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2017/07/31

お題「7月会合主な意見は最後の佐藤木内オンパレードに味わいが」

ほお。
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-kelly-idJPKBN1AD2Q3
World | 2017年 07月 29日 07:04 JST
トランプ米大統領、プリーバス首席補佐官更迭 後任にケリー氏

ところで出口に関する話が何を今更という話題で頭がクラクラするんですが>モーサテ

#最後まで我慢して聞いたけど物凄く斜め上の論点に終始していてダメ過ぎる


○決定会合主な意見が最後の大演説モードとな

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2017/opi170720.pdf

・物価に関してと賃金のお話

『T.金融経済情勢に関する意見』の(物価)から。

『現在の金融政策を続けていけば、失業率がさらに低下し、需給ギャップのプラス幅が拡大するもとで、物価は経験則に沿って上昇していく。需給ギャップと物価の関係には半年ほどのラグがあるので、需給ギャップの値が変わらなくても、物価は上がっていく。現実の物価が上昇すれば、予想物価上昇率が高まり、それがさらに現実の物価を上昇させるメカニズムも存在する。』

・・・・・・・これ誰が言ってるんだか分かりませんが(なんとなく置物センセじゃない置物一派の香りもするけど)、「物価は経験則に沿って上昇していく」とか「需給ギャップと物価の関係には半年ほどのラグがあるので」とか言うのが何かワークしませんな、というのが今回の展望レポートでも問題視されてBOX3連発になったのではないかと思うと、この人は何が問題になっているのかを理解していないのではないか疑惑ががががが。

『物価が弱めの動きとなっている主因は、2014 年の消費税率引き上げ後の消費の回復が弱いために、企業が、人手不足により人件費が増加する中でも、価格を引き上げることができずにいることである。2%の「物価安定の目標」の達成のためには、消費拡大により需給ギャップを改善し、企業の価格設定行動を強気化していく必要がある。』

つーことなのですがじゃあ消費拡大はどうすると出来るのやらということですが、こういう意見もありまして。

『企業がコスト削減を優先して値上げを回避するのは、成長期待が乏しいためで、金融政策とともに成長期待を高める構造政策が重要である。』

まあそうじゃろうな。

『わが国では、デフレ期の環境に家計及び企業が順応してきた結果、物価の上昇に時間がかかっていると思うが、社会のノルム(規範)に変化が生じる環境は整いつつある。』

『企業による賃金上昇圧力の吸収努力は、短期的には物価を下押す可能性があるが、人手不足感がますます強まる中で、いずれ賃金上昇圧力がかかり始めると考えられる。』

『生産性の上昇余地はサービス業でなお大きく、雇用逼迫が賃金・物価の上昇に波及するまでには距離がある。』

つーことでまあ見解は分かれていますが、上がるでしょうという方に願望成分が高い感じは否めません。


・金融政策に関して

『U.金融政策運営に関する意見』でありますが、最後の方に佐藤さんと木内さんの連発ぶっこみが登場しますのでそれは後の方で。

『2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されている。もっとも、なお力強さに欠けることから、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要である。』

まあ何と申しますか、正副総裁の誰かがお書きになったと思うのですが、主な意見って個別で出すんだからこういう公式文書で書かれているものを引っ張って来なくて良いと思うのですけれどもねえ。

『足もとの物価の動きは鈍いが、景気の改善基調は強まっており、「物価安定の目標」の達成に向けたモメンタムは維持されていることから、現行の金融政策の枠組みを維持し、その効果を見守ることが肝要である。』

『物価の見通しは下振れているが、現時点では2%に向けたモメンタムがしっかりと維持されていることから、追加的な緩和策は不要であり、現在の政策を維持すべきである。』

というのが最初から3本あって、特に3本目は追加緩和が不要という話になっているのですが、今回は「モメンタム」を連発していまして、あまり練れていない言葉を連発して誤魔化している感が出てしまっているのがイクナイと思う。まーモメンタム自体は総括検証の後辺りから良く使うようになっている(QQE2の時にも言ってましたっけ)ので、使う側はそれなりに定義が出来ているという認識なのでしょうが、もうちょっと「モメンタムとは何ぞや(ちなみにそれは「需給ギャップ」と「インフレ期待」です)」というのを丁寧に説明した方が良いと思う(中曽副総裁の金懇で説明があったのでちょっとその辺は意識していると思いますけど)。


『今後、景気の緩やかな拡大が続き、現実の物価上昇率が高まるにつれて、人々の経済成長や物価に対する見方も変化することが見込まれる。そうしたもとで、長短金利を維持する現行の金融緩和政策の効果は一段と強まることになる。』

これなんですが、それはそうかも知れんが、そもそもそうなった場合に10年金利0%近辺で市場金利を維持、というのがオペレーショナルに回るのかという問題があるので、話がこう上手く行くのかどうかは謎ですけど、まー金利上昇圧力ゆうてもインフレ期待がそれなりに上がるのであればそっちの方は0.1%とか0.2%とかいうレベルの話ではないから緩和効果は高まるっちゅうのは分かります。

『実質GDPは年1%以上の成長が続いている。推計される潜在成長率も今後、おそらく1%以上になることから、10 年物金利をゼロ%程度に固定していれば、金融政策の景気刺激効果は強まる。そこで物価が上昇すれば、金融政策の効果はさらに強まるはずである。』

まあそれ言い出したら2014年の消費増税の所では物価がもっとホイホイ上がっていた訳で、消費増税効果であっさり金融政策の効果はオフセットされてしましましたが何か?ということでもありますので、金融緩和が足りないのか、そもそも効きが悪いのか、という話になるからこれの意見は理屈としては分かるのだがじゃあ何故前回はコケたの?って言われると先々この説明で行けるのかは謎な気がする。


『競争力と成長力の強化に向けた官民の取り組みに加え、日本銀行が強力な金融緩和を粘り強く推進することが重要である。その際、政府と日本銀行の足並みが揃っていることが引き続き肝要である。』

まあそうですが是非日銀におかれましては金融政策とプルーデンス政策の足並みも揃えて頂きたく。


・最後に佐藤さんと木内さんの連発が主な意見に華を添えます(?)

とここまで来て最後が佐藤木内オンパレードというのは構成が黒田さんですから中々味わいが。

『2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するという方針は、政策の自由度を制約しており、先行きの金融政策の正常化を困難にする。2%の「物価安定の目標」の達成は、中長期の目標と明確に位置付けるべきである。』

正常化を困難にするというよりは「出来もしない早期達成を標榜するとクレディビリティーが落ちる」という方が問題のようにも思えます。中長期を明確化というのですから木内さんなのかと思いますが。

『物価目標の達成時期の先送りを繰り返すことは、日本銀行の物価見通しの信認にかかわる。「できるだけ早期に」実現するスタンスを残しつつ、物価の安定が経済・金融の安定を含む包括的な概念であることを踏まえ、「物価安定の目標」を中長期的かつ柔軟な目標と位置付けることが適当である。』

ということでこちらでは「日本銀行の物価見通しの信認」と出てきました。この意見でも中長期的という話をしていますが、明確にそうだというのではないのと、柔軟な目標という話をしているので佐藤さんっぽいですな。

『物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の2つの使命をともに達成するために、後者により比重を置いた金融政策を行うべきである。付利金利を+0.1%に戻すことやイールドカーブ・コントロールの廃止はそれに資する。』

付利金利+0.1%というのは木内さんが提案していて、YCCではなく量にしろというのも木内さんですからこれは木内さん。

『10 年物金利の操作目標である「ゼロ%程度」の範囲をあまりに狭く解釈するべきではない。』

佐藤さんですかね。とは言いましても10bpの所を強力に意識させるような指値をバンバカ実施してしまった以上、この範囲ってオペレーショナルには中々簡単に柔軟化できないと思います。

『国債買入れペースに年間約 45 兆円という目標を新たに設定し、それを秩序だって段階的に低下させることが妥当である。』

これは木内さんですけど、まあ買入ペースってだいぶ落ちてきました(単にこの先償還が多いからというのはありますけど)という所ではあります。

『年間約6兆円のETF買入れの継続の是非について、今後議論が深まることを期待する。』

これは佐藤さんでも木内さんでも有りなのですが、どちらかと言えば佐藤さんの方がこのETFに関する懸念を説明していましたし、ここまでの流れが木内佐藤木内佐藤木内と来ているので佐藤さんでしょう。

・・・・ということで最後の所で佐藤さんと木内さんが金融政策に関する意見を色々とぶっこんで来まして、黒田さんが最後に木内佐藤スペシャルといった風情で構成してきましたなあというのが今回の見どころですが、次回以降まともな議論が行われるのかということ(そもそもこれまでもまともな議論になっていたのかどうかが怪しいのですが)について、10年後に議事録が出るので、その時を楽しみにしたいとは思いますが、その時金融政策ってどうなっているのでしょうねえ・・・・・・・・


○オペ関係雑談

・短国買入は順当に5000億円とな

金曜のオペのうち短国
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170728.htm
国庫短期証券買入 5,000 2017年8月1日

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170728.htm
国庫短期証券買入 11,495 5,000 0.000 0.002 88

つーことで来月は日銀保有短国の償還が少な目なのと8月はカレンダーの関係で月内渡しが5回入ってしまうのですが、さすがに5000億円を割って買入というのは無くて、結果も応札1.15兆円なので需給は良い(流れてはいないけど)という結果と相成りました。まあ問題は6Mと1Yの週に幾ら入れて来るのかという話ではありますが。


・輪番は前回オファーと同額とな

でもって輪番のオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170728.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年8月1日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年8月1日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,700 2017年8月1日

別にパターン確定している訳ではないのですが、月内最終回で買入額をいじってきて月末の輪番レンジ変更の際にサプライズ感を出さないというやり方もあるので、今月の輪番で中期と長期に関しては金曜が最終回ということもありまして、月内に増やした中期3-5年輪番と、500増やして300だけ減らした長期輪番を減らすのかどうだかなあという気はせんでも無かったのですが、そのまま前回オファーと同額で維持してきました。

でもって例によって例のごとく今日は来月の輪番予定が出てくるのですが、3-5と5-10の輪番のレンジを前月の数字と同じにしてくるのか、はたまた300とか200増えた分を反映させて来るのかという事ですが、別に前月維持(つまり元に戻す)でエエンチャウノという気はするんですけどどうなんでしょ。

まーここの上げ下げとか出し方に関してはここもとちょっとパターンが変わってきているので、あまり従来これだったからこうですみたいなのは無いと思った方が良いでしょうな。


○バランスシートは縮小するのか(カシュカリ総裁)

http://jp.reuters.com/article/kashkari-idJPKBN1AD2J5
Business | 2017年 07月 29日 04:54 JST
FRBバランスシートの支援効果薄い、縮小適切=ミネアポリス連銀総裁

『[28日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は28日、4兆5000億ドルまで膨らんでいる連邦準備理事会(FRB)のバランスシートは現時点で米経済の加速に大きく貢献していないとの考えを示し、段階的な縮小が適切となると述べた。』(上記URL先より)

ということですが、

https://www.minneapolisfed.org/news-and-events/presidents-speeches/neel-kashkari-speaking-at-the-business-networking-luncheon-in-woodbury
President's Speeches
Neel Kashkari Speaking at the Business Networking Luncheon in Woodbury
Neel Kashkari | President
Federal Reserve Bank of Minneapolis

Business Networking Luncheon
Woodbury Area Chamber of Commerce
July 28, 2017
12:30 PM

ってリンク先は40分の対談が延々と放送されるのでさすがに勘弁ですが、カシュカリさんもともとバブル警戒系の人でもあるので、利上げは否定的でもバランスシートは縮小なのね、という感じではあります。







2017/07/28

お題「短国ェ・・・・/中曽さんの会見/鈴木さん、片岡さんの就任会見」

お、おぅ・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170727/k10011076591000.html
民進 蓮舫代表 辞任の意向を周囲に伝える
7月27日 14時00分

『蓮舫氏は、次の衆議院選挙で東京の小選挙区から立候補する考えを明らかにするとともに、党の役員人事を行って党勢の回復につなげたい考えでしたが、役員人事の調整が難航したことなどもあって辞任の意向を固めたものとみられます。』(上記URL先より)

「役員人事の調整が難航した」って党が苦しい中で足の引っ張り合いをするというこの党の芸風は何なんでしょうかねえ(こんな所で投げ出す方も投げ出す方だと思いますし)。野党時代のガッキー自民党をちったあ見習った方が良いと思うのですが。

そしてこの勢いなら言える!って奴ですかこのタイミングは。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170727/k10011077201000.html
稲田防衛相 辞任の意向固める
7月27日 19時00分


○まーた短国が強くなっているのだが

昨日の3M入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170727.htm

(3)募入最低価格 100円03銭0厘0毛(募入最高利回り)(-0.1202%)
(4)募入最低価格における案分比率 85.5834%
(5)募入平均価格 100円03銭0厘7毛(募入平均利回り)(-0.1230%)

とまあそういう訳で▲12bp水準と前週が平均▲11bp乗ったとかネタにしていたのに対して一段と堅調となりました。そらまあ先週の短国買入が入札強いのに1.5兆円で打ってくるもんだから需給が強いんで仕方ないんですけど、来月は日銀保有短国の償還がアタクシの計算が間違えてなければ4兆少々弱(3.96兆円)になると思いますので、短国買入の残高は落とし方向にしないと後々で困る可能性もあるので、来月の短国買入は少なくて2兆多くて3兆、8月は土日の関係で受渡ベースの8月分買入が5回あることを考えると、買入ってそこそこ減らしてくる事になると思うのですが、さて今日の短国買入幾らで来るんですかねえとゆーところで、来月は徐々に需給が悪くなるのかなと。

なお償還額の計算に関しては
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
で計算していて本人は合っている積りで計算していますが自分で1回検算しただけ
なので間違っていたらゴメンなのですけど、まあそんなに償還が多くは無い筈
(9月の償還もあんまり多くない)ではあります。

なお今はMBターゲットは無い(ただしオーバーシュート型コミットメントがあるので減ることはないのですけどYCCやっていたら常識的に考えて勝手にMBは増える)のですけれども、何らかの事情で量的ターゲットをやらないといけなくなった場合の事を考えますと、とりあえず手っ取り早く数字が作れる短国買入はバッファーとして残しておいた方がどう見てもお得ですし、どうせ▲10bpを明確に超えて金利が上がってくればマイナスチャージとの見合いの買いが入って来るのでもっと減らした方が良いという話に普通に考えるとなると思いますがさてどうなるやら。


○中曽副総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1707c.pdf

・金融政策単体でインフレ期待をシフトアップさせるの無理ならゴメンナサイをすべきだと思うの

金融政策に関わる最初の質問(冒頭の質問は広島県経済に関する質問)である。

『(問) 午前の講演で、足許の物価上昇が鈍い背景には労働生産性の向上があり、これは日本経済全体にとってプラスであること、また、そうしたプラスの動きが物価上昇にも今後つながるはずであるという発言をされました。労働生産性の向上が物価上昇につながるメカニズムについて、それを阻害する要因は何かということも含めて、改めてご説明下さい。』

『また、ご指摘のようなメカニズムが働いて、実際に賃金や物価が上昇してくるタイミングについて、副総裁はいつごろとお考えなのか、ご所見をお聞かせ下さい。』

順番が逆ですが後半の答えを先に引用します(前半の答えが圧倒的に長いので)。

『(答)(前半は次で)そのうえで、物価上昇の時期ですが、今申し上げたような政府による構造政策と金融政策がしっかりとかみ合うことが前提ですが、自分自身としては、労働生産性の伸びをやや高めに想定しています。それを通じた物価上昇圧力が目に見えて現われてくるタイミングというのは、なかなか正確に予測することは困難ですが、私自身は展望レポートの見通し期間の後半には、こうした力が強まってくるのではないかと思っています。』

でまあ前半の大演説になるのですが、それはそれとしてここで「物価上昇の時期ですが、今申し上げたような政府による構造政策と金融政策がしっかりとかみ合うことが前提ですが、」って思いっきり言っている訳ですが、毎度しつこく指摘しておりますように、元々「金融政策でインフレ期待をシフトアップさせる」というのをボウリングの一番ピンとしてこの政策を打ち込んできた訳で、ついに「構造政策と金融政策がしっかりとかみ合うことが前提」とまで来たかと実に感慨が深いものを感じます。

でまあ折角ボウリングで話をしたから悪態ついておきますと、物価が上がっていないけれども経済の状況が良いから良いではないかという見苦しいエクスキューズが置物リフレ一派から相次いでおりますが、ボウリングの一番ピン倒してストライクって言いながら投じた玉が一番ピン当たらないで後ろのピンが5本くらい倒れたからよし、というのはシロウトが遊びでやるならそんなもんでしょうが、プロボウラーがそれやったら普通はミスショットと言われますよねー。

でもなぜかそれをミスショットと言わないで色々と話をしようとするから話が複雑骨折を起こす訳でして、「これからです」を連呼するのではなくて、「元々考えていた政策ルートは効いていないしロジックに無理があった」という事を素直にゴメンナサイ(特に岩田副総裁が全面に出て)するのが必要なんじゃないのと思いますがねえ。

ということでメカニズムのお話(長いです)。


・成長力が高まるメカニズムについて

『(答) ご回答にあたり、現在の人手不足、あるいはそれに対する企業の取り組みが持つマクロ経済的な意味合いについて、もう一度念のため整理をさせて頂いたうえでお答えしたいと思います。』

『本日の講演の繰り返しになってしまう部分もありますが、今の人手不足への企業の取り組みは、1つ目は省力化・効率化投資、2つ目が労働節約的なビジネス・プロセスの見直し、そして 3つ目が既存の人的資源の有効活用です。』

はい。

『これらは、マクロ的にみると、いわゆる資本装備率、および全要素生産性(TFP<Total Factor Productivity>)の上昇を通じて労働生産性が上昇することを意味します。また、7 月の私どもの支店長会議における支店長報告でも、このところ労働需給が非常にタイト化するなかで企業の開廃業も増えているという話がありました。実際、国内のM&A件数も増加基調にあり、新陳代謝も進んでいるのではないかと思います。』

ふむ。

『そうしたプロセスを通じて、雇用者がより生産性の高いセクターに移ることによって、経済全体の労働生産性は高まっていきます。そして、労働生産性が上昇すると、日本経済の潜在成長率も押し上げられることになります。』


『もともと潜在成長率の引き上げはアベノミクスの 3 本目の矢である成長戦略で目指していたわけであり、私たちもデフレを脱却して日本経済を持続的な成長経路に戻すうえで潜在成長率の引き上げが必要であるということをかねてより訴えてきたところですが、講演の中でも申し上げました通り、現在の人手不足が日本経済の構造改革を強力に促すことになると思います。』

昨日も申しあげましたが、そういう形での構造改革って上手く行くのかよと思う所があって、例えが適切かどうか怪しいですけど、それっていわばコストプッシュで物価が上がったら適合的な期待形成でインフレ期待が上がりますって話に近い気がして、まあコストプッシュと違って人手不足がワンタイムじゃないというのはありますけれども、需要増によって人手不足になって起こる構造改革と、労働人口動態の変化によって起こる構造改革って何か違う気がするので、この部分が楽観にすぎるように思える。

『そのうえで労働生産性の上昇が物価上昇に向かうメカニズムについては、いくつかあると思います。第 1 には、企業の省力化・効率化投資、ビジネス・プロセスの見直し、既存の人的資源の有効活用、こうした人手不足への取り組みが追求され尽くされてきた段階で、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくる、そして物価上昇圧力が強まってくると考えられます。次にもう少し、長い時間軸の話になると思いますが、第 2 には、潜在成長率が引き上げられることに伴って企業の成長期待が上昇する、あるいは恒常所得が増加することを通じて、設備投資や個人消費が活発化して需要を押し上げる効果もあると思います。』

ってこれどっちも時間が掛かる話ですよね。

『第 3 に、労働生産性の上昇に伴ってベースアップの伸び率が高まり、雇用者所得が増加する効果があると思います。これも消費活動を活発化すると思います。』

まあこれは分かるのだが、ベースアップするには企業の成長期待が必要なので、内需ならば消費を上げるためのベースアップ、と循環論法になりますし、そうなると外需頼みという話になりそうな。

『第 4 に、潜在成長率の上昇に伴って、いわゆる自然利子率も上昇すると考えられますので、金融緩和効果がその分高まると思います』

そもそも潜在成長率が上がるのに時間が掛かるという話なのでこれまた時間のかかる話だし、それ以前の問題としてこれだけ金融緩和していて需要の落ちは止められても別に盛り上げる程の効果がある訳でもなく、という状況なんですがそれは。

『以上のチャネルを通じた効果が複合的に作用して物価を押し上げると考えています。こうしたメカニズムがうまく発揮され、労働生産性を全体として引き上げていくためには、人手が足りない企業や成長性の高い産業に必要な人材が円滑に移動できるという意味での労働市場の流動性が十分に高いことが必要だと思います。わが国の労働市場の流動性は、改善余地が大きいと思われるだけに、政府による「働き方改革」を含めた労働市場改革が鍵を握ると思います。自分としても、この労働市場の流動性の問題は、もう少し掘り下げて考えてみたいと思っているテーマです。(以下先ほど引用した後半部分なので割愛)』

労働市場の流動性高めるのは良いんですけど、他の条件変えないで流動性だけ上がるような話になると労働コスト下げる方向に効いてしまうんじゃないかという懸念もありまして、制度面(年金とか)もそうですし、労働市場の流動性が高まるならば労働者には相応の流動性リスクプレミアムのようなものを払うようになっていくようにならんと思うんですけどね。まあアタクシもど素人なので良く分かりませんがいち労働者として考えますと。

・・・・・・・つー話なのですが、これってそもそも昔からずーっと続いている課題で、確かに人手不足になってきたからちったあこの辺りの話が進むかも知れません的なのはあるのですけれども、逆に言えばそうならないと動かんというのは政府サイドの無為無策って日銀がもっと文句を言った方が良いと思うのですが、ここで残念なのは日銀は「物価目標を金融政策で達成」と大口をたたいていることで、金融政策達成できてないのに何を言うと切り返されてしまうとぐぬぬとなってしまうのが惜しいので、やっぱりこうゴメンナサイな総括というのが必要なんでしょうな、と思うのでした。


・モメンタムとは

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、物価がいつ上がってくるか不確実性があるとのことですが、モメンタムが維持されているのであれば、多少物価が上がり始める時期が遅れても追加緩和は不要であり、現状の政策をこれまで通り続けるという理解でよろしいでしょうか。(後半割愛)』

『(答) まず、モメンタムとはどういうことかについて、もう一度整理させて頂きます。2つありますが、1 番目はマクロ的な需給ギャップの動向であり、2番目が中長期的な予想物価上昇率です。』

はい。

『マクロ的な需給ギャップにつきましては、本日ご説明した通り、展望レポートでは成長率が潜在成長率を上回る伸びが続くなかで、プラス幅を拡大していく見込みです。この点については、改善しているということです。』

『もう 1 つの中長期的な予想物価上昇率については、いくつかの指標は下げ止まっており、一部には上昇している指標もみられます。先行きも、実際に価格引き上げの動きが広がり、着実に上昇すると考えています。』

もっと改善を早くする為に追加緩和するのでは??

『こうした点からみますと、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタム、勢いがしっかりと維持されているとみています。そのうえで、日本銀行が目指しているのは、単に物価だけが上がっていく、そういう経済を目指しているわけではありません。私どもとしては、潜在成長率が上昇するなかで、雇用の拡大や賃金の上昇を伴いながら、物価も安定的に上昇していく、そうしたバランスのとれた経済を目指しています。』

2年を念頭に出来るだけ早期に達成ではなかったのか??

『今申し上げたように、日本経済はそうした方向に向かう途上にあり、次第に勢いを増していく、つまり、こうしたメカニズムが維持されていると判断していますので、追加緩和は不要と考えています。(後半割愛)』

ということでまー想定問答通りではあるのですが、これは毎度悪態申し上げている通りでアプローチをステルス転換しているということで、モメンタムというのが言い訳になっている、という形になっていますな。


・市場との対話とか金融政策の副作用とかの説明は相変わらずダメダメ

『(問) 2 点お伺いします。(前半割愛)もう 1 点は、達成時期の先送りで、大規模緩和も長期化しますが、ETFやマイナス金利、国債の大量購入による副作用も懸念されています。その副作用もより大きくなる点については、どのようにお考えでしょうか。


『(答) (前半割愛)副作用の問題については、私自身、市場をみてきた仕事が長く、非常に関心の高い分野ですので、先程申し上げたETFのほかに、短期市場と国債市場、金融機関の仲介機能に分けて少しお話をしたいと思います。』

ほうほう。

『期金融市場の核となるのは無担保コール市場です。マイナス金利政策を導入した直後は、残高が大きく落ち込みましたが、最近は回復してきており、ほぼ導入前の水準である 7 兆円強まで戻ってきています。これは、2001 年から 2006 年まで行った前回の量的金融緩和のもとでは、ほぼ市場取引がなくなったことと対照的と思っています。』

ってそら人為的にマイナス金利やっているんだから取引があるだけの話ですが。

『マイナス金利政策のもとで市場規模が回復しているのは、ややテクニカルになりますが、いわゆる政策金利残高を持っている市場参加者から、マクロ加算残高の余裕枠を持っている主体へと、裁定機会を求めて資金が流れていくことが背景にあると思います。短期金融市場の機能の維持は、当初から、当座預金を 3 層階層構造とした狙いの 1 つだったわけですが、意図した通り、無担保コール市場では、ある程度市場規模や市場機能が保たれていると思います。』

という説明なんですが、これは別に市場参加者の何らかの金利観などによって取引が行われているというよりは、マイナス金利適用を偏在化させることによって強制的に資金を動かしている訳で、こういうのは市場とは言わん。まあ参加者が残っているという意味では市場が残っているとは言えますし、元々無担保コール市場って基本管理相場なので取引があれば市場って話でしょうけれども、管理市場捕まえて市場がどうのこうのというのも違和感がある(「ある程度」といってるのはそういう意味合いを含めていると好意的に解釈しますが)。

『次に国債市場です。国債市場の市場機能をどう定義するか、この定義を少しはっきりさせたほうが、話が分かりやすくなると思います。私自身はBIS(国際決済銀行)の定義が良く出来ていると思っています。BISでは、市場参加者が大口取引を価格面に大きな影響を与えることなく、速やかに執行できる市場が流動性ないしは市場機能が高い状態であると定義しています。』

価格形成に介入しまくっている件はスルーですか・・・・・・・・・・

『こうした観点から、私自身が国債市場の機能度を評価する場合には、現物と先物の取引量、値幅出来高比率、板の厚さ、価格のインパクトつまり市場の頑健性、SLFの発動の頻度、SCとGCのスプレッド、少々テクニカルで申し訳ありませんが、こうした点を一生懸命みるようにしています。こうした指標をみる限りは、これまでのところ、国債市場の流動性や機能度がひどく低下したとはみていません。』

>国債市場の流動性や機能度がひどく低下したとはみていません
>国債市場の流動性や機能度がひどく低下したとはみていません
>国債市場の流動性や機能度がひどく低下したとはみていません

いやこの次にYCCの話はしているのですけれども、お前は何を言っているんだという話でありまして、何でこういう白々しい話をするかなーと思いますし、市場の中の人ってこういう会見の時にヘッドラインを先に見ますから、当然のように一昨日もこのヘッドラインが流れている訳で、こういうの見ると市場の中の人たちは盛大にドッチラケになってしまいますし、市場との対話とかいう言葉が物凄く空しくなるので、もうこういう説明しないで欲しいんですけどねえ。いやマジで。

『これは、そもそも「イールドカーブ・コントロール」のもとで、価格が動きにくくなっていることも影響していると考えられますが、いずれにしても、引き続き我々が行っている国債市場のサーベイ結果を注視していくほか、市場参加者との密接な意見交換も行いながら、国債市場の流動性や機能度の動向について、よく点検していきたいと思っています。』

っていう話にしちゃっているのが困る訳で、それよりも素直に「この政策は国債市場に対して日銀が強力に関与する事によって政策効果を上げるもので、物価安定目標達成という最も重要な目標の為に国債市場の流動性や機能度が一時的に低下することに関しては市場の皆様のご理解を頂きつつこの政策を行っていきたい」って言ってくれれば市場の中の人だって「そうですね」という話になるんですけど。

とは言いましても、まあその一時的が最初2年だったのに途中で更に凶悪化して開始から4年経っても終わらんどころかあと2年はやっていそうな見通しを出してくるという状況だから「一時的に低下することはご理解頂きたい」で済まないので、大本営発表をしないといけなくなるというのはあるのでしょうがそれにしても自分で最初に「市場をみてきた仕事が長く、非常に関心の高い分野ですので」というし市場の中の人もそう思っているあの中曽さんがこれを言う、というのががっかり感を強くするんですよね。黒田さんは黒田さんで元々市場を小馬鹿にしているんじゃないのというスタンスが見え見え(総括検証以来少し殊勝になったけど)だったし。


『もう 1 つは金融仲介機能です。金融機関の仲介機能については、現状、金融機関は全体として充実した資本基盤を持っており、人口減少のような構造問題や低金利環境を背景に収益力は下がっていますが、リスクテイクを継続する力は持っていると思います。実際、貸出は前年比+3%程度の伸びとなっています。企業や家計の資金調達は、本日の金融経済懇談会でも話が出ましたが、円滑に行われています。』

はあそうですか。

『今後、金融機関のポートフォリオ・リバランスが経済・物価情勢の改善とうまく結びついていけば、基礎的な収益力の回復を通じて、金融機関の仲介機能の維持・向上につながると考えています。』

>金融機関のポートフォリオ・リバランスが経済・物価情勢の改善とうまく結びついていけば
>金融機関のポートフォリオ・リバランスが経済・物価情勢の改善とうまく結びついていけば
>金融機関のポートフォリオ・リバランスが経済・物価情勢の改善とうまく結びついていけば

・・・・・・・・・ポートフォリオリバランスしたらいや何でもないです。

『もっとも、収益力の低下が長引いた場合には、金融機関は収益維持のために過度なリスクテイクに向かい、金融システムの安定性が損なわれるリスクがあると思われます。』

それは現状では起きていないと。

『また、収益力の低下が自己資本の蓄積に悪影響を及ぼすと、金融仲介機能が低下するという停滞方向のリスクもあります。当然ながら、金融仲介機能は、金融政策の大切な伝播チャネルですので、しっかりと機能を維持していくことが必要だと思います。我々としては引き続き、考査やオフサイト・モニタリング、金融システムレポートを通じて、今申し上げた両面のリスクを引き続き注視していきたいと思っています。』

つーことでですね、いや確かに会見とかで金融政策の副作用という話をあまり強調されると出口だなんだと書き立てられるからそういう話はしたくない、というのも分かるんですけれども、この調子で副作用はありませーんとか言われますと市場の中の人とか金融機関の中の人とかがドッチラケになってしまいますので、もうちょっとこう何とかならんのかとしか申し上げようがないし、ここの辺りが誠意に欠けるとかいう話で、しかも結果が出ていないのですから信頼感が無いとかそういうことになるんですよね。


なお質疑応答は結構な量があるのですが、まあ物価が上がらん言い訳とETFの話が殆どですし、ETFの話は別に面白くも無いのでこの辺で。


○鈴木審議委員・片岡審議委員の就任会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1707b.pdf

従来だと会見が就任の初日に打ち込まれるので、割とこうハプニングみたいなのもあるのですが、今回は就任の翌日ということで確りと練り込まれた(?)受け答えになっていてあまり面白くない(不謹慎)ですな。

・量に関する質疑(片岡さん)

『(問) お二人に質問します。黒田総裁の政策は、実際には、紆余曲折あったと思います。当初の 2 発については、純粋な量的緩和的なインパクトがあったと思うのですが、その量の期待インフレ率に与える影響について、今後も活用していくべきとお考えなのか、局面によって効果も変わってくるので、必ずしも、今後は、量によって期待インフレ率を上げていくのは慎重に考えた方がよいということなのか、その辺りの見解をお願いします。特に、現行の日本銀行の政策では、80 兆円という文言が紙には書かれていますが、この点については今後論点になると思いますので、ご見解をお願いします。』

どう見ても片岡さん向けの質問ですし、鈴木さんの答えはそつなく無難に答えているので割愛します。

『(片岡委員) 日本銀行は、現状、量・質・金利という 3 つの軸で、特に最近では、先程鈴木委員からもお話がありましたが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という形になっていますので、引き続き、例えば、量のみにこだわるとか、金利にのみにこだわるとか、そのような話ではなくなっていると理解しています。』

でもってそれが片岡さん的にどうなのよというのが質問なのですがさて・・・・・・・

『もちろん、今後どうしていくかという点については、私個人としては、足許の経済動向ですとか、委員の皆様方の議論を拝聴しながら、適切な対策を自分なりに考えて、提案なりを考えていくということなのだと思っています。』

ということなのですが、えーっと量でインフレ期待を引き上げるという置物リフレ理論はどこへ???という感じでして、原田さんはまだ量に拘った説明をしているので、アレはアレなりに筋は通っている(ただし今回追加緩和を提案しないのは筋が通っていない)のですが、片岡さんはどうも最初から腰が砕けているように見えます。

もちろんリフレ一派なので緩和的なスタンスで来るとは思いますし、最初の会合でどう出るのかはまだまだ分からないですけれども、ただまあスタートがこの調子だと何気に上が変わるとコロッと変わってしまうのではないかという雰囲気は今から漂っているように見えます。


・リフレ云々の質問に対して(またも片岡さん)

『(問) お二人にお伺いしたいのですが、反リフレ派と言われていた佐藤委員、木内委員が抜けることによって、全会一致でこれから政策決定が行われていくことになるのではないか、そういうことを危惧する声があります。議論が深まらない状況になるのではないかということなのですが、そのような懸念がある中で、お二人は審議委員として、どのような姿勢で政策決定に臨んでいこうと考えていらっしゃるのでしょうか。』


別に佐藤さん木内さんも反リフレというよりは就任時には寧ろ緩和派と言われていた訳で、政策手段やアプローチに関して現実派だったというだけの事ではないかと思いますが、それはそれとして片岡さんの回答(鈴木さんは非常に普通の答えなのでこれまた割愛)。

『(片岡委員) 私はよくリフレ派と呼ばれることが多いので、基本的に私に対する質問なのかもしれませんが、私がリフレ派なのかどうかについては、神学論争だと思いますので、直接申し上げることは何もありません。』

まあリフレ派=置物一派という感じだと思いますけどね(^^)。

『私個人は、こうして国会で選んで頂いた以上、自分の職務に忠実に、精一杯努めていければと思っています。それから、先程のご質問に関連して申し上げると、リフレ派なのか反リフレ派なのかといった主義主張に基づいて、現実の経済動向や環境条件の変化といったものを無視して政策判断を下すのは、私は全くの間違いだと思います。』

>現実の経済動向や環境条件の変化といったものを無視して政策判断を下すのは、私は全くの間違いだと思います
>現実の経済動向や環境条件の変化といったものを無視して政策判断を下すのは、私は全くの間違いだと思います
>現実の経済動向や環境条件の変化といったものを無視して政策判断を下すのは、私は全くの間違いだと思います

ほほう。

『よくエコノミストや経済学者の意見がコロコロ変わる、例えば、ケインズも書かれている本の時々において意見が違うという話もあるわけですが、なぜこのようになるのかというと、やはり現実の経済動向や統計などのファクトに基づいて、その時々に最適と考えられる政策判断を行った結果だと思います。』

>ファクトに基づいて、その時々に最適と考えられる政策判断
>ファクトに基づいて、その時々に最適と考えられる政策判断
>ファクトに基づいて、その時々に最適と考えられる政策判断

・・・・・・ということでして、これは君子豹変する香りがプンプン漂って参りますな。

『そのような意味で申し上げると、鈴木委員も少しおっしゃいましたが、全員が賛成だから不毛だとか、全員が全く違うことをおっしゃっていればそれでいいのかとか、そのような話にもつながると思いますので、そうした話は、正直不毛だと思います。それから、金融政策決定会合で、どのような議論がなされているのかについては、議事要旨ですとか、「金融政策決定会合における主な意見」などの形で公表されると思いますので、まずはこれらをご覧頂いた上でご判断頂ければと、現時点では感じています。』

まあここはその通りだと思うのだが、今問題視されているのは「やっている政策が極端な政策であるのに全員一致になるとは何ぞそれ」という事なので、一般論で返されてもとは思いますけど、まーそういう質問しても現時点では不毛なのでこんなもんでしょう。


・ということなので片岡さんの場合は・・・・・・・

『(問) (前半割愛、というか次で)片岡さんには、今の質問の答え(注:上記部分で引用した質疑です)で少し分かったような気もしたのですが、昨年の時点では量の拡大をすべきだという主張をよくされていて、その中では外債の購入やヘリマネも選択肢としてあり得るというお話もされていました。一方で、金利に対しては批判的な意見を述べられていたと思うのですが、こうした去年までの、あるいは就任前の意見というのはそのまま政策委員としても主張されるのかどうか、お考えを教えてもらえればと思います。』

『(片岡委員) 将来、特に 9 月以降、私自身がどのような提案をさせて頂くのかについては、現段階で直接的なお答えはできませんし、それは議事録をご覧頂くということになる、と思っています。それから、先程も申し上げましたが、金利か量か、など、政策手段の話は、その時々の判断に応じて変わっていくものだと私自身は考えています。ですから、そういう意味においては、現状の経済動向ですとか政策手段などを判断、議論しながら、私個人の中で間違いのないように進めていければと思っています。』

>金利か量か、など、政策手段の話はその時々の判断に応じて変わっていく
>金利か量か、など、政策手段の話はその時々の判断に応じて変わっていく
>金利か量か、など、政策手段の話はその時々の判断に応じて変わっていく

ということでもうのっけから日銀執行部(執行部というよりは事務方)に取り込まれる気が満々という風情ですなあ。


・鈴木さん当初は静かに静かにという感じのようで

今の質問の前半になります。

『(問) 別々の質問をしたいのですが、鈴木さんには、国債マーケットにも詳しいということですので、現行の金融政策をあと何年くらい続けられるものなのか、それと長引くことの弊害や副作用についてどういうふうに考えていらっしゃるかを教えて頂ければと思います。(後半割愛)』

『(鈴木委員) 今の金融政策があと何年くらい続けられるかというのは、まさに昨日辞令を受けて、これから日銀の方々からも色々な金融経済の状況についての認識や分析について伺い、そういったことを踏まえたうえでこれから考えていくことになると思いますので、現時点でコメントできるような立場にはないと思います。』

いやいやいや、当然そういうのは銀行さんは考えているでしょうから何らかのイメージが無い訳がないと思うのですがとりあえず余計な事を言って騒ぎにしないということですな。

『それと、市場の副作用云々ということをおっしゃられましたが、元々、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、あるいはマイナス金利を含んでいるものも、これらは全て経済の活性化のためにやっていることですので、その目標が実現できた暁には健全かつ活発な市場が戻ってくるのではないかと考えています。一時的には何がしかのことはあると思いますし、どんな良薬にも副作用はあるものだと思いますので、病の方が治れば全てはよくなるのではないかと思います。』

問題はその物価安定目標が全然達成できないことなのですが、というかこの答えはさっきの中曽副総裁の会見で中曽さんにしてほしい表現なんじゃがのう。


という安全運転答弁(まあ今回は従来の銀行出身審議委員よりも超思いっきり注目されてしまいましたから安全運転しないとマズカロウというのはあるでしょう)なので追加質問。

『(問) 鈴木委員にマイナス金利についてのお考えをお尋ねします。鈴木委員は銀行界に長くおられて、銀行の実務も熟知されていらっしゃると思うのですが、やはり現状の短期金利がマイナス、ならびに長期金利がゼロ%に置かれている状況というのは、銀行経営にとってはかなり厳しい状況で、一部には金融仲介機能を阻害しているのではないか、という声もあります。この現状について、銀行ご出身の立場からどのようにこの政策をみていらっしゃるのかということと、なるべく早い時期に金利が上がってくるような状況を期待しているのかどうか、お考えをお聞かせ下さい。』

『(鈴木委員) 40 年間くらいメガバンクにいましたが、私は業界の代表としてこれから意見を言っていくつもりは全くございません。もちろん銀行業界に長くいた感覚は消えるわけではありませんが、あくまで国民の代表として、その時々で判断をしていきたいと考えています。』

そらそうよなのですが、きっちり言う辺りが堅実ですなあ鈴木さんという感じです。

『マイナス金利政策が金融機関にとって収益のマイナスになるというのは、私が申し上げるまでもなく、その影響は相当程度大きいということだと思います。』

でもって上手いなあと思うのは、最初にバシッと入れて置いてからマイナス金利の弊害の話をすることで、ベンダーヘッドライン的には最初のバシッとしたのが先に出てくる訳ですから、そうなると以下の話をしてもあまりセンセーショナルに取り上げられない訳でして、これは良く練られた答え方ですね。

『銀行ならびにその他の金融機関の収益の主力は資金収益です。資金収益を仮に 3 つに分解すると、1 つ目に預金金利と貸出ベース金利の差、2 つ目に信用リスクスプレッド、3 つ目に長短金利のスプレッドがありますが、1 つ目と 3 つ目がなくなって、2 つ目は競争の激化とともに低下しているということですし、加えて金融機関は、様々な金融サービスをやって、手数料を取ることも考えていますが、本邦においてはなかなかサービスによって手数料を頂くということは非常に難しい、ということがございまして、その辺は色々と苦労しているということだと思います。』

原田審議委員にレクチャーしてやって下さい。

『また、金融機関の収益以外にも、年金や保険での運用の問題であるとか、国債市場の流動性の問題であるとか、あるいはマイナス金利というのがデフレ的な語感があるというように言われていますし、そういったような影響、あるいは 1,800兆円を超えている個人金融資産についても、保険や年金を含めて金利系の運用が半分以上を占めていますので、そういった影響は無視し得ないということだと思います。』

最初にバシッと言って中和しているのですが割ときっちりと言ってますね。

『ただし、金融機関にとって収益が減っていることについても、先程のように多少副作用的に我慢しなければいけない局面があるかもしれません。』

そらそうなのですが、だからこそ「出来るだけ早期に達成」してもらうか、あるいは長期的になるのであれば副作用の少ない方法に組み替えてもらうしかないと思うの。

『それが更に厳しくなって、金融システム、あるいは金融仲介機能に影響を与えるということがあれば、それは非常に問題があることだと思いますが、日銀における金融システムレポートにもありますように、そうした懸念は現状ないということですし、地域金融機関まで含めても財務基盤は十分であるということですので、現状において、苦しいということは事実ですが、それでどうだということは金融システムとしてはないということだと思います。』

あるとは言えないのでここは想定問答の世界だが「現状において、苦しいということは事実」とか微妙な表現ではある。

『そもそも、マイナス金利政策は、イールドカーブの起点を引き下げて、それに大規模な長期国債の買入れを行うことによって、イールドカーブ全体に対して強い下押し圧力を加えることによって、極めて緩和的な金融環境を作ることを企図していますので、これについては、間違いなく成功していると思います。』

色々と中和していますな。

『それから、先程の繰り返しになりますが、このようなマイナス金利政策を含めた今の金融政策が、国民経済の健全な発展に資するようデフレからの脱却を目指しているということですので、その目標が達成された暁には、金融機関にとっての収益環境も改善することになります。従って、それまでの間はなんとか経営努力によって頑張るということも、金融機関の使命の 1 つであるのではないか、といったように考えています。』

問題はそれがドンドン先送りされることで、例えば最初から「5年かかります」ということでやってもらうのでしたらそれはそれで心の持ちようというのもあったのではないかと思います。というような事は言わないで穏当な問答にとどめていますな、うんうん。


その他色々と質問はありましたが、概ね安全運転な質疑に終始していたのでこんなもんで。





2017/07/27

お題「FOMCはまあ順当/中曽副総裁金懇は展望レポートベースなのですが・・・・・・・」

NHK独自取材ニュースというまさかのぶっこみが来ているのだがどういう風の吹き回し??
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170726/k10011075411000.html
近畿財務局と森友学園 売却価格めぐる協議内容判明
7月26日 18時02分

それからこの見出しにも何か今までと違う書きっぷりを感じるのだが気のせいですかねえ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170726/k10011075801000.html
自民 二階幹事長「いろいろ言われても耳貸さず自信を」
7月26日 21時23分


○FOMCはたぶん世の中のコンセンサスだったと思うのだが

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20170726a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20170614a.htm(前回)

・第1パラグラフ:雇用と個人消費の現状判断引き上げ、物価の現状判断引き下げ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising moderately so far this year.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in May indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising moderately so far this year.』(前回)

総括判断は同じです。

『Job gains have been solid, on average, since the beginning of the year, and the unemployment rate has declined. Household spending and business fixed investment have continued to expand.』(今回)

『Job gains have moderated but have been solid, on average, since the beginning of the year, and the unemployment rate has declined. Household spending has picked up in recent months, and business fixed investment has continued to expand.』(前回)

雇用の伸びに関して前回あったmoderatedが抜けたので上方修正。家計消費に関してはpicked upからexpandになっているので上方修正。

『On a 12-month basis, overall inflation and the measure excluding food and energy prices have declined and are running below 2 percent.』(今回)
『On a 12-month basis, inflation has declined recently and, like the measure excluding food and energy prices, is running somewhat below 2 percent.』(前回)

今回はヘッドラインだけでなくコアインフレに関しても下がったという現状認識を示して、その水準に関しては「is running somewhat below 2 percent」から「running below 2 percent」と下がっていまして為替市場ちゃんとかはここに反応したようですな。いやまあ反応しても良いとは思うのですが、ハト派ヒャッハーという反応をするのはちと期待し過ぎで、せいぜい半身の構えという感じだと思うのですがどのくらいのハトを期待しているんだか。

『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)
『Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(前回)

インフレ期待に関する表現に変化はないです(あったらびっくりするが)。


・第2パラグラフ:先行きに関する文言は見事に全文一致

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

いつも通り。

『The Committee continues to expect that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(今回)
『The Committee continues to expect that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace, and labor market conditions will strengthen somewhat further.』(前回)

ということで次の物価の部分も全文一致ということで・・・・・・・・

『Inflation on a 12-month basis is expected to remain somewhat below 2 percent in the near term but to stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term.』(今回)
『Inflation on a 12-month basis is expected to remain somewhat below 2 percent in the near term but to stabilize around the Committee's 2 percent objective over the medium term.』(前回)

つーことで、足もとの物価認識に関する表現は下げているのですが、先行きの物価見通しの文言は変えていない、というどこかの中央銀行のような芸風を示していますが、こちらの中央銀行の場合はこういう表現をしているのに加えて、この先にあるように事実上の9月バランスシート縮小予告をしているので、「足もとの物価がちと下がっているけど別に政策スタンスは変えませんが何か?」という表現をしている訳でして、声明文だけでヒャッハーと喜ぶのはさすがにちとどうなのかと思います。

まー勿論物価が中々アガランチ会長だったら利上げペース遅れるジャンという見方は百万理あるのですが、一方で株価とかヒャッハーとか言って上がっているとマクロプルーデンス観点での利上げがやりやすくなるというかやりたくなってくるでしょうし、そもそも論としてインフレ目標は別にアウトカムベースでやっているのではなくて、フォワードベースで2%に上がっていく見通しならば良いのではないか的な理屈で攻めてくると、利上げと言っても引き締めではなくて緩和度合いの修正なのですから無問題とかいう理屈も成り立つので、アウトカムベースの物価にどこまでフォーカスするのかという点はFOMCメンバーの考えに依存する面があると思う。

『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced, but the Committee is monitoring inflation developments closely.』(今回)
『Near-term risks to the economic outlook appear roughly balanced, but the Committee is monitoring inflation developments closely.』(前回)

リスク認識の部分も同じ(つーか全文一致ですが)です。


・第3パラグラフ:金利は今回維持

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1 to 1-1/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(今回)

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1 to 1-1/4 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting some further strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』(前回)

利上げしました、ってところが違っているのは当たり前でして、それ以外は全文一致。


・第4パラグラフ:先行きの金利に関する文言は全文一致

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee will carefully monitor actual and expected inflation developments relative to its symmetric inflation goal.』(前回)

長いので一旦ここで分割。

『The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(今回)

『The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.』(前回)

でまあ全文一致なのですが、その次のパラグラフではバランスシート縮小の予告をしている一方でこちらは全文一致なので、つまりは次回はバランスシート縮小着手、利上げはその後という事になりますけど、まーそれ自体は市場予想のコンセンサスではないかと思う。


・第5パラグラフ:9月FOMCでバランスシート縮小をしますよ予告とな

『For the time being, the Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(前回)

「For the time being」って時間的にどんなニュアンスなんじゃろう(こちとらハイパードメスティックおじさんなのでこういうニュアンスについては困る)と思ったら次に予告ホームランが。

『The Committee expects to begin implementing its balance sheet normalization program relatively soon, provided that the economy evolves broadly as anticipated; this program is described in the June 2017 Addendum to the Committee's Policy Normalization Principles and Plans.』(今回)

『The Committee currently expects to begin implementing a balance sheet normalization program this year, provided that the economy evolves broadly as anticipated. This program, which would gradually reduce the Federal Reserve's securities holdings by decreasing reinvestment of principal payments from those securities, is described in the accompanying addendum to the Committee's Policy Normalization Principles and Plans.』(前回)

ということで、前回は経済が見通し通りに推移すれば「this year」だったのが今回は「relatively soon」となっているので、まあ普通に考えて次のFOMCが9月だから9月に発表して10月から縮小開始という話になるんじゃろ、とは思うのですが、一応relativelyとか入れて逃げる余地は残しているんですが、今回は次回FOMCまでそこそこ間が空くので、まーその間に思惑は出るのかもしれませんけれども、寧ろ利上げペースが遅れる(12月の利上げが無理という見方になる)方で反応するのかも知れませんね。


・第6パラグラフ:今回は全員一致

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; Neel Kashkari; and Jerome H. Powell.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Patrick Harker; Robert S. Kaplan; and Jerome H. Powell. Voting against the action was Neel Kashkari, who preferred at this meeting to maintain the existing target range for the federal funds rate.』(前回)

今回は利上げした後なのでカシュカリさんは賛成(前の時もそんな感じなので通常運転です)となっています。


○中曽副総裁の広島金懇ですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170726a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170726a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 広島県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 中曽 宏


・経済物価の説明は基本的に展望レポート基本的見解と同じです

そらまあ副総裁が展望レポート出た直後に行う金懇ですからそうなるのは当たり前というところですが、経済の所はもう面倒なのでスルーしまして物価の所から参ります。

『3.物価の現状と先行き』の『(物価の現状)』から。

『次に、物価情勢についてお話しします。消費者物価をみると、2014年後半以降、物価の下押し圧力として作用してきたエネルギー価格が、昨年春以降の原油価格の持ち直しを背景に物価の押し上げ要因となっています。こうした中、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、本年1月に13か月振りにプラスに転じ、5月には+0.4%まで上昇しました(図表7)。』

『もっとも、エネルギー価格の影響を除くと、わが国の物価は弱めの動きとなっています。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、2015年末の+1.2%をピークにプラス幅の縮小傾向が続いており、最近は0%程度で推移しています。携帯電話機や通信料の値下げといった一時的な要因も影響していますが、後ほどお話しするように、労働需給の引き締まりや高水準の企業収益の割には、これが、賃金・物価の上昇になかなかつながっていないことも影響しています。』

ということで日銀版コアなんて言い出しただけにこの話もしない訳にはいかないのですが、次の『(物価の先行き)』に参ります。

『このように、現状、物価はやや弱めの動きとなっていますが、先行きは、情勢が好転していくことが期待できると考えています。すなわち、この先、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、私どもが「物価安定の目標」として掲げる2%に向けて、上昇率を高めていくとみています。そこでは、以下のようなメカニズムを想定しています。』

『第1に、個人消費が底堅さを増していくもとで、加工食品や生活用品といった景気感応的なモノの価格が次第に上昇していくとみられるほか、これまでの為替円安や原油価格の持ち直しが、輸入物価の押し上げに寄与すると思われます。』

『第2に、先行き、景気が拡大を続ける中、マクロ的な需給ギャップは、プラス幅を拡大・維持していくことが見込まれます。そうしたもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化し、賃金の上昇を伴いながら物価上昇率が高まると考えています(図表8)。』

『そして第3に、これらの要因によって実際の物価上昇率が高まることで、人々が予想する先行きの物価上昇率も上昇し、より基調的な物価上昇につながっていくと考えられます。』

『以上の基本的な考え方をもとに、「展望レポート」では、政策委員見通しの中央値として、2017年度の消費者物価の上昇率を前年度比+1.1%、2018年度を+1.5%、2019年度については、消費税率引き上げの影響を除き、+1.8%に上昇するとの見通しをお示ししました(前掲図表6)。足もとの物価が弱めであることから、私どもの3か月前の見通しと比べ、最初の2年間の数字を中心に下方修正しましたが、2019年度頃には、消費者物価上昇率が2%程度に達する可能性が高いとみています。』

とまあこういうのがメインシナリオになっていますね。


・物価が上がらん説明を物凄い勢いで入れています

次の小見出しが『(労働需給、賃金、物価の関係)』なのですが、

『ここまで、わが国の景気と物価についてご説明してきました。改めて、一言で整理しますと、強めの景気とやや弱めの物価情勢、という姿です。こう申し上げると、多くの方が抱く疑問は、景気の緩やかな拡大、とりわけ毎日のように人手不足が報道されるほど労働需給が引き締まっているにもかかわらず、賃金や物価の上昇率が高まってこないのはなぜか、ということだと思います。そしてもう一つの疑問は、先ほど申し上げた先行きの物価上昇のメカニズムが、果たしてうまく作動するのか、ということです。いずれも難しい問いですが、ここでは、わが国の労働需給と賃金、物価の関係に焦点を当てながら、これらの疑問に対する答えを整理してみたいと思います。』

ということで以下話があるのだが、今回の金懇って13ページ話があるうちのほぼ5ページ(PDF版で見た場合)がこの小見出しになっていまして、今回の金懇の一つ目のポイントになっております。

『まず、理論的に申し上げると、労働需給と物価の間に相関関係があることは、経済学のどの教科書にも書いてありますし、わが国の過去のデータからも確認できます。そこで想定されているメカニズムは次のようなものです。』

『人手不足に直面した企業は、必要な人材を確保しようとして賃金を引き上げます。そして、その企業は、一定の収益を確保するため、人件費の増加に見合う分だけ製品の販売価格を引き上げようとすると考えられます。同時に、賃金が上昇すれば雇用者の所得が増加し、その分、消費活動が活発化しますから、需要の増加に伴って価格が上昇するといったルートも考えられます。このように、労働需給の引き締まりは、本来は、賃金の上昇と需要の増加を通じて、物価の上昇方向に作用します。』

ほうほうそれで?

『逆に言えば、現在のわが国では、こうした理論的なメカニズムがまだ十分には表れていない、ということになります。以下、この点に関し、最初に労働需給と賃金の関係、次に賃金と物価の関係と、2つに分けてお話ししたいと思います。』

ということで展望レポートBOX1からBOX3のお話でもあるのですが、惜しくも話の肝心なところを端折っているのでイマイチ感は漂います。


・労働需給ギャップの改善対比で賃金が上がらない件について

『1つめは、労働需給の引き締まりに比べ、賃金の改善ペースが緩やかなものにとどまっているという点です。』

つーことで。

『これについては、正規雇用者と非正規雇用者で賃金決定メカニズムが異なるわが国労働市場の構造が相応に影響しているように思われます。先ほど申し上げたとおり、パート労働者の賃金は労働需給の引き締まりに応じて上昇しており、その上昇ペースは、過去にみられた労働需給との関係にほぼ見合ったものとなっています。一方、正規雇用者の賃金は、相対的に上昇していません(図表9)。』

『この点について、わが国では、労使ともに長期的な雇用・賃金の安定が優先されてきたため、デフレ下で雇用調整や賃金カットが行われなかった一方、労働需給が引き締まっても、賃金上昇に向けた姿勢になかなか切り替わることができないとの指摘があります。』

というので話が終わっているのが物凄く残念で、寧ろ日本がデフレ的になったのは正規雇用に関して雇用確保の代償として賃金の引き下げを受け入れてきていたというのがある、という話って時々佐藤審議委員(前審議委員ですな)が指摘していて、日米の「賃金版フィリップスカーブ」を出して比較しながら説明していたりした訳ですし、展望レポート全文のBOX2でも正規雇用の賃金設定の基準が労働需給に感応的ではなく、「労働需給に感応的でない一般労働者の所定内給与が、インフレ予想と生産性の低さを反映して、鈍めの動きを続けている。(直近7月展望レポート全文のBOX2より)」という説明をしている訳で、この中曽さんの説明はちょっと単純化し過ぎなんじゃないのかなあと思う。


『2つめは、賃金と物価の関係です。すなわち、緩やかとはいえ名目賃金が上昇しているにもかかわらず、物価が弱めの動きとなっている点です(図表10)。これを説明する企業の取り組みとして、以下の3点があるように思います。』

ここは7月展望レポート全文巻末のBOX3のお話。

『第1に、賃金上昇によるコストの増加をビジネス・プロセスの見直しによって吸収する企業の取り組みが関係しているとの指摘があります。具体的には、最近、これまで当然のように提供していたサービスであっても、人件費との兼ね合いで採算が合わないものは削減していく、といった対応が増えているように思います。例えば、売れ行きの悪い深夜や早朝の営業をやめる場合、営業時間、すなわち労働投入量を減らしても、売上全体がさほど減らない可能性があります。この結果、労働生産性は向上することになります。従業員の時給を引き上げたとしても、営業時間が減った分、企業の総労働コストは増加しません。この場合、人件費の増加を販売価格に転嫁する必要がなくなり、その分、物価の押し上げ圧力は小さくなります。』

『第2に、ITなどを活用した省力化・効率化投資も、これと同様の効果をもたらします。近年、小売りや宿泊・飲食等の業種を中心に、セルフレジやインターネットでの予約処理などを導入する動きが拡がっています。労働投入量を減らしても同じ売上げを実現できるという点で、ビジネス・プロセスの見直しと同じ効果をもたらします。この場合も、労働生産性は向上します。従業員の賃金を引き上げても総労働コストへの影響は限定的であることから、先ほどのケースと同様、賃上げが物価の上昇に結び付きにくくなります。』

『第3に、既存の人的資源をこれまで以上に有効活用しようとする取り組みも見受けられます。典型的には、繁忙度の低い部署から高い部署に、社員を配置換えするようなケースです。この場合、企業としては、全体の労働投入量を変えずに売上げを伸ばすことができますので、やはり労働生産性は向上することになります。一方で、人件費の増加は抑えられますから、その分、販売価格への転嫁は限定的となります。』

この辺りは展望レポートのBOX3を特に端折ってはいないです。

『以上お話ししたいくつかの取り組みの背景を、さらに突き詰めて考えると、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が、わが国の企業や家計に根強く残っていることが影響しているように思います。正規雇用者の賃金が労働需給の変動に対して余り反応しないことについて、ベアを始めとするわが国特有の長年の労使関係が影響していることはよく知られています。また、企業が販売価格へのコスト転嫁を抑制するのは、消費者が値上げに慣れていない、あるいは、そうした消費者の行動を見越して、企業自身が値上げに慎重になるといった事情があるように思われます。先ほどご説明したように、こうした取り組みは、経済全体でみれば物価上昇圧力を減じる方向に作用しています。とはいえ、どの取り組みも、企業の皆様の真剣で合理的な選択の結果です。こうした状況こそが、「長期間にわたって定着してきたデフレマインドを払拭することの難しさ」の正体なのかも知れません。』

まあ中曽さんがこれ言うのはまだ許せないことも無いが岩田某が言い出したらさすがにキレる自信があります。

『そのように申し上げた上で、日本銀行は、こうした状況がいつまでも続くとは考えていないことも付け加えさせていただきます。マクロ的な需給ギャップは着実に改善していますし、そうしたもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは、次第に積極化してくると考えています。もちろん、そのタイミングには不確実性がありますので、楽観は禁物です。』

だったらタイミングを早くする為に追加緩和、という話にはならずに以下明るい未来への長広舌が始まります。

『しかし、人手不足感が益々強まる中、既に就業率がかなり上昇してきていることを考えると、この先、パート労働者等の増強だけで対応することは難しいと思われます。実際、過去10年以上にわたって一貫して上昇してきたわが国のパート労働者比率は、今年に入り、頭打ち傾向が明確化しています(図表11)。また、営業時間の短縮やサービスの削減には一定の限界がありますし、すべての業種で省力化投資を推進できる訳でもありません。人材の配置転換などの対応にも、やはり限度があります。』

『そうした一方で、景気の拡大と雇用・所得環境の改善により家計の消費活動が活発化してくれば、経済全体に値上げを許容する動きが拡がってくると思います。この点、短観の販売価格DIをみると、「運輸・郵便」、「卸・小売」、「宿泊・飲食」といった労働集約的な業種において、幅広く、販売価格の上昇傾向が明らかになってきました(図表12)。先行き、値上げを検討している企業が増加しているとの報道を目にすることも、増えてきています。』

『こうした動きによって現実の物価が上昇してくれば、それに影響されて、中長期的な予想物価上昇率も高まることが期待されます。このところ、企業や家計の予想物価上昇率の上昇を示す指標が一部にみられ始めており、これも、デフレ脱却に向けた明るい材料です(図表13)。物価が上がるとの予想が広く企業や家計の間で共有されれば、正規雇用者の賃上げも本格化してくるでしょうし、賃金の上昇を販売価格に転嫁しやすくなると考えられます。そうなれば、幅広い雇用者の賃金上昇を伴いながら、物価上昇率が持続的に高まるという前向きの循環メカニズムが本格的に作動してくると確信しています。』

って延々と説明していますが、物価が上がるのに時間が掛かっている間に循環的に景気が減速してきたらその時点で需給ギャップは縮小から下手したらマイナスに転じていくのですから、結局上がらんでした、という話になってもおかしくない訳で、願望的な話はさておいて実際に需給ギャップに反応して物価が上がるというのは何を見て行けばよいのか、それに対して海外経済のサイクルがここからどうなって行くのか、というのを考えていかないと元の木阿弥の可能性もあるのではないかと。


『物価の話を締め括るに当たり、労働生産性について、もう一度触れておきたいと思います。先ほど、省力化投資の事例などを取り上げ、労働生産性の高まりが物価の下落圧力として作用していると申し上げました。しかし、これは、物価への影響という一面のみを説明したものです。労働生産性の向上をネガティブに捉えるつもりは全くありません。生産性の向上によって1人当たりの稼ぐ力が増加すれば、その分、企業の収益力は強化されます。やや長い目でみれば、収益に余裕が生まれた企業は、むしろ生産性の向上に見合う形で賃金を引き上げてもよいと思うようになるはずです。実際、企業における近年のベースアップの動きを分析しますと、労働生産性が高まればベースアップの伸び率も高まるという関係を確認することができます。』

これは例の展望レポート巻末のBOX3の結論でもあります。

『さらに、経済全体の労働生産性が向上し、長期的にみた経済の成長率が引き上げられれば、成長期待や恒常所得の増加を通じて設備投資や個人消費が活発化し、需給ギャップの改善とともに物価が上昇していく可能性もあります。この点については、時間はかかりますが、構造政策面のサポートも重要です。例えば、労働市場改革によって、人手の足りない企業や産業に必要な人材がスムーズに移動するようになれば、経済全体の生産性は高まります。諸外国に比べ、わが国の労働市場の流動性は改善の余地が大きいと言われていますが、それだけに、「働き方改革」を始めとする最近の政府の取り組みには、大きな意義があると考えています。このように捉えれば、今の人手不足は、日本経済の構造改革を強力に促す究極の成長戦略としての側面があると言ってもよいのかも知れません。』

最後のが蛇足にも程があって、そんな外生的にやらなければならないからやったみたいな「構造改革」だと多分企図したような効果は出ないと思う訳で、そういう感じで行う構造改革って「安い労働者が足りなくなったから安い労働者を確保できる制度を作らないと」みたいな方向に走りがちになるのであって(いや別にエビデンスのある根拠を持ってアタクシも言っている訳ではないけど多分世の中ってそういうもんじゃないですかね)、そうじゃなくて「成長力を高めるためには雇用者の恒常所得を引き上げていく必要があるが、そのためには何をすべきか」みたいな話から持って行かないとダメだと思うし、日銀はそういう面からの成長戦略のための改革が必要、って文脈で話をしないと何かこれじゃああんまり意欲が伝わってこないと思うのです。


・金融政策の話は一生懸命別の論点の話をしているのでどうでもよいが痛々しいともいえる

その次が『4.日本銀行の金融政策運営』という小見出しですが、本来話をすべきなのは「2年程度を念頭に出来るだけ早期に物価安定目標を達成」というのに対して時間のかかる状態になっているのに何で追加緩和を行わないのか、という事だと思うのですけれどもお話の方は・・・・・・

『さて、ここまで、労働需給のタイト化の割に、物価が上昇していない理由について、お話ししてきました。ただ、皆様の中には、「日本銀行は、なぜ物価の上昇を目指しているのか」疑問に思われる方もいらっしゃると思います。むしろ、「モノの値段は安い方が良いのではないか」と思われるほうが自然かもしれません。そこで最後に、日本銀行の金融政策運営についてご説明するにあたり、安定的な物価の上昇を目指しているのは何故かという点から、話を始めたいと思います。』

ということでQQE開始して4年以上経過しているのに何を今更という話の次に2%が何で必要なのかというこれまた何を今更という話をしておりまして、まあその話自体はいつもの説明を丁寧に行っているのですが、そもそも「期待に直接働きかける」政策を行うために、「日本銀行が強力なコミットメントを行い、コミットメントを裏付けする為に強力な金融緩和政策を実施する」って言って4年経っているのに未だにこの話をしている、という時点で「期待に直接働きかける」という政策アプローチがワークしていないのであって、その状態なのに何でフィリップス曲線がシフトアップするのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、まあ小一時間問い詰める以前に、またも物価2%達成見込み時期を先送りしたのに何の追加策も無く、こういう説明をしている、というのはさすがに痛々しい感じがしてまいります。

無理筋の説明を何度も行っているうちにどんどん無理筋が拡大して、いまさらゴメンナサイするにも引くに引けなくなっているという置物リフレ日銀はこれからどうするんでしょうかねえ・・・・・・・


○鈴木さんと片岡さんの就任記者会見ネタは時間と量の関係で明日で勘弁してつかあさい

まあ急ぐネタでもないので、と言い訳をしていますが要は事前準備そこまでやってる時間が無かったということで(FOMCが寝起きなだけに今日は夜なべ下準備をしてたんですが)勘弁してつかあさい。

物件はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1707b.pdf






2017/07/26

お題「6月決定会合議事要旨を鑑賞とその他少々」

これは何ぞ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170725/k10011072751000.html
東京五輪 選手村の交流施設を作る木材 全国から無償で募集
7月25日 7時08分

『大会の組織委員会は、この施設の屋根や壁などに使う木材を全国の自治体から無償で提供してもらい、大会後は各自治体で東京オリンピックのレガシー=遺産として活用してもらう取り組みを始めることになりました。』(上記URL先より)

タダで供出させて使用後は持ち帰れとは・・・・・・・・

確かこの前「メダルに使う金属集めに使用済み携帯電話」とか何とかいうのがありましたけれども、金属供出に木材供出と来たら次はそろそろ運営ボランティ(銃声)。


○新委員の就任会見って1日遅かったんですね

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017072501220&g=eco
2%物価、何としても達成=2審議委員が就任会見−日銀
(2017/07/25-21:03)

『会見で、片岡氏は黒田東彦総裁が導入した大規模な金融緩和の効果について、失業率が改善し、物価上昇期待も高まったと評価。その後の消費税増税による実体経済の悪化や原油安などが物価上昇を抑えたとの見方を示した。2%達成のための追加金融緩和の必要性については、「最適な金融政策を実行していくことに尽きる」と述べるにとどめた。』

『また鈴木氏は、「デフレマインドからの脱却は想定以上に時間がかかっている」と指摘。2%物価は、米国や欧州でも達成できない「高い目標だ」と述べた。』(以上上記URL先より)

ということで就任会見は従来発令日の夕方に実施するものだと思ったのですが、今回は何故か発令日の翌日に実施という段取りになっていまして、従いまして就任会見の発言要旨は本日出るの巻となっておりましたのを認識してなかったです(汗)。

つーことで会見は昨日だったのですが、ヘッドラインを見た感じでは別に何か変わった話をするでもなかったようで面白くもありませんでしたが、とりあえず片岡さんも追加緩和の提案をすることも無いようなのでああそうですかという所です。

原田さんだって先日の決定会合で追加緩和を提案するのが筋じゃネーノ(物価見通しを下げて2%達成時期を遅らせているのだが「2年を念頭に出来るだけ早期に達成」というのはリフレ日銀の根幹じゃないかと)と思うのだが何のアクションも無し、ということですので、リフレな方々が信念通して暴れるということもなさそうですので、そういう点で言えばあるとき突如話が一転する(つまり出口じゃない形で今のフレームワークを変更する)時もなんの問題もなくシャンシャンモードになってしまうのでしょうなあ、とは思ったりします。


それはそれとして佐藤さんと木内さんが退任したので先任の審議委員があの人になりまして・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170725a.pdf
政策委員会議長の職務を代理する者の決定について

『政策委員会は、本日、日本銀行法第16条第5項の規定に基づき、政策委員会議長 黒田東彦委員に事故がある場合に議長の職務を代理する者および代理する場合の順位を以下のとおり定めた。

原 田 泰 委員 第三順位』

・・・・・・・一番先任の審議委員が自動的に第三順位になるのですがいやはや何とも。


○6月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2017/g170616.pdf

・途中を盛大に飛ばして賃金の議論あたりから

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識を共有した。』

という所から参ります。

『この点に関し、何人かの委員は、労働需給の引き締まりが一段と明確になるもとで、労働需給の状況に感応的なパートの賃金が足もと2%台後半の高めの伸びとなっていると指摘した。複数の委員は、今年の賃金改定交渉では、中小企業におけるベースアップの上昇率が大企業を上回るなど、賃上げの動きに拡がりがみられると付け加えた。』

ほほう。

『先行きの雇用者所得について、委員は、労働需給の着実な引き締まりが続き、企業収益も改善するもとで、緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。』

ということで・・・・・・・

『ある委員は、労働需給の引き締まりにより、企業において人材を確保するために、正社員の賃金を引き上げる動きや、IT投資や働き方改革を通じて労働生産性を引き上げる動きが進むと述べた。そのうえで、この委員は、労働生産性の上昇は、長い目でみれば、賃金の引き上げ余力の拡大につながるとの見方を示した。』

『一人の委員は、日本の企業は固定費の上昇につながる所定内給与の引き上げに慎重になっていることから、これを変えるためには、成長期待を高める構造政策が重要であるとの見方を述べた。』

つーことですが、その後に行われた金融政策決定会合で出た展望レポートでは「何で賃金が上がらんのじゃろ」という話が展開されている訳でして・・・・・・・・


・物価に関して

でもってまた飛ばしまして物価に関して。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は0%程度となっており、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、0%程度ないし小幅のプラスで一進一退の動きを続けているとの認識を共有した。』

ということで。

『何人かの委員は、企業収益や需給ギャップの改善との対比でみて、物価の上昇率がなかなか高まらないと指摘した。その背景について、複数の委員は、多くの企業において、提供するサービスの見直しや省力化投資により労働生産性を引き上げ、賃金の上昇圧力を吸収しようとする動きがみられていると指摘した。』

『また、何人かの委員は、人々の間にデフレマインドが根強く残っているため、企業は、総じて慎重な価格設定スタンスを維持しているとの見方を示した。』

後者の「何人かの委員」に与党審議委員の方が含まれているのかどうか、というのが不明なので何ともではございますが、冷静に考えまして「人々の間にデフレマインドが根強く残っている」というのでしたらば、元々「インフレ期待に直接働きかける」という政策、フィリップスカーブを持ち出して説明すればフィリップスカーブのシフトアップによってカーブのY切片を2%に持って行く、という政策をおっぱじめて4年経過して全然変わっていないという話になる訳ですから、それって「金融緩和が足りない」のか「インフレ期待を引き上げるための具体的な手段が適切でない」のか「そもそも金融政策単体でインフレ期待を引き上げるのは無理筋」のかのいずれかであるという議論に話が進んで、追加の何らかの施策(必ずしも今の施策の延長である必要はない)をするなり、政策のフレームワークを変えるなりという議論になる筈なのですから、与党の人がこれを言って平気な顔をしているというのは筋としておかしい。

『先行きについて、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、小幅のプラスに転じたあと、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

ここはいつものお題目。

『何人かの委員は、賃金の上昇圧力が着実に高まっていることや、個人消費が底堅さを増していることを踏まえれば、企業の価格設定スタンスも次第に積極化していくとの見方を示した。この点に関連し、何人かの委員は、労働需給が一段と引き締まっていくことを踏まえると、サービスの見直しなどによるコストの吸収にも自ずと限界があるため、これを価格に転嫁していく動きが出てくると述べた。』

という話を6月にしていた筈なのに、そこから1か月であっさりと物価2%到達見通し時期が1年先送りになっている訳で、実はこの辺りの話を覚えて置いて7月の決定会合議事要旨を見る、というのが一番適切な楽しみ方になります。

『こうした見方に対し、一人の委員は、サービス削減による生産性上昇余地は大きく、労働需給の引き締まりが、賃金や物価の上昇に波及していくには、相当距離があると述べた。』

まーここは結果をみないと何とも言い難いですが、ただ今回の展望レポートの基本的見解ではこの部分について従来よりも見えやすい形で触れてはいるので、さすがに7月に見通しを先送りした時点で野党の方々に歩み寄っている感はある(ので佐藤さんと木内さんの退任が惜しまれるのですが)。

『なお、別の一人の委員は、労働生産性の向上は、長い目でみれば、経済全体の潜在成長率を高め、いずれ実質賃金の上昇や雇用者所得の増加をもたらし、需要面から物価上昇圧力につながっていくと指摘した。 』

とは言えこれは時間のかかる話で、(孔明の罠があるからネタにしていませんが)展望レポート全文の最後のBOX3に「企業による人手不足対応と物価の関係」ってのがあって、そこを見ますと労働生産性の上昇と賃金や物価の関係についての考察もありまして、近年の労働生産性上昇に関しては投入労働量の減少を伴う形で進んでいるので物価下押し圧力になるけれども、労働生産性の上昇による一時的な実質賃金ギャップは解消に向かうものなので、長期的に見れば物価上昇圧力になる、というお話になっていますな。


『この間、予想物価上昇率について、委員は、現実の物価上昇率がこのところ幾分弱めの動きとなっていることなどから、「適合的な期待形成」の要素が強く作用し、弱含みの局面が続いているとの認識を共有した。ある委員は、最近の予想物価上昇率に関するアンケート調査などをみると、一頃に比べ上昇を示す動きもみられると指摘した。』

現実が容赦なく物価上昇力の弱さを示す中で、今後の日銀としての希望は特に労働需給ギャップが賃金に反映することと、消費などが堅調で何となく一部のインフレ期待指標も強めなのも出ているので、ちったあ価格設定が強気化してくれるのではないか、というお話ではあるのですが、労働需給ギャップの改善が中々賃金に跳ねないで時間が掛かる、となるとその間に海外経済が下押ししてきたりした時にどうなるんじゃろというのはある。なお展望レポートによると2019年度は海外が引っ張って需要は強いという話になっていて実はそこも怪しいのだ。


・でもって金融政策運営の辺りを確認

続いて『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』である。

『金融政策運営にあたって、大方の委員は、物価動向について、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠け、引き続き注意深く点検していく必要があるとの見方で一致した。』

『多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえると、これをできるだけ早期に実現するためには、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切であるとの認識を共有した。』

となっていますが、さてこれが7月以降「できるだけ早期に実現」の表現がどうなってくるのでしょうか、とは思うのですけれども、惜しいのは・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。』(上記URL先の2013年1月の政府・日銀共同声明)

というのがあって、出来るだけ早期にという文言は外せないけれども、まあ「目指す」とあるので気持ちの問題であって、実際には時間が掛かることも踏まえて政策を運営するみたいな話をするのか、そもそも物価安定の目標をアウトカムベースのようなリジッドな運営にするのか、という形にしないといけないのが微妙な所ですな。

『複数の委員は、現在の金融政策を維持することによって、需給ギャップの一層の改善と失業率の一層の低下および有効求人倍率の上昇を促し続けることが、2%の「物価安定の目標」を達成するうえで最も有効であると述べた。』

『また、多くの委員は、労働需給の引き締まりが賃金の上昇をもたらし、これが物価上昇につながるというメカニズムは引き続き作用しているとの見方を示した。そのうえで、これらの委員は、現在の強力な緩和を粘り強く推進することで、経済・物価の改善をサポートしていくことが適当であると指摘した。』

つーことですが、何かこう元々は出口議論へのカウンターとして「粘り強く推進」という文言を使っていた筈なのが何時の間にやら中長期っぽい文脈で使われるようになっているなあと思うのですがどうでしょうかね。

『この間、大方の委員は、「2%」の「物価安定の目標」を実現することが、わが国経済にとってきわめて重要であるとの認識を改めて共有した。』

の部分はどうでも良い話なのでパス。


『委員は、最近、金融政策のいわゆる出口について関心が高まっている状況について議論を行った。』

ふーん。何かその話するなら年初じゃなかったのかねと思うけど。

『ある委員は、こうした状況の背景には、景気の改善が一段と明確になっていることがあると指摘した。』

????

『何人かの委員は、金融政策運営の考え方については、日本銀行の財務面に及ぼす影響も含め、しっかりと説明し理解を得ていくことは重要であると述べた。そのうえで、これらの委員は、出口の具体的な進め方や、財務面の影響については、その時々の経済・物価情勢や金融市場の状況などによって変わり得ると指摘した。』

そらそうよ。

『複数の委員は、2%の「物価安定の目標」の達成までなお距離がある中、あまり早い段階で不確実な情報を提供することは、却って市場に混乱を招く惧れがあるため、現段階では、内部でしっかりと調査や分析を進めておくことが重要であると述べた。』

『また、一人の委員は、自らの物価見通しのもとでは、2%の達成まで相当な距離があり、具体的な出口の時期を見通せないことが問題であると述べた。そのうえで、この委員は、出口政策について事前に開示しても、FRBのように、実際の政策の順序が過去の説明と異なることもあり得るため、市場とのコミュニケーションについては、周到な準備と丁寧な説明が必要であると述べた。』

最後のは佐藤さんですね。



○柄にもなくニュース世間話メモ

昨日は参院の閉会中審議。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170725/k10011073741000.html
獣医学部新設 首相「過去の答弁は混乱」と謝罪し訂正
7月25日 17時14分

『安倍総理大臣は参議院予算委員会の閉会中審査で、加計学園が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だったとする、みずからの答弁をめぐって、過去の国会答弁は混乱していたと謝罪し、訂正する一方、新設のプロセスは適切だったと重ねて強調しました。』(上記URL先より)

前日の答弁を訂正する(のも基本ダメなんですけど)どころか「過去の国会答弁を訂正」ってそれがアリなら法案なり予算案通すときに都合の良い話をしておいて国会通ってから「過去のは訂正」ってしたら国会審議の意味が無いんですがそれは。

つーことでまあこういうプロセス軽視ってのは権力行使のタガが外れてしまうことになるので如何なものかと思うのですが、民主党政権の時もそうだったし、目的の為にプロセスを飛ばしても良いっての小泉政権の時もその傾向があったから、まあ今に始まった話ではないのですけどね。

でもってこの公共放送さんですけど。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170725/k10011074361000.html
加計学園 獣医学部新設 問題の真相どこまで明らかに?
7月25日 23時24分

結論部分が、

『獣医学部新設が「加計ありき」だったのか、また、「総理のご意向」はあったかどうか、いずれの焦点についても真相の解明は道半ばといった状況です。政府には国民が納得できる説明が一層求められることになります。』(上記URL先より)

ってありまして、ほうあのNHKがという所で(ここのところ大体こんな感じですけど)、何で今回こうなるのやらとは思いますが、ちょっと動向は気にしないとですのう。

#南スーダンPKO日報の方も大概ですからねえ・・・・・・・・






2017/07/25

お題「長期輪番減額/展望レポート全文のBOXが興味深い件」

ほー。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170724/k10011072561000.html
獣医学部新設 明らかになった事実 解明されなかった事実
7月24日 20時13分

○佐藤さん木内さん退任ですなあ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170724a.htm/
審議委員の発令について

『なお、佐藤 健裕 政策委員会審議委員および木内 登英 政策委員会審議委員は、7月23日任期満了により退任しました。』

ということで佐藤さん木内さんお疲れ様でした。まあリフレの人には1ミリも期待しません(2年で2%行ってないんだから追加緩和の提案をしたらどうですか、とは思いますけどねえ)が鈴木さんには期待致したく。

就任記者会見は華麗にスルーしていたので会見要旨が出てからのんびりと参ります。どうせ次のMPMまで時間がありますし。


○長期輪番減額しましたな

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170724.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年7月26日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年7月26日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,700 2017年7月26日

ということでこの前増額した長期輪番を減額してきましたが、この前4500→5000に増額したのを5000→4700に減額の巻。

水準的には金曜の10年引けが6.5bpの所まで戻っていた上に昨日は朝から債券先物は上昇してスタートしていましたのと、海外の金利上昇モードが一服というか寧ろ低下気味で来ているし、ということですから水準と地合い的には減額のしどころだったのかというのはあります。

ただ今月は長期輪番があと1回28日にも予定されていて、来月から減額(というか増やしたのを減らす)というのであれば予告編で28日(つまりその月の最終回)に減額してくる、というのが従来のパターンだったのでそこは外してきやがりましたなということで通常の輪番スケジュールのパターンは外して来ている部分はあるのでそこは意外感。

ではあるのですが、28日だとFOMCが終わっていて、運が悪い(?)とその時に「テーパリング開始だぜヒャッハー」とか言われるリスクが全くない訳ではない(暫く前はやっても全然おかしく無かったですけれども議会証言からこの方トーンダウンしてまあ9月じゃろうなという情報発信になっている以上不意打ちはしてこないと思いますけどね)ですから、昨日の時点で減額をしておかないと増やした分を減らせないままで8月を迎えるリスクも無い訳ではないから、そう考えるとやっぱり月曜に減額だったんですかねえ、とか何とか。

ただし、4500→5000→4700なので「気を使っていますよ」というメッセージは出しているということですわなとは思うので、総合的に見たらまあこんなもんだったのかも知れませんが、まー正直減額はどこかでしないと金利また上がった時に段々増やしにくくなるので、8月になる所で減額かなあと漠然とは思っていたもののMPMネタの方で頭使っていたのと、先週金曜の短国買入が1.5兆円と多めに入れてきたのであまり気にしていませんでしたすいませんすいません。

とは申しましても、
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1KF2DS
Markets | 2017年 07月 24日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小幅続伸で引け、長期金利は横ばい0.065%

『<15:09> 国債先物が小幅続伸で引け、長期金利は横ばい0.065%

国債先物中心限月9月限は前営業日比3銭高の150円25銭と小幅続伸して引けた。前週末の海外市場で欧米債が上昇したことを受けて買いが先行した。残存5年超10年以下を対象にした日銀の国債買い入れで、買入予定額を4700億円と前回(5000億円)から減額したことをきっかけに、一時小幅安まで弱含んだが、買い入れ結果で底堅い需給環境が確認されると、再びプラス圏に浮上した。25─26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えていることもあり、全般に様子見ムードが強い相場展開となった。現物市場はまちまち。盛り上がりに欠いた取引で、25日に40年債入札を控える超長期ゾーンは上値が重かった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.065%。』(上記URL先より)

つーことで減額したけど何の問題もなく推移するという結果でして、まあ結局のところ何だかんだ言いましても結果論の世界になってしまいますので今回の減額もお上手という事ですが、何せ前々回の指値打ち込みやら輪番増額をやった時以降長期輪番って減額できていなかったので、(例の中期輪番スキップの後に輪番増額して月末の「翌月の予定」で減らす予告したものの減らすどころか指値になったというのがありましたが)久々に減額できて良かったですねという所です。つーか9月以降にはFOMCだのECBだのの金融緩和の正常化あるいは緩和ペースを緩める(口頭だと気にならないが字で書くと妙だな)の巻というのがあるので、その時の金利上昇圧力に対応するように減らせるうちにもうちょっと減らしてくるのかも知れませんな(FOMC無事に通過したら8月から減額含みでレンジの中心を4500で維持するとか)。


○展望レポート全文のコラムを読むの巻

展望レポート基本的見解の前回比較が途中という事実がありますがその前に全文のコラムが
良いのでそちらをネタに。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1707b.pdf
経済・物価情勢の展望
2017 年 7 月

前回はこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1704b.pdf(前回4月展望レポート)


・やはり「出来るだけ早期に」をステルス撤回しているんだろうなあと思う構成

全文の最後の所に(BOX)ってのがあって、前回4月の展望レポートのラインアップは・・・・・・

(BOX1)需給ギャップと潜在成長率の見直しについて
(BOX2)近年の全要素生産性(TFP)の動向
(BOX3)企業規模別にみた賃金動向
(BOX4)最近の携帯電話市場の動向と消費者物価

(以上の4つの見出しは前回4月の展望レポート)


というのが並んでいまして、特にBOX4の締めには『以上のような「携帯電話機」および「携帯電話通信料」の値下げの動きには、所謂「格安スマートフォン」の普及などに伴う、携帯電話市場におけるキャリア間の競争激化が、相応に影響しているとみられる。こうした事情による物価の下落は、やや長い目でみた一般物価の動向を規定するマクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率とは、あまり関係のない部門ショック(sectoral shock)によるものと捉えられる。』(4月展望レポートBOX4より)という事で、まあ分析としては仰せの通りではあるのですが、「物価の弱含みは携帯電話の一時的な部門ショック」ってな話を出してくるとか、BOX3に関して大企業対比でモビリティーの比較的高い(というと格好が良いが要は長期雇用の安定性が相対的に低い)中小企業の賃金が上がっているという話をしてみたりとなっていた訳です。

まー分析としてはその通りという話でありますが、こういう風味のコラムを入れてくる、というのには「展望レポートの見通しを補完するような分析を打ち込んでくる」という意味で中々味わいのある作品でして、今年の流行語大賞の呼び声も高い忖(銃声)。


・・・・・・とまあそんな作りだった前回とは一変しまして、今回の展望レポート全文の巻末コラムは以下のような見出しになっております、曰く、

(BOX1)最近の労働需給と賃金の関係
(BOX2)わが国労働市場の特徴とマクロでみた賃金
(BOX3)企業による人手不足対応と物価の関係

となっていまして、今回あっさり味で物価2%到達見通しを1年先送りした訳ですが、その背景としてある一方の中々賃金が伸びないじゃないのという話(もう一方はインフレ期待が中々上がらないことだがその辺は適合的期待形成の話で総括検証とかその他で出ていますな)についての解説になっていまして、3部作話が繋がっているのですな。

つーことで、今回の展望レポートって色刷りだの図表が中に入っていてIMFのレポートみたいだのという話はさておきまして、何が大きく違っているのかと言えば、アタクシが思うのは、「早期に物価が行きますよ、という見通しに沿ったストーリー展開ではなくなった」ということでして、これは即ち昨日ネタにした総裁定例会見の話が何となく総裁痛々しい感じもするという状態になっているのとも繋がっていて、QQE導入当初に「2年でMB2倍にして物価2%達成」というニバイニバーイのあのフリップ芸の顔を立てるのをすっかり止めているという事でございますな(だったら置物副総裁は筋を通して辞任しろと思うけど)。

まー当初の話が無かった事になってしまっている代わりに、その明らかに無理のある「2年を念頭に出来るだけ早期に」が事実上ひっこめられた結果として、「どこがイカンかったのじゃろ」という事を素直にレビューするお話となっておりまして(前のコラムも別にインチキな話をしている訳ではないが見通しに願望成分と大本営発表成分が混入していた)、まあこんな感じで「どこに見込み違いがあったの」という分析を素直に入れて頂ければ、問題の所在も明らかになるわけで、金融政策で直接どうにかなる話と、それ以外の話というのも分けて考えられると思うから良いんじゃないでしょうかねえ、と思うのですがどうでしょうかね。

つーことで何かこう憑き物が落ちた感のあるBOXを鑑賞してみるのですが。


・まずはファクトを確認するのだがそこでまさかの諸葛孔明の罠に掛かるアタクシorz

(BOX1)最近の労働需給と賃金の関係

『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのかという声がこのところよく聞かれる30。ここでは、「なぜ」という問題に取り組む前に(後掲 BOX2参照)、最近の労働需給と賃金の関係について、事実整理を行いたい。』

と引用しようとして諸葛孔明の罠があることが判明したのですが、これプレーンテキストに貼り付けようとすると一部の漢字(ちなみに「人手」と「足」と「金」と「行」)が文字化けするという事案が発生しておりまして(なおアタクシの環境はWin7のパーソナルでブラウザはグーグルクローム)、これは多分引用するのに無駄に時間を要する、と気が付いたので、残り時間から逆算すると本日はBOX3までネタに出来ない事が判明という悲報。

ちなみに日銀の会見や講演などのPDFをプレーンテキストに落とすときに文字化けするのは何故か「少」の字と、あとはジンバブエ大先生の講演PDF(謎の半角スペースが文字ごとに入ってしまって話にならない、なおHTMLだと問題は無いのでそっちから引用している)なのですけど、何が原因なんでしょうかねえ。

たぶん(全部テキストに落とした訳ではないので多分なのですが)「基本的見解」の方は文字化け現象が起きない筈でして、基本的見解の方が文字化けしなかったら安心してたらまさかの孔明の罠ということで、これだとやや困るのでフォントだか何だかを直して頂けませんでしょうかねえ。

ちなみにワンチャン行けるかと思ってIEで落としてみましたがやはりだめなのでPDFのバージョンに問題があるのかもしれませんけど。

と脱線しましたが頑張ってネタにする。

『最近の労働需給の引き締まり度合いは、バブル期のピーク並みか、これを若干下回る程度にある。労働需給を示す指標には様々なものがあるため、これらを横並びで比較できるように、それぞれの指標の過去の振れ幅(標準偏差)が同じになるようにグラフ化した(図表 B1-1)。すると、有効求人倍率や短期失業率、就業率ギャップは、バブル期のピーク並みまでタイト化が進んでいることがわかる31。一方、短観の雇用人員判断DIや失業率、長期失業率、労働投入ギャップは、バブル期ピークに比べると、なお若干のスラックが残っている32』


ほうほう。

『このように労働需給がバブル期とほぼ同程度にまで引き締まっているにもかかわらず、最近の賃金上昇率は、バブル期に比べると、弱めである。名目賃金と労働需給の関係を図示すると(図表B1-2)、例えば、労働需給の指標として有効求人倍率を用いたケースでは、両者の間には正の相関がみられる(賃金版フィリップス曲線)。しかし、2013 年以降のサンプルに限ると、両者の関係が下方シフトしたうえでフラット化したように見受けられる。この結果、バブル期のピークにあたる1990 年頃には、名目賃金は5〜6%の上昇率となっていたが、最近は1%前後の上昇率に過ぎない。 』

図表B1-2が中々悲しいので必見。

『こうしてみると、まったく賃金が上昇していないという訳ではないにしろ、労働需給が引き締まっている割には、賃金は上昇していないということになる。』


・労働慣行とか制度上の分析なのだが時間がない

というのがファクトでして、その次に『(BOX2)わが国労働市場の特徴とマクロでみた賃金 』ってのがあるのですが、さっきの所で孔明の罠に掛かってしまい時間が無くなってしまったのですが、要は労働需給の調整をするのにモビリティーが低い、というか低くなるような制度上のインセンティブがあるので、その結果として正規雇用中心に賃金の粘着性が高い、という話ではありまして、前回の分析にも似た話になっているのだが、そもそも雇用慣行とか制度のインセンティブって昔もあったじゃん的な話がありまして、では何でそこに違いがあるのか、という話になっていて、そこは「インフレ予想」と「労働生産性」の差がありますよというお話になっているので中々面白いのだが無念の時間切れorzorz。

しかしまあ何ですな、「インフレ予想が低いので正規雇用の賃金上がり難い」となると、賃金が上がってこないとインフレ予想が上がりにくいですなあという話と思いっきり話が循環してしまってどうするんじゃろこれという話で、やはりインフレ期待を即座に上げるような魔法の杖というのは無かったんじゃないの(下げる方は引き締めれば良いのだが)という話になってくるような気もしますが詳しくは展望レポートをご覧あれ。




2017/07/24

お題「内閣支持率ェ・・・・・・・/総裁会見を見ながらツッコミというよりはミーの愚感想などを少々」

ほほう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170723-00000061-asahi-pol
仙台市長選、野党共闘候補が自公系破る 郡氏が初当選
7/23(日) 22:16配信

今回は投票率が上がって野党系が与党系破っているので与党的にはちと深刻な訳ですが(東北だから元々自民が弱めではあるが)。


○つーことで内閣支持率のメモ

低めに出る傾向にあるらしい毎日は26%とな

https://mainichi.jp/articles/20170723/k00/00e/010/231000c
内閣支持率
続落26% 初の2割台 不支持56%
毎日新聞2017年7月23日 16時30分(最終更新 7月23日 18時17分)

『毎日新聞は22、23両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は26%で、6月の前回調査から10ポイント減。不支持率は12ポイント増の56%だった。』(上記URL先より)


高めに出る傾向にあるらしい日経も40%割れ

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE23H02_T20C17A7MM8000/?dg=1
内閣支持率39%に続落 「政権におごり」65%
本社世論調査
2017/7/23 22:01日本経済新聞 電子版

『日本経済新聞社とテレビ東京による21〜23日の世論調査で、安倍晋三内閣の支持率は39%となり、6月の前回調査から10ポイント下がった。不支持率は10ポイント上がって、2012年12月の第2次安倍政権発足以降で最高の52%となり、支持率と逆転した。』(上記URL先より)


・・・・・・・・でもって先ほどの仙台市長選挙が(再掲)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170723-00000061-asahi-pol
仙台市長選、野党共闘候補が自公系破る 郡氏が初当選
7/23(日) 22:16配信

『仙台市長選は23日に投開票され、新顔で前民進党衆院議員の郡和子氏(60)が、いずれも新顔で、自民党宮城県連や公明党などが支持した冠婚葬祭会社長の菅原裕典氏(57)、前衆院議員の林宙紀氏(39)、前衆院議員の大久保三代氏(40)を破り、初当選を決めた。投票率は44・52%(前回30・11%)だった。』(上記URL先より)

って投票率が盛大に上がって与党系敗北ってこれはアチャーな展開な訳ですが、まー今だったら野党サイドの党としての支持も低空飛行なんですから与党体制維持するんなら・・・・・・・・

でまあ今後どうなるかは分かりませんけど「私の金融政策」の行く末にも影響がないとは言えないお話だったりするのではてさてどうなるのやら。

#ちなみにアタクシは「権力は抑制的に行使すべきである」と思っておりますのでね・・・・・・


○ところで短国買入って何で1.5兆円打ってるの?????????

金曜のオペで意味不明だったのはこれ。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170721.htm
国庫短期証券買入 15,000 2017年7月25日

・・・・・・・・・・???????

えーっとですね、先週の短国は1年もそうですが3Mの新発金利が下がってきていまして、3Mの平均落札が▲11bp台に金利低下となっていた訳で、どこからどう見ても需給改善以外の何物でもない状態だった訳ですよ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170721.htm
国庫短期証券買入 26,137 15,001 -0.019 -0.010 50.7

落札結果は上記のとおりで、応札2.6兆しかなくて足切1毛9糸まで流れていまして、今月その前に1.5兆円入れたのは月初の全般の雰囲気がよろしくなくて需給が若干緩めの時だったからまあ分かるのですが、何も需給タイト気味になってきていて全般的にも金利に上昇圧力が掛かっていないときにわざわざ強くなるの明らかな買入の仕方しなくても良いじゃないのと思うのと、日銀買入のせいですっかり焼け野原市場になってペンペン草も生えない状態になっていた焼け跡市場に市場機能の萌芽が出てきた感じのあった所にまーた火炎放射器で火がボーボーとしてしまうとか何ちゅう事をしていますねんと小一時間問い詰めたいのだが、何でこうなったんでしょうかねえ??????

というメモだけ。


○総裁会見を先に参りますね

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2017/kk1707a.pdf

・あっさり降参の巻

実質最初の質疑がこれ。

『(問) 今回の展望レポートでは、景気判断を前に進めましたが、物価目標の達成時期については後ろにずらすという形になりました。景気が改善もしくは拡大している一方で、物価の上昇が鈍いことの背景について、総裁のご所見を改めて伺わせて下さい。』

まあ今回の展望レポートはとにもかくにもここですし、しかも追加緩和のつの字も無いというのはナンナンデショというお話なのですよ。しかも従来の物価到達時期先送り攻撃ってのはそうは言いましても結構ギリギリまで粘ったり匍匐前進させたりしていたのですが、今回は来年度の2%乗せについて今年度まだ1四半期しか終わっていないのに降参してくるというかなりの早期降参なので、そのポッキリ折れっぷりが従来とは全然違うという所で。

『(答) 先程申し上げましたように、わが国の景気が緩やかに拡大している一方で、消費者物価は弱めの動きとなっています。この背景としては、携帯電話機や通信料の値下げといった一時的要因もありますが、やはり賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることも影響していると考えています。企業においては、人手不足に見合った賃金上昇をパート等にとどめる一方で、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収するなどの動きがみられます。』

これは展望レポートの基本的見解をネタにした時に思いっきり書いてありましたが、本来期待に働きかける金融政策をするってのに対してその期待に働きかける部分に成功していない(失敗したとは申しません)という事をここまであっさり認めるとな。

『このように、労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重なものにとどまっています。実際の物価上昇率の影響を強く受ける形で、中長期的な予想物価上昇率の高まりも、先程申し上げたようにやや後ずれしています。』

これについては展望レポート本文の最後の所に色々と説明があって中々味わいがありますが後程。

『もっとも、こうした状況がいつまでも続くことは想定していません。先行き、マクロ的な需給ギャップが着実に改善していく中で、賃金コスト吸収のための対応にも自ずと限界があると考えられますので、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化していくとみられます。』

とは言いましても展望レポート基本的見解のリスク要因の中にこの賃金コスト吸収の対応がまだまだ企業の所で出来てしまうリスク(というのか?)があって、その場合待てど暮らせど賃金と物価に跳ねてこないというリスクがあって、そうこうしているうちに循環的に景気が下降(ちなみに2019年度が外需で伸びを続ける、という展望レポートのシナリオに関しても何かインチキの香りがするのですけどね)局面を迎えた場合にどうなるんでしょう、というのはある。

『また、中長期的な予想物価上昇率についても、実際に価格引上げの動きが拡がるにつれて、着実に上昇すると考えられます。このように「物価安定の目標」に向けたモメンタムがしっかりと維持されているもとで、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えています。』

という説明なのですが、この流れを見ておりますと「できるだけ早期に達成」はどこに行ったのでしょうか、という疑問が出る訳でちょっと先に質問が飛んでいます。


・2%目標達成はなし崩し的に中長期(木内さん)あるいはローリングターゲット(佐藤さん)に

『(問) 2%目標の達成時期の先送りは今回で 6 回目となります。総裁の任期切れを迎える 2018 年 4 月までの目標達成を断念することになりますが、その責任についてどうお考えでしょうか。前回先送りされた昨年 11 月の会見では、任期と物価の見通しは関係ないというご発言もありましたが、改めてお聞かせ下さい。(後半割愛)』

『(答) ご案内のとおり、日本銀行は、2013 年 4 月に、2%の「物価安定の目標」を 2 年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現することを目指して、「量的・質的金融緩和」を導入しました。』

とわざわざ言うのは丁寧ちゃあ丁寧。

『その後、わが国の経済・物価は大きく好転しています。生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入前は−0.5%程度で推移していましたが、2013 年秋にプラスに転じた後、3 年半以上にわたってプラス基調で推移しています。こうした状況は、1990 年代末以降初めてのことで、既にわが国は物価が持続的に下落するという状況ではなくなっていると思います。』

・・・・・・・ここの説明って毎回しているので何となくスルーしてしまうのですが、一方で今回認めているように「やはり賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることも影響していると考えています。」という事である訳でして、それは即ち本来QQEだの置物リフレ理論などで言っている「期待への働きかけ」に関してはまるで出来ていない、という事を意味する訳でして、足元では確かに「物価が持続的に下落するという状況ではなくなっている」ということですけれども、その要因は期待のシフトアップによるものではなくて、海外経済が全般的に堅調で需要が確りしていることに加え、人口動態要因による労働需給への影響が追い風になって、その結果として需給ギャップが改善しているという要因なのであれば、それはQQE以降の政策で企図した事が出来た結果とは言い難いのではないでしょうかねえ、と思うのですよ。

ですから、とりあえず今の建付けというか枠組みを早めにもうちょっと普通のものにして(緩和解除しろというのではない)いかないと、次に循環的な下降局面が来た時にインフレ期待も上がっていないのですからあっさりダメダメになるし、しかもこれだけバカスカ緩和をしていたら有効なタマが枯渇するじゃろ、という風に思うのですよね〜。

『一方で、ご指摘のように、2%の「物価安定の目標」は実現できていません。その背景としては、昨年 9 月に公表した「総括的な検証」でも示した通り、原油価格の下落を始めとする様々な逆風によって実際の物価上昇率が下落し、もともと過去の物価上昇率に引きずられやすい予想物価上昇率が、横ばいから弱含みに転じたことが主な原因ではないかと思われます。』

そもそも外生要因でインフレ予想があっさり下がるのであれば金融政策でリアンカーするという企図は成功していないと申し上げるしかありませんので、大規模金融政策でリアンカーさせるというのを諦めて、緩和的な金融環境を継続することによって適合的な物価上昇期待の形成を時間を掛けて行う、という中長期な取り組みに変えるしか無いんじゃないですかねえ。


『こうした中で、日本銀行としては、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」あるいは現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入するなど、その時々の経済・物価・金融情勢を踏まえて、政策面で必要な対応を実施してきました。今後とも、2%の「物価安定の目標」を実現するため、強力な金融緩和を粘り強く推進していく所存です。


でまあこの「粘り強く」ってのですが、先般5月の内外情勢調査会での総裁講演で、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170510b.htm/
経済・物価見通しと金融政策運営 内外情勢調査会における講演

『先ほどご説明した通り、景気の足取りはしっかりとしてきていますが、物価面では、2%の「物価安定の目標」までにはなお距離があり、物価上昇のモメンタムは力強さを欠いています。また、海外経済の動向や、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に、下振れリスクが大きい状況が続いています。こうした状況のもとでは、現在の「金融市場調節方針」を維持し、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが何よりも重要だと考えています。』(上記5月10日内外情勢調査会の講演より)

って言い方で「粘り強く推進」ってのが出て来まして、今回は「2%物価到達見込み時期を先送り」しながらこの粘り強くというのが出てきた訳でして、そうなってくるとニュアンスがより中長期的な意味合いを強くすると思うのですよね〜。


・はいはいモメンタムモメンタム

話は戻りまして、さきほどの質疑応答の続き。

『ご指摘のように、コミットメントの達成時期は先送りになり、展望レポートでも示している通り、消費者物価の前年比は、見通し期間の前半を中心に下振れているわけですが、見通し期間の終盤にかけて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えています。展望レポートでも示している通り、まず第一にマクロ的な需給ギャップが着実に改善していく中で、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化してくるとみられることに加えて、中長期的な予想物価上昇率も、下げ止まりから一部に上昇する指標もみられているもとで、先行きも、実際に価格引上げの動きが拡がるにつれて着実に上昇すると考えられます。』(今回の定例記者会見からの引用で先ほどの引用の続きに戻ります、以下同様)

ということですが・・・・・・・・

『従って、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムはしっかりと維持されており、本日の金融政策決定会合では、現在の金融市場調節方針を維持することが適当と判断しました。』

つーことはモメンタム(ちなみに勘定したら今回の会見ではモメンタムは14回連呼されていました)というのは需給ギャップのプラス化継続と期待インフレが少なくともコケないことらしい。

『この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、ある意味でフレキシブルに経済・物価・金融情勢に対応できる、持続可能性が非常に高い金融緩和のフレームワークであり、実際に予想物価上昇率が上がっていくと、実質金利が更に下がっていきます。現在でもマイナスになっていますが更に実質金利が下がれば、金融緩和効果が拡大していきますので、モメンタムが維持されており、今後更に金融緩和の効果が強化されていくもとで、先程申し上げたような形で、2%の「物価安定の目標」が達成されるという見通しになっています。』

という話だが、そもそも論として暫く前の段階でいったん期待インフレが上がったという事になっていた筈だが、それによって金融緩和効果が高まったのに逆風とやらで上がった期待インフレが下がった、というのがこれまでの言い訳だと思うの。だとすればその時期も金融緩和効果が高まったという建付けになるのだが、それでも(海外経済が後退期に入らない程度の)海外要因で期待がコケたという事ですから、それは金融政策が需要ショックには効くとしても期待に直接働きかえるフォワードルッキング的なことは出来ていなかったと認めた方が良い気がする。

つまり、モメンタム云々は良いのですが、もうちょっと単純に「緩和的な金融環境で需要を喚起できるような金融面のサポートを行う」という従来の在り方(期待に直接働きかけて押し上げるというような中央銀行万能感を押し出すような態度を改めて)に戻した方が今後の運営楽になると思うのですよ。まあ色々やったけれどもやってみないと分からなかった面もあるので、今後副作用が起きるような事の無いように緩和政策の手段を変えながら長期的に緩和政策を行う、みたいな転進って出来ないのかね。


・追加緩和についての質疑を見るともうね

『(問) 2 点お願いします。1 点目は、金融政策についてです。現在、想定よりも物価上昇が下振れしている中で、今回は、それとセットでより強力な金融緩和を進めていく、という考え方もあったと思うのですが、それについてのご見解をお願いします。(後半割愛)』

『(答) まず 1 点目については、マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくもとで、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化していく、また、中長期的な予想物価上昇率も今後着実に上昇していくと考えられます。いずれも2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムがしっかり維持されているということで、今回の決定会合では、現在の金融市場調節方針を維持することが適当だと判断しました。そのうえで、実際に予想物価上昇率、あるいは足許の実際の物価上昇率が上昇するにつれて、実質金利が下がり、金融緩和の効果が更に強まっていくわけですので、現在の金融市場調節方針を維持することにより、しっかりとこうしたモメンタムを維持、強化していけると考えました。(後半割愛)


・・・・・・・説明はオートリバースのテープレコーダー(若い人は知らんですかそうですか)だし謎の用語「モメンタム」は連呼するしというこの状況が何とも。まあ他に説明のしようがないちゅうことですわ。


・もはや回答が出来ないので仕方ないのですが

『(問) 2 点質問があります。1 点目は、物価上昇率見通しを下方修正したわけですが、今回 6 回目ということで、繰り返し下方修正すること自体が、日銀が戦っているはずのデフレマインドを更に強める結果にはならないでしょうか。もしくは、日銀がやれることは、今回政策が維持されたことで、手だても少ないという受け止めが世の中に広がるといったことについて、総裁はどう思われるでしょうか。(後半割愛)』

まあその通りなんですけどね!!!!!

『(答) 「物価安定の目標」が達成される時期については、展望レポートでの見通し等に示してある通りですが、ご案内の通り、欧米各国の中央銀行の物価目標の達成見通しも、何回も先送りになっています。これは、色々な事情があると思います。原油価格の大幅な下落など、それぞれの中央銀行がコントロールできる範囲の外の、予想が難しいことが大きく変わったこともあったと思います。もちろん、見通しが何回も先送りになること自体は残念なことですが、見通しはあくまでも足許、それから今後の経済動向を踏まえて、適切に作っていくことが一番大事だと思っています。』

『なお、今回、物価の見通しを特に 2017 年度、2018 年度を中心に下振れさせました。これは足許の状況を踏まえてそうしたわけですが、そうしたもとで、金融市場調節方針を維持したことについては、先程申し上げた通り、モメンタムは維持されていること、更に付け加えて言えば、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中には、実際に予想物価上昇率が上昇していくにつれて実質金利が更に下がっていく形で、金融緩和が強化されていく仕組みが内在されていることが背景にあります。従いまして、手だてが少ないとかそういうことではなく、現在の仕組みを維持していくことによって、モメンタムを維持し、更に強化していけるということだと思います。(後半割愛)』

というこのオートリバースと言い訳ですが苦しいですわなあ。

なお、何度もネタにしておりますがここで2013年に置物副総裁がご説明していたアレを引用しておきましょう(定期)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

『2 つ目は、そういう意味で、2 年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(上記2013年3月総裁、副総裁就任会見での岩田副総裁の発言より)



・まあこれも隔世の感があるわけで

この質問のひとつ前にあるのから話は続いているのですがそちらはパス。

『(問) 企業に求めることとしては、デフレマインドというものをなるべく早く変えてほしいということですか。』

『(答) そこは、物価だけ上がってしまえばよいということではなく、やはり賃金と物価が上がっていく、そして賃金の上昇率と物価の上昇率の間には労働生産性の上昇率も入ってきますので、賃金の上昇率が物価の上昇率に労働生産性の上昇率を加えたものになっていくことが、ある意味で言うと持続可能な、中期的な均衡値です。そうした意味では、物価だけ上がればよいということではなくて、賃金と物価が同時に上がっていくためには、私どもとしては、緩和的な金融環境を粘り強く続けていくことによって需給ギャップがプラスになって更に拡大し、予想物価上昇率が上がっていくというモメンタムを維持、強化していきたい。そうすることによって 2%の「物価安定の目標」が均衡の取れた形で達成される、と思っています。』

まあこれもいつも出す定期引用ですが、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
ー 「第一の矢」の考え方 ー

の6枚目のスライドを見ると賃金上昇って随分先のほうですし、

浜田御大におかれましては
http://diamond.jp/articles/-/30804?page=6
で『名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない』ってな小見出しがありますが、

黒田総裁も2013年9月のきさらぎ会講演(これは良くできている)で

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko130920a.htm/

『このような変化が起こった結果、現在のフィリップス曲線の形状を前提とすると、2%の物価安定目標を達成するためには、6%程度という大幅なプラスの需給ギャップが必要という計算になります。これは1980年代末から1990年初にかけてのバブル期のピークの水準です。もちろん、私たちはこうした姿を目指しているわけではありません。なぜなら、景気が「ものすごく良い」時に2%を達成しても、景気の波の中でまた物価上昇率は下がってしまうからです。したがって、安定的に2%の物価上昇率を実現するためには、景気が普通の状態の時に2%になるような経済・物価の関係を作る必要があります。こう考えると、従来のように「景気を良くして物価上昇率を上げる」というアプローチだけでは、物価安定目標である2%を持続的に達成することはできないということがわかります。ここに、フィリップス曲線を上方にシフトさせるような政策が必要になるということです。または、同じことですが、企業や家計の予想物価上昇率を上げること、すなわち、人々の「物価は上がらない」という考え方を転換する政策が必要となるのです。先ほどの「錨」の喩えでいえば、現在の「錨」を断ち切り、2%の新しい「錨」まで持っていく政策です。』(上記2013年9月のきさらぎ会での総裁講演より)

という話をしていた訳ですが、結局の所はその期待のシフトアップは簡単に起きないということであれば、「中長期的」なアプローチで、無理のない形で長期的な緩和の継続をしていき、その間に経済の成長力を高める施策を政府に行うように促す、という元々の姿にもどるべきなんじゃないでしょうかねえ、というかそうじゃないと説明がつかないような感じになっているなあ、と思うのでした。


#ということでツッコミというよりはアタクシの長広舌になってしまって展望レポートの話とかできなくなってしまいましたすいませんすいません







2017/07/21

お題「日銀展望レポートがある意味サプライズだったりしたので」

日銀とECBがまとめて打ち込まれましたがたぶん今朝は日銀で手一杯でふ。

ところでこれわwww
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00364816.html
虚偽答弁か 稲田大臣が窮地に
07/20 17:20

『陸上自衛隊が日報を保管していたにもかかわらず、公表しなかった。隠蔽(いんぺい)ではないかとされる問題だが、この問題の発覚後、稲田防衛相は、「自分自身には報告はされなかった」と繰り返し答弁をしてきた。19日も、あらためて報告を否定している。しかし、稲田防衛相は、この前の時点で報告を受けていて「けしからん。あす、なんて答えよう」とまで話していたことが新たにわかった。新たな証言などによって、これまでの答弁や説明が虚偽だった可能性が出てきたのは確かで、稲田氏は19日も「事前の報告はない」と否定していただけに、さらに厳しい立場に立たされたことは間違いない。』(上記URL先より)

ってこれFNN(フジテレビ)系でもこうなっているというのがいやはや何とも。


○展望レポートがかなり白旗モードになっている件について:鏡と見通し数値の所

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1707a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1704a.pdf(前回)

何故か知らんが今回フォントが変わっていまして印刷して比較して読むのに一瞬難儀しましたが、前回と比較しながらペタペタコピペをするときには前回と今回のフォントが違うのでコピペミスをしないで済むというメリットがあることに気が付きました(笑)。

てな話は兎も角まずは概要から。

・物価が上がらない事の言い訳成分が高まる概要部分

『わが国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、景気の拡大が続き、2018 年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる。2019年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれる2。』(今回)

『わが国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018 年度までの期間を中心に、景気の拡大が続き、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられる。2019 年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれる2。』(前回)

「景気の拡大が続き」ってのが今回新しく入っていますが、前回時点で景気は「拡大」になりましたのと、先の方にありますように成長率の見通しを上振れさせていますのでその辺を受けて景気に関してはより威勢の良い表現になっています。

でもって注目点はこの次。

『消費者物価(除く生鮮食品)は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格上昇の影響を除くと弱めの動きとなっている。これに伴って、中長期的な予想物価上昇率の高まりもやや後ずれしている。もっとも、マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も上昇するとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

どうよこの長さという感じですが、物価が上がる上がるという話をしながらまた今回も物価2%到達時期の先送りというのが打ち込まれましたので、足元の物価が中々アガランチ会長になっている事に関してのエクスキューズが思いっきり入っているという図。

『従来の見通しと比べると、成長率については幾分上振れている。物価については、見通し期間の前半を中心に下振れている。』(今回)

『2018 年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率、物価ともに、概ね不変である。』(前回)

ということで「成長率上振れ、物価下振れ」+「2%達成時期の先送り」というコンボ来ました。

『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、マクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に上昇するとみられるもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(今回)

『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠け、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(前回)

今回はわざわざ「物価面では、マクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に上昇するとみられるもとで」と入れていまして、つまりは主に中長期的な予想物価上昇率の方なのでしょうが、そちらの前提がまたまた後ずれすると「モメンタムは維持されているが2%到達時期が遅れるかもしれませんねえ、ああでも需給ギャップのプラス幅が拡大傾向ですからそのうち何とかなるだろう」という話になる、ということですな。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

というのは同じです。


・基本的見解本文に行く前に見通し数値に関して

最後の『2017〜2019 年度の政策委員の大勢見通し』を念のため。

2017 年度
成長率:+1.5+1.8<+1.8>
コアCPI:+0.5+1.3<+1.1>
4月時点
成長率:+1.4+1.6<+1.6>
コアCPI:+0.6+1.6<+1.4>

2018 年度
成長率:+1.1+1.5<+1.4>
コアCPI:+0.8+1.6<+1.5>
4月時点
成長率:+1.1+1.3<+1.3>
コアCPI:+0.8+1.9<+1.7>

2019 年度
成長率:+0.7+0.8<+0.7>
コアCPI:+0.9+2.0<+1.8>
4月時点
成長率:+0.6+0.7<+0.7>
コアCPI(除く消費増税):+0.9+2.0<+1.9>

見通し数値なのですが、2017年度が下がるのは当然としても、アタクシの妄想としては「足元の物価は下がっているけれども成長見通しが上振れている、つまり需給ギャップの改善度合いが上振れるので、先行きの物価上昇圧力に関しては前回見通しよりも上振れるため、2018年度の2%達成見通しに変化はない(キリッ)」と出ると思っていた(仮に下げるにしても+1.7→+1.6という下げ方)のですが、この出し方ですとそもそも物価の先行きパス自体が随分角度弱くなったなという数字になるのですな。

つまり、大勢見通しのレンジの上限が+1.9→+1.6って結構な下がり方ですし、中央値(中央値自体はメディアンの数字であって特定の人の数字を追っている訳ではないのでそれ自体で話をするのはあまり適切ではないのですがそこは留保しまして)でみると、この数字って「年度平均」の数字になるので、2017年度が年度平均+1.1で2018年度の年度平均が+1.5という数字ってのは、足元から数字を引っ張ってイメージすると物価の上昇角度が前回見通しの+1.4→+1.7に対して上昇角度が弱まっているという計算になると思うのよ(イメージです)。

つーことで、今回ある意味サプライズと申し上げたのは、ここの物価見通しのパスを含めた話のところ(本文でも出てきますが)でして、2018年度の2%達成に関してはもう少し意地汚く粘って来ると思ったのですけれども、こんなに早くに降参してくるとは思わなかった(精々10月で下手したら来年頭だと思ってた)ので、潔いちゃあ潔いですな。



○追加緩和無しで(されても迷惑だが)事実上のローリングターゲットまたは中長期目標になって来ましたな

でもって今回もまた「物価目標達成時期の先送り」と「追加緩和無し」というセット販売になった訳ですが、今回に関しては「成長見通しを上振れさせているのに物価見通しが下振れ」となっているのに追加緩和無しという組み合わせでして、それはQQE当初に言っていた「2年を念頭に出来るだけ早期に達成」という話との整合性is何処?という事になると思うの。

しかも、展望レポート基本的見解本文の記載にありますように、今回って「原油価格ガー」とかいう特殊要因を言い訳の前面にだしている訳ではなくて、結構ド直球にインフレ期待が上がらないという話をしているのですよ。

でもってですよ、QQE当初の説明って「金融政策で期待に直接働きかけるというのが今までに無い部分(キリリッ)」と従来の日銀のドクトリンとは違うと宣伝して元々の異次元緩和をぶちこんで来た訳でして、本来だったら追加緩和を行って期待に直接働きかけるという事をしないと従来の話との整合性が取れないのですが、それをやらなかったという訳ですよ。

#まあやられても迷惑だけど

・・・・・となりますと、これは「期待に直接働きかけて2年を念頭に出来るだけ早期に」という話ではなくなったのか、それとも金融政策単体ではそのような短い期間を区切るのは難しい(他の要因によるフォローが必要)という認識になったのか、はたまた「期待に直接働きかけて一気に期待インフレを引き上げる手段は金融政策単体では無い」という認識になったのか、というようなお話でありますな。

つまり「出来るだけ早期に」というのは気持ちとしてはあるけれども、じゃあそれをどうやって金融政策だけでやれるか、となると「物価目標達成に向けた環境作りは金融緩和でできるけれども、それでホイホイと早期に物価目標が達成できるかというのは他の要因に左右される部分が大きい」ということなので追加緩和を実施しなくても良し、という話になっている訳ですから、これはつまりなし崩し的なローリングターゲットあるいは中長期目標になってきたという感じではないでしょうか、とまあたぶん円債の皆さんも思うとは存じますが、まあそういう事ですよね。

だから出口が近づくかと言うとそれは別問題。とは言いましてもマイナス金利政策そのものが長期間続けるものでもないと思いますので(個人の感想です)、中長期目標であって2%は気持ちの問題、という事になるのであれば、出口政策とは別の意味あいでの緩和政策の組み換え、というのはアリエールということなのではないかと思いますけれども、まあ黒田さん在任中にそういう話になるのかは謎としか申し上げようがないので今すぐどうこうという話にはならないでしょう。


○展望レポートがかなり白旗モードになっている件について:とりあえず物価の所を確認の巻

時間が押しているので本日は基本的見解本文中の物価の部分について。

『前回展望レポート以降の消費者物価の前年比の動きをみると、エネルギー価格が押し上げに寄与するもとで、上昇率が高まってきている。しかし、こうした影響を除くと、年度初の価格引き上げの動きが限定的となるなど、弱めの動きとなっている。』(今回)

『前回展望レポート以降の消費者物価の前年比の動きをみると、このところ、一部の耐久消費財やサービス価格が幾分弱めの動きとなっている。』(前回)

「年度初の価格引き上げの動きが限定的となるなど」という所に無念というのが出ています。でもって今回はその背景を延々と説明しているというのが白旗モードという所です。

『この背景としては、携帯電話機や通信料の値下げといった一時的要因もあるが、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることも影響している。』(今回)

ということで、先ほど申し上げましたように、従来ならここで「一時的要因ガー」という方向で話を持って行って「でも需給ギャップ改善で物価上がるしこの先は行くもんねー」と意地汚く見通しを維持していたのですが、今回は非常に潔いと言えば潔いですし、何でこんなにポッキリ折れるのという感じもするのですが、まあ思いっきり「インフレ期待(というかゼロインフレ期待)の粘着性」を理由にしているのですな。

『企業は、人手不足に見合った賃金上昇をパート等にとどめる一方で、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている。このように、労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重なものにとどまっている。』(今回)

つーことで、労働需給の逼迫で賃金上がって価格も上がるというストーリーがワークしていませんという説明をしていまして・・・・・・・・

『実際の物価上昇率の影響を強く受けるため、中長期的な予想物価上昇率の高まりもやや後ずれしている。』(今回)

ということなのですが、いわゆるバズーカ2の時はそういう事の無いようにバズーカ2を打ち込んだみたいな話だった訳ですし、QQEがそもそも期待に直接働きかけてというふれこみだったことを考えると、本来ならばここでまさに追加緩和をするという話になるべきところなのですから、まー隔世の感がありますわ。


『もっとも、先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。従来の見通しと比べると、見通し期間の前半を中心に下振れるとみられるが、見通し期間の終盤にかけては、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まるという好循環が次第に作用すると考えられる。2%程度に達する時期は、2019 年度頃になる可能性が高い6。』(今回)

『もっとも、先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2018 年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤(2018 年度頃)になる可能性が高い6。その後は、2%程度で安定的に推移していくものと見込まれる。』(前回)

つーことで今回は「見通し期間の終盤にかけては、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まるという好循環が次第に作用すると考えられる。」という言い方になっていまして、つまりは賃金がまともに上がりだすのを待つしか無くて(その間緩和政策は続くんですが)、元々の置物リフレ理論では「物価が上がって企業収益が上がれば雇用も増えるしそのうち賃金が上がるので無問題、というより寧ろ賃金が上がるのは後」というような説明だったので、置物リフレ理論はすっかり崩壊してしまいましたという事でしょう。

となりますと、2年で2%とかそういう話は(2年の方が)無くなって、2%という目標を置くけれども、それはリジッドに目指すのではなくて、あくまでも「2%の物価上昇率が安定的に維持できるような経済情勢を作っていく」という意味での物価目標であって(だから2%の旗を降ろすというのは無い)、それは期限を切ってやるとかそういう話ではないですよ、という元々の白川ドクトリンに近いものに
戻ってきた、という事でしょうな。

#つーか原田某審議委員とか何で追加緩和を提案しないのかが理解不能


・・・・・・という所で時間が怪しくなってきたので、あとちょっとだけ。

『好循環が作用していくメカニズムについて、物価上昇率を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは着実に改善している。特に、有効求人倍率がバブル期ピークを上回っているほか、失業率も3%程度まで低下するなど、労働需給の引き締まりは一段と明確になっている。先行きについても、わが国経済が緩やかな拡大を続けるもとで、マクロ的な需給ギャップは 2018 年度にかけてプラス幅を拡大し、2019 年度も比較的大幅なプラスで推移するとみられる。』(今回)

というのが今回第1番目になったので(従来はインフレ期待が1番目でこっちが2番目)、まあ期待インフレの上昇に期待する(変な日本語ですな)のはもうちょっと先という話なのでしょう。

あとものすごく気になるのは、ちょっと戻るのですが先行きの見通しの所で、

『2019 年度については、内需の減速から成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気拡大が続くと予想される。』

ってありまして、いやまあ従来よりこういう説明になっているのですが、FEDのSEPなんかでも2019年(あっちは暦年)って成長が鈍化する、という見通しになっていまして、2019年度の景気拡大継続の根拠となる外需ってどこの外需だよ(『もっとも、海外経済の成長を背景とした輸出の増加が景気を下支えするとみられる。』としか書いてない)と思うのですけど、これも何だかなーというところで、2019年度の外需が空振りだと更に達成時期後ずれジャンという気がしますがどうなんでしょうかね。

#というところで本日は勘弁




2017/07/20

お題「日銀当座預金で補完当座預金適用外残高が増えてますな/その他少々」

何か知らんけどよーあがりますなあ。
http://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL3N1KA46T
Markets | 2017年 07月 19日 22:40 JST
米国株式市場・序盤=上昇、ナスダックとS&Pは最高値更新

全然話は違うけど、「日銀が金融引き締めの方向を示したら低金利のアンカーが無くなって海外が困るので日銀は引き締め方向を示しにくい(キリッ)」という何で日銀が海外の為に金融政策やるんだよという某モーサテの珍妙コメントを聞いてそっと番組を閉じる今朝のアタクシ(引き締め方向は示さないのは明らかじゃろとは思うが何だその理屈は・・・・・・・・・)ですが、タダだから別に聞き流せば良いけどリサーチレポート年ウン百万円とか言われると・・・・・・


○毎度の市場メモ備忘の巻

市場備忘メモと言えば昨日は朝に超長期20年確りですなあとか申し上げたらふと見ると超長期20年が1毛甘(先物が5銭も下がっていないのに)とかになっていて何というフラグ建築士と頭を抱えてしまいましたorz


・3M短国堅調とな

うむ。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170719.htm

(3)募入最低価格 100円02銭7厘0毛(募入最高利回り)(-0.1082%)
(4)募入最低価格における案分比率 63.6822%
(5)募入平均価格 100円02銭7厘6毛(募入平均利回り)(-0.1106%)

アベレージが▲11bpに低下してきまして、足切も▲10.8で、先週の3Mが▲10.82/▲10.33だったので一段と堅調という展開になっております。まあ需給なんでしょうけれどもこうなって来ると短国買入を減らしやすくなるので、それはそれでどうなんでしょとは思うものの、短国に関しては基本ショートって出来ない(訳ではないがコスト考えると全然間尺に合わない)ようなもんですからその瞬間瞬間の需給でどうしようもない面がありますからねー。


・日銀当座預金残高

1日ほど出遅れましたが(汗)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/

毎度の『(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)』ですけれども。

補完当座預金制度対象先ベースの当座預金座残高は平残ベースで8兆1,470億円増加。

掛け目が変わったのでマクロ加算残高の理論値は8兆2,660億円増加。
ゼロ金利適用残高が6兆8,990億円増加。
マイナス金利適用残高は6,530億円増加して残高は24兆7,800億円。
5月積み期間(をネタにするの忘れてたの思い出しましたが)でマイナス金利適用残高が大きくドロップした(285,719億円→241,270億円)のですが、今回もあまり残高増えないモードとなりまして、マイナス金利適用残高と短い所の金利の関係がどうなるのかってのはイマイチ肌感覚が無いので申し訳ないのですが、直感的にはここの残高が減ると▲10近くに張り付きにくくなるのかなとは思うけど、たぶん24兆も28兆も同じような気がします。


都市銀行の計数はいつみても鑑賞物としてお洒落でして、6月積み期間ではゼロ金利適用残高の理論値50兆7,810億円に対して実際のゼロ金利残高が50兆5,430億円で差分が2400億円とか段々この差分も無くなってきて職人芸の高度化が進んでいる感がありますけれども、着地調整がどんどん精緻になってくるという事はそれだけ積み最終の所でお家の事情的な金利のブレが起きるんでしょうなあとは思うのですがどうでしょうかね。


プラス金利の内使い切れていない分(億円表示)
9月:29,906
10月:20,778
11月:19,224
12月:30,198
1月:22,939
2月:17,178
3月:25,421
4月:12,747
5月:18,530
6月:12,520

ゼロ金利の内使い切れていない分
9月:101,618
10月:79,931
11月:84,490
12月:111,544
1月:97,012
2月:94,811
3月:130,210
4月:99,930
5月:106,500
6月:120,170

この辺は(ゼロ金利はマクロ加算の掛け目が変わるので四半期ごとに増えますが、その季節性も含めて)安定するようになっていますが、しかしマクロ加算の掛け目に関してはMB目標じゃなくなって攪乱要因もある(買入ペースが上がったり下がったりする)中で綺麗に納まるように調整してくるのは偉人としか思えないです。

というか金利コントロールとマイナス金利政策と、それに伴う当座預金残高の三層構造(なお物凄く正確に言うと所要準備部分は基礎部分残高(普通はプラス金利適用)に含まれますが、所要準備はゼロ金利適用なので四層構造)を維持するために精緻なマクロ加算掛け目の調整をするとか、物凄い実務能力なのだが、そもそもマイナス金利政策とか不毛にも程があるから止めて欲しい所なのですけど、こういう実務能力の物凄い高さによって政策が破綻なく維持できてしまうというのも皮肉な話ではありますな〜とは思ったりもする。

あと、補完当座預金制度適用外の人の残高ですけれども、

9月:87,969
10月:88,726
11月:90,493
12月:96,901
1月:97,650
2月:97,186
3月:103,695
4月:107,463
5月:108,770
6月:138,120

ここの残高が増えるとマイナス金利適用の一種の尻抜けになる、という話は先般のFSRで思いっきりネタになっていました(それまでは一応微妙な話なのでアタクシもゴリゴリはネタにしていなかったのですけれども・・・・・・)けど、6月積み期間になってここの残高がしらっと3兆円も増えていまして、日銀当座預金残高の平残が11兆増えた中で3兆増加ってのはちょっと目についたのですが何か理由でもあったのでしょうか。


○政治リスクェ・・・・・・・・・・・・・・(ニュース備忘録)

何気に昨日は朝っぱらからこういうのがあったようなのですが(汗)。

https://this.kiji.is/260088924608626696
稲田氏、組織的隠蔽を了承
PKO日報、国会で虚偽答弁
2017/7/19 02:00

https://this.kiji.is/260194620040396805
稲田氏報告、緊急会議2日前にも
陸自説明、PKO日報隠蔽問題
2017/7/19 10:52

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170719/k10011065291000.html
日報 公表しない考えで防衛省上層部は一致
7月19日 18時13分

https://this.kiji.is/260330139575027197
日報非公表、防衛次官の意向
稲田氏も了承、統率力欠如
2017/7/19 19:48

・・・・・・って南スーダンPKO関連のネタが打ち込まれたと思えば一方で、

http://bunshun.jp/articles/-/3330
「加計に決めた」政府決定2カ月前に山本大臣発言 議事録を入手
source : 週刊文春 2017年7月27日号
genre : ニュース, 政治

ってかけ蕎麦方面ではセンテンススプリング砲が打ち込まれるとかだし、

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170719-00000046-jij-pol
京産大は「物事の順序逆」=菅長官
7/19(水) 12:42配信

ってちょっと脇が甘めのコメントがガースー先生から飛んでみたり、ということでせっせと後日備忘用にニュースヘッドラインを淡々と貼っておきました(つーてもいずれリンク切れになるのですが、汗)けれども、まーボロボロと出てくるのですが、今の所金融市場は特に反応していないのか反応しようが無いのか、それとも単にポジションの偏りが無いから別に反応する必要もないのか、というのがよー分からんですけれども(ドタ勘によると一番最後の「ポジションが偏ってないから反応する必要もない」なのですけど、特に円債は)、さてどうなるんでしょうか。さすがにちょっと第一次の時を思い出すような感じもせんでもない。


○先週のネタですがダラス連銀カプラン総裁のエッセイというのがありまして簡単にメモを

その時のニュースはこちら。
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPL4N1K54MR
Markets | 2017年 07月 14日 23:45 JST
米FRB、9月にもバランスシート縮小開始の公算=ダラス連銀総裁

『[メキシコ市 14日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、米連邦準備理事会(FRB)が「早ければ9月にも」バランスシートの縮小に着手する可能性があるとの認識を示した。米経済は完全雇用に近い状況にあるとの考えをあらためて示す一方、インフレは抑制されており、追加利上げに踏み切る前に一段の進展を確認したいと述べた。』(上記URL先より)

たぶんこれとリンクするのがこちらでして、

https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170713.aspx
Essay by President Robert S. Kaplan
Assessment of Current Economic Conditions and Implications for Monetary Policy
July 13, 2017Essay in PDF | Essay in Spanish

上記のEssay in Spanishってのはこちらでして、スペイン語バージョンがあるのがお洒落。
https://www.dallasfed.org/news/speeches/kaplan/2017/rsk170713sp


でもって手抜き読みで最後の『The Current Stance of Monetary Policy』の所を読みますと・・・・・・・・

『As I mentioned earlier in this essay, I believe that we are making good progress in accomplishing our dual-mandate objectives of full employment and price stability.』

As I mentioned earlier in this essayの所は盛大にパスしているのですが(最初の方にある)、まあここについては基本FOMCの皆さんで違う話をしている向きは無いですよね。

『However, I am cognizant that progress toward our 2 percent inflation goal has been slow and, at times, uneven. I intend to be patient in critically assessing upcoming data to evaluate whether we are continuing to make progress in reaching our inflation objective.』

2%達成への動きは不均等だしスローです、と基本ハト風味でして・・・・・・・・・・

『I have consistently stated that I believe there is a cost to excessive accommodation in terms of limiting returns to savers, as well as creating distortions and imbalances in investing, hiring and other business decisions. Monetary policy accommodation is not costless. It has been my experience that significant imbalances are often easier to recognize in hindsight and can be very painful to address.』

カプラン総裁は前から割とこの「超緩和政策の長期化は金融のインバランスをもたらす」という主張をしている人なのですな。

『However, I also believe that the key secular drivers discussed earlier in this essay will continue to pose challenges for economic growth. As a result, my view is that the neutral rate, the rate at which we are neither accommodative nor restrictive, is likely to be much lower than we are historically accustomed.』

ただし、the key secular drivers discussed earlier in this essayがある、ってのもこれまた前の方に「Broader Secular Trends」ってのを挙げていて(引用は割愛しますが)、米国および先進諸国の人口動態の影響、グローバルに拡大する負債というサイクルに入っていてその持続には限度があること、グローバル化の影響、世界的なコストカット圧力による従来型のビジネスモデルへの悪影響、というようなのを挙げていまして、そういうのが物価を上げにくくしているので様子をよく見るべきというお話のようですし、自然利子率は大きく下がっているという認識。

これを合わせますと・・・・・・・

『Based on these considerations, I have argued that future removals of accommodation should be done in a gradual and patient manner. “Gradual and patient” means to me that I will be open to updating my views on the economic outlook and the appropriate stance of monetary policy based on incoming economic information. I will avoid being rigid or unduly predetermined in my views.』

『At present, with a federal funds rate at a range of 100 to 125 basis points, I would like to see some greater evidence that we are making progress toward meeting our 2 percent inflation objective in the medium term. I am cognizant that several secular forces (described earlier in this essay), particularly an intensifying rate of technology-enabled disruption, are likely impacting the pricing power of businesses and creating downward pressure on inflation. I plan to continue to work to try to better understand the impact of these secular forces in the weeks and months ahead.』

『Separately, with the Federal Open Market Committee having now published updated principles and plans for reducing the size of the Fed’s balance sheet, I believe it will likely be appropriate to begin the process of balance-sheet reduction sometime later this year.』

つーことで、金利に関しては自然利子率が下がっているし構造的に物価が上がりにくい可能性がある(今カプランさんのところでは研究中だからペーパーなりが出るみたいですね)ので利上げは慎重スタンス、一方でそれとはまったく別個に金融インバランスに関する点で言えばバランスシートの縮小に関してはやるのが望ましい、という組み合わせになるのですが、まあ今の所そこまで明示的に説明はしていないですけれども、何かブレイナードさんの講演とかも含めて考えると、イエレンさんも「バランスシート縮小着手を優先して金利は様子見」的な考えに傾いているのかねえとか思ったりするのでした(個人の感想です)。

#という超簡単メモで恐縮至極





2017/07/19

お題「市場その他ニュース備忘録雑談という感じですいません」

ナムナム。
http://jp.reuters.com/article/shimonkaigi-estimate-idJPKBN1A30Q5
Business | 2017年 07月 18日 17:55 JST
基礎的財政収支、高成長でも赤字8.2兆円=20年度試算で内閣府

インフレ目標達成すると財政問題も解決へという置物リフレ理論は何処へ、と思ったけどインフレ目標達成してないから仕方ないのですね、わかります。

○ニュースメモ雑談

・オバマケアネタでリスクオフとは言いますが

http://jp.reuters.com/article/obamacare-tough-dollar-falls-idJPKBN1A31QQ
Business | 2017年 07月 19日 00:28 JST
オバマケア代替法案可決困難、ドル下落

『[ワシントン 18日 ロイター] - 米上院で与党共和党が成立を目指す医療保険制度改革(オバマケア)代替法案に共和党議員2人が17日夜遅くに反対を表明し、可決が難しくなったことを受け、金融市場ではドルが主要通貨に対し10カ月ぶりの安値をつけるなどの動きがみられた。』(上記URL先より)

とまあそういう事で

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1K953O
Investing | 2017年 07月 19日 04:54 JST
米金融・債券市場=利回り低下、オバマケア代替法案可決困難で警戒感

10年債(指標銘柄)
15時36分 100*31.50 2.2625%
前営業日終値 100*18.50 2.3090%

2年債(指標銘柄)
15時36分 99*25.75 1.3518%
前営業日終値 99*25.25 1.3600%

つーことでまーた2.3%割っている訳ですが、つーても2年の金利はそんなにサガランチ会長ということですからまあこんなもんなんでしょうかね。とりあえず長期金利の話と金融正常化の話ってことになるとこれはまた微妙に違うという感じなのでしょうが、この調子ですと今月のFOMCでいきなり資産買入縮小に向けたアナウンスとか出て来ないっぽい感じ(出すならもうちょっと威勢の良い話をするのかなと思うので)ではありますが、市場が概ね想定しているような9月FOMCで資産規模縮小開始に向けたアナウンス(で10月から縮小開始)があったとして、その後現実問題として償還再投資のフローが落ちる中でどんな影響が出るのか、という話に関しては正直始まってみないと良く分からんのですが、現実の買入フローが落ちるのはそれなりに影響はすると思うし、市場の長期金利とかの反応はその辺りを舐めて掛かっている感isあるとは思う。

ただまあ7月FOMC時点で(声明文しか出ない)ここもとと同じような感じで「正常化はするけどそんなに急ぎませんよああそれからバランスシートの縮小はもうすぐ着手な」というのが出ますと、そこから先はしばらく米国金融当局夏休みモードに入って、ジャクソンホールで何か面白発言でも出ない限りはネタなしモードになるのでしょうかね、よー知らんけど。


・円債は確りしておりましたが・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1K92IF
Markets | 2017年 07月 18日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は上昇、長期金利0.070%に小幅低下

『<15:10> 国債先物は上昇、長期金利0.070%に小幅低下

長期国債先物は上昇。国内連休中の海外市場で米債が買われた流れを引き継いで買いが先行。円高・株安の進行も短期筋の買いを誘った。海外勢を巻き込んで需要が強まり、一時7月3日以来となる150円19銭に上昇した。現物債はしっかり。長期ゾーンは先物に連動して強含みとなり、超長期ゾーンは押し目買いが優勢になった。あす流動性供給(残存1年超5年以下)入札を控えているが、中期ゾーンも底堅い。残存5年超10年以下の日銀オペ結果は無難な範囲に収まった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比14銭高の150円17銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp低下の0.070%。』(上記URL先より)

まあオバマケア代替法案ダメでリスクオフというのを先取りしました(ネタ自体は昨日の東京では出ていたから)という話なのかも知れませんけれども、ここもと短い所が妙に確りしていまして、先週は3M短国が足切も▲10bp台に乗っかっていましたけれども、短国買入専用機状態の1Y新発入札も、

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170718.htm

(3)募入最低価格 100円11銭4厘(募入最高利回り)(-0.1138%)
(4)募入最低価格における案分比率 78.6594%
(5)募入平均価格 100円11銭6厘(募入平均利回り)(-0.1158%)

つーことで、6月の1年短国が▲11.58bp平均の足切▲11.28bpなので同水準での推移となりまして、今月は短国買入のフローが多め(単に償還が多いからですが)というのもあるとは思いますけれども、先月末から月初辺りで中短期弱かった流れは一段落というか、だったらまあ今週の短国買入1.5兆円入れなくてもエエンチャウノという感じではありますが。

あと補完供給オペが久々にずいぶん減りまして、

金曜の補完供給
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170714.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)673 673 -0.500 -0.500
(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
20年利付国債161回(670億円)、30年利付国債23回(3億円)です。

昨日の補完供給
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170718.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)54 54 -0.500 -0.500
(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
10年利付国債336回(10億円)、20年利付国債114回(37億円)、20年利付国債160回(4億円)、
30年利付国債33回(3億円)です。

となりまして、超長期161回の(追加)発行日が昨日でしたので見事に超長期161回の当日ショートで補完供給でロール分が解消されたという事になりまして(だからショートが無くなったのかどうかというとそれは別問題で新発出たから投資家なり同業なりからのレポに置き換わっただけかも知れませんので念のため)、でもその一方で超長期輪番は特に超長期前半が確りしていたりというのが続いているので、超長期の前半というか20年カレントは相変わらずで、先週途中まであんなに60bp台で滞留していたのにあっさり60bp割れになっているとか、何かここにきて妙にしっかりしておりますなあ、とは思うのですが「需給の良さを入札で確認したから買い」ってことなんでしょうかねえ、イマイチわからんので誰か解説プリーズ。


・それはそれとして増やした分の買入は何時減らせるのでしょうかねえ

とまあそんな感じで月初に発生した調節部門緊張の夏(円安に振れるから執行部はウハウハで調節が苦労するのはそれはもう「頑張れ」でしょうなあ)というのは一段落したのですが、この間に中期3-5年と長期5-10年の輪番を拡大してしまっている訳ですよね。

でもって(そらまあ昨日の時点ではいじりようがないですが)昨日の長期輪番も普通に5000億円の増額後数値を打ち込んできている訳ですが、中期はここまで減らしてきたのを少し戻したというところだから良いとして、長期輪番って減らせないうちにまた11bpアタックで増額、とかやっていると段々買入のバランスがおかしくなってくるような気がするんで、この長期輪番をどうやってフロー落とせるのか、というのはちょっと気にしています(なんとなく落とせないまま段々バランスがおかしくなるような予感しかしませんけど)。


○MPMのブラックアウト前に打ち込むネタも枯渇しているということでしょうかねえ(ブルームバーグネタ)

昨日は何かこの記事に反応したというのがあったというお話も。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-18/OT0LGB6JIJUV01
日銀内でETF買い入れの持続可能性に懸念の声広がる−関係者
日高正裕、藤岡徹
2017年7月18日 09:30 JST

MPMのブラックアウト期間に入って出る某記者作品の「関係者ソース」記事で反応するの大概にしろよと思いますが、昨日は他のベンダーも転電していたのでそっちで反応したのかも知れず、何か良く分からん。

でもって記事ですが、

『日本銀行が年6兆円規模で行っている指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れの持続可能性について、日銀内から懸念の声が上がっている。ただ、喫緊の課題ではないとみられており、今週の金融政策決定会合で修正する可能性は低い。日銀の金融政策に詳しい複数の関係者への取材で明らかになった。』

『懸念が出ているのは、現在のペースでETFの買い入れを続けた場合、個別企業の役員保有株などを除く浮動株の大半を日銀が買い取ってしまい、株価を大きくゆがめかねないためだ。非公開情報のため、複数の関係者は匿名を条件に語った。』(以上上記URL先より)

「日銀の金融政策に詳しい複数の関係者への取材で明らかになった」って毎度の事なのですがまあナンジャソラですし、日銀内から懸念の声が云々って言いましても、

6月決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/k170616a.pdf

『(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員。
反対:佐藤委員、木内委員。

佐藤委員は、約6兆円のETF買入れは、市場の価格形成や日本銀行の財務健全性に及ぼす悪影響などを踏まえると過大であるとして反対した。なお、木内委員より、資産買入れ額を操作目標とする枠組みとしたうえで、長期国債保有残高が年間約 45 兆円、ETFが約1兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどの議案が提出され、反対多数で否決された。』(上記URLにある声明文2ページ脚注)

って佐藤さんと木内さんが思いっきり反対していますし、佐藤さんは「約6兆円のETF買入れは、市場の価格形成を踏まえると過大である」と言って反対していますし、だいたいからして買入ペースから考えたら(増資でもしない限り)浮動株減ってしまうってのは計算すれば分かる話でありまして、「非公開情報のため」ってそれまたナンジャソラというお話でして、何かこうネタを無理矢理ひねり出して盛りまくっているという風情で、大丈夫かブルームバーグと懸念してしまいますぞな。


・・・・・とは言いましてもこれはこれで意味を見出すとすれば、「今回の金融政策決定会合はそれだけネタをひねり出すのも難しい状態」すなわち「思いっきり無風」ということでもありまして、

まあしかしこのネタのオチはインターネット版ブルームバーグ日本版のトップページ
https://www.bloomberg.co.jp/
の最初の所に思いっきり当該記事があること(今朝の東京6時時点で確認したがその後は変わっているかも知れません)で、ただの観測記事を思いっきりデコレーションしたという作品をトップに置いておくとゆーのはさすがにどうかと思いますぞ。

確かにこの記事はヒット数は多いでしょうし(アタクシも思いっきりヒット数に貢献しちゃいましたが)、ヒットすれば「注目記事」ということになるのでしょうが、記事のクオリティとヒット数は比例する訳ではないのですから、ウケ狙いを連発するのは如何なものかという感じではございますが、ニュースワイヤーの皆様が時々この病に罹患しまして、暫くはニュースの反響で相場が動いたりして「影響力のあるベンダー」って扱いになるのですが、それをやり過ぎて段々相手にされなくなってきて、代替サービスに取って代わられる、というのを相場道20ウン年(ただし多いのは年数だけで修業度は極めて低い)の不肖このアタクシ見ておりますため、ブルームバーグさん大丈夫かよとは思ってしまいます(つーてもブルームバーグさんの場合はニュースワイヤーよりもその他の方がメインちゃあメインなのかも知れませんけど)。


○そういやEU規制絡みでこんなのもありますな

これは暫く前のネタですが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-23/ORZ1T86K50YW01
野村、最高1500万円のリサーチ料提示−手数料分別のEU新規制で
Stefania Spezzati
2017年6月23日 09:44 JST 更新日時 2017年6月23日 11:29 JST

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-30/OSC8YC6S972801
クレディ・アグリコルの最高級リサーチ1540万円から−野村とほぼ同額
Stefania Spezzati
2017年6月30日 12:15 JST

いわゆるソフトダラーの規制問題に絡んでの話なので、日本がこういう話になるかっていうとなる話ではないと思うのですが、リサーチ料金ウン百万円(つーかこれは千万の話だが)というのはそらまあ結構なのですが、何かお前それでも本職の何とかストかというようなツッコミどころのあるレポートとかがその金払って平気で出されたりすると金払って読むのかよという話になるような気がするんですけど、今ちょうどブルームバーグの一部ニュースのネタで記事の質という話をしたので思い出したので備忘メモ置いておきます。



○このネタをやりたいのだが読み込みがちゃんとできていない(予告編)

この前中銀の皆さんがやたらいろんな発言をしたEUの中銀フォーラムですが、

https://ecbforum.eu/
Welcome
ECB Forum on Central Banking

こちらの
https://ecbforum.eu/speakers-and-papers-2017
Speakers and papers

を見ると錚々たるメンバーがお話をしていて、逆さ絵おじさんも

https://www.ecbforum.eu/uploads/originals/2017/speakers/Speech/Bernanke%20ECB.pdf
WHEN GROWTH IS NOT ENOUGH
Ben S. Bernanke

ってのを講演していたりしまして、この講演とか他の幾つかの講演が面白そうな気がするのですが、どうも休みの日にまとめて読もうとか思いつつ暑さに負けるか冷房に負けて(それはただのぐうたらではないかというツッコミはしないように)ちゃんと読めていないのですが、色々な読み物のリンクがあるので夏枯れ時のネタに行けるかな、と思いまして予告編ということで貼って自分にプレッシャーを掛けておきます。

#今日は備忘録雑談大会になってしまいましたすいません






2017/07/18

お題「決定会合プレビュー雑談話になってしまうま」

おっちゃんの昔の梅雨のイメージはしとしとぴっちゃんしとぴっちゃんだったのですが、どうも近年の梅雨はイメージに合わない。

#それは「悲しく冷たい雨すだれ」ではないかというツッコミはしないでつかあさい


○内閣支持率が軒並みアレというメモ

発表順に。

時事通信。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017071400769&g=pol
安倍内閣支持29.9%に急落=2次以降最低、不支持48.6%−時事世論調査
(2017/07/14-15:03) 

『時事通信が7〜10日に実施した7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、最大の下げ幅で、初めて3割を切った。不支持率も同14.7ポイント増の48.6%で最高となった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題が響いた。東京都議選で稲田朋美防衛相が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねない失言をしたことなども影響したとみられる。』

『内閣を支持しない理由(複数回答)でも、「首相を信頼できない」が前月比8.7ポイント増の27.5%と急増。前月と今月だけで14.9ポイント増となった。次いで「期待が持てない」21.9%、「政策が駄目」15.8%の順。内閣を支持する理由(同)は、「他に適当な人がいない」14.1%、「リーダーシップがある」9.0%、「首相を信頼する」6.8%などとなった。』(以上上記URL先より)


共同通信(東京新聞記事より)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017071702000122.html
内閣支持率 最低の35% 不支持53%と逆転
2017年7月17日 朝刊

『共同通信社が十五、十六両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は続落し、前回六月より9・1ポイント減の35・8%となった。調査手法が異なるので単純比較はできないが、二〇一二年の第二次安倍政権発足後で最低を記録した。不支持率は10・0ポイント増で最も高い53・1%。支持と不支持が逆転した。安倍晋三首相の下での改憲に54・8%が反対し、賛成は32・6%だった。』

『安倍内閣の不支持理由として「首相が信頼できない」が前回比9・7ポイント増の51・6%で最多だった。首相が八月早々に行う方針の内閣改造に「期待する」は41・0%にとどまり、「期待しない」が57・0%に上った。』(以上上記URL先より)


ANN(テレビ朝日)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000105519.html
安倍内閣支持率がついに20%台に ANN世論調査 (2017/07/17 10:30)

『ANNの世論調査で、安倍内閣の支持率が29.2%に下落しました。「危険水域」と言われる3割を切ったのは、2012年の第2次安倍政権発足以来、初めてのことです。』(上記URL先より)

詳細はこちら。
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201707/index.html
2017年7月調査
【調査日】2017年7月15・16日(土・日曜日)【調査方法】電話調査(RDD方式)
【対象】全国18歳以上の男女1683人【有効回答率】63.0%


時事は対面調査なので遅めに出て調査は先々週、他は先週の調査ですが、低めに出る時事で計算した所謂「青木率」が51%とかになってビビりますが、他ので計算すると60台が出てくるのでまあ51は愛嬌としましても見事な落ちっぷり。

でまー思いっきり「首相が信頼できない」ってのが増えているのがアチャーという感じではあるのですが、大して説明もしないでゴリゴリってのは別に今に始まった事でもないとは思うのですけれども。


・・・・・・・・でもって政治の方が微妙な雰囲気になってきますと日銀も微妙なのに巻き込まれないようにするのが大事な訳でして、何せ「私の金融政策」ということで思いっきり安倍ちゃん肝いり(なお「私の金融政策」の場合は説明はしているけど説明になっていない説明でゴリゴリの巻ではありますな、総括検証で少しは反省した感が見受けられないこともないけど)になっているだけに、変なコケかたやレイムダック化してしまいますと、これがまたちょうど正副総裁の交代時期が来年の春なだけに実にヤヤコシイ展開になる可能性が浮上してまいりましたな。


○という訳で決定会合プレビュー雑談

てな訳で今週はジャパンの決定会合とECBが待っていまして、まあECBの方が注目されて日銀の方は華麗にスルーされる方向になるんでしょうがプレビュー雑談をば。


・政治が怪しげなのでとにかく目立たずに静かに迎えるのが吉ですよねー

今申し上げたような事情のある中なので、支持率回復の為にも経済政策投下→金融緩和圧力、という可能性も無い訳ではないのですけれども、そもそも論として追加金融緩和と言いましても、やることってマイナス金利の深堀くらいしかなくて、しかもそのマイナス金利を深堀した日には金融機関の収益を一段とスクイーズするだけの機能しか無くて、それやって景気が良くなるのかという話があります。それに最近はリフレ一派の皆さんもすっかり「財政ガー」という風に言い出すようになる程度には「これだけ金融緩和をやっても精々この程度しか効かない」というのがばれてしまって、「金融政策だけで2%の物価目標を達成できて、達成すれば世の中バラ色だというのに何だかんだと言って金融政策を出し渋る白川日銀はクソ」という言説が見事に自分に跳ね返っているのを誤魔化す為に財政戦線へと戦線拡大、という状態になっています。

とまあそんな状況を考えますと、とてもじゃないけどここで追加緩和とか出来ないですし、海外金融政策が出口方向の中で日銀は今の緩和政策を維持、という見せ方をしておけば相対的には円安に行きやすいですからそれで満足するしかないでしょうな。

#つまり金融政策では残り打つ手はそんなに無い、ということじゃろうな

いやまあこれで物価がもうちょっとホイホイ上がっているのならばダメ押し追加緩和みたいなのも出来るかも知れませんけれども、別に追加緩和を実施しても物価が急に上がるでもなく、つまり目に見えて即効性が出るような施策にもならん、という中で今まで「私の金融政策」のバックアップだった安倍ちゃんがうっかりコケるような事になると、後任が誰になるか次第によっては完全に梯子を外されて日銀政策が火だるまになるリスクが出てきた(黒田さんが安倍ちゃんの強力なバックアップで就任した、という経緯があるだけに別にその状況は今に始まった訳ではなくて顕在化しなかっただけではありますけど)という所。


つーことでこうなりますと、とにかく日銀としては地蔵となって今の政策を継続してじっと動かずという話になるでしょうし、2年で2%に程遠い中であまり威勢の良い進軍ラッパを吹かしていると「人柄が信頼できない」ってののとばっちりが黒田さんの所にも延焼してきちゃうともう話にならなくなってしまいますから、これはもうしばらく低姿勢で大人しくしていかないとアカンと思うのですがどうでしょうかねえ。


・物価見通しは下げて経済見通しは上げているのは「期待の形成に失敗している」のだが

でまあ物価見通しは元々17年度とか大本営発表もビックリの数字(今年度の数字が+1.4%なのだが年度の数字は期末値じゃなくて「期中平均値」なのでどこからどう見ても無理としか申し上げようがない)を出している訳で、ここの引き下げは必至ですけれども、まーここに関しては「もともと大本営発表の数字で全然行く訳無い」という世の中の認識だから別にさがったからと言いましても「はいはい引き下げ引き下げ」で話が終了する。

問題は「2%に到達する時期となっている2018年度」の所でして、4月に示した展望レポートの文言、『2018 年度までの物価見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤(2018 年度頃)になる可能性が高い6。その後は、2%程度で安定的に推移していくものと見込まれる。』(前回4月の展望レポートより)をどうするのか、(同時に+1.7%になっている2018年度見通しをどうするのか、というのもある)という部分ですよね。

一応(当てても意味がないですが)大予想をすると、物価の見通しは2017年度(当年度)は引き下げ、理由は携帯電話等の要因が見込みより大きくて足もとまでの物価推移がパッとしないから、となるものの、2018年度(2%達成するという触れ込みになっている時期)の数値は鉛筆なめなめスキームによって変わらないで中心値+1.7%を維持する、という事になるでしょう。この中心値については「5番目の人の数字」ですから、佐藤さんと木内さん(今週末が任期ですね〜)がどういう数字を出して来ても(算術平均値ではないから)そこはもう5番目の数字を(以下内務省検閲)。

まー理屈は直ぐに思い浮かぶのですが、おそらく成長率見通しは足元の堅調さを背景に上方修正してくると思いますので、そうなると足元の物価が弱めで推移していても、成長率見通しが上方修正→需給ギャップの拡大ペースも上方修正→今後の物価上昇力が高まるので上方修正して足元の下方修正と合わせてチャラ、という黄金のロジックが形成されるので何の問題も無く見通しは同じでしょう。


・・・・・・・・ただですね、冷静に考えてみれば「見通しよりも経済が若干強めに推移する」という中で「物価上昇力が見通しよりも弱めに推移する」というのは、それは声明文や展望レポートで毎度言っている『今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(4月展望レポートより)という点を踏まえると「需給ギャップの拡大に対して物価の伸びがぱっとしない、すなわち物価上昇のモメンタムが弱い」ということであり、何でそうなるかと言えばフィリップス曲線的な考え方を敷衍すればフィリップス曲線がフラット化しているのか、フィリップス曲線のY切片(=経済全体の中長期的なインフレ期待)が下方シフトしているか(もしくはその合わせ技)になります。

でもって
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1704b.pdf(4月展望レポート)
の80枚目にある『(図表41)フィリップス曲線』ってのを見ると特段顕著にここにきてフラット化している訳ではないようには見えるところでして、そうなりますとY切片の下方シフトの方が疑われます。

ってなってしまうとそれこそ追加緩和を何故しないのか、という話になると思うのですが、まーたぶん今申し上げたような骨格で展望レポートが出てくるとして、どういう答えをしてくるのかなあというのはだいぶ楽しみだったりします。

物凄く(アタクシ的に)真面目に言えば、ここからの追加緩和手段が精々付利下げくらいしかなくて(ETFはさすがに有り得んというか止めろよという状況)、その付利下げっていうのは金融市場経由で為替に効果があるかもしれないですが、マイナス金利政策実施しても結局のところ預金金利がマイナスに出来ない、というのが判明した以上、マイナス金利の深堀は円安メリットよりも金融機関収益のマイナスの方がでかい、というプロコン評価によって追加緩和は行いません、という風に堂々と言って欲しい所ではあるのですが、「打つ手なし」と思われるのもまずいから出来ないという事になると思います。

ちなみに、次に何か追加緩和をやりたければ、色々とハードルが高すぎて現実に落とし込むのはムツカシイのですが、もう「米国債(場合によってはドイツ国債も)の購入」しか無いと思いますし、その方が為替に一発で効くし、米国なんか特にテーパータントラムみたいなのを警戒しているんですからそらもう出口政策がはかどって飯が美味いという事になる(冷静に考えれば迷惑だが)のでお勧めしたい所ではあります(なお実務上はかなり無理)。


まーいずれにせよ今回も「上手くいっている」という事を言いながら会見では愚にもつかない出口政策(日本の)話で時間を稼ぎまくって結局ゴミみたいな会見になる、という所までは想像できました。まーここで安倍ちゃんが盤石だったら次の執行部の事を考えて「YCC政策になってからの推移をまたまた総括検証」というのが絶妙の一手になる可能性はあったのですが、安倍ちゃんがこの状態で総括検証パート2とかやると後ろから安倍ちゃんを撃ちにいくような感が出るのでさすがにちょっと出来ないな、とは思います。


○雑談ばかりでしたので市場メモだけ

ロイターさん
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1K52AU
Markets | 2017年 07月 14日 15:20 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利0.080%に小幅上昇

『<15:09> 国債先物は横ばい、長期金利0.080%に小幅上昇

長期国債先物は横ばい。前日の海外市場で米債が下落した流れを引き継いで売りが優勢だったが、後場は日銀オペ結果で残存10年超25年以下の利回り格差の水準がしっかりだったことが材料視されて買い戻しが入った。現物債は午前の取引で金利に上昇圧力がかかるゾーンが目立ったが、先物が切り返すと長いゾーンを中心に押し目買いが入った。金利上昇は限定的で底堅さをみせた。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比横ばいの150円03銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp上昇の0.080%。』(上記URL先より)

ということですが、同じ記事に

『<11:35> 短国買い入れ結果、小じっかり

日銀が発表した国庫短期証券(TB)買い入れ結果は、買入予定額7500億円に対して、応札額は1兆9981億円、落札額は7502億円。案分利回り格差はマイナス0.003%、平均落札利回り格差はマイナス0.002%。市場では、オペ結果について「利回り格差の水準から判断して小じっかりという結果だ。在庫は軽めになっているもよう」(国内金融機関)との声が出ていた。』(上記URL先より)

とありますように、短国買入は順当に7500億円で実施されましたが、特段問題なく終了したようでございますので、その前の日の3Mが▲10になっていたのも実力実力ということで、まあ月1兆ペースだったら残高まだ落としていけるんじゃないですかねえ(てきとう)。








2017/07/14

お題「20年入札で止まりましたかね/海外金融政策ニュース雑談&ブレイナード講演」

ほほう。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20170713-OYT1T50065.html
物価上昇率、日銀下方修正へ…「2%」達成遠く
2017年07月13日 15時10分

「マネタリーベースを2年で2倍にすると2%物価目標達成」という馬鹿リフレ理論をすいませんでしたって謝って置物一派が焼き土下座すれば話は簡単なんですけどねぇ。

○市場世間話

・20年確りでフラットニングとな

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1K42J8
Markets | 2017年 07月 13日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利0.080%に低下

『 <13:51> 超長期ゾーン強含み、20年債入札無難で金利低下に弾み

超長期ゾーンが強含み。20年債利回りは前営業日比2bp低い0.605%、30年債利回りは同3bp低い0.860%、40年債利回りは同3bp低い1.055%に低下している。市場では「20年債入札を無難にこなしたことで、金利の低下に弾みがついた。ショートカバーに加え、入札で思うように買えなかった市場参加者が動いているもよう」(国内証券)とみている。超長期債利回りの低下は、長期ゾーンにも波及している。』(上記URL先より)

入札自体は上で切った感じじゃなかったと思うのですが、30年とか20年とか投資家買いでもあったのか強くなりまして昨日は入札あったけどブルフラットするというお洒落な展開になりましたな。まあここもとは超長期弱めに推移していましたので、新発への入替みたいなのもあったんでしょうかねえとかゆー感じなのか、それともブレイナードにイエレンの発言を受けて米国の利上げに関するビューを変えてきて買っているのかというのがよー分からんですが(他人の懐具合は分からんですばい)、まあここもとヘロヘロだった超長期が確りしてくれたので、とりあえず月初からの金利上昇0.10%チャレンジシリーズは一旦終了という感じですかねえ、良く分からんけど。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170713.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 3兆4,042億円
(2)募入決定額 8,126億円
(3)募入最低価格 99円80銭(募入最高利回り)(0.611%)
(4)募入最低価格における案分比率 34.8784%
(5)募入平均価格 99円88銭(募入平均利回り)(0.606%)

つーことでそんなに上で切られたという感じじゃないと思うのですが、まあ昨日の場合は朝からいきなり20年2強からスタートするとか威勢の良い展開でしたから、踏みの踏ん切りがつかなかった向きはあったのかも知れませんな。


てな訳でとりあえず月初からの金利上昇10年0.10%アタック祭り、というほど仕掛けているのではなくて単に重くて売られただけなので、ズルズル戦線後退的な金利上昇という風情でしたが、10年は500億円増額砲を撃ちつつマジノ線要塞が火を噴くぜ!と指値を見えたら指値の方は見せ玉だけで済んだし、マジノ線の防御範囲外にある5年と20年は事前調整が入ったから入札が確りして、でも業者主体の入札っぽかった5年は機動防御を入れて止めて、20年は投資家が買いに来て勝手に止まった、という事で今回は無事に撃退ということで宜しいのですかね、よー知らんけど。

ただまあこれでホイホイ金利が戻ってくれるのかというと米国が利上げできませんヒャッハーという話にでもならない限りは全般的に海外の金利が下がってジャパンの金利も盛大に下がるという話にはならんでしょうから(なお物価見通しが下がってヤケクソで日銀が追加緩和したら話は別だがまだヤケを起こす時間帯ではないと思う)、日銀としては「海外金利が上昇する中で日本は金利上昇圧力を押さえて行けば円安効果が出てウハウハですよ」というスキームに則ってせっせと防御をするという事になりますが、その間に(短国買入以外を)減らしにくくなる上に金利が上がったら買入拡大ですから、今後どういうバランスになっていくのか、というのは面白そう(とか他人事のように言っている場合じゃないのだが)ですな。



・3M短国も▲10bpに低下とな

ほほう。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170713.htm

(3)募入最低価格 100円02銭5厘5毛(募入最高利回り)(-0.1033%)
(4)募入最低価格における案分比率 62.6760%
(5)募入平均価格 100円02銭6厘7毛(募入平均利回り)(-0.1082%)

つーことで今回の3Mは▲10レベルに金利が低下しておりまして、日銀短国買入の減額ペースを落としたのが効いてるのですかねえという風情ですが、来週火曜日に1年の入札があるという日程の組み方になっているので、今週分の短国買入は普通に今日打ってくる筈で、今月の通常ベースの7500億円に普通に減らしてくると思われる(来週は1年入札の後になるので増やしてくる)のですけど普通に捌けるもんなんですかね。


○欧州ネタ面白そうです

http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-bonds-idJPKBN19Y1O8
Business | 2017年 07月 14日 04:09 JST
ECB、9月に資産買い入れの段階的縮小を示唆へ=WSJ

『[フランクフルト 13日 ロイター] - 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、欧州中央銀行(ECB)が来年から資産買い入れを段階的に縮小する方針を9月7日の理事会で示唆する公算が大きいと報じた。金融市場では、ECBが年末に当面の期限を迎える資産買い入れの今後について、9月に決めるとの見方が支配的になっているが、単発の縮小なのか、プログラムの正式なテーパリング(段階的縮小)になるかを巡ってアナリストの意見が割れている。』(上記URL先より)

つーことでまあ今年に入ってから「80×6を60×9にしたので引き締めではない」というインチキ理論をスタートにして徐々に緩和規模の縮小という話になった訳ですが、まあこちらに関しても色々と読み込みを進めないといかんですな。

しかし9月の日程だとECBってFRBの2週間前に決定会合がありまして、FRBが9月に資産買入縮小のアナウンスをする前に先んじて示唆しちゃうというのは考えようによってはおぬしも中々の悪よのうという風情で、FRBの資産買入縮小が思いの他影響しちゃうと自分の所で買入縮小の話をしにくくなるので、とりあえず先に話をしておいて(どうせ実際に縮小を開始するのは来年ですので)FRBの影響が思いの他大きかったら途中で「さっきの無し」とすれば良いですし、まあ平常運転で行っているようならそのまま実行という作戦に出れば良いとゆー感じでしょうかね。

あと別件でこんなのも。
http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-weidmann-idJPKBN19Y0VI
Business | 2017年 07月 13日 18:40 JST
ECB、グリーンボンドを選好すべきではない=独連銀総裁

『フランクフルト 13日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁は13日、クリーン・エネルギーの促進は金融政策の目的ではないとし、ECBは2兆3000億ユーロ規模の債券購入プログラムにおいて、温暖化や環境対策などへの資金を調達するための債券である「グリーンボンド」を選好するべきではない、との見方を示した。ワイトマン氏は、グリーンボンドの市場規模は相対的に小さいため、多額の投資を行うと、必然的に市場中立的な買い入れを行うという原則を破ることになると指摘。金融政策の効果の波及も国によって異なってくるとした。また「ユーロシステムに委託された権限は、価格安定性を維持するためのものだ。この価格安定性の維持能力を守るために、金融政策は他の目的を持つ政策によって過度な負担をかけられるべきではない」と述べた。』(上記URL先より)

ということで、まあこれに関しては普通に買入を行ったらグリーンボンドが打ち込まれた、というような話だったら別に問題ないけど、グリーンボンドだけ買入をするとかいうのはまあ有り得んわなと思います。



○米国関連である

・イエレン議長議会証言パート2

http://jp.reuters.com/article/yellen-fed-trump-idJPKBN19Y2E8
Business | 2017年 07月 14日 02:59 JST
トランプ米政権が目指す成長率3%達成、困難な公算=FRB議長

『[ワシントン 13日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は13日、上院銀行委員会で行った証言で、トランプ大統領が示した経済成長率3%達成の目標は困難になる可能性があるとの見解を示した。』

『イエレン議長は前日に下院金融サービス委員会で行った証言で 米経済は緩やかな利上げとバランスシート縮小を吸収できるほど十分健全だとの認識を表明。この日の証言はこれをほぼ踏襲するものだった。』(上記URL先より)

てな話はしているようですが、基本的に前日とトーンは変わっていないようなので、それはつまり今回のFOMCで資産買入縮小開始、とはならないという事だとすれば、まあ普通に考えて9月に資産買入の縮小開始をアナウンスして10月からスタート、様子を見ながら特に問題無ければ12月に利上げ、というコースになるんでしょうなあ、という感じなんでしょうな。

もし7月会合で資産買入縮小着手したいのであれば前日の反応を見てもう少しタカ的な話をおっぱじめてもおかしくは無かったので、まあスケジュールとしてはそんな感じなんでしょうな。7月FOMCで資産買入縮小着手というのもあり得ると思ってはいた(そうすると年4回利上げが可能)のですが、そこまでは特攻してこないということ(とは言っても別に9月に利上げと資産買入縮小の同時攻撃もあり得る)でしょうなあと。


・ブレイナード理事講演ネタの続き

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20170711a.htm
July 11, 2017
Cross-Border Spillovers of Balance Sheet Normalization
Governor Lael Brainard
At "Normalizing Central Banks' Balance Sheets: What Is the New Normal?" a conference sponsored by Columbia University’s School of International and Public Affairs and the Federal Reserve Bank of New York, New York, New York

実は同じ題名で昨晩も講演しているようなのですが、読んだのが11日のバージョンなので11日のほうで勘弁してつかあさい。


・資産買入縮小と短期政策金利引き上げの影響に関しての謎考察

正直どうしてそういう理論になるのか謎な話が結構延々と続いているという講演なのですよこれが。一昨日ネタにした所から再掲します。

『Before discussing the cross-border effects of normalization, it is worth noting that the two tools for removing accommodation--raising policy rates and reducing central bank balance sheets--appear to affect domestic output and inflation in a qualitatively similar way. This means that central banks can substitute between raising the policy rate and shrinking the balance sheet to remove accommodation, just as both were used to support the recovery following the Great Recession.』

定性的には資産買入縮小と利上げは同じような引き締め効果が生じるとのことですが・・・・・・・・・・

『Insofar as a range of approaches is likely to be consistent with achieving a central bank's domestic objectives, the choice of normalization strategy may be influenced by other considerations, including the ease of implementing and communicating policy changes, or the desire to minimize possible credit market distortions associated with the balance sheet.』

『In the case of the Federal Reserve, the Federal Open Market Committee (FOMC) decided to delay balance sheet normalization until the federal funds rate had reached a high enough level to enable it to be cut materially if economic conditions deteriorate, thus guarding against the risk of returning to the effective lower bound (ELB) in an environment with a historically low neutral interest rate.3 The greater familiarity and past experience with the federal funds rate also weighed in favor of this instrument initially.』

『Separately, for those central banks that, unlike the Federal Reserve, moved to negative interest rates, there may be special considerations associated with raising policy rates back into positive territory.』

バランスシート縮小にあたってはどのような拡大をしたかによっても影響が違ってくるのですが、米国の場合は利上げをする方を優先した理由はゼロ金利制約を意識して金利政策の糊代を作る方を優先したからであって、他の中銀(たぶんECBを意識)のように金利をマイナスにぶっこんでいる所はまた別の考え方もあるでしょう、ということですが。

『One question that naturally arises is whether the major central banks' normalization plans may have material implications for cross-border spillovers--an important issue that until very recently had received scant attention. This question is a natural extension of the literature examining the cross-border spillovers of the unconventional policy actions taken by the major central banks to provide accommodation.』

でもってここで「cross-border spillovers」が出てくるのですがナンジャラホイと思いますと、

『Although this literature suggests there are good reasons to expect broadly similar cross-border spillovers from tightening through policy rates as through balance sheet runoff, the effects may not be exactly equivalent.』

短期金利の引き上げとバランスシートの縮小は海外への政策のスピルオーバー効果が違う、というお話をおっぱじめまして、

『The balance sheet might affect certain aspects of the economy and financial markets differently than the short-term rate due to the fact that the balance sheet more directly affects term premiums on longer-term securities, while the short-term rate more directly affects money market rates. As a result, similar to the domestic effects, while the international spillovers of conventional and unconventional monetary policy may operate broadly similarly, the relative magnitude of the different channels may be sufficiently different that, on net, the two policy strategies have distinct effects.』

資産買入はタームプレミアムに影響を与え、短期政策金利の変更はモロに金利に効く話なのでそのスピルオーバー効果は違う、だそうです。

『For example, as will be discussed at greater length shortly, the two strategies may have very different implications for the exchange rate.』

為替への効果が違うとな。

『Moreover, as was evident with the European Central Bank's (ECB) asset purchases in late 2014 and early 2015, and as we have seen again in reverse in recent weeks, in addition to the standard demand and exchange rate channels, expected or actual asset purchases may have spillovers to foreign financial conditions--by lowering term premiums and the associated longer-term foreign bond yields--that are greater than conventional monetary policy.』

ECBが資産買入をやっていた時は為替に影響が小さかったがマイナス金利ぶっこんだら為替やら海外の長期金利のタームプレミアムやらに思いっきり効いたぞな、という説明なのだが、それはぶち込んだ時の状況が違うから、「資産買入」「金利政策」の差によるものとは一概には言えないんじゃネーノと思いっきり思うのですが、そういう前提でお話が進むのだ。

『To explore possible differences, it is useful to compare two different approaches to policy normalization, each of which is designed to have identical effects on aggregate domestic activity and thus, at least in the long run, on inflation. At one extreme, a central bank could opt to tighten primarily through conventional policy hikes, while maintaining the balance sheet by reinvesting the proceeds of maturing assets. At the other extreme, a central bank could rely primarily on reducing the balance sheet, while keeping policy rates unchanged in the near term.』

『The question is whether there are circumstances in which the choice of normalization strategies, which are similarly effective in achieving domestic mandates, might matter for the global economy. Where the two approaches have entirely equivalent effects, the central bank could freely substitute between them without changing the composition of home demand, and net exports, the exchange rate, and foreign output would also be unaffected.』

『Conversely, under different assumptions about the transmission channels of monetary policy, alternative approaches to normalization can have quite different implications for foreign economies. Most prominently, the exchange rate may be more sensitive to the path of short term rates than to balance sheet adjustments, as some research suggests.4 Although several papers using an event study approach find on balance little disparity in the exchange rate sensitivity to short-term compared to long-term interest rates, this lack of empirical consensus may simply reflect the difficulty of disentangling changes in short-term and longer-term interest rates, which are highly correlated.5』

めんどいので3パラほどまとめて引用しちゃいましたが、どうも「短期金利操作は資産買入政策よりも為替市場に与える影響が大きく、同じように国内に効くような程度の変化を行った場合、短期金利操作の方が海外へのスピルオーバー効果が大きくなる」というのが話の前提にあって、この先には1960年代のオペレーションツイストの話まで出てくるのだが、何かそうか???と眉に唾をつけて読みたくなる話が以下延々と続くのである。

要は、「資産買入の縮小の方が為替には効かない」というのがこの話の前提になっているので、恐らくそういう意味ではブレイナードさんとしては緩和縮小するのに短期金利上げて為替に効いてそっちから米国経済に悪影響を受ける位なら資産買入縮小の方がエエンデネエノという事を示唆したいのだろうと思うのですが、そもそもその前提が怪しいように思える。

まあ買入の規模によってフロー効果とストック効果の出方って違ってくるようにも思える(経験則による個人の感想です)ので米国がどうなるかというのもアタクシ良く分かっていない面はありますけど。


・盛大に途中の論述を飛ばしまして金融政策に関する部分

このあと5ページにわたってああでもないこうでもないという話があるのですが正直謎論考なので飛ばしまして最後の所。

『Let me conclude by returning to the policy choices facing central banks. The Federal Reserve chose to remove accommodation initially through increases in the federal funds rate. In light of recent policy moves, I consider normalization of the federal funds rate to be well under way. If the data continue to confirm a strong labor market and firming economic activity, I believe it would be appropriate soon to commence the gradual and predictable process of allowing the balance sheet to run off.』

つーことで利上げよりもバランスシートの縮小を優先という感じで、そちらはとっととやれというお話。

『Once that process begins, I will want to assess the inflation process closely before making a determination on further adjustments to the federal funds rate in light of the recent softness in core PCE (personal consumption expenditures) inflation.』

この辺がハト派と読まれた所で、まあこれは利上げ慎重派ですわ。

『In my view, the neutral level of the federal funds rate is likely to remain close to zero in real terms over the medium term. If that is the case, we would not have much more additional work to do on moving to a neutral stance. I will want to monitor inflation developments carefully, and to move cautiously on further increases in the federal funds rate, so as to help guide inflation back up around our symmetric target.』

でもって今の実質自然利子率がゼロ近辺でとかいう話もして慎重に利上げを行うというのですからハト派。

『Meanwhile, in recent days, we have begun to hear acknowledgement from other major central banks that they too are seeing conditions that suggest policy normalization could be on the table before too long, against the backdrop of a brighter global outlook. As I just discussed, the pace and timing of how central banks around the world proceed with normalization, and the importance of balance sheet policy relative to changes in short term rates in these normalization plans, could have important implications for exchange rates and financial conditions globally.』

他国も正常化の話していて、短期金利の相対的な変化が為替市場やグローバルな金融環境にどう影響与えるのかも注意というようなお話で締めています。まあハト派というか慎重派って感じでしょうな。










2017/07/13

お題「中期輪番増額とな/イエレン議会証言」

ブレイナード理事の講演ネタをと思ったらイエレン議長の議会証言で市場が反応しやがったのでそちらが先になるのか。

○中期輪番増額とな

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170712.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 2,800 2017年7月14日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,300 2017年7月14日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,000 2017年7月14日

つーことで中期長期だったのは予告通りなのですが、今回は3-5の輪番が3000→3300に増額となりまして、5年入札は堅調だったけれども別にその後伸びない、という状況になっていて、まー良く分からんですけど投資家がどどーんと買ったという感じでもなく推移しているって感じでしょうから、そうなりますと輪番増やして安心させておかないと投げが入るとトマランチ会長になるから入れました、とまあそんなところでしょうか、よー知らんけど。

つーことでせっせと減額していた中期輪番もこの辺の水準で減額できなくなりましたなあとなりまして、短国くらいしか減らせるもの無いじゃんとなってしまいましたなナムナム(超長期減らせない事は無いのかもしれませんけど、アタクシ思うに先週金曜の20年の応札激減とか多分一時的な要因で激減しているだけで本質的には20年絡みの輪番ってそう簡単に減らせないような気がするので、中期輪番減らせないとなると減らせる年限が無くなってしまったと思う(金利が下がれば別ですが)、なお根拠はアタクシの山勘なので全然根拠は無い)。

まー今日の20年入札を前に米国が金利さくっと低下して戻ってきていますし、何か昨日は最後超長期しっかり目になってたようですので、とりあえずここからバカスカ売り込んでいくというのは防止できたという感じですが、そうは言いましても長期輪番がまさにそうですが、大して金利が戻らないという中では増額したものを減額しにくいというのがあって、金利が下がった所で増やした分減らせないままで推移した後にまた金利が上がってくる、という展開になると買入ペースがジリジリ加速していくことになって際限なくなってしまうのと、いずれ物価目標を達成するなり達成した事にするなり、という話になって行くときには金利の調整をしないといけなくて、その時に向けてドンドンフローの買入が拡大するというのは調整時のショックを大きくするから、こんな所でドンドン買入が増えてくるのも後々マズーではあるんですよね。

とは言いましても、そもそもそういう設計にしたのは執行部なので、調節部隊としてはその設計通りにオペやっていきますよという事で、まあできるだけ買入を増やさないようにしながら金利止めていくしかなさそうですな〜。

#5年の小幅マイナスってのは投資家不在市場になるので止めるの結構ムツカシイのだが10年を10位に止めるためには5年が0〜5bpとかにする訳に行かないのが辛いところ


なお今日入札の20年新発の補完供給。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170712.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)1,077 1,077 -1.500 -2.057

(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、20年利付国債161回です。



念のため毎度のロイターさん貼っておく(ただの自分用備忘)
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1K326V
Markets | 2017年 07月 12日 15:14 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばいの0.090%

『 <15:10> 国債先物が続伸で引け、長期金利は横ばいの0.090%

国債先物中心限月9月限は前日比10銭高の149円88銭と続伸して引けた。前日の海外市場で、ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事のハト派発言を受けて早期米利上げ観測が後退し、米債が買われた流れを引き継いだ。日銀は午前に実施した3本の国債買い入れのうち、「残存3年超5年以下」の買入額を3300億円とし、前回から300億円の増額に踏み切った。7日に続いて金利上昇抑制策を打ち出したことで、午後の市場では買い安心感が広がり、上げ幅を広げた。現物市場では超長期ゾーンを中心に利回りが低下。13日の20年債入札が無難な結果になるとの見方から買いが入った。また、相対的に高い利回りが残されている超長期ゾーンに国内勢から押し目買いが入ったとの観測も出ていた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずの0.090%。』(上記URL先より)

昨日は中期の輪番増額でホッと一息したものの長期の輪番がパッとしなくて、お助けが入った中期や先物は反応したものの10年カレントはあまり反応せず、ということで、お助けの入ったところはその時にお助けに反応しますが、じゃあその後ヒャッハーと強くなるかというと中々ならんという推移を示していますが、イエレン議会証言でとりあえず米国様が反応して下さったようですので、そいつを受けまして迎える20年入札がどうなるか(たぶん落札結果よりもその後に投資家が登場するかのほうが大事)というお話でしょうかねえ。


○イエレン議会証言だがそこまでハト派ヒャッハーとなる話なのかというのは謎

つーかね、ついついFF先物とかを見て織り込み度合いがどうのこうのとか考えてしまうのだが、たぶんFF先物と長期金利まで含めたコンセンサスとかセンチメントってのは微妙に違うんだと思います。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20170712a.htm
July 12, 2017
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Chair Janet L. Yellen
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.

『Chairman Hensarling, Ranking Member Waters, and other members of the Committee, I am pleased to present the Federal Reserve's semiannual Monetary Policy Report to the Congress. In my remarks today I will briefly discuss the current economic situation and outlook before turning to monetary policy.』

ということで、この時に出されるマネタリーレポートってのは、

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/mpr_default.htm

Current Report: July 7, 2017
って所にあって、HTMLってのがサマリー、PDFが全文です

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/2017-07-mpr-summary.htm(サマリー)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/20170707_mprfullreport.pdf(全文は重いので注意)

でもってサマリーの方のネタは飛ばしますけれども、基本的に金融政策運営や経済認識についてはこの前のFOMCと同じような話をしている(当たり前だが)という感じではあります。

でもって証言ですけれども、手抜きで金融政策の所とバランスシートの所だけ。

『Monetary Policy』って所から。

『I will now turn to monetary policy. The FOMC seeks to foster maximum employment and price stability, as required by law. Over the first half of 2017, the Committee continued to gradually reduce the amount of monetary policy accommodation. Specifically, the FOMC raised the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point at both its March and June meetings, bringing the target to a range of 1 to 1-1/4 percent. In doing so, the Committee recognized the considerable progress the economy had made--and is expected to continue to make--toward our mandated objectives.』

ここは普通の話しかしていませんね。

『The Committee continues to expect that the evolution of the economy will warrant gradual increases in the federal funds rate over time to achieve and maintain maximum employment and stable prices. That expectation is based on our view that the federal funds rate remains somewhat below its neutral level--that is, the level of the federal funds rate that is neither expansionary nor contractionary and keeps the economy operating on an even keel.』

でもってこの次が市場の反応した所だと思われるのですが・・・・・・・・・・・・・

『Because the neutral rate is currently quite low by historical standards, the federal funds rate would not have to rise all that much further to get to a neutral policy stance.』

この一文を取るとヒャッハーなのかもしれませんが、前後の文脈は従来から説明しているのと同じで、ターミナルレートに関して「金融危機以前の水準とは違う」的な話をしている従来の説明と同じ文脈で話をしているのであって、そんなに従来と変わった認識を示しているようには読めないのですけれどもどうでしょうか。

『But because we also anticipate that the factors that are currently holding down the neutral rate will diminish somewhat over time, additional gradual rate hikes are likely to be appropriate over the next few years to sustain the economic expansion and return inflation to our 2 percent goal.』

『Even so, the Committee continues to anticipate that the longer-run neutral level of the federal funds rate is likely to remain below levels that prevailed in previous decades.』

以前より低い、というのは先程申し上げたように「below levels that prevailed in previous decades」なのであって、今この時点でターミナルレートが下がったとかいう話ではないので、市場が妙に反応しているのか、それともタカ派前のめりを相当警戒していたのでその反動だったのか、というようなお話ではないかと思うの。


『As I noted earlier, the economic outlook is always subject to considerable uncertainty, and monetary policy is not on a preset course. FOMC participants will adjust their assessments of the appropriate path for the federal funds rate in response to changes to their economic outlooks and to their judgments of the associated risks as informed by incoming data.』

これも平常運転。

『In this regard, as we noted in the FOMC statement last month, inflation continues to run below our 2 percent objective and has declined recently; the Committee will be monitoring inflation developments closely in the months ahead.』

まあここを慎重姿勢と言えば言えなくはないが別に物価を見ないとは昔からいってない。

『In evaluating the stance of monetary policy, the FOMC routinely consults monetary policy rules that connect prescriptions for the policy rate with variables associated with our mandated objectives. However, such prescriptions cannot be applied in a mechanical way; their use requires careful judgments about the choice and measurement of the inputs into these rules, as well as the implications of the many considerations these rules do not take into account. I would like to note the discussion of simple monetary policy rules and their role in the Federal Reserve's policy process that appears in our current Monetary Policy Report.』

ということで、テイラールール的なケースの考察云々みたいなのがさっきのレポートの方にあるみたいだが、それは読めていないのでパス。


・・・・・・・・ということで金融政策のパートは(質疑応答で何を言ったかはこっちには出ないから何ともですが)、いつも通りの話をしているだけのように思えまして、そらまあ確かに利上げ予告ホームランとかバランスシート削減予告ホームランとかにはなっていないので一安心、というのは分かりますが、そこまでヒャッハーヒャッハーとなるものなのかはちょいと不可解な感じはしますがどうでしょうかねえ。


次は『Balance Sheet Normalization』

『Let me now turn to our balance sheet. Last month the FOMC augmented its Policy Normalization Principles and Plans by providing additional details on the process that we will follow in normalizing the size of our balance sheet.』

ということで。

『The Committee intends to gradually reduce the Federal Reserve's securities holdings by decreasing its reinvestment of the principal payments it receives from the securities held in the System Open Market Account. Specifically, such payments will be reinvested only to the extent that they exceed gradually rising caps. Initially, these caps will be set at relatively low levels to limit the volume of securities that private investors will have to absorb. The Committee currently expects that, provided the economy evolves broadly as anticipated, it will likely begin to implement the program this year.』

相変わらず「this year」であってlaterとは言ってないがsoonとも言わない。

『Once we start to reduce our reinvestments, our securities holdings will gradually decline, as will the supply of reserve balances in the banking system. The longer-run normal level of reserve balances will depend on a number of as-yet-unknown factors, including the banking system's future demand for reserves and the Committee's future decisions about how to implement monetary policy most efficiently and effectively.』

『The Committee currently anticipates reducing the quantity of reserve balances to a level that is appreciably below recent levels but larger than before the financial crisis.』

これまた従来通り。

『Finally, the Committee affirmed in June that changing the target range for the federal funds rate is our primary means of adjusting the stance of monetary policy. In other words, we do not intend to use the balance sheet as an active tool for monetary policy in normal times. However, the Committee would be prepared to resume reinvestments if a material deterioration in the economic outlook were to warrant a sizable reduction in the federal funds rate. More generally, the Committee would be prepared to use its full range of tools, including altering the size and composition of its balance sheet, if future economic conditions were to warrant a more accommodative monetary policy than can be achieved solely by reducing the federal funds rate.』

金利がメインツールで今後は金利政策ですが、ショックが起きた時に資産買入政策を実施するのを排除する訳ではありませんよ、という話をしているもの同様で、正直この議会証言単体だとそこまでヒャッハーとなる必要があるのかというのは謎としか申し上げようがないのだが、まあ米国市場は米国市場で場味が通常通りであっても反応する、という程度には警戒していたんでしょうかねえ、よーわからんけど(個人の感想です)。

ということで本日の所は勘弁。







2017/07/12

お題「市場メモとブレイナード講演ネタの導入メモだけです(汗)」

お、おぅ・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-russia-emails-idJPKBN19W249
World | 2017年 07月 12日 01:58 JST
トランプ氏長男、メール公表 露検察がクリントン氏の情報提供か

『トランプ・ジュニア氏はツイッターで、パブリシストのロブ・ゴールドストーン氏が同氏に充てた2016年6月3日付のメールを公表。ゴールドストーン氏は同メールで「ロシア政府のトップ検事が公文書に加え、クリントン氏に不利となる情報および同氏のロシアとの対応に関する情報をトランプ陣営に提供することを申し出た。あなたのお父さんに非常に役立つだろう」と指摘。さらに「これが高官レベルの機密情報であることは明確だが、ロシアの一部と同政府のトランプ氏に対する支持の表れといえる」と述べている。』(上記URL先より)


○市場世間話メモ

・とりあえず5年入札通過しましたな

ということでいつものようにロイター記事ばっかですいませんが(ロイターの回し者ではありません)。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1K22A9
Markets | 2017年 07月 11日 15:11 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反発で引け、長期金利0.095%に小幅上昇

『<15:07> 国債先物が小反発で引け、長期金利0.095%に小幅上昇

国債先物中心限月9月限は前日比1銭高の149円78銭と小反発して引けた。前日の海外市場で欧米金利上昇の流れにいったん歯止めがかかったことに加えて、事前に警戒感があった5年債入札結果が順調だったことを受け、買い安心感が広がった。日銀が7日に買い入れ増額や指し値オペを通じて金利上昇抑制姿勢を示したことで、利回り上昇余地が狭まったとの思惑が市場に浮上。「一方向に売れなくなっている」(国内金融機関)との声が聞かれた。もっとも、12日のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言や13日の20年債入札と続くイベントを前に上値は限られた。』(上記URL先より、以下同じ)

別にコメントにいちゃもんつける訳ではないのですが(と先に断わっておく)、前日の時点では中期の指値オペがあるのかどうかとか盛り上がっていた市場ちゃんが5年の入札を無事に通過した途端に「一方向に売れなくなっている」というコメントになってしまうというこの豹変ぶりが実に味わいが深いですな。

『現物市場は、入札をこなした中期ゾーンは、12日と14日に予定されている日銀買い入れも意識されて底堅く推移。2年債利回りは一時同0.5bp低いマイナス0.105%、5年債利回りは同変わらずのマイナス0.035%を付けた。一方、長期・超長期ゾーンは20年債入札を控えて調整が入った。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.095%に小幅上昇した。』

てな訳で5年入札ですが、

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20170711.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額 8兆7,406億円
(2)募入決定額 1兆8,025億円
(3)募入最低価格 100円66銭(募入最高利回り)(-0.033%)
(4)募入最低価格における案分比率 81.8127%
(5)募入平均価格 100円67銭(募入平均利回り)(-0.035%)

先程のロイター記事の入札前の見通しだと足切64銭で、ベンダー予想だと64銭とか65銭とかの足切という事になっておりましたが足切は66銭っつーことで堅調な結果という話になって、その後は確りという展開(つーても別に引け強な訳でもないが)になりまして、5年0%に行くまでにはまだまだ距離がありそうな結果と相成りました。

まー何ですな、追加緩和の可能性って中々無いですが、そうは言いましても物価2%どころか全然こうホイホイと物価が上がる感じもしない中では今の政策を地蔵のように継続するしか無い、という残念な建付けになっておりますので、そうなりますと10年の金利は10bpの所で当面止めてくるでしょうからバランスから言って5年の0%以上とか全然オッケーとなるでしょうし、プラス金利になれば買える人も増えるでしょうし、まかり間違って10年の金利レンジがプラマイ20とかになった日には長い所は金利リスク高くなるからやっぱり中期じゃんという事になるでしょうし、とか何とかで5年プラス金利には盛大に需要が見えているだけにその前にいったん止まりましたという所ですか。

あと余談ですが、追加緩和と言いましても既に今の政策方法によって物価上昇が加速するかと言えば加速しないのでありまして、そうであれば「物価が上がらないから追加緩和」というのは実は無駄うちにも程がある訳で、もし追加緩和をするならばその逆で、「物価2%達成が見えてくる所で敢えて追加緩和」というのをを実施して「ほーら金融緩和が効いているでしょう」という自作自演を行うという福井俊彦スキームになると思うの。

でもって今の政策建付けで物価上昇を加速させる方法って円安誘導しか無くて、米国と欧州が金融政策出口モードでやってくれれば軋轢を生むことなく円安誘導が出来ますから、この状況において日銀はとりあえずオペでその場を凌いでおけばヨロシ、という事になりますから、まあ粘れるだけ粘るということになるんでしょうな。

だったら追加緩和したら更に円安行くじゃないか、という議論はもちろんあるのですが、円安誘導していると海外が言うとかそういう話はまあどうでも良い(恥ずかしいとかそういう話はある)けれども、既に「円安誘導によるコストプッシュで物価を上げる」というプレイについては賃金上昇が追い付かないと将来の物価失速要因になる上に、物価上昇で生活が苦しくなります的な批判が飛んで来る、という結果が出ておりますので、露骨な円安誘導を狙う追加緩和というのも無謀(だしそれで2%まで上がってくれる訳でもない)という事ですわな。

・・・・・とあまり関係ない方向に話が飛びましたがちょっと整理したかったもんで。


・明日は20年国債入札ですが

ということで補完供給オペの状況を1週間分淡々と貼ってみましょう。

昨日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170711.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)1,668 1,668 -0.600 -1.082

(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
10年利付国債336回(30億円)、20年利付国債73回(37億円)、20年利付国債156回(12億円)、
20年利付国債161回(1,589億円)です。


一昨日
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170710.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)1,453 1,453 -0.600 -0.632

(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
5年利付国債127回(1億円)、10年利付国債335回(196億円)、10年利付国債336回(34億円)、
20年利付国債73回(1億円)、20年利付国債156回(95億円)、20年利付国債161回(1,126億円)です。


先週金曜
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170707.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)759 759 -0.600 -0.619

(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
10年利付国債336回(1億円)、10年利付国債340回(244億円)、20年利付国債161回(514億円)です。


先週木曜
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170706.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)919 919 -0.600 -0.605

(注4)国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
20年利付国債156回(102億円)、20年利付国債161回(817億円)です。


先週水曜
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170705.htm
国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)(注4)242 242 -0.600 -0.668

(注4) 国債補完供給(国債売現先)・即日(午前オファー分)の売却銘柄は、
20年利付国債114回(9億円)、20年利付国債161回(192億円)、国庫短期証券691回(41億円)です。


でもって明日の入札はご存じのとおり、
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/yotei/auct20170706.htm
※20年利付国債(7月債)は、6月債(161回債)のリオープン発行とします。

となっていますので、20年161回債の補完供給が192→102→514→1126→1589とお洒落な推移をしている訳でして、明日の入札で無事にショートカバーしないと5年130回の二の舞になる(と言っても8月の入札も161回だからそこでカバーできますけど)という中々胸の熱くなる展開なのでして、ここもと超長期が弱めに推移していますが、先週金曜の10-25年輪番の応札もろくすっぽ無かった上にこの補完供給と来ていますので、20年カレントのマーケットメーカーのショートは結構あって入札そのものはカバーニーズも入って、となるるんですかねえ、よー知らんけど。

まー20年カレントに関しては0.60%という絶対水準押し目買いポイントの所で止まってから暫く止まって(戻りもしないけど下がらないみたいな感じで)その後0.6%台前半になってきているので、カーブ上の割高割安と別の所での買いで需給がタイトになってしまったという年限なので入札自体が無難でもその後は扱いが難しいのかもとか全然ビューの無いただの感想でした(普段からビュー無いじゃろと言われるとぐうの音も出ませんが)。


○指値オペモードで海外ネタがお留守になっておりましたが(大汗)

http://jp.reuters.com/article/usa-fed-brainard-idJPKBN19W29K
Business | 2017年 07月 12日 03:08 JST
FRB、バランスシート縮小に近く着手すべき=ブレイナード理事

『[11日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事は、雇用と成長に関する経済指標が持ちこたえる限り、FRBはバランスシートの縮小に近く着手すべきとの認識を示した。理事はニューヨークで開催された中銀関連の会議で「緩やか、かつ予測可能なバランスシートの縮小プロセスを開始することが早期に適切になると思う」と述べた。』

『一方でブレイナード理事は、バランスシートの縮小に着手したら、追加利上げを支持する前に、インフレの進捗状況を見極めたいとの考えを表明。「インフレ動向を注意深く見守りたい。インフレが確実に対称的な目標に回帰するよう、追加利上げには慎重を期すことが望ましい」とした。』(以上上記URL先より)

ということでブレイナードさんの講演ですが、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20170711a.htm
Cross-Border Spillovers of Balance Sheet Normalization
Governor Lael Brainard

At "Normalizing Central Banks' Balance Sheets: What Is the New Normal?" a conference sponsored by Columbia University’s School of International and Public Affairs and the Federal Reserve Bank of New York, New York, New York

ということで、題名が「Cross-Border Spillovers of Balance Sheet Normalization」というのが苦笑を禁じ得ないのでして、前の白川総裁が「金融政策の海外へのスピルオーバーとそのフィードバックループについても考慮すべき」というような話をしていた時代にはFEDって「自国の経済状況を見てやっていればよろしいので他国なんぞ知らんがな」と言いまくってたのに、とは思いますが、まあブレイナードさんの場合はその当時の人じゃないですし、今回の講演では、

『One question that naturally arises is whether the major central banks' normalization plans may have material implications for cross-border spillovers--an important issue that until very recently had received scant attention.』

『This question is a natural extension of the literature examining the cross-border spillovers of the unconventional policy actions taken by the major central banks to provide accommodation.』

ということで緩和の時の海外への影響というのと同じ論点、という話をしているので、それはそれでまあ一応フェアな話にはなっています。

でもってこの先やるのに例によって時間がないですしまだ超越斜め読みしかしていないので続きは別途なのですが、今回のブレイナードさんの話の中でほほーと思ったのは冒頭の所で、

『Before discussing the cross-border effects of normalization, it is worth noting that the two tools for removing accommodation--raising policy rates and reducing central bank balance sheets--appear to affect domestic output and inflation in a qualitatively similar way. This means that central banks can substitute between raising the policy rate and shrinking the balance sheet to remove accommodation, just as both were used to support the recovery following the Great Recession.』

ということで、金利引き上げとバランスシート縮小は「質的に言えば似たような方法で経済に影響を与える」という説明をしていまして、利上げがメインツールだからバランスシート縮小はオマケです、というような説明とは一味違う話をしていて、まあちょっとハト成分が入っているなあという所なのですがこの辺で勘弁、ってただの導入メモでした(大汗)。


#ということで今日は簡単にメモだけですいません





2017/07/11

お題「5年入札でこっちを日銀はどうしていくのでしょうかねえ/さくらレポート関連」

あちゃー。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170710/k10011052631000.html
内閣支持率35%で最低水準 NHK世論調査
7月10日 19時01分

ところで幸三先生またこのネタが蒸し返されてきましたなあ。
http://www.sankei.com/affairs/news/170710/afr1707100006-n1.html
2017.7.10 07:05
山本幸三地方創生相、知人のインサイダー事件で調査に圧力か 監視委幹部を呼び出し「違法な調査だ」


○さて本日は5年国債の入札な訳だが

・5年ゼロ金利水準が見えてくるんでしょうかどうでしょうか

ということで毎度のロイターさんですいませんが。
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1K127R
Markets | 2017年 07月 10日 15:09 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小幅安で引け、長期金利は0.090%に上昇

『 <15:05> 国債先物が小幅安で引け、長期金利は0.090%に上昇

国債先物中心限月9月限は前営業日比4銭安の149円77銭と小幅安で引けた。前週末の海外市場で米債が下落したことを受けて売りが先行。ただ、日銀が7日に通告した国債買入増額や指し値オペを通じて金利上昇をけん制する姿勢を示した余韻が残り、売りは限定的だった。

現物市場は全般に盛り上がりに欠いた。中期ゾーンは11日の5年債入札に備えた調整圧力で売りが出た。5年債利回りは同1bp高いマイナス0.035%と日銀がマイナス金利政策を導入した16年1月29日以来約1年半ぶりの水準に上昇した。一方、超長期ゾーンは底堅く推移。品薄感が出ている20年債は0.6%台での買い期待に支えられた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.090%。』(上記URL先より)

ということで今日は5年新発の入札がありまして、それに向けての調整というのもあるでしょうけれども5年カレントの金利が▲3.5bpまで上昇ということですが、元々中短期がずーっと重めに推移している中で5年の金利0%が見えてくるという展開になってさてどうしましょという風情な訳ですが。

毎度申し上げていますように短国とか2年の金利が▲10bp水準まで上がってくれば利下げ期待の無い5年債をどマイナスまで買い進む意味はまるで無いのであって、そらまあ5年の0%が見えてくるわなとは思いますが、そうは申しましても事実上10bp上限とは言いましても10年の金利は「0%程度」というのが誘導目標になっている訳で、10年が0%程度なのに5年が0%ってどんなイールドカーブだよ、という議論isありますので日銀がどうしてくるのか、というのが注目されますな。


つーことで、「5年が0%になるのを日銀が止めに掛かるか」という所なのですが、これはまあ両方の考え方がある訳でして、「10年0%」というのをガチガチに捉えますと、そら5年がプラス金利で10年が0%ってナンジャラホイな訳で、そうなったら何のためのYCCでしょうか、って話になるのですから止めに行かないと理屈がおかしい、というのは勿論ある訳ですよ。

ただ、そもそも10年は「0%程度」であって、その「程度」というのは本来幅のある概念であった筈なのでして、10年が0%程度の若干のプラス金利であっても誘導目標範囲内、というのであれば5年10年が思いっきり逆イールドにでもならない限り問題ないですよね、という考え方ならば目先は通常通りに通常のオペレーションを実施していれば良し、という事になります。

しかも今回って別に早期利上げとか早期誘導目標見直しとかの議論で金利が上がっている訳ではなく、しかも金利急騰している訳でもないですし、さらに言えば10年を目先は10bp来ると止めに掛かるというスタンスを思いっきり示したこともありますので、まあ5年がゼロからプラス金利になったら一旦投資家の買いが入って日銀が抑えなくても勝手に止まるでしょう(2度3度止まるとは言っていないし個人の感想だが)とか考えますと、本日指値とか明日指値とかあまり期待しない方が良いんじゃネーノと思います。

あとですね、中期輪番って基本的に減らし傾向でここまで来た訳ですし、先週金曜の指値オペだって長期輪番増額500億円とぶつけることによって実際の応札はゼロで済んでいまして、何のかんの言いましても日銀の国債買入ってそんなに増やしていないという事実もあります。まあここまでのオペレーションを見ますと(1月末の中期スキップというチョンボもそうですけど)基本的に国債買入のペースは落ちていくステルステーパリング(短国の場合は堂々残高削減中)をする(1月末の場合はそれを派手にやって却って買入増やして止めに行くことになったけど)という流れになっているわけで、明示的な誘導目標水準を設定していない中期に関してこんな所で一々介入を拡大していたら今後どんだけ買う羽目になるのか、というのもあるでしょうから、まーそんなこんなを勘案すると別に明日指値とかやらなくてエエンチャウノとは思いますし、だいたい普通にやってくる予想ではある(今日の入札結果とその後の状況をみたら見解がかわるかもしれないけど)のですがどうでしょうかね。


まあさすがに5年10年逆イールドとかになってくれば何かやってくると思いますが、これもどの程度やっていくのかとか難しい話で、足元の状況だと別にそこまで売り込みに行くような材料でもなくて、本当の本当に金利が上がるような状況、すなわち国内物価がホイホイと上昇していくような事になれば、10年カレント3銘柄だけがマジノ線の遺構のように戦場に取り残されてしまうようなのもあるでしょうが、別にそこまで10年近辺を叩き売らないと行けないような状況でもない訳で、風雲が急を告げる前から慌てて機動防御に回っていたら肝心の風雲急を告げた時にやることなくなるリスクあるから、とりあえず物価がホイホイ上がってくる前だったら10年カレント陣地だけ強力防御しておけば途中の中短期は防御できるでしょとは思います。



・海外中銀にマイナス金利とな

ところでこれは不覚にも知らなかったです。超短い所のニーズに少しは影響するのかいな。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017071000765&g=eco
日銀、海外中銀にもマイナス金利=6月から適用

『日銀が海外の中央銀行などから預かる資金の一部にマイナス金利の適用を始めたことが10日、分かった。』

『日銀は約90の中央銀行や国際機関から13兆円程度を預かっており、6月以降、このうち一定額を上回った資金に対し、短期の市場金利よりも「0.05%低い金利」を設定した。現在、短期金利は0%を小幅に下回って推移しているため、海外中銀にもマイナス金利を適用しているとみられる。(2017/07/10-17:04)』(上記URL先より)


○支店長会議関連だがさくらレポートの威勢の良さよ

・挨拶を鑑賞

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/siten1707.htm/(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/siten1704.htm/(前回4月)

『(1)わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。』(今回)
『(1)わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。先行きについては、緩やかな拡大に転じていくと考えられる。』(前回)

回復→拡大になったのは4月末の展望レポートで、需給ギャップが明確にプラスに転じたからという事になっておりますな。

『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台前半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについては、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

0%程度→0%台前半ということで、これはまあ単に現実の数字の話なのでだからどうしたというのはありませんが、この調子で今年度の物価見通し行くんでしょうかねえ。

『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)
『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(前回)

という部分と、

『(4)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)

『(4)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

という部分は当然ながら全文一致状態が続いているのですが、モメンタムを維持するために政策の調整って全然モメンタムついてないじゃんとしか思えませんけどね・・・・・・・・・・・・


・さくらレポート

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer170710.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer170410.pdf(前回)


『T.各地域の景気判断の概要』からですが『(1)各地域の景気の総括判断』から参ります。

『各地域の景気の総括判断をみると、6地域(北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)で、「緩やかに拡大している」、「緩やかな拡大に転じつつある」等としているほか、3地域(北海道、東北、四国)では、「緩やかな回復を続けている」等としている。』(今回)

『各地域の景気の総括判断をみると、北陸と東海で、「緩やかに拡大している」としているほか、残り7地域では、「緩やかな回復基調を続けている」等としている。』(前回)

2地域拡大→6地域拡大キタコレですが、なにせマクロ的にも需給ギャップがプラスに転じたって話になっているのですからさくらレポートで拡大が2地域しか無かったらそらマクロの展望レポートと整合性が取れませんから忖(内務省検閲により削除されました)。


『この背景をみると、海外経済の緩やかな成長に伴い、輸出が増加基調にある中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費の底堅さが増しているなど、所得から支出への前向きな循環が強まっていることなどが挙げられている。』(今回)

『この背景をみると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、企業と家計の両部門において、所得から支出への前向きな循環が働いていることなどが挙げられている。』(前回)

労働需給の引き締まりで云々というのが定番化しておりますな。


『前回(2017 年4月時点)と比較すると、5地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)で総括判断を引き上げている。主な背景をみると、@生産が、海外向けの電子部品・デバイスや生産用機械を中心に増加していること(北海道、関東甲信越、近畿、中国)、A個人消費が、耐久消費財や高額品の販売堅調などから上向いていること(関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)、B公共投資について、災害復旧関連工事が進捗し、昨年度の補正予算関連工事の発注も顕在化しつつあること(北海道、関東甲信越、九州・沖縄)が挙げられている。一方、残り4地域では、総括判断に変更はないとしている。』(今回)

『前回(2017 年1月時点)と比較すると、北陸で総括判断を引き上げている。この背景をみると、生産が海外向けの電子部品・デバイスや半導体製造装置を中心に増加していることや、個人消費が着実に持ち直していることなどが挙げられている。一方、残り8地域では、総括判断に変更はないとしている。』(前回)

生産、消費を理由にして判断を引き上げているというのがありまして、こちらの方が「所得から支出への前向きな循環が強まっている」という説明の背景にある、という図になっておりますので、まあソンタクーズは兎も角としても景気に関しては足もとでは強い感じになっておりますぞな、というのはそらまあそうでしょうなあとは思う。


・前回から主な需要項目の話は本文の方にいってしまったので鏡の部分の総括表だけ確認

設備投資について

北海道:増加に転じている→増加している
東北:緩やかに増加している→緩やかに増加している

北陸:需要好調業種の大型能増投資や小売業の新規出店・既存店改装投資のほか、幅広い業種で人手不足への対応を企図した省人化投資やソフトウェア投資を含む効率化投資がみられており、着実に増加している
→高水準となっている

関東甲信越:増加している→増加している
東海:着実に増加を続けている→着実に増加を続けている
近畿:増加基調にある→増加基調にある
中国:緩やかに増加している→緩やかに増加している

四国:一部で投資の先送りや遅延の動きがみられるものの、基調としては緩やかに増加している
→緩やかに増加している

九州・沖縄:企業収益の改善もあって、増加に転じつつある→企業収益の改善もあって、緩やかに増加している



全体的に判断上方修正入っている所が多いですな。


個人消費について

北海道:雇用・所得環境が着実に改善していることを背景に、回復している
→雇用・所得環境が着実に改善していることを背景に、回復している


東北:底堅く推移している→底堅く推移している

北陸:雇用・所得環境の着実な改善に加え、マインド面の好転も寄与して、着実に持ち直している
→雇用・所得環境の着実な改善が続くもと、株高等によるマインド面の好転も寄与して、着実に持ち直している

関東甲信越:底堅く推移している→底堅さを増している
東海:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している

近畿:雇用・所得環境が改善 するもとで、総じてみれば緩やかに増加している
→雇用・所得環境が改善するもとで、底堅く推移している

中国:底堅く推移している→底堅さを増している
四国:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している

九州・沖縄:観光面では弱い動きとなっているものの、被災地を中心に耐久財の買い替え需要が続いているほか、消費者マインドの改善に伴って高額品などに動意がみられていることから、全体として回復しつつある
→スーパーの一部で弱めの動きがみられているものの、耐久財の買い替え需要が増加しているほか、観光面も着実に持ち直していることから、全体として回復している

とまあ個人消費も改善傾向。


生産について

北海道:概ね横ばいとなっている→緩やかに持ち直している
東北:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している
北陸:着実に増加している→強い増勢が続いている
関東甲信越:緩やかに持ち直している→増加基調にある
東海:緩やかに増加している→緩やかな増加基調にある
近畿:緩やかに増加している→増加基調にある
中国:緩やかに増加している→横ばい圏内の動きとなっている

四国:振れを伴いつつも、足もと持ち直しの動きがみられる→振れを伴いつつも、足もと持ち直しの動きがみられる

九州・沖縄:被災地における挽回生産などが継続する中、旺盛な海外需要を背景に、高水準で推移している→旺盛な海外需要を背景に、高水準で推移している


・・・・・・とまあ主要項目全部に渡って上方修正なのですが、肝心の物価がアガランチ会長ということで内田名古屋支店長の会見記事を貼っておきますね。

http://jp.reuters.com/article/nagoya-branch-boj-idJPKBN19V10F
Business | 2017年 07月 10日 19:20 JST
東海経済、人手不足抱えながらさらに拡大へ=日銀名古屋支店長

『人手不足感が強まっているにもかかわらず、物価・賃金の上昇が鈍い理由として「デフレマインドが根強い」ことを挙げたが、「どんなに人手不足になっても、賃金・物価が上がらないということはない」と指摘。今後も雇用情勢のタイト化が見込まれる中で「物価はいずれ上がってくる」と強調した。』(上記URL先より)

さてどうなるのでしょうか(じっと手を見るアタクシ)。






2017/07/10

お題「指値もあったので淡々と市場ニュースやその他をメモっておくの巻」

○淡々と内閣支持率のニュースを貼っておく

日テレ。
http://www.news24.jp/articles/2017/07/09/04366544.html
支持率31.9% 第2次安倍政権で最低
2017年7月9日 19:32

『安倍内閣の支持率が、第2次安倍政権発足以来、最低を更新した。NNNが7〜9日に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比7.9ポイント下落して31.9%となり、2012年12月の第2次安倍政権発足以来、最低を更新した。一方、「支持しない」は前月比7.4ポイント増え49.2%に上っている。』(上記URL先より)


読売新聞。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170709-OYT1T50093.html
内閣支持続落36%…不支持は最高の52%
2017年07月10日 02時06分

『読売新聞社は7〜9日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は36%で、前回調査(6月17〜18日)の49%から13ポイント下落し、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で最低となった。不支持率は52%(前回41%)で最高となった。支持率は2か月で25ポイントの大幅下落となり、安倍首相は厳しい政権運営を強いられそうだ。。』(上記URL先より)


朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASK7553HSK75UZPS001.html
安倍内閣支持率33% 不支持47% 朝日新聞世論調査
2017年7月9日22時39分

『朝日新聞社は8、9日、全国世論調査(電話)をした。安倍内閣の支持率は33%で、前回調査(1、2日)の38%から1週間でさらに下落し、第2次安倍内閣の発足以降、最低となった。不支持率は47%(前回42%)だった。調査方法が異なるため単純に比較できないが、支持率は2015年9月、安全保障関連法の成立直後の緊急調査での35%がこれまでの最低だった。不支持率も15年7月の緊急調査の46%が最も高かったが、今回はそれと同水準となった。』(上記URLより)


○淡々と生活意識アンケート

淡々とは関係ないですかそうですか。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1707.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第70回)の結果
―― 2017年6月調査 ――

ごくごく簡単に。

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』から。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が増加し、「悪くなった」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少したものの、「悪くなる」との回答も減少したことから、景況感D.I.は改善した。なお、現在の景気水準については、「良い」、「どちらかと言えば、良い」との回答の合計が増加し、「悪い」、「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計が減少した。』

ということで。

『1-2. 暮らし向き、消費意識』の『1-2-1. 現在の暮らし向き』ですけれども、

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が若干減少し、「ゆとりがなくなってきた」との回答が若干増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

となっていますが、まあ数字を見ていたければと思いますが悪化と言っても大して悪化してない。

『1-2-2. 収入・支出』についても・・・・・・・・・

『収入については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。先行き(1年後)についても、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。』

『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が拡大した。先行き(1年後)は、「減らす」との回答が減少したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』

とまあここまで結構いいじゃん、という感じなのですけれども・・・・・・・・・・

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「収入の増減」との回答が最も多く、次いで「今後の物価の動向」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで、「安全性が高い」、「長く使える」、「信頼性が高い」、「機能が良い」といった回答が多かった。』

となっていまして、8ページの『(図表8)今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること(3つまでの複数回答)〔Q11(3)〕』を見ますと、

「価格が安い」、「安全性が高い」、「長く使える」、ってな順に並んでいて、価格と耐久力に関する回答が増えている一方で、その後に続く「信頼性が高い」、「機能が良い」って辺りの回答が徐々に減っている辺りが何とも微妙な味わいを出していて、そりゃ価格設定がいつまで経っても強気化しないわなと思うのでした。


なお、『1-2-3. 雇用環境』では、

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少したものの、「かなり感じる」との回答も減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。』

とまずます。

物価に関しては、『1-3. 物価に対する実感』を見ますと、

『1-3-1. 現在の物価』

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が増加した。1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.3%(前回:+4.5%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計』


『1-3-2. 1年後の物価』

『1年後の物価については、『上がる』(注)との回答が増加した。1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.9%(前回:+3.5%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』


『1-3-3. 5年後の物価』

『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が増加した。これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.8%(前回:+3.4%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。

(注1)消費税率引上げの影響を除くベース。
(注2)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

とありまして、物価に関しての数字も日銀的にはウマーの展開になっていまして、今回の生活意識アンケートを見ると日銀は先行きに対して楽観的というか希望的な感覚を持っても良いんじゃないかな、とは思いますが、ただまあ消費行動の部分の回答を見ると結局の所やっぱ価格って上げにくいじゃんという風にも思うのでありました。


○指値オペ入れてきましたな!!

ということで金曜の市場ですが例によってロイターさん。

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JY00M
Markets | 2017年 07月 7日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利0.085%に低下

つーことですが、ECB議事要旨ショック(というのを金曜に書き忘れました)だったので結局朝は金利が上がる方から始まったものの、さすがに指値警戒で突っ込むという動きはないけれども寸止めの所まではやるわ、ということえまずは朝方は10年0.105%で始まって、10時10分までは特にオペは無くて、その間に20年0.635%だの30年0.915%だの40年1.10%だの5年▲0.04%だのとやっていた訳ですが・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of170707.htm

国庫短期証券買入 15,000 2017年7月11日
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注3) 2017年7月11日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 5,000 2017年7月11日
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,000 2017年7月11日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2017年7月11日

(注3) 国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)の固定利回較差は、0.015%。この結果、10年利付国債347回の買入利回りは、0.110%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

ということで、短国買入は1.5兆円ですがこれは短国買入の減額ペースを1兆円でおけば1.5兆円で入れてきても別におかしくないのですが、前週が7500億円だから何も無ければ1.25兆円で打ってくるという変化もあったと思うので気持ちとしては多め程度。中期の輪番をエクストラで入れて来なかったのと、超長期の輪番は増額しなかったのですが、長期輪番を+500億円となる5000億円で打ち込んできた上に出来上がり0.110%のフルアロットメントオペを入れて来るという作戦に出ました。

でまあさっきの
http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JY00M
Markets | 2017年 07月 7日 15:15 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は横ばい、長期金利0.085%に低下

から引用しますが、

『 <10:23> 国債先物が反発、日銀の国債買入増と指し値オペを好感

国債先物が急反発。日銀が午前10時10分に通告した国債買い入れで、「残存5年超10年以下」のオファー額を5000億円とし、前回比500億円の増額に踏み切ったことに加え、同ゾーンを対象に特定銘柄を固定利回りで無制限に購入する「指し値オペ」を通告するなど、金利上昇抑制策を打ち出したことが好感された。先物中心限月9月限は一時前日比13銭高の149円94銭に上昇。10年最長期国債利回り(長期金利)も一時0.095%と前日引け水準に戻した。』(上記URL先より)

てな訳で先物はホイホイ戻って10年も9.5bp(途中で10とかもやっていましたが)とか戻って行き、何か知らんが10年カレントは調子に乗っているのか前場引けは8.5bpとか前日比1毛強とかナンジャソラという感じではありましたが、その一方で超長期は戻らないで20年0.640%とかやっていたのはナンナンデショという感じ。

まあどうでも良いのですが、指値オペのオファーバックは通常のオペと同じで結果は同時発表というのは惜しかったですが、10時10分の定例オペに同時に指値をぶつけてくるという一番安易に止める方法(ただしあまり品は良くない)という予想が当たったという事にしておいてください(フンガー)。


つーことでオペ結果。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba170707.htm

国庫短期証券買入 29,751 15,002 -0.007 -0.003 96.0

先に短国が出るのですが、まあこれはこんなもんで順当というか安心な結果。

国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下) 0 0
国債買入(残存期間5年超10年以下) 15,528 5,010 -0.009 -0.008 77.5
国債買入(残存期間10年超25年以下)2,167 2,000 -0.028 0.014 33.0
国債買入(残存期間25年超) 2,136 1,002 0.021 0.035 9.9

前場引けの時点で10年カレント0.085%をついたりしていたので、0.110%の指値オペはボウズになりましたが、5-10輪番が普通の結果に終わっているのでこれはまあ順当(これが5-10輪番が死ぬほど甘い所で封鎖されたらお洒落だったのだがそんな事はさすがに起きない)な結果になっておりますが・・・・・・・・・・・・

>国債買入(残存期間10年超25年以下)2,167 2,000 -0.028 0.014 33.0
>国債買入(残存期間10年超25年以下)2,167 2,000 -0.028 0.014 33.0
>国債買入(残存期間10年超25年以下)2,167 2,000 -0.028 0.014 33.0

・・・・・・・お、おぅ。

前場せっせと叩いていた超長期とは何だったのかという結果が超長期前半の輪番で発生しまして、そらもう後場寄りから値が飛ぶわと思ったら、

『<12:55> 国債先物が上げ幅拡大、日銀買入で好需給確認で買い戻し

国債先物が上げ幅拡大。中心限月9月限は一時前日比22銭高の150円03銭と2営業日ぶりに150円を回復した。日銀が午前に実施した利回り入札方式による国債買い入れ結果で、良好な需給環境を確認したことで、買い戻しが入った。市場では「国債買い入れ(利回り入札方式)のうち、特に残存10年超25年超は売り圧力に乏しく、今後の札割れも意識させられる結果だった。午後の取引では、買い入れ結果を受けて、業者のショートカバーの動きが先行している」(国内金融機関)との声が聞かれた。20年債利回りは同0.5bp低い0.610%と低下に転じている。』(最初の方に引用したロイターの市場記事URL先より)

ということでヒャッハーと戻ったのですが、その後はしらーっと失速しまして、輪番が強かった超長期は前場と違ってまずまずでしたが中期の方がパッとしないというような展開。


『 <15:13> 国債先物は横ばい、長期金利0.085%に低下

長期国債先物は横ばい。前日の海外市場で欧米金利が上昇したことを受けて売りが先行し、寄り付き直後に一時149円70銭と、中心限月ベースで2月8日以来、約5カ月ぶりの水準に下落した。日銀が午前10時10分に通告した国債買い入れで金利上昇抑制策を打ち出すと、買い戻しが入りプラス圏に浮上した。ただ、海外金利上昇への懸念は消えず、戻り売りも出たことから上値が抑えられた。現物債市場は、前半に金利への上昇圧力がかかっていたが、日銀が通告した国債買い入れで、オファー増額と同時に「指し値オペ」に踏み切ったことから反転低下基調になった。特に、日銀オペの結果が強かった超長期ゾーンの金利に強めの低下圧力がかかった。中期ゾーンは横ばい。』(最初の方に引用したロイターの市場記事URL先より)

てな訳で20年とか確りです(そら輪番がアレだったら強いわ)けど中期がイマイチだったりしましたし、冷静に考えてみれば当日って5-10を500億円余計に買っただけ、という結果であって、指値でボコボコ買入をした訳ではないので、日銀のスタンスは見えたけれども需給が良くなった訳ではない(超長期前半だけじゃ需給が良いのは確認できたけど今週20年入札あるのと先週は途中で0.60%をやってから滞空していたようにまあ買いも入ってマーケットメーカーがショートになっていたでしょうからねー)訳でして、まー海外金利もありますし事ここに至って安倍ちゃんの支持率があばばばばばーとなってきた訳ですので、そっちもこじつければ売り材料に出来ない事も無いという事でして、今週もまたアタックが来るでしょうなあ〜とまあ思うのでありました。


ということでですね、10年カレント3銘柄の所には強力な防御陣地があるのですが、マジノ線を迂回して突破されてしまって10年カレント3銘柄だけ超割高、というような展開だって有り得るのですが、ただまあそれをするにはそもそも論としてジャパンの物価がホイホイと上がってきて金融政策の見直しとか、安倍ちゃんすっころんでその後どうよという話になった時に緩和政策の枠組みを微修正(というのはあまりない気がするけど、思惑として浮上するという意味で)とか、そういう本格的な売りネタが無いとマジノ線を迂回する程のことにはならんのかも知れず、まあこの先は見ていきたいですな、ということで本日は淡々とメモを備忘として置いておくという感じで。








2017/07/07

お題「さあ10年0.1%ですよ、という雑談コーナー」

そう言えばこの前の指値オペは月初最初の金曜日でしたが今日も月初最初の金曜日・・・・・・・・

#なおモーサテで株のゲスト解説の人が「日銀依存症脱却なるか」という説明をしていますがMBと株価とか中々頭のクラクラくる話をマクラにしているけど結論はMB依存症じゃなくて業績を見ていく相場になるかどうか、という割とちゃんとした話になっていましたが、実は日銀クレクレから債券よりも他市場の方が先に脱却しようとしているのですかねえ・・・・・・・・・・・

#ちなみにもう一人のお方(は金融セクターアナリストの人ですが)も「日銀依存症で指値をやって市場を押さえつけ続けるのが本当に良いのか」というお話をしていまして、何気に限界集落円債村にしぶとく残っている村民だけがクレクレ言っているのではないか、という気がオラだいぶしてきたぞ!!


○10年10bpキタコレということでさてどうするのでしょうか

昨日の債券市場は皆様ご案内の通りとなりまして・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JX299
Markets | 2017年 07月 6日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落、長期金利が2月15日以来の0.1%に上昇

『 <15:19> 国債先物は続落、長期金利が2月15日以来の0.1%に上昇

長期国債先物は続落。前日の夜間取引で下落した流れを引き継いで売りが先行した。後場は海外勢の売りを巻き込んで軟化し、一時149円81銭と2月15日以来の低水準を付けた。現物債市場も弱含み。長期ゾーンは国債先物に連動して軟調。超長期ゾーンでは30年債利回りが一時0.885%と2月23日以来と約5カ月ぶり、20年債利回りは0.610%と5月12日以来約2カ月ぶりの水準に上昇した。30年債入札へ向けた調整が優勢だったことに加え、市場全体の金利に上昇圧力がかかる中、ポジションを調整する動きが強まった。中期ゾーンもさえない。マーケットでは、今後の欧米金利の上昇を警戒する声が一部で聞かれた。また、あすの日銀の国債買い入れオペで長期ゾーンを対象にしたオファー増額を想定する市場参加者がみられた。30年債入札に関しては、調整が奏功して、一定程度の投資家需要を喚起できた。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比17銭安の149円81銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比2bp上昇の0.100%と2月15日以来の高水準を付けた。』(上記URL先より)

とまあそういうことですが、今週は10年と30年の入札がありまして、どちらの入札も順調な結果(寧ろ10年とか上で決まった感じ)に終わっているのですが、入札した後にパッとしなくて先物とか中期とかが弱くなって推移している、というのが何ともアチャーな感じですな。

でもって前回の指値オペってのはまあ有体に言ってその前の謎の中期輪番スキップからの一連の混乱で勢いついて金利が上がってしまった(中期輪番スキップしてギャーとなったあとに長期輪番増額したから落ち着いたと思ったら月末の翌月予定の所で減らしてきたのでアギャーとなってやっぱり減額しなかったけど時既にお寿司って奴)が、さて今回ですが、欧米(というか欧州)の緩和政策も徐々に縮小、ということになってくる中で特段どうという話でもない中じりじりと金利が上昇してきてやっとこの2日位で少し金利上がりました感の出る先物17銭下落2連発、という展開ですな。


・・・・・・・ということで前回といっても2月ですが、前回11bpでドタバタ指値オペを実施した訳ですけれども、さあ今回どうしますのよ、というのが注目される訳ですが、前回は10時10分の定例オペの増額が中途半端で市場が却って売り込みの巻をやってオペ結果が14bp位の所をガッツリ売り込む結果となって後場寄り(BBの)で15bpヒット〜!とかやっていたらいきなり12時半に指値オペ攻撃、という盛大なドタバタモードではございましたが、その後も長期輪番を増額したりしたのと、その後は海外金利が落ち着いたり日本の物価が思いのほか上がらなかったりということで落ち着いていた訳ですな。

でですね、今回って海外が緩和政策縮小モードというのの初期反応チックに金利が上がって来ているという中で何となく重くなっている、というのがあるのと、中短期の金利がそもそもの政策金利よりも低い所にあったのが修正されてきている、という状態になっていますので、中期がコケて金利が上がっているのは同じなのですが、原因が日銀のオペでのやらかしじゃない所がだいぶ違いますな。


色々と論点があって実はアタクシもきちんと頭の中を整理しないでダラダラ書いている感が強いので以下ダラダラと雑感を垂れ流す(予想は正直無理で、何をしようとするか次第でそういうの決め打ちできません)の巻で勘弁ですぅ。


・海外が緩和縮小モードの時に本来の威力を発揮する、のですけど・・・・・・・・・・

えーっとですな、YCC政策って海外が緩和縮小モードになるような状態になった時に、海外との政策スタンス差によって効果を出す(つまり円安になって物価に上昇圧力が掛かり易くなってウマー)という建付けになっているので、この展開は実は日銀の政策担当的に言えばウマーの展開であって、ここでYCCをしっかり行えば円安に振れて物価が上がって日銀ヒャッハー(なお円安ドライブによる物価上昇が世の中的に幸せなのか、という問題は今の黒田日銀的には知った事かという建付けであって、物価安定が国民厚生のための手段ではなく、それ自体が目標化している建付けなので良い悪いを言っても仕方がありません)というお話になるのですよね。

・・・・・・とまあそういう事を考えれば一も二も無く今日は頑張って10年の金利上昇を止めに掛かる、という事になりますし、まあ今日止めるのは指値ぶっこめば止まると思いますけれども、問題は今後のYCC政策の持続性を考えた場合にどうなのよというお話。


・今回は中短期の金利も上がっているので中々めんどい

前回の指値オペぶっこんだ時ってのは中短期が短国に引っ張られたり海外の買いが多かったりということで政策金利水準の▲10bpよりも盛大に低い(5年で▲10程度でしたが2年とか▲20台前半とかでしたので)水準で推移していたのですが、今回は短国買入を削減してきた効果と海外の買いが落ちてきたことから、短国の金利が▲10bpがほぼ下限(昨日の3M短国は▲9bp水準)という事になって、まあ本来の「短期金利▲10bp」になってきたのですよ。それからさすがに追加緩和観測も無いので仮需は無いという状態。

でもって短国金利が超過準備政策金利水準程度まで上昇してくるという状況即ち海外の中短期債の買いが細っている中で、それまでは担保ニーズとかそういうので仕方ないので買われていた2年の金利も▲10bp(2年の場合はショートをしにくいので売りが入り難くて金利が実力よりも低くなっている可能性はある)という状態ですが、まあ実は10年もさることながら5年の居所というのも中々難しい。

つまりですね、2年ならまだ今の政策の時間軸を考えたら(なお来年になると正副総裁が変わってマイナス金利が・・・・というリスクはあるがメインの話ではないので気にしないことにしておく)担保需要とか▲10bp回避かつ債券ポートの残高調整みたいなお家の事情的なニーズで買うのも致し方ないと割り切り買いが出来ますが、5年って冷静に考えると追加緩和の見込みも無いのにマイナス金利をホイホイ買って良いものなのか、というなる訳で、その前は短国にしろ2年にしろ政策金利▲10bpを盛大に割り込んだどマイナスで推移していたから短い所の代替需要があったのですが、そんな需要が無くなった場合に本当の本当に5年のマイナス金利ってどうなのよ、という話になるのは大変に良く分かるお話。


でもって10年が本当の本当に0%でガチガチに固定されていたら5年10年逆イールドというのも変な話なので仕方なくマイナス金利になるのかもしれません(10年カレントだけピンポイントで逆イールド、というオモシロ展開の可能性はこの際オミットする)が、10年も事実上+10bpまでのレンジ、という事になっている現状ですと、意外にこの5年の居場所をどうするのかってのが難しくて、今日10年を止めること自体は力技で可能であっても、5年の居場所についてのコンセンサスが市場で出来ないと多分この先も海外金利上昇、それも長期というより短期の方がどうのこうのとなった時に中期債経由で金利上昇圧力掛かるんじゃネーノと思います。

それから20年は前回指値やった時よりも金利やや低い(前回指値が60台後半で足元は60台前半)ですけど30年は金利がやや高い(前回指値時が80台後半でしたが足もとは90乗せ)というバランスで超長期の後ろの方がイマイチ(30年入札当日で引けだか引け後だかに外しが来てバランスが一段と崩れた感はありますが)になっていて、まあカーブを立たせること自体は総括検証以降の日銀の政策方針的な面もあるのでそれはそれで良いのですけれども、そうは言っても10年金利とのバランスという問題があるから、こっちの金利にも上昇圧力が掛かった場合にどうなるの、というのもある。

つまりですな、前回の場合はまあ端的に言ってその前の中期輪番オペのお手付きを収拾する、という面があったので10年止めたら止まりましたという感じでしたが、今回って特に急落するとかそういう訳でもなく全体的にキャッシュが重い(所に来てここ2日は先物の叩き料理になっているという流れ)感じなので、一度頑張って止めるのは良いのですが、前哨戦の前哨戦の段階でフルスロットルで金利止めに掛かると後々の運営が大変になるんじゃないの、と思うのでそういう意味で難しいんじゃないの、と思います。


・将来的な事を言えばちょっと振り落としを入れた方が良いようにも思えます

まあ何ですな、「10年10bpに殉ずる」ということであればそらもう今日は指値ぶっこむなりなんなりすれば良い(後で作戦については雑談する)のですが、まあ今申し上げたようなこともありますし、ここでまた同水準の11bpとかで止めてしまいますと、確かにYCC的に言えばそういうことだから目的は達成なのですけれども、当然ながらこの水準にロングがドンドコ溜まってしまう訳ですよ。

でもってYCCの政策って別に未来永劫続ける訳ではなくて、物価目標達成するための政策なのですから、(まあ今誰も行くとは思っていませんが)物価2%だぜヒャッハーという時まで10年金利を+11bpで止めないと行けない訳ではなく(寧ろそんなに緩和したら弊害の方が大きい)、政策の修正を本来の意味で行わないと行けないのですから、まだまだ初期段階の所で10年の金利をガチガチに固定しようとすると、そこに市場のポジションが盛大に溜まることになって、将来YCC政策の修正を行わないと行けなくなる、となった時の災厄が甚大な物になるから、あまりこういうポイントでポジションが溜まり過ぎるような事はしない方が後々この政策枠組みの持続性が高まるのですよね。

ですからここで10年金利のアローワンスをしらっと広げる(15bp位に)というのをした方が政策の持続性が高まる気もしますが、ただまあ地合い悪い時にこれをやるとヒャッハーヒャッハーと売り込まれてしまうリスクがでかくて、まあこれはボードの方が「別に10じゃなくたっていいじゃないかまーけっとだもの」という覚悟を持っていてくれないと現場レベルではよーやらんだろうなあと思いますので、中々難しいかなあとは思います。

ただ、今回は海外の金融政策ガーの初期段階なので、初期消火しておく方が良いという反対の考え方もあるからどっちがどうというのは一概に言えないし、再現性のある実験はできないからどうするのがベターなのかは正直分からんです、はい。


・そもそも足もと▲10bp、10年0近辺というのが建付けとして無理がある訳で

まー毎度申し上げておりますが、この組み合わせに元々の作りが悪いというのがありまして、足もとの金利が▲10で10年が0%ってのは10年を10bpにしたとしてもスプレッド20しかない上に▲10〜0金利の所まではゼロ金利制約がある訳ですから、ここのイールドカーブがフラットし過ぎだし、金利水準として投資家が入れない水準(特にマイナスは)で固めているというのが無茶な訳ですよ。本来なら10年を10で止める必要は無くてそれこそプラマイ20位でアローワンス入れて置けばもう少しマシな展開になっていたと思う。

#まあYCC入れた時はその時の現状水準から考えて10年0%位にしておかないと実勢から遠くなり過ぎる、というのがあったのと、どうせ0%だとキリが良いとかそういうことだったと思うのですが、特にこの10年0%というのに理論的背景も根拠もない(屁理屈ならある)のに10年金利を何故ここで固定しようとするのか(+10にしてもそうですが)という話になった時に説明不能、というのも中々頭の痛い所ですよね〜、と毎度申し上げている通り。

円高が怖いから中々アローワンス拡大できないというのは分かるのですが、海外の方が脱却モードヒャッハーとなっているのであれば実はアローワンス拡大してもその程度が海外よりも小さいならば別に問題ないじゃん、という話は・・・・・まあ無理ですかね(笑)。



・さてどうするというオペレーショナルな話

まあ一番やると間抜けなのは「定例オペの輪番増額したら足りないとみなされて売りモード」という2月の再来でして、しかもあの時に不味かったのは12時半とかに奇襲攻撃したことで、あれ後場もうちょっと売られてから指値入れるのならまだしも、何かもう慌ててオペ入れました的な印象が強すぎてドタバタ感を滅茶苦茶出したのがアレ。

・・・・・・・ということでですね、思いっきり止めるとすれば「10時10分の定例オペの時に11bpになる無制限指値オペを同時に打つ(何でしたら朝一でも良い)」というのをやるのですが、「オファーバックの時間を輪番オペの結果が出た後にする」というのはどうでしょうかねえ。とか思った。

つまりですな、指値がある、というバックストップがあって、しかも輪番空振りしたのを確認した後に入れられる、となるとそらもう超越甘やかしオペレーションで、そんな事する必要あるのかよという話でもあるのですが、絶対に止めたいのならそれでやれば輪番が流れる事も無いですし(嫌がらせで打ち込んでくるのがいたら笑えますが)、それこそそんなに指値に札入らないんじゃないのと思います。

#まあ凄まじく下品ですけど

ただまあ本来的に言えば本日は淡々とオペ打って金利が上がったら上がったで暫く見て置いてからランボー怒りの指値オペを時間差で入れるとロングが振り落とされるので売り圧力が一旦納まる(まあ冷静に考えたら前回のドタバタ指値もロングのお掃除には効果あったですからね)という虐殺オペレーションの方が後の運営は楽になる(なおディーラーを虐殺するのでそっちの意味で運営がどうなるかという大問題なのでお勧めしない)とかいうのもあるような気がしますが・・・・・・まあ無理ですかね(^^)。


とまあそういうことで取り留めもない雑談になってしまいました。どうなるんでしょう。

#しかしこうなるんですから途中で長期輪番減額しておいた方が良かったんですよね〜この調子で一々介入してたらこの先何ぼ買うことになるのやら








2017/07/06

お題「市場メモとFOMC議事要旨寝起きバージョン」

http://www.asahi.com/articles/ASK745GMGK74UUPI003.html
ペットもうかるから公務員獣医師不足?山本創生相が持論
2017年7月4日20時09分

『山本幸三地方創生相は4日、公務員の獣医師が不足しているのは「小動物獣医師がもうけるからだ」と述べ、ペットを診る小動物獣医師の待遇が良すぎるとの認識を示した。獣医学部をつくって獣医師を増やせば、ペット診療の「価格破壊」が起きて小動物獣医師の給与が下がり、相対的に給与が低いとされる公務員獣医師の不足が緩和されるという持論を述べた。』(上記URL先より)

って山本幸三先生はリフレ派だった筈なのですが、賃金の価格破壊とかデフレ丸出しのご発言とは恐れ入るのですが、この記事最後にオチまであって、

『厚生労働省の2016年賃金構造基本統計調査によると、民間事業所で働く獣医師の平均年収は約570万円となっている。医師の年収約1240万円、歯科医師の約860万円に比べても低い。』(同じく上記URL先より)

ってのが更に泣けるのですが。


○市場メモでござる

・特に大ネタ無いのに先物150円割れとな

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JW30M
Markets | 2017年 07月 5日 17:56 JST
〔マーケットアイ〕金利:夜間序盤の国債先物は弱含み、長期金利3月15日以来の0.090%

『 <17:53> 夜間序盤の国債先物は弱含み、長期金利3月15日以来の0.090%

夜間取引の序盤で長期国債先物は弱含み。日中取引の大引けを8銭下回る149円90銭近辺で推移している。指標10年347回債(長期金利)も3月15日以来となる0.090%を付けた。市場では「特別な材料は出ていないが、海外金利が上昇基調になることを想定した海外勢を含めた売りが優勢になっている。あすの30年債入札への警戒も一部であるようだ」(外資系証券)とみている。』

『<15:10> 国債先物は続落、長期金利0.085%に上昇

長期国債先物は続落。前日の米債市場が休場で、外部環境による円債への影響が限られる中、前場は方向感に欠く動きとなった。後場は日経平均株価がプラス圏に浮上すると、短期筋からの売りが優勢になった。9月限は中心限月として3月15日以来となる150円割れとなった。

現物債市場も軟化。中期ゾーンは日銀オペで需給の緩みを意識させる結果になったことから金利に上昇圧力がかかった。長期ゾーンは国債先物に連動して弱含み。超長期ゾーンはあすの30年債入札を前にした持ち高調整が入っていた。北朝鮮に絡む地政学リスクの影響は限られた。』(以上上記URL先より)

ということで昨日は中期の輪番が弱めで押したあと戻ったのですが引けにかけて下がって安値引けした後にイブニングでもパッとしないのですが、まあとりあえず海外ガーという話で後講釈はお茶を濁しておりますが、はて何でこうなんでしょって感じはございまして、ワカランチ会長ですなあ、というメモだけ置いておく。


・日銀当座預金増減見込みと短国

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juqp/index.htm/
日銀当座預金増減要因(見込み)

短国に関しては53,600億円の償還でして、月末に出てきた買入残高予定だと2兆円程度までは減らせる事になっております。前回の短国買入が7500億円でして、今月受渡分は買入が4回になりますので、6Mと1Yのある週が1兆円の買入で計算すると3.5兆円の買入になりますが、1.25兆円位買入を入れてきても特に問題ないというか、先月の削減ペースと同じだと考えれば寧ろ1.25兆円でも少ないという感じ(なお別に先月1兆減額だったから今月も1兆減額で止める、と考える根拠は特にないのだが)でしょうな。

まあ今月は買入のフローが若干多い(日銀保有分の償還が多いのだからなのですから別にそれ自体はトータルの需給でみればチャラの話なのだが、グロスの買入が大きいというのはディーラーにしてみれば新発短国を捌きやすい(別に投資家じゃないからディーラーとしては買入フローが見えている方がやりやすい、投資家がそのまま償還再投資するかどうかは蓋を開けてみないと分からないのだから)とイメージを持ちやすいという事でもありますので・・・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20170705.htm
(3)募入最低価格 100円05銭1厘 (募入最高利回り)(-0.1000%)
(4)募入最低価格における案分比率 70.4432%
(5)募入平均価格 100円05銭2厘 (募入平均利回り)(-0.1019%)

つーことで短国買入専用機の6Mに関しては明日の買入は1兆よりは多めに入ってくるという感じでしょうから今回は捌きやすい(日銀買入で、ですが)よって▲10bpの所できっちり止まるの巻という理解で宜しいでしょうか。


○寝起きでFOMC議事要旨だが金融政策の話の部分が長い・・・・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20170614.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20170614.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
June 13-14, 2017

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors was held in the offices of the Board of Governors of the Federal Reserve System in Washington, D.C., on Tuesday, June 13, 2017, at 1:00 p.m. and continued on Wednesday, June 14, 2017, at 9:00 a.m.1

寝起きインスタント読みの基本は『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツから遡って読んでいくのですが、この中で金融政策に関する話が結構多いのが今回の特色。


・償還再投資のガイダンスに関する部分はあっさり味

その前に『System Open Market Account Reinvestment Policy』の部分ですけど。

『The Chair observed that, starting with the March 2017 FOMC meeting, Committee participants had been discussing approaches to reducing the Federal Reserve's securities holdings in a gradual and predictable manner. She noted that participants appeared to have reached a consensus on an approach that involved specifying caps on the monthly amount of principal payments from securities holdings that would not be reinvested; these caps would rise over the period of a year, after which they would remain constant. Given this consensus, the Chair proposed that participants approve the plan and that it be published as an addendum to the Committee's Policy Normalization Principles and Plans; the addendum would be released at the conclusion of this meeting so as to inform the public well in advance of implementing the reinvestment policy.』

『It was anticipated that when the Committee determined that economic conditions warranted implementation of the program, that step would be communicated through the Committee's postmeeting statement. Participants unanimously supported the proposal.』

ということで以下この前公表された文言になりまして、特段このガイダンスに関する議論も無くあっさり味で承認されていた、という事が示されています。全員一致だからまあそうなのかなと思いましたが超あっさりでほえーと思いました。


以下『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の途中から。

・ファイナンシャルスタビリティーに関する議論ではバブル警戒感を出している人がいますのう

経済物価に関する議論の所を飛ばしてファイナンシャルスタビリティーの話と金融政策の話の所を読むということでいつものインスタント読みよりも長く読んでみようという意欲的(??)な企画をしてみるが時間が無くなったらゴメンやで。

『In their discussion of recent developments in financial markets, participants observed that, over the intermeeting period, equity prices rose, longer-term interest rates declined, and volatility in financial markets was generally low.』

さいですな。

『They also noted that, according to some measures, financial conditions had eased even as the Committee reduced policy accommodation and market participants continued to expect further steps to tighten monetary policy.』

利上げして追加利上げの話をしているのに金融環境は緩和的になりましたよと。

『Participants discussed possible reasons why financial conditions had not tightened.』

それはナンデジャロと。

『Corporate earnings growth had been robust; nevertheless, in the assessment of a few participants, equity prices were high when judged against standard valuation measures. Longer-term Treasury yields had declined since earlier in the year and remained low. Participants offered various explanations for low bond yields, including the prospect of sluggish longer-term economic growth as well as the elevated level of the Federal Reserve's longer-term asset holdings.』

『Some participants suggested that increased risk tolerance among investors might be contributing to elevated asset prices more broadly; a few participants expressed concern that subdued market volatility, coupled with a low equity premium, could lead to a buildup of risks to financial stability.』

ということで、企業収益に対して株価が高すぎるという見解が数名から出てみたり、長期金利の低さに関してもその要因にFRBの資産保有が大きい事があげられるという見解が出てみたりしていまして、さらに数名の参加者はリスク許容度が上がっているのが資産価格の上昇やボラの低下による寄与もあって、それって金融不安定の構築が進んできていく可能性がありませんか、という指摘をしていましてどう見ても資産バブル警戒スタンスです本当にありがとうございました。

#まあ普段のインスタント読みだとここは後回しにするのですが、どう見ても最近の正常化路線の中には資産バブル警戒成分が強かろう、と思ってここから読んでみたら案の定だったのでネタにしたのだ

以下金融政策の議論。


・金利引き上げに関する話はまあ順当な議論内容

『In their discussion of monetary policy, participants generally saw the outlook for economic activity and the medium-term outlook for inflation as little changed and viewed a continued gradual removal of monetary policy accommodation as being appropriate. Based on this assessment, almost all participants expressed the view that it would be appropriate for the Committee to raise the target range for the federal funds rate 25 basis points at this meeting.』

見通し通りに経済は推移しているので見通し通りに25bpの利上げが適切ですよと。

『These participants agreed that, even after an increase in the target range for the federal funds rate at this meeting, the stance of monetary policy would remain accommodative, supporting additional strengthening in labor market conditions and a sustained return to 2 percent inflation.』

利上げしても依然として金融政策は緩和的、というのはいつものお話。

『A few participants also judged that the case for a policy rate increase at this meeting was strengthened by the easing, by some measures, in overall financial conditions over the previous six months.』

ここはちとワロタ部分ですが、最近の金融環境緩和によって利上げが更に適切になった、って金融市場が利上げ出来ないと思ってオラオラオラと債券高株高をやっていると却って追加利上げをしやすくなる、というギャグのような展開になっている訳ですな。

『One participant did not believe it was appropriate to raise the federal funds rate target range at this meeting; this participant suggested that the Committee should maintain the target range for the federal funds rate at 3/4 to 1 percent until the inflation rate was actually moving toward the Committee's 2 percent longer-run objective.』

カシュカリ先生ですな。

・資産買入縮小に関して

次のパラグラフ。

『Participants noted that, with the process of normalization of the level of the federal funds rate continuing, it would likely become appropriate this year for the Committee to announce and implement a specific timetable for its program of reducing reinvestment of the Federal Reserve's securities holdings.』

キタコレ。

『It was observed that the ensuing reduction in securities holdings would be gradual and would follow an extended period of Committee communications on balance sheet normalization policy, including the information that would be released at the conclusion of this meeting.』

今回のガイダンスの反応も見ながら時期を考えると。

『Consequently, the effect on financial market conditions of the eventual announcement of the beginning of the Federal Reserve's balance sheet normalization was expected to be limited.』

とは言いましてもその前に議事要旨などで示している正常化の話を受けても特に変な金利スパイクとか無かったですよね、という話をしているのだが、そもそもその辺について市場がタカをくくっているという面が多分にあると思うんだが。でもって更に議論は次のパラグラフに続く。

『Participants expressed a range of views about the appropriate timing of a change in reinvestment policy.』

更にキタコレ。

『Several preferred to announce a start to the process within a couple of months; in support of this approach, it was noted that the Committee's communications had helped prepare the public for such a step.』

within a couple of monthsって実質的に次回FOMCじゃねえかということで、まあそういう元気なのも複数名いますと。

『However, some others emphasized that deferring the decision until later in the year would permit additional time to assess the outlook for economic activity and inflation.』

残りのうち数名は経済物価情勢を見極めてから今年の遅くに決定すべきということで、次回FOMCでアナウンスだぜヒャッハーというのと、年末で十分という両方の意見が共に複数あるのですが、someとseveralとどっちが多いのですかという話はFED文学の世界で、これは議事録(本チャンのTranscript)と突合しないと確認できない話だったりするが、一応経験的に順番としてこうじゃろというのはあって、someの方が人数多いということになっているはず、違ったらゴメンなので誰か教えてジェネラル。

まあいずれにせよ見解は割とばっちり割れているということですな。

『A few of these participants also suggested that a near-term change to reinvestment policy could be misinterpreted as signifying that the Committee had shifted toward a less gradual approach to overall policy normalization.』

年内遅くでいいだろと言っているうちの複数名は近いうちに償還再投資縮小をすると政策の正常化速度が速まると市場が誤解するのではないかとの懸念を示しています。

さらに話は続く。

『Several participants indicated that the reduction in policy accommodation arising from the commencement of balance sheet normalization was one basis for believing that, if economic conditions evolved broadly as anticipated, the target range for the federal funds rate would follow a less steep path than it otherwise would.』

『However, some other participants suggested that they did not see the balance sheet normalization program as a factor likely to figure heavily in decisions about the target range for the federal funds rate. A few of these participants judged that the degree of additional policy firming that would result from the balance sheet normalization program was modest.』

バランスシート縮小と利上げペースの関係でも議論があって、縮小していく間は利上げペースをもっと緩やかにすべきという見解と、予定しているバランスシート縮小のペースは極めて緩やかなのだから利上げペースを変える必要はない、という意見もこれまた分かれているようですな。こっちについては後者の方が頭数多そう。


・利上げペースについて

『Participants generally reiterated their support for continuing a gradual approach to raising the federal funds rate. Several participants expressed confidence that a series of further increases in the federal funds rate in coming years, along the lines implied by the medians of the projections for the federal funds rate in the June SEP, would contribute to a stabilization, over the medium term, of the inflation rate around the Committee's 2 percent objective, especially as this tightening of monetary policy would affect the economy only with a lag and would start from a point at which policy was still accommodative.』

今後利上げをしていくにあたって利上げの政策効果が徐々に出てくる事を考えると緩やかに利上げして様子を見ていき、金融政策は緩和的な状態を保つのが吉、という議論なのですが・・・・・・・・

『However, a few participants who supported an increase in the target range at the present meeting indicated that they were less comfortable with the degree of additional policy tightening through the end of 2018 implied by the June SEP median federal funds rate projections. These participants expressed concern that such a path of increases in the policy rate, while gradual, might prove inconsistent with a sustained return of inflation to 2 percent.』

今回利上げ賛成した人の中ではSEPで示すような利上げパスを今後続けていくと物価2%まで届かないのではないかという指摘をしていて(これは前の物価に関する部分を読まないといかんのですが・・・)ほほーという感じ。

で最後のパラグラフですが時間が無いので駆け足で勘弁。

『Several participants endorsed a policy approach, such as that embedded in many participants' projections, in which the unemployment rate would undershoot their current estimates of the longer-term normal rate for a sustained period.』

今度は失業率の話ですな。

『They noted that the longer-run normal rate of unemployment is difficult to measure and that recent evidence suggested resource pressures generated only modest responses of nominal wage growth and inflation. Against this backdrop, possible benefits cited by policymakers of a period of tight labor markets included a further rise in nominal wage growth that would bolster inflation expectations and help push the inflation rate closer to the Committee's 2 percent longer-run goal, as well as a stimulus to labor market participation and business fixed investment. It was also suggested that the symmetry of the Committee's inflation goal might be underscored if inflation modestly exceeded 2 percent for a time, as such an outcome would follow a long period in which inflation had undershot the 2 percent longer-term objective.』

『Several participants expressed concern that a substantial and sustained unemployment undershooting might make the economy more likely to experience financial instability or could lead to a sharp rise in inflation that would require a rapid policy tightening that, in turn, could raise the risk of an economic downturn. However, other participants noted that if a sharp rise in inflation or inflation expectations did occur, the Committee could readily respond using conventional monetary policy tools.』

失業率のロンガーランからのアンダーシュートや物価が2%を若干超える件(超えるのか、という話はさておき)に関しては、基本的には問題ないでしょというのが大勢のようですが、一部の方々からはそれはどこかでインフレがスパイクするから良くないのでは、というタカ的見解を示しているようです。

『With regard to financial stability, one participant emphasized the importance of remaining vigilant about financial developments but observed that previous episodes of elevated financial imbalances and low unemployment had limited relevance for the present situation, as the current system of financial regulation was likely more robust than that prevailing before the financial crisis.』

あと、1名(誰なんでしょうかね)は金融不均衡の問題を主張している、ということでバランスシート縮小ほどではないにせよこちらも意見結構割れている感じですね。

ということで勘弁。




2017/07/05

お題「ブルームバーグのシリーズ企画かも知れませんが今度は本田参与の発言とな/短観私家版チェック」

こ、これは・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1JV4EF
Markets | 2017年 07月 5日 04:33 JST
ECBのインフレ目標、柔軟性が必要=オーストリア中銀総裁

『[ウィーン 4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の理事会メンバーであるノボトニー・オーストリア中銀総裁は4日、ECBのインフレ目標について、過度に狭く適用されるべきではないとの見解を示した。同総裁は金融政策に関して行った講演で、インフレ目標には「ある程度の柔軟性」が必要になると述べた。』(上記URL先より)

ちなみにこんなのも。
http://jp.reuters.com/article/boe-household-prepare-idJPKBN19P28L
Business | 2017年 07月 5日 02:48 JST
英国の家計、金利上昇に備え必要=中銀金融政策委員


○今度は本田さんが黒田さんの後任関連発言とな

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-03/OSIENM6KLVR401
日銀次期総裁はアベノミクス再構築へ「清新さ必要」−本田駐スイス大使
天野高志、藤岡徹、氏兼敬子
2017年7月4日 05:00 JST

『本田氏は6月29日の電話取材で、2012年末の第2次安倍政権発足とともにアベノミクスが始まった際は金融政策を転換する「レジームチェンジが起こり、みんなが期待した」と指摘。消費増税をきっかけにデフレ脱却へ向けた勢いが失われているとし、次期総裁にはアベノミクスの初心に帰るため「レジームチェンジをきちんと再構築できる清新さと、人心を一新できる人間的魅力や誠実さが必要だ」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

・・・・・・・えーっと、「レジームチェンジが起きた」のであればそのまま無事に推移している筈なのでして、それはレジームチェンジが起きたとは言わないのではないでしょうか。

つーかさ、消費増税前って財政が思いっきり拡張方向だったし、増税前の駆け込みとかに絡んで需要が仮需も含めて出たタイミングであって、結局のところ「マネタリーショックで金融市場が動いた」以上の効果って無かったんじゃないでしょうかねえという風に思うのだが、何でもかんでも消費増税のせいにするってどこからどう見ても政策評価として正確性に欠けまして、でもってそれを前提に話をされると将来の政策運営においてまた同じような失敗をするんじゃないでしょうかねえ、と思うのだが、当の日銀も自分たちの面目玉の問題があるから消費増税ガーとか言い出しちゃうのはマジで地獄感がある。

しかしまあ、

『本田氏は、日銀は現在の金融政策の枠組みを維持すべきだと主張した。ただ低金利で地域金融機関の利潤が減少しており、金融システムを守る意味では「金融政策には限界がある」とも指摘。デフレ脱却まで財政を拡張的に運営し、金融と財政が「車の両輪として相乗効果を発揮することが大原則」と話した。』

って金融政策単独で物価目標を達成という話はどこに行ったんでしょうかというか、そこは間違えている、という話をしないでなし崩しで財政の話になってくるというのがまあインチキにも程があって、それでシムズとか出てくるというのが碌なもんじゃないですよねえ(シムズの理論がそんなに立派なら米国で先に実施すれば毎度出てくる債務上限問題とか起きないんですけど、米国がシムズ理論を取り上げない、という時点で机上の空論(ただし机上の空論なだけに空論としては見事に完結している、というのがタチが悪くて、一から十まで全くの妄言を言い出すよりも害悪度は高いと思う)ではなかろうかと思うのですが、まーたシムズみたいな「簡単に問題が解決できる海外の経済理論」に乗ってしまいそうなので却ってタチが悪いなあとは思う。


まあ何ですな、昨日ネタにした中原伸之さんのもブルームバーグでしたので、そういう点で言えば中原さんと本田さんが示し合わせて日銀次期総裁に関するキャンペーンをした、というよりはブルームバーグのシリーズ企画みたいな感じではないかとは思うのですが、ただまあブルームバーグもこういうシリーズ企画を打ってみる、となるのにはそれなりに何らかの背景というか動機があるのかも知れませんので、人事、という面で言えばまだまだこんな時期から話が具体化するようなもんではないと思いますけれども、ただまあ先ほど引用した部分でもありますけれども、本田先生も「金融政策には限界がある」と来ている訳でして、中原伸之さんはマネタリーベースと物価の関係は知らんがな位の勢いで梯子を外しに掛かっている、というのはこれ即ち「次に誰かがやるにせよ、今のままの金融政策単独で2%物価目標を早期に達成できる、という建付けを変えておかないと先々金融政策が失敗という話になってします」という認識の下で、「金融政策と財政政策(昨日ネタにした中原伸之さんのアコード再締結の話も同じ)」という形で枠組みを作り直して大風呂敷を収拾しよう、という考えにリフレ派の先生方も傾いている、という事を示しているんでしょうな。

以下妄想の世界になりますけど、たぶんそうやってQQE以降の枠組みを作り直す、ってことになるというのを考えた場合、実は黒田さんが再任だと風呂敷畳むのに都合が悪くて、従来から何気に黒田さんって頑固な面があって、恐らくそういう君子豹変的なのはやらないでしょうし、大体からして黒田さんは財政再建論者ですから、シムズっぽい話を持ち出してきて政策転換とかは梃子でも動かなくて、転向リフレ派の皆様的には都合が宜しくない人材になってしまっている、というのがあって一連の話になっているのかいな、などと思ったりするのでした。まあ妄想ですけどね。


○短観関連

ということで毎度の私家版チェック。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1706.pdf

・先行きDIの達成度合い

         (3月時点)     (6月時点)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   +12→+11     +17→+15 
製造業中堅企業  +11→+4      +12→+11        
製造業中小企業  +5→+0       +7→+6

非製造業大企業   +20→+16    +23→+18
非製造業中堅企業  +17→+10    +18→+12
非製造業中小企業  +4→▲1      +4→+7

でまあ前回、前々回ははこう書いたのですよ。。

「でもって今回ですが、特に製造業が9月時点の先行き見通しよりも現状判断が結構な上方修正になっていまして、前回も日銀ニッコリの風情だったのですが、今回は更に日銀ウマー。」(こいつが前々回12月短観時の駄文)

「今回ですけどこれどう見ても良いでしょうと思う訳でして、「前回の見通し対比で上振れ」というのは大体強めの水準になってくると先行きが慎重になるので達成度上回ったぜというのはありがちなのですが、12月短観に引き続き現状判断DIの実績値が前回調査を上回っているというのもまあ強いですよねというお話。」(こいつが前回3月短観時の駄文)

となっておりまして、今回は更に前回の先行きDIを全部において上振れている上に前回対比でも水準が上がっているし、中堅中小を中心に先行きDIの下げ方(基本的によほどの上向きモメンタムが強い時でもない限り、先行きDIって現状対比で弱く出る)が小さくなっているのが多い、とまあいいことずくめで、通常だったらこれで債券市場が盛大に反応しても良いんじゃないのと思ってしまうまな数字だと思うのですけどどうでしょうかね。

でまあ昨日も申しあげましたが、この「短観強いわ〜」って話って昨年の9月短観の所で「日銀も安心の展開」みたいな感じだったのから始まって12月以降ずーっとこれは強いわというのが3回連続となっているのですよ。でもってそうであるならば企業の所から前向きの循環メカニズムが働いて物価が上昇してウマーとなる筈がそっちは全然ならない、というのはどういう事やというお話でありまして、物価の方の見通しに関して本当に大丈夫なのか、というツッコミは飛んで来て然るべきというステージじゃないのかね、とか言いたくなります。

なお、日銀の想定問答を想定しますと、おそらく「これまでは需給ギャップがプラスに転じて居なかったので短観でみられる企業部門の好調さが物価になかなか反映していませんでしたが、いよいよこれからです」といういよいよ詐欺で目先は持つので、恐らくは今回の展望レポートにおいても目先の物価見通しは下げても先行きの物価見通しは下げないで済ませるという理屈は行けるのではないでしょうか。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  ▲8→▲9       ▲10→▲11
製造業中堅企業 ▲17→▲17      ▲17→▲20
製造業中小企業 ▲19→▲19      ▲17→▲24

非製造業大企業   ▲22→▲22    ▲21→▲23
非製造業中堅企業  ▲32→▲33    ▲31→▲34
非製造業中小企業  ▲34→▲37    ▲33→▲39

前々回、前回はこう書きました。

「でまあ今回も雇用人員判断DIはタイトなままとなっておりまして、これもまた日銀ニッコリと言いますかこれで何で賃金がもっとホイホイ上がらないのでしょうとじっと手を見るいや何でもありません。」(こいつが前々回12月短観時の駄文)

「企業の業況感は更に改善していき(先行き見通しの落ち方も小さくなっている)、おまけに雇用人員判断はタイト化、という状況なのですから、この数字だけを見るともうちょっとホイホイと賃金が上がって然るべきだと思うのですがどうしてこうなったという感は更に高まるの巻ですが、もしや賃金を抑制しながらだから企業の業況がいや何でもありません。」(こいつが前回3月短観時の駄文)

一方で昨日のニュースにもあるように、何故かここにきて人手不足が先行きの企業活動に悪影響かもというような大本営発表が出てくるというのは、つまりは企業サイドが労働に払うにしてもテンポラリーな払い方はするけれども常勤の賃金を上げるという感じではない、というのが相変わらずということを意味しているのかね〜とかじっと手を見ながら思うのでありました、トホホ。


・販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  ▲3→▲2      ▲1→▲2
製造業中小企業 ▲4→▲3      ▲4→▲3

非製造業大企業  +3→+2       +4→+2
非製造業中小企業 ▲4→▲2       ▲3→▲1



仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (3月時点)        (6月時点)
        現状→6月予測       現状→9月予測
製造業大企業   +16→+16       +13→+13
製造業中小企業  +24→+33       +26→+31

非製造業大企業  +13→+14       +12→+13
非製造業中小企業 +19→+23       +18→+23

前回はこんなことを書きました。

「でまあ今回も前回と同様の傾向になっているって感じで、販売価格判断が上がっている以上に仕入れ価格判断が上がっているという感じですが、ただまあ「前回見通し対比」で見た場合には大企業製造業以外では前回見通しと今回の判断の差分が全部上振れといっても販売と仕入でそれほど上振れ度合いに差がないので、ある意味見通し通り(見通しよりも仕入も販売も上振れたけど同じようなぶれ方なのでマージン的には計画対比無問題)という感じになっておりますが、製造業大企業はマージン減ってやがるわという所ですか。」(前回3月短観時の駄文)

今回に関してはあまり著変が無くて傾向が無い感じですな。



・需給判断DI

国内需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (3月時点)        (6月時点)
        現状→6月予測       現状→9月予測
製造業大企業  ▲8→▲9         ▲6→▲6
製造業中小企業 ▲19→▲22       ▲18→▲19


海外需給判断(「需要超過」-「供給超過」なのでプラスの方が強い)

        (3月時点)        (6月時点)
        現状→6月予測       現状→9月予測
製造業大企業  ▲4→▲3          ▲2→▲1
製造業中小企業 ▲12→▲12        ▲12→▲11


ここの数字って最近数回見ているのですが、実はあまり大きな動きが無いのでして、まー海外の需要も目に見えて上がったり下がったりしていない時期になっているからなのかも知れないので、もうちょっと様子は見たいと思いますが、イマイチ参考にならんのかも。


てな感じです。物価の話はまた明日にでもなのですが、実は金融機関のうち銀行業態の業況感が何となく悪化傾向トレンドになっている感がありまして、そらもう「日銀」短観ですからそろそろ銀行の皆様もランボー怒りのアンケート回答という事になるのかも知れません(違)。






2017/07/04

お題「幾つか書いてみたが良く見たらニュース雑談大会になっていましたorz」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170703/k10011039861000.html
都議選圧勝 小池知事 都民ファーストの会代表は退任
7月3日 11時44分

選挙の時だけ代表やってましたとか露骨に選挙狙い過ぎだわ・・・・・・・


ところで、原田大先生の発言が一般紙の話題になっておりますなあ、ナムナム。
http://www.asahi.com/articles/ASK7354FQK73ULFA01B.html
日銀審議委員の「ヒトラー発言」、ユダヤ人権団体が憂慮
2017年7月3日17時26分

なお、ヒトラー云々の前に根本的講演の内容がゴミクズ過ぎるのだがこっちばっかりクローズアップされてしまっておじちゃんは残念でしゅ。


○都議選結果に反応するよりも海外金利ですかそうですか

・都議選結果に反応していないようで反応しているようで(たぶんしてない)

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JU2DL
Markets | 2017年 07月 3日 15:13 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利0.080%に低下

『 <15:10> 国債先物は小反発、長期金利0.080%に低下

長期国債先物は小反発。前週末に大きく下落した反動に加えて、日銀の国債買い入れで需給が締まるとの思惑から買いが先行した。オペは総じて無難な結果に収まったことから底堅さを見せる一方で、10年債入札を翌日に控えたポジション調整が上値を抑えた。前週末の米債安の影響は限られた。』(上記URL先より、以下同様)

「日銀の国債買い入れで需給が締まるとの思惑から」ってのは書くネタがありません、と言っているのと同じ(だって輪番オペは事前に日程が通知されてるんですから思惑もへったくれもない)ですな。

『現物債市場は高安まちまち。超長期ゾーンは6日の30年債入札を意識した持ち高調整が入る一方で、中期ゾーンはやや強めになった日銀オペを反映して2年債利回りに低下圧力がかかった。2日の東京都議会議員選挙は、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が圧勝する一方、自民党は歴史的な惨敗を喫したが、市場での反応は限られた。また、6月日銀短観は、材料視されるまでに至らなかった。長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比5銭高の150円16銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比0.5bp低下の0.080%。』(上記URL先より)

「超長期ゾーンは6日の30年債入札を意識した持ち高調整が入る一方で」ってその前に今日は10年入札があるのにそっちの調整は入らないのかよ、とか(別にロイターさんに悪態をついている訳ではないのですが)後付け理由を考えるのも苦労するという感じではありますが、入札に向けた云々とはあまり関係なくここもと超長期が重いということでツイストっぽいとかそういう事でしょうな。

でもって株式市場は平均株価上昇の巻とかやっていまして、結局週末に海外金利が上がって円安チックになっている方に反応するとなってしまって反応のしようが無かったという感じでしょうか良く分からんけど。


・・・・・・・とは言いましても、まあここから政治方面がどうにかなるというような話になりますと、元より黒田日銀って安倍ちゃんと一体みたいな建付けになっていますから、そうなりますと政策がこのままで居られるか、まあ緩和政策そのものが止まるということはありえない(物価が2%達成するなら別問題ですがどうせ達成しない)のですが、今となっては何のためにやっているのか良く分からないマイナス金利とかリスク性資産の買入とか、10年金利が0%近辺というような緩和政策のうち極端な部分って今後どうなるの(そもそも今の正副総裁も来年の春までですし)ってはお話に繋がるか、というのはあるでしょ。とは思うのですけどね。

まーそうでなくても今の正副総裁の後をどうするのか、という話の中で安倍ちゃん安泰としても政策をこのままやって行けるものなのか(2%行かないですからねえ)という問題もあるでしょうし、冷静に考えればポスト黒田(まあポスト黒田が黒田さんの可能性もありますけど)で政策の大風呂敷をどう収拾するのか、というのもちったあ真面目に検討しておかないといけない(あと9か月だし)のですが、そういうのが政治の先行きが不透明になると動きにくくなってしまうかもね、とは思います。


・海外金利が上昇とな

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1JU4Z8
Markets | 2017年 07月 4日 04:19 JST
UPDATE 1-米金融・債券市場=利回り上昇、ISM指数好調で追加利上げ観測高まる

『米金融・債券市場では国債利回りが上昇した。朝方発表された米供給管理協会(ISM)の6月の製造業景気指数が好調だったことで連邦準備理事会(FRB)が年内に追加利上げを実施するとの観測が高まり、中でも2年債利回りは約8年ぶりの水準に上昇した。米供給管理協会(ISM)が発表した6月の製造業景気指数は57.8と前月の54.9から上昇し、2014年8月以来約3年ぶりの高水準となった。市場予想の55.2も上回った。』(上記URL先より)

つーことで、
10年債(指標銘柄 14時05分 100*07.50 2.3481%)
2年債(指標銘柄  13時04分 99*21.75 1.4141%)

とか割とお洒落な事になっておりまして、これですと都議選云々とか関係なくて海外の方でさてどうでしょというお話になるんでしょう。そして大体イベントネタで3日も関係なく相場が推移するとイベントは消化済み、ということになるので都議選の直接的な影響は無かったという評価になりますなこりゃ。



○まーたリフレ派の方が梯子を盛大に外しているのだが

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-02/OSC6OC6S972801
黒田総裁は「お辞めいただいた方がよい」、斬新さ欠けると中原氏
日高正裕、野原良明
2017年7月3日 05:00 JST 更新日時 2017年7月3日 10:31 JST

『安倍晋三首相と長年にわたりパイプを持つ元日本銀行審議委員の中原伸之氏(82)は、任期満了まで残り1年を切った黒田東彦総裁の再任が取り沙汰されていることについて、「長くやっていると惰性に陥り斬新なアイデアが湧きにくくなる」と述べ、「お辞めいただいた方がよい」との見方を示した。』(上記URL先より、以下同様)

えーっとすいません、「長くやっていると惰性に陥り斬新なアイデアが湧きにくくなる」とのことですが、そもそもリフレ派の皆様におかれましては「世界標準の金融政策を実施すれば物価2%のインフレ目標が達成されてデフレで起きた問題もたちどころに解決」という宣伝になっていた筈で、「世界標準の政策」を実施するのに「斬新なアイデア」は別に必要では無いと思うのですが何を仰せなのでしょうか。

『中原氏は「マネタリーベースは欧米と遜色ない500兆円に近づいており、異次元緩和をこれ以上続けることと、2%の物価目標達成との間にどのような関係があるのか」と首をかしげる。』

・・・・・( ゚д゚)

『物価上昇率とマネタリーベースの関係は「インフレ期待に働き掛ける以外は、まだ理論的に証明されていない」として、政府との間で新たなアコードを策定する際に「ゼロから見直したほうがよい」と述べた。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

そのインフレ期待が安定して上がってこないんですけれども、という話は兎も角として、以前は中原さんこういう話をしていたのですが。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-01-17/MZIQ4T6JIJW201
中原元委員:日銀は追加緩和余地ある、マネタリーベース300兆円も
池田祐美、Kevin Buckland
2014年1月17日 15:39 JST

ちなみに上記URL先を見ますと、

『中原氏は、「デフレ心理を脱却したことは日本経済にプラスだと思 う。2%の物価目標達成は可能だ」と指摘した。一方、「賃上げは必ずしも必要ではなく後で良い。物価目標を達成するのが先だ」とし、幅広い賃金上昇は日銀の2%物価目標の達成後に起きるとの見方を示した。』(上記URL先より)

ということで、賃金の上昇の前に物価目標が達成されるという辺りは今になってみますと大変に味わいが深いですな。


しかしまあ何ですな、結局リフレ派の皆様が主張されていた世界標準の金融政策で物価2%は金融政策単独で達成できて、それによって世の中バラ色という話が実際にやってみたらこの有様、と思いっきりこの4年で示された訳でして(なお余談だがQQEの初期って前の政策の効果じゃないのという感じですし、そういう点ではまだ1年位先になってみないともしかしたら2%行ったでーとなるのかも知れないですけど、少なくとも「2年で達成」というのは机上の空論だったのは明らか)、そういう結果に対して中原さんの場合は一応向き合った発言である、というのはまだ評価できるということかも知れませんが、しかしまあこの盛大な梯子外しっぷりには涙がちょちょ切れてしまいます。


・・・・・・・・しかしまあ

『物価上昇率とマネタリーベースの関係は「インフレ期待に働き掛ける以外は、まだ理論的に証明されていない」として、政府との間で新たなアコードを策定する際に「ゼロから見直したほうがよい」と述べた。』(再掲、昨日のインタビュー記事の方より)

ってことで、物価上昇率とマネタリーベースの関係について「ゼロから見直したほうがよい」という話を中原さんが打ち込んできている、というのはやはり今の大風呂敷政策に関して、短期的に物価目標達成が出来ないのにこういう短期決戦型の政策を打ち込み続ける事に対する無理というのを(そら日銀審議委員やっていたし、どこぞのジンバブエ先生みたいな学習しない人とは大違いなんですから実務的に長期継続が無理というのは分かっているでしょうよ)感じていて、短期決戦型の政策フレームワークを中長期的に持続可能な政策フレームワークにしましょう、というのを考えているんでしょうから、そーなりますと安倍ちゃんやっぱり盤石、という事になったとしても、来年に向けては大風呂敷の収拾に向けたサムシング、というのは意識されるんじゃないですかねえという気はだいぶしてくるのであります。


なお、話が別になりますが、

『中原氏がETF購入から撤退するための「秘策」として挙げるのが、企業の自社株買いの利用だ。日銀は保有株を「企業が買い取らなければ市場で売る、それが嫌であれば自社株をお引き取りくださいと言えばよい」。もし企業に資金がなければ、日銀が銀行経由で融資することも考えられるという。「今も銀行の貸し出しを増やすため、日銀が資金の面倒をみている」と語る。』(最初にURLを出した昨日付の中原さんインタビュー記事より)

という事なのですが、秘策もへったくれも場で外すのでなければ自社株買いにぶつけるしかないのですから(ETFをバラして個別にしてから個別の自社株買いにぶつけるという形ですが、自社株買いしない所にはどうするんだという大問題が残る)普通に思いつく話ですけれども、「企業が買い取らなければ市場で売る、それが嫌であれば自社株をお引き取りくださいと言えばよい。」ってどこのグリーンメーラーだよという話もありますし、頼んでも居ないのに日銀がホイホイ株を買っていきなりその予定も無い先に「自社株を買え」って企業の資本政策に関して何をお考えなのかと頭が痛いですし、「今も銀行の貸し出しを増やすため、日銀が資金の面倒をみている」って何か物凄く勘違いしている発言があって、ETFの収拾しようとして却ってハチャメチャな事になりそうな悪寒がします・・・・・・・・・


○やっと短観だが時間がないので(大汗)短観内容は明日で関連で気になったお話(ニュース雑談)

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1706.pdf
短観(概要)―2017年6月― 

短観の内容自体は今回強いじゃんと思ったので、まあ良いニュースでしょ(問題はこの企業マインドの好調さがトリクルダウンして来ないので前向きの循環メカニズムが力強く働いてこない、ということなのですが)と思ったのですが、ニュースでの報道がこれ。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170704/k10011040701000.html
深刻な人手不足続く 企業活動への影響懸念 日銀短観
7月4日 4時24分

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

『日銀が3日に発表した短観=企業短期経済観測調査では、人手不足を示す指数が引き続き25年前の平成4年以来の高い水準にとどまり、今後、企業活動への影響の広がりが懸念されます。』(上記URL先より、以下同様)

って何でこういう報道になるのやらなのですが、以下ちょっと拝読しますと・・・・・・

『日銀が3日に発表した今回の短観では、従業員の数が「過剰」と答えた割合から「不足」と答えた割合を差し引いた指数が大幅なマイナスとなりました。これは人手が足りないと感じている企業が多いことを示し、このうち、大企業はマイナス16ポイントと、前回、3か月前の調査よりマイナス幅が1ポイント拡大しました。また、中小企業はマイナス幅が前回より1ポイント縮小しましたが、マイナス27ポイントと高止まりしています。』

毎度毎度ネタにしておりますように、短観の雇用人員判断はずーっと強い状態が続いておりまして、何を今更という感じなのですよね。

『その結果、全体では前回の調査と同じマイナス25ポイントとなり、企業の人手不足感は引き続き25年前の平成4年以来の高い水準にとどまっています。』

『人手不足はすでに宅配や外食、小売り業界などで深刻化していますが、人口減少が進む中、抜本的な改善策が見いだせないだけに、今後、物流コストの上昇などを通じ、さまざまな企業への影響の広がりが懸念されます。』

というような話になっているのですが、「だったら労働分配を引き上げろ」で済む話ではないかと思う訳で、これが賃金インフレでも起きているんだったら懸念するという話になると思いますが(それも懸念するべき話なのかは良く分からんですが)、別に労働分配率が顕著に上がっている訳でもない(つーか下がってるだろ)という状況なのにこういう話題になる、というのに妙な違和感を思いっきり感じたのでメモを置いておきます。

#短観の計数関係は価格関連の今日のと合わせて明日にでも








2017/07/03

お題「円債市場久々に動きましたな/その他雑談少々」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170703/k10011039331000.html
東京都議選 小池知事を支持する勢力が過半数 自民は大敗
7月3日 3時19分

都議会のチェック機能ガーとか言って議会批判をしていた知事が翼賛政党作るという時点でお前は何を言ってるんだという感じでしたが、第一党になっちゃうとか二元代表制の意味が無いんですがそれはorzorz

#まあこれまでもチェック機能果たして無かったのでそのままということでしょうが

まあ出たとこ勝負で考えるという所ではありますが、安倍ちゃんアチャーという感じではありますので、株式市場が反応するんでしょうか。債券市場がどう反応するのか分からんけれども今の日銀政策自体がアベノミクス緩和みたいなもんなので、(1)安倍ちゃんあばばばばーなので政策の見直しコース、(2)安倍ちゃん危うしなので経済で復活ということで追加緩和なりのサポートキタコレコース、というどちらでも作文が出来るので中々アレ。

#都議選ニュース追っかけるのに忙しかったので今日は簡単メモモードですいません

○久々に円債市場が息をしましたな

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JR2EH
Markets | 2017年 06月 30日 15:21 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、長期金利0.085%と3月15日以来の高水準

『[東京 30日 ロイター] -

<15:17> 国債先物は大幅続落、長期金利0.085%と3月15日以来の高水準

長期国債先物は大幅続落。前日の海外市場で、欧州の中央銀行が緩和的な政策を後退させる公算が大きいとの見方から、欧米債が下落した流れを引き継いだ。後場は甘い日銀オペ結果を嫌気した海外勢を巻き込んだ売り圧力が強まり、一時3月15日以来の低水準となる150円03銭まで下落した。

現物債も金利に強い上昇圧力がかかった。10年債利回りは3月15日以来となる0.085%、30年債利回りは4月6日以来となる0.855%、20年債利回りは5月12日以来となる0.600%にそれぞれ急上昇する場面があった。国債先物が軟化するなか、来週の10年債、30年債入札に向けた調整がみられた。中期ゾーンもさえない。

長期国債先物中心限月9月限の大引けは、前営業日比33銭安の150円11銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比3bp上昇の0.085%。』(上記URL先より)

ということで何か知らんがECBフォーラムでの色々な発言に関して木曜になって急に海外金利が反応してきて、それを受けてだか何だか知りませんが甘く推移した挙句に長期輪番が弱めで後場一段安という図に。

つーてもまあ先物40銭とか本来なら少し動きましたなあ程度の話ではあるのですが、何せここのところ全然ウゴカンチ会長状態だったのでいやー動きましたねーという所ですし、10年8.5bpな上に一応昨日の結果を受けた債券が売りで入ってくると10bpが見えてくるのでさてどうするんでしょ、というのはオモシロ展開ではございますな、うんうん。



○国債買入は現状維持

http://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1JR35I
Markets | 2017年 06月 30日 17:19 JST
〔マーケットアイ〕金利:7月日銀国債買入は全ゾーンで据え置き、市場想定通り

これ出た時に先物戻っていたので(上記URL先にもありますが)もしかして減額を懸念していた人がいたのかと思ったのですが、相場水準が金曜の引けレベルになっている中だとそらまあ減額という数字は出しにくかろうという感じですね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2017/rel170630e.pdf

6月の最終回の買入オファーと比較する。

短期:500〜1500(1000億円)
中期1-3年:2000〜3000(2800億円)
中期3-5年:2500〜3500(3000億円)
長期:3500〜5500(4500億円)
超長期10-25年:1500〜2500(2000億円)
超長期25-40年:500〜1500(1000億円)
物国:250(250億円)
変国:1000(1000億円)

そもそも上記ロイターニュースにもあるように全ゾーン据え置きという結果になりまして、金利が低い状態だったらホイホイ減らせるのでしょうけれども、さすがに10年8.5bpまで金利が上がった日に輪番減らすというのは勢い付けてしまうので無理です。

一方で海外は
http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-lautenschlaeger-idJPL3N1JR44H
Markets | 2017年 06月 30日 20:37 JST
UPDATE 1-ECB緩和解除、準備始めておくべき=ラウテンシュレーガー理事

だの、

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1JR56X
Markets | 2017年 07月 1日 06:11 JST
米金融・債券市場=国債利回り上昇、FRBの利上げ計画遅れずとの見方

だの(10年やっと2.3%に届きましたな)という展開になっておりまして、東京都議選の結果が円債の売りになるのか買いになるのか釈然としにくい所ではありますけれども、本来はこういう感じで海外の金利が上がってくると、比較的金利が上がりにくい日本という材料がクローズアップされてくるので円安に行きやすくて物価上昇圧力が高まりやすくなってウマーという絵が描けるのですけれども、今回の場合はそもそも安倍ちゃんまたピンチ来々軒というネタが円高に振れるネタにされてしまったりすると意味ナッシングになってしまうのでその辺りも微妙なのでさてどうなるのやらという所ですな。


ちなみに短国ですけれども、

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、7月末の残高を26〜28兆円程度とすることをめどとしつつ、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』

なのですが、6月は27−29兆円で入ってきたものの結局28兆円近く(ざっくり計算すると多分27.8兆円程度)で着地させていた筈なので、7月も一応2兆円近くまで減らす余地は残しているけれども、まあそこまで減らしてくるのかどうかは中短期の金利がどの程度になるかを見ながら、という事になるのでしょうか。

しかしまあ何ですな、毎度申し上げていますように、YCC突っ込んだときには短期の所がもっと深いマイナスになっていたので「政策金利▲10bp、10年0bp」というのでも据わりは悪く無かったのですが、短国の所を普通になるように持って行けば、短国の金利自体が超過準備のペナルティ金利水準よりも若干高い所で落ち着いてしまうのが当然(全くの余談ですが、昔は何だかんだ言って短国金利が当座預金付利よりも低い金利にあったのは、日銀当座預金付利金利の恩恵が無い人(投信とか)がプラス利回りならば購入する、というのがあったのだが、今はマイナス金利なのでマイナス金利よりもマイナスが少なくないと買う意味が存在しない)となりますが、そうなった時に10年の0%(事実上10bpになっていますけど)っていうのはやはりこう無理がある(特に中期の金利に関して)と思うので、政策の持続性を高める為には何とかした方が良い(一番手っ取り早いのは10年の許容レンジを10bp拡大することだが)のではないかという気はだいぶするけど難しいでしょうな。


○ところでジンバブエ先生

何か結構なおおごとになったようで。

https://www.reuters.com/article/us-japan-hitler-idUSKBN19K1KT
LIFESTYLE | Thu Jun 29, 2017 | 8:30am EDT
Japanese central banker praises Hitler's economic policies

ロイターの題名がド直球過ぎる訳でそら問題になるわ・・・・・・・

『A Bank of Japan policymaker praised Adolf Hitler's economic policies on Thursday, but said they enabled the Nazi dictator to do "horrible" things to the world.』(上記URL先より、以下同様)

あちゃー。

『Yutaka Harada, a member of the board of Japan's central bank, said Western policymakers helped bring Hitler to power by being slow to apply John Maynard Keynes' proposals to fight the Great Depression. Hitler had taken "wonderful" fiscal and monetary stimulus steps, which in turn led to "something horrible for the world" as his strengthened grip on power led to the Holocaust and massive human casualties during World War Two, Harada said in a seminar on monetary policy in Tokyo.』

何もヒトラー出さんでも話はできるだろと思うのですが、まあこの先生実は(アタクシも以前これ見つけてげげーと思ってURL先だけ紹介した事があるのですが)このネタは説明の定番でして、

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3727
経済の常識 VS 政策の非常識
2014年5月15日
歴史に学ぶ
インフレより怖いデフレの危険性
原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

というのに思いっきりあるのですが、ハイパーインフレではなくその後のデフレが問題だったからヒトラーが政権取ったという話になっていて、いやその前のハイパーインフレだって問題だったじゃろというような謎の議論が展開されている(要はデフレよりもハイパーインフレがマシみたいに読める説明の展開になっている)という点で2014年の頃からもジンバブエ先生だったのではないかという感じなのですよね。


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-07-01/OSE8T86TTDS001
ヒトラーの経済政策「正しい」発言に国際的な非難−日銀が謝罪声明
日高正裕
2017年7月1日 14:07 JST

『日本銀行の原田泰審議委員がナチス・ドイツ総統だったヒトラーの財政・金融政策について「正しい」などと発言したことについて、国際的な人権団体が抗議の声明を出すなど波紋が広がっており、日銀は謝罪声明を公表するなど対応に追われている。原田氏の発言に対し、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の記録保存や反ユダヤ主義の監視を行っている「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」は6月30日、「深く憂慮する。日本のエリートはホロコーストについて教育が必要だ」とする声明をウェブサイトに掲載した。』

『問題の発言は29日の講演で飛び出した。金融緩和は将来の需要を前倒しするだけだという批判に対し、世界大恐慌時に積極的な財政・金融政策の必要性を説いたケインズを例に出して反論。その中で、「ドイツでケインズの言葉通りにやったのがヒトラー政権だ。ヒトラーが正しい金融・財政政策をしてしまったことによって、かえって世界が悪くなった」と述べた。続けて、「ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったけれども、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう」と指摘。「彼が正しい財政・金融政策をやったが故に、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーの前の人たちがやればよかった」と語った。いずれも日銀のウェブサイトに掲載された講演録にはないアドリブだった。』(上記URL先より)

ということで、金曜に超大作ツッコミを行いましたが、最後のケインズを引用した所でその話をしたようで何だよそれという所ですが、いずれにしても政策当局者の持ち出す譬えとしては相当に慎重であるべき案件なのですからちょっと・・・・・・・・・・・・・


でまあ、

http://jp.reuters.com/article/harada-boj-apology-idJPKBN19L1DC
Business | 2017年 06月 30日 19:40 JST
ヒトラーの政策を正当化する意図ない=原田日銀委員が謝罪

ということにはなったようですが、アタクシがせっかく(?????)散々ツッコミを入れた講演で、内容の方も相当のハチャメチャ状態で、「批判に対する反論」をしているうちに反論が益々ハチャメチャになっていくという内容そのものもかなりの規模で問題なのですが、そっちの問題がヒトラーネタで全部持って行かれた感がありましてアタクシはトンビに油揚げを攫われた感じでありますわ。


ちなみにこのハチャメチャ講演ですが、
http://www.boj.or.jp/en/whatsnew/index.htm/
News List

を見ますと講演の英訳バージョンは無いようです。そらまああれだけ意味不明の内容だと英訳できんわな、とは思いますが、英訳した講演テキストが無いからまた海外の方では裏の取りようもないというのが・・・・・・

なお、「ニュースの社会科学的な裏側」さんが
http://www.anlyznews.com/2017/06/blog-post_30.html
2017年6月30日金曜日
原田泰日銀審議委員のナチスの経済政策の政治効果の認識でおかしいところ

って指摘をしていますのでご参考までに。