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2019/11/29

お題「何で中銀が環境問題??/櫻井審議委員会見から/その他少々と読書室だよ」

実に悲しい。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191128/k10012194261000.html
“桜を見る会” 招待者名簿「電子データ復元できず」官房長官
2019年11月28日 12時43分

直近の行政行為の正当性を検証する事に関して「その件については関連書類を破棄したので調べようがありませんデータの復元はできません」ってそれ同じ説明を民間金融機関が当局検査相手にやったら場合によってはお取り潰し級の事案であり、こんな説明で良しとするなら行政が民間相手にやっていることの全てが崩壊するんですけれども、という行政の正当性の話に発展しているんですよね。どうしてこうなった・・・・・・・


〇何でまた急に環境問題??????

この前のECB議事要旨でも急に気候変動云々とか出ていて、FOMC議事要旨でも出ているのですが、何か変なもんでも食ったかと思ったらこんなのがあると。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191128a.htm/
NGFSへの参加について
2019年11月28日
日本銀行

『日本銀行は、NGFS(Network for Greening the Financial System)のメンバーとなりました。NGFSは気候変動リスクへの対応について、メンバー間で経験を共有し、検討することを目的とした、中央銀行・金融監督当局のネットワークです。日本銀行では、NGFSへの参加を通じて、気候変動リスクに対する理解を高め、国際的な議論へ参画していきます。』

・・・・・・・・いやあのそういうの別に中央銀行の仕事じゃないでしょあんさんらは災害時の業務継続体制だけきちっとやっていれば良いんですけど、と思ったのですが、ふとアタクシ碌でも無い妄想を思いついたので陰謀脳満載で読み筋を披露しますとですな。

この気候変動ガーとかESGだのSDGsだのの流行にいっちょ噛みというのもさることながら、最近の主要中央銀行における金融政策枠組み云々の話の中で自然利子率が低下する中での金融政策の有効性低下ってのがあるじゃないですか、非伝統的政策が効くの効かないのってのも結局のところは潜在成長率の低下した経済において金融政策って、引き締め方向は効くとしても緩和方向って効きにくいですわな(だって金融緩和って別に本質的な意味での需要創出効果がある訳ではなくて将来の需要を手前に持って来る効果な訳でエナジードリンク飲んでヒャッハー今日も頑張るぜーってやってるようなもんですからにゃあ)という問題がございまして、これを突き詰めていくと、成熟経済において金融政策の意味はとか言い出すと自分らの存在ってそもそも要らんのとチャイマスカ(ただし中央銀行そのものは決済機能と信用秩序維持(最後の貸し手機能)のために必要なのは間違いないので、まあバジョットの時代あるいはその前に戻るって話ですわな)というのに危機感持って、存在意義を出すために仕事を増やそうというお話なんでしょ、とか思う位に妄想脳。


ということで何か総裁がパリでこんな講演をしていた訳ですが、
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko191128b.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191128b.pdf
【挨拶】
国際的な金融規制・監督:これまでの成果、現在の論点、将来の課題
パリ・ユーロプラス主催フィナンシャル・フォーラムにおける挨拶の邦訳
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年11月28日

英文の方はメンドイのでパスしますし、まあ中身的にもああそうですか程度なのですが、その中で異彩を放つのが気候変動ガーの部分でこんな章があってナンジャソラ状態のアタクシ。

『5.国際的な金融規制・監督上の将来的な課題:金融安定に関する新たな論点としての環境問題』

ナンジャソラ。最初のパラグラフは前の話からの流れになっているので2パラ目から。

『こうした中で、金融安定に関する新たな論点の一例として、気候関連リスクに言及したいと思います。』

はあ。

『本年10月の台風19号とその洪水による被害からの復旧・復興に向けた努力が全国的に続けられていますが、近年、日本では、台風などの厳しい自然災害が増加しています。因果関係をはっきりさせることは容易ではありませんが、甚大な自然災害が増加している原因として、地球温暖化を指摘する人もいます。』

はあ。

『究極的には人命こそが重要ではあるものの、自然災害の影響としては、資産価格の下落や担保価値の毀損に繋がる可能性、関連するリスクが金融機関の大きな課題となる可能性もあります。』

????????????????????????????

いやあの災害で甚大な被害を受けて債務者が返済不能になりましたとかそういう話は行政マターの話だと思うのですがもしかしたら行政は何もしないから民間金融機関ケツ拭けとかそういう事でも言うのかねとか変な方向で考えてしまいましたよ。

でまあ災害で甚大は被害を受けて債務者が返済不能になりました云々という話から震災手形の話に発展して、その後処理が適切じゃなかったら昭和金融危機の1つの要因になったとかそういう事案の話でもするのかと思えば別にそんな話をするでもなく、なんか謎の話が以下続くのでありますが、

『気候関連リスクには、他のリスクとは異なる特徴があります。すなわち、他の金融上のリスクに比べて長い期間に亘って効果が持続するという長期的な影響があり、そして、その影響がとても予見しにくいという問題もあります。このため、気候関連リスクの影響については、しっかりとした調査や分析を行う必要があります。』

ナンヤソラという感じですが、長期的に影響する事案だったら当初は確かに予見しにくいとしても、時間の経過と共に影響が出てくるんだからそれ対処できるだろという話なのですが、まあよくよく考えたらマイナス金利政策の金融機関に与える影響とかいうような長期的に影響する事案に関しても予見しにくくて全然弊害について対処しようとしない中央銀行なのですからこういう結論になるんですね!!!!!!!!!!!

『規制や監督上の対応が求められる場合には、先に申し上げた4段階のサイクル、すなわち、フォワードルッキングな視点で制度を設計し、着実に実行し、効果と副作用を評価し、必要ならばどんな問題にも対処する、ということを注意深く実行していくべきです。』

仕事を増やしたいのは分かった。

『また、気候関連リスクの規制や監督を検討する際は、産業政策や環境規制・ガイドラインが、こうしたリスクへの対応としてどの程度効果的か、念頭に置いておく必要があります。このため、産業セクターと金融セクターの間で連携する余地があるかもしれません。』

やったね!!仕事がたくさん出来て予算が確保できるよ!!!!!

『気候関連リスクは、セクター横断的で時系列的な論点を提起しています。セクター横断的な問題としては、炭素排出が幅広い産業に影響を及ぼすこと、時系列的な問題としては、炭素排出の影響が長期に亘る問題となることです。』

どう見ても中央銀行の仕事ではありません本当にありがとうございました。

『金融規制・監督の観点から、私達は、セクター横断的かつ時系列的な問題に対処するため、「大きすぎて潰せない」問題への対応やCCyBの設計・実施を通じて、専門的な知見を活かしてきました。こうした金融規制・監督に関する議論の蓄積は、今後、金融安定のための新たな課題として環境リスクに対処していく際に、貴重な示唆を提供してくれるものと思います。』

思いません。

『この点、気候変動に関する論点についての国際的な議論を行う場として、「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(the Network for Greening the Financial System、NGFS)」があることを紹介させてください。日本銀行は、このたびNGFSのメンバーとなりました。他の参加機関とともに今後の議論に貢献していくことを心待ちにしています。私達がNGFSへの参加を決めるに際しては、この分野で国際的な強いリーダーシップを常に発揮されてきた、ここにおられるフランス中央銀行のヴィルロワ・ド・ガロー総裁や他の同僚の方々からの後押しが大きかった点を申し添えます。』

官僚組織膨張大好き欧州さんにお付き合いする必要あるんですかねえ。

・・・・・・と、アタクシひたすら意識の低い話をしておりますが、そらまあSDGsとか理念的には言いたいこと分かるんですけど理念を実際の実務に落とし込む段階においてまあ何と申しますか以下自主規制って感じで、この件において中央銀行が民間金融機関に求めるのは業務継続体制の頑健性を一段と高めるとか、そういう事にとどめておかないと環境問題ガーが逆に資源の適正配分をゆがめる方向に動いてしまったら元も子もないと思うんだが。



〇櫻井審議委員会見を鑑賞

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191128a.pdf

・物価目標に関する質問とマイナス金利政策に関する質問が最初に来るとな

最初の説明の次に飛んできたのがこの質問。

『(問) 先日、IMFが 4 条協議終了後の声明の中で、物価上昇率 2%の目標 について、幅で提示することによって政策の柔軟性が高まるのではないかとい うことを提案していたのですが、カナダとか、他の結構欧米の国々ではそういったこともされているようですが、それについての受け止めをお伺いしたい のが 1 点目です。』

『あと、スウェーデンでは、2009 年と早くからマイナス金利政策を入れていると思うのですが、12 月にマイナス金利をやめるというような話 があって、かなり欧州ではマイナス金利政策に対する副作用についての懸念が 高まっているような気がするのですが、これについての見解を教えて頂ければと思います。』

櫻井さん相手の場合は質問も充実しますな。

『(答) まずIMFの 4 条協議後の声明ですが、2%の物価目標についてなど 色々な提案がされているということですが、それはあくまで一つの提案という ことで認識をしています。私どもの方は、あくまでも 2%という目標がありますので、そこに向かって時間をかけてでもそこに持っていくように、ということです。』

まあこれはこういうしかないのはシャーナイ。

『ただ、挨拶の中でも述べましたが、物価上昇ということ自体がかなり 現在、複雑化してきていると私は認識しています。その辺も含めて、生産性が上がっていくことであるとか、それに対して相変わらずヒステリシスの部分という足を引っ張る部分もありますし、色々なことがかみ合い始めているということだろうと思います。』

『それから、日本経済が、この金融緩和を続ける中で、 2016 年、17 年辺りから供給サイドが変わってきたという部分も少しずつ出てきているので、その辺の物価に対する影響というのもありますので、その辺を じっくりとみていくということだろうと思います。』

物価目標達成には時間が掛かりますという話だし、じっくり見るってんですから追加金融緩和をして物価を押し上げようとかそういうスタンスは採りませんよと言っている訳で、金懇挨拶と同じですが確認できましたという感じ。

『2 点目のスウェーデンの話ですが、私どもは、むしろかなり早い時期 からFSR(金融システムレポート)等を通じて副作用も含めてみていきたい ということだったので、欧州でもそういう話が出てきているというので、そこは私どもの方が早かったのかもしれないと思います。ある意味では少し副作用 の問題も含めて世界で共有するようになりつつあるのか、という感じを持ちました。 』

ということでこの会見、金融政策の副作用論の質疑が多いからそうなるのもありますが、FSRが櫻井さんの回答の中で頻発するのが中々お洒落です。

しかしまあ何ですな、「そこは私どもの方が早かったのかもしれないと思います」とか言いましても、それを改善しようという行動をとらないで私言いましたよねとか言われましても知らんがなと思いますが、とりあえず「ちゃんと弊害については意識していますのでよろしくお願いします」というメッセージを櫻井さんをして言わしめる程度には金懇で金融機関から恨み節は聞かされているってえ事なのではないでしょうか(個人の妄想です)。


・拙速に対応しないということについての櫻井さんの説明が中々良い件について

次の質疑の前半から。

『(問) 2 点あるのですが、講演の中で拙速な政策対応は控えるべきと仰っている一方で、仮に政策対応が必要な場合に備えた準備は必要であるということなのですけれども、もう少し具体的に教えて頂ければと思うのですが、仮に再びデフレに直面する惧れが出てきた場合に、今、4 つのツールの中でも有効 と思われるものは、櫻井さんご自身どういうものなのかという点を是非お願いします。(後半割愛)』

この質問は聞くだけ無駄(その時の状況で適切なツールを使う、以外に答えようがないから)なのですが、櫻井さんがわざわざ聞かれもしない事について説明しているのでそっちを鑑賞。

『(答) まず第 1 点目の拙速に対応しない方がいいだろうということですが、 現在の経済状況というのを考えたときに、まずは景気後退というものがそれ程 切羽詰まってきているのかどうかということなのだろうと思います。』

ということで聞かれもしない事について説明していまして、つまりは「拙速に対応しない」という件についてはもちろん挨拶要旨を見ますとどう見ても黒田節の梯子を外しにかかっているのは明白なのですが、更に説明しておきたいってんですから、これはつまり「追加金融緩和観測をいったん潰しておきたい」という事なんでしょ、と若干の願望成分が入っているというのは否めないですが(汗)、まあアタクシはそう思ったんですけどどうでしょう。

『これはご案内の通り、世界経済は確かに非常に不安定な状態ですが、その代わり国内経済の方は内需が比較的底堅く堅調に動いているというこの二つがあるということで、例えば 9 月の時点というのは、消費税率引き上げを控えた目前の時点でかなり微妙な時期だったと思います。』

ほーん。

『というのは私どもも、もうずっとこれ は年初来、どこかの時点で年内に中国経済が持ち直してくるかあるいは底打ちするかというような予測を標準シナリオとして考えていましたが、そこが秋口になってどうも標準シナリオと違ってきたということで、これは多分IMFの WEO(世界経済見通し)なども同じような感じだったのではないかと思いま す。その時点でやはり少し緊張感が高くなっていたと思います。』

『その点、足許 はどうかというと、更に悪くなるという状態でも必ずしもないということです ので、そこは慎重に点検をし続けるということに尽きるのではないかと思います。』

てな説明をしております。昨日も申し上げましたが、金懇挨拶での経済見通しの部分を見ますと、ついこの前の黒田節全開の時から見たらトーンが夜と昼くらいに豹変しておりまして、いやまあ経済情勢に応じて豹変してもそらまあ良いんですけれども、じゃあ何がその判断を変更するトリガーになったのか、という説明を日銀サイドからして欲しいんですよね。そこの説明が市場ちゃんの方でも成程とか納得のいく話ならば梯子を外しやがってコノヤローという事でもなくなるでしょうし、さらに言えば日銀の景気判断や先行き見通しについて市場との認識共有がしやすくなると思うので、まあこれはそもそもが聞かれもしない質問に対しての話なのでそんなに細かい話はしていないですけれども、それでもちょっとだけ説明は入っているので、もうちょっとこれを敷衍したような説明ってのをどっかで入れてくれると完全に崩壊モードのコミュニケーションが少しは建て直せるんじゃないかなあと思うのです。

『そのような状況ですので、積極的に政策的に動いていく必要があるのかど うかというと必ずしもまだその段階でもないのかもしれません。もう少し事態 がどう推移するかというのを見守るということなのではないかと考えています。(後半割愛)』

なお聞かれている部分はどうでもいいので割愛します。


・政策変更のトリガーについて

ちょっと先の質疑から。

『(問) 先程来話は出ていますけれども、金融政策について拙速な対応は避け るべきだというご指摘をされている一方で、いざというときは当然必要なので、 準備しておくべきだということなのですけれども、櫻井さんとして考え得るシナリオとして、どのようなことが起きたときに、政策対応のトリガーが引かれ るのでしょうか。輸出が更に落ち込んだときなのか、堅調だといわれていた設備投資がそうでもなくなってきたときなのか、あるいは物価が、例えばCPIでマイナス圏に行ってしまうとか、色々考えられるとは思うのですけれども、 今特に警戒すべきシナリオがどこにあるかというところを改めて教えて頂き たいのが一つ目です。(後半割愛) 』

この説明がまたやたら丁寧。

『(答) まず、現在の景気をどうみるか、政策対応をどうするかということで すが、先程少し申し上げましたが、9 月から現在までの状況をみたときに、特別に更に悪い景気状況の方に走ってきているかというと必ずしもそうでもないだろうと思います。ただし、良くなってきているということでもないという ことも確かだろうと思います。それから、世界経済のリスク自体が、やはり、 まだちょっと見通しがなかなかはっきりとはしないのではないかと思います。 特別に悪くなっているということもないのですが、かといって、安心できる状態では必ずしもないだろうということです。特に欧州なども、若干、景気は、 思ったより減速が延びているかなという感じもします。』

うーんこの玉虫色。

『それに対して、国内は私どもの予想以上にむしろ内需が強かった、堅調だったということがあるのではないかと思います。ただ、この辺でもやはり仰る通り、色々な影響が及んで くるのかどうか、その辺を少し見極めたいということです。それを見極めないと、なかなか政策として動くというのは少し早過ぎるのではないかというのが、 率直な私の考えです。』

というこの説明っぷりを見ると、まあ景気先行きの話について黒田節全開状態から判断が変わったトリガーは国内ということになるように思えます。よくよく考えるとこれも聞かれもしない事について答えているコーナーになっていまして、つまりこれは日銀の景気先行き見通しのトーンを変えたことと、明日にも利下げっぽい話からの豹変についてのトリガーが何だったのかというのを説明しようと櫻井さんがわざわざ聞かれもしないのにちゃんと説明しようとしている、という事なのではないかとか物凄い勢いで好意的に解釈している気もするがまあそんな気がしました。

『それに従って、ある程度準備をしておくということは何かというと、かなり大きく景気後退がはっきりと出てきそうだというのであれ ば、そこは、色々な準備をしておく必要がありますが、では具体的にどうかと いうと色々な指標があると思います。ご指摘の通り、輸出がこのままずっと下 がっていってしまうとか、あるいは需給ギャップがどのような動きになってい るか、設備投資がどう動いてくるかというような、まさにそれは様々な指標を みながら考えていくということではないかと思います。その点でいえば、まだ 現時点では、それがどんどん悪い状況が重なっていくというようなことにはなっていないだろうということではないか、むしろ予想よりも内需が堅調さを維持しているということだと思います。』

『ただ、楽観は当然できないということ です。やはり、輸出は多少マイナスが少なくはなってきているかもしれませんが、まだまだ心配な状況でもありますし、それが設備投資にどう影響してくる のか、いくら非製造業の設備投資が強いといっても、それなりに影響はくるかもしれません。それから消費税率引き上げの問題も、今のところ限定的と思われますが、ここももう少し時間が欲しいところです。(後半割愛)』

政策変更のトリガーに関する質問はまーありきたりですが、前半の聞かれてない部分の説明がほほーんと思ったのでネタにしましたです、はい。


その他のネタとしてはポリシーミックスが云々というのもあるのですが、まあこちらはそんなに変わった話をしている訳でもないのでパスします。


〇国債投資家懇談会議事要旨とか思ったが時間が無いのでURLだけ貼っておく&今日はオペ紙

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/191126.html
国債投資家懇談会(第81回)議事要旨

・日時 令和元年11月26日(火)13:30〜14:50
・場所 財務省 第3特別会議室

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて
2. 令和2年度国債発行計画について

ということですがこれはまた後日ネタにするかも知れません。近年は国債市場の多様性欠如を反映しましてPD懇の議事要旨よりも投資家懇の議事要旨の方がオモロイ(昔は逆だった)という状況ではないかと存じますので(個人の感想です)まあこれはこれで読んでおかないと。

でもって今日は月末ですがプレミアムフライデーとは何だったのかという勢いで17時になるとオペ紙が出てくると思いますが、投資家懇でも指摘があったと思うのですが、現状の需給って結局のところプラス金利か否かでニーズの断崖が出来ていると思うので(なお短期ゾーンだと短期政策金利も断崖になると思う)、超長期金利をマジで上げたいんだったら本当は10年金利をプラスの水準に持って行かないとアカンと思うのよね。まあそれをする必要があるのかどうかというのは(金利が上がるとアリガタヤとかそういう話ではなくて政策枠組みの問題として)良く分からんですけどね、というメモだけ置いておきます。



〇読書室ってことで東京マネーマーケットキタコレ

・「東京マネー・マーケット(第8版)」東短リサーチ株式会社編(編集代表加藤出)有斐閣選書

不肖このアタクシも年寄りとは申しましても東京マネー・マーケットは第4版以降しかお世話になっていないので、もっとベテランの古狸じゃなかった重鎮の前では小僧同然ではございますが、とうとう第8版ですかそうですかおめでとうございますという所で。

基本的には辞書替わり、とは言いましてもアタクシも二等兵時代は第4版を読みながら資金需給ってなんだっけとか言いながら戦場に赴いていた訳でして、これ持たないで戦場に出たらそらもう手足がもげてあばばばばーですわという所なので二等兵から将校まで必携でしょとは思いますが、さて短期市場関係ない方的にどうよという話に関しては、今回は第1章として「マネー・マーケットと日銀金融政策」というコーナーがあって、ここの本文とコラムが無駄に攻めている(誉め言葉)ので、読み物としてもオモロイ(無駄に攻めているので人によってはケシカランという感想も出そうですが)。

なお、市場の説明とかに関してはボチボチと読んでいますが、そこは短資会社さんが作っているので、どうしてもアクティブな参加者寄りになっている部分はあるかなというのは多少あって、短期市場を運用オンリーとか調達オンリーとかでまったりと参加する人から見ると多少もにょる部分が無い訳でもないかな程度の感想はありますけどまあそれは特に気にしなくても良い(アタクシが細かいだけ)。

でまあそんなことを考えておりますと、そういえば短期市場って文字通りに短期資金の融通が一番大きな機能なだけに、メジャープレーヤーってその時の資金ポジション次第で調達にも運用にも回ります(資金繰り的な出入りもそうですしターム運用して翌日物でショートファンディングするポジションメイクでもそうですし)から、例えば債券だったら発行側と購入側、そしてブローカー・ディーラーって画然と分かれているのとはまた違った味わいがあるわな、とか何とか思ったりするのでありました。

ISBN978-4-641-28145-5 C1333 ¥2100E








2019/11/28

お題「櫻井さんの金懇は盛大に「動かんもんね」宣言をしているように見えます/その他」

一昨日のアレですが、
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191126-00000112-kyodonews-pol
反社会勢力、入っていたのだろうと菅氏
11/26(火) 17:01配信

FATFさんこっちです案件かよとおもったらさすがに否定に回ったか。
https://www.asahi.com/articles/ASMCW647YMCWUTFK018.html
菅氏、反社会勢力「定義定まっていない」 責任明言せず
有料記事
2019年11月27日21時47分

しかしまあ何ですな、このグダグダっぷりを見ながら過去のあんなのとかそんなのとかを思い出すと官僚の皆様の火消し(内務省検閲により削除)。


〇櫻井審議委員金懇挨拶は「追加緩和も利上げもしねーよ」を強調しておりますな

日銀ちゃんの今後の方向性を探るうえで今や最重要なのではないかとの評も高く、櫻井最高や!!(自主規制)なんか最初からいらんかったんや!!!との令名も高い櫻井審議委員の金懇挨拶があった訳ですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko191127a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191127a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
兵庫県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 櫻井 眞
2019年11月27日

毎度不思議に思いますが、昨日の櫻井さんの金懇って公表とほぼ同時位にHTMLバージョンが出てきたのですが、たぶん来週のジンバブエ先生の金懇ってHTMLバージョン出るのに少々お時間が掛かったりしまして、この差はなんなんでしょうかねえ(棒読み)と思うのですが、まあそれは兎も角として鑑賞します。でもってHTMLバージョンの方がコピペしやすいという事情により以下上記URL先のうちHTMLバージョンから引用します。

・経済の見通しのトーンが何気に明るくなっているように見えるのですが・・・・・・・・・・・

『2.内外経済の現状と先行き』のところはサラサラと参りますので先行きの所だけ読むという手抜きプレイに入る。まずは『海外経済の先行き』から。

『米中貿易問題の拡大・長期化の影響により、今後一段と減速が進む懸念は残りますが、上方リスクも考えられます。例えば、既往の景気対策の効果が、2020年前半に想定以上に出てくる可能性があるほか、米中貿易問題を受けたサプライチェーンの再構築の動きが加速することも考えられます。いずれにしても、今回の世界的な成長減速は、世界貿易量の急減速が主因であり、製造業を中心に生産・輸出の減速が続く一方、非製造業は緩やかな成長の拡大を維持していることも特徴です。ウエイトが高い非製造業の底堅さは、世界経済の成長を下支えする一定の役割を果たしていると思われます。』

でもってちょっと飛んで『国内経済の先行き』の方なのですが、

『当面のわが国経済を展望すると、消費税率引上げの影響は前回対比で相対的に小さいとみられるものの、短期的には影響が見込まれることや、世界経済の緩やかな回復への転換が2020年半ば頃までは想定し難いことから、今後の約半年間は慎重に情勢を点検すべき時期と考えています。』

ほうほう。半年ですと来年前半の途中じゃないですかこの前総裁会見だと金利のフォワードガイダンスのカレンダー撤廃したけれども2020年春がだいぶ伸びるような話してたような気もするのだが。

『こうしたもとで、わが国経済の緩やかな成長が、今後短期的に減速する可能性は否定できませんが、中長期的に減速が続くこともまた考え難いと思います。なぜなら、過去7年に亘る金融緩和の継続により、大きく雇用の改善が進み、人手不足が続いたことで企業行動の変化を促し、設備投資を通じた経済の好循環メカニズムが働いているからです。さらに、ウエイトの高い非製造業の設備投資が堅調な中で、海外経済の減速という外部ショックに対するわが国経済の頑健性は着実に強まっています。』

実は基調の話は威勢が良い。

『当面は、世界経済の動向とそのわが国への影響を慎重に点検していくことが重要ですが、先行きを過度に悲観するべきではありません。当面は、生産年齢人口の減少ペースが総人口の減少ペースを上回ることを踏まえると、労働市場が逼迫した状況が続く可能性が高く、堅調な個人消費、さらには人手不足対応を中心とする設備投資の拡大が持続する可能性は相応に高いと思われます(図表7)。』

そう簡単に(労働需給ギャップが悪化しにくいので)需給ギャップが落ち込むこともないし、設備投資も出るしということで、海外のリスクガーで利下げもあるでよ状態だった今年の初夏以降のトーンというかこれ展望レポートのトーンよりも(海外の先行き評価も含めて)強めになっていねえかという感じがしますけどどうですかねえ。

『2019年10月の「展望レポート」における政策委員の実質GDP成長率の見通しの中央値をみると、2019年度が+0.6%となった後、2020年度、2021年度はそれぞれ+0.7%、+1.0%となっています(図表8)。』

ということですが、これ先行きのトーンを見ますと字面から受ける印象がついこの前までの黒田節全開状態の時とだいぶ違う感じです。もちろん思いっきり判断を変えたみたいな言い方をしている訳でも何でもないのですけれども、なんか先行き超警戒ですよ空襲警報ですよという感じだったあの夏の日々は何だったのかと小一時間問い詰めたい気分。


・物価の現状と先行きの話は結局のところ「塹壕掘って援軍が来るのを待ち続ける」という話に収束する

でもって『3.物価の現状と先行き』ですが、最初の小見出しが『現状の物価動向とその背景』となっている時点できな臭さが漂う。

『続いて物価動向についてお話しします。わが国の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+0%台前半での緩やかな伸びが続いています(図表9)。既に前年比プラスが3年間も続いており、「再びデフレに逆戻りしない」という意味での頑健性が強まっていることが窺われます。』

『しかしながら、物価上昇率が一段と加速し、物価安定の目標に近づく状況には至っていません。こうした「デフレではないものの物価が加速しない状況」の背景には、物価変動のメカニズムが近年徐々に変化してきていることがあると考えられます。』

物価が勢いよく上がらないけれども下落しないという点でレジリアントであるという話でして、本来はモメンタムは無いけれども構造的に物価が下がりにくくなっているという意味でメカニズムは頑健という話をして、徐々に2%が適正になるようになればいいじゃないですかそれで誰も困らんでしょ、と本当は言いたいんでしょうなあとは思うものの、最初に広げた大風呂敷の面目玉があるのでそうも言えません、というのを以下そういわずに丁寧に説明するの巻が始まります(^^)。

『現状のわが国の物価変動メカニズムは、1つの物価上昇要因と2つの物価抑制要因が重なっていると整理できます。すなわち、物価上昇要因としての「プラスの需給ギャップの継続」、そして物価抑制要因としての「長引くデフレマインド」、「労働生産性の向上が物価上昇圧力を抑制する効果」です。』

最近はこの説明が多いですな。

『まず、物価上昇圧力としての需給ギャップは、2016年第4四半期以降一貫してプラスを維持しています。実際、物価上昇率と需給ギャップは一定のラグを伴いつつ連動して動いており、「プラスの需給ギャップ」は物価上昇圧力として作用していることが示唆されます。』

へいへいそうですかと思うが、結構高い需給ギャップ(+1%超の水準)が随分続いてこの程度という時点で何ともかんともなのですが。

『一方の物価抑制要因です。まず、「長引くデフレマインド」ですが、過去のデフレの経験を踏まえた消費者の節約志向は根深く、これが引き続き企業の慎重な価格設定に影響しています。わが国の予想物価上昇率の形成プロセスをみると、今後の経済状況や政策の変化に基づく予想の側面よりも、過去に実現した物価上昇率に基づいて予想が形成される側面、すなわち適合的期待形成の側面が強く、これがデフレマインドの長期化に繋がっています。』

この説明も聞き飽きましたが、適合的期待形成って結局「物価が持続的に上がらないと物価が持続的に上がりません」とかトートロジー言ってるのと同じ話だし、じゃあ外的ショックで物価を上げてみたらどうなったかというのは既に実施済みでコストプッシュの物価上昇は消費を下げておしマイケルだったという結果なのですから、これはもう言い訳以外の何物でもない。

『また、2017年頃からは「労働生産性の向上が物価上昇圧力を抑制する効果」がみられ始めています。』

でもってこれですよこれ。

『労働市場は現在ほぼ完全雇用状態である一方、賃金上昇圧力は然程高まっていません。これは、人手不足が深刻化する過程で同時並行的に労働参加率の上昇がみられたことで賃上げを抑制する余地があったことも影響していますが、加えて、人手不足が長期化する見通しのもとで、企業が省力化投資に踏み切り、労働生産性の向上が進んだことも重要です。』

ほうほうそうですか。

『労働投入が節約されたことにより、需給ギャップの面からみると、プラス幅のさらなる拡大が回避されたことになります。こうした労働生産性の向上によって、人件費や原材料費等のコスト上昇圧力を販売価格に転嫁する動きは抑制されました(図表10)。民間設備投資の拡大を通じて、「労働生産性の向上が物価上昇圧力を抑制する効果」が作用した、と整理できます。』

ということで物価上昇が加速しないことをポジティブなネタにして早期達成しないのを正当化する理論ですが、これは早期達成しないのを正当化するだけでなく、追加金融緩和で需給ギャップの更なる拡大(が本当にするのかよというツッコミはさておきまして)して2%達成の早期化を図るというのを棄却する理屈になっているというのもご案内の通り。

よって次の小見出し『物価の先行き』では、

『物価変動メカニズムが複雑化する中で、物価の先行きを見通すことは容易ではありません。』

じゃあ展望レポートで3年も先の見通し出さない方が良いんじゃないでしょうか、というような無粋なツッコミはしてはいけませんですかそうですか。

『まず、適合的期待形成に基づく「長引くデフレマインド」を克服するためにプラスの物価上昇率が必要であり、そのために「プラスの需給ギャップ」を維持し続けることを前提にすると、残る「労働生産性の向上が物価上昇圧力を抑制する効果」の見通しが重要となります。』

しかし良く練られた理屈ではある。

『先行き見通しの検討にあたっては、労働生産性の向上が経済構造を変化させる側面を考慮する必要があります。すなわち、供給側の変化は、物価抑制要因として作用することに加えて、潜在成長力の向上を促すという点です。』

潜在成長率が上がっているとな???

『世界経済の先行きを巡る不確実性が高いもとで、わが国経済の当面の課題は、堅調な内需に支えられた緩やかな成長を何とか維持することで、「プラスの需給ギャップ」を持続させると同時に、進み始めた経済の構造変化を止めないことです。こうした当面の課題に適切に対応できれば、デフレではない状況を維持しつつ、いずれ労働参加率の上昇に歯止めがかかり、実質賃金上昇が生産性向上ペースに追いつけば、物価上昇率の緩やかな加速に繋がることが想定できます。』

蕎麦屋の出前みたいですが、まあとりあえず引き締め方向に動かないというのは把握した、というかそもそもがマイナス金利の深掘りの方が引き締め的になるんじゃねえのかとか、本来はたぶんそっちの方を考えるべきなのでしょうなあ、とは思います。

『物価の先行きを巡るリスクにも警戒が必要です。海外経済の減速が想定を超えて継続し、需給ギャップがマイナスに逆戻りすれば、再びデフレに直面するおそれも出てきます。現時点では、堅調な内需のもとで「プラスの需給ギャップ」が維持されていることを踏まえると、慎重に海外経済やわが国経済の先行き動向を点検しつつ、さらなる政策対応が必要な場合に備えた準備は怠るべきではありません。万全の態勢で世界経済の回復を待つことが、物価上昇のモメンタムを維持していく上で重要です。』

「とりあえず塹壕掘って待っていれば援軍が来ます」みたいな理屈ですなあと思いますが、まあ要するに日銀執行部方面としては金融政策単体で物価やらインフレ期待を押し上げる力はきわめて弱い(無いとは言わないけど極めてメリットが無い)ので、今の状況をだましだまし続けていくしかありませんよ、とまあそういうイメージなんだろうなあ、というのが分かりやすいですわな。

本来は2%の物価目標を中長期的に目指すべき経済の状況と整合的な物価水準が2%なので、そのような経済が出来るように金融政策で長期的にサポートして行きます、という話にしてしまえば、物価水準の細かい話しとかはさておいて、経済の状況に応じて政策を行うという話に出来るのでもうちょっと無理のない理屈で政策運営出来るんでしょうが、まあ最初に広げた大風呂敷のせいなので自業自得で政策委員会に対して同情の余地は一点も無いですな。


・よって金融政策は「梃子でも動かん」モードということですが最初に盛大な梯子外しキタコレなのだ

次の章が『4.金融政策』で現状の説明はパスして『今後の金融政策』です。

『日本銀行は、引き続き現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていきます。今後の政策運営にあたって特に留意すべき点として、(1)世界経済の減速がわが国経済に与える影響、(2)金融緩和政策の継続による効果と副作用のバランス、(3)経済構造・物価変動メカニズムが変化するもとでの政策運営、の3点を挙げたいと思います。』

しらっと(3)が入っているのがチャーミング。

『1点目は、わが国の実体経済の先行きを占う上で、当面の大きな留意事項です。仮に、海外経済の減速が一段と強まり、わが国の実体経済への悪影響が顕在化した場合には、政策対応が必要となる可能性はあります。その際の重要な留意点は、悪影響の規模とその波及スピードを見極めた上で対応すべきということです。』

ついこの前までの黒田節と全然トーンが違うというのがお洒落ですが、そもそも何であんなに黒田節を吹きまくったのかという話になる訳でして、あそこまで吹かさなくても円高が進んでマズー(これも本当にマズーなのかという事は検証すべきであって、輸出企業の声がでかいからどうしてもこうなってしまうのですけれども・・・・・・・)になったのかねとも思いますし、結局のところ日銀の煽りによって債券市場ちゃんに余計なロングを作らせて日銀が梯子を外すという盛大なショーを実施して、ショーに騙された方々の日銀の情報発信に対する不信感を残しただけになったような気がしますがまあいいです。

『すなわち、仮にリーマンショックのように金融システム崩壊の可能性を伴うような危機の場合には、信用収縮を通じた急速な景気後退となるため、果断な対応が必要となります。一方、貿易問題に起因する海外経済の減速が緩やかなものにとどまる場合には、わが国の経済に波及するそのスピードも緩やかなものとなり、経済指標の動向を見極めた上で政策対応を考える余地が出てきます。』

でもって何がどう梯子外しかと言いますとこれでありまして、いやあのすいません海外経済のリスク要因とか言って貿易問題とかブリクジットとかありますけれども、そのどれを捕まえてもリーマンショックになるかよとしか言いようがない訳でして、これはつまり「多少海外が落ちても追加緩和しないもんねー」という話になっている訳で、ほんの2か月くらい前の話は何だったのかと小一時間なのですが、ここでお上手なのはこれを黒田さんなり雨宮さんなりが言い出すとそらもう観客席から木戸銭返せと物が飛んで来る話になるのですが、櫻井さんが言っているので「いや別にこれは政策委員会の総意の話ではありません櫻井個人の意見ですが何か?」と最終的には回避が可能ということでして、鉄砲玉ゲフンゲフン。

『拙速な政策対応を控えるべきであることは、次の副作用の論点とも関連してきます。』

ということで、要するに副作用がでかいから拙速な政策対応を控えるという話なのだが、そもそも論としてリーマンショックのような急激な金融ショックによる金融収縮に対処するのはウォルター・バジョットの時代からの中央銀行のお仕事なので、対応するの当たり前で今更「果断な対応(キリッ)」とか言うのは本来言うまでもない話で、それは対応しますが多少の経済の下振れで一々拙速に対応しませんとか物凄い勢いで梯子を外しているので、世が世ならアチャーとなってもおかしくはないのですが、まあ昨今は欧米中銀もすっかり追加緩和って何でしたっけ状態になっておりますので、ここで日銀が盛大に梯子を外したとしても、梯子を外されること自体が市場の中の人的にまあ来るでしょうなあ状態である、ということで対して反応せんのじゃろうなあとは思いますが・・・・・・・・・


・副作用論も当然追加緩和無し話になる

『2点目の副作用ですが、今後の金融政策運営にあたって、低金利政策の継続に伴う金融システム面での副作用に留意する必要性が一段と高まっています。企業の資金需要が限られるもとで、低金利環境の継続などから貸出利鞘の縮小が続いています(図表11)。金融機関は収益確保のためにリスクテイクを拡大していますが、世界的に緩和的な金融環境のもとでリスクに見合うリターンを確保できる投融資先が限られる中で、景気後退時にリスクが顕在化し、自己資本比率が急低下するリスクも高まっています。』

詳しくはFSRをって感じですが、これがまたチャーミングなことに素敵なスタッフペーパーが狙ったのかどうか知らんが同日にリリースされています(後で紹介だけします)。

『現時点では、金融機関の自己資本比率はいずれの業態でも規制水準対比で十分高いと考えられますが、地域金融機関を中心に自己資本比率が低下トレンドをたどるもとで、時間の経過に伴い従来以上に細やかなモニタリングが必要な状況になってきています。日本銀行では、金融システムレポート、考査、オフサイト・モニタリングなど複数のチャネルを通じて、金融システムのリスク状況を点検するとともに、必要に応じて、こうしたリスクへの対応を促していくほか、金融高度化センターの活動など幅広い機会を捉えて、金融機関の課題解決に向けた対話を進める方針です。金融政策運営にあたっても、こうした金融システム面での副作用の状況を慎重に点検しつつ、適切に政策判断を行うことが重要と考えています。』

どう見ても追加緩和しません論です本当にありがとうございました。


・構造問題の話で1章を割いておりますが早期目標達成はキニシナイというお話に帰着する

『最後の3点目ですが、省力化投資に伴う労働生産性の向上が物価上昇を抑制するなど、金融政策と物価の関係が複雑化しており、今後の不確実性も高い状況です。こうした、経済構造の変化とそのもとでの望ましい金融政策のあり方について、やや詳しく説明していきたいと思います。』

という前振りのあと『5.わが国経済の構造変化と金融政策の役割』というのがあるのですが・・・・・・・

最初の小見出しが『わが国経済の構造変化とその新たな注目点』となっていまして、

『過去7年間に亘る金融政策と財政政策のポリシーミックスに支えられて、わが国では静かながらも着実に経済構造の変化が起き始めています。こうした変化は、(1)グローバル化に伴う産業構造の変化、(2)人手不足の定着に伴う好循環プロセスの確立、の2つに大別できます。』

って話だがそれはどっちも別にQQE始まってからの話じゃなくてその前からの話だろとか思いますけどまあ次を見ますと、

『その結果、わが国では、(3)供給サイドの拡大に伴う潜在成長率の上昇期待、および(4)外部環境の変化に対する頑健性の向上、といった変化がみられ始めています。以下、それぞれ簡単に触れた上で、最後に(5)構造変化のもとでの望ましい政策のあり方について説明します。』

ってなっていまして、最初の『(1)グローバル化に伴う産業構造の変化』とかそれもっと前からの話であって今さら何をおっしゃるウサギさんなのですが引用だけしますと、

『ブレトンウッズ体制の崩壊以降、40年超に亘ってグローバル化のトレンドが続く中で、わが国では製造業の海外進出が進みました。結果として「国内」総生産であるGDPに占める非製造業のウエイトは約8割を占めています。わが国企業の対外直接投資は、1980年代後半から大幅な為替レート調整が進むもとで急速な拡大を続け、現在のグローバルなサプライチェーンが形成されました。』

『製造業による生産拠点の海外移転、という構造変化を受けて、わが国の経常収支において、海外投資の果実である所得収支の寄与は趨勢的に高まりました(図表12)。現在、わが国の経常収支黒字の対名目GDP比は約4%ですが、大部分は対外直接投資および証券投資による収益です。名目GDPに所得収支を加えた概念であるわが国の名目GNI(国民総所得)は、GDPよりも約4%大きくなっており、製造業は「海外生産で収益を上げる」構造へと着実に変化しています。』

って何を今さらな話ですが次が『(2)人手不足の定着に伴う経済の好循環』は、

『次に、国内における経済構造の変化です。2017年頃から、恒常的な人手不足のもとで、緩やかな成長、プラスの需給ギャップ、デフレではない物価上昇、設備投資の拡大、といった特徴が継続的にみられています。これらが相互に影響を及ぼしつつ同時並行的に進んでいることが、わが国経済の好循環の持続に繋がっているといえます。』

『高齢者の増加と生産年齢人口の減少というトレンドにより、人手不足が続くもとで、政策面からの需要サイドの拡大も相まって、プラスの需給ギャップが続きました。これにより、企業部門では「わが国経済の緩やかな拡大と人手不足が中長期的にも続く可能性が高い」との期待が高まったと考えられます。その結果、ある程度時間を要する設備投資を断行しても、前向きな事業環境がある程度まで維持され、投資の費用対効果が見込めるとの判断に至り、省力化目的を中心とする設備投資の拡大に繋がりました。』

という理屈だが、これってQQE無くても別に普通に金融緩和してたら出来たんチャウのかと思いますが、なにせ経済というのは再現性のある実験が出来ないという結果オーライ主義なのでこう言い張られてしまうとはあそうですかとしか言えないのがアカン所ではある。

でもってその結果として、という話が『(3)供給サイドの拡大に伴う潜在成長率の上昇期待』から始まる。

『設備投資は、GDPの需要項目の1つであり、短期的な需要を拡大させる面があることに加え、生産能力や生産性の向上を通じて供給を拡大させる中長期的な効果も持ちます。継続的な設備投資の拡大という構造変化に伴い、わが国で供給サイドの拡大が進んだことにより、今後一定の時間的ラグを伴って、わが国経済の潜在成長率の緩やかな上昇に繋がっていく可能性があります。』

ほうほうそれでそれで??

『足もとの潜在成長率をみると、労働投入の寄与が縮小する一方、資本ストックおよび全要素生産性(TFP)の寄与が底打ちしつつあります(図表13)。過去3年間続いた設備投資の拡大は、供給サイドの構造変化をけん引し始めています。将来のイノベーションを見据えた研究開発投資の増加も相まって、今後潜在成長率が上昇すれば、自然利子率が上昇し、実質金利が自然利子率対比でより低位になることを通じて、同水準の政策金利であってもより金融緩和効果が増すこととなります。』

金利を上げなくても緩和効果が高まる攻撃で、つまりは副作用のある追加緩和特別攻撃隊をするよりも塹壕戦で戦線を維持していればそのうち良い事があるという話をしておる、ということですな。

そして『(4)外需の変動に対する国内経済の頑健性の向上』になりまして、

『外需の変動に対するわが国経済の頑健性の向上も、見逃せない構造変化です。』

ついこの前の海外ガーからの黒田節は何だったのかという話ですな。

『グローバルなサプライチェーンの確立を経た、わが国製造業の内外生産施設の役割分担をみると、大きく分けて海外拠点は海外の現地市場および第三国への輸出向け、国内拠点は国内市場向け、という形の分業体制が構築されてきました。その結果、外需の減速が輸出の縮小を通じてわが国のGDPに与える悪影響が以前よりも弱まったと考えられます。』

『今回の米中貿易問題には地政学的な背景もあるだけに、今後の展開次第では既存の世界的なサプライチェーンが中国を中心に再編される可能性は否定できません。もっとも、こうしたサプライチェーンの再編は、日本企業の生産拠点の配置、すなわち国内か海外か、輸出か現地生産か、という意思決定には大きな影響を与えないと予想します。既に内外拠点の分業体制がある程度確立し、海外生産の第三国へのシフトは起こっても、国内設備投資が大きく減少することは考え難いからです。』

ほうほうこれはまた威勢の良い話で。

『非製造業の投資が堅調であることや、中長期的な人手不足が継続する見込み等、その他の構造変化も加味して考えれば、国内における設備投資の拡大が持続する可能性は相応に高いと考えます。』

という景気の良い話の後に最後の『(5)経済構造の変化を支える金融政策』になるがこれがまた長い。


・「安定」がキーワードになっているようですのでつまりは余計な波風をたてるようなことはしないというお話

『金融政策の基本的な役割は、物価の安定を通じてマクロの健全な経済環境を実現し、それを維持していくことであり、金融政策が経済の構造変化に直接的な効果を持つことはありません。』

そらそうなのですが何故か置物理論では・・・・・・・・・

『一方で、約7年に及ぶ大規模な金融緩和政策の継続に伴い、実体経済に関連する多くの指標が改善し、物価もデフレではない状況となりました。2019年入り後も、米中貿易問題の強まりから世界経済の減速が続いており、わが国経済にもその影響が一部にみられていますが、堅調な内需に支えられる形で、緩やかな拡大が維持されています。』

『世界経済の減速が進む中でも緩やかな成長が維持できている背景には、良好なマクロ経済状況が続いたことで、わが国の経済構造が変化し、外需の変動に対する経済の頑健性が強まったことがあります。まさに大規模な金融緩和政策を粘り強く続けてきたことが、実体経済の改善に繋がり、それが間接的に経済構造の変化を支えたと考えられます。』

お、おぅ・・・・・という感じもしますが先に参ります。

『また、現在の金融緩和政策が効果を発揮できている背景には、マクロ経済政策の枠組み全体が安定していたことも重要です。この間、政府と日本銀行の間で、政策目的と役割分担に関する基本的な理解を明確に共有するもとで、金融政策と財政政策のポリシーミックスが実施されてきました。』

されていたか????という気がするが先に参ります。

『金融政策は、その直接的な目的が物価の安定を通じたマクロ経済の安定である一方、財政政策はマクロ経済全体に対する刺激だけでなく、予算配分等を通じた構造政策の側面も持ちます。マクロ経済政策における金融と財政のポリシーミックスが基本的に維持されたことが、ここ数年のマクロ経済を安定化させただけでなく、経済構造の変化をスムーズにしたと考えられます。』

そ、そうなのか????

『さらに、グローバルな視点からの金融政策という面でも、ここ数年間は概ね安定的であることも重要です。』

?????

『現在、主要先進国の間で物価目標の水準に大きな差異はないほか、今年に入ってからは金融緩和方向にあるという面でも政策の方向性に大きな違いは見られません。』

というのはさておき、

『さらに、リーマンショックから10年間を経て、主要先進国における各中銀間のバランスシート規模や通貨供給量の相対的な関係がかなり安定的になってきています(図表14)。主要国間での相対的な量的緩和度合いの変動幅が以前よりも小さくなったとも解釈できます。』

この図表14はさすがにナンジャソラという感じでして、まあ置物一派の片鱗を見せつける「都合のいい期間を取ってきてグラフを作成する」スキームを久々に見ましたなあという感じです、まあPDFの方を見てちょ。

『加えて、わが国がデフレではない状況が続く中、購買力平価の観点から長期的な名目為替レート調整圧力に影響を与える、主要国間のインフレ率の格差も大幅に縮小しています(図表15)。こうしたもとで、金融市場はニュースに反応して短期的には変動しても、長い目でみると一定のレンジ内で動いているようにみえます。グローバルな金融政策面の類似性が市場変動を抑制し、わが国経済の外需の変動に対する頑健性の向上と相まって、わが国経済の安定化に寄与しているとも解釈できます。』

何だかこの段落はお前は何を言ってるんだという感じがするのですが、まあ要するに言いたいのは「安定を維持すべき」という話なんでしょうなあとは思う。よって・・・・・・・・

『わが国の緩和的な金融政策は、国内では財政政策とのポリシーミックスの維持、グローバルには金融政策の方向性の類似性により、わが国経済の経済構造の変化を支えているほか、金融市場の変動を抑制するアンカーとしての役割を果たしています。』

黒田節とその梯子外しをしている人が何を仰せでしょうかとか思いますが、それは先ほどありました「金融市場はニュースに反応して短期的には変動」の範囲内でありますからヘーキヘーキということですねわかります。

『米中貿易問題を契機に、国際的な協力の枠組みが大きく後退し始めるなど、グローバルな貿易問題の先行きは懸念材料ではあります。もっとも、国内でのポリシーミックスとグローバルな金融緩和環境が維持されるもとで、当面は世界経済の減速に適切に対応し、世界経済の回復局面を辛抱強く待つことで、プラスの需給ギャップの持続と、変化し始めた経済構造を支えることが、わが国にとって重要な政策課題であると考えられます。』

どう見ても動かない宣言です本当にありがとうございました。

#以下はご当地経済の話になりますので割愛します


〇副作用といえば同日にこんなスタッフペーパーが(URLの紹介だけ)

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/19-E-21.html
Discussion Paper Series2019-E-21
Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability
Kosuke Aoki, Ko Munakata, Nao Sudo

ということでURLに燦然と輝く「english」の文字に有りますように英文のペーパーです。でもってお題が上記にあるように『Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability』なのでもう思いっきりイイハナシダナーな物件になりますが、先日の企業の期待インフレ云々と言い今般のこれと言い、何と申しますかこの味わいの深いラインアップは何なんでしょうかね(棒読み)という所ではございますな、うんうん。

本文はこちら(英語です)
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/19-E-21.pdf

ネタにするのにはちょっと読み込みが全然できていないのでパス。


#しまった時間の都合で某書籍の書評ネタががががががが(何かはお察しください、明日やります、と宣言しておく)





2019/11/27

お題「国債PD懇議事要旨/指標金利改革関連/基調的インフレェ・・・・・・」

お、おぅ・・・・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52609690W9A121C1H99A00/
ゴンチャジャパン社長に原田泳幸氏 タピオカ飲料大手
2019/11/26 13:19

〇国債発行計画関連なのでPD懇議事要旨を拝読する訳ですが

たぶん営業時間になりますと投資家懇の議事要旨も出てくると思います(ということは懇談会終了後にこれ作って翌朝一番で決裁貰っているとかそういうレベルで誠に恐れ入ります次第)が昨日出たPD懇の方を。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/proceedings/outline/191125.html
国債市場特別参加者会合(第83回)議事要旨

でもってまあ最初の財務省の説明ですけどね。

『○令和2年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。』

つーことで、

『・10月25日(金)に行われた「国の債務管理の在り方に関する懇談会」における当局提出資料を説明するとともに、委員からの意見を紹介する。』

ほうほう、で『(国の債務管理の在り方に関する懇談会(10/25)における議論@(理財局からの説明))』の小見出しを拝読する訳ですが、

『・確実かつ円滑な国債発行と、中長期的な調達コストの抑制のため市場ニーズに即した発行を行っていく必要がある。今後も100兆円を大きく上回る国債の発行が継続的に見込まれるため、機会主義的な発行ではなく、中長期的な需要動向を見極め、安定的な発行を行っていくことが、結果的にコストの抑制や、確実かつ円滑な発行につながると考えている。』

てな訳で「機会主義的な発行ではなく、中長期的な需要動向を見極め、安定的な発行を行っていく」という所にまあ思いっきり集約されていると思うの。でもって国債投資主体別の中長期的な動向についての推計について説明していて、

『・国内銀行の国債保有額は、日本銀行の量的・質的金融緩和以降、減少傾向にあるが、足元は担保需要等もあり、その傾向は緩やかとなっている。一方、日本銀行への当座預金残高はこの間も増え続けているため、国債への潜在的な投資余力は残っていると考えられる。』

うんうん。

『・生命保険会社の投資動向について、国債保有残高は平成20年度から24年度にかけて増加傾向にあり、超長期ゾーンの保有残高も増えてきたが、平成25年度以降はほぼ横ばいの動きとなっており、この間、外国債券の買いが増加している。この背景には、低金利下で資産と負債のデュレーションのマッチングを進めると、逆ザヤが固定化されてしまうという事情もあるため、今後の金利の動き次第では投資動向は変わり得る。』

金利が上がれば円債の購入も増えるでしょうという話っすな。

『・今後の人口構成の変化によって、保険料収入の減少や新たな保険ニーズの出現の可能性が指摘されている。保険ニーズの変化は資産の運用スタイルの変化につながるため、今後も保険の負債の金額、質の両面における変化を注視していく必要がある。』

ただしその時に負債デュレーションが短くなっている可能性もあるのでそこは留意と。

『・保険会社の国際的な規制に関して、2025年の導入に向けて現在議論が進んでおり、同時に、国内規制についても、今年の6月に金融庁において有識者会議が立ち上がり、議論が始まったところ。規制の中身や導入時期に応じて、また、規制対応の前後で、国債へのニーズも変わってくると予想されるため、こうした動きも見ながら今後の国債発行を考えていく必要がある。』

ということでやたらと生命保険会社さんの話を並べているのは超長期のニーズが云々という話に持って行くための前振りですねわかります。

『・投資家の運用原資とデュレーションの推移において、日本とアメリカを比較すると、日本は銀行部門のウエイトが高く、運用原資のデュレーションが短くなっている。今後、国債の発行を中長期的に考える上では、この運用原資の動きも注視していく必要がある。』

とは言え貯蓄から投資へというのはもう何十年もその話をしながら全然構造がカワランチ会長であるという状況もあるのでさてどうなるんでしょうかね。

とまあそういう話とか他の説明とかがあるのですが、一方で参加者の意見を拝見しますとまあシャーナイ面はあるのですが・・・・・・・・・・・・・

『○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。』って所から。

PD懇って昔は3行コメントみたいなのが沢山あったのですが、最近はクッソ長いのが少数という感じになっておりまして、まあ3行コメントが並んでいるというのもどうかとは思ったけれども、少数しか出てないというのも当初は良いかなーとも思ったが、多様性という観点からちょっとどうなのという気が最近せんでもない。たださすがに今回は発行計画なので意見がたくさんあってやたら全体の量が多いのでちょっといい感じだし通常もこの位あると何か見ごたえがありますなと思う。

個別の意見ですが、今申し上げたようにクッソ長いので分割しながら鑑賞。

『・まず足元の市場動向については、日銀買入オペの減額効果が少しずつ現れてきており、値動きがだいぶスムーズになったと感じているが、値が飛びやすい状況がまだ続いており、流動性が十分回復したとは言い切れず、市中残高はもう少し増やしておきたいため、市中残高の維持が引き続き重要である。』

へいへい。

『特に、金利上昇局面では新発債ニーズが高まりやすく、日銀買入オペでもカレント銘柄は対象から除かれているが、投資家の買いニーズは新発債に集中しやすい傾向にあり、特に、超長期ゾーンの需給が引き続きタイトな状況が続いている。』

さいですな。

『 足元の市場動向を踏まえ、超長期ゾーンについては少なくとも現状維持、もしくは増額を検討してほしい。足元、生保の購入が増加してきているが、国内投資家の裾野が広がってきており、来年度の運用見通しの中でも、超長期ゾーンの需要が高まってきている。また、海外投資家の買いニーズもかなり出てきている。日本銀行がこれまで超長期ゾーン、特に残存25年超の日銀買入オペの減額を進めてきても市場の需給ひっ迫感が継続していることを考えると、実需が非常に多く見られており、超長期ゾーンの残高維持は必須である。足元のイールドカーブや投資家が購入しやすい年限を考慮すると、報道にも出ていたが、40年債の増額であれば投資家の期待の声に応えることに加え、マーケットの流動性を高め、市場機能を維持することにも寄与すると考えられる。』

『一方で、5年債と10年債については減額余地があるのではないか。本年4月に日本銀行による国債補完供給の要件緩和措置が発表され、長期国債先物取引の受渡銘柄のショートスクイーズ懸念は大きく後退している。また、残存5-10年の日銀買入オペの減額もかなり効いてきており、流動性が高まってきている。5年債や10年債はマーケットの中心的な存在であるため、流動性の確保が非常に大事な命題であり、これまで10年債の増額を要望していたが、こうした日本銀行による措置が功を奏している中では、10年債については減額余地がある。5年債については、投資家が少ないこともあるため、減額余地がある一方で、2年債以下については、投資家の担保ニーズ等の実需がある。』

いやまあ言いたいことは分かるんですが、それって全体の金利水準が変わったらニーズまた変わってくる話であって、輪番オペみたいに状況に応じて上げ下げ(最近は下げしかしてないが)出来るものじゃないんですがとは思う。というかまあ前半の超長期の話は分かるんだが、10年増額要望だったのが日銀のオペ見直しで一転して減額出来るって話になるのはちょっとそれは目先の話過ぎるじゃろと。

とか言いつつ次の人。

『・イールドカーブ・コントロールを実施しているため、10年債以下の市場機能は改善しても限定的になる一方で、超長期ゾーンについては、世界的に色々な材料を消化しながら取引されているため、時に需給がひっ迫することはあるが、年限別で比較すると、超長期ゾーンの方が市場として機能しているのではないか。報道にもあったが、生保を中心とする負債が長い投資家からは、特に30年債と40年債に対するニーズ、いわばプラス金利のカレント債に対する需要は相当なものがある。そのため、現在プラス金利を維持している20年債や30年債、40年債については、可能であれば発行額を維持してほしい。』

うんうん。

『一方で、前倒債の積み上がりから、一定程度の減額も考えていかなければならない。流動性供給入札に関しては、リーマンショックに伴う国債増発への対応や、QQEの拡大に伴う日本銀行の買入額の増加に合わせるという側面があることから、今年度の日銀買入オペがそれなりに減額されてきたことを考えると、流動性供給入札の役目はもう少しトーンダウンさせてもよい。特に、残存5-15.5年ゾーンは減額対象としてもよい。次に減額可能だと考えられるのは10年債である。入札1回当たり1,000億円の減額を行っても、入札1回当たりの発行額は2兆円であり、この規模の発行額を維持すれば適切な指標金利と表現することが可能だろう。』

こうやって説明入れてくれると短期的なニーズじゃないよという話に見えるのですよね。とは言いましても金利水準が変わった場合、今超長期に行かざるを得なくなっている人たちのうち、負債デュレーションがそもそもそんなに長くない方々のシフトが始まるんじゃネーノと思う(個人の感想です)ので、いやまあそれはその時に考えれば良いといってしまえばそれまでですが、今の超長期ゾーンのニーズには金利が盛大に低下した結果として押し出されてきているニーズが相当量入っているんじゃないかとは思うのですよね。

『仮に、40年債の増額を考えるのであれば、ストックベースの債務の長期化を抑制する観点から、流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンを減額することも考えられるのではないか。』

なるほど。流動性供給入札に関しては市場の流動性確保という点ではアリガタヤではありますが、その時のニーズでスポットで出てくるものなので発行計画的には将来の償還にデコボコを作るリスクもあって確かに使い方は難しいなあとか何とか。

でもって次の人。

『・長期国債先物に係るチーペスト銘柄が残存7年なので、長期国債先物中心に相場が動くことはあるが、最近のマーケットの状況や流動性の観点から考えると、超長期ゾーンは唯一、市場機能が維持されており、マーケット全体は超長期ゾーン中心に動きつつある。こうした中で、来年度国債発行計画では、超長期ゾーンについては、少なくとも発行額の現状維持は必須である。特に、30年債や40年債については、生保中心に実需の買いが見えており、イールドカーブ上もかなり割高化していると感じている。日本銀行による買入額もかなり減額されているものの、その効果もなく、イールドカーブがスティープニングしない状況では、超長期ゾーンの減額はかなり難しい。40年債の増額に関する報道が出ていたが、もし増額されるのであれば、非常に歓迎したい。』

ふむふむ。

『一方で、前倒債が大きく積み上がっている中で、来年度国債発行計画において減額対象と考えられるのは流動性供給入札である。日本銀行による諸政策の効果により、チーペスト銘柄がスクイーズすることもなく、特に、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンについては、流動性が低い銘柄というよりは、割安銘柄が落札される入札になってきているので、一番減額しやすいのではないか。』

『それ以外では、10年債については、マイナス金利の現状では、投資家のニーズは乏しいが、今後、金利上昇局面では、2年債や5年債よりはニーズが高まっていくと考えているので、どちらかと言えば、2年債もしくは5年債の方が、減額余地があると考えている。』

ということで、減額の方で流動性供給入札の長期ゾーンというのは以下の意見でもまあだいたい皆さん一致していますし、そもそも流動性供給入札に関しては本来的には補完的役割だから市場状況としてイラネという時にさくっと減らすのは良く分かるので、そっちの意見が一致するのはまあそんなに変な話でもないとは思うのですが、通常発行の年限での減額余地に関する話の中で10年債が盛大に連呼される中で、10年より中期じゃないでしょうかという意見ってのがこの人ともう一人(もう一人は10年ってYCCの年限だから足もと減額余地があると言っても安易に減額するのは如何なものかということでこれまた仰せの通りかなとは思った)のしかない(10年でも中期でも一緒ですな、というのはある)というのがうーんこのと思ってしまった次第です。

まあ投資家懇じゃないからそうなってしまう、というのは勿論あるのでこれが一概にアカンとか良いとか言う話じゃないし、意見は意見ではあるのですが、ただまあ今回の見てますと増減に関する意見が見事なまでに揃いすぎているなあという感じでして、もう少し昔のPD懇での発行計画話の時ってもうちょっと意見が色々とあったような気がしたんですよ(ってアタクシの記憶と印象ベースの話で過去のを細かく比較検討している訳ではないので勘違いだったらすいませんなのですが)。でまあ近年はこの辺のニーズに関する意見が大体そろうようになっているなあとは何となくイメージしていたのですが、こうやって見事に意見が揃ってしまっているのを見ると壮観ではありますが、金融政策が無駄に効きすぎじゃないでしょうかねえとか思ってしまったりもするのよねこれがまた。

てな訳で、国債発行計画に関する意見が更にドバドバとあるのですが、まあ大体そろっているという状況でありまして、市場流動性という話になると、やれアスクビットスプレッドだ板の厚みだボラだとかいう話にはなるのですが、そもそも論として国債発行計画の意見聴取の所で出てくる意見が揃いも揃って同じようになっている、というのはやはり質的な意味での市場流動性(ってナンジャラホイとか言われそうですが)が盛大に欠如しているんじゃなかろうか、などと思うのでありました。


あと市場流動性に関しては概ね、

『・イールドカーブ・コントロールを実施しているため、10年債以下の市場機能は改善しても限定的になる一方で、超長期ゾーンについては、世界的に色々な材料を消化しながら取引されているため、時に需給がひっ迫することはあるが、年限別で比較すると、超長期ゾーンの方が市場として機能しているのではないか。(以下割愛)』

ってな感じの話が多い中で、

『・取引を行うときには、超長期ゾーンと短中期ゾーンで、流動性や機能度が違う感じはしない。同じだけ、量をさばくのは厳しいと思っている。前回の本会合から本日に至るまで、一本調子とはいかないまでも金利が上昇している中で、グローバルな要因もあり、米債対比で日本国債はアンダーパフォームしている状況だと思っているが、その要因としては、日本銀行の政策が良くも悪くも効いていることが結構大きいと思っている。まず、9月の金融政策決定会合時には更に緩和方向というイメージだったが、10月はどちらかというとそれが後退しており、期待させた分、剥落する勢いがかなり強まり、海外勢を中心に売りが短中期ゾーンに出ている。また、意外に効いているのが日銀買入オペであり、予期しないタイミングで、これまでと違うルールで実施したり、カレント銘柄を除外したりといった形で、かなりテクニカルに色々動いているため、そこを測りかね、腰を据えてポジションを取るというのが正直難しい。こうしたことも、ここ昨今の流動性や機能度の状況であるため、マーケットについてはポジションのアンワインドも含めて少し我慢の時間帯というわけではないが、海外でトレンドが出てくることや、オーバーシュートして10年債の利回りがゼロ%を超えてくることがない限りにおいては、ボラティリティが高い状況は中々変わらないのではないかというのが今の見立てである。(以下割愛)』

って指摘は中々ではありました。


しかしまあ何ですな、

『・市場の流動性や投資家のニーズが、プラス金利である超長期ゾーンに集中している。当該ゾーンの市場残高や、取引量を維持することが市場にとって非常に重要で、逆に言うと、当該ゾーンの流動性が更に低下して、金利が低下していくことは、証券会社にとっても市場にとっても、運用環境からみて投資家にとっても非常に厳しいものになると認識している。当該ゾーンについては、日銀買入オペの減額余地も大分低いため、市場残高を維持するという観点からも、できれば減額は避けてほしい。(以下割愛)』

言いたいことは非常によくわかるのだが、金利が下がると困るから減額しないで欲しいと言われましてもそれは知らんがなという事になってしまうと思うし、

『・(前半割愛)一方で、減額もやむを得ない中では、10年債、もしくは5年債、更にあえて言えば、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンが減額対象の候補に上がる。本年春先以降の日本銀行による国債補完供給の要件緩和措置が、実際にスクイーズの動きに対して抑止力として機能していると認識しているので、こうした懸念が無い中で、マイナス金利に沈んでいる10年債の絶対金利水準を考慮すると、10年債を減額しても大きな影響はない。更に、年度途中での国債発行計画の変更もあり得ることも考えると、例えば10年債がプラス金利になって大きく市場環境が変わるときには随時変更すればよい。』

物価連動国債とかみたいなのだったら兎も角、主要発行年限で金利がプラスになってニーズが出たからよーしパパ増額しちゃうぞーとかいうのはさすがにちょっとと思うので、いや勿論言いたいことは分からんでも無いというか非常に良く分かるのですが、まあさすがにそれはちょっととは思いました。


〇基調的なインフレ率ェ・・・・・・・・・・・

毎度のこれですが、
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表ちゃん
http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

の『(2)刈込平均値・加重中央値・最頻値』と『(3)上昇・下落品目比率』を見ても唸ってしまうのですが、エクセルちゃんのデータを見るとこうなる。

刈込平均値(前年比、%)
Jan-19  0.5
Feb-19  0.4
Mar-19  0.5
Apr-19  0.7
May-19  0.7
Jun-19  0.6
Jul-19  0.6
Aug-19  0.4
Sep-19  0.3
Oct-19  0.3

加重中央値(前年比、%)
Jan-19  0.1
Feb-19  0.0
Mar-19  0.2
Apr-19  0.2
May-19  0.2
Jun-19  0.2
Jul-19  0.2
Aug-19  0.0
Sep-19  0.0
Oct-19  0.0

最頻値(前年比、%)
Jan-19  0.2
Feb-19  0.2
Mar-19  0.2
Apr-19  0.3
May-19  0.3
Jun-19  0.3
Jul-19  0.3
Aug-19  0.2
Sep-19  0.2
Oct-19  0.3

最頻値が辛うじて上向いているのですがまあまるでパッとしない状況だし、

左から
上昇品目比率(%)
下落品目比率(%)
上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)

Jan-19  54.9 37.1 17.8
Feb-19  54.1 37.9 16.3
Mar-19  55.6 35.6 20.1
Apr-19  58.5 33.3 25.2
May-19  58.7 33.5 25.2
Jun-19  59.5 32.5 27.0
Jul-19  59.8 32.7 27.2
Aug-19  59.5 33.1 26.4
Sep-19  59.1 33.1 26.0
Oct-19  59.5 38.8 20.7

いやまあ今年の頭の方が上昇マイナス下落比率低いでというのはありますが、ただその時の刈込平均はもうちょい上だったとか見ているとうーんこのという感じはするのですが、詳しい人の解説キボンヌ。



〇円指標金利に関する会議の議事要旨出てましたな

先週金曜に出てましたサーセン。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191122b.pdf
「日本円金利指標に関する検討委員会」第9回議事要旨

『● 事務局より、市中協議結果のポイントについて以下の説明が行われた。』

ってなことですが、

『・ 全体として、リスク・フリー・レート(RFR)にもとづくターム物金利(ターム 物RFR金利)が多数の支持を集めたこと等が報告された。

・ なお、貸出の代替金利指標について提出された意見の中に、選択肢の1つであ るTIBORについて、円LIBORから移行する際の金利水準の違いを懸念する声が一 部にみられたことに対して、「仕上がりの金利水準が同程度となることが移行 に向けた議論の出発点となるため、こうした懸念は契約当事者間のコミュニケ ーションの中で解決されていくと考えられる」との補足説明があった。』

ということで、ほうほうそうですかという感じではあるのですが、先の方の『3.ターム物RFR金利の検討状況』 を拝読しますと、

『● 事務局より、ターム物RFR金利の検討状況について、参考値の算出・公表主体の公募 を10月29日に開始したほか、今後、タスクフォースでの評価をふまえて、来年1月を目 途に、検討委員会として応募先にかかる議論・評価を実施する予定である旨説明が行われた。

この点、金融庁からは、応募先に求める条件に関し、新たに構築されるターム物RFR 金利は、国内外で広範に使用される可能性があり、金融商品取引法の趣旨もふまえて、 その算出・公表主体には安定的・継続的な算出が必要であるとの説明があった。』

公募に関してはしばらく前の
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191029b.pdf
ターム物 RFR 金利(スワップ)の参考値の算出・公表主体の募集について

でちょっとネタにしたような気がしますが、これ何か短期市場の方々の所にいろんな皺寄せが来ているんじゃネーノとか思ってしまう次第でして、「新たに構築されるターム物RFR 金利は、国内外で広範に使用される可能性があり、金融商品取引法の趣旨もふまえて、 その算出・公表主体には安定的・継続的な算出が必要である」っての全くその通りなのですが、この「安定的・継続的な算出」というのにオブリゲーションを負う(この仕組みだと負ってくれないと困るんですけれども)というのがちともにょってしまいますがまあシャーナイナイ。

でもって議事要旨の前のページの方に戻りますと、

『証券会社メンバーからは、「ターム物RFR金利の早期構築に向けて、前向きに協力していきたい。他方で、英米では、債券を中心にO/N RFR複利(後決め)での商品が発行・ 取引されており、システム・事務面での整備も進められてきている。このため、海外展 開している本邦企業においても、こうした海外動向を注視する必要があるが、顧客に対して適切な情報還元を行っていきたい」との意見があった。 』

ということで、まあ例の問題の震源地が海外で日本は完全なる海外からの貰い事故にも程があるからこういう感じになった訳ですが、この辺の差異がさてどうなるのかというのも気に掛かるところではありまする、というただの愚感想でしたすいませんすいません。






2019/11/26

お題「FOMC議事要旨の政策ツール検討鑑賞会(その3)/企業のインフレ期待形成に関して短観個票データから実証分析とな」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112501010&g=eco
「やりがい」整備を 経団連、20年春闘の経営側指針
2019年11月25日20時30分

「誠意は言葉ではなく金額」という名言が心に響くニュースが多すぎて困る。

#ちなみに本当は「評価は言葉ではなく金額」なのでそっちの方がよりフィットする


ところで話は変わりますが、一時某SNS金融クラスタ内を風靡したオモシロ理論、折角鎮静化したのに何でまた着火するんでしょうか意味が分かりません。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-24/Q18W71DWX2PS01
2019年11月25日 8:11 JST
(敢えて記事題名は引用しません^^)

〇FOMC議事要旨での政策ツール検討会鑑賞の続き

引っ張ってすいません(汗)。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20191030.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20191030.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 29-30, 2019

・マイナス金利政策に関しては参加者(投票権者限定ではない)全員でケチョンケチョンとな

まあこれは欧州と日本の姿を見れば一目瞭然ですがこれは凄い。

『All participants judged that negative interest rates currently did not appear to be an attractive monetary policy tool in the United States.』

>All participants
>All participants
>All participants

・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

全員ですよ全員!!!!!!!

『Participants commented that there was limited scope to bring the policy rate into negative territory, that the evidence on the beneficial effects of negative interest rates abroad was mixed, and that it was unclear what effects negative rates might have on the willingness of financial intermediaries to lend and on the spending plans of households and businesses.』

しかしこの
the evidence on the beneficial effects of negative interest rates abroad was mixed
とか
it was unclear what effects negative rates might have on the willingness of financial intermediaries to lend and on the spending plans of households and businesses
とかいや全く持ってその通りなのですが、ECBやBOJの立場を無くす話になっていてワロスワロス。

『Participants noted that negative interest rates would entail risks of introducing significant complexity or distortions to the financial system.』

マイナス金利政策はsignificant complexity or distortions to the financial systemですってよ奥様、ずいぶんと嫌な政策でございますわねえオホホホホホホホホ。

『In particular, some participants cautioned that the financial system in the United States is considerably different from those in countries that implemented negative interest rate policies, and that negative rates could have more significant adverse effects on market functioning and financial stability here than abroad.』

米国の場合は欧州や日本と金融市場の仕組みが違っているのでこれらの国よりも更に深刻な問題が起きる可能性があるって指摘。

大体からして米国の場合は短期市場のマイナス金利回避のために財務省にTビルを追加発行してみたりする位でして、その時代だと特に短期金融市場におけるリスクマネーの供給元がMMFとかのミューチュアルファンドだったから(その後のFSB−IOSCOによるMMF改革の結果固定NAV方式のMMFはトレジャリーオンリーになって、変動NAV方式じゃないとクレジット物にぶっこめなくなって移行の時に一時金融機関のファンディングコストが上がったのはご案内の通り)、まあFEDはさすがにその辺分かっていたからマイナスを回避しましたがどこぞの日銀の場合はマイナス金利ぶっこんでから後出しでマクロ加算のMRF特則をぶっこんで来るという泥縄にも程があるプレイが出たのもこれまたご案内の通りですな、いやはや何とも。

『Notwithstanding these considerations, participants did not rule out the possibility that circumstances could arise in which it might be appropriate to reassess the potential role of negative interest rates as a policy tool.』

とは言いましても一応マイナス金利を政策ツールにする可能性を排除する訳ではない、と言っているのはまあ|д゚)チラッと欧州日本の状況を見ておきましょうってなもんでしょう。


・政策には効果があったが均衡金利水準が低下していますよね的なまとめはまあ普通だ

『Overall, participants generally agreed that the forward guidance and balance sheet policies followed by the Federal Reserve after the financial crisis had been effective in providing stimulus at the ELB.』

フォワードガイダンスとバランスシート政策は緩和効果があった、というまとめ方になっているのですが、金融市場の機能不全時における流動性供給やカウンターパート機能の発揮による市場機能の回復という話と、(結局あの時に問題になったのはスタンディングファシリティ(ディスカウントウィンドウ)が制度としてあってもスティグマ問題であんまり機能しないというのは実にアカンかった)マクロ経済に対する効果という話は分けて考えないといけないのですが、その辺ってダドリーがいたらちゃんと論点整理をしてくれたと思うのだがウィリアムスだとそういうのが出来ていなさそう、と思ってしまいまして、この議事要旨を見るとちょっとその辺が懸念されますな。つまりウィリアムスがいるうちに金融市場に対して大きなストレスが掛かる事態が生じたらマズイって話なのでNY連銀は中曾さんを総裁に招聘すべき。

『With estimates of equilibrium real interest rates having declined notably over recent decades, policymakers saw less room to reduce the federal funds rate to support the economy in the event of a downturn. In addition, against a background of inflation undershooting the symmetric 2 percent objective for several years, some participants raised the concern that the scope to reduce the federal funds rate to provide support to economic activity in future recessions could be reduced further if inflation shortfalls continued and led to a decline in inflation expectations.』

自然利子率の低下によって均衡金利の水準が下がっており、何かあった時の金融政策の発動余地が小さいですね、という話はいつもの話ですけれども、

『Therefore, participants generally agreed it was important for the Committee to keep a wide range of tools available and employ them as appropriate to support the economy. Doing so would help ensure the anchoring of inflation expectations at a level consistent with the Committee's symmetric 2 percent inflation objective.』

今後も有効な政策ツールについて幅広く検討すべきであるという話で、有効な金融政策ツールがあるという信認によって物価2%達成への信認も確保できる、というまあそれはそうですなとか思いながらも、有効なツールが無いのに有効なツールがありまぁすと言いながら延々と政策を引っ張り続ける日銀涙目。


・新しいツールを導入するときは前広に説明を行って理解を得ることが必要とはイイハナシダナー

『Some participants noted that the form of the policy response would depend critically on the circumstances the Committee faced at the time.』

そら(状況が変われば)そう(適切な金融政策ツールは変わる)よという話ですが、

『Several participants suggested that communicating to the public clearly and convincingly in advance about how the Committee intended to provide accommodation at the ELB would enhance public confidence and support the effectiveness of whichever tool the Committee selected.』

新しい政策ツールをぶっこみに行くときは前広に説明を行い、そのツールが政策として有効であるという信認を得ることによって政策効果を出していくという透明性と信頼性が必要という指摘をしている人がいまして、なるほどイイハナシダナーと思う一方、不意打ちでマイナス金利政策をぶっこんだら円安どころか円高株安になった素敵な国の中央銀行に対する巧まざる砲撃になっている(砲撃しているつもりはない)というのがこれまた味わいがあって実に宜しい、というかこの「Several participants」の場合ジャパンの事例についてを念頭に置きつつそんなこと言ってるんだったら更に味わいが深い。

『Some participants thought it would be helpful for the Committee to evaluate how its tools could be utilized in different economic scenarios, such as when longer-term interest rates were significantly below current levels, and discuss which actions would best address the challenges posed by each scenario.』

異なる状況における有効な政策ツールについての推計というのを行う事も重要です、という指摘も行われていますが、そこの例が長期金利が現状の水準よりも極めて低い水準になった時とか言われていまして、もうやめて!!!日銀のライフはゼロよ!!!!!!って感じなのですが、ここでの話って(最初の所からずーっとそうですが)昨日も申し上げたようにガイダンスとかAPPって「長期金利の金利水準を下げる効果」という話で一貫していまして、だからこそ長期金利がクソ低くなった時にどういうツールが有効なのかという計測が大事って話になるのですが、「金利」の話をしているの重要ですな。

でもってですね、これ今後の枠組みの話でたぶんまたゼロ金利制約到達をどうやって回避するかという話になってくる時に、物価目標を上げるとかアベレージインフレーションターゲットとかそっちの話になるんでしょうなと思いますが、政策発動余地としての糊代論になってくるんですが、それって成長経済というのがベースに無いと糊代づくりが却って平時の金融引き締めになってしまいますので、最終的には成長力を維持するのが大事とかいう話になって、金融政策オンリーでの話じゃなくなるわなあとか思うのでした。

『Several participants noted that, particularly if monetary policy became severely constrained at the ELB, expansionary fiscal policy would be especially important in addressing an economic downturn.』

という事になりますので金融政策がゼロ金利制約でseverely constrainedされた場合には、拡張的な財政政策がespecially importantという指摘になる訳ですが、どこぞの国の場合はとっくの昔にゼロ金利制約によって金融政策がseverely constrainedとなっているにも関わらず「金融政策で物価目標達成」とか言って登場したスットコドッコイによって貴重な時間を空費しているという辺りに悲しさを感じるのでありました。しかも無節操にも程があるのはその一派は自分らの空理空論を自己批判することなく財政ガーとか言い出しているのが更にケシカラン次第で。


・結論が出るまではまだまだ時間があります

『Participants expected that, at upcoming meetings, they would continue their deliberations on the Committee's review of the monetary policy framework as well as the Committee's Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy. They also generally agreed that the Committee's consideration of possible modifications to its policy strategy, tools, and communication practices would take some time and that the process would be careful, deliberate, and patient. A number of participants judged that the review could be completed around the middle of 2020.』

政策ツールとかロンガーランゴールとかに関しては今後も検討と議論を行っていきますが、そこそこお時間が掛かる話で、概ね来年の中ごろ位までは掛かるんじゃネーノという指摘になっております。

今回の議論(というかブレーンストーミング)はここまでですが、PDFバージョンだと2枚半分くらいありまして、うっかりこれを議事要旨出た日の朝に読み込みださないで良かった(一瞬読みだしたのですが直後に分量の多さでこれはヤバいと思って回避した)という感じです(^^)。

なお、一々日銀への砲撃みたいなネタにしておりますが、まあ非伝統的政策に関しては各中銀がそれぞれ人柱になって教訓を得てそれを後の人が生かす、という構造になっている(出口に関して言えばFEDだってテーパータントラムからの流れはやらかしでしょ)ので、別に悪意を持って砲撃している訳ではなくて、重要な知見として参考にしている、という事でもありますとか最後の最後で急にポジティブな話をして悪態をちょっと中和しておきますサーセン。まあ他所の経験を生かさないで「他所でやっているからよーしパパも導入しちゃうぞ」というのは止めて頂ければと思う次第。



〇企業のインフレ期待に関するスタッフペーパーが2本出ていますな

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19j09.htm/
企業のインフレ予想の形成メカニズムに関する考察
―短観データによる実証分析―
2019年11月22日
稲次春彦*1
北村冨行*2
松田太一*3

こちらのページは要旨でして、本文はそちらのページにもリンクの有るように
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j09.pdf
です。

まずは要旨から引用しますと、

『要旨』

『本稿では、日本銀行が実施している「全国企業短期経済観測調査」(短観)のデータを用いて、日本の企業のインフレ予想形成における、完全情報下の合理的期待(Full-Information Rational Expectations: FIRE)、ノイズ情報仮説、粘着情報仮説の妥当性を検証した。』

おじちゃん学が無いのでよくわからんけど何か凄そうだ。

『主な分析結果は以下のとおりである。(1) 集計データを用いたパネルVARの分析結果によると、企業のインフレ予想は、FIREと整合的なフォワードルッキングな面を有すると同時に、インフレ率の実績値の変化が徐々に織り込まれていく傾向があるという、FIREでは説明できない面も有する。』

ほほう。

『(2) 集計データでみたインフレ予想の予測誤差は、過去の予想改定幅と相関を持っており、全ての企業のインフレ予想形成にFIREが妥当するとは言えない。』

『(3) 個票データを用いた動学的パネル回帰分析の結果によると、企業のインフレ予想は、ノイズ情報仮説や粘着情報仮説が示唆するとおり、過去の自身のインフレ予想に強く依存しているほか、中小企業の短期のインフレ予想は、ノイズ情報仮説、なかでも合理的無関心仮説が示唆するとおり、自社の経営環境に関する実感の影響を受けている。』

ということで・・・・・・・

『以上の結果は、企業のインフレ予想には単一の理論では説明できない複雑なメカニズムが働いていることを示唆している。』(ここまで要旨のHTML版より引用)

日銀当座預金が10%引きあがるとインフレ予想が0.44ポイント上昇するという理論では説明できませんね!!!!!


ということなのですがちょっとだけ本文を鑑賞してみましょう。最初は要旨で同じ話なのでその後から、と言っても分析部分は2×2の行列しか計算できない(というかそれも怪しい)アタクシにはちょっと脳が火を吹くので全部パスします。

(以下、上記URL先の本文の方から引用します)

本文2ページの『1.はじめに』から引用しますと、

『現代のマクロ経済学によると、企業のインフレ予想はインフレ率の主な決定要因の一つである。例えば、ニューケインジアン・モデルが想定するように、企業が自らの市場において何らかの独占力を持ち、価格に硬直性が存在する場合、価格設定主体で ある企業のインフレ予想は、インフレ率の決定に大きな影響を与える。』

なるほど。

『現在の教科書的なマクロ経済モデルでは、企業のインフレ予想形成メカニズムにつ いて、「完全情報下の合理的期待(Full-Information Rational Expectations: FIRE)」が 仮定されることが多い。しかしこの仮説を巡っては、懐疑的な見方も決して少なくなく、近年のミクロ・データを用いた実証研究も、その説明力の限界を指摘している(Coibion et al. 2018a)。 』

なるほどこの説明だと分かる(理解しているとは言ってない)。

『こうした中、FIRE を代替する期待形成仮説として、近年、情報の不完全性に着目 した 2 つの仮説が注目を集めている1。』

『一つは、経済主体は自身を巡る経済環境に関 する実感を含む様々な情報からノイズを取り除きながら徐々に予想を更新するとい う「ノイズ情報仮説(noisy information hypothesis)」(Phelps 1970、Lucas 1972)である2。』

『もう一つは、情報の取得などに費用が発生するため経済主体は予想を必ずしも 毎期更新しないという「粘着情報仮説(sticky information hypothesis)」(Mankiw and Reis 2002、Reis 2006)である。』

ほうほうそれでそれで?

『もっとも、これらの仮説の妥当性について、家計や専門家のインフレ予想のデータを用いて検証した研究は相応に存在するものの、企業のインフレ予想のデータを用いて直接検証した研究は、十分に蓄積されているとは言い難い。これは、幅広い企業を対象としたインフレ予想のサーベイの実施例が近年まで限られていたことが一因で あると考えられる。』

ということで短観が登場する。

『本稿では、日本の企業約 1 万社を対象に日本銀行が実施している「全国企業短期経 済観測調査」(短観)で 2014 年から開始されたインフレ予想の調査の集計データと 個票データの双方を用いて、日本の企業のインフレ予想の性質を分析し、上記 3 つの 予想形成仮説――FIRE、ノイズ情報仮説、粘着情報仮説――の妥当性を実証的に検証する。』

でもってその結果ですが、

『分析で得られた主な結果は、以下のとおりである。』

『第 1 に、集計データを用いたパ ネル VAR によると、企業のインフレ予想形成は、長期予想へのショックが短期予想に波及する点で、FIRE と整合的である一方、インフレ率の実績値の変化が徐々に織り込まれていく傾向があるという点で、FIRE と整合的ではない。』

つまりフォワードルッキングな期待形成が即座に行われる訳ではないということですかね。

『第 2 に、集計データでみたインフレ予想の予測誤差は過去の予想改定幅と相関を持っており、全ての企業が FIREに従うとの帰無仮説は棄却される。』

そらそうだ。

『第 3 に、個票データを用いた動学的パネル回帰分析の結果によると、企業のインフレ予想は、ノイズ情報仮説や粘着情報仮説が示唆するとおり、過去の自身のインフレ予想に強く依存しているほか、中小企業の短期のインフレ予想は、ノイズ情報仮説、なかでも合理的無関心仮説が示唆するとおり、自社の経営環境に関する実感の影響を受けている。』

でもってこの合理的無関心仮説とか粘着情報仮説に関するペーパーがもう一本同時に出ているのですがそっちは今日はURL貼っておくだけにしておきます。

『以上の結果は、企業のインフレ予想には単一の理論では説明できない複雑なメカニズムが働いていることを示唆している。 』

まあそらそうよという話ではあるが置物理論ェ・・・・・・・・・・


『本稿の分析結果は、近年徐々に増えつつある、サーベイ・データを用いた企業のインフレ予想形成メカニズムに関する実証研究で報告されている結果と整合的である。』

『 例えば、海外では、この分野の研究を牽引している Coibion and Gorodnichenko (2015) が、米国の様々な経済主体のインフレ予想の集計データを用いて、予測誤差と予想改定幅の間の相関関係を分析し、FIRE の妥当性は棄却される一方でノイズ情報仮説や 粘着情報仮説の妥当性は支持される、との結果を報告している。』

『また、英国の企業を 対象にした Boneva et al. (2016) や、カナダの企業を対象にした Richards and Verstraete (2016) も、Coibion and Gorodnichenko (2015) と同様の分析を行い、企業のインフレ予 想形成には FIRE が妥当しないことを報告している。』

『このほか、ノイズ情報仮説が示 唆するとおり、インフレ予想は自社の経営環境を巡る情報に影響されるとの分析結果を報告する実証研究もみられている。Coibion et al. (2018b) および Kumar et al. (2015) は、ニュージーランドの企業に対して独自にサーベイを実施した結果を個票レベルで分析し、インフレ予想がインフレ率の実績値や業界内の価格動向、競争環境の影響を 受けていることを指摘している。また、先述の Richards and Verstraete (2016) は、インフレ予想が、原油価格などのマクロ要因のほか、賃金予想、仕入価格予想、人員不足感といった個社レベルの要因にも左右されていると指摘している。』

マネタリーベース直線一気理論とは何だったのか・・・・・・・・・・

『日本でも、近年、企業のインフレ予想に関する実証分析が増えている。特に、短観 で 2014 年にインフレ予想の調査が開始されて以降は、約 1 万社に上る企業のインフ レ予想に関する大規模なパネルデータを用いた分析が行われている。』

『Uno et al. (2018) は、インフレ予想の改定頻度を分析し、企業のインフレ予想形成が粘着情報仮説と整合的であると指摘している。また、Inamura et al. (2017) や日本銀行調査統計局経済分析グループ(2017)は、機械学習の手法を用いて、インフレ予想が原油価格などのマ クロ情報だけでなく、仕入価格など自社固有のミクロ情報にも影響を受ける傾向があることを指摘している。このほか、短観以外のデータを用いた分析としては、開発・ 白木(2016)が、「企業行動に関するアンケート調査」の個票データを用いて上場企 業のインフレ予想(GDP デフレータの予想)の決定要因を分析し、予想の年限が短い ほど、仕入価格や為替予想の影響を強く受けるとの結果を報告している。』

全部日銀の気がするがキニシナイ。

『これらの先行研究に比べた本稿の特徴は、集計データと個票データの両方を用いて、企業のインフレ予想形成を多面的に分析している点にある。また、妥当性を検証する 期待形成仮説として、FIRE や粘着情報仮説だけでなく、ノイズ情報仮説も取り上げ たうえで、個票データを用いたパネル分析によってノイズ情報仮説と粘着情報仮説の 妥当性を支持する結果を得ている点も、本稿の貢献である。 』

ということで以下が分析コーナーになるのですが、数学に関してはハクション大魔王なアタクシは全部すっ飛ばして結論を拝読。本文20ページにワープします。『5.おわりに』って小見出しになります。

『本稿では、短観のデータを用いて、企業のインフレ予想形成メカニズムに関する 3 つの仮説――FIRE、ノイズ情報仮説、粘着情報仮説――の妥当性を、集計データおよ び個票データを用いて実証的に検証した。』

『分析で得られた主な結果は、以下のとおりである。』

結果は先ほどから出ているのとまあ同じ説明ですけれども敬意を表しまして謹んで引用させていただきます。

『第 1 に、集計データを用いたパ ネル VAR によると、企業のインフレ予想形成は、長期予想へのショックが短期予想に波及する点で、FIRE と整合的である一方、インフレ率の実績値の変化が徐々に織 り込まれていく傾向があるという点で、FIRE と整合的ではない。』

『第 2 に、集計デー タでみたインフレ予想の予測誤差は過去の予想改定幅と相関を持っており、全ての企 業が FIRE に従うとの帰無仮説は棄却される。』

『第 3 に、個票データを用いた動学的パ ネル回帰分析の結果によると、企業のインフレ予想は、ノイズ情報仮説や粘着情報仮説が示唆するとおり、過去の自身のインフレ予想に強く依存しているほか、中小企業の短期のインフレ予想は、ノイズ情報仮説、なかでも合理的無関心仮説が示唆するとおり、自社の経営環境に関する実感の影響を受けている。』

『以上の結果は、企業のインフレ予想には単一の理論では説明できない複雑なメカニズムが働いていることを示唆している。』

『企業のインフレ予想形成は単一の理論では説明できないという本稿の分析結果は、現実の企業のインフレ予想データとも整合的なマクロ経済モデルを構築するうえでの重要な示唆を与えている。マクロ経済モデルにノイズ情報仮説や粘着情報仮説などの複数の期待形成仮説をインフレ予想のデータと整合的な形で組み込んで、これらの期待形成仮説のマクロ経済のダイナミクスに対するインプリケーションを探ることは、今後の重要な研究課題である33。 』

という結論でして、世の中そんな単純な話ではない、という事自体は当たり前ではあってもそらまあ市井の凡人が俺様はこう思うとか言いましても説得力が1ミリも無い(そもそも話を聞いてくれない)のですが、こうやって実証分析するというのは実に面白そうですな、と言ってもアタクシの脳味噌では分析結果を見てほほうというだけの話ですが。まああとはそもそも論としてこの短観個票データ(ちなみに短観って回収率無茶苦茶高くて超優秀な指標なんですよね確か)で示されている企業の期待インフレ率と実際の行動がどのように関係しているのかという話(んなもん分析不能と言われそうですが)と繋がっていくとこれまた政策に対するインプリケーションがという事になるんでしょうかね、まあ分析の統計的処理とかそういう話は分からんけれども、「この分析の前提条件になっているのは何か」という所から考えることくらいはアタクシでも出来ると思う(出来るとは言ってない)ので。


あと、もう一本はこのペーパーの続きになるんですかね。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/wp19j10.htm/
合理的無関心や粘着情報の企業のインフレ予想形成に対する含意
―小型マクロモデルを用いた分析―
2019年11月22日
北村冨行*1
田中雅樹*2

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2019/data/wp19j10.pdf

要旨は短いので引用しますと(以下の部分上記HTMLの方から引用します)、

『要旨

本稿では、完全情報下の合理的期待 (Full-Information Rational Expectations、FIRE) と合理的無関心、粘着情報を組み込んだ小型のマクロ経済モデルを、企業のインフレ予想のデータを含む日本のデータを用いて推計し、企業のインフレ予想形成における合理的無関心仮説や粘着情報仮説の妥当性や、これらが近年のインフレ予想のダイナミクスに与えている影響について分析した。』

ほうほう。

『主な分析結果は以下の2点にまとめられる。』

『(1) 日本の企業のインフレ予想形成を説明する理論として、FIRE、合理的無関心、粘着情報はいずれも妥当性を有しており、日本の企業のインフレ予想形成は、非常に複雑なメカニズムを有している。』

『(2) 日本銀行の物価安定目標の導入や、量的・質的金融緩和 (Quantitative and Qualitative Monetary Easing、QQE) などを背景とした需給ギャップの改善基調は、企業のインフレ予想を着実に押し上げているが、合理的無関心や粘着情報の存在は、インフレ予想の2%に向けた上昇を緩やかなものとしている。』

ほっほーという所ですが時間も無くなったので今日はこれで勘弁。

#後半引用大増量大会で誠に申し訳ありません






2019/11/25

お題「今日は中期超長期輪番ですな(雑談)/FEDの政策ツールキット検討会鑑賞(その2)」

ほほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191124/k10012189611000.html
高知県知事選 自公推薦の新人 浜田省司氏が初当選
2019年11月25日 1時33分

『▽浜田省司、無所属、新。当選。17万3758票。
▽松本顕治、無所属、新。11万1397票。』(上記URL先より)

〇そういや今日は輪番でしたかな

本日は中期と超長期の輪番が予定されていますが

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N28211N
2019年11月22日 / 15:17 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、米中合意期待高まる「リスクオンの日」

『<15:05> 国債先物は続落で引け、米中合意期待高まる「リスクオンの日」

国債先物中心限月12月限は前営業日比26銭安の153円16銭と続落して取引を終えた。米中通商合意への楽観論が強まる中、リスク選好度が上昇。流動性供給入札も弱い結果となり、先物は一時39銭安まで下げ幅を拡大させた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.0bp上昇のマイナス0.085%。』(上記URL先より)

ということでなんか最近金曜になると妙に急騰したり急落したり(って言っても精々30銭とかですけれども30銭も動くと急騰急落とか言うようになる程度にはナマコ相場脳になっている)する訳ですが、米国ちゃんの方が・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N2823O7
2019年11月23日 / 07:08
米金融・債券市場=利回りまちまち、指標堅調も通商懸念くすぶる

『午後の取引で、米10年債利回りは横ばいの1.772%。一方、30年債利回りは前日の2.231%から2.221%に低下。半面、2年債利回りは前日の1.605%から1.627%に上昇した。』(上記URL先より)

となっていまして、うーんこのという結果で帰ってきた訳ですが、個人の勝手な印象ですがの世界になりますが、前回の超長期輪番減額もそうでしたけど、その前の10年減額の時からちょっと思って前回の超長期輪番減額でうーんと思ったのですが、これNYがリスクオーンで帰ってきていないから何ともかんともなのですが、もうちょっとNYがリスクオン金利上昇アイヤーで帰ってきたときの超長期輪番の動向を見たかったなあというのはあります。

つまりですな、前回が如何にも金利が上がりそうな地合いの時に堂々の超長期輪番減額と来てまして、どこまでその辺を意識しているのか分からんですけれども、輪番減額していく中でかつてはできるだけインパクト出さないような感じでしらっと減額していたのが、なんかもう80兆円どころかオーバーシュート型コミットメントまで空文化させようというような勢いになってきたら、そのへんのタイミングがちと変わった感isあるという感じがせんでもない(個人の感想です)という所でございまして、いやまあそのような事はございませんディレクティブの通りにやっております(棒読み)という返事が返って来るのはほぼ予想される展開なのでそこに関して聞いても暖簾に腕押し糠に釘になると思いますが、どうせなら週末のNYがもっとあからさまに金利上昇で帰ってきたら面白かったかなあ(不謹慎)という所でございます。

しかし金曜って何でああ週末なので閉店みたいな感じの動きになる(ならない日もあるけど)んですかねえ不思議不思議。


〇FOMC議事要旨ネタ:非伝統的政策の手段を比較検討しているだけなのに期せずして日本に大砲撃の巻

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20191030.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20191030.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 29-30, 2019

んな訳で金曜の続き。

・資産買入に関する連銀スタッフの報告

中途半端な所で終了しておりましたので(汗)その続きでバランスシート政策に関する連銀スタッフの考察コーナーになります。

『The second part of the staff briefing focused on balance sheet policy tools.』

はい。

『The staff discussed the benefits and costs associated with the large-scale asset purchase programs implemented by the Federal Reserve after the financial crisis.』

リーマンショック後にぶっこまれた大規模資産買入のベネフィットとコストについてスタッフが議論したそうな。

『In general, the staff's review of the historical experience suggested that the benefits of large-scale asset purchase programs were significant and that many of the potential costs of such programs identified at the time either did not materialize or materialized to a smaller degree than initially feared.』

こうかはばつぐんだ!だったしコストに関しては今のところ当初懸念していたほどは出ていない、と随分と虫の良い結果になっておりますな。

『In addition, the staff presentation noted that?taking account of investor expectations ahead of the announcement of each new program-the effects of asset purchases did not appear to have diminished materially across consecutive programs.』

そして新しいバランスシートプログラムに対する投資家の期待も考慮に入れたとしても、資産買入の効果がまだ残っているそうな。

『However, going forward, such policies might not be as effective because longer-term interest rates would likely be much lower at the onset of a future asset purchase program than they were before the financial crisis. 』

(:∀:)イイハナシダナー

えーっとですね、「リーマンショック前の時のように長期金利が高い時はこうかはばつぐんだになるのですが、長期金利って通常状態でもその時代よりは低い水準になっているので、LSAPって将来のツールとして考えた場合に今回のような効果が期待できないかも知れませんね」っては連銀スタッフの分析なのですが、それを言い出しますととっくの昔に長期金利が物凄い勢いで低下しているどこぞの国の場合はLSAPをしても碌すっぽ効かないかもしれません(なお米国の10年金利は下がりきった所でも1%を割っていなかった筈ですよねー^^)という実にイイハナシダナーなこの無慈悲な砲撃(FEDは砲撃をしているつもりはない)。

『The staff also compared the benefits and costs associated with asset purchase programs that are of a fixed cumulative size and those that are flow-based-where purchases continue at a specific pace until certain macroeconomic outcomes are achieved-and examined the potential effectiveness of using asset purchases to place ceilings on interest rates. The briefing also discussed lending programs that could facilitate the flow of credit to households or businesses.』

でもって資産買入に関するプロコン分析として、資産買入の手法による違いという話もしていて、その結果は何故か書いてありませんが、「バランスシートのサイズにフォーカスする買入」「買入のフローペースにフォーカスする買入」(いずれの買入も特定の経済状況に紐付けた継続期間を示す)というのと、「金利の上限を設定するような買入の方法」についても検討をしました、ってのがありますが結果が書いてない。

あと、最後の所でほぼオマケという感じでいわゆるTLTROとか貸出支援基金とか方式の貸出プログラムについての検討もしたとはあるが、まあオマケっぽく書かれているし、たぶん雨人の趣味に合わない手法なのでは無かろうかと思うのであんまりそういうのやらんでしょうなあとは思います。


・FOMC参加者の議論:まずはガイダンス政策

ということでここからがFOMCパーティシパントの議論である。

『Participants discussed the relative merits of qualitative, date-based, and outcome-based forward guidance.』

まずはフォワードガイダンス。

『A number of participants noted that each of these three forms of forward guidance could be effective in providing accommodation, depending on circumstances both at and away from the ELB. They also suggested that different types of forward guidance would likely be needed to address varying economic conditions, and that the communications regarding forward guidance needed to be tailored to explain the Committee's evaluation of the economic outlook.』

フォワードガイダンスは緩和的な環境をもたらすという意味で有効だし、これはゼロ金利じゃない時でも有効ですよ、とまあそらそうだとは思いますが、ゼロ金利制約に掛かっていない時のフォワードガイダンスって時間的不整合性の問題をモロに抱えることになると思うんだがそれはどうなのよとは思うけど、なんかガイダンスに紐付ける条件を工夫することによっておっけーおっけーとかゆうとるのだが、その工夫をし過ぎると今流行りの「単なる委員会のジャッジメンタルな条件」になってしまって、それ最初は誤魔化せるんだがそのうち「これはただ当たり前の話をしているに過ぎない」とかいうのに気が付かれるから多分1回しか効かなくなるぜよとは思うのですが(個人の感想です)まあよく考えたら5年もすればポートフォリオマネージャーだいぶ入れ替わるからそれでも良いのか、(よくないが)と思ったりもする。

『In particular, several participants emphasized that to guard against the possibility of adverse feedback loops in which forward guidance is interpreted by the public as a sign of a sharply deteriorating economic outlook, thus leading households and businesses to become even more cautious in their spending decisions, the Committee would need to clearly communicate how its announced policy could help promote better economic outcomes.』

フォワードガイダンスを入れた時にそれが悲観的な見通しに基づくものと思われてマインドを悪化させないようにコミュニケーションには工夫をしないといけません、ってスタッフの時と同じ点を指摘していますが、まあもとより雨人の場合威勢のいいことを言うのはいつもの仕様ではなかろうかという気もするのですが。

『Participants saw both benefits and costs associated with outcome-based forward guidance relative to other forms of forward guidance.』

ということで、どうもこの人たち「アウトカムベース」のガイダンスがお好きなようです。まあ特定経済指標に紐付けじゃない形のアウトカムベースだと、結局のところジャッジメンタルな要素が入ってくるのですから、それが効けば一番おいしいし、時間的不整合の問題はどうせ後になってから出てくる話だし、その時によほど失敗(インフレが突如スパークして大引き締めをすることになるような事案とか)したら別ですが、マイルドに出れるのであれば時間的不整合もそこまでキニシナイでも良かろうという事でしょうな。

『On the one hand, relative to qualitative or date-based forward guidance, outcome-based forward guidance has the advantage of creating an explicit link between future monetary policy actions and macroeconomic conditions, thereby helping to support economic stabilization efforts and foster transparency and accountability.』

『On the other hand, outcome-based forward guidance could be complex and difficult to explain and, hence, could potentially be less effective than qualitative or date-based forward guidance if those hurdles could not be overcome.』

日付ベースのガイダンスよりも経済条件に紐ついているだけに結果ベースのガイダンスの方がメリットがあるという一方で、結果ベースだと説明は日付ベースよりも難しく(そらそうだ)、結果として効果が小さくなる可能性がありますな、という議論のようだ。

『A few participants commented that outcome-based forward guidance, tied to inflation outcomes, could be a useful tool to reinforce the Committee's commitment to its symmetric 2 percent objective.』

数名(A few)はインフレ数値に直接リンクしたフォワードガイダンスが物価目標達成を強調するのに良いのではないか、と言ってて、別にこれに対する賛否とかの話は無い(基本的に現状はブレーンストーミング段階なのでしょうなあと思われる書き方になっている)のですが、逆にこの部分、物価数値直接紐付けガイダンスに対してそんなに多くの人が賛意を示している訳ではない、というのが味わいがあるなあと思いました。


・資産買入についてはスタッフ同様にどこぞの国に着弾していますな

『Participants also discussed the benefits and costs of using different types of balance sheet policy.』

はい。

『Participants generally agreed that the balance sheet policies implemented by the Federal Reserve after the crisis had eased financial conditions and had contributed to the economic recovery, and that those tools had become an important part of the Committee's current toolkit.』

リーマンショックの後に行われたバランスシート政策は金融環境を緩和させて経済の回復に寄与したので、これらのツールは重要な政策ツールキットとなっている、というお話ですが、これは。

『However, some participants pointed out that research had produced a sizable range of estimates of the magnitude of the economic effects of balance sheet actions.』

という事になっているけれども数名(some)の参加者はバランスシート政策の経済に与える効果に関しては研究によってかなり幅広いレンジの推計になっていると指摘した、っていうのは要するにこうかはばつぐんだじゃないという分析もあるでよ、って指摘なんでしょうな。

『In addition, some participants noted that the effectiveness of these tools might be diminished in the future, as longer-term interest rates have declined to very low levels and would likely be even lower following an adverse shock that could lead to the resumption of large-scale asset purchases; as a result, there might be limited scope for balance sheet tools to provide accommodation.』

スタッフ分析同様にどこぞの日本銀行が頑張って行った政策の効果について「元々の金利が低かったら効果は大したことないかもしれませんね」とか無慈悲な砲撃をしていますし、この一連のスタッフブリーフィングからFOMC参加者の議論の中で、どこからどう見ても「金利」の話が効果のメインの話になっておりまして、あともしかしたら最初の所にあった金融危機云々の所は「危機時における流動性供給」の意義を指摘しているのかもしれませんが、すくなくともマネタリーベース直線一気理論でもマッカラムルールでも何でも良いですが、置物理論に関しては一顧もされていないというのが実にイイハナシダナーとしか申し上げようがありません。

『Several participants commented on the advantages and disadvantages of flow-based asset purchase programs tied to the achievement of economic outcomes.』

フローベースの買入(特定の経済状況に紐付けた形での)のプロコンに関してのコメントとな。

『On the one hand, such programs adjusted automatically in response to the performance of the economy and, hence, were more straightforward to implement and communicate. On the other hand, flow-based asset purchase programs may result in the balance sheet rising to undesirable levels.』

フローベースの方が経済状況に応じた自動的な買入になるので分かりやすい一方で、フローベースで買入をしているとバランスシートが不適切な水準まで拡大するリスクがあるとな。

『A few participants also commented that, barring significant dislocations to particular segments of the markets, they would restrict asset purchases to Treasury securities to avoid perceptions that the Federal Reserve was engaging in credit allocation across sectors of the economy.』

やはりこの辺は雨人らしいですが、基本的にはクレジットのディスローケーションが起きないように長期国債の買入に買入資産はとどめておくべきではないかという指摘が数名(A few)からコメントされた、ってのがこうやって出てくるのがFEDっぽいですな。


・金利キャップ政策について

『In considering policy tools that the Federal Reserve had not used in the recent past, participants discussed the benefits and costs of using balance sheet tools to cap rates on short- or long-maturity Treasury securities through open market operations as necessary.』

短期または長期金利のキャップ政策(バランスシート政策に含まれていますな)に関して。

『A few participants saw benefits to capping longer-term interest rates that more directly influence household and business spending. In addition, capping longer-maturity interest rates using balance sheet tools, if judged as credible by market participants, might require a smaller amount of asset purchases to provide a similar amount of accommodation as a quantity-based program purchasing longer-maturity securities.』

キャップ政策をとればより直接的に家計や企業の行動に影響与えることが出来るし、キャップ設定に市場の信認が得られれば結果的に買入が少なくて済むかもしれない、という数名(A few)のご意見に対して、

『However, many participants raised concerns about capping long-term rates.』

そらそうよという感じですが、長期金利のキャップではない、とは言っていますが長期金利コントロール政策を実施しているどこぞの中銀涙目。

『Some of those participants noted that uncertainty regarding the neutral federal funds rate and regarding the effects of rate ceiling policies on future interest rates and inflation made it difficult to determine the appropriate level of the rate ceiling or when that ceiling should be removed; that maintaining a rate ceiling could result in an elevated level of the Federal Reserve's balance sheet or significant volatility in its size or maturity composition; or that managing longer-term interest rates might be seen as interacting with the federal debt management process.』

長期金利キャップ政策に関して「そのうちの数名」からケチョンケチョンに言われていますが、キャップを外す経済状況になって実際に外したら大爆発するじゃんとか、それってつまりその直前には買入を無茶苦茶にやらないといけなくなるよねとか、国債管理政策にも影響出るよねとかイイハナシダナー。

『By contrast, a majority of participants saw greater benefits in using balance sheet tools to cap shorter-term interest rates and reinforce forward guidance about the near-term path of the policy rate.』

なお、短期金利にキャップを付けるってそれ政策金利のガイダンス政策と何が違いますねんという指摘はまあそうですね、という所です。

でもって例によってあと続きの部分がありますが時間がまたも無くなってしまったので明日以降にでも(別に引っ張っている訳ではなくて土日ボケで頭の暖機運転に時間が掛かるだけですサーセン)。






2019/11/22

お題「ECB議事要旨とFOMC議事要旨とか海外議事要旨ネタで(汗)」

アタクシの検索の仕方が下手なのでこの記事でリファーされている元の記事が見つからないのですけれども先般出てたこれ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-19/Q17DY8DWX2PT01
財務省、超長期金利支える手段として50年国債の発行検討−ロイター
Max Zimmerman
2019年11月19日 16:31 JST

そもそも財務省が「超長期金利支える手段として50年国債の発行」とかそんな理由で新しい国債発行せんじゃろと思うし(個人の感想です)、大体からして40年国債がイールドダッチ入札やっているという状況はつまり40年国債市場が育成途上なのであって、育成途上の市場よりも長い年限の国債をいきなり発行するとかねえわと思う訳でして(個人の感想です)、40年国債入札が価格(でも利回りでもいいけど)競争コンベンショナル方式で出せるようになってからのお話だろうと思うし、どうせ出すなら60年ルールあるんだから50年飛ばして60年ではなかろうか、とかまあそういう個人の感想が湧き上がってくるのですが・・・・・・・・・・・


〇ECB議事要旨が出ておりますのでインスタント読みを試みる

ECBの議事要旨が出ておりますが、
https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg191121~b1d36734d7.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council
of the European Central Bank held in Frankfurt am Main
on Wednesday and Thursday, 23-24 October 2019

こ奴に関しては俺様的インスタント読みの手法か確立できていなくて、基本は『2. Governing Council’s discussion and monetary policy decisions』の『Monetary policy stance and policy considerations』を読めば良い筈なんですが、そこだけ読んでもイマイチワカランチ会長(結局執行部報告から読んでいかないと論点がイマイチ分からない場合が多々ある)だったりしましてうーんこのという感じなんですよね。

とは言いましても本来はあまりそういうスケベな事を考えずにひたすら読むという修行を4〜6会合程度行わないと自分なりに読みどころの判別がしにくいという事実isある(そういう意味では最近さぼりんぐしているBOEも最初からやり直しだわさ)ので修行が足りてませんな。

などと言いつつも結局今の所暫定的に行っているインスタント読みで『Monetary policy stance and policy considerations』の鑑賞なんぞを。なおこちらはインスタントとか言っても逆順読みとかそういうことはしませんです(のでインスタントという程でもない)。この小見出しの最初から参ります。


『With regard to the monetary policy stance, members widely shared the assessment provided by Mr Lane in his introduction.』

インスタント読みの障害はこれでして、結局前半の『1. Review of financial, economic and monetary developments and policy options』で出ているレーン理事(ちなみに経済の方はクーレ理事)による説明というのを読まないとポイントがきちんと把握できない場合があって困るのよね。

『The package of measures decided at the Governing Council’s September monetary policy meeting had to a large extent preserved the highly favourable financial conditions prevailing in the period before that meeting, in part owing to the anticipation of further monetary policy easing.』

『This was seen as demonstrating that markets had well understood the “reaction function” of the Governing Council. Despite some upward movement at the front end of the yield curve since the September monetary policy meeting, taking a somewhat longer perspective, financial conditions had eased significantly since the Sintra conference in June this year.』

うーんこのという認識で、9月決定以降の市場の動きは「markets had well understood the “reaction function” of the Governing Council」ですとか言うのですが何でしょうこの違和感。まあ最後の「6月のシントラ(ドラギ発言)から見ると金融環境は顕著に緩和的になった」というのはその通りだと思いますけれども。

『It was underlined that the incoming information since the September monetary policy meeting had confirmed the pronounced slowdown in euro area economic growth and a continued shortfall of inflation with respect to the inflation aim, thus vindicating the monetary policy decisions taken by the Governing Council at that meeting.』

9月以降のデータはユーロ経済のスローダウンとインフレが足りない件についての見通しを確認する結果になっていたので今回の金融政策で実行する金融政策手段が適切であることが証明された、ってのも何だかなーな書きっぷりで、普通に考えて9月に決定したことを10月は実務的に対応したという話の筈なので、これは9月の決定が正しかったというのを殊更に強調するという話になっているだけのことでありまして、この部分も何か違和感があるのだが、ECBの議事要旨は微妙に変な書きっぷり(個人の主観です)が時々あるので慣れの問題かもしれません、しかし別に10月は現状維持と9月決定事項の事務化だけだったのでこう書かれるとナンジャソラという気はする。

『There was wide agreement that more information would be needed to reassess the inflation outlook and the impact of the monetary policy measures, particularly given that some of the measures had yet to be implemented - notably the resumption of net asset purchases and the introduction of a two-tier system for reserve remuneration.』

『Therefore, the measures should be allowed more time to fully unfold their effects on the euro area economy and ultimately on inflation outcomes, taking into account the usual transmission lags of monetary policy.』

APPの再開とか準備預金の階層構造導入とかの効果についてはまだよく計測できないし、政策効果の実現にもラグがあるからここから暫くは様子を見て行かねば、ということのようでして、まあこれ自体は個別手段についての効果がどうのこうのとは書いていますが、こういう説明をしているということはECBもしばらくは「ぶっこんだ追加緩和策の効果を見極める」フェーズに入りましたと言うことなんでしょうかねえ、とは思いました。

『Confidence was expressed that the comprehensive package of policy measures decided at the September meeting provided substantial monetary stimulus, which would contribute to a further easing in borrowing conditions for firms and households. This would support the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, the sustained convergence of inflation to the Governing Council’s medium-term inflation aim.』

と9月にぶっこみを決めた緩和パッケージ効果について自画自賛。

『Against this background, the members agreed with the proposal made by Mr Lane in his introduction to keep the monetary policy stance unchanged at the current meeting.』

ということで10月は現状維持で合意。

『This entailed confirming the resumption of net asset purchases under the Governing Council’s asset purchase programme at a monthly pace of ユーロ20 billion as from 1 November 2019 and reiterating the forward guidance on policy interest rates, net asset purchases and reinvestments.』

はい。

『There was broad agreement that monetary policy had to remain highly accommodative for an extended period of time in the face of a protracted weakness in the economy and subdued inflation developments.』

でもって現在の大いに緩和的な金融政策は経済や物価の弱さの中では当分続けていく必要があることで合意、としているのでまあ緩和政策の巻き戻しを直ぐにするような話は出てこないということですな。順当。

『Accordingly, it was important to fully implement the September monetary policy decisions. In this context, it was highlighted that the Governing Council’s forward guidance provided an important stabilisation function, as Mr Lane had pointed out in his introduction.』

ってフォワードガイダンスが重要な機能を果たすとか言っているんですが・・・・・・・・

『The strengthened state-based forward guidance decided at the September monetary policy meeting, which had more clearly tied the likely path of policy interest rates to inflation prospects, ensured that financial conditions would adjust in accordance with changes in the inflation outlook, thereby reinforcing the Governing Council’s commitment to achieving its inflation aim.』

とは言いましても、「state-based forward guidance」が特定の経済指標に紐ついているのでなくて、「inflation prospects」に紐ついているとなると、結局のところベースになるのはジャッジメンタルな話になってしまうので、この辺の説明というのはどうにもこうにもインチキ臭が漂う。

『It was argued that the state-based nature of the forward guidance, which depended on a forward-looking component, whereby the inflation outlook had to be seen to converge robustly to a level sufficiently close to, but below, 2% within the projection horizon, as well as on a backward-looking component, whereby the convergence of inflation had to be consistently reflected in the observed dynamics of underlying inflation, provided a clear guide to the Governing Council’s “reaction function”. 』

うーんこのという感じでして、バックワードルッキングコンポーネントとかゆうとるのだが、ガイダンス文言は経済指標に直接紐ついていなくて、結局のところ見通しベースの要素ばっかりなので、これって何だかなーというか、今の時点では確かにおんどれらの認識がそういうことかも知れんが、別に政策判断を特定の経済指標にがっちり紐付けていないという時点で、おんどれらの判断に変化が生じたらコロッと変わることが可能(そう簡単に変わるとは思わないですけどね)なんだよなー、とは思うのでどうにもこうにも。

『Strong commitment by the Governing Council to providing the necessary policy stimulus was seen as important to ensure the sustained convergence of inflation to the Governing Council’s aim. Accordingly, it was vital for the Governing Council to remain prepared to act by using its full set of instruments if the inflation outlook so required.』

でもって、

『It was, however, cautioned that due account also had to be taken of the assessment of the possible side effects of monetary policy measures. At the same time, a plea was made for patience to allow the measures taken in September to work through the economy, supporting a “wait and see” posture at the current juncture.』

ってな話になりまして、緩和的な政策の維持というのは物凄い勢いで強調されているのですが、追加に何かするのかという話はこれまた全然無くて、“wait and see”でっせという事になっているという次第で、まあこちらもウゴカンチ会長で行くんでしょうなあ暫くは、とは思うのでした。副作用の点検するとかいうのもありますしね。


『As regards communication, members widely agreed with the proposals made by Mr Lane in his introduction.』

でもってコミュニケーションに関してもレーン理事のお話通りとか書かれちゃうので実際は前半の方を読まないとアカンとかいう話になるのですが、そこまで読んでいると沼に嵌ってしまうというか結局全文読まないと行けなくなってどう見てもインスタントにならないのでパス。

『It needed to be stressed that the September monetary policy package supported the sustained convergence of inflation towards the Governing Council’s aim, while noting that the transmission of the individual measures would take time to work its way through to growth and inflation dynamics.』

パッケージの各々が効いて行くそうな。

『At the same time, the Governing Council needed to forcefully reiterate its unwavering commitment to achieving its inflation aim and the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time to support underlying inflation pressures and headline inflation developments over the medium term.』

何か今回の議事要旨無駄にこの部分の繰り返しをしているように思えるけど何なんでしょ。

『In the light of the persistence of prominent downside risks surrounding the euro area outlook, it also needed to be emphasised that the Governing Council continued to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moved towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』

これは景気づけで言ってるけどすぐやるかというとその前に“wait and see”というパワーワードぶち込んでいるのではあそうですかそうですねってなもんで。

『Looking ahead, a strong call was made for unity of the Governing Council.』

これはワロタ。この前随分と意見が割れたのをドラギ先生が強行突破気味にぶっこんだやん、ということで何か妙に9月決定を正当化する話が繰り返されて、先行きも緩和的な政策が必要云々としつこく出てきたのはここで伏線が回収されるとかそういう話ですかねえ、よーわからんけど。

『While it was underlined that open and frank discussions in the Governing Council were absolutely necessary and legitimate, it was regarded as important to form a consensus and to unite behind the Governing Council’s commitment to pursuing its inflation aim.』

何だよこれという感じですが、オープンでフランクな議論が完全に必要で適切であることが強調される中で、物価安定目標に対するECBのコミットメントに向かってコンセンサスを作り、一体となって取り組むのは重要ですよ、っていうのがぶっこまれる訳でして、いやだからそのコミットメント達成の手段に関して意見が割れているのについてのunityとは何ぞやという話になるんですが、まあ何か妙な雰囲気ではあります。

『Furthermore, the call on other policymakers was reiterated, emphasising that they needed to contribute more decisively to supporting the euro area economy. In particular, fiscal policy, notably of governments with fiscal space, had to play a more prominent role to stabilise economic conditions in view of the weakening economic outlook and the continued prominence of downside risks.』

最後は金融政策だけじゃなくてほかの政策も重要ですよねーという最近の主要中銀が従来の「金融政策は万能薬じゃない」という見解から一歩踏み込んできたいつもの話になってこのパート終了しています。


ちなみにそんなに詳しくはないですが、ラガルドさんってドラギよりもコンセンサス重視だけれども、そのコンセンサス形成に関してはタフネゴシエーター(というか何というべきか)であって、意見が割れているけど数を頼みに強行突破とかいうような感じではないとは仄聞しておりますので、さっきのユニティーがどうのこうのってのはドラギのおっちゃんに対するイヤミとラガルドに対する(出席はしていて木彫りの熊のように座っていたようですので)エールを送っている、ということで勝手に解釈してみましたがさてどうなんでしょうかね。

#という訳で分かったようなわからんようなインスタントでもないインスタント読みですいません


〇FOMC議事要旨続きだが金融政策フレームワークの話が中々オモロい件について

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20191030.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20191030.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 29-30, 2019

昨日インスタント読みの前に小見出しだけ見たら面白そうだったのですが、ちょっと目を通した(読んだとは言っていない)瞬間にこれは沼に嵌りそうと思って回避行動をとった最初の部分が案の定沼に嵌る案件だったということでネタにしますがこれがまた結構な大部でして今朝だけでは足りませんすいませんすいません。

冒頭(最初は出席者名簿とかなのでその次ですが)の小見出し『Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices』という所です。


・フォワードガイダンスについて

最初にスタッフからのリサーチ結果的なものから始まるのですがこの部分だけでも色々と良い味わいがある。

『Committee participants continued their discussions related to the ongoing review of the Federal Reserve's monetary policy strategy, tools, and communication practices.』

てな訳で始まり始まり。

『Staff briefings provided an assessment of a range of monetary policy tools that the Committee could employ to provide additional economic stimulus and bolster inflation outcomes, particularly in future episodes in which the policy rate would be constrained by the effective lower bound (ELB).』

今回のお題は「追加緩和で(金利引き下げ以外に)出来る手段、特にゼロ金利制約に引っ掛かってきたときのお話」のようです。まずは連銀スタッフのブリーフィングから。

『The staff first discussed policy rate tools, focusing on three forms of forward guidance-qualitative, which provides a nonspecific indication of the expected duration of accommodation; date-based, which specifies a date beyond which accommodation could start to be reduced; and outcome-based, which ties the possible start of a reduction of accommodation to the achievement of certain macroeconomic outcomes.』

フォワードガイダンスについて、qualitative、date-based、outcome-basedの3つに分けてのリサーチ結果。

『The briefing addressed communications challenges associated with each form of forward guidance, including the need to avoid conveying a more negative economic outlook than the FOMC expects.』

これらのガイダンスを出した時に「なるほど景気が物凄く悪いのか」という世間様の認識を呼んで逆効果になるのを避けるためのコミュニケーション(どこぞの国で「デフレ宣言」とか出したトンチキ内閣があって腰が砕けましたがああいう奴ですな)はチャレンジングですよね、というのが入りまして、

『Nonetheless, the staff suggested that forward guidance generally had been effective in easing financial conditions and stimulating economic activity in circumstances when the policy rate was above the ELB and when it was at the ELB.』

一般的にゼロ金利制約あるいはそれ近い時にはフォワードガイダンスは金融環境を緩和して経済を活性化させるのに有効ですよと。


・マイナス金利についての指摘はイイハナシダナー

『The briefing also discussed negative interest rates, a policy option implemented by several foreign central banks.』

キタコレ。

『The staff noted that although the evidence so far suggested that this tool had provided accommodation in jurisdictions where it had been employed, there were also indications of possible adverse side effects.』

これまでの所のエビデンスにおいて、マイナス金利政策をぶっこんだ国においては緩和的な環境が出来たという示唆が得られているが、副作用に関しても兆候が見られている、とか友邦(とFEDが思っているかどうかは兎も角として)に背中から軽く銃撃がきておりまして、

『Moreover, differences between the U.S. financial system and the financial systems of those jurisdictions suggested that the foreign experience may not provide a useful guide in assessing whether negative rates would be effective in the United States.』

この部分が実にイイハナシダナーという奴でして、「マイナス金利をぶっこんだ国と米国では金融市場のシステムが違っていますので、マイナス金利が有効かどうかという事を検討するにあたって、海外の経験が米国に対して有効なガイドにならないかもしれない」とか実に御尤もな指摘をしております。

でもってまあこの時点でアタクシの悪態が想像できると思いますが(^^)、いやもう欧州でマイナス金利政策やってるんだからよーしパパ日本でもマイナス金利やっちゃうぞーと言いながら(かどうかは知らんが)軽率にマイナス金利政策をぶっこんだらこの有様だよという日本に対する見事な砲撃(もちろんFEDとしては砲撃しているつもりは無いと思います)になっていますし、この「金融システムの構造が違うから取り得る政策の効果副作用に関しても必ずしも他国の政策が参考になるとは限らない」って論議って「世界標準の金融政策」とか寝言を抜かしていたどこぞの置物一派のご所感をお伺いしたいという話でありまして実にイイハナシダナーとしか申し上げようがありません。

という悪態は兎も角、マイナス金利の効果が米国であるかどうかは分からんでーと思いっきり米国でのマイナス金利導入の可能性を否定していますなこりゃ。


でもってスタッフのブリーフィングは次に資産買入に関しての話になり、そこから参加者のああでもないこうでもないモードが始まるのですが、時間の関係で今日は頭出しだけになってしまいましたが、この先もこんな感じで、FOMC的には別に砲撃するつもりでも何でもなくてピュアに議論しているだけだと思うのですが、ゼロ金利制約時における非伝統的政策に関する政策オプションの検討をしている中で、結果的に日銀に無慈悲な砲撃になっている部分がちょこちょこ出てくるので実に味わいがあってよろしいですなあ、というのが続きますので乞うご期待、って変な引っ張り方する暇があったら続きを書けですよねすいませんすいません(土下座)。

#しかし時間が無いので切りの良い(よくないが)所のここで今日は勘弁してくんなまし





2019/11/21

お題「FOMC議事要旨は今回の利下げでの意見対立が結構あったことをアピっているような気がしますが・・・・・・」

このニュースからの、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191112/k10012174481000.html
“記述式問題” 事業者が事前に正答例把握 大学入学共通テスト
2019年11月12日 17時03分

『英語の民間試験が延期された「大学入学共通テスト」に新たな懸念です。共通テストには、国語と数学に記述式の問題が導入されますが、採点を任された民間事業者に、大学入試センターから問題と正答例が試験を実施する前に知らされる仕組みになっていることが分かりました。センターは、採点を迅速に行うためとしていますが、専門家は、「試験の前に、民間事業者に問題などが知らされれば、漏えいなどの懸念がある」と指摘しています。』(上記URL先より)

このニュースという展開には草も生えない。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191120/k10012184521000.html
文科相 「大学入学共通テスト」採点の委託業者に厳重抗議へ
2019年11月20日 19時36分

『おととし「大学入学共通テスト」の課題を探る「プレテスト」が行われた際、採点を委託された業者が、みずから採点業者であることをうたって、自社の模試などを宣伝する資料を、高校の教諭に配布していたことがわかり、萩生田文部科学大臣は厳重に抗議する考えを示しました。』(上記URL先より)

どこのポンコツが設計したんだよこの仕組みと思うし、厳重に抗議じゃなくて重大な不適切行為で委託取り消しじゃねえのかよふざけんなこの馬鹿と思うし2年前の話が今頃出てくるっていうのは制度のポンコツを誤魔化すために民間委託業者を悪者にする目くらまし作戦なのかと思ってしまう位には陰謀脳。

・・・・・というか共通一次試験じゃなかったセンター試験のどこが悪いのさっぱり分からんのだが。



〇寝起きでFOMC議事要旨

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20191030.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20191030.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 29-30, 2019

最初の方に、『Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communication Practices』とか『Review of Options for Repo Operations to Support Control of the Federal Funds Rate』とかいうような素敵な小見出しがあるのですが、そこを読んでいると沼に嵌って政策の所が読めなくなるので(というか嵌りかかった^^)涙を飲んで本日はパスしていつものようにインチキインスタント読みで『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を逆順に読んで参りたいと思います。

#ということで逆順に読むからその点お含みおきを(平伏)

・逆順に読むので今後の政策スタンスに関する話が最初になりますサーセン

『With regard to monetary policy beyond this meeting, most participants judged that the stance of policy, after a 25 basis point reduction at this meeting, would be well calibrated to support the outlook of moderate growth, a strong labor market, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective and likely would remain so as long as incoming information about the economy did not result in a material reassessment of the economic outlook.』

ということでして、FOMC会見の時に散々っぱら強調されておりましたし、ここもとの議長やウィリアムスの発言でも強調されていました通りで、「今回の利下げによりインシャランスな利下げは十分に行ったので、今後は顕著な情勢の変化が無ければ政策を変更する必要なし」というのが思いっきり出オチのように(と言ってもこれ経済物価と金融政策見通しに関する最終パラグラフなので出オチではないが)登場するの巻。

『However, participants noted that policy was not on a preset course and that they would be monitoring the effects of the Committee's recent policy actions, as well as other information bearing on the economic outlook, in assessing the appropriate path of the target range for the federal funds rate.』

こちらにもあります政策効果の浸透状況を見ていく云々ってことでこの前の議会証言ではスタンスの変更からのMBS金利低下からの住宅市場の底打ち反転って効果の話をしているということになっておりまして、なんかここに来て急に変な物でも食ったのかFEDの情報発信が急に綺麗に整合性取れた落ち着いたものになっているなあ(個人の感想です)と思うアタクシ。

『A couple of participants expressed the view that the Committee should reinforce its postmeeting statement with additional communications indicating that another reduction in the federal funds rate was unlikely in the near term unless incoming information was consistent with a significant slowdown in the pace of economic activity.』

さすがにこれは採択されておりませんですが、2名の参加者はステートメントの中に追加文言として先行きの金利引き下げはよっぽどの経済活動低下が無いと行わないというのを入れるべきとか言っていた、というのをきっちり議事要旨に入れ込んで来る辺りがチャーミング。


・利下げ反対の複数参加者という部分で1パラグラフが構成されるとな

ではその前のパラグラフ。

『Some participants favored maintaining the existing target range for the federal funds rate at this meeting. These participants suggested that the baseline projection for the economy remained favorable, with inflation expected to move up and stay near the Committee's 2 percent objective.』

利下げに反対していた参加者は「Some participants」だったということですな。メンバーで反対したのがローゼングレンとジョージですけれどもseveralよりもsomeの方が多い筈(詳しくTranscriptと照合したことが無いのですが確かそんな感じだった筈でして、どこかで照合しないとイカンですよね本当は)なので、他にも反対している地区連銀総裁がいるって(この参加者というのに理事が含まれない限り)NY除く11地区連銀中5地区連銀は居たとかになりますとそらまあ連続利下げとかいう話にはならんですわな。

『They also judged that policy accommodation was already adequate and, in light of lags in the transmission of monetary policy, preferred to take some time to assess the economic effects of the Committee's previous policy actions before easing policy further.』

でこの人たちは緩和は既に適切な水準だし金融政策の波及ラグを考えたら金融政策の効果浸透度合いを見てから追加利下げすれば良いとか正論おぶ正論。

『Several participants noted that downside risks had diminished over the intermeeting period and saw little indication that weakness in business sentiment was spilling over into labor markets and consumer spending.』

でもってここでSeveralが出てくるのでsomeはseveralより人数多いでしょとなりますが(^^)、ダウンサイドリスクは前回の会合以降減ってきているし企業のセンチメントの弱さが労働市場や消費などのスピルオーバーしている兆候は見られないので利下げは要らんじゃろという指摘が。

『A few participants raised the concern that a further easing of monetary policy at this meeting could encourage excessive risk-taking and exacerbate imbalances in the financial sector.』

でもってこの次にA fewが出てきますので、これが3人で以下4人5人と計算する訳ですがそれは兎も角として、今回利下げすると過剰なリスクテイクを促して金融のインバランスをもたらすので反対、というのが3人から出ている訳でして、そら(5地区連銀から反対が出ているのだから)そう(独立パラグラフを作る)よという感じでございますな。


・利下げ決定要因のうちインフレあんどインフレ期待に関して

逆順読みなので話の構成が妙になるのは勘弁ですが、一応遡上して斜め読みするとこのパラ及び前の2つのパラグラフが今回利下げ決定した理由に関する見解部分になります。

『Many participants also cited the level of inflation or inflation expectations as justifying a reduction of 25 basis points in the federal funds rate at this meeting. Inflation continued to run below the Committee's symmetric 2 percent objective, and inflationary pressures remained muted.』

インフレ及びインフレ圧力が抑えられているのも今回25bp利下げをする根拠ということで、「Many」だから利下げ提案している人たちとインフレ云々を根拠にする人の塊は同じということでしょうな。

『Several participants raised concerns that measures of inflation expectations remained low and could decline further without a more accommodative policy stance.』

ホンマカイナと思いますが、利下げをしないとインフレ期待が一段と低下するんじゃないかという主張をSeveral participantsが行っていて、

『A couple of these participants, pointing to experiences in Japan and the euro area, were concerned that persistent inflation shortfalls could lead to a decline in longer-run inflation expectations and less room to reduce the federal funds rate in the event of a future recession.』

2名は日本やユーロ圏(何気にユーロ圏が入っているのがお洒落)の経験を見ると、長期的に物価上昇水準が低い状態が続くと長期的なインフレ期待が低下して、その結果として(金利水準を低く抑えざるを得なくなるので)将来のリセッションの時に利下げの余地が低下するのを懸念、という話でして、まあそれ自体言ってることは分からんでもないのだが、そもそも構造的に2%の水準自体が正しいのかとか、別に金利操作だけでやる必要があるのか(金利操作の余地のためだけに平時の金利水準を無駄に高くすることにならないのか)という論点もあるんジャマイカとはおもうのだが、まあそれ言い出すと金融政策の存在意義の話になって来るリスクがあって(中央銀行自体は決済とか金融秩序維持とか発券とかで存在意義はあるのですが)諸刃の剣であるので中々そっちに踏み込まないのは中央銀行しぐさなので致し方ない。

『In general, the participants who justified further easing at this meeting based on considerations related to inflation viewed this action as helping to move inflation up to the Committee's 2 percent objective on a sustained basis and to anchor inflation expectations at levels consistent with that objective.』

ということで利下げによって物価上昇圧力を高めましょうというのが利下げ主張の方々の一般的な見解ですよと来ました。


・利下げの主張リスク認識編ですが現状維持派との意見対立を分かりやすく見せているのがチャーミング

遡上はさらに続きまして(^^)。

『Many participants continued to view the downside risks surrounding the economic outlook as elevated, further underscoring the case for a rate cut at this meeting.』

利下げしないと先行きのダウンサイドリスクが上がる、だそうな。

『In particular, risks to the outlook associated with global economic growth and international trade were still seen as significant despite some encouraging geopolitical and trade-related developments over the intermeeting period.』

ということでさっきの(ちゃんと順番に読めばこの後に出てくる、というのが正しいですが)現状維持の方々とリスク認識がマッコウクジラで対立。

『In light of these risks, a number of participants were concerned that weakness in business spending, manufacturing, and exports could spill over to labor markets and consumer spending and threaten the economic expansion.』

人数の表記に「a number of」もあったです(汗)、議事録と照合すればいいんですけど多分こういうの元中の人とかそういう方に聞くのが一番手っ取り早い(この手の表記は連綿と同じ意味にしておかないと議事要旨の意味をなさないので)んでしょうというか、解釈テーブルがちゃんとある筈ですし、アタクシも直ぐに忘却する(大汗)。

まあそんな話は兎も角として、これもまたさっきの(というか後の方に出てくる)現状維持の方々とリスク認識がマッコウクジラというかなり面白い作りになっていまして、これは「意見が相当割れた中で今回は執行部が押し切った代わりに、今後の利下げについては封印せざるを得なくなりました」というのを議事要旨の書き方で分かりやすく教えて進ぜようという事なのではないか、とかただの個人の感想ですになりますがそんなことを思うのでありました。

『A few participants observed that the considerations favoring easing at this meeting were reinforced by the proximity of the federal funds rate to the ELB.』

ナンジャソラ。

『In their view, providing adequate accommodation while still away from the ELB would best mitigate the possibility of a costly return to the ELB.』

今予防的に利下げすることによって将来大きな利下げをしなくて済むことになるから利下げする、ってのも何か本末転倒感のある理屈だわさ、とは思うのでした(ってのはアタクシが基本的にそんなに利下げするなやゴルァと思っているから主観バイアスがありますサーセン)。


・利下げ賛成派の中にも2名逡巡する方がおいでであったとかいうチャーミングな記載がある

ということで利下げ意見の最初の所に到達。

『In their consideration of the monetary policy options at this meeting, most participants believed that a reduction of 25 basis points in the target range for the federal funds rate would be appropriate.』

ふむふむ。

『In discussing the reasons for such a decision, these participants continued to point to global developments weighing on the economic outlook, the need to provide insurance against potential downside risks to the economic outlook, and the importance of returning inflation to the Committee's symmetric 2 percent objective on a sustained basis.』

はいはいインシャランスインシャランス。

『A couple of participants who were supportive of a rate cut at this meeting indicated that the decision to reduce the federal funds rate by 25 basis points was a close call relative to the option of leaving the federal funds rate unchanged at this meeting.』

しれっとお洒落な文言キタコレなのですが、利下げに賛成した参加者(メンバーではない、為念)のうち2名は、今回利下げするか現状維持にとどめるかの判断は「a close call」だったとかゆうとりまして、でもってこの後の書き方がああなっている(なのでこれ前から読むのと後ろから読むのでは印象が違うかも知れないとは思います)という事ですので、まあこりゃ意見がかなり割れる中で執行部が今回は押し切ったという印象を強くするのでありましたです、はい。


でもってこのパラグラフ(前から読んでいくと10パラ目)から後ろが金融政策決定と今後の政策スタンスの話でしたよ、となりますが、もうちょっとだけ遡上してみます。


・金融不均衡の話は企業セクターの過大債務(過大かどうか知らんが)の話が毎度のごとく登場

これ1パラ目からは経済情勢の話で、最初の方が全体感、3パラ目が家計セクター、4パラ目が企業セクター、5パラ目が工業、エネルギー、農業分野についての話になっていて、6パラが労働市場、7パラが物価動向、8パラが経済のリスク要因、9パラが金融安定の話になっています。

でもってインスタント読みで逆順読みをしないんでしたら、6パラまではお察しの話だと思うので7パラ以降から読めば良いというのに遡上をしていくうちに気が付くのですが、こちとらガチで逆順読みをしているのでそんな構成は考えずに最初のうちは何も考えずに遡上してまして、実は7パラからネタにすればよかったとか気が付いた時には時すでにお寿司ということで気が付かなかったことにして遡上して9パラを読みますとこんな感じです。

『Among those participants who commented on financial stability, most highlighted the risks associated with high levels of corporate indebtedness and elevated valuation pressures for a variety of risky assets.』

企業の過大債務と様々なリスキーな資産の価格に上昇圧力が掛かっているのが懸念されるとな。

『Although financial stability risks overall were seen as moderate, several participants indicated that imbalances in the corporate debt market had grown over the economic expansion and raised the concern that deteriorating credit quality could lead to sharp increases in risk spreads in corporate bond markets; these developments could amplify the effects of an adverse shock to the economy.』

クレジットバブルを警戒している、というのをこれでもかと表現。

『Several participants were concerned that some banks had reduced the sizes of their capital buffers at a time when they should be rising.』

数名の方が複数の銀行が資本バッファーをこの間に減少させているのが懸念されるとか指摘していてほほうという感じ。

『A few participants observed that valuations in equity and bond markets were high by historical standards and that CRE valuations were also elevated.』

数名の方が株価と債券価格がヒストリカルに見て大変に高いし、商業用不動産価格が上がっていることも観測されると指摘。

『A couple of participants indicated that market participants may be overly optimistic in the pricing of risk for corporate debt.』

市場には企業債務のプライスに対する「overly optimistic」があるのではないかと2名が指摘。

『A couple of participants judged that the monitoring of financial stability vulnerabilities should also encompass risks related to climate change.』

気候変動に関連するリスクとどうつながるのかがイマイチよく分からんのだが何か謎の指摘までありました。


・・・・・・という所で時間が無くなったので本日はこれで勘弁してつかあさい。まあ今回これだけ意見が割れた(だいたい9月のSEPでの年末の金利見通しの時点でお察しではあったものの)というのを明確にして、利下げ???何を仰るウサギさんというのを明確にしたというのは把握しましたし、利上げの話が(この辺を見る限り)1ミリも観測されませんのでそれはそれで全然ない(現状維持派は緩和は十分で効果の浸透を見るべきであり拙速に利下げせんでもよかろう派なのであるからしてまあ利下げ後の状況を所与にした時にも当面は利下げ効果を見るべきって話になるでしょうと思う)という感じでよろしいんじゃないでしょうかねえ(個人の感想です)とは思いました。





2019/11/20

お題「引き続き虫干しネタのFOMC会見ネタ(続き)」

恐ろしいのは有能な敵ではなくて無能な味方とはまさにこのこと。
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/mainichi.jp/articles/20191118/k00/00m/010/330000c
桜を見る会 安倍首相の元秘書・下関市長はこう答えた…定例記者会見・一問一答
会員限定有料記事 毎日新聞2019年11月18日 22時22分(最終更新 11月19日 16時30分)

『領収書などお金のやりとりは適正にやっていると本人や事務所が主張している以上、公職選挙法(違反)には当たらない。』

『そういうなんか、人情的な感覚というのは公金を扱ってルールにのっとって正しくやっていく中では、あまり言っちゃいけないのかもしれないけど、そういうのもあっていいんじゃないですか。』(以上上記URL先の無料部分より)

全力で後ろから銃撃していることにすら気が付いていなさそうで恐ろしいしここはどこの中世ですかと小一時間問い詰めたい。


〇相場様が米中でしか動かなくて(個人の感想です)アレなので虫干しネタのFOMC会見続き

しかしまあ何ですな、相場動向ノートとかにつけて記録するじゃないですか。そうするとここもと毎日「米中協議の先行きに対する楽観/悲観」だけしか後講釈のネタが無いと言いますか、一時ちょっと経済指標で動きかけてた感じもあったのに最近毎日それだけという感じでして(いや実際はそうじゃなくてアタクシがちゃんと理解していないということな気もしますけど)、さすがにノート付けててゲッソリーヌという感じになりますわ。

ということで(どういうことだ)昨日の続きの超虫干しネタでご勘弁。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191030.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference October 30, 2019


・ド直球でインフレ期待の話に攻め込んでみると・・・・・・・・・・・

アタクシ思いまするに記者会見って一種面白いなってのは、会見録って出てきた順に書かれるから、まあ後から読む場合普通は最初から読むじゃないですか、でも会見のヘッドラインとか出ている時(FOMCの場合どういう感じなのかとかそんな時間に英文ベンダー見ないから知らんけど)って実は後の方に来た方がインパクトあったりして、そこの差が「その場での市場の反応を後付けで会見要旨見ると何かよくわからん」的なことが起こり得るのかなあとか思ったりする今日この頃なのですよ。これが議事要旨なんかですとポイントになる箇所ってだいたい同じ場所になりますから、まあインスタント読みするときって当然そこから読んでいくし、さすがにベンダーヘッドラインも重要性の順に出してくる(出してこない場合もあるがそれはベンダーの能力次第)ので、解釈については色々な見解が出るにせよ見るポイントって同じだから、まあ解釈の違いについても別の解釈としてそんな見方があるなあとか思いながら講釈を見れるので、その辺りって会見というのはちょっと面白いなって思いましたです。

ってな個人の感想はともかくとして、何もしないもんねーな説明に切り込む狙撃兵登場の場面から。

『NICK TIMIRAOS. Thank you. Nick Timiraos with the Wall Street Journal. You described the recent slide, Chair Powell, in inflation expectations as “unwelcome.” You said that inflation expectations are “very important.” What, if anything, would the Committee be prepared to do to address this slide in inflation expectations if it continued?』

インフレ期待が下がっているという指摘して、その上インフレ期待動向が重要であるという話をしているのに、何で政策対処しないのかというド正論でのツッコミが登場。

『CHAIR POWELL. So, as I mentioned, we do think that inflation expectations are-they’re quite essential, quite central in our framework of how we think about inflation. We need them to be anchored in a level?at a level that’s consistent with our symmetric 2 percent inflation goal. And we think that we need to conduct policy in a way that supports that outcome. That’s what we’re doing now.』

何ですかね、この会見割とそんな傾向があるんですけど、質問された時に即座に答えないで、最初に原則論を延々と喋っていまして、喋りながらその後の対応を考えることによって余計な不規則発言をしないようにしているんジャマイカとか邪推してしまったのですが(個人の妄想です)、まあ不規則発言で散々痛い目にあってますからこれはこれで良い対応だと思います、話がクソ長くなってアカンのですけど。

『We’re also, as part of our review, looking at potential innovations, changes to the way we think about things, changes to the framework that would lead us-that would be more supportive of achieving inflation on a 2 percent-on a symmetric 2 percent basis over time.』

原則論の後は話が変な方向に向かっておりまして・・・・・・・・・・・・・

『That’s at the very heart of what we’re doing in the review. It’s too early to be announcing decisions. We haven’t made them yet. But we’re in the middle of thinking about ways that we can make that symmetric 2 percent inflation objective more credible by achieving symmetric 2 percent inflation. And it comes down to using your policy tools to achieve 2 percent inflation, and that is the-that is the thing that must happen for credibility in this area. So we’re committed to doing that. 』

だからこそ政策フレームワークの見直しを行っている最中です(キリリッ)とか全然質問に答えないという攻撃に打って出ておりまして、ある意味これはパウエルさん絶好調のああいえばこういうモード。

『NICK TIMIRAOS. How soon do you think that review might be announced to the public?』

すっかり相手のペースに乗ってしまっているんですがこちらの記者さん。

『CHAIR POWELL. So we’re in the middle-we’re really quite in the middle of it now, and my thinking is still that it will run into the middle of next year. These are-you know, these changes to monetary policy frameworks happen-they don’t happen really quickly, let’s say. Inflation targeting took many years to evolve. I don’t think we’ll take many years here. I think we’ll wrap it up around the middle of next year, would be my guess. I have some confidence in that. 』

フレームワーク見直しの結果のとりまとめは来年の中ごろになるそうですが、話をすっかりそらされてしまいまして、結局のところインフレ期待がどうのこうのって話に切り込めず仕舞になっていますが、何度か申し上げておりますように、大体からしてインフレ期待というのもフワッとした概念で数字としてリアルタイムでアクチュアルに出せるかというとそうではなく、まあ過去の状況だとこんな感じでしたでしょうかねえ的なバックワードでしか分からん話ですけれども、フィリップス曲線に直した場合に長期均衡状態でのY切片がインフレ期待として示せるもんだから、政策のやりたいことに関する後付け理屈で使う、というのがまあ明白って感じですかねえ。ということでこの質問は不発ですが、要するに四の五の言ってますが政策金利は動かしたくないというのが見え見えな話のそらし方ですわな。

ということを考えますと、アクチュアルに物価がホイホイ上がってきたりすると、おそらくFOMCとしては相当ややこしい判断(利上げするとか言い出すとまたパツキンが五月蠅くなる)を求められるようになるので、面白いから米国の物価ちょっと上がれや(不謹慎)と思うのでした。



・利下げしないもんねーは分かったが利上げはどうかというと見事に答えない堅実さ

ということで利下げはないでっせアピールが続いたので、今度はこういう質問が飛んでくる。

『EDWARD LAWRENCE. Edward Lawrence of Fox Business. Thank you, Mr. Chairman, for taking this. So how big of a change, then, to monetary policy would there be if you get some of that uncertainty cleared up-specifically, the phase-one China trade deal finished and USMCA ratified? How big of a change could that be to the monetary policy as it stands here, and could we see rate cuts next year-or, rate hikes next year? I’m sorry. 』

米中貿易問題が不確実性というのでしたらそれが大きく進展したら利上げするのかいな、とはそら聞きますわな。

『CHAIR POWELL. Rate hikes for next year.』

『EDWARD LAWRENCE. Yes, because I’ve heard the argument that trade’s causing the uncertainty. Uncertainty is keeping the prices low. I’ve heard that argument from a Fed president from one of the Districts. So you remove that uncertainty, prices, then, would naturally rise. So could there be a point, or how-I guess my question is, how big of an impact on monetary policy would removing that uncertainty be? 』

こういうのは我らがポンニチ銀行を見習って、消費税だー海外だーと言いながら最後は完全に定性的かつジャッジメンタルな「モメンタムが損なわれる惧れがあると判断した場合」とかいうのに誤魔化していくのが正しいと思います。

『CHAIR POWELL. Yes. So I would just say that a-if we were to have a sustained reduction in trade tensions-broad reduction in trade tensions and a resolution of these uncertainties, that would bode well for business sentiment, which is-trade uncertainty’s been weighing on business sentiment, in our judgment, in the judgment of many analysts. And, ultimately, it could affect activity.』

仮定法過去って奴ですな。

『I wouldn’t expect that the effects on activity or confidence would be immediate, or-would there be immediate effects in economic activity. I think it would take some time after the recent things, but I do think it would be quite positive over time.』

仮に貿易問題などの不確実性が除去されるとなれば企業活動にプラスの影響をあたえると思われるのですが、そうなるまでにはタイムラグもあると思っているので、という説明になっていまして、これはもう利上げに関しても早急には動きませんよ(まあ来年は大統領選挙あるから動けないというのもあると思うけど)という説明をがっつりしておりまして・・・・・・・・・・・・

『You come back to the question of raising rates. So that’s really about inflation. And you know, we haven’t yet?we just touched 2 percent core inflation, to pick one measure-just touched it for a few months, and then we’ve fallen back. So I think we would need to see a really significant move up in inflation that’s persistent before we would consider raising rates to address inflation concerns.』

政策金利に関しては物価の方がポイント、という言い方になっています。先般2%に数か月なったと思ったらその後下がったのでという説明をしているのは(ここでは言ってませんけどシンメトリックな物価目標という話も含めて考えると)今後アクチュアルの物価が2%に到達したからと言ってもインシャランス利下げの解除をホイホイ行う訳ではない、というメッセージになっていますので、利下げをする気はないけど利上げをする気はもっとない、というのが今のFRBのスタンスということになるんでしょうな。

ただまあ背景には物価が「a really significant move up in inflation」となるような状況を見ていないというのがあるので利上げは急がんという話になっています。まあそう簡単にインフレがホイホイとスパークするような事にもならんとは思う(根拠はただの勘)ので大丈夫だとは思うのですが、どうもインシャランスな利下げの話をするときは海外不確実性を前面に出す一方で、正常化路線に戻すという時にはインフレ動向を全面に出してくるという感じになっている(まあインフレ目標政策だから正しいちゃあ正しいのだが)ということで、どうせ物価はそうホイホイ上がらんし、海外不確実性ガーの話は正直ジャッジメンタルというよりは何とでも言い張れる物件なので、これは要するに今のFEDが動く気無いというのを示しているということになりますわな、うんうん。



・バランスシートの件について

ここまでQA全部引用していましたがさすがにこの調子ではキリがないのでそろそろ飛ばしながらとなりますがバランスシートの件についての質疑を鑑賞。

『VICTORIA GUIDA. On the Fed’s balance sheet-you all recently resumed purchases of Treasury bills, and I was just wondering, how long do you expect that to continue? And, given the fact that, you know, the repo operations-it seems like the Fed is having to increase the amount of liquidity-temporary liquidity that it’s injecting into the system. You know, do you still feel like it’s just-that there is not enough reserves in the system? Do you feel like you have a good sense of what’s going on there? 』

ビルの買入をいつまでやるんすかとかそんな質問ですが、

『CHAIR POWELL. Okay. So, on the “how long,” what we’ve said is that we expect bill purchases to continue at least into the second quarter of next year. And we’ve said that temporary open market operations we expect to continue, I think, at least until the end of January, I believe. Yes, through January.』

とこれは決定されている事項の話ですが、

『In terms of the causes, so there’s a lot of forensic work going on by us and by market participants and all kinds of analysts. And, you know, one thing is that we think we need reserves to be back up to the level-the minimum level of reserves that we can have during the various fluctuations that you see with reserves is something like $1.45 trillion or a little higher, and that’s the level in early September. So we’re going to be adding reserves to get back to that place. That’s one thing.』

期限云々よりも必要最低限のリザーブがどの位になるかというのがポイントですよというのはそらそうですなと思う。

『There are also-it may be-one thing that was surprising about the episode was that liquidity didn’t seem to flow as one might have expected. We had surveyed the banks carefully about what was their lowest comfortable level of reserves, and many banks that were well above that level did not take that excess cash and invest it in the repo market at much higher rates. They just-they didn’t do that, and so the question is why.』

でもって、当初考えていた必要最低限のリザーブってのも当然ながら金融機関にヒアリングをしたりして行っていたのですが、当初見込みよりも高い水準の所で先般のような金利上昇が起きた訳で、その背景としては銀行も当初考えていたよりも高めの超過準備保有へのインセンティブ(というか資金を出さないインセンティブというべきなんでしょうけれども)があったという認識。

『And are there things that we can do that would-adjustments that we could make that would allow liquidity to flow more easily in the system without in any way sacrificing safety and soundness or financial stability? So we’re looking at those. Those are not things that can happen that can really address the situation in the short term, but those are a range of things that we’re looking at as well. 』

ということなので、当初考えていたよりも高水準の超過準備が必要になっていたという整理で、まあ全く持ってその通りですなという感じではありますが、まあこれ金融規制要因で、しかも規制ぶっこまれてから初めて超過準備の削減に取り掛かったのですから見込み違いはあっても仕方ない面はあるのですけど、何か当初はQE再開ヒャッハーみたいな感じに(今でも雨人の認識ではなっているかも知れませんが)なっていたし、なんとなく説明する方も微妙な説明をしていた感じですが、ここもとになってここの部分の説明はひたすらテクニカルという話になってきてよかったとは思うのですが、規制要因に関する説明はどの位すれば良いのか問題はあるけれども、もうちょっと外野が分かりやすいように細かい解説をして差し上げた方が良いような気もします(単にアタクシの興味本位というのもあるが、笑)。


でもってこの先の質疑ですが、金利をどうするかという話とちと別の話が割と続いた後に中立金利の話しとかも出てくるのでその辺を軽く成敗しようと思ったら時間が無くなったので今日はこれでご勘弁頂きたく存じますサーセン2日連続で虫干しネタで。









2019/11/19

お題「今更ながらにFOMCパウエル会見だが後付けで見るとそれはそれで味わいも無くはない(言い訳)」

何がマイナス金利も協議じゃ。
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-powell-idJPKBN1XS239
2019年11月19日 / 01:50 /
トランプ氏、FRB議長と「マイナス金利も協議」 米経済巡り会談

『トランプ大統領は会談後、ツイッターへの投稿で「非常に良好かつ友好的な会談だった」と評価。「金利やマイナス金利、低水準のインフレ、金融緩和、ドル高と製造業への影響、中国や欧州連合(EU)との貿易などすべての問題について協議した」と述べた。』(上記URL先より)

トランプの妄言に対してパウエルが「はあそうどすか中々ユニークなご意見どすなあ」とか言ったのが「協議した」に化けたというのは誰もが把握したと思うので今更材料にならんですな。しかしまあ付き合わされるパウエル議長お疲れ様です。


〇てな訳で予告編の通りで今更にも程がある(20日も過ぎとるわ)FOMCプレカン

すいませんすいませんすいません(平伏)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191030.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference October 30, 2019

・冒頭からの質疑が延々と「利下げしないもんね」なのに・・・・・・

FOMCの当日というか翌朝ですが、アタクシこんな事を書きながら首を捻りつつ市場の反応ちゃんについて申し上げたんですよね。

『いつもは寝起きでFOMCの時って市場の反応を見ないで書いてから市場の反応を見て自分のイメージとの差を見るんですが、今回は輪番雑談を書くので以下の部分を書く前(声明文と(SEPが無かったので)オープニングリマークは確認済み)に市場の反応見たのですが、アタクシとしては想定の範囲内ながらも割とすっぱりと利下げ継続バイアス外してきたじゃんとか思ったのですが、SPは高値更新しているし10年の金利はちょっと下がっている(アタクシが見た時間の話ですが)ので、なんだ好感してるのかこれで12月利下げあるでと市場が煽りに来るとどうなるんじゃろうな、とは思いました(個人の感想です)。』(10月31日のアタクシの駄文より)

でまあSPちゃんの方は別のご用件によって最高値更新をしておりますが、というかこれとりあえず何か好感して上がるのはベースにゴルディロックスヒャッハーがあるのか、FEDのバランスシート再拡大というのがベースにあるのか、まあ何なんでしょうねとは思いますが金利ちゃんは順調に(という程でもないが)上昇の巻ですわな。

ところで話は逸れますが、FEDのバランスシート再拡大でQEヒャッハーとはあまり盛大なネタにはならないものの、何とかストの皆様とかは意味を感じてああだこうだという向きも結構いる訳ですけれども、短期国債と当座預金の交換にそんなに意味があるんだったら長期国債買わんでエエヤンとか思うので、ちょっと自分たちのロジックの整合性を考えた方が良いのではないでしょうか、いや市場が勝手にそう思うのだから市場がそう動くだろうという予想は予想で良いんですけど、手品見せられて真顔で超常現象だとか言うんだったら何とかストの意味無いんですけど。

という悪態は兎も角として、このQAって最初の方が延々と「利下げしないもんね」の主張が続くのよこれが。まず最初の質問。

『MICHAEL MCKEE. Michael McKee with Bloomberg Radio and Television. So I guess the question is, is this it? Do you consider rates to be accommodative enough now to achieve your goal of sustaining the expansion? And as far as global Wall Street’s primary question, what kind of change in the economy would cause you to reassess-some sort of significant deterioration in what?』

「is this it?」でマイケルジャクソン思い出したのですがついこの前だと思ってたのにもう10年前になるんですねMJ他界してから、と思いっきりビックリしてしまう(年寄りによくある現象ですサーセン)のはさておき、このThis is itは「これで利下げは最後」という意味と理解しておけばいいんですよね(前後の文脈から類推)?

一発目の質問という事もあるのかも知れませんがやたら説明が細かいパウエル議長の返し。

『CHAIR POWELL. So what we’ve said, to repeat, is that we see the current stance of policy as “likely to remain appropriate as long as incoming information about the economy remains broadly consistent with our outlook.”』

でもまあいつも自分の政策スタンスはその時点では「appropriate」だし、見通しに沿って経済が推移すればその後も「remain appropriate」なのではなかろうかという感じで、問題はその方向性の話なんですがこれがですな、

『And we say that, really, because both of the performance of the economy and the stance of policy.』

と来てから経済の話がおっぱじまりまして、

『The performance of the economy has been-particularly the household sector-has been strong, has been resilient, with low unemployment, attractive levels of job creation, wages moving up, labor force participation moving up, household confidence, and solid gains in many measures of consumer spending. The manufacturing sector, particularly manufacturing, and also investment and exports have been weaker. But, overall, we’ve seen moderate growth, a strong labor market, inflation moving up. We see the outlook as for more of the same. We also see the risks to the outlook as perhaps having moved in a positive direction over the course of this intermeeting period, although, some remain-some things remain to be seen. So that’s the economy. 』

毎度のように説明されているのと同じ(というか議会証言が後でこっちが先ですが、汗)で、個人セクターがレジリアントな一方で製造業がイマイチ、そして経済の状態は良いけれどもリスクは海外中心に下方ですよ、という説明ですな。

『Turning to policy, we’ve moved the stance of policy over the course of the year to a more accommodative stance, and, after the cuts at the last three meetings, the federal funds rate is now in a range between 1-1/2 and 1-3/4 percent.』

で金融政策スタンスですがここまでは事実の話。

『We feel that policy is well positioned to support the outlook that I described. So you asked what it would take, you know, to move, and, as I mentioned, we’re going to be watching all factors, And if developments emerge that cause a material reassessment of our outlook, we would respond accordingly. But that’s what it would take: a material reassessment of our outlook.』

これ「必要ならば追加緩和」とは言っているものの、そこで「a material reassessment of our outlook」になったらと言っているうえに、重ねて「But that’s what it would take: a material reassessment of our outlook.」と「大事な事なので2度繰り返します」モードになっている訳で、どう見てもこれスッパリと追加利下げバイアスを外してきたという内容ですよね(って後からこんな話をしても時すでにお寿司ですかそうですかスイマセン)。

質問者の念押しがオモロイ。

『MICHAEL MCKEE. If I could follow up-if the markets decide that you need to cut rates again, will you be forced to follow?』

市場に追い込まれたらどうしますねんとかこれは良いイヤミ。

『CHAIR POWELL. We’ll be looking at a full range of data about the economy and about the risks to the outlook, and I’ve given you a sense of what our outlook is. It’s for moderate growth, a strong labor market, and inflation near our 2 percent objective. If something happens to cause us to materially reassess that outlook, that’s what would cause us to change our views on the appropriate stance of policy. 』

市場動向がこうだったらこうする的な余計なことは言わずにさっきと同じ原則論を繰り返すという記者の土俵に乗らない攻撃に来ましたがまあこれはこれでやり方としては正しい。うっかり親切に「市場がそのようになっている中で、実際の経済物価見通しに変更が必要なのかどうか次第」などと答えると変なバイアスの掛かったヘッドラインになりますからね。よすよす。


『HEATHER LONG. Hi, Heather Long from the Washington Post. You just said that the risks to the outlook are moving in a positive direction. I’m wondering if you could specify-is that on trade, or are there other matters? This morning we obviously learned that we’ve now had two quarters of contracting business investment, which would seem to be moving the outlook in the other direction. 』

先行き見通しのリスクがやや改善方向にという話をしてましたが、それは何ですかね?今朝の指標を見ると企業の投資が2四半期連続で調整局面に入っているというのがあったんだが(楽観的すぎないか)という質問が次に来まして。

『CHAIR POWELL. So, in terms of risks, what I was referring to there-the principal risks that we’ve been monitoring have been, really, slowing global growth and trade policy developments as well as muted inflation pressure.』

主なリスクはグローバル成長と貿易戦争とインフレ圧力が弱いことだそうな。

『So I was really referring there to trade developments.』

でもって今回(10/30)指摘しているのは貿易戦争のテンション。

『We have that phase-one potential agreement with China, which, if signed and put into effect, could have the effect of reducing trade tensions and reducing uncertainty, and that would bode well, we think, for business confidence and perhaps activity over time. So that has the potential for being an improvement in the risk picture. 』

第1弾合意とか言いつつこれがまた引っ張ってますけどまあそれは兎も角としまして、

『Brexit, I would say, as well-it appears that the risk of a no-deal Brexit seems to have materially declined. I think on both situations there’s plenty of risk left, but I’d have to say that the risks seem to have subsided.』

ブリクジットって極東の国のドメドメおじさんとして見ておりますとただの見世物みたいなイメージがありますが(超不謹慎)、これもリスクに入れているのですかそうですか。でもってリスクの改善の話はこの2本だそうです。

『You asked about business investment, and that’s right. Business investment has been weak, and today’s reading was weak as well. And it was broad across equipment and other parts of-all parts of business fixed investment were weak. That’s consistent with what we’ve seen, but that’s the economy we’ve had this year.』

企業の投資が調整局面なのは見通し通りなんですって。

『What we’ve had is an economy where the consumer is really driving growth, and, you know, personal consumption expenditures were almost 3 percent in this quarter-in this first reading for the quarter. So, overall, we see the economy as having been resilient to the-you know, the winds that have been blowing this year.』

返す刀で聞かれもしない個人消費が強いという話をして経済の強さを強調するという攻撃でして・・・・・・

『HEATHER LONG. Can I just follow up quickly? I mean, there’s this concern that I sometimes hear that, with business, businesses have cut investment, and are they going to turn around and cut employment? You know, sort of, if they continue to be concerned. Can you give a sense of how the Committee is thinking-thinking through that possibility? 』

質問者追加しまして、企業が投資を抑制しているんだったら今後雇用や賃金にも影響するリスクがあるんじゃないですかと来ましたところ、

『CHAIR POWELL. Yes, so that is a risk. That’s a risk that we’ve been monitoring, but we don’t see it yet. We don’t see rising initial claims or layoffs or anything like that. But the risk you mention of the weakness in the manufacturing-in export investment, business investment, parts of the economy getting into the consumer side of the economy, we really don’t see that.』

それはリスクです、とは言いながらも、そのような兆候はないですよという説明。でもってしつこくも企業セクターの投資抑制は個人消費の強さでオフセットの話をするという説明。

『What we continue to see is good job creation. Unemployment has declined again, and the household survey is now at a 50-year low-has been, you know, very close to 50-year lows for 18 months now. So it’s very positive. The consumer-facing companies that we talk to in our vast network of contacts report, you know, that consumers are doing well and are focused on, you know, the good job market and rising incomes, and that’s their principle focus. So that is the thing that’s pushing the economy forward, and it doesn’t seem to have been affected so far by weakness in the other areas. 』

雇用環境は依然として絶好調ですがな何をゆうとりゃーすという感じで返してきていて、でもって兎に角個人消費の強さをやたらめったら強調するの巻ですよねこれ。


・威勢の良い説明続くので(かどうか知らんが)再利上げについて質問されるがその手には乗らない(^^)

あまりにも威勢の良い説明が続いたからかどうかは知らんけど次にこんな質問が。

『JEANNA SMIALEK. Jeanna Smialek from the New York Times. Thanks for taking our questions. So you’ve previously sort of compared this rate-cutting cycle to the insurance cuts in the ’90s, and in both of those instances, the Greenspan Fed took those cuts back after a while. They raised rates again fairly quickly. And I guess I’m just curious what the onus is for doing that in this cycle. What would make you guys decide it’s appropriate to raise interest rates again? 』

グリーンスパンの時の保険的対応利下げってその後すぐに利上げ路線に転じたけれども、今回はどのような事が起こると利上げ再開が適切って話になるんですかねえキタコレ。

『CHAIR POWELL. So the reason why we raised interest rates is because-generally is because we see inflation as moving up-or, in danger of moving up significantly, and we really don’t see that now.』

一般的に金利を引き上げるのはインフレが高まる、あるいはその恐れが顕著な時ですが、今はそうではないです、とか答えているのだが、じゃあその前の正常化局面の理由はナンジャラホイという話であって、ここで一般論に逃げて質問の趣旨を外してしまうパウエルさんやるじゃん。

『Inflation moved down in the first quarter of this year. We thought that that was due, to some extent, to idiosyncratic or transient factors. That turns out to have been the case, so it’s moved back up. But it seems to be settling in below 2 percent. So we really don’t see that risk.』

インフレが上がるリスクは見ていないとな。

『And inflation expectations have also kind of moved down and sideways-both surveys and market based over the course of this-of, really, the recent months. And, you know, we think that inflation expectations are very important in driving actual inflation, and we’re strongly committed to achieving our 2 percent inflation objective on a symmetric basis. We think it’s essential that we do that. 』

インフレ期待も上がっていないという説明ですが、このインフレ期待云々に関しては(どこの中銀でもそうですけど)自分たちがやりたい政策スタンスの補強に都合のいい時だけ持ち出す傾向にあるので(個人の感想です)、正直この部分にフォーカスした形で金融政策と絡めた説明はほぼすべてがインチキでしょうなあと思います。

#なお「日銀当座預金が10%拡大すると予想インフレ率が0.44ポイント上昇する」という理論を唱えて日銀副総裁になったゴミクズが居ましたがどう見てもただの迷信です本当にありがとうございました

『So we’re not thinking about raising rates right now. There obviously will be times in the future where that will be appropriate. What we’re really thinking now is that our current stance of policy is appropriate and will remain so as long as the outlook is broadly in keeping with our expectations.』

ということで今すぐに利上げするとか考えていませんそれには時間が相当かかるでしょう、という話をしておりまして、余計な条件とかそういう事をうっかり言わないで躱しているとは当然のテクニックではありますが結構結構。


・これはオモロイ質問

これはオモロイ質問。

『STEVE LIESMAN. Mr.-Steve Liesman, CNBC. Mr. Chairman, I’m-not to make light of it, but I’m a little bit-I wonder if you could help me out with the appropriate understanding of the word “appropriate” here.』

最近マジックワード化している「appropriate」についての質問というのは中々宜しい。

『 So the statement says that the Committee is going “to monitor the implications of incoming information for the outlook as it assesses the appropriate path of the target range.” That tells me you could go either way. 』

声明文の「経済の情報を確認しながら先行き見通しに対する示唆を確認し、必要な政策金利パスについて検討をしていく」、という場合色々な可能性を含んでますよね、とな。

『You came in, and you used the word “appropriate,” that the current rate is “likely to remain appropriate,” which means you’re on hold.』

一方で今の政策スタンスについてさきほど説明していたのは、「現在の政策金利は適切な水準に暫くいるとみられる」ってんだから動かんという意味ですわな。

『So how do I walk away from this, and what should we walk away from this believing what “appropriate” means? Are you on hold and need to be proved wrong that you should remain on hold, or is it, really, you could go either way here? Thank you.』

ということで、このappropriateってのをどのような意味に使っているのかというのが明確になってないと混乱するんでネーノとかそういう質問ですな。まあ今の事と先の事とか色々な言い方はあると思いますが議長の説明を確認。

『CHAIR POWELL. So we think that the current stance of policy is likely to remain appropriate-likely to remain appropriate-as long as incoming information about the economy is broadly consistent with our outlook, which is a positive one of moderate economic growth, strong labor market, and inflation moving close to 2 percent. That’s-so that’s what we’re saying about that. We also say, of course, if developments emerge that cause a material reassessment of that outlook, we would respond accordingly. So that’s really how we’re thinking about it. I can’t point to one data point or one thing that would change our minds. It really-it would be a reassessment of-a material reassessment of our overall outlook, which is what I described.』

変に字義の話にしないで今後の政策スタンスについて今の所動かん話にしちゃってますな。でもってここでほほーと思ったのは、ちょうど昨日ネタにした先週末のウィリアムスの講演で「データディペンデントはデータポイントディペンデントではない」というのがありましたが、ここでもパウエルが「I can’t point to one data point or one thing that would change our minds.」って言ってて、何だちゃんと説明の統制が出来てるじゃん、と変なところで感心してしまいました。


『STEVE LIESMAN. I’m sorry, just to-why isn’t the phrase “likely to remain appropriate” in the statement if that’s the sense of the Committee? 』

『CHAIR POWELL. Well, there’s-there’s a lot of, you know, practice and science and history, in terms of how much you put in the actual postmeeting statement as opposed to what we say in the press conference statement. It’s a-you know, it’s a judgment call. You know, I’m saying it now, so- 』

『STEVE LIESMAN. Thanks. 』

だったら何でステートメントに“likely to remain appropriate” って入れないのという質問が飛びましたが、それに関しては議論の結果ステートメントには入れないでプレカンの冒頭説明で行うという話になった訳でして、ということで理解されたようですな。


ということで24ページ(冒頭ステートメント含む)のうち9ページしか成敗できていないですが時間の関係で本日はここで勘弁してつかあさい。




2019/11/18

お題「先週のウィリアムスのスピーチを確認しておくが暫くは上下とも動く気がなさそうなのは把握した」

やまもといちろうさんのコメント
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13239808.html
サクラを見る会問題が駄目押しで解散総選挙の『サクラチル解散』感
2019/11/13 21:43

厭債害債さんのコメント
https://ensaigaisai.at.webry.info/201911/article_2.html
2019年11月16日
桜を見る会の問題と政局

厭債害債さんの見解が論点綺麗に整理されていて首がもげるほど同意。

#なお国営放送は沢尻エリカさんの件が重大ニュース扱いの模様

〇おしゃべりウィリアムスさんの講演ペーパーが出ていましたので確認しておく

基本的にクラリダに喋らせておけば無難なのですが、NY連銀総裁ともなるとそうもいかんというのでしょうけどね、古巣サンフランシスコ(SF連銀の前の総裁でその前の総裁がおなじみイエレンさん、後任のデーリー総裁もウィリアムスさんと同じく連銀エコノミスト上がりだと思いましたが)での講演ですな。ロイターの記事は金曜にネタにしましたが出たのがちと遅かったという物件。

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2019/wil191114
No Man Is an Island
November 14, 2019
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at 2019 Asia Economic Policy Conference, Federal Reserve Bank of San Francisco, San Francisco, California

・なんか世界が連関してるとかそういう題名らしい

スピーチのお題がですね。

『“No man is an island entire of itself,” wrote the poet John Donne in 1624. Almost four centuries later, his words still ring true. And they are particularly salient when it comes to the financial fortunes of the global economy.』

ってのから始まっていまして、海外ガーという最近のFEDの言い訳に準ずる話が題名キタコレではあるのですが、ただロイター記事にありましたように海外ガーはリスクではあってもメインでそれがあばばばばーという話ではない、というお話のようです。なぜかわざわざ脚注があって、

『Addendum

'No Man is an Island'

No man is an island entire of itself; every man is a piece of the continent, a part of the main; if a clod be washed away by the sea, Europe is the less, as well as if a promontory were, as well as any manner of thy friends or of thine own were; any man's death diminishes me, because I am involved in mankind. And therefore never send to know for whom the bell tolls; it tolls for thee.

John Donne』

と(最後の所に)来ているのだが、今申し上げたように海外の話の前に中立金利が低下している話が先に来るというのはウィリアムスクオリティでして、最初の小見出し『The U.S. Economy』がですね、

『If monetary policy represents a set of scales, on one side we have a strong U.S. economy with unemployment near a 50-year low, and on the other, a more challenging and uncertain landscape.』

何が「a more challenging and uncertain landscape」じゃお前の不規則発言の方がとか血圧を上げている場合では無くて次。

『GDP looks to grow around 2 percent this year, and unemployment has stayed at or near historically low levels, boosted by solid job growth. At the same time, the Federal Open Market Committee (FOMC) has moved to cut rates three times. What’s going on?』

経済は調子ヨロシなのに今年は3回も利下げしましたぜって内2回分くらいお前の発言で緩和合戦になってECBが見事に煽られて退任前のドラギが全部乗せ(ただし一つ一つのポーションはしょぼい)をぶっこむ破目になって市場から追い込まれたからだとか血圧をあげると健康によくない。

『There are three trends I’ll explore today, which all demonstrate the commonalities and the interconnectedness of the global economy. 』

世界経済ガーという話をしていますな。まあしかし元々米国様って唯我独尊というか海外経済がどうのこうのとか金融政策のスピルオーバーがどうのこうのとか言われても知らんがなというのが仕様だったのに、近年すっかりこういう話になってしまいましたな、と思うのです。ところが・・・・・・・・・

『The first is the low neutral rate of interest, or r-star, the second is slowing global growth, and the third is rising geopolitical tensions.』

何故か最初が自然利子率の低下から入るのがウィリアムスしぐさではあるのですが、不確実性ガーとか言いながら追加緩和あるでよとか言っていた時と比較しますと、(重要な論点とは言えども)喫緊に金融政策対応でどうのこうのという訳でもない自然利子率の低下、もちろん正常化のターミナルレートに影響する話だから重要ではありますが、少なくとも緩和局面が暫く維持されるような状況の元ではその話を急ぐ必要はないので、この話を最初に持って来る辺りで、ウィリアムス総裁というかFOMCの中心的な議論が追加緩和モードじゃなくなっている、という事を示すのかと思います(個人の感想です)。


以下小見出しの並びが

Low R-star
Slowing Global Growth
Geopolitical Tensions
Data Dependent, Not Data-Point Dependent
Monetary Policy
Conclusion

となります(その後にさっきの脚注)。短いのでサラサラ流しますが、自然利子率の話はパスしてその次の辺りから。

・世界経済の話をしているのに途中から物価が上がらん話になっている謎展開

『Slowing Global Growth』という小見出し。

『Which brings me to the second trend I highlighted: slowing global growth. This story-of low interest rates, low inflation, and slow growth-is showing up in the data. 』

ということで海外ガーなのですが、

『The latest numbers from the International Monetary Fund (IMF) follow the recent trend of steady downward revisions of growth estimates. Their forecast for global growth for 2019 is now 3 percent, which is the lowest since 2008-09, and it’s not hard to think of scenarios in which growth slows even further.1 』

IMFの世界経済見通しが下方に修正されましたという話。

『In the old days, central bankers used to worry about inflationary pressures being too great. Old habits die hard, and I’m always on the lookout for signs that inflation is rising too fast. But in the current climate it’s inflation that’s too low that’s of greater concern.』

何でここで物価が上がらん話になるんだ??

『You see, my five-dollar cup of coffee masks an inconvenient truth: inflation in the United States is below target and has been for some time. 』

コーヒー5ドルとかタピオカミルクティーより高いよ、とか言うのはジャパン脳ですかそうですか。

『Beyond sluggish inflation, we’re starting to see signs of slower global growth playing out in the U.S. data. While consumer spending is holding up, other parts of the economy-including manufacturing, exports, and business investment-have seen growth stall or experienced outright declines. 』

ということで世界経済がスラギッシュだから物価が上がらんとかナンヤソラな物価の話になっているのですけれども、まあここもとのインシャランス利下げを正当化する背景に物価が上がり難くなっていてそう簡単にインフレがスパイクしないという認識があるから、という話があるのでこういう話をしているんだと思うが、だったら物価が上がりにくい話をストレートにすればという気はする。


・不確実性に関しての説明だが無茶苦茶警戒モードとかいう話よりも政策の正当化のための説明っぽい

次が『Geopolitical Tensions』である。

『The third and final issue I want to discuss-the rising geopolitical tensions around the globe-further complicates an already complex picture. 』

地政学、というより政治的なテンションというべきな気もするが便利なのでこればっかり使いますな。

『When it comes to the economic outlook, the word of the day-and probably the year-is “uncertainty.”』

はいはい不確実性不確実性。

『Trade negotiations, civil unrest, and tensions in a number of corners of the world are driving many businesses to take a wait-and-see approach to investment, thus putting a further dampener on growth prospects. 』

不確実性があるから企業行動に悪影響といういつもの説明。

『It’s notable that later in the same poem I used to open my speech, John Donne writes, “if a clod be washed away by the sea, Europe is the less.”』

『The ongoing uncertainty around Brexit and its eventual outcome is a cause of concern not just for the UK economy, but many of its European trading partners. It’s impossible to predict what the spillover effects will be when Brexit finally reaches a conclusion.』

先にブレクジットかよ。

『We face similar uncertainty on our own shores regarding trade tensions. I frequently hear from my business contacts that they’re holding off on making investments until the landscape is clearer. 』

でもって貿易問題。

『And the ongoing uncertainty in both of these situations, rather than the day to day ups and downs, has become a key driver of business decisions.』

『Trade negotiations and Brexit are top of mind when it comes to uncertainty. But geopolitical risks and political upheaval are affecting regions across the globe. 』

ということで海外の不確実性は主にブレクジットと貿易問題だそうな。

『It’s striking that in almost every corner of the world geopolitical tensions are threatening to put the brakes on growth. Even if the outcomes of current negotiations are ultimately positive-be they between the U.S. and China, or the UK and the European Union (EU)-the uncertainty created by current events is no doubt having a lasting effect on the economic conditions we’re experiencing today. 』

『Furthermore, the interconnectedness of our economies means that literally, no man is an island. If one economy starts to struggle, the spillover effects onto others can take hold rapidly. 』

『The common thread of geopolitical tensions is that while they’re difficult to predict, they’re also impossible to ignore. On a backdrop of low r-star and slowing global growth, they drive businesses to be more cautious, more vigilant, and more conservative in their approach.』

『All are critically important to the long-term prospects of the U.S. economy, and each tells an important story about the conditions we’re experiencing today.』

自然利子率の低い経済状態(の部分は飛ばしましたが)で、世界的な連関性が強まっている中では、どこかでのアチャーな事案の影響というのが大きくなっているので、それだけ企業などの行動が積極的に成り難いですなあとかそういう話をしているのだが、それ言い出したら無限に様子見してろって話になるような気がしまして、まあこの辺ってのは「不確実性」を言い訳にして今の政策の正当性を図っている感はある(個人の感想です)。


・データディペンデントと言いつつジャッジメンタルな総合判断の話をするという攻撃に出る

ということで現世利益コーナーで『Data Dependent, Not Data-Point Dependent』という妙な小見出しから。

『The long-term factors driving low r-star and slowing global growth, as well as the more near-term geopolitical tensions, are afflictions from which we all suffer.』

『So what’s the solution? Where do we as policymakers, researchers, and regulators go from here? 』

で??

『At press conferences I’m often asked: if growth slows by X percent, or unemployment increases by Y percent, will that mean that the FOMC is going to do Z at its next meeting?』

そんなこと誰か聞いてたっけと思うがまあ話を聞いてみましょう。

『If the Fed had a motto, it would probably be “data dependent.” When asked about this, it’s important to clarify that while I’m data dependent, I’m not data-point dependent.』

どうも「こうなったらこうです」というような政策判断をしている訳ではない、ということのようだが、それ「データディペンデント」と言いつつ「総合判断」って奴であって、まさしくジャッジメンタルな話になるのであって、「データディペンデント」という言葉から見られるニュアンス、すなわち何らかのデータに紐を付けながらやっていくというような話ではない、ということのようですなコリャマタ。

『It’s not about being guided by one single data point-GDP or job growth-but by all of the data and information that tell us where the economy is, and where the economy is heading. Importantly, it’s not about looking at things merely as they are-it’s about trying to read how the economy is likely to evolve over the next couple of years, and what risks lie ahead, based on a broad range of evidence. 』

どう見ても総合判断です本当にありがとうございました。しかし元々FEDがデータディペンデントってのを強調していたのって「金融政策の先行きパスがプリセットコースではない」というような話をする中でデータディペンデントを連呼していた筈なのですが、最近は(別にこれはウィリアムスに限った話でも無いのですが)データディペンデントを「総合判断」の意味に使ってきてますなとか思うのでした。

『Monetary policy is a long game. The policy decisions we’ve made this year will continue to have a ripple effect years into the future. As policymakers, we need to take in how far-reaching those ripples are going to be.』

という話の次が金融政策という小見出しになるのだがこれがまたですな、


・金融政策の説明がめちゃくちゃあっさり味になっていてとりあえず動かないというのは把握した

『Monetary Policy』という小見出しだが。

『The adjustments to monetary policy we made this year were designed to balance maintaining a strong U.S. economy with slowing global growth, and provide insurance against ongoing and potential future risks. 』

はい。

『And that’s what they’ve done. The economy is in a good place, and monetary policy is as well. My forecast is for moderate GDP growth, the labor market remaining strong, and inflation moving back to our symmetric 2 percent target. Of course, things can change. Data dependency remains our motto, and if there were a material change to this outlook, we would adjust monetary policy in support of our goals of maximum employment and price stability.』

で終了というあっさり味になっていまして、ロイターニュースにあった「大きな変化が無い限りは動かん」というのは最後の所にある「if there were a material change to this outlook, we would adjust monetary policy in support of our goals of maximum employment and price stability」という所と思われます。情勢に顕著な変化があれば金融政策を調整する、ということは情勢に顕著な変化が無ければ金融政策は動かん、という話で、頭の所にある「And that’s what they’ve done.」がインシャランスな利下げを行いました終了ですよ(まだやるならdoingになるんでしょうから)という意味ですな、という風に読みますと、これは利下げ打ち止め当面様子見、という話だし、まあ利下げ打ち止めの話をあからさまにするとタカっぽくなるからRスターの話をしているということですかそうですか(単にこれはウィリアムスの趣味の反映だとは思うのでそこまで考えている訳でもなさそうですが)。


一応『Conclusion』も引用します。

『I’ll conclude with this. John Donne’s words are perhaps more relevant in 2019 than they were in 1624. No man is an island, and no economy can insulate itself-for better or worse-from the fortunes of its neighbors.』

『At the same time, all economies are having a common experience as a result of longer-term structural changes. 』

『Shifts in demographics and productivity growth point clearly in the direction of low neutral interest rates and slowing growth. We’re seeing the reality of these changes in the form of sluggish inflation and interest rates much lower than in previous decades.』

『Central banks and policymakers around the world need to prepare for economies that are more connected than ever before. 』

となっていて自然利子率の低下が世界的に進んでいるうえに世界の連関性が高まっているから金融政策運営は従来と違いますよねという話になっているので、まあ一頃のように利下げじゃああああみたいになっていないというかすっかり落ち着いたというか。まあこのまま落ち着いていて欲しいものです。



〇予告編:すっかりFOMC会見ネタを飛ばしておりましたが・・・・・・・・・・

甚だ申し訳ございません。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191030.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference October 30, 2019

既にFINALバージョンになっている時点でアタクシの名折れに(ナンジャソラ)にも程があるのですが、まあ結果的にその後の動きがそうだから、というのはさておきつつも、この会見出た時に何でそんなに追加緩和について否定的じゃなかったから好感したかのような反応をしたのか、というのが今になると割と訳分らないなあ、という意味で味わいのある物件だと思いますので、ポキポキ成敗して参ります所存ですが、月曜につき(ナンジャソラ)時間も無くなってしまって本日は自分に箍嵌めるために予告編で宣言だけしておきます(超大汗)。





2019/11/15

お題「米国市場ネタ備忘メモ/今さらですがFSRからほんの少しだけ」

いやーすいませんすいません、また「バーナンキ議長の議会証言」をやってしまいました(多分今年2度目)。どんだけ俺様はバーナンキ信徒なんだと小一時間、いや寧ろ日本を散々馬鹿にしやがったからアタクシとしてはどちらかというとカタキ役の筈なんですけどねえ。

何ですかね、「パウエル」から文章を考えると間違えないのですが、「議長」から文章を考えた時に手が脊髄反射でバーナンキと打ってしまう次第でして、そう考えるとアタクシにとってのFRB議長は永遠にバーナンキなんでしょうかねえ(滝汗)。

ところで珍しく国営放送ちゃんが踏み込んでいるのだがどういう風の吹き回し??
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191114/k10012177631000.html
「桜を見る会」安倍首相の国会答弁と食い違う証言
2019年11月14日 20時02分

#ただしネット版のみでニュースの方ではスルーを決め込んでいる模様


〇米国利下げ停止ネタは既に織り込んでいるようで結構結構(市場メモ)

ほうほう
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N27U4T8
2019年11月15日 / 05:38 /
米金融・債券市場=利回り低下、米中通商合意の見込み低下で

30年債 15時36分 2.3119% 前営業日終値 2.3490%
10年債 15時35分 1.8255% 前営業日終値 1.8690%
5年債 15時36分 1.6317% 前営業日終値 1.6760%
2年債 15時34分 1.5955% 前営業日終値 1.6280%

『米金融・債券市場では、米債利回りが低下した。米中通商合意の可能性が見直されているほか、前週の債券価格の下げの反動も出た。米中通商合意を巡っては、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が14日、米中が知的財産や農産物の購入、関税について交渉しており、最終合意に苦戦していると報じた。』(上記URL先より)

とか何とかで米国10年2%行くかと思わせながらもしらっと1.8%台前半まで戻ってしまいまして惜しいですなあという感じですが昨日も昨日とて何気に・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKBN1XO2OY
2019年11月15日 / 04:13
米経済に過熱見られず、景気後退リスク極めて低い=FRB議長

『パウエル議長は「米経済成長率は2%のレンジにあり、他の先進国を上回っている」とし、米経済は「スター(最も優れている)」と評価。その上で「この拡大が継続しない理由はない」とし、FRBは緩やかな成長の継続を想定していると述べた。拡大を脅かす過熱は存在しないかとの質問に対しては、「米経済には現時点で崩壊するようなブーム(過熱)は見られない」とし、「極めて持続可能な状況にある」と言明した。』

『冒頭証言は、前日行った下両院合同経済委員会での内容をほぼ踏襲。前日の証言では「現在の金融政策スタンスが引き続き適切となる公算が大きい」とし、「見通しが著しく再評価」されない限り、FRBが利下げ余地を活用する可能性は低いとの認識を示したほか、トランプ大統領が求めるマイナス金利は持続的な成長や強固な労働市場、安定的なインフレを備える米経済にとって適切ではないと述べた。』(上記URL先より)

しらっとマイナス金利をdisったのかパウエルちゃん頑張るじゃんと思うのですが、Q&Aに関してはこちらを見に行けただし議事録でてからな、とFEDのページにあるのですが、全部が見れる親切設計っぽいですが慣れが必要そうですな(汗)。

https://www.govinfo.gov/app/collection/CHRG/
Congressional Hearings


んでもってカプラン総裁が
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKBN1XO2U6
2019年11月15日 / 05:43
米消費は堅調、来年のリセッション入り見込まず=ダラス連銀総裁

『[14日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は14日、米経済が来年リセッション(景気後退)入りするとは予想していないとし、米経済が逆風を乗り越える上で堅調な消費が資するとの楽観的な見方を示した。ダラス連銀が主催したタールトン州立大学でのイベントで、タイトな労働市場と頑強な個人消費が設備投資の鈍化や製造業の低迷、世界的な景気後退という下方リスクに対抗していると指摘。「消費は極めて好調だ。経済を支える大きな基盤であり、成長が鈍化したとしても2020年のリセッションは予想していない」と述べた。』(上記URL先より)

と言ってみたり、おしゃべりウィリアムス副議長が、
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKBN1XO2PY
2019年11月15日 / 04:23 /
米経済・金融政策とも「良い状況」=NY連銀総裁

『[14日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は14日、突然の景気悪化がなければ、追加利下げは必要ないとの認識を示した。ウィリアムズ総裁はサンフランシスコ地区連銀で開催された会議で、「経済は良い状況にある。金融政策も同様だ」と指摘。米利下げは世界的な成長鈍化や通商政策および英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不確実性などの逆風への対応を目的としていると述べた。』(上記URL先より)

てな感じで来ていまして、まあこのウィリアムスは余計なおしゃべりをして今年6月以降の緩和合戦相場に拍車を掛けたという点でもう黙っていろやこのスットコドッコイという感じではあるのですけれども、まあおしゃべりおじさんがこういう話をおっぱじめていますし、流れとしてはガッツリ12月据え置きの方向なんですけど、あんまりこっちの方に反応するでもなく、相変わらずの米中ヘッドラインでヒャッハーとなっていますな。

いやまあ実体経済に反応するという意味では高官発言<経済ニュースってことでよかバイという事ではあるのでしょうが、利下げがどうのこうので一々暴れていたつい3か月前位の事を思いますと隔世の感がありますなあ、とか何とか思ってしまうのでありました。何せ最近はパツキンヅラがFEDに悪態をついても全然市場が反応しなくなってきたというのが実に結構な傾向かなあと。

でもって昨日も申し上げましたが、ここに来てやっとパウエル議長の出してくる物件がだいぶ落ち着いてきた感じがする(がマイナス金利の否定はパツキンを刺激するので勿論言い方は難しいのですがあまり踏み込まない方が良いと思う、というか「マイナス金利政策が必要になるような経済状況になるとは思われないし我々もそうならないように政策運営を行っていますが何か?」とかいう逃げ方すればエエンチャウノとは思うがそういうの雨人はやらんのかな)次第でして、まーよくよく考えればイエレンの時も最初は随分と発言で相場が荒れまして、パウエルの場合も慣熟期間が必要だったということですかそうですか(それにしては長かったが)。

いずれにせよ、まあ物価が上に振れた時に物価に対する物言いがどうなるかというのが焦点で、たぶんそれ以外ではパツキンヅラの貿易戦争自爆攻撃以外でそんなに面白いことにはならないでしょうし、たぶん米中交渉妥結(どうせ大統領選挙まで延々とメイクアメリカグレートアゲインで中国と戦う姿勢示すから妥結しないと思うけど)したとしても、それ単体ではインシャランスを解除してこないと勝手に想像していて、ブレるときがあるとすれば物価が焦点になると思います(個人の感想です)。


・・・・・などと書いていたらマイナス金利云々の記事を見つけたので(大汗)クリップクリップ。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-powell-idJPKBN1XN226
2019年11月14日 / 00:46
米FRB議長「マイナス金利は不適切」、利下げ休止を示唆

『[ワシントン 13日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は13日、上下両院合同経済委員会で証言し、トランプ米大統領が求めるマイナス金利は持続的な成長や強固な労働市場、安定的なインフレを備える米経済にとって適切ではないと述べた。 』(上記URL先より、以下同様)

さっきの奴ですな。

『欧州で導入されているマイナス金利に関する質問に対しては「現在の環境においてマイナス金利が適切ではないことは確実だ」と応じ、「米経済は強固な状況にある。米国では経済成長、堅調な消費セクター、物価上昇が続いている。成長率やインフレ率が非常に低いときにより大きな経済圏でマイナス金利が導入される傾向があるが、米国には当てはまらない」と語った。』

まあいい感じじゃないですかね、でもって現世利益の方は昨日見ました上院公聴会での冒頭証言と同じで、

『「緩やかな経済成長、堅調な労働市場、2%目標近辺で推移するインフレ率」というFRBの見通しに沿い、「現在の金融政策スタンスは引き続き適切となる公算が大きい」と述べた。さらに「見通しが著しく再評価」されない限り、FRBが利下げ余地を活用する可能性は低いとの認識を示した。』

『今年3回実施した利下げは「進行中のリスクに対する保険」として正当化されたと説明。利下げの効果は完全には浸透していないものの、「時間と共に表れるだろう」と述べた。』

という話をする中で冒頭の議会証言だとモーゲージ金利の低下で住宅市場の減速が底打ちして上昇に転じた、という話を入れ込んでいるという辺り、かなり美しい作りになってきておりまして、昨年9月に自信満々で「中立金利よりも上に政策金利を上げるかも知れんで」と余計にも程がある発言(あれは正常化サイクルの市場の織り込みがあまりにも弱いから織り込ませに行ったんだと理解しているけど)をしてからのあばばばばーで今年の中盤までは自信なさそうでしたが、やっと復活して良かった良かった。

・・・・あと余談ですが、直近でクラリダがスピーチ2連発打っていますが、こちらはフレームワーク見直しに絡む話なので、目先の追加緩和がどうのこうのみたいな話ではない、と斜め読みした感じではそう思ったのですが、クラリダだけに後でちゃんと読み直してみます。


〇FSRを完全にスルーしていましたのでちょっとだけ

ええすいません1か月前ですよサーセンサーセン。

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr191024.htm/
金融システムレポート(2019年10月号)

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr191024b.pdf

全文(PDFで5Mある)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr191024a.pdf


・FSRから金融政策のインプリケーションを見に行くのは適切でないと言われましても見に行くアタクシ

以下暫くはご紹介ページのHTMLの方から参りますね。『2019年10月号の特徴と問題意識』ってところなんですが・・・・・・・・・・・

『今回のレポートでは、次の3つに力点を置いて分析を行った。』

ということでして、力点がどこにあるのか、という話はここにもありますが、「概要」の方を見ると要するにワシらとしてここを読んで欲しいもんねというのを並べている(と思われる)ので、これを確認するのが吉ですが、さらに手抜きなのでご紹介ページからネタにする手抜きっぷり。

『第一に、グローバルな金融危機以降、大手行等を中心に、レバレッジドローンやCLOを含めた海外貸出・海外クレジット投資が拡大し、それに伴い海外との連関性が高まっていることを踏まえ、邦銀の海外向けエクスポージャーについて、潜在的なリスクや脆弱性を分析・評価した。』

要するにCLOとかの話。内容的には興味深いんですけど、これ寧ろ海外の当局がクレジットバブルガーみたいなことを言う時にさすがに露骨には言う人いないけど、海外も含む投資家のイールドハンティングの動きでクレジット市場の過熱ガーとか言い出して日本はどうなっとるんじゃヴォケとか相変わらず分かりやすくてしかも自国じゃないところにいちゃもんを付ける攻撃にお答えした感もありますな(個人の妄想です)。内容はオモロイ。

『第二に、地域金融機関について、近年収益力の低下が続くもとで、経費の節減や非資金利益の拡大といった経営効率の改善に向けた取り組みがみられていることを踏まえ、経営効率性の動向や同一業態内のばらつき、その要因の分析を行った。また、分析結果を踏まえて、マクロ・ストレステストにおいて、先行き一段の経営効率の改善が行われた場合の収益効果を織り込んで、中長期シミュレーションと将来のストレス発生を想定したテストを行った。』

今回ですね、アタクシ最初に見た時にここで「おー」とか思った訳ですよ。というのはですね、マイナス金利ぶっこんでからの2016年の2回のFSRって・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr160422.htm/
金融システムレポート(2016年4月号)

『マイナス金利付き量的・質的金融緩和と金融システム』ってのがあって、

『金融機関収益に対しては、当面、一段の下押し圧力が働くが、金融機関は総じて充実した資本基盤を有するもとで前向きの信用仲介を継続していくとみられる。金融機関のポートフォリオ・リバランスが、経済・物価情勢の改善と結びついていけば、基礎的収益力の回復にもつながっていくと考えられる。もっとも、足もとの収益力の減少傾向が長引く場合には、いずれ信用仲介機能の制約に繋がっていく可能性がある。金融安定面への影響としては、マクロ的なリスク蓄積や資産価格等への影響が行き過ぎる過熱方向のリスク、収益減少に歯止めがかからず金融仲介が停滞方向に向かうリスクの両面をみていく必要がある。』
(この部分直上URL先の2016年4月号の金融システムレポート紹介ページより)

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr161024.htm/
金融システムレポート(2016年10月号)

『金融機関の収益性低下に伴う潜在的な金融脆弱性』ってので、

『もっとも、人口減少や高齢化の進展などの構造問題は、地域金融機関の預貸業務の収益性を今後も下押し続けるとみられる。そうしたもとで、マイナス金利の影響も加わり、足もとの収益力の減少傾向が長引いた場合には、損失吸収力の低下する金融機関が増加し、金融仲介機能が低下する可能性も考えられる。』

『一方で、マイナス金利の影響などから貸出や有価証券投資の収益性が低下するなかで、金融機関が収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かうことになれば、金融システムの安定性が損なわれる可能性があることにも留意が必要である。』(この部分直上URL先の2016年10月号の金融システムレポート紹介ページより)

ってな感じで、マイナス金利政策が長期化するとアカンがねという話を以前はしていましたが、今回のFSRに至って遂に(再掲します)、

『マクロ・ストレステストにおいて、先行き一段の経営効率の改善が行われた場合の収益効果を織り込んで、中長期シミュレーションと将来のストレス発生を想定したテストを行った。』(再び今回の金融システムレポート紹介ページに戻ります)

となってしまいました。これ即ち「マイナス金利政策が長期化するのは所与なんだからお前ら諦めて経営効率の改善を行って生き延びて下さい」という悲しいお告げが下された、とまあそういうお話なのでありまして、もうちょい前ですと「このマイナス金利政策が長く続くと金融機関経営に悪影響を与えて金融システムにも問題なしとは言えない(婉曲表現)」的なメッセージがFSR方面から出ていたので、ちょっとこう第二の柱的なサムシングもどうなのかとかいうような儚い希望的観測(かなり妄想寄り)も無い訳でもなかったのでしょうが、これはどこからどう見てもこの門に入るものは全ての希望を捨てよってなもんですなナムナムナム。


なお、物凄く味わいがあるなあと思ったのは、このストレステストの結果というのは「概要」の方で最後の方になりまして、『ストレステスト結果:目先と5年後の比較』というスライドで振ってあるページ数で39ページ目(PDFファイルのページ数も同じ)になりますが、(FSR概要のスライドから引用します)

『・国内基準行について目先と5年後のストレステスト結果を比較すると、5年経過する間に、@低採算先 貸出比率の上昇が続き、ストレス時の信用コストの悪化幅が大きくなること、A有価証券の益出し・ 含み益減少が続くことによって減損損失が大きくなることから、後者の結果がより厳しくなる(前回 レポートと大きく異ならない結果)。

・もっとも、「効率性上昇ケース」の自己資本比率は、「効率性不変ケース」と比較すると0.5%ポイントほど高くなる。こうした結果は十分な幅をもって解釈する必要があるが、経費節減や非資金利益の 拡大など、金融機関の経営効率性の改善に向けた幅広い取り組みは、将来の経営体力やストレス耐性を有意に高めると考えられる。』(金融システムレポート2019年10月号概要より)

って結果になっているのは良いとしまして、下にある図表の『図表Y-2-20 CET1比率とコア資本比率 (5年後のストレステスト)』のシミュレーションのうち、平均値ではなく分布の方を示すシャドウ部分の脚注を見ると、

『(注)「10-90%点」は、テールイベント(効率性上昇ケース)の値。』

となっていて、テールイベントの分布は出しているものの、現状維持のケースではなくて、状況が改善している方の「効率性上昇ケース」の方で10%-90%点の分布を出しているのが物凄く味わいがあるなあと思いました。

グラフの縦軸に補助線が引かれていないので目の子で判断する格好になりますが、5年後にテールイベントが起きて、その時までに経営効率化が進んで(ちなみにそこで置かれているシナリオ結構キツイと思うんですけれどもねえ)、それでも目の子で見ると左側の『国内基準行(銀行)』シャドウの下の方になる10%点の分布が4%カツカツなのか若干下なのか微妙に怪しげな分布になっておりまして、物は試しにちょっと効率性不変ケースのシャドウを出して味噌とか思ってしまう訳ですがいやまあ何と申しますか。


・・・・・・というシミュレーションも含めまして、何ちゅうかこの門を入るものはすべての希望を捨てよモードになっているじゃんというのを思いましたが悲観に走り過ぎですかそうですか。


さて、今回のFSR紹介文章に戻りまして、

『第三に、足もと地域金融機関を中心に国内の信用コスト率が低水準ながら上昇し始めていることを踏まえ、信用コスト増加の背景や先行きの見通しについて、整理した。』(今回FSRの紹介文に戻る)

ってしらっとありますけれども、割とここも身も蓋も無くて、またまた概要に戻りますとスライド22ページ目の『信用コスト増加の背景』ってのがありまして(以下概要22ページから引用します)、

『・金融機関の信用コスト率(信用コスト/貸出残高)は、引き続き低水準ながら、地域金融機関を中心に、上昇に転じている。企業のデフォルト率は、足もと若干上昇している。』

景気後退じゃないのにそうですか、というのはまだ良いのですがこの次が物凄く身も蓋もない。

『・足もとの信用コスト増加の背景としては、』

ほうほう。

『@金融機関との取引履歴が比較的長い、一部の業況不芳先における経営再建の遅れ、』

アカン。

『A近年、金融機関が貸出増加に取り組んできたもとでの一部審査・管理の引き緩み、が挙げられる。』

ほほう、貸出増加を絶賛して見習うべきビジネスモデル(以下爆発音の為に聴取不能)

『また、こうした状況を踏まえ、金融機関で引当積み増しの動きが増えていることも、信用コスト増加の一因となっている。』

まあ体力のあるうちに引当積み増しをしろという話はここもとのFSRで言ってたのでこれはまあそんなに悪い話ではないですが、Aとかどう見てもいやなんでもありません。

『・現状の景気局面において既に信用コストが反転上昇している点を踏まえると、景気面のダウンサイド・リスクが顕在化した場合の影響についても、金融機関はこれまで以上に認識しておく必要がある。』

言葉遣いは丁寧ですが実にこれはアカンという話っすわ。

で、紹介ページに戻りまして折角なので最後まで引用しますね。(以下FSRの紹介文にまた戻る)

『なお、レポートの構成として、今回から、国内外の金融脆弱性を総括的に点検する章(IV章)を設けた。また、各種リスクの評価に当たり、従来の信用・市場・流動性リスクに加え、近年重要性が増しているリスク(サイバーセキュリティ、反マネーローンダリング、デジタライゼーションへの対応等)について項目(V章6節)を設けた。』

とまあそういう話ですが、最初のCLO云々が当然のごとくメディアネタになるのですが、何気にこの重点項目2と3の方が身も蓋もないじゃろ、と思うのでありました。いや1番の分析も中々面白いのですが、構造的な話に近い2番と3番の方が・・・・・・・・







2019/11/14

お題「パウエル議会証言の冒頭スピーチは慎重に練って当面様子見スタンスを示した感じですかね」

炎上しそうなので建物ごと爆破スキームキタコレ。適正で問題無いなら継続すれば良いんじゃないでしょうかねえ(鼻ホジホジ)。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191113/k10012175891000.html
来年の「桜を見る会」は中止 菅官房長官
2019年11月13日 17時55分

これって問題なのは、桜を見る会そのものの問題ではなくて、「公金を支出して行っている公的行事」に「行事の趣旨に沿わないのではないかという人」が大量に、しかもその「人数と支出が近年急速に拡大」していて、おまけに「記録を残していないのに適切と言い張っている」というのが公金を支出する行事の運営として不適切じゃねえのという話だし、そんなスタンスで公金支出してるっての一事が万事じゃねえの大丈夫かよ、という話だと思うのですけど。

まあどこの誰とは言いませんけど、この件で「俺様は毎年呼ばれている大したもんじゃない」アピールしたと思ったら中止の報道を受けて「それほど予算がかかっているわけでもない」とか「無粋」とかコメントしているのを見たんだが、お前の会社では会社の売上対比で大した額じゃなかったら何の記録も残さないで経費の不適切支出をして、おまけにその額を調子に乗ってドンドン拡大するのが粋なのかと小一時間問い詰めたい(分かっててわざと問題点を外してるんだろうけどもうね)。

#再来年はやるみたいですがさてどうなるのやら

〇バーナンキ議長議会証言(の冒頭挨拶)を鑑賞

他に米国ちゃんのネタがあるじゃろという気がするのですが米国ネタに手が回るとなったらとりあえず在庫品の前にあるものに飛びつくのでした。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/powell20191113a.htm
November 13, 2019
The Economic Outlook
Chair Jerome H. Powell
Before the Joint Economic Committee, U.S. Congress, Washington, D.C.

そんなに長くないので全文(最初の挨拶は飛ばします)鑑賞という事で。

・経済物価情勢の話だと「利上げは当分しないけど保険的緩和の効果を見ていく時間帯ですよ」という感じですな

まずは『The Economic Outlook』から

『The U.S. economy is now in the 11th year of this expansion, and the baseline outlook remains favorable. Gross domestic product increased at an annual pace of 1.9 percent in the third quarter of this year after rising at around a 2.5 percent rate last year and in the first half of this year.』

ということで経済の状況についてはいつも通り威勢の良い話をしています。

『The moderate third-quarter reading is partly due to the transitory effect of the United Auto Workers strike at General Motors. But it also reflects weakness in business investment, which is being restrained by sluggish growth abroad and trade developments. These factors have also weighed on exports and manufacturing this year. In contrast, household consumption has continued to rise solidly, supported by a healthy job market, rising incomes, and favorable levels of consumer confidence. And reflecting the decline in mortgage rates since late 2018, residential investment turned up in the third quarter following an extended period of weakness.』

3Qの成長がモデレートになった要因の一部はGMでのストライキ要因だが、企業投資が弱めに推移しているのを反映していて、それは海外経済の成長がパッとしないのと貿易戦争のせいで、輸出と製造業に効いています、という話をしつつ、一方で家計が強いという話をしております。でもって家計が強い話をしながら最後の所に「モーゲージ金利が昨年末あたりから低下をしてきていて、この3Qにはこれまで弱めだった住宅投資が上向いてきている」という話があるのが中々お洒落。

これは「緩和的な金融政策を行っている効果ですよ」というアピールですからして、まあそういう意味では別にタカ派バイアスとかそういうのはありませんぜというメッセージでもありますが、その一方で「(自称)保険的な若干の金融緩和スタンスへ年初来転換してきた効果がここへきて住宅市場に現れている」という話でもあり、つまりは保険的緩和(ナンジャソラとは思うがそれはさておき)の効果現出のアピールとなりますので、この部分は「このように効果も出てきたことだしここからバカスカ追加緩和をするのではなく、今後は保険的緩和の効果発現の状況を見ていく時間帯になりました」というアピールにもなっているという割とよく練っている説明だとあたしゃ思いました。

全体感の話の次は個別項目。

『The unemployment rate was 3.6 percent in October-near a half-century low. The pace of job gains has eased this year but remains solid; we had expected some slowing after last year's strong pace. At the same time, participation in the labor force by people in their prime working years has been increasing. Ample job opportunities appear to have encouraged many people to join the workforce and others to remain in it. This is a very welcome development.』

雇用拡大のペースは鈍化しているが元々強いしという話の上、労働参加率が上がってきているのを高く評価とな。

『The improvement in the jobs market in recent years has benefited a wide range of individuals and communities. Indeed, recent wage gains have been strongest for lower-paid workers. People who live and work in low- and middle-income communities tell us that many who have struggled to find work are now getting opportunities to add new and better chapters to their lives.』

これは直近のFOMC後の会見(QAネタまだやっていなかった、大汗)の冒頭ステートメントでも言及していましたし、だいたいパウエルになってから必ずこの「オールアメリカンへ経済成長の果実を届ける」という話をするようになっていましたが、ここもと中低賃金の労働者に恩恵が来ていますというのを強調してます。これ議会証言だからという訳でもなく今申し上げたように普段から強調しております。

『Significant differences, however, persist across different groups of workers and different areas of the country: Unemployment rates for African Americans and Hispanics are still well above the jobless rates for whites and Asians, and the proportion of the people with a job is lower in rural communities.』

とは言いましても人種による格差とか都会と地方の格差とかはまだあります、とも仰せで。

『Inflation continues to run below the Federal Open Market Committee's (FOMC) symmetric 2 percent objective.』

物価キタコレですが、2%のシンメトリック目標に対して低い、という説明になっています。そらまあここを近いだの達成だの言うとじゃあお前は何のために保険的対応をしたのかと小一時間になってしまうので、こういう話になりますが、これがタカ派のローゼングレンあたりになると「ニアー」だの「クローストゥー」だのという認識を示してくるので、まあこう言ってるうちは下げた保険的対応を直ぐに戻そうとか考えていませんよ、というメッセージなのでここも手堅く来ています。

#コア物価が強くなってきた際にどうなるか、というのを見てみたいのですけどね

『The total price index for personal consumption expenditures (PCE) increased 1.3 percent over the 12 months ending in September, held down by declines in energy prices. Core PCE inflation, which excludes food and energy prices and tends to be a better indicator of future inflation, was 1.7 percent over the same period.』

1.7%をビローっていうのもナンヤソラではありますが、インフレが加速すると思ってないんですからそういう評価してても大丈夫という話。しかしながら今後関税ちゃんだの緩和効果だのが出てきた時に物価にどう跳ねるのかというのと、その時の反応が、というのがありますな。つーかインフレが加速しない限りにおいて多少の緩和を継続してても大丈夫だろという感じで運営しているので、つまりこの構造が崩れる一番のファクターはインフレの予想外の加速な訳ですな、うんうん。

でもって見通し。

『Looking ahead, my colleagues and I see a sustained expansion of economic activity, a strong labor market, and inflation near our symmetric 2 percent objective as most likely. This favorable baseline partly reflects the policy adjustments that we have made to provide support for the economy.』

保険的な緩和効果も織り込んで先行きは成長続いて2%目標に向かって物価は進むとな。

『However, noteworthy risks to this outlook remain.』

noteworthy risksとな。

『In particular, sluggish growth abroad and trade developments have weighed on the economy and pose ongoing risks. Moreover, inflation pressures remain muted, and indicators of longer-term inflation expectations are at the lower end of their historical ranges. Persistent below-target inflation could lead to an unwelcome downward slide in longer-term inflation expectations. We will continue to monitor these developments and assess their implications for U.S. economic activity and inflation.』

今回のリスクの説明なんですが、何気にインフレ期待の低下の方に長く文章が割かれているのってナンジャラホイとは思うのでして、適合的期待形成でインフレ期待が下がる云々の話なんですが、コアPCEが1.7%あって何が適合的期待形成のリスク何だかよく分からんのですが、確かにまあエネルギー価格の影響でヘッドラインのPCEは低いですし、期待形成という意味ではトータルの物価であるヘッドラインの方が重要ちゃあ重要なのかも知れませんけれども、なんかそこまでここをアピールするのって(確かに市場のBEIとかはうんこなんですが)どうなのかなあとか思うのでした。まあ貿易戦争のリスクを議会で強調するのもパツキンヅラに喧嘩を売るようで控えただけなのかもしれませんけど。

でもって最後に金融不均衡ネタも入れていまして、

『We also continue to monitor risks to the financial system.』

ほほう。

『Over the past year, the overall level of vulnerabilities facing the financial system has remained at a moderate level. Overall, investor appetite for risk appears to be within a normal range, although it is elevated in some asset classes. Debt loads of businesses are historically high, but the ratio of household borrowing to income is low relative to its pre-crisis level and has been gradually declining in recent years.』

企業負債の拡大についてと、それに関連する金融商品のリスクアペタイト拡大を指摘と。ただし家計のレバレッジは拡大していないとも説明。

『The core of the financial sector appears resilient, with leverage low and funding risk limited relative to the levels of recent decades. At the end of this week, we will be releasing our third Financial Stability Report, which shares our detailed assessment of the resilience of the U.S. financial system.』

関連して米国版FSRを今週末に出すそうな。


・経済の所で慎重に言い回しを練っているだけに金融政策に関してはお察しの内容

『Monetary Policy』に参ります。

『Over the past year, weakness in global growth, trade developments, and muted inflation pressures have prompted the FOMC to adjust its assessment of the appropriate path of interest rates. Since July, the Committee has lowered the target range for the federal funds rate by 3/4 percentage point. These policy adjustments put the current target range at 1-1/2 to 1-3/4 percent.』

「weakness in global growth」「trade developments」「muted inflation pressures」で利下げしたと。

『The Committee took these actions to help keep the U.S. economy strong and inflation near our 2 percent
objective and to provide some insurance against ongoing risks.』

でたなインシャランス。

『As monetary policy operates with a lag, the full effects of these adjustments on economic growth, the job market, and inflation will be realized over time.』

という理屈に対してホンマカイナという質問に向けてはさっきの住宅投資の復活ネタを入れている訳でして、これは良く練っているなあと思う訳ですよ。

『We see the current stance of monetary policy as likely to remain appropriate as long as incoming information about the economy remains broadly consistent with our outlook of moderate economic growth, a strong labor market, and inflation near our symmetric 2 percent objective.』

「remain appropriate」来ました。

『We will be monitoring the effects of our policy actions, along with other information bearing on the outlook, as we assess the appropriate path of the target range for the federal funds rate. Of course, if developments emerge that cause a material reassessment of our outlook, we would respond accordingly. Policy is not on a preset course.』

別に動くとも動かんとも言ってませんし、データディペンデントなのはデータディペンデントなのですが、まあこの言い方は「12月の利下げ?何すかそれ??」という感じですな。

いやですね、10月利下げをすると12月に市場にまた追い込まれて結局まーた利下げする破目に追い込まれるんじゃないかという風にあたしゃ思っておりましたので、利下げ合戦モードの中利下げするのってどうなのという感じだったのですが、今回の利下げの前から急速に風向きが利下げ合戦から打ち止めモードになった上に、(まだネタにしていなくてすいませんが)FOMCのステートメントとか冒頭コメントでも割と打ち止め感を出したというのが効いてますな。ECBも打ち止めっぽくなったのも効いたと思います。

なおFOMC当日の反応だとQAで追加利下げの可能性についても言及あったからヒャッハーという事になっていましたが、よくよく読むとそんなに追加利下げバイアス掛かっていたとは思えないので、あれは一体全体何だったのかと(声明文と冒頭ステートメント見ただけだと結構頑張って打ち止め感出してきたと思ったので市場の反応見て?????とかワシ読み間違えたんかいなとか正直不安になった、当日の日本の朝だとQAテキスト無いし)思うのですが。

『The FOMC is committed to ensuring that its policy framework remains well positioned to meet its statutory goals. We believe our existing framework has served us well. Nonetheless, the current low interest rate environment may limit the ability of monetary policy to support the economy. We are currently conducting a public review of our monetary policy strategy, tools, and communications-the first of its kind for the Fed. With the U.S. economy operating close to maximum employment and price stability, now is an especially opportune time to conduct such a review. Through our Fed Listens events, we have been hearing a diverse range of perspectives not only from academic experts, but also from representatives of consumer, labor, business, community, and other groups. We will draw on these insights as we assess how best to achieve and maintain maximum employment and price stability. We will continue to report on our discussions in the minutes of our meetings and share our conclusions when we finish the review, likely around the middle of next year.』

しかも金融政策現世利益ネタはさっきの所で終わってしまいまして、いきなりここから金融政策フレームワークレビューとかフェドリッスンズとかの話になります。レビューが終わってまとめが出るのが来年の半ば頃とかだんだん先送りになっている気がするんですけれども、いずれにせよ物価目標の見直しという話にはならないで、2%のシンメトリックターゲットをアプリオリに認めるという所から入って来る話なので、大した話にはならないでしょうとは思います(いまのところ)。

『In a downturn, it would also be important for fiscal policy to support the economy.』

大流行の財政政策で経済を支えるキタコレですが、そういえば世界標準の置物金融政策理論においては、金融政策単体で2%の物価目標を達成するし、うまくいかない時に他のせいにするのはよくないという話しでしたが最近はいけしゃあしゃあと消費増税ガーからの財政ガーになっているのはあれはいったい全体何なんでしょうかねえ。

『However, as noted in the Congressional Budget Office's recent long-term budget outlook, the federal budget is on an unsustainable path, with high and rising debt: Over time, this outlook could restrain fiscal policymakers' willingness or ability to support economic activity during a downturn.1 In addition, I remain concerned that high and rising federal debt can, in the longer term, restrain private investment and, thereby, reduce productivity and overall economic growth.』

『Putting the federal budget on a sustainable path would aid the long-term vigor of the U.S. economy and help ensure that policymakers have the space to use fiscal policy to assist in stabilizing the economy if it weakens.』

とは言いましても単純に財政出せではなくて、財政のサステイナブルパスを確保して、成長力を高めることによって経済が悪化したときの財政出動余地を作りましょうという話をしているので、ドラギあたりの話とは違う感じですな。

『I will conclude with a few words on the technical implementation of monetary policy.』

最後にこれかよ・・・・・・・・・

『In January, the FOMC made the key decision to continue to implement monetary policy in an ample-reserves regime. In such a regime, we will continue to control the federal funds rate primarily by setting our administered rates, not through frequent interventions to actively manage the supply of reserves. In the transition to the efficient and effective level of reserves in this regime, we slowed the gradual decline in our balance sheet in May, and stopped it in July. In response to the funding pressures in money markets that emerged in mid-September, we decided to maintain a level of reserves at or above the level that prevailed in early September.』

『To achieve this level of reserves, we announced in mid-October that we would purchase Treasury bills at least into the second quarter of next year and would continue temporary open market operations at least through January. These actions are purely technical measures to support the effective implementation of monetary policy as we continue to learn about the appropriate level of reserves. They do not represent a change in the stance of monetary policy.』

超過準備の再拡大措置を行った件と、レポ金利スパイク対策のシステムレポ実施の話についてやたら詳しく説明して、結論としては「これは金融政策のスタンス変更ではない」という話をしているんですけれども、この件ってFOMCの時もそうですけれども、やたらめったら何度も詳細に説明するのっていうのは、アタクシ米国市場の中の雰囲気が分かる訳ではないので想像するに、米国ではアタクシ辺りが思うよりも遥かにこの資産買入に関して「QEゴルディロックス相場ヒャッハー!!!」ってなっていて、それを何とか火消ししたいとか、議会証言だけに議員からも突っ込まれそうとか、そういうことがあるのかどうなのか。なんか不思議ですな。

まあテクニカルな話だから逆に説明がクソ長くなるという面もあると思うけど・・・・・・・・・

何はともあれ、今回の議会証言冒頭挨拶は「無茶苦茶無難に手堅くまとめてきたわ」という感じでして(個人の感想です)、最初からこれで行けば良かったのにと思ってしまいましたわ。

#などとのんびり読んでいたら時間が無くなってしまいましたすいません今日はこれだけで勘弁







2019/11/13

お題「色々とニュース等雑メモ/円債ちゃんのマーライオン?が続いてますが/展望レポート基本的見解比較の残り(すいません)」

ほほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191112/k10012174131000.html
「桜を見る会の招待適正 名簿廃棄で調査困難」 内閣府
2019年11月12日 13時51分

『総理大臣主催の「桜を見る会」について、内閣府の官房長は、衆議院地方創生特別委員会で、招待者の取りまとめは適正だったとしたうえで、招待者の名簿は開催後速やかに廃棄しており、取りまとめの経緯などを調査することは困難だという認識を示しました。』(上記URL先より)

書類を全部速やかに廃棄して「適正だ」と言っておけばオッケーとか、こういう説明をするために内閣府の官房長になったつもりでは無かったのではないでしょうか、と思いたいのですが、心底思っていたらちょっとヤクルト高田元監督をお呼びいたしまして・・・・・・

〇ちょっとだけ備忘用ニュースクリップ

・スペイン総選挙メモ

極右政党が大躍進とかいうのはありますが考えられる連立の組み合わせががが。
https://elpais.com/elpais/2019/11/11/inenglish/1573490056_920718.html
After another inconclusive election, Socialists rule out grand pact with the PP

『Forming a government in Spain will be more complicated than ever following the inconclusive repeat election on Sunday, which delivered big gains for the far right and left the winning Socialist Party (PSOE) with 120 seats, 56 short of a parliamentary majority.』(上記URL先より)

記事をちょっと下にスクロールすると『Possible majorities』って表がありますが、PSOEとPPの大連立以外の選択肢で過半数176確保できる現実性のある組み合わせが、『PSOE + UP + MP + PNV + BNG + CC + PRC + Cs + TE』でやっと180議席とかお洒落過ぎですし、

『The easiest option in terms of the math would be a combination of the PSOE and the Popular Party (PP), which improved on its dismal results of April 28 to win 88 seats on Sunday. But this scenario, which would yield well in excess of the 176 seats required for an absolute majority, seems highly improbable. On Monday, the PSOE’s organization secretary, Jose Luis Abalos, rejected the notion.』(上記URL先より)

っていうことで大連立は模索するものの難しい(だいたい大連立っぽい連立した後って第2党がそのあと第1党および野党に食われちゃう傾向にあると思うのでPPにメリット無いわな)ようでさてどうなるのやら。

ちなみにスペイン語版(ElPaisの本チャンページ)の方を見るとクッソ細かく得票状況が見れます(スペイン語だけだ字面を見れば大体わかると思います)のでオモロイ。


なおこの後、
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N27S3UB
2019年11月13日 / 03:09 /
ユーロ圏金融・債券市場=スペイン国債利回り約4カ月ぶり高水準、連立合意受け

とはなっているのですが、

『 ユーロ圏金融・債券市場では、スペイン国債利回りが約4カ月ぶり水準に上昇。同国のサンチェス首相率いる社会労働党(PSOE)と急進左派ポデモスが12日、連立政権を樹立することで基本合意したことを受けた。予想外に早期の合意となったが、連立樹立には他党の協力や閣僚の調整などさらなるステップを経る必要がある。連立が実現すれば1970年代後半の民主化以降で初の連立政権誕生となる。』(上記URL先より)

ってPSOE+UPなので155議席なんですよねー。各党の内訳はこちら辺りで。
https://resultados.elpais.com/elecciones/generales.html
Elecciones generales 2019 10N
(スペイン語です)


・バーキン総裁発言とな

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-investment-idJPL4N27S3VK
2019年11月13日 / 03:29
設備投資に利下げ効果薄、労働意欲向上を=リッチモンド連銀総裁

『[ダンビル(米バージニア州) 12日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は12日、企業の設備投資の縮小はもっぱら経営環境を巡る不確実性から来ており、連邦準備理事会(FRB)が今年に入り実施した3回の利下げは設備投資の回復にさほどつながらないという見方を示した。設備投資の低迷に伴い、米経済は個人消費への依存が強まっているが、バーキン総裁は「利下げは設備投資に大幅な効果をもたらしていない」と発言。設備投資の縮小は「規制や地政学的要因など経営環境と関連がある」と語った。』(上記URL先より)

・・・・・・日銀ネタというか市場ちゃんネタがMPM後にホイホイと来たせいで米国ネタの消化が遅れておりまして誠にアカンのですが(サーセン)、どうも追加緩和やるでーな話がだんだん打ち止めっぽい香りになる中、株式市場ちゃんの方があんまりこっちのネタに反応しない感じになっているような気がするのだが、FEDが緩和姿勢でゴルディロックスヒャッハーじゃなくてもエエのかねとは思うのだが、まあ直ぐに元に戻すという話じゃないから良いって話なのかね、よー分からんですけど。



・何か急にECBも副作用がどうのこうのってなっているのね

という訳でそろそろ米国金融政策ネタとか言っているうちにこのようなのもあって・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/ecb-deguindos-idJPKBN1XM2CJ
2019年11月13日 / 03:04 /
ECB金融政策の副作用顕在化、財政政策の役割拡大=デギンドス副総裁

『[ベルリン 12日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は12日、ECBの金融政策の副作用は顕在化しているとの認識を示し、ECBは監視を強化していくと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

・・・・・・・・(;゚Д゚)

『デギンドス副総裁はドイツの日刊証券紙Boersen-Zeitungに対し、ECBの政策手段は枯渇していないとし、「一段の行動を起こす用意があり、必要に応じて一段の措置を実施する」と述べた。ただ「(ECBの金融政策による)副作用は一段と顕在化している」とも指摘。「現在のように低金利が長期化している状況下では財政政策が経済に及ぼす影響は大きくなっている」とし、「将来的には財政政策が果たすべき役割は大きくなる。われわれはECBの金融政策の副作用については認識しており、将来的に副作用に対する監視を強化し、一段と注視していく」と述べた。』

『また、経済成長率が著しく低い状態で長期化していることが現時点で現実的な脅威となっていると指摘。ECBが9月の理事会で包括的な緩和措置を決定したことは完全に正しい判断だったと述べた。』

ということで多分これ全体的に見たらそんなにホーキッシュな話ではない予感がする(ただの勘)のですけれども、最近とみに副作用論が出てくるようになって来たのって、元々EU圏の銀行ちゃんは預貸利鞘のバッファーが日本のようなカンナ屑のような状態ではなかったので、多少の期間マイナス金利になってもヘーキヘーキだったのですが(その手の分析はここ数回のFSRでやっておりますな)、さすがに長期化してきてマズーという事になってきたという事でしょうし、これアタクシのただの感覚的な話になりますけれども、そもそも成長力の低い経済においては、高成長経済の時と違ってひとたび預貸利鞘がカンナ屑化してしまうと、構造的にそれがビルトインされてしまい、たぶん相当今後欧州も預貸利鞘のカンナ屑化に苦労するんでネーノとか思うのですけどね。

なお、ジャパンの場合は規制金利時代から政策的に預貸利鞘が低めになっていた(から歩積み両建てとかが問題になったりしたと思うの)と思われまして、そこから金融自由化が一気に来た上にその後の低金利の超長期化(達観して言えばもう25年近く低金利時代ですからにゃあ)が来たので論外という感じですが、これから欧州もアカンし、そんな中でマイナス金利政策自体がサステイナブルではないというのにやっと気が付いたかコノヤローって感じで誠に結構な話ですな。

ということを考えると、まあだいたい米国に引っ張られる動きというのはあるにせよ、金融政策のフレームワークという意味では欧州がマイナス金利を今後どう位置付けていくのかというのは日本にも影響、というよりは日本がドサクサに紛れてマイナス金利をしらっと撤回できるのって、黒田さんが退任する今の執行部的なバットシナリオではない形でってことになると、米国の正常化路線の復活タイミング以外には欧州がマイナス金利を見直すタイミングだと思うので、まあこちらは今すぐにマイナス金利引っ込めるとも全然思えないですけれども、中期的には期待したいのでこの辺の論調も整理しておかないとアカンですの。


〇なんちゅうかマーライオンっぽいのが続くんですけど(市場雑談メモ)

アイヤー!
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N27S112
2019年11月12日 / 15:17
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は-0.040%と半年ぶり高水準

『<15:10> 国債先物は反落で引け、長期金利は-0.040%と半年ぶり高水準

国債先物中心限月12月限は前営業日比43銭安の152円59銭と大幅反落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.0bp上昇のマイナス0.040%と4月26日以来の高水準。30年債入札を控えて調整地合いとなったが、入札結果は不調。後場はリスクオンムードが強まる中、下げ幅が拡大した。』

『債券市場の地合いの悪さを示した30年債入札となった。新発30年債でみて、今年5月以来の水準まで金利が上昇してきたことから、事前には一定の需要が見込めるとの見方が多かった。しかし、結果はテール(落札価格の平均と最低の開き)が流れるなど、弱い入札となった。』(上記URL先より、以下同様)

昨日ってその前の日が何だか知らんけど先物やたら堅調に推移していた印象があるんですが、あれは何だったのかという感じで先物10年弱くて超長期も(20年170回が悪さをしていますが)弱いという感じだったと思うんですよね。

でもって落札結果は事前予想とかベンダーが言ってたのよりも若干弱かったのですが、結果出て瞬間先物ちゃん152円60銭とか飛んだあとは盛り返している感じがあったので、ああ下げ止まったかねとか思ってたら14時過ぎ位から怪しくなって来て14時半前後にはアチャーな雰囲気になって最後の最後引けで2銭飛ばして最後は安値引けだわ、イブニングは10銭近く窓開けて下で寄るわという風情で中々のアレ。

10年が弱かったような気がしますが、何か中期も相変わらずですし、これ特に9月以降の日銀による黒田節連発な如何にも付利下げしますよ的なアオリイカ(日銀に言わせればそんなことはないと言うはずですが)を真に受けて付利下げヘッジとか言ってヘッジのために積み増しをしちゃった人って相場は自己責任とは言えあまりにも遺憾な訳でして、いやまあアタクシとかは(と急に自慢モードになって見苦しいですねすいません)付利下げなんぞしたらそれは自爆モードなので日銀に冷静な判断能力があればやる訳ないじゃんとは申しておりましたが、あの黒田節連発は「もしや日銀が冷静さを失っているのではないか」とまで思ってしまう勢いでしたから、そらヘッジするわなと思いますし、今回って日銀が変に煽ったから上の方に余計なロングが出来て、お蔭で下げる中で入る押し目買いまでゲロゲロマーライオンによって貰いゲロになってしまってあばばばばーっていう悲しい感じになっているのがもうねという所です。

とは言いましても、そもそも論として10年金利の誘導目標0%なのですから、これ日銀的には「いやーやっと海外の影響で過剰に低下した金利が是正されたわー」などという感じだったりするかも知れないのがこれまたオソロシスなところで、いや別に海外の追加緩和思惑の大幅後退で日本も追加緩和観測が後退した結果織り込みがはがれた、というのはその通りなのですが、その前に日銀が声明文項番6までぶっこんで煽ったという事実は厳然として存在する訳で、あれなかりせばこんな無駄な相場の振幅はなかったし、無駄な怪我人でなくて済んだのではなかろうか、とまあ斯様に思うのですけれども何なんでしょうかね。

『現物市場では、超長期金利が一段と上昇。新発20年債は同2.5bp上昇の0.320%、新発30年債は同3.0bp上昇の0.480%、新発40年債は同2.5bp上昇の0.505%と、いずれも約5カ月強ぶりの高水準となった。』

と金利上がったとは言えまだ0.3台なんだよなー20年。

『 TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 -0.18 -0.169 0.021 15:13
5年 -0.17 -0.163 0.029 15:13
10年 -0.041 -0.031 0.032 15:13
20年 0.316 0.327 0.027 15:13
30年 0.473 0.484 0.029 15:13
40年 0.502 0.51 0.025 15:04』

てな訳で10年と先物が弱そうだったし、イブニングで確か先物10銭程度引けから下がってた時に▲3bpとか出合ってたりしてたと思いますし、なんかこんなにズルズルというかゲロゲロというか下がるのって日銀のコミュニケーションにも問題あった(日銀には言い訳はあると思いますけれども、こんなの市場から見たら過度なバイアスのある情報発信の仕方をしていた以外の何物でもない)と思うんですけどね、というかこれで日銀「金利低下止まったぜウッシッシ」とか思ってたら畜生ですな。

#まあこれだけフラグを立てたらそろそろ水準的には・・・・・・・(と言って両建てフラグにするインチキモード)


〇これは中々勉強になるのだが(ETFの貸出に関して)詳しくないのでとりあえずURLは置く

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191112a.pdf
「ETF市場関係者との意見交換会」議事要旨

『(日時) 10 月 17 日(木)16 時から
(場所) 日本銀行本店
(参加者)ETF市場に携わる金融機関等(公募)のほか、資産運用会社、市場 インフラの運営主体、業界団体、金融庁および財務省(オブザーバー) の実務責任者
(本行出席者)企画局長、企画局審議役、同企画調整課長、同企画調整課企画役、 金融市場局市場調節課長、同市場調節課企画役
―― 席上配付資料は、別添1〜4のとおり。 』

ってあるんですが、この手の資料には珍しく資料の最終ページに座席表まで掲載されていたのはちょっと面白かったです(妙なところに反応するアタクシ)。

でもって、不肖このアタクシ、ETFのマーケットメイク制度で実務的にはこんな感じで云々という話までは聞いたことはあっても、実際にその実務携わったことは無いので読んでいてもほほーと感心するだけで勉強しないと分からんので詳しい人教えてジェネラルという感じではありますが、とりあえず色々とややこしいのは分かった。

特に最後の『その他』のところの、

『・ 日本銀行から借り入れたETFの解約(現物株への交換)が可能であれば、理屈のうえでは、流動性の低い現物株を取得する目的で大口の借入れが行われ得る点には留意を要する。この他、借り入れたETFの解約等が、日本銀行のETF買入れに与える影響等も気になる。

・ 仮に日本銀行から借り入れたETFの現物株への交換が制度上禁止されると、 分別管理が必要となり、管理が煩雑化する。』

という辺り、おーこれはと思ってしまいました奥が深いわ〜(と感心するだけのアタクシ)。




〇超遅くなりましたが展望レポート基本的見解(いつの話だよ)の残りの確認

すいませんすいませんすいません。殆どアタクシの備忘なんですがやっておかないと半年後位にはもうすっかり忘却するニワトリ脳なもんで。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1907a.pdf(前回)

・リスク要因のパート、まあ今さらですが読んでいて成立するのかこの理屈という感じで

『3.経済・物価のリスク要因 』の『(1)経済のリスク要因 』から続きです。

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバ ルな調整の進捗状況、英国のEU離脱問題の展開やその影響、地政学的リスク、 こうしたもとでの国際金融市場の動向などが考えられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは高まりつつあるとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある 』(今回)

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも 含めた中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバル な調整の進捗状況、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが考えられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられ、特に、保護主義的な動きによる影響の不確実性が高まっている。これら が、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。』(前回)

米国のうち「マクロ政策運営」というのが抜けているのですが、これは何ぞという感じですが、財政政策(前年にバンバン打った財政のカンフル剤が切れる方の効果)の話でしたっけ。ただし、(ネタにしませんでしたが)点検の別添資料とかだと中国の話を延々と点検してたりして、米国ガーなのか中国なのかがよーわからんですわな。

でもってこれ単体だとそうですねという感じだし、リスクが高まりつつある云々ってのは9月の声明文をそのまま引っ張ってきているのですけれども、一方でこういう認識なのに「モメンタムは維持」「海外経済の国内需要への影響は以前より少なくなっている」という話になっていて、単体では言ってること分かるのですけれども、全体としての整合性is何処?という感は否めない。

『第2は、2019 年 10 月に実施された消費税率引き上げの影響である。今回 の消費税率引き上げ前の需要増は前回増税時と比べて小幅となっている。もっ とも、その影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変 化し得ることから、引き続き注意する必要がある。 』(今回)

『第2は、2019 年 10 月に予定される消費税率引き上げの影響である。これ については、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得 る。』(前回)

まあここは事実として判明した部分を入れただけですが、このネタもあと精々2回ですな。

『第 3 に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な 課題への取り組みや労働市場を始めとする規制・制度改革の動向に加え、企業 のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能 性がある。 』(今回)

『第 3 に、企業や家計の中長期的な成長期待は、少子高齢化など中長期的な 課題への取り組みや労働市場を始めとする規制・制度改革の動向に加え、企業 のイノベーション、雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能 性がある。 』(前回)

はいはい全文一致全文一致。

『第 4 に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々 の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れ につながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不 安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。 』(今回)

『第 4 に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する場合、人々 の将来不安の強まりやそれに伴う長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れ につながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、将来不 安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。 』(前回)

はいはい(以下略)


・物価のリスク要因も総合判断の部分が何ともかんとも

次が『(2)物価のリスク要因 』ですが、

『以上のように、経済のリスク要因については、特に海外経済を巡る下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、これらが顕在化した場合には、物価 にも相応の影響が及ぶ可能性に注意する必要がある。 』(今回)
『以上のように、経済のリスク要因については、特に海外経済を巡る下振れリスクが大きく、これらが顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある。』(前回)

7月の段階で「大きく」なのが「高まりつつある」のにモメンタムは維持されてるとか、海外の国内需要に与える影響は小さくなっていると言ってるのとか、しかも今回って「可能性がある」という言い切りから「可能性に注意する必要がある」という謎のヘッジクローズが入っていて、結局何がなんだかよく分からん文章になっているのがチャーミング。

『このほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、第1に、 企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物価上昇率 は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、企業の賃金・価格設定スタンスが 積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続 ける場合には、「適合的な期待形成」を通じて、予想物価上昇率の高まりも遅 れるリスクがある。 』(今回)

『このほか、物価の上振れ、下振れをもたらす固有の要因としては、 第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。予想物 価上昇率は、先行き上昇傾向をたどるとみているが、企業の賃金・価格設定ス タンスが積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続ける場合には、「適合的な期待形成」を通じて、予想物価上昇率の高 まりも遅れるリスクがある。 』(前回)

というのと、

『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が挙げられる。企業 の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みが長期にわたり継続したり、近年の技術進歩や流通形態の変化等によって企業の競争環境が一 段と厳しくなったりする場合には、こうした面からの価格押し下げ圧力が予想 以上に長く作用する可能性がある。また、公共料金や家賃などの鈍い動きが、 先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性も ある。』(今回)

『第2に、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が挙げられる。企業 の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みが長期にわたり 継続したり、近年の技術進歩や流通形態の変化等によって企業の競争環境が一 段と厳しくなったりする場合には、こうした面からの価格押し下げ圧力が予想 以上に長く作用する可能性がある。また、公共料金や家賃などの鈍い動きが、 先行きも、長期間にわたって、消費者物価上昇率の高まりを抑制する可能性も ある。 』(前回)

というのと、

『第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や 国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。 』(今回)
『第3に、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向およびその輸入物価や 国内価格への波及の状況は、上振れ・下振れ双方の要因となる。 』(前回)

というのが同じでして、結局のところ今回の「物価のモメンタム点検」なのですが、ただの「経済の点検」と同じである(物価特有のリスク要因に変化がないんですからねえ)というナンヤソラな物件に仕上がっているのですが、いや点検するところ本当にそこなのか???というのはありますけれども、まあ政策の結論があれだけ騒いで現状維持だけどファイティングポーズは出しておかないとアカンって話だからこうなるのもやむを得ないのは分かるが何だかなあとは思う。


・金融政策運営の所ですがフォワードガイダンスを全部並べるとどういう風になるかが鑑賞できます

『4.金融政策運営 』のところは、

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」 による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する7。 』(今回)

とかありますが前回と同じ話でもうお経状態になっているので割愛しまして、最後のフォワードガイダンスの部分からの政策スタンス(キリッ)ってのを続けて読むと、政策金利のガイダンスの同義反復っぷりがよくわかりますので通しで引用してみましょう。

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金 融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生 鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価 安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。 特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合 には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる。 』(今回)

どう見たって政策金利のところ、最後の部分と同義反復ですわなー。

#すいませんエライ遅くなってしまいました






2019/11/12

お題「10月会合主な意見をまったり鑑賞の巻」

ネタが押して米国の方がスルー状態ですが、
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-rosengren-q-a-idJPKBN1XL21A
2019年11月12日 / 01:25
FRB利下げ不要論変わらず、米経済は良好=ボストン連銀総裁

まあこれはローゼングレン先生の平常運転なのでノーサプライズですし、そもそも12月FOMCに向けた盛り上がりよりも米中合意の方に話が行っていて金融政策ネタが相場のドライバーになっていない(気がする)のでスルーモードですいませんすいません。

と言いつつ日銀ネタの直近ネタともはや虫干しになっているネタをば。

#と思ったら主な意見で時間切れになったんですが(汗)

〇10月決定会合主な意見ですが

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2019/opi191031.pdf
金融政策決定会合における主な意見 (2019 年 10 月 30、31 日開催分)1

何か今回の微妙にコピペしにくいんですけど何なんですかね。まさかとは思うが12月5日のジンバブエ先生の金懇に向けてPCに呪いが掛かりだしたのではないかと。

#と思ったら検索窓閉めたら(下記ご参照)治りましたあっはっは(何年使ってもPCは難しい)


・モメンタムは計11個でしたが経済情勢ではなくて全部物価と金融政策のパート

ほらF5使ってキーワード検索できるじゃないですか。最初にサッと見た時にモメンタム連発してるわと(後ろから見るので)モメンタムで検索かけたら11個あるとのお告げが出たんですが、最初の『T.金融経済情勢に関する意見』の所を見ると、『(経済情勢)』 の所にはモメンタムの文言がありませんな。

いやまあ勿論モメンタムって物価のモメンタムの話だからそれはそれでも良いのですけれども、モメンタムの点検をしていたのは殆どが経済の話なのに、経済情勢の方ではあんまりそっちの話が無いんだなあと思って。たぶんこの会合の議事要旨が出るときって経済物価情勢の点検と展望レポートの点検とモメンタムの点検の部分を分けて作りそうな気がするので、それに合わせた構成になっているのかも知れませんが、「点検」の方が経済情勢(需給ギャップ)の話が多いように見えるのに対してここでモメンタムの文字が出てこないのも理屈は分かるがふーんという感じでした。

でもって経済情勢の所を見ていてこれはと思った意見を一つだけ引用します。

『・失業率は 2.2%まで低下したが、名目賃金の伸びは減速している。賃金と雇用者数の積である雇用者所得の伸びも、今年度は 昨年度と比べて鈍化している。労働需給に変調がないか懸念される。』

確かにこれは気になりますな。すっかりスルーされていますが、そもそもQQE2やる時あたりでは今(10月末でしたな)緩和しておかないと来年の春闘からの賃金改定が鈍化するかもしれない、とかいう理由も言っていたわけですが、最近はすっかりお賃金の話をしなくなっておりまして(サガランチ会長になったように見えるからあまり気にしなくても良いという判断になっているというのはあると思いますが)、むしろ省力化投資や人手不足対応での設備投資によって潜在成長率が長期的に見たら上がるとかそっちの話になっているので、こうやって賃金の話の指摘を見るとちょっと懐かしいというかこれは良い指摘。

ついでに可処分所得の部分に踏み込むと大変に結構なのですが、それを言い出すと日銀が政府に喧嘩を売るモードになってしまいますので用法容量は適切に使用しましょう。


・物価のモメンタムの部分

まあ何ですな、一応見てみましょうですよ、『(物価) 』の部分。

『・消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるこ とや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』

これは大本営。

『・ 物価は、堅調な設備投資に伴う生産性向上による物価抑制効果等により、上昇率の加速には時間を要すると見込まれる。外需の変動に対するわが国経済の頑健性が強まる中、物価も変動しにくい構造に変化している。』

上がらんけど下がらん、というのも大本営チックですが、物価が変動しにくい構造になっているというのであればモメンタムが損なわれる惧れが云々というのはどういう事なのかと小一時間という感じではある。

『・「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れにつ いて、一段と高まる状況ではないものの、引き続き、注意が必 要な情勢にある。』

一言で良いから理由を書いて欲しい。

『・海外経済の下振れリスクは引き続き大きく、このリスクが顕在化した場合には、わが国の物価にも相応の影響が及びうる状況にあるため、物価のモメンタムが損なわれる惧れについて、一 段と高まってはいないが、注意が必要な状況は続いている。』

これも大本営かとは思うのですが、一方で大本営は海外経済の状況が国内に与える影響が以前よりも弱くなっているという認識も示している訳で、だったら何で海外からモメンタムが損なわれるということなのか、そもそも国内需要への影響が小さくなっている海外経済がモメンタムを損なう程の影響を与えるというのはどの程度の海外経済の下振れを想定しているのか、というような話を今回の展望レポートでは盛大にブラックボックスにしていて、まあ要するに大本営が言い張ってしまえば何とでも言えるという裁量バリバリの状態になっているんですよね。

ですからして、はいはい大本営大本営は良いんですけど、せめてこの話をするならば一言で良いからどの程度の海外経済の落ち込みがモメンタムを損なう惧れが高まるものなのか、というのを入れて欲しいのですが、どうせこの理屈ってただの大本営の言い訳であって、単に自分らの裁量余地を高めるために採用したロジックでしょうから(個人の感想です)、そう思えば当然そのようなコンディショナルな話をここでする訳が無い、とまあそういう話になりますな、うんうん(個人の偏見です)。

『・プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているが、プラス幅は縮小している。経済の下振れリスクの顕在化によりプラス幅が一段と縮小するリスクに留意が必要である。』

とは言えマイナスまでは見てないのであればモメンタムは維持って理屈になるんですよね確か。

『・ 内外経済のリスクと不確実性の高まりを受けて、製造業を中心 に景況感が慎重化し、消費者のセンチメントも後退しており、 物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れは相応にある。』

製造業の景況感は分かるが消費者センチメントって米中摩擦とかブリクジットとは別世界の話のように思えますが、それはともかく相応にあると言っているのでこれは緩和しろ系の人(ただし片岡さんはこの次に出てくるので別人28号)かな、とは思いました。

『・長短金利操作の導入以降、デフレに陥らないという意味では物価のモメンタムは維持されているが、2%の「物価安定の目標」 に向けたモメンタムが維持されているとは言えない。』

これは片岡さんですな、この話は話として筋が通っているのですが、だからこそ2%に向けてモメンタムを上げるような政策、という具体的に有効な政策手段を説得力のある形で示せない、すなわちマイナス金利を深堀りしてどのようなメカニズムでアクチュアルな物価あるいは直接的にインフレ期待が上がるのか、という波及メカニズムの話ができない訳でして、いくら「追加金融緩和をすれば物価に正の影響が出るはず」と言いましても、少なくとも今の緩和政策、中身を少しずつ入れ替えながらも派手派手な金融緩和を延々とやっていて物価モメンタムとやらがアガランチ会長な訳で、これまで上がらんものを何で今の延長線上だと上がるのか、という話に関しては、マイナス金利深堀の副作用が見え見えなだけに、説得力ある理屈を出してくれないとまあ何ぼ言っても負け犬のオーボエでございますわ。

むしろデフレに陥らないというメカニズム(モメンタムという言葉は使わん)が維持されているのであれば、その状態を維持しながら徐々に物価の上昇が定着してインフレ期待が上がって行くように、無理の無い形で緩和的な金融政策を維持すれば良いじゃん、という話だし、現実問題として今の日銀大本営って明示的にそういうと今までの面目玉がつぶれるから言えないんですが、やってることはそういう事でしょという話なので、ここまでくるとドクトリンの違いという話になるわな、と思うのでした。


・これ議論してたんかいな・・・・・・・・・と言いたくなる部分

次が『U.金融政策運営に関する意見 』なんだが、これを見ているとまともに議論したのかと小一時間問い詰めたくなるような感じなんですけど。というのはですね、

『・「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは一 段と高まってはおらず、現状の金融市場調節方針と資産買入れ 方針を維持することが適当である。』

『・ 物価上昇のモメンタムは損なわれておらず、現行の緩和政策を 維持すべきだが、引き続き世界経済の動向を丹念に点検することは重要であり、フォワードガイダンスの見直し等で姿勢を示すことは考えられる。引き続き、金融システム面の副作用にも 留意しつつ政策運営を行っていくべきである。 』

とか何とか、あと2つほど大本営(あるいは与党)っぽいのが続きます(この次に引用します)が、

『・ 「物価安定の目標」の実現になお時間がかかることを踏まえると、強力な金融緩和の継続方針を強く発信すべきである。』

『・ フォワードガイダンスについては、これまでの情報発信との連続性の観点から物価のモメンタムと関連付けるとともに、政策 金利の下方バイアスがあるものにすることで、緩和方向をより 意識して政策運営を行っているというスタンスを明確にするこ とが適当である。 』

という話になっていますが、その次にガイダンスに対するちょっと別の意見があるんですけれども、あの文言ってどこからどう見てもただの声明文最終文言の同義反復としか思えないし、確かに「明確化」としか言ってないから同義反復でも構わんとか開き直られるとはいそうですかと言う話にはなるんですけど、それにしてもガイダンス文言の中に何らかの強化みたいな文言が無いのに対して碌すっぽ議論らしきものが無いの何なのとはさすがに申し上げたい。

でもってそこへの物言いチックなのはこの人のだけ。

『・フォワードガイダンスでは、物価上昇率の低下を容認しないス タンスが示されていること、内容が具体的であること、具体的 な条件にもとづいて行動することが約束されていること、の3つが満たされていることが望ましい。 』

まあ全然満たされてませんわな、という辺りでモメンタムの話は終わっておりまして、いや何ちゅうかこの議論がちゃんと行われているのかというのって、昨日ネタにした9月会合議事要旨の点検に対する他人事感溢れる複数の委員の見解と言い、改めて点検した、というにしては随分とこれシャンシャンじゃん(しかも議事要旨みたいに話を丸めている訳ではないのにこれというのが・・・・・)という感じなのですが(個人の感想です)。

『・現状、物価のモメンタムは維持されていると評価しているが、 家計や企業の予想物価上昇率は盤石とは言えず、今後もより注意を要する情勢であると認識している。モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加の緩和策を講じるこ とが必要だと考えている。』

まあ片岡さんじゃない置物一派なのかなとは思いますが、そもそも追加緩和によって予想物価上昇率を引き上げるなり何なりのモメンタム強化が出来るのならとっととやればーって感じですなというのと、それはそれとして何だかなあと思うのはこの現状認識でして、「家計や企業の予想物価上昇率は盤石とは言えず」ってことだが、たぶん「上がって来ない状態で盤石」というべきであり、ただしそれがデフレ予想という訳ではないので物価がサガランチ会長になっている、というような状態だと思うのよねこれがまた。だからこの理屈ってのも何だか違うんでネーノ(個人の感想です)。


・片岡さんかなと思うのですがロジックの詰めが甘いのが残念無念

でもって見世物コーナーがこの辺から来ます。

『・下方リスクの厚い現在、追加緩和の要否を引き続き検討すべきである。海外経済の影響を受けやすく、予想インフレ率が物価安定の目標にアンカーされておらず、現実の物価上昇率と目標の距離が大きい日本こそ、予防的金融緩和論が一番妥当するの ではないか。』

この意見長いので分割しますけど、今回「今すぐ追加緩和」というのが無くて、この意見の最後の所に財政とのなんとかかんとかというのがあるので、これ多分片岡さんだと思うのですけどどうでしょうかね。

でもって海外経済の影響を受けやすいというのは大本営と意見が違うので、それはそれで意見としては分かるのですけれども、「予防的金融緩和論が一番妥当するのではないか」というお話なのですが、その前に「予想インフレ率が物価安定の目標にアンカーされておらず、現実の物価上昇率と目標の距離が大きい」という現状認識を行っている訳でして、そういう状況で行う金融緩和は予防的とかそういうのではなくて普通に普通の金融緩和だと思うので、単に米国で「予防的金融緩和」という言葉が出てきたので、乗るしかないこのバズワードに、という貧困な発想を感じてしまいまして誠に遺憾の極みでございます。

予防的緩和、というのは経済物価情勢からして本格的な緩和をするほどでもないけれども、まあ念のため緩和をしておきましょうという文脈で行われる話でしょと思いますし、大体からしておまいらの金融緩和はスタートの時点で「必要な措置全部乗せ」という話なのですから、予防的金融緩和論じゃなくて、そもそも全部乗せが不足している、つまり「緩和が足りない」という方向で追加緩和の話をしないと整合性が取れないじゃろと思うのよね。

でもってその続き。

『また、リスクシナリオの一環として、次なる景気後退に備えることを真剣に考えておくべきであり、その際には、金融政策での対応もさることながら、財政政策やその他の政策において、政府との連携強化が一層重要になる。 』

言いたいことは分かるんだが、次なる景気後退に備えるってあーた強力な金融緩和しているのに次なる景気後退が起きるんだったら今の金融緩和は一体全体何なのかと小一時間問い詰めたい訳で、もうちょっとロジックを整理して詰めて欲しいんですけど。というか片岡さん(と勝手に比定していますが間違ってたらゴメンナサイ)ってロジックの詰めが甘いんですよね。その点ジンバブエ先生とかは言ってる内容は無茶苦茶ですが理屈だけは整合しているというのが何ともアレでして次の意見はジンバブエ先生。


・この先生は銀行が親兄弟の敵か何かなんでしょうか????

そしてメインイベントはジンバブエ先生、意見を分割する。

『・金融政策は、銀行経営ではなく、経済全体との関係で考えるべ きである。』

というのがあるのだが、この次が延々とただの銀行に対する悪態になっていまして、この人は親兄弟を銀行にぬっころがされたとかそういう経緯で個人的な遺恨でもあるんかいなと思ってしまう。

『「量的・質的金融緩和」導入後の数年間、銀行の当期純利益は、主として債券・株式売却益の増加や信用コストの低下により増加した。利益の増加もあって、銀行によっては職員数を増加させるところもあったが、これらの要因による利益の増加は、人を増やして増えるものでもない。採用した人材でどのように利益を上げるのかが重要なのではないか。』

・・・・・・もはや何を言いたいのかさっぱり分からんが、「俺は銀行が嫌いだ」というのは分かった。でもこれって全然金融政策と関係ない話で、こんなのを「主な意見」で出してくるとか、東京ヤクルトスワローズのかつての高田監督(今の監督は高津さん)の名言に「絶対やってはいけないプレー。頭を割って、中を見てみたい。」というのがあったと存じますが、ちょっとここは高田さんにお出まし願ってですな(以下自粛)。

しかしまあ何か藁人形論法にも程がある話をしていてジンバブエ先生絶好調という感じでして、そもそもどこの世界に銀行の収益を増やすために金融政策やれと言ってる輩が居るのか小一時間問い詰めたい訳で、今のマイナス金利政策が実質的に金融機関(とこの次の意見の人が指摘していますが金融機関以外の投資主体も)に対する追加課税になって、一段と金融機関の体力を削いでいるという話なので、その金融機関に対する不当な虐待(物価目標を早期に達成させて金融政策が早期に正常化するのであれば正当な施策だが結果全くそうなっていないのだからただの不当な虐待だわさ)を何とかしろという話をしているだけじゃろと存じますが、どうもジンバブエ先生は銀行に対する個人的怨恨でもあるのか、金融政策の論点でも何でもない悪態まで並べて藁人形論法とか、なんか神とか言い出して鬼気迫る勢いかつての金懇挨拶テキスト(聞かされた金懇参加の経済界の皆様には大迷惑だったと存じますが)のような物件が来月の金懇で出てくる勢いなんじゃないかと(なんか今回は銀行に対する藁人形論法による悪口雑言大会になりそうな予感もしますが)と今から期待したくなって参りますな、うんうん。

ちなみに、近年の金融機関の当期純利益の推移とその要因分解については、まだネタにしておりません(だって読み込むの大変なんだもん)金融システムレポートの概要

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr191024b.pdf

の21ページにありまして、ジンバブエ先生の言う「「量的・質的金融緩和」導入後の数年間、銀行の当期純利益は、主として債券・株式売却益の増加や信用コストの低下により増加した。」云々って話、そこまで大袈裟なもんじゃないのではないでしょうか、ともツッコめたりするんですよね、増分だけで言えばまあそうだから言ってることは間違ってはいないけど、なんかそこの部分を強調しすぎには思えるけどまあそこは別にああだこうだという訳ではなく折角なのでご参考ということで出しておきます。

#大体からして有価証券売却益が増えたからと言ってそれだけで金融機関が急に積極採用に転じる訳ねえだろというそもそも論もあるな


・金融機関だけがマイナス金利を負担しているのではないという話

鈴木さんの指摘だとは思いますがこれは良い指摘、というか一般紙もぜひこういう視点でマイナス金利のマイナスを宣伝して頂きたいものだと存じます。

『・長期金利が現状程度で長期間継続する場合、国民ニーズが高い終身保険や年金保険などの商品の提供を維持することが困難と なり、生命保険業界としての社会的使命を果たせなくなる可能 性がある。また、年金や投資信託は、円債運用において、金利 が 0.1%低下すると数百億円の収益減になる可能性があるほか、 マイナス金利適用残高の約半分を占める信託銀行の残高は年金や投資信託からの受託財産であり、その分のマイナス金利は実 質的に年金や投資信託が負担していると言える。』

イイシテキダナー。

#ということで元々は展望レポート基本的見解の前回比較の続きもやるつもりだったのについノリノリになってしまって時間切れになってしまいましたすいませんすいません








2019/11/11

お題「雨宮副総裁講演が現世利益の話とは関係なくイイハナシダナー/9月会合議事要旨から(遅れました)」

http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
公表予定

に燦然と輝く、

『5(木)10:30 ○ ● 【挨拶】原田審議委員(大分) 』

キタコレという所ですが、ちょうど2年前にジンバブエ先生の金懇直前に先代のPCが突如ぶっ壊れるというプレイがありまして、何故か2年サイクルでPCをぶっ壊してしまうアタクシと致しましては嫌な予感しかしないのですが・・・・・・・

〇雨宮副総裁が中国でとても良い話をしている件について

題名からして現世利益関係ないだろと思ってヌルーしておったら実にイイハナシダナーな事を知り慌ててネタにするアタクシ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko191107a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191107a1.pdf
【講演】日本の経験と中国―金融政策と金融システム―
清華大学五道口金融学院における講演の邦訳
日本銀行副総裁 雨宮 正佳 
2019年11月7日

・最初に三重野さんの話キタコレ

まあどうでもいいんですけど最初のマクラの部分ね。

『本日は、伝統ある清華大学で講演の機会を頂き、大変光栄に存じます。』

『日本と中国は、一衣帯水の隣国として古くから活発に交流し、現代に至るまで様々なことを学び合ってきました。ただ、知識や文化が伝わる方向は、時代によって大きく異なっていました。19世紀から20世紀にかけては、西洋流の学問や技術が、近代化に先んじた日本を経由して中国にもたらされました。一方、そこに至るまでの長い期間にわたって、日本は多くのことを中国から学んできました。実際、日本では、中国の古典や詩歌の学習が、学校教育にしっかり組み込まれています。私も、学生時代、李白や杜甫の詩、あるいは春秋や論語といった古典と格闘したことをよく覚えています。』

19世紀から20世紀にかけては云々の部分、ウエメセっぽくて何だかなあとは思うんだがまあそれは兎も角としてその次。

『そこで、中国の古典から、印象的な言葉をひとつご紹介したいと思います。

── 窮して困(くるし)まず、憂いて意(こころ)衰えず。

荀子にある言葉です。この書(図表1)は、中国への理解が深かった日本銀行第26代総裁の三重野康の直筆で、かつて秘書であった私に贈ってくれたものです。この言葉は本来、学問を修める態度を説いたものです。しかし、三重野はその中に、信念を持って中央銀行の責務を果たすことの重要性を見出し、「どんなに困難な局面に直面しようとも、逃げてはいけない」といつも語っていました。』

三重野さんの話は出てくるわ、「困難な局面に直面しようとも、逃げてはいけない」とかイイハナシダナーというところではございますが、まあそんな感じでイイハナシダナーな訳ですよこれが。


・いきなり窓口指導の話から入るとな

『2.金融政策 ── 金利手段の更なる活用に向けて ──』って小見出しに入ります。

『日本における銀行預金・貸出金利は、1990年代半ばまでは、日本銀行による銀行向け貸出金利──公定歩合──を基準として規制されていました。このため当時、日本銀行は公定歩合を操作することで金融政策を実施していました。しかし、高度成長期には、資金の需要が供給を上回る状況が発生していました。こうした中、公定歩合操作だけでは、旺盛な資金需要で膨らんだ貸出を抑制することは困難でした。このため、日本銀行は、1957年に銀行の貸出行動に直接働きかける手法を導入します。具体的には、日本銀行が銀行の貸出増加額を定めるものであり、これを窓口指導と呼んでいました。』

寧ろ金融政策は割り当てと同義だったと聞いております(さすがにこの時代は知らん)。

『これは当時、極めて有効な金融政策手段でした。』

そら(規制金利で資本の自由化してないんだから)そう(割り当て政策が有効になる)よ。

『しかし、1980年代後半になると、金融自由化による企業の資金調達の多様化や海外を通じた資金融通経路の拡大などを背景に、窓口指導の有効性は低下していきます。まず、企業の資金調達が銀行借入から社債発行にシフトする動きが顕著となりました(図表3)。また、銀行に比べて中央銀行の直接のコントロールが効きづらいノンバンクによる貸出も急増しています(図表4)。さらに、この間、資本取引の自由化を受けて外貨やユーロ円での貸出、いわゆるインパクト・ローンの規模も急増しました(図表5)。』

うんうん懐かしい。

『日本銀行は、こうした変化に対応し、窓口指導の対象範囲を拡大するなどしました。しかし、金融自由化が進む中で、金融機関の複雑な資金の流れを漏れなく管理することは現実的でなく、窓口指導の有効性は低下していきました。』

『このため、日本銀行は、公開市場操作を通じた市場金利の誘導による政策手段の比重を徐々に引き上げていきました。金利のコントロールは、銀行貸出に限らず、全ての金融活動に影響を与えることが出来るためです。そして窓口指導は1991年に廃止することとしました。』

という話なのだが、微妙に違和感あって、91年とかだと日銀の窓口指導どうのこうのは兎も角として、総量規制とか3業種(不動産建設ノンバンク)貸出規制とか、そっちの規制がありました(しかもこれが当時金貸しの手先だった訳ですが現場的には効いた気がするんですよねえ)し、預金金利の自由化ってもうちょっと後で、この頃は規制金利時代だったし出店規制とかその手の規制がありまして、日銀の話しだけだと何か微妙な気がするんですがまあそれはさておきまして。

この続きが『(中国への示唆)』となっています。

『中国でも、近年、金融自由化が着実に進展しています。短期金融市場や債券市場は着実に規模を拡大させています。短期金利や国債の発行・流通金利は既にそうした市場で形成されるようになっています。銀行の預金・貸出金利についても、金利設定の目安となる基準金利は今でも一定の影響を及ぼしているように見受けられますが、金利を基準金利対比で一定の範囲内に収めなくてはならないといった規制自体は既に廃止されています。金利の自由化が徐々に進展する一方、資本取引の自由化も進んだことで、海外からの資金調達や海外への資金運用についても、以前に比べれば容易になりました。』

『こうしたもとで、中国人民銀行は、近年、公開市場操作の役割を徐々に高めてきています。ただし、その一方で、銀行の貸出量に直接働きかける「マクロプルーデンス評価」といった指導も引き続き活用しています。』

寧ろ日本よりもよっぽど活用してるんじゃないでしょうか(^^)。

『中国人民銀行は、マクロプルーデンス評価を、金融政策とマクロプルーデンス政策の2つから成る金融コントロールの枠組みの重要な構成要素と位置付けています。易綱行長も、「人民銀行の金融政策は量的手段から価格的手段への移行途上にある。現時点では量的な手段も非常に重要である」旨、発言されています1。』

ほうほう。

『こうした中国の現状は、日本において、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、金利自由化が徐々に進む中で、日本銀行が公開市場操作の位置付けを徐々に高めつつも、窓口指導に補完的な役割を与えていたころに相通じるものがあると考えています。そこで、金利自由化の過渡期の頃の日本銀行の経験を踏まえ、中国にとって参考になると思われる点を、3つ申し上げたいと思います。』

ということでイイハナシダナーが始まる。


・バブル発生に対して窓口指導が不足していたという反省が登場

『(1)金融自由化のもとでの銀行貸出への働きかけの有効性』というのが最初の点です。

『一点目は、金融自由化に伴い、金融政策としての銀行貸出を直接コントロールする手法の有効性は、必然的に低下するという点です。』

そらそうだ。

『既に申し上げた通り、日本銀行の窓口指導の有効性は、企業の資金調達の多様化等を背景に、徐々に低下することとなりました。以下では、これについて私自身の経験を少しご紹介したいと思います。』

でもって以下が割とこういうのぶっちゃけ話して良いのか位の話になるのでアリガタヤアリガタヤと拝読。

『私は1980年代後半、窓口指導を担当していました。』

っていきなりぶっちゃけキタコレ。

『当時は、いずれの銀行も貸出には極めて積極的で、実体経済の好調を背景に資金需要が如何に強いかを繰り返し強調していたことが印象に残っています。私どもは、そうした資金需要が実需なのか投機的なものであるのか、また、社債発行の増加等といった環境変化を踏まえても適正な水準なのかどうかを確認しようとしました。』

なるほど。

『しかし、一件一件の貸出にまで踏み込んで完全に精査することは現実には不可能です。』

そらそうよ。

『その一方で、銀行は、貸出増加額が一旦認められると、まるで「お墨付き」をもらったかのように許容額一杯に貸出を増加させました。そして、日本銀行が当時コントロールしていたのは貸出増加額だったため、如何に節度のある貸出姿勢を求めても、翌年の貸出実績は前年を上回ることになっていったのです。1980年代後半には、こうした過程を通じて貸出やマネーストックは高い伸びを続けました(図表6)。』

まあそうですな、てゆーか枠は一杯まで使うもんなのかとwwww

『振り返ってみれば、私自身としては、窓口指導が信用拡大の歯止めとして十分に機能しなかっただけでなく、バブル形成の一因にもなった、と考えています。』

実に良い反省をしておられますな。でまあその後に中国に関する話をしておりますがそこは飛ばしまして、何という素晴らしい反省をしておられるのかと不肖このアタクシ感動することしきりなのですが、せっかくそのような素晴らしい話をしておられる訳ですから今まさに副総裁としてやっておられます金融政策に関して(ここで音声が途切れる)。


・金利を早期に引き上げておけばバブルの発生も無かったとはこれはまた良い反省です

さらにイイハナシダナーなのがこの次に来る『(2)金融自由化と金融政策における金利手段の重要性』である。

『二点目は、金融政策の有効性の観点からは、金融自由化の進展に伴い金利手段の一層の活用が重要になる、という点です。』

ほう。

『1980年代後半に窓口指導が効果を発揮しなかった理由は、企業の資金調達ルートの多様化だけではありません。当時、日本銀行は、インフレ率が低位に止まっていたうえに為替レートの円高化を警戒していたこともあり、金利の引き上げには慎重でした。1987年から1988年にかけて、日本銀行は窓口指導において「節度ある融資態度」を求めるスタンスに転じ、漸次その度合いを強めていきましたが、公定歩合が据え置かれるもとで、その効果は極めて限定的なものに止まりました。』

ほうほう。

『当時、金利を適切に引き上げていれば、望ましい政策効果が得られた可能性が高いと思います。』

>当時、金利を適切に引き上げていれば、望ましい政策効果が得られた可能性が高いと思います。
>当時、金利を適切に引き上げていれば、望ましい政策効果が得られた可能性が高いと思います。
>当時、金利を適切に引き上げていれば、望ましい政策効果が得られた可能性が高いと思います。

これわwwwwwww

『金融自由化が進むもとでは、金利水準の変更は、窓口指導の影響が直接には及ばない幅広い金融活動に影響を及ぼすことができるからです。また、預金・貸出金利の自由化に伴い、銀行の貸出スタンスや企業の資金需要が、従来以上に金利水準の変化に敏感になってきたためです。日本銀行は、こうした経験を踏まえ、金融政策の重点を、金利水準の変化にシフトさせていくことになりました。ただし、その際の金利は、公定歩合ではなく、公開市場操作を通じて誘導する市場金利に変わりました。』

以下が中国の話なのでまた割愛しますが、この時代から30年たった今、こんなに金融不均衡の発生について反省しておられるのでしたらば、副総裁として運営しておられる政策に関して30年後に同じことを言われないように色々と行動をされるというのは如何でしょうか(提案)。


・金融市場整備は重要ですなあ(棒読み)

三番目は『(3)金融市場整備の重要性』ということで、

『三点目は、金利手段による金融政策の有効性を高めるためには、金融市場整備が重要だということです。』

という話をしていますが、さすがにここはワロタ。

『まず、市場参加者の多様性を高めることです。ビジネスモデル、資産負債構造、金利観の異なる多様な市場参加者間での取引が拡大すれば、金融市場の流動性が向上します。具体的には、国内の機関投資家を育成するのみならず、外国金融機関の参入を促進することにも大きな意義があります。日本では、1980年代から債券市場等への外国金融機関の参入が進み、長短市場金利の円滑で弾力的な形成に貢献してきました。』

なるほど今やっている金融政策は何でしたっけ???でもってその次は更に・・・・・・・・・・

『また、金融市場の整備に当たっては、市場参加者との対話と協力が重要であるということです。』

騙し討ちでマイナス金利導入したり散々追加緩和を煽って実質何もしないで日銀の言う事を真に受けた方々の梯子を盛大に外しておられ、政策のロジックに整合性がまるで存在しない状態になっている金融政策を実施しておられるようにしか思えませんけれども、これは制度の話だから金融政策運営とは関係ないんですね!!!


でもってこの次に『3.金融システム ── 銀行の秩序ある市場退出への備え ──』というのがありますが、こちらに関してはまあ仰る通りという話が続いていますのでパスしますけれども、金融機関のオーダリーレゾルーションをする話ってどうしても自由な金融市場取引とは違う世界観が必要な話なので、そこって金融市場整備とのバランスをよく考えないと行けないんジャマイカ、という感想は当時金融市場に居て散々っぱら海外にいいようにやられたという印象が強いだけに、その部分の視点での話も欲しかった(まあ難しい問題ではありますが)なとはちと思いましたが、まあそうですねという話が続きます。


・・・・・・・ということで、案の定まるで現世利益に関係しない話ではあったのですが、結果的にはマクロプルーデンスの難しさとか、金融不均衡発生の原因が過度に緩和的な金融政策だとか、金融市場の重要性とかの話になっておりまして、折角これだけ良い話をするんだったら今の(爆発音の為以下聴取不能)。


〇9月決定会合議事要旨ェ・・・・・・・・(出遅れてすいません)

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g190919.pdf

・何というか微妙に微妙な味わいのある景気認識部分

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』のところの国内の話なんですけどね、

『わが国の景気について、委員は、輸出・生産や企業マインド面に海 外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循 環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大しているとの 認識で一致した。何人かの委員は、海外経済の減速の影響は、製造業 の設備投資や新規求人倍率にも及んでいる可能性があると指摘した。 もっとも、多くの委員は、非製造業を中心に将来を見据えた戦略投資 や省力化投資の需要が根強いなど、内需は堅調であり、所得から支出 への前向きの循環が働くという景気拡大の基本的なメカニズムは維 持されているとの見方を示した。』

ふーん。

『景気の先行きについて、委員は、当面、海外経済の減速の影響を受 けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとの見方で一致した。 このうち、国内需要について、委員は、きわめて緩和的な金融環境や 政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所 得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調 を辿るとの認識を共有した。もっとも、多くの委員は、海外経済を巡 る様々な不確実性が高まりつつあることを踏まえると、海外経済の動 向がわが国経済に及ぼす影響を慎重にみていく必要があると指摘し た。』

で?

『そのうえで、これらの委員は、9月短観の結果や 10 月の支店長 会議におけるミクロ情報も踏まえつつ、次回の決定会合において経 済・物価動向を改めて点検していくことが重要であるとの認識を共有 した。』

っていう話になっているのですが、なんかホンマカイナという感じは物凄い勢いでする訳でして、これって「点検をやりますよ」という声明文項番6をぶっこんだからそういう話を入れているだけの話じゃろという感じが物凄い勢いで漂ってくる文言でして、こんなの毎回普通にやってるだろと思うし、そもそも先行き判断するのに対して短観やらミクロ情報でいきなりひっくり返るとかそういうんだったらそれ以前の認識が違うじゃろと思う訳ですよ。でもって結果はご案内の通りひっくり返っている訳ではないのですからして、何かこの取って付けたような纏まり方が何ともアレという風情。

『一人の委員は、海外経済の回復は遅れており、当面、外需の持 ち直しには期待できないほか、内需も、海外経済の減速の影響が及ぶ 中、10 月には消費税率引き上げが迫っており、景気の先行きを楽観 視できないと述べた。』

これは片岡さんですかね。

しかしまあ何ですな(この先の需要項目別の部分全部飛ばして最後の結論まで飛びます)、

『以上の議論を踏まえ、大方の委員は、景気が基調としては緩やかに 拡大するもとで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持され ているとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、@マク ロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格 設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、A中長期的な 予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えら れることを挙げた。もっとも、委員は、海外経済の下振れリスクが高 まりつつあるとみられるもとで、「物価安定の目標」に向けたモメン タムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあ るとの認識を共有した。』

ってまあ公表文と同じ話になっていますけれども、寧ろ海外経済の下振れリスクがどのような形でモメンタムを阻害するのかという話に関して(その後に出た今回の展望レポートの方でもそうですけれども)の方が何か良く分からんというかフワフワした話になっていて、元々モメンタムが無いのではないかとかそういう話をさておいて「モメンタムはありまーす」という話にするのであれば、このロジックで何で海外が下振れたらモメンタムが阻害されるのでしょうか、とは思ってしまいますな。


・点検云々の所で血圧急上昇の巻

という訳で毎度の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。最初の部分は割愛して途中から。

『そのうえで、委員は、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリ スクが高まりつつあるとみられるもとで、「物価安定の目標」に向け たモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢にな りつつあることを念頭に、展望レポートを取りまとめる次回の決定会 合において、経済・物価動向を改めて点検していくことが必要である との認識で一致した。』

毎回点検してるんじゃないのかよ、という所ですし、話の進み方が何というか予定調和(以下爆発音の為聴取不能)。

『また、委員は、こうした認識について公表文に記述し、対外的に明確にすることが望ましいとの見方を共有した。』

何で望ましいのかの理由が1ミリも記載されていないところに味わいを感じますね!!!!!!!!!!!!!!


・・・・・・でもって今回の9月決定会合議事要旨でアタクシの血圧をいちばん上げたのはこちら。

『そのうえで、複数の委員は、経済・物価動向を改めて点検していく際には、それまでに公表された指標とともに、短観や支店長会議での報告 なども踏まえて判断していくことが重要であるが、現時点で点検結果について予断を持つべきではないと指摘した。』

>点検結果について予断を持つべきではない
>点検結果について予断を持つべきではない
>点検結果について予断を持つべきではない

ちょwwwwおまwwwwww何他人事みたいな言い方になってるんだよこの「複数の委員」。

いやマジで予断を持つべきではないとか訳分らなくて、そもそもおまいら普段から自分で経済物価動向を点検してるんだから現時点(9月会合)で何らかの考え方がベースにあって、それに対してこのようなデータが出てきたらベースラインシナリオを変更すべきとか、変更しなくて良いとか、そういう話でもするんだったら分かるんですが、これって如何にも「事務方が上げてきたものをお待ちしています」って感じの表現ジャンとか思う(個人の感想ではありますが)次第で、アタシャここ見てナンジャソラと思ってしまったんですけどね。

いやね、例えば政策判断に関して予断を持たずに対応とかいうのなら話は分かるんですが、点検に関して予断を持たないってのは何か物凄い勢いで違和感があるのよアタクシ的には、まあアタクシだけの偏見かもしれないんですけどとは思うものの、この一節に盛大な「他人事感覚」の印象を受けてしまった訳で、予断を持つべきではないとかいうのではなくて、普通は「十分に警戒しながら点検」とかそういう話になるんじゃないですかねえ(つまり主体的な文言が入る)と思うの。


・政策手段が尽きているのが良く分かる&片岡さんがひねり出してきた短期金利引き下げ転向の言い訳

気を取り直して次のパート。

『委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。 はじめに、市場の一部に追加緩和手段に関する様々な議論が出ている ことを巡り、委員の意見が示された。』

って何だっけと思いますが、どうも手段がないとかそっちの指摘に関する話のようだ。

『一人の委員は、長短金利・量・ 質のすべての面で日本銀行の金融政策に手詰まりはなく、あらゆる可能性が常時存在していることを強調する情報発信を行うことが重要であるとの認識を示した。』

可能性はそうだけど問題は有効な手段があるかどうかという話ではないでしょうか。

『別のある委員は、国内外でこれまでに取ら れた非伝統的政策手段の教訓を踏まえると、その有用性について広く発信することが重要であると指摘した。』

マイナス金利の有用性???????YCCの有用性????????

なおYCCは量の拡大を極力止めてステルス政策転換を図るという意味では有用ですが、それが物価安定目標の早期達成に対してどの程度有用であったかと言うと・・・・・・・・・

『ある委員は、海外経済の回復 遅れがわが国経済・物価に悪影響を及ぼす懸念があることを踏まえると、副作用にも留意しつつ、望ましい政策対応について検討していく必要があると述べた。』

しかしまあ何ですな、「長短金利・量・ 質のすべての面で日本銀行の金融政策に手詰まりはなく」っていう話で、まあ総裁もそういう説明になっていますけれども、その一方で「望ましい政策対応について検討していく必要がある」ってのが現実問題として出てくる(毎度出てきますが)という時点で、それは政策手段の手詰まりとしか申し上げようが無い訳でして、有効な追加緩和手段があってそれが共有されているのでしたらば、そもそも「検討していく必要がある」とかいう話にならない訳ですよあっはっはっはっは。

『別のある委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは相応にあり、追加緩和措置の要否を検討すべきであると指摘した。そのうえで、この委員は、追加緩和手段については、緩和効果をもたらすとの目的を明確にし、予断なく、 短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、あらゆる政策手段を検討すべきであると指摘した。』

こっちの予断無くの方はまだ分かるのですが、しかしまあこちらでも「政策手段を検討すべきである」という話であって、まあその時点で有効な追加緩和手段が手詰まりにも程があるのが良く分かるというものです。もちろんマイナス金利の深掘りのような無効かつマイナス効果のある政策でしたら色々とあると思いますがwwww

『この間、一人の委員は、この半年ほど名目イールドカーブがフラット化した一方で、均衡金利・予想物価上昇率の期間構造は大きく変化していないことを踏まえると、金融 緩和余地は短中期ゾーンで大きいとみられ、追加緩和策としては短期政策金利の引き下げが適当であると付け加えた。』

これ片岡さんの意見と思われます。当初「15年金利0.2%未満」という円債市場の皆様が腰を抜かして爆笑の発作を禁じ得なかったオモシロ提案(思えばあれが片岡さんの芸人化の始まりだったのですが)をして、その後も超長期金利の話を主にしていたのに急に短期金利の引き下げと言い出した件についての言い訳がこちらに記載されていますけれども、一応金懇だか何だかで超長期の金利がフラット化したから短期の方が良いという話はしていましたが、今回また理屈を補完しようと思って「均衡イールドカーブ」の概念を出してきましたな。

でまあこれはどう見ても藪蛇の予感しかしないのですが、別に片岡さんの提案とか興味ない方も多いとは思いますけれども、ぜひ金懇その他で機会がありましたら、皆さまにおかれましては片岡さんに対して「じゃあ今の時点での均衡イールドカーブを出してください」とご提案されるとまたオモシロ理屈が見られることと存じますので、ぜひよろしくお願いいたします(ニッコリ)。


・金融機関の云々の話は毎度の通り

その次。

『また、その他の留意点として、何人かの委員は、低金利環境が長期 化するもとでも、金融機関の財務は健全であり、金融仲介機能も維持 されているが、先行き、収益性が更に低下していく可能性や、過度なリスクをとる動きが拡がる可能性について多面的に点検していく必要があるとの認識を示した。』

FSRでも指摘されています(ってネタにしてませんな汗)。

『これに関連し、複数の委員は、金融機関経営に影響を及ぼす構造的な問題と、金融緩和に伴う影響は、区別して議論する必要があると指摘した。』

ほうほう。これ本当に区別したら普通に低金利の影響の方が大きいじゃろとは思うけどどうせ日銀が分析すると鉛筆なめ(爆発音)。

『別のある委員は、マイナス金利を 含む金融緩和の効果については、それが銀行経営に与える影響よりも、 あくまでも、経済全体に与える影響を優先して考えるべきであると述べた。』

マイナス金利が経済全体にどのようなプラス効果を与えているんでしょうかねえ・・・・・・・・・・・

『これに対し、一人の委員は、金融システムがひとたび不安定化 すると、物価安定の確保が困難になることには、十分留意する必要が あるとの見方を示した。また、この委員は、低金利環境の継続による 銀行の収益性低下と資産のリスク量増加が格下げにつながれば、外貨流動性リスクや外貨調達コストが高まり、取引先企業にも悪影響が及ぶ惧れがあると述べた。 』

という話でこのコーナー終わっていまして、暫く前でしたらば必ずあった何を言ってるんだか訳の分からん某大先生と思われる方の無茶苦茶な指摘があったのが、最近すっかり無くなっているのは、別にそんな見苦しいもの見たくはないとは思いましても、無いなら無いでちょっと寂しい気がしますなうははははは。


#とまあそんなところで出遅れまくってすいません








2019/11/08

お題「市場メモクリップ/名古屋での講演だが色々なところで整合性が堂々の破綻ですな」

昨日の引け後に
https://jp.reuters.com/article/usa-china-tariff-idJPKBN1XH0YP
2019年11月7日 / 17:22 /
米と追加関税の段階的撤廃で合意、中国商務省が表明

って出てた(ちなみに第1報フラッシュを最初に確認したのは16時25分
くらいだった気が)訳ですが、またこういうのが出るとかもうねと。

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-split-idJPKBN1XH2R6?il=0
2019年11月8日 / 05:33
追加関税の段階的撤廃、米政権内に強い反対論=関係筋

とりあえずこれがどう効くのか分からんが、

https://jp.reuters.com/markets/bonds
金利・国債
情報は15分以上の遅れで表示しています。
米国債10年 利回り
US10YT=RR
+1.928 +0.116
(東京の朝6時前後に拾った数字です)

・・・・・・・うーんという感じですが、ここもと金利市場の動きの派手さが凄いですな。これだと今週って米債25毛位金利上がっていて先週はFOMC後に15毛金利下げていてナンジャソラな展開だし円債ちゃんも然り。


〇昨日は昨日でこれまた微妙に不思議ちゃん相場だった気がしますがさて・・・・・・

ほんこれという感じのヘッドラインで中々よろしいですな。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N27N10Z
2019年11月7日 / 15:17
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、波乱相場の余韻残る 長期金利-0.090%

『<15:05> 国債先物は続落で引け、波乱相場の余韻残る 長期金利-0.090%

国債先物中心限月12月限は前営業日比3銭安の153円20銭と続落して取引を終えた。前日の金利急上昇の余韻が残るなか、プラス圏とマイナス圏を往復する荒い値動きだった。10年最長期国債利回り(長期金利)は同変わらずのマイナス0.090%。』(上記URL先より、以下同様)

昨日って米債ちゃん戻ったから先物上がって始まって、なんとなくブルフラットちっくで始まったのですけれども、前場途中から何かまーた中期が怪しくなって5年カレント2.5甘(▲19bp)とかになってまたもマーライオンかと思ったら後場になったら急に揃って前日比変わらずみたいな何事も無かったかのような動きになって、それで終わるかと思えば取引終盤には超長期も微妙になるとか何をやっているだかさっぱり分からん(><;

てな訳で、

『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 -0.196 -0.188 -0.001 15:04
5年 -0.215 -0.208 -0.003 15:04
10年 -0.096 -0.085 -0.003 15:03
20年 0.257 0.267 0.004 15:02
30年 0.399 0.41 0.007 15:05
40年 0.423 0.431 0.005 15:01』

だそうで、まー何ちゅうかこのMPM後の2営業日で妙に金利が下がってしまったのが上下に変なポジションを残す結果になったのかなあとか勝手に妄想するんですけれども、ポジションの整理が起こっているとかそういうことなんでしょうかよくわかりません。

まあ何ですな、ポジション整理といえばそれ以前の問題として特に9月以降に別にそこまで煽ることは無いのに正調黒田節で付利下げについて散々煽ってしまった(いや勿論これ本人たちに言わせれば「慎重に点検するとは言ったがその結果について予断を与えたわけではないし予断は持っていない」とかいけしゃあしゃあと開き直るんでしょうが、あのメッセージの出し方はどこからどう見ても付利下げの可能性を大いに示唆したものと市場が捉える物件であることは言うまでもない)ので、そこからの変なポジションもあるでしょうし、こういう怪我の修復作業やっている時の売買ってお家の事情によるものになるから何かよくわからん動きになるんでしょうなあ、とか何とかそういう気はするが上記のように米債がアイヤーとなって帰ってきているのでさてどうなるんでしょうな。

というメモだけとりあえず備忘のために置いておきます(なんだかんだ言ってすぐ忘れちゃうから)。


〇出遅れましたが(というか市場雑談のせいもあって全面的に出遅れている、大汗)名古屋の黒田節鑑賞

・MPM直後の挨拶になりましたが基本は決定事項と展望レポートの説明なんですが・・・・・・・・・

名古屋での挨拶というのも恒例行事ですわな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191105a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──

『1.はじめに』ってのを引用するのも何ですがちょっと引用してみます。

『日本銀行の黒田でございます。本日は、中部経済界を代表する皆様方とお話しする機会を賜り、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃より、私どもの名古屋支店の様々な業務運営にご協力頂いております。この場をお借りして、厚くお礼申し上げます。』

『日本銀行は、先週開催された金融政策決定会合で、2021 年度までの経済・物価見通しを取り纏めました。特に、今回は、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあることに、より注意を払いながら、経済・物価動向を点検しました。本日は、その内容をご紹介しながら、わが国の経済・物価に対する日本銀行の見方と最近の金融政策運営の考え方について、ご説明したいと思います。 』

より注意を払いながらですかそうですか、ということで説明があります。


・展望レポートの通りだが「海外が弱くて内需は堅調」

『2.経済情勢』の小見出しになります。

『それでは、経済情勢からお話しします。先週の会合では、先行きのわが国経済について、2021 年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くと判断しました。この「拡大基調が続く」という総括判断はこれまでと変わっていません。海外経済の持ち直し時期が後ずれし、外需の回復が遅れると見込まれる一方で、国内需要については、その波及が限定的にとどまり、底堅く推移すると予想しています。以下、順番にご説明します。』

展望レポート基本的見解の鏡にある通りですが、「基調判断は変わらない」であって、海外が弱いけど国内への波及が限定的で底堅く推移する、というのまではまあそういう話でもエエンチャウノとは思うのですが、それなのに何で海外を警戒して政策金利が低下バイアスなのかというのがさっぱり分からん理屈になっているのですなこの講演も。

海外経済云々をぶっ飛ばしまして国内の話の総括部分に行きますとこの理屈。

『このように、海外経済の持ち直し時期は遅れているものの、先ほどお話ししたように、わが国経済が大きく下振れることはないと考えています。』

で?

『その理由は、海外経済の動向を受けて外需は下振れるとみられる一方、内需は底堅さを維持することが予想されるためです。』

ほう。

『わが国経済は、過去、外需主導で景気変動が生じる場合が多くみられました。しかし、今回の局面では、少なくともこれまでのところ、設備投資などの堅調さを背景に、外需の弱さが内需にまでは及んでいません。また、消費税率引き上げの影響も、過去の経験から、慎重にみてきましたが、これまでのデータをみる限り、2014 年の引き上げ時と比べると、影響は小幅にとどまっています。以下では、こうしたわが国経済の動向について、外需、内需の順にさらに詳しくご説明します。 』

という話になっていて、内訳の説明は展望レポートの通りなのですが、そういう見通しをだしながら(途中の長々とした説明を全部飛ばして)リスクの話をすると急にこうなる。

『以上が経済の見通しですが、海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい状況は変わっていません。』

海外の影響が従前よりも小さいのに「海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい」ってのは何なんでしょうかねえ。

『米中貿易摩擦に関しては、先月の部分合意は前向きな動きですが、今後の展開は引き続き不透明です。英国のEU離脱についても、10 月末の合意なき離脱という事態は回避されましたが、12 月に総選挙が予定されるなど、なお不確実な状況です。また、新興国経済の動向や地政学的リスクなどの不確実性もあります。さらに、これらのリスクに対して、国際金融市場が反応しやすくなっている点にも留意が必要です。』

とはゆうとるものの、海外の影響が従前よりも小さいのですから、それは即ち海外経済がリセッションとかマイナス成長とかそのくらいの大きな落ち込みを示すような莫大なリスクがあるとかそういう認識じゃないと整合性が付かないと思うのですが、説明はというとこれまた(当然とはいえ)展望レポートでの話と同じでして、

『仮に、そうした下振れリスクが顕在化した場合には、前向きさを維持している企業行動も慎重化する可能性があります。』

ってその程度のリスクなのに何で下振れリスクが大きい状況となるのかと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

いやね、従前どおり海外経済の減速が輸出を通じて国内需要に波及して、その影響が大きいって認識をしているんだったら話は分かるんですが、見通しの方では所謂デカップリング論みたいなのをしておきながら、リスク判断の方では海外ガーって言ってしまうのって、それって要するにおまいらが「今回は金融緩和を行いたくない」というのと「でも先行きの金融緩和という話は残しておきたい」という結果が先にあってそこから理屈作ってるからそういう理屈になるんじゃねえのと言いたくなってしまう次第でございまして(個人の妄想です)、政策の説明部分での整合性もそうなんですが、見通しの方の整合性も何か微妙感を醸し出してきているように思えます(あくまでも個人の感想です)がどうなんでございましょうかねえと。

『海外経済を巡るリスク以外では、消費税率引き上げの影響には、引き続き注意が必要です。既にご説明したように、今のところ、その影響は小さい模様ですが、消費者マインドへの影響も含めて、引き続き、慎重に確認していきたいと考えています。』

政策金利のフォワードガイダンス(もどき)を入れた時の最初の理由が消費税で、「政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」ってなっていたわけですが、その後今年の4月に「日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」ってなっていて、(この時も今回と同様に「ガイダンスの明確化」でした)リスクの方ではどちらも言及があるものの、じゃあ展望レポートに示されているメインシナリオではどうかと言うと、消費税の影響は前回よりも小さく、海外の国内への波及は従前よりも軽微って話になっているので、本来だったら寧ろ緩和バイアスが弱まる方がロジカルじゃないのとか言いたくなる訳ですな。まあそういうツッコミに対抗するためかどうかは知らんですが、今回「日本銀行は、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」と最早何が何だか分からん説明になってした訳です。

まー要するに現実問題としては(以下個人の妄想ですよ念のため^^)、有効な追加緩和手段が殆どなさそうなのを認識しているので逆にファイティングポーズを取っておかないとマズーである、という現状認識があって、ガイダンス文言のリスク要因の所に特定のものを入れておくと情勢の変化に応じて何かやったり(それは上下双方の意味があるでしょう)しないと行けなくなるので、今回はそこを全てブラックボックスにぶっこんでおきました、ということでしょう。

でもって、そうは言いましても前からの経緯があるから、とりあえず今回は前からの説明と今後のやりたいことの話の辻褄を合わせる為に何か整合性に怪しさのある物件を出してきた、という所なんジャマイカとか勝手におもう次第です。そういう点では今後はファイティングポーズを取っておかないといけない時間帯においては、適当にリスク要因のネタをだしておけばファイティングポーズを継続できる(消費増税の影響とかだと明らかにタイムリミットあるし、海外に関しても海外中銀のスタンスが正常化や緩和縮小方向に明確に向かう前にはリスクが軽くなっている筈だけど、海外中銀に先んじて正常化方向とかどうせ出す気はないので、そういう時期には何か適当なのを出しておかないといけなくなるから海外要因アピールは程々にしとかないといけない)というまあそんなのが先に立ってるんでしょうとか、勝手に妄想は広がりますが、なんかそういうのが見えてしまうような作りになっているのも何だかなあとは思う(もうちょっと整合性を取った話にしてオブラートに包んでくれと)。


・物価のモメンタムの話も展望レポート通りですが・・・・・・・・・

『3.物価情勢』の小見出し部分に参ります。

『続いて、物価情勢です。日本銀行は、9月の金融政策決定会合で、海外経済の減速が続き、その下振れリスクが高まりつつあるもとで、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに、より注意が必要な情勢になりつつあると判断しました。』

いやその前からモメンタムねえだろ。確かに物価下落モードには入りにくくなったとは思うけど。

『そうした情勢にあることを念頭に置きながら、先週の会合では、物価動向を点検し、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを評価しました。評価にあたっては、経済活動の強さを表すマクロの需給ギャップと、人々の物価観を示す予想物価上昇率の動向、の2つが、特に重要と考えています。』

ということで今回もまた需給ギャップとインフレ期待で説明しているのは展望レポートあんど点検結果にある通りです。

『まず、需給ギャップです(図表8)。 結論から申し上げると、需給ギャップは、いったんプラス幅を縮小するものの、均してみれば現状程度のプラスを維持すると考えています。つまり、マクロでみた需要が平均的な供給力を上回る状況がさらに続くとみています。』

ということで説明していて、背景は経済見通しの通りってことになるのでそれはそれで理屈は通っているのですけれども・・・・・・・・・

背景説明ぶっ飛ばしてインフレ期待に行きますと、

『次に、予想物価上昇率の動向です(図表9)。』

『サーベイデータなどからみた予想物価上昇率は、一部に弱めの動きがみられる一方、上昇を示す指標もあるなど、指標ごとに幾分動きが異なっていますが、総じてみれば、横ばい圏内で推移しています。人々の予想物価上昇率の動向を把握するためには、家計や企業の物価に対するスタンスの変化をみることも重要です。生活意識に関するアンケート調査における「物価上昇についての感想」を家計の値上げ許容度を表す指標と捉えると、2017 年以降は、過去の平均を上回る許容度を維持しています。また、消費と関係の深い企業の価格設定スタンスを、消費関連業種の販売価格判断DIでみると、「上昇している」と答える企業の割合が「下落している」と答える企業の割合を上回る状態が続いており、その幅が緩やかながら拡大しています。』

という話になっていて、なんか良い話のほうだけ強調しているんジャマイカとかそういうのはさておくとしましても、

『先行き、プラスの需給ギャップが維持されるもとで、雇用・所得環境の改善が続いていけば、家計の値上げ許容度は徐々に高まり、企業も価格設定を次第に積極化していくことが見込まれます。それに伴って、企業や家計の予想物価上昇率も徐々に高まっていくと考えられます。』

ということなのでモメンタムは維持されているという結論になった訳ですが、そもそも論としてこの最後の部分に関して、既に日銀試算ベースでの需給ギャップって6四半期だか連続してプラス1%以上の比較的大きなプラスを維持した状態にあるというのに、期待インフレは遅々としてアガランチ会長な訳でございまして、それがワークしているかどうかが怪しいのに需給ギャップの分析を延々としているのはちと分析としてズレてねえかとか言い出してはアカンのでしたっけとか申し上げたくなりますし、更にマズーなのはここから需給ギャップのプラス幅が縮小していきそうなタイミングなので、その下げ具合によっては理屈上モメンタムが失われるという定義に成らざるを得なくなってしまう可能性があるので、それがまた微妙。

つまりですね、そもそも論としてインフレに直接働きかけるような有効な政策手段が乏しいというか多分無い上に、ここから追加緩和とか言って利下げしても逆噴射にも程があるという状況なので、そう簡単に緩和カードも切れないのに、需給ギャップ動向によっては緩和を強いられる話になるというのは如何にも苦しい(有効な手段があるんだったらとっくの昔に実施している筈で、今はとにかく政策の延命スキーム状態ですから)訳で、本来ならモメンタムじゃなくてメカニズムとして、物価が下がりにくい状態になってきたことですし、一方で無理に物価を引き上げようとして政策を無駄に吹かすべきではないので、緩和的な金融環境を長期間持続できるような政策を行うことによって徐々に物価上昇の圧力が出てくることを期待しつつ政策運営をする、みたいな感じに本来は話を持って行けば、ここまで無理気味の説明をせんでも良いと思うのですが、それは面目玉上出来ないですし、置物一派総退場しないと落とし前がどう見てもつかないですから、そっちの要因で無理という中のナローパスの結果がこの昭和の温泉旅館モードな説明になっているんでしょうなと思うと落涙を禁じえません。


・でもって政策運営の話だがのっけから話が微妙にアレ

『4.日本銀行の金融政策運営』に参ります。

『ここからは、金融政策運営についてお話しします。』

へいへいそうだっか。

『日本銀行では、従来から、金融政策運営に当たり、中心的な見通しとリスク分析という2つの柱による点検を行っています。現在のように経済・物価の下振れリスクが大きい局面では、リスク点検の重要性は一段と高まります(図表 11)。』

えーっとすいません、第二の柱ってそういう分析じゃないんですけどいつの間にメインシナリオとリスクシナリオの話に化けてしまったんですか??????????????

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060309b.htm/
新たな金融政策運営の枠組みの導入について
2006年 3月 9日 日本銀行

『金融政策の運営方針を決定するに際し、次の2つの「柱」により経済・物価情勢を点検する。

第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。

第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因についての点検が考えられる。』(この部分だけ上記URL先2006年3月9日公表分「新たな金融政策運営の枠組みの導入について」から引用)

っていう骨子は生きている筈で、これ出た当初に第1がメインシナリオで第2がリスクシナリオなんですかって聞いたらそれは違いますがなみたいな話だったのですけどねえ・・・・・・・

・・・・という話がありますがそこは(あんまり置きたくはないが)さておきまして、

『7月の会合で「物価のモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と明示し、9月の会合で「『展望レポート』を公表する次回会合において、経済・物価動向を改めて点検していく」ことを強調したのは、こうした従来からの考え方をより明確にしたものです。同時に、経済・物価の下振れリスクが大きくなるもとで、緩和方向をより意識して政策運営を行うという基本的なスタンスを示す狙いもありました。 』

はあそうですか。

『先週の会合では、点検の結果、 「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まる状況ではないものの、海外経済を巡る下振れリスクが高まりつつあるとみられるもと、引き続き、注意が必要な情勢にあると判断しました。こうした経済・物価情勢に関する判断と、緩和方向をより意識した政策運営を行っているという、日本銀行の政策運営スタンスを明確にする観点から、先週の会合では、新たな「政策金利のフォワードガイダンス」を決定しました(図表 12)。具体的には、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているというものです。』

で??

『ポイントは2つあります。』

はあ。

『1つ目は、フォワードガイダンスを、「物価安定の目標」に向けたモメンタムと、明確に関連付けたことです。』

今までもそうじゃなかったでしたっけ????

『2つ目は、緩和方向を意識して政策運営を行うというスタンスを、政策金利のフォワードガイダンスにも反映させたことです。政策金利について「下方バイアス」があることを明確にしました。』

えーっとすいません、物価目標の達成が見通し期間中に見通せなくて、リスク認識が下方にあるなら金融政策の引き締めってできないから当たり前ではないでしょうか?????

『ただし、このことは、追加緩和手段を政策金利の引き下げに限定したわけではないことも、付け加えておきます。追加緩和の手段としては、政策金利の引き下げに加えて、資産買入れの拡大やマネタリーベースの拡大ペースの加速など、その時々の経済・物価・金融情勢次第で様々な対応があり、これらの組み合わせや応用といったことも考えられることは、これまでと変わりません。』

その話は量から金利に転換したけどいきなり転換したと言えないので話を取り繕っていたYCCぶっこんだ当初の話であって、現実問題として量の拡大ペースが物凄い勢いで落ちているのにまだその話をするのはただの藪蛇だと思います。


というのが講演でございましたが、(以下の部分はもう面倒なので割愛)とりあえず追加緩和バイアスの話を一生懸命しているのは把握したが、その一方で輪番ェ・・・・・・・というのが何とも味わいがありましたな。


〇でもって記者会見だがはっきり言ってみるところはあまりなかった

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191106a.pdf

・量のペースについての質問だが微妙な聞き方をしているので答えが更に微妙になるという図式

『(問) 総裁は従来から、追加緩和手段として、マネタリーベースの拡大ペー スの加速を挙げていらっしゃいます。一方で、足許では国債買入れの減額から、 マネタリーベースの伸びが鈍化しています。マネタリーベースの伸びの加速に緩和効果があるとしたら、伸びの鈍化は緩和効果を弱めると思われるのですが、 仮にイールドカーブの形状が一定だった場合、マネタリーベースの伸びの加速 と鈍化そのものに、効果の違いはあるのでしょうか。 』

これ「仮にイールドカーブの形状が一定だった場合」っていうのを入れているのが引っ掛け質問のような気がします。つまりこの答えが・・・・・・・・

『(答) 政策金利、10 年債の金利の操作目標、資産買入れプログラムの拡大、 マネタリーベースの増加ペースの加速など、4 つほど挙げています。それらはいずれも緩和方向に働くわけですけれども、具体的にどの程度の緩和をもたら しているかというのは、長短金利の実質金利が、俗に言われる自然利子率をど の程度下回っているかということによって計られるわけです。』

と思いっきり引っ掛けに乗っかった説明になっていて、

『従って、手段としてその 4 つを挙げていますし、その組み合わせや改善など色々なことがあり 得ると思いますが、実際に経済にどの程度の緩和効果を与えているかというのは、あくまでも実質金利が自然金利をどの程度下回っているかの程度によって 計っているわけです。』

っていう事は、結局のところ金利を下げるのが効果で量は関係ないと言っているのと同じですよねこれ。

『そう申し上げたうえで、マネタリーベースの拡大ペースの加速も、そういうことを通じて、実質金利を押し下げる効果があると思いますし、それが 自然利子率を更に下回ることになれば、緩和効果が追加されることになると思います。』

だったら減速しているのは何ですかということですが、

『マネタリーベースについて現状、伸び率が若干下がっているのは、確かに国債買入れの額が少し減少していることによるのですが、』

「少し減少」?????????????

『イールドカー ブ・コントロールのもとで、今の長短金利の実質金利の水準をみますと、別に 上昇したり、あるいは自然利子率とのギャップが縮んだりしていません。』

そこまで言うなら均衡イールドカーブ示してください。示さないでこういう説明するのってかなりインチキ臭くなるんですが。

『政策金利、10 年債の金利の操作目標、資産買入れプログラム、そしてマネタリーベー スの増加という全体の組み合わせの中で適切な緩和効果が得られていて、緩和 効果が減少していないということですので、そうしたもとでマネタリーベースの増加率が若干減ったからといって、何か緩和の程度が弱まったと思っていま せんし、そういう意味で何か問題があるとは思っていません。 』

どう見ても量は関係ないということですね。

『ちなみにマネタリーベースの増加というのは、色々な要因で決まります。長期国債の買入れの額だけでなく、その他のマーケットオペレーションの 額にもよりますし、財政状況などにもよるので、色々な状況によって変わって いますけれども、今の時点で増加率が減ってきたから金融緩和の程度が弱くなったということにはなっていないということです。』

まあ引っ掛け質問にあまりにも綺麗に乗っているので(内務省検閲)なのですが、これヘッドラインで出た時は緩和手段がどうのこうのの方だけ強調されていましたが、説明を見ると金利しかやらんという話をしていまして、その先の方でETFの買入について質問があった時の答えで、総裁聞かれもしないのに国債の話をしているんですよ。


『(別の質問に対する総裁の答えの途中から)それから、資産買入れについては、国債の買入れにつきましては、イールドカーブ・コントロールのもとで適切な買入れを行う、弾力的に行うという ことで、80 兆円というのはめどです。イールドカーブ・コントロールが今や市 場調節の目標になっていますので、それに合わせて適切な額の資産買入れを行っているということです。また、J−REITやETFの買入れにつきまし ては、それぞれのマーケットのリスクプレミアムの状況をみながら、弾力的に 増やしたり減らしたりしていますし、特に何か大きな問題が生じているとは思っていません。このところ、為替が比較的安定しており、株価も変動はありますが、安定した状況が続いていること自体は好ましいことではあると思いま すけれども、それだけで何か金融政策を今、変更するというような状況ではないと思っています。』

ということで、ETFの質問なのに国債買入の話はするわ80兆円はめどですとか聞かれもしないのに(というのは上記URL先を確認してくらはい)答えていまして、一方で講演の方ではわざわざ量の手段の話をしている訳で、これはもう訳の分からんコミュニケーションの世界に突入したなあと思うのでした。










2019/11/07

お題「久々にプチマーライオンっぽかったのでメモメモ/今更ですが総裁定例記者会見」

まーたこのオッサンが余計なおしゃべりをしているのか。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKBN1XG2P7
2019年11月7日 / 04:11
FRBの政策はデータ次第、先手先手で対応を=NY連銀総裁

お前が先手先手で対応だか何だか知らんが無茶苦茶利下げバイアスをかける発言したのが7月〜10月の金融緩和合戦思惑でアヒャーの相場を作るわ、オペレーションがヘタクソで短期市場の金利をスパイクさせるわと無能の極みなので可及的速やかに天寿を全うして頂きたく存じます。

なお中身についてはボチボチ読んでいきます、というかFOMCのあと皆さん喋りまくりで日銀は日銀でネタがあって処理が追いつかんわ・・・・・・・・


〇プチ程度ではありますが久々にゲロゲロマーライオンっぽいのキタコレ(円債ちゃん)

・米国金利上昇と10年入札で前日の勢いが継続してプチマーライオンの巻(個人の感想です)

昨日の債券市場ちゃん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL3N27M1QL
2019年11月6日 / 15:25 /
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、長期金利は一時-0.075% 約5カ月ぶり水準

『 <15:20> 国債先物は大幅続落、長期金利は一時-0.075% 約5カ月ぶり水準

国債先物中心限月12月限は前営業日比66銭安の153円23銭と大幅続落して取引を終えた。米中通商協議に対する楽観的な見方からリスクオンの流れが強まり、朝方から売りが先行。10年債入札結果はやや弱めと受け止められ、金利上昇圧力が一段と強まった。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時、マイナス0.075%と5月28日以来の水準まで上昇した後、前日比5.0bp上昇のマイナス0.090%まで水準を戻した。』(上記URL先より、以下同様)

まあ何と申しますかここもと米国長期金利も最近変なお祭りになっているのかという感じで、先週のFOMCの後10年金利ベースで水曜木曜で15毛強くなったと思ったら今週は月曜火曜で15毛甘くなるとか、何を今さらジローな感じもする米中貿易摩擦ネタに右往左往しているように見える動き(実際はどうなのか知らん)でして、おまいらなんか変なものでも食ったのではないかと言いたくなる展開。円債ちゃんも引っ張られたんでしょうか先週末の引けでは先物154.40円だったり10年カレント▲18.5bpだったり5年カレント▲31.0bpだったりしてたんですよね。

でもって週明けの円債市場では「なんで!!なんでそんな変な方向ばかりに思い切りがいいのよ!!」(画像割愛)な金利押上げを意図したのかと小一時間問い詰めたい輪番減額が入ったもんで、MPMの後踏み上げだか新規買いだか知らんですが妙に威勢よく金利が低下していた(先物2日で63銭上昇な)所にこれをぶっこまれたもんだから火曜日がアイヤーと先物ベースで51銭下がって迎えた昨日の10年国債入札。

ということでここで同じく上記URL先になりますが10年国債入札の所の市況後講釈を拝読しますとこうなっておりまする。

『<13:00> 10年債入札結果、見方分かれる 国債先物は下げ幅拡大 

財務省が午後0時35分に発表した10年利付国債の入札結果で、最低落札価格は101円94銭(最高落札利回りマイナス0.094%)、平均落札価格は101円99銭(平均落札利回りマイナス0.099%)となった。落札価格の平均と最低の開き(テール)は5銭と、前月債の29銭から大幅に縮小した。応札倍率は3.62倍で前回(3.42倍)を上回った。

入札結果について、「テールが前回よりも大幅に縮小した。事前の水準調整により国内勢の買いが入り、無難な結果」(国内証券)との声が聞かれた。 一方で、「一部の投資家の応札が多かったようだ。それを除くと需要は強くなかったとの見方になり、先物が少し弱含んでいるようだ」(別の国内証券)との見方も出ている。』

ってな感じになっていますが、確かベンダーとかに出ていた事前の足切り予想が101.95辺りだと思いましたので足切りはほぼ無難、予想通りの足切りの割にアベレージが上なのと(前回債のテールは事故なので参照するのはちょっと)、市場推計では一部に札が偏っていたようなのですな。まあ前場引けの時点で▲9.5bpとだいぶ調整しておりましたのでニーズがあったということなのかも知れませんが、たぶん「強めの札が入っていた割には足切りが予想程度にとどまっているので、上記の引用部分のコメントにある後者の方(それを除くと需要は強くなかった)がまあそうですわな、ということになったんでしょうかね、よー知らんけど。

でまあ落札結果出てから暫く小動きっぽかったのですが途中から先物の叩き料理もそうですが5年がアイヤーという感じになり、先物153円カツカツまで下がっていったん戻ってまーた先物153円ドタまで下がってその後持ち直して引けにかけては先物ホイホイ戻るものの前日比66銭安とかまたダミアンみたいな値幅をするという相場ちゃんでしたな。

でもってその間10年カレントって安値▲7.5bpで6.5甘とかまでマークしてたと思うのですが、5年カレントが安値▲19bpで8甘とかマークしていまして、中期ゾーンのゲロゲロマーライオンでもあったんジャマイカと申し上げたくなるような展開でしたな。まあゲロを出し切ればスッキリしてまた食うもの食える(=買い出動できる)のでマーライオンも必ずしも悪い訳ではないのですが、しかし5年なんて前週末の引けが▲31bpでしたから2日で12bp食らうとか、本格的なマーライオンという程の事ではないかも知れませんが、久々にプチ(なのかな?)マーライオンなものを拝見してしまいましたですナムナムナム。

ということで一応さっきのロイターさんの大引け時点での市況後講釈の続きを引用します(一部)。

『10年債入札結果については、やや弱めと受け止められた。「マイナス0.10%を上回る水準まで事前調整が入ったものの、そこまで需要がみられなかった」(国内投信)との声が聞かれた。』

はい。

『現物市場では、 新発2年債は前日比5.0bp上昇のマイナス0.195%、新発5年債は同5.5bp上昇のマイナス0.215%。超長期ゾーンは、押し目買いが入り金利上昇幅を縮小した。新発20年債は前日比3.0bp上昇の0.255%、新発30年債は同2.5bp上昇の0.395%。新発40年債は同3.0bp上昇の0.425%。』

『TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間

2年 -0.199 -0.188 0.054 15:20
5年 -0.218 -0.21 0.06 15:20
10年 -0.094 -0.084 0.05 15:19
20年 0.252 0.262 0.028 15:20
30年 0.393 0.404 0.032 15:17
40年 0.413 0.425 0.026 15:17』

という訳で以下悪態になりますけどね・・・・・・・・


・円債以外の人には別に関係ないとは思うが円債村の村民とのコミュニケーションとしてはアレだったのではないかと

上記のように、昨日の市場ちゃんはベアフラットしておるわけですよ。

超長期はプラスという金利が存在するだけに押し目買いは入るというものでして、超長期輪番減額の結果売られたのは主に中期から先物(とタイミング的に入札が重なってしまった長期)であって、超長期ちゃんは押し目買い軍団の登場により10年20年で3毛ちょいフラットニングしているという事実が発生しておりまして、えーっとすいません超長期金利のフラット化がどうのこうのって言ってたような気がしますがご感想をお伺いしたいといった所ではありまして、一体全体日銀は何をしようとして超長期輪番をあのタイミングで減額したのかということでコミュニケーションどうなってるんだ、という風になると思うの。


ああ先に申し上げておきますと、金利水準全体が下がりながら超長期がスティープしても屁の突っ張りにもならないとアタクシは思うクチでして、金利市場の人たちがチューチュー頂きますパイの全体はあくまでも全体の金利水準じゃろと思うので、こうやって金利水準が上昇しながらフラットするのはそんなに問題があるとは思っていない(フラットで問題なのはブルフラット)のですがががががが。

まあそれはさておきスティープ化による弊害ガーと日銀の偉い人が言い、一方で政策金利には緩和バイアスガーと日銀の偉い人が言う、という中において、結果的には金利上昇を加速させるわ超長期のカーブは寝るわとなりますと「言ってることとやってることの整合性is何?」という話になりますし、そういうのが続いてくると「そもそも此奴らの情報発信を真に受けて良いのだろうか」という話になってきまして、そうなってしまうとコミュニケーションも蜂の頭も無い訳ですし、それはコミットメントだのガイダンスだの期待に働きかける政策(笑)だのの有効性をドンドン下げることになりますので、頼むからもうちょっと整合性というのを考えて情報発信をしてくと思う訳ですが、何せ最近の日銀ちゃんは「目先を凌ぎつつQQE+YCC政策を延命しているうちに情勢が好転するかもしれない」(なお国内の物価が上昇するのではなく海外が正常化モードに戻るのが情勢の好転である)という風にしか動いていないように見える(個人の感想です)ので、クソ粘りする間にコミュニケーションが益々グダグダになってきますわなあ、とか思うのでありました。

まあね、今回の値動きに関しては先週はFOMC後の米国金利に釣られている面があって、今週だって米国金利に釣られているというファクターがあるから、全部が全部日銀が悪いみたいなのを言うとそこまで言わんでもとは思いますが、超長期輪番減額プレイが出てしまったので日銀自作自演の債券市場ボラティリティとか言われても文句が言いにくい(個人の感想です)のは残念無念としか申し上げようがありませんな。

さすがに昨日の中期とか見てると「あーあーあー、黒田節に梯子外されちゃったんだなあ」とか言う空気を感じる(個人の感想です)訳でして、そういう思いの人が増えれば増えるほど金融政策のコミュニーケーションアカンタレになるんですよね、まあ元々コミュ障なのに真に受ける方が悪いとかいう説もあるがそれはあまりといえば甘利ではありますし。


ただまあ何ですな、
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N27M4MN?il=0
2019年11月7日 / 05:31 /
米金融・債券市場=利回り低下、米中協定署名後ずれ報道でリスク選好後退

幸か不幸か毎度おなじみのごとく喜ばせておいてまたシバキ材料の出てくるDVモラハラ貿易交渉がこのように展開して米国金利様が低下なさっておられますので、そうなるとまあ落ち着くんですかねえ、よー知らんけど。

いやこれが米中署名でヒャッハーとかなって米国様の長期金利が一段高で帰ってきて頂いておれば、もう一丁マーライオンとかになって臨時輪番の登場とかになると大変にオモシロ展開になる(不謹慎)ことになったのですが惜しい(超不謹慎)ですな。うんうん。

#なおしつこく申し上げますがベンダーの後講釈とプライスアクションを元に個人の感想成分が高めでお送りしておりますのでお間違えの無いようによろしくお願いいたします



〇出遅れまくっていますが総裁定例記者会見

名古屋の方の黒田節もあるのですがまずは総裁定例記者会見。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191101a.pdf


・なんでこうなったのという質問はそら来るわ

実質最初の質問はこれ。

『(問) 日銀は 9 月の会合で、経済・物価動向について、今回の 10 月会合で改めて点検するという方針を示すとともに、総裁もマイナス金利の深掘りを含 めた追加緩和について、「 前向きだ」ということを強調されてきました。今回、 マイナス金利の深掘りを見送ったわけですが、一方で、フォワードガイダンスの修正をして、将来の利下げを示唆するというかたちになったのだろうと思い ますが、どういう点検の結果に基づいてこういう政策の組み合わせにしたのか、その判断の内容についてお願いします。』

『(答) 今回の会合では、経済・物価の現状評価と見通しを取りまとめたうえ で、特に、「物価安定の目標」に向けたモメンタムについて、需給ギャップと予想物価上昇率等の観点から点検をしました。公表文の別紙に示されている通りですが、点検の結果、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる 惧れについて、一段と高まる状況ではないとの判断に至ったため、金融市場調節や資産買入れについて、現在の方針を維持することにしたわけです。 もっとも、海外経済の下振れリスクが高まりつつあるとみられるもと で、引き続き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な情勢にあることは事実であり、モメンタムが損なわれる惧れが高ま る場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる考えです。 今回の新たな政策金利のフォワードガイダンスも、こうした緩和方向を意識した政策運営を行うという日本銀行のスタンスを明確にすることを目 的として決定したものです。』

アタクシ実は会見のライブ映像見てないので(サーセン)ニュアンスとして「木で鼻をくくった対応」なのか「緩和バイアスに力を入れた対応」なのかがこの字面だけだとどっちとも判断できそうなのですが、少なくとも言えるのはこの感じだと踏み込んで緩和ですぜウハハハハハハ、という感じの踏み込みっぷりは無いなと。


・これ名古屋の講演(今日はネタにしない)でも言ってるけど藪蛇感が強いからもっとぼかすべきだと思う

ちょっと先に行きますが、

『(問) 総裁はこれまで追加緩和の方策として 4 つの手段、もしくはその組み合わせを常々おっしゃってきましたけれども、今回のフォワードガイダンスで は、長短金利の現状の水準もしくは下回る水準というように明記しました。今 後、追加緩和を行う場合は、金利の引き下げというのが第一の選択肢になっていくのかをお伺いします。』

って普通聞きますよね。しかも今回「明確化した」って言いながら政策金利のガイダンスを「現状維持か利下げか」って言ってるんだから普通に考えたら質問者のようになるし、アタクシだってそう思うわ。

『(答) 政策金利について、長短金利が現行の水準あるいは更に低下した水準が今後当分続くということを明記したわけで、緩和方向をより意識して政策運 営を行うことを金利のフォワードガイダンスで示したわけです。』

ん?????

『追加緩和の手 段としては、もちろん政策金利の引き下げ、資産買入れプログラムの拡大、マネタリーベースの増加ペースを加速するといった様々なオプションがあり、』

えーっとすいません長期国債の買入ペースやMBの増加ペースは絶賛大減速していますが(なお名古屋講演ではその質疑があったようなのですが今日はそこまで手が回りませんすいません)・・・・・・・・・・・

『具 体的に追加緩和を決めるときの経済・物価・金融情勢を踏まえて最適な組み合 わせあるいは改善した形で行うわけで、政策金利に限られているということはありません。ただ、あくまでも政策金利のフォワードガイダンスとして、現状 の低い水準ないしはそれを下回る水準が、かなり長い期間続くということをお 示ししたわけです。』

これもまた「日銀は何をしたいのかさっぱり分からん」の中に入る訳で、だったらあの「明確化」は何なんだとしか申し上げようがない(元々モメンタム維持の懸念が高まってこりゃヤバイとなったら追加緩和を躊躇なく実施って言ってるんだから、もし金利下げ以外もあるでよとかなったら何の明確化なのかまずます分からん)。


・物価の見通しが目先引き下げられているのに適合的期待形成に影響するような記載がない件について

『(問) 今回、物価の展望レポートの見通しを下方修正されましたが、そうな ると適合的な性格が強いインフレ期待にも影響を与えると思うのですが、今の インフレ期待は横ばい状態が長い間続いていることを考えると、経済は既に2%達成に向けたモメンタムをかなり失っているのではないかという見方もで きると思うのですが、いかがでしょうか。』

この理屈は分かる。なお回答は、

『(答) モメンタムについての評価は、別紙でかなり詳しく述べていますし、 参考資料の形で色々データもお示ししていると思いますが、2%に向けたモメ ンタムを評価するにあたって一番大きな要素は、やはり需給ギャップの動向と中長期的な予想物価上昇率の動向ということになると思います。』

いきなり蒟蒻問答モードにスイッチが入りました。

『需給ギャップ につきましては、製造業中心に輸出の弱さの影響を受けていますので、一時的 に若干プラスの幅が縮小するかもしれませんが、2021 年度までの見通し期間を通じてみると、やはり現在程度のプラスの需給ギャップが続くだろう、という のが 1 つです。』

そんなことは誰も質問していない。

『もう1 つは、予想物価上昇率ですが、これは一時下がってその後上がったのですが、今のところはずっと大体横ばい圏内で推移していて、2%に向け てまだ上昇していくという状況になっていないことは事実です。ただ、色々な予想指標をみますと、今の時点で下がっていくという状況でもない一方、上 がっていくという状況にもなっていないということです。』

これは酷い。質問しているのは「今後の」物価が弱含み予想になっているのは適合的期待に影響しないのか、という話しなのに現時点での話をしておる。

『いわゆる適合的な予 想形成という要素が強い日本においては、需給ギャップがプラスの状況が続いて、物価の上昇率が上がっていけば、当然、予想物価上昇率も上がっていくと 思いますので、プラスの需給ギャップが続くことが非常に重要ではないかと 思っています。』

いやだからそこの物価について足元下方修正してるじゃん、というのが質問なのに、まともに回答をしようという風になっていないのがもうねという感じです。


・超長期金利対策に関して

まあベンダーヘッドラインは黒田節ですが、実際の質疑を紙に落とした奴を見ると寧ろ質問を柳に風というか暖簾に腕押し糠に釘というか、そんな感じで適当に流している感が強い質疑応答で、つまんないので最後までワープします。

『(問) 総裁は、最近のインタビューなどで、超長期の金利が下がっているの は望ましくないというように言われていて、最近、黒田総裁の口先介入がよく 効くという噂を聞いてまして、総裁がそう喋ると金利が上がるという話も聞いています。』

そうかいな?まあこういうの調子に乗っていると効力無くなるし信認落ちるので使用には節度を持って。

『ただ、今回打ち出された、かつてない強力なフォワードガイダンス によりますと、現在の水準、または、それを下回る水準で推移するというわけ ですから、やはり超長期の金利は意図に反して下がってしまうという危険があるのではないかと思っているのですが、』

最初の口先介入が〜の所に加え「かつてない強力なフォワードガイダンス」とか実はこの質問者イヤミで言ってるだろと思いました。

『先程、新たな政策をとるには、そのと きに副作用対策は考えるということだったのですが、このフォワードガイダン スによって総裁自身が望まない超長期の金利の引き下げを招いてしまえば、自分で自分の首を絞めることになるのではないかという疑念についてどのよう に思われるでしょうか。』

と、前の方の極端な説明はここのマクラでして、いやもしこの質問者がさっきまでの部分を素で言ってたらちょっと小学校からやり直した方が良いと思ったのですがそういう懸念はここで払拭されました(^^)。

『また、それに対する対策、特に超長期の金利が下がら ないようにする対策についてはどう考えているか、お聞かせください。』

手段はないというのが正解なはずですが、どうも市場はコントロールできるもんだと考えている節のある黒田日銀ですので・・・・・・


『(答) 政策金利についてのフォワードガイダンスは、当然、長期の金利にも影響が出るということはその通りだと思いますが、私どもとしては特に超長期 の金利を下げる必要があるとは考えていません。』

ほう。

『むしろ、超長期の金利があま り下がり過ぎると、年金や生保の資産運用に影響し、間接的ではありますが消費マインド等にも影響が出る可能性がありますので、依然として超長期の金利 が下がり過ぎるのは好ましくないと考えています。景気対策という意味では、 短期・中期の金利が下がることが効果的だということが「総括的な検証」でも明らかになっています。そういう意味で、超長期の金利が下がった方が良いと か、あるいはこれによって下がるとは思っていませんが、仮にイールドカーブ が非常にフラット化してしまう状況があり得るとすれば、当然、資産買入れプログラムで超長期の国債の買入れを更に減額するなど、色々な方法があり得る と思っています。 』

って結局輪番減額しかネタが無いようだがもうだいぶ削減していますし、大体からして今週のように超長期輪番減額しても中長期の方が引っ張られてマーライオンになってカーブフラット化したりするんでありまして、何というかまあお前は何を言ってるんだという感が相変わらず強いのでありました。

#今日はこの辺で勘弁してつかあさい







2019/11/06

お題「金利が上がりそうな地合いで超長期輪番減額とな!!/展望レポート基本的見解物価の部分から/海外ネタメモ」

ほうほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191106/k10012165701000.html
英語民間試験延期 文科省 課題繰り返し指摘も公開せず
2019年11月6日 5時03分

『入試制度に詳しい、東北大学大学院教育学研究科の柴山直教授は「議事録が公開されなければ、国は結論ありきで進めていたと疑われてもしかたない。委員からの懸念をどうしてくみあげなかったのか疑問が残り、同じことが起きる可能性がある。問題点を、丁寧に検証するプロセスが求められている」と指摘しています。』(上記URL先より)

議事要旨に加えて議事録も公開しているし、委員からの意見も別途ダイジェストを公開する制度があっても結論ありきでいやなんでもありません。

〇海外ネタの雑メモ

・ローゼングレン総裁の反対意見から怒りを感じる

https://www.bostonfed.org/news-and-events/press-releases/2019/rosengren-dissenting-statement.aspx
Statement of Eric S. Rosengren, Commenting on Dissenting Vote at the Meeting of the Federal Open Market Committee
November 1, 2019

これですね、何が怒りかと言いますと、

『Fiscal and monetary policy are already accommodative. With labor markets tight, inflation near target, real GDP growing around estimates of its potential, and a moderation of the risks surrounding trade and Brexit, I believe further accommodation is not needed.』

労働市場はタイトで物価は目標近くで実質GDPは潜在成長率近辺で推移しており、貿易問題とブリクジットのリスクテンションが下がっているので追加緩和は必要ないと考える、と書いて・・・・・

『The table below contains current actual data on growth, unemployment, and inflation, as well as the median projections of Federal Reserve policymakers for these indicators in the fourth quarter.』

『Additional perspective can be found in my recent talk, Exploring Economic Conditions and the Implications for Monetary Policy.』

ということで、その下に3Qの実績値とSEPのメディアンの2019年見通しが3月から9月にかけて対して変わってねえじゃんというのを示しただけで終了ということで遂に(PDFバージョンだと)印刷すると1枚ペラ紙で終了となっております。

でもってですね、上記URL先の欄外左下の方に『Related Content』ってのがあって、過去のFOMC後に出した反対コメントが並んでいるのですが、例えば9月FOMCの

https://www.bostonfed.org/news-and-events/press-releases/2019/eric-s-rosengren-dissenting-statement.aspx
Statement of Eric S. Rosengren, Commenting on Dissenting Vote at the Meeting of the Federal Open Market Committee
September 20, 2019

を見ますと一応経済とか物価とかのグラフを出して反対理由の説明(骨子は同じですけど)をしておりまして、もう1回前の時は更にその図表の数が多かったのですが、3回目にして遂にペラ1で反対理由のステートメントを出すか、ということでして、「お前らこういう見通し出して現実の数字もこうなのに何で利下げするんじゃゴルァ」というのが静かな怒り心頭モードになっているなあ(黙って怒るってパターンな)と微笑ましく感じました。

ちなみにそこにある「my recent talk」はこいつですが先般ネタにした物件で、これも利下げ派に対して渾身の悪態という風情ではありました。
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2019/exploring-economic-conditions-and-the-implications-for-monetary-policy.aspx
Exploring Economic Conditions and the Implications for Monetary Policy
By Eric S. Rosengren
October 11, 2019



・ラガルド総裁講演とな(なおネタにするかは未定)

https://jp.reuters.com/article/lagarde-ecb-idJPKBN1XE2CE
2019年11月5日 / 07:58
ラガルドECB総裁、批判派の元独財務相を称賛

『[ベルリン 4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は4日、就任後初の講演で、ECB批判の急先鋒として知られてきたドイツのショイブレ元財務相を絶賛し、批判派を含むあらゆる立場の人々との協力に前向きな姿勢を示唆した。

1日に就任したラガルド氏は、ショイブレ氏の欧州統合へのコミットメントのほか、ベルリンの壁崩壊以来のドイツの分断解消で同氏が発揮した政治的手腕を称賛。講演では金融政策には言及しなかった。』(上記URL先より)

でもって講演の方はこちら。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2019/html/ecb.sp191104~bc0e09d455.en.html
Laudatory speech
Laudatory speech by Christine Lagarde, President of the ECB, for Dr Wolfgang Schauble
at the VdZ Publishers’ Night, Berlin, 4 November 2019

(ウムラウトとかアタクシのウィンドウズ標準テキストでサポートされていないのは勝手に修正してますサーセン)

ちょっとだけ斜め読みしたけれども確かにEUの理念がどうのこうのみたいな話で今の金融政策の話ではないですけれども、まあそっち系の話をしだすと何らかの理念的な話になってくるので直接金融政策に関連しなくても読んだ方が良い場合があるので熟読する。



〇黒田節が名古屋で鳴り響く中で超長期輪番減額とな!!

MPMレビューネタを連休中にぶち込まなかった(要因はアタクシのぐうたら)のでネタが滞留する中において金融市場局ちゃんから月末の輪番紙に続いて大ネタがぶち込まれて来るというこの多忙モード(急にネタが無くなる時との差が最近禿しいですわマッタクモウ)。

・超長期前半の輪番減額キタコレ

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191105.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,200 2019年11月6日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,400 2019年11月6日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2019年11月6日
国債買入(残存期間25年超) 300 2019年11月6日

>国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000
>国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000
>国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000

ちょwwwwおまwwwwww

えーっとですな、アタクシの記憶が間違えていなければ名古屋での黒田総裁の講演の方が先にヘッドラインでていたと思うのですが、まあいずれにせよ黒田総裁の講演の方は相変わらずの黒田節だった次第で、「政策金利に低下バイアス」という説明をしておった訳ですよ。まあそもそも黒田総裁の決定会合後の会見でも同様に低下バイアスを強調している上に、(ってこの辺りがまだネタに出来ていないのに書くのもスイマセンが)同日に実施された名古屋での講演では「利下げ以外の追加緩和もあるでよ」と量的拡大も追加緩和の選択肢という藪蛇になるからそれはヤメレという趣旨の言及まであった訳ですよ。

然るに、連休明けの昨日って月曜にリスクオーンからのSP最高値更新米債アチャーな展開となっておりまして、先週後半ってFOMC後に何か米国金利が盛大に下がってお蔭でMPM後の円債ちゃんも金利低下とかやっていた反動がどこからどう見ても来る、という日だし現実に寄りから先物ちゃんは26銭下がってスタートしていた訳でして、そんな日に超長期輪番を減額すると誰がどう見ても金利の上昇を加速するじゃろという所でしたが、何を急に思い切ってしまったのが華麗に超長期前半の輪番を減額してくるのでした。

でまあその結果先物大引けは50銭安とかになって金利上昇でござるの巻になったのですけれども、「超長期の金利が下がり過ぎるとイクナイので過度な金利低下を防ぐために超長期の輪番減額して牽制します」というようなのではないこのタイミングでの輪番減額というのはさすがにこれは市場の方から「日銀は超長期の金利を押し上げようとして金利が上昇しそうなタイミングで輪番を減額して金利上昇に拍車を掛けた」と言われても仕方がないプレイな訳ですな、うんうん。


いやまあ別にこちとら金利が上がってくれないと円債から生まれる収益(金利市場の人って究極的には債券発行とかしている債務者が払うクーポン収入があるからプラスサムの世界(おまいら調達コスト払ってるじゃんという指摘は脇に置かせてくらはい)とか思っているのでマイナス金利とかそもそも以ての外だと思うのよねー)があばばばばーになるので金利が上がったから困るとかいう話しでもないのですけれども、これってコミュニケーションポリシーどうなってますねんという話になると思うのよね。

つまりですな、直近のMPMでは「政策金利の引き下げバイアスを明確にした」という(なお先日来申し上げているようにアタシャこれはただのブラフというかやるやる詐欺だと思ってますけどそれはさておきまして)のを示し、更に総裁会見とMPM直後一発目に華麗に黒田総裁の講演をぶち込んで、政策金利引き下げバイアスについて説明しているのに、やっているオペレーションは「日銀は金利を上げようとしている」と捉えられても仕方がないものを実施している訳でして、「言ってることとやってることが違う」という事案(実は今に始まった話ではなくてそもそも9月のMPMからの緩和バイアス黒田節からの現状維持にインチキガイダンスなのですからその時点で言行不一致なのですけれども)が発生するというのは、これはまあ中央銀行としてコミュニケーション真面目に取る気があるのかと小一時間問い詰めたいという事案ではありますな。

いやまあ言い訳するとすれば、今月の超長期輪番の残り2回はどちらも入札の前でタイミングが割と接近しているからその時にやるのも何ですから(次の超長期ゾーン入札は来週火曜日なので時間的にちょっと先)今月の減額するなら昨日ですよとか、そもそもオペでは政策メッセージを出すことはないですから関係ないです何をおっしゃってるんですかとか、まあそういう言い訳が思い浮かぶのではありますが、ここで減額したら日銀が超長期金利を押し上げようとしている、と円債の中の人たちにメッセージを出すことになってしまうというタイミングなのですから、減額しないで様子見という選択肢もあったと思うのですが、まーた毎度の妙なところで思い切りがいいのよ!!(画像割愛)なオペ減額ではありますな、とは思ってしまいます。

つーかですね、月末の物価連動国債輪番増額予定公表と言い、今回の金利が上がりそうな時にわざわざ超長期減額ぶち込んで来るプレイと言い、何かなりふり構わずに自分の意志らしきものをアピールしようとしていませんかMPM以降何か妙になりましたな、という感想ではございます。

一つ一つのパーツでやりたいこととか言いたいことは分かるのですが、全体としての整合性が元々おかしかった所に、今回のMPM通過したら更にその整合性が露骨におかしくなってきているなあというのが印象でして(個人の感想です)、なんか変なことでも起きていなければ良いのですが、と懸念するところではありまする、はい。


・でもって減額したらアタクシの試算的には精々3兆になるんだが来年の長期国債増加額

例によって
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/index.htm/
営業毎旬報告

なんぞを見ながらつらつらと。

先日来申し上げておりますように、暦年2020年って日銀保有の長期国債の償還がドバドバと来まして、昨日出ていた直近バージョンでありますところの10月末だと額面ベースで56兆3,938億円の償還額だと思うのですよ(なお売買参考統計値のエクセルから各銘柄の償還日を取ってきて人力ソートしているので、間違えてはいないと思うのですが間違ってたらゴメンやで)。

でもって今回の減額を前提にしますと残存1年超の月間買入額(変動利付はメンドイので1年超の方に入れて計算、1か月分に均す)が49,400億円になりますので、年間で計算すると59兆2,800億円という計算になりますので、差分が28,862億円とかいうかなりお洒落な数字になってしまいますなこりゃ。

現時点で暦年2021年の償還額が45兆6,411億円ですが、これが今後どの位になるのかとか次第ではありますが、確かにこちらがそんなに増えなければ「2020年は偶々日銀保有長期国債の大量償還に当たったので暦年ベースで長期国債保有残高が減っているように見えるが、先々ドンドン減る訳ではない」(キリリッ)とか言い出しても不思議ではない展開ですし、まあそれ以前の問題として「マネタリーベースに関しては長期国債以外の資産の買入もあって増加傾向は続いているので別にオーバーシュート型コミットメントを逸脱している訳ではない」(キリリリッ)と言ってしまえば無問題である、と言われてしまえばその通りなのですけれども、いやー80兆円の文言があるのに3兆ですよ3兆。


まあ何ですな、先に出ていた物価連動国債の増額の方はまだMB拡大に(年間1200億円の増額だから誤差の範囲内ですけれども)寄与する方向の話だからBEIに働きかけるとかそういう悪態はあっても「MB増加のコミットメントもありますしデヘヘ」とかいう話になるんですけれども、減額の方は何せ減額ですから量の話の逆やんということでして、いやー何かもう(さっきも申し上げましたが)整合性が取れないことに関して開き直るというか悪びれないというか、凄いことになってきましたなこれはという感じではございまする。


#などというのを自分で作ったエクセルを念のため確認しながら悪態交じりにかいておりましたら時間が無くなってしまいましたので正調黒田節のネタをやっている時間が無くなるという本末転倒感漂う時間配分の悪さェ・・・・・・・・・・・・・


〇という訳で展望レポート基本的見解の続きですいませんすいません

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1907a.pdf(前回)

・物価の中心的な見通しは主文が全文一致なのですが需給ギャップの記述に微妙な点が

鏡のところでもちょっと申し上げましたが、物価見通し自体は毎度おなじみの願望レポートになっておるわけでございますけれども、その主要コンポーネントというかそこしかない需給ギャップに関しての記述がどうも、という訳でちょろっと比較します。

『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の 引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。』(今回)
『消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の 引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。』(前回)

へえへえそうだっか。

『こうした動きには、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣 行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げ に対する慎重な見方が明確に転換するには至っていないことに加え、企業の生 産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みや近年の技術進歩、弾 力的な労働供給なども影響している。また、公共料金や家賃などが鈍い動きを 続けていることも、物価の上がりにくさに影響しているとみられる。こうした 物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消には時間を要しており、物価のマクロ 的な需給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予 想物価上昇率も上がりにくい状況が続いていると考えられる。』(今回)

『こうした動きには、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣 行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや家計の値上げ に対する慎重な見方が明確に転換するには至っていないことに加え、企業の生 産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みや近年の技術進歩、弾 力的な労働供給なども影響している。また、公共料金や家賃などが鈍い動きを 続けていることも、物価の上がりにくさに影響しているとみられる。こうした 物価の上昇を遅らせてきた諸要因の解消には時間を要しており、物価のマクロ 的な需給ギャップへの感応度が高まりにくく、適合的な期待形成の力が強い予 想物価上昇率も上がりにくい状況が続いていると考えられる。 』(前回)

現状判断および言い訳全文一致キタコレですが、いつまで「時間を要しており」なのでしょうかもしかしたらそれは時間を要するのではなくて経済構造にビルトインされているのではないでしょうか、などと言ってもどうせ馬の耳に念仏。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落 の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラ スの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景 に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、今回の物価 の見通しを従来の見通しと比べると、原油価格の下落などを背景に、見通し期 間の前半を中心に下振れている5。 』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャッ プがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることな どを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。なお、今 回の物価の見通しを従来の見通しと比べると、概ね不変である6。』(前回)

見通しに関しても「当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも」という文言以外は同じになっていまして、見通しが変わらんのだからそちらの面から見ると政策も変わらんとなる、という構成になっているのですが、ただ気になるのはこの需給ギャップの件で、経済見通しの方で先行き「いったん潜在成長率を幾分下回る成長になると見込まれる」というのがありますので、その時には需給ギャップに下押し圧力が掛かる訳ですよね。でもってまあそこまで押さないんだったらこのシナリオ通りではあるのですが、何かの拍子に一時的であっても需給ギャップ(の推計値)がゼロカツカツとかうっかりマイナスとかになってしまうと、その時って思いっきりメインシナリオ崩壊の図に近くなって来ると思うのですけれども、その辺大丈夫なのかよというのはある。

『消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズム について、一般物価の動向を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1 に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、引き締まった状態にある労働需給や高水準の資本稼働率を反映して比較的大幅なプラスとな っている。先行き、海外経済の減速や消費税率引き上げなどの影響からプラス 幅を縮小する局面もみられるものの、景気の拡大基調が続くもとで、均してみ れば、現状程度のプラスを維持するとみられる。こうしたもとで、賃金上昇率 の高まりなどを受けて家計の値上げ許容度が高まり、企業の価格設定スタンス も積極化していけば、価格引き上げの動きが拡がっていくと考えられる。 』(今回)

『消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズム について、一般物価の動向を規定する主たる要因に基づいて整理すると、第1 に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、引き締まった状 態にある労働需給や高水準の資本稼働率を反映して比較的大幅なプラスとな っており、先行きについても、そうした状態を維持するとみられる。こうした もとで、賃金上昇率の高まりなどを受けて家計の値上げ許容度が高まり、企業 の価格設定スタンスも積極化していけば、価格引き上げの動きが拡がっていく と考えられる。』(前回)

基本的な部分は前回と同じですが、需給ギャップに関する記載の所で「プラス幅を縮小」するものの「均してみれば」現状程度のプラスを維持、という微妙な記載になっておりまして、ギャップの所これで大丈夫なのかというのは気になるところではあります。

『第 2 に、中長期的な予想物価上昇率は、足もとは横ばい圏内で推移してい るが、先行きについては、上昇傾向をたどり、2%に向けて次第に収斂してい くとみられる。この理由としては、@「適合的な期待形成」6の面では、現実 の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、 A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目 標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率 を押し上げていく力になると考えられることが挙げられる。 』(今回)

『第 2 に、中長期的な予想物価上昇率は、足もとは横ばい圏内で推移してい るが、先行きについては、上昇傾向をたどり、2%に向けて次第に収斂してい くとみられる。この理由としては、@「適合的な期待形成」7の面では、現実 の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、 A「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目 標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率 を押し上げていく力になると考えられることが挙げられる。 』(前回)

インフレ期待の記述はもはやお経ですな、全文一致全文一致。

『第3に、輸入物価についてみると、既往の原油価格下落が、当面、エネルギ ー価格の下落を通じて消費者物価を相応に下押しすることが見込まれる。もっ とも、その後は、そうした下押しの影響は次第に減衰していくと予想される。』(今回)

『第3に、輸入物価についてみると、既往の原油価格下落は、当面、エネルギ ー価格を通じた消費者物価の下押し圧力となると予想される。 』(前回)

ここも前回とほぼ同じ話(先行き影響が減衰するというのが入った)。

『この間、女性・高齢者の労働参加の高まりや、企業の生産性向上に向けた取 り組みの強化は、長い目でみれば、物価上昇圧力を高める方向に作用していく と予想される。すなわち、こうした動きを受けて、経済全体の成長力が高まっ ていけば、企業や家計の支出行動が積極化していくことが期待できる。 』(今回)

『この間、最近の女性・高齢者の労働参加の高まりや、企業の生産性向上によ るコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みの強化は、長い目でみれば、物価上 昇圧力を高める方向に作用していくと予想される。すなわち、こうした動きを 受けて、経済全体の成長力が高まっていけば、企業や家計の支出行動が積極化 していくことが期待できる。』(前回)

今回何故か「コスト上昇圧力の吸収に向けた(取り組み)」というのが抜けているのですが、これはコストをパススルーする動きが出てきている(キリッ)とでも言いたいのかな??????

#ということで本日はこれで勘弁






2019/11/05

お題「引き続きMPMレビュー関連などなど」

高級腕時計の窃盗はいけませんなあ(一般論です)。
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20191102/GE00030239.shtml
セコム社員が緊急出動先で窃盗か 高級時計などを盗んだ疑い
更新:2019/11/02 12:20

〇そういえば遂にモメンタムに直接働きかける荒業キタコレ(11月の国債買入日程)

まーた今月はプレフラの17時に公表するのか(プレフラってまだやってるんでしたっけ?)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191031d.pdf(今回)
当面の長期国債等の買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしてお り、当面、以下のとおり運営することとしました(2019年11月1日より適 用)。
── 次回公表は2019年11月29日17時を予定。』

ということで毎度の輪番表ですがごしゃごしゃ動かしたのは前回でしたな。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel190930c.pdf(前回)

#ちなみに今見ていて下の比較部分、先月の10-25を減額したと書いているのにうっかり減額前のレンジを書いている(元の数字から減額したと書いているにも元の数字ェ・・・・・)というのに気がつきましたすいません

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:3000-5500、月4回(変更なし)
3−5年:2000-4500、月4回(変更なし)
5−10年:2000-5000、月4回(変更なし)
10−25年:500-2000、月3回(変更なし)
25−40年:0-500、月3回(変更なし)
物価連動国債:300、月2回(回数は同じ、250→300に増額)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

大本営キターーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

BEIに直接働きかける政策キタコレという所でございまして、買入額20%増ですよ20%ということで、まあ確かにぶっこくちゃんのBEIが西方浄土という感じでございまして、もう見てらんない数値になっている、という誠に残念な件はあるのですが、折角物価連動国債市場を育成しようとしているのに日銀の介入を深めてしまったら市場が健全に育成されないじゃないですかヤダー(棒読み)という風情ではありますけれども、日銀ちゃん遂に物価目標達成に向けたモメンタムのうち、需給ギャップはどうにも成らん(なお金融緩和によってギャップの比較的大きなプラスが維持されるという事になっている)のですが、インフレ期待(なお金融緩和によって期待に直接働きかける事になっていた)に関して、置物先生も大好きなBEIを物価連動国債の買入を拡大することによってよーしパパ(自粛)しちゃうぞーとか大本営発表も書類を抱えて逃げ出す金融市場局の側面射撃が登場の巻。

いやあのですね、需給が悪いから何とかかんとかとか言いたいんでしょうなあというのは分かりますが、名目金利そのものに与える影響が小さくて、これで見るのは基本BEIなんですけれどもそういうものの需給が悪いから買入を日銀が増やすってそれは如何なものかって感じで、しかもこれ一応は育成途上の市場の筈なんで、需給が悪いから日銀が買入拡大とか言っていると、その需給が悪いのが何らかの特殊要因(かつてのCPI基準改定ショックとかリーマンショックみたいなの)ならまあ分かるけど、そうでもない平時においてやるわ、しかも展望レポートで物価モメンタムの再点検を行った直後に買入拡大するとか、自らツッコミ待ちをしているとしか思えないので、仕方が無いから突っ込んで差し上げておきます。

・・・・・・ということですが、更に突っ込んで考えてみると、自分からわざわざ痛くもない腹を探られにいくようなタイミングで物価連動国債の買入拡大を実施する、というのはこれ金融市場局の側面射撃なのではなく、政策委員会に対する無慈悲な砲撃であって、いわゆる順法闘争(って若い衆は知らんですよねレッツ検索)って奴だったら更に面白くて味わいがあるのにとか考えたりして(たぶんそれは考えすぎ)、なんでまたこのようなタイミングで特攻するのでしょうかねえと。



〇という訳で展望レポート基本的見解

10月会合って以前もQQE2とかあって、そういう時には3連休潰して更新したりしておった訳ですが、どうにもこうにもそこまでのパワーが起きなかったのと、どうせ次のネタは12月のFOMCがどっちに転ぶかという話で、ECBがすっかりお休みモードになってきたので(ただECBはマイナス金利をどうするとかいう話が徐々に広まって来そうなのでそっちも見逃せない)まあボチボチと成敗して参ります(とぐうたらの言い訳をする)。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1907a.pdf(前回)

前回基本的見解は既にHTML版もあって、HTMLの方がコピペが楽なのですが、比較引用する関係でどっちもPDFバージョンから引用します。

・鏡の理屈の時点で難解ホークス

最初の<概要>って奴が所謂「鏡」になります。

まずは1ポツ目。

『日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要の波及は限定的となり、2021 年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる。』(今回)
『日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021 年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる2。』(前回)

海外経済の減速の影響が「受ける」から「続く」となっておりまして、これはまあ声明文とか総裁会見でもありましたし、基本的見解の本文にもありますが、「海外経済の回復が当初想定よりも遅れている」という認識をここで示したものです。何せ年度後半から回復するって元々のシナリオがあったので、そろそろ回復基調が見えてこないと申し開きができませんからこれは降参しています。

しかしながら、ここで「国内需要への波及は限定的となり」とか、これは(詳しいのはパスしていますが)金曜日にネタにしたモメンタムの点検の中でああでもないこうでもないと説明していましたが、設備投資を中心にした国内需要は、海外経済の減速の影響とは関係ないところでレジリアントなので、当初のメインシナリオの海外経済見通しが下振れてもヘーキヘーキとかいう理屈を繰り出している訳ですな。

『輸出は、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。国内需要も、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加基調をたどると見込まれる。』(今回)

『輸出は、当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。国内需要も、消費税率引き上げなどの影響 を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加 基調をたどると見込まれる。』(前回)

よって輸出の所も弱めの動きが「続く」になっていますが後は同じということで、基調的な部分での現状判断と先行き見通しには変化が無い(数値自体は3ポツにあるように下がっています)ということで、モメンタムは維持という事になる訳ですな、うんうん。

2ポツ目。

『先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面原油価格の下落の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラス の状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いている。中長期的な予想物価上昇率は 横ばい圏内で推移している。もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、価格引き上げの動きが拡がり、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まる とみられる。この結果、消費者物価の前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。 』(前回)

前回までは物価が中々アガランチ会長であることの言い訳文言がありましたが、今回は点検したからそっちに行ったということだとは思いますが、これを機にどうせ次回以降も言い訳文言は外して今回の方式に戻すんじゃないかと思いますけれども(本文や全文では説明は続いています、為念)、先行きの需給ギャッププラスの状態を続けるのとインフレ期待が高まる云々で上昇していくという希望的観測はそのまま。

というのは良いのですが、「当面原油価格の下落の影響などを受けつつも」の「など」とは何ぞやという感じでありまして、この説明は基本的見解の本文では特に言及が無くて、全文の方を見ますと「電気代等のエネルギー価格の下落」という説明になっていまして、それは原油価格の下落の影響でエエンチャウノかと思いますが、わざわざこちらに「など」がついているのって、それ以外の要因も実は懸念してるんちゃいますかという微妙感はありますな。

3ポツ目。

『従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の成長ペースの持ち直し時期の遅れから、幾分下振れている。物価については、原油価格の下落などを背景に、見通し 期間の前半を中心に下振れている。』(今回)
『従来の見通しと比べると、成長率、物価ともに、概ね不変である。 』(前回)

半年に1回下方修正するのはお約束ですが、海外経済の成長ペースの持ち直し時期が遅れるがものの、国内需要への波及は限定的だから基本的な見方は変えないけれども、見通しは下振れていて、かつリスクは海外のせいで下方に大きい(4ポツ目にあります)とか、限定的になったり下方修正したりリスクは大きいままと言ってみたり、何かもう自由自在過ぎて何が何だか。


4ポツ目。

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリ スクの方が大きい。物価の見通しについては、経済の下振れリスクに加えて、中長期的 な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクの方が大きい。2%の「物 価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引 き続き注意深く点検していく必要がある。 』(今回)

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリ スクの方が大きい。物価の見通しについては、経済の下振れリスクに加えて、中長期的 な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクの方が大きい。2%の「物 価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引 き続き注意深く点検していく必要がある。 』(前回)

はいはい全文一致全文一致。


・本文に入って現状判断ですがまるでカワランチ会長

まずは『1.わが国の経済・物価の現状 』ですが。

『わが国の景気は、輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響が引 き続きみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもと で、基調としては緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみ られるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調 としては緩やかに拡大している。』(前回)

鏡の1ポツにありますように現状の基調判断に変更はありません。

『海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きが続いている。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は 増加傾向を続けている。個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。 住宅投資と公共投資は、横ばい圏内で推移している。以上のように、輸出は弱 めの動きが続いている一方、国内需要が増加していることから、鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっており、労働需給は引き締まった状態が続いている。』(今回)

『海外経済は、減速の動きがみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きとなっている。一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加しており、一部では前回増税時よりも小幅ながら消費税率引き上げ前の需要増もみられ始めている。住宅投資と公共投資は、横ばい圏内で推移している。以 上のように、輸出は弱めの動きとなる一方、国内需要が増加していることから、 鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっており、労働需給は引き締まった状態が続いている。』(前回)

海外経済と輸出の「引き続き」という変更は鏡と同じであとは基本同じという変化なしなし攻撃。個人消費のところでも「消費税率引き上げなど」ってのがあって、全文の方を見ると大型連休の反動と夏場の天候不順ってのが記載されていましたです。

『この間、わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消 費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台前半となっている。 予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、 消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台半ばとなっている。 予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(前回)

物価の現状判断が下がっていますがこれは定性評価じゃなくて定量評価部分なのでそうなるところ。


・先行き見通しも謎の理屈で基調判断が同じになる

『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し 』に参ります。まずは『(1)経済の中心的な見通し 』

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需 要への波及は限定的となり、2021 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調 が続くとみられる。 』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、2021 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。 』(前回)

鏡にある通りの理屈で基調判断は変えていません。

『海外経済については、成長ペースの持ち直し時期がこれまでの想定よりも遅 れるとみられる。そのため、輸出は、当面、弱めの動きが続くことが見込まれ る。もっとも、海外経済は、各国のマクロ経済政策の効果発現やIT関連財の グローバルな調整の進捗などを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成 長していくとみられる。こうしたもとで、わが国の輸出は緩やかな増加基調に 復していくと予想される。 』(今回)

『すなわち、当面のわが国の経済を展望すると、海外経済の減速の影響を受け て、輸出が弱めの動きとなるほか、』(前回)
『その後についてみると、海外経済は、中国などにおける景気刺激策の効果発 現やIT関連財のグローバルな調整の進捗などを背景に幾分成長率を高め、総 じてみれば緩やかに成長していくとみられる。こうしたもとで、わが国の輸出 は緩やかな増加基調に復していくと見込まれる。』(前回)

前回は目先減速からの拡大、という2段階の説明になっているので、記載が2か所に分散されていますので変な比較引用になっております。でまあさすがに海外経済の前提が崩れたのでここの説明はクドクドと長くなっていますな。

『国内需要については、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えな どを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカ ニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。すなわち、設備投 資は、海外経済の減速の影響から製造業を中心にいったん増勢が鈍化するほか、やや長い目でみれば、資本ストックの積み上がりなどが減速圧力として作用す るものの、緩和的な金融環境のもとで、都市再開発関連投資、人手不足に対応 した省力化投資、成長分野への研究開発投資などを中心に、緩やかな増加を続 けると予想される。』(今回)

『設備投資についても、幾分減速することが 見込まれる。』(前回)
『国内需要は、消費税率引き上 げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環 メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。すなわち、設 備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりなどが減速 圧力として作用するものの、緩和的な金融環境のもとで、景気拡大に沿った能 力増強投資、都市再開発関連投資、人手不足に対応した省力化投資などで、緩 やかに増加していくと予想される。』

「景気拡大に沿った能力増強投資」がしらっと「成長分野への研究開発投資」に差し替えになっているのがチャーミング。

『個人消費も、消費税率の引き上げの影響2からいったん下 押しされると見込まれるが、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増 加傾向をたどるとみられる。』(今回)

『もっとも、個人消費は、雇用・所得環境の改善が続くもとで、 2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げ前の需要増もあって、増加 を続けるとみられる。』(前回)
『個人消費も、消費税率の引き上げの影響3か ら下押しされる局面もみられるものの、雇用・所得環境の改善が続くもとで、政府の消費税率引き上げに伴う対応の効果もあって、緩やかな増加傾向をたど るとみられる。』(前回)

消費増税対応の効果がなくなっておる。

『この間、政府支出は、災害復旧・復興関連工事や オリンピック関連需要、国土強靱化等の支出拡大から 2020 年度にかけて増加 を続けたあと、高めの水準で推移すると予想している。このように、海外経済 の減速の国内需要への影響は、限定的なものにとどまると見込まれる。 』(今回)

『公共投資も、オリンピック関連需要や自然災害を受けた 補正予算の執行、国土強靱化等の支出拡大から増加すると考えられる。』(前回)
『この間、公共投資は、2020 年度にかけて増加を続けたあと、 2021 年度も高めの水準を維持すると予想している。 』(前回)

公共投資の部分が説明長くなっているなおい。


という需要項目別判断の後の見通しですが。

『こうしたもとで、わが国の経済は、いったん、潜在成長率3を幾分下回る成 長となると見込まれるが、その後は、緩やかに成長率を高めていくことから、 均してみれば、潜在成長率並みの成長を続けるとみられる。なお、今回の成長 率の見通しを従来の見通しと比べると、海外経済の成長ペースの持ち直し時期 の遅れから、幾分下振れている。』(今回)

『こうしたもとで、わが国の経済は、均してみれば、潜在成長率4並みの成長 を続けると見込まれる。なお、今回の成長率の見通しを従来の見通しと比べる と、概ね不変である。 』(前回)

前回は「均してみれば」とファジーな表現でしたが今回は「いったん、潜在成長率3を幾分下回る成 長となると見込まれるが」になっているのですが、さきほどの鏡でありましたように、一方で需給ギャップはプラスを維持するみたいな書き方になっているので、そこまで下押ししないという事になっていますが、これ下押しが深かった場合にどうするつもりなのかは結構なみものではありまする。

でもって以下の部分は最早お経なのでどうでも良いが一応の確認だけ。

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金 利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は 見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している4。また、金融機関 の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家 計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融 環境が維持されると予想される。 』(今回)

『こうした見通しの背景となる金融環境についてみると、日本銀行が「長短金 利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、短期・長期の実質金利は 見通し期間を通じてマイナス圏で推移すると想定している5。また、金融機関 の積極的な貸出スタンスや社債・CPの良好な発行環境が維持され、企業や家 計の活動を金融面から支えると考えられる。このようにきわめて緩和的な金融 環境が維持されると予想される。』(前回)

全文一致キタコレ。


『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略 の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による設備投資や生産性向上に向けた取り組みなどが続くなかで、見通し期間を通じて 緩やかな上昇傾向をたどるとみられる。また、日本経済の成長力の高まりとと もに自然利子率が上昇すれば、金融緩和の効果も高まっていくと考えられる。 』(今回)

『この間、潜在成長率については、政府による規制・制度改革などの成長戦略 の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生 産性向上に向けた取り組みなどが続くなかで、見通し期間を通じて緩やかな上 昇傾向をたどるとみられる。また、日本経済の成長力の高まりとともに自然利 子率が上昇すれば、金融緩和の効果も高まっていくと考えられる。 』(前回)

どさくさに紛れて潜在成長率の話の中に「設備投資」がしらっと入っているのですが大丈夫かいな・・・・・・・・・

#という所で時間が無くなったので続きと総裁会見は明日にでも








2019/11/01

お題「MPMレビュー:コミュニケーションが誠にアレで落涙を禁じ得ない」

お前が言うな以外の感想が無い。
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-fed-idJPKBN1XA2D8
2019年11月1日 / 02:45 /
トランプ大統領、FRBに利下げ継続要求 「米の競争力阻害」


〇点検した結果現状維持で謎のフォワードガイダンスワロスワロス(声明文)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k191031a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k191031a.pdf(前回)

今回は展望レポート回なので声明文の方には経済物価のアセスメントは記載されませんので、政策云々の所だけが比較対象な訳です。

・何だこの政策金利のフォワードガイダンスは????(憤怒)

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、「物価安定の目標」 に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まる状況ではないものの、 引き続き、注意が必要な情勢にあると判断した1。』(今回、以下断りのない限り暫く今回声明文から引用)

脚注は、

『1 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、前回会合で示した方針に基づき、経済・物価動向を改めて点検し、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを評価した。その結果は、別紙のとおりである。』

ということですが、そのモメンタムちゃんは「一段と高まる状況ではないものの、引き続き、注意が必要な情勢にある」って何だよそれという感じですが、その次がご案内のフォワードガイダンス。

『こうした認識を明確にする観点から、以下のとおり、新たな政策金利のフォワードガイダンスを決定した(注1)。』

注1についてはあとで。

『日本銀行は、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』

いやー申し訳ないですがアタクシこれ見た瞬間爆笑の発作を禁じ得なかったというか大爆笑しました。

まずですな、「「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間」ってお前それなんだよという話でして、そもそもモメンタム自体がフワフワした話なのに、それが「損なわれる惧れ」というのがジャッジメンタルな話なうえに「注意が必要」ってのもジャッジメンタルでして、これをフォワードガイダンスというのはフォワードガイダンスに失礼(ナンジャソラ)じゃろと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

何せこのガイダンス、ジャッジメンタルな上にジャッジメンタルを重ねたものを「条件」らしくしていますが、これ極端に言えば「モメンタムが損なわれる惧れが払拭した」っていう事にしてしまえばその瞬間に利下げ無しどころか利上げまで可能というオソロシスな話(時期を外しているので極端にいえば次回会合でも可能)な訳でして、いやまあ勿論今の黒田日銀にその気は無いでしょうけれども、これって米国の緩和モードがまた正常化モードに戻って、ECBがマイナス金利撤回方向に向かうような外部環境の変化でも起きようもんなら日本も利上げワンチャンあるでって話ですわな。


だいたいですな、声明文項番3(前回声明文だと項番5)の最後の所にある文言が、

『特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、 躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

『特に、海外経済の動向を中 心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向け たモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注3)。 』(前回)

と同じ(これは7月会合以降の文言)な訳ですが、ここに有りますように、そもそも論として「モメンタムが損なわれる惧れが高まる」場合には「追加緩和を行う」のは前から言っている事なのでして、それだったら「モメンタムが損なわれる惧れに注意が必要」な時に政策金利の引き上げをする訳はない(政策金利の引き上げを追加緩和という詭弁をぶっこむことが出来た場合はその限りではありませんが、笑)のであって、その間って追加緩和をするか現状維持かのどちらかしか選択肢が無い訳ですよ。

・・・・・・となりますと、これ「こうした認識を明確にする観点から」とか言ってるけれども、声明文の最終項番にある最後の文言を繰り返しているだけに過ぎない訳で、何が「明確にする観点」じゃこのスットコドッコイただの反復表現じゃヴォケという話であって、何も変化が無いという事なのですが、例によって例のごとく、どこぞのベンダーの英文ヘッドラインでは「ガイダンスをstrengthenした」みたいなのがホイホイと流れていたり、どこぞの株式系何とかストだったかなと思いましたが「フォワードガイダンスを強化したので云々」みたいなコメント(ヘッドラインしか見てないので中身は知らん)が出てみたりと、さっそく目くらまし効果が出ているのですが、何度も申し上げますように、このフォワードガイダンスらしきものは元々声明文の最後の部分で示されているものの反復表現に過ぎないのであって、これを捕まえてヒャッハーとか言ってるのは日銀声明文の読み込みが足りないだろとさすがに申し上げざるを得ません。

まあ敢えて変化について申し上げますと、この書き方によって「追加緩和をするときには政策金利(長期か短期かその両方かは指定されていない)を引き下げる」というのが明確になったという話しですが、これとてそもそも論としてMB拡大ペースの引き上げと国債買入ペースの拡大という追加緩和の選択肢については事実上不可能(もしそれを言い出したらその前に散々ペースを落としていることについての申し開きをしないと行けなくなってただの藪蛇)なので、端から利下げ以外の選択肢ってロジカルに言って存在しなかった(ETF買入拡大だけで追加緩和というのはかなり恥ずかしいのですがまあ一応それは無くはないです、念のため)のであって、つまり「次の緩和は政策金利引き下げ」を明確にしたとは言いましても、それもまた今の状況を考えたら当たり前の話であって、新しい情報でも何でもない、ということになります。

という訳で、本質的に何も新しい話が無いのに「明確にする」って何だよという話なのですし、カレンダーの日付取れてるからうっかりしたらガイダンス後退じゃねえかという感じでもあるのですけれども、まあ声明文の最後の部分に書いてあることの意味が読み取れない人たちのために反復表現をして下さったということですねわかりますってことですけど、こんなの「振り上げた拳を下ろすのに目くらまし入れただけ」だし、それを仰々しくフォワードガイダンスでございとかいうのってコミュニケーションとして如何なものかと言わざるを得ないですな。

いやね、まあここまでの政策運営が昭和の温泉旅館かという感じで、建て増し建て増しを繰り返していて、そもそもの最初の建造物である置物マネタリーベース直線一気理論が建造物の名に値しない欠陥物件なのにそれを残しながら建て増しを繰り返してきたから、今更クリアカットな建築物が作れなくてグロテスクの極みになっていて、しかもこれをスクラップにするのは面目玉上無理がある、ということで建て増しの都度コミュニケーションというか過去との整合性が無茶苦茶になるというのは分かるのですが、中央銀行のコミュニケーションとしてそれで良いのか、目先とりあえず目くらましでお茶を濁しておけばそれで良いのか、という事をアタシャ思うのですよね、マッタクモウ。


・ジンバブエ先生何でこれに賛成してるの????

てな訳でいくらでも話が続きそうですが、どこぞのフォワードガイダンスのように反復表現になってしまうのも何ですので(−−;脚注の方に行きますと、

『(注1)片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとして反対した。』(今回)

財政金融云々とガイダンスは別問題のような気がしますがそれは兎も角としまして(前からこの話はしているのだが政策金利ガイダンスの所だけに脚注置かれると違和感が出ますな)、まあこの反対そのものは筋が通っている(致命的なのは物価2%達成のパスがより明確になるような追加緩和策を片岡さんが持っていない事ですがそれはさておき)のですが、よくよく見ると前回の時は・・・・・・・

『(注3)原田委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の物価目標の早期達成の ためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、政策金利のフォ ワードガイダンスを、物価目標と関係付けたものに修正することが適当であるとして反対した。 』(前回)

となっていて、前回はジンバブエ先生も反対していたのですよ。でもって今申し上げましたように、そもそもこの政策金利のガイダンスってどこも「物価目標との関連がより明確となる」ってことになっていない(つまり具体的な物価指標なりインフレ期待の指数(というのは無いから無理だが)に紐の付いたガイダンスになっていないということね)のですから、論理的に言って前回反対していて今回賛成するというのは筋を曲げたのか日本語読解能力が著しく欠如しているのかのどちらかということでして、この豹変ぶりに関しても小一時間問い詰めたいですが誰か問い詰めてください。


・てな訳で9月からのあの騒動は何だったんでしょうかねえと言いつつモメンタム評価のところを簡単に

という訳で今回のフォワードガイダンス明確化とかいう奴ですが、目くらましだし従来から見たら何の変化も無いのに等しいですし、これが『こうした 情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成 する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである。』(前回)と声明文で大見得切った上にその後もインタビューやら何やらで散々っぱら黒田節追加緩和の巻を唸りまくっていた挙句の結果かよということで、大山鳴動して鼠一匹という故事成句をこんなところで見るとは思いませんでしたことです。

でまあただのネズミ一匹だったら良いのですが、この9月MPMで振り上げた拳と、その追い打ちを掛けるかのようにメディア等での黒田節の連発と来ておりました訳で、そらまあ真に受ける人は続出するわけでして、何とかストの皆様におかれましても今般梯子を思いっきり外された方々もおいでではないかと思いますし、何とかストだったらまあはいはいサーセンで済むかも知れない(済むとは言っていない)のですが、ポジション食らってしまった方におかれましてはナムナムナムとしか申し上げようがありませんな。

まあしかし何ですな、ヘッドラインしか見ていませんが総裁会見質疑がまーた黒田節になっていまして、緩和バイアス的な威勢の良い口での説明に対して、やっていることは現状維持オブ現状維持と目くらましフォワードガイダンスって、これ実際問題としてはまるで追加緩和する気ねえだろうというか、やる気があるんだったらあれだけ拳を振り上げておいてやらないのがおかしい位の話なのですから、まあこの辺の黒田節はブラフなんでしょうけれども、ブラフも使いすぎるとコミュニケーションが無茶苦茶になるから使用には節度を持っていただきたいと思うのでありました。つーかこの調子でブラフかましていたらそのうち黒田さんの発言そのものの信認が無くなるだろと思うのだが・・・・・・・


でもって(ついうっかり声明文のところでハッスルして長広舌を振るったので展望レポートの部分がちょっと時間がががなので恐縮ですが)展望レポートの前にちょっとだけモメンタム評価云々のところで、今回「別紙」とかなっている部分をば。

別紙に『「物価安定の目標」に向けたモメンタムの評価(注3) 』てなお題があります。

なお、『(注3)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木 委員。反対:片岡委員。片岡委員は、物価上昇率の実績値、需給ギャップ、予想物価上昇率 の動向を踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムはすでに損なわれているとして反対した。』(今回、以下断りの無い限り今回の声明文から引用)

とあってこれも議決しているのがチャーミング。片岡さんの反対はまあ分かる。

『日本銀行では、前回の金融政策決定会合において、このところ、海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、「物価安定 の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断した。こうした情勢にあることを念頭に置きながら、今回の金融政策決定会合では、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを評価する際の主な要因である「マクロ的な需給ギャップ」と「中長期的な予想物価上昇率」等に関して、以下のとおり点検を行った。』

はい。

『そのうえで、日本銀行では、「物価安定の目標」 に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まる状況ではないものの、 引き続き、注意が必要な情勢にあると判断した。』

ゲラゲラゲラ。

『1.マクロ的な需給ギャップ

マクロ的な需給ギャップは、いったん、プラス幅を縮小するとみられる。もっとも、見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くもとで、マクロ的な需給ギャップは、均してみれば現状程度のプラスを維持すると考えられる。』

この辺の話は展望レポート基本的見解と被りますので、展望レポート基本的見解の方まで今日は手が回らないと見られるのでこっちの鑑賞で勘弁してつかあさい。

でもってこれ前回の展望レポートだと「いったんプラス幅を縮小」云々が無くてここが加わっているのですけれども、その背景は、

『海外経済については、米中貿易摩擦の拡大・長期化や、中国をはじめとする新 興国・資源国経済において減速の動きが続いていることなどから、成長ペースの 持ち直し時期がこれまでの想定よりも遅れるとみられる。わが国経済については、 そうしたもとで、輸出の弱めの動きが続くことや、消費税率引き上げなどの影響もあることから、いったん、潜在成長率を幾分下回る成長となり、マクロ的な需 給ギャップのプラス幅は縮小することが見込まれる。』

マイナスになるのかどうかという割とクリティカルな部分は直接的な表現を回避しているのがチャーミング。この書き方だと「マイナスにはならない」と言いたいように見えますが、たぶんうっかりそれを入れてしまうと間違ってマイナスになった時に即追加緩和ということになるので、それを避けたいというのがあるんだと邪推しています(個人の感想です)。というのは先ほども申し上げたように「追加緩和やる気ねえだろこれ」という読み筋の元の個人の感想ですのでそこはまあそういう事でご諒承いただければと。

『もっとも、2021 年度までの見通し期間を通じてみると、設備投資は、海外経済の減速の影響から、製造業を中心にいったん増勢が鈍化するものの、都市再開発 関連投資、省力化投資、研究開発投資などを中心に、緩やかな増加を続けると予 想される。個人消費は、消費税率引き上げの影響が小幅にとどまるもとで、雇用・ 所得環境の改善が続くことなどから、緩やかな増加傾向をたどるとみられる。』

ということで海外がアカン、内需は確り、という説明はここもとの仕様になっています(詳しくは展望レポート比較の後日に)。

『このように、国内需要については、海外経済の減速の波及は限定的となり、増加基調をたどると考えている。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

今回って「海外のリスクを勘案してモメンタムの動向を点検した」結果「海外の見通しを下振れ(回復時期の後ずれ)させたので先行きの経済物価見通しが下がった」けれども、「モメンタムは損なわれていない」という謎の結論になっていて、しかも見通しは下がっているのですが「海外減速の波及は限定的」っていう説明になっておりまして、最早何が何だかさっぱり分からん理屈になっておりまして、いやマジでこれどういう構造になっているんだと思うのですが、こういう辺りからもコミュニケーショングダグダというか、整合性を取って説明する気あんのか(多分無いとみられる)ゴルァという感じではございますな。

『また、海外経済についても、各国のマクロ経済政策の 効果発現やIT関連財のグローバルな調整の進捗などを背景に、先行き、成長率 を高めると予想される。そうしたもとで、わが国経済は、見通し期間を通じて、拡大基調が続き、均してみれば、潜在成長率並みの成長を続け、マクロ的な需給ギャップは、現状程度のプラスを維持するとみられる。 』

均してみると現状程度のプラスを維持するということで、これ途中でマイナスになったらどういう説明になるのか、というかそもそもが途中でマイナスになるのかならないのかが分からんのがお洒落ではありますな。


でもってインフレ期待の方ですが、こっちはいつも通りのはいはいそうですかそうですかという奴なので展望レポートの時にやります。

『3.原油価格や国際金融市場の動向等 』というのも飛ばしまして『4.留意点 』に参ります。

『物価の動向に関しては、マクロ的な需給ギャップ、中長期的な予想物価上昇率のどちらの面からも不確実性が大きい状況が続いている。特に、海外経済につい て、下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、成長ペースの持ち直し時期がさらに遅れたり、一段と減速するなど、下振れリスクが顕在化した場合には、 マクロ的な需給ギャップなどの経路を通じて、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある点には留意しなければならない。また、今後の原油価格や国際金融市場の展開によっては、物価にも影響が及ぶ可能性があるため、注視する必要がある。』

はいはい海外海外という所ですが、モメンタムが損なわれる可能性と言わないで物価に影響が及ぶと表現する辺りがもう憎いねこの!!って感じで、クリティカルヒットしないように慎重に言葉を選んでいる辺りに日銀文学の真骨頂を感じるアタクシなのでした。

#展望レポートと会見に関しては後日