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2019/09/30

お題「金曜もカーブは隙あらばフラットニングとな/遅ればせながら政井審議委員金懇ネタ」

半期末ですなあ。でもって消費増税は明日と。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190930/k10012104471000.html
消費税率あすから10% 引き上げに向け小売店などで準備大詰め
2019年9月30日 4時05分

駆け込みしようと思ったが結局大した買い溜めもしませんでしたな。


〇イールドカーブは金曜もフラットしてるんだよなー&今日はオペ紙

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N26I16J
2019年9月27日 / 15:19 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、超長期金利は低下 方向感欠く展開

『 <15:05> 国債先物は続落で引け、超長期金利は低下 方向感欠く展開

国債先物中心限月12月限は前営業日比6銭安の155円17銭と続落して取引を終えた。後場中盤までは欧米の政治リスクの高まりへの懸念を背景に買い優勢だったが、米株先物が切り返すとマイナス圏に沈んだ。ただ、全般的には上期末を控えて需給中心の方向感に乏しい展開だった。超長期債は押し目買いでしっかり。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇のマイナス0.240%。』(上記URL先より、以下同様)

ということで・・・・・・・・

『現物市場では超長期金利が低下。新発20年債は前日比0.5bp低下の0.165%。新発30年債は同1.5bp低下の0.320%。新発40年債は同2.5bp低下の0.375%。「さらなる日銀オペ減額には警戒感もあるが、最近の金利上昇の反動で押し目買いが入った」(別の国内証券)との見方が聞かれた。』

『TRADEWEB
     OFFER   BID  前日比  時間
2年   -0.33  -0.32   0.008 15:07
5年   -0.366 -0.359   0.01  15:05
10年  -0.245  -0.239  0.006  15:03
20年  0.162   0.169  -0.003 15:07
30年  0.317   0.324  -0.013 15:07
40年  0.378   0.387  -0.016 15:07』

って事でして、また隙あればフラットニング攻撃が華麗に登場しておりますが、まあ大々的に売り切りオペでもするなら別ですが、そうでもない(ちなみにそれはさすがに金融引き締めって言われるだろうとしか申し上げようがないし、そもそも論として基本的に売らない(政府の国債買入消却に応じるとか、国債補完供給がバイインになったいう話で前者は市場関係ないし後者って発生済み事案なのかどうか存じません(たぶん無いと思うが)が、まあこれも限界的な話)という買入なのであって、買入はするが必要に応じてホイホイ売却するって話になると、それってまさかの「国債買入の時間的不整合性」って話になってしまいませんか大丈夫ですか(今回それで良くても次回以降の買入の時に「いつか逆が来る」と思って市場が対処することになるで、というお話ね)って話なので、そう安易にホイホイと国債の売りオペとかできないと思うのね。

そうなりますと、そもそも超長期ってそんなに買入をしてないので、買入を減額するって言っても限界あるし、オーバーシュート型コミットメントとの整合性(ちなみにあれは「拡大”方針”を継続する」がキーワードなのではなくて、そのバックグランドにある総括的検証で示されている「マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも、長期的な関係を持つものと考えられる。」がキーワードになると思いますよ。”方針”文言はあれ基本的に季節要因での増減に対応する文言ですから)はどうなるとか、まあ色々と出てくるのですが、そんな中で本日はオペ紙。まあ超長期の下限をゼロにしてくるとか(25年超はやりますかねえ)そういうプレイになるんでしょうかよくわかりません。まあ削減方針ってのを出すんでしょ、よーわからんけど。






〇遅ればせながら政井審議委員

このPDFアタクシの環境(PDFはエッジで見ている)で開くとテキストに引用するときに微妙に変な挙動をする(コピペは出来るがテキスト選択をした時の画面の出方が変)という仕様になっています。ジンバブエ先生の金懇とか、金融システムレポートとかもそうなのですが、日銀ってもしかして中で使っているテキストエディタが部署によってバラバラとかそういう仕様にでもなってるんでしょうか、と毎度疑問に思っておりまする。少なくともMS標準ものをデフォルトで使っている(のが正しいかどうかというのはさておいて)感じがしない。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190925a1.pdf
わ が 国 の 経 済 ・ 物 価 情 勢 と 金 融 政 策
── 三 重 県 金 融 経 済 懇 談 会 に お け る 挨 拶 要 旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員  政井 貴子


・経済物価見通しに特段見るものはないですな

『U.経済・物価情勢』ってコーナーがあるのですが、これがまた展望レポートまんまの話になっていてクッソ面白くないのですが、先行きリスクに関する部分でも見てみましょうかね。『(3)中心的な見通しの不確実性 』って小見出しになります。

『こうした中心的な見通しについては、様々な不確実性が存在しますが、中でも、現在、私が気にとめている点を2点申し上げます。』

ということで「私が気にとめている点」キタコレなのですが・・・・・・・・・

『1点目は、外需の底入れ時期が後ずれするリスクです。私自身、昨年の後半以降、海外経済を中心にリスクは下方に厚くなっていると評価してきましたが、保護主義的な動きの強まりを始めとする政治的な要因により、足もと、下振れリスクはさらに増大しているとみています。これが、金融市場の急変や貿易を起点とした投資意欲の減退といった様々な経路を通じて、外需が底入れする時期に影響を及ぼしうるため、懸念しています。』

はあ、でその注意すべき見通しのシナリオとかその時に確認すべき事項とかは何でしょ?

『2点目は、この 10 月から実施される消費税率引き上げの影響です。今回の増税は、2014 年4月の前回増税時と比べると、税率の引き上げ幅が小さいほか、軽減税率やキャッシュレス決済利用時のポイント還元、価格転嫁の柔軟化などの対応を政府が行うこともあって、その下押し効果は小幅なものにとどまるというのが中心的な見方となっています。とはいえ、足もとの地政学的リスクの一層の高まりとも相俟って、先行きの消費に与える影響など、注視しています。』

消費税率の影響の話と地政学リスクの話は別次元で話をした方が良いんじゃないでしょうか。

『本年 10 月の「展望レポート」では、こうした点を含め、慎重に状況を見極めていきたいと思っています。』

ということでこのコーナーが終わっていましていやこれではお話として読む方は「読むに値しない」ってなっちゃいますわな。と申しますのは、別に標準シナリオ棒読みなら棒読みでも構わんのですが、先々の見通しとして考えているシナリオを崩す要因はこれこれで、その状況を見るために特にこの辺りの指標なり動向なりを注意しており、トリガーとなりうる事象としてこんなことを念頭に置いている(最後のトリガー云々は要らんかも知れんけど)、とかそういう話をしてくれないと、このお方の政策反応関数がさっぱり分からん訳でして、展望レポートに書いてある通りの話をそのまま展望レポートの紙通りに話をしましても、「だから何なの」の説明がこっちは聞きたいのですけどねえ。


・物価の説明はこれまた執行部ベースのまんまですけれども・・・・・・・・・・

次が物価のコーナーになりまして、『3.物価情勢』の『(1)現状』になります。説明そのものはどう見ても執行部ベースなのですが、執行部がここもとの足元の動向についてどういう評価をしているのか、というのを確認するには良いテキストなので鑑賞しましょう。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格の下落の影響が出始め、足もとでは0%台半ばとなっており、幾分上昇に一服感がみられます。もっとも、肌感覚ではじわりと物価が上昇してきているように感じています。これは、購買頻度の高い食料品において値上げの動きがみられていることが影響していると考えています。実際、消費者物価では、食料工業品の幅広い品目で春先より前年比のプラス幅が拡大しているほか、ともにスーパー等のPOSデータを利用して算出している一橋大学の消費者購買単価指数や日経CPINowのT指数も高めの伸びを維持しています(図表8)。 』

ちなみにまさに同じ日に
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

の直近数字が出ていまして、そちらを拝読致しますと、

刈込平均値(前年比、%)15年基準

Jan-19 0.5
Feb-19 0.4
Mar-19 0.5
Apr-19 0.7
May-19 0.7
Jun-19 0.6
Jul-19 0.6
Aug-19 0.4

加重中央値(前年比、%)15年基準

Jan-19 0.1
Feb-19 0.0
Mar-19 0.2
Apr-19 0.2
May-19 0.2
Jun-19 0.2
Jul-19 0.2
Aug-19 0.0

上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)15年基準

Jan-19 17.8
Feb-19 16.3
Mar-19 20.1
Apr-19 25.2
May-19 25.2
Jun-19 27.0
Jul-19 27.2
Aug-19 26.4

・・・・・・・・・微妙に直近タレてねえかという気もしますがまあさておきまして、とにかくそういう説明をしている、という点を確認するということですな。さらに、

『日本銀行が 2016 年9月に実施した「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」では、わが国は、他の国に比して、適合的な期待形成の要素が強い、つまり過去の物価上昇率に引きずられやすい傾向があると指摘していますが、その後の研究でも同様のことが確認されています。これは、換言すれば、ガートラー(2017)が、インフレ率が目標水準にアンカーされた歴史に乏しい経済では、「信じるためには、実際に目にしてみないといけない」と指摘しているように、物価上昇に向けた実績が積み重なっていくことが大切だということです。こうした観点からみると、足もとみられ始めているいくつかの変化の兆しは、ポジティブなステップを踏みつつある中で生じているものと受け止めています。』

ほほう。というかまあそういう説明をしていますな執行部。でもって以下説明があるのですが、説明の最後の方を見ると「おや??」という記述にぶつかるのでした。

『このように、私自身は、「物価安定の目標」2%の実現にはなお距離はあるものの、それに向けたモメンタムが再び強まる兆しがみられると感じています。言い換えれば、企業や家計の価格上昇に対する耐性の向上や、予想物価上昇率の一層の上昇にも繋がり得る重要な局面に近付きつつあると感じており、この流れを大切に育てていくことが極めて重要と捉えています。』

後の方の説明で金融政策の話があって、確かに「必要ならば対応」ってなっているので、この時の政井さんの金懇挨拶って(ちょっと元ニュースのURLとか記録残してなくて探すのメンドイのでパスしますが)ベンダーを見ていましたら「黒田プットの存在を確認する」とかそういうような感じで、いつもと違う何とかストがコメントしてたりしてのがベンダーに幾つか出てたんですよ。まあ主に為替なんですが、為替の何とかストの方でも割と日銀の金融政策とか日本の債券市場とかにも普段からコメントしている方ってのもいるのですが、この時にベンダーで出てくるコメント見てて思ったのは「普段日本の金融政策とかに全然コメントしてねえだろオメー」って方々(個人の偏見です)のコメントだったことでして、別に目立たなくて良いのに色々と悪目立ちモードになって来ているなあと思うのでありました。


・まあ確かに必要ならば追加緩和って話ではありますが・・・・・・・・

次が金融政策の話。『V.日本銀行の金融政策 』ってあって『1.現在の金融政策の枠組み 』、『2.強力な金融緩和を息長く続けていくために 』というのはごく普通の話をしているので割愛しますが、しかしちょっと話は飛びますけど「強力な金融緩和を息長く続ける」ってよく考えてみたら何ですかその字義矛盾という感じでして、政策目標を早期に達成させるために強力な金融緩和を実行している筈なんですが、その強力な金融緩和とやらが政策目標の早期達成に全然寄与しないので何故か息長く続けるってことになってしまいました、って話なのでまあお話として如何なものかって感じですわな。でまあ「息御長く続けるために」ってあるように、今の政策枠組みって最早「何をどうすると物価2%が達成できるか」という話は完全にお留守になってしまっておりまして、ひたすら戦線の維持だけが自己目的化する、というさすがはクールジャパンの国の金融政策だけにクールだわと申し上げたい所ではありますな。

そんな悪態は兎も角として『3.足もとの不確実性への対応 』ってのが追加緩和対応どうのこうのという話になるので確認確認。

『このところ、国際金融市場では、政治的な色彩が極めて強い要因により、悲観と楽観が目まぐるしく入れ替わる中で、全体としてリスク回避的な状況が続いているとみていますし、その様相は強まっているように感じます。』

はあそうですか。

『実際、ドイツでは、翌日物から 30 年債までのすべての金利がマイナスとなる場面もみられたほか、スイスでは、50 年債までがマイナス圏となりました。米国でも、10 年債の利回りが金融危機後の最低に迫る水準まで低下しており、市場ではインプリケーションについて様々な受け止め方があるようですが、8月中旬以降、2年債の利回りよりも 10 年債の利回りの方が低くなる「逆イールド」が生じる場面もみられています。』

はあそうですか。

『この間、FRBやECBを始めとする主要国の中央銀行では、世界経済を巡る不確実性が自国・地域の経済・物価情勢に影響するのを未然に防ぐ観点から、政策スタンスを緩和方向へと修正しています。この点、日本銀行としても、海外経済を巡るリスクをしっかり点検し、それが国内の経済・物価動向にどのような影響を与えるかを慎重に見極めることが肝要であると考えています。そのうえで、必要があれば追加の政策対応を行うこともあり得るというのは、他の中央銀行と同様です。』

まあ何となくこの部分には反応していたというか、円債村界隈においては別に政井さんの金懇も会見もノーマークにも程があるので反応していなかったと思いますし、ほかの市場がこれで反応していたのかは微妙に怪しい気もしますが、さっき申し上げた方面の為替何とかスト(ただし普段日銀の金融政策とかコメントしない人)の方面では反応があったかなあ、という感じだったと思います。「政井さんの金懇でマイナス金利の深掘りが実施される可能性が示唆された」みたいな感じですな。

でまあゆうてるアタクシもノーマークだったのでベンダーコメントとか見て「そらこの流れだったらマイナス深掘りしませんとかそっちの話になる可能性が無いんだからそういう解釈になるわなー」とか漫然と思っていたのですが。

さらに続きを読む、

『こうした日本銀行の考え方を明確にするために、本年7月の金融政策決定会合の公表文では、「先行き『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」との方針を明示しました。また、先週の金融政策決定会合の公表文でも、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあるとの判断のもと、こうした情勢にあることを念頭に置きながら、10 月の展望レポートを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく旨の文言を追加しました。』

これはどうでも良い。

『中央銀行が対峙している現実の経済は非常に複雑で、しかも時間の経過とともにダイナミックに変化しています。この点、昨年のジャクソンホール・シンポジウムでは、近年、デジタル・イノベーションや無形資産(ソフトウェア、知的財産、ブランド力など)の増加といった様々な構造変化が生じている中で、こうした変化が金融政策に与えるインプリケーションについて議論が行われました。また、今年のジャクソンホール・シンポジウムでは、パウエルFRB議長が、足もとの不確実性を新たな金融政策運営上の課題として提示しました。実際、足もとの保護主義的な動きの強まりが、状況をさらに複雑化する要因の一つになっていると思います。』

何かこう具体的な話に欠けますな、と思ったら。

『こうした大きな環境変化や重視すべきリスクを十分注視しつつ、政策の効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討し、「物価安定の目標」の実現に向けて、今後とも適切な金融政策運営を行っていこうと考えています。』

となって次が三重県経済の話になって話が終わるという構成になっておりまして、このテキストだけ読んでいると、とりあえず「リスクはある」「検討する」と言っている割には物価のモメンタムについては(直近の数字的にそれはちょっとどうなのというツッコミは措くとして)結構なポジティブトーンで話をしていますし、リスクの所もさっきあったように通り一遍。こちらの部分での説明も通り一遍ということで、むしろこのテキストを見ると、執行部は10月に盛大に自爆緩和する気があるのかどうも怪しい(検討するだのリスクがだの話をする割に具体的な例を挙げていなくて危機感を感じない書き方になっている)なあというような感じを受けたのは単に追加緩和するんじゃねえよスットコッドッコイが!というアタクシの思いが読み方にフィルターを入れてる可能性もあるのでその点ご留意くださいませ。


〇政井審議委員会見な

ちなみにこっちのテキストのコピペで起きる現象はMS標準の挙動になります。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190926a.pdf

・「一体として効果」ってよく考えたら(よく考えなくてもそうですが)ひでえ理屈ですわなあ

『(問) 講演では、効果と副作用について慎重にみていくというお話をされてい たと思うのですが、先般、マイナス金利の深掘りについては、全銀協の会長が色々な副作用対策を総動員してもオフセットできないような副作用があるというお話をされていて、これはあくまで銀行界の意見だと思うのですが、委員として、現時点でこの副作用を確実に上回る効果がマイナス金利の引き下げに期待できるか、 見込めるかどうか、という点についてのお考えを教えてください。』

一発目の質問から元気よく投球。

『(答) まず、現在私どもが行っている金融緩和の枠組みは、長短金利操作スキームの調節方針と、ETFなどをはじめとする資産の買入れ、そして政策に関するフォワードガイダンスなど、全体のパッケージとして運営しています。』

パッケージって最初のパッケージと違うし途中でパッケージの中身入れ替えておりますが・・・・・・・・・

『マイナ ス金利は、短期金利に付利している政策金利ですが、全体をパッケージとして政策を遂行していますので、一つの部分だけを取り出してその是非を論じるということ自体があまり適切ではないのかな、というように私自身は考えています。』

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いやまあこの理屈、個別政策の具体論の妥当性について問われると執行部が繰り出してくる(例えば「リスクプレミアムに働きかける」といっておっぱじめたリスク性資産の買入ですが、現状問題になるようなリスクプレミアムの拡大という現象が観測されず、寧ろリスクプレミアムがマイナス化しているような現象もみられるのではないかと思われるので、これらの政策(CP社債買入な)について停止する検討はしないのか、とか質問するとこういう答えが返ってくるはず)のですが、副作用対策でどうのこうのとか入れてくる時点でパッケージの中身別物になるだろいい加減にしろという感じですな。

『しかしながら、仰る通り、マイナス金利を 2016 年に導入して以降──それまで数十年間に亘り趨勢的に我が国の短期金利は低下してきており、2016 年の 総括検証時にもその考えを総括したわけですが──、幾分その下落の速度が大きくなったということはあったと思います。 したがって、そうしたメリットとデメリットを勘案し、その後、例えば、 政策の運営の柔軟化であったり、そのほか多くの施策も勘案して、現在の緩和政策を、持続的に息長く強力な緩和を続けることが出来ることを常に検討し、実行してきているということになります。 』

という訳でまるで答えになっていませんでした。


・講演でモメンタムが強まっているような話をしていた点に案の定質問が来たのだが無駄に大演説

そらそうよ。

『(問) 講演で、モメンタムについて再び強まる兆しがみられると感じています、 というお話だったのですが、この間の会合では、モメンタムが失われる、損なわ れる惧れについてより注意深くみていく必要があり、次回の会合で点検します、ということでした。この字面だけ見ると、モメンタムは大丈夫だというようにも読み取れますが、この意図は、政策対応は現時点で必要ないというふうにご判断 されているのか、それともこの勢いを止めないためにも予防的な対応というものが必要になってくる場合もあるというふうに判断されているのか、これはどちらなのでしょうか。』

助け舟付きの質問とはお優しい。

『(答) まず、私自身が物価のモメンタムを見定めるということに当たっては、 基本的に労働ですとか資本の稼働率を示すマクロ的な需給ギャップの傾向は無論のことですが、これは一定の前提のもとで算出される推計に頼らざるを得ないということもありますので、リアルタイムでの把握も非常に難しいと言いますか、 できないものです。』

いきなり斜め上の方から説明が始まる。

『そこで、例えば企業の生産性向上に向けた取り組みですとか、企業の価格の設定スタンス、風下へのコスト転嫁の進捗度合といったことや、家 計に近いところでは、賃金や雇用情勢や、人々の物価感に変化がみられそうか、などといったことを、ミクロ、マクロ合わせて総合的に丹念に確認したうえで、 モメンタムの判断をしていくということだと思っています。』

はあそうですか。

『そのうえで、講演でも申し上げました通り、いわゆる肌感覚では、この 春先頃からじわりとモノの値段が上昇してきているように感じています。身近な ところで例を申し上げれば、この春には 27 年ぶりに塩が値上げされるなど、食料 工業品の幅広い品目で価格改定の動きがみられています。こうした点は講演でも ご指摘させて頂きましたが、消費者物価の品目やスーパーなどのPOSデータを 利用して算出している一橋大学の消費者購買単価指数や日経CPINowのT指数でも確認できるところかと思います。また、サービス分野でも、例えば、ネッ ト配信のストリーミング料金が値上げした、というように、価格上昇の傾向がみられています。また、各種の消費関連のマインド指標が、このところ低下気味なのは望ましくはありませんが、その背景の一つに価格上昇が挙げられることが端的に示している通り、やはり、生活実感としてのモノの値段は、じわりと上昇しているのだろうと思っています。』

『更に、ややテクニカルになるのかもしれません が、このところの地価の上昇基調に下支えされ、長らく恒常的に物価を押し下げ る方向に寄与していた物価における「家賃」も、東京都区部の消費者物価に対しては、昨年半ばごろからプラスの寄与に転じており、全国の消費者物価でみても、足許は、マイナスの寄与度が縮小してきています。』

『もちろん、エネルギー価格の変動や、いわゆるセクターショック的な通信費の引き下げの影響を受け、ヘッドラインの指数は、足許低下気味ではありますが、いわゆるコアコアの指数は、比較的しっかり気味に推移しているというようにみています。このように、色々申し上げてきたような状況を積み上げ、総合的に勘案すると、物価のモメンタムは、 再び強まる兆しがみられていると感じています。』

質問されてないことを延々と説明するの何なの??なお演説は続く。

『もっとも、ただ物価だけが上がっていく姿では、決して望ましいとは言えません。予て申し上げている通り、日本銀行の目指す物価安定の目標とは、企業収益や雇用・賃金の増加を伴いながら、実体経済がバランス良く改善するという好循環の中で達成されるべきものだということも、改めて、申し上げておきた いと思います。』

まるで関係ないそもそも論の世界に旅立たれる政井審議委員。

『この点、講演の中でも触れましたが、日本銀行スタッフが試算した家計の値上げ許容度は改善傾向にあり、その背景としては、6 年連続のベア実現 ですとか、26 四半期に亘る名目雇用者所得の前年同期比増加、といった家計にとっての所得が増加するという経験を重ねてきているからではないか、と思ってい ます。このように、望ましい循環が生まれつつあるのではないかと感じており、 こうした好循環の流れを大切に育てていくこと、サポートしていくことが重要な局面である、というように捉えています。』

ということで、質問に対して全然答えていないというこの恐ろしい質疑応答(しかも回答が丸々1ページ半位ある)なのですが、結局南極おまいら何をやりたくて「点検する」とか言い出したんだと小一時間問い詰めたい訳ですし、まあ最近言われているマイナス金利の深掘りとイールドカーブのスティープがなんで必要なのかという点、波及メカニズムなども含めて小一時間程ご説明を賜りたいものだと存じますです。


・マイナス金利深堀と銀行のマイナスチャージについては例によって知らんがなですな

『(問) 銀行の口座維持手数料について、取材していますと、日銀がマイナス金利の深掘りをどんどんするようであれば、銀行としても口座維持手数料を導入し なくてはいけないという声を聞くのですが、政井委員は、今、物価上昇に関してモメンタムで良い状況が出始めているというふうにも仰ってますが、口座維持手数料が普及すると、消費者のマインドというのでしょうか、せっかく物価上昇に対して耐性ができてきて、物価上昇を許容するムードが出来つつあるなかで、かえって水をさすといいますか、好循環が絶たれてしまうのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。』

という話が真なのであればそもそもマイナス金利自体が政策として波及効果マイナスって話になりますな。

『(答) 金融機関が提供するサービスの対価として、具体的にどのような手数料を徴取するのか、といったことについては、各金融機関のいわゆる経営判断に関わることだと思いますので、私からこの場でコメントすることは適切だとは思いませんので、差し控えさせて頂けたらと思います。』

まあ案の定の逃げ口上。

『 その上で、一般論として申し上げれば、我が国の金融機関の基礎的収益力は、低金利環境の長期化に加え、人口や企業数の減少から趨勢的に低下してき ており、収益力の向上に向け、既に様々な工夫はされてはいますが、一層の向上 に向けた取り組みが重要と思います。こうした観点から、例えば顧客ニーズを的 確に捉えた質の高い金融サービスの提供をするといった取り組みの中で、新しい 視点も織り混ぜつつ、非金利収入の拡大を更に図っていかれることなどは重要な 取り組みであると思っております。』

ふーんという所で、まあこんなところでございます。




2019/09/27

お題「急に思い切りがよくなって減額してますが・・・・・(輪番雑談)」

おそロシ・・・・・・いやなんでもありません。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-25/PYDRWADWLU6801
ダンスケ銀エストニア部門元CEOが遺体で発見、マネロン疑惑の渦中
Ott Ummelas
2019年9月25日 20:02 JST


〇これまで碌すっぽ手を付けていなかった10年輪番を思い切りよく減額とな

・なんで!!なんでそう変な方向ばかりに思い切りがよいのよ!!(画像割愛)

昨日は長期輪番だった訳ですが・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190926.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,500 2019年9月27日
国債買入(物価連動債) 250 2019年9月27日

なんで!!なんでそう変な方向ばかりに(以下同文)ということで、3800→3500に減額しましたので、今回は年額に直しますと300×4×12で14400億円の減額とか、MPM終わってから3兆5000以上の減額を打って来ました。何なんですかこの勢い。

ということになりますと、毎度おなじみ暦年2020年の償還額(めんどいので更新しないで先月末の数字をそのまま使いますが)に対しての増加額の計算ですが、今回の減額で月額の買入が(ほとんど直近に償還が来る銘柄が打ち込まれる1年未満の部分をゼロで考えた場合)49900億円になりやがりますので、遂に5兆割れ水準になるという計算。実は変動利付とかも償還銘柄が打ち込まれるのではないかとかそういう話もありますが、そこはパスしてもそんなもん。

てな訳で単純計算すると(なお毎度の事ですがアタクシが表計算ソフトでヘコヘコ手計算しているので違ってたらゴメンよ、毎度確認しているから合っていると思うけど)5兆割れの状況になりますので、例えばの話超長期って全部減額しようものなら月額4500億円なので、今後(巷間言われるように)マイナス金利深堀して対策で超長期の輪番を減らしますって言ったって、超長期輪番をゼロにしたら暦年2020年は日銀保有の長期国債残高が何と減少してしまう、という大変にお洒落なことになってしまいますわな。でもってこれをどう整合させる気があるのかよく分からんですが、あとで屁理屈を考えてみます。


しかしまあ何ですな、輪番減らすのは減らすで結構なんですけれども、オーバーシュート型コミットメントという、それ自体がへっぽこコミットメントであることは間違いないにしても曲がりなりにも「コミットメント」って言い切っている物件があるのに、その維持大丈夫かというレベルまでバンバン輪番を減額するってのは想定云々の話以前に「お前らのいうコミットメントというのは信用して良いのか」という話になるんじゃないの大丈夫なの?とさすがに思ってしまいますので、こんなペースで急に減額とかベニテングタケでも食ったのかおまいらという勢いにはナンジャソラでありますし、大体からして半期末ギリギリの時期に派手な動きをせんで頂きたいんですけどねえ・・・・・・・・・

ところでずーっと不思議なんですが、マネタリーベース直線一気理論とかマッカラムルールとか言ってた方々的にこの減額にいちゃもんらしいものが飛んでこない(アタクシの観測範囲外であったらお詫び申し上げますけど)のってあの理論らしきものはもしかしてあの方々の出世の道具であって、別にちゃんと検証とか理論的考察をした結果の理論でも何でもなかった、という理解をしておけば良いんですねわかります。

という訳で関連備忘メモと雑談を。


・長期輪番減額して超長期フラットニングしていて笑うしかありません

まあ1日だけの動きでどうのこうのというのもアレですがネタとして笑えたので備忘メモという感じですがロイターさんの市況記事から。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N26H1DB
2019年9月26日 / 15:15 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は-0.250%に上昇

『<15:05> 国債先物は反落で引け、長期金利は-0.250%に上昇

国債先物中心限月12月限は前営業日比11銭安の155円23銭と反落して取引を終えた。米中通商交渉や米景気への期待感からリスク選好度が強まり、円債には売りが優勢だった。日銀の長期債オペが減額されたが、想定内との声も多く、大きな影響はなかった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.0bp上昇のマイナス0.250%。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう想定内とな。オーバーシュート型コミットメントとのコンフリクトどうするつもりなんでしょうかねえ。まあそれより笑えたのは、

『 現物市場で、超長期ゾーンはしっかり。新発20年債は前日比0.5bp低下の0.170%。新発30年債は同2.0bp低下の0.335%。新発40年債は同変わらずの0.420%となった。』

ということで、

『 TRADEWEB
     OFFER  BID  前日比  時間
2年  -0.337 -0.328  0.01   15:05
5年  -0.375 -0.368  0.015   15:06
10年  -0.25 -0.245  0.01   15:03
20年  0.164 0.171  -0.007   15:05
30年  0.33  0.337  -0.02   15:06
40年  0.394 0.402  -0.022   15:04』

となっておりまして、何のことはない長期輪番減額したら超長期の金利が下がるというオモシロプレイ(前場引けの時点で20年5糸強とかでしたし)が発生しておりまして、こういう状況を見ますと「マイナス金利を深堀しても超長期の輪番を工夫すればイールドカーブはスティープして寧ろ超長期の金利が上がって副作用が軽減できる(キリッ)」とかいうのも随分と怪しいもんだ(個人の感想です)とゆーか何というか。まあ国債残高の2020年の見込み増分が10兆切ってもジャンジャン減らしてくるとは思いませんでしたが、いずれにせよジャンジャン減らしてくると「そろそろ輪番減額にも限界が出てきた」という想像をするのはオーバーシュート型コミットメントだの80兆円だのという文言があるので普通に出てくる発想なので、「超長期の輪番減額に限界が出てきた」→「輪番が減らない」→「超長期買えるじゃん」とかいう連想ゲームになったらそれはそれでワロエますな。

まあいずれにしても「長期輪番減額で超長期フラットニング」というオモシロ現象が起きたのでメモメモということで残しておきます。


・仕方がないので色々な理由や今後の屁理屈を考えてみる

さてまあさすがに2020暦年5兆円割れ水準まで減額をしてくるとは思ってませんでしたので、いろいろな妄想やら屁理屈やらを考えてみたのですが、まあ個人の感想なので話半分に聞くというか、世間話のたたき台にでもして頂ければ恐悦至極。

そもそも論としては「なんでまた急にこんなに減額が派手に進んできたの」という話で、10年輪番で言えばこの前減額したもののまた▲26だのというような水準で、0±20から見た時に▲26だと▲20bpというよりは▲30bpに近い訳なので、まあ10年の0±20というのを重視して捉えるのであればそらまあ10年減額って話になる訳ですな。

しかしながら、だったらその前に▲30近い所まで10年が買われていた訳で、なんでそこでは減額をしないで今回急にホイホイと2打席連続、というか実感的には2球連続減額をしてきているか、というと、前と後の差は「9月金融政策決定会合」しかない訳でして、金融政策決定会合において、10年金利の変動幅拡大容認(ただし低下方向のみ)みたいなのをやって来なかったじゃないですか今回。でまあそれを受けて金利低下について急にバカスカ反応するようになった、というのが一つと、あとはまあその前からも出ています超長期金利がどうのこうのという奴で、これも決定会合の方で(政策決定事項のレベルではないから別に文書とかは出ないんでしょうが)何らかのコンセンサスが発生して、長い所の金利に関しても何か明示はしないけど出てきた的なサムシング、とかまあそんなこんなを妄想してしまう次第(個人の妄想です)。

それにしてもMPMの後で年額ペースで3.5兆円も減額してくるってのも幾ら金利低下牽制とは言いましても随分とやりやがるなという感じでして、80兆円文言とかオーバーシュート型コミットメントとかの関係はどうなのよという点は気にならんのかねと思うのですが、まあこれだけ派手派手しく減らせるのですから量についてはスルー方針というのも(これこそ文書は出て来ませんが)コンセンサスにでもなったのかいな(量で勝負は諦めた)ということなんですかねえ、さっぱりわかりません。


さて問題はオーバーシュート型コミットメントなので、オーバーシュート型コミットメントの源流を探るべく取材班(違)は「総括的検証」に立ち戻ってみることにしました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921b.pdf
「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と 政策効果についての総括的な検証 【背景説明】
2016年9月21日 日本銀行

オーバーシュート型コミットメントの源流はこちらの本文4ページ、PDFの5枚目の下の方にありまして、『(4)予想物価上昇率の形成におけるマネタリーベースの役割』って小見出しがあって、

『マネタリーベースの拡大は、「物価安定の目標」に対するコミットメントや 国債買入れとあわせて、金融政策レジームの変化をもたらすことにより、人々 の物価観に働きかけ、予想物価上昇率の押し上げに寄与したと考えられる。 一方、マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも、長期的な関係を持つものと考えられる。したがって、マネタリーベースの長期的な増加へのコミットメントが重要である。』

というのが四角の枠の中にあって、まあこれが結論でして、その説明が下にあって、

『上記のとおり、「量的・質的金融緩和」が全体として予想物価上昇率の押 し上げに寄与したと考えられる。その中で、マネタリーベースの拡大も、 「物価安定の目標」に対するコミットメントや国債買入れとあわせて、効 果を発揮したと考えられる。一方、2015 年夏以降は、マネタリーベースが 拡大を続けるもとで、予想物価上昇率は弱含んでいる。理論的にも、マネ タリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも長期的な関係を持 つものと考えられる。 』

「マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも長期的な関係を持 つものと考えられる」ので、「マネタリーベースの長期的な増加へのコミットメントが重要である」という建付けになっているのですな。

それを踏まえたうえで今のオーバーシュート型コミットメントの文言を直近の声明文から確認しますと、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190919a.pdf
当面の金融政策運営について
2019年9月19日 日本銀行

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

となっておりますな。

つまりですな、まず最初に理屈の方から見ますと、MBの「長期的な」増加が重要である、という話をしておりますので、「長期的に拡大する・・・・・・!拡大するが今回その時間軸までは指定していない、そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい」って言い出して「単年で減少することがあっても長期的に拡大すると言っているので無問題」とか言い出すとか、「QQEを開始したときから見たら大幅に拡大しているではないですか」とか言い出すとか、いろいろと屁理屈は繰り出せる訳ですな、うんうん。

でもって声明文の方も「拡大方針」を継続する、と言っているのであって、拡大するとは言ってないので、「我々の方針は変わっていません(キリッ)」で言い逃れすることも無理筋にも程があるが可能は可能。まあもともとはこの文言って財政の季節要因で前月対比で減少することがあるのでその弾除けに入れている筈の文言だったと理解しているのですが、まさかこんな屁理屈を繰り出すのに役に立つとは、という感じではありまする。

・・・・・・では国債の買入はどうなのか、という話ですが同じく直近声明文を見ますと、

『長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約 80 兆円を めどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。』

・・・・・増加額のメドはあるが「増加させる」とは書いていないというこの事実。まあこちらについても、保有国債の償還が(2年以外の中長期国債の国債償還が四半期償還を基本にしているので)集中する時があるので、その弾除けに「増加させる」と書いていなかっただけだと思うのですが、これまた役に立つとかどういう事やと苦笑するしかありません。

てな訳で、屁理屈を通そうと思えば通せるちゃあ通せるのですが、どちらかといえば普通に10年の金利低下のほうに関してブレを容認しちゃった方が楽だと思うのですが、金利>マネタリーべース(と国債買入残高)という判断が働いて先般のMPM以降急に変なキノコでも決めたかのように減額フェス状態になっているって事なんでしょうかねえ、としかアタクシには想像のしようがないのですな。

まあ確かに超長期塹壕戦ということになりますと、出来るだけバランスシートの拡大をしないで運営した方が良い(マイナス金利を食らい続ける金融機関サイドからしたらたまったものじゃあありませんが)、ということになりますので、まあその考え方も分からんではないのですけれども、80兆円のメドは何と5兆円割れ水準、オーバーシュート型コミットメントまで形骸化の可能性、ということになってしまいますと、一体全体この人たちの「コミットメント」とは何ぞやというそっちの方の心配をしたくなってくる次第でございまして、何ちゅうかこう元々の理論が間違っているのだからどうしようもないのですけれども、それを取り繕うためにダマテンステルスでの方向転換をするもんだから理屈がぐちゃぐちゃになってしまいましたな、としか申し上げようがありません。


あと念のため補足しますと、ご案内の通りでETF買入があるので多少長期国債が減っても資産買入からのMBの方は何とかなるのですが、しかしながら年単位で見て長期国債保有残高が減ってるとかいう話になって「長期的な増加にコミットしている(キリッ)」もへったくれもねえだろうとは思いますし、それ以前の問題として、「マネタリーベースの増加をETF買入で行っている」っての政策としてそもそも筋が10本くらいズレてないですかと小一時間問い詰めたい訳でして、ここに来て益々何をやりたいのか良く分からなくなってきましたが、どうも行き詰まりを打開しようとして変な方向に思い切りのよいことをやるというリスクは意識せんとな、とは思います。いや別に今の時間帯って日銀がこんなに派手に動く必要はバーナンキの毛髪ほどもない筈なんですけどねえ・・・・・・・・・・・

#ということで雑談コーナーになってしまいましてどこぞの審議委員のネタが2日放置という過去最大の放置プレイ続行中ということになってしまいましたが別にいいっしょ(サーセン)




2019/09/26

お題「7月決定会合議事要旨に悪態/総裁の大阪での会見を鑑賞」

ほほう。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190925d.htm/
インターンシップ募集要項(総合職)
2019年9月25日
日本銀行総務人事局

『日本銀行は、わが国の中央銀行として、「物価の安定」および「金融システムの安定」を政策目標としています。ただ、こうした目標の達成に向け、どのような実務が具体的になされているのかについては、なかなかイメージしにくい部分もあるのではないでしょうか。』

『そこで、5日間のインターンシップを通じて、日本銀行の職員(総合職)が、金融政策の企画立案や経済調査などの業務をどのような視点や考え方のもとに行っているのかを体験して頂くとともに、中央銀行における仕事のやりがいや、法律や経済など大学で学んだことがどのように活かされているのかを、感じ取って頂きたいと考えております。』

『1.応募資格

大学生および大学院生
学部学科、専攻は問いません。』

よーしパパ今から勉強して大学に入り直すぞ、などということはございませんが、なんか色々なコースを用意しているようでエエですのう。おじいちゃんの若いころはこんな洒落た制度は無かったと思うのだが単に無知で知らなかっただけなのかもしれませんのでその辺は知らぬ存ぜぬ。


〇7月金融政策決定会合を読みながら血圧を盛大に上げて悲しみが止まらないの巻

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g190730.pdf
政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2019年7月29、30日開催分)

なにせ8月の頭にタリフマンによるタリフ砲が発射されてから状況が変わってしまいましたので、経済物価情勢の所は見ていましても完全に過去の話モードになっていて何を今さらという奴になりますので、今回は例の「躊躇なく対応」の文言追加という辺りを確認しようかと思いまして『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』を読むわけです。


・一応追加やれというのと時期尚早というのの間で揉めているのは伝わった

最初の『金融政策の基本的な運営スタンスについて、』ってところから始まる部分をサラッと鑑賞しますとですな。

『大方の委員は、経済・ 物価の下振れリスクには留意が必要であり、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、 現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。』

はあはあそうですか。

『多くの委員は、プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。』

ということですが、

『ある委員は、わが国の金融緩和の度合いは、政策金利に加え、量的緩和やフォワードガイダンスによる効果も含めて考えると、 既に欧米以上に強力なものになっているとみられるため、更なる緩和が必要かどうかについては慎重な検討が必要であり、少なくとも足もとにおいては、可能な限り現在のきわめて強力な金融緩和を粘り強く継続していくことが重要であるとの見方を示した。』

これ流し読みしていると読み流してしまいますが、「プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう」というのを考えた時に、緩和政策を強め過ぎて過度に経済を吹かしてはいけない、という高圧経済アプローチの否定から入る説明になっていますな。(まあ実際にここから追加緩和して経済が吹くのかとか、そもそも今の政策で物価上昇が加速する効果があるのか、とかそういう話はいったん措く)

『別のある委員は、 仮に、今後海外経済が一段と悪化し、わが国の経済・物価に悪影響を与える場合には、金融・財政のポリシーミックスの中で迅速に政策対応を行うべきだが、当面は金融システム面への副作用に留意して、現行の緩和政策を継続することが重要であると述べた。』

この方の場合は高圧経済アプローチについては特に賛否を示していなくて、ポリシーミックス云々の話になっている、ということでまあ話の持って行く筋がだいぶ違うという感じではありますな。その一方・・・・・

『この間、一人の 委員は、早期の2%の達成が見通せない状況のもとで、米欧中銀による緩和姿勢の強まりが、為替等を通じてわが国の物価を下押しするリスクも高まっており、現時点において、物価の下振れリスクに対して予防的・先制的に政策対応を行うことが必要であると述べた。』

それ「為替のために金融政策やります」って言ってるのと同じですよね、いやあのそういうのは市井のチンピラ何とかストが言うのなら別に問題は無いでしょうが、中央銀行の政策委員がそういう事を言うのってどうなの、と思います。なお、言うまでもありませんが、この金融政策決定会合議事要旨って日銀の事務方が議論内容を要約して書いていますから、実際に発言されたのってもっと露骨な発言だった可能性も大有りでして、それを一生懸命無難に見えるように丸めてこれ、という所に悲しみを感じますわ。

あ、念のため申し添えますが、別に為替軽視しろとかそういう話じゃなくて、為替と金融政策の所ってのは一種の外交プロトコルというかお約束というかの世界で、それを言っちゃあおしめえよというのがあるのですから、そういうお約束は踏まえてお話をしないといけないと思うのね。まあ現在の金融政策を巡る状況はそのプロトコルの頂点にパツキンヅラがいる時点で色々と崩壊しているというのもありますけどね。

『これに 対し、別のある委員は、他国の金融政策運営の影響は、経済情勢や市場動向に応じて変化するものであり、短期的な変動にとらわれずに総合的に判断していくことが重要であると指摘した。』

これは良いイヤミですな。

『ある委員は、米中貿易摩擦の影響を受けやすく、2%から距離のある日本こそ、経済・ 物価の下振れリスクに対する、いわゆる予防的金融緩和論を検討する 必要があり、消費税率引き上げの影響や市場の急変などに対して、日本銀行の政策が後手に回らないよう十分な警戒が必要であると述べた。』

言いたいことは分かるが具体策を合理的な波及メカニズムと共にしめさないとただの評論家なんであって、追加緩和しろとか言ってる連中は何にどう働きかけるためにこういう政策を実行すべき、という話を持ってきてちゃんと具体的対応について議論しろよ、と思う訳ですが、ちょっと後に絶望的な文言が登場するので乞うご期待。


『こうした議論を踏まえ、多くの委員は、特に、海外経済の動向を 中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、 躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じることが適切であり、こうし た政策運営スタンスを明確化するような情報発信を行うことが望ましいという認識を示した。』

こうした議論を踏まえ、ってなっているのですが、なんかこの結論に本当に結びつくんでしょうかという気は思いっきりしないでもない訳ですが、とにかくこの次の部分におじちゃんの血圧急上昇ですよ。


・評論家は政策委員を今すぐ辞任して頂きたいと言いたくなるこの部分よ

『このうち、複数の委員は、様々な緩和策に関する利害得失を含め、予め緩和策を検討しておく必要があると指摘した。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

あのさあ、「あらかじめ緩和策を検討しておく必要がある」って意見があるんだったら緩和策を出すのはお前ら政策委員の仕事だろうが何を他人事みたいに言ってるんだこいつら(複数の委員なので)はということで、もうおじちゃん血圧急上昇ですよ全く。さあ!今すぐ!あなたたちが具体的な緩和策を提示するのです!!そうしたら利害得失に関する議論だってできるって話だろふざけるなこの給料泥棒と小一時間問い詰めたい訳ですわ。

でまあこの一節を見ますと、要するに反対一派の方々って別にそういうの出す能も何もなく、単に執行部がお膳立てした追加政策の言葉尻でも捉えて文句垂れているだけ位の、まあそういうレベルなんですなあ、ってな感じを受ける訳でして(個人の妄想です)、まあそうじゃないっていうんだったら波及経路のメカニズムを説明しながら、波及経路のここに作用させるためにこのような政策を具体的に提言する、ってのをやってみろやオイコラという感じですな。



・金融機関への影響の議論が長めになっている気がしました

さて気を取り直してその次の、『このほか、委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』というコーナーに入ります。

『一人の委員は、緩和による副作用の累積が長年にわたるという時間軸も踏まえ、金融機関のリスクテイク姿勢の変化や、金利の低下が金融機関の収益や貸出姿勢に与える影響も見極めつつ、金融の不安定化を未然に防ぐという観点からも、金融政策をより慎重に検討する必要があると述べた。』

ふむふむ。

『ある委員は、現行の緩和を続けるために は、金融システム面により留意すべきとの見方を示した。』

ふむふむ、

『複数の委員 は、副作用を緩和する方法を不断に検討する必要があると指摘した。』

マイナス金利政策を撤廃してYCCもMB拡大方針も撤廃して、ゼロ金利政策を2%の物価上昇達成するまで継続する、というコミットメントにすればいいだけの話。それで金融が引き締め的になるとは到底思えない。

『また、一人の委員は、仮に追加緩和により副作用が生じるならば、それを緩和する方法を検討する必要があると指摘した。』

まあ言ってることは分かるんですけれども、そもそも論として「副作用を緩和する措置を入れなければならない新たな追加緩和政策」ってそれ最初の時点で政策の作りこみに間違いがあるんじゃないの?と思ってしまいますな。

『別のある委員は、 金融市場や金融システムへの影響を十分認識して政策判断を行うと の方針は堅持すべきだが、追加緩和余地がないと受け止められないように丁寧に情報発信を行う必要があると述べた。』

真面目な話実際にないじゃんと思いますし、追加緩和と言いましても、マクロ経済に働きかけるのと、リーマンショックの時の米国のQE1みたいに、市場機能喪失に対応するとか、資産市場のリスクプレミアム急拡大に対応するとか、短期市場の流動性枯渇に対応するとか、そういう話と分けて考えないと本来はアカンのですよね。

とまあここまでははあそうですかって話ですが最後の部分にまーた血圧が上がる訳よ。


・今回の議事要旨では「他人事政策委員」と「問題をまるで分っていない政策委員」の存在が明瞭になりました

ということで物凄い地獄感を受けた(ちなみにさっき血圧上がった所も相当の地獄だと思う)のはこの次。

『この間、複数の委員は、金融機関の収益性低下の背景にある構造問題や個別金融機関の経営問題を、マクロ的な金融政策によって解決することは困難であるし、 適切でもないと述べた。』

>複数の委員は
>複数の委員は
>複数の委員は

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

まあ何ですよ、そもそも誰も金融緩和止めろとか引き締めろとか言っている訳ではないし、構造問題があることは重々承知しているんですけれども、そんな環境の中で、「マイナス金利政策」という名目ゼロ金利制約が一般非金融部門との間で厳然と存在する中では、単なる金融機関への人頭税状態でしかない政策を行っていることの意味というのが何なのか、しかも「マイナス金利」でなければならないという意味は何なのか、そもそもマイナス金利導入して3年半(YCCへ切り替えてから3年)も過ぎていて、相変わらず物価目標達成していないのはデフレを前提にした行動ガーとか言い続けていて、本当にマイナス金利政策が必要なのか、ゼロ金利政策でも問題ないのではないか、というような話をしている訳ですので、そもそもこの反対論が毎度おなじみの藁人形論法であって、まあゴミクズな話なんですよ。

でもってですね、まあそのゴミクズなんですが、皆様にも容易に想像できるあのお方が主張してこうやって議事要旨に残るのはまあ見苦しいにも程があるのですが、まあいつものことなのではあそうですか相変わらずのトンチキですね、で話が済むのですが、今回「複数の委員」と来やがりまして、つまりはジンバブエ先生に並ぶ国宝級のトンチキがもう1名(またはそれ以上)存在するというこの地獄のような事実。

いやホント、お前ら何なのちょっと一回義務教育から勉強やり直してこいやとしか申し上げようがない次第で、昨日血圧を猛烈に上げていた時にはもっとアレな罵倒文言を用意していたのですが、朝になったら少し血圧が下がったので不穏当表現のトーンを20段階位下げておきました(−−;


てな訳で、別に見るものは大してないのですが(8月以降に相場が変わったのもありますけど)、とにかく今回は緩和推進派とみられる連中の他人事感と、金融システム問題とか全然わかっていなくて政策をやっているのがあのお方だけではなく他にもいるという衝撃の悲しみというのが収穫(負の収穫だが)ではございましたということで。


〇黒田総裁大阪講演の記者会見

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190925a.pdf

・そもそも今回の検討の結果どうなるかの政策反応関数というかトリガーがさっぱり読めない件について

最初の方はまあパスして政策運営の辺りをば。

『(問) 先程のご挨拶の中で、10 月の展望レポートの検証の結果に予断を持っ ていらっしゃらないとおっしゃいました。先週の会合では、追加緩和に向けて 前向きな姿勢を示されていますし、市場とのコミュニケーションを重視しているのかなと受け止めているのですけれども、市場の期待が間違って高まるリスクもあり得るかと思います。仮に市場の催促相場に追加緩和が急かされてしまうという状況が起きたとして、日銀として経済指標次第であるべきという正しい判断ができるのか、その辺りのリスクをどう認識しているのか教えてください。』

丁寧な言い方だが割とキツイ質問ですな。

『(答) この間の金融政策決定会合後の記者会見でも申し上げた通り、その前の金融政策決定会合の時よりも海外経済を中心とするリスクがやや高まっているという認識を踏まえたうえで、次回の金融政策決定会合では、特に展望レポートをまとめる機会でもありますし、経済・物価の動向を十分点検して、必要があれば政策対応をとるということを申し上げたわけです。』

それいつもと同じでだから何で殊更に項番6なの?

『その意味では、前の金融政策決定会合の時よりもリスクが高まっているだけに、金融緩和についてより前向きになっているということはその通りです。』

これを言いたかったのかそれともただのハッタリなのかが以下を読んでもイマイチ分からん、というか言ってる本人もどっちのつもりで言ってるのか分からなかったりして。

『ただ一方で、あくまでも次回の金融政策決定会合において、それまでの経済データ等を十分吟味し、かつ支店長会議もありますので支店長からのミクロの情報も聞いたうえで、展望レポートをまとめ、金融政策について政策委員会で議論して決定するということです。予断を持ってということはないと思いますが、全体としてリスクが高まっているだけに、従来より緩和に向けて前向きになっているという姿勢は今のところ変わっていないと思います。 』

結局どっちですねん。何がトリガーなのかがそもそも分からん説明だわさ。まあ実際はドル円が100円切るまたは切りそうになるのがトリガーでしょ、とは思うけど、こうやって話を大きくしていくと、なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(画像割愛)のリスクはさらに高まりますな。


・マイナス深堀をしても超長期のオペを工夫(だいたいは減額など)すればカーブが立つと思っている危険さが

『(問) 先般の会見では、今おっしゃったように緩和に前向きですという話と、 イールドカーブについてもう少し立ったほうが好ましいのではないかという お話をされていて、それはいずれもそうだと思うのですが、これを両立させるのは、緩和をすれば金利に下押し圧力がかかりますし、なかなか難しいようにも思えるのですが、総裁の中で両立のイメージをどのように持っていらっしゃるのか教えてください。』

当然の質問である、

『(答) 2016 年に「総括的な検証」を行った際にも明らかにしましたように、 マイナス金利を導入した後、平行的にイールドカーブが下がるよりも、超長期の金利がものすごく下がったわけですが、やはり金融緩和効果という意味では、 短中期の金利が非常に重要であり、他方で、超長期の金利が下がり過ぎると、 金融緩和効果よりもむしろ、年金とか生保の運用の低下を通じて、消費者マインドが冷えてしまうと、却ってマイナスになってしまうということを指摘しています。』

質問からの流れで考えると文章の前半と後半のつながりが変ではないか?

『 その「総括的な検証」の考え方は今でも変わっていないわけで、追加緩和策を仮にやるということになれば、当然、短中期の金利は更に下げる必要があるのですが、』

ごめん今の5年▲0.40%(昨日の高値)近辺とかの金利をもう一発下げて何にどういう効果がでるのかまるで分からないんですけど。

『超長期の金利は下げる必要がないどころか、むしろ上がってもおかしくないのかもしれないと、』

なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(画像割愛)

という発言になっていて、これはちょっと執行部が毒キノコにでも当たって急にラリラリラリ状態になっているとしか思えん、ヒラ審議委員が言うならともかく「次回に何かやるかもしれません」って時にこんな具体的な話を総裁がしたらマズいだろうよ。

『ただそのようにどうやってするのかという話ですが、そこは従来から申し上げている通り、国債の買入れプログラムを適切に修正していくことによって、超長期の金利が下がり過ぎることは回避できると思います。』

無理です。超長期後半の減額余地とか最早無いに等しいんですけど。そら大規模売却したら10年超で90兆円とか持っているからなんぼでも金利上げられますけれども、それやったらマネタリーベースがインフレ期待に効果があるという総括検証での結果との整合性取れませんわなあ。

『そこはまさにイールドカーブ・コントロールで、適切なイール ドカーブを形成するということであり、』

現場にマルナゲータという美しい国ニッポン。

『別に今の時点で 10 年物国債金利の操 作目標をゼロ%程度と言っていて、そのゼロ%程度の範囲内で弾力的に考えていくことは当然ですので、ある程度 10 年物国債金利が下がったときでも、それが海外の金利の低下を反映して、国債市場の円滑化機能を反映したものであれば、機械的に±0.1%の 2 倍程度を超えているから、引き上げなくてはならないということでは必ずしもありません。』

やっぱり変だと思うのですが、アタクシもこれ上記URL先からテキスト貼り付けしていまして、貼り付けながら悪態入れるのですが、文章のつながりがあまりにも変で(これ事務方大変だったでしょうな)、何でこんなに興奮している(かどうか知らんが)ような話の繋がり方になっているのよ、と思います。

『ただやはりゼロ%程度という操作目標があるのにどんどん下がっていくというのはいくらなんでもおかしいので、そういう状況になれば、当然国債買入れの中身について、必要な調整を図っていくということだと思います。』

いつの間にか10年のレンジの話になっておる。しかもこれだってどの程度柔軟にやるのかがさっぱり分からんという現場泣かせの展開でありますな。有耶無耶のうちに±20では無くなった、というのだけは分かるが。

『ですから、適切なイールドカーブを形成する観点から、現在の政策金利を決め、そして 10 年物国債金利の操作目標を決めて、適切なイールドカーブとなるように、国債の買入れを進めていますので、まさにそういった観点か ら、仮に短中期の金利を下げるということになれば、超長期の金利が行き過ぎた低下をすることがないように、必要に応じて買入れプログラムを調整するということになると思います。』

ということで、途中の話がかなり飛んでいるのですが、結論としてはマイナス深堀しても超長期を立たせることができますよ、という市場の現場の方々100人にアンケート取ったら200人くらいが全力で否定しそうな思想を日銀執行部が持っているのではなかろうか、という大変に危ういものを感じるところではありまする。

というのはちょっと後にも、

『(問) 先程のご発言で確認みたいになるのですが、政策効果を踏まえれば、 短中期金利を下げることも必要というご趣旨の発言をされたように思うのですけれども、今し方、4 つのオプションのうち、どれが有力というわけではな いというご発言もあったわけですが、やはり政策効果を踏まえれば、中短期の 金利を下げて、超長期をあまり下がらないようにする、むしろスティープ化するようなことを、追加緩和を行う場合に、考えておられるということなので しょうか。 』

『(答) そういうことは十分あり得ると思います。具体的に、どういう緩和策 をとるかというのは、先程申し上げたように、4 つのオプション、あるいはそ れぞれの組み合わせ、改善策等を総合的に勘案して、その時の経済・物価・金融情勢のもとで、最適のものを選択することになると思います。 』

という話になっているので、まあそういう幻想を持っているんだろうなあというのは分かる。それがどういう結末を生むことになるのか、10月会合とその後の展開は面白い(多分面白くないのだが)ことになるかもですな。



〇政井審議委員金懇がありましたが・・・・・・・・・・・・・・

えーっとですね、まあ俺様備忘録なので一応何かのメモは残すつもりなのですが、どこぞのジンバブエ先生とは別の意味で読むに値しない金懇テキストでありまして、これなら大阪での総裁講演のビデオ放映で良かったんじゃないでしょうか、という物件なのですけれども、まあ関連して市場の反応とかでネタがない訳ではないですが急がないので明日ということで。


〇あと40年入札でスティープとかそういうのも同様

この辺りの話は明日まとめて成敗したいと思います。ああそういえば今月の輪番は今日の長期と月末の中期で超長期輪番は無いんですな、うんうん。





2019/09/25

お題「黒田総裁定例の大阪講演のお時間でついうっかり引用大会になってしまいました」

いや本当にそうなら結構な話なんですがマジですか???
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190924/k10012097331000.html
日銀のマイナス金利政策 「副作用」を来月の会合で検証へ
2019年9月24日 21時34分

『会見で、記者団が、来月の金融政策決定会合で副作用について検討するのか質問したのに対して黒田総裁は、「そのとおりだ。ここまで低金利が続く中で、金融機関の信用仲介機能や国債の市場機能に対する影響があるとすれば、十分に勘案することが必要だ」と述べ、来月の会合で検証する考えを示しました。』(上記URL先より)

そこらのへっぽこメディアが言ってるのではなくて国営放送様が報じているというのが気になるのですが・・・・・・・・というかどうなってるのここもとの動きは?????


〇定例の大阪経済4団体共催懇談会での黒田総裁講演である

てな訳でFOMCとかECBとかその辺を華麗にスルーして(サーセン)こっちの方が気になってしまいますなどうも。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190924a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年9月24日
日本銀行

・挨拶の構成からついに消えてしまった決意表明

さてさて大阪での講演なのですが、何故か毎年この時期(11月にズレた年もあるが)に行われるという定例行事になっておりますので、ああまたこの時期が来ましたなあという感じになるのですけれども、その今回の挨拶、読んでて一番引っ掛かったのが実は最後の部分です。

と申しますのも、内容云々ではなくて、この講演って構成が毎年

1.はじめに
2.内外の経済情勢
3.わが国の物価情勢
4.日本銀行の金融政策運営

と来た後に(小見出しの細かい名前は年によって違う場合もありますが内容自体は経済情勢、物価情勢、金融政策運営、という形で来る)、最後に決意表明のお時間みたいなコーナーがありまして、例えば昨年の大阪講演ではこういう構成になっておりました。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180925a.htm/
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2018年9月25日

1.はじめに
2.経済情勢
3.物価情勢
4.日本銀行の金融政策運営

・・・・・・何か違ってるのか??という感じですが(全角半角の違いはHTMLバージョンから引用しているからですので気にしないでください)、さらに1年遡って2017年のを見ますとこうなります。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170925a.htm/
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2017年9月25日

1.はじめに
2.経済情勢
3.物価情勢
4.日本銀行の金融政策運営
5.おわりに

2017バージョンでは『5.おわりに』ってのがありまして、これ2013年から2017年まではこのコーナーがあって、まあ中々勇壮な決意表明のコーナーだったりしたんですよ。でもって前回の挨拶の中ではこのコーナーがぶった切られたのですが、そうは言いましてもちゃんとそれに相当する話があったのですな。ところが今回はそのコーナーが無いもんだから、この挨拶要旨を読んでいたアタクシは「あれ?話がブツリと終わってしまってるじゃあーりませんか」と思いっきり違和感を覚えた訳ですよこれがまた。

・・・・・・・・・ということでまずは前回とこの部分を比較してみましょう。構成の都合上いつもと逆にして前回→今回で比較しますね。


『私は、毎年この時期に、皆さまの前でお話しする機会を頂いており、2013年4月の総裁就任以降、今回で6回目ということになります。6年前は、景気回復が緒に就いたばかりで、デフレ克服も見通せませんでした。そうした経済・物価情勢のもとでは、大規模な政策を思い切って実施する必要があり、取るべき政策とその考え方はシンプルで明確でした。そうしたもとで、この5年間、わが国は息の長い景気回復を続け、企業収益は過去最高となり、雇用環境も大幅に改善しました。賃金や物価も、持続的に下落する状況ではなくなり、上昇基調に転じています。もっとも、「物価安定の目標」である2%の実現には、想定よりも時間がかかっています。このように大きく改善しつつも、やや複雑な経済・物価の展開のもとでは、金融政策もまた、様々な情勢を総合的に勘案して運営していくことが適当であると考えられます。強力な金融緩和を続けていくうえで、効果と副作用の両方をバランスよく考慮していく必要がある状況になってきているということです。今回の政策対応は、まさに、こうした考え方に即したものですし、国民経済の健全な発展に資する観点から物価の安定を目指す日本銀行の姿勢は、全く変わりません。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続け、わが国の企業活動をしっかりとサポートしていく方針です。』(2018年大阪挨拶)

『日本銀行としては、引き続き、様々なリスクを注意深く点検しつつ、経済・物価・金融情勢を踏まえ、予断を持つことなく、適切な政策運営を行っていく方針です。今後とも、中央銀行としてなしうる最大限の努力を続け、わが国の企業活動をしっかりとサポートしていく方針です。』(今回)

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

なお、その前には「おわりに」というのがあった訳でして、まあいつのでも良いのですが、せっかくですので2015年(この年の年末に補完措置がぶち込まれて翌年1月にマイナス金利がぶち込まれた)の当該部分を拝読しますと、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150928a.htm/
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年9月28日

『最後に、以上を踏まえて、日本経済の好循環を確実にするうえで、最も重要と思われるポイントを申し上げます。企業は今や史上最高益を享受し、労働市場は完全雇用の状態にあります。これが、将来の経済成長と賃金・物価の上昇に繋がっていく道筋は、経済のメカニズムからみて当然のことですし、私もそう考えています。ただ、程度の問題として「これだけの収益水準の割には設備投資や賃金の伸びが鈍い」と言われることもまた事実です。その背景には、長く続いたデフレのもとで、企業や家計のマインドセットの転換に時間がかかっているということがあると考えられます。だからこそ、日本銀行は、デフレからの脱却と2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットし続けます。そして、別の機会に何度か申し述べたとおり、2%が安定的に実現した世界では、当然、これほどの低金利環境は続きませんし、人手の確保はより困難になるはずです。現在の収益を使って将来のための行動に移るタイミングには早い者勝ちの面があり、おそらく皆様方の間でもいち早くそうした行動を起こされている方々がおられることでしょう。経済のメカニズムは必ず貫徹しますし、その中で日本銀行は役割をきっちりと果たす、とお約束して私からの話を終えたいと思います。』(2015年大阪挨拶)

いやー実に威勢が良いという感じでして、年々この勢いが衰えて来まして、遂に今回の挨拶では決意表明らしき部分がすっかり消え失せてしまいました、ということで実に感慨深いものを感じますし、威勢の良い話をしなくなっている(まあ前回のも威勢はだいぶ良くないのですけれども自画自賛はせっせと行っている)のも誠にアレではあるのですが、やはりこう政策の行き詰まりについては苦悩しているのではなかろうか、という勝手な妄想が沸き起こって来る(その結果として、なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(画像割愛)な政策がぶち込まれて爆発するのが黒田日銀の仕様なのがおそロシアなんですけど)のですが、まあ気にしすぎですよねそうですよね!!!!

・・・・・・・・しかしまあ何ですな、2015年の時も「マインドセットが中々変わってくれないので物価2%の達成が遅れています」って同じ説明になっている訳でして、そこから4年、しかも政策ぶっこんでからは6年が経過している訳でございまして、その場合「マインドセットの転換に時間が掛かっている」という設定自体に問題があって、経済構造から考えた最適な状況が実は今の状況なのではないか、というような話になるんじゃなかろうかという気がしますし、別に現時点でそこまで悪い経済の定常状態という訳でも無いのでありますからして、もしかしてマインドセット自体不要だったりしませんかねえ。


なおこの挨拶、過去の分に関して最後の「おわりに」部分を読み進めていくと味わいと悲しみが大変に深いものがございますので、折角ですから時系列でURL貼っておくのでご鑑賞を推奨します(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko131105a.htm/(2013年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140916a.htm/(2014年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150928a.htm/(2015年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/ko160926a.htm/(2016年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170925a.htm/(2017年)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180925a.htm/(2018年)


・それは兎も角として政策運営の理屈を鑑賞するのですが・・・・・・・・・・・

内容じゃないところで大引用大会をしてしまいましたが、折角のご挨拶なので内容も見ておかんと、ということですけれども、まあ経済物価情勢に関しては前回の展望レポートプラス今回声明文で強調した海外ガーの話しかございませんので華麗にスルーしまして、『4.日本銀行の金融政策運営 』をひたすら確認しておきますが、これがまた微妙に引っ掛かるのよね。


・物価上昇の「メカニズム」と「モメンタム」とな

最初の所でこんな説明をしています。

『現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という枠組みのもとで、強力な金融緩和を推進しています(図表8)。 金融緩和の主な波及メカニズムとして想定しているのは、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利の引き下げです。現在、実質金利は、景気に中立的である自然利子率を十分に下回る水準で推移し、経済活動を幅広く刺激しています。こうしたもとで、プラスの需給ギャップを起点とした物価上昇のメカニズムが作動していることは、先ほどお話しした通りです。「物価安定の目標」を実現していくため、物価上昇のメカニズムを働かせ続け、 「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持していくことが重要と考えています。』

ということで話がおっぱじまるのですが、『物価上昇のメカニズムを働かせ続け、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持していく』って表現は初めてみた気がする(漏れていたらゴメンナサイなのですが)のでちょっと引っ掛かりました。

従来、「メカニズム」という言葉を使って説明するのは、前向きの経済循環の「メカニズム」という文脈でのお話をしていまして、物価上昇に関しては常に「モメンタム」を使っていたのですが、今回物価上昇の「メカニズム」と「モメンタム」という形でメカニズムとモメンタムを並列して使うというのは少なくとも直近では初見だった(会見でも「モメンタム」としか言わない)と思う訳ですよ。

でですね、これ「モメンタムが失われる惧れがある場合は云々」ってのが声明文に入っているから今更引っ込みが付かない状況なので時すでにお寿司にも程があるのですが、実際に政策でやっているのって早期達成のためにバンバンやるとかそういう話じゃなくて、完全に塹壕戦モードになっているのですから、本来は「モメンタム」じゃなくて「メカニズム」が維持されているかという事を考えるのが重要な筈なんですよね。そういう事を考えるに、今回「メカニズムとモメンタム」という形で出てきたのはどういう理屈を考えているんだろうか、というのが気になりましたです、はい。まあ深読みのし過ぎかもしれませんが。

しかしまあ何ですな、この説明の中に1ミリもマネタリーベース(オーバーシュート型コミットメント)の話が無くて、ちなみにこの講演中でもMBの拡大方針を継続することによってインフレ期待を引き上げるのに効果が云々という話がすっかり無かったことになっているのは(それ自体は今に始まった話ではないですが)まあそういうことですよねという所です。


・予防的対応???

ではその続き。

『こうした日本銀行の金融政策運営スタンスは、昨年、本席でお話しした方針と基本的に変わっていません。』

へえへえそうだっか。

『一方、海外の主要中央銀行の金融政策運営は、昨年の正常化方向の動きから大きく変化しています。』

キタコレ。

『今月、ECBが政策金利の引き下げや資産買入れの再開などを決定したほか、FRBも7月に続く政策金利の引き下げを決定しました。これらの決定の背景には、世界経済減速の長期化と不確実性の高まりという、わが国も共通して直面する要素があります。ECBのドラギ総裁は、金融緩和決定後の記者会見で、地政学的な要因や保護主義の脅威の高まりなどに関する不確実性の長期化を背景に、世界貿易は弱含んでおり、ユーロエリア経済の下振れリスクが大きいことを強調しています。』

まあ結局三極共に「自分の所は大きな問題はないのだが海外ガー」な訳で、その海外というのはどこの事なのかと小一時間問い詰めたい所ではありますがそれはさておき、

『このように、政策運営にあたって、リスク予防的・保険的な対応を意識するという点では、日本銀行も同様のスタンスにあります。』

????????????

さてここで2016年(ですのでYCC導入後)の大阪挨拶の結びの部分を確認いたしましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/ko160926a.htm/

『4.結びにかえて』の途中から引用しますが、

『今がデフレから完全に抜け出す絶好の機会です。金融政策の「限界」を論じるだけでは、問題の解決には全くつながりません。大切なことは、解決すべき課題に正面から向き合い、最善の対応策を追求し続けることです。「イールドカーブ・コントロール」や「オーバーシュート型コミットメント」は、これまで学界などで議論されてきたことをベースにしていますが、中央銀行の現実の政策手段としては、今回、日本銀行が世界に先駆けて導入します。これまでも繰り返し申し上げている通り、金融政策に「限界」はありません。「政策のコストを最小に、ベネフィットを最大にする」、「そのための創意工夫を惜しまず、新しい挑戦をためらわない」、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、今後とも最大限の努力を続けてまいります。』(2016年大阪挨拶より)

・・・・・・・・2013年の当初にぶっこんだ時に「逐次投入はしない」とか大見得切っていたのはさておきましても、実はYCCぶっこんだ時もこんな感じで「出せるものはバンバン繰り出す」というような説明をしていた訳ですから、そもそもリスク予防だの保険だのとかいうような話があるならその前に出せる策を繰り出すし、金融政策には限界が無いというお話だった筈でして、まあYCC導入後から見てもこのような変遷を経ている、というのが中々悲しい所ではありますな、うんうん。


・モメンタムが何で損なわれるのかという説明ですが

というような野暮なツッコミはさておきまして、政策変更するときの屁理屈になるモメンタムについての説明が次にあるので確認しておきましょう。

『その際、日本銀行にとってポイントとなるのは、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムの評価であり、先行き、モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じます。』

さて・・・・・・・

『「物価安定の目標」に向けたモメンタムの点検にあたっては、様々な要素が判断材料となりますが、次の2点がとりわけ重要と考えています。』

まあここも子細に読むと元々「モメンタム」=「需給ギャップと期待インフレ」の筈なのに、何故か「次の2点がとりわけ重要」となっていて、いやあのモメンタムって定義がそもそも需給ギャップと期待インフレで、それ以外の要素って判断材料にならんじゃろと思うので引っ掛かるには引っ掛かる(どさくさに紛れて定義を少しづつ変えてないか疑惑という意味で)のですがそれは兎も角としまして、

『第一に、プラスの需給ギャップ、すなわち経済の活動水準が高い状態が続いていくか、そのもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化していくかという点です。』

『第二に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向です。』

これはいつも通り。

『これらの点からみて、今のところ「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると考えています。すなわち、最近では、需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、コストの上昇を反映して、幅広い企業で販売価格引き上げの動きがみられています。先行きも、これまで物価上昇を遅らせてきた要因の多くが次第に解消し、価格引き上げの動きが拡がる中で、予想物価上昇率が高まっていくとみています。こうしたもとで、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えています。従って、日本銀行としては、現在の政策を続けていくことが適当と判断しています。』

これが変わる要素とは?

『もっとも、海外経済の減速が続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、物価のモメンタムが損なわれる惧れに、より注意が必要な情勢になりつつあります。特に注意が必要なのは、需給ギャップの動向です。』

ほほう。

『海外経済の下振れリスクが顕在化すれば、輸出の弱さが長引くことや企業の投資スタンスが慎重化することなどによって、わが国経済の成長率が大きく鈍化する惧れがあります。』

どんな下振れだよ・・・・・・・・・・・

『その場合、需給ギャップの下振れを通じて、 「物価安定の目標」に向けたモメンタムに影響が及ぶ可能性があります。』

理屈は分かるが今まで海外で微妙なのがあった時に何も追加してなかったのに今回やる程の事案ってどんなだよ、とは思う。まあどうせそんな整合性は無いんですが。

『また、わが国では、実際の物価上昇率が予想物価上昇率に影響を与える、いわゆる「適合的な期待形成」の影響が大きいことにも注意が必要です。原油価格は、足もとでは地政学的リスクの高まりから幾分上昇する場面もみられますが、やや長い目でみれば、海外経済の減速などを背景に、幾分下落しています。原油価格がさらに下落し、実際の物価上昇率がはっきり低下すれば、予想物価上昇率にも影響が及ぶ可能性があります。』

えーっと、QQE2やった時は確かに前年対比で大きく下がりましたが、そのくらいの勢いの価格下落ってどんだけの下落の話ですかとしか申し上げようがない。大体からして長い目でじり安シーザーな位の原油価格下落だったら交易条件の改善のプラスの方が大きいだろうと小一時間。


・まあ要するに海外金融政策(とその後の為替市場の反応)次第ということですな

『日本銀行としては、このように「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあることを念頭に、「展望レポート」を公表する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めてしっかりと点検していく考えです。もとより、次回会合では、その時点までに判明する様々な経済指標や支店長会議での報告、金融市場の動向なども踏まえて、幅広い観点から経済・物価動向を点検します。』

でもって、

『このところ、米中通商交渉の進展への期待から、投資家のリスク回避姿勢は幾分後退しつつあるなど、状況は目まぐるしく変化しています。点検の結果について、現時点では予断を持っていないことも申し上げておきます。』

つまりは海外金融政策次第という話をしているだけ、という理解でよろしいでしょうか(ニヤニヤ)。


・基本的な考え方とな

『最後に、現在の日本銀行の金融政策運営についての基本的な考え方を改めてご説明しておきたいと思います。ポイントは3点です。』

ってのが出て来ましてですよ、

『第一に、経済・物価・金融情勢に応じた柔軟な対応が可能で、持続性の高い、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みが、今後も前提になるということです。』

どう見ても持続性に懸念が持たれていますが、というか金利コントロールが金利低下方向に崩壊してますけどね。

『金融緩和措置を考える場合の具体的な選択肢としては、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などがあり、また、これらの組み合わせや応用といったことも考えられます。』

じゃんじゃん国債買入を縮小しているのに「資産買入の拡大」はねえだろ。

『状況に応じて適切な手段を選択することになりますが、いずれにしても、基本的には、実質金利や資産価格のプレミアムを通じて、政策効果が発揮されるものと考えています。』

ということなので、まさかとは思うがまたETF拡大とかやるんじゃねえだろうなおいやめろ下さい。


『第二に、2016 年9月、日本銀行が量的・質的金融緩和実施後の政策効果と効果波及メカニズムを検証した、いわゆる「総括検証」の結論は、現時点でも妥当すると考えていることです。』

これがまた酷い。新しい政策ぶっこんできたんだからその効果検証を改めてやるのに何の問題があるのかさっぱり分からんのだが、これは「総括検証をやる気がない」ということなのか、ただのフェイクなのかは良く分からんが、一応字義通りに受け止めると来月もただの定例検討になるのですよね。

『例えば、金利の期間構造による経済・物価への影響については、短中期ゾーンの金利の効果が相対的に大きいとの認識に変化はありません。一方で、超長期金利が過度に低下すれば、保険や年金などの運用利回りが低下し、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるとの考え方も変わっていません。』

マイナス金利を深堀した時にマインドに悪影響を与えたことをお忘れのようです。

・・・・・・でまあこれに関連して、ご案内の通り昨日の会見(この挨拶は後にメディア向けの会見が行われて会見要旨も出てくるので今日出るのを確認してまたネタにしますが)では、「中短期の金利を下げて超長期の金利を上げる」みたいなエライ具体的な話をおっぱじめておりまして、まあ普通そういう話はしないもんなのでありまして、突如何変なものを食ったんだという感じで追加策の具体論の話をしていた訳ですよ。

先般の日経新聞インタビュー以来という感じですが、なんかやたらめったら「マイナス金利の深掘りはあり得るし、超長期の金利は上げたい」の話をバンバンぶっ放して、具体的な緩和策のメニューみたいな言い方(なのはヘッドライン打っているベンダーバイアスの可能性があるのでそちらに関しては今日出る会見要旨をみたい所ですが)までおっぱじめておりまして、ちょっと様子が変としか申し上げようがない。

何かね、やっぱりこう政策の行き詰まり(まあ金利低い方にコントロールが効かなくなっているという意味ではすっとぼけておくというのも一つの手段だと思うのですが何故かコントロールはしたがるようですし)を感じてブチ切れモードになっているのではないかという懸念を相変わらず持つのですが、ちなみに皆で「日銀政策の行き詰まり」とか言い出すと更に意地になるので焚きつけるのもどうなのか、とか言いつつ薪をヒャッハーと構えてますかサーセン。


でもって第三はさっき国営放送が書いていた部分。

『第三に、金融政策運営にあたっては、政策のベネフィットとコストをしっかりと比較衡量したうえで、適切な措置を考えることが重要ということです。先ほど述べたように、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、実質金利の低下を通じて経済活動を幅広く刺激しており、政策効果をしっかりと発揮しています。もっとも、低金利環境がさらに長期化することになれば、金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響など、政策のコストにも一段と留意が必要になると考えています。したがって、政策の持続性をさらに強化するためにどのようなことが必要かという点は、今後とも重要な検討課題であると認識しています。 』

「政策の持続性をさらに強化するためにどのようなことが必要か」ってあーたマイナス金利政策とMB拡大方針を止めてただのゼロ金利政策にして時間軸効果を出すために2%行くまでゼロ金利政策を維持って言うだけで十分だろうが何言ってるんだこの人は、とは思いますが、それを言い出すとただの麿になってしまいますので、黒田さんさすがにそれは恥ずかしくて出来んでしょ、とは思います。

でもってこの次がさっき引用した決意表明部分になります。

・・・・・・ということで思わぬ引用大会になって海外金融政策ネタがすっかりお留守なのですが、今日は今日とて政井さんの金懇があったりするんですよねー、まあ読むところ無さそうな気がするので楽観してますが(おい)。





2019/09/24

お題「謎の思い切りの良さで輪番盛大に減額の巻/黒田総裁会見より」

ほほうこれはこれは。
https://mainichi.jp/articles/20190921/ddm/005/070/020000c
社説 中央銀行のポピュリズム 緩和期待に応えぬ勇気を
毎日新聞2019年9月21日 東京朝刊

・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー(褒めてる方な)


〇なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(画像割愛)

・という訳で輪番を思い切りよく減額したのですが・・・・・・・・・・・

いやー金曜の事とかすっかり忘れそうになる連休明けですが(それは属人的アレですが)、金曜といえば輪番ですよ輪番。

まあご案内の通りですが、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190920.htm
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,800 2019年9月24日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,200 2019年9月24日
国債買入(残存期間25年超) 300 2019年9月24日

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(画像割愛)という例の煽り画像を貼りたくなるような事案が発生している訳でして、今回は超長期どころか長期まで輪番減額という急に変なもんでも食ったのかという思い切りの良い減額が来ました。

長期輪番4000→3800
10−25年輪番1400→1200
25年超輪番400→300

とビックリして思わず全角数字にしてしまいましたが(なおアタクシの全角半角はその場の勢いと貼って来る元データがあるか無いかに依存しているので規則性は皆無ですサーセン)、超長期はまだ分からんでもない(わかるとは言っていない)のですが長期輪番まで減額とか、しかも別に金利ちゃんのほうはといえば確かにMPMで一旦落ち着いたような気もしましたが、別にその前から海外金融緩和ヒャッハー相場の巻き戻しからの金利上昇(というか下がり過ぎた分の戻し)が出ているところでありまして、金利水準という意味ではもっと前に減額するタイミングがあっただろうと小一時間問い詰めたい。

いやまあ金利上がってくれた方が色々と結構なのでアリガタヤな減額ではあるのですが、何もこんなに思い切って減額せんでも良かろうにとは思う訳でして、輪番が突然変な方向に思い切りよく動かしてきた時といえば2017年1月の「中期輪番スキップ」を思い出してしまうのがアタクシの仕様になっていまして、益々嫌な予感しかしないのですよね・・・・・・・・・


・下振れリスクが増していてこれから「改めて点検」するのに減額って何だよそれ

えーっとですな、皆様ご案内の通り、前日に終わりました金融政策決定会合ちゃんの方でですよ、

『このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、日本銀行は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断している。こうした 情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである。 』(9月決定会合声明文項番6より)

というのをわざわざ入れてきた訳ですよ。「下振れリスクが高まりつつあるとみられる」状態であって、「モメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢」だという話をしていまして、しかも(この後でネタにしますが)追加緩和手段として国債の買入拡大やマネタリーベースの増加ペースの拡大というのが入っているのですが、情勢判断のうちリスク判断を下方に思いっきりシフトしたような文言を入れて、読み方によっては次回に追加の緩和措置を取るでよ、という話までしている項目を追加した翌日に長期、超長期の輪番を思い切りよく減額とか何だよそれとしか申し上げようがない。

いやまあ(しつこく申し上げますが)金利が上がってくれるのはアリガタヤな面があるからそれはそれで良いんですけど、やるにしたって何もこんな「追加緩和(の可能性)を示唆する声明文を出した翌日に輪番減額」ってのはこの人たちは一体全体何をやりたいのか、どういう理屈で政策を運営しているのか、というのがまるで訳分らなくなってしまう(まあワケワカランのは今に始まった話ではないですけれども)のですが大丈夫でしょうかとしか申し上げようがない。

まあ輪番減額して当然のように当初金利が上がって反応していたのですが、それみた日経平均とかは上がっていましたし、為替は無反応だったので(その時は)、日銀としては今回も大勝利と申しますか、寧ろ金利を下げた方がマイナス効果が出る、という絵に描いたようなリバーサル・レートの図が市場ちゃんから示されていて大変に心の温まる展開になっておりましたので、それはそれで結構ではあるのですが、しかしまあ別に暴れる必要があるとも思えない展開で急に暴れだす日銀、というのは何なんでしょうね。



・オーバーシュート型コミットメントの撤廃でもするつもりなのかね

今回の減額ですが、年額に直すと長期200×4×12で9600億円、長期300×3×12で10800億円ということなので年額2兆円の減額をぶっこんできまして、おーおーおー減らしたやん減らしたやんという感じでもあるんですよね。

んな訳でアタクシの計算間違ってなければベースなので皆さんも計算してちょ状態なのですが(サーセン)、月額の輪番って1年以内をゼロとみなして、変動利付を月額平均500億円としますと、今回の減額で月の買入が5兆1100億円ということになりやがりました。

でもってまあ今年は良いんですけれども、2020年暦年で見た時に、2020年って額面ベースの償還額が(日銀の保有銘柄一覧から償還日でソートして足し算する、というのを表計算ソフトでアタクシがやった結果なので内容無保証ですが本人は合っているつもりで作っています)55兆2528億円ございますので、この調子だと2020年暦年の日銀保有長期国債の増加見込み額って6兆円カツカツになってしまうんでございますわ。

でですね、まあ確かにETFの買入とかあるからオーバーシュート型コミットメントまだ大丈夫なのかもしれませんけれども、長期国債買入残高のメドの方も(誰も気にしていないとは言え)声明文に80兆円とかいうのも残っていて、80兆円VS6兆円ってちょwwwwおまwwwwwwwという感じでもありますし、これは点検した結果何故か「量は気にしなくて良い」とか言い出してQQEですら無くなるとかいうオモシロ政策になってくれる・・・・・・・訳はないかなとは思いますが(過去ぶっこんだものの間違いを認めるのは普通だったら過ちは改めるに憚ること勿れという感じですが、何せこの執行部は麿執行部を石持て追い出したという過去があるのですから石投げて追い出した旧執行部へのお詫びと落とし前の為にも、公開焼き土下座ショーなり公開リアル切腹ショーなりをやって頂いて総退場しないとねえ、というのがやってくる(かどうか知らんが)のでまあそんな「総括」が連中にできる訳が無い)、現状の輪番ペースだと量の方がどないなっとんねんという感じではありますので、その辺の落とし前はどうするつもりなのでしょうかねえ、とは思います。

まあ何ですな、とは言いましても別に今年はオーバーシュート型コミットメントは楽勝(細かく計算していませんがアバウトで今年暦年の買入増加自体は15兆円程度はあるという計算になっている(なおここから先は償還の方が多い筈)ので、そのような問題は来年になってから考えれば良いという、その時になってから考えるいうケンチャナヨ精神で突撃しているのかも知れませんね。


・いずれにせよこの思い切りの良さもそこはかとない不安ががががが

金曜にMPMレビュー雑談で申し上げた時に、「もしかして政策が八方ふさがりになってしまって日銀執行部の頭が煮詰まってしまっているのでは無いか」という杞憂を妄想の選択肢の中にぶっこんでみたのはご案内の通りかと存じます。

でまあこの「なんで!!なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!(煽り画像割愛)」の輪番と来ている訳でして、しかもまたこの輪番が幸か不幸か為替には大して悪影響出さずに長い所の金利は無事(?)に上昇しているもんだから、これは何か調子にのって次回決定会合でイールドカーブがスティープする策とマイナス金利深堀りとかやらかして、マイナス金利深堀りが効いてフラットニングしてしまって策士策に溺れるというか何というかというのが懸念されるところではあります。しかし急にこんなに思い切りよく減額ってのはまあワカランチ会長ではありますな。


でもって市場メモはロイターさん記事から。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N26B147
2019年9月20日 / 15:15 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反落で引け、日銀オペで上下 市場に戸惑いも

『<15:05> 国債先物は小反落で引け、日銀オペで上下 市場に戸惑いも

国債先物中心限月12月限は前営業日比4銭安の154円73銭と小反落して取引を終えた。一方、10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇のマイナス0.215%。日銀の国債買い入れオペを材料に相場が上下した。』(上記URL先より、以下同様)

・・・・・えーっとですね、この後オペ減額に関する解説がうだうだとあるのですが、大引けは市況説明をしていただきたいんで、オペ減額に関する解説を長々とするのは例えばこのシリーズの前場引け後なり後場途中なりのタイムラインの所でやって頂きたいんですよ。どうせ場中にも解説するコーナーがそうやって作れるんですから、大引けは出来るだけ客観的な数字と、材料になった出来事の紹介をするような形で情報を詰め過ぎないで頂きたい(最近何か大引けの市況の所で変なポエムが出てくるようになったような気がするので)のですがそれはそれとして。

『オペ額据え置きを受けて、国債先物は下げ幅を拡大。現物債は超長期ゾーンを中心にスティープニングした。しかし、午後に発表されたオペ結果は堅調で相場は切り返し。国債先物は一時プラス圏に浮上、長期金利も横ばい水準に戻すなど、オペを材料に相場が大きく動いた。』

『現物市場で、新発20年債利回りは前営業日比2.0bp上昇の0.185%、新発30年債は同4.0bp上昇の0.355%、新発40年債は同5.0bp上昇の0.400%と超長期ゾーン中心にスティープ化した。』

という訳で日銀もニッコリ(かどうか知らんが)のスティープ攻撃になっておりまして、これでニヨニヨして調子にのって「じゃあフラットニング停止措置とマイナス深堀でいけるやん」と思ってしまいそうなのを懸念しております(しつこい)。まー結局のところ、海外というかFEDとECBちゃんの金融政策が緩和バイアスを残したまま&国内の方がマイナス金利政策って組み合わせの中で走る状態にいる分には今回の巻き戻しみたいな一時的なスティープはあっても本格的にスティープはしてくれないでしょうし、マイナス金利深掘りとかしようもんなら更にアカンという事になるとは思いますけどね(しつこい)。



〇黒田総裁会見である

3極同時にやられるとネタの成敗をどう整理するかというのもありますが3連休明けなので総裁会見から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190920a.pdf

・項番6の質問ですがとかそら来るわな

ちゃんとライブ音声聞いてなかった(ヘッドラインだけ見てた)のでどこまで幹事社が質問してるのか分からなかったのですが、実質最初の幹事社質問が珍しくも面白くないのでその次の質問から。

『(問) 今回、公表文の6.が新たに追加されたと思うのですが、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると、そのうえで、次回の金融政策決定会合では経済・物価動 向について、改めて点検されるということを書かれたわけですけれども、これについてマーケットでは追加緩和の予告ではないかというような見方もありますけれども、次回の会合ではより踏み込んで追加緩和についての是非をご検討されるという意味合いはあるのでしょうか。 』

そら聞くわな。まあ当然これは想定問答ど真ん中なのでどういう想定問答なのかを見るのにちょうど良い。

『(答) 前回の会合の後の公表文でも、「先行き、『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と、はっきり申し上げていたわけです。』

で?

『今回、特に、海外経済の減速の動きが続いており、よりしっかり経済・物価動向を改めて点検する必要があると日本銀行として判断したわけです。次回は展望レポートを公表する決定会合でもありますので、そういった下振れリスクが高まりつつあるとみ られるもとで、物価のモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあるということを踏まえ、これまでの政策運営の基本的な考え方を、より明確にお示ししたということです。』

いつもやっている事をより明確にお示ししたって「ボクちゃん今日もちゃんと学校に行ったんだよえらいでしょう」とかアピールしてるのかお前はというレベルの想定問答ということで、やる気があるんだか無いんだかも訳が分かりませんという代物が出てくる。というか翌日に輪番を思い切りよく減額しているんですが。


次の質疑はそもそも質問がズレている(直近国内の指標が冴えないのに何で緩和しないのかという質問だが、そもそも国内は堅調という認識を示しているんだからそれは会話が成立しない、赤点再履修)のでパスするとまたも項番6の質問が来る。

『(問) 今回、公表文の6.が追加されて、先程、「より注意が必要な情勢になりつつある」とおっしゃる時にかなり強めに発声されたなというような印象もあったのですけれども、』

(;∀;)イイシテキダナー

『7月以降、何かあったら躊躇なく手を打つよというアグレッシブな姿勢を示しているわけですが、姿勢を示すだけの状況が続いて しまいますと、オオカミ少年じゃないですが、何となく市場が信用しなくなるといいますか、市場との対話がうまくいかなくなるというような懸念はないでしょうか。 』

これはwwwwwww

そういやまあ直近の日経総裁インタビューなど威勢の良いネタが撃ち込まれまくったせいで、9月追加措置待ったなし位の自信満々何とかストが続出しておりまして頭痛が痛かったわけですが、まあおまいらちょっと反省文レポートでも出してみやがれなどとは申しませんがPDCAちゃんと回してね。

『(答) そこは、前回の会合でも、また今回の会合でもはっきりと申し上げて いるように、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、金融緩和措置を実施すると、申し上げていることに全く変わりありません。』

おまいらの言うモメンタムって需給ギャップと期待インフレだよな。

『そのうえで、現状、外需あるいは製造業中心に弱めの動きがある一方 で、内需に支えられた非製造業は、堅調な状況が続いています。ご案内の通り、GDPに占める非製造業の割合は非常に大きなものになっており、今の時点では、所得から支出への前向きな循環メカニズムも働いていますし、「物価安定の目標」に向けたモメンタムも失われていないと判断したわけです。』

ふむふむ。

『最近、確かに海外経済の動向になかなか回復の兆しがみえてきませんが、中心的な見通しとしては、IMF等がいっているように、今年後半から来年にかけて緩やかに成長率が戻っていくというメインシナリオを、国際的にも私どもとしても、今の時点で変えなくてはいけないとは思っていません。』

ふむふむ。

『 しかしながら、海外経済のリスクが高まっている、特に、保護主義の話や地政学的リスクが前回より高まっていることは事実ですので、より注意し ていく必要があるということで、6.を皆で一致して追加したということです。』

結局何がどうモメンタムに影響するんだかの説明は無い訳でして、これまで何が何でも「モメンタムは維持されている(キリッ)」で引っ張り続けていたこととの整合性から考えたらモメンタムが損なわれる惧れっていうの相当の海外減速とか相当のショックが起きないと説明がつかないんですけど大丈夫でしょうか。

・・・・・・まあ日銀の場合、必殺技「いままでのロジックから突如飛躍して全然違うロジックをおっぱじめる」というのがありまして、これがあるだけに何ぼロジカルに推測しても最後に突如積み木を引っくり返す2歳児登場みたいなので全てが押し流されてしまう、というのが日銀ヲチャー(ウォッチャーではない)の悲しい所ではありますが、兎に角黒田日銀になってからというもの、元々の置物リフレ直線一気理論が全然使い物にならない机上の空論だった事がある上に前任を全否定して始めた上に政治肝いり案件だから今更間違いを認められない、という事情があるにせよ、その場その場で適当に屁理屈を引っ張り出してQQE2だ補完措置だマイナス金利だ総括検証だYCCだ柔軟化だとその場その場でしか整合性取れていない屁理屈の増築をするもんだから、このモメンタムに関しても普通に考えればそう簡単に失われないような作りになっているんですが、さて必殺技「今までのロジックは無かったことにする」が出るのでしょうか(興味津々)。


でもって今回は当たり前だが項番6しか聞く話は無いのでそっちに質問が集中するのは理の当然、で1つ飛ばしてこんな質疑も。

『(問) 総裁は 7 月下旬の会見で、かなり金融緩和に向けて前向きになったと言える、と発言されているのですが、今回、公表文の6.を付けたことで、この総裁の姿勢が、やや金融緩和に一歩進んだのか、その立ち位置を確認させてください。(後半は財政の質問だが割愛)』

そら聞くわな。

『(答) 金融緩和について、前回の会合の時よりも前向きになっているかと言 われれば、その通りだと思います。』

だったらやればいいんじゃないですかねー(鼻ホジホジ)。

『というのは、繰り返し申し上げている通り、海外経済の減速の動きが続いていて、下振れリスクが高まりつつあるとみてい ますので、金融緩和についても、次回の展望レポートをまとめる会合で、十分、 経済・物価情勢をよく点検していくということを申し上げているわけです。(後半割愛) 』

と思ったら次も突っ込まれるのでして、

『(問) 公表文の6.の次回展望レポート会合における点検ということなのですが、展望レポートは通常、経済・物価情勢を点検していると思うのですが、これは通常とは異なって、ということなのかの確認と、何かこれは金融政策の枠組みの見直しを企図されているのかどうかをお願いします。』

ですよねー。

『(答) 展望レポートは、年に 4 回、そのときまでの経済指標等を分析して今後の経済・物価の動向を予測し、それらを踏まえて金融政策の決定を行っていくものであり、そうした点は、特に違うことはないと思います。』

だったら何で書いた?

『ただ、これか ら次の決定会合までの間には、色々な指標が出てきますので、その分析を行い、 更には短観や支店長会議といったものも十分総合して点検作業を行い、展望レポートに反映することになると思います。』

それいつもやっている事なんですがナメトンノカ。

『金融政策の枠組みについては、追加緩和を仮に議論する場合でも、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という全体の枠組みを変更する必要があるとは思っていません。』

これも屁理屈の一環でして、まあそういう追撃質問は難しいのかも知れず惜しくもそういうツッコミは無かったのですけれども、じゃあ「YCC導入は枠組み変更なのかどうか」という事を誰か質問して頂きたかったですな。と申しますのは、一応今って相変わらず「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」なので政策の主語(というか何というか)はQQEのままになっているのですが、金曜の輪番減額の通りで量についてはドンドン知らんがな状態になってきており、どこからどう見ても枠組み変更じゃろと言いたい訳でして、これが枠組み変更ではない、というのであれば、次回なんか持って来るのも「枠組み変更ではない」と言いながら枠組みを変更してくるという可能性だってある訳ですよ、もはや何が何だか分からないけど・・・・・・・・

『金融緩和効果を出すためには、実質金利の引き下げやリスク・プレミアムの抑制といったことを通じて、実体経済に影響を与えていくことになります。そのための枠組みとして、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中で、国債の買入れやETFの買入れなど、様々な手段を講じているわけです。 』

さすがに「量」とツッコまれるのがヤバいので「実質金利の引き下げやリスク・プレミアムの抑制」だけで量とは言わないのはよく練られておられますな!!!!


・マイナス金利深堀関係について

これはまた露骨な直球。

『(問) 今後追加緩和をされる際に、4 つの中に入っていると思うのですが、 マイナス金利の深掘りは有力な選択肢になり得ると考えていらっしゃるので しょうか。』

『(答) 4 つのオプション、またその組み合わせや改善など色々なことがあり得るということは前から申し上げており、その 4 つのオプションの中に、マイナス金利の更なる引き下げということも入っているということだと思います。 ただ、具体的に何をどうするかということは、そのときの金融政策決定会合に おいて議論して、プラスの効果とマイナスの副作用等を十分勘案して、適切な緩和措置を行うということになると思います。』

という答えにもなっていない答えに続いてこんな質問。

『(問) 先程の 4 つのオプションとも絡むのですけれども、今の枠組みが基本的に金利のターゲットを主眼としたものであるということを考えると、やはり その 4 つの中でも最初に考え得るより有力な手段は、金利操作目標の変更ということなのでしょうか。』

そらそうだ。

『その場合、どうしても副作用が最近意識されて、日銀としても金融情勢も踏まえて政策を検討するということであれば、組み合わせといった場合には、そういう緩和的な手段と併せてその副作用を軽減する措置もセットでやるという理解でよいのか、必ずしもそういうことではないのか、その辺りをお願いします。』

まあそもそも深掘りが碌なもんじゃないので副作用対策も蜂の頭も無いんですけどね。

『(答) 4 つのオプションとして常に申し上げているのは、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、色々な対応があり得るということです。』

って会見でここまできちんと具体的に言って翌日に輪番を思い切って減額ってwwwwwwwwwww

『また、それ らの組み合わせや応用ということも考えられるということであり、現時点で何かを優先的に選択するとかそういうことはありません。あくまでも、緩和措置を講じるときに、経済・物価・金融情勢を踏まえて最適なものを選択するということになると思います。』

どう見ても量はないだろ。やったら笑うわ。

『なお、金融緩和を更に行った場合のいわゆる副作用ということで、色々な対策があるではないかということが市場関係者の間で議論されている ことはよく承知していますが、具体的なコメントは差し控えたいと思います。 いずれにせよ、私どもとしては、常に政策のベネフィットとコストをしっかり比較衡量したうえで、適切な措置を考えていくという方針に変わりはありません。』

と思うんだったらマイナス金利撤回したらどうですかねえ。


でもってマイナス金利関連の質問がもう一つあるのだが日銀ちゃんの根性の無さたるや・・・・・・・・・・・

『(問) 今の深掘り、政策金利の引き下げに絡みまして、預金の金利が実質的にゼロ金利よりも下に下げられないと、これは下げれば下げられるのですけれ ども、なかなか今現実そうなっていない中で、一方で政策金利を下げると貸出の金利が更に下がって、利鞘が非常に縮小してくると、むしろ金融仲介機能を阻害しかねないということがあると思います。その場合、銀行として口座を維 持管理する手数料を取ることで、そのマイナスを避けるというやり方もあると思うのですが、この妥当性について、かつて幹部の方が講演で正当な対価を取るべきだというような趣旨の発言をされていることがあったと思いますが、総裁として、預金の――法人、個人ありますが、――金利を実質的にマイナス化させる、金利をマイナスにするということについてのお考えを教えてください。』

前置きが長いですがな。

『(答) 欧州の場合は、ユーロ圏に限らず他の欧州の中央銀行も政策金利をかなり深掘りしているわけですが、個人の預金金利がマイナスになっているとい う話はあまり聞いていませんので、そのようになる可能性はないと思っていま す。口座維持手数料云々というのは、それぞれの金融機関が経営判断で決めることであり、私から何かコメントをするのは差し控えたいと思います。』

論点を誤魔化して説明(法人預金や大口預金に関して欧州はマイナス金利つけていますねという話を回避するというインチキ説明)していますが、結局「それぞれの金融機関が経営判断で決めることであり」というのが自分でマイナス金利政策という無茶振り政策打ち込んでおいていざ金融機関がマイナス金利を預金者に転嫁しようとするとその責任は金融機関で、というこの逃げっぷりが卑怯としか申し上げようがなく、先般も悪態申し上げましたが、「マイナス金利政策の効果を実体経済に及ぼすためには金融機関の預金金利がマイナスになるような事もあって然るべき」とか日銀総裁が堂々と発言してマイナス金利政策で起きる弊害部分の批判を一手に引き受ける位の覚悟も無くてマイナス金利導入とかファッションでも実験室でもじゃねえんだよ金融政策は、という所ですな。


・そして後ろの方の質疑で「予告ホームランではない」キタコレ

終盤の質疑でこんなのがあってワロタ。

『(問) 公表文の6.の話ですけれども、前回 7 月の会合に比べて金融緩和に前向きな姿勢を強めていると先程おっしゃられました。それはこの書き振りを見れば分かるのですが、後段の部分で、次回の金融政策決定会合で、というふうに、次回というところに特定されています。これは金融市場では、次回会合で金融政策の変更があるのではないかと、そういうメッセージにもなると思う のですが、この次回という時期を特定されている理由についてお願いできますか。』

確かに。

『(答) 年に 8 回金融政策決定会合を行っていますが、海外経済の下振れリスクが高まっており、足許では「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われ ているということではないですが、失われる惧れをより注意深くみていく必要があるということです。世界経済の減速が続いているという状況、そしてそれが「物価安定の目標」に向けたモメンタムを損なう惧れがあるのではないかと いう懸念が、前回よりも高まっているので、次回の金融政策決定会合では、その辺りを十分注視して検討しますと申し上げているわけで、特別なことを申し上げているのではありません。』

は???という感じですが少し飛んでこんな質問が来まして、

『(問) 先程、前回会合よりも金融緩和へ前向きになったということですが、本日の公表文の6.の声明は、特に何かするという約束まではしていないと思うのです。ですので、ここまで示唆されているかもしれませんが、次回会合で、 マーケットも素早く変わりますし、ツイートで米中貿易摩擦というのもまた変わってくるわけです。その中で、来月またモメンタムがしっかりしていれば、 何もしないということも十分可能性としてはあり得る、という理解でよろしいのでしょうか。』

ワロタ。

『(答) おっしゃる通りなのですが、そのように言うのがよいのか、ここに書いてある通り、ということでご理解頂きたいと思っています。』

何だよその日本語。


・10年金利変動幅について結局何も追加しないのかよ

まあ追加しちゃうと次回の時に何かやるかも知れんってののネタが無くなるからなのかも知れんけど。

『(問) 長期金利のターゲットについて、総裁はマーケットが機能的に動いているときに無理に止めていくのはいかがなものかというご発言をされて、その一方で、ただターゲットを持っている限り、それがどんどん落ちていっても何もしないわけではないということですが、ここは、例えば機能的に動いていた としても、どんどん下がっていくようであれば、やはりそこは止めにいかなければいけないことになる、ということなのでしょうか。 』

割と逃げ道塞いで聞いてますな(^^)。

『(答) そういうことです。現に、毎月の国債買入れについても必要な調整を しており、他方で、海外の金利が下がったときに、それを反映してわが国の金 利も下がるということを全部止めなくてはならないというのも、国債市場の機能が十分発揮されている面もありますので、少し変だと思います。ただ、10 年 物国債金利の操作目標としてゼロ%程度と申し上げているわけですから、それ を外れる状況をいつまでも容認するということはなく、必要に応じて適宜国債買入れのプログラムをマーケットの状況に応じて修正していますし、今後とも必要に応じて修正していくということだと思います。 』

これは一番現場が困るであろう回答ですな。まあ逃げ道塞がれて質問されたからこうなるというのもありますが。


#ということで米国欧州ネタは今後成敗しますです、はい







2019/09/20

お題「決定会合レビュー」

皆さま既にご案内の通りですが、

https://jisin.jp/domestic/1778515/
小泉進次郎氏 回答がポエム?「何言ってるかわからない」の声
記事投稿日:2019/09/18 16:28 最終更新日:2019/09/18 21:31

あたしゃこの人ヤベーだろと感じているのでこうやって早めにボロが出て頂くのは結構なことなのですが、これは「本人の能力に余る大役を与えることによってボロを出させて潰してしまう」という安倍ちゃんの深慮遠謀プレイだったという説にアタクシも100ドラクマですな。

・・・・・・・・なお、別に深慮遠謀に引っ掛かった訳でもないのにボロがボロボロ出ている政策審議委員会審議委員という方がどこぞの中央銀行にいるような気がしないでもありません。まあ器以上の仕事というのは克服できれば大成長ですがそうじゃないと悲惨なことになりますからにゃあ。


〇決定会合レビュー:予告ホームランかただの時間稼ぎかそれとも・・・・・・・・・・・

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190919a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k190730a.htm/(前回7月)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k190730a.pdf

前回7月の展望レポート基本的見解
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1907a.htm/(7月展望レポート)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1907a.htm/

・政策変更は無く、10年金利の変動幅に関する表現の変化もありませんでしたな

決定事項はご案内の通りですが(ちなみに以下の引用ですが、7月の分はHTML版の方から貼り付けを行っておりますので、全角半角とかスペースの入り方とかが違う場合がありますが宜しゅうに)、

『長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。』(今回)

『長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。』(前回7月)

脚注は

『1金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。』(今回)
『1金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。』(前回7月)

ということでどう見ても全文一致です本当にありがとうございましたという所ですが、まあ元々プラマイ10bpだのその倍だのというのは声明文中には無くて、あくまでも総裁会見での口頭のお話(ただし口頭と言えども会見要旨に掲載されるので文字としては残る)ということになっていましたが、今回も何も変更なしでして、これは総裁会見で質問されたら何か答える攻撃に来ました。


・経済物価の現状判断は海外経済を下げただけで需要項目に関する部分の判断に変化無し

ということで項番2、3の経済物価見通しですな。

『わが国の景気は、輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(今回)

『わが国の景気は、輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(7月展望レポート)

基調判断に変化なし。

『海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きとなっている。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。』(今回)

『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きとなっている。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。』(7月展望レポート)

まずは海外ですが、海外経済について減速の動きが「みられる」が「続いている」と判断引き下げですが、輸出の判断、設備投資の判断は同じ。

『個人消費は、振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。住宅投資と公共投資は、横ばい圏内で推移している。以上のように、輸出は 弱めの動きとなる一方、国内需要が増加していることから、鉱工業生産は横ばい圏 内の動きとなっており、労働需給は引き締まった状態が続いている。 』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加しており、一部では前回増税時よりも小幅ながら消費税率引き上げ前の需要増もみられ始めている。住宅投資と公共投資は、横ばい圏内で推移している。以上のように、輸出は弱めの動きとなる一方、国内需要が増加していることから、鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっており、労働需給は引き締まった状態が続いている。』(7月展望レポート)

個人消費に関しての表現が変わっていますが、増税前の駆け込み云々の説明が展望レポートではありましたが、まあ分量も長くなる(声明文だからそこまで長くするのもアレ)のでその辺りを「振れを伴いつつも」の一言に集約させてしまったのかなあ、とは思われますので、そこがそうなのであれば、この辺りの現状判断も7月時点と変化はない、ということになりますな。

『この間、わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(7月展望レポート)

金融環境は緩和してるかもしれないけどマイナス金利という金融機関実質課税で金融機関の経営環境は引き締まっていますけどね!!!!!!

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で 推移している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(7月展望レポート)

というこの表現を見ますと、これまで、例えばこの前の年末年始みたいにリスクオフじゃー日経平均2万割れじゃーと言っているような時でも「需給ギャップ」と「インフレ期待」で定義される物価上昇に向けた「モメンタム」とかいう奴が維持されている(キリッ)だったのですが、このような感じでの景気認識の中ですと、いままでの話であれば当然「モメンタムは維持(キリッ)」という話になる筈ですがそこをいじって来るのが今回の日銀攻撃。


・先行き見通しはどこからどうみても判断に変化が無いのですよねー

先行き見通しの前回は概ね展望レポートの鏡の部分から引用します。

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる2。』(7月展望レポート)

ってなっていまして、まあこれ展望レポートなので先行き見通しのタイムホライズンが違うというのがあって表現的にどうなのよということでもう一丁遡って6月決定会合声明文(http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k190620a.htm/)を見ますとこうなります。

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(6月声明文)

ということで、要するに先行き見通しの基調判断に変化はないという状況ですな。

『国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、 企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続する もとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要も、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加基調をたどると見込まれる。』(7月展望レポート)

7月の方は輸出が語順的に先に来ているので書き方がちと違っていますが、結局これ言ってることまるで同じですな。

『輸出も、当面、弱めの動きとなるものの、 海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やか に増加していくとみられる。』(今回)

『輸出は、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。』(7月展望レポート)

内需外需ともに見通しはまるで同じなんですがこれが。


『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプ ラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、 2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)。』(今回)

『もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるとみられる。この結果、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(7月展望レポート)

展望レポートの鏡の所なので書き方が丁寧になっていましたが、まあ言ってることはこれまた同じですわな。


・取って付けたようなリスクの高まりキタコレ

『リスク要因としては、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、 保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた中国を始めとする新興国・資 源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱交渉 の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられる。』(今回)

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。』(7月展望レポート)

展望レポートではリスク要因を4つ並べていますが、声明文では基本的にその中でウェイトの大きい話をぶっこんでくるというのが仕様なので、比較すると(こちらは本文から引用しています)こうなりますな。でまあ並べているのは同じなんですが・・・・・・・・・・・・

『こうした海外経済を巡る下振れリスクは高まりつつあるとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。 』(今回)

『こうした海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられ、特に、保護主義的な動きによる影響の不確実性が高まっている。これらが、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。』(7月展望レポート)

ふーん高まりつつあるんですかー(棒読み)って感じですが、貿易問題のテンションってパツキンヅラの虫の居所次第でありまして、まあ日替わりとは言わないけど月替わりと週替わりの間位の感じのメニューでぶっこまれてくるので、出したこの瞬間は間抜け感が漂うという辺りが日銀の芸風でして、まあ物凄い勢いで取って付けた感の漂うこの文言。


・そして最後の謎項目

項番5の金融政策運営に関しては文言一致ですので割愛しまして、今回新設の項番6ですわな、まあアタクシも11時49分位だったと思いますがベンダーフラッシュ見て日銀のサイト見に行って真っ先にここを見ましたぞな。

『このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつある とみられるもとで、日本銀行は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断している。こうした 情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである。 』(今回:新設文言)

まあ色々とアレな訳ですが、「このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられる」って言ってますが、先週から今週にかけて出てきたECBとFRBちゃんの場合、どちらも「国内(域内)の需要は堅調に推移しているが海外ガー」という話をしております。ECBちゃんの場合はその中でも製造業の生産などに海外経済の影響が出てイマイチとかいう話は入れています(ただし返す刀で労働需給の強さと消費の堅調さを指摘してる)し、米国に関しても海外がアレだが国内はロバストって話をしておりまして、3極揃って「海外ガー」という話をしているのは何なんでしょうかねえという感じではあります。いやまあもちろん直近で貿易戦争のテンションが下がってリスクオンヒャッハーになっているから間抜け観が更に強まる結果になっているのはありますが。

でですね、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れ、とか何とかゆうとる訳ですが、モメンタムの定義は需給ギャップと期待インフレという話を従来していて、これが損なわれるっていう話になると需給ギャップのプラス傾向継続がダメになるという話をするか、期待インフレが下がるという話をするか、ということになるんですけれども、需給ギャップが大きく落ち込むような外需の落ち込みってそれどこのリーマンショックだよという話になりますし、期待インフレに関しては確かに2%に向けてホイホイ上がる状況でも何でもないですが、それは別に今に始まったことではないですし、現状って寧ろ物価が中々下がりにくくなってきている状況になってきた、という形での判断をしている筈ですが、さて何がどうなって「モメンタムが損なわれる」のか、従来全然損なわれないという話ばっかりしていたこととの整合性というものを見せてもらおうじゃありませんか日銀さん。ああ屁理屈捏ねるのは止めて下さいねと先に念を押しておく。

まあしかし何といってもこの項番の白眉は最後のところで、「こうした情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである。」(キリッ)ってお前は小泉進次郎かと小一時間問い詰めたい訳で、じゃあ普段の会合は経済物価動向の点検をしないで何やってるんだよと思いましたが、確かに議事要旨や主な意見を見るとジンバブエ大先生と思われる謎の大演説だったり言いがかりだったりみたいなのが見受けられますので、そもそも議論をしていないのでは疑惑はあるにはありますが、そうは言いましても議論をしたことになっておりますので、当たり前の事を書かれましてもお前は何を言ってるんだとなりますわな。

でもってまあこの謎項目の解釈ですけど・・・・・・・・・・


・謎の項番6について解釈というか妄想をしてみますとですなあ・・・・・・・・・・・・・

大体からしてですね、経済・物価動向を改めて点検していくって毎度当たり前の話だし、しかも次回は展望レポートの会合なんだから四半期ごとのレビュータイミングな訳でして、総括検証の時みたいな検証指示みたいな雰囲気を1ミリを漂わせない文言でこういうの入れてくというのはまあ不自然だし唐突だし、しかも何をしたいのかが全然わからんという小泉進次郎成分の高い文言に仕上がっておられます。

さて、これをどう解釈するかという話ですが・・・・・・・・・・・・

その1:次回の追加措置予告ホームランという解釈(ホームランの時期には解釈の余地あり)

何せ先般来超長期の金利上昇とマイナス深堀とかいう虫の良すぎる発信がベンダー方面から出ていて、その出所になっているのが日経の黒ちゃんインタビューを筆頭にまあ日銀方面って感じですわな。でもってこれが出るということは、つまりはまあマイナス深堀と長期超長期の金利は下がらんように、または超長期が上がるように何か施策をセットにしてやっていく(なおその施策はイールドカーブ最終的にフラットすると思う)、というのをぶち込んで来るというお話でしょうな、という解釈。

だってリスクが云々ってのもあからさまに取って付けたネタだし、項番6は当たり前のことを(キリッ)ってぶっこんでいる訳で、ポエムでもやってるんじゃなかったら何かの行動を事前に示唆するもの、という事になりますからそらもう10月展望レポートで見通し下げて追加緩和じゃあ、という想像ですな。

ただし、さすがになけなしの弾なことくらいは分かっている筈なので、10月にFRBやECBが何もしないで現状維持コースだったら敢えて無理はしない(今回も大規模緩和が来たわけでもなかったので今回もその理由でスルーした)ので両にらみ、という可能性と、もう次回は特攻の覚悟なのかはどっちとも解釈できますわな。

#一応会見では「次回何かやることを確約した訳ではない」というのがあったようです

まあ予告ホームラン説は普通に説得力があるから、そら金利下がって反応するわなとなりましたが、折に触れてそういう話になるっしょ。


その2:ただのブラフでこの文言入れておかないと格好がつかないから

今回10年金利の変動幅について、例えば低下の方は低下をじゃんじゃん容認する(もっと品の良い表現をつかうとして)というようなのを声明文脚注辺りにでも入れておいて「日銀、長期金利の低下を容認」というフラッシュを打たせるという方法もあったと思うんですよ。

でも今回ってそれをやっていないので、会見で総裁にそれを言わせるとしても、MPM公表から会見まで後場丸々ある訳でして、その間って「まるで前回と同じ声明文が出てきました」状態で後場を引っ張ることになるので、それはアカンヤロということで文言をぶち込んでおいた、という可能性もあります。「次回の会合で点検する(キリッ)」って言ったってそれは毎回点検してるじゃろ、という文言しか入れていないのは、別に何かするようなことを考えている訳ではなく(もちろんその間に欧米緩和合戦とかになって円高に振れれば話は別としても)、単にこの文言入れておかないと市場の反応がまずいことになるだろう、ということでお為ごかしにぶっこんだだけのブラフ、と読むこともできそうではありますな。


その3:ちょっとアレな妄想ですが・・・・・・・・・・

いやですね、この謎文言と急に言い出したモメンタムが損なわれる云々に加え、今回って別に何も慌てることも何もないのにMPM前に日銀が急に騒ぎ出した感がありますが、アタクシがこの一連のアレを見て一番イヤーな予感がしているのが「日銀が政策の行き詰まりで頭に血が上ってきたリスク」でありまする。

つまりですね、QQEやってQQE2やって結局何だよ全然行かないじゃんというのに加えて、オペ運営もドンドン窮屈になってきた中で、2015年の12月に「補完措置」とかいうのが出たじゃないですか、あれですよあれ。

あの補完措置ってのは「政策を円滑に推進するための諸措置導入」ってことでぶっこんできたのですが、その前からQQEの限界論が言われだしている中だったので、まあそれに対抗した面が多々あったと思うのですが、ぶっこんだ結果として改めて「QQE政策の限界が明確になった」みたいな言われ方になってしまって、その結果として、今に至る不幸の始まりでありますところのマイナス金利政策とかいうものが、ブチ切れたとしか思えない流れで導入されたら案の定大コケして半年後にYCCに移行、となった訳ですよね。

でですな、ここもとのドタバタぶりを見ていると、あくまでもアタクシの杞憂であって欲しいのですが、今の政策がどう見ても八方塞がりにも程がある状況の中で、だんだん日銀が政策の行き詰まりから頭が茹で上がって来て、謎の方向に思い切りの良い政策をぶっこんできて結果自爆してしまうというのをまあつい数年前に見ているだけに、そのデジャブなのではない、という懸念をちょっとしていまして、まあそうではないと思いたいのですが、そうなりますとちょっともう何が飛び出すのやらという感じになるので、まああまり舐めて掛からないようにしようかとは思っておりますです、はい(全面的に個人の妄想です)。

といったところで会見等は週明けに。







2019/09/19

お題「FOMC寝起きでレビュー:これ次回のFOMCがポイントになりそうな気が」

日の出時刻がどんどん遅くなりますな(朝の寝起きが悪くなる)。

・・・・・でもってまあ今回のFOMCはそんなに派手派手しいものじゃなかったので日銀会合はほぼ無風でお願いします一つよろしく。

〇声明文:利下げの理由が前回と同じとか芸人ブラード登場とか

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190918b.htm(前回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190731a.htm(今回)

・第1パラグラフ:家計支出の判断を上げたが企業投資と輸出を下げたとな

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July indicates that the labor market remains strong and that economic activity has been rising at a moderate rate. Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June indicates that the labor market remains strong and that economic activity has been rising at a moderate rate. Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回)

労働市場に関連する判断についての文言変更はありません。

『Although household spending has been rising at a strong pace, business fixed investment and exports have weakened.』(今回)
『Although growth of household spending has picked up from earlier in the year, growth of business fixed investment has been soft.』(前回)

家計消費の判断は「rising at a strong pace」とか威勢の良いものになっているのですが、一方で企業の固定資産投資をsoftからweakenedに判断を引き下げておりまして、同時に今回輸出もその中にぶっこんで来る、という図にしております。

まあこういう図にしておかないと海外経済のリスクが米国経済に与える影響を鑑みて利下げって理屈が通らないですから、企業の投資に加えて輸出の需要項目をぶっこんでくる、という形になっているのです、というのも後でネタにしますが、SEP見ますとSEPの前回って6月だから利下げ2回実施前の話ですけど、この時点での成長率見通し、物価見通しを全然下げていない(どころか若干上がっている部分もある)という代物になっていまして、そらまあ「今回は金融緩和を行った効果を勘案したのでこのような見通しになった、金融緩和なかりせば見通しは下がる(キリッ)」みたいな説明をするんでしょうが、景気判断にそんなに大きな下げが無い(寧ろ家計消費上げてるんだから目先GDP的にはこっちの方が効くじゃろ)中で利下げを行う理由is何?という感じではありますな。

『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy are running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(今回)
『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy are running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(前回)

インフレとインフレ期待に関する文言にも変更はなく、ご案内のように今回は利下げを実施したのですが、何で利下げしとりますねんというのはうーんこのという感じではありまする。


・第2パラグラフ:連続利下げしたというのに書いてある内容が前回と同じなのかよ

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

これはいつもの文言。


『In light of the implications of global developments for the economic outlook as well as muted inflation pressures, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate to 1-3/4 to 2 percent.』(今回)
『In light of the implications of global developments for the economic outlook as well as muted inflation pressures, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate to 2 to 2-1/4 percent.』(前回)

global developments for the economic outlookのインプリケーションおよび物価上昇圧力の弱さを鑑み利下げを行いました、は良いんですが前回と今回の理由の変化が全然ない(そら経済の現状認識が上記の通りですから変わらんのは変わらんのですが)というこの芸の無さ。

『This action supports the Committee's view that sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective are the most likely outcomes, but uncertainties about this outlook remain.』(今回)
『This action supports the Committee's view that sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective are the most likely outcomes, but uncertainties about this outlook remain.』(前回)

この政策でどうのこうのという話も同じ。じゃあ何で前回利下げしてすかさず連続利下げするのか、というロジックはどないなっとんねんという話は多分オープニングリマークの方にあるのではなかろうか(PDFが出てきたのが5時をそこそこ回った辺りだったので成敗は後回し)とは思いますが、声明文だと1パラの企業の固定資産投資と輸出の判断のところを根拠にして下げましたと言わんばかりの下げ(あともう一つ考えられる屁理屈はあるがSEPの時に)ですが、政策の波及ラグとか考えたら何で連続利下げですねんという感じではあります。まあそもそもそんなロジックは崩壊しているというのが前回の利下げFOMC記者会見での無慈悲な吊るし上げの時点で明らかなので今更ジローにも程があるのですけれども。

『As the Committee contemplates the future path of the target range for the federal funds rate, it will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective.』(今回)

『As the Committee contemplates the future path of the target range for the federal funds rate, it will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective.』(前回)

ここも同じ。「act as appropriate」もそのまま残しているので打ち止め様子見という話ではなく、次にネタにするSEPでの見通しが年内もう1回利下げな人が7/17もいますし、従来からの流れとか勘案すると(アタクシは何で利下げするんじゃ金融不均衡大発生コースじゃろと思いますけれどもそれはそれとしまして)年内利下げの可能性を普通に示した(ただし予告ホームランはまだ)という感じだと思うので、まー市場コンセンサス位のところに落ち着いている感じだと思う(と言っても米国債券市場の金利織り込み云々というのほど見てて何が何だか分からんものはないので個人の感想ですってことで勘弁して頂きたいですけれども)のですが、しかしまあここも文言一致でございまして、要するに金利水準のところ以外全部同じっす。


・第3パラグラフ:今後の金利操作に関しての説明文言もこれまた前回と同文

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

今後の金利政策運営に関してはマンデート達成の観点から幅広い経済、物価動向やインフレ期待の動向、金融動向、海外経済の動向などを勘案して判断する、という当たり前の話を並べているだけでしかも前回と文言一致。

なお、前回はバランスシート縮小(ランオフ)の終了前倒しに関する文言がありましたが、こちらは決定済みの話に変更はないということで、その関連文言に該当する文言は今回存在しません。


・第4パラグラフ:ブラード先生の芸人モード復活&予想通りの反対

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair, John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; and Randal K. Quarles.』(今回)
『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; and Randal K. Quarles.』(前回)

おや、今回はブラード先生の名前がありませんね。

『Voting against the action were James Bullard, who preferred at this meeting to lower the target range for the federal funds rate to 1-1/2 to 1-3/4 percent;』(今回)

芸人キタコレという感じですが、前回は50と言わないで今回50というその理屈がどうなのかというのについては、こっちが小一時間問い詰めなくても、どうせ出たがりお喋り芸人のブラード先生が何かしょうもない屁理屈を繰り出して来るでしょう。実際のところは前回50下げって言うとあまりにもパツキンヅラに媚び媚びの印象が強くなって、自分のレピュテーションに傷がつくというか笑いものにされるリスクを考えてたんでしょどうせこの芸人は、という風に思っておりますが(個人の盛大な偏見です)昔は良い事言ってたのにすっかり今は芸人枠になってしまいましたな、悲しい。

『and Esther L. George and Eric S. Rosengren, who preferred to maintain the target range at 2 percent to 2-1/4 percent.』(今回)
『Voting against the action were Esther L. George and Eric S. Rosengren, who preferred at this meeting to maintain the target range for the federal funds rate at 2-1/4 to 2-1/2 percent.』(前回)

利下げ反対は同じくこの2名ですが、そろそろ「経済の先行き不透明感もかなり無くなったので中立に戻すべきだから利上げ」とかで反対してくれませんかねえ(無茶振り)、まあしかし「先行きの不確実性」ってそもそも先行きが分かるとか思う方が傲慢にも程がある話で、不確実を言い訳にして金融政策ってのもちょっと何だかねーとは思うのでした。


〇IOERとONRRPのレートを30bp下げて来ましたがこれは今週入ってからのアレ対策

声明文、PDFで出すと次の所の「Implementation Note issued September 18, 2019」ってのが勝手に出てきますが、HTMLの場合は下にあるのをポチっとなをしないといけません。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190918a1.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190731a1.htm

こちらですけれども、『Decisions Regarding Monetary Policy Implementation』ってお題になっていまして、

『The Federal Reserve has made the following decisions to implement the monetary policy stance announced by the Federal Open Market Committee in its statement on September 18, 2019:』

『・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to lower the interest rate paid on required and excess reserve balances to 1.80 percent, effective September 19, 2019. Setting the interest rate paid on required and excess reserve balances 20 basis points below the top of the target range for the federal funds rate is intended to foster trading in the federal funds market at rates well within the FOMC's target range.』

というのが冒頭にあります。でもって「interest rate paid on required and excess reserve balances to 1.80 percent」ということですので、FFへの付利金利(米国の場合は法定準備預金と超過準備の双方に付利をしている、IOERって言ってるのこの事ね)は今回1.80%になりました。

前回は『lower the interest rate paid on required and excess reserve balances to 2.10 percent, effective August 1, 2019.』(前回)だったので、2.10%→1.80%になりましたね。誘導金利目標が1.75-2.00なので誘導金利目標+5bpまでスプレッドが下がって来ました。

でもってRRP(レポファシリティ、米国の場合連銀当座預金直接参加者以外の所にある金がドデカホーンなので超過準備を不胎化しようとするとこの人たちの金を連銀によるGCレポ取引で吸収しないといけない)金利の方はというとこっちはディレクティブの方にありまして、

『・As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open Market Account in accordance with the following domestic policy directive:』

以下がディレクティブ、

『"Effective September 19, 2019, the Federal Open Market Committee directs the Desk to undertake open market operations as necessary to maintain the federal funds rate in a target range of 1-3/4 to 2 percent, including overnight reverse repurchase operations (and reverse repurchase operations with maturities of more than one day when necessary to accommodate weekend, holiday, or similar trading conventions) at an offering rate of 1.70 percent, in amounts limited only by the value of Treasury securities held outright in the System Open Market Account that are available for such operations and by a per-counterparty limit of $30 billion per day.』

とありまして(ディレクティブはこの先も続くのですが今日は割愛)、こちらですけれども、ONRRP金利の方が1.70%になりまして、前回が2.00%だったので(引用するの面倒になったので確認してくらはい)こちらも30bpの引き下げで、誘導目標金利▲5bp水準になりました。なお1取引先辺りの限度額の1日30ビリオンについては変更ありません。

ちなみにおまけですが、

『・In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve a 1/4 percentage point decrease in the primary credit rate to 2.50 percent, effective September 19, 2019. In taking this action, the Board approved requests to establish that rate submitted by the Boards of Directors of the Federal Reserve Banks of Chicago, Minneapolis, Dallas, and San Francisco.』

ディスカウントウィンドウのプライマリークレジットレートは25bpの引き下げになっています。当然ですけど。


・・・・・・ということですが、昨日興奮してああでもないこうでもない書きましたが、あのあと読み直して思ったのですが(今日これが出たから気が付いたわけではない、という位はアピらせてくらはい)、先般(というか昨日も起きたようですが)発生したシステムレポ登場モードってえのは、「マクロ的には超過準備が死ぬほどあるのに、資金余剰主体が超過準備を抱え込んで出さない」ので、想像以上の所で「所要準備+予備的超過準備需要」の壁にぶち当たってしまった、という話になる訳です。

でまあこの壁、本石町日記さんの言葉を拝借しまして岩盤と申し上げますが、岩盤自体はこれ動きうるものでして、要は超過準備を抱え込むインセンティブを少なくする、というか超過準備を市場に放出するインセンティブを与えるようにすれば良いのでして、それをするにはIOERとONRRPという「超過準備不胎化装置」のパワーを落としてやれば良い訳です。つまり抱えている余剰資金を市場で運用するのと、FEDにぶっこんでおくのでは、FEDにぶっこんでおいた方が信用リスクはないわ事務手間は(たぶん)軽いわ、期中のリスク管理とか面倒なことはないわ、規制資本は食わないわと、いいことずくめなのでして、そこの金利が市場金利とあんまり変わらんというのであれば、多少の金利差だったら何も市場に出すことないじゃんという話になるのですな。

一方、これを撤廃してしまうと今度は大量にある超過準備が運用先を求めて金利をバカスカさげてしまい、究極的には短期市場金利がほぼゼロとかまで下がってしまいますので、今回はこれを5bp下げて様子を見てみた、ということになるかと思います。

まー米国と欧州と日本とインターバンクとか短期金融市場の構造が違うので、同じ話にならないのが難しくて、インターバンク市場の金利コリドアを中央銀行が作ってその中で勝手にどうぞという形が一番やりやすいのですが、問題はこれだけの超過準備が残る中でしっかりした(有効的な)コリドアが出来るのかという話ですが、今回のケースはIOERとONRRPの作りが強すぎた(スタートがハイパー超過準備から始まっているから強く作らざるを得なかったので仕方ないけど)というケースになりますな、いやはや面白い(と思っているのはマニアだけ)。



〇インプリメンテーションノートでつい興奮したのでSEPの話はあっさり味で

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190918b.htm
September 18, 2019
Federal Reserve Board and Federal Open Market Committee release economic projections from the September 17-18 FOMC meeting
For release at 2:00 p.m. EDT

ということでSEPですが
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190918.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190619.pdf(前回)


・経済物価見通しがほとんどカワランチ会長なのですが

時間がないのでHTML版の方から数字だけコピペという安直作戦。

左から2019、2020、2021、2022(今回新設)、ロンガーランの「メディアン」になります。

Change in real GDP
2.2 2.0 1.9 1.8 1.9
June projection
2.1 2.0 1.8   1.9

Unemployment rate
3.7 3.7 3.8 3.9 4.2
June projection
3.6 3.7 3.8   4.2

PCE inflation
1.5 1.9 2.0 2.0 2.0
June projection
1.5 1.9 2.0   2.0

・・・・・・・全然変わっていないどことか成長見通し上がってるんですけど。まあ「金融緩和の効果で見通しが上がった、金融緩和しなかったら先行きは下だった(キリッ)」って言うはずなのでいいんですけどねえ。


・政策金利見通しだがこれはどう見ても勝負が次回FOMC

政策金利見通しですけれども、

ドットちゃんを見ますと・・・・・・・・

今回の年末までの見通し
現状維持:5名
1回下げ:7名
1回上げ:5名

来年の見通し
1回利上げ5名のうち、1回利上げ1名横ばい4名
現状維持5名のうち、1回利上げ2名横ばい2名1回利下げ1名
1回下げ7名のうち、横ばい7名

という感じになっていると思われます(来年のは想像成分入り)。

でもってですね、6月の時点って「1回利下げ1名、2回利下げ7名」(現状維持8名に1回利上げ1名)だったので、見通しと現実の差異及び今回の動向を踏まえますと、6月時点では2回下げまでしか想定が無かったのに、今回になったら、その間に2回下げたから当たり前と言われればそれまでかもしれませんが、利下げの人が出てきている訳ですよ。

ということは、これ10月にまた下げるとなると、やっぱり12月もあるじゃんという話になるので、10月利下げするのかどうかって連続利下げコースになるのか、今のSEPで出ているような様子見コースになるのかの分岐点になるような気がしますがどうでしょうかねえ。

とか言いつつ、今回ってしれっと1回上げ(つまり利下げはケシカランと言っているのか、これから先行き不透明感が解消してくるし経済も良いので戻せると言っているのかは分からんですが)が多いというのもチャーミングで、意見割れてますなあという所です。

とは言いましてもロンガーランの方は、

今回
3.25%:2→1
3.00%:2→1
2.75%:3→3
2.50%:8→8
2.38%:1→1(実際は2.25-2.50です)
2.25%:0→1
2.00%:0→1

と割と盛大に下方シフトしている感じで、この下がり方だと多くの人が匍匐前進(後退?)してロンガーランの方はしらっと下がっているので、まあ強気というのは感じられませんなあと思うのでしょうがどうでしょうか。

ま、方向としてはやはり金利低下の方なのかなーって感じを見せていますが、これ会見内容見てないから何ともですが、10月に問題を先送り(様子見なんだから先送りでもおっけーちゃあおっけーですけどね)している感じはするんですが気のせいかなあ・・・・・・・

#てな訳で会見の冒頭ステートメントとQAは後日






2019/09/18

お題「NY連銀システムレポとな/MPMプレビュー世間話/ドラギ会見続き(ただし少々)」

イイハナシダナーだがほんまかいな・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190918/k10012086841000.html
サウジアラビア エネルギー相「原油供給 通常に戻った」
2019年9月18日 4時10分

『サウジアラビアのエネルギー相は主要な石油関連施設が攻撃を受け、原油の生産能力が半減したことについて施設の復旧作業などを進めた結果、サウジアラビアの原油の供給量が攻撃前の水準に戻ったことを明らかにしました。』(上記URL先より)

まあ急騰したとゆうてもWTI先物で60ドル台な訳で水準的にはそんな話でも無いような気がせんでもないが詳しくないのでよくわからん。


〇ランオフ停止前倒しはただの技術論だったのか(もしれないというメモ)・・・・・・・・

昨日もレポ金利がどうのこうのとかいうのがあったんですけどあんまり真面目にケアーしてなかったらこれはキタコレ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-17/PXZD1F6JIJUW01?srnd=cojp-v2
NY連銀、10年ぶりシステムレポで資金供給−短期金利が異例の急上昇
Elizabeth Stanton
2019年9月18日 0:27 JST

システムレポ懐かしい。というか超過準備ろくに無かった頃は連日のようにシステムレポやカスタマーレポがあって、そもそも日本みたいな精密管理していない(という風に言われておりましたが実際にどうだったのかはそっちに座ったことはないので知らん)ので、FFというのはぶれるのが仕様だけど、そもそもFF自体が限界的な調達部分なのでヘーキヘーキみたいな状況だったのですが。

と思ったら記事にもあったわ。引用順序逆になるけど。

『翌日物システムレポでニューヨーク連銀はプライマリーディーラーに、財務省証券などの担保に翌日物の資金を供給する。ライトソンICAPの調査リポートによると、こうしたオペは「2009年に金融当局のバランスシートが拡大されるまでは」、金融政策を運営する上で日常的な手段だった。』(上記URL先より、以下同様)

ということでですね、まあこの辺はNYのマネーデスクにいないと実際の所よくわからんのでアタクシのようなドメドメおじちゃんが外野から何か言うのも僭越なのですが(と言いながらいうので僭越ですな^^)、まあ上記にあるように、要は超過準備が少ない状況で、財政要因が主だと思うのですが、何かの資金需給要因に狂いが生じて想定外にインターバンクの資金需給が逼迫していて、当局が気が付くのが遅れる(遅れるって言ったって数時間の世界ですが)と市場金利がホイホイ上がりだしてアチャーとなる、とかそういう状況ですな、どうせ米国の場合日本みたいに精密管理してなかったでしょうし、NY連銀に日銀業務局みたいな超絶職人の技があるとも思えんし。

ちなみに状況はブルームバーグさん記事によりますと、

『ニューヨーク連銀は17日、公開市場操作(オペ)を実施し、10年ぶりに翌日物システムレポ(自己勘定による売り戻し条件付き買いオペ)で市場に資金を供給した。米短期金融市場で金利が2日連続で急上昇し、月半ばとしては異例の事態となったことに対応した。』

『ニューヨーク連銀はフェデラルファンド(FF)金利を目標レンジ内にとどめるための同オペを実施。東部時間午前10時10分に締め切り、約530億ドル(約5兆7300億円)を供給したと、声明で発表した。オペは当初、技術的な問題によりいったんキャンセルされた。担保の対象となる証券には、米国債や機関債、住宅ローン担保証券(MBA)が含まれる。』


・・・・でまあ何ですな、本来現状でも超過準備がガバガバにあるはずなのでして、こんな超過準備水準でインターバンクとかレポとかのレートが飛び出してシステムレポ登場という事になっているってのもほえーって感じでして(個人の感想です)、本来は超過準備需要ってのは決済その他諸々の資金繰りバッファー以上には必要にならない、ただし金融危機以前の所要準備カツカツ位の運営状況とは違っている(危機の教訓による超過準備予備的需要の拡大とか流動性規制とかあるんでしょうとは思う)のである程度超過準備は以前よりも残る、とか何とかそういうイメージだったので、ランオフを前倒しで停止して短期市場の金利形成ってどうなるんじゃろうかのうとか思っていたわけですよ。

ところがこの状況ってことですから、実はランオフ前倒しして全然大正解だったという超過準備需要ですよ、ってな話なのですが、まあ以下完全に当て推量になりますが、RRPとかIOERとかがあるので(というか無いと超過準備が不胎化できないので短期金利がゼロに向かって下がってしまうのでこれは必要)、資金余剰主体がそちらに資金をぶっこんでしまって、でもってそもそも論として金利水準も(上がったとは言え昔に比べて)低い中で、そんなに細かい運用するほどのリソースを割く必要もねえじゃんRRPとかIOERとかあるんだから、というような状況が資金余剰主体に発生しますと、そもそも論として資金の出が悪くなるので、資金需給がぶれた時に金利が跳ねやすくなる(まあ金利がドカンと上がって運用ヒャッハーとか言ったって翌日物レポ金利が数日跳ねたことによる超過収益とそこに人員張って約定して管理するコスト考えたらFRBにぶっこんでおけばいいじゃないか無リスクだもの、とか判断してもおかしくはない(個人の妄想です)次第で)。

つーことで、RRPとIOERの超過準備吸収能力が高い(ただしこれ米国だからという可能性もあるのでそのまま日本に適用できるかどうかは別問題、というかたぶん別問題になると思う)ようで、ランオフで超過準備削減して行ったら思った以上に早い時点で超過準備の予備的需要部分(とされる)まで到達したという話なのかなーと勝手に外野から当て推量していますが、これはNYで実際に動かしているマネーデスクに聞かないと実際の所はワカランチ会長でして、しかもマネーデスクって特殊世界にも程がある(個人の感想です)ので、普段その辺を詳しくいじっているとか経験者とかじゃない何とかストがこの流れに乗るしかないとか言ってレポート書いてもだいたいトンチキレポートになってしまいますので、東京か上田八木かセントラルさんレポート出してちょというこの他人依存体質。

まあ何ですな、何だよランオフ前倒しって話でしたが、調節の技術的見地からすれば当たり前だのクラッカーな措置であって、金融緩和とかそういうのとは別問題(だけど金融緩和っぽく見せてしまったのは何気に禍根を残すかも知れない)でしたな、という話だった訳ですな、うんうん。


#雑メモの積りが久々の「動いた」短期ネタでつい興奮してしまいましたサーセン


〇日本のMPMプレビュー雑談&山口(廣秀)元副総裁参戦とな

・何かやたらマイナス深堀的な話が出るのだが何なんスかねえ

ニュースタグに「マイナス金利」というのがあるのがチャーミング。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190918/k10012086851000.html
日銀 きょうから金融政策決定会合
2019年9月18日 4時21分

『世界の中央銀行は米中の貿易摩擦やヨーロッパの景気減速を踏まえ、いっせいに金融緩和に向かい、ヨーロッパ中央銀行は先週、3年半ぶりにすでにマイナスとなっている金利をさらに引き下げる異例の政策に踏み切りました。』(上記URL先より、以下同様)

はい。

『アメリカの中央銀行にあたるFRB・連邦準備制度理事会は、日銀のに(原文ママ)先立って日本時間の19日未明に政策を決定しますが、前回・7月に続いて利下げに踏み切る可能性があります。』

まあそうじゃろな。

『日銀内には、貿易摩擦などの影響で日本の輸出や生産は振るわないものの、景気はなお緩やかに拡大しているとして政策の変更は必要ないという意見もあります。』

ほう。

『会合では直前に決まるFRBの対応や金融市場の動向、それに来月に迫った消費税率の引き上げが景気にどのような影響を及ぼすかについて、慎重に議論したうえで対応を決める方針です。』

うーんこの。

『日銀は、必要であればちゅうちょなく追加の金融緩和策に踏み切る姿勢を示していますが、さらに緩和を進めれば低金利で年金の運用や金融機関の経営に打撃になるといった指摘もあり、影響を抑える方策も議論することにしています。』

ということですが、そもそも影響を抑える方策って追加緩和前提の話でして、うーん何だこのトーンはって感じではありますな。まあアタクシは毎度申し上げておりますように、日銀がヤケクソの連合艦隊海上特攻とか言い出す程度に頭に血が上っているんでしたらば、それはもう冷静じゃない判断をしているんですから知らんがなとは思いますけれども、まー普通に考えたらここでなけなしのマイナス金利深掘りとかやるだけ無駄だしマイナス効果しかないし、だいたいからして(ドラギのおっちゃんも遂に半分降参モードになっているように)金利下げたから物価がホイホイ上がる訳でもないし、円安消費税のコストプッシュだけの物価上昇に持続力が無い上に誰得物価上昇なのは既に実践済みな訳ですから、日銀がアホウじゃなかったら今ここで利下げとかせんじゃろ、としか思えんのですな(個人の感想です)。

海上特攻(なお作戦は失敗)並みのナローパスを狙って「ヤケクソ大緩和」→「ビックリして円安」→「コストプッシュで物価が跳ねる」→「その数字を捕まえて物価目標達成と言い張って政策撤収」とかいう位しかここでちゃんとした緩和をぶっこんで来る理由が読めないのですけれども、まあ「10年金利コントロールについて下がる方については容認して金利低下だけレンジ撤廃」みたいな「ただの現状追認をやったように見せかける程度の何か」というのは施策として出てくるような気がしますが(やらないと輪番運営メンドイですからねえ)、従来の延長線上の追加緩和ってまあ碌な事にはならない(個人の感想です)のですからやらんじゃろ、とは思うもののこんなのが、


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-17/PXYMNDT0AFB601
日銀、マイナス金利深掘り必要になっても逆効果生じずと認識−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2019年9月17日 17:00 JST

→9月会合、日銀内の一部で直ちに追加緩和に踏み切る必要ないとの声
→金利の大幅低下受け「適正なイールドカーブのあり方」も議論へ

結局どっちですねんという表題だが内容を一応確認。

『日本銀行は、今後追加緩和策として現在マイナス0.1%の短期政策金利の引き下げが必要になった場合でも、日本経済や金融市場に逆効果が生じることはないとみている。複数の関係者が明らかにした。』(上記ブルームバーグニュース記事URL先より、以下同様)

ほほう。

『マイナス金利導入から3年半以上が経過し、黒田東彦総裁がマイナス金利の深掘りは追加緩和手段の選択肢の1つとの発言を繰り返していることを受けて、市場でも有力な追加緩和手段との認識が浸透していることが背景にあるとしている。』

何その論理性の欠片もない説明、でちょっと先の方に行くと、

『関係者によると、現在はマイナス金利を前提に金融取引が行われており、日銀は導入当時とは環境が異なると認識している。懸念される金融仲介機能や金融システムへの影響も、日本の金融機関が全体として厚い自己資本を有していることなどを根拠に、直ちに不安定化する可能性は小さいとみている。』

この地域はかつては治安が保たれていましたが無政府状態になって何年もたっており住民も無政府状態を前提に生活しているので治安の回復は必要ありません(キリッ)ってオモロイ事言いますのう(憤怒)。

『具体的には、マイナス金利深掘りの際は長期・超長期金利の一段の低下を回避する方策も合わせて導入し、全体として金融緩和の度合いが高まる方策を模索する見通し。長期・超長期金利が大きく低下する中で、9月会合では「適正なイールドカーブのあり方」も議論される可能性がある。』

って話で、まあこれが偶々先般来のキャンペーン効果で超長期のカーブが立って来ましたね、って認識してるとしたら(実際は欧米大緩和ヒャッハー相場の巻き戻しのせいじゃろうよ)現実にマイナス深堀りして超長期の輪番減らしたらカーブが立つので無問題とか思って居たりするとかなりヤバくて、あたかも最初の航空特攻で戦果が上がったという悪魔の微笑みたいな現象からの航空特攻ぶっこみまくりみたいな大変にあばばばばーの懸念が起きる訳ですな。

マイナス深堀してから日銀手持ちの超長期全部売りでもするなら別だが、単に超長期の輪番停止するくらいでイールドカーブがスティープする程甘いもんじゃない(欧米の緩和モードが正常化モードに戻らない限り一時的な上げ下げは別にして方向としては難しいじゃろうよ)し、大体からしてお前らマイナス金利ぶっこんでとんでもなくフラットニングして慌てた経験わすれたかと小一時間問い詰めたい訳でして、まあアホウじゃなかったら今回は何か現状追認的なやったふりだけで済ますとは思うのですが、さてどうなるのやら・・・・・・・・・


・山口廣秀さんキタコレ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-17/PXYLUSDWRGG101
日銀はマイナス金利深掘りも、これ以上の緩和必要ない−山口元副総裁
日高正裕
2019年9月17日 14:55 JST

ほうほうこれはこれはH高さん。

『元日本銀行副総裁の山口広秀日興リサーチセンター理事長は17日、日銀がマイナス金利を深掘りする可能性があるとの見通しを示した上で、日本経済や金融システムへの悪影響を考えれば、これ以上追加緩和を行う必要はない、と述べた。』

『山口氏は記者団に対し、日銀の今後の金融政策について、物価目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まれば「ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と言っている以上、「かなりの副作用があったとしても、マイナス金利深掘りという道に進んでいく可能性はないとは言えない」と語った。』

『先進各国の中央銀行が金融緩和にかじを切る中、「政策の同一性を考えれば日銀も何らかの手を打ちたくなる状況だろう」と指摘。ただ、「これまでやってきた政策の副作用、日本経済、金融に与えるマイナス効果を考えると、これ以上の追加緩和は必要ないのではないか」とも述べた。』(以上、上記ブルームバーグニュース記事URL先より)

必要はないが今の日銀はタコなのでやる可能性はあるということですねわかります。

でもってそちらの記事にもありますが、昨日日興リサーチさんからこんなのが出ていまして、

https://www.nikko-research.co.jp/release/8199/
理事長室研究レポート「金融リスクと日本経済」を公表

『当社理事長室では、研究顧問の吉川 洋 立正大学学長、山口 廣秀 理事長の2名の共著として、研究レポート「金融リスクと日本経済」をまとめた。本レポートでは、世界金融危機から11年が経過した現在、米国の金融リスクが危機前の水準を超えつつあってバブルが破裂する惧れと、日本経済に及ぼす影響の可能性について指摘している。』(上記日興リサーチセンターHPより、以下同様)

ということで、『サマリー』というのがありまして、

『現在米国では、資産価格が高騰、企業債務も拡大するなど、金融リスクが世界金融危機、リーマンショック前の水準を超えつつあり、来年にかけてバブルが破裂する可能性がある。その場合、日銀の超金融緩和政策もあって、金融機関の収益力や体力がかなり低下し、海外からのショックに対し脆弱になっている日本においては、受ける影響が世界金融危機時を大きく上回る可能性がある。』

キタコレ。

『こうした中で、日銀の追加緩和が行われるとすると、金融機関の体力が一段と脆弱化し、危機への対応力も弱まる可能性があることから、日銀に対しては、幅広い見地に立った政策論が求められている。』

という要旨なので、「マイナス金利深堀りも」という記事のヘッドラインは微妙にどうなのよという感じではありますが、本チャンのレポート(なおPDFで3M以上あります)はこちらです、まあご覧あれということで。
https://www.nikko-research.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/frk_article_01.pdf



〇想定外にネタが打ち込まれてしまったのでドラギのおっちゃんの会見の時間がががが

ええ段取りというものを考えておりませんですすいませんすいません。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190912~658eb51d68.en.html
PRESS CONFERENCE

Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 September 2019

・財政出せや話は2発目の質疑応答でも登場

昨日ネタにした最初の質疑応答(答えの方)がクッソ長くて、これA4紙に打ち出すと冒頭ステートメント含めて8枚組になると思うのですが、4ページ目の真ん中まで進んでしまうのですな。でもって次の質問。

Q:『Let me take your point on the length of the programme and also how long you think those measures are needed because I think one of the surprising elements of the proposed package was that the APP comes in with an unlimited amount of time right, so what are you expecting how long does this need to prevail in order to really get inflation back to target and in your experience how much effort does the Central Bank need to do in order to re-anchor inflation back at where you want to have it?』

うーん確かに「with an unlimited amount of time」ではあるのだが、政策金利の引き上げを行ったらとっとと停止するとも書いてあるのですが、と思いながら質問の後半を読んでいると、「でもって物価が目標に戻るために他に何か追加することはないんですかね」とか微妙な切り口ですな。

『And then another question is did you discuss also to move the marginal lending rate into negative territory and is that an option which could be a next step and why didn’t you do it, enlarging the corridor now? Thank you.』

ついでに後半の質問も。MROと間違えたんじゃないかという気もするが、いやお前限界貸出制度の金利をマイナスはさすがにないだろうと思いました。

A:『President Draghi: Thank you. As far as the first question is concerned we really think this package is adequate to re-anchor inflation expectations and by the way again if I may repeat myself, if fiscal policy had been in place, or would be put in place, the side effects of our monetary policy would be much less, the action of our decisions today would be much faster and therefore the need to keep in place some of these measures would be less.』

冒頭ステートメントの最後の部分、最初の質疑での回答に続いて、ここでも「財政を出してくれると物価目標の達成が早まるし、金融緩和政策の副作用も軽減できるんですが」(|д゚)チラッ)ってな発言がぶっこまれておりまして、勝手な妄想ですけど(昨日も申し上げましたが)金融政策に対する過度な期待を下げてラガルドが運営をしやすくさせようという親心(?)があってこういう話をしているのかも知れませんんが、まあドラギマジックもおしマイケルという感じの黄昏感の漂う財政発言ですわなあとも思いますし、そらまあさすがに市場もそういう反応する向きが出るっしょ。

『So we believe this package to be adequate and your other question was about whether we discussed, no we didn’t, we didn’t discuss changing the marginal lending rate, no.』

まあMROもそう簡単にはマイナスにしないと思いますけどどうなんでしょうかね。


・QE導入に対する反対論はどうだったのよ

最初の質問でも質問されていましたが案の定追加質問。

Q:『Mr Draghi, going into today’s meeting how many members early on in the meeting were actually against quantitative easing even though you didn’t take a vote in the end, and did you also discuss higher amounts of monthly purchases before your final decision?』

A:『President Draghi: I’m sorry the answer is that I can’t tell you the numbers, we never did it, we’re not going to do it, just to let you know that there was no need to take a vote as I said because there was such a significant majority. The second point is no, we didn’t discuss it.』

額は端から20ビリオンでしたし今回のQE賛成は「such a significant majority」だったそうです。まあこの辺は物凄い後日にならんと分からんでしょうが、答えがあっさり味なのは逆に揉めたのかなとか邪推するくらいに心は濁っているアタクシ。


・QE自体は従来通りの路線でっせという質疑

Q:『Can you address this issue of how long the Asset Purchase Programme will last, the markets seem to be assuming that this is QE ad infinitum; can you also talk about the make-up of the QE, the type of assets that you’re planning to purchase and can you also talk about helicopter money and what’s your view on whether there could in the future be a need for direct action?』

今回の施策は長く続くと見られていますが、他の資産購入とかの可能性などの模様替えの予定は?だそうで。

A:『President Draghi: OK there was no discussion about the type of assets meaning that by and large it’s going to be the same we purchased in the past. Now with helicopter money I’ve got to be very cautious because last time I was asked this it was about a year, year and a half ago, I said well it may be an interesting thing but we haven’t discussed it and immediately everybody said: “oh they are talking about this,” it has not been discussed, it is not an option that we considered.』

there was no discussionってホンマカイナという感じはしますが、QE自体は復活させましたが内容自体は前回のとまるで同じ物件ということで、途中で買入しようと思っても物理的にリームーとかいう事になった場合はまたすっとぼけるような雰囲気が漂っていますが、まあこうせんとドイツ様が諒承してくれなかったんでしょとは思われます。


でもって質疑はさらに続く(なお次の質問はいきなりワロタんですけどね)のですが誠に恐縮ですが時間ががががなのでFOMCとか日銀とかがあまり派手な政策を出さないことを祈りつつ後日参りますが、まあ最初の長広舌とこの補足あたりでもそれなりの情報量だとは思います(と見苦しく言い訳)、はい。







2019/09/17

お題「ECBレビュー雑談とかドラギの質疑の一発目が無駄に長いのでそれを鑑賞とか」

次から次にネタが投下されますなあ(とほほ)。
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL3N2673LZ?il=0
2019年9月17日 / 05:38
米国株式市場=ダウ142ドル安、サウジ攻撃嫌気 エネルギー株は堅調

今後何がどうなるのかよく分からんので判断致しかねますが(誰ですかそこ連休明けで頭が寝てるだけとか事実を指摘する人は!!!)。


〇てな訳でECBレビューの続きである

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190912~658eb51d68.en.html
PRESS CONFERENCE

Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 September 2019


・結局のところ評価としては「しょぼいのをかき集めて数で勝負」というアイドル(爆発音)

見た瞬間は読む方に唸っておりましたが、まー結局その後の反応とかを見ますと、今回のパッケージは「一つ一つは事前予想の下限オブ下限の措置」になっているものを数出してセット販売することによって目くらましして勝負という結果、しかも「包括パッケージ」ってまさにどこぞの日本銀行(日銀の包括緩和は「comprehensive easing」でした)を思い出させる名前になっていて、(ちなみに冒頭ステートメントで「today’s comprehensive package of monetary policy decisions」とか説明しているのは金曜にネタにした通り)ECBの手詰まり感が如実に出てきた、という感じを日銀政策を趣味で見物し続けておりますアタクシなんぞは思ったりする訳ですからして、まー何ぼエラソーに「追加の手段はいくらでもある(キリッ)」とか言っても限界キタコレという話になって来るでしょうな。

まあ落ち着いてつらつら今回ぶっこんだ理由を考えてはおったのですが、もちろんその前に鉦や太鼓で大宣伝してしまっている以上何もしないというのもちょっと難しかったとは思いますが、(一つ一つのパーツは市場が事前に予想していた最低限に届くか届かないか、という感じの「この位は何ぼ何でもやるじゃろ」パックになっていたということで)ぶっこんできたのが全体的に色々なものなのですが全部しょぼいという物件で、しかもドラギのおっちゃんもう任期近いのであって、ラガルドの前にここまで路線引くか普通、というのもまあ不思議。

ただですな、勝手に想像するに、QEについてあれだけ悪態ついてるドイツ勢を通すためにキャピタルキーとかの部分をいじらない、かつ「利上げしたら速攻で停止」条件までつけて、「200億ユーロ」という市場予想の中では最低限の水準(だと思った)の物をぶっこむ、というような感じで、今回はとにかく追加緩和に対する北欧州軍団との妥協の産物というか、とにかく中身はともかくメニューだけは揃えて、そのためには緩和反対(特にQE再開に)のドイツ様を中心とするところを纏め上げるのはラガルドさんじゃあ荷が重いから、ドラギ俊彦先制のインチキパワーでインチキパッケージを作っておこう、ってな所だったのではないでしょうかねえ、よー知らんけど。

そう考えますと、冒頭ステートメントの最後にあった例の「財政出せや」というお話、再掲しますと、「In view of the weakening economic outlook and the continued prominence of downside risks, governments with fiscal space should act in an effective and timely manner.」ってのが(金曜日にネタにしましたように)前回の冒頭ステートメントで入っていなかった文言で、あたくしはこれ見て瞬間の感想は「ドイツ向けに財政出してちょ発言」と思ったのですが、さらによくよく考えて見ますと、というか市場がそういう受け止めしておりましたのが「金融政策単独での限界があることをドラギが指摘」という話で、まあだから全力フルスイングしても別に球は飛ばない(=物価が2%に向けてホイホイ上昇しない)とくれば、そんなに無理くり追加緩和する意味ってあるのかね、という話になりますな。

というのもわざわざぶっこんできたのにも、ドラギ先生のラガルドに対する配慮というか、とにかくドラギ先生のインチキマジックで今まで引っ張ってきたのに対して、ラガルドさんは強引にECBの議論を方向性もって自分から引っ張るという方でもなさそう(コンセンサス重視っぽいと聞いているのが違ったらゴメンやで)ですし、だいたいからしてドラギのせいで金融政策に対する期待度が無駄に高い状態が続いているので、すこし肩の荷を軽くしてさしあげないと後任しんどかろう、とか考えていたのかもしれないなあ、などと思ったりもしておりましたですわ。


というのは兎も角としてQ&A(当然ながら明日に続く予定)です。Q:A:はアタクシが補記しています(実際には質問がゴシックで答えが普通の自体)。


・一発目の質問が「ところでQEってドイツ様が全力で反対してませんでしたっけ」である

最初の質疑やたら長かったのだがまず前半。

Q:『The question, my first question would be about the dynamic in the room because going into the meeting we’ve seen quite a vocal opposition, especially to the restarting of the QE, so probably me and the others here would like to know how much support each of the instruments that were eventually adopted got and whether, how much support was there for it?』

ということでドイツ様はどうだったんでしょうというのが前半で後半は、

『 My second question is specifically about your Asset Purchase Programme (APP) because it’s effectively a programme that’s open-ended, it starts from November which basically means you will end up buying bonds or assets for months or years, the question is do you have the space to do it, have you considered changing limits or adding other assets to the programme? Thank you.』

APPはオープンエンド(実際は利上げしたら速攻で止めるのでそれはオープンエンドとは言わんだろうし、そんなこと行ったら期限切ってないのは全部オープンエンドじゃんなのですがそれはそれとして)ですが、買入する国債の物理的な限界あるんちゃいますかという質問な。


でもって答えなのだかこれがクッソ長い。

A:『President Draghi: Thank you. If I can, before giving you the sort of the chemistry of the meeting let me just spend a word trying to explain what we have actually done. I think as I kind of sketched in the Introductory Statement there were three elements that prompted action.』

まずはその前に今回の政策決定の3つの要因の説明とな。

『Along the lines, by the way, that you would find in my Sintra speech.』

シントラのスピーチ、これも以前はただの中銀が夏に向けてリゾートで英気を養うだけの物件だったのに毎回ドラギがここでキーノートスピーチをおっぱじめやがるもんだから重要になってしまいましたな。

『First of all after, and again if anything after Sintra the case became even stronger because the protracted slowdown in the eurozone economy is actually more marked than expected, this is the first element.』

ユーロ圏の減速がより鮮明に見通せるようになってきました。

『The second element is the persistent and the persistence of downside risks of trade nature but also geo-political nature in the eurozone.』

貿易問題と地政学問題のダウンサイドリスクが継続的にあること。

『And by the way our baseline scenario that actually contains the third reason for acting, namely the downward revision in projected inflation with the inflation expectations at this low level and the current underlying inflation being muted.』

実際のインフレとインフレ期待が中々上昇しない状態なこと。

『This baseline scenario is also relatively favourable because it doesn’t contain the case of a hard Brexit for example, the probability of which has gone up over recent time, and it doesn’t contain some of the trade measures, trade escalation at least, some of the trade escalation that’s taken place since August. 』

『So with this relatively favourable baseline scenario there was a downgrade in inflation and inflation expectations. And so that’s over the whole horizon. And that’s what prompted the measures we’ve taken and let me just spend a word explaining them and then I will answer your points more specifically.』

という状況はインフレ以外の所は多少良くなっているのですが、如何せん物価の方がアガランチ会長状態が鮮明。

『First of all, the lowering of the DFR, the Deposit Facility Rate, together with the reinforced forward guidance operates all throughout the yield curve, especially in the short- and the medium-term segments. And then you see that there is a different forward guidance today, it’s a strengthened state-dependence, there is no more calendar-dependence and this should give a pretty good guidepost, pretty clear guidepost for rate expectations by linking our policy to more stringent conditions for the inflation outlook.』

政策の説明がおっぱじまるが利下げの次にガイダンスの話になって、「it’s a strengthened state-dependence, there is no more calendar-dependence」と日付ベースにしないで、「strengthened state-dependence」とは言ってまして、本人の説明の中ではこれが「this should give a pretty good guidepost, pretty clear guidepost for rate expectations by linking our policy to more stringent conditions for the inflation outlook.」とは言っているのだが、それはハト派が牛耳っている時であれば確かにガイダンスを強くしたように見えますが、こんなの「by linking our policy to more stringent conditions for the inflation outlook」という物件なのですから、タカ派が主導権を握れば「物価見通しに自信が出てきました」とぶっこんでしまえば(その時の物価水準があまりにも低ければ別ですが、そもそもそんなときにはタカ派といえどもそう簡単に緩和解除には動けんわな)良いので、実際の所、「経済の特定データに紐付きになっていないベースのコミットメント」というのはそれ「強力な緩和政策が必要と見込まれる時期まで強力な緩和政策を行います」って言ってるのとほとんど変わらないのであって、メンバー構成の変化次第で何とでもなってしまうものだと思うんですよねえ。

ところで質問にあったAPPの話が始まりませんが続き。

『Over our projection horizon, projected inflation will not only need now to converge but also as I think I read in the Introductory Statement, also stabilise around a level sufficiently close to but below 2%. The reference to levels sufficiently close to but below 2% signals that we want to see projected inflation to significantly increase from the current realised and projected inflation figures which are well below the levels that we consider to be in line with our aim.』

『Our guidance would remain forward-looking but at the same time it contains elements that protect us against the risk of over-reacting to transitory shocks to inflation as well as against forecast and measurement errors, as we would emphasise that convergence should be robust, that’s important, and also important is the reference to underlying inflation that will have to increase to ensure that the pick-up in inflation is backed by a sustained build-up of domestic price pressures. I think that’s the explanation of the first few elements of today’s decision.』

何か物凄い勢いでガイダンス文言の説明をしていますが、一時的に物価が何らかのショックで上ぶれしたからといって直ぐに政策を変更しないよ、「the reference to underlying inflation」というのは域内の価格上昇圧力が持続的かつしっかりとしたものであることが必要だよ、とガイダンス文言の変化をしつこく説明しています。

『Now I can also give you an explanation of why the restarting of the APP is appropriate but we can defer this to the next question perhaps.』

やっとAPPに到着・

『And let me now move to the other point, your first question was about the chemistry of the meeting. First of all let me start from one thing about which there was unanimous consensus, unanimity, namely that fiscal policy should become the main instrument it’s quite clear that in order to raise demand in an effective… you’ve seen the language of the Introductory Statement after many years I think of being more or less the same about fiscal policy that has changed and I think there was complete agreement about that. And if you see also if you compare what’s happening now that jurisdictions where inflation rates are higher and you look at monetary policies that are broadly comparable in terms of easing capacity, you see that fiscal policy did play in these jurisdictions a much more active role than it played here and I’m talking now not only about this year, last year, I’m talking about the last six, seven years. 』

2番目の文章がピリオド無しで流れるもんだから切りようがないのですが(涙)、APP復活に関しては全員一致のコンセンサスがとれておりませんということで、財政政策が需要を喚起するのに有効であっても、それがメインのツールになり得るかという問題においても見解の不一致がありました、から何か財政を出す話なのか構造改革が重要なのかというのが判然としない謎の演説(謎なのはアタクシの語学力の問題)になっておりましてさらに続く。

『Almost all the things that you see in Europe, the creation of more than 11 million jobs over a short period of time, the recovery, the sustained growth for several quarters were by and large produced by our monetary policy. There was very little else, of course there were structural reforms in some countries, in some countries.』

『So now it’s high time I think for the fiscal policy to take charge.』

ということで、さっきネタにした冒頭ステートメントの話の続きになっているようだが、これまでは主に金融政策一部は構造改革で経済を喚起しておりましたが、ここからは財政でっせとか言っているのでAPPとまるで別のお話になっておりますが、まあこれは普通に読めば「金融政策の限界を示唆しました」って話になるから追加緩和おかわりという話には成り難くなるじゃろ、これが一発目の質疑ですからね。

『Second, there was a broad agreement on the parts concerning forward guidance and the rate cut and the reinvestments and the TLTRO.』

APP以外は幅広い合意があった、ということでしてまあ利下げもDFRのみ10bpですからねというのと、TLTROに関してはドイツ様もラウテンシュレッガー理事のインタビューよろしく賛成なので問題はAPP復活ということですの。しかもこの「余裕のあるところは財政出せ」攻撃に関してもドイツ様的にはいろいろとヤヤコシイと思われますので、その辺との絡みで揉めた挙句の妥協の産物なんでしょうな。

『So you can see that that part was by and large agreed. And then there was of course more diversity of views as it was vastly pre-announced by statements on all newspapers, wires, television and so on, there was more diversity of views on APP, but then in the end the consensus was so broad, there was no need to take a vote.』

「there was more diversity of views on APP, but then in the end the consensus was so broad, there was no need to take a vote」ってんですから強行したのではなくドイツ様との妥協が成立している訳ですな、この説明を字面通りに読みますと。

『So the decision was in the end assured by a very broad consensus, as I said there was no need to take a vote, there was such a clear majority there. So I will say one word about where the main differences actually lay in the discussion. I think there was again full agreement about the need to act, but the difference of views were about the severity of the outlook.』

『In other words the majority of the Governing Council believed that the outlook was deteriorating as I said in a way greater than expected and the revision in the growth and inflation projections granted full action. Others viewed this deterioration with a little more caution. The second point was about the need to act now. As usual you have always views that say let’s wait and see and the Governing Council decided to act now this time.』

先行き不透明なのに関してはコンセンサスがあって、緩和実施すべきかに関しては待つという意見もあった。

『And the third is about the appropriateness of the APP, by the way one reason to also act now concerns inflation expectations that we’ve seen not only the ones that are now at low levels but we see that inflation expectations are not de-anchoring but are re-anchoring at levels between zero and 1.5% which is not our aim. That’s why the Governing Council, in full consistency with its mandate, did decide to act now and the package is quite powerful both in the short run but also in the long run in designing action over the coming months.』

『So the appropriateness of these instruments because some think that the APP is appropriate only for risks of deflation, others thought that the level of interest rates is already so low that it doesn’t need action on the APP, but the majority of the Governing Council believed that action was warranted and so that was the chemistry basically.』

APPに関してはラウテンシュレッガー理事のインタビューよろしく「デフレリスクに対処するなら必要だがこの程度でやるかヴォケ」というのと、必要ですよ今のままではインフレ期待が1.5%程度の所でアンカーされてしまいますよアカンでしょというのがいまして結果後者になったと。

『Now the limits, there was no appetite frankly to discuss the limits for one good reason, because we have relevant headroom to go on for quite a long time at this rhythm without the need to raise the discussion about limits. I think I will stop here.』

買入国債の物理的なリミット云々というのはそれ自体が本質ではなくて、だから導入しないという訳ではないそうな。

という最初の質疑を引用してうだうだ書いていたら時間が無くなってしまった(だから連休中にやっておかないと、と思っていたのだが何せぐうたらなもんで)のですが、この先引用していると微妙に切れ目がない質疑応答の連歌みたいになっているので今日は冒頭一発目で勘弁。


〇あとこんな解説も出ているのだが・・・・・・・・・(レーン理事の解説とな)

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2019/html/ecb.sp190916~ca77017a8e.en.html
Reflections on monetary policy
Keynote speech by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, at Bloomberg, London, 16 September 2019

キタコレということで、最初に

『I will divide this speech into two parts. First, I wish to review the current economic and financial environment. Second, I will discuss the monetary policy decisions taken by the Governing Council in last week’s meeting.[1]』

というどう見ても(特に後半が)現世利益です本当にありがとうございましたというのがぶっこまれておりまして、これは昨晩ぶっこまれたものなので当然斜め読みしかしていないのですが、何か経済の状況の話の部分で図表が無駄(かどうか知らんが)に多い作品になっております。これもまたFOMCの前に(って今日明日じゃん)。










2019/09/13

お題「パッケージは出してきたが、想定されたものをトッピングしたけどメインディッシュは何なんでしょ」

昨日は政策決定見ようかな〜とか言ってるうちにお時間が来たので公表分をみたら前回の手直しモードがチマチマと出ているのでこれは「前回と比較」入れた方がわかりいいわ、などとチマチマやってたらドラギさんの落語会でしたが、落語会を最後まで聞いた日には寝不足になるのがアタクシの仕様なので、決定内容の公表文は前日政策出た直後に読み、会見に関しては(一番最初の質疑だけ聞いたけど)頭の部分を聞くともなしに聞く、という状況からスタートでありまする(と言い訳言い訳)

てな訳でドラギ大先生最後のイリュージョンショーになるのでしょうか・・・・・・・・・

〇まずは決定内容公表文

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190912~08de50b4d2.en.html
Monetary policy decisions
12 September 2019

ちなみに前回の声明文とも比較してみるので
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp190725~52d3766c9e.en.html
25 July 2019

は「前回」という形で引用します。

・預金ファシリティ▲0.40→▲0.50だがMROの0.00は維持しましたな

『(1) The interest rate on the deposit facility will be decreased by 10 basis points to -0.50%. The interest rate on the main refinancing operations and the rate on the marginal lending facility will remain unchanged at their current levels of 0.00% and 0.25% respectively.』(今回)

『At today’s meeting the Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.40% respectively.』(前回)

まあここは前回を出さなくても見りゃ分かるのですが、今回は衆目の一致する通りに預金ファシリティ金利だけ10bp下げてきて、▲0.50−0.00-0.25のコリドアにしてきました。

でもってこの金利を何ぼにする、というのには金利水準のフォワードガイダンスというのが付随しております。こちらにも変化があります。


・フォワードガイダンスにカレンダーベースを外し、見通しベース+実際の物価ベースのガイダンス(ただし・・・・・)

『The Governing Council now expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』(今回)

『The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels at least through the first half of 2020, and in any case for as long as necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to its aim over the medium term.』(前回)

こちらがフォワードガイダンスなのですが、前回までは「時間を明示しつつ「necessary to ensure the continued sustained convergence of inflation to its aim over the medium term」という条件をつけていました。このため「ステートコンティンジェントなガイダンス」というような言い方をしながら時間もあるでよというステイタスで来たと思います。実際の条件ベースの部分は「中期的に物価が目標水準に継続的、安定的に到達するという状況が起きるのに必要な」時期までは継続します(2020年前半、というのに被せてきているので2020年の期限以降はどうなのか、という事も含めた話ですの。)

でもって今回は時間は特段書かずとなったので純粋にステートコンティンジェントベースになりまして、会見の中でもどっかで「タイムディペンデントのガイダンスではない」とドラギが言っていた筈です。その文章(現状の金利水準を維持あるいは追加利下げを行う時期)は、

「until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics」

って元々長いガイダンス文言でしたが、まあ今回は更に長い長いという感じでして、こういう政策決定における条件みたいなのは、基本的に文章が長いものが悪文というのが洋の東西を問わず仕様となっておりますので(自分にブーメランが刺さっている気がするが気にしないことにする)、更に悪文になりやがったという感じです。

でもってですね、これをアタクシの知能で訳しますと、

「物価の見通しが見通し期間のホライズンの間にロバストかつ十分に物価目標水準に達することが見込まれ、その状況が基調的な物価の動向にも継続的に示される状態になるまで」今の金利またはより低い政策金利水準を維持する、

ということになっておりまして、見通しベースの文言のトーンがちょっと強くなったのは強化って話ではありますが、まあ見通しの所って所詮は見通しなので、もし政策金利を上げよう(または上げないとヤバそう)というような状況になった場合、見通しベースの部分というのは所詮は鉛筆舐め舐めなので意思次第というのは実はあるし、しらっとカレンダーを削除しているので、今の時点では当然これガイダンスを強化しているのですが、将来的に逃げたいときに屁理屈ができるようになっていると思うの。

まあ今回のガイダンスで目立つだろうなあというのは後半の「such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics」という部分ではないかと。

こちらは「その確固たる物価見通しが現実の基調的な物価の推移にも継続的に示されていることが必要です」ってな話なので、一応は「今はこの通りの物価だがそのうち上がってくるのは自明おぶ自明なので利上げするよ」とは言えないような仕様になっていて、物価がある程度確りとした推移になっていないで利上げをするな、という話ではあるのですが、じゃあ基調的な物価とは何ぞやみたいな論点があるので、まあ解釈次第で引っくり返そうとすると、「基調的な物価」とECBが認識しているもの(という事になっているもの)が下向きショボーンの時には利上げはしませんよって位でその辺上向きだとか言い張れるようであれば(近い将来に現実的なことにはならんでしょうが)遠い将来に何かタカが正義みたいなことになった時にはしらっと引っくり返すことが可能は可能という感じですけれども現世利益的には今気にする話ではない。

という細かい話(細かくはないけど)はさておき、今回のステートコンティンジェントベースに関しては、インフレ動向に継続的に示されていないとアカン、という形で実際の物価にも紐付き(ただし紐はそんなに強くない)ので、結局のところガイダンスは強化しました、ということにはなりますが、この強化した部分はその気になればかなり空文化しやすい、ただし物価が弱い時は無理、という仕様になりましたな。


・APP200億ユーロってAPP入るならそんなもんとかいうコンセンサスでしたっけ

『(2) Net purchases will be restarted under the Governing Council’s asset purchase programme (APP) at a monthly pace of ユーロ20 billion as from 1 November. The Governing Council expects them to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』(今回)

これはAPP再開。ドイツ様が全力で反対していましたが無事(かどうか知らんが)打ち込んできました。月200億ユーロの買入を11月より再開ですが、こちらに関してはその期間について「expects them to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates」とありますので、政策金利の引き上げまでは継続、引き上げたらさっさと(拡大の方は)終了。

まあドイツ様お怒りのAPPちゃんですが、終了タイミングが割とあっさり味で「利上げしたらとっとと撤収」ということになっているのはドイツ様とのギリギリの妥協ラインなんでしょうかね。


・償還再投資に関する部分は同じ、そらまあ当たり前だが

『(3) Reinvestments of the principal payments from maturing securities purchased under the APP will continue, in full, for an extended period of time past the date when the Governing Council starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』(今回)

『The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the asset purchase programme for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』(前回)

償還分の再投資に関しての文言は同じ。まあそらそうだ。


・TLTRO3の手直しは色々といじっておる

『(4) The modalities of the new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) will be changed to preserve favourable bank lending conditions, ensure the smooth transmission of monetary policy and further support the accommodative stance of monetary policy.』(今回)

TLTRO3に関しては手直しの実施。6月にぶっこんだときの条件はこちら。
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.pr190606~d1b6e3247d.en.html
ECB announces details of new targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III)6 June 2019

『The interest rate in each operation will now be set at the level of the average rate applied in the Eurosystem’s main refinancing operations over the life of the respective TLTRO. For banks whose eligible net lending exceeds a benchmark, the rate applied in TLTRO III operations will be lower, and can be as low as the average interest rate on the deposit facility prevailing over the life of the operation. The maturity of the operations will be extended from two to three years.』(今回)

『・TLTRO III interest rate will be set at 10 basis points above the average MRO rate over the life of each operation

・For counterparties exceeding their lending benchmark a lower interest rate will apply, which can be as low as the average deposit facility rate plus 10 basis points』』(6月TLTRO3導入時)

『They will start in September 2019 and end in March 2021, and have a maturity of two years each.』(6月TLTRO3導入時)

とあったので、金利に関してはTLTRO2の時のスプレッドと同じいになりましたな。MROの金利は変わってないけど預金ファシリティは下がったのでそっちの金利が適用される部分はその分更に下がっていますな。でもっていずれも期間が2年から3年になりました、ということでMROと預金ファシリティからのスプレッドはTLTRO2まで緩和、期間は4年よりは短いけど2年が3年になったので緩和。


・中銀当座預金金利の2層化

『(5) In order to support the bank-based transmission of monetary policy, a two-tier system for reserve remuneration will be introduced, in which part of banks’ holdings of excess liquidity will be exempt from the negative deposit facility rate. 』(今回)

中銀当座預金金利を2層化しますという例のお助け策。欧州の場合はもともと所要準備が多かったりするので中銀当座預金残高がほかの域内に比べて大きく、しかも盛大に全部マイナス適用だった気がするので、その分のお助けではあります。

とは言いましても、これってはっきり言ってお為ごかし政策でして、市場金利が低下した結果として、貸出金利自体がドドーンと下がるとかいう話になると、こんなところで雀の涙(よりは額があると思う)ほどの軽減されても、本業のローン資産の金利低下圧力がバンバンかかるというような状態になると、まあ中央銀行の保身行為以外の効果と限界的な部分での費用削減的な話になりますな。

これによってそこまで銀行ローンの金利低下(というかスプレッド縮小というか)圧力が掛かるのかそれともそうでないのか、って話になると、欧州の場合どうなんでしょというのにそこまで詳しくはないのでパスしておきます。


・詳細はのちほどといういつもの奴

残りの部分はそういうことで、

『Separate press releases with further details of the measures taken by the Governing Council will be published this afternoon at 15:30 CET.』

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:30 CET today.』


〇ドラギのオッチャンの会見はもうQAが出ているが冒頭ステートメントで勘弁してつかあさい

会見の放送は
https://www.ecb.europa.eu/press/tvservices/webcast/html/webcast_pc_youtube.en.html
YouTube live streaming of the press conference
12 September 2019
Press conference following the meeting of the Governing Council of the European Central Bank on 12 September 2019, starting at 14:30 CET:

なお8分後から開始しますので最初の所はすっ飛ばして聞いてくらはい。

今回はすんばらしいことにQ&Aまでこの時間にぶっこまれております。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190912~658eb51d68.en.html
PRESS CONFERENCE

Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 September 2019

QA付のテキストをとっとと出してくれるECBの心意気に感動したが、せっかく出してくれているのにこちとら寝起きモードなので(おっちゃんの会見聞くには聞いたのですがQA始まる頃に睡魔によってお布団に拉致されてしまいましたので、汗)冒頭ステートメントをば。

INTRODUCTORY STATEMENT

『Ladies and gentlemen, the Vice-President and I are very pleased to welcome you to our press conference. We will now report on the outcome of today’s meeting of the Governing Council.』

これは時候の挨拶なのでスルー。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we have conducted a thorough assessment of the economic and inflation outlook, also taking into account the latest staff macroeconomic projections for the euro area. As a result, the Governing Council took the following decisions in pursuit of its price stability objective.』

今回示されたスタッフの見通しも参考にしつつ、経済と物価の見通しを検討したところ、以下のような施策をぶっこんで物価安定目標達成に向けた措置をとることにした、

・各種施策に関しては声明文の内容を淡々と読んでるだけのようです

『First, as regards the key ECB interest rates, we decided to lower the interest rate on the deposit facility by 10 basis points to -0.50%. The interest rate on the main refinancing operations and the rate on the marginal lending facility will remain unchanged at their current levels of 0.00% and 0.25% respectively. We now expect the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until we have seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within our projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』

さっきの声明文での説明通り。

『Second, the Governing Council decided to restart net purchases under its asset purchase programme (APP) at a monthly pace of ユーロ20 billion as from 1 November. We expect them to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of our policy rates, and to end shortly before we start raising the key ECB interest rates. 』

APPに関しても声明文通り。

『Third, we intend to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when we start raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

バランスシート維持のための償還再投資に関しては同じ文言、利上げ後も望ましい流動性供給と金融緩和効果を出すために出来るだけ長い期間(というのはガチのインフレ懸念とかになったら別よ、という話ですわな)継続しまっせというお話。もちろんこれも声明文通りですがさっきスルー気味だったので。

『Fourth, we decided to change the modalities of the new series of quarterly targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) to preserve favourable bank lending conditions, ensure the smooth transmission of monetary policy and further support the accommodative stance of monetary policy.』

TLTRO3の使い勝手を向上させますという施策はドイツ様もニッコリの施策なのでして、具体的な話に関してはこれまた声明文の方にあるとおり。

『The interest rate in each operation will now be set at the level of the average rate applied in the Eurosystem’s main refinancing operations over the life of the respective TLTRO. For banks whose eligible net lending exceeds a benchmark, the rate applied in TLTRO III operations will be lower, and can be as low as the average interest rate on the deposit facility prevailing over the life of the operation. The maturity of the operations will be extended from two to three years.』

『Fifth, in order to support the bank-based transmission of monetary policy the Governing Council decided to introduce a two-tier system for reserve remuneration in which part of banks’ holdings of excess liquidity will be exempt from the negative deposit facility rate. 』

当座預金の階層化ですが、「in which part of banks’ holdings of excess liquidity」についてマイナス預金金利の適用を行いません(ゼロ金利にするんじゃろ)、といっていまして、じゃあそのエクセスリクイディティって何だよというのはあるのですが、詳細の方もあるのでそっち見ないと。

『Separate press releases with further details of the measures taken by the Governing Council will be published this afternoon at 15:30 CET.』

会見後に出ますよ、ということで出ております。のちほど。


『The Governing Council reiterated the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time and continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』

そらまあ出尽くし感出されたら困りますからね。一応当座預金の2層構造ぶっこんでいるのは「次に更に利下げができますよ」って話のためにぶっこんでおりますので、まあ普通にヲチャーやっていればああ一応次の利下げも可能なのね(やるとは言っていない)となって打ち止め感は出ないのですが、従来この話しているので、このパラグラフは削除してしまうと無駄な引き締めバイアスを掛けてしまうので、そりゃまあ残すわなと。


・政策導入判断に至った経緯の説明

次がそういう説明です。

『Today’s decisions were taken in response to the continued shortfall of inflation with respect to our aim. In fact, incoming information since the last Governing Council meeting indicates a more protracted weakness of the euro area economy, the persistence of prominent downside risks and muted inflationary pressures. This is reflected in the new staff projections, which show a further downgrade of the inflation outlook. 』

背景説明は従来通りで、物価ちゃんが中々アガランチ会長なのが続いておってケシカランというのと、欧州経済の弱い兆候、下方リスクの存在、物価見通しが中々あがってくれないこと、になっています。

とは言いましても・・・・・・・・

『At the same time, robust employment growth and increasing wages continue to underpin the resilience of the euro area economy. With today’s comprehensive package of monetary policy decisions, we are providing substantial monetary stimulus to ensure that financial conditions remain very favourable and support the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, the sustained convergence of inflation to our medium-term inflation aim.』

こっちの説明もこれまた従来通りで、雇用のロバストな伸びとお賃金の上昇によって欧州経済がレジリアントな状況が継続している(ルー大柴状態ですいません)でもって本日の包括的なパッケージが今後効果を出してくるでしょうということ。

しかしまあ何ですな、この「comprehensive package of monetary policy」とか言うのを見ますと「包括緩和」とかいう言葉を思い出してしまう程度の記憶は残っているおじいちゃんですが、今回の政策決定もとりあえず色々なのを出して皿数だけは稼いでいるのですが、メインデッシュは何ですかと聞くとちょっとうーんとなってしまう感じで、その辺りも含めて「コンプリヘンシブ」ですかそうですかってなサムシングは感じます(個人の感想です)。


・以下経済見通しになります

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP increased by 0.2%, quarter on quarter, in the second quarter of 2019, following a rise of 0.4% in the previous quarter. Incoming economic data and survey information continue to point to moderate but positive growth in the third quarter of this year. This slowdown in growth mainly reflects the prevailing weakness of international trade in an environment of prolonged global uncertainties, which are particularly affecting the euro area manufacturing sector.』

ということで以下経済見通しとリスクの話になりますが、スタッフ見通しは

『This assessment is broadly reflected in the September 2019 ECB staff macroeconomic projections for the euro area. These projections foresee annual real GDP increasing by 1.1% in 2019, 1.2% in 2020 and 1.4% in 2021. Compared with the June 2019 staff macroeconomic projections, the outlook for real GDP growth has been revised down for 2019 and 2020.』

成長率見通しは19年1.1%、20年1.2%、21年1.4%となっていて19年と20年を下げたざます。

でもってリスクはダウンサイドとかその辺の話は変わっていませんな。その次がマネタリーアナリシスがあってその後に・・・・・・・・


・財政と構造改革に関する発言の中でどさくさに紛れて「ゲルマン野郎ども財政出しやがれコノヤロー」登場

これもいつも言っているコーナーではあるんですが、まあ確認ちゅうことで、前回7月の冒頭ステートメントのこの部分を比較してみます。
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is190725~547f29c369.en.html
PRESS CONFERENCE
Mario Draghi, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 25 July 2019
INTRODUCTORY STATEMENT

以下前回のINTRODUCTORY STATEMENTの引用は(前回冒頭文)、今回のは(今回)にします。

『In order to reap the full benefits from our monetary policy measures, other policy areas must contribute more decisively to raising the longer-term growth potential, supporting aggregate demand at the current juncture and reducing vulnerabilities.』(今回)

『In order to reap the full benefits from our monetary policy measures, other policy areas must contribute more decisively to raising the longer-term growth potential and reducing vulnerabilities.』 (前回冒頭文)

若干書き方が違うが言ってることは同じ。


『The implementation of structural policies in euro area countries needs to be substantially stepped up to boost euro area productivity and growth potential, reduce structural unemployment and increase resilience. The 2019 country-specific recommendations should serve as the relevant signpost.』(今回)

『The implementation of structural reforms in euro area countries needs to be substantially stepped up to boost euro area productivity and growth potential, reduce structural unemployment and increase resilience. The 2019 country-specific recommendations should serve as the relevant signpost.』(前回冒頭文)

構造改革をやれ構造改革をやれ、の部分も7月の冒頭ステートメントと同じ。

『Regarding fiscal policies, the mildly expansionary euro area fiscal stance is currently providing some support to economic activity. In view of the weakening economic outlook and the continued prominence of downside risks, governments with fiscal space should act in an effective and timely manner. In countries where public debt is high, governments need to pursue prudent policies that will create the conditions for automatic stabilisers to operate freely. All countries should reinforce their efforts to achieve a more growth-friendly composition of public finances.』(今回)

『Regarding fiscal policies, the mildly expansionary euro area fiscal stance is providing support to economic activity. At the same time, countries where government debt is high need to continue rebuilding fiscal buffers. All countries should reinforce their efforts to achieve a more growth-friendly composition of public finances.』(前回冒頭文)

今回チャーミングだったのは、しれっと「In view of the weakening economic outlook and the continued prominence of downside risks, governments with fiscal space should act in an effective and timely manner」とかぶっこんできていて、マクロ見通しが悪化して来て継続的にダウンサイドのある国においては、財政の余地があるんでしたら効果的かつタイムリーに政府が行動すべきではる、とかドイツ様に向かって財政出せと仰せですな。もちろん従来から「財政に余裕のある場合は経済成長にフレンドリーな財政政策取りましょ」とは言ってるんですが、今回のはどう見てもドイツ向け発言キタコレではあります。


『Likewise, the transparent and consistent implementation of the European Union’s fiscal and economic governance framework over time and across countries remains essential to bolster the resilience of the euro area economy. Improving the functioning of Economic and Monetary Union remains a priority. The Governing Council welcomes the ongoing work and urges further specific and decisive steps to complete the banking union and the capital markets union.』(今回)

『Likewise, the transparent and consistent implementation of the European Union’s fiscal and economic governance framework over time and across countries remains essential to bolster the resilience of the euro area economy. Improving the functioning of Economic and Monetary Union remains a priority. The Governing Council welcomes the ongoing work and urges further specific and decisive steps to complete the banking union and the capital markets union.』(前回冒頭文)

最後のEUの将来のフレームワークに向けた云々は全文一致でした。以下質疑応答が入るのですが順当に時間が無いので勘弁ということで。




〇措置の詳細に関しての部分も間に合わなかったので備忘用にURLだけ貼っておきます

すいませんすいません下準備少ししたせいで余裕ぶっかましてたら時間が無くなってしまいました。

・預金の階層化

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.pr190912_2~a0b47cd62a.en.html
ECB introduces two-tier system for remunerating excess liquidity holdings
12 September 2019

・Two-tier system aims to support bank-based transmission of monetary policy
・Part of excess liquidity holdings exempt from negative deposit facility rate
・Scheme to apply as of seventh maintenance period starting on 30 October 2019
・Exempt tier will be remunerated at the annual rate of 0%


だそうだが詳しく読んでないから週明けにでも(サーセン)。


・TLTRO3見直し

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.pr190912~19ac2682ff.en.html
ECB announces changes to new targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III)
12 September 2019

・Interest rate on TLTRO III operations to be reduced
・Rate can be as low as the average interest rate on deposit facility
・Maturity extended to three years, from two years, with repayment option after two years


・APPではジャンジャンマイナス金利で買いまっせ

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.pr190912_1~b17f699a88.en.html
ECB provides additional details on purchases of assets with yields below the deposit facility rate

12 September 2019
・ECB extends possibility of buying assets with yields below deposit facility rate to all private sector purchase programmes
・Decision takes immediate effect
・Extension facilitates smooth implementation of asset purchase programme

APPによる買入で出来上がりレートのマイナスが預金ファシリティよりも大きなマイナス金利になる買入についてですが原則やりまっせみたいな。


〇という訳で・・・・・・・・・・・・・・・・

まあ「パッケージ」とか「コンプリヘンシブ」とかいう位で、いろいろなものを出してきましたが、こういうのをやるとうまくいってくれればいいのですが、実はたいした効果がなさそうなものの組み合わせだったりする、というよりはどこかのネタが副作用の方が大きかったりすると、政策波及メカニズムとかがファジーな説明なだけに、どこをどう手直ししていくか、というのでグダグダになりそうですな。

ああそれから本来のべき論としては、そろそろ物価に過度にフォーカスした金融政策止めろやと思うのですが、寧ろそっちに逝ってる感じがするのはちょっとねえとは思います。






2019/09/12

お題「円債ちゃん昨日も動いてたのでメモ/ECBプレビュー雑談代わりにドイツ魂を鑑賞しとく」

ちょっと相場が落ち着いてきたと思ったらまたこれか。
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-fed-idJPKCN1VW1VC
2019年9月11日 / 22:30
トランプ氏、FRBにマイナス金利要求 パウエル議長を再批判

結局あちこちに噛みついて反撃食らいまくって上手くいかないもんだからまーた叩いても反発の来ないのび太議長の所に来ましたですかそうですか。ところで米国の場合短期市場の構造上マイナス金利ぶっこむと色々と問題が発生するという仕様だったはずだが、そっちの仕様ってそんなに変わってないと思うんだが大丈夫かね。

・・・・・とか言う前に、

『トランプ氏は「FRBは政策金利をゼロ%、もしくはこれを下回る水準に引き下げる必要がある。それを受け、われわれは債務の借り換えを行う。金利は大幅に引き下げられる。同時に、期間を大幅に長期化させることもできる」とし、「われわれは素晴らしい通貨、権限、そしてバランスシートを有している。米国は常に最も低い金利を支払うべきだ。インフレはない!」とツイッターに投稿した。』(上記URL先より)

ただのジンバブエ理論のようですな。

そういや全然話は飛びますが、先般のパウエル議長発言はSNBのサイトに載っているのですけれども、音声データで載っているようですな(聞いてないのですが、大汗)。
https://www.snb.ch/en/ifor/research/id/researchtv-event?event=bH79N3jXzad8Duya--rtZA
Research TV
Jerome Powell, Chair of the Board of Governors of the Federal Reserve System,Swiss Institute of International Studies (SIAF), University of Zurich, 6 September 2019


〇まあ単に欧米金利に連れられてという奴なんでしょうが(市場メモ雑談)

昨日の債券市場ちゃん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N26213B
2019年9月11日 / 15:19
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、長期金利は「日銀フロア」を一時回復

確かに見出しとしてキャッチーだという気持ちは分かるのだが、一旦抜けしまっているし、止めたのか止めないのかよくわからんプレイの出た水準が▲0.30%近い所だったという時点でもはや▲0.20%に何の意味もないと思うので「日銀フロアを回復」ってのは残念な見出しですなあって感じです(なお引用しませんが本記事中にも金利上昇時の▲0.20%に意味はないというコメントが紹介されておりますな)。

それはさておきまして、

『<15:05> 国債先物は続落で引け、長期金利は「日銀フロア」を一時回復

国債先物12月限は、前営業日比29銭安の154円54銭と続落して取引を終えた。9月限から事実上の限月交代となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時、同3.0bp上昇のマイナス0.200%を付け、日銀長期金利目標における変動許容幅の「下限」を回復した。』(上記URL先より、以下同様)

ということなのですが、なんか以下謎にポエムみたいな説明が続いていて場中のプライスアクションの説明成分が少なめなのは何なんですかとか思ってしまいましたけれども、しょうがないので途中飛ばして引用。

『実際、本日実施された5年債入札は、弱めの結果となった。日銀のマイナス金利深掘り期待が高まっているなら、買われやすいゾーンだが「海外勢、国内勢ともに需要が弱かった」(国内証券)とみられている。黒田東彦日銀総裁は7日付日経新聞インタビューで、マイナス金利深掘りの可能性を示唆したものの、市場では「株高・円安が進んでおり、いま無理に残り少ない緩和策を打ち出す必要はないだろう」(岡三証券の債券シニア・ストラテジスト、鈴木誠氏)との予想が多くなっている。』

昨日はこちらの駄文でもネタにしましたように前夜にロイターさんからも追加緩和ネタが打ち込まれていまして、お蔭で何とかストの皆さんが益々9月追加緩和とかいう話をするようになっていてお前は何を言ってるんだという感が強いのですが、そんなのとはあんまり関係なく朝から金利上がってスタートしたんですが、割と早めの時間から超長期がサガランチ会長な展開になってきまして、一方で中期長期はアカンという展開。直近ベアスティープして金利水準が上がったから押し目買いだぜという話なのかもしれませんが、「マイナス深堀りするけど超長期のイールドカーブは立ってくれ」的な話が日銀方面からなのかメディア方面なのか知らんけどまあそういう感じで出ている中で、金曜後場からベアスティープが始まったものの早くも水曜にはフラットニングとか中々味わいのある動きではありました。

まあ5年新発がこの地合いで出てしまった(出るのはスケジュール通りだから仕方ないけど)から単に需給上の関係なのかも知れませんが、まー日銀のマイナス金利深堀りとかなけなしのカードにも程があるものをこの程度の状況でホイホイ切って来るとは到底思えない(個人の感想です)のですが、土曜の日経以降の記事に煽られているのかここに来て何とかストの方々のコメントがだいぶ「9月に追加緩和」という話に傾いている感じでして、いやあのだから打つタマ無いし、10月に消費増税控えている訳で、影響があるのか無いのかという話は兎も角としてこの影響についての不確実性というのを日銀も説明の中にぶっこんでいる状況で、最後のカード切ったら10月以降にガチであばばばばーとかになったら(個人的にはそんなに懸念してないんですが楽観過ぎですかそうですか)その時に切るカードがないんですけど、とは思います。

とは言いましても、今晩のECBがトチ狂って大盛りカレートッピング全部乗せみたいな政策をぶち込んできて、それにFEDが煽られるの図になって円高にぶっ飛ぶとかいう事になれば話は別なんですが、さてどうなるんでしょうかねえ。


〇超今更なのですがECBプレビュー雑談代わりに

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN1VW2QA?il=0
2019年9月12日 / 06:05
ユーロが1週間ぶり安値、あすのECB追加緩和織り込む=NY市場

『[ニューヨーク 11日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、ユーロが対ドルで下落し1週間ぶりの安値を付けた。あすの欧州中央銀行(ECB)理事会では追加緩和策の採択がほぼ確実視されている。 複数の関係筋によると、理事会では利下げのほか、マイナス金利が銀行に及ぼす影響を軽減するための金利の階層化、および低金利政策の長期的な継続を確約するフォワードガイダンスの強化を含む包括的な刺激策を決定する方向に傾いているという。』(上記URL先より)

この記事見ますとしらっと資産買入という言葉が抜けていまして、APPに関してはラガルドに追加緩和策を残すというイメージになっているのかどうかコンセンサスよくわかっていませんが(すいませんすいません)、預金ファシリティ10bp下げにフォワードガイダンスだけだったらトッピング全部乗せという感じはしないんですけどどうなんでしょうかねえ。

てなお話ですが、ここで今更にも程がある「APPは今ぶっこむもんじゃない」というECBのメンバーからのご指摘物件でも鑑賞(というよりも備忘録のイメージですが)しておこうかということでこんなんでも。

https://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2019/html/ecb.in190830~646887fa26.en.html
Interview with Market News
Interview with Sabine Lautenschlager, Member of the Executive Board of the ECB, conducted by Luke Heighton on 28 August, and published on 30 August 2019

ということで先月末に出ていた物件なので今更別に材料になる話でもないのですが(汗)。

なおサイトの方では質問がゴシックになっていて答えが普通の書式になっているのですが、アタクシの手元では書式なしでテキストに落としてしまいますので、QとかAとか補記代わりに頭につけておきます。

でもってドイツ出身のラウテンシュレッガー理事なのでドイツ魂に溢れた話が展開されるのですけど・・・・・・

Q:『The account of last month’s monetary policy meeting of the Governing Council showed the ECB has become more pessimistic in its assessment of the eurozone growth and inflation outlook over the longer term, to the extent that the baseline growth scenario may need to be revised. How worried are you?』

先般出てた議事要旨を見るとベースラインシナリオを直す位の勢いで悲観的な見通しになっておりましたがどうよ?ということですが、まあだからこそ7月ECB政策委員会からのユーロゾーン追加緩和マシマシヒャッハー相場になっておったというのもありますな。

A:『There is, indeed, some increasing uncertainty based in particular on political shocks such as the trade tensions and Brexit. Also in Germany there is a downward trend in the manufacturing sector. But we also see signals of strengths in the euro area, for instance positive trends in the labour market and a resilience of the overall domestic growth.』

確かに貿易戦争にドイツの製造業のダウントレンドについては懸念が拡大しているけど、一方で労働以上の強さとか域内の成長の頑健性とかユーロ圏の強さを示すシグナルもありまっせ、とのっけから強気スタンス。

Q:『The account appears to suggest - or at least I took from it - that a majority of members in the Governing Council do favour the introduction of a package of measures, such as a combination of rate cuts, asset purchases and tiering, rather than a selective sequence of options. Would that be your preference?』

追加緩和政策の具体策はどうでっしゃろとか直球ストレートに質問していますな。

A:『In my opinion, based on the current data, it is much too early for a huge package. 』

大規模パッケージをするには物凄い勢いで時期尚早ではなかろうか、から来まして、

『And I am still convinced that the Asset Purchase Programme (APP) is the ultima ratio, and it should only be used if you have a risk of deflation; and the risk of deflation is nowhere to be seen now.』

上記URL先のECBのページの方ではultima ratioってのがイタリックになっていまして、「戦争は最後の手段」みたいな言い方する時の「最後の手段」って意味のようで、デフレーションのリスクがあるような時じゃないと資産買入プログラムをぶっこむべきではありませんし今そんな状況では全然ありませんとか物凄い勢いでAPP復活を否定。

『Furthermore, I am concerned about setting the wrong incentives for governments if we were to re-start the APP and buy further government bonds. What is needed are structural reforms to foster sustainable growth.』

FRBの人間が同じこと言い出したらトランプ大統領がズラの毛を逆立てて怒りだしそうですが、APPを復活させて国債買入を拡大したら各国政府における構造改革の進展が進まなくなってしまうかもしれないとかこれは溢れんばかりのドイツ魂シバキアゲ論法。

『And you always have to ask yourself what kind of impact restarting the APP would bring. We are already in negative yield territory for many government bonds.』

既に多くの国の国債金利マイナス金利状態なのに別に買う必要あるんかいなとか、

『We also need to consider how big the purchase universe is when keeping the current purchase limits. And keeping the limits is for me of utmost importance to address the risk of monetary financing.』

だいたいからして今定めている買入上限を考えたらそんなに買えないし、そこを買いにいったら財政ファイナンスになるわ、ともうケチョンケチョンにAPP復活に悪態をついている次第。

Q:『There has been a lot in ECB communications of late, and elsewhere, about the perceived need for fiscal authorities to do their part to boost growth and inflation. Do you think there is a trade-off between convincing certain governments to provide fiscal stimulus and the ECB embarking on deeper negative interest rates? Equally, if there is to be an interest rate cut on September 12, does it follow that there has to be tiering in order to gain support for such a measure?』

これインタビューしてる方も煽ってるだろという感じでして、インフレ目標達成のためには金融緩和だけではなくて財政を出すべきではないかという話がECBの中から出てくるのですがご見解は如何に、とかどう見てもアオリイカな訳で、

A:『We are not the only game in town, and we should not be. Let me repeat the need for structural reforms. This is necessary for sustainable growth, and would give a boost to the competitiveness of many countries in the euro area. Using fiscal space is another possibility for some countries.』

何が財政じゃ構造改革じゃろうが構造改革、と煽りに乗ってぶっこむぶっこむ。

『Rate cuts are part of standard monetary policy tools, so it’s something that you should certainly think about before you consider non-standard measures like APP. But overall, we have to assess whether these instruments are needed to support the transmission channel and what kind of impact and side effects they would have.』

利下げについてはさすがにAPPよりは否定的ではないのですが、波及経路と副作用を考えろとかまあ今日の理事会でも悪態つくんでしょうなあラウテンシュレッガー姐さんは。

『But first, I would like to see the September data and whether additional measures are needed to maintain price stability in the medium term. I would also like to assess what kind of impact these measures could have. Let us not forget that we already have a very accommodative monetary policy. Lending to households and firms is still high, according to the July figures; investments are still ongoing in spite of the uncertainties.』

今後のデータ見て判断するけど(ってこの時点であと2週間しかないのだが)既に散々緩和ぶっこんでるし、家計や企業の借入に関する金融環境は非常に良好ですがな、とかどんだけ反対してるんだよという感じです。

でもってちょっと途中を飛ばしましてフォワードガイダンスに関する話とTLTROに関する話に行きますが、

Q:『Would you support more closely linking the state-dependent leg of forward guidance to inflation expectations? To plot a more explicit rate path should certain inflation conditions be met at a given point in time.』

今のフォワードガイダンスもカレンダーベースなのにステートディペンデントみたいな説明になっていたりしてかなり微妙なのですが、このガイダンスをインフレ期待の動向に紐付けたガイダンスにするという見解についてどうお考えかと聞きますと、

A:『I’m sceptical to link forward guidance solely to inflation expectations. 』

1行で切り捨て。

Q:『Could you envisage circumstances in which existing TLTROs could be repriced, in order to make them more attractive to banks?』

TLTROの条件をもっと銀行寄りにするのはどうよ(なお先般入れられたTLTRO3は前回対比条件が厳しくなっている)という質問については、

A:『That might be, yes. We can use different tools: a change in forward guidance, TLTRO, rate cuts, the mitigating measures for rate cuts, depending on whether the data shows a need for them, their impact, costs and benefits. But overall, I don’t see the need for a huge package.』

それは有りという話になっていて、でもってまあAPP以外のパッケージの話になっているけど大規模パッケージは要らないしプロコン比較を慎重に行うべきとか言ってはいますが、まあこの辺が落としどころという感じですな。

でまあドイツ魂の再度爆裂がその直後にありまして、

Q:『Recent ECB communications have consistently stressed that the medium term target inflation rate of below but close-to 2% is, and has always been, symmetric….』

物価目標のシンメトリックターゲットの話を振ったところ、

A:『For me it’s asymmetric as the Governing Council has defined price stability as an inflation rate of below 2 % over the medium term, while our inflation aim is defined as close to but below 2%. A change should not be done hastily but based on a holistic discussion about our monetary policy strategy.』

『while our inflation aim is defined as close to but below 2%.』のclose toがイタリックになっておりますな。

『Do I think that it needs to be changed? I’m not sure.』

I’m not sureとか言ってますが、物価安定の定義の方の「中期的に2%に近い2%以下」を譲る気はなさそうな感じですな。まあドイツクオリティなので順当ですが。

以下質疑もう少しありますが、まあ北ECBはこんな感じということですかそうですかってなもんで、そうなると今回は小出しにして、その小出しを例によってドラギ大先生が口八丁手八丁で張りぼて装飾するという図になるんでしょうかね、まあお手並み拝見。





2019/09/11

お題「ロイターからもマイナス深堀りのネタが出ているようなので/市場メモ」

名前の出てくる順序を工夫してシンジローを後ろにだしたので目くらましちっくになっているのですが、この面子はさすがにアレにも程があるのですが、まあ9.11発足ですからお察しというか何でこの日程になったし(六曜は友引)。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190911/k10012075071000.html
きょう内閣改造 小泉進次郎氏ら13人が初入閣
2019年9月11日 4時02分

でもってそんなことよりもこれは朗報。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190911/k10012075051000.html
米大統領「ボルトン大統領補佐官を解任」ツイッターで公表
2019年9月11日 1時11分

しかしまあニュースの多い朝ですが、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190911/k10012074931000.html
「金融検査マニュアル」年内廃止に 金融庁
2019年9月11日 4時03分

『今後は、不良債権の処理ではなく地域経済の実態を踏まえた融資をしているかどうかを重点的に検証する方針で、金融危機からおよそ20年を経て金融検査が様変わりします。』(上記URL先より)

えーっと、(以下のコメントは内務省検閲により削除されました)。


〇ロイターにも9月会合記事が出るとか無風会合の筈なのに何なのこのキャンペーン

30年国債入札の翌日であり雇用統計前の金曜日の後場の場中とかいうような、プライマリーディーラー殺しのタイミングでニュースを打ってこないロイターさん素晴らしい、というか20世紀の時になりますが、長期国債(年限忘れたがたぶん10年)入札の札入れ完了後落札結果発表5分くらいだか前(今と違って昔は落札結果が出るまで時間があってその間はプライマリーディーラー(という制度は無かったが)が事実上のガンマショートみたいなもんでその間に上下に振らされるのが一番困ったのだ)にソブリン格下げの検討がどうのこうのというフラッシュをぶち込んで債券市場の大憤激を買ってまあ後で色々と苦労したという伝説の事案があったりしましたので、こういうのは一周するもんだと思っていますけどまあそれは兎も角。

てな訳で昨晩のニュースでしたが。
https://jp.reuters.com/article/boj-meeting-idJPKCN1VV1BR
2019年9月10日 / 20:28 /
日銀が9月会合で金融緩和の是非を議論、海外経済回復の後ずれ影響見極めへ

というのが来ました。以下『』内は上記URL先より引用となります。


・「金融緩和の是非」とな

まあ本文の中身を読みますと普通に追加緩和をするとしてどういう手段があるんでしょというお話ではあるのですが、記事のお題と本文の頭の部分が「金融緩和の是非」と書いてありまして、いやもうそれ金融緩和のやり過ぎで現状の緩和政策が非とかいう素晴らしい話でもおっぱじまるのかと一瞬興奮してしまいましたが(マイナス金利嫌いが高じてアタクシの目が曇っております)、まあそういう訳ではなさそうなのですが、こちらの記事のクレジットを見ますと頭の方がベテランの方(以前日銀とか金融政策ネタ書いてて暫く企業記事とかの方に行ってたお方)なので「追加緩和」と書かないことに意味でもあるんでしょうかどうなんですかねえとか変なことを思ってしまいました。

まあそんな掴みは兎も角としまして、


・日経に続いてロイターですがモメンタム云々の解説がついておりますの

『[東京 10日 ロイター] - 日銀は18─19日開催の金融政策決定会合で金融緩和の是非について議論する。日銀内では海外経済の不確実性の増大を懸念する声が多く、9月会合で「物価安定の目標」に向けたモメンタムに悪影響を及ぼさないか点検する。仮に金融緩和が必要と判断すれば、マイナス金利の深掘りが有力な選択肢となりそうだ。複数の関係筋が明らかにした。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、日経の黒田総裁インタビューでもヘッドラインは「マイナス金利深堀り」でしたし、こちらでもいきなりマイナス金利深堀りが一発目に出てくる、ということで、まあアタクシはしつこく申し上げておりますようにマイナス金利の深掘りとか大和海上特攻(なお坊津沖で轟沈)にも程があって、そこまで思考的に追い詰められているのか(先の大戦のアレからすると追い詰められた優秀な官僚組織というのは思考がアレ状態になった挙句にどう見ても無茶な作戦とかをおっぱじめるのがジャパニーズしぐさのように思えます)という風に思う訳で、まあ落ち着けと。

『モメンタムをみる上で重要となるのが、需給ギャップと企業や家計の物価上昇予想だ。海外経済の回復時期が当初見通しよりも大幅に後ずれすれば、外需の持ち直し時期も遅れ、内需から外需へのバトンタッチシナリオに黄信号がともる。中国や欧州経済は弱さが目立っており、日銀内では「世界経済は年後半に向けて回復するとみられていたが、後ずれしている」との声が出ている。』

という解説になっているのですが、確かに今の日銀の説明では「モメンタム」は「プラス水準の需給ギャップがトレンドとして維持されていて、インフレ期待が落ちていない」という状況であればモメンタムは維持、ということになっております。

ですので、まあ多少外需が弱いからと言っても需給ギャップがマイナス転換する程の悪化になるかというとそこはまた別問題になると思いますし、インフレ期待何ぞはお手盛りで行けますし、大体からして最近はさすがに物価がサガランチ会長という感じになってきている中なので、2%に向けて云々とかいうのをネグってしまえばこっちも普通に維持と言い張れる状態は継続しそうなんですよね。

もちろん問題として、そもそも需給ギャップのプラス水準(1年半以上プラス1%)が継続しているのに全然物価に跳ねてこないというフィリップスカーブのフラット化なのか効かなくなっているのかはともかくとして、そういう事からして「2%のモメンタム」とかそんな勢いねえだろというのは思いっきりあるのですが、その辺は早期達成を事実上放棄しているだけに知らんがなというスタンスで通しているのが今の日銀主流派。

『現時点では外需の弱さが内需に波及するまでには至っていないと判断しているが、海外経済の先行きに対する警戒感は強まりつつある。』

えーっと、海外金利の動向をみておりますと一頃の総悲観大金融緩和ヒャッハー相場では無くなっているように思われますが・・・・・・・・・

てな訳でして、まあ昨日も三極の中銀揃ってロジックが後付けになってるじゃろという悪態を申し上げた次第ですけれども、この「モメンタム」ってのも大概に都合のいい話で、ついこの前までは「モメンタムは維持されている(キリッ)」と言い続けていた訳でして、しかもこのモメンタムの定義から考えてそう簡単にこれがコケるような話にはならない(現にこれまでクソ粘りしているのですから、なんぼでも言い張ることはできる、正しいかどうかは別にして)ので、どっからどう見ても別の理由があって、ただしその理由を出すと政策の整合性が更におかしくなるので、モメンタムの方を操作してくる、というまあそれでも政策ロジックは崩壊しているのですが、

話飛びますがアタクシ思うに(というか人の受け売りなんですけどね)本来これは「モメンタム」なのではなく、持続的に物価が安定する(というかデフレ状況に簡単に落ちない)「メカニズム」が効いている状態である、と考え「メカニズム」が損なわれる恐れがあるなら何らかの対策(ただし日銀で出来るのかどうかは知らん)をってな話になるのが筋であって、モメンタムとか2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成の亡霊が思いっきり憑依した用語を使うのもねえとは思いますが、散々これを使って今更後には引けないというこの事実で、まあ元々の置物MB直線一気理論がゴミクズカスダニ理論だったから仕方ないのですが、このゴミクズカスダニ理論を間違いと棄却しないで話を進める以上、いろいろな面でロジックに無理が生じまくってしまうのは仕方ないのですが、それは仕方が無いのではなく早く過去の総括(「総括」の意味合いはお察し)をしないとドンドン話がグダグダになるんですけど勘弁してください。

いやですね、まあ曲がりなりにも中銀動向をボケーっと観察してたりするんですが、とにかく三極中銀共に政策ロジックが盛大に崩壊(先般のFOMCでの記者の吊るし上げ振りは凄かったですわなあ)してしまいますと、結局こっちもべき論でケシカランとか言ってるだけではなくて、この崩壊したロジックの中でこいつら何をしようとするのかとか考える訳ですが、なにせロジックが壊れているのでロジカルに考えるだけ無駄というのが困りもんですが、まあ日銀の場合は謎にこの手の記事が出てくる(ただし某B社のHさんの場合はただの記者脳内観測だったりするのでアレだったりしていましたが、今回は日経とロイターなので)ので、まあこの辺は察しろという話しなのか、単にブラフを張っているだけなのかというのが何とも判断致しかねますな。



・でもって手段ですけれどもこちらでもマイナス深堀りとな

『仮に追加緩和に踏み切る場合、1)短期政策金利の引き下げ、2)長期金利操作目標の引き下げ、3)資産買い入れの拡大、4)マネタリーベースの拡大ペースの加速──の4つの選択肢があり、黒田東彦総裁は7月30日の会見で「これらの組み合わせや応用といったことも考えられる」と説明した。』

それは日経のインタビューでも言っていたが日経のインタビューと書かないのがロイターの根性を示しております(^^)。

『では、どの選択肢があり得るのか。日銀はイールドカーブが過度にフラット化することに警戒感を示している。超長期ゾーンの利回りが下がり過ぎると、年金基金などの運用難を通じて、消費者マインドに影響を及ぼす可能性があるためだ。イールドカーブのフラット化を防ぐために、長期金利操作目標の引き下げを単独で実施するという選択肢は考えづらく、長短金利目標を同時に引き下げるか、マイナス金利の深掘りが有力な選択肢となる。』

いやだから短期下げたら金融システムに一段の負荷が掛かるんですがそれは、という話なのですが、どうもすっかりこの理屈に乗っかった説明ばっかりが登場してくるのでありまして、これは状況が行き詰ってしまい、追い詰められてパニックになって海上特攻だのインパール作戦だの言い出すようなもんだとするとかなりの重症なのですが、そこまで追い詰められているとすれば、物価が上がらん方に関しては、別にデフレ状態になっている訳でもないのですから、特段文句が飛んでくるような状況になって追い込まれているという話はあるとも到底思えない以上プルーデン(以下略)。

だいたいですな、イールドカーブのフラット化を防ぐっていったって金利水準が全体的に下がってしまったら結局債券の再投資利回りさがるんですから、カーブが立てば良いってもんじゃないですし、昨日も申し上げたようにそもそも輪番を多少いじっても金利が下がる時は下がるというのが最近の値動きで実証された以上、付利下げはそのままスライドで金利下がるし下手したらブルフラットするんじゃないですかねえ(個人の偏見です)。

『ただ、そうした措置をとる場合は金融機関への収益への悪影響を軽減するための措置も併せて検討する可能性がある。』

あのですね、日銀当座預金全体に100bpのプラス利回りでも付けてくれるのでしたらそら軽減されますけれども、当座預金の政策金利残高部分とかいう限界的な部分のマイナス金利って(制度上政策金利残高が多くなってしまっている一部の人を除けば)金融機関の全体収益から見たら屁のようなものであって、そこの部分を軽減とか言われましてもヘソが茶を沸かしますし、小手先で屁のような軽減措置をやったのを宣伝でもされようもんなら金融機関の方が悪者扱いされかねませんので却って迷惑(個人の感想です)だし、そんなもんでエクスキューズするとかいう根性が気に食わん(個人の感想です)。

まあアレだ、軽減措置導入するんだったら、日銀が会見か声明文で「マイナス金利政策を実施しているのに金融機関が預金金利をマイナスに設定しないのは政策効果の波及という観点で極めて遺憾」と言って頂けると軽減措置になるんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

『12日には欧州中央銀行(ECB)理事会、17─18日には米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えている。日銀は市場の反応などをギリギリまで見極めたい意向だ。政策委員の一部からは長引く緩和の副作用に対する懸念も出ており、最終的には各政策委員が、海外経済をめぐる不確実性が日本の景気回復にどの程度悪影響を及ぼすのか、追加緩和の効果と副作用をどのように評価するかで政策対応の是非を判断することになる。』

そもそもマイナス金利が非なんですがそれは、というよりも、マイナス金利政策自体が「短期決戦」の政策であって、こんなもん長期間持続する政策ではないでしょ。名目ゼロ金利制約が続けば金融機関課税になって金融システムの安定性を徐々に阻害していく話ですし、欧州の一部みたいに大口預金などにマイナスチャージって話になってくれば、それは民間部門から政府部門への所得移転という話になる(企業部門がネットで資金不足の場合はまだ意味があるような気がせんでもないが日本の場合は個人も企業もネットで資金余剰なので話にならん)ので、それはただの財政引き締めになってしまいますがな、って話であって、欧州の場合は元々金融機関の預貸マージンがそれなりにあったから問題が顕在化するのに時間が掛かっているのと、恐らく域内での不均衡があるので企業の資金ニーズがまだ残っているのではないかと思われるので政策が今の所持ちこたえているんじゃなかろうかとは思いますが、日本の場合は元々金融緩和しまくっている上に伝統的に(規制金利時代から)預貸マージンを制度的に押さえつけていた(のもあるのでかつては歩積み両建てのような悪しき風習があったんじゃなかったでしたっけ、歩積み両建てとかそもそも読み方しらんでしょ若い衆は)上に、今世紀に入ってからは民間の資金超過が鮮明になっておりますので、そらマイナス金利政策が短期決戦になりますわな、という話の筈なんだが(なおこの辺は個人の感想ですであって定説では無いし検証もしてないので念のため)、何故かこのマイナス金利政策を持続させようという無理をするかこうなるのですが、まあ方向性がマイナス深堀海上特攻ということですので、あとはどのように轟沈するのかを悲しみをもって眺める(のと轟沈の時に極力巻き添えを食らわないようする)にしかワシらのすることないもんねという次第で。

まあ欧州と米国がそんなに過激な追加緩和しなかったら、既に過激な追加緩和を織り込んでその戻しが来ているような状況と思いますので、別にそこまで円高を警戒することもないのに、とは思うんですけどね。まあ円高が100円カツカツとかになったら海上特攻が開始されるということで、手段はマイナス金利とその他意味のない目くらましってところなんでしょうね。よー知らんけど。

#なんかくだを巻いているうちに悲しくなってきました


〇一応動いたので市場雑談メモ

一応備忘までに。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N2610ZS
2019年9月10日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は一時1カ月ぶり高水準

『 <15:05> 国債先物は反落で引け、長期金利は一時1カ月ぶり高水準

国債先物中心限月9月限は前営業日比31銭安の154円67銭と反落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.0bp上昇のマイナス0.230%。一時マイナス0.220%と約1カ月ぶりの高水準を付けた。米中通商協議の進展期待や、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱懸念の後退、ドイツ政府が財政刺激策の拡大に向けて「影の予算」を検討しているとロイターが伝えた[nL3N2603LB]ことなど、海外のリスクオン材料が重なった。』(上記URL先より、以下同様)

ってな話ですが、ついこの前までは貿易協議が開催されてもどうせ物別れでしょとか言ってた時期もありましたし、ブリクジットだってこれ全然懸念後退してねえだろとか思うのですが、まあ元はといえばパウエルとウィリアムスが追加緩和を無駄に大規模に煽ってしまって、それがECBの「FRBに大緩和砲撃食らう前に先制攻撃じゃああああ」を呼んでしまい、今度はFRBにフィードバックループが起きるという誰得な展開になったから他市場が呆れる中で債券市場ばっかりがヒャッハーヒャッハーとやっていましたってことで、その巻き戻しが起きているだけなんでしょうな、とは思います。よって、

『日本では黒田東彦日銀総裁が6日付日経新聞インタビューで、マイナス金利の深掘りの可能性示唆と超長期債の過度なフラット化に懸念を示したことも、短期金利下落・超長期金利上昇のスティープ化に拍車をかけている。』

という話にはなっていますが、まあ月曜も30年とかはスティープしておりましたけど、何のかんの言いましても月曜って中長期は引け強だった訳で、やはり海外の方が効いてるんじゃないですかね、とは思います。なにせ「利回りを求めて20年債に買い」とかいうような後付け解説を円債方面で見た時には、20年の一桁ベーシスというのは利回りとは最早言い難いんですがそれはとか思いましたもんねえ。


『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 -0.297 -0.288 0.024 15:02
5年 -0.325 -0.319 0.025 15:06
10年 -0.232 -0.224 0.034 15:02
20年 0.14 0.146 0.047 15:04
30年 0.269 0.278 0.065 15:06
40年 0.302 0.31 0.065 15:04』


でもって米債ちゃんが、

https://jp.reuters.com/article/idJPL3N2613Z0
2019年9月11日 / 06:09
UPDATE 1-米金融・債券市場=利回り上昇、リスク選好改善 独債動向に追随

『30年債 17時05分 2.2270% 前営業日終値 2.0980% 
10年債 17時05分 1.7437% 前営業日終値 1.6220%
5年債 17時05分 1.6029% 前営業日終値 1.4770%
2年債 17時05分 1.6882% 前営業日終値 1.5750%』(上記URL先より)

とかもう何ですかそれって感じですが、まあこれを見てECBとFEDはどういう反応になるのか、まずは木曜の夜が見ものですな。




2019/09/10

お題「金融政策祭りが来る前に何となく確認するのだが三極ともにロジックは後付け感が強いっすなあ(個人の感想です)」

ほーん。
https://jp.reuters.com/article/germany-budget-idJPKCN1VU20U
2019年9月10日 / 03:16
ドイツ政府、債務拡大へ「影の予算」検討 財政規則を迂回

『「債務ブレーキ」と呼ばれる規定では、連邦政府の財政赤字は国内総生産(GDP)比で0.35%までと決められている。これは年間約120億ユーロ(133億ドル)に当たるが、成長率などを考慮に入れると、政府が来年に増やすことができる新たな債務は50億ユーロにとどまる。計画では、公共投資機関に充てられる新たな債務は連邦予算に含まれない。ただ、債務規模は欧州連合(EU)の安定・成長協定によって決まるという。また今回の計画では、債務規則の変更に必要となるドイツ議会の3分の2以上の承認も必要がない。』(上記URL先より)

公共投資機関に充てられる新たな債務とな、と思ったけど財政投融資とはどう違うんじゃろうなあとか思ってみたりみなかったり。よくわからんけど。

〇パウエル議長の利下げ発言ネタの補足というか何というか

結局スイスでの発言自体はFRBのサイトには出てこないみたいなので、困った時のCNBC(WSJは基本的に記事が会員じゃないと読めないので役に立たない)ということで。

(若干URLが長いので途中までしかハイパーリンクしていませんがちゃんと記事に飛ぶつもりです)
https://www.cnbc.com/2019/09/06/powell-says-feds-lower-rates-are-helping-to-keep-the-economy-in-a-good-place.html
Powell says the Fed is not forecasting or expecting a recession
Published Fri, Sep 6 2019 ・ 12:47 PM EDT Updated Fri, Sep 6 2019 ・ 2:13 PM EDT

Key Points
・“The Fed has through the course of the year seen fit to lower the expected path of interest rates,” Powell says.
・“That has supported the economy.”
・He says trade uncertainty is weighing on business investment and confidence.
・However, he expects the problems to be contained and not a major impediment to growth.

つーことなので、まあ普通に9月利下げ予告砲ですよってな話で良いのですが、貿易問題に関しては投資やコンフィデンスに悪影響と言いつつも、それによって経済悪化まで見ている訳ではない、と相変わらずややこしい理屈を捏ねておられるということのようで。

『Speaking during a forum in Zurich, the central bank leader gave mostly positive reviews to where the U.S. stands now, even while much of the rest of the world weakens.』

って他の海外が弱めでも米国経済は健全ってナンヤソレではありますな。

『“The Fed has through the course of the year seen fit to lower the expected path of interest rates,” he said. “That has supported the economy. That is one of the reasons why the outlook is still a favorable one.”』

年内の利下げを前提にして「だから経済見通しは好ましい状態」ってのも何というか・・・・・・・・

『Powell noted multiple challenges to that picture, specifically the drag from Europe and elsewhere. That’s compounded by the tariff battle between the U.S. and China as well as a persistently low inflation rate that has run below the Fed’s 2% target.』

懸念材料としている欧州などの海外経済動向、貿易戦争に加えて物価が2%を割り込んで推移していること、というのは前回利下げをした時から特に変わっていないので、この理屈でもう1回利下げをぶっこんで来るということになるんでしょうな。

『He said that trade uncertainty is weighing on business investment and confidence.』

『However, he expects the problems to be contained and not become a major impediment to growth. Powell described the labor market as in “quite a strong position” and the consumer to be “strong” as well.』

懸念だから利下げするのに、それ自体は成長の主要な阻害要因にはならないでしょう、ってのも何が何だかよく分からん理屈ではありまして、結局このおじちゃんの一番の問題である(個人の感想です)ところの「先行きの見通し(経済見通しも政策金利見通しも)をナローパスで決め打ちしてしまうので、外れると物凄い振幅でブレてしまう」というのが全然治っていないというのが分かりますな。

こんなん、「先行きが不透明なのでとりあえず中立水準の金利を若干下げて様子を見る」と言っておけばよいものを、ウィリアムス辺りを使って盛大な連続利下げを想像させる発言をさせてみたり、一方で今回は利下げはするものの「先行きは不透明だが大きな問題にはならない」って連続利下げの可能性が低そうな話をぶっこんできたりと、んなもん端から黙っていればブレずに済むのにとしか。

『“We’re not forecasting or expecting a recession,” he said. “The most likely outlook is still moderate growth, a strong labor market and inflation continuing to move back up.”』

『“Our main expectation is not at all that there will be a recession,” Powell said.』

まあリセッションを見てませんという位は別に言っても良いとは思いますけど、「not at all」とまでいうのが何ともこの決め打ちクオリティではありますわな。

でもってトランプの圧力がどうのこうのの話の部分は飛ばしまして、FEDの意見が割れている件につきましては、

『Powell pledged that the Fed will “continue to act as appropriate to sustain this expansion,” verbiage he has used before that the market has taken as assurance that the Fed is likely to keep rates low.』

「continue to act as appropriate」発言があったので利下げですなという事ですけれども、

『He acknowledged, though, that there is a wide range of views on the FOMC regarding the proper policy path ahead. St. Louis Fed President James Bullard, for instance, recently voiced support for a 50 basis point cut, while others, like Eric Rosengren of Boston and Esther George of Kansas City, have supported staying put.』

ブラード先生がまた先日より急に0.5%下げとか言い出して(謎のブレブレ振りに最近すっかりお前は何を言ってるんだおじさんになって参りましたが)、一方で利下げ反対もいるという状況に関して、

『“Sometimes it’s easy to get unanimity on things when the path is clear. There will always be questions about how much to do and how fast to move. Sometimes things are relatively clear, other times it’s murky out there,” Powell said. “I think it’s one of those times.”』

先行きのパスがクリアじゃない状態なのだから意見が割れるのは自然(キリッ)っていうのは結構なのですが、お前が先行きのパスがクリアじゃない状態なのに先行きの決め打ち発言をしまくるから市場の政策金利パスが一々ぶれるんだよいい加減にしろ。

『He added that he considers the disparate opinions to be a “healthy thing” that he encourages.』

と思うのであれば、一々なんでも地均しをしようとして決め打ち発言をするなよという同じ悪態になるのでございますが、こればっかりはどうもパウエルさんまるで懲りる気配が無いので、これからも決め打ち発言(しかも何かの拍子にサクッとブレる)に振り回されることになりそうですな。さらに言えば繰り出してくる理屈がその時々で一貫していない(物価なんて利下げの話をする前は下がっていても「一時的」って言ってたのに利下げをするって話になった途端に「継続的に2%を下回る状況イクナイ」とか言い出す有様)ということなので、まあこれはアカン奴やというイメージは変わらんですの。


〇ところで黒田総裁日経インタビューの件も補足というか何というかでして

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49475090V00C19A9EE2000/
マイナス金利の深掘り「必ず選択肢」 黒田日銀総裁
世界経済のリスクに警戒高める
経済 2019/9/6 13:30 日本経済新聞 電子版

例のこれなんですが、あたくし「超長期の金利を上げたいのか短期のマイナス深堀をしたいのか判然としないのだが・・・・・・」などと申し上げてああでもないこうでもないと書かせていただいたんですが、読者様(何人か)からは「それって必ずしも矛盾しないのではないか」という冷静なご指摘を賜りましてなるほどその考えはあるわとか思うのでありました。

例によって例のごとく記事の方をホイホイと引用(ネットが有料版限定になってしまうと新聞記事手打ちするのが引用の範囲内であっても微妙に悩んでしまう(たぶん無問題の筈ですが)ので困ったもんなのですが)、記事の見出しではなくて全体のということになると、「長期や超長期の金利がドカドカ下がられると今の政策の持続性が苦しくなるので特に超長期の金利は立って欲しいというかもうちょっと元に戻らんか」という話ではなかろうかというツッコミでして、まー確かにそれもそうかなとは思ってみたりする次第。とは言え後ろの金利が上がるような施策を単独で打ち込むとそれはただの引き締めなのでマイナス深堀りでお茶を濁すってのはどうでしょとか言われますとなるほどなるほどと思うのではありました。

アタクシのイメージだと(なので個人的妄想ですが)、マイナス深堀がそもそも論として海上特攻で大和出撃の世界という発想なので、たぶんそれをやると死期を早めるだけだからそんなのやらんじゃろとか思っておりますが、まあそう思わないならば何か施策は無いかとか考えて散々頭を捻った挙句に碌でも無い施策が飛び出してくるリスク、というのは考えないとアカンのでしょうかねえ。いずれにせよ、市場をコントロールしたいという発想(とついでに言えば金融システムへの無理解)が黒田さんの仕様になっているだけに、「普通に考えてこれは無いわ」という物件が出てくるリスクは常にありますし、大体からしてあの日経の記事に関しても黒田さんの出してるロジックかなりハチャメチャで、「超長期の金利が過度に低下して生保や年金の運用成績が悪化するとマインドに悪影響」とか言ってるのですが、そんなことよりも「マイナス金利深堀で手数料の引き上げとか下手したらマイナス預金金利導入」の方が盛大にマインド悪化させるだろいい加減にしろと思う訳で、あまりにも今回の理屈がお為ごかしににも程があるだけに、日銀お得意の「やりたいことがあるので屁理屈を後付けで持って来る」の巻だったりするのかもですな、とか何とかまあそんな世間話とツッコミを通勤で疲れた状態で話のネタにしておりましたのでメモメモということで。疲れた状態での話だからアレかも知れませんが(−−;

・・・・・って考えると、全体的に今の中銀って「ぶっこむ必要があると思っている施策が先にありきで政策ロジックは前後の整合性も考えずに後付け」というのが主要国(というか三極)で大流行という状態な訳で(個人の偏見です)、政策効果の波及メカニズムだの効果の検証だのとかいうようなロジカルな話では無くなっているなあと、悲しいものを感じるのでありました。


〇明後日には定例理事会があるというのに泥縄方式のECB議事要旨ネタ続き

片岡審議委員の金懇だわ台風襲来だわで超泥縄モードになってしまいましたが先日の続き。

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg190822~63660ecd81.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank,
held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 July 2019

・政策ロジックにこちらも混乱が見られる件について

前回(先週の水曜日)にネタにしたところのケツの部分を再引用しますが、

『Members broadly supported the reintroduction of an easing bias to the Governing Council’s forward guidance on interest rates in the light of the weakness of the economic outlook and the muted inflation developments. The easing bias was considered appropriate for addressing the risk of an unwarranted tightening of monetary conditions related to the short end of the yield curve in view of the persistent uncertainty surrounding global developments.』

フォワードガイダンスに関して緩和的なバイアスを再度示すことが概ね支持された、という話の部分で前回も申し上げたことの繰り返しになりますが、このバイアスを入れることによって「addressing the risk of an unwarranted tightening of monetary conditions related to the short end of the yield curve」という話をしておりまして、いやあのガイダンス政策って長期金利の押し下げ効果を出すためにやるんじゃろと思うのですが、どうもこの人たち先行きの政策金利パスに関して直接市場の操作をしたいような言い方になっている(従来のフォワードガイダンスは別に短期金利に関してバイアスをかけさせる政策ではない)ので、まあ新理論って言ってしまえばそれまでですけれども、既にこの辺りからロジックが変だなと思わせてくれるのですがその先。

『Members also broadly supported the proposal made by Mr Lane to task the relevant Eurosystem Committees with examining options for future policy measures.』

レーン理事の示した(というのは議事要旨の前半にあります、ネタにしたのが前ですいません)政策手段に関して検討したそうで。

『Some nuances were expressed about the design and the individual elements of a possible policy package, which was presented as a list of options. In particular, it was argued that the term premium on long-term euro area bonds had already been compressed for quite some time and that the risk of an unwarranted tightening of financial conditions was higher at the short end than at the long end of the yield curve.』

さっきの話の背景がこっちに出ていますが、既に長期金利が散々下がっている状況なので、今後のリスクはイールドカーブのロングエンドよりもショートエンドの方が予期せぬタイトニング(って要するに短期金利のちょっと長いのの金利があがること、なんですかねえ)がリスク、というのもナンジャソラという感じのお話。

『However, the view was expressed that the various options should be seen as a package, i.e. a combination of instruments with significant complementarities and synergies, since experience had shown that a policy package - such as the combination of rate cuts and asset purchases - was more effective than a sequence of selective actions.』

パッケージという言葉が連発されていますが、いくつかの手段をパッケージにして出した方が効果が大きいでしょうという話だそうな。

『The point was made that the choice of instruments and the design of a possible package should reflect the relative effectiveness of different instruments in addressing future contingencies.』

状況に応じてその組み合わせを考えましょう、というのは理屈としては美しいのだが、パッケージというのを強調しすぎると、この政策はこの効果みたいなのがだんだん形骸化してきて、どこぞの日本銀行のように「リスクプレミアムがとっくの昔に無い社債CP買入は何で続いてるんですか」と聞いても「パッケージとして効果を発揮します(キリッ)」というようなオモシロ回答になってしまうリスクがありますな。

『Members saw value in examining ways to further strengthen the state-based component of the forward guidance on the path of policy rates, announcing preparatory work on the design of a tiered system or other options to mitigate the effects of negative interest rates on bank-based intermediation, and preparatory work on modalities for potential new net asset purchases.』

手段の話になっています。ステートベース(カレンダーベースではなく)のガイダンスをぶっこむとか、ECB当座預金残高に対する階層構造の設定による金融機関のマイナス金利負担軽減だとか、資産買入プログラムの新展開(ただしEUの承認が必要)とかの話のようで。

『In this context, it was also argued that linking the state-contingent leg of the forward guidance to inflation would require attention being paid to consistency with the inflation aim. While members expressed broad agreement with initiating preparatory work on mitigating measures, some concerns were raised regarding possible unintended consequences of a tiered system and its ability to fully mitigate the potential effects of negative policy rates on bank intermediation.』

ステートベース(インフレにより紐付けされたもの)ガイダンスの導入は賛成が多いようですが、当座預金階層構造に関しては変なことにならんのかという意見や、それで金融機関の負担軽減になるんかいなという疑問も飛んでいるようですな。まあやらないよりはマシだがこれがあるからマイナスもっと深掘りできるぜヒャッハーとかやられるのであれば階層構造イラネーヨってなもんでしょ。


・コミュニケーションの話に関しては議論がもうちょっと割れている筈にも思えるのだが予定調和な書き方

『Against this background, communication needed to strike a careful balance between, on the one hand, giving unduly negative signals about the state of the economy and, on the other hand, effectively counteracting the concern among some observers that the Governing Council lacked the necessary instruments to secure the convergence of inflation to its inflation aim over the medium term.』

追加緩和およびその手段に関しては、追加緩和によって経済への悲観的な見方を却って広めることにならないように注視しないといけませんね、という話と、市場などから言われ始めている「ECBは追加緩和手段の弾切れで物価目標達成のための手段がなくなった」という懸念を払しょくしないといけませんね、という指摘で、まあそらそういう罠という話。

『It was therefore seen as appropriate for the Governing Council to adjust its forward guidance on the key ECB interest rates, namely that it now expected them to remain at their present or lower levels at least through the first half of 2020, and in any case for as long as necessary, while restating its forward guidance on reinvestments.』

とか何とか検討した結果、結局7月会合で出てきたのがガイダンスのケツを2020年前半まで持って行くというお話でした。

『Moreover, the Governing Council should underline the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time, as inflation rates, both realised and projected, had been persistently below levels that were in line with its aim.』

実際の物価も先行き予想物価も中々アガランチ会長なので大規模緩和が必要ですよというのを引き続き強調。

『Accordingly, the Governing Council needed to convey its determination to act if the inflation outlook failed to improve, in line with its commitment to symmetry in the inflation aim.』

それはいいんだが手段大丈夫かね、とは思いますけど。

『It therefore remained essential to underscore that the Governing Council stood ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moved towards its inflation aim in a sustained manner.』

てな訳で必要ならば必要な手段を投下します(キリッ)ってのも強調するのが大事です、だそうでまあこの辺は既に会見などでも示されている通り。

『Furthermore, it should be announced that the relevant Eurosystem Committees were being tasked with examining options, including ways to reinforce the Governing Council’s forward guidance on policy rates, mitigating measures, such as the design of a tiered system for reserve remuneration, and options for the size and composition of potential new net asset purchases.』

これまでの政策オプション以外の新たなオプションについて検討していることを具体策を挙げて示すのがヨロシアルねという話にもなっている、ということなのですが、なんかこの辺りまでくると(実際問題としては結構な勢いで反対しているドイツ様その他北半分勢力がいるというのに)ちょっと議事要旨の書き方が予定調和になっているような気がします。

『In addition, as heightened uncertainty was likely to extend further into the future, it remained essential to stress that a significant degree of monetary stimulus continued to be necessary to ensure that financial conditions remained very favourable and supported the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, headline inflation developments over the medium term.』

ファイナンシャルコンディションが良い状態を続けることがインフレ上昇のサポートになります、って各国中央銀行はファイナンシャルコンディションを気にし過ぎじゃネーノという気もしますが(もちろん無視したらいかんのだが)まあそういう事だそうな。

『Finally, it was recalled that in the current situation monetary policy would be more effective if other policy areas contributed to raising the longer-term growth potential. With fiscal policy using available space and accelerated structural reforms, monetary policy would be less at risk of being overburdened and would be able to deploy available instruments more effectively.』

最後に例によって構造改革と、出せる範囲内での財政のサポートもいるねという話になるのでした。この後は『Monetary policy decisions and communication』ということで決定事項の話になりますので、そこは先にインスタント読み方式でネタにさせていただきました。






2019/09/09

お題「黒田総裁発言ェ・・・・・・・・・・・/パウエル議長ブラックアウト前に一応利下げの予告っぽいが微妙なビビりも」

台風ェ・・・・・・・ということで今朝は簡単版でご勘弁つかあさい。

〇超長期の金利を上げたいのか短期のマイナス深堀をしたいのか判然としないのだが・・・・・・

金曜の債券市場はご案内の通りでして、
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N25X1JR
2019年9月6日 / 15:31
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、超長期債の金利上昇圧力強まる

『<15:17> 国債先物は続落で引け、超長期債の金利上昇圧力強まる

国債先物中心限月9月限は前営業日比12銭安の154円92銭と続落して取引を終えた。前日の欧米債安や利益確定売りの動きを受けて朝方から軟調に推移。ただ、黒田日銀総裁のインタビュー発言が材料視され、後場にかけて下げ幅を縮小した。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日比2.5bp上昇のマイナス0.250%。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういう訳でして、

『黒田東彦日銀総裁は6日付の日経新聞のインタビューで、20─30年などの超長期債利回りについて「ちょっと下がり過ぎ」と指摘。「生命保険や年金のリターンが非常に下がり、消費者マインドにマイナスの影響を与える」として、副作用にも懸念を表明した。市場では「超長期債利回りに言及したことに市場は大きく反応した。超長期ゾーンから中期ゾーンに資金を入れ替える動きが強まったようだ」(国内証券)との声が聞かれた。』

何せツイストスティープなんぞしやがりましたんですけれども、

『現物市場では、超長期ゾーンの金利上昇圧力が一段と強まった。新発20年債利回りは前日比4.5bp高い0.100%と節目の水準まで上昇した。新発30年債は同7.0bp上昇の0.200%。新発40年債利回りが前日比8.0bp上昇0.225%。一方で、中期ゾーンはしっかり。』

ということで2年とか強くなっておられまして、いやまあナンジャソラという感じではありますが、金曜の13時くらいだったかなと思いますが、日経新聞の土曜の朝刊に出ていましたのでそちらはまあ大枚180円はたいて読んだんですけどね。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49475090V00C19A9EE2000/
マイナス金利の深掘り「必ず選択肢」 黒田日銀総裁
世界経済のリスクに警戒高める
経済 2019/9/6 13:30 日本経済新聞 電子版

こちらのURLですと13時半とかになっていますな。まあ最初はこのタイトル通りに「マイナス金利の深掘りは「必ず選択肢」」ってのがヘッドラインに出ていたのですが、まあそれ自体は前から言ってる話だし、おうやれるもんならやってみやがれコノヤローってなもんでして、まあマイナス金利を深堀りしてリバーサルレートが爆裂して金融システム(のどこぞか)に問題が生じてしまって、現執行部とリフレ派もろとも政策が大爆発して二度とこのへっぽこ共が日の目を見ないようになっていただけるんでしたら別にどうぞ、という位には最近ヤケクソ気味になっているので、まあマイナス深堀りが無いとは言えないからそらそういう罠とは思ったのですが、記事の方はと言いますと、

『米欧が金融緩和にかじを切り始めるなか、6年半にわたり異次元緩和を続けてきた日銀の黒田東彦総裁がインタビューに応じた。米中貿易戦争の混迷が深まり、世界経済は「さらに下方リスクが高まっている」と警戒レベルを高めた。現在はマイナス0.1%の短期政策金利について「深掘りは従来から示している4つのオプションに必ず入っている」と述べ、追加緩和の手段としてマイナス金利の深掘りが選択肢であることを認めた。』(上記URL先より)

とあるのですが、寧ろ市場ちゃんが反応したのはマイナスの深掘りではなくて、ロイターさんの所にもありましたように、超長期の金利が低いだのイールドカーブの過度なフラットは是正されるべきだのという話の方なのですが、土曜日の日経新聞朝刊では(あたくしがそこらのコンビニで購入したバージョンですと)1面トップ記事にどどーんと出ているのですが、記事のタイトルは日経ネット版の表題と同じで「マイナス金利の深掘り」がどどーんと前面に出ている物件でございました。

・・・・・・てな訳で、このインタビューなんですが、「マイナス金利の深掘り」についてアピールしたいのか、超長期のイールドカーブを立たせようとして話をしているのかがさっぱりワカランチ会長な仕上がりになっているのですが、まあ日経本紙の記事タイトルの方を信用することにしまして、マイナス金利の深掘りをアピールしたと思いますと、遂に黒ちゃんなのか日銀なのか知りませんが、ヤケクソになって特攻自爆願望が出てきたかと頭が痛くなるのですが、単に「どうせマイナス金利の深掘りは出来ない」とか言われているのにブチ切れてこういうアピールになったとかそういう事なんでしょうかねえ、つまりECBとFEDが利下げだのなんだのしてきた時に日銀の手段がないとか言われると円高に振れてしまうのでそれを事前に牽制しようとしたとかっすかねえ、何もそんなに鉦や太鼓で宣伝しなくても良さそうなもんなのに、とは思いますけどね。

つまりですね、そもそも論としてガチの追加緩和(効果があるとは言っていない)をしようとしたら、短期マイナス政策金利の深掘りか、長期目標金利の明示的な引き下げ(ゼロ近辺と言ってるのを下げる)しかない訳でございまして、なぜならば量に関しては散々っぱらから減額している訳で、今更量のアピールしようとすると「じゃあお前らこれまでダマテンで引き締めしてたんかいな」というスーパー藪蛇になりますし、まあETF拡大ってのはありますけれども、たぶんこれやって為替に効くとは思えませんので(個人の感想です)、そうなるとガチで追加緩和しようとするとマイナス金利の深掘りか長期の金利下げるとかいう海上特攻作戦しかない、とまあそうなるはずなのよ。

もちろんそれって海上特攻して碌すっぽ戦果も無いまま轟沈するだけの悲しい結論が待っているので、目くらましで誤魔化す手段として「どうせ金融緩和やっているんだから長期金利に関して上昇は容認しないけど低下については容認しますよ」と「日銀、長期金利の一段の低下を容認」とか何とかいうような形で、実際はただの現状追認しかもどさくさに紛れてYCCの形骸化なのですが、まあそれでもやって目くらましして誤魔化しておけば〜とは思うのですけれども、日経のインタビュー記事(何か日経のネット版だと有料会員限定とかになっているので、引用して良いのかどうか悩むので引用はしませんが)をみた感じですと、なんかYCCやっているんだから金利があんまりドカドカと下がるのもイクナイ(でも今の水準は直ちに問題にならない、という玉虫色)という事になっておりまして、いやそっちを有耶無耶にして誤魔化せよと思ったのですが、散々インチキ政策やっているのにそういうインチキはしないのね、ってな感じでした(詳しくは有料会員向けネット記事か土曜の日経新聞朝刊をご覧あれ)。


さて、イールドカーブのスティープに関してもコメントがあったのですが、物凄い勢いでうーんこのと思ったのは「短期のマイナス金利を深堀りするとイールドカーブがスティープする」と思っている節があること、というか何とかストの中でもそういう説は一定量あるのですが、まあそれはちょっとねえとは思うのですよこれがまた(個人の感想です)。

つまりですね、確かに「10年(でも何でもいいですが長期の金利ね)が0%水準というのがフィックスされた状態で短期の金利を引き下げる」ということをすれば、それは確かに金利の期間構造というのがありますのでカーブは立ってくれるのですが、残念ながら実際に短期の深掘りをするとどういう事になるのか、というのは既に今の市場ちゃんが身を切って実践している訳でして、残念ながら「10年の金利も下がってしまう」ので、結局のところイールドが下方シフトするだけですし、下方シフトするだけならまだいいのですけれども、なんぼでもさがるやんという事になるとフラット化まであるでという事になりますので、話はそう簡単ではないんじゃないですかね、と思うのよ。

いや勿論売りオペでも何でもして買入も10年超一切やらないし10年の0%以下の出来上がり金利になる買入の札は全部切る位の根性出して10年金利の上昇阻止を全力でやればカーブは立つかもしれませんが、それができるんだったら今やれよという話でございまして、それが出来ないで金利の低下を力づくで止められない以上、まーマイナス深堀りして超長期のカーブが立つと考えるのは無理があろうかと思われますってなもんですな、うんうん。



・・・・・・・しかしまあ何ですな、これ記事に有りましたけれども、木曜にインタビューしたんだったら金曜の朝刊に出せよと思いますし、30年国債入札の翌日かつ雇用統計前の金曜の後場にいきなりクイックにヘッドライン打つとか、これマーケットメーカーというかプライマリーディーラーに嫌がらせしてるとしか思えない(だからあんなに派手にカーブが動いた訳ですな)仕打ちで、日銀のせいなのか日経のせいなのか知りませんけれども、日銀と日経はプライマリーディーラーに死ねと言ってるのかと小一時間問い詰めたい訳で、別にインタビューするなとまでは言わないですけれども、相場が動きそうなタイミングを狙っただろうと言われそうなタイミングで出すなよと小一時間。

というのもありますし、大体からして次回MPMって利下げするしない云々はさておいても、YCCの運営的にちょっと下がり過ぎてしまっている10年金利に関して何らかの見解をだす必要があると見られる(というか出さなかったら調節の方が大変じゃろ)という状況な訳でして、そういう時にMPMの議論をすっ飛ばして執行部がこういう話をするってのは如何なものかと思われる訳で、審議委員が言うのと、総裁が言うのでは発言の重みというのが全然違うのですから、こういうような次回MPMの政策に予断を持たせるような発言をMPMの議論をすっ飛ばして行うのはアカンヤロと思うので、そのスタンスも問題ですわな、とは思うのです。

まあ色々と問題含みのインタビュー記事ではありましたが、一応アタクシはこの記事に関しては「他国の利下げにウチも対抗できまっせ」というのをアピールしたもんだ、という割と単純な見方をしておきます。ただですね、米欧って多少の利下げはとっくの昔に織り込んでしまっているので、(特にドイツ様の金利は何なんですか)緩和キタコレでそんなに円高に来るかいな、とも思いますし、そんなに円高が嫌なら何でイールドカーブのフラット化に文句垂れるのか、という具合でして、この会見ってとりあえず黒田総裁がイキっているのは分かったのだが、やろうとしていることに対して発言が整合性取れてなくて、何のためにやったのかがイマイチよく分からんです。しかも変なタイミングで出たから、市場に騙し討ちのインパクトを出してしまって、特にマーケットメーカーの皆様の日銀不信を高めてしまったなあと思いますですよ。


〇FEDは利下げの方向なんでしょうけれども筋論の反対の対処は

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKCN1VR293
2019年9月7日 / 02:35 /
FRB議長、景気拡大へ「適切に行動」と再表明 追加利下げ示唆

ちょっとこの記事の元ネタが見当たらなかった(FRBの方にはなくてセントルイス連銀のFOMCSpeakの方にも入ってません)のでベンダーの記事だけになってしまいますが。

『[チューリヒ 6日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は6日、景気拡大を維持するため、FRBが引き続き「適切に」行動すると再表明した。金融市場が追加利下げに向けたシグナルと見なす発言を改めて繰り返した。』(上記URL先より、以下同様)

まあ別に利下げするならすればーとは思いますが、先週金曜までの相場ちゃんを見ていますと、先週後半ってトランプのツイッターも無かったし金融政策に関するポイントになるような発言って無くて、そうこうしているうちに週前半は相変わらずの何やってもリスクオフみたいな(リスク資産の)売り方してたけれども、米中交渉再開とか香港とか英国議会とか、別に何も解決していないけれども一時休戦(英国議会は一時休戦なんてもんじゃないですが)っぽいのが出たとたんにホイホイとリスクオン相場をやっていたわけですよ。

ということで、まあそう考えますと、政治と中銀が大人しくしていれば別にリスクオフにはならんじゃろ(まあ元々の悪化の原因がトレードタリフマンだから当たり前ちゃ当たり前だが)と思う訳でして、おまいらいいから大人しくしてろ、と思った先週の相場なのでした。

てな悪態はさておき、

『パウエル議長はチューリヒで開催された討論会で「政策手段を用い経済を支援することがFRBの責務であり、われわれは引き続き経済を支えていく」と述べた。』

株価の間違いじゃないんですかねえ。

『その上で、17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定を巡り「FRB内で異なる見解が見られることも明らかだ」と述べた。』

最終的に票決の力関係から行けば普通に反対2、悪くても反対3で押し切れるので、多数で押し切ってしまえばやりたいことはやれるんでしょうが、こういうのを言うのはどうなんでしょうかね。

この調子で引用していると全文引用になってしまうので途中少し飛ばしまして、

『パウエル議長は、米国と世界経済が妥当なペースで拡大を続け、景気後退に陥る公算は小さいと予想。同時に、貿易を巡る不透明性などのリスクや「横風」に直面していることから、FRBは地政学リスクや金融状況、入手される指標を注視し、どのような措置を講じるか検討していくと述べた。』

という説明で、ハードデータが別にそんなに悪い訳でもないのに利下げ、というのはまあ別に屁理屈は屁理屈であっても、もともとパウエルさんにしても金融緩和でバブルの発生云々というのを強めに懸念する人だった筈なので、その辺でパウエルさんの中でもコンフリクトがあるのかも知れませんね。

しかしまあこちらは相変わらずですが、

『トランプ大統領はこの日、FRBに対し利下げを実施するようあらためて圧力を掛けた。』

もういい加減にしろと。

『パウエル議長は、トランプ大統領の要求だけでなく、金利決定に当たり来年の米大統領選を念頭に置くよう求めたニューヨーク連銀前総裁のウィリアム・ダドリー氏の主張にいずれにも耳を傾けないとし、[nL3N25N4AE]「政治的要因がFRBの金融政策過程で考慮されることは決してない」と言明、「景気拡大の維持に向けて適切な行動を取る」と表明した。』

ということで締められているようですな、まあ頭がアレなのが上だと大変ですわな。自業自得の面は多々あるのですが、同情は同情しますけど、とにかくパウエルさん「先の決め打ちを止める」だけで随分と運営が楽になると思うので是非その方向で。








2019/09/06

お題「片岡審議委員金懇会見を謹んで鑑賞」

昨日話題になっていたようですがこれは呆れた。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190905/k10012063871000.html
五輪・パラの暑さ対策 人工雪降らせ効果を検証へ
2019年9月5日 4時40分

『このため組織委員会は今月12日から行われるカヌースプリントのテスト大会で暑さを和らげようと観客席に人工の雪を降らせる考えを明らかにしました。』(上記URL先より)

今月12日に効果検証テストとか時すでにお寿司感が拭えませんし、だいたいこの対策意味があるようにも思えんのですが・・・・・・・・


〇片岡審議委員会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190905a.pdf

金懇の時点で市場がノーマークなのですが、会見となりますと金懇以上にノーマークでそもそもがろくにヘッドラインも出てこなくて、そういう意味では会見要旨をフレッシュ(?)な気持ちで見れますな、うんうん。


・「イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させる」の説明が登場します

最初の「今日は何がありましたかああそれから当地の経済はどうっすか」という質問の次に登場した質問がいきなりこれですが確かにこれは聞かないと。

『(問) 挨拶要旨の 8 ページの 5 番の脚注ですが、「フラット化した現在 のイールドカーブを念頭に置くと、短期政策金利のマイナス幅を拡大させ ることで、イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させる」ことができるということですけれども、短期金利のマイナス幅を拡大させるこ とでイールドが立つので、結果的に緩和的になるということなのか、緩和的なイールドカーブの形状というところを、もう少し説明頂きたいです。(後半割愛)』

そらそうよな当然の質問。

『(答) 前回の政策決定会合では、私自身は、その時点のイールドカーブ の形状を前提とすると短期金利の引き下げが適当であると主張しました。 これは、短期金利の引き下げ自体が経済・物価に対して最も効果的であると個人的に判断したためです。』

ほほう。「その時点(=前回MPM時点)のイールドカーブ の形状を前提とすると」、「短期金利の引き下げ自体が経済・物価に対して最も効果的である」とのご判断とのことですが、イールドカーブの形状まで考慮して御分析されたようでございますので、その分析内容についてご説明頂けるのかとここで正座待機。

『「物価安定の目標」の達成・維持は道半ば ではありますけれども、その過程で生じている好循環の勢いを途切れさせないように、 「物価安定の目標」を早期に達成・実現することが非常に重要なことだと考えていますので、引き続き政策委員の 1 人として最大限の努力をしていきたいと考えています。(後半割愛)』

ねえねえそれで説明になると思ってるの????

・・・・・・・・ということで、当然の帰結と致しまして、次に更にツッコミが飛ぶ。

『(問) イールドカーブの形状ですけれども、どういう形になると緩和的なのでしょうか。』

とりあえず何の答えも来なかったのでトサカに来て(かどうか知らんが)直球を投げ込んできました!

『(答) どういう形になれば良いのかということについては、政策決定の鍵になるところですので、この場で申し上げるのは適当ではないと考えます。』

???????????????????????

えーっとすいません、別にYCCじゃない普通の(というか何というかの)フォワードガイダンス政策だって、あれは「将来の政策金利パスの予想(現状政策を維持するコミットメントもこの概念に含まれますな)を中銀が示すことによって、短期金利のみならず中長期のイールドカーブをフラット化させる」というように、インターバンクの短期市場金利水準ならともかく、債券市場の世界での長期金利への働きかけを促す政策っていう時には自ずから「長期金利がこの政策手段によってどのように影響されて、それが金融政策の実体経済の効果を引き起こすどのパスに繋がるのか」という辺りを示さないと政策の意図が分からないんですけど・・・・・・・・・・・・

っていうか、やろうとしている政策があったら、その政策の鍵となる部分の説明しないと意味がないんですけど、まさかとは思いますがその鍵というのは貴方様の想像上の産物であって実際には存在しないものなのではないでしょうか??などと言いつつ話は続く。


『ただ、一般論として申し上げれば、イールドカーブの形状については、 水準・傾き・たわみの 3 点からみて、どういう形状が緩和的なのか、2016年 9 月の「総括検証」でも分析されていると思います。』

はああああああああ???????????

えーっとですな、総括検証における分析では「金利水準というのは闇雲に下げれば良いというものではなく、適切な緩和度合い、と言えるものが存在する」って話で、総括検証の中では直接的に出ていませんが、いわゆる「均衡イールドカーブ」という均衡金利のイールドカーブ版という考え方から出発して、その均衡イールドカーブに対して実際のイールドカーブが金利水準として低い所に居るのが緩和的政策であり、その均衡イールドカーブからの乖離度合いが緩和の度合いで、それをむやみやたらと乖離を大きくすれば良いというものではない、というのが理念的に存在する、というのが総括検証の結果。

でもってですな、その観点からしますと、ここから利下げするって話ですと一段と市場金利を下げようという話だと思う(思う、というのはそもそも何をしたくて短期政策金利を下げろといっているかという説明が皆無なのでこっちで想像するしかない、という信じ難い理由による)のですが、その場合、均衡イールドカーブからの乖離が更に大きくなる訳で、それは総括検証的に言えば効果と副作用を十分に勘案すべきだし、金利の下げ過ぎは逆効果の可能性が高いって話になっていたのですが、何故ここで総括検証を出すんでしょこの人は。

『その辺りを基準に しながら、どういう形状が良いのかをみていくことになるのではないかと思っています。』

・・・・・・・・・何にも考えてないのかよ!!!!!!!!!!!!

ということで、昨日ネタにしてアタクシも疑問だった「フラット化した現在のイールドカーブを念頭に置くと、短期政策金利のマイナス幅を拡大させることで、イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させるよう、長短金利操作 を行うことが適当だと考えています。」(同日の金懇挨拶より)という部分に関して、何のことはない何も考えていなくて、ただ単に追加緩和主張芸人なので何も言わないわけには行かないし、単に政策金利部分の引き下げだけ言ってるのも芸が無いから、「イールドカーブ」と言い出した、という理解にこの説明だとなってしまうようにしか見えないのですけれども(個人の偏見です)、それで良いのか片岡さん。



・15年金利→10年超の金利→短期金利の変遷の理由が今明らかに!(明らかになるとは言ってない)

暫く質疑が続きますが質問して欲しかったネタですよこれが(なお上記のイールドカーブ云々も今回の金懇挨拶で急に登場してきましたが、同様に聞きたいネタでありますので、紹介順がアタクシの好みを盛大に反映しておりますな)。

『(問) 一貫して就任以来、追加緩和を主張されてきたということですが、 今までの発言をみていくと、どちらかというと長期金利の低下であるとか、 その誘導目標をより下げていくべきだといった方向で緩和を考えられていたところが、7 月の金融政策決定会合で、短期の政策金利、マイナス金利の深掘りに手段として着眼されたのは、今までのところからするに、そういう観点を変えられたのは何か意味があるのでしょうか。(後半割愛)』

順当ではあるがきわめてイイシツモンダナーである。

『(答) マイナス金利について、どのようになぜ変えたのかというご趣旨 かと思いますが、現状、金融政策の枠組みの中で日本銀行が行っているイ ールドカーブ・コントロールでは、その当時のイールドカーブの状況にあわせて、どういう形で形状を変化させれば緩和的になるのかという観点で長期金利を下げるべきなのか短期金利を下げるべきなのかといった判断をしています。』

ほーなるほどー、そーなんですかー(完全に棒読み)。

『ですから、私自身が 7 月の金融政策決定会合の際に主張を変えたというのは、7 月の金融政策決定会合の時点に成立していたイール ドカーブをみて、そのように判断したということです。(後半割愛) 』

これは酷いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

片岡さん今回新たな技として「その時のイールドカーブ次第で変更しようとする金利の位置が変わる」というオモシロ技を繰り出してくださったんですが、だったら金融政策決定会合の「主な意見」でどういう理由でその判断をしたか説明して頂きたいものですなあとか思いますし、それ以前の問題として、過去片岡さんが参加されて追加緩和が必要という話をしている筈のMPMの記事要旨に関しては不肖このアタクシ浅学菲才ながら拝読をしておりますが、その中でイールドカーブの形状に関する議論からの適正なイールドカーブにするためにこういう政策が必要ではないか、というような議論ってありましたっけ(少なくとも毎回その話をしているようには見えない)と小一時間問い詰めたい。

まさかとは思いますが、イールドカーブとかいう言葉を持ち出してしまったのでそれに話を合わせるために尤もらしい話をつけたら更にそれが墓穴を掘っているとかそういう展開だと悲しいので、まあそのような事ではないと信じたい所ではありますが、これじゃあ何をどう考えて政策提案をしているのかさっぱり分からないんですが勘弁してください。


・議案を出さない理由が今明らかに!(明らかになるとは言ってない)

さっき引用した実質1番目の質問の後半になります。

『(問)(前半割愛)また、7 月の会合の際に、片岡委員は、「短期政策金利を引き下 げることで金融緩和を強化することが望ましい」という理由で、現状維持 に反対されたと思うのですが、現下の経済・物価情勢を考えると、正式な短期金利の目標の引き下げを提案するということを今月にも検討すべき なのか、その辺りのご意見をお願いします。』

『(答)(前半割愛)議案を提出しないのかといった点については、前回の金融政策決定会合では、先程申し上げたことは意見として申し上げ、議案を提出する 必要はないと考えました。ただ、先行きの政策運営にあたっては、毎回の 金融政策決定会合までの経済・物価・金融情勢を十分に検討したうえで、適切に判断していきたいと思っています。この際、副作用やリスクについ ても様々な観点から検討していきますし、賛否や議案提出の有無などについては、そうした検討を進める中で判断していくことになると思います。』

???????

いやあのですな、例えば一等最初に出してきた「15年の国債利回りを0.20%未満で推移するように促す」とかその次の「10年超の金利の一段の低下を促す」とかいうのでしたらば、このディレクティブ出すって言ったって15年金利ならその手段が無いと具体的に政策を実行できませんし、後者の場合はあまりにもフワッとしすぎでディレクティブに落とし込めんがな、となりますから、そらまあ政策議案として提案するにしても何らかの実行手段とかもセットにしないと政策提案にし辛いってのは分かるんですよ。然るに、今回の短期政策金利の引き下げって別に今の枠組みの中で何の工夫をしなくてもお茶の子サイサイで出来てしまうし、ディレクティブ的にも日銀当座預金の政策金利残高相当額の適用金利が何ぼ、というだけで他は変わらんのですから、短期金利の引き下げだったら必要だと思うならさっさと出せや以外の感想が沸かないのですけえども。


・先制的な政策対応だそうだがその前に今の政策の効果の確認をした方がよろしいのではないでしょうか

先制的に対応とかいうのはベンダーヘッドラインをにぎわしておりました。こんな質疑でしたが。

『(問) (前半割愛)また、挨拶要旨の中で先制的に政策対応をしていく必要があると いうことだったのですが、繰り返しになってしまうかもしれませんが、例えば次回の金融政策決定会合等で何かしらの政策対応をしていくべきだ というような意図をもってこうした発言されているのか、その点をよろしくお願いします。』

ふむふむ。

『(答) (前半割愛)先制的な政策対応については、私自身、何か特段の思い入れをもって先制的と言っているわけでは決してなく、金融政策の要諦というのは フォワードルッキングな政策対応というのが基本ですので、この線に沿っ て政策運営をしていくべきではないかということを申し上げたということです。』

そういう時には「プリエンティブに対応」と言った方が発言としての戦闘モードが下がって穏当になるのでお勧めしておきます。

『世界経済の状況をみていきますと、様々な意味でリスク要因が増 していますし、そのことによる影響も一部では顕在化しつつある状況です。 そうしたような状況というのは、日本経済に対して一部波及してきているところもあると私自身は認識していますが、そういった状況になってくると判断されれば、当然、遅行指標である物価に影響が及ぶのをみてから行 動していては、結果的に経済が悪化したことを確認してから行動することになってしまいますので、そうではない形で先んじて行動を起こさないと難しいのではないかということです。』

ほーそうですか、ところで遅行指標である物価を目標にした金融政策をやっていると「先制的な政策対応」ってのが出来なくなると思うんですけど大丈夫なのでしょうか片岡大先生様wwwwwwwww

・・・・・・てな訳で、昨日も脇がガバガバとか申し上げましたが、先制的な対応(キリッ)とか威勢のいい話をする理由の中で「物価を見て政策をしていたら手遅れになる」とか言ってしまい、物価安定目標政策の中で、緩和政策に対してフォワードガイダンスだのオーバーシュート型コミットメントだのという、政策がビハインド・ザ・カーブになるのを辞さない政策を現状で行っている事と思いっきり矛盾する話を持ち出すとか頼むから整合性というのを考えて発言なり講演原稿の作成なりをして頂きたい。

この説明だって別に物価云々持ち出さなくても、例えばの話「リスクが顕在化した場合、マインドが急速に悪化して実体経済に影響を与えるので、経済のハードデータの悪化を確認してから動くのでは、その時点でマインドの悪化が深刻なものになっているリスクがあるのでプリエンティブに対応する姿勢が重要である」とでも言えば良いのに、何でそう墓穴を掘りに行くのかと。

でもって回答はもうちょっと続きまして、

『それから、フォワードルッキングな政策対応の重要性に関して言えば、金融政策というのは、政策を決定する際のラグ、時間的な遅れは比 較的短いと思いますが、金融政策が実体経済に波及するラグは、他の政策と比べても長いということがよく言われています。この政策の波及ラグを 前提とすると、悪くなったことを確認した後で行動していては、政策が後 手後手に回ってしまいますので、金融政策運営上好ましいことではないというのが私の意見です。』

って言ってるんだから前半の話しなければ良いのにと思いますが、 「金融政策が実体経済に波及するラグは、他の政策と比べても長いということがよく言われています」だそうなのですが、置物リフレマネタリーベース直線一気理論は随分と物価に影響するまでタイムラグがあると思うのですが、その辺はどのようにお考えなのかと小一時間問い詰めたい所ではありますなあっはっは。


#えーっとすいませんやってるうちについうっかり時間を消費してしまいまして他のネタをやる時間が無くなってしまいました





2019/09/05

お題「片岡審議委員函館金懇である」

すいません昨日続きやるとか言ってたECBネタは天候不良のため(嘘)明日に順延で勘弁して頂きまして片岡さんの金懇である。

〇片岡審議委員の函館金懇は結論に持って行く理屈がアレ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190904b1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 函館市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
片岡 剛士

スライドショーになっているのが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190904b2.pdf
でして、こちらにポンチ絵と図表が載っています。


・ちなみに時々発生するアドビで開けるとあばばばばー現象is何?(冒頭から余談)

えーっとですな、こちらの挨拶要旨なんですけど、最初にアップされているバージョン(今のもそうなのかちと確認してないですが)だと、アドビのアクロバットリーダーで開けると印刷とか読むのは出来るのですが、テキストに落とそうとすると変なことになってしまうという仕様になっていまして、MSのエッジで明けるとまあ無事にテキストに落とせる(クロームでは見てないのですがたぶんそういう時は経験的にクロームでも大丈夫なのではないかと)ということで、テキストエディタ何使ってますねんという事象が発生するのですが、ときどき日銀の出してくるPDFファイルに発生するので、MSオフィスデフォルトのものじゃないエディタ使ってるんですかねえとか思うのですが、マジで面倒なので勘弁して頂きたい(今回はエッジで無事だったので良いのですが)と思う、とか言うと意識の高い人たちから「そもそもMS標準使っているお前のリテラシーがなっとらん」と言われるという事実もありますのですが、今回もこれかよと頭抱えてしまったので一応メモっておきます。


・・・・・・・さてさて、まあ万年野党だわ提案芸人だと思ったら提案すらしなくなってくるわとか、いろいろな芸の変遷を見せる片岡大先生ですが、まあ今回も特段見るべきものは無いのですが、持って行きたい結論「追加緩和がさっさと必要」に対して繰り出す理屈の組み方が安普請にも程がある状態で(個人の感想です)何とかスト出身として如何なものかとか思いながら拝読するのでした。

ちなみに出オチで申し上げますと、「追加緩和が必要」という主張をするのは良いのですけど、その根拠を説明しようとしてその説明が強引にも程があるので脇がガバガバ、とまあそういう具合に出来上がっているのが今回の金懇ちゃんでありましてですね・・・・・・・・・・・


・えーっとすいません何で2018年4月のWEOと比較するんですか??

最初の(と言いつつ前置きはパスしてますが)『2. 経済・物価情勢』というところの『(1) 海外経済の動向 』という小見出しの所(本文1ページの後半から)を見る訳ですけれども早速これですよ。

『まず、海外経済の動向についてお話しします。海外経済は、昨年後半から足もとにかけて成長ペースが弱まる中、各国の動きにばらつきが目立ち、リスク要因の一部が顕在化しつつあります。』

って話で、要はだからこそ追加緩和が必要ですよって話をするのは良いんですが、この説明は何なんでしょというのが続く。

『図表1にあるIMFの世界経済見通しでは、世界経済の成長率は、2019 年に 3.2%まで減速し、2020 年に3%台半ばのペースに回復するとの予測が示されています。』

直近のですと
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2019/07/18/WEOupdateJuly2019なのですが、IMFのページってアタクシが慣れてないせいだと思うのですが、こういうのの過去レポートを見たいときにちと不便でして、今回は同ページの検索機能使って「WEO 2018」みたいな感じで過去のレポートを検索してみました。

でまあ直近は仰せの通りになっておりますがこの次がアレ。

『しかし、図表の右側にあるように、昨年4月時点の見通しと比べると下方修正が目立っています。』

>昨年4月時点の見通しと比べると
>昨年4月時点の見通しと比べると
>昨年4月時点の見通しと比べると

????????

えーっとすいません、IMFの世界経済見通し(WEO)って4月と10月にフルレポートが出て、7月と1月に中間アップデートがあるので、今年7月の直前の見通しですと今年4月のWEOがあると思うのですが、何でまた1年3か月前のと比較すると下方修正だからって話をする訳なのでしょうかというお話。

まあこれはさっきご紹介した直近WEOアップデートを見れば(経済見通しの数字自体は今年7月のアップデートバージョンだと本文8ページの『Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections』という所にテーブルがある)分かるのですが、直近のアップデートでは確かに世界経済の成長見通しは4月対比下方修正になっているのですが、2019、2020年の世界の成長率の下方修正幅はいずれも-0.1%(ちなみに4月の見通しが2019年3.4%、2020年3.5%で7月アップデートの見通しが3.2%、3.5%と表示されているので、有効桁数未満の端数の所でヘッドラインの差と出ている変化幅がちょっと違うようになっております)という小幅修正になっていますし、米国の見通しに至っては2020年は4月対比横這いですが、2019年見通しは+0.3%の上方修正が行われております。

なお、念のため2019年の世界経済成長率見通しの推移を見ますと、昨年4月見通し以降四半期ごとに3.9%→3.9%→3.7%→3.7%→3.5%→3.4%→3.2%という推移になっておりますが、この金懇テキストでは「リスク要因の一部が顕在化しつつあります」という風にいかにも最近になってリスクが顕在化しています的な表現になっているのですが、直近との比較で見るのではなくて1年3か月前と比較して下がっているからどうのこうの、というのは如何なものかというのに加え、ことさらに1年以上前の見通しと比較しているのは、直近での下方修正が大したことないので、大きく下方修正されているような期間を恣意的に拾ってきたんじゃないの??との疑問を拭えませんですな。なにせ置物リフレ一派といえば「ヒストリカルデータの話をするときに自分の話に都合の良い期間を恣意的に選んでくる」というのが置物しぐさとして人口に膾炙しているだけに、片岡さんよお前もかという所ではございますな。

つまりですね、1年3か月前のWEOと比較して云々、というのであれば、恐らくは「IMFの見通しは次第に下方修正されていくもの。2018年の見通しを見ると、昨年4月の時点で+3.9%となっていたが、実際には+3.6%と下方修正されている。したがって現在の2019年見通しの+3.2%も今後の不確実性を考えると下方修正が必至で、国際機関などが見込む見通しよりも悪くなる可能性が高いとみられる」みたいな理屈で迫っていくと思うのですが、2018年4月と比べて下方修正が大きいから今後懸念されるとか言われましてもそれは理屈として無理があると思われる、ということですな、うんうん。


なお、その続きですが・・・・・・・・・


・世界経済の下振れリスク顕在化の説明にPMIだけを使うというのはちょっとお前

『また、図表2で世界の購買担当者景気指数(PMI)をみますと、製造業は2か月連続で中立水準の 50を割り込み、世界が欧州金融危機に直面した 2012 年 10 月以来の低位にあります。非製造業では、水準は 50 を上回るものの、方向は緩やかな低下基調にあります。』

と来まして、

『こうした点から、私自身は、今年後半以降とされてきた世界経済の回復のタイミングが後ずれし、かつ回復の程度も小幅にとどまる可能性が高まっていると考えています。』

という説明になっているのですが、WEOの数字に関しては今申し上げましたように直近変化じゃないのを使っていますし、しかもそれ以外での説明が上記の通りPMIというマインド指標だけでして、いやあのPMI一本勝負で景気の先行きガーとか言い出すのは何ぼ何でも根拠薄弱と言いますか、せめてハードデータがこうなっている一方でソフトデータであるマインド系がどうのこうのみたいな説明してくれよあんさん何とかストだろ勘弁してくれよというお話ではあります。

そしてこの続きですが、

『その、より具体的な背景としては、経済政策の不確実性の強まり、米中貿易摩擦の展開とその影響、さらに世界半導体市場の先行き、の3点が重要です。』

というのがありまして、まあその趣旨自体はさようでございますなという物件なので、悪態という程のものでもないのですが・・・・・・・・・


・何の断りもなしにいきなり普段あまり使わん指数を出さんで欲しい

『第1の点について、図表3では、世界生産量の前年比と、主要 20 か国の経済政策の不確実性の度合いを示す「経済政策不確実性指数」を示しています。各国が行う経済政策の不確実性が強まる中で、世界の生産の増勢が鈍化しています。』

ってあるんですが、本文には脚注も何もなくて、図表の方の脚注も『(出所)Economic Policy Uncertainty, "Global Economic Policy Uncertainty Index" CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis, "Industrial Production Volume"』ってこれだけじゃ何が何だか分からんわという所でして、いやまあ市井の片隅におりますアタクシが無知蒙昧だから知らんだけと言われてしまえばすいませんですねえって話ではあるのですが、普段そんなに皆さんが使ってるわけでもない(と思うのですが・・・・・・)マイナー指数をいきなり説明碌にしないで出さないで頂きたいと思う訳ですよ。お蔭でこっちは調べないといけない破目になる訳で。

ちなみに、この「経済政策不確実性指数」を使った考察は日銀の場合だと2016年10月の展望レポート全文のBOX2にありまして(http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1610b.pdfの本文31ページ)、そこの脚注を見ると『「経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)」とは、主要新聞における経済政策の不確実性に関連する報道件数や、エコノミストの経済・物価見通しのバラツキなどに基づき、人々が感じる不確実性の度合いを定量的に測定した指標。作成方法の詳細は、Baker, S., N. Bloom and S. Davis (2016),“Measuring Economic Policy Uncertainty,” Quarterly Journal of Economics , 131(4), pp.1593-1636.を参照。』ってあって、何ちゅうかこの最近出来た指数じゃんとか思う次第で、そらまあ定性的にそうでしょってのを指数化したものだから結果として片岡さんの説明のような出来上がりになるというのはまあ分かるんですけどねえ・・・・・・(2016年10月の展望レポートも同様の説明です)。

ただですね、この部分、何もこんなマイナー指標を持ち出さなくても「先行きの不確実性が高まると生産意欲などが委縮します、特に米中貿易がそうですが、米中貿易問題以外にも多くの要因があります例えば・・・・・・」って定性で説明すりゃ良いだけの話でして、それで十分説得力があるストーリーが書けるのに、マイナー指標を指標の説明抜きに持ち出してきて尤もらしいグラフとかを出すと、説明そのものの説得力よりも胡散臭さの方が印象になりやすくなってしまうので残念なんですよね(個人の感想です)。

でまあ米中貿易摩擦だの半導体だのというのは大体展望レポートの全文とかにも話があるネタなのでまあこの辺は別に普通なのですっ飛ばします。


・説明のパーツパーツの話をもう少し丁寧にお願いしたい

次の小見出しが『(2) わが国の経済情勢 』でして、現状の方はパスして先行き見通しですけれども、

『わが国経済の先行きについてですが、図表7で本年7月の展望レポートにおける政策委員の経済見通しの中央値をみると、実質GDP成長率は、2019 年度が+0.7%、2020 年度が+0.9%、2021 年度は+1.1%と見込まれています。こうした日本銀行の中心的な見方では、当面、外需は弱めの動きとなるものの、その後は緩やかに増加し、堅調な内需と合わせ、先行き拡大基調が続くことを想定しています。もっとも、私自身は、見通し期間の成長率をゼロ%台の半ばから後半と予測しており、潜在成長率をやや下回り、リスクも下方に厚いと見込んでいます。この背景として、海外需要の悪化が国内需要にどう波及するかが重要です。以下、私の考えを、輸出、設備投資、個人消費の順にご説明します。 』

となっていまして、輸出はそらまあ海外がもろに響くのだから良いのですが、設備投資に関しては、

『次に、設備投資については、図表9のとおり設備不足の圧力が加わり続ける中で増加基調にあります。ただし、短観の生産・営業用設備判断DIは今年に入り設備の不足と過剰の分水嶺に近づいており、今後、設備投資の拡大基調が一服する可能性があると考えています。』

ほうほう。

『6月短観の設備投資計画は、製造業、非製造業ともに全体では堅調な動きでした。しかし、図表 10 にあるとおり、製造業の中でも「はん用・生産用・業務用機械」や「自動車」といった輸出依存度の高い加工業種の計画は過去の平均を下回っており、特に「はん用・生産用・業務用機械」では6月調査の計画が3月調査より下方修正されています。足 もとは、素材業種が製造業全体を牽引していますが、過去の平均的な修正パターンを踏まえれば、素材業種でも下方修正が進む可能性があります。さらに、図表 11 の非製造業についても建設や卸・小売では過去平均並みの計画となっていますが、情報通信はやや弱めの計画です。このように設備投資計画は、全体としては堅調でも、製造業においては海外経済減速の影響が着実に及んでいると考えています。』

という話ではあるのですが、今すっ飛ばした景気の現状の話の部分では、

『19 年4〜6月期は、世界経済の減速を反映して輸出の寄与は引き続き低調であったものの、1〜3月期に寄与が低下した民間消費、設備投資、政府支出の寄与が拡大したことで内需の寄与が好転して、全体として外需の減少を内需の拡大が補う形となっています。』

となっていて、そもそもが外需が弱くて内需が強いという構造がある中で、では海外がどのように設備投資に効いてくるのか、という話になった時に、この説明だと何かこう「製造業でとどまってしまう」みたいな感じに読めてしまう訳ですよ。いやまあアタクシも別に設備投資が国内要因だけでサステイナブルに堅調というのもどうかとは思うけれども、省力化とかのような外需が多少コケてもあまりキニシナイ分野の堅調さは侮れないとも思いますので、その辺をもうちょっと整理せんと「ああそうですか」って感じになってしまうように思えますがねえ(個人の感想です)。

『個人消費については、図表 12 のとおり、耐久財やサービスの消費が全体を牽引しつつ緩やかな増加基調にあります。これには良好な雇用環境が維持されていることが寄与していますが、景気ウォッチャー調査における雇用関連の現状水準判断DIが分水嶺である 50 を割り込む瀬戸際の水準にあり、有効求人数も5か月連続で前年比が減少しているように、今年に入り労働市場には変調の兆しもあるとみています。』

ほうほう。

『図表 13 のとおり、消費税率引き上げを控えた消費の動きはこれまでのところ穏やかですが、消費者マインドは前回増税時の半年前(2013 年度下期)と比べて悪化していると私自身はみています。消費税の負担軽減策の効果が消費にどう作用するか見極めが難しく1、消費税率引き上げの影響を含め消費の先行きには注意が必要です2。』

・・・・・・・えーっとですな、この説明だとさっきの「この背景として、海外需要の悪化が国内需要にどう波及するかが重要です。(キリッ)」と説明していたポイントはどこにあるのよという感じでして、個人消費が海外のリスクに対して、リスクが顕在化すると波及効果がこのように出てくるから懸念されますという話をするならともかく、結局この説明だと殆ど輸出で一部設備投資に影響、みたいな話になっていて、「この背景として、海外需要の悪化が国内需要にどう波及するかが重要です。(キリッ)」と話が繋がっていないと思うの。

いやもちろんこのパーツパーツの部分での説明は(数字の評価とかで見方が割れる部分はあるにせよ)ご指摘の点について別に全然違うじゃんとかそういう話ではなくて、むしろさいですなと思う部分も多いのですけれども、海外がリスクでその波及が懸念という話で政策提案をしようというのであれば、どのようなメカニズムで海外リスクが国内に対する大きなリスクになるのか、というストーリーを作って頂きたいのですけどねえ。

でまあそれはそれと致しまして、実はこの労働市場の部分、講演の後の方で「労働市場に構造変化が起きている」という話をしていて、そっちの話はそれはそれでメイクセンスするのですが、その構造変化の話をするならば、近い将来の労働市場の見通しに関してもその影響あるでしょうし、政策判断の部分でも重要なファクターになるんじゃないかと思うのですが、構造問題は構造問題、今の話は今の話、みたいな感じになっていて、その辺の説明を一体として労働市場の話をしてくれれば、またひとつ面白い話になると思うのですが、部分のパーツを仕上げるだけ終わっていて、全体の構成がアレなのが誠に遺憾に存じます次第。


・物価の現状に関する説明ですけど

次の小見出しが『(3) 物価の現状と先行き 』になりますが、読んでてちょっと引っ掛かるのはこの辺。

『 続いて物価動向についてみていきます。本年7月の消費者物価指数の実績は、図表 14 左図のとおり、生鮮食品を除く総合、生鮮食品およびエネルギーを除く総合ともに前年比+0.6%となりました。図表 14 右図に示した消費者物価の基調的な変動を表す指標をみると、価格上昇品目数が下落品目数を超える度合いは今年に入りやや高まっていますが、刈込平均値や加重中央値は上昇が一服し、価格上昇が消費ウエイトの大きい財にまで波及していないことがわかります。『

「価格上昇が消費ウエイトの大きい財にまで波及していない」って説明に何か違和感ありますし、上昇品目下落品目の話の部分に関しては(確かに2%に行く勢いがないというのは同意しますが)ここまでいう程悪いかという感じで、むしろ先行き懸念とか言われても全然底堅いじゃんという感じがするのですが(個人の感想です)。

『次に、物価の基調的な変動に影響を及ぼす指標として、マクロの需給ギャップと中長期の予想インフレ率の動きを確認します。図表 15 左図の需給ギャップは、資本・労働市場の改善を受けて需要超過の状況が続いていますが、最近では、需要超過幅が一本調子で拡大を続ける状況ではなくなっています。』

ってあるんですが、日銀謹製の需給ギャップで言えば1%台の水準をもうだいぶ継続していてそれなりに高い水準だろうと思いますし、そもそも論として高すぎる需要超過状態は(高度経済成長経済でもやっているのでない限り)サステイナブルではないのですから、「需要超過幅が一本調子で拡大を続ける状況ではなくなっています(キリッ)」とか言われましても当たり前じゃヴォケ高度成長経済でも考えてるのかこのスットコドッコイという感想しか出てこないんですがそれは。

なお、その続きになりますが、

『また、予想インフレ率については、図表 15 右図にある通り弱めの動きが続いています。これには、過去、長期間にわたってデフレが続いたことや、足もとの物価の動きが弱いことが作用しているほか、私自身は、日本銀行が掲げる2%の「物価安定の目標3」の実現に対する信認が十分に強まっていないことも影響していると考えています。』

ってのは笑ってしまいまして、お前ら置物リフレ一派の政策が実績上げてないからこのテイタラクなのであるのですから、普通に考えますと政策の背景となる思想理論や、政策波及メカニズムなどへの真摯な再検討を行い、政策の抜本的見直しを行うことによって、「信認を十分に強める」とやらをやって頂きたいのですが、何せ置物リフレ一派の場合は謝ったら死ぬ病に罹患しておられるうえに、話が怪しくなってきたら急に今までの理屈を放棄して戦線拡大に走る(マンデル・フレミングを持ち出して金融政策で達成するのが当然位の話をしていたのは今や昔)という得意技がありますが、まあこの部分を自分らの置物リフレ政策が根本的な部分で役立たず理論であったという反省にならないで他人事のように予想インフレが上がらんことを説明する辺りがもう何ともではあります。



・需給ギャップに物価が反応しないのは良いのですが・・・・・・・・・・

でもって今の話は続きまして、展望レポートに関する物価見通しの記述に反対した、という部分になります。

『物価の先行きについてですが、本年7月の展望レポートにおける消費者物価指数前年比の政策委員見通しの中央値は、消費税率引き上げと教育無償化政策の影響を除いたケースで 2019 年度+0.8%、2020 年度+1.2%、2021 年度+1.6%となっています(前掲図表7)。2%の物価目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているというのが日本銀行の見解ですが、私自身は、この先、物価上昇率が2%に向けて伸びを高めていくとは判断できないとして、7月の展望レポートにおける一部の記述に賛成しませんでした。』

ほうほう。まあ見通しがそもそも大本営発表ですから賛成しないのはよくわかる。

『この理由として次の4点が挙げられます。第1に、需給ギャップの拡大がインフレ率の拡大につながりにくくなっていること、第2に、適合的期待形成を通じた予想インフレ率の上昇や、予想インフレ率の上昇を受けた物価上昇という経路が機能するには時間がかかること4、第3に、物価見通しの下方修正が続く中で政策が現状維持とされるもとでは、物価目標に対する信認強化を通して予想インフレ率がフォワードルッキングに高まるとは見通しにくいこと、第4に、各国の中央銀行が金融緩和姿勢を強める中で、為替相場等を通じてわが国の物価に対する逆風が強まるリスクが高まっていることです。』

ということだそうですが、その次の金融政策の話になりますとですなあ・・・・・・・・・・・・


・金融政策の話がちょっと脇がガバガバなんですけど

次が『3. 金融政策運営』の小見出しになります。最初の部分は現在行っているYCCQQEの説明を普通に行っているのでそこは飛ばしまして、では片岡さんのご意見について、というまあ今回の金懇挨拶で読んでみたかった部分が登場するのですな。


『こうした政策手段のうち、私は、長短金利操作とコミットメントの2つに対して反対しました。』

はい。

『長短金利操作については、私は、できるだけ早期に物価目標を達成するという政府との「共同声明」でも謳われている日本銀行の責務に鑑みると、物価目標と実際の物価上昇率に相応の距離がある現状では、金融緩和を強化することが必要だと判断しました。』

ほうほう強化するとな。

『以上の認識から、追加緩和によって需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることと併せて5、物価目標と関連付けた形でフォワードガイダンスを修正することも適当であると指摘しました6。』

>追加緩和によって需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることと併せて
>追加緩和によって需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることと併せて
>追加緩和によって需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることと併せて

ちょwwwwあんさんwwwwwww

えーっとすいません、展望レポートの反対のところで「需給ギャップの拡大がインフレ率の拡大につながりにくくなっている」って言って反対しているのに、需給ギャップの拡大を働き掛けるために追加緩和をして、行ってそれがどのように物価上昇目標達成に寄与するのかというのは詳しく説明して頂かないと、説明がただのご都合主義になってしまうんですけれども。

さらに、

『これらに加えて、経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中でデフレからの完全脱却を目指すうえでは、財政・金融政策のさらなる連携を図る工夫を講じることで、市場や企業・家計の期待や予想に働きかけていくことも重要であると考えました7。 』

ってあるんですけれども、まあそれ以前の問題として、マイナス金利の拡大を行うことによって何で需給ギャップの拡大が一段と進むのか、というメカニズムに関してきちんと説明していただきたい訳でして、政策金利を下げて実質金利が下がると需要が喚起されるって理屈は分かるのですが、そもそも論として実体経済への波及メカニズムを考えた場合、市場金利が下がったって貸出金利や預金金利が下がらないと実質金利の低下が金融政策の波及メカニズム的な意味で発生しない訳でして、現状で既に名目金利非負制約に引っ掛かってきている状況(少なくとも預金金利はどう見ても非負制約に引っ掛かっている)で、マイナス金利のマイナス拡大の多くの部分が単に金融仲介機能の中での実質課税強化の形で吸収されてしまって、政策としての効率はどうなのか、とかそんな考察はどうなっているのかと小一時間問い詰めたい。

しかもこの「追加緩和」の話って物凄くフワッとした説明しか本文には無くて、このページの脚注の方に辛うじてマイナス金利拡大というのがあるのでこうやってツッコミが出来るのですが・・・・・・・・・・


・何か手段に関してもナンダソラという感じがするのでして

でもってその脚注。

『5 フラット化した現在のイールドカーブを念頭に置くと、短期政策金利のマイナス幅を拡大させることで、イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させるよう、長短金利操作 を行うことが適当だと考えています。』

ってナンジャソラという感じでして「短期のマイナス幅を拡大」というのは分かるのだが、それによって「イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させる」って何を言いたいのかさっぱりわからなくて、短期政策金利のマイナス深堀をすると今のイールドカーブがどのように変化することが想定されて、その結果どうなったら緩和的なのかの説明が無いと、何考えてるんだかさっぱり分からんので、せめて短期政策金利のマイナスを拡大してどのようなイールドカーブ形状になると緩和的になるのか、という図式だけでも(定量じゃなくて定性でいいから)ちゃんと説明してくれませんかねえ、というか脚注になっているだけなのでそもそも金懇挨拶では触れてすらいないのかもしれませんね。


『 6 現在のフォワードガイダンスに示された 2020 年春頃までに物価目標が達成できない場合、 その期間を延長する必要が生じる可能性があります。仮にそうした変更を繰り返すことになると、金融政策への信認が低下する懸念があり好ましくないと考えています。私自身は、 政策金利のフォワードガイダンスは、物価目標と関連付けたものに修正することが適当と考えています。』

まあこの理屈は理屈としては分かる、問題は物価目標を達成する手段がない事だし片岡さんも説得力のあるメカニズムと共に具体的な提案を出していただかないと。

つまりですね、政策金利のフォワードガイダンスってのは、「通常だとこの辺で金融緩和政策の修正がおっぱじまると世間様や市場様が想定する時期よりも長めの期間の緩和政策維持について(何らかの条件と普通はそこにつけて)コミットすることによって、経済物価情勢が改善していく中において、緩和政策終了を先取りした市場金利の上昇を抑制することによって、より長めの金利に対しての金融緩和効果を持続させる」という代物であることはほぼ見解が一致するところだと思うのですが、「物価目標と関連付けたフォワードガイダンス」を作ったとしても、それは物価安定目標の達成に向けた具体的かつメカニズムとして有効そうな政策とセットでなければガイダンス入れても入れなくても同じですがなという話ですので、理屈としては片岡さんの言ってることは良いのですが、物価目標を達成させるためのメカニズムを含めた政策プロポーザルが無いのであれば意味なし芳一。


『 7 わが国では、1990 年代半ば以降、デフレが長期化する中で、物価が上昇しないことを前提 とした経済活動が合理的となり、そうしたもとで企業や家計のマインドが形成されてきた と考えています。こうしたインフレ予想のアンカー(碇)を失った状況のもとで、2%の物 価目標を達成・安定化するためには、金融緩和の強化のみならず、財政政策との連携(ポリ シーミックス)をより強化することも重要であると考えています。』

だから何をどうするのよ??ジンバブエ理論で財政マネタイゼーションして無限に財政支出だヒャッハーってやればそら物価は上昇するでしょうけれども、それが国民厚生にとって適切な物価上昇なのかという話になるので、ちゃんとした施策を出していただかないとただの机上の空論置物理論ということになるんですが。



・労働市場の構造分析は物凄く面白いのだが置物リフレ政策で労働市場が改善したのが効果じゃなかったのかと

さて、片岡さんの今回の金懇ですが、この後に『4. わが国の労働市場の変化 』というのがあって、この分析は面白いのですけれども、惜しいのは分析そのものは良さげな作品に仕上がっているのですが、その作品の示すインプリケーションが地雷の香りがプンプンする、ということですな。

『続いてわが国の労働市場についてお話ししたいと存じます。』

基本的に金融政策の後にこういう話が出てくるときは本人のやる気があるトピックスになるので正座待機。

『図表 17 のとおり、わが国の完全失業率は 1990 年代に上昇を続け、2002 年には 5.5%まで悪化しました。その後、3%台まで改善した後、リーマン・ショックを受けた悪化を経て、現在は2%台前半まで改善しています8。』

ちなみにこの脚注なんですけど、

『8 1990 年代以降、悪化した完全失業率を説明する概念として、完全失業率を需要不足に起因 する要因と労働市場の構造に起因する要因(構造失業率)に分解し、それらを推計する研究 がなされました。』

ってあるのは良いのですがその次が、

『片岡(2017)「構造失業率推定方法の誤り」、原田・片岡・吉松編『アベノ ミクスは進化する』(中央経済社、第 11 章所収)では、構造失業率を2%台後半と分析して いますが、足もと2%台前半の完全失業率が続く一方で、賃金上昇は加速していません。構 造失業率の推定は、推計方法そのものの誤差に加え、人口動態や高齢者・女性の就業の拡大 などの社会的変化も考慮する必要があるため、容易ではないといえます。』

構造失業率の算出はムツカシアルねという結論は良いんですけど、参考資料が身内のお手盛りだけとかいうのはちょっと見苦しいというか、「それはお前の中だけで正しい話なのではないか」というようなツッコミを食らう元なのであって、「研究がなされました」ってんだったら他の研究者の例を出して、同じ結論に持って行ってくれれば良いのに、何でこの一派の方々は自分の講演のリファレンスに身内の同人誌ばっかり出してくるんでしょうかと毎度不満(いちゃもんつけに他の人の文献出してくるジンバブエ大先生もいますな)。

・・・・・でもって話は戻りまして、

『労働市場の改善に対して賃金・物価の上昇が鈍い背景については、就職氷河期世代の低賃金、賃金の上方硬直性の可能性、パート比率の高まり、労働組合の賃上げ要求の消極化など様々な説明がなされています9。』

そういやどうでも良いのですがこちらの脚注9は

『9 玄田編(2017)『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』 (慶應義塾大学出版会)を参 照。尾崎・玄田(2019)「賃金上昇が抑制されるメカニズム」(日本銀行ワーキングペーパー シリーズ No.19-J-6)では、賃金の顕著な上昇がみられない背景について最新データを用い て考察し、労働供給の拡大が収束し非正規雇用市場がルイスの転換点を迎えれば、特に女性 の賃金が急速に上昇する可能性が高いと論じています。』

ってあって、上記にあるように先般このネタ出ていて、その時にも気になったのですが、「ルイスの転換点」って一般的に開発経済学の話で、農業型経済から工業型経済に移行する際に発生する農業部門から工業部門への労働者シフトの話をするのだと思うのですが、これ一般的な使い方なのかというの??と思うのですが、なにせこちらは経済学とか知らんがなという無学な人なので学のある人教えてジェネラルでして、この「ルイスの転換点」が出てくるたびにきになるんですよね。

『もっとも、これらの中には、労働需給が十分にひっ迫していることを前提にしているものもあります。ここでは、現在の労働需給のひっ迫が賃金・物価を引き上げるに足るものか、について確認したいと存じます。』

ということでお話が始まり始まり〜となるのですが、その結論らしき部分では、

『景気拡大に伴う企業の労働需要の高まりが、女性や高齢者を中心にそれまで労働市場に参加してこなかった人々の参入を促すとともに、就業者の増加を通して完全失業率を改善させてきたと考えられます。もっとも、15〜59 歳の男性については労働力率が十分に回復していません。失われた 20 年の間に逸失した男性の労働参加が完全に回復していないことが、雇用のひっ迫が物価を押し上げるほど強くない要因の1つとなっている可能性があります10。』

ちなみにこの脚注10もどこのジャーナルなのかもさっぱり分からん物件をリファレンスにしていて、しかも共著に原田とかいう文字列があるのが大変に引っ掛かるのですが、リファレンスもうちょっと何とかならんのでしょうかねえ、というのはさておきまして。

ちとメンドイのでこの分析部分は一々引用しないのですが、最初の方にもありましたように、要は労働市場の構造変化が起きており、確かにデータ上は労働市場は大きく改善しているものの、実体的には賃金の上昇が鈍いことに示されるように、労働市場には依然として事実上のスラックが存在するし、だからこそ金融緩和政策を強化していかないといけない、とまあそういう結論になっている訳ですな、うんうん。

ということですので、この話も追加緩和が必要だよねというネタではありますし、それはそれで話としての筋は分かるのですが、この話を是としてしまうと、今までのQQEおよびマイナス金利付きQQEYCCとは何だったのかという話になる訳でして、置物リフレ一派の大先生方、特に往年の置物先生やジンバブエ先生などはマネタリーベース直線一気置物金融緩和理論に基づく金融緩和政策の効果として大々的に雇用の改善をアピールしておるわけでして、一方で片岡さんが「労働市場には事実上のスラックが存在する(キリッ)」と説明してしまいますと、それはリフレの皆さんが鉦や太鼓で盛大に自画自賛している金融緩和政策の成果が実はいう程上がっていませんですよって話になって、見事なまでに見方を後ろから砲撃して火の海にしているんですけれども大丈夫ですか??????

#というかアベノミクスの成果でも雇用雇用雇用と言われる中で、と考えると地雷の香りがするんですが


てな感じですかねえ、なんか見落としはありそうな気がしますが別に現世利益に影響しない金懇なので趣味のツッコミをしてみただけ、という感じではありますが、それにしても緩和しろはいいんだが政策手段をメカニズムの説明とセットで入れて頂きたいし、何で昔は15年金利だったのに今は短期金利引き下げに宗旨替えしたのかの説明も無いのは予想はしていましたがまあ残念なところであはります。


#ECBネタの時間が無くなったので勘弁してくらはい明日投下します(やっぱり段取りが・・・・・・)




2019/09/04

お題「まーたブルフラットしているんだが(という雑談メモ)/ECB理事会を前に泥縄で議事要旨チェック(その2)」

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N25U436?il=0
2019年9月4日 / 05:22
米金融・債券市場=10年債利回り3年ぶり低水準、製造業景気指数が低下

30年債 16時05分 1.9586% 前営業日終値 1.9730%
10年債 16時05分 1.4691% 前営業日終値 1.5060%
5年債 16時04分 1.3409% 前営業日終値 1.3900%
2年債 16時05分 1.4640% 前営業日終値 1.5060%

お、おぅ・・・・・・・・・・以外の声が出てこないんですが(トホホ)。

〇何か知らんがフラットニングキタコレ(市場メモ雑談)

まあこちらのロイターさんの題名通りではありますが。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N25U189
2019年9月3日 / 15:16
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、10年入札後に超長期主導の金利低下

『<15:05> 国債先物は反発で引け、10年入札後に超長期主導の金利低下

国債先物中心限月9月限は前営業日比6銭高の155円22銭と3営業日ぶりに反発して取引を終えた。調整気味で始まったが、10年債入札が無難な結果となったことで5日予定の30年債入札に向けた先回り買いが入り、超長期債が主導し買い優勢に転じた。』(上記URL先より、以下同様)

つーことで昨日はまあ元々ツイスト気味にフラットしていたのですが、10年入札の後に一段と超長期様が進んでフラットニングの巻になりましたが。

『10年債ゾーンは日銀のオペ減額が続けば需給が緩むとの懸念もあったが、事前に調整が進んでいたことが奏功し、入札は無難な結果となった。最高落札利回りがマイナス0.2640%と過去最低の金利水準での入札となったものの、しっかりとした需要があった。入札を無難に通過したことで、超長期ゾーンが買われた。市場では「10年債の次は30年債だとばかりに30年債入札に向けて先回り買いが入ったようだ。20年債も、キャッシュを持ちたくない銀行勢の需要が強い」(国内証券)との指摘が聞かれた。』

ナンジャソラという感じなのですが、いやその水準で事前に調整もへったくれもねえだろとか思ってしまいますし、10年債の次は30年債だと先回り買いとかもはや何を言っているのかよく分かりませんが、なんか元気よく盛り上がっておられるようで何よりなことではありまする(棒読み)。

『現物市場では、10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.0bp低下のマイナス0.280%。新発30年債は同3.0bp低下の0.115%と2016年7月以来の低水準を付けた。新発20年債は同2.0bp低い0.035%、新発40年債は同0.5bp低い0.155%となっている。』

前場引けで先物4銭安で10年カレント5糸甘の水準で入札を迎えて、引けは先物6銭高で10年カレント1毛強ですから入札大勝利の巻だし、落札結果水準自体もベンダー予想足切りの所でほぼ入る厚い按分(だったので結果出た瞬間は先物下押ししていたと思いますが)なので空振りしてウギャーとかいうショートカバーで持ち上がった訳でもないでしょうし、なんか知らんが強いというか、超長期輪番減額が結果的にナイス押し目を作っただけとかいうの何だよそのフラットニング攻撃は、という感じではございまする。

・・・・・・・でですな、MPMが18−19日にあってその前の輪番って中期2回長期2回超長期1回とか結構ありまして、まあ中期は既に行くところまで行っている感もある(個人の感想です)のでよほど明確なマイナス深堀ビューでもない限り、他のお家の事情とか為替絡みとかインデックス対比のデュレーション調整とかでもないと買い進むって話にならんと思うのですが(個人の希望的観測です)、超長期ちゃんはなんかもう「金利のある所を潰していく」とか言うどこかで聞いたことのあったような無かったような定番のセリフでヒャッハーとやっておりますので、はてさてMPM前にもう一発減額かまして来るかどうかという感じではありますな。

幸いにして(かどうか知らんが)月曜の2球連続サプライズ輪番減額攻撃に関しては日銀が金利上昇を望む的なストーリーが持ち上がるような流れでもなかったみたいなので(と思うのですがどうですかね)、いまのところ無事に減額できたという感じになっておりますが、この金利低下をいい機会にして輪番の買入年限の短期化と量拡大ペースの縮小を行う、というだけではなく、金利低下に何かのアクションをするという話であれば、これがまた幸か不幸か月前半に輪番スケジュールがガッツリ入っておりまして、超長期のヒャッハー相場をどうするかね(とは言っても超長期はそもそもYCCのディレクティブ的には金利ターゲットでも何でもないので札切り攻撃はする必要がないしやるのは変なのでやるなら減額しかないのですが)とか、結局SLに引っ張られれば10年もまたまた▲30bpいらっしゃーいとなるのでさてどうするんでしょとか言うのは一応の見ものではあります(とりあえず1回は牽制球放ったので後は知らんというのか、とにかく盗塁阻止でガンガン牽制球を放るのか、ということですな)。

アタクシが思うオペの一番ビューテホーな姿は「とりあえずメディア的あるいは他市場での話題にならないようにしつつ減額とか短期化とかの推進」が出来れば良いのではと存じますが、いずれにせよMPMでもうちょっと「どの辺が許容されてどの辺は何らかの手を打つのか」というのが(外に明示的に出すかというのは別問題としても)示されないと、今って、YCCの金利メドおよび許容範囲の話と、オーバーシュート型コミットメント(80兆円はまあ知らんことにして)とのコンフリクトが起きた場合どうするのかとか、そもそもの長期金利メドと許容範囲どないすんねんという辺りがファジーにも程があるので、これはオペの匙加減が難しいわと思うので、その辺MPMで何らかの議論をして頂きたい所でしょうな、とは思います。

#その辺明確な方針がMPMの内部では諒承が取れているというのであればまあ良いんですけど


〇ECBネタの続きで虫干し物で誠に申し訳ございません(その2)

何かこういうニュースが今朝もでておられるようですが。
https://jp.reuters.com/article/exclusive-ecb-easing-idJPKCN1VO27H
2019年9月4日 / 02:12 /
ECB、包括的刺激策決定の公算 利下げや金利階層化など=関係筋

『[フランクフルト 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9月12日に開く次回理事会で、利下げのほか、マイナス金利が銀行に及ぼす影響を軽減するための金利の階層化、および低金利政策の長期的な継続を確約するフォワードガイダンスの強化を含む包括的な刺激策を決定する方向に傾いていることが複数の関係筋の話で明らかになった。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『関係筋は、利下げは金利階層化とセットで決定される公算が大きいと指摘。このほか、資産買い入れの再開に対し多くの支持が示されているものの、ユーロ圏北部の国から反対の声が上がっているため、事態が複雑化していることも明らかにした。関係筋は、利下げ幅を含めまだ何も決定されておらず、討議は継続されていると指摘。ECB報道官はコメントを控えている。』

ってことで、何のことはないしらっと「ユーロ圏北部の国から反対の声が上がっているため、事態が複雑化している」って言ってるので、緩和派の世論工作かも知れませんが、そもそもがFEDの連続利下げ織り込み相場に煽られてドラギが特攻した感はプンプン香って来るので、まあ現執行部はやる気満々なのでしょうが、実際問題どうなるのかとか、その記事にもありますが、

『関係筋は、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明性が増大したとしても、ECBが景気刺激策について数回の理事会にわたり討議を継続する理由はないと指摘。ただ、ドラギ総裁の後任として11月1日付で次期総裁に就任するクリスティーヌ・ラガルド氏のために利用可能な手段を手元に残しておくことが重要となるとの見方も示した。』

ってあるようにドラギ大先生最後のマジックで10bp位預金ファシリティ引き下げだけやっておいて発言では追加のやる気を散々見せておきながら、「あとはラガルドさんが上手い事やりますので新連載ラガルド劇場をお楽しみに」とかいう送りバントで誤魔化してくる可能性も(北ECBが猛反発してくる場合には)アリエールではないかとは思うのですけどね(個人の感想です)。


ということで昨日の続きでございますが(汗)。

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg190822~63660ecd81.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 July 2019

・金融政策オプションに関する委員会の議論

てな訳で昨日はレーン理事から出てきているご提案という部分を引用しましたが、あの説明だと基本的に「状況が盛大に改善しない限りは追加緩和措置の導入が適切」という話になっておりましたわさ、というところではありますが、『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions』の方ではどうなっているかの確認で、まずは手抜きで小見出しの『Monetary policy stance and policy considerations』から参ります。

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Lane in his introduction.』

ということで、昨日ネタにしたレーン理事による金融政策スタンスに関する状況認識に関してメンバーはその認識を幅広く共有しましたってことで、そのレーン理事の認識は昨日の再掲になりますが、

『Based on this assessment, Mr Lane proposed that at the current meeting the Governing Council underline the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time, as inflation rates, both realised and projected, had been persistently below levels that were in line with its aim. In this regard, the Governing Council needed to underscore its preparedness to act at its forthcoming meetings should the inflation outlook fail to improve, in line with its commitment to a symmetric inflation aim. 』(ここだけ項番1の部分から引用)

「should the inflation outlook fail to improve, in line with its commitment to a symmetric inflation aim.」であれば「underscore its preparedness to act at its forthcoming meetings」であるとゆうとりますので基本的に物価の方が明確に上向きのサイン出てくれないと追加措置を何だか知らんがぶっこむ、という話になっております。

『Overall, financial conditions had eased since the Governing Council’s June monetary policy meeting, largely on account of market expectations of further monetary policy easing. Bank lending conditions for firms and households remained very favourable. An ample degree of monetary accommodation remained necessary for financial conditions to support the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, headline inflation developments over the medium term.』

ECBの議事要旨って読みにくいというかどうも読んでてアレなのはこの辺にありまして、これって昨日ネタにしたレーン理事によるファイナンシャルコンディションの現状認識の話からの部分とまるで同じ表現の物を重複してぶっこんでいまして、いやまあ確かに「執行部からの報告」と「政策委員の議論」だから別のものが同じになった場合にはこうなるっちゃあこうなるのですけれども、まるで同じ英文が2度出てくる(これ以外でもそんな感じなのよね)というのはどうも読んでてめんどくせーというのが先に出てしまいますな。

『Members shared the assessment that information available since the early June Governing Council meeting indicated that, while further employment gains and increasing wages continued to underpin the resilience of the economy, softening global growth dynamics and weak international trade were still weighing on the euro area outlook. The prolonged presence of uncertainties, related to geopolitical factors, the rising threat of protectionism, and vulnerabilities in emerging markets, continued to dampen economic sentiment, notably in the manufacturing sector.』

まずは景気の話はグローバルな不確実性で特に製造業に影響がというお馴染みの話。

『It was noted that, while recent data were broadly in line with the baseline scenario and the forces underlying the baseline - such as solid wage growth and rising cost pressures - were still seen as intact, the uncertainty around the projected duration of the economic slowdown remained high, also affecting the medium-term inflation outlook. In this environment, inflationary pressures had remained muted and indicators of inflation expectations had declined.』

賃金は上がる見通しなのですが、そうは言いましても不確実性やら何やらで物価上昇圧力が弱いままだそうな。

『Despite the considerable divergence in the levels of different survey-based and market-based measures of medium-term inflation expectations and the observation that market-based measures may have been affected by special factors, broad agreement prevailed that the overall downward movement across indicators was a cause for concern from a monetary policy perspective. 』

インフレ期待に関して計測方法によって差が大きいものの、「overall downward movement across indicators was a cause for concern」と来ているのでまあここを懸念と言ってしまう以上は「じゃあ追加措置は」という話になるし、それを意識したつくりになっています。

『Against the background of inflation rates, both realised and projected, remaining persistently below levels that were in line with the Governing Council’s inflation aim, members widely agreed with the assessment that a highly accommodative stance of monetary policy was needed for a prolonged period of time. In this context, confirming the symmetry of the Governing Council’s medium-term inflation aim was seen as an important element to bolster the achievement of a sustained adjustment in inflation to its aim.』

シンメトリックな物価目標であることを確認することが重要とか言ってるんですが、別にシンメトリックにしたからと言って物価がホイホイ上がるもんじゃなかろうに、とは思いますけどまあそれを言ってしまうと話の前提が崩壊するんでしょうなあ、とは思います。

『A remark was made that so far the interaction between the inflation aim and the Governing Council’s definition of price stability as an inflation rate of below 2% introduced, de facto, an element of asymmetry. A view was put forward that a discussion of symmetry around the inflation aim could not be separated from a discussion about the level of this aim, while the point was made that any future change in the inflation aim should not be employed as an isolated policy measure but should be linked to a broader review of the ECB’s monetary policy strategy to ensure consistency of the strategy.』

元々の物価安定の定義の方は今回いじっていなくて、それとのコンフリクト(あっちは「中期的に2%以下で2%近く」のままになっている)があるから変更する必要あるんじゃないかとの議論があったものの、あれはあれ、これはこれみたいなファジーな結論にされとりますな。これも南北対立あったのかも知れませんね。

『At the same time, the point was made that a clarification of the symmetric nature of the Governing Council’s “reaction function” would not pre-empt a full review of the monetary policy strategy at a later point in time.』

政策反応関数に関する議論とかもありましたようですな、でもってその次は具体的な政策手段論。

『Members expressed broad agreement with the monetary policy proposals made by Mr Lane in his introduction: first, to adjust the forward guidance on the key ECB interest rates by reintroducing an easing bias; and, second, to initiate preparatory work, including on ways to strengthen the Governing Council’s forward guidance on policy rates, mitigating measures, such as the design of a tiered system for reserve remuneration, and options for the size and composition of potential new net asset purchases.』

ここはレーン理事の提案をそのまま並べただけ。

『It was seen as important for the Governing Council to demonstrate its determination and capacity to act and to be prepared to ease the policy stance further by adjusting all of its instruments, as appropriate, to achieve its inflation aim.』

政策発動余地があることを示すのも重要、ということですので、まあ副作用軽減措置もマジで副作用を軽減してやろうというのではなく。「副作用を軽減する措置があるから一段の追加緩和を行って一段の副作用軽減措置が用意されてまっせ」という効果を期待しているものと見ました。

『Looking ahead, more information would be available at the Governing Council’s monetary policy meeting in September, when new projections, incorporating the effects of the measures taken at the Governing Council’s June meeting, would be presented. 』

9月にはmore information would be availableだそうで、まあこの書き方だと9月にやりますよという雰囲気は出そうとしているなあとは思いますけど。

『Members broadly supported the reintroduction of an easing bias to the Governing Council’s forward guidance on interest rates in the light of the weakness of the economic outlook and the muted inflation developments. The easing bias was considered appropriate for addressing the risk of an unwarranted tightening of monetary conditions related to the short end of the yield curve in view of the persistent uncertainty surrounding global developments.』

何やそれという感じはしますが、フォワードガイダンスの強化(緩和バイアスの再導入)を行うという話ですが、その効果として「addressing the risk of an unwarranted tightening of monetary conditions related to the short end of the yield curve」とロングエンドじゃなくてショートエンドのイールドカーブが海外要因でタイトニングするのを防ぐのに効果があるとかゆうとりますが、ガイダンスの強化はより長めの金利に対して効果を出すものであって、ショートエンドの金利は需給で動く部分が多分にあるので、ガイダンスで先行きの緩和バイアスを出したからと言っても、需給(要するに金融あばばばばーみたいな状況での需給な)で上がる時は上がるだろと思うので、何でこういう議論になっているのか意味がイマイチワカランチ会長なアタクシ。

でもって実はこの先にも各種手段に関する話と、フォワードガイダンスの見せ方についてもうちょっと見直す余地があるんでネーノ的な話があるのですが、何という事でしょうアタクシの段取りが悪くて今朝最後のところまでぶっこむ積りだったのに時間が無くなってしまいまして(って言い訳書いてる暇があったら先に進めと言われそうですがキリの良さそうなところで・・・・・)今日は確か片岡審議委員の金懇に黒田総裁の講演もぶっこまれる(後者はそんなに大した話はしないと思うのだが)というのに続きは明日とか段取り悪くてすいません明日はちゃんと段取りします。






2019/09/03

お題「連続サプライズ輪番減額ですかそうですか/ECB7月会合議事要旨より(その1)」

ねえねえ、ソビエト連邦はどうなってるの???
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190902/k10012060201000.html
ナチスのポーランド侵攻から80年 ドイツ大統領が謝罪
2019年9月2日 15時24分

・・・・・・・と思ったら最後に、

『一方、ポーランドは第2次世界大戦で旧ソビエトにも侵攻されましたが、ドゥダ大統領はロシアのプーチン大統領を式典に招待せず、「帝国主義がいまだヨーロッパに残っている」として、ロシアによるクリミア併合を批判して警戒感を示しました。』(上記URL先より)

とありましたが、まあどうせ招待しても(ここでルビヤンカの方からお客様が来る)。


〇何と2営業日連続の輪番減額とな

・2営業日連続のサプライズ減額とな

昨日の輪番オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190902.htm
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,400 2019年9月3日
国債買入(残存期間25年超) 400 2019年9月3日

・・・・・( ゚д゚)

ということで、超長期前半の輪番を1600→1400に減額。月3回の買入だから月額で600億円、年額で7200億円ではあるのですが、アタクシめが昨日計算したお手製集計(なので本人は合っているつもりだが皆さんも銘柄毎の償還日のリストを引っ張ってきてレッツ確認)によりますと、暦年2019の方はまあそんなに気にすることもないのですけれども、暦年2020になりますとアタクシの計算だと償還547,849億円、買入633,600億円(例によって1年以内が全部残高に跳ねず、変動と物連が全部残高に跳ねる計算をしている)になるので、年間の長期国債増加ペースが8.5兆円になってしまってオーバーシュートなんとかは大丈夫なのかと心配になってくる水準(8月末の銘柄別残高出てきたら計算結果またネタにしますね)。

いやまあ中の人たちの方が色々と細かい計数持っているでしょうし、ほかのオペの進捗とか推移とかの絡みもあるんでしょう(こうなってくるとETFで増えるのが何気に大きいのだが、MB増加をETFでやるってのも何かそれ別の意味で頭がクラクラしてきますよね)けれども、まさか10兆割ってここまで減らしてくるとは正直思っていなかった(その程度のマージンは取って来ると思った)ので、その威勢の良い減額っぷりにちょっとびっくりというか市場もノーケアーだったと思うの。金曜日に長期輪番をサプライズ幅の減額してきたばっかりだから。

ということで市場ちゃんの反応byロイターさん。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N25T1DK
2019年9月2日 / 15:14 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、連日の日銀オペ減額で金利上昇

『 <15:05> 国債先物は続落で引け、連日の日銀オペ減額で金利上昇

国債先物中心限月9月限は前営業日比4銭安の155円16銭と続落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp上昇のマイナス0.265%。連日の日銀オペ減額で金利が上昇した。日銀は午前の国債買い入れを通告で、「残存10年超25年以下」を1400億円と前回から200億円減額した。前週30日に「残存5年超10年以下」の買入予定額を500億円減額したのに続き、連日のオペ減額となった。』

『市場では「連日のオペ減額で売りが強まる展開になった。ただ、オペ通告前から相場は弱含みだったため、ものすごく効いたというわけではない。基調は依然として金利低下方向」(国内証券)との声が出ている。現物市場は長期から超長期債中心に金利が上昇。新発20年債は前日比1.5bp上昇の0.060%。新発30年債は同1.0bp上昇の0.150%、新発40年債は同1.0bp上昇の0.165%となっている。』(以上、上記URL先より)

ということで米国様が祝日にぶつかると謎に(謎でもないが)取引が低調みたいで先週金曜のような先物売買高という訳でもなかった(とは言っても月曜なのに日中1万8000枚水準なのでオペオファーによる動きが影響したのですかね)のですけれども、まあとりあえず連日のオペ減額だわ、金曜のは市場予想よりも多い額だし昨日のは金曜にあれだけ減額しておいてさすがに今日はノーマークだったので2営業日連続もさることながら2営業日連続のサプライズというのが今回の特徴でございます、とアタクシは思うのですがどうでしょうか。



・減額はありがたいのですがサプライズ減額を連発するのは調子に乗り過ぎの悪寒

・・・・・・・ということで昨日の20年は6bpまで戻ってきた訳でして、20年も0金利からマイナスだぜヒャッハー祭りにはだいぶ水を差されて誠に結構は結構なのでございますが、だからと言って手放しで喜んで良いのかというと、どうも過去の実績から勘案するとどうもマズーな悪寒がする、というこのヒネクレモノとか言われそうですが、おじいちゃん心配性なのですぐ気になるんですよ。

と申しますのはですね、別に昨日の今日でサプライズ減額連発したからと言っても為替市場が米国のパツキンヅラとか欧州のパツキンヅラおよびその他諸々の欧州情勢の方で主に反応していますし、そもそも債券市場自体はECBの緩和踊りを確認しないと何とも動きがたいものがありますし、ってなもんでまあ直ちに影響はない、って奴だと思うのでございますが、こうやって急に何か変なもんでも食ったかのようにやる気元気井脇になって債券市場にサプライズ減額を連発しますと、当然ながらメディア(というか日経)的には「日銀の金利抑制姿勢が明確になりました」的なストーリーが出来てしまうと思うのよね(ミーは日経宅配で取ってないという割とケシカラン人間だから朝刊見てないので実際の記事は知らんので念のため申し添えます)。

まあそういうストーリーが出来てしまって、それがメインストリームの見方になってしまいますと、それがどこかでしっぺ返し食らいまして、そのストーリーに乗っかった形で金利がそれこそ「ファンダメンタルズを反映したのではなく、投機的な動きで」上昇するというパターンが発生して、それを止めに買入を却って増やす破目になって、結局何をやったのか良く分からんわ、という結果になる恐れがあると思うの。

まあ恐れがある、というよりは過去輪番減額では「調子に乗って輪番減額を加速させた(あと過去1回やったのは輪番をスキップする、なんてえのがありましたなあ)ところ、市場が急に日銀が金利引き上げの意欲が強いと判断して売りが売りを呼ぶ展開に」というのを何回かやらかしておりまして、まあ今回は外部環境が全然違う(今のところ欧州が追加緩和モードで米国も緩和モードですな)ので今すぐどうのこうのというのは無いと思うのですが、何もここで「日銀は金利を上昇させようとしている」というストーリーを自分から作りに行く必要は無いと思うのね。

つまりですな、昨日ネタにした先週の鈴木審議委員の金懇における記者会見でも、

『ただし、今おっしゃられたように、−0.285%ということで、±0.1%の倍程度ということよりも、更 に下がっているというような範疇にあるとは思います。』(8/29鈴木審議委員熊本金懇会見より)

といいつつも、

『欧米発のそうした金利低下と、日本においても同じようなことが起こるということと、裁定取引のチャンス、これによって金利が低下していると認識をしているのですが、そうしたことの見通しが変化した場合にはもう少し正常なものに戻る可能性があ るということです。そうした意味において、過度に厳格にみることなく、場合によっては、今、少し行き過ぎているのかもしれないということではないかと考えています。』(8/29鈴木審議委員熊本金懇会見より)

という説明をしていまして、現状でほぼ間違いなく金利低下の弊害についての急先鋒(先鋒とか言ってますが、もしかしたら櫻井さんが次鋒かもしれませんがその後に選手は控えておりませんので念のため申し添えます^^)であらされる所の鈴木審議委員様においてすら、「まあ別にオペで金利低下抑制を無理にせんでもエエンチャウノ」というスタンスで説明している訳でありまして、今回2営業日連続のサプライズ減額とかをぶっこむほど焦らなければいけない状況でもないと思われる(その上追加すれば本格的にヒャッハー言って下がりだしたら買入停止でもしないとトマランチ会長だし、長期国債の売り切りオペをする制度は今のところない)のですよ。しかも明日って金利低下させると2%に行くということで15年金利を0.2%未満になるようにすると2%物価目標達成できるとの珍説をかつてお唱えになっておられた片岡審議委員様の金懇がある訳で、何でまたそんなタイミングで片岡さんに喧嘩を売るようなストーリーを自分から作りに行くんだと思います。

つまりね、別に市場のサプライズにならないように(全部が全部先読みできなくてもいいんですけど)輪番の減額を慎重に進めて行ってもなんだかんだと言いながらここまで減額できているのに、最後の所に来て急に慌てるとか、山頂が見えてきて高揚して走り出したら高山病みたいな洒落にならないオチが起きる、というような図がアタクシの霊感が示しておりまして(個人のあてずっぽうです)、どうもこうオペで前のめりになると逆の事象が発生してやらなきゃよかったとか日銀のせいだよ日銀のとか言われるパターンを踏襲しそうなので、まあ落ち着けと申し上げたいのですな、減額して頂けるのはありがたいのですが、明確な金利上昇の政策的な意図がある訳でもないのに(ある訳ないでしょ今のボードメンバーで)、日銀のオペが悪目立ちする形で妙な意思を出しているように見せるのは、過去においてもそれで碌な事起きてないので、もうちょっと目立たないように減額して頂けると四方八方丸く収まると思いますです、はい。


・・・・・・・ということですが、これまでの日銀の微妙なまでのアレを勘案しますと、この2球連続(2打席連続というよりは今回の頻度は2球連続という感じがします、個人の感想ですが)サプライズ輪番減額というのは、その後の変なフラグを立てているような気がしまして、ここで何かのフラグと言えばそらもうECBが思ったほど緩和ぶっこまなくて(そもそもECBの緩和って域内経済がどうのこうのもあるけど、FRBが連続利下げしそうな勢いになったから先制攻撃しなきゃと慌ててぶっこんできた感があるので、FRBの腰が落ち着いてくれればECBもそこまでぶっこむ必要はなくなる筈だと思うのよね)今▲70bpだの言ってて、それお前預金ファシリティ金利をここから40bp位下げることでも織り込んでるのかと小一時間問い詰めたいドイツ10年国債金利あたりが(欧州金利はぶっ飛ぶときはぶっ飛ぶ)盛大にあばばばばーになって怪我人続出とか、そういうオモシロ事案が来週待っているのではないか、などとあらぬ妄想をしてしまうのでありましたです(何の根拠もない個人の妄想ですので念のため)、はい。


〇一応債券市場サーベイが出ているので備忘代わりにメモメモ

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1908.pdf
債券市場サーベイ <2019年8月調査>
回答期間:2019年8月5日〜8月9日

ということで調査機関が8/5〜8/9ということで、10年が▲20だのやっていて、週末には2か月連続の逆ツイスト輪番というか輪番の短期化というかが出るというような週でしたけれども、結果がもう出オチ過ぎて泣いた。

『1.債券市場の機能度の状況』のところになりますが、最初の機能度のところが、

(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度

                          前回  今回         
機能度判断DI(現状)             -36   -38
機能度判断DI(3か月前と比べた変化)   -5   -15   

とかいう大変に素敵なものになっておりまして、スプレッドはワイドになるわ板は薄くなるわなのですが、一方で取引量に関しては横ばっておりまして、まあこの時期は今ほどでは無いにせよ米国→欧州→米国の緩和アオリイカのフィードバックループから日本も金利低下ヒャッハー祭りになりだしておりましたのでありまして、ヒャッハー祭りだから流動性とか板はアレなんですけど、売買は活発ということで、市場機能自体はワークしているけど市場そのものがヒャッハー相場なので機能度は低いってパターンなのですな、うんうん書いてる本人も自分で自分の煙に巻かれて何が何だかわからなくなってきた。


〇次のECB理事会も近いというのに今更ジローで前回のECB理事会議事要旨ネタ(その1)

その1、とあるのは書いている本人が時間的にどう見ても今日のネタに全部搭載できないという自覚と段取りの悪さがあるからですすいませんすいません。

サーセン先々週木曜に出ている物件です。
https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg190822~63660ecd81.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank, held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 July 2019

・虫干しモードのタイミングなのに読み方は手抜きモードでまずは具体的政策から

ECBの議事要旨は執行部、と言っても専務理事からの説明とプロポーザルみたいなのがあって、これが長い(まあ他の議事要旨と比較すれば普通は普通なんですが)のと、その後の委員の議論の所が思いっきり話が重複しているので読み進めているうちに(アタクシの知能にもんだいがあるのですがそれはさておき)読むポイントが分かりにくいというのが特徴というか勘弁してくださいという感じです。

でもって実際の金融政策運営どうしますかというご相談コーナーは、議事要旨のかなりケツの方になりますが、小見出し『Monetary policy stance and policy considerations』の所になるのですな。

・・・・・・・ということで通常はそこから読むのですが、今回はその頭のところが、

『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Lane in his introduction.』

とありまして、政策オプションの検討に関してレーン理事が説明している方を先に読んだ方が吉な気がするので、そっちから読みます。

前半の執行部説明のケツにある『Monetary policy considerations and policy options』という小見出しになります。

『Summing up, Mr Lane remarked that financial conditions had eased since the June Governing Council meeting, largely on account of market expectations of further monetary policy easing. Bank lending conditions for firms and households remained very favourable.』

金融環境は緩和的だけどそもそもそれはワシらの追加緩和を織り込んでおりますもんね、あああと銀行の貸出環境に関しても家計や企業に良い状況ですわ、とレーンさんは言うのでした。

『Incoming data still pointed to somewhat weaker growth in the second and third quarters of this year, in line with the June 2019 Eurosystem staff projections.』

2Q3Qは1Qよりもsomewhat weaker growthだが元々の見通しにin lineであるとな。

『Softening global growth and weak international trade dynamics were weighing on the euro area outlook, while the prolonged presence of uncertainties continued to dampen business sentiment, especially in the manufacturing sector. At the same time, the services sector had been robust and favourable labour market dynamics were supporting consumption.』

製造業はマインド中心に悪化しており、同時にサービスセクターは堅調で雇用環境が良いので消費もサポートされていますと。

『The balance of risks remained tilted to the downside, reflecting the prolonged presence of uncertainties, related to geopolitical factors, the rising threat of protectionism, and vulnerabilities in emerging markets.』

リスクバランスはダウンサイド。

『HICP inflation had increased in June, while measures of underlying inflation had continued to move sideways. Market-based measures of longer-term inflation expectations had stagnated at the historic lows reached after the June meeting, while surveys signalled a marked fall in longer-term expectations.』

インフレ期待に関して懸念を示していますな。

『Wage growth had been robust and was expected to support inflation in the future, although the softening in inflation expectations could slow the pass-through of cost pressures to inflation.』

賃金の伸びが強いので物価をサポートするのですが、一方でインフレ期待が弱めになっているのが価格転嫁圧力を下げる形になっている、とまあそういう認識の下で政策オプションの話ですが、

『Based on this assessment, Mr Lane proposed that at the current meeting the Governing Council underline the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time, as inflation rates, both realised and projected, had been persistently below levels that were in line with its aim.』

インフレ目標言ってるからまあ物価の話がメインになるし、今回は実際のインフレおよびインフレ期待が低迷というのと製造業中心のマインド悪化に関してがだいたい前面に出る格好。

『In this regard, the Governing Council needed to underscore its preparedness to act at its forthcoming meetings should the inflation outlook fail to improve, in line with its commitment to a symmetric inflation aim.』

needed to underscore its preparedness to actと来ましたので準備なのか覚悟なのか知りませんが、まあこれは「この調子が続けば追加措置の実施」という話になっておられる。

『Accordingly, Mr Lane proposed the following decisions:』

キタコレ。

『first, to adjust the forward guidance on the key ECB interest rates by reintroducing an easing bias;』

『and, second, to task the relevant Eurosystem Committees with initiating preparatory work on policy options, including ways to strengthen the forward guidance on policy rates, mitigating measures, such as the design of a tiered system for reserve remuneration, and the modalities of potential new net asset purchases.』

政策金利の引き下げと緩和バイアスの表明、そして事前に準備を依頼している金利引き下げ副作用対策の導入(当座預金残高3層構造みたいなやつ)、新たな資産買入プログラムの導入、ということで、利下げがメインの話で、資産買入もあるでよという話になっていまして、さてこれに関する議論はどうなっているでしょうという所で時間が無くなったので続きは明日(ただの導入だけでしたすいません)。






2019/09/02

お題「長期輪番を頑張って減らすの巻/鈴木審議委員会見は副作用論というか利下げはアカン論で盛り上がる」

今年も早いものでもう9月になってしまいましたか・・・・・・・・・・

〇輪番を結構頑張って減らしてきましたな

・年額換算2.4兆円も減額するとはよく頑張った!!!

金曜の輪番オファーはご案内の通り、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of190830.htm
国債買入(残存期間1年以下) 500 2019年9月2日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,000 2019年9月2日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,600 2019年9月2日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,000 2019年9月2日

・・・・・・いやー長期輪番減らすにしても200とか位かと思っておりまして、そんなのを金曜には書いたのですが、500減らすとは中々。

と申しますのは、1回500億円減額すると月2000億円の減額になるので、年間ベースで2.4兆円の減額ということになりますから、これは結構な減額でございまして、(めんどいので7月末の数字を使いますが)7月末現在の日銀保有国債残高から2020年(暦年)の償還額面を拾って来ると、償還額が547,849億円という数字が出てくると思うの(アタクシが手元で計算したものなので内容については本人は合っているつもりでいますが違っていたらゴメンやで)ですけれども、今回の減額によって月間の買入額が、除く1年以内+変動利付を月500で計算すると、53,400億円になりますからして、2020年暦年の長期国債買入残高増加額が92,951億円になりまして、堂々の10兆円割れという数字になる訳ですな(前提として1年以内は全部償還銘柄、一方変国は気にせず残高に跳ねることにしている)。

今年に関してはそんなに気にしなくて良いのですが、来年は何せ償還が多めなので、これ以上減額していくとマジでオーバーシュート型コミットメント(しかし80兆円文言とか言ってたのが懐かしくてまさかYCC導入時にこっちの方が引っ掛かる話をこんなに早くにすることになるとは思わなかった)に引っ掛かり兼ねない水準になって来ているような気がしますが、まあ9兆円あれば何とかなるのかね、と思いつつも頑張って減らしましたなあという感じです。

まあ確かに10年の所は政策金利のターゲット処になっているので、よほどの事が無いと減らしにくかったので、▲29だとか言っている時ならば大手を振って減らせますし、まあMB増加の所が問題になりそうなのは今年よりも来年なので今すぐに悩まなくても良かろうという考えはありますので、まあここでドカンと減額できたのは良かったという事でしょうかね、よー知らんけど。

しかも何気に今回の減額で長期輪番が月額1.6兆円水準まで落ちてくれましたので、10年の新規発行対比8割以下(流動性とか第U非価格とかメンドイのでスルー)とかになってくれますので、10年カレントがチーペストになる頃の玉無し芳一問題も軽減されて市場機能的にも大幅改善、ということで、オーバーシュート型コミットメントの兼ね合いを除けば良い事ずくめの減額ということで、オーバーシュート型コミットメントとのコンフリクトに耐えてよく頑張った!感動した!!という所ではございます。

・・・・・・てか今や量とかマッカラムルールとか言ってるの政策委員会リフレサンバじゃなかった三銃士の皆様でも存在していないようでございますので、80兆円とオーバーシュート型コミットメントをいい加減何とかして頂きたいですし、このへなちょこコミットメント外すともっと買入減額できてめでたしめでたしになるんですけどねえ。


・という訳で日程表

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190830e.pdf

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:2500-5000、月4回(変更なし)
3−5年:2500-5000、月4回(変更なし)
5−10年:2500-5500、月4回(3000-6500から上限1000下限500引き下げ)
10−25年:1000-2500、月3回(変更なし)
25−40年:100-1000、月3回(変更なし)
物価連動国債:250、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

今回長期輪番を4000にした訳ですが、2500-5500だと4000が丁度真ん中になりますので、まあとりあえず暫くはこれで行きますよという話なんですかねとか思いますが、というかさっきうだうだ申し上げたように、これ以上減額していくのも厳しいですかねとは思うので、当面これで行くのですかね。


・とはいえまあ別の要因でヒャッハーヒャッハーやっているので・・・・・・・・・・

一応今回ってそこそこ大きな減額を入れて来ましたので(市場コンセンサスよー知らんのだが、500は市場予想以上の減額ではなかったのではないかと)金利低下牽制、という話になるのですが、どうせ金利低下している理由がだいたい海外金利政策ですし、特にあの意味不明に金利がバカスカ下がっている欧州ちゃんの利下げ懸念がどうしたこうしたという話ではありますので、日銀が減額したから、という理由単体で金利が持続的に上がるような話ではないでしょう(個人の感想です)というお話であって、まあこれはこれでメディア的には「長期金利の低下抑制に日銀が動いた」というヘッドラインになるんでしょうが、別にまあ本当の本当にマジで金利低下抑制したかったら、例の「この金利以下は買わない攻撃」を炸裂させた方がメッセージ性が強烈になるのであって、その大技はかましてこないということは別にそこまで気合入れて金利低下に身を挺して止めるという話しでもないという事ですな(思いっきり個人の感想です)。

寧ろ、発行対比の買入割合が他年限比で見た時に大きく高い上に、10年カレントは時間の経過と共に7年チーペストになっていく訳で、チーペストの玉無し芳一問題で色々とアカンタレになって先般もそれも含めた市場機能サポート施策を打ちましたように、本件の買入減額は、この金利低下をうまく使って市場機能不全対策をバッチリ入れられるという効果の方を重視しているんじゃなかろうか、などと勝手な妄想をしてみましたが、まあ妄想で個人の感想ですって奴ではございます(汗)。


〇鈴木審議委員記者会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190830a.pdf

・さっそく副作用論の質問が来る

最初の「今日はどうでしたか」の質疑の次にさっそく副作用論の質問が来るのは順当おぶ順当なのですが、前半に金利低下の話をしたらそっちの説明が予想外のクソ長さ。

『(問) 今日も 10 年債の金利が−0.285 を一時つけまして、日銀が政策のもと 許容している倍程度というレンジの下限を下回っているのかどうかという問題が市場でも意識されていますが、鈴木委員からご覧になって、今の水準は下 限を下回っている、何らかの対応が必要とお考えなのか、それとも柔軟に運営 するという観点から、さほど問題視する必要はないのか、その点、ご意見を伺いたいというのが一点目です。(後半割愛)』

2点目が副作用論なのですが、この部分の答えが予想外の大演説になっているのでそっちから。


『(答) 日本銀行は、金融市場調節方針において、長期金利の水準は、経済・ 物価情勢に応じて、ゼロ%程度から上下にある程度変動し得るとしているわけ であり、また、その変動幅については、昨年 7 月末の記者会見で総裁から説明がありましたように、概ね±0.1%の倍程度ということを念頭に置いています。』

よくよく見ますと「概ね±0.1%の倍程度ということを念頭に置いています」ってヘッジが3重に入っていますな。

『このように、金利のある程度の変動を許容しているのは、金利形成の柔軟性を 高めることを通じて、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減し、現在の政策枠組みの持続性を強化することを狙いとするものです。』

市場機能論ということですので・・・・・・・・・

『この点を踏まえ ますと、金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はないと、これ は先月の総裁の記者会見でもお話があったと思います。』

しかしYCCって「長期金利操作」なのであって、操作するんだから介入するじゃろという話でありまして、

『ただし、今おっしゃられたように、−0.285%ということで、±0.1%の倍程度ということよりも、更 に下がっているというような範疇にあるとは思います。』

キタコレ!!ではあるのですが、特に何かこの発言が(出たのは木曜な)市場を動かすネタには成らなかったというのも何ともかんとも。

『ただ、この背景として 考えられることとしますと、例えば 10 年物国債の購入を行う人は、まず原則的には、それを買って満期まで保有し、確定利付債券、フィックスト・インカ ムということで、その固定した利回りを利益として追求しようという人であり ますが、そうした人は最初からマイナスが確定しているものを買うという経済合理性はないことになります。』

いきなり解説が始まるというこの展開。

『もう一つの投資家というのが、更に金利が下が り価格が上昇する、そのために今買って将来売れば利益が得られるかもしれないということで購入するという投資家、トレーディング等ということになります。』

ほうほう。

『それから第三というのは、裁定取引ということで投資をします。』

裁定取引とな。

『現状は、 ご案内の通り、昨年の秋に 3.23%程度までいった米国の 10 年債利回りが 1.5%程度になっているほか、ドイツの国債も以前は 0.8%程度あったものが−0.7% 程度という中において、そうした通貨を保有している投資家が為替市場を使って裁定取引という格好で投資を行うと、マイナス金利の 10 年物国債でも利益が出でくるということで、そうしたものが流れているということです。』

うーんこの。為替ヘッジ付き投資を裁定取引と言っていただけるのでしたらヘッジ外債投資は何でひところ槍玉に上がらなければならなかったのかと小一時間ではありますが。

『ただし、 先程申し上げましたように、本源的な投資家というものは、満期まで保有して それを投資するという方ですので、これ以上金利が下がっていくということの見通しがなくなった場合、あるいは裁定取引の妙味がなくなった場合に、そう した取引がなくなる、ちょっと端折りましたけれども、欧米発のそうした金利 低下と、日本においても同じようなことが起こるということと、裁定取引のチャンス、これによって金利が低下していると認識をしているのですが、そう したことの見通しが変化した場合にはもう少し正常なものに戻る可能性があ るということです。そうした意味において、過度に厳格にみることなく、場合によっては、今、少し行き過ぎているのかもしれないということではないかと 考えています。(後半割愛) 』

ほっほー。これは長期金利の低下は一時的という意味っぽいですが、こんなに長々と解説するとは。


・副作用論の回答部分で本音がポロリとか中々チャーミング

てな訳で上記質疑の後半である。

『(問)(前半割愛)二点目は、講演全体を読むと、随分副作用について、やっぱり意識されているというふうに私には思えたのですけれども、それでも海外経済を中心とするリスクが顕在化した場合は、物価にも相応の影響が及ぶと。つまりは、 追加緩和の可能性も今後出てきた場合、この副作用とのバランスをどう取った ら良いのか、何らかの緩和をする場合は、そういった副作用を軽減化するための措置と組み合わせて緩和するべきなのか、その辺りについてお考えをお願いします。』

『(答)(前半割愛)それから、副作用と追加緩和ということで、日本銀行は、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇 なく、追加的な金融緩和措置を講じるということを前回の公表文に出していま す。それから、総裁もいつも申していますように、手段には四つありまして、一つ目が短期政策金利の引き下げ、二つ目に長期金利操作目標の引き下げ、三 つ目に資産買入れの拡大、四つ目にマネタリーベースの拡大ペースの加速、こ ういった様々な対応があり、かつこれらの組み合わせや応用といったことも考えられるということです。』

これ誰もゴリゴリ言わない(言うとただの藪蛇だから)のですけれども、MB拡大ペースの加速ってのを追加緩和手段に入れたままで説明していると輪番減額が引き締め扱いになってしまうので、この話はもうしない方が良いと思うのよね。まあ鈴木さんのせいじゃなくてYCCぶっこんだ当初の話を全然リバイスしていない(これまた追加緩和手段の話をリバイスすると藪蛇になるからわざとしていない、というのも分かりますけど)のに問題があるんですけど。

『いずれにしましても、現在の「長短金利操作付き量 的・質的金融緩和」の枠組みを前提に、実質金利、資産価格のプレミアムを通 じて、政策効果が発揮されるように考えていくと、そうした際に、今ご指摘もありましたように、私の挨拶要旨の中にもありますが、金融政策の効果がもた らされる時間軸だけでなく、その副作用が累積していく時間軸も踏まえつつ、 金融システムの不安定化を未然に防ぐ観点からも、政策の効果と副作用をこれまで以上に慎重に比較衡量することが必要です。』

「これまで以上に慎重に」と二重表現で強調。

『公表文に発表しておりますよ うに、モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には具体的な検討をするのですが、現時点においては追加緩和の必要はないと私は考えており、実際に必要 があると考える場合には、現時点で具体的な議論がされているわけではありま せんので、どのような複雑な組み合わせがあるかどうか分かりませんが、やはりそれが副作用を上回る効果があるという前提でやるべきであると考えているところです。 』

公表文はこの前変更して「具体的な検討」ではなくて「追加緩和」になっていまして、この答えの頭のところではちゃんと「モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」って言ってるのに、ケツの所で「モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には具体的な検討をするのですが」という辺りに本音がポロリと出ていて大変に微笑ましい。


・物凄い勢いで副作用論が展開されます

という割と大演説モード(さっきのは2つに分かれた1人の質疑を分割していてあの量になる次第)のあとは良い感じでこの流れ。

『(問) 今の講演録でもあったように、効果に対して副作用をかなり列挙され ておられて、預金金利がマイナスになってしまう可能性ということにも言及さ れていたと思うのですが、現時点で言うと、マイナス金利を深掘るということに関しては、これは副作用を上回る効果というのは現時点ではないと委員はお 考えだということでよろしいのでしょうか。』

『(答) ご質問は、仮に将来マイナス金利の深掘りを行う場合に、それは効果 が副作用を上回ると考えているか、ということでしょうか。』

『(問) そういうことです。』

『(答) まず、先々の金融政策について、仮定の話として現時点でどうかということは難しいということです。』

と言いつつすかさず直後にこれですよ(^^)。

『そのうえで、マイナス金利の深掘りというの は、今申し上げた四つの選択肢のうちの一つにあるわけで、それを行う場合、 副作用を上回る効果があるかどうか、これは非常に慎重に検討する必要があるだろうと思いますし、そういうものがある場合には、それだけをもってその効 果が副作用を上回るという形になるのかどうかというのは疑問があるのでは ないかと考えております。』

要するに効果が無いと言いたいってことですね、わかります。


さらに応酬は続く。

『(問) 「リバーサル・レート」についても言及されていますが、もう既に今 の−0.1 というのは、だいぶ近いところまで来ているというふうにお考えなのか、まだそこまでは距離があるけれども、追加的な緩和をするとそこにぶち当 たってしまうという可能性、懸念があるというふうにお考えなのか、教えてください。』

鈴木さんなのでここぞとばかりに聞きますな。

『(答) ご案内の通り、いわゆる金融機関の貸出という観点で申しますと、このところ一時期よりは少し減速傾向はあるかもしれませんが、大体 2%台程度 の貸出の伸びがあり、これは大手金融機関や地域金融機関によって比率が変化 しておりますが、いずれにしましても、貸出は伸びています。それから、よく総裁始め、皆申し上げておりますが、現時点において、資本・流動性において、 マクロとしては大きな問題はないということです。こうした点において、現時 点において「リバーサル・レート」に達しているということではないということになるかと思います。』

ほほう、と言いたいところですが、鈴木さんの場合はこのあと「そのうえで、」からお話が始まるのだ。

『そのうえで、例えば地域金融機関の公表データを基に、 いわゆる、平均の貸出レート、そこから平均の調達のコスト、それに金融機関 の経費を貸出規模で割って比率にする、こういうものを控除した数字を計算致しますと、新規実行の貸出レートの利鞘がどんどん減少していて、足許では相 当程度ゼロに近付いているということをみることが可能かと思います。それに 対して、今後、金融緩和が金利を低下させて、それが金融機関が使用する顧客との取引に基づく貸出のベースレートに連動して低下していく、そうした場合 には、同じスプレッドを適用すると逆鞘になる可能性が出てきます。逆鞘にな る可能性が出てくる場合には、これは顧客との交渉の中で、スプレッドを上げていくと金利が下がらないということが起き得ます。そうしますと、「少し金 利が下がらないとか上がってしまうのであれば、借りない」という形で貸出の 伸びが減速するというようなことがあれば、それは「リバーサル・レート」の兆候の一つになるということだろうと考えています。』

キタコレ。

『従いまして、将来そうい うことに達する可能性があり、それがいつかというのは非常に推測することは 難しいわけですが、それほど遠い将来ではない可能性もあるということだと思っています。』

リバーサルレートに達するのは「それほど遠い将来ではない可能性もある」だそうですよ!!!!


・地域経済に関する問答が後から出てくるのもお洒落

とまあこんな質疑のあと、次の質問が・・・・・・・・・・

『(問) せっかくですのでローカルの質問をさせて頂きたいと思うのですけれども、先程米中の関係については、輸出等の話がありましたけれども、ここ熊 本、特に九州全体そうかと思いますけれども、日韓関係、かなり今、目が離せ ない情勢が続いています。この日韓関係がローカルに与える影響、そして今後の見通し、その辺をちょっと教えて頂ければと思います。 』

と、「せっかくですのでローカルの質問をさせて頂きたいと思うのですけれども」って掴みから地域経済の質問(とは言え日韓関係がどうのこうのってのも何かねえとは思いますが)が入るというのは、どんだけその前の部分で質疑が白熱した雰囲気になっていたんだと思わす微笑を禁じ得ない。なお地域経済云々のところはパスします。


・預金金利マイナスに関する話

『(問) 副作用の三点目として挙げられている、金融機関が預金に手数料を賦課し、預金金利を実質マイナス化させることも考えられますというふうに指摘 されていらっしゃいますけれど、これに達する蓋然性というのは、今現在どの 程度高まっていて、今後どうなっていくとみていらっしゃるのでしょうか。』

これは銀行出身審議委員としては慎重に答えざるを得ないネタではありますが、まあ自分から金懇挨拶で振っていますからねー。


『(答) 現在、民間金融機関の経営のご判断や、そういったことについての検 討を、具体的に伺ったり調査しているということではありませんので、あくまで可能性としてということを申し上げたということです。』

まあそう答えるわな。

『ご案内のように、形 態は違いますけれども、欧米の国においては、預金の手数料というものがある 場合があると思います。例えば皆様におかれましても、クレジットカードでゴールドカードであれば年会費がかかるということがありますが、一定の残高 未満、あるいは上回る場合に、色々な形で手数料がかかっているものがあるこ とと思います。加えて、例えば欧州においては、法人の預金には、手数料ではなく、具体的にマイナスの金利が適用されている、あるいは最近の報道でもあ りますけれど、一部の欧州の国では、個人預金にもマイナスの金利が適用され ている、そういった流れにあるわけです。そのような欧米諸国の動きの中においては、本邦の金融機関もそういったことを検討するということはありますし、 確か一週間くらい前の新聞報道の中にも、一部の金融機関が休眠口座に対して 手数料を賦課するという話があったと思いますが、その辺が更に拡大する可能性ということを申し上げています。』

ということで、まあ自分で振ったネタだけに特に逃げも打たずに答えているのがお洒落ですな。

#ということでこの辺で