トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「190501」というような形式でつけていますので「URL+#日付(190401形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2019/05/31

お題「櫻井さんの静岡金懇挨拶テキストが大変に結構でありまして」

ええい同時に出すな同時に。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2019/ron190530a.htm/
国債決済期間短縮(T+1)化後の市場取引動向
―レポ市場を中心に―

http://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor190530.htm/
2018年度の金融市場調節

なおこの辺については来月(来週が来月でもう6月ということに気が付いて戦慄しているんですがががががが)にボチボチと成敗する予定にしてますが、そうやっているうちにFEDちゃんネタ絡みもありそうな感じですな、円債市場?なんかそんなのありましたな(涙を拭きながら)。

〇とは言え円債市場備忘雑メモをばちょっとだけ

・減額観測だけで前日の上げを半分お返しとな

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2361NH
2019年5月30日 / 15:31 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は-0.085%へ上昇

『 <15:13>  国債先物は反落で引け、長期金利は-0.085%へ上昇

国債先物中心限月6月限は前営業日比12銭安の153円02銭と反落した。この日行われた2年債入札は、前回よりテールが小幅に拡大したものの無難な結果で、午後に入り株価が下げ幅を縮小するとともに、売りが強まった。10年最長期国債利回り(長期金利)はマイナス0.085%と、前日比1.0bp上昇した。』

『市場では、最近のイールドカーブのフラット化を受けて、あすの日銀の国債買い入れオペで、買い入れ予定額が減額となる可能性を指摘する声も出ていた。現物債市場では、前日に2年9カ月ぶり低水準をつけた20年債利回りが0.315%まで反発した。』(上記URL先より)

昨日はのっけから20年1甘とか2年1甘とかで始まって、2年は入札あるからまあ分かるんですが、確かにNYちゃんは株下がったけど金利はサガランチ会長であったのはそうなんですけど、前日に20年0.300%マークしたあの勢いis何処へという風情。別に何か斬新なニュースフローがあった訳ではなかったのでベンダー後講釈ベースでは輪番減額警戒って話になっていてホンマカイナという感じが。

まー20年0.300%までやらかしてくれましたので、いやちょっと待てここから上を買うのって誰なんじゃという風になったんじゃろうなという気もしますが(個人の妄想です)、何がケシカランって昨日は久々に駄文で円債動意キタコレとか申し上げて、この地合いなら減額し放題のボーナスステージ(つまり減額しても為替とか動かんし金利もよー反応せんじゃろ位の鼻息)とか申し上げたらこれですよというのに自らオーマイガーと言いながら先物ちゃんの値動きをみる昨日でありました事よというまあそんだけの話なんですが(−−;

なお、本日のメインイベント櫻井さんの金懇で思いっきり追加緩和する訳ねーだろコンチクショーというのが出ていた件について市場が反応、という事ではないとは思いますけれども、その確認は出来ましたなとは思うのでそれはそれで水準が節目に来ると意識されるのでしょうかね、よーわからん。


〇櫻井審議委員の静岡金懇テキストが素晴らしい(文字通り褒めている)内容となっている件について

就任(というかノミネート)当初はどちら様でいらっしゃいますかモードだったりした櫻井さんですが、今やこの人の発言を抑えておけば今後の方向性が概ね読めるのでは、という地位を確立した櫻井さん。

まあここのところその傾向が強まっていましたが、今回の静岡金懇では中々格調高い内容のお話になっており、もしかしたら櫻井さんの中の人が麿になったのではないかと背中のファスナー(大嘘)を確認してみたくなる講演になっております。

ということで、正直アタクシも当初はどなた様でしたっけ状態でどうせ謎のリフレ派でしょとか思っていたわけですが、今や完全にええの取ったで!状態になっておりまして、櫻井さん最高や!〇〇なんて最初からいらんかったんや!!(なお〇〇はお好みでどうぞ)状態となるアタクシだったりするのですが皆様の感想や如何に。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190530a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190530a1.pdf

【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策 静岡県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 櫻井 眞
2019年5月30日

以下の引用はHTML版の方から行いますが、図表を見る場合はPDF版で見る必要がありますのでよろしくです。

・物価変動メカニズムに構造的な変化が生じているという指摘

『3.物価の現状と先行き』という小見出しから参ります。

『足もとの物価動向と物価変動メカニズムの整理』っつー小見出しから参ります。

『続いて物価情勢についてお話しします。わが国の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%弱の緩やかな伸びが続いています(図表9)。一方、需給ギャップは、2016年第4四半期にプラスに転じた後、プラス幅が拡大し、昨年末の時点で+2%を超える高水準となっています。需給ギャップのプラス幅拡大は、本来は物価上昇圧力となるはずですが、物価上昇の兆しはみられません。』

はい。

『これは、わが国の物価の変動メカニズムに構造的な変化がみられ始めていることが原因と考えています。』

ほうほう。

『すなわち、緩やかな経済成長が続いたことで、2017年頃から、経済の供給サイド、すなわち労働・資本が変化し、物価上昇を抑制する影響を与え始めた、と考えています。』

ほっほー。

『わが国の消費者物価の変動メカニズムを、2つの物価上昇要因と3つの物価抑制要因に分けて整理してみます。』

てな訳で、

『まず物価上昇要因の1点目は、既に申し上げた「プラスの需給ギャップ」であり、プラス幅の拡大により、物価上昇圧力は強まっていると考えられます。次に2点目は、原材料価格など、コスト上昇を販売価格に転嫁する動きです。』

ただし前者が効いてない、というのはさっき出てましたな。

『ただし、後ほど述べますように、家計部門の値上げ許容度が低い状況が続くなかで、販売価格への転嫁ができる商品は(消費者にとっての代替性が低い商品・サービスなど)一部に止まっているのが実情です。』

御尤も。

『一方、物価抑制要因として考えられるのは、第1に、過去の景気後退時に根付いた「デフレマインドに基づく物価下押し圧力」が挙げられます。』

『バブル崩壊後の長引く需要低迷を受け、企業は人件費の抑制や設備投資の取止めによってコストを抑えることで、販売価格を引き下げました。こうした企業行動により、労働・資本両面で、マクロ的な供給能力、言い換えれば潜在成長力も低下しました。循環的な景気後退が供給面への影響を通じて長期的な成長力を低下させる履歴効果、すなわちヒステリシスが定着したことで、企業の価格設定スタンスの慎重化や家計の値上げ許容度の低下が生じ、結果として物価が上昇しない状況が続きました(図表10)。』

図表10は展望レポートにも出ていると思いますが、ここに『ヒステリシスによるデフレマインドの醸成』って小見出しをつけています(図表はさっきも申し上げましたがPDF版でどうぞ)。

『先ほど申し上げた「コスト上昇を販売価格に転嫁する動き」が一部に止まり、なかなか広範に拡がらないのも、こうしたデフレマインドに基づく物価下押し圧力が根強いことが背景にあると思います。』

というのがありまして、


『次に2点目は、「賃金上昇圧力の弱さ」です。』

おー、ここ直球で来るか〜。

『すなわち、賃金は前年比プラスを維持していますが、伸び率が加速する状況にはなく、「企業が労働コストの上昇分を販売価格に転嫁することで物価が上昇する」、というメカニズムは必ずしも働いていません。』

その通りですな。

『この背景には、人手不足が深刻化するもとでも、女性や高齢者の労働参加に伴う非正規雇用の増加が、労働市場のスラック、すなわち需給緩和要因として作用していることが考えられます。』

『実際、労働参加率の上昇を伴う就業者数の拡大が続いているほか、相対的に低賃金である非正規雇用の構成比が緩やかに上昇を続けていることが確認できます(図表11)。』

なるほどこれはクリアカット。


『3点目は、2017年頃からみられている「労働生産性の向上による物価抑制効果」です。』

『企業部門は、深刻化する人手不足に迫られる形で、IoTやAIを活用した省力化投資や能力増強投資を進めています。かつては労働集約的な産業であった建設業や宿泊・飲食サービス業など非製造業の一部の業種で、足もとソフトウェア投資が拡大していることも、省力化投資の進展を示唆しています(図表12)。』

うむ。

『省力化投資は、労働者1人当たりの資本を表す資本装備率の上昇を通じて、労働生産性の上昇に繋がります。家計の値上げ許容度が低いもとで、企業は、人手不足による労働コストの上昇圧力に対し、販売価格を引き上げることによりシェアを失うのを恐れ、労働生産性を高めることで販売価格に転嫁せずに乗り切ろうとしています。すなわち、労働生産性の向上は物価抑制要因となっているのです。』

とまあそういうことで、


『なお、これらのうち、2点目の「賃金上昇圧力の弱さ」と、3点目の「労働生産性の向上による物価抑制効果」は、2つ合わせて「実質賃金ギャップ」の概念で捉えることが可能です1。』

『実質賃金ギャップは、実質賃金の労働生産性からの乖離率として定義されます。すなわち、プラスの実質賃金ギャップは、実質賃金の変化率が労働生産性の変化率を上回ることを意味します。その場合、労働コストの増加をカバーするために、企業は販売価格を引き上げる必要があるため、マクロの物価上昇に繋がります。』

なるほど。

『足もと実質賃金ギャップは引続きマイナス圏で推移しており、今のところ賃金上昇圧力を労働生産性の向上でカバーできていることで、物価上昇圧力が高くなりにくいことが示唆されます(図表13)。』

これはクリアな説明、という訳で先行きに関してはこうなる訳でして、小見出しが『物価の先行き』になります。


・展望レポートの説明よりもこちらの見通し説明の方が分かりやすいですな

『物価の先行き』に参ります。

『こうした複雑な物価変動メカニズムのもとでの先行き予測は、以前よりも難しくなっています。』

ということですが、そこで展望レポートの場合従来からの行きがかりで(今回はついに見通し期間中の2%は捨てましたけれども、それでも決め打ちでこの位から上がりだすみたいな図になっていますから)暫くすると上昇します(キリッ)になっているのですが、そのような制約(?)も無いのでこのように正直(?)に見通しを示しています。

『例えば、労働需給のひっ迫が今後も続き、労働市場の需給緩和要因として作用してきた非正規での就業希望者が減少していけば、賃金上昇率が加速し、販売価格への転嫁を通じて物価上昇に繋がることが見込まれます(図表14)。一方、賃金上昇が生産性の上昇で吸収され、販売価格への転嫁が遅れれば、物価上昇にはさらに時間を要することになる可能性もあります。』

つまり・・・・・・

『生産性向上の余地は無限ではないので、賃金上昇が物価押上げ要因として充分に作用するようになるまで、プラスの需給ギャップを今後も維持し、緩やかな成長を持続させられれば、最終的には「物価安定の目標」の達成に繋がると考えています。』

そうそう、こういう説明をして頂ければ良いのですよ。でもそうするとQQE導入当初の「2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成」とか「達成できないなら最高の責任のとり方は副総裁を辞任する」とかいうのとのコンフリクトが生じてものすごい勢いでポリティカリーインコレクトになってしまう(のはそもそもの設定が間違えていたんですから置物リフレ一派だけが総退場して人様の迷惑にならないように世間から引っ込んで頂ければよいだけではあるのですが)のですな。

いやまあ執行部も概ねこういう趣旨の説明はしているんですけれども、元々の「早期達成を目指す」というのが今でも生きているので、そこの文脈と合わせながらの話になるから歯切れが悪くなるわけで、やはりこれは2%の看板自体下げる必要はなくて、それはそれで「経済の望ましい姿を分かりやすく示したものが2%の物価安定目標」としながら、その達成を急がなくても良いという風に落とし込んで、置物一派は以下同文。


・先行きの金融政策では副作用に思いっきり言及しまくりんぐで大変素晴らしい

次の小見出しが『4.金融政策』となりまして、最初の『現行の金融緩和政策とその枠組み』は普通の話なのでパスしましてその次の『今後の金融政策』に参ります。

『日本銀行は、新たに明確化した「フォワード・ガイダンス」に沿って、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていきます。今後の政策運営にあたって特に留意すべき点は、(1)世界経済の減速がわが国経済に与える影響、(2)物価変動メカニズムの不確実性が高まるもとでの政策運営、(3)金融緩和政策の継続による効果と副作用のバランス、の3点を挙げたいと思います。』

と来ていますが、

『1点目は、わが国の実体経済の先行きを占う上で、当面の大きな留意事項です。中国の景気対策の効果の大きさや、それが顕在化するタイミングなどについて、慎重に点検していく必要があります。』

ということで実はこの項目が1番目ではあるが一番あっさり味でして、以下2番3番とくるにつれて説明が長くなる、という時点で非常によろしゅうございますし、お察しすることもあろうかと存じますですよ。

『2点目は、これまで述べた通り、生産性の向上が物価上昇を抑制するという点において、金融政策が物価に与える影響が複雑化してきており、今後も不確実性が高い状況にあると考えられます。』

ほいな。

『生産性の向上自体はわが国経済にとって悪いことではない点を踏まえると、物価上昇の遅れだけをことさら問題視して追加緩和に踏み切ることは、金融緩和の副作用とのバランスからみても望ましくないと考えています。』

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

でもってその副作用の説明が長いのよこれがまた。

『3点目の副作用ですが、低金利環境が長期化するもとで金融機関の収益力が低下し、金融仲介機能の低下に繋がる、という金融システム面での副作用は、今後の金融政策運営において、極めて重要な留意点となっています。』

>副作用は(略)極めて重要な留意点
>副作用は(略)極めて重要な留意点
>副作用は(略)極めて重要な留意点

『副作用が顕在化する経路は、大きく2つに分けられます。1つは、金融緩和により金利が低下すると、預金金利の引下げには限界があるため貸出利鞘が縮小し、リスクテイクに見合った収益を確保できず、継続的に自己資本比率に下押し圧力がかかる、「悪影響がじりじりと顕在化する経路」です。』

限界があるためにどころかそもそも下げ余地が無かったというのは今回のFSRで示されていましたなあっはっは(白目)。

『もう1つは、貸出利鞘が縮小、有価証券利回りも低下するもとで、金融機関が期間収益を確保すべく投融資においてリスクテイクを拡大し、景気後退局面になってそれらが不良資産化し、信用コスト等の急増を通じて自己資本比率が急低下する、「悪影響が急激に顕在化する経路」が考えられます。』

もちろんこの辺も展望レポートなどでも示されてはいるのですが、行間をある程度読まないと分からんみたいな感じになっているところを櫻井さんはきっちり金懇テキストとして示しているのが結構なお話。櫻井さん執行部の鉄砲玉説に乗って考えればお察しということでもあります。

『わが国では1990年代後半以降、企業部門の資金余剰傾向が定着し、無借金企業が増加しています(図表15)。こうした中での貸出の増加は、競争激化による貸出利鞘の低下と、借入企業のレバレッジ比率の高まりの双方を示唆しており、注視が必要です。』

仰る通り。

『現時点では、マクロで見た金融機関の自己資本比率の水準は規制対比で充分と考えられますが、自己資本比率が趨勢的に低下トレンドをたどっている点には留意が必要です。また、直近2019年4月の金融システムレポートをみると、全体としては1980年代後半のバブル期のような過熱感はみられないものの、様々な観点から金融システムの過熱・停滞を読み取るための指標である「金融活動指標」の一部に、「過熱」を示す指標も出てきています(図表16)。』

ここでFSRの話が出ているのもポイントが高くて、副作用についての説明がかなり確りと示されていて、話自体は色々なペーパーで日銀からちょこちょこ示されてはいるのですが、正面切って副作用はきわめて重要な留意点とぶっこんできているのがイイハナシダナーポイント(なんじゃそら)が高いというものです。

『日本銀行としては、金融システムレポートに加え、考査、オフサイト・モニタリングなど複数のチャネルを通じて、金融システムにおけるリスク状況を点検するとともに、必要に応じて、金融機関に対し、こうしたリスクへの対応を促していきたいと考えています。金融政策面でも、こうした金融面の不均衡が蓄積するリスクを含めた政策の効果と副作用を慎重に点検しつつ、適切に政策判断を行っていくことが重要と考えています。』

「政策の効果と副作用を慎重に点検しつつ」というのが本当に点検している感が出ますな。どうも黒ちゃんの説明だと棒読み感が強いのですけどね。



・という訳で今回の一番の見どころに入って参ります

次の小見出しが『5.わが国経済の変化と金融政策の運営について』なのですが、ここがもう麿キターってなもんでございましてですよ、

『以下では、やや長い目でみた日本経済の構造的な変化と、そのもとでの今後の金融政策のあり方について、改めて私なりの見方をお話しします。』

ということで『わが国経済の構造変化とその特徴点』という小見出しに入ります。

『2013年から約6年間に亘る金融緩和政策によって、緩やかな需要拡大が持続したことで、2017年頃からは供給サイドの変化も明確にみられるようになってきました。以下では、この6年間のわが国経済の構造変化について、(1)外需主導の拡大と企業の海外投資の拡大、(2)企業の国内設備投資への波及、(3)人手不足の深刻化を受けた労働参加率の上昇、(4)これらの構造変化による経済の頑健性改善、の4つの段階に分けてお話しします。』

さて、

『(1)まず、「外需主導の拡大と企業の海外投資の拡大」です。現在まで続く今回の拡大局面を振り返ると、当初は輸出の伸びが主導する外需主導の拡大でした。この間、GDPに占める輸出のウエイトも上昇しました(図表17)。この間、企業は海外経済の成長を取り込むべく、M&Aを含む対外直接投資による海外生産能力の増強を進めました。その結果、経常収支をみても、従来の貿易収支の寄与が縮小する一方で、対外直接投資や対外証券投資の果実が反映された所得収支の寄与が一貫して増大しています。』

はい。


『(2)次に、「企業の国内設備投資への波及」です。外需主導の拡大を受けて、企業の国内における設備投資が増加しました(図表18)。設備投資の意思決定においては、ミクロでみれば投資の将来キャッシュフローの現在価値、マクロでみれば先行きの経済成長率が重要な決定要素となります。』

さいですな。

『2016年以降、わが国でプラスの経済成長が続き、企業の先行きの経済見通しが好転したことで、企業は長らく見送っていた国内設備投資の実行に踏み切りました。こうした動きは、2016年を境に設備年齢が減少に転じていることからも窺われます。』

なるほど。

『設備投資の内容は、企業が直面する外部環境に応じて多岐に亘ります。すなわち、設備の老朽化を受けた更新投資、深刻化する労働力不足に対応する省力化投資、インバウンド需要の拡大に対応するサービス業の投資などです。』

『多様なインセンティブに基づいていること、さらには建設部門における人手不足の影響もあって一部の投資案件の実行が先送りされていたことなどを踏まえると、設備投資が今後短期間で腰折れする可能性は低いと思います。』

はい。

『さらに、ヒステリシスの影響から企業が長らく設備投資を見送っていたことで、投資実行のタイミングでより生産性の高い最新設備に更新することも想定されるため、今後、生産能力増強効果や省力化効果が着実に顕在化する可能性が高いといえます。また、非製造業の設備投資が増加していることも注目点です。』

なるほどなるほど。


『(3)第三に、「人手不足の深刻化を受けた労働参加率の上昇」です。外需の拡大が内需へ波及し設備投資に繋がる前向きな構造変化は、労働需要の増加も生み出しました。先ほど述べた通り、労働需給がひっ迫する中で、女性と高齢者を中心とする労働参加率が向上する形で就業率の上昇が続きました。2016年後半以降、現在まで労働投入ギャップの改善が続いており、労働需給のひっ迫した状況は現在も続いています(前掲図表3)。』

というののまとめが、

『(4)最後に、「これらの構造変化による経済の頑健性改善」です。』

外需の変動に対してレジリアントな構造になって来ている、という説明の部分が引用すっ飛ばしている辺り(国内経済の現状に関する説明部分)にあるのですけれども、まあこっちにこの話があるので飛ばしております。気になるかたは読んで味噌。

『わが国経済においてこれらの構造変化が継続してきたことで、わが国経済のショックに対する頑健性も改善しました。海外投資の拡大を受けて企業の生産拠点の多様化が進んだことや、GDPに占める非製造業のウエイトが上昇したことは、わが国経済が外需の変動に対する頑健性を高めていることを示唆しているといえます。』

『結果として、足もと海外経済に減速の動きがみられるもとでも、所得から支出への前向きな循環メカニズムが維持されている、と考えています。』

この「結果として」というのが中々宜しいのはこの次に出てきますけれども、

『今回の構造変化の特徴点は、「外需の高まり」や「人手不足の深刻化」という外部環境の変化が、緩和的な金融環境によるサポートと相まって、民間部門の設備投資を促す形で生じてきたことです。』

金融緩和効果であれもよくなったこれもよくなった、でも物価だけ上がらない、とか言っているどこぞのジンバブエ審議委員の金懇での我田引水シャンパンタワーの説明と比較して何というまともな説明なのでしょうか!!!!!

『きっかけは受動的であっても、結果として構造変化が進み始めたこと自体は、前向きな動きとして評価できるものです。』

この謙虚な説明素晴らしいですし、金融政策が何でもできるみたいな話をして無茶振りするアプローチではないこのスタンス、もうどう見ても麿ですよ麿。

『今後、政府の構造改革の動きが進展し、既にみられ始めている民間部門の構造変化との相乗効果により、さらなる生産性の向上や潜在成長率の上昇に繋がることを期待したいと思います。』

とまあこういう話をするなら長期化するのもシャーナイとは思うがマイナス金利とYCCの枠組みをもうちょっとマイルドなものにください(小声)。


・ということで最後の部分が中々の格調

『経済の変化を支える金融政策』という小見出しである。

『日本銀行の政策運営の理念は、物価の安定と金融システムの安定を通じて、わが国経済の健全な発展に資することです。この理念のもとで金融緩和政策を継続したことで、実体経済の持続的な成長が実現しています。現時点では、政策効果の多くは、「わが国経済の健全な発展」という形で顕在化していると思います。物価面についても、インフレ率はプラスを維持しており、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではない状態にまで改善してはいますが、「物価安定の目標」の達成は遅れています。これは、既に述べた通り、物価変動メカニズムが複雑化してきたことにより、金融政策と物価の関係にも変化が出てきていることが原因と考えられます。』

微妙に言い方に金融政策の効果風味があるのはまあ金融政策で物価目標達成じゃあとやっていた置物リフレ理論を今の日銀も引っ張っているのでこうなってしまいますが、この先の格調が高いんですよ。

『長期に亘る金融緩和政策の継続が、企業の前向きな行動変化に繋がったことで、結果的に「物価安定の目標」の実現が遅れていることは、重要な構造変化といえます。』

これに文章次第でこの部分がただの開き直りにもなり得るのですが、以下の部分を拝読すると普通に格調高い仕上がりになっておりまする。

『過去6年間で生じた経済の構造変化により、「物価安定の目標」と金融緩和政策との関係も変質しつつあります。』

ほう。

『新たに判明した「生産性向上による物価抑制」、という供給サイドの要因を考慮すれば、「物価安定の目標」に達しないことだけを問題視し、追加緩和によって無理して目標を達成しようとすることは、金融システム面での不均衡を高めるリスクもあることから、適切ではないと考えられます。』

でもってこれも「単なる追加緩和しないための方便」ではない、というのがこの続きにある訳でして・・・・・・・・・

『金融政策自体に経済構造を変化させる直接的な効果があるわけではありませんが、緩和的な金融環境を醸成することで、わが国経済の構造変化を側面から支えることは可能です。海外経済の動向や金融システム面での副作用の状況を慎重に点検しつつ、粘り強く金融緩和政策を続けることで、緩やかな成長とプラスの需給ギャップの双方を維持し、所得から支出への前向きな循環メカニズムが実現するもとでの「物価安定の目標」を達成することが、わが国の金融経済にとって重要です。』

(;∀;)イイハナシダナー

ということで、金融政策であれもこれも出来ましたみたいな話じゃないのってこれ普通に麿じゃんというお話ではございますな、先日どこぞの金懇テキストでアレになった心が洗われましたですよ、はい。





2019/05/30

お題「円債も動き出しましたなあ(ただの備忘メモ)/金研コンファランスがどう見ても降参モードな件について」

アイヤー!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190530/k10011934331000.html
ダウ平均株価200ドル超値下がり 世界的な株安の様相
2019年5月30日 5時34分

株が下がる→トランプが大人しくなる→株が戻る→トランプが・・・・・・

こうですか、わかりません(><)


〇ということで金利も下がったので備忘メモ

円債ちゃん暫く上がらん下がらんモードでしたがここに来て遂に動意キタコレという事で。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2351EL
2019年5月29日 / 15:24
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、長期金利は節目の-0.100%に低下

『<15:09>  国債先物は続伸で引け、長期金利は節目の-0.100%に低下

国債先物中心限月6月限は前営業日比25銭高の153円14銭と続伸で取引を終えた。リスクオフムードの流れを背景に朝方から堅調に推移。日経平均株価が軟調に推移したほか、ドル/円が円高に振れたことも円債の支援材料となり、引けにかけて上げ幅を拡大。そのまま高値圏で取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2.5bp低いマイナス0.100%と、3月28日以来2か月ぶりの水準まで低下した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで連休明け以降延々と152円76銭とか77銭に吸い寄せられていた債券先物ちゃんもここに来て上昇の巻になっていますが、まあ海外金利の方が盛大に下がる中でいつまでも動かんというのも何ですのでこうなるの巻ですけれども、横綱が冴えなくて平幕力士が優勝した本場所が終わった辺りから動意が出てきたように見えるのがオソロシス。

でまあいきなり完全与太話になってしまいますが、この手のってギャグネタではあるのですが、そうは申しましても2013年のQQE導入の時に株高進行(円安はその前から進行していたのでそうでもなかったけど)した結果、導入した翌日の前場に高値を付けた債券市場はこれマジでいい感じになるのかも、ということで(それだけが理由ではないけど)金利がホイホイ上昇したのですが、ちょうど金利が上がって一旦止まったと思った頃に、GUさんだったと思うのですが(過去ログ見ればわかるのですがメンドイので確認しない)、きゃりーぱみゅぱみゅさんが何かになりきるTVCMシリーズってのが丁度投下されまして、その(確か)第一弾がきゃりーさんがマーライオンに扮する、というのがあった訳ですよ。でもってそれおっぱじまったら債券市場のマーライオンが起きちゃいまして、きゃりーさんのマーライオンシリーズのCM放映が終わった辺りから戻りだすとかいう大変に味わいのある動きがあったという事案もありまして、世の中偶然というのは恐ろしい、というのもあるんですな、と何の役にも立たない昔の与太話をば(^^)。

『現物市場では、超長期ゾーンが終日しっかりと推移。「22日の20年債入札や28日の40年債入札で需給の良さが確認されたほか、独10年債利回りや米10年債利回りが節目の水準を抜けたこともあり、高値警戒感が薄れたようだ」(国内証券)という。また「株式から債券への資金シフトが、予想外に速い金利低下を促している」(外資系証券ストラテジスト)との指摘もあった。』(上記URL先より)

長い所の入札で云々というのはまあ分かりますが他はナンジャソラ的なアレですけれども、

『新発20年債は前日比2.0bp低い0.300%と、16年8月30日以来約2年9か月ぶりの水準まで低下。新発30年債利回りは同2.5bp低い0.465%と、16年11月以来約2年半ぶりの低水準まで低下した。新発40年債は出合いなし。』(上記URL先より)

ということでアイヤーという感じではあるのですが、これは輪番減額大チャンスですよ明日は長期と超長期ですね楽しみですなー(棒読み)とは思いますが、海外がこの調子の中ですと輪番減額しても金利上がるような雰囲気にならなさそうだし(個人の感想です)、最近は輪番減らしても別に為替が反応しない(というか米国金利が盛大に下がる中で円債もそうですけど為替の方が円高ヒャッハーにならないのがイイハナシダナーといえばイイハナシダナーなのですが、それはそれでなんか居心地は悪いんですよねえ、個人の感想ですってやつですけど)という地合いになっていると思われますので、まあ輪番減らし放題(ただしオーバーシュート型コミットメントがあるのでもうそんなに減らせないはず)ではありますがさてどうするのやら。輪番減額の余地が無い状態にしちゃうと打ち止めで却って金利下がりやすくなったりするかも知れんしよー分からんですの。

ということで単に後日チャートを見て何でしたっけという時の俺様備忘メモのためにネタにしたって感じで誠に恐縮至極。


〇金融研究所コンファランス関連が色々と降参モードな件について

こんなんでてまして。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190529a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190529a.pdf
【挨拶】
日本銀行金融研究所主催2019年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年5月29日

ということなのですがそのページのPDFへのリンクの下にある、『コンファランス・プログラム<金融研究所ウェブサイトにリンク>』というのをポチっとなとするとこんなページが登場します。

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/conf_index_j.html
コンファランス


・金研コンファランスでリバーサルレートだの金融機関の安定性だのというお題がちりばめられてる件について

でもって今回行われているコンファランスが

http://www.imes.boj.or.jp/english/publication/conf/2019confsppa.html
2019 BOJ-IMES Conference
Central Bank Design under a Continued Low Inflation and Interest Rate Environment
May 29 - 30, 2019
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan

となっていまして、「低インフレと低金利下における金融政策の構築」とでもいうんでしょうかねと思いますが、上記URL先にあるのが式次第でして、そこの1日目の午後のセッションを見ますと・・・・・・

『14:30 Session 2: The Reversal Interest Rate

Chairperson: Daniel G. Sullivan, Federal Reserve Bank of Chicago
Paper Presenter: Markus K. Brunnermeier, Princeton University
Discussant: Meredith Beechey, Sveriges Riksbank 』

>The Reversal Interest Rate
>The Reversal Interest Rate
>The Reversal Interest Rate

リバーサルレートキターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

とか2日目の所でも、

『9:00 Session 4: Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability

Chairperson: James C. MacGee, Bank of Canada
Paper Presenter: Nao Sudo, Bank of Japan
Discussant: Carlos Thomas, Banco de Espana』

>Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability
>Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability
>Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability

低金利によるバンキングの安定性というお題とかこれはもう日本が主要国に先駆けて身を切って実践しておりますが何かとしか申し上げようがないお題キタコレでありますな。

・・・・・・・・ということでですよ、まあ「期待に直接働きかけて短期間でフィリップスカーブをシフトアップさせて2%物価目標達成じゃあ」と言っていた時代にこのコンファランスのお題を見たら何を思うかなあなどと思うようなお題な訳でして、もちろん「金融研究所のコンファランスはあくまでも学術的な面からの話しであって現在の金融政策運営に直接関係する話とは限りません(キリッ)」ってことなんでしょうけれども、これは「物価目標2%は達成しないけどそうは言ってもまあいい感じで推移していますよね」となった辺り(または国の方のトップが変わって、あるいは心変わりして「無理くり2%を目指すのではなくて、もうちょっと皆に優しいアプローチがあるじゃろ」となった辺り)でなんとかこの大風呂敷を畳むための理論的背景となりうるお話がぶっこまれているというのが実に素敵ではあります。

まあ今今の状況だと撤収とか無理無理無理という所ではありますし、海外がこの調子だと寧ろ下振れリスク拡大じゃろ追加緩和(の手段はもうないに等しいのだがそれはさておき)じゃろという勢いなので何ともかんともですが、そうは言いましてもこうやって今の大風呂敷を畳むための手段を模索するってのは悪くないお話ですなあ、とは思いましたですよ。



・金研コンファランスの総裁挨拶もまた色々と降参モードになっている次第で

てな訳で再掲しますが、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190529a.htm/
【挨拶】
日本銀行金融研究所主催2019年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年5月29日

から以下引用します。まずは小見出し『2.低インフレ・低金利環境のもとでの政策課題』から。

『具体的には、今回のコンファランスで焦点をあてる4つの論点についてお話しします。最初が金融政策運営の枠組み、次が金融政策手段、3つめが物価安定と金融安定の関係、そして最後が新興国・途上国へのスピルオーバーについてです。』

ということで小見出し『(1)金融政策運営の枠組み』になります。

『金融政策運営の枠組みについて、教科書的なニューケインジアン・モデルでは、長期のインフレ予想がインフレ目標値にアンカーされていることを前提に、自然利子率をベンチマークとして参照しつつ政策金利を機械的に操作するルールが提示されています。』

テイラールールとかそういう奴な(色々なのがありますよね)。

『この場合、中央銀行にとって景気を刺激するために必要なのは、実質金利を自然利子率よりも低く設定することです。』

さいですな。

『もっとも、こうした伝統的な金融政策の枠組みは、2つの大きな課題に直面しています。』

ほう。

『1つは、実際の金融政策運営において、自然利子率をどの程度ベンチマークとして活用すべきかという課題です。この点は、自然利子率の計測の難しさとも関連しています1。もちろん、複数の手法による推計値の共通トレンド部分を参照するなどして計測上の問題を小さくすることは可能です。実際、さまざまな推計で自然利子率は非常に低い水準にあり、その趨勢的な低下に対する懸念が広がっているのはご存知の通りです。』

はい。

『もう1つは、「失われたインフレ(missing inflation)」のもとで長期インフレ予想が安定的であると考えてよいかという問題です。』

キタコレ。

『多くの先進国では、経済活動がはっきりと改善するなかにあっても、非常に緩慢な物価の動きが観察されています。過去の実績がインフレ目標に対する信認を維持するうえで重要であることにかんがみると、この事実は、そうした信認についての懸念を惹起するものと言えます。』

でもってジャパンはというと・・・・・・・・

『実際日本は、目標を下回るインフレ率を引き上げ、長期インフレ予想をリアンカリングすることの難しさに直面してきました。』

リアンカリングって昔から言ってるけど、「リ」アンカーということはかつてはアンカーされていたという意味になる訳ですけれども、そもそもジャパンの長期インフレ予想が2%でアンカーされていた時代があったのかという点には物凄いツッコミの余地があると思うのですけど。

という話は兎も角として、「世界標準の置物マネタリーベース直線一気理論で日銀当座預金残高を〇〇兆円にすれば期待インフレは2%に上昇する、それをしない白川日銀は無知蒙昧で無能」などとしながらQQEをぶっこんできた置物師匠の所感をお伺いしたいし、相変わらずのうのうと存在している置物一派の政策委員の皆様におかれましても所感をお伺いしたいですなこの部分に関しては。

『こうした経験は、インフレ予想をしっかりとアンカーし続けることの重要性を示しています。同時に、「失われたインフレ」がグローバル化やデジタル化のような構造要因に起因している場合、中央銀行が、フレクシブル・インフレーション・ターゲティングの枠組みのもとで、経済・金融環境の安定を確保しつつインフレ予想をどのようにコントロールしていくことが最適かという点についても、今後とも考えていく必要があります。』

まあ中央銀行としてはこういう風に言うしかないのですが、そもそも論として構造要因に起因して失われたインフレが発生するという状況であって、しかも自然利子率が低下している(というかそのような失われたインフレが自然利子率の低下をもたらすんですが)という状況下において、インフレ予想維持のために中央銀行の金融政策だけで取り組むのはどうなのか、むしろ中央銀行は経済の振幅に対する安定化と需給ギャップの安定的なプラス推移に注力して、インフレに関して政策の割り当てを全部中銀に振るのではないという政策のデザインっていうのはどうよ的なお話ってのもあるようには思えます(というかその話を振り切って財政方向に寄せたのがMMTだと思うのですけれどもそんなにMMT関連には詳しくないのですいません)。

まあいずれにせよ、金融政策で2%は達成するだの、行かなかった場合には他の理由を出さないだのという鼻息だった(黒ちゃんはそこまで鼻息荒くは無かったと思いますが、今となっては寧ろ黒ちゃんの方が金融政策で行くんだぜモードで引くに引けなくなっているような感じに見受けられる)のから見れば隔世の感がありますの。


・世界標準の金融政策とは何だったのかと小一時間問い詰めたい

次の小見出しが『(2)金融政策手段』である。

『平時における中央銀行は、名目短期金利の操作によって政策目標の実現を目指します。』

はい。

『もっとも、グローバル金融危機以降、非伝統的金融政策手段と呼ばれる代替的な政策手段の活用を迫られることになりました。具体的には、名目金利が実効下限制約(effective lower bound)にあるもとでのフォワード・ガイダンスの活用や中央銀行のバランスシートの規模・構成の操作などです。』

さよですな。

『こうした新しい政策手段の活用が、実効下限制約に直面するもとで大きな負のショックに対応する際に有効であることは、近年の経験が示すところです。』

ふーん。本当にそうなのかは(無効では無かったとは思うけど)議論の余地はあると思うけど(単に流動性対策としての意義だけだったのかもしれず、実は財政および財政チックな施策(リスク性資産の買入とか)が効いていたという考えもあると思うの)。

『もっとも同時に、非伝統的な政策手段に対するわれわれの理解は、なお十全とは言えないことも事実です。』

>非伝統的な政策手段に対するわれわれの理解は、なお十全とは言えないことも事実です
>非伝統的な政策手段に対するわれわれの理解は、なお十全とは言えないことも事実です
>非伝統的な政策手段に対するわれわれの理解は、なお十全とは言えないことも事実です

イイハナシダナーという所ですが、国会での人事承認前の参考人質疑、就任時の記者会見、そしてQQE導入当初に鼻息荒く説明していたものは何だったのかと小一時間問い詰めたいし、だったら何であの時に「この政策で2%達成」って言えたのか(何とか蛇に怖じずでした、と言ってしまえばそれまでですが)という話ですわこれは。

『これまで多くの非伝統的な政策手段を発明してきましたが、その有効性や波及メカニズムは金融情勢や経済構造に依存します。』

世界標準の(以下同文)。

『また、非伝統的な政策手段を今後どのように活用するのかという点も重要であり、特に、こうした政策手段が平時における標準的な政策手段となり得るかどうかは興味深い論点の1つと言えます。』

非常に興味深い云々は良いのだが、とりあえずおまいらは麿の所に行って土下座して謝っている姿を実況配信してから言え(まあ麿様はそのような品の無い事は求めないと思うので迷惑でしょうけど落とし前を付けないでなあなあで済ますのはイクナイと思う(政治的に無理なのは分かるけどさ))と小一時間。


・リバーサルレートキタコレ!

という訳で次の小見出しが『(3)物価安定と金融安定の関係』である。

『物価安定と金融安定の関係については、低金利環境のもとで2つの論点が広く認識されるようになっています。』

ほうほう。

『1つは、低金利環境の長期化が、金融機関のリスクテイク姿勢や金融安定に影響を与えるのかという点です。』

『これについては主に2つのリスクが指摘されています。すなわち、過度なリスクテイクが助長されるとする見解と、金利が「リバーサル・レート」と呼ばれる一定の水準を下回るとリスクテイクが抑制されるとする見解です。』

キタキタ!

『この論点に関する実証分析は増えてきてはいますが、現時点ではこれらのリスクの特性やその確率分布は必ずしも明らかになっていません2。』

でまあ今回のコンファランスでそのお題の話がある(というか昨日のセッションなのであった、ですけど)訳ですな。


『もう1つは、金融安定に関するリスクについて、どのような政策手段で対応すべきかという点です。』

『この点に関しては2つの考え方が提起されています。まず、ティンバーゲン・ルールに沿い、政策目標に対して政策手段を使い分けるという考え方があります。具体的には、物価安定には金融政策手段を、金融安定にはマクロプルーデンス政策手段をそれぞれ割り当てるというものです3。』

政策目的に応じて一対一対応で政策を割り当てるという話。

『他方、金融政策がさまざまな金融活動に影響を及ぼすという前提にたち、物価安定だけではなく金融安定にも配慮しつつ金融政策を遂行する“lean against the wind”という考え方もあります4。』

lean against the windと来るとモロにBISビューになります。

『ただし、前者の立場を含む多くの見方において、マクロプルーデンス政策手段は万能ではないと認識されていることや、後者においても、金融環境に起因する循環を逐一抑制するというよりは、制御不可能なまでの金融の不安定化を避けることがその本質であることをかんがみると、2つの考え方は全く相いれないものではないと言えそうです。』

ここで並べられたのは両方とも結構突き抜けている話なので、たぶんこの間でどのようにバランスを取っていくか、という「総合判断」の世界であって、そういう点ではルールベースの金融政策みたいなのってのはやはりあまりうまくなくて、アート性も必要なんじゃないかな、とは(アタクシが理論詳しくなくて現場職人上がりだからその辺りにバイアスが無茶苦茶掛かっているのではありますが)思ったりしますが、まあ難しい話ですよね、とは思います。

#最後の小見出し『(4)新興国・途上国経済へのスピルオーバー』はパスします






2019/05/29

お題「市場的にインプリケーションは多分ほぼないけど味わいは感じた月曜の黒田講演」

こんだけ散々引っ張ったらハードブリクジットになっても英国はともかくとして他の皆さん的には「ああそうですか」で済むのではなかろうかとか思うのは甘いんですかねえ。
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2343RP?il=0
2019年5月29日 / 05:14 /
英、合意なきEU離脱受け入れる必要=次期首相候補マクベイ氏


〇G20でグローバルインバランスの話をするのか・・・・・・・・・・・・

すいません月曜の総裁講演ネタですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190527a.pdf
グローバル経済の課題と対応  
T20サミットにおける挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年5月27日

当然ながら最近はフォワードガイダンス(のようなもの)が効いているので、というよりはむしろ米国にしろ欧州にしろウゴカンチ会長ですから正常化という話にはなり得ない上に、利下げするかというと利下げしたらただの爆発炎上コースなので何もできませんなあ、というコンセンサスが債券市場ちゃんにはそれなりに強いと思われる(個人の感想です)ので、多少何を言っても動かないという悲しい状態になっております(動くのは需給絡みの時)のでこちらの講演も見事にノーケアーだったと思いますが。

・どうでもいいけどT20ってのがあるんですか

最初の挨拶部分から。

『本日は、T20 サミットでお話しする機会をいただき、誠に光栄に存じます。本年は、日本が初めて議長国として G20 を開催することになっています。福岡で開催される財務大臣・中央銀行総裁会議も、いよいよ目前に迫ってきました。私は、麻生大臣とともに共同議長を務めます。』

よしこの際G20が大々的に成功したのを花道にいや何でもないです。

『G20 では、グローバルな金融経済面での課題について、様々な角度から議論をすることになっています。世界のシンクタンクが集うこの T20 におかれても、G20 における議論と並行するかたちで、グローバル経済の課題について多様な議論を行い、政策提言をされると伺っております。』

へーそうなんですか。

『シンクタンクの持つ専門性や独自の視点を活かした政策提言は、公的セクターの政策運営にとっても非常に有益なものになります。』

まるでそんな気が(爆発音の為以下聴取不能)。

『官民が切磋琢磨し、建設的な議論を通じてより良い政策を策定・実施していくことが重要だと思います。本日は、私が考えるグローバル経済の課題と対応についてお話します。本日のお話が T20 サミットにおける議論に資するものとなれば幸いです。』

とまあそんな話なんですが、お題が・・・・・・・・・

『以下では、まず、最近のグローバル経済の情勢について述べた後、中長期的な課題として、グローバル・インバランスと国際金融アーキテクチャーについてお話ししたいと思います。』

ということですが、グローバルインバランスの話をお前がするのかお前が、と思いながらちょっとだけ鑑賞の巻でありまする。


・最大のリスク要因扱いされているので海外経済の先行き見通し確認するのだが楽観してねえかこれ

次の小見出しが『2.最近のグローバル経済の情勢 』でありますが、何せ現状ではフォワードガイダンスの方でも「海外が不透明だから今の金利を2020年春まで維持するもんね」という理屈になっているのですから海外のアセスメントは一応見ておく方が吉、と言ってもまあガイダンス自体が物凄く意味があるのかというとアレな面があるという認識もこれありというところなのでそこまで注目されんというのもあるのでしょうな。

『それでは、先行きについてはどうみればよいのでしょうか。今年4月に公表された国際通貨基金(IMF)の最新の世界経済見通しでは、グローバル経済が本年後半にかけて再び成長率を高めるという見通しになっています。』

だいたい見通しのベースになるのはIMFのを使うというのは日本だけじゃなくて海外も含め中央銀行の仕様になっているのでこれはこれで平常運転ですが、

『その理由として、第1に、中国などにおける景気刺激策の効果が徐々に現れてくることが挙げられます。昨年後半以降、中国では、財政・金融面で各種の景気刺激策が決定され、あるいは実施に移されつつあります。また、アジア新興国においても財政支出の増加が見込まれています。さらに、新興国全体としてみますと、米国 FRB の金融政策正常化に対する姿勢が慎重化する中、昨年見られたような新興国からの資本フローの流出、それに伴う通貨安やインフレ率の上昇に対する懸念が後退した結果、各国における金融政策の発動余地が拡がっています。』

ふーん。。

『第2に、IT 関連財の調整が進捗するとみられることです。現時点では、電子部品等の生産について、日本を含むアジア全体が調整局面にありますが、これも徐々に復調していくと考えられます。』

ふーん。

『ただし、こうした先行きの見通しについては不確実性が高いうえ、下振れリスクが大きいとみられます。ここでは、下振れリスクを4つ指摘したいと思います。』

さて、

『第1に、通商問題の影響です。』

キタコレ。

『いくつかの国の間では協議が進展しているようにみられますが、なお解決すべき課題は少なくありません。』

いやそんなにのんびりしたことを言ってる場合ではないんじゃネーノ。大体からしてIMFの出した見通しって説明にあるように「今年4月」であって、あのタイミングって何となく米中交渉も落としどころにまとまるような雰囲気だったし、ブリクジットに関しても妥協に向けた努力が保守党労働党間で行われていた時期な訳ですからして、現状ってIMFが見通し出した時期から見たら通商問題の話って相当に悪化していて、まさに下振れリスク顕在化の恐れという感じだと思うのですが・・・・・・・・・・・・・・・

『関税引き上げの対象品目が拡大することに伴って貿易コストが上昇するほか、製造拠点やグローバル・サプライ・チェーンの見直しを余儀なくされることなどによって企業活動が抑制されるリスクは、引き続き高いと言わざるを得ません。』

寧ろ貿易摩擦だったものが通信分野の覇権争いモードになっているんですが随分とのんびりした説明になっているように見えるのが何ともアレ。

『第2に、中国などにおける景気刺激策の効果です。』

『中国では、景気を刺激するため、インフラ投資の積み増しに加え、各種の減税を実施していますが、例えば減税が家計や企業の支出に及ぼす効果は、マインドや先行き見通しによって左右される面もあります。通商問題などを巡り不確実性が高い状況も踏まえると、景気刺激策の効果については幅を持ってみておく必要があると思います。』

なるほど。

『第3に、政治的なリスクがあります。Brexit や欧州の政治情勢の不透明感に加え、所得格差の拡大を背景とした政治の不安定化は、企業・家計のマインドや金融資本市場の変動などを通じて幅広く波及する可能性があります。』

この辺はよーわからん。



・官民における債務の積み上がりが脆弱性を招くとな

というような3つのポイントに関しては(貿易交渉問題の認識が甘い気がするのはさておきまして)まあだいたいアリエールな話なのですが、この次に出てくるポイントは普段こんな話が出てこないのでおーという感じはしました、というネタになる。

『第4に、官民における債務の積み上がりという脆弱性が挙げられます。』

ほほう。

『公的セクターの債務の増加は、リーマンショック後の財政支出の拡大、あるいは増大する社会保障支出の結果であり、経済に対してプラスの効果を発揮してきたことは間違いありません。もっとも、先行き、長い目で見て財政の持続可能性を確保していくことは、経済全体の安定を維持するうえで、重要な前提条件となります。』

突如何を言い出すのかという感じですが、この部分は消費増税先送り観測に対して元財務省の黒田さんらしくぶっこんできたという事なんでしょうかね。

『また、民間債務の増加についても、企業の設備投資や家計の住宅投資という前向きな投資の結果ではありますが、これらも、金利や金融市場の変動に対する家計や企業の脆弱性を高めている側面もある点には注意する必要があります。』

というのもしらっとぶっこんできたという感じです。確かに先般ネタにした5月FOMC議事要旨の中でもファイナンシャルスタビリティとかの話題の中で、企業の財務レバレッジが高まってきているのでそれが経済に下方ショックが起きた時の脆弱性に繋がる、というような指摘があったので、最近の中央銀行ではこの論点で話をするのが流行なのかよとか思ってしまいます。

でもってこの話がこの先のグローバルインバランスにもつながるネタになっているのですけれども、さはさりながら一方で日銀ちゃんって貸出支援オペみたいな形で銀行融資を推進している訳ですし、さらに深刻だと思うのは金融機関の利息収支が徐々に厳しくなる(ここ数年で過去の高金利という程でもないけれども今となっては高金利の国債が続々償還になっていて、どこでもポートの平均利回りが下がる要素になっているはずですので)という中において、国内は成長期待の起きにくい中で融資も中々伸びないし、どこぞの長官の称揚していた新しいビジネスモデルも爆発炎上するし、結局ポートで何とかせねばならんじゃろ、という中において海外も金利が下がるとなるとそれはもうクレジットですよクレジット、という話になりやすいという状況を見事に作っている訳ですな(海外金利に関しては日銀のせいではないけど)。

とまあそんなことになりますと、実は日本の金融緩和が本邦金融機関におけるサーチフォーイールドの動きを促す結果、緩和効果が海外のクレジット方面に出ていくという現象も起き得るという話でありまして、それって金融緩和効果の海外漏出というのもそうなんですけれども、日本がクレジット市場のリスクプレミアム縮小の輸出をしているという現象が起きるとかそんな話になりかねない訳ですな。

つーことでですよ、この第4の視点というのが何を考えてぶっこまれているのかよくわからん(というかこれはお題のグローバルインバランスのマクラみたいなもんだと思うけど)のですが、いやいやいやそれ中央銀行も思いっきり拡大に加担しているんですがそれを「下振れリスク」とか言われてしまいますとリンダ困っちゃうんですけど何の風の吹き回しなんだか。


・お前が言うなモード、またはお題を決めた時と状況が変わってションボリーヌモードのどちらでしょ

『3.グローバル・インバランス 』という小見出しに続きます(さっきの部分の最後ちょっと話がありますが飛ばしてます)。

『以下では、G20 で議論してきた中長期的な課題の中から、グローバル・インバランスおよび国際金融アーキテクチャーの2つについてお話ししたいと思います。』

『まずはグローバル・インバランスです。』

てなことで始まり始まり。

『長年、グローバル・インバランスは、G20 財務大臣・中央銀行総裁会議の議題として取り上げられてきました。もっとも、近年は、グローバル・インバランスそのものを議論する機会が少なくなっていました。』

そらお前らが緩和しまくってインバランスの拡大に寄与しとるんだから仕方ないわ。

『そこで、今年の G20 では、改めてこの問題を取り上げることとし、グローバル・インバランスの傾向やその背景をしっかりと分析したうえで、適切な政策対応について議論をしていきます。』

というところで「なるほど」と思う訳でして、これはてめえらが緩和して金融不均衡の種をばらまきまくっておったのにお前が言うなという話ではあるのですが、よくよく考えてみますとこのG20で何のお題を取り上げるのかなどという話を昨日の今日に決める訳にも参りませんで、では前の時点で世の中どうなっていましたか、と言いますと、例えば昨年の夏ごろであればFEDちゃんの正常化路線が遂には「おうお前らロンガーランのドットプロットの所で正常化利上げを打ち止めするとは限らんぞ若干上げるかも知れんから覚悟しとけや」とパウエル大先生が威勢の良い話をするというような状態(なおG20でのお題がいつ決まっているのかは知らんので1年前というのは単にその程度は準備期間掛かってもおかしくないよねと思ったからですので個人の妄想ではあります)だったりした訳ですな。

となりますと、実はこのG20でのグローバルインバランスのお題ってのは順調にFEDが金融正常化を行い、ECBも緩和の程度を抑制していますね、という世界でグローバルインバランスをどうのこうのみたいな話をおっぱじめ、金融政策や財政政策を緩和モードというか高圧経済モードというかから脱却していく「正常化モード」用のお題だったんじゃネーノとか思うと、これはこれで物悲しい味わいもあるなあとか思うのですが(個人の妄想成分がかなり入っていますので念のため)、実際はどうなんでしょうかねえ。

『リーマンショック前のグローバル経済の大きな構図を振り返りますと、米国で資産価格の高騰を背景とした過剰な消費や投資が行われ、そうした国内経済の過熱のミラーイメージとして、経常収支の赤字が拡大しました。一方で、新興国では、過去に国際収支危機に陥ったトラウマ等から、投資に対して慎重になり、結果として経常収支の黒字が累積していました。その後、米国では、資産価格が下落に転じるとともに内需が縮小することによって貯蓄・投資バランスが改善し、併せて、経常赤字の拡大ペースが鈍化しました。他方、新興国では、グローバル金融危機をきっかけとした世界経済の減速によって貿易収支が悪化し、経常収支の黒字拡大傾向に歯止めがかかりました。』

ほほう。

『グローバル・インバランスについては、赤字は悪く、黒字が良いとは一概に言えません。標準的なマクロ経済学が教えるように、経常収支には国内における貯蓄と投資の差額が現れます。そのため、それが黒字であるか赤字であるかということをもって良し悪しを判断することは適当とは言えません。』

ほうほう。

『例えば、成長機会が豊富な新興国にとっては、他国から資金を借り入れることによって投資を行い、経済成長を図ることが最適な行動となります。逆に、成長機会が乏しい国にとっては、海外に資金を投資することによってより高い収益を得ることが望ましいと言えます。この場合、成長機会の豊富な国は投資超過になり、その結果、経常収支は赤字となります。また、成長機会の乏しい国は貯蓄超過になり、結果として経常収支は黒字となります。このように、各国の状況によって、貯蓄・投資バランスや経常収支の状況は異なり得ます。問題は、実際の経常収支や貯蓄・投資バランスが、経済のファンダメンタルズを反映した最適な状態からかい離しているのかどうか、また、そうしたかい離が、金融や経済の不均衡ないしは望ましくない経済政策によってもたらされているかどうか、という点です。』

うーんこのという感じでして、これは普通に「正常化モードに正当性を与える理屈」ですなあと思う訳でして、この話を今回のG20で行うというのは割と悲しみが止まらない(個人の感想です)。

『持続可能でバランスのとれた経済成長を実現するためには、ファンダメンタルズに基づかない過度な経常収支の不均衡を放置しておくことは問題です。こうした問題を、二国間の貿易上の措置で解決することは、問題の解消には繋がりません。経常収支の不均衡やそれを反映したグローバル・インバランスの問題は、あくまで多国間におけるマクロ経済の貯蓄・投資バランスの問題です。』

でもってここで米中貿易戦争に対するはいはいどうどうみたいなのが入るのも中々ポイントの高い指摘でして、目先の(どころかもうちょっと先も含めた)金融政策運営にはまるでご縁の無い話が続いてはおりますが、この仰せ御尤もな話と、今やっているマイナス金利とかいうアレな政策のアレっぷりとの断層はどこから生じるのでしょうか、などと考えると味わいがあります。

『今年の G20 財務大臣・中央銀行総裁会議では、グローバル・インバランスについてしっかり議論をしていきます。とりわけ、高齢化など構造的な要因の重要性を認識したうえで、インバランスが過剰かどうかを判断していくことが大切である、という認識を共有していきたいと思います。 』


・国際金融アーキテクチャーとかいうお話ではお前が言うなの香りが漂うお話が

次の小見出しが『4.国際金融アーキテクチャー 』となっていまして、

『グローバル・インバランスとならんで長年 G20 財務大臣・中央銀行総裁会議で議論してきたのが、国際金融アーキテクチャーです。1990 年代後半のアジア危機、リーマンショック後の世界的な金融危機や欧州債務危機など、国際的な金融経済危機が発生しますと、グローバル経済に多大な悪影響が及びます。』

さよですな。

『こうした危機を未然に防ぐためには、各国が適切な経済政策を実施し、経済や金融面での不均衡を蓄積させないことが重要です。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・・

『先に述べたいずれの危機においても、危機発生前には土地や株式などの資産価格が高騰する「資産バブル」や金融機関の過剰融資が、相乗的に経済を過熱させ、経常赤字の深刻化や対外債務の累増といった危機の芽となっていました。』

いやあの今の日銀ちゃんの政策って金融機関のサーチフォーイールド行動を思いっきり推進する(か座して死を待つのかの二択を強いる)政策になっているように見える、というアタクシの目ん玉がおかしいと言ってしまえばそれまでですが、まあそのような目ん玉から見ますとお前が言うなお前がという話になる。

『その意味では、危機の芽を早期に摘むという適切な経済政策運営が、「危機回避(crisis prevention)」にとっての第一の防衛線となります。その際には早期に危機を察知することが必要となるため、金融経済情勢のサーベイランスが重要になります。そうした観点から、先に述べたように、G20 では、毎回、グローバル経済や金融情勢について丹念に点検を行っています。』

自分の国の金融情勢の丹念な点検を行ってからその話をして頂けると大変にありがたいのですけれども。

『もっとも、そうした過熱や不均衡について、事前にすべてを察知して対応することが必ずしもできないことは、過去の事例を見ても明らかです。したがって、実際に危機が発生してしまった場合に備え、その波及を防ぐ「危機管理(crisis management)」のための政策も準備しておく必要があります。その危機管理の中心にあるのが IMF による融資です。一国の国際収支危機に対して短期的な融資を行うことは、IMF の重要な役割の一つです。貿易取引や金融取引がグローバル規模で拡大する中で、危機発生時における IMF の融資の役割は重要度を増しています。』

ということで以下危機時における国際的な流動性ファシリティの話をしているのですがそこはスルーしてこの小見出しの結論部分に飛びますと、

『サーベイランスによって認識された不均衡に対しては、経済政策面での各国の対応やその国際協調も引き続き大きな課題です。この点、金融政策や財政政策に加えて、金融不均衡に対処するために、マクロプルーデンス政策を活用する国が増えています。カウンター・シクリカル・バッファーやストレステストの活用、各種の貸出規制などのマクロプルーデンス政策は、各国における経験を踏まえ、相互に学んでいく余地が大きい分野であると考えられます。今後、国際金融危機への対応面では、各主体が提供するファシリティーのあり方について、議論を深めていく必要があると考えています。』

という結論になっていて、まあ黒田さんってこの話の展開から行くと所謂FEDビューBISビュー問題で言えばFEDビューに寄っているなあという印象を受ける(個人の感想です)ので、ジャパンの金融システム安定がどうのこうのという話になった場合もそらFEDビューちっくに来るんでしょうから、副作用対応でどうのこうのというのは中々厳しいというか期待しない方が良いというスタンスなんでしょうな、と思うのでありました。

ということで目先の政策インプリケーションは無いのですがうっかり長々と引用大会になってしまいました。







2019/05/28

お題「FEDバランスシートの長期的な方向性については百家争鳴群雄割拠状態ですな」

日経本紙は駅売りでしか買わない、となると月曜ってまず買わないんですけれども、昨日の朝刊では日経さんが渾身のギャグを投下していたそうで朝一から見事なネタだったのをパスったのは惜しいことですな。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45291260W9A520C1PE8000/
市場を汚した野村の情報漏洩
2019/5/27付日本経済新聞 朝刊

・・・・・・・これはまた盛大なお前が言うな案件なのですが、何が凄いってこれ「社説」というところが凄くて、この会社の体質なのか、日本の報道機関共通の体質なのかと思いつつ、まあ自分も他山の石として教訓にせねばとは思うのでありました。

〇またもFOMC議事要旨のネタでバランスシートの扱いに関する議論から

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20190501.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20190501.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee

昨日の続き(というか何というか)ですが、今回の議事要旨の冒頭に『Balance Sheet Normalization』というのがあるのでこちらを拝読するの巻。

『Participants resumed their discussion of issues related to balance sheet normalization with a focus on the long-run maturity composition of the System Open Market Account (SOMA) portfolio.』

てな訳で継続審議になっているFEDの長期的なバランスシートのあり方についての議論のお話が冒頭の所にある訳ですよこれが。

『The staff presented two illustrative scenarios as a way of highlighting a range of implications of different long-run target portfolio compositions.』

2つのシナリオとは?

『In the first scenario, the maturity composition of the U.S. Treasury securities in the target portfolio was similar to that of the universe of currently outstanding U.S. Treasury securities (a "proportional" portfolio).』

『In the second, the target portfolio contained only shorter-term securities with maturities of three years or less (a "shorter maturity" portfolio).』

プロポーショナルポートフォリオという名前になっているのと、ショーターマチュリティーポートフォリオという名前になっている物件がありまして、そういや先般来ロンガーランのFEDのポートの償還構成に関しての意見が地区連銀総裁などからちょこちょこ出てますなとは思いましたがこのFOMCでは論議になっていたようですな。

でもってプロポーショナルというのが「その時点における発行済みUSTの満期構成と似たようなポートフォリオ構成」でして、ショーターマチュリティーというのが「3年およびそれ以下の短い期間の銘柄によるポートフォリオ構成」という話。でもってスタッフの論点はというと、

『The staff provided estimates of the capacity that the Committee would have under each scenario to provide economic stimulus through a maturity extension program (MEP). The staff also provided estimates of the extent to which term premiums embedded in longer-term Treasury yields might be affected under the two different scenarios.』

一つの論点は「短期債売って長期債買うオペ(MEP)をした時の効果」で、もう一つは「保有ポートフォリオが米国債市場のタームプレミアムに与える効果」ということですので定性的にはお察しの結果になりますけれども、

『Based on the staff's standard modeling framework, all else equal, a move to the illustrative shorter maturity portfolio would put significant upward pressure on term premiums and imply that the path of the federal funds rate would need to be correspondingly lower to achieve the same macroeconomic outcomes as in the baseline outlook.』

短期ポートにした場合、プロポーショナルポートにした時と比べて、タームプレミアムに「顕著な」上昇圧力(significant upward pressure)を掛けるので、プロポーショナルポートと比べるとマクロ経済に与える影響を同じにしようとすれば(長期金利がこちらの方が高くなるので)短期誘導目標金利を低くしておく必要があるのではないか、だそうです。

まあ何ですな、ストック効果というのをモデルに入れて回せばそういう結果になるのは分かるのですけれども、市場現場労働者的な感覚からすると、ドミナントな買入を中央銀行がやっていて、その残高もドミナント、というようなケース、例えばジャパンでの以前の短国買入みたいな場合は、ストック効果が死ぬほど効くと思うのですが、QQE導入以降短国買入の残高が増加(国債買入増加に対してMB増加の目標が高かったので帳尻で短国買入にしわ寄せが来たから)する中で、当初は短国買入の毎回のオファーの方が効いていたのが、途中から金利がドドーンと下がりだしてきた時点からはストック効果が効いていた、という風に理解しておりまして(むろん個人の感想に過ぎませんが)、無茶苦茶にドミナントなプレーヤーになるというので無い限りにおいて、そこまでストック効果がガシガシとタームプレミアムに効くというイメージは無くて、それ以外の要素の方が長期金利の決定要因としては大きくて、FEDはストック効果を過大評価してるんでネーノという気はする。

むろん病は気からじゃないですけど、ストック効果ストック効果言い続けていると米国債券市場の参加者がストック効果があるもんだと思ってその上下を注目材料として売買するようになるので、それによって自己実現的にストック効果が出てくる、という可能性もある(というかまあアタクシの場合、米国国債市場に関しては外野席どころか神宮第2球場から神宮球場の歓声を聞いている程度の知見しかございませんので、現実問題としてどの程度市場に効いているのか分からんですが、昨年末の時もバランスシートが縮小してきた件でああだこうだとネタにしていたみたいですし、恐らく自己実現的な意味でのストック効果が日本よりも効いているような気はします)ので、まあ日本がこうだからという話をするのもそれはそれでズレているのかも知れませんけどね。

『However, the staff noted the uncertainties inherent in the analysis, including the difficulties in estimating the effects of changes in SOMA holdings on longer-term interest rates and the economy more generally.』

でもってFEDのスタッフブリーフィングでも実際にFRBのポートフォリオ(ちなみに最初の所にもありましたように、「System Open Market Account」でSOMAという方が通なのですがSOMAはさすがに何が何だか初見で分からんのであまり使う気が無い)がどの程度長期金利の形成に効いているのかという話、ひいては(短期金利ではなく)長期金利がどの程度経済に影響するかというような件については計測するのが難しいという点を挙げていますので、まあ留保付きでさっきの話ですよ、ということだと思います。

『The staff presentation also considered illustrative gradual and accelerated transition paths to each long-run target portfolio.』

次はそのロンガータームに向けたあるべきポートフォリオにするためのパスについての話。

『Under the illustrative "gradual" transition, reinvestments of maturing Treasury holdings, principal payments on agency mortgage-backed securities (MBS), and purchases to accommodate growth in Federal Reserve liabilities would be directed to Treasury securities with maturities in the long-run target portfolio.』

『Under the illustrative "accelerated" transition, the reinvestment of principal payments on agency MBS and purchases to accommodate growth in Federal Reserve liabilities would be directed to Treasury bills until the weighted average maturity (WAM) of the SOMA portfolio reached the WAM associated with the target portfolio.』

グラデュアルな移行シナリオというのは、償還再投資の際に大体長期的なポートのイメージと同じような再投資を行う、ということですので、再投資銘柄の償還構成をその時点での米国債の期間別発行残高に対してプロラタに近いイメージで購入していくという話ですな(ショータータームだったら別だけど)。でもって加速的な移行シナリオというのは、まずは短期国債に乗り換えていって、満期構成は兎も角として平均残存年限をターゲットのポートフォリオに近くするように持っていきましょうって方式。

『Depending on the combination of long-run target composition and the transition plan for arriving at that composition, the staff reported that, in the illustrative scenarios, it could take from 5 years to more than 15 years for the WAM of the SOMA portfolio to reach its long-run level.』

でもってシミュレーション(というかまあ現状での保有ポートは確定していて償還構成もMBS以外は確定しているのでシミュレーションというよりは普通に計画という感じでしょうが)によると、ロンガータームでのターゲットポートの出来上がりをどっちにするのか、移行シナリオをどっちにするのか、というのにも依存しますが、FEDのポートフォリオの平均残存年数がターゲットポートに落ち着くまでの期間が「短くて5年、長ければ15年以上」掛かるそうな。

でまあ5年だって景気サイクル的にどうよと思いますけれども、15年以上って景気サイクル何回やれば気が済むんだとか、その間にどう見ても(FEDビューでやっていれば)資産市場のバブルと崩壊をやるんじゃネーノ(程度は知らんけど)とか、そんな事を考えますと、「家に帰るまでが遠足」という論点(?)からしますと、FEDのバランスシートを正常化する前にまたぞろバランスシート政策を使わないといけない破目になり、そうなりますと政策効果って前の時よりも逓減しちゃいますよねとかそんなことを考えると非常にアレな未来が待っていそうな悪寒も漂う次第で、この「it could take from 5 years to more than 15 years」というのを見た時に(まあ時間が相当かかりそうなのは想像はつくにしても)あちゃーという感を深くしたのは申すまでもございません。


『In its Statement Regarding Monetary Policy Implementation and Balance Sheet Normalization, the Committee noted that it is prepared to adjust the size and composition of the balance sheet to achieve its macroeconomic objectives in a scenario in which the federal funds rate is constrained by the effective lower bound.』

『Against this backdrop, participants discussed the benefits and costs of alternative long-run target portfolio compositions in supporting the use of balance sheet policies in such scenarios.』

先般出されたバランスシート正常化に関する政策ステートメントの中で、FOMCは「政策金利がゼロ金利制約によって効果が束縛される場合には金融政策目的達成のためにバランスシートの構成を変化させる用意がある」つまりゼロ金利制約に引っ掛かったら(または引っ掛かりそうになったら)バランスシート政策を発動するよという話をしている、というかバランスシート政策を使わざるを得ないという状況になる、というのを踏まえた場合に、じゃあ正常化をどう進めていって、出来上がりのポートをどうすればよいのか、って話になりますわなということでFOMC参加者の議論が行われるのでした。

『In their discussion of a shorter maturity portfolio, many participants noted the advantage of increased capacity for the Federal Reserve to conduct an MEP, which could be helpful in providing policy accommodation in a future economic downturn given the secular decline in neutral real interest rates and the associated reduced scope for lowering the federal funds rate in response to negative economic shocks.』

そら(将来の政策発動余地という意味で考えたら)そう(糊代作るならポートは短期化一択)よという感じでございますが、多く(many)の参加者は長期化オペレーションをするという政策発動余地が大きくなる点で短期化ポートにメリットがありますわなと考えていますし、しかも現状ってそもそも論として自然利子率の低下によって政策金利の発射台が低くならざるを得ない状態なのですから、ゼロ金利制約に政策金利が引っ掛かる可能性が昔よりも高くて、バランスシート政策の発動可能性が高いことを考えるとそりゃまあ短期化ポートにメリットありという話にもなりますわな、とは思います。

ただこれって(アタクシは中銀ポートのストック効果よりもフロー効果の方が債券価格形成には影響する(マクロ経済には知らん)と思っているので短期化ポートで問題ないんちゃいますかと思うけど)ポートのストック効果を重視すると、さっきのように「短期化ポートを指向するとタームプレミアムを大きく上げてしまう」ということで、糊代作りに行って金利を上げちゃうの長期金利版になる(アタクシは別に大した問題にはならないと思うけどそれはそれとして)ので、その点はどうなのという関連話がちょっと後にあるので乞うご期待。

『Several participants viewed an MEP as a useful initial option to address a future downturn in which the Committee judged that it needed to employ balance sheet actions to provide appropriate policy accommodation.』

数名の(Several)参加者は長期化プログラムは効果が大きいという認識をしている(ので短期化ポートにしておいた方が良い)という認識のようで。

『Participants acknowledged the staff analysis suggesting that creating space to conduct an MEP by moving to a shorter maturity portfolio composition could boost term premiums and result in a lower path for the federal funds rate, reducing the capacity to ease financial conditions with adjustments in short-term rates.』

さっきアタクシが申し上げた論点。長期化プログラムの発動余地を作ろうとすると短期ポートにする必要があるけれども、スタッフの分析を基にして考えた場合、この時はより低めの短期金利と短い償還構成のFEDポートという組み合わせになって、今度は短期金利の下げ余地を減らすという問題が生じますね、ということは認識しました、だそうな。

『A number of participants noted, however, that the estimates of the effect of a move to a shorter-maturity portfolio composition on the long-run neutral federal funds rate are subject to substantial uncertainty and are based on a number of strong modeling assumptions.』

何人かの(A number of)参加者は、短期ポートにする影響に関しては不確実なところがあって、しかもスタッフの分析に関しても幾つかの強い前提を置いている点がありますよね、とのご指摘がありまして・・・・・・・

『For example, estimates of term premium effects based on experience during the crisis could overstate the effects that would be associated with a gradual evolution of the composition of the SOMA portfolio. In addition, a shift in the composition of the SOMA portfolio could result in changes in the supply of securities that would tend to offset upward pressure on term premiums.』

金融危機の時の経験(その時にLSAPやったんだから当然ですが)をベースにした場合、FEDの資産買入に関するタームプレミアムの影響を過大評価している可能性がある(つまり金融危機によるプレミアムをLSAPで解消させていったのであればそれは平常時のストック効果とは違うだろという話で確かにそれは仰せの通りだとアタクシも思う)とか、FEDポートの償還構成のシフトというのは、債券の供給に変化を与えるからタームプレミアムの上昇を打ち消すでしょ(っての一見してナンジャソラと思うのだが、ポートが短くなってタームプレミアムが上がれば、当然ながら社債などの発行がコストを嫌って短期化するからそれでオフセットする部分もあるじゃろ、と言いたさそうな気がする)。

『Nonetheless, other participants expressed concern about the potential that a shorter maturity portfolio composition could result in a lower long-run neutral federal funds rate.』

一方で短期化ポートに懐疑的な見解が以下出てきますが、まずは短期化ポートによって長期自然利子率を下げるのではないかというのがあって、

『Moreover, while a shorter maturity portfolio would provide substantial capacity to conduct an MEP, some participants raised questions about the effectiveness of MEPs as a policy tool relative to that of the federal funds rate or other unconventional policy tools.』

そもそも長期化プログラムがそんなに強力なツールなのかどうかがはっきりせんじゃろという指摘があって、

『These participants noted that, in a situation in which it would be appropriate to employ unconventional policy tools, they likely would prefer to employ forward guidance or large-scale purchases of assets ahead of an MEP.』

同じ非伝統的政策を使うんだったら長期化プログラムよりもフォワードガイダンスとか大規模資産買入(LSAP)の方がツールとして強力じゃろとこの人たちは指摘していて言いたいことは分かる。

『In the view of these participants, the potential benefit of transitioning to a shorter maturity SOMA composition in terms of increased ability to conduct an MEP might not be worth the potential costs.』

ということでプロコン比較をした時に、ポートの短期化によるコストの方が大きいので短期化ポート良くない、という意見もありまして見解はまだ収束していない感じの書き方というかがっぷり四つで組んでいますよというような両論併記になっていますなこのパラグラフ。


この話は長くてなおも続く。

『In their discussion of a proportional portfolio composition, participants observed that moving to this target SOMA composition would not be expected to have much effect on current staff estimates of term premiums and thus would likely not reduce the scope for lowering the target range for the federal funds rate target in response to adverse economic shocks.』

今度はプロポーショナルポートの話になりますが、プロポーショナルポートに移行する場合には特段のタームプレミアムの拡大も起きない、という分析になっているので、それを前提にすると将来の経済ショックにおけるFF金利の下げ余地を確保したまま走ることが出来るという認識を参加者は持ちましたよとな。

『As a result, several participants judged the proportional target composition to be well aligned with the Committee's previous statements that changes in the target range for the federal funds rate are the primary means by which the Committee adjusts the stance of monetary policy.』

その結果として数名(several)の参加者はプロポーショナルポートの方がよろしかろうという結論に達していまして、

『In addition, several participants noted that while the staff analysis suggested a proportional portfolio would not contain as much capacity to conduct an MEP as a shorter maturity portfolio, it still would contain meaningful capacity along these lines.』

短期化ポートの方が長期化プログラムの発動余地が大きいけれども、そうは言ったってプロポーショナルポートでも長期化プログラムの発動は出来ますし、

『Some participants noted that a proportional portfolio would also help maintain the traditional separation between the Federal Reserve's decisions regarding the composition of the SOMA portfolio and the maturity composition of Treasury debt held by the private sector.』

数名の(Some)参加者はプロポーショナルポートにしておけば(米国債の発行年限構成に対してFEDが中立の状態になるので)民間セクターの保有する米国債の償還構成に対して中立でいられることもメリットであると。

『However, a number of participants judged that it would be desirable to structure the SOMA portfolio in a way that would provide more capacity to conduct an MEP than in the proportional portfolio.』

さっきの短期化ポートの時と同じ話ですけど、何人かの(a number of)参加者は長期化プログラムの発動余地を残しておくという点を考えるとプロポーショナルポートイクナイという見解。

『In addition, a couple of participants noted that a shorter maturity portfolio would maintain a narrow gap between the average maturity of the assets in the SOMA portfolio and the short average maturity of the Federal Reserve's primary liabilities.』

2名の参加者は、そもそもFEDの主な負債は短期債務なのだから(銀行券以外は短期債務になりますわな、実際には法定準備も事実上の銀行券同様の長期債務ですからこれも長期債務扱いでしょうが)、FEDの資産負債のギャップを小さくしておくという点でも短期化ポートの方がエエンデネエノという指摘ですな。


まだまだ話は続くのだ。

『Participants also discussed the financial stability implications that could be associated with alternative long-run target portfolio compositions.』

ファイナンシャルスタビリティの論点となりますが。

『A couple of participants noted that a proportional portfolio could imply a relatively flat yield curve, which could result in greater incentives for "reach for yield" behavior in the financial system.』

2名の指摘としてプロポーショナルポートにすると(短期化ポートよりも)イールドカーブがフラット化するのでサーチフォーイールドの動きをとっても(greater)起こしやすい。

『That said, a few participants noted that a shorter maturity portfolio could affect financial stability risks by increasing the incentives for the private sector to issue short-term debt.』

一方でこの点に関しては数名(a few)の参加者が、短期化ポートにすると(イールドカーブが立ってしまうので)民間セクターが短期債務を発行するインセンティブを高め、その結果として(短期債務が増えるので)ファイナンシャルスタビリティのリスクに影響を与える、と言いたいことは分かるがナンジャソラという指摘。

『A couple of participants judged that financial market functioning might be adversely affected if the holdings in the shorter maturity portfolio accounted for too large a share of total shorter maturity Treasury securities outstanding.』

2名の参加者は短期化ポートにすると米国国債の短期ゾーンにおける買入シェアが高まってしまうので、債券市場の機能に悪影響を与えるのではないかとの指摘もありますな。まあこの辺の論点は全般的にナンヤソラ感は強いが大真面目に話をしているようで。


さらに話は続く。

『In discussing the transition to the desired long-run SOMA portfolio composition, several participants noted that a gradual pace of transition could help avoid unwanted effects on financial conditions.』

『However, participants observed that the gradual transition paths described in the staff presentation would take many years to complete.』

今度は移行の話でして、グラデュアルな移行は市場に対して不測の影響を与えないのは良いのですが、一方でその場合に掛かる時間があまりにも長すぎるのがうーんこのという話になっているようでそれは分かります。

『Against this backdrop, a few participants discussed the possibility of following some type of accelerated transition, perhaps including sales of the SOMA's residual holdings of agency MBS. In addition, several participants suggested that the Committee could communicate its plans about the SOMA portfolio composition in terms of a desired change over an intermediate horizon rather than a specific long-run target.』

つーことで代替案として、残りのエージェンシーMBSについては売却を行うことによって移行を加速するというのがあったり、ロンガーランのターゲットの話だけではなくて、ポート構成の中間目標に関してコミュニケーションしていくというのはどうでしょうか、という意見が出されていますな。


これでこの章は最後。

『Several participants expressed the view that a decision regarding the long-run composition of the portfolio would not need to be made for some time, and a couple of participants highlighted the importance of making such a decision in the context of the ongoing review of the Federal Reserve's monetary policy strategies, tools, and communications practices. 』

『Some participants noted the importance of developing an effective communication plan to describe the Committee's decisions regarding the long-run target composition for the SOMA portfolio and the transition to that target composition.』

つーことで、意見が割れまくりというのもあるのか、結論パラグラフの所では「まあそんなに今から急いで長期的なポートフォリオの構成について決め打ちしていかなくても時間はあるんだし」というようなお話が出てきたり、「ポートの構成云々だけではなく全体的な政策ストラテジー、政策ツール、コミュニケーションなどの中で話をしていけばエエンチャウノ」みたいなお話になったりしてまして、要は全然まとまっていませんですねという話ではありますが、そうは言いましてもこの話自体は重要ですのでコミュニケーションどうやって行くのかは大事ですよね、という指摘も出たりして、なんかこう百家争鳴状態で(つづく)という感じになるのでありました。







2019/05/27

お題「5月FOMC議事要旨ネタでござる」

現場の実践者が「このような現象が起きています」っていう話をする際に、一般的な学問だと自然科学はもちろん社会科学とかでもその現象を受けて理論から得られると推測される事象との差分を確認し、それが発生する要因について考えていき、これまでの理論でカバーできていない部分を埋めていく、というフィードバックループが生じると思うのですけれども、何故か「経済学」方面では「お前らの言っていることは理論を分かっていない人間の意見、理論ではこうなる(キリッ)」という説教が開始されるという状況を何度も見ることになるのでしょうか、と毎度思うアタクシなのでした(何かを見た)。


〇金懇ネタでスルーしていたのでFOMC議事要旨ネタ

大先生の金融政策に何のインプリケーションも無くエンターテイメントとしては神とかが出てこないのでイマイチではありますが、ツッコミどころは満載(本当はあの金懇の数字出している辺りはツッコミの練習素材には有用だと思いますが、ツッコミでエンターテイメントが出来るかどうかよくわからんのでパス)ではありますので、まあネタにしているうちにFOMC議事要旨が投下されていた訳ですがががが。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20190501.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20190501.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors was held in the offices of the Board of Governors of the Federal Reserve System in Washington, D.C., on Tuesday, April 30, 2019, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, May 1, 2019, at 9:00 a.m.1

ということで人様が連休中というのにFOMCなんぞをやりやがって連休中にいつもの時間に起きたらそれまでぐうたらしていたので頭が全然動くリズムになっていなくてケツの時間が案の定遅くなってしまったFOMC(ただの個人的わがまま)ですが。

なお引用は編集が楽なHTMLの方から参ります。


・インフレが弱くなってきている要因で意見が結構な割れ方をする

例によって『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を逆順に読むの巻をしますと・・・・・・・・・・

『Participants discussed the potential policy implications of continued low inflation readings.』

ということでインフレが低いですがなという件に関しての話だがこれが割と長い。

『Many participants viewed the recent dip in PCE inflation as likely to be transitory, and participants generally anticipated that a patient approach to policy adjustments was likely to be consistent with sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective.』

ということで会見の方ではこの足元でちょっと下がってきたのは「transitory」の方がやたらと強調されていましたが、ミニッツの方ですと「一時的」の話に加えて「patient approach」もセットになっておりますな。でもってこの先が割とオモロイ。

『Several participants also judged that patience in adjusting policy was consistent with the Committee's balanced approach to achieving its objectives in current circumstances in which resource utilization appeared to be high while inflation continued to run below the Committee's symmetric 2 percent objective.』

リソースの稼働が高いという現在の状態の中で、ペイシャントなアプローチをとるのは、FOMCが目標に向けたバランスアプローチをとるという点から適切であるとの数名の意見。

『However, a few participants noted that if the economy evolved as they expected, the Committee would likely need to firm the stance of monetary policy to sustain the economic expansion and keep inflation at levels consistent with the Committee's objective, or that the Committee would need to be attentive to the possibility that inflation pressures could build quickly in an environment of tight resource utilization.』

一方で数名(さっきより人数少ない)参加者の意見は、経済の稼働が高水準の中なので、経済見通しが今の委員会の見通し通りに推移すれば、いずれかの時点で過熱してインフレ上昇圧力になるとみられるので、それに対して政策対応を行うなり、インフレ上昇圧力に対して即座に対応するよというスタンスを示していくという事が必要であるとの意見が。

『In contrast, a few other participants observed that subdued inflation coupled with real wage gains roughly in line with productivity growth might indicate that resource utilization was not as high as the recent low readings of the unemployment rate by themselves would suggest.』

でまた別の数名は、実質賃金が上がりながらもインフレが抑制されているという現在の状況について、これは生産性の伸びを反映しており、かつ失業率で推測される程の労働資源の稼働が高くないということを示している、との意見ですな。

『Several participants commented that if inflation did not show signs of moving up over coming quarters, there was a risk that inflation expectations could become anchored at levels below those consistent with the Committee's symmetric 2 percent objective-a development that could make it more difficult to achieve the 2 percent inflation objective on a sustainable basis over the longer run.』

先ほどの所までは物価が上がらん要因に関する話ですが、ここに出てくる数名の参加者はインフレ期待に関する話をしていて、今のように2%よりやや低い水準で今後数四半期が推移すると、インフレ期待が低下するリスクがあるという意見を示しています。


『Participants emphasized that their monetary policy decisions would continue to depend on their assessments of the economic outlook and risks to the outlook, as informed by a wide range of data.』

とまあそういう議論の末に結論は先行きの金融政策は色々なデータをもとに経済物価見通しとリスク認識を踏まえながら判断していきましょうね、という結語でまとめているので、要するにこれはこのインフレに関する部分での議論は意見割れる上に決定打となる話もないので、議事要旨の方でもこのような形で「色々な意見はありますが今後の推移を見ながら判断をしていく」、つまり現状では決め打ちできるような物はない、という事になりますわな。


でですね、普段の(特にインスタント読みの場合の)時には大概にスルーする『Committee Policy Action』のコーナーですけれども、そこの4つ目と5つ目のパラグラフに参りますと、

『With regard to the postmeeting statement, members agreed to remove references to a slowing in the pace of economic growth and little-changed payroll employment, consistent with stronger incoming information on these indicators. The description of growth in household spending and business fixed investment in the first quarter was revised to recognize that incoming data had confirmed earlier information that suggested these aspects of economic activity had slowed at that time.』

『Members also agreed to revise the description of inflation to note that inflation for items other than food and energy had declined and was now running below 2 percent.』

まあここは結論だけなのではあそうですかってなもんですけれども、この時の声明文の第一パラグラフで経済の現状認識を引き上げて物価の現状認識を引き下げるというオモシロプレイをやっていただいたことについての記述が上記のようにございまして。

『Members observed that a patient approach to determining future adjustments to the target range for the federal funds rate would likely remain appropriate for some time, especially in an environment of moderate economic growth and muted inflation pressures, even if global economic and financial conditions continued to improve.』

その次の所がちょっとほほーと思いましたが、今の「ペイシャントアプローチ」に関しては、経済がモデレートな状態で物価があんまりアガランチ会長な状況が続いている場合、海外の経済やファイナンシャルコンディションが改善を続けてもこのアプローチを継続する、という話になっているのでして、これは昨年9月辺りに株式市場がヒャッハーとなっている時にパウエルが盛大に水をぶっかけてしまうというプレイをしましたが、あれがオーバーキルだったのでもうしねえよ、というメッセージではありますな、と思うのですよね。

でもってそれ自体はFEDビューバリバリの話なのでそこまでのサプライズに非ずという所ではあるのですが、そうは言いましても資産市場に一々振り回されるのが得意なパウエルFRB、しかも今回資産バブル発生からの崩壊とかやったら、ここ数回の米国の経済ショックって揃いも揃って資産バブル崩壊だった訳でして、FRBは何をやっているんだこのトンチキ野郎という話に成り兼ねない、というのはさすがにパウエルは(強固な理論的アプローチをしてくるタイプじゃないだけになおさら)思っていそうには見えます(個人の感想です)ので、実際に資産市場がゴルディロックスヒャッハーとなった時にどう対応するのかが一番難しそうですな。まあ今回の場合はタリフマンがタリフどころかIT通信覇権戦争モードになったのでFEDが水をぶっかけに行く必要がなさそうなのである意味助かっているかもしれませんけど(個人の感想です)。


・ペイシャントアプローチは強調されていますの

では最初に引用したパラグラフの一つ前に戻りまして、

『In their discussion of monetary policy, participants agreed that it would be appropriate to maintain the current target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent.』

政策金利据え置きが適切、結果の通りですぬ。

『Participants judged that the labor market remained strong, and that information received over the intermeeting period showed that economic activity grew at a solid rate.』

『However, both overall inflation and inflation for items other than food and energy had declined and were running below the Committee's 2 percent objective.』

これは声明文第1パラグラフの経済現状認識上げ、物価現状認識下げということですの。

『A number of participants observed that some of the risks and uncertainties that had surrounded their outlooks earlier in the year had moderated, including those related to the global economic outlook, Brexit, and trade negotiations. That said, these and other sources of uncertainty remained.』

数名の参加者からは下方リスクがややモデレートになったという指摘。

『In light of global economic and financial developments as well as muted inflation pressures, participants generally agreed that a patient approach to determining future adjustments to the target range for the federal funds rate remained appropriate.』

『Participants noted that even if global economic and financial conditions continued to improve, a patient approach would likely remain warranted, especially in an environment of continued moderate economic growth and muted inflation pressures.』

ということで、ペイシャントアプローチの話、さっき引用した方が議事要旨の順序としては後の方にあって、先にこっちに出ているのですが、同じように「経済拡大がモデレートで物価上昇圧力が弱いうちは、海外経済の状況や金融の環境(って要するに資産価格ですがな)が改善したとしても、引き続きペイシャントアプローチを継続するのが適切、という話をしていて、まあ議事要旨の作りからすると2回載るのもそんなに変なことではない(先に引用した方が「政策のアクションについて」なので政策アクションのスタンスに関わる話だから載って来るのは順当といえば順当)のですが、声明文の方にはそこまでペイシャントの説明をくどくどしていないので、先ほども申し上げましたように、資産価格が上がってきたからと言って自動的にまたスタンスを締め気味にする訳ではありませんというのを示したかったんだろうなあ、というのは把握しました(個人の感想です)。


・金融不均衡に関する部分

でもって更にもう一つ前に。

『Among those participants who commented on financial stability, most highlighted recent developments related to leveraged loans and corporate bonds as well as the current high level of nonfinancial corporate indebtedness.』

金融不均衡の話がその前のパラグラフにありまして、金融分均衡について話をしていた参加者は、最近の状況に関してはレバローンとコーポレートの社債、非金融機関の負債比率の高まりについて指摘しているそうな。

『A few participants suggested that heightened leverage and associated debt burdens could render the business sector more sensitive to economic downturns than would otherwise be the case.』

負債比率を引き上げる企業が増えると景気が悪化した時にマイナスとして作用する恐れって指摘ですが、そうは言いましても企業セクターがレバレッジ掛けないと経済成長せんじゃろとは思うので、そのバランスが重要、というよりは米国の場合は言うだけ言っても別にそのままレッセフェールにして後から「私言いましたよね」というだけというのもありますけど(個人の偏見です)。

『A couple of participants suggested that increases in bank capital in current circumstances with solid economic growth and strong profits could help support financial and macroeconomic stability over the longer run.』

銀行の資本が拡大されているからヘーキヘーキという意見が2名から。

『A couple of participants observed that asset valuations in some markets appeared high, relative to fundamentals.』

他の2名の方からはこらまたド直球で幾つかの市場での資産価格がファンダメンタルズを反映していない高価格になっているとかいうお洒落な指摘をしていた、そういうのをしらっと入れてくるのね。

『A few participants commented on the positive role that the Board's semi-annual Financial Stability Report could play in facilitating public discussion of risks that could be present in some segments
of the financial system.』

ということもありますので半期の米国版FSRに色々と書いてあるのでコミュニケーションしやすくなりましたよね、とか言ってる意見があるがこれはどう見てもFSRを読めという話ですかそうですか。


・株価が戻ってニッコリだそうです

ということで引き続き逆順読みで前のパラグラフに。

『In discussing developments in financial markets, a number of participants noted that financial market conditions had improved following the period of stress observed over the fourth quarter of last year and that the volatility in prices and financial conditions had subsided.』

昨年4Qに起きた金融市場のストレスやボラによるファイナンシャルコンディションの引き締まりは改善したと。

『These factors were thought to have helped buoy consumer and business confidence or to have mitigated short-term downside risks to the real economy.』

それによって消費者や企業のセンチメントも改善して実体経済のダウンサイドリスクを軽減しました。

『More generally, the improvement in financial conditions was regarded by many participants as providing support for the outlook for economic growth and employment.』

また、金融環境の改善は経済成長や雇用の先行き見通しにもプラスに働くと認識している、ということでして、このパラグラフちゃんの方では株価が戻ってニッコリというのを割と直球勝負で記載していまして、先ほど来出ている「多少金融環境や海外の改善が進んだからと言って政策スタンス締めに行かないもんね」という部分と合わせますと、まあ「緩和する」というのに関して言えば失望ちゃんちゃんこではあるのでしょうけれども、「こらまるで正常化路線をやる気がないわ」というのはとりあえず把握できるような作品に仕上がっているように思えますがどうでしょうかね。


・ダウンサイドリスクは軽減

その前のパラグラフに。

『Participants commented on risks associated with their outlook for economic activity over the medium term.』

リスクについてのコメント。

『Some participants viewed risks to the downside for real GDP growth as having decreased, partly because prospects for a sharp slowdown in global economic growth, particularly in China and Europe, had diminished. These improvements notwithstanding, most participants observed that downside risks to the outlook for growth remain.』

依然として残っているものの、海外経済のリスクを中心にリスクが軽減、というあっさり味の説明ですな。


・労働市場はタイトだがお賃金の力強い上昇はまだ

もう一丁戻りますね。

『Participants agreed that labor market conditions remained strong.』

労働市場の評価です。

『Job gains in the March employment report were solid, the unemployment rate remained low, and, while the labor force participation rate moved down a touch, it remained high relative to estimates of its underlying demographically driven, downward trend. Contacts in a number of Districts continued to report shortages of qualified workers, in some cases inducing businesses to find novel ways to attract new workers.』

労働市場に関しては景気のいい話ではありますが、

『A few participants commented that labor market conditions in their Districts were putting upward pressure on compensation levels for lower-wage jobs, although there were few reports of a broad-based pickup in wage growth.』

とは言え数名の参加者が指摘しているのは、お賃金があがっているのは低所得部分でのお話で、幅広くお賃金が上がってヒャッハーという話ではないそうな。

『Several participants noted that business contacts expressed optimism that despite tight labor markets they would be able to find workers or would find technological solutions for labor shortage problems.』

んな訳でタイトな労働環境だから必要な人が全然取れないとか焦るような動きを企業経営者がしているかと言えばそうでもないという証言も聞くぜよと数名の参加者が言ってまして、まあこの辺がお賃金イマイチ上がらんねえの背景という話なんでしょう、となると物価ですが一つ前に戻ります。


・物価に関して

『Participants observed that inflation pressures remained muted and that the most recent data on overall inflation, and inflation for items other than food and energy, had come in lower than expected.』

という訳で物価の話。

『At least part of the recent softness in inflation could be attributed to idiosyncratic factors that seemed likely to have only transitory effects on inflation, including unusually sharp declines in the prices of apparel and of portfolio management services. Some research suggests that idiosyncratic factors that largely affected acylical sectors in the economy had accounted for a substantial portion of the fluctuations in inflation over the past couple of years.』

最初に物価が足元ちと上昇率を下げていて予想に反しているということであったのですが、この中で特殊要因が絡んでいる部分がありますよというお話。

『Consistent with the view that recent lower inflation readings could be temporary, a number of participants mentioned the trimmed mean measure of PCE price inflation, produced by the Federal Reserve Bank of Dallas, which removes the influence of unusually large changes in the prices of individual items in either direction; these participants observed that the trimmed mean measure had been stable at or close to 2 percent over recent months.』

これはパウエル会見の時にも説明がありましたが、ダラス連銀の出している刈込平均ベースの物価指標を見ると依然として2%水準になっているので、そんなのもあって今回の足元の下げは一時的かつ特殊要因込みだと。

『Participants continued to view inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcome, but, in light of recent, softer inflation readings, some viewed the downside risks to inflation as having increased.』

とは言いましてもやっぱり物価が弱くなって来ると青菜に塩という感じでダウンサイドリスクを見る参加者の方々も何人もいるというこの事実。

『Some participants also expressed concerns that long-term inflation expectations could be below levels consistent with the Committee's 2 percent target or at risk of falling below that level. 』

これさっき引用したところでもありました(例によって登場するのはこっちが先)が、物価が2%割った状態が続くとインフレ期待がさがるのではないか、という話をしていまして、まあそれ自体はそうかも知れませんねとは思いますが、それ言い出したら米国の場合その前に延々と2%割っていたやんと思うので、この話を持ち出して来るのは仰せ御尤もではありますが何かちょっともにょるというか、今の政策を動かしたくないという結論が先にあってそこから導き出した方便には見えます(個人の感想です)。


この前の部分もありますが、需要項目別の話と全体感の話になってくるのでパスします、ということで引用大会で恐縮ですが本日はこんなもんで。








2019/05/24

お題「引き続き誰かさんの長崎金懇関連ネタを本日は簡単に(汗)」

暫く米中の方ばかり目立っていましたがこちらはこちらで永遠の泥沼状態ェ・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/may-resign-idJPKCN1ST0J8
2019年5月23日 / 15:20 /
英首相、EU離脱新提案巡り協議 24日に辞任表明の報道も


〇ジンバブエ先生金懇の続き(会見ネタはこのあと)

FOMC議事要旨??なんか知らないですな、などと言ってはいけないのだが幸か不幸か市場ちゃんの方がFOMCネタにあんまり反応していないように見える(個人の感想です)のでネタとして後回しの所存で昨日の続きでも。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190522a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190522a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──


・分析部分もだいぶ怪しげな香りがするんですがそこは誰かツッコミ入れて欲しいなあ(願望)

えーっとですな、昨日華麗にすっ飛ばした成長会計の辺りとか高圧経済で云々という話の辺りなんですがたぶん色々と微妙に怪しい分析、特に高圧経済云々のあたりって怪しい筈で(何故かというと「QQEは効果がある」というのがアプリオリに決まっているところからスタートして過去の経済に起きたことの中で望ましい話を捕まえて効果だ効果だと言っているから)すけれども、その分析の中でウケたのはこれ、ということで昨日アタクシがトサカに来た部分の直後に出てくる話から参ります。

場所的には本文12ページ(PDFベースだと13枚目)から。

『図2は、QQE 開始以来、貸出が伸びて金利が下がった結果、現実に生じた預貸関連収益(貸出の利息から預金の利息を差し引いて計算される収益)と、QQE を行わなかった場合の仮想的な預貸関連収益を比べたものです。』

ということで図表がその次のページにあるんですけれども、QQEを行った場合と行わなかった場合の比較とか中々高級なシミュレーションをしていると思ったら、その内容に茶を盛大に吹いてしまったのですけれども。

『QQEを行わなければ、貸出は増えず、また金利は過去のトレンドで下がっていったとしています。これがケース1です。』

・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、QQEが無かったら貸出が増えないというのが何でアプリオリになるのかという話がまるでないんですけれども。

『金利が下がったのは、物価が下がり、実質成長率が下がったからだという1.での指摘に従えば、金利はトレンドで下がっただろうと考えるのが正しいと私は思いますが、仮に金利は下がらなかったとしたのがケース2です。』

自由自在な前提を置きすぎ。

図表2というのの脚注がですね、こうなっているんですよ。

『(注)全国銀行(国内業務部門)。預貸関連収益は貸出金利息から預金利息を控除したもの。 ケース1では、貸出金利回り、預金利回り、貸出金残高、預金・譲渡性預金残高について、2002年度から2012年度の時系列データから算出したトレンドを用いて2013年度以降のデータを試算した。ケース2では、ケース1での貸出金利回りについて2012年度の数値をそれ以降は横這いと仮定して試算した。』

どう見ても直線一気理論です本当にありがとうございました。


でまあそういう非現実的な前提を置きますと、そらケース2なんて「預金利回りは下がるけど貸出金利回りは下がらない」という面白前提なので(図表を見ればわかりますが)預貸関連収益は減らんという話になりますわな。ということで、

『現実の預貸関連収益と仮想ケースを比べると、ケース1の場合は、2017 年度において現実よりも 0.2 兆円収益が上振れています。ケース2の場合には、1兆円上振れます。この上振れ部分を 2013年度から累積しますと、ケース1の場合は 0.9 兆円、ケース2の場合には 3.4 兆円となります。』

ほーん。

『しかし、QQE で景気が良くなり、株が上がり、金利が低下したのですから、QQE によって、信用コストが低下し、株式関係損益と債券関係損益が増加したはずです。』

ほーん。

『これらを 2013 年度から累積していきますと、2017 年度までで 4.0兆円となります 17。ケース1、ケース2のいずれの場合の預貸関連収益の上振れの累積額より大きくなります。』

ということで、QQEを実施しないと何故か与信コストも低下しないし株式関係損益も増加しないし、債券関係損益も増加しない、という勝手な前提をダマテンで置いて計算をおっぱじめております、その結果・・・・・・・・・・

『2017 年度まででは、むしろ QQE によって銀行の利益は上振れしたと思います。』

という我田引水のシャンパンタワーのような結論になっておりますが、このご自身でお作りになられたシャンパンタワーを指しまして大先生はこのようにQQEへの批判に対してお答えしております。聞いてみましょう。

『QQE で銀行の収益が低下したという議論は、金利低下が景気を回復させたことを見ずに、ただ金利のみが低下しなかったら、もっと利益が上がっていたはずだという、ありえない想定に基づいた議論だと思います。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

あり得ない想定に基づいたQQE批判を勝手に自分で作っておいて、「この批判はあり得ない想定に基づいたものである」(キリッ)って詭弁のガイドラインの最初の方に出てくるような話しですなあとしか申し上げようがございませんが、意識的にこういうまるでおかしい批判をでっちあげて、そのでっちあげた批判に反論することによって自分の正当性を主張する、という詭弁を意識的にやっているのでしたらそれはそれで確信犯の詭弁なのでいい(イクナイけど)のですが、もしやジンバブエ先生におかれましてはQQEで金融機関の収益が圧迫されている、というような分析はすべからく上記のような珍理論によって行われているとかガチで認識されているのではなかろうか、とあらぬ心配をしたくなってしまうんですがどうなんですかねえ。


とまあそんな感じで、「この分析をしたのは誰だぁ(ガラッ)」と海原雄山が出てくるの間違いなしという謎の分析によってQQE批判にお答えしているジンバブエ大先生なのですが、このような雑な分析を出されてしまいますと(検証するのが面倒なのでパスしていますし、政策インプリケーションも得るものもないですけれども)ほかの部分での分析っぽいのもどうせ我田引水理論やら風が吹けば桶屋が儲かる理論などを駆使しているんでしょうなあ、と思ってしまいますな(個人の偏見です)。


とまあそういう訳で昨日の後ろの方からの『4.低金利と銀行経営 』という小見出しの部分が終わるのですけれども、この物凄く粗雑だし不勉強にも程がある分析をもって地方は滅びろ位の勢いの話をするってもう酷いとかそういう通常の形容詞が使えないんじゃネーノというお話。

マクロ経済環境は今後も金融機関の現在の経営モデルにとって逆風の状況が続くので、適切なダウンサイジングはやむを得ない面がある、というのはそらまあその通りではあるのですが、FSRみたいにちゃんとした分析をして話をしているのならともかく、「預金が集まって困るなら集まらないようにすればよい」「集まらないようにするには支店を減らす」と来てからの『郵便局、農漁協、信組、コンビニやスーパー内の銀行もあります。預金口座は様々なところで持つことができます』って銀行機能がATMですっていう話をおっぱじめた挙句に分析させれば今日引用したような頭を抱えてしまう分析と来ている訳で、まあこんな不適格にも程があるのを任命したのは誰だぁ(ガラッ)って感じではあるのですが、まあ情けないのもあるけど、こんな文章を日本銀行の名前で出すというのがアレでして、確かにまあ独立して金融政策運営に関わる判断を下す人なので手足口全部縛って座敷牢に放り込むという訳には行かないのも分かるのですけれども、いくら何でも中央銀行の名前で出すものには一定のクオリティというのが必要なのではないでしょうか、と斯様に思う次第ではございます。


〇まあ政策インプリケーションとかの存在しない会見ではあるし内容もアレなので実質最初の質疑だけ

ということで会見ですが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190523a.pdf

・預金在庫論という珍理論がやはり出てきたか

いやですね、講演の方では「預金は在庫」という例の珍理論が無かったので、さすがにそこは理解したのかと思っていたら会見の事実上の一発目の質問(最初のは「今日の内容の説明をお願いします」だし2番目は今回「地域経済について」という想定問答の世界でした)でやっぱり珍理論が披露されてアタシャげんなりですよ。

『(問) 大きく二点、原田委員にお伺いできればと思います。まず今日の挨拶要旨の中での話なのですけれども、今の日銀の金融政策について、銀行経営の観点からのお話がありました。その中で、結果的に人員や店舗の削減につながっているとか、構造改革につながっているというようなご発言をされていますが、一方で銀行の方からは副作用を懸念する声が結構出ている中で、今後の銀行業界はどうあるべきか、どのようになっていくべきか、どういうふうにお考えなのでしょうか。(後半割愛) 』

という質問だった訳ですがその答えがこれですよ。

『(答) 一番目の、今後の銀行経営のあり方というか、今後の銀行業界はどうなるのかについては、銀行というのは基本的には預金を集めてお金を貸し出すという仕事ですが、残念ながら貸出以上にお金が集まってしまう状況にあります。』

そして次がこれ。

『私の考えでは、預金というのは仕入れで、貸出というのはそれの販売になるわけですが、販売よりも仕入れが多くては、いかなる 業界も成立し得ないわけですので、貸出を増やすか、仕入を減らさなければなりません。』

銀行が貸出を行う際には資産の部に貸出金、負債の部に預金が両建てで立つという行為が発生するってのは日商の簿記3級の勉強をすれば5秒でわかる話なのですが、もしかしてジンバブエ先生の中では預金通貨を実物の子安貝だか寛永通宝だか知らんけど、そういうものが集まってきたのが預金でその実物を貸し出しているとかそういう理解になっているんでしょうかと小一時間問い詰めたいですな。というかまあそういう意味からしてせめて金融の話をするのに簿記3級の理解だけはして頂かないとその時点で議論が成立しないこのようなケースが発生してしまいます、ということなのですが。

『仕入が減るということは、縮小していくということになら ざるを得ません。銀行業界としてもそれをお考えになって、貸出以外の新たな収益機会を考えるとともに、仕入を減らし、同時に効率化するという、あらゆる業界で必要なことをなさっていくのではないかと思っています。(後半割愛)』

でまあこの方、相変わらず個別行ベースのミクロの話とマクロの話がごちゃごちゃになっていて、「必要なのは仕入の削減」って言いましても、銀行というのは金融「仲介」業な訳でして、マクロ的な資金循環の中での仲介をしているのですから、ミクロベースで預金の増加を抑えたとしても、マクロベースで見た場合、今の資金循環を前提にするとその結果金融機関の預金が増えてしまう、って昨日も同じこと書きましたが、まあそういう論点もないし、だいたいからして「預金在庫論」ですから、もう話にならんわけですよこれが、というか日銀の政策委員4年以上やっててこれってのは「進化した」とか言ってた置物師匠も大概にアレでしたが、進化すらしないのってアレオブアレというか、究極のアレという感じでこれを任命したのは以下同文って感じですわ。


・ジンバブエvsMMTファイッ!!

さっきの質疑の後半部分。

『(問)(前半割愛)もう一点は、今日の議論とは関係ない点なのですが、MMTについてお伺いできればと思います。アメリカ発の話なのですけれども、日本 銀行と日本政府が実証してきているというようなことも言われています が、今日本がやっている財政政策、金融政策との違いはどこにあるのか、あるいは同じなのか、原田委員のご認識と合わせてお伺いできればと思っております。』

キタコレ。

『(答)(前半割愛) 二番目のMMTにつきましては、まずMMTというのは、人によって違うことを言っておられるようにも思いますが、基本的には通貨発行権を持っている政府が自国通貨で借金をしている限りは、債務返済で破たんすることはなく、財政赤字は問題ではないという議論だと思います。』

ふむ。

『そういう議論だとすると、まず自国通貨で借りている限り政府は破たんしないというのは正しいのですが、破たんしない代わりに必ずインフレになってしまいます。』

うむ。

『ですから、インフレも破たんのうちと考えれば、それはちょっとおかしいのではないかという議論になると思います。』

そうですな。

『MMT論者によれば、インフレになるのであれば、それを止めるために増税をするなり、政府支出を減らせば、コントロールできるということですが、現実問題としてそういうことができるのかというと、私は非常に怪しいと思っています。(後半割愛) 』

>現実問題としてそういうことができるのかというと、私は非常に怪しいと思っています。

なるほどそうですな、それではここでジンバブエ先生のジンバブエ理論について確認してみましょう。

https://jp.reuters.com/article/interview-waseda-idJPKBN0KM0FA20150113
2015年1月13日 / 15:33 / 4年前
インタビュー:日銀は景気重視を、国債買入増も選択肢=早大教授

(どうでも良いけど何でこのタイトル個人名じゃなくて「早大教授」なんだろ・・・・・・・)

『一方、国債買い入れの増額について「国民の借金を日銀が減らすことだ。誰も困らず公平である」とした。』(上記URL先より)

えーっと、ジンバブエ先生のジンバブエ理論によりますと国債を日銀が買うと国の債務がチャラになる、というムガベ大統領も嬉しさの余り踊りだしてしまうジンバブエ理論を御提唱されていたと思いますが、MMTは非常に怪しいと仰せならば「日銀が国債買ったら借金チャラ論」の方がもっと怪しいようにしか見えないのですけれども不肖不勉強にしてよくわかりませんのでご教授いただけませんでしょうか?????????

#以下の部分はまあ読む意味もないのでパスということで







2019/05/23

お題「ジンバブエ先生長崎金懇挨拶ェ・・・・・・・・・・・・」

昨日はお題と小見出しで「パウエル」と書くべきところを無意識のうちに「バーナンキ」と書いてしまいまして、読者様からご指摘を受けるまで気が付かなかったのですが(汗)、学校で寝惚けて先生に向かって「おかあさん」と言ってしまった後のような顔をしておりました。どうもすいませんすいません(さすがに皆さんそこはパウエルで読み替えて頂いたと存じます)。

・・・・・・さて昨日申し上げましたように、昨日はジンバブエ先生の金懇がありましたので、市場に対するインプリケーションは1ミリも存在しませんが、本日はお約束のように金懇ネタで参ります。なお市場に対するインプリケーションがあるかもしれないFOMC議事要旨とかいうのがあるような気がしますが今日は見なかったことにしますのでご了解の程よろしくお願い申し上げます。


〇鬼気迫らないのですが色々なものが集大成になってきた感といえば良いでしょうか

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190522a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190522a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員 原田 泰

後日HTML版も出ると思いますが、とりあえずはPDF版しかありませんので引用はPDF版になります(HTML置いてるのは後日自分で使うかもしれないから便宜的に載せているだけ)


・のっけからこの話の繋がり方と言い藁人形論法振りと言いという感じで先を期待させます

『はじめに 』という最初の部分から先を期待させるジンバブエ節である。

『本日はお忙しい中、長崎県を代表する皆様にお集まり頂き、懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。皆様の前でお話しできるのを大変光栄に思います。また、皆様には、日頃から私どもの長崎支店をはじめ、日本銀行各部署の業務運営に多大なご協力を頂いており、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。』

という世間並みの言葉から始まりまして、

『80 年代まで主要先進国の中でもっとも高い成長率を誇っていた日本の成長率が、90 年代以降低下してしまったことは皆さまよくご存じのことです。低成長は 90 年代からですから、もう 30 年間低成長のままです。物心ついた時には低成長だったという方は、すでに 40 歳になっておられる訳です。バブルのころ新入社員で楽しい思いをした、あるいは資産価格の変動で酷い目にあったと覚えておられる方も、もう 50 歳を過ぎておられます。』

とまあここまでは良いのですが、

『「経済が低成長でも構わない。経済よりももっと大事なものがある」とおっしゃる方は多いのですが、「低成長は年金の切り下げになりますよ」と言われると「それは困る」という方ばかりです。福祉の充実した北欧諸国は、皆日本より経済的に豊かな国です。』

何故かここで話が唐突に飛ぶのがジンバブエクオリティでして、前半の「という方ばかり」というところで早速藁人形が出てくるわけでして、そういう話はどこでしたのかと問いたいし、そもそも年金の切り下げ云々は人口動態の変化に対応できていない年金制度の問題をどうするのかという設計の話も絡んでいるから「低成長だから年金切り下げ」とかそんな単純な話じゃないでしょという話なんですが、そんな雑な説明で良いんですかねえ。

でもってその次に北欧の話が出てくるのはこれまた唐突感があるのですが、更に凄みを感じるのは、上記のように「福祉の充実した北欧諸国は、皆日本より経済的に豊かな国です」というのは良いのですが、どのように豊かなのかというデータを示すこともなく、しかもこの後北欧諸国との比較をするような話をするでもなく、話の中に唐突にこの一節だけがぶっこまれるというこの脈絡の無さで、アドリブで喋ったのがそのまま講演原稿になっているんじゃないかと思ってしまう位にワケワカラン。

で、先ほどの「福祉の充実した北欧諸国は、皆日本より経済的に豊かな国です。」の次がこれです。

『また、人々が寛大さや合理的な判断能力を失うのは、経済が苦境にある時です。日本の昭和恐慌から戦争に至る道を考えても、このことはご納得いただけると思います。経済が良好な状況にあることは重要です。』

貧すれば鈍すとは言われますのでそうですなあと思いつつ、経済が苦境にある中で寛大さや合理的な判断能力を失って置物リフレ理論などを導入しましたなあと思うと中々味わいがあります。

ところでジンバブエ先生って以前「正しい金融財政政策をしたのに戦争になった」って例を出していたと思うんですが、結局どっちなんですかねえ。

https://jp.reuters.com/article/harada-germany-polcy-idJPKBN19K1JT
2017年6月29日 / 21:11 / 2年前
原田日銀委員、ヒトラーが「正しい財政・金融政策」 悲劇起きた

経済が苦境にあったからヒトラーに引っ掛かった、という理屈ではありますが、でも正しい金融財政政策して経済が良好な状況にあったって合理的な判断能力を失ったってことですわな。経済が悪い状態よりも良い状態である方が良いに決まっていますが、(大体からして日本の昭和初期だって特に昭和10年代の頭の方って日本経済は良好な状態と言われていたように)日本の昭和恐慌から云々というような説明をこういうのに使うのは説得力を出そうとして却って謎のツッコミどころを醸し出しますなあ。

というかジンバブエ先生ってこの辺の表現を見てて思うのですが、説明を説得力あるようにするとか分かりやすくするとかの考えで例え話を交えて説明しようとしているのですが、その出し方が微妙に斜め上なので却って話がわけわからなくなるという特性があるので、綴り方教室あたりからやり直した方が良いのではないでしょうか。


・物価目標が大事だという話から本領発揮

『本日は、まず第1に、日本の低成長を労働、資本、TFP(全要素生産性、技術進歩)の3つの要素に分けて、かつ世界的に考えてみます。第2に、低成長との関連で、なぜ2%物価目標が必要か、第3に、高圧経済と成長との関係、第4に、低金利と銀行経営の関係、第5に、最近の経済情勢と金融政策についてお話ししたいと思います。』

ということで成長率の要素分析をしているのが1番目で、なんか微妙に怪しさを感じるのですがそちらのツッコミは後日出来ればするという感じでまいりまして、まずは『2.なぜ2%物価上昇目標が大事なのか 』という小見出しから。

『前節で述べましたように、日本ばかりでなく主要国も、低成長、低インフレに悩まされています。大陸ヨーロッパの国々も、2%の物価目標を達成できていません。では、なぜ2%物価上昇が大事なのでしょうか。他の国も達成できないなら、日本も達成できなくても良いではないかという声もあります。日本銀行は、2%物価上昇が大事な理由を3つ挙げています6。』

いやまあ別に良いんですけど、ジンバブエ先生の講演原稿が読みにくい理由って今引用した部分がまさにそうなんですけど、前後の文脈の話が途中途中で飛ぶというか文章をつなぐ接続詞とか接続助詞みたいなの使い方が悪いのと、前後の文脈を繋ぐ言葉が足りないんですよね。

上記のだったら、「大陸ヨーロッパの国々も、2%の物価目標を達成できていません。”それにもかかわらず”なぜ2%物価上昇が大事なのでしょうか。他の国も達成できないなら、日本も達成できなくても良いではないかという声もあります”がそうではありません。なぜ必要なのか、”日本銀行は、2%物価上昇が大事な理由を3つ挙げています6。」とかそんな感じで話の流れを補う表現を入れればとか思うのよね。

つまりですな、会話しているんだったらその流れで話が微妙に飛んでもその間って脳内で補完されて話が繋がると思う(程度問題だと思うけど)んですけど、文章に落とした場合って話を繋げて書いて行かないとその途中飛ぶ部分で読む方が一々引っ掛かってしまい、それが「読みにくい文章」につながるんですよねえ、などと自分の駄文の事を考えると冷汗が出てきますが、まあ自戒を込めて思うのでありました。


・・・・・・・・などという話はまあどうでも良いのですがその次。

『これを私なりに要約しますと、第1に、消費者物価上昇率の統計には上方バイアスがあり、ゼロ%インフレを目指すことはデフレを目指すことになりかねないことです。第2に、ゼロ%インフレを目指せば長期的に成立する均衡金利も、名目で見ると、低いものになってしまいます。そうであると、いざ不況の時には金利を下げる余地がほとんどないという状況になります。それを避けるために、インフレ率の上昇によって得られる名目金利の「のりしろ」が必要です。第3はグローバルスタンダードです。世界の主要国が皆2%インフレ目標を持っているときに、日本だけ、より低い目標を持てば、結果として円高をもたらし、企業の投資計画に混乱を与えるということになります。また、世界と同じインフレ率を保てば、長期的には為替の安定に寄与するということだと思います。』

ボスキンバイアスとインフレをある程度の所にあった方が金利政策での対応余地があるという話と、名目の物価目標を並べておかないと為替レートガーという話で、まあこれはこれ。

『これらの議論のうち、私は、もっとも重要なのは、第2の「のりしろ」論だと思います。』

いやいやいや、3番の為替じゃないのですかねえ、とは思いますが鑑賞してみましょう。

『これについて私の考えを述べたいと思います。これは、過去、日銀が唱えていた「のりしろ」論とは全く異なります。これまでの「のりしろ」論は、金利が低すぎれば不況の時に刺激策がなくて困るので、景気回復が十分でなくても、早めに引き上げるということでした。』

正面切ってそんなことを言う日銀を屏風の中から出してください。すくなくとも「金利を引き上げるのに十分な経済状況にある」と言って金利上げていましたが。

『その結果は、大失敗です。 十分な物価上昇のモメンタムを確認してから利上げを行うことが正しいのりしろ論です。インフレによって金利が高くなることが期待されているのです。現在の日銀ののりしろ論は、過去の誤ったのりしろ論とは全く異なるものであることを強調しておきたいと思います。』

まあこの後出てきますが2006年の利上げを大失敗とか言ってるんですが、あれはサブプライムバブル崩壊のせいで日銀が利上げしたからバブルが崩壊したわけでもないし、それにあの時に利上げ無かったら利下げ対応もできなかったと思いますけどねえ。まあそこはさておき、この「糊代論」の説明にまた唐突にこういうのが入る。

『銀行とは、短期で資金を調達して、長期に貸し出すものです。』

急に何を言い出す???

『短期金利に比べて長期金利が高ければ利鞘も高くなります。短期金利は長期金利ほど高くならないのが通常ですので、インフレ率の上昇によって金利が高くなれば、銀行は利益が得られることになります。』

色々とツッコミどころが多くて頭がクラクラするんだが。

『では、そうであるなら、なぜ銀行は一刻も早い金利の引き上げを望んだのでしょうか。』

話の飛び方が尋常ではない。

『おそらく、金利を下げて景気を刺激することで物価が上がり、名目金利も上がるというメカニズムが十分に理解されていなかった、あるいは、理解されていたが待つことができないほど金利の上昇が渇望されていたということでしょう。』

だったら今すぐ「金利を下げて景気を刺激することで物価が上がり、名目金利も上がるというメカニズム」とやらを見せていただけませんですかねえ原田大先生。

『また、日本銀行の行っている大規模な資産買入れやマイナス金利政策は異常なものだから一刻も早く「正常化」しなければならないという方はたくさんおられます 7。』

いつの間にやら「糊代論」に関する私の考えとやらがどこかに行ってしまって全然話が別のものになっているのですが大丈夫かこの人???

『しかし、何が正常で何が異常かの根拠が説明されることはありません。』

はああああああああああ???????????

『2000 年のゼロ金利政策の解除も、2006 年の量的緩和の解除も、「正常化」の試みだったのでしょうが、大失敗でした。早すぎた金融引締で景気の悪化が懸念され、長短金利差はむしろ縮小してしまったからです 8。』

2000年は兎も角(2000年はITバブル崩壊によるバランスシート毀損の影響を軽視してた節がある、と思ってる)として2006年の解除で景気の悪化が懸念されって全然違うだろお前は何を言ってるんだ(その後の悪化はサブプライムバブル崩壊からの欧米発)。

『現在、米欧の長短金利差も縮小しています。これはこれまでの金融引締めが景気を冷やしたからだと言われています。』

えーっと、欧州は引き締めてませんし、米国は短期政策金利水準が中立金利レベルまで上がってきたから(本当にそうなのかはともかくとして)ということですし、景気を冷やしたからとか言うんだったらおんどれの景気判断どうなっとるんじゃ(という話は後にあるが本日はそこまで手が回らない予定)・

『現在の日本でも金利を直ちに引き上げれば、長短金利差は逆転してしまうでしょう。』

マイナス金利政策とYCC止めたら普通にスティープすると思いますが。


・物価が景気のバロメーターだという理屈を出してきて盛大に自分の首を絞める面白説明キタコレ

さてこの部分まだ続きます。

『さらに2%インフレ目標にコミットする理由があります。』

ほう。

『これは実際にどれだけ景気が良いかよく分からないことです。』

前後の日本語の繋がりが相変わらずのアレだが、これはどういうことかと言いますと・・・・・・・・・・・・

『具体的に言えば、それ以上引き下げたらインフレになるという限度である構造失業率がいくらなのか、実はよく分かりません。』

話があっちゃこっちゃ飛びすぎですが。

『仮に構造失業率を3%台前半から半ば程度などとする推計値をもとに金融緩和を止めていたら、現在の2%台前半の失業率は実現していません9。今後さらに低い失業率が実現するだろうと思います。直接物価を目標にしたからこそ、より低い失業率を実現し、バブルにもなっていません。賃金の上昇を受けて、非製造業の企業などにおいてはビジネスプロセスの改善や省力化投資も進んでいます。』

ということなので、たぶん構造失業率のようなものは事後的にしか分からないのだから、例えば物価以外の指標として失業率を使って政策判断するのは宜しくない、ということを言いたいようです。

『すなわち、明確な物価目標を持つことで、大胆な金融政策の発動が可能になり、経済を回復させることができたのです。』

となっていますが、「金融政策運営において実際にどれだけ景気が良いかよく分からないので物価2%目標を置いて運営する」ということですと、2%物価目標を全然達成していない、という今の状況は「景気のバロメーターとして設定している目標数値に経済情勢が全然届いていない」という状況である、というのと同義になりますので、「経済が良くなっていない」という話になってしまうわけで、何で「経済を回復させることができた」となるのかさっぱり分からないのですが。

でもってその後政府債務がどうのこうのの話がありますがそこは割愛して次のコーナー。


・現象に対する理解がナイーブなのか説明が雑なのか分からんけど・・・・・・・・・・・

『3.高圧経済と実質成長 』という所ですが、そもそも高圧経済アプローチがちゃんとワークしているんだったら物価目標達成しろよという話であって、曲がりなりにも物価と雇用がマンデートに達成した米国が言うならともかく、日本が高圧経済アプローチでこれだけ効果があったみたいな説明をするのは図々しいにも程があると思います。

でもってそこの先が毎度おなじみのジンバブエ先生謹製の風が吹けば桶屋が儲かる理論なのですがその辺にネチネチ突っ込んでいるともっとツッコミたいところに時間が無くなるので(計画的時間配分)この分は先生の雑な説明を鑑賞しましょう。

『また、不況になるとは、仕事がないことですから、運良く仕事に就いた人は、なんとかその仕事を失わないようにします。ブラック企業とは、仕事のない中で、なんとか得た仕事を失いたくない人びとに付け入って、過酷な労働をさせる企業です 12。』

まあこの辺からの話ですけどね、

『また、大企業は、そう簡単に人を解雇できませんので、不満を抱え、先の見通せない人々を大量に抱え込むことになります。こんな状況では、利益も生産性も高まるはずがありません。』

ほほう。

『景気が良くなれば、労働生産性の低い仕事を止めてしまうということもあります。不況になって売り上げが落ちれば、お店を開けている時間を増やしていくらかでも需要を取り込もうという動きが現れます。好況の時には、この逆のことが起きます。人手不足になれば、深夜まで営業していた飲食店も早めに店を閉めてしまいます。昼と夜の書き入れ時だけ営業すれば、労働生産性は高まります。』

この物凄く雑な説明は何なんでしょ。

『人手不足になれば、人々は新しい仕事に就くことができるようになります。ブラック企業から人々は逃げ出し、先が見通せないまま大企業にいた人々も、新しい仕事を求めて移動します。自分の価値をより高く評価してくれる企業に移るのですから、経済全体の生産性が高まるはずです。生産性の問題だけではありません。自分をより高く評価してくれるところで働くことは、人びとの幸福度を高めるはずです。生産性と幸福度の両方が同時に高まり、TFP も上昇します。』

簡単に解雇できないのに何でそう簡単に「仕事を求めて移動」できるのかと小一時間という所でして、なんかこう物凄く説明が「浅い」んですよね・・・・・・・・・・・・・・・・


・相変わらず銀行に悪態ついているようですが色々とこれはひど過ぎる

ということでそこらへんは飛ばしまして本日のメインイベントは『4.低金利と銀行経営 』。

まず最初からおかしい。

『低金利は人手不足を引き起こし、生産性と幸福度を高めている訳ですが、これが銀行経営の困難を引き起こしているという議論が度々聞かれるようになっています 14。』

日本語がおかしい。前半の話関係ないし、「これ」は「低金利」なのでしょうが、この文章の書き方だと「これ」が「人手不足を引き起こし生産性と幸福度を高めているということ」を示すように読めるような書き方になっていて、いかにも銀行経営の困難を言う人間が人びとの幸福を阻害するかのように読める書き方をしているのがもうゴミクズ。

この部分ってジンバブエ先生の日本語が下手というよりも悪質な印象操作をするための書き方にしかみえない(ちゃんと書くなら、「これが」じゃなくて「その一方で、低金利が」という形できちんと書けばいいだけのこと)ので、もう入口の時点からジンバブエ先生の悪意を感じて早速血圧ゲージ上昇ですよ。

『しかし、私は、経営悪化は、むしろ、貸出先がないのに預金が集まってしまうという、銀行の構造問題に依るものであると考えています。』

資金循環というのをちゃんと理解された方がよろしいのではないでしょうか、貸出が無くて預金が集まるのは政府部門が大幅な資金不足となっているからバランス上民間が資金余剰になってそれが資金仲介の部分で銀行預金に跳ねるって話なんですけど。

『QQE 導入以来、国内銀行の貸出は、2019 年 2 月までで 71 兆円増えていますが、預金は 144 兆円も増えています(日本銀行「民間金融機関の資産・負債」)。本来、銀行業界には、71 兆円も貸出が伸びるような金融政策を前向きに受け止めて頂けるのではないかと私は思っているのですが、非難と不満は絶えません。』

そしてこの次が凄い。

『その理由は、貸出よりも預金が増えてしまって、運用に困っている銀行があるからです。』

まあここは良いとしまして、

『もちろん、信用乗数のメカニズムによって貸出が増えれば預金も増えるのですが、このメカニズムだけでは貸出の2倍も預金は伸びません。』

??????????????????????????????????????????

いやあの正直申し上げて「信用乗数のメカニズムによって貸出が増えれば預金も増えるのですが、このメカニズムだけでは貸出の2倍も預金は伸びません」という説明の意味が全く分からないんですが。

『運用に困っているなら、預金が集まらないようにすれば良いのではないかと思います。』

パンが無いならケーキを食べれば良いじゃないというジンバブエアントワネット理論キタコレですが、そんなこと言いましてもマクロの資金循環的に民間の資金余剰は発生するんですからどこかで預金が超過するところが発生するんですがその辺大丈夫でしょうか、と思いますがもっとひどいのはこの直後に出てくる。


・お前それ覚悟持って発言してるの???????

この次のパラグラフが今回のジンバブエ講演の最大の見どころになります、では行きましょう。

『これに関連して、地域金融機関に人材が集まらない、中途退職するという報道があります 15。報道では、これが困ったことであるかのように書かれていましたが、結果的に必要以上の預金集めに充てている人員や店舗の削減につながる面もあります。これは、銀行業、ひいては、日本経済全体の生産性を上げることにもなります。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやー凄いですよね、自分らの大規模緩和が6年たっても全然成果が出てこないで更に長期化するとか言っている事への反省の弁もないのにこれですよ。

そらまあ一つの意見としてどっかのサロンで紅茶片手にそんな話をする向きだってあるでしょうけれども、ジンバブエ先生は経済運営の一環を担う日本銀行の政策委員会委員という立場の人間でしょ。そんじょそこらのへっぽこ評論家やらへっぽこ学者が偉そうに話をするのとは違うんですよ立場分かってますか???

でまあそういう方がこの「地方は滅びろ」と言わんばかりの発言を堂々とその地方の方々の前で言い切ってしまうというのは、人間としての心とかどうなってるんだと思いますし、さっきまで言っていた「幸福を引き上げる」云々とかいうのは所詮自分の正当性をアピールするためのただの飾りなんですよね、というのが非常によくわかる発言ですよね、まあネオリベ(というような手垢のついた術語はあんまり使いたくないが)の正体見たりとはこの事だなと思いましたわ。

しかしまあ何ですな、長崎金懇ということで、長崎を代表する方々というお立場のある方々だから無事に済むわけでして、これ同じことをもっと別のシチュエーションで言ったり、それこそ労働争議盛んだった時代とかに面と向かって労働者の皆様の前で言い出そうもんならどうなるのかとか、そういう想像力も無いんだろうなあとか思うのでした。何ちゅうか人間の温かいハートみたいなのが全然感じられませんですなこの部分の発言。

いやね、日本経済の生産性向上のため地方は中核都市だけ残して後は原野に戻すし人は強制移住みたいなことを命掛ける覚悟と信念をもって話をしているってんだったらまだしも、この続きの部分が情けない。


・その上銀行業務に関する理解が「銀行はATM業務」ってアホかと馬鹿かと

でもってその次が更にひどい。

『もちろん、銀行の店舗が減少すれば、利用者の利便性は低下します。だからいけないという批判もあります 16。しかし、そもそもお客が少ないからお店を閉めようとする訳です。預金口座を持つことは基本的人権に含まれるという議論に私は賛同いたしますが、郵便局、農漁協、信組、コンビニやスーパー内の銀行もあります。預金口座は様々なところで持つことができます。』

・・・・・・・・・よくこれまで「エコノミスト」「日銀政策委員」やっていたと呆れてしまいます。

#他にもいろいろとツッコミどころがあるような気がしますが、時間も無くなってきたのでこの辺で

#しかしこんな金懇に付き合わされた長崎の各界の皆様にご同情申し上げるとともに、この後長崎支店長はどんな火消しをしたんでしょうと思うと長崎支店長カワイソスとしか申し上げようがない





2019/05/22

お題「今日は原田審議委員の金懇ですよ/ところで15年金利/バーナンキ講演は企業の財務レバレッジをネタに」

「二酸化炭素をゼロ」って真空ポンプで引くのかよと小一時間ですが(笑)。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190521/k10011923621000.html
2050年に都内のCO2を実質ゼロに 戦略策定へ 小池知事
2019年5月21日 14時00分 環境

・・・・・・・・二酸化炭素無くなったら生物の殆どが存在し得なくなりますが、という話ではなくて排出量の話をしているようなのですが、それを上記のような見出しにしてしまう報道の端折り方は如何なものかと。

なおこの都知事先生は「ゼロ」とかいう抹殺計画大好き姐さん(個人の感想です)なので、過去の選挙の公約でも「都道の電柱ゼロ」、「待機児童ゼロ」、「満員電車をゼロ」などなどその後どうなっていやなんでもありません。


〇本日は何とアレがありますよ!!!!

http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
公表予定

22(水) 10:30 ○ ● 【挨拶】原田審議委員(長崎)

・・・・・・・ということで大先生のありがたいお話が聞ける(紙でしか読まないけど)というアリガタヤアリガタヤな企画が長崎で金懇と言う事で挙行されるようですが、いやこの先生の金懇って

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/index.htm/
講演・挨拶等 2019年

をご覧になると分かるように、前回の金懇から3か月弱しか経過しておりませんで、概ねそれまでが半年をちょっと超えるペースでやっていたので、来年の任期満了を近くにどんな風の吹き回しだと思うのであります。

ただまあ何ですな、昨年7月に金沢(石川県金懇)で行われたまさに神懸った鬼気迫る講演の次の回になった先般3月の甲府(山梨県金懇)の講演が神成分も不足していましたけれども、何といってもあの昨年7月の石川金懇の文章というのは読むものをしてジンバブエ先生の作る結界に引きずり込まれそうな鬼気迫るものを感じてしまう(婉曲表現)書きっぷりだったのですが、そこから比べますと前回は温泉旅館で風呂上りに牛乳でも飲んでいるような程度の迫力しか感じなかったという事案がありました。

という経緯を考えて、さて今回どういう話があるのか、昨年7月のあの鬼気迫る気迫をまた見せてくれるか、と白装束に身を固めて潔斎沐浴して金懇挨拶を待ちたいと思いますがそんなことすると怒られますので普通にPCのモニターを熟視したいと思います。


しかし半年超位のペースで来てたのに何で急にこんなに素早く金懇の次が入るんじゃろとは思ったのですが、気持ち先生のペース遅めなので最後に帳尻を合わせに来たとかそういうことなのか、実はこのタイミングで満を持して言いたいことがあってそれをぶつけに来た(後者の方が見世物として面白い)のか、というのが気になります。

なお、どうせこちらの金懇が出ると、鑑賞会という名のアタクシのただの駄文への期待が高まるというのが仕様な訳ですが、本日は諸般の事情で明日に向けての夜なべタイムがさほど取れないかもしれません。まあ内容によってはその気迫がこっちにも乗り移って、昨年7月の時みたいに夜なべ〇時間必死こいて実施というのもアリエールではありますが。



〇さらに雑談であるが

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
売買参考統計値/格付マトリクス ダウンロード

毎度おなじみのこ奴でございますが、本日は「そういえば残存15年ゾーンの国債金利っていくらでしたっけ」というのを思い出そうという企画(ただの悪態)ではあります。

昨日引けの時点で作成されている本日付の売買参考統計値を見ますと・・・・・・・・・・・

超長期国債(30)14 2034/03/20 2.4 132.73 +9 0.164 0.145
超長期国債(30)15 2034/06/20 2.5 134.55 +9 0.177 0.155
超長期国債(30)16 2034/09/20 2.5 135.02 +10 0.182 0.160

左から順に銘柄、償還日、クーポン、売買参考統計値平均値、前日比(銭)、平均値を複利に換算したもの、平均値を単利に換算したもの

とまあそうなっておりますが、これを見ますとどこからどう見ても「残存15年程度の長期国債利回りが0.2%を下回る水準で推移」となっていますので、片岡大先生が最初に追加緩和が必要と提案し、その時に「具体的な施策も無くて緩和しろだけかよ」という批判を受けて必死に考えた結果満を持して登場したのが「片岡委員は、イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げ る観点から、15 年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うこと が適当であるとして反対した。」って奴でしたので、これはもう片岡さんの追加緩和提案が勝手に市場で現出している、という大変に素敵な事態になっております。

となりますと、やはりこの金利低下効果によって物価上昇の勢いが上がるという話になるはずですが、相変わらず片岡さんは具体的手段の話はしないで追加緩和だ財政との協調だとかいう話を展開しておられる訳ですが、現実に片岡さんの提案していた「15年国債金利が0.2%未満で推移」というのが続いてきた時に当初片岡さんが企図していたような事が起きるのか、という点について、ちゃんと提案をしたんですから、当初の提案していた時の目論見通りの効果をこの超長期金利低下が果たすのか、というのをキチンとレビューして頂いて、間違ってここから物価がホイホイ上がって繰ればドヤ顔すればいいと思いますし、別に物価にろくに影響なかったというのであれば、元々の「15年国債が0.2%未満」をどのように計測したのか、その計測の際の波及効果などを考えた理論がおかしかったのか、それとも前提としている市場金利のセッティングがおかしかったのか、などについて是非独自研究をして頂きたい、とまあ斯様に思ってこんな事を申し上げる次第(^^)。



〇バーナンキ講演だが企業債務がどうのこうのの話

昨日はクラリダ副議長の講演もあったのですが、こちらは初見でネタにするにはちと面倒(ざっと見てちょっと論旨が散っている感が)と思ってパウエル方面に退避行動。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20190520a.htm
May 20, 2019
Business Debt and Our Dynamic Financial System
Chair Jerome H. Powell

At "Mapping the Financial Frontier: What Does the Next Decade Hold?” 24th Annual Financial Markets Conference, sponsored by the Federal Reserve Bank of Atlanta, Amelia Island, Florida

マクラの途中から。

『In public discussion of this issue, views seem to range from "This is a rerun of the subprime mortgage crisis" to "Nothing to worry about here." At the moment, the truth is likely somewhere in the middle.』

つまり何も心配することはない、という訳ではないというのが今の状況ですよ、という話だがまあそうしないと「政策は上下とも動かさんもんねー」と矛盾が生じるのでそう来るのは自明。

『To preview my conclusions, as of now, business debt does not present the kind of elevated risks to the stability of the financial system that would lead to broad harm to households and businesses should conditions deteriorate. At the same time, the level of debt certainly could stress borrowers if the economy weakens.』

ほぼ出オチでこんな話になっていて、「企業の財務レバレッジが高まっているので、次の経済のダウンターンの時にはこの財務レバレッジが逆回転して問題が発生するよ注意しましょうね」、「ああでもそれによってこの前みたいな金融危機に発展する訳ではなく、米国の金融システムはその問題を吸収しますよ」というお話。

『The Federal Reserve continues to assess the potential amplification of such stresses on borrowers to the broader economy through possible vulnerabilities in the financial system, and I currently see such risks as moderate.』

まあ今度時間を作って米国のFSR読んでみるかいなとは思いますが、先日のブレイナード理事の講演でも金融不均衡の積み上がりの可能性は散々指摘しているけれども、それはレギュレーションで規制しつつ、金融機関の資本を厚くしたので損失吸収力はあり、流動性規制を強めたのでファンディングニーズからの投げ売りスパイラルも起きにくくなっているのでヘーキヘーキ、という結論になっておりましたが、まあマクラの部分で概ねこのネタはお察しモードという感じですな、で終わりにするのも何なので本文をちょっとだけ。


・CLOキタコレですが別にいちゃもんつけまくっている訳ではない

『Discussion』ってところから。

『Many commentators have observed with a sense of deja vu the buildup of risky business debt over the past few years. The acronyms have changed a bit-"CLOs" (collateralized loan obligations) instead of "CDOs" (collateralized debt obligations), for example-but once again, we see a category of debt that is growing faster than the income of the borrowers even as lenders loosen underwriting standards.』

ここ数年のCLOとCDOにかつてのリスキーな負債の積み上がりを感じるというコメントが多い、といきなり名指し。

『Likewise, much of the borrowing is financed opaquely, outside the banking system. Many are asking whether these developments pose a new threat to financial stability.』

でもってこれがシャドウバンキングの中で行われていますというのもかつてのアレに似ていまして、これがかつてのアレの再来になるのか質問する人が多いです、と来まして・・・・・・・・・・・

『At the Federal Reserve, we take this possibility seriously.』

その可能性は真剣に注視している(キリッ)。

『The Fed and other regulators are using our supervisory tools and closely monitoring risks from the buildup of risky business debt. Business debt has clearly reached a level that should give businesses and investors reason to pause and reflect. If financial and economic conditions were to deteriorate, overly indebted firms could well face severe strains.』

過大な負債を持つ企業は経済が逆回転したときのダメージが大きいので、そういう事に繋がる企業与信拡大には注視していますとな。

『However, the parallels to the mortgage boom that led to the Global Financial Crisis are not fully convincing. Most importantly, the financial system today appears strong enough to handle potential business-sector losses, which was manifestly not the case a decade ago with subprime mortgages.』

とは言いましても、前回のアレと違って現状では金融システムはビジネスセクターの潜在的なロスを吸収するには十分の資本バッファーがありまっせ。

『And there are other differences: Increases in business borrowing are not outsized for such a long expansion, in contrast to the mortgage boom; business credit is not fueled by a dramatic asset price bubble, as mortgage debt was; and CLO structures are much sounder than the structures that were in use during the mortgage credit bubble.』

しかも前回のモーゲージブームの時どだいぶ違うのは、現在の企業の買入がそんなに長期間のローンでないこと、企業信用を支えるものが資産価格のバブルによるものではないこと、(モーゲージは住宅価格上がるから信用度高いという回転があった)CLOのストラクチャーは過去のモーゲージと比べてストラクチャー自体を健全に作っていること、などがありまっせ、だそうです。

次のパラグラフに行きますと、

『Could the increase in business debt pose greater risks to the financial system than currently appreciated?』

ほほう。

『My colleagues and I continually ask ourselves that question. We are also taking multiple steps to better understand and address the potential risks. In conjunction with other U.S. regulatory agencies, both domestically through the Financial Stability Oversight Council (FSOC) and internationally through the Financial Stability Board (FSB), we are monitoring developments, assessing unknowns, and working to develop a clearer picture. We are also using our supervisory tools to hold the banks we supervise to strong risk-management standards. And we are using our stress tests to ensure banks' resilience even in severely adverse business conditions.』

まあ要するに色々とみていまっせ、という話になっておりまして以下
『The Rise of Business Leverage』
『Risks to Financial Stability: Using the Framework Deployed since the Crisis』
『Addressing the Risks: Monitoring and Acting』

とあるのですが、例によって残り分量と段取りと頭の回転の関係上時間が無くなってしまいましたので、続きはまた後日という感じですが、だいたいの論点は前半のディスカッションの所で片が付いているようには思えた(寝起き斜め読みなので見落としがあるかもしれないの勘弁な)のですが、まあ要するに企業の財務レバレッジが上がってきている面があるのは気になりますなあ、とは言えそれで別に金融システムにダメージみたいな話には今のところなっていないけれども、なんかの拍子に投資大ブームヒャッハーとかになったらそれはそれで影響出るからちゃんとウォッチはするし必要な手綱は金融政策ではなくて(ポイント)プルーデンスとか規制とかで対応しまっせ、という話をしているようでございます。金融不均衡を気にして正常化路線継続、というのではない、ということは確実に読み取れそうな感じっすね(それはそれで円債村としてはションボリーヌではある)。







2019/05/21

お題「金曜の総裁講演は市場ネタには使えない講演ですがまあ降参振りは中々のもの」

おじちゃんの記憶にある昔は梅雨といえばダラダラ雨が降る感じでしたが、最近の雨は梅雨の走りから無慈悲な降りっぷりをするのはアカンですなあ。

〇内外情勢調査会での総裁講演とかあっても市場ちゃんは反応しませんが

って金曜の講演を火曜にネタにする方もどうかと思うのだが、何せ市場ちゃんが1ミリも反応しないので致し方ない訳ですな、うんうん。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190517a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190517a1.pdf
経済・物価見通しと金融政策運営
内外情勢調査会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年5月17日

引用の方は(便利なので)HTMLの方から行います。

・経済情勢に関する先行きがヘーキヘーキという根拠について

珍しくも経済見通しの所(基本的に展望レポートを焼き直して読んでるだけというケースが多いので読むまでもないことが多い)で一応先行きが大丈夫と考える根拠というのを出していますな今回は。

でまあ普段そんなの出さないのに出すという時ってえのは(1)何か政策アクションを実施することを考えているので補強しておきたい、(2)先行きについての展望レポートベースでの説明だと世間が納得しなさそう、ってな感じだと思うのですが(あるいは実施した後の自己正当化になるがその時は普通展望レポートとセットで政策変更しているから展望レポート焼き直しになる)、まあ今回の講演ではついこの前(と言ってももう1か月近く経過していますが)展望レポートやったばっかりなのに割とちゃんとした補足が入っているのですな。

つーことで今回の場合だと個人の妄想になりますが、まあ消費増税再延期の話なども絡みますし、追加緩和しろ勢力との絡みもありますし、そんなこんなで先行きの経済見通しについて強いこと言って補強しないとアカンじゃろという状況なのと、まあそういわなければ行けない程度にはシナリオが怪しいってことでしょうな、などと勝手に妄想を逞しくしてみました。

ということで『2.経済情勢』の『わが国経済の現状』でありますが、

『このように、世界経済が減速するもとで、わが国の輸出や生産にも、足もと弱めの動きがみられています(図表2)。輸出は、中国向けの資本財やIT関連財を中心に年明け以降減少しており、これが、生産面の弱さや製造業における業況感の悪化に繋がっています。もっとも、これまでのところ、海外経済の弱さが、わが国の国内需要にまで、はっきりと波及しているようには窺われません。』

この辺は展望レポートとかその辺の話になりますが、昨日ネタにしたFSRでも多用されている「〇〇である、もっとも〜」が使われていますな、言いたいのは後半部分で前半部分は付けたりですな。

『設備投資は、企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続けています(図表3)。3月に実施した私どもの短観調査によれば、今年度の設備投資計画は、この時期としては、過去の平均を上回る高めの伸びとなりました。個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加しています。』

GDP一次速報ェ・・・・・・・・・・・・・・

#そういや昔はGDP1次速報をQE(クイックエスティメート)と言うのがファッショナブルみたいな風潮がありましたが量的緩和以降言わなくなりましたな、どうでもいいけど

『この間、相次ぐ自然災害の影響から、昨年後半にいったん減少した外国人観光客のインバウンド需要も、再びはっきりと回復してきています。このように、わが国では、現状、輸出や生産に弱さはみられるものの、企業や家計部門における、所得から支出への前向きの循環メカニズムは維持されています。こうした点を踏まえ、日本銀行では、わが国の景気は、「基調としては緩やかに拡大している」と判断しています。』

まあこの大本営は良いんですけどその次のパラグラフの方がこの「わが国経済の現状」部分の中で分量が多いという記述になっていて、「このように現状は大丈夫」というのをやたらめったら説明するという事になっていますが、まあだいたい自信がないとか微妙なアレの時とかにやたら説明をクドクドして偉い人に「余計な説明するな」と言われるのは世の中よくあることですから(大汗)これもまたそういう事よ。

『今回のように、海外経済の減速がわが国経済を下押しするという構図は、2015年半ばから2016年前半にかけての時期にもみられました。いわゆる「チャイナショック」として記憶されている方も多く、今回の局面との類似性を指摘する声も少なくありません。』

『もっとも、よくみてみると、当時と今では、いくつか違いもあると考えています(図表4)。』

でたなもっとも。

『第1に、輸出や生産の減少幅です。チャイナショック時と異なり、今回、輸出や生産は大きく落ち込みました。今週、内閣府が発表した景気動向指数における基調判断が、2013年1月以来の「悪化」となったのも、最近の生産関連指標の下落が大きく影響しています。もちろん、この点については、ここ数年、輸出や生産が大きく増加してきたことの反動という面があることは、割り引いて考える必要があります。実際、減少したとはいえ、輸出や生産の水準は、チャイナショック時よりもなお高い水準を維持しています。』

水準は高いとエクスキューズを入れていますが輸出や生産が減少しているというのは認めつつも大丈夫という話をする根拠はなんでしょうかね。

『第2に、内外の金融・商品市場の動きも前回と今回では異なります。原油価格は、2016年2月にかけて1バレル30ドル弱まで大きく下落し、為替市場では、2016年入り後、1ドル120円台から100円を割り込む水準まで、急激に円高が進みました。一方、今回は、昨年秋から年末年始にかけて、原油価格や内外の金融市場が一時不安定化しましたが、その後は、いずれも落ち着きを取り戻しています。少なくとも、市場の動きが企業や家計のマインドを悪化させ、経済活動を下押すような状況にはなっていません。』

なんか知らんがそんな説明になっているのだが、おじちゃん記憶が怪しいから前回そんな感じで経済活動が下押ししたんでしたっけ????

『第3に、先ほども述べたとおり、今回は、良好な企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に、国内需要や非製造業の業況はしっかりしています。こうした中、資本や労働の稼働率を示すマクロ的な需給ギャップは、2016年後半に長期的な平均であるゼロ%を超え、その後もはっきりとしたプラスを続けています。このように、戦後最長ともいわれる景気拡大のもとで、外的なショックに対するわが国経済の頑健性が着実に強まってきていることは、前向きに評価してよいと考えています。』

うーんこのという感じで、「お、おぅ・・・・・」としか言いようのない微妙な味わいなんですが、まあそういう状況なので海外発の下押し圧力何のそのという事になっているそうな、ホンマカイナという気はするが。



・先行きは内需の持続性と言っている割には消費増税の影響の話がスルーされているという味わいの深さ

『経済の先行き』の方に参りますと、途中から引用しますが。

『こうした先行きの景気見通しにおいて、重要なポイントが2つあります(図表6)。』

ほう。

『第1に、今後の海外経済の動向です。足もと、海外経済には減速の動きがみられていますが、日本銀行としては、このまま一方的に悪化していくとはみていません。世界経済の牽引役である米国経済は、拡張的な財政政策などに支えられ、今後とも拡大を続けると見込まれます。中国経済については、既に景気刺激策の効果が一部で表れてきており、今後、こうした動きが拡がってくると予想しています。欧州経済も、自動車排ガス規制の強化といった一時的な要因の影響が剥落し、減速した状態から次第に脱していくと考えられます。』

ほうほうそうですかそうですか(棒読み)。

『これらの点を踏まえると、海外経済は、当面、減速の動きが続くものの、持ち直しに転じてくると考えています。大事なことは、そのタイミングです。』

はい。

『この点、IMFは、本年後半には、世界経済の成長率は再び高まってくると予想しています。企業に対する私どものヒアリングでも、本年後半には、グローバルなIT関連財の需要も底を打つとの見方の先が少なくありません。こうして海外経済が持ち直してくれば、わが国の輸出も、それからさほど遅れずに、緩やかな増加基調に復していくと考えられます。』

海外がコケてもレジリアントであるという説明ではあるものの、さすがにそれだけでは無理がありますよね、というコンセプトになっているのはそらそうよではありますが、米中あれだけごちゃごちゃやっているとさてどうなるんでしょうかね。

『もちろん、このような見通しには、様々な不確実性が存在します。例えば、中国当局は、かつてリーマンショック後に行った大規模なインフラ投資が、その後の過剰設備・過剰債務の問題に繋がったとの認識から、今回は、景気刺激と債務抑制のバランスに配慮し、減税などに重点を置いた景気対策を実施しています。このため、今回の対策が、これまでと同様の即効性をもつかどうかは、今後の海外経済の持ち直しのタイミングにも大きく影響してくる可能性があります。半導体などのIT関連財の需要動向も、なお不確実性が高く、グローバルな在庫調整に想定以上に時間を要する可能性もあります。米中貿易摩擦や英国のEU離脱交渉の展開などについても、依然として最終的な着地点は不透明です。』

まあこの辺は順当。

『リスク要因をことさら取り上げ、過度に慎重になる必要はありませんが、日本銀行としては、先行きのリスクを、常時、予断なく点検していくことが大切だと考えています。』

と言っているところを見ると色々とヒヤヒヤしながら見てるんだろうし、でも追加緩和手段もないのにどうしようという事になっているんだろうなあというのは把握した。


『先行きを見通すうえでの第2のポイントは、内需の持続性です。』

どう見ても持続性が怪しいと思うのだがまあ見てみましょう。

『わが国経済の緩やかな拡大が途切れることなく続いていくためには、海外経済が持ち直すまでの間、内需が堅調を維持する必要があります。』

そらそうよ。

『この点、個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、当面、緩やかな増加を続けるとみられます。国土強靱化策によるインフラ投資を中心に、先行き、公共投資の増加が見込まれることも、今後の景気下支えに寄与すると考えられます。』

GDP1次速報ェ・・・・・・・・・・

『鍵を握るのは、設備投資の動向です。』

それこそYCCとかになる前は「賃金」とか言ってましたが、最近は一番見栄えがするのが設備投資なもんだから設備投資をやたら強調するのが仕様になっておりますが大丈夫なのか??

『これまでのところ、本年度の設備投資計画に、海外経済減速の影響をはっきりとみてとることはできませんし、人手不足が続く非製造業では、省力化投資を中心に、昨年以上に積極的な投資を計画する先も多いようです。しかしながら、例年、この時期の投資計画は腰だめ的な性格が強く、仮にこの先、海外経済の持ち直しに予想以上に時間を要するような状況となれば、製造業を中心に、企業の投資スタンスが慎重化していく可能性があることには留意が必要です。』

うむ。

『先ほど述べたように、良好な企業収益などを背景に、わが国経済の頑健性は一頃よりも増しているとみていますが、海外経済や市場の動向次第では、企業や家計のマインドに影響を及ぼす可能性もあるため、日本銀行としても、今後の展開を十分注視していきたいと考えています。』

・・・・・・・・・ということで先行きの見通しが出ているのですが、これ何がお洒落かと申しましても「消費増税の影響」というのがまるで記載されていないという部分な訳ですよ。

えーっと確か日銀様におかれましては金融政策における政策金利水準のフォワードガイダンスの中で、

「日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも 2020 年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」

と仰せになっていたと思うのですが、こちらでの先行き不確実性の中で消費増税のしょの字も出てこない訳でございまして、消費増税の影響が不確実性が高い云々とか言ってフォワードガイダンスを導入したのは何だったのかと小一時間問い詰めたいのですが、フォワードガイダンスそのものが何らかのコミットメントだのというものであれば、当然ながらそのタイムフレームを確実に信頼されるものとする為にもガイダンスの条件を確りとすべきだし、その条件がどうなっているのかというのについても説明をしていくことが重要となると思うのですが、フォワードガイダンスに「海外経済の動向」とかしらっと入れてゴールポストを動かした直後(というほど直後でもないがまあ1月以内だから直後みたいなもん)の総裁講演での先行き不透明要因の説明で消費増税の影響について説明しないというこの清々しいまでのロジック無視振りは、ここまで来ると逆に感心してしまいますわ。

ということでありますので、今回の講演でよくわかったことの1つは実はここの見通し説明部分にありまして、「フォワードガイダンスに関して、真の意味でのガイダンスとかコミットとかを考えているわけではなく、ただの飾りとしてぶっこんだものですよ」というのを示したという意味では中々分かりやすかったかなとは思うのでして、そらただの飾りで深い意味はないんでしたらば、決定会合後の総裁記者会見でガイダンスについて「ステートコンティンジェントからタイムコミットメントになったようですが」みたいな質問をされたときの答えが驚異的に訳分らなくなるし、過去との整合性においてナンジャソラと翌朝の駄文でアタクシが延々と悪態ついたのも。「あれはただの飾り」という事であればもう暖簾に腕押し糠に釘という奴でしたなあっはhっは、とまあそういう事になるのでありますな。

でまあどうせ政策変更できるような状況にそう簡単にならないでしょうから、金利のガイダンス自体も結果としては政策金利上げられませんということになるから、結果的にはガイダンスがそのまま達成されるという事にはなるんでしょうが、これが実はただの飾りですという事ですと、目先はまるで関係ないにしてもどこかで梯子を盛大に外される(まあ外された方が円債村全体で見れば干天の慈雨だが当然その過程で怪我人が出るので少ない人口にまた被害がががががが)という可能性も頭の片隅に入れておいた方がエエンチャウノと思うのでした(個人の感想です)。


・物価の先行きの話がもう色々と降参モード

次が『3.物価情勢』でして、最初の『物価の現状』は飛ばして次の『物価の先行き』から行きます。

『次に、物価の先行きに話を移したいと思います。先日の「展望レポート」では、2019年度の消費者物価の前年比は、政策委員の中央値でみて+1.1%、2020年度は+1.4%と見込んでいます。見通し期間最後の2021年度は+1.6%と予想しています(図表9)。』

ここは展望レポートの紹介。

『このように、わが国の物価の上昇ペースは、引き続き、緩やかなものにとどまるとみています。これについては様々な理由がありますが、その一つが、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っており、その転換に時間を要すると考えられることです。こうした過去の経験や、それに基づく人々の慎重なマインドは、主に2つの経路を通じて、わが国の物価を上がりにくくします。』

元々それを金融政策で何とかしようとしたのがQQEなのですから、そもそも論としてQQE自体の看板を残している(今の政策は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」というのは如何なものかというか、その文言残すから短期決戦レジームベースでの話しとかが出てきて話をややこしくして、益々日銀の政策がワケワカランので物価目標って何でしたっけ状態になるんじゃないのかと思う。

『第1に、マクロ的な需給ギャップが改善しても、理論面から期待されるほど、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してこない可能性です。』

ってしらっと言っているんだが、「物価上昇のモメンタム」を「需給ギャップと期待インフレ」で定義して説明しているのに「期待インフレが低位で粘着していると需給ギャップに対して物価がさほど反応しない可能性がある」となると「モメンタム」の定義自体がおかしいという話になってしまわないかこれ???

『デフレ下での厳しい雇用調整の経験などから、今なお、労使ともに賃上げよりも雇用の安定を優先する傾向が根強く、人手不足の割に賃金の上昇ペースが鈍いことも、こうした状況の一例です。』

でもって第2がこれ。

『第2に、予想物価上昇率の高まりに時間がかかるということです。』

でありまして・・・・・・・・・・・

『オーソドックスな考え方によれば、現実の物価が上昇すれば、人々が予想する将来の物価上昇率も高まり、予想物価上昇率が高まれば、それに伴って現実の物価も上昇するというように、現実と予想の相互フィードバックが作動することが想定されています。』

さて・・・・・・・・

『もし、企業や家計が、先々、賃金・物価がなかなか上がらないと予想すれば、こうしたフィードバックはスムーズに働かなくなります。』

アイヤー!!!

『この点に関し、最近の研究では、人々の予想物価上昇率は、現実の物価だけでなく、個々人の長年にわたる経験に依存する面があるとの指摘もなされています。』

ちょwwww

『人生の多くをデフレのもとで過ごした世代が増えるにつれて、平均的な予想物価上昇率が上がりにくくなる可能性もあるということです。』

って説明は良いんだが(おじちゃんのリアル小僧時代は国鉄(私鉄もだが)が毎年値上げするわ春闘でストが起きるわとかいう時代なので物価がボンボン上がるというのはちゃんと見た)、これもう降参モードに入っていますなという説明で、「早期に達成を目指すとは言っているがどう見ても早期に達成できません」と降参して開き直るのはまあ結構なんですが、だったらマイナス金利政策みたいなトンチキ政策をとっとと止めて普通の普通に低金利ですなあ程度の通常の(?)低金利政策に戻せやとしか申し上げようがない。


『もっとも、現状を過度に悲観する必要はありません。』

この「もっとも」はさすがにこの話いれておかないとただの降参モードになってしまいますからねえとは思った。

『マクロ的な需給ギャップの改善により、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比が、1年以上にわたって1%近い水準を維持していることは、日本経済にとって大きな変化です。ベースアップが6年連続で実施されるなど、デフレ下の慣行や考え方も次第に薄れつつあります(図表10)。』

でも隙あらば賃金上げない話ばっかりですよね。

『こうした中、予想物価上昇率も、全体としてはなお横ばい圏内で推移していますが、最近では、家計を中心に幾分上昇する動きがみられています。』

????????

『ここ数年の賃金や物価の上昇が、人々の新たな経験として積み重なることで、先行き、予想物価上昇率の押し上げに寄与していくことも考えられます。』

単に生活防衛的になっているだけのような気がしますが。

『このように、プラスの需給ギャップを起点に現実の物価が上昇し、それが予想物価上昇率の高まりに繋がるという、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは引き続き維持されています。日本銀行としては、時間はなおかかるものの、わが国の消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えています。』

そ、そうですか。


・金融政策運営に関してですがまあ色々と悲しい

珍しく経済物価の所でツッコミを入れていたら時間が怪しくなってきたので『4.日本銀行の金融政策運営』の部分は簡単に。

フォワードガイダンスの説明なんですけど、ただの飾りですとはさすがに言えないのでこんな説明に。

『こうした認識のもと、日本銀行は、「物価安定の目標」の実現に向けて、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくとの政策運営方針に変わりがないことを、より明確に示すことが重要と判断しました(図表12)。このため、金融政策決定会合では、昨年7月に導入した「政策金利のフォワードガイダンス」を明確化することとしました。』

はい。

『フォワードガイダンスとは、金融政策に対する市場の信認や期待を高めるために、将来の政策金利に関する運営方針をあらかじめ約束するものです。』

と言ってるんだが、そもそも先行きのリスクの話の中に消費増税の話が無いのにその影響がどうのこうのとかいうガイダンス文言にしている時点で金融政策に対する市場の信認や期待を云々という話にならんだろとしか言いようがない。

『具体的には、既存のガイダンスに一部変更を加え、「海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」という方針を明らかにしました。』

『見直しのポイントは、現在の金利水準を維持するとしている「当分の間」の意味を明確にするため、「少なくとも2020年春頃まで」という具体的な時期を新たに加えたことです。』

でもって、

『これは、海外経済やグローバルなITサイクルの持ち直しが展望できる時期が本年後半以降になると想定されることや、消費税率引き上げの影響を見極めるには、増税後ある程度の期間を要すると考えられることを踏まえたものです。』

という話ですが、さっきの先行きリスクの部分で海外についてこのような説明をしていました。

『これらの点を踏まえると、海外経済は、当面、減速の動きが続くものの、持ち直しに転じてくると考えています。大事なことは、そのタイミングです。この点、IMFは、本年後半には、世界経済の成長率は再び高まってくると予想しています。企業に対する私どものヒアリングでも、本年後半には、グローバルなIT関連財の需要も底を打つとの見方の先が少なくありません。こうして海外経済が持ち直してくれば、わが国の輸出も、それからさほど遅れずに、緩やかな増加基調に復していくと考えられます。』(『経済の先行き』部分の再掲)

海外の回復タイミングが大事で、それが遅れるとアカンという話をしていた筈で、しかも見通しとして本年後半(年度後半ではない)となっているのに、何で2020年春までボーっとみているんでしょうかという話になったりしまして、まあ飾りだから仕方ないんですが、もうちょっと整合性取って説明してほしいんですけど・・・・・・・・

『そのうえで、現在のフォワードガイダンスは、「経済・物価の不確実性を踏まえて判断する」としている点で、経済・物価情勢に応じ、その時までに得られたデータや情報を用いて判断する仕組みであることを改めて強調しておきたいと思います。』

それは良いんだが「経済物価の情勢踏まえて政策を判断する」ってのはガイダンス云々と全然関係ない平常運転の行為になるので、それを強調すると話が更にややこしくなるのだが、ただの飾りだということでしたら仕方ないんでしょうな(憤怒)。

『先行き、少なくとも2020年春頃までは、現在のきわめて低い長短金利が適当であるような経済・物価情勢が続くと想定していますが、今後の情勢次第では、この期間を超えて、現在の低金利を維持する可能性が十分にあると考えています。』

それって「経済物価がなかなか回復しないしかなり掛かりそう」と言っているのと同じで、それなのに何故「モメンタムが維持」と言えるのかと小一時間問い詰めたい。


・まあそうなんだが遂にここまで降参したか

ちょっと飛ばして最後のパラグラフですけどね。

『日本銀行では、物価や予想物価上昇率がなかなか高まらないというわが国経済情勢を踏まえると、「物価安定の目標」を実現するためには、十分に低い金利を長く維持することにより、できるだけ長期間、需給ギャップがプラスの状態を持続させることが必要だと考えています。先ほどご紹介したいくつかの措置もそうした考え方に基づくものです。』

という所から始まりますが、

『このように、中央銀行は、物価の安定という自らの目的を達成するために、それぞれが置かれた状況のもとで、常に最適な金融政策を模索しています。これは、日本に限ったことではありません。』

世界標準の金融政策に基づいたリフレ政策とは何だったのか。

『米国のFRBは、ここ数年、政策金利を段階的に引き上げるなどして、金融政策の正常化を進めてきましたが、本年入り後は、リーマンショック前に比べて金利水準はまだかなり低いにもかかわらず、世界経済の減速などを理由に、利上げの動きをいったん中断しています。』

『また、最近、FRBをはじめ、海外の中央銀行では、グローバル金融危機後の金融政策をレビューし、新たな金融政策のあり方や具体的な手段を議論しようとする取り組みも進んでいます。』

総括検証第二弾マダー??

『こうした動きについては、近年、多くの先進国で、潜在成長率の低下や恒常的な資金余剰などから、景気に中立的な実質金利、すなわち自然利子率が趨勢的に低下していることや、そうしたもとで金融政策の有効性を高めることの難しさが意識されていることが、背景にあると理解しています。』

ちょwwwww遂に「金融政策の有効性を高めることの難しさ」とまで来たか。

『もちろん、米国などと日本を同じように扱うことはできません。しかしながら、低成長・低インフレにより、かつてに比べれば金融政策による対応余地が狭まる中、いかにして経済や金融の安定を確保しながら、物価安定の目標を実現していくのかという問題は、現在、多くの中央銀行が共通して抱えている根源的な課題です。日本銀行としても、引き続きそうした問題意識を持って、海外での議論の展開も適切にフォローしていく必要があると考えています。』

これは見事な降参振りですが、降参したんだったらマイナス金利(以下同文)。










2019/05/20

お題「唐突ですがFSR鑑賞会の続きを虫干しで」

一部で話題になっていた小峰先生のコラムなんですけどね。
https://www.jcer.or.jp/j-column/column-komine/20190516.html
小峰隆夫の私が見てきた日本経済史
不良債権問題への取組(上) 2通のファックス
2019/05/16

いやまあ小峰先生の仰りたいことも分かるんですけど、一方で金融を巡るメディアというのは今も当時もこの有様な訳でして、

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44906730W9A510C1EE9000/
金融庁、「限界地銀」に照準 含み益6千億円消失
経済 金融機関 2019/5/16 22:00
日本経済新聞 電子版

これ日経本紙だと金曜の朝刊だったけど、この見出しが金融経済面(7面)にデカデカと出ててどこのタブロイド紙の煽り見出しだよって感じでして、なんかこのネーミングそのものが東京エリートの傲慢を絵にかいたような見出しにしかアタクシには見えない訳で不愉快極まりない煽り文句で(なおこの記事の見出しとリードだとネーミングが誰によるものなのかはよくわからんが)、こういう文言を見だし(しかもデカデカと)に使うエリート新聞様は可及的速やかに滅びろや位にしか思えないのですが、当時だと海外メディアも(というかそっちが悪意を持って)滅茶苦茶煽っていた訳でして、その後欧米不良債権問題でヒーコラ言ってる時に何言ってるんだかという感想が先に立ってしまったのは言うまでもありません。

てな訳ですので、まあ小峰先生の話の中にあった「この分析で株価が下がったらお前ら責任取れるのか(意訳)」ってのに対して理不尽だ何だというのはまあ分かるけど、それを言いたい方の立場もこれまた理解できますなあと思ってしまうのでありました。

つまりですね、まあ最近はこういうの中銀なり何なりのマクロプルーデンスをやっている当局部署からFSRみたいなのってのが出てくるようになっていますが、そこのトーンというのは継続的に確認して、状況が変わったとは思えないのに警鐘の鳴らし方が急に穏やかになるとか、微妙にずれた論点で大丈夫振りをアピールするとかしだした時が一番アレという事になるんじゃないですかねえ、というのはあくまでも個人の感想ですけどまあそんなことを思いました。

・・・・・・・すいません前振りが長くなりましたがそんな訳でMPMと連休に紛れて途中でスルーしたFSRのネタでも。

#なお、木曜日に先物動いたと思ったらまた金曜に同じだけ下がって元に戻ってネタが無えという訳ではない筈です(キリッ)


〇ということでFSRネタの続きというか何というか

まあ金融機関のどうたらこうたらという話の時期になってきたこともありまして急に続きということで。

紹介ページ
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr190417.htm/

全文(色刷りでファイル大きめ)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417a.pdf

概要(プレゼンテーション方式)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr190417b.pdf

でまあ全文の方からヘロヘロと参ります。

この前は第V章まで(かなり途中端折って)鑑賞しましたが、その次の『W.金融機関の財務基盤とリスクプロファイル』は味わいがあるのが不動産の所だったりするのでそこから。


・不動産市況そのもののリスクというよりは・・・・・・・・・・・

ここは貸出の話と市場リスクの話があるんですけど、まあ総与信が伸びていて云々というのはヒートマップ上そろそろ引っ掛かるネタなのですが、とりあえず従来のアップデートという感じで、それはそれで重要な話ではあるんですがまあパスしちゃいまして、本文52ページからの『3.不動産関連リスク』に参ります。

『本節では、信用・市場両リスクに影響を及ぼすファクターとなっている不動産関連のリスクについて整理する。』

ということで始まりますけど。

『V章でみたように、銀行の不動産業向け貸出残高は、地価の全国的かつ大幅な上昇がみられていないにもかかわらず、バブル期のピーク水準を上回って増加を続けており、ヒートマップにおける対GDP比をみてもトレンドからの乖離幅が拡大し、過熱を示す「赤」へと転化している(前掲図表V-4-1,2)。』

地価が全国的に上昇していて転売ヤーが不動産投資してヒャッハーだし不動産価格上がるから担保としてもいけるやんとなってさあ貸出じゃ貸出じゃ、という状況ではないのにも拘わらず不動産業向けの貸出はホイホイ増えている、というのもよくよく考えてみれば妙なお話ではありますな。

『こうしたなか、地域金融機関では、貸出全体に占める不動産業向け貸出の比率が上昇を続けており、また、同比率が3割を超える先が少なからずみられるなど、そのばらつきも拡大している(図表W-3-1)。』

ほほう。

『こうしたもとで、不動産業向け貸出比率を高める金融機関ほど、自己資本比率が低い傾向も窺われる(後掲図表W-3-3)。』

FSRの難しい(というか何というか)なところは、サラッと流して読んでいると軽くふふーんと流れで読んでしまう部分に味わいの深い表現が埋設物のように置かれていることでして、この「図表W-3-3」というのは53ページの真ん中にあるグラフ群の中にありますところの、

『図表W-3-3 自己資本比率と不動産業向け 貸出比率』

という題名のグラフになっているのですが(貼り付けできないのでURL先を見てちょ)、何をやっているかと言いますと、2013年3月末と2018年3月末を比較して、不動産業向けの貸出比率を出していて、それを自己資本比率の相対的に高い所と中位の所と低い所で比較する、という代物なのですよ。

でそちらを見ていただくと一目瞭然なのですが、自己資本比率の低い金融機関は元々の時点(2013)でも不動産業向けの貸出比率が相対的に高いのですが、この5年間で更にその比率を(自己資本比率が中上位の金融機関対比で)引き上げてきておりまして、自己資本比率がお低めの金融機関ほど不動産業向け貸し出しに突っ込んでいるし、さらにそれを拡大させている、という割とアチャーな事象が示されていましてまあオソロシスなんですが、FSRの本文を見ていますと記述が膨大なのもあって、ついサラサラと読んでしまう傾向があって(というのはアタクシだけですかそうですか)こういう味わいの深い部分をうっかり読み飛ばす可能性があって、まあそうならないようにするためにはパワーポイント紙芝居系の概要も見た方が良いのかも知れません。

つーことで、こういう感じでしらっと味わいの深い話をぶち込んでくるのがFSRクオリティなのですが、2013年との比較ということで「見よこれがQQEのポートフォリオリバランス効果(笑)だ」という事でもありますなとかいやまあ何でもないです。

ではその続き。

『また、融資だけでなく、J-REITや私募REITなどの不動産ファンド向けの出資も、地域金融機関を中心に近年大きく増加している(図表W-3-2)。不動産業向け貸出の全体に占める比重の高さに加えて、金融機関が出資の面からもエクスポージャーを増加させていることは、特定セクターへのリスク集中の観点から注目される。』

まあそうなんだけどその辺しか資金需要が伸びてないというのもあるのでねえ・・・・・・・・・・・

『そこで本節では、足もとの不動産業向け貸出のバブル期との違いを整理した上で、関連するリスク管理面の課題等を指摘する。』

だそうですが・・・・・・・・・・・


・貸家向け投資に関しての先行きはどうでしょうかという話

『バブル期に比べると、@貸家業を営む個人を含め、借り手が幅広い投資家に分散している(バブル期は、不動産業のほか建設、ノンバンクを含む大手関連業者が借り手の中心であった)。また、A借入期間が長期であることや物件の個別性・多様性から、 不良債権化する場合でも時期的にある程度分散して発生すると考えられる。これらは、金融機関の不動産貸出ポートフォリオのストレス耐性を高める要素である。』

とありますが、そんなわけ無いじゃろ、と思いますとちゃんとその続きがある。

『もっとも、@関連貸出が、全体として、中長期の空室増加・賃料下落といった共通リスクに晒されている点は変わらない。』

と続くわけで、FSRでこういう話をしている時に、「何とかである。もっとも〜」と来た場合、前半の何とかであるというのは原則論の話をしているのですが、この場合だいたい「もっとも」以下の方に重要な話がある、というのはFSR何回か見ていると大体そんな書きっぷりになっていることが多いなと思います(個人の感想です)。

『人口や企業数の減少、成長期待の低下といったバブル期とは異なるファンダメンタルズのもとで、将来の物件需要に対して過大投資となっていないかという点は注視していく必要がある(図表W-3-5)。』

でもってこの「図表W-3-5」というのが「総人口と世帯数」とだけあるグラフで、国立社会保障・人口問題研究所で出しているデータからグラフを作っているのですが、実績値ベースでは総人口は既に減少に転じていますが、世帯数というのはここまで増加が続いていまして、一方で今後の予測値ベースでは総人口はこの調子でホイホイと減る中、世帯数も2020年代前半にはピークを打って減りだす、という図表になっていて、「将来の物件需要に対して過大投資となっていないかという点は注視していく必要がある」とサラッと書いていますが、これはどこからどう見ても将来の需要に対して考えればバンバン増やして良い局面は終わったのか終わりに近いのかという風情しか感じないのですが、その辺をゴリゴリ言わずにこの一文とグラフで言わしめるという辺りがこれまたFSRクオリティ。

『また、AREITや不動産ファンド向けはノンリコースが多いこと、貸家業向けは中小企業や個人など必ずしも損失吸収力の高くない借り手の比重が高いことから、不動産収入の減少が債務返済能力の悪化に直結しやすい点にも留意が必要である。』

ファンドやリート向けは飛んだ時に物件価格がさがっていたらあじゃぱーだし、貸家業向けはリコースするとは言いながらもその相手にリコースにいったらやっぱり飛んじゃった的なアレがありますな、というのを上品に表現するとこうなる。

以下これに対する分析(中々表面的には難しいですな、というのが結論の原則論部分です、為念)がありますけれどもその辺はパスします。


・マイナス金利政策を行っている欧州との比較という部分の悲しみが色々な意味で止まらない件について

さらにワープして『X.金融機関の収益力低下と潜在的な脆弱性』という所に参りますが、その中で『2.低金利政策下の銀行の収益構造:国際比較 』という小見出しがありまして、ここから始まる部分が色々と悲しみが止まらないのですな。

本文66ページからになります。

『次に、低金利環境の長期化がわが国金融機関の収益・財務構造に及ぼしてきた影響について、わが国と同様にマイナス金利政策を導入した欧州諸国との比較を通じて分析・評価する。 具体的な比較対象は、日本の地域金融機関と、ユーロ圏4か国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)およびスイスとスウェーデンのG-SIBを除く金融機関である。欧州諸国と比較した日本の金融機関の近年の特徴は、次の3点に集約できる。』

何でしょうか。

『第一の特徴は、収益力のはっきりとした低下である。』

ナムナム。

『業務粗利益ベースでみた利益率をみると、近年、欧州諸国は総じて横ばい圏内で推移している一方、日本は低下傾向が明確である(図表X-2-1)。』

アイヤー。

『こうした収益力の違いの背景には、資金調達コストの動向が最も大きく影響している。』

調達とな。

『この違いは、資金調達利回りの低下度合いにある。すなわち、欧州諸国では、資金運用利回りも低下したが、資金調達利回りがほぼ同程度に低下した。これに対し、日本では、資金調達利回りがゼロ近傍に張り付くなかで、資金運用利回りが金融緩和の影響などから一段と低下した(図表X-2-2,3,4)。』

この辺の図表を見ると一目瞭然です。

『日本では、欧州諸国に比べ、@前述した構造要因を背景に低金利・ゼロ金利の継続期間が歴史的に長かったことを反映して、預金金利が元々低い水準にあり、さらなる低下余地がほとんど無かったほか、A預金の負債に占める割合がきわめて高く、社債をはじめとする市場性資金の調達コスト低下の恩恵も受けにくかったことによるものである(図表X-2-5)。』

ということで、欧州系の場合だと金融機関がカバードボンドとか社債とか発行して市場性調達をするというのがあるし、そもそも預金偏重でもないとか、まあそういうのがあるので金利の引き下げ余地があったというのと、そもそも発射台の時点で金利がまだあった所から来ている欧州と、大昔からゼロ金利で瞬間上げれた時でも政策金利0%台のままという国とでは全然違いますがな、という身も蓋もない話。

・・・・・・ではあるのですが、これまた悲しいのは「図表X-2-7」で「貸出利回り」というのがあって、欧州と日本の比較があるのですが、そもそも論として欧州は貸出利回りが日本と比べて高くて、その分こちらも下げ余地があるのですが、日本の方は元が低いので下げたにしてもそこまでサガランチ会長である、というのも同様にあるのですよね、でまあそっちの話はしていないんですが、そうだとすればマイナス金利政策の効果と副作用というのも日本と欧州ではそのバランスが異なるという話になるでしょうし、だいたいからして貸出金利に下げ余地が乏しい中でマイナス金利政策をやって貸出ルートで政策効果が効くのかという話にもなると思うのね。

ということはですよ、そうだという分析が最初の時点であればですよ、欧州が何となく回っているっぽいから日本でやってもヘーキヘーキとかいう話でもないですし、調達コストが下がらんのに市場金利だけ下げられたら金融機関課税じゃろというのも自明な話で、もちろん分析するのはこのように有用ではあるのですが、だったらマイナス金利導入する際に何でこういう背景比較をちゃんと検討して導入しないのか、いやまあ検討したのかも知れませんけど、その検討がちゃんと行われれば、普通に考えればマイナス金利政策を「当分の間」しっかりと続けるというようなスキームではなくて、短期決戦でやってみて直ぐに見直しを図るとか、マイナス金利政策部分だけ早期に出口になるような仕掛け作っておけよとしか思えないのですな。

ということでして、この分析が出てくるのは良いのですが何というかこの時すでにお寿司感がぬぐえない。

『また、欧州と比べた日本の金融機関の低収益性には、非資金利益の低迷も少なからず影響 している。すなわち、ユーロ圏やスイスの銀行は、業務範囲やビジネスモデルの違いもあって、手数料の収入源が多様であり、比較的金利変動の影響を受けにくい非資金利益を着実に積み上げてきた。一方、日本の地域金融機関の非資金利益は、業務粗利益に占める比率でみても、総資産対比の利益率でみても、低水準に止まっている(図表X-2-6)35。』

今回はちゃんと「業務範囲やビジネスモデルの違いもあって」とか入れてますな。欧州みたいにしろとか邦銀に言ったってそれは色々な歴史的経緯や慣行の違いがあるんだから一朝一夕にはいけないし、当局が何もしないで金融機関のケツだけ叩くのが一番イクナイ結果を招きやすいと思うの。



『第二の特徴は、有価証券運用における積極的なリスクテイクである。』

というと聞こえが良いのですが・・・・・・・・・・・

『運用資産別に利回りを欧州諸国と比較すると、貸出利回りは、程度の差こそあれ欧州、日本ともに低下している一方で、有価証券等利回りは、欧州諸国が国債利回りの動きを反映して低下傾向をたどるなかで、日本のみが金利低下局面でも横ばい圏内で推移している(図表X-2-7,8)。』

これは!!

『こうした日本の有価証券等利回りの動きには、大きく分けて2つの要因がある。』

ほう。

『1つは、 保有株からの配当収入の増加である。』

ほほう。

『わが国金融機関は、政策保有株を相応の規模で保有しており、長期の景気拡大を背景とした堅調な企業収益の恩恵を受けるかたちで、配当収入の受取を増加させてきた。もっとも、配当収入は景気変動の影響を受けやすいため、景気が悪化方向に転じた場合、これまでとは逆に収益の押し下げ要因となり得る。』

なるほど。


『もう1つは、リスクテイクの前傾化を反映した有価証券ポートフォリオの構成の変化である。』

なんか物凄く格好良い表現ですけれども・・・・・・・・・

『V章でみたとおり、日本の金融機関は、近年、国債の保有残高を縮小させる一方で、外債や投資信託など多様なリスクファクターを内包するリスク性資産への投資を積極化させている。』

おまいらが金利下げるから仕方ないわな。

『こうした日本の金融機関による有価証券投資でのリスクテイクは、低金利環境の長期化を背景に預貸収益の減少傾向に歯止めがかからないなかで、収益力の維持を目的として行われきた側面が強い。』

と思ったら一応自分らの作った環境にも起因するとは言ってるのか。

『実際、地域銀行の預貸利鞘と投資信託残高の関係をみると、預貸利鞘の縮小幅が大きい先ほど、投資信託残高を増加させている(図表X-2-9)。』

まーたここでさっきの不動産の部でも出てきた「さらっと流す中に味わいのある文章」攻撃ですけれども、図表X-2-9というのが『図表X-2-9 預貸利鞘と投資信託残高』ってお題でして、それを見ると本文にあるように「預貸利鞘が減少している幅が大きい所は投信をせっせと積み上げて減少した収益を補う」という全俺が泣いてしまう図表があります

『こうした投資信託等での積極的なリスクテイクは、欧州諸国との対比で、利息・配当金収入の増加を通じて収益を下支えする方向に作用してきた。』

見事な「物は言いよう」ではあります。泣いた。

『もっとも、これは、W章で指摘したとおり、わが国金融機関の収益や経営体力が、内外金融市場の影響を受けやすくなっていることも意味する。 このように、金融機関が、近年多様な市場リスクを内包する投資信託や外債などへのエクスポージャーを拡大させている姿は、証券市場を通じた金融仲介においてノンバンクの役割が大きい欧米とは明らかに異なる、わが国金融システムの際立った特徴であると言える(図表 X-2-9,10)。』

まあそうなんですけど・・・・・・・・

『これは、基本的には家計の金融資産選択における預金選好・安全資産選好の強さの結果、金融機関を中心とする間接金融の役割が大きくなっていることによると考えられるが、いずれにせよ、そこに内包されている市場リスクの大きさには、十分な注意が必要である。』

というよりは、まあ金融面に関する良いことも悪いことも銀行セクターに全部が集中しやすいのが日本の特徴なので、金融面のところを点検すると必然的に銀行分析になってしまう、ということになるので、これは一概に銀行が悪いとかそういうことではなくて、マクロ経済における立ち位置がそうなっていて今金融面に起きている問題があるからこうなっている、という事でもあろうかと思うのですよね、うんうん。


そして第三の論点も泣ける。

『第三の特徴は、自己資本比率の低下である。』

お、おぅ・・・・・・・・

『日本の地域金融機関は、W章で指摘したとおり、収益蓄積による自己資本の増加がリスクアセットの拡大に比べて小さいことが累積的に作用し、自己資本比率が緩やかな低下傾向にある。これに対し、ユーロ圏やスウェーデンの金融機関は、自己資本の増加がリスクアセットの拡大を明確に上回っており、低金利環境下でも自己資本比率は緩やかな上昇傾向にある(図表X-2-11,12)36,37。』

とだけサラッと書かれていますが、要するにこれは「リスクアセットを増やしているけれどもリスク対比リターンが取れていないですなあどこぞの国の金融機関は」という悲しみが止まらない話をしているんだが、リスクプロファイルをおかしくしているのはマクロ政策の失敗によるものが大きい訳で、これだから個別金融機関捕まえてリスク対比リターンガーとか言われましても困ると正直思うのでした。

#ということで本日はこのあたりで勘弁










2019/05/17

お題「金融不均衡にだいぶ言及しながら結局利上げしないもんねになってしまうFEDしぐさ」

いやー動かん動かん言ってたらやっと円債先物ちゃんが動きましたねー。ってまあカーブの後ろしか動かん相場と言ってしまえばそれまでなのかも知れませんけど。

〇またも先入先出法でブレイナード理事講演で勘弁

いやまあこの見出しに釣られたんですけどね。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-brainard-mmt-idJPL4N22S4DK?il=0
2019年5月17日 / 05:39
MMT理論、FRBの権限低下させるリスク=ブレイナード理事

でもって講演がこちらなのですが
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20190516a.htm
The Disconnect between Inflation and Employment in the New Normal
Governor Lael Brainard
At "Certain Uncertainty: Tax Policy in Unsettled Times" National Tax Association 49th Annual Spring Symposium, Washington, D.C.

題名が『The Disconnect between Inflation and Employment in the New Normal』だし、場所が「National Tax Association」とかあるからそんな話をしてるのかなとか釣られてみたのですが・・・・・・・・・

#なお先に断っておきますがMMT云々の話は講演本文にはありませんと読めましたので念のため

・ニューノーマルの特色の話をしている中でしらっと「トレンドインフレが2%を下回る」と言い出す

最初の『Employment and Inflation』は状況の説明なのでパスしまして次が『The New Normal』となっていましてまあこれも状況の説明なんですけれども、フィリップスカーブがフラット化している状態をニューノーマルと称して政策対応どうするのという話をしています。

『Since the Great Recession, there have been several changes in macroeconomic relationships, which I refer to as the new normal.3 Now is a good time to assess the characteristics of the new normal and what they mean for monetary policy. The emerging contours of today's new normal are defined by low sensitivity of inflation to changes in labor market slack, a low long-term neutral rate of interest, and low underlying trend inflation. Let me take each in turn.』

今のニューノーマルの特徴は労働市場のスラックと物価の関連性が下がっていることと、長期自然利子率の低下と、トレンドインフレが低いことですよ。

『In today's new normal, price inflation has not moved up consistently as the labor market has strengthened considerably over the course of the long expansion. This is what economists mean when they say the Phillips curve is very flat: The historical relationship between resource slack and price inflation appears to have broken down.4』

これはフィリップスカーブがフラット化しているという説明の繰り返し。

『Although wage growth has been moving progressively higher as labor market slack has diminished, broader price inflation has remained muted.』

おまけにお賃金が上がっても物価が上がらんとな。

『Another important feature of today's new normal is that the long-run neutral interest rate seems to be lower than it was historically. The neutral rate of interest refers to the level of the federal funds rate that would maintain the economy at full employment and 2 percent inflation if no tailwinds or headwinds were buffeting the economy.』

自然利子率低下の話ですな。

『The decline in the neutral rate likely reflects a variety of forces globally, such as the aging of the population in many large economies, some slowing in the rate of productivity growth, and increases in the demand for safe assets. When one looks at the Federal Reserve's Summary of Economic Projections (SEP), it is striking that over the past five years, since the SEP interest rate projections first became available, the median estimate of the long-run federal funds rate has declined 1-1/2 percentage points, from 4?1/4 percent to 2-3/4 percent. Going back further to the two decades before the crisis shows a similar decline in today's long-run neutral rate relative to earlier Blue Chip consensus forecasts of the long-run federal funds rate.5』

でもってそれ自体はグローバルに起きていて要因は多くの主要国の人口動態の問題とか生産性の伸びが下がるとか安全資産への需要が高まっているとかいうことがありましてこのように以前と比べて自然利子率とみられるものが下がりましたよ、とこの辺も普通の話。

『Third, underlying trend inflation-the trend in inflation after filtering out idiosyncratic and transitory factors-appears to be somewhat below the Federal Reserve's goal of 2 percent.』

ここから少し面白くなって、「トレンドインフレは2%を若干下回る水準にある」と言い出しているんですよねえ。それはそれで良いのですが、そうしますとそもそも2%目標自体がおかしいとかいう理屈にどう対抗するんだか、と思ってしまいますが、以下のところを見るとあんまりそこを考えて言っている感じでもなさそうなのが味わいがある。

『This raises the risk that households and businesses could come to expect inflation to run persistently below the Federal Reserve's target and could change their behavior in a way that reinforces that expectation.』

そうなるとインフレ期待が下がってしまいますって話なんだが、そもそもそれが均衡状態なのであれば仕方ないんじゃないでしょうかと思ったりするんだが・・・・・・・・

『Expectations are an important determinant of actual inflation because wage and price behavior by businesses and households is partly based on expectations of future inflation.』

でもってそのインフレ期待は重要(なので下がるのはイクナイ)って言ってるんですがうーんこのという感じがするけどその部分はスルーされて次の論点になる。


・政策発動余地の糊代論キタコレ

『While low inflation and low interest rates have many benefits, the new normal presents a challenge for the conventional approach to monetary policy, in which the Federal Reserve could rely on changes in the level of the federal funds rate to achieve its inflation and employment goals.』

インフレが低くて中立金利が低いという状態は金利コントロールを主体にする金融政策運営のかじ取りを難しくします、というのも今までさんざん言われている話ですが・・・・・・・・

『In past recessions, the Federal Reserve has typically cut interest rates by 4 to 5 percentage points in order to support household and business spending and hiring. With the long-run neutral rate low and with underlying trend inflation somewhat below target, nominal interest rates are likely to remain below those levels, which therefore leaves less room to cut rates as much as needed. With less room to ease financial conditions and support economic activity using our conventional policy tool, the economy may endure prolonged periods during and after recessions with short-term interest rates pinned at their effective lower bound. That, of course, was what happened following the financial crisis, when the Federal Reserve kept interest rates close to zero from December 2008 through November 2015.』

でもって昔は利下げ余地がたくさんあったけど先般はその余地を使い切ってからも緩和したから色々やりましたしゼロ金利政策を7年もすることになりましたよ。

『That constraint limits the Federal Reserve's ability to provide stimulus through its conventional tool and thus could tend to leave inflation lower than it would otherwise be, and unemployment higher. The experience of several years with the federal funds rate pinned at its effective lower bound and actual inflation below our target could weigh on expectations for future inflation and thereby influence the behavior of households and businesses that helps determine wages and prices.』

『The experience of a sustained period of low inflation could depress underlying trend inflation by feeding into lower inflation expectations, further reducing nominal interest rates and the space to cut interest rates in what could become a downward spiral.6』

『So we need to be especially careful to preserve as much of our conventional policy space as we can, while exploring mechanisms to augment the effectiveness of our framework.7』

つーことで非伝統的政策をすることになったけれども、低インフレと低中立金利という状態だと経済のダウンターンに伝統的政策で対応する余地がすくなくなるし、低インフレが続くとインフレ期待の低下からの物価低下定着からのインフレ期待低下につながるリスクがあるよ、だからそうならんような政策枠組みを、ということですから、まあ多分ブレイナード理事はインフレ目標からの一時的な上振れを容認するスキーム(アベレージインフレーションターゲットとか)を考えているんでしょうかねえとは思いますが、ただそれってシンメトリックインフレーションターゲットと実質的に変わらん気もしますけれどもね(使い方次第、もちろんリジッドなのにすればプライスレベルターゲットみたくなると思う)。


・割とちゃんと金融不均衡の話をしているのがほほーと思った

次の小見出し『Maximum Employment in the New Normal』に関しては「こういうニューノーマルになると雇用の最大化というのはインフレを起こさないので追及しやすくなるのでウマー」という話なので飛ばしましてその次の『What about the Risks?』ですけどね。

『Of course, there are also risks.』

ニューノーマルにおけるリスクとは??

『The past three downturns were precipitated not by rising inflation pressure, but rather by the buildup of financial imbalances.』

何だ分かってるじゃんということでして、「直近3回の経済落ち込みは、インフレ圧力の高まりによって起こされたのではなく、金融不均衡の積み上がり(要するに資産バブルの崩壊)で起きた」って認識はちゃんとしている訳でして・・・・・・・・・・・・

『Extended periods of above-potential growth and low interest rates tend to be accompanied by rapid credit growth and elevated asset valuations, which tend to boost downside risks to the economy.9』

トレンドグロースよりも高い成長と低い金利が長期間続くと、クレジットの急激な拡大や資産価格の急激な上昇を招き、それは経済のダウンサイドリスクの芽になります、とか分かってるじゃんという感じですな。

『It is not hard to see why a high-pressure economy might be associated with elevated financial imbalances, especially late in the cycle.』

経済サイクルの後期において高圧経済がそのような不均衡を生むというのがなぜ起きるかというのを見るのは難しいことではないと。

『As an expansion continues, the memory of the previous recession fades. Profits tend to rise, experienced loss rates on loans are low, and people tend to project recent trends into the future, which leads financial market participants and borrowers to become overly optimistic. Risk appetite rises, asset valuations become stretched, and credit is available on easier terms and to riskier borrowers than earlier in the cycle when memories of losses were still fresh.』

この辺はそういう時にこういう事が起きますという話なのでまあご案内の通りの話。

『Historically, when the Phillips curve was steeper, inflation tended to rise as the economy heated up, which naturally prompted the Federal Reserve to raise interest rates. In turn, the interest rate increases would have the collateral effect of damping increases in asset prices and risk appetites. With a flat Phillips curve, inflation does not rise as much as resource utilization tightens, and, accordingly, provides less necessity for the Federal Reserve to raise rates to restrictive levels. At the same time, low interest rates along with sustained strong economic conditions are conducive to increasing risk appetites prompting reach-for-yield behavior and boosting financial excesses late in an expansion.』

でもってフィリップスカーブがスティープの時にはそういう場合インフレが高進するから利上げで対応しやすいのですが、フィリップスカーブがフラットな時は物価が上がらんもんだから中々政策金利を上げるという事にならなくて、同時に持続的に経済が強い状況にある中で金利が低い状態が続くと、リスクアペタイトの上昇や利回り追求の動きから金融の拡大が経済拡大の終わりのころに起きてしまいます。

『With the forces holding down interest rates likely to persist, valuation pressures and risky corporate debt, such as leveraged lending, could well remain at elevated levels. Elevated valuations and corporate debt could leave the economy more vulnerable to negative shocks.』

『The market volatility in December is a reminder of how sensitive markets can be to downside surprises.』

つーことで高リスク社債だのレバレッジローンだのみたいなのも増えて来るし、オーバーバリュエーションが起きれば経済のネガティブショックに対して脆弱になります、その例が昨年12月の市場変動ですよ、という説明をしていてほほーと思ってしまいましたです、はい。

何でほほーかと申しますと、まあ前段の方では金利対応の糊代論でインフレ(とインフレ期待)をもっと上げたいみたいな話をしている中(でもってフィリップスカーブがフラットなのですから金利はlower for longerになる筈なのですな)で、ここではリスクとして低金利長期化で金融不均衡が溜まるという話をする中で、大体その辺を一般的にサラッとしか流さないFED高官が多い中で、「直近3回の経済ダウンターンは金融インバランスから起きた」と(その通りなのだが)説明しているところでして、しかしながら話の全体を見る(超斜め読みだから違ってたらゴメンやでなのですが)感じではそうは言ってもその辺は規制で対応して物価がもうちょい上がらんかなというトーンになっているので、これはまあブレイナード理事としてはファイナンシャルスタビリティの面でまたバブルを作って崩壊させたらさすがにFRBがマズイだろという意識もあるし、とはいっても金利がこの程度まででノーマルになっちゃうと利下げ余地がろくすっぽなくて困るという意識もあって、その点ちと困っているのかもしれないなあとか勝手に妄想を逞しくした次第な訳ですな、うんうん。

でもって、12月の下げについて上記のような評価をしているということは、それなりにファイナンシャルインバランスが溜まりつつあるという認識を示しているものだと思いますし、まあゆうてガス抜き出来たわとか達観してそうな感じでもありますが、わりとちゃんと金融不均衡に触れているのはほほーと思いました。


・とは言え金融サイクルの抑制を行うのはマネタリーではなくてプルーデンスという話になるのですが

『A key implication of the weakening in the relationship between inflation and employment, then, is that we should not assume monetary policy will act to restrain the financial cycle as much as previously. As a consequence, policymakers may need to think differently about the interplay of the financial and business cycles due to the combination of a low neutral rate, a flat Phillips curve, and low underlying inflation.』

だったら金融政策運営において金融サイクルを考慮に入れる、あるいは入れるポーズでもすれば良いのに、とあたしゃ思ってしまうのですが、そういう話をしながらも結局「金融サイクルの拡大に対して事前に行動するというわけではない」という話になってしまうのはある種不思議な気もするんだがまあそういう話になっとる。

『With financial stability risks likely to be more tightly linked to the business cycle than in the past, it may make sense to take actions other than tightening monetary policy to temper the financial cycle. In order to enable monetary policy to focus on supporting the return of inflation to our symmetric 2 percent target on a sustained basis along with maximum employment, we should be looking to countercyclical tools to temper the financial cycle.』

金融サイクルに対応するためにはカウンターシクリカルなツールを使うという話になりまして、

『One tool other central banks have been using to help temper the financial cycle is the countercyclical capital buffer (CCyB). The CCyB provides regulators with the authority to require large banks to build up an extra capital buffer as financial risks mount.10 Although the CCyB was authorized as part of the post-crisis package of reforms, so far, the Federal Reserve has chosen not to use it.』

カウンターシクリカルバッファーキタコレということになる。

『Turning on the CCyB would build an extra layer of resilience and signal restraint, helping to damp the rising vulnerability of the overall system. Moreover, because the CCyB is explicitly countercyclical, it is intended to be cut if the outlook deteriorates, boosting the ability of banks to make loans when extending credit is most needed and providing a valuable signal about policymakers' intentions. This feature proved to be valuable in the United Kingdom in the wake of the Brexit referendum.』

でもってCCyBがあると(平常時に資本賦課が余計にかかって危機時に開放されるから)金融システムをよりレジリアントにするし、英国でこの前のブリクジット騒動があった時にこの有効性が示された、という話になるのでした。

『If countercyclical tools and other regulatory safeguards are not adequate over the cycle, monetary policy will need to carry a greater burden in leaning against financial excesses. That would be unfortunate, because adding financial stability concerns to the burden of conventional monetary policy might undermine sustained achievement of our employment and inflation goals.』

CCyBや他のプルーデンスツールがワークしないならば金融政策はよりleaning against the windにならざるを得ないです(キリッ)って話になっているのだが、正直CCyBがあるからと言って別にサーチフォーイールドの動きは変わらんと思うし、金融不均衡は普通に積みあがると思うんだが、どうも資本充実させて流動性規制もしているからヘーキヘーキと楽観してるんじゃねーかというのは気になるところ。

『Because the financial cycle is today likely to be tempered less than in the past by material increases in interest rates as the economy expands, the appropriate level of bank capital for today's conditions is unlikely to be the same as in past business cycles: Because interest rates likely will do less than in past cycles, regulatory buffers will need to do more.』

などとひとしきりプルーデンスツールの有効性をアピールして・・・・・・・

『As a consequence, now is a bad time to be weakening the core resilience of our largest banking institutions or to be weakening oversight over the nonbank financial system. Instead, we should be safeguarding the capital and liquidity buffers of banks at the center of the system, carefully monitoring risks in the nonbank sector, and making good use of the countercyclical tool that we have.』

よって今金融機関のプルーデンスツールを緩和するのはイクナイ、という結論になっています。


・フィリップスカーブが効かないのに物価の上振れ容認とか言われてもちともにょるがそんな話に

最後の小見出しが『Achieving our Inflation Objective on a Sustained Basis』になりまして、

『Finally, let us turn to the apparent softness in underlying trend inflation.』

最後に物価の話。

『One hypothesis for the flat Phillips curve is that central banks have been so effective in anchoring inflation expectations that tightening resource utilization is no longer transmitted to price inflation.11』

『Another possibility is that structural factors such as administrative changes to health care costs, globalization, or technological-enabled disruption have been dominant in recent years, masking the operation of cyclical forces.12』

『Regardless, because inflation is ultimately a monetary phenomenon, the Federal Reserve has the capacity and the responsibility to ensure inflation expectations are firmly anchored at-and not below-our target.』

需給ギャップと物価との関係が本当に切れているのか、その他の構造要因で上がらない状態になっているだけなのかという議論はあるものの、インフレは最終的にはマネタリーな現象なので、とキタコレではありますが、FEDはインフレとインフレ期待をターゲッティングしなければいけません(キリッ)。

『As I have argued in the past, the fact that inflation has been running somewhat below our longer-run goal of 2 percent may not be entirely due to labor market slack or to transitory shocks; it also likely reflects some softening in inflation's underlying trend.13』

でもって物価が2%より下回って推移していますがトレンドインフレもちと下がっている可能性とみているそうで。

『First, estimates of underlying inflation based on statistical filters are lower than they were before the financial crisis and are currently below 2 percent. Second, estimates of longer-run inflation expectations based on the University of Michigan Surveys of Consumers and on inflation compensation from financial market pricing are also running lower than before the financial crisis.14』

計測して推計するとそんな感じだというのと、ミシガン大学のサーベイとか債券市場のインフレ期待とかが金融危機前より下がっていることがその傍証だと。

『Our goal now is to get underlying trend inflation around our target on a sustained basis. What would this take? We can get some sense from statistical models. Although there is no one widely agreed-upon method of measuring underlying inflation, one statistical approach that has received attention in recent years captures the idea that underlying inflation responds to the experience with actual inflation, and that this responsiveness varies over time.15』

『We can use such an approach to get an idea of how much, and how quickly, underlying inflation might respond to any particular path for actual inflation. It provides some reassurance that our goal may be achievable if inflation moves only slightly above 2 percent for a couple of years.』

『The SEP inflation projections of Committee members suggest that many have, over the past year or so, envisaged a few years of a mild overshoot.16』

でもってトレンドインフレを2%に近づけないといけませんね、という話になっていますが、まあそもそも計測が難しい話なので計測の話をしたりもしておりますけれども、

『Of course, it is not entirely clear how to move underlying trend inflation smoothly to our target on a sustained basis in the presence of a very flat Phillips curve.』

フラットなフィリップスカーブの中でじゃあどうやってトレンドインフレ上げるのかという手段はまだクリアにはなっていないですな、ってまあそうですわな。

『One possibility we might refer to as "opportunistic reflation" would be to take advantage of a modest increase in actual inflation to demonstrate to the public our commitment to our inflation goal on a symmetric basis.17』

ほー。

『For example, suppose that an unexpected increase in core import price inflation drove overall inflation modestly above 2 percent for a couple of years. The Federal Reserve could use that opportunity to communicate that a mild overshooting of inflation is consistent with our goals and to align policy with that statement. Such an approach could help demonstrate to the public that the Committee is serious about achieving its 2 percent inflation objective on a sustained basis.』

物価がマイルドに2%を上回った時でも「それは問題ない」というようなアプローチをとると良いのではないでしょうか、という話になっていて、結局のところそれはシンメトリックターゲットと同じ話ジャンとは思うのですが、まあ要するにFRBの大勢は「2%を上回るインフレが起きてもマイルドなものなら容認する」という話、つまり利上げはせんということになると思うのですが、それやるとどう見ても金融不均衡ヒャッハー相場になるので、またいつか来た道になるんでしょうなあとか思うのでした。気にしていても結局アプローチがこれという辺りがまあねという所で。

#ということでしたのでMMT云々はたぶん質疑での話だったんでしょうな、最後のまとめにもとくに登場してない






2019/05/16

お題「寝起きで読んだら味わいのあったバーキン総裁の講演という代物を突如投下してみます」

昨日は債券先物がまた前日比同値で終わってしまいまして、フラグ建築したつもりだったのですがフラグ建築なんてしょぼいものでは動いてくれないようで全くもう・・・・

〇先入先出法に基づき突如直近のFED高官発言をば

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPKCN1SL2MD
2019年5月16日 / 04:47 /
利上げや利下げの根拠なし、業況感に不安も=米リッチモンド連銀総裁

『[ニューヨーク 15日 ロイター] - バーキン米リッチモンド地区連銀総裁は15日、企業信頼感が脆弱になっているものの、米経済の力強い伸びや物価の落ち着きを踏まえると、利上げや利下げを行う根拠は見当たらないとの考えを示した。総裁は「インフレが抑制されているのに利上げしたり、経済成長が健全であるのに利下げすることは、明確な根拠に基づいていない」と語った。』(上記URL先より)

ということで色々出ているいろんな方の発言の1つではあるのですが、講演の方のお題を見たら・・・・・・・・

https://www.richmondfed.org/press_room/speeches/thomas_i_barkin/2019/barkin_speech_20190515
Sentiment and the Real Economy
Tom Barkin
May 15, 2019
Tom Barkin President, Federal Reserve Bank of Richmond
New York Association for Business Economics New York, N.Y.

ってあって、センチメントをお題にしているのでほーんと思いながらざっくりと鑑賞という訳でございまする。しかしまあFEDが現状「利上げも利下げもしませんよ」と強調するモードになって来ましたので、もとより動く気が見られない日銀ちゃんというのがあったとしても外部環境の変化で動かざるを得ない(主に正常化の方向で)ような事に追い込まれることがあれば円債ちゃんも動意を示すのでしょうが、まあこれじゃ動かんわな、などと嘆きつつバーキンさんの講演を鑑賞ということで。

・最初にまとめがあるので便利だが割とナンジャソラな話をしていて味わいがある

最初に『Highlights』ってのがあるので便利(これがあるのはリッチモンド連銀の仕様)。

『I believe our economy’s performance is driven in important ways by sentiment, that is, the outlook and beliefs of consumers and businesses.』

経済のパフォーマンスはセンチメントによって動かされます、という経済のスラックだとかフィリップスカーブだとかいうのをスルーするような割と(中銀高官としては)大胆な話をしておりますの。でもってセンチメントとは消費者と企業経営者の先行き見通しや信頼感だそうな。

『At the end of 2018, considerable uncertainty led to large drops in sentiment. We then saw weak numbers in January and February. By the end of February, uncertainty had decreased, and now the data look quite strong.』

昨年末は先行きの不確実性が大きくなったためにセンチメントが大きく下がってその後1月2月は弱めの指標が出てきたですが、2月の終わりには不確実性が減ってきて今のデータはかなり強くなっている、という説明になっとりますの。

『In my view, sentiment has become both more important and more volatile. The result is an asymmetry in which firms are much more cautious about the downside than they are optimistic about the upside. Both consumers and firms may have a higher bar for spending and investment decisions.』

でもってそのセンチメントというのはかつてよりも重要になっており、以前よりもボラタイルになっております、でもってセンチメントによって行動が変化するんですけれども下向きのセンチメントの時はより慎重になって来るので上下対象という訳ではありませんぜとな。

『For monetary policymakers, we need to recognize communication as a monetary policy transmission channel, acknowledging that this channel adds value to nontraditional measures such as quantitative easing.』

ということでセンチメントが大事なので金融政策の波及の中でコミュニケーションが大事になっており、コミュニケーションによって量的緩和のような非伝統的政策の効果も増す、と来ました。

『Overall, I still see an economy that is sound. But confidence-especially business confidence-is fragile. It’s our job as policymakers to try to support it.』

でもって全体的に経済は健全だけれどもセンチメント、特に企業のセンチメントは壊れやすい状態なので、ワシらはセンチメントをサポートしなければいかんですな、というのがまとめの結論。

・・・・・・・とまあそういう話だというまとめになっているのですが、これ「センチメント」ってのが実は株価なんじゃネーノという雰囲気が漂うまとめになっておりますがなというか、株価って読み替えても話がそのまますーっと通ってしまうという事で、「ワシらは株価動向に配慮しながらコミュニケーションをしないといけませんね」とか読み替えると何というかもうアレという感じになってしまいますが、パウエルFRBの政策反応関数が株価と政治圧力の掛け算なんじゃネーノという感じもする位に見られる中でこういう講演が(理事じゃないけど)FEDの要人から出てくるというのがなんか今のパウエルFRBを象徴する感じでもうねとか思ってしまいますがさて本文をちょっと拝読。


・ではセンチメントとは何ぞや

最初に『The Current Outlook』という小見出しがありますがそこはさっきのロイターさんにあるような結論のようですので(超斜め読みしかしてない)飛ばしまして、その次の『Defining Sentiment』ですよこれは。

『What do I mean by “sentiment”? 』

ということでこの小見出しの文章の最初はこれである。

『As a practitioner and as a policymaker I’ve learned that the economy can move in ways not fully justified by moves in fundamentals.』

経済はファンダメンタルズだけで動くわけではなくて・・・・・・・・・・

『Especially sensitive are variables that depend on expectations about the future, such as spending on consumer durables, investment and, most famously, stock prices.』

>most famously, stock prices
>most famously, stock prices
>most famously, stock prices

これは出オチかと言いたくなる潔さですな。

『This suggests that something else matters. I’m calling that business and consumer sentiment.』

経済主体の行動は現在の経済ファンダメンタルズだけではなく先行きの期待によって動く、というお話はその通りちゃあその通りではあるのですが、そこを強調しすぎると短期的な動きに中央銀行が一々反応することになったり、何とかプットみたいに思われて資産価格のバブルが形成されやすくなるんじゃないのかと小一時間問い詰めたいが、まあこういう定義で来ましたよ。

『In his seminal 1936 book The General Theory of Unemployment, John Maynard Keynes used the phrase “animal spirits” to describe the idea that beliefs and views not only matter for decision-making, but also change in ways that are hard to predict and manage.』

『As a longtime business practitioner, I too think of sentiment in this way. I believe our economy’s performance is driven in important ways by the outlook and beliefs of consumers and businesses-over and above what the hard data, and past patterns in it, by themselves would imply.』

『In other words, having the incoming data is one thing, but knowing what consumers and companies think about the road ahead is quite another.』

ということで経済主体というか家計と企業がどのような期待を持っているかによって行動が異なるから、経済のファンダメンタルズが先行きどうなるのかというのを知るのも大事だが先行き期待を知るのも大事ですという事ですな。

でまあ実際問題として最近ってハードデータよりもISMみたいな景況感指数の方が市場ちゃんも反応しているのでして、まーこの辺は鶏が先か卵が先かという感じでもあるのですが、FEDの高官が堂々とこのように言い出すくらいなので、そらまあセンチメント系の指数に反応するわなと思いますし、センチメント指数に金融市場が反応するもんだからFEDの方が注目を高めてしまう、という状況なのかもしれませんが、いずれにせよバンドワゴン効果みたいな感じで、センチメントとか株価みたいなのにホイホイと反応するもんだからそらボラタイルになるわな、とも思ってしまうのでした。でもって次のパラグラフ。

『Scholars have formalized the notion of sentiment in a variety of ways. Examples include the now large literatures on “news shocks,” “sunspot shocks,” “uncertainty shocks,” “sticky information,” “data misperceptions” and the like.2 Clearly, the definition of sentiment is tricky. But what these notions all have in common is the idea that businesses and consumers have to form views in order to operate successfully in an uncertain world, and that they may at times find it very difficult to do so. This latter point is especially important in my view.』

ああだこうだ言ってますが、人びとが先行きの不透明な中で経済活動の意思決定をするためにはその時の期待がどうなっているかによって決まります的な話をしておるようで。でもって次。

『Sentiment is not unrelated to “confidence.” Confidence is a must for businesses to want to invest and for credit and equity markets to be willing to finance that investment.』

ということで結局のところなんちゃら信頼感系の指数に注目みたいな話になってしまうのでありました。

『As a practitioner, it’s not surprising to me that the investment is significantly more volatile than GDP. Confidence is also essential for consumers to spend, but, in our economy, most of what we produce is for immediate consumption rather than investment. Spending for immediate consumption isn’t greatly affected by confidence, but, because households bear substantial risks that they cannot easily insure, such as losing a job or falling ill, they are unlikely to spend on big ticket items without at least some assurance of future stability.』

普段の消費などのような行動では先行きのセンチメントがどうのこうのというのは関係ないし、そういう部分で消費の多くは占められているのは事実だけど、消費者がより大きなものを買うとかそういう時になると先行きのコンフィデンス、自分の将来のジョブとか健康とかそういうのにコンフィデンスが無かったら大きな買い物を決めませんわな、ということで・・・・・

『As a result, a sudden pullback in their expectations could easily affect their expenditures and tip the economy into recession.』

よって消費者の先行きに対する期待を突如大きく下げるようなことが起きると皆さんが消費を控えてしまって経済はさらに悪化してリセッションになってしまいまっせ、だそうです。

『Practitioners and policymakers have both, at some general level, long recognized what I’ve described. I view the many policy levers erected around us-the automatic stabilizers of unemployment insurance, safety net programs and deposit insurance, among others-as a response to the idea that fear and optimism should not contribute unduly to the volatility of our economy. Nonetheless, no amount of publicly funded safety can fully remove the role of sentiment and confidence, as I think the great financial crisis taught us all, and New Yorkers especially.』

でもって社会保障などで先行きの不安を軽減することはできますし、だからこそ社会保障の制度ってのがある訳ですが、それだけでは不安ゼロって訳に参りませんですね、とか何とかそんな話をして、この「センチメントの定義」ってコーナーが締められていますな。


・センチメントが大きく下がってもしかしたら物価に影響も与えた可能性もとか自由自在ですな

次の小見出しが『The Impact of Sentiment』ってので、だいたいお察しの内容があるのですが、さっきのまとめにあった話の所だけ引用するざますわよ。

『In my short Fed experience, I’ve seen it even more clearly. At the end of 2018, the considerable uncertainty I described a few minutes ago led to large drops in sentiment. Between December 2018 and January 2019, the University of Michigan’s consumer sentiment index dropped seven points, the largest one-month decline since 2013. The Conference Board’s measure of CEO confidence also fell significantly in the fourth quarter to its lowest level since 2012.』

『We then saw weak numbers in January and February; for example, February retail sales and payroll employment growth were quite low. Perhaps that’s also why inflation in the first quarter was so weak. Firms with less confidence have less conviction to push through price increases.』

年末からの話ですが、センチメントが落ちた結果リテールセールスが減ってみたり、雇用者数の伸びが落ちてみたり、もしかしたらそれによって企業が価格引き上げに慎重になった結果として1Qの物価上昇率が下がったのかもしれませんぜ、とか割と何でも万能化しているのが面白いというか調子に乗り過ぎじゃねーかというかなこのおじちゃん。

いやまあ確かにそれはそうなのかも知れないですけど、これ言い出すとさっきも申し上げたように結局のところ米国の場合株価が下がるとマズーという話に繋がってしまい、それでまあ株価がサガランチ会長になるのは結構なのかも知れませんが、金融市場ちゃんというのはそのような時には「下がらないなら上がるしかないぜヒャッハー」となってあっという間にヒャッハー相場を形成してしまい、ファンメタと乖離したアンサステイナブルな資産価格を形成して最後には崩壊して怪我人死人が続出するというのが仕様になっているのですがそっちはどうなりますねんという気はだいぶする。


・そして株価が重要と思いっきり来るのでした

『Has Sentiment Become More Important? 』という小見出しが次に来る。まあ小見出しでお察しの内容ですが。

『I want to make the case that sentiment is up in importance-and that at the same time, it has become more volatile.』

はあそうですか。

『One indicator might be the increased visibility of this topic in the academic literature over the past 15 years. But more generally, both good and bad news diffuse significantly more quickly and broadly. We surf the news on our phone 10 times per day.』

1日10回どころではありませんが何か?(自分の電話機は使わんけど^^)

『The business media is everywhere, even on planes. And the Fed contributes, for example, by having even more press conference and speeches.』

ほうほうそう来ましたか。

『Relative to a few decades ago, consumers might be more exposed to the vagaries of sentiment. In 2016, according to the Fed’s Survey of Consumer Finances, about 57 percent of middle-aged families were invested in the stock market, compared with 40 percent in 1989.3 And they’re more likely to be invested in index funds that move with the market than with company fundamentals.』

キタコレ。

『Households also might still be scarred by the effects of the Great Recession; recent research by Richmond Fed economists found that even six years after the recession ended, consumers were the most uncertain they’d been since the late 1970s.4』

つーことでリッチモンド連銀の調査によれば、リーマンショック終わって6年経過してもショックの恐怖が残っていたという結果があって、1970年代の不況の記憶よりも長い間恐怖が残っているというのがあるそうで、金融市場のショック、というか要するに株価暴落に対してより脆弱だということを言いたいんでしょうな。

『In addition, the business reaction function has gotten faster. One reason is that CEO short-termism has increased as activism in the market for corporate control has shifted companies’ focus. I also think firms’ resilience is down. They start with lower confidence. I hear from business leaders who are still feeling “hungover” from the Great Recession. While economic upturns are more likely to die of a heart attack than of old age, the length of the current upturn makes many people nervous that another recession is right around the corner.』

企業のコンフィデンスもよりボラタイルになっていまっせと。

『All of this may be exacerbated by higher leverage; according to the Fed’s Financial Stability Report, which was released just last week, business borrowing relative to GDP is historically high at present.』

企業のレバレッジがヒストリカルに見て高い所にあるのが大きな要因とな。

『Levered companies have a bias toward taking action on negative news, including cutting costs, reducing staff and pricing for volume. These all lead to an asymmetry in which firms are much more cautious about the downside than they are optimistic about the upside.5』

ハイレバだったら先行きの見通し変化にどうしても大きく反応してしまいますがな、ということだそうな。


・でもって金融政策へのインプリケーションですが

最後から2番目の小見出し(最後のは『Keeping an Ear to the Ground』ということで多くの声に耳を傾けないとセンチメントってわからんよねみたいな話なのでパスします)の『Implications for the Economy and Monetary Policy』である。

『Let’s assume I’m correct that sentiment is both more important and more volatile. What are the implications for the economy and for policy?』

さて何ですかな。

『One implication, I believe, is that both consumers and businesses have a higher bar for spending decisions, which would tend to reduce consumer spending and lower firms’ investment posture.』

センチメントが良くならないと中々先行きの投資や消費に繋がらんとな。

『From that perspective, it’s possible that some of the tepid recovery from the Great Recession was a self-fulfilling lack of belief in the strength of the economy. And I see it continuing today with a negative tilt or asymmetry, as I discussed before.』

でもってリーマンショックの後遺症もあってセンチメントが下がった時の抑制効果の方がでかいと先ほど申し上げましたが・・・・・・・・

『Firms are frustrated with political polarization and uncertainty about regulation. This limits their pricing courage and caps the upside on their spending and investment decisions.』

企業は政治やら規制の不透明感に対してフラストレーションを持っていまして、その結果価格引き上げとか投資とかの決定に慎重になっとる、という見立てになってますの。

『For these reasons, I don’t discount the idea that we could talk ourselves into a recession. Some economists have studied the spread of information from a disease perspective, where the information spreads slowly at first but quickly gains steam. I would argue that in today’s media climate, the “disease” spreads faster. (Of course, it’s possible that the “disease” could also be good news, but recent research suggests that firms are much more likely to react to negative economic news than positive economic news.6)』

でもって悪いニュースには人間反応しやすいので・・・・・・

『For monetary policymakers, we have to be aware that our communication matters critically. Long gone are the days when we could change rates and then wait for economic actors to discern that change and react.』

よってFEDのコミュニケーションも重要であるということを重要視しなければいけなくて、そんなこともありまして、利上げをするにあたっても慎重にしないといけない、というなんかそうなのかと思うけどこの話の流れでは説得力のある話になっているのがワロタ。

『You might have heard the story that for many years people would use the size of Alan Greenspan’s briefcase as a clue to the stance of monetary policy; a thick briefcase meant a rate change, and a thin briefcase meant the status quo.7 Now, in addition to releasing a detailed statement after every FOMC meeting, the chair gives a press conference. The public also gets a lot of information through speeches by other Fed leaders and our Summary of Economic Projections (SEP, also known as the “dot plots”).』

で?

『But it’s worth asking if we’re helping or just confusing things. There might be ways we can clarify our communications, such as the chair’s recent efforts to have more press conferences. We might also try to simplify communications tools such as the SEP. Such steps are part of the review of our monetary policy framework that is currently being led by Vice Chair Clarida.8』

って話がコロコロ変わっているのお前らだろと思うのだが、SEPをもうちょっとシンプルにした方が良いというのはまあこれは緩和時代から緩和正常化時代には使えるツール(先行きの金融政策にガイダンスを与えて効果を出そうとしていたから)だったけど今は単に混乱のもとになるだろ、というのはまあ分かる。

『It’s also the case that monetary policy becomes about more than interest rates per se. In a volatile environment, rate moves can indicate more than stimulation or restriction. They are also taken as signals on the health of the economy. Counterintuitively, then, rate moves can send unintended messages.』

金融市場のメッセージが重要なのはわかるが、全体のトーンから見てもこれは金融市場に振り回されて増幅装置になってしまうFRB爆誕の巻(ってか既にそうですが)というのを示す話しっすなあ。

『For example, in March the market reacted to a lower median rate path in the SEP by lowering inflation expectations. Similarly, when the Fed signaled in mid-2013 that it might begin winding down its bond purchases due to a strengthening economy, investors panicked and a global sell-off ensued. And this can happen quickly, both when the Fed is removing or adding accommodation.』

てな事例を出しながら・・・・・・・

『We need to recognize communication as a monetary policy transmission channel, acknowledging that this channel adds value to nontraditional measures such as quantitative easing.』

という事なんですが、まあこれって普通はアランはアランでもブラインダーさんの方が喝破する「自分の尾を追う犬」への道に容易につながるわな、と思ってしまうのでした。

『Beyond the scope of monetary policy, there might be other steps to reduce the asymmetry of sentiment, such as providing incentives for productive investment or, more broadly, more regulatory certainty. Paying closer attention to corporate debt could increase firms’ resiliency. If the ground beneath them is solid, firms’ memories of the bad times will eventually fade.』

ということでこの部分最後になりますが、いやまあそらそうではあるのですが、中央銀行がこのセンチメントという奴に振り回されだすと経済というよりも金融市場の上下増幅装置になるのか、あるいは株価のプットを堂々形成した結果として資産価格のオーバーバリュエーションを生み出すということにつながるので、どうせ株価にプットを入れるのであれば、資産価格のオーバーバリュエーションを防ぐためには安全資産の収益率を上げる、つまりもっと利上げを行うのと株価に中銀プットをぶち込むセットというのはどうでしょうか、という名案(迷案)を今思いついてしまったんですがいかがでしょうか(そこの貴方、ただのポジショントークじゃねえのとか言わないように)。


・・・・・てな訳で唐突にぶっこんでみましたがまあこういわれるとそれはそれで潔いのだが大丈夫かそれで、とは思っていますバーキン総裁の講演なのでありましたとさ。






2019/05/15

お題「米国株式市場ってヘッドラインで反応しすぎでね?などの雑談/虫干しFOMC会見ネタ消化の続き」

FOMCで暫く止まっていたFRB高官の皆様のベシャリーヌが再開されてああでもないこうでもないと来ているので会見ネタとかだんだん賞味期限が近いのに焦るアタクシ(ならとっとと片付けろというツッコミは甘んじて受ける)。

https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
FOMC Speak: Remarks by Federal Open Market Committee Participants
About FOMC Speak

右側の『Recent Public Remarks』 のリストを見ると日程が詰まってバンバンとトークが出ているのでちゃんと追わないといけないんですけど、まあほら今日はまだ月初7営業日ですから・・・・・・・・(言い訳にもなってない)


〇市場世間話雑談

・米国株式市場は詳しくないのでよくわからんのですが思うことありメモメモ

昨日の朝っぱらってこれだった訳ですな。

https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN1SJ2DS
2019年5月14日 / 07:44
米国株式市場=ダウ617ドル安、中国の報復措置発表でリスク回避強まる

でもって何でそうなのというと中国の報復措置発表ウギャーって事なのですが、よくよくいろんな分析を拝見して確認しますと、今回の報復措置って過去実施した分をこの前一旦兵を退いた奴の焼き直しバージョンということなので、エスカレーションしているのはタリフマンの方で、中国の方は別に「よろしい、ならば戦争だ」モードにはなっていないというような内容ですね、などというのは門外漢のアタクシでも把握できましたし、大体からして米国が追加関税発動したら報復するよって事前にアナウンスしてただろ何でここまで下げなきゃいかんのだ、とかは何となく思っていたのよね(と翌日になって言っても説得力がないのですけど、笑)。


でまあ昨日の国内株式市場ちゃんも下で始まったと思ったらトランプおじさんから一連の火消し発言が登場するという摩訶不思議な展開。

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-talks-idJPKCN1SK22J
2019年5月15日 / 01:40 /
米中摩擦は「ささいな口げんか」、協議は継続=米大統領

『トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、両国の交渉団は協議を継続しており、話し合いは「非常に良好」と説明。中国の知的財産や補助金慣行を巡る米側の主張に触れ、「われわれは数十年にもわたって非常に不公正な扱いを受けてきたため、中国とささいな口げんかをしているところだ」と述べた。トランプ氏はこの日発信した一連のツイッターへの投稿で、「適時に中国と合意する」とし、「考えられているよりも早期に合意に達するだろう!」と述べた。』(上記URL先より)

でまあこの記事のタイムスタンプ昨日の深夜になっていますが、もうちょっと前の時間というか東証の前場という向こうの夜のお時間に色々とトランプのアレが登場していて、日本株もこれを見て戻るというかSP先物時間外みたいなのが前日比プラスで推移していくのを見て戻ったという感じだと思うのですが、日経で400円安とかやらかしていたと思ったら結局は21000円は回復して(前日比安ですけど)何となく格好は付くの巻。


でもって米国株式市場ちゃんは
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N22Q4R6
2019年5月15日 / 05:31 /
米国株式市場=ダウ反発し207ドル高、米中協議の行方を楽観視

ということでして、トランプの一連の発言とか株価急落したの見てトランプが火消しにその場しのぎのおためごかし言っただけだろいい加減にしろと思いますし、最初の中国報復関税に関しても内容的には妥協的な部分が色々とみられるという内容だと思うんですが、最近はアルゴだかAIだか知らんですが、中身も見ないでヘッドラインで反応してオリャーとやる向きがこんなにいるのかよ、などと思ったりするのですが、米国株式市場機関投資家様動向とかそんなのに詳しい訳もないローカルドメスティック中年男性のアタクシと致しましては何が何やらさっぱり分からんという日々のトレードウォー相場ではございますな、というメモだけ後日のために備忘しておくと割とどこかで使うかもしれないな、と思っているのでした。



・令和新時代を飾るウゴカンチ会長の債券先物ェ・・・・・・・・・・・・

さてさて、そんなのもあって日本株ちゃんも改元してから平均株価がホイホイ連発で下がって1000円レベルの下げとか大変におはぎゃーな展開を示しているのですが、一方で全然動かんのが債券先物でありまして、あーた10連休明けに前日比3銭高で大引けになった債券先物ちゃん(なおアタクシはジジイなので債券先物の引けは15時(2分)の引けだし寄りといえば8時45分の寄りである)ですけれども、そこから先の日々で大引けの数値が1銭高と1銭安と引け変わらずの3つしか無くて、しかも延々とこの間の引値の値幅が1銭しかないとかどうなっとるんじゃワレという状況。

まあ動くのはカーブの後ろの方でチーペ近辺は追加緩和ネタが本格化するとか、中期が需給でもっと過激に金利低下するとかでもしないとバランス上これ以上突っ込んでいけないということなのだけかもしれませんが、ここまでくるとそろそろフラグ建築士のアタクシが債券先物ちゃんにフラグを立てに行かないと、投資家はまだ債券ちゃんなので日銭が入る(マイナス金利だと入らないだろいい加減にしろとか言わないでくださいお許しください)のですが、マーケットメーカーの皆さんこのテイタラクでは売買にも困るし先物のヘッジもやってもただの気休めだし、相場が動く要因がトランプ先生のタリフ音頭で大暴れというのばっかりなので如何ともしがたいのですけれども、何とかならんかね、とは思います(たぶん米債が目先トレンド形成じゃあってのを上下どっちでもいいからやらないと・・・・・・)。


・短国買入残高今月は増加ですかそうですか

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190514.htm
国庫短期証券買入 7,500 2019年5月15日

8日が3M、9日が6M、10日が3Mの入札と来てましたので、新発入札3回に対応して2500億円×3=7500億円という順当なオファーでやってきました。まあこれですと基本的に今月の短国買入残高は久々に増加するでしょうが、だから何なのというとまあ結局短国買入自体はゼロにはならない(べき論としてはして欲しいのだが)でこの程度のオファーを淡々とというか機械的に実施していき、まあ何か著変があった時だけ増やしたり減らしたりすることもあるもんね、というメッセージを示した(残高維持からなんぼでも減らすということにはこだわらない)という理解をしておきますが、それで良いでしょうかね、知らんけど。


〇引き続きの虫干しネタ(すいません)

FOMCスピークを見て消化すべき高官発言があっという間に大増殖したことに震えながら未だに5月2日のネタをやっているアタクシをお許しくださいませナムナムナム。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190501.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference May 1, 2019

・Fedwireがダウンするという事案があったとな

これは不覚にもアタクシ気が付きませんでした。汗顔至極。

『VICTORIA GUIDA. Victoria Guida with Politico. I wanted to ask, early last month, I believe it was April 2, the Fedwire system went down and I was just wondering if you could talk about what happened there, how long it lasted, whether you know what happened, whether you're still looking into it, and whether it's something that could happen again?』

フェドワイヤー(日銀ネット相当)が一時的にダウンしたそうな、その質問です。

『CHAIR POWELL. Sure. So that's right. I want to say it was April 1 but it may have been April 2. In any case, the Fedwire did go down for a few hours, in the three or four hour range. We were able to quickly identify the problem. It was an internal problem and we were able to correct it and make changes so that that problem and other problems like it cannot repeat themselves. So we learn from these instances. They're fairly rare but we learn from them and in this case it was internal and it's been corrected.』

3〜4時間以内に復旧しまして、原因についても確認済みで、外部からのものではなく単に内部的な不具合によるものだったので、これを教訓にして今後の再発防止に努める、だそうです。4月2日の出来事だったようで。



・政治圧力の影響は如何ほどございますでしょうかというイヤミ質問への反応

こんなんがありましてね(ちなみに少しすっ飛ばして11ページ以降になっています)。

『MARTIN CRUTSINGER. Mr. Chairman, Marty Crutsinger with the AP. You've repeatedly said that the Fed's going to conduct monetary policy without regard to outside political pressure but it seems like the president is intent on increasing that political pressure.』

「it seems like the president is intent on increasing that political pressure.」とかド直球過ぎてワロタ。

『Yesterday, he said you should cut rates a full percentage point and start quantitative easing. What do those comments do in terms of affecting how you pursue policy and how you convey your decisions to the public? 』

これはまた露骨なイヤミ。でもってパウエル議長のお答えですけど。


『CHAIR POWELL. Yeah. So, as you know, we are a nonpolitical institution and that means we don't think about short-term political considerations, we don't discuss them, and we don't consider them in making our decisions one way or the other. And what we're always solving for in our process, in our work, is to carry out our mission which is to extend the economic expansion, keep the labor market strong, and get inflation around 2 percent.』

とこのように最初にそんなの当たり前よという話から入る時は怪しいというのがまだ読みだして日が浅いですがどうもパウエル議長の会見での仕様になっているような気がします。

『So to give you an idea of what our process is like maybe as a way of putting all that in context, so for the past maybe 10 days, all 17 FOMC members will have made extensive preparations, catching up on the latest data, reading all the memos, talking to their colleagues and their staff.』

政治的な圧力はない、という話をするのに事前にこのように経済物価情勢の調査を深く行い、そのブリーフィングを経て議論に臨むんですおんどれらの妄想するような政治圧力とか関係なんじゃオラ(キリッ)っという説明になっているのが益々怪しい。

『As you also are I'm sure aware, Marty, we talk to literally thousands of business people and market people and people in the nonprofit sector and the educational sector just to get a better sense of the economy. We put all that together and we come together for two days.』

更に多くのヒアリングを企業だけではなく幅ひろく行ってそれらから上がって来る情報も参考にしてるんだぜマーティー、とか言い出しまして、最初この唐突に出てくる「Marty」って何だろと3秒悩んだのですが、これは質問している人が名乗りを上げるときに「Marty Crutsinger」って言っていたから、記者に向かって呼びかけていたという状況でして、どうも「政治的圧力」の話になると説明の途中で相手の名前まで呼んでしまうという辺りに心理的動揺というか空元気というか、まあ淡々とお答えするというような状況になれないというのが示されているのではないかと勝手に個人の妄想で妄想しました。

『The first day begins with an economic briefing, which is sort of economic and financial developments in the United States and around the world. That takes up most of the first day and we talk about this in great detail. We go away, we think about that, and we come back and the next day we talk about monetary policy.』

『And in this particular case, we came to a unanimous decision after an extensive discussion that our monetary policy stance is appropriate where it is. And we think our monetary policy stance is in a good place and we're going to be patient as we consider adjustments. And we also see, by the way, the evolving risk picture as very consistent with that outlook.』

この辺は議事がどういう内容のものをどの時間帯で話をしていますか的なまあ記者の皆様も先刻ご承知の話を延々とする。

『So we don't feel like the data's pushing us in either direction. Of course, we'll not hesitate if we do feel that the data justify moving in either direction. But that's our process. That's how we think about things.』

『We don't think about other factors. We don't let them into our decision making. We don't discuss them. 』

別にそのFOMCの会議やるのにこうやってああやってとかいう話をわざわざせんでもエエジャロと思う訳で、最後の所だけビシッと言えばエエンチャウノとは思うのですが、その前にああだこうだと説明するというのは、時間を稼ぐ間に気の利いた答えでも考えていたのか、それとも後ろめたいことがあるので話を長く引っ張って煙に巻きながら答えようとしたか、などと妄想が膨らんで楽しいです(別にアタクシが変態な訳ではない、と思う)。


・大体物価の質問になると色々と苦しいというのアゲイン

こんなのがありました。

『PAUL KIERNAN. Paul Kiernan from Dow Jones Newswires. Thanks for the question. In the last 23 years, core PCE inflation has run above 2 percent only during the period that coincided with the housing bubble. I'd like to know what you would say people who worry that it will prove difficult for the Fed to lift inflation without potentially stoking another asset bubble of some sort. Thank you.』

過去23年間でコアPCEインフレが2%を超えた時期って住宅バブルの時だけなんですけど、またその手の資産バブルでも作りに行かない限り2%を超えるのって無理ゲーなんじゃないでしょうかどう思いますかとかこれはまた剛直球な質問。

『CHAIR POWELL. Yeah. So you're pointing to really the fact that in recent years inflation has moved down and down and, really, many major central banks have struggled to reach their inflation goals from below. And that includes us, although we've actually done -- we've come closer, I think, than most others. And it's just a question, I think, of demographic and other large and, in some cases, global forces that are disinflationary to some extent and it creates significant challenges.』

話を逸らしにかかっておりますな。

『One, I would say, is it means that interest rates will be lower, will be closer to the effective lower bound more of the time because that means lower interest rates. And that's one of the reasons we're having a review of our monetary policy strategies, tools, and communications this year is to think about that problem.』

金利が実効ゼロ制約に近い状況にあるので金融政策も従来型から枠組みを検討する必要がありますので検討中ですキタコレ。

『You mentioned the connection to financial stability of lower for longer rates and that is another challenge.』

たぶんこの質問者は「今の経済は住宅バブルのようなエクストリームな状況にしないと2%行かないって状況であって物価って上がらんのとちゃいますか」という質問をしていると思ったのだが、話を低金利長期化による金融不均衡発生からの金融安定化の方に逸らしてしまうというこの謎の答弁。

『As I mentioned earlier, we do consider financial stability concerns to the extent they threaten achievement of our goals but we also view, and I do take the view, that macroprudential and supervisory tools, regulatory tools, things like the stress tests that we can do right through the cycle, those are really the best defense against financial instability so that the financial system is highly resilient to the kinds of financial shocks that can happen.』

金融システムの安定問題は基本金融政策以外のツールで対応しますし、現状は特に金融不均衡による金融システムへの懸念があるほどのような状況ではない、と物価が上がらんの大丈夫かという質問(と思ったのだが)と話がかみ合っていないように見えましたが、まあ物価の所をゴリゴリやられたくないんでしょうね。

#とまあそんなところで、あとちょっとあるかなあ程度ですが本日はここで勘弁







2019/05/14

お題「虫干し企画と化しましたが(すいませんすいません)パウエル会見鑑賞の続き」

ほほう。
https://jp.reuters.com/article/us-rate-cut-tarrif-idJPKCN1SJ1R2
2019年5月14日 / 01:08 /
米短期金融市場で利下げ観測高まる、中国の報復関税発表受け

って言ってるんですが関税引き上げ→インフレ圧力高まるのコンボは思いっきりアリエールだと思うのですがその場合はどうするんじゃろ。

〇すっかり虫干しネタですがFOMC会見鑑賞の続きです(虫干しスイマセン)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190501.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference May 1, 2019

ちなみにFEDはFOMC当日中には冒頭説明部分を出してくれて(そら原稿があるんだから出るわな)、翌営業日か翌々には「PRELIMINARY TRANSCRIPT」としてQAのパートを出してくれるのですが、これが最終稿になるまで下手したら1か月近く掛かる(なおジャパンの14日朝現在もPRELIMINARY TRANSCRIPT)というのが謎というかオモロイというか。

・IOERに関して

前回の続きからで次の質疑はIOERに関する質疑でこれは普通ちゃあ普通の会話。

『HOWARD SCHNEIDER. Hi. Howard Schneider with Reuters. Shifting gears a little bit, I wondered if you could flesh out -- I know you're describing it as a small technical adjustment but on the IOER federal funds spread, give us a sense of why it matters whether or not this reaches the upper limit a little bit. Is there any feedthrough to broader credit conditions and financial conditions that you worry about or is it simply a matter of the fed showing that it can control what it says it's controlling? And I do have a follow-up. 』

IOERが上限にならなくなってきたからテクニカルに下げたという事のようですが説明プリーズみたいな話ですけど。

『CHAIR POWELL. So a small, temporary deviation outside of the range would really carry no -- wouldn't be important, as your question suggests. But we do think it's important that we be able to control the federal funds rate and generally keep it within the range. That's just good monetary policy, monetary control. So we think it's important and we have the tools to do that so we've use them again today and, again, this is just a technical fix. It really has no implications for policy.』

微妙に会話の上あごと下あごがズレている気もしますが、日々のFF金利が当日の需給関係で目標レンジから外れることが起きるのは一時的なら問題とはしなくて、基本的にFF金利がレンジ内にあれば良いし、そうであるという事にならないと金利コントロールしている意味がないですが、今回のIOERの引き下げはあくまでもテクニカルですよ、という回答でなんかこう微妙な会話。

『HOWARD SCHNEIDER. As a follow-up on this, it is demonstrating that you can control the market you want to control. And I guess the question is at what point would these steady declines in the IOER -- steady widening of this spread if it continues essentially become the policy choice?』

と思ったら追加(最初から追加すると言っていましたので自然な流れですが)が来ましたが、質問の方はIOERを徐々に下げてきているのだが、政策としてはIOERと誘導レンジの上限が開いていくという事になっているのはこれ政策としてのチョイスなの?という質問。

この場合、本来の回答は「FEDの資産残高縮小によって、金融機関における超過準備需要のアグリゲートと見らえる水準程度まで超過準備が下がっていけば、本来IOERは翌日物銀行間取引金利の下限となるものなので、FF市場動向を見ながら誘導レンジの上限からは遠くなっていくものです」という答えだと思うのだが、パウエル先生なんか微妙な答え、というか米国の場合はFF市場がどうのこうのみたいな話をあまりしない傾向があるので、聞く方も説明する方も通常あまりケアしてないんだと思う(個人の偏見です)。

『CHAIR POWELL. Yeah, so generally speaking, the federal funds rate -- we control only directly the federal funds rate in terms of the market rate. And the transmission of the federal funds rate into other short-term rates -- money market rates -- has been very good over a long period of time.』

直接的にコントロールが出来るのが銀行間翌日物金利で、そこを起点にしてより長い金利に波及させていくというのが金融政策における金利コントロールですよ、というのはまあ良いのですけど、

『And that's important because it's really broader financial conditions that matter, not so much precisely the federal funds rate. So I think the fed controlling the federal funds rate is actually important from that standpoint and I don't see us not controlling it. So I think we'll continue to control it and it will continue to transmit well into broader financial conditions.』

FF金利が幅広い金融環境にも影響していきますから、FF金利のコントロールは重要で、そのコントロールは上手くできています(キリッ)って答えているんですが、それ質問者が聞きたいことと話がかみ合っていないんですが。

・・・・・・以下もこんな感じでパウエルわざと外しているのか、素で外しているのか分からんのですが、こういう珍問答が随所に出てくるのは何なんでしょうね、とは思います。


・ファイナンシャルコンディションから金融不均衡の質問が飛んで民間企業負債への若干の懸念が表明される

次の質問ですが、

『MICHAEL MCKEE. Michael McKee with Bloomberg. I'm curious about the financial conditions that you see out there.』

と次のブルームバーグのMichael McKee記者は今の質疑でfinancial conditionsというのが出たのですかさずそれをマクラに質問をする、というこの記者のプレーに流れるような美しさを感じますので日銀記者クラブも見習ってほしい。

『The minutes of the March meeting tell us a few officials worried about financial stability risks.』

そっちで来たか。

『Was there a broader discussion at this meeting? Any consensus on whether such risks are growing as the markets hit new highs and we do see some instability in short-end trading. Is it possible that rates are too low at this point?』

金融不均衡に関するマターは議論しましたか、それから現状認識は前回FOMCから変化しましたか、とな。

『CHAIR POWELL. We actually have a financial stability briefing and opportunity for comment every other meeting. So we had our quarterly briefing today -- yesterday, as a matter of fact -- and had that discussion as well.』

勿論金融不均衡に関するブリーフィングをしてますよと。

『And I think there haven't been a lot of changes since the last meeting but I'll just go through the way we think about it.』

特に前回からの変化はありませんと。

『First, we've developed and published our framework for assessing financial stability vulnerabilities, put it out for comment, and welcomed any feedback we get from the public. And that enables us to focus our assessments regularly on the same things so that we can be held accountable and be transparent.』

米国版のFSRレポートも作っておりますし、そのあたりを見て我々の考えていることを理解して頂こうとしております、とか微妙に余計な説明をぶち込むのがパウエルクオリティ。

『So there are four aspects of it that I'll go through quickly but I'd say that the headline really is that while there are some concerns around nonfinancial corporate debt, really the finding is that overall financial stability vulnerabilities are moderate on balance and, in addition, I would say that the financial system is quite resilient to shocks of various kinds with high capital and liquidity.』

一文がなげえよと思いましたが、非金融機関企業部門の負債について最近はやや懸念する部分もありまっせと来ましたが、ただまあその企業部門の負債が増えていること自体は、その状況と金融機関の資本や資金流動性の状況と比較してみた場合に、金融機関経営に直撃するような事態を想定するような話しでもないので金融不安定化リスクという程の事でもない、と結論は当然ながら大丈夫大丈夫ではありますが、具体的なものとして一発目にこれが来ましたかというお話。、

『But the four things we look at are, first, asset prices. And as for asset prices, some asset prices are somewhat elevated but I would say not extremely so.』

その他見ているもの4つあるけど資産価格は幾分か上がっているけど別に過激に上がっている訳でもないので気にしない気にしない。

『Leverage in the financial sector, I mentioned households are actually in good shape from a leverage standpoint. Default rates are low. Borrowing is relatively low. Nonfinancial corporates is an area that we've spotlighted and focused on for attention and there are concerns about that, not so much from a financial stability standpoint but from the standpoint that having a highly levered corporate sector could be an amplifier for a downturn.』

金融セクターのレバレッジに関しても注目点だそうで、家計のレバレッジは特に問題になるような状況ではないのだが、非金融企業のレバレッジに関しては注目すべき水準にあるので注意して様子を見ているかれども、ただその状況が金融システムを直撃するような状況かというとそこまでの規模ではない、とは言いましても企業部門の高過ぎるレバレッジが逆回転すると、それは景気下押しの増幅装置に働くからやはり注意すべき。

『And then the last two things are really about the leverage in the financial system and funding risk and those are both very, very low by historic standards in the United States. So on balance, in my view, vulnerabilities are moderate.』

のこりの2つの点は金融システムにおけるレバレッジとファンディングリスクの状況ですが、これらは歴史的に見て極めてリスクの低い状態にあるので、全体的に見た場合に金融不均衡による脆弱性の問題はモデレートなものに留まっているという認識です。とこっちの話になると割と明快じゃな。

でもって追加質問。

『MICHAEL MCKEE. If I could follow up on that, I'm just curious as to whether the level of asset prices is a reason why you might not be interested in cutting rates.』

逆方向から攻めてきたな。資産価格のレベルが上がったから利下げを検討しないということなのかも気になりますなあとかワロス。

『CHAIR POWELL. So we do say that risks to the financial system -- we say in our longer-run statement of goals and monetary policy strategy that risks to the financial system that could prevent us from achieving our goals are something that we do take into consideration.』

今話をしたのは金融システムの安定化に対するリスクの話であって、そのような観点で考えている話なので・・・・・・

『I would say though that really the tools for addressing those concerns are better -- capital liquidity, good supervision, good stress testing, and things like that. Those are better first-order tools to deal with these kinds of issues than monetary policy. 』

そのような問題に関しては資本とか流動性とか監督とかストレステストなどのようなプルーデンスツールで対応するのが本筋であって、金融政策で対応するよりもその手のもので対応しますよ、と来ました。まあそこはそう答えるわなと思います。


・物価の所から突っ込まれると基本的に苦しい答弁になるのは把握した

苦しいからこそ蒟蒻問答になってみたり、トランジトリーの連打になったりするんでしょうな、ナムナム。

ということでその次の質疑がまた物価に戻る。

『NICK TIMIRAOS. Nick Timiraos of the Wall Street Journal. Chair Powell, with the benefit of hindsight, did last year's rate increases make it harder for the fed to credibly affirm its 2 percent symmetric inflation target is not in fact a ceiling? And, if so, would it be appropriate to lower rates if core inflation remained persistently closer to 1 and a half percent instead of 2 percent? And, if not, do you worry about any unwelcome tightening in real rates, given the recent softness in core inflation?』

後講釈になりますが昨年12月に利上げしたのって結果的に物価目標がシンメトリックじゃなくて2%を上限にするようにしてしまったということになり、シンメトリックターゲットと言ってるFEDの信認を下げたことになったんじゃないですかねえとかこらまたキツイ事をという感じで、更に物価が1.5%とかに下がってきたら利下げですな利下げ、と来たもんだ。

『CHAIR POWELL. So, to your first question, if you go back and think about the middle of last year, inflation was at 2 percent and appeared to be staying there. And the economy was quite strong and was growing strong. The fiscal changes were hitting the economy in a very positive way. And so I think the expectation was that inflation would remain up around 2 percent.』

昨年の夏時点の事を考えますと、物価は2%だったし経済は強かったし更に強くなりそうだったし、財政の追い風もありましたので、物価は2%アラウンドで推移するという見通しでしたよ。

『The weak first quarter performance of core was not expected and I don't think is related to anything we did in terms of raising rates.』

今年の1Qのコア物価の弱さに関しては想定外ではあるが、これは別に利上げのせいではありません(キリッ)。

『It appears to be more -- we don't know this, but you never know until -- with hindsight, with perfect hindsight -- but some of it does appear to be transient or idiosyncratic. Now the second part of your question?』

これは完全に後講釈の話になってしまいますが、ワシらもおんどれらも予期していなかった一時的および特異的な事象(ちなみに後の方の質疑でそのファクターの話もしているが今日は間に合わないのでパスしますけど一部の物価構成品目が予想外に影響したという説明になっている)ですよ、と一時的現象で押し通す。

『NICK TIMIRAOS. I mean, if it was an issue, would it be appropriate to lower rates if core inflation held closer to 1 and a half percent? And, if not, are you worried that there is unwanted tightening from real rates being where they are? 』

『CHAIR POWELL. I mean, so as I said earlier, we do address this in our sort of constitutional document. If inflation were to run persistently below 2 percent or persistently above 2 percent, that would be a concern for the Committee and the Committee would take that into account in making policy. I do think it's important that inflation run close to and sustainably for a sustained period of time and symmetrically around 2 percent because, if it doesn't, you run the risk that inflation expectations can -- it has been the case, most of the misses are on the downside -- inflation expectations over time could be pulled down and that could put downward pressure on inflation and make it harder for us to react to downturns and harder for us to support the economy in difficult times.』

何つーかこの延々と答えているのですが、ゆうてることは「一時的じゃない下押しと判断すれば政策対応をしますよ、でも今はそう思っていない」と言っているだけで、何でここまでクドクドと説明をするのかが分からんのだが、しかもクドクド説明するのが原則論を延々と言っていて、それは前提として分かっとるがなというのを話すので読んでいて長いのですが、さすがに就任以降回数読んできて、特に最近はこの手の苦しい受け答えが多くなってきたので、「はいはいまた来たまた来た」と読み流すことによって斜め読み力が上がりましたですなwwww

そして次の人も物価。

『JEANNA SMIALEK. Jeanna Smialek, New York Times. So as you just mentioned, last year when you guys were kind of getting inflation coming in around 2 percent, you had this benefit of the tailwind of fiscal stimulus. And you still have that to some extent, although the tax cuts have mostly fed through. We've still got something in the pipeline from the spending cap increases. So I guess, how do you think about inflation as that fiscal benefit wanes toward the end of this year?』

今年の末には財政の追い風無くなりますがその後の物価動向はどうなの(大丈夫なのか、と言いたいんでしょうな)という問いに対して・・・・・・

『CHAIR POWELL. Inflation, first of all, month-to-month, quarter-to-quarter is going to move around.』

一々この調子でお前に言われんでもわかっとるわというのが入るのが最近のパウエルクオリティだし、さっきの金融不安定の話の質疑と比較すると分かりますが、答えるのが苦しい質問が来ると延々とこういう原則論をおっぱじめて煙に巻こうとするのが露骨なので、その辺はもうちょっとドラギ俊彦さんとか福井の俊ちゃんとかの爪の垢を煎じて飲んだ方が良いと思う。

『There will always be factors hitting it. So probably the biggest single factor driving it is the rate of underlying inflation or the closely related idea of where inflation expectations are anchored, the thought being that's where inflation will go in the long run if it's not been pushed by those other factors.』

で?

『So we also think that slack, the level of slack in the economy, does play some small role. It's actually still a measurable role. It's nothing like it was in the 1960s when the Phillips curve was quite steep, so that's also something that plays a role. And so we take all those things into account and the part of it that we can control is the slack part.』

スラックの話をしているのはまあ説明そうするしかないって感じでもありますな。

『And again, we do expect that this reading will be transient and inflation will move back up. And if it isn't and if it runs persistently below 2 percent for a sustained period, then that's something we'd take into account in setting policy. 』

でもってさっきも言ったように直近の動きはトランジエントですよというのがまた来まして、結局は「基調は強い、足元の調整は一時的」と言い張っている、という形で延々推移するからそらまあ(あの時点では)市場ちゃんは追加利下げ観測を落とすのですが、そうなった側からタリフマンが大暴れという辺りにパウエル先生の最近のツカンポ振りがよく現れておりまして実に味わいがありますが、FRB議長にツカンポの花が咲いてハコテンになられると世界が迷惑するので決め打ちしないで大人しくしていて欲しいもんですな、うんうん。

#これで半分で続きはたぶんやりますがまあ物価の所はこんな感じでもいいかなとも思います









2019/05/13

お題「先日の黒田総裁会見ネタの補足/4月会合主な意見には一部幽玄の味わいがありますな」

ほうほうこれはこれは。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190510b.htm/
新しい日本銀行券に関する説明会の開催について

中を見ていただけると分かりますが、技術的なガチモンの説明会ですな。単なる興味本位の興味はあるけど素人が近寄れるような代物ではないですにゃ。


〇そういや唐突に先般の黒田総裁会見ネタの補足

えーっとですな、先般の黒田総裁定例会見なんですけど、最初の質問(フォワードガイダンスに対する質問が答えを思いっきりはぐらかしていた件)に対して次の質問が急に「平成を振り返って」とかいう愚にもつかない質問で質問者は豆腐の角に頭をぶつけてとか申し上げた件なのですが、会見をちゃんと聞いた人によりますと、その質問までが幹事社(会見の司会みたいなのを輪番でやるやつ、たぶん大手で回していると思う)が行ったそうなので、そうしますとあの「平成を振り返って」という質問は最初に用意した分だし、代表以外の誰かに質問させるのは忍びないということで質問した(個人の想像です)、ということのようですな、知らんけど。

・・・・・・・・いやまあ幹事社で一般紙向けの小ネタ「平成を振り返って」を質問しないとあかんという立場については理解するんですけど、(この前も申し上げたように)最後の6年だけ日銀マンだった方をとっ捕まえて31年間の話させたって仕方ないでしょと思う訳ですし、そういうのは最後のまとめの時にでも聞けやと思いますし、そもそも論としてその「元号が変わる」ってので振り返って云々とかいう話をすること自体が何か意味があるものとは思えませんのですが、令和フィーバーで猫でも杓子でも平成を振り返ってどうのこうのとかいうので愚にもつかない話を垂れ流すというメディアにはここのところホトホト呆れておりまして、下らないもんばっかり放流してるんじゃねえよというので更にトサカに来たという感じですな。

しかしまあ何ですな、あれだけ「答えになっていない答え」が出てきたら「先ほどの質問のこの部分に対してのお答えが判然としませんが」って噛みつくとかそういうのをやって頂きたいと思うんですが、どうせ上から言われている(のか誰かこれを聞くというお約束だったからなのか知らんけど)質問の方をそのまま当初予定通りに出してくる、というのはFEDの会見における謎の連携プレーの出来の良さと比べると如何ともしがたいですし、そういうレベルから出てくる報道で日本銀行の金融政策に対する理解度というのも上がりにくいし、インチキ理論を振りかざして2年で2%とか言うのにコロっと引っ掛かる訳ですな、とか何とか思うとやっぱり会見もうちょっとこうガチ勝負の方向にならんかね、とは思います(表に出てないだけでガチ勝負できる人材ってそれなりに居る筈なんだが)。

ということで猛省を促すというのはまあ少しだけマイルドにしますかねとは思うけど、ああいう回答が来ても当初通りの用意した質問を出してしまうとう辺りの臨機応変さが無い会見ってえのは如何なものなのかという風には思うのでした。



〇決定会合主な意見である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2019/opi190425.pdf
金融政策決定会合における主な意見 (2019 年 4 月 24、25 日開催分)1


・経済情勢からは2つほど

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』ですけど、まあそんなに読むものもないという感じ(よくよく考えてみたら展望レポートの回で「そんなに読むものもない」ってナンジャソラという感じではあるが)ですな。

『・わが国の労働市場は着実に改善しているが、依然として男性を中心に労働市場にスラックが残っているとみられる。こうした スラックが完全に解消され、雇用の逼迫が賃金上昇率の明確な加速につながる時点まで、労働市場の改善が続くことが必要である。』

と言っている側から外国人労働者の要件緩和をしてみたり、先週金曜に出ていたヘッドラインにあるような副業をやりやすくするとか思いっきりまた賃金のディスカウントをやりやすくするとか、ちゃんと確認していませんし実際にどうなるのかわかりませんが一部で盛大に話題になっていた厚生年金の2号だか3号だか忘れましたが働いていない配偶者への支給を減らすだのなんだの(さすがにそれは突然やったら大変なことになるだろいい加減にしろと思うが)とか、とにかく低賃金でオッケーという労働者を労働市場にジャンジャン供給しようという施策を物凄い勢いでやっている政府が横にいるのですから、金融政策云々の話ではないと思うんですがねえ。

『・米国では、企業債務がGDP比でみて歴史的な高水準にあり、 トリプルB相当の格付けの社債も多い。こうした銘柄が景気後退局面で格下げとなれば、市場環境が急速に悪化するリスクがある。』

というのが(まだそこまでネタが行ってないですが)FOMC記者会見の中でもありましたけれども、まあこういうのって評価が下がったからギャーとかそういうのを十羽一絡げにしてリスクガーとか言い出しそうな雰囲気がプンプン漂っているのが気になるところではあります。ある意味そういうものはそういう時に評価は食らうのってお約束で、問題はその時に持っていて問題ないものを与信判断以外の事情で投げたりする(短期調達で投資しているとかレバレッジ効いてるとかで自動ぶん投げ装置が稼働する)ようなのがある程度以上いるとややこしい話になるという事ではないかと思いますけどね、よー知らんけど。



・展望レポートなので物価の所でも

『(物価)』の所に参ります。

『・昨年を幾分上回るベアの実現や最近の食料品価格の上昇等を踏まえると、プラスの需給ギャップを起点に、賃金・物価が緩やかに高まるという基本的なメカニズムは作動しているといえる。』

「昨年を幾分上回るベアの実現や最近の食料品価格の上昇等を踏まえると」とのことですが、そもそも論としまして今年は消費税が上がるんですからベアは昨年から消費増税分をきっちり乗せていただかないと生活給の概念からしてアカンじゃろと思いますし、最近の食料品価格の上昇によって上昇しただけそのまま消費が増えているんでしたらメカニズムは回っているとなるでしょうが、実際問題としてはどうなのよというのがこれだと分からんので、この文章だけだと大本営発表にしか見えないし、食料品価格の上昇がインフレ目標達成に向けた前向きな動きって解釈しているように読めるけどそれ違くね?とは思う。

『・物価については、プラスの需給ギャップ持続による上昇圧力と、 家計の根強いデフレマインドや生産性上昇など抑制要因が併存しており、2021 年度にかけても不確実性が高い状況が続くと見込まれる。 』

生産性上昇の抑制要因は良い抑制要因(キリッ)ってことにはなっていますが、それも何だかなあとは思いつつ、まあ大本営の人は別にすると大体皆さん2021年度になってもアカンがねという話になっております。

『・先行き、消費者物価の前年比上昇率の拡大は小幅なものに留まるとみられる。需給ギャップは適度な逼迫感を継続しているものの、適合的期待形成の影響等から、「物価安定の目標」の実現には暫く時間がかかると見込まれる。』

まあそういうことですよね、という話ではありますがこのコーナーの最後には中々良い味わいの指摘がございましてこれは素晴らしい。

『・現実の物価が上がらないから予想物価上昇率が上がらず、予想物価上昇率が上がらないから現実の物価も上がらないという膠着状態に陥っていないか、検証が必要である。』

・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイシテキダナー

しかしまあ何ですな、期せずして先般のフォワードガイダンスへの悪態(なお過去ログで5月1日の頭の所にありまする)の時にQQE以降のドクトリン変更の推移を見ておりましたが、もともとは置物の例のポンチ絵を見ればわかりますように、「マネタリーベースの大幅拡大を伴う大規模金融緩和と、物価目標達成へのコミットメントによって期待インフレに直接働きかける」というのがキモにあった訳でして、現状はまさに上記の通りになっていてこの指摘って訳でして、何気に置物リフレ理論に対して盛大な物言いをつけている訳ですな。

ということから分かりますように、これ真正面からこの膠着状態云々の検証とかいうのをおっぱじめてしまうと、そもそもの当初ドクトリンが机上の空論であったという事を示してしまいますので、仮に間違ってこれをやるとなりましても、アベノミクス第一の柱と銘打ってぶっこんでいる政策な以上、間違えていましたテヘペロしかも6年間も、などと言い出すと自分たちが大変なことになってしまいますので、そこは金融機関が死のうとも金融システムがおかしくなろうとも知らんがなで通すという事になるんでしょ、頭痛いけど。

ちなみにブラードの複数均衡論は先日もご紹介しましたがリンクのほうはこちら、当然英文ですがお題付きの図表(グラフ)があるので何となく見てもビジュアルで行けると思うので一読推奨(って何回か推奨している気がする)。

http://research.stlouisfed.org/publications/review/10/09/Bullard.pdf
Seven Faces of “The Peril”
Federal Reserve Bank of St. Louis Review, September/October 2010, 92(5), pp. 339-52.

ということで、まあ過去の経緯から言えば複数均衡論に軽く乗っていた例もあります次第なのでして、この点のツッコミが入って来るというのは味わいがありまして、何というか侘び寂びと申しますか幽玄の世界と申しますか、今回の決定会合主な意見の中でも大変に奥の深い味わいを示すものですなあとか思うのでした(個人の感想です)。


・金融政策運営に関する部分では「今の政策を延々と続けるしかないもんね」という意思が強く示されておりますorzorz

次の『U.金融政策運営に関する意見』でありますが、

『・現在の政策枠組みは、市場の状況に対応するための一定の柔軟 性を有しており、副作用を軽減しつつ、市場環境が変化するもとでも緩和的な金融環境を維持しやすい政策と考えられる。 』

というのの前にも大本営があるのですが読んでもショーが無いので割愛してこの3つ目なのですが、どこからどう見てもマイナス金利にしている時点で副作用なんてもんじゃねえだろという風に思う訳でし、金融市場での取引とは別に実体経済相手の所では厳然たる名目ゼロ金利制約が存在し、しかもそもそもが民間の預金超過の反映によって金融機関は預金超過なのですから、そうなりますとこのマイナス金利は普通に金融機関課税をしているのと同じ話なのであって、それしながら「緩和的な金融環境を維持しやすい政策」とか何言ってるんだマイナス金利政策はよ止めんかい。

『・息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、経済・物価・金融情勢を踏まえて適宜適切に金融政策の枠組みに調整を加え、その持続性を強化すべきである。 』

マイナス金利を止めて下さい。

『・政策枠組みの持続性強化に繋がりうる取組みを不断に検討していく必要がある。 』

マ(以下同文)。

『・経済・物価を巡る不確実性が大きく、2%の実現になお時間がかかることを踏まえると、現在の強力な金融緩和の継続方針をより明確に示すことが重要である。 』

示していただくんでしたらマイナス(以下同文)という所ですが、まあそれはそれとして「今の金融政策がやたら長くなる」という認識を皆さんでここぞとばかりに強調している、という事になっておりまして、おまえら2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成するという話はどこに逝ったんだよと小一時間ではありますが、まあこの辺りを見ますと、一部に置物リフレMB直線一気理論から目が覚めていない夢遊病の方がおいでのようですが、それ以外の方々におかれましては完全にと言って良いほど従来ドクトリンの放棄が行われている、というのが示されたという感じです。

フォワードガイダンスの文言自体に関しては会見での説明があのテイタラクという位ですから、別に何かロジカルなものを作ってぶっこんできたわけでもなく、ただの雰囲気目くらましという機能しか果たさない物件ではあると思うのですが、その一方で、「益々長期化したんだがドクトリン完全撤収とは大人の事情で言えないから目くらましをしたるわ」ということでこのガイダンス明確化がぶっこまれたと考えますと、ドクトリン放棄まであと一息という感じだし、明確に放棄してくれればマイナス金利政策の見直しもワンチャンないですかねとバーナンキの頭髪程度には期待したいところです。

そんなフォワードガイダンスに関してはその後の意見。

『・強力な金融緩和の継続への信認を強化するためには、きわめて低い金利水準を維持する期間を具体的に示すなど、政策金利のフォワードガイダンスを明確化することが適当である。 』

これ面白いなと思ったんですが、会見の方では「カレンダーベースではなくステートコンティンジェント」という説明になっていて(カレンダーベースにすると「早期達成」との矛盾が問われるし、早期達成するという気合があるからインフレ期待が上がるという面に関してはまだ棄却していない筈なのでカレンダーで押し通すと別の方面からロジカルな攻めが来るというのはある)、ナンジャソラという感じではあったのですが、「カレンダーベース」というような解釈で賛成した委員もいたんですね、と面白かったです。

『・政策金利のフォワードガイダンスは、導入時点に比べて海外経済を巡る不確実性が高まったことなどを踏まえ、見直しを検討するのが適切である。 』

海外の不確実性なら年末の方が高かっただろいい加減にしろという感じで、だったら1月の展望レポートで出せよという感じですが、こちらのガイダンス変更理由はステートコンティンジェントな言い方になっていて、まあ大本営系列の方がぶっこんできた意見だと思われますが、この二つの対比というのもさっきの物価が上がらないから期待が上がらない膠着状態云々の指摘の部分と同じく中々滋味深いものを感じます。


なお主な意見金融政策の後半に行くとだんだんいつものアレに・・・・・・・・・・・・

『・雇用や賃金が景気に遅行することなどを踏まえると、金融政策は、これまで以上に景気動向に配慮して運営することが重要である。 』

これはどっちを言いたいのかしら。追加緩和しろって言ってるのかね?

『・ 平成はデフレの時代であり、デフレとの闘いの歴史だった。新 しい時代にデフレ不況を繰り返してはならない。』

デフレは結果であって原因ではありません、というのが良く分かったのが平成最後の馬鹿金融政策だと思いますがねえ、ああこの意見は以下続きます。

『物価安定の目標からまだ距離がある現状では、追加緩和論にも相応の妥当性がある。』

これまで散々やってまだ距離があるという状況の場合、そもそも戦術なり戦略なりに問題があったと考えるのが普通じゃないんですかねえ同じことして同じ失敗繰り返すとかお前は壊れたマクロかと小一時間問い詰めたい。

『物価上昇のモメンタムが失われた時には、機動的かつ断固とした追加緩和を行うべきである。 』

だからそれやって物価上昇するのかどうかちゃんと説得力のあるものを出せよこら。

などと軽く悪態をついて次の人のに。

『・景気が局面変化する中で、金融緩和の副作用が累積していくことを踏まえると、「物価安定の目標」の早期達成に向けて、現時点で金融緩和を強化する必要がある。 』

追加緩和して早期達成できる施策があるならすぐにでもやってください、でそれで失敗したら他のせいにするんじゃなくて責任を取るってことでリアルハラキリショーでもベイブリッジから紐無しバンジージャンプショーでも何でも結構ですのでよろしく。

という感じでアレをまとめた後に穏当なのをまとめるというかたちにしていて、総裁も編集ご苦労なこって。

『・ 足もとの金融経済情勢をみると、金融政策の効果が実体経済に波及していく時間軸およびその副作用が累積的に強まっていく時間軸に留意することに加え、効果と副作用を慎重に比較衡量することが一段と必要な状況となってきている。』

というのは穏当なご意見の方です。

『・ 金融機関の預金・貸出金利には契約上、運用上のゼロフロアがあると考えられることや、民間部門の資金の運用・調達構造を 踏まえると、現状以上の金利低下は、実体経済への効果よりも副作用を助長するリスクの方が大きい可能性がある。 』

(;∀;)イイハナシダナー

そして最後に真打ジンバブエ先生ですが「預金は在庫」論はあちこちから突っ込まれて引っ込めたのでしょうか(^^)。

『・「量的・質的金融緩和」が銀行収益を悪化させているという議論は、金融緩和による景気の改善、貸出の増加、信用コストの低下、株式と債券に関する収益の増加を無視している。』

無視していませんが。FSR読んでますか??

『この議論は、低金利政策が銀行収益に与えた好影響を考慮せずに、貸出金利が低下しなければ、もっと利益が上がっていたはずだという、非現実的な想定に基づいている。』

・・・・・・・・そのような非現実的な想定に基づいて議論しているをそこの屏風の中から出して頂きたいと思いますが、この人の脳内はどういうことになっているのかというのが不思議で不思議で・・・・・・・・・・・・


#しまったFOMC会見の時間が無くなった








2019/05/10

お題「輪番ペースはおおむね17兆円少々を再確認/パウエル会見鑑賞会(ただし最初の2質疑だけ)」

ドサクサに紛れてどう見ても碌でもない運用が行われそうな規制緩和が・・・・・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190510/k10011910491000.html
副業や兼業推進で労働時間管理見直しへ
2019年5月10日 4時07分

だいたいこの辺の言い草が気に食わない。

『また、30日以内の「日雇い派遣」は、副業として、年収が500万円以上の人に限って認められていますが、所得の低い若者が副業できなくなっているとして、年収の要件を引き下げるよう求めています。』(上記URL先より)

って言ってるけど、これ所得の低い若者の日雇い派遣を兼業させて安くこき使い、使われる方は何時まで経っても不安定な掛け持ち勤務状態が固定されるという結果になるのを促進してようにしか見えないんですけど。

ところでこれはどういう事になるのやら。

『そのうえで、今の制度では、複数の職場で働く人の労働時間が、合計して1日8時間、週40時間の法定労働時間を上回った場合、副業にあたる事業主が時間外の割り増し賃金を支払うことになっているのを改め、それぞれの職場ごとに管理するよう見直すべきだとしています。』(上記URL先より)

とまあ大体最近のこの働き方改革ものって「低賃金の労働力が足りなくなってきたから労働者保護を緩めて都合してきましょう」という物件ばかり気になって仕方ありませんですわ、よー知らんけど(個人の感想です)。


〇計数世間話アップデート

なお、以下の数字は日銀のページなど(日証協のページを各銘柄の償還日を紐付けるために使いました)から拾ってきたデータを表計算ソフトでヘコヘコ計算した結果を転記しつつ書いておりますので、本人はちゃんとできているつもりですが、正確性については担保致しかねますので、かならず自分で計算するか本職のレポートを確認してくださいませ、と一応ヘッジクローズを入れまして毎度の定点計数観測。

・長期国債買入拡大は17兆円ペースなのを再確認

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

例によって直近数値をポチっとなと落としてきて売買参考統計値をエクセルでホイホイ落としてきまして全銘柄の償還日を銘柄別残高に加えてからせっせと加工しましたが、まあ当然ながら予定通りに物事が進む場合には特に著変はありませんで・・・・・・・・・・・・

今年の残り償還額:379,897億円
今年の残り買入額:465,600億円

差分が73,104億円となりますので、昨年末から4末までの買入額面残高の増分が92,446億円になっているを合計すると178,149億円程度の増加見込み。

2020年暦年の償還予定額に関しては、2年のオフザランとか残存1年以下の近いところ(基本は償還銘柄が入るからあまりそっちのファクターでは増えないと思うが)が少し増えたので、

来年の償還額:524,634億円

でして、1年未満の買入を除いた月間買入は(変動利付は月500億円として計算しています)58,200億円なので12倍して698,400億円なので、差分は173,766億円となりまして、まあ要するに今の買入は「年間20兆円を割っている状態」ということは(この前リバイスしてから変わっていないのだから当たり前ですが)この前リバイスした通りでございまする。

でもってオーバーシュート型コミットメントとの関係であとどの辺減らせるかというのはありますが、何の根拠もないですけど今が17兆円とかになっていることを勘案すると、一番頑張って減らしても月5000億円(で年間6兆)位になるので、4回買入をしているバゲットで複数バゲット合計で1回辺り1200億円程度まで減らしたら限界オブ限界という感じですから、中期後半で1回長期で1回とか、まあ精々そんな組み合わせになる悪寒。

あとは今月末にしらっと4回→3回にして、朝三暮四スキームでしらっと総額調整して、減らすなら3回ベースにしてから減らした方がやり良いかもしれませんな、まあどっちにしろ減額はかなりやれるところまでやってしまいましたが、「80兆円」の看板を堂々残しながらここまで盛大に減額できるというのは木内さんもビックリという所でしょうが、面従腹背という言葉の真の実力を垣間見たという所で、何でも一々整合性とか言っているアタクシのような青臭い論議に勝る現場の順法闘争という所で、凄みを感じてしまいますわこの件に関しては。


・短国買入今月は残高増えるんけ??

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/tmei/index.htm/
日本銀行による国庫短期証券の銘柄別買入額

短国の場合基本的に償還近いのは買入対象から外れるので、短いところの償還予定は既に読めているのですが、その読めている通りで今月の償還が7,661億円、来月の償還が10,602億円と相成っております。

最近は「入札1本につき買入2500億円」という換算で買入を打ってくるのを得意技にしているのですが、償還が7600だとどこからどう見てもいつものペースだと買入超過になってしまいます。短国買入の残高自体は2月末に(額面ベースの話で)8兆円切って、この2カ月順調に減少して、4末では72,573億円なのですが、今月は償還が少ないので今までのパターンだと買入残高拡大となるのですけど、短国自体は相変わらずニーズがあるようですので日銀ちゃんが買う必要は全然ないんじゃが、というような感もあるのでさてどうする。

ただし、7兆が今後ゼロになるかというと、オーバーシュート型コミットメントとの絡みがあって、こっちをバシバシ減らすと輪番が減らしにくくなるので、減らすにしてもある程度マイルドに減らさないといけないし、中長期輪番を10兆カツカツペースまで絞ろうとすると、短国の所で7兆落とすわけにもいかないというこのバランス問題。とは言え短国買入に余力を残しておけばMBの帳尻調整買入がしやすくなるというメリットもある(んだがYCCの一環で買っている手前MB帳尻でヒャッハー買いとかすると金利の方が変なことになるのでそれはそれでアカン)のでどうするんでしょうかね。

というところですな、あまり変わり映えしない話なのですが計数ネタになると検算してまた検算して最終的に自分のイメージと比較して直感的に変な数字が無いかとか探したりするので量の割に時間を食う企画なのでありました(大汗)。


〇貿易ネゴシエーションで一喜一憂する中まるで空気を読まずにパウエル会見ネタの続きである

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190501.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference May 1, 2019

ということで今回から(って1回で終わらない気が満々なのですが)質疑応答コーナーになるのですけれども、鑑賞物としては割と面白いし、なんか適当な前提というか妄想を入れて読むと更に勝手に盛り上がれるという物件でして、パウエルの会見ってベシャリの方は早口にも程があるのと、発音がドメドメアジア人のアタクシにはちとこの苦手ちゃんなので画像の方はアレなのですが、文字起こしの方で楽しめるという感じです。


・冒頭2発が物価に関しての質問で「一時的」キタコレとなる

『STEVE LIESMAN. Thank you, Mr. Chair, Steve Liesman, CNBC. As the statement noted, core inflation now running below 2 percent. It's been falling for three straight months and while you've been close, it's only been at 2 percent or above one month since 2012. Mr. Chair, I guess I wonder is it time to address low inflation through policy and can you give us some sense of your metric for when it would be time? At what level would it require a policy response from the Committee?』

おう物価の現状判断下げとるな。コアインフレは3か月連続で伸び率落ちているし、そもそもお前ら2012年以降2%のゴールを上振れてないじゃろ、そろそろ政策対応必要なんじゃねえかどういう基準で何かするんだちょっと説明してみろや、などと品の無い言い方はしていませんがまあそんな質問でおじゃる。

『CHAIR POWELL. So, first, we are strongly committed to our 2 percent inflation objective and to achieving it on a sustained and symmetric basis.』

一昨日申し上げましたように、この人元からその傾向はあったのですが、最近になって特にこのような「そんなことは言われんでもわかっとるわ」というそもそもネタを一々入れてくるようになって、そのせいで質疑に対する応答がやたら冗長なのが多くなっています。

『As I mentioned, we think our policy stance is appropriate at the moment and we don't see a strong case for moving in either direction.』

前回もそういってましたが、「どちらの方向にも動く必要性を感じない」という言い方をします。

『I would point out that inflation actually ran, including core inflation, actually ran pretty close to 2 percent for much of 2018. As you point out, both headline and core though did come in on the soft side in the first quarter and that was not expected as it relates to core.』

昨年は2%近傍だった云々というのも一昨日紹介しましたように冒頭説明の所でやっているのにこの説明のくどさよ。

『So we say in our statement of longer run goals and monetary policy strategy that the Committee would be concerned if inflation were running persistently above or below 2 percent. So persistent carries the sense of something that's not transient, something that will sustain over a period of time.』

でもってここでpersistent対transientの対決開始という感じですが、persistentなら対応するしtransientなら対応しないとか言うのは完全にこれ本人たちがやりたい政策に対して判断が後付けになる典型で、誰が見てもpersistentと分かった頃には時すでにお寿司になっているわけですねわかります。

『And in this case, as we look at these readings in the first quarter for core, we do see good reasons to think that some or all of the unexpected decrease may wind up being transient.』

現状はtransientと考えられる多数の要因がある(キリリッ)。

『And I'd point to things like portfolio management, service prices, apparel prices, and other things.』

原油だけじゃなくてこんな要因もありますよ、だそうな。

『In addition, the trimmed mean measures of inflation did not go down as much, indeed Dallas trimmed mean is at 2 percent.』

ダラス連銀の出している刈込平均は依然として2%です(キリッ)とか言ってるがこれも都合の良い時に都合の良い指標を出してくるというその場しのぎ攻撃にも程がありますが、まあこれを都合の良い指標として出しているというのは、3月にあれだけ全面大敗北ポツダム宣言受諾状態だったのからすると手のひら返しというか君子ジャガーチェンジと言うか何なのコイツはという話になるわな、と一発目の質疑の時点でかなりの出オチになっています。

『But to go back to your question, if we did see a persistent -- inflation running persistently below, then that is something the Committee would be concerned about and something that we would take into account in setting policy. 』

だからそのpersistently belowをどう判断するんだよオイこら3カ月連続鈍化とかマズくねえかという質問なのですが、ああでもないこうでもない言いながら要するに「今は政策金利上げも下げもしたくない」というのをせっせと説明し、足元の物価動向に関してはとりあえず言い逃れておこうという意思が満々に出るとこうなる、というもんでしょうかね。



・こういう連携を見習ってほしいのだが連携プレーが出たものの相手が蒟蒻問答ェ・・・・・・・・・・・・・

という答えの次に別の記者が質問するんですけどね、

『SAM FLEMING. Thanks very much. Sam Fleming from the Financial Times. Let me carry on on the same theme.』

答えが満足いかないものなのですかさず追い打ちをかけてくるわけで、まあこの「物価動向と政策判断の関連性」は今回の一番のツッコミどころ(現状判断で景気を上げて物価を下げた挙句に政策は全員一致で現状維持だから)なので端から同じこと聞きたかっただけの可能性もありますが、会見要旨を見ていると「誰誰の質問のフォローアップなんだが」と言って質問を飛ばしてくるケースが多く、記者の連係プレーが出来てますなあと申しますか、この会見要旨アップされてからよく考えたら皆勤賞で読んでいるのですが(って当たり前か)、質問する記者が歴戦の古豪というか古狸オブ古狸みたいなのが揃っているので、どこぞの国の記者会見とかのようにツッコミどころ満載の質疑の次に「平成を振り返って」とか(しかも終盤ならともかく序盤で)するような無能な働き者は後ろからハチの巣にされそうな雰囲気を(文字だけ見ていると)感じますなあ(^^)。

『There's obviously been a lot of speculation in the markets about the prospects for a rate reduction this year. Do you think markets have effectively gotten ahead of themselves on this? And what sort of economic conditions would you need to see to give serious consideration of a rate cut? The discussion, for example, about the 1995 example, do you actually need to see a looming recession to cut rates or could an insurance cut be appropriate? Thanks. 』

市場は利下げまで織り込んできてるんだが、結局おまいら物価動向のどこをどう見たら政策判断につながるんじゃという質問でして、これに対するパウエル議長の答えが質問と全然かみ合っていないというのが実にチャーミング。

『CHAIR POWELL. So as I mentioned, we've just come through a two-day meeting and we've done a deep dive on economic and financial conditions in the United States and around the world and thought about our policy and we do think our policy stance is appropriate right now. 』

まーた無駄なマクラを付けているんですが。

『We don't see a strong case for moving in either direction. We do of course though, as a routine matter as you will know, we look not only at our baseline but we also look at alternative simulations, both better and worse.』

いやだからそれも言われんでもわかっとるわ。

『And we ask ourselves what the appropriate policy response would be but that's all we do. And I would just say that we're comfortable, the Committee is comfortable with our current policy stance.』

と、これだけ無駄な前振りをしておいて回答が無回答ということで、上記の質問に対して「この2日間十分に米国や海外経済の動向を確認し、先行きのあらゆるシナリオを勘案した結果、現状の政策を維持することが快適であると判断した」って答えなわけで、物価がどういう状況になったらどうするとか、先行きの経済に対して予防的に対応しないのかとか、そんな質問には堂々の無回答、しかも持って回った言い方をしながら中身はまるでない回答をする、というのが特に今回の会見では目立ちました。


・・・・・・しかしまあ何ですな、これ先般の「ワシはこんな情けない中央銀行は見とうなかったんじゃ」状態のグダグダフォワードガイダンス説明における黒ちゃんもそうなのですが、要するにパウエルおじちゃん先の展望に美しいものが無くて、自信無し無しモードになっているから、こういうしょうもない話をするようになっているというのはあると思うの(個人の感想です)。

というのは、パウエル議長就任当初の感じだと割と自信満々に説明していた感があって、それが昨年10月の大強気発言による市場のアチャーとタリフマン参上とか言って舞台で大暴れするパツキンズラジジイの大暴れであばばばばーとなってからすっかり自信喪失モードになってしまいましたってなもんで、そうなると質疑応答でも歯切れの良い話は出来なくなるのは人情というものですので、このような結果になる、というのの一例を出したら何と時間が無くなるという時間配分の痛恨のミス(いやまあ寝起きが悪かったのもあるんですが)により以下後日に続くとなりますサーセン。

まーしかし今回の会見の「質疑応答が全然かみ合っていない」という傾向は今まで見た中で一番酷い感じはしまして(個人の感想です)、これはパウエル議長マジで自信喪失してやがるな、とは思うのでありました。

#会見要旨19ページ中まだ5ページの途中ェ・・・・・・・・・・・・








2019/05/09

お題「3月会合議事要旨は見るべきものも無いのが見もの」

6月のシカゴでの金融政策の長期的なストラテジーがどうのこうののカンファレンスに向けて色々な話が出ているようだが追いかける前に足元のネタということでいずれこの辺も見て行かないと。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-brainard-idJPKCN1SE2JE
2019年5月9日 / 04:28 /
FRB、景気低迷期に長期金利水準設定も選択肢=ブレイナード理事

あれはJGBという海外のマネーちゃんはもちろんしこたま入っていますけど、基本がドメドメ市場なところなのと、このストラテジーを入れる前から既に中央銀行の買入がドミナントになっていたという前提があったから政策が何となくスムーズに進行している(政策の最終目的の筈である2%物価安定目標達成が促進されたとは言っていない)のであって、スクラッチであんなのぶち込んだら多分市場のアタック食らうでそれ、という気はだいぶするのだがまあどういう話してるか全然見てないのでいずれネタにするかもしれません。


#なお議事要旨がありましたのでパウエル会見鑑賞の巻は明日に順延(すいませんすいません)


〇3月会合議事要旨は4月決定事項の伏線を碌に張っていないので4月決定は実は現状維持という件

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g190315.pdf

・経済物価情勢の話はかなりどうでもよいのだがちょっとだけ

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『1.経済情勢』という奴の物価の先行き見通しの所だけ確認しておきますとですな、

『先行きについて、大方の委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。』

この大本営発表はいつもの話だし、これを引っ込めると事実上長期塹壕戦になっているのだが看板上短期決戦レジームを下げていない関係上、追加緩和をすべきか否かという話がややこしくなるので、神州不滅位の勢いで言い続けるしかない。

『ある委員は、需給ギャップが適度に逼迫するもとで、物価は緩やかにプラス幅の拡大を続けていくとみられるが、賃金の上昇は緩慢であり、原油価格も低迷していることから、「物価安定の目標」の実現には暫く時間がかかるとの見方を示した。』

『複数の委員は、今年の春闘では、大企業のベースアップ率が昨年を幾分下回る水準となるなど、企業の慎重な賃金設定スタンスが窺われると指摘した。』

という話をしらっとしているのですが、よくよく考えてみればQQE2を実施したときなどは

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2014年10月31日(金) 午後3時半から約60分

『今回の措置はデフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。「量的・質的金融緩和」によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちで経済の好循環が実現することになります。この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。いま、この歩みを止めてはなりません。』(この部分だけ直上URL先の2014年10月31日の黒田総裁定例記者会見における冒頭の質疑(実質説明)より引用)

などと言っていた訳でして、まあ総括検証でちゃっかり総括はしているのだから今更死者に鞭打つようで恐縮ですが(と言いつつ全然恐縮していない)、こう言ってQQE2実施したときの勢いis何処というか、いやまあ結局のところはマネタリーショックで期待をシフトアップするのが無理、という総括検証をしたのですけれども、その一方で「QQEには効果があった」というのを面目玉上仕方ないとは言え強調しまくったので、ドクトリン変更というのが有耶無耶になってしまって、後に出てくるような追加緩和ネタが出続けるということでして、切断処理が難しいのは分かるが、ちゃんと切断処理をしないで有耶無耶にしてしまったのと、まあこれも各種大人の事情があったからシャーナイとは言え、黒田総裁を再任させちゃったから切断処理が出来ない(切断処理はトップが変わった時にしかできないというのは日本は毎度の事ですが結構万国共通のような気がします)ので話がややこしくなっている訳ですな、うんうん。


『これに対し、別の複数の委員は、ベースアップ率は前年に比べて大きく低下してはいないと述べたうえで、今後は、より深刻な人手不足に直面している中小企業の状況も確認できるので、全体として判断していく必要があると指摘した。』

おう消費税上がる分があるじゃろ生活給の観点から行って昨年プラス消費税分上げろやゴルァと思うのですが、何故か今年の春闘の話題の時には消費増税で物価が上がる分の話が華麗にスルーされている気がする。

『別のある委員は、物価は、プラスの需給ギャップという上昇圧力と、家計の根強いデフレマインドや生産性上昇などの抑制要因が併存する状況が続いており、先行きを巡る不確実性は高いと指摘した。』

『複数の委員は、輸出や生産の減少が雇用や内需に波及し、物価上昇のモメンタムを弱めることがないか、これまで以上に警戒すべきであるとの認識を示した。』

ふーん。

『予想物価上昇率について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『複数の委員は、食料工業製品のように、値上げに向けた取り組みにより、実際に価格引き上げの動きが拡がってくれば、 企業や家計の予想物価上昇率も上昇していくことが期待されると指摘した。』

コストプッシュなだけだし、それで価格が上がっても持続性がないというのは2014年に証明されてしまったのでは??

『一人の委員は、消費税率引き上げが予想物価上昇率等を通じて経済・物価に与える影響を注視する必要があると述べた。』

これが何を言いたいのかさっぱり分からなさ過ぎて、スタッフもうちょっと丁寧に書いて差し上げろと思いました。


・当面の金融政策運営に関して4月決定事項の伏線が碌すっぽ張られていない件について

ええもちろんこの議事要旨は「3月の議事の概要を記載した書類」ですので3月の話ということになるのですけれども、幸か不幸かこの議事要旨の記載については金融政策決定会合で決定するという法的な建付けになっておりますので、結果としては4月会合で内容が承認されないと公表できないというものになっております。

そうなりますと、直近会合で何らかの政策変更が行われた際には、その前の会合での議事要旨を作るにあたって、何らかの伏線的な論議があればその部分をどうしても掲載したくなるというのが人情だと思いますので(この辺りアタクシの妄想が物凄い勢いで入っているので念のため申し添えます)、それなりに大きめの決定があった時というのは何らかの伏線があってその次の会合で伏線が回収されたみたいな感じにどうしてもなってしまいやすい(まあFOMCの議事要旨に関しても次回会合前に出るとは言え、出てくるまで時間が掛かっているのでどうしてもその間の情勢変化に応じて掲載するトピックにバイアスが掛かりやすいというのは人情だと思うのでだからケシカランという事ではないし、そもそもこの辺の感想はあくまでもアタクシの妄想によるものですからその辺誤解無きように伏してお願いいたします)と思うのね。

でもって『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』を見ながら今回の措置、特にガイダンスの明確化に関する伏線があるかというと、トピックとしての情報発信という議論はあるのですが、別にその中で先日ネタにした総裁会見で黒田総裁が持ち出した藁人形「10月に増税を行ったら政策金利の引き上げがあるという市場の見方」などというようなものは存在しておらず、まあいつもの話をしてるだけなのよね。

ということはですな、まあ市場ちゃんの方もMPM決定出た直後に出た某Qとかいうベンダーの「日銀、金融政策を修正」とかいうのにうっかり釣られてしまったファーストアクションは別にしまして、今回のガイダンス明確化は政策が動くに動けない現状を追認しただけの話だし、展望レポートでの物価見通し的に更なる長期化を覚悟した、というような物件であって、政策の変更には当たらないという事で話はまとまっていると思いますけれども、日銀の方としても今回の「明確化措置」自体は金融政策の変更でも修正でもなく、現状維持が長く続くでしょうという現状追認であった、という整理だし、まあ何となれば明確化とか言って太鼓は叩いてみたものの、本質的には特に意味のある変更とは思っていない(ただの某リフレ政策委員向け対策と、もしかしたら10連休為替対策とかいう超目先凌ぎ)という事なんでしょうな(個人の大幅な妄想です)。


・珍しく会話っぽいのが成立しているように見える件について

でもってその中身なのですが頭の方は割愛して途中から。

『委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。』

ってところからね。

『大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、 2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の金融市場 調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を粘り強く続け、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。多くの委員は、物価上昇の原動力であるプラスの需給ギャップができるだけ長く持続す るよう、経済・物価・金融情勢をバランスよく踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。』

この辺りははいはい大本営大本営なのだが動きようがないですから以下同文。

『ある委員は、当面は、景気動向を慎重に見極めつつ、 金融機関や市場機能に与える副作用についてこれまで以上に留意して、現行の金融緩和政策を維持する必要があるとの見解を示した。』

いつもの副作用論。

『一人の委員は、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、市場の状況に応じて対応できる一定の柔軟性を有しており、市場環境が変化するもとでも、市場機能に与える副作用を軽減しつつ、緩和的な 金融環境を維持しやすい政策であると指摘した。』

そうとも言えんような気がするが。

『この間、ある委員は、 現時点では、内外経済の動向についてデータの蓄積を待つ必要があり、 現在の政策を継続することが適当であるが、経済・物価を巡る下方リスクが顕在化しているのであれば、政策対応の準備をしておくべきとの認識を示した。』

まあ伏線ちゃあ伏線なのはこれくらいかなと思うのですが、現在の政策を継続するのに賛成しているけれども政策対応の準備をしろというのを言いそうなのってだいたいお察しの博多人形先生だと思うので、床の間のガラスケースをぶち破って槍を振り回しだす可能性を示しているということですわな。

『また、ある委員は、低下した予想物価上昇率を再び高めることの難しさなどを考慮すれば、経済・物価情勢の局面変化に際しては、先制的に政策対応することが重要であると述べた。』

と言っとるのだが、そもそもその前に予想物価上昇率が本当に上がったのか?という論点があると思いますし、仮に予想物価上昇率が2013年以降に上がって下がったという認識だとしても、上がったのが金融政策によるフォワードルッキングで下がったのが原油価格等下落による適合的期待形成みたいな話にも無理があるんじゃないですかと思いますし、たぶんこれは浅学菲才のアタクシの想像の世界だからアレですけれども、「コストプッシュ要因で物価が上昇してインフレ期待が(適合的か合理的かはともかくとして)上がったとしても、所得の増大を伴わないとその上昇には持続性がない」という話(自国通貨が暴落してダブルデジットのインフレになるとかいう位のスケールだと話は別な気もするけど)なのではないかと。

『これに 対し、ある委員は、2%の実現に向けた経済・物価情勢のメインシナリオは現時点で変わっていないとしたうえで、金融政策は、景気指標の短期的な変動に逐一、機械的に対応するものではなく、こうした基調判断に基づいて運営していく必要があるとの認識を示した。』

>金融政策は、景気指標の短期的な変動に逐一、機械的に対応するものではなく

まあ当然の指摘ではありますが、一々反応している米国に対するイヤミっぽいのもチャーミングですし、昔の日銀批判の中ではインフレ目標を設定すれば金融政策はオートパイロットみたいな話もありましたなあとか思うと味わいがありますが、何せ最近の議事要旨ではこの手のインタラクティブっぽい記載が碌すっぽ無かった(特に金融政策運営に関する部分)のでちょっとほほーと思いました。

『別の一人の委員は、需給ギャップのプラス基調に変調がない中にあっては、 現行の緩和政策を維持し、景気動向を慎重に見守ることが適当であるとの意見を述べた。』

『このほか、一人の委員は、足もとの景気や物価動向を考慮すると、消費税率引き上げが経済・物価を下押しするリスクは相応にあると述べたうえで、「物価安定の目標」の早期実現が見通 せない中にあっては、財政・金融政策がさらに連携して総需要を刺激することが重要であると指摘した。』

って後半の部分で片岡さんと分かるが、消費税率引き上げを前提にしながら財政が連携して云々ってナンジャソラとしか申し上げようがない。

『別のある委員は、ここ数年、わが国経済が緩やかな拡大基調を維持できたのは、金融政策と財政政策による景気下支えが機能したことが大きいとしたうえで、今後とも、金融と財政のポリシーミックスというマクロ経済政策運営の枠組みが維持されることが重要であると述べた。』

これリフレ一派が言ってるのかそうじゃないのが言ってるのかにもよって微妙に感想は違いますが、「財政政策による景気下支えが機能」とか言っている側から金融政策の効果の中では特に置物一派(というかジンバブエ先生)はよく「財政収支が好転した」というのを効果の宣伝材料に使っていたりしまして、金融政策の効果で財政が好転したという話をするんだったら上記のような「財政政策による景気下支え」というのと話が矛盾してるだろいい加減にしろと申し上げたいい訳でして、別に今に始まった話ではないのですが、色々な説明をするときに、単発で見たらほうほうと思う所があっても、前後の整合性とかを全然取っていなくて、その時々で都合の良い部分を取り出して説明する、という傾向が黒田日銀になってドンドン拡大し、特に物価目標達成が遠くなる中でその傾向が凶悪化してないか、とまあそういう風に思うのでありました。


・情報発信の話があるが伏線になっていないですな

『続いて、委員は、金融政策運営上の情報発信のあり方を巡って議論を行った。』

へいへいそうだっか。

『多くの委員は、世界経済の先行きを巡る不透明感が高まる中、市場参加者は、これまで以上に中央銀行が発するメッセージに敏感になっているため、日本銀行としても、情報発信のあり方には十分な注意を払う必要があるとの認識を共有した。』

まあこれ3月の話なんですが、経済の不透明感が高まる中で云々というよりは中銀に振り回される状態だし、中銀の方はFEDちゃんが完璧な「自分の尾を追う犬(byアラン・ブラインダー)」になっているだけのような気がしますが。

『一人の委員は、先行き、 物価上昇のモメンタムが失われる懸念が生じれば、断固とした追加緩和を行うことを強調するとともに、一部で指摘されている緩和限界論には明確に反論すべきであると述べた。』

まーた言ってるんだが、そもそも限界云々じゃなくて「効果が碌に無いのに副作用ばっかり溜まる」という話をしているのですから、それに対して明確に反論するなら物価安定目標早期達成の図を出せよこらとしか申し上げようがない。

『この点に関連し、一人の委員 は、日本銀行は、これまでも、2%に向けたモメンタムを維持するために必要であれば、様々な緩和手段をとり得ることを具体的に示してきており、今後とも、こうした説明を丁寧に行っていくことが重要であると述べた。そのうえで、この委員は、これまでのところ「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されており、市場の思惑に拍車をかけたり、不安定化させないためにも、こうした基本的な判断を中心に据えたコミュニケーションを行っていくことが必要との認識を示した。』

「市場の思惑に拍車をかけたり、不安定化させないためにも」っての何を指しているのかさっぱり分からん。

『別のある委員は、強力な金融緩和を息長く続ける姿勢を示すことにより、市場に対して、他の中央銀行と方向性が変わらないことをしっかりと伝えていくことが大事であると述べた。 』

というのも何だかなあという感じで、他の中央銀行は「緩和政策の正常化(FED)」とか「緩和度合いの修正(ECB)」が頓挫しているというステージでして、日銀と全然ステージが違うんですが何で「方向性が変わらないことをしっかり伝えていくことが大事」となるのか、目先の事だけにとらわれ過ぎた発言過ぎて涙がちょちょ切れる。

ということでこの部分、まあ強いて言えば伏線かも知れないけど中身自体の質がちょっとアレなので伏線になっていないように思えます。


・この辺の話も同じですなあ

最後の所は妙にジンバブエの香りがする文章が多いのですがここに押し込めたんかね。

『委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』

留意点も蜂の頭も無い訳で、今の政策でクソ粘りするしかないでしょ。

『一人の委員は、これまで社債市場では、国債金利にスプレッドを上乗せして社債金利が決定されてきたが、国債金利がマイナスとなる中、 こうしたプライシングが行われず、金利の絶対値が基準となりつつあ ると指摘した。そのうえで、こうした実質的なゼロ金利制約があるような状況では、追加的に国債金利が低下しても、これまでと比べ、金融緩和効果は限定的となる可能性があると指摘した。』

イイシテキダナーなのだがこの後にインタラクティブな話になっていないような記載になっているのが残念無念。

『複数の委員は、 低金利環境が長期化するもとで、先行き、地域金融機関を中心に、期間収益や自己資本に対する悪影響が少しずつ顕在化する可能性や、収益を確保するために、過度なリスクをとる動きが拡がる可能性に留意する必要があるとの認識を示した。』

後半の部分については「金融緩和が結局海外に漏出しているだけではないか」みたいな話になっていくと良いのですが、ここで議論をぶち壊しにかかるジンバブエスペシャルが以下入ります。

『これに対し、ある委員は、長期的に名目金利を上げるには物価上昇率を高めることが必要であり、そのためには、2%の早期実現が近道であると指摘した。』

達成のめどもつかないのに偉そうに言うな。

『そのうえで、この委員は、デフレから完全脱却する前に金融緩和をやめると、むしろ 低金利が続いてしまうと付け加えた。』

誰も金融緩和止めろとは言っとらんわ効果と副作用考えろと言ってるだけだろいい加減その藁人形論法見苦しいから止めろや。


・・・・・・・となったところでまた話が別の物になりまして、

『一人の委員は、海外投資家の資金が国債市場に流入し、国債の需給が一段とタイト化していることや、 金融機関の国債保有額が資金調達の担保等として低限必要な水準 まで近付いている可能性があることを踏まえれば、国債買入れオペの運営には見直し余地があると述べた。』

担保の緩和で対応されましたな。

『この間、一人の委員は、わが国経済の生産性向上のためには、金融業も含むすべての業種で、生産性の高い企業が新規参入し、低い企業が退出するよう、人材の企業間移動を促し、経済の新陳代謝を高める必要があると述べた。そのうえで、この委員は、長期にわたる金融緩和の圧力が、こうした人材移動を妨げていたわが国労働市場の硬直性を打破しており、これは、金融政策が構造改革を促す一例であると指摘した。』

またジンバブエ先生キタコレですが、前半の話は簡単にそういうの言って良いんですかと思う超シバキアゲの話だし、後半の方って単に人口動態が変化して労働市場の需給が変化したのを金融政策効果にしているんだが、そもそも論として金融緩和政策によって既存企業の債務コストが軽減され、企業の倒産などの拡大を防ぎましょうって話をしているのですから、前半のシバキアゲ理論をするならば、過度な金融緩和による非効率企業の温存は生産性向上や構造改革を阻害するって話になるだろお前は何を言ってるんだという感じではあります。

ということでネタがないとか言いながら結局そこそこのネタにしてしましましたな、お蔭でパウエル会見遣ってる暇が無くなってしまいました(大汗)。






2019/05/08

お題「FOMCパウエル議長会見をネタにしようとしたら冒頭説明で時間切れですいません(明日に続く)」

さあもりあがってまいりました(−−;
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL3N22J58N?il=0
2019年5月8日 / 05:31 /
米国株式市場=大幅安、米中貿易摩擦懸念でリスク選好後退

『ニューヨーク 7日 ロイター] - 米国株式市場は大幅安。ダウ平均株価は一時600ドル以上値下がりし、終値で2万6000ドルの水準を下回ったほか、ハイテク株の多いナスダック総合指数<.IXIC>も8000ポイントの大台を割り込んで取引を終了した。米中貿易摩擦の激化を巡る懸念からリスク選好が後退した。』(上記URL先より)

ちょっと株が上がりだすと直ぐに暴れだすタリフマンには困ったもんですが、このおじさんって注目されなくなると突如飛翔体を打ち上げ花火しだすどこぞの国の委員長に似てますな、そら意気投合するわ(個人の偏見です)。


〇FOMCパウエル記者会見を鑑賞してみるのだが質疑に入る前に時間が無くなってしまいました(サーセン)

なお記者会見のネタを消化しようとしたら今朝はFED版のFSRがぶち込まれているのでそっちの話しとか、よく考えたらジャパンのFSR鑑賞も途中で別ネタを打ち込まれてしまってパスモードになっているジャンとかいうのがありますが10連休で経験値がリセットされておりますので気にしないことにしまして先週のパウエル会見ネタでも。

まあ小見出しの通りで、会見質疑が微妙に噛み合わない(パウエル無駄に早口で物凄く聞きにくいんですよね、バーナンキは発音明瞭で米国話者じゃなくても分かりやすいし、イエレンはゆっくりと喋ってくれるので(そのせいでベシャリに「往生しまっせ〜」感が漂うのはご愛嬌^^)これまた話が分かる)んですが、そのせいなのか特に最近は質問する方がテーマを絞って複数の人たちが畳みかけるように質問していまして(連合軍を組んでいるのか、単に質疑がかみ合わないので畳みかけないと肝心な話にならないのかというのは謎ですけど)、どこぞの国の中央銀行総裁会見に参加するスットコドッコイはこのTranscriptを100回読んで出直してこいと申し上げたい。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20190501.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference May 1, 2019

まずは冒頭説明から。

・声明文通りで「成長のアセスメントを上げ」て「物価のアセスメントを下げ」ていますが・・・・・・・・・

とにかく(前からそうなのですがパウエルスタイルが定着していく中で更にその傾向が強まっている)この人の会見は余計な原則論というかそもそも論の話をしていて(「我々は物価と雇用のマンデートを達成する責務がありまして云々」みたいなそれは分かっとるわ時間稼ぎすんなこのジジイと言いたくなるフレーズがドンドン過大になっている気がするんんですが・・・・・・・・・・)そこをすっ飛ばして引用するので段落の途中から引用とか言う変なことになりますがご勘弁ください。

『Incoming data since our last meeting in March have been broadly in line with our expectations. Economic growth and job creation have both been a bit stronger than we anticipated, while inflation has been somewhat weaker. Overall, the economy continues on a healthy path, and the Committee believes that the current stance of policy is appropriate. 』

ということで声明文通りなのですがその内容について、

『The Committee also believes that solid underlying fundamentals are supporting the economy, including accommodative financial conditions, high employment and job growth, rising wages, and strong consumer and business sentiment.』

金融環境、雇用、賃金、センチメントが堅調で米国経済をサポートするそうな。

『Job gains rebounded in March after a weak reading in February and averaged 180,000 per month in the first quarter, well above the pace needed to absorb new entrants to the labor force. Although first-quarter gross domestic product (GDP) rose more than most forecasters had expected, growth in private consumption and business fixed investment slowed. Recent data suggest that these two components will bounce back, supporting our expectation of healthy GDP growth over the rest of the year.』

雇用の指標は強くて1QのGDPは見通しよりも強い一方で、個人消費と企業の固定資産投資が減速してましたが、こちらは最近のデータを見るにリバウンドしてくるでしょう、だそうな。

『The Committee is strongly committed to our symmetric 2 percent inflation objective.』

と次のパラグラフでは物価の話をするのだが、こういう感じで一々説明するのって、最初のうちはふーんと思っていたが最近は質疑応答までこの調子で一々無駄なマクラを付ける(なにか耳が痛いですががが)ので「早口で冗長な説明をした挙句に質疑応答があまり噛み合っていない」という会見になっておりまして、まあFEDに対する風当たり強くなっているらしいんですけど、こういう会見での説明における質疑応答が噛み合わないという辺りで記者の方々がイラっと来ることから報道とかのトーンにも影響してくるんじゃないでしょうかね、と思ったりもするのでした、って黒田総裁の会見説明のグダグダ感が増すにつれてアタクシの悪態ゲージが上がる、という個人的な感想を一般化してはいけませんですかそうですか。

『For much of this long expansion, inflation ran a bit below our 2 percent objective, alongside considerable slack in resource utilization. But last year, with the unemployment rate at or below 4 percent, inflation moved up. From March through December, core inflation--which excludes volatile food and energy components--was at or very close to 2 percent. Overall inflation fluctuated from a few tenths above 2 percent to a few tenths below over this period, with the moves mostly due to changes in energy prices.』

経済のスラックが解消されて失業率が4%を割って来てからは物価が上昇してきまして、昨年の3月から12月に掛けてはコアインフレは2%に極めて近い水準で推移しましたし、総合インフレはコンマ数%程度この間に上下しましたがそれは概ねエネルギー価格によるものでした、と昨年は物価がマンデート達成していたという話をマクラにしまして、

『As expected, overall inflation fell at the start of this year as earlier oil price declines worked through the system. Overall inflation for the 12 months ended in March was 1.5 percent. Core inflation unexpectedly fell as well, however, and as of March stood at 1.6 percent for the previous 12 months.』

今年に入ってからの総合物価指数は原油価格下落の影響で若干下がると予想していたが、コアインフレに関しても想定以上に下がりまして3月は+1.6%水準になりました(ので声明文の現状判断文言を下げました、とは言ってないけどそういう説明じゃな)。

『We suspect that some transitory factors may be at work.』

それは幾つかの一時的な要因が影響している(キリッ)。

『Thus, our baseline view remains that, with a strong job market and continued growth, inflation will return to 2 percent over time and then be roughly symmetric around our longer-term objective.』

てな事なのでインフレは今後2%に向けて戻っていくでしょう、となっていてこの物価に関する質疑がやたら今回多かったのは当然ちゃあ当然ですし、答える方も何か蒟蒻問答っぽい説明になっていてしまっているので、これ会見をライブで見たり、リアルタイムのベンダーヘッドラインが出るのを見た場合、やたらめったら「今の物価停滞は一時的(キリリッ)」というのが連発されてしますので、利下げまで織り込みに行ってた米国債券市場ちゃんガックシとなるわなとは思いました。

次がリスク要因の説明。

『At the start of the year, a number of cross currents presented risks to the outlook, including weak global growth, particularly in China and Europe; the possibility of a disruptive Brexit; and uncertainty around unresolved trade negotiations.』

『While concerns remain in all of these areas, it appears that risks have moderated somewhat. Global financial conditions have eased, supported in many places around the world by an accommodative shift in monetary policy, and in some cases fiscal policy. Recent data from China and Europe show some improvement, and the prospect of a disorderly Brexit has been pushed off for now. Further, there are reports of progress in the trade talks between the United States and China.』

年初来申し上げてきていた下振れリスクが色々とありましたが、最近はこれらが幾分か改善してきていまして、金融環境は各国中銀が緩和的にシフトしたり一部で財政が出たりしましたし、中国や欧州経済は改善の様相を見せてきているし、ハードブリクジットの懸念も後退したし、貿易戦争も解決に向けた動きがありますな、だそうです。

『The Committee views these developments, along with the outlook for continued growth, a strong job market, and muted inflation pressures, as consistent with continued patience in assessing further adjustments in monetary policy.』

とは言えリスクが払拭された訳でもないし物価上昇圧力が強くないので今後の政策金利調整に関してはpatienceであることを続けますと。

でもって冒頭説明はここからバランスシートの話になっていくのでした。特に今回その話は市場って気にしていなかったと思う(個人の感想です)のですが、というのはどうせランオフ自体が9月までやって行く話なので、5月のこの時期に何か決め打ちしたものは出せないし出す必要も無かろうと思うのだが、「色々な議論をしています」というのを謎にアピールするの巻。

『 Over the past several months, we have made a number of consequential decisions about our balance sheet. In January, we decided to continue implementing monetary policy using our current policy regime, which involves providing an ample supply of reserves. In March, we decided to slow the pace of balance sheet runoff starting this month, and to cease runoff entirely in September. These plans support our longer-run dual mandate objectives and also provide clarity about the path of our asset holdings.』

そもそもこのマクラ相当部分で1パラ使っているのがくどい。

『Today, we had a preliminary discussion about the longer-run maturity composition of the portfolio. Before the financial crisis, our portfolio was weighted toward shorter-term debt of the federal government. In the wake of the crisis, the Fed bought a large amount of longer-term securities with the aim of lowering longer-term interest rates and, thus supporting the recovery. Because of these purchases, our portfolio is now weighted toward longer-term securities. As part of normalization, we will have to decide what the maturity structure should be in the longer term. This choice raises many complex issues and has possible implications for the stance of policy.』

『Today’s preliminary discussion laid the groundwork for more complete analysis and discussion, and we plan to return to the maturity composition question toward the end of the year. There is no pressing need to resolve this matter, however, and any decisions we ultimately reach will be implemented with considerable advance notice and in a manner that allows for smooth adjustment. As we have often emphasized, adjustments to the balance sheet normalization process may well be needed as the process unfolds.』

でもって今回のFOMCでは長期的な観点でFEDの今後のバランスシートの資産構成をどのようにすべきかという話(なんかハーカー総裁が「短期債オンリーにしておいた方が先々何かしたいときの自由度が上がるので良いのでは」という発言を昨日だか一昨日だかにしてたようですが、この論議の一環なんでしょうな)を始めました、ということなのですが、その辺の議論は今回キックオフを行って今後じっくり話し合っていきますよ、という説明をああでもないこうでもないと行数使って説明しているのは、パウエルおじちゃんがバランスシートポリシーについてこだわりがあるからなのかね(イエレンは基本的にゼロ金利制約が無くなったらバランスシートは用済み、という感じで淡々とやっていましたからね)とは思いました。

最後にIOERについて、

『Finally, we made a small technical adjustment in one of our tools for implementing monetary policy--the interest rate on excess reserves, or IOER rate. The change does not reflect any shift in the intended stance of monetary policy.』

IOERの下げに政策意図はないよ、だそうです。

『We use the IOER rate to help keep the federal funds rate in our target range. As balance sheet normalization continues, we have expected that the effective federal funds rate would shift up over time relative to the IOER rate. Last year, we twice lowered the IOER rate by 5 basis points relative to the top of the target range after the federal funds rate moved toward the top of the range. These actions helped keep the effective federal funds rate well within the target range. Today we made one more such change. The target range for the federal funds rate is our main indicator of the stance of policy, and it remains unchanged.』

2日の寝起きでFOMCシリーズの時にはFF市場金利がどうなっていますねんとかについてそんなに調べずにテキトーに書いておりました(すいません)が、ECBが昔やっていた(今も一応そういう作りだが)ように常設預金ファシリティと常設貸出ファシリティの間で翌日物銀行間市場金利のコリドー(新橋でもおじさんでもない)を作って、例えば誘導目標±50bpとかにして、あとはあんじょうようやっといてくれやという方式がコリドー方式なのですが、超過準備が大杉なので常設預金ファシリティの恩恵を直接受けることがないGSEとかMMFとかが常設預金ファシリティよりも低い金利でホイホイ資金放出してしまうとフロアが機能しなくなってイクナイのでRRPを設けている、というのがあって、実際のFF金利に関しては本来のべき論で言えばIOERが下限になるべきなんですが、超過準備が莫大にあるので今は翌日物RRP(ONRRP)でフロアしますよとなっている訳ですな。

でもってバランスシートのランオフが進んで超過準備の過大度合いが下がって来ると、徐々にIOERを抜けて金利が形成されるようになってくるケースも出てくるので、そうなりますと何も誘導レンジの上に近い方にIOERを置く必要がない、となってFF誘導レンジ▲15bpの所までIOERを下げることにしました、ってなもんですな。まあONRRPについての最近のFOMCでの議論がどうなっているのか知らん(議事要旨に特に出てこない)のですが、当初の目論見だとIOERが翌日物銀行間金利の下限として基本的に機能するようになれば、ONRRP自体は常設にはする必要ないという話になっていたと記憶しております。

まあ昔(アタクシが小僧時代なので前世紀の話)の実効FF(政策金利ではない)とかぶれまくっていましたけど別にそれで政策インプリケーションがとか言う人いなかったし、ECBの場合は預金と貸出の常設ファシリティ作って当初からコリドーにしていた(もっと辿ればブンデスバンク方式ですよと先日本石町日記さんが指摘していたと存じます)ですし、その一方で日銀と日本の短期金融市場ではやたら精緻な資金繰りと準備預金積み操作を行ってトン調節という芸術的なことをしていた(その芸術っぷりに魅せられてしまったのがアタクシの幸運なのか運の尽きなのか・・・・・)りして、この辺はその時の各国の市場状況などによって色々と変わって来るのですが、FFブレブレを誰も問題にしていなかった(と思っていますが)時代からは変われば変わるもんですな、とは思うのでした。

とか何とか駄感想を申し上げていましたら時間配分的に微妙になってしまいまして(少しはあるんですけれども今回は質疑のテーマがさっき申し上げたように絞られているので一旦ネタにしだすとそのポイントだけですごく長くなる)、質疑の噛み合わなさっぷりとかそういう話を先に散々書いておいて肝心の質疑出さないとか「続きはCMの後」かよとお叱りを受けますなすいませんすいません。

微妙な質疑応答に関しては明日(日銀ネタもあるんですが)に続きを(汗)。


〇ということで余談ですけど

毎年お馴染みのこんなイベントがあるんですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190507a.htm/
学生向けコンテスト「第15回 日銀グランプリ〜キャンパスからの提言〜」の実施について
2019年5月7日  日本銀行

『2.応募資格

現在、大学(短大等を含む)に在籍の方(大学院生は除く)。2〜5名1組のグループでご応募ください。』

とのことですが、今からちょっとどこかの大学に途中入学なり編入なり出来ませんかねえ、と思ったがわざわざ「大学院生は除く」とかありますのを見ると「フレッシュな感性を求める」という趣旨だからくたびれたオッサンが社会人学生になってフレッシュな振りして「ぼくのかんがえたさいきょうのきんゆうせいさくうんえい」とか出して来たら5秒で却下ですかそうですか(^^)。

#その前に入学編入する頭が無理だろいい加減にしろというツッコミは謹んで却下させていただきます






2019/05/07

お題「総裁会見のフォワードガイダンスに関する質疑応答が想像以上のグダグダで悲しい件について」

パウエルに悪態つきまくっているこのジジイだが、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-05/-110
円が急伸、110円台−トランプ氏の対中関税引き上げツイート後
Michael G. Wilson
2019年5月6日 5:55 JST

こいつの方がどう見ても株価を上げたり下げたりしてるんで可及的速やかに天寿以下自粛。

#1日と2日はこっそり更新したので今日の下に延々とふんどしのようについています


〇総裁記者会見のロジック崩壊振りが目を覆う惨状な訳でして連休明けからいきなり湯気ポッポーの巻

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190426a.pdf

・のっけからこれは酷い蒟蒻問答ですね

最初の総裁説明の後に出てきた質疑でいきなり吹いた(実況聞いてなくてベンダーヘッドラインしか確認してなかったざます)。

『(問) 本日の展望レポートでは、2021 年度におきまして、目標とする 2%に なお届かない 1.6%という見通しが示されました。一方、本日の決定内容では、 フォワードガイダンスの明確化あるいは強力な金融緩和の継続に資する措置ということが決定されたわけですけれども、本日の決定内容というのは、物価目標の実現に向けた金融緩和の強化あるいは追加の金融緩和である、というような理解でよろしいでしょうか。』

そらそう質問しますわな。

『(答) 先程申し上げた通り、わが国の景気は、先行き、基調として緩やかな拡大を続けるとみられ、物価も、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。もっとも、海外経済の動向をはじめ、経済・物価の先行きを巡る不確実性は大きいと思われますし、また、2%の「物価安定の目標」の実現には、なお時間がかかることが見込まれています。』

ほうほう。

『こうした認識のもと、日本銀行は、「物価安定の目標」の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていくという政策運営方針をより明確に示すことが重要と判断しました。』

でもってそれが追加緩和あるいは金融緩和の強化かと聞いているんだが。

『このため、日本銀行の金融緩和姿勢に対する市場や国民からの信認の強化に資するよう、政策金利のフォワードガイダンスを明確化することとしました。また、適格担保の拡充など、円滑な資金供給や市場機能の確保に資する措置を講じることとしました。』

で?

『このような対応は、強力な金融緩和の継続に対する信認を高め、「物価安定の目標」の実現をより確かなものとすることに資するとともに、金融市場の安定にもつながるものと考えています。』

????????????????


・この蒟蒻問答の次に質問した記者は豆腐の角に頭をぶつけて以下自粛

というこの意味不明の回答に対して次の質問者は当然追撃しろよと思うのだが次の質問がこれですよ。

『(問) 本日の決定会合は、定例の会合としては、平成時代最後ということに なりますけれども、この 30 年余りの金融政策を振り返って、総裁のご所見あるいは新たな令和の時代に向けて決意のようなものがございましたらお願いします。』

何でこんなツッコミどころ満載の回答の次にこんな質問するんだよFOMCとかECBの会見をちったあ読んで勉強しろやと小一時間だし、大体からして黒田さん日銀の中の人になって10年も経過していない(しかもその前アジア開銀で日本に常駐してない)のに30年余りの金融政策を振り返らせてどうするんだよ貴様の首の上に載せているものはカボチャか何かかと小一時間問い詰めたいがとりあえずそのカボチャ頭で反省をして頂きたい。応答は引用する意味を感じないので割愛。

#なお会見の実況を聞いていないのでどこの誰だかガチで認識しないまま悪態ついてますので念のため


・短期マイナス長期ゼロ金利の長期化の可能性は十分あるのに物価のモメンタムが行っているとはどういう事や

次の質疑で無事に戻ったのでそこは良かったのですが・・・・・・・・

『(問) 2 つお伺いします。まず 1 つはフォワードガイダンスの修正ですけれども、いまお話がありましたように、粘り強く続ける方針を明確化したということですが、「2020 年春頃」としているこの期限にどういう思いを込められて いるのかということと、この期限はこれまで「当分の間」でやや曖昧にしてきた低金利の継続期間が少し延びたというふうに理解してよろしいのでしょうか。』

これ後の方でカレンダーベースかどうかという質問があって、その辺とも絡む話になりますよね。

『もう 1 つは物価の見通しなのですけれども、21 年度も 1.6%というこ とですが、これは21年度末まで2%は達成できないということなのでしょうか。もしそうだとすると、2%の達成時期について、いま現在のお考えをお聞かせください。』

ここで昨年4月の展望レポートだと翌年度(つまり19年度)、その翌年度(20年度)の中央値が+1.8%になっていたこととの比較をして頂ければパーフェクト。

『(答)まず、1 点目のフォワードガイダンスについては、基本的にはより明確化したということです。』

ほ?

『以前のフォワードガイダンスでは、10 月の消費税率引き上げを例示しつつ、経済・物価の不確実性ということで、「当分の間」、現在の非常に低い長短金利を継続するという言い方になっており、どうしても この税率引き上げが予定されている 10 月が近づくにつれて、ガイダンスが想定している期間である「当分の間」という時間軸が分かり難くなり、やや短くみられる懸念がありました。』

えーっとすいません、10月の消費増税の影響がデータで見えてくるまで時間が掛かる位普通の感覚で分かりますし、しかも「不確実性」なので、確実に安心となるまでは政策金利上げませんということだったら10月が近づいても短くみられる懸念は起きないと思うんですが。

『それに加えて、何よりも、最近になって世界経済の不確実性がかなり大きく焦点になってきたということもありますので、「当分の間」というのがかなり長い期間であることを明示しました。』

「最近になって世界経済の不確実性がかなり大きく焦点になってきた」という説明をしているのですが、この先の方でじゃあその内容は何かという説明がありまして、そこを読むとのけぞってしまいます(昨年末位にその話をするならともかく今回持ってきたのってどう見ても変なのですがその辺は後に出てくる)。

『「少なくとも2020 年春頃まで」ということですから、当然のことながら、従来皆さんが考えておられたよりもだいぶ長い、』

って偉そうに言ってるんだが、そういう捉え方をされる日本語を使っていることについての反省の弁は1ミリも無いのかと小一時間問い詰めたい。

『「少なくとも」と言っていますので、「当分の間」というのは、2020 年の春よりもっと長くなる可能性も十分あるわけで、そうした意味で「当分の間」というのはかなり長い期間であることを明示したということです。』

と、物凄い緩和的な話をしているのに、何故かこの後の質疑では「ステートコンティンジェント」とか言っている訳で、「今の経済物価見通し通りに行ったらかなり長い期間であること」を明示したというのが正解のようですが、それって「将来のコミットメントをしているようでしていない」という奴でして、これがまあ「2%達成のモメンタムが維持されている」とか言わなければまだ話は分かるのですが、モメンタムが維持されてるんだったら「もっと長くなる可能性」とかそんなの無いだろ寧ろモメンタムが強まっていくような政策をしてるんじゃないのかよいい加減にしろという感じではあるのですが、まあ実際はモメンタム云々は最早オワコンなのに従来の面目玉の関係上撤回できないという事になっていまして、要は1日のお休みの駄文(物凄い下の方にあります)でうだうだ書いたんですけど、元々の短期達成レジームと今の長期籠城戦(なお籠城しても援軍は来ない)レジームの整理がグチャグチャになっているのがロジック崩壊に崩壊の上塗り状態になっている原因ですわな。

まあご案内のように政治的面目玉の関係上止むを得ないのでまあそういう意味では日銀の中の人たちは被害者でもあるのだが少なくとも総裁は最初からやっているんだからごのグダグダの責任は総裁にある訳ですが、このようなワケワカラン問答してて本人は恥ずかしくないのかね、とは思ってしまうのだが、ロジカルな詰めが足りないので鼻でせせら笑っているのかも知れませんな、ナムナム。


とガイダンスに悪態ついた(なんかMPM翌日以降これにばっかり悪態ついてますが)ところで後半の回答を。

『それから 2 点目は、展望レポートの政策委員の大勢見通しの中央値でいいますと、消費者物価指数(除く生鮮食品)でみて、2019 年度が 1.1%、2020年度が 1.4%、2021 年度が 1.6%です。もちろん、これは 2021 年度の 2020年度に対する上昇率であり、2021 年度の 12 か月の間の動きは明らかにしていま せんので、2021 年度全体として 1.6%であっても、2021 年度中に 2%に絶対にならないとはいえませんが、』

ぷぷぷ。

『概ね 2021 年度に 2%に達する可能性は低く、従って、今回展望レポートで見通し期間を 1 年延ばしたもとでも、2%に達するの は、やはりその見通し期間の先になりそうだということです。』

なのに何でモメンタムが維持されているといえるのか、というとモメンタム=需給ギャップとインフレ期待ということになっているからなのですが、需給ギャップは1%超のプラスが続いて直近では2%(ただし日銀推計の方で内閣府だかの方は違うんですが)まで高まっているのにインフレ期待は上がらんし物価上昇の勢いもつかない時点でそのメカニズムに何か抜けている点があるんじゃないですかという総括検証マダー?

『ただ、12 か月の間の物価の動きを特定しているわけではありませんので、2021 年度中に 2%になる可能性が絶対ないともいえないということだと思います。』

つーか2021年度中に2%になる可能性があるという話を政策金利水準の短期マイナス長期ゼロがより長期化する可能性が十分にあるという説明と同じ中でするとかその矛盾はどう整理するんだと言いたくなるがもはや整合性とか言っている場合じゃなくなっているのでこのような尻滅裂な話をしても平気(かどうか知らんが)でいる訳ですな。


・期間の意味を更に質問されるのだが説明が情けなくて涙がちょちょ切れてしまう

まあ何ですな、「フォワードガイダンスの明確化」とか言いながら声明文を出しておきながら、直後の記者会見で政策委員会の議長が自ら「2020 年の春よりもっと長くなる可能性も十分あるわけで」とか言ってる時点で何がどう明確化なのかさっぱりワカランチ会長にも程があるのでこういう質問が当然出る、ちょっと後の質疑な。

『(問) 「少なくとも 2020 年春頃まで」という文言ですが、説明が長くなってくると、その分緩和の時期も長引いてくるような気がしてしまう、ということもありますし、その反面、その「2020 年春頃」以降、緩和縮小に向かうのかとも受け取られかねないと思いますが、そうした中でもこの言葉を入れた、この時期を明確化したというところ、改めてなぜこれを入れようと決意されたの かという理由を教えてください。』

そんなもん某置物一派の1名に変な事言わせないためだろいい加減にしろ、とは口が裂けても言えないのでこういう説明になってしまうのは止むを得ませんがそれにしてもこういうグダグダを見るのは悲しい。

『(答) 2019 年 10 月の消費税率引き上げを例示して、経済・物価の不確実性 を踏まえて、当分の間、現在のような低い長短金利を維持する、と申し上げてきた中で、消費税率の引き上げが行われたらすぐ金利の見直しをするのか、と取られる向きもあったので、』

どんな向きだよ遂に総裁までが藁人形論法を持ち出すようになったかよという所でして、ワシはこんな情けない中央銀行は見とうなかったんじゃと泣きたい。

『そういうことではありませんということです。』

言われんでもわかっとるわ。

『むしろ、世界経済の不確実性という点を特に挙げているのは、ご承知のように、IMFも含めて、今年の後半から世界経済は成長を加速していくという見通しになっていますが、そこにもまだ不確実性は残っているためです。』

そういうのは「世界経済の不確実性」とは言わないのではないでしょうか?????????????

『ですから、 少なくとも 2020 年の春頃までは、金利を引き上げるような見当は全くありませんし、』

世界経済の成長が加速して消費増税の影響が軽微だったらどうなるんでちゅかねえ。

『それより先でも、「当分の間」ですから、かなり長い期間にわたって、 現在の極めて低い長短金利を継続するということでして、2020 年春になったら何が何でも金利を見直すというようなことは全く考えていません。』

寧ろこの説明だと「何が何でも金利を見直さない」と言っているようにしか読めませんが、ワシはこんな情けない説明を聞きとう無かったんじゃと何度も申し上げたいですけど、まあ外野のアタクシがこう思う位なのですから、公共に資するという意識をもって日銀マンになられた挙句にこんな会見要旨を作らされている中の人のいや何でもありません。


・ということなのにステートコンティンジェントってナンジャソラ

消費増税に短観云々の質疑が幾つかあるのですが正直どうでも良いのでちょっと先のまたもガイダンスの質疑な。

『(問) 重ねてフォワードガイダンスでお伺いします。今回、「2020 年春頃まで」ということで、カレンダーベースで時間軸を設定したわけですけれども、 今後、時間軸が更に延びる場合なのですが、やはり引き続きカレンダーベース で期限を考えていくのか、それとも物価とか経済指標に紐付けて考えていくこともあり得るのか、その辺の現時点の総裁の考えをお願いします。』

そらそう質問するわな。

『(答) 現在のフォワードガイダンスは、基本的には、いわゆるステートコンティンジェントすなわち経済・物価情勢に応じて、またデータディペンデントという、そのときまでに得られたデータや情報を用いて判断する、という仕組みです。』

だったら何で2020年春までの事が今断言できるんでちゅかねえ。

『今回、海外経済の動向をフォワードガイダンスの判断要素に加えたことで、よりその点は明確になったと思います。』

世界経済に下振れリスクなのかと思えば(まあ展望レポートだと目先だけ判断を下げているという器用なことをして、元々世界経済の下振れリスクは以前から指摘してあった)、ここでの総裁の説明って「IMFなどの見通しでは年度後半から世界経済が成長を高めるという見通しになっているがそうじゃないかもしれないリスク」という謎説明になっているので、総裁会見を読んだら却って「何をもってリスクと思っているのか」が訳わからなくなったんですがががががが。

『そのうえで、今回「少なくとも 2020 年春頃まで」という具体的な時期を示していますが、これは、先行き少なくともこの期間は、現在の極めて低い長短金利が適当であるような経済・物価情勢が続くと想定しているということを分かりやすく示したものです。』

想定ベースなのかコミットメントベースなのかはっきりしてください。

『いずれ にしても、「当分の間」というのは、「少なくとも 2020 年春頃まで」ということで、それ以上になることも十分あり得ることを示していますが、あくまでも基本的な考え方としては、ステートコンティンジェントでデータディペンデ ントであるということだと思っています。』

将来のデータ次第なら単にデータ次第といえば良いだけなのに何故に「より長くなる可能性も十分にある」ということになるんだか、という矛盾点を涼しい顔して説明するというのもよーやりますなとしか申し上げようがない。

『将来このフォワードガイダンスを変えるかどうかや、変える場合にどうなるかというのは、その時点での議論によるということだと思います。』

だったらデータ次第といえば済むだけではなかろうかと思いますが、そもそも論として「ガイダンス政策」と「データディペンデント」というのが矛盾する概念(モロに時間的不整合だわさ)なのにそれを説明に使うのでグダグダになるという話ではありますな。



・まあしかしフォワードガイダンスの説明はどこまで行ってもグダグダですわ

なおガイダンスに関しては後の方でこんな質疑もありました。

『(問) フォワードガイダンスのところにまた戻って恐縮なのですが、かなり 長い間やることを明確にしたかったということなのですが、ただ、マーケット の中には、来年 4 月を意識すると結構思っていたより早いではないか、と。というのも、最近、追加緩和の期待が増えていたようで、来年にも利上げがあるとみている方は結構少数で、この「2020 年春頃」というのは、ある意味ちょっと日銀はタカ派なのではないか、とそういう見方もあるのですが、それについてお願いします。』

まあ金利市場の人はどうせ金利動かせない(金利が下がったどさくさにレンジを拡大しておけば上昇するような環境の時にダマテンでレンジ拡大が既成事実になっている、という位しか期待するものはない)と思っていますが、確かに前回は「消費増税の影響を見るまでは」という意味だったのに今回ある意味では「消費増税の影響を確認する時期を明示したような形」になったのは間抜けちゃあ間抜けで、確かにこれ他市場の人から見たら来年春に金利水準見直しの判断をするって読んでも全く不思議ではないのよね(まあ実際は半年後に半年期日が伸びると思うが)。

『(答) そういう見方はあまりないと思います。』

えーっとすいません、最初の方で市場の「当分の間」の時間の見方が私たちの見方よりも短いのではないかと思ったので明確化した云々という話をしたのに、何で「そういう見方はあまりない」になる???「日銀がタカ派なのではないかという見方はここで改めて否定したい」とかいうのなら分かるが日本語の使い方がおかしい。

『あくまでも消費税率引き上げの影響を見極めるということだけでなく、むしろ世界経済の不確実性と、これが本当に年後半に回復していって万事うまくいくのか、まだ分からないわけですから、最低 2020 年の春頃までは見極める必要があります。』

グダグダや・・・・・・・

『それだけではなく、「当分の間」というのは、ご承知のように英語では for an extended period というので、日本語としても私はかなり長いと思っていたのですが、市場の人達はもっと短いと思っておられたらしいので、もっと長いのです、ということ をより明確にしたということです。』

これですね、最初のガイダンス(YCCのレンジ拡大とセットになった時)にも悪態ついたと思うのですが、政策決定会合で英文の声明文は決議事項になっていない(なっていたら議事要旨の中で決議されている旨が示されて英文声明文も掲載される)のであって、英文の声明文を使って政策委員会議長が説明するのっていうのは、この英文を作った人がどこの誰さんか存じませんけど、結果的に英文声明文を作成して公表を裁可した人が政策委員会の決定を跳躍していることに他ならない越権行為にも程があるのであって、英文の声明文で説明をするのであれば英文声明文も議決事項に加えるべきだし、英文声明文を決議事項にしないのであれば、英文を読まなくても説明できるような日本語を作成すべきなので、この部分は権限踰越にも程があると思うのですよね。

前もこの話出た時に申し上げましたが、ECBでは英文のステートメントが正本という扱いで、ほかの言語で翻訳する場合に直接あてはまる単語が無いのでこう読める云々という質問があった時に「英文で書かれているものが正しい」とドラギ総裁ちゃんと説明している訳で、経済見通しのバックグラウンドの展望レポートの背景説明みたいなものならともかく、声明文のしかも政策運営に直接に関わるガイダンス文言の解釈部分で勝手に議決されていないものを持ち出して説明するのは如何なものかと改めて申し上げておきます。


・フォワードガイダンスの明確化は時間軸政策ではないという話

となると結局何なんでしょうこの明確化は、という話ですけど、まあ物凄く好意的に説明して進ぜると、「どうせ当分金融政策は動くに動けないので、どうせ動けないんだから2020年春とか言う時期を出しても人畜無害だし入れておけば追加緩和派をちったあおとなしくできるから目くらまししておくか」という目くらましスキームではあるのですが、政策ロジックがどうなっているのか報道しないといけないので質問はさらに飛ぶ飛ぶ(最後の方になります)。

『(問) フォワードガイダンスに、時間軸を今回入れたということについてのお尋ねなのですが、FRBが四半期毎に政策金利の見通しというのを示していますけれども、これをパウエル議長が、色々市場が先を見越して色々思惑等々で混乱するということで、見直す考えを示唆していますけれども、世界経済が不透明化したりしますと、なかなか時間軸で先行きを見通すというのが難しくなっていくと思いますけれども、その辺のこのフォワードガイダンスの効果の一方で、懸念されることというか、今後注意すべきことというのはありますでしょうか。』

最初の所は良いんだがそもそもFRBは自分の政策金利が中立金利(ワシは現水準を中立金利というのは低すぎだろいい加減にしろと思うがそれは兎も角)にあるから先行きの政策金利パスを示すのは無理があるというのと、日銀のように緩和が結果的に長期戦化せざるを得なくなっているのとではまた扱いが違うと思うので質問の仕方もトンチキなのですがまあそれは兎も角。

『(答) フォワードガイダンス自体、アイデアは最近世に広まったわけです。 一番最初はある意味で日本銀行がいわゆる時間軸効果という議論をしていたのですが、より精緻な形でのフォワードガイダンスは、やはり米国から始まったと思います。』

どう見ても日銀ですがこの人昔の日銀を余程嫌いなんですね。まあ肝心の斬新な政策が結局元に戻っているのに未だにこれっていうのは面の皮が厚いのか思考回路がアレなのか。

『ただ、その中で、金利のドットチャートというのは、やや米国独自のものでして、それを見直す議論もありますが、現時点で見直されるような状況にあるとも思われませんし、それはそれで、それぞれの国のやり方だと思います。』

というかそもそもドットチャートは「プロジェクションマテリアル」の「コレクティブビュー」であって、ガイダンスとして使っているのはFOMC声明文の中のワーディングの方ですよ、という話でもして上げれば良いと思うのですが、まあこの辺まではどうでも良い。

『フォワードガイダンスは、先行きをまさにフォワードガイダンスとして示すことによって、金融政策の効果をより一層高めるという意味があるわけです。』

ほほう。

『他方で、フォワードガイダンスというのは、自分の金融政策の自由度を制限する意味もあるわけです。逆にいうと、制限しているからこそ、マーケットはそれを当てにできるという面もありますが、金融政策としては、やはりその時々の、それからその時々の先行きの経済・物価状況をみながら、適切な金 融政策を運営していくことが重要であることも事実です。』

時間的不整合の話な。

『そこは、フォワードガイダンスのさじ加減というか、ちょうど適切なフォワードガイダンスを見出す必要があるということだと思います。』

お前は何を言ってるんだ。コミットメントじゃないガイダンスってただのプロジェクションだろいい加減にしろとしか申し上げようがないし、時間軸効果を出すのだったら何らかの経済条件に紐付けをするというのが妥当だというのはそれこそジンバブエ先生でもわかる話(その趣旨で反対していますからねえ)だろという事で、この説明のロジック無し無し振りにワシはこんな情けない(以下同文)。

『何が何でも物凄く長く絶対にこうしますと言えば信用されるのか、とか、あるいはそれが却って変化する経済・物価・金融情勢に合致しなくなってしまうという問題も考えなければいけません。』

だから「コアCPIが安定的に何とか%を超えるまで」のような分かりやすい経済状況に紐付けるんじゃないですかねえ。

『そういう意味では、今回は、かなり踏み込んでフォワードガイダンスを強めたことは事実ですが、』

その割には追加緩和とは言わずに明確化と言っていまして、もはや追加緩和なのか追加緩和じゃないのかのロジックもこの説明の中ですら行ったり来たりしていて、マジでちょっと大丈夫かと申し上げたい。

『他方で、あくまでもデータディペンデントであって、「2020 年春頃」というのは、「少なくとも」ですから、それよりも長くなることを意味しているわけであり、それよりも短くなることはないでしょうということです。』

データディペンデントだったら状況が物凄く良くなれば短くなるだろいい加減にしろと思いますし、大体からしてこれだけ大口叩いて消費増税延期になったらどうする積りなんでしょうかねえ。

『展望レポートで見通し期間を 1 年延ばしたわけですけれども、消費者物価の上昇率が 1.6%ということで、まだ2%には達してないという状 況を踏まえて、データディペンデントであり、ステートコンティンジェントであるという基本姿勢は変わらないと思いますが、やや踏み込んで現在の大幅な金融緩和を粘り強く続けていくことをより明確に示したということではないかと思っています。』

なんかもう説明がシッチャカメッチャカで見てらんない・・・・・・・・・・・


・・・・・・・という訳で、休み明け一発目がいきなりの悪態仮面になっていますが、連休が終わって勤労の時間が始まる腹いせで攻撃的になっている訳ではない筈ですのでその点はよろしくお願いいたします(^^)。




2019/05/02

お題「寝起きでFOMC、とりあえず声明文とIOERに関して」

いやーさすがにぐうたらしてたのが急に早起きするとキツイ(笑)。ペースは通常よりもゆっくり目にやっているのであまりリハビリにはなっていませんな(別に明日の朝また投下する訳でもないし)。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190501a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190320a.htm(前回)

〇声明文第1パラグラフ:現状認識は上げたり下げたり芸が細かい

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March indicates that the labor market remains strong and that economic activity rose at a solid rate.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January indicates that the labor market remains strong but that growth of economic activity has slowed from its solid rate in the fourth quarter.』(前回)

ということで現状認識のアセスメントを示した1パラなのですが、いきなりここで景気の総括判断を引き上げるというのが出てきます。

『Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Payroll employment was little changed in February, but job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回)

何故か労働者数への言及が削られましたが、労働市場の認識は変わっていないと見るのが妥当と思われます。

『Growth of household spending and business fixed investment slowed in the first quarter.』(今回)
『Recent indicators point to slower growth of household spending and business fixed investment in the first quarter.』(前回)

家計消費と企業支出に関しては前回「最近の指標は減速を示している」だったのが今回はすんなりと「減速」になりまして、こちらは現状判断が下がった(たいした下げではないが)という感じです。

『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy have declined and are running below 2 percent.』(今回)
『On a 12-month basis, overall inflation has declined, largely as a result of lower energy prices; inflation for items other than food and energy remains near 2 percent.』(前回)

ここはおーと思ったのですが、物価に関して前回が「near 2 percent」だったのに今回は「below 2 percent」となりまして、物価マンデートに対して下という認識に下方修正してきました。そらまあ物価は景気に遅行するからという事でしょうけれども、物価に関しては従来よりも引き下げになっているのに経済の方は上がっているとは何の判じ物という感じではありまする。

『On balance, market-based measures of inflation compensation have remained low in recent months, and survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(今回)
『On balance, market-based measures of inflation compensation have remained low in recent months, and survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(前回)

インフレ期待に関する文言は変化ないです、というかあったら政策に割と直結する。



〇声明文第2パラグラフ:先行き及び金利政策に関しては全文一致

実は2パラ以降は全文一致なのですが、PDFバージョンで印刷を掛けると同じ文章なのに何故か改行位置が異なって印刷される(昨日印刷した3月声明文と今朝印刷した5月声明文を並べて比較している)という訳の分からん仕様になっているのがFEDクオリティでお蔭で往生する訳です(HTMLだとズレは起きない)。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent. The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes. In light of global economic and financial developments and muted inflation pressures, the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent. The Committee continues to view sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective as the most likely outcomes. In light of global economic and financial developments and muted inflation pressures, the Committee will be patient as it determines what future adjustments to the target range for the federal funds rate may be appropriate to support these outcomes.』(前回)

きっちりと全文一致でして、パラグラフ最後の「In light of 〜」以下の、世界経済や金融環境の動向、上昇圧力に乏しい物価動向を踏まえて、FOMCは今後の政策金利変更に対して「patient」である、というpatient文言もそのままであります、まあ順当ですけど。


〇声明文第3パラグラフ:今後の金利変更に関する文言も同じ

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

うーんこの。まあこのパラグラフは一般論みたいな毒にも薬にもならない文言化しちまいましたな。


〇声明文第4パラグラフ:今回も全員一致

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Jerome H. Powell, Chairman; John C. Williams, Vice Chairman; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(前回)

何で前回のウィリアムスが「Vice Chairman」で今回のが「Vice Chair」なのか、という謎があるのですが、先ほども申し上げましたようにPDFバージョンだと前回の声明文は3パラの途中で改ページしてしまうのですが、今回はきっちり1ページに収まっていまして、1枚に収まった方が美しいとかそういうのは万国共通の美意識(?)によるものなのではないか(個人の感想です)というところでしょうか、よー知らんけど。


・・・・・・・ということで、物価の現状認識を2%マンデート達成だぜヒャッハーモードから2%には届いていないショボーンモードにしているものの、一方で年末年始辺りの景気減速は一時的なものでしたわ良かったですね奥様となっておりますので、そっちでは強いということで、あとは「中立金利」に関する認識次第でどうとでも出来るような声明文に仕立て上げたということで、前回あれだけ腰が砕けておいて今回はちゃっかり景気認識引き上げとかナンジャソラという観は拭えませんがまあそんな形ですにゃ。


〇IOERを5bp引き下げ

でもって声明文なのですが、PDFバージョンだとその次のページにそのまま出てくるのですが、HTMLの場合、声明文の下に「Implementation Note issued May 1, 2019」というのがあって、そこを踏みに行きますと・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190501a1.htm
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

こげなのが出てきますタイ。なおこのImplementation Note自体は毎度出ていて、NY連銀(オペを実際にやるところ)のデスクに向けたディレクティブなどが記載されているのですが、今回はここにIOER変更のネタ(IOERとONRRPの金利については今回と言わず毎回記載はされています、あと資産買入に関しても)が仕込まれています。

以下上記Implementation Noteから引用します。

『The Federal Reserve has made the following decisions to implement the monetary policy stance announced by the Federal Open Market Committee in its statement on May 1, 2019:

・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to set the interest rate paid on required and excess reserve balances at 2.35 percent, effective May 2, 2019. Setting the interest rate paid on required and excess reserve balances 15 basis points below the top of the target range for the federal funds rate is intended to foster trading in the federal funds market at rates well within the FOMC's target range.

・As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open Market Account in accordance with the following domestic policy directive: 』

ということで、IOER自体はスタンディングファシリティなのでディレクティブには出てこなくて、引用した部分に続いてディレクティブがあって、そっちには資産買入どの位にするだの、ONRRPのレートを何ぼにしてカウンターパート当たりの限度額を幾らにするだのという「オペレーションの指示書」になっているという作りでございまする(興味のあるかたはURL先を読んでちょ)。

でもってIOERですけれども、これまでが2.40%(FF誘導レンジ上限▲10bp)だったのを今回5bp引き下げまして、2.35%にするとなりやした。

アタクシそこまでFF市場に詳しくないので(すいません)IOERに関してはFOMC議事要旨で話題になっている部分位しかちゃんとした知見が無いのですが、基本的に最近の実効FFレートは、特殊日を除けばIOERが市場レートの下限を画するような感じになっている、とFOMCでの議論を見ると書いてあって、まあ大体そんなもんになっているという感じではありますので、ある意味5bp利下げっぽくもあるのですが、下げた理由に関しまして、

「Setting the interest rate paid on required and excess reserve balances 15 basis points below the top of the target range for the federal funds rate is intended to foster trading in the federal funds market at rates well within the FOMC's target range.」

ということで、FOMCのターゲットレンジの中で市場価格(FF金利)が動いて市場取引が活発になりますようにみたいな言い方になっていて、表面上はテクニカルな話になっています(ただまあ実際は実効FF金利がフルスライドかどうかは知らんが若干下がりやすくはなるでしょう)。

本来、銀行間翌日物短期市場金利というのは、上限がディスカウントウィンドウ、下限が当座預金金利、あるいは預金常設ファシリティ金利の高い方になって、その中で動くもんでして、ECBは昔からありましたが、日銀やFEDも量的緩和だのするようになってIOER(ちなみに上記記載にあるようにFEDの場合は法廷準備預金と超過準備の両方に付利をしています、日銀は法定準備預金は付利しません)を作るようになった次第。

でもってFEDの場合、量的緩和をする間に預金ファシリティ保有の金融機関以外の名義のところに短期運用資金が滞留するようになって、この人たち(米国の場合はGSEとか言われるファニーメイとかフレディーマックなどなど)が預金ファシリティよりも低い金利で運用せざるを得なくなり、預金ファシリティをぶち抜いて金利が下がるという構造になった訳でして、いざ利上げを開始するにあたって、この人たち(GSEに加えてMMF(今の米国のMMFは制度改革したから主にトレジャリーオンリーだった筈)が主な対象だったと記憶している)がFF誘導目標金利の下でバカスカ短期資金放出をするのを回避するために、RRPというFEDがGCレポ取引の相手方になってあげるからこっちで運用しなさい攻撃を始めて、そっちのレートが現状のFF誘導レンジの下限になっている訳ですな。

つーことですが、本来はIOERが短期翌日物市場金利の下限になる方が美しい姿になる(ぶち抜けて下がっているのであれば不胎化が不十分ということ)わけでして、まあIOERで市場金利の下限が設定できるようであれば、そもそもFF誘導目標をレンジにする必要もないので、もしかしたらそのうちFF誘導目標をピンポイントの数字に戻すことも可能なんじゃないのかとか思ったのですが、その辺は議事要旨が出たらなんか話があるかもしれない(ないかもしれない)なあとは思っています。


#とまあこの程度のネタでしたがやはり久々の朝だしケツが決まっている訳でもないので手が遅かったですな(下に昨日散々更新した展望レポートネタを投下しております)




2019/05/01

お題「朝じゃないけどあけましておめでとうございます(決定会合レビュー続き)」

って元号変わっただけなので明けましてなのか知らんけどとりあえず。でまあ予告の段階では平成のうちに更新とか言ってましたが案の定休みをぐうたらと満喫(漫画喫茶ではない)しておりましてお休みが半分になってきたのでコリャイカン(明日のFOMCもあるし)ととりあえずはあるネタの方をアウトプット。

金曜日はフォワードガイダンスの「明確化」で延々と悪態をつきましたが、思いつくまま悪態を並べたのでちと整理してみますと・・・・・・・

〇決定会合レビュー:政策云々よりも「政治的に間違いを認められない」のが致命的な問題

金曜最後の方にも書きましたが、今回の「ガイダンス明確化」の一番不思議なのは「カレンダーベースのガイダンスに変更したわけではない」という説明でして、金曜の夕方に出ていた総裁会見でも明確に述べられていたのがイミフで、これをもって普通は明確化とは言わんじゃろと思うのですが、まああちらを立ててこちらを立ててとやりながら現実解を出そうとするとこうなる、というのは分からんでもない(分かっているのに悪態をつくアタクシも大概な性格だが)、というのはある。

つまりですな、当初の政策であるところのQQEぶっこんだ時の理屈ってのは、現状(当時)の(需給ギャップと物価の関係を示した版)フィリップスカーブが基本にある訳ですよ。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/index.htm/
経済・物価情勢の展望(展望レポート)

ここに行くと過去のが見に行けますがQQEぶっこんだ後の(当時4月は2回会合があったので4月2回目会合ね)展望レポート。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf
2013年4月(背景説明を含む全文) [PDF 4,366KB]

こちらの(図表43)って奴がPDFの75枚目にありまして、

需給ギャップと物価上昇率
(1)フィリップス曲線(総合除く生鮮食品)需給ギャップ<2四半期先行>(%)
(2)フィリップス曲線(総合除く食料・エネルギー)需給ギャップ<4四半期先行>(%)

ってありまして(コアとコアコアで期間が違うのは単純に一番時差相関が高くなる時期を使っているだけ)、補助線の方は3本引いてあるのですが、

A:1983/1Q〜2013/1Q
B:1983/1Q〜1995/4Q
C:1996/1Q〜2013/1Q

という期間になっていて、金融危機以降というかデフレ入り以降というのがCの時期だという切り方してるんでしょうけど、直近の方は

コアで『C:1996/1Q〜2013/1Q y = 0.28x + 0.3』
コアコアで『C:1996/1Q〜2013/1Q y = 0.17x - 0.1』

以前の方は、

コアで『B:1983/1Q〜1995/4Q y = 0.28x + 1.1』
コアコアで『B:1983/1Q〜1995/4Q y = 0.15x + 1.7』

となっていて、そもそも論として金融危機前の成長力が高かった時代でも、コアCPIだと需給ギャップがゼロの時点、つまり「安定的な物価推移をする水準」ってのがY切片の+1.1%なのですが、ただこちらをコアコアで見ると+1.7%なのでちったあ2%っぽくなる、という水準な訳だったのですが、このフィリップスカーブのY切片が更に下方シフトしているのですから、2%物価達成ってのはコアで6%、コアコアだと12%とかいずれにせよ凄まじい数値が必要になるという計算になるので、マネタリーベースの拡大とコミットメントでインフレ期待に直接的に働きかけることによって、このフィリップスカーブのY切片を引き上げるのが必要というのがありましたな。

でまあもう一つはあまり明示的には書かれたりはしていないですけれども、いわゆる複数均衡論に軽く乗っかったような理屈で、低位のインフレが常態化して一種の均衡状態になっているので、その均衡状態をマネタリーショックによって動かすことによって、つまり物価に上方ショックを与えることによって粘着的になっているインフレ予想に働きかけるという話で、後になってから講演なんかでそういうのが出てきていて、例えば中曾副総裁の

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/ko140423a.htm/
[Speech] What the Lost Decades Left for the Future
Keynote Speech at the 2014 International Conference Held by the International Association of Deposit Insurers, Asia-Pacific Regional Committee

Hiroshi Nakaso
Deputy Governor of the Bank of Japan
April 23, 2014

『Escaping from Deflationary Equilibrium』という小見出しの所に、

『Another lesson is that, once the economy falls into deflationary equilibrium, it is difficult to overcome that situation. In order to get out of deflationary equilibrium, a sufficient escape velocity needs to be provided to the economy. What is extremely important in this regard is to employ all policy measures in the arsenal.』

ということで、複数均衡論(複数均衡論自体はこの小見出しの上にある脚注1の『 1 Bullard, J. (2010): "Seven Faces of 'The Peril'," Federal Reserve Bank of St. Louis Review, September/October, pp.339-352.』ということでおなじみセントルイス連銀ブラード総裁の複数均衡論のお話に乗っかっておりましたな。

・・・・・・・・・・とまあそういう感じでやっておった訳で、明らかにこれは「ショックを与えて経済の状態をシフトさせる」という作戦だったので、そもそもが短期的にショックによる遷移が起き、それによって均衡状態から外れた後上手く次の均衡の2%物価安定推移にもっていく、というのが作戦だった訳でございますよ。


でね、為替が円安になって(たぶん対外収支は貿易収支に関する構造的な変化が起きていたからマネタリーショックが無くても円安トレンドになっていたと思うけどマネタリーショック(の思惑)で加速した面はあるでしょうな)、それから消費増税前の財政措置があって久々の消費増税だったからちょっとお祭りみたいになって駆け込み需要は出るわ(エコポイントとかエコカーの期限切れ前のもあった)便乗値上げは出るわということになって、まあ瞬間物価は上がった訳ですよ。なので最初は思惑通りだったと思うのね。

でも物価が上がってみて暫くしてみると、そもそも消費者の実質所得がそんなに上がっていないのに物価だけ上がられても困るがなとか、企業サイドはコストプッシュ要因が増えてるだけで別に数量景気で上がっている話ではないとか、冷静に考えたらこれはただのワンオフじゃろという話になって笛吹けどインフレ期待はアガランチ会長という事になった訳ですな。

一方、短期決戦の積りでぶっこんでいる政策だし、そもそも論からして均衡状態からの離脱であったり、フィリップス曲線のシフトアップを促すというのを早期でやろうとなるとショックが必要ですが、ショックを出すほどの大規模金融緩和のタマがそう何発もある訳でもなく、ということでQQE2をやってみたものの不発。補完措置を導入したら「ナンジャソラ」とか「政策の限界」とかいう話になってブチ切れて奥の手で導入したのがマイナス金利ですが、もとより金融機関の預貸スプレッドがそれなりにあった欧州の制度を長年ゼロ金利政策やっていて金融機関の競争が激しい日本に持ってきたら起きたことはただの金融機関課税であり、それを理解した株式市場が株安で反応して為替は円高ということで奥の手も大不発どころか逆噴射の巻。

しかも為替円安で物価をシフトアップしていく作戦に関しては現実に円安や燃料高で物価が上がったらそこら中から文句が出まくってしまい、政治的にも過度な円安誘導が国内の事情でできないということになってしまったので、もう打つ手なしとなってYCCというものを道具にすることによって、従来の「量で勝負」「短期決戦」のレジームからシフトしたのですな、うんうん。

とまあそういう訳ですから、今の枠組みって「短期決戦のこのようなメカニズムを考えて誰も今までやっていなかった新しい取り組みをしてみたものの、残念ながら思っていたようなメカニズムは作動しませんでした。ただし、昔からある考え方で金融緩和を継続して経済の需給がプラスの状態を作って景気の良い状態を長く継続すればそのうち物価も上がるでしょうから、じっくりと緩和政策をやっていきます」という代物になっている、というのは皆様もご案内の通りだと思うの。

ただですな、そもそもが鳴り物入りの政治主導、しかも結局元に戻っているということは当時追い出された人たちのドクトリンに戻った、というのを認めると死んじゃう病に罹患しているというのが如何にもジャパンのクオリティな訳でして、こんなの「分からない政策だから実験的にやって問題点も分かったのでこの知見を生かして新たなアプローチで取り組みます」って言えば済むのに、大口叩いて大風呂敷広げて「世界標準の金融政策」とか大嘘ついて安倍ちゃんに取り入ってぶっこんだだけのインチキ連中だけのことはあって、置物野郎のように「すべて消費税が悪い」とか意味不明の責任転嫁だけして自分らの間違いを認めないとかいうのって何なんでしょうねと思うのよ。

理論なんてあくまでも理論であって、実際に適用する場合には現実にそのまま適用できるわけではないし、適用限界みたいなのだってある訳で(そういう意味でマッカラムルールとかあんなの適用限界直ぐ来るだろいい加減にしろとしか思えんのだが)、そういうの違ったらすいませんって言って謝ったりしないで、何か知らんけど「消費税ガー」のように全部正当化してわーたーしーはーわーるーくーなーいーとか始めてしまうのって、第2次大戦の時にも「私は反対だったが軍部ガー」みたいなこと言ってその後ものうのうと居座り続けていた連中がうじゃうじゃいるという時点でジャップランドクオリティとしてビルトインされてしまっているんでしょうけれども、全く持って困ったもんだという風にもあもったりする令和の明けなのでございますよ。


・・・・・・・とまあまーた愚痴になってしまいましたが、政策としては金曜から申し上げているように、YCC導入から徐々に推し進めている「元々のQQE政策ドクトリンの形骸化の推進」が完成形にだいぶ近くなっているので、QQEドクトリン(短期決戦ドクトリン)の放棄という文脈から考えた場合、片岡さんと原田さんの言う反対というのは「既に負けが決まっているドクトリンに固執する無能将軍」ということになるので、反対そのものが論外という事になるのですが、今申し上げましたような流れを置物リフレ一派は今更取り下げる訳にもいかない訳ですよあの2名は。つまりですね、本当に自分の理論に誠実に対峙するのであれば、理論に誤りがあったらそれを取り下げて直すのが誠実な学問的態度だと思いますし、学術の世界だったらそうやって進歩していく訳ですが、まあ学問に対して誠実ではないというか、どうせおまいらの出世の道具に使っていただけじゃろという理論だと、出世の道具を間違っていましたとは言えないので、そら反対するわというお話になる。なお置物本人は「進化した」とか一時言ってたから腐っても鯛とはこの事と一時感心しかかったのですが、置物日記という言い訳満載ブックを出してああやっぱりこれも学説は出世の道具かとがっかりしました。ハマコー先生の方が素直に反省するだけまだマシなので麿の前で五体投地して謝罪ショーをしてくれ。


つーことでまーた同じ話になってしまいましたが、要するに今回は「長期戦化であることがより分かりやすくなった」というステータスで、日銀の中の人からしたらそんなの前から長期戦になっていてただ猫をかぶっていただけということでしょうが、まあこの有耶無耶っぷりは政権トップが変わらない限りこの調子になるので、長期化は長期化であっても、元の亡霊のように残っているQQE当初の理論が出てきて追加緩和観測とか思惑のようなものは出てくるでしょうね、とは思います。それから今回は長期戦化に加え、海外中銀動向を見て正常化に関してもかなりの死んだふりモードになっているのが目につきますな。


ということで結局金曜と同じことを書いただけで(時間が幾らでもあると幾らでも雑感を書いてしまう・・・・・)声明文チェックは次のコーナーで(一旦ここまででアップする)。



2019/05/01(その2、特にタグは設けません)

お題「ちと熱くなってしまったので気を取り直して決定会合声明文レビュー」

いやードクトリン変更をダマテンで実施というのが現実問題として現場は最善の対応をするとこうなるってのは分かるんですけど、政策にプリンシパルが無い国はどうなのよとかそんなことを考えていたら同じ話を延々とまた書いてしまいましたサーセン。

気を取り直して声明文レビューである。

〇決定会合声明文

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190425a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190315a.pdf(前回)

・政策は「ガイダンスの明確化」で強化でもなくて政策変更でもない

というのは金曜の再掲のような気がしますがそれはさておき、再度確認しますと、

『当面の金融政策運営について 』(今回)
『当面の金融政策運営について 』(前回)

という題名になっているので政策変更ではないという建付けです。そして、

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、強力な金融緩和を粘り強く続けていく政策運営方針をより明確に示すため、以下のとおり決定した。』(今回)

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。 』(前回)

となっていまして、日本語が美しくないのですがやっていることは「政策運営方針をより明確に示すため」であって、政策運営方針自体に変更があった訳ではなくて、もとより「強力な金融緩和を粘り強く続けていく」という建付けになっておりましたので、今回のガイダンス変更は別に政策変更でも修正でも何でもないのですが、某Qの頭文字のついているベンダーが第一報のヘッドラインで「日銀、金融政策を修正」とか何とか入れやがって、それがちょうど後場先物寄り直前(BBはやっている時間だったと思う)だったので木曜の後場寄り付きで飛ばされてしまったのはそのせいだが、最近のベンダーヘッドラインは当てにならんから直ぐに本文確認しろと小一時間という所ですな。


・ガイダンスの「明確化」は先般来申し上げている通りなので内容はパスする

『(1)政策金利のフォワードガイダンスの明確化(注1)

日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも 2020 年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(今回)

『政策金利については、2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(前回)

ということでこれは金曜以来ずっとこのネタだけやっていたのでまあいいでしょうという感じですが、「当分の間」の時期が明確化されたということになっているのと、不確実性に関して海外経済のアセスメントを今回基本的に下方シフトしているので、下方リスクに関して消費増税だけではなく海外も入れましたという話ですな。

でまあ筋論の方はさておきますと、「少なくとも」って期間が入っているのは「長くなるかもしれません」というのを言外に籠めている(言外じゃないかも、笑)ので、当分政策金利水準を変更することはないですよと宣言したようなもんですが、カレンダーベースではないと言っているのは一応「早期達成」の向きに対して配慮したらこうなった、という妥協の産物ということになるんでしょう。まあそうは言っても10月の展望レポートでは「東京五輪の反動による需要減の不確実性を踏まえる」とかいう話が出てきて2020年秋だか冬だかまでエンドは伸びると思われますので、このエンドが近くなってきたらマズいんじゃないですか、ということを気にする必要はオバケのQ太郎の毛ほどしか無いでしょう。気にしない気にしない。

反対に関しては「当初のドクトリンが生きているんだったら反対理由としては筋が通っている」という事ですが、何せ現実的にドクトリンを骨抜きにして換骨奪胎している(人の物じゃなくて自分の場合に換骨奪胎とは言わないですかそうですか・・・・・・)ので、現状のドクトリンに対しては思いっきり外れた提案をしている、ということになるのですが、そういう意味では「達成時期を明確にしたコミットメントを入れなおせ」というような話をした方がエエンチャウノ(なお実現する手段は無いので机上の空論)とは思いますけどねあのお二方。


・諸措置の実施に関しては要するに市場からの要望があったものとかでしょうけれどもどこまでニーズあるんだか

今回投下された諸措置に関してですが、

『(2)強力な金融緩和の継続に資する措置の実施

適格担保の拡充など別紙の諸措置を実施する。 』(今回)

となっていて、別紙の方が3ページにあるので確認。

『強力な金融緩和の継続に資する諸措置2 』とあって(以下暫く今回の声明文および声明文別紙から引用)、


『1.日本銀行適格担保の拡充

(1)企業債務に関する信用力要件を、以下の基本方針のとおり緩和する。

@ 外部格付けを取得している企業の債務については、当該企業がBBB格相当以上の格付けを取得していること。
A 外部格付けを取得していない企業の債務については、金融機関の自己査定で当該企業が正常先に区分されていること。

(2)地方公共団体に対する証書貸付債権等については、貸付条件の決定方法として入札等の実施を求めない。非公募地方債については、公募地方債との表面利率および発行価格較差要件を求めない。

(3)セカンダリー市場で取得した政府向け証書貸付債権等を適格担保として受入れ得ることとする。 』

ということで、まあ一番残高行く可能性があるのが(1)のAですけれども、現実問題として証貸を日銀担保にぶっこむ場合、満括じゃないのを入れるの面倒そうだし、細かいのをチマチマ入れていくのも面倒そうですし、そもそも掛け目が相当厳しいでしょうし、というのはありますが、それにしても今の金利状況だと何せ短いどころか先物近辺までの国債がゼロ金利どころか▲10bpよりも金利低いので、ブタ積みしてマイナスチャージ食らうよりはマシという理屈すら持ち出せない状況となっていて、既存の持っている国債が償還になればなるほど担保繰りで死ねるわという状況だが、とは言ってもまさか担保玉に超長期買うなどというような金利リスク量の無駄遣いもできないので、マイナス確定スキームで泣きながら中短期を買ってポートの無い体力を更に悪化させるプレイに出る向きもいるでしょうし、まあ担保無しモードをどげんかせんとあかんという状況なのでこういうのを入れた、というのは分かる。

まあ寧ろ貸出増加支援貸出とか止めて頂きますと、あれは日銀からの資金供給見合いに適格担保が必要になりますので、担保繰りでヒーコラ言うのがちったあ改善されるような気がします(個人の感想です)が相変わらずこっちの方は金融政策に資するという建付けになっているようでこんな施策ががががが。

社債のトリビーまでの担保適格というのは、まあそれを買入するというのであれば話は別なのですが、単に担保にしますよという時に日銀に担保を入れるような方々がそんなに日本のトリビー社債をせっせとポートに持っているのかというと微妙な気がする(年金とか保険とかはしこたま持っていると思うけど)し、これも掛け目の問題もありますから、まあやらないよりはやった方がマシという感じですかねえ、よくわからん。


ちなみに26日には実務(業務)担当者は見ておかないとアカン奴やでという、
http://www5.boj.or.jp/
業務上の事務連絡

2019年4月26日 「担保に関する細則」の一部改正に関する件等

というのがあって、そこの
http://www5.boj.or.jp/bojnet/kaisei-tuuchi/tuuchi190426.htm
●担保関連
・2019年4月26日 「担保に関する細則」の一部改正に関する件
・2019年4月26日 「担保に関する細則」を更新しました

の上の方にあるリンクをポチっとなとしますと、
http://www5.boj.or.jp/bojnet/kaisei-tuuchi/tks190426.pdf
「担保に関する細則」の一部改正に関する件

『規程整備の観点から、標題規程の一部を別紙のとおり改正し、本日から実施することとしましたので、通知します。

(主な改正内容)
オンライン担保差入先による地方債の適格性確認に関する取扱いを明確化しました。』

ということで、非公募地方債の適格性確認もオンライン化しますよ、という趣旨と思われる物件は既に出ていますな。




『2.成長基盤強化支援資金供給の利便性向上・利用促進

(1)「成長基盤強化を支援するための資金供給」(円貨)の利用先に本資金供給の実績を踏まえた利用枠を付与し、その範囲内で資金供給を受けられることとする。

(2)「成長基盤強化を支援するための資金供給」および「貸出増加を支援するための資金供給」について、新規貸付の実行日の期限を 2021 年6月まで延長する。』

最初見た時何のこっちゃと思いましたが、よくよく実務家の方からの解説を聞きまするに、成長基盤強化に関しては個別の案件に紐付けになっているので、個別案件に関して成長基盤強化資金供給に適格かどうかという確認をしたり、約弁で減ったりしたらその分日銀の供給資金をお返ししたりと管理が七面倒ということなので、過去の実績に応じて(これがいつの時点での既往ピークとかそのあたりの説明はここではないのでちょっと謎ですが)成長基盤強化貸出の限度枠を設定してその中だったらホイホイお出ししますよという話ですな。

一応これをやると成長基盤強化が借りやすくなる(個別審査の事務手間が省ける)のですが、そもそも成長基盤強化のオペで資金取るニーズって何なんだかという観もありますので、これは「資金供給を増やす」ということになっていますが、借りる方貸す方の個別審査に掛ける労力を減らすという効果のような気がしますが、ユーザーフレンドリーはユーザーフレンドリー。


『3.国債補完供給(SLF)の要件緩和

最低品貸料の引き下げ、銘柄別の売却上限額の撤廃等の要件緩和を行う。』

ということで早速リリースが出ていて、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190425a.pdf
国債補完供給の要件緩和措置について

(以下の部分は上記の要件緩和措置のPDFから引用します)

『1.最低品貸料の引き下げ

従来の取扱い 最低品貸料 0.5%
緩和後の取扱い  最低品貸料 0.25%

―― 併せて、上限期間利回りを設定するうえで勘案する市場実勢金利をレポレート(注)に変更します。 』

『(注)具体的には、前営業日公表の東京レポレート(トムネ物)。 』


『2.銘柄別の売却上限額の撤廃

売却上限額
従来の取扱い 日本銀行の保有残高(注1)の 100%または 1 兆円(注2)(注3) のいずれか小さい額
緩和後の取扱い 日本銀行の保有残高(注1)の 100%

(注1) 前営業日の残高から当日までのオペ等で売却が決定している金額その他の業務遂行上必要と認める金額を除いたもの。
(注2) 利付国債の場合。国庫短期証券の場合は 1,000 億円。
(注3) 午後オファーの入札については、午前オファーの国債補完供給で売却が決定している金額を除きます。』

ということでレートが下がったのと1兆円上限の縛りは無くなったのですが、別にこの措置自体が常設化されるとか、バイインするのもバッチコーイみたいな変更をする訳ではないと思われますので、まあやらんよりはやった方が良いのですが・・・・・・・・・・

『3.チーペスト銘柄等の引き渡しにかかる要件の緩和

チーペスト銘柄等(注)については、利用先が日本銀行に引き渡せない場合の対応にかかる要件を緩和することとします。

(注) 長期国債先物取引の直近2限月におけるチーペスト銘柄およびセカンド・ チーペスト銘柄のうち、日本銀行の保有割合が発行残高の80%を超えるもの』

ということでして、チーペストのバイインに関してちったあ緩和される可能性がありますが、緩和する内容についてこちらには記載されていないので、出て来るであろう要綱を見ないことには何ともかんとも。事務連絡の方には先ほど申し上げた非公募地方債の担保差入れに関するオンライン適格性確認の話しかまだ出ていません。

まーこのチーペストのバイイン可能ということで先物がちったあ売りやすくなるといいですねという話ではありますが、残念なことに「金融政策の修正」というヘッドラインで当然のように債券買いで反応しちゃう、即ち金利上昇方向の金融政策修正が発生するとは全然思われていない状況にあるので、先物の無駄な買い煽りが出来なくなるという効果はあっても、だから金利が上がるとかそういう話ではない(金利上がる話になりたかったらトランプとかパウエルとか書いた人形もって白装束姿で丑の刻以下自主規制)ので相場が大きく変わる話にはならんでしょうなあ(個人の感想です)。


『4.ETF貸付制度の導入

日本銀行が保有するETFを市場参加者に一時的に貸し付けることを可能とする制度の導入を検討する。 』

おじちゃんETFのマーケットメイク制度がどうだからこうですという話はそんなに詳しくないのでアレなのですけれども、まあこれはこれで市場から要望があったから実施するという話だと思いますので、これが入ったから株価形成がどうのこうのというのは局地的な話としてはあっても本質的な株価形成とは関係ないんじゃないですかねえ、よー知らんけど。というかこれは「導入を検討」なのでこれは結構時間が掛かりそう。


ということでまあ基本的にこの辺りは特に政策意図があるというものでもなくて、何もわざわざ「強力な金融緩和の継続に資する措置の実施」などと銘打って実施するものではないと思いますし、これやったから今の資産買入政策の継続性が担保されるような話でもないんですが、一々話を盛って公表するのが好きな日銀なので平常運転の話なんですけれども、政策インプリケーションが無い措置を出すのにこのような書き方をすると政策インプリケーションがあるように見えてしまうので、変に話を盛るのは如何なものかと思う。

ま、現実問題としては今回反対しなかった若田部副総裁対策もあって盛れるもんは盛っておこうというハッタリクオリティが炸裂したということだとは思いまする。


・「時間が掛かる」と「強化」に関して何となく気がついたこと

金融調節決定方針と資産買入は同じで、80兆円も残っていますよという所ですがご案内の通りなので引用はパスしまして、経済物価の部分ですけど、今回は決定事項に関する説明が入ったりしているので比較がヤヤコシヤでして、次に投下予定の展望レポート基本的見解の方を見ながらぶっこんでいった方がわかりやすいかも。

『3.わが国の景気は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、先行き、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。物価も、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いているものの、先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることなどから、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。もっとも、海外経済の動向をはじめ経済・物価の先行きを巡る不確実性は大きい。また、「物価安定の目標」の実現には、なお時間がかかることが見込まれる。 』(今回)


『2.わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは弱めの動きとなっている。国内需要の面では、企業収益や業況感が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要を反映して、 鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、緩やかな増加基調にある。 労働需給は着実な引き締まりを続けている。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。 』(前回)

『3.先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出によ る下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)。』(前回)

とまあこんな感じの比較になるのですが、今回は現状認識の部分まで書くと長くなるから(施策があるので)展望レポートの方を見てくんなましってなもんなんでしょうが、先行きの所を比較しますと、

『わが国の景気は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、先行き、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(前回)

という差になっているので、「基調としては」というヘッジクローズが入っているという始末。次に投下予定の展望レポート基本的見解の説明だと「目先はアカン」というのを明確に分けて説明しているので、そこの部分をもって「基調としては」という作文になっているものと思われます。

物価については今回、

『先行き、マクロ的な需給ギャップが プラスの状態を続けることなどから、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。もっとも、海外経済の動向をはじめ経済・物価の先行きを巡る不確実性は大きい。また、「物価安定の目標」の実現には、なお時間がかかることが見込まれる。』(今回)

ということで「なお時間がかかる」というパワーフレーズが飛び出しておりますが、この「時間が掛かる」ってのはYCC導入の時と昨年の金利変動幅拡大容認の時に同じように出ていまして、

2016年9月のYCC導入時の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf
金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

『一方、「適合的な期待形成」の要素が強い予想物価上昇率を引き上げていくこ とには不確実性があり、時間がかかる可能性もある。こうした点を踏まえ、枠組み の中心にイールドカーブ・コントロールを据えることで、経済・物価・金融情勢に応じたより柔軟な対応を可能とし、政策の持続性を高めることが適当であると判断した。』(上記URL先の項番3(2)より)

2018年7月のYCCの金利柔軟化に加えて金利のフォワードガイダンスを入れた時の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/k180731a.pdf
強力な金融緩和継続のための枠組み強化

『その背景には、本日公表した「経済・物価情勢の展望」で示したように、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや値上げに対する家計の慎重な見方の継続といった要因が複合的に作用しており、2% の「物価安定の目標」の実現には、これまでの想定より時間がかかることが見込まれる。』(上記URL先の項番3より)

となっていて、YCC導入以降に何かの手直しをする度に「物価目標達成に時間がかかる」という文言が入って来るのですが、今回の特色はYCC導入および先般の金利変動幅拡大容認の時には「金融緩和強化」だの「枠組み強化」だのとありましたが、今回はもう「強化」すら言わなくなっているのですが、YCC導入時や金利変動幅容認時もおいては、なんだかんだ言っても「自分からは上げに行くとは決して言わないけれども、実は金利(長期とか特に超長期とか)が上昇するのも構わんのですよ」という施策でもあったので、そこの目くらましの為にも「強化」という言葉が必要だったのに対して、今回の場合はそもそもが金利の上がる施策ではないですし、ガイダンスの明確化とか言いながら時間が事実上長くなっているので、金利の上がりようがない話だからして、わざわざ強化とか目くらまし文言を付ける必要が無かった、ということではないでしょうか、と個人の妄想を述べてみます。


・とは言え早期実現云々は残さざるを得ない

次の項番は今回このようなことをしました背景にはという説明なので比較はありません。

『4.こうした認識のもと、日本銀行は、消費税率引き上げの影響に加え、海外経済の動向を含めた経済・物価の不確実性を点検しながら、強力な金融緩和を粘り強く続けていくとの方針をより明確に示すこととした。あわせて、円滑な資金供給および 資産買入れの実施と市場機能の確保に資するよう、適格担保の拡充などの諸措置を講じることが適当と判断した。』

円滑な資金供給が担保と成長基盤、市場機能がSLFとETFなんでしょうが、金が余って困っているのに円滑な資金供給もへったくれもあるかよとは思う。

『日本銀行としては、強力な金融緩和を継続し、需給ギャップがプラスの状態を続けることにより、経済や金融情勢の安定を確保しつつ、 「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指していく考えである。』(今回)

しかしまあよく考えたら「強力な金融緩和を継続」するんだったら、それは景気を吹かすために強力な緩和をするという筈で、「需給ギャップがプラスの状態を続ける」のは別に吹かすわけではないという話になっていて、これまた最初のQQEで強力な金融緩和と広げてしまった風呂敷を畳めないという悲しさが滲んでいて落涙を禁じ得ない。


・ほかのガイダンス文言に変更はない

あったら最初に出るので当たり前だが。

『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(今回)
『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(前回)

『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。』(今回)
『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実 績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(前回)

でもって政策金利のガイダンス部分は飛ばしまして、

『今後とも、金融政策運営の観点から 重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』(今回)
『今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、 経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(注3)。』(前回)

しかしまあ何ですな、このモメンタムってのも本来はエスケープベロシティの話しだった筈なのにいつのまにやら「細く長く需給ギャップのプラスを続ける」という話にすり替わっておりまして、換骨奪胎大王の企画クオリティ恐るべしというか整合性をキニシナイという姿勢は見習いたくないけど感心するわ。


なお、反対芸人の芸風でも見ようかと思いましたが同じ話しかしてないので割愛します。


#また一休み入れてから次に行きますね




2019/05/01(その3、特にタグは設けません)

お題「展望レポート基本的見解:事実上の長期戦モードなので理屈は苦しい」

時間に追われないとどうもいつもの謎のハイテンションな勢いが出ませんな。

ということで(どういうことだ)展望レポート基本的見解の全文チェックを一気に行きます。なお3月決定会合声明文との比較の場合は『』(3月声明文)としておきますね。

展望レポート基本的見解
今回
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1904a.pdf
前回1月
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1901a.pdf

3月決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190315a.pdf

〇まずは鏡の部分になりますところの概要であるが今回体裁が変わっているので読みにくいったらありゃしない

<概要> ってところですな。まずは最初の●から。

『日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる2。』(今回)

『日本経済の先行きを展望すると、海外経済が総じてみれば着実な成長を続けるもとで、 設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、2020 年度までの見通し期間を通じて、 景気の拡大基調が続くと見込まれる2。』(前回)

となっていますが、今回のはこの部分の次に項目別展開が入っていて、前回と体裁を思いっきり変えているので比較しにくいんですよね。でまあこれ見ると主文は同じように「見通し期間を通じて景気の拡大基調が続くとみられる」になっているのですが、前回は海外経済について「総じてみれば」というヘッジクローズが入りながらも「着実な成長を続ける」だったのが、今回は「当面、海外経済の減速の影響を受ける」ということで海外の判断を下げていますが、これがまたややこしいのは「当面」なのであって、中長期的に見た場合は変わらんという見通しにしているところです。

『輸出は、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。国内需要も、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加基調をたどると見込まれる。』(今回)

とさっきの続きにありますように、「当面は減速」だけどその先は「緩やかに成長」にしている訳ですが、3月声明文での先行き見込みの表現では、

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。』(3月声明文)

とありまして、基本的に3月声明文の見通しから横ばいという認識になっていると見れば良いと思います。


でもって二つ目の●です。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。これには、@賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどが明確に転換するには至っていないことに加え、A企業の生産性向 上に向けた動きや近年の技術進歩なども影響している。こうした物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消に時間を要している中で、中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移している。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。これには、@賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどが明確に転換するには至っていないことに加え、A企業の生産性向 上に向けた動きや近年の技術進歩なども影響している。こうした物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消に時間を要している中で、中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移している。』(前回)

ということで前半の現状認識部分全文一致。

『もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、 実際に価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。 』(今回)

『もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、 実際に価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

というホンマカイナ感にも程がある先行き見通しの文言も全文一致でして、さきほど確認したように声明文の中では「なお時間を要する」云々という文言がありましたし、今回の物価見通しって遂に昨年同時期の2020年度見通しの+1.8%から+1.6%まで下がってしまいまして、見通し期間中の2%達成は困難(この数字は「年度平均」なので+1.8%で置けば当時の3年後の2020年度終わりごろに2%が見えますとか言えましたが、さすがに今回2021年度の終わりごろも2%と言い出すのはちと無理がある(急回復みたいな図にすれば出せるかも知らんが)という風にはなっているのですが、一方で展望レポートの鏡での表現が変わっていないということですので、これは「物価の基調的な判断に変化は全くありません(だから追加緩和の必要もない)」という話をしているという話っすな。


3つ目の●です。

『2020年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率、物価ともに、概ね不変である。 』(今回)
『従来の見通しと比べると、成長率については、2018年度は下振れているが、2019年度、 2020年度は概ね不変である。物価については、原油価格の下落を主因として、2019年度を中心に下振れている。』(前回)

ということでさっきの物価の所が同じですし、後で出てきますけれども、「当面の海外下振れ」は「一時的現象」として切断処理した形でのシナリオライティングになっているので、「概ね不変」という結論になる訳ですな。


4つ目の●ですが、

『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(今回)
『リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい。物価面では、 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。』(前回)

ということで見事に変化なし、という形ですので、総括判断に変更がない以上、金融政策も変更はありませんなという話になっている訳ですな。


〇現状総括判断:総括判断部分こちらで見ると3月からも下がっている

では基本的見解本文に入りまして『1.わが国の経済・物価の現状 』から。

『わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、 所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、 緩やかに拡大している。』(前回)
『わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。』(3月声明文)

つーことで経済の現状に関する総括判断は前回からは明らかに下がっていますし、3月声明文から比較してみても、今回「基調としては」緩やかに拡大、という形になっておりまして、更にヘッジクローズが入っていますという図になっておりますな。


『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。 そうしたもとで、輸出は増加基調にある。』(前回)
『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は、足もとでは弱めの動きとなっている。』(3月声明文)

とありますように、前回よりも海外経済、輸出が下がっているのは直ぐに分かりますが、3月声明文と比較した場合でも、今回は輸出だけではなくて生産も足元弱めの動きになっているという認識を示していまして、輸出生産が弱いとかで見通しカワランチ会長とかナンジャソラという感じですが、後でも出てきますがこれを全部「一時的」で済ませているのが大本営クオリティ。

『一方、企業収益や業況感は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて良好な水準を維持しており、設備投資は増加傾向を続けている。 』(今回)
『国内需要の面では、企業収益が高水準で推移し、業況感も良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けている。』(前回)
『国内需要の面では、企業収益や業況感が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けている。』(3月声明文)

企業収益や景況感の所の表現が弱くなっています。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。この間、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(前回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移している。公共投資も高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要を反映して、 鉱工業生産は、足もとでは弱めの動きとなっているが、緩やかな増加基調にある。労働需給は着実な引き締まりを続けている。』(3月声明文)

個人消費は同じ。生産は文章構成の都合上場所が違っていますが、先ほどありましたようにここの判断は引き下がっております。労働需給の部分は同じですな。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。 物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。 物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台後半 となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半 となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(3月声明文)

ここの判断は意地でも変えて来ませんな。


〇先行き見通しは「足元」を切断するという技に出る

次の『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し 』の『(1)経済の中心的な見通し 』に参ります。

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、2020 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。』(前回)
『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる。』(3月声明文)

ということで、手前の部分は3月声明文どおりですが、基調判断は同じという結果になっていまして・・・・・・・

『すなわち、当面のわが国の経済を展望すると、海外経済の減速の影響を受けて、輸出が弱めの動きとなるほか、設備投資についても、幾分減速することが見込まれる。もっとも、個人消費は、雇用・所得環境の改善が続くもとで、2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げ前の需要増もあって、増加を続けるとみられる。公共投資も、オリンピック関連需要や自然災害を受けた 補正予算の執行、国土強靱化等の支出拡大から増加すると考えられる。 』(今回)

と、手前の部分の見通しを切断していて、その次に『その後についてみると、』という形で分断しており、これによって「フォワードガイダンスで2020年春ごろまでの政策金利据え置きを示した」というのと、「先行きの基調判断に変化はないから政策変更はない」というのを満たすためには、こういやって足元を切断処理してしまうという技に打って出るしかないのですが、しかしこれ言われてみればそういう手があるわと思いますが、よくもまあ考え付くわと感心するやら呆れるやら、

『その後についてみると、海外経済は、中国などにおける景気刺激策の効果発現やグローバルなIT関連財の調整の進捗などを背景に幾分成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとみられる。こうしたもとで、わが国の輸出は緩やかな増加基調に復していくと見込まれる。』(今回)

『海外経済は、米中貿易摩擦など最近の様々な動きには注意を要するが、先進国・新興国ともに内需が堅調に推移するもとで、総じてみれば 着実な成長を続けると考えられる。こうしたもとで、わが国の輸出は、基調として緩やかな増加を続けると見込まれる。』(前回)

『輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。』(3月声明文)

ということで、海外の見通しは前回対比では下がっているのは当然として、3月対比でも「基調としては」だったのが「総じてみれば」ってなっていて、さらにヘッジクローズっぽくなっているので自信度は下がっている感じはだいぶ見受けられますが降参したら追加緩和なので諦めたらそこで試合終了ですよという状態ですな、ナムナム。

『国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要は、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回)

『国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(3月声明文)

ということで結局のところ「前向きの循環メカニズムが作動するので増加基調」というのは同じになっています。声明文では個別需要項目の展開までしていないので次の部分は前回展望レポートとの比較だけになります。

『すなわち、設備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりなどが減速圧力として作用するものの、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能力増強投資、都市再開発関連投資、人手不足に対応した省力化投資などで、緩やかに増加していくと予想される。』(今回)

『すなわち、設備投資は、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能力増強投資、都市再開発関連投資、人手不足に対応した省力化投資などで、増加を続けると予想される。2020年度にかけては、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから、増勢が徐々に鈍化していくとみられるが、輸出の増加に支えられた投資需要もあって、増加基調は維持されるものと考えられる。』(前回)

設備投資の説明は今回が「その後」の話なので微妙に表現が違っていますが、基本的な話は同じになっています。まあホンマカイナという感じはしますが、設備投資がコケだすと本格的に説明が苦しくなるのでここは試金石。


『個人消費も、消費税率の引き上げの影響3から下押しされる局面もみられるものの、雇用・所得環境の改善が続くもとで、 政府の消費税率引き上げに伴う対応の効果もあって、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。この間、公共投資は、2020 年度にかけて増加を続けたあと、 2021 年度も高めの水準を維持すると予想している。』(今回)

『個人消費も、2019 年 10 月に予定されている消費税率の引き上げの影響3から下押しされる局面もみられるものの、 雇用・所得環境の改善が続くもとで、政府の消費税率引き上げに伴う対応の効果もあって、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。この間、公共投資は、オリンピック関連需要や自然災害を受けた補正予算の執行、国土強靱化等の支出拡大から増加していくと予想している。 』(前回)

ここも相変わらずですが、雇用環境の引き締まりから家計所得が堅調な中で緩やかな増加傾向という形になっています。まあこれも同様で、現状では設備投資と個人消費がコケなければメカニズムは維持されていると言い張れるようになっております。

『こうしたもとで、わが国の経済は、均してみれば、潜在成長率4並みの成長を続けると見込まれる。なお、2020年度までの成長率の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である。』(今回)
『こうしたもとで、わが国の経済は、潜在成長率4並みの成長を続けると見込 まれる。なお、今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べると、2018 年度 については昨夏の自然災害の影響などから下振れているが、2019 年度、2020 年度については概ね不変である。』(前回)

均してみるのは足元下げているからなのですが、結局のところ中長期的には見通し不変で通してきましたな。


・でもって金融環境と潜在成長率に関しては同じですな

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金 利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は 見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関 の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家 計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融 環境が維持されると予想される。 』(今回)

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金 利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は 見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関 の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家 計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融 環境が維持されると予想される。 』(前回)

全文一致ですね。しかし確かFSRの方では金融機関のミドルリスク向け貸出の質が悪化していて将来の景気下押し局面で金融仲介機能に悪影響を及ぼす可能性を指摘していたような気がするんですがマネタリーポリシーウィング的には関係ないですかそうですか。

『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略 の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生 産性向上に向けた取り組みなどが続く中で、見通し期間を通じて緩やかな上昇 傾向をたどるとみられる。 』(今回)
『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略 の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生 産性向上に向けた取り組みなどが続く中で、見通し期間を通じて緩やかな上昇 傾向をたどるとみられる。 』(前回)

こっちも全文一致。しかし物価が全然アガランチ会長な事の背景に実は潜在成長率が推計よりも高い(ので需給ギャップの推測が高めに出ている)という可能性はないんですかねえ(たぶんなくてインフレ期待というよりも成長期待がないだけの話なんでしょうけど)。


〇物価の見通しは堂々のほぼ同じ攻撃になっているのがチャーミング(というかそうするしかないのだが)

次の『(2)物価の中心的な見通し 』に参ります。

『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の 引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。』(今回)
『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の 引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。』(前回)

はい。

『この背景としては、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残って おり、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方が、明確に転換するには至っていないことがある。加えて、非製造業を中心 とした生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な 労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重なスタンスを維持することを可能にしている。また、技術進歩などは、分野によっては 競争環境を厳しくしている面もある。公共料金や家賃などが鈍い動きを続けて いることも、物価の上がりにくさに影響しているとみられる。』(今回)

『この背景としては、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残って おり、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方が、明確に転換するには至っていないことがある。加えて、非製造業を中心 とした生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な 労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重なスタンスを維持することを可能にしている。また、技術進歩などは、分野によっては 競争環境を厳しくしている面もある。公共料金や家賃などが鈍い動きを続けて いることも、物価の上がりにくさに影響しているとみられる。』(前回)

鏡の所と同じですけど、公共料金や家賃が上がらん事にも言及していますな、ご覧の通り全文一致。

『こうした物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消には時間を要しており、物価のマクロ的な需 給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予想物価上昇率も上がりにくい状況が続いていると考えられる。』(今回)
『こうした物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消には時間を要しており、物価のマクロ的な需 給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予想物価上昇率も上がりにくい状況が続いていると考えられる。なお、足もとでは、昨 秋以降の原油価格下落を受けて、エネルギー価格が消費者物価の前年比を押し上げる効果が縮小している。』(前回)

足元では云々の話が抜けただけで、前回と言ってることは同じだし、時間を要しているというのも時間が経過しているのに何も変わらんというこの事実。まあそもそも論を言えばじゃあ物価が上がれば幸せなのかというとそうでもないように思えますけどね。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、 2020年度までの物価の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である6。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、今回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、原油価格の下落を主因として、 2019 年度を中心に下振れている6。』(前回)

ここもいつも同じで結局3カ月ごとに後ずれしているだけという悲しい事実。しかもですよ・・・・・・・・・


〇メカニズムも相変わらず同じなんだが、これだけ需給ギャップのプラスが続いてるのに・・・・・・・

『消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズム について、一般物価の動向を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1 に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、労働需給の着実 な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に均してみればプラス幅を拡大してきており、先行きについても、比較的大幅なプラスで推移するとみられる。こ うしたもとで、賃金上昇率の高まりなどを受けて家計の値上げ許容度が高まり、 企業の価格設定スタンスも積極化していけば、実際に価格引き上げの動きが拡がっていくと考えられる。 』(今回)

『消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズム について、一般物価の動向を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1 に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、労働需給の着実 な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に均してみればプラス幅を拡大して きており、先行きについても、比較的大幅なプラスで推移するとみられる。こ うしたもとで、賃金上昇率の高まりなどを受けて家計の値上げ許容度が高まり企業の価格設定スタンスも積極化していけば、実際に価格引き上げの動きが拡 がっていくと考えられる。 』(前回)

って思いっきり全文一致で、しかも日銀推計の需給ギャップは直近出ているところでは+2%台まで乗って来ているのですが、前回の展望レポートの時にも申し上げましたが、需給ギャップが+1%台以上のプラスで推移すること1年半とかになるのに、物価加速の兆候が碌に見られないという中で、この第一のメカニズムって本当にワークするのか、というか何か見落としているものは無いのか、というのを意地でも認めようとしないという感じがして落涙を禁じ得ない。

『第 2 に、中長期的な予想物価上昇率は、足もとは横ばい圏内で推移しているが、先行きについては、上昇傾向をたどり、2%に向けて次第に収斂していくとみられる。この理由としては、@「適合的な期待形成」7の面では、現実の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、 A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率を押し上げていく力になると考えられることが挙げられる。 』(今回)

『第 2 に、中長期的な予想物価上昇率は、足もとは横ばい圏内で推移しているが、先行きについては、上昇傾向をたどり、2%に向けて次第に収斂していくとみられる。この理由としては、@「適合的な期待形成」7の面では、現実の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、 A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率を押し上げていく力になると考えられることが挙げられる。 』(前回)

というのも相変わらず全文一致なんだが、あのさあ、怒らないで聞いてほしいんですけど日銀さん、「日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし」ているのに待てど暮らせど物価安定の目標が実現しないし、達成見通しはドンドン後ずれするしってのをやっていると、普通は日本銀行のコミットに対する信認が無くなって来るので、フォワードルッキングな期待形成がドンドン壊れて行くんじゃないですかねえ、その辺はどうなっているという見方なんですかあ????(ってまあ既にぶっ壊れていると思うけど)

『第3に、輸入物価についてみると、既往の原油価格下落を受けて、エネルギー価格が消費者物価の前年比を押し上げる効果は減衰していくと予想される。 』(今回)
『第3に、輸入物価についてみると、既往の原油価格上昇は 2018 年度の消費 者物価を押し上げてきたが、昨秋以降、原油価格は下落に転じており、これが 2019年度の消費者物価の前年比を押し下げる要因として作用すると予想される。』(前回)

輸入物価は現象面の話になるので表現が違ってきますが、そうは言いましても輸入物価が上がってコストプッシュで物価が上がっても所得の伸びが伴わないのであればワンオフどころか先行きの需要減衰から物価下押し圧力になってしまいますよね、というのを既にやっていると思うのでこれが中長期的な物価動向を形成する要因になり得るのかというのは考えた方が良いんジャマイカとも思う。


『この間、最近の女性・高齢者の労働参加の高まりや、企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みの強化は、長い目でみれば、物価上昇圧力を高める方向に作用していくと予想される。すなわち、こうした動きを受けて、経済全体の成長力が高まっていけば、企業や家計の支出行動が積極化していくことが期待できる。また、日本経済の成長力の高まりとともに自然利子率が上昇すれば、金融緩和の効果も高まっていくと考えられる。 』(今回)

『この間、最近の女性・高齢者の労働参加の高まりや、企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みの強化は、長い目でみれば、物価上昇圧力を高める方向に作用していくと予想される。すなわち、こうした動きを受けて、経済全体の成長力が高まっていけば、企業や家計の支出行動が積極化していくことが期待できる。また、日本経済の成長力の高まりとともに自然利子率が上昇すれば、金融緩和の効果も高まっていくと考えられる。 』(前回)

ここの話も全文一致で、要するにメカニズムに変化はないという話なのでした。


2019/05/01(その4、特にタグは設けません)

お題「展望レポート基本的見解全文鑑賞の続き:同じロジックでどこまで持たせるんだか」

さあ続きですよ続き。

展望レポート基本的見解
今回
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1904a.pdf
前回1月
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1901a.pdf

〇リスク要因に関しては下振れ認識を微妙に強めるの巻

次が『3.経済・物価のリスク要因』になります。まずは『(1)経済のリスク要因 』なのですが・・・・・・・・・

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も 注視していく必要がある。また、IT関連財については、最終需要の動向を巡る不確実性が大きいだけに、グローバルな調整の進捗に想定以上の時間を要する可能性もある。』(今回)

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは、このところ強まっているとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。』(前回)

ということで、前回に比べて海外経済の動向に関する記述が詳しくなっていて、中国の話とIT関連の調整がモドランチ会長になる可能性について言及していますし、更にこのリスクアセスメントに関して、今回は「下振れリスクは大きいとみられ」となっていて、前回が「このところ強まっているとみられ」となっていたところよりも強まっているという内容になっていて、基本的に全文一致とかそれに近いのが多い中でここは異彩を放つ部分ではあります。

『第2は、2019 年 10 月に予定される消費税率引き上げの影響である。これについては、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。 』(今回)
『第2は、2019 年 10 月に予定される消費税率引き上げの影響である。これについては、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。 』(前回)

ここは同じっすな。

『第 3 に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な課題への取組みや労働市場を始めとする規制・制度改革の動向に加え、企業のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。 』(今回)
『第 3 に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な課題への取組みや労働市場をはじめとする規制・制度改革の動向に加え、企業のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。 』(前回)

ここは全文一致なのですが、何故か一か所漢字かな遣いが異なっているという謎の変化があります。別に字数調整しないといけないというものでもなさそうなのに(「第3に」からで一段落になっているので)。


『第 4 に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。 』(今回)

『第 4 に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。 』(前回)

ここも全文一致でして、結局海外のリスク認識が下がっているという部分がだいぶ書きっぷりを変えてますなという図になっておりまする。


〇物価のリスク要因は見事に全文一致

もう物価に関しては表現をいじるにいじれないという状態になっているようですな、ナムナム。『(2)物価のリスク要因 』に参ります。

『以上の経済のリスク要因による影響のほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物価上昇率は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、 企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続ける場合には、「適合的な期待形成」を通じて、予想物価上昇率の高まりも遅れるリスクがある。 』(今回)

『以上の経済のリスク要因による影響のほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物価上昇率は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、 企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続ける場合には、「適合的な期待形成」を通じて、予想物価上昇率の高まりも遅れるリスクがある。 』(前回)

リスクじゃなくて現実に遅れまくっていますが何か?ということで全文一致。

『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が挙げられる。企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みが長期にわたり継続したり、近年の技術進歩や流通形態の変化等によって企業の競争環境が一 段と厳しくなったりする場合には、こうした面からの価格押し下げ圧力が予想以上に長く作用する可能性がある。また、公共料金や家賃などの鈍い動きが、 先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性もある。 』(今回)

『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が挙げられる。企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みが長期にわたり継続したり、近年の技術進歩や流通形態の変化等によって企業の競争環境が一 段と厳しくなったりする場合には、こうした面からの価格押し下げ圧力が予想以上に長く作用する可能性がある。また、公共料金や家賃などの鈍い動きが、 先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性もある。 』(前回)

これも全文一致なのですが、まさに需給ギャップがプラス1%台に乗ってから随分と時間が経過している中で全然物価加速の香りがしませんのでリスク要因じゃなくてまさに現象なのではないでしょうか。

『第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。 』(今回)
『第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。 』(前回)

はいはいそうですな、ということで梃子でも動かん物価関連の記述という所です。


〇第二の柱の点検はどう見てもきちんと見ていくべきだと思うのだが

次が最後の『4.金融政策運営 』である。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。経済・物価のリスク要因については注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価 安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。これは、@マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、A中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられること、が背景である。 』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。経済・物価のリスク要因については注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価 安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えられる。これは、@マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、A中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられること、が背景である。 』(前回)

ってずっと同じように大丈夫という事になっているのですが、その間全然物価が加速してくれないのに第一の柱もあったもんではないですが、そうは言いましてもここがアカンということになると追加緩和なので如何ともし難い。


『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。もっとも、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、 これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向には注視していく必要がある9。 』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていない。もっとも、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、 これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向には注視していく必要がある。 』(前回)

というこの全文一致という感じですが、今回は脚注9にありますように、『9 詳しくは日本銀行「金融システムレポート」( 2019 年4月)を参照。 』ってあるのですけれども、展望レポートがアップデートされて相変わらず更に厳しい先行きが示されているというのに何も変わらんというのは何なんですかねえというか、全然政策に反映されない(はっきり言って成長基盤とか別に使い勝手よくせんでも融資の障害にならんですがな)というのであれば何のためにFSR書いているんだかという感じもしますな、と思いっきり矛先が別の所に(^^)。


〇金融政策運営に関する文言は政策金利のフォワードガイダンス部分だけ変更

なんか散々引用している割には後半は「全文一致」だらけなのですけれどもここまで来たら最後までお付き合い下さいませ。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(今回)
『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』(前回)

YCCの枠組みのガイダンスな、

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生 鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)
『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(前回)

オーバーシュート型コミットメントという奴ですが輪番は長期国債保有残高純増ベースで年間17兆円程度のところまでしらっと落としていて木内さんもニッコリ、というか正面切っては何も反逆していないのに反乱軍の木内さんの言っていたよりも国債拡大ペースを落とすという日銀の換骨奪胎力恐るべし。


『政策金利については、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含 めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも 2020 年春頃まで、 現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(今回)
『政策金利については、2019 年 10 月に予定されている消費税率引き 上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。』(前回)

この見苦しい継ぎはぎ日本語を考えたのは誰だあ(ガラッ)と海原雄山状態になるのは散々やったのでパス(^^)。

『今後とも、 金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するた め、必要な政策の調整を行う。 』(今回)
『今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政 策の調整を行う。 』(前回)

と最後の所も同じで、この第一の柱第二の柱の点検って全然点検になってないじゃんと言いたくなりますが、まあ大人の事情なので致し方なしという感じですな。


〇物価見通しにの昨年からの後退振りを見ると金利のガイダンスは「ローリングガイダンス」待ったなし

昨年4月の基本的見解はこちら。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1804a.pdf

昨年4月時点での2020年度物価見通し(除く消費税):+1.5〜+1.8<+1.8>
でもって今年の2021年度物価見通し:+1.4〜+1.7 <+1.6>

ということで、見通し期間中に2%行きませんよというのがより明確になったという状況になっているのでして、昨年はこの後7月にYCCの長期金利変動幅の拡大容認と政策金利のフォワードガイダンスをぶち込んできた訳ですが、もう時間が掛かりますというのを完全に開き直ってしまっていますなあ、という感じです。

ちなみに昨年4月時点での物価見通し(除く消費税)は、

2019年度:+1.5〜+1.8 <+1.8>
2020年度:+1.5〜+1.8 <+1.8>

となっていて、一応2年くらいで2%近いところまで行きますよという見通しになっていたのですが、なにせ今回は(こちらは消費税や高校無償化など全部の特殊要因をこみこみにしている方で)、

2019年度:+0.9〜+1.2 <+1.1>
2020年度:+1.2〜+1.5 <+1.4>
2021年度:+1.4〜+1.7 <+1.6>

となっていまして、 昨年4月即ち政策金利のフォワードガイダンスを入れる前は曲がりなりにも2年程度を年頭に2%とは言わないまでもそれに近いと言えそうなところまでは行くというシナリオだったのですが、今回は2020年度がらして中央値+1.4ということで、まるで早期達成を見ていないという状況になっておりまして、そんな中での「フォワードガイダンス明確化」と言いましても、これは半年後にロールされるガイダンスや!!
という話になってしまいますな。

ということで以前佐藤審議委員(当時)が物価目標の実質上の中長期化を容認するために「ローリングターゲット」という概念を提唱していましたが、その尻馬に乗って今回の政策金利ガイダンスを「ローリングガイダンス」と命名したい、というか誰かもう命名してますかね(笑)。


とまあそんなところでとりあえず展望レポートの件はここまで。明日の朝はいつもの時間に起きていつもの時間設定で寝起きでFOMCシリーズでもやってやろうかと思います。目覚ましちゃんと掛けるので、大丈夫でしょ^^;