか最初からいらんかったんや(要らんは極端ですけどね、為念)という話になってしまうので日銀としては頭の痛い話になる


でもって期待インフレに関してですが、

『中長期的な予想物価上昇率、すなわち物価の先行きに対する人々の見方は、やや長い目でみた物価上昇率を規定する重要な要因です。日本銀行が昨年9月に公表した「総括的な検証」でも指摘したように、わが国においては、将来に向けての予想物価上昇率が過去の物価上昇率の実績に引きずられやすい傾向があります。こうした傾向を、やや専門的な言葉で「適合的な期待形成」の要素が強いと表現しています。』

2013年に「期待に直接働きかけるという新しいアプローチ」でQQEやったんですが。

『2015 年夏以降、予想物価上昇率は弱含みの局面にありますが、これには原油価格の下落に加え、冒頭に申し上げたような世界経済の逆風の中で、実際の物価上昇率が低下したことが大きく影響しています。』

冒頭というのは引用していない部分なのですが、確か日銀および置物リフレ一派の皆様におかれましては「日銀の金融政策がバンバン効いた」という話になっているはずなのに、物価の話になると急に「世界経済の逆風ガー」という話になるのはインチキ説明にも程があります。

・・・・・・とはいえ、この「世界経済の逆風」とは何ぞや、という話になりますと、要するに「円高」という話なのでして、マネタリーショックで円安誘導して為替ショックによるコストプッシュで物価を上げて期待に働きかける、というアプローチがQQEのメインの部分であり、それをやったら何のことはない実質所得のスクイーズによる需要の落ちが先に来て期待のシフトアップが出来なかった、というお話ですわな、と思ってしまいますし、だからこそ話に説得力ねーわと思うアタクシですが。

『一方、先行きは、こうしたメカニズムが逆方向に作用することが期待できます。すなわち、賃金の上昇やエネルギー価格による押し上げを背景に実際の物価上昇率が高まれば、これに後押しされる形で、予想物価上昇率も高まっていくと考えられます。もとより、日本銀行が最終的に目指しているのは、様々な要因で実際の物価上昇率が変動しても、人々の予想物価上昇率が2%にアンカーされているという状態です。しかしながら、そこに到達するためには、実際の物価上昇率が高まっていく必要があります。エネルギー価格による消費者物価の押し上げは、あくまでも一時的なものですが、予想物価上昇率を引き上げるドライバーとして機能すると考えています。』

ということで、結局為替ショックよもう一度というアプローチをするしか無い(それが良い事なのかというと多分よくないのだが)のでは???と思ってしまう説明で、やはり「早期に2%達成」というシナリオはこの説明だと弱いなあと思うのでした。

まあそんなところで。






2017/05/10

お題「市場メモメモ/ローゼングレン総裁は不動産の一部に懸念とな」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170509/k10010974501000.html
3月の給与総額 10か月ぶり減少
5月9日 9時08分

『前の年の同じ月を0.4%下回り、去年5月以来、10か月ぶりに減少しました。物価の上昇分を反映した実質賃金では、0.8%のマイナスとなっています。厚生労働省は「去年3月の給与総額が大幅に上がった反動で、今回、マイナスとなったもので、賃金の上昇傾向は変わっていないと見ているが4月以降の動向を注視したい」としています。』(上記URL先より)

アカン奴や・・・・・・・・・・・・

○市場メモメモ

・入札ネタの前にオペネタで

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170509.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)1,480 1,480 -0.600 -0.600
CP等買入 9,110 2,495 -0.005 -0.002 98.9

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(1,078億円)、10年利付国債343回(1億円)、10年利付国債346回(400億円)、
物価連動国債16回(1億円)です。

先週行われた流動性供給入札分の追加発行日が9日だったのですが、5年130回が碌に追加発行されておりませんでしたからお察しの結果ではあるのですが、相変わらず5年130回債が補完供給で1000億円規模で出ているという状況でして、いつまでやってるんだかという感じではありますな。


それからCP買入なのですが、こちらはマイナス深くはないとはいえ、水準が相変わらず0よりはやや有意な感じのマイナス水準(まあこの辺りの▲0.1bpと▲0.5bpを0と比較してどう考えるの、というのは多分に感覚の問題になってしまうのであくまでもアタクシの感覚的な話になって恐縮なのですが)での推移でして、中々「ゼロ近傍」という感じの数字になって来ませんなあという感じです。まあCP金利が今年3月辺りの所から気持ちまた下がったかなという感じも。


・10年入札でしたが益々膠着感が・・・・・・・・・・・・

またもロイターさんからで恐縮ですが。
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1IB2DW
Markets | 2017年 05月 9日 15:16 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小幅続落で引け、長期金利は一時1カ月ぶり0.035%

『<15:08> 国債先物が小幅続落で引け、長期金利は一時1カ月ぶり0.035%

国債先物中心限月6月限は前日比4銭安の150円78銭と小幅続落して引けた。前日の米債安を受けて売りが先行して取引が始まった。10年債入札は、ショートカバーや在庫確保を目的にした業者主導の応札で無難な結果になったが、その後も上値を追って買い進む動きは見られず、小幅安水準での推移が続いた。

現物市場は軟調。入札結果発表後の長期ゾーンは一時買い戻しが入ったが、買いは続かなかった。超長期ゾーンは利回り上昇局面で一部国内勢の買いが観測されたが、11日の30年債入札を警戒した売りに押された。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時同1bp高い0.035%と4月12日以来約1カ月ぶりの水準に上昇した。』(上記URL先より)

なお10年国債入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170509.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 7兆8,124億円
(2)募入決定額 2兆772億円
(3)募入最低価格 100円67銭(募入最高利回り)(0.031%)
(4)募入最低価格における案分比率 47.6053%
(5)募入平均価格 100円68銭(募入平均利回り)(0.030%)

つーことでテールは1銭でオファーサイド寄りの入札でしたが、別に誰かが上で切ったとか訳でもない入札で、その後盛り上がるかと思えばロイターさんの記事にありますようにこれまたウゴカンチ会長という展開で、引値ベースでは10年新発3bpで前日比5糸甘という結果。

・・・・・・・・いやまあ10年国債って日銀様のYCC政策攻撃で動きにくいゾーンではあると思いますが、為替も株もそこそこ位置が変わっていて、入札のテールは短いまあ確りちゃあ確りの結果でしたが、見事なまでにボラの出ない動き方をしていまして、これで入札日かよという中々遺憾な展開となっておりまして実に残念。


まあ何ですな、YCC政策って「適正と(日銀が)考えるイールドカーブ水準」に関する市場の見方に変化が起きてくるような事象が生じると長期金利の誘導水準に対してアタックナンバーワン(昭和ですかそうですか)状態になって来るので色々と面白いのですが、「今の状況が当分続くしかなさそうですな」という見方になってしまうと途端に動かなくなってしまう、という政策になっております、てかそもそもYCC政策そのものが「量的拡大をバンバンやって行くと政策が物理的に持たなくなる閾値があるので、政策を物理的に持たせる(ためには量的拡大のペースを落とすのが一番簡単)ようにして時間を稼ぐ」というものであり、その背景には総括検証だ何だとありましたが、今回の展望レポートでの見通しで見られましたように、「『早期の』2%目標達成は困難だが経済がコケる訳でもない」という可能性を考えて緩和政策を長持ちさせようとした、という事でもありますので、「いやー何か全然物価上がって来ませんなあ」という話になって来ると全然動かなくなってしまう、という事になりますな。

つーことでこうなりますと「YCCが機能しており金利が安定している(キリッ)」とか日銀執行部大喜びになる事が容易に想像されるのですが、金利が安定している、というのはそれはつまり「金利上昇圧力が無い」という事でして、それはとりも直さず「市場の見方としてインフレや期待インフレが全然上がらない」という事になりますので、金利が安定しているから政策が上手く回っているとか言われてもそれは倒錯したお話になります(だって本来は物価目標を出来るだけ早期に達成するのが目標で金利安定は手段に過ぎないでしょ)なとは思います。

#たぶん足元金利が動かなくなって日銀執行部ニッコリとしていると思うのでイヤミを入れてみた


○先般の総裁会見でちと引っ掛かった件

この前のADB年次総会の時の会見ですけど
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1705a.pdf

まあ質問の方はどうでも良いのですが、物価2%達成のパスの話についてですね、

『基本的にインフレを決める要素は、需給ギャップと予想物価上昇率の 2 つです。』

って話はしているのですが、

『この点、日本経済は成長しており、引き続き潜在成長率を十分に上回る成長を続けると思われますので、今後、需給ギャップは改善を続けると予想されています。このことは、先行き、物価・賃金の上昇圧力を強めます。』

『また、予想物価上昇率は先ほど申し上げた通り、さほどアンカーされておらず、むしろ、
足許の現実の物価上昇率によって左右されます。つまり、ある時点で物価上昇率が加速すると、予想物価上昇率も加速するということです。』

『従って、需給ギャップが改善することと、予想物価上昇率を引き上げること、それらの両方の効果で物価上昇率は目標の 2%に近づくと思います。現段階において、私どもは、2%の物価上昇率は 2018 年度頃に達成する可能性が高いと想定しておりまして、この点は全く変わっておりません。』

ってな話をしていまして、これ展望レポートでの説明でも、

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1704a.pdf(基本的見解)

の4ページのケツにありますように、

『こうした見通しの背景を述べると、第1に、中長期的な予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いている。各種のマーケット関連指標やアンケート調査結果をみると、上昇しているものもみられるが、総じてみるとなお明確な持ち直しには至っていない。』

『もっとも、先行きについては、@「適合的な期待形成」7の面では、後述のようにマクロ的な需給ギャップが改善する中で、エネルギー価格の動向などを映じて、現実の物価上昇率は高まっていくと予想されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことから、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』

という話になっていまして、需給ギャップの説明の方は・・・・・・・・・

『第2に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、ゼロ%程度で横ばい圏内の動きを続けてきたが、このところ改善しており、昨年末にプラス転化した。特に、有効求人倍率がバブル期ピークに近づいているほか、失業率も2%台後半まで低下するなど、労働需給の引き締まりは一段と明確になっている。こうしたもとで、中小企業を含め、多くの企業において4年連続でベースアップが実現する見通しにあるなど、賃金は緩やかに上昇している。』

『先行きについては、輸出・生産の増加に伴う設備稼働率の改善に加え、経済対策の効果の顕在化もあって労働需給の引き締まりがさらに強まることから、マクロ的な需給ギャップは、プラス幅を拡大していくと見込まれる。こうしたもとで、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環が作用していくと考えられる。』

となっていて、だいたい労働需給の逼迫(ちょっと海外需要)で需給ギャップのプラス拡大と、為替や資源価格のベース効果で物価が上がるので物価もここからプラス幅拡大という話になっているのですが、その一方で先ほど最初に引用したニュースのように早速出オチの如く3月の賃金がコケていたりする訳ですな。

そしてもっとうーんこのというのは期待インフレに関しては主なドライバーが上記要因による物価上昇を受けてバックワード的(適合的期待形成)にインフレ期待が上がる、というような説明になっていまして、それによってインフレ期待が上がってくると徐々にフォワードルッキング的なインフレ期待も上昇してくれるでしょう、という話になっているように見えるのですよ。


もともとこのQQE政策って置物リフレ理論によりますと量的拡大によって「インフレ期待に直接働きかける」というのをメインにしていた訳でして、↓の7枚目のスライドについて忘れたとは言わせませんけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf

しかしながらこれまでに起きた事って「期待インフレに直接働きかける事に失敗している」ということであって、それを綺麗な言い方で置き換えたのが「我が国の予想物価上昇率の形成においては適合的な期待形成の要素が強い」というお話なのであって、マネタリーショックで円安に振って物価を引き上げた事によって適合的な期待形成に寄与はしたとは思いますが、所詮それだけに止まって2%なにそれ美味しいのという状態になっている訳でして、結局のところ「今の政策を延々とやって行って本当に早期にインフレ期待を2%に引き上げてアンカーさせる事が出来るんですか」というお話になるのですが、それに対する答えは相変わらずないのですよね〜。

つーことで何を申し上げたいかというとまだまとまっていないのですが(おいおい)、「今の政策を継続するにしても展望もないのに長期消耗戦(金利市場的に)をやっていって良いんでしょうかねえ」というお話ですし、長期消耗戦って金利市場的にと書きましたが、これって金利市場だけの話じゃなくて金融システム的にも消耗戦が継続するお話であって、そっちにも問題出てくるでしょこのまま続けると、という話でもあるので、YCC政策続けるなら続けるで「目先凌ぎ」ではなくて「グラウンドデザイン」を考えて頂きたいと思うのでした。


○ちなみにFEDネタメモ

・ローゼングレン総裁は商業用不動産市場についての話のようですが

こんなニュースがありましたが。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-rosengren-jobless-plunge-idJPKBN1852AX
Business | 2017年 05月 10日 03:55 JST
失業率急低下にリスク、利上げ加速も=ボストン連銀総裁


ボストン連銀のページから。
https://www.bostonfed.org/-/media/Documents/Speeches/PDF/050917text.pdf(講演テキスト)
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2017/trends-in-commercial-real-estate.aspx(概要)
Trends in Commercial Real Estate
By Eric S. Rosengren
May 9, 2017

概要の方から少々。

『Speaking in New York on Tuesday, Boston Fed President Eric Rosengren discussed commercial real estate valuations. While a variety of favorable conditions account for some of the elevated valuations, he noted that at such times it is worth asking what could go wrong and cause a reversal.』

ということで講演そのものは商業用不動産市場に関するお話ですな。

『"While I do not expect that a downturn in commercial real estate prices would by itself cause a significant problem for the economy, in some past recessions such an occurrence has propagated an initial adverse shock - and by constraining financial intermediaries, made the extent of the subsequent economic downturn more severe for a wide range of households and businesses that depend on intermediaries for credit," Rosengren said, echoing themes he has stressed in prior analysis.』

商業用不動産市場については経済全体に問題を起こすような状況ではないものの、過去のリセッションにおいては不動産がおかしくなったのがきっかけだったりするのでそれはそれで宜しくないし、企業や家計のクレジットにも影響してくる話ですよ、ということで不動産市況についての話をしている、という講演なのですな。

ただまあ市況そのものに関しては、

『He acknowledged a number of favorable "tailwinds" accompanying rising commercial real estate valuations, including low and stable inflation, accommodative monetary policy, and the relative economic strength in the U.S. compared with the rest of the world. Rosengren also said that greater urbanization, later marriage age, and preferences among the large cohort of millennials are additional favorable trends for multifamily commercial real estate.』

とマクロ環境的には追い風があるという話を入れているので一方的に警戒しているのでもなさそうなのですが、

『However, Rosengren cautioned that it is harder to know if these conditions warrant the extent of price increase we have seen to date.』

『"For almost any asset category, positive trends can sometimes evolve into prices that increase more than fundamentals justify," Rosengren said. "It is very hard to distinguish how much of the price gain is the result of the favorable fundamentals, and how much reflects an abundance of optimism by investors."』

資産価格を支えるファンダメンタルというのは「資産価格が上がったので状況が改善したように見える」という部分が多分にあるので、本当に大丈夫かというのは怪しい面があるという言及があって、

『Rosengren noted that government‐sponsored enterprises (or "GSEs") have significant holdings or guarantees of multifamily loans outstanding. If future reform proposals required the GSEs to reduce their holdings of multifamily loans "a potential and significant shock to this sector of the commercial real estate market could occur."』

『Rosengren concluded by noting that leveraged institutions and GSEs have significant exposures to commercial real estate. In the event of an adverse scenario such as a recession, these exposures could pose significant risks to these institutions.』

さっきのロイター記事で引用しませんでしたが、GSEのエクスポージャーが大きくて、GSEへの改革が行われた際にポジションの圧縮が起きた時にリスクという指摘があって、それがこの部分です。

『"While I am certainly not expecting such a scenario to occur, central bankers are charged with thinking about adverse risks to the economy. So current valuations in real estate are one such risk that I will continue to watch carefully," Rosengren said.』

今すぐ起きるシナリオではないと考えるものの、不動産の一部の価格についてはリスク、という話をしていまして、まあこういう辺りからも利上げしましょう的な話が出るでしょうなあとは思うのでした。







2017/05/09

お題「円債が動かんのでFED高官の皆様のお話でも」

平均株価が高値更新しても10年1毛甘ですかということでまあ米国の方でも。

○ブラード先生の毎度の利上げしない論を拝見

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2017/05/08/bullard-discusses-decline(概要)
https://www.stlouisfed.org/~/media/Files/PDFs/Bullard/remarks/2017/Bullard_Amelia_Island_8_May_2017.pdf?la=en(プレゼン資料)
St. Louis Fed's Bullard Discusses the Decline in the Natural Real Rate of Interest

ということで、ブラード総裁の毎度のお話ではありますが、自然利子率が下がっているので利上げはしないで宜しい、という毎度のお話ではありますが概要の方から鑑賞。

『Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed reasons for the downward trend in the natural real rate of interest during a presentation Monday at the Federal Reserve Bank of Atlanta’s 22nd Annual Financial Markets Conference.』

実質自然利子率が下がっている、というお話。

『He examined this downward trend in a regime-switching context. He also discussed implications of the low natural rate for the Fed’s policy rate (i.e., the federal funds rate target). “According to the analysis presented here, the natural rate of interest, and hence the appropriate policy rate, is low and unlikely to change very much over the forecast horizon,” Bullard said.』

この人昔インフレの複数均衡論を提唱していたりもしていましたのですが、最近はレジームスイッチという話をしていまして、複数均衡的な話が好きなのでしょうかね。

『An Illustrative Calculation of r+』という小見出しになりますが。

『In his presentation, “An Illustrative Calculation of r+,” Bullard noted that r+ is often referred to as “the natural real rate of interest.” Using U.S. data from 1984 to the present, he constructed an ex-post measure of the real rate of return on short-term government debt by subtracting the Dallas Fed trimmed-mean PCE inflation rate from the 1-year Treasury rate.』

この辺りの話は以前からこういう定義で話をしていますが、現在の実質金利について、1年TB利回りをリスクフリーレートにして、とダラス連銀の刈込平均PCEを物価にして計算するという奴です。

『“These raw data show a clear downward trend,” he said. “Macroeconomic theory does not like this downward trend-it wants a constant mean.”』

で、その金利が明確に下がっているという話をしていまして、実質金利が下がっていますよというお話なのですが、その背景は・・・・・・・・・・・・

『He looked at three factors that can influence the natural rate: 1) the labor productivity growth rate, 2) the labor force growth rate, and 3) an investor desire for safe assets.』

『He included the third factor because the declining trend appears to be on real returns to holding government paper, not on capital.』

背景としては労働生産性が下がっている事と、レーバーフォースの成長が下がっている事、投資家が安全資産志向を強めている事と、それに加えて資本収益率が下がっていることから安全資産志向が強まっている、ということで、これはブラードさんの最近の得意とする主張。


『The Implication for the Natural Real Rate of Interest』という小見出しに飛びますと、

『To summarize, he noted that labor productivity appears to be in the low-growth regime, which would set that factor at 1.26 percent. He said that the labor force also appears to be in the low-growth regime, which would set that factor at 0.45 percent; however, labor force could plausibly be interpreted as switching to the high-growth regime, which would set that factor at 1.33 percent. Finally, he said that there appears to be a high desire for safe assets, which would set that factor at -3.04 percent.』

低成長レジームVS高成長レジーム、というのと安全資産への高いニーズのあるレジームVSニーズが低いレジームみたいな話をしていまして、経済の状況がシフトするとそれによって自然利子率が変わります、という説明をしていて、いや何かそれどうなのかというのもありますが、この「レジームシフト」というのがブラードさんが突如金融政策の話をドテンしてくる事の背景にあるんでしょうなあ(というか本人ドテンしているという意識が無くドテンできる背景と言いますか)と思うのでありました。

でまあそのレジーム次第によって実質自然利子率の水準が100bp位変わりますという説明部分の引用はパスしまして、『Implications for the Policy Rate』という所を。

『Turning to monetary policy implications, Bullard noted that with the U.S. unemployment gap and inflation gap near zero, a Taylor-type rule simply recommends setting the policy rate equal to the value of r+ plus 2 percent, which is the FOMC’s inflation target.』

2%の物価目標に対して実質自然利子率を乗っければ望ましい金利になる、という事ですが、

『Thus, he obtained an appropriate policy rate setting of either 67 basis points or 155 basis points (again, depending on whether the labor force is in the low-growth or high-growth regime).』

さっき引用をすっ飛ばした部分になってしまいますが、労働市場の高成長レジームだと実質自然利子率が-45bpで、低成長レジームだと実質自然利子率が-133bpですよ、って話でしたので、こういう結論になる。

『He noted the actual current policy rate is about 88 basis points. “The policy rate is approximately at an appropriate setting today according to this analysis and with gap variables assumed to be zero,” he said.』

でもって現状では経済のギャップがほぼゼロであり、政策金利が概ね88bp程度(75-100だから)なので、現在の金利水準は適正である、という理屈なのですが、この説明ってそもそもの部分で、過去からの利子率の推移を持って金利水準がどうのこうのという話をしていることから、資産バブル崩壊によるバランスシート調整の影響が金利などにも出ている部分を過小評価している(つまり適正な金利水準が過去に引っ張られて低めに評価されていないかということ)ような気はだいぶするのだが、アタクシ無学なもんで良く分からんですな。

まあこの人基本的に外れ値状態になっているのですが、素っ頓狂な話をする中で偶に大当たりすることがあって、QE2導入を主張した複数均衡論に関しては「当たり」だった観が強いので(本当に正しい議論なのかは謎ですけど)、まあ時々思い出したようにチェックするのが
吉かと。


○メスター総裁はまあ普通に今のFOMCの見解を示していますな

https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/speeches/sp-20170508-outlook-for-the-economy-and-monetary-policy.aspx
The Outlook for the Economy and Monetary Policy
05.08.17 Loretta J. Mester
The Chicago Council on Global Affairs, Chicago, IL

長いので簡単にですけど。

・経済の状況に関して

『The Economic Outlook』の小見出し部分から少々。

最初の部分で、

『The economic expansion turns eight years old next month. It got off to a slow start from a very weak place, but now this expansion is one of the longest on record. While the quarterly pattern has had its share of ups and downs, output growth has maintained a moderate pace of a bit more than 2 percent, on average, over the expansion. The sustainability of the expansion through various economic shocks is a testament to the U.S. economy’s resiliency.』

って説明していまして、ここ8年間平均してみれば2%ちょっとの成長を継続しており、しかもその間に色々なショックがあったのにこの成長を維持しているのですから米国経済はレジリアントです(キリッ)ってな話。

『While some of the recent readings on real activity have been soft, it is normal to see variability in the monthly and quarterly data.』

従って足元で弱めの数値が出ているのは単に月とか四半期とかのブレである(キリリッ)って話をしておりまして、何かこう景気って循環しませんでしたっけという気もするのだが、まあ確かに何だかんだと言って今までコケるかと思うとコケないという実績があるのでねえという所です。

その先に『Economic growth』って小見出しもあるのですが、そこでも改めて

『Despite the strong fundamentals, GDP growth in the first quarter was weak. At this point, I’m not taking much of a signal about future growth from that reading; there are reasons to think this was a transitory slowdown.』

『We’ve seen a pattern over the past several years of weak growth in the first quarter followed by stronger growth in subsequent quarters. So even though the data are adjusted for seasonal effects, there appears to be some residual seasonality in the GDP data.1』

ここ数年1Qが弱めというパターンを見ておりまして、今回もそれですよそれ、という説明になっている辺りが、そらまあこういわれると「はあそうですか」としか申し上げようがないのですけれども、今回はやりたい政策に経済見通しを合わせてないかという疑惑は少々残る所でございます。


・賃金に関して

でまあ経済の説明は結構ああだこうだと需要項目別にあるのですがそこはパスして『Labor markets』の賃金の部分を鑑賞。

『For much of the expansion, wage growth has been subdued compared to what we’ve experienced in other expansions.』

というこの賃金の部分が何ともなのですがそれにつきまして。

『Partly this reflects slow productivity growth.6 Still, we have seen a gradual acceleration in wages over time as labor market conditions have strengthened. For some time we have heard from our labor and business contacts across a broad set of industries that firms are having trouble finding qualified workers, both in high-skill occupations and in lower-skill jobs.』

労働生産性の伸びが低い事は要因ですが、最近は労働力の確保に関してハイスキルだけではなくてロースキルの確保も大変になってきていると聞いています、とアネクドータルな話をしておりまして、

『More and more of these firms are responding by raising wages and offering other benefits to attract and retain workers. Contacts in the Cleveland Fed District expect wage increases to average about 3 percent this year, with significantly higher increases expected for highly skilled workers. These anecdotal reports are showing through to the wage data, where measures such as the employment cost index and average hourly earnings have accelerated from earlier in the recovery. This is a welcome state of affairs.』

『As one of the characters in Beethoven’s opera “Fidelio” sings: “If you haven’t money by you, happiness is hard to find・・・But when it jingles round your pockets fate is at your mercy.”』

最後にオペラのセリフが出てきておりましてアレですが、どうも賃金はここから上昇傾向を強めるというのはヒアリングなどのアネクドータルな所からは読み取れます、という事のようですが、賃金がこれから上がる上がると言いながらイマイチ上がらんというのを延々と続けているというのもありまして、実際の所どうよという感はありますが、まあFED的にはここから上がっていくと見立てているので、やはり雇用統計関連では賃金動向が思ったように上がらんとなると「ちょっと待て」という事になってくる可能性はあるんじゃないのかなーとは思うのでした。


・金融政策に関して

上記の労働市場の後物価の話もあるのですがまあパスしまして金融政策のパートに。

『Appropriate adjustments in monetary policy are those that will sustain the expansion so that our longer-run goals of price stability and maximum employment are met and maintained. In my view, we have met the maximum employment part of our mandate and inflation is nearing our 2 percent goal.』

というのは良いとしまして、

『Although we live in a high-frequency world, we cannot overreact to transitory movements in incoming data; our policymaking has to focus on what changes in economic and financial conditions imply for the medium-run outlook and risks around the outlook.7』

足もとの指標に一々過剰に反応すべきではない(キリッ)っていうのは何かの死亡フラグを立てているような気もしますが、まあそういう話をしておりますな。

『If economic conditions evolve as anticipated, I believe further removal of accommodation via increases in the federal funds rate will be needed. In March, the FOMC raised the target range for the fed funds rate by one-quarter percentage point to 3/4 to 1 percent, and last week, the FOMC decided to maintain this range. Both decisions are consistent with the gradual upward path of interest rates that the Committee has indicated for some time is likely to be appropriate to achieve and maintain our objectives, should the economy evolve as anticipated.』

『This upward policy path will help prolong the expansion, not curtail it. It will help avoid a build-up of risks to macroeconomic stability that could arise if the economy is allowed to overheat and risks to financial stability, should overly low interest rates encourage investors to take on excessively risky investments in a search for yield.』

『It will put monetary policy in a better position to address whichever risks, whether to the upside or downside, are ultimately realized.』

ということで、パラグラフを3つに分割して引用しましたが、2番目の所に思いっきり「It will help avoid a build-up of risks to macroeconomic stability」ってあって、今の利上げ路線が「正常化」であり、糊代利上げであるとともに、マクプル対応的な意味合いも含めていると考えているFOMC参加者もいますよ、ということですから存外利上げしたいという腰は強いとみるのが妥当。

以下利上げパスは昨年より早くみたいな話をしている部分はちょっと飛ばしましてバランスシート政策に関してですが、

『Normalizing the stance of policy also means taking steps to normalize the balance sheet, and the FOMC recognized this need from the very start of using nontraditional tools. Currently, the FOMC is continuing to reinvest the proceeds of maturing Treasuries and principal payments from agency debt and mortgage-backed securities, essentially maintaining the balance sheet at its very large size.』

というのはマクラ。

『But, as indicated in the minutes of our March meeting, the FOMC is discussing its reinvestment policy, including when and how best to implement a change in reinvestments.8 Such a change should be done in a way that allows for a gradual and predictable reduction in the Fed’s asset holdings so that over time the balance sheet is reduced to the smallest size needed to implement monetary policy efficiently and effectively.9』

3月には議論したということですが今回どういう話をしたのかはミニッツでてないから話をしないのかあまり議論が進んでいないのかは分からんですな。

『In my view, if economic conditions evolve as I anticipate, I would be comfortable changing our reinvestment policy this year, with clear communication in advance about how we plan to implement the change.』

今年中に償還再投資のやり方を変化させるのと、事前にアナウンスしてそれはやるという事のようで。

『My preference is that once we decide on a plan, we stay with it; the fed funds rate should be our main tool for responding to changes in the outlook during normal times. Because it will take several years to reduce the size of the balance sheet through asset run-off, we can end reinvestments before we have decided on the ultimate size of the balance sheet.』

『This decision is essentially one about our longer-run monetary policy implementation framework: do we want to operate with scarce banking reserves (the so-called corridor system) or abundant reserves (the so-called floor system)?10 Regardless of which framework is chosen, the Fed’s balance sheet will be considerably smaller than it is today.』

ということで、さすがにバランスシート縮小に関してはロンガーランで行うものだという話をしているので、そこまで過激な話をしている訳でもないでしょうし、議論でもまあこういう感じになっているんでしょうなあというお話だと思うのでした。


#ということで円債ネタがアレにつき米国に出稼ぎということで




2017/05/08

お題「休みボケなので先週のFOMC声明文で勘弁してくらはい」

ちょっとこの連休ドタバタしておりまして結局更新している余裕がありませんでしたすいません(時間はあったと思うが、汗)。

で、おフランスはマクロンさんのようですが積極的支持というよりはルペンよりマシという感じがしないでもないのが。

http://jp.reuters.com/article/french-election-macron-idJPKBN183100
World | 2017年 05月 8日 05:07 JST
仏大統領選決選投票、マクロン氏の勝利確実 仏史上最年少の指導者誕生へ

○遅ればせながらFOMC声明文だが「やる気」だけは伝わった気がする

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20170503a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20170315a.htm(前回)

FEDのホームページが変わって今までだとHTML版の「印刷用バージョン」が出せて、それを印刷して読み比べると非常にやりやすかったのですが、印刷用バージョンが無くなってしまったもんで普通にHTMLを印刷すると非常に字が細かくなってイカンです。

ということは兎も角として、今回のFOMCは「足もとの経済が何となく怪しげな感じを醸し出しているのは認める」ものの、「それでもワシら利上げするもんね〜」という意思はよー伝わった、とアタクシは思うのですがどうでしょうかねえという所で。

・第1パラグラフ:足もとの弱さに言及するも・・・・・・・

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that the labor market has continued to strengthen even as growth in economic activity slowed.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in February indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has continued to expand at a moderate pace.』(前回)

つーことでまず最初の経済認識の部分ですけれども、足もとの経済がスローになっているのは認めていますが、今回の景気認識に関する最初の文章のポイントだと思うのは、文章の主文が「labor market has continued to strengthen」であって、経済に関しては「even as」以降で示されている、ということでして、後の方にも「足もとの経済減速は一時的」というのがあるのでそちらで理解できるという話でもあるのですが、ここの主文が「労働市場は引き続き強含み」というのにしている、という辺りに味わいを感じる次第です。

『Job gains were solid, on average, in recent months, and the unemployment rate declined.』(今回)
『Job gains remained solid and the unemployment rate was little changed in recent months.』(前回)

労働の拡大の所に「on average」とかヘッジクローズが入っていますな。

『Household spending rose only modestly, but the fundamentals underpinning the continued growth of consumption remained solid. Business fixed investment firmed.』(今回)
『Household spending has continued to rise moderately while business fixed investment appears to have firmed somewhat.』(前回)

家計消費の所も拡大が「only modestly」とか前回の「moderately」から弱くなっていたりしていますが、その後に「but the fundamentals underpinning the continued growth of consumption remained solid」とかこれまた言い訳じみた説明が入っていて「そうは言っても基調は強い」とかここまで言い訳が入りまくっている経済認識の出し方というのはFEDの声明文は一応毎回読んでおります(とは言え別に暗記しているわけではないが)けれども、基本的には割とスパッと認識の文言を変化させるという印象のあるFEDなのに、今回の表現って「足もとは確かに弱い部分があるけれども、基調としては強いんですよ大丈夫ですよ」というのが前面に出た感じの表現になっていてあまりこういうの見た印象があまり無いのです。

まあ普通に考えると糊代的に利上げ(と資産縮小)をしておきたいというFEDの意思(口を悪くして言えば「下心」)があるので、その「やりたい政策」に向けて経済のアセスメントに手心(口を悪くして言えば「大本営発表」)が入っているのではないか、という懸念がありますなあという事だと思うのですがどうでしょうかね。

でもって、だいたい「こういう政策をやりたいから」と言っている中で環境が変わっているのを軽視(無視とは言わないでおく)して特攻するというのは碌な事にならないという経験則があるんですよね〜。大丈夫ですかね〜。

『Inflation measured on a 12-month basis recently has been running close to the Committee's 2 percent longer-run objective. Excluding energy and food, consumer prices declined in March and inflation continued to run somewhat below 2 percent.』(今回)

『Inflation has increased in recent quarters, moving close to the Committee's 2 percent longer-run objective; excluding energy and food prices, inflation was little changed and continued to run somewhat below 2 percent.』(前回)

インフレに関しては表現が「最近は2%のロンガーランの目標に接近してきている」と前回も大概強い言い方ですが、今回は更に「マンデート達成間近だぜヒャッハー」という表現になっておりまして、まあ強い言い方をしています。コアインフレはまだ2%より若干下ですよ、というのは入れていますが、表現は今回若干進めていますので、まあ6月利上げしますよという話でしょう。

『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)
『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(前回)

でもってインフレ期待に関する文言は同じです。


・第2パラグラフ:足元の弱さは一時的というのを強調

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

というのは良いとしまして、

『The Committee views the slowing in growth during the first quarter as likely to be transitory and continues to expect that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will stabilize around 2 percent over the medium term.』(今回)

『The Committee expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, labor market conditions will strengthen somewhat further, and inflation will stabilize around 2 percent over the medium term.』(前回)

「the slowing in growth during the first quarter as likely to be transitory」というのが最初に入っていまして、第1パラグラフで散々示した「そうは言っても景気は強い」というのをこちらにも示しています、ということでして、それ以下の部分は前回同様です。

『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(今回)
『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.』(前回)

とまあ思いっきり同じです。


・第3〜5パラグラフは基本的に同じ話です

第3パラグラフ。

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 3/4 to 1 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(今回)

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 3/4 to 1 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(前回)

ここは前回利上げをしているので、利上げしましたというのと現状維持というのが書き方が違いますけれども、本質的には全文一致と同じですな。


第4パラグラフは全文一致です。長めだけど一応両方載せますね。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

先行きの政策はデータディペンデント(キリッ)と言っていますが第1パラグラフを見るとどう見ても金融政策がプリセットコースになっているじゃろと小一時間問い詰めたい。

バランスシート政策に関する第5パラグラフも変化なしで、特にバランスシート縮小政策に関する新たな説明もなく(Implementation Noteというのが最後にリンクありますが、これは付利金利をどうするとか、ディレクティブはこういう文言ですよとかそういう話)という感じです。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.』(前回)

バランスシートに関する話に何らかのが出るのは6月利上げ通過してからですかねえ。


・第6パラグラフ:今回は全員一致

カシュカリさん利下げ提案とかそういう頓狂な事はしませんでした。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; and Jerome H. Powell.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo. Voting against the action was Neel Kashkari, who preferred at this meeting to maintain the existing target range for the federal funds rate.』(前回)

つーことで今回は全員一致になっています。

まー今回は「6月利上げやりますよ」声明文でしたし、市場の受止めもそうだったと思うのですけれども、その一方で米株の方はきっちりと堅調推移していますので、FEDとしてはウマーという展開で、利上げはホイホイと実施できるという事ではありますな。ただ市場としてはFEDの考えているであろう利上げ路線はどこかで止めざるを得なくなる、とタカを括っているからこその株価堅調長期金利アガランチ会長という展開でもあると思いますので、



○基調的な物価ェ・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

でまあこちらの
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

ですけれども、何故か直近数字を最近PDFの図表の方でださなくなっていますけれども、エクセルの方を見れば数字は載っておりますのでそちらを拝読するとですな。

(1)総合(除く生鮮食品・エネルギー)・総合(除く食料・エネルギー)

Jan-17 0.2
Feb-17 0.1
Mar-17 -0.1

・・・・・・・・・日銀版コアがマイナスになっていますが。

(2)刈込平均値・加重中央値・最頻値

刈込平均値
Jan-17 0.2
Feb-17 0.1
Mar-17 0.1

加重中央値
Jan-17 0.0
Feb-17 0.0
Mar-17 0.0

最頻値
Jan-17 0.3
Feb-17 0.3
Mar-17 0.3

ということですが、ちなみに加重中央値って2013年7月にゼロまで戻ったのですが、その後延々とゼロと0.1、ごくまれに0.2しか付けていなくて、しかも新基準になってからの2016年1月以降ってずーっとゼロのままでして、「QQEでインフレ期待を引き上げてフィリップス曲線を上方シフトさせる」とは何だったのかと小一時間問い詰めたい(適合的期待形成という意味ではこの粘着性の強さは良く当たっているなあと思いますが)。

(3)上昇・下落品目比率
    上昇 下落 差
Jan-17 59.1 33.7 25.4
Feb-17 58.5 34.4 24.1
Mar-17 59.3 33.5 25.8

昨年12月には差が19.7まで来ていましたので少しましになったということですし、一応は上昇の方が多い、というのは続いていますな、というのはありますけど。


○そういや5年130回はどうするんでしょ

2日の中期流動性供給入札の追加発行銘柄
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170502a.htm

5年債 121 77
5年債 122 2
5年債 123 50
5年債 126 1,106
5年債 130 30
10年債 296 717
10年債 302 13

130が連日の補完供給攻撃なのでこれが本命なのかと思っていましたが、126回がドカンと追加発行されるとなという所で、まあショート銘柄なんでしょうかという(詳しくなくてすいません)ことですけど、これで先々延々と130回の補完供給が続くとなんじゃそら的な気はするんですが良く分からん。



2017/05/02

お題「今日は中期流動性供給入札!/総裁会見の出口論に関して」

本日は諸般の事情(ただの寝坊)により簡単版ですいません。

なお相場の方は
http://jp.reuters.com/article/idJPL4N1I31W1
Markets | 2017年 05月 1日 18:09 JST
〔マーケットアイ〕金利:新発10年債は半年ぶりに取引成立せず、連休谷間で様子見

ではありますが、今週はFOMCもありますし先般のECBも瞬間的に材料にならなかったのを良い事に(?)とりあえず放置プレイしていますが、まあそうも言ってられませんし、連休中にアップデートできるものはアップデートします(キリッ)。

あと、サイトの方なのですが、KDDI(au one net)のホームページ公開代理サービス使っているのですが、ケシカラン事に10月末にサービス無くなるので引っ越し先を作っておかないといけない(暫くミラーサイトで運営していずれそっちがメインとなる予定)のでその辺の段取りもあったりするので、まあ連休なのですが微妙にやることはあるのでした(大汗)。


○市場メモメモ

・今日は流動性供給入札な訳だが

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/yotei/auct20170425.htm
流動性供給(第237回)入札の発行予定額等

1.入札予定日 平成29年5月2日
2.発行予定日 平成29年5月9日
3.発行対象予定銘柄

利付国庫債券(2年) 第364回から第374回まで
利付国庫債券(5年) 第112回から第130回まで
利付国庫債券(10年) 第293回から第322回まで
利付国庫債券(20年) 第40回から第55回まで

4.発行予定額 額面金額で2,000億円程度

ということで本日は
>利付国庫債券(5年) 第112回から第130回まで
の流動性供給入札が有る訳ですが、5年130回と言えば・・・・・・・・


http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170501.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)1,784 1,784 -0.600 -0.600

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債130回(1,654億円)、5年利付国債131回(17億円)、10年利付国債343回(7億円)、
30年利付国債54回(105億円)、物価連動国債16回(1億円)です。

てなことで5年130回債が相変わらず補完供給のうちの殆どになっているという状態でございまして、まあ今日は中期ゾーンの流動性供給入札で追加発行待ったなしという感じではあるのですがさてどうなるのやらというメモだけ置いておくのですが、しかしまあこの銘柄延々と補完供給で出ずっぱりでして、同じ人が延々と補完供給を使っているとそろそろ(もうちょっとあると思いますが)ロールの期限がやってくると思うのだが・・・・・・・・・・


・3M短国

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170501.htm

(3)募入最低価格 100円03銭2厘5毛(募入最高利回り)(-0.1303%)
(4)募入最低価格における案分比率 74.9697%
(5)募入平均価格 100円03銭4厘8毛(募入平均利回り)(-0.1395%)

ということで▲13〜▲14の水準になっていますが、前回の3Mが▲14.75bp平均の足切りが▲13.83bpでしたので、まあ▲10bp台の前半がとりあえずの落ち着きどころなのかと思いますけれども、日銀の盛大な買いがもうちょっと緩和されればGC並みに落ち着くじゃろとか思いまするにこの微妙な水準ェ・・・・・という感じではありますが。


・輪番は予定通り(?)中期3-5を減額

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170501.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年5月8日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,000 2017年5月8日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2017年5月8日
国債買入(物価連動債) 250 2017年5月8日

ということで、輪番オペですけれども3-5年が3200→3000となりまして、これで3月の最終回以外の買入額が3500だったので実質的には今月に入って3500→3000と1回あたり500億円減額になってますので月間で3000億円の減額だったりしますな。

でもって基本的に中期とか発行減ってきてますので減額は妥当なのですが、こうやって「月内最終回の輪番で減額を行う」→「月末の翌月予定でレンジを変更」→「月初1回目に変更したやつの買入額をレンジの中心に落とす」というのをパターン化してしまうと、今度はそのパターンから外れるといきなりサプライズみたいな事になってしまいかねませんので、(つまり月の真ん中あたりで減らすとサプライズみたいな事になる)あまり定型パターンにするのもどうかと思います(だからと言って積極的に増減されたらもっと困るけど)。


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170428c.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について


── 次回公表は2017年5月31日17時を予定。



それから相変わらず輪番の予定額が月末の17時になっているのですが、別に月末である必要もない筈なので、どこかのタイミングで月のど真ん中あたりに変更してくれませんですかねえ(例えばキリの良い所で積み最終日にするとか)と思う次第ではありまする。



○総裁会見ネタの出口政策に関するお話から

つーことで展望レポートネタとかの前に昨日の続きで勘弁。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1704b.pdf

たぶん昨日ネタにした物価関連の話の方が重要なのですが、出口関連の話につきましても質問のポイント的に面白いのはあったので引用の巻。

最初の方にあった質問は3つも論点入れるなよという感じですが。

『(問) 国債の買入れペース、年間 80 兆円をめどという文言が今回も残っています。買入れ額は、足許では減っていたり、振れ幅が大きくなっている状況だと思いますが、それでもこの 80 兆円という文言を残すのか、それとも現状に即した数字にしていくのか、そういうことを視野に入れていらっしゃるでしょうか。』

これが80兆円の文言。

『もう 1 つ、自民党の行政改革推進本部で、日銀は、今のうちから出口戦略についての考えを語り、市場との対話をすべきではないかという意見が出されました。日銀内で出口戦略についてのシミュレーションは行っているということですので、それを早い段階から公表していくというお考えはありますでしょうか。』

これはこの前の国会での岩田師匠の答弁関連。

『そしてもう 1 点、物価目標 2%を達成するために、今の金融政策を続けていくと、出口の段階で日銀が債務超過に陥るという指摘がありますが、それについて総裁はどう考えていらっしゃるでしょうか。』

でもってこの質問なのですが、まあ回答の方でアタクシ的なツッコミをしてみようかと。では参ります。

『(答) まず、80 兆円のめどについては、昨年の 9 月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを決めた際にも申し上げましたが、実際の国債買入れ額は、金融市場の状況に応じて、ある程度の幅をもって変動することになります。実際、昨年 9 月以降の毎月の買入れ額をみますと、計算上の年間買入れペースは、80 兆円を上回ったり下回ったりしているわけです。』

そら2月に指値やったり買入拡大したからな。

『金融市場調節方針の具体的な内容は、もちろん毎回の金融政策決定会合で議論しますが、年間 80 兆円のめどについては、ゼロ%程度という長期金利の操作目標を実現するという点で、問題が生じているとは考えていません。


という謎答弁をしているのですが、実際問題としてはまたまた買入減っていますから年間のペースに引き直すと60兆円も怪しくなっている位になると思うのでして、問題生じているとかそういうのはごまかし答弁にも程があります。

ただ、昨日ネタにしましたように、現状の政策は「実質金利ガー」と言って効いているだの効いてないだのという話をしていて、量の話はすっかりスルー(オーバーシュート型コミットメントはあるけど)という事になっていますし、債券市場の方も80兆円はただのオマジナイになっている、というのも理解していますので、今更文言削除して目立つのも如何な物かということでしょうし、本当に経済物価情勢が好転して金利上昇圧力が掛かれば防衛買いをしないといけなくなるので、一気に買入残高拡大ペースが加速するかも知れず、ということで諸々考えたら放置プレイで良い訳ですよ。

ここの文言については割とこう本職の何とかストの皆さんがネタにしたがるようなのですが、おそらく債券的にはどうでも良くて、他市場の反応的に「緩和の後退」と言われて為替が円高に振れたりすると嫌でしょうから、外すなら外すでタイミングはそっち次第じゃないのですかねえ、と思います。

『それから、出口戦略につきましては、毎回申し上げている通り、物価は 2%に向けて上昇していくとみていますが、足許では、0%程度に止まっています。今から出口戦略について具体的にお話しすることは、かえってマーケットに混乱を招くおそれがあると思っています。』

『と申しますのは、具体的な出口戦略というのは、そのときの経済・物価・金融情勢如何によって、どのようなものが適当かが決まってくるわけです。』

と言ってますがまあこれもインチキな話で、「このようなプリンシパルで」みたいなのを出したとしても「情勢違うから前の無しね」で済む話で、却って出口が遠い時に出した方が現実の話じゃないから市場が反応しようにも反応できない、という事になると思うのですよね。

『「量的・質的金融緩和」を導入して以来 4 年になりますが、出口戦略を考えるときには、短期金利の水準をどうするか、拡大したバランスシートをどのように取り扱うか、という 2 つの点が議論になると思います。それらについてどのような具体的な戦略で進めていけばよいかは、あくまでもそのときの経済・物価・金融情勢如何によりますので、今から具体的なイメージをもってお話しするのは、やはり時期尚早であろうと思います。』

だったら「まずは金利の引き上げ」「その後にバランスシートの縮小」みたいな原則だけ出せば良いじゃんと思うのですけどねえ。

・・・・・・・あとですね、これ質問のテクニックというか質問者の定義の仕方というかにもツッコミどころがありまして、「出口」という場合にどういう状況なのかを定義しないで質問すると上記のようなふわっとした答えを返される訳ですよ。

でもって正直「経済が好転して物価が徐々に上がって行ってインフレ期待も上がって来ました」というような「美しい出口」だったらそんなにまずい話になる訳もなく、その時って10年金利の居場所の問題ではやや面倒ではあります(ので債券市場的には色々と深刻です)が、他の弊害ってそんなにないし、最終兵器「ETF売却」があるので経済の過熱を冷やす手段は物凄いのがあるんですよ。

それより問題なのは(1)財政発散経路に入ってしまって出口政策ができない、とか財政インフレみたいなのになる、というのと、さらに不味いのが(2)物価が全然上がらないまま政策の方が行き詰ってしまう袋小路、という奴でして、そっちについてどう思いますか(特に2番)と聞くのが宜しいのではないでしょうか。メディア的にはつまらんのかなあ。

『3 点目のご質問についても同様です。必要な市場とのコミュニケーションというのは常にありますし、出口戦略について、米国も、出口にさしかかったときに説明しています。我々も、そういう段階になれば、適切なコミュニケーションをとることになると思います。』

いや米国は出口の相当前に話をしたぞ。


次の質問ですけど。

『(問) 先程の質問の繰り返しになりますが、出口について、今は時期尚早だというお話があり、経済・物価・金融の状況によるということでしたが、具体的な条件としてはどういったものが挙げられるのでしょうか。(後半割愛)』

『(答) まず、第 1 の出口云々については、経済・物価・金融情勢によって、最も適切な出口戦略を採っていくことになりますので、具体的なイメージを持って出口戦略のあり方を今から議論するのは、やはり時期尚早であろうと思います。そもそもどういう場合に出口になるかというと、当然のことながら 2%の「物価安定の目標」を実現するということが、出口についての議論の始まりであろうと思っています。(後半割愛)』

何という禅問答という所ですが、この説明の最大のインチキな所は、金融政策の波及のラグについてスルーした説明をしている事で、超強力金融緩和を推進しているのですから、本当にそれが効くのであれば2%に達して安定するのではなくて、当然ながら2%を確認して暫く経過したら上にインフレが突き抜ける筈なのですよ。

でもそういう話をしていないし、大体からして展望レポートの見通しだって足元から急角度で物価が上がってそのあと2%近くに来ると急にアンカーされる、という夢のような見通しになっているというこの謎の見通しになっている辺りが何とも非現実的でして、本当は急角度で上昇してその後アンカーされるためには途中で緩和の縮小を行わないとそうならんじゃろという事になる筈なんですよ。

しかしそういう話にならん、ちゅーことは元々展望レポートの物価見通しのパスに無理があるということでして、恐らく大本営発表とは別で本音の所では物価はチンタラとしか上がらないと思っていて、だからこそ出口について時期尚早と言い続ける余裕がある、という事なんでしょウリウリウリと小一時間問い詰めたいところではあります。


あとこんな演説がありましたけれども、

『(問) 先程からいくつか、日銀の出口について質問があったのですが、いつも通り黒田総裁は時期尚早とお答えになっています。なぜここに関心が増えているかというと、やはり 2013 年に始まって、2 年でケリをつけると始まった異次元緩和が、4 年目から 5 年目になり、2%に達するのも 2018 年度頃とおっしゃっていますが、民間のエコノミストはそれも難しいだろうと言っています。今の異次元緩和を続ければ続けるほど、バランスシートが膨らんでいき、バランスシートが膨らめば膨らむほど、出口が難しくなるということは議論の余地がないと思います。だからこそ、今どのようにお考えなのか、私どもに示してほしいというのが、色々な声だと思うのですが、それを時期尚早だというのは、やはり説明責任を果たしているのかどうか、疑問があります。(後半割愛)』

とここで止めればさっき申し上げた(2)のケースの「出口のない中で政策の副作用が高まって立ち往生」という話になるのですから、そう質問をすれば良いのにその後余計な事を延々話すもんだから、

『(答) 従来から申し上げている通り、この場は金融政策および今回は展望レポートも含めてですが、ご質問にお答えする場でありまして、演説をして頂く場ではありませんので、それに対してコメントをするつもりはありません。』

とか誤魔化されてしまいましたが、その続きを見ますと、

『なお、出口戦略については、何回も申し上げている通りです。米国のFRBも、2008 年のリーマンショック以降、量的緩和を 3 度にわたって拡大してきて、そうした中で出口戦略をかなり前に語りましたが、それは実際に現在行っている出口戦略とは違ったものでした。』

おうさっきと話が違うじゃん(これが正しい)。

『ですから、あまり時期尚早に出口戦略を語っても、実際にそうなるわけではない話をするのは、あまり市場にとっても適切でないと思いますので、私どもとしては、まさに適切に説明責任を果たしていく、ということに尽きます。


とか何とかこれまた誤魔化していますが、じゃあ実際にそうなる訳ではない話をしたから当時の市場が混乱したかというと全然そういう事は無かった訳で、だからこそ説明したらどうですか、という話はありだと思うのですな。

#とまあそういうことで簡略版で勘弁






2017/05/01

お題「輪番減額はマイルドに継続/総裁会見での物価上昇メカニズムに関する質疑を集中鑑賞」

メーデーということですから5月ですよ5月。

○国債買入は中期3-5年を減らすのみで穏やかですが一応減額方向は継続

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170428c.pdf

4月の最終回の買入オファーと比較する。

短期:500〜1000(700億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3200億円)
長期:3500〜5500(4500億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(1000億円)

ということで、4月24日の所(月内最終の中期輪番)の所で中期輪番の3-5を減額してきたのですが、輪番のレンジに関して今回変更してきたのが中期の3-5年という事になりまして、これはもうパターンとして「月内最終の輪番を減額したら翌月のレンジを下げてきます」という事になりましたな。

いやまあサプライズになるのを避けようという事だと思うのですが、ただこれを固定化させてしまうと何か別にやらないととなった時に物凄いサプライズになってしまうリスクがあるので、適当にそこはガス抜きをしながらやっていった方が良いような気もしますが、まあこうやってとにかくボラを出さないようにしていきましょうというのは分かりました。

でもって今回も中期輪番が減額になったのですが、ただ暫く前よりも金利が下がっている割には減額のペースが落ちてるなあというのは、為替の円高を気にしているのでしょうかねえとか、まーちょっとバカバカ減らしたから(ただし中期)様子見ということなのか良く分かりませんが、ややソフトになってきた感があります。まあそれで調子に乗って金利が下がったらまた削減ペースに入ってくるとは思います。


あと短国ですが。

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、5月末の残高を29〜31兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。


となっていまして、確か4月の短国残高が31.5兆円とか31.6兆円とかその辺の数字だと思いましたので、5月も削減方向。今月は威勢よく減らしたら短国3Mが▲10bp近くまで金利が上昇して、短国買入を厚めに入れたら月末近辺になってまた金利が低下方向になりましたので、また減額方向という事でしょう。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170428.htm
国庫短期証券買入 5,000 2017年5月2日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170428.htm
国庫短期証券買入 16,645 5,000 -0.006 0.001 33.9

ということで昨日は短国買入が5000億円でしたが応札も1.6兆円しかありませんでして、落札も強い所まで流れていますから、まあ需給は一時から見れば改善してるんでしょ。とは言いましても、国内投資家に嵌る金利水準じゃない所(GCレート並みに金利が上がれば国内投資家が普通に買ってくると思うので日銀関係なく捌けると思うのだが)でやっているだけに日銀買入とのバランスで需給が決まりますからねえ。


○総裁会見であるが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1704b.pdf

・物価が上昇するメカニズムに関する質疑を少々といいつつたくさん並べてみました

『(問) 今回初めてお示しになりました 2019 年度の物価見通しは消費税の影響を除くと 1.9%、2017 年度については下方修正をしています。一方で 2%の「物価安定の目標」の達成時期については「2018 年度頃」と、これまでの見通しを維持されているかと思います。物価目標達成へ向けた道筋について、特にその達成時期の考え方を含めて詳しくご説明下さい。』

経済見通しが上がっているのに物価見通しは足元下がって先行き不変なのはなぜか。

『(答) 前回の展望レポートの後の消費者物価の動きをみますと、このところ、携帯電話機など一部の耐久消費財やサービス価格が弱めの動きとなっています。もっとも、2%に向けたモメンタムは維持されていると考えています。』

ということではいはい携帯電話携帯電話ということだそうですが、これまでずーっと物価が思うように上がらん原因をやれ石油だやれ為替だやれ形態だと特殊要因のせいにしているのですが、本来の日銀の説明通りに期待物価上昇率に対して日銀の金融政策によって引き上げる事ができているのであれば、この手の特殊要因はワンオフのものであって、トレンドとしての物価上昇はより明確になっている筈なのでして、個別特殊要因のせいで一々物価上昇が遅れる、というのは話は簡単で要するにインフレ期待の引き上げに失敗しているんですよ。

ということは間違っても口にしないのが日銀執行部(というか企画)クオリティなので如何ともしがたいですな。

『すなわち、マクロ的な需給ギャップは改善しており、昨年末にプラス転化しています。特に、労働需給の引き締まりが一段と明確になるもとで、多くの企業で 4 年連続のベースアップが実現する見通しにあるなど、賃金は緩やかに上昇しています。先行きも、需給ギャップがプラス幅を拡大していくもとで、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環が作用していくとみています。』

実際は需給ギャップに対する物価の感応度が弱くて(フィリップスカーブの言い方であればフィリップスカーブの傾きが寝ている状態)需給ギャップが拡大しても物価が上がらなくて、その好循環が出てくるのが怪しいという可能性があったり、別の問題としてはこの前の物価上昇で消費が思いっきりコケてしまったのが足もとの物価上がらんぞな的な流れにもなっている(ここもとの値下げとかそうでしょ)というのもありますが、今回物価が上昇していった場合に、消費がコケないで推移して物価上昇が定着するのかね、とか色々と課題はあるのですが、とりあえず現在の日銀は「労働需給がひっ迫している」→「賃金を引き上げない訳には行かない」→「賃上げが価格にいずれ転嫁されるに違いない」→「賃金上がっているのだから価格上昇も受け入れられるし、それが定着すればインフレ期待が上がっていくでしょう」という労働需給一本足打法になっているのが何とも。

『中長期的な予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いていますが、先行きは、現実の物価上昇率が高まっていくもとで、いわゆる「適合的な期待形成」の面からも、上昇傾向を辿っていくと予想されます。』

『こうしたもとで、先行き、消費者物価の前年比は、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤である 2018 年度頃になる可能性が高いと考えられます。また、その後は、2%程度で安定的に推移していくものと見込んでいます。


つー説明になっている訳よ。つまり足もとは一時要因、今後は労働需給タイト化が引っ張っていくというシナリオなのでロジックは・・・・・・・・・・・・

『(問) 本日の展望レポートの成長率をみると、2017 年度をピークに 2019 年度にかけて徐々に成長率が減速していく格好になっています。一方で、物価上昇率については 2019 年度にかけて徐々に上昇率を高める、という格好になっています。経済が減速している中で、物価上昇率が高まると考えられる根拠、特に需給ギャップをはじめとして、どのように推移していくとこのような状況が達成できるのか、具体的にお願いします。』

需給ギャップだけで話をしていると需給ギャップはシクリカルな話なのだからどこかでコケると思うんだが大丈夫かという質問。

『(答) この見通しについて、もっと強気だとかもっと弱気の見通しもあり得るとは思いますが、ロジックは非常に分かりやすくなっています。』

ほう。

『わが国の潜在成長率は、従来 0%台前半かと思われていましたが、最近のGDP統計の改定等により、中期的な潜在成長率は、0%台の後半くらいではないかと思っています。いずれにしても、2017 年度、2018 年度と潜在成長率をかなり上回るペースで経済が拡大していくと、需給ギャップは改善し、労働需給は更にタイトになっていくということですから、そうしたもとで賃金や物価が上昇していくというのは、極めて自然というか、経済のロジックに合ったものであると考えています。』

といいう説明になっている、ということですな。


でも良く考えますと・・・・・・・・・・・・・・・・

『(問) イオンの岡田社長が、「脱デフレは大いなるイリュージョンだ」という発言をされました。いわゆる予想物価上昇率は低い状況にあるかと思います。総裁は当初、予想物価上昇率が物価上昇の起点になると説明されていましたが、昨年 9 月の「総括的な検証」では、予想物価上昇率は過去の物価上昇率に引きずられやすいと整理をされていると思います。』

さいですな。

『お伺いしたいのは 2 点です。1 点目は、今、この状況でなかなか予想物価上昇率が高まらない中で、金融政策の何が物価上昇の起点になっているとお考えでしょうか。』

これは剛速球ストレートで実に良い質問(^^)。

『もう 1 点は、金融政策の中でも、特に量的緩和、国債の買入れの増加と日銀のバランスシートの拡大が、足許で予想物価上昇率に作用しているとお考えでしょうか。』

2球連続で剛球を投げ込んでおります。

『もしそうであれば、量的な増減、国債の買入れの増減は、予想物価上昇率の低下や上昇、ひいては実質金利の上昇や低下を通じて、企業行動や為替にも影響が出てくるかと思いますが、その点をどうお考えかお願いします。』

要するに効いてねえだろオイという質問ですな。でもってあまりにも剛球なもので答えがアホのように長くなっておりまして、まあだいたい長い答弁というのは話が苦しいから長話をしてその場を誤魔化すというのが仕様ですけれどもだいたいそんな感じ。

『(答) まず、予想物価上昇率につきましては、私どもは、世界の中央銀行あるいは世界の経済学者達と違ったことを言っているわけではありません。物価上昇率は、労働市場を含めた需給ギャップに影響されるとともに、中長期的な予想物価上昇率にも影響されるということです。』

いきなり斜め上の話から入って話を誤魔化す気が満々です。

『その場合の予想物価上昇率がどのように形成されるかは、それぞれの国や局面で色々な分析がなされていますが、昨年 9 月の「総括的な検証」で示したように、わが国の場合は、「適合的期待形成」の要素が非常に強い、つまり足許の物価上昇率が上がると予想物価上昇率も上がっていく、他方足許の物価上昇率が下がると予想物価上昇率も下がっていく傾向があります。これとは対照的に、米国の場合は、2%程度の「物価安定の目標」に予想物価上昇率が強くアンカーされている、という違いがはっきりしています。』

で?

『そうしたもとで、今後の予想物価上昇率や実際の物価上昇率については、潜在成長率を上回る経済の拡大が当面続き、需給ギャップが更に改善していく中で、賃金の上昇を伴いつつ、上昇するプロセスが起こってくるとみられます。他方で、エネルギー価格が非常に大きく下落し、それが実際の物価上昇率、ひいては一昨年の夏以来、予想物価上昇率を適合的に下落させたような状況に今はなく、むしろエネルギー価格が戻ってきたことによって、実際の物価上昇率には引上げの方向で効いてくる可能性が高いわけです。』

ということで、需給ギャップの話とワンオフの物価下落要因の裏が出て上がるから、という話なのですが、需給ギャップに関して言えば労働需給の逼迫って日銀の金融政策だけなんですかという話で、それよりも人口動態とかの問題だったりしねえかってのもあったりしますし、大体からして労働分配率がそこまで劇的に上がっていない(というか水準が低い方で推移している)のにそんなに前向きメカニズム働きますかねえという気がだいぶするのに加えまして、適合的期待の方については確かに今回昨年のワンオフの要因落ちるので物価上昇、と言っても足元では携帯電話という別のワンオフがマイナス寄与している訳で、いつになったら特殊要因の言い訳止めることが出来るんでしょうか、という気もする。


『いずれにしても、需給ギャップの縮小が続く、あるいは需給ギャップの改善が続く中で、エネルギー価格の回復もあり、実際の物価上昇率が上がっていく、その中で予想物価上昇率も徐々に上昇していくとみられます。』

まあそれ以外に説明のしようがない、ということです。

『それから、バランスシートの拡大が、直接的に予想物価上昇率であれ、将来の金利であれ、為替レートであれ、そういうものに影響するかについては、経済学者の間でも色々な議論があるところです。私どもが「量的・質的金融緩和」を始めて以来強調している通り、「量的・質的金融緩和」は、一方で予想物価上昇率にプラスの影響はありますが、何よりも長期金利を含めて、名目金利を大幅に引き下げて、その結果として実質金利を引き下げるというのが、実体経済にプラスの影響を与える主要なチャネルです。』

なお、効果は完全に「実質金利」になっておりまして、マネタリーベース2倍で2年で2%という話はすっかり無かった事になっています。そらまあ早期達成できないのですからここからはどうロジックを誤魔化して勝った事にするか、というはなしになるのでしょうからね。

『もちろん、期待に対する影響もあったとは思いますが、基本的な「量的・質的金融緩和」の実体経済に対する影響のチャネルは、先程申し上げたようなものです。現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」では、金融調節の目標を直接的に短期の政策金利と長期の国債金利に定め、いわばより明確な形で金融緩和を進めています。そういった意味では、操作目標は変わっていますが、金融緩和の目標や実体経済に与える影響のチャネルは、全く変わっていないということだと思います。


マネタリーべスはどこ行った??


さらに先の方でもメカニズムに関する疑問が。

『(問) 労働需給も逼迫してきて、賃金も 4 年連続でベアが達成されたということですが、一方で 4 月に入って小売業界では値下げという話も出てきています。このように、企業がなかなか値上げを出来ない理由は、どのような所にあると思っていらっしゃるのかを教えて下さい。もう 1 点、その背景に個人の節約志向というようなことがあるとすれば、2019 年10 月には、また消費増税があります。2%にようやく行きそうな所で、消費税をまた引き上げることが果たしてよいのかどうか、ご見解をお願い致します。』

まあ消費税の是非については答えが出ないでしょうが。

『(答) まず、需給ギャップが縮小してプラスになり、更に改善していく、あるいは、労働需給が更にタイトになっていく中で、当然、賃金は上昇していくと思っています。足許でも、4 年連続のベアが実現しています。特に、今年は中小企業も賃上げが昨年より高いようでありますし、ご承知のように、パートの賃金は、現在、前年比で 2%台の半ばぐらいの上昇を示しています。そういう意味で、賃金は今後、更に上昇していくと考えています。』

じっと手をみるいやなんでもないです。

『物価については、財とサービスで色々違いはあるとは思います。財の場合はどうしても、国際競争に晒されていますので、その影響は、ある程度大きくあります。サービスは、多くが国内向けであって、しかも、いわゆる非貿易財の場合が多いため、そういったものの価格は、主として、その国内の需給で決まってくると思いますので、全体としての物価も、徐々に上がっていくとみています。』

という願望。

『ただ、サービスの中でも、統計上、家賃が下がっている状況がずっと続いています。家賃については、以前から品質調整がされていないので、ずっと下がっているようになっているとか、議論が色々とあるわけです。』

はいはい家賃のせい家賃のせい。

『財の方は中身をみてみると、比較的上昇の要素がみえてくるのですが、サービスの中には、今申し上げたものですとか、公共料金等は別のシステムで決まってきますので、その辺りは、もう少しよくみていかなくてはならないと思います。』

はいはい公共料金のせい公共料金のせい。

『従って、賃金については労働需給が更にタイト化していく中で、色々な形で上昇していくとみていますが、物価については、今申し上げたような色々な要素がありますし、特に予想物価上昇率の弱めの状況というのが、まだ続いているわけです。ずっと予想物価上昇率が下がってくる状況が昨年以来止まって、一部に上昇しているものもあるのですが、まだ具体的に、明確に予想物価上昇率が上昇するところまで至っておらず、下げ止まってフラットに推移している状況ですので、物価については、先程来申し上げているように、予想物価上昇率の動きをよくみていきたいと思っています。』

ということなのですが、まあ見ていくという間に時間稼ぎをして、時間稼ぎした後にはまた別の理屈を繰り出してきて時間稼ぎ、とかそういう話なんでしょうな。


『消費税については、これは政府・国会が決められることですので、私から何か申し上げることは差し控えたいと思いますが、今回の展望レポートに示している通り、2019 年の 10 月に消費税が2%引き上げられるということを前提に、経済の見通し、物価の見通しを作成しているということだけは申し添えます。』

だそうです。


でまあ物価のメカニズムに関してはさらにツッコミがありまして・・・・・・・・・・

『(問) 物価に関して 2 点なのですけれども、足許の物価が想定よりも下がっている、あるいは弱い理由は、今日のお話からすると携帯電話、家賃、それから国民の予想物価上昇率が想定より低いという整理でよいのかどうかというのが 1 点です。』

うむ。

『 もう 1 つは、昨年 9 月の時点で日本人の予想物価上昇率というのは適合的だというのは、もう分かっていたことだと思うのですけれども、その 9 月以降の見通しに比べても、足許の物価というのは弱まっているのではないか、なかなか伸びてきていないのではないかと見受けられるのですけれども、更に予想物価上昇率が上がってこない理由について、何かお考えがあればあわせて教えて下さい。』

ですなあ。

『(答) 第 1 点は、基本的には、帰属家賃のマイナスはずっと続いており、最近マイナス幅が特に大きくなったというわけではありません。それから、予想物価上昇率については、原油価格が大幅に下落する中で実際の物価も下落し、一昨年の夏以降、予想物価上昇率も下がっていったわけですけれども、昨年の前半か中頃から、予想物価上昇率自体もどんどん下がるという状況ではなくなって安定していますので、足許の物価上昇率が 1 月にみていたよりも弱いといっても、予想物価上昇率が更に弱くなったわけではありません。』

いやそれは見通しより弱いんだから問題視しないとまずいでしょう。ということでここは明らかに大本営発表のノリでの誤魔化しモード。

『従って、足許の物価上昇率が 1 月にみていたよりも弱いのは、主として携帯電話機とか、その通話料等の値下げが相当効いていると思いますので、それ自体としては一時的な水準の引下げである可能性は高いと思います。』

ふーん。

『ただ、足許が下がるとその後にもある程度の影響は出てくる可能性はあると思います。基本的には、前回の展望レポートと比べて下がったのは、携帯などの一時的な要因であると思っています。』

はいはい一時的一時的。

『予想物価上昇率について、適合的な要素が非常に大きいということは、9 月の「総括的な検証」で詳しく分析した通りであり、そこが特に変わったとは思っていませんが、色々な事情で足許の物価上昇率が下がると予想物価上昇率にも影響するおそれがあるという点は変わっていないと思います。』

『ただ、実際の物価上昇率は大きく分けて、需給ギャップと予想物価上昇率の動きで説明できるわけですが、需給ギャップ自体は改善が続いていますし、2017 年度、2018年度と潜在成長率をかなり上回る成長が続くと見込まれますので、実際の物価上昇率も上昇していき、そうしたもとで適合的に予想物価上昇率も上昇していくとみています。


という説明に戻ってしまっているが、結局「一時的一時的とか言いながら説明しているけれども、本当にお前物価上がるんだな」という質問と、「物価が上がってインフレ期待本当にあがるの?」というあるのかな、とか何とか考えてみたりします。


なお、出口議論に関する質疑もありますが、そっちは今回時間と量の関係で明日続きを。