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2018/11/30

お題「昨日のパウエル講演ネタの追記ネタ的な何か/政井審議員福岡金懇から/FOMC議事要旨から」

FOMC議事要旨があり地区連銀総裁の講演ありですが、昨日の話の続きから唐突に参ります。

〇昨日のパウエル講演ネタの続きというか何というか

昨日のパウエル講演の報道で物凄い勢いで気になったのですが、朝からいきなり細々調べられなかったので昨晩の夜なべ作業でちょっと調べた件があるのよ。

つまりね、
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN1NX2BM
2018年11月29日 / 02:36
米FRB議長「中立金利若干下回る」、利上げ終了前倒し示唆か

『[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、政策金利は中立金利を「若干下回る」水準にあるとの認識を示した。』

『2カ月足らず前には、中立水準にはおそらく「程遠い」との見方を示しており、利上げ終了時期が早まった可能性を示唆したもようだ。ニューヨークで講演した。 政策金利は足元2─2.25%。中立金利は9月時点での推計レンジが2.5─3.5%。 パウエル議長は、物価安定と最大雇用のFRBの二大責務の達成に「近い」と述べ、米経済見通しには「多くの好材料」が存在するとの見解を示した。 FRBは「底堅い」成長が続き、低失業のほかインフレが目標の2%近辺と見通す中でも、経済指標を「非常に」注視していると説明した。』(上記URL先より)

ってのあったじゃん。ただこの時にそんなにネタになったっけとか思いますと、確かにSEPとか受けて中立金利よりも高い水準まで利上げするかもしれまへんで的な話は(FOMC後の会見で)していましたんで、まあ今回の講演は9月FOMC以降しばらくの威勢の良さからはトーンダウンしているのは確かなんですけど、ベースラインの話って前日のクラリダ副議長とそんなに変わらんのではないかとか、そもそもが2.75-3.00が中心なのに「程遠い」って言うかいなと思ってちと調べてみたんですよ。

でまあセントルイス連銀のお役立ちページ
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak

https://www.stlouisfed.org/fomcspeak/jerome-powell
を見ますとパウエル議長の講演などへのリンクがペタペタ貼ってある訳ですが、10月頭のパウエルと言えば講演の方はだいぶネタになりましたが、こちらはアタクシも駄文のネタにしましたですわ。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20181002a.htm
October 02, 2018
Monetary Policy and Risk Management at a Time of Low Inflation and Low Unemployment
Chairman Jerome H. Powell
At the "Revolution or Evolution? Reexamining Economic Paradigms" 60th Annual Meeting of the National Association for Business Economics, Boston, Massachusetts

でもって「程遠い」云々のニュースってのはその次の3日の話でして、ニュース見ると題名がそのものズバリなのはCNBCのこちら↓でして、

https://www.cnbc.com/2018/10/03/powell-says-were-a-long-way-from-neutral-on-interest-rates.html
Powell says we're 'a long way' from neutral on interest rates, indicating more hikes are coming

『In a question-and-answer session Wednesday with Judy Woodruff of PBS, Powell said the Fed no longer needs the policies that were in place that pulled the economy out of the financial crisis malaise.』

『"The really extremely accommodative low interest rates that we needed when the economy was quite weak, we don't need those anymore. They're not appropriate anymore," Powell said.』

『Interest rates are still accommodative, but we're gradually moving to a place where they will be neutral," he added. "We may go past neutral, but we're a long way from neutral at this point, probably."』(以上直上のHTML先となるCNBCウェブサイトより)

ブルームバーグだとこんな感じ。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-10-03/powell-says-fed-to-keep-hiking-at-gradual-pace-amid-solid-growth
Powell Says Fed May Lift Rates to Levels That Restrain Growth
・The U.S. is enjoying ‘positive set of economic circumstances’
・Rates probably still a long ways away from neutral level

(こちらはどうも記事10本までしかただで見れないらしいので引用は控えときます)

でして、物件は
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak/jerome-powell

Oct 03, 2018
Interview, The Atlantic Ideas Festival, Fed Chair Jay Powell: U.S. may be in a different era for workers’
wages despite economic gains
ってあるリンク先にあります、

https://www.pbs.org/newshour/show/fed-chair-jay-powell-u-s-may-be-in-a-different-era-for-workers-wages-despite-economic-gains#transcript
Fed Chair Jay Powell: U.S. may be in a different era for workers’ wages despite economic gains
Oct 3, 2018 6:35 PM EST
のようなんですな。

でもって『Read the Full Transcript』ってのを見ますと、「"We may go past neutral, but we're a long way from neutral at this point, probably."」っていうのが無くて、音声も聞ける(トップのところが動画になっている)ので最初から最後まで(と言っても画面にあるように13分3秒ですが)聞いてみたんですが、『Read the Full Transcript』に書いてあることと同じ(「is」みたいなのが抜けている部分はあるけど)でして、金利に関する質疑って

『Judy Woodruff:

Now, let's talk about something - I guess your favorite subject, interest rates. Right now, it seems to me half the world is worried that you are raising rates too slowly. They say growth is so strong, the labor markets are so tight, inflation could take off.

The other half of the world doesn't want you to raise rates at all or as much as you are. They argue you are widening the inequality gaps that are already out there, that, as we have been discussing, wages are too low.

You obviously think you're threading the needle about right. But what makes you so sure?』

『Jay Powell:

So it sounds like we're doing something right.

I will talk about the two risks that you mentioned. So the first risk is that we - that we move too quickly and we prematurely end the expansion, and inflation never gets solidly back to 2 percent.

And that's always a risk at this point in the cycle, where the economy has been growing now for nine years. It's in its 10th year of growth.

The alternative risk is that we move too quickly - too slowly - sorry - and the - too slowly - and the economy overheats. And that can show up in the form of too high inflation or financial market imbalances and that kind of thing.

So you look at those two risks. So, for a long, long time after the financial crisis, the second risk wasn't a risk at all. We were far away from full employment and inflation was below target. So, we kept rates low for a long, long time. We kept them at zero for a long time.

And we had a lot of advice to move more quickly and raise interest rates. And I'm very happy we didn't follow that advice, because I think it benefited the country, benefited workers and their families.

So, now we have come to a situation where unemployment, as I mentioned, is close to a 20-year low and headed lower, by all accounts. And the really extraordinarily accommodative low interest rates that we needed when the economy was quite weak, we don't need those anymore. They're not appropriate anymore.

We need interest rates to be gradually, very gradually moving back towards normal.』(以上直上URL先のPBSウェブサイトより、以下同様)

(ちなみに動画だと6分58秒くらいから8分57秒くらい)

となっていまして、むしろ「And we had a lot of advice to move more quickly and raise interest rates. And I'm very happy we didn't follow that advice, because I think it benefited the country, benefited workers and their families.」とか言っているんですがとは思いますが、動画に出ていない部分で言ってる可能性はある(一つだけじゃなくて複数のメディアが報道しているので)かなあとか思うのは、この公開インタビュー(というか対談というか)の最初でJudy Woodruffさんが、『So, as we sit here on October 3, 2018, we seem to be in a Goldilocks economy.』といった後、最後の所でも、

『Judy Woodruff:
Meanwhile, we're in Goldilocks time.

Jay Powell:
Your words, not mine.
(LAUGHTER)』

とか思いっきり最初と最後に「ゴルディロックス」というパウエル議長の琴線に触れる煽り文句を入れておりまして(というかわざと煽っているんだと思いますが)、売り言葉に買い言葉で利上げトーンの強い発言をしている(けど編集が入っている)というのはあるのかもね、とは思います。

ちなみにアトランティックマガジン社のサイトですと、
https://www.theatlantic.com/politics/archive/2018/10/federal-reserve-chair-jerome-powell-ignoring-trump/572110/
The Atlantic Festival 2018
The Federal Reserve Chair Is Ignoring President Trump
Jerome Powell foresees the economy continuing to grow and isn’t concerned about what politicians say.
David A. Graham
Oct 3, 2018

ってなっていまして、こちらも「we're a long way from neutral at this point」な話は無かったりしますので、公式文書的なもの(というか確認可能なアーカイブというか)には残っていないという所になっております。


まあそれ以前の問題として、今般の講演の「just below」にしたって、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20181128a.htm
November 28, 2018
The Federal Reserve's Framework for Monitoring Financial Stability
Chairman Jerome H. Powell
At The Economic Club of New York, New York, New York

『Interest rates are still low by historical standards, and they remain just below the broad range of estimates of the level that would be neutral for the economy--that is, neither speeding up nor slowing down growth.』(昨日引用した時に外字部分が??になっておりましてすいませんでした)

「just below」と「of the level that would be neutral for the economy」の間に、「the broad range of estimates」ってのが入っている訳で、それは2.5%−3.5%になりますので、そらジャストビローだわさ、という事になりますが、もちろんその部分がサービスフレーズになる、というのは意識して言っていると思いますので、見せ方としてハトな見せ方をしよう、という意図はあるのは確かだと思いますが、「2.5%〜3.5%のレンジの下限からみたらわずかに低いと言っているが2.5%で利上げを止めるとは誰も行ってませんが何か?」とすっとぼけることは全然問題ない仕掛けになっているので、12月上げたら利上げ停止だヒャッハーみたいに盛り上がるのはさすがにやりすぎというか、昨日(というか書いているの夜なべなので今日ですが、笑)書いたように、これで利上げ打ち止めヒャッハーとか言って株とかクレジットとかが強くなってくるとまた盛大に水をぶっかけられるという図になるだけの話で、ただまあ金利が急騰したり株が暴落したりするのは困るから、適当にその辺はリスク資産市場の動向を見ながらリアクティブに水ぶっかけたりサービスフレーズ出してみたりの繰り返しになるんじゃないですかねえ。

ただまあ中立金利が近くなっているのは事実(そら利上げ継続してるんですから)なので、どこで利上げを止めるのか、または途中でペースを落とすのか、というのについてはちと頭悩ませているのかもしれませんですなあ、とは思うのでありました。まあ現状では3.5%とかそういう所まで上げる感じは出していない、というのはあると思いますけど。

#とこれだけ書いておいて一晩明けたらFOMC議事要旨で話が全然変わっていたら正直泣きます


〇YOUは何しに日銀へ??

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko181129a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko181129a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
福岡県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 政井 貴子
2018年11月29日

・どこから見ても展望レポート棒読みにしか見えませんが金融政策の説明を一応読んでみる

でまあ金懇は最初PDF版だけアップされるのですが、その後でHTML版が出るというのが最近の仕様になっているのですが、コピペしやすいのでHTMLの方から引用・・・・・しようと思った訳ですが、これがまた日銀公式見解というか展望レポートの話から全然出ていないという代物。

でまあ以上それまで、とか言いたくなるのを我慢して『III.日本銀行の金融政策』を見ますと・・・・・・・・

『1.基本的な考え方』ってのが最初にありまして、

『(1)強力な金融緩和の継続』というのが最初の小見出し。

『ここまで、わが国の経済・物価情勢についてお話してきました。続いて、日本銀行の金融政策についてご説明します。』

『日本銀行は、長年続いたデフレを克服するため、2013年4月に、「量的・質的金融緩和」というそれまでにない非常に強力な金融緩和政策を導入しました。その後も、日本銀行は、きわめて緩和的な金融環境を維持することにより、企業や家計の経済活動をサポートし、需給ギャップの改善に貢献してきました。現状では、わが国の経済は大幅に改善し、物価面でも、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなっています。』

はいはいそうですか。

『先ほど申し上げたように、現在、わが国の基調としての物価は、景気の拡大に比べて、弱めの動きを続けています。もっとも、需給ギャップの改善を起点とする物価上昇メカニズムは作動し続けており、2%に向けたモメンタムは失われてはいません。したがって、現在の極めて緩和的な金融環境を息長く続けることにより、プラスの需給ギャップをできるだけ長く持続させ、前向きのモメンタムを途切れさせないようにすることが適当だと思います。具体的には、2016年9月に導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要だと考えています。』

もちろんこの「長短金利操作」の中に短期金利部分として日銀当座預金の政策金利残高部分に▲0.1%を適用する、というのが含まれているので、マイナス金利政策の話も入っているには入っているのですけれども・・・・・・

『なお、この枠組みは、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」という2つの要素から成り立っています。「イールドカーブ・コントロール」とは、長短金利を低位に安定させることを目的として、短期政策金利を「▲0.1%」、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」とする金融市場調節方針を定め、これを実現するよう国債の買入れを行う政策です。また、「オーバーシュート型コミットメント」とは、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベース、つまり日本銀行が直接供給するお金の総量を拡大し続けることを約束するというものです。これにより、「物価安定の目標」の実現に対する人々の信認を高めることを狙っています。』

ということで、まあ声明文のほうでも「マイナス金利政策」という言葉を使っていませんよ、と言ってしまえばそれまでですけれども、「マイナス金利」というのをできるだけ出さないような言い方をしている、というこのマイナス金利の不評を受けた説明には侘び寂びの世界を感じるものであります。


・副作用の話もしているがどうみても通り一遍

『(2)政策の効果と副作用』というのがありまして、

『金融緩和には、景気を刺激する効果がある一方、長期間にわたって金利全般が低位で推移すると、国債市場の機能や金融機関の収益にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。』

というのから始まっていますが、別に金利が低位だから市場機能が無くなる訳ではなくて、国債の馬鹿買入に加えてマイナス金利と来てYCCがとどめを刺しているんですけれども、まあこういう説明になる辺りが通り一遍感を強くするのでありました。

『このため、日本銀行としては、政策の効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討し、コストとベネフィットをきめ細かく点検しながら、政策を進めていく必要があると考えています。』

はいはいそうですか。

『このような問題意識のもとで、日本銀行は、その時々の状況に応じた、強力な金融緩和を推進してきましたが、7月末の金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みをさらに強化することとし、政策金利の「フォワードガイダンス」を導入するとともに、金融市場調節や資産の買入れを弾力的に運営することを決定しました(図表8)。例えば、長期金利については、「ゼロ%程度」という操作目標を維持しつつ、実際の金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうることを示しました。また、ETFについても、年間約6兆円の買入れ目標を維持しつつ、市場の状況に応じて買入れ額を上下に変動しうることとしました。こうした弾力的な措置が、市場機能を維持することに繋がっていくと考えています。』

繋がりません。

『今後も、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて、十分注視のうえ、「物価安定の目標」の実現に向けて、経済・物価・金融情勢を踏まえて、適切な金融政策運営を行っていきたいと考えています。』

とまあそういう話で終わるのですけね。


・強いて言えば最後の最後だけ何となく何かあるかも知れん

でもって最後が『2.経済構造の変化への対応』という小見出しでして、その最後のパラグラフが、

『中央銀行が対峙している現実の経済は非常に複雑であり、時間とともにダイナミックに変化しています。教科書に載っている経済理論などはもちろん大切ですし、過去の経験を分析することも大変重要です。しかしながら、当局や各種の経済主体が意思決定を行う際には、例えば経済モデルでは必ずしも描写しきれないこうした構造変化など、様々な要因についても目配りしたうえで、今何をすべきかを模索し続けていくことが求められていると感じています。』

という辺りが、置物直線一気理論(なお置物直線一気理論が教科書に載っている経済理論なのかというとそれはそれ)によるリフレ理論だぜガハハハハハというのは採りませんよ、という話がありますなあ、というのだけ見どころといえば見どころなのかもしれません。

つーことでまあ会見要旨が出るのを待つしかありません(がベンダーのヘッドライン的には期待薄)ですな。なお題名に深い意味はありません(棒読み)。


〇ということで寝起きでFOMC議事要旨:クラリダ、パウエルと来た講演と平仄があっている感じがします

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20181108.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20181108.pdf

・例によってインスタント読みですがとりあえず正常化の着地点を考えているのは把握した

実はインスタント読みマンの前に頭の部分で思いっきり読んでしまったのがあって(後述)、そっちに引っ掛かっていたので超インスタントモードになってしまいましたが(汗)、『Participants' View on Current Conditions and the Economic Outlook』のケツのパラグラフから逆順に読んでみます(ので話の繋がりが読みにくくてすいません)。

ということで上記小見出しコーナーの最終パラグラフから参ります。

『Participants emphasized that the Committee's approach to setting the stance of policy should be importantly guided by incoming data and their implications for the economic outlook.』

先々の金融政策運営は新たなデータを見ながらどうのこうの、という話ですが以下出てくるのは一般的な話ではなくて今後の運営という話なのでまあ味わいがある。

『They noted that their expectations for the path of the federal funds rate were based on their current assessment of the economic outlook.』

皆さんの経済見通しに伴う金利見通しについてノートしたとな。

『Monetary policy was not on a preset course; if incoming information prompted meaningful reassessments of the economic outlook and attendant risks, either to the upside or the downside, their policy outlook would change.』

政策は事前に決められたコースで運営する訳ではないって話は一般的な話でもありますが、次にあるように割と具体的な話をしているっぽい。

『Various factors such as the recent tightening in financial conditions, risks in the global outlook, and some signs of slowing in interest-sensitive sectors of the economy on the one hand, and further indicators of tightness in labor markets and possible inflationary pressures, on the other hand, were noted in this context.』

ファイナンシャルコンディションのタイト化(ちなみに上の方のパラグラフでもその話isある)とか、金利上昇による影響とか、海外経済のリスクなどがマイナスというか利上げ遅らせる要因で、一方では労働市場の更なるタイト化とかインフレ圧力とかが利上げを早める要因と。

『Participants also commented on how the Committee's communications in its postmeeting statement might need to be revised at coming meetings, particularly the language referring to the Committee's expectations for "further gradual increases" in the target range for the federal funds rate.』

声明文の先行きの金利ガイダンス部分に現在ある、政策金利の"further gradual increases"を想定するという文言を削除するかどうかについての議論があったというキタコレですが、

『Many participants indicated that it might be appropriate at some upcoming meetings to begin to transition to statement language that placed greater emphasis on the evaluation of incoming data in assessing the economic and policy outlook; such a change would help to convey the Committee's flexible approach in responding to changing economic circumstances.』

多くの参加者は「この先の数回のFOMCの時点で」この文言を変更することによって、政策の柔軟性を確保することができると示唆した、ということでして、上の方に次回12月利上げは確定というのが明らかになっておりますので、そうなると3月だとあと3回、6月だとあと5回先になりますが、まあこの文言からすると、とりあえずは3%超までFF金利を上げてくるイメージになってなくて、財政刺激で景気上ぶれヒャッハーとかインフレ圧力が拡大するとか株価が盛大に上がるとかがあれば別で、その場合は正常化とは別件の「正常化した後の微調整」みたいな感じでの利上げってステージになるのかね、という感じでしょうか。

ただまあ何度も申し上げていますが(こちらでも上の方を見ると書かれているのですが)この時点では足元の状況としてファイナンシャルコンディションがややタイト化している、という認識を示して、それゆえ慎重化している、という面がありまして、このファイナンシャルコンディションってのが曲者でして、利上げ打ち止め感が強まるとヒャッハーと緩和されてしまうし、中立よりも上に金利上げまっせと来るとタイト化するという代物になるので、結果的には来年のFED高官からの情報発信って市場の動きに対してリアクティブにそれを止める方向(株高金利低下だとタカ発言、株安金利上昇だとハト発言)になって、一々振り回されるでござるの巻になりそうですな。

ということで最終パラでしたがその一つ前に戻る。

『Consistent with their judgment that a gradual approach to policy normalization remained appropriate, almost all participants expressed the view that another increase in the target range for the federal funds rate was likely to be warranted fairly soon if incoming information on the labor market and inflation was in line with or stronger than their current expectations.』

「almost all」の参加者は12月利上げを支持。

『However, a few participants, while viewing further gradual increases in the target range of the federal funds rate as likely to be appropriate, expressed uncertainty about the timing of such increases.』

『A couple of participants noted that the federal funds rate might currently be near its neutral level and that further increases in the federal funds rate could unduly slow the expansion of economic activity and put downward pressure on inflation and inflation expectations.』

2名が利上げ反対。利上げ論者の中でも次回ですーと決め打ちするほどの自信はないよというのが数名(a few)。


もう一丁前。

『In their discussion of monetary policy, participants agreed that it would be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate at this meeting.』

今回は据え置き。

『Participants generally judged that the economy had been evolving about as they had anticipated, with economic activity rising at a strong rate, labor market conditions continuing to strengthen, and inflation running at or near the Committee's longer-run objective. Almost all participants reaffirmed the view that further gradual increases in the target range for the federal funds rate would likely be consistent with sustaining the Committee's objectives of maximum employment and price stability.』

参加者は経済がオントラックで推移していて、今後も徐々に利上げをすることが適切であるとおおむね一致しました、とのことで、でもってさっき引用したように「あと数回したらfurther gradual increasesという文言には変更かねえ」という話をしているという事で、まあ要するにこれはクラリダ副議長、パウエル議長の先日来の講演と平仄取れている、というか講演の方がFOMCでの議論を受けて平仄合わせているんでしょうが。

という辺りまでが金利政策の話、その前に行きますよ。ファイナンシャルスタビリティの話が2パラほどある。


・ファイナンシャルコンディションとファイナンシャルスタビリティ

『Among those who commented on financial stability, a number cited possible risks related to elevated CRE prices, narrow corporate bond spreads, or strong issuance of leveraged loans.』

という風に始まっているように、この前のパラグラフもファイナンシャルなんとか、ということで前の方ではファイナンシャルコンディションの話をしています。でもって商業用不動産価格とか社債のスプレッドの低さとかレバレッジドローンの拡大とかが懸念されると何人かの委員が指摘していますな。

でもって話ちょっと逸れますけど、これって実は米国が利上げすれば済むかというと、実は大緩和している欧州や日本などからせっせと資金流入が行われていたりすると、その辺がザルモードになってしまうのではないかという気もするので、ファイナンシャルスタビリティで特にクレジットとかを気にするんだったら、実は欧州や日本に文句垂れた方が早いのではないでしょうか、とか何とか妄想をしてしまいました。

『A few participants suggested that some of these financial vulnerabilities might not currently represent risks to financial stability so much as they represent downside risks to the economic outlook; a couple of participants suggested that financial stability risks and risks to the outlook are interconnected. A couple of participants also commented on the upcoming release of the Board's first public Financial Stability Report and noted that the report would increase the transparency of the Federal Reserve's financial stability work as well as enhance communications on this topic.』

現状これらの問題が金融システム上の問題になるほどの大きさではないという認識ですが、問題が大きくなった場合には経済の見通しにも影響する話ですなあということで、昨日でたFRBのFSRでこれらに関する見方を示して世の中と認識を共有するのが重要なコミュニケーションポリシーの1つになるでしょう、と割とイイハナシダナーなお話っすな。

ではもう一つ戻ります。

『In their discussion of financial developments, participants observed that financial conditions tightened over the intermeeting period, as equity prices declined, longer-term yields and borrowing costs for most sectors increased, and the foreign exchange value of the dollar rose.』

ファイナンシャルコンディションについては、前回会合の時よりもタイト化しているとの認識。なおその要因は株価が下がったり長期金利が上がったり多くのセクターにおける借入金利が上がったり、ドル高になったり、ということですので、そらお前らが「財政刺激による景気上振れの可能性があるので、中立金利よりも上に利上げするかも知れませんぜグヘヘヘヘ」って情報発信するからそうなるんだろいい加減にしろこのマッチポンプ軍団、という所ではありまして、最近の所から一連の情報発信でゴルディロックスヒャッハーになったらまたポンプ車が登場するでしょうという読み筋はこういうリアクティブな反応を見てアタクシがそう思っている、という個人の感想ではありますがどうでしょうかね。

『Despite these developments, a number of participants judged that financial conditions remained accommodative relative to historical norms.』

とは言いましてもファイナンシャルコンディション自体はヒストリカルに見れば緩和状態とな。


でもってもう一つ前に戻ると経済の話のコーナーになりまして、先行きの不確実性とリスクの話のパラグラフになりますのでそこまで鑑賞しておきましょう。


・経済の上下リスクに関する記述を確認

『Participants commented on a number of risks and uncertainties associated with their outlook for economic activity, the labor market, and inflation over the medium term.』

ほいな。

『A few participants indicated that uncertainty had increased recently, pointing to the high levels of uncertainty regarding the effects of fiscal and trade policies on economic activity and inflation.』

財政と貿易戦争のテンションの影響が益々ワカランチ会長になってきたとの認識を数名(A few)が示す。

『Some participants viewed economic and financial developments abroad, including the possibility of further appreciation of the U.S. dollar, as posing downside risks for domestic economic growth and inflation.』

海外の金融環境とかドルの上昇が米国経済やインフレにダウンサイドリスクと数名(Some)が示す。

『A couple of participants expressed the concern that measures of inflation expectations would remain low, particularly if economic growth slowed more than expected.』

2名がインフレ期待って実はまだそんなに上がってなくて、もし成長が想定よりも減速したらアカンのとちゃいますかと指摘。

『Several participants were concerned that the high level of debt in the nonfinancial business sector, and especially the high level of leveraged loans, made the economy more vulnerable to a sharp pullback in credit availability, which could exacerbate the effects of a negative shock on economic activity.』

数名(Several)は非金融セクターの負債のレベルが高いこと、特にレバレッジドローンのレベルが高いことに関して、いったん事があれば巻き戻しでエライコッチャになるんじゃないでしょうかとの指摘(これは金融引き締めろ方向の話になる方ですが)。

『The potential for an escalation in tariffs or trade tensions was also cited as a factor that could slow economic growth more than expected.』

貿易戦争のテンションの高まりは経済成長を鈍化させるファクターですよね、とこれは何人かとかいうのが無いので、皆さんの同意できそうな(同意したとは書いてないけど)見解ですと。

『With regard to upside risks, participants noted that greater-than-expected effects of fiscal stimulus and high consumer confidence could lead to stronger-than-expected economic outcomes.』

次にアップサイドリスクの話になっておりまして、財政刺激効果が想定以上に出ること、より高くなっている消費者信頼感が経済を想定以上に引き上げる可能性が指摘されています。こちらはおおむね一致の見解という感じで。

『Some participants raised the concern that tightening resource utilization in conjunction with an increase in the ability of firms to pass through increases in tariffs or in other input costs to consumer prices could generate undesirable upward pressure on inflation.』

数名(Some)の参加者は経済の稼働状況がタイトニングしている中において、追加関税やら投入コストの増加が価格に転嫁されることによって、望ましくないインフレ上昇圧力を発生させうる点を懸念しているとな。

『In general, participants agreed that risks to the outlook appeared roughly balanced.』

ということで、以上を勘案してリスクはバランスということになっているのですが、分量的に下振れの方が大きくないか???という感じもだいぶするんですが、確かにファイナンシャルコンディションから来る部分って利上げ加速観測が後退したら緩和される部分でもあるので、まあどうなんでしょとは思いますが、今回はこの上下リスクを細々書きましたなあという感じです。


・短期市場金利のコントロールに関して(別のコーナーになります)

でもって実は今回のFOMC議事要旨なんですが、もうちょっとじっくり読めるかなあ(夜なべ効果による)とも思ったりしてたのですが、最初の部分に思いっきりこれは孔明の罠(でも何でもないのですが)があって、『Long-Run Monetary Policy Implementation Frameworks』というそんな餌に俺様が釣られクマーという小見出しがあって盛大に釣られて読みふけってしまいまして、お蔭で『Participants' View on Current Conditions and the Economic Outlook』の読み込みが平常運転になるという有様。

でですな、この話がかなりマニアの皆さんには面白い話(裏を返せば別にマニアじゃない人が読んでも「ソーホワット?」って代物)になるのですが、これをやっているとどこからどう見ても時間が足りなくなるので涙を呑んで本日はパスしますが、なんと8パラグラフもある大物でして、じゃあ何の話をしているかという話だけしておきます。

『Long-Run Monetary Policy Implementation Frameworks』って題名なのですが、実際に出ている議論は「短期市場金利を運営するのにどうやりますか」という話で、それフレームワークちゃうやろとは思うのですが、まあそれはそれとしまして、超過準備をどのようにしていくか、という点について、金融危機前と金融危機以降(つまり今)の金融機関の予備的超過準備需要に関する調査結果とかを踏まえて、じゃあどうしましょうかみたいな話をしているのと、市場の現状として、インターバンクの資金の出しがファニーメイとかフレディーマックとかのFederal Home Loan Banks (FHLBs)がドミナントな状態になっているとか、その手の短期市場スキーの皆さんを思いっきりホイホイ(別にホイホイを狙っている議論ではありません、念のため^^)するような話が続いているのですが、これはネタにするのには割と量がありますよ、ということで本日はパスさせていただきます。興味のある方は冒頭のところ(本当の冒頭には誰が出席しただのとか言うのが延々と続いていましてその次になります)にありますのでご覧あれ。


#まあ最初の奴はあまり無駄にはなっていないような気がするのでホッと一息






2018/11/29

お題「パウエル講演とFEDが満を持して(かどうか知らんが)出したFSRとな」

何ちゅうタイミングで砲撃するんですか。
http://bunshun.jp/articles/-/9830
(お題は敢えて引用しない)

http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
公表予定
29(木)
8:50 ○ ● 製造業部門別投入・産出物価指数(10月)
10:30 ○ 【挨拶】政井審議委員(福岡)

ただ文春Webのリードだけ見ても「で?」という感じではあるのですがさて・・・・・・・(個人の第一印象です)


〇FRBのFSRキタコレとかパウエル講演とか

・肝心の講演本題の前に現世利益編:多分あと3回利上げしたらあとは出たとこ勝負って奴ではないかと

まずは現世利益のネタはロイターさんのニュースで安直に確認。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN1NX2BM
2018年11月29日 / 02:36
米FRB議長「中立金利若干下回る」、利上げ終了前倒し示唆か

『[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、政策金利は中立金利を「若干下回る」水準にあるとの認識を示した。』

『2カ月足らず前には、中立水準にはおそらく「程遠い」との見方を示しており、利上げ終了時期が早まった可能性を示唆したもようだ。ニューヨークで講演した。 政策金利は足元2─2.25%。中立金利は9月時点での推計レンジが2.5─3.5%。 パウエル議長は、物価安定と最大雇用のFRBの二大責務の達成に「近い」と述べ、米経済見通しには「多くの好材料」が存在するとの見解を示した。 FRBは「底堅い」成長が続き、低失業のほかインフレが目標の2%近辺と見通す中でも、経済指標を「非常に」注視していると説明した。』(上記URL先より)

ということでまあ講演の方は後程。

https://jp.reuters.com/article/instantview-fed-idJPKCN1NX2QE?il=0
2018年11月29日 / 06:01
米FRB議長、利上げ終了前倒し示唆か:識者はこうみる

前半はさっきと同じなのですが、識者とやらの最初のが、

『●利上げ休止示唆か、想定下回る可能性
<サントラスト・アドバイザリー・サービシズ(アトランタ)の米国マクロ・ストラテジスト、マイケル・スコルデレス氏>

政策の道筋をあらかじめ定めていないとの文言が重要だ。米連邦準備理事会(FRB)が必要なら(利上げを)休止するという、やや明確なシグナルを市場に送った可能性がある。データ次第という姿勢は市場が聞きたかったポイントだ。(利上げは)機械的な操作で行うものではない。インフレ動向や成長指標、諸外国の動向はどうか。何か他の動向が鈍化すれば、想定したほど多く利上げを行う必要もない。2019年に(予想どおり4回の)利上げに踏み切るかは疑わしい。2、3回にとどまる可能性もある。 』(上記URL先より)

っていう解説があったのでナンジャソラと思ったんだが、そもそもFF先物の織り込みとこの人の説明全然違くねえかという話でして、来年2回利上げして2.75-3.00のレンジにしたところで一旦様子見モードになるってのは既にそれ市場織り込んでるんじゃネーノと思うのだが、どうもこの米国債券市場の「金利見通し」ってのが相変わらずワケワカランわと思うのでした。

えーっとですな、10年が3.3%くらいまで上がった時というのは「中立よりも若干上の水準まで金利を上げる」という絵が9月のSEPで明確に出てきて、しかもそんな威勢の良い話をエバンス辺りが思いっきりしていて、もともと市場が織り込んでいる利上げ見通しが低かった(9月のSEPの前ってうっかりすると12月利上げ無しという話だってあった訳ですよな)のを修正に掛かった時期だったと思いますし、大体からして2019年の利上げが4回だと思ったら10年のUSTが3%そこそこって事はねえだろいい加減にしろと思うので、このコメントは外れ値だとは思うのですけれども、なんか他の何とかストも似たようなコメントしていて、どうもこう米国市場の金利見通しネタって米国債券市場の価格形成を見ながら「市場はこう考えているんだろうなー」というのと全然違うコメントが何とかストからホイホイと出てくるんでしょと不思議で不思議でしょうがないのですが、そんなの気にする方が悪いということですかそうですか。


・パウエル講演の基本は金融安定化の話なんですけどね

つーことで講演なんですけどね。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20181128a.htm
November 28, 2018
The Federal Reserve's Framework for Monitoring Financial Stability
Chairman Jerome H. Powell
At The Economic Club of New York, New York, New York

ご覧の通りでファイナンシャルスタビリティの話でして、この次にネタにしますがFRBのFSRってのが出てきているのですが(なお当たり前だが寝起きで斜め読みできる量ではない)、基本はそっちの話をしておりまして、その中の一部に金融政策ネタがあるところが大々的にニュースネタになる、というのはまあ仕方がないのではありますがちとショボーンって感じではありますな。

とか何とかいいながらも結局現世利益ということで目先の損益に影響する金利の話に飛びつくのはアタクシも同じなので人の事は言えません(爆)。

では講演の頭の方から。

『It is a pleasure to be back at the Economic Club of New York. I will begin by briefly reviewing the outlook for the economy, and then turn to a discussion of financial stability.』

はい。

『My main subject today will be the profound transformation since the Global Financial Crisis in the Federal Reserve's approach to monitoring and addressing financial stability.』

しかしこのメインサブジェクトはニュースのネタにならない悲しさ。

『Today marks the publication of the Board of Governors' first Financial Stability Report.』

FSRの部分イタリック体になっています。

『Earlier this month, we published our first Supervision and Regulation Report. Together, these reports contain a wealth of information on our approach to financial stability and to financial regulation more broadly. By clearly and transparently explaining our policies, we aim to strengthen the foundation of democratic legitimacy that enables the Fed to serve the needs of the American public.』

ということで初企画なのですがその物件については後程。では現世利益編に参ります。『Outlook and Monetary Policy』って小見出しから。

『Congress assigned the Federal Reserve the job of promoting maximum employment and price stability. I am pleased to say that our economy is now close to both of those objectives. The unemployment rate is 3.7 percent, a 49-year low, and many other measures of labor market strength are at or near historic bests. Inflation is near our 2 percent target. The economy is growing at an annual rate of about 3 percent, well above most estimates of its longer-run trend.』

「I am pleased to say that our economy is now close to both of those objectives」というのは最近毎度言っていますが、まあワシントンの馬鹿が五月蠅いからそれを踏まえて強調しているのではないか、というようなコメントが出てくるのもシャーナイ所はありますな。

『For seven years during the crisis and its painful aftermath, the Federal Open Market Committee (FOMC) kept our policy interest rate unprecedentedly low--in fact, near zero--to support the economy as it struggled to recover. The health of the economy gradually but steadily improved, and about three years ago the FOMC judged that the interests of households and businesses, of savers and borrowers, were no longer best served by such extraordinarily low rates. We therefore began to raise our policy rate gradually toward levels that are more normal in a healthy economy.』

とまあここまではよいとして次が報道ネタになった部分。

『Interest rates are still low by historical standards, and they remain just below the broad range of estimates of the level that would be neutral for the economy??that is, neither speeding up nor slowing down growth.』

ここが「just below」だからヒャッハーというような解説がさっきのロイターなどではあった訳ですが、これって、基本的には昨日のクラリダ副議長のとそんなに変わらなくて、とりあえず中立金利とみられるところまでは利上げしまっせという話でもあると思いますし、大体からして既に「2.75-3.00まで利上げするけどそこで一旦打ち止め」っていうのは市場織り込み済みじゃないのかねと思う次第なんですが。

いやまあそういう意味で言えば、確かに9月FOMCの後に10月前半とかやたら威勢が良くて、中立金利よりも若干高い所まで金利を上げるという話をしていたのですが、あの時って背景に財政による刺激が上ぶれ要因って話をしていたし、株式市場はヒャッハーヒャッハー言っていた時期なので、そういうのが落ち着いてきて、ついでにワシントンの馬鹿が中国相手に馬鹿踊りをしているので中立よりも上まで上げんでもという風になった、というところではあるのでしょうが、まあそのあたりで市場ちゃんの放って急激に政策金利の見方が変わっているという程でもない(しょせん米国10年金利で3.0-3.3%のレンジワークですから利上げ1回分になるかならんかくらいの差だわさ)ので、何とかスト反応し過ぎじゃヴォケとは思いますが。

でもって後でちょこっとだけネタにしますが、FSRの方でも何かそれ違うだろとは思うのですが、リスク要因という奴が貿易とかの話になっているので、直近では経済の過熱に関しても懸念がやや落ちてきた、って感じで、中立手前で利上げサイクルが止まるってのもなさそう(そらまあ中立金利が2.5とかに下げられたら別ですが、そこまでの事はないでしょ、と思うんだが)なんですけどね。まあ寧ろUST市場の方が冷静に反応していると思われ。

『My FOMC colleagues and I, as well as many private-sector economists, are forecasting continued solid growth, low unemployment, and inflation near 2 percent.』

まあそれはSEPでも講演でも出ている話。

『There is a great deal to like about this outlook. But we know that things often turn out to be quite different from even the most careful forecasts. For this reason, sound policymaking is as much about managing risks as it is about responding to the baseline forecast. Our gradual pace of raising interest rates has been an exercise in balancing risks. We know that moving too fast would risk shortening the expansion. We also know that moving too slowly--keeping interest rates too low for too long--could risk other distortions in the form of higher inflation or destabilizing financial imbalances.』

昨日もクラリダ講演ネタで申し上げましたが利上げ遅れると「destabilizing financial imbalances」ってのがあって、その思いで今回FSR出しているんですから、まあとりあえず中立金利までは上げていくでしょうし、ゴルディロックスヒャッハー相場にはしたくないというのはあると思うんだがそこのところは見方は色々とあると思うので個人の感想ですって奴で。

『Our path of gradual increases has been designed to balance these two risks, both of which we must take seriously.』

でもって現世利益の最後から2番目のパラグラフに入る。

『We also know that the economic effects of our gradual rate increases are uncertain, and may take a year or more to be fully realized. While FOMC participants' projections are based on our best assessments of the outlook, there is no preset policy path. We will be paying very close attention to what incoming economic and financial data are telling us. As always, our decisions on monetary policy will be designed to keep the economy on track in light of the changing outlook for jobs and inflation.』

『Under the dual mandate, jobs and inflation are the Fed's meat and potatoes. In the rest of my comments, I will focus on financial stability--a topic that has always been on the menu, but that, since the crisis, has become a more integral part of the meal.』

いつもと言っていることはそんなに変わらなくて、金融政策の効果にはラグがあるから、バランスもってデータディペンデントなアプローチって話をしていて、昨日ネタにしたクラリダ副議長の「データ見ながら中立水準がどこなのかというのを点検」というのと同じで、まあ慎重には遣っていくと思うのですが、明らかに緩和的という水準で止めるというのはちょっとしないんじゃネーノと思います。ですからまあ今の所2.75-3.00までやって様子見ながら考えるって感じ(それを受けてゴルディロックスヒャッハーになるとまた冷やしてくる)ってところではないかと思います(個人の感想です^^)。


でもって本当の本題の部分ですが現世利益重視の為本日はパスしまして(後日ネタにするかもしれませんが)、そこは小見出しだけ見ておきましょう。

Historical Perspective on Financial Stability
The New Approach to Financial Stability
 Building Resilience of the Financial System
 A New Framework for Monitoring Systemic Risks
 Monitoring Likely Triggers for Financial Distress
 Bottom Line: Financial Stability Risks Are Moderate

まあ大体そうですなというようなお話で内容の想像は付くのですが、斜め読みしかしていないのでパスしまして、いきなり最後に飛びます。『Conclusion』な。

『I'd like to conclude by putting financial stability and our two new reports in a longer-term context. To paraphrase a famous line, "eternal vigilance is the price of financial stability."』

eternal vigilanceっていうので、「常に用心する」って感じでしょうか。毎度申し上げていますが、パウエルFRBの従来との違いで一番目立つしたぶんポイントになるのはこのファイナンシャルスタビリティに関するスタンスだと思うの。

『We will publish these reports regularly as part of our vigilance.』

だそうです。

『Over time, some may be tempted to dismiss the reports entirely or to overdramatize any concerns they raise. Instead, these reports should be viewed as you might view the results of a regular health checkup. We all hope for a report that is not very exciting. Many baby boomers like me are, however, reaching an age where a good report is, "Well, there are a number of things we should keep an eye on, but all things considered you are in good health." That is how I view the Financial Stability Report out today.』

『We hope that this report and the Supervision and Regulation Report will be important tools, sharing Federal Reserve views and stimulating public dialogue regarding the stability of the financial system.』

ということなので、まあ景気がコケて来たら別ですが、今のような状態の中で高圧経済アプローチみたいなのはまず取ってこない、とみる(まあそう思う向きもさすがに少ないと思いますが)のが妥当なので、緩和政策長期化ヒャッハーと喜ぶとかいうのはさすがにちょっとという感じだと思います。


・でもってFSRですけど

https://www.federalreserve.gov/publications/financial-stability-report.htm

『This report summarizes the Federal Reserve Board’s framework for assessing the resilience of the U.S. financial system and presents the Board’s current assessment. By publishing this report, the Board intends to promote public understanding and increase transparency and accountability for the Federal Reserve’s views on this topic.』

レポートはこちら(やや重い、2M少々ある)
https://www.federalreserve.gov/publications/files/financial-stability-report-201811.pdf

でまあまだ碌に読めていない(寝起きでは無理です、汗)のですが、最後の所に『Near-term risks to the financial system』
というお題の部分があって最初に、

『Developments in domestic and international markets could pose near-term risks to the U .S . financial system . The ultimate effects of shocks arising from such developments likely depend on the vulnerabilities in the financial system identified in the previous sections of this report .』

となっていたので現世利益ヒャッハーと飛びついてみたらその中の小見出し(要は当面のリスク要因)が、

『Brexit and euro-area fiscal challenges pose risks for U.S. markets and institutions . . . 』

『. . . and problems in China and other emerging market economies could spill over to the United States 』

『Trade tensions, geopolitical uncertainty, or other developments could make investors more averse, in general, to taking risks』

ってなっていて、お前それはファイナンシャルスタビリティリスクじゃなくてただの経済のテールリスクじゃんという話をしていまして、ナンジャソラと思いましたが本チャンの方をちゃんと(というか全然)読んでいないのでまあこれも追々ネタにするという感じで。






2018/11/28

お題「クラリダ副議長講演はハトタカではなく無色っぽい感じかなあ/社債市場活性化ねえ・・・・・」

法案の内容がスッカスカとかそういう問題点の話を全然しないで、単に政局ネタとして垂れ流した後に法案通ってから急に良識派ぶって「今後の課題」をWeb特集とかでエクスキューズする、という展開まで見えますな。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181128/k10011726031000.html
外国人材法案 参院へ 与党「会期内成立」 野党「阻止したい」
2018年11月28日 4時27分



〇クラリダ副議長の講演(というかスピーチっぽい)の来ました

題名が直球過ぎてワロタ。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20181127a.htm
November 27, 2018
Data Dependence and U.S. Monetary Policy
Vice Chairman Richard H. Clarida
At The Clearing House and The Bank Policy Institute Annual Conference, New York, New York

そんなに長くなくてまあスピーチみたいなもんですが、寝起きインスタント読みマンとしては小見出しをまず見てから現世利益の高い順に読んでいく(と必然的に後ろから読むことになるのだが)というイカサマ読みをする。

まずは『Consequences for Monetary Policy』というどう見ても現世利益です本当にありがとうございました編を読む。

『What does this mean for the conduct of monetary policy?』

この「this」は当たり前ですがその前の話なのでそこの前にこの先読むとかインチキにも程がありますが、まあ大体読んでいるうちに前の部分は予想できるので気にしない気にしない。

『As the economy has moved to a neighborhood consistent with the Fed's dual-mandate objectives, risks have become more symmetric and less skewed to the downside than when the current rate cycle began three years ago.』

ほうほうそれで?

『Raising rates too quickly could unnecessarily shorten the economic expansion, while moving too slowly could result in rising inflation and inflation expectations down the road that could be costly to reverse, as well as potentially pose financial stability risks.』

パウエル議長になってからは「as well as potentially pose financial stability risks」というのが結構キーワードだと思う。というか以前の人は言うには言ってたけど後期イエレン(トランプ大統領になる前の高圧経済話が最後でトランプ以降が後期イエレンだと勝手に思っている)前はほぼ「棒読み」状態のFEDビューな人たち(正常化着手を検討していた時期に一時バーナンキがこれをネタに正常化の取っ掛かりにしていた時期がありましたなあ、と懐かしく思い出す、咄嗟に当時の理事の名前が出てこないので自分の過去ログ見たらスタイン理事でした)だったりしてましたので。

『Although the real federal funds rate today is just below the range of longer-run estimates presented in the September SEP, it is much closer to the vicinity of r* than it was when the FOMC started to remove accommodation in December 2015.』

中立金利議論キタコレ(というかその前の所で話をしているのですが、汗)。

『How close is a matter of judgment, and there is a range of views on the FOMC. As I have already stressed, r* and u* are uncertain, and I believe we should continue to update our estimates of them as new data arrive. This process of learning about r* and u* as new data arrive supports the case for gradual policy normalization, as it will allow the Fed to accumulate more information from the data about the ultimate destination for the policy rate and the unemployment rate at a time when inflation is close to our 2 percent objective.』

というので話は終了しているので、ここの現世利益部分では中立金利水準というのは不確実で、今どの位そこに近いのかとかいう話はここでは決め打ちしていないし、大体からしてFOMCの中でも意見が割れている、ということですが、まあ当然といえば当然ですけどそれを知るためにはデータを見ながら判断して行くというデータディペンデントで行かないとなりませんよね、というお話ですが、まあ「new data arrive supports the case for gradual policy normalization」とか言っているので、とりあえずいきなり利上げ止めろとかそういう話をしている訳ではなさそう、ということで一つ前に戻って確認する、というイカサマ読みをする。

『Data Dependence of Monetary Policy: What It Means and Why It Is Important』という小見出しはちと長め。

『Economic research suggests that monetary policy should be "data dependent."3 And, indeed, central banks around the world, including the Federal Reserve, often describe their policies in this way.』

データもへったくれも無くて置物直線一気理論というのもありましたな。あああれもマッカラムルールとかいうの使って当座預金残高の必要額計算してましたっけ。

『I would now like to discuss how I think about two distinct roles that data dependence should play in the formulation and communication of monetary policy.』

ということで。

『It is important to state up-front that data dependence is not, in and of itself, a monetary policy strategy.』

ほうほう。

『A monetary policy strategy must find a way to combine incoming data and a model of the economy with a healthy dose of judgment--and humility!--to formulate, and then communicate, a path for the policy rate most consistent with our policy objectives.』

クラリダ副議長は中立金利の話はしていますが、ここの言い方を見ますと(アタクシの勝手な感想になるので違っていたらゴメンやでなのですが)「ザ・中立金利」みたいなのがあって、修正テイラールールみたいなシステマティックな政策運営をするというのではなくて、経済物価データ見ながら中立金利の水準そのものの推計が動くという話ではございますな(さっきもそんな件があったけど)。

『In the case of the Fed, those objectives are assigned to us by the Congress, and they are to achieve maximum employment and price stability. Importantly, because households and firms must make long-term saving and investment decisions and because these decisions--directly or indirectly--depend on the expected future path for the policy rate, the central bank should find a way to communicate and explain how incoming data are or are not changing the expected path for the policy rate consistent with best meeting its objectives.4』

金融政策運営に関するコミュニケーションの重要性、というお話です。

『Absent such communication, inefficient divergences between public expectations and central bank intentions for the policy rate path can emerge and persist in ways that are costly to the economy when reversed.』

という辺りは常識的な話でごく普通。

『Within this general framework, let me now consider two distinct ways in which I think that the path for the federal funds rate should be data dependent. U.S. monetary policy has for some time and will, I believe, continue to be data dependent in the sense that incoming data reveal at the time of each Federal Open Market Committee (FOMC) meeting where the economy is at the time of each meeting relative to the goals of monetary policy. This information on where the economy is relative to the goals of monetary policy is an important input into the policy decision.』

『If, for example, incoming data in the months ahead were to reveal that inflation and inflation expectations are running higher than projected at present and in ways that are inconsistent with our 2 percent objective, then I would be receptive to increasing the policy rate by more than I currently expect will be necessary.』

『Data dependence in this sense is easy to understand, as it is of the type implied by a large family of policy rules in which the parameters of the economy are known.5』

出てきたデータに対して金融政策がリアクティブに反応するという部分の話ですが・・・・・・

『But what if key parameters that describe the long-run destination of the economy are unknown? This is indeed the relevant case that the FOMC and other monetary policymakers face in practice.』

『The two most important unknown parameters needed to conduct--and communicate--monetary policy are the rate of unemployment consistent with maximum employment, u*, and the riskless real rate of interest consistent with price stability, r*. As a result, in the real world, monetary policy should, I believe, be data dependent in a second sense: that incoming data can reveal at each FOMC meeting signals that will enable it to update its estimates of r* and u* in order to obtain its best estimate of where the economy is heading.6』

『And, indeed, as indicated by the SEP, FOMC participants have, over the past nearly seven years, revised their estimates of both u* and r* substantially lower as unemployment fell and real interest rates remained well below prior estimates of neutral without the rise in inflation or inflation expectations those earlier estimates would have predicted.』

『And these revisions to u* and r* almost certainly did have an important influence on the path for the policy rate that was actually realized in recent years.7 I would expect to revise my estimates of r* and u* as appropriate if incoming data on future inflation and unemployment diverge materially and persistently from my baseline projections today.』

データディペンデントというのはそのデータによって均衡失業率や中立金利水準の推計を常にアップデートしていき、それと現状の政策金利との関係でさてどうなんでしょ、というのを考えていく作業という話をしているようですな。クラリダさんの言っている理屈はまあ理屈としては分かるのですが、それどうやって推計していくんじゃろというのはありますし、プロアクティブにどうするという話の部分がイマイチ見えてこないのはあるのですが、ただまあ政策水準や経済水準がニュートラルな状態にある、というのであれば、プロアクティブにどうのこうの言いましても、「今後の展開次第で上下どちらもありまっせ」ということに理屈の上ではなってしまうので、確かにこういうような言い方になってしまうのかも知れませんが。


でですね、最初の小見出し(なんちゅうインチキ読み)の『Recent Economic Developments and the Economic Outlook』はその部分の最初と最後だけ引用しますと・・・・・・・

『U.S. economic fundamentals are robust, as indicated by strong growth in gross domestic product (GDP) and a job market that has been surprising on the upside for nearly two years. Smoothing across the first three quarters of this year, real, or inflation-adjusted, GDP growth is averaging an annual rate of 3.3 percent. Private-sector forecasts for the full year--that is, on a fourth-quarter-over-fourth-quarter basis--suggest that growth is likely to equal, or perhaps slightly exceed, 3 percent. If this occurs, GDP growth in 2018 will be the fastest recorded so far during the current expansion, which in July entered its 10th year. If, as I expect, the economic expansion continues in 2019, this will become the longest U.S. expansion in recorded history.』

とまあ普通に強いという認識の話をしていまして、途中のデータ話は全部割愛するとして先行きの部分は、

『As for the economic outlook, in the most recent Summary of Economic Projections (SEP) released in September, participants had a median projection for real GDP growth of 3.1 percent in 2018 and 2-1/2 percent in 2019. The unemployment rate was expected to decline to 3-1/2 percent next year. And, for total PCE inflation, the median projection remains near 2 percent.』

って思いっきりSEPの話をしてサラサラ流していまして、

『With a robust labor market and inflation at or close to our 2 percent inflation goal and based on the baseline economic outlook for 2019 I have just laid out, I believe monetary policy at this stage of the economic expansion should be aimed at sustaining growth and maximum employment at levels consistent with our inflation objective.』

『At this stage of the interest rate cycle, I believe it will be especially important to monitor a wide range of data as we continually assess and calibrate whether the path for the policy rate is consistent with meeting our dual-mandate objectives on a sustained basis.』

ということで、別にジャンジャン利上げしろとか利上げ止めろとかいう話もしていませんですし、「At this stage of the interest rate cycle」とか現状追認チックな表現になっているので、まあ目先の正常化路線に対して別に怪しからんとかそういう話をしている訳ではなくて、ちょっとこの前のCNBCインタビューが思いっきりハト扱いされたので変な色を出さないようにしているのかなあ、とは思いました。

〇うーんこのという社債市場ネタ

ブルームバーグがしばらく前から社債市場に対して妙な煽りキャンペーンしているのは気になっていたのですが。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-27/PITWRZ6JIJUQ01
社債市場の現状把握大きな課題、募残問題含めヒアリング−金融庁長官
中道敬、萩原ゆき、谷口崇子
2018年11月27日 11:38 JST

『金融庁の遠藤俊英長官は、社債市場の発展に向け、新発債の売れ残り(募残)などの問題点を把握するため、市場関係者からヒアリングを行う考えを明らかにした。ブルームバーグとのインタビューで語った。』(上記URL先より、以下同様)

ってまあそもそもがブルームバーグが煽っているネタなんですけどね。

『遠藤長官は、国内債券市場には圧倒的に大きな国債市場はあるものの、ポートフォリオの安定性を担保する多様な商品が存在せず、社債市場を発展させる必要があると指摘。問題点の現状把握は「大きな課題だ」と述べ、募残問題を含めた社債市場の課題について、証券会社など市場関係者からのヒアリングを検討すると同時に、活性化への取り組みも議論していく考えを示した。』

だそうなのですが、そら企業部門が資金余剰なんだから社債市場が広がらんわというマクロ的な話がありますが、それに加えまして銀行融資の方が元々圧倒的優勢なことに加えまして、すっかり話題にならない用語になりましたが、以前は「リレーションシップバンキング」とか、最近でも有価証券投資よりも本来は貸出をしなさいだの、担保などに左右されない貸出をしろだの、競合するローンに関しても振興させようとしているじゃないですかやだー。

『社債市場では一部の新発債が売れ残り、引受会社が在庫を安く一部の投資家に販売するなど「一物二価」が起きており、取引の不公正さが指摘されている。ブルームバーグの取材によれば、新発債の募残比率は4−9月平均の14%に対し、9月は29%、10月に年度最高の31%に達している。』

このブルームバーグの書き方って前からやっているのですが、「募残比率が〇〇%」とか言ってますが、各証券会社が募残を何ぼ抱えたとか分かりようがなくて、「案件の件数の中で、新発債が発行条件で完売しなかったと思われる件数の率」を出しているようなのですがとしか思えないのですが、まるで新発社債の3割が発行条件で売れなかったかのような書き方をする辺りがもうねという所で。

まあ無理くりな発行条件で受けてくる引受サイドと、とにかくコスト下げ感覚で発行条件ごり押ししてくるような一部の発行会社サイドは物凄い勢いで如何なものかとは思いますけれども、だいたいこの手の話になると何故か流通市場の価格形成がという変な方向に話が行くのが仕様になっていまして、上記記事でも「活性化への取り組み」というワードがあって、これはどう見ても流通市場の謎改革という方向になるフラグが盛大にたっているというのがもうねという感じです。

そらまあ有担保原則(超大昔)みたいな制限がガチガチにあるならともかく、制度上における発行を規制するものって国内公募社債を発行するのに際して(公募をするためのコストというのはあるけど)そこまでの話ではない(ですしレッセフェールにする必要もないでしょ)と思いますし、保管振替決済になって流通上の利便性も特段問題ない状態になっていると思うので、こういうの殊更に「市場の育成」とか力こぶ入れて市場の改革とかやりだしますと、まーた明後日の方向になってしまう可能性がと思いますし、だいたいからして発行サイドに必要があれば発行はドンドン進むし、一方で社債発行よりも銀行融資の方が有利な状態が続けばそら発行は増えんよという話であるので、こういうののデザインっていうのは単にその市場の一部分だけ見てハッスルしてもまあ的外れになってしまうんじゃないですかねえ、と思うのでありました。

なお異論は大幅にあると思いますのであくまでも個人の感想ですというだけの雑談でした。







2018/11/27

お題「利上げ慎重派の地区連銀総裁2名の発言から/置物日記日記(相変わらず出オチ部分ですが)」

おいおいもう委員会通しちゃうのかよ色々なニュースのドサクサ(銃声)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181127/k10011724641000.html
外国人材法案 与党 きょう委員会採決 野党は法相不信任案も
2018年11月27日 4時42分外国人材

『外国人材の受け入れを拡大するための法案は27日、衆議院法務委員会で採決が行われることが委員長の職権で決まり、与党側は27日中に委員会と本会議で可決し、参議院に送る方針です。野党側は採決を阻止するため山下法務大臣に対する不信任決議案の提出などを検討していて、与野党の攻防はヤマ場を迎えます。』(上記URL先より)

って全然世の中に向けた論点の説明とか無いで通してからナンジャソラとなる事案にしてもちょっとこれは問題が大きすぎると思うのだが。


〇利上げに慎重な地区連銀総裁発言を確認の巻

直近はカプランとカシュカリがそういう発言をしていますが、一方でウィリアムスとかが中和剤を入れてくるのと、足元米国だと原油とかテック系の業績とかの方がネタになっているし、まあ12月は利上げするじゃろという目先の部分まではさすがに大きくは変わっていないでしょうからというのもあって、ここもとは連銀高官発言で動くという感じでもないですわな(個人の感想です)。

なお本日のネタは例によって例のごとく
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
から拾って参りましたです。


・カプラン総裁の発言(先週水曜)

発言の方はFOXビジネスニュースで
https://www.foxbusiness.com/economy/fed-will-be-data-dependent-dallas-feds-kaplan
Fed will be 'data dependent': Dallas Fed's Kaplan
By Julia Limitone Published November 21, 2018The Fed FOXBusiness

ということですが、喋っている時間50秒でして、記事の方でカバーできているので記事を確認しますね。

『Dallas Federal Reserve President Robert Kaplan said the central bank has no plans to change its policy, despite disapproval from President Trump on the pace of interest rate hikes.』

『“I think we’re getting close or approaching a neutral, where we’re neither accommodative nor restrictive,” he told FOX Business’ Maria Bartiromo during an interview that will air Friday at 9 p.m. ET.』

でまあ発言の方は50秒くらいでアタクシの環境だと普通に見れたんですが、「現状はニュートラルにかなり近いので今後のスタンスは極めて慎重に行うべき」という話をしていました。次回上げるべきかというのはここに出ている部分では特段の言及は無かったですが、

『The Fed raised interest rates in September for the third time this year - to a range of 2 percent to 2.25 percent - and signaled it would raise borrowing costs again in December. The central bank also forecast an additional three rate hikes in 2019 and one in 2020. They have raised rates a total of eight times since 2015.』

この辺りはFOXによる説明部分。

『Trump launched an assault on the Opens a New Window. Fed last month, saying that it is his “biggest threat” because it is “raising rates too fast, and it’s too independent.”』

こちらはトランプ発言に関するネタですな。

『Kaplan said due to potential headwinds, the Fed should be patient and gradual going forward.』

『“We’re going to be - and use the lingo 'data dependent,'” he said. “And that means we’re going to be very sensitive, to talking to contacts, looking at data, understanding what’s going on with businesses, looking global.”』

『Catch the full interview on “Maria Bartiromo’s Wall Street” on Friday at 9 p.m. ET.』

ってことで詳しくはこっちの番組を見ましょうねという結論になっているのですが、そっちは見ている時間と余裕がないのでパス(というかどこを見れば良いのかあまりよくわからん、普段FOXとか見てないもんで)しますけど、まあ基本的には利上げに慎重という話をしていますな。


・カシュカリ総裁の利上げすんな発言(先週月曜)(ただし自分はアウトライヤーとも説明)

カシュカリさんのはこちら。
http://www.wbur.org/npr/669482149/its-time-to-stop-raising-interest-rates-kashkari-says
It's Time To Stop Raising Interest Rates, Kashkari Says
November 20, 2018

『The Federal Reserve is likely to raise interest rates in December. Neel Kashkari, president of the Federal Reserve Bank of Minneapolis, tells Steve Inskeep it's not the right time to do so.』

ほほーという感じですが、こちらはラジオになっていて、念のため音を確認しましたら、下にある『Transcript』と同じであることを確認できましたので音は聞かなくても無問題。

最初が前振り。

『STEVE INSKEEP, HOST:

Interest rates have been going up - not a lot, but the Federal Reserve has steadily brought up a key interest rate from near zero during the Great Recession. This is normal. As the economy improves, the Fed is supposed to use its influence over interest rates to make money a bit more expensive to borrow for a house or a car to avoid high inflation. The question is how far to go. There is a debate within the Fed, and one voice in that debate is Neel Kashkari, the president of the Federal Reserve Bank of Minneapolis, who says he would like to hold off further rate increases.』

前振りですな。

『Can you just remind people, on the most basic level, what is the one huge lever that the Fed has over interest rates?』

ということでカシュカリさんのお話。

『NEEL KASHKARI: Well, we move short-term interest rates - overnight interest rates that banks use to trade with each other to affect the trajectory of the economy. And by moving short-term interest rates up and down, longer-term interest rates, such as the rates that you get for a mortgage or that you might pay for a car loan, those end up getting affected by those short-term rates. So we have one tool, but it affects interest rates throughout the economy.』

on the most basic levelの話なのでここは当たり前の話をしている。なお極東のとある国では当たり前の話すら怪しいといういやなんでもありません。

『INSKEEP: So when you've taken part in the discussions at the Federal Open Market Committee, which decides these interest rates, is it your impression that people feel that this is a progression of upward steps that is still going, that there are more interest rate hikes in the future?』

さて・・・・・・・・

『KASHKARI: That's the current projection. So once a quarter, every three months, we put out a collection of our own estimates of what we think is going to happen to interest rates over the next couple years. Most of my colleagues are forecasting additional interest rate increases.』

ほとんどの同僚は更なる利上げを見込んでいる。

『I'm a little bit of an outlier in saying, hey, I think we ought to pause and see how the economy continues to evolve before we continue raising interest rates.』

しかし私は「ちょっと待て少し様子見たらどうじゃ」と言っているんだが、FEDの中では外れ値ですよと。

『INSKEEP: So when you call for a pause in interest rate increases, are you effectively saying the same thing that President Trump has said when he has been criticizing the Fed's leadership for raising interest rates?』

先般のトランプ発言(というか八つ当たり)は向こう的にはそれなりに話題になったんだろうなあという感じで、こちらもトランプ発言への質問が。

『KASHKARI: I think substantively, we're probably saying something similar, though I would argue our styles are somewhat different. I'm not seeing signs that the U.S. economy is overheating. So I don't think we need to pre-emptively raise interest rates.』

別に景気がコケると思っていなくて、プリエンティブな利上げがイラネと言っているんですよ。まあ似たような話をしているけど、違う部分もありまっせ、だそうな。

『INSKEEP: Those of us who are laymen out in the economy, do we have to assume that a recession is coming sooner or later and maybe even sooner because the economic recovery has gone on for so long?』

ふむ。

『KASHKARI: Well, you know, my former colleague and our former chairwoman, Janet Yellen, famously said that economic expansions don't die of old age.』

ほうほう。

『So there's no reason that it has to end just because it's been going on for a long time. In fact, one of my concerns is that if we pre-emptively raise interest rates and it's not in fact necessary, we might be the cause of ending the expansion and triggering that recession.』

景気サイクルという考え方をするのではないという感じの話をしていますな。まあ直観的にそれもわからんでもなくて、これまでの景気サイクルという考え方と違った動きが続いているのは事実としてあるのですが、それをそのまま金融政策運営に使うと結局ゴルディロックスヒャッハー相場が資産市場に起きないのか、という気はだいぶするのですが、カシュカリさんそちらに関する言及は特にないので、まあこの辺りはバックグラウンドとか感覚の問題になってくる話で、誰が正しいのかというのは事後的になってみないと分からない(もしかしたら事後的にもわからないかも知れない)世界なんでしょうな。

質問は続く。

『INSKEEP: How did the Fed's decisions on interest rates ultimately affect what the federal government can do and how much the federal government has to pay in interest?』

まあここの答えは基本的に当たり前の話をしているんだが、でも「利上げすると財政の支出に抑制要因」って話をするのは中銀の人としては割と斬新(あまりそこは触れない)な希ガス。

『KASHKARI: Well, if we continue raising interest rates, and if we need to because the economy is heating up and if inflation picks up, that will lead to higher borrowing costs for the U.S. government, for the Treasury Department and more debt service. So they have to make interest payments every month on the debt that they've accumulated. As interest rates go up, their interest payments go up. And then that crowds out other things they might want to spend on.』

利払い費が上がると他に使える財政資金が減るとな。

『So if Congress or the White House want to spend on education or health care or defense, there's going to be less money for that because they have to service the debt. Now, that's up to them. We're not at the Fed. We're not making interest rate decisions to make Treasury's job easier or Congress's job easier.』

とは言いましても別に財政助けるために金利をどうこうする訳ではない、と言っていまして、質問が上記のようだから、答えが単に素直に答えただけ、とも言えますけど、こういう言い方をするのはちょっと微妙に地雷に片足掛かっているようには思えますけどどうなんでしょ。

『INSKEEP: But I wonder if there can be a self-destructive spiral here. The federal government increases the deficit through spending or tax cuts. That overheats the economy. You then have to raise interest rates. And suddenly, the federal government is stuck with huge interest rates and all the money they just borrowed.』

話を振っておいて財政爆発懸念の方に質問を振るとは何とも。

『KASHKARI: That's a very possible long-term outcome. And that's why, in the long term, we absolutely have to get our fiscal house in order. And if you look at other countries, that happens. That happens in Argentina. That happens in other emerging market countries. It's happening to some degree in Italy or in Turkey. So it absolutely can happen.』

『There's no evidence that that's going to happen in America anytime soon. Treasury is still borrowing at very low rates, about 3 1/4 percent for a 10-year loan, from the public. So that's the good news, but we don't know how much longer this can go on.』

そらそういうこともありますが米国では懸念なし、という当たり前の結論でお話は終了しています。とりあえず利上げに関して慎重なのと、景気循環に関して「ピークアウトがいつ来る」というような考えではない(それはそれでグレートモデレーションちっくになる話なのでどうなのかなあとは思うけど)というのは把握した。


〇置物日記日記:「2年で辞任」発言の真意という思いっきり冒頭部分で・・・・・・・・

さてこの不毛な置物日記日記ですが、何せ最初が「2年で辞任」発言の真意説明という言い訳になっておりまして、置物日記を読みますと何となく筋が通っているように見えるのですが、どうみてもそれは違うんじゃなかろうか、と疑問を呈したくなるのでご報告を。

以下(岩田(2018))となっているのは
「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著」 筑摩書房 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500E
からの引用です(縦書きを横書きに直し、漢数字をアラビア数字にしております。引用者はタイポ等慎重に確認しておりますが、引用ミスがあるかもしれません、なお文章の趣旨に関わる重大な引用ミスはない筈です)。

ということで本日は置物日記初日の2013年3月21日という栄光の日付になりますが、こちらの10ページから辞任発言に関する言い訳が連ねられています。以下鑑賞しましょう。本書の10ページの後半から11ページのほぼ最後までになります。

『ここでは、この国会での所信説明における辞任発言を正確に示しておこう。』(岩田(2018))

『2013年3月5日、衆議院民主党(当時)の津村啓介議員から「そこで、お伺いしたいんです。一つは、2年と仰るのは、この就任の3月から2年後、つまり再来年の春ということでよろしいのかというのが一点。それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか」という質問を受け、次のように答えた。』(岩田(2018))

『「それは当然、就任してからの2年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております」』(岩田(2018))

『この回答で、私が「その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども」と述べたのは、私の頭の中には。「責任のとり方は、達成できなかった理由によって異なり、その理由が軽い順に、叱責、減給、職務一時停止などがあるが、重大な自分の政策選択の誤りの場合には、最高の責任のとり方は辞職である」という考えがあった。』(岩田(2018))

『後から考えると、日本銀行法によれば、日銀副総裁ととしての内部組織運営上のミスであれば、叱責、減給、職務一時停止などの責任のとり方はあり得るが、「金融政策運営に関する責任のとり方は、説明責任しかなく、その説明が2年で達成できなかった合理的理由になっておらず、政策選択の誤りであった場合には、責任のとり方は最高の、つまり、それ以上の責任のとり方はありえない辞職である」と誤解のないように言うべきだった。端的に言えば、「説明責任が果たせない場合は、辞職」なのである。これが辞任発言の真意であるから、「2年で2%達成できなかった場合には、辞職する」とはいわず、「最高の(引用者注:この部分強調の傍点入り)責任のとり方は辞職だ」といったのである。ここで重要なポイントは、責任のとり方は、2%を2年で達成できなかった理由によって異なる、ということである。だからこそ、単に「責任」とは言わず、「最高の責任」というように、「最高の」という修飾語を付けたのである。』(岩田(2018))

当該国会での議事録はこちらになります。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/183/0020/18303050020012a.html
第12号 平成25年3月5日
第183回国会 議院運営委員会 第12号
平成二十五年三月五日(火曜日)
    午前十時三十分開議
(直リンで飛ぶはずですが駄目な場合は国会会議録検索システムで検索してちょ)

でまあ当該部分の議事は確かに置物日記の記載通りですが、念のため当該部分を引用しましょう。(以下『』をつけると見にくくなるので(引用開始)(引用終了)にします。元ネタは上記URLの国会会議録です、なお適宜改行を行っています)

(引用開始)
○津村委員 はい。失礼いたしました。

 二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。

 そこで、お伺いしたいんです。

 一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。  それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。

○岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。

○津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。

○岩田参考人 それで結構でございます。
(引用終了)

・・・・・・とまあここだけ見ると置物日記の通りですな、とかつい勘違いしたくなるのですが、実はこの津村委員の質問の最初の「マンデート」とか「市場が信頼」という辺りに関しては、置物師匠の主張を受けての部分というのがありまして、それは上記質疑の前の部分にあるのですよ。そこを見ますと・・・・・・・・・(質疑の冒頭から引用します)

(引用開始)
○佐田委員長 次に、津村啓介君。

○津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 岩田さんに幾つか御質問をさせていただきます。

 まず最初は、日銀法の改正についてでございます。

 かねてから岩田参考人は、現行日銀法は大変問題があるということで盛んに改正を主張されてきましたが、今回の人事案提示後も重ねてその御主張をされているように報道されております。

 きのうの黒田総裁候補は、いろいろお考えはあるものの、これから中央銀行のトップに立つ者として、その制度自体を否定するようなことは立場上控えたいというお立場でしたけれども、岩田さんにおかれては、日銀法改正はやはり必要だということで、お考えに変わりはございませんか。また、必要であるとすれば、どういった改正が必要とお考えですか。

○岩田参考人 先ほど申しました金融政策のレジーム転換というのは、要するに、物価の安定あるいは二%のインフレ目標というのは、日本銀行に責任が全部あるという立場なんですね。それが市場に信頼されるというのがこの基本的なメカニズムなんですね、デフレを脱却して二%インフレになるという。

 そうしますと、現在、日本銀行法では、そういうふうなレジームになるというのは、なかなか法的には担保されていないということで、私は、やはり法治国家ですので、法律できちんと、日銀に、物価のコントロール、二%のインフレ目標というのは達成する責任があって、しかし、その達成手段は日銀が自由に政府から選択できるんだということを明記するというのが中長期的には必要だというふうに思いますので、そのことを国会の方でも少し議論して深めていただければというふうに思っております。(津村委員「端的にお答えいただきたかったんですが、日銀法改正は必要とお考えですか」と呼ぶ)必要です。

 しかし、議論しないとあれですので、すぐ、もうあしたからやるというぐあいにはいかないと思いますので、世界のいろいろな中央銀行の仕組みなども研究した上で、私自身としては、改正は、する方がインフレ目標の達成は容易になるというふうに思っています。

○佐田委員長 津村君、挙手の上、お願いいたします。
(引用終了)

ということで、さっきの津村さんの「失礼しました」が来るのですけれども、この前段階で置物大師匠先生様におかれましては、

『先ほど申しました金融政策のレジーム転換というのは、要するに、物価の安定あるいは二%のインフレ目標というのは、日本銀行に責任が全部あるという立場なんですね。それが市場に信頼されるというのがこの基本的なメカニズムなんですね、デフレを脱却して二%インフレになるという。そうしますと、現在、日本銀行法では、そういうふうなレジームになるというのは、なかなか法的には担保されていないということで、私は、やはり法治国家ですので、法律できちんと、日銀に、物価のコントロール、二%のインフレ目標というのは達成する責任があって、しかし、その達成手段は日銀が自由に政府から選択できるんだということを明記するというのが中長期的には必要だというふうに思いますので、そのことを国会の方でも少し議論して深めていただければというふうに思っております。』(再掲)

って日銀法の建付けそのものが金融政策のレジーム転換に対して担保されていないのは問題だという説明をしている訳でして、その日銀法の建付けで担保されていない部分を強化することによって金融政策のレジーム転換を図るという目的から日本銀行の責任を強調した結果、辞任という発言に繋がっているわけですし、大体からして日銀批判している時も達成しないのに辞職もしないとは何事ぞというような趣旨の非難を繰り返しておられた訳なのに、何故か置物日記になったら「今の日本銀行法の建付け上はそのような規定がないから説明すればいいんだもんね」といけしゃあしゃあと言い出す辺り、もし2013年のこの時点から言ってるんだったら最初の時点でウソツキにも程があるし、途中で都合が悪くなって後から編集を加えているのであればそれはそれで歴史修正キタコレというところなのですが、さて実際はどうなんでしょうかねえ、などと思いながらこの出オチ部分を鑑賞した次第で、この出オチで血圧上がるからそら健康に悪いわけよこの本は・・・・・・・・・・







2018/11/26

お題「感謝祭だし月曜なので雑談読み物系で(汗)」

来週からは12月ですかそうですか。

〇例の東洋経済ネタを少々

・ハマコー大先生はまあ要するにアレ

金曜の朝からアタクシの血圧を盛大に引き上げた例の東洋経済ちゃんですが、血圧を下げてから改めて真面目に読んでみたら出オチの浜田先生の落語の後は何かこうどうでも良い話が並んでいて、「だから何をするんだ」という政策論は見事に皆無でこれで8ページも使うなよと思ってしまいました。

https://toyokeizai.net/articles/-/249850
日本の物価を安定化し経済を活性化する方策
浜田宏一×渡辺努×安斎隆:鼎談
2018/11/21 5:20

ここの8ページの中のどこにどう物価を安定化させて経済を活性化する方策があるのか小一時間問い詰めたい訳ですが、まあ東洋経済ってアタクシ普段基本読まないのって理由がこの辺にある訳で、まあ大体電波浴には使えるので悪態を並べるネタには使えるのですが、読み物としての意味があるのかというチョイスのものが多くてもうねという感じです。

なお、この対談(鼎談)の読みどころはハマコー先生のアレな話だけだったりしますが、

3ページ目
https://toyokeizai.net/articles/-/249850?page=3

『浜田:渡辺教授による支払いのマイクロデータを使った研究は経済学の進歩の現状をよく示しています。僕らの時代は、簡単なモデルで、いわば、一筆書きで「モデルによるとこうなります」と。直観に訴えるのも、重要ではあるんですが、データから本当にそうなっているのかを調べることができる。「需要が高まれば物価は上がるはず」と思っていたが、なぜ上がらないのか。』(上記URL先より)

とりあえずお前らの直線一気理論に関しても一筆書きだわな。あとマイクロデータを使った物価研究をほめたたえていますがお前ら「個別物価と一般物価は違う」とか言ってませんでしたっけ。

5ページ目
https://toyokeizai.net/articles/-/249850?page=5

『浜田:需給でまったく上げられないということはなく、景気の影響もあると思います。けれども、私が安倍晋三首相と少し意見が違ったのは、首相は無理をしてでも賃金を上げれば、需要は増えますから、賃金を上げてくださいと言っている。しかし、トヨタの社長さんなど企業の経営トップのみなさんは、「賃金を上げて後から業績が悪化したら、責任を取らなければならないのはわれわれのほうですよ」と言いますね。初め、私は後者の考えに賛成でした。しかし日本の企業が、あまりにも臆病で、内部留保をため込むだけなので、首相のほうが正しかったのかなと思うようになりました。

グローバリゼーションで先進国では賃金が下がる、あるいは上がらない傾向が出ている。アメリカでトランプ大統領が出てきたのも、そうした現象で「プアホワイト」の層が出てきたからです。』(上記URL先より)

色々とおかしすぎてどこからどう突っ込んでいいかよくわかりません。

6ページ目
https://toyokeizai.net/articles/-/249850?page=6

『浜田:(前半割愛)イエール大学とハーバード大学の学生は、いわゆる“読み書きそろばん能力”、頭のよさではほとんど変わらないんですが、ハーバードの一部の優れた学生は自分の枠組みで議論を組み立てて、それを先生にぶつけるということをします。こんなことを言うと、イェールの同窓会から除名されてしまうかもしれませんが(笑)、イエールの学生はぼくが教えたことを
前提として話を始めるような人が多い。』(上記URL先より)

イェールの学生は浜田大先生の理論に疑問を持たないのでゴミということですね分かります。


7ページ目
https://toyokeizai.net/articles/-/249850?page=7

『浜田:アメリカの学者に創造性があるのは、ジェネラルアーツでいろいろなことを学ぶからだと思います。創造性の大部分は学際間の類推から生まれると川島教授から学びました。理科系とか文科系とかいうこともまったく意味がない。高橋洋一さんは理科系出身で、日本の経済学部出身者は数学のできない人が多いので、「数学ができると経済学の世界で威張れる」と言っていた。』(上記URL先より)

グラフを都合の良い所で切り取るのと因果関係と相関関係を(たぶんこの方の場合はわざと)取り違えるのと、直線一気理論を持ち出すのが数学とな。

『僕のゼミにいた中で、いちばん数理経済学の適性があったのは(前日銀総裁の)白川さんです。彼の昔のBIS(国際決済銀行)流の政策論では、若年も含め失業者がいっそう増えると心配して、失礼なことを言って東洋経済新報社で出した本で批判してしまった。仲直りしたいんですけど(笑)。
この部分はボツかな。』(上記URL先より)

『安斎:いや、この話、いいですね(笑)。』(上記URL先より)

その場にいたらさすがに怒る自信がある。とりあえず死ねと言わんばかりの罵倒を繰り返して日銀を追い出しておいてお前は何を言っているんだと思うけど、たぶん白川さん温厚な紳士だと思うので、焼き土下座しろとかそこのドラム缶に入って日本海溝クルーズしてこいとか、一度生まれ変わってみては如何でしょうかとか、そんなことは言わないと思う。

・・・・・・・・というのは良いんですが、これ結局なんかとりとめのない話が続くだけで全然まともな政策の話になっていないんですが、何なんですかこの企画は、といいながらアクセス向上に寄与する訳で、ネットのこの手の物件って雑誌とかメディアがお送りするものが年々内容がスカスカになってしまうのってこういう記事でもアクセス自体は増えてしまいますし、フィードバックだってまあ大体碌なもんじゃない(アマゾンの置物日記と麿の本のレビューを見ればわかるように馬鹿には一定の信者が付くので馬鹿が成り立つ)ので、まあ見るサイドとしても考えないといかんのでしょうが、ゴミ記事でも釣り成分が高いとアクセスが来る(ハマコー先生の妄言は釣り成分高いですから)という話になるんでしょうなあと思いつつ週の頭から頭を抱えながら記事のアクセス向上に寄与してしょんぼりするのでありました。


・ついでにみつけたので岩村センセネタ

ついでに見つけたのですがちょいくら前のネタ。

https://toyokeizai.net/articles/-/239310?page=3
日銀保有の国債を変動利付きにすべき理由
岩村充・早大教授が出口への準備策を提言
野村 明弘 : 東洋経済 記者
2018/09/26 5:00

ちょっと前のネタなんですが、そういや東洋経済岩村先生もお好きなようでよく出てくるんですけど、話の理論の部分は基本的に良い話なのですが政策論になると急にナンジャソラになるというお方(ちなみにさっきの所に出ていた渡辺センセも物価の話をしている分には物凄くいい話をしているのに政策の具体論になると「”日銀は”賃金目標を設定せよ」(ってどうやってやるんだよ)というような電波ゆんゆんの話をするという残念な仕様になっている)ですが・・・・・・・・・

前のページの話から続いているのですが岩村先生のお言葉。

『シムズ案以上に無理筋なのは、英国金融サービス機構(FSA)のアデル・ターナー元長官による、日銀保有国債の消却を行えという2016年の提案だ。彼は、日銀が持っている国債の一部をもともと存在しなかったことにして利払いも償還もやめてしまえと主張したわけだが、それをしても政府から日銀への元利払いが減る分、日銀からの国庫納付金が減るだけだ。それではヘリマネにすらなりそうもない。』(上記URL先より、以下同様)

無理筋という結論は良いのですが、その結論に至る理由がおかしくて、それはそもそも国庫納付金云々ではなくて、「日銀保有国債の見合い資産は日銀当座預金なのだから、日銀保有の国債を元々存在しなかったことにするというのは日銀当座預金をなかったことにすることと同義になるので、民間金融機関の資産を強制接収することになるのでそもそもあり得ない」が正しい説明になると思うのですが。

でもってまあ異次元緩和金融政策の出口問題の話をこのようにしているんですよ岩村センセ。

『日銀が保有する国債はすでに400兆円を超えたが、そのことは緩和終了時における金利上昇が、日銀保有国債の時価を大幅に下落させることを通じ、新たな危機を発生させてしまう可能性を示唆する。たとえば、日銀保有国債の金額が400兆円で、その元利収入見込額の加重平均期間が3年程度だとすれば、金利上昇幅がわずか0.5%でも現在価値損失額は6兆円、1.0%なら12兆円にもなる。一方、日銀の自己資本は8兆円ほどだから、日銀への信認は大きく傷付く。これが金融緩和の出口問題だ。』

『異次元緩和で膨らみきったベースマネーを回収できないと思われてしまうリスクは無視しないほうがよい。いったん人々にそう思われるようになったら、その効果は回収のスケジュールがない政府紙幣の発行、つまりヘリマネと同じことになってしまう。ヘリマネの問題点は、それで生じた人々の期待が暴走すれば、制御の効かないインフレなど最悪の事態になる可能性があることだ。今の日本で必要なことは、期待の暴走が止められなくなることがないよう、いつでも日銀保有国債を市中に売却できるように準備をしておくことだ。』

とまあここまでの説明は仰せの通り。ただし本当に問題になるのは時価評価そのものというよりは期間収支のマイナスの方での国庫へのマイナスであり、まあもっと達観してしまえばそのマイナスを見た時の市場の反応が暴走すること、なので、「期待の暴走が止められられなくなることがならないよう」にするというのは仰せの通りでございますが・・・・・・・・・・・

『ヒントにしたのは、新規発行国債は日銀が引き受けてしまい、日銀は市場の状況を見て保有国債を売却していくという戦前の高橋財政のスキームだ。ただし、今それを参照するなら、日銀が保有することになる国債の法的性格は工夫して、それが日銀の金庫の中にある間は「無利子の永久国債」とする一方、それを日銀が売却した後では、「変動利付きの国債」として利払いを復活させるというのが提案の骨子だ。このほうが、政策メッセージとして明確だし期待暴走のリスクも制御できる。形式上、国債は市中消化されるが、その後は日銀がほぼ自動的に買い入れるという今の状況は、国民の眼を欺くものだ。』

えーっとすいません、市中売却した時に変動利付国債になったら政府の利払いってその時点で急に(出口で金利が上昇してるんだから)物凄い勢いで負担増になりますし、大体からして売る時の条件って変動永久国債にするとかどんだけの金利になるんだよという話だし、売却始まった瞬間に日銀が持っている無利子永久国債の将来利払いについてちゃんと計算しなおして評価しないと結局「国民の目を欺いている」のって同じであって、期限付き固定利付国債を保有した状態で、その気になれば時価を見ることができる状態になっている方が何ぼわかりやすいかって思うのでございまして、なんか毎度そういう仕様なのですが、岩村先生って元の理屈はおかしくないのですけれども、政策議論に入ると突如電波ゆんゆんの電波浴になってしまうのってどうしてそうなるんんでしょうかと不思議で仕方ありませんな。

#まあそれ以前に「今までの国債どうするんだよ」という大問題があるので最初から現実性がないのですけど

〇連休明け早々に電波浴だけではアレなので浄化のために日銀レビューシリーズ(ただの備忘用ですが)

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2018/rev18j08.htm/
外為証拠金取引における個人投資家の投資行動

まずは上記URL先紹介ページから。

『要旨』

『個人投資家による外為証拠金取引については、いわゆる逆張りの投資戦略が特徴として意識され、相場の変動を一定程度抑制する作用を持つと考えられてきた。しかし、最近のアンケートでは、7割の投資家が順張りの投資戦略を採るという結果もみられている。順張り戦略を採る個人投資家は、ごく短い時間に売買を繰り返すことが多いとの指摘もあることから、本稿では、個人投資家の売買について、高頻度の取引データも活用しつつ、投資期間別にみた考察を行った。』

ほほう。

『その結果、投資期間が一日以上の投資では逆張りの特徴が確認された。一方、投資期間が一日未満の投資については、全体として逆張りの特徴がみられるものの、局面次第では順張りの特徴もあることが確認され、日中の相場変動の抑制に作用しない場合もあることが示唆された。』

ほー、ということで本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2018/data/rev18j08.pdf
外為証拠金取引における個人投資家の投資行動

以下上記URL先の本文から少々引用します。『はじめに』から。

『個人投資家による外為証拠金取引(以下、「FX 取引」)については、いわゆる逆張りの投資戦略 ――相場の動きと反対向きの売買(相場上昇時には売り、下落時には買い)を行う――が特徴として指摘されてきた。一般的に、こうした逆張り戦略は、他の様々な市場参加者による売買を含む相場の変動を一定程度抑制する作用を持つと考えられてきた1。しかし、最近のアンケート調査では、 7 割の投資家が順張りの投資戦略――相場の動きと同方向の売買(相場上昇時には買い、下落時には売り)を行う――を採っているとの結果もみられる。その場合、個人投資家の投資行動が相場に与える影響が変化している可能性も考えられる2。』

へー。

『この点、順張りの投資戦略を採る個人投資家は、 ごく短い時間に売買を繰り返すことが多いとの指摘も聞かれる。このため、本稿では、個人投資家の投資行動を、期間が一日以上の投資と、期間が一日未満の投資(当日中に売買の両方が行われる投資)に分けて、考察を行った。その際、投資期間が一日未満の投資については、高頻度の取引データを活用して分析を行った。以下では、FX取引の概要を整理したうえで、投資期間別にみた個人投資家の投資行動がどのように異なるかを 確認していく。』

アタクシはおじいちゃんなのでよくわからんのですが個人でFX高頻度取引とかバシバシやるもんなんですか(無知ですいません)。高頻度じゃない日計りってのはどうなんでしょ。

でちょっと先に行きまして、『(店頭 FX・取引所 FX 別にみた取引の特徴)』 から。

『店頭 FX は主要通貨を中心にスプレッド(売値 と買値の差)が狭く、取引コストが低い傾向にあるため、一日以内に高速で回転売買を行う投資が多いとされる。一方、取引所 FX はスワップポイント(ファンディング通貨と投資先通貨の金利差 に基づく利益)が店頭 FX 対比大きい傾向にあるため5、主な高金利通貨を対象に一日以上にわたってポジションを抱える投資家が多いと言われている。』

ほほう。

『この点は、実際の回転売買指標(月間取引金額 /月末時点の建玉数6)からも確認できる。すなわち、店頭 FX では、ドル/円を中心に主要通貨の 倍率は 70 倍近くとなっている一方、取引所 FX では、これらの通貨取引においても回転売買指標は 1 倍程度となっている(図表 4)。』

図表見てワロタです。

『FX 取引のうち、圧倒的に店頭 FX が多いという事実は、多くの投資家がごく短い時間に売買を行っていることを示している。実際、ポジション保有期間別にみた投資家の口座数割合に関する 調査からは、一日以内に決済されるトレード(スキャルピング<僅かな値幅を狙って数秒から数分の間に売買を繰り返す取引手法のこと>やデイトレード<ポジションを翌日に持ち越さず、一日の中の相場の値動きを利用して売買を行う取引手法のこと>)が 8 割以上を占めている(図表 5)。』

ほー。

『この実際の統計からは確認できないが、市場参加者からは、ドル/円を中心としたスキャルピングは拡大傾向を辿っているとの声が聞かれている。そうした増加の背景には、2013 年以降、 大きな政治・経済イベント(例:英国民投票、米大統領選)に伴うボラティリティ上昇局面の増加 (収益機会の増加)等も寄与した模様である。 』

ということで、まあこういう話はFXとかの方からしたら当たり前じゃと言われそうですが、基本的にあたしゃ外為証拠金取引とは無縁で来ておりますので、この辺りの事は中々分かっていなくて、たぶん為替の人には常識なんでしょうけど、個人的にはなるほどと思いました、まあ思ったから現世利益があるかというとあまりないのかもしれませんが、知っておいて損はないことかなあと思いましたので、この手のネタに詳しくない方はご覧になると吉ではないかと。

なお、一応気になるのは最後のまとめの中の・・・・・・・・・・

『第 2 は、為替市場のモニタリングにおけるインプリケーションである。為替市場をモニタリングする上では、秒単位といったより高粒度のデータ を使ってきめ細かいチェックが有益である。今後とも、日本銀行としては、市場参加者との意見交換に加え、市場参加者等と協力しつつ、きめ細かいモニタリングの実施のために、為替市場に関する高粒度データの収集や分析を積極的に行っていく方針である。』

という所なんですが、いやまあ分析を精緻化したいのはよくわかるし、まあそういう結論になるのもわかるのですが、債券市場の分析もそうなんですけど、ミクロデータでの精緻化云々というのはやるとそれなりに面白い結果がでるでしょうからやりたくなるのは分かるのですが、政策当局として考えた場合、そこのマイクロマネジメントよりもやることは別にあると思うので、マイクロマネジメントに力を注ぎすぎて本来のやることをおろそかにするとか、マイクロマネジメント精緻化して仕事した気にならないようにしてほしいな、と思いました。





2018/11/22

お題「発行計画は順当オブ順当/置物日記日記/浜田先生ェ・・・・・・・・」

あっちもこっちも圧力とな。
https://jp.reuters.com/article/italy-budget-borghi-idJPL4N1XW4R9
2018年11月22日 / 05:53 /
イタリア国債利回り、ECBがQE継続ならすぐ低下=「同盟」有力議員

〇発行計画関連はまあ順当なお話で

昨日は投資家懇ですが議事要旨がアップされるのが朝になる(というか寧ろ昨日の午後にやっている会議の議事要旨が翌朝にアップされるというのが凄いのだが)のでPD懇の議事要旨の方を少々鑑賞。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/181120.html
国債市場特別参加者会合(第78回)議事要旨

ご案内の通りで今回はほぼ『1. 平成31年度国債発行計画について』のお話でしたがまあ下馬評通りという順当なお話。

・20年と5年の減額は妥当オブ妥当でその次の優先順位が10年ってところですかねえ

まあだいたい最初の3、4人くらいの意見でほぼ話が総括されている訳ですが。

『・超長期ゾーンについては、10年債、20年債に減額余地があると考えている。どちらの年限も日銀買入オペの買入額が多くなっているため、マーケットに不要なボラティリティを生じさせているほか、価格発見機能の低下につながっていると考えている。そうした意味で、10年債、20年債を中心に発行を減額し、それに呼応する形で日銀買入オペが減額されることにより、マーケットの流動性が回復し、価格発見機能が強化されると考える。

中短期ゾーンについては、2年債、5年債のいずれも減額余地はあるが、ドル円ベーシスのマイナス幅のワイドニングによって海外投資家のニーズがT-Billに集中する際に、担保ニーズを抱える国内投資家の投資対象の選択余地を広げるため、2年債の発行額は据え置きとし、5年債を優先的に減額する方がマーケットにとってはよいのではないか。』

10年は超長期ちゃいますがまあそれは兎も角として、20年は本年度減額の対象になっていないからバランス的にまあそこ減らすじゃろというのがあって、マイナス金利と10年YCC(とやたら強い債券先物という7年)に挟まれているマイナス金利の5年はリターンがマイナスな癖にデュレーションリスクは一丁前にあるという要らない子にも程があるので減額、という話ですな。

なお、ちょっとオモロイなと思ったのは「日銀買入オペの買入額が多くなっているため、マーケットに不要なボラティリティを生じさせている」っていう指摘で、うーんそうとも言えるしそうでないとも言えそうな感じではありますけれども、価格形成が日銀オペばっかり見ていて自然ではない、とは思います。しかしまあ「発行減額したら日銀も買入減らせやゴルァ」というのは市場の中の人としては極めて自然な考えではあるのですが、よくよく考えてみますと財政ファイナンスがどうのこうのという論点についてもっと話題になっていた時代(とかいうと大昔の話のようですがQQEぶっこんだ後の2013年終わりの時点での国債発行計画の話でこの裏側の話があったんですけど)ですと、日銀の見解としては確か「財務省が発行を増やすから日銀が買い入れを増やさないといけないという考えは財政従属に繋がる議論なのでアカン」って感じだったと思いますので、実は国債発行が減るから輪番その分減らせというのもコインの裏表みたいな話のような気もする。まあ減る方なので財政従属ガーと目くじら立てる話ではないということなのかも知らんが。

『・現在のマーケット環境を踏まえると、中期、長期、超長期の各ゾーンをバランスよく減額した方がよい。超長期ゾーンについては、現在の投資家需要を考慮すると、30年債、40年債よりは20年債に1回の入札当たり1,000億円程度の減額余地がある。

中期・長期ゾーンについては、2年債、5年債、10年債のいずれにおいても減額余地がある。

流動性供給入札については、各ゾーンとも安定した需要があるため、現在の発行額を維持することを希望。』

どうせなら中期とかドカンと減らして流動性供給入札増やせばとか思うけど、それはそれで調達側的に調達年限とかの管理が面倒なんでしょうな。


『・5年債、10年債、20年債の発行減額は可能である。需給については、発行減額に伴い、日銀買入が減っていくこととのバランスだと思っている。』

『・30年債と40年債については、負債サイドのデュレーションが長い投資家から安定的な需要があることや、今年度減額した影響があるため現状維持を希望。

一方で、20年債については1回の入札当たり1,000億円の減額が可能。10年債についても、1回の入札当たり1,000億円の減額は可能と考えているが、10年債に関しては金融政策のターゲットであるだけではなく、一般的な指標金利という側面もあるため、一定の市場規模・発行規模を維持した方がよい。従って、今後数年のことを考えると、1回の入札当たり2兆円を下回ることになる減額は避けた方がよい。

中短期ゾーンについては、5年債は投資家からの強い需要がここ数年ないセクターになっている一方、2年債は担保需要によって投資されることが多いため、2年債よりも5年債に減額余地がある。T-Billの1年物は減額が可能。』

ということで、基本的に「日銀買入もっと減らせや」という意見だらけ(PD懇だから順当なのですが)ですし、短国は需要ある(上にそもそもがピーク時から発行額が大幅に減っている)ので減らすなという方が多い(国債発行計画の短国は1年短国なので3Mとはまた需給が別なので1年短国というだけで言えば減らしても大差ないという観点での意見もありますな)という話で、短国があまりにも強くて(強いのは3Mですけど)担保需要とかの分が2年債まで弾き出されているので2年も必要。マイナス金利の5年は要らない子でそれ以降で減らすなら30年以上の所は減らされると投資家ニーズに対応できなくなるから勘弁、という感じですな。


・それはそれとして市場コメント

ということで意見がだいたい一致という結果で、シャンシャン総会にも程があるPD懇(投資家懇の方も似たようなもんでしょうと思う)ですが、まあそれだけ日銀が市場介入していて、達観してみると市場が動かんというか、イールドカーブの形状としての傾向が変わらん上に、日銀買入という最終投資家と関係ないニーズがドカンとあってそっちが市場を支配しちゃっているから、参加者の見解が揃ってしまう、とまあそんなことを考えますとやっぱりYCCイクナイ、という話になりますな、うんうん。

でもって今回の『2. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて』はほぼオマケのような扱いで2名だけのコメントが掲載されていますな。

『・ブレグジット関連の報道や、FRB副議長によるハト派発言などもあり、足元、海外マーケットが大きく動いている。FRBの動向に関して特に注目しており、FRBの来年の利上げの打ち止め見通しが、生保の投資方針にも影響すると考えている。仮にリスクオフが続き、FRBの利上げの打ち止め見通しが示され、円高局面になっていくのであれば、生保としては、低い金利の日本国債を買うよりは、オープン外債投資の方にシフトしていくのではないか。従って、日本国債のイールドカーブがブルフラット化していくのは、まだ早いのではないかと考えている。ただし、円高局面にならなければ、生保は日本国債に回帰せざるを得ないだろう。

一方で、日本銀行が、国債買入オペの柔軟化の一環で買入額を減額していくことで、スティープニングの流れになっていくとも考えており、足元のブルフラット相場は短期的なものに終わるだろうとも考えている。』

金曜のクラリダ副議長発言を火曜にネタにするとか足元にも程があるコメント(しかも動いたって言ったって別に10年3%割ってないんだし)ですが、まあそれだけ「最近の国債市場の状況」について話をすることがないという事ですな。

『・日本銀行が7月末の金融政策決定会合において、長期金利の変動幅拡大を容認して以降、一旦は金利上昇したが、足元、金利水準が戻ってきている。その過程において、債券市場における流動性や機能度等が改善しているのではないかとの話も出ているが、米金利の動きとほぼ似たような形で、円金利も動くようになってきた点はよい方向に向かっていると思う。ただし、今後、米金利が更に低下したとしても、これ以上円金利は低下しにくく、一時的に債券市場の流動性や機能度の改善はあったものの、まだ完全に実需を反映した価格で取引がなされているわけではない。引き続き、日本銀行の動きを見ながらの相場が当面は続いていくだろう。』

別にいちゃもんつけるというつもりではないのですが、2本とも何か纏まりの無いコメントじゃなあと思う訳ですが、それは別にゆうてる人たちがどうのこうのなのではなくて、まあ要するに円債市場ちゃんの方が何の主体性もなく(主体性をもって取り組んでいるのは輪番やってる日銀金融市場局だけですかそうですか)テーマも無いという状態(輪番ネタ以外日々のネタにならんというこの惨状)だからということでしょうな、うんうん。


〇置物日記日記:QQEで実際に起きたことの説明が色々とアレ

さて先日ネタにした「ヨーロッパの研究者の皆さんにご説明した話」なのですが、「政策金利を引き下げることによって、銀行貸出を増やし、それによって景気を回復させて、デフレを回避しようとしたり、デフレから脱却しようとしたりする金融政策は効果的でない。」のに、「短期名目金利ではなく、長期名目金利を引き下げる一方で、中長期の予想インフレ率を引き上げることによって、長期の予想実質金利を引き下げることが必要である。」という謎理論を披露した後に、じゃあどういう事をしてるのという部分を折角ですので引用しますが、何か色々とアレでしてですね・・・・・・・・・

以下(岩田(2018))となっているのは「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著」 筑摩書房 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500Eからの引用です(縦書きを横書きに直し、漢数字を英数字にしております。引用者はタイポ等慎重に確認しておりますが、引用ミスがあるかもしれません、なお文章の趣旨に関わる重大な引用ミスはない筈です)。

本文150ページ、日付は先日ネタにした部分の続きですので、(2014年11月11日)になります。

『長期の名目金利を引き下げる主たる方法は、中央銀行が満期までの残存期間の長い国債(以下、長期国債という)大量に購入すること(長期国債買いオペ)である。13年4月に開始された「量的・質的金融緩和」では、買いオペ対象の長期国債の平均残存期間は約7年である。これにより、イールド・カーブ(国債の利回り曲線)全体に大きな下押し圧力が働き、国債の金利は残存期間にかかわらず低下する。』(岩田(2018))

中長期の予想インフレ率が上がったらフィッシャー効果で名目長期金利上がる可能性がある(現実問題としてQQEぶっこんだ時には円安と株高が進んだのと、その前にロングがしこたま溜まっていたのもあって金利って当初は上昇したんですよね、金利上がってるの見て株が頭打ちになったところから金利下がったんですけど)んですがまあそこは措いておこう。

『一方、中長期の予想インフレ率を引き上げるためには、残存期間の長い国債を大量に購入するだけではなく、何を目的に、どのような状態になるまで長期国債を買い続けるかを明確に約束(コミットメント)することが不可欠である。』(岩田(2018))

『「量的・質的金融緩和」は、この強いコミットメントの下に、大量の長期国債購入を中心とする資産購入によって、マネタリーベースを2年間で倍増する、というコミットメントを裏付けるアクションをおこすことによって、民間の中長期のインフレ予想形成(一般的には、期待形成と呼ばれる)に働きかけようとするものだ。』(岩田(2018))

ぷぷぷ。

『「量的・質的金融緩和」政策実施以後、長期名目金利が低下する一方で、中長期の予想インフレ率も上昇し始め、長期国債の予想実質金利はマイナスになった。これは、預金や国債などの名目利息が固定された金融資産の保有を不利にする一方で、インフレに強い株式や不動産の保有を有利にする。そのため、預金や国債から株式や不動産へのポートフォリオ・リバランスが進み、株価や不動産価格や株式や不動産を組み込んだ投資信託の価格が上昇する。』(岩田(2018))

いやだから本当にインフレ期待が上がったら実質は下がるかも知れんが名目は上がるって。インフレ期待に直接働きかけて上昇させるってゼロ近辺のものを2%にしようってんだからそれ名目金利はフィッシャー効果がちゃんと効けば上昇しますがな、ということで師匠の説明名目の話と実質の話がごちゃごちゃで何を言ってるのかよくわからん。あと、個人投資家みたいな話をしてるけど、機関投資家(年金なども含む)って預金者なり契約者なりに定時的に支払いが生じるからキャピタルゲインとれたから良いとかいう単純な話じゃないんですけどね、まあいいけどさ。

『また、海外と日本の名目金利差の拡大(海外金利から日本の金利を引いた値)と海外と日本の予想インフレ率の差の縮小は、過度の円高修正・外貨高をもたらす。外貨高は外貨建て資産を保有している家計や企業(特に、輸出企業)や金融機関や機関投資家にキャピタル・ゲイン(資産価格の上昇の利益)をもたらす。』(岩田(2018))

うーんこの、なんちゅうか在外資産がすべてキャピタルゲイン狙いのものという考えなのでしょうかねえ、まあいいけどさ。

『以上のようにして、各経済主体のバランスシートが改善する。バランスシートが改善し、キャピタル・ゲインを得た家計と企業は、それぞれ。消費・住宅投資と、配当・賃金支払いを増やす。』(岩田(2018))

すさまじくナイーブってか、そもそもバランスシートが傷んで過剰債務があるのを金融政策で何とかするって発想がちょっとおかしいので話がどうも・・・・・・・

『配当と賃金の増加は消費の増加をもたらす。バランスシートの改善により、企業はリスクをとり易くなり、設備投資や研究開発投資やイノベーションに積極的になる。さらに、適度の円安が定着すると予想するようになれば、海外投資を抑制し、国内投資を増やすようになる。これにより、製造業の海外生産移転の動きと、したがって、国内空洞化が抑制される。これは大都市圏だけでなく、地方圏における雇用をもたらす。』(岩田(2018))

そんなこと起きましたっけ??????

『円安は海外製品から国内製品への需要転換をもたらすから、たとえ、輸出の増加が小さくても、輸入競争産業(農産物などの食品や旅行サービスとそれに関連する消費財。たとえば、インバウントと呼ばれる外国人の訪日旅行の増大)に利益をもたらす。』(岩田(2018))

『以上のような、内需の拡大は、デフレから脱却して緩やかなインフレへの移行を可能にする一方で、雇用需要を増やして、失業率の低下をもたらす。失業率が低下するにつれ、物価と共に賃金も上がり始め、生産性の上昇と相まって、実質賃金も上昇に転ずる。』(岩田(2018))

『以上のことは、「量的・質的金融緩和」以後、実際に日本で起きたことである。』(岩田(2018))

・・・・・・・・うーんこのという感じでして、師匠の話って全般的に「風が吹けば桶屋が儲かる」テイストが強いのでもう何だかねと思う訳ですが、しかし本日は置物日記日記も裸足で逃げ出す物件が東洋経済方面から投下されているのでありました。


〇ハマコーェ・・・・・・・・・・・・・

アタクシもこの物件今朝気が付いた(というか本石町日記さんのツイッターで知った)のでその衝撃に頭がクラクラしてしまい、他に何かネタを考えていた筈なのにぶっ飛んでしまいましたし、だいたいからして1ページ目で衝撃を受けて全文読むに至っていないのでまあその先は読んで味噌という所なのですが・・・・・・・

https://toyokeizai.net/articles/-/249850
日本の物価を安定化し経済を活性化する方策
浜田宏一×渡辺努×安斎隆:鼎談
2018/11/21 5:20

ということなので昨日の朝には出てたのね。でまあ8ページもあって最初の1ページ目でノックアウトされてしまったので後の方を読んでない(訳でもないが目は追ったが頭に入れて消化できない・・・・・・)のですけど、まあ今の所全部読めるようなのでご覧あれという事で。

もう最初の大先生の言葉でちょっと大いなる衝撃を受けてしまったんですけど。

『浜田宏一:自分で褒めるのも何ですが(笑)、アベノミクスは効果を上げたと思っています。5年で250万人以上の新たな雇用が生まれた。後楽園ドームの収容人員が5万人ですから、その50個分です。ホームレスのテント村も顕著に縮小してきた。国民所得は約25兆円増えました。』(上記URL先記事より、以下同様)

物価はどうした、というツッコミをしたくなるところに大先生の物凄い説明が来る。

『われわれの経済生活には物価上昇が重要なわけではない。雇用が重要だし、新卒学生が職業を選択できる状態をつくった。それは認めていただきたい。マネーの量的効果を軽視する人がまだ日銀にいて驚きましたが。』

>われわれの経済生活には物価上昇が重要なわけではない

『ただ2013〜14年には「期待」の効果も働いたのですが、時間を経るにつれて、金利は当然、効かなくなるし、マネーの量の効果も薄れてきた。為替も動きにくくなってきたと思います。』

何だよそれ。

『現在、日銀審議委員の中には、まだ物価が上がっていないから「金融緩和を拡大せよ」って言う人もいますが、一部の業種では非常に労働が逼迫して、日本経済は供給過剰から、供給が制約になる状況に変わっています。ですから、金融政策も正常化に向かっていくでしょう。需要はもう天井に来ているので、天井そのものを上げる政策、すなわち成長戦略のほうが重要になってきています。』

>現在、日銀審議委員の中には、まだ物価が上がっていないから「金融緩和を拡大せよ」って言う人もいますが
>現在、日銀審議委員の中には、まだ物価が上がっていないから「金融緩和を拡大せよ」って言う人もいますが
>現在、日銀審議委員の中には、まだ物価が上がっていないから「金融緩和を拡大せよ」って言う人もいますが

・・・・・・・・・とりあえず片岡審議委員のご見解を拝聴したい、というかこの前の置物日記日記でネタにしましたけど、2年で2%達成させるために日銀当座預金幾ら必要かとかいう計算って置物じゃなくて片岡さんがしていたとかありまして、あんさんら片岡さん使い捨てってそれ人としてあまりにも酷くありませんかって思うし、そう思うなら片岡さんの部屋に乗り込んでいって正常化しろって膝詰め談判でもしてこいやという感想しか湧きませんな。

とまあそういうことで、いきなり最初から衝撃の出オチが出てくるわけですが、出オチが衝撃過ぎてそのあとを読もうとしても字面を追うだけで中身が頭にまだ入ってこないので、衝撃から立ち直ったら続きのネタにするかもしれませんが、置物師匠といいハマコー大先生といい何なんですかということで本日も朝から血圧が上昇して大変に健康に宜しくないアタクシなのでした。

なお、浜田大先生のご高説に関しましては、
https://diamond.jp/articles/-/30804
2013.1.20
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

もご参照になられると更に血圧が上がるので低血圧や低体温でお悩みのお方にはお勧めしておきます(嘘)。






2018/11/21

お題「どうせ円債はネタがないので米債ということでクラリダ副議長のCNBCインタビュー関連記事をCNBCのサイトから」

いろいろとひどいな。
https://this.kiji.is/437182829442040929?c=39550187727945729
週100時間で月給9万円
失踪実習生の聴取票開示、法務省
2018/11/19 21:07 コピーライト一般社団法人共同通信社

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181120/k10011717221000.html
外国人技能実習生資料に誤り「心からおわび」法相が謝罪
2018年11月20日 13時04分

〇うーんこの米国金利下がりたがりモード

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N1XV53Y
2018年11月21日 / 05:47 /
米金融・債券市場=国債利回り低下、世界的な株安で質への逃避買い

30年債 15時45分 3.3147% 前営業日終値 3.3160%
10年債 15時45分 3.0573% 前営業日終値 3.0590%
5年債 15時45分 2.8782% 前営業日終値 2.8660%
2年債 15時45分 2.7996% 前営業日終値 2.7830%

『米金融・債券市場では、10年債利回りが低下し7週間ぶりの低水準を付けた。世界的な株安でリスク選好が後退、国債に質への逃避買いが入った。また感謝祭の祝日を控え、ポジションを手じまう動きも見られた。』

『株式市場ではアップルの業績懸念などから売りが膨らみ、ダウ平均株価は一時600ドル以上値下がりしたほか、ハイテク株の多いナスダック総合指数も2%を超える下げとなった。供給を巡る懸念から原油先物相場も6%超急落した。』

『世界経済の減速が懸念される中、投資家らは減速が米利上げの道筋にどのような影響を及ぼすかを見極めようとしている。クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長は前週「世界的な減速を示唆する証拠はある」とした上で、貿易や資本市場を通じて経済に大きな影響を与えることから、米経済の見通しを考える上で関連する問題だと述べた。またパウエルFRB議長は、米経済が非常に強く、成長は続く可能性が高いとの認識を表明。ただ、住宅セクターの減速の兆しや高水準の企業債務を注視しているとした。』(以上上記URL先より)

ということで先週来あばばばばーという感じになっておりますが、FEDがこの状況に関してやべーと思っているのか健全な調整(キリッ)と思っているのかは今の所よー分からんところがあって、いやまあ確かに市場の方では連銀高官の発言を捕まえてハト扱いしていますけれども、中立金利までは上げるとは言っているのでそこまでハトかいなというのは多少ある次第、とは言いましても足元の一連の前は「中立金利を越えて利上げするかも知れんで」というメッセージだしていたりもしたので、そこから比べると少し後退した感じもしますけど、そもそもが中立金利を越えて利上げ云々ってのが足元の強さを反映してオーバーヒートを牽制しようとしている面があったと思うので、これはこれで今後どう出てくるのか(どうせ12月は利上げするんでしょう、と思うけどそのあとに出てくるメッセージが気になりますな)というのを見ながらどの程度腰が引けているのかを見ていくって感じでしょうか。ちょっと足元は債券買い地合いのムードで威勢よくやっている感がありますが(個人の感想です)。


〇クラリダ副議長の先週のCNBCでのインタビュー記事がございましたので遅ればせながら鑑賞鑑賞

ところでクラリダさんの先週の記事が見れたので(気が付くのが遅いと言われそうですが、地区連銀とFEDのサイト以外のネタって基本的に毎度おなじみセントルイス連銀のFOMCSpeak(https://www.stlouisfed.org/fomcspeak)でチェックするのがアタクシの仕様なので、と言い訳してますが最初からCNBCのサイトを見ろと言われるとぐうの音も出ない。

https://www.cnbc.com/2018/11/16/feds-clarida-says-central-bank-needs-to-be-in-data-dependent-mode-now-with-rate-hikes.html
Fed's Clarida says central bank getting closer to neutral and should be 'data dependent' on more hikes
Jeff Cox @JeffCoxCNBCcom
Published 8:42 AM ET Fri, 16 Nov 2018 Updated 11:56 AM ET Fri, 16 Nov 2018

ということなので実は金曜に出ていましたすいません。

『・Federal Reserve Vice Chairman Richard Clarida said the central bank's benchmark short-term rate is getting closer to a "neutral" level.』

『・The distinction is important for the Fed as it moves to a policy that is neither restrictive nor stimulative.』

『・In a CNBC interview, Clarida also said the U.S. economy is in good shape though pockets of the world are "slowing."』

ということで、インタビューについては動画ちゃんがあるようですが、動画なだけにネタという訳にもいかず(汗)記事の方を鑑賞しますと・・・・・・・

『The Federal Reserve is close to the point of being "neutral" on interest rates and should predicate further increases on economic data, the central bank's vice chairman said Friday.』

で、問題の「中立金利水準」ってどうなんですかという話ですが、

『Recent appointee Richard Clarida told CNBC's Steve Liesman that nearly three years of increases have brought the Fed's short-term interest rate near where it is neither restrictive nor stimulative, a key consideration when considering the future path of monetary policy.』

CNBC's Steve LiesmanといえばFOMC後の議長会見の時に毎度登場する著名な方の一人。でもってその人とのインタビューだからちゃんとした話になっているということでしょうな。

・・・・・・・でですな、中立金利水準に関しては「a key consideration when considering the future path of monetary policy」という話をしておりまして、ほうほうそうですかと思うのですが、一方で最近のパウエル議長の話のトーンだとどうせ後付けの推計値しか出てこない中立金利水準について細かく議論することよりも、経済物価情勢の現状と先行き見通しを勘案しながら金利を調整していく、という話になっていた感があって(個人の感想です)、その場合足元では特に財政による刺激部分が効いているので、やや金利はロンガーランよりも高い水準でもええんじゃないのみたいな感じのふわっとした感じでややタカっぽい感じの話をしていた、というイメージがありました。

『"As you move in the range of policy that by some estimates is close to neutral, then with the economy doing well it's appropriate to sort of shift the emphasis toward being more data dependent," Clarida said during a "Squawk Box" interview, his first public comments since being confirmed in September.』

中立金利に近づいてきて、経済状態が良好な状態であれば政策運営はよりデータディペンデントなものにシフトしていく、というお話をしていたとのことでして、まあ冷静に考えたらそらそうよとしか言いようのないお話をしているのですが、そらまあ最初のまとめにありますように「central bank's benchmark short-term rate is getting closer to a "neutral" level」というのが示されていて、市場がハト材料に反応しやすい地合いだったらハト反応するわなとは思うのでした。

『He spoke at a time when the markets are watching Fed speakers closely for what happens next with rates. Fed Chairman Jerome Powell helped stoke market volatility in mid-October when he said the central bank remains "a long way" from neutral, an indication that it would be more aggressive with policy than investors had anticipated.』

やはり米国での見方としてはパウエルがタカ派ってイメージなんですな。まあそうだと思いますけど、パウエル議長って中立金利に対してそんなに遠いって話してたっけとなると(過去ログの整理をさぼっているツケがここに出てきて来るのでちゃんと確認できないので3連休使ってやらないと、と思っていますが、汗)なんか市場ちゃんもそこまで盛大にタカ評価してるんかいなと思ってしまうのですが・・・・・・・・・

『With his comments Friday, Clarida becomes the second central banker in as many days to suggest that neutral isn't so far away. Atlanta Fed President Raphael Bostic, in a speech delivered in Barcelona, said Thursday that the federal funds rate is "not too far" from neutral.』

ということで、FEDwatcherのひとりでありますところのCNBCのSteve Liesmanさんのインタビューを受けたこちらの記事(エディターのJeff Coxさんも会見に出ていたりしたような気もせんでもない)ですが、現状の金利に対して中立金利に近いと評価した2名目(一人目はアトランタ連銀のボスティック総裁)という評価になっていますな。

『Clarida's remarks "continued the process of softening the Fed's message, emphasizing the need for the Fed to be data-dependent as interest rates move close to the lower end of the range of estimates for the neutral rate," Krishna Guha, head of global policy and central bank strategy at Evercore ISI, said in a note.』

中身の前に「Evercore ISI」の方に反応してしまうのが市場脳にも程があるアタクシですが、中立金利に近くなったらデータディペンデントなのか、中立金利以降がデータディペンデントなのか、というのは議論の余地があるのではないかと思います。まあ現実問題としてはその中立金利水準が後付けじゃないと分からんので、「どこで止めるのか」というのは非常にヤヤコシヤな問題でして、今までのように3カ月ごとのオートパイロットではアカンという事になるんでしょうが、来年はどこで一旦打ち止めになってその後両にらみになるのか、というのが焦点(今の所アタクシは2.75-3.00の水準まではオートパイロットと思っている(のであと3回)のですがさてどうでしょうかね)というお話。ただ手前で止めちゃうと追加利上げ余地を残して残尿感が出るという奴ですので、打ち止め感を出すのかどうかという捌きもどう考えているのかよくわからん。12月利上げしたら(ここから株が更に2割とか下がったらしないと思いますが多少の事ならやるっしょ)少し見えてくるのでしょうか。

『Clarida noted that the most recent projections from Federal Open Market Committee members indicate that the long-run funds rate projection is 3 percent. The current funds rate target range is 2 percent to 2.25 percent, with markets widely expecting the FOMC to approve another quarter-point increase in December.』

クラリダ副議長も結局のところ「ではどこが中立か」という話はスルーしていて、SEP使って皆さんのレートを出している辺りはまあ慎重というか決め打ちできないというか(中立金利なんてしょせんそういうもので、正直言って中央銀行の人間が中立金利の話を(事後的な分析レポートペーパーとかじゃなくて)出してくるときってのは、基本的に「政策としてこれをやりたい」というのがあって、それを理屈の上で正当化するために出してくるものである、と中央銀行の行動をそれなりに外野からボケーっとみておりましたが思う訳でして、実際には「中立金利とかの細かい話をするのではなくて経済状況全般を見ながら現状と見通しを勘案しながら運営するもんじゃろ」とゆうとるパウエル議長と本質的に大差はないと思うの。むしろエバンスみたいなタイプが「ザ・中立金利」みたいなのを追っかけて詰めていこうって感じじゃないかなー(個人の感想です)。なお理論を色々出してくるのは面白いのですがブラード総裁の場合はSEPでロンガーランの数値を出したがらないという変態。

『"I think being at neutral would make sense," he said.』

ということでとりあえず中立よりも若干リストリクティブにしておく、なぜならば経済に追い風が強いので、というようなスタンスではないのは把握した。

『In the October interview with PBS, Powell said the Fed may actually want to go past neutral if it sees a need to stop the economy from overheating.』

『While Powell's comments helped rankle markets, Clarida said "there is no clear signal" from the markets about the direction of the economy. He also defended the Fed's actions from criticism that it is moving too quickly with rates and could harm the momentum seen over the past two years.』

『While he said the U.S. economy continues to grow, he did not a slowdown globally that could factor into the Fed's decision-making.』

パウエル議長の発言に対する感想を聞かれたりしているようですが、結局のところパウエル議長もデータ次第と言っていますし、そもそもザ・中立金利に対する思い入れがない(というよりも政策論議上中立金利を過度に重視するのはイクナイと思っているように見える)ので、クラリダ副議長のように「中立金利まで上げたらそこで様子を見る」というのではなくて、そもそもがデータディペンデントおじさんなのと、たぶん金融不均衡の拡大に関する部分の認識というか問題意識の大きさの方が今のFED高官の中での意見差に出ていると思う(経済物価見通しにそこまで大きな差があるようには見えない)ので、そっちの話を敷衍した記事を見たかったなとは思いますけど、まあそれはそれとしまして、クラリダ副議長は別に今のFEDのスタンスなりに文句を言っている訳ではないですし、足元の海外経済やら国内経済の動きを見て今すぐに利上げ打ち止めしろというようなスタンスではないようには見えるのですけれども・・・・・・・・

『"The economy this year as I said is going to be growing at a pace we haven't seen in a decade. Going forward, you have to look at a lot of trends, including the global economy ... Some of it is slowing," Clarida said. "Broadly, we're going to set a policy that will help us achieve the mandate given to us by Congress."』

と最後に来ていまして、

『"At least from my perspective, we're at a point now where we need to be especially data-dependent," he added.』

というまとめになっているので、この記事を見ると確かに中立金利に近くなっているのではという認識は示しているのですが、マーケットの人たちの場合こういう言い方されると「じゃあ早速利上げ打ち止めも含めたデータ次第キタコレ」とかなるんですけど、だったらSEPの話とか出してこない訳で、SEPの話を出しているということはこの「we're at a point now where we need to be especially data-dependent」ってのも本当の意味での今じゃなくて、幅をもった概念として言っている可能性の方が高くねえかと思ったりもするので、まあタカ派じゃないのはよくわかりましたが、市場が大喜び(なのかどうかわからんが)する程のハトとして受け止めるのはさすがに保留したいと思いました。

・・・・・・とか言いながら結局記事を思いっきりネタにしてしまいましたCNBCさんすいません海外行くと(見れるときは)いつも見てますCNBC(他の経済ニュースと比べてディーリングルームっぽいというか、企業決算出たり経済データが出た側から能書き垂れる人たちがガハハ笑いしながら大声で下品に解説してるっぽい(「っぽい」という辺りお察しください、汗)のが雰囲気だけでもオモロイと思うんですがどうでしょうかねえ)、と頼まれもしないのに宣伝しておきます(汗)。






2018/11/20

お題「市場世間話メモ/なぜこのタイミングでこういう話をするのかという黒田総裁の講演」

こらまたエライモンがぶち込まれてきましたな。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20181119/0021533.html
日産「重大不正」会長解職提案へ
11月19日 19時07分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181120/k10011716821000.html
ゴーン会長 世界4か国に住宅 日産から数十億円支出か
2018年11月20日 4時02分

所得税法とかじゃなくて有価証券虚偽記載って何ぞと思ったら確かにこれはとんでもない額の可能性ということですが、さてどうなるのやら・・・・・・・


〇10年10bp割れましたなあとかメモメモ

・10年10bp割れで月末輪番日程表で10年も減らせないですかねえというかなり妄想寄りの妄想

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N1XU2XU
2018年11月19日 / 15:24 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利3カ月ぶり0.090%に低下

『 <15:15> 国債先物は続伸、長期金利3カ月ぶり0.090%に低下

長期国債先物は続伸で引けた。米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が引き締めサイクルが近く終了する可能性を示唆したことを受けて、前週末の米債市場が強含みとなった流れを引き継いだ。海外勢を巻き込んだ需要は終盤にかけて強くなり、12月限は中心限月の日中取引ベースで5月30日以来となる151円12銭まで買い進まれた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで昨日の債券市場は先物つええええとか言ってたら超長期も強くなって10年は何か置いて行かれていましたけど結局1毛強水準までは行ってくれましたな。9bpキタコレ。

『現物債市場では、全ゾーンで利回りが低下した。翌日に20年債入札を控えているが、業者の持ち高調整は入らず、入札を無難に通過すると見た先回りが入った。20年債利回りは前営業日比1.5bp低い0.615%と9月18日以来の水準に低下した。30年債もしっかり。日銀オペで需給の引き締まりが意識された中期ゾーンも買われた。長期ゾーンは先物に連動して強含みで推移した。』

実際は長期に関しては先物に置いて行かれていて、そうは言いましても中期が1強で先物が1毛以上強くて20年1.5強とかやっているのにそこだけ置いて行かれるいうのも(しかもここ数日そんな感じ)アレですからさすがに最後1強とかになっておりましたの。でもって昨日に関して言えば先物ちゃん寄りで151円やって碌すっぽ押し目らしい押しもしないでじり高して引けにかけて一段じり高みたいな、この押し目作らずじりじりってパターンは踏まれている人とか、実質踏まれているようなパターンで、うーんこの水準かあ暫く前に20年60台後半だったんだよなーというような感じで様子見地蔵になっていた場合にはこの数日のじりじり攻撃は相場を見ているとこれはストレスな展開とか思うのでした。


『黒田東彦日銀総裁は19日の講演で、「収益減続く下で外生ショックが発生すれば、信用コストが上昇し金融システムが不安定化する可能性がある」「自己資本比率の下振れ・当期純利益の赤字継続により金融機関のリスクテイク姿勢が慎重化する傾向がある」などと発言したが、市場への影響は限られた。』

このネタは後程。

『長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比16銭高の151円11銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比1bp低い0.090%と8月23日以来約3カ月ぶりの水準に低下した。』(ここまで『』内は上記URL先より)

・・・・・・・とまあこうなりますと、これは月末の輪番予定表の所で超長期を5回→4回にする上に長期もやろうと思えばできるじゃん(10年についてはやるなら10年5bpくらいまで待った方が良いのかもしれないけど、昨日の地合いでじりじりやっているならば月末にはチャンス来々軒の可能性が、という感じでイメージしています)という感じですな。ここもと「月中動かず月末に回数減らして1回の回数を増やす朝三暮四掛け算減額スキーム(朝三暮四ではないですけど)を打ち込んでいってまして、このパターンを定着させましょうという事であれば、変に月中は動かないで月末に動くってのでエエンチャウノとは思いますな。

でもってですな、まあさすがに主要全年限月4回にしてしまえば、何ぼ何でもそこから減らすのは(よっぽど買入規模下げるなら別ですが今程度をあと少し減額するくらいの話だったら)そろそろ回数減らす程でもなさそうとかいう感じになって目先の(輪番減額)打ち止め感とか出てこないかなとも思ったりしまして、つまり何を申し上げたいかと言いますと、円債市場微妙に金利が下がりそうで威勢よくサガランチ会長でじりじりと動いていくってのは、(オペの日の度に一々減額減額言う何とかストが一部にいるのと、ニュースワイヤーがネタが無いのでそのたびに減額減額と報道するのも悪いんですけど)減額のタマが急に飛んでくるというリスクを考えて(実際に月中でそこでやるんかいなという時に減額ありましたし)動きにくい、ってのがあって、その結果市場が匍匐前進塹壕戦モードになっているってのはあると思うの(個人の感想です)。

つーことでですな、せっかくこういう地合い(とか言ってたら月末になってみたらやっぱり雨公の利上げは来年2回以上かも知れんとかなっているかもしれないけど)になっているので、月末の所で長期と超長期を5回から4回に減らして何となく目先の打ち止め感を出してみて市場がその後どういう価格形成するのかというのを見てみるってのもどうでしょうかと勝手に他人事のように(というか市場局の人でも何でもないので他人事ではあります)申し上げておこうかなーなどと思ったんで。7月の決定以降って8月早速臨時輪番ぶっこんだ以降、8月が地蔵で9月からなんだかんだ言いながら毎月ちょこちょこ輪番をいじっているのですが、毎月いじっているだけに「今度は輪番の変更は何があるか」ばっかり気になって市場が日銀の方をチラチラ見てばっかりで主体的な価格形成よりも日銀予想って感じになっているように思えますので、別に明示的に目先打ち止め感を出す必要何ぞ全くないですが、ただまあ金利下がってきたところですので少し目先の打ち止めっぽくするのはどうでしょうかね(個人の感想です)、


それから発行計画関連。
https://jp.reuters.com/article/mof-budget-idJPKCN1NO0EB
2018年11月19日 / 15:14 /
固定利付債、満期20年以下を減額対象に=19年度国債発行で政府筋

『[東京 19日 ロイター] - 財務省は、2019年度国債発行計画で、満期20年以下の固定利付債について全て減額対象の候補とする方針だ。複数の政府筋が明らかにした。前倒し債を活用して19年度発行額を抑制し、当初ベースの金融機関向け市中総額は6年連続で減額となる。』(上記URL先より、以下同様)

つーことで順当おぶ順当ではありますが、

『19年度計画では、これらの年限債よりも前年度に減額を見送った20年債を優先する方向で、長期金利の指標となる10年債、5年債や2年債などと併せて減額候補に掲げ、市場参加者との議論を始める。』

ってことで、来年度はまあ普通に20年債は減額だという話になりますので、超長期輪番を減額するにはちょうどヨロシ(と言いましても入札減るのは来年度ですけど)という感じでもありますので、ここは超長期だけではなくて長期も4回コースでどうじゃろの、とは勝手に思うのですけどね。

ま、幸か不幸か輪番は来週に3営業日ぶち込まれているという日程段取りになっているので、今週は「今日の輪番ガー」という話もなく推移ということになるんでしょうけど。


・さて米国
 
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N1XU5AV?il=0
2018年11月20日 / 05:20 /
米金融・債券市場=国債利回り低下、米株価急落受け安全買い

30年債 15時19分 3.3204% 前営業日終値 3.3260%
10年債 15時19分 3.0610% 前営業日終値 3.0740%
5年債 15時18分 2.8697% 前営業日終値 2.8920%
2年債 15時19分 2.7872% 前営業日終値 2.8120%

『金融・債券市場では、米株価が急落したことで安全資産としての米国債に買いが入り、国債利回りが約6週間ぶりの低水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、週末金利が下がっていたので度肝を抜くほどは下がっていないように見えますけど、株式市場ちゃんの方が・・・・・・・・・・・・

『この日の米株式市場では主要3指数が約2%下落。アップルが売られたことでハイテク株が軟調になったことに加え、米中通商問題を巡りさまざまな情報が交錯していることが重しとなった。こうした中、10年債利回りは3.054%と、前週16日の3.074%から低下し、10月3日以来の低水準を付けた。』

てな訳で株式市場ちゃんがアイヤーという感じになっておりますので、これは円債ちゃんもという話ではありますけど・・・・・・・・・

『ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はこの日、来月も段階的な利上げを継続するとの見解を表明。DRWトレーディング(シカゴ)の市場ストラテジスト、ルー・ブライエン氏は、「前週のクラリダ連邦準備理事会(FRB)副議長の発言で政策の道筋が若干不透明になったため、この日のウィリアムズ総裁の発言が株安につながった」と指摘。「株式市場の動向を受け、国債利回りが低下した」と述べた。ラリダFRB副議長は前週16日、米金利はFRBが中立金利と見なす水準に近づいているとし、「経済の現状、およびFRBの景気見通しを踏まえると、中立的であることは理に適う」と発言。ジェフェリーズ(ニューヨーク)の短期金融市場エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は「市場ではこうした一連の発言が非常にハト派的に解釈されている」としている。』(以上上記URL先より)

という事なんですが、まあ米中摩擦だのブリクジットだの原油価格ションボリーヌだのアポー株価だのというようなネタが色々揃っているので盛大に反応している面もあるように思えるとこでして、まーアタクシもCNBCでのクラリダさんの話をちゃんと聞いたわけではないので決め打ちをする気はあまりないですけれども、クラリダさん別に「どこの水準が中立金利でそこでストップ」みたいな話をしている訳ではない(2.5-3.5%とは言ってたようだが仮に3.5%なら市場の足元織り込みの遥か上の高金利ですがな)という状況でして、もろもろの外部要因のある中で地合いとして債券買いのネタがあったら飛びついてヒャッハーとやりたかった、という状況で金利低下となっている感も拭えませんので、さてどうなるやらという所ではありますな。


〇総裁講演の仰せ御尤もではあるのだが「どの口がそれを言う」以外の感想が起きてこない件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko181119a.pdf
人口動態の変動と金融セクターの課題
パリ・ユーロプラス主催フィナンシャル・フォーラムにおける挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2018年11月19日

ということで講演があった(これフォーラムの名前はパリ・ユーロプラスなんですが講演自体は都内でやっているという物件、なお英語)訳ですが、一応一般的な話題をしているとは言え、それにしても何か全然トーンが違くね????という講演になっているのは不思議ちゃんです。以下確認。

・話題は人口動態なのですがそこから金融機関経営の話になりましてですな

『1.はじめに』から。

『本年も、パリ・ユーロプラス主催フィナンシャル・フォーラムでお話しする機会をいただき、誠に光栄に存じます。 例年、このフォーラムに参加させていただいておりますが、過去2年間は、金融イノベーションについてお話ししました。本年は、同じく多くの先進国が直面している長期的な問題の一つ、人口動態の変動について、お話ししたいと思います。』

今更何でこれ???ということですが、

『フランスは、先進国の中でも人口減少問題への取り組みが進んでおり、出生率が緩やかに上昇していますが、他の先進国と同様、高齢化は進展してい ます。日本では、出生率が2を大きく下回り1、人口減少と高齢化が同時進行するという逆風に直面しています。本日は、人口動態の変動、とりわけ人口減少と高齢化が、金融セクターにどのような影響をもたらしているのかについて、お話ししたいと思います。』

>金融セクターにどのような影響をもたらしているのか
>金融セクターにどのような影響をもたらしているのか
>金融セクターにどのような影響をもたらしているのか

・・・・・・・・・・・・・・??????∫dx

ということで本論になりますが、『2.人口動態の変動と経済成長、利子率 』という小見出しに入りますと・・・・・・

『初めに、人口減少と高齢化が、経済成長に与える影響について考えてみたいと思います。』

はい。

『人口減少と高齢化が同時に進行すると、働き手である生産年齢人口は減少します。生産年齢人口の減少は、労働投入量の減少を意味しますので、それ自体は、経済成長率を低下させる要因になります。また、仮に総人口が増加していても、高齢化が進行し、生産年齢人口の割合が低下すれば、人口一人当たりでみたGDPの成長率は低下します。 』

『もっとも、労働を代替する機械の活用やイノベーションの促進により、人口減少や高齢化の逆風を和らげることは可能です。実際、最近の日本における動きをみると、人手不足を背景に、生産ラインの自動化や新たなIT技術の導入による効率化をはじめ、投資活動が活発化しています。』

って感じでこの続きが利子率への影響、投資への影響という話をしているのですが、思いっきり両論併記の説明になっていましてその結論が、

『このように、人口減少・高齢化は、利子率を押し上げる方向、押し下げる方向のどちらにも作用しうると考えられます。最近の様々な研究によりますと、中長期的な均衡実質金利は、先進国では低下傾向にあり、それには人口減少・高齢化が相応に寄与していることが示唆されます3。このことと先ほどの議論を合わせて考えますと、人口減少・高齢化は、少なくとも当面は、貯蓄を増やす影響か、投資を減らす影響、あるいはその両方の影響が大きいと言えそうです。』

と結局両論併記マンで短期的には下がるけど長期的には上がるみたいな話にまとめているのですが、今更何をゆうてまんねんという感がぬぐえない平々凡々としたお話。

そして次の小見出しが『3.銀行ビジネスへの影響 』なのですが・・・・・・・・・・

『先進国では、国によって多少の違いはあるものの、インフレ予想は小幅のプラスの領域で変動しています。このため、均衡実質金利の趨勢的な低下は、名目金利の趨勢的な低下に反映されることになります。こうした趨勢的な名目金利の低下を伴う人口減少・高齢化は、金融セクターにどのような影響をもたらしているのでしょうか。まずは、銀行ビジネスへの影響について考えてみたいと思います。』

名目金利が低下しながら人口減少高齢化というのですから答えは明白ですが、この次の部分の話はさすがにお前は何を言っているんだという感想しか湧かない。

『貸出にかかる名目金利の低下が趨勢的に続く一方、預金金利がゼロ%以下には下がらないという状況のもとでは、預貸利鞘の縮小を通じ、銀行収益が下押しされます。』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwマイナス金利政策実施しているその口が言うかオッサン自分で何言ってるのかわかってるんかいな、ともう読んでいて盛大にブチ切れですよ先生。

『さらに、人口減少やそれに伴う成長率低下によって、貸出需要が趨勢的に弱まる場合には、ボリューム面からも、銀行収益に下押し圧力が加わります。とりわけ、人口減少が著しい地域では、企業や家計の数の減少率が大きい分、資金需要への下押し圧力も大きくなると考えられます。こうした地域で、縮小した資金需要を巡る銀行間の競争が激化しますと、さらに利鞘が縮小し、収益の下押しにつながります。』

どう見ても金融システムレポートです本当にありがとうございました。

『もとより、人口や企業数の減少が、直ちに金融サービスへの需要の先細りを意味する訳ではありません。例えば、家計には、高齢化、長寿化に対応した資産形成ニーズや相続ニーズがあります。高齢者世帯が増加しますと、仕事や家族の有無、健康状態、資産状況などの個人差が大きい分、それに応じた肌理の細かいサービスが従来以上に求められることになるでしょう。』

『また地域ないし国全体の人口減少に直面する企業は、それを乗り越えていくための新たな事業展開や技術開発、商圏の拡大、海外進出などのニーズがあり、それらを可能とするM&Aやコンサルティングサービスへの需要は高まると考えられます。さらに、現在進行中のデジタライゼーションは、様々な形で銀行業務のフロンティアを広げていくと考えられます。』

そらあーた金融全体をアグリゲートしたらそうかも知れんが決済機能を行っている預金金融機関がそれ全部対応するんかいなというお話もあるし、大体からして新しいニーズとか言うのと通常の預貸業務とのスケール観が全然違うじゃろ。

『他方、銀行が、今述べたような家計・企業のニーズの変化や技術革新に適切に対応していくことができなければ、人口減少は収益機会の減少に直結していくこととなります。銀行は、支店網やITシステムの維持などに多くの固定費がかかるという点で、一種の装置産業です。従って、仮に人口減少によって収益機会が縮小することになれば、経費率(Over Head Ratio、OHR)は上昇し、生き残りのために、費用の削減、さらにいえばコンソリデーションを視野に入れることまで必要となってくるかもしれません。』

とか他人事のように言っているけど今までの金融行政(だから日銀あんまり関係ない面はあるけどさ)がそもそも業態別すみわけみたいなことをさせていたのを引っ張っていて、しかもその後の金融自由化の際に護送船団みたいなのをやって引っ張ってしまっていたし、銀証分離とか平成も10年くらいになってからやっと緩和されたみたいなのをやっておいて、今更対応できない預金金融機関はどうのこうのとか言い出すというのも何だかなあ感が拭えないがまあそれはそれとして、

『いずれにせよ、人口減少や高齢化は、20 年、30 年という時間軸で進んでいく事象であるだけに、金融産業全体として、それへの適応も徐々に進行していくはずです。このため、新たなサービスの展開、技術革新の成果の活用、コンソリデーションの進展などの様々な角度から、金融システムへの影響をみていく必要があるように思います。』

だったらマイナス金利政策だのYCCだのは何なんだという話になりますがその直後にこんなのが。

『金融システムの安定との関係では、低金利環境が恒常化する中で、銀行のリスクアペタイト・リスクプロファイルにどのような変化が生じるのかは、中央銀行にとっても非常に関心を持っているテーマです。』

ポートフォリオリバランス効果とか言ってた筈ですが。

『十分に長い時間軸で捉えれば、低金利環境の下でも、新たな金融サービスの提供などを通じて収益源を拡充できるかどうか、技術革新の影響、さらには非銀行部門や事業会社との連携を含めた金融産業のコンソリデーションの進み方などによって、銀行部門が将来にわたって収益力を確保できるかどうかが決まってくると思われます。』

この他人事感。

『一方、もう少し短い時間軸でみますと、収益に減少圧力が働く下で、リスクテイクが過度に積極化する可能性には注意が必要です。』

ここでまたぶち切れですよ。

『一般に、充実した資本基盤を備えた銀行がリスクテイクを積極化することは、企業の生産活動を資金面から下支えし、景気の改善にも寄与すると考えられます。しかしながら、収益減少が続く下で十分な資本蓄積が進まず、適切なリスク管理も行われていない場合には、ひとたび景気悪化につながるような大きな外生的ショックが発生しますと、これに伴って信用コストが急激に上昇し、金融システムが不安定化する可能性も考えられます。 』

・・・・・・・そう思うんだったら、金融機関収益云々とかいう話ではなく、マイナス金利政策というのは要するに「息をしているだけで大赤字にさせる」みたいな政策な訳で、少なくともマイナス金利は無しにして、「安全な資金の一時置き場」を復活させていただきませんと、そらおめー金融機関が取りたくもないリスクをとりに行かざるを得ないような状態を作るっていうのがマイナス金利政策なのであって、上記のような話をするなら即刻マイナス金利止めれば少なくとも不必要なリスクテイクによる将来への問題蓄積ってのが相応に軽減される話だし、その前の所で「預金金利がゼロ%以下には下がらない」って名目ゼロ金利制約の話をしているんだから、マイナス金利撤回しても経済への悪影響は軽微じゃろとしか思えんのだが。


・・・・・・・って話からまたFSRの話になっていく、という展開でして、いやまあ仰せの通りではあるんですが、マイナス金利政策やっているその口が言うかという話を延々と展開しているというのが今回の挨拶の訳の分からんところで、これは単に「金融機関経営の問題にも気配りしています」というアリバイ発言なのか、それともどこかに向けた手打ちのメッセージ(意味深)なのかというのが???????ではあります。


あとオマケっぽくなってしまいましたが『4.非銀行部門への影響 』から少々。

『低金利環境が長期化しますと、資金を運用する主体がより高い利回りを求める、いわゆる「利回り追求」の動きが活発化します。その過程で、よりリスクの高い貸出や金融商品への投資が行われることになります。そうした動きが広範化すれば、金融システムの安定を脅かすことにつながる可能性も出てきます。』

『近年では、保険や年金商品に対する需要の拡大とともに、資産運用会社を通じた金融仲介が拡大してきています。このことは、基本的には、金融仲介経路を多様化し、より効率的な資金配分に資するものと考えられますが、他方で、ストレス環境下におけるリスクの波及経路、あるいは危機管理のために求められる対応をより複雑にする面もあるように思います。例えば、資産運用会社は、往々にして、似たような運用戦略をとることがあります。その結果、何かしらの負のショックが生じた際に、多くの資産運用会社が一斉に投げ売りを行い、当該資産価格がファンダメンタルズを大きく下回る水準まで下落するリスクが考えられます。また、同様の理由から、流動性の枯渇が生じるリスクも考えられます。』

まあこの辺も意味深といえば意味深でして、しかしまあ何で今回こういう話になったのか、というのが謎ですな・・・・・・・・・






2018/11/19

お題「FRB関連でクラリダ副議長とダーリーSF連銀総裁ネタ/置物日記日記」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181115/k10011712211000.html
プーチン大統領「2島の主権について引き続き協議が必要」
2018年11月15日 19時55分

えーっとこれエリツィンの時(でしたっけ)よりも後退してない????気のせいだったら良いんですけど。

〇日銀ネタもイマイチなので出稼ぎモードで米国モード

・クラリダ副議長とな

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N1XR4PB
東京外為市場ニュース
2018年11月17日 / 07:07
米金融・債券市場=利回り低下、FRB副議長が利上げサイクル終了示唆

『米金融・債券市場では、米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が米金利はFRBが中立金利と見なす水準に近づいているとの見方を示し、現在の引き締めサイクルが近く終了する可能性が示唆されたことで、国債利回りが低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『10年債、30年債、2年債の利回りが2週間ぶりの水準に低下したほか、5年債と7年債の利回りは2カ月ぶりの低水準を付けた。』

ほっほー。

『クラリダ副議長はCNBCのインタビューに対し、金利がFRBが中立的な水準と見なす2.5─3.5%に近づくにつれ、政策担当者は労働市場とインフレ動行(原文ママ)を緊密に注視する必要があると指摘。「現在は特にデータに依存する必要がある時点に差し掛かっている」とし、「経済の現状、およびFRBの景気見通しを踏まえると、中立的であることは理に適う」と述べた。米上院はクラリダ氏の副議長指名を8月に承認。この日の発言は承認以来初めての公の場での発言となる。』(以上上記URL先より)

でもってFRBのサイトの方を見に行ったのですが、惜しくもCNBCのインタビュー記事は出ていない(FRBはメディアとの単独インタビューのような物件の場合はサイトに掲載されません、まあ日銀とかもそうだから(ニュースワイヤーの著作権とかの問題があるんでしょうかね)同じなんですけど)ので、内容は確認できないのですが、そもそもクラリダさんの言っている中立金利の幅が広すぎで、実際にはどこで打ち止めになるのかというのがよー分からんですな。

まー毎度申し上げていますが、FRBの捌きが難しくなっているのって、マンデートは達成した形になって安定しているように見えている中でさあどうしましょって話で、マンデート達成してニヨニヨしていると金融不均衡が発生してバブルになられると困る訳で、米国の資産市場は隙あらばゴルディロックス相場ヒャッハーをやりたがるので適当に水をぶっかけて回らないといけなくて、かといってオーバーキルはしたくないという状態の中、たぶん一番美しいのは「打ち止め感を出さないようにしながら中立金利水準になった時にゴルディロックス相場を作らせないためにはどうしたらよいか」という事だと思うの。先週出てきた謎の「政策枠組みの見直しを皆さんも一緒に参加してやっていきませんか???」というリリースもそういう線から来ているんじゃないのかと思う次第。

現状ではまだ中立金利よりは金利が低いのですからもうちょい(あと3回はやるじゃろ、と思うんですけどねえ)利上げするにして、株が暴落されても困るのだがヒャッハー相場でホイサホイサと上昇されても困る訳です。さてどうするんでしょ。


・ダーリー総裁ネタの続き

https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2018/november/a-strong-economy-but-we-can-aim-higher/
Remarks made to the Regional Economic Development for Eastern Idaho?
Idaho Falls, Idaho
By Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery November 12, 2018

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https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2018/november/a-strong-economy-but-we-can-aim-higher/Daly-Speech-A-Strong-Economy-But-We-Can-Aim-Higher.pdf

・現状が完全雇用かという話からの労働参加率

金融政策のパートについては木曜にネタにしましたが、まあこの方も中立水準までは上げるだろうというのは分かったのですが、水準などの話は特にしていないので、そこは新機軸出すのを避けたというのもあるでしょうし、パウエル執行部寄りと思われるダーリー総裁足元ではリスクオフっぽいのもあるからあまり先の話はしないで今回は安全運転でスルーってのもあるんでしょう(いましがたのクラリダさんも同じかな、と思う)。


んでもって『Are we at full employment? 』という部分になる。

『That summarizes where I see the economy and policy headed. But there are always uncertainties. We’ve been surprised at how long it’s taken inflation to return to target. This has raised questions about whether the economy has truly reached its full potential. In other words, are we at the point where growth will be increasingly constrained by bottlenecks and other supply factors, rather than inadequate demand?』

そもそも今は実際に経済がポテンシャル通りになっているのか、という点を考えないといけませんということで、

『In the labor market, this idea of an economy at its potential corresponds to full employment.』

そこで労働市場の完全雇用に関する考えになる。

『Hence the question: “Are we at full employment?” While we frequently summarize the state of the labor market with the unemployment rate, we always look at a wide variety of other labor market indicators. These include broader measures of underemployment that take into account individuals who are out of the labor market or stuck in part-time jobs. We also watch an array of independent data series on job openings, worker quit rates, reported job availability and difficulties filling jobs, and others. Essentially all of these indicators are flashing bright green: they’ve met or moved beyond their values from past peaks, signaling a labor market that is indeed at full employment.』

失業率以外の色々なデータも緑信号を示しているそうな。ところが・・・・・・・・・・

『The key exception is continued low rates of labor force participation.』

労働参加率に着目とな。

『This refers to the fraction of the working-age population that is either employed or is unemployed and actively seeking work. My first chart shows the patterns in participation over the past 25 years for the overall population ages 16 and over and for workers in their prime working years, corresponding to ages 25 to 54.』

一々解説を入れているので長いがプライムエイジ層(25-54)の労働参加率に関してのお話。

『You can see that the overall rate has generally been on the decline since the year 2000. Demographics play a big role-specifically aging, as many of the baby boom generation head off for retirement. 』

『But an aging population doesn’t explain everything. The chart also shows a drop in labor force participation among prime-age workers. Like the overall rate, prime-age participation peaked around the year 2000. It fell around the 2001 recession and then took an even steeper tumble during and after the Great Recession of 2007 through 2009. It reached a low point in 2015, nearly eight years after the initial downturn. We’ve seen a bit of improvement since then. But currently, the prime-age participation rate is significantly lower than it was in the 1990s. 』

HTMLの方だと図表がくっついていまして、労働参加率は全年代では低下傾向、プライムエイジ層では足元回復しているけど過去のピークよりは低い状態ですので、全年代での低下だけだったら人口構成で説明できるけどそうでもないよねと。

『This raises the question-why aren’t Americans working like they used to?』

ミクロで言われたら大きなお世話とか言いそうですが(笑)。

『Some observers think this reflects a labor market that hasn’t yet recovered from the last recession. But my reading of the evidence suggests that longer-term factors are at play. 』

長期的ファクターとは???

『A number of influences have been identified. Research by San Francisco Fed economist Nicolas Petrosky-Nadeau and his coauthor Bob Hall suggests that some of the drop owes to economically secure families opting in favor of one employed spouse rather than two.5』

『In other words, there may have been some shift toward the “life” end of the work-life balance.』

ええことやん、と思うが後の方でそれに対する論点がある。

『Another factor behind the decline is ongoing job polarization that favors workers at the high and low ends of the skill distribution but hinders those in the middle.』

中間層向けの仕事が減っているとはアカンですな。

『This is mainly due to changing technology. I know for myself, I never call a travel agent anymore. With a few taps and swipes on my phone, I can book a trip to almost anywhere in the world in seconds. But it goes far beyond that: our economy is automating a wide range of jobs in the middle-skill range, from assembly lines, to call center workers, to grocery checkers. 』

やるなダーリーおばさん。ワシは旅行代理店のパッケージツアーに堂々行くわ。

『A growing body of research finds that these pressures on middle-skill jobs leave a big swath of workers on the sidelines, wanting work but not having the skills or flexibility to keep pace with the ever-changing economy.6 』

という中間層の業務が機械化でなくなっているという話でした。


次の小見出しが『What to do?』でして、

『I’ve argued that low workforce participation reflects long-term challenges. Good monetary policy can’t directly cure these problems. But as I’ve already noted, it can help by keeping the expansion going. Recessions cause long-term damage to workers’ employment and wage prospects.7 Keeping the economy on an even keel can help avoid these problems.』

金融政策でどうこうする問題ではなく、金融政策は景気の下支えをして問題の解決をしやすくするだけですけど・・・・・・

『But much can be done beyond good monetary policy. We shouldn’t think of “full employment” as a fixed target, but instead think of it as something that can be moved. From that perspective, there appears to be quite a bit of upside potential for U.S. workforce participation.』

労働参加を上げる方法とは??

『International comparisons are helpful on this point. The next chart shows the prime-age participation rate in Germany, Canada, the United Kingdom, and the United States. In these other advanced economies, participation has increased overall and now stands well above the rates observed in the United States. This is especially striking because, just like the United States, these countries are facing long-term challenges like labor market polarization. Yet, they have managed to offset the downward pull on participation rates.』

この次にHTMLだとグラフが出てくるのですが、1992年以降の米国、英国、ドイツ、カナダのプライムエイジ層の労働参加率の推移をみると確かに米国だけ伸び悩み。

『What factors have contributed to this growing divergence between us and other countries?』

なんでしょうか、ということで・・・・・・・・・

『Education is one. Like most advanced economies, job creation in the United States has tilted toward jobs that require a college degree.8 But we’re not adequately preparing our new workers for the jobs of the future. Although the share of young people with four-year college degrees is rising, we are falling behind many of our international competitors.9 』

『So where should we focus our efforts when it comes to increasing college education? A good place to start would be reducing the educational attainment gap across students of different races and ethnicities. Equalizing opportunity and access to higher education has substantial upside potential for overall growth, as well as for enhancing the economic mobility that is at the core of our American identity.10 』

学卒者が求められるという中で、特に人種やジェンダーによる進学率の差があるようですな。これを改善しましょうと。

『But education is not the only answer. There are other things that can be done. The United States versus Canada comparison is especially telling (chart). You can see a growing participation gap between the two countries since the late 1990s. By 2017, the prime-age participation rate was over 5 percentage points higher in Canada than in the States. This is a startling difference. It represents about 6.7 million additional individuals in the U.S. who could be in the labor force. 』

次の図表ではカナダとの比較があって、1992年以降の参加率推移が思いっきりワニの口状態になっています。

『In a research report scheduled for public release tomorrow, I worked with current and former San Francisco Fed staff to try to understand this gap.11』

https://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2018/november/why-are-us-workers-not-participating/
FRBSF Economic Letter
2018-24 | November 13, 2018
Why Aren’t U.S. Workers Working?
Mary C. Daly, Joseph H. Pedtke, Nicolas Petrosky-Nadeau, and Annemarie Schweinert

というのが出ていますが今日はそこまで届かない(届くつもりだったのですが、汗)。

『We found that it’s mostly due to differences for women: they account for about three-fourths, or 5 million, of that 6.7 million total. And it’s not a matter of differences in educational attainment: the Canadian edge is generally evident across all educational groups.』

要因は女性の労働参加ということで、さきほどは教育の話でしたが、必ずしもこの部分は教育とは関係ないそうで・・・・・・・

『Why is there such a large gap in women’s participation rates across the two countries? We discuss some tentative but compelling answers in our research note.』

暫定的な結論として以下のようなものを得た。

『Government subsidies for the cost of childcare in Canada may play a role, supporting the return to work for parents?especially mothers?with young children.』

出産後の母親の労働市場への復帰の問題のために子供へ政府が行う支援策が効いているとみられる。

『Probably more important, though, are Canada’s generous parental leave policies. Workers are assured of being able to return to their prior job, with the same compensation, after taking a prolonged parental leave-up to a year and a half in some provinces. They also receive payments that replace much of their lost income during leave, funded out of the nation’s employment insurance system. This system encourages people to return to jobs rather than drop out of the labor force following the birth of children.』

出産や育児休暇中における所得補償制度や、職場復帰後の所得水準の保証制度などが有効に機能しているようですな。

『Now I’m not advocating we adopt the Canadian system or recommending any particular policy. But the comparison with Canada, as well as with other industrialized nations, shows that policy matters and that, with the right mix of skills and support, there’s meaningful potential for increasing U.S. workforce participation.』

カナダの例をそのまま使えるかは別にして、比較するとそういう部分がプライムエイジ層の労働参加に効いているというのが言えそう。

『The Fed can help by making sure that the economy continues to grow, creating work opportunities for wide swaths of the population. But over the long term, it is equally important to develop more supportive educational and family policies, so that individuals are encouraged to take advantage of those opportunities.』

FEDが直接どうこうとはできませんが、教育や家庭への支援などに関しても重要なことであり、個人が挑戦する機会を整備するというのは米国の政策として重要でしょう。とこの講演後半のこの話の方が本来ダーリーさんのやりたかった話で、さっきのペーパーとなるのですが時間の都合で割愛。


〇置物日記日記:この高尚過ぎる理論がさっぱりわからん

毎度おなじみ置物日記日記でございますが、本日は2014年11月にヨーロッパの経済研究者と話をしたそうで、その時にどんな話をしたのか、というのが得々と示されている部分があるのだが、理論が高尚過ぎてワカランチ会長だったのでネタにしてみます。

ということで、以下(岩田(2018))となっているのは「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著」 筑摩書房 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500Eからの引用です。なお、間違えないように慎重に引用し、誤字脱字もチェックしていますが、誤字脱字等あった場合は引用者のミスによるものです(内容が取り違うようなミスはない筈です)。

(2014年11月11日)の本文148ぺージからの部分になります。

『今日は、何人かのヨーロッパの経済研究者と話す機会があった。彼らの関心は、デフレ・リスクを抱えているユーロ経済がデフレに陥らないようにするためにはどのような政策をとればよいかについて、日本の経験を踏まえた意見を聞きたいということで、次のような意見を述べた。』(岩田(2018)以下同様ですが入れて起きますね)

以下師匠のご説明。

『日本の経験からすると、資産バブル崩壊後に、ディス・インフレ(インフレ率の低下)からデフレに至る過程では、政策金利を引き下げることによって、銀行貸出を増やし、それによって景気を回復させて、デフレを回避しようとしたり、デフレから脱却しようとしたりする金融政策は効果的でない。その理由は以下である。』(岩田(2018))

な、なんだってー!!!!金利下げてもきかないんだったら何すれば効くのーって思いますけど、その答えは後の方にありますのでそれはそれとして、まあ説明を聞いてみましょう。

『資産バブルが崩壊する前に、家計や企業は大きな債務を負って、設備投資や不動産や株式などに投資をしているが、資産バブルが崩壊すると、それらの投資資産の名目価値が暴落する一方で、債務の名目価値は変化しない。そのため、多くの家計、企業および金融機関(含む機関投資家)の名目純資産価値が暴落したり、それらの経済主体が債務超過に陥ったりする。金融機関についていえば、大量の不良債権を抱える状態である。』(岩田(2018))

バランスシート不況の話をしているのは分かるのですが、そもそも資産バブル時に発生したこととして、借入余力の拡大や、過剰な楽観に伴って、過大な設備投資が進んで、その設備が要はマクロ的に余剰となってしまったというのがあるのですが、どうも師匠はそっちのほうには興味がなくてひたすら資産価格にしか興味がない、というのがアレなんですよ、以下読めばわかります。

『名目純資産価値が暴落したり、債務超過に陥った(以下では、バランスシートの悪化という)家計や企業は、バランスシートを改善しようとして、物への支出を抑制して、貯蓄を増やし、債務返済を優先する。その結果、家計だけでなく、普通は資金不足主体である企業までもが、設備などへの投資を企業貯蓄(内部留保と減価償却費)以下にとどめ、余った資金を現金や預金で保有しようとするようになる。不良債権を抱えた金融機関はリスクが取れなくなり、資金を民間貸出ではなく、比較的安全な資産である国債で運用するようになる。』(岩田(2018))

んーっと何か話が妙なのですが、バランスシートが悪化した状態なのに何で余った資金を現金や預金で保有している訳なのでしょうかそれは(運転資金と予備的資金需要を除けば)債務返済に回ると思いますし、民間銀行が全体として預金超過になったのって2003年とかそのくらいの話で、その時点までは民間銀行は貸出超過(業態によってデコボコはあります、念のため)になっていたので、話の時代が随分先の方に飛んでいて、なんか同時期に発生する話と先に発生する話がごっちゃになっている気がするんですけど・・・・・・・

『このようにして、バブル崩壊後にディス・インフレからさらにデフレに進む過程では、家計でだけでなく、現金・預金を豊富に持っている企業の借り入れ需要もなくなる。』(岩田(2018))

えーっと、そもそもバランスシートが悪化して云々というメカニズムの中で何でディスインフレからデフレに進むのかの因果関係の説明がないですし、大体からしてバランスシート悪化している状態だと現預金が豊富にならないんですけど(債務超過の企業が金しこたま持ってたら金返せ運動が始まるだろうよ)、それから全銀が預金超過になったのは2000年代になってからですというのは先ほど申し上げました。

『そのため、中央銀行が名目金利を引き下げて、銀行貸出を増加させようとする金融政策はディス・インフレやデフレを止める上では効果は限られている。』(岩田(2018))

過剰債務がある状況で名目金利を下げれば債務主体の金利負担が減ってバランスシート改善の助けになると思うんですが、というかいつの間にこれ話がバランスシート調整問題の話からディスインフレデフレの話に化けてないか????

『また、ディス・インフレからデフレに陥る過程では、市場の短期名目金利はゼロに近い水準まで低下しているから、短期の名目政策金利を引き下げる余地はほとんどなく、ゼロ金利制約にぶつかる。』(岩田(2018))

さっきまで政策金利を下げても効果が限られると言っているのに何で市場の短期名目金利が勝手にゼロに下がるの???


『日本では、1994年頃から、消費者物価(除く生鮮食品)前年比が1%を切って低下し始めるディス・インフレが始まった。実際に、GDPデフレーターは1995年度にマイナスになり、消費税率が5%に引き上げられた97年度(消費税込みのGDPデフレーターは消費増税によって高くなる)を除いて、2013年度までマイナスが続いている。97年の消費税率の引き上げは、日本がディス・インフレからデフレに陥るリスクが増大しているにも関わらず、日銀が適切な政策を採用しようとしない状況で、実施された。』(岩田(2018))

何か話が・・・・・・・・・(政策金利は95年に0.5%に下がっておるんですが)

『実際に、不適切な金融政策と消費税増税が重なって、消費者物価前年比は1998年7月からマイナスになり、以後ほぼ15年の間、日本はデフレに悩み続けることになる。』(岩田(2018))

どうも置物師匠の中ではアジア通貨危機とか日本の金融危機というものは無いことになっているようですな。

『ディス・インフレまたはデフレの状態で、家計だけでなく、本来は、資金不足主体であるはずの企業までもが資金余剰主体になってしまっている状況では、金融政策は銀行貸出増加の経路ではなく、家計や企業の傷んだバランスシートを改善する経路を利用しなければ、デフレを阻止し、景気を回復させることはできない。』(岩田(2018))

その前のバブルで出来た過剰を解消しないでどうやってバランスシートを改善しろと仰せなのかという感じですし、バブルで出来た過剰が整理されないとそれは経済に余剰生産力がある状態を維持することになるのですから、ディスインフレ圧力として作用するだろいい加減にしろと思う次第。そもそも不良債権がバカスカある時に銀行貸出増加経路を狙って金利引き下げする訳はないので話が元々何が何だか分からんのですが分かりますこの説明???

まあそれはそれとしてこの次が・・・・・・

『家計や企業のバランスシートを改善するためには、株式や不動産の価格下落や外貨資産の円建て価格の下落を阻止し、引き上げる必要がある。』(岩田(2018))

いやあのバリュエーションが過大なものそのまま維持しようとする方がサステイナブルじゃないんですがまあそれは兎も角としてこの処方箋がですよ・・・・・・・・・

『そのためには、短期名目金利ではなく、長期名目金利を引き下げる一方で、中長期の予想インフレ率を引き上げることによって、長期の予想実質金利を引き下げることが必要である。』(岩田(2018))

さっきまで金利を下げて貸出を増やそうとしても効果が乏しいと言っていたのは何だったのでしょうか??????

以下長期国債を買えという話からQQEの話になるのですがあんまり調子に乗って長々と引用するのも何なので、じゃあ長期国債買入をしたらどうなるかという話は本日は割愛します・この続きもだいぶ何だかなあという話ではあるのですが、まあ前段の理論だけでお腹一杯で、説明している話の時空が同時期に起きていないことが同時期に起きるという亜空間殺法もビックリという置物亜空間理論にしか見えないのですが、まあこの調子で説明が部分部分であっていても全体の整合性とか全体の時間軸とかがとにかく合ってないので読んでいて血圧が上がるというのがお分かりいただけるのではないかと思いますし、先週末の東京のような好天の休みの元で読む気力を起こすの大変(なのであんまり読めませんでしたすいません)でしょ、ということでありますよ。









2018/11/16

お題「英文ペーパー日経のネタになるの巻/FED関連ネタ/置物日記日記」

さて・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181116/k10011712511000.html
「外国人材拡大」法案 きょう衆院法務委で審議入り
2018年11月16日 4時09分

〇日経新聞がネタにしていましたな(英文のペーパーの件)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3765471012112018EE8000/
マイナス金利撤廃を提言 日銀論文、市場に波紋
2018/11/15 5:30日本経済新聞 電子版

ということで昨日の日経電子版で例の金研ペーパーのアレが話題になったようで。

http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/18-E-16.html
Macroeconomic Effects of Quantitative and Qualitative Monetary Easing Measures
Junko Koeda

でまあ怪しからんことに日経新聞朝刊の紙の方には出ていないという物件になっていますし、そもそもアタクシは日経をいわゆる駅売りで買う人で電子版の有料会員ではないという事実があるので記事が読めないという残念な事案が発生しておりますが、(夕刊に出たかどうかは知らん)、まあいずれにせよ出たとたんにネタにしておいて良かった(何が?)という感じです。

でですな、まあこういうのも一々妙な読み筋を入れようとすると入れられるんですけれども、古い蛍光灯のように10日過ぎてから日経がネタにしたのっていうのも何でじゃろということで、単に日経が気が付いたのが最近だったというだけなのか、市場の誰かの所で取材してたら知ったのでネタにした、とかいうのであればまあ別に普通なのですけれども、リバーサルレートの時みたいな話題になっていないから(たぶんこれってネタが「コミットメントのスレッショルド引き下げ」とか「マイナス金利撤回」とかいくら何でも話が先のものになり過ぎで現実性という意味でどうなのというのがあるから話題性に乏しいんだと思うのと、そもそも足元がリスクオフの方が話題なので話題にしても知らんがなという地合いだからだと思うけど)注目させようという動きがあったりすると、まさにリバーサルレートの再来で味わいが深いというものではありまする。


ちなみにアタクシ思いまするに、リバーサルレートの話をしてみたり、名目ゼロ金利制約の話をしてみたりしながら政策見直し、と言いましても、仮に今の政策を修正しようとしましても、均衡イールドカーブを使った説明だと「幅のある概念」なので弱いし、リバーサルレート論は政策修正そのものには使える理屈ですが、これをやってしまうと追加緩和が必要な事態になった時に自分たちの緩和手段をなくすので諸刃の剣。糊代論はまあ普通に受けないですし、もしやるならば先般の名古屋での総裁講演のように「経済のステージが2013年のQQE導入当初と変わってきたので、今のステージに合致した政策枠組みにする」と言ってマイナス利を撤回とかするのが一番屁理屈展開としてはマシかな、と思うので、確かに今回のレポートって「フォワードガイダンスで用いるインフレ数値のスレッショルドを下げても潜在成長率が十分に高ければ問題はない」「マイナス金利を撤回した方が拡張的な政策になる可能性もある」ということで、政策修正した場合の理屈には使えるのですけれども、問題はその政策修正を起こすトリガーが目先ちょっと無さそうなのと、そもそも黒ちゃんが政策修正(特にマイナス金利撤回)やる気ねえだろという所なのではないでしょうか。



さてちなみに直近は日銀のリサーチペーパーが何故か英語オンパレードとなっていまして、

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/wp18e18.htm/
わが国のGDPのナウキャスティングに関する検討

こちらはアブストラクトだけ日本語版がありまして、

『要旨』

『わが国のGDPの四半期速報値は速報性を重視して作成される一方、四半期速報値から遅れて公表される年次推計値は経済活動をより包括的に把握できる統計を用いて作成される。このため、本稿では双方についてのナウキャスティングを検討した。まず、四半期速報値のナウキャスティングでは、ハードデータ及びソフトデータの月次指標を用い、複数の混合頻度アプローチ(mixed-frequency approach)、すなわちブリッジ方程式、混合データサンプリング(Mixed Data Sampling、MIDAS)およびそれらのファクターモデルの比較を行ったほか、予測平均(Forecast Combination)の有用性も検討した。次に、年次推計値のナウキャスティングでは、Chow and Lin(1971)等の複数のベンチマーキング法を用いて、月次の供給側指標の有用性を検証した。本稿で得られた結果は次のとおりである。』

本文は英語でして、要旨だといきなり説明になっているので問題意識が何なんだかよくわからんのですが(ちなみに英文要旨も同様になっている、というかこれ英文要旨の邦訳です)、英文本文の方だと冒頭に、

『Understanding the current state of economy is crucial for policy makers. However, due to the inevitable publication delays of some key economic data, such as GDP, policy makers are forced to set policies without knowing the current state, and sometimes, even without knowing the past state, of the economy.』(下にリンクのある本文2ページより)

と、「GDPを出来るだけ早く正確に知るようにすることは経済の実態を早く知ることに繋がり、金融政策運営の際に重要なツールになる」というようなことが最初に書いてあったんんですけど、こっちの要旨もそれ最初に書かないのかなとは思ったんですが、GDPのナウキャストが重要というのの理由に上記の話をするのはアプリオリにもほどがあるから入れないんですかね。

『第1に、四半期速報値のナウキャスティングについては、混合頻度アプローチは、GDP成長率の期間平均と比べて、優れた予測精度を示すほか、モデル予測とエコノミスト等による予測を組み合わせることで予測精度が向上するとの結果を得た。第2に、年次推計値のナウキャスティングについては、供給側指標を用いたベンチマーキング法は、有用な予測ツールであることがわかった。』

ということで、まあこれはこれで別に他意は無いのでしょうが、ここもとFEDが(マンデートを達成した状態になっている、という理由がありますが)特定の経済数値(要は物価)の話をするよりも、「Stete of Ecconomy」を総合判断するという話をするようになって(だからこそ金融不均衡に対しても指摘が多い)いる中で、日本の場合は物価指数のポンコツ性に加え、政府がデフレ促進政策をおっぱじめるという状況にありますので、そうなると物価が明らかにマイナスにならないような状態であれば、「物価が目標からちょっと低いかもしれないけれども経済の状況が問題ないからいいじゃないかにんげんだもの」という総合判断攻撃をする、という形をさっきの政策枠組み見直しの際に投下する理屈として採用し、そういうためには経済の状況のナウキャスティングが部分的にでも出来るというのは大事だね、ということでこういうのが登場したとか好き勝手に陰謀論を入れながら解釈するとそれはそれで笑えます。)

なお本文はこちら
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18e18.pdf
Nowcasting Japanese GDPs




あと、英文レポートと言いますと直近では
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2018/wp18e19.htm/
What Drives China's Growth? Evidence from Micro-level Data
November 13, 2018

ってのがあるんですが、さっきのGDPナウキャスティングのはアブストラクトは日本語でもあって(単なる訳ですが)、日本語のトップの新着情報にも出ているのですが、一昨日出た上記の中国経済のレポートに関しては何故か日本語の新着情報に出てこないという謎の建付けになっております。

要旨は、

『This paper discusses the sustainability of China's rapid growth mainly based on the estimation of the corporate-level total factor productivity of Chinese listed firms.』

ということで中国の高度成長時における企業セクターにおける全要素生産性の上昇に関する分析、という話なのであまりきな臭さは感じませんがちゃんと読めてないのでよくわからん。

『Since the 1980s, both capital accumulation and rapid technological progress -- measured as total factor productivity (TFP) -- have contributed to the high growth of the Chinese aggregate output. Should the prediction of the standard growth theory be correct, however, economic growth led by capital accumulation is not likely to be long lasting, hence we mainly focus on firm level TFP growth.』

『As a result, we identify four channels that would continue to promote the TFP growth of the Chinese corporate sector at an aggregate level: (i) declining proportion of low-productivity state-owned enterprises, (ii) continuous influx of highly competent new start-ups, (iii) broad catching up trend among the laggards in the firm distribution, and (iv) innovation spawning R&D activities. These four channels would underpin the medium-term economic growth of the Chinese economy.』

なお本文はこちら
http://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18e19.pdf
What Drives China's Growth? Evidence from Micro-level Data


〇ボスティック総裁の講演である

https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2018/11/15-bostic-considerations-on-the-path-from-extraordinary-to-neutral
Considerations on the Path from Extraordinary to Neutral
Raphael Bostic
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

Global Interdependence Center: Central Bank Series
Madrid, Spain

November 15, 2018

ということでアトランタ連銀のボスティック総裁マドリッドに登場ですが、何せ寝起き読みなので手抜きマンということでアトランタ連銀お得意の最初に書いてある箇条書きまとめを読む。

『・On November 15, Atlanta Fed president and CEO Raphael Bostic speaks on normalizing monetary policy in Madrid, Spain, for the Central Bank Series of the Global Interdependence Center.』

それは分かった。

『・Bostic explains that the Federal Open Market Committee (FOMC) began the process of normalizing its monetary policy stance three years ago with a modest increase in the policy target of 25 basis points. That gradual pace has become characteristic of the policy path since then.』

それでそれで?

『・Bostic points out that today, inflation is effectively at the FOMC's longer-run 2 percent objective and the unemployment rate has fallen to 3.7 percent, very close to the FOMC's goal of promoting maximum sustainable employment growth, or possibly some measure beyond.』

マンデート達成していますとのお話で、まあ皆さんそこはそうですよという認識になっていますな。

『・In Bostic's view, conditions warrant the final steps in adopting a neutral stance of monetary policy. But he believes the FOMC must balance the risks of stopping short of full normalization and risking an overheated and unstable economic environment, versus going too far and short-circuiting an otherwise sustainable expansion. 』

まず、「conditions warrant the final steps in adopting a neutral stance of monetary policy」って言ってるんですから現状の政策はまだニュートラルになっていなくて、「ファイナルステップ」を踏んでニュートラルになるって認識なので利上げはするでしょうし多分来年の利上げも容認でしょうな。

でもってそのあとのBut以下ですけど、どうもこの言い方だと中立の所で正常化を止めるべきというのが基本線のようで、手前で止めて経済がオーバーヒートしてもイクナイし、やり過ぎて経済がヒエヒエになってもアカンガナという話なので、スタンス自体はたぶんFEDの主流派と思われる人たちよりも慎重でしょうな、別にハト派という訳ではないですけど。

『・Bostic says that to manage the balance between the risks of being too timid and being too aggressive in the Fed's monetary policy course, he can think of no superior approach than to proceed cautiously and keep a keen eye on the data.』

じゃあどうするかって話ですが、結局のところ「慎重なスタンスで見ながらデータに注目」っていうので、(そらまあ他にやりようもないですが)特に新しい機軸を出している訳ではないですな。なお本文は超寝起き斜め読みしかしていないのでネタにするとしても週明けで勘弁。


〇それはそれとしてFEDがこんなものを出しておりますが

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20181115a.htm
November 15, 2018
Federal Reserve to review strategies, tools, and communication practices it uses to pursue its mandate of maximum employment and price stability

な、なんだってーーーー!!!

ということで説明書きを読む。

『The Federal Reserve next year will review the strategies, tools, and communication practices it uses to pursue its congressionally-assigned mandate of maximum employment and price stability. The review will include outreach to a broad range of interested stakeholders.』

ほほう。

『"With labor market conditions close to maximum employment and inflation near our 2 percent objective, now is a good time to take stock of how we formulate, conduct, and communicate monetary policy," said Federal Reserve Chairman Jerome H. Powell.』

マンデート達成後という新しいステージになるとデュアルマンデート達成のためのアプローチとか枠組みとかコミュニケーションも変えていくのにちょうど良いですよね、よいう話。

『As part of the outreach effort, the Federal Reserve System will sponsor a research conference June 4-5, 2019, at the Federal Reserve Bank of Chicago, with speakers and panelists from outside the System. Additionally, Reserve Banks will host a series of public events around the country to hear from a wide range of stakeholders.』

これは興味津々。

『Beginning around the middle of 2019, Federal Reserve policymakers will discuss the perspectives offered during the outreach events as part of their review of how to best pursue the Fed's statutory mandate. At the end of the process, policymakers will assess the information and perspectives gathered during the year of review and will report their findings.』

ということで、来年時間かけてやっていく話なのですが、これは日銀もこのドサクサに紛れて・・・・・という訳にはいかんかあ・・・・・・




〇置物日記日記:直線一気理論に関するバックボーンが片岡さんなのでしたらば・・・・・・・・・・

置物日記を引き続き血圧を上げながら確認している訳ですが、またまた出オチに近い冒頭部分から、

以下(岩田(2018)より)となっているのは
「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著」 筑摩書房 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500E
からの引用です(縦横、漢数字とアラビア数字の入れ替えを行いました、また人名漢字の所で環境依存文字の関係上当用漢字を使った箇所があります)。

(2013年3月24日)の本書12ページ以降になります。

『明日は昼過ぎから、企画局と金融政策に関して初めて議論する。企画局が従来の日銀の金融政策の延長線上の案を出してきた時に備えて、以下の論点をメモにしておく。』(岩田(2018)より)

ということで(岩田メモ2013年3月24日)という代物があるのですが、

『岩田メモ2013年3月24日

(途中割愛)

(3)長期国債の月間買入額を最低5兆円以上とする。この数値は2013年3月14日(国会で私の日銀副総裁就任の動意の賛否が決まる前日)の高橋洋一教授、片岡剛士氏、安達誠司氏、飯田泰之駒澤大学経済学部准教授(当時)との研究会における片岡氏の消費者物価上昇率2%、3%名目成長を2年で達成するためのマネタリーベース(日本銀行券と金融機関が日銀に預けている日銀当座預金の合計)増加の試算による。片岡氏の試算はマッカラムというアメリカの経済学者が開発した手法(マッカラムルールと呼ばれる)によるものである。なお、高橋教授の計算も片岡氏とほぼ同じである。』(岩田(2018)より)

(なお、高橋さんの「高」は環境依存文字になるので当用漢字の方にしております、すいません)

とございまして、置物師匠お前計算してないのかよと小一時間問い詰めたいのもさることながら、なるほど置物直線一気理論の計算は片岡さんがしていたのですねという話で、つまりは片岡さんってご自身で計算した直線一気理論が全然ワークしてなかったことに関するレビューも反省もしないで堂々と日銀審議委員にご就任になった挙句に、今度は片岡理論によって「15年国債利回りが0.2%を超えないようにする」という債券市場を爆笑の渦に巻き込む平成最後の金融政策爆笑王となっておられたということなのですかと思った次第。

つーことはアレですな、今度片岡さんの金懇があった時にどなたか記者の方に置かれましては、「2013年のQQEの導入時にはマッカラムルールを用いて必要な当座預金の額を計算されたと岩田前副総裁の著書にありますが、実際にそれが機能しなかったことに関しての反省や責任は感じないんでしょうか」とか誰か煽って下さいお願いしますということですが、そうやって量の話をしていた片岡さんが何でまた足元では金利の話になっているのかよく分からんですな。

ということで置物日記の読破が進んでいないのではないかと思われるかもしれませんがだいたいお察しの通り。





2018/11/15

お題「金利が下がって来ましたが輪番は月中には・・・・・・・/置物日記日記関連雑談」

うーんこの。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181114/k10011710111000.html
“外国人材拡大”法案 5年で最大34万5000人余 介護業は6万人
2018年11月14日 15時39分

大丈夫かとしか思えんし、この法案のネーミングがインチキっぽくて非常に遺憾。


〇10年0.105%となというメモだけでも

https://jp.reuters.com/article/TOKYO-DBT--idJPL4N1XP2VU
2018年11月14日 / 15:22 /
訂正-〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小幅続伸で引け、長期金利は0.105%に低下

『<15:15> 国債先物が小幅続伸で引け、長期金利は0.105%に低下

国債先物中心限月12月限は前日比4銭高(訂正)の150円84銭と小幅続伸して引けた。前日の海外市場で、原油相場の急落からインフレ鈍化が意識され米債が上昇したことを受けて買いが先行し、一時150円93銭と日中取引で7月20日以来、約4カ月ぶりの水準に上昇した。日経平均株価が反発するなど株安の流れに一服感が出たため上値は限定的だったが、朝方に発表された7─9月期国内総生産(GDP)がマイナス成長になり、国内景気の不透明感が浮上。引き続き海外発のリスクオフ再燃を警戒して、下値では買いが入った。現物市場はしっかり。超長期ゾーンを中心に利回りが低下した。20年債利回りは一時同1.5bp低い0.630%と10月30日以来、10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp低い0.105%と10月29日以来の水準に低下した。』(上記URL先より)

とまあそういう訳で、10年0.105%まで来ましたよーという風情ではありますが、何かこうじりじりと金利低下していって気が付いたら20年カレント0.690%とは何だったのかという状況になっておりますけれども、これアタクシ勝手に思うに、超長期輪番減額の思惑というか期待があるからまだこの程度で済んでいるような気がしますし、逆に言いますとそれがあるもんで中々ロングで盛大にオリャーとしにくい分だけ投げが発生しにくいので金利が上がらん(上がるのは入札後に海外要因が出た時くらいで)という感じでしょうし、輪番日程の改善によって明日の輪番入れればいいや的な札がさすがに少しは慎重になることによって、スケベロングの発生が減るとスケベロングの投げが起きないのでまた逆に下がりにくいの巻みたいになるんですかね、よー分からんけど。

でまあ何だか知らんのですが、超長期輪番に関しては毎回のように「次回の輪番で減額」という話が出てくるらしくて、いや今月は輪番日程の改善と中期の減額やっているんだからそれ以上やったら目立ち過ぎることになって、そもそもが「金利を上げろ」とは言われていないのですから、オペレーションの一部局の運営が金利が露骨に上がるような目立つ輪番調整できないでしょと思えば、常識的に考えて今月は月末まで何もせんでしょ(金利が急騰したときの指値オペは別だが金利は上がるネタが今月末までのスパンであんまり無さそうだし)と考えないのかなーとまあほぼ連日のように輪番がどうのこうのというベンダー報道とか何とかストコメントとか見て頭抱えるアタクシ。

ちなみに何か予想しろと言われば、まあ一番やりやすいのは超長期輪番の回数減らして10−25年を実質減額(5回×1800を4回×2000にすれば月間1000減る、25年超は5回×500を4回×600なのか500なのか)するって方法で、来週PD懇と投資家懇があるようで、国債発行計画の市中消化に関する基本的な考え方も公表されると思いますが、どうせ市中消化減額となると、本年度減額非対象だった20年は普通に考えると減額待ったなしなので、実は輪番減らしてもそんなに痛手はないというか寧ろ減らさないとバランス悪いとなりますので、まあそこは一番説明付きやすいんとちゃいますかと思いまする。

発行に対して明らかに買入が過大な5−10年ですけど、こちらはコントロール対象になっているだけに安易に減額して変なメッセージ性を出したら今までの努力が水の泡になってしまうでしょうから、まあ10年5bpとかにならないと減額(実質減額も含む)ってハードル高そうな気がします。

とは言いましても、いずれにせよ減額するんだったら回数減らして実質減額のコースで暫くは行くと思われますし、金利を上げますメッセージが出るような動きはしないというかできないと思うのですけど、何でああ毎回毎々輪番ガーという話が何とかスト方面から出てくるのかは(他にネタがないから無理矢理ネタ作りをしているという商売上の事情というのは分かるけど)わからんですなあと思うのでした。よって別にこうやって金利が下がったから明日の輪番がどうのこうのとかいうのはちょっと先走りにもほどがあると思いますのでまあ落ち着けと。


〇置物日記日記:ほこたて対決キタコレ

世のため人のために人柱になる覚悟、とか言っている割にはちゃんと読みだすと3行で血圧が上昇し7行で眩暈がしてくるということで、徴兵検査の朝に読むと検査で丙種不合格となることができるのではないかと徴兵逃れのお札代わりに活用が可能と思われる書籍なだけに一旦トサカに来だすと読むペースが極端に落ちるという代物。まあギャグとして最初読んでいましたが、ギャグにしても見苦しい記述のあれこれにドンドン機嫌が悪くなるというものです。

・・・・・・・・・・とか何とか申し上げておりますが、先般申し上げたように「とにかく消費増税が悪い」と言い訳にしまくっている消費増税に関してですが、置物大先生そんなに怪しからんのだったら職を賭して反対すれば良かったじゃん寧ろ2%とかよりもそっちを理由にしておけば2%未達は誤魔化して威張れたんじゃないですかと思うのですが、何せこの先生、就任当初の日記によりますとこのようなお話を。

以下(岩田(2018)より)となっているのは
「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著」 筑摩書房 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500E
からの引用です。

(2013年3月26日)の本書13ページになります

『いま述べたことからわかるように、私は消費増税反対論者だったが、政府が日銀の政策手段に文句をつけることが許されないように、日銀副総裁も政府の財政再建の手段に文句をつけるべきではなく、中立を守るべきだとおもったから「日銀副総裁になった以上は中立を守るよ」と(引用者注記:財務省の当時の木下主計局長に)いった。』(岩田(2018)より)

となっていまして、なるほど政府が日銀の政策手段に文句をつけるのはダメだし日銀副総裁も政府の「財政再建の手段に」文句をつけるのはダメ、ということで黙っていたんですね。

・・・・・・・・というのを延々と言い訳にしていまして、こちらの著書でもひたすら「私は反対だったが立場上反対を表明できないので黙っていました」という、戦争が終わってから「私はあの戦争に反対だった」とか言い出す保身風見鶏人間と同じじゃないかと思いますし、大体からしてアベノミクス3本の矢とか言ってたんですからお前らの異次元緩和と財政政策セットなんだから言わないってのおかしいだろこのデコスケという感想しか沸いてこないのですが、まあこれだけではないのが師匠の師匠たるゆえん。

時は下りまして10%に増税するってのの集中点検とやらをやっていた時分のお話になります。

(2014年11月18日)の本書158ページから引用しますね。

『なお、私は、片岡剛士氏を除いて、証券会社や銀行系のエコノミストがこぞって、消費税増税に賛成するのを不思議に思っていたところ。この件で詳しい人から、「彼らは、消費税増税に賛成するようにという会社命令を受けて、集中点検会合に出席しているんですよ。だから、本心では反対の人は「集中点検会合」に呼ばれないことを祈っているんです」という話を聞いた。

どうやら、証券会社や銀行系のシンクタンクは仕事上、財務省の意向を忖度して行動しているようである。』(岩田(2018)より)

・・・・・・・・・人の事は偉そうに仕事上の発言だの財務省の忖度だの言ってますが、お前だって仕事上だからと言って何も言ってないのに何を偉そうに言えるのかと小一時間問い詰めたいのですな。


ああちなみに置物大師匠の2014年2月6日の宮崎金懇記者会見を確認しますと、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402a.pdf

『(問) 先程、消費増税の影響について、リスクは低下しているという考えを聞かせていただきましたが、安倍政権はこの年末にかけて今度は 8%から 10%へ上げるかどうかを検討する考えです。現時点で副総裁のお考えとしては、リスクは低下しているので順調に予定通り上げるべきかとお考えなのかどうかを確認させて下さい。』

『(答) もともと昨年4月4 日に現在の政策を導入した時は、消費税の増税が 2段階で行われることは織り込み済みです。その場合には、この程度の金融緩和政策、量的金融緩和が必要だと思って打ち出したものです。その時の考えに今も変わりはありません。』(上記URL先より)

でまあその後8%に上げたら予想外に悪化したっていうんだったら、そこは予想外に悪化したから再増税はすべきではないと言うべきだし、追加緩和は確かにその後してたけど、追加緩和の時の消費増税の影響は需要の一時的な下押しという説明しかしてないし、原油価格下落の影響による物価低下がマインドに与える影響の話がメインで、消費増税の影響が思いの外大きいので追加緩和で対処するって話はメインでも何でも無かったじゃろという所で、(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf)そういう時に置物がバシッとそういう事を言えばまだしも、後から「消費増税には実は反対でした」とか言いだすとかもうねとしか申し上げようがない。

しかしほこたてなのはそこではありませんで昨日こんなんありまして・・・・・・・・・・・・・

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181114/soc1811140007-n1.html
「デフレ脱却まで消費増税は凍結すべきだ」 日銀前副総裁・岩田規久男氏に直撃インタビュー  (1/2ページ)
2018.11.14

最近は産経を使わなくても金懇挨拶や決定会合主な意見、議事要旨などで電波浴ができるようになった(理由を考えると血の涙が流れて参りますがそれは気が付かなかったことにしまして)のですっかり産経電波浴をしておりませんで、電波浴を怠っているうちに随分とレイアウト変わったなこのサイトと思いながら拝読しようと思った訳ですが、タイトルでいきなりのけぞった。

・・・・・・・・えーっとすいません、師匠様散々大口叩いて麿たちを石持て追い出して「世界標準の政策で物価目標達成」「2年で達成しなければ最高の責任の取り方は辞任」ってイキっていたのに5年やって結局デフレ脱却してないのかよお前報酬返上モノだろうよ今すぐ俸給返せや、などと思いましたが、どうもこのデフレ脱却云々は今がデフレだという話をしている訳ではなさそうな感じも記事全部を読んで思いましたので、まあ思ってはみたもののこれはスルーしましょう。

でもってこれ「直撃インタビュー」とか言ってるのに、中の話って置物日記の内容を宣伝しているだけだったりしまして、何がどう直撃インタビューなのかさっぱりワカランチ会長なのですが、消費増税反対の話は最後の方にありました。よって2ページ目になります。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181114/soc1811140007-n2.html
「デフレ脱却まで消費増税は凍結すべきだ」 日銀前副総裁・岩田規久男氏に直撃インタビュー  (2/2ページ)

『「壊れてしまったリフレ・レジームを再構築することが必要だ。そのためには、『2%の物価安定が持続的になるまでは消費税率の10%への引き上げは凍結する』という協定を日銀と政府が結ぶことが望ましい」』(上記URL先より)

・・・・・・・・・あのですな、師匠様置物日記の方で「政府が日銀の政策手段に文句をつけることが許されないように、日銀副総裁も政府の財政再建の手段に文句をつけるべきではなく、中立を守るべきだとおもった」結果として任期中に消費増税の反対論を公式には言わなかった、って言い訳をしていますし、上記のように日銀は政府の手段の方には文句つけないっていう建付けの説明をしているのに、何で政府の財政再建の手段たる消費増税に関して(しかも消費増税のみ)日銀と政府が協定を結ぶってことになるのかさっぱり分からないのですけれども、もしかしておじいちゃん日記で書いたのは2013年だからってことでもう忘れてしまったの???

てかさ、あまたある税金・社会保障制度の中の一つのパーツである消費税だけ単体でフォーカスするんじゃなくて全般的な税・社会保障の運営について包括的な話をするならともかく、こんな1パーツの話で協定結ぶとか現実問題として意味があるのかという話なんですけど、もういいからお前はすっこんでろとしか申し上げようがない。


#ついトサカに来ていたのでダーリー総裁ネタが落ちてしまった







2018/11/14

お題「計数関連世間話/SF連銀新総裁の初講演から少々」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181113/k10011709341000.html
日銀の資産 553兆円余 GDPの額を上回る
2018年11月13日 19時38分

日銀の資産がGDPを超えたようですがここでデンマーク中銀のレポートを見てみましょう。

http://www.nationalbanken.dk/en/publications/Pages/2018/11/While-the-sun-is-shining-prepare-for-a-rainy-day.aspx
WHILE THE SUN IS SHINING, PREPARE FOR A RAINY DAY
Analysis - November 2018 - No. 16

でまあこのページにあるPDFマークをポチっとなとしますと(URLが長いのでリンクはこちらにはっておきます)、そこの本文10ページに『4: Systemic institutions in a Danish context14』ってのがありまして、

『The Danish financial sector is characterised by a handful of large credit institutions and multiple small and medium-sized banks, cf. Chart 6. The six large credit institutions identified as SIFIs have a market share of more than 85 per cent of loans in Denmark, and their total balance sheet amounts to almost 280 per cent of GDP. Also the Faroe Islands and Greenland are characterised by a few large credit institutions.』

とありまして、11ページに『Chart 6 Danish SIFIs are large relative to the economy and the rest of the sector』というのがありまして、先般来お洗濯関連で話題の某銀行様のバランスシートは対GDP比で・・・・・・(色がついているのでよくわかるとおもいますよ)

#日本の3メガが連結で1メガ辺り200兆円〜300兆円という感じでしたっけな


〇日銀のバランスシートネタがあったのでついでに買入残高関連とかその他

・短国の買入残高でも確認してみる

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

直近の買入残高が122,991億円とだいぶ減ったのですが、短国3Mカレント金利がマイナスに突っ込んだのが4年前の9月でして(若い人のために念のため申し添えますがこの時はマイナス金利導入前で、IOERは10bpだった時です)、まあもうちょっと前(2014年の年度頭くらい)から短国の金利がIOERから明確に下という状況だった訳ですが、セカンダリーマイナスとかになるわ、当時は買入額優先のため出来上がりマイナス金利の短国買入を平然と実施して拍車をかけるというトンチキプレイをしていた日銀ちゃんがいた訳ですが、この自分の買入残高を見ますと、2014年8月末で422,160億円なので、当時から見て概ね30兆円買入残高が減少していますな、うんうん。

とは言いましてもそもそも発行の方が減っておりまして、
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/index.htm
国債等関係諸資料

ここの過去の短国の入札結果とかでも見ますと、

2014年度
3M:5.7兆円×13
6M:3.5兆円×6
1Y:2.5兆円×12
2M:2.5兆円×2

2018年度
3M:4.4兆円×13
6M:2.3兆円×6
1Y:2.1兆円×12

となっているので、そもそも発行額自体が35兆円ほど減っているという問題があるので、まあ短国買入減らせども市場の需給はちょっと海外需要が強くなればそら締まるわという状態な訳でございますけれども、だいたい感覚的に言えば短国買入が35兆円超えて来たあたりから(当時のベースで)市場が明らかにおかしくなってきたというのがあって、まあ当時とは海外需要の方がだいぶ違うと思うので何とも言えませんけれども、これだと短国買入ゼロになっても市場は壊れっぱなしになるのか、それとも政策金利水準に接近するのか(プラス金利とマイナス金利の非対称性があるから、短国の金利がプラスのIOERよりも高くなった時よりも、マイナスのIOERより高くなった時の方が相対的な需要が圧倒的に多くなる筈で、マイナスのIOERを継続して、エクセスリザーブが潤沢なうちはIOER以上に短国の金利が恒常的に上がるとは考えにくいとおもうのですがどうでしょうかね)というのは見てみたいのですが、恐らく短国買入の方も週に1000億円とかいうのが継続すると思われますので、そうなると残高はまあ残ることになるでしょうからさてどうなるのやら。


・ところでTKRRが足元で盛大に下がっていますが

http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

公表データ
東京レポ・レート(2018年11月13日) エクセルファイル (Excel:27KB)
東京レポ・レート(一覧) エクセルファイル (Excel:290KB)

こちらが・・・・・・・・

     overnight/翌日物
      T+0   T+1
2018/11/7 -0.122 -0.149
2018/11/8 -0.114 -0.137
2018/11/9 -0.128 -0.140
2018/11/12 -0.149 -0.200
2018/11/13 -0.200 -0.256

とか思いっきり下がっているのですが、短国の金利も相変わらずの強さとは言えこの前までの3M▲30bp上等という水準からは少しはましになっているという状況で、短国要因ではないと思われますので普通に考えれば積み最終要因ということになりますが、期末(四半期末)バランスシート要因というのはレポで盛大に出たり出なかったりしますけど、積み最終要因でコールじゃなくてレポの方で出てくるというのもほえーという感じではあります(過去の推移見れば何となくわかるとおもうの)けど、積み最終の資金需給要因なんじゃろうな。よー知らんけど。


・・・・・・あとは輪番の銘柄別残高みたりしながらほほうとか思ったりもしたのですが、最近は償還額が幾らで今後の買入で残高何ぼ増える的な方ばっかり見ていまして、まあマーケットメーカーでもないので個別銘柄の需給とか買入額とかまで詳しくないから見てぼーっとしているだけになってしまいますが(超大汗)、この辺も今の地蔵マーケットが何とかなるころにはちゃんと感覚を取り戻しておかないといけませんね、などと思いながら計数をぼけーっと見るアタクシなのでありました



〇ダーリーSF連銀総裁の総裁としての講演一発目があったのでその辺から少々

いずれにしてもURLが長いので画面構成を考えてハイパーリンクは途中までしかつけていませんけど、ちゃんと下記URL先に飛びますので宜しゅうに。

https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2018/november/a-strong-economy-but-we-can-aim-higher/
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2018/november/a-strong-economy-but-we-can-aim-higher/Daly-Speech-A-Strong-Economy-But-We-Can-Aim-Higher.pdf
A Strong Economy?But We Can Aim Higher

Remarks made to the Regional Economic Development for Eastern Idaho
Idaho Falls, Idaho
By Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery November 12, 2018

デーリーとか言ってたらベンダー見たら「ダーリー」総裁なんですな。なんか気力の抜けるカタカナ読みになるような気がせんでもないですがそれは兎も角として。


・私らの現世利益に関わる部分に関してはこれどう見ても中立金利までは3カ月ごとに利上げと言っとるな

前半が現世利益に関わる部分で、後半は雇用に関する話を延々としていまして、後半は後半で金融政策以外の部分になる話ではありますが、まあこれはこれでオモロイのですけれども(さすがチーフエコノミスト)、とりあえずは現世利益部分を鑑賞してみませう。

『Current economic conditions』という小見出しから。

『I’ll start with the current state of the economy, which is very good. The expansion is over nine years old and seems destined to set a new record for the longest period without a recession in U.S. history, which it should reach in the middle of next year. The labor market is booming. Household and business balance sheets are very healthy, and confidence is high. All these factors point to significant underlying economic momentum, which is being boosted by tailwinds including the federal fiscal stimulus and global growth that, despite some recent unevenness, has been solid over the past few years.』

盛大に威勢の良い話をしていますが、最後にちょっとだけ格差の話が。

『Even in this strong economy, though, some people are getting left behind. There are pockets of economic distress, and we need to do all we can to ensure that growth is inclusive and everyone has an opportunity to benefit.』

その格差ってのは今次回復に置いて行かれている人がいますぞなという指摘。

『Monetary policy, however, can’t do everything. Our job is to keep the overall economy healthy, thus helping promote sustainable economic growth. By doing this, monetary policy supports economic well-being and creates opportunities for all to advance.』

金融政策ではその部分に対応できないけど、経済をサポートすることによって「creates opportunities」という環境を作ります、というそれしか言いようがないけど(なおどこぞの置物一派は・・・・・・・)まあ仰せの通り。雇用の話の所(今日はパスしますが)でもこのopportunityの話をしていて、「米国はopportunityの国なのでそういう機会を作るようにしていかないといけない」って話をしていたのには何か爽やかなものを感じたのは本邦いや何でもないです。

という経済認識の次に『Implications for monetary policy』という小見出し。

『This principle of sustaining a healthy expansion has guided our recent policy and plans. As you probably know, the Fed’s monetary policy group, the Federal Open Market Committee, or FOMC, meets eight times per year. We left interest rates unchanged at our meeting last week. More generally, though, we’ve been gradually increasing rates in order to bring the stance of monetary policy closer to neutral.』

「we’ve been gradually increasing rates in order to bring the stance of monetary policy closer to neutral.」ですので・・・・・

『This policy normalization, or return to neutral, reflects our commitment to the Fed’s dual mandate. One goal is “maximum” or full employment. This means an unemployment rate that is very low, reflecting normal worker turnover in a thriving labor market. Recent unemployment numbers below 4 percent strongly suggest that the labor market has reached or exceeded full employment. But there are other indicators as well, and I’ll return to them in a moment.』

でもってこの労働市場の色々な見方の話をしているのがどちらかと言うと今回の講演のお題目のような気がしますが、その部分は本日はパスしておきます(時間がないので、汗)。

『Our other goal is stable prices. In 2012, the FOMC determined that aiming for price inflation of 2 percent was most consistent with that broad long-run goal.2 We’d been mostly running below that target since the Great Recession ended in 2009. Recently, though, inflation has come back up and is basically on target. I expect this modest uptrend to continue, with inflation rising to just a bit above 2 percent over the next year or so. Of course, there are risks on both sides of that projection. Inflation could pick up more rapidly than expected, or it could drop back down again.3 For now, though, the inflation numbers are very encouraging.』

物価に関してはどう見てもマンデート達成。

『These conditions, with both of the Fed’s goals essentially met, merit the gradual normalization of monetary policy.』

「with both of the Fed’s goals essentially met」だそうな。まあ中心的にFEDの皆さんそういう見解になっているが。

『So why gradual? I view this gradualism as a process of iterated learning, guided by incoming data. That is, we take a policy action, wait, learn about the economy’s response, and repeat. The information gathered through this gradual approach is crucial for determining the speed and size of the subsequent policy adjustments. Of course, since monetary policy acts with a significant lag-likely a few years-policymakers must plan ahead, but need to be ready to adjust if the data or the environment change.4』

データを見ながら検討していく、とは言っていますけど・・・・・・・

『In other words, the FOMC is not on autopilot, with quarterly rate increases locked in. We’re constantly looking at the data and adjusting the monetary policy path as needed in response.』

この「the FOMC is not on autopilot, with quarterly rate increases locked in.」って言ってるのって要するに点検した結果特に問題なければ四半期ごとに利上げします、といってるようなもんでして、惜しくもこの中ではその水準について書いていない(どうもニュースを見ると質疑応答の中で来年あと2回(2.75-3.00%)までの利上げは順当という話をしたようで、まあ超順当な見通しと、あと3回は特段大きな問題なければ自動運転でっせという話ってことですわなあ、というのが現世利益的な部分の結論だと思われます。そらまあウィリアムスの後釜ですから順当に主流派見解の通りになるんですけど、まあ特にこの方突拍子もない話を始めるネタ枠にはならなさそう、というのはわかりました。あと飛ばしましたけど最初のご挨拶も割と面白かったと思います。

でもって、その労働市場の話に関して(周辺の他国(特にカナダ)対比でプライムエイジ層の労働参加率が低い件とかが話のメインだと思う、題名とリードしか見てないけど)ですが、講演の中で「明日ペーパーが出るよ私が総裁になる前に作った奴だけど」(その部分は今日は飛ばしてますが)ということで言ってたのがこちらのようです。

https://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2018/november/why-are-us-workers-not-participating/
FRBSF Economic Letter
2018-24 | November 13, 2018

Why Aren’t U.S. Workers Working?
Mary C. Daly, Joseph H. Pedtke, Nicolas Petrosky-Nadeau, and Annemarie Schweinert

ダーリーさんの名前が思いっきりありますな。まあこのEconomic Letterと合わせてネタにするかもしれません。


2018/11/13

お題「物凄く遅くなってしまいましたが展望レポートのロジックを確認する(と称して虫干しネタ)」

虫干しネタにも程がありまして誠に申し訳ありません。

〇展望レポート基本的見解のロジックちゃんの確認を今更ですが整理しておきます

まあその後に総裁講演があり、直近では布野審議委員の金懇挨拶もありましたが、要するに今回の展望レポートは「物価がそう簡単に上がらんのですがそれは別に悪い話ではない」と開き直っているのが実はアタクシ的には一番トピックかなとか思う次第です。

もちろん前回の展望レポートで物価が上がりにくい理由の言い訳大会が開始されて、その結果として2%達成時期に関して知らんがなと開き直る、という堂々の負け戦の収拾作業が開始されていてその流れではあるのですが、金融不均衡への言及を強めていることもさることながら、肝心の目標である物価が足元上がらんのにも良いことがあるという説明は完全に「口では早期達成と言っているけど全然早期達成しようとしていません」コースになっていることをあからさまに表明してますな、ということで、「超強力緩和によって物価上昇を加速させて何が何でも早期で2%」というドクトリンの完全放棄に向けた理屈的な準備は既に出来上がっているというような内容だと思うの。

・・・・・・・だから政策見直しかというとそういう訳ではなく、何せアベノミクスの面目玉だし、マイナス金利に関しては黒田総裁が新たに打ち込んできた政策(国債買入もその他資産買入も白川総裁時代の物を拡大しているだけで先代の政策対比斬新なのはマイナス金利政策だけなんですよねー)なのでこれ引っ込めるのは黒田さん的にはだいぶ恥辱なんじゃネーノというのは何となくわかるので、まあ政策見直しするには官邸が諦める(まずない)のか、外部環境的に大問題(要するに副作用による金融機関経営の悪化の顕在化)が起こるのかとかそういう話がトリガーだと思うと落涙を禁じ得ません。

と、マクラの積りの愚痴が長くなりましたがいまさらジローの展望レポート基本的見解でございますわよ。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1810a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1807a.htm/(前回、HTML版)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1807a.pdf(前回、PDF版)

この前(と言っても先週ですねすいません)の続きで『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済の中心的な見通し 』の2019年度以降の見通しから。

・経済の中心シナリオは海外の見通しをちょっと下げただけとなっています

『2019 年度と 2020 年度については、内需の減速を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる。』(今回)
『2019 年度と 2020 年度については、内需の減速を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる。』(前回)

という最初の所が同じですのでそもそもが変更なしな訳です。

『すなわち、個人消費は、2019 年 10 月に予定されている消費税率の引き上げの影響4から一時的に減少に転じるなど、2019 年度、2020 年度ともに緩やかな増加ペースにとどまると予想される。もっとも、海外経済が総じてみれば着実な成長を続けることを背景に、輸出は増加基調を維持すると見込まれる。』(今回)

『すなわち、個人消費は、2019 年 10 月に予定されている消費税率の引き上げの影響4から一時的に減少に転じるなど、2019 年度、2020 年度ともに緩やかな増加ペースにとどまると予想される。もっとも、海外経済の着実な成長を背景に輸出は増加基調を維持すると見込まれる。』(前回)

海外経済の所に毎度おなじみ「総じてみれば」というヘッジクローズが入りました。


『この間、設備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから、2020 年度にかけて増勢が徐々に鈍化していくとみられるが、輸出の増加を起点とした投資需要の高まりもあって、増勢鈍化のペースは緩やかなものになると予想される。』(今回)

『この間、設備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから、2020 年度にかけて増勢が徐々に鈍化していくとみられるが、輸出の増加を起点とした投資需要の高まりもあって、増勢鈍化のペースは緩やかなものになると予想される。』(前回)

『なお、今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(今回)
『なお、今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(前回)

ということで概ねもへったくれもほぼ不変じゃなという感じになっています(海外はファクターとして大きいので文言にヘッジクローズが入っただけとは言えそこそこ効いてはいますけどね)。


・金融環境と潜在成長率に関する記述は全文一致

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融環境が維持されると予想される。』(今回)

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融環境が維持されると予想される。』(前回)

全文一致ですな。ところで緩和的な政策を続けると副作用で金融機関の収益が悪化して、金融仲介機能に問題が生じる可能性があるって話もしていますけど、そもそもマイナス金利とか極端な低金利状態というのは名目ゼロ金利制約の観点から考えると実はただの金融機関引き締めであって、それを本当に金融緩和というのか、という疑問は思いっきりある(リバーサルレートの考え方みたいな話になるんでしょうな)。


『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みなどが続く中で、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。 』(今回)

『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みなどが続く中で、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。 』(前回)

まあここらはほとんどお題目状態ですので。


・物価が上がらんロジックの修正は政策修正に向けた屁理屈陣地の構成でもある(と思う)

『(2)物価の中心的な見通し 』である。

『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。』(今回)

『わが国の物価は、マクロ的な需給ギャップが需要超過となるもと、前年比プラスの状況が続いている。もっとも、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、なお弱めの動きを続けている。こうした中、中長期的な予想物価上昇率は横ばい圏内となっており、その高まりが後ずれしている。』(前回)

前回は物価が上がらん理由の分析大会になっていましたが、元々が見通し期間中に2%行きますよという見通しを出していたのを引っ込める言い訳が必要なので入れた訳ですが、そんな背景があるから色々と遠慮した表現で物価がアガランチ会長になっていますなという話をしていましたが、前回そうやって免罪符を得た(のかどうかは知らんが)ので今回はここぞとばかりにあっさり味の表現にして開き直り度が高まっております。

でもって前回はこのあとに先行き見通し→物価が上がらん理由の説明という風につながっていたのですが、今回に関してはご案内の通り、

『この背景としては、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っており、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方が、明確に転換するには至っていないことがある。』(今回)

『加えて、非製造業を中心とした生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重なスタンスを維持することを可能にしている。また、技術進歩などは、分野によっては競争環境を厳しくしている面もある。』(今回)

『公共料金や家賃などが鈍い動きを続けていることも、物価の上がりにくさに影響しているとみられる。』(今回)

『こうしたもとで、わが国では、物価のマクロ的な需給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予想物価上昇率も上がりにくい状況が続いていると考えられる。なお、春先までの為替円高に伴うコスト上昇圧力の緩和も、短期的には消費者物価を押し下げていたが、足もと、こうした下押し圧力は弱まりつつある。』(今回)

という説明になっていましたが前回は、

『もっとも、経済・雇用情勢の改善に比べて、物価や予想物価上昇率の改善ペースは、緩慢なものにとどまっている。この背景には、基本的に、長期にわたる低成長やデフレの経験があると考えられる8。1990 年代後半の金融危機やその後の世界金融危機を含む厳しい調整局面を経て、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや値上げに対する家計の慎重な見方、言い換えれば、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が経済に組み込まれ、その転換に時間を要している。』(前回)

この部分は前回が丁寧になっているだけで同じですけど、

『加えて、非製造業を中心に生産性を引き上げる余地が大きいことや、デジタル化といった近年の技術進歩などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重なスタンスを維持することを可能にし、分野によっては競争環境を厳しくしている面もあるとみられる。』(前回)

鏡にもありましたが、前回はこの生産性向上や技術進歩による物価上昇抑制圧力に関して「とみられる」となっていたのが思いっきり今回は要因として言い切っています。でもって昨日ネタにした先週の布野審議委員の高知金懇挨拶なんかではこの部分を思いっきり強調するという有様になっておりまして、これはすなわち足元の物価が上がらんことを「短期的に物価が上がらんけれども実際は経済の中では良いことが起きているんですよ」という風に説明することによって「2年で2%」という呪縛を取り払う(2年はさすがにと言っても「早期」というのは呪縛として残りまくっているので、会見などで「早期達成にこだわらないという理解でよいでしょうか」と聞くと絶対に反対されるという状態になっているのですな)ようにしていこう、ってなことを考えますと、政策転換に向けた屁理屈陣地の構築はしらっと続いていますし、この理屈を持ち出しているのは結構な強力な陣地構築ではあるんですよね、と思ったのでこの辺に関しては注目してしまったのです(あんまりネタにされてなかった気もするけど)。

『このように、低成長やデフレの経験が生産性向上余地の大きさなどと相俟って、わが国では、物価のマクロ的な需給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予想物価上昇率も上がりにくい状況が、想定以上の期間にわたって、続いていると考えられる。こうした物価や予想物価上昇率が上がりにくくなっている要因を、家計や企業の行動面から整理すると、以下のとおりとなる。』(前回)

ということで前回はこの後に理由の話があって、そのあと上昇するメカニズムの説明がありますがそこの引用はパスするとしまして。


・先行きの見通しなのだが正直メカニズムの説明に無理があると思う

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、今回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、2018 年度を中心に幾分下振れている6。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まってくるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、これまでの想定よりは時間がかかるものの、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、今回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、下振れている6。』(前回)

とまあ言っていることは同じでして、

『消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズムについて、一般物価の動向を規定する主たる要因に基づいて整理すると、』(今回)

『第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景にプラス幅を拡大しており、先行きについても、比較的大幅なプラスで推移するとみられる。こうしたもとで、賃金上昇率の高まりなどを受けて家計の値上げ許容度が高まり、企業の価格設定スタンスも積極化していけば、実際に価格引き上げの動きが拡がっていくと考えられる。』(今回)

『第 2 に、中長期的な予想物価上昇率は、足もとは横ばい圏内で推移しているが、先行きについては、上昇傾向をたどり、2%に向けて次第に収斂していくとみられる。この理由としては、@「適合的な期待形成」7の面では、現実の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率を押し上げていく力になると考えられることが挙げられる。』(今回)

『第3に、輸入物価についてみると、原油価格の上昇は、2018 年度の消費者物価の押し上げ要因として作用するが、その影響は緩やかに減衰していくと予想される。』(今回)

『この間、最近の女性・高齢者の労働参加の高まりや、企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みの強化は、長い目でみれば、物価上昇圧力を高める方向に作用していくと予想される。すなわち、こうした動きを受けて、経済全体の成長力が高まっていけば、企業や家計の支出行動が積極化していくことが期待できる。また、日本経済の成長力の高まりとともに自然利子率が上昇すれば、金融緩和の効果も高まっていくと考えられる。』(今回)

この3点セットプラスワンに関しては前回も今回も同じような話をしているので前回のこの部分は引用しないのですけれども、前回の物価がアガランチな説明の中ではこの整理の前にこのような説明があった訳よ。

『先行きを展望すると、景気の拡大基調が続く中で、物価の上昇を遅らせてきた要因の多くは次第に解消していくと考えられる。』(前回)

ほほう。

『技術進歩の影響などは先行き強まる可能性もあるが、労働需給が引き締まった状態が続くもとで、賃金上昇率の高まりはより明確化していくとみられる。』(前回)

うーんこの。

『こうしたもとで、外食などのサービス業で既にみられ始めているように、販売価格への上昇圧力は強まっていくとみられるほか、人手不足を背景とする物流コストの増加は、インターネット通販企業のコスト面での競争力を弱めることを通じて、小売業との競争環境を緩和させる方向に作用することも考えられる。』(前回)

うーんこの。

『さらに、労働生産性の上昇や非正規雇用者の賃金水準の高まりが、正規雇用者の賃金に波及していけば、家計の値上げ許容度も全体として徐々に高まり、企業による値上げはより受け入れられやすくなるとみられる。』(前回)

昨日ネタにした先週の布野さんの高知金懇でも言及がありましたが、一般労働者のお賃金ってろくすっぽ上がっていないんですよねえ(しかも給与所得の皆様ご案内の年末調整で何で今年はこんなに紙をださんといかんのよと思ってよく見れば配偶者控除がまた縮小とかいうように(その他でも)しらっとステルス増税してますしねえ)。

『また、高齢者の労働参加の高まりを支えてきたいわゆる団塊世代が 70 歳代に達しつつあることなどを踏まえると、労働参加の高まりが賃金を抑制する効果も緩やかになっていくことが予想される』(前回)

とまあこんな説明をしているんですが、そらまあ3カ月で大きく変わるもんじゃないというのはその通りかもしれませんが、今回の展望レポートでは寧ろ生産性の向上と技術進歩を堂々の物価が上がりにくい主因に昇格させている有様でして、物価が中々上がらんことに関しては益々開き直っている感じなのに、何で先行き上がるという話になるのか(そうしないと今まで広げまくった大風呂敷の手前言い訳が付かないから、というのは分かりますが)と小一時間問い詰めたいわけですよ。

だってね、先行き物価があがるのって、上記にあるように「需給ギャップのプラスで物価に上昇圧力を掛ける」→「その結果物価がちょろっと上がる」→「その状態をキープすることによって適合的期待形成に影響を与えてインフレ期待が上がっていく」→「インフレ期待が上がると物価が下がりにくくなるので需給ギャップのプラスが物価に与える影響がもうちょっと強くなる」→「そうなると物価が・・・・・・・」ってのの繰り返しって説明になっているのよね今は(なお昔は当座預金残高を10%引き上げると期待インフレ率が0.44%上昇するという世界標準の置物直線一気理論を使っていましたがそれはいつの間にやら無かったことにされておりましていまや置物日記の中にファンタジーとして残存するに過ぎません)。

でまあそういう物価上昇メカニズムなのですが、今回は物価が上がりにくい要因として生産性向上とか技術革新とかというのを主因の一つに昇格させているということは、つまり「物価は足元では中々上がりにくい」というのを強化している訳でして、足元がより上がりにくくなっている(2018年度の見通しも下げておりますよね、さっきはサラサラ流しましたけど)という状況なうえに、この生産性向上がどうのこうのって話は「需給ギャップのプラスが物価上昇に反映しにくくなる」という事も意味する訳ですから、そもそも論としてこれで物価上昇のモメンタムが維持されているというのはお前は何を言ってるんだという話になるはずなのよ。

でも「モメンタム」を「需給ギャップ+インフレ期待」で定義していて、需給ギャップがプラスでインフレ期待が下がってはいないというのでモメンタム維持、って理屈になっているんですけど、そもそもこの需給ギャップが物価に反映していくという肝心の元々のメカニズムに関して物価が上がりにくくなっているのを更に強化バージョンで説明しているのに、そっちは軽くスルーしている辺りがもうねという感じだと思うのよ。


・・・・・・・・とまあ悪態ついていますが、これ「物価2%を頑張って早期達成しましょう」という建付けが悪いのであって、「経済状況が適当に良い状態を長期間継続できた方が良いじゃないですか国民厚生的に言って」という風な考え方で、何でもかんでも物価最優先じゃなくて総合判断でやっていく、という風にしていけば、別に悪態をつくような話でもなんでもなくなるというのがあら不思議って奴でして、つまりは今回の展望レポートの物価認識と見通しとメカニズムの部分って、(以前からもちろんそういう傾向はあったのですけれども)2%目標がフレキシブルとか中長期とか、ゆうてみればステートオブエコノミーの象徴としての数字として考えて、でもって経済の総合判断の中で金融政策運営していきますよ、という風に考えて政策運営すると言って2%未達成大敗北なのに更に無理矢理金融政策の投下を続けるという無茶政策から撤収するための理屈上のお膳立てが(最後の一番難しい建付け変更を除けば)外堀くらいは埋めている感じがしますな、と思えばこの説明も中々良い味をだしています。ただし置物一派は焼き土下座して全員引退して二度と政策に関連するような所に出てくるな何だったら皆さん揃って(以下の文言は削除されました)、とまあそういう話ではありますな、とか思いましたがどうなんでしょうかね。


・リスクの部分は物価の所だけ確認な

『3.経済・物価のリスク要因 』は基本的に言ってること同じなのですが、物価の所だけ違いがありまして、

『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が挙げられる。』(今回)
『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が低い品目があることが挙げられる。』(前回)

前回は局地的な話だったのが今回昇格、その理由は従来から出ている生産性だのの影響でして、

『企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みが長期にわたり継続したり、近年の技術進歩や流通形態の変化等によって企業の競争環境が一段と厳しくなったりする場合には、こうした面からの価格押し下げ圧力が予想以上に長く作用する可能性がある。また、公共料金や家賃などの鈍い動きが、先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性もある。』(今回)

『公共料金や家賃などの鈍い動きが、先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性がある。また、流通形態の変化や規制緩和等によって企業の競争環境が一段と厳しくなる場合には、差別化の難しい財・サービスを中心に、価格押し下げ圧力が予想以上に長く作用する可能性がある。』(前回)

ということで、前回は公共料金や家賃の話がメインで、局地的な話で、むしろCPIをテクニカルに上げにくい要因がありますよってな感じの言い方だったのですが、今回は生産性向上とか技術進歩の話を前面にもっていっていまして、これどう見ても上がらんリスク要因としては強い意味になっているのですが、その内容が「中長期的に良いことである(キリッ)」という説明をすることによって、物価が足元アガランチ会長なのを開き直るようにも作ってあるという代物です。


・第一の柱はさっき悪態ついた通り

『4.金融政策運営 』に行きます。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)
『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、これまでの想定よりは時間がかかるものの、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

はいはい大本営大本営、ちなみにこれ前回が「見通し期間中に行きません」攻撃をしたために大きく下がっているので、単純比較すると上方修正に見えてしまいますがただの横這いです。

『経済・物価のリスク要因については注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。』(今回)
『経済・物価のリスク要因については注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。』(前回)

はいはい大本営大本営。

『これは、@マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、A中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられること、が背景である。』(今回)

『これは、@マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、A中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられること、が背景である。』(前回)

とまあ全文一致ですが、さきほど散々申し上げたように、そもそも需給ギャップに対する価格の感応度が低い状態が長期化するかもしれないし、その長期化は実は経済の生産性や技術進歩の賜物ですとか言い出している中で何がどうモメンタムが維持なのかという話ではありますが、そこはもうこれで押し通すしかない(モメンタムがダメとなると政策対応という建付けになっているから)。


・第二の柱はご案内の通りでリスク認識を昇格

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、2018 年度はリスクは概ね上下にバランスしているが、2019 年度以降は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。』(前回)

経済リスクアセスメントを下げているのは海外要因ですな。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。』(今回)
『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。』(前回)

はい。

『もっとも、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向には注視していく必要がある9。』(今回)

『また、低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるが、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、そのリスクは大きくないと判断している。』(前回)

ご案内の通り、これは今回は「リスクがある」であり、前回が「リスクはあるが現時点ではリスクは大きくない」なので、リスク判断を引き上げておりますし、それだけだとアレなので「先行きの動向には」というのを入れて読みやすくしてあげました、ということで、FSRもあれだけ散々書いたのがここにちょろっとだけ反映されて良かったですね(棒読み)という所ですが、あの認識だったらCP社債買入と貸出支援いや何でもないです。

なおフォワードガイダンス文言は当たり前ですが変化がないのでパスします。


#ということで虫干しネタの滞貨解消シリーズで誠に恐縮至極




2018/11/12

お題「布野審議委員金懇ネタが(たいしたネタでもないのに)引用大会になってしまいました/置物日記日記進捗状況」

簡単にする予定が思いの外ながくなってしまいましたすいません。

〇布野審議委員金懇挨拶はそれほどのネタではないのですがつい引用大会

金懇挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko181107a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko181107a1.pdf


・先行きの留意点という話があるが超ありきたり

『3.経済・物価見通しを巡る留意点』ってところから参ります。

『以下では、こうした経済・物価見通しが実現していくにあたって、私が留意している点をお話ししたいと思います。』

『(1)労働需給と所得環境』

『まず、労働需給と所得環境についてお話しします。わが国の景気が緩やかな拡大を続けるもとで、マクロ的な需給ギャップはプラス幅を拡大しており、直近(4〜6月)は2%程度のプラスとなっています(図表5)。さらに労働需給について着目しますと、着実な引き締まりを続けています。労働力調査の雇用者数の前年比はプラス2%程度となるもとで、有効求人倍率はバブル期のピークを超えた水準にあります。また、短観の雇用人員判断DIでみた人手不足感も強まっており、失業率も足もとでは2%台半ばとなっています(図表6)。』

はい。

『これらの労働需給指標は、1990年代前半もしくは1970年代前半以来の引き締まり度合いであります。先行きも、基調として潜在成長率を上回るペースでの経済成長が続くもとで、雇用者数は引き続き増加し、労働需給は着実な引き締まりが続く可能性が高いと考えています。』

その割には何で皆様の金回りが90年代前半や70年代前半ほどの威勢良さがないのか。

『このような労働需給のなか、労働需給の状況に感応的なパートの時給は、均してみれば、前年比プラス2%程度と高めの伸びとなっています。一方で、一般労働者の所定内給与の前年比は、0%台半ばにとどまっています(図表7)。』

毎度思うのだが、パートの賃金が上がっています(キリッ)とかゆうとる訳だがそれって補助的な話なのであって、結局のところ一般労働者の賃金がアガランチ会長なのにカーチャンのパート収入が増えたからよーしパパ消費を思いっきり増やすぞーとはならんじゃろ常識的に考えてと思うので、むしろ「賃金が全然上がらん」という状態が続いているということではないかと。

『この結果、一人当たり名目賃金は、振れを伴いつつも緩やかに上昇していますが、近年の女性・高齢者を中心とした弾力的な労働供給などから、労働需給の引き締まりに比べると弱めの伸びにとどまっています。先行き、労働者全体の時間当たり賃金は、名目の労働生産性上昇率と概ね同程度のペースで緩やかに上昇したのち、伸び率を高めていくと考えています。もっとも、企業における賃金設定スタンスが慎重なものにとどまるリスクもあることから、今後の動きに注目しています。』

という話にはなっていまして、結論としては「今後の動きに注目しています」ですけど、このトーンですとまあ「上がりませんわなあ」という話になっているのをマイルドな言い方で表現している、というような感じです。

・・・・・・とは言いましても、そもそも直近の日銀ちゃんは事実上「2%物価目標達成時期は知らんがな」モードになっていますので、賃金が中々上がりませんわなあとなっておりましても、下がるというような状況ではない限りにおいて別にケツに火が点くような状態ではないので、まーこの程度だったら「注目しています」で終了するんでしょうなあと思います。しかし「一人当たり名目賃金は、振れを伴いつつも緩やかに上昇していますが、近年の女性・高齢者を中心とした弾力的な労働供給などから、労働需給の引き締まりに比べると弱めの伸びにとどまっています。」って状況なのに外国人労働者受け入れ拡大とか究極の弾力的な労働供給をぶち込もうとしている今の政治状況って何なんでしょうかと小一時間ではあります。


次が『(2)物価動向』です。

『続いて、労働需給と所得環境を踏まえたうえで、物価動向についてお話しします。消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比はプラス0%台半ばにとどまっています(図表4)。』

『こうした弱めの動きの背景には、主に2つの要因があると考えています。』

はい。

『1点目は、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることです。2点目は、生産性向上の余地があり、技術進歩が進んでいることなどから、企業は、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収し、値上げを抑える取組みが可能となっている点です。』

思いっきり展望レポート通りの説明。

『一方で、物価の改善ペースが緩慢なものにとどまっているものの、経済・雇用情勢が改善するなかで、いくつかの変化も出てきています。』

『例えば、サービス業を中心に幅広い企業において、販売価格を引き上げる動きがみられるようになってきています。短観では、販売価格が上昇していると答える企業数は、下落していると答える企業数を上回ってきています(図表8)。また、高齢化などに伴い、労働需給がさらにタイト化し、パートの時給の上昇率も高まっていくと予想しています。こうした動きに加え、一般労働者の賃金も生産性の向上とともに上昇していけば、家計の値上げ許容度も高まっていくとみています。』

ということで結局のところ一般労働者のお賃金が上がらないことにはどうしようも無いという身も蓋も無い結論になるはずなのですが・・・・・・・・・・

『物価動向には様々な要因が影響を与えますが、その基調は需給バランスによって規定されると考えています。需給ギャップのプラスの状態が今後も維持されることによって、物価動向が弱めの動きとなっている様々な要因は徐々に解消されていくとみています。これにより、企業の賃金・価格設定スタンスや家計の値上げ許容度は改善し、予想物価上昇率も次第に加速していくと予想しています。』

という展望レポートまんまの説明でして、このコーナーの頭が「以下では、こうした経済・物価見通しが実現していくにあたって、私が留意している点をお話ししたいと思います。」だった割には展望レポート棒読みモードということで、私が留意しているとか言わなくて良かったんじゃないでしょうかと思うのでありました。

しかしまあ何ですな、そもそも「需給ギャップの改善が続いても物価が上がりにくいのは過去のノルムが強いから」という説明をしているのに、「需給ギャップがプラスの状況を長く続ければ物価が上がる」というのも変な理屈でございまして、ノルムを変えるためには需給ギャップに正のショックを与えるような大規模な政策を実施しないと、いつまでもノルムはノルムのままなんじゃないでしょうか、とか言いたくなりますが、まあその政策に失敗してしまっているので最早どうしようも無いのですよね。


・金融政策の話がこれまたまるで新しいネタがない

『4.金融政策運営』というのが次ですが、

『次に、金融政策についてお話しします。』

『日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率プラス2%を「物価安定の目標」として、これをできるだけ早期に実現することを目指して金融政策の運営をしています。その実現に向けて、日本銀行は、2016年9月に導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもと、経済・物価・金融情勢を踏まえて、強力な金融緩和を進めています。現状では、イールドカーブ・コントロールとも呼ばれる長短金利操作として、金融市場調節方針において、短期政策金利をマイナス0.1%に設定するとともに、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう長期国債を買い入れることとしています(図表9)。これにより、長短金利は低水準で安定的に推移し、きわめて緩和的な金融環境は企業や家計の経済活動を刺激し、需給ギャップの改善に貢献していると考えています。』

『一方で、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、物価動向はなお弱めの動きを続けています。そこで、日本銀行は、本年7月の金融政策決定会合において、2%の「物価安定の目標」の実現に時間がかかるとの見通しを示すとともに、2%に向けたモメンタムは維持されているものの、強力な金融緩和を粘り強く続け、需給ギャップをプラスにできるだけ長く維持することが必要であると判断しました。そして、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントを強めるとともに、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定しました。』

この棒読み感という感じですが、ここでの説明の中では7月の決定について「2%の「物価安定の目標」の実現に時間がかかるとの見通しを示す」って話をちゃんと入れているのはまあちゃんとしてますねと思いました。

でまあこの後が例の政策の説明になるのですが、フォワードガイダンスの部分では、

『この措置の内容は主に2点あります(図表10)。第1点目は、政策金利の「フォワードガイダンス」の導入です。「フォワードガイダンス」とは、金融政策に対する信認や期待を高めるために、将来の政策運営方針をあらかじめ示すものです。日本銀行は、「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」ことを表明しました。物価動向と合わせて考えると、当分の間、強力な金融緩和を緩めることはないということです。』

ってあっさり説明していて、9月の総裁講演みたいに長い期間アピールをしていないのがチャーミングです。

10年金利の変動幅拡大についても模範解答。

『第2点目は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化するための各種施策の実施です。例えば、10年物国債金利の操作目標について、引き続きゼロ%程度としつつも、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうることとしました。長期金利がある程度変動することを許容することにより、市場機能を維持することに広くつながっていくと考えています。ただし、金利水準を引き上げていくことを想定しているわけではない点には留意が必要で、金利が急速に上昇する場合には迅速かつ適切に国債買入れを実施する方針です。加えて、ETFの買入れについても、政策の持続性を強化する観点から、年間「約6兆円」という買入れ目標を維持しつつも、市場の状況に応じて買入れ額は上下に変動しうることを明らかにしました。』

「金利水準を引き上げていくことを想定しているわけではない点には留意が必要」ってのが入っているのは順当ではあるのですが、こういう説明を行っているにも関わらず市場の何とかスト方面の一部では引き続き「日銀は金利を上げようとして輪番減額している」というネタが出てくるのが何ともかんともで、まあ願望込みという以外の背景事情とか何となく分からんでもない気がせんでもない(物凄い奥歯にものの挟まった言い方ですがわざとそうしている)という風情なのですが、まあここの所のコミュニケーションもうちょっと明確にやった方が良いとは思いますけどね。

『強力な金融緩和を続けていけば、利鞘の縮小などを通じて、金融機関の経営体力に累積的に影響を及ぼし、金融仲介機能が停滞するリスクもあると考えています。今後も、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて、しっかりと見ていく考えであり、プラス2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、経済・物価・金融情勢を踏まえて、適切な金融政策運営を行っていく方針です。』

と最後にありまして、まあこの前のFSRでも主に基礎的な収益力の低下という方にフォーカスした感じで、有価証券運用に関する問題よりも本業基礎収支の話を重視したつくりになっていましたな。


・日本経済の課題という話を見るとどう見ても足元物価が上がらんのを正当化しておる

『5.日本経済の課題』というのがある。

『次に、私なりに、より長期的な視点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。』

ほう。

『日本銀行の推計によると、わが国の潜在成長率は2010年前後に比べれば上昇しているとはいえ、足もとにおいて0%台後半で推移しています(図表11)。成長力は伸び悩んでいると言えるかもしれません。しかし、私は、幅広い主体による構造改革や成長戦略の取組みが進み、生産性の向上を通じて、成長力の底上げが進むものと考えています。』

ほうほう。

『企業活動に着目すると、需給ギャップがプラスに転じてから相応の時間が経過して、業種や企業規模等によって差はあるものの、全体としては供給側の制約が成長への隘路となってきています。そのため、企業は、収益が改善していることもあって、製品やサービスの供給力拡充に向けた設備投資を始めています。』

『個別企業における業務見直しは設備投資を契機として展開されることが多く、生産性向上も期待できます。同時に、企業は研究開発投資の増加を通じて付加価値の高い新製品やサービスの開発を進めてもいます。』

ほほー。

『また、人口動態やタイトな労働需給を映じて、企業は様々な対策を講じています。第1に働き方改革などによる
従業員の有効活用です。わが国においては重複作業や長時間労働が多いこともあり、業務の効率性向上の余地は大きいと思われます。第2は女性の活躍で、現役世代の女性の就業率は世界的にも高水準の70%に達しました。今後はより付加価値の高い業務への就労や管理職への登用が一層促進されることを期待しています。第3は高齢者の雇用です。高齢者の就労は進んでいるものの、個々人の能力や勤労意欲と担当業務との間にギャップがあり、改善ののりしろは大きいと思います。第4は外国人の雇用で、徐々に増えてきてはいるものの、受け入れ体制という点では一層の整備が必要です。第5はロボットなどのITの活用による省力化です。わが国はロボット技術大国ですので、これをいかして生産分野だけでなく事務分野など応用範囲を拡大すべきだと思います。』

・・・・・・・・どう見ても賃金が上がらないのですが。

『以上のような構造改革や成長戦略の取組みは、業務の効率化などをもたらし、賃上げに対して短期的に下押し圧力となる可能性があるものの、長期的には生産性を向上させ、わが国の成長力を高めていくとみています。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・

『また、生産性の向上は、賃上げと個人消費の増加を通じて、物価上昇を促していくと考えています。』

何時の話になるのやら・・・・・・・・

『しかし、市場縮小や事業承継などに悩んだり、今後の個人消費に確信が持てないことなどを背景に、未だ慎重な姿勢を崩していない企業も存在します。生産性を向上させ、わが国の成長力を高めていくのは、時間のかかる取組みでもあります。したがって、金融政策が総需要を喚起して、適度にタイトな需給環境が維持されるなかで、活発な需要が様々な取組みの進展を促す環境が長期にわたり持続されなければなりません。』

という話でして、これはもう賃金が上がって物価が上がるとかいうような話は程遠いし、この説明だと寧ろ足元の賃金上がらん状況が続くのが結構、という話になってしまうというこのオソロシスな話で、それは分かったのだが、そうなると物価安定目標のありかたとか見直した方が良いし、マイナス金利+QQE+YCCって政策が本当に必要なのか(過度に金融市場にプレッシャーを与えていませんか?)というのを2013年に立ち返って見直していただきたいんですけどねえ。

『「物価安定の目標」の実現や、それと整合的な「持続的な経済成長」の実現に向けて、日本銀行としては今後も金融緩和政策を続け、幅広い主体による様々な取組みを確りと後押しすべきだと考えています。』

ということで、しらっと布野さん最後に今回「それと整合的な「持続的な経済成長」の実現」というのを入れていまして、まあこの部分が布野さんオリジナルなのか、それとも実は執行部が「転進」のためにこういう理屈を入れ込みだしているのかは謎ですけれども、今回の布野さんの金懇挨拶の最後の部分って明らかに「口では早期達成といっていますが、実際には持続的な経済成長や経済の生産性向上が重要なので、物価目標の早期達成はただのお題目ですがな」というような方向に話のポイントを持ってきていますな、という風には思います。


〇布野審議委員金懇会見は今回布野さんが妙に慎重な物言いをしているのが印象的です

記者会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk181108a.pdf

いつもだと会見で時々「おー」というのが出てくるのですが今回はそれがないですのう。

・ということで副作用論に関する質疑を2つ

『(問) 日銀は、今年 10 月の金融政策決定会合で物価上昇率の見通しを0.9%という形に引き下げ、その一方で、強力な金融緩和策の維持というものを決めましたけれども、金融緩和策によって、人口減少の進む地方銀行など、地域の金融機関の収益悪化というところも一方で懸念されていますが、物価2%の目標達成の見通しや、金融緩和策による副作用と言われるようなところについてのご見解をお聞かせください。 』

『(答) 10 月に見通しを引き下げたというお話はその通りですが、7月の展望レポートでも、見通しを下げた経緯がありまして、特に7月においては、見通しの引き下げに伴って、新しい政策を打ち出した次第です。1つは、フォワードガイダンスですが、フォワードガイダンスの意味するところは、当分の間、緩和的な金融環境を進めるということです。2つ目は、様々な副作用を制御するような施策を出したということです。2016 年の9月に「総括的な検証」をして以降、日本銀行の政策は経済、物価に加えて、金融情勢も踏まえながら行うという考え方でおります。全ての施策には作用、副作用がございますので、副作用も含めて、金融情勢をよく見極めてやるということです。そのような意味で、確かに金融緩和の状態が長引けば、金融機関の収益力に負の影響が累積的に掛かるということですので、今後とも注意深く見ながら、その都度、政策を決めていくものと考えています。』

まあ基本模範解答ですけれども、「2016 年の9月に「総括的な検証」をして以降、日本銀行の政策は経済、物価に加えて、金融情勢も踏まえながら行うという考え方でおります。」っていうのは一応しれっと打ち込んでますなというところで、本来金融政策点検第二の柱というのがあるのですから、金融情勢も踏まえるのって元々の建付けとしては当たり前なのですけれども、総括検証によって金融情勢も踏まえるようになった、というのはそれまでは副作用何も考えずにやっていました、と言ってるのと同じでして、まあこの時点で置物理論は完全崩壊しているという事ですな。


『(問) 2点あるのですが、1点目は、金融機関の収益への副作用という点が金融政策の議論で最近なされていますが、イールドカーブを立てれば、金融機関の収益に与える金融政策の副作用が軽減されるのかどうか、という点が1点目です。2点目は、当面極めて強力な金融緩和を継続するということだと思うのですが、効果と副作用のバランス次第では、物価が2%に達する前にも金利水準を引き上げる可能性はあるのでしょうか。』

1点目の質問なんですが、こんな質問の仕方したら「イールドカーブを立てれば良いわけではない」って答えが返って来るのが見え見えな訳でして、せっかくしらっと超長期の輪番がこの前減ったというのに、こういう質問して話を大きくするんじゃねえよと非常にトサカに来る質問なのですが回答も予想通りになっています。

『(答) 後の方から申しますと、物価が何%になったから金利をどうするということについては、金融政策そのものでありますので、今の時点で将来についての具体的なコメントは差し控えさせて頂きたいと思います。』

本来は調整ありうべしという話なのですが、まあこうやって答えるというのは、とりあえず変に切り取られてヘッドラインにされたくない、というのがあるでしょうし、それよりもこういう言い方になるってのは政策委員会の中の議論的に今の政策の調整が話題になっていないということなのでしょうかね。よーわからんけど。

『そのうえで、最初の質問についてですが、金融機関の収益力は、必ずしも金融政策だけで成立しているわけではございませんので、非常に多岐にわたる要因が絡んでいます。例えば、貸付先の事業のパフォーマンスであるとか、個別の金融機関での経営構造改革の努力であるとか、成長戦略の展開であるとか、そのようなことを含めて影響してきますので、金融政策がこうやったから金融機関は経営上の問題なくなるというような種類のものではないと思っております。ただ、急激に金利が上がるということは、当然のことながら、逆に金融機関においてマイナスにも効くでしょうから、金利の上がり方は一つのポイントではありますが、一般論では、イールドカーブが立つ方向にいけば、利ざやの拡大を通じて、金融機関に対してはプラスの影響が出るだろうと私は想定しています。』

この結論の前の前置きの慎重さがもうねという所で、布野さん今回はやたら慎重な物言いをしているなあという印象で、それがどういうインプリケーションなのかというのはいくつか読み筋は考えたのですがまだ妄想段階であって、今後の展開を見たら後からああなるほどというのがあるかもしれないな、とは思うもののはっきりしませんなという事で。


〇全然進捗しませんが置物日記日記メモ

置物日記日記ですが、引き続きちょっと読む→トサカに来る→付箋を貼る→精神を落ち着ける、という不健康なサイクルが続くので中々進捗しません。

でもってまあ進捗しないと言いましても適当に開けたところから読んでいるので飛び飛びながら後ろの方までだいぶ進んできたには来たんですけど、結局この本って3行でまとめると、

・置物一派の交遊録
・消費税増税が悪い
・国会質疑はムカツクし吊るし上げする民主党議員はムカツク

というので終わってしまうという大変にアレな内容でして、別に政策決定のプロセスみたいなのとか、政策の理論的バックボーンの話とか、まあまるで無いにも程があります。

しかしまあ見ていて一番トサカに来るのって消費増税に対する文句の部分で、そんなに文句があるなら日銀の政策委員会の委員という立場でちゃんと発言しなかったのかと思う訳で、延々と「自分は反対だった」という話をして、置物一派の誰誰にそういう話をして云々という話ばかりをして、自分が何も言わなかったのは日銀副総裁の立場として云々で全部言い訳をしているのがお前ふざけんなという話であって、それって「私は実はあの戦争には反対でした」とか戦後になってイケシャーシャーと言う連中とまるで同じだし、地位がある人間がそうやって傍観して後から言い訳しまくるとか見苦しいにもほどがあるわ、とまあ思うのですが、その辺の話は追々。








2018/11/09

お題「FOMCは無風で12月利上げ態勢でしょうな/10月会合主な意見がどうにもアレな感じで」

こんなに社会全体にコスト掛けさせる軽減税率って・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181108/k10011703161000.html
軽減税率「店内飲食禁止なら対象」など 国の新指針を公表
2018年11月8日 16時58分

読んでいるだけで頭がクラクラしてくる。

〇寝起きでFOMC

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20181108a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20180926a.htm(前回)

今回は順当おぶ順当にほぼ変更がなくて、既存路線を継続しますって内容なのですが、一つ物凄く不思議なのはPDFファイル版を見た時にほぼ単語量が同じなのになぜか今回行数が多くなっている(全文一致なのに改行位置が前回と今回で違うとかです)ことで、アタクシの場合前回との差分確認をするのに印刷して目検で逐語確認という原始人メソッドを使っているのですが、まず最初に全体の行数、次に行末の単語を見て変更があるかないかを判断してから目検を開始するので、「あれ今回なんで変更があるのよ」と思って読見直してしまった時間を返せと小一時間問い詰めたい。

そんな話はさておき参ります。

・第1パラグラフ:企業の固定資産投資の現状判断を引き下げ&失業率の判断を引き上げ

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising at a strong rate.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in August indicates that the labor market has continued to strengthen and that economic activity has been rising at a strong rate.』(前回)

実質全文一致ですな。

『Job gains have been strong, on average, in recent months, and the unemployment rate has declined.』(今回)
『Job gains have been strong, on average, in recent months, and the unemployment rate has stayed low.』(前回)

失業率の判断を強気化させています、と言ってもまあここは数値の後追いですけどね。

『Household spending has continued to grow strongly, while growth of business fixed investment has moderated from its rapid pace earlier in the year.』(今回)
『Household spending and business fixed investment have grown strongly.』(前回)

家計支出の判断は横ばい、企業の固定資産投資支出の判断が「moderated」になっていますが、そのあとに「from its rapid pace earlier in the year」ってわざわざ入れているのは水準は強いでっせというのを
言いたいから。

『On a 12-month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy remain near 2 percent. Indicators of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(今回)

『On a 12-month basis, both overall inflation and inflation for items other than food and energy remain near 2 percent. Indicators of longer-term inflation expectations are little changed, on balance.』(前回)

インフレとインフレ期待に関しては全文一致、とまあ全体的に微修正にとどまっています。


・第2パラグラフ:全文一致なのだがPDFバージョンを見ると行数が1行増えているという謎のパラグラフ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

いつもの文言。

『The Committee expects that further gradual increases in the target range for the federal funds rate will be consistent with sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term.』(今回)

『The Committee expects that further gradual increases in the target range for the federal funds rate will be consistent with sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective over the medium term.』(前回)

今後も徐々に利上げしまっせという文言にも変化はない。

『Risks to the economic outlook appear roughly balanced.』(今回)
『Risks to the economic outlook appear roughly balanced.』(前回)

リスク認識に関しても変化なし、ということなのですが何故かPDFだと行数が1行多いという怪奇現象。


・第3パラグラフ:政策金利据え置き

『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2 to 2-1/4 percent.』(今回)
『In view of realized and expected labor market conditions and inflation, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 2 to 2-1/4 percent.』(前回)

前回からこの金利部分の表現があっさり味になりました。前回は利上げで今回は据え置きなのでそこの単語が違うだけです。


・第4パラグラフ:今後の利上げパスの話も全文一致

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

めんどいのでパラグラフまとめて並べてしまいましたがまあ全文一致だわさ。


・第5パラグラフ:票決は全員一致

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chairman; John C. Williams, Vice Chairman; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Mary C. Daly; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chairman; John C. Williams, Vice Chairman; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Esther L. George; Loretta J. Mester; and Randal K. Quarles.』(前回)

前回はサンフランシスコ連銀総裁が空席だったので代打でカンサスシティ連銀のジョージ総裁が代打をしていましたが、10月1日から後任が入りましたので本来の順序通りにサンフランシスコ連銀のダーリー総裁(と読むのかしら、ワタシエイゴワカリマセーン)が投票しています、政策変更なしですから全会一致な訳ですが。

・・・・・・・・とまあそういう訳で、今回は超順当オブ順当にほとんど判断の変更もなく、堂々の12月も利上げしまっせという状態、しかも今や予告ホームランしなくても既に予告ホームラン状態となっている大変にお洒落な展開になっておりまして、ホワイトハウスの方から来ましたというアホウがノイズですが、まあ普通に無視して利上げするっしょ。



〇10月決定会合主な意見が何かこうアレなんですががががが

決定会合主な意見ちゃん登場。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2018/opi181031.pdf

んでまあ登場しているのは良いのですが、「おまいら本当に議論しているのか」という感じが漂う「主な意見」という風情でありまして、今まで出ていた中でもトップクラスに首をかしげてしまうような出来に仕上がっております。まあ四の五の言わずに鑑賞鑑賞。

まずは『T.金融経済情勢に関する意見』の(物価)のところなのですけど、最後の意見として、

『・プラスの需給ギャップのもとで物価上昇が遅れているが、これは供給面における生産性向上が物価上昇を抑制するなど、物価変動メカニズムが複雑化しており、先行きの不確実性も高まっていることが影響している。』

というのがあって、いやまあ言いたいことは何となくは分かるのですけれども、「物価変動メカニズムが複雑化」って何か妙で、そうじゃなくて単におまいらが物価変動メカニズムを読み誤っていただけじゃないのかよと思いますし、「先行きの不確実性も高まっていることが影響」ってあるけど先行き不確実なのと物価が直接関係するもんなのかというとそれって何か因果関係として弱くないかという話で、今回の「主な意見」って言わんとすることは分からんでもないけど、なんか意見として生煮え感の漂う物品が結構並んでいる感じで、これって要するに決定会合で各人の見解を揉むというようなプロセスが不在の結果、皆さんの出してきた素材が素材のまま放置されてしまっているのではないか(つまり議論になっていない)、というようなことを感じるんですよ。気のせいかも知れないけど。


でまあ『U.金融政策運営に関する意見』を最初から並べて鑑賞しますけど。

『・「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要である。

・息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策方針を継続すべきである。

・景気拡大や労働需給の引き締まりに比べると、基調としての物価は引き続き弱めの動きとなっているため、きわめて緩和的な金融環境を息長く続けていく必要がある。』

この辺が執行部派ですな。

『・金融システム面の副作用について慎重に点検しつつ、需給ギャップのプラスを維持する現行の金融緩和政策を続けることで、物価上昇を粘り強く待つことが肝要である。』

執行部案には近いけど副作用というのがあるのは副作用警戒派ですな。

『・7月の政策対応以降、経済・物価情勢に応じて国債金利が多少変動するようになっている。これは、強力な金融緩和効果がしっかりと確保されている範囲内の動きと評価できる。』

ナンジャコリャ。

『・2%に向けて物価に加速感が見られない現状は重く受け止めるべきである。こうした現状では、市場の一部で言われているような更なる長期金利変動レンジの柔軟化は、2%の実現に対するコミットメントを揺るがしかねない。』

ジンバブエキタコレなのですが、なんでこのおじさんは一々「市場の一部で言われているような」とか言うのかねと思う訳で、これって、リフレ派の世界標準の金融政策に関する見解を理解しない無知蒙昧の債券市場のチンピラゴロツキはケシカラン、と言いたいのか、はたまた副作用重視派の人たちのいう(たまに執行部も言い出しそうな)長期金利変動レンジの柔軟化はケシカラン、と直接言うのではなくて「市場の一部」とか表現して当てこすり的に批判するという底意地の悪いものの言い方をしているのか、どっちだか分からんですけれども、よほど債券市場の事がお嫌いなようですが、以前は金融機関がケシカランとか言ってましたが、さすがにその態度で金懇とか行くと行った先で総スカンを食うのに気が付いて、直接対峙する必要がない「市場」を名指しするようになったんでしょうな、うんうん。

『・長期金利を長期にわたり「ゼロ%程度」に誘導した場合に、インフレ期待への影響がかえって低減しないかどうか注意が必要である。枠組みとしては緩和方向を維持しつつ、金利変動幅や金利操作目標年限等について、柔軟に検討していくことが重要である。』

ジンバブエ先生の直後にこれを並べてくるとか黒ちゃんお洒落ですな。こちらは副作用派なのですが、前半の言っていることの意味するところがよく分からん。字数制限あるから仕方ないけど、期待が低減する想定経路について言及がないとよくわからん。

『・金融業の規模に対して、十分な借入需要がないという構造問題を、金融政策で解決することはできない。金融政策にできることは、十分な金融緩和を早期に行うことでデフレを防ぎ、名目GDPを拡大し、金融業を含むすべての産業の名目の生産額を増大させることで、経済の調整コストを引き下げることである。』

いやね、FSRを受けての見解で、金融機関の経営環境については金融政策要因だけではない人口動態だの産業動態だの金融機関の過当競争だのの要因がある、って前段は言いたいのはわかるのですが、後段の話ってまさにそれ借入需要を創出する話だし、だいたいからして毎度毎度今次金融政策の効果として貸出の増加というのをアピールしているんで、前半と後半の文章が思いっきり矛盾しているように見えてしまうんですが、さっきのとかこれとかもそうなのですが、もうちょっとこういうの政策委員会の中で色々な議論が進んでいれば、こういう生硬な感じの「意見」がもっとこなれて来ると思うのよ。(前段が余計だし、書くなら前段は「金融機関の収益環境の厳しさには構造要因も多くあり、その部分は金融政策では解決できない」とかじゃないの?と思う)

でもってこれまでの主な意見の中で、今回のは特に(アタクシが見ての個人的感覚なので恐縮ですけれども)アタクシ思うに生硬なものが多く出ているように見えまして、何かこうMPMで議論をしてコンセンサスを探していこうという努力を全然やっていないのではないか(総裁会見での投げやり感もそういう思いを加速するのだ)という気がヒジョーに強くなっておりまして、何というかただただ寂しいものをここもとの総裁定例会見、9月議事要旨、10月主な意見の3連発で感じるのでありました。

でまあ今回はこのMPMの前にFSRが出たから上記の意見以降しばらくはFSRを受けての意見が並んでいまして、気にしてるジャンと思うのですが、FSRの問題提起を真面目に受け止めたら社債CP買入もそうですが、貸出支援関連のオペって普通止めろという話になるはずなんですけど何であのオペ毎度碌すっぽ議論している形跡もなく継続されているんでしょうかねえ、と悪態。

『・地域金融機関では、貸出金利が低下傾向にある中で相対的にリスクの高いミドルリスク企業向け貸出等を増やしており、仮に景気後退局面となり信用コストが顕在化した場合には、加速度的に収益悪化が進む恐れがある。こうした点に十分留意が必要である。』

FSRの指摘通りですな。

『・金融システムに関するリスクの点検に当たっては、モデルで必ずしも描写しきれない構造変化など、様々な要因についても目配りする必要がある。』

うーんこの。

『・金融仲介機能の低下といった問題に対応するための政策ツールとして、金利変更など金融政策に焦点を当てた見方も見受けられるが、プルーデンス政策の重要性を見落としてはならない。』

これは「で??」と言いたくなる。で何なのかという話が無いと何を言いたいのが分からん。

FSR的なシリーズの次は最後のコーナーとなりまして緩和派片岡さんの意見

『・消費税増税等を巡る経済の不確実性が高い中、需給ギャップが一本調子で拡大する可能性は低い。需給ギャップから物価への波及度合いも弱まっている可能性がある。こうした中、適合的期待形成を通じて物価が上昇する経路が本格的に機能し始めるには、想定以上の時間を要するとみられる。したがって「物価安定の目標」の早期達成に向けて予想インフレ率に直接的に働きかけることが、より重要である。金融緩和の強化とともに、政府との政策連携も、もう一段強化することが必要ではないか。』

前半はまあ分かる(展望レポートの先行き物価上昇するメカニズムに関する疑問点とかは同じように思いますですよ)のですが、問題は「したがって」以降で、「予想インフレ率に直接的に働きかけることが、より重要である。」とあーた仰いますが、マネタリーベースを10%引き上げると予想物価上昇率が0.44ポイント上昇するという世界標準の経済理論を駆使した置物直線一気理論(しかもネタに中々登場させてなくて恐縮ですが置物日記によるとどうもこの手の計算昔から片岡さんが置物の知恵袋としてやっていたような記述があるのでまさにこれは片岡理論だったりするのかも知れませんな)がワークしなかった(婉曲表現)のですけれども、あーた具体的に何をどうすると予想インフレ率に直接働きかけることができるのかと小一時間問い詰めたい、というか案を出してその案でインフレ期待が上がるメカニズムを合理的に説明してみやがれコノヤローとしか申し上げようがない。

『・金融政策では財政の持続可能性や潜在成長率の低下という日本経済の課題を解決することはできないとの考え方もあるが、現実には、「量的・質的金融緩和」の導入以降、雇用や財政は改善し、潜在成長率も安定している。』

どう見てもジンバブエです本当にありがとうございました。


〇布野さんの金懇と会見ですが・・・・・・・・・・・・・・

ということで布野さんの金懇と会見なのですけど、ええまあ今回は会見の方も特段新しいネタが打ち込まれずとなっていまして(正直質問が露骨な誘導質問過ぎてあれじゃ布野さんが執行部公式見解でしか答えようがないわという出来栄えなのは残念でした)、記録としては残すから週明けに簡単にネタにしますけど、まあ正直全く新しい情報がなくてガックシという物件に仕上がっておりますです、はい。





2018/11/08

お題「名古屋での黒田総裁会見は何か投げやりというか何というかな変な味わいがすると思うのですが・・・・・・・」

厭債害債さんが荒ぶっておられる・・・・・・・・
https://ensaigaisai.at.webry.info/201811/article_1.html
移民政策の転換案に思う

アレがアレなのは今に始まったことでは無いのですが、行動力のあるアレという観点に関してはなるほどと思うのでありました。


〇黒田総裁の名古屋会見ですが何だかなあ感が強い

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk181106a.pdf

・思い切った政策が最適ではない云々の質問が早速来るわけですが

『(問) 講演では、講演録の 8 頁ですが、経済がこの 5 年間で「はっきりと改善」して、物価も「デフレに苦しんでいた 5 年前に比べれば、着実に改善している」とおっしゃったうえで、「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなって」いるとおっしゃっています。』

でもってそれに関しまして、

『とはいっても、5 年前の異次元緩和を始めた時と比べて、国債の買入れ額は、一時よりは減らしているとはいえ、年間増加額 50 兆円前後とあまり変わらない水準が続いています。長期金利の水準も、当時と比べてかなり低い状況にありますし、短期金利、政策金利もマイナスというように、5 年前当時ではなかったような状況です。ETFについても、何倍もの額で買入れを続けていらっしゃいます。』

さいです。

『大規模な政策を思い切って実施することが最適な状況ではなくなってきているとおっしゃっているにもかかわらず、5 年前におやりになった異次元緩和をまだ続けているというのは、論理的には理解しがたいところもあるのですが、どのようにお考えでしょうか。』

イイシツモンダナーなのですが、この答えが投げやり感が強い。

『(答) 2013 年 4 月に「量的・質的金融緩和」を導入した際は、15 年続きのデフレでした。消費者物価上昇率は−0.5%のデフレであったわけですし、失業も多く、経済は沈滞していました。』

まずこの説明がおかしくて、物価は若干のマイナスだったかも知らんが、実質成長率はプラスで推移(除く東日本大震災時)してたし、失業率とかその前から顕著に改善が続いていた訳でして、例えば2012年10月の展望レポート全文の図表でも見れば宜しいのではないかと思うのでURLを貼っておきますが、物価の話はともかく失業が多いだの経済が沈滞だのというのは煽り言葉にも程がある訳で、そんな雑な説明を置物一派がするならともかく黒ちゃんがするという辺りに投げやり感を受けてしまうわけですよ。

2012年10月展望レポート全文はこちら(図表は後半の方にありますよ)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210b.pdf

『そうしたもとで、資産買入れを拡大する、マネタリーベースを拡大するといったことで、非常に明確に、これまでの金融政策とは大きく変わった政策を「量的・質的金融緩和」として打ち出したわけです。』

実際はそれまでの金融政策を大きく拡大しただけですけどな。

『その後、原油価格の下落その他を踏まえて、更に「量的・質的金融緩和」を拡大し、また、マイナス金利の導入などをやってきて、現在のようにデフレではなくなった状況、経済も 1%台半ばで持続的な成長を続けている状況となりました。』

成長率に関してはその前も実質プラスだったんですけどねえ。

『そうした中では、2013 年 4 月の時のように、それまでと大きく変わった政策を打ち出すという意味のものは必要ではないとは思いますが、まさにご指摘のように、依然として大幅な金融緩和を粘り強く続けて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成しようとしていることには全く変わりはないということです。』

もうこの「できるだけ早期に」を引っ込めるか、気持ちの問題にするかしないとロジックがグチャグチャになると思うの。まあ以下の質疑応答見ててもそうなんですが、政策の建付けが増築を重ねた昭和の温泉旅館状態になっているからどこがどうつながっているのかもワケワカランし、そら出口なんかワケワカランわな、という話になっておりましてもう見てられない。


・副作用の質問で思いっきり頓珍漢な答えをしているのが何ともアレ

『(問) 総裁は講演で、金融機関に対する副作用を指摘されました。基本は先般の金融システムレポートで分析されたものに沿ったものと思われますし、一義的には、プルーデンス政策で対応するものと思いますが、その中でも、金融政策の運営の観点からも注視していく必要があると述べていらっしゃいますし、質疑応答の中でも、副作用を最小化することは続けていきたいとおっしゃいました。ただ、今の金融政策の枠組みを維持したまま、現実的に何ができるのか、ちょっと疑念があるとは思うのですが、その中で何ができるのか、意見を伺うことができたらと思います。』

そもそもが金融緩和長期化の弊害によって副作用が発生するのであれば、要は政策自体がその時点で副作用>>>効果となっているのだから、枠組みを変更しないと追加の意味がない(縮小するなら意味があるかもしれないけど)という話ですが・・・・・・・・・・・


『(答) 7 月の金融政策決定会合では、長短金利に関するフォワードガイダンスを非常にクリアに示し、引き続き大幅な金融緩和を粘り強く続けることを示しつつ、そうしたことが持続可能なように、10 年物国債金利の操作目標ゼロ%程度について、それまでのような±0.1%といった非常に狭い幅での変動ではなく、その倍くらいの変動も、経済・物価・金融情勢に応じて生じるのは当然であるし、それ自体、むしろ国債市場の機能を改善することになると申し上げました。その後、3 か月強経って、実際に国債取引は現物でも先物でも増えていますし、価格の変動幅も大きくなっており、市場の機能度は改善していると思います。』

???????

『イールドカーブ・コントロールや、こうした低い金利を当分の間続けるというフォワードガイダンスのもとでは、国債市場への圧力がある程度続くということ自体は変わらないと思いますが、そのもとでも、機能度を高める工夫は色々あり得ると思います。国債の買入れ自体も、イールドカーブ・コントロールをちょうど実現できるような形で行っています。今のところ、従来よりも国債の買入れ自体は少なくなっていますが、そのもとで、しっかりとイールドカーブ・コントロールができているということです。』

?????????????????

『国債市場の機能にしても、金融仲介機能にしても、そういうものが十全に発揮できず、それによって金融政策の効果が阻害されるという状況は好ましくありませんので、そういった点には十分配意しつつ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために必要な大幅な金融緩和は粘り強く続けていく、むしろ、続けられるように、そうしたことに十分配慮していくということだと思います。』

これは酷いという話で、質問に対して1ミリも答えておらず、おじいちゃん人の話聞いてまちゅかという風情の質疑応答なのですが、これは(1)答えたくないので延々と別の話をしている、(2)金融政策の副作用は市場機能という事しか頭にない、(3)モノホンのアレ、というような可能性が考えられますが、まあ次の質問で答えているのでどうも(2)なのではないかと思われまして、これは金融機構局涙目という気がだいぶするんですけどどうなんでしょうかねえ、と申しますのは・・・・・・・・

『(問) 今、国債市場について言って頂きましたけれども、金融機関の収益の悪化という副作用に対してのご見解はいかがでしょうか。


そら質問続けるわな。

『(答) 金融システムレポートでも詳しく分析していますように、この 5 年間ということではなく、もっと長い期間にわたって低金利環境が続いていますし、特に地域金融機関にとっては、人口の減少、高齢化、あるいは企業数の減少というもとで、競争が激化し、利鞘が縮小しているという構造的な問題もあります。この 5 年間だけをみると、金融機関の収益はかなり良いレベルですが、それは先程の懇談会でも申し上げた通り、信用コストの減少と有価証券の売却益で業務純益の減少を補っていたということです。』

という説明をして俺のせいじゃないと言いたげなのですが、(FSR本文ネタをぶち込むのが遅れておりまして申し訳ないのですが)ここでFSRネタを打ち込みますと、先般のFSRの中で例えば金融機関の自己資本比率の推移なんぞを見ますとですな、

金融システムレポート概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr181022b.pdf

こちらの12ページ目(PDFでも同じ)の『自己資本の充実度:自己資本比率の推移』というお題のスライドにある『図表X-1-1 金融機関の自己資本比率』のうち、国内基準行のコア自己資本比率の推移を見ますと、QQEぶち込んで以降銀行の場合は早速減少傾向、信用金庫の場合はいったんちょっと上がりましたがそれから減少傾向、とか続いている訳で、「前から緩和をしていたんだからワシ知らんもんね」という言い訳は通用しないのが見て取れます。もちろん金融緩和長期化の副作用って累積的に来るものですから白川時代の緩和政策の副作用が徐々に顕在化しているという見方も成り立つわけですが、まー普通に考えてQQEに加えてマイナス金利で金利水準を極端に下げた副作用が現れているわ、という話になるんじゃないでしょうかね。

『先行きを見通すと、その 2 つの要素はいつまでも続くものではありませんので、業務純益の減少がいずれ大きな課題になってくるということは私どもも認めているわけです。ただ、それはかなり長期の話で、足許は資本が十分ありますので、金融機関の金融仲介機能が損なわれることは当面ないと思っていますが、より長い目でみた場合に、そういうことも十分注意してみていかなければならないと思っています。』

今ネタにしたFSR概要の12ページ目の図表をみたら「かなり長期の話」とか言っている場合じゃないというのが普通に感じられると思うのですが、この人の現状認識は大丈夫なのでしょうか?????

『ただ、当面、金利を引き上げ、イールドカーブを立てて、金融機関の利鞘が高まるようなことをすると、今の状況では、むしろ景気が悪くなって、金融機関にとっても決して好ましい状況にならないと思いますので、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという観点から大幅な金融緩和を粘り強く続ける一方で、そういった長期の課題についても考えながら金融政策の運営を行っていくということだと思います。』

もしかしてこの前ネタにした9月議事要旨での「金利を上げると景気が悪くなってクレジットコストが上昇する」とかいうの黒田さんが言ったのかよと頭が痛くなるのですが、いや何も景気悪化させるほど金利を上げろと言っているのではなくて、どう見ても名目ゼロ金利制約の問題からただの金融機関課税にしかなっていないマイナス金利と、無理くり金利を引き下げる長期金利コントロールを何とかしろと言っているだけの話で、別に緩和政策を止めろという話じゃないんだから、金利が上がるにしても経済物価情勢から考えて景気が悪化するほど金利は上がらんじゃろと思うし、そもそも金利を上げてカーブが立つと(今のカーブは10年辺りを無理矢理寝かせているから変なことになっている)景気が悪化する、という程度にしか今の経済が強くない、というのであれば、先ほど大威張りでQQE政策の成果を自慢して「現在のようにデフレではなくなった状況、経済も 1%台半ばで持続的な成長を続けている状況となりました。」と仰せの話との整合性はどうなっているんだと小一時間という感じです。


・ということでFSRちゃんと読んでないんじゃないかという質疑がもう一つ

ちょっと先の方に行きますとこんな質疑が。

『(問) 地域金融機関の件で、追加でお伺いします。先程、黒田総裁は、当面の話として、金利を上げても逆に景気は悪くなって、金融機関にとって決して好ましい状況にならないとおっしゃったと思うのですが、今後、いよいよ地域金融機関のリスクが大きくなった場合に、日銀としてどういった政策対応がとれるのか、選択肢を伺えますでしょうか。』

まあさっきも斜め上の返事しかなかったのですけど。

『また、これとほぼ関連している話ですが、講演の中で、必要に応じて金融機関に具体的な対応を促していく方針だとお話しされましたが、ここをもう少し詳しくお伺いできませんでしょうか。』

でもってこの答えがまた投げやり大会。

『(答) 先程来申し上げている通り、現時点では、地域金融機関も含めて、収益状況は決して悪くありません。ただ、この 5 年間だけをとってみても、もっと前からとってみてもそうですが、貸出に伴う業務純益はずっと減り続けており、それをこの 5年間は、信用コストの減少と有価証券の売却益でちょうど補って、収益が安定してきたわけです。信用コストがずっと下がり続けることは期待できませんし、有価証券の売却益もいつまでも続くものではありませんので、長期的にみれば、業務純益の減少傾向を抑えない限り、いずれ地域金融機関にとって大きな課題が持ち上がってくることは事実ですが、それはすぐに来る話ではなく、5 年とか 10 年とか 15 年とか、そういうタームでの議論です。』

そういうタームの議論ではない、というのがFSRで示されていたと思うのですが、これは金融機構局涙目。

『大幅な金融緩和は確かに 5 年続いているわけですが、先程申し上げたような長さで続くとは思いませんし、』

2年で達成すると言って5年半続けてもなお全然出口が見えない人がこれを言っても説得力が1ミクロンも無い。

『業務純益の低下傾向の相当部分は、実は先程申し上げたような構造的な問題です。人口減、企業数減の中で、地域金融機関の間の競争が激化して、なかなか利鞘が取れない状況にあるわけです。その構造的な問題は、すぐに大問題になるわけではありませんが、長期でみると、やはり構造問題ですので、まさに構造的な対応をしていかなければなりません。』

とまあそういうことでして、金融政策第二の柱によるリスク点検とか、金融政策のプロコン比較とかそういう論点での質問には答える気がサラサラなくて、ただ市場機能に関しては債券市場のチンピラゴロツキどもが五月蠅いのと、新聞が10年国債の市場売買がゼロだとか言ってネタにするし、他のせいにできないからおためごかしに対応はするけど、緩和政策長期化の悪影響とか知ったことかこのヴォケという気概が大変に良く伝わってきて大変にアレという感じですな。

ですので・・・・・・・・

『その中には当然、統合や合併のような話もあるでしょうし、あるいはITをもっと導入して効率化するといったこともあるかもしれません。更には新しい顧客の開拓ですとか、新しいビジネスの開発ですとか、そういったことも必要になるかと思います。そうしたことも含めて、モニタリングや考査の時には、それぞれの金融機関と十分対話をしていきたいと思います。』

となりますし、

『もちろん、法律的権限に基づく色々な対応策は、ミクロプルーデンスもマクロプルーデンスも日本の場合は金融庁が担当していますので、当然、金融庁の対応を待たなければならないと思いますが、日本銀行としても、地域金融機関との対話の中で、どういった対応によって長期的な業務純益の減少傾向を食い止め、あるいは増加させていくかということについては、十分対応していきたいと思っています。』

ということで、プルーデンスの観点からどうこうというのは日銀は知らんがなと金融機構局が血の涙を流すような発言が平然と出てくる辺り、何か今回の会見って無茶苦茶投げやりになっている感じがするんですが、もしかしたら先般の定例記者会見と全然違うトーンの講演をやることになって機嫌をマックス悪化させて、そのために会見では(金融緩和の度合いを修正しましょう的な政策を実施するのは今までの自分の政策の否定になる訳だからやる気サラサラないので)ランボー怒りの投げやり会見になったのではないかとか物凄くしょうもない読み筋ですが、そんな読みになってしまったのはやはり裏読みのし過ぎですねすいません。


・ということなので政策見直しにつながる質問は全部ゼロ回答

『(問) 先程の懇談の後の質疑応答では、FRBが利上げをするからといって日銀が利上げをする必要はないし、ファンダメンタルズに照らしても必要ない、ということだったのですが、米欧が正常化に向かうと、相対的に日銀の緩和が過度になってしまうということはないのでしょうか。そういう観点から、柔軟化や調整などが必要ということはないでしょうか。』

総括的検証においては、金融緩和をやり過ぎて金利を下げてもよくないという結論になっていたので、YCCについては、均衡イールドカーブに対して適切な規模の利下げ度合いを維持する、というのが総括的検証を受けて行う政策としては正しい筋のやり方になる、と考えますとまあこういう質問もありちゃああり、ゼロ回答になるのは見え見えですけど。

『もう一つは、出口に関して質問された方が、そろそろ戻る道筋を示されるべきではないかとおっしゃったと思います。FRBが 2015 年 12 月に利上げしましたけれども、正常化の原則というのはかなり前の段階で、2011 年とか 2014 年で出していたと思います。そういうことは、日銀としても、すぐに正常化ではないけれども、原則として何か示すということは可能なのかどうか、伺わせてください。』

こっちの質問に対する答えも以下のようにゼロどころかマイナス回答なのには結構驚いたんですが・・・・・・・・・

『(答) ご指摘のようにFRBはかなり前に正常化のプロセスについての考え方を示したわけですが、そのときの考え方は、バランスシートの増加を止めて、最終的にバランスシートを縮小していくことと、短期政策金利を引き上げることの順序について、今現在やっていることとは逆に言っていました。実際にやったこととちょうど逆のことを言っていたことになりますので、早めに出口戦略のようなものを示すことは、あまり好ましいことではなかったのではないかと思います。』

いやさすがにこの回答には唖然としたのですが、別にこれ出したからと言ってミスコミュニケーションが起きた訳でも何でもない(テーパータントラムは別の次元で発生した話)ですし、誰もこのプリンシパルと違ったからと言って文句出した訳でもないですよね、と思う訳です。

でまあ話がやや明後日の方向に行きますが、この「実際にやったこととちょうど逆のことを言っていたことになりますので、早めに出口戦略のようなものを示すことは、あまり好ましいことではなかったのではないかと思います。」って言うのにはジャパンの官僚カルチャー(狭義の官僚だけではなくてそういう感じの組織全般とか社会全般とか)にある構造的な問題も示しているなあとか思う訳でして、「最初に決めたことが都合が悪ければ止めればいいじゃないか」みたいなのが当初の面目玉とか組織の面目玉とかによって自動継続になって、グダグダになったどこぞの金融政策運営とか、古くは戦線拡大を延々と行って最後は全部おじゃんになった15年戦争とか、まあ何ちゅうかねえとしか申し上げようがない味わいも感じるのですよね。

ということで、別にFRBのあれは問題があったとかいう人が寡聞にして存じませんのですが、何故そこまでに評価するのやらという感じで、まあ自分等はそういうの出したくないもんねという事なのでしょうが、それにしてもそこまで言わなくても以下の後半の答えだけで良くて、海外は海外のやり方がありますし、うちはうち、というのだけで良かったと思うのですよね、なんか今回の会見って妙に投げやりというかとげとげしいというか、そんな感じがしたのは気のせいでしょうか。

『また、日本は物価上昇率が1%程度の状況です。展望レポートでも、1%台半ばに来年度以降なっていくわけですが、まだ 2%に到達する状況ではありませんので、大幅な金融緩和を続けていくことは当然必要であると思います。』

いかさらにどうでも良いのですが一応引用しておきます。

『また、金融政策は、それぞれの国がそれぞれの経済・物価情勢に応じて行います。FRBの場合は、正常化のプロセスのかなり進んだところまできていますし、ECBの場合は、年末までにネットの資産買入れ額をゼロにして、バランスシートを安定させることは決めていますが、政策短期金利はまだ当分据え置いて、来年の後半以降に考えるということですので、正常化のプロセスも入口に差し掛かったところです。日本の場合は、先程来申し上げているような状況ですので、当然、大幅な金融緩和を粘り強く続けていきますし、それが日本経済にとって必要なことであると思っています。』

『ご指摘のように、欧米の金融政策が正常化していったときに、日本の金融緩和がより大きなものになり得るということは、その通りかもしれません。そもそも、物価上昇率が上がっていくことによって、予想物価上昇率も上がっていけば、名目金利は、例えば 10 年物の国債金利をゼロ%程度にしているわけですから、実質金利はより下がっていくわけです。それは、2%の「物価安定の目標」に向けた動きを、より確実なものにするということであって、それが好ましくないということではないと思います。』

ここはそもそもの総括的検証+YCCの中にある矛盾で、総括的検証によれば「適切な緩和度合い」があるので、本来は外部環境がより緩和的になった時には、均衡イールドカーブが上方シフトするので、適切な緩和度合いを加味してもYCCの誘導金利を調整しないといけない、ただし計測誤差と市場の混乱を考えたらそんなに頻繁に金利を変える必要はないが、その場合適切な度合い以上に緩和していないかどうかを注意しないといけない、とまあそういう話の筈で、この説明も(日銀の公式説明通りですが)ちょっとロジック崩壊気味なんですよね。

『わが国の場合は、経済成長は 1%台半ばということで、潜在成長率を上回っているわけですが、物価上昇率がまだ 1%程度ですので、当分の間、長短金利の低い水準を維持し、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するように、大幅な金融緩和を粘り強く続けるということに変わりはないということだと思います。


とまあそういう訳でして、本当はこれに布野さんの金懇ネタということになるのですが、ついうっかり今日もせっせと悪態ついていたので時間が無くなりましたが、もともと布野さんの金懇は講演挨拶の方は思いっきり展望レポート棒読みみたいな内容になっていて、読むべきものは会見、という独特の路線を走っておられる方になりますので、本日出てくる会見要旨とセットで明日ネタにする所存でございます(半分言い訳ですが、残りの半分は結構マジでそう思ってます^^)。






2018/11/07

お題「遅くなりましたが9月決定会合議事要旨(で名古屋総裁会見が間に合わないorzorz)」

麿キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーー!!!

https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2018_1106.html
退任から5年半 白川前日銀総裁が思うのは
2018年11月6日 19時00分

『日銀の前の総裁、白川方明氏を覚えていますでしょうか。今の黒田総裁の前の日銀総裁です。2008年から2013年までの、リーマンショック、ユーロ危機、そして東日本大震災と、金融危機や大災害、歴史的な円高のなか、金融政策の運営にあたってきた人物です。当時、日銀は金融緩和に消極的だ、小出しだとの批判も浴び、白川氏はその矢面に立っていました。退任後、5年半にわたってメディアの前に姿を現さなかった白川氏。単独インタビューを通じて、金融緩和の本当の役割とは何か、今の日本経済が直面する真の課題は何なのかを掘り下げます。(おはよう日本 おはBizキャスター 豊永博隆)』(上記URL先より)

折角なのでもう少しいろいろな話をぶっこんで頂きたかったんですけどまあこうやって話題になっていくのは結構なことで。


〇9月決定会合議事要旨は内部の議論が全然まとまってねえだろというのを示す(と思うんだが)

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2018/g180919.pdf


・物価に関する議論の中に微妙な指摘があるんだが

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』ですけれども、特段見るようなものもございませんで(とエライ勢いでスルーしますが)すが、どうもこう話が散漫になっているなというのがごあいまして、例えば本文8ページの辺りなんですけれども、景気の先行きについての全般的な議論が続く中なんですけど、

『この間、一人の委員は、先行き、経済の需給が適度に引き締まった状態が続く中、企業において、多様な人材の活用や省力化投資などの構造的な取り組みが進み、これが家計の所得増加や消費拡大につながっていくことが期待されるとの見解を示した。』

って辺りまでは良いのですが、

『別のある委員は、効果的に経済成長を実現するためには、企業が、生産性が低く利益が上がらない仕事をやめることも必要であるとしたうえで、その際に生じる雇用の問題を軽減するためにも、金融緩和を通じて労働需給をひっ迫させることが大事であるとの意見を述べた。そのうえで、この委員は、実際、「量的・質的金融緩和」のもとで時間当たり労働生産性の上昇率が高まっていると指摘し、この間の新規雇用者の多くが、相対的に生産性が低いと考えられる勤務経験の少ない労働者等であることを踏まえると、既存の労働者の生産性上昇率は、マクロ的に観測される数値よりも高まっている可能性があると述べた。』

なんかこう微妙にナンジャソラという感じがする指摘で、そもそも「金融緩和を通じて労働需給を逼迫させる」というのが何だかなというのがあるし、後半の理屈ってなんか話が飛躍しているように見える。

『ある委員は、少子高齢化の進行などとも相まって、わが国では、先行き、潜在成長率や自然利子率に低下圧力がかかることが想定されるが、金融緩和の効果を発揮していくためにも、技術革新の一層の推進による生産性向上が必要であると述べた。』

という次の人のもまあ分かるんだが、この間の人の指摘が何か議論が飛躍してませんかね、というのがあります。


でまあそれはそれとして10ページの所に飛んで、もう一回先行き見通しの話があるんですが、この物価の先行き
見通しの部分を読むと何か物凄く議論が散漫な気がするのよね。

『先行きについて、大方の委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

まあ実際どうなのよという話はさておきここは良いとして、

『一人の委員は、春先までの円高効果が剥落していることもあって、足もと財価格の減速が一服していることや、夏季賞与が大幅に増加したことは、物価の改善に向けた明るい材料であると指摘した。』

『ある委員は、労働参加率の上昇や有効な省力化投資には限界があることから、現在のような人手不足が続けば、いずれ賃金の上昇に結びつくとの認識を示した。そのうえで、この委員は、最近の統計上の賃金上昇率は過大とされているが、それを差し引いても賃金は上昇しており、雇用者の増加と合わせた雇用者所得の拡大は、需要増加とコスト上昇の両面から物価の押し上げ圧力になると指摘した。』

『この間、複数の委員は、賃金弾力性の高い高齢者の労働供給が続けば、今後とも、賃金や物価の上昇を全体として抑制する要因になり得ると述べた。このうちの一人の委員は、インターネットやスマートフォンの普及と高齢者のITリテラシーの高まりは、情報収集能力の向上を通じて高齢者の就労を促進しており、こうした動きは一時的なものにとどまらない可能性があると付け加えた。』

『こうした点に関連し、一人の委員は、物価上昇の遅れは、単純な需要不足が原因ではなく、人々の根強いデフレマインドに加えて、労働参加率の上昇や省力化投資による生産性向上に伴う物価抑制効果など、様々な要因によるものであることがわかってきており、先行きの物価を巡る不確実性は、一頃より高まっていると述べた。』

『別のある委員は、わが国では適合的な期待形成メカニズムの影響が大きいことを踏まえると、消費者物価指数の中で大きなウエイトを占める公共料金や家賃、携帯電話通信料といった品目が、需給ギャップにほとんど感応しないという点も、先行きの物価動向を点検するうえで無視できないと指摘した。』

『これらの議論を踏まえ、何人かの委員は、需給ギャップの改善を起点とする物価上昇のモメンタムは維持されているものの、それが人々の物価観を変化させ、予想物価上昇率の高まりとともに、フィリップスカーブの明確な上方シフトにつながるまでには、なお時間がかかるとの認識を示した。』

とまあそういう話になっていまして、もとよりこの議論の所は色々な見解が出ますよというような書き方になっているのですけれども、なんかこう議事要旨を散々見慣れてしまいましたアタクシの個人的な霊感なので甚だ恐縮なのですが、今回の物価の先行き見通しに関する上記の議論部分が従来以上に「単なる各委員の言いっぱなし」みたいな雰囲気を醸し出しているように文面を見た時に伝わってくる何かがありまして(何か書いている本人がこれじゃあ説明になってねえオカルトじゃんとか思って冷汗三斗ではありますが・・・・・)、今回のは特に「議論というより皆さんの言いっぱなし」に見えてくるんですよね。気のせいかもしれませんが。


・金融政策運営に関する議論というか指摘部分

本文11ページからが『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』になりますがな。

『続いて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。』

っていう12ページの頭からね。

『大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。』

はい。

『何人かの委員は、現在の強力な金融緩和のもとで、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続け、2%に向けたモメンタムを途切れさせないことが、経済や金融情勢の安定を確保しつつ、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することにつながるとの見解を示した。』

この前の会合(7月)からのスローガン。

『一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を継続し、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。』

『また、別の一人の委員は、現在の強力な金融緩和の効果と副作用をきめ細かく検討しつつ、きわめて緩和的な金融環境を息長く続けていくことが重要であると指摘した。』

「効果と副作用をきめ細かく検討しつつ」来ましたね。でもって次は片岡さん。

『こうした意見に対し、ある委員は、金融緩和の効果は時間とともに減衰し得るため、「物価安定の目標」の早期達成のためには、長期にわたって長短金利を一定水準に誘導するのではなく、むしろ追加緩和によって、政府とともに企業や家計の前向きの行動変化を後押しすることが必要であると述べた。』

ということなんだが、実際問題として他の人たちは上記にあるように「時間を掛けて行う」となっていて、まあ片岡さんの言ってる方が元々の政策枠組みから言ったら仰せの通りなんですが、現実問題としてそれがワークしなかった(「失敗した」の婉曲表現)訳ですから今の時間を掛けるというのになっている次第なわけよ。

だいたいからしてじゃあ片岡さん2%に確実に行く施策あるんですか(国民厚生を無視して物価だけを強引に上げるのは禁じ手という制限つけて)という話だし、ワークしなかったから今の枠組みがあるというのを無視して過去の話をしても困りますがなというのはあるが、そもそも「2年を念頭にできるだけ早期に2%」とか言っていた看板に対してゴメンナサイをしないのが元々の問題だし、共同文書にもできるだけ早期とか書いているのが悪いんですよね。

この先の国債市場の話はさておきまして、政策運営上の留意点がという部分がこれまた話が色々と発散している感じ。

『この間、委員は、金融政策運営上の留意点について、議論を行った。』

本文13ページからになる。

『一人の委員は、プラスの需給ギャップが維持されるような経済環境が続くのであれば、市場機能維持の観点から、現在の金融政策の枠組みを維持しつつ、その柔軟化について将来的に検討する余地があるとの見解を述べた。もっとも、この委員は、現在の物価に関する不確実性を考慮すれば、金融市場や金融システムの状況をしっかりと点検しながら、現行の政策を慎重かつ粘り強く続けることが肝要であると述べた。』

鈴木さんか櫻井さんですかね。

『何人かの委員は、わが国の金融機関は充実した資本基盤を有していることもあり、現時点で金融仲介機能に支障は生じていないが、金融機関の収益動向がその経営体力に及ぼす影響は累積的なものであるため、今後とも、低金利環境の継続が金融機関収益や金融仲介機能に及ぼす影響をしっかりみていく必要があるとの認識を示した。』

というのを見て行った結果が10月に出てきたFSRでどう見ても問題が深刻化しとるわという話ですな。

『このうちの一人の委員は、今後、収益の確保を目指して金融機関が過度なリスクテイクを進め、それらのリスク性資産が不良化した場合には、資本基盤が毀損して金融仲介機能が低下し、ひいては、持続可能な経済成長を阻害するリスクも高まると述べた。そのうえで、この委員は、より長期的な視点から、金融面の不均衡の有無や先行きの動向を、慎重に点検していくことが重要であると指摘した。』

これはわりとぶっこんできている感がある。例によって鈴木さんか櫻井さんか、鈴木さんですかねえ。

『この点に関連し、ある委員は、大規模な金融緩和に伴う金融面での副作用を考慮すると、その長期化にも限界があると考えられるため、金融政策の時間軸について、政策委員の間で議論を深めておくべきではないか、との意見を述べた。』

イイシテキダナーなんですが、こうなってみると最初にQQEをぶっこんだときに木内さんが「2年間の措置として一旦期限を切って、2年後にまた点検する」という提案をしていて、時間を区切ってそのたびに再検討という考えを出していたわけですが、まあこうやって政策がワークしないで(婉曲表現)だらだら続くとなりますと、政策の時間軸が無いのが困るというのはありますな。

『このほか、別のある委員は、金融機関収益を改善させるために金利を引き上げるべきとの声もあるが、現状で金利だけが上昇して景気悪化に伴うクレジットコストの上昇により収益が悪化するリスクが高いことから、金利は物価上昇と資金需要の回復に応じて上昇することが望ましいとの見解を示した。』

ジンバブエキターーーーーー(・∀・)ーーーーーー!!!!

この前は「金利を引き上げても株価も債券価格も下がらないと考えている向きがあり」みたいな面白コメントが主な意見にあったので仕方がないから議事要旨にも反映されていましたが、さすがにそれはということで今回は無くなっているようです。

でまあ「金利を上げると景気が悪くなる」とのことですが、そもそもYCCっていうのは現状の経済の状況から考えて中立的な金利水準と見られるイールドカーブに対して、適切とみられる規模の金利引き下げを促すように国債の買入を実施して、それによって金融緩和効果を出そうという政策なのであって、多少の金利引き上げでいきなり景気が悪化してクレジットコストが上昇するっていうようなことが起きるかよヴォケと思いますし、大体からしてジンバブエ先生QQE政策は大効果を上げているのにそれを認めない馬鹿が市場に居て度し難い馬鹿であるという話をしていたと思うんだが、ちょっと金利上げたらいきなり景気が悪化してクレジットコストが上がって収益が悪化するとかいうんだったら、それは現時点でQQEが碌すっぽ効いていませんと言ってるのと変わらんじゃろうがお前は何を言ってるんだという事だと思うの。

大体からして政策の調整しやがれコノヤローと言ってる向きだって、(一部変なことを言うのはいるでしょうが)精々マイナス金利をゼロ金利にして、長期国債のコントロールやめろ位の話しかしていない訳で、景気を壊すくらいの引き締めしろとか言ってる人は少なくとも市場の中の人でしたら屏風の中にしかいないと思います。それに長期金利コントロールを仮に止めたって結局のところ経済物価情勢と今後の金融政策を反映した金利上昇しかしないんですから、市場金利だけで引き締め的になるとは思えんのですけどねえ。いやまあQQEからの5年間の政策が全然効果上がっていなくて実はまだデフレ状態ですよ、ってんだったら金利上げたら困るのかもしれませんけど。

『これらの議論を踏まえ、一人の委員は、現在のように、景気は着実に拡大する一方、2%の実現には時間がかかっている複雑な状況のもとでは、様々な情勢を総合的に勘案して政策を運営することが重要であると指摘したうえで、強力な金融緩和を粘り強く続けていけるよう、政策の効果と副作用をバランスよく考慮していくことが大切であると述べた。』

ということで話が散漫のままのような気がしますが何となくまとめが入っていて、そちらを見るとこのように効果と副作用とかの話がどどーんと出てくるという形。


『このほか、委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。』

ほうほう。

『一人の委員は、地方の有効求人倍率や中小企業の収益、雇用者報酬等が改善しているにもかかわらず、金融緩和の効果が地方経済や中小企業、個人に行き届いていないとの指摘があるため、引き続き、金融政策の考え方や効果を丁寧に説明していくことが必要であると述べた。』

マクロとミクロは別ですけれども、そういう指摘があるというのは政策が国民厚生の向上に対してまだうまく回っていない部分があるっちゅうことですわな。再分配とかの問題もあると思うからそういうの説明するだけじゃなくて政府にも注文付けたらどうなのよとは思うけど。

『また、一人の委員は、政策運営にあたっては、様々な経済・物価の下振れリスクへの備えが重要であり、特に予想物価上昇率の動向を重視していると述べたうえで、人々のインフレ予想にも効果的に働きかけられるよう、各種の学術研究も参考にしながら、情報発信の方法を常に改善していく必要があると指摘した。』

???????????????????

というか「各種の学術研究も参考にしながら」というのが凄まじく脱力な訳で、世界標準の金融政策とやらを行ったら2年で2%なんぞ楽勝で達成できるのに全然それをやろうとしない白川日銀は無知無能というような話をして石持て追い出した結果、世界標準の金融政策を実施しても達成できないという事案が今まさに発生しているのに、そこで「各種の学術研究も参考にしながら」とか平気で言っちゃうのはさすがにちょっと何なのと思ってしまう訳ですけど。

『ある委員は、日本銀行が、あたかも物価上昇さえ達成できればよいと考えていると誤解されているケースが少なくないとしたうえで、こうした点も意識した適切なコミュニケーションを続けていくことが、金融政策に対する信認を確保し、結果として、2%の実現に向けた政策の自由度を高めることにもつながるとの見解を示した。』

「インフレ物価目標2.0%で日本は変わる」って宣伝してたのを忘れたとは言わせない訳で、誤解を解きたかったら置物が表に出てきて焼き土下座してからにしろと思うのですが、置物日記(読んでるのですが一々ツッコミどころでツッコミながら読むと中々話が進まんので置物日記日記の続きはもう暫く待ってちょ)とか出している位なので甚だ残念ですが、まずは現在の政策枠組みが増築に増築を重ねた温泉旅館というか、リフト増設しまくった90年代の苗場スキー場というかな状態なのをスクラッチで綺麗にする、当然その間に置物焼き土下座ショーが入る、というプロセスを経ないとコミュニケーションに関してはまあ無理があるじゃろうのとしか思えません。


まあしかし全体を通してみると、「意見がかみ合って話が進んでいる」という感じがしなくて、言いたいことを言っているんだがその議論の中でコンセンサスを取っていこうというプロセスがあるのかが疑問を感じるような内容になっている気がします(議論の結果一致したみたいな表現がないからなのかも知れんけど)。まあ次回の展望レポートでの議論の書き方も見ていきたいなとは思います。


〇ひえー総裁会見やってる時間がない(すいませんすいません)

議事要旨ネタをサラサラ流して総裁会見、とか思っていたのですが、ついうっかりまた悪態ついたのと、そもそも立冬という事もありましてお布団が(ただの寝すぎの言い訳)ということですいませんすいません完全にネタが遅れております(麿のさっきのURL先をじっくりと読んでしまったのも不覚であった)。

でまあ総裁会見も何だかなーという感じですが、いろいろと遅れておりますので明日はある程度追いつかせる気合で参りますのでご勘弁賜りたく候。




2018/11/06

お題「総裁講演のトーンが微妙に違うんですが/また登場する英文ディスカッションペーパー」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181105/k10011699471000.html
外国人材受け入れ拡大法案 首相「わかりやすく周知徹底」
2018年11月5日 19時38分

『この中で、安倍総理大臣は、外国人材の受け入れを拡大するための法案について、「深刻な人手不足に直面する中小企業の声に応えなければならない。国民の懸念に応え、わかりやすく周知徹底したい」と述べ、丁寧に説明し、理解を求めていく考えを強調しました。』(上記URL先より)

雇用の改善をアベノミクスの成果と誇ってみたり、一転して深刻な問題扱いしたりとご苦労な事ですなあwwww


市場は相変わらずの先物サガランチ会長ぶりを発揮していましたが、昨日は日銀からぶち込まれた新着情報が色々と味わいがあったので優先順位(?)順に日銀から出てきた紙を確認するでござるの巻。


〇名古屋での総裁講演は政策運営絡みの説明がきな臭い件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/data/ko181105a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦


・物価の話の辺りから参ります

最初が経済情勢の話で、こちらは展望レポート(本文の続きがネタにするする詐欺でまだやっておりませんすいません)の通りなのでスルーしまして、物価の話の辺りから参ります。

ちなみに今からネタにする部分は実は展望レポート基本的見解の方でも説明があるので、ネタを後回しにしたら先に講演が来ました状態で甚だ遺憾の極みではあるのですが(汗)。

『続いて、物価情勢についてお話しします。わが国の消費者物価は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて、なお弱めの動きを続けており、生鮮食品やエネルギー価格を除いた消費者物価の前年比は、ゼロ%台半ばで推移しています(図表7)。』

『この背景には、主に2つの要因があると考えています(図表8)。第1に、長期にわたる低成長やデフレの経験が、人々のマインドに大きな影響を及ぼしているということです(図表9)。』

とありますが、こちらの内容はいつも通りの話なので割愛しまして、展望レポート基本的見解の鏡にもありました、今回昇格して並列の理由扱いになったこの部分を確認しましょう。

『物価上昇に時間を要している2つ目の背景は、企業における生産性向上に向けた取り組みや、それを促進する近年の技術進歩、女性や高齢者の労働参加の高まりなど、モノやサービスを供給する側のビジネス環境の変化です。』

先日も申し上げたように、前回の展望レポートは物価の上昇が遅れている理由の話をしていましたが、この時にはこの材料は「このような面もある」というような感じでオマケ扱いだったのですが、しらっと今回の展望レポートから並列メインの理由に昇格したわけですよ。

『こうした要因は、景気が拡大してコストが上昇する中にあっても、企業が値上げに踏み切らずに済むことを可能にしています。誤解のないように申し上げますが、これらの取り組みは、経済全体の成長力強化に繋がるものであり、わが国にとって好ましい動きです。』

>わが国にとって好ましい動きです
>わが国にとって好ましい動きです
>わが国にとって好ましい動きです

つまり我が国にとって好ましい動きによって物価の上昇が遅れているのだから悪いことではない、と規定している訳で、2年を念頭に2%をできるだけ早期に達成するという話は何だったのかと小一時間問い詰めたいのですが、物価が上がりにくくて全然2%目標に届かない、という現状を思いっきり正当化する話をぶち込んできた訳でして、これは物価目標未達でも実際には状態が良いので政策調整が、みたいな能書きを垂れながら政策をいじってくることも可能(やるとは言っていない)という素敵なロジックですな(まあ昨日急に出たのではなくて展望レポートで出た訳ですが)。

『物価の面でも、将来の成長期待の高まりは、企業や家計の支出行動の積極化に繋がり、長い目でみれば、物価の押し上げに寄与すると考えられます。ただし、少なくとも短期的には、賃金や物価の上昇圧力を弱める方向に作用することになります。


まあこれとは別ネタになるかも知れませんが、確かおじちゃん原油価格下がっている時も最初そういう説明していませんでしたっけ??????????後から適合的期待形成がとか言い出したけど。


『ここまで、物価が上がりにくい理由を説明してきました。実際、わが国の物価は、景気の拡大に比べて弱めの動きを続けています。しかしながら、その一方で、既にわが国は、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなっています。生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、振れを伴いつつもプラス幅の拡大を続けており、2%にはなお距離があるとはいえ、足もとでは、その半分の前年比+1%程度まで上昇してきています(図表 10)。』

日銀版コアを作っているのにそっちでは説明しないんですね!(ちなみに図表7では日銀版コアも入っている)


・でまあ金融政策の話ですけれども

『4.日本銀行の金融政策運営』もボーっと見ます。

『ここまで、わが国の経済・物価情勢についてご説明してきました。ここからは、私どもの金融政策運営についてお話しします。


ちょっとチャーミングだったのはフォワードガイダンスの部分。

『第1に、政策金利に関する「フォワードガイダンス」を導入しました。これは、将来の政策金利水準について、あらかじめ約束し、強力な金融緩和の継続スタンスを明確にするための手法です。具体的には、「2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」ことを、対外的にコミットしました。』

ってありまして、この前の大阪での経済団体との会合における講演(挨拶)ではこの説明に加え、フォワードガイダンスの期間に関して「当分の間」というのが分かりにくいかもしれませんが声明文の英語版を見ると分かりやすいですよ、という割と掟破りな説明をして、ガイダンスの期間が長いことをアピールしていたのですが、今回はそのような追加説明はなくなっておりまして、日本語のガイダンス(英語のガイダンスの方が明らかに「長期間」を連想させる書き方になっている)で説明していたので、あれこの前の大阪と違うじゃんと思いました。

なお掟破りなのは、対外公表文として金融政策決定会合の議決を経ているのは日本語の声明文だけであって、英文の声明文はあくまでもコミュニケーションの補助ツールという建付けなので、政策決定によって決まった政策運営に関する説明は日本語の対外公表分ベースで行うべきものであって、日本語の対外公表分を玉虫色にしておいて、この部分は英文を読んでください、とするのは政策決定会合の決定を骨抜きにしかねないことですよ、という理由ですな、大阪での講演をネタにした時に申し上げましたが。


でまあそのあと副作用の話がありまして、これまた展望レポート(や決定会合後の記者会見)にあるような話をしているのでまあ飛ばしまして、このコーナーの結論部分が割と腰が抜ける書きっぷりになっていまして、ヘッドラインにもなっていましたが市場ちゃんは特に反応しないという事態になっていましたな。

『この5年間、わが国の経済ははっきりと改善しました。企業収益は過去最高となり、雇用環境も大きく好転しています。物価の面でも、デフレに苦しんでいた5年前に比べれば、着実に改善しています。』

ほほう。

『かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています。』

>大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています
>大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています
>大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています
>大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています
>大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

まあこの部分ですが、もちろん追加金融緩和を否定しているのはその通りだと思いますが、この理屈(屁理屈)ってしらっと政策を調整するのにも使える理屈でして、「経済のステージが変わったのでそれに適合的な金融政策を実施すべき、そのためにいま必要なのは大胆な緩和ではなく、大規模ではなくても着実に長期間緩和を継続することである」と言い出して(まあ既に「需給ギャップがプラスの状態を長く続けるのが重要」というような説明をしていて、大胆な政策じゃなくて細く長くというような説明になし崩し的に変化していますけど)、大規模資産買入を前提にした政策じゃない枠組みにするとか、マイナス金利のような大胆な(量じゃないから大規模じゃないけど)政策を解除するとか、そういう話を可能にする屁理屈な訳ですな。

『しかしながら、「物価安定の目標」である2%の実現にはなお時間がかかっている状況でもあります。このように、やや複雑な経済・物価の展開のもとでは、金融政策もまた、政策の効果と副作用の両方をバランスよく考慮しながら、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要になってきています。日本銀行としては、今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、適切な政策運営に努めていく方針です。


と締まっていまして、どちらかといえば先日の総裁会見(昨日ネタにした奴)は下方リスクを強調した説明で、出口とか知らんがな、でも追加緩和もしませんよ、という感じで、まあこの部分も「追加緩和はしません」というのはありますけれども、先般来の講演やら会見やらと比較しますと、なんかまたトーンが政策見直し方向にややバイアスがかかったニュアンスになっていますな。


・会見は今日出ますので・・・・・・・・・

でもって今回のは会見もあって、会見要旨は今日出てくると思いますけれども、ヘッドラインを見た感じだと何か投げやり感の漂うようにも見えまして、ちと妙だなという風にアタクシの山勘は思う訳ですが(個人の山勘です^^)、この次にネタにするオモシロペーパーが同時にリリースされている辺り、ちょっと政策見直し(諦めの出口)の可能性だってありますよ、という陽動作戦に出てきたという気が思いっきりするのですが、個人の山勘なので違っていても知らんがなですからそこは一つよろしく。



〇日銀の中の人ではない方のディスカッションペーパーとはいえこれはまた大胆な物件が

最近また英文のディスカッションペーパー(邦訳無し)でしらっと物件が出てくる攻撃が続きますが、昨日のは中々腰が抜けた。

物件概要
http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/18-E-16.html
Discussion Paper Series 2018-E-16
Macroeconomic Effects of Quantitative and Qualitative Monetary Easing Measures

物件本文(以下本文から引用します)
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/18-E-16.pdf
Macroeconomic Effects of Quantitative and Qualitative
Monetary Easing Measures
Junko Koeda
Discussion Paper No. 2018-E-16

著者は本文見ますと『* School of Political Science and Economics, Waseda University』とのことですので、日銀の方ではないのですが、『This paper was prepared in part while the author was a visiting scholar at the Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan. The author is grateful for the research opportunities at the Institute for Monetary and Economic Studies at the Bank of Japan.』とありますので日銀金融研究所の関連ですわな(そもそもそうじゃなかったら日銀のサイトに出てこない)という物件。

でまあアタクシ頭が悪いので最初の『Abstract』とか第一章の『1 Introduction』を読んでもウンウン唸るという残念な事態になっていたのですが、(その先は大体計測モデルの説明になるので更に分からん)唸りつつ結論の所に来たら中々シャレオツな結論が待っておりました。


・確かにこの計測すればこういう結論になるんだけど日銀のディスカッションペーパーで出すには中々の物件

本文19ページ、PDFファイルだと22枚目になりますが、『6 Conclusion』ということで結論がありますのでそこを鑑賞する訳ですよ。

『Using macroeconomic and financial data until the end of 2016, our empirical evidence shows that since the implementation of QQE,』

ということで、まあそもそも論としてQQEぶっこんでから2016年末までのデータを元に分析をすれば、そらそうよという結論になるのですが、以下は笑ってしまうしかない。

『・Boosting the size of the BOJ’s balance sheet alone does not robustly increase inflation and output. Qualitative easing is a complement, but at the cost of unwinding QE;』(原文はrobustlyがイタリック体)

日銀のバランスシートを拡大すること単独ではインフレや生産を力強く引き上げない。質的な緩和は補完的に作用しているが、政策を閉じる際に発生するコストを伴う。

『・Lowering the inflation threshold in the forward guidance is not necessarily contractionary if trend growth is sufficiently strong; and』

フォワードガイダンスにおいて設定されるインフレの数値(インフレ目標値ではない)を引き下げることはトレンドグロースが十分に強い中においては必ずしも問題を起こすものではない。

『・Raising the ELB can be expansionary. However, our estimates do not explicitly model the risk of Japanese government bond holdings in a rising policy rate environment.』

ここのELBってのは「effective lower bound of nominal interest rates」で、何のこっちゃという感じですが、本文16ページの辺りで『4.3 Effects of an increase in ELB』というのがあって、

『Suppose the BOJ had moved back the ELB from ?0.1% to 0% in the base period of September 2016, which is under the Z regime. The effect of this ELB can be captured by ・・・・・・・・(以下割愛)』

とかになっていまして(Zはゼットじゃなくて数学で使うようなラテン文字みたいです)、要は利上げしても実は拡大的の可能性もあるというような話でして、そらまあ確かに2013-2016のデータ使ったらQQEは役立たずとかマイナス金利は役立たずとかそういうのが出てくるわなと思いますが、この内容に関してもう少し理解しようと思って本文を泡を吹きながら読みますと、本文4ページ、つまり『1 Introduction』のところになりますが、こないな分析してまっせという説明になるんですけどこんなのが。


『Further, we conduct nonlinear counter-factual analyses to quantify the macroeconomic effects of

(i) Raising the ELB
(ii) Lowering the inflation threshold in forward guidance.5』

ということでさっきの結論のポツ2とポツ3の話ですが、

『More specifically, we increase the ELB from -0.1% to 0% and lower the inflation threshold from 2% to 1% in the base period of September 2016 (the month in which the BOJ announced a new policy framework, including yield curve control and an over-shooting commitment,6 along with its comprehensive assessment of QQE). 』

上記にもあるようにこの時に有ったフォワードガイダンスはYCCの継続期間のコミットメントとオーバーシュート型コミットメントになりますが、それに加えてマイナス金利解除というのもあるとか実にチャーミング。

『Regarding (i), we find that an increase in ELB can be expansionary. It is accompanied by a drop in real interest rate, where inflation rises at an earlier and faster pace than nominal policy rate. This finding that an increase in ELB can be expansionary is not without theoretical possibilities, such as the effect of reverse interest rate (Brunnermeier and Koby, 2017), that of the central bank’s information (Nakamura and Steinsson, 2013), and that from a neo-Fisherian environment (e.g., Uribe, 2018).』

>such as the effect of reverse interest rate (Brunnermeier and Koby, 2017)
>such as the effect of reverse interest rate (Brunnermeier and Koby, 2017)
>such as the effect of reverse interest rate (Brunnermeier and Koby, 2017)

さてここで昨年11月13日のチューリッヒでの総裁講演を確認しましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko171114a.htm/

『このほか、金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています11。』『11Markus K. Brunnermeier and Yann Koby (2017), "The Reversal Interest Rate: An Effective Lower Bound on Monetary Policy," mimeoを参照。』(以上、直上のURL先、黒田総裁2017年11月13日チューリッヒでの講演邦訳より)

という訳で、思いっきり(Brunnermeier and Koby, 2017)ってこの前黒田さん講演で出てきたリバーサルレートじゃんという大変にお洒落なものになっております次第(本文の方では「利上げをしても拡張的になる可能性がある、というのは必ずしも理論的根拠を欠くものではなく、例えば(Brunnermeier and Koby, 2017)のリバースレートのような先行文献があります」って言ってます、と思います)。

以下元々のペーパーの本文からの引用を続けまして、先ほど引用した部分の続きをば。

『Regarding (ii), we find that weaker forward guidance does not negatively affect inflation or output if trend growth is sufficiently strong. This finding that weaker forward guidance is not necessarily contractionary may deserve some explanation.78 』

フォワードガイダンスを弱めてもトレンドグロースが十分に強ければ必ずしも物価や生産に悪影響を与えるわけではない、という話で以下説明部分があるのですが、頭が悪いので(というのもあるが時間がないので)以下は皆さん本文を読んでちょ、というかどこかの物好き何とかストがネタにしてくれるかも知れませんな。


しかしまあ何ですな、これ実はもう一つお洒落なポイントがありまして、冒頭のアブストラクトのページに謝辞とヘッジクローズ(これは著者の見解であって日本銀行の公式見解とは関係ありません、って奴)があるのですけど、その謝辞を見ますと・・・・・・・・・・・

『The author is grateful to the reviewers for most valuable comments. The author thanks Shin-ichi Fukuda, Yutaka Harada, Fumio Hayashi, Ryuzo Miyao, Taisuke Nakata, Mototsugu Shintani,Etsuro Shioji, Shigenori Shiratsuka, Tomohiro Tsuruga, Kazuo Ueda, Kozo Ueda, and Yoichi Ueno for their helpful comments. The paper benefited from presentation at the Bank of Japan, Hitotsubashi University, Institute of Statistical Research, JSME, RCAST Macroeconomic Analysis Workshop, and Waseda University (Center for Positive Political Economy). 』

錚々たる方への謝辞があるのですが、その中で異彩を放つ「Yutaka Harada」ってのがありまして、こんな結論のペーパー見せられたらその場で破り捨てるんじゃネーノと思ったのですが、なんでまた謝辞にお名前が載るんじゃと不思議に思うのでした。同姓同名の別人28号っていないですよね・・・・・・・・・


#決定会合議事要旨は本日は時間がないのでパスしますが、「何か全然まとまってないけど大丈夫か」というのが印象です








2018/11/05

お題「中期輪番予想の下限まで減額とな/総裁会見は普通に想定問答で来ています」

ふーん。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181103/k10011696851000.html
外国人材 最初の1年間の受け入れは4万人程度と想定
2018年11月3日 5時05分

あっという間に人数の話とかノーズロになってしまうに1万ドラクマなわけですが、人手不足だから呼びますとかじゃあ人手不足解消したらホイホイと送還するとかいうようなそんなの無理じゃろというのを前提にした安易な発想で法案作っている(労働者が必要とか言ってる経済団体のトンチキ野郎どもはそれ以前の知能レベルで単に自分の会社の事しか考えていない)としか申し上げようがないんですけど。


〇中期輪番は予想の下限で実施してきましたが特段崩れずとな

んな訳で輪番。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of181102.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,500 2018年11月5日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,000 2018年11月5日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,500 2018年11月5日

・・・・・・・・ということで、1−3はレンジの中央の3500億円、3-5は3000-5500と来ていましたので中心が4250億円ですけどその刻みは無かろうということで4200-4000かなとか思われたところ(3900以下にするとレンジが3000-5500となっていたのがインチキにも程があるという話になるので、もし3900だのにするなら最初の時点で3000-5000にしておかないと、とはさすがに思う)、下限の4000億円でオファーでした。

しかしながら輪番そのものでは相場がコケることもなく、輪番結果堅調ということで確りした相場だったので輪番減額はスムーズに行ったという感じ(入札への影響は次以降の入札をみないといかんですが)でしたが、債券市場自体は最後にトランプ砲が出たので押してしまいましたな。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1XD2H2
東京外為市場ニュース2018年11月2日 / 15:18 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が小反落で引け、長期金利0.125%に小幅上昇

『 <15:12> 国債先物が小反落で引け、長期金利0.125%に小幅上昇

国債先物中心限月12月限は前日比1銭安の150円64銭と小反落して引けた。前日の米債高に加えて、日銀が中期・長期を対象に実施した国債買い入れが好需給環境を反映した結果となったことから、一時150円75銭まで水準を切り上げた。午後中盤に入ると、米大統領が中国との貿易合意の草案作成を当局者に指示したとの一部報道をきっかけに、日経平均株価が上げ幅を拡大すると、短期筋の売りが出てマイナス圏に沈んだ。』(上記URL先より、以下同様)

まあ相場そのものの流動性がどうしたこうしたというのが好転したとはあんまり思わないですけれども(個人の感想です)、最近は一応外部環境ネタを受けて微妙に買われたり売られたりして値動きをする分だけ少しマシになっているような気がせんでもない。

『現物市場は軟調。朝方から長期・超長期を中心に一部国内勢の買いが観測され、金利低下圧力が掛かったが、日経平均株価が一段高の展開になると、利益確定売りに押された。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp高い0.125%に小幅上昇。短期金融市場で、無担保コール翌日物の加重平均レートは前日(マイナス0.071%)並みになる見通し。週末を迎えたが、資金調達需要は高まらず、マイナス0.04─マイナス0.086%を中心に取引された。ユーロ円3カ月金利先物は動意薄。新発3カ月物国庫短期証券(TB)の入札結果で、最高落札利回りはマイナス0.2836%、平均落札利回りはマイナス0.2980%と、前回(最高:マイナス0.2958%、平均:マイナス0.3211%)に比べて上昇した。』

3M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20181102.htm

(3)募入最低価格 100円07銭7厘0毛(募入最高利回り)(-0.2836%)
(4)募入最低価格における案分比率 10.9941%
(5)募入平均価格 100円08銭0厘9毛(募入平均利回り)(-0.2980%)

ということで先週まで入札がじりじりと強くなっていて▲30bp台が普通という状態になっていてナンジャソラという感じでして、まあこの水準も大概に強いのですけれども、▲30台定着はしないで結構という所ですな。


・・・・・・・でもって今回は中期なので量が稼げるということで、月額で1−3が1000億円、3−5が1500億円の減額ができましたので、さてこれで来年の買入何ぼになるんじゃいのというのを恒例の計算してみました。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

こちらから銘柄別残高を取ってきて償還順に作り直して(各銘柄の償還日は売買参考統計値のページからエクセルで落とせる)ヘコヘコと計算してみました(ので本人はあっているつもりですが違っていたらすいません)ところ、こんな感じになりました。

昨年12月末時点での日銀保有長期国債
営業毎旬ベース:418兆5,169億円
額面ベース:407兆5,794億円

10月末時点での日銀保有長期国債
営業毎旬ベース:454兆2,876億円
額面ベース:442兆8,526億円

なので今年の増加は今の所
営業毎旬ベース:35兆7,707億円
額面ベース:35兆2,732億円

でして、営業毎旬ベースと額面ベースって残高でみると差異はあるのですが、差分を見る分に関しては額面ベースで考えておいても大差ないということで良いと思いますので額面ベースで出したものを見ながら考えていくということにしませう。

でもって今年償還が来る長期国債の額面合計が11兆4,320億円になります。

今の買入が
−1年:500×2
1-3年:3500×4
3-5年:4000×4
5-10年:4500×5
10-25年:1800×5
25年-:500×5
変国:1000×0.5(隔月)
物国:250×2
になっていて、1年未満に関しては基本的に短いのが入るので残高増加に寄与しないという置きにしますと、月間の買入額面が6兆5,000億円になっています。

となりますと、2018暦年の国債残高増加見込みは、352,732+65,000×2−114,320=368,412となりまして、今年の暦年での国債買入残高増加は37兆円ペースとなりました(12月また減額すればもうちょっと減りますけど)。

さらに2019年がこのままのペースだとしますと(たぶん減額はするのでもうちょいペースは落ちるけど、そこまで派手にはやらないで地味に隙あらば減額という感じでしょうな)、来年は償還が52兆48億円で、月額6.5兆円が12カ月で計算すると78兆円の買入になりますので、差分は25兆9,952億円となりまして、まあ多いちゅうのは変わらんですけれども、でもまあ随分と減って来ましたので、この調子で減らす(と言ってもMB拡大しないといけないから0だの1兆円だのという訳には行かないですけど)とYCCという存在があるからどうしようもないにはどうしようもないものの、買入自体のサステイナビリティはちったあ上がるじゃろとは思いますので、どさくさに紛れて良く頑張った(褒めてないように見えるが褒めてる)!!感動した!!ということで計数の確認をするの巻なのでした。


〇総裁記者会見は今回は見事に想定問答を連ねている

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk181101a.pdf

・海外経済のリスクについて

最初の「今日はどうでしたか」という実質質問じゃない質問の次がこの質問。

『(問) 世界経済のリスクについてお伺いします。総裁は今月上旬にインドネシアで開かれたG20会議に出席した際に、米中の貿易の問題は世界経済に悪影響を及ぼすとのご認識を示されていまして、IMFも 18 年以降の世界経済の見通しを下方修正しています。足許で米中の貿易摩擦の問題は、実際にどのような形で世界経済にリスクとして及び始めているのでしょうか。特に中国景気の減速が懸念され始めていますが、それが世界や日本に与え得る影響についてもご見解をお願いします。』

今回展望レポート基本的見解でも海外のところを下げているのでこれは順当な質問。

『(答) 最近のいわゆる保護主義的な通商政策の影響は、米中間など一部の貿易活動にみられますが、グローバルな製造業の業況感が緩やかな改善を続けるもと、多くの国で内需が増勢を維持しており、世界経済は、総じてみれば着実な成長を続けていると判断しています。』

展望レポートの見通しでもメインのシナリオは(特に国内が一巡する2019年半ば以降は)海外が引っ張って成長していく、という絵になっているのでこの説明は順当。

『ただ、各国経済の相互依存関係が一段と深まる中で、こうした保護主義的な政策は、先行き、当事国だけでなく、いわばグローバルなサプライチェーンを通じて、世界経済全体に影響を及ぼす可能性があります。その影響度合いについては、貿易活動に加えて、家計や企業のマインドや金融市場にどの程度波及するのかという点にも大きく依存すると思います。この点は、IMFの世界経済見通し等でも指摘されています。』

順当な説明ですが、そんなにリスクあるのにその割には「モメンタムは維持」なんですよね。

『中国経済については、投資関連の指標などにやや弱めの動きがみられているほか、先行きも米国による関税率引き上げがあれば相応に影響があると思われますが、今のところ、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとみています。』

これまた下だ下だというと追加緩和の話になり、追加緩和と言っても最早やったら副作用という状況になっている中で追加緩和もできないので(つーか寧ろマイナス金利撤回した方が追加緩和になるんじゃなかろうか、今の状況ってマイナス金利が単なる金融課税状態になっているだけだと思うので、実は引き締め的な政策なんじゃなかろうかという事も含め)、追加緩和の話に繋がることはこうやって大本営発表をするか、物価がアガランチ会長の説明をするときのように(展望レポートの最初の所にあった「生産性の向上」「技術の革新」を堂々と物価の上がらん並列メイン理由に昇格させる奴な)悪いように見えますが実は良いんですという大技の説明をする、という風にして追加緩和を避けようというのはこの辺を見ても確認できるというものです。

『わが国の経済への影響についてみますと、先日の短観やこの間のヒアリング調査等を踏まえれば、これまでのところ、米中間の貿易摩擦の影響は限定的なものにとどまっていると思いますが、他方で、企業からは、現時点で、この問題の影響を正確に見積もることは難しいとの声も聞かれるほか、この先、こうした貿易摩擦が長期化するようなことがあれば、IMFも指摘しているように、マインドや金融市場の不安定化という経路を通じた影響が拡がる可能性もあります。』

こういうのは普通マズイという話になるんだが(まあトランプなんでいきなり豹変して何もなかったかのように元に戻る可能性はありますけど)。

『日本銀行としては、保護主義的な動きの帰趨とその影響を、わが国経済の先行きに関するリスク要因の 1 つとして認識しており、今後とも注意深くみていきたいと思っています。』

ということで多分想定問答集通りなのですが、まあ慎重な言い方はしていますな。


後の方でさらにしつもんが。

『(問) 今回、経済の見通しについて、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きいと書かれていますが、具体的にどういうリスクに注目なさっているでしょうか。先程、中国に関して言及があったように、中国、それからヨーロッパの指標ではよくないものが出てきていますし、ドイツは政治的に揺らいできている面もありますが、その中でどういったリスクが日本にどのような影響を及ぼすとみていらっしゃるでしょうか。』

うむ。

『(答) 公表文にもありますように、保護主義的な動き、最も典型的には米中の貿易摩擦がエスカレートしている状況ですが、こうしたことが米中のみならず、世界貿易や世界経済に与える下方リスクは、一番注目しているところです。その他、米国の金融政策の正常化を通じて、米国の金利や為替が上昇し、それが新興国にも資本流出や為替の下落をもたらすリスクは潜在的にあると思います。今のところは、アルゼンチン、トルコといったマクロ経済のファンダメンタルズが非常に脆弱な特定の国に影響が出ているだけで、新興国全般に影響が出てはいませんが、やはり、潜在的なリスクはあると思います。』

ほほう。

『こうした 2つの点は、先日、バリで行われたIMF世銀総会の際のG20やIMFC等でもしばしば言及されたリスクです。』

今回はIMFの指摘を踏まえまして〜で説明をするのが目立ちます。

『その他、ご指摘のように、欧州経済は回復しているが、このところやや減速気味であるとか、ブレグジットの交渉がなかなか進んでいないとか、イタリアの財政政策を巡り色々な議論が行われているなど、様々なリスクについてよくみていく必要はあると思いますが、やはり保護主義のリスクと、新興国経済が世界的な金融の状況により影響されるリスクが、国際的に最もよく議論されていると思います。』

ということですが、「国際的に最もよく議論されていると思います」なのであって、じゃあ日銀はどうなのよとゆーのは華麗に避けて通っているのも、「これ」と特定した時に追加緩和とかの話と結び付けられるのが困るというのがあるんだろうなあと勝手に邪推致しました。


・下振れリスクでの金融緩和ですが

ってな質問群の先にはこんな質問が。

『(問) 先行きの経済・物価は下振れリスクの方が大きいということですが、今後そうしたリスクが顕在化した場合の金融政策対応についてお伺いしたいと思います。超低金利に加えて金融緩和の副作用が拡大している分、従来よりも追加措置を行う場合の判断は難しさを増しているかと思いますが、この点について総裁のご見解をお伺いします。また、その関連で、現在のイールドカーブ・コントロール政策では、長期金利が−0.2%程度まで低下することを許容していると思います。その意味では、ある程度経済・物価の下振れにも対応できる枠組みになっているのではないかと思いますが、その点について総裁のお考えを伺わせてください。』

ほうほうこれは良い質問。

『(答) 下振れリスクがあり、そのリスクのかなりの部分が海外からくる可能性があるということは、この展望レポートにも示されている通りですが、仮にそうしたリスクにより、経済や物価、金融市場等に大きな影響が出てきたときには、金融政策の対応もあり得るわけです。』

「あり得る」とはお洒落な説明、昔なら「断固として追加措置」って感じでしたので隔世の感があります。

『その際に、どのようなことがあるかといえば、一昨年、「イールドカーブ・コントロール」を導入したときにも申し上げた通り、金利の引き下げ、マネタリーベースの拡大、資産買入れの拡大など色々な手段があり得ると思いますが、今のところ、メインシナリオではそのようになっていませんので、リスクを注視しているところです。』

今のところ、と来たので、YCC導入当初の声明文にあった・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf

『(3)追加緩和手段

具体的な追加緩和の手段としては、「イールドカーブ・コントロール」の2つの要素である@短期政策金利の引き下げとA長期金利操作目標の引き下げを行うほか、「量的・質的金融緩和」以来実施してきたB資産買入れの拡大が考えられる。また、状況に応じて、Cマネタリーベース拡大ペースの加速を手段とすることもある。』

(上記URL先:2016年9月21日金融政策決定会合声明文「金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」」から)

の説明でもおっぱじめるのかと思って思わず正座してしまう訳ですが、知らんがなとなってしまうあたり、2年間の間に随分と骨抜きして軟体動物金融政策になったものだと思います。

以下総裁会見質疑応答に戻りまして(よって以下の引用は最初のURL先の総裁定例会見に戻ります)、今の説明の続きを見ますと、

『また、「イールドカーブ・コントロール」で 10 年物国債金利がゼロ%程度というときに、今年の前半までは±0.1%程度の狭い範囲で動いていましたが、それはやや極端で、その倍くらいの幅で動いても全然おかしくありません。経済・物価・金融情勢によって、そのような変動が起こることはある意味で当然ですので、今おっしゃったようなこともあり得るとは思います。』

『具体的に大きな下方リスクが顕在化して、経済・物価見通しに大きな影響が出てくるということになれば、金融政策自体を調整することになると思いますが、今のところ、そのような状況にはなっていないと思います。』

2%を出来るだけ早期に達成するためには何でもやるとか吹いていた黒田さんがすっかりと想定問答棒読みマンと化して骨だか魂だか知りませんけど抜け抜けモードで腑抜けになっていますなあという以外の感想はないのですが、まあ想定問答では追加緩和の具体的な思惑が出ないように言葉を選ぶ、というのがあるわなあとは思いました。


・債券市場の機能がどうしたこうした

最初の方の質疑に戻りまして、

『(問) 7 月末の金融緩和の修正から 3 か月がたちました。総裁は市場機能の改善に必要な措置とご指摘されましたが、3 か月たちまして、金利形成や取引の活性化に関して当初想定した通りの効果が得られていますでしょうか。市場機能の改善に引き続き課題があれば、その点についても教えてください。』

正直10月まではナマコのままでして、今月の入札日翌日やらない攻撃がどう効くのかという話ですが、中間選挙終わるとネタ切れの悪寒も。

『(答) 7 月の決定会合以降、国債市場では、現物、先物ともに取引が幾分活発化して、日々の値動きもある程度高まってきています。本年前半には、株価や米国の長期金利が変動しても、日本の国債金利は殆ど反応しないといった状況がみられましたが、7 月の会合以降、そうした価格の連動性も回復しつつあるように思われます。従って、いわゆる市場の機能度という点からは、国債買入れを弾力的に運営するもとで、一頃よりも改善してきているということは言えると思います。』

他市場の動きに反応しないのはあんまり変わってないと思うがまあそれは兎も角。

『ただ、「イールドカーブ・コントロール」というものが、そもそも長短金利を低位に安定させることを通じて、経済活動を広く刺激することを目的としていますので、市場機能に一定の負荷をかけ、金利変動を抑制する面があることには留意が必要だと思っています。そのうえで、日本銀行としては、こうした副作用が大きくなり過ぎて、政策効果を却って阻害することにならないよう、引き続き市場の動向をよく点検していくつもりです。』


さらっと副作用という言葉が出てくるようになっているのは変動容認の効果(というか副作用を意識しないとさすがにマズいと負ったから変動を容認したんでしょうが)。

ちょっと後の質疑。

『(問) 先程言及のあった債券市場への 7 月末以降の影響について、多少機能が回復してきているという言及はあったのですが、一方で先日も 10 年物国債の値付けができない事態も発生しています。今後更に市場の機能の阻害が疑われるような事態になったときに、日銀としてどのような手立てがあるのかお聞かせください。』

まあ無いんですけどね。

『(答) 値動きの幅が非常に小さくなりますと、あるときに需要と供給が突き合わなくなって、取引が成立しないことが起こり得るわけですが、』

??????????

『このところは少なくとも今年前半のような状況ではありません。』

??????????

『7 月末の決定会合以降、変動幅はある程度広くなって、需給の突き合いがつかないケースはかつてに比べると非常に少なくなっていると思います。依然として値動きの幅はそれほど大きくなっているわけではないので、そうしたことも起こり得ると思いますが、基本的には、あくまでも 10 年物国債の操作目標はゼロ%程度であり、ある程度の幅をもって変動し得るということで、長期国債の買入れについてもある程度弾力的にやってきていますので、更に市場機能が低下するとは考えていませんし、そうした心配はないと思います。』

どう見ても蒟蒻問答です本当にありがとうございました。

『ただ、経済・物価・金融情勢次第では色々なことが起こり得ますので、そうしたことには適切な対応を必要に応じて講じていくということに尽きると思います。市場機能がこれ以上低下していくようなことはないと思います。


いやお前買入拡大してストック効果が効くんだから更に低下するじゃろ、と思いますが、副作用とかさっき言ってしまった手前、あまり余計なことを言うと「副作用を緩和するには買入減額」という当たり前の結論の話に帰結してしまいますと甚だマズーなので(何せ80兆円の文言も削除できない状態ですから)、急に説明が蒟蒻問答になってしまうのは致し方ない、というのもありますけど今回の会見って黒田さん見事に想定問答の振り付け通りに喋っているなあというのが字面を見て思うのでした。


・物価のモメンタムの説明は風前の灯火

『(問) 本日の展望レポートで、物価の見通しが 18 年度以降、全ての期間で、下方修正、引き下げられました。物価がなぜ上がり難いのかの検証を踏まえた7 月の見通しから、更に下振れた形になるわけですが、この要因について、総裁はどのようにご認識をされているのでしょうか。あわせて、物価上昇に向けたモメンタムは変わらず維持されているとお考えなのか、例えば、モメンタムが弱くなっていることはあり得るのか、お願いします。』

『(答) まず、2018 年度の物価の見通しについて、幾分下振れしたことは事実ですが、2019 年度、2020 年度については、殆ど変わっていないのが実態だと思います。足許の物価がやや弱めであったことから、2018 年度の見通しが 0.2%程度下振れしましたが、物価を巡る全体のピクチャー、状況は大きく変わったとは考えていません。』

0.2%が「幾分下振れ」で0.1%が「殆ど変わっていない」というその差は何????????????

『そのうえで、いわゆるモメンタムの面では、非常に重要な点は、1 つは需給バランス、GDPギャップがどうなっているかですが、これはプラスに転化して、ずっとプラスが続いています。更には、失業率も極めて低い 2.3%ですし、有効求人倍率も 40 数年振りの高さになっていますので、需給ギャップ、GDPギャップあるいは労働市場の需給の引き締まりといった点からは、賃金・物価を押し上げていくモメンタムははっきりと維持されていると思います。』

はあ。

『もう1つの中長期的な予想物価上昇率は、昨年の初めからみると上昇してきていますが、このところ横ばい状態ですので、予想物価上昇率はやや弱めといいますか、少なくとも引き続き上昇していく感じではないと思います。』

はあ。

『ただ全体としてみて、物価上昇に向けたモメンタムは維持されていますので、今後、徐々に賃金・物価は上昇していくとみています。』

でもってこの部分ですけど、展望レポート本文のネタがまだやってなくて恐縮ですが、そもそも物価が足元上がりにくい理由説明を受けると、需給ギャップも期待インフレも中々物価上昇につながっていかない、というような足元の説明をしているので、それでモメンタムがとかいうのも何だかなとは思います。


・金融不均衡ネタ

『(問) 金融システムの安定という観点についてお尋ねします。先日公表された金融システムレポートでは、やはり不動産向けの融資が過去最大になっている点とか、銀行の信用コストに見合わないような金利水準での貸出が増えているといった指摘がありました。最近でいいますと、例えばスルガ銀行の過剰な個人向けの不動産融資問題等も顕在化しています。こういった状況を考えると、既に超低金利の長期化を見越した過度のリスクテイク、あるいは過度の債務の増大という副作用が相当顕在化しているのではないかという感じがしますが、総裁の現状認識をお尋ねします。』

うむ。

『それから、先立って 7 月に、超低金利の長期化を見越した副作用対応をされましたが、こうした過度のリスクテイクや金融仲介機能が損なわれる点についての対応はまだなさっていないと思いますが、これについてもどのようにお考えかお尋ねします。』

まあそれをすると利上げになるので(^^)。

『(答) 金融システムレポートにもある通り、地域金融機関を中心にミドルリスクをとることがやや増えていますが、競争が激しい中で、それに応じた金利の調整がなかなかできないでいると、リスクとリターンが見合わないことになるおそれがあります。』

他人事のように言われましても・・・・・・・・

『不動産融資については、一昨年末くらいがピークで、地域金融機関は、このところむしろ不動産融資関係についてより厳しい目でみており、融資の増加ペースは大幅に低下していますので、これが今大きな問題になってはいないと思います。』

そうなんですかねえ。

『いずれにせよ、リスクテイクする際には、十分なリスク管理が必要なのは全くその通りで、この点は、金融機関の方々にも十分理解してもらえるようにということもあり、金融システムレポートで年に 2 回詳しく分析していますし、また、個別金融機関に対する考査の中で、それぞれの金融機関におけるリスク管理等の問題についてよく議論しています。そうした対応は十分できていますし、今後ともやっていく必要があると思います。』

リスクを取れという政策をぶち込んでこれですかそうですか。

『マクロ・プルデンシャルあるいはミクロ・プルデンシャルに基づく規制そのものは、ご承知のように金融庁が担当していますが、カウンター・シクリカル・キャピタル・バッファーなどの運用については、金融庁と日本銀行で話し合うことになっていますので、そうした形で、金融庁のマクロあるいはミクロのプルデンシャル規制にも一定の発言をできるようにはなっています。』

突如何を言い出したのかという感じです。何なんでしょ。

『今申し上げたように、金融システムの安定を維持するために、金融システムレポートにある各々の課題について、色々な形で金融機関とも対話し、対応を促していますし、今後とも続けてまいります。』

そうじゃなくて政策の方なんだが、まあプルーデンスは金融庁ってさっき言ってるんだからあんまりやる気ないんでしょうなあというのは分かる。

『なお、個別行のケースについてとやかく言うつもりはありませんが、スルガ銀行の場合は、適切なルールに従っていなかったとして金融庁からも指摘されている、大変遺憾な状況であって、普通の意味のリスクテイクや信用コスト云々の次元を離れた問題だと思っています。』

そういう状況に金融機関を追い込んでいるのはヘボにも程がある金融経済運営のせいなんですけど。

『それから、今申し上げたように、色々な形で副作用について議論はしていますし、一番典型的には金融システムレポートで指摘していますが、金融政策が適切に経済・物価に波及していくためには、そのチャネルである金融システムが安定していることが重要であり必要ですので、その点には十分今後とも目配りをしてまいります。』

とは言っていますが、まあ副作用対応での政策変更とかするきねえだろというのは伝わりました。







2018/11/02

お題「中期輪番(たぶん)減額にもめげず先物中心にサガランチ会長とな/展望レポート基本的見解は物価の開き直りが目立つ」

いやもうさあ・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37245430R01C18A1EE8000/
携帯通信料値下げ、物価下押し 最大0.85%
経済
2018/11/1 18:29日本経済新聞 電子版

『NTTドコモが携帯電話の通信料金を2019年4〜6月に2〜4割引き下げると発表したのを受け、物価が下押しされるとの見方が出ている。民間試算によると通信大手3社がそろって同等規模の値下げに踏み切った場合、消費者物価指数(CPI)は最大で0.85%下押しされる。政府と日銀が掲げる2%の物価目標達成には逆風になりそうだ。』(上記URL先より)

展望レポートの方だと教育無償化の話が経済物価の委員による見通し表の中にあるんですけど、これがまたCPI押し下げる件については見通しに入っていなかったりして、そらまあこの手の費用下がるのは個人のお財布事情的にはアリガタヤではあるんですけど、記事にもあるようにアベノミクスって2%物価目標達成するんじゃないの??

なお話は変わりまして、昨日はあまりの大爆笑が起きたので是非ともお知らせしようとして入れました置物日記日記は本日は誠に申し訳ございませんがパスします、サーセン。一応今の所週末にねじり鉢巻きして読みたいと思う(読むとは断言していない)ので乞うご期待(ご期待の物が出るとは言ってない)。

#なおそのような時間がありましたら麿の本を読んだ方が有益なのは申すまでもございません


〇輪番減額にもめげず先物がサガランチ会長どころか上昇とな

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N1XC2J6
東京外為市場ニュース2018年11月1日 / 15:21 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発、長期金利変わらず0.120%

『<15:15> 国債先物は小反発、長期金利変わらず0.120%

長期国債先物は小反発して引けた。前日の海外市場で、米債が下落した流れを受けて売りが先行。日銀が国債買い入れ運営方針を見直したことも影響して前場は売りが優勢になった。後場は10年債入札を順調にこなしたことで、短期筋の買い戻しが入り終盤にプラス圏に浮上した。日経平均株価が軟化したことも買いを誘った。現物債市場も同様な展開となり、午後の取引で押し目買いが優勢となった。長期国債先物中心限月12月限の大引けは、前営業日比2銭高の150円65銭。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比横ばいの0.120%。一時0.135%と10月24日以来約1週ぶりの水準に上昇した。』(上記URL先より)

先物日中(と言いましてもこれは先物寄り付き前じゃないと前日の日中が出て来ませんです)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime

長期国債先物
18年12月限 11/01
始値:150.53 (08:45)
高値:150.65 (15:02)
安値:150.47 (12:30)
終値:150.65 (15:02)
前日比:+0.02
取引高:45,825

表の「長期国債先物」となっているのをクリックすると日中チャートが出てくるという割と便利な代物(いやまあクイックとかが手元にあれば別に問題ないんですけど)ですけど、昨日の日中足を見ますと前場は10時くらいから150円50銭ちと割れ位のところで大坂夏の陣のごとく押したり引いたりしているのですが、後場になったら売り方華麗に落城して敗走モードになってしまいましたという図になっていますが、まあ昨日は先物サガランチ会長とか思っていたら売り軍総崩れの図になってしまうの巻で、先物強いよという感じでしたな。

しかしまあ何ですな、昨日は5年カレントは1.5甘の▲7bpで始まって途中先物一番戻した時には引けの▲8.5bp水準になってました(その後0.5甘になってたりしたと思うが)のは、そらまあ中期の輪番が多分減額されるだろうという見通しの中で1.5甘位で始まったという部分はそらそうよなのかも知れませんが、20年カレントが2.5甘の0.670%で始まったのはなんでや超長期輪番関係ないやろという感じで(当然ながら先物戻ったところで引けの0.645%に戻っておりました)したけど、「中期輪番減額したので次は超長期」とか言い出して叩かれたとかだったらさすがにおまいら先走り過ぎじゃろとは思ってしまいました。

確かに10年入札堅調だったし株もヘロっとしていましたし、中期輪番減額されても実は5年には効いても先物以降には(先物がくそアンカーされているので)関係ないじゃろという評価になるのかも知れませんが、それにしても先物の底堅さというか後場の売り方落城絶賛敗走モードにはこれは何なんですかと思ってしまいましたが、何なんですかという事に対する知見はあんまりございませんのでそういうのは詳しい人に聞いてくらはい(というか教えてくらはい)。

という俺様備忘メモでございました。


〇展望レポート基本的見解を鑑賞するのだがこれ物価が上がらんのを開き直ってねえかと思うんだが

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1810a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1807a.pdf(前回)

ちょっとだけ比較するので9月会合の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/k180919a.pdf(9月声明文)

・最初の鏡(<概要>)の物価の説明がどう見ても「物価が上がらんですなあ」となっているように見えますが

ということで基本的見解の鏡の部分をば。

最初のポツの部分。

『・日本経済の先行きを展望すると、2018 年度は海外経済が総じてみれば着実な成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』(今回)

『・日本経済の先行きを展望すると、2018 年度は海外経済が着実な成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。』(前回)

総じてみれば、という毎度おなじみのヘッジクローズが入りまして海外経済の先行き認識が下方修正。

『2019 年度から 2020 年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる2。』(今回)

『2019 年度から 2020 年度にかけては、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に、成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気の拡大基調が続くと見込まれる2。』(前回)

ただし2019〜2020年度の見通し文言は不変だし、あいかわらず「外需にも支えられて」ってなっていて、足元の海外経済のアセスメント下げているのに先行きは外需が牽引して景気拡大とはこれ如何にという感じはします。

2ポツ目は前回と今回で体裁が違っていまして、前回物価が上がらん理由をうだうだと説明するという企画をやったのでうだうだとポツが入っているのですが、今回はそこをちょっとまとめたという感じなのですがまとめているドサクサに紛れてしらっと説明内容が更新されているという事実。

『・消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。(途中に文言があってそのあとにこれがあります、後で再掲します)こうした中で、中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしている。』(今回)

『・消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。これに伴って、中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしている。』(前回)

という上がってませんし予想物価上昇率も思うようにあがってませんというのがありますがここは同じになっております。

『これには、@賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどが明確に転換するには至っていないことに加え、A企業の生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩なども影響している。こうした中で、中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしている。』(今回)


・経済・雇用情勢の改善に比べて、物価上昇率の高まりに時間を要している背景には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていることがある。こうしたもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方が、明確に転換するには至っておらず、分野によっては競争激化による価格押し下げ圧力が強い。企業の生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩などが、それらに影響している面もある。』(前回)

前回は言い訳コーナーを別のポツにしていたのですが今回は一体化しています。でもって一体化している中でどさくさに紛れて、物価の上がらん背景に前回も入れていた「企業の生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩など」というのが、前回は「影響している面もある」とサブ扱いというか留保付き文言だったのですが、今回は堂々と「企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどが明確に転換するには至っていない」というのと同列で出てきました。

でですよ、このファクターの@の方は経済主体の予想物価上昇率がノルムの影響で上がらんという話だから、予想物価上昇率を引き上げてアンカーさせましょうという今の金融政策目的というか2%達成するルートの阻害要因の話であることは明らかなんですけど、Aの方ってた「企業の生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩など」って話なので、「企業の生産性が向上しているから物価がアガランチ会長なんです」とか「技術進歩の影響で物価がアガランチ会長なんです」という話になりますから、それは背景としては実は前向きなんですよ、というお話。

つまりですよ、これって遂に物価が中々上がらん理由の中には実はポジティブな面もありますよって言うのをより強調している、という事になりますので、意地悪な言い方をすれば「物価が中々上がらんことに開き直っている」という話でございまして、益々「早期達成」というのがただの出してみただけなお題目状態になっているという事を意味する、という風に解釈できると思いますがどうでしょうかね。

まあ最初の所にありました通信費の引き下げとか、教育無償化策とか、外国人労働者受け入れ拡大とか、政府の方が絶賛デフレ政策を実施しているから、物価目標早期達成とか言っても空しいだけというのも日銀にはあるかも知れず、そういうのを受けてこっちも開き直ってしまえ、となっている可能性はあるんじゃネーノというのは捻り過ぎでしょうかね。

あと、政策運営という意味で言えば、(反対派のお方の見解とは別に)この話って要は「足元の物価が中々上がらんし物価目標達成見込み時期が後ずれすることがあったとしても、その背景には企業の生産性向上や技術革新の影響も含まれているんだから、あわてて追加緩和する必要は無い」という理屈(あるいは屁理屈)を展開するバックグランドとして使えてしまいますので、今回海外のアセスメント下げたり(あとで出てきますが)リスクバランスの認識を下げている中で、追加緩和をしなくていい言い訳をバランス上ぶっこんできた、という事でもあると思います。

・・・・・・とアタクシの口上が長くなりましたが続き。

『もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、実際に価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『・もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、実際に価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、これまでの想定よりは時間がかかるものの、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

これややこしいのですが、前回は「これまでの想定よりは時間がかかるものの」ってのがあって今回は入っていないので一瞬上方修正に見えるのですが、その次の所で物価見通し下ぶれていまして、結局のところ物価見通しは下方修正ただし足元だけ、という事になっています。じゃあ何で今回この文言削除したかといえば、今回は中央値で見た場合の物価見通しを、2018年度は+1.1→+0.9に下がっていて、2019年度が+1.5→+1.4、2020年度が+1.6→+1.5(19年度以降は除く消費税)となっているので、達成時期そのものは特段先送りになったわけではありません(キリッ)ってなっているので文言を削除したってなもんでしょう。


ということで次のポツ。

『・従来の見通しと比べると、成長率については、概ね不変である。物価については、2018年度を中心に幾分下振れている。』(今回)
『・従来の見通しと比べると、成長率は概ね不変、物価については下振れている。』(前回)

幾分ってのが0.1%ということですかそうですか。

『・リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(今回)

『・リスクバランスをみると、経済については、2018 年度はリスクは概ね上下にバランスしているが、2019 年度以降は下振れリスクの方が大きい。物価については、下振れリスクの方が大きい。物価面では、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(前回)

前回よりも経済のリスクバランスを下げていますが、冷静に考えると「足元はバランスしているけど先行きは下方リスク」っていう前回の評価もわけわからんですわな。先行きの下方リスクが大きいんだったら、普通に足元だってそれを意識して下になるもんじゃネーノということで。


・経済の現状と先行き見通しの部分は海外の認識を下げるの巻

一部9月声明文と比較します。『1.わが国の経済・物価の現状 』から。

『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(9月声明文)
『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(前回)

同じと。

『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が改善基調をたどり、業況感も良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(今回)

『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(9月声明文)

『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(前回)

短観が概ね横ばいになっていたので企業業況感の部分が下がっていますが水準については問題ないという認識になっています。企業収益は「改善基調を維持する」が「改善基調をたどり」となっているのですが、これ上方修正なんだか下方修正なんだかよく分からんです。特に悪化しているという認識は無いと思いますが。

その他の需要項目に関するアセスメントは同じですな。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している』(今回)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(9月声明文)

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回)

足元の数値を反映した部分は足元の数値の違いによって違いますが、認識そのものに変化はありません。


『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(9月声明文)
『先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(前回)

『2018 年度についてみると、国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(9月声明文)

『2018 年度についてみると、国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回)

まあ同じっすな。

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能力増強投資、オリンピック関連投資、人手不足に対応した省力化投資などで、増加を続けると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。公共投資は、オリンピック関連需要や補正予算もあって高めの水準を維持すると予想している。』(今回)

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能力増強投資、オリンピック関連投資、人手不足に対応した省力化投資を中心に、増加を続けると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。公共投資は、2017 年度補正予算やオリンピック関連需要もあって高めの水準を維持すると予想している。』(前回)

需要項目別の見通しは声明文では輸出のところしかないのでここは9月声明文はありません。でもってこれも内容は基本同じ(2017年度補正予算の話は抜けているのはまあ当然なのでこれは気にしなくて良いと思う)ですな。

『輸出についても、海外経済が総じてみれば着実に成長していくことを背景に、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。こうしたもとで、2018 年度は、潜在成長率3を上回る成長を続けると見込まれる。』(今回)

『輸出も、海外経済の着実な成長を背景として、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。』(9月声明文)

『輸出についても、海外経済の着実な成長を背景に、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。こうしたもとで、2018 年度は、潜在成長率3を上回る成長を続けると見込まれる。』(前回)

ということでここで海外経済の見通しを下げていますな。さっきの鏡と同じです。

・・・・・・でもってこの先の2019年度以降の話になりますが、時間がここで無くなったので続きは週明けで勘弁して頂くとしまして(というか総裁会見ネタも週明けですいません)、先に結論だけ申し上げると経済の見方に関してはこの調子で前回展望レポートと特段カワランチ会長(海外経済だけちょっと下げている)というのが続きます。色々微妙にいじっているのは物価なので本来はそっちがメインイベントなのですが、メインにつく前の前座で終わってしまいまして誠に恐縮でございます。





2018/11/01

お題「決定会合レビューだが展望レポートよりも輪番を先にやるの巻/置物日記日記メモ」

決定会合結果出て市場は無風→総裁会見でも無風→来月のオペの紙で先物動くという市場って末期症状っぽくって泣けますな。

〇声明文比較:内容に変化なく提案芸の細かい芸が観察されました

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/k181031a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2018/k180919a.htm/(前回)

経済アセスメントに関しては展望レポート基本的見解に出てきますのでこちらは政策に関する文言だけになります。

・政策に変更なし

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約 80 兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。』(今回)

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲-0.1%のマイナス金利を適用する。長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。』(前回)

フォントの全角/半角が違うのはページがPDFなのかHTMLなのかの違いに起因します。



『(2)資産買入れ方針(全員一致)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。

A CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。』(今回)

『(2)資産買入れ方針(全員一致)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

[1]ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。

[2]CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。』(前回)

これもフォント違いなのはPDFバージョンじゃない方を引用しているからです(PDFだと同じになる)


『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、2019年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(注2)。』(今回)

『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している(注3)。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(前回)

項番が違うのは前回MPM声明文は展望レポートがないので経済アセスメントが入っているからです。


・・・・・・・ということで金融調節方針、資産買入方針、フォワードガイダンス群に変更はないのですが、提案芸人先生の提案芸が多少見られます。脚注を見ましょう。


『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、先行きの経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中、10 年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。』(今回)

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。』(前回)

長いので片岡さんの所だけ比較してみましょう。

『先行きの経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中、10 年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対』(今回)
『物価が伸び悩む現状や今後のリスク要因を考慮すると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対』(前回)

提案芸に新たな心境ということで、理由をいじっているのですが、結局結論は同じですなあ。


『(注2)原田委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。』(今回)

『(注3)原田委員は、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとして反対した。』(前回)

これジンバブエ先生も何か変化が出ていますね。分けて再度比較しましょう。

『原田委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。』(今回)
『原田委員は、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。』(前回)

「政策金利については」というのが今回何で入ったのかよく分からん。フォワードガイダンスコーナーはオーバーシュートコミットメントと政策金利とQQE+YCCの枠組み、という3つのガイダンスがあるので、その中の政策金利ガイダンス、という意味でこの文言が入ったんだと思いますが、前回会合の時点でもガイダンスは項番5(今回の項番3に相当)にごったまぜになっているので、もしこの文言を入れるとしたら前回から入れるのが妥当なんですが、これは芸で変化したという感じではないけどワケワカラン。


『片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。』(今回)

『片岡委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、長短金利維持のコミットメントではなく、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが適当であるとして反対した。』(前回)

芸人先生、今回「財政・金融政策の更なる連携が重要であり、」っての入れていて、それは分かったけどじゃあそれが政策運営方針の中でどういう位置づけになるのかさっぱり見えてこないんで、主な意見のところできちんと説明して頂きたいですし、そうじゃないなら具体的に何を指すのか分からないスローガンだけぶち込まれましても(マイナー意見だからスルーされるとは言え)その内容に関連してどのような事が政策として行われるか、ということでコミュニケーションにノイズを与えるだけになるんですが、まあ提案内容を毎回変えるのは無理があるから、反対理由の文言を毎回変えてやっている感を出そうという涙ぐましいというかいじましい努力を行っておられる、ということに落涙を禁じえません。


〇ここで本来なら展望レポート基本的見解の話になるのだがここは敢えて17時のネタに突撃

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel181031d.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180928c.pdf(前回)


・本文読むから先に短国買入

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。』(今回)

『3.国庫短期証券の買入れ

金融市場調節の一環として行う国庫短期証券の買入れについては、金融市場に対する影響を考慮しながら1回当たりのオファー金額を決定する。なお、10月初回の国庫短期証券の買入れは、現時点で、10月2日を予定している。』(前回)

短国に関しては買入週1000億円という申し訳程度の買入になっているのですが、需給がとにかく堅調にもほどがあって▲30bp水準での推移とかで、しばらく前までは▲10〜▲20で中心が▲10前半だったのからすると隔世の感(なお短国なのでその時期に持っていて今になったら値上がりヒャッハーという訳に行かない(償還してる)のが短国の短国たる所以)がありまして、今月はどこかでスキップするかどうかが見ものっちゃあ見もの(初回買入日を今回また削除したのでスキップは可能)ですが、まあ週1000億も買って無いのとあんまり変わらないので、変に波風立てないようにするためにが普通に週1買入は実施するんでしょうなとは思います。前回の日程変更は中長期輪番の日程調整をしますよというメッセージということで良かったわけですな。


・中長期輪番

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:2500-4500、月4回(2000-4000、月5回から変更)
3−5年:3000-5500、月4回(2500-4500、月5回から変更)
5−10年:3000-6000、月5回(変更なし)
10−25年:1500-2500、月5回(変更なし)
25−40年:100-1000、月5回(変更なし)
物価連動国債:250、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

中期と超長期に関して「入札の翌営業日の輪番実施」を今回外してきましたが、10年金利が関連する5−10年に関しては入札の翌営業日(11/2)の輪番を継続する、というこの細かい芸風に「市場メカニズムによる金利形成が行われることを期待しているが、10年はコントロールの直接対象だからおめーは統制する」というメッセージ性を出したということで、なんちゅう細かい芸だと感心してしまいましたが、入札の翌営業日輪番というのが徐々に無くなっていくのは結構なお話。

それから中期輪番が月4回ということで、どうせまた掛け算スキームを実施するのでしょうけれども、まあ中期に関しては需給は確りしていると思われますし、短国も強いような状況ですし、大体からして金利変更の思惑が最近すっかり鎮静化している(そもそもそう簡単に10年のレンジをホイホイ変更できんじゃろ、とは思う)ので、中期の輪番ここで減らすことによって中期が動揺するようなこともそんなにないんじゃないですか、と考えると中期輪番減額は理に叶っていますし、額自体をガサッと落とせるの中期ですからな。

でもって従来は1-3年が3000億円×5、3-5年が3500億円×5でしたので、1-3年が3750億円、3-5年が4375億円の買入でツーペーになりますが、もとよりそうなる訳はございませんので、レンジの中心だと素直に読むと3500億円と4250億円になりますが、なんぼなんでも4250億円って刻みはないから4000〜4200の間のどこかとかになるんでしょうかね。結果は明日分かりますけど。

でもってアタクシの愚感想としては、入札翌日という悪習を(10年を除いて)撤廃できたのは大変に結構(ただ40年の前日に入ったりしてるのも微妙ではあるけど超長期は3本入札があるから日程を選びにくいので仕方ないのと、一応激変緩和措置のつもりかもしれませんね)なお話で、これは原則論として財政ファイナンスしませんという話にほんのちょっとだけ足を入れられたので非常に良かったと思います。

10年もずらすかと思ったけどずらさなかったのはまあメッセージということですわな。

・・・・・・でもって中期の回数削減(なのでたぶん実質減額)をしたのがアタクシの想像比アグレッシブ(市場の想像比はイマイチよくわからん)で、ここは今月様子見してくるかと思っていましたので、まあわりと減額に関しては隙あらばやっていくというのが確認できたという感じではないでしょうか、と思いましたけどどうなのかなあ。


〇展望レポートは時間がないので明日で勘弁ですが・・・・・・・・・・

展望レポートは諸々含め明日とそれ以降ですが、今回目立っているのは海外経済の現状認識と先行きリスク認識を下げたのと、低金利長期化の金融機関への悪影響の見方を進めた。というのはありますが、何気に物価に関するメカニズムの説明が「すっかり開き直っている」というのがあるかなあと思います。つまり物価が上がらんですわ〜というのを割と広範に認めていて、それで何でモメンタムが維持されているのか小一時間問い詰めたい所もあるのですが、まあどうせそれはそれ、先行きは従前と同じ、というような説明しか出てこないんだろうなーとは思いますけどね。

詳しくは明日で勘弁してちょ。


〇置物日記日記(メモ)

やる予定では無かったのですが、例によってパラパラと見ていたら爆笑の発作が起きたのでご報告させていただきます。

「日銀日記−五年間のデフレとの戦い 岩田規久男著 筑摩書房」 ISBN978-4-480-86459-8 C0033 \2500E

より謹んで引用させていただきます。

以下は『2017年4月3日から4月6日にかけて』の部分の本文358ページの最後の辺りから359ページの部分になります。

『右に上げた民主党議員はみな、不遜な態度で、参考人(引用者注:岩田さん)を馬鹿にするような発言をすることによって、参考人の信用、ひいては、日銀の信用を貶め、それによって、アベノミクスを全否定することを目的として、一方的に自分の考えを述べるだけで、参考人の意見を真摯に聞く気が全くない。これでは、そもそも質疑は無駄であり、気分が悪くなるだけで、二度と参考人として呼ばれたくなくなる。』(岩田規久男「日銀日記-五年間のデフレとの戦い」(2018)358-359p)

・・・・・・・・・うんうん、お気持ち非常によく伝わってきます。ところで置物一派の皆さんが日銀や白川さんの批判をしていた時のことは覚えていらっしゃいますでしょうか?????????